【とらドラ!】大河×竜児【ナツナツ妄想】Vol13

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1名無しさん@お腹いっぱい。
ここは とらドラ! の主人公、逢坂大河と高須竜児のカップリングについて様々な妄想をするスレです。
どんなネタでも構いません。大河と竜児の二人のラブラブっぷりを勝手に想像して勝手に語って下さい。
自作のオリジナルストーリーを語るもよし、妄想シチュエーションで悶えるもよし、何でもOKです。
次スレは>>970が立ててください。 もしくは容量が480KBに近づいたら。
    / _         ヽ、
   /二 - ニ=-     ヽ`
  ′           、   ',
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  ∧    〈 ∨ ∨ ヽ冫l∨
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/ ==',∧     ̄ ∧ 、\〉∨|         /.: : :′. : : : : : : : . 「∨ / / ヘ
     ',∧       | >  /│        /: :∧! : : : :∧ : : : : | ヽ ' ∠
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      ',∧      |′   ∨ ///> 、  Y: '仆〉\| '仆リヽ:|\_|: :|
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まとめサイト
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/

前スレ
【とらドラ!】大河×竜児【モフモフ妄想】Vol12
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【とらドラ!】大河×竜児【ラブラブ妄想】(1スレ目)
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【とらドラ!】大河×竜児【ニヤニヤ妄想】(2スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1234443246/
【とらドラ!】大河×竜児【デレデレ妄想】(3スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1236695653/
【とらドラ!】大河×竜児【イチャイチャ妄想】Vol4
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1237819701/
【とらドラ!】大河×竜児【ベタベタ妄想】Vol5
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1238865504/
【とらドラ!】大河×竜児【スキスキ妄想】Vol6
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1240317270/
【とらドラ!】大河×竜児【ドキドキ妄想】Vol7
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1241386432/
【とらドラ!】大河×竜児【アツアツ妄想】Vol8
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1242374673/
【とらドラ!】大河×竜児【フワフワ妄想】Vol9
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1243354181/
【とらドラ!】大河×竜児【クネクネ妄想】Vol10
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1244280781/
【とらドラ!】大河×竜児【ワクワク妄想】Vol11
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1245146459/
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 07:38:14 ID:alMCutT5
【※CAUTION※超重要事項!※CAUTION※】

非エロ(ギシアンレベルまで)はここに投下

ガチエロは避難所に投稿、ここへは告知誘導のみ

アク禁に巻き込まれたなど直接投下できなかった
非エロ作品の代理投稿は作者が望んだ場合に可

※避難所はまとめサイトにあります

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竹宮ゆゆこ103
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http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1244190432/
とらドラの大河だけど
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1241841788/
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 09:54:22 ID:2Y1e2Yzm
まとめサイトより

Q、1話の机が吹っ飛ぶシーンどういうこと?超能力?
A、ちがいます。ラブレターを鞄に入れてたら人が来たので、ロッカー隠れようとして凄い勢いで移動したんです。

Q、とらドラ!ってどんな作品なの?
A、とらドラ!は高校生特有の『思春期』という限られたひとときの中、
 友達と過ごしながら楽しいと感じたり、ある時は落ち込んだり、
 またある時は恋に悩んだりしながら、毎日を過ごしていくという作品です。
 (雑誌インタビューより)

Q、何クールですか?
A、2クール25話(DVD8巻構成)です。

Q、会長とあーみんの区別がつきません。
A、川嶋亜美(あーみん・ばかちー):前髪が朝倉風、ややたれ目、胸がおおきい、モデル
  http://www.tv-tokyo.co.jp/contents/toradora/images/chara/ami.gif
  狩野すみれ(会長・兄貴):前髪ストレート、ややつり目
  http://www1.atwiki.jp/toradora?cmd=upload&act=open&pageid=19&file=up49532.jpg

【一目でわかるとらドラ!一話】
@猛獣が襲い掛かってきた
Aお腹がすいていたのでご飯をあげた
B「気に入った。これからも飯つくってくれ、毛づくろいとかも頼むわ」
C襲われそうだし、ほっといたら死にそうなので、しぶしぶ飼うことに
Dご飯あげたら、ちょっと尻尾ふった ←今ここ
実際は竜児を犬扱いしている大河こそが
飼われている側っていうのが面白い

とらドラ! まとめwiki
http://www1.atwiki.jp/toradora/
とらドラ! AA保管庫(仮)
http://monabase.net/toradora
4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 09:55:25 ID:2Y1e2Yzm
この板の設定

1レスあたり最大4096バイトで改行は60行まで可能
半角で4096文字・全角で2048文字です

Samba24規制は40秒です
一度書き込んだら40秒は書き込めません

バイバイさるさん規制は40秒以上開けて投稿しても
スレッドに同時に書き込む人数が少ないと発動します
ROMってる人は割り込みを遠慮せずむしろ支援する方向で

●を持っていると上記の規制は無効化されます
ただし調子に乗ってSamba24規制無視して連投しているとバーボンハウスに飛ばされます
たっぷり二時間は2ちゃんねる自体にアクセス出来なくなるので注意
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 09:56:37 ID:2Y1e2Yzm
       ____
     /      \
   /  _ノ  ヽ、_  \
  /  o゚⌒   ⌒゚o  \  また今日も大河の胸がつるぺたのままでいるように
  |     (__人__)    |  祈り続ける仕事が始まるお…
  \     ` ⌒´     /
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 09:58:09 ID:2Y1e2Yzm
>>1乙って書くと竜児がギシアンのやり過ぎで干からびるので注意
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 10:19:27 ID:Mw2Opbpz
大河のおっはー可愛い(・ω・*)
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 10:25:32 ID:ORQhdkf7
>>1>>1>>1>>1>>1>>1>>1
あっはっは
>>1>>1>>1>>1>>1>>1>>1


前スレの埋めネタはあれで終わりかな?
相変わらず面白かった、GJ!
書きかけの作品、長編楽しみにしてます!


大河は生涯つるぺたなので祈る必要はありませぬ
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 12:49:08 ID:TihhrcjV
>>1乙!

下品で駄文なギシアンしか書けなくてごめんなさい
10名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 17:00:10 ID:u5DnbPFE
                        ______
                        \        \
     _, -、                  |,.\        \
.  〃´ ^⌒ヽ               /   \        \
.  i{ /{八人}i              /    ,. i \_______\
  八ハ#゚ 、゚ノハ  パンパン    >>8 |    /.| |\||_______||~
  ノノ ノ)iてと八    ..         | .|   | | |  ||          ||
 ( (く/_j」〉ノ )   .  _./⌒..───' | / | | .||          ||
     (_ハ_)     ..  __/⌒ 二二ニニ ノ  U ||        ||
11名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 17:22:17 ID:wi9otCKy
>>9 ナニ?そんなことないていって欲しいの?
俺は大人だからな子供には教える義務があるからだめなことはだめてはっきり言うぞ。
12名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 22:05:33 ID:4DXq+kon
>>1乙!埋めネタの人も乙!
GoogleノートブックとFireFoxで小窓を開いて書くのもオススメ
しかし、DVD7巻のジャケ絵を見るとどうしても2828しちまうな
13名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/24(金) 23:52:48 ID:YJ0YVmUI
埋め職人乙
14名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 01:06:27 ID:57HvRfp2
ttp://www.amazon.co.jp/gp/product/images/B001IAAPQU

やばい8巻最高なんだけどwww
15名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 01:13:29 ID:AW4VbEYU
>>14
これ反則だろう
16名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 01:18:20 ID:QpqFW0R/
幸せを絵に描くとこうなるのか。。。
17とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/07/25(土) 01:20:12 ID:7WJbt8+j
お題 「関係」「土下座」「感激」



 事務的な手続きも、
 厳かな儀式も、
 友人達とのお祭り騒ぎも、
 全てを終えて、迎えるは静かな夜。
 今日この日をもって、二人の関係は決定的に変化した。
 恋人から家族に。婚約者から夫婦に。
「えへへ……高須大河、かあ……」
「やっぱ、すぐには慣れねえか?」
「ううん、なんか不思議なくらいしっくりくるの」
「おう、そいつはよかった」
 明日からの新婚旅行に備えて、今夜の宿泊は空港近くのホテル。
 普段着に着替えた二人はベッドに並んで座り、軽くキス。
「ねえ竜児、『警告夢』って覚えてる?」
「おう……あったなそんなのも。高2の夏休み、川嶋の別荘に行く前日だったよな」
「そう、竜児が犬になってて、私に土下座して頼むの。結婚してくださいって」
「それで大河が、俺の頭を踏みつけながら、仕方ないからってOKするんだよな」
「あの夢って、見た直後は最悪の気分だったけど」
「まあ、あの頃の俺達なら仕方ねえよな」
「でもね、旅行の最中になんとなくね、ああいうのも『アリ』なんじゃないかなって、そう思ったんだ」
「おう、奇遇だな、俺も実はそうだったんだよ。大河に殴られそうで言わなかったけどな」
「なによそれ、ひどーい」
「だってよ、あの頃はそうだったじゃねえか」
「まあそうだけど……でね、あの夢って、実は警告夢なんかじゃなくって、正夢だったんじゃないかなって」
「いや大河、それは違うぞ」
「……え?」
「あの夢の俺はさ、一匹ぽっちで、寂しくて、どうしようもなくて……
 どうしようもないから、結婚してくれって頼むんだよ。一匹ぽっちじゃ生きられないからって。
 大河もさ、俺が哀れだから、俺があんまり頼むから、仕方ないからってOKするんだよな」
「うん、そうだった……」
「俺は、そんなに追い詰められたから、他にいないからって大河を選んだわけじゃねえぞ。
 あの頃は色々あったけどよ、俺が、俺自身が大河の傍らに立ちたいから、一緒に幸せになりたいから、大河を選んだんだ」
「うん、そうね、私も……竜児に頼まれたからじゃなくて、私が竜児の傍に居たいから、一緒に生きていきたいから、竜児と結婚したんだもの……」
 大河の眼の端に、じわりと涙が浮かぶ。
「お、おい、大河?」
「ごめん、なんかちょっと、感激しちゃって……」
「お、おう。あ、そうだ、あれだけは正夢になって欲しいな」
「あれって?」
「ほら、夢では犬だったけどよ、その、いっぱい子供いたじゃねえか。俺と大河の」
「そうね。子供、いっぱい欲しいね」
「だろだろ?あ……」
「子供って、ことは……」
 見つめ合って真っ赤になる二人。
「えと、その、だな……」
「うん、もう、夫婦、なんだものね……」

 次の日の朝寝過ごして、あやうく飛行機に乗り遅れそうになる二人なのであった。
18名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 01:34:06 ID:auflX67A
19名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 01:43:02 ID:fauvdpBJ
高須竜児は人生で最大の決断を迫られていた。

いいのか?本当にいいのか?
でも、やってくれと本人は言っているんだぞ。
だが、そんなことをしていいのか?
竜児のどうどう巡りの思考に答えは出ない。
「まだ?」
声の主は竜児の目線の下に居て、後ろ姿で立っていた。
それは逢坂大河の小柄すぎる体。
その大河が少し前かがみになるとふんわりと長い栗色の髪が左右に流れ、大河の背中をあらわにした。
いつもの3割り増しのフリル。大河の持っている服の中でも外出着と言ってもいいくらいの上品な仕立ての服をまとい、大河は再度、竜児に催促した。
「まだ?」
大河の声に竜児は覚悟を決めるように、手を大河の背中へ伸ばした。
その手の指先が小さく震えるのを竜児は抑え切れなかった。
大河は何を竜児に催促していたのか。
つい1分前、大河はこう言ったのだった。
「竜児、背中のファスナー、下ろして・・・」



どうしてこんなことになったのかと言えば、話は1日前に遡る。
夏休みも残りわずかとなった高須家の晩餐の席からそれは始まった。
「そう言えば、大河」
「ふぁによ?」
口いっぱいに竜児特製の牛肉のソテーをほおばりながら、大河は行儀悪く答えた。
「あ〜、お前、こぼしてる」
大河が返事をした途端、口の端からポロリと肉の破片が落ちたのだ。
「あら」
そう言うと、大河は平気な顔で落ちた肉片を拾い、口に運んだ。
「おま、落ちたやつを」
呆れ顔の竜児を前に大河は平然と言ったのだ「3秒ルール」と。
「何だそりゃ?」
竜児の疑問に大河が解説を加える。
いわく、食べ物が床に落ちてから3秒以内なら菌が付かない。だから食べてもセーフと。
「竜児の足の裏から落ちた竜児菌とか、付かないから全然大丈夫」
「人の家の畳をばい菌の巣窟みたいに言うな」
「事実でしょ」
「そういうなら、大河の足の裏の大河菌だっていっぱいだぞ。夏休み中はほんとんど俺の家に居たんだからな」
「そう、なら今頃はみんな私の菌があんたの菌を飲み込んでるから問題ないじゃない」
「竜ちゃんも、大河ちゃんもお食事中だよ」
菌だの何だの食事時には相応しくない話題に堪り兼ね、泰子が割って入る。
「大河ちゃんも、拾うのはめっ・・・ね」
「ごめんなさい・・・あんまりおいしかったから・・・つい」
普段は見せたことが無いくらいの殊勝さで大河は泰子に謝った。
「素直な子はやっちゃん大好き」
大げさなくらい泰子は喜び、大河の頭をくりくりと撫でた。
その時の大河はいつもと違って嬉しいような困ったような表情を浮かべ、最後に泰子が手を放した時に、にぱっとはにかんだ。
猫みたいだなと竜児はいつもと違う感じの大河を見てそう思った。
そう言えば虎は猫の仲間だったなと竜児は妙なことを思いながら食事を終えた。
20名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 01:44:00 ID:fauvdpBJ
「はい、これ」
これから仕事に出勤という装いで隣の部屋から出た来た泰子が竜児と大河のふたりに向かって封筒サイズの何かを差し出した。
「何だよこれ?」
「なあに?やっちゃん」
「ん、お店のお客さんにもらったんだけど、忘れてて。竜ちゃんにあげる。大河ちゃんと行って来たら」
受け取った竜児が封筒の中身を確認すると、出て来たのは都心の高級ホテルのディナー券だった。
「うぉ、これってあのカリスマシェフの店。いいなあ、一度味わってみたかったんだよな」
竜児はメディアでも有名なシェフの味を一度体験して見たかったのだ。
「明日までだね・・・有効期限」
大河が券に記された数字を指でなぞりながら衝撃的なことを言う。
「マジかよ、残念、行けねえな」
竜児は天を仰いだ。
「どうして?明日まで使えるんだよ。大丈夫じゃん」
こと、グルメに関してうるさいのは大河も竜児並みであったから既に出かける気満々で、大河がそんなことを言う。
「さっき、俺が言いかけたことがあったよな」
「あ、うん、何?」
「今、言うけどさ。宿題とか・・・終わってるんだろうな?」
「あ、当たり前じゃない。この大河さまを見くびらないで」
大見得を切った割りに大河の視線が泳いでいるのを竜児は見逃さなかった。
「ほ〜お。なら見せてもらおうか」
「うん、後でね」
逃げ切りを図る大河を竜児は許さなかった。
「何時やったって?」
「家で・・・しっかりと」
「嘘付くんじゃねえ。俺はお見通しだ」
「お見通しって、げ、まさか私の家に盗聴器でも仕掛けたんじゃないでしょね」
「そんなことするか、アホめ」
竜児の説明はこうだった。
・・・夏休み中、大河、お前が起きて来る時間は何時だった?
・・・お昼ごろ。
・・・それからどうした?
・・・竜児の家で朝ごはん。
・・・それから?
・・・インコちゃんと遊んで、テレビ見て、お菓子食べて、買い物に行って、晩ご飯食べて、デザート食べて、テレビ見て、マンガ読んで、大笑いして、竜児がうるさいって怒って・・・。
「当たり前だ、俺が自分の部屋で宿題を片付けているのに、お前と来たら、グータラと・・・そんなんでいつ勉強したんだよ」
「あれ?おかしいな」
首を傾げる大河に竜児は「はあ」とため息。
「やってないんだろ」
「や、やろうと思ったのよ、私だって、でも、ほら、ばかちーの別荘とか行っていろいろ忙しかったし、それで・・・」
竜児の顔を上目遣いに見つめ、宿題をやっていない理由を並べ立てる大河に竜児はひとこと。
「な、明日はお前の宿題の面倒を見ないといけねえ」
だから、ディナーは無理だと竜児は付け加えた。
しょんぼりする大河を見て泰子が竜児を非難する。
「竜ちゃん、ひどい。大河ちゃん泣かせた」
「泣かせてないだろう。誤解を招くようなことを言うなよ。大体はこいつの自業自得で」
しかし、泰子は竜児の言い分をまったく聞いていなかった。
「大河ちゃん?竜ちゃんとお出かけしたい?」
「うん」
迷いも無く大河は即答した。
「竜ちゃん、命令。大河ちゃんをちゃんとエスコートすること」
家長の権限を振りかざして、実行を迫る泰子に竜児は両手を上げた。
「ったく、しょうがねえな。つれってってやるよ」
口ではそう言いながらも、内心、行きたかった竜児の表情は浮かれていた。
「やった、ねえねえ、何時に出てく・・・そうだ、何着て行こう」
すっかり浮かれモードに入った大河に竜児は釘を刺すのを忘れなかった。
「その代わり、31日は一日中、勉強だぞ」
「わかってる」
返事だけはいいが聞いていないのは大河の様子を見れば一目瞭然だった。
21名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 01:45:37 ID:fauvdpBJ
「つかまれよ」
「大丈夫」
「無理すんな」
夏休みも終わりに近い平日の上り電車は空いている席どころか、つり革すらつかまる余地が「tyっとないくらい混んでいた。
「私、あれにつかまるから」
大河は空いていたドア付近にある少し高い位置のつり革を見つけると手を伸ばし、つかめないと見るや、爪先立ちになって意地でもつかまろうとした。
それでも届かないと知るや、大河はジャンプしてつり革へ飛びついた。
「ほら、竜児、大丈夫でしょ」
「そのまま、ぶら下がって行くのかよ」
床下数センチを残してブラブラと大河の足は宙に浮いていた。
まさに器械体操の吊り輪状態。
「平気よ」
まあ、華奢に見えても木刀を振り回す様な女である。軽い自分の体重を支えるのなんてわけの無いことだろう。
電車の横揺れに合わせて、大河もぶら〜り、ぶら〜りと揺れている。
「こうしてみると、ちょっといいかも」
「何がだよ」
「竜児の顔が目の前」
言われて竜児も気が付いた。
立ったままの姿勢だと竜児はいつも大河から見上げられるしかなく、上目遣いの大河の表情が竜児のデフォになっていた。
その大河から真正面に見つめられて、竜児はわざとらしく咳払い。
「ん、いいんじゃねーの」
「じゃ、終点までこうしてく」
しかし、大河の空気ハイヒールは次の駅までだった。
更に乗ってきた乗客で竜児と大河は車内の、中ほどまで押し込められてしまった。
竜児は小さな大河が押しつぶされないようにかばいながら、今朝からの出来事を思い返していた。
22名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 01:47:09 ID:fauvdpBJ
なにせ今朝の大河は8時前に高須家の玄関を開けて、飛び込んで来たのだ。
つい昨日まで、お昼前後まで惰眠をむさぼっていた奴と同一人物には見えず、竜児は少なからず驚いた。
「おま、もう起きたのかよ」
幻でも見るような視線で竜児は大河を見つめた。
「何よ、私が早起きしちゃいけないの」
「いけなくはない・・・てかそれが当たり前だろ」
大河のペースに載せられかけて、竜児は慌てて正論を主張した。
「いいのよ、今朝の私はひろ〜い心で見てあげるから、竜児が何を言っても怒らないでいてあげる」
気味が悪いくらい上機嫌で、笑みさえ浮かべる大河に竜児は思わず右手を大河の額に当て自分の熱さと比べてみた。
熱でも出してるんじゃないかと不安になったからだ。
「平熱・・・だな」
「熱なんかない」
邪険に竜児の手を振り払い、大河は食器入れからマイ箸を取って高須家の居間の指定席へ陣取った。
大河はご、は、ん。ご、は、ん・・・と鼻歌風に歌いながら、箸でちゃぶ台のふちを叩いて竜児に朝食の用意を命じていた。
「なあ、大河」
「何よ、早くしてよね。お腹ぺこぺこなんだから」
「さっき言った台詞、信じていいよな」
「私、何か言ったっけ?」
「ほら、怒らないとか言っただろ」
「そんなこと言ったかしら?まあ、いいわ。そういうことにしておいてあげる」
気味悪いくらい機嫌がいい大河の様子に竜児は言い難そうに告げた。
「悪い、飯のしたくこれからなんだ」
軽快なテンポで鳴っていた大河のちゃぶ台太鼓がぴたりと鳴り止み、次の瞬間、激しい乱れ太鼓に変身した。
「なんですって〜え」
低域から高域へレガートするように伸びる大河の声。
まさかこんなに早起きするとは思わず、竜児は朝食の用意を始めていなかったのだ。
「す、すぐ作るからさ。10分待ってくれ」
「待てない・・・って言いたいところだけど、許してあげる」
バッグドロップのひとつも来るかと身構えていた竜児は大河が付け加えた予想外のひと言に天変地異の予感を覚えた。
「そうだ、私、手伝ってあげる」
口先だけではなく、大河は立ち上がると竜児のそばまでやって来て、「何すればいいの?」とばかり、服のそでをまくった。
「あ、いや・・・そうだ。茶碗を並べてくれよ」
「そんな簡単なことでいいの?お豆腐とか切ろうか?」
「気持ちだけでありがたいからさ・・・すみやかに茶碗を並べてくれると助かる」
「わかった。これね」
大河は食器入れごと持ち上げると、居間へ運び、ちゃぶ台の上へ食器を並べ始めた。
いつまでこの晴れ間が続くのやらと竜児は小さく肩をすくめた。
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 01:53:32 ID:fauvdpBJ
とりあえず、今日はここまで・・・。
導入部分を書くだけで、何やら時間が掛かってます。
ラストまで何回かに分けて書いていきます。
途中、少し間が空くかも知れませんが、最後までお付き合い頂ければ・・・と。

>>17
いつも乙です。
まあ、ふたりの遺伝子の悪いところを受け継ぐと大変なことにw

>>14
絵の破壊力って大きい
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 02:03:17 ID:57HvRfp2
>>17
今日も乙でした。ほんわかしました。

>>23
ぶら下がりワロタw 続き楽しみに待ってますねー
25名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 02:49:20 ID:867bDoUG
>>23
乙だ
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 03:00:38 ID:bMvgsHWp
>>23
出だし、手に汗握る展開ですね。

空気ハイヒール、ワロタ。 目線の話しがイイ!
しかし隣の駅まで余裕でぶらさがるたぁ、さすが大河さんだぜw
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 08:25:25 ID:rvhi72yh
DVD8巻のジャケットは破壊力あるな。
幸せそうに手をつないでる2人を見てたら泣けてきた。
ネタばれ、はなはだしいがw
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 08:46:50 ID:3A7g91+D
>>17
おぉ本編後!
さりげなくギシアンだ…。GJ!

>>23
ほんわかムードがいいね。
夏休みの大半が高須家で過ごしてると思うと惚れるのも当然だよな


DVDBOX出るならいくらくらいだろう?買おうか決断中なんだが
29 ◆fDszcniTtk :2009/07/25(土) 08:47:21 ID:AW4VbEYU
新作投下するよ

「君と二人で」

ちと長い。あと、能登が国立選抜ってのは原作と合わないんだが、勘弁。
30 ◆fDszcniTtk :2009/07/25(土) 08:50:16 ID:AW4VbEYU
文化祭を秋にやるというのは、あまりいいアイデアではない。

理由は単純明快。三年生の身が入らないからだ。とくに進学校である大橋高校では、シベリア寒気団とともに迫ってくる大学受験を前に三年生の顔つきが怪しくなっていく頃でもあり、いくら文化の秋とは言え、この時期にお祭り騒ぎというのはどんなものだろうか。

もちろん、三年生を蚊帳の外にして実行すればいいのだが、それはそれ、受験生とて人の子だ。お祭りには参加したい。それに日々の勉強で疲れた心を休めるためにも、ここらでひとつ羽目を外したいという願いもあるだろう。
さらに加えるならば、これは正真正銘、高校時代に彼女を作る最後のチャンスだ。クリスマスに彼女を作っても、受験間近の身ではデートなどおぼつかない。恋人気分を味わったことのない生徒にとって、文化祭は最後のチャンスだ。
逃してなるものか、という三年生も多いだろう。

ま、俺には関係ない焦りだけどな。と、廊下側の窓際でニヤリと笑ったのは高須竜児。

眇めた目の奧には、ぎらぎらと青白く光る白目と、その中央で黒々とした狂気を放つ小さな瞳が収まっている。こみ上げる笑いをこらえているその顔は、いかにも同じ教室に居る生徒達をまとめて両断して新鮮な血を絞り出し、
クリスタルのグラスに注いで食前酒にしてやろうとしているかのようだ。が、そんなことを考えているわけではない。恋人のことを考えていたのだ。

適当にばらけさせた前髪の下に凶悪な双眸を青白く光らせる高須竜児は、見た目と違って暴力沙汰や悪質な非行行為とはまったく無縁である。初めて行くスーパーマーケットではたいてい万引きジーメンにマークされ、警察官とすれ違うと必ず職質を、
それも体格のいい方の警察官から受ける竜児であるが、目を閉じてしまえばごく普通の高校生に過ぎない。

それどころか、生まれたときから母ひとり子ひとりの生活を送って来た上に、幾分頼りない母親を支えてきたために家事の腕前は掃除洗濯お料理どれをとっても超一流。おまけに誰にも優しく思慮深い性格で、どこにお嫁に出しても恥ずかしくない男子高校生である。
ついでと言っては何だが勉強も良くできる。事実、彼が居る3−Aは国立理系選抜コースと呼ばれ、進学校である大橋高校でも選りすぐりの生徒25人を集めたクラスだ。

その竜児に念願の恋人が出来て、早8ヶ月。

相手の名前は逢坂大河さん。誰もがうらやむ美少女だ。わずかにブルーをたたえるミルク色の頬からシャープな顎へかけての優美な輪郭は、ガラスに施した精緻な細工を思わせる。淡く薄い唇は薔薇の花びら。大きな瞳を覆う長いまつげが放つ儚げな印象は、
思わず抱きしめて守ってやりたいほど。体つきは華奢の一言で、公称145cmの人形のように小さなからだは、灰色がかった淡い色の腰まである髪に覆われていて、この世のものとは思えない。いっそ幻想的といいたくなる。

一言で言えば、歩くフランス人形。

宝石のように美しく、朝露のように儚げな彼女を持つ竜児にとって、3年生として迎える文化祭など気分転換以上の意味は無い。悪いが鼻で笑ってしまう。いや、全然期待していないかというとそんなことはない。実のところ期するところがある。
それでもクラス展示には興味はない。だから、教壇に立ったばかりの村瀬には悪いが、早いところホームルームも終わってくれないかなと思っている。

実際そう思っているのは竜児だけではないようで、

「今、北村から話があったように、今年の生徒会は既に学校側との交渉を終えている。大筋は去年と同じだ。残念ながら今年も土曜日1日だけだが、そのかわり、去年と同じくクラス展示、ミス大橋高校、ミスター大橋の得点を競うクラス対抗だ。
優勝クラスにはエアコンの先行施工こそないが、去年同様冷蔵庫が提供され、トイレのコンセントが開放される。そういうわけだから、我が3−Aも頑張ろう」

地味な見た目とは別になかなか熱い語り口を見せる村瀬に対して、クラスメイトの反応はいまいち鈍い。

そりゃそうだ。進学校の進学クラスの秋である。成績が思うように上がらない生徒は焦り、成績があがった生徒も上のクラスの大学を思って焦り、何の心配もない生徒は万が一を心配する季節だ。メイドカフェだの焼きそば屋だのお化け屋敷だの、
ましてプロレス(ガチ)など言っている場合ではない。まかり間違って言い出しっぺになった場合、どれだけ仕事を積まれるかわからないのだ。
31 ◆fDszcniTtk :2009/07/25(土) 08:51:01 ID:AW4VbEYU
やっぱり、時期が悪いだろう。

そう思って視線を横に飛ばす。校庭側の窓際に座っている眼鏡の生徒会長こと北村祐作も、浮かない顔でクラスメイトを見回している。してみると、根回しをしていないというのは本当だったらしい。昨年、先代生徒会長の下で文化祭を盛り上げるべく暗躍した北村は、
他校への宣伝や各クラスとの密な連携、お膝元の2−C内部での根回しと八面六臂の活躍を見せたものだ。北村に限って気のゆるみなどないだろうが、あるいは生徒会の業務が忙しすぎてクラスまで手が回らなかったのかもしれない。

こりゃぁ、HR長引くかな。と、竜児は思う。そう思ったのは竜児だけではないらしく、教室には現代っ子らしい無関心と沈黙が充満していた。が、意外にも案を持っていた奴がひとり。

「じゃぁ、俺はこんなのはどうかと思うんだけど」

さわやかな笑顔を浮かべたまま黒板に向き直ると、村瀬は白いチョークできれいな字を書いた。

「理系展示」

教室がほんのすこしざわつく。そりゃざわつきもする。抽象的すぎて意味がわからないのだから。もう一度見やると北村も意味を図りかねているようだ。やはり根回しは無かったか。それより何より、竜児は村瀬の意外な面に驚く。

村瀬はまじめだし、いい奴だ。家業の病院を継ぐと言って一所懸命勉強している。ただ、積極的に自分からクラスを引っ張るようなタイプではないと思っていた。生徒会にしたって北村同様先代会長狩野すみれから一本釣りを食らって始めたといっていたから、
積極的に参加しているわけではない。部活にも属していない。あらゆることに対して、ほとんどねじが外れているような積極性を見せる北村とは対照的に、村瀬は思慮深くておとなしい、誤解を恐れずに言えばシャイとすら言える。

その村瀬がクラスメイトにむかって展示の提案をしている。それも、仕事を全部負わされるリスクを冒して。
「ちょっと質問があるんだけど」

教室の後ろのほうから声が上がった。振り向くと、男子が一人手を挙げている。

「どうぞ」
「理系展示、って何するんだよ」

そうそう、そこがわからないと頷きながら教卓に視線を戻すクラスメイトに、村瀬は微笑みながら

「いうまでもないけど、俺たちは国立理系選抜コースだ。だけど、自分たちが大学に進学して何をするのか、わかってない人も多いんじゃないかな。実際、おれだって医学部志望だけど、じゃ、医学部で何をするのかというと、よくわかってない。
中には大学卒業後に何をするかすらわかってない奴もいるんじゃないか?」

ご名答、俺はわかってない。竜児は独りごちる。というか、将来の仕事まで決めている村瀬のほうが少数派だ。

「だからさ、いい機会だし理系の大学って何してるんだ?ってのを調べて見て展示してみたらどうかと思うんだ。同じような疑問は親も持っているだろう?だったらどうせ説明するんだから、今調べちまうと一挙両得だ。独りで調べると面倒だけど、みんなで調べれば楽じゃないか」
「調べるってどうやって調べるんだ?」

と、質問したのはさっきとは違う男子。

「1,2カ所、近所の大学の学生課にいって聞いてみるのはどうだろう。そこを始点にして図書館やネットで調べればいい」
「これって、大学の勉強の先取りってこと?」

これは女子。ここに来て、竜児はあれっと思う。賛成とか反対とかではなく、クラスは検討に足を突っ込みかけている。どうやら最初に村瀬が書いたタイトルが抽象的すぎて、質問から検討に誘導されてしまっているようだ。

「そこだよ」

嬉しそうに笑って

「カリキュラムの調査だけしたってつまらないよな。だったら、大学って所は、どんな研究をするところかを調べて見ても楽しいと思うんだ。何でもいいんだよ。自分たちが進む理系って何なのか、学校の勉強だけじゃなくて調べてみようって事だよ」

村瀬が語りかける。
32 ◆fDszcniTtk :2009/07/25(土) 08:51:49 ID:AW4VbEYU
悪くなさそうだな。と、クラスはすでにまとまりかけている。喫茶店じゃないから食材や火の心配はない。プロレスなんて言うふざけた展示ではないから怪我の心配もない。演劇じゃないから役を覚える苦労も衣装を作る苦労もない。人数の少ない国立選抜コースにとって、
人手を要求されない展示は嬉しい。すばらしきナイナイ尽くし。これならちゃっちゃっちゃと終わらせることが出来そうだ。

「ああ、ごめんごめん。俺の案ばっかりしゃべっちゃったな。他に展示の提案無い?」

あるわけがない。

ここに来て竜児は村瀬がかなり周到に計画を練っていたのではないかという疑念を強める。ここまで具体的な案を示された後、自分が言い出しっぺになる覚悟を持って対抗案を提出できる奴は、よほどのあほか、下心のある奴だろう。
だけど残念ながらこのクラスはお勉強のできる子供たちばかりだ。"All"のつづりすら知らないようなアホはいない。さらには、プロモデルのような、はっきり言えば川嶋亜美のような美少女がいるわけではない。別段、あの子にこれを着せたいなどという事前意見もなかった。

下心などない。

「おうっ!」
「高須、何か案があるのか?」

突然声を上げた竜児にクラス中が振り向き、竜児が赤面する。ほんの少し、村瀬の微笑みに緊張が走ったことに気づいた者は居ない。

「いや、申し訳ねえ。ちょっと思い出したことがあって。すまん。お前のそれ、いいアイデアだと思うぞ」
「そうか」

村瀬が嬉しそうに目を細める。

思い出したのだ、恋人である大河のクラスには超絶美少女がひとりいる。大河その人だ。まさか大河狙いでコスプレ喫茶なんて破廉恥な事を企画していないだろうな。

昨年、2−Cの年頃男子生徒のひとりとして、破廉恥にもコスプレ喫茶に賛同していたのは竜児なのだが、それは都合良く棚にあげて、恋人である大河の事が心配になる。すでにクラスの行事なぞ考えている気分ではない。つり上がった三白眼をぎらつかせ、
前の席のクラスメイトの背中を挙動不審に右から左へと視線を走らせる。取り繕うためとはいえ、村瀬案を承認してしまった。

「じゃぁ、代案も無いみたいだし決をとろうか。反対の人、手を挙げて」

誰も挙手しなかった。

「決まりだな。詳細は放課後もう少し話し合うことにしよう。今日は忙しいぞ、ミス大橋高校の候補も決めないとな」

この一言でまた、竜児は動揺する。大河、まさか今年は出ないよな。
クラス展示の話が終わって緊張から開放されたのか、クラスメイトもざわざわし始めた。女子は露骨に嫌な顔
「どうせ今年も逢坂さんよね」
「そうそう、なんだか彼氏できて、またきれいになっちゃったし。うふふふ」

などなど。

衆人環視の下、出来レースのミスコンになど出たくないという意思表明にさりげなく竜児への冷やかしを交える。いろいろ事情があって、竜児と大河のカップルは全校で知らぬ者が無いほど有名だ。気を抜くとすぐ冷やかされる。今日もそう。
顔面を真っ赤にした竜児がカタカタと瞳を震わせながら振り返るとピタリと黙るくせに、前を向くとまたくすくす笑いだ。どうにもならない。

どうにもならない竜児の窮状を救ってくれたのは村瀬だった。

「逢坂さんなら出ないよ。去年の優勝者はさすがに出場禁止だ。ちなみに、プロも正式に禁止したから川嶋さんも出ない。そうそう、福男も同じルールだから、高須は出られないな」

へーそうなんだ、というクラスメイトの呟きをBGMに、竜児も安堵のため息をつく。よかった。

昨年大河がミス大橋高校に選ばれた際、父親が見に来なかったのは全校生徒の知るところだ。だが、そのときにどれほど大河が心の中で血を流したか知るものは、わずかしかいない。もう一度担ぎ出されても、大河は冷ややかな気持ちで自分の傷痕を眺めるだけだったろう。

ほっとする竜児をよそに、盛り上がり始めたクラスはミスコン出場者を決めにかかる。嫌がる女子もいるとはいえ、トイレの電源開放は大きな餌だ。そして、おしゃれに関心のある子ほど、総じてミスコンに近い位置にいる。勉強三昧とはいえ、女の子は女の子。
出来レースでないなら、ステージの上、きれいにお化粧してスポットライトにあたってみたいという気持ちもあるのだろう。

代表に選ばれる心配の無い竜児は、大河のクラスの動向を探ろうと、廊下から伝わってくる声が無いか耳を傾ける。高須イヤーは地獄耳ではない。残念。

目つきだけはデビルだが。

◇ ◇ ◇ ◇
33君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/25(土) 08:52:58 ID:AW4VbEYU
「高須、俺たちの班に入れよ」
「え?」

村瀬に声をかけられて、竜児は当惑を隠せない。だって畑違いもはなはだしい。

「お前んところ、医学だろ?俺、数学班に入ろうと思っていたんだけど」
「いいじゃないか、数学のところは濃い大将がいるだろ。うちも濃い奴がほしいんだ」
「濃いってなんだよ。それにお前が大将なんだろ」
「いや、俺はクラスのまとめ役だからさ。うちのチームだけかかわるわけには行かない」
「そういう細かいところは北村に似てきたな。気をつけろ」

お前も裸族の闇に落ちるぞ。

そう独りごちながら、竜児はちょっと考え込む。帰りのSHRで、「医学」「数学」「物理学」「コンピュータ科学」の4班に分かれることに決まった。各班リーダーを決めて、調べごとをする。数学の得意な竜児は当然数学と思っていたのだが。
ちなみに北村はさすがに生徒会が忙しすぎると頭を下げて班作業を辞退した。責める者がいるわけではないが、であれば、村瀬はどうなんだと思わないこともない。

「おーい、高須。こっち来ないのか?」

数学班の連中は暢気に笑っている。確かに、あちらは村瀬が言うとおり、人材に困っているわけではない。クラスメイトに数学マニアがいて、普段から数学史だの数学者列伝などを読みまくっているため、ここぞとばかりに展示を自分の趣味で染め上げようとしている。
くっついていけば楽そうなので、数学の得意な連中はみなそこに集まっている。

一方、医学班が人手不足なのは一見して分かる。なにしろ敷居が高い。大学卒業まで順調にいっても6年もかかる分野だ。面倒くさいに決まっている。ただ、竜児としては考えどころだ。濃いなどといわれるのは引っかからないでもないが、
一方で「来たいなら来いよ」と「ぜひ来てくれ」では天と地の差がある。どうせやるなら望まれているほうが楽しそうだ。

「ま、俺は医学は分からないが、『分からないからしない』より、『分からないからする』ほうが楽しそうだな。よろしく頼むぜ」
「よし、決まりだな」

村瀬がニコニコしながら言葉を継ぐ。

「医学といっても、血が出るような話ばかりじゃないよ。健康医学とか、食事の話とか、スポーツ医学とか、いろいろだ」

なに、食事だって?食事なら分かるぞ。瞳をぎゅっと小さくして竜児が狂おしく視線を揺らす。偶然目が合った女子が目をそらすが、落ち込んでいる場合ではない。だったら食事を調べようぜ、栄養とか、料理の歴史とか。と、言おうとした所で

「え?気持ち悪くないの?だったら医学班いっちゃおうかな?」

物理学班から少し離れたところで思案していた女子が、こちらに声をかける。教室のあちこちからも興味のありそうな視線が向けられている。

「無理に外科の話をする必要はないからね。父兄や子供も見に来るし、血や内臓の話は無しにしようか」
「そうしよう」
「おう、それでいいだろ」
「じゃ、私医学班!」
「あ、俺も」

あっという間にばらばらと人が集まってきた。医学ってそんなに人気なのか、と竜児は首をひねる。そして食事について調べようという竜児の意見は「家庭科じゃない」と一蹴され、スポーツ医学について調べようということになった。なんだよ、食事も医学だって言ったくせに。

三年になって部活こそないとはいえ、塾に通っている連中は多い。買い物以外時間に都合のつく竜児は、居残って同じ班の仲間と計画をたてることにした。

◇ ◇ ◇ ◇
34君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/25(土) 08:53:49 ID:AW4VbEYU
「大河、お前んところクラス展示なんになった?」
「いきなり何なのよ。『おう』とか『おはよう』とか言ってくれないの?」

少しずつ空が高くなり、ひんやりとしてきた朝の通学路。顔を見るなり食いつくように質問をしてきた竜児に揶揄を飛ばすのはちんまりとした少女。脚を開いて両手を腰にやり、バッグは斜めがけ。
薄い胸をそらして「愛が足りないわ」といわんばかりに見上げているこの少女こそ、竜児の恋人、逢坂大河である。

「おう、すまねぇ。おはようがまだだったな。そいでさ、お前んとこクラス展示なんなんだよ」

いつも一緒に帰るのだが、昨日はクラス展示の打ち合わせがあったので先に帰ってもらったのだ。塾こそ行っていないものの、今年生まれたばかり弟の世話は大河がすることになっている。だから、大河のクラスの展示がなにか、竜児はまだ知らない。
ちなみに大河のクラスは3−B、国立文系選抜コース。お隣だ。

「なによまったく。あんたそんなに文化祭好きだっけ?」
「そうじゃねぇけど、気になるんだよ」

二人並んでいつもの通学路を歩く。木々の葉はすっかり色づいている。二人が長く苦しい日々のあと、ついに心を通じ合わせたのは今年の聖バレンタインデー。それまで大河は竜児のアパートの隣のマンションに住んでいた。

見かけの可憐さとまったく逆に、出会った頃の大河は他者に対する呵責の無い攻撃性を露わにし、全方位360度に殺意を放ち、全世界を敵に回す覚悟すらしているような強烈な女だった。その桁外れの非寛容さ、容赦の無さと、
一風変わった名前、高校生とは思えないちんまりした体つきからついたあだ名が「手乗りタイガー」。

見かけばかり凶悪で、実は象のお母さんのように心優しい竜児。見かけばかり可憐で、実はけだもののように凶暴な大河。

偶然お隣同士で、偶然、互いの友達に片想いしていた二人は、ふとしたことから共同戦線を張ることになった。ふとしたことと言うのは大河のドジとそれに続く高須竜児襲撃事件のことだが。

その大河がいつの間にか半居候になるまでさほど時間はかからなかった。大河は生活能力が限りなくゼロに近いのだ。そして、竜児は困っている奴を頬って置けないたちだった。後から考えてみれば、お約束のように二人は互いをかけがえの無い相手だと想う様になり、
ついにその心のうちを互いに伝えたのが、聖バレンタインデーの夜だった。

実のところ、二人はその場で婚約までしているのだが、それはそれ、まだ高校生である。今はただ、毎日を二人面白おかしくすごしている。変わったのは、大河が竜児の隣のマンションでの一人暮らしをやめ、実の母親の元で新しい家族と暮らしていることと、
少しおとなしくなったことだけ。

そう言うわけで、もともと『手乗りタイガー』『ヤンキー高須』として全校を震え上がらせていた二人だが、バレンタインデーの次の日に学校で二人が駆け落ち騒ぎを起こしたこともあって、全校に知らぬ者が居ないほど有名なカップルである。

「うちのクラス展示『文系って何?』よ。大学で文系の勉強って言ってもぴんと来ないから、調べてみんなで展示するんだって」
「え?」

竜児が眉をひそめる。とりあえずコスプレ喫茶とか、チャイナメイド喫茶などという破廉恥な展示でないことはいい。しかし、あまりにもどこかで聞いたことのある内容じゃないか。

「竜児のクラスはどうなのよ」
「おう、俺のところは、その…」

悪いことをしているわけでもないのに、しどろもどろになるのは

「『理系展示』。理系に進むっていってもぴんとこないし、どうせ親にも説明するんだから、みんなで調べようぜって」

あんまりにも似ているからだ。

「なにそれ!まるっきり同じじゃない」

大河も驚いて目を丸くする。あ、かわいい。

「…あのさ、大河。お前のクラス、文化祭実行委員だれ?」
「ほら、あの子よ。竜児覚えているでしょ?クリスマスパーティーで私やばかちーと一緒に歌った子。あ、名前ど忘れした!」
「書記女史かよ」

生徒会じゃねぇか。日に日に高くなる青空を見上げながら、竜児は唐突に村瀬の顔を思いだす。

◇ ◇ ◇ ◇ 
35君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/25(土) 08:54:55 ID:AW4VbEYU
「高須!」
「おう、おはよう。なんだ、どうした?」

教室に入るなり北村に声を掛けられて返事をした竜児は、クラスメイトの視線が自分に集まっていることに気づいてたじろぐ。あれ、俺何かしたっけ?最初に自分に非がないか問いかけるあたり、竜児の奥ゆかしさが出ていると言える。これが去年の今頃の大河なら、
「なに見てるのよっ!」と、いきなり睨み付けて低い声で「殺すわよ」と恫喝するところだ。今年の大河はそんなことはない。「なに見てるのよっ!」と、いきなり睨み付けて低い声で唸るのが関の山だろう。丸くなったものだ。

「高須、隣の展示聞いたか?」
「おう、道すがら大河から聞いたぞ。『文系って何?』だろ」

そうそう、といった感じにクラス中が頷いて、しんとなっていた教室が再びがやがやし始める。なんだ、と竜児は胸をなで下ろす。俺が何かしたんじゃなくて、何か知ってるかを聞きたかったのか。

「北村、お前の仕込みだと思っていたんだけど、違うのか?」

かまを掛けてみるが、

「馬鹿をいえ、隣のクラスと同じ展示なんて、相談なしにやるものか」

これはハズレらしい。とすると、犯人は…いやいや、ここで犯人というのはちょっと早計に過ぎるかもしれない。なにしろ、隣のクラスと内容がかぶっているのは偶然かもしれないからだ。去年の文化祭など、校内にメイド喫茶が乱立していた。あれだけかぶっていたんだから、
隣のクラスと展示内容がかぶるのだって…無理があるか。こんなマイナーなネタでかぶるなど、ちょっと考えにくい。

「そうか、じゃぁやっぱり」

と、みんなが顔を見合わせたところに、
「おはよう」

丁度村瀬が登場した。
水をうったように静かになる教室。えっ?と戸惑う村瀬。

「村瀬、ちょっと質問があるんだが、いいか」

クラスを代表して北村が話しかける。別にクラスを代表してくれと頼んだわけでもないし、北村も、よし、一丁俺がなどと意気込んでいるわけではない。だが、クラス委員と生徒会長の兼務などと言う面倒なことを平気な顔で自分から引き受ける男だ。
自然、クラスの代表のような空気をまとってしまう。

「何?どうしたんだよ」
「隣のクラスの展示、お前が仕組んだのか?」

そこまでストレートに聞かなくても、と竜児は切れそうな視線を泳がせる。ものには順序があるし、そもそも人間は機械ではないのだから相手の顔色をうかがいながら、といった気遣いが必要だ。だが、北村はわざとやっているのか、
そういった気遣いのようなものを平然と踏み倒してしまうことがある。360度全方位にやたらに気を遣って生きている竜児は、時々北村のこの手の無神経さがうらやましく感じることがある。

北村のストレートな質問に、村瀬は柔らかい、だがちょっと困った様な笑みを浮かべた。

「仕組んだ、と来たか。参ったな。答えはNOであり、YESだ」
「なんだよ、はっきりしろ」

眼鏡の奥の目を怒ったように細めて北村が詰問する。

「そうだな。たいした話じゃないんだが、あっちもほら、文化祭実行委員だろ」

そういいながら、村瀬は自分の机の横に鞄をかけ、顔を上げて机に腰掛ける。『あっち』とは、生徒会の書記女史のことだろう。村瀬は庶務だ。あっちね。と、その微妙な距離感を感じさせる言葉に竜児は妙に引っかかる。

「だから、前、生徒会室でどうしようって話したことがあるんだよ。三年だから、みんな文化祭どころじゃないかもしれないし、誰も提案しないかもしれないってね」
「まあ、確かにその通りだな。毎年3年生の展示はなかなか決まらないし、今年もまだ決まって無いところがある」

と、北村が同意する。

「そうなのか?」

これは竜児。
36君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/25(土) 08:56:32 ID:AW4VbEYU


「ああ、正確には決まっているのはうちと隣だけだ。だからといって、事前に示し合うことは無いんじゃないか?」
「いや、そうじゃない。誰も提案しないかもしれないから、あらかじめ考えた方がいいかなっていう話をしてたんだ。そのときに俺が『理系だし、理系がどんなものか展示したら面白いかな』って言ったら、『そのアイデアもらい!こっちは文系で行く』って言ってたんだよ。
それだけさ。昨日は誰も提案しなかったし、だから前に考えてたことを提案したんだ。隣の経緯は知らないけど、同じじゃないかな」

そうか、そういうことか。と、独り言のようにトーンの落ちた北村と同様、クラスの他の連中も納得する。もともと怒っていたわけではないから、特に食い下がる奴も居ない。偶然隣のクラスと展示の方向が一緒だったというそれだけなのだ。
『今朝、フォルクスワーゲンを2台見たよ』『俺も見た』程度の話でしかない。いきなり詰問口調の北村が大げさ過ぎだ。

だからそれほど気にする必要はないのだが、村瀬は

「なぁ、みんな。もし気を悪くしたんなら謝る。先生からは判を貰っているけど、事情を話せば変えさせてくれると思うぞ」

譲る姿勢を見せる。この辺は村瀬らしいところだろう。もっとも、村瀬自身何も提案がないときのためのアイデアと言っていたからこだわる必要もないのかもしれないが。

村瀬の情報については北村が制した。

「いや、そこまでは言ってない。どうだろう、みんな。ちょっと戸惑っただけだし、村瀬の提案は面白いと思うぞ。まだ来ていない奴も居るから、あとで席の近い奴が説明してあげてくれ。反対いるか?」

誰もいない。何も問題無いだろ?という声が教室の端からあがり、みな同意した。

◇ ◇ ◇ ◇ 

帰りのSHRのあと、何も用の無い連中が集まって、昨日と同じく計画を練った。塾のスケジュールも人それぞれなので、昨日と面子が少し変わっている。あるいは、まったく塾に行っていない竜児や大河のほうが少数派かもれない。

作業中、数学班のひとりが

「いっそ3−Bと共同企画にしたらどうだろう」

と、言い出した。似たような展示を違う方向でやるのなら、タイトルだけでもそろえると面白いかもしれない。

「おお、エレガントな解」

と喜んでいるのは数学班のリーダーの木下。エレガントかどうかは別として、竜児も悪くない意見だと思う。そして、ちらりと村瀬の顔を見る。予想通り、嬉しそうだ。どんな企画にしようか。と、みんなに問いかける。

いやいやいや、と竜児は首を振る。去年、自分と大河の事を人があれこれ噂していたときどうだったか。嫌だったはずだ。だったら、自分もゲスの勘ぐりは止めようじゃないか。そう、言い聞かせて話し合いに注意を戻す。

翌朝、担任に5分もらってクラスに村瀬が共同企画案を説明。特に反対もなく、そのまま昼休みに隣の文化祭実行委員…生徒会の書記女史に打診することになった。付け加えておくと、一番嬉しそうだったのは村瀬じゃなくて担任。先生とは、
生徒が積極性を見せると無条件にうれしいものらしい。

結局、文化祭の準備三日目にして、両クラスの生徒並びに担任同意の下、3−Aと3−Bは共同企画に舵を切った。展示内容はそれぞれ変更無し。特に共同作業も無し。ただ、タイトルが変わる。

3−A「理系の世界」
3−B「文系の世界」

文化祭まで、あと10日。

◇ ◇ ◇ ◇ 
37名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 09:28:58 ID:57HvRfp2
支援
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 10:42:13 ID:3A7g91+D
ウホッ読むのに1時間も掛かったぜ。
原作を読んでた頃を思い出したw
支援!
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 10:57:24 ID:mbLkhRhx
相変わらず内容のクオリティとレベルが高いぜ…
さっそく続きが待遠しいのは確定的に明らか

>>38
いくらなんでもかかりすぎだよ!
そんなに時間かけてたら大河のおっぱいが大きくなっちゃう!
40名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 14:33:28 ID:wgPB67QP
>>14
ハァ━━━━━━;´Д`━━━━━━ン!!!!
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 14:51:00 ID:wgPB67QP
>>18
この大河の幸せそうな表情ったら////
42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 15:45:51 ID:bMvgsHWp
>>36
いいなー。さりげない日常の描写でも、風景が目に浮かぶ。
これぞ物語!
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 17:11:37 ID:sYaMyOzH
>>36
いいねぇ。村瀬シリーズ。
期待しております!!
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 19:02:23 ID:867bDoUG
規制が!
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 19:04:37 ID:867bDoUG
解除されてたー(゚∀゚)やったぜ
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 19:33:37 ID:dwN+bo/r
解除はまだかな
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 19:47:27 ID:3A7g91+D
どうかしたの?
48名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 20:00:35 ID:HzCCGtXj
「今夜はカレーにするか…」

ttp://blog-imgs-32.fc2.com/n/e/w/newslog2ch/20090122184254.jpg

「私甘口じゃなきゃヤダ!」
49名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 20:08:10 ID:3A7g91+D
>>48
それ多分中身共通だった気が
50名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/25(土) 20:18:14 ID:dwN+bo/r
まとめの人は12の保管できたんだろうか
専ブラなら問題ないだろうけど
51名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 00:47:10 ID:StV7bJIR
>>22
続きです。

急ごしらえだが手抜きの少ない朝食を食べ終えると大河が出かけようと言い出した。
「出かけるって?」
「決まってるでしょ。昨日の」
「ああ、泰子がくれたチケットのか。でも、あれは夜だぞ。今からだといくらなんでも早すぎないか」
「いいじゃない。どこかで時間をつぶせば」
早く家を出ることに消極的な竜児にとうとう大河は癇癪を爆発させた。
「もういい!ばか!!」
それだけ言い捨てると、扉の開閉音も激しく高須家を飛び出して行った。
「何だ、ありゃ?」
竜児には訳がわからなかった。
あんなに機嫌が良かったのに急に態度が変わった大河が理解できなくて、竜児にも変なもやもやが発生していた。
つい、食器洗いが乱暴になり、お皿同士がぶつかって、大きな音を立てた。
その音に呼応するように泰子の部屋のふすまが開いた。
上向けに寝転んだ姿勢のまま泰子が姿を現した。
「竜ちゃん」
「わりい、起しちまった」
「大河ちゃん、帰っちゃったね」
「ああ、いんだよ、わけわかんねえ」
「ふふ、大河ちゃん、分かりやすくて、かわいい」
泰子が妙なことを言い出す。
「そりゃ、大河はかわいいけど・・・」
「外見のことじゃないんだけどな、竜ちゃんにはわかんない?」
謎解きのような質問をされて竜児は答えにつまった。
息子のあまりの鈍さに泰子は仕方なしに回答を提示してやった。
「嬉しいんだよ、大河ちゃん。竜ちゃんと出かけられるのが」
竜児にはピンと来ない答えだった。
「出かけるって・・・スーパーとかいつもあいつと行ってるし、今さら」
泰子は竜児の育て方をどこで間違えたのかと後悔するような顔を見せ、それでも竜児の背中を押した。
「いいから、いいから、ここはやっちゃんの言うことを信じなさいって」
そして大河を早く迎えに行けと、エプロン姿の竜児をせかした。
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 00:48:18 ID:StV7bJIR
泰子に押し出されるように家を出た竜児は仕方無しに大河の家の玄関前に立った。
「大河、いるのか?入るぞ」
少し大きな音を立てて、玄関ドアを開け、竜児は大河の家に足を踏み入れた。
「大河」
いると思われたリビングルームには人影が無く、竜児はさらに大河と声を掛けながら、寝室へ続くドアを開けた。
寝室へ一歩入った竜児は部屋の惨状に目を見張った。
あたり一面に散乱する脱ぎ散らかされたように無造作に打ち捨てられた洋服の数々、クローゼットの中身を総ざらえしたかのように床一面に広がっていた。
大河はその中に居た。
ちょうどベッドのある部屋の中央だけが洋服の海から侵食を免れた島のようにぽつんと漂っていた。
ひざを抱えた姿勢のまま頭をその中に沈ませて、大河は言った。
「何しに来たのよ」
くぐもった様な大河の声。
「さっきは・・・悪かったよ」
竜児は短く、謝罪の言葉を大河へ伝えた。
ようやくこの時になり、大河の今朝の装いがいつも以上に決まっていたことに竜児は気が付いた。
よほどのことが無い限り、単に食事に来るだけでも高須家を訪問する際、大河はそれなりのファッションで来ていた。
だから、今朝のちょっぴりドレスアップしていた大河に竜児は気が付かなかったのである。
大河なりに気合を入れてきていたのに、竜児はそれに答えてやれなかった。
泰子に言われて気づくようじゃ、俺もまだまだだな・・・。
「大河、出かけようぜ」
ぷいとそっぽを向く大河。
「大河!」と声を荒げかけて、竜児は思いとどまった。
さっき、泰子に言われたのだ「大河ちゃん、もしかしたら意固地になってるかもしれないから、優しく、言わないとダメよん」と。
泰子の読み通りの展開に竜児は感心する。
「なあ、お弁当作ってきたんだ。たまには外で食べようぜ。俺、いい場所知ってるし」
お弁当の3文字に反応してか大河がピクリと動く。
「3段重ねの豪華版だぞ」
向こうを向いていた大河が竜児の方へ向きを変えた。
手ごたえあり・・・と釣り師の気分で竜児は大河をさらに引っ張り出すべく、撒き餌をまいた。
「大河が来ないなら、ひとりで食うか・・・仕方ない」
竜児はお弁当箱をわざとがちゃがちゃ言わせ、寝室を出て行こうとした。
その竜児の後ろへ向かって投げつけられた大河の声。
「ひ、ひとりで食うな〜あ」
大声と共に大河復活。
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 00:49:38 ID:StV7bJIR
天気は曇天。
景色を眺めながらそれがちょうどいいと竜児は思った。
あれから竜児と大河と電車を乗り継いでやって来たのは海辺の埋立地にある小さな区立公園。
新交通システムの小ぶりな電車の駅から、少し歩いた所にそれはあった。
まったく、ここへ来るまで一苦労だったぜ・・・と竜児ははしゃぐ大河を見ながら自分の肩を叩いた。

てこてこと竜児の先を歩いていた大河が立ち止まった。
「ねえ、竜児・・・まだ?」
「あと、ちょっとだ」
「さっきから、ちょっと、ちょっとって言うだけで、いっこうに着かないじゃない」
「10分も歩いてねえだろ、もうへばったのかよ」
「退屈なのよ。おんなじような風景で」
確かに大河の言う通り、駅からまっすぐに伸びる道路がはるか先まで続いているだけで、周囲に建物は無く、何とか建設予定地みたいな看板が立てられた空き地が広がるばかりだった。
「しょうがねえな・・・最初はグー、じゃんけんぽん」
竜児が手を動かすと、つられたように大河も手を出してきた。
竜児はパー、大河はグーだった。
「俺の勝ちだな」
「え、え・・・ズルイ、竜児」
「いきなり、じゃんけんしかけるとだいたい、グーを出すんだよ。頭脳戦の勝利と言って欲しいな」
竜児はそれだけ言うと、その場から「パ、イ、ナ、ツ、プ、ル」と言いながら6歩分スキップして、前にいる大河を追い越して止まった。
竜児はそれからくるりと大河の方へ向き直り、「次、いくか?」と大河に誘いをかけた。
「負けない」
うんざりしたような顔は吹き飛んで、大河の瞳はキラキラと光るように活発に動き出した。
「じゃん、けん・・・」
「ちょっと、待った」
大河がじゃんけんのモーションに入るのを竜児は止めた。
「何よ?」
「次に出す手は決まったのか?」
「決めてないわよ」
「良く、考えた方がいいぞ。2回続けて負けたくないだろう」
「あ、当たり前じゃない・・・ちょ、ちょっと待ちなさいよ」
大河はその場でグーがどうのとかパーがどうのかとかぶつぶつ言いながら次に繰り出す手を思案した。
「そうだ、負けた方が荷物を持つってはどうだ?」
「余計なこと言わないで、気が散るから」
大河はじっくり考えること30秒余りで結論を出した。
「決めた」
「よし、それじゃ、じゃんけんぽん」
竜児の掛け声と共にお互いが手を出し合う。
竜児はグー・・・大河はチョキだった。
信じられないというように大河は自分の目の前にV字の手をかざし、まさかの敗戦結果に呆然とした。
「ぐりこのおまけ」
さらに大河の先に行く竜児。
「ぬお、竜児、次よ。次」
すっかり、勝負に熱くなった大河だったが、勝負運に見放され、この戦いは電柱2個分の間隔が出来たところでお開きになった。
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 00:51:14 ID:StV7bJIR
「着いたぜ」
「ここ?」
何の変哲も無い入り口に大河が不思議そうな顔をする。
植林された木々が並び、向こう側が良く見えないくらいだった。
延々と歩いた先に竜宮城やディズニーランドみたいな物が待っているとはいくら大河でも思わなかったが、これではあまりに殺風景過ぎると言わざるを得ない。
歓迎の幟が立っているわけでもないし、愛想のいい店員さんが出迎えてくれるわけでもない。
ただ素っ気無く区立公園と看板が出ているだけだ。
「どこがいいところなのよ?」
人買いに騙されて連れて来られた村娘な気分で大河は竜児に抗議した。
「いいからいいから、この先に行けば分かる」
大河の気持ちにお構い無しに竜児は中へ足を運んだ。
「待って、竜児」
大河は竜児を慌てて追い駆けた。
竜児に付いて進む大河はやがて、前の木々の間が白くなっているのを見つけた。
「あれ?何?」
竜児はただ、大河へ向かってうなづくと黙ってそのまま、その方向へ向かって進んだ。
「わあ・・・」
大河は歓声を上げた。
公園の中の森を抜けると、すぐそこに水平線まで海が広がっていた。
大河はそのまま駆け出し陸地と海とを隔てる低いフェンスから身を乗り出して、海の先を見つめた。
「海だあ・・・海」
「川嶋の別荘で行った伊豆の海には及ばねえけどな」
大河に追いついた竜児がフェンスに手をつきながらそんなことを言う。
実際、絶景といえるのは正面だけで、左右にちょっとでも視線を振れば見えるのは化学コンビナートの紅白の煙突や、巨大な倉庫でしかなかった。
「風が気持ちいい」
目を細める大河と竜児の間を海を渡る風がさっと駆け抜け、歩き続けて火照ったふたりの体を冷やす。
そのままぼんやりと大河と竜児のふたりは海風にふかれるまま、時を過ごした。
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 00:52:55 ID:StV7bJIR
「静かね」
大河言う。
実際、物音はしているのだが、車の音や話し声などの人工的な音がほとんど無いのだ。
護岸を叩く波のちゃぷちゃぷ言う音や、時折、通り抜ける風で背後の木々がざわめくくらいだった。
「人もいないしな」
「本当」
竜児に言われて大河もそれに気がついた。
この公園に入ってから、人影をまったく見ていないのだ。
「どうしてよ?」
不思議に感じて大河は竜児に問いかけた。
「実は大河には黙っていたんだが・・・俺は・・・」
打ち明け話のような竜児の態度に大河は息を呑んだ。そして次の瞬間、吹き出した。
真面目な顔をして竜児はこう言ったのだった。・・・超能力者なんだ!俺の超能力でここ封鎖してるんだ、だから誰も入って来ないんだ・・・と。
「何だよ、信じてねえだろ」
竜児、あんたバカと、笑い転げる大河。
しかし、バカと言う割りにいつもの毒がなく乾いた口調だった。
「いいじゃねえか、あこがれてたんだ。子供の頃・・・何でも願いが叶う気がして」
大河は笑いを止め、竜児を見た。
「わかんなくないな・・・竜児のその気持ち」
大河は遠くを見るような表情を見せ、ポツリと言った。
「私だって・・・魔法使いにあこがれてた」
竜児は笑わなかった。
「呪文ひとつで何でも願い叶う・・・はは・・・うらやましかった」
複雑な家庭事情が及ぼした子供時代の陰。
味わった者でしか分かり合えない共通認識。
ほんの一瞬だけ、竜児も大河もお互いに何かが触れ合った気がした。
「・・・で、本当の理由は?」
イタズラっぽく笑う大河に竜児は種明かしした。
・・・この暑い中、歩いてこんな何も無いところまで来る物好きはいねえよ。
・・・車なら来れるじゃない?
・・・ああ、ダメダメ。ここへ来る道は一般車通行禁止。だから徒歩しか移動手段が無いんだ。

「じゃあ、私たち・・・相当な物好き?」
「そう言うことになるな」
・・・プッ。
竜児も大河も顔を見合わせ、笑いあった。
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 00:56:23 ID:StV7bJIR
とりあえず、ここでいったん中断。
続きはまた後日で。

・・・なんか、短く終わる気がしてたんですが、長くなりそうな気もします。
まだ、冒頭のシーンへ戻らない。


・・・タイトルくらい付けたほうがいいような気もしてきました。
はて?何が良いだろう。
タイトル考えるのって、結構苦手だったりして。
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 01:03:17 ID:Az/QRLbX
>>56
おつ!そしてGJ
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 01:03:49 ID:2CRbRlsh
>>56
今日も乙でした。とっても良かった。

タイトルは自分でしっくり来るのが無ければ
スーパーまとめ人様にお任せという手も・・・
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 01:08:55 ID:JiU3cNy9
>>18を見ていたらこんな光景が浮かんだりなんかしたりした

◆◇◆

「じゃあ撮るよー」

「おぅ」

「うん」

「はいチィィィィィィィィィズ!よし撮れたよ」

「ありがとう、みのりん」

「さっそく見てみようか。いやあ二人ともいい笑顔だね!!」

「えへへ♥」

「おぅ」

「はっはっはー。次は俺が撮るぞー!」

「まあついでだから私も撮るかな」

「あータイガーそのセーラー服かわいいじゃん!あたしにも撮らせてー!」

「私も記念に一枚」

「お、おまえら…」

「ちょっとあんたら…!」

「うひょー今日は能登っちとたかっちゃんたち二組のツーショットだぁ!」

「ゑ!?能登くんあんた、木原麻耶とそんな仲になってたの!?」

「い、いや…//////」

「べ、別にそんな…嫌いじゃない…っていうか…その…////」

「あらあら二人とも♪」

「はっはっはめでたい!実にめでたいぞ四人とも!」

「まったく祐作も実乃梨ちゃんも…やれやれだわ」

「よーし!じゃ今度はみんなで撮ろうか!」

「おー!!」
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 01:15:18 ID:JiU3cNy9
◆◇◆

キャッキャッウフフ

「ねえ、竜児、あのね」

「おぅ」

「好き」

「…俺もだ」

「えへ♪嬉しい…」

終わり

◆◇◆

俺はこんな感じ
みんなはどんな光景が浮かびましたか?
61まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY :2009/07/26(日) 03:33:28 ID:embf9p0F
2日ぶりに家に帰ってきたら12スレ目がDAT落ちしていたでござる、の巻。
おおおお…専ブラだけど最後の方のログ取ってねえ…
文豪の埋めネタが…

どなたかログを盛っていたら提供していただけないでしょうか…
よろしくお願いいたします。


まとめサイトの更新はもう少しおまちください。
あと、タイトルが無い作品はこっちで勝手に考えているので
タイトルを変更したい場合は、ご連絡ください。


62名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 04:21:53 ID:dn6anaed
まとめ人さま、いつもありがとうございますm(_ _)m
63 ◆fDszcniTtk :2009/07/26(日) 06:44:20 ID:XRZmX1CO
>>61
いっそそのまま闇に葬って貰いたかったのですが…
ttp://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/21174
うぷしときました。DLパスはruka。なお、24時間で自動的に(ry


>>38
>>39
>>42
>>36
ありがとう! >>39 、夜道に気を(ry
64 ◆fDszcniTtk :2009/07/26(日) 06:45:01 ID:XRZmX1CO
中々火がつかなかった文化祭の展示の準備も、木曜日に行った大学学生課への訪問と、図書館への潜入の結果が出てくると少しずつ方向が見えて来た。

「時間割のコピー貰ってきたんだけどさ、これ1年生。こっち2年。で、これが3年。4年は研究だからスカスカだな。必須とA選択、B選択ってのがあるんだって」
「おいおい、びっちりじゃん。必須だけ取ってればいいんだろ?」
「いや、1年のときは全部とれっていわれたぞ」
「な、なんだってーっ!」

金曜日の朝、SHRの前に教室の中央に首を突っ込んでいる生徒達が大声をあげる。自分たちが進む世界の片鱗が、急に具体的に示されたせいだろうか。大学についてある程度調べていた連中には自明のことらしかったが、後手に回っている連中には新鮮な話題だ。

「大学って遊べるところじゃないのかよ」
「生協にいた学生さんに同じ事聞いてみたら『理系なめるな(w』だって」

今度は笑い声が教室に響く。大学に入ったら授業なんか出ないで楽しいキャンパスライフを満喫して…と考えるほど世間の経済情勢にうとくもないのだが、やはり長く息苦しい受験勉強が終わったら、ちょっとは楽な大学生活が待っていると考えたい。
しかし時間割を見る限り無理そうだ。

「やべー、文系に変えようかな」

などと不謹慎な発言も飛び出すが、

「文系なめるな(w」

と、端から茶々が入り、また笑い声がはじける。今朝はみんな妙に陽気だ。

「2年までが教養課程で、3年から専門過程になるんだって」
「教養…解析学、偏微分方程式論、線形代数?教養なのか?」
「これ、工学部のだから」
「数学は科学の女王だよ。なめんなよ、猫」

これは数学班の濃いリーダーこと木下。数学の前にひれ伏して拝めといわんばかりの顔をしている。数学が苦手な連中は露骨に苦い顔をして笑っている。いつになったら数学から解放されるのかと考えているのだろう。
しかし時間割を見る限り、この科学の女王様はそう簡単には手を放してくれそうにない。

「4年の研究って、何するの?」
「大学のサイト見ろって」
「『ググレカス』って言われた?」
「何それ」
「知らねぇの?ググレカスってのは神聖ローマ帝国の元老議員でさ、」
「もういい、もういい」

どうやら哲人ググレカスを知っているらしい村瀬が手を振って話を止める。クラスのほぼ全員がその場に集まっており、きらきらした目を村瀬に向ける。選抜コースはクラスメイトが少なくて、時に寂しいが、こういうふうに盛り上がるときの一体感は
大きなクラスより強いように竜児は思う。
65君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/26(日) 06:45:46 ID:XRZmX1CO
「よし、訪問部隊はいい成果を上げたみたいだね。図書館部隊は」
「おう、俺達だな」

と、これは竜児。夏休み図書館にこもって大河と勉強したので志願したのだ。
「雑誌コーナーにその月に出た雑誌が展示してあるんだ。片っ端から読んでみたけど面白かったぞ。『月刊むし』って本があって」

いきなりコースを外れる竜児だが、

「おい、高須。手短に頼むよ」

村瀬が制止する。

「おう、すまねぇ。一般向けの科学解説雑誌があったな。本屋で見たことはあるんだが、初めて読んだよ。これが毎月いろいろな分野の最先端の研究を易しく説明しているから、バックナンバーを読んでいけば、興味深い話はいくらでも拾えそうだぞ」
「なんて雑誌?」
「『日経サイエンス』だ。同じような雑誌も何冊かあった」
「あ、それ毎月読んでるよ」

と、物理班のリーダーの田口。意外だった。田口は柔道部だ。屈強な体をしている。国立選抜に居るくらいだから勉強は出来るが、自分から進んで科学雑誌を読んでいるなど、竜児は考えもしなかった。もちろん、人は見かけによらない。
見かけで言えば、竜児が料理好きなど誰にも想像出来ない。

「あれはいいよ。いろいろ目新しい話が載っているから、あの雑誌の記事をとっかかりにしてネットで調べるといくらでも面白い話が出てくる」
「私も読んでる。お兄ちゃんが100冊くらいバックナンバー持ってるよ」

おお、お兄ちゃんすげぇ。と、声が上がったところで担任が教室に入ってきた。

「君たち、何してる。席に着きなさい」

ばらばらと散っていく生徒達が席に着くまもなく、北村が号令を掛ける。

「起立。礼。着席」

調べ物?何するの?という雰囲気もようやくぬぐい去ることが出来て、3−Aの文化祭展示もいよいよエンジンがかかる。

◇ ◇ ◇ ◇ 
66君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/26(日) 06:46:50 ID:XRZmX1CO
「おじゃましまーす」

金曜日の昼休み,

普段聞かないきれいな声に先導されて、ぞろぞろと3−Bの生徒が入ってくる。

せっかくの共同企画なんだからリーダー同士ランチ・ミーティングをして情報を交換しようと村瀬が提案したのだ。あらかじめいそいそと用意しておいた机に案内して、それぞれ席に着く。ちなみに机を貸してくれた連中は、表で青空を眺めながら昼飯を食っているはずだ。多謝。

女子も居るとは言え、幾分男臭さの強い3−Aは実行委員の村瀬に加え、リーダーは4人とも男。それに対して3−Bはさすが文系。実行委員の書記女史に加え、リーダー6人中3人が女子だ。

ぱっと花が咲いたように華やかになった昼食会に、むさい男共が頬を染める。目の毒だ。とくに竜児の目の前に座っているちっこい女子の愛らしさときたら、

「大河。お前班長だったのかよ」
「班長?なにそのかび臭い言葉。リーダーって言ってよね」

手乗りタイガーその人ではないか。

短気で鳴らした大河をリーダーに選出するとは、いくら今年になっておとなしくなったとは言え

「3−Bは正気なのか?」

無謀すぎるだろう。

大河はドジだ。本当にドジだ。魚が海を泳ぐように自然にドジを踏む。歩くとコケ、皿を洗うと割り、汁物はこぼし、カレーは垂らし、トーストを持たせると落とす。それもバターの面を下にしてだ。大河に何かをさせると言うことは、その何かを危険にさらすことと同義である。
3−Bは今回クラス展示を危険にさらしてる。しかも短気な大河にリーダーを任せるなど、結束を踏みつぶしてくださいとお願いしているような物だ。度胸あるぜ。

案の定、

「何よ」

久々の瞬間湯沸かし器。目を眇めて大声を出す大河に、竜児も

「だって、お前。普通あり得ない人選だろう」

と、空気を読まずに応戦する。

ボルテージのあがる二人に、よせばいいのに数学班のリーダーの木下が

「これが有名な2−C名物『夫婦漫才』か」

などと茶々を入れ、

「なにっ?」
「なんですって?」

いきなり二人から睨みつけられて椅子から転げ落ちた。

盛大に跳ねた弁当箱は、前に座った3−Bの女子が押さえてくれたおかげで危うく落下を免れる。ちょっと緊張気味だった一座は大爆笑。初っぱなから騒々しいことこの上ない。

あきれた村瀬が

「おいおい、飯くらい落ち着いて食べようよ」

苦笑すると、村瀬の正面に座っている書記女史も

「高須君、逢坂さんはムードメーカーなのよ。彼女の英文学班はうちのクラスで一番賑やかなの」

と、フォローを入れて場を和ませようとする。
67君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/26(日) 06:47:35 ID:XRZmX1CO
へぇ、そうなのか。こいつ俺の見ていないうちにすっかりクラスに溶け込んで。と、竜児はちょっと嬉しい。そんな気持ちを知ってか知らずか、大河は薄い胸を張って形のいい顎を斜め上についと向け、得意そうな笑みを浮かべてる。

「とりあえず飯、飯」

という物理班のリーダー、田口の声に推されるように、全員が

「いただきます」

の唱和。そして賑やかなランチ・ミーティングになった。

竜児と大河による冒頭のコントが効いたのか、最初から和気あいあいとしている。

「俺たち昨日、大学の学生課行ってきたよ」
「え?何聞いてきたの?」
「カリキュラムとか」
「わー、面白そう。私達まねしちゃっていい?」
「どうぞどうぞ。あ、でも時間割はあげない」
「えー?どうして?ちょうだいちょうだい!」
「あらだめよ、私達も自分たちで調べよう?」
「ちぇ、残念」
「てか、逢坂さんのお弁当、高須君と違うじゃない」
「あ、本当だ。噂と違う」
「久しぶりだよ高須、久しぶりだよ。タイガーの弁当お前が作ってたんじゃないの?」
「おう、居たのか能登。つーか、お前等いつの話してるんだ?俺が大河の弁当作ってたのは去年だぞ」
「そうよ、今はママに作ってもらってるんだもん」
「きゃーっ、やっぱり高須君が作ってあげてたんだ」
「おう。いや、大河がどうのじゃなくて。ほら隣だったしな。まぁ、一人分作るも二人分作るも同じだし」
「なにそのツンデレ」
「お前等何の話しに来たんだよ」

一同再度爆笑。今日はなんだかみんな楽しげだ。3−Bの面々は、たとえて言えば潤いの少ない砂漠に現れたオアシス。いや、3−Aにオアシスがないといっているわけではない。少ないのだ。今日のオアシスは一味違うぞ。

とはいえ、このままいじられ続けるのはたまらない。竜児は何とか話をクラス展示に戻そうとするが、

「高須君のお母さんて、『弁財天国』の店長さんなんだよね」
「へ?あのお好み焼き屋さん?」
「そうそう、高須のお袋さんの店、うまいよ」
「おい、本当か?あそこの店長さんめちゃめちゃきれいじゃないか。うちの後輩なんか店長さん目当てで毎日通ってたぞ。あの店長さんからどうしてこんな………………いや、すまん」
「お、おう。後輩にはお好み焼きなんかで身を持ち崩さないよう、くれぐれも伝えてくれ。あと、人の親に横恋慕するの止めてくれないか」

一度狂った舵は、もう元には戻らない。それでも展示の紙どうしようとか、油性マジック臭いよねとか、パネル使うのとか、うちのクラスには秘密兵器の美術部が居るぜとか、おほほほほうちは書道部よ、とか、それなりに有用(?)な情報交換もできた。

楽しい情報交換会、というか、お昼ご飯も終わり。今度は来週の火曜日ね、じゃぁ次は3−Bが招待するね、と笑顔を交わしてお開きとなった。去年の2−Cは灰神楽の立つような騒がしさの中で文化祭の準備を楽しんだが、
今年のような和気あいあいとした準備もいいな、と竜児は独り微笑む。

そして、あれ?と気づいた。北村はどこだ?

◇ ◇ ◇ ◇ 
68君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/26(日) 06:48:20 ID:XRZmX1CO
明けて月曜日の朝、がらりと扉を開けて教室に入ってきた竜児に、クラスメイトが息を呑む。

「おはよう」
「おう」
「…高須…どうした」
「あぁ、何がだ?」

と、村瀬を見つめ返す目は、普段より30%くらい狂気の光が強い。叫び声を上げそうな心をねじ伏せてよく見てみると、眼の周りにくまが。

「いや、なんだか怒ってるかなぁとか。あははは」
「怒ってねえぞ。目つきの悪いのは生まれつきだ。寝不足で人相が悪くなってるがな」

と答える竜児は嘘25%ほど。ちょっと不機嫌なのだ。週末、図書館にもぐって調べものをするつもりだった竜児は大河に一緒に行こうと誘った。ところが、答えはNO。

「ごめん、文化祭の準備があるんだ」

と、あっさり袖にされてしまった。いや、大河はちょっと悲しそうな顔で謝ったのだが、竜児の絶望感はそんな大河の貴重な顔でも癒されることは無かった。おまけに、これからは朝も早く出るとかで、登校も別々になってしまった。
もともと弟の世話があるので大河は下校時も5時くらいには学校を出なければならない。最近文化祭の用事で遅くなっている竜児とは、これで朝晩会えなくなった。

バレンタインデーの騒ぎの後、二人は離れ離れになっていたことがある。そのころの竜児は周囲に「いつまでも大河を待つ」とか言っていたくせに、今ではすっかり大河分の欠乏が精神に不調をきたすようになっている。言い換えると、竜児は軟弱になった。

それはともかく、嘘25%だから、残りの75%は嘘じゃない。つまり、寝不足なのは本当だ。

「ちょっとこれ見てくれ」

半分ほど集まった教室の真ん中に分厚い紙の束を置く。たいていは広告の裏紙だが、びっちりと竜児の字で書き込みがしてある。図書館にもぐりこんで集めた資料を、夜遅くまでまとめた成果だ。

「スポーツ医学について調べていたんだけど、ランニングのフォームとかって、今はコンピュータで解析するんだってな」

指差したところにには、文献名と引用した一節。下には鉛筆で書いたランナーとカメラ、そしてコンピュータの絵。

「ああ、そうだよ。モデル化するんだよ。だいぶ前からだけどね」

コンピュータ班のメンバーが覗き込みながら言う。

「そう、それだよ。モデル化するって書いてあった。で、それって『物理モデル』って書いてあったぞ」
「そうだけど…」

それがどうかしたのか、と言うように竜児を見つめ返す。言いたいことが伝わらない。竜児は昨日図書館で突然得たイメージに任せてしゃべっているので説明不足になっているのだが、それに気づいていない。中々理解してくれないクラスメイトに多少いらいらしながら、

「人間の体の動きを物理運動に置き換えるんだよ」

物理班のリーダーの顔を見上げる。
69君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/26(日) 06:49:01 ID:XRZmX1CO
「そうだな。シミュレーションの基本だ」
「ああ、そう書いてあったよ。で、物理運動に置き換えると、数学で解析できる。そうだよな」

と、今度は数学班のメンバーに問う。

「うん」
「ああ、どうして伝わらないんだ。お前らには常識なのか?全部つながっているんだぞ!」
「いや、そうだけど。何が言いたいんだ」
「だからさ、俺たちが進学した後の勉強も研究も、ばらばらに見えるけど全部つながっているんだよ!」

教室が、一瞬しんと静まり返る。クラスメイトたちは竜児の顔を見つめ、校庭からは朝連をしている後輩たちの声が聞こえる。

「うわ、なんか鳥肌たったぞ」
「ああ、そうか。そうだよな。本で読んで知っていたけど、実感したのは初めてだ。つながっているのか」
ぽかんとしているクラスメイトも多い。一方で、6、7人ほどが、感化されやすいのだろうか、竜児が言い出したことにひどく興奮している。

「学際ってやつかな」

と、物理学班のリーダー、田口。

「学際?」
「ああ、だいぶ前にはやったらしい。専門が深すぎて視野が狭くなるから他の分野と交流して新しい考え方を吹き込もうって考え方」
「それそれ。いや、違うかな。ああ、わからねぇ。とにかく、考えたんだよ。たとえばスポーツ医学のところでコンピュータでフォームを改良する話をしたらさ、『コンピュータ科学のコーナーも読んでくれ』って書くんだよ。
そうしたら医学とコンピュータがつながっているって分かるだろ。で、コンピュータの説明で運動の話が出たら物理のコーナーを読んでくれって書くんだ。そうしたら『ここに書いてあることは別々のことじゃなくて関連がありますよ』ってわかるだろ」
「ハイパーテキスト」
「なんだそれ?」
「今高須が言ったとおりだよ。文書の中に出てきた単語をクリックして、その単語の解説を読めるような文書」
「あ、ネットのあれね。ハイパーテキストって言うんだ」
「おう、それだよ。俺が言いたいのは。教室全体をハイパーテキストにしようぜ」
「客を次の文書まで歩かせるのかよ」

笑い声が上がる。竜児が凶悪な笑みを浮かべてクラスメイトを見渡した。

「歩かせろ!」

◇ ◇ ◇ ◇ 
70君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/26(日) 06:49:48 ID:XRZmX1CO
その日の1時間目のおわり、3−Aの教室の前の入り口から女の子がひょいっと中を覗き込んだ。ノートを見直している竜児の方を見て声をかける。

「高須君、ね、ね」
「おう。どうした?村瀬か?」

書記女史だった。

「ううん、ちがうの」

のそりと立ち上がって扉に歩いて来る竜児を見ておののいたに違いない、ずりずりと後ずさる。ちょっと傷つきながら教室の外に出ると、

「あのね。この前のランチミーティングのとき、数学班のリーダーの子っていたじゃない。呼んでくれないかな。展示のことで相談したいんだけど」

そういう書記女史の後ろに、やっぱりランチミーティングのときにいた女の子が控えていて、ぺこりと頭を下げる。

「おう、いいよ。木下!なんか相談らしいぞ!」

ぐいと後ろにのけぞって教室に頭を突っ込んだ竜児が声をかける。
やせぎすのコンピュータ班リーダーが頭をあげて、のこのこ出てくる。扉を出て、顔つきが変わった。明らかに動転している。断言してもいいが、こいつの生涯で女子二人に呼び出されたのは初めてのことだ。挙動不審すぎる。
そういえば2年生の頭の頃は、俺も櫛枝に声をかけられるとこんな感じだったかもな、と竜児は一瞬遠い目。

書記女史の後ろの女の子が話し始めた。

「ごめんなさい、いそがしいのに。えと、吉田です。この前のランチミーティングにも出ました。昨日図書館で社会学の展示の調べ物してたんだけど、数学の言葉が多くて。教科書をみても、よくわからないし、うちのクラスの子ってみんな数学苦手で。教えてくれないかな」

「ちょっと見せて」

木下と竜児が二人して吉田さんの手元のメモを覗く。正規分布、マルコフ過程といった言葉が丁寧な字で書いてある。あらかた竜児にもわかるが、知らない言葉もある。マルコフ過程?

「ええと、今説明するの?」

困惑して顔を上げた木下が聞く。いや、絶対無理だろう。

「ううん。今じゃなくていいです。放課後でいいからちょっと教えてもらえないかな」

もう一度メモを見てちょっと考えた後、木下が顔を上げる。

「いいよ。メモ預かっていい?」
「わぁ!ありがとうございます。助かりました」

吉田さんと書記女史が顔を見合わせてうれしそうに笑う。そっと差し出されたメモを両手で受け取って木下が
「じゃ、あとで」

と頬を赤らめた。

あーあ、と竜児は思う。これは日本で一番、恋ヶ窪ゆり(31)に見せてはならないシーンだ。

◇ ◇ ◇ ◇ 
71君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/26(日) 06:50:29 ID:XRZmX1CO
「おい、木下どこだよ」
「え?チャイム鳴ったらすっ飛んでいったよ」
「なんだよ、ミーティングするって言ったのに」

同じく月曜日の昼休み、週末の文化祭に向けて方向性が見えてきた3−Aの展示は、竜児の悪夢のようなやり過ぎオーラに引きずられる形で、敵前大回頭を行いつつある。これまで集めてきた資料を見直し、原稿案を破棄し、展示内容をつながり重視に書き換えようというのだ。
このまま行くか、方針変更するか。昼休みに飯を食いながらリーダー同士で話し合うはずだったのに、数学班のリーダーがいない。濃い数学マニアの木下の提案で数学コーナーだけはかなり個性的な展示に向かっていた。方針変更となると、彼の意見も聞くべきだが。

「しかたがねぇ。話し合いをするってちゃんと知らせたんだ。来ないほうが悪い」
「そうだな。じゃ、はじめようか」

村瀬が所用ではずしているのでリーダー3人だけで飯を食いながらの話し合いが始まった。

「おう、じゃ俺からだな。朝も話したけど、いろんな分野がつながってるってのは、俺には新鮮だった。こう、手繰っていくのが面白いんだよ。原稿がどのくらい無駄になるかわからないけど、書き換える価値はあると思う」
「俺はいいよ、賛成だ」

と、いきなり一票投じたのは物理学班リーダーの田口。

「おう、いいのか?そんな簡単で」

気を使う竜児に手を振って、すでに班の同意は取ってあるという。もともと科学雑誌を読んでいるくらいなので、こういう見方が好きなのかもしれない。

「でもさ、そうとう作業は増えるんじゃない?」

これはコンピュータ班。来たな、と竜児は思う。当然このタイミングでの書き換えは反対がでる。竜児のように暇ならいいが、塾と掛け持ちで参加している連中はつらい。ここで言いくるめたり、無理やり数でねじ伏せても展示はうまくいかない。
どれほど面白いか、竜児が説明するしかない。

紛糾、と言うほどではないが、話し合いは昼休みいっぱいかかった。チャイムぎりぎりでようやく方針を変えようと3人全員が同意した。方針変更の言いだしっぺである以上、竜児の展示に対する責任は大きくなった。

チャイムがなると同時に、木下が教室に飛び込んできた。

◇ ◇ ◇ ◇ 
72君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/26(日) 06:51:37 ID:XRZmX1CO
「高須、ちょっと高須」
「おう、木下。お前さっきすっぽかしやがって」

5時間目の終わり、後ろから声をかけてきた木下を睨みつける。びびりながら木下はごめん、ごめんと繰り返し、竜児の腕を掴んで廊下に引っ張り出す。

「何だよお前、6時間目始まるぞ」

竜児は授業の前に教科書とノート、シャーペンをびしっと並べておかないと落ち着かないのだ。正しい生活は整理整頓から。これこそ生活の活力。それを何の権利があって邪魔をしようというのか。
いぶかる竜児の腕をつかんで、ちょっと、ちょっと、と3−Bの前まで引っ張ってきた木下は、逼迫した表情で

「吉田さん、呼んで」

などと、頭のおかしなことを言い出した。

「あほか。自分で呼べ!」
「無理無理無理!俺、高須みたいに女の子慣れしていないもん」
「おう、俺のどこが女の子慣れしてるだと?」

むかっ腹を立てて剃刀のような目で睨みつける竜児だが、木下は目をそらしながら食い下がる。

「頼む。お願い!呼んで」
「知るか、お前が呼べ」

ぐいと木下の背中を押して3−Bに押し込む。竜児は世話焼きだが、わがままを聞くのは大河だけと決めている。何が悲しくて野郎のわがままを聞かなければならないのか。

あうっと声を上げた木下は3−B全員の視線をあびて、石化の呪文を受けたように固まる。しかし、偉かった。石化したのに、扉に近い生徒に向かって、一応言葉らしきものを搾り出した。

「すすすすみません、よよよよ」
「あ、木下くん」

泣き崩れるような声を出していた木下を救ったのは吉田さんの声。髪を揺らしながらたたたっと小走りに駆け寄ってくる吉田さんと、あわてて廊下に後ずさった木下を比べて、竜児はため息をつく。こりゃだめだ。

吉田さんにはきっと彼氏がいる。どう見たっている。逆立ちしたって居る。木下がどういうつもりか知らないが、たとえ吉田さんがフリーでも、こりゃだめだろう。うん、だめだ。木下、安らかに眠れ。

心の中で念仏を唱える竜児の前で、木下がレポート用紙の束を吉田さんに渡した。こいつ、ミーティングさぼってこれ書いてやがったな。量からして、授業中も書いていたに違いない。

◇ ◇ ◇ ◇ 

帰りのSHRが終わると、帰宅組を除いて3−Aの面々は修羅へと変わる。竜児が引きずり込んだ『やり過ぎワールド』の中で、これまで集めた資料の山の再検討と関連づけを行うのだ。
予定では今日、月曜日のうちに再検討を終え、火、水、木でレポート用紙に下書きを作り上げ、金曜日に清書を行う事になっている。同時に、美術部の平原が各班のリーダーと話し合って、イラストの検討を始める。

コンピュータ班のメンバーからの提案で、「こっちも読んでね」のマークは色つき矢印と番号に決まった。それぞれのパネル(単なる紙)の上に色と番号を打っておき、教室を見回して一目で歩いて行く先をわかるようにするのだ。色は分野別になっている。

数学班の木下を抜きに決めたことだったが、事後連絡で方針変更を伝えても、木下は別に文句を言わなかった。

「え?異分野のつながり?おもしろそうじゃん」

で、終わりである。

肩すかしを食らったクラスメイトを余所に、竜児は竜児で心当たりがあるのだが、黙っておくことにする。茶化している場合ではない、竜児の提案でやり直しになったのだ。やるべきことをやらなければならない。

ふと、結局去年と同じくドタバタなになりそうだとニヤケて、そういえばと怪訝な顔になる。

北村はどこだ?

◇ ◇ ◇ ◇ 
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 07:01:18 ID:Az/QRLbX
>>61
まとめおつっす
74君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/26(日) 08:43:59 ID:XRZmX1CO
夜、母親の泰子とお休みの挨拶を交わした後、竜児は自分の部屋でぼんやりと今日のことを考えていた。

北村が、放課後の教室に居なかった理由はわかる。いつも居ないからだ。生徒会長として何かと忙しい北村は、たいてい放課後になると生徒会室にすっ飛んでいく。しかし、ここ1週間ほど、竜児は北村の顔をろくすっぽ見ていない。

朝、教室に入るのはぎりぎり。昼休みになるといつの間にか姿を消す。放課後も居ない。いくら忙しくても、自分のクラスの展示の準備に声ひとつかけない奴ではないはずだが。

ふと、窓の外のマンションを見る。去年まで大河が住んでいた部屋には、今は知らない誰かが住んでいる。買ってきた本を開いてみるが、今日は頭に入りそうにない。

◇ ◇ ◇ ◇ 
75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 09:26:30 ID:r1eDiDgK
>>56
この時点で大河は竜児に「ほ」の字だな!
原作に似てる感じと甘甘な感じがとてもいいwGJした!続き期待してます

>>74
うは、相変わらずの文豪…。
また読むのに1時間も掛けてしまった。
このままじゃ大河が巨乳にwGJ!!
76名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 09:48:35 ID:9sDjsVTW
あのね、なんかね、最近原作知らない人にわかんないSS多いの。村瀬って誰?木村って?アニメで好きになったから私。小説苦手だし。でもここのSSは好きなの。虎注の続き読みたいなぁw

チラ裏ゴメンナサイ。
77名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 11:21:21 ID:K+4KAqgw
>>76
村瀬はアニメにもでてきたよ。(でんわだけだったけ?)
北村がグレたときに、竜児に電話してきた生徒会役員。
小説では、その後竜児と仲良くなっているということになっている。

ちなみに、小説では以下のようになっている。
・書記女史は、クリスマスパーティで、大河と川嶋と一緒に歌っている。
・大河は、高校3年の4月初日に竜児の元に戻ってきて、一緒に登校。
 (ここが重要かな。)

木村はしらないねぇ。(新キャラと思ってよんでるけどね。)
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 11:48:46 ID:QTeWL7MI
>>76
小説苦手でも面白い
というかアニメ見てからの方が光景が浮かんでさくさく読めるぜ
79名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 12:06:21 ID:jGDiUmru
「竜児ーお腹すいたー」

「おう 炒飯にするか?」

「ありがとう それより眠れない話と恋のかま騒ぎの部分録画してくれた? 私途中で寝ちゃたし・・・・」

「ああ ちゃんと録画してあるぞ それより雨が強くなってきたな 洗濯物を中にいれるか」

「私も手伝うー!」

80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 12:31:19 ID:2CRbRlsh
>>74
今日も乙でした。
久しぶりの早朝投下攻勢にSunday,を楽しみにしていた時期を思い出した。

小説を読んでて自分の疎い分野の興味をそそられる事があるけど、それをSSで感じるとは思わなかった。
インターネットの起源は学術機関の知識共有のためって話があったよな、と。大橋高校レベル高いw

>>76>>77
村瀬は16話の序盤に電話だけの出演かな。
他に絡むのは、3学期にタキシードを返却しに来た生徒が村瀬の友達とか・・・
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 12:40:54 ID:QTeWL7MI
>>79
過度な期待しないでくださいというやつか
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 13:09:08 ID:QTeWL7MI
今日のとらドラがちょうど村瀬登場の話だった
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 13:39:41 ID:ldQwBBab
この物語は、顔面凶器と巨大なローゼンメイデンのイチャイチャっぷりを淡々と描くものです。
過度な期待はしないでください。あとry
84 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 14:40:07 ID:rKIOn1kw BE:2697484379-2BP(2828)
『大河がおとなしい女の子だったら』

  +×+×+×+

今朝の目覚めは最高に良かった。
朝から気分も高揚し、洗濯しながら鼻歌も出てしまう。昼になったら逢坂が来る、最高じゃないか。

「しかし、でっかいマンションだな…」
でき上がった時は太陽の恵みも奪われ恨みもしたが、今は逢坂を俺の隣に導いてくれたことに感謝できる。
ありがとう、マンション様。
「んっ?」
ベランダに一番近い窓のカーテンが動いた。ジロジロと見過ぎたな、これじゃのぞきと間違われる。
居心地が悪いので家の中に入ろう。

「おはよう、高須君」
「えっ?」
振り返ると先程の窓から逢坂が笑顔で手を振っている。
「びっくりした?ここが私の部屋なんだ」

こんな事が現実で起こるのか?
好きな子が隣に住んでて、しかも部屋は窓を挟んで向かい合わせ …こんなの都市伝説だと思ってたぞ。

「聞こえてますかぁ〜?高須くぅ〜ん」

「あぁ!バッチリ聞こえてるぞ!」

「びっくりした?」

「あぁ、凄くびっくりだ。何で昨日は言ってくれなかったんだ」

「ごめんね!忘れてたの」

…ダメだ、こんな距離に逢坂が居たら身体が保たない。
可愛いことは凄く良いんだが、逢坂の一挙手一投足が俺の心を刺激する。
今の謝る逢坂も可愛いかったなぁ。

「いや、気にしないでくれ。人間たまには忘れることもあるから」
「うん、ありがとう」

「しかし、でっかいマンションだよな。中も広いんだろ?」

「うん、わたし1人にはちょっと広すぎるかな。時間があるなら高須君も見てみる?」

「…それは俺が逢坂の家に行くってことか?」

「うん、何も無いけど来て!来て!」

「いやぁ〜悪いな逢坂。オレ今から昼飯の準備しないといけないんだ!」

「そうなんだぁ、それじ仕方ないね。じゃあ楽しみに待ってるね」

「あぁ、待っててくれ」

逢坂、頼むから少しは警戒心を持ってくれ。
85 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 14:43:05 ID:rKIOn1kw BE:428172825-2BP(2828)
+×+
「えぇ!大河ちゃんお隣さんだったの!」

「黙ってて、すみませんでした!」
「良いよ〜、気にしなくて。でも大河ちゃんの家、見に行けば良かったのに竜ちゃん」

「泰子!一人暮らしの女の子の家にそんな無神経に入れるか!」

「えぇ〜 だって大河ちゃんが、おいでって言ったんでしょ?」

「ハイ、わたし何も気にならないよ?」

「ほらぁ、竜ちゃんは考え過ぎるんだよ。大河ちゃんはお友達なんだから、ねぇ〜」
「ハイ!高須君とはお友達です」

楽しい筈の逢坂との昼食が…
泰子、息子の傷口に塩を塗るような真似は止めろ。本当にコイツが居ると逢坂との時間が楽しめない。

「それでね、素敵な人だったのよぉ〜」
「そうなんですか」

また見たこともない親父の話をして、逢坂もそんな話を真剣に聞くなよ。

「もうやめろ、泰子。逢坂もそんな話を聞いても面白くないよな?」

「そんなことないよ」

お母さんは何でも話してくれる、私だったら口にできないようなことまで。
たぶん2人に隠してることなんて無いんだろうな、だからこんなに親子で仲良しなんだ。
私のことも全て話したら、その中に入れてくれますか?

「でもね、居なくなっちゃたの〜」
「それは大変だったんですね」

「でも竜ちゃんが居たから、やっちゃん頑張れたんだぁ」
「あんまり、恥ずかしいこと言うな」

「だって本当のことだし。大切な家族が居なかったら、やっちゃん頑張れなかったもん」

「頼むから、もう止めてくれ」

全てを話して、全て知ってもらったら私もこの中に……
可能性は0じゃない、少しの勇気でこの中に入れるかもしれない。
話をしないで後悔するより、話してから後悔する方が私も諦められるよね。

「…私の家族は」
86 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 14:46:08 ID:rKIOn1kw BE:513807326-2BP(2828)
逢坂は何か話そうとして俯いてしまった。多分、櫛枝が言ってた辛いことって家族の問題なんだろうな。
そんなに辛いことなら思い出さなくていい、無理に話すことはない。

「さぁ、片付けてお茶でも入れるか」

「待って、聞いてほしいの!」
「高須君とお母さんに私のこと知ってもらいたいから。だからお願い、私の話を聞いて」

「…いま話さないと私きっと後悔するから、諦められなくなっちゃうから」

「あぁ、分かったよ」

「私の両親は昔からあまり仲良くなかったの。それでいつの間にか、お互いに恋人を作って離婚したの」

「私はお父さんについて行ったんだけど、新しいお母さんが私のこと好きじゃないみたいで…」

「それでお父さんに相談したら、私に一人暮らししろって」

笑顔で話そうとしてるが、明らかに無理をしているな逢坂。

「大河ちゃん…」

「でも大丈夫なんですよ、立派なマンションにも住ませてもらってるし」

もう無理だ。こんな話しは聞きたくない、無理してる逢坂も見たくない。

「ちゃんと毎月仕送りも『大河ちゃん!!』

意外にも話しを止めたのは泰子だった。

「なんで大河ちゃんは笑ってるの…… そんな悲しい話を何で笑って話すの?」

「何故って言われても……」

「おかしいよ!大河ちゃん無理に笑顔で話そうとしてる!」

「……泣きたくないんです」

「どうしてなの、訳があるんでしょ?大河ちゃん」

「私、思うんです。泣いたら負けだし、全てが終わっちゃう気がするんです」

「違うよ!大河ちゃんは間違ってる」
「泣いたら終わりじゃなくて、泣いてお終いにするの」

「泣いておしまいにする?」

「そうだよ、勝ち負けとかじゃない。泣きたい時は涙が止まるまで泣いて良いの」

「そして涙が止まったら、また新しく何でも出来るようになるんだよ、大河ちゃん」

泰子はそっと逢坂を胸に抱いて耳元で何か囁いてる、ここは泰子に任せて俺は片付けでもするか。

やっぱり苦労させたんだな。
泰子も辛いことを泣いて終わりにして俺を育ててくれたんだろうな。
87 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 14:49:06 ID:rKIOn1kw BE:685076328-2BP(2828)
お母さんの胸の中は暖かかった。お風呂の中みたいにポカポカして、いつまでもこの場所を離れたくない。

「…落ち着いた?」

「はい」
「じゃあ、洗面所で顔を洗おうか」

泣いちゃったけど、悲しくてじゃないと思う。お母さんの言葉とその中に込められた、私宛てへの気持ちが嬉しかったからかな。
私の考え方は全部否定されたけどそれで良かった、だって私はお母さんに貰った言葉の方が好きだから。

「逢坂、お茶をどうぞ」

「ありがとう。…恥ずかしいところ見られちゃったな」

「恥ずかしくなんかないよ、大河ちゃんはもう家族なんだから」

「家族ですか?」

「やっちゃんは大河ちゃんのこと大好きだから、今日から娘にするんだ。
だから家族なの、家族なんだから恥ずかしいこと何て無いよ」

お母さんまた私を泣かすつもりなのかな?
嬉しくて、ついお母さんの胸にまた飛び込んでしまった、やっぱり落ち着くし暖かい。

「大河ちゃんは甘えん坊さんだね」

泰子に抱かれる逢坂を見てホッとした、もう逢坂の悲しむ顔は見たくない。

でも、確かに2人の絆は強くなったが俺は置いて行かれてるような気がする。
泰子には良い所ばかり持って行かれたし、もしかして一番のライバルは泰子なのか?

「別に反対するわけじゃないけど、家族ってのは言い過ぎじゃないか?」

「何で竜ちゃんはそんなつまんないこと言うの?気持ちの問題だよ、気持ちの!竜ちゃんはKYだよ」

「またお前は微妙な言葉を覚えてきて…」

「竜ちゃんは空気読めてないよねぇ、大河ちゃん」

「ハイ、高須君はKYです!」
88 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 14:52:07 ID:rKIOn1kw BE:685076328-2BP(2828)
駄目だ、二人の間に俺の入る隙間が見つからない。

「どこに行くの?竜ちゃん」

「デザートだよ。昨日、逢坂に貰ったさくらんぼ」
「あっ、高須君。私も手伝います」

「ちがぁ〜う!!二人とも家族なんだから『竜ちゃん』『大河ちゃん』って呼ばなきゃダメ!」

「…泰子。俺と逢坂は同い年でクラスメートなんだ。そんな呼び方できる訳ないだろ、なぁ逢坂」

ほら見ろ、逢坂だって目をまん丸に見開いて驚いてるじゃないか……

でも、これって何気に逢坂のレア顔だな…あっ、笑った

「りゅうちゃん!」
「ヴホッ!」

無理だ、逢坂にこんな呼び方されたら俺は何を仕出かすか分からない、だから無理だ、無理。

「逢坂、その呼び方は止めてくれ」

「えぇ〜 だって竜ちゃんは『竜ちゃん』だよ」

「違う!泰子。俺は『高須竜児』だ」

「えぇ、何それ?そんな一休さんみたいなこと言われても、やっちゃん分かんないよ」
「じゃあ、何て呼べば良いの?『竜児君』とか?」

「竜児くん!」

逢坂の周りに『楽しい!』オーラが見える、もう駄目だ。こんなに逢坂が悪ノリするとは思いもしなかった。

「まだその呼び方でも…その、照れくさい。もう呼び捨てで良い『竜児』で……」

アレ?呼んでくれない。

「……じゃあ、竜児も私のこと『大河』って呼んでくれますか?」

「うっ?!……大河」
「竜児!」

三人+一匹の家族の出来上がりか、悪くない。

でも、好きな子が家族として家に居るってのはどうなんだろうか?
もし大河に俺の気持ちを伝えて、受け入れてくれなかったら。
この家族はそこで終わってしまうのだろうか。
89 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 14:55:27 ID:rKIOn1kw BE:770710436-2BP(2828)
「大河ちゃん!やっちゃんのことも『やっちゃん』って呼んでね」

「やっちゃん!」

新しい家族ができた、もう家族と呼べる人なんて居ないと思ってたのに。

やっちゃんはお母さんと言うよりお姉ちゃんって感じ、だからあまり遠慮しないで話せそう。
それに本当の家族より家族みたい。

「大河ちゃん、これからは毎日一緒にご飯も食べようね」

「さすがにそこまで甘えるわけにはいきません… 偶に呼んでもらえくらいで私は良いです」

「ダメだよ〜 家族なんだから一緒に食べるの!ねぇ、竜ちゃん」

「別に気なんか使わなくていいぞ、二人分も三人分もそんなに変わらないから」
「弁当だって俺と一緒のてよかったら作るから」

「ありがとう…… いろいろ手伝います!わたし料理は苦手だけど高須君に教えてもらえばやりますし、掃除とかもしますから」

「そんなこと気にしなくて良いよ、大河ちゃん」
「それより竜ちゃんのこと『高須君』って、まずはそれから。
あと話し方もね、家族なんだからもっと仲良しな感じで話そうよ」

「うん…やっちゃん」

+×+
私はもうお客さんではなく家族なので夕食の準備を手伝う。
昨日はやっちゃんと話していたので見れなかったけど高須君の手際の良さ、素敵です。
男の人が料理する姿って初めて見るけど格好いいな、意外性があるからかな?

「大河、これをテーブルに」
「ハイ!」

大河には『切る・剥く・洗う』など基本的な事を手伝ってもらった。
料理を覚えようと一生懸命なのは良いんだが、手が空くと俺の方をじっと見詰めるのは止めてもらいたい。
緊張するし、どうにかなっちまいそうだ。
90 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 14:58:10 ID:rKIOn1kw BE:1370151348-2BP(2828)
「ハイ。では、いただきます」
「「いただきます」」

昨日から始まった三人での食事。
三人で食事をするなんていつ以来だろうか?……思い出せない、家に客なんて来ないから初めてだな多分。
でも大河はよく家に来る気になったな、何故だろうか?それに家族と言うなら注意しておきたい事もある。

「でも大河はよく家に来る気になったな、弁当箱なんていつで返せるのにわざわざ」

「話し声が聞こえてたから…… いつもやっちゃんと竜児が楽しそうに話してたの聞いてたから」

「それは恥ずかしいな」

「ごめんなさい、盗み聞きみたいな真似して」

「いや!別に気にしてないぞ。ホラ、家は壁が薄いからな逆にうるさかったじゃないか?」

「そんなことないよ、いつも賑やかで羨ましかった」

大河は少し恥ずかしそうに、そして申し訳なさそうに味噌汁に口を付ける。
一気に食卓の温度を下げてしまった気がする、こんな時に限って泰子は何も言ってくれないし。
言い難くなったな…でも家族として、そして俺の未来の為にも黙ってる訳にはいかない。

「大河。その… あんまりな」
「うん」

「あんまり、よく知らない男の家に行ったり、家に入れたりしたらダメだぞ」

「私はそんなことしないよ?」

現に来てるだろ、家に。それに今朝は俺を家に入れようとしたじゃないか。

「私はよく知らない人や男の人なんて家に入れないし、行ったりしないよ?」
「だって怖いもん」

「竜ちゃんは分かってないなぁ」
「……何だよ、それ」

「大河ちゃんがいま言ったじゃない」
「嫌いな人の家なんて行かないし、好きでもない人は家に入れないって」

「お前はどんな耳してんだよ!」

「でも、やっちゃんの言ってることで合ってるよ?」

「だよねぇ、好きな人しか家に入れたり誘ったりしないよねぇ」

「うん、しない」

泰子は誤解してるな、大河のことをまだ解っていない…
大河とってはlike or loveで言ったら俺はlikeなんだろうな、また複雑な気分だ。
91 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 15:01:05 ID:rKIOn1kw BE:3082839089-2BP(2828)
「ごちそうさまぁ、美味しかったね」

「ハイ、美味しかったです。片付けは私がするから、竜児とやっちゃんはゆっくりしてください」

「ありがとう、大河ちゃん」
「良いのか?」

「うん、任せて!」

料理と同時進行でお鍋や包丁は竜児が洗ってくれてたので、片付けはお皿を洗うだけ。
やっぱりすごい手際の良さだ。
楽しくて鼻歌混じりにお皿を洗っていたら、無意識に薄く歌声が漏れていた。
同時に近くに人の気配が!振り向くと後ろに竜児が苦笑いで立って居る、恥ずかしい…

「もぉ!私に任せてって言ったでしょ!」

何で観たかも既に忘れてしまったが、俺には心に残る風景があった。
二人並んで台所に立ち、彼女が洗ってそれを俺が拭き上げる。
人に言ったら笑われそうだが、俺が理想と感じ、憧れた幸せの風景だ。

「二人でやった方が早く終わると思ってな、手伝わせてくれないか?」

「しょうがないなぁ」

それを今こうして大河とこの風景を作ることが出来るなんて、本当の恋人になれたようだ。

「ハイ、おしまい。お疲れ様でした」

「大河もお疲れ様。いまお茶いれるからな」

わたし高須家に来てまだ2日目なんだけど、すっかり馴染んでしまった。
これなら少しくらい甘えても良いかな?片付けてる時に考えてたこと二人に聞いてみよう。

「二人にお願いがあるんだけど」
「なに?大河ちゃん」

「私の家の鍵をここに置いて欲しいの」

「別に良いけど、何で置いて欲しいの?」

「偶になんだけど、怖くなる時があるの」
「私に何か遭っても誰も気がついてくれないじゃないかって」

「あぁ!でも本当に偶にだから心配しないでね。だから御守りみたいな感じで…」

「別に良いね、竜ちゃん」

「あぁ、そこの柱にでもぶら下げて置くか。大河に何かあったら直ぐに駆けつけられるように」

「ありがとう!今度持って来るね」

これで不安で眠れない夜を迎えることもないよね。
92 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 15:04:33 ID:rKIOn1kw BE:1070430555-2BP(2828)
「安心したら眠くなっちゃった、そろそろ帰ります」

「朝飯はどうする?」

「…朝は、ちょっと遠慮しとく」

「何で?遠慮するな」

「朝はいろいろ準備しないといけないし、それに寝起きだから……」

「失礼した!無神経だったな、すまん。さぁ送って行くぞ!」

「大丈夫だよ〜 家は隣だよ」

「そういえば、そうだったな」

「…でも5分経っても私の部屋に明かりが着かなかったら助けに来てね?」

「あぁ、何が起ころうと直ぐに助けに行くぞ!」

「二人とも今日はありがとう」

「また明日ね、大河ちゃん」
「気をつけてな」

大河を送り出してベランダで明かりが着くのを今か、今かと待つ。
この2日間で大河との距離が物理的にも精神的にも近くなった。

大河か…『クラスメートの逢坂』から『家族の大河』に、良くも悪くも本当に近い関係になったな。
しばらく俺の気持ちを伝えるのは止めておこう、言葉は悪いが大河はこれからはいつでも俺の目の届く距離に居るし。
この家族関係が落ち着くまでは。

「ただいま!って言うのも変かな?」

「おぉ、無事に帰ったな」

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ〜」

「油断は禁物だぞ!女の子が夜道を1人で歩くなんて本当に危ないんだからな、解ったか?」

プッ!ハハハ!「竜児それじゃ、妹の帰りを待つお兄ちゃんだよ」

「お兄ちゃんって… とにかくまだ夜は冷えるんだから暖かくして寝るんだぞ、妹よ」

「ハイ!お兄ちゃん」

「おやすみなさい」
「おやすみ」

『お兄ちゃん』かぁ……悪くない。

実際は大河が姉で俺が弟、この時はまだお互いの誕生日など知らなかった。
93 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 15:07:21 ID:rKIOn1kw BE:513807034-2BP(2828)
  +×+×+×+

大河が家族になって2週間、我が家に大河が居るのが至極当然の事となった。
最初の数日間は緊張や煩悩を刺激されたりと俺の精神状態も大変なことになった。
しかし一週間を過ぎると馴れてきたのか、大河を前にしても平常心を保てるようになった。
人間は環境に適応するように出来てるんだな、改めて霊長類の適応力の高さを思い知った。

「竜児、体操服出して」

「あぁ」

夕飯を終え、泰子を仕事に送り出す。当初の予定ではこれからの時間は大河と2人で甘い時間を過ごせる筈だった。
しかし大河はこの時間になると俺の相手を全くしてくれなくなる、それは何故か?
簡単なことである、そう大河は洗濯や洗い物や掃除、つまり家事を始めるのである。

「お願いします」

「他のは?体操服だけじゃないでしょ?」

「無い」
「ウソ!知ってるだからね、竜児が自分の当番の時にまとめて洗濯してるって」

そりゃそうだろ、つき合ってもないのに自分の想い人に下着など洗わせられるか。

「なに?まだ恥ずかしいとか思ってるの?」

「…………」

「竜児、私たちの関係は?」

「…家族です」

「そうでしょ、だから恥ずかしがることはないのよ」

実はもう一つ問題があった。
当初は兄であったはずの俺だったが、実は大河の方が誕生日が早く、実際は俺は弟である事実が発覚した。
事実を知った時は楽観したが事態はそうもしてられなくなった。
94名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 15:16:18 ID:06UFYSvc
>>14
ジャケットみただけで涙腺がやばいですw
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 15:47:55 ID:8sde6MWu
やっと呼び名が下の名前になった
そしてBeポイントが2828
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 15:52:05 ID:2CRbRlsh
>>93
来て来てタイガーが萌えたw
甲斐甲斐しい描写が新鮮で良かったです!

というか、おそらく規制入ってると思うけど、
別の人が書き込んだからもう大丈夫だと思う。
97名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 16:08:21 ID:XRZmX1CO
>>75
だから、夜道に気を(w

>>78
サンキュー。小説も面白いから読まないのはもったいないよ。1巻で完結しているから騙されたと思って…

>>75
あのころは気が狂ったみたいにSS書いてたな。俺の社会人生命、どうなるのかと思った。
今回の作品では、2−Cの外での二人を書きたかった。

>>93
GJ

あーあ、竜児失敗したな。もう尻の下に敷かれつつある (w

それにしても、自分より背の低い姉さんに甲斐甲斐しくされるってのは、破壊力強そう。

続き期待してるよ。
98名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 16:15:27 ID:r1eDiDgK
>>93
ちょ、まとめの「もし大河が〜」の読み返して、
スレ確認しにきたら続き投下されてたww
なにこのミラクルww
しかも読み返し始めた頃に投下されたようだ…。
GJ!今回も面白かったよ、甲斐甲斐しい大河に萌えた。続き期待してます。


充実した週末だな
99名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 17:02:54 ID:jGDiUmru
>>98
「本当 98の言うとおり 充実した週末だね 竜児」

「おう いつまでも幸せでいような 大河」

「うん 竜児だいーすき!チュ」

「大河 俺もだよ チュ」

いつまでも続くといいな この幸せな日々
100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 17:43:43 ID:o/JQQUxh
>>93氏乙
待ってましたよ
今回もすごく面白かったです
やっちゃんが良かったねえ
独り暮らしの理由もざっくりと明かされて、呼び方も変わり、生活も変わり
竜児が言うようにかなり距離も縮まって
縮まり方をミスったか大河の方が主導権握ったみたいだけど!?www
呼び方変えたことでの2Cの連中のリアクションが見たかったなあ
能登とかw
さてさて、いつまた「竜ちゃん」って呼んでもらえるのかなw

〆がぶったぎりちっくだったけど夜にでも投下があるのかな!?


いつまでも読んでいたい作品なのでまたの投稿を楽しみに待ってます
101名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 17:46:39 ID:fOVAdY3+
>>93
GJ! です。

「大河」「竜児」と同じ呼び方でも、ちょっとニュアンスが違う感じがして、すごい新鮮。
いやー、続けてもらってホントよかたなー
102名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 21:51:41 ID:XS3w844T
2日振りに来てみたらなんか凄い事になってるしwww
職人の皆さんGJです!

関係ないけど、やっと原作8巻にトライ中。
死にたい気分になるのは何でだろう……
103名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 22:01:11 ID:XRZmX1CO
>>102
死にたい気分わかるよ。ネタバレになるからこれ以上言わんけど。

俺、8,9巻の反動で竜虎SS書いてるって言っても過言じゃない。
104 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 22:22:20 ID:rKIOn1kw BE:513806843-2BP(2828)
感想ありがとうございます、連投規制くらいました。残りの10レス分を貼りますでは>>93の続きを

「お姉ちゃんは恥ずかしいなんて思ってないから、パンツも出しなさい!」

これである、自分が姉と分かるや大河は俺にお姉ちゃん風を吹かせてきたのである。

「…………」

「りゅ〜じ〜、恥ずかしくないよぉ、だからパンツも洗おうねえ」

しばらく抵抗してみたが大河のお姉ちゃんパワーには勝てず、俺のシークレット洗濯カゴは没収されてしまった。

「なぁ、大河。洗濯はやっぱり自分でするからさ」

「まだそんなこと言ってるの?私は最初にお世話になる代わり何でもするって言ったよね?」

「だけど大河はウチの家事をやって、帰ってから自分の家の分もやって大変じゃないか」

竜児は分かってないなぁ。
竜児にとっては家事をするのは当たり前の事だけど、私には新鮮な事ばかりで楽しいの。
自分の分は今までもやってたけど、今は家族の為に出来る。
こんなに嬉しい事は他にない、だって二人に『ありがとう』って言ってもらえるだから。

「大丈夫だよ、私は好きでやってるんだから」

「でも大変じゃないか」

「うぅん。…それに家事をすると安心できるし」

「何が?どうゆうことだ」

「私が家事をすれば竜児もやっちゃんも私を必要としてくれるじゃない?」

「そんなこと考えてたのか」

「それにね… もし私が食事だけして、他に何もしなかったら『違うぞ、大河!』

「俺たちは家族なんだ。だから何かを求めたりしないし、無理に与える必要もない」
「だからそんなこと考える必要はない」

「そうか… そうだよね、家族だもんね!」

「オゥ!」

「でもね、竜児とやっちゃんの為に何か出来るのは私にとってすごく嬉しいことなの、だから家事は手伝わせて」

「まぁ、無理しない程度にな」

「うん!」

最近分かってきたが、この小っこいお姉ちゃんは結構な頑固者だ。
知り合った当初のイメージとは若干違ってきてるが、そんな大河に俺は益々惹かれてゆく。
だが現実は弟扱いだしな…。
105 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 22:25:56 ID:rKIOn1kw BE:1541419294-2BP(2828)
  +×+×+×+

食後の一服は旨い、やはり一息つきたい時はコーヒーに限る。
最近は何かと周囲の目が気になってお疲れ気味の俺、人気の疎らな自販機の前はすっかり俺にとってのオアシスとなっている。

「竜児!またそんな物を飲んでる!」

「大河、頼むから学校ではちゃんと『高須』と呼んでくれ」

「誰も居ないし大丈夫。それよりまたコーヒーなんか飲んで、もぅ〜!」

怒りを露わにしてズンズンと近づいて来る、やっぱり怒らせると怖いな。
もし大河が勝ち気な性格だったら常にこんな感じなんだろうな、そんな大河でも俺は好きになるんだろうか?

「いや、一息つきたいなぁと思って、つい…」

「私がポットでお茶を持って来てるって知ってるでしょ!」

「知ってるけど… 偶にはコーヒーも飲みたいなあって」

「だったら前の日に『コーヒー飲みたい』って言ってくれれば準備するのにっ!」

大河はすっかりご立腹だが俺はこの状況に満更でもない。
それどころか『俺って愛されてる?』と、少し勘違いをして楽しんでいる。

「ねぇ竜児、ちゃんと聞いてる?」

「うん、聞いてるぞっ!」

「………とにかく、やっちゃんが一生懸命に働いて稼いでくれてるお金なんだから、無駄使いしちゃダメ!」

「コーヒーくらいで怒るなよ。それに俺だって日頃から節約してるじゃないか、食材とか日用品とか」

「だ・か・ら!私もできる所から節約してるんじゃない。
やっちゃん、私の食費を受け取ってくれないし」

大変有り難い話なんだが、正直ちょっとやりすぎだと思うけどな。
しかし、大河がこんなに世話焼きだとは思いもしなかった。

「やっちゃんが食費を受け取ってくれたらな…」
「無理だろ」

「そう思うなら、お姉ちゃんの言うこと少しは聞きなさい!」


「大河、学校じゃマズいって」

「分かってるよ〜 だったら竜児も協力してよね」

まだ怒りが収まらない様子の大河について教室に戻ると、殆どのクラスメート達がこちらをチラ見してくる。
物珍しいのは分かってるからお前らもいい加減に慣れろ。
とにかくこの流れで大河と会話を始めるのはマズいな、北村の所にでも逃げるか。
106 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 22:28:09 ID:rKIOn1kw BE:2697484379-2BP(2828)
「北村、何をやってんだ?また資料を作ってるんだったら手伝おうか?」

「いや、これは目を通してるだけだから大丈夫だ」
「それにしても、最近はお前たち仲良いな」

「お前たち?」

北村の言葉を疑問に思って振り返ると大河が水筒片手にニッコリ笑ってる。

「北村君もお一つどうぞ」

「おぉ、ありがとう逢坂。丁度なにか飲みたいと思ってたんだ」

にこやかに北村へお茶を渡し、俺にも…ってコップには一口分しか入ってない。
不満を伝えようと大河を見ると、イ〜ッ!と目を閉じ歯を見せ行ってしまった…… 意地悪なヤツだ。

「逢坂は本当に感じの良い子だよな」

「そうか?案外と意地悪かもしれないぞ」

「実体験か?」
「…何だよ、それ」

「ハハハ、偶に親友どうし腹を割って話そうじゃないか!場所を替えよう、密談だ」

「密談?」


北村君また高須君と仲良く話してるな。
何で高須君なんかと仲良くしてるんだろう?悪い話しか聞かないのに…

「麻耶?」

「なに!?奈々子」

「何をそんな難しい顔してるの?」

「何でもないよ!」

「また北村君のことでも考えてたんでしょ〜」

何でいつも奈々子は私の考えてることが分かるんだろ?
そんなに私って態度に出してるかな?
まぁ自分でも頭は良いとは思ってないけど、私って分かり易いのかな?

「違うよ!?」
「じゃあ、何をそんなに考えてたの?」

「あぁ… アレよ、アレ!今日の夕食は何を作ろっかなぁって」

「麻耶、夕飯なんて作ってたっけ?」

「チョ−作ってるよ!毎晩作ってるよ」
「へぇ〜」

「あっ!ママに今日は何を食べたいか聞かなきゃ、ちょっとメールしてくるね」

咄嗟にとんでもない嘘をついてしまった。それも料理上手の奈々子を相手に、バレるのも時間の問題だよね……
まぁ良いか、言っちゃったことはしかたない、何か飲んで落ち着こうっと。
107 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 22:31:18 ID:rKIOn1kw BE:1798323067-2BP(2828)
+×+
「ど・れ・に・しよっかな〜♪」

「何にするだ?木原」

「北村君!…と高須君」

「いつも賑やかだな木原は!」

「そうかな?」

「あぁ、いつも明るく元気で良い事だ」

「嬉しいかも!北村君がそう思ってくれるなら」

「そうか、ありがとう。そろそろ何を買うが決めないか?俺たちも買いたいんだが」

「ゴメン!えっ〜と… リンゴにしょっと」ガコ!

「それじゃね、北村君」

最初から最後までそっぽ向いてたな高須君、なんか感じ悪い。
でも北村君、何であんな人と仲良くしてるんだろ?

教室に戻るならそのまま廊下を真っ直ぐ、でも自販機の向かいにある階段を下った。
あの2人がどんなこと話してるのか気になるよね、階下なら気づかれないはずだし。
108 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 22:36:22 ID:rKIOn1kw BE:770709492-2BP(2828)
「逢坂とつき合ってるか?」
「オイ、直球だな!」

この歯に衣を着せぬ物言いが、今の俺と北村の関係を築いてくれたんだけどな。
だから俺は嫌いじゃない。

「……まぁ、お前らしい物の尋ね方だよな」

「そうか?まあ俺は竹のように真っ直ぐ、向かい風にも折れないを信条にしてるからな」

「良い心構えだな。流石は次期、生徒会長候補だ」
「それじゃな!」

「待て、高須。まだ答えを聞いてない」

チッ、話をすり替えようとしたが駄目か…

「どうなんだ?高須」

「…つき合ってない」

「そうなのか?意外だな。あんなに一緒に居るのに」

やっぱりそう思うよな、俺だってこんなに一緒に居る所を見たらそう思うよ。
もう俺は正直どうしたら良いのか分からないんだ、誰かに話を聞いてもらいたいし、相談もしたいんだ。

「逢坂の家が近所なんだ、それで偶に家で一緒に飯を喰ったりしてな」

「そうか、意外な縁があったものだな」

「そうだな、それで逢坂と親しくなったんだ」

こんな話しを安心して出来るのはやっぱり北村しか居ないよな、ついでに俺の悩みも聞いてもらうか。

「俺は分からないんだ。どうすれば良いか、俺の立ち位置がどこなのか」

「内容は分からないが微妙な関係みたいだな」

「あぁ、微妙だ。今は絶妙なバランスで保ってるが、もし俺が動けば全て終わってしまうかもしれない」

「う〜ん、そうか。逢坂の家庭事情もあるしな」

「ハァ!?どうゆう意味だ、北村」

「スマン、知ってるんだ逢坂の家庭事情を」

「知ってるって、何を」
「一年の時に両親が離婚したことだ」

「知ってたのか… でも何故お前が知ってるだ?確かあまり人には話してないはずだぞ」

「逢坂のことが気になっててな。いつもニコニコしてる逢坂が一時期笑わなくなったんだ、それでな」

「それって… もしかして逢坂のことが好きなのか?」

「まぁな、でも正確には『好きだった』が正解だ」
「過去形なのか?」

「あぁ、過去形だ。理由は聞かないでくれ、俺のトップシークレットだからな」
109名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 22:36:39 ID:r1eDiDgK
支援ッ!
110名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 22:36:42 ID:2CRbRlsh
念のため支援
111 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 22:40:08 ID:rKIOn1kw BE:1712688285-2BP(2828)
トップシークレット?気になる。
大河に告白して振られたのか?それとも別に好き人もしくは彼女ができた、でも北村はそんな素振り見せたことないしな…
もしかして2人はつき合ってたのか?そして何らかの理由別れた。

「高須、大丈夫か?」

「あぁ!?」

「心配しなくても大丈夫だ、俺と逢坂の間には何も無かったから」

「そうなのか?」

「あぁ、何も無い。それより話をしてて思い出したんだが…」

「何を?」

「コレだ!高須にやるよ」

「んっ?これ大河の写真じゃないか!」

「一年生の時だけどな。別に念とかは籠もってないから安心してくれ」

「そうか…」

「もう、持ってたか?」

「イヤ!大河の写真なんて一枚も持ってない。大切にするよ、ありがとう」

「そうか、『大河』なんて呼び捨てだったから持ってるのかと思ったぞ」

「……つい家での癖でな、誰にも言うなよ」

「あぁ、約束するよ。人の恋路を邪魔するヤツは、昔から自分の恋も失敗するって相場が決まってるからな」

+×+
知らなかった、そんなこと昔の人は言ってたのか。北村君が言ってるんだから間違いないよね。

でも北村君は逢坂さんのこと好きだったんだ、過去の事と分かっていてもショックだなぁ。
あと高須があんなに女々しいとゆうか弱々しい人とは思わなかったな、人は見かけによらない。

 +×+×+
112 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 22:43:10 ID:rKIOn1kw BE:856344645-2BP(2828)
竜児は私に隠しごとをしてる。偶に隠れてニコニコしてるし、たぶん良いことがあったに違いない。
でも私が聞いても教えてくれないんだよね、悲しい。
嬉しいことは2人で共有したのにな。

「たいが〜、ちょっとハンガーを2・3本持って来てくれ」
「…は〜い」

ハンガーを持ってベランダに行くと竜児はご機嫌な様子で洗濯物を干してる、私が悲しいのに気づいてくれない。

「オゥ、ありがとう!」
「……ねぇ、なにか良いことあったの?」

「またその話か、何もねぇよ」
「…ごめんなさい」

これで三回目か。最初は教えないことに拗ねてたが、ハンガーを渡して居間に戻れる大河の背中は寂しげとゆうか悲しげとゆうか。
「終わった?お疲れ様でした、お茶入れるね」

アレ?いつもの大河だ、さっきのは俺の勘違いか?
「どうしたの?お茶はイヤ?」
「いや、お茶で良い」

「ちょっと待ってね…… ハイ、どうぞ」
「ありがとう」

いつもと同じように振る舞うほど悲しくなるな。
やっちゃんは泣きたい時は泣いて良いって言ったけど。いま泣いちゃったら、只のわがままになるし。

「大河、さっきベランダで『あぁぁ!』

「やっちゃんが私にお洋服をくれたんだった!試しに着てみよう!」
「えっ?」
「やっちゃんの部屋借りるね、覗いちゃダメだよ!」
「…ハイ」

やっちゃんの部屋で落ち着こう、竜児のこと知りたいのはきっと私のわがまま。
家族にだって知られたくないことだってあるよね。ごめんね竜児、わがまま言っちゃって。
少し落ち着いたらいつもの私に戻るから、ちょっと待ってね。

「大河!」ドン!ドン!
「えっ?!」

「大河!開けてくれ、開けないと部屋に入るぞ!」
「ちょっと待って!」

「早くしないと本当に開けるぞ」

「…なに?」
「やっぱりだ… 泣いてたろ?」

「…泣いてないよ」
「嘘つけ、目が真っ赤だ。そんなに知りたったのか?」

「…違うよ、そんなわがままは言いたくないから」
「じゃあ、何で泣いてる」
「…………」

もうこれは真相を話すしかないだろうな、でも大河は写真のことを知ったらどんな風に思うだろう…
悪い方に考えたらキリがないか、とりあえず話してみよう。
113 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 22:46:09 ID:rKIOn1kw BE:1027613164-2BP(2828)
「ほら、これを貰って嬉しかったんだ」

「……わたしだ」

「そうだ、大河の写真を貰って嬉しかったんだよ」
「何で、嬉しかったの?」

『何で、嬉しかった?』って、そう来ますか。
いつもは家族絡みの事だったら何でも『嬉しい』って言うのに、今回も『家族の写真を貰って嬉しかったんだね』でいいじゃないか。
鈍いんだか、鋭いんだか分からないヤツだな。

「…俺は昔の大河を知らないから、見ることが出来て嬉しかった」

「あっ!本当だ、これ一年生の時だ。でも誰に貰ったの?」

「それは言えない、トップシークレットだ」

「トップシークレット?」
「そうだ、だからそれは聞かないでくれ」

「わかった、聞かない」

「でも、何が泣くほど悲しかったんだ?それとも教えなかったから悔しかったのか?」

「だって…」

「だって、何だ?」

「……だって竜児が秘密にするんだもん、せっかく一緒に居るのに… 私は嬉しいことや楽しいことも一緒が良いのに」

「ゴメン… そうだよな、楽しいことや嬉しいことも2人なら倍になるしな」

「でも竜児だって秘密にしたいことあるだろうから、もうわがままは言わない」
「それに本棚の後ろに竜児がエッチな本を隠してるの知ってるし」

「ナンデスト!!」

「家族でも秘密くらいあるんだよね」
「だから竜児が話してくれることだけで良いの、私はそれで満足するから」

「お前はサラッと、とんでもないこと言ったな…」

「なにが?」

「…本だよ、本」

「本?…あぁ、エッチな本のこと?見つけた時はびっくりしちゃったけど、私は別にいやらしいとか竜児を軽蔑したりしないよ」

「……ありがとうございます」
114 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 22:49:12 ID:rKIOn1kw BE:2312129096-2BP(2828)
「知ってるよ、男の人はみんなエッチな本を見るんでしょ?だからみんな持ってるんでしょ?」

「ダァァ!この話はもう止め!それに男の前でそんな話をしたら駄目!」

「なんで?」

う〜ん… ここは大河に男の心理ってヤツを教えた方が良いんだろうな、今後の為にも。
でも大河はこの手の話には鈍いからな、へんにオブラートに包んで話しても解ってくれないだろうな。

「大河、時に男は抑えが効かなくなるんだ」

「だからこんな話をして、もし俺がいやらしい気分になって大河に変なことしたらどうするだ」

「泣く」

「泣く?」

「そう、泣く。泣いてる女の子に酷いことなんてしないよね、竜児は」

それを好きな子に言われたら男は何も出来ないだろ… それに『私に触るな!』と言われた様なものだ。

「俺はしないけど、世間には酷いことする男も居るんだ。だから男の『だから!』

「だから、前にも言ったでしょ?私は竜児以外の男の人と2人っきりなんてならないって、忘れちゃったの?」

「いや、覚えてる。そうだったな、ありがとう」

「ありがとう?」

「イヤッ!その、家族が酷い目に合った嫌じゃないか」
「それで大河もちゃんと考えてくれてるんだなぁと思っての『ありがとう』だ」

失礼だな!こんなに一緒に居るのにちっとも私のこと分かってくれないんだから。
115 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 22:52:11 ID:rKIOn1kw BE:1370151348-2BP(2828)
「私だってちゃんと考えてるよ、私はガード固いんだから!」

「そうなのか?」

「ひどいよ、竜児…… 私のことちっとも分かってくれない、もう知らない!」

「スマン!これからはちゃんと大河の言うこと聞くからさ、だからいい加減に機嫌を直してくれよ」

「ホントに?」

「あぁ、大河の言いつけもちゃんと守るし、何でも言うこと聞くから」

「何でも?」

「何でも!」

「じゃあねぇ…… 私も竜児の写真が欲しいな」

「そんなので良いのか?」

「うん!写真が欲しい」

それから大河はアルバムを手に取って興味津々に眺めている。
時折、子供の頃の俺を見て『カワイイ!』などと言ってくれてるが正直、
泰子以外で俺を見て可愛いと言ってくれる人間がこの世に居るとは思いもしなかった。

「う〜ん、どれにしょうかな…… やっぱりコレとコレかな。竜児、この2枚貰って良い?」

「あぁ、良いぞ」

「でも高校生になってからのが全然ないよ、なんで?」

「う〜ん…理由はない。ただ撮らなかっただけだ」

「そうか… 今の写真も欲しいんだけどなぁ」

「…………撮るか?一緒に」

「それ良い!2人で撮ろうよ!写真」

それから私の家からデジカメを持って来て2人で写真をたくさん撮った。
でも私はプリントできないとゆう問題が発生、竜児に何度お願いしても家には来てくれなかった。

でも良いんだ。画面は小さいけど、いつでも顔を見れるから。

『おやすみなさい』久しぶりにベッドの中でこの言葉を使った、今夜はきっと楽しい夢が見れるはず。
116名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 22:57:42 ID:r1eDiDgK
何度もリロードしてwktkしたのはいつぶりだろうか…。
GJした!この性格の可愛いさは犯罪レベル。

それと、所々タイピングミスがありましたが…疲れてるならゆっくり休んでいってね!
117 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 23:00:50 ID:rKIOn1kw BE:342538324-2BP(2828)
以上です。支援ありがとうございます、助かりました。
感想をたくさん頂きありがとうございます、感激してます。
あと前回モリタポを送ってくれた方ありがとうございます、でも正直に言うと自分はモリタポって何か分かりません。
モリタポってお金なんですよね?ですから感想を書いてもらうだけで十分です。

自分的にはあと2回ぐらいで終わらせたいなと思ってます。
今回もありがとうございました。

長文失礼しました。
118 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/26(日) 23:06:12 ID:rKIOn1kw
>>116 ありがとうございます、そしてすみません。
いま貼った9レス分は規制中にダァーと書いたんでチェックが甘かったですね、気をつけます。
119名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 23:21:35 ID:2CRbRlsh
>>117
乙でした。ベタベタで甘い・・・だがそれがいい!

>>109
3秒差・・・だと・・・?
120名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/26(日) 23:36:23 ID:K+4KAqgw
>>118
「大河がおとなしかったらぁぁあぁ」
あ、ありえねぇ・・・
と思いながら、
結局にやにや読んでます。
GJです。

お姉さん設定が、いい味をだしてますね。



121名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 00:06:47 ID:r28KtMXL
まさかのお姉さん大河と思いもよらない展開に目が離せないとはこのことか…
122名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 00:11:03 ID:r28KtMXL
>>117
モリタポはお金じゃないのです
確かにお金出して買うことも出来るが誰かからもらうことも可能

で、Beアカウントに送ることが出来るのはchモリタポというやつ

モリタポを自分のBeアカウントに変換して、それを別のBeアカウントの人にポイントとして送れるという仕組み
2005年くらいから実験的に始まったサービス

モリタポ→chモリタポ→ポイント
って感じ
ちなみにポイントはもらうだけで分けたり何かに使ったりは出来ない
いっぱいポイント数ある人は何かしら面白いこと書いた…と思っていただければ結構ですの
123 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/27(月) 00:42:54 ID:8ML5FX6X
>>122 ご丁寧ありがとうございます、お金じゃないんですね安心しました。
感想くれた方々ありがとうございます。
次は早めに書きたいと思います。流石に今日は疲れました、では失礼します。
124名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 01:00:00 ID:r28KtMXL
>>123
まあ俺は2000円払って20000モリタポ補充してるけどね
125名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 02:01:07 ID:iq0Cd+ZO
だからね?虎注と1話Ifと幼児化竜児読みたいの。
126名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 02:19:36 ID:HG4qDyXE
それも読みたいな。
他にもUSAとかエンゲージリングとかも・・・
いや分かってる、忙しいもんね、みんな。
127まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY :2009/07/27(月) 02:54:38 ID:O8fQYOYe
>>63(◆fDszcniTtk)氏
いただきました!無事ログも取得できてなんとかまとめ作業もできそうです!
ありがとうございました!!

村瀬視点での文豪の新しいとらドラ!が読めるのが楽しみですヒャッハー!


まとめサイトはもうしばらくおまちくだs…
128名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 02:56:32 ID:Q+4OqdGN
>>127
お疲れです!
129 ◆RYuuKO/JZU :2009/07/27(月) 03:30:06 ID:yYpGBn1J
実に一ヶ月ぶりにスレを見たが…さすがというか勢い衰えないな!
スレ住人の愛情に敬服です。

休んでる間に見つけたトリを試してみるテスト。


あと駄文を一つ。

「ねぇ竜児」

「おう? どうした大河?」

「最近さ、激しくない?」

「おおおおおう!?!?いきなり何を」

「なんか溢れてきていっぱいになっちゃってるみたい」

「いや……俺はだな、別にその、なんだ」

「もう立派な災害よねー。遺憾だわ」

「いや、ホラ、大河を見てると……かわいくて、その……つい」

「は? 私の見た目とこれと何の関係があんのよ??」

「そりゃお前……我慢しきれなくなると言うか……」

「……なんか竜児カンチガイしてない?」

「え?」

「私が話してるのはコレよコレ! ほら!」

「ん?大分・山口で記録的豪雨……」

「さーて、エロ犬君は世間がこーんなに大変だって言うのに一体なんの話をしていたのかしら?」

「おう……」

「もう、ホントエロ犬なんだから」

「……おう」

「でも、そういう竜児が好きよ」

「大河……」

「で、何が激しいの?」

「それはだな……」



ギシギシアンアン



最近の関門海峡あたりの大雨マジ大丈夫ですか?
130とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/07/27(月) 04:33:39 ID:sqbJ9ARC
お題 「後輩」「オレンジ」「指」



「ねえ父さん、オレンジタルトの作り方教えてくれない?」
「おう、かまわねえけど……急にどうしたんだよ、竜河」
「ん、いや、ちょっとね」
「へっへ〜……俺知ってるもんね」
「なになに?詳しく教えなさいよ泰児」
「お兄ちゃん!母さんも!」
「いやさ、昨日・一昨日の合宿に父さんが皆で食べろって作ってくれたの持ってったじゃん?
 それを食べた後輩がさ、『竜河さんってケーキ作るのも上手いんだね!』って」
「ほっほ〜う。で、竜河はその勘違いを訂正できなかったわけね」
「訂正するどころか、俺が言おうとしたら机の下で足踏まれた。指の骨折れるかと思ったよ」
「……まあ、それでちゃんと自分で作れるようになろうってんだから、いいんじゃねえか?」
「ちぇ、父さんは竜河に甘いよな〜」
「ところで泰児、ひょっとしてその後輩って」
「お、鋭いね母さん。ずばりオ・ト・コ。しかも竜河のクラスメイト」
「ふふん、まあ私はどこかの鈍感犬とは違うからね」
「……ひょっとしてそれは俺の事を言ってるのか?」
「あんた以外の誰の事だっていうのよ」
「……まあいいけどよ。で、泰児、そいつはどこの誰なんだ?」
「父さんまで!?」
「ひょっとしたら父さん達も見たことぐらいあるんじゃないかな?
 狩野コタロウ、かのう屋の一人息子だよ」
「げ、あの黒猫男の息子?」
「『げ』ってのはなによ母さん」
「泰児、そのコタロウってのはどういう字を書くんだ?」
「ああ、虎に太郎で『虎太郎』だよ」
「……」「……」
「なに、どうしたのさ父さんも母さんも妙な顔して」
「……なあ大河、これってただの偶然だと思うか?」
「……妙な因縁めいたものを感じるのは確かね」
「……運命……とは言いたくねえな、さすがに」
「まあ、なんにせよ最終的に選ぶのは本人次第よね。竜児や私がそうだったみたいに」
「ちょっと、父さん、母さん、何を二人だけでわかった会話してるのよ?」
「竜河、今からあんたにいい言葉を教えてあげるわ。昔から虎と竜は――」


――とらドラ・ネクストジェネレーション!――
131とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/07/27(月) 04:36:10 ID:sqbJ9ARC
注:
今回は脳内設定全開ですが、コレでシリーズとか長編とかの予定はありません。念の為。
132名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 06:36:32 ID:/cHwOM4v
>>129
おかえり!少し前は過疎の恐れもあったけど作家さんの準備期間だったようだ。

>>131
毎度毎度GJ。
この4人のコントはもはや定番。

てかもう竜河の婿は狩野なのかw
133 ◆fDszcniTtk :2009/07/27(月) 06:39:08 ID:CUVnZdWK
おはよう

誤解があるようだけど、「君と二人で」は、竜児視点の物語っす(^^;。村瀬はがんがん出てくるけどね。
134君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/27(月) 06:39:53 ID:CUVnZdWK
「おう、北村。ちょっと待て。話がある」
「なんだ高須。すまんが急いでるんだ」

火曜日の昼休み。チャイムが鳴ると同時に駆け出そうとする北村に声を掛けた竜児だったが、いきなり全力ダッシュで振り切られた。だが、振り切られたことより、すれ違った瞬間の顔色の悪さにぞっとする。
思ったよりはるかに事態が深刻であることに気づいて、竜児は立ちすくんでしまった。なんてこった、また北村の変調に気づかなかった。そうだ、村瀬、と思ったところで名前を呼ばれていることに気づく。

「高須、いくぞ!」

教室の後ろに固まっているのは村瀬とリーダー連中。今日は合同企画のためのランチミーティングだが、実情は先週の合同ランチのお返しだ。木下の嬉しそうなこと。

しかし、竜児はそれどころじゃない。北村の蒼白な顔が目に焼き付いているのだ。弁当箱をひっつかんで教室の後ろに歩き、一団に合流する。さぁ、来た来たと歩き出す中から村瀬の肘を引っ張って引き寄せる。

「何だよ、高須」
「なんだじゃねぇ。北村はどうなってんだ。顔が真っ青だったぞ」

きっ、と村瀬が唇を結ぶ。やはり何かあったのだ。

「後で話すよ。今は行こう」

高須、村瀬、早く行こうぜと廊下から声が聞こえる。

「順番間違えてねぇか?どう考えても北村のほうが深刻だろう」

小さな瞳を揺らせて村瀬をにらみつけるが、村瀬はまじめな顔のまま竜児の目を真っすぐに見る。

「間違えてないよ。せっかくクラス展示が盛り上がってるんだ。雰囲気を壊したくない。北村だって同じ気持ちだ」

ちょっとの間、互いの顔を見つめあった後、口をへの字にして竜児が息を大きく吐く。

「わかった。納得はしてねぇが、わかった。終わったらちゃんと説明しろよ」
「ああ、ありがとう」

◇ ◇ ◇ ◇ 
135君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/27(月) 06:40:40 ID:CUVnZdWK
3−Bでは、なんというかほんの少し居心地の悪さを感じた。

理由は視線である。前回3−Aがそうしたように一部クラスメイトに退席願って机を作っているのだが、譲ったのはほとんど男なのだろう。結果的に竜児達は女の子とご飯を食べる様子を、別の女の子達からちらちらと見られる形になった。見ても面白いものではないはずだが。

ため息をつきながら、ふと横をみて竜児はあれっと目を見張る。

「おう、木下。弁当忘れたのか?なんでパン買ってこなかったんだよ」

竜児のつっこみに、村瀬が

「木下は今日は弁当持ってきてないんだ」

説明になっていないことを言う。えっ?と振り向くと、村瀬はニヤニヤ笑い。事情を知っているのか書記女史も困った様に笑っている。そしてもう一度木下のほうを向いた竜児は驚異の衝撃映像を見てしまった。

「木下君、昨日は数学のこと教えてくれてありがとう。とっても助かりました。これはお礼です」
「あ、いや、そんな。何でもないよ。僕こそありがとう」

吉 田 さ ん が 木 下 に 両 手 で 弁 当 を 渡 し て る ぞ 。

一瞬、その場がシンとなる。木下も吉田さんも真っ赤。前を見ると、目をまん丸に開いて大河も真っ赤になっている。他の連中も同じだ。赤くなったままフリーズ。あらためて、竜児も自分の体温が上昇していることに気づく。

「「「「「「「えーーーーっ!」」」」」」」

っと、驚愕の声を上げるリーダーの面々。後ろでも女子がキャーキャー言っている。これか、視線を浴びていた原因は。一部女子は知っていたな。

「何これ」
「え、何?」
「いや、あれ?」

パニック状態の面々に、

「木下は、昨日社会学関係の数学がわからないって聞きに来た吉田さんに詳しく説明してあげたんだ。で、お礼にお弁当をって申し出が、文化祭実行委員経由であってね」

村瀬が解説する。いや、しかし。

「吉田さん、早まりすぎです」

いち早くパニックから立ち直った田口が、筋肉質の体に似合わない柔らかい笑顔で教育的指導を行う。

「おう、そうだ。木下、お前いい気になるなよ。みんなの前で渡されたって事を忘れるな。これはクラス展示のお礼だからな。それ以外の意味があるなんて思うのは100万年早いぞ」

仁王のような形相で、むやみにつらく当たる竜児。村瀬に向けて誓った気遣いは、衝撃映像のせいでどこかに消し飛んでいる。コンピュータ班のリーダーもそうだそうだと笑っている。

「あ、いや、そんな。いい気になんてなってないよ。吉田さん、ありがとう!」

ゆでだこのように赤くなって汗を流す木下。同じく赤くなり、うつむいてこくんと頷く吉田さん。畜生、何だこの雰囲気は。持って行き場のない怒りを抱いたまま、ランチミーティングが始まった。

3−Aから、ご飯を食べながら昨日決まった方針変更と作業の状況を説明することになった。説明するのは言い出しっぺの竜児。あらかた説明が終わったところで放たれた、

「ねぇ、竜児。今更そんな変更して間に合うの?」

という大河の感想は実に正鵠を射ている。
136君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/27(月) 06:41:28 ID:CUVnZdWK
昨日以上に竜児は寝不足だし、他のメンバーも目をしょぼしょぼさせている。が、やると決めた以上、やるしかない。

「でも、急に盛り上がってきたし、楽しいよ」

とは、村瀬のフォロー。物理班の田口が体に似合わぬ柔和な笑顔で

「そうだな、やっているって充実感が出てきたし。最初の目論見通り自分たちがこれから進む道の大きさがわかって楽しいよ」

と続けると、3−Aは一同うんうん、と頷く。さすが柔道部。言葉に重量感がある。

「3−Bは予定通りです。だけど、ちょっと心配なのはパネルかな」

そうねぇ、と書記女史の説明にみんなが同意する。どうやらパネルレイアウトを凝った形にする予定のため、金曜日の夕方に突貫工事を行うらしい。問題は大工仕事をする男手が圧倒的に足りないこと。元々人数が少ない上に、塾人口が多いのは3−Aと同じだ。
立ち直った吉田さんも少し心配げ。木下も心配そうだが、そんなことはどうでもいい。村瀬が

「な、いざというときは3−Aから手伝ったらどうだろう。せっかくの合同企画だし」

提案すると、3−Aのリーダー連中は一様にいいアイデアだと賛同する。が、3−B側がちょっと複雑な顔をした。それまで存在感の無かった能登が口を開くものの

「まぁ、何とかなると思うよ」

と、それだけ。何だろうと考えて、竜児は真相に思い当たった。プライドだ。男が少ないだけに3−Bの男子としてはかっこいいところを見せたいのだろう。女子もそれを察しているから顔をつぶすわけにはいかない。まいったな、と思う。
プライドの問題はデリケートなだけに、竜児はあまり得意ではない。竜司自身は細やかな気遣いができるのだが、それがアダになって相手のプライドを気遣い、二進も三進もいかなくなるのだ。

共同企画の前に立ちはだかった問題に頭を悩ませる竜児の横で、

「ところでさ、展示の内容ってどんな感じなの?」

脳天気にも木下が吉田さんに聞いている。竜児のまなじりがきっと吊り上がる。こいつ、みんなの前でアプローチしてやがるぞ。

「社会学の概要を調べて、まとめてるの」
「…」
「何だよ木下」

軟派か?この野郎。と、悪意ばりばりでにらみつける竜児の視線も気づかないまま、木下は浮かない顔で何か思案している。

「うーん。文系の研究って想像がつかなくて」

え?と吉田さんが表情を変える。見ると、大河初め3−Bの面々も同じような表情。つまり、なぜわからないの?という顔をしている。

「高須、わかる?」

話を振られるが、面と向かって聞かれると竜児にもいまいちわからない。

「おう、俺か?俺は…わからん」
「ちょっと、竜児何言ってるのよ」

大河がいきなりふくれてみせる。

「いや、だってさ…」

言いよどむ竜児を継いで田口が

「木下や高須が言ってるのは、例えば英語の勉強だったらわかるんだよ。英単語覚えて文法覚えて、発音覚えて。だけど、英文学の研究って、いや、文学の研究って何だろうって思う。そうだろ?」

「田口の言うとおりだよ。ごめん、ちょっとぴんと来ない」

まとめたのは木下。
137君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/27(月) 06:42:12 ID:CUVnZdWK
「数学だったら未発見の定理、未証明の仮説がある。物理もおなじだよね、未発見の現象、未解決の問題がある。だから研究する。でも、社会学の研究って、何?」

3−Bの面々に向かって熱っぽい演説をぶってみせる。意外だな、と竜児はびっくり。

「おう、それだよそれ。わからねぇんだよ。社会学とか、文学とか」
「あら嫌だ」

急に気取った声に変わった大河を全員が注目する。

「竜児ったら本当にわからないの?いい?文学を研究すると、その当時の文化とか、思想なんかがわかっちゃうのよ。すごいでしょ?」

どうせクラス展示で仕入れた知識のくせに、腹が立つほど態度がでかい。一方、そうそう、と3−B連はうなずくが、3−A連の大半はまだ納得できていない。

「でもさ、大河。それって、研究っていうより趣味っぽくないか?なんていうか、あまり役に立たないというか」

思わず口を滑らした竜児に大河が眉をつりあげ

「なんですって?」

目を眇めてにらみつける。周りは笑顔を引きつらせ、去年の大河を知っている能登に至っては既に腰を半分浮かせている。しかし、大河は大声を出すことなく、再び気取った言い方に戻ると竜児に言い放った。

「竜児は理系犬だからわからないわよね。でもね、それが豊かさってものなのよ」

ふんっと気取ってみせる大河に、3−B側はくすくす笑い。やがてその笑いは大きくなって、教室挙げて、やんややんや大喝采になる。3−A側はなんとなく丸め込まれたみたいで、気まずそうに笑うばかり。

そんなこんなで、特に暗雲たちこめるわけでもないが、双方とも追い込みに向けて状況は厳しい事を爆笑のうちに確認しあった。必要な部材や困っていること、アイデアの交換を終えたところで、前回より10分早く、村瀬がお開きを宣言した。

そう、この後大切な話がある。

足りない大河分をもう少し補給したいが、そんな場合ではない。

◇ ◇ ◇ ◇ 
138君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/27(月) 06:42:54 ID:CUVnZdWK
踊り場は人通りもあるが、その分騒がしい。人に聞かれずに話をするのはうってつけだ。

「で、北村はどうしたんだ」

声を潜めて問いただす竜児に、村瀬は

「あいつは頑張りすぎてるんだ」

ため息混じりに漏らす。

どう考えても、北村は先代生徒会長だった狩野すみれを意識しすぎている。とっくの昔に振られたくせに、忘れられないのだろう。この文化祭を是が非でも成功させたいのだ。
それはいい。だからといって、昼飯も食わずに校舎の様子を見て回る必要など無いし、毎放課後、一人で全クラスの状況の聞き取りと相談なんか行う必要など無い。

「全クラスやってんのか!」
「うちと3−Bだけはやってない。さすがに俺たち二人は信用されているんだろう」

村瀬が苦笑いする。全クラスの状況を毎日まとめて、クラスごとの進捗がわかるように整理し、起こりうる問題をあらかじめ予測し、物資の搬入やゴミの始末のプランを作り、ミスコンの実行委員会と会議を開き…。

「あいつはアホだ。寝てるのか?」
「たぶん、ほとんど寝ていないよ。高須から何か言ってやってくれないか?一番仲がいいだろう」
「お前だっていいじゃないか」
「ああ、そのつもりだったけど」

と、答えたところで生徒が階段を上ってくる。黙ってやり過ごした後、村瀬が言葉を継ぐ。

「全然耳を傾けてくれない。仕事を分担させろといっても聞かないし、そこまでやる必要なんかないといっても暖簾に腕押しだよ。正直、俺はあいつの友達なのか自信がなくなってきたよ」

再びため息をつく村瀬に

「あいつは」

と、竜児は言葉を切り、目を眇めて床をにらみつける。

「友達を自信喪失に追い込む天才なんだよ」

◇ ◇ ◇ ◇ 
139君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/27(月) 06:43:38 ID:CUVnZdWK
水曜日、相変わらず大河とはすれ違い。頭に来るほど突き抜けて青い空を恨めしげに見上げるだけだ。携帯でメッセージを送るのも照れくさくて、やってない。それ以前に、「寂しい」など打てるわけがない。男が廃る。

そして竜児は寝不足三日目である。そしてそして、さらに仕事が増えた。昨日の階段会議で村瀬とは事実上役割交代となったのだ。3−Aの文化祭の展示とミスコンの準備は竜児がリードする。村瀬は名目だけ残して生徒会に顔を出し、わがままメガネの仕事をなるべく横取りする。

これが竜児と村瀬の作戦だった。昼休みになると同時に教室を飛び出した北村を、村瀬が追いかける。竜児はリーダー連とミーティングをしながら昼飯をかきこむ。弁当箱を洗ったらミスコンに出場する湯川と打ち合わせだ。

「大丈夫、私、アイデアあるんだ。化粧品もコスチュームもいらない。いい方法があるの」
「すまねぇ、俺たち男連中が役に立たないばっかりに」
「役に立たない?高須君の針裁きは噂に聞いてるんだけどな。大丈夫。忙しいの知ってるから」

いたずらっぽく笑った後に、ウィンクしてみせる。以前は、これほどおちゃめな表情は見せてくれなかった。いきなりクラスメイトが仲良くなるのも、文化祭の魔力だろう。

「すまねぇ」
「私さ、どうせ美人じゃないし、楽しむつもりなんだ。そんな風におちこまないでよ」

自分を美人じゃないなんて言うなよ、湯川、結構いけてると思うぞ。そう喉まで出かかって、竜児は危うく言葉を呑み込む。彼女にも、そう言ってほしい相手がいるかもしれない。竜児が言うことじゃない。

「コスチュームはお兄ちゃんから借りるし」
「え、お兄ちゃんから?」

聞いてはいけない家族の秘密を聞いたような気がして動揺する竜児に、もう一度ウインクが飛んできた。

「まだ内緒」

◇ ◇ ◇ ◇ 
140君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/27(月) 06:44:19 ID:CUVnZdWK
そして昼休みが終わる前に竜児はもう一つ片付けなければならない。3−Bに行くと、いきなり大河と目があった。ラッキー。

手を振りながら、とてとて歩いてきた大河に、

「書記女史呼んでくれないかな」

と、頼むと、大声で呼んでくれた。

「なに?高須君」
「話伝わってると思うけど、村瀬が忙しくてさ。俺が代理をすることになった」
ここまで話して竜児は自分のうかつさに突然背中が冷えた。ドライアイスを背中に放り込まれたようなパニック感。横で大河が聞いている。何がラッキーだ。話を聞かれたらつまらないことで心配させてしまう。しかし、残念ながらこんな時だけ大河は察しがいい。

「ん?生徒会」

書記女史が大河をちらりと横目で見て、あらま、といった表情を浮かべる。仕方がない。女の子に嘘をつかせるのもなんだ。

「北村が働き過ぎでな。村瀬がサポートに入る。だから俺が村瀬のサポートをする」
「え、北村君が」

と、言った大河の顔には本当に心配そうな表情が浮かんでいる。

そりゃそうだろう。かつては泣くほど好きだった男だ。働き過ぎと聞いて、落ち着いていられるはずがない。もともと、大河は北村のことが好きで、なんとか恋人にして欲しいと願っていた。いろいろあって、その恋を応援していたのが竜児だ。
その後更にいろいろあって今は竜児と大河が恋人同士だ。が、それで今は大河が北村のことをどうでもいいと思っているかというと、そんなことは無い。

普段のわがままぶりからは想像出来ないが、大河は情の厚い優しい女だ。北村が体を壊しそうなほど働いていると聞けば、自分の事のように心を痛めるだろう。

そして大河が少しでもつらそうな顔をすると、竜児は胸が張り裂けそうに痛む。

「大丈夫だ。村瀬がちゃんとサポートするから。心配するなって。そういうことで3−Aは俺がやるよ。よろしく」

心配そうな大河をなだめながら、書記女史に挨拶をする。が、

「こちらこそよろしくね」

そういって微笑んだ後、書記女史も表情を曇らせる。

「高須君、私も生徒会に顔をだしたほうがいいかな。北村君からはクラスに専念しろといわれてるんだけど」

こうしてみんなが心配するのだから、一人で抱え込まないで初めから適切に仕事を振っておくべきだったのだ。今更大幅に仕事を変更しようとしたって、クラスごとに事情がある。3−Aは村瀬と竜児の連携でうまくしのいでいるが、3−Bまでそれを押しつけるのは酷だ。
北村の奴、まったく世話を焼かせる。

「いや、まだいいよ。いざというときには村瀬をバックアップしてやってくれ。その時が来たら俺から頼むよ。今は、いい」

そうなだめてやると、きれいな瞳を輝かせて安心したように書記女史は微笑んだ。
141君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/27(月) 06:45:08 ID:CUVnZdWK
二人と別れたあと、ふと竜児は足を止めて3−Bに戻る。

「大河」

それほど遠くに行っていなかった大河が、小さな声に気づいて振り向く。

「なに?」

戻ってきた大河に小声で

「あのさ、明日の朝も一緒に登校できないのか?」

問うのだが、大河も困った様な顔をする。

「うん。まだだめなのよ。ごめん。文化祭当日は、また一緒に登校できるから」

大河の寂しげな笑顔に胸が痛むが、しかたない。

「わかった。それから、土曜日はキャンプファイヤーまで残るよな」
「うん。弟の世話はその日はしなくていいから。打ち上げもあるしね。竜児も残るよね」

微笑む大河に竜児も微笑んでやる。

「おう、残るさ。じゃ、お前体に気をつけろ」
「竜児もね…ねぇ、竜児。北村君大丈夫かな」

教室の中から聞こえる音が、急に大きくなった。

「おう、大丈夫だ」

◇ ◇ ◇ ◇ 

放課後も3−Aは大車輪で文化祭の準備に邁進する。昨日の階段での話し合いの後、竜児は作業予定表を作って教室の後ろに張り出している。それによると、水曜日の今日が山場だ。
今日、すべての原稿を大まかに決めたあと、明日、最終チェックを全員でしながらリンク張りをする。そうすれば、金曜日に一気に清書をすることが出来る。

3−Aは来場者に教室の中を歩かせるため、展示はシンプルに仕上げる。すべての机を教室の後ろに重ね、暗幕で隠してその上に数学展示。校庭側も暗幕を垂らしてコンピュータ科学の展示。廊下も暗幕を付けたいところだが、
息が詰まるのでそれは我慢して窓の上に物理学班の展示を貼る。正面は導入部の役割を果たす医学のコーナー。元々スポーツ医学だったが、方針転換ですこし幅を持たせることになった。

展示は大判の紙にマジックで一気に書き上げる。色と番号で来場者を誘導する色つき画用紙は、美術部の提案で目立つように白の縁取りをしている。これなら暗幕に貼り付けても目立つ。

『木下は浮かれていないか』

軍法会議を行いながら、3−Aの面々はプレッシャーの下で楽しげに原稿をまとめ続けた。

文化祭まで、あと3日。

◇ ◇ ◇ ◇ 
142名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 07:13:19 ID:CP8X9c0c
>>117氏乙
ショックです…orz
あと2回の投下でおしまいですか…

ともあれ再開してくれてありがとうございました


ベースはあるとはいえねぇ
それこそ原作みたいに婚約まで読みたかったなあ
143名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 12:40:35 ID:/cHwOM4v
>>141
朝から長文投下乙っス!
続き楽しみにしてるよー。
144名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 14:05:56 ID:vFaBG4na
>>114
まじスピンオフだわ、これ。さすがっす!
145名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 15:19:14 ID:vFaBG4na
すごい間違いした。141さんでした。
146名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 16:02:27 ID:TnAijpS7
あながち間違いでもなさそうだぞ

どっちも的な意味で
147名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 17:59:08 ID:vFaBG4na
もちろん、おとなし大河も好きです。
原作後の三年生の話だからマジで、という意味合いですた。
148 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/27(月) 19:24:00 ID:8ML5FX6X
>>142 GJ 読み応えがありますね、つい時間を忘れてしまうくらい読み入ってしまいます。
その文章力、羨ましいです。
あと自分の話しはあんまりダラダラと続けても他の作者さんに迷惑になるので、あと2回くらいで終わらせます。
次回も楽しみにしてますね。
149名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 22:01:01 ID:APmd3pec
そうですね
迷惑なので早く終わらせてくださいね


あ…れ……私…なんで…泣いてるの……?
べ、別に…名残惜しくて……まだまだ続けて欲しくて……泣いたりなんか……してないんだから!
ウワァーン
150名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/27(月) 22:13:47 ID:HG4qDyXE
なんていうツンデレw

でも、書き手としては一緒に走ってくれる人が多いほうが嬉しいものだから、
迷惑って事は無いんじゃないかなと思ったり。あ、個人的意見ですがw
151 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/07/28(火) 00:22:04 ID:3gsu91oa
長文失礼します

自分も個人的な意見とゆうか書いてる感想なんですけど。

書いてる本人はその気が無くても、ネタが被ったり似たような話になったりする時があるですよね、それも書いてるうちに自然と。
そして結局は貼らずにお蔵入りなんてなるですよ。

だから同じネタで長く引っ張ると『同じような話だから貼るの辞めとこ』って、迷惑じゃないかなと思ったりします。

それに『この設定は前に誰か書いたから駄目か』じゃなくて『設定は似てるけど違う視点で書く』
の方が良いじゃないですか、その為には長引かせずに次の人にバトンタッチした方がスレの活性化にも繋がるじゃないかと。

幸いにこのスレは良い人ばかりだから多少似た話でも中傷する人も居ないでしょうから。

あくまでも個人的な意見です、それと説明が下手ですみません。
152名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 00:48:11 ID:g+zuCKqh
>>151
設定やネタが似てるくらい別にいいんじゃないか?

でも人のSSそのままパクってるふざけたのが居たね。

さすがにスレ投下はしなかったけど。

ああいうのは止めて欲しい。2度と来るなと言いたいね。
153名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 00:58:02 ID:d3xfek0F
↓ここからギシギシアンアン
154名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 01:25:14 ID:xL47lVXW

「ねぇ、竜児?」
「おう、どうした?」
「メタ的な話で申し訳ないんだけど、ここには色々なパラレルワールドが広がってるわよね?」
「ああ、そうだな」
「で、その中で私たちには色々な事が起こって、でも最終的には結ばれる」
「おう」
「どんな物語だったって、やっぱり私の隣には必ず竜児がいるの」
「そうだ。俺とおまえはずっと一緒だからな」

「その物語には長いのもあったり短いのもあったり、色々あって、私はそのどれもが好き」
「ああ、俺も好きだ」
「ちなみにね、私が見た中で、前スレ490の物語はとても長かったの」
「そうだったな」
「私の好きな物語に、更に素敵な部分が加わってて、とっても好きだったな」
「俺も……そう思う」

「だから、私はずっとここで、色んな物語の中を通り過ぎて行きたいって思うんだ……」
「おう。俺もずっと、ここで大河と過ごして行きたいって思うぞ」
「ふふふ……良かった。竜児も同じ考えで」
「そんなの当たり前じゃねえか、今更何を言ってんだよ」

「ごめんってば。でも……でもね、竜児?」
「何だ?」
「今は、どうやら、しなきゃならない事があるみたいよ?」
「そうみたいだな」
「だから……ね…………来て」
「……おう」



ギシギシアンアン
155まとめ人 ◆SRBwYxZ8yY :2009/07/28(火) 03:04:40 ID:ayUpZ8+t
壁|ω・`) ...コソーリ

壁|ω・`)つ まとめサイト更新しました。このスレの100くらいまでですが…のこりは週末に何とか。

壁|彡サッ!
156君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/28(火) 05:28:16 ID:ETO+0xEJ
恐れていた事がおきたのは、木曜日の5時間目のあとだった。

教師が教室を出て行った後、椅子から崩れ落ちるように北村が倒れたのだ。

「北村!」
「大丈夫か?!」

飛んできたクラスメイトが黒山の人だかりをつくる。その中心で、差し出された手を振り払いながら、北村が独りで立ち上がる。

「なんだお前達。大げさだなぁ。大丈夫、足がすべっただけだ」
「座ったまま足を滑らせる馬鹿がどこにいる」
「バナナの皮が落ちてたんだ」
「あほか。どこにもないぞ」
「窓から飛んでいったよ。さあ、6時間目が始まるぞ」
「いや、だけど」
「席に戻れ。ほら、先生がいらっしゃった」

しぶしぶ戻るクラスメイトをよそに、北村が号令をかける。ふらふらしているのに教師は気づかないらしい。気づけよ!というテレパシーを飛ばすが、何事も起きずに授業を始めてしまった。

◇ ◇ ◇ ◇ 

「高須、そんなところで何をしている、ほら、今日は追い込みなんだから展示の準備をしろよ」
「顔面蒼白で目にくま張っつけてる奴が何言ってんだよ」

帰りのホームルームの後、例によって全校の教室チェックに出向こうとする北村と、教室の出口で仁王立ちの竜児が睨み合う。クラスメイトが固唾を呑んで二人を見つめている。塾に行く連中も教室から出ずに二人を見守っている。

「北村、お前は馬鹿だ。生徒会長が倒れるようじゃ文化祭は失敗するぞ。今日は帰って休め」
「俺が倒れる?馬鹿を言え」
「だから馬鹿はお前…おい!」

いきなり、がっくりと膝が折れて沈む北村に教室のあちこちから慌てたような声が上がり、思わず竜児がかけよる。その刹那、さっと体をかわして北村が廊下に滑り出た。

「わはははは。高須。クロスプレーで俺と対等にやりあおうなど100年早いぞ」

そう言い残すと、廊下を走って行く。生徒会長のくせに走りやがって。狩野すみれに言いつけてやろうか。

「高須…」

ぎらぎらと目を光る目を眇めて廊下を睨みつけていた竜児に村瀬が声をかける。

「村瀬、俺はもう腹を決めたぞ。あいつの首に縄をかけてでも家に連れて帰る」

村瀬もまっすぐ見つめ返してくる。

「ああ」
「みんな、ちょっと集まってくれ。早く帰る奴もちょっと待ってくれ!」

教室の窓際の隅に竜児が全員を集める。25人しかいないクラスならではのコンパクトな集会。竜児が全員の顔を見回して口を開く。

「手短に言う。北村は馬鹿だ。一人で文化祭を成功させる気でいやがる。けど、あのままじゃ土曜まで持つわけがない。だいたい、誰かが倒れるような文化祭なんかやっちゃいけないんだよ」
「ああ、そうだな」

と、田口がうなずく。つられて、みなもそうだ、と同意する。だが、

「今日は俺があいつを首に縄を掛けて引っ張ってでも連れて帰って休ませる。だから、あいつが倒れたことは黙っておいてくれないか。ほかのクラスが動揺する」

さすがにこれは敷居が高い。
157君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/28(火) 05:29:24 ID:ETO+0xEJ
全員共犯になれ、という竜児の言葉に、クラスが沈黙した。本当ならきちんと担任に報告すべき事だ。誰も口を開かず、気まずい空気が流れるが、

「高須。北村の世話女房までやるとは、お前も恋多き男だな」
「あほか!」

田口の軽口に、緊張していた面々が声を上げて笑う。おかげで場がほぐれた。

「よし、俺はいいよ」
「私も」
「ああ、俺もいい。黙っとく」
「高須の目つきに免じて黙っていてやろう。異議のあるやつはいるか?」

誰も異議を唱えなかった。

「おう、みんなすまねぇ。恩に着るよ。帰る奴、引き留めて悪かったな」

いいって、いいって。手を振りながら、帰宅組が教室を去る。それを見送りながら、

「さて、今日の作業だが。もう一つ頼みがある」

竜児が残った面々を見回しながら、硬い表情で口を開いた。

「威勢のいいことを言ったのはいいが、正直、もみ合ってあいつに勝つ自信は無え。そこで折り入って頼むが、二人ばっかり、俺と一緒に北村を連れて帰ってくれないか」

今度こそ、正真正銘クラスが沈黙する。たっぷり10秒誰も何も言わなかった。最初に口を開いたのは、やはり、というべきか田口。

「高須、腕尽くでやるつもりか」

全員が田口と竜児を見比べる。

「いや、俺はこんなツラだが、暴力沙汰は柄じゃない。あいつを説得する自信はある。だが、途中で逃げられたらとても俺ひとりじゃ押さえ切れねぇ。だから手助けがいる」
「そういうことか」
「おう」

暴力沙汰にはしないという竜児の言葉を聞いて、一同ほっとしたようだ。田口が、

「わかった、俺が行こう。物理班のほうは、あとは原稿最終チェックとリンク張りだけだ。問題無いよな」

名乗り出て、班のメンバーに確認する。

「ああ、任せとけ」
「すまねぇな。あと一人、誰か」
「谷本がいいだろう。どうだ?」

田口に指名された数学班のメンバーが、ふっと笑顔を浮かべる。

「いいよ。かけっこなら負けない」
「おう、陸上部なら鉄板だな。よし。これで決まりだ。みんなすまねぇ。なるべく早く片付けて戻るから」

OK,OK,喧嘩するなよという声を背中に受けて、廊下に出た。

「村瀬、お前は教室に残ってくれ。必要になったら連絡する」
「いや、これは生徒会のことだから俺も行くよ」
「生徒会のことだからこそ、お前はついてくるな。北村を連れて帰ったら生徒会はガタガタになる。お前が引っ張れ。その時は、共犯じゃないほうがいい」
「いやしかし」
「いいから。連絡するから。あと、必要だと思ったら書記女史に応援を頼め」
「…そうか。すまない」

教室に戻る村瀬の背中を見つめた後、三人で顔を見合わせる。田口が口を開き、竜児をあわてさせるような事を言い出した。
158君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/28(火) 05:31:02 ID:ETO+0xEJ
「高須、3−Bから一人連れてくるから待っていてくれ」
「待て、よそのクラスを巻き込むなよ」
「大丈夫だ。心配するな」

そう言って、すたすたと3−Bに入ってしまう。竜児は、隣の組まで巻き込みたくないという気持ちと、大河に見つかるとまずいという気持ちでいらいらしながら田口を待つ。これから起きるかもしれないことは、大河には見せたくない。

田口は、引き締まった体つきの男を連れてきた。

「剣道部の横川だ。うちの高須。谷本は知っているな」
「よろしく」
「よろしく。すまねぇ、巻き込んじまって」
「水くさいな。北村は生徒会長だろ。おれも生徒だよ。無関係じゃない」

竜児にはとてもまねできない、さわやかな顔で横川が笑う。高校生活も残り少ないが、この文化祭でいい奴とまた知り合いになれた。

「高須、家に連れて帰ったとして、北村はまた逃げ出すんじゃないか?」
「いや、俺に考えがある」
「そうか」

お前がそう言うなら大丈夫だろう。田口が人のよさそうな柔らかい笑顔を浮かべる。

「よし、行こうか」

4人が、緊張した面持ちで生徒会室に向かって歩き出した。

◇ ◇ ◇ ◇ 

「最後にもう一度聞くが、暴力沙汰は無いんだな」
「ああ、ない。ここで暴れても文化祭がつぶされるだけだ。冗談じゃない。俺はうちのクラスの展示を石にかじりついてもやるぞ。一芝居うつかもしれないけど、信用してくれ」
「わかった。それだけ聞けば十分だ」
「よし、行くか」
「おう」

生徒会室の前でひそひそ話をやったあと、ぐわらりと扉を開いて、やおら竜児が大声を出す。

「北村は居るか!」

居なかった。生徒会室には男子生徒が一人いるだけ、驚いて目を丸くしている。二年の富家だ。

「あ、高須先輩」
「北村は居るかって聞いてんだよ」
「い、いません!」

いきなり柄の悪い竜児に、ついてきた三人がうっと息を呑む。が、そこはそれ、黙って表情を険しくしている。

「そうか、じゃ、待たせて貰うぞ」

手近な椅子を引き寄せると、背もたれを前にして足を大きく開いて座る。肘を背もたれについてギンっと音のするような目つきで富家を見つめるあたり、素人離れした雰囲気を放っている。竜児にあわせて田口達もその辺の椅子や机に座る。

「お前、なんてったけな。見たことあるな」

「は、はいっ。2年の富家幸太ですっ!そ、その節はお世話になりました!」

富家幸太は、竜児や大河と絡んだことがある。北村とつきあいが長いから、竜児の根っこが善人であることくらい知っているはずだ。だが、ここで待っていても、たぶん北村は2時間や3時間帰ってこないだろう。だったら、富家の気の小ささにかけるしかない。
竜児は血走った目を見開いて、意味なく富家を睨み付けている。
159君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/28(火) 05:34:33 ID:ETO+0xEJ
「あ、あの」
「なんだ」
「と、トイレに行ってきます!」

あわてて出て行く富家を見て、竜児はしてやったりの表情。田口達の表情もゆるむ。

「高須、堂に入ってるな」
「やめろよ」
「素人とは思えん。これからは高須さんと呼ばせてもらう」
「落ち込むからよせ」

田口がニヤニヤしながらからかう。それにしても殺風景な部屋だ。北村の色気のなさが原因だな、などと竜児は考える。確か1年も入れて女子が3人いるはずだが。もうすこしなんとかならないのか。生徒会は会長独裁制か?

「高須、あいつ逃げたんじゃないか?」
「かもしれねぇ。そうしたら俺たちはここで2,3時間待ちぼうけだ」
「どうするんだよ」
「どうしようもねぇ。だけど、そうすると富家は生徒会の他の生徒を見捨てることになる。何も知らないで来る奴がいるだろうからな。その時はそいつと話をする。それか、富家は職員室に行ったかもしれない。先生が来たらブリッ子をかますぞ」
「古いな」
「おう、うちのお袋のお家芸だ。けど、あいつは職員室には行かないだろう。生徒会室で揉め事が起きたなんて、どれほどの問題になるか馬鹿でもわかるはずだ。だから俺はあいつは北村を携帯で呼んでいると思う。あいつの気の小ささに賭けよう。
北村は俺たちに耳を貸さなくても、後輩が助けを求めれば必ず飛んで来る」

一同押し黙る。文化祭まであと2日。只でさえ北村を送るロスがきついのに、2,3時間の追加ロスは痛すぎる。

しかし、竜児の賭はあたった。

「高須、何をしている。田口と谷本まで」

眉をひそめて入ってきたのはメガネ生徒会長。倒れたときほどではないが、相変わらず顔色が悪い。

「お前を引きずって帰る為に来たんだよ」
「馬鹿を言え。仕事があるんだ。俺は帰らんぞ」
「さっきも言ったが馬鹿はお前だ。生徒会長が過労で倒れてみろ、学校はそれみたことかと来年から文化祭を縮小するぞ。お前、後輩達になんて申し開きする気だ」

「俺は倒れてなんか」
「いい加減にしろ!」

竜児が大声をだす。

「北村、もうお前と話をしても無駄だ。無理矢理連れて帰ってやる」
「なんだ、腕尽くか。高須、見損なったぞ」

硬い顔でにらみつける北村に竜児が苦笑いする。

「なんとでも言え。自慢じゃないが腕尽くでお前に勝てるなんてこれっぽっちも思ってねぇ。悪いが人質を取らして貰う」

いつの間にか、入り口から富家幸太と一緒に中を心配そうに覗いていた狩野さくらが、ひっと声を漏らす。自分が人質にされるとでも思ったのだろうか。

「後輩に手を出すな!」

どうやら北村もそう思ったらしい。生徒会はどうなってるんだ。人を顔で判断するなよ。

「見損なうなよ。お前の後輩なんか人質に取る必要はないぜ。人質は文化祭だ」
「なんだって?」
「田口、谷本、横川、外に出てくれ。お前等も離れていろ」

竜児に睨まれて富家幸太と狩野さくらが慌ててあとずさる。
160君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/28(火) 05:38:04 ID:ETO+0xEJ
「連中の内申書に傷をつけるまでもねぇ。俺一人で十分だ。生徒会室で生徒が暴れたら、文化祭はどうなるだろうな。ガラス何枚くらいまでなら事故で済むんだ?」

部屋の端に転がっていた木の棒を拾って、竜児がゆらゆらと振る。

「脅しても無駄だぞ。お前は物を壊したりできる奴じゃないだろう」

ガシャン!と音がして窓ガラスが砕ける。全員が目を見開いたまま、声を出せない。おそらくその場の誰も、竜児が窓ガラスを本当に割るなどと思っていなかったろう。

「お前と無駄話なんかする気は無いんだよ。おとなしく帰る気になったら、そう言え。さあ、2枚目だ」

物を壊してしまった。

身の回りの物という物すべてに愛着を注いで生きている竜児にとって、ガラスを自分から割るなどということは初めてだった。汚物を呑み込んでしまったようなどす黒い不快感に縁取られた自己嫌悪と、
こんな事態に追い込んでくれた北村への少々不当なほど大きな怒りが竜児の全身を焼く。

「わかった、帰るよ。それでいいのか」

怒りの表情で北村が声を震わせ、同じく顔をゆがめている竜児とにらみ合う。

「帰ったら夕飯食って風呂入ってさっさと寝ろ。それが要求だ」
「引き継ぎだけさせてくれ」
「だめだ!何が引き継ぎだ。自分一人で文化祭回してるつもりでいい気になってた事を存分に後悔しやがれ。さあ、表に出ろ」

唇を噛んで渋々表に出る北村に続いて、竜児も続く。田口達が当惑した表情で二人を見ている。よほど展開に驚いたことだろう。あとで謝らなければ。とにかく、今は北村を連れて帰るのが先決だ。

「竜児、あんた何してるのよ!」

驚いて振り向くと、大河が目を丸くして竜児を見上げていた。

「大河、なんでここにいるんだ。教室に戻れ」
「何よ、何しているのよ。北村君もどうしてそんな顔してるの?!」
「俺はこの馬鹿を連れて家に帰らせる。お前は」
「何よえらそうにっ!どうして何も話してくれないのよっ!!」

大河が顔を真っ赤にして大声を上げる。まずい、と竜児は唇を噛む。こんなところを見せたくなかった。それに話が通じそうにない。

「大河、あとで説明するからお前は」
「うるさいっ!うるさいっ!何よ子ども扱いして!」

地団駄を踏んで絶叫する大河に、廊下の向こうの生徒が気づいたようだ。まずいことになってきた。と、田口が音もなく竜児と大河の間に割って入る。

「逢坂さん、話を聞いてくれ」

突然現れた障害物に、大河は全身の毛をぶわっと逆立てる。拳を握り込み、姿勢を低くし、うなり声を上げはじめた。目を眇め、鼻にしわを寄せ、唇の端が怒りにめくれあがる。

「どけよ肉だるま。ぶっ殺すわよ」

地獄から響くような低音。

三年生になって、はじめて大河が見せる虎の本性。竜児と付き合いだして丸くなったなんて、とんでもない思い違いだった。虎はおとなしくなっても虎。仮面を脱いだ手乗りタイガーは、以前と同じく目の前の邪魔者を容赦なく片付けようとする。

「北村も、高須も文化祭をなんとしても成功させたいんだ」
「どけっていってんのよ!」

最悪の展開に竜児が総毛立つ。せっかく何とか北村を連れて帰ることの出来る所だったのに、これでは何もかもめちゃめちゃになってしまう。一度怒り出した大河は話の通じる相手ではない。最悪なら廊下で乱闘。一番よくても廊下で乱闘だ。

「大河!」

前に出ようとする竜児を、だが田口が制した。
161君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/28(火) 05:39:13 ID:ETO+0xEJ
「文化祭は成功させたい。でも、二人とも譲れない。譲れなくてこんな事になった。もし、ここで暴力沙汰にでもなったら、二人がぎりぎりのところで守ろうとしている文化祭がおじゃんになってしまう。そんなことにしたくない。わかってくれ」

焼き切るような殺気を帯びた目を光らせたまま、大河が田口を下からねめつける。永遠にも思える数秒の後、「ちっ」と舌打ちすると竜児をにらみつけた。奇跡のような展開、と竜児は思った。それとも、大河は本当に丸くなっていて…。

「竜児、命拾いしたわね」

そう吐き捨てるとくるりと背を向けて、どすどすと廊下の向こうへ去っていく。田口が振り返り、竜児にほほえみかける。それが合図だったように、その場で固まっていた全員が息をつく。ただ、北村だけがどう言うつもりか外を見つめていた。

その横で狩野さくらが、割れたガラスを片付けようとかがみこむ。竜児は二年生をにらみつけて

「狩野、さがってろ。富家、女に割れたガラスを片付けさせるな」

腹の中の不愉快な気持ちをそのまま叩きつける。自分が割ったくせに。

◇ ◇ ◇ ◇ 
162君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/28(火) 05:41:01 ID:ETO+0xEJ
真っ青に晴れ渡った青空の下。川に架かった橋を、犯人護送の一段が押し黙ったまま歩いて行く。前を田口と横川。後ろを谷本、間を竜児と北村のフォーメーション。

学校を出て15分経ったころ、ようやく北村が口を開いた。

「高須、大げさすぎないか。彼等も忙しいんだ。俺はこんな事しなくても逃げないぞ」
「黙ってろ。お前の信用は地に落ちてるんだよ」

それっきり、最後まで誰も口を開かなかった。

◇ ◇ ◇ ◇ 

北村の母親は、家の前で待っていた。竜児が頭を下げると母親も頭を下げる。

「すみません、お騒がせして」
「高須君、電話くれてありがとう。ごめんなさいね、迷惑掛けて。みなさんもごめんなさい」

頭を深々と下げる北村の母親に、全員ぺこりと頭を下げる。その横で、北村だけはそこに居るはずのない母親に目を丸くしていた。北村の両親は共働きだ。平日のこんな時間に家にいるはずがない。

「高須、お袋に電話したのか」
「悪いがお前の家出騒ぎの恩を十分に利用させて貰った。泰子に電話してお袋さんの電話番号教えて貰ったのさ」
「…高須、お前がどう言うつもりでやっているのかは理解しているが、こんなやり方は俺は気に入らんぞ」
「月曜になったら存分に話を聞いてやる。今日は寝ろ。言っとくが、お袋さんに監視をお願いしてるからな。自分の母親突き飛ばして逃げるようなまねするなよ」
「お前に言われたくないよ」

そう捨て台詞をはいて、北村は家に入っていった。北村の母親が竜児に駆け寄る。

「高須君、ごめんなさいね。うちの祐作が」
「いえ、疲れているはずですから、寝かせてやってください」

そう言って微笑むと、4人で礼をしてその場を立ち去った。

少し歩いたところで、竜児が3人を振り返る。

「すまねぇ、つまんないことに巻き込んじまって」
「水くさいぞ」

そのまんま、さっきの会話の繰り返し。

「みんな学校に帰るのか」
「そのつもりだけど」
「飯は?」
「パンでも買うよ」

みな、文化祭を前にして暗くなるまで作業の予定だ。こんなに明るいのに教室で頑張っているクラスメイトを放り出して帰るわけにはいかない。

「だったら、少し遠回りしてうちによって行かないか。礼と言っちゃ何だけど、飯食わせてやるぜ」
「えっ、いいのか?!」

横川が目を丸くする。

「おう、チャーハンくらいしか出せないけどな」
「チャーハン?!俺、行くよ!」

やたらとはしゃぐ横川を、田口が図々しいぞ、と肘でつつく。

◇ ◇ ◇ ◇ 
163君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/28(火) 05:41:46 ID:ETO+0xEJ
2DKのぼろアパートにあがりこんだ体格のいい3人組の前にチャーハンが出されたのは、それから30分ほどしての事だ。ごま油とにんにくで香り付けされたチャーハンが、野郎共の空腹感を暴力的にあおりたてる。

「おお」
「うまい!」
「高須の料理の腕前は噂に聞いていたが、これほどとは」

元運動部の食べ盛り3人組にかかって、3合飯のチャーハンは見る見る間に無くなってしまった。一人でこのくらいを平らげる奴を竜児は知っているが、この連中に教えるのは忍びない。いくら大河が無神経といっても可哀想だ。

「しまった!写メ撮るの忘れたぁ!」

横川が声を上げたのは、からになった皿が下げられ、お茶を飲んでいるときである。ちなみに、竜児は気配すら感じさせずに皿を洗い終わっている。

うわぁ、あんまり旨いんで夢中になって食っちまった…と頭を抱える横川を、変態でも見るような目つきで田口が見ている。

「横川、なれなれしい上にうるさいぞ」
「だってお前、高須君のチャーハン、超有名だぞ」
「高須でいいよ。てか、なんだよそれ」

どっかりとあぐらをかいて、座に加わった竜児が横川に聞く。

「うちのクラスは逢坂さんに高須のノロケ話ばっかり聞かされてるからな。なかでもチャーハンがうまいって話は耳タコだ。あんまり聞かされたんで夢に見た奴も居る。死刑前夜にロープか高須のチャーハンの差し入れを選べって夢だったらしい。
そいつ迷わずチャーハンを選んだって言ってたよ。ロープだったら脱獄できるのにな」

竜児は話の途中からうつむいて、目のあたりを手で押さえている。大河、お前はアホだ。

「高須のチャーハン食ったってだけで、俺は今日から3−Bの貴族だ」
「愛されてるな、高須」

からかう谷本を、馬鹿言えと竜児がにらみつける。

「見ただろう。あいつ、俺の事殺す気だったぞ。ああなったら機嫌を戻すまで大変なんだ。田口、危ない目にあわせてすまなかったな」
「ははは、やっぱり危なかったか。見事なくらい本物だったな。あれは」
「やめろよ。誉めてないぞ、それ」
「高須、逢坂さんを柔道部にくれ」
「アホか、絶対やらねぇ」

◇ ◇ ◇ ◇ 
164 ◆fDszcniTtk :2009/07/28(火) 05:48:24 ID:ETO+0xEJ
みんな感想ありがとう!

>>143
この時期早起きすると気持ちいいよ!

>>144-145
長編になると力が入る。なんかこう、とらドラ!の世界観そのままで書いてみたいって思うよ。

>>148
あんま迷惑とかなんとか考えなくていいんじゃない?てか、考えすぎだと思う。ここは作品投下する所なんだし。
ネタかぶり云々で言えば、ここは「とらドラ!」という壮大なネタかぶりを楽しむところだよ。

>>155
いつもありがとうございます。そんでもって、いつも宵っ張りっすね。
165名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 06:15:06 ID:kzR499f7
>>164
今朝も朝刊がちゃんと届いてるな
読まねば



あとまとめサイトの人
密かに乙!
166名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 07:42:35 ID:qAekfZGw
なんかこのスレの4/1くらいは「君と二人で」で埋まってるような気がするw
今回もGJした!
最悪乱闘、良くても乱闘は名言だなw盛大にワロタ
167名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 09:02:53 ID:rVMqivLU
>>154
こういうハートフルなギシアンは好き
168名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 09:07:32 ID:+5ENg8sp
169名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 14:36:52 ID:9f2ecuBP
◆eaLbsriOas@避難所です。代理投稿歓迎。感想いつも拝見しています。ありがとう!
新居の新婚さんを覗く第二弾。
170・奥さまは虎女 その2:2009/07/28(火) 14:37:33 ID:9f2ecuBP
 奥さまの名前は大河。そして、だんな様の名前は竜児。
 すごく微妙なふたりは、しごく異常な恋をし、ごく普通の結婚をしました。
 でも、ただひとつ違っていたのは、奥さまは虎女だったのです……人間だよ、美人だよ!?


 ガチャ、バタン。
「ただいまー。大河……大河ぁ?」
「きゃは……っ! おかえりなさぁい、竜児っ!」
 だだだだっどす!がん!
「ぐぇ……っ! お、おまえさあ、突進して抱きつくのはいいんだけど、胴タックルに切り替えれば
 いいってもんじゃねえぞ? たしかに後頭部は無事だが、腹と、こ、腰が……」
「っ!? も、もう、愛は冷めたのね……?」
「またですか……だから、抱きついて欲しいよ、俺も。突進もいいよ。だけど加減がなおまえ……」
「ひどいっ! 愛に痛みはつきものだって、あんたが教えてくれたんじゃない!」
「はあ? 俺、そんなことおまえに教えたことなんかねえぞ?」
「嘘っ!? もう忘れたの!? ひどいっ! 竜児ったら、愛してるよ愛してるよって言いながら、
 初めての時あんなに私に痛い思いさせたくせにっ!」
「ブッフオォッ! お、おまえ、それとこれとは話が別だろ!?」
「なんてこと……っ! も、もう、妻の私に二枚舌使うなんて……夜の舌は一枚なのに……」
「おまえの舌こそ減らねえな……だいいちマジで舌二枚あったら俺やべえだろ? 妖怪か!?」
「べ、べつに、私は竜児に舌、二枚あってもいいけど……やさしく舐めてくれるなら……」
「真っ赤になって上目遣いか……愛しくてたまらないが、言ってることはドエロでどうしたもんだか。
 てか、大河……おまえやっぱり、痛かったのか……?」
「えっ? なに? 痛くするの? 舌が二枚だと……ん、でも、私、我慢するよ? 竜児だもん……」
「いいかげん舌の話から離れろ。あと変態話で俺を感動させるな。変なクセがついたらどうする。
 だからさ、大河。そうじゃなくて、その、初めての時だよ……痛かったのか? おまえ、あの時は
 ちょっとだけって、言ってたよな? ……隠してたのか? やっぱ」
「う、ううん、隠してないよ! ……ほんとにちょっと、ちょっとだけ、痛かっただけなの……
 だって竜児、すごく優しくしてくれて、私のゆ」
「わあああああぁぁぁぁ――――――――――っほおぉおぉうっっっ!!」
「わっ!? な、なに!? なんで竜児、急に叫んだの!? や、山びこ!? 山びこすればいいの!?
 わ、わっほー……?」
「ああ、いや、違う。べつにここでハイキングごっこするつもりはねえ、おまえ可愛いけど。
 まあ、うん、とにかく、わかった! ちょっと痛かっただけだって確認できて、よかった!
 初めての時の話はこれでおしまい! さ、メシにしようぜ。キッチンまでウォーキングだ、な? 大河」
「う、うん、いいけど、べつに……じゃ、じゃあさ、竜児。その前に、いつもの……して?」
「おう? い、いつもの?」
「んもぅ! まだしてないでしょ? 忘れちゃやぁだ! だから、その……ただいまのちゅう、して?」
「おう……ただいまの……てかこの流れでか……」
「うん、して? ちゅう……い、一枚舌で、いいから……」
「うはあぁ……お、おまえね、そんな、舌とか、そんな、真っ赤になって、可愛くてたまんない顔して、
 い、言うなよ……」
「はう……っ」
「わあおまえ、ふるふる震えるとか、まで、か、勘弁してくれよ……や、やばいよ、俺、負けそうだ。
 こ、ここで、玄関で、なんて、やばいって……」
「ん……負けて? 竜児、負けて、欲しいの……」
「くそっだめだ! おまえ可愛すぎる! 大河っ!」
「竜児……っ!」
 ピンポーン!
「と、あらやだ、誰か来た」
「うへえぇ!? そんなんありか……!?」
171・奥さまは虎女 その2:2009/07/28(火) 14:38:14 ID:9f2ecuBP
 ピンポーン!
「わ、やばいやばい! 深呼吸深呼吸! すうっ……はー……ちょ!? ちょちょ、ちょっとあんた!?
 それ! どうにかしなさいよ!? どうすりゃいいのそれ!? ジャ、ジャンプ? ジャンプ!?」
「そりゃおまえここ打った時だよ!? やべえ、これ、すぐはどうにもなんねえんだよな……くそっ!?」
 ピンポーン!
「じゃ、じゃあ、いいから! あんたとっとと居間に行って! 隠れてて!」
「お、おう! わかった! く、靴、揃え……ああもういいや! 居間な……よし、オッケーだ……!」
 キィ……パタン。
 ピンポーン! ピンポーン!
「ふう……はぁい、どちらさま……うげ、お母さん……!」
 ガチャ!
「わーお母さーんどーしたのー急にー嬉しーいー」
「なによ、大河。いいわよ棒読みで歓迎のふりなんかしなくても。それよりとっとと出なさいよね。
 いるのはわかってたんだから、気配で」
(げええええっっっ!? お義母さんっ!! さ、最悪だ……)
「ごめんなさい。ちょっとキッチンにいて、お水使ってたものだから、聞こえなくて……」
「へえ、あなたが、キッチン。ふうん……あらやだ、あなたの駄目亭主、帰ってきてるの。
 やあねえ、こんなに靴脱ぎ散らかして。躾がなってないったら。は!」
(……さ、最悪だ……)
「竜児のこと、駄目亭主だなんて言わないで! そんなこと、いくらお母さんでも許さないんだから!
 それから靴を揃えるのは私の仕事。私の躾がなってなかったみたいね、お母さん……!」
「あら、言うわねえ。……へえ、あなたのそんな目、久しぶりに見たわ……結構ね。結構だこと!
 そんなにまで愛されて、幸せ者ねえ、あなたの駄目亭主は」
(っ! お、お義母さん……)
「っ! お、お母さん……だから、駄目亭主って言わないでよね……」
「はいはい。お母さん悪かったわ。言わない言わない。でも、そろそろお出迎えくらいあっても
 良いのじゃないかしら? いくらボンクラ亭主でも」
「お、か、あ、さ、ん……っ!」
「あら。駄目亭主とは、言わなかったわよ?」
(すげえ……やっぱ親娘だ……親娘すぎる……)
「……竜児ぃーっ? 来てぇ? お母さーん!」
(おう……わあまだちょっとやばい!?)
「……竜児ぃーっ?」
(ああくっそ、行くしかねえか、こうなったら……!)
 カチャ!
「ああ、お義母さま! ごっ、ごきげんよう! ご無沙汰しております! せんだっては、
 この家のことでも助けて頂いて」
「ごきげんよう、ようやくのお出ましねこのボンクラ亭主。いいわよ、堅っ苦しい挨拶は。
 どうせ電話でも手紙でもメールでも聞いたことの繰り返しでしょ? あなたいちいち細かいのよ。
 そんな目つきで日々世間さまを脅しつけて平気でいるんだから、もうちょっと図太く
 構えているくらいでようやくつり合いがとれるというものじゃないの。違う?」
「た、大河?」
「竜児、ちゃうちゃう。私はこっち」
「あ、お、おう、そうか。いや、圧倒的な聴覚情報につい視覚が流されてしまったらしい。
 っと、率直なご意見痛み入ります、お義母さま。あのう、それで、今日はどういったご用向きで……?」
「どういったもこういったもないでしょこのボンクラ亭主! 新居暮らしの娘夫婦の顔を見に来たに
 決まってるじゃないの。それともなにかしら? 義理の母が連絡も無しにいきなり顔を
 見に来てはいけないとでも言う気? はっ! なんて冷たい義理の息子なんでしょ!
 大河、あなたのとっつかまえた旦那は目つきどおりの冷血漢よ。とっととわかれるがいい!」
「た、大河?」
「ちゃうちゃう、私はこっち。っもう、お母さん! 竜児はね、見かけは凶悪犯で最低最悪だけど、
 とーっても優しい素敵なひとだってこと、お母さんだって知ってるでしょ!? わかれろだなんて、
 冗談でも言わないでよね!」
「見かけはやっぱそうなんだよな俺……ふっ……」
「はん! どうだか! 大河、見て御覧なさいよあなたの旦那の格好を。帰ってきたというのに
 これ見よがしにカバンなんか抱えたまま私を出迎えに来て、さも『僕は今ちょうど仕事から
 帰ってきたところなんですぅ〜、お義母さんタイミング悪すぎですぅ〜、また出直して来て
 くださいませんかねぇ〜?』なんて言わんばかりじゃないのよ。どう? 図星でしょあなた?」
「おう!? あ、いや!? 違いますお義母さま! こ、これはですね、あ、あのですね……
 (カバンで股間を隠してるんですぅ〜なんて言えるかよ!?)」
172・奥さまは虎女 その2:2009/07/28(火) 14:39:17 ID:9f2ecuBP
「ちっ、違うのお母さん! りゅ、竜児はね、今、仕事に熱中してるの! 仕事に夢中なあまりね、
 カバンを手放せなくなっちゃったの! ふぇ、ふぇら、フェチになったの。カバンフェチなの! 
 カバン抱えてないと落ち着かないちょっと小粋な変態なの! だっ、だから竜児はこうやって、
 大好きなお母さんに挨拶するからって、落ち着いてなきゃって思って、だからカバン抱えてるの!
 だよね? 竜児! お母さん大好きだから、緊張しちゃうんだよね!?」
「うげえっ!? あ、いや、そ、そうなんです、お義母さま。失礼しております。いやまったく
 お恥ずかしい……(そんな言い訳あるかよ大河!? どうだ見たかヅラしてんじゃねえよ!?)」
「あらやだ。大河、あなたの旦那、そんな変態までこじらせているの? というか、いやだわ、
 や、やめてよね。そんな変態娘婿から好かれても、私はちっとも、う、うう嬉しくなんかなくてよ……。
 ねぇ、竜児くんも、仕事を頑張るのはよいけれど、それは早く治しなさいね。カバンフェチだなんて、
 みっともない」
「は、はい! 恐縮です! 治します! すぐ治ります! 5分後くらいに!」
「5分後なんて無理でしょ。もぅ、意気込みだけは一人前なんだから、あなたの旦那は……
 なによ、大河。ニヤニヤして」
「えへへ。だってお母さん、笑ってるんだもん」
「なに? 目の錯覚よ。私は微笑んだりなんかしていません。だらしない笑顔はおやめなさい、大河。
 ……ん、結構。さて……では、わたくし、そろそろお暇するわね」
「えっ!? そ、そんなお義母さま! どうぞお上がりになって下さい! お茶か、よろしければ
 お食事なんかもご一緒にいか」
「はっ! これだけ玄関で立ちぼうけさせておいて、いまさらお上がり下さいもないでしょうよ!
 わたくし、お昼は遅かったし、お茶も済ませて来たところ。だからお茶もお食事も結構。
 まったく間が悪いったら……。よくてよ、どうせ近場に来たから思いついて寄ったまで。
 また日をあらためて出直してくるわ。あなたたちもよく覚えておくことね!」
「そ、そうですか。し、失礼しました……き、肝に銘じます……?」
「はーい。じゃあねお母さん!」
「それでは、大河、りゅ、ボンクラ亭主、ごきげんよう!」
「ごっ、ごきげんようお義母さま! お、お義父さまにもよろしくお伝え」
 ガチャ、バタン……
「くださ、い……?」
「……」
「……か、帰った、のか?」
「うん、帰ったね。お母さん」
「……大丈夫、か?」
「ん? どしたの竜児?」
「……あへ」
「りゅ、竜児?」
「あへあへあへあへあへあへあへあへあああああああぁぁぁぁぁ………………………………っ」
「どっ、どうしたの竜児!? 変な声出して、くずおれてっ? や、山びこ? 山びこなのね?
 あへあへ……?」
「ああ、いやあ、大丈夫だ大河……山びこじゃねえ、おまえ可愛いけど……はあぁ……疲れた……
 お義母さんいきなりなんだもんなあ……」
「ご、ごめんね? 竜児。お母さんには今度から連絡してから来るようにして、って、ちゃんと
 言っておくから……」
「ああ、いや、まあ、いいんだけどさ……大丈夫かなあ、大河?」
「へ? 何が?」
「いや、俺さ、やっぱおまえのかあちゃんに嫌われてんじゃねえか? それが心配でさ……」
「へ? なに言ってんのあんた。お母さん竜児のことすっごく気に入ってるよ?」
「えぇっ!? そ、そうかあ? それであんな口ぶりになるかあ? 駄目亭主とかボンクラ亭主とか」
「なるよ。ほら」
「……なに? なんだ、大河? ニヤニヤしたり、親指突き立てたり」
「私を見たり、しなさいっての。私を産んだのは誰? あのひとでしょ? ほら、私だって、
 高校で出逢った最初のころから、もうあんたのこと大好きだったってのに、
 さんざん犬呼ばわりとかしてたでしょ?」
「おう、そうだな。今でもたまにされるけどな……てことは、あのお義母さんの悪口も、
 同じだっておまえは言うのか? なんてか、好意の表れ、ってやつか?」
「そうよ。お母さん男のひとにあんな口叩くの、あんたの他は今のお父さんくらいのもんよ。
 お母さんお父さんのこと愛してるから、つまりあんたのことも、愛してるとまでは言わないけど、
 特別、気に入ってるってこと」
「おう、そうか。まあ、そうだといいんだけどな……」
173・奥さまは虎女 その2:2009/07/28(火) 14:39:59 ID:9f2ecuBP
「そうだといいじゃない。そうなの。嫌われてたらあんた、最初のころみたいにばっちり他人行儀か、
 完全無視よ。ウチの血筋は」
「そうか……うん、わかったよ、大河。信じるよ、おまえを」
「竜児……」
「あー……でもそうなら、やっぱお義母さんに上がってもらった方がよかったかなあ? なあ大河、
 おまえはどう……あら、おまえ、うちゅーって、いつからタコちゃんだ……?」
「……さっきからよ」
「おう、そうか、すまねえ……」
「ぷいっ」
「な、なんだよ大河。キス、いらないのか?」
「いらない。ぷいいいーっ!」
「ど、どうしたんだよ、なあ? 大河。そんなぶんむくれて、ふくらんだほっぺも可愛いけどよ……」
「ふっ、ふるふるなんかさせても、駄目なんだから! なによ、もう! お母さんお母さんって、
 そんなに好きならお母さんとキスでもすれば!? ぷいいいいぃぃぃ――っっ!」
「おまえ……」
「な、なによっ?」
「大河……」
「だ、だからなによっ?」
「大河……」
「なによ、ほっぺた撫でないで!」
「大河……大河。大河。大河、大河……」
「なによ……っ! なによ、そんな、や、優しい声で、いっぱい名前呼んだって、だ、だめなんだから……
 そんな、竜児、いっぱい、大河って、だ、だめ……いっぱい、だめ……」
「大河……」
「りゅ、竜児……っ。声、好きなんだもん。だめ……っ」
「大河……」
「わーん! ひどいっ! 抱っこ! 抱っこして! お、おかしくなるの!」
 ぎゅ……っ
「大河……」
「ひどいの、竜児、ひどいの。その声で、いっぱい優しく、されたから、私、だめなの……
 だめに、なっちゃうんだから……」
「この声はおまえだけのものだよ、大河」
「っ! りゅ、竜児……っ」
「だからさ……やきもちなんか焼くなよ、な? 大河」
「うん、うんっ。やきもち、焼かないよ? 竜児……っ」
「……あ、いや。やっぱたまに焼いてくれ、大河。やきもち焼くおまえ、すげえ可愛いからさ」
「う、うん……っ。じゃ、じゃあ、たまに、焼く……」
「よし、じゃあ……おまえの唇、俺にくれよ、大河」
「っ! は、はい……っ」
 ちゅ。
「……ただいま、大河」
「っ! お、おかえりなさい、竜児……っ。その……忘れて、なかったの……?」
「忘れるわけがあるか。……よし、ようやく笑ってくれたな?」
「だって、竜児がニコニコしてるから……ね、竜児。もう一回、して……」
「お、おう……」
 ぐきゅるるるるるるる〜〜〜〜〜〜っ!
「あらやだ。……ちょっとあんた、笑いすぎ……笑いすぎだってば、もうっ! あんたって最低!
 愛してるけど」
「……いや、すまねえ。おまえのお腹の虫にはかなわねえわ」
「もーっ! かなわないって、なによ!?」
「だっておまえ、そいつも俺たちのキューピッドじゃねえか」
「っ!」
「な? そいつが鳴って、俺はチャーハン作ったんだ。真夜中に、おまえのために」
「うん、うん……っ」
「さ、じゃあ、メシにしよう。な? 大河」
「うんっ! ……あ、そういえばね、竜児」
「おう、なんだ?」
「お母さんだけど、よかったのよ。あれで帰ってもらって」
174・奥さまは虎女 その2:2009/07/28(火) 14:42:28 ID:9f2ecuBP
「おう……どうしてだ?」
「お母さん、すぐ帰るつもりで来たのよ、初めっから。じゃないとこんな、夕食時になんか
 顔出さないわよ。あれはお母さんの手。どうとでもできるように狙って襲撃してきたのよ。
 お昼遅かったとか、お茶も済ませたなんてのもたぶん嘘。お母さんいまごろご飯食べてるはず」
「はああああ……やっぱおまえのかあちゃんにもかなわねえわ……」


***おしまい***


※Janeで代理投稿していて気づいたんですが、文章の行が中途半端に切れてしまいました。
申し訳ございません……。今後は気をつけたいと思います。
まとめる際にはこの文章は消しておいて頂けたらなと思います。
175名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 15:46:04 ID:rVMqivLU
書き込み欄の枠を広げようぜ!
あとプレビューもしたら良いぜ
最強の2chブラウザの名は伊達ではない
176名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 17:01:43 ID:9f2ecuBP
>>175
コピーしただけだから改行とか関係ないのだよ
プレビューか!その手があった!
177名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 17:42:53 ID:R0a1NTfX
こういうのすき
178名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 18:36:45 ID:GctFDsiK
通勤途中に今朝の朝刊を読みながら歩いてたんだ。
そしたら、フフンと胸を逸らしながら偉そうに語ってる大河が浮かんで



赤信号なのに普通に渡っちまったよ!!!
しかも2828しながら、だ。
フハハ!俺にはもう怖いものなんか無い!
179名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 19:13:37 ID:pPjTkAyM
>>178
おぬしもとらドラ!脳かw
俺は今月のおーはしるいのふ〜ふな生活が竜虎夫婦に脳内変換されたぜ。
180名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 20:22:29 ID:qAekfZGw
電車で隣の人が携帯でとらドラスレ見てたときは笑ったなあ
話しかけられなかったけどw
181名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 21:55:21 ID:LhKkDS7U
>>164
相も変わらず、素晴らしいです。
超本気の大河を久々に見た。読んでてぞくっとした。元2-C連中なら瞬時に校外まで逃げてるな、きっと。

「高須のチャーハン食ったってだけで、俺は今日から3−Bの貴族だ」
この表現いいわぁ・・・
てか、俺も竜児のチャーハンが夢に出そうだ。想像するだけで垂涎モノになってるんですが。
これからも展開に目が離せません。
182名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 22:40:31 ID:+5ENg8sp
>>164
おつです!?楽しませてもらいました
183名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 23:20:47 ID:a5mhHP2s
>>56です。

感想その他ありがとうございます。
タイトルはまとめ人様が付けてくれましたので、そのまま使用致します。
「真夏のシンデレラ」>ありがとうございます。
こういうタイトルは思いつきませんでした。

少しづつ書いてますので、ある程度まとまったら投下します。
筆力のある人がうらやましい・・・いっぺんにたくさん書けないので。

そんな中でふと小ネタを思いついたので、投下します。
大河も竜児も出てこないけどね。
184名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 23:22:21 ID:a5mhHP2s
恋ヶ窪ゆり独身(30)は選択を迫られていた。

選択と言ってもイケ面エリート会社員とアラブの第3王子から同時に求婚されて、そのどっちの手をつかんでいいのか決めかねていると言うビッグな選択でもなければ、今日の夕食を外で食べるか、家で食べるかというちっぽけな選択でもない。
恋ヶ窪ゆりは今までの人生で、大きな間違いもしていないし、人から後ろ指を指される様なこともしていない。
多少、狙った彼氏に逃げられたくらいである。
それが目の前にあるドアをノックしてしまうと、間違いなく犯罪者になってしまうという状況に立ち、ドアをたたくか立ち去ってしまうか、その選択に悩んでいたのだ。
校長室とプレートの出ているドアの前でゆりは固まっていた。


どうしてこんなことになったのかと言えば、話は2時間前に遡る。
それは受け持っている授業がない空き時間だった。
後輩(仮氏持ち)がバレンタインにチョコを上げたとか、それからどうなったとか、聞かれもしないのにしゃべりまくるのをうざいと思いながら、ゆりは職員室で事務作業をしていた。
その作業はある意味、教師として一番やりたくない性質の物かもしれなかった。しかし、それは担任としてやらざるを得ないものだった。
「はっ」と小さくため息をついてから、ゆりは30センチ定規を取り出し、A4サイズの黒表紙を開くとその用紙の一箇所にボールペンで2重線をゆっくり引いていった。
黒いインクが伸びて、紙の上に記された文字に掛かる。
ゆりはしばらくためらってから、ボールペンを動かした。
一文字、一文字、ゆっくりと消して行き、やがて4つの漢字が黒い線の下敷きになって消えた。
つい、数秒前までそこには「逢坂 大河」と4文字の漢字が書かれていた。
この瞬間、2年C組の出席簿から「逢坂 大河」の名前が永久に消えたのだ。
教師を10年近くやっていれば、ゆりは何回かこんな経験をしてきた。だけど、何回目でも教え子が途中でいなくなるというのは嫌なものだとゆりは思う。
たとえ、いなくなった生徒がクラスの問題児でもだ。
そんなゆりが物思いにふけってぼんやりしていると急に電話だと同僚から呼ばれた。
あせって湯飲みのお茶をこぼしかけながら電話に出ると、電話の主はたった今、名前を消した逢坂大河の保護者だった。
あたりさわりのない挨拶の後、相手が切り出した用件は娘の大河が地元の高校へ編入するので必要書類を送ってもらいたいというものだった。
たいした手間でもないので、ゆりはふたつ返事で引き受け、今日中に発送することを確約した。


必要な書類は成績証明書、他だった。
仕事自体は学校指定の用紙に必要事項を転記するだけで良かった
ゆりは用紙を探し出すと、学年主任の机から成績原簿を自分のデスクへ持って来て、該当ページを探した。
それは原簿の真ん中辺りのページで見つかった。
所属クラスと出席番号、そして名前。
その名前の欄の横に赤いスタンプで「除籍」とあるのが痛々しい。

化学81、英作文97、国語U92・・・


授業態度、最悪だったけど、出来た子だったのよね、逢坂さん。
改めて、ゆりはそう思った。
成績証明書は簡単に出来上がったが、次の書類でゆりは考え込んだ。
・・・どうしよう、これ。
出席日数を記入する欄がいくつか並んでいる。
その中に「停学、出席停止等に関する欠席日数」というのがあった。
・・・あの子・・・経歴に傷があるのよね。
ゆりの眉間に少ししわがよった。
先の生徒会長と繰り広げた大立ち回りの記憶はゆりも未だ生々しい。

普通ならば、そのまま出席簿の出席日数を転記すればいい。
しかし、なぜかゆりはためらった。
あ〜もう・・・とゆりは頭を掻いた。
なんで、学校を辞めたあんな小娘のために私が悩まないといけないのよ・・・。
一息つこうとゆりは立ち上がった。
185名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 23:24:28 ID:a5mhHP2s
外の風に当たりながら、ゆりは大河が編入を希望する学校がどんな学校なのか気になった。
しかし、遠方の学校のこと、ゆりにはそれを知るすべが無かった。
そんなゆりがふと思い出したのは教育学部時代の友人が向こうの県で教師をやっている事実だった。

アドレス帳をめくり、久しぶりに聞いた友人の声は昔ながらに元気そうだった。
近況を簡単に報告しあった後、ゆりは本題を切り出した。
「ああ、あそこ、一言で言えば地元の名門ね。歴史あるし、校風はちょっと古臭い感じの女子高。レベルはそこそこ高いわよ。昔風に言うなら良妻賢母育成の学校ね」

礼を言ってゆりは電話を切った。
ふうと息を継ぎ、ゆりは思案顔になった。

教師経験の浅いゆりでも、ああいった学校が何を重視するのか薄々分かる。
生活態度だ。
学力も必要だろうが、何よりもそれが重視される。
停学有りなんて論外だ。

う〜、あ〜言いながらゆりはそれから書類を完成させた。
最後に生徒氏名を記入する欄にいつもの癖で生徒の名前が入ったゴム印を押そうとしてゆりは止めた。
ペンを再び掴み、楷書で記入した・・・逢坂 大河・・・と。
もう2度と記す事の無い名前だった。

さて、書類を有効にするには学校長の印が必要だった。
出来た書類を胸に抱き、ゆりは校長室へ向かった。

結局、出席日数は誤魔化せない。
ゆりは悩んだ末、問題の欄に12という停学日数を正しく記し、欄外の備考に「インフルエンザによる出席停止」と虚偽の理由を書き込んだ。


・・・これって有印公文書偽造ってやつ。


校長が目の前ではんこを押すのを見ながらゆりはそう思った。
私もとうとう犯罪者。
あ〜あ、やっちったぜ。

びくびくしながら校長室を退出しかけたゆりを校長が呼び止めた。

「恋ヶ窪先生」
「はいっ!」
すねに傷のあるゆりは1オクターブ高い声で返事をした。
「何でしょう?」
「うん、僕も長いこと教職についているけど・・・生徒のために良かれと思ってすることなら、大概は許される・・・はずだな。うん」
186名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 23:26:55 ID:a5mhHP2s
・・・バレてる。
記載事由が出鱈目なのが・・・。
ゆりの背中を冷や汗が流れるが、そこはゆりとてもう30代。
にっこり笑い、「そうですね、校長」と大人の対応。
妙な化かしあいをしながら、職員室へ戻って来たゆりはどっと疲れを感じ自分のデスクの椅子へバタンと体をあずけた。
・・・たく、今ので目じりのしわが増えたら、どうしてくれるんだよ、逢坂さんよお。責任取れよな。
・・・聞けば、高須竜児といい仲なんだって・・・けっ・・・やってらんねーよ。
・・・私より先に結婚でもしてみやがれ、末代まで祟ってやる。

・・・ま、今回のは何もしてやれなかった私からのはなむけだと思って受け取ってよね。
・・・伝わらないか、そんなもの。
・・・でも、まあいいわ。
・・・元気でね、逢坂さん。

キーンコーンカーン

聞こえてきたチャイムに恋ヶ窪ゆりは英語教師の顔に戻り、教材を手にすると職員室を足早に出た。



終わりです。


すいません。大河が出てなくて。
でもゆりちゃん先生っていい先生ですよね。

187名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/28(火) 23:43:33 ID:R0a1NTfX
ゆりちゃんは何気にハイスペックなんだぞ!
ただ結婚に縁が無いだけで…
188名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 00:03:00 ID:qAekfZGw
GJした!
ゆりちゃんいい人すぐる…。
所で学校の退学についてなんでこんなに詳しいんだ
189名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 03:09:22 ID:I3uTG4QQ
>>164
うおおこれは予想できずに一気に読まざるを得ない展開だった
>>160の5行目からはその場の外野とシンクロしたw

平穏に丁寧に進んでいた前半部と
波乱の匂いをまとった後半部のジェットコースターに5巻以降の原作の空気を感じてたまらんすげーっす
190君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/29(水) 06:25:13 ID:2pQL0G/E
金曜日の昼休み。

号令の後、いきなり飛び出していく北村を竜児は目で追いながら、飛び出していっても仕事はないぞとほくそ笑む。北村が作り上げた悪夢のようなルーチンワークは、昨日のうちに村瀬と書記女史が全部強制終了している。
各クラスには生徒会からのチェックおよび相談は終了と通達済みだ。アホみたいに細かく記されたノートにはそのこともはっきり書いてあるはずで、生徒会室でそれを知ることになる北村がどんな顔をするのか、竜児は想像するだけでおかしくなる。
『馬鹿め』と、電報でも打ってやろうか。

北村の名誉のために一つだけ付け加えておくと、特に1年生のクラスは相談が終了と聞いて残念がったらしい。
あるいはひとあがきするかもしれないが、あとは知らない。一晩たっぷり寝たことだし、体力馬鹿の北村は十分回復したことだろう。北村のおかげで竜児は電話もメールも大河に無視されているのだ。これ以上誰が面倒なんか見てやるものか。

「高須、飯だ」
「おう」

今日の午後は授業はない。昼飯が終わったら大車輪で展示の製作が始まる。飯を食いながらのリーダー会議で最後の手順と必要な物資の確認が行われる。

「用紙は色紙もあわせて二度枚数をチェックした。少し多めに用意したが、書き損じ過ぎると足りないから気を付けろ」
「脅かすなよ」
「馬鹿野郎、気合いを入れて書け!書き損じても破ったりするなよ。MOTTAINAIからな。別の紙を小さく切って上から貼るんだ。マジックも用意している。床にうつさないように新聞紙を下に敷け。暗幕の配布は2時からだ。俺と田口と谷本で取りに行く。
暗幕用の画鋲は十分用意した。テープも糊もある」
「平原は何時だ?」

美術部に所属している平原は、部の出展があるのでクラス展示には参加していない。だが、3−Aの展示の美術顧問と、仕上げのイラストを引き受けてくれている。

「4時だ」

展示内容を書き終わる時間がそのくらいだろうと予想して頼んである。

「こんなものかな」
「そうだな」
「高須が居るおかげで、準備万端だな」
「いいお嫁さんになれるぜ!」
「おう、よせ照れるだろう」

そんなにお嫁さんと呼ばれるのが嬉しいのか。と、いぶかしむクラスメイトをよそに、竜児は顔を赤らめて喜んでいる。

◇ ◇ ◇ ◇ 
191君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/29(水) 06:26:01 ID:2pQL0G/E
「高須」
「おう」

田口が谷本と二人で相談があると、近づいてきたのは3時ごろのことだった。

「物理班は4時には書き終わる。数学班も似たようなものだ。イラストが終わればあとは貼り付けるだけだろう。で、物は相談だが、隣の手伝いに行ってきていいか」

隣、というのは3−Bだ。確かに今日の大工作業は手が足りていないはずだが

「連中、断ってたろう」
「面子もあるんもんな。だから」

と、言葉を切って田口がひとの良さそうな笑顔を浮かべる。

「昨日横川を借りたお詫びとして手伝う」
「おう、お前まさか」

全部言わせずに、田口がウィンクを飛ばす。ぜんぜん似合わない。

「わかった。俺からも頼むわ。恩に着るぜ」

笑いながらひらひらと手を振って田口と谷本が教室を出て行った。

昨日、メガネ生徒会長を拉致するために、3−Aは3−Bから横川を借りている。そのお詫びとして手伝うなら、向こうも面子が立つだろう。昨日は大工仕事が無かったので、借りたときのダメージは少なかったはずだ。
で、今日は喉から手が出るほど欲しいだろう助けを、お詫びとして提供する。あの一瞬で、田口はどうやらそこまで計算したらしかった。

◇ ◇ ◇ ◇ 
192君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/29(水) 06:26:56 ID:2pQL0G/E
今日は大回転で用意だ!と思っていたのだが、実のところ4時頃には、ほぼ全部おわってしまっていた。あまり装飾が多いと、ごてごてしてうるさいから。という平原の意見を受け入れて、イラストを入れるのは数学展示だけになっている。

他のコーナーは既に飾り付け済みだ。来場者を歩き回らせるためのシンプルなレイアウトが功を奏した。なにより、午後の授業が無いので塾に行く奴も時間まで一緒に働くことが出来た。文化祭の準備を始めて以来、全員で作業したのは初めてだ。

「ごめんごめん、遅れちゃった」

平原の到着は4時30分。カラフルに汚れたつなぎ姿で、なんだか両手に一杯荷物を抱えている。

「おう、すまねぇな。部の展示忙しいのに」
「いやいや、手伝えなくてごめん」

荷物を下ろすのを手伝って貰いながら平原が詫びる。クラス展示と違って文化部の展示は3年間の総決算の意味がある。その点、すでに引退して文化祭にはイベントの無い運動部とは違う。詫びる必要なんか無い。むしろ時間を割いてくれている分ありがたい。

「いわれたとおり紙は全部文字で埋めたぞ。よかったのか?」
「細工は流々仕上げをご覧じろ」
「お前もおっさん臭いやっちゃなー」

竜児達に笑われながら、黒いケースから大きな竹ひご細工をとりだした。

「うわっ、すげぇーっ!」

真っ先に反応したのは、数学班の濃いリーダーこと木下。やせぎすの体を激しく意味なく動かして興奮している。

「なんだよ」
「高須わかんないのかよ!ピタゴラスの定理だよ!」
「…おう、そういえばそんな風に見えるな」

その繊細な作りの模型は、『直角三角形の斜辺の二乗は、他の二辺の二乗の和に等しい』という、例の定理の証明過程を竹ひごと凧糸で作り上げた物だった。おー、すげぇなぁと感心する竜児達の横から、もう一つ模型が取り出される。

「ぎゃーっ!別解か。うひゃひゃ、もう一つ!うぉーっ」

どうやら平原はピタゴラスの定理の証明のうちの6種類を竹ひご細工で作り上げてきたらしい。

「なぁ、これ全部一人で作ったんだろ?なんで俺たちに言わないんだよ。クラス展示だから俺たちが作ったのに」
「まぁそうだけどね。平面に収まるよう作るのは難しいんだ。自分で作った方が早いよ。結構楽しかったしね」

その横で壁に立てかけられた繊細な模型達にかぶりつくように見つめながら、木下は

「すげぇーっ!萌える、これは萌える!ピタゴラすげぇーっ!」

と体をくねらせている。

おい、誰か吉田さん呼んで来いよ。真の姿見てもらおうよ。と、いうクラスメイトの声も気にならないらしい。

そして竜児達の思いも寄らなかった方法で短時間のうちにイラストを仕上げると、平原は満足そうにそれらを眺めた。

「よし。できあがりだ」

金曜日の5時30分、最後の展示を暗幕に貼って、3−Aの文化祭展示は完成した。

◇ ◇ ◇ ◇ 
193 ◆fDszcniTtk :2009/07/29(水) 06:35:35 ID:2pQL0G/E
>>165
今日も届けといたぞ(w

>>166
そこは気分を削いじゃ行けない所なんだけど、どうしても我慢できなくて書いてしまった。あはは

>>181
サンキュ−!その表現は俺も気に入ってる。自分で書いてわかるけど、ゆゆこの文章の賑やかさには
超えられない壁を感じる。その100分の1でいいからおもしろみを出したいと思ってる。

>>189
キャラを変えるのは原作者の特権。SSでキャラに「らしくない」ことをさせると違和感があるんだよね。
竜児にこんな事させて竜児らしさを失わないか心配しながら書いた。気に入ってもらえたみたいで
嬉しいよ。

さーて、明日から楽しい文化祭だ。
194名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 08:12:31 ID:N5lK5RzO
今朝もGJでした!
195名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 12:44:35 ID:pUhArTlw
こんなの出てたぜ

とらドラ!ノ全テ!
ttp://item.rakuten.co.jp/book/6135599
196名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 14:03:22 ID:UQmR6glV
>>186
ゆりちゃんいいねぇ、愚痴ってる内容がツボったw

>>193
今朝も乙でした。明日からの祭本番にも期待してます。
197とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/07/29(水) 21:28:43 ID:ASYN9cgb
お題 「完全無視」「涙」「大歓声」



『傷ついちゃうの 傷つけちゃうの 純情プレパラート
 頭の中は いつも一人の 純情プレパレード』

 曲が終わる。
 一瞬の空白の後、ホール全体が大歓声に包まれる。
 舞台の上で観客に手を振るのは三人の美少女――櫛枝実乃梨、逢坂大河、川嶋亜美。
「みんなーっ!ありがとだっぜーっ!」
 うおぉぉぉ!『みのりーん!』
「ほんとに、ありがとねー!」
 うおぉぉぉ!『タイガーっ!』
「みんなみんな、あいしてるーっ!」
 うおぉぉぉ!『あーみーん!』

 やがて会場が落ち着きを取り戻してから、実乃梨が口を開く。
「えー、実は今日、みんなに大切な報告があるんだ」
 その後に亜美が続く。
「多分、ショックをうける人もいると思う……だけど、だからこそ、自分達の口からきちんと発表しようと思ったの」
 そして、大河が一歩前に出る。
「私達……結婚しました!」
 たちまち会場に飛び交う悲鳴と怒号。涙を流す男達もいる。
 その中で三人は声をそろえ、ステージ奥から歩み出てくる人影へを手を差し伸べる。
「「「紹介します。私達の旦那様……高須竜児君!」」」


「……という、夢を見たのよ」
「……」
「ちょっと竜児!人に話させておいて完全無視とかしてるんじゃないわよ!」
「だってお前、朝から妙に機嫌悪いから何事かと思ったらそんな下らない夢が原因とか……呆れる以外にできる事ねえだろ」
「下らないとかよく言えたものね!三つ股だけでも許し難いのに、重婚は犯罪よ犯罪!わかってるの!?
 まったくあんたのエロさときたら、もうエロ犬ってレベルじゃないわね。ドエロ犬だわ、ドエロ犬」
「いや、だからそれはお前の夢の中の話だろうが。俺はなんもしちゃいねえぞ」
「きっとあんたがエロエロな犬電波を発振して私の脳に干渉したせいなのよ。そうでなきゃ私があんな夢を見る理由がないもの」
「俺はどんな超能力者だよ……夢ってのは大概ワケわかんねえものだろうが」
「ともかく謝罪と賠償を要求するわ。具体的に言うと今日のおかずは肉。あと食後にプリンも」
「……へいへい。肉の種類はスーパーで特売のやつでいいな?」
「まあいいわ、それで許してあげる」
「……まあ、なんだ。電波飛ばせるかどうかはともかく、今度は北村の夢が見られるように念じといてやるよ」
「……ふんっ!」
「いってぇ!何で蹴るんだよ!」
「うるさい黙れバカ犬」
「おい大河!俺何も悪い事言ってねえだろ!? 何で急に怒り出すんだよ!」
「黙れって言ってるでしょうがこのグズ!駄犬!」
「何なんだよお前!もうワケわかんねえよ!」
198名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 22:18:33 ID:S2d4kAu2
みんな付き合う前が好きなんだなあ
199名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 22:34:13 ID:N5lK5RzO
俺は付き合い始めてからのが好きだけど基本どっちも大好きだよ。てかどのカップリングも好きw

北村×大河スレができたら全力で荒らすけどね!


GJでした!
200名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/29(水) 22:36:02 ID:NgAEIrpT
>>197
希望のハッピーエンド大全ですね!

>>198
俺はどっちも好きだぜ!
むしろ竜児と知り合う前の大河すら好きだっ!
あ、竜児も、うん。好きかな。
201名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 00:43:41 ID:Fxo4TnRG
今日、「とらドラの全て」発売だけど
書き中、もしくはプロットだけのSSが、明かされる新事実で駄目にならないか、すげー心配
反面、新たな燃料貰えそうで期待もしてるが
202名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 00:44:49 ID:Fxo4TnRG
>>199
冗談でもそういうことは書かない方がいい
でも本気だったら許す
いややっぱりダメだから

>>200
竜ちゃん涙目
203名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 01:35:52 ID:O+Ml7YTt

「ちょっと竜児どういうことなの?」
「は?いきなり何を言い出したんだ、大河?」
「足りないのよ!」
「だから何が?」
「だ、だだだだから・・・ほら・・・いつものやつ」
「そうだったか?」
「そうよっ!もうすぐ一週間経つっていうのに2回しか・・・ううっ」
「なん・・・だと・・・?」
「わああああん!竜児は私の事なんかどうでもいいんだ!」
「そんなことねえよ、そんなことねえって!」
「グスン・・・本当?」
「もちろんじゃねえか、寂しい思いをさせてすまねえ、大河」
「ううん。分かってくれればいいの・・・それじゃ・・・」
「・・・おう」


ギシギシアンアン
204君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/30(木) 06:09:29 ID:lhFTVqB1
明けて土曜日の朝。文化祭当日。

竜児はアパートの前でじりじりしながら大河を待っていた。木曜日に馬鹿メガネのせいで大河と喧嘩みたいになってしまった。その後フォローの電話をかけているが、携帯を取ってくれない。メールも返事が無い。大河は今日は一緒に登校できると言っていたのに、
いつもの時間になっても、まだ現れない。携帯に電話をしてもやっぱり出ない。

昨日は作業が終わった後、3−A挙げて3−Bに手伝いに行ってみたのだが、驚いたことにドアを閉めたまま「関係者以外立ち入り禁止」の張り紙がしてあった。ノックをして声をかけると、ちょっとだけ扉があいて、隙間から目が一つ覗いた。かわいくない。

「入れないよ高須、入れないよ」
「おう、能登。手伝いに来たぞ。共同展示だから遠慮するな」
「だめだよ、明日は本番だからね。俺たちはライバルでしょ。明日おいでよ」
「何言ってやがる、お前田口達いれてるだろ」
「田口と谷本は味方だよ。でも高須は敵。あと、高須、最近言葉遣いが荒いよ」
「なんだと!」

目を狂おしく光らせて能登を睨みつける。振り返ってそんなことないよな!と3−Aの連中に同意を求めるが、嫌な笑いを浮かべて全員黙り込んだままだ。

「畜生、じゃ、いいから大河と話をさせろ」

ひそひそ声で能登に言うのだが、それこそ能登はぶるぶると首を振り

「タイガー帰っちゃったよ!」

扉をぴしゃりと閉めたのだ。いったい中で何が起きているのか………………そんなことが、昨日あった。

回想を止め、爽やかな青空の下、ボロアパートの前でため息をつく。

「しかたねぇ、行くか」

いつもの時間から5分待っても大河は現れなかった。学校に向かって竜児は駆け出す。歩いても始業20分前につくように時間を決めているから走る必要は無いのだが、いつもと違うタイムスケジュールで動くことを竜児の几帳面さが許さない。

幸い、空気はひんやりと冷たく、空はあくまでも高い。走ってもそれほど不愉快ではない。今日は絶好の文化祭日和だ。

◇ ◇ ◇ ◇
205君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/30(木) 06:10:14 ID:lhFTVqB1
「おう、おはよう」
「おはよう。高須、3−B見た?」
「いや、昨日入れてくれなかったんだよ」
「ちょっと見て来いよ」

田口がニヤニヤ笑いながら意味深に薦める。なんだよ、と暗幕の向こうに積んである机の山の間にかばんを放り込み、後ろの扉を出て3−Bまで歩く。

「なんじゃこりゃっ!」

廊下で大声を出す竜児を、扉から首を出して3−Aの野郎共が冷やかす。

廊下の3−B側の窓には大きな横断幕が張ってあり、黒々とした墨でスローガンらしき文句が書いてあった。

『それが豊かさってものなのよ!』

ランチミーティングのときに大河が竜児に言い放ったセリフである。ひでぇ、笑いものにしやがって。横断幕を切り裂きそうな鋭利な視線を泳がせていると、扉が開いて、書記女史が半身をひょいっと突き出す。

「高須君、おはよう。どう?うちの書道部の作品。素敵でしょ」
「なんだよこれ、名誉毀損だぞ」
「怒んない怒んない!あとで案内してあげるね!」

そう笑ってウィンクを飛ばすとひっこんで扉をぴしゃりと閉じた。今年の文化祭は、よくウィンクを飛ばされる。

「畜生、なんて奴らだ」

ぶつぶつ言いながら戻ってきた竜児に、クラスメイトは

「高須、隣のクラスでも大活躍だな」
「あーあ、3−A、3−Bは高須夫妻にかき回されっぱなしだったぜ」

と、追い討ちをかける。最近竜児にいじられてばかりの木下も、ここぞとばかりにはやし立てる。畜生。

危険な目つきでクラスメイトの調理方法を考えているようにしか見えない竜児に、クラスメイトは適度な距離をとって笑いながら知らんぷり。そんなこんなでちょっとだけ気分の悪い朝を一人で呪っているときだった。

「高須、ちょっと話があるんだけど、いい?」

歩み寄ってきた村瀬が小さな声で話しかける。深刻、と言うわけでもないが、少し困ったような笑みを浮かべている。

「おう、どうした。北村か?」
「いや、そうじゃないんだけど」
「これからSHRの前にミーティングだろう」
「みんなには話を通してあるよ。うちのクラスは展示と説明だけだから大丈夫だし。な、来てくれ」

妙にしつこい村瀬に竜児は渋々ついて教室を出た。ほかの連中も少しおかしい。事前に何か知っていたのか、見てみぬ振りと言うか、お、ついにと言うか。微妙な空気を背中に感じる。

「何の用だよ」
「逢坂さんと喧嘩しているんだろ。仲直りしてくれないか?」

廊下を歩きながら、村瀬が微笑んで言う。

「そんなことかよ。ほっといてくれ」

憮然として竜児は突き放す。俺はお前のことには首を突っ込まなかったぞ。しかし、村瀬は

「それがそうもいかないんだよ。3−Bがちょっと困ってる」

と、本当に困っている様子。3−Bが困っていると聞いて、えっ、と竜児が驚く。
206君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/30(木) 06:11:31 ID:lhFTVqB1
「まさか暴れて展示をめちゃめちゃにしたとかじゃないだろうな」
「いや、そうじゃなくて」

と、村瀬は苦笑。竜児の顔は見ないで前を向いて歩きながら話す。

「ほら、彼女。逢坂さんのこと、ムードメーカーだって言ってたろ?そのムードメーカーがイライラしているからクラスが油が切れたみたいにギクシャクしてるんだよ」

「そんなことかよ」

適当に返事をしながら、竜児の心には小さな疑問が浮かぶ。いま、『彼女』って言ったよな。先週は『あっち』って言ってなかったか。考えすぎだろうか。何でも恋愛話に結び付けたがる、噂話好きの女子みたいになっていないだろうか。

「冷たい事言うなよ。それに展示被害が出てる」
「やっぱり暴れたんじゃないか」
「そうじゃないって。そうじゃないんだけど…昨日だけで、つまづいてパネルを倒したのが2回。書き損じ5回、暗幕を落としたのが」
「いや、もういい。なんというか、すまん。書記女史に謝っておいてくれ」
「謝らなくていいよ」

村瀬は笑いながら、話を継ぐ。

「思い余って櫛枝さんにも相談してみたんだ」
「櫛枝…」

竜児が大河の前に現れるまで大橋高校でナンバーワン、いやオンリーワン虎使いの名をほしいままにしていた櫛枝実乃梨は、今はクラスが別なので最近ではあまり顔をあわせない。が、竜児、大河双方と仲がいい。

「『犬も食わない夫婦喧嘩に首を突っ込むとは生徒会のグルメっぷりには敵わないぜ』って笑われたよ」
「あいつ」

村瀬が笑いながら、竜児を連れて階段を上る。屋上へと出る階段は今日は使う人もいないだろう。

「な、だから逢坂さんと仲直りしてくれないか。俺たちが口を挟むのも変もしれないけど、もとはといえば生徒会が原因だ。それに、共同展示を楽しくやりたい。最後の文化祭じゃないか。仲直りしてくれよ」

その階段の先にある踊り場を見上げて、ようやく竜児は村瀬と書記女史の意図を理解する。踊り場には、困ったように笑う書記女史と、ちんまりした女子が立っていた。脚を開いて腕を組み、ぷいっと膨れて横を向いているくせに、白い頬、形のいいあごのライン、
けぶるような髪が、嫌になるほど絵になる。大河。まったく頭にくる。

「高須君、ごめんね」
「おう、いや。いいんだが」

大河が迷惑をかけちまったな、という一言をあわてて飲み込む。そんなことを言ったら、それこそ大河の逆鱗に触れる。書記女史にしたって、なだめすかしして大河をここに連れてきたのだろう。ここでちゃぶ台をひっくり返すようなまねはしたくない。

しかし、それにしても

「なによ」

どこから手を付ければいいものか。

不機嫌な大河をなだめる方法は、実のところ竜児も一つしか知らない。成り行きに任せることだ。竜児が大河とうまく行ったのは、暴虐の嵐に耐えながら辛抱強く待つことが出来たからだ。いちど機嫌を損ねたが最後、なだめることも、すかすことも、謝ることも、
言い訳することも、怒ることも、何一つ通用しない。退かず、媚びず、省みないのが大河だ。仲直りしよう、で仲直りしてくれるようなら虎とは呼ばれない。

根は優しくていい奴なんだが。

「大河、すまなかったな。機嫌直してくれないか」

とりあえずアプローチしてみるが、

「何よ、私に黙ってこそこそしちゃって」

取り付く島がない。
207君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/30(木) 06:12:17 ID:lhFTVqB1
「いや、あれはだな」

言い訳をする竜児を、村瀬が制する。

「逢坂さん、聞いてくれ。あれは生徒会の内輪の問題だったんだ。俺たちの不手際を、高須は助けてくれたんだよ。だから高須を許してくれないか?俺たちならいくら怒られたっていいから」

「そんなの問題じゃない!」

と、大河は村瀬を無視して竜児を睨みつける。

「どうしてあんたは北村君が大変だって教えてくれなかったのよ!」

ああ、そうだろうな、そこだよな、と竜児は思う。別にやましい思惑があって隠していたわけじゃない。だが、北村のことを黙っていたのはまずかったのだろう。でも、だからって何が出来たろうか。

「なあ、大河。分かってくれ。俺はお前を巻き込みたくなかったんだよ」

竜児のこの言葉は嘘ではない。下手をすれば、暴力沙汰だと思っていた。そのときには、全部一人で背負うつもりだった。田口も、谷本も、予定外の参加になった横川も、生徒会の誰も巻き込まず、一人で背負い込むつもりだった。大河を巻き込むなんてことができたわけがない。
それは、暴れられると困るなんてことでは、ちっともなくて…

「子ども扱いするなっ!」

大河が叫ぶ。星を散らしたようなきれいな瞳は涙に潤み、声は悔しさに染まっている。

「なんで子ども扱いするのよ!あんたは私をなんだと思ってるのよ!」

噛み付くように叫ぶ大河に竜児は何か言おうとするが、

「逢坂さん。いい格好、させてあげようよ」

後ろから書記女史が、ぽん、と大河の両肩に手を置いた。大河が、くっと唇を噛む。

「高須君、男の子だもん。格好つけたかったのよ」

優しい微笑を浮かべて大河の後ろから語りかける書記女史を見て、きれいな声だな、と他人事のように思った。心を優しく包んでくれるようなきれいな声だ。脈絡もなく、村瀬はこの声が好きだろうな、と思った。

「男の子だからさ、逢坂さんを揉め事に巻き込みたくなかったのよ。男の子はみんなそう。村瀬君だってそう。北村君だってそう。子ども扱いなんかじゃないよ。いっつも格好つけちゃって。だからさ、格好つけさせてあげよう。好きな子には格好つけたいのよ。男の子は」

説得が効いたのかどうかは分からない。だが、ついさっきまで叫んでいた大河は、今は体の力を抜いてうなだれたまま黙って居る。村瀬と書記女史は目配せすると、

「私たちは行くね。お願い、仲なおりして。みんなそう願ってる。楽しい文化祭にしよう」
「高須、待ってるよ。SHR遅れるな」

そう言って、二人とも階段を下りていった。
208君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/30(木) 06:12:58 ID:lhFTVqB1
残された竜児は、うつむいて、たぶん泣いている大河と二人っきりになる。大河のつむじを見ながら、こんな風に泣くのを見るのは久しぶりか、と思う。つむじはいつも見ているのだが。

「大河、泣かせちまったな。すまねぇ」

少し、間が空く。がやがや、たばばたと廊下の方から音がする。大河は涙混じりの声で

「何よ。あんた本当に格好つけたかったの?」

ぼそっと、一言。

竜児はため息をつく。自分が格好を付けてたかって?よくわからない。別にいい格好をしたかったわけじゃない。ただ、大河を巻き込みたくなかった。だって、大河が傷付くかもしれなかったら。これは格好を付けてたんだろうか。違うのだろうか。
大河にちゃんと話した方が良かったのか。

一人で決めるのは、いい格好をしているということなのだろうか。

「そうかもしれねぇ。たぶん、そうなんだろう」
「馬鹿なんだから。竜児の馬鹿。格好付け犬。私の気持ちも知らないで」

ののしって、涙を散らしながらしがみついてくる大河を抱きしめる。

まもなく始まる文化祭の期待に、学校のどこもかしこも浮き足立ってざわついている。その喧騒から取り残されたような誰も居ない踊り場。二人黙ったまま、ただ、抱きしめあう。文化祭のことも忘れて。大河は竜児の胸の中で、時折鼻をすすっている。
仲直りするときはいつもこうだ。

子どもみたいな奴。

「ねぇ、竜児」
「何だ」
「北村君のこと、私に教えたくなかったの?」

なんとなく、大河の言いたいことは分かる。大河は北村の事が好きだった。今は竜児の事を好きだと言ってくれる。そして竜児は大河が好きだ。

「そうじゃねぇ。そうじゃねえけど」
「…なに?」
「俺は、ひょっとしたら喧嘩になるかも知れねぇと思ってた」

腕の中の大河が、ぴくりと体を硬くする。

「そんなことにはしたくなかったけど、でも、ひょっとしたら北村と殴り合いになるかもって思ってた。そのときには、その場にいる誰も巻き込まずにやろうって思ってた。北村と、俺と二人で」

竜児は天井を仰ぎ、深く息を吸い込む。

「だから、お前にその場に居てほしくなかったんだ」
「私が暴れるから?」
「馬鹿野郎、そうじゃねぇ。そうじゃねぇよ」

腕の中の大河を荒々しく揺する。なぜ、わかってくれないのか、と。

「お前に見てほしくなかったんだよ。そんな俺も、そんな北村も」

お前には見せたくなかったんだよ。竜児がつぶやいて、そして二人とも口をつぐむ。喧騒が遠くに聞こえる。やがて腕の中の大河が小さく、

「うん」

と、一言。

もうすぐ高校生活最後の文化祭が始まる。

◇ ◇ ◇ ◇
209名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 06:21:28 ID:7FCE5uwq
朝刊乙
210 ◆fDszcniTtk :2009/07/30(木) 06:26:42 ID:lhFTVqB1
>>194
>>196
ありがとう!

>>198
付き合う前の、「北村が好きなのに竜児が気になっている」大河がすき。

>>199
よそのスレ荒らすなって。結局はつぶし合いになってここが荒れるんだから。

>>201
http://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS/539.html
ま、小説、アニメという異なる設定に対するSSで溢れてるんだから、心配はないと思う。
だけど、小説中にちりばめられた暗喩や比喩に対する公式な謎解きがあったりすると
興ざめだな。

あーっ!書記女史の名前が書いてあったらどうしよう (( ;゚Д゚))) がくがくぶるぶる
211名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 07:10:40 ID:i9rZuTWB
>>199の者です。

なんというか、スレの雰囲気壊して申し訳ない。
>>199はネタのつもりだったんだが…。
スレを荒そうなんて考えは毛頭無かったんだ。すまない。
212名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 09:10:14 ID:J+wOMMEA
>>210
公式は公式、二次創作は二次創作
公式に合わせるのがベストではあるしそういうコンセプトなのも承知してるが
公式とまた違う部分も俺は楽しむから書記女史の名前が出てても気にしなさんな
だがあえて気にするのもよろし
強制はしないしすることも出来ないよ
213名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 09:13:08 ID:J+wOMMEA
>>211
本気で荒らしまわるやつじゃないのはわかってるから気にするな
いや許さん!
罰として彼女に毎日好きだ!と告白すること
いなかったら竜児が作った料理で好きなものでも書けばいい

あ、俺チャーハンね
214名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 09:25:44 ID:J+wOMMEA
>>203
キスに見せかけてギシアンかよ!
だがこの二人の場合ギシアン中に何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
キスするんだろうなあ
女性ホルモン分泌されまくりで肉体的に変化が訪れるであろう
具体的には

 _   ∩
( ゚∀゚)彡 <おっぱい!おっぱい!
(  ⊂彡
|   |
し ⌒J
215名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 12:46:58 ID:6eVP4ZkI
>>208
毎日、乙です。

>ぷいっと膨れて横を向いているくせに、〜、嫌になるほど絵になる。大河。まったく頭にくる。
この表現いいですね。
情景がが頭に浮かびました。
216名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 19:32:31 ID:f3bAstKt
>>201
エロパロ版での俺のコメントを転載するな!
いや、別にどうでもいいんだが、なんか気持ち悪くってレスしちまった。
217名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 20:58:18 ID:LcCs9W2b
>>201
エロパロ版での俺のコメントを転載するな!
いや、別にどうでもいいんだが、なんか気持ち悪くってレスしちまった。
反省はしていない。
218名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 21:23:09 ID:VwyEZPMg
大河「水中サッカーをやるのよ!」
竜児「なにいってんだお前」
219名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 21:25:28 ID:3YhRAU4P
>>218
気持ちはわかるが黙ってろw
220名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/30(木) 22:17:26 ID:yiWYatPU
>>210
毎朝、乙でございます。
大河の気持ちが痛いほどわかる。そうだよね… 

文豪の表現をストーキングしているわけじゃないが、今回は
「生徒会のグルメっぷりには敵わないぜ」
「成り行きに任せること」
でため息がでた… ハァ、うまいわ。
221名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 00:08:14 ID:DQF+E77K
『CMネタ・九州ローカル・1』

 結婚相手どころか恋人すらいないのを
 仕事に打ち込むことで誤魔化そうとする
 独身(30)

 人間界は、痛い……


《黒麹芋焼酎・魔界への誘い》



『CMネタ・九州ローカル・2』

 好きになった人には
 告白直前に振られ

 傍らに居たいと思った奴は
 離れていく

 人間界は、痛い……


《黒麹芋焼酎・魔界への誘い》
222名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 00:16:49 ID:u/2VIQPJ
朝刊乙 GJJJJJJ!!!
(朝刊前に出勤だから、夜に読んでるけど・・・)

やっぱ、氏は、大河を泣かすのうまいなぁ。

でも女の子をなかすこーはー。。。。

泰子「やっぱり大河泣かしちゃったね。
    りゅうちゃん、めっ!」
竜児「しょーがねーだろ、
   ◆fDszcniTtk氏の趣味?なんだから」
223名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 04:13:54 ID:39A7ekze
>>208
そういや、生徒会長選挙の前日も
「北村を殴りにいってくる!」
って竜児が一人で飛び出していったことがあったね

あの後、探しに来て問いかける大河に「言わねえ」って告げる竜児と
戸惑いながらも男と男のやり取りを察してるような大河が好きだったんだけど

そういうこと過去の経験も踏まえてるからこそ、今は
>「子ども扱いするなっ!」
だったり

最後は
>「うん」
なのかなあと思ったり・・・
224君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/31(金) 06:31:12 ID:VzfsTaxU
SHRのあと、全員体育館に集合。校長の話やら何事も無かったように無駄にポジティブな生徒会長の挨拶を聞いた後、教室に再集合した。9時30分。開門まで30分だ。

「よし、そろそろやるか」

今週後半、竜児に仕事をまかせっきりだった村瀬が、展示の終わった部屋でクラスメイトを見回す。机を教室の後ろに重ねてあるので、広々としている。

「おう。村瀬、見回りはいいのか」
「ああ。北村はやってるけどね。ほったらかすことにした。生徒会は、あまり生徒を過保護にするべきじゃない。もともと俺と彼女はクラス展示に専念していいって北村に言われてたんだ。2年と1年に見回りは任せて、俺たちは文化祭を楽しむよ」
「そうしろそうしろ」

俺たち、ね。と竜児は心の中で独りごちる。村瀬、お前にとって、この2週間はどうだった。

「よし、少しばかり早いけど、俺たちのクラスの文化祭を始めよう。みんなそろってるな。一本締めやるよ」

そうやって全員を見回す。みんなきらきらした目で村瀬を見ている。

「皆さん、お手を拝借っ。よーーーーーっ!」

パン、と全員で一本締めを決める。教室に拍手が満ち溢れる。隣のクラスからも拍手が聞こえてきた。

「お隣さんも始めたらしいな」
「もういいんじゃないか」

田口が人のよさそうな笑みを浮かべる。

「ああ、じゃぁお迎えに行ってくるよ」

そう言って村瀬が教室から出て行った。

文化祭が開催されたら、互いのリーダーを招待して展示の内容を説明しようと3−Bと約束していた。受験を目前に控えて、2週間とはいえ朝から晩まで文化祭の準備漬けだったのだ。リーダーにはそれくらいの特典が与えられてもいい。ああ、いいとも。

「おう、そうだ。湯川、ミスコンの準備どうなんだ?まだ手伝えること残ってるか?」

そうそう、とみんなの注目を受けて

「大丈夫!準備オッケーよ!すっぴんでやるつもりだったけど、みんなお化粧協力してくれるって言うから」
「女子軍団の力を見せるときよ!」
「おーっ」

国立理系選抜のたった6人しかいない女子は仲がいい。今日は塾も無いだろうから、存分に結束を高めるだろう。

「ばっちりウケを狙うから、みんな楽しみにしててね!」
「コスチュームどうするんだよ?」
「内緒よ内緒!」
「まだ内緒かよっ!」

わいのわいのと騒いでいるうちに、村瀬が

「おい、お連れしたぞ」

と、教室に戻ってきた。

続いて書記女史を先頭に大河やら能登やらが入ってくる。能登、レディーから先に通せよ。迎え入れる3−Aから拍手が沸き起こる。村瀬が代表して歓迎のスピーチを行った。
225君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/31(金) 06:31:55 ID:VzfsTaxU
「えー、2週間の短い間でしたが、3−Bと行った共同作業は実のりあるものでした。3−Bの知恵や力を借りることで、我々の展示をよく出来たことはみんな実感していると思います。本当にありがとうございました。今日はささやかですが我々のリーダーから、
3−Bのリーダーの皆さんにお礼方々、展示のご案内をさせていただきます」

盛大な拍手に混じって

「スピーチの練習してきやがったな」
「格好つけやがって!」

揶揄が飛び交い、教室が楽しげな笑いに包まれる。3−Bの面々は、ちょっとだけフォーマルな出迎えのスピーチに気恥ずかしそうに、それでも嬉しそうな笑みを浮かべている。

「よし、じゃ説明を始めよう。みんな手短にな。トップバッターは事実上の総大将だった高須だ」
「おう、俺が総大将?やめろよ」
「いやいや、高須だよ」
「まったく高須大将殿には振り回されっぱなしだったよ!」

顔を鬼のように真っ赤にして竜児が説明を始める。

「俺たち3−Aの『理系の世界』のもう一つのテーマは『つながり』だ。この先進む道は専門になるけど、それは全部、今の勉強とも、別の道に進んだ奴らの研究ともつながってるんだ。だから、この展示ではそのつながりを強調してみた。たとえばこの説明」

と、貼り出している紙の一枚を示す。

「スポーツ医学には、予防の分野もある。体を痛めたりしないようにスポーツのフォームを医学的な観点で見るんだけど、そのときコンピュータを使うんだ。この紙には体を痛めるってことはどういうことか、フォームを改善すると何がいいのか書いてる。
で、関連するコンピュータの説明も別の班の説明で読めるってわけだ」

へー、と感心したような声が漏れてきて、竜児は上機嫌。だが、

「竜児、あんた何普通にしゃべってんのよ。村瀬君を見習って少しは練習しようとか思わなかったわけ?」

まったくもう、と容赦の無い大河に、周囲がたまりかねたように笑い出す。

「何だよお前、くそ。みんな笑いやがって。あー、次は青の4番」

こんこん、と展示の紙に張った矢印をたたいて

「あれだ」

と教室の一角を指差す。青い紙はコンピュータ班の色で、その中に大きく4と書いた紙が目に入る。

「歩いて説明をたどるのね」
「おもしろい!ゲームみたい」
「お客さん歩かせるって、どういうつもりかしら」
「うちの展示全否定しやがって」

幕間の夫婦漫才に教室が笑いに包まれる。これがどつき漫才になると教室が阿鼻叫喚の地獄に包まれるが、今日の大河はその心配はなさそうだ。口は悪いが、表情は上機嫌そのもの。その後、コンピュータ班、物理班と一枚ずつ説明する間も、
大河はちゃちゃを入れることなく竜児の横で黙って聞いていた。ようするに、竜児と話がしたかったのだろう。
226君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/31(金) 06:32:44 ID:VzfsTaxU
最後の数学班の展示は、3−Bの面々から高い評価を得た。

「きれいねぇ」
「どうやってこのイラスト描いたの?」
「竹ひごと凧糸で模型を作って、上から平原がスプレーガンで噴いたんだよ」
「へー」

内容ではなくイラストに注目に集まっているために木下は少し傷ついているようだが、数学で女子の関心を引こうというのも虫のいい話だ。だいたい本来なら、平原の提案ではイラストを最初に描いてから文字を入れるはずだったのだ。
それを木下がびびって「字を間違えずに書くなんてできない!」なんて言い出すものだから、順序が逆になってしまった。おかげで黒い文字の上に絵の具の色が散っている。小心者め。

木下は晴れの舞台で精一杯頑張って説明をするのだが、
「木下、お前吉田さんばかり見て説明するのはよせ」
「吉田さんに失礼だぞ」
などといじられて、グダグダになって行く。

◇ ◇ ◇ ◇
227君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/31(金) 06:34:23 ID:VzfsTaxU
秘密のベールに包まれた3−Bの展示が、ついに明らかにされるときが来た。そしてその内容は、あんまりといえばあんまりだった。廊下に貼り出されたスローガン『それが豊かさって言うものなのよ!』が、教室の中のすべての展示の結びの句の後に、
毛筆で書き加えられていたのだ。おまけに入り口にはどういうつもりか『それが豊かさって言うものなのよ!』ステッカーがおいてあり、「ご自由にお取りください」などと添えられている。誰がこんなもの欲しがるんだよ。

「吉田さんのアイデアなの」
「ステッカーください!」
「木下、夜道に気をつけろよ」

くすくす笑いに包まれて、竜児だけなんだか割り切れない気分である。

「みんな覚えていると思うけれど、『それが豊かさって言うものなのよ』は、逢坂さんが考えた言葉です。この考えって、文系には大事だと思うのよね。だから、あのあと展示を見直して、全部この結論につながるように書き換えたの。ちょっと強引なのもあったけど」

ぺろっと舌を出して笑う書記女史の横で

「竜児、そのえぐい目をちゃんと見開いて私たちの展示を見ておきなさい。これは機械文明に毒された現代への警鐘よ」

大河が無意味に偉そうに胸を張る。畜生。

「嘘つけっ!口から出任せのくせに!」

できもののように所かまわず発生する夫婦漫才は、3−Bでも歓迎されている。それはそうだろう。昨日より確実に大河の機嫌はよくなっているのだから。

説明は国文学から始まった。テーマは源氏物語。

「『車争ひ』だっけ。2年の授業でやったよね」
「そうだね。古文で勉強すると退屈だけど、小説としての源氏物語はおもしろいんだ」

リーダーが男のせいか3−Aの反応はにぶい。だが、ネタさえよければ自然と食いつきはよくなるものだ。

「光源氏は学校が幾つも入りそうな敷地に御殿群をつくって、恋人達を住まわせてる。発想が異常だよ」
「ハーレムだね」
「それなんてエ」

何を言おうとしたのかあわてて口をつぐむコンピュータ班のリーダーの横で

「おう、男の夢だなっててててやめろ!耳がちぎれるっ!」

竜児が悲鳴を上げる。

「この頃の恋の形は形式美に彩られていて、とてもロマンチックだよ。恋愛そのものが詩や音楽といった芸術と同列で扱われている。高校の展示では中々突っ込んだこと書けないんだけど、主人公の光源氏は、
セックスそのものも詩や音楽と同列に形式美の中でとらえていたんじゃないかな」

高校の展示では言いにくい事を言ってしまった国文学班のリーダーは顔を真っ赤にしているが、聞いているほうも3−A、3−B全員真っ赤である。父兄への説明の時には少し気を使ったほうがいい。

◇ ◇ ◇ ◇ 
228君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/31(金) 06:35:15 ID:VzfsTaxU
次の展示は社会学。リーダーは噂の吉田さんである。実のところ彼女は3−Aにおいて今もっとも注目されている女子だ。ごく普通の女の子だが、適度に明るく、控えめで誰にも優しそう。小柄で少し短めの髪をきれいにまとめているのが愛らしい。
おまけに数学のお礼に木下に弁当を作ってあげたときの可憐な恥じらいは、リーダー連から3−Aに(女子がいない所で)詳しく伝えられている。

自分の目で見ていないだけに、「そんな可憐な乙女が現代の日本にも居たのか」と、神格化され、用もなく3−Bの前を歩いて中を覗き込むファンは多い。木下の勘違いは横におくとして、「数学でお弁当をもらえるのなら、自分にもチャンスがあるかもしれない」という、
少年達の儚い夢を責めることは出来ない。

注目度合いなら同じくらい目を引いている女子が別に居る。が、虎は一人二人と数えないから並べて考えるのは吉田さんに失礼である。

「吉田です。それでは社会学の説明をはじめます」

恥じらいに彩られた挨拶に、3−Aのリーダー連も、はいお願いしますと口許が緩む。ひとり竜児だけは渋い顔をしているが、これは脚を大河につねられているせいだ。

「社会学は、社会、つまり人間関係を調べる学問です。これは、人間同士の関係と、それぞれの人間の行動の研究双方から成り立っていて…」

驚くべきことに、吉田さんの社会学の解説は、バリバリにハードだった。やわらかい語り口にもかかわらず、数理社会学だの、社会統計学だの、ゲーム理論だのという言葉が出てきて、竜児の度肝を抜く。おそらく、3−A代表でちゃんと理解できているのは木下だけだろう。

「今回の展示では、3−Aの木下君に数学のことを教えてもらいました。木下君、ありがとう」

木下は照れて頭をかいているが、内容に圧倒された3−A連は、からかわずに素直に賞賛の拍手をおくる。

「あ、こんなところに木下のクレジットが」
「本当だ。畜生」
「すまん、高須。実は俺のもある」

と、田口がぺろりと暗幕をめくる。ベニヤ板に鉛筆で

『田口』

と、一言。

「お前…」
229君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/31(金) 06:36:06 ID:VzfsTaxU
「木下君は、こんなに分かりやすい説明を書いてくれたんですよ」

3−Aの悪弊になりつつある突発コントを恐れたのか、吉田さんがレポート用紙の束を差し出してきた。びっしりと鉛筆で書き込まれたレポートには、随所にグラフやイラストが書き込まれている。今週書かれた割にぼろぼろなのは、
きっと勉強するために吉田さんが何度も読み返したのだろう。

「アスパラガスの太さの分布と標準偏差…」
「肉、魚、魚、肉、肉、魚……………竜児、もう少しお肉をお願い」
「木下、これ全部お前が書いたのか?」
「うん」

食欲をそそられている約一名を覗き、一同唖然。説明が参考書なんかよりずっと分かりやすい。丁寧で具体的なのだ。

「木下君は、すごく分かりやすい説明を書いてくれたんです」
「くそー、頑張りやがったなぁ」

と、一瞬天秤は木下賞賛に傾くが、

「おう、これ方針転換のリーダー会議サボって書いた奴だろう」

竜児の一言で一気に針が反対側に振り切れ

「ええ!?」
「裏切りだ」
「俺たちを天秤にかけたな」

いつもの木下いじりが始まる。そしてやわらかい笑顔で田口が

「この解説は下心で穢れているから没収だ」

と冗談を飛ばしたときだった。

「だめっ!」

さっと伸びてきた白い手が、レポート用紙の束を田口のごつい手からひっさらう。そして紙の束を胸に抱えたまま吉田さんは2,3歩後ずさり、パネルに背中があたったところで行き止まると、うつむいてしまった。
えっ、という声も出せずに3−Bの教室が凍りつく。
えっ、えっ、えっ?!何?何?弁当のときのようなキャーッという声すら上がらない。静まり返った教室で全員が同じ事を考えていた。

マジですか?吉田さん。

弁当はわかる。あれはお礼。展示を隣の組の男子が手伝ってくれた。だからお礼に弁当をつくった。きゃーっ!弁当ってちょっと飛躍しすぎよね。吉田さん、だめよ。誤解されちゃうわよ。でもお礼だから仕方ないよね。そうだよね。礼儀だもん。

3−Aの男子だってそれを十分分かっていたから木下いじりで遊んでいたのだ。木下、誤解するな。変に期待するとお前が傷つくぞ。

だけど、これは何だろう。吉田さん、そのレポート用紙の束を胸にかき抱く姿は、まるで恋人の手紙を悪人から守ろうとする乙女のようじゃないですか。

「あの。えーと。ごめん」

ようやく田口が言葉を取り戻して、ぺこりと頭を下げる。

「おう、そうだ、田口。ふざけ過ぎだぞ。吉田さん、ごめん。他意はないんだ。許してやってくれないか」

竜児も取って付けたように吉田さんにクラスメイトの非礼を詫びる。本当なら村瀬か書記女史にとりなしてほしいところだが、二人とも、まだショックから立ち直れていない。誰か助けてくれ。

大河が弱々しく竜児の袖を引っ張った。

「ねぇ、竜児。次行きましょう。英文学の説明してあげる」

◇ ◇ ◇ ◇
230名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 06:46:58 ID:5iomvSzV
今朝も乙
231君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/07/31(金) 06:48:38 ID:VzfsTaxU
みんな感想ありがとう!SS書いててマジよかった。

>>215
>>220
文章は俺なりに苦労してるつもりなので、こうやって気に入ってもらえるとすごく嬉しいよ。

>>222
大河から「ヒロイン泣かせば読者が喜ぶって、どんだけ頭悪いのよ」ってなじられそうだ(w

>>223
うわーお。鳥肌立った。
北村、大河、竜児の関係って、北村が不動のまま竜児と大河が変わってるんだよね。
232名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 07:22:51 ID:og4xkzb1
毎回投下の適度な短さがちょうどいいな。
内容も濃くてそれでいて読みやすいし。
大河の説明に期待!
233名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 08:58:58 ID:HKqi1G1c
オリキャラ多数なのに、皆さんでしゃばる訳でなく愛すべきキャラ設定でなごむ(´ー`)
234名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 09:20:39 ID:3dVB7fB/ BE:98628858-DIA(222222)
>>231
書いて良かった
そう思えたことに対してこちらもなんか嬉しくなってきた
楽しみにしてます
235名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 19:28:46 ID:DQF+E77K
とらドラ!の全て買ったー
読んだー

キャラ設定公開とかはなかったけど、高須家&大河の部屋の間取り(アニメ版)がわかったんで、
そのへん動かす時にイメージしやすくなったかも。

あとアニメ版の「俺は牡牛座だ!」の謎が明らかに。

ゆゆぽの初期プロットで「来週、俺は十八になるんだ」
 ↓
高ニの二月に十八っておかしくね?
 ↓(竜児留年案もありつつ)
直前に「俺はうお座だ」という部分があるので、そこを牡羊座にかえればいいんじゃない?
 ↓
アフレコ台本で間違えて「牡牛座」にw
(大河のジンギスカン云々が意味の無いセリフに……)

だそうな。
236名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 20:05:56 ID:HxPNQeya
>>235
まあ竜児の性格は行動派で直感タイプのおひつじ座より慎重派で感覚タイプの牡牛座だよなあ
中の人も牡牛座だし
237名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 20:06:45 ID:HxPNQeya
高須家の間取りは検索すると結構出てくるけど大河マンションは何気に初だな
これはありがたいのう
238名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 23:42:08 ID:zZbP4KK+
>>183 です
ゆりちゃんネタ、すいませんでした。
でも、クラスメートがひとりいなくなった後の寂しさみたいなものを
書いてみたかったので、やりました。
ちなみに退学したことも、させたこともありません。

>>55の 続き
真夏のシンデレラ、続きを投下します。

239名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 23:43:39 ID:zZbP4KK+
「ねえねえ竜児。見て見て、お魚がいるよ」
海辺をぼんやり見ていた大河が急にはしゃぎだす。
大河の差す指先を見れば小さな魚が何匹も泳いでいるのが見えた。
「へえ、こんなところにもいるんだ」
竜児は感心する。
東京湾の奥まった水辺に集う生き物達。
どんなに環境が悪くても生き物は精一杯、存在している。
ちっぽけな悩みなんて関係ないよとばかり、活発に動き回っていた。
「竜児、こっちこっち」
「おま、何やってんだよ」
「へへ、ちょっとお魚さんと遊んでみたくて」
竜児が名も無き魚に想いを馳せている間に、大河はどこから入ったのかフェンスの向こう側へ体を移動させていた。
フェンスの先にわずかにある狭い出っ張りを足場にしゃがみこみ、海側へ身を乗り出し、手を水中へ入れてパチャパチャと子供のような真似をする大河。
竜児が大河の先に目をやるとフェンスがわずかに切れている場所があり、どうやらそこから入ったらしかった。
「つべたい。それにきれい」
確かに透明で大河じゃなくとも水遊びくらいしたくなるような海水だった。化学的にはきれいじゃないんだろうけど。
どれと竜児が大河に近づくと、待ってましたとばかり大河から水鉄砲の襲撃を顔面に受けた。
「うおっ・・・大河」
「さっきのお返し」
「まだ負けたこと根に持ってんのかよ」
「あれは竜児が悪い」
「大河が単純なんだ」
「う〜、覚えてなさいよ、この次は負けないんだから」
大河は2発目の水鉄砲をお見舞いしてきた。
ここへ来る途中やっていたじゃんけんで大河が負けまくった理由を竜児はついさっき大河に教えてやったのだ。
・・・かっかすると大河はグーかパーだ。俺はパーを出せばあいこか勝ちだ。負けはねえ。
・・・次の手を考えこむと大河はチョキかパーを出すことが多い。俺はチョキを出せば負けない・・・等々。
すっかり手の内を読まれていたのは大河にとって面白いはずが無く、駄犬の分際でとか散々、文句を言ったばかりなのである。
それに加えて、この水鉄砲攻撃。
竜児とて、このまま黙って攻撃を受け続ける謂れはないのだが、反撃する手段が見つからない。
「ひ、卑怯だぞ、大河」
続けざまに命中弾を受けて竜児は逃げまくった。
「ふ、勝つためには手段を選ばず」
安っぽいマキャべリストと化した大河は情け容赦なかった。
「もう、怒ったぞ」
竜児が濡れるのも構わず大河に向かって突進した時、ドジの神様が大河の頭上に舞い降りた。
竜児の急接近に慌てて水鉄砲を仕込もうとした大河はバランスを崩したのだ。狭い足場の上で・・・。

・・・バチャン。
240名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 23:44:53 ID:zZbP4KK+
穏やかだった海面に水しぶきが跳ね上がる。
その水音がドボンで無かったのは竜児のお手柄と言っていい。
そのまま東京湾へ着衣海水浴を楽しむはずだった大河はすんでのところで竜児に手首を掴まれ、転落だけは免れた。
でも、片足だけはどうにもならなくて・・・。

「ドジめ」
「何を言われても・・・言い返せないわ・・・」
シュンとしていつもよりおとなしめの大河。
いい歳してはしゃいで海に転落したなんてことになったら、大河とて立ち直れないことだろう。
「これを教訓にしてだな」
竜児のお説教もどきの言い方に大河は反省の色を捨てた。
「だいたい、竜児が来るのが遅すぎるのよ。犬なら飼い主の危機にすばやく来なきゃダメじゃない」
「そんなこと言っていいのかよ。あ〜あ、助けるんじゃなかった」
「もう、帰る」
「裸足でか?」
「・・・そうだった」
ブスっとして立ち上がった大河だったが、また座り直した。
転落未遂の水辺から少し下がった場所。大きな木の下にある芝生の上に大河と竜児はいた。
そのふたりの頭上で木の枝にぶらさがっているのは大河のソックスと靴が片一方づつ。

「もう少しで乾くだろ、風通しいいし・・・それにそろそろ昼だ・・・ここで食うか?弁当」
竜児が弁当の入った保冷バッグに目を向けると大河は顔を横に向けたまま「は、早くしなさいよね」と。
口調のぶっきらぼうさと裏腹に大河の口先がにやけているのを竜児はしっかり見てしまった。
「わかった。少し待ってろ」
竜児の口は仕方ないなと言う感じだが、手先は嬉々としてランチの準備に取り掛かっていた。



「麦茶、まだ飲むか?」
「もういい・・・満足したから」
青空即席ランチタイムは空になったお弁当箱を残して終了した。
作った時、少し多いかなと竜児は思っていたのだが、ふたを開けてみればちょうどいいくらいだった。
いつも以上に食の進んだ大河がきれいに片付けてしまったのだ。
今も大河は名残惜しそうに、最後の一切れになったカットりんごを、おちょぼ口でシャリシャリと噛んでいた。
全てを食べ尽くしてしまって、満足げな大河。
竜児は夏バテとか本当に縁のなさそうな奴だよなと目を細めて大河を見つめた
「はあ〜お腹いっぱい」
幸せ極まれりと言うのは大げさだが、おおむねそんなニュアンスをたたえながら大河は芝生に上に仰向けに寝転んだ。
「生地が傷むぞ」
竜児は注意を促した。
なにせ、大河の服装はいつもより高級感のあるもので、上質の生地と仕立てなのは竜児にも分かる。
値段を聞けば間違いなく高須家の月間生活費を上回るのが確実そうな代物。
少なくとも、こんな屋外で着る様なものじゃない。
241名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 23:46:09 ID:zZbP4KK+
「いいの・・・」
トロンとした感じで大河は答える。
食後のごろ寝が何にも変えがたい贅沢なんだと、大河の中の基準として断固あるらしかった。
大河を高須家に招き入れて、半同居生活が始まってから数ヶ月以上が経過しているが、竜児最大の失敗は大河に付けさせてしまったこの癖だった。
座布団に座ってちゃぶ台でする食事スタイルは大河にとって初めてのものであったらしい。
最初の頃、高須家に来た時、大河がいやにぎこちなく座っていたのを竜児は思い出していた。
今まで椅子とテーブルでしか飯食ったことないんだよな、こいつは。
それが今では食後にドベーと横たわるのが大河の定番スタイルになってしまった。
おずおずとおかずのお皿に手を出していた頃の大河が懐かしいぜと竜児は苦笑する。
素足のままの大河。
片足だけ靴を履いているのは変だと、濡れ無かった方の靴も脱いで、両足とも陽光にさらしていた。
スカートの中から日焼けを知らない白さで伸びる大河の足。
太陽の下で見るそれは普段と違って見え、竜児を少しだけどぎまぎさせた。
細すぎる足首が妙に竜児の心を騒がせ、竜児はおもわず視線をそらした。
「ん・・・ん・・・すう・・・すう・・・」
そんな竜児の心の機微も知る由も無く大河は体を少し丸めた姿勢で眠りに落ちていた。
その安心しきった大河の寝顔。
ちょんと突いてしまいたくなるような健康そうな頬。
神様が絶妙なバランスで配置したとしか思えない細い鼻、そしてどんなカラー番号を使っても再現不可能な淡いピンク色の唇。
あごから伸びる線はコンピューターで測ったように綺麗で、大河の顔立ちを引き立たせていた。
遠くから見たら等身大の精緻な人形が横たわってるとしか見えないかもしれない。
芝生の上を流れる様に横たわるふわふわの髪はまるで作り物めいて見えて、大河はアンティークドールのようだ。
でもと、竜児は思う。
大河はちゃんと生きている。人形じゃない。
半開きになった大河の口元・・・大河が息をするたび、膨らむ胸元。
その全てが大河の生の証。
不思議だよな・・・竜児は改めて思う。
まったく違った場所で生まれて、お互いに全然知らないところで今まで生きてきて、こうして知り合えたんだから。
・・・竜ね、だっさ・・・
不意に竜児の脳裏に大河が吐き捨てるように言った台詞が蘇る。
新学期、最初の邂逅だった。今思えば最悪な出会いだよな。
つい最近のことなのに、竜児にはそれがもう遠い昔のことのように思えた。
なんか昔からずっと、こんな風に大河と過ごしてきた気さえすると竜児は思う。
侮蔑のまなざしで俺の横を通り過ぎた大河・・・そんなやつが、俺の手の届くところで眠っている。
よもやこんな時が来るなんて・・・大河もそう思うか?・・・大河は答えない。
答えを聞けないまま、竜児もいつしか眠りに落ちていた。

*********
242名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 23:48:03 ID:zZbP4KK+
「なあ、逢坂」
「何?」
「食事中になんだけどよ、明日の晩ご飯」
「なによもう作るの嫌になったの?」
「そんなんじゃねえ・・・俺の家で食べてくれないか?」
「あんたの家、あのボロアパートで、嫌よ」
「・・・そうか。悪い。無理にとは言わない」
「当たり前でしょ、犬は黙って言うことを聞けばいいの」
「わかった、その代わり、俺、夕食は家で食べるからさ。あ、もちろん、逢坂の分はちゃんと作りに来るよ」
「べ、べつにここで食べ行けばいいじゃない・・・場所代なんて取らないから」
「そうも言ってられねえんだ。泰子がさ」
「泰子?」
「ああ、俺の母親。夜、働いてんだ。帰宅はいつも明け方で・・・俺が学校行く時は寝てるし、だから晩ご飯しか一緒に食えねえんだ」
「それがどうしたの?」
「家族だからさ・・・飯ぐらい一緒に食いたいじゃないか」
「そんな・・・ものなの?」
「ああ、だから明日から・・・悪い」
「ふうん・・・私・・・行ってもいいよ」
「え?」
「だから、あんたの家に行って食べてもいいって言ってんのよ。耳遠いの!」
「いや・・・大歓迎だ」
「ありがたく思いなさいよ、出向いてやるんだから、せいぜいおいしい物を作って、私を喜ばせることね」
「ああ、ありがとな、逢坂」
「あんたのためじゃないわよ。竜児のお母さんのためよ。勘違いしないで!!」


「ほら、入れよ」
「いいの?」
「いいのって、この間は忍び込んで殴りこみかけたくせに」
「あれは・・・悪かったわ」
「まあ、いろいろ誤解もあったしな。もう気にしちゃいねえ」
「なら・・・いいけど・・・」
「おら、入れ」
「うん・・・」
「ただいま・・・泰子?」
「あ、竜ちゃんおかえり」
「竜ちゃん?・・・ぷっ」
「いけねえかよ!」
「あれ・・・竜ちゃんの・・・ガールフレンドだあ」
「ば!ちげえよ!失礼なこと言うなよ」
「え〜違うの。やっちゃんつまんなあい。せっかくかわいい子連れてきたのに。さすが私の竜ちゃんだと思ったのに」
「口を尖らすな・・・逢坂に悪いだろ」
「逢坂・・・さん?」
「ああ、紹介がまだだったな。このちっこいのが・・・痛て、足を踏むな。こいつが逢坂、大河。クラスメートでお隣さんだ」
「あ、逢坂です。お邪魔します」
「良く出来ました、自己紹介、ちゃんとお辞儀も出来て、おりこうさんなんだ。私がやっちゃんだよ〜。よろしくね、大河ちゃん」
「あ・・・こちら、こそ・・・よろしく・・・です」
「妙なテンションで挨拶するなよ。逢坂が引くだろう」
「そんなこと無いよね、大河ちゃんは」
「お邪魔しても、迷惑じゃ・・・?」
「じぇんじぇーん。ノープロブレム。多勢で食べた方がきっとおいしいよ」
「泰子もOKだとよ。ほら靴脱いで上がれ」
「うん。お邪魔します」
「いらっしゃーい・・・あ、そうだ、大河ちゃんはどこに座ってもらおうかな・・・ここがいいかな、あ、でもこっちの方が・・・ねえねえ、竜ちゃんはどこがいいと思う?」
「どこでもいいだろ、そんなの」
「良くないよ。だって、竜ちゃんが初めて連れて来た女の子なんだよ。大事にもてなしてあげなきゃ」
「妙な母親だろ?」
243名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 23:49:04 ID:zZbP4KK+
「ううん、いいお母さんじゃない」
「そうか、でもあんまり本人には言うなよ。調子に乗るから」
「きれいな人だね」
「まあ、若いだけはあるしな、高一ん時俺を産んで、それからずっと二人暮しさ」
「そう・・・なんだ」
「ごめん、変な話聞かせた。お詫びに今日は飛びっきりうまいもの作ってやるよ」
「竜児・・・」
「何だよ?」
「・・・何でもない」



「あれ?大河ちゃんもういいの?」
「うん。ごちそうさま」
「何、遠慮してんだよ。まだ残ってるぞ」
「そうだよ、育ち盛りはたくさん食べないと大きくならないよ」
「泰子!」
「ふえん、竜ちゃん。私、何か悪いこと言ったあ」
「じゃあ、もういっぱいおかわり」
「おう、茶碗貸せよ」
「そうだよ、大河ちゃんスマートだもん。たくさん食べても絶対太らないから」
「デリカシーの無いこと言うなよ。悪いな逢坂」
「ううん・・・おいしい」
「そうでしょ、そうでしょ、竜ちゃんはお料理上手だから・・・はい、これあげる」
「泰子、そんな自分のおかずを・・・お客さんに失礼だろ」
「お客さんじゃないよ。うちでご飯食べたら、もううちの一員だよ。ね、大河ちゃん」
「・・・うん・・・」



「ねえ、竜児?」
「あ?」
「呼んでくれて・・・言わない」
「何だよ、変な奴」
「明日も来ていい?」
「泰子は大歓迎だとよ」
「明日は何作るの?」
「まだ考えてねーな。逢坂は食べたい物でもあるのか?」
「特には・・・」
「そっか・・・なら明日、一緒にスーパー寄るか、学校の帰りに」
「うん、考えとく」
「じゃな、おやすみ」
「そうだ、竜児・・・竜児・・・竜児・・・」
「そんなに何回も呼ばなくても・・・」

*******

「竜児!!!!!」
「んんわ」
目を開いた竜児の視界いっぱいに大河の顔のドアップ。
「あ、れ?お前、部屋に帰ったんじゃ?」
「何、寝ぼけてんのよ」
ちょっとよそよそしいと言うか、まだ他人行儀だった大河の顔は消えうせて、いつもの大河がそこにいた。
夢か・・・と竜児は起き上がる。
244名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 23:50:22 ID:zZbP4KK+
「乾いたんだな」
「ようやくね」
両足にちゃんと靴を履いた大河は履き心地を確認するようにその場でとんとんと足踏みをした。
「あ〜あ、芝生がついてる」
竜児はめざとく大河の服に付いている緑の欠片を見つけると、手でそっと払い落とす。
「いい服なんだから、丁寧に着ろよ」
「もったいな〜いって」と大河は竜児の口癖をまねた。
「大河!」
「びんぼー症なんだから、竜児は」
「しょうがねえだろう、これが俺の性分なんだ」
「そんなんじゃ、モテないよ」
「やかましい、お前に心配されたくねえ」
「心配なんかしてないわよ、竜児は一生、私の犬なんだから」
「ふふん・・・って、偉そうに、言っとくがな俺はそんな契約した覚え、ねえぞ」
「証文が無くても、そうなってるのよ。もうあきらめなさい。竜児に付けた首輪、私、外すつもりないからね」
「まさに、悪徳商法」
「何とでも言いなさい」
芝居が掛かった高慢さで手を口にあて、大河は高笑い。
おーほほと調子に乗ったまでは良かったが、そのまま、ゲホとむせ込んだ。
ゲホゲホと喉を鳴らして続けて咳き込む。
「天罰だな」
「うるさ・・・ケホ」
「大丈夫かよ。って髪にも付いてるぞ」
竜児は大河の天辺に芝生の切れ端を見つけた。
「やだやだ、取って。竜児」
「しょうがねえな、動くなよ」
竜児は大河に乗った緑色を手でつまんで、地面に落とした。
「取れた?」
「ああ、大丈夫だ」
「もう、付いてないよね?」
大河はそう言いながら、もう付いていないかなと自分の髪を手を櫛の代わりにして梳いた。
「大丈夫そうだね・・・あれ?誰か来たよ」
聞こえてきた話し声に大河は手の動きを止める。
竜児も声のした方を見ると、いつの間にかさっきまで大河と竜児がいたフェンス際に男女のふたり組みが陣取っていた。
仲良さげに談笑するふたりは大学生くらいに思え、推測するまでも無く恋人同士の親密さ。
「物好き第2号、あれ?」
「まあ、そう言うことになるだろうな、こんなとこまで来るんだから」
「ずいぶん、仲良さそうだね」
竜児たちの声も聞こえていないのか、陽のあたるその場所から、木陰のここは暗がりに
なって良く見ないのか、まるで誰もいないかの様に目の前のふたりは大河と竜児の前でいちゃつき始めた。
245名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 23:51:23 ID:zZbP4KK+
「邪魔しないように退散すっか」
「そうだね」
竜児がお弁当を入れていた保冷バッグを拾おうとふたりから視線をそらした時だった。
「あ、ひゃああ・・・」
大河が悲鳴とも感嘆ともつかない声を上げた。
「どうした、大河・・・うぉう・・・」
大河が思わず発してしまった妙な声の原因に直面して、竜児も声を出してしまった。
竜児と大河は同時に見てしまったのだ。距離にして数十メートル先で展開される妖しくも甘美なアダルトの世界を。
大河と竜児の目の前で繰り広げられる恋人同士の熱い抱擁と口付け。
指と指の間がすき間だらけで目隠しになっていない両手を顔の前にして大河は右往左往する。
大河の白かった頬が見る間に赤く染まり、「はうう」と声を漏す。
「い、行こう、大河」
竜児は大河の手を掴むと、その場から駆け出した。

公園の森を抜け、広い道路へ出たところで竜児は走るの止めた。
「あ〜びっくりした」
「竜児・・・」
情けなさそうな感じで大河は竜児を呼んだ。
「何だよ?」
「・・・手」
「手?うぉ、わりい」
その時になって竜児は己がずっと大河の右手を握り締めていたことに気がついた。
急いで手を放し、大河に謝る竜児。
テレビの画面の中でしか見たことがなかったものをいきなり目の前で見せ付けられて、竜児も相当、動揺していた。
大河もいつもなら「いつまで握ってんだよ、馴れ馴れしい」と怒り爆発のはずなのに大人しい。
「は、初めて見たよ、あんなの」
まだ、赤みの残る顔で大河はぽつんと言う。
「竜児は?」
「俺だって、見たことねえよ」
「恋人同士って・・・あんなことするんだ・・・竜児は・・・その・・・したことあるの?」
ストレート過ぎる質問に竜児は面食らう。
「あ、あるわけ・・・ねえだろ」
この場合、この返事がかっこいいのか悪いのか分からないまま、竜児は正直に明かした。
「そっか・・・そうだよね・・・うん」
安心したと言う感じで大河はひとり言のようにつぶやいた。
竜児はつい視線が大河の口元に行くのを抑えられない。
竜児も聞いてみたくなる「お前こそどうなんだよ?」と。
多分そんなこと聞けば、間違いなく鉄拳回答が戻ってくるだろうな。
竜児は興味の追求と身の安全を秤にかけて、その質問を封印した。

「走ったら、のど渇いちゃった」
「麦茶、まだあるぞ」
「うん、飲む」
「待ってろ」
水筒のふたに中身を注いで竜児は大河に手渡した。
ためらい無く、口をつけて大河は麦茶を一気に飲み干し、ふたを竜児に返す。
それはさっきの昼食で竜児が麦茶を飲むのに使っていたふただった。
気にも留めないで、そんな振る舞いをする大河に竜児はなんとも言えない安らぎを覚えた。
前を歩く大河の後姿に向かって竜児は声を掛けた。
「続き、やるか?」
右手でグーを出し、じゃんけんのポーズをとる。
「やる」
今度こそ負けないとオーバーアクションでじゃんけんに応じる大河。
「最初はグー、じゃんけんぽん」

・・・やっぱり、大河は単純だった。
246名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/31(金) 23:56:34 ID:zZbP4KK+
とりあえず、今回はここまでです。
また、書き溜めたら投下します。
ようやく、折り返し地点見たいな感じですので、完結まで後、数回、掛かりそうです。
お邪魔かもしれませんが、お読み頂ければと思います。

>>229
毎日、この投下量でこのクオリティ。
GJです。
しっかり読ませて貰ってます。
247名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 01:06:15 ID:HD+uZNAE
>>246
いいねぇ、いいねぇ。
大河が始めて家にきたときの回想シーンがよかった。
続きをきたいしてまーぁす。

248名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 01:38:51 ID:8Q6PMofO
(*´Д`)ポワワ
249名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 02:29:33 ID:vxeInhiJ
>>246
いいねぇ。微妙な距離感がうまい。
今まで見たことなかった(と思う)回想シーンも初々しい感じで良かった。 
続き楽しみにしています。

>>238
ゆりちゃん先生の話、よかったですよ。スピンオフ2の話も大好きだし。
読みながら、ずっと大河の顔が浮かんでたから、無問題!
250名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 07:01:34 ID:jtYBF2qP
>>246
GJ!
このほのぼのした感じ、まさしくとらドラだわ。
話の持ち掛け方が凄くうまくて尊敬します。続き待ってますね。
251君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/01(土) 07:30:47 ID:0SLBlPW3
見ものと言えば、これ以上の見ものはないだろう。居並ぶ3−Aのリーダー達を前に、今、まさに手乗りタイガーこと大河が英文学の説明をしようとしていた。

今でこそ大人しくなっているとはいえ、手乗りタイガーと言えば大橋高校でその名を聞いて声を潜めぬ者は居ないくらいの悪名である。1年生の時にはその現実離れした美貌に引き寄せられる少年たちの告白を右から左に切って捨てて消えぬ傷を心に残し、
噂によれば写真部の部員を一人ずつ闇討ちにして廃部に追い込んでいる。何が不満なのか四六時中仏頂面で廊下を歩く姿は人波が左右に割れるほど禍々しかったという。そして2年生に進級してからはヤンキー高須(なんてセンスのないあだ名だ)と組んで生徒会の乗っ取りを図り、
挙句の果てには全校生徒の心の兄貴と呼ばれた前生徒会長、狩野すみれに木刀一本で殴りこみをかけまでしている。つい最近も生徒会室前で暴発しかかり、暴虐の女王が健在であることを示したばかりだ。

正真正銘の凶状持ち。それが大河だ。

そのくせ、お勉強はできるのだ。竜児はそれを知ったとき椅子から転げ落ちるほど驚いた。親と先生の言うことをよくきき、予習復習を欠かさず、規則正しいおだやかな生活と毎晩の勉強を心がけて学年トップ10入りを目指していた竜児。
その竜児にとって、部屋は散らかし放題、素行不良で好き嫌いだらけ、わがまま放題の大河のほうがお勉強ができるという事実は、受け入れるのにたっぷり3日かかるほどの衝撃だった。どこにいるとも知れない神様を恨んだものである。

もっとも、大河の成績がよくなったのは2年になってからだ。1年のころは名前の書き忘れが多くて結構な数のテストを落としていたらしい。どじの星の下に生まれるというのは悲惨なものである。2年のときの担任の恋ヶ窪ゆり(今年31歳まだ独身)が
特別に大河の名前の書き忘れに注意を払って指導してくれなかったら、到底国立選抜になど進めなかったろう。小学生みたいなエピソードだ。

とにかく、大河は神様からドジの星の下に生まれることと等価交換で美貌、身体能力、頭のよさを与えられている。そのうち前二者はほとんど恐怖の伝説として学校中に知れ渡っているが、今、その三つ目がついに白日の下にさらされるのだ。

ちょっと大げさか。

それにしても、と竜児は微笑む。この得意満面な態度はどうだろう。足をそろえてちっこい体の後ろで手を組み、あごを斜め上についとあげ、目を軽くあけて薄笑いを浮かべている。あごの線はガラスに施した精緻な細工のようにシャープで、
ミルク色の頬は触ればそのまま溶けて流れてしまいそう。小さくて形のいい鼻はうっとりするような曲線を描き、柔らかい微笑をたたえた薄い唇はバラの花びらを思わせる。
長いまつげは優美にカーブし、体を包む淡色の髪はこの世のものとは思えない、いっそ幻想的な香りすらする。これほどえらそうなフランス人形がいたとは、おもちゃ屋さんもさぞかし驚くことだろう。

「それでは、英文学の展示の説明をします」

竜児に文句を言っただけあって一応丁寧語で話すらしい。

「英文学は英語で書かれた文学を研究する学問です」

そりゃそうだ。フランス語で書かれてる本は仏文学者が研究するだろうからな。

「文学の研究をすると、昔の人の生活や思想がわかるのです」

この前言ってたな。
252君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/01(土) 07:31:33 ID:0SLBlPW3
破綻のないまずまずの出だしだが、大河は相変わらず得意そうな顔で微笑んで3−Aのリーダー連の注目を浴びている。しかし、そのまま不動の姿勢をとられてもこちらも困る。

「で?」

なぜ話を続けないのかいぶかしみつつ竜児が先を促すと、

「『でっ?』て何よ」

と来たもんだ。えええ?

「いや、生活とか思想がわかるってのは、わかったからさ。その先を説明してくれよ」
「そのくらい自分で読みなさいよ!何のために苦労して展示を作ったと思ってるのよ」

めまいがする。
お前さっき、説明してやるって言ってたよな。これか?説明ってこれなのか。竜児はぎゅっと収縮した瞳を揺らしながら言葉を継ぐ術を探した。探せばその辺に落ちているのが見つかるとでもいうように。

「いや、その、あれだ…えーと………すまん、俺が悪かったような気がしてきた」

ぷっと3−Bの連中が吹き出して竜児を横目で見る。書記女史はじめ3−Bも苦笑い。

そして竜児は思い当たる。書記女史は大河がムードーメーカーだと言っていた。まさか、ムードメーカーだけやってたわけじゃないだろうな。というか、今やそれ以外竜児には信じられない。そもそも、大河がリーダーってのが信じ難かったのだ。
計画とか方針とかって柄じゃないだろう。それをぶち壊すほうがずっと得意だ。リーダーシップ?そんな言葉、知っているかどうかすら怪しい。「なにそれ、おいしいの?」とでも真顔で言いそうだ。

えらそうに手を腰に当てて得意げに薄ら笑いを浮かべている大河を見ながら、こんなやつの気分ひとつで盛り上がったりギクシャクしたりするらしい3−Bの連中は、何か重大な心の病でも抱えてはいやしまいかと、また一つ竜児は余計な心配事を抱え込んでしまった。

◇ ◇ ◇ ◇
253君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/01(土) 07:32:17 ID:0SLBlPW3
文化祭で見たいもの、行きたいところがあったかというと、竜児には特に無かった。

クラス展示の作成には予想外にのめりこんだとはいえ、3−Aのそれはいったん展示が完成すると、あとは手がかからない。午後に1時間解説当番があるだけだ。他のクラスで売っているような、素人が作った焼きそばやクレープに興味があるわけでもない。
竜児の方がはるかにおいしく作ることが出来る。やったことはないが、断言できる。あちこちのクラスで安売りされているメイドカフェに行ってオムライスに自分の名前を書いてもらう気もしない。家で母親の泰子の名前を書いてやっている。
クラス展示を手伝ってくれた平原の美術部の展示は見たいとは思うが、それだって(平原には悪いが)最初から興味があったわけではない。そういうわけで、竜児は、あまり文化祭には興味は無かった。でも、何も期待していなかったのではない。やりたいことはあった。

大河と二人で文化祭を見て回りたかった。

去年、理不尽な親に翻弄されて人知れず心の中で真っ赤な血を流した大河のために、今年の文化祭では楽しい思い出を作ってあげたいという気持ちがある。そして、別段すばらしいわけでもない出店や展示を、大河と二人でぶらぶらしたかった。
素人が作った焼きそばを二人で食べて悪口を言いたかった。オムライスのはしごをしている能登を捕まえて、二人でからかってやりたかった。クレープを並んで歩きながら食べたかった。一人でしたいことは特に無い。でも、二人でしたいことはたくさんある。

特別なことじゃなくていい。大河と二人で並んで、一日だけのお祭りを楽しむ。それこそ竜児が文化祭にずっと前から期待していたことだ。そして、一つだけ特別なことを大河にしてあげたいと思っているのだが、今はまだそのときではない。

「大河、クレープおいしいか?」
「うん、おいしいよ。竜児も食べて?」

すっと、目の前に突き出されたクレープ。大河の小さな口がかじった所を、特に狙ったわけでもなく食べる。

「おう…甘ぇ」
「だってクレープなんだもん」

こともなげにそう言いながら、大河も竜児のかじった所を食べる。

二人は付き合い始める前から弁当のおかずの取り合いやお茶の奪い合い、嫌いな食べ物の押し付け(一方的に大河から竜児へ)を繰り広げていた。間接キス、竜児言うところの唾液の交換などとっくの昔である。それが雪の聖バレンタインデーのファースト・キスの後、
ちょっとだけ歯車が狂った。好きな男が飲んだ水筒のカップの飲み口。好きな女が使った箸の先。そんなものを目にするだけで二人とも頬を赤らめ、食べかけの卵焼きを目の前に突き出されでもした日には、顔から火を噴いて悶絶死しそうなほど胸をどきどきさせたものだ。

付き合い始めて実質6ヶ月になった今、間接キスはそれほどの重大事ではない。それはたぶん、二人が慣れてしまったということではない。それはたぶん、以前のようにお互いを空気のように感じているということだろう。だから竜児は大河と会えないと苦しくなる。

廊下を歩きながら息をするように自然に間接キスをかわすウルトラ美少女とS級ヤンキーの二人組みは、周囲の孤独な少年少女達の胸を残酷に切り刻みながら、ぶらぶらと展示を見て回った。
254君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/01(土) 07:33:02 ID:0SLBlPW3
「あったたたたかす先輩、あああいさか先輩」

北斗神拳のような、しかしふんわりした、それでいて妙に色っぽい声をかけられて二人とも振り向く。すぐ後ろに、ぽやんとか、ぷわんとかいった感じの女の子が、見るからにびびった表情で一人立っていた。ほわんと引きつった笑顔でぺこりと頭を下げる。

「ちっ、あんたか…」
「おう、狩野さんか。この前は驚かして悪かったな」

可憐な歩くフランス人形からきつい舌打ちを食らい、人さらいの下見に来たチンピラから優しい声をかけられるというコンボダメージに汗を流しながら、もはや伝説化している先代生徒会長の妹、狩野さくらは、話しかけるなら怖くても話の通じるほうと決めたらしい。

「た、高須先輩、この前は本当にありがとうございます」
「よせ、窓ガラス割るような不良に礼なんか言うな」

ここは小さな声で、竜児としては軽妙な冗談のつもりだ。が、にやりと笑った顔におびえたのだろう、小さな悲鳴を上げられて落ち込む。

「でもあれは北村先輩のことを思って下さってのことですから」
「いやいや。それより片付けさせて悪かったよ。怪我しなかったか」
「はいっ!冨家君が片付けてくれました!」

ぱぁぁっと明るく笑ったところを見ると、狩野さくらは富家幸太を好きなのだろうか。しかし、そういう乙女乙女した雰囲気があまり好きでなさそうな虎が約一頭

「ちっ、あの黒猫野郎か」

せっかくリラックスしてきた狩野さくらを茨のごとき不機嫌ボイスでぐるぐる巻きに縛り上げる。

「おまえなぁ。そうだ、北村はどうしてる?」
「は、はい、先輩はすっかり元気になって、今日は一日中見回りです」
「あいつは懲りねぇな。ま、そこがいいとこか。元気になったのなら文句はねぇ」
「そうよ、竜児も北村君のまじめなところを少しは見習えばいいのに」
「冗談じゃねぇ。俺は十分まじめだし、あんな露出狂なんか薬にしたくもねぇ」
「なによ!」

往来の真ん中で今日何度目かの夫婦漫才を始める二人を前に、くすっと狩野さくらが笑い

「お二人は本当に仲がいい恋人同士なんですね。とっても幸せそうで素敵です。私も富家君とお二人のように…」

顔を赤らめて、不必要にグラマーな体をもじっとひねる。

そして竜児の横では狩野さくらの不用意かつそれほど的を外していない発言を至近距離で被弾したせいで、大河が大変なことになっている。

「あ、あ、あ、ああああんた、ななにいっちゃってくれちゃってんのよ。わた、わた、わたしとりゅうじが」
「もういい、もういいから大河」

クレープ片手に火を噴くほど赤面して呂律の回らない大河の頭を優しくなでてやりながら、

「狩野、北村に感化されないよう気をつけろ。働きすぎの日本人なんて今更流行らないからな。あと、富家に『男としての気構えが足りねぇ』と伝えといてくれ」

偉そうに言うと、竜児は大河を連れてその場を離れた。

◇ ◇ ◇ ◇
255君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/01(土) 07:33:43 ID:0SLBlPW3
「高っちゃーん!タイガーっ!久しぶりジャーン」
「あ、ロン毛虫」
「おう、春田じゃねぇか」

エプロン姿でへらへら笑いながら手を振っている長身の男に、二人とも足を止める。旧2−Cで同級生だった春田浩次だ。ちょっと教室に戻って様子を見るか、などと3年の階に戻ってきたときのこと。

「うちのクラスよってきなよ。焼きそばうまいよ。今年も俺が実行委員なんだぜぇ」
「今年も俺がって…なんか微妙に日本語おかしいぞ」

そう言いつつ横を見ると、扉にはシンプルに『焼きそば』の4文字。それにしても。中は暗幕を使っているみたいだし、扉は閉めっぱなしだ。いい匂いがするとはいえ、もう少し明るく開放的にしないと食い物屋は流行らないだろう。

「それよりロン毛虫の焼きそばってのが恐ろしいわよね。中でもぞもぞ動いてたり。おお怖い」

両腕を抱えて震えるまねをしながら、大河が嫌味を言う。

「タイガー冷たいよぉ。きょうは二人ともおごりだからさ、寄って行きなって」
「え?おごり?」
「タダなのか?」
「そうだよ、二人はタダでいいよ」
「竜児、行きましょ」
「おう、なんか恐ろしいな」

ぼったくりバーだか人体実験だか知らないが、タダより恐ろしいものは無い。竜児も大河もぷぃっと視線をそらして怪しい客引きから一刻でも早く逃れようとする。

「ちょっとちょっと、待ってよ高っちゃーん。うちの焼きそばは高っちゃんにもタイガーにも絶対気に入ってもらえるよ。シェフ櫛枝が腕を振るってんだらさー」

「え、みのりんが?」
「おう、櫛枝か」

立ち去ろうとした二人が脚を止める。

春田によれば、櫛枝実乃梨は文化祭のクラス展示から積極的に提案を行い、企画にかかわっている。準備期間中、ほとんど手伝えなかったので今日は開店から閉店まで腕を振るっているらしい。

「櫛枝っちってすっげー料理うまいぜ。タイガー知ってたぁ?」
「知ってるわよ。みのりんの料理はプロ仕込なんだから」

大河が自分のことのように得意げにこたえる。

体育大学進学のために数え切れないほどのバイトをこなしてきた実乃梨のことだ、文化祭の模擬店の焼きそばなど、造作も無いことだろう。準備期間中手伝えなかったというのは、部活を引退しても自主トレを続けているからか。しかし…

「ねぇ、タイガー、高っちゃん、寄ってきなよ。櫛枝っちも喜ぶからさあ」
「ふーん、そう。ロン毛虫が呼び込みってのが胡散臭いけど、みのりんが焼いてくれるのなら安心よね。ねぇ、竜児寄っていきましょ?」

そう竜児を見上げて優しく微笑む大河をよそに、竜児は何か違和感を感じていた。おかしい。何かが引っかかる。いったい何が引っかかってるんだろう。このまま入ってはいけない気がする。なぜだ。考えろ考えろ高須竜児…
256君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/01(土) 07:34:25 ID:0SLBlPW3
「おい、春田。櫛枝は提案から関わってるって言ったな」
「うん、そうだよ」
「竜児、どうしたのよ」

早く入ろう?おなかすいちゃった、という顔で大河が袖を引く。

「だったら、なぜ焼きそばなんだ?」
「え、いやだなー高っちゃん…」

春田がどっと額から汗を噴く。ビンゴ。これはただの焼きそばではない。ポケットに突っ込んでいた文化祭のしおりを開く。クラス展示3−D…

「おう、『おばけ焼きそば』?なんだよこれ」
「え?大盛りなの?」

約一名、間違った方向で喜んでいる奴が居るが、明らかに竜児の指摘は春田が隠している何事かのど真ん中を射抜いている。

「これ、お化け屋敷と焼きそば屋のセットだろう」
「へ?」
「あははははは…」
「大河、行くぞ。これは櫛枝のお化け屋敷だ。あいつお化け好きとか言って、本当はスプラッター・ホラーのマニアだからな。焼きそばに入っているのは豚肉とかじゃなくて目玉とか内臓に決まってる」
「嫌ーっ!竜児それ以上言わないで!」

おぞましいイメージに大河が目を閉じて耳をふさぐ。一方、これまでと観念したか、春田はあまり見せないきりりとした表情で

「ええい仕方ない!出でよ闇の軍団!」

そう号令した瞬間、閉まっていたドアが20センチほど開くと、にょきっと太い腕が出てきて竜児の腕を掴んだ。

「うわっ!なんだよこれ!」

ばしばし叩いて振り払おうとするが、腕は次々と隙間から出てきて竜児を掴む。掴むところを探してぐねぐね動いている腕もあって、鳥肌が立つほど恐ろしい。高校の文化祭のクラス展示と思えない。

「いやーっ!竜児助けてっ!」

悲鳴に目をやると、開いた窓の隙間から伸びた腕が大河の袖を掴んでいる。手乗りタイガーにこんな不逞を働くなど、普通なら、加害者骨折→入院→受験失敗→人生終了のお知らせ。となる所だが、ホラーのイメージを吹き込まれてしまったせいだろう、
にょっきり生えた腕に大河も身がすくんでいる。するにことかいて、女子にこんな事までするとは。それ以前に大河に触るな馬鹿。

カチンと来た竜児が、やおら扉を開けて、中の連中を本気の怒りを込めて睨む。

「お前等!名前言ってみろ!」

いきなり現れたプロのチンピラ譲りのガンつけに、うわーっ!と5人ほどが尻餅をつく。這いずって逃げる奴がアウアウと声を上げ、中の暗幕までばりばりと?がれ、悲鳴やら何やら、ドンガラガッチャン阿鼻叫喚。

「高っちゃん何するんだよ!」
「お前が『何するんだよ』だ、この馬鹿!」
「何だよ高っはぐぐぐぐ〜〜〜〜」

何らかの抗議をしたかったらしい春田だが、やおら目の前に現れた大河がぐいと両手を突き上げ、頬をつまんでそのまま宙吊りにしてしまった。
257君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/01(土) 07:35:15 ID:0SLBlPW3
「このエロがっぱ、殺してやるからっ!竜児!止めないで!」
「おう、かまやしねぇ。そのままねじ切ってしまえ!」

怒りのあまり、めちゃめちゃ不条理なことを言い出す竜児。一昨日の田口の感動的な「守りたい」演説も水の泡である。竜児の許可をえて大河が春田の頬を逆方向にひねりあげる。

「あひゃひゃひゃひゃ」
「おう、こいつ笑ってやがる!」

顔も心も悪に売り飛ばしてしまった竜児が、まだ加虐がたりねぇとばかりに大河をけしかける。周囲にはまばらに生徒達が居るが、久々に見る手乗りタイガーの暴虐に目をそらし、関わりになるのを恐れてその場から足早に去っていく。
何しろ今回はオプションのヤンキー高須付きである。写メなんか撮ってぐずぐずしていたら何が起きるか知れたものじゃない。

もうちょっとで春田の頬が千切れるかな、というところで3−Dの反対側の扉が開いて白い人影が飛び出してきた。

「ちょっとちょっと、タイガーやめて!」
「いやぁっ!おばけ!」

廊下を駆けてきた和風お化けに、大河が春田を放り出して竜児にしがみつく。いきなり投げ捨てられた春田は「ぎゃふん!」と声を上げて廊下でバウンド。そのあたりでキューと伸びてしまった。

「きゃっ!春田君大丈夫?」

言葉と裏腹に、両足をきれいにそろえて座り込んで、つんつん人差し指でつついている幽霊。よく見ると香椎奈々子だ。

「おう、香椎じゃねえか。なにやってんだ?」
「高須君おひさしぶりー、タイガーも元気そうね!」

旧2−Cで二人の同級生だった奈々子が立ち上がって、癒し系全開の微笑みを投げかける。竜児にしがみついていた大河もようやく事態が飲み込めてきたようで、大きく息を吐く。

「ひさしぶり。って、何よその格好」
「ん?これ?幽霊よ」

そんなことは見ればわかる。

和風ど真ん中の死装束を着込み、頭には例の三角の布きれ。旧2−C公式美少女トリオの一角を担っていた香椎奈々子ともあろうものが、何をやっているのか。と、突っ込みたいところだが、正直いって破壊力はすさまじい。
さりげなく体の線を強調した死装束は、いっそけしからんと言ってやりたい。おまけに本人が美形なのが罪深い。こんな格好なのに、両手を前に垂らした古式ゆかしい幽霊のポーズで小首をかしげ、片足のつま先をトンと床で鳴らしながら

「どう、似合う?」

などと問う仕草は、間違いなくさみしい男の心臓を握りつぶすだろう。ねぇ、一緒にあの川渡りたいの、などと言われればサンデー読者の8割は二つ返事で三途の川へと飛び込むに違いない。

とは言え、

「『似合う?』じゃねぇよ!」

竜児には大河がいる。こんな事でごまかされはしない。

たぶん。

◇ ◇ ◇ ◇
258名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 08:17:18 ID:jtYBF2qP
規制?

朝から乙!GJ!
259君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/01(土) 08:26:05 ID:0SLBlPW3
>>232
いままでは投下出来るだけを一気に投下していたけど、この作品では話の切れ目を
もっと重視して投下するようにしたよ。
大河の説明が期待に添えたかどうかは知らない(w

>>233
最初はほとんど全員名無しっぽかったんだけど、やっぱキャラづけ出来ないんだよね。
3年でクラス活動書く、オリキャラ出さざるを得ない。すこし冒険だったけど、まぁまぁ
成功したと思う。

>>234
埋め込んだネタとか工夫した文体に感想を貰うと、ほんとに嬉しいよ。

>>246
舞台は幕張かな?間接キスネタで2828した。
「君と二人で」は全部書き上げてから投下しているから、楽だよ。投下する前に落ち着いて最後の推敲ができるのもメリット。
260高須君のチャカバナナ:2009/08/01(土) 10:29:27 ID:pHNsn9oF
初夏。篠付く雨が印象に残る雨の日に、一人の少女が歩道を進んでいる。
後ろには丸で拳銃でも突きつけられているような錯覚を覚える程の威圧感を放つ男が一人。
フィギュアの様に小さく、フランス人形を思い出させるような顔立ち。それとは正反対に、後ろの男は
傘を差して歩く少女の後姿を地獄から這い出た化け物のようなオーラを纏い、狂った凶眼で睨みつけている。
この二人の間に台詞と言えるような会話はなく、だんまりを決め込んでいる。家に着くにつれ、少女の顔は
どんどん怯えたような表情に変化していく。進める足は震え、傘の柄を掴む腕も小刻みに揺れている。
しかし後ろの男は少女とは違い、水溜りとひょいひょいと避けつつ前進する少女を睨みつけている。
「…………」
依然無言。少女の限界が突破しかけたとき、ようやく古い二階建ての建物に着く。
門は崩れかかり、木は萎えかかり、二階への役目を果たすかどうか心配な手すりも錆びれ切っている。
階段を上る毎に足元は軋み、耳に付く嫌な音を発する。勿論狭いため二人並んで上る事はできず、
前を歩いていた少女が先に進む事になる。外付けされた階段を覆い隠すようにできた屋根も役に立たず、
傘を閉じれば風と共にやってくる雨が二人を容赦なく濡らすため、傘は差したままだ。
もちろんすぐ後ろに付いていくと少女の傘から滴る水がズボンを濡らすため、少し距離を取る。
少女の短いスカートと、角度のキツいな階段なため、顔を上げると呆気なく少女の下着が目に入る。
しかし男は全く悪びれる様子はなく、先を行く少女の下着を目に焼きつけんばかりに凝視し続けた。
少女はそんな男の様子に気づく術もなく、カンカン、と高い音を立てて階段を上りきる。
そしてドアの前に付くと、軽い疲労感と共に男に手渡された鍵をドアノブに差し込む。ガチャリ、と古びれた音と
ともに開かれるお世辞にも綺麗だとは言えないドア。後ろ手に鍵を閉め、声を出す事もせず傘を畳んで適当に水を切り、
傘たてにしまう。シンクにある蛇口から一滴、また一滴と水が滴る。部屋の所々には軋み、家賃が5000円下がるだけで
大喜び、狂喜乱舞する程低家賃なこのボロアパートの主は少女にタオルを渡し、制服を拭いてシャワーで体を
清めるように言い渡す。少女は小さく相槌を打ち、顔を赤らめてお粗末な風呂場へと向かった。
男は制服をハンガーに掛け、水気をタオルで丁寧にふき取る。そして自室に入り普段着へと着替える。
普段着と言っても悪魔のコスプレや赤いYシャツにネクタイ…というような格好ではないのだが。
そして居間にあるティッシュと、机の中に仕舞ってある避妊具を枕元に置く。軽く自室を見渡し、埃がないか丹念に
調べ上げる。別にニトロやプルトニウムが隠されているわけではない。チェックが終わった所で、
少女が風呂場から出てきた。少女は風呂場に予め用意されたパジャマを着ている。男は少女に髪を乾かすように
言い、風呂場へと入っていく。20分ほどで風呂から上がり、少女が待つであろう自室へと向かう。
自室に入ると、床には先ほど着ていたパジャマや下着が乱雑に散らばっている。男はそれを畳むと、
毛布を引っ被り、顔を赤らめてこちらを見ている少女のいるベッドへ入っていく。
そして、少女は快楽の渦へと巻き込まれて行った…。

***

「で、筆者は何がしたかったワケ?何が伝えたかったワケ?バカなの、死ぬの?」
「壮大なギシアンを書こうと思ったら収拾がつかなくなったんだろ。察してやれ」
「ふぅん…。確かに台詞も無いしシチュやSSにするなら失敗作だよね」
「本人曰く、『眠れぬ夜を過ごして居たら閃いた。カッとなってやった。反省はしていない』との事だ」
「バッカじゃないの?これだから文才のないやつが書くとグダグダになるのよ。今後のいい薬だわ」
「まぁそう言うなよ。筆者もスレが過疎らないように、頑張ってるんだからさ。過疎は誰だっていやだろ?」
「そうだけど…」
「最近は◆fDszcniTtkさんの『君と二人で』が殆どだろ?勿論それだけって事はないし、他にも投下してくれている
人はたくさんいる。つかそれだけでも十分過ぎる程だ。でも、その内「ストォォーーップ!!もういい!もういいから!」…おう」
「まぁそう言うわけで、これからも、竜虎妄想スレ活性化に向けて日々精進しましょう。では!」
「またねん♪」「後日談…。『拳銃でも突きつけられているような錯覚』というのはマジだぜ。高須君のチャカバナナry」
「みのりん!?」「きゅしえだ!?」「チョコバナナではなくチャカ(拳銃)バナナ…なんつて。アデュー!」
261名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 12:35:04 ID:uk0ew45q
>>260
乙です!

いやこれはこれで新鮮。硬派な文体で、いつもの日常が展開されているのがなんかオモロイ
大河は怯えているように見えて、妄想炸裂中?!
262名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 13:55:42 ID:h4LKWM+J
>>227
『それが豊かさって言うものなのよ!』、っていい結びだわー
このスレもSS中心に進行するから文系の世界だよね
すべてのSSに豊かさあり

>>260
>「壮大なギシアンを書こうと思ったら収拾がつかなくなったんだろ。察してやれ」
『それがギシアンって言うものなのよ!』
263名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 14:19:53 ID:0SLBlPW3
>>260
> 「壮大なギシアンを書こうと思ったら収拾がつかなくなったんだろ。察してやれ」

最後の一行を「ギシギシアンアン」に変えるだけで、あら不思議!不条理こそがギシアンだ(w

>>262
3−Aに比べて3−Bの展示が弱かったのでこのスローガンにしたんだけど、結果的に3−Aを食ってしまった
気がする(w

短編一本投下。長編飽きた(待て)。
264お兄ちゃんのバックナンバー ◆fDszcniTtk :2009/08/01(土) 14:24:02 ID:0SLBlPW3
文化祭まで一週間を切った月曜日の放課後。

竜児のやり過ぎパワーのせいで展示方針の舵を切ることになった3−Aでは、リーダーを初めとする作業担当による口角泡を飛ばしながらの議論が始まっている。あれにするかこれにするかを話し合っているのではない。
どう進めるかを話し合っているのだ。既に一週間を切った今、好みや考えをベースとした議論など通用しないのだ。全員が同じ方向を向いていないと、絶対に間に合わない。

各班固まって議論をしているが、ここ医学班でも3人ほど固まってあーでもない、こーでもないと話している。

「いけない!」
「おう、どうした湯川」
「昨日お兄ちゃんのバックナンバー調べて面白そうなのをリストアップしといたんだ」
「おお、サンキュー。てか、なんで朝教えてくれなかったんだよ」
「だって、高須君怖かったし」
「…寝不足の顔くらい許してくれねぇか」
「あははー。これがリストね、リーダーミーティングの時に他の人にも見せてあげて」

湯川のまとめたリストは、医学、コンピュータ、数学、物理学に関して、分野ごとに過去一年ほどの記事を列挙してあった。

「いや、今渡しちまおう。他の班も喜ぶだろう。破っていいか?」
「いいよ」

レポート用紙に定規をあてて、竜児が分野ごとにリストを切り離していく。

「ん?この記事何だよ」
「ああ、それ。展示に関係ない分野なんだけどさ。なんかひっかかっちゃって。何がって言われると困るんだけど、関係ある気もするんだよね。高須君わかる?村瀬君はどう?」

村瀬が竜児の手元の紙を覗き込む。そこには、記事の見出しと書き出しの引用があった。

日経サイエンス 2009年09号 「1万年前に来た猫」C.A.ドリスコル pp60
  ネコ(イエネコ)は素っ気ないようで人懐こくもある。
  穏やかなようで獰猛、かわいらしくも腹立たしい。
  態度をころころ変える気まぐれな性格にもかかわらず、
  ネコは世界中でもっとも人気のあるペットだ

「…」
「ねぇ、展示に使えるかな」
「い、いや。使えねぇんじゃないかな」

そう答えながら竜児は、参考のために後で読んでおこうと思った。


(おしまい)
265 ◆fDszcniTtk :2009/08/01(土) 14:25:09 ID:0SLBlPW3
あ、書くの忘れたけど「君と二人で」の外伝ね。

266名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 14:25:52 ID:gzHQNbwj
なんかもう、◆fDszcniTtkさんの正体は幻の6巻没キャラ津田瀬宇(つだしょう・生徒会長候補の文系才女・僕っ娘)じゃないかって気がしてきたw
267名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 14:32:15 ID:5Mtg7iMQ
         *'``・* 。
        | ∋o   `*。
       ,。∩ノ゙゙゙゙ヽ   *
      + リl|*´∀`l| *。+゚<でも嘘なんだよ
      `*。 ヽ、  つ *゚*
       `・+。*・' ゚⊃ +゚
       ☆   ∪~ 。*゚
        `・+。*・
268名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 14:56:10 ID:jtYBF2qP
>>266
ゆゆぽの間違いだろう?
269774RR:2009/08/01(土) 15:06:30 ID:RWeKfkGJ
270名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 16:55:15 ID:pHNsn9oF
>>261
あざす!
いつもはもっと柔らかい文体なんだけど、今回は堅苦しくし過ぎた感がw
いやあ、最初は実は知らない男に追従されてるように思わせるように書く…って
考えてたんだけど、途中で無理と断念、書き直すのも面倒なのでそのままにしました。

>>262
大河さんマジ半端ねぇっす。

>>263
過度なエロは禁止だからそこまでの過程を書いて、その上でギシアンに…と。
流石ですね。あと、勝手に作中で氏の話題持ち出して申し訳ありませんでした。


今読み返したけどタイピングミスが多く見つかった。もう竜児の嫁に行く事はできないな
271名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 19:41:38 ID:HD+uZNAE
>>270
> 今読み返したけどタイピングミスが多く見つかった。もう竜児の嫁に行く事はできないな
なんで?
竜児は大河みたいな"ドジっ子"にやさしいよ。





後ろに嫌な気配が・・・・・・

ぎゃーあーーーー
272名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 20:27:04 ID:pHNsn9oF
おお、死んでしまうとは情けない
273名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/01(土) 23:37:03 ID:iNhZjBRL

>>259
今日も乙でした。
いつも思うのは、竜虎の周囲で引きまくるその他大勢の描写と、
不吉な未来予想図が笑える。見習いたいものです。


ところで、とらドラノ全テ。かなり満足度が高かったね。
だが惜しむらくは、>>14の挿絵が間に合わなかった事か。1ページ丸々使ってくれてよかったのに!
後は、可能性は低いと思ってたけど、PSP版の三つ子の名前に公式回答が無くて良かった。
274とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/08/02(日) 01:42:58 ID:sNandXNm
お題 「クッキー」「空」「亜美」



 川嶋亜美の前に差し出されたのは、甘い匂いを漂わせる袋。
「……何?」
「何って、クッキーだよ。ホワイトデーの」
「あたし、高須君にチョコあげてないわよね?」
「チョコは貰ってねえけど、川嶋には色々と世話になったしさ。
 勿論この程度で返せるとは思ってねえけどよ。まあ気持ちだ、気持ち」
「ふ〜ん、ま、くれるっていうなら貰っておきましょ。
 ……ねえ高須君、その……もう一ヶ月経ったわけだけどさ、大丈夫なの?」
「ん?ああ……正直寂しくないって言ったら嘘になるな。たまにだけど、会いたくてたまらなくなる時もある。
 だけど、みんなで幸せになるって決めたからさ。そのために大河も、同じ空の下で頑張ってることだし」
「ふうん……強いんだ」
「そうなのか?自分じゃよくわかんねえよ。あとはまあ、俺は竜で、大河は虎だからな」
「何よそれ?」
「昔から虎と竜は並び立つって決まってるだろ。だから、たとえ離れてたって俺達は互いの傍らにいるんだよ」
「虎と竜……ねえ。竜虎……は普通すぎるか……タイガー&ドラゴンじゃ長すぎだし……うん、『とらドラ』、かな」
「何がだ?」
「あんた達のことよ。とらとドラゴン、略して『とらドラ』」
「『とらドラ』……うん、『とらドラ』か。なんかいい感じだな、それ。
ありがとうな、川嶋。早速大河にも教えてやるよ」
「……ちょっと待って。今何て言った?」
「ん?大河にも教えてやるって」
「あんた達、会えないんじゃなかったの?」
「そりゃ会いには行けねえけど、けっこう頻繁にメールで連絡はしてるぞ?櫛枝か大河に聞いて無いか?」
「何よそれ!わざわざ心配してたあたしが馬鹿みたいじゃないの!
 あったまきた。あたしもタイガーにメールしてやる。高須君の手作りクッキー貰ったって羨ましがらせてやる」
「おう、よかったら今日だけじゃなくて、ちょくちょく大河にメールしてやってくれよ。きっと喜ぶからさ。
 ちなみに大河の分のクッキーは今日届くように郵送済みだ」
「……ホント、高須君ってば強くなったわ」
275名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 02:35:10 ID:AO6YydK+
>>274
あーみん、カワイソスw
竜児らしく、優しいけど、ちゃんと大河には先に言ってあるんだろうな?
276名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 05:49:38 ID:V4Hhyd69
あぁ〜竜児だなぁって感じw
277君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/02(日) 07:15:37 ID:gn4JAdMd
「まったく…お前等何してんだよ」
「何って?焼きそば屋だけど?」

怖くないから、大丈夫だから、目さえ閉じていれば大丈夫だからと言いくるめられて通された『VIPルーム』は確かに怖くなかった。暗幕で仕切った教室の一角。確かに、ここにはワカメも厚揚げもない。破れた提灯もない。
そのかわりに一面が開いていて、カウンター代わりの机がおいてある。

で、そのカウンターに肘をついて外からのぞき込みながらひまわりの花のような笑みを振りまいているのが

「高須君、こう見えてもおいらの焼きそばは108まであるぜ」

女子ソフトボール部を関東ベストエイトまで引っ張っていった豪腕の持ち主、櫛枝実乃梨である。ちなみに去年まで竜児の想い人だった。VIPルームの中には椅子と机がおいてあり、数人が机を囲んで焼きそばを食べることが出来るようになっている。
今いるのは竜児と大河、頬を腫らした春田と幽霊姿の奈々子、それにカウンターから陽気な笑顔を突き出している実乃梨。

「で、その焼きそば屋がどうして悲鳴に満ちあふれてるんだ?」

VIPルームの外には、絶叫やら笑い声が飛び交っており、とうてい焼きそばを食べる雰囲気ではない。先ほどまで静かだったのは、お化けを嫌がりそうな竜児と大河を中に引き込むため一時的に活動を停止していたのだとか。なんなんだよ。

「あら、新感覚焼きそばよ。楽しみながら味わってもらうの。うふふ」

と、昨年より一層色っぽく笑う奈々子。もういい。

「何を考えているのか、まったく理解できねぇ。とにかく、さっき大河に触った奴連れてこいよ」
「ちょ、高っちゃーん。あれ事故だから」
「そうそう、高須君落ち着いて」
「やだぜ高須君!暴力はよくないし、君のがらじゃないぜ!」

3方向から引き留めがはいる。が

「おう、暴力は俺のがらじゃねぇよ。だから大河の好きなようにさせる」

と、竜児はこれ以上考えられないほど苛烈な暴力的解決策を突きつける。それじゃ死人が、と3−Dの3人が息を呑む中、

「そうねぇ。竜児の前であんな恥かかされて。私もう生きていけないわ。だから、そいつ捕まえて殺しちゃいましょう」

体を覆う煙るような淡色の髪を震わせて、うつむいたまま大河が冥府の底から響くような声で呟く。ちなみに目ん球ひんむいて机をにらみつけている様子が手に取るように竜児から見えている。机がカタカタ揺れているのは、きっと大河が体を震わせているからだ。
机が恐ろしさに震えているとか、大河から何か恐ろしい物が出ていて揺らしているとか、そんなことではない。ないはず。
278君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/02(日) 07:16:35 ID:gn4JAdMd
「待って待って待って」
「ちょちょちょ」
「待ったーっ!」

久々のダウナーオーラを大河から浴びせられた3人が焦りまくり、言葉をつくして慰留にかかる。一方、だんだん面倒くさくなってきた竜児は

「じゃ、もういいよ。わかったわかった。大河、行こうぜ。村瀬に『3−Dが客の女の子に痴漢している』って言いに行こう」

切り上げにかかるが、この一言で、3人はさらなるパニック。

「お代官様ーっ、おねげぇでごぜーますだ。ご勘弁してくだせーっ」
「ねねね、高須君、落ち着こう?落ち着こう?」
「やべーよ、高っちゃんマジで切れちゃったよ。これじゃ福男釣れないよ!」

え?

VIPルームが静寂に支配される。全員が、息を呑んだ。ただし、考えている事はバラバラ。

竜児は春田をにらみながら、「今、変なこと言ったよな」と。
大河はアンニュイな瞳で、「もういいや、おなかすいちゃった」と。
実乃梨は目をそらしながら、「やべー」と。
美人幽霊は春田に笑顔を向けながら、「いっぺん、死んでみる?」と。
春田は、「やべーよ、高っちゃんマジで切れちゃったよ。これじゃ福男釣れないよ!」と。

しばしの沈黙のあと、

「おう、『福男釣る』ってどういう事だよ。3秒以内に説明しないと村瀬に言いつける。321」
「わーったよ。全部話すよ。カウント早いぜ高須君。あーもう。春田君どうしてくれるんだよ!」

竜児の脅迫に実乃梨が低い天井を見上げた。

◇ ◇ ◇ ◇
279君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/02(日) 07:17:17 ID:gn4JAdMd
実乃梨が白状したのは恐るべき計画だった。

3−Dは竜児達の国立選抜クラスのようなエリート集団ではない。とはいえ、大橋高校は進学校である。クラスメイトそれぞれに期する所がある。だから、是非とも欲しいのだ。福男の景品である狩野すみれのノート、通称『兄貴ノート』が。

天才にして努力家だった先代生徒会長狩野すみれは、自らが2年と半年かけて作り上げた授業のノート、疑問点と質問とその回答のまとめ、全試験の答案(すべて満点!)を昨年の福男レースに際し景品として与えたのだ。
ちなみに獲得したのは同着首位だった竜児と実乃梨。本来これは譲渡された物だったが、生徒会からの依頼で竜児と実乃梨は今年の福男レースの景品として返還することに応じた。今年からノートは学校の宝として福男レースの勝者に1年限りで貸与されることになる。

教科と時期さえ定めれば望みの知識が手に入るという、アレクサンドリアの図書館も裸足で逃げ出す驚異のオーパーツ、兄貴ノート。

このノートは是非欲しい。だけど入手するには福男レースで勝たなければならない。といっても、頼りの運動部はすでに引退済みであり、日々研鑽を重ねている後輩達と一騎打ちで勝てるとは思えない。昨年の優勝者の実乃梨は出場禁止。
だったら昨年のバレー部や陸上部のように手段を選ばない方法で…それは嫌だなぁ。特に自分の手を汚すところが。文化祭を前に3−Dの生徒達は手の届かないところにバナナをぶら下げたチンパンジーのように無力だった。

そこへ担任に内緒で企画を売り込んだのが櫛枝実乃梨である。3−Dには、香椎奈々子が居る。彼女がミスコンで1位を取ればいい。そうすれば福男が誰であれ、香椎奈々子はノートのコピーをねだることが出来るだろう(嫌だと言われたらダンスに応じない)。
コピー代は全員で分担すればいい(もちろん奈々子は只)。コピーは教室の備品とする。ちなみに兄貴ノートの総ページ数は数千に達する。昨年、竜児は実乃梨の分をコピーすることを考えたが、到底高校生のお小遣いでまかなえる額ではないため、あきらめた。

この企画を成立させるには、奈々子に是非とも勝ってもらわなければならない。そのために今日一日美人幽霊としてあまねく校内にその美貌をとどろかせる。生徒には『3−Dにすごい美人がいる!』とランダムなサクラメール(郵便局に怒られても知らない)を流す。
最初の一陣が来ればあとは口コミの連鎖反応で客は入るだろう。そして、審査員には激ウマ焼きそばを只で、しかも香椎奈々子と差し向かいでおしゃべりしながら食べて貰うためのVIPルームを用意。
すなわち、この悪魔のような計画こそ届かないバナナを手に入れるための棒であった。

文化祭クラス展示の名を借りた兄貴ノート強奪作戦。恐るべき計画である。

「お前は、アホだ」

得意満面に計画を披露した実乃梨に竜児が投げかけたのがこの言葉だった。これがかつては惚れ抜いていた女に言うセリフか、と後ろ指をさされそうだが

「てへへ、おいらもそう思うぜ」

実乃梨本人がそう思っている。

「ちょっと、竜児。みのりんに何て酷いこと言っているのよ」

割って入った大河がたしなめるが、竜児はどこ吹く風。決定的な事実を大河に突きつける。

「コピーしたけりゃ半年時間があったんだよ。先月まで櫛枝も所有者だったんだから」

ぱかん、と大河の口が開いた。全幅の信頼を置いていた親友がアホだったと知ってしまった瞬間だった。
280君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/02(日) 07:17:58 ID:gn4JAdMd
「いやー、おいらもうかつだったぜ。あんまりお勉強しない学校に進むつもりだから、ついつい全部高須君にあずけて忘れちゃったんだよね−」
「おう、おまけに3−Dの誰一人として、頼めばコピーさせてくれる奴がクラスに居ると気づかなかったんだからな」
「うふふふふ、うかつよねぇ」

うかつよねぇ、ではない。笑っている奈々子も、そのうかつな一人だ。

「まったく。それで、どうなんだ?集客のほうは」
「いえい!ばっちりだぜ。右肩上がりだよ。さっきから奈々子っちが出てないから客足にぶってるけど、またサクラメールばらまけば無問題さ!」

悪びれることなく笑顔を振りまく実乃梨に大河が頭を抱えている。いい加減クラス展示から離れたくなった竜児はため息をつきながら、

「だいたいこんな大騒ぎしなくても、ミスコンは香椎の優勝で鉄板じゃないのか?」

話をそちらに振る。

「うふふ、うれしい。高須君、私の事きれいって思ってくれてるんだ?」
「この状況でシナ作っても無駄だぞ。それはそれとして、前評判だとお前だろう」

事実、今年のミス大橋高校は3−Dの香椎だ、という声は男子生徒の間で強い。もともと美人な上に体型維持の努力を絶やさない。いくぶん陰のある落ち着いた立ち居振る舞いと、包容力のある笑顔が多くの男子生徒の心をとろかしている。
その上、香椎は昨年1年間、プロモデルの川嶋亜美の薫陶を受けてきたのだ。プロからもたらされる、コスメやエステといった情報がダイヤモンドの原石を短時間で磨き上げ、去年から一層美しさが増している。

「いやーそうなんだけどさー。対抗馬が麻耶様なんだよ」
「そうなのか。それにしても…」

竜児の好みは別として、香椎奈々子のほうが同じく2−Cの同級生であった木原麻耶より人気がある。木原麻耶は川嶋亜美が転校してくるまで、香椎奈々子と共に2−Cの公式美少女コンビの一翼を担っていた。落ち着いた和風美人の奈々子に対して、
麻耶は当世ギャル系美人と言えた。いずれアヤメかカキツバタ。二人とも甲乙付けがたい。しかし、この年代の寂しい少年達には、空想の恋人に優しさを求める傾向が強い。そうすると美の優劣は別として、奈々子のほうに人気がでるのが自然である。

だから、3−Eの麻耶を恐れる必要はないのだが…
「向こうはあーみんがバックに付いてんだよねぇ」
「おう、川嶋が後ろ盾か!」

ようやく竜児にも3−Dが麻耶を恐れる理由がわかってきた。

川嶋亜美はプロモデルだ。一学期の途中に大橋高校に転校してきた彼女は、最初に仲良くなった奈々子と麻耶に、コスメやエステの情報をいろいろ与えていた。おしゃれと男の子の視線に関心のある年頃である。きゃっきゃうふふと談笑する3人は、
いつも新しい化粧品やファッションの話をしていた。それが奈々子の容姿を磨いたのだ。同時期に奈々子と同じく亜美の薫陶を受け、今年も亜美と同じクラスの麻耶のポテンシャルがさらに高まっているだろうことは、想像に難くない。
そしてなにより、亜美はプロのスタイリストの技を関心を持って盗み見ており、昨年のミスコンでは大河に対して存分に腕を振るっていた。今年はその技が麻耶に施されて3−Dの前に立ちはだかるだろう。

◇ ◇ ◇ ◇ 
281君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/02(日) 07:18:44 ID:gn4JAdMd
「どうでもいい話だったな」

一通り聞き終わって竜児は背伸び。

「高っちゃん、ひでー」

ロン毛の批難など毛虫ほどにも怖くない。毛虫は怖いぞ。刺されたら痛いし化膿することもある。

「酷いのはお前達だ。俺たちには全然関係ないじゃねぇか。大河まで巻き込みやがって」
「われわれトライデントはすべてのミスコン関係者を懐柔するつもりなのだよ御神苗君。関係者は票の重みが違うからね」
「御神苗って誰だよ。だいたい俺も大河もミスコン関係者じゃないぞ」
「何言ってるのさ、大河はミスコンで」
「みのりん言っちゃだめ!」

え、なんだって?
あ、言っちゃまずかった?
あちゃー、ばれちゃった。
ん、なになに?

絶叫渦巻く『おばけ焼きそば』のVIPルームが再び静寂に包まれた。静けさや・岩に染み入る・蝉の声。お互いがお互いの顔を見て、次に何がおきるか固唾を呑んで見守っている。喧噪の中、沈黙を破ったのは竜児。

「大河、お前まさかミスコンに出場する気じゃ」
「違うの!」

大河は小さな手で待てのサイン。

「あーあ、ばれちゃった。仕方ないよね。竜児、びっくりさせようと思って黙ってたんだけどさ。今年のミスコンの司会、私なんだ」

急な話で竜児は声が出ない。シカイ?なんだそれ?わかった、石化の呪文の一種だろ…。

「朝、一緒に登校できなかったでしょ。あれ、クラスの準備もあったけど、ミスコン準備委員会の打ち合わせもあったんだよね」
「…そ、そうか」
「え、でも高須君本当に知らなかったの?」

美人幽霊が首をかしげる。お色気ぼくろが去年にまして破壊力たっぷり。

「おう、だって、ほら、発表なかったろ?司会」

竜児はそう答えるのだが

「何言ってんだよ高っちゃん、最初のLHRでちゃんと言ってたじゃん」

いや、お前とはクラスが違うし、と言い返そうと思ったところで、実乃梨もきょとんとしているのに気がつく。え?クラスが違うからって話だろ。え?
282君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/02(日) 07:19:26 ID:gn4JAdMd
「ごめん」

と、気まずそうに微笑みながら言ったのは大河。

「生徒会から司会の話が来たときにね、条件付けたの。『竜児に内緒なら』って」
「へ?」
「驚かそうって思って。だから3−Aは村瀬君が竜児に内緒でみんなに教えてるはずよ。他のクラスは知ってる。3−Bには共同企画が決まったときに『竜児には内緒だよ』って念押ししてるの」

えーーーーーーーーーっ!

「いやぁ、驚愕の展開だねぇ。おっちゃんも驚いちゃったよ。大河は高須君に誰かが話すかもって思わなかったのかい?」
「そこは賭けよね。でも竜児は部活やってないじゃない?学校が終わったら私とすぐ帰るし、クラス展示をするならクラスにずっと居るだろうから、ひょっとしたら最後まで気づかないかもって思ったの。途中でばれても悪いことしてるわけじゃないから困らないし、
もし最後まで行ったら竜児はきっとびっくりよ。惜しかったよね、もうちょっとで驚かせたのに」

大河は実に楽しそうに、驚くべきいたずら計画の全容を話してくれる。二週間の間、全校生徒が知っていることを竜児だけが知らずに居たのだ。竜児は一言声を出すのがやっと。

「いや、十分驚いてる」

がっくりと机に伏せる。ぜんぜん気づかなかった。

「竜児、怒ってる?」
「怒ってねぇけど…やられた…」

今日は驚かされることが多い。ともかく、驚きはしたが、大河は楽しそうだ。悪いニュースでないなら竜児はそれでいい。別に大河を怒らなければならない話でもない。もうちょっと、とりあえず体に力が入るようになるまでこうして机に突っ伏しておこうか。
あ、ミスコンが無事終わるか心配。

「いやぁ、大河のいたずらっ子ぶりにはびっくりだぜ。まさか生徒会を巻き込んでいたずら仕掛けるとは。高須君のぼけっぷりにも脱帽だけどね。学校中が大河の司会の話で持ちきりだったのにさぁ。高須君て大河以外に友達居ないのかい?友達作った方がいいぜ」

実乃梨がひまわりのような笑顔全開でニコニコしている。大河は気まずそうにエヘヘと笑っている。奈々子もおかしそうにウフフと笑っている。春田も頭悪そうにアハハァと笑っている。

しかしその時、ふと竜児の頭に小さな疑問が浮かんだ。

「なぁ、大河。司会って投票権あるのか?」
「え?投票券?貰ってないよ。あとでくれるのかな?」

今度は3−D側が凍り付いた。よりによって何のメリットもない人間を呼び込んで重大な機密を漏らしてしまったらしい。

お前たちは本当にアホだ。

◇ ◇ ◇ ◇
283君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/02(日) 07:27:17 ID:gn4JAdMd
>>266
へぇ、そんな設定があったんだ。ひょっとして生徒会と演劇部が放送枠で対決しているのはその辺の設定の名残かな。

>>270
どうぞどうぞ、こんなので良かったら作品でいじってよ。
ところで、竜児ってお嫁に貰うものじゃないの?(w

>>273
サンキュ!ゆゆぽの文体とか表現をまねしたいんだけど、そこそこ取り込んでなんとか形に出来たのはこのへんの
ドタバタ表現だけだったよ。楽しんで貰えて嬉しい!

>>274
携帯って、「引き離される悲恋」を殺したよなぁ(w
「なぜ黙って行っちまったんだよ」→携帯で聞こ!ってなるもん。アニメ版はその辺をうまく処理したと思う。
284名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 08:22:40 ID:LteihpQ/
朝刊乙!
毎回投下する度に思うんだけど区切りがうまいなぁ
週刊雑誌みたいに、「なんでここで終わるんだよ!」ってなるw


大河が司会→みんな見てる→俺嫉妬→俺キモチワルイ
285名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 09:25:10 ID:Dr3Im+uW
286◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g :2009/08/02(日) 19:18:18 ID:eM/KkjjT
おっと昨夜は寂しいとか言って言及し忘れ。
三題話、ぐっじょぶ。とってもナチュラル。スーパーナチュラル。それじゃ超常現象か。


全テは当然、購入。
64ページ。誌上ミスコンの大河のプロフが良くて、抜群に巧いライターだなーと思ってたのだけど、
ゆゆぽ本人だったと知って納得。
287名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 19:20:25 ID:DZwO+jcG
ん?アク禁解除されたのか
ぜひこっちにも直接投下希望ぬ
288◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g :2009/08/02(日) 19:21:02 ID:eM/KkjjT
あ……あれ? 本スレだおね? ここ? あれ? あれ?

か、書けた? ……やったああああぁぁぁ――――――っっっ!!
289名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 19:24:06 ID:DZwO+jcG
Style使ってメモ書き込み欄で書き込むときにはよくあること
人はそれを誤爆とも言う
290名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 19:33:02 ID:XMHXOo43
>>283
GJ!した。 竜児はよく怒らずに我慢したもんだ。
奈々子、色っぽいなー。やっぱいい立ち位置だよね。彼女は。
あと、みのりんはスプリガンまでカバーしてるのかい? そういえばどこかにサウザーもいたような・・・

えと、ちょっと長いんですがこの後投下してよろしいでしょうか?
291◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g :2009/08/02(日) 19:34:45 ID:eM/KkjjT
◆eaLbsriOasです。私、来ちゃった……みんなありがとう、ありがとう!
なんもないけどお礼がわりの蔵出し、アフターSS投下。デート中のようです。
***

・いいところ

「ねぇ竜児」
「なんだ、大河」
「『私のどこが好き?』とか彼氏に訊く女って、いるじゃん」
「ああ、いるな」
「謎よね。私、訊こうと思ったことないから。気が知れないったらないわ」
「おう、俺はおまえのそういうとこも好きだけどな」
「っ……あとさ、『私って綺麗?』とか、『私って可愛い?』とかも謎よね」
「ああ、まあ、不安なんじゃねえの。関係ないわな、おまえは綺麗だし、すげえ可愛いし」
「っ……あとさ、『私のこと好き?』とか『愛してる?』とか」
「ああ、まあそれも」
「ううん、いいの。わかったの、私。謎ぜんぶ解けた。大好きよ、竜児……」


・スーパーバカップル・オン・ザ・ストリート

「なんだ? どうした、何怒ってるんだ、大河?」
「は? 私、怒ってるように見える?」
「おう……まあ、そう見えるが」
「まったく正解よあんた。私と一緒にいるのになによ、さっきから、他の女ちらちら見て!」
「おう……」
「図星ね。すれ違うたびに見てるじゃないあんた、しかも綺麗なひとばっか!」
「うん、まあな」
「な、なんなの、なんなのそれ!? 謝るとか、ちょっとは言い訳するとか、無いわけ!?」
「綺麗なひとじゃねえと意味ねえんだよ」
「う、うぅ!? だ、だから、なんなのよおっ! わ、わ、私という、こっ、恋人がありならが!」
「ありながら、な……まあ、そうなんだよ。おまえがいるからなんだよ」
「な、なによそれ!? てか何!? なにあんた、さっきからずっとニヤニヤ余裕かまして!
 私、怒ってんのよ!? なんで平気なの!? オロオロとか、しないわけ!? く、くやしい……っ!」
「なんてかなあ……おまえ、全勝中なんだよ」
「……はあ!? ぜんしょうちゅう……?」
「おう、だからな、大勝利ってことだ」
「だいしょうり……?」
「なあ大河、俺たち歩いてて。けっこう綺麗なひと何人も通ってったよな?」
「う、うん……」
「でも、おまえの勝ち、おまえの勝ち、おまえの勝ちだ、大河」
「な、なにそれ……」
「おまえが一番綺麗だ、おまえが一番美人だ、おまえが一番可愛いんだよ、大河」
「は、はあ……」
「まあ、そうだろ? あきれるだろ? だからまあ、見比べて、ひとりでゲームしてたわけだ」
「あ、あきれるっていうか……あ、ほら! あそこ! 美人、カッコいい!」
「おう、どこだ……いや、おまえの勝ち」
「むぅ……あ、ほらほら、あそこ! スリムだし、素敵! モデルさんみたい!」
「んん? どれだ……ああ、いや、おまえの勝ち」
「えぇ……あ、ありがと……でもなんかくやしい……」
「アホか。なんでくやしい、逆だろ?」
「アホ言うな! み、見てなさいよ竜児……必ず私より綺麗なひと見つけてやるんだから……!」
「おかしいだろだから……てか、どうかなあ? 見つけられるものかねえ、おまえに」
「むっかあああ! 絶対見つけてやるもん! 絶対、絶対!」


***おしまい***
292◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g :2009/08/02(日) 19:37:01 ID:eM/KkjjT
>>290
おっと失礼しました。私のはこれで終わりなので。
ほいほい、どぞどぞ。
293名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 19:39:12 ID:XMHXOo43
>>292
あ、すいません。有難うございます。
竜児、そんなこったろうと思ったよ。 大河、もちつけ。
294とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/08/02(日) 19:46:04 ID:XMHXOo43
>>292
eaLbsriOasさん
せっかく本スレにいらしたのに、投下された直後ですいません


― 注意! ―

この先の話にはシリアスな展開が含まれています。
竜虎のつらいシチュエーションを好まない方は全力で回避してください。

前の投下時に「読み直してくるぜ」と行ってくださった方、本当にすいません m(_ _)m
やっぱりシリアス展開なのです。でも、そのままで終わることは絶対にありません。

空気読めない投下ですが、色々考えても仕方ないので10レス程、行かせて頂きます。

前スレ
>>535 の続き
295とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/08/02(日) 19:47:28 ID:XMHXOo43

[lost & found]

その時は唐突にやってきた。

大河の20才の誕生日。学生には忙しい季節、竜児も大河のところを訪ねる余裕は無く、
でも何か祝ってやりたくて、また皆で弁財天国に集まることになった。

亜美もモデルと学業の忙しい合間を縫って駆けつけ、実乃梨も合宿所から久々に大橋に帰って来た。
能登、春田、麻耶、奈々子の地元の面々も集まり、北村も遠くアメリカから早朝にもかかわらず、
ネットで参加。久しぶりに8人が揃う。あとは大河がオンラインになれば、全員集合だ。

「そろそろ…時間だよな」
「うん、タイガーまだ来ないね。なんか調子悪いのかな?」
セッティング役の能登と麻耶がいぶかしそうにネットをチェックしている。

「仕方ねぇな、俺ちょっと連絡してみるわ。ったく、大河のヤツ、なにやって…」
竜児がケータイのフリップを開いたその瞬間、その場にいる7人のケータイが一斉に鳴った。

「何? メール? 全員に?」
奈々子が素早くメールを開き、小さく驚きの声をあげた。
「えっ?」

見たことも無いフリーメールのアドレスから短く一言。恐らく全員宛に一斉に発信されたのだろう

件名:みんなへ
『ごめんなさい。今日は参加できなく
 なりました。みんなには当分会えな
 いと思います。会えるようになった
 ら、また連絡します。さようなら 
 逢坂大河』

「なんなの、これ?」麻耶が小さな悲鳴をあげた。
「本当にタイガーからなのか?」驚きながらも能登は冷静にニセモノの可能性を指摘する。
「ね、これ何かのドッキリでしょ? 櫛枝氏、タイガーと組んで、俺達驚かそうとしてんでしょ?」
春田が願いを込めて、実乃梨の方を振り返る。
「そんなこと…するわけないじゃん… こんな…」実乃梨は顔面蒼白のまま、食い入るように
ケータイの画面を見つめている。
「高須君! 固まってないで電話!」亜美が振り返って叫んだ。
「あ、あぁ…」竜児はようやく我に返り、着信履歴から大河の番号をリダイアルする。

“お掛けになった電話番号はお客様の都合によりお繋ぎすることができません… お掛けになった…”
事務的な音声が繰り返される。

嘘だろ? 昨日いや一昨日、この番号で大河と話したんだぞ? 何で繋がらないんだ…

その瞬間、竜児のケータイにだけ、メールの着信を知らせる音が鳴る。震える手でボタンを押すと、
さっきと同じアドレスから件名の無いメールが届いていた。

『竜児ごめんね。私、頑張るから。
 でも竜児にはもう会えない。だから
 私のことは忘れ 』

メールはそこで途切れていた。きっと、あと一文字を打てなかったんだろう。
無味乾燥なはずの画面から、大河の気持ちが見えるような気がした。
つい先日、イルミネーションの下で別れ際に大河と交わした言葉が甦る。

『頑張るから』『頑張れよな』
296とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/08/02(日) 19:49:36 ID:XMHXOo43

「間違いない… 大河から…だ…」
ケータイを持つ手が力なく垂れ下がり、竜児は呆然としたまま俯く。
頭の中が混乱し、何が起こったのか推測することすらできない。
「何? タイガーから? 見せなさいよ!」
亜美が竜児のケータイをひったくり、開かれたままのメールを見て悲鳴に似た声をあげる。
「嘘でしょう! なんで、こんな…」

7人とも呆然としていた。ある者は仲間と顔を見合わせ、ある者はまだ信じられないと
ケータイの画面をじっと見つめ、ある者は両手で顔を覆って泣き出した。
誰も、何も、言葉を発することができない…

その時、パソコンのスピーカーから頼もしい元生徒会長の声が響いてきた。
「おい、みんな! 聞こえるか! こっちでもメールは受信した。高須、これは本当に逢坂からか」
「え、あ、あぁ…」
「高須! しっかりしろ。こういう時こそ頭を使え!」

北村の叱責が有難かった。ようやく竜児の頭が動き始める。
「ああ。その後、同じアドレスから俺だけに送られて来たメールは、間違いなく大河の言葉だ」
「すまんがその内容、教えてもらっていいか?」
亜美から実乃梨の手に渡っていたケータイを取り戻して、竜児はメールを読み上げた。
途中で言葉が出なくなり、息をするのが苦しいぐらいに胸が詰まる。
「え?」「なに?」「うそっ?」文面を聞いた他の仲間達から驚きの声があがった。

「高須。何か思い当たることはあるか?」
「いや、一昨日にこの集まりのことを話した時はいつもと全く変わりなかった。昨日のメールでも」
「そうか… 逢坂は今日が20才の誕生日だよな。あと今、日本は夜の7時か」
「ああ。ひょっとしてきて、北村は何が起こったのか、見当がつくのか?」
「分からんな… 2つのメールを見る限りだが、逢坂は自分のことを探して欲しくないこと。そして高須、
お前に迷惑を掛けたくないと思ってること。そして、誰かに強制されたのではなく、自分の意志でメールを
送っていること、この3つは間違いないだろう」

「す、すごいな。そこまで…」
「分からんのは、そんなことが可能なのか? ということだ」
「北村、すまん。俺にも理解できるように説明してくれないか?」
「これは推測で、本当に可能なのかは分からんが、逢坂の性格とこれまでの状況を考えると、
1つだけ思い当たることがある」
「何だよ、早く言ってくれ」

パソコンの向こうで、北村は一旦言葉を切ると、大きく息を吸い込んでから一気に言った。

「……逢坂は父親の借金を背負わされた。きっと莫大な金額の。そして自らから家を出て行った」


竜児は目の前が真っ暗になり、生まれて初めてショックで倒れるのを経験しそうになった。
だが頭の中のほんの一隅で、嫌な予感があったのに目をつぶっていた、という意識が
竜児を踏みとどまらせる。北村の推測はきっと当たっているだろう、という直感とともに。

大河の前の父親に絡むゴタゴタは、親同士の話であり、竜児と大河には直接手の下しようの無いこと、
早く片付いてくれるのを待つだけ、他人事ではないが自分が動けることはない、そんな姿勢でいた。
それはあの人間にできるだけ関わりたくないという竜児の忌避感から来たものなのか、何千万円
という現実味の金銭のやりとりが、竜児をひるませたのか、とにかく自ら積極的に状況を把握し、
最前の道を探す行動を起こさなかったことは確かだ。

大河も母親という一応の保護者を得て、同じような気持ちだったかもしれない。竜児より近いところに
いたが「いつか」「もうすぐ」「大丈夫」を繰り返していた大河も、竜児と見方はそれほど変わって
いなかったのかもしれない。

しかし、それは降ってきた。2人の上に、何よりも大河のところに。
297名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 19:49:53 ID:7WGtUcyQ
支援
298とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/08/02(日) 19:52:41 ID:XMHXOo43
「俺は、なんで、もっと知ろうとしなかったんだろう… 動こうとしなかったんだろう… 
大河を守るために… 大河の母親の心配事って、これだったんだ… 何で気づかなかったんだ…
今からでも遅くない、考えろ、考えろ、考えろ、考えろ、考えろ…」

目を閉じると、小さく手を振りながら、イルミネーションの中を駈けていった大河の姿が、
ついさっき見たかのように浮かんでくる…

「亜美、いるか?」
「ここにいるよ」
幼馴染みの北村の呼びかけに、間髪入れず、亜美が答えた。
「お前の知り合いとか事務所のツテで、探偵とか興信所のようなところを知らないか?
できるだけ内密に人探しをしてくれるところだ」
「すぐには思い当たらないけど、パパとママにも聞いて探してみる。そんな話を聞いたことがあるから、
たぶんすぐ分かると思う」
「頼む」
「ハイッ! だったらさ、テレビの人探し番組とかに出た方が良くね?」
春田がとっておきの解決策を思いついたとばかりに手を挙げて言う。
「いや、タイガーは身を隠したいんだろ? だったらテレビで情報をバラ撒くのはマズイんじゃないのか」
能登が北村の話を受けて、状況を分析した。

「ああ、俺もそう思う。ただ信頼できる人には話してみていいんじゃないか。みんな、ケータイに
逢坂の画像を常に入れておいて、“この人なら”という相手には話してみてくれ。どこかで繋がるかもしれん」
「それいいな。タイガーなら容姿に特徴あるし、それも伝えよう。身長、髪型、体型、それぐらいなら
知らない人でも覚えてくれるかも。でもさりげなく、普通に“長い間会ってないなー”て感じでな」
「元2ーCのみんなにも話すってのはどうよ?」
「うーん、あんまり大ごとにして、善意でも予想外の行動を取られるのもなぁ・・・」
北村と能登、春田は他にも色々知恵を絞っているが、どれも竜児には物足りない気がしていた。
それを察したのか、親友が再びパソコンから声を掛けてくる。

「高須、そこにいるか? 探しに行くな、とは言わない。だけど、やるべきことを怠って、全てを
費やすのは逢坂が望むことじゃないぞ。まさかビラつくって、地元でバラ撒こうとか思ってないよな」
「大河を探す24の方法のうち、12番目にそれを考えた… テレビはその次の次だ」
「アホか。逆効果だ。本格的に探すのはプロに任せた方がいい。後の対処も含めてな。まずは自分の
ことをしっかりやるべきだ」
「そんなことで大河は帰ってくるのか?」
「信じろ。逢坂はいつか必ず帰って来る。お前が信じなくてどうすんだ!」

竜児は、北村の状況分析とリーダーシップ、素早い切り替え、そして強い意思をうらやましく思った。
もし自分が北村のように行動できていたら、大河はきっと…… そう思うと竜児は自分の顔面を
張り飛ばしたい気分だ。いや、もし周りに誰もいなかったら、きっとそうしていただろう。

「高須、そしてみんな、聞いてくれ。逢坂が、大切な友達がいなくなった。まずは連絡を待とう。
だが様子を見る限り、すぐには見つからない可能性が高い。だけど俺達にはやるべきことがある。
みんなで逢坂を探しまわることじゃない。足下をしっかり固めることだ。逢坂は消えてしまった
わけじゃない。いつか櫛枝が言ってたろ『見えなくても星はそこで輝いている』って。
俺達それぞれが精一杯輝くことができれば、逢坂にその存在を見せることができる。いつか逢坂も
俺達の姿に気づいて、ひょっこり帰って来るかもしれない。いやきっと来ると信じてる。
だからみんな、約束してくれ、みんなで輝こう、その準備をしよう。逢坂を再び迎えるために!」

女子たちがまだ呆然と俯くことしかできない中で、実乃梨1人が顔をあげ、きっぱりと言った。
「やるよ私は。信じる。大河はいつか必ず帰ってくるって。そのために全力で生きる。
もう一度必ず会える。このままで絶対に終わらせない」
その言葉を合図に全員が実乃梨を見て、隣にいる仲間を見て、互いに強く頷き合った。

―ドサッ、パリン!!― 
竜児の背後で、紙袋が落ちる音と、ガラス瓶の割れる音が同時に響いた。

「…大河ちゃん、いなく…なっちゃた…の? なんで?」
買い物に出ていた泰子が大きく目を見開き、店の戸口で呆然と立っていた。
299とらドラ!, again, ◆VW.RtTKf1E :2009/08/02(日) 19:54:07 ID:XMHXOo43

北村が「やめとけ」と言ったこと以外、思いつく限りのことを竜児はした。
遠く離れた自宅を訪ねていこうにも、住所すら知らない。知っているのは、大河のケータイ番号と
メールアドレスだけで、もはやどれも繋がらない。

まず、大河が入学するはずだった東京の私立大の教務課を訪ね、入試の合格者の記録を調べて、
住所を教えてくれるようお願いしたが、個人情報を理由に素気無く断られた。
「きっとこの凶悪ヅラ見て、ストーカーかなにかと勘違いしてんだろう…」
自分の顔の遺伝子が遺憾なく能力を発揮しているのを、この時ほど恨んだことはない。

クリスマスイブを共に過ごした大河の地元も再び訪ねた。イルミネーションを見上げた場所、
ホテルのラウンジ、大河が駈けていった地下鉄の駅、バスを降りたターミナル駅、
どこだか分からない住宅街、あてもなく歩き回ってみたが、ただ足が棒になっただけで
何の成果もなかった。

「こんなことで見つかれば、苦労はしない…か…」

そして、何も起こらない、変わらない日々が流れ出す……

月に一度、亜美が依頼した興信所から報告が入った。最初の数回は何か進展を期待したが、
片手を越える頃には「どうせ駄目だろう…」とすっかり気持ちを抑え込むようになっていた。
興信所の費用は、亜美が「自分が一番稼いでいるから」と他の誰にも払わせずにいる。

* * * * *

そんな中、ささやかな変化をある人物がもたらしてくれた。
ある休日の午後、ケータイから着信。番号は春田のだ。
「や、たかっちゃん、ちょい久しぶり。元気? あ、ごめん。元気じゃ、ないよね…」

「いや、いつまでもふさぎ込んでいるわけにいかないしな。勉強に没頭するようにしてる…」
「あのさ、ちょっと見てもらいたいものがあってさ、これからウチに来れない?」
「構わないけど、なんだ? 見てもらいたいものって」
「それは、来てもらってから、でさ」
春田はちょっと言いにくそうな感じ。

―大河に関わることだ―
竜児はそう直感すると着るものも構わず、春田の家に向かって駆け出した。

内装業を営んでいる春田の家は意外と広く、事務所の裏の倉庫には様々な道具や部材が
並べられている。その奥から、春田がダンボール箱を抱えて出てきた。

「ウチ、商売がこれじゃん。不動産屋とは付き合いが多い訳だけど、知り合いの所がコレ持って、
今朝訪ねてきたんだ」
見るとダンボールの蓋は開かれ、貼付けられた送付票がひらひらと風に揺れている。
「これ、数年前にタイガーが送った荷物みたいなんだけど…」
「えっ?」

竜児はダンボールを春田の手から奪うと、はがれそうな送付票を見た。
真っ先に飛び込んできた送り主の名前には、見慣れた、ちんまりとした文字で書かれた
“逢坂大河”の名前。送付先には竜児のアパートのすぐ近くの住所が記されている。

「なんか、一度送られてきた引っ越しの荷物を、すぐ送り返すように言われたんだけど、
この箱は別便だったので返すの忘れてたんだってさ… これって、例の時のことだよね」
「ああ、きっとそうだ…」
送付票の日付は大橋高校での卒業式の数日前。間違いない。

「昨日、不動産屋の子供が偶然見つけてうっかり開けちゃったらしいんだよ。ウチの高校の
生徒手帳が出てきてたから、送り主に心当たりはないか、長い間放置していて大騒ぎされる
ような相手かって、俺に聞きたかったらしい… まさかタイガーとはねぇ…」
300とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/08/02(日) 19:56:05 ID:XMHXOo43

竜児には、そんな春田の説明がほとんど耳に入っていない。
送付先の住所は、竜児のアパートから歩いて、ほんの5分のワンルームマンションだった。
もし大河が予定通り東京の大学に進学していたら、今もそこに住んでいることになる。
「あいつ、同じ市内だなんて、ウチからこんなに近い所だったなんて、一言も…」

『これから毎日チャーハン食べに来る!』
卒業式の翌日、大河が弁財天国で無邪気に語った言葉が甦る。
そして、前のクリスマスイブ、考え事をしていて聞いていなかった大河の言葉。
『私、竜児のところに間違って写真送ってなかった?、高校の時のアルバムとか…』

地面に下ろしたダンボール箱の中には、確かに大橋高校の生徒手帳が見える。思わず手に取って
開いてみると、中から1枚の写真がひらりと舞い落ちた。文化祭の2-Cのプロレスショー、
大河のマントを結んでやる竜児と、何かを叫ぶ大河の姿が映った、あの1枚。

「あいつ、まだここに入れて…」
ありえないことなのに、竜児はダンボール箱から大河の香りがほんのわずか、立ちのぼった気がした。
「あのドジ… って、これはあいつのせいじゃないよな…… 大河、今、どこっ… 何を…ぉぉ…」

大河と連絡が取れなくなってから、竜児は初めて泣いた。
写真を持ったまま崩れるように膝をつき、片手で目頭を覆うと、声を殺してひきつった呼吸を繰り返す。
目から溢れる熱い液体は、切れてしまった堰のようにもはや止めることができない…

「たかっ…ちゃん…」
そっと肩に置かれた春田の手の暖かさが、気遣いが、却って悲しみを倍加させた。

―ギュッ― 
その瞬間、痛みすら覚える程の強い力が肩に加わり、竜児は驚いて、春田の方を振り返る。
「悪いけど、たかっちゃんにはやることがあるよ。ほら、これ、タイガーんちの住所じゃない?」

発送元の欄には見たことも無い住所が記してある。大河の地元、そうだ、きっと自宅だ。
なんで真っ先に気づかない… 北村、やっぱ俺はアホだ。肝心のところが見えてねぇ… 
「行ってきなよ。きっと何か分かるよ…」
「春田…」
「たかっちゃんの泣き顔はさ、みんなには内緒にしとくからさ…」
「す、すまん、俺…」
「いいってば。みんな忘れてないよ、タイガーのこと。いつも気にしてるし」
「ああ、ありがとな。これ預かってもいいかな? 不動産屋には知り合いが持ってったって
言っておいてくれ」
「りょーかいっ! 言っとく」

竜児はダンボール箱を抱えると、春田の家に来た時と同じように走り出した。

その数日後、竜児は大河の自宅を訪ねることができた。
大河の今の父親に会い、北村の推測が間違っていなかったこと、大河と大河の母親、弟の3人共が
いなくなったことは分かったが、肝心の居場所は結局分からずじまいだった。
そして、父親との会話で、竜児はさらに苦い思いを噛み締めて、帰路につくことになるのだった。
301とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/08/02(日) 19:58:08 ID:XMHXOo43

再び、変化の無い日々が始まる一方で、北村が呼びかけた約束の通り、仲間達は自ら輝くべく、
頑張りを見せていく。特に実乃梨、亜美の努力と活躍には鬼気迫るものがあった。

実乃梨は、ソフトボールの大学日本一チームのレギュラーになると共に、大学生では数少ない
日本代表のメンバーに選ばれた。実乃梨はついに長年の夢をかなえたのだ。
チームの中では小柄な方なので、もはやピッチャーは務められないが、シュアなバッティングと
広い守備範囲を誇るジャパンのセカンド、不動の1番打者として国際大会にも出場。
スポーツ紙では、普段はあどけない顔だが、打席に立つと鋭い打球で野手の間を容赦なく打ち抜く
「女イチロー」と取り上げられ、注目を集めた。

亜美は、モデル業を行いながら、元々考えていた映画女優としてデビュー。
最初は親の七光りと叩かれたものの、そんなノイズを黙らせる、巧みな感情表現、20才過ぎとは思えない、
存在感が注目された。特に「アクション!」の掛け声からわずか5秒で涙を零すことのできる演技力は、
いつしか亜美に「涙の女王」の異名を業界内で与えるようになっていた。
亜美はドラマやバラエティといったテレビには一切出ず、映画だけに出演。国内だけでなく、海外の
監督からも声を掛けられた。メジャーな作品より社会性、芸術性の高い作品に出演し、さらに評判を
高め、アジアの映画祭ではいくつかの新人賞を手にしたのだった。

他の仲間達も、2人に負けじと厳しい就職戦線を勝ち抜いて、無事大学を卒業、社会人となった。
能登は音楽系ではなく大手総合出版社に、春田は親と一緒に仕事を始め、麻耶は急成長のネット系企業に
奈々子は老舗の食品メーカーに就職。北村は予定通りハーバードのロースクールへと進学を果たした。

竜児は、大学を優秀な成績で卒業。宇宙への夢を実現できる日本で唯一の企業に就職した。

* * * * *

社会人1年目の研修を中心とした日々を無難にこなしつつ、気がつくと師走の声を聞く季節になっていた。
夜、いつもと変わらぬ自宅への帰途、竜児は恋人がかつて暮らしていたマンションの部屋を見上げる。
「…………」

そのまま視線を夜空に向けると、すっかり癖になった、星に向けての語りかけを行うのだった。
ただ、今日は珍しく、はるか海を越えたアメリカにいる親友が相手だった。
「なぁ北村、俺、そろそろ限界かも… 大河を探す24の方法の残り、試していいか…?」

* * * * *

暫く後、竜児がチラシの文面を書き上げつつあったある平日、仕事の最中にケータイが鳴り、
メールの受信を知らせた。
発信は川嶋亜美。件名には「急ぎの用」 文面は短く一言「今日、これから会えない?」だった。
社会人としてお互い忙しい身、こんな性急なメールは亜美にしては珍しい。きっと重大なことだという
予感を抱きつつ、メールをやり取りし、午後に学会のために訪れる大学での待ち合わせを約束した。
302とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/08/02(日) 19:59:58 ID:XMHXOo43

「あんたさー、タイガー放ったらかして、なに女といちゃいちゃしてんのよ!!」
サングラスを外しながら極悪の目つきで、川嶋亜美、その人が立っていた。

「川嶋! おい、いちゃいちゃなんかしてねーぞ、この人は研究室の先輩でこっちの大学院に
進んだから、学会のついでにちょっと挨拶に…」
いきなりケンカを売られた女性は、驚いて竜児の横から飛び退き、
「えっ?、川嶋亜美?! なんでこんなところに、まさか高須君の会えない彼女って?」

―ギロッ―
「あ、あ、ごめんなさい、じゃ高須君またね。教授にはさっきの件、頼んどくから」
「すいません、お願いします。あ、この馬鹿は彼女でも何でもないんで、気にしないでください」
「じゃっ、し、失礼しまーす」

「あーあ、事情を知らねえ一般人を怯えさせてどうすんだよ。評判落ちるぞ!」
「かんけーないもん、評判なんて。あんたが鼻の下伸ばしてっから、むかついたのよ」
「伸ばしてねぇよ。真面目な学問の話だ。あと”放ったらかし”なんて言っていいことと、悪いことが
あるぞ。それより、急ぎの用ってなんだ? なんか進展あったのか、あっちの方」
「興信所の方はさっぱり。だけど、映画のスタッフがタイガーに似た子を見たっていうのよ。つい3日前に」

“ドクン”
竜児の心臓が、亜美にも聞こえるかというぐらい、大きく跳ねた。身体中の血液が一瞬流れを止め、
そして、今度は猛烈な早さで体中をうねるように流れ出し、全身を駆け巡る。

―ずっと、ずっと、ずっと待ち望んでいた。誰かがその言葉を言ってくれるのを―

はやる気持ちを抑えつつ、竜児は慎重に、順番に亜美に尋ねた。
「大河の画像、見せたのか?」
「ほらコレ、私のケータイの待受。高校卒業してからずっとコレなんだ、機種変えても」
そこには、卒業式の夜に弁財天国に集まった、あの希望に満ちたひとときの写真があった。
真ん中には大河と竜児、囲むように7人の仲間達。亜美のケータイで撮って、皆に送ったものだ。

「打ち合わせの時、そのスタッフが隣にいたの。『人のケータイ覗き見すんじゃね』って、
ブン殴ろうと思ったら『真ん中の女の子に似た子をつい最近見た』っていうのよ」
「で、場所はどこなんだ? やっぱり自宅の方か?」
「それが全然違うところ。A県の○○市でドキュメントの撮影があって、夜に立ち寄った店で
見たらしいんだけど、場末のバーみたいな所だって」
そこは、東京から電車で2-3時間はかかる、ある地方の中核都市の近郊だった。

「そこで大河は何を・・・?」
「飲み物作って出したり、洗い物したりしてたらしいよ」
「あいつが? そんなリスキーなことを。あ、でも、いわゆる水商売みたいなのではないんだな?」
「ええ、ただのバー。店のマスターに『未成年を働かせていいのか?』ってからかったら、
20才は超えてるよ!って、言われたらしい。でも、その子はあまり話さず、黙々と働いているだけで、
客の前にはほとんど来なかったって」

想定していた最悪のケースの1つではなかったようで、竜児はホッと1つ息を吐く。

「ほら、これ、店の名前と地図。手書きでいい加減だけど、住所はネットで調べて確認した。
先に連絡すると逃げられるかもしれないから、店が開いている時間にいきなり行くのがいいと思うよ」
「俺、明日にでも行ってくる って、ダメか。どうしても仕事が抜けられねぇ。明日は課題の発表が
あるんだ・・・あ、でも明後日から研修場所が変わるんだ。俺が配属を希望している部署で、
きっと大河のいる所にも近いはず。今週一杯はずっとあっちだから、訪ねるチャンスはきっとある」

「あんたのことだから、仕事さぼって飛んでいくかと思った。うん、でも今は足下を固めた方がいい。
スタッフの話だと、タイガーらしき女の子が店をあがる時、他の店員から『また明日!』って
声掛けられてたらしいし、たぶんずっと働いてるんだと思う。私がすぐ行けたらいいんだけど、
ゴメン、今夜出発して海外でロケなんだ。さっき、この話聞いたから飛んできた」
「すまねぇな」
303とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/08/02(日) 20:02:23 ID:XMHXOo43

「結果、必ず連絡して… もしあいつだったら、私もすぐ帰国する」
「足下固めとけ、ってさっき自分で言ったろ? 大丈夫。もう絶対放さねえ」
「実乃梨ちゃんはどうする?」
「確か、社会人チームであっちの方に住んでいたよな?」
「ひょっとしたら、すごく近いかも…」
「一緒にいけたら、何かの時に力になってくれるかもしれないな。櫛枝もずっと心配してるし」
「じゃあ私、すぐ連絡とってみる。高須君はまだ仕事でしょ?」
「ああ、頼む」

* * * * *

翌日、気を抜くと大河のことで頭が一杯になりそうな自分を叱咤しつつ、なんとか発表をこなし、
研修チームの打ち上げを一次会で切り上げると、荷物をまとめて夜行バスに飛び乗った。

同期生達は、明日朝の新幹線で新たな研修場所に向かうが、竜児は少しでも交通費を浮かせて、
差額を貯めるため、適当な理由をつけて安いバスに乗ったのだ。
そして、深夜の高速道路でバスに揺られながら、1人でゆっくりと考えてみたいことがあった。

さほど混んでいない夜行バスに乗り、竜児は川のように流れる対向車線のヘッドライトと、一定のリズムで
窓の外を流れていくオレンジ色のナトリウム灯を見ることも無く、ただ視界に入れたまま、つぶやいた。
「本当に… 大河なのか…」

これまで有力と言える手がかりは何1つなかった。しかし今回は違う。
「大河に似た女の子」「未成年に見えるが20才は越えている」「ほとんど話さない」
やっと、やっと見つけた手がかり。縁もゆかりもないはずの土地で何をしているのか? 
もしかしたら別人かもしれない。でもそしたら、またやり直せばいいだけの話。
それより亜美のスタッフが語った言葉が気になる。まるで自分が直に聞いたように、
何度もそのフレーズが頭の中で繰り返されて離れない…

亜美のケータイの待受画面を見て、スタッフはこう言ったらしい。
「この子、こんな屈託のない笑顔見せるんだ。いや確かにキレイな子だったけど、なんか生気が
ないって言うか、そう、良くできたフランス人形のように、無表情だったんだよね…」

竜児は、春田が見つけてくれた住所で大河の自宅を訪ねた時の、父親との会話を思い出していた…
304とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/08/02(日) 20:04:55 ID:XMHXOo43

北村の推測どおり、大河は実の父親、逢坂陸郎の借金を背負わされていた。
20才の誕生日、連帯保証人として大河の名前が記された金銭消費貸借契約書を持って、自宅に
金融屋が取り立てにやってきた。勿論、そんな契約書に大河が名前を書いて、判を捺す筈がないので
偽造で無効なはずなのだが、避けがたい仕組みが用意されていたらしい。

そして、大河と大河の母親、弟の3人は、今の父親に迷惑を掛けないため家を離れた。
分かりやすく言うと“夜逃げ”だ。

“逢坂陸郎の借金の肩代わりをしてくれ”なんてことを、大河の今の父親に頼むのは全くの筋違いだと
分かっている。でも竜児には他に手段を思いつかなかった。

「お願いします! 大河を救ってやってください」
「…私だって、大河ちゃんは気の毒だと思っている。しかし世の中にはどうしようもないことがあるんだ」
「あなたは社長じゃないですか? 会社を経営されてるんですよね! 家もこんなに広くて立派だ。
全部は無理かもしれないけれど、いくらか払えないんですか? 奥さんと子供を取り戻すために。
大河もあなたのことを凄く感謝していました。家族としての居場所を作ってくれたって。
俺も今は学生ですが、就職したら一緒に返します」

「………君の気持ちは良く分かった。だが、君が働いてなんとかなるような額じゃない。
この家を売り払っても足りないだろう…」
「そんな…に…?」
「それに社長だから金持ちだと思うのは短絡的だ。私には親から受け継いだこの家と会社、従業員と
その家族を守らなきゃ行けない。君は私に会社をつぶして、彼らを路頭に迷わせろと言うのか?」
「だけど、今、頼れるのはあなたしか…」

「高須…竜児君といったね。ずいぶん頭がいいそうじゃないか? しかし、やはりまだ学生さんだな。
キミが言っていることは、ただお願いしてるだけだ。それでは人や物事を動かすことはできない。
恐らくこれ以上話しても話が噛み合うことは無いだろう」
「なんとか、もう一度、もう一度考え直してもらえませんか?」
「時間の無駄だから、帰ってくれないか。私も、ずっと平気でいられたわけじゃない。考えた。
悩んでいる。でも今は何も打つ手が無いんだ。だからこれ以上、私を乱さないでくれ」
「………」

「最後に一つ、忠告しておく。3人が巻き込まれているのは借金の問題だけじゃない。
性質の悪い連中が何か別のことで行方を追っているらしい。それに警察もな」
「性質の悪い連中? 警察? なんですか、それは?」
「私にも詳しいことは分からない。妻もふさぎ込むだけで詳しく話してくれることはなかった。
いずれにせよ、君の手に負えるような問題ではない、ということだ。悪いことは言わない。
君の勝手ではあるが、忘れた方がいいかもしれない。大河ちゃんのことは…」

「そんなこと、できるわけがないじゃないですか! あいつと俺は!!」

「もう一度言う。帰ってくれないか? これ以上は人を呼ぶよ。警察でも何でも」
「せめて居場所だけでも教えてもらえませんか?」
「わからない。これは本当だ。連絡も一切無い」
「そんな……」
305とらドラ!, again ◆VW.RtTKf1E :2009/08/02(日) 20:07:18 ID:XMHXOo43

あれから、自分は成長しただろうか。
今、振り返ると相手の立場、悩みも考えず、ただ工夫もなくお願いに行ったことが自分でも良く分かる。
だが一介の学生で、財産も力も世間に示す地位も何も無い自分には、他にどうしようもなかったことも事実だ。

竜児は作っていた大河捜索用のチラシに目を落とす。別にどこかでバラ撒こうなんて思っていない。
ただ、大河の今の父親に見せ、金融屋への連絡方法を教えてくれなければ、これをバラ撒くと脅すつもりだった。
3人の居所は知らなくても、金融屋の連絡先は必ず知っている筈だ。
そして、自分が交渉する。今は12月。奇跡が起こるとしたら今月しかない。そう思っていた所に
亜美からの連絡が来た。やっぱり12月はそういう月なんだ。

「まず大河を見つけよう。そして考えるんだ。きっと方法はある。このままで絶対に終わらせない」
いつか実乃梨が言ったことを竜児は繰り返す。

夜行バスはエンジン音をひと際高く上げながら、山間部のカーブを抜け、闇の中を西に向かって走っていった。

* * * * *

翌日、研修が終わると、竜児はバスと電車を乗り継いで、大河がいるはずの街に向かった。
途中、実乃梨から連絡があり、練習が長引いて、15分程遅れると連絡が入る。
はやる気持ちを抑えられない竜児は、実乃梨を待たずに先に店へ行くことを告げ、近くに来たらケータイに
連絡するようにと、実乃梨に話した。

電車を降り、駅を出ると大きなビルと整備されたロータリーが広がっている。
亜美から貰った地図によると、駅からそう遠くはないが、新しい商業エリアから外れた、
繁華街のはずれに店はあるらしい。

「“Lost & Found” ― 遺失物取扱所 か。 おかしな名前の店だな…」
そう竜児は独りごちたが、大河がそこにいるなら、文字通り“失ったものを取り戻す場所”になるはず
と思い直し、力が湧いてくるのを感じた。

「大河を見つけ出す。そして必ず連れ戻す」
強い決意を胸に宿し、竜児は地図に描かれた場所に向かって、歩き始めた。
306 ◆VW.RtTKf1E :2009/08/02(日) 20:10:46 ID:XMHXOo43
今日はここまでです。

>>297
支援、本当に有難うございましたぁ!


重い展開で本当にすいません… でもここから動き出します。
ようやく、最初に投下した導入部へと繋げることができました。
1ヶ月以上も掛かって、なにやってんだ、俺 orz
ちなみに法律 、民法は詳しくないので、大目に見て頂けると有難いです

一応、まとめ人さんが作ってくださったサイト、導入部のURLを貼っておきます。
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/index/SS2/578.html

まとめ人さんには、1回目の投下のあとの作者コメントまで付記していただき、
本当に有難うございます。すぐに気づいていたのですが、なかなか言えずにすいません。
各作品のタイトル付けといい、本当に編集センスのある方と思います。

つらい状態で置いておくのはいやなので、次は早く投下したいが…

307名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 20:16:26 ID:ktaek5+c
>>306
期待してるYO!!
308名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 21:14:24 ID:LteihpQ/
>>306
シリアスとノーマルの境目くらいかな。これはこれで面白い。
このスレ民なら批判する人もいないだろうしまったり続けてください。

続き楽しみにしてます。GJ!


避妊所のエロ大使!本スレ降臨おめでとうございます。
309名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 21:47:58 ID:U5+x+Chx
避妊所言うなエロ犬www
310名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 23:04:44 ID:7WGtUcyQ
>>306
お疲れ様でした。
離れ離れの切ない感じと、2-Cの面々との絆がよく描かれてたと思います。

落としたままにしておきたくない気持ちは良く分かるけど、
納得いくまでしっかり書いちゃって下さい。気長に待ってます。
311名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 23:14:52 ID:MBFnY5lN
>>306
> ちなみに法律 、民法は詳しくないので、大目に見て頂けると有難いです

俺も詳しくはないけど書くならちょっとは調べたほうがいいかも
展開ありきだけだとケータイ小説みたくなっちゃうよ


でもまあ生殺しは勘弁だw
早急に二人に幸せを!
312名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 23:51:02 ID:3VKzV243
エロパロで地雷踏んだ……
誰か、俺に応急処置をお願いします
313名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 23:54:54 ID:MBFnY5lN
エロパロはもはや地雷原の代名詞だな
314名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 23:56:13 ID:FbTEBs4e
>>306
乙です。

細かいこと言うと厳しくなっちゃいますけど、その辺のことを置いても
話に引き込まれますから、問題ないと思います。

辛かった分、ラストが素敵なことを信じてますので、続き待ってます。
315名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 00:01:19 ID:7WGtUcyQ
>>312
俺も踏んだ。どうすっかな、これ・・・
316名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 00:04:18 ID:tVo2w81G
ああ、アレか
あれは単純に竜虎フリークであることを抜きにしても地雷認定だわ
317名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 00:09:29 ID:mCLnbkj7
エロパロはまとめサイトで見る主義
318名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 00:14:56 ID:MA2TOp4S
スレを荒廃させる手っ取り早い方法:

「他のスレを悪く言う」

事実か否かに無関係。先方が荒れている、あるいは荒れた場合には、いい確率で飛び火してくる。
319名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 00:21:14 ID:YJbgsMBW
文句があるなら向こうでやれ

せっかくこっちに引きこもってるんだから
向こうの火種を持ち込まないでくれ
お願いだから

フラストレーションが発生したなら
そのエネルギーをハッピーな妄想に変換して
投下しろ
320名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 00:26:04 ID:+xSJaJHf
「りゅ(ry」


「た(ry」



ギシギシアンアン

321名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 00:39:19 ID:ObWoKW4H
>>317
荒れてくると高確率で更新しなくなってくるしなぁ
322名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 00:57:34 ID:0KkZBBhI
>>280
みのりん何やってんのw
でもここまで頑張って計画練ってるならミスコン3-Dに勝利して欲しいわ〜と思ったw

>>283
津田さんはとらドラノ全テに載ってた設定だね
結構面白い小ネタが多かったよ
ゆゆこ的にはぶっちぎりで体育祭を書いてみたかったとか
>ダンスで一人まったく違う動きをしている大河、リレーのバトンを他のチームの奴に渡してしまう大河、騎馬戦でエグいことになっている大河(略)
323名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 01:30:15 ID:mCLnbkj7
「R(ry」

「T(ry」



ギシギシアンアン
324名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 01:31:23 ID:Bug47gJy










ギシギシアンアン
325名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 01:46:42 ID:FB31yWGy
略しすぎwww
326名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 01:50:58 ID:ajcMg0sv
『時事ネタ』

「う〜ん……やっぱり大事なのはマニフェストか……」
「……こんの、エロバカ犬っ!」(ぶぅん!)
「うおっ!? た、大河!いきなり何だ!? どっから木刀とか!?」
「ま、魔乳フェチストとか!(ぶぉん!)あんたも!(ぶん!)やっぱり!(ぶん!)おっぱい星人かーっ!!(ぶおぅん!)」
「なんでそうなるーっ!?」


《それは大河の聞きそこまちがい》



『CMネタ』

♪た〜い、た〜い、大河〜
 されるとふにゃんふにゃん
 ふにゃんにゃにゃんふにゃん
 されるとふにゃんふにゃん
 ふにゃんにゃにゃん
 されると柔らか竜児のキス


《ロッテのFit's》 
327名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 02:23:54 ID:YJbgsMBW
328名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 03:59:35 ID:ajcMg0sv
>>327
これはいい竜虎(*´Д`)
329 ◆fDszcniTtk :2009/08/03(月) 06:38:52 ID:MA2TOp4S
おはよう。

「君と二人で」

続き投下だ。
330君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/03(月) 06:39:33 ID:MA2TOp4S
大河と二人でクレープを食べた。

大河と二人で焼きそばを食べた。

二人で美術部と書道部の作品展を眺め、

二人で吹奏楽部のコンサートに行った。

「クラシックなんて退屈じゃないかしら」

と、言っていた大河は、体育館一杯に広がる美しい音楽に目をきらきらさせたものだ。そしてたちどころに居眠りしてしまった。それの何が悪い?自分の肩に頭を預けて眠る恋人。そのあどけない寝顔を流れる一筋のよだれを拭ってやる以上に幸せな文化祭を竜児は想像できない。

そして、午後4時過ぎの

「文化祭の展示はこれで終了です。各クラスは、展示の片付けを始めてください」

放送を合図に3−Aのクラス展示は終了した。

「お疲れさん!」
「お疲れ様−!」

笑みを浮かべたクラスメイトの拍手が教室に満ちる。派手な興奮はなかったが、自分たちなりに充実した準備期間であり、自分たちなりに満足のいく展示だった。

よーし、撤収しよう。村瀬が声をかけ、教室のあちこちからおーっと声が上がる。一所懸命作った展示の紙がはずされ、クルクルと巻かれていく。ばりばりと暗幕を引っぱがすクラスメイトに、画鋲をひとつひとつ外せと竜児の罵声が飛ぶ。

「あ、そうだ。みんな打ち上げやるよね?」
「おお、いいねぇ。やろやろ」
「後夜祭の後だよな」
「当然!」
「かーっ、俺行けないよ〜」
「マジかよ」

せっかくの提案だったが、行けない奴もいた。少ない人数で短時間に力を合わせて展示を成功させたのだ。本当はみんなで行きたいのだが、高校生だ。夜遅くまで遊ぶのを許してくれない家もあれば、用のある家もあるだろう。

「行ける奴何人いる?」

村瀬の問いかけに、ぱらぱらと手が挙がる。ミスコン組も誘ってやろうぜ、と言う声が上がり、湯川の化粧で忙しい女子に携帯で連絡が飛ばされる。半分ちょいが参加できるとわかった。
331君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/03(月) 06:40:25 ID:MA2TOp4S
「結構居るね…よし、じゃ参加は14人…高須は来ないのか?」
「おう、行っていいのか?俺はまた、みんな俺抜きのほうが楽しいのかと思ったぜ。ミスコンの司会も教えてくれなかったしな」
「…」
「…」

ばれた?ばれた!一瞬気まずい沈黙が漂った後、教室中がひきつり笑いに包まれる。

「高須ぅ!怒るなって!」
「悪かった、な、な」
「悪気は無いんだよ、許してくれよ!」
「ちょっとしたいたずらだよ。サプライズサプライズ」
「そうよそう、逢坂さん可愛いとこあるじゃないか」
「高須は三国一の幸せ者だな!いいなぁ!うらやましいなぁ」

顔色ひとつ変えずに無差別ひねくれ凶眼を打ちまくる竜児を、クラスメイトはびびりながらなだめる。

「高須、わるい!司会やってもらう条件だったんだよ。俺たちも、ほら、是非去年のミス大橋高校に司会やってもらいたかったし。逢坂さんは華があるよな!」

村瀬も脂汗を流しながらご機嫌取り。

「ははは、そうだよな。それで、打ち上げの店どこ?」

竜児の肩を抱いて笑顔を浮かべながら田口が無理矢理話をすりかえる。しかし、話を振られた村瀬は思案顔。あんまり知らないんだよ、と。

「高須んちどうだ?」
「おう、2DKに14人で押しかける気か」

なかなか乗ってくれない竜司にクラスメイトはまたもや胆を冷やす。

「高須のお袋さんのお好み焼き屋だよ!」

馬鹿だなぁ高須は。なんだと?日本語は正確に使いやがれ!と、ひとしきり応酬した後

「大丈夫だと思うぞ、8時くらいだよな」
「そんなもんだろ」

話がまとまる。

「おう、ちょっと待ってろよ」
332君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/03(月) 06:41:05 ID:MA2TOp4S
ぐわーっ、高須のお袋さん見たかったーっ!美人らしいぜ!と言う声を背に、携帯を取り出して電話を掛けようとする竜児。

だが、

「3−Bも呼んだらどうかな」

木下が遮る。

「ナイス・アイデア!」

いつもの木下いじり無しで賞賛の声が上がる。

実は、朝のリーダー招待発表会の後、リーダー連が集まって木下に「勘違いは俺たちだった」と詫びを入れている。頭をかきかき苦笑いしながらだったし、木下もいいよいいよと却って焦っていたくらいだから、それほどシリアスな詫びというわけではない。
だが、とにかく筋はとおした。だから、吉田さんの事で木下をいじる奴は、もう居ない。

ま、本当に付き合うことになったら冷やかしくらいはするだろう。何しろこの学校では虎とヤンキーのカップルさえ冷やかされる。

「よし、隣で聞いてこよう。高須も来てくれよ。そうだ。うちは人数が余ってるから何人か来てくれ。向こうの撤収を手伝おうよ。今度は断る暇を与えないようにしよう」

村瀬が声を掛け、数人があつまって3−Bへと押しかけた。

共同企画の成功で気心の知れた3−Bでは助っ人部隊も快く受け入れてもらえた。そして打ち上げに大喜びで賛同してくれた。参加者はやや少なくて12人。

「じゃ、店に電話するか…おう、泰子か。俺。8時から文化祭の打ち上げするんだ。うん、うん、そう。友達。30人くらい。いや、違う。わかってるだけで27人。少しくらい増えるだろ。おう、いけそうか。ちょっと待て…能登、引っ張るなよ。
あとにしろ…おう。大丈夫だ。おう。じゃ、8時な。30人。頼んだぞ。おーう。…………よし、大丈夫だ。8時から30人。閉店まで予約取れた…………どうした?」

村瀬が怪訝な顔をしているのに気づく。いや、村瀬だけじゃない。3−Bの全員が竜児のほうを…なんというか、どん引き?

「いやぁ、俺1,2年の時一緒のクラスだったから慣れてるつもりだったけどさ。チンピラだよ高須、チンピラ」

能登の一言に、ぷっと書記女史が吹き出して、それが合図だったように3−Bが笑い声に包まれる。腹筋の痛みに負けて座り込んだまま体をひくつかせている子がいる。吉田さんなんかパネルに頭を押しつけて、暗幕を握りしめながら体を震わせている。

「なんだよ」

不機嫌丸出しな竜児に

「高須」

と、村瀬が声をかける。

「相手、お母さんだよな。まるで…その、映画みたいだったぞ。情婦に電話するチンピラって感じで」

ちぇ、なんだよ。

◇ ◇ ◇ ◇
333君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/03(月) 06:41:47 ID:MA2TOp4S
ミスコン会場は去年と同じく体育館。3−Aの連中は撤収が早かったので早い者勝ちの椅子を占領できたはずだ。が、村瀬の

「下級生に譲ってやろうよ」

の一言で、ミスコン・サポートの女子の為の席取りを除いて、全員教室でだべりながら時間をつぶすことになった。村瀬は気配りが細やかだ。もし去年の生徒会長戦に北村が出馬しなかったら村瀬が会長だったはずだが、それでも生徒会は立派に運営されたろうな、と竜児は思う。

「湯川のコスチューム知ってる?」
「知らない。知ってる?」
「教えてくれないんだよ」

俺たち嫌われてるよな、と馬鹿話をする間に時間が経つ。

もうころあいだろう、という頃になって全員でぞろぞろ体育館に移動。当たり前のようにほぼ満席で3−Aは後ろの壁に張り付いて高見を決め込む。

「おう、座ってりゃいいのに」

同じく壁際に立っている書記女史を見て、竜児が驚く。

「私も生徒会だから立ってようって思って。見回りさぼってたけど」

ぺろり、と舌を出して笑う。へーそうですか。本当にそうですかね、うちのクラスの誰かさん待ってたんじゃないの?。と横に立つ書記女史の楽しそうな横顔を見ながら竜児は思うが、木下の件があったので改めてゲスの勘ぐりはしないことにする。

「おまたせしました。それでは、本年度ミス大橋高校コンテストを開催します」

アナウンスと共に照明が落とされ、ざわついていた体育館も真っ暗になり、ひそひそ話のボリュームが落ちていく。そして、効果音と共にステージの中央に3本のスポットライトが当てられると

「え?」
「おお」
「すげぇ」
「わははは、いーぞーっ!」

館内が歓声に包まれる。スポットライトの真ん中にはちんまい鎧武者が立っていた。大河、お前なにやってんだよ。

鎧兜は遠目によくわからないが、段ボール製だろう。大河のサイズなら端午の節句用の鎧兜が使えそうだが、あらゆる物を壊す大河に高価な鎧を着せる阿呆も居まい。しかしまぁ、作りが丁寧で細かいことは確かだ。ミスコンの準備委員会も
青春の血を燃やしていたであろうことは想像に難くない。

そして、兜には「逢」の前立。大河と同じ名前のドラマにひっかけたのだろう。金色の色紙でも貼っているのか、なかなかの出来だ。実際の所、担当者は「虎」としたかったに違いないが、恐ろしくて出来なかったって所か。猫に鈴、ってやつだ。

左手に軍配、右手にマイクを握った大河は両脚を開き、薄い胸を偉そうに張って顎をつんと突き出すおなじみのポーズ。そして生徒達の歓声を十分に浴びたと思ったか、やおら軍配を後ろに伸ばし、ロックンローラーの如く前傾姿勢になって、

「うぉぉぉぉるるるるららららぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!」

と、巻き舌で猛烈にひと吠え。

一瞬迫力に気圧された全校生徒が、呼応するように大歓声をあげる。

「去年のミス大橋高校、逢坂だ!今年は私が司会をやってやらぁーーーーーっ!」
「うぉーーーーーっ!」
334君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/03(月) 06:42:42 ID:MA2TOp4S
誰だよ、こんなシナリオ考えた奴は、と竜児は心の中で突っ込んでいる。考えようによっちゃ元気があっていいんだけど。

しかし、

「ニューヨークへ、行きたいかーーーーーっ!」

軍配を掲げる大河に

「…」

会場は沈黙。すべった?すべったよね、とひそひそ話が交わされる。ま、このギャグは滑ることが前提だ。滑ったら勝ちとも言える。

「ニューヨークへ、行きたいかーーーーーっ!」
「おお」

もう一度掲げられた軍配に、まばらに返事が起きる。あ、そうかとギャグの意味に気づいた奴もいるようだ。

「聞こえねぇぞごるらぁ!ニューヨークへ、行きたいかーーーーーっ!」
「うぉーーーっ!」

かなり大きな歓声が返る。しかし大河様は満足しない。

「聞こえねぇって言ってんだろうが!ニューヨークへ、行きたいかーーーーーっ!」
「うぉーーーーーーーーーーっ!」

振り上げられた軍配に、観客が吠え、足を踏みならす。体育館の中は耳をふさぎたくなる騒音レベル。いつも目障りな格闘ファンの連中だろうか、狂乱状態に陥っている奴等もいる。

「た、たーっ、タイイーッ!! タイーッ!!」
「うるっっっっっっっっっっっせぇぇぇーーーーーっ!」

逆ギレタイガーに会場は笑い声。

ああ、シナリオ書いた奴結構うまいぞと、竜児は前言撤回。

ちょっと狩野すみれ臭いから生徒会が書いたのかもしれない。くそ忙しい北村ってことはないだろうが、ひょっとしたら富家あたりか。トップバッターまでの話の枕で、大河は軍配を上げたら盛り上がれ、下げたら黙れという合図を体育館の生徒達にすり込んでいる。

人間様が虎に調教される場面に遭遇するとは考えもしなかった。

「採点ルールは去年と同じだ。詳しくは手元のパンフレット読みやがれ!よーし、トップバッター行くぞ。1−A、出て来ーーーーいっ!」

大河が軍配を掲げ、会場が拍手と歓声に包まれる。まぁいいけど、出場者に命令するミスコンの司会ってどうなんだよ。

◇ ◇ ◇ ◇
335君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/03(月) 06:43:41 ID:MA2TOp4S
大河の司会は、まあまあだった。

途中何度も舌を噛む上に、丁寧語とため口がぐちゃぐちゃに絡まっているのだ。公平に言って司会としては失格。だが、それを補ってあまりある気迫と、よく練り込まれたシナリオが会場の雰囲気を盛り上げる。きっとどこかにスクリプターも居るのだろう。
一致団結という奴か。全校生徒の視線を独占しようともくろんだ、どこかの腹黒モデルとは大違いだ。

一方、出場者の質も高い。1年生こそ「お帰りなさいませ、ご主人様」のオンパレードで、大河から「あんた等のメイド好きには爬虫類も裸足で逃げ出すわ」と鼻で笑われていた(爬虫類は裸足だよ!とのツッコミが会場から多数)が、2年生は違う。
昨年のメイドばかりだったミスコンの失敗から学び、今年は自分のクラスの姫をどれだけ差別化するか知恵を絞っている。コスプレから正当派の衣装まで色とりどりだ。ま、去年の大河のドレスにかなう奴は居ないけどな、と竜児は指名手配の笑顔。

惜しむらくは、ステージに立つ女の子の線が細いことか。せっかくみんなかわいいんだし。

線が細いのには仕方のない面もあって、大河を知らない1年生の女子は、お笑い担当だと思っていた司会の美貌に度肝を抜かれているし、2年生の女子は今だに手乗りタイガー伝説におびえている。

そんなこんなのうちに2年も終わる。次は3−Aの湯川だ。竜児達は壁際で顔を見合わせてワクワクしていた。3年はさすがに伝説におびえることはないだろう。大河と同じクラスだった旧2−Cの連中も散らばっていることだし、どの程度なら虎に変貌しないか、
おおよその目安がわかっているはずだ。そう言う意味では、大河が司会と決まった段階で、今年のミスコンは3年同志の争いに決定していたのかもしれない。湯川は楽しむといっていたが、どうする気だろうか。

「よーし次行ってみよう。3−A出て来ーーーーいっ!」

偉そうに掲げられる軍配に拍手と歓声があがり、そしてスポットライトに白い衣装が照しだされると、

「おおおお」

低いうなり声が挙がる。よし、湯川。つかみはばっちりだ。

「次の候補者は3−Aの湯川さんです」

アナウンスが入る。大河に全員の名前を覚えさせるのには無理がある。いや、頭はいいし暗記も得意なのだが、ドジだから何かの拍子に全部忘れるのが恐ろしいのだ。名前のコールをアナウンスにしたのは正解だろう。

「3−Aの湯川です。よろしくお願いします」

大河に突き出されたマイクに微笑んで自己紹介をする。

「この格好何?お医者さんごっこ?」

館内が笑いに包まれ、竜児が頭をかかえる。横のクラスメイトに肩の辺りをどやされる。ピーッと声を上げたい。ピーッと声を上げたい。が、湯川は動じない。

「いえ、これは実験室用の白衣です。3−Aのコンセプトは『理系セクシー』」
「おおおおおぉぉぉぉ」

髪をかき上げる湯川に、生徒達は思わず食い入るような視線。結構背の高い湯川は年齢不相応な程白衣が似合っていて見栄えがする。きっとあの白衣をお兄ちゃんから借りたのだろう。変な趣味じゃなくてよかったぜ、お兄ちゃん。
336君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/03(月) 06:44:51 ID:MA2TOp4S
理系の生徒達の中には、やがては白衣を着ることになる者も居る。大学には、あんなお姉さんが沢山居るのかもしれない。という身勝手な妄想が手に取るようにわかる。うまい。実にうまい。まったくポイントを理解していない大河は別として観客は引きつけた。

「ふーん。よくわからないけど。じゃ、なにかアピールしてみてください」

べらぼうに居丈高な大河の司会に微笑みながら、

「それでは、試験管の早抜きを」

と、言った刹那、両手をポケットに手を入れたかと思うと、もう、引き出していた。両手の指の間には3本の試験管がきれいに挟まれている。

「おおおおーーっ」
「やるなー」
「かっこいー」

ぱちぱちと拍手が広がる。3−Aの連中も笑顔で拍手を送る。しかし、やはり理解出来ない虎が約一頭。

「ねぇ、それ、何の役に立つの?」

ストレートに真顔で聞いて会場中を苦笑させ、竜児を引きつらせた。お前司会なんだからお世辞くらい言え!しかし、しかし、しかし、ここでも湯川はめげなかった。おそらく、予期していたのだろう。

「文系の逢坂さんにはわからないかもしれないけど、これが豊かさってものなのよ」

明らかに3年生の特定のクラスだけを狙ったギャグに、会場は当惑。それでも、ターゲットにされた3−A、3−Bは大喜び。大きな拍手がわき起こる。

「湯川ーーーっ」
「いいぞーっノーベル賞ーーっ!」
「湯川愛してるぞーーーーっ」

湯川は喝采を浴びて満足そうに微笑むと、白衣の裾を翻してスポットライトを去った。司会をへこました本日最初の出場者である。

◇ ◇ ◇ ◇
337君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/03(月) 06:45:32 ID:MA2TOp4S
「さぁ、気を取り直して次行ってみようか!3−B、出て来やがれ!」

気を取り直さなければならないのはお前だけだ。と、竜児にテレパシーで突っ込まれながら大河が軍配を上げる。

「次の候補者は3−Bの岸本さんです」

アナウンスと拍手に迎えられてスポットライトに現れたのは、びしっとスーツを着こなした生徒だった。きれいな足をタイトスカートが包み、履いているのはご意見無用のハイヒール。髪をアップにまとめ、顔には銀縁メガネ。白いブラウスにグレーの落ち着いたジャケット。
左腕にはクリップボードを抱いての登場である。

「秘書だ」
「秘書さんだ」

カツカツとヒールを鳴らしながら登場するだけでこちらも掴みはばっちり。

「3−Bの岸本です。よろしくお願いします」

ぱちぱちと拍手がわき起こる。3−Aの野郎共も盛大な拍手を送る。

「OLさん?」

またもやコンセプトを理解出来ない司会に会場が沸く。ここまでぼけられると、これはこれでありかもしれないと思ってしまう。

「いえ、秘書の岸本です。3−Bのコンセプトは、『知的な女』」

おおおおおと、またもや低い声が会場を包む。3−Aの女子も団結してよく頑張ったが、3−Bの女子は母数で勝る。おしゃれで真っ向勝負されると、こうなっちゃうよなぁと竜児は苦笑い。湯川、お前はよくやったよ。ほとんど全部一人でやったもんな。

「じゃ、なにかアピールしてみてください」
「はい、それでは逢坂社長の今日のスケジュールを確認させていただきます」
「へ、私?」

有無を言わさず司会を巻き込んだ。というか、大河は突然のアドリブに弱い。抵抗できずに引きずり込まれる。クラスメイトだけに大河の弱点を知り尽くした上で計画を練ったのか。おそるべし、3−B。
338君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/03(月) 06:46:13 ID:MA2TOp4S
戸惑う大河をよそに、主導権を掴んだ岸本さんは右手でメガネのつるを直し、クリップボードを見ながらスケジュールの確認に入る。

「10時からテレビ東京の社長と会談があります」
「ふむふむ」

実在の団体とは関係ありません!と会場にいる3−Bの生徒からフォローがはいり、笑い声がわき起こる。用意がいいな。

「2時から議員会館で小泉元総理と会談。今後の経済動向について意見を求められています」

ハイブローな会見相手に、手乗りタイガーすげぇー!と、あちこちから無責任な軽口が飛ぶ。会場は完全に岸本さんペース。

「7時からデートです」
「デート?」

色っぽい展開に観客は大喜び。一方の大河は顔を赤くしてうろたえ気味。

「はい。そのお姿ですと先方に失礼ですので、お召し換えを持って参りました。『I・LOVE・RYU』って感じで」

そう言うと大河に考える暇を与えず、兜の「逢」の前立に紙を一枚貼り付けてしまった。

紙には墨で黒々と『竜』の一文字。

どわははははは!と爆笑が館内に渦巻く。司会いじりやめろよ!と顔を真っ赤にしている竜児の横で書記女史が、

「逢坂さーん!高須君ここよーーーっ!」

と、やおら手を振る。

その声に全校生徒が一斉に振り返り、ニヤニヤ笑いを竜児に向けて一斉射撃。ふざけやがって。書記女史め、座らずに居たのはこれが目的だったのか。ひょっとして仲直りさせたのも、このネタの為か。畜生、もう女は信じねぇ。
竜児は逃げることも怒ることもできずに弁慶のごとく立ち往生。

「え、何?何貼ったの?あ、取れない。どうしよう竜児ぃ」

素に戻って口を滑らせる司会が、いっそう観客を喜ばせる。

◇ ◇ ◇ ◇
339名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 08:46:45 ID:nqC6L3LV
>>338
朝からお疲れさまです。所々の表現、後の展開への付箋が凄くうまくて尊敬します。
舞台での竜虎漫才に期待!

さて、投下直後で申し訳ないのですが、またまた眠れぬ夜をry収拾が付かなくなりギシギシry
って事で閃いた小ネタを一つ。携帯にネタがあと4つほどあるので、暇な時に書いていきます。
私の日常の8割は暇でできているので、随時書いていけると思います。
さて、心の少し弱い大河さんはどんな日曜日を過ごしているのでしょうか。

ぱちり、と大きな瞳を覆う瞼が開かれる。カーテンが朝日を遮り、暖かな光を朗らかに部屋へ通す。
近くの電線に停まる小鳥が、朝チュンを詩を歌うように爽やかな声を奏でている。
日本人の大半の人がこの瞬間を、「気持ち良い」と思わず呟きを漏らすだろうが、大河は違った。
理由は単純。竜児が居ない。セミのようにしがみ付いていた自分を温かく包み込んでくれていた体。体温が、鼓動が、
聞こえない。半身をもぎ取られたような喪失感に包まれ、枕を竜児と思い込み、抱きしめてリビングへ向かう。
とてとて、という擬音が似合う歩き方で少し歩くと、リビングと隔てるドアから、ふんふふーん♪と鼻歌を歌う声が
聞こえてくる。ほっと安堵して、ドアノブを回す。三白眼をトマトに向け、朝食を作っていた竜児が私に気づく。
「おう、お早う大河。よく眠れたか?」
私の気も知らないで。
「…うん。お早う、竜児」
それだけ言うと、包丁を持っていた竜児の腰に腕を回す。
「お、おい。危ないからあっちにいろよ」
なんて冷たい人。でも、それは私がドジをして怪我をしないよう庇うためだ。
それが判ると、だらしなく頬が緩む。
「なんで、居なくなっちゃうの」
緩んだ顔とは正反対な言葉。ついでにさっきの竜児の台詞とも噛みあっていない。
顔を上げて瞳をうるうるさせる私を、首を曲げて竜児はきょとん、と私を見つめていた。
「なんで、一人で勝手に行っちゃうの」
続けてもう一言。さぞかし意味不明な言葉だろう。でも、関係ない。
「それは…あいや、俺は居なくなったりしないぞ?」
それは大河だろ。そう言うのを寸前でつぐみ、安心するような言葉を掛ける。のだが…。
「うそ」
簡単に否定。
「えっと…俺、何かしたか?」
してないよ。でも、したよ。
「…朝起きたら隣に居ないんだもん」
ずっと抱きしめててくれたくせに。
「すまん。朝飯できたら起こそうと思ってたんだけど、その前に起きちゃったからさ」
ううん。竜児は何も悪くない。悪いのは、我侭な私。
いいよ、と答える代わりに、腕に力を込める。もう離れないで、と言わんばかりに。
「じゃあさ、朝飯食ったら弁当作ってピクニックに行こうぜ?電車で遠出でもしよう」
ぱぁぁ!と遠くから音声さんが擬音を付けてくれたと思わせるほど、顔を輝かせる。
「うん!行きたい!どこ行こっか!」
それはある、日曜の朝。とても幸せで、どこか切ない、幸せの1ページ。大事な大事な、1ページ。
340名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 09:19:27 ID:94aBC/0h
>>330-338
これは良いミスコン!2828した
341名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 10:34:54 ID:oQsbLw/8
鎧武者はかなり予想の斜め上だたwww
つーか、ミスコンのクオリティ高須!
342名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 22:14:46 ID:U5CyC/u5
>>338
相も変わらず、ですね。 これは楽しいミスコン!
ノリノリ大河、いいなー、やっぱ大河はこうでなくちゃ。
2人で文化祭を楽しみ、そして全校生徒にいじられる竜虎にも萌え。

> 人間様が虎に調教される場面に遭遇するとは考えもしなかった。
吹いた
次は麻耶と奈々子の一騎打ちか!

>>339
こういうさりげない話も好き。
343名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 23:53:49 ID:GcDelnnB
なんだろう・・・・
季節外れな筈なのに、ミスコン編でホーリーナイトが脳内再生された。

そして>>339では優しさの足音。
344名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 23:56:50 ID:r98nRtKE
>>339
GJ。そういうのをごまんと書いて頂きたい
345 ◆VW.RtTKf1E :2009/08/04(火) 00:09:54 ID:QK0O6vMu
>>307-308
>>310-311
>>314
感想下さった方、有難うございます。他に読んでくださった方々にも。
ちょっと不安でしたが、また頑張れそうです。
ここは読み手のレベルも高いので、一杯一杯なのがバレバレだと思いますが、
なんとか最後までたどり着きたいと思っています。
まだ話の途中なのに失礼しました。
346名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 00:21:33 ID:Hx2xgSw4
>>343
>そして>>339では優しさの足音。

思わず、iPodで再生しながら読み直してしまった。 イイネ!
ついでに、トントンとかグツグツとか、竜児が調理する音まで聞こえてきたぜ! 
347名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 00:39:06 ID:7rABXu11
大河「ねぇ、竜児ぃ。」
竜児「おぅ。」
大河「最近、いい作品ばかりでなかなかあれできないじゃない。」
竜児「あぁ、そうだなぁ。
   うめねたまで、GJな作品だしな。」
大河「で、で、竜児はどうなのよ。」
竜児「どうって、どういうことだよ。」
大河「あれよ、あれ。」
竜児「あれって?」
大河「・・・・・・」
竜児「おぃ。」
大河「バカ、鈍感、ゴミレーズンのエロ犬!!」

竜児「わかったよ。わかってるけどはずかしぃんだよ。
    しゃーねーなぁ」
大河「わかりゃいいのよ、わかりゃ。」







それでは、みなさんお手を拝借????

ギシアンギシアン
348名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 01:08:52 ID:A7Y45kwm

「ねぇ、竜児」
「おう?」
「今年の夏は暑くないわね」
「あぁ、なんか冷夏みたいだな」
「遺憾よね、夏はもっとこう、カーっと熱くないとつまらないじゃない」
「なんか、エルニーニョが原因らしいぜ。しょうがないだろ?」
「ふん!こうなったら自然の理すら越えてやるわっ!」
「いきなり何を言い出すんだ、おまえは」
「私たち二人で熱くさせてやればいいのよっ!」
「ま、まさか・・・」
「さぁ、竜児!いくわよっ!」
「やっぱりかーーっ!?」


ギシギシアンアン
349名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 01:12:14 ID:iu031MAe
「何こんな所硬くしてんの?」ニヤニヤ
「おう…お前のもカッチカチだぞ?しかも2つ…いや3つか?」


ギシギシアンアン
350名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 01:18:01 ID:7rABXu11
>>347です。

>>348
>>349
おぉ友よ。



ギジアンってほんっとに無駄だよねぇ。

他人の恋愛の
その小説の
その二次創作の
間に埋めるネタ。

何の生産性もない。。。。

でも、







それが豊かさってものなのよ!!

by 大河
(朝刊さんすみません・・・・・)
351名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 01:22:16 ID:8vD0SEej
ギシアンこそこのスレの本体であり骨格でありふんにゃら
352名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 01:51:39 ID:XVOU1hJz
「運動しないとすぐに身体が硬くなるよな」


「ああああああんた!そ、その、いいい言いたいことがああああるなら、はっきり言いなさいよ!!かかぁかかか硬くなってるねよね、そうなのよね!!?」


「た…いが?…………?!!っておい、やめろいきなりっっ!!!!」







ガバッ

ギシギシアンアン

353名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 03:14:38 ID:t2r3Gwz6


   ガッ
                         ギシ




           アン
354 ◆fDszcniTtk :2009/08/04(火) 06:35:54 ID:bKdWKEHm
ギシ…じゃなくて、投下するぞ〜〜
355君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/04(火) 06:36:34 ID:bKdWKEHm
ゆっくりと暗くなっていく校庭。

「おう、谷本。お前走る気か?」

ミスコンも無事終わり、福男レースをのんびり眺めようとゴール目指して歩いていた竜児は、ふと体操服姿のクラスメイトを見つけて声を掛けた。福男の参加は自由だ。が、昨年結構荒っぽいことになったので、受験を控えた3年生はほとんど参加しない。
参加するとしてもウケ狙いだろう。

ところが、どういう事か陸上部を引退したはずの谷本は上から下まで走る気満々の格好でいる。

「まぁな」

竜児の言葉を軽く流して、歩きながらも屈伸だの何だのと準備体操に余念がない。

「止めた方がいいんじゃないか?俺、去年走ったけど、結構荒っぽいぞ」

昨年優勝した竜司だが、いきなり引きずり倒されるわ、走路妨害されるわ散々だった。それでもあのときは大河に「俺が居る!」と教えてやりたさに必死だった。今年のミス大橋高校は大河じゃないのでどうでもいい。

「あ、お前まさか。木原狙いか」

竜児の顔がにぃっと凶悪にゆがむ。けけけ妨害してやる。と思っているようにしか見えないが、そうではない。おやおや、ここに小悪魔にたぶらかされた男が、と思っているのだ。

ミス大橋高校の栄冠は木原麻耶の頭上に輝いた。

ミスコンは3−Dの香椎奈々子の登場で観客の興奮がピークに達した。少々季節外れながら鮮やかな浴衣をまとって、しとやかな美しさを全面に押し出してきた奈々子。もともと身についているやわらかい物言いや身のこなしが浴衣とばっちりあって、包容力抜群。
美人お化けの噂を聞いて3−Eのクラス展示に押しかけた連中も多かったこともあり、体育館中の男子生徒の潜在的年上願望を呼び覚まして骨抜きにしてしまった。

一方、続いて登場した3−Eの木原麻耶はバリバリのモテ系カジュアル。カジュアルと言ってもブツがちがう。なにしろ上から下まで嫌みではない程度のブランド品でびしっと揃えてあるのだ。当然、ブツを持ち込んだのは川嶋亜美だろう。

しかし、本当の勝負どころはそこではなかった。身のこなしが完璧だったのだ。スポットライトが当たった瞬間から、腰に片手を当てたモデル立ち。自分の魅力を知りぬいた笑みを浮かべ、右に左に、チャームの魔法を振りまく。
そして、優雅さと若さの双方を兼ね備えた完璧な歩き方でステージ前方まで来ると、全校生徒が見守る中、大河のボケも突っ込みもすべて完璧にさばいて見せたのだ。

ミスコンへの出場を禁じられ、司会として全校生徒の賞賛の視線を浴びる喜びも封じられた川嶋亜美。その性悪腹黒モデルが文化祭に向けて全力で作り上げた自らの分身、それが木原麻耶だった。歩き方から笑顔の作り方、視線の持って行き方、
大河との想定されるやりとりから想定不能なやりとりまで、さぞかし厳しく指導したことだろう。亜美の執念にも似た努力は、奈々子が男子生徒の心に呼び覚ましたお姉さん願望を焼き尽くし、麻耶へと振り向かせるだけの力を持っていた。

大和撫子対当世美少女の頂上対決は審査を遅らせに遅らせ、ついに木原麻耶に軍配が上がった。ちなみに本当に大河が軍配を上げた。

あとでわざわざ「二位の香椎さんとは一票差だった」と付け加えられたことから、よほど集計で手間取ったことが察せられる。
356君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/04(火) 06:37:16 ID:bKdWKEHm
しかし、

「いやいや、そうじゃなくて」

と、笑いながら谷本は言葉を濁す。眉をひそめる竜児に

「高須、遺恨試合だよ」

と、声を掛けたのは柔道部の田口。

「遺恨試合?」

そう言われてもピンと来ない竜児に谷本が苦笑しながら

「本当に覚えてないんだな。高須、去年、あのあたりでお前をぶち抜いた中の一人が俺だ」

運動場の一角を指さしてみせる。

「おう、そうだったのか」

昨年、ゴール間際に設置された陸上部のトラップに引っかかり、トップを走っていた実乃梨とそれを追っていた竜児は痛恨の転倒を喫した。そのときに抜いていった3人のうち1人が谷本だったというのだ。

「遺恨と言っても高須がどうのなんて思ってないよ。ただ、今度はうまくボールをよけてやろうと思ってね」

にやりと笑う。3人のうち2人は実乃梨の剛速球に射抜かれてぶっ倒れていた。あれか。

「そうか、まぁ、怪我するなよ」
「ああ、サンキュー」

そう言葉を交わして見送る竜児は、ふと

「おい、田口。お前も遺恨試合か?」

と、体格のいい物理班のリーダーに声を掛ける。振り返った田口は、だが人の良さそうな柔らかい笑顔を浮かべて着ている制服を指す。

「さすがにこれじゃ無理だ。だけど谷本のサポートくらいはできるだろう」

俺はこんな話に弱くてな、と笑う。

ちょっとの間お互いの顔を見つめ合った。そして

「おう、そうか。おれもホームドラマとか友情とか弱いんだよ。ついでと言っちゃ何だが、結構悪巧みも利くんだ。ちょっと耳貸せ」

前科5犯の薄笑いで2人にひそひそ話を始める。

◇ ◇ ◇ ◇
357君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/04(火) 06:38:01 ID:bKdWKEHm
福男レースのスタート地点。もうまもなくスタートと言う時間になって、後ろに並ばずに進路方向から堂々とやってきた人影にブーイングが巻き起きる。

「おい並べよ!」
「後ろいけ馬鹿!」
「もう場所はねぇぞ」

しかし、威勢のよかった声は見る見る小さくなる。

「う、田口さん…」
「高須先輩…」

薄暗い夕暮れ、だんだんとはっきりしてきた3人組の両側は、屈強な体つきの男と、薄明のなかに目だけがぎらぎらと光る痩身の男だった。ついでながら、コース両脇の照明が下から照らすせいで、寄ってみると竜児の顔の怖さは普段の100%増しである。

「おう、確かにこれじゃフライングだ。悪ぃな、ちょっと下がってくれよ」

目の前の1年坊主の鼻先まで近づいてギンと睨むと、ひぃえええと声が上がる。分厚い壁のように密集している人垣が、眼光にぐいぐいと押されて下がる。『高須はヤンキーじゃない』というのは、試験に出る大橋高校用語、という本があれば必ず掲載されているような成句だ。
だが、人間の体は知識だけでは動かないらしい。喧嘩をすれば明らかに竜児より強いだろう体つきの後輩が、汗を垂らして後ずさる。

横目で見ていた田口は人のいい笑顔を浮かべながら

「ははは、高須と逢坂さんは敵に回したくないな。さてと、投げ飛ばされたいのは誰だ」

と、見回す。その一言で、最前列の下級生達がぐいと後退。竜児と田口の作った真空地帯の中、フロント・ロー中央に谷本が陣取ってアップを続ける。

「たた高須先輩、出場禁止でしょう!」

そうだ、そうだと抗議の声があがるが

「俺は『たたたかす』じゃねぇ!」
「ひぃっ!」

一声で制圧。

「出場禁止とは言われたが、走路妨害をするなとは言われてねぇんだよ。おい富家!」
「はいぃぃっ!」

スタート地点で笛を銜えて成り行きを見守っていた副生徒会長に声を飛ばす。

「去年、バスケ部と陸上部は処罰されたか?」

う、やべっと言う声が聞こえてくる。アップをしている谷本も苦笑。バスケ部と陸上部は昨年の福男レースでかなりあくどいトラップを仕掛けていた。おかげでレースは芸能人爆笑運動会のようだった。

「い、いえ、処罰されてません!」
「じゃぁ、ルール変わったか」

「いえ、狩野前会長が定めたとおり変わっていません!」
358君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/04(火) 06:38:42 ID:bKdWKEHm
あたりまえだ。ミスコンはともかく、福男レースはいかにも狩野すみれ好みのイベントだ。すみれ信者である北村の目が黒いうちはルールをいじらせないだろう。田口が人のいい笑顔を浮かべる。

「ははは、じゃぁ問題無いな。今年は3−Aが走路妨害をさせて貰おう」

夜叉か羅刹かといった表情で立っている竜児は、血が吹き出そうな鋭い視線で生徒を見回しながら独りごちる。お前等は『高須は怖くねぇ』と思ってるだろ。それは本当のことだけどな、俺にチンピラの血が流れているのも本当なんだよ。その血の恐ろしさを思い知りやがれ。
あのチンピラのおかげで泰子がどれほど苦労したか…あ、腹立ってきた。

何の罪もない高校生達と向き合いながら、竜児は脈絡無く怒りのボルテージを上げる。口許はゆがみ、目はつり上がってオゾン臭を撒き散らし、握りしめた拳がわなわなと震え始める。

竜児と同じくらい悪巧みが利く連中だろうか、スタート地点の異変に感づいた連中がゴールのあたりからばらばらと駆け出してスタート地点を目指す。しかし、時すでに遅し。

「お、おい生徒会!早く笛吹け」

このままでは状況は悪化するばかりと観念した生徒達が、富家幸太をせかした。

「は、はいっ!位置について!用意!」

ピーッと笛がなり、クラウチング姿勢から谷本がはじき出されるように飛び出した。その横で竜児が、こっそり体操服の名札を読んでいた最前列の下級生を

「西山っ!」

と、どなりつける。

「ひぃっ…うわぁぁぁ!」

びびって足がすくんだ可哀想な西山君は、後ろから押されて転倒。そのまま将棋倒しが起きて5,6人ほどが巻き込まれた。将棋倒しを避けようとしてコースを変えた連中が、もみ合いながらもたつく。
その間に谷本は校庭に設置された照明が作る回廊の中を、矢のように走り去っていく。やや遅れて好位置に陣取っていた連中が谷本に追いつこうと疾走していくが、いくらかのリードは確保できたようだ。

竜児はニヤリと笑って一言。

「計画通り」

さて、俺の仕事はおしまいだなと横を見ると、田口の方はさすが本物。ひっつかむまねをするだけであわてた下級生が蹴躓き、将棋倒しが起きる。田口と竜児をよけて駆け抜けていく生徒達は、さながら立木を避けて走るバッファローの群れ。

「高須、うまくいったな!」
「おう!」

去年と同じルールなら、あの先にもトラップはあるだろう。それを避けられるかどうかはわからないが、あとは谷本が何とかするさ。

「高っちゃーん」
「おう、春田」

バッファローの群れの最後尾あたりを走ってきた春田がゆっくりとした駆け足で笑いかけてきた。

「ずっこいよ高っちゃん!」
「あははは!木原狙いか?ノート狙いなのか?」

両方だよ!と笑う春田と交わしたハイタッチが校庭に響く。

◇ ◇ ◇ ◇
359 ◆fDszcniTtk :2009/08/04(火) 07:32:41 ID:bKdWKEHm
第三部、完!(待て)

まとめ人様、いつもお世話になってます。
次回まとめの際、次のようにしていただけると嬉しいです。

I >>30 から
II >>64 から
III >>204 から
IV >> 次回投下分から

気が向いたらで結構です。よろしくお願いします。


前回連投制限でコメントかけなかった。みんなサンキュー!

>>284
嫉妬しすぎ(w 大河は竜児の嫁。

>>290
竜児は理屈っぽいから、怒る理由がないときには怒らないんだよ。たぶん。小ネタ拾ってくれてうれしいねぇ。文化祭当日編には小ネタばらまいたのに反応少ないから落ち込んでたよ。

>>322
>みのりん何やってんのw
何って焼きそばだぜ(w

>>340
ミスコンなのか大河いじりなのかわからなくなった(w

>>341
鎧武者のアイデアはすぐに浮かんだよ。網タイツ女王様とかチャイナドレスとかは無理だし!


>>342
>> 人間様が虎に調教される場面に遭遇するとは考えもしなかった。
>吹いた
やった!俺が書くと大河がおとなしめになるので、今回は少しはじけてみたよ。

>>343
ちょ、その曲バッドエンドのBGMじゃ…
360名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 09:11:08 ID:rONT8ofs
炒飯じゃなくて、朝刊のひと、乙であります!
おかげで暑くてだるい夏の通勤も乗り切れる気がするよ
361 ◆odaAq0EgoE :2009/08/04(火) 09:49:24 ID:IWsok0Aa
あー・・・KYでスマン。続き書こうと思ってフォルダ漁ってたら、書きかけの奴見つけて・・・どーにも書きたくなったので書き上げた(苦笑)既に話数も忘れたクリスマスifネタなんだが、お付き合いくださると嬉しいw
362 ◆6jWDIfrXEol6 :2009/08/04(火) 10:02:20 ID:IWsok0Aa
「・・・竜児の傍に居られなくなる・・・それが・・・嫌・・・だったっ・・・!!」
零れ落ちる涙はそのままに、取るものもとりあえず、大河は夢中で駆け出した。
先程、送り出した竜児を追って。
自らの辿り着いた、唯一の答えに従って―――。

「クリスマスの夜に」
363名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 10:04:50 ID:tHes58jd
>>339です。

>>342
そう言って頂けるだけでおら幸せだぁ

>>343
試しに流しながら読んだけど…これは…。

>>344
あっはっは。いくらでもあるという訳じゃないんだ。でもありがとう。

>>346
俺には衣擦れや枕を抱く音まで聞こえた!かもしれない。

今日の分はまたあとで。

>>360
随分と久しぶりですね。
エンゲにSNOWに1話ifに咆哮に繋いだ手はそのままにって、どんだけ生殺しに…w

でも戻ってきて嬉しい。
SHIEN☆
364名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 12:01:30 ID:tHes58jd
◆odaAq0EgoE氏の投下どうなっているんだろう?
お先に失礼をば…。小ネタです。正直やっちゃった感がありますが、長文が苦手な方はスルーして下さい。
あと会話がねぇ!消すのもなんかMOTTAINAIので。お目汚し申し訳ありません。2レスです。


自分が求めた物は何も手に入らない。そう、ずっと昔から。本当は、あの時引越しなんかしたくなかった。
その学校にも一応話せる人はいたし、優しく接してくれる人もいた。でも、家族が家族なだけ私はそれを拒否し、
どうせ居なくなるなら、最初からいらない。そう拒絶し続けた。そして、話しかけてくれる人も見る見る減り、
丸一日誰とも話さないなんてザラになった。もう慣れた。表向きにはそう思い込み、でも心は真っ赤な血を流し続け、
毎日一人部屋に篭っていた。お手伝いさんが作る料理だけを頬張り、毎日中学へ通う。つまらない。
でも、そんなつまらない日常はある日突然終わった。あのクソ親父が、離れた土地にマンションを購入し、
荷物は見る見るまとめられ、私は熊のぬいぐるみを抱きしめてその光景を眺めていた。他人事のように。
でも、それでも私は構わなかった。そして引越し先で、みのりんに出会い、北村君に恋をして、竜児に出会った。
そして今、想い人である北村君と一緒に…という事にはならず、お互いの恋のサポートをしていた相方、竜児に
恋をした。北村君に抱いていたのは恋だとばかり思い込んでいた。でも実際は違った。北村君に向けられていた
のは、ただの憧れ。誰とでも向き合える、そんな彼に。でも、その偽の恋を成就させるために、犬として傍にいた
竜児に、本当の恋心を抱いた。そして私達はバレンタインのあの日、二人で逃避行を行った。簡単に言うと、駆け落ち。
恋の応援をさせていた奴の素性を知り、気持ちが傾いていく。普通の昼ドラで散々使い古されたようなネタだろう。
でも、私は構わない。私は、とてもロマンチックだと思う。私は竜児が好き。ううん、愛してる。でも、竜児はどうだろう。
我侭で、素直じゃなくて、アイスののべ棒みたいな身体。口も悪くて、すぐ罵声をしてしまう。
こんな女をずっと好きでいてくれるなんて、本人である私にも到底思えない。すぐに愛想を尽かせて離れて行くだろう。
そう思い続け、一人で悩み、苦しんで。そんな気もしらないで、と理不尽な罵声をも竜児は温かく包み込んでくれた。
大丈夫。ママから料理も洗濯もお裁縫もママから習っている。自分でも驚くほど覚えられて、竜児も褒めてくれる。
だから、大丈夫。竜児は私を捨てない。一人にしてどこかに行ったりしない。竜児は私を愛してくれている。
それは確信した。でも…もし、竜児に未練があったら?実乃梨に、私の親友みのりんに、まだ想いがあったら?
ある日突然、別れようなんて言われたら?私は、潔く身を引けるだろうか。みのりんと殴り合いの喧嘩になって
しまうかもしれない。誰かに突っ掛かってしまうかもしれない。もしかしたら、自害するかもしれない。
みのりんに限らず、ばかちーや色ボクロ、ギャル女に私と離れてしまった竜児のクラスメイトが、猛烈なアプローチを
掛けていたら?そしてその子に好意が及んでしまったら、私はどうなるだろう。多分、生きてはいけない。
少し前に、みのりんが私の気持ちを知るために、嘘をついてきた。「私、まだ高須君の事…好きなんだよね。…ねぇ。
大河、私も高須君の事、狙っていい?」彼女にとっては思いつきの、下らないいつもの冗談だったに過ぎない。
心ではそう思っていても、分かっていても、両手に拳を作ってしまった。今までにないくらいの目つきでみのりんを
睨みつけた私を、みのりんは冗談だって!なんて笑い飛ばしたのだ。あの日ほど、怖かった事はない。
元々みのりんと竜児は両思いだったはず。それが、私にはとても嬉しくて。友達が相思相愛の恋人なんて素敵。
そう思い続けていたのに、零れる涙の雫を止める術は、見つからなかった。
あの冗談をきっかけに、私の不安はむくむくと膨らんで行った。振られたら、どうしよう。そう考えるのだ。
竜児と致す時も、眠る時も、キスをする時も、登下校中も、私は竜児の想いを聴く。言って、と懇願する。
そうしないと自分が壊れちゃう。デート中に竜児の目があっちら、こっちらと動くのにも意識してしまう。
もちろん毎回聞く度に、竜児は「愛してる」と呟いてくれる。それがとても嬉しい。
でも、他の女の子と話す所を見るだけで、胸が張り裂けそうになる。
だから私は今日も尋ねるの。再会してから、殆ど毎日尋ねる質問を。しつこいぞ、と頭を小突かれるくらいしつこい質問を。
「ねえ竜児。竜児は私の事──」

* * *
365名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 12:02:13 ID:tHes58jd
「あーあ」
「おい」
「またやっちゃってくれたわね…何度言ったら分かるのかしら、このうすらハゲは。あれ程たらたら長文書くなって言ってるのに、
まだ懲りてないのかしら、この筆者。頭に虫でも沸いてるんじゃないの」
「曰く、『本当は狩野すみれを出すはずだった。でも予想外に長くなったのでパッツンしました』だってよ」
「www」
「やめろ!草生やすな!あと笑い方が気持ち悪い」
「だって、すみれ出すつもりでしたー、だって。そういう問題じゃなくてもっと会話を入れろと。回想なんていらないと。そう言ってるのに
まだあのバカ会長を出すつもりだったんだって。笑う以外ないわ」
「メモ帳に会話とか入れてたけど結局使わなかったらしいな」
「で、そんな些細なことよりも内容よ。ナニコレ、アイスののべ棒って。自害って。ふざけてんの?」
「あぁ、少なからず、些細にも、健気にもあるのにな。おまけレベルで」
「これ終わったらこっち来なさい竜児」
「ハイ。で、肝心なのは自害ってのだな。絶望に暮れて自害なんてよくある話だが…そんなの大河に限ってないよな」
「あったりまえじゃない。そんなのする前にあんたの肢体を死体に変換してやるわよ」
「おう…できれば勘弁願いたいが、まぁ浮気なんてしねぇわな。大河もしてないよな?」
「………」
「…おい、大河。うそだろ?」
「実は私、他に好きなものができたの」
「おい…冗談だろ?」
「ほんと…。最近、チャーハンよりオムライスが好きになってきたの」
「よし次だ」
「フッ…流石はスルー検定2級持ちね。でもそろそろ筆者の指が限界よ」
「おう、右手の中指に感覚がねぇな。じゃあ終わりにしよう。では最後に大河一言」
「えぇ、私? んーと、んーと」
「ワクワク」
「ぬぐぐぐ…ないわ…見つからない。〆のいい言葉が、答えが見つからなぁい!」
「そんなに難しく考えるな。ほら、リラーックスリラーックス」
「うおおおお…ぬおおおお!あああ『ぷぅ〜♪』…あ?」
「…お前…お芋さんの恨みでも買ったのか?場違いすぎるだろってくっさ!」
「〇×◆○×△Ξ!!」
「おおう!目も当てられない姿に!では皆さん、お勉強もお仕事も、頑張ってください!では!」
366名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 12:18:45 ID:ghVAtkrw
367名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 13:33:53 ID:OKODnjdy
これはひどいwww
しんみりさせると見せかけていつもの二人で安心した
368名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 14:08:26 ID:Q94Mm05E
コスプレイヤー、マニア、おたく、占い師 募集!
ライブチャット「マニアカデミー」
369名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 16:15:46 ID:IWsok0Aa
#ラミリアです。投下しようとしたらいきなり仕事忙しくなるわ、久々だからトリのあとにタイトル入れて、別トリに変換されたりと・・・orz
てなわけで>>362はなしで仕切り直していきますw
次レスから投下します。ヨロシクお付き合いください☆ヽ(▽⌒*)
370クリスマスの夜に ◆odaAq0EgoE :2009/08/04(火) 16:17:31 ID:IWsok0Aa
「・・・竜児の傍に居られなくなる・・・それが・・・嫌・・・だったっ・・・!!」
零れ落ちる涙はそのままに、取るものもとりあえず、大河は夢中で駆け出した。
先程、送り出した竜児を追って。
自らの辿り着いた、唯一の答えに従って―――。

「クリスマスの夜に」


371クリスマスの夜に ◆odaAq0EgoE :2009/08/04(火) 16:19:24 ID:IWsok0Aa
「竜児・・・」
寒風吹き荒ぶ12月の外気。見える人影はない。
それでも大河は・・・
「竜児・・・りゅうじーーーーっ!!!」
喉が裂けんばかりにその名を呼んだ。
絶叫と見まがうばかりに声をあげた。
しかしその声は、空しく漆黒の夜空へと吸い込まれていくのみで。
「りゅうじ・・りゅうじぃ・・」
ぺたんと大河はその場に膝をついた。
裸足のまま飛び出した足の裏からは血が滲み出ていた。
しかしそれらのことなどどうでもいいほどに、大河は後悔していた。
「私・・・バカだ・・・」
こんなになるまで分からないなんて。
こんなになるまで気付かないなんて。
次々に溢れてくる涙と共に、暖かい記憶が溢れてくる。
その全てが、竜児との・・・思い出であった。
近くにいる道理など無いのに、いつでも一番近くにいてくれた。
嬉しい時も。
辛い時も。
悲しい時も。
ずっと・・・ずっと・・・。
「りゅ・・じいぃ・・・」
ギュッと目を閉じて大河は地面に手をついた。
その手にポタポタと涙が降り注ぐ。
でももう遅い。
私はまた取り返しのつかない事をしたんだ。
差し伸べられた手を振り払い、自らその手を離した。
バカだバカだバカだバカだ。
「私・・・バカだぁ・・・」
泣き崩れる大河の耳に、響く一つの声。
「なんでだよ?」
・・・え?


372クリスマスの夜に ◆odaAq0EgoE :2009/08/04(火) 16:23:05 ID:IWsok0Aa
聞こえた声に、驚いて目を見開いた。
聞こえるはずの無い声に、耳を疑った。
そしておそるおそるあげた顔が、呆けた様に固まった。
「・・・」
一瞬夢かと思った。
幻かと思った。
だってそこには・・・。
「・・なにか言えよ」
さっきまでと同じ、クマの着ぐるみを着た竜児が立っていた。
「・・・なんで居るの?」
「・・・」
思わず大河は呟いていた。
さっき送り出したはずだ。
さっき離したはずだ。
でもそこには紛れもなく竜児が居た。
気まずそうに、前髪をクリクリと弄くるいつもの癖のまま。
「・・・」
「・・・」
そのまま大河がなにも言わないで居るので、観念したように竜児が口を開く。
「お前が・・・」
「・・・」
「その・・・呼んでるような・・・気がして・・・」
バツの悪そうな顔で、竜児はぼぞぼぞと小さい声で呟いた。
明るければ耳まで真っ赤になっているのもばれただろう。
いや、今の大河にはそれはわからなかったかもしれない。
彼女もまた混乱していたから。
なに・・・?
呼んでる・・・私?
呼んでた・・・けど・・・。
届くはずない・・・ないのに・・・。
「・・・みのりんは?」
混乱したままにとりあえず声を出す大河。
「電話して謝った。なんか色々・・・全部」

竜児の言葉は、大河を更なる混乱に陥れる。
色々?色々って・・・なに?全部?
混乱した頭に飛び込んでくる単語。
その全てが理解不能だった。
だから大河は、素直にそのまま聞き返した。
「全部って・・・なに?」
「!!」
一瞬竜児がしまったという顔をした。

373クリスマスの夜に ◆odaAq0EgoE :2009/08/04(火) 16:26:36 ID:IWsok0Aa

しかし相変わらず思考停止している大河は、ただただキョトンと、その涙をたたえた大きな目でみつめてくるだけだ。
困ったように頭をガリガリと掻いた竜児だったが、覚悟を決めたように大河の目を真っ直ぐ見た。
「断ってきたんだ。今夜のことや、海でのこと。あと・・・体育館でのこと」
「・・・?」
「その・・・思わせぶりな態度をとったから・・・」
「!!」
そこまで聞いて、やっと大河も気がついた。
竜児が・・・実乃梨を諦めた事に。
バツが悪そうに顔をそむけた竜児に、大河は責めるように呟く。
「・・・どうして?」
「・・・」
大河には理解できなかった。
言っていることは理解できても、内容が理解できなかった
「どうして!?どうしてなの!?あんなに好きだったじゃない!!みのりんだって絶対あんたのこと好きなのに!!」
「大河・・・」
困ったような目を向ける竜児。
その目の前で大河は頭を抱えて、俯いていた。
「私の・・・所為?」
「・・・大河?」
そうして・・・紡ぎだされた言葉は、大河自身を切り裂く刃のようで。
「私が居るから・・・?私が竜児の傍に居るから・・・?」
「っ!なにを・・・!!」
「だって!!」
上げた顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。
その涙を拭うこともせず、大河は叫んだ。
「私がいたから竜児は私を追いかけてきた!私がいたからみのりんは私に遠慮した!私がいたから・・・竜児はみのりんの想いを・・・みのりんは竜児への想いを・・・閉じ込めた・・・」
「っ!?それは違う!!」
「違わない!!」
ブンブンと頭を振りながら、大河は狂ったように叫びつづけた。
「私はやっぱり居ちゃいけないんだ!私はずっと一人じゃなきゃいけないんだ!私が居るから皆壊れてく!
家族も!親友も!好きな人だって・・・!皆皆私が居る所為で・・・っ!!」
パシン。
「え?」
痛みを伴う大河の激白。
それを止めたのは・・・小さな破裂音だった。


374クリスマスの夜に ◆odaAq0EgoE :2009/08/04(火) 16:28:42 ID:IWsok0Aa

一瞬の沈黙。
ポカンと呆けたように硬直する大河。
聞こえたのは軽くはじけるような音だ。
感じるのは軽い頬への痛みだ。
今のは・・・なに?
「・・・わりぃ」
それは、竜児が大河の頬を叩いた音。
「こうでもしねーと・・・お前、話きかねーから」
本当に申し訳なさそうに、竜児はゆっくりと俯いた。
その姿を見ながら、大河は頬を押さえたまま動くことが出来なかった。
何も言わない大河に、竜児は一つの決意を胸に秘めて顔を上げた。
「・・・大河・・・」
ゆっくりと竜児が一歩、大河へと踏み出す。
反射的に大河の身体がビクリと震えて、一歩後ずさる。
一瞬躊躇うように、差し出された竜児の手が宙を泳ぐ。
しかし意を決したようにその手は、半ば強引に大河の二の腕を掴んだ。
「やっ・・・!」
目を瞑りその手を振り払おうとする大河。
瞬間。

ふわり。

全身が包み込まれる感覚に、大河の目が見開かれた。
視界を覆うのは闇ではない、竜児の身体の陰。
抱きしめられてるのだと気付くのに、幾許かの間が開いた。
「・・・もう離さねえ・・・」
「!?」
耳元に直接囁くような至近からの声に、大河の頬が瞬時に紅潮する。
「・・・俺は・・・もう2回・・・お前を一人にした・・・」
「・・・え?」
しかし聞こえてきた声の真剣さに、大河がもぞもぞと顔を無理矢理竜児に向けた。
「・・・な・・・」
「ごめん・・・本当にごめんな・・・」
視界に入ってきた竜児の顔。
思いの外近い顔に、しかしそれでも大河は驚きを隠せなかった。
「な・・・なんで・・・」
「ごめん・・・大河・・・ごめんな」
「なんで・・・あんたが泣いてるのよ?」
目の前でポロポロと辺り構わず涙を流す竜児に、大河はそれだけ言うのが精一杯だった。


375クリスマスの夜に ◆odaAq0EgoE :2009/08/04(火) 16:32:34 ID:IWsok0Aa

「・・・俺はお前を傷つけた・・・」
「!?」
「並び立つ・・・傍にいるなんて言ったのに・・・お前を傷つけて・・・泣かせて・・・」
「っ!?それは違う!!」
「いや違わねえ・・・」
グイと涙を乱暴に拭って、ズズッと鼻をすする。
そうしてから竜児は、改めて大河をみつめた。
「前はお前の親父の時」
「!」
「あん時俺は、お前のためなんていいながら・・・その実、お前が離れていくのが寂しかった・・・」
「!!」
「でもそれは俺のエゴだから・・・だから殊更お前に、親父のトコへいくように仕向けた。・・・あんな奴のところに・・・」
「・・・竜児・・・」
ギリッっと竜児の奥歯が音を立てる。
あの時のこと・・・自分の事を思い出して歯噛みしてるのが痛いほど伝わってくる。
無意識に大河の腕に力が篭る。
「・・・わりい」
それを感じ取って、竜児が身体から力を抜いた。
「とにかく・・・俺はあそこでお前を一人にした。それは間違いねえ」
「・・・」
「それなのに・・・俺は今日・・・・同じ間違いを犯した」
「!?」
「お前が一人でも頑張ってること・・・見ていてやれるのは俺だけなのに・・・俺はそれを怠った・・・」
「そ、そんなの別に・・・」
「誰かが見ていてくれてるから」
「え?」
「お前がこの間俺に言った言葉だ」
「竜児・・・」
ギュッと大河が唇を噛む。
まるで何かを我慢するかのように。
「俺は今のお前なら、見ていてくれる奴は他に居るって思ったんだ。先生も、泰子も、北村に川嶋・・・勿論・・・櫛枝も・・・」
「・・・」
実乃梨の名前に、ビクンと大河の身体が震える。
だが竜児は、抱きしめる手を緩めなかった
「・・・でも俺は間違った・・・」
「・・・」
「お前を見てるのは・・・俺だけだったはずなのに・・・」
「・・・竜児・・・」
その言葉に、知らず大河の目から涙が零れた。
こんなにも・・・こんなにも竜児が自分を思ってくれた事を感じて。
「・・・大河」
「・・・ん?」
「・・・好きだ」
「!!」

376クリスマスの夜に ◆odaAq0EgoE :2009/08/04(火) 16:34:25 ID:IWsok0Aa

驚いて顔をあげようとした。
しかしそれは覆いかかってきた竜児の手に妨げられる。
「ちょ、竜児!」
「わりい!か、顔は見ないでくれ!」
響いてくる必死な声音。
「お、俺さ・・・は、初めてだから・・・ここ告白とか・・・」
カタカタと震える感触。
それを感じながら、大河は・・・沈んでいく心を自覚していた。
「・・・大河?」
手の中で、力を失っていく愛しい人に、竜児は声をかけた。
それはそうだろう。
自らの全霊を絞って決行した告白だ。
ないがしろにされたらたまったもんじゃない。
「な、なんか言えよお前」
「・・・ごめんなさい・・・」
「・・・え?」
聞きなれない言葉に、竜児の身体が固まる。
「た、大河・・・?」
「ごめんなさい・・・ごめんなさいごめんなさい!!」
言いつつ大河が顔を上げた。
真っ赤になったその泣き顔で。
「ごめんなさい!竜児にそんなこと言わせて!ごめんなさい!私がこんなに弱い所為で!ごめんなさい・・・ご、ごめ・・・っ!」
ワンワンと泣きながら、大河は竜児に謝罪の言葉を連呼する。
全く状況がつかめないまま、竜児は、ただ大河だけは離すまいと手に力を込めた。
「・・・なんで、謝ってんだよ・・・お前・・・?」
「だ、だって・・・」
大河はその潤んだ目を彷徨わせて、結局俯いた。
「りゅ、竜児は・・・みのりんが好き・・・」
「!?」
何を言ってんだこいつ!?
今俺がお前に告白したのを・・・っ!!
「・・・でも・・・竜児は優しいから・・・」
そう言って、大河は無理矢理な泣き笑いの顔で竜児をみつめた。
「・・・私に同情して・・・そう言っちゃったんだよね?・・・竜児は優しいから・・・」
瞬間、竜児の中で何かが切れた。

377クリスマスの夜に ◆odaAq0EgoE :2009/08/04(火) 16:37:23 ID:IWsok0Aa

「・・・大河・・・」
「え?」
呼ばれてあげた大河の顔。
その両頬に手を当てて竜児がみつめる。
「竜児・・・?」
「・・・」
呼びかけには答えない。
ただ・・・行動で示すのみだ。
「っ!」
不意に重ねられた・・・唇。
竜児は少し屈むと、不器用ながら自分のそれを大河へと重ねたのだった。
「ん・・・ふ・・・んむ!」
どんどんと、抵抗するように大河が竜児の胸を叩く。
しかし竜児はびくともせず、ただ、大河へと己の気持ちを注ぎつづける。
好きだ好きだ好きだ。
ただそれだけを。
「ん・・・ふあ、はあ・・・はあ・・・」
どれくらい経っただろう?
解放された大河は、ぐったりと竜児の胸の中に収まっていた。
「・・・どうよ?」
「・・・?」
「これでも・・・同情とか言うのかよ?」
「!?」
驚いてあげた目の前、竜児が照れたように顔を伏せていた。
「・・・俺は・・・大河が好きだ。これは俺の本心だ」
「りゅ・・・じ・・・」
伏せられたまま紡がれる告白。
その言葉一つ一つに込められた気持ち。
それを感じ、大河の瞳がまた雫を零した。
「俺は・・・これからもお前を見ていたい。お前の傍で・・・お前の笑顔の傍で・・・」
「・・・」
「お前は・・・どうしたい?」
「!」
そう言って、竜児は真っ直ぐに大河をみつめた。
その眼には一切の迷いはなかった。
一心に、大河をみつめていた。
その心・・想いを受けて、大河がボロボロと泣き出した。
「う・・ううぅ〜・・・ど、どごにもいっじゃ、やだよぅ〜・・・わ、わだじのぞばにいで・・・わだじのぞばにいでえぇぇぇぇっ!!」
そのままワンワンとなく大河を、竜児は優しく抱きしめつづけた。
語りかける言葉と共に。
「・・・俺は竜・・・」
「・・・!う、ん・・・」
「お前は・・・虎」
「っ!!」
「虎と竜は・・・昔から並び立つんだ」
「う・・・うん!!」
「だから俺は・・・これからもお前の傍に居つづける・・・。竜だけじゃねぇ、高須竜児として!おまえを愛する者として!!」
「っ!?りゅ・・・竜児いいいいいいい!!」
そうして二人は抱き合いつづけた。
いつまでもいつまでも・・・。
ゆっくりと振り出した、白い雪のみつめる聖なる夜に。
二人の心はその空を疾駆して、遥かな高みへと昇華する。
二人共に居続ける。
そのたった一つの、破られない誓いの許に。

END
378名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 16:44:47 ID:IWsok0Aa
以上です。

>>363
うおぉ・・・トリップ抽出されてバレてら・・・orz
書いてるうちに、だんだんと取り戻してきましたので、おいおいいきますw
379名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 17:38:35 ID:OKODnjdy
情熱的なクリスマスifだ

クリスマスifだけでご飯16合はいけるな
380名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 17:50:20 ID:rONT8ofs
>>379
大河でもそんなにおかわりしねぇよw
381名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 17:58:07 ID:KIZGAdLE
勘弁して!犬の散歩ならぬトラの散歩で村はパニック―遼寧省大連市
ttp://news.nifty.com/cs/world/phdetail/rcdc-20090802021/1.htm

タイトル見た瞬間にとらドラ!を連想した俺。
382名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 18:40:52 ID:iu031MAe
次スレシーズンかな?
383名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 18:47:24 ID:Kbuy5KWV
まだ後85KBもあるがな
400字詰め原稿用紙だと100枚以上?
384名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 19:10:04 ID:OKODnjdy
>>380
大河の食欲を甘くみてはならん

>>381
犬とトラで反応しちまったぜ
385名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 19:37:45 ID:gTdODk+I
>>377
GJした!おつです
386名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 21:18:53 ID:2mwKxjSX
久々なギシアンの方々GJ!
やっぱ竜虎スレにはコレが無くてはw

>>377
GJ!
熱いクリスマスいいねぇ


俺、「君と二人で」は原作読み終えてから読むんだ……
そんで、「again」は時間が出来てから一気読みするんだ……
だけど先にお二方にGJを!
387名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 21:20:52 ID:A7Y45kwm
>>359
朝刊乙でした、今日は竜児の方が本領発揮?ですね!

>>365
いいよーいいよー不安な大河心いいよー

>>378
GJでした。他の作品も気長に待ってます
388名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 22:01:23 ID:iu031MAe
◆odaA氏はトリップを変更した方がいいかも知れないな
悪用する人がいるとは思えないが誤爆した以上はなぁ。
かなりの名作を残してるだけに偽物が出ないか心配だ。
IDが変わらないうちにトリップ変更の通知をって自分勝手すぎるか…


ぬおおお
389名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 23:08:28 ID:7rABXu11
いやぁ;みなさん今日もいいしごとっぷりですなぁ。

>>378
原作10巻の、橋の上で、大河が竜児の告白を断るシーンを思い出したぜ。
(遠慮大好きの京都人としては、あのシーンだいすきですぇ。)
GJです。

>>364
この妄想も大好きですよ。
〆もばっちりっすよ。

>>359
朝刊さん、いつもGJです。
大河がいなくても。いつもおもしろいねぇ。


いやぁ。スレが活発なことはいいことです。
390 ◆6U1bthnhy6 :2009/08/04(火) 23:24:39 ID:IWsok0Aa
>>388さんありがとう。・・・あるかな、そんなこと?うーん・・・わかりました。お言葉有り難く頂いて、この後の投稿よりこちらのトリップで書かせて頂きます。
・・・しかし相変わらず、ネットに疎いな俺は・・・orz
391ラミリア・スカーレット ◆odaAq0EgoE :2009/08/04(火) 23:27:43 ID:43S8V9on
>>388
確かに別トリに変えた方がいいね
392名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 23:28:25 ID:43S8V9on
>>390
そういえば携帯で書いてるんだっけ?
393名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 23:28:53 ID:BIcHrf72
一瞬開くスレを板ごと間違ったかと思ったぜ
394名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/04(火) 23:40:17 ID:yOyjzyoB
>>350
> それが豊かさってものなのよ!!
ギシアンだけでなく、このスレ全体で言えそうだなー
良い言葉をくれた文豪氏と、豊かさをもたらしてくれたゆゆぽに乾杯!

>>365
こういうことを考えるときもあるかもね。でも自害って、って思ったら、次レスで吹いた。
いいな、お疲れ様会風。俺もやろっかな?

>>378
>>390
乙です。
告白に震える竜児が良かった。
オリジナルと、こっちとどちらが良かったんだろう?とか考えてしまう。
新トリップ、把握したぜ! 日付変わる前でヨカタ


395 ◆fDszcniTtk :2009/08/05(水) 01:07:24 ID:sAQKDSUP
明朝投下出来そうにないので今のうちに。
396君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/05(水) 01:08:42 ID:sAQKDSUP
キャンプファイアに火がともされる。

大橋高校文化祭の恒例行事である後夜祭を照らし出す灯りは、黒へと沈んでいく空に代わって生徒達の顔を優しい光で照らしだす。

向こうの方では、先ほどミス大橋高校の頭にティアラを乗せた福男が、勝者に授与された『ミスへのダンス申し込み』権を行使している。しかし、木原麻耶が上目遣いで微笑みながら腰をかがめて手を合わせている姿から察するに、
ダンスをするには兄貴ノートのコピーを取らせなければならないようだ。拒むとも思えないが、たとえ拒もうと思っても陸上部の2年生ごとき、バックに腹黒モデルが付いた麻耶の手管にかなうわけがない。

「谷本、残念だったな」
「いやいや、最高だった。走って良かったよ。最後に面白いイベントに参加出来た。やっぱり『同じ阿呆なら踊らにゃ損、損』だな」

残念ながら谷本は3位。今年は体育会で示し合わせて走路妨害をしていなかったらしく、妨害は事もあろうに全校生徒の手本となるべき3年生の選抜クラスによるもののみ。結局元気のいい1,2年生と真っ向勝負になった。ま、現役と元、では勝負にはならない。

後ろでひゅーひゅーっと声があがる。振り向くと

「おう」
「へぇ」
「ははは」

直立不動の木下がうつむき加減の吉田さんに何かを話しているところだった。竜児、谷本、田口はニヤニヤしながらそれを眺める。

「おい、あれってダンスの申し込みかな、それとも告白かな」
「告白はねぇだろう。ものごとには順番てものがある」
「木下はいろんな意味で読めない奴だぞ」
「いや、あいつは数学マニアだから手順を飛ばすようなエレガントじゃないまねはしないだろう」
「おっ」

木下が手を差し出した。吉田さんが、おずおずと手を伸ばす。2人の手がつながったところで歓声が上がる。

「あーあ」
「吉田さん、早まりすぎです。俺ちょっと冷やかしてくるよ」
「おい、よせ!」

田口が振り返ってひとの良さそうな笑みを浮かべる。

「俺は『いじらない』とは約束したが、『冷やかさない』とは言っていない」
「だよねー」
そう言って谷本が後を追う。

◇ ◇ ◇ ◇ 
397君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/05(水) 01:09:38 ID:sAQKDSUP
冷やかす、と言った割には田口達は少し離れて木下と吉田さんを楽しげに見ているだけだった。竜児はその様子をすがすがしい気分で見ている。今年の文化祭は楽しかった。遺恨が残らなかったな、と思う。苦い思いと消せない染みが残った去年の文化祭とは大違いだ。

ぽんと、肩を叩かれて振り返ると

「北村と和解したって?」

村瀬が笑っている。

「和解も何も、俺はあいつと喧嘩なんかしてねぇ」
「はは、やはりうちのクラスの総大将は器が違うね。大人物だ」
「よせ、誰が総大将だよ」

竜児は苦笑い。

一通りのイベントが終わると、北村は勝手に近寄ってきて、勝手に謝罪して、勝手に反省した後、勝手に握手して、じゃ、仕事があるからと去っていった。忙しい奴だ。照れもあるのだろう。木曜日には『こんなやり方は嫌いだ』と言っていたし、
竜児は竜児で生徒会室のガラス代を誰に払えばいいのか気にしている。だが、北村はそんなことを話す暇すら与えなかった。ま、月曜日に生徒会室に払いに行くか。その時にゆっくり話せばいい。

「自分の非を認める事のできる北村のほうが大人物だ」
「そういうことにしとこうか」

村瀬は、どちらでもいいというように微笑んで、勢いを増し始めたキャンプファイヤーを見ている。オレンジ色の炎の周囲で楽しそうにおしゃべりし、あるいは踊る生徒達を眺めながら、ふと、竜児は思った事を口にした。
398君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/05(水) 01:10:20 ID:sAQKDSUP
「なぁ、村瀬。文化祭どうだった?」
「文化祭?ああ、楽しかったよ。最高だった。みんな最初は乗り気じゃなかったけど、共同企画は審査員特別賞とったしな」
「学年主任が泣いてたって、本当か?」

噂によると、3−Aと3−Bの共同企画を評するにあたって、学年主任は生徒の自主性と視野を広げようとした努力、そして文化と科学に対する個性的な洞察力に男泣きに泣いたという。どうも嘘くさい。

「男泣きにってのは嘘だろ。だけどさ」

と、村瀬は笑って言葉を継ぐ。

「ずいぶんうれしそうにしていたらしい」
「おう。そうか」

学年主任は生徒に甘い顔をしない大人の代表だ。それがうれしそうだったのなら、あながち俺たちがやったことも的外れじゃなかったな、と竜児は思う。大河の口から出任せもたいした物だ。

しかし。

竜児が聞きたいのは何となくそこではない。もっと違う話が聞きたい。文化祭がどうだったか、ではなくて。村瀬にとってどうだったか。それは有り体に言えば詮索趣味なのかもしれないが、振り返ってみると3−Aのクラス展示はそこから始まったようにも思える。
遠まわしに聞くくらい、いいだろう。

「なぁ、そうじゃなくて」

と、村瀬の顔を見、それから何気ないことのようにキャンプファイヤーに顔を向ける。竜児にできる、精一杯芝居がかった仕草。

「文化祭、どうだった」

村瀬は柔らかい笑みを顔にたたえたまま、しばらくキャンプファイヤーを見ていた。そして唐突に話をそらす。

「高須。文化祭のスローガン、覚えてる?」
「おう、なんだっけ」

聞きたかったことをはぐらかされて少し残念な竜児だが、それでも律儀に考える。仕方ない。遠回しに聞いて嫌がられるならそれ以上立ち入るような話じゃない。それに竜児の想像は単なる勘ぐりかもしれない。

それにしても、文化祭のスローガンなんか、毎年誰かが決めて、誰も注意を払わないまま消えていく。誰かスローガンにそったクラス展示をした奴が居るだろうか?スローガンを覚えている奴のほうが少ないだろう。
399君と二人で ◆fDszcniTtk :2009/08/05(水) 01:11:11 ID:sAQKDSUP
「たしか、『世界が一変する瞬間』か」
「そう、それ。俺が提案したんだよ」
「そうだったのか」

ちらりと村瀬を横目で見る。やっぱりこいつ、意外に積極的なのか。いつも静かにしているくせに、心の中には外見とは違う何かを隠し持っているのかもしれない。この2週間で感じたことを、あらためて思う。竜児だったらスローガン募集に応募するなど考えもしない。

「実は今年の生徒会活動方針を考えろって言われたときに思いついたんだけど、没食らってね。文化祭で再提案した」
「スローガンの再利用か。エコな生徒会だな、まったく」

竜児のこれは、軽い皮肉。せっかくいい話っぽかったのに、なんだよ。やっぱりはぐらかされただけか。

「ははは。いやいや、俺は結構本気だったよ」

世界が一変する瞬間を文化祭で見たいと思ったんだ。この文化祭で。と、村瀬は炎を見つめながら話す。でも、まだ見ていない。そう言った後、しばらく炎を見ていた。

「高須」
「おう」

村瀬は燃えさかる炎を見ながら大きく一呼吸し、そして

「ちょっと見てくる」

心持ち硬い表情になってキャンプファイヤーの方へと歩きだす。だけど2,3歩行ったところで振り返り、

「なぁ」
「ああ?」
「心臓を握られたまま喧嘩するって、どんな気分だ?」
「えっ………なんだよお前。藪から棒に」

微笑んで竜児を慌てさせると、もう一度歩き始めた。

その後ろ姿を見ながら、(ちぇっ、やっぱり俺の思った通りじゃないか)と独りごちて、竜児はほんの少し笑顔。村瀬はまっすぐキャンプファイヤーの方へ…………友達と話をする書記女史の方へと歩いて行った。

そして何かを話しかける。
そして書記女史が小さく頷いて村瀬のほうを向く。
そして話をしていた女の子達がその場を離れていく。

「さて」

体を伸ばして深呼吸する。心地よく冷えた空気が肺に満ちる。お姫様を探す時間だ。

◇ ◇ ◇ ◇ 
400朝刊 ◆fDszcniTtk :2009/08/05(水) 01:16:47 ID:sAQKDSUP
みんな、感想ありがとう

>>360
おお、電車の中で読んでる?通勤中携帯いじってる人多いね。

>>386
おま、それ死亡フラグ…

>>387
とらドラ!は高須竜児の物語だからね。

>>389
いつの間にか「朝刊」が定着してる

>>394
そんなのでよければどんどん使って。そして、文中のそのセリフに間違いがあることを発見 orz

401名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 03:59:47 ID:ieoOhqLz
>>400
GJ!!
次は竜虎のラブラブが‥
楽しみにしてます
402とらドラ!で三題噺 ◆Eby4Hm2ero :2009/08/05(水) 04:32:38 ID:WS9FABvG
お題 「彼女」「学ラン」「身体」



「ねえ竜児、今度学ラン貸してくれない?」
「かまわねえけど、何に使うんだ?」
「私、体育祭の応援リーダーに選ばれたの。それで、リーダーは女子も学ランで応援することになったのよ」
「それなら俺のだとサイズがでかすぎるだろ。中学の時の制服の丈詰めてやるから、それもってけよ。
 あと、デザインアレンジがあるなら言ってくれ。できる範囲でやっとくから」
「ありがと竜児。なんかお礼しないとね」
「この程度、別に礼なんていらねえよ」
「そうね、使用済みの学ラン持ってくるから、洗濯前にそれでハァハァするのを許可してあげる。
 竜児ってば匂いフェチだもんね。彼女の身体を包んで汗と体臭がたっぷり染みこんだ学ランとか最高のゴチソウでしょ?」
「大河……常々思ってたんだが、お前俺のことエロ犬とか呼ぶけどよ、お前の方がよっぽど発想がエロいぞ」
「あら、それは竜児があまりにもエロすぎるから私にも移っちゃったのよ。遺憾だわー」
「嘘つけ。キスだって大河からおねだりする方が多いじゃねえか」
「竜児がしたがってるけど言い出せないみたいだから、代わりに言ってあげてるのよ」
「いーや、うちゅーってタコみてえに唇を突き出すあの姿は大河がキスしたくてたまらねえからとしか思えねえな」
「た、タコみたいとは何よ!」
「残念ながら事実だ」
「わかったわ、それじゃしばらくキスはお預け。竜児が土下座してお願いするまでさせてあげないんだから」
「ふふん、先に我慢できなくなるのはどっちかな?」

「あんたら……勉強会の真っ最中だってのにイチャイチャイチャイチャしてんじゃねーわよ……」
「いやいやあーみん、ここは二人のラブラブコントを楽しむ所ですぜ。ちなみに私は大河が先にキスしたがる方に100円」
「それはいいが櫛枝、鼻血は拭いた方がいいと思うぞ。あと俺は高須が我慢できなくなる方に100円だ」
403◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g :2009/08/05(水) 04:44:36 ID:NRernWMb
大河×竜児SS、対話形式。
***
・お腹いっぱいなの

「はー! 食った食った!」
「食った食ったじゃねえよ、ったく。せめて食べた食べたって言え。女の子が」
「なによ。いいのよ私は。どこからどうみても女の子なんだからさ」
「へいへい。綺麗に生まれてきてようござんしただよ、おまえは……なんだよ、睨むなよ」
「べつに……はー、食べた食べた」
「おう。よしよし、いい子だ……じゃねえよおまえ!? 腹ぽんぽん叩くな!? おっさんか!」
「うっさいわねいちいち。ぽんぽんをぽんぽんしようが私の勝手でしょ?」
「おなかをぽんぽんって言うなよおまえ幼女か。可愛すぎて卑怯だぞ、ったく。高二にもなって……
 だからなんで睨むんだよ」
「べ、べつに……」
「しっかし不思議だな、おまえのその腹」
「は、はあ!? なによ、見んじゃないよ! レディに向かって失礼でしょ!? 無神経!
 エロ犬! この無痛犬!」
「痛覚はあるよ。いつもおまえに刺激されてるよ。だいいちぽんぽん叩いてアピールしてたの
 おまえだろ? まあ見事な小太鼓でございますなあ、って見るだろそりゃあ、人は」
「うぬう、人を騙るか、犬のくせに……しょ、しょうがないでしょ? うな重美味しかったんだもん。
 ごはんいっぱい食べたんだから。ちょっとはふくらむっての」
「べつにふくらんでるのを責めちゃいねえよ。不思議だってのはさ、だから、おまえのその、
 ぽんぽんさんがだよ、二、三時間もしねえうちに消えちまうじゃねえか。それなのにおまえ、
 太るわけでも、そだ……いや、なんでもねえ。まあとにかく、どこに消えちまうんだか」
「……言い淀んだところは聞かなかったことにしてやるわ。ま、なるほどね、不思議でしょう!
 不思議だろうー不思議だろー! ふっふーん。あんた、どこ消えてくのか知りたい?」
「え? い、いや、べつに、いいよ、お、俺は。そんな……」
「最低。あんた最低。あんた今あっち見たね、チラっと」
「おう!? いや、み、見てねえよ! トイレなんか!」
「語るに落ちたねこの駄犬が。はあぁ……まさかあんた、エロでスケベで変態だとは思っていたけど、
 まさかそこまでの超ド級の大変態だったとはねえ……わかった。飼い主の私が責任をもって
 いずれ必ずあんたのその病気を治してあげるわ。みのりんの、ううん、世界のために……」
「怒りも嫌悪も通りこしてしみじみと言うな。ちげーよだから。俺はそんな変態じゃねえ」
「ふっ……いいのよ、人の性的嗜好はひとそれぞれ。今さら隠すでないよ……」
「語尾にため息まぜんなよだから!? 話戻そうぜいいかげんマジで、頼むわ。なんだ、だから、
 あー、つまりさ。そう! どこにそのぽんぽんちゃんは消えるんだよ」
「……」
「蔑んだ目してトイレに向かって顎しゃくんな!? いやもうほんと違うから! 俺まとも! 健全!」
「だめだめ、言えば言うほど変態フラグが立つよ……」
「うおお……なんだ、なんの困難だ、試練だこれは。違うんだよ。マジで信じてくれよ大河。
 そりゃ多少はエロだ、ちょっとはスケベだ。でもそこまでじゃねえ。な、マジで、信じて……」
「ぷくく……あんたの涙目キモっ! はー、なんかぞくぞくしちゃった! やだやだ! さあて、
 どうしてやろうかしらねえ。信じてやろうかしらねえ」
「……なんかおまえ、楽しんでねえか? てかおまえこそ変態に目覚めてねえか?」
404◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g :2009/08/05(水) 04:45:50 ID:NRernWMb
「っな!? ば、馬鹿なこと言わないでよね! かっ、飼い犬への愛があふれてちょっとなんだか
 だっただけよ!」
「あ、愛……?」
「っ!? かっ、飼い主よ!? 飼い主としての! 勘違いすんな! 身の程知らずが! なっ!?
 なにあんた、ニヤニヤしてんのよ! キモい、こわい、きしょい、グロい! ぞっとする!
 冬が来る! あさって氷河期が来る! 宇宙が冷える!」
「ねえよ……いや、いいこと聞いた。そうか、飼い主としての……愛、か……愛ね」
「っひいいいいいぃぃぃぃっっっ! や、やめてよね! あ、暑いっ! なんか暑い! やだ!」
「冷えんのかあちぃのかどっちなんだよ……」
「あ、暑いの! 暑っ、あつっ……そ、そうだ! 熱くなるの! それで消えるの!」
「はあ? なにが?」
「だからこれよ! ぽんぽん! 話戻してやるわこのブタ犬が! 私は食べたらあっつくなんの!
 それで消えちゃうの! ぽんぽんが!」
「はあ……熱くって、身体がか?」
「ほかにどこが熱くなるって言うのよ。そうよ、身体! 背中とかさ、わ……せ、背中とかさ。
 なんての……背中とか」
「いやそんな、繰り返さなくていいよ。わかったよ、メシ食ったら背中が熱くなるんだろ。
 なんとなくわかる気がするけどさ。でもそんだけでその、ぽんぽん様が消えるものかね」
「なによあんた、やけに疑り深いじゃない……はっ、わかった! あんた、私の身体を触る気ね!?
 そんな風にわざと疑うふりをして、ほんとに熱くなってるかどうか触らせろって言う気でしょ! 
 『おう、ここか? ここが熱いのんかむひひっ?』
 『や、やだ、やめてよ! そこ、違……っ』
 『違う? なにがだ? ほら、ここだって、こんなに熱くなってるじゃねえか、大河……』
 『やだ! やだ! ひ、ひどい……っ! わ、私がか弱い女の子だからって……!』
 ひ……っ。な、なんてこと……っ! このドエロブタゴリラ犬!」
「……」
「なによ。なんか言いなさいよこのスケベストオンナスキー。あらやだ、私わかっちゃった。
 図星ね。図星過ぎたのね。それで額押さえて、ぐぅの音も出ないってわけね。は!」
「は! じゃねえよ、は!じゃ! おまえなんつーひとり芝居を……むひひはねえって俺だから……
 ブタゴリラ犬って俺はどんなキメラだよ……か、か弱いぃ?……はあ、頭痛ぇ……」
「えっ? 嘘っ。竜児、頭痛いの? やだ! く、薬箱どこ! ず、頭痛薬! 飲まないと!
 どこ!? パ、パンシロン、パンシロン!」
「それじゃ胃腸がスッキリだ馬鹿たれ。ちがうよ、そうじゃねえ。おまえが頭痛のタネなんだよ」
「はあ? なにそれ。そんなわけないじゃないよ。てか、なにそれ仮病? 騙したわけ?
 私こんなに慌てたのに! あ、あんたってば、この……っ。あ、あれ? や、やばい、なんか、
 私、ショックみたい。怒れないみたい……な、なんで……?」
「知るかよ、ったく……」
「あれ? あれ? ちょっと、ねぇ、おかしいよ? 怒るとこ。ね、竜児? ここ、私、
 怒るとこだよねえ……?」
「わかんねえよ、そんなの。怒らねえならその方がいいよ、俺は」
405◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g :2009/08/05(水) 04:48:35 ID:NRernWMb
「え、えぇ……っ? だ、だって、あの……あれ?……りゅ、竜児、なんだか、冷たい、よね?
 ね、ねえ、ねえ?」
「なんだよ。べつに冷たかねえよ」
「嘘。だって、顔、覗き込んだのに、どうしてそらしちゃうの……? も、もしかして、怒ったの?」
「さあな。怒ってんのか? んん、まあ、怒ってんのかもな」
「え? そ、それじゃあ、わ、私も怒んなきゃ、だめだよね? 竜児が怒って、そっぽ向いて、
 私も怒って、そっぽ向くなあって、そんで、わーって……な、なんないと、だめ……なのに、
 わ、私、怒れない………………わ、私っ、悲しい……っ!」
「えぇっ!? お、おおう!? た、大河、どうした? なんだそれ!? なんでそんなに泣く!?」
「っ知らないよおっ! あ、あんた、そっぽ向くんだもん! つ、冷たいんだもん! いやなの!
 お、怒っても、いいから! ご、ごめんなさい、するから! だから! 冷たいの、いやあ……っ!」
「た、大河、大河……どうした……大丈夫だって、な? ほら、冷たくなんかしてねえって、な?」
「う、嘘。だ、だって、さっき、ひっく、つ、冷たかったもん……」
「おう……そうか。そうだったのかな……わかんねえけど。悪かったな、大河」
「りゅ、竜児……」
「なんだよ、大河。そんな顔するなって。泣くなって。な? 大丈夫だから。俺、冷たくないだろ?
 な……?」
「う、うん。や、優しい、目……よ、よかった……わ、わた、し、私、竜児、冷たいの、だめみたい。
 冷たいの、いやなんだもん……っ!」
「ああ! だから泣くなって! ああくそ、なんだこりゃ、どうした? くそ、いったいどうしたら……
 っ! よし! 大河!」
「ひっ……な、なに?」
「おまえの背中触らせろ」
「え……っ!」
 ぽん。
「っ!?」
「そんなビクつくなよ……」
「……まだ返事してない」
「そうかそうか。悪かったな、勝手に触って。怒っていいぞ、大河。怒れ怒れ」
「お、怒んない、けど……なに」
「おう! ほんとだな、大河! 熱いぞ、おまえの背中!」
「あ……!」
「なあ、ほんとだなあ、大河。すげえ熱いよ、おまえの背中。びっくりだ」
「りゅう、じ……」
「これでおまえのぽんぽんちゃんが消えるわけだ。なるほどな」
「……うん。そうだよ。消えるの……」
「……そうか。なるほどな。わかったよ、納得だ。悪かったな、急に触って……じゃあ、終わりだ」
 すっ。
「……」
「ふう……よし。泣き止んだな」
「……うん」
「おう、こりゃまた……いいぞ、大河。いい顔だ……なんてか……安心、したのか?」
「うん……安心した……え? なにその大笑い……なによ、あんた笑いすぎ!」
「……はは、はあ。馬鹿。安心したのはこっちだよ、大河」
「え……そう? そう、なんだ……」
「そーうだよ、おまえ。はあ……疲れただろ、大河」
「え? あ、う、うん……疲れた……なんでわかるの?」
「なんでもわかるよ、おまえのことなら……てな、嘘だ。わかんねえことも多いわ、おまえは」
「な、なによそれ……」
「まあ、いいから。さ、ごろんしろ、大河。それとも帰って寝るか?」
「……ううん。ごろんする」
「よーしよし。ほら、座布団使え。敷け……はいごろーん」
「クス……馬鹿にして……ごろーん!」
「よしよし……っふあぁ〜あ! 俺もちょっと、ごろんするわ。はいごろん」
「……竜児、座布団」
「いいよいいよ。俺は寝るわけじゃねえから。はあ……」
「ん……竜児も、疲れたんだね……?」
「そうだなあ、疲れたなあ。はは……なんだったんだろうな?」
「そうだね、なんだったんだろうね……ね、竜児……?」
406◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g :2009/08/05(水) 04:49:19 ID:NRernWMb
「おーう、なんだ?」
「私、なんか、言いすぎたのかな……? 謝ったほうが、いい?」
「いやあ……いいよいいよ。充分だよ、それで。しかし、謎。謎だねえ……ってか、逆じゃねえか?」
「え?」
「いや、俺こそ謝ったほうがいいんじゃねえのか? おまえに」
「どうして?」
「だって俺、なんか冷たかったんだろ? おまえに」
「う、うん……ううん……もう、よく、思い出せない……」
「ふっ……なんだそれ」
「そう、なんだそれ。だからもう、どうでもいいよ」
「そうか、変だなあ……」
「うん、変なの……」
「ふう……」
「……竜児」
「おう、どした」
「……呼んだだけ」
「ふはっ! なんだそれ。ほんとに変だぞ、おまえ」
「うん……ね、竜児?」
「はいよ、なんだ?」
「私の名前、呼んで?」
「おう? こりゃまた……オッケー、わかった……」
「……ね、早く」
「おう……大河」
「……はい」
「はいぃ? はいとかおかしいだろ、おまえ……ったく、笑いやがって」
「……っそうだ、竜児!」
「今度はなんだよ」
「背中触らせろ! あんたの!」
「おう、仕返し来たか。いいよ、じゃあ……ほれ。あ、そっぽ向いたんじゃねえぞ? 冷たくねえぞ?」
「うん、わかってる……」
「ああ待て! 叩くとか、蹴るとかも無しな」
「うん、わかってるよ。そっと触るだけ」
「へえ……」
 ぴと。
「おう……」
「……ね?」
「ほんとだ。そっとだ」
「うん……熱いね」
「熱いだろ」
「うん、熱い……竜児の、背中も……」
「まあ、俺のぽんぽんさまも消えるわけだよ」
「ぷくくっ……ね、竜児」
「なんだ、大河」
「あんたの……ううん。いいや」
「なんだよ、俺の?」
「いいの。なんでもない」
「なんだよ。気になるだろ? 言えよ」
「ん……じゃあ、言うね?」
「おう」
「竜児……あんたの、ね……?」
「おう。お、俺、の?」
「あんたの……ド変態、必ず治してあげるからね……」
「……そっちかよ……」


***おしまい***
407◇eaLbsriOas ◆dvuHYisf.g :2009/08/05(水) 05:01:04 ID:NRernWMb
>>377
祝!復活GJ。 『1話if』の続きとか、楽しみにしてます……けど、放りっぱで新作でもおk

>>399
は、早くトドメを刺して欲しい……

>>402
GJ! ちょっと直後っぽかったけど、割り込んでないよ……ね?
途中、大河はてっきり、見返りに自分の制服持ってくるのかと思ってしまった。ちんでくる……
408名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 08:19:05 ID:RwpLUW8O
朝から2828が満載だっぜ
409名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 09:39:47 ID:PottnIOP
>>365です。

>>366
おぅ

>>367
放屁大河は新ジャンル

>>387
ヒロイン怯えさせて興奮してるだけですw

>>389
1レス目ので終わりにしようかと思ったけど自害☆というキーワードが出たのでそれを含めた
所からスレが荒れる恐れがあるので、ネタにするために二人に出演願いました。

>>390
うむ、日付変わる前に携帯から書いといてよかったよ。せふせふw新鳥把握

>>394
そう!「これは…」って思う人がいるから漫才を入れたのだよ!

>>朝刊
朝刊ってレベルじゃねぇぞ!
手乗り武者とダンスするんですねわかります

>>407
いいねいいね。やっぱり竜虎はこうでなくちゃ。
氏の書く虎はよく泣いて私の心を癒してくれるんだ…。変体だな、俺…。

さて、ちょっと小ネタを投下…と行きたかったんですが、ネタ切れのため今日は無理かも。
もしかしたら明日も。楽しみにしててくれた人がいたらゴメンネ!

ただの米返しが投下と見間違えるほどの長さに…。すいませんでした
410名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 10:22:30 ID:/7yzXK70
禁断の壷使いの人にお願い

こちらのスレを開いて

とらドラ!って面白いね
http://yy53.60.kg/test/read.cgi/newso9vaplus/1246592936/

!tubo

と書き込んでください
それが次スレのタイトルになります
壷入れてないと何にも変換されないんで注意してね
411名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 12:25:32 ID:jh7fBjR9
>>400
何となく短編の一変する〜が出来た経緯が分かったような。
長いの書いてる途中で、ちょっと息抜きで違うの書くと筆が乗るよね。
あ、逆だったらスマソ

>>402
大河は絶対臭いフェチだと思う。
412名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 18:08:47 ID:9f9MqI7q
マフラーくんかくんかだもんな
413名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 20:53:21 ID:/GrmxSvP
オレも大河に\100w
414 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 21:20:39 ID:m6valGUb BE:2055225986-2BP(2828)
『大河がおとなしい女の子だったら』続き貼ります。
今回は量が多いのでとりあえず規制されるまで貼ります。続きは明日の夕方からでも貼ります、では今回も宜しくお願いします。

大河と二人で写った写真を胸に今日も高校生活を謳歌する。話せる人数も少しは増えたし、今も春田と能登の三人で雑談中だ。
二人の話はくだらないことばかりだが俺はそれなりに楽しんでいる。

「良いなぁ、高須は。逢坂に毎日お茶を用意してもらってるし、何かあれば『高須君!』だしな」

「そうか?お前らだってお茶を貰ってじゃねぇか」
「なんか高須のついでにって感じだけどな」

「そんなことないだろ、それにお前が『逢坂はみんなに平等』だって俺に言ったじゃないか」

「俺も高っちゃんが羨ましいよ、大河ちゃんや奈々子様と仲良くできてさ」

俺と大河の噂は日々膨らんで行く一方だった。人の噂もナンタラと、沈静化するのをジッと待っているがその気配がしない。
どうしたもんかな…

「そうだ!高須、合コンしようぜ!合コン」

「ハァ?合コン?」

「良いねー!能登っち。やろうよ合コン!」

お前らは慣れたかもしれないが、まだ俺を恐怖の対象にしてる奴は学校にもたくさん居るんだ。
それなのに知らない連中だったら尚更だろ。

「俺が行っても相手を怖がらせるだけだぞ、多分」
「そんなことないさ!それに今回は高須の協力が絶対に必要なんだ」

「俺の?俺が合コンに協力できることなんて無いぞ」
「あるんだなぁ、これが。高須は逢坂や香椎と仲良いだろ、だから2人に頼んでさ」

「待て!クラスメートを呼んで合コンなのか?それはただ遊びに行くだけじゃないのか?」

「いや!合コンなんだよ、高須」

「そうなのか?俺は全然そうゆうこと知らないからな… 合コンなのか…」
「だけど、香椎とはそんなに親しくないぞ」

「嘘つけ!偶に2人っきりで話してるじゃないか」
「知らん」

「高っちゃ〜ん、合コンしようよ〜。もしかしたら運命の彼女に会えるかもしれないよ?」

「何を夢見る乙女みたいなこと言ってんだ」

「失礼だな、高っちゃんは。俺って恋愛は真面目に考えるタイプなんだよ」
「悪かったよ、春田。お前の考え方は立派だ」
「じゃあな」

「ちょっと!待ってくれ高須!」
415 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 21:23:06 ID:m6valGUb BE:513806562-2BP(2828)
「こうなったら実力行使だ、香椎!高須が何か話しがあるって!」
「能登!お前!」

能登の一言で香椎がこちらに向かって来る。本当に香椎とはスーパーで会ったら話すだけで、そんなに親しくないんだ。

確かに一度だけお茶に誘われたが、でもあれは香椎がお礼がしたいからって言ったからだ。
それに俺は未だに何のお礼なのか分からない。理由を聞く為にお茶につき合ったのに、香椎は最後まで教えてくれなかったしな。

でもどうすんだよ… 俺が『合コンしようぜ!』とか言わないといけないのか?
待てまて、俺は合コンなんて望んでない。真相を話して香椎にはお引き取り願うか。

「あのな、香椎」

意外なことに、香椎は俺の言葉に振り向きもせず歩みを続けた。

「なに?能登君、合コンしたいの?」

「えっ?!」
「だって名前と合コンって交互に連呼されたらね」
「聞こえてた?」

「そりゃ聞こえるでしょ、教室であんなに大きな声で話してたら」
「すいません…」

「合コンはあれだけど、放課後にお茶するくらいなら良いよ」
「本当ですか!」

「うん良いよ、みんなで」
「なんだ、そうゆうことか…」
「私は麻耶を誘うから、高須君も逢坂さんや櫛枝さんも誘えば?」

「あぁ、誘ってみるよ」

「それじゃ、放課後ね」

何でお前はそんなに満足げな顔で勝ち誇ってんだ能登。結局、合コンはできなかったじゃないか。

「まぁ当初の予定とは違うが、まずまずの結果だな」
「そうなのか?」

「そうなんだよ、高須!」
「だからお前も早く逢坂と櫛枝を誘ってこい!」
416 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 21:26:05 ID:m6valGUb BE:685076328-2BP(2828)
大河と櫛枝をお茶に誘うのか… 缶コーヒーを買うだけで怒られるのに、ショップのお茶に誘うなんて出来るのか?
また怒られるかな、大河に… ファミレスのドリンクバーなら怒られないか?

「あのさ、今日の放課後にみんなでお茶に行くことになったんだけど…」

「行ってきたら?」

「あらあら、高須君は友達と出掛けるのもお伺いを立てないといけないのかい?大河も凄いねぇ」

「そんなことないよ!」
「もう、そんなことで私に聞きに来なくていいよ〜」
止めてくれ櫛枝!これから怒られるかもしれないのに先に怒らせないでくれ。

「違うんだ!2人にも来て欲しいんだ!」

「何だ、そうゆうことか。でも私は今日も部活経由バイトなんだ、ごめんよ高須君」

「そうか、それは残念だな。大河は良いかな?」
「良いよ」

良かった〜 能登、俺の使命は果たしたぞ。
あぁホッとした〜 これで肩の荷が降りた。今のは普段の大河、怒られずに済んだ。

「あら、奥様!『大河』ですってよ!」
《くぅしえだぁー!!!》
「櫛枝!!大河から話しは聞いてるだろ、それに奥様って誰だよ!」

「ごめん、ごめん。つい、2人を見てたら私の本能が勝手に発動しちゃった」

「本能で奥様って何だよ… 櫛枝、あんまり変な物ばっかり見たり読んだりしない方が良いぞ」

「そうだよ、みのりん。みのりんはせっかく可愛いんだから、変な事ばっかりしなければ良いのに」
「……しどいよ!2人してぇ〜!」ガタン! タッタッタッ…

『しどいよ』? …あぁ『酷いよ』ってことか、やっぱり櫛枝は変わってるな…
ルックスは本当に良いのにな、MOTTAINAI。

「大河、追っかけなくてよいのか?」

「うん、大丈夫だと思う。いつものことだから、そのうち戻って来るよ」

「そうか、大河も大変なんだな」
「うん、偶にみのりんが理解できないの。でもみのりんのこと好きだし、何をしても憎めないんだよねぇ」

「そうだな、櫛枝は嫌いになれないな」
「うん!」
417 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 21:29:07 ID:m6valGUb BE:2397763687-2BP(2828)
+×+
「えっ?男子と一緒にお茶?」
「うん、高須君と能登君と春田君、あと逢坂さんと櫛枝さんも来るかな」

「……北村君は?」

「どうかな?でも高須君が誘って来るかもね」

「う〜ん……」

北村君は来るか分からないのか… 来なかったら行く意味ないしなぁ、でも来るかもしれないしなぁ…

「とりあえず行ってみない?嫌だったらすぐ帰れば良いし。ネッ、麻耶」

「そうだね、奈々子1人を行かせるのもアレだしね」
「ありがとう。みんな先にファミレスで待ってるって」

ファミレスに向いながらも頭の中は北村君のことでいっぱい、来るかな北村君。

「ねぇ麻耶、そんな考え事しながら歩いてたら危ないよ」

「ごめん!危ないよね、気をつけなくちゃね」

そうだよね、私が考えても結果は替わらないもんね。北村君もう着いてるかな…
ちがぁーう!他のこと、他のこと考えなくちゃ。

「麻耶、危ないって!」
「あぁ!ごめんなさい」

「また、北村君のこと考えるの?本当に好きだよねぇ」
「そんなことないよ!」

「本当に?」

もう北村君のこと考えちゃダメ!とにかく考えごとするからダメなのよ。
そうだよ!奈々子が一緒なんだから奈々子と話せば良いんだよ!奈々子と… 奈々子?
そういえば奈々子の好みって聞いたことないな…

「ねぇ奈々子はどんな人がタイプなの?」
「タイプって男の人の?」
「そうだよ、そのタイプ!いつも私のことばっかりで奈々子の好みとか聞いたことないし」

「…そうだな、優しい人が良いかな。少し鈍感な人でも良いから、ずっと私だけを見てくれる人」
「私の家って親が離婚してるじゃない」

「…うん」

「だから憧れるのよ、共に添い遂げるってことに」
「そうなんだ…」

まいったな、軽い気持ちで聞いたんだけどな… 奈々子がこんなに真剣に答えてくれるなんて。
でも奈々子が好きになる人って、実際にはどんな人なんだろ。
418 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 21:32:05 ID:m6valGUb BE:1027613838-2BP(2828)
+×+
逢坂さんたら当然のように高須君の隣に座るのね、やっぱりその位置が落ち着くのかしら。

「悪いな香椎、それに木原もつき合わせて。時間は大丈夫なのか?」

「私は奈々子と寄り道するつもりだったから平気」
「私も大丈夫だよ、それに高須君とお茶するのも久しぶりだし」

「なにそれ奈々子!」
「気になる?麻耶」

「気になる!その話に興味津々だよ!」

「オイオイ香椎。誤解されぞ、その言い方は。1度だけじゃないか、香椎とお茶したのは」

「そんなに強く否定しないでよ。傷つくなぁ、もぅ」
「スマン、でもあの時の『お礼がしたい』って何だ?」
「あの頃はスーパーで見掛けるくらいで、香椎と話したことなんて無かったよな?」

「やっぱり分からないの?」
「あれから考えたけどサッパリだ」

「じゃあ、今日はヒントをあげる。ヒントは子供の頃、それも小さい頃よ」
「そんな昔のことか、思い出すのは無理かもな」

「そんなこと言わないで少しは考えてよ」

「あぁ、頑張ってみるよ」

高須君と奈々子に何があったんだろ?
でも逢坂さんと高須君はつきあってるんじゃないのかな?
逢坂さん、奈々子の話しを楽しそうに聞いてるし、う〜ん… 私には分からないことばかりだな。

「んっ?木原。飲み物が空だけど何か飲むか?」

「えっ?!いいよ、自分で取りに行くから」

「遠慮するな、何が良いんだ?」
「じゃあ、アイスティーを」
「ストレートで良いのか?」
「うん」

でも一番分からないのは高須君だな。思ってたより話し易いし、それに周りに気ばっかり使ってるしな。
あれじゃ『ヤンキー高須』じゃなくて『気づかい高須君』だよ。
もう少し話してみようかな、北村君のこと聞きたいし。
419 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 21:35:13 ID:m6valGUb BE:642258353-2BP(2828)
「お待たせ、アイスティーだったよな」

「うん、ありがとう。…ねぇ高須君、今日は北村君は来ないの?」

「あぁ、誘ったけどアイツは部活だし生徒会もあるからな」
「そうなんだ…」

「残念だったね、麻耶」
「奈々子?!」

「そんなに焦ったらバレバレだよ、麻耶。お気に入りなんだよねぇ、北村君のこと」
「奈々子!!」

「へぇ、そうなんだ。それは悪いことしたな、次は北村も必ず連れてくるからな、木原」

「…ありがとう、高須君」

その頃、隣の二人掛けの席では……

「…なぁ能登っち、もう帰って良いかな」
「あぁ帰ろうか、春田」

+×+
香椎さんと木原さん、今までほとんど話したこと無かったけど良い人たちだったな。
今日はいろんなお話しもできたし、これからは学校でも仲良くできるよね。
でも北村君のことを話す木原さん可愛いかったな、恋をするとみんな可愛い女の子になるんだなぁ。

「大河、今日は遅くなったし晩飯は簡単なもので良いよな?」

「うん、やっちゃんも時間ないだろし良いよ」
「でも竜児は香椎さんの言ってたこと全然覚えてないの?」

「覚えてないな、それに小さな頃の記憶なんてあんまり残ってないからな」
「そう、でも思い出さないと香椎さんが可哀想だよ」
「そう言われてもなぁ…」
「やっちゃんに聞いてみたなら?」

「オォ!そうだな、泰子が何か知ってるかもな」

でも、俺が覚えてないことを泰子が覚えてくれてるんだろうか。
420 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 21:38:08 ID:m6valGUb BE:385355333-2BP(2828)
「覚えてるよ〜 香椎奈々子ちゃん、奈々ちゃんでしょ?」

意外にも泰子の記憶力は俺より良かったようだ、流石は客商売してるだけあるな。

「竜ちゃん覚えてないの?」
「あぁ」

「やっちゃん、香椎さん今は同じクラスなの」
「えぇ!!」

何でそんなに驚くんだよ?ただでさえ俺は覚えてないんだ、何か緊張してくるじゃないか。

「やっちゃん今日は早くお店に行くんだった!それじゃあ、行ってきまーす」

「オイ、泰子!ちょっと待て」
「嘘をつくな、早く行くにしてもまだ早すぎるはずだ。それにそんな態度をされたら気になるぞ」

逃げようとした泰子を捕まえると、大河をチラチラと見ている。
大河に何か関係することなのか?それに何でそんなに動揺してるんだよ。

「やっちゃん、どうしたの?」
「何を知ってるんだ、気になるぞ」

困ったな〜 大河ちゃんの前でこんな話しをして良いのかなぁ。
それに竜ちゃんは、もう大河ちゃんに好きって言ったのかな?それなら話しても大丈夫だと思うんだけどなぁ。

「教えてくれよ、泰子」

「分かったよ、竜ちゃんがそんなに言うなら話すよ。でもね」

話すこと了承すると、泰子は体の向きを変えた。

「この話は竜ちゃんの小さな時の話しなんだからね」
「えっ?あっ、うん」

何で大河に話してるんだよ、俺に話せよ。
421 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 21:41:06 ID:m6valGUb BE:1926774195-2BP(2828)
「じゃあ話すよ」
「あぁ、話してくれ」

「奈々ちゃんはね、竜ちゃんのお嫁さんになるって言ってたの」
「…本当か?でも何で」

「何かね、奈々ちゃんがイジメられてるの、竜ちゃんが助けてくれて好きになったんだって」

「そうなのか?でも何で俺は全く覚えてないんだ?」
「竜ちゃんは、奈々ちゃんってゆうか女の子に全然興味なかったみたいだし」

確かに言われてみれば、子供の頃に女の子と遊んだ記憶が無いな…
でも好きって言ってくれる女の子のことも覚えて無いなんて、俺って人として問題があるじゃないか。

「でもね!小さい頃の話だしねぇ〜」

ちゃんと話せたかな?大丈夫かな?大河ちゃん傷ついたりしてないかな?

「カッコ良いね、竜児。イジメられてるの女の子を助けてあげるなんて」

大丈夫かな?…大河ちゃんは自分の気持ちを隠すの上手いからなぁ、心配だな。

「そうか?ありがとう」

「でも覚えてないのは酷いと思うなぁ。だって竜児のお嫁さんになりたいって言ってくれたんだよ」
「そうだよな、明日でも香椎には謝るよ」

「うん、それが良いよ」

「…じゃあ、やっちゃんは仕事に行くね」

「もうそんな時間か、悪かったな飯の準備出来なくて」
「お店で食べるから良いよ、行ってきまーす」

「いってらっしゃい」

「さて、俺たちも飯の準備するか」

「うん、じゃあ私は洗濯するね」
422名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 21:41:26 ID:Nz9swIl4
スーパーベストタイミング支援っ!
423 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 21:44:09 ID:m6valGUb BE:1798322876-2BP(2828)
今でも竜児のこと好きなのかな?
それでもし、竜児と香椎さんが恋人なったら私はどうすれば良いんだろ。
やっぱり彼氏の家にクラスメートの女の子が居たら嫌だよね、そしたら私はここに居ちゃダメだ。

でもイヤだよそんなの… 本当の家族になりたいなぁ、そしたらこんなこと考えなくても良いのに。

「大河、出来たぞ」
「は〜い」

竜児はいつも変わらないないな、香椎さんみたいな美人にあんなこと言われて嬉しくないのかな?意識とかしないのかな?

「……やっぱり、嬉しかった?」
「何が?」

「香椎さんにあんなこと言われて… 香椎さんあんなに美人なんだし」

「あぁ、そのことか。まぁ嬉しくないと言ったら嘘になる」

嬉しいのか… バカなこと聞いちゃった。
当然のことだよ、あんな綺麗な人に好きって言われたら嬉しいよね。

「…そうだよね、嬉しいよね。良かったね、竜児!」
「お前は何か勘違いしてないか?所詮は子供の頃の話しだぞ」
「確かに香椎は美人だとは思うけど、それ以上の感情は俺は持ってないぞ」
「そうなの?」

「あぁ、そうだ。それに香椎だって俺なんかに興味ないと思うぞ」

う〜ん、そうなのかな?イマイチ分かんないだよなぁ、好きとか嫌いとかって。
でも香椎さんのことを何とも思わないって、竜児はどんな女の子が好きなんだろう?

そういえば周りにはみのりんや香椎さんや木原さん、元気な子・綺麗な子・可愛い子が居るのに竜児はそんな素振りを見せないな、どうゆうこと?
424 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 21:48:38 ID:m6valGUb BE:256903823-2BP(2828)
>>422すごいタイミング!ありがとう


「何をそんなに難しい顔して考えてるんだ?」
「えっ?」

「何を考えてるんだって聞いてるんだ」

「あぁ、あのね。竜児はどんな女の子が好きなのかなぁって」
「だってさ、周りには可愛い子ばかりが居るのに竜児は好きとか言わないよね?」
「どんな子が好きなの?」

「どんな子って言われても……」
「どんな子なの?」

「笑顔が可愛い子かな…タイガみたいな」

「何みたいな?」
「イヤッ?!何でもない」
「教えてよぉ!何って言ったの?」
「ダメだ!教えない」

「教えてよぉ」

こんな感じで毎日を過ごせるなら楽しいのになぁ、でもいつまで続けられるんだろ……
私を選んでくれないかな… そして私を…

「………お嫁さんにしてくれないかなぁ」

「お前はいま何て言った?」
「えっ?私が何か言った?ウソ!!聞こえた?」

「イヤ、よく聞こえなかった」
「ホントに?良かったぁ」

聞こえてなかったか…
聞かれても良かったんだけどな、そしたら竜児は何て言ってくれただろ?
竜児が私のこと好きになってくれたら、家族のままで居られるのにな。

でも香椎さんみたいな美人でも何とも思わない人が、私みたいなちんちくりんを好きなることないか。

竜児はどんな人を好きになるんだろ、その時が竜児とのお別れになるんだろうな。

 +×+×+
昨日はいろいろな事を考え過ぎてあまり眠れなかったな。
香椎のこと謝れば良いとして、大河のことがな…
聞こえてないふりをしたが確かに『お嫁さんにしてくれないかな』って聞こえたよな… 
俺の?それとも俺以外の誰か?アァァ気になる!。
でも弁当の用意しないとな、日頃と違ったら大河も心配するだろうしな。

「竜ちゃん、おはよう」

「泰子!何で起きてるんだ?それとも寝てないのか?」

「うん、起きてた。竜ちゃんに話したいことあったから」
425名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 22:02:54 ID:+RGMJ+Vx
ん?一旦終わりかな?

GJ!!相変わらず最高に面白いっす
426名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 22:19:04 ID:BZoGxtw/
>>410
やってみた

41 名前:大橋高校の生徒さん[] 投稿日:09/08/05 22:18:11
【とらドラ!】大河×竜児【ユラユラ妄想】Vol14

次スレはこれだな
427名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 22:25:19 ID:/GrmxSvP
ちょっと佳境ちっく!?
あと1回くらいの爆撃でおしまい!?
いやだなぁ…もっとこの世界に浸ってたいなあ
麻耶の恋、奈々子様の思い
そしてちょっとキャラチェンしたかわいい大河

まだまだネタあるじゃんねぇ

あぁ終わっちゃうのいやだぁ
428名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 22:37:05 ID:bdl70ncH
続きが気になる
429 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 23:07:21 ID:m6valGUb BE:2397763687-2BP(2828)
貼れるかな?

「竜ちゃんは大河ちゃんのこと好きなんでしょ?」
「朝っぱらから何を言ってんだよ」

「だって大河ちゃんが居たら聞けないしさぁ」

「まぁ確かに聞けないな、でも朝からする話しでもないだろ」

「そんなことない!大切な事だから、やっちゃんは寝ないで待ってたの!」
「竜ちゃんは大河ちゃんに、ちゃんと『好き』って言ったの?」

何で朝から母親に自分の恋愛について語らないといけないんだ。

「朝飯は喰うか?喰うなら用意するぞ」

「ちゃんと答えて!大河ちゃん、昨日の話しを聞いて不安になってると思うよ」
「あれは子供の時の話じゃないか、だから大丈夫さ」

「好きって言ってるなら大丈夫だと思うけど、言ってないなら不安になると思うよ」
「大河ちゃんに好きって言ったの?」

「……まだだよ、まだ言ってねぇよ」

「まだなんだ…… だったら昨日の話しを聞いて不安になってると思うよ」

不安になったから大河はあんなこと言ったのか?
でもそんな風には見えなかったしな…… 分かんねぇ。
こんなこと朝から考えてたら、俺の方が不安になってきたぞ。

「それに早く好きって伝えないと、大河ちゃんを誰かに取られるよ」

「…そうか?」

「そうだよ!大河ちゃんはあんなに可愛いくて良い子なんだから」

「そうだよな… 泰子にこんな話しをするのも変だけどさ、本当は怖いんだよ」

「何が怖いの?」

「大河に自分の気持ちを伝えるのが」

「何で竜ちゃんは怖いの?」
「たった一言、大河ちゃんに『好き』って言うだけで今よりずっと楽しい毎日が始まるんだよ」

「始まらなかったらどうするんだよ。大河に告白して全部が終わりかもしれないじゃないか、この家族だって」

「終わりじゃないよ。もし大河ちゃんが竜ちゃんの気持ちを受け入れてくれなくても、それから始まる何かがあるよ」

物は言い様だな、そんなことになったら俺はしばらく立ち直れないぞ

「例えだよ、今のは例え話!大河ちゃんは竜ちゃんの気持ちを知ったら、きっと喜んでくれるよ」

「だから早く大河ちゃんに『好き』って言ってあげてね」
「あぁ」

大丈夫かな?余計なことしちゃったかな?でも2人を見てると心配になるしなぁ。
竜ちゃんは奥手だし、大河ちゃんは自分の気持ちを正直に話してくれないしな。
2人が自分の気持ちを伝え合ったら全部がハッピーになるのになぁ。
430 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 23:11:04 ID:m6valGUb BE:2312129096-2BP(2828)
+×+
逢坂さん、朝から元気ないな。昨日の帰りに高須君と何かあったのかしら…… 私のことで?

自惚れかな、昨日の二人を見てもう分かったはずなのに。
あの二人の絆はきっと本物、私の入る隙間なんて無かった。私だけじゃない、きっと誰もあの二人の邪魔なんて出来ないはず。
逢坂さんの笑顔には私にそう確信させる何かがあった。
その笑顔を奪った原因が私かもしれないし、ほっとけないよね。

「逢坂さん、大丈夫?体調悪いの?」
「香椎さん… うぅん、そんなことないよ、大丈夫」

無理してるなぁ、健気とゆうか本当に女から見ても可愛いわね。
やっぱりこうゆうのが男の子の心をくすぐるのかな。

「昨日話した私と高須君のこと、逢坂さんに教えようか?」
「えっ?!…私が聞いて良いの?」

何を驚いてるんだろ?
高須君が思い出して話したのかな?

「もしかして高須君が思い出して、もう聞いちゃった?」
「うぅん、聞いてないよ。それに昨日の帰りに聞いたら覚えてないって言ってたし」

「そう、じゃあ話すね」
「幼稚園の時にいつも私に意地悪する男の子が居てさ、ブランコで遊んでたらその男の子が意地悪するの」
「そしたら凄い怖い顔して近づいて来る男の子が居て、意地悪してた子は泣きながら逃げちゃって」
「私は助けに来てくれた!と思ってその男の子のことが好きになったの」

「それが高須君だったの?」
「正解!高須君だったのよ」

「そうなんだ、素敵な話しだね。すごく良い思い出だと思うよ」

「ありがとう。でも続きがあるの」
「後で聞いたらね、高須君はブランコで遊びたかっただけで助けてくれた訳じゃなかったの」

「えっ?」

「ブランコに向かって歩いて来ただけ、おかしいでしょ!」

「???」

……そうか、逢坂さんは高須君のこと怖がってないから意味が分からないか。
431 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 23:14:04 ID:m6valGUb BE:856344454-2BP(2828)
「とにかくね、私の勘違いだったの。でもあれが私の初恋だったんだけどなぁ」
「初恋… 香椎さんは高須君のこと好きなの?」

「違うよ!!あくまで初恋、子供の頃の話しだから。…安心した?」

「安心?」

「……とにかく、今は高須君のこと友達としか思ってないから」
「それに逢坂さんが素敵って言ってくれる、私の初恋を覚えてない人に興味ない」

「そうなんだ」

「そうよ、それにね… 私は人から奪うって行為が好きじゃないから」

「あの… 香椎さんの言葉の意味が分からないだけど」
「ゴメン!変なこと言っちゃって。ガンバってね、逢坂さん」

どうゆうこと?香椎さんの言葉の意味が分からない、う〜ん…… 分かんないことばっかり。

初恋か… 憧れちゃうな、香椎さんも初恋は竜児か。
もし2人がつき合ったら… 結構お似合いのカップルと思うな。でも香椎は今は友達って言ってたし、無いか。
竜児の彼女… 竜児に彼女が出来たら… 私は傍に居たらいけないんだろうな。
432 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 23:17:05 ID:m6valGUb BE:1541419766-2BP(2828)
+×+
香椎にはどんな顔して話せば良いのか…とりあえず行くか。

「あの、香椎」
「高須君。少しは思い出した?」

「あぁ、思い出したとゆうか、親から聞いた」

「へぇ… あぁ!もしかしてお母さん?」
「あぁ、母親に聞いた。香椎は覚えてるのか?」

「うん、覚えてる。優しいお母さんだったよね」

泰子のことまで覚えてるのか。何か俺だけ覚えて無いって、人でなしみたいだな。

「話を聞いた感想は?」

「えぇと… 凄く光栄です」
「ありがとう。でも昔のことだからね、気にしないで」

「悪かったな、こんな話しを忘れて。もう正直に話すけど、話しを聞いても全く思い出さないんだ」
「そうだろうね、高須君は全然わたしに興味を示してくれなかったから」
「今も昔も変わらないよね、高須君は」

「そうか?」

「うん!ずっと鈍感なまま」
「鈍感?」

「そう、高須君は昔から鈍感で私に気づいてくれない…」

「…ゴメン」
「謝らないでよ!なんか私が惨めじゃない。それより、逢坂さんには告白は済んでるの?」

「…何のことだ」

「済んでないのか… 高須君!そんなことじゃ逢坂さんのこと誰かに盗られるよ!」
「大丈夫だよ。心配してくれるのは有り難いが本当に大丈夫なんだ」

「何でよ?その根拠はどこから来るの」

本当のことを話すわけにもいかないしな…
何も言わないのも心配してくれてる香椎に悪いしな。

「根拠は無い!でも、大丈夫だ」

「何よそれ、本当に知らないよ!誰かに持ってかれても」
「じゃあね!!」

謝りに来たのに怒らせてしまったな… 今朝も泰子に同じこと言われたし。
みんなは焦り過ぎなんだよ。こうゆうことは時間を掛けて、じっくりとお互いの気持ちを育てて行くんだ。
それに大河はいつでも俺の傍に居るからな、心配ないさ。
433名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 23:24:07 ID:s81XU5CK
支援してみる
434 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 23:24:26 ID:m6valGUb BE:171269322-2BP(2828)
  +×+×+
「おはよー!逢坂さん」
「あっ、おはよう…」

「ねぇ、1回でイイからさー遊びに行こうよー」

困ったなぁ、この人は何度断っても来るしな。
それにこの人が来るようになって竜児は機嫌が悪いみたいだし。

「じゃあ考えておいてねー」
「…ハイ」

やっと帰ったか!何だあのチャライのは。最近、大河の周りをウロチョロしやがって。

「どうすんのさ」
「何をだよ、櫛枝」

「惚けないでよ!大河のこと放っておくつもり!」
「大河が困っていたら助けるさ!」

「困ってるじゃない!いま現実に」
「それに大河を守るのは、もう私の役目じゃないからね」

俺だって大河が頼ってくれたら助けるさ、でも大河は俺に何も言ってくれないんだ。

「高須君以外に誰が居るのよ!このまま何もしなかったら、私は絶対に許さないからね」

「…大河と話してくる」

頼ってくれよ大河、お前の一言で俺は何だってするさ。
だからお前の本当の言葉を俺に聞かせてくれよ。

「逢坂、ちょっといいか」

怒ってる、きっと原因は私だろうな。廊下を歩く間も一度も私を見てくれない。

「大河、俺が断ってやろうか?」
「何を?」

「お前、あの男の誘いに困ってるんだろ?」

「そんなことない!それに嫌なら自分で断れるよ。竜児は心配性だな」

話してくれないか……

「……そうか、でも偶には俺を頼ってくれよ」

頼って良いの?
でも私は何でも自分で出来るようになりたいの。
そしたら竜児も私を一人の女の子として見てくれるでしょ?選んでくれるかもしれないでしょ?私を…

「ありがとう、でも竜児に頼ってばっかりだと悪いから」
「そんなことない!俺は大河に頼って欲しいんだ!」

嬉しいけど、怖いの。もし竜児に好きな人ができた時に後悔しそうだから。
今を頑張れば未来に繋がるかもしれないし、駄目になっても諦めがつく。だから、いま私が出来ることはやっておきたい。
435 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 23:28:04 ID:m6valGUb BE:1027612883-2BP(2828)
「今はそれで良いけど… でもさ、竜児に好きな人が出来たら私って邪魔になると思うよ」

わたし何を言ってんだろ…

「絶対にそんなことないって、俺たちは家族じゃないか」

「家族だから悩んでるの!!」
「……ごめんなさい、もう授業始まるから戻ろ」

何であんなこと言っちゃったんだろ…
後悔も諦めもまだしちゃダメ!今は断らなくちゃ。
あの人にハッキリ断りを言って、そして竜児に私の気持ちを正直に伝えよう。

+×+
「途中まででも良いからさ、一緒に帰ろうよ」

もう誘わないように断らなくちゃ。

「…あの、ちょっと良いですか」

大河は荷物をまとめてあの男と教室を出ていってしまった。
結局、俺は役立たずのヘタレか… 俺は何をやってるんだろうな。

「高須君。大河、行っちゃたよ」
「だから何だよ?」

「私はそれで良いのかって聞いてるの」

「……どうなんだろな」
「何を言ってんの……」

「このヘタレがぁぁー!!!!!」

櫛枝の怒号と共に椅子や机を巻き込んで俺の身体は吹っ飛んだ。
怒りがまだ治まらないのか、拳を握り締めた櫛枝は倒れた机を蹴飛ばしならが近づいて来る。

「お前は馬鹿か!!好きな子1人も守れないでそれでも男か!この鈍感野郎!!!」

慌てて北村が止めに入るが勢いは止まらない。

「止めろ、櫛枝!」

「離せ!!コイツは殴りでもしなきゃ分かんないんだよ!」
「落ち着け!!」

「テメェは大切な人も守れない馬鹿野郎だ!お前は大河のことが好きなんだろ!!!」
「笑顔の大河が好きなんだろ!お前があの笑顔を奪ったら誰が取り戻せるんだよ!!」

「…………」

「逃げんじゃねぇよ!!」

「逃げるんじゃない ………取り戻しに行くんだ」

走り出した俺の背中にクラスメートたちが何か言っていたが耳には届かない。
今は一秒でも早く、大河を俺の腕の中に取り戻すんだ。
436名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 23:30:42 ID:5YuiHRB6
支援
って書けばいいのか?
437 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 23:31:12 ID:m6valGUb BE:599440872-2BP(2828)
「ねぇ、お茶くらい行こうよ」
この人ちょっとも話しを聞いてくれないな…
気を使って教室を出たのに昇降口まで来たら意味ないじゃない、却って目立ってるよ。

「わたし困ります、一緒には行けません」

「そんなこと言わないでさあ」
「触らな!はぁぅ?!」

触れられる!と思って後ろに下がると背中から抱き締められた。
嫌な感じはしない。

「竜児?」

顔は見えないけど間違いない、この感じは竜児だ

「何だよ!高須、離せよ!」

私を片腕に、そして男の人の腕を片手で受け止めてる。まるで映画のシーンみたい… 
でも竜児はなぜ来てくれたの?私はこのまま素直に喜んで良いの?

「大河」
「…はい」

「俺は大河のことが好きだ、お前はどうなんだ」

「もちろん好きだよ!」

「悪いがそうゆうことだ、俺の彼女に近づかないでくれ」

「何だよそれ、最初に言えよな。ヤンキー高須の女じゃな、逢坂もそんなのが良いなんて意外だよ」
「…帰るぞ、大河」

私の手を引っ張って歩き出す。でも握った手は優して、私への気遣いが嬉しかった。

「ゴメンね、竜児。私の為に嫌な想いさせて」

手を引いて歩く竜児は何も応えてくれない、前だけを見て歩き続ける。

「……ウソでも嬉しかったよ、私を助けに来てくれて」

私の精一杯な強がりに一度足を止め、繋いだ手を強く握り締めてくれた。

「嘘じゃない」

振り向きもせず一言だけ告げて、また歩き始める。

そんなこと言ったら私は信じちゃうよ。
嘘じゃないの?本気だったの?もう私は隠さなくても良いの?私が竜児を好きになったこと。
438 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 23:34:06 ID:m6valGUb BE:2397763687-2BP(2828)
+×+
家に帰り着くまで大河に何も話さなかった。
失敗はしたくない、絶対に他人の来ない静かな所でもう一度、俺の気持ちを伝えたかったから。

「大河、聞いてくれ」

「うん。でも手は離して良いじゃないかな?」

「まだ離したくないんだ、話しが終わるまでは」
「わかった」

「俺は大河のことが好きだ。ずっと前から… イヤ、初めて逢った時から大河のことが好きだ」
「だから、俺とつきあってくれ」

「つきあう?」

「……嫌なのか?俺の彼女になるのは」
「嫌じゃないよ!」

「じゃあ、俺の彼女になってくれるんだな」

「…うん」
「そうか、ありがとう」

俺の想いは伝わり、大河はそれを受け入れてくれたか。
心配してくれてたし、ちゃんと話しとくか。

「泰子!聞いてるんだろ」

部屋を見ても泰子は居ない、聞かれるのを覚悟して話したんだがな。どこに行ったんだ、泰子は。

「竜児、冷蔵庫にやっちゃんからの伝言が貼ってある」

『今日は早く出てお店の子とご飯食べま〜す。泰子』

「じゃあ、今日の晩飯は二人分で良いな」
「うん、二人だけだね!」

二人きりか… 普通なら何か期待してしまうとこだが、まだ俺には不安に思うことがある。
さっきの告白で一瞬大河は戸惑ったよな?あれは何だったんたろう… でも俺ってつくづく臆病だよな。

「大河、さっきは何か戸惑ってなかったか?」

う〜ん… 竜児に話して良いのかな?
本当はつきあうって、よく分かんないだよね。何がどうなったら、つきあってることになるんだろ?
話したくないなぁ、私が恋愛音痴と思われるのもイヤだし。
439 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 23:37:06 ID:m6valGUb BE:342537942-2BP(2828)
「う〜ん…」
「大河、大河!」

「えっ?」
「どうしたんだ、そんなに嫌なのか?」

「そんなことないよ!!竜児と一緒に居られるのは、すっごい嬉しいの」

「だったら、何をそんなに考えてるんだ?」

「あのね… つきあうって何なのか分からないの…」
「でもね!竜児とはずっと一緒に居たいんだよ!」

「それで良いじゃないか、俺もずっと大河と一緒に居たい」
「お互いの気持ちが同じなんだからつきあってるって説明じゃ駄目か?」

そうか、2人の気持ちが一緒だからつきあうのか…… う〜ん、何か私の想うこととは違うような…

「まだ考えてるのか?何がそんなに気になるんだ?」
「私の考えとゆうか、目的?とゆうか…」

「目的?大河は何かを望んでるってことか?」

「そう!それだ!私が望んでることと、竜児の言ってることは違うの」

この期に及んでそんなことを言うか、大河よ。
『ゴメン、勘違いだった』って大河ならサラッと言いそうだしな、今更振られるんじゃないだろうな?

「…大河は何を望むんだ」
「話すけど笑わないでよ?」
「笑わない」

「絶対だよ!約束する?」
「約束する、絶対に笑わない!」

「私ね… 竜児のお嫁さんになりたいの。そしたら、ずっと一緒に居られるでしょ?」

「本気か?」
「私は本気だよ!それとも…… やっぱり私じゃダメなの?」
「全くそんなことはない!!寧ろ、俺と結婚して下さい!!!」

「うん、良いよ!これからも私のこと大切にしてね、竜児!」
440 ◆Tw0dVfiTgMyj :2009/08/05(水) 23:45:00 ID:m6valGUb BE:1284516465-2BP(2828)
支援ありがとうございます。一回目の方はナイスタイミング!と思いましたが、連投規制は回避できましたがさるさんになりました。
あと7レス分あるのですが貼っちゃって良いですかね?
次スレのスレタイも決まってないので待った方が良いですかね?
これで10レス目なので貼るなら少し時間を空けて貼ります。
441名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 23:49:46 ID:oDxonk+F
張ってくれ!頼む!
貼ってくれなきゃ北村ぶつけるぞw

442名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 23:51:01 ID:WS9FABvG
スレタイは>>426として、残り容量が微妙だな……
一応次スレ立ってからのほうがよくないか?
443名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 23:51:25 ID:5YuiHRB6
>>440
一気にやっちゃうもよし、焦らしてまたせるもよし。
どちらでも、うちはOKですぇ。

444すんません、ちょいと通りますよー:2009/08/05(水) 23:54:19 ID:tuw6kkKM
あ〜…邪魔しちゃいけないと思って控えてたんですが、もうそろそろ落ちますので貼らせてください。また一月ぶりだし。

えー、前口上は「お題」ってのはやめて「趣旨」に変えます。んでもって

趣旨:とりあえず、ギシアン落ちにはしないっつーことでどうか一つ。ではでは〜。

【リップサービス】

 夕食の後片付けを終えた竜児が、居間に座り込むのを待ちかねていたように大河が話しかけてきた。
「ねえ竜児。竜児は料理するの好きなのよね?」
「おう。そりゃ勿論」
「竜児は掃除が大好きだよね?」
「当たり前だ。なんでそんな今更なこと訊くんだ?」
「う、うん。…あのさ、好きって具体的にどれくらい好き?例えばそう…何かと比較して」
「比較とか言われてもなあ。
 …そうだな、前にお前、学校のロッカーにいちご牛乳ぶちまけたことがあったろ?
 あの時、実は能登や春田たちに1年女子との合コンに誘われてたんだけどさ。
 でも俺にとっては、大河のロッカーの掃除の方が大事だったから」
「ふ、ふうん。…ね、もし料理や洗濯ができなくなったら、竜児どうする?」
「そ、そんな恐ろしいこと、考えたくもねぇ!
 俺にとって家事は呼吸みたいなもんで、生きていく上で絶対に必要なもんだ!
 なんだろうな、自分で言うのもなんだけど、この気持ちは、もう俺にとっては本能みたいな
もんっていうか…魂に刻み込まれちまってるんだと思う。
「そんなに家事が好きなの?」
「好きだとも!好きで好きで、大好きだとも!
 この気持ちを表すのに「好き」なんて言葉じゃあ全然足りねえよ!」
「ふんふん」
「高須棒でな、こう、隅から隅まで入念に、優しく、慎重に、しかし決して見落とさず、じっくり
たっぷりねぶりあげるよーに…」
「ふんふん」
「――料理は作るのも食べるのも楽しいが、やはり誰かに食べてもらえることが嬉しいな。俺の料理を
食べて、おいしいって喜んでくれるとすごく嬉しい。それから……」
「ふんふん」
 その後、いつになく穏やかに聞き役に徹する大河を相手に、いやむしろ水を向けられて、竜児は滔々と
『自分が如何に家事を愛しているか』について語りとおしたのであった。

  * * * *

「〜〜♪〜〜♪」
「大河?」
「……!////〜〜♪」
「大河…おい大河!」
「……なによぅ。人がせっかく至福の一時に浸ってるってのに」
「まあ楽しそうなのは傍から見てもわかるんだが…」
 休み時間。
 机にうつ伏せになって「うふふ」「えへへ」と奇妙な笑い声を立てている大河の奇行っぷりを放置も
できず、竜児は心境的には爆発物処理班な気分で対応していた。
「なんだかえらく機嫌よさそうだが…なんかあったか?」
「〜〜〜♪〜〜♪♪♪」
「聞けよ!ってか聞いてんのか人の話!?…って」
 長い髪に隠れて気づかなかったが、大河の耳にはイヤホンが付いていた。
 コードの先を辿ると、手元のiPodに行き着く。
「もしかしてそれ、午前中ずっと聞いてたのか?授業中も?」
「……聞く?」
「お、おう」
 意味ありげにニヤリと笑う大河に不気味なものは感じたものの、聞かないわけにはいかないだろう。
 大河の変な態度の原因であるし、正直、好奇心もある。
 大河はポケットから携帯用ミニスピーカーを取り出すと、イヤホンの代わりにそれを繋いだ。
 スイッチが入り、近くでなければ聞き取りにくい音量で、しかしひどく聞きなれた声が再生される。
445名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/05(水) 23:54:59 ID:Nz9swIl4
さるさんは明日になれば問題ないけど、次スレ告知が問題だね。
こっちは何かで埋めるとして、次スレに投下の方が感想とかも気を使わずに書けると思う。
ま、続きは気になるのはみんなそうだと思うけどw

でも俺はスレ立て出来ません・・・誰かお願いします
446そのにー:2009/08/05(水) 23:56:43 ID:tuw6kkKM
「ねえ竜児。竜児は『私のこと』好きなのよね?」
「おう。そりゃ勿論」
「竜児は『私』が大好きだよね?」
「当たり前だ。なんでそんな今更なこと訊くんだ?」
「う、うん。…あのさ、好きって具体的にどれくらい好き?例えばそう…何かと比較して」
「比較とか言われてもなあ。
 …そうだな、/能登や春田たちに1年女子との合コンに誘われてたんだけどさ。
 でも俺にとっては、/大河/の方が大事だったから」
「…ね、もし『私に嫌われたら』、竜児どうする?
「そ、そんな恐ろしいこと、考えたくもねぇ!
 俺にとって『大河』は呼吸みたいなもんで、生きていく上で絶対に必要なもんだ!
 なんだろうな、自分で言うのもなんだけど、この気持ちは、もう俺にとっては本能みたいなもんって
いうか…魂に刻み込まれちまってるんだと思う」
「そんなに『私が』好きなの?」
「好きだとも!好きで好きで、大好きだとも!
 この気持ちを表すのに「好き」なんて言葉じゃあ全然足りね……

「止めろおおおおおおおおおおおおおおっ!!
 ってか止めてええええええええええええぇぇぇぇ!!」
 MS5(マジで死んじゃう5秒前)という必死な悲鳴を上げて、竜児は強引にiPodをもぎ取った。
「ああっ何するのよ!人が昨夜徹夜で編集した竜児らぶらぶ音声集!」
「作るな!編集するな!徹夜すんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
 畜生これ昨日の会話か!何か変だと思ってはいたが、こんなこと企んでやがったかこの虎!」
「ちなみにこの後は高須棒で私の身体を隅から隅までという展開」
「お前は何を言ってやがるんだこの変態痴女!」

 どごっ!

「……乙女に向かってなんてこというんだこのエロ駄犬」
「……乙女はこんなストーカー気質な音声集、作ったりしねーよ…」
 床の上でくの字になって痙攣しながらも、ツッコミは忘れない竜児である。
「なによ。大体、竜児が悪いんだからね」
「こんなこっぱずかしい音声ファイル作られた上に拳を手首まで鳩尾に突き刺されて、なおかつ俺が
悪いのかよ…?」
 床の上からのもっともな意見に、クラスの皆もうんうんと頷く。
 だがしかし。虎は決して孤立無縁ではなかった。

「あーらしを、おーこして♪」
「すーべてを、こーわすの♪」

 歌は工藤某なのに振り付けはWi○kという謎な往年のアイドル風味でみのりん&あーみん見参。
 ネタが古目でチョイスの理由が意味不明な芸風は、相変わらずである。
 そんな二人に、復活してきた竜児は一応、訊ねた。
「櫛枝はともかく川嶋…お前恥ずかしくないのか?」
「い、いわないで!今、じわじわと『やっちまった』感ヒシヒシ来てるんだから!」
「うわっはっはっはっは!口は悪いが情に篤くて付き合い良いナあーみん!…フフフ、可愛いぜ?
 それはそうと高須くん、後で土下座」
 亜美という新しい相方を得て、その妙な芸風に更なる磨きをかけているともっぱらな櫛枝実乃梨嬢である。
「で、高須くんは大河に対する思いやりも不足。
 大河がまるでゆりちゃん先生みたいな一人上手で痛々しい行為に突っ走ってしまうのも…欲求が
不満してるからに他ならないゼ?」
「そうよ?高須君ちょっと想像してみなさいよ?
 深夜独りでパソコンの前で、ニヤニヤしながら猫背になって音声編集に勤しむ逢坂さん…
 うわキモッ!マジでちょっとこれキモ!!
 …………ごめん、本気で痛々しすぎて…もう何も言えない」
「た、大河……ッ!?泣くな!生きろ!」
「ううう……私も実はちょっと自分でもキモとか思ってたし…はっきり言われるとやっぱり私って…
 欲求不満なのかな?」
447そのさんー:2009/08/06(木) 00:01:03 ID:tuw6kkKM
 孤立無援ではなかったが、味方からの援護が誤爆な逢坂さんです。
落ち込む嫁を当面の敵(のはず)な旦那様がとりなそうとしているのを意味ありげに見ながら、
二人は続けてきた。

「まああれだよ。高須くんが大河のこと大事にしていることは、疑いないことだけどさ。
 見えない所や小さな所まで、細々と配慮して、いつだって見守って慈しんでるのは承知してますよ?」
「でもねぇ。高須君、ぶっちゃけ不器用で口下手で、リップサービスが足りてないのよ。
 まあその素朴で実直な優しさが高須君の良い所だとは思うんだけど。
 あれよね。無言実行ってやつ。高須君、古風だから。
 なんか調子いいことぶっこいて、適当にご機嫌とりとか不実に感じるタイプ?
 面と向かって「お前が好きだ」なんて気恥ずかしくていえないけど、誰よりもお前のことが大事
なんだって胸に秘めてる忍ぶ恋こそ、って葉隠れだっけ?」
「……なんだそのマンガに出てきそうな恥ずかしいのは。
 人のことを勝手に評価して決め付けるなよな」
 得意げに述べ立てる亜美から視線をずらし、竜児は不機嫌そうに呟く。
 そう言いつつも、実のところ思い当たる節はいくらでもある竜児である。
「だけど…俺たち、互いに自分の気持ちに気づく前に、友人…というか、家族みたいに馴染んでしまったからさ。
 確かに、大河に対してぞんざいな物言いは多いけど……俺たちにとってはそれが一番、自然っていうか」
「だ〜〜〜まれシャーラーップ!」
 ヨロイ元帥みたいな節回しで、実乃梨はずびし!と竜児の眼前に指をつきつけた。
「高須くん!高須くんは大事なことを忘れてる!失念してる!ボケている!
 大河はね、普段はすんげーツンダクダクのデレ抜きだけど、性根のところは寂しんぼの甘えん坊
なんだよ!
 たとえ普段どんだけ高須くんのことを犬だのエロ駄犬だのグズでノロマで鈍くさい顔だけヤンキー顔面
凶器のエコロ爺なしみったれのオバサン根性、脂性で油足で体臭きつくてさわるとヌルとした中年体質の
ゴキブリ以下の変質者一歩手前というかほとんど変質者のきれい好きを通り越した家事の変態しかも
黒乳首ゴミレーズン!とか言っていたとしてもだね…
 っておよ!?
 なんで高須くん、いきなり机の下で体育館座りしてるの――!?」
「りゅ、竜児!?泣かないで!
 ちょっと罵詈雑言しこたま並べ立てられるなんて、いつものことじゃない!!」
「いや〜〜…そりゃ今はチビ虎とラブラブだとしても、実乃梨ちゃんは初恋の相手じゃね?
やっぱ特別な存在だと思うよ?
 その人に言われると…攻撃力、あると思う」
「りゅ…りゅうじい〜〜〜!」

 机の下で、ワックスがけのときについた微かな床の模様と友達になろうとしている竜児の腕に、大河は
取り縋る。

「竜児!さっきみのりんが言ったことは全然本気じゃないし!誇張だし!
 私だったらアンタ相手にあんだけ語彙費やすのもバカらしいから本当に言ってないよ!?」
「チビ虎…それはそれでヒデェよ…」
「うっさいばかちー!
 そ、それにね、それに……そうだ、私、竜児の黒レーズン、本当はね、本当は…好きだから!
 あの時はいきなりでびっくりして、つい照れ隠しにひどいこと言っちゃったけど…
 だだだだっていきなり竜児の裸とか見せられて、動転しちゃって、つい心にもないことを…」
「た…大河〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「りゅうじぃ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 ひしっ!

「……そんなんで復活していいのかね、高須くん…?」
「つっこまないよ。私はつっこまないからね」

 相変わらず周囲の目も気にせず互いの愛を確認中なバカップルから眼を逸らし、こめかみを抑える
友人ズである。
 というか、問題になるのは黒レーズンだけなのか高須竜児?
448そのよんー:2009/08/06(木) 00:10:01 ID:d/7qAwGH
「でも竜児、これでわかったでしょ?
 たった一言で救われることもある。そんな力が言葉にはあるの」
「おう…言葉ってトゲが生えてるのな。使い方次第で、ペンは剣以上にえげつない暴力になるって、よくわかった」
「うわ、微妙にわかりあえてねぇ!」
「そのくせ物事の一端は的確に捉えてやがる!」
 そんな仲良し四人組を生温かく見守るクラス一同。
 無論クラスの仲間として、微笑ましく思う気持ちはある。
 でも、まあ、そろそろ落ち着いてくんないかなーそろそろ弁当にしたいんだけどー、とも思っているが。
 そのクラスメイトの心の声が聞こえたわけではないだろうが、珍しく実乃梨が軌道修正を図ってきた。
 こほん、と咳払いなどして姿勢を正した実乃梨は、穏やかではあったが滅多に見せない、真面目な
顔をしている。
「…とにかくだね高須くん。この件で大河が寂しい思いをしているということは、わかってもらいたいんだ」
「寂しい…?」
 思わず竜児は大河を見るが、その視線から大河は居心地悪そうに顔を背けた。
「高須くんが大河をどれだけ大事にしてるか、どんなに大河を想っているかなんて、それはもう十分に承知してるよ?」
「というか、毎日胸焼けしそうなくらい見せ付けられてるけど」
 会話の流れの邪魔にならない程度に、小さく亜美がクラス全員の心の代弁を務める。
「…正直、恋愛経験皆無な私がアツアツのお二人さんに偉そうなコト言えないなぁって思うんだけど。
 実際、高須くんは本当、良くしてくれてるから。
 傍から見ているだけで、わかるよ。
 高須くんの視線は、ちょっと離れていてもいつだって大河のところに戻ってくるし、そうやって大河を見守ってる高須くんは、とてもやさしい目をしてる」

 だから、彼方の本当の気持ちが誰に向いているか、なんて。
 ずっと前からわかっていたから。

 それは決して心の内から零れ出ることはないから、誰にも届くことはない言葉。
 でも、長身の友人は、そっと実乃梨の横顔を見つめていた。
「――だから大河が寂しい思いをしてるって言われても、ピンとこないとは思うんだ。…いや、寂しいというか、物足りない…なのかな?」
「物足りない…?」
 頭を傾げる竜児を見やり、実乃梨も少し間を置いた。
 自分の考えをまとめ、伝えたいことを表現するにはどうすればいいのか、考える。
「例えば――ほら、登校中に君たちと一緒になった時、私、「大河は今日も可愛いね」とか言うでしょ?
 私と高須くんじゃニュアンスが全然ちがうけど…要は一言、普通の会話にスプーン1杯と半の愛情を加えるのだよ?」
「おう……」
「イマイチわかってないって顔ね」
 わざとらしいため息と共に、アメリカンに亜美が肩を竦める。
「なんでそんなこと、とか、意味あるのかそれ?とか思ってるんでしょ?
 そ・れ・が、ダメダメだってーの。
 意味なんか無くていいの。っていうか、そんなの後からいくらでもつけられる。
 まあ…ぶっちゃけ、大した意味はないから。形だけのものだし。
 でもね?
 その形だけ、ってのが時に必要なこともあるわけ。
 我侭で横暴で、欲張りなのはなにもそこのチビトラに限ったわけじゃない。 女の子はみんな、そんなとこあるんだから。
 だから、チビトラがこんな独り上手なモノに走っちゃう気持ちもなんとなくわかっちゃうんだ。
 大事にされてるのはわかってる。でももっと大事にしてほしい。
 傍にいてくれるのもわかってる。それでも、もっと近くにいてほしい。
 大好きだよって、可愛いよって、自分をもっと褒めてほしい。甘い言葉をささやいてほしい。
 眼に見える『カタチ』でその気持ちを伝えて欲しい。
 いつも見えていないと、不安になってくるから。
 見えていれば安心できるから。
 バカみたいに単純だけど、シンプル故にわかりやすくて、だからこれが結構、強いワケ。
 こーゆーのって、理屈じゃないからね。
 ホント、…ただの欲求だから」
「おおう…」
 瞳に敬意の色を見せて、大河は亜美の両手を自分の小さな手で、ぎゅっと包み込んだ。
「自己顕示欲の塊のアンタが言うとすごくわかりやすいというか実感こもりすぎてこえー」
「ウェイ!?あたし今ちょっとイイコト言った?とか思ってたのにそういう評価!?」
 ちょっとだけオンドゥル語に目覚めかけた亜美であった。
 そんな彼女を気遣う気持ちは皆無ではなかったが、今は自分たちのことを優先させてもらう
ことにして、竜児は大河に問いかける。
449そのごー:2009/08/06(木) 00:17:30 ID:d/7qAwGH
「今、櫛枝と川嶋が教えてくれたことは…そうなのか、大河?」
「う……ん。というか、実のところ、私も今の説明を聞いて、あ、そういうことなのかなって思ったとこ。
 というか、そんなに深く考えてのことでもないし。
 私はただ、竜児にはちょっと照れくさくて恥ずかしがるような台詞を言ってもら…」
 言葉を途中で止めて、大河は少し考え込んだ。
「そっか。…そうか。…そうだったんだ。やっぱり私、ちょっとさみしかったのかもしれない」
「さみしいって…なんで!?」
 決して怒っているわけではない。だがそれでも竜児の声は常に較べて少しだけ、大きくなった。
 ――大河の、17年の人生で抱えた孤独の深さをを垣間見て、彼女の負った傷の深さと痛みに慄いて、
そして、何よりその痛みに慣れきって、麻痺して、痛みを痛みとして感じることすらできなくなった、
乾ききった心を感じてしまった。
 理解はできなかった。でも、知ってしまった。
 大河の傍に居続ける。
そうしたい気持ちは、そう決めた理由は、他にいくつもあるけれど、
「あいつにさみしい思いをさせたくない」という願いは、竜児の中で決して小さなものではなかった。
 それなのに。
「竜児のせいじゃない。
 多分、これは…私が欲張りなだけだって思うから」
 暴君・手乗りタイガーとしては小さくて穏やかな声だった。
「…竜児と出会って、竜児が一人ぼっちだった私の傍にいてくれて。
それだけで、私は幸せだった。
みのりんのことが好きな竜児を好きになって。
もう一緒にはいられなくても、近くで、竜児を見ていることができればそれでいいって思った
こともあった。
竜児が私を好きになってくれて、私もやっぱり竜児のことが好きで、一緒に同じ道を歩いていくって
誓い合って、私は本当に幸せになれて。
私はもう、これ以上ないほど幸せになれたのに。
ホントだ…ばかちーの言うとおり。私はほんと、欲張りで貪欲だ。
私、もっと幸せになりたいんだ。
もっと竜児に、私を好きになってもらいたいんだ。
だから…もっともっと好きだって言って欲しいんだ。
もう十分幸せなのに、それでも欲しいって、さみしいって。
ほんと、…際限ないね」
ハハ、と乾いた笑い声を大河は上げた。
笑うしかないといった笑いだった。
まったく、自分は結局、どこまでも竜児に縋っていくだけなのか。竜児の優しさにどっぷりと甘えてるだけなのか。
こんな様で、対等だといえるのか。竜と虎は対等で、だから並び立てるのではなかったのか。
竜児が私にくれたものに対して、私はそれに見合うだけのお返しができているのか。
それなのに、自分ときたら更にこんな独り遊びまでして、もっと欲しがって。
「なにやってんだよ、ホントに」
それは、自分ではなく竜児の口から零れ出た。
450そのろくー:2009/08/06(木) 00:19:29 ID:d/7qAwGH
「意味わかんねぇ。どうしてもわかんねぇ。
櫛枝。先週、大河がさ、いつもと違うリップ、使ってたんだよ」
「ほうほう?」
「俺さ、そのことにちゃんと気づいてたんだよ。リップ変えたのかって、大河に言ったんだよ。
……なのにさ。なのによ。
変えたのか、って言って。それだけなんだよ。
新しいのもいいな、とか、その色もなかなかだな、とか、そんな気の利いたこと、言わなかったんだよ。
そういうこと、思い付きもしなかったんだよ」
「あちゃ〜〜〜〜〜…高須くん…そいつぁ、朴念仁にもほどがあるっすよ」
「うっわ、気づかないならまだ鈍感で済むけど、気づいてて思い付かないって…どんだけ…」
「自分で自分がわかんねぇ。なんでそんなことに気がつかないんだ。
一時が万事で、そんな気の利かないことが他にもあるんだろうな、俺。
なにやってんだよ、ほんとに。俺って奴は!」
そう言って、この鈍犬野郎は右手で顔を覆ってノロノロと天井を仰いだ。
まただ。
まただ。
また一つ、竜児は、わかってくれた。
人は万能には程遠い。
どんなに近くにいても、どんなにわかってもらいたくても、理解してもらえないこともある。
わかってくれない竜児に苛立って、ケンカすることも幾度もある。これからもあるだろう。
でも、と思う。
竜児は最後には、絶対にわかってくれる。鈍いけど、わかってくれるのだ。
私のことを、わかってくれるのだ。
「まったくよ。何をやってんだか」
そう。私も竜児も、なにやってんだか。
まったく、いらないじゃない。あんな音声ファイル、作る必要ないじゃない。
「…ごめん、大河。お前がいうとおり俺って本当、鈍犬野郎だわ」
こんなにも私を思ってくれる竜児の気持ち、カタチにしなくったってわかるじゃない。
最初っからわかってたことじゃない。
まあ…でも、カタチにしてくれるなら…いってもらいたい台詞とか、色々あるんだけど。
えへへ。やっぱり生で言ってくれる方が…
「……大河。お前、なんか今、矛盾しつつもこう、邪なこと考えてねーか?」
「なんでそんなことばっか敏いんだグズ野郎!?」
「考えてたのかよコンチクショウ!!ちょっとは自分の果て無き貪欲さを反省したかと思ってたのに!」
「う…そ、それは、その…」
さっき自分の欲深さに落ち込んだばかりだというのに、竜児と自分は本当に対等なのか、疑った
ばかりだというのに。
「ま、俺もお前のこと、毎日どんどん好きになってるから、お相子ではあるんだけどな」
「え?」
え。え。え。
コイツ、イマ、ナニイッタ?
「そっ…それだ高須きゅん!その意気だっ!そんな感じだよその感じ!」
「う〜〜〜ん…意図した発言じゃないからこそ、とは思うけどね」
ばかちーがなんかいってる。いや、それも一理あるとは思う。
思うけど。
「バカ犬…今の台詞、リピート!ワンモアアゲイン!」
「なんでだよ!」
「録音する!そして夜、寝る前に10回くらい聞き倒す!」
「うわコイツ本気だ!!しかも開き直ってる!!?」
「やかましい!てか、そういえば私のiPod、いい加減かえせ!返却しろ!」
「おう?そういえば…あれ?」
ポケットを探って、竜児は目的の物が無いことに気づいた。
というか、あの恥ずかしい編集音声に耐えられず、らしくもなく力ずくで奪って…
それからどうした?

記憶が無かった。というか、考えもしなかった。
一体、どうしたのか…?
451そのななー:2009/08/06(木) 00:25:55 ID:d/7qAwGH
『あなたの恋の応援団!』

悩む竜児の頭上で、最近すこし音質が悪くなったスピーカーから失恋大明神こと親友の声が流れ出していた。
気づけば昼休みも半ば近くまで過ぎてしまっている。
『こんにちは。今日も始まりました皆さんの恋を応援するお昼の一時。
失恋大明神こと生徒会長・北村祐作です。
今日はつい先ほど届けられた緊急特別投稿を紹介したいと思います』
生徒会の放送は、既にお昼おなじみのものとなっている。
いつもの平凡な昼の情景。
しかしなにか不吉なものを感じ、竜児は古びたスピーカーを見上げていた。
『え〜絶対匿名希望のA美ちゃん稚内さん…ってわかる人にはバレバレやんけー!さんからの獲れたてピチピチ産地直送投稿です』

「あーみんどういうこと!?ってはっ!既にいない!!」
「みのりん…すごいわざとらしい」
「っていうか櫛枝。お前も一枚噛んでるかもしかして?」
 いや一番の問題は、超移動すぎだろあーみん?ってとこだが。

『祐作、ちょっとおもしろいかもしれないネタ拾ったから協力しろ。…少しは隠す努力して下さい、
A美ちゃん以下略さん。
――え〜、私のクラスメイトにすっごく恥ずかしいバカップルがいるのですが、この度、その
バカップルのちみっこい方の馬鹿がおバカなものを作ってきたので、つい、投稿しちゃいまいた。
ちなみに、私はこれからちょっと仕事で海外に行ってきますので、ほとぼりが冷めるまで
帰ってこないからね。……すばらしいブラックストマックぶりだな、亜美!』
                                        
お前も隠してねーよ北村!つか、まさか…?

『彼氏のリップサービスが足りてないと、日々不満を抱えてる彼女。
彼女にそんな不満を抱え込ませてしまっている無粋な彼氏。
そんな二人に一つの手本として、この音声ファイルは役立つかもしれないと思い、投稿します。
――と、いうことらしいので、これも恋に悩む若人に、一筋の光明になってくれることを望んで、
お送りしたいと思います』

「まて〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!きたむら〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
『あ〜〜、高須、すまん!でも、おもしろそうなもんで、つい』
「つい、で親友を売るなあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

悪鬼のような極悪面を本当に危険に歪め、竜児は絶叫しつつ教室を飛び出していった。
もちろん向かうは放送室、狙う的は失恋大明神。

「…大河は行かないのかい?」
「んんん〜〜〜〜…竜児、アレが流れたら、もう退路なくなると思わない?」
「深慮遠謀すげぇな大河…!」

割とのんびりとした空気で語らう親友同士。
そしてその周囲では、やれやれようやく飯にできると普通に昼食を始めるクラスメイトたち。
ようやく平穏な昼の一時が始まろうとしていた。

『ねえ竜児。竜児は『私のこと』好きなのよね?』
『おう。そりゃ勿論』

「せめて、名前は修正して流せ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

……そんな悲痛な叫びが、廊下の奥で響いていたようではあったが。


<なし崩しに了>
452名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/06(木) 00:50:47 ID:hfr+nKdt
次スレどうなった?(滝汗)
453名無しさん@お腹いっぱい。
立てたよ。
ミスあったらごめん。

【とらドラ!】大河×竜児【ユラユラ妄想】Vol14
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1249487623/