D.C.SEEDDESTINY (バトル編) その2

このエントリーをはてなブックマークに追加
1まとめの人
熱いバトルを書きたい職人様は、こちらへ。

前スレ
D.C.SEEDDESTINY (バトル編)
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1131070084/l50

このスレは、下記のスレの姉妹スレです。↓

シン・アスカと白河ことりが交流するスレ 5
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1139059550/l50

朝倉ヒナがシン・アスカと交流するスレ
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1133661423/l50
2名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/08(土) 01:20:11 ID:UlvidEsA
>>1
乙であります( ゚∀゚)ノよぅ!
3 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/08(土) 01:23:12 ID:NSxJeu7p
>>1
お疲れ様であります
これで次回のうpも安心してできますなw
4名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/08(土) 01:23:28 ID:JqYSCBkI
>>1
乙!
5名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/08(土) 20:27:42 ID:JqYSCBkI
6あの人:2006/04/08(土) 21:45:01 ID:r6FS7vwq
>>1 >>5
お疲れさまです。
7あの人:2006/04/09(日) 14:26:49 ID:wbA/mKzf
すいません流れを読まずに……投下します。

ユニウス7落下テロ事件……ブレイク・ザ・ワールドから始まった
プラント・地球間の戦争は、CE.74、停戦条約が結ばれた事によりひとまず終結した。
しかし、それに納得していない者達もいる。実質敗戦した元ザフトの一部の兵、そして
そもそもコーディネーターという存在そのものを否定している強行派ブルーコスモス。
今、太平洋上を進む大西洋連邦の戦艦も、その実態は大西洋連邦が黙認している
ブルーコスモスによる独立機動軍の一つだった。

「……ええい、いまいましいっ!」
艦長室の机に1人の男性が拳を振り下ろした。
「何故だ、何故ワガハイがこんな命令を受けねばならンのだ!!」
癇癪に任せて机の上を手で払う。
「しかたありませんよ、オーブが盟主国になってから
 地球連合の中の大西洋連邦の発言力はただでさえも落ちてるんですよ、
 残存のロゴスメンバーも、何かしようとしていたみたいですけど
 ヘブンズベースごとγ線レーザーで吹き飛ばされてしまいましたし、
 こうやって仕事があるだけありがたいじゃないですか。」
書類を持ってきた将校……この艦の副長は溜息混じりでなだめ、
慣れた手つきで床に広がる書類を拾いあつめた。
「ワガハイ達は機動軍なンだぞ!こんな仕事、諜報部の連中にでも任せればいいだろうが!」
「そんな事言っても、戦う相手がいないんですからしょうがないでしょう。」
地球軍とプラントの間には停戦協定が結ばれている。
今戦闘が起こるとしたらブルーコスモスによるテロぐらいだろう。
ブルーコスモスである彼らには応援こそすれ戦う相手ではない。
「コーディネーターぐらい探せばいくらでもおるわ!試しにそこらの島に陽電子砲でも…」
「一応我々は地球軍なんですから、同盟国内で無意味に戦闘したらこっちが討たれますよ。
 それに最近はここら辺には、あのミネルバがウロウロしていますからね。」
「くっ……ミネルバか……」
ミネルバ……停戦条約提携後、地上のブルーコスモスのテロ対策にあてられている艦だ。
以前は世界中を飛びまわっていたが今は何故かカーペンタリア基地を中心として太平洋に留まっている。
「あの艦のせいでいくつの工作部隊が潰されたか……」
「コレの部隊もその一つですね。」
副長は再びまとめた書類を机の上に置いた。
「重要度特Aの機密物資を移送中にミネルバに遭遇。
 ウインダム6、フォビドゥンヴォーテクス4で応戦するも全滅。
 そのまま輸送船は撃沈したそうです。」
「ン?その部隊はザムザザーとゲルズゲーも持っていただろ?」
「戦闘に出さなかったようですね。船ごと沈んだかと。」
「なるほど……自業自得だな。カトンボばかり出すから沈むンだ。
 男は黙ってモビルアーマーだろ。」
「臨機応変に対処してください……ともかく」
副長は、はあと溜息を吐くと再び言葉を続けた
「今回の指令は大西洋連邦からの正式な指令です。我々はあくまでも、
 大西洋連邦の基地からブルーコスモスの”ゲリラ”により”盗まれた”機密物資の
 捜索・回収を目的として来ているんです。無意味な戦闘は厳禁です。」
「機密物資か、まったく大げさな話だ。あんなのが……」
「しかし、ブルーコスモスにとってトーテムとなるものですよ。」
「何がトーテムだ……上層部も何を考えてるンだ!どうせトーテムにするならば
 アスハの小娘やピンクの歌姫のように、美少女を使うべきだろうが!それがよりにもよって……」
「適材がいないんですよ。候補として前々盟主の妻とか娘とか、前盟主の妹とかその娘とかありましたが、
 年齢的に高すぎたり低すぎたり亡くなってたり行方不明だったりで結局ダメでしたから。」
「だからといってもアレはないだろう。ふざけているとしか……。」
『艦長!副長!大変です!!』
「ぬ?」
艦長室に通信が入ってきた……つまりは状況に何か進展があったという事だ。
「どうした、例のモノが見つかったのか?」
『そ、それがその……捜索にあたっていた斥候部隊が……』
8ANOther ポートレート:2006/04/09(日) 14:28:12 ID:wbA/mKzf
比較的小さな無人島……その上でお世辞にも小さいとは言えない二つの人影がぶつかり合う。
もちろん、本当に人間なわけはない。人型の機動兵器……MS、モビルスーツだ。
MS……戦場では珍しい物ではないし、最近は作業用のMSというものもある。
だが、今回の場合はそのどちらでもない。確かに戦ってはいる。しかし武器は一切持っていない。
拳が、蹴りが、宙を舞う。それを受け止め、もしくは避けつつ、再び拳が放たれる。
普通MSでそんなことする奴はいない……わけでもないが、一般的ではない。
そしてその度に、無人島の中に響く声……

『バード!いい加減にその本を返しなさい!!』
『い〜や〜だ〜!!女性とか、キラとか、アスランとか、レイのはどうでもいいけど、
 シン君のページだけは、ぜっっったいに、わたさないぃぃぃ!!』

どうも緊張感に欠ける。まるでどつき合いのケンカのようだ。
そしてそのどつき合いをするMS自体もかなり変わっていた。
片方の黄色のMSは、オーブのM1アストレイを彷彿とさせる装甲が少ないMSであった。
ただ、M1と違いフレームは皮膜状の装甲で被われ剥き出しになっていない。
また腹部などの一部の間接の継ぎ目も、皮膜で被う事で見えないようにしてある。
これは連合、プラントのMSと比べる、人型にかなり近いと言えるだろう。
しかし、それももう一体のMSを前にすると霞んできてしまう。
もう一体の…はたして、本当にMSと呼んでいいのか疑問なのだが、そのMSは
やはりフレームを皮膜状の装甲で包んであるようなのだが、
黄色いMSと違い全ての間接が完全に被われており、継ぎ目はまったく見えない。
そしてそのフレームには……本来ありえない事なのだが、通常装甲がまったくついておらず、
その代わりなのかどうかわからないが、布状の追加アーマー……というか、服を着ていた。
この時点でも既に悪い夢のような物だが、極めつけはその頭部だろう。
風にたなびくオレンジ色の髪、瞬きをして視線が動く瞳、声を出すたびに開く口、
そしてその度に微妙に変化する表情……大きさ以外は完全に人間、しかも少女の姿をしている。
例えるなら、怪獣映画のジオラマに間違って入ってきてしまったエキストラ、と言ったところか。

……しかし、なんなんだこのMSは?
場所から考えると東アジア共和国製だろうか、一応MSを持っていたはずだ……見たことはないが。
だが、装甲が薄く人型に近いというのはオーブ製のMSの特徴でもある。
……少なくとも大西洋連邦製ではないだろう、大西洋連邦はこんなMSは造らない。
もっとビームとかを特盛りで装備した大火力のMSを造るはずだ。
ブルーコスモスがこんなMSを所有しているという話も聞かない。
つまり、いま目の前でどつき合いをしている所属不明なMSは『仲間』ではなく、
また一応『盟友』である東アジア共和国の領土内で戦闘行為をしている、
そこに我ら大西洋連邦の機動軍が偶然通りかかった、というわけだ。
黙って見逃すわけにはいかないだろう……理由はできた。
せっかく軍に入ったのに戦闘ができなくてイライラしていたところだ。
操縦手と砲手に指示を出す。さあ、祭の始まりだ……っ!
9ANOther ポートレート:2006/04/09(日) 14:29:06 ID:wbA/mKzf
「た、大変です!バードとミハルがプロトバナーとロボ美春Xに乗って格納庫から飛び出して……」
「無人島でバナーファイトだろ?さっきも聞いたぞ。」
「そ、それが、無人島でバナーファイトをしていたら突然ザムザザーが!」
「ザムザザー……地球連合のMAか?どうしてここに……」


『なんでこんな所に地球連合のMAがいるの?!』
「ミハルに聞かないでくださいっ!!」
バードに体育会系的な指導をしていたら、突然現れた緑色の巨体。
ライブラリーによれば地球連合のMA……ザムザザーというらしいです。
兵装アームが向けられます。でも地上での機動力はこっちの方が上です。
すぐさまその場から離れると、次の瞬間、超高温のプラズマが地面を焼きました。
『どうするの、私、ビームサーベルもビームライフルも置いてきちゃったよ、あれと素手で戦うの?』
「いまビーム装備なんか使ったら、一発でエネルギー切れです。」
まあロボ美春Xには掌底部のプラグがついていないから、どのみち使えないんですけど。
再びビーム、よっぽどビームが好きなんですね。
地球軍と言うことは乗っているのはナチュラル……OSでいくらサポートしたからといっても、
反応速度には限界があるはずです。その点ミハル達は、頭部の触覚型通信デバイスで
MSと完全に同期していますから、タイムラグは実質ゼロです。さて……
ライブラリーによるとこのMAのコクピット正面ど真ん中、3人で操縦しているようですね。
装甲は……フェイズシフトではないんですね。武装のほとんどは4本のアームに集中。
……まあなんとかいけそうです。
「バード、ちょっとお願いがあるんですけど?」
『えっ?』


「ちっ、すばしっこいヤツらめ。」
奇襲を仕掛けて一気に倒してやろうと思っていたが、早々に気づかれてしまった。
だから偵察にザムザザーは使いたくないのだ。ミラージュコロイドとまでは言わないが、
こういうのはもっと小型で小回りが利くMSでやった方がいい。その上いま戦っている相手は
やたらと機動力が高い。黄色いMSはもちろんだが、バーニアの類が一切ついていない
完全人型のMSの方もあり得ない反応速度でこちらの攻撃を避けている。
……だが、所詮避けるだけだ。
さっきのどつき合いから、このMS達が武装を持っていないことは分かっている。
どつかれて沈むような装甲はしていない。つまりはこの戦闘、負けることはない。
動きさえ封じれば我々の勝ちだ。体勢さえ崩せれば……
ビームが放たれる、しかし放たれるよりも早く2体のMSは回避運動に入り、
「……ぬ!」
黄色いMSが足を滑らせて転倒した。着地に失敗したのか、チャンスだ!
「ガムザートフ、てぇーー!!」
ビームが放たれる。回避運動は間に合わない、勝利を確信した、が。
「なっ?!」
ビームは黄色いMSに命中することなく空中で四散した。どういうことだ?
次の瞬間、機体に衝撃が走る。鳴り響くアラームの中、砲手が悲鳴を上げる。
「どうした?!」
「ア、アームが……アームが切り落とされました!低圧砲も潰されていますっ!」
「た、隊長!?」
続いて操縦手が……そして私自身も悲鳴を上げた。メインカメラの映像には
対装甲ナイフを構えた完全人型のMSの姿が映っていた。
10ANOther ポートレート:2006/04/09(日) 14:29:51 ID:wbA/mKzf
「対装甲ナイフなんか隠しもっていたんなら、早く使ってよ。」
「無茶言わないでください。いくら小回りが利かないとはいえ、
 真っ正面から行って流れ弾にでも当たったらどうするんですか。」
きりきり、きりきり、とプロトバナーのバックパックにネジを差し込み
ネジを巻いていく。これで充電できるのだからすごいエネルギー効率です。
ただ、あんまりエネルギーはもたないわけで……
「だからって、私を囮にしなくても……」
「アンチビーム粒子発生装置があるから、あの程度のビームなら大丈夫です。」
戦闘中にエネルギー切れを起こした時の、緊急防衛装置として付けられているのが
アンチビーム粒子発生装置……こちらのビームも消されますが、
対ビーム装備としてはエネルギー消費が少なく、かさばらないのが利点です。
「実弾、撃ってきたらどうするつもりだったの?」
「バナナ装甲なら、一発ぐらい当たっても大丈夫です。
 それに、相手のパイロットはビームにこだわりがあったようなので、
 トドメを刺すときは必ずビームを使うはずだと思いました……と、
 はいゼンマイ巻き終わりましたよ、さあ帰りましょう。」
「……本は返さないよ。」
「返してください……ん?」
通信が入ってきました、天枷研究所からです。
『バード、ミハル、大丈夫か?』
「あっ、天枷所長。」
「大丈夫じゃないですよ、いったいどうしてこんなところにあんなのが……」
『ああ、そのことだが……どうやら大西洋連邦の戦艦がそばまできているらしい。
 で、今、そっちにMA部隊が向かっているようなんだ。』
「「……えっ?」」


「ええい、不甲斐ない!!」
斥候部隊が所属不明のMSと戦闘し、中破、帰還したという報告を受け、
大佐と私はブリッジにやってきていた。
「たった2体の、しかもほとんど丸腰のMS相手にこのざまはなンだ!」
「しかし、異常なまでの反応速度です。それにこの映像に映っている対装甲ナイフは
 フォールディングレイザー……プラント製です。おそらくパイロットはコーディネーターですね。」
「ふン、東アジアめ、やはりコーディネーターどもと連んでいたか。」
「いえ、まだ東アジア共和国のMSと決まったわけでは……」
「かまうか!どのみちあれは敵だ、ワガハイのMA部隊ですりつぶしてくれるわ!」
「ザムザザーとゲルズゲーで、ですか?」
「あたりまえだ、この艦には貧弱なカトンボなンぞ積んでおらンからな。
 いくら反応速度が良いと行っても数で押せばあんなナヨナヨしたMS敵ではないは!」
「あ、あの……か、艦長……」
がははははは、と高笑いが響くなか、オペレータが恐る恐る艦長を呼んだ。
「ん?どうした、討ち取ったか?」
「そ、それがその……」
11ANOther ポートレート:2006/04/09(日) 14:32:05 ID:wbA/mKzf
飛び交う巨体の中、私達は……意外と善戦していた。
『ばななななぁぁ!!』
狭い無人島に集まった巨大なMA達。下手に攻撃すれば相打ちになってしまう。
その間をくぐり抜け、ミハルは変な叫び声をあげつつ、2本の対装甲ナイフで
ザムザザーの上半身を切り裂き、前足をぶった切り、
滑腔砲にナイフの柄を叩き付けて砲塔を潰していく。
私も、ミハルに渡された予備の対装甲ナイフ2本で
ザムザザーの武装を破がしていく。ザムザザーもゲルズゲーも
コクピットのそばに武装がない親切設計のMAで助かった。
たまに突進してくるMAもあるが、私達が避けれないはずもなく、
たいてい他のMAにぶつかって自滅していった。

しかし、数が少なくなるにつれ、逆に隙がなくなる。
先の戦闘でビームが効かなかったことからか、実弾の攻撃が多い。
プロトバナーのバナナ装甲は普通の装甲材に比べれば高い防御力を誇る。が、
PS装甲のような無茶苦茶な強度があるわけではなく、
何発か攻撃を受ければ貫かれてしまうだろう。
流石に対装甲ナイフ2本では厳しいか……そう思った、その時!
空から颯爽と降りてきた見覚えのあるシルエット……そして入る通信。
『バード、聞こえるか?』
「所長!あ、あれは、あれはもしかして……」
『B77-01ワンディフェンサーだ。その武装では厳しいだろ?
 バナナーン換装システムの調整に手間取ったが、なんとか間に合ったようだな。』
「じゃあじゃあじゃあ!合・体!できるんですねっ!そうなんですねっ!」
『ああ、装備は分かってるな?』
「もちろんっす!」
『よろしい、では……存分に萌えてくれ。』


「なんなんだ、あれ……?」
外見に似合わずやたらと強い2体のMS、その戦闘中上空から現れたのは黄色い……
「……バナナ?」
いや違うだろ。言っててなんだがバナナはあんなに大きくないし空も飛ばない。
戦闘機……いやMAか。しかし何故バナナ?というかやけに速いなオイ。
仲間の何体かがビームを放つが、あまりにも速すぎて照準が合わない。
突如、バナナは高度を下げ、そしてそれを待っていたかのように黄色いMSは跳び上がる。
ぶつかる。そう思った次の瞬間、バナナは突然空中でバラバラになった。空中分解?
……いや、違う!バラバラになったバナナは黄色いMSの周りをグルグルと回りつつ、
足に、腕に、肩に、腰に、胸に、バックパックに、そのパーツを……合体させている?!
そしてすべてのパーツが合体した黄色いMSは地面に降り立ち、ポーズを付けて、そして

『スーパー……プロト、バナァァァァァ!!』

……叫んだ。
12ANOther ポートレート:2006/04/09(日) 14:33:57 ID:wbA/mKzf
「くっ……!」
非現実的な光景だった。仲間達のMAが次々と丸裸にされていく。
それも一体のMSによってだ。しかも、
『ドリル……クラッシャァ!!』
合体MSの両肩のパーツが空中でよく分からない変形をしたあと、
右手に装着された……ドリル。こちらの攻撃をことごとく跳ね返し、
ある時は叩き付け、ある時は貫き、MAの武装を破壊していく。
戦闘能力を奪われたMAは、あるものは突進し、あるものは船へと戻っていった。
そうしているうちに、あれだけたくさんいたMAは私達のゲルズゲーだけになっていた。
ドリルを正面に突撃してくるMS。とっさに陽電子リフレクターを展開する。
『勇敢なる盾』を意味するシュナイドシュッツSX1021。陽電子砲すら受け止めるその盾は
しかし、合体MSのドリルによってあっさりと貫かれた。
ゲルズゲーの上半身を完全に吹き飛ばし、なぎ払われたドリルにより前足がちぎれ飛ぶ。
機体のバランスが崩れよろめく。その隙をつき背後に回られ、滑腔砲を殴りつけられた。
曲がった砲身では暴発するだけだろう。あとは突進するぐらいしかできないが、
避けられるのがオチだ。追撃するつもりはないらしい、
私達に今できることは、一度戦艦に戻って機体を修理することぐらいだった。


「MA部隊全機中破帰還……ですか。」
「ぬぬぬっ……」
艦長の額に青筋が立つ。自慢のMA部隊が全滅させられたのだからしょうがない。
「なんなンだあれは!どうしてバナナだ!どうして合体だ!」
「重力下であの動きができると言うことは、おそらく推進システムに
 特殊なものを使っているのでしょう。形式はだいぶ違いますが、
 ストライカーシステムと同じような物でしょう。」
それにしても奇妙なことは、ここまで圧倒的なのにコクピットを狙わない、
いや、むしろコクピットへの攻撃だけは当てないようにしていることだ。
俗に言う不殺主義者なのだろうか……戦場で手加減するというのは大抵、
相当腕に自信があるか、覚悟がない理想主義者かそのどちらかだが……
まあ、今の状況を『戦場』と呼ぶべきかは疑問だが。とにかく戦争には向かないタイプだ。
敵にしたくもないが、味方にしたくもない。傭兵でもしていてもらいたい。
「ふンまあいい……クリムゾンを出せ!目にもの見せてくれるわ!」
この人も艦長としてあんまり向かないタイプな気もするが……いや考えるだけ不毛か。
「クリムゾンですか?しかしあれはまだ……」
「いま出さずしていつ出す!このままおめおめと帰れるか!
 責任はワガハイが取る、すぐに発進させろ!」


『あ〜ん……やっぱり、ドリルって良い♪私、シン君とドリルさえあったら、
 例え宇宙の果てに流されたって希望を見失わない自信があります。』
「バード、既に色々なことを見失ってますよ。」
あとその場合、シン先輩が希望を見失います。
『ふふふ、いいんです♪でも今日は私、大活躍でしたね。
 この大活躍に免じて、このポートレートブックは私の……』
「だから、人のものを盗っちゃダメなんです!ちゃんと返して……?!」
ミハル達はその場から飛び退き、直後その場をビームが駆け抜けました。
海上からのビーム攻撃?ビームを放ったのは……?!
「ザムザザー、でも……赤い?」
13ANOther ポートレート:2006/04/09(日) 14:36:09 ID:wbA/mKzf
ビームが外れたのを確認した赤いザムザザーは、そのままこっちに向かって飛んできた。
ビームの出力と射程が上がっていたけど、どうやら機動力も上がっているらしい。
三倍ぐらいかな?でも、スーパープロトバナーには遠く及ばないっす。
天枷研究所製通常蓄積式ナノ合成型発展セラミック装甲……バナナ装甲材の研究中に発見された、
電界プラズマジェット放出材、シュガースポットセラミックス(SSC)。
ワンディフェンサーを始めとしたバナディフェンサーにはそれを利用した
プラズマジェット推進装置『シュガースポット高出力バーニア』が搭載されている。
低重量で高出力……試したことはないけど、理論上単体での大気圏離脱も可能。
そんなワンディフェンサーと合体したスーパープロトバナーが、
三倍程度出力が上がったザムザザーに追いつめられるはずもなく、
逆にドリルクラッシャーを構え、一気に間合いを詰め、アーム目掛けて、思いっきり突き出す。
超硬合金製のドリルクラッシャーにより赤いザムザザーのアームは……
……あれ?


『どうしよう、ドリルクラッシャーが効かない!』
「えっ?」
1人無人島に残されたミハル……ロボ美春Xにはバーニアがない……の元に
バードからの通信が入りました……ドリルクラッシャーが効かない?
『攻撃は当たってるんだけど、やけに硬くて硬くて……キズ一つつかないっ!』
「硬い…………あっ」
思い当たることがありました。そう、それなら赤い理由も説明が付きます。
「バード、たぶんそれPS装甲なんです!ビームとかじゃないと効きません!」
『ふぇ、フェイズシフト装甲?!』
PS装甲は装甲両面の位相を転移することで物理的な攻撃に対して高い強度を誇ります。
この位相転移の際、表面で反射、吸収する光のスペクトルに違いが現れ、色が変わります。
そして赤系統の色というのは、PS装甲の中でも高い強度に分類される色なのです。
ただ、その分エネルギーの消費も激しいので、通常のバッテリーならば、
ドリルクラッシャーでの連続インパクト攻撃と組み合わせれば、
エネルギー切れのフェイズシフトダウンを狙うことも可能です。
しかしさっきからの高出力……おそらくこの赤いザムザザーは核動力です。そしてその場合、
いくらドリルクラッシャーで攻撃しても、自力で発電してバッテリーが回復してしまいます。
こうなると、ビームやレーザー、もしくはフォノンメーザーで攻撃するしかないのですが……
『あ〜っ!!ビームシールドで防がれてビームが通らないっ!!』
ワンディフェンサーに搭載された高エネルギーバナナライフルでも、陽電子リフレクターは破れません。
陽電子リフレクターに有効な装備としては、ビームサーベルが一般的ですが、
残念なことに、今のスーパープロトバナーは、ビームサーベルを装備していないのです。
「……こうなったら。」
ミハルは専用の通信チャンネルを開き、天枷研究所に呼びかけました。
14ANOther ポートレート:2006/04/09(日) 14:36:55 ID:wbA/mKzf
「YMAF-6BDRザムザザークリムゾン……くっくっく……がははははっ!
 いいぞいいぞ、流石は核動力だ。これならば勝てる!」
コーディネーターなどとの条約を気にして搭載しなかったから苦戦したンだ。
あんなコソコソ消えるMSに付けるぐらいなら、さっさとMAに付ければ良かったンだ。
「しかし制式採用前の機体を勝手に使うのはやはりまずくないでしょうか?
 あのパイロットも、私達の所のパイロットではありませんし。」
「かまわンだろ、エクステンデット、しかも不良品のコーディネーターのだ。」
確か不良品のコーディネーターどもを、兵士として育てて派遣している組織から
ダース単位で買い取ったコーディネーターを使ってるはずだ。そんなヤツらは、
ワガハイ達が使ってやってこそ初めて価値があるンだ。それに代えならはいくらでもある。
「か、艦長大変です!」
「ぬ?またか。こんどはなンだ、バナナ型のミサイルでも降ってきたか?」
うむ、我ながらなかなか上手いことを言った。まあ実際はそんなのありえンが……
「はい。ザムザザークリムゾンの周囲から小型のバナナ型ミサイルが」
「何の冗談だ?!」
「冗談じゃないみたいです。光学映像ではハッキリとは見えませんが、
 やけにカーブした形状の黄色いミサイルが、妙な軌道でザムザザークリムゾンに向かっています。」
「なっ……」
バナナミサイルだと……ええい!何処までワガハイをバカにするつもりだっ!!
「何処から発射された!」
「わ、わかりません。軌道がランダムで発射地点、特定できません!」
「……ええいっ!!」


炸裂するモンキーバナナミサイル。
もちろんPS装甲に、ミサイルが通用するとは思っていません……普通のミサイルなら。
今のモンキーバナナはM622とM624、ジャミング弾頭と煙幕弾頭、つまり目くらましです。
しかし、あまり長くはもちません。ザムザザーはバーニアで煙幕を吹き飛ばし、すぐにバードを探し始めます。
……見つけたようです。スーパープロトバナーに向かって猛スピードで接近していきます。
それに対してスーパープロトバナーは手に持った高エネルギーバナナライフルを構えます。
それに気づいた赤いザムザザーは態勢を前のめりにして陽電子リフレクターを展開します。
バナナライフルのビームはSSCにより造られた高出力ビームですが、
陽電子砲をも受け止める陽電子リフレクターの前では、やはり他のビーム同様弾かれてしまいます。
SSC特有の白いプラズマビームを弾きながら、スーパープロトバナーとの距離を詰めていきます。
……前のめりの、不安定な姿勢のまま。
「……今です!」
海を割り現れる巨体……バードが赤いザムザザーと戦ってる間に、
天枷研究所に戻って、MSサイズのパワードスーツを装着したロボ美春X。
ジャミングによりセンサーを効かなくして、浅瀬の海中に潜んでいたのです。
「とりゃああっ!」
赤いザムザザーの背後に現れたミハルは、不安定な態勢のザムザザーを
力任せに甲羅返しにして海面に叩き付け、その腹の上にマウントしました。
15ANOther ポートレート:2006/04/09(日) 14:38:46 ID:wbA/mKzf
PS装甲は装甲表面の位相を転換することでその強度を上げています。
そう、あくまでも装甲の表面が強いだけ。カニのような甲殻類と同じ、いわば外骨格です。
ミハルはカニというものは食べたことがないのですが、その食べ方は知っています。
ザムザザーの腹の上に乗っかり、アームの一本を抱きかかえます。
バーニアをふかして起きあがろうとしていますが、甲羅返しにされることは
想定していなかったのでしょう。少々揺れますが問題ありません。
抱きかかえたアームを逆関節におもいっきり曲げます……まずは一本。
折れたアームを海中に投げ捨て、次のアームを抱きかかえます。

ロボ美春Xの装着しているパワードスーツは天枷研究所が新開発したパワードスーツを
単純にMSサイズにしたものです。プラグが無くても装着できるので、
ロボ美春Xにとっては唯一の強化パーツといえるでしょう。

2本目を海中に投げ捨て、続けて3本目。

ただ、まだ研究段階でモニターテストすらしたことが無い試作品なので、
いつまでもつかは分かりません。

3本目を投げ捨てて、最後の一本に取りかかります。

実際、だいぶ負荷がかかっています。パワードスーツ自体にもですが、
ロボ美春Xの関節にも変な方向に負荷がかかっているようです。

最後の一本を放り投げます。
「……これで最後です!」
海中に手を突っ込んで泥を掴み、ザムザザーの左右に位置する低圧砲にねじ込みます。
ホントは、海底の地層を掘り返すのはマズイのですが、他にねじ込めそうなものが
ないので仕方ありません。砲身をつぶせなくても、砲身を詰まらせてしまえば撃てません。
ミハルはザムザザーの上から飛び降り、そのままザムザザーの下に手を差し入れ持ち上げます。
ザムザザーの重量は526.45t……このザムザザーもそれぐらいはあるのでしょうか?
流石に持ち上げるのは少し無茶があったみたいで、足が海底に沈んでいきます。
……天枷所長の話だと、戦艦の方向はあっちでしたね。
「ではでは……お帰りはあちらでーす!」


「ぐぐぐぐぐ……」
今日何度目になるだろうか、艦長の拳は怒りに震えている。
無理もない。切り札であったザムザザークリムゾンを中破させられ、
そのうえ、投げ飛ばされたザムザザークリムゾンが水切をしながら戦艦に激突。
幸い、水切の際にスピードが減少していたため損害は少なく、沈みはしなかった。
しかし、激突の衝撃で航行不能になり、東アジア共和国の海軍に助けられたものの、
自国領土内で戦闘行為をしたことに対して責任が追及され、
おまけに、大西洋連邦……というかブルーコスモスが極秘裏に開発していた
ザムザザークリムゾンのデータまで奪われてしまった。
「……これは、左遷ですかね?」
「ワガハイに聞くなっ!!」
16ANOther ポートレート:2006/04/09(日) 14:40:31 ID:wbA/mKzf
「うむ、おつかれさま。」
無人島の一つに造られた秘密の通路を通り、私達は
天枷研究所の地下に造られた秘密のファクトリーへと帰ってきた。
……結局、本は取り替えされてしまった。後で映像データを焼き増ししておこう。
「そういえば、大西洋連邦の戦艦はどうなりましたか?」
「ああ、航行不能なところを東アジア共和国が保護したそうだ。
 なに、いつもどおり上手くやってくれるさ。しかし……」
天枷所長はスーパープロトバナーとロボ美春Xを見上げ、なにやら考え始めました。
「どうしたんですか?」
「いや、パワードスーツがな……やはりモニターテストをした方が良いか。」
影の薄い研究員が、あたりまえですよ、と呟いた。
「それにロボ美春X自体も……プラグが無いというのは厳しいか。
 やはりMk-Uはバナータイプと互換性をもたせてバナディフェンサーとの合体機能を……
 はて。そういえば、バード。彼はどうした?」
「彼?」
「ほら、ワンディフェンサーに乗っていた色眼鏡の……」
「えっ……人が乗ってたんですか。」
「バナナーンシステムは脳波が必要だからな、有人が原則だろ。
 しかし、通信を入れてないところを見ると……気絶しているな。」
「合体の時グルグル回ってましたから……私達やコーディネーターならともかく、
 ナチュラルにはあの回転は厳しいと思いますよ。」
「うむ……昔戦艦に乗っていたというからそれぐらい大丈夫だと思ったのだが、
 やはり合体システムを見直す必要がありそうだな。」
「……無駄な回転を無くせばいいと思います。」


「くっ……や、やめろ……せ、せめてポストカードだけは……
 3枚目と、9枚目と10枚目、13枚目、20枚目を残して……」
「おーい、レイ、大丈夫か〜〜?」
水越病院の病室……包帯グルグル巻のレイがよく分からない寝言を呟いている。
道のど真ん中で、黒こげで倒れていたらしいが……そもそもなんで初音島に来たんだ?
「うっ、うう……はっ!こ、ここは……!シ、シン!!」
「目が覚めたか?まったく、いったいどうし」
「シン!おまえは騙されている!」
「……はっ?」
「あの女は恐ろしいやつだ……秘蔵写真を渡すと呼びだしておいて、
 笑って人にミサイルを撃ち込めるやつだ!」
「ミ、ミサイル?いったい何の話だよ……さてはまた俺を連れ戻そうと」
「花瓶に水、入れてきたよ……あっ、レイさん、目が覚めたんですね。」
ことりが花瓶をもって病室に入ってきた。その姿を確認したレイは、突然起きあがり、
「このアマァァァァァァ!!」
「きゃ?!」
「ことりになりするんだぁぁぁぁぁ!!」
ごべきっ、という音と共にカウンターが命中。レイは再び眠りについた。
17ANOther ポートレート:2006/04/09(日) 14:42:15 ID:wbA/mKzf
「大丈夫かことり?」
「う、うん……でも、レイさんの方は大丈夫なんですか?」
「心配することないって。これぐらいで死んだらコーディネーターやってられないから。」
それにしても、いきなりことりに襲いかかるなんて……あんまり乗り気じゃないけど、
とりあえずアスランにでも連絡して、さっさと連れて帰って……
「失礼する。レイ・ザ・バレルの病室は……あっ」
噂をすれば何とやらで……扉を開けて入ってきたのは
「アスラン・ザラ!」
「シン……それと、ことりさんか。二人ともレイの見舞いか?」
「ええ、まあ……」
「何であなたがここに……まだ連絡入れてないはずですけど?」
「いや、この近くで大西洋連邦の……いや、ちょっと野暮用があってな。
 そしたらイザーク達から、レイが病院に運ばれたと連絡があって。」
「……ああ、そっか。」
軍に直接連絡するのは気が引けたから、イザーク先輩達に連絡しておいたんだった。
「しかし……どうしたんだ?道端で黒こげになっていたと聞いたが。」
「さあ……少し錯乱しているようでしたけど。」
いいところに一発入れたから、当分は起きないだろう。
「そうか……ああ、そういえばレイ宛に落とし物が届いていたぞ。」
「落とし物ですか?」
「いったいなんなんです?」
「中身はまだ見ていないんだが……うん、何かの本みたいだな。」
「本?」
「ああ、えっと……題名は……」




ANOther ポートレート 完




色々と設定をサルベージしつつ……バトル編です。
プロトバナーとロボ美春Xはブレイズバナーとロボ美春MK-Uから、
ワンディフェンサー(バナディフェンサー)はそのままですが……
ドリルを付けてしまいました。あと色々と捏造……
バナディフェンサーがいい動きをするのとか、
バナナーンが重力下で使えるのはきっと推進システムが(ry
ミハルやバードがコクピットを攻撃しないのはロボット三原則の影響。
某ファンタジー小説で魔族が嘘をつけないのと同じようなことです。
赤いザムザザーは……ボンボン版コミック一巻のどこかから。
4スレに出てきたのボツネタからもサルベージ。
ちなみに5スレの566あたりの続きになっています。
探し歩いて、先日、ようやく2冊とも購入できました。
18名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/09(日) 15:46:05 ID:Q9ZowRN+
>>7-17
あの人GJ( ゚∀゚)ノよぅ!

レベル高いな、オイ。ホンオt面白かったよ。すげぇ笑った。しかもポートレートのネタが、
こんな風に後を引いてくるとは……
19名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/09(日) 15:51:06 ID:BGQjBwG/
赤いカニは出力も三倍か・・・。
おおおお。遂に現本スレ看板職人さんのあの人までバトスレに降臨。
しかも面白れぇ。GJです!
20名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/09(日) 20:42:50 ID:fhttgtdU
まあ、なんだ。

アムロいきまーす。
21第十三話1/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/09(日) 22:29:32 ID:LAu7hRla
 初音島に到着した時には、すっかり陽は沈んでいて、港は街灯の光で淡く輝いていた。
他国に個人で入国するならまだしも、軍を率いて駐屯する許可を取るのには、それなりの
時間を要した。それでも、たった一日でその許可を得ることができたのだから、普通ならば
有り得ないほどの速さである。
 一個大隊。総員およそ500名。巡洋艦二隻に、戦艦一隻。そしてこの巨大なタンカー。
国際指名手配犯キラ・ヤマトの逮捕という名目で、アスランはこれを集めた。メイリンにしてみれば、
少し大仰過ぎるのではないかと思ったが。アスラン曰く、キラに対しては一個師団で囲んでも
不思議とは思わない、らしかった。メイリンも以前ミネルバのブリッジからキラの戦う姿を
見たことがあったが、確かにあのフリーダムには並大抵のMSでは歯が立たない。
そう考えると、やはりこれでも少ないかもしれなかった。
 タンカー以外の船は全て海上にて待機を命じられている。あの3隻で、島全体を覆う包囲網を
作り上げる。タンカーは港に接岸するやすぐに、機材が運び込まれて中継地点ができあがった。
周りは人で騒然としてきて、突然の軍の来訪に島の住民も何事かと集まり始めてきていた。
 アスランとメイリンがタンカーから降りてきた時には、ライトで辺りが照らされていて、少し
眩しかった。軍の関係者たちが忙しなく動いている最中に、ジープに乗って二人を出迎える
ルナマリアの姿を見つけた。
「これは・・・・・随分とまぁ遅い到着で」
「もう・・・・お姉ちゃん」
 アスランたちが近付いてくると、ルナマリアは不機嫌そうな声で睨んできた。遅くなってしまった
到着にルナマリアが怒る気持ちも分からなくはなかったが、これだけの総動員には
止むを得なかったとしか言いようがなかった。
「状況は?」
 しかし、アスランはルナマリアのことを気にする様子も見せずに尋ねる。
「状況は最悪。シンが倒れて、白河ことりが人質に取られた。今キラは人質と島外れの
廃ビルに立て篭もってる、らしいですよ」
 話によると、ルナマリアが駆け付けた時には既に、白河ことりが連れ去られた後だったらしい。
已む無くルナマリアは気絶したシンをひとまず白河宅に運び込み休ませて、急いで港に
飛んできたとのことだった。
22第十三話2/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/09(日) 22:30:30 ID:LAu7hRla
「そうか・・・・」
「状況はかなり深刻ですよ、体長。キラはもう手段を選ばずにきてます。白河さんも、
いつ殺されてもおかしくない・・・・・指示を出してくださったら私が救出に向かいます」
 ルナマリアの言葉にアスランが頷くと、暫く悩む仕草を見せるが、すぐに決断をした。
「メイリン」
「あ、は、はい!!」
「シンのところに行って、アイツが起きたら伝言を伝えてくれ」
「は、はい・・・・・?で、何て・・・・?」
「白河ことりの救出は俺たちに任せて、お前は自宅で待機をしていろ、とな」
 アスランがそう言うと、ルナマリアは険しい表情でアスランを睨んでいた。メイリンも、アスランの
言葉に驚きを隠せなかった。
 つまり、この状況になってもまだシンを動かそうとせず待機させるつもりなのだ。
そんな命令を伝えたとしても、シンの性格上絶対に言うことを聞かないのは眼に見えている
はずだった。それが分からないはずもないアスランだからこそ、メイリンはその指示が
不思議でならなかった。
 そもそも、この人は本当にキラを捕まえるつもりがあるのだろうか。確かに、このように
大部隊を率いてまでキラを逮捕するかのように来て見せたわけだが。まず最初に、キラが
この島に来た時すぐ、シンに捕縛命令を出していれば、このような事態にまで発展するような
ことはなかったのではないだろうか。勿論、何の罪状もない人間を捕まえることはできないが。
 だが、アスランは以前からキラ・ヤマトという人間が絡むとどうにも私情を見せる傾向があった。
今回の事件も、アスランの私情による決断の不適具合、判断の遅さが原因の一端を担っている
のではないだろうか。その上でなお、シンに対して待機命令を出すアスランの意図を、
メイリンはどうにも判断が尽きかねた。
「・・・・お言葉ですがねぇ・・・・・アスラン!!」
 ルナマリアが苛立ちを含んだ声を出した。ルナマリアもやはりメイリンに同じく、アスランの
意向を測りかねているのであろう
「どういうつもりなの!?あなた、本当にキラを捕まえる気があってここに来たの?
何で、シンのことを助けてあげずにそんな冷たいことばかり言うのよ!!」
23第十三話3/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/09(日) 22:32:09 ID:LAu7hRla
「・・・・・・」
「シンは・・・・・大好きな人を人質に取られたのよ?」
「私情を挟めば、作戦の支障を引き起こしかねない」
 しれっと答えるアスランの態度に腹を立て、ルナマリアはかっとなった感じで声を荒げた。
「・・・・アンタが、アンタがそれを言える立場だと思ってるのっ!?・・・・これじゃ・・・・・これじゃ
シンが・・・・あまりにも可哀想だわ・・・・・」
 あらん限りの不満を爆発させてアスランにぶつけると、悲しげに俯いてしまうルナマリア。
ルナマリアの一声に驚き、周りの兵たちも一瞬静まり返ってしまった。アスランは、何も言わずに
黙って眼を瞑っていた。暫くして、メイリンにただ行けと命じて、アスランは再びルナマリアの
方に向いた。
「・・・・・ルナマリア」
「・・・・何よ」
 アスランは運び込まれた機材の中から何か探り始めて、やがてそれを両手に掴むと片方を
ルナマリアの方に放り投げた。ライフルだった。
「確かに、全て俺の判断ミスが起こした失敗だ・・・・・だから、罪は償う」
「・・・・・・」
「俺の手で、終わらせてやる。彼女、白河さんを絶対に助け出して、そしてあのバカの眼を
覚まさせてやるんだ」
 ルナマリアは、ぼんやりと手渡されたそのライフルを眺めながら、アスランの話に耳を
傾けていた。
「ルナマリア・・・・・君の協力が必要だ・・・・・俺に、力を貸してくれ」
「・・・・・ふふ、私情は禁物だって言ったのは、どこの誰よ?・・・・・ま、いっか・・・・」
 ルナマリアが乗っていたジープにエンジン音がかかり始める。
「乗りなさい。たかがキラ一人、私らだけで終わらしてあげるわよ♪」
 ルナマリアがにやりと笑うと、アスランも少しだけ微笑んでジープに乗った。
そんな二人の姿を見て、メイリンはやっと安心ができた。
 あとは、シンだけである。二人の姿も見送らずに、背を向けてメイリンは白河宅へと急いで行った。
24第十三話4/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/09(日) 22:34:16 ID:LAu7hRla
 薄暗い部屋。ことりの知らないその場所で、眼を覚ました。
 明かりも何も灯していない。ただ、窓から入ってくる月明かりだけが、辺りを照らしていた。
この明かりがなければ、本当に真っ暗で何も見えなかっただろう。そこは何処かの建物の中で、
辺りはだいぶ煩雑としている。この建物が使われなくなって、随分と年月が経っていることが分かる。
 体を動かそうとするけど、動けなかった。椅子に縛り付けられている。手もロープで
後ろに縛られており、完全に身動きが取れなかった。
 どうして、こんな状態になっているのか。最後に思い出せる記憶は、シンが倒れて、
シンに近付こうとしたところに、キラが現れた。
 不意に、シンのことを思い出した。あれからどうなったのだろうか、シンは無事なのだろうかと。
自分の身も省みずに、ことりはそんな心配で頭がいっぱいになる。
「眼が覚めたの・・・・?」
 ことりの眼前の闇の中から、少年の声が聞こえてきた。キラ・ヤマト。その少年が、暗闇の
中から姿を見せた。手には、拳銃を握っている。
「あなたは・・・・・」
「悪いね、君は人質なんだ・・・・シン・アスカを釣るためのね」
 キラが愉快そうにくすくす笑う。そんなキラを、ことりは眼で睨んだ。
「・・・・可愛い顔に似合わず、怖い顔をするんだね」
「どうして・・・・こんな酷いことをするんですか?」
 ことりは悲しげな声で尋ねた。
 なぜ、そんなに平然としていられるのか。
 どうして、そんな簡単に人を傷つけることができるのか。ことりには分からなかった。
「どうして、シン君と話し合おうとしないんですか・・・・?こんな乱暴なことをしなくても、
話せばきっと仲良くなr」
「しようとしたさ・・・・けど、彼は聞く耳を持とうとせず、僕を殺そうとした」
「・・・・・そ、それは・・・・で、でも、もう一度ちゃんと・・・」
「僕はね、白河さん。彼が怖いんだよ・・・・シン・アスカが」
25第十三話5/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/09(日) 22:36:58 ID:LAu7hRla
 キラが、窓の方を見上げた。ことりの位置からだと、キラが陰って見える。
「彼は・・・・僕のことを憎んでいる・・・・本気で僕を殺そうとしてくる」
「それは・・・・・それは、もう昔の話でしょ?今は・・・・今は違うよ・・・・シン君、人殺しなんて」
「何も違わないよ。もしかしたら、再び彼は恨みが再発して僕を殺しに来るかもしれない。
それが、僕はとても怖い・・・・」
「・・・・・」
「毎日、殺されるかもしれないっていう、悪夢にうなされるんだよ。僕は、まだ死にたくないんだ。
だから、先に殺すんだ・・・・自分の為に」
「・・・・あなたは」
 じっと話を聞いていたことりは、キラに真っ直ぐと眼を向けて言った。
「あなたは、悲しい人ですね・・・・」
 ことりがそう言った瞬間、今まで無感情だったキラの瞳が鈍く光った。
「・・・・悲しい?どうして?」
「あなたは、人を信じることができないから・・・・他の人に壁を作って、いつも独りぼっち・・・・
だから、いつも何かに怯えて生きている」
「・・・・」
「あなたには、本当に信頼できる人はいますか?」
 キラはとても臆病な人間なのだ。きっと、信頼できる誰かにすがりたいのかもしれなかった。
友達でも家族でも、恋人でも。誰だっていい、そんな人が彼には必要なんだ。
大切な人が一人でもいれば、孤独の寂しさに押し潰されることはない。
 独りが寂しいのは、ことりもよく知っていた。昔、ことりも独りぼっちだったから。いや、
本当は独りぼっちなんかじゃなかった。ただ、自分のことしか頭に入らず、周りが見えなかっただけ。
自分のことを思ってくれている家族や友達はたくさんいたのに、心が読めなくて、分からなくて
その思いに応えてあげることができなかっただけ。勇気がなくて、信じてあげることが
できなかっただけだった。キラも、そんな昔のことりと同じである。
「・・・・君に、僕の何が分かるの?まるで全てを見通したようなその物言い、生意気だね」
26第十三話6/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/09(日) 22:38:52 ID:LAu7hRla
 苛立ちのこもった声で、キラは手に持っていた拳銃をことりに向けた。
怒っているはずなのに、無機質なその瞳。撃つことに、何の躊躇も見せてない。だけど、
絶対に怯えているはず。なのに、とても怖く感じる。恐怖で、ことりは一瞬震えた。
眼は、反らさなかった。反らしてはいけなかった。
「怖くないの?」
「・・・・怖くないです」
「嘘だね。声が、震えてるよ」
 泣きそうになって、泣いたら負けだとことりは必死で自分に言い聞かせた。
「負けたくないから・・・・・あなたなんかに、絶対に」
「・・・・撃つつもりはないよ、人質なんだから・・・・」
「・・・・もうやめて、こんなこと・・・・・」
「やめないよ」
「シン君が、必ず助けに来てくれるよ・・・・・必ず・・・・信じてますから」
 しばらく、眼を合わせていたが、やがてキラの方が根負けをして銃をしまい背中を向けて
部屋を出て行こうとする。
「・・・・癪に触るね、君って・・・・本当に」
 煩わしそうに、キラは言って扉を閉めていった。張り詰めていたものが抜けて、どっと
疲れが出てきた。
 月、窓から空が見えた。
「・・・・シン君」
 小さな声で、シンの名前を呼んだ。シンは、必ず助けに来てくれる。根拠はなかったけれど、
それでも信じた。夜が、更けていく。長い夜が。
27 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/09(日) 22:40:49 ID:LAu7hRla
最近上手い具合に言葉が出てこないもので・・・・苦労してます
こんな調子で本当に最後まで書いていけるかどうか・・・
アスランもすげえへたれだし・・・・w
というか、俺が書いていくキャラはどんどんへたれていくばかりで・・・・




だが、それがいい(前田慶次)
28名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/09(日) 23:09:27 ID:xD8JytMP
これで唐突に前田慶次がことりを助けに来た日にゃ・・・。
てかもう最近スプラッシュスターの話してないよあのスレ・・・。
29名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/10(月) 00:13:48 ID:UI3a/tFL
ルナたんテラカッコヨス(*´Д`)ハァハァ
30あの人:2006/04/10(月) 07:54:17 ID:D62TeuNO
ことり、強い。いや、弱いからこそ、でしょうか。
今の状況、キラの目を覚まさせる(?)ことができるとしたら、
それができる人物はアスランでも、ルナマリアでもなく、
ことりのような気がします。でもそれだとシンの出番が(ry
とにかく、GJ!!
31名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/10(月) 13:09:19 ID:khb5s73W
>あの人
GJ!前本スレで軽く載せてたミハルとバードの喧嘩がここまで発展するとは……

>hA/Opjl6aY 氏
GJ!キラいいよ、悪役のキラ

あとこのスレにも初代氏のまとめサイト置いといたほうがいいでしょ
ttp://www.geocities.jp/yumiduka01/kotori.html
32第十四話1/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/12(水) 22:13:49 ID:2VfI0udD
 思えば、今までずっと誰かに言われて戦ってきたのかもしれなかった。
確かに、自分の主義や信念といったものをシンも持っていた。持っていたつもりだった。
けれど、その持っていた信念というものは、本当に自分で考えて決めたことだったのか。
時々分からなくなって、よく悩むことがあった。
 アスランやレイ、ギルバード、ラクス、カガリ、そしてキラ。様々な人間が多種多様な主張を
繰り返してきたのを、シンはずっと聞いてきた。
 ただ、大切な人を守りたい。それがシンの信念だった。けれどいつからだろう、その想いが
少しずつ形が変化してきたのは。何かを守りたいのは変わらない。けれど、その守りたいものという
ものがいつからか不明瞭になってきた。多くの人が信じている正義。どれも正しく聞こえれば、
間違っているようにも聞こえてくる。そして、多くの人がシンに語りかけてくるのだ。それが
本当に正しいのか、考えても分からなくなってきて。どれが正しくて、どれが間違っているのか。
 どんなに考えても、答えが見つからない。次第に、シンは考えるのを止めてしまっていた。
何も考えずに、ただ周りに流されてしまうだけの自分がそこにいた。本当にそれで、そのままで
いいのかさえ、分からなくなっていた。
 そんな自分を見失っていた時だった。突然ふと現れた彼女に惹かれてしまったのは。
どこへ行けばいいのか、道標となってくれたのが。それがことりだった。



「・・・・・ン・・・・シン!!」
 遠くに聞こえていた声が次第に近付いてきて、段々と意識が戻ってくる。
「あ、シン!!」
「シン君・・・・」
「良かった・・・・目覚めてくれたぁー」
 眼を開くと、そこは見知った場所。我が家、白河家でシンの部屋だった。
目の前には三人の女の子。アイシアと音夢。
「わ、私は別に・・・・た、ただお見舞いに来ただけですからね!!」
「いや、それは別にどうでもいいんだが・・・・」
 何故か顔を赤くして大声で怒鳴り散らす音夢を軽くあしらって、そしてもう一人赤毛の
見知らぬ少女に眼を移した。
33第十四話2/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/12(水) 22:14:44 ID:2VfI0udD
「・・・・・シン?」
 その見知ら少女が名前を呼んでくる。シンは寝ぼけた顔で首を傾げた。
「誰だ、アンタ?」
「はぅ!?ひ、酷い・・・・わ、私、メイリン・ホークだよぉー!!」
 ほらと言って両手で髪を引っ張りあげて見せた。それを見てシンもようやく納得した。
いつもツインテールに結んでいる髪をおろしていたせいで誰だか分からなかった。
「相変わらず紛らわしい髪型だ・・・・ずっと縛っとけ」
「・・・・イメチェンのつもりだったのに・・・・やっぱ髪型戻そうかな・・・・ぐすん」
 べそをかいてるメイリンを無視して起き上がろうとするが、肩と首筋に激痛が走って上手く
体を起こせない。やってくれたなと思いながら。首筋に手を当てた。そこで、先ほどの記憶が
鮮明に蘇った。キラに、不意打ちを受けて襲われたのだ。シンは慌てて部屋を見渡した。
「・・・・シン?」
「・・・・ことりは?」
 ことりの名前を出した瞬間に、三人の表情が曇った。
「ことりはどうしたって聞いてるんだ」
 シンは、焦りと苛立ちの混じり合った声で再度尋ねた。諦めたように答えたのが、アイシアだった。
「・・・・さらわれました・・・・キラに」
「・・・・何だと!?」 
 さらわれた。その言葉を聞いて、シンは信じられないといった感じで耳を疑った。
ことりのことを守ると、約束した。何があっても守り抜くと、誓ったのに。それでも、
さらわれたのだ。シンは約束を守れなかった、そんな不甲斐ない自分自身が悔しくて、情けなくて、
痛くなるほど歯を食いしばった。
「・・・・シ、シン」
「何処だ!!何処にさらわれたんだ!?」
 シンは血相を変えてアイシアの肩を掴み尋ねる。アイシアが、怯えた感じで答えた。
「し・・・・島の外れ・・・・廃ビルで待ってるって・・・・」
「そうか・・・・分かった!!」
「ちょ、ちょっと待ってシン!!」
 立ち上がろうとするシンを、メイリンは体を張って止めようとしてきた。
34第十四話3/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/12(水) 22:16:18 ID:2VfI0udD
「なんだメイ!?」
 シンが睨むと、メイリンが一瞬怯む。それでも、再びシンに向き合って言った。
「ア、アスランさんから伝言があるの・・・・」
 アスラン、という言葉を聞いて、シンも僅かに反応を示した。先ほどルナマリアが、アスランは
力になってくれる、と言った。今更あんな奴がどうした、といった思いがある反面、シンはまだ
微かな期待を抱いていた、アスランという人物に。しかし、次のメイリンノ言葉にそんな淡い期待も
一瞬の内に砕かれてしまった。
「あ、あのね・・・・キラのことは俺たちに任せて、怪我をしているお前は家で休んでろ・・・・って」
「・・・・何・・・・だと」
 その瞬間に、シンの中の何かが吹っ切れた。
「ふざけるな!!ことりがさらわれたんぞ?家で休んでろだと?そんな悠長なことを
言っている場合かッ!!」
「ひっ!?そ、そんなー・・・・・私に言われても・・・・あーん、だから嫌だって言ったのにー・・・・」
 メイリンの愚痴さえも、もはや耳に入ってこなかった。
 裏切られたんだ、シンはそう思った。最後の期待も、跡形もなく崩れさって、その虚しさを
やつ当たりする勢いでシンはメイリンに激しく激怒した。
「どけメイ、俺は行くぞ!!誰に何と言われようが、もう絶対に許さん!!キラだけは
絶対に許さない!!」
「え、だ、ダメだってば!!」
「シン!!そんな体で、無茶です!!」
 無理やり立ち上がろうとシンを、メイリンとアイシアの二人がかりで必死に押し留めようとする。
音夢は、その後ろで黙ってシンのことを見つめている。シンは二人を振り払おうと右肩を
上げようとするが、不意に激痛が走り、肩を押さえて蹲ってしまった。
「・・・・・シン」
 アイシアが心配そうに声をかけてくるが、その声はシンには届かなかった。
怒りが冷めてくると、次第に失意と落胆が胸の内に襲い掛かってくる。
35第十四話4/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/12(水) 22:17:59 ID:2VfI0udD
「・・・・ふ、ふふ・・・・・」
「・・・・シ、シン?」
 自分でも気づかぬうちに、シンは失笑していた。自嘲的な笑い。それを奇妙に思うメイリンと
アイシア。シンも、なぜおかしいのか自分でもよく分からなかった。
「情けないな・・・・俺・・・・アンタは、最後は結局・・・・・俺を裏切るんだな・・・・アスラン・ザラ・・・・・」
 まるで独り言のように、自暴自棄気味に、シンはぽつりと呟いた。
 こうなることが、最初から分かっていたのに。それでも、シンはアスランを心の何処かで
信じていたかった。そんな微かな望みさえ、アスランはいとも簡単に期待を裏切った。
 昔と、軍にいた頃と何ら変わることはなかった。アスランに言われて、レイに言われて、
ギルバードに言われて動く自分。それが、その行為が本当に正しいのかも分からずに、命じられた
ことを人形のようにただこなす自分。また流される、流されてしまうだけの自分に戻ってしまうのだ。
そして最後には、何を考えても無意味に思えてくる。
「・・・・そうだ」
 もう、誰かを信じるのをやめればよかった。誰も当てにしないで、ただキラを殺せば全てが
終わる。全てが良くなる。もう、何も考える必要なんてなかった。
「シン、待ってシン!!話を聞いて。アスランさんはシンが思ってるような人じゃ・・・・」
「うるさい!!あんな奴、もう信じられるものか!!もう誰も、信じられるものか!!」
「シン!!」
 メイリンの手を振り払って、何者も受け付けたくなかった。誰の言うことも信じられない。
自分が分からなくなってきて、我を失いそうになる。
 ふと、涙が流れ落ちた。自分の涙。何故か分からないけれど、とてつもなく胸が苦しくなって、
とても自分が悲しくなる。誰かにすがりたくて、後ろを押してくれる存在が欲しかった。
「・・・・・ことり・・・・・」
「・・・・・」
「俺・・・・・俺は」
 これで、自分は全て終わってしまうのだろうか。また流されるままの昔に戻ってしまうのだろうか。
そんなのは、嫌だ。自分の足で、立ち上がりたかった。
「俺は・・・・・どうすればいいんだよ・・・・・ことり」
「・・・・自分で、自分で考えなさい!!!シン・アスカ!!」
36第十四話5/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/12(水) 22:19:55 ID:2VfI0udD
 シンが、はっと我に返るほど大きな声が、部屋の中に響き渡る。アイシアも、メイリンも、
自分たちの後ろを振り返って呆然としていた。
 音夢。今まで何も言葉を発していなかった彼女が、息を荒げるほど大きな声を挙げた。
やがて三人が呆然と注目していることに音夢が気がつくと、やってしまったといったばつの
悪そうな表情をする。それでもすぐに、また真剣な眼をシンの方に向けてきた。
「じ、自分で考えるのよ!!自分の頭で。自分が・・・・・今何をしなければならないのか、
何が大事なのか、よく考えて、それから行動する」
「・・・・・」
「人の意見なんて・・・・所詮は選択肢の一つなんです・・・・だから、そんなので周りに流されたり
しないで、自分のことを潰してしまうようなことをしないで、もっと自分のことを信じてあげてください。
何が本当に大切なのかを・・・・」
「・・・・・音夢」
「・・・・っ、ってー・・・・ことりなら・・・・そう言うでしょうね、きっと。本当・・・・・ことりが言ってた
通りの人でしたからね・・・・あなたは」
 しばらく、呆然とシンは音夢の話を聞いていた。自分でも驚くぐらい冷静になって。
昔を思い出した。自分に塞ぎがちだったあの頃。ことりに出会って、何かとても安らぎを感じた
想いに似ていた。まるで、ことりに説教させられているような擬似的な感覚に陥る。
やがて、全ての蟠りを吐き出すかのように大きな溜め息をついた。
「・・・・音夢」
「な、何ですか?」
「悪いな。また、アンタに助けられたな」
 今、音夢が声を挙げてくれなければ、全てが無駄になっていた。ことりと出会ってからの今まで
分かったこと、学んできたこと。自分で考えて決めること、それは、ことりに出会ってから
ようやく気がついたことだったのに、それを自分自身で壊そうとしてしまっていたのだ。
「音夢、アンタの姿がことりとダブって見えたぞ」
「えっ?ええっ!?」
 呆気に取られた音夢の顔を見て、シンはおかしくて笑った。
「さて、と・・・・」
37第十四話6/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/12(水) 22:21:38 ID:2VfI0udD
「あ・・・・」
 シンがゆっくりと立ち上がると、メイリンが小さな声を挙げる。
「悪いなメイ、俺は行くからな」
 肩は、まだ痛みがある。けれど、先ほどのように耐えられないほどではない気がする。
今度は、メイリンは止めようとせずにただ呆然とシンを見ていた。
 不安げな表情を浮かべているアイシアの頭に手を添えて優しく撫でてあげた。
「ゴメンな、怖がらせちゃって・・・・・もう大丈夫だから」
「シン・・・・」
「シン君・・・・」
「音夢・・・・行ってくるよ」
「・・・・・行ってきなさい。ちゃんと、ことりのことを助けてあげて、二人で戻ってきなさい。
待ってるからね」
 音夢が呆れたようにふと笑った。
「・・・・シン!!」
 シンが部屋から出て行こうとしたら、メイリンがシンの名前を呼んだ。
「えっと・・・・アスランさん・・・・シンが思ってるような、悪い人じゃない・・・・」
「・・・・」
「ちゃ、ちゃんと話してみて。絶対、シンのことを助けてくれると思うから」
「・・・・・ああ、分かったよ」
 三人にブイサインを出して、部屋を後にした。
 アスランとは、もう一度話し合ってみるつもりではある。ただ、話したところで、もう答えは
出ていた。自分で考えて、そして出した答えはただ一つだった。それは──
38 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/12(水) 22:23:22 ID:2VfI0udD
原作でシンが完璧にダメになった瞬間は37話のアスランが脱走した次の回の、
アスランを討つ瞬間に真っ暗になって色んな人の言葉が反芻するシーンだと俺は思ってる
守りたいものがあったというのに、段々その対象が何なのか分からなくなってしまい
何が、誰が正しいのか分からなくなって、そして遂には周りのプレッシャーに
耐え切れなくなって潰れてしまった。つまり考えるのを止めてしまった瞬間と。
あんな調子では最終話にアスランに負けても当然としか言いようがない。
俺は両作品の原作を悉く否定したいので、その場面のシンが自分を失わない瞬間、
自立したシーン描いてみたつもりだったけれど・・・・
うーん・・・・思った以上に上手く言葉にできてないぞー・・・・





まぁ、ヘタレであるのには変わりはないけどね
けど、それを乗り越えたシンはもう最強ですwこれからがシンの本番です
チラシ以上
39名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/12(水) 22:54:34 ID:ropGIpRH
相変わらず目の付け所が素晴らしいですな。
音夢もすっかりいいキャラになっちゃって…。
40名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/12(水) 23:38:59 ID:Neq5kbCA
音夢かわいいよ音夢
41名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/13(木) 01:38:51 ID:dlaRi8Nv
>>38
やー、十分伝わっているから大丈夫( ゚∀゚)ノよぅ!
というか、シンを書くと、どうしても一度は通らざるを得ない道だから、そう感じるのかな。
ねぇ、それは “どうすればいいか”じゃない“自分が何をしたいのか” のことでない?

これで違ってたらオレかなり恥ずかしいけど。
42名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/13(木) 02:28:45 ID:V/wC81UV
GJ!
あぁ、原作では好きじゃなかったキャラまでいいキャラだ!しかもあんまイメージ変わらないし。やっぱキャラの使い方は重要ですね
音夢かわいいよ音夢
43名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/13(木) 19:06:03 ID:u6uZ1+zT
アニメでの扱いが可愛そうだったシンやことり…

監督や脚本、スポンサーのせいでキャラは悪くないが、みんなの反感をかってしまった音夢やキラ


ここではみんなイキイキしてるよ…(´∀`)ьGJ!
44 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/15(土) 23:52:46 ID:SYEMyhIR
投稿日になってもまだ書き終えてない・・・・申し訳ないっす(ノД`)
本スレの方に絵うpしとくんで、それでもうしばらくお待ちください・・・・
45名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/16(日) 00:23:12 ID:76dRfghm
>>44
Nice!

ところで未だに埋まってない前スレはどうするんだ?
46 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/16(日) 00:56:03 ID:tONzYOGI
>>45
そのうち落ちると思うんで放っておいては?
47第十五話1/8 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/16(日) 22:51:19 ID:tONzYOGI
 廃ビルの近くまで来てジープで待機をし始めてから、もうだいぶ長い時間が経った。
アスランとルナマリア以外の兵士は連れてこないで、港にて待機を命じてある。
理由は三つ。一つにキラは人質を持って立て篭もっておるので、大人数で押しかけるのは
得策ではない。二つにキラを逃さないように島全体の包囲を厳重にすること。三つに、
キラはアスラン自身の手で止めたかったから。キラはビルに立て篭もったまま、出て来る
気配はない。まだ突入の指示は出さない。隣では、痺れを切らせたようにルナマリアが手持ち
無沙汰に小型銃をくるくる回して遊んでいる。
「ねー隊長ー、一体いつまでここにいるつもりなんですかー?」
 もう何度も同じ質問を繰り返してきた。その度に、アスランは同じ答えを返していた。
「もう少しだ」
「ちぇっー」
 既に日が変わってから大分経つ。シンは必ず来る、とアスランは思っていた。だからシンが
来るのを待っていた。そして、もし未だ私情に囚われて自分を見失っているようならば、
何としてでも止めなればならなかった。自分がそんなことを言えるような立場でないことは
アスラン自身でも分かっていた。
 できるならばキラの件に関しては穏便に解決したいと思っていた。話せば、キラだって
きっと分かってくれると。キラは大事な親友だから、傷つけたくなんかなかった。
 しかし、その甘さが結果的に今回の事件へと悪化してしまった。だからこそ、シンを
止めなければならないのである。私情を挟むとこのような失態を被る原因になりかねないから。
 シンは、以前から殊更キラのこととなると眼を血走らせて、周りが見えなくなるところがあった。
今までは何とか乗り切ってきたものの、次も無事で済む保障なんてどこにもない。
シンのことは、決して嫌いではなかった。だから、死なせたくなかった。それに、キラのことも。
もはや止めることができないのであれば、自分の手で終わらせたいと思っていた。
一人の親友として。
「・・・・・シン、本当に来るのかしら」
 言わずとも、何の為にここで待機しているのかが分かっているルナマリア。
今のルナマリアは軍にいた頃よりもよく勘が冴え渡っていて、アスランも眼をひくほどであった。
「来るさ・・・・絶対に・・・・」
 アスランがそう呟いた矢先、眼の前の影が揺れた。気のせいかと思ったら、遠くの
方から誰かが近付いてくる。シンだった。
「あ・・・・まぁー・・・・噂をすれば何とやらってやつ?」
 ルナマリアの言葉にアスランは答えず黙ってシンの姿を見つめていた。表情がはっきりと見える
ところまで来ると、アスランは一瞬自分の眼を疑った。あれは本当にシンなのだろうか。
 雰囲気が、いつもとは少し違って見えた。
48第十五話2/8 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/16(日) 22:52:24 ID:tONzYOGI
「・・・・・シン・・・・待て、シン」
 シンはアスランたちの方を一瞥すると、そのままジープの横を通り過ぎて廃ビルの方へと
行こうとした、だから呼び止めた。
「・・・・アスラン。俺は、アンタの命令なんか聞かないぞ」
 アスランの声にシンは立ち止まると、顔も向けずにそう言い放った。
「俺は、もう軍人じゃないんだ。自分で考えて、そして決めた。だから、俺はあんたの命令には
聞けないね」
 覇気のある声ではっきりとそう言って、先に進もうとする。
「・・・・止まれ、シン」
 アスランは急いでジープから降りると、シンの背中に銃口を向けた。
ルナマリアは慌てた様子も見せずに、黙って二人を見比べていた。
「動くと、撃つぞ」
 低い声で、そう威圧する。脅しのつもりではなかった。シンが動けば、本当に撃つつもりでいた。
しかし、シンは依然とアスランの方に顔を向けようとはせず、毅然と立っていた。
「撃ちたきゃ撃てよ。けど、俺は行くぞ」
「・・・・一つ、尋ねる」
 言葉を切ってから、アスランは言った。
「お前は、あそこへ何をしに行くんだ?自分の恨みを晴らすために、キラを殺しに行くのか?」
「・・・・・」
「それとも・・・・」
「・・・・・ぷ、くく・・・・」
 暫く沈黙が続いてから、突然堪えきれなくなったかのようにシンが吹いた。何がおかしいのか、
アスランは訝しげな表情をする。
「そんなの、決まってるだろ」
 シンが振り返ると、笑って答えた。
「キラ?あんなヤツ、今更どうだっていいね。俺は、ことりを助けに行くんだ!!ことりさえ
無事だったら、何だっていいさ」
49第十五話3/8 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/16(日) 22:54:22 ID:tONzYOGI
 シンが、笑った。軍にいた頃は、少なくともアスランの前でこんないい笑顔を見せたことは
殆どなかった。今なら、シンは変わったとアスランにははっきりと思えた。どこが変わったのかと
問われても、あまり上手く説明できそうに無かったが。それでも、シンからは昔の粗暴な頃とは
違う、何か力強いものを感じる。
 何が、シンをそこまで駆り立てているのか。そこで、例の彼女のことが浮かび上がってくる。
白河ことり。シンを変えた一番の要因は、彼女しかなかった。人の心をここまで豊かに
することができる。それが白河ことりという人間の強さで、そして優しさなのだろうか。
「アスラン、アンタじゃ俺を止められないぜ。俺は行くんだ」
 それだけ言って、再び背を向けて行こうとするシン。今度は、振り返らない。
自分で決めた、固い決意だった。アスランは説得するのを諦めて溜め息をついた。
「おい、シン」
「ん?・・・・・って、おわっ!?」
 アスランは手に持っていたライフルを投げ渡した。シンは落としそうになるが、何とか
上手くキャッチをする。
「・・・・・アスラン?」
「どうした、行くんだろう?人手は、多いに越したことは無い」
 狐に騙されたかのように唖然としていたシンだったが、やがてはっと何かに気がついた
表情をした。
「・・・・試してたな、俺のこと」
「何のことだ?もしお前がキラを殺しに行く、なんてことを答えていれば、俺は容赦なく撃ってたぞ。
感情に囚われた人間を連れて行ったところで、本来助けられる人質にも要らぬ危険が
及ぶだけだからな」
「・・・・・うわぁ・・・・性格悪ッ・・・・」
 そんな風に邪険に呟くルナマリアだが、口元はにやついていた。シンもしてやられたといった顔をしていた。
「け、けど、俺がことりを助けに行く理由だって、感情的だぞ?」
「動機が違うだろ。憎しみと誰かを助けたいという気持ちには、雲泥の差がある」
「・・・・ア、アンタの命令なんかに従うつもりなんt」
「別に従わなくてもいいさ」
50第十五話4/8 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/16(日) 22:56:19 ID:tONzYOGI
 アスランも何だか嬉しくなって、ふと口元がにやけてしまった。
「俺も、今からフェイスのアスラン・ザラではなく、ただのアスランだ」
「・・・・・」
「シン、俺はお前の力になってやる。白河さんを助けるためにな」
「熱いねー隊長ー・・・・・すっかりヤル気満々ねえ♪」
 ルナマリアが茶化してくるが、アスラン自身も不思議な感じだった。本来こんな感情に
流されるような行為を是としなかったはずだったのに。今のシンを見ていると、それも
悪くないように思えてきてしまう。
 シンはしばらく呆然とした顔をしていたが、やがてぱっと顔を明るくさせた。
「アスラン・・・・・あ、あぁ!!アンタがいてくれれば、俺は何も怖いものなしだ!!」
 あまりに素直な反応をするシンに、アスランもつい苦笑してしまう。
「さーて、では男同士の友情も復活したところで、そろそろドンパチ派手にやりに行きますか♪」
 ルナマリアが待ってましたと言わんばかりの張り切りぶりを示すが、アスランはそんな彼女に
水を差す。
「ルナマリア、お前はシンの代わりにここで待機だ」
「って、えぇー!!な、何でよー、せっかく大暴れできると思ったのにー!!」
「お前の場合は、張り切りすぎて逆に白河さんの身も危うくなりかねん。大人しくジープで
待っていろ」
「それは・・・・言えてるかも」
 シンも相槌を打つように頷いた。明らかに不満げにふてくされているルナマリアから
ライフルを取り上げて、アスランはシンに顔を向けた。
「よし、行くぞシン」
「ああ」
 二人は廃ビルに向かって歩き出した。足取りが、いやに力強く感じた。
51第十五話5/8 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/16(日) 22:58:17 ID:tONzYOGI
 ビルの下まで来ると、その荒廃ぶりがよく分かった。闇夜にひっそりと佇むその暗い建造物、
あまりいい気分にはなれない。手近な窓から中の様子を伺うが、暗くてよく見通せない。
とりあえず人の気配がないことを確認して、静かに建物内に潜入した。
 シンも、アスランの横で引き締まった表情をしている。白河ことりが今も無事である
保証は無い。けれど、大切な人、愛しい人を守るためにただ戦う。そんな一途になれる想いが、
アスランには何処か羨ましく思えた。だからこそ、そんなシンを助けてやりたかった。彼女とともに
幸せでいる姿を見ていたかった。
「シン」
「ん?」
「キラのことは、俺に任せろ。お前は、白河さんを助けることだけを考えるんだ」
「・・・・・」
「キラを、討とうなんて考えるなよ。彼女のことだけを考えろ。そうすれば、今度は絶対に
助けてあげることができる、心配するな」
 シンがじっとアスランを見てきた。シンは昔から、自分のやり方にどこか不満を持っていた
ことをアスランは知っていた。恐らく、考え方自体が全く違うのだろう。だから、よくすれ違ってしまい、
衝突することが多々あった。いつか、再びシンとはぶつかることになる日が来るかもしれない。
「・・・・・シン」
 けれど、今だけは。この瞬間だけでも、ともに並んでいたかった。
「俺のことが信用できないことは分かってる。だけど今回だけは、俺を信じてくれ」
 暫くして、シンが硬い表情を崩して頷いた。
「俺はアンタを信じてるさ、アスラン・ザラ。ずっと信じるよ」
 その言葉を聞いて、アスランも安心できた。再び暗い室内に顔を向ける。ライフルを握っていた
手が汗ばむ。
「行くぞ」
 低い声でそれだけ言って、アスランが先行して進む。後ろからシンがぴったり背後に付いてくる。
思った以上に暗いので、足元がよく見えない。電灯なんて勿論ついてない。辺りには机やら
椅子が散乱していて、窓ガラスも割られて完全に放置されている。割れた窓から差し込む
月明かりだけを頼りに、冷たいコンクリートの上を歩いてゆく。
52第十五話6/8 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/16(日) 22:59:49 ID:tONzYOGI
「いらっしゃい」
 曲がり角にさしかかろうとしたその時、先の方から声がした。アスランのよく知った声。
「キラ・・・・・」
 アスランが唸るように闇に向かって呟いた。曲がり角の先、そこにキラがいた。久方ぶりに会った
その親友の姿は、以前と何ら変わりはなかった。
「シン・アスカ・・・・・それと、アスランか・・・・」
 キラはアスランの姿を見ても、さして驚いた様子は無かった。アスランとシンは、すかさず
銃を構えた。キラは、動かない。
「・・・・ことりは、ことりはどうした!?」
「彼女なら上だよ、怪我一つもしてない。無事だよ」
 叫ぶように尋ねるシンにキラはあっさりと答えた。少なくとも、キラの近くには白河ことりは
いない感じである。
「上に行きたければ、そこの階段を使えばいいよ」
 キラが指した先に、上に続く階段があった。話が、どうも上手く行き過ぎである。
「・・・・・罠か?」
 シンが、キラには聞こえないくらい小さな声で尋ねてくるが、アスランにも皆目尽きかねていた。
白河ことりが上の階にいるとも限らない。もしシンの言うように罠だとしたら、危険である。
「・・・・二手に別れるぞ」
 悩んだ末、それがアスランの下した決断だった。
「俺がキラを引き付けておくから、お前は急いで白河さんを」
「・・・・了解」
「無事助けたら、俺のことは構わず急いで彼女を安全な場所まで連れて逃げろ、いいな?」
「・・・・無理するなよ、アスラン」
「お前もな」
 シンが頷いた。まずは、キラに牽制を仕掛ける。その隙に、シンには上へ行ってもらう。
「いいのかな・・・・・?彼女が上にいるという保障はないんだよ?」
 キラが、言葉で惑わそうとしてくるが、シンは聞く耳を持とうとはしない。
アスランが、キラに向かって発砲する。キラは難なくかわして、物影に隠れた。
「今だ」
53第十五話7/8 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/16(日) 23:01:39 ID:tONzYOGI
 アスランが叫ぶと同時に、シンが階段に向かって駆けた。キラが、手持ちの銃でシンに向かって
撃つ。銃弾はシンに当たらず、近くの壁に外れた。すかさず、アスランがキラに向かって撃つが、
避けられてしまう。しかしその間に、シンは上に上がることができた。
 それでもキラはそれも予想通りだったのか、あまり慌てた様子はなく落ち着いてアスランの方に
顔を向けた。
「・・・・キラ」
 シンが上に行ったことで、アスランは銃をおろしてキラの名前を呼んだ。できるならば、
これで終わりにしたかったが、警戒は決して解かなかった。
「馬鹿な真似をしたな・・・・お前は。もう、こんなことは止めて投降しろ」
「馬鹿な真似?」
 キラが不思議そうに呟き、そして悲しげな表情をする。
「・・・・アスランなら、僕のことを分かってくれると思ったんだけど」
「分かろうとしたさ。だけど、今のお前は分からない!!一体何を考えているのか」
「彼が、嫌いなだけさ。アスランだって、彼が嫌いでしょ?シン・アスカが。だったら、想いは同じのはず。
僕の側について欲しい。アスランが僕の手助けをしてくれれば、これほど心強い味方はいないよ」
「・・・・確かに、俺だってシンが気に食わないところもある。だけど、俺はアイツが決して嫌いじゃない!!
そして、こんなことをする今のお前は、間違っている。だから、俺はアイツを助けて、お前を
止めてみせるんだ」
「僕らは、友達だよね?アスランは、いつだって僕の傍にいて、助けてくれた・・・・」
「都合のいい時だけ、友達ぶるのはよせ!!」
 キラの物言いに、段々腹が立ってきた。キラは説得を諦めたかのように小さく溜め息をついた。
「君なら納得してくれると思ったんだけど・・・・残念だね」
「よせ・・・・お前を、撃ちたくはない」
「僕だって、君を殺したくはないよ・・・・けど」
 キラが構えるその瞬間、アスランは先に構えて発砲をした。銃弾は上手くキラの持っていた
銃に当たり、地面に落ちた。キラが苦痛の表情を浮かべる。
「・・・・・これで終わりだ、大人しくしろ」
54第十五話8/8 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/16(日) 23:03:34 ID:tONzYOGI
 しかしキラは、たじろいだ様子も見せずに不適に笑う。
「・・・・僕を撃てるの、君は」
「・・・・ああ、撃てるさ」
 アスランは鋭い目つきで、キラを睨んだ」
「お前は・・・・人を不幸にする人間だ。もう誰も、不幸になんかさせない。お前を止めることが
できないなら、せめて俺の手で・・・・・」
「・・・・言うことは立派だね、けど」
 キラは手元に何かを握っていることに、アスランは気がついた。
「今撃たなかったことが、君の甘さだよ。アスラン」
「なっ!?」
 小型のスイッチ。キラが笑った瞬間、アスランは急いでその場から飛び跳ねた。
しかし一瞬遅れて、今いた場所から火が上がった。爆風に吹き飛ばされると、アスランは
勢いよく壁に叩きつけられて、地面にひれ伏すように倒れてしまう。意識を必死に保とうとするが、
徐々に薄れていく。
「・・・・・シ、シン・・・・」
 シンの名前を呼んだ瞬間、視界が真っ暗になっていた。
55 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/16(日) 23:06:24 ID:tONzYOGI
ようやく書き終えたからうp
いよいよ大詰めです。ドンパチやる・・・・予定なんですが



まだこの続き書いてない(ノД`)下書きもできてないよー・・・・
56名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/16(日) 23:30:08 ID:5utoYCU4
リアルタイムGJ!!!!

シン&アスランテラカッコヨス!!
キラもココまでやってくれる分運命の時みたいな苛立ちも感じない!


D.Cキャラがことりの名前だけしか絡まなかったのが少し残念だったですが…

物語もクライマックスになってきたようですし…
続きを楽しみにしてます!
57 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/16(日) 23:48:11 ID:tONzYOGI
>>56
やっぱ戦闘になると種キャラがメインになってしまうので
どうしてもDCキャラは影に隠れてしまいますね・・・・
だから前半にことり視点を多く入れて補ったつもりだったんですが

予定ではあと残り7話のですが、
その内ことり視点は後2回しかありませんwDCキャラはそれでオシマイ
58名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/17(月) 00:22:33 ID:u/28ma7k
GJ!
アスランもシンもカコイイ!
今回は長くて大変だったんでしょうか?お疲れ様です。次回もゆっくり書いてください、気長にお待ちしとります。
59名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/17(月) 02:29:50 ID:HVQDlMoX
おお…ついにシンが本編でするべき成長を遂げおったか。
今の彼ならどっからどーみてもちゃんと主人公に見えるぜ。
しかしキラ強いな…生身の戦闘した時は殆どアスランに
まかせっきりだったような記憶があるが…やる気満々だ。
60名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/17(月) 19:07:57 ID:fnJCnvuE
いよいよクライマックスに近づいていく感じですな、GJです。
61名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/20(木) 18:55:01 ID:wCiCV2e4
保守上げ
62名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/20(木) 19:04:01 ID:FjBQjT8l
上がってねぇよ・・・。
63名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/20(木) 19:35:58 ID:YmMgP2Mg
ワクテカ
64 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/20(木) 21:19:38 ID:IPP59SUV
そういえば保守もしておりませんでしたな・・・・申し訳ないです
ちょっともう3日じゃ追いつかなくなってきましたな
一つには最近時間がないせい、最近言葉が全く思い浮かばないせい
展開はとっくの昔から決まってるけど、それに言葉がついていけない状態ですね

そんなセイセイばかり言っててもしゃーないですな
気合入れてやりゃ今日の夜中にはうpできるかも・・・・
よっしゃ!オラいっちょやってみっか!('A`)ノガンバリマス
65名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/21(金) 02:04:48 ID:bf46Oy8k
ガンガレ、超ガンガレ。
66名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/21(金) 13:12:12 ID:0sK3plRT
>>64
その心意気、立派過ぎます。wktkしてまってます
67 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/22(土) 17:04:31 ID:eu1Lsmo1
ちょっと16話が思った以上に長くなってしまいまして・・・・
どう区切っていいか悩みますw
とりあえず前編後編に分けてうpります・・・・後編は、夜にでも流しますか
区切った方が読みやすいと思いますので
68第十六話(前編)1/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/22(土) 17:07:05 ID:eu1Lsmo1
 下の階の方で、地鳴りと共に大きな爆発音が響いた。一瞬、アスランのことが頭によぎったが、
すぐに頭を振って打ち消して先に進んだ。
 ことりを助けることだけを考えろ、アスランはそう言った。もしここで戻ってしまったら、
それはアスランの信頼から背くことになってしまう。シンは、アスランを信じていた。
だから、キラのことはアスランに任せて、今自分にできることはことりの救出だけである。
「ことりー!!どこだ、返事をしてくれーーー!!!」
 必死になって、ことりの名前を呼ぶシン。その声が、ビル全体に響き渡り空しく消える。
本当に、ここにことりはいるのだろうか。そんな気持ちさえ出始めてきた。しかし、階段を
上りきって、上の階についた時。奥に、閉め切られた扉を発見した。
 あそこに、ことりがいる。何となく、シンにはそう感じられた。
「ことり!!!」
 扉に近付いてノブを回そうとするが、鍵がかかっていて開かない。シンは躊躇無く
そのドアを蹴破って中に入った。
「・・・・・シ、シン君・・・・・」
 中にはシンの予感どおり、ことりがいた。椅子に縛り付けられているが、何とか無事そうである。
「ことり!!」
 シンはすかさずことりの傍に行き、縄を解いた。解いた瞬間、いきなりことりが抱きついて
きたので、シンは慌ててしまった。
「こ、ことり!?」
「良かったぁ・・・・・シン君へ行き?怪我とかしてない?」
 自分の身のことよりシンの安否を気遣ってきてくれることり。それがことりらしいくも
思うが、シンはそんなことりの姿を見てつい苦笑してしまった。
「お、俺は大丈夫だよ。ことりの方こそ、アイツに何か酷いことされなかった?」
「うん、私は平気だよ」
「そうか・・・・良かった」
 それを聞いてシンは安心して微笑んだ。しかし、なぜかことりがいつまでも離れてくれなくて、
シンも何だか段々気恥ずかしくなってきた。
69第十六話(前編)2/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/22(土) 17:08:09 ID:eu1Lsmo1
「こ、ことり・・・・そろそろ離れて・・・・そ、その・・・・・胸当たってるし」
 シンとしては嬉しいところだったが、今は一刻も早く脱出しなければならないので。
その気分を堪能している暇など無い。
「・・・・もう、せっかく再会できたのに・・・・・シン君にはやっぱセンチメンタリズムというものが
足りないっすなぁ・・・・」
「センチ・・・・・なんだ、それは?美味いのか?」
「はぁ・・・・やっぱり」
 ちょっと惚けてみるとことりが呆れ返ってしまい、それがどこか滑稽に見えた。
「ま、そんな冗談が言えるぐらいなら十分元気だろう」
「冗談のつもりなんてないのにー」
 ことりが何かぶつぶつ文句を言ってるが、とりあえず気にしないことにしておく。
「立てるかことり?」
「あ、うん」
「よし、感動の再会は後でゆっくりやればいいさ。今は急いで逃げるぞ」
「あ、待って・・・・あと、これだけは」
 ことりの手を引っ張ろうとするが、呼び止められてしまう。振り返ると、ことりが少し微笑んだ。
「・・・・・ありがとう、シン君」
 面と向かって改めて言われると、何だか照れくさくなってシンはそっぽを向いた。
「気にするな・・・・さ、行くぞ」
「うん」
「・・・・・そうは、させないよ」
 今度こそ脱出しようとしたその矢先、邪魔が入った。キラが、いつの間にか入り口に立って
銃を構えて立っていた。予想外のキラの登場にシンとことりは驚いた。
「キラ・・・・いつの間に・・・・・アスランは、アスランはどうした!?」
「心配ないよ、下でちょっと眠ってもらってるだけだから」
 アスランがやられた。俄かには信じがたい話であるが、事実キラはこうして眼の前にいる。
「人の心配よりも、自分たちの身の心配をした方がいいんじゃないのかな?」
 キラはにやりと不適な笑みを見せて銃をつきつけてくる。しかし、シンの方も余裕の表情を
浮かべていた。
70第十六話(前編)3/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/22(土) 17:09:12 ID:eu1Lsmo1
「へっ、何言ってやがる。ことりはもうこの通り助け出したぜ。こうなりゃ、もうこっちのもんだ」
「・・・・そう、確かにそこまでは良かったよね・・・・けど」
 そう言いながら、キラはことりの方に銃を向けた。それでようやく、シンにも焦りの表情が
出始めてきた。
「けど、君は白河さんという重荷を守ることにより、自由に立ち回ることができなくなった」
「・・・・・」
「最初に君を殺すのも良し。はたまた、再び君の大切な彼女を眼の前で殺される姿を
見せ付けられるのもまた一興。どちらに転んでも悪くないね・・・・・さて、面白くなってきた」
「・・・・・き、貴様ぁぁああ!!!」
おっと・・・・動かないでよね・・・・怪我をしている君では、彼女を守りきることは難しいんじゃ
ないのかな?」
「ぐっ・・・・・くそっ!!」
 ここまで持ち込んできたのも、キラには全て計画通りだったのだろう。相手を絶望に
貶めてから止めを刺す。実に悪辣なやり方に、シンは苛立ちと嫌悪感を感じざるを得なかった。
「こういう時は、そう・・・・・チェックメイト、って言うのかな・・・・ふふふ・・・はは」
 キラは、まだ決着もつかないうちから勝ち誇った気分になっているようだった。
「・・・・・キラ、ようやく本性を表してきたな・・・・」
「そうだね・・・・・認めるよ。僕も、自分でここまで残酷な人間になれるとは思ってなかったよ。
君を殺すためだったら、何だってしてみるさ」
 キラは、狂っていた。そんなキラに、シンの横からすっとことりが前に出てきて、
キラの方を睨んだ。
「・・・・・弱い人・・・・卑怯な手を使わなきゃ、何もできないなんて」
「・・・・それも認めるよ。僕は、弱くて臆病だから・・・・・こんなことをしなくちゃ勝てないんだよ」
 もはや開き直ってしまっているキラ。こうなってしまった人間は、戸惑いも見せないので
手強い。けれど
71第十六話(前編)4/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/22(土) 17:10:16 ID:eu1Lsmo1
「・・・・・あなたみたいな弱い人に、私とシン君は負けない・・・・負けたくない!!」
「それで死んでしまっても、負け犬の遠吠えにしかならないよ。最後に生き残った者こそが、勝者さ」
「あなたは、既に負けている・・・・・シン君とまともに向き合おうとする勇気がない時点で、
負けていた・・・・・」
 キラの眉が、僅かに動く。
「・・・・君は、本当に僕を不快にさせてくれるね・・・・」
 キラが引き金を引きそうになった。ことりが撃たれる。そう思った瞬間、何かが吹っ切れた。
ことりを守るんだ、ただそれだけが頭によぎった。
「キラァァァアアアア!!!!」
 我を忘れて、キラに突撃をかける。突然動いたシンに、キラも慌てて銃をシンの方に定めて
撃ってきた。避けない。弾丸は頬をかすめるが、そんなものにはまるで怯まずにぶつかろうとする
勢いは止まることを知らない。拳を力強く握り締めて、キラの顔を思いっきりぶん殴った。
それに見事にキラが吹っ飛んでしまい、あまりの勢いに銃を手放してしまう。シンはさらに
倒れたキラに飛びかかって掴みあげる。すかさずキラも抵抗して、激しい取っ組み合いとなった。
「貴様に!!!貴様なんかにことりをやらせるものかぁぁあああ!!!」
「ぐっ!!き、君なんかに!!!」
 顔が歪むんじゃないかと思うほど、本気で殴った。キラも殴り返してくるが、全く痛くなかった。
キラなんか大したことない、そう思っただけだった。キラの腕を掴んで後ろに回し、少し引っ張り
あげるだけでキラが苦痛の声を挙げた。
「ぐぁぁあああ!!!」
「ふざけやがって・・・・」
 このまま腕を折ってしまおうか、キラを忌々しげに睨みながらそう思っていた時。しかし、
キラが突然後ろに向かって頭をぶつけてきた。顔面に当たって、締め上げていたキラの手を
離してしまった。その一瞬の隙をキラは見逃さずに、シンの怪我をしていた方の右肩へと
思いっきり殴りかかってきた。あまりの激痛に耐えかねて倒れこんでしまうシン。
キラは血反吐を吐くて、シンを上から睨みあげていた。
「はぁ・・・・はぁ・・・・や、やめてよね・・・・こんな手間をかけさせて」
 再び殴りかかろうとしたキラ。しかしその瞬間、銃声が響いた。その音に驚いて、
キラは唖然と横を向いていた。
72第十六話(前編)5/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/22(土) 17:11:28 ID:eu1Lsmo1
 ことり。キラが落とした銃を握り締めて、キラの方に銃口を向けていた。そんなことりの
姿に、シンまでもが驚いてしまっていた。
「・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・シ、シン君を・・・・離して」
 震える肩で、しかし銃はしっかりと握り締めたままことりはキラのことを睨んでいた。
 あの優しいことりが、今はまるで別人のように思えてしまうほど。こんなのは、ことりはなかった。
「こ、ことりよせ!!」
「・・・・君に撃てるの、人を殺せるの?」
 キラの言葉に反応して、ことりは眼の仇のようにキラのことを冷たく睨んだ。
「・・・・・あ、あなたさえ・・・・あなたさえ来なかったら!!!!」
「よせっ!!!」
 キラの表情が引きつる。シンは、飛び出してことりを止めようとする。けれど、一歩間に合わず
発砲してしまった。
「・・・・・・あ・・・・・」
 銃弾はキラの頬ぎりぎりをかすめて、そこから一筋の血が流れていた。シンが銃口をそらして
いなかったら、今頃ことりは本当に人を殺してしまっていたかもしてなかった。
「・・・・・もういい・・・・止めるんだ、ことり」
「・・・・わ、私・・・・」
「・・・・ことりが、誰かを殺すところなんて・・・・・人殺しになるところなんて・・・・・俺、見たくねえよ」
 ことりにそんな姿は、相応しくない。ことりがそんな風に汚れてはいけないんだ。誰かを憎み、
怒り、そして悲しむことりの姿なんか、見ていたくない。こんなくだらない争いをいつまでも
続けているんから、人がおかしくなってくるのだ。
 ことりには、ずっと笑っていて欲しい。誰にでも優しく笑顔を振舞って、そんな慈しむ心を
忘れて欲しくなかった。
「・・・・・私は・・・・・シ、シン君・・・・・」
 張り詰めていた糸が切れたかのように、ことりがシンの胸の中で激しく泣き始めた。
なぜなくのか、シンにも何となく分かってしまう。自分を失ってしまうのが怖かったのだ。
人を殺してしまえば、それでかけがえのない何かを失うことになる。それが、
きっとことりには怖かったのだ。あんな男の為になんか、何も失う必要はなかった。
73第十六話(前編)6/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/22(土) 17:13:04 ID:eu1Lsmo1
 未だ放心状態のキラに、冷たい眼差しを向けるシン。
「キラ・・・・お前って最低だな。女の子泣かせるヤツなんて・・・・・やっぱ最低なヤツだよ、お前は」
 ことりの頭を撫でて慰めながら、シンはきっぱりと言い切った。男として、だけでもない。
人間として、最低な奴である。そう言われてもキラは無表情で、やはり感情はなかった。
「・・・・お前の負けだ。殺す価値もない・・・・・軍に引き渡して、その裁決に身を委ねろ」
「・・・・まだだよ・・・・・まだ、終わりじゃない」
「終わりだ。無駄な抵抗はよせ」
「まだ、最後じゃないよ」
 キラが、懐から何かのスイッチを取り出して笑った。
「フィナーレは・・・・これからさ」
 それを押した瞬間に、ビルの至る所で大きな爆発が起きた。すると、ビル全体が揺れ始めた。
「ここで、二人とも埋もれてしまうことだね・・・・・」
 そう言うと、キラは素早部屋から出て、扉を閉めてしまった。
「ま、待て!!」
 シンはキラを捕まえようと急いで扉を開けるが、そこにはもはやキラの姿は無かった。
階段を下りてキラを追おうとした時だった。
「危ないシン君!!!」
 ことりの悲痛な叫び声が聞こえる。頭上から、天井が崩れ落ちてくる。シンは無意識的に
その場から飛び離れた。瓦礫が重なって、階段は完全に埋もれてしまった。ことりの声が
なかったら、危うくシンもあの瓦礫の下敷きになっていた。想像すると、ぞっとしてくる。
 さっきの爆発で、もはや建物全体の崩壊が始まっている。ここも長くは持たない。
「シ、シン君・・・・・どうしよう」
 怯えたような、ことりの声。シンは安心させるために笑ってみせた。
「し、心配するな・・・・・絶対に何とかなるから」
「で、でも・・・・・」
 そう言ったものの、既に下へ繋がる階段は使えなくなり、ビルからの脱出が不可能となってしまった。
別の脱出ルートを探している余裕はない。このままでは、本当にこのビルと共に埋もれて
しまうことになってしまう。どうすればいいか、シンは必死になって考えた。
「シン君・・・・・」
「・・・・お、屋上だ、屋上に行くぞ!!」
 考えた末に、それけが思い浮かんだ。思いついた時には、ことりの手をとって走っていた。
74名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/22(土) 18:15:08 ID:e3ViaV0x
GJ
続きが気になる
75 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/22(土) 20:48:46 ID:eu1Lsmo1
何かもう切る必要なかったような気もしますが・・・・w
切っちゃったものは仕方ないので気にせず後編貼りますね
76第十六話(後編)1/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/22(土) 20:50:54 ID:eu1Lsmo1
 ことりを連れて屋上まで上がってきた。けれど、それからどうするかは
まだ考えていなかった。そんなことをしているうちに、建物の崩壊はどんどん進行してきている。
「くそ・・・・・どうすりゃ・・・・・」
「・・・・あ、シ、シン君!!あそこ!!」
 シンが苦々しく呟いたとき、ことりが顔を明るくさせて指した先。隣のビルの屋上。この建物と
結構近い距離にある。しかし、飛び移るには少し距離がありすぎるようにシンには思われた。
「・・・・む、無理だろ・・・・あんなに離れていたら」
 シンが諦めたように言うと、ことりが力強い笑顔を振り向けてきた。
「だ、大丈夫・・・・・きっと大丈夫だよ、私たちなら」
 何の根拠もない自信。けれど、ことりは絶対に助かるといった確信みたいなものを持っていた。
シンも、上手くいくかもしれないという気がしてきた。どのみち、他に脱出経路は見当たらないのだ。
一か八か、やってみる価値はある。
「・・・・・よ、よーし!!」
 自分の顔を叩いて気合を入れてから、シンはことりを自分の方に引き寄せた。
「きゃ!?」
 少し驚くことり。本当はかっこよくお姫様抱っこでもしたいところであったが、あいにく右肩が
使えないので仕方なく左肩にことりを支えてあげることしかできない。
「一二の三で駆けるからな。そしたら、ことりも一緒にジャンプだ」
「う、うん・・・・・」
 ことりの顔が間近にあり、何だか恥ずかしくなってくる。ことりも何だか照れたように顔を
赤らめていて、何だか可愛かった。手に力をぎゅっと込める。ことりも、身をそっとシンの方に
預けてきた。建物の崩れる音だけが、響いた。
「一・・・・」
「二の・・・・」
「「三ッ!!!」」
 掛け声とともに、駆ける。勢いに乗り屋上の切れ端のところで、思いっきり跳んだ。
距離は思ったほどなかったが高さの差が結構あり、落ちるように跳んだ。叩きつけられないように、
咄嗟にことりを庇うように着地をしようとするが、失敗してしまい二人して縺れ合った状態で
着地してしまった。
77第十六話(後編)2/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/22(土) 20:52:05 ID:eu1Lsmo1
「いてて・・・・・あ、あはは・・・・失敗失敗・・・・」
「・・・・はぁ、格好がつかないっすなぁ・・・・・」
 ことりが呆れたように苦笑した。隣のビルは、もう完全に瓦解していた。さっきまでいた
屋上も崩れていて、ぎりぎりのところで助かった。二人一緒に助かったからこそ、こうして
笑えていれるのだ。
「ことり・・・・・本当に良かった・・・・」
 シンが小さく呟いた。心から、そう思えた。ことりと見つめ合い、何だかいい雰囲気になる。
このままキスとかしても、悪くないような気がしたきた。ことりも眼を瞑ってすっかりその気満々である。
シンも勢いに任せて、顔を近づけようとした時。
「・・・・・あー・・・・お熱いところを失礼するよ」
「「わああぁぁっ!!!」」
 突然背後から声がして、慌てて身を離す二人。振り向くと、アスランが苦笑していた。
「・・・・・じゃ、邪魔しやがってこの糞凸が・・・・・お前はアイシアか?」
 恨めがましく睨むシンにアスランは呆れた声を出した。
「な、何のことだ・・・・・・」
「というか、生きてたんだな。アンタ」
 すっかり念頭から消えていたが、キラが気絶していると言っていたからてっきりあのビルと
ともに埋もれてしまったのではないかと思っていた。
「勝手に殺すな・・・・君らが隣のこのビルに飛び移るところを下から見たから、急いで
ここまで上がってきたというのに」
 アスランはシンとことりが無事であることを確認すると、真剣な表情になって尋ねてくる。
「キラは?」
「さぁ。階段で逃げていったけど、あの調子じゃ恐らくあの瓦礫の下になったんじゃないのか?」
 逃げ切れた、とは到底思えなかったが、もしかしたら上手く脱出をしているのかもしれない。
しかし、それを確認できるような手立てもない。
「そう・・・・か」
 アスランは少し悲しそうな表情をした。しかしすぐにまた安心した顔をシンたちに振り向けてきた。
78第十六話(後編)3/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/22(土) 20:53:54 ID:eu1Lsmo1
「とにかく、二人とも無事で何よりだ・・・・・お疲れ様」
「ああ、全くだ」
 シンが気だるそうに答えた。ようやく終わった。そんな開放感を感じながら隣のことりを見る。
ことりも安心したように笑顔を向けている。
「さ、帰ろう。シン君」
「ああ、そうだな」
 立ち上がろうとするが、体全体が痛くて上手く体を起こせない。もう心も体も、すっかり疲れきっていた。
アスランが笑っている。
「わ、笑うなよ!!」
 ことりに手を差し伸べてもらい立ち上がった瞬間、突然地鳴りがした。大きな音が
辺りから響いてきて、三人ともはっと我に返る。聞いたことのある音。これは、MSの駆動音。
音のする方を一斉に振り向いた。
「・・・・・そ、そんな」
 見たことあるフレーム。あの機体だけは、忘れようにも決して忘れられない。フリーダム。
「・・・・キ、キラ」
『・・・・お遊びは、もう終わりだよ・・・・』
 低い感じのキラの声が聞こえてきた。すると、フリーダムはいきなり腕を振り上げた。
「ここから離れろ!!!」
 アスランの叫び声とともに、シンとことりは建物の中に向かって駆け出した。
容赦なく、フリーダムはシンたちに向かってその巨大なアームで殴りかかってきた。
何とか建物の中に入って、直撃は免れたものの、その凄まじい派火力に周りの壁や天井が
耐えられなく一気に瓦解してくる。
「きゃああ!!!」
 ことりが悲鳴を挙げる。
「く、くそっ!!マジかよ!?」
 シンはことりを庇うように走った。上を見上げる。フリーダムがその翼を羽ばたかせて、駆ける。
 ふと、昔とよく似た風景を思い出した。オーブにいた頃。あの時にも、フリーダムを見た。
父と母と、そしてマユを殺したあの忌まわしい機体。
 今は、昔とは違う。同じ過ちを繰り返させない。あの時の歴史を変えることが、今ならばできるはず。
79第十六話(後編)4/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/22(土) 20:55:02 ID:eu1Lsmo1
「下に行け、この建物から出るぞ!!!」
 アスランが下に向かう階段を指して、急いでそこから降り始めた。降りながら、シンの後ろで
アスランが携帯を取り出してどこかにかけようとする。
「ルナ、ジープだ。大至急下に回せ!!つべこべ言うな!!」
 それだけ言って携帯をしまった。アスランが何を企んでいるのか、シンにはいまいちまだ予想が
つかなかった。
「ア、アスラン・・・・何を?」
「いいから、早く降りるぞ!!」
 とにかく、今は何も考えずに言われるがまま走って外に飛び出した。建物の外には既に
ルナマリアがジープに乗って待っていた。三人はすぐさまそれに乗り込んだ。
「三名様ごあんあーい♪」
「ふざけてないで、早く港に向かえ!!!」
 快調な声で三人を迎えるルナマリアだが、アスランが激怒するとふてくされながらも
アクセルを踏んで飛ばし始めた。
「み、港・・・!?そんなとこに行ってどうするんだよ」
「説明している暇はない」
 シンの問いにも答える気のないアスラン。しかし、それで納得のいくシンではなかった。
「だ、だけど!!アイツ、フリーダムを使い始めたんだぞ。このままじゃ、周りにどれだけの被害が
出るか」
 キラは、もはや自棄を起こしているようにしか思えなかった。今のあの男なら、何をしても
不思議ではなかった。しかし、アスランもルナマリアも平然とした表情をしていた。
「へーきよシン。そのためのタンカーでしょ、アレって」
「・・・・・なんでもお見通しか、お前は」
 ルナマリアが意地悪そうな笑みをアスランに向けた。なぜかアスランも面白くなさそうな顔をしていた。
シンには何のことだかさっぱり分からなかった。そんなシンにアスランが声をかけてくる。
「安心しろ、全て予想済みだ。アイツを止める”切り札”も、既に用意してある」
「切り札・・・・・って?」
 シンは不可解な感じで首を傾げた。
80第十六話(後編)5/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/22(土) 20:56:20 ID:eu1Lsmo1




 瓦礫の中には、もうシンの姿は見受けられなかった。恐らくは、既に逃げられた後なのだろう。
 誤算だった。シンを討ち取れるチャンスは、今までいくらでもあったはずだった。
それなのに、取り逃がしてしまった。
 シンに向けて発砲した弾。それがなぜか、外れてしまった。外れるはずのない弾が、外れたのだ。
シンには守り神か何かが宿っているのだろうか。それぐらい、あの男には運があった。
それとも、全て自分の油断が招いてしまった代償なのだろう、とキラは思った。少なくとも、
情に流されたつもりはなかった。それでも、最後の詰めは誤ってしまったのかもしれなかった。
 とにかく、もう失敗は許されない。まだ、当初の計画からは何の支障もきたしてはいない。
フリーダムを使えば、シン・アスカなんて簡単に潰せる。ただできるならば周りを巻き込みたくは
なかったので、あまり使いたくはなかった。キラも、無意味な大量虐殺なんて謗りを受けるのは
嫌だった。だが、もう手段を選んでいられない。油に火を注いでしまったようなものだ。
火は勢いを増し怒り狂い、一気にキラを包み込んでこようとするだろう。その前に、消さなければ。
シンたちの姿は見えないが、ならばこの辺り一帯ごと消滅させてしまえば問題ない。
必要ならば、島ごと吹き飛ばすか。ミーティアを使えば、それも不可能ではない。やはり、ミーティアを
取りに行くしかなかった。
 フリーダムは地面からゆっくりと上空に浮上し始める。東の空が、白くなり始めている。
夜明けも近い。夜明けまでには、始末をつけたかった。
 体を少し動かすと、不意に痛みが走った。シンに殴られた頬。手で触れて、腫れていることが
分かった。とても痛い。顔が潰れてしまうんじゃないかと思うぐらい、彼は本気で殴ってきた。
酷いことをしてくれたものだった。何も、ここまでしなくてもいいではないか。殴りかかってくるシンが、
狂気に駆られ我を忘れたように、眼を血走らせて襲ってきた。今思い出しても、その姿はぞっとした。
キラも無我夢中で応戦しようとしたが、力の差がありすぎてとても敵わなかった。
 とても、恐ろしい存在。やはり、シンはここで倒すべきだった。アスランが助けてくれると思っていたが、
彼は助けてくれなかった。邪魔をしてくるのならば、彼も一緒に倒さねばならない、とキラは思った。
親友だから、できるならば殺したくはなかった。
81第十六話(後編)6/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/22(土) 20:57:37 ID:eu1Lsmo1
 攻勢に出る前に、ミーティアがいる。今度こそ、逃がさないように念入りに準備をしなければ。
キラは回線を開いて海上に待機しているはずのオーブ艦隊へと連絡を入れる。オーブ船の
空母の上に、ミーティアを置いてあった。
「こちらアークエンジェル所属、キラ・ヤマト。オーブ艦隊、聞こえますか?」
 オーブ艦隊に向けて通信を送り始める。けれど、なぜか一向に応答がなかった。キラは
奇妙に思いながらも、再度呼びかけようと声を発しようとした、その時だった。
『無駄ですよ』
 突然、通信に無理やり乱入してくる声があった。女の声。以前、どこかで聞いたことのある声だった。
しかし、その声の主が信じられない言葉を言った。
『海上にいたオーブ艦隊の全てのシステムは私が停止させました。もう、誰も助けに来ませんよ』
 艦隊が乗っ取られた。俄かには信じがたい事実であるが、しかしそれはキラを動揺させるのには
充分な凶報である。実際に、連絡も取れないのだ。
 そこではっと気がついて、急いでレーダーで辺りの領域を調べた。北と南に、島全体を監視するかの
ように見慣れぬ艦隊が取り囲んでいる。恐らくは、まだ別働隊もどこかに潜んでいる可能性もあった。
 全て、アスランの仕向けた計画なのだろう。フリーダムを使うことも、オーブ艦隊と連携していたことも。
何もかもが、後手に回っていた。キラは煩わしそうに顔をしかめた。
『ここまでです・・・・投降してください』
「・・・・まだだ」
 まだ、何も終わってはいない。たとえどんな罠が仕掛けてあろうと、力で押し切ってしまえばいい。
このフリーダムには、それだけの力がある。まずは、オーブ艦隊との連絡を取り戻さなければならない。
 だが、その前にここまで邪魔をしてくれた人間の正体を知っておかなければならない。
『そうですか・・・・なら、私が止めてみせる・・・・』
「・・・・何者だ、君は」
 冷たく、キラは回線に向かって尋ねた。するとその瞬間、レーダに機影が一つ反応を示した。
正面。山を背後に初音島の空中に浮いていた。その機体と対峙して、キラは眼を見張った。
 見覚えのある機体だった。ガンダムレジェンドというあの機体。そのシルエットに、一瞬あの男、
クルーゼを思い出しそうになったが、すぐに頭の中から打ち消した。
『私でも・・・・・せめて時間稼ぎぐらいなら・・・・できる』
「・・・・君は・・・・・メイリン、か!?」
 モニターには、以前会った時には見せなかった、険しい表情をした彼女がいた。
『メイリン・ホーク、レジェンド・・・・・行きます!!』
82 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/22(土) 20:59:02 ID:eu1Lsmo1
いや、うp遅れて申し訳ありませんでした
今後もこちらの都合上3日以内にうpは無理かも('A`)一週間以内にはできそうですが


もうラストも近いですです。メイリンが戦っちゃっいますw
もうめちゃくちゃですが、そもそもDCキャラと種キャラが
一緒になってる時点で設定自体はおかしいので、このぐらいはご勘弁ください
時間軸もおかしかったりもするし・・・・ヤバイですもう
83名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/22(土) 22:39:51 ID:f2Dj8xxQ
キラ…いいキャラだなー いやいや、まずはGJ!
84名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/23(日) 08:39:36 ID:z05HhW82
メイリンガンバレ
そしてGJ
85あの人:2006/04/23(日) 10:38:09 ID:p+CHNfha
シンが……シンの姿が眩しすぎるっw GJです!
86名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/23(日) 13:09:34 ID:OEOo74Zl
まー…GJかな。

>シンには守り神か何かが宿っているのだろうか。それぐらい、あの男には運があった。

補正がキラ→シンに変わっただけかって、突っ込んじゃダメなんだろうか…

87名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/24(月) 04:23:20 ID:fnTX3rdP
キラのキャラが違いすぎるのはこの際どうでもいいと思う事にするけど
シンの口調が時々おかしいのが気になる
他のキャラも必要ないところで微妙に違ったりするし
後今更だけどシンってメイリンの事「メイ」って呼ぶっけか

色々言ってるけど文章のクオリティの高さに関してはGJ
88名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/25(火) 00:51:22 ID:RX/qUmCN
いつの間にかレジェンドのパイロットを降格された上もはや出番すらない
レイ・ザ・バレル、マジカワイソス。
89 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/25(火) 01:14:29 ID:709QCdOP
下書きは既にできたけど・・・今日中に書き上げられるかなぁ・・・・(´ー`)ムリッポソウ

>>86
そのへんも追々説明しますが・・・・一言で言えば誰にも補正なんてついてないだけです
キラの補正も取っ払って、みんな平等の視点で書いてますから。それだけです

>>87
実は、シンというキャラが俺の頭の中でまだいまいち
どういうキャラなのか定まってないんですよねw
熱血キャラだと思ってこういう風に書いてるんですが・・・・色々他のスレを見て研究とかも
してみたんですが、どうもいまいちまだ分かってません、謎です

呼び方に関しては自分がただ面倒くさいだけです
メイリン、ってなんかいまいち語呂が悪くて、メイの方が呼びやすくないですかねえ?
怒鳴るシーンとかもそう呼ぶ方がカッコイイかと思いまして

>>88
次回にもその話出てきますが。現在、彼行方不明中ですw
なんかレイってギャグ言えなそうで書き辛いんですよね。出ない理由はそれだけです。
だからもう完璧なギャグキャラと化して現在初音島のどこかの土の中に埋まってます
90名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/25(火) 22:22:38 ID:Gnrg9Zxu
今まで三、四日ごとにうpしてる◆hA/Opjl6aY氏は凄すぎる。
無理しない程度にガンガッテ下さいな。
91名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/26(水) 14:48:23 ID:9tqTmU+0
>>87
まあキラも一応人間だし自分の不注意の犠牲になった男に恨まれた上そいつに
何度も殺されかけたら精神が不安定になる可能性も十分有り得そうだけどな。
本編で「あの時はアークエンジェルを逃がすのに手一杯で―」とかアスランに
すら言い訳してるところを見ると悩みを打ち明けれる人も居ないみたいだし
唯一弱音を吐けそうだったフレイ様は死んじゃったし・・・。
92 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/26(水) 17:27:46 ID:E5SV6xcm
ぶっちゃけ、あんま深く考えないでくださいw
そんな深く考えて書いてないんで、うん
93 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/26(水) 23:28:11 ID:/fuXH+RX
書いたには書いたんですが・・・・これうpしちゃってもいいのかな?w
自分が戦闘物書くとやりすぎてキャラが違ってくるんだよなぁ・・・・
今更設定も変えられないし、もう書いちゃったのでうpしますけどね
これに懲りたらもう戦闘物は書かないほうがいいですな、調子に乗ってくるので

ちなみに、これ書いてる時ノリノリでしたw好調です
94第十七話1/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/26(水) 23:29:29 ID:/fuXH+RX
「はぁ!!メイリンを!?ちょ、ちょっとどういうつもりなのよアンタ!!あの子を殺す気?
このハゲ!!!」
「なっ!?ハ、ハゲって言うな!!ハゲって」
 港に向かいながらアスランの説明を聞いてて一番驚いたのは、それまで涼しげな顔をしていた
ルナマリアであった。
 メイリン、というのはルナマリアの妹だということはことりも知っていた。知ってるだけで、
直接会話したことはなかった。この間の音夢があの巨大な兵器、デスティニーで白河家を
襲撃してきた際にもメイリンはあの場にいたらしかったが、その時はことり自身がごたごた
していたので遠くから顔を見た程度にしか記憶になかった。ルナマリアと同じ赤毛の女の子。
ただ、活発的な姉とは対照的に大人しめな印象が見受けられた。それがメイリンを見た時の
ことりの印象だった。少なくとも、ロボットに乗って誰かと争うといった好戦的な姿は想像できない。
恐らくは、ことりと同じ様に争いごと自体が苦手ではないかと思われた。
 そんな大人しい子が、今巨大な兵器に乗りあのキラ・ヤマトとたった一人で対峙している。
姉のルナマリアの心配もそれは定かではないことであろう。
「そ、そうだぞ隊長。メイリンに戦わせるなんて、無茶だ。相手はあのキラだぞ!?」
 シンも同じ様にアスランに対して抗議をする。しかし、アスランは平然として答えた。
「まあ、戦わなくても時間を稼いでくれればそれでいい」
「はあ!?一瞬で殺されるに決まってるじゃない!!!何寝ぼけたことばかり言ってんのよ!!!」
「ぐええ、く、首離せ!!首!!」
「お、落ち着けルナマリア!!ハ、ハンドル持て、前を見ろ!!!」
 運転中だというのにアスランの首筋を掴んで激怒するルナマリア。それにはシンとことりも
さすがに冷や汗をかいて慌ててルナマリアを宥めた。それでようやく手を離して運転に
集中してくれる。あやうく死に掛けてしまった。
「・・・・この妹殺し、何回殺せば気が済むのよ・・・・・」
「まあ、ギャグキャラだったら復活できるから問題ないだろう」
 後ろの席からシンが茶々を入れるので、じろりと睨んでくるルナマリア。アスランはその間に
咳を一つついて改める。
「お、落ち着け・・・・こっちも人手不足なんだ。ハイネはミネルバに置いてきてるし」
「人手不足・・・・・?レイは?」
95第十七話2/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/26(水) 23:31:43 ID:/fuXH+RX
 レイという人はことりも以前会ったことあるような気もしたが、どうしても思い出すことが
できなかった。隣でシンがどこか呆れた表情をしていた。アスランが話を続ける。
「それに、これは彼女自身が志願してきたことなんだから」
「え・・・・?」
「レジェンド使いたいから私も出撃させてくださいー♪って」
「・・・・そ、そんな理由で許可を出すなーーー!!!!」
 再び手を離して首を絞めようとするルナマリアを二人が慌てて宥める。
「ま、まあ待て!!!俺だって、死ぬと分かっていれば許可なんか下ろしているわけないだろう」
 アスランがそう言うと、三人とも意味が分からないといった感じで首を傾げた」
「ど、どういうことだよ、隊長」
 最初にシンが尋ねた。するとアスランが皮肉っぽそうに笑った。
「つまり、彼女の素質はお前より上だってことさ」
「へ・・・・?う、嘘ばっかー・・・・」
 シンが苦笑いを浮かべた。あの彼女がシンよりも強い、というのもことりには想像ができなかった。
けれどアスランが冗談、ましてや嘘をつくような人間とも思えない。アスランは引き締まった表情を
して前を見据えた。
「とにかく・・・・あまり長く持たないことは確かだ・・・・彼女を救うには、一刻も早く港へ・・・」
 港に何があるのかことりには分からなかったが、空気を察してルナマリアも港に行く間ずっと
深刻な表情をしていた。




 声が震えていることが、実際に口から出してみて初めて分かった。きっと怖がっているんだと、
メイリンは思った。それも無理はなかった。前方、フリーダムが睨みを利かせてくる。一歩でも近づけば、
噛み付かれるどころでは済まない一頭の獣のように思えてしまう。あのヤキンの英雄と呼ばれた
エースと戦おうというのだから、普通ならばその威圧感だけで圧倒されてしまうものだ。
「・・・・久しぶりだね、メイリン」
 キラから通信が入る。昔と何ら変わらない声だった。
96第十七話3/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/26(水) 23:32:55 ID:/fuXH+RX
「・・・・お久しぶりです」
 キラとは以前、会ったことがある。それほど深い話をしたわけでもなかったけれど。
「驚いた・・・・まさか君がパイロットになっていたとは」
「・・・・まぁ、成り行きで・・・・・」
 本来メイリンの専属はオペレーターだったけれど、先日のデスティニー襲撃事件の際に
成り行きでレジェンドに乗る羽目になってしまった。以来オペレーター兼非常勤パイロット扱いに
されてしまっていた。
メイリンとしてはあまり本意ではなかったが、どうしてもということなので、渋々承諾することになった。
それに、上手く乗りこなすようになればレジェンドも乗せてもらえるということなので、
その点は結構楽しみだったりした。それからというものここ一週間あまり、食事と睡眠以外は
ほとんど時間MSに乗って動かし方を学んでいた。おかげで難なく動かせる程度には成長した。
 そんな時、今回の事件の話が舞い込んできたのだ。メイリンは日頃の修練の成果を確かめるために
今回の任務に参加を申し出た。
しかし、まさかフリーダムと戦うことになるなんて話は聞いてなかった。アスランの話によると
時間を稼いでくれるだけでいいらしいのだが、正直なところ三分と持つかどうか怪しいところである。
こんなことなら志願しなければ良かったと、今更ながら後悔し始めてきた。だが、戦場に立ったならば
もはや戦わなければ生き残れない。メイリンは意を決して構えた。
「・・・・・何のつもりだい?」
 キラの冷めた声に、怯みそうになるメイリン。しかし、眼は反らさない。
「あ、あなたを・・・・止めてみせます・・・・・」
「・・・・正気かい?死ぬよ?」
 フリーダムがゆらりと不気味に動き始めた。メイリンはフリーダムが動くのよりも速く、ビームライフルを
抜き放ち、容赦なく撃った。直撃した、そう思った一発が難なくかわされてしまい、驚いた。
「そ、そんな!?」
 一瞬、フリーダムの動きが止まったと思ったら、次の瞬間にはビームサーベルを抜き放ち
物凄い速さで接近してくる。メイリンはすかさず二発目、三発目と間断なく撃ち続けた。
しかし、フリーダムにかわされるどころか、持っていたサーベルでビームごと薙ぎ払われてしまう。
 驚いている暇もない。正面。あっという間に眼の前まで来る。やられる、と思った時、咄嗟に
ライフルを捨ててすぐさまレジェンドに装備されているビームシャベリンに持ち替えて構える。
97第十七話4/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/26(水) 23:34:15 ID:/fuXH+RX
「へえ」
 キラが感嘆の声を挙げた。フリーダムはビームサーベルを持った腕を振り上げると、
勢いよく振りかざしてくる。シャベリンで受けとめ、その斬撃を防ぐ。サーベルとシャベリンの間に
激しく火花が飛び散りあう。直撃は免れたものの、フリーダムの重い一撃の勢いに
押し切られそうになる。腕を掲げ、持ち堪える。しかし、その隙を逃さず、フリーダムはすかさず
離れてレジェンドの腹部に蹴りを入れてきた。
「きゃあああ!!!」
 その一撃はもろに入ってしまい、体勢を維持できず海面まで吹き飛ばされ大きな水柱を上げて
潜った。
「ぐ・・・・ま、まだ・・・・」
 メイリンはすぐにランチを前に押し倒して海中から脱出する。しかし、海上には既に
フリーダムがビームライフルを構えて待っていた。メイリンもそれに気づき、急いでその場から
離脱しようとするが、フリーダムの容赦のない攻撃が続いた。逃げることもできず、
メイリンはシールドを構えてその攻撃を防ぐことしかできなかった。アームに、強い負担が圧し
掛かってくる。
 必死だった。力の差は当然あることは分かっていたつもりだった。それでも、力も速さも技術も、
全ての面でキラに圧倒されて手も足も出ない状態だった。それだけじゃない。戦うということが、
これほど怖いものだったなんて、知らなかった。ブリッジから見てるだけでは分からなかった
恐怖が、胸の中に押し寄せてくる。死、という恐怖が、今間近に迫っているのだ。
もう、無我夢中だった。泣き言を言いそうになったが、すぐに我に返ってそれだけは言わなかった。
ふと、姉の姿を思い出したからだ。
「・・・・・あ」
 気がついた時には、二人の機体の動きは止まっていた。フリーダムに、ライフルを付きつけ
られていた。メイリンは息を飲んだ。
「弱いね・・・・・時間稼ぎにもならなかったよ」
 面白くなさそうに、キラが呟いた。
「死にたくなかったら、武装を解除して。できるならば、殺したくはない」
98第十七話5/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/26(水) 23:35:17 ID:/fuXH+RX
 恐らく、武器を捨てなければ本当に撃ってくる。メイリンには分かっていた。
だけど、持っていた槍を手放すことに、戸惑った。
 少しの間、時間を稼げばいい。アスランは、自分を信じてくれたからこそ、この重要な任務を
与えてくれたのだ。現実主義なアスランは、望みがないようなことは決して任せたりは
しないはずだった。自分にもそれだけのことができるはずなのだ。今ここで諦めたら、それは
アスランたちの信頼から背くことになる。
「死にたいの・・・・・本当に撃つよ?」
 キラの冷たい声が耳に響いた。恐らく、武器を捨てればキラだって命までは取ろうとはしないだろう。
だけど、武器を捨ててしまったら、同時に大切な何かも捨ててしまうことになる。それでは、昔と
何ら変わらない。昔とまるで同じだった。
 以前からずっと、姉に対して劣等感を抱いていた。全ての面で、自分は姉に劣っている、
とメイリンは昔から思っていた。ルックスの面でも、人当たりの良さの面でも、そして心の強さの面でも。
そんな姉に憧れていた反面、ずっと姉の姿を追っていた。それは一種の逃げだった。
 昔から、辛いことがあるとすぐに投げ出してしまう節があった。姉に頼って、姉がいてくれれば
何でも助けてくれるだろうと、そんな甘い考えを抱いていた。
 それも、別に悪いことではないのかもしれない。けれど、いつからかそんな自分が嫌になっていた。
自分も、姉のように強くなりたいと願った。そんなある日、MSに乗る機会が突如舞い降りてきた。
そのきっかけは偶然だったけれど、メイリンは躊躇なくMSに乗った。姉と同じ土台に立てば、
何かが変われるかもしれないと、そう思ったから。
「・・・・・・私・・・・・は」
 だから、超えたいのだ。たとえ相手が誰であろうと、あのキラ・ヤマトであろうとも。
昔みたいに、また投げやりにしてしまいたくはなかった。
「・・・・・何?」
「・・・・・私は、ルナマリア・ホークの・・・・・あのお姉ちゃんの妹、メイリン・ホーク・・・・・
私は・・・・あなたなんかに」
 レジェンドの後ろに装備されていたビッドシステム、”ドラグーン”静かに鼓動を打ち始める。
「あなたなんかに、絶対に負けない!!!」
99第十七話6/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/26(水) 23:36:36 ID:/fuXH+RX
 きっ、と鋭い眼をキラに向けた瞬間、ビットが八方に散らばってフリーダムを完全に捉えた。
焦った感じのキラに、メイリンは一斉にに攻撃を開始した。
「いっけぇぇええーーー!!!」
「くっ・・・・・こ、こんなもの!!!」
 キラはすぐさまビットの一つを撃ち落とそうとライフルで狙い撃った。その一撃が、外れた。
外れたというより、かわしたのだ。ビットの一つ一つが、まるで意思を持ったかのようにキラに
襲い掛かっていく。
「なっ・・・・そ、そんなバカな!?」
 ライフルが外れて、明らかに動揺した様子を見せたキラ。フリーダムの動きが、一瞬止まった。
 押し切れる。そう思った瞬間、何かが弾けた。シャベリンを分離させて、両腕にサーベルを構えて
突撃した。
「はぁぁあああ!!!!」
 胸の底から雄叫びを挙げる。もはや何も考えずに、力の限りフリーダムにぶつかっていった。
100 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/26(水) 23:37:48 ID:/fuXH+RX
えっと・・・・・


イメージがよく分かるように俺が絵に描いてみましょうか?w
キャラ違ってほんとスンマセン!!
ホーク家は姉妹揃ってカッコいいなぁ〜・・・・∩(・ω・)∩
101名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/27(木) 00:03:04 ID:41ukzGK+
GJ
メイリンつえーーーーーーーーーーーーーーーー
そして絵の方もお願いします
102名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/27(木) 09:09:37 ID:4NkmL2ei
GJ!
>レイという人はことりも以前会ったことあるような気もしたが、どうしても思い出すことが
できなかった。
えらい最初の方だなw。そういえばこの時どんな場所で交流してたんだ。

うわぁ・・・キラがめっちゃ苦戦してる・・・w。
103名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/27(木) 19:01:39 ID:Zbzt0ACh
GJ( ゚∀゚)ノよぅ
メイリン強ぇ!!
104名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/27(木) 19:09:11 ID:Zbzt0ACh
と思ったけど、キラが手を抜いているようにも見える。その状況だとセイバーをガラクタに
変えたように、四肢をぶった切ることも出来そうだし。
やんない理由って、なんだろ?
105名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/27(木) 19:39:41 ID:KUWKYswa
GJ! メイリンかっこいいwww
106名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/27(木) 20:17:21 ID:JBJH/lWC
蹴りいれた後ビームサーベルで突っ込むより二丁拳銃で動くな!とかやった方が
メイリン相手だと効率がいいと判断したんじゃないの?

ところで実はキラとメイリンが出会った時の話のSSもネットのどこかに存在してたりするんだろうか?
107あの人:2006/04/27(木) 22:59:06 ID:yIM8iRFU
GJです!メイリンが種割れしたw
絵も期待しています。

需要あるか分かりませんが、前スレが落ちたので
仮設の保管庫みたいなものを作ってみました。
ttp://yadoou11.hp.infoseek.co.jp/DCSD/hokan-index.html
108名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/28(金) 01:19:35 ID:yggH9xjm
しかし重力下でファンネ(ryドラグーンは使えんかったはず・・・









ま、どーでもいーか
109名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/29(土) 19:26:00 ID:4MDxoJ+B
面白かったです
110名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/30(日) 00:52:30 ID:dfguiMD8
前スレやっと落ちたみたいだな
111 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/30(日) 18:31:39 ID:u2om1Vtn
ようやく書き終えたので後でうpします・・・

絵?そ、それもいちおう描きましたよ・・・でもなぁーアレは・・・(ノ∀`)色んな意味でスゴイw

>>104
あんま原作を考えない方がいいです
戦いはあんな甘いもんじゃありませんから
何でもかんでもキラ最強にすればいいと思ったら大間違い
もうじきその辺の描写、考察も入れていきますが

>>106
いや・・・・ありませんが
結構設定ごっちゃになってるところがあるんで、意図的に
種の設定は俺のSSの場合だとアスラン脱走の前後辺りにしてます
まぁ、まだハイネが生きていたりアスランがまだザフトに残ってたりとおかしな部分がありますが

あんま気にしないでくださいw

>>107
あー、いつもお疲れ様です
もうお世話になりっぱなしですね

>>108
とりあえず、スパロボではνガンダムはファンネル使えたので、よしw
112名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/30(日) 18:59:16 ID:dMDXN9GX
>>111
キラ最k云々じゃなくて、メイリンが一時的に停止した隙をついて、戦闘不能(四肢ぶった切り
や手足撃ち抜く)にしない理由の方を指していったから、こちらとしては>>106の答えでもいい
わけで。
まぁ考察入るのなら、それはそれで待つけど。
113 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/30(日) 19:55:31 ID:u2om1Vtn
>>112
すいません、誤訳してました
そこのところは、特に深く考えてないで書きましたw
だから特に理由はありません
114第十八話1/9 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/30(日) 20:02:42 ID:u2om1Vtn
 港に着いた時、そこは何の変哲もない場所から一変して、人で溢れ返っていたことに
ことりは驚いた。
「あ、アスラーン、こっちこっちー♪」
 ジープを降りると、まず最初に気づいて迎えに来たのが、派手な服を着たピンク色の女性であった。
シンはその女性を見た瞬間眼を見開いた感じだった。
「えっ!?ラ、ラクス・クライン?ど、どうしてここに・・・・」
 ラクス、という名前はどこかで聞いたことがあった。外国の有名人だったはずだが、ことりも
あまり詳しくは知らない。そのラクスと呼ばれた女性はシンを見るとにんまり笑顔を見せた。
「あ、私はミーア・キャンベル。本日だけみなさまのサポーターとして来ました。ヨロシクねー♪」
「え・・・・だ、だってまんまラクス・クラインじゃn」
「ミ・−・ア!!分かった?」
「は、はぁ・・・・」
 釈然としない感じのシンはアスランの耳元で小さく呟く。
「何で連れてきたんですか・・・・この人」
「いや・・・・別に来なくていいって言ったんだけど、無理やり・・・・」
「なーに言ってるのよアスラン。本当は私が来て嬉しいくせにー♪」
 べたべたと引っ付いてくるミーアをアスランは必死になって剥がそうとする。
「こら、引っ付くな!!暑苦しい!!」
「やーねー、照れなくてもいいのよー♪」
 二人のその熱い光景を眺めていたら、ことりは何か後ろの方から嫌な気配を感じて振り返った。
何故かルナマリアが異様なほど殺気立った感じで二人のことを睨んでいた。さすがのシンも
ルナマリアの異変に気がついておずおずと声をかけた。
「ル、ルナ・・・・どうしたんだ?」
「べーつにー」
 どうでもいいといった感じでそう言ってルナマリアは明後日の方向を向いた。
 シン君の鈍感、ことりは小さく呟いた。

115第十八話2/9 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/30(日) 20:03:56 ID:u2om1Vtn
「そ、それよりミーア、デスティニーのほうは」
「バッチリ、稼働率70%オーバー。普通に動かす程度のことだったら、もう何てことないわよ♪」
 アスランとミーアの会話を聞いていたシンはあんぐりと口を開けて驚いていた。
「デ、デスティニー!?デスティニーがあるのか?でもあれは確か音夢が壊したはずじゃ・・・・」
「正確にはメイリンが、だけどな」
 アスランが訂正するように言った。
 白河家にデスティニーが襲来したあの事件からまだ一週間弱しか経っていなかった。
あの時にデスティニーという巨大人型兵器はもう一つの、レジェンドとかいう機体に見事なまでに
ばらばらにされてしまった。それをこの短期間であれほど精密なものを修復できるものなのだろうか、
と疑問に思うことりだが、軍の技術力にも感心した。
「ああ、あの後回収してから急いで修理に入ったんだ」
「へー・・・・」
「俺が早く乗りたかったからな、修理を急がせていた」
「・・・・・あっそ」
 アスランの本音に呆れ返った風に返事をするシン。しかし、アスランの隣でミーアが暗い
表情を浮かべていた。
「けど、さっきも言ったように稼働率がまだ7割しか出ないのよ・・・・・」
「そんだけ出れば充分さ。急いでメイリンを助けに行かないと」
 メイリン、という言葉に、ルナマリアが僅かに肩を揺らした。やはり、妹のことが心配なのだろうか。
けれど、そんな時にミーアは更なる追い討ちをかけるような発言をする。
「あ・・・・その、実はロールアウトできるまで、最低後20分はかかるのよ・・・・・それまで
動かすのはムリ」
「なっ!?20分だと、そんなに待ってられるか!!もう5分とメイリンはもたないぞ!!」
「そ、そんなこと私に言われてもー・・・・これでも頑張ってるのよー」
 ミーアのその報告にはさすがのアスランも顰め面を見せた。
「何とかならないのか・・・・?」
「そう言われてもー・・・・」
116第十八話3/9 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/30(日) 20:04:57 ID:u2om1Vtn
 三人並んで唸って悩んでしまっていた。そんな時、ことりの横から颯爽と駆け出していく影があった。
 ルナマリア、その場にいた全員置いて一人タンカーの方へと向かった。みんなが何事かと
首を傾げた。
「ルナ・・・・?」
「動かないんじゃもうポンコツと変わらないじゃない。私は先に行くわよ、私の”ジャスティス”でね♪」
 ジャスティス、という言葉を聞いてアスランは思い出したかのようにはっと顔を上げた。
「そ、そうか、ジャスティスがあったか・・・・・お、おいルナマリア、俺と代われ!!」
「イ・ヤ・よ」
「・・・・は?」
 そのジャスティスという兵器の操縦席前まで行くと、ルナマリアは怒ったようにアスランたちの
方へ振り向いた。
「私らの了承もなしに勝手にデスティニーを奪って私物化して、今度はせっかく頂いたジャスティスまで
私から奪う気、隊長さん?」
「え、い、いやぁーそれは・・・・・そ、それに、元々ジャスティスは俺のだったし・・・」
 しどろもどろに棒読みになるアスラン。それに付き合いきれないといった感じでルナマリアは
大きく溜め息をついた。
「フリーダム一体ぐらい、私一人で充分。隊長はどうぞミーアさんとイチャイチャしながら
そのポンコツが動けるようになるのを待っていらしてくださいー」
「えっ!?ちょ、ちょっと待て、お前何か勘違いしてるぞ!!」
「お許しが出たみたいですから二人でイチャイチャして待ってましょ、アスラン♪」
「こら、引っ付くな!!そんなことばかりするから俺が誤解されるんだろうが!!」
「・・・・ねえシン君、アスランさんっていつもあんな感じなの?」
「ん?ああ、まぁあんな感じ」
「ふーん・・・・」
 どこか冷めた感じでアスランを見守ることり。少なくとも、初めてアスランに会った時に感じた
紳士的な印象はもはやことりにはなかった。
117第十八話4/9 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/30(日) 20:06:03 ID:u2om1Vtn
「・・・・ぐぐぐ!!あー、もうやってらんないわ!!!」
 怒りが最高潮まで達したのか、怒鳴り散らしながら操縦席の中に入ってしまうルナマリア。
「ま、待て!!」
「潰されたくなかったらどきなさい!!」
 無理やり起き上がろうとするので、巻き込まれないように逃げ惑うスタッフで辺りは混乱する。
ルナマリアも八つ当たりするかのようにずけずけと無遠慮にジャスティスを動かしていき
デスティニーの前で止まった。
「あ・・・・」
「この斬艦刀、借りていくわよ。どうせこんな動かないポンコツには必要ないものでしょ」
 そう言ってデスティニーの横に装備されてあった巨大な大剣を持ち上げる。
「お、おい!!せ、戦争はヒーローごっこじゃないんだぞぉ!!」
「アスラン・・・・今アンタがその台詞を言ってもギャグにしか聞こえないぞ」
 シンが笑いを堪えながら小さくつっこみを入れた。ことりから見ても、アスランはすっかり
ギャクキャラと化していた。
 そうこうしているうちにジャスティスは発進準備が整い、バーニアを全開にする。辺りには
うるさいと思えるほど激しい駆動音が鳴り響く。
「ルナマリア・ホーク、ジャスティス行くわよ!!」
 周りの迷惑なんて考えずに思いっきり飛び去っていくものだから、風圧が物凄く圧し掛かってくる。
シンはさりげなくことりを庇った形で前にいた。ジャスティスはあっという間に島の端の方まで
行って見えなくなると、辺りには再び静けさが戻ってきた。ことりを含めた四人が呆然と見ていた。
「・・・・なあことり」
 シンが眉を潜めて尋ねてきた。
「なんでルナはあんなに怒ってたんだ?」
「・・・・・シン君のバカ」
 もはや呆れ果ててしまうことり。
「・・・・ま、全く!!戦いを舐めてるんじゃないのか、アイツは!?」
 アスランが隣で不満げにぶつくさ呟いていた。しかしことりとしてはちょっと心配になる。
「けど・・・・・大丈夫なんですか?ルナマリアさん一人で」
「そ、そうだよ隊長。相手はフリーダムだぞ。いくらジャスティスといったって・・・・」
118第十八話5/9 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/30(日) 20:07:28 ID:u2om1Vtn
 シンもそんな危惧を抱くが、それを聞いたアスランはまたいつもの平然とした顔に戻っていた。
「まぁ・・・・アイツなら別にその心配はないが・・・・・負けはしないだろうな。勝てもしないだろうけど」
 アスランは何かを悟りきった感じで冷静に答えた。シンは何のことだか分からないといった
感じで再び首を傾げている。
こんな争いが、いつまで続くんだろうか。そう思いながら、ことりは島の端の方、ジャスティスが
飛び去っていった先の方を静かに見つめていた。




 メイリンは、よく動いた。先ほどまでとはまるで別人のように、速い。そして、ただ素早いだけではない。
驚くべきは、機体の運動と連携させてドラグーンシステムを実に巧みに動かしていた。
まるで、一つ一つのビットが意思を持っているかの如く、無秩序に襲い掛かってくるのだ。
 本来ドラグーンは限られた人間、空間認識能力という特殊な技術を持った人間でなければ
動かすことができないものだった。近年になりシステムの改良化が進められて若干の
普遍性を得ることには成功したが、それでも熟練した乗り手でなければ使いこなすのは
難しいとされている。何せ機体の操縦とビットの制御の両方を同時にこなさなければならない。
 実に複雑なシステムのはずで、ましてほぼパイロットとして素人のはずであるメイリンが
扱いこなせる代物ではない。
 それを、メイリンは動かしている。機体の操縦技術はともかくとしても、ビットの方はほぼ完璧に
制御しきれているのだ。本来ならば有り得ないことだが、現実に扱いこなしている。
 もはや一種の才能としか言いようがなかった。育てば、怖いぐらい強くなる。ならば、まだ
半人前であるうちに叩き潰しておく必要がある。将来敵に回られても、厄介でしかない。
 初音島の遥か上空を、高速で駆けていた。ビットが二つ。フリーダムの背後にぴったりと
付いてくる。引き離そうと全速力を出していたが、一向に離れない。キラは舌打ちをして振り返った。
 ビームライフルで狙いを定めて撃つ。一発目が、かわされた。なぜか、軌道が読みきれず、
先ほどから何度もかわされているせいでビットの数が一向に減らない。やはり、意思を
持っているようにしか思えなかった。あまりのしつこさに、苛立ちが募ってくる。
119第十八話6/9 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/30(日) 20:09:00 ID:u2om1Vtn
 面倒くさくなり、ビームサーベルを抜いた。左右から、同時に二つのビットが襲い掛かってくる。
撃ってくる。それをキラはいとも簡単にかわすと、間合いに入ってきたビットを一瞬で二つ同時に
切り払い落とした。捕まえようとしても、まるで雲のようにするりとすり抜けてしまう。
メイリンは、そんな感じにやりづらい敵であった。キラがそう思っていた時、ふと気がついた。
 レジェンドの姿が消えた。レーダーを見ても、見当たらない。逃げた、とは思わなかった。
恐らくどこかに潜んでいるはずだ。どこだ。辺りを見回した。あんな素人相手に、まるで
こっちが追い詰められているみたいだ、とキラは思った。
 その時、突然レーダーに反応があった。上空。キラは無意識的に頭上に向かってライフルを
撃った。その過敏なまでの反応の良さが、仇となった。
「なっ!?」
 絶句した。レーダーに反応を示したのは、レジェンドではなくビットだった。そのビットは
今の攻撃で撃ち落したものの、その間に一瞬の隙を生じてしまった。同時に、もう一つの影が
レーダーに映る。背後。雲の中から、突如レジェンドが姿を現した。両腕には、ビームサーベルを
構えている。一瞬、レジェンドの眼が光った気がした。
「てやぁぁあああ!!!!」
「ぐっ!!」
 メイリンが叫ぶ。一太刀目は、何とかかわすことができた。だが、もう一太刀。確実にフリーダムの
操縦席を狙ってきた一撃。ぎりぎりのところでビームサーベルで受け止めた。気づくのが
あと一歩遅れていたら、操縦席ごと貫かれて死んでいた。更にレジェンドの鋭い斬撃が続く。
サーベルで切り払い、後退しながらライフルを当てていく。何発かはレジェンドに命中するが、
しかし致命傷にはならなかった。
「う・・・・で、でも・・・・まだ!!」
 ライフルを当てては後退をしていく。こんな攻防を、もう何度も繰り返していた。それでも、
依然メイリンの勢いは衰えず、突撃をしてくる。恐れを知らない敵ほど、怖いものはない。
何が、彼女をそこまで駆り立てているのか、キラには分からなかった。
120第十八話7/9 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/30(日) 20:10:17 ID:u2om1Vtn
 勿論未だフリーダムは傷一つ負っておらず、対するレジェンドは微量ながらもダメージを
少しずつ蓄積してきて、今ではだいぶぼろぼろの状態になってきている。それでも、その
勢いは決して侮ることはできない。現に、さきほどの攻撃は危うかった。このままでは
ラチがあかないと思う反面、時間をかければ相手は自滅するとキラは読んでいた。
ペース配分を考えないこの攻撃なら時期に潰れると思っているのだが、一向に潰れる気配はない。
 これ以上は、時間をかけて入られない。もうじき向こうの援軍が来る。もしかしたらあの男、
シン・アスカが駆けつけてくるかもしれない。そうなるとかなり危ない事態になる。やはり、
短期決戦しかなかった。
「・・・・・はぁ・・・・・はぁ」
 メイリンはサーベルを構えたまま、だいぶ息を切らしていた。キラが睨んだ通り、やはりメイリンは
限界が近かった。先ほどは突然ドラグーンを使い始めてきたので、一時的に心を乱したが、
もうそれもなかった。技術ではどうしても補えない、今までの戦いの経験の差が明らかに
出てきているのだ。少しぶつければ、一気に瓦解する。
「遊びは、終わりだよ・・・・・」
 キラは静かに呟いた。風に乗った感じで動く。一瞬で、レジェンドの傍まで近付いた。
「えっ!?」
 メイリンが構えようとする。遅い。ビームサーベルでぶつかっていった。レジェンドは双刀を前面に
出して何とかふせぐものの、素早い動きから発生する凄まじい衝撃に、一撃で怯んだ。
フリーダムは反転してすぐさま二撃目をぶつける。もはやよける回避する余力も残っていない。
三撃目で、防御が解けた。一気に突撃をする。レジェンドはぎりぎりのところで斬撃をかわすものの、
手酷いダメージを負った。
「きゃああ!!!」
 メイリンの悲痛な叫びが響く。レジェンドのバーニアが停止して、海面まで落ちていく。
しかし、海の中にまで落ちることはなく、海面の上で再びバーニアを動かして止まった。
だが、もう戦う力は残っていないはず。フルバースト一撃でかわす暇も与えずに沈むだろう。
全砲門をレジェンドに向けた。
 それでも、メイリンは怯むことなく、キラのことをじっと睨んでいた。
 なぜ、そこまで敵意を持った眼で見てくるのか、キラは不思議に思った。
121第十八話8/9 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/30(日) 20:11:31 ID:u2om1Vtn
「・・・・何故だ?」
「え?」
 構えたまま、キラは尋ねた。殺す前に、尋ねておきたかった。
「何故君は、僕にそんなに敵意を向けるんだ・・・・アスランだってそうだ。君は、以前は僕たちの
仲間だったじゃないか。志に賛同してくれて、一緒に戦ってきたじゃないか。何故なんだ?」
 志、という言葉を言ってから、キラは自分に対して失笑した。そんなご大層なものは、持っている
つもりはなかった。ラクスの志も、それが自分の想いとは、キラは思っていなかった。
理由なんて、どうだっていい。たとえラクスが間違っていたとしても、構わなかった。
大切な人たちのために、愛している人のために剣を振るえれば、それでいいと思っていた。
 だから、理由なんて必要なかった。もし、シンやプラントのあの男がラクスの障害となり、
そして自分を殺そうとする怖い存在になるのならば、この力で薙ぎ払うだけだった。
 メイリンは、以前ラクスの想いに賛同する意思を見せていた。実際にラクスとも仲が良かった。
だから、何故アスランとともに自分たちから離れて、こうして敵意を見せて現れたのが
不思議に思えた。メイリンは肩の力を外すと、眼を閉じて静かに語りだした。
「・・・・た、確かに・・・・あなたたちの言葉は響きが良く聞こえる・・・・実際にあなたたちの主張は
正しいのかもしれない。私も、本当は何が正しいのかも分からず、ただアスランさんに付いていって
しまっただけだったけれど・・・・」
 するとメイリンは再び鋭い眼つきでキラのことを睨んだ。
「け、けど、あなたたちはいつも理想論しか言わない!!現実を見ないで夢見たいことばかり
言ってるの・・・・そ、そんなの、絶対におかしいです!!」
「より良い理想を持っていなければ、いい世界なんて創れるはずがない」
 目標があるからこそ、頑張っていけるのではないか。誰も争わずに済む世界を願うことこそが、
力に成り得るのだ。
「だ、だから!!そんな風に高尚な理論ばっかり振りかざしてるだけで、行動で示そうとしない!!
従わない人はただ武力で押さえつけ押さえつけるなんて、そんなの間違っている!!」
「もういい」
 理想論ばかりなのか、考えようとしたがやめた。どちらにしろ、シンやギルバードさえ消えれば、
全てがいい方向に変わる。全ては、ラクスのためだった。
122第十八話9/9 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/30(日) 20:12:37 ID:u2om1Vtn
「お別れだ、メイリン」
 砲門から光が漏れてくる。メイリンは眼を瞑んだ。
「さようなら」
 その言葉と同時に、引き金を引いた。虹色の綺麗な光が辺りに輝き、一斉にレジェンドに
向かっていく。ぶつかった。虹は海面にもぶつかり、大きな水しぶきを作る。
 しかし、ぶつかったと思った光弾が、直前のところで全てレジェンドの後ろへと吹き飛ばされていった。
キラは愕然とした。何かが、妨げになったのだ。
「ふぅー、間一髪ってところね♪」
 メイリンではない、別の声が回線に響いてきた。水しぶきが晴れてくる。そこには、真紅の機体が
シールドを構えてレジェンドを守っていた。
 ジャスティス。しかし、アスランではない。
「え・・・・あー!!お、お姉ちゃん!?」
 メイリンが驚いたように叫んだ。ルナマリア・ホークがにやりと笑った。
123 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/30(日) 20:14:15 ID:u2om1Vtn
何だか物凄い展開になってきたなぁ・・・・
カッコよく現れたルナマリアだけど、これでメイリンより弱かったらお話にならないですよね
キラきゅん補正の原作だったらありえそうだけど




んなことあるわけないじゃんw
メイリンも凄いように描写されてるけど。まだ続き書いてませんが活躍させる予定です

絵の方は今ちょっとスキャナが使えないからまた後で・・・・
124名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/30(日) 21:08:50 ID:hWhtWy/p
GJ!特に>>121最高wwww。よくぞ言ってくれたメイリン!!!
えーと、アスラン達一度ラクス側に回ろうとしたけどロゴスほったらかして
デスティニープランを叩き潰すぜとか言い出した辺りでやっぱ変だと気付いて
ジャスティス貰ってからまたザフトに戻ってきた…?ま、いっか。
125あの人:2006/04/30(日) 21:44:25 ID:Mv2Z1OKs
GJです!
  接近戦の方が得意なルナマリア
+ 接近戦型MSジャスティス
+ 一刀両断アロンダイト
= ルナマリア大活躍の予感wwww
126名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/30(日) 23:02:59 ID:IizdG5n4
なにこの板違いスレ
127 ◆hA/Opjl6aY :2006/04/30(日) 23:12:43 ID:u2om1Vtn
絵の方スキャンしたからうp  ノキラとメーリンのイメージ
ttp://vista.x0.to/img/vi4640606251.jpg
なんか・・・もうキャラが全然違うw(´・ω・`)
色を塗れないのがとても悔しく思えてきますね



ちなみに、俺の脳内ではメイリン=髪解いた方と認識されてますんでw


>>124
そんな感じですかね
そうすれば結構辻褄が合ってくるかもw
128名無しさん@お腹いっぱい。:2006/04/30(日) 23:24:49 ID:oTa7EFhA
 超 展 開 !
まぁメイリンが強い時点でギャグなんだから、ツッコミどころは気にしちゃダメなんだろうな。
なんで、色々割り切ったよ、もぅ。

GJです( ゚∀゚)ノよぅ!
笑った笑った。
129名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/01(月) 00:30:03 ID:LlUEgjGH
>>127
メイリン格好いいー。一瞬ステラみたいに肩の露出した制服着てる様に見えた。
130名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/01(月) 17:19:20 ID:NaCJACaC
>>127
キラのフリーダムは和田じゃなくて普通の自由?
131名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/01(月) 23:30:15 ID:SfRWpECT
アスランめちゃくちゃだな。種から数えて
ザフトに所属→ラクス達の意思に賛同してオーブに参加
→成り行きでザフトへ→オーブへひょいひょい戻ってくる
→そこで戦うでもなくジャスティスとメイリンだけ持ってザフトへ戻る
何コイツ
132名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/02(火) 00:37:33 ID:f/Er3Mkm
案外、笑う所なのかもよ?
もうね。初代さんの話のツッコミ所は、全部ギャグって認識でいいよ。
今のところ一番笑ったのは…

状況的に追い込まれて余計なことをしている暇が無い上、それまでシンを殺さなきゃって
散々言ってきたにも拘らず、シンが気絶しかかり、さして障害もないという『シンを殺せる最
大の機会』を、ふいにして、ことりをサラったキラ。

オレの笑いのツボを大ヒットしてる。
シンを虐めるのが目的だと、それ以前の内容(さっさとシンを殺さないと自分が危ないという認
識)に不具合がでるし…。ことりを見て目的を忘れたとしか思えないwwwww
133名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/02(火) 15:45:22 ID:+8Pbb1TP
初代氏まとめページのbackをnextに変更。
クリックで次の話へ進める仕様にしてみました。
134名無しさん@お腹いっぱい:2006/05/02(火) 22:59:02 ID:1uRYdt5Q
なんつーか、井上御大といい勝負してますね。











割と好意的な意味で
135名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/03(水) 11:52:20 ID:nvX5s7Gd
形だけの赤服のルナマリアがジャスティス乗って出てきた所で大して変わらないと思う(?)
136名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/03(水) 12:29:03 ID:ztKh3/C4
搭乗する機体を間違えてただけで本当は強かった可能性も・・・。
137名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/03(水) 16:44:17 ID:Qtyn0TCn
アスランの すごい コウモリっぷり
138 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/03(水) 22:08:49 ID:JJi2gXb9
なんだか全然創作意欲が湧かない・・・・まだ書いてないです、すいません・・・・
おわびといっては何ですが4コマ描いたので本スレのほうにうpしときます
最近絵描くほうが楽しくなってきたなあ。でもちゃんとSSの方も書かないとダメですよね・・・・はい


>>129
あれ、服の部分のつもりなんですよねー
まだまだ画力の足りなさが・・・・(ノД`)

>>130
キラの乗ってるのはストフリです
呼ぶのが面倒くさいからフリーダムで統一しちゃってますが

>>133
毎度お疲れ様です
139名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/04(木) 11:41:58 ID:KM2XrjaJ
問題ない。待つのは慣れてる。
140 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/04(木) 21:57:29 ID:vNIYBKSZ
書き上げたのですが、一点報告
前のSSチラチラ見てたら何故か抜けてる文章一点発見・・・・
今更どうでもいいと思いますが訂正

>>94
>「人手不足・・・・・?レイは?」
>「もう何週間も連絡が途絶えたまま。未だ行方不明中だ」

という文章が入るはずだったんですよね
レイ・・・・(ノ∀`)

ではうp・・・・
141第十九話1/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/04(木) 21:58:30 ID:vNIYBKSZ
 光が見えた。見えた時には既に、無意識的にシールドを構えて突っ込んでいた。
無数の光弾が一斉にルナマリアの方へと襲い掛かってきた。防ぎきれるかと思ったが、
重い衝撃だけで光弾は当たることなく全て後方に弾き飛ばされた。ジャスティスの硬さは
ルナマリアの想像以上のものであった。
 インフィニットジャスティス。最新鋭機だけあって、その機動力はザクウォーリアはまだしも、
あのインパルスであっても桁違いの運動性能を見せていた。まだ少し飛ばしただけだったが、
機体が予想以上に思い通りに動くので、ルナマリアもつい胸が弾んだ。
「お、お姉ちゃん・・・・」
 メイリンの声が聞こえてきた。だいぶ疲れきっているのが分かる。レジェンドを見ると、
大破とまではいかないものの、装甲等がかなり手酷くやられていた。
「・・・・メイ」
「あ、は、はい?」
「このバカ!!!」
「はう!?」
 再会早々、早速罵声をメイリンに浴びせた。ルナマリアは甲高い声高を落とさずに怒鳴った。
「こんな危ないことしちゃダメでしょ!!!何考えてるのアンタは!?」
「うぅ・・・・・だ、だってぇー」
「だって、じゃない!!」
「・・・お、お姉ちゃんだってMS乗ってるじゃないー」
「私はいいの、アンタはダメ!!!」
「はぅ・・・・酷い・・・・ひいきだぁー」
 半べそをかいているが、何だかんだで無事そうなメイリン。無事であったからこそ、ルナマリアも
こんな軽口が言えるのだ。
「メイ」
「ぐすん・・・・な、なーに?」
「・・・・・無事で、本当に良かったわよ・・・・全く」
 ルナマリアはいつもは見せそうもない優しげな顔をして、心の底から安心した。
大切な、大好きなたった一人の妹なのだから、心配するのは当然だった。
142第十九話2/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/04(木) 21:59:31 ID:vNIYBKSZ
「・・・・お、お姉ちゃん・・・・・」
 メイリンも何だか涙ぐんでいた。本当はここで感動の抱擁シーンでもやりたいところであったが、
生憎眼の前でまだキラが睨んでいるので、そこまで隙を見せられなかった。少し潤んでしまった
自分の瞳を指でそっと拭いて、ルナマリアは笑った。
「ほら、ここはもうお姉ちゃんに任せて、危ないから早く隊長たちのところに戻ってなさい」
「あ、お、お姉ちゃん」
 メイリンが慌てた感じで呼びかけてくると、予想外のことを口走った。
「わ、私も一緒に戦うよ!!」
 何を言うのかと思ったら、メイリンのその言葉を聞いて呆れてしまった。
「メイリン」
「は、はい♪」
「この大バカ!!!」
「はう!?」
 本日二回目のバカという怒鳴り声に怯みあがってしまうメイリン。
「そんな怖い目にあっておいて、まだ戦うって言うの!?ここはお姉ちゃんだけでいいから、
アンタは」
「だ、だって・・・・・」
 そこでてっきりメイリンはまたいつものように落ち込むものかと思っていたが、急に
普段は見せないようなきりっとした真剣な目つきを向けてきたので、意外な反応に
ルナマリアも驚いてしまった。
「わ、私だって、戦える・・・・もう陰で怯えているだけの私じゃないもん!!!」
「・・・・・・」
「さ、さっきまで、あのキラさんのスピードにだってやりあっていたんだし。せ、せめて
お姉ちゃんの援護ぐらいはできると思うから・・・・・だから」
 何があったんだろうと、ルナマリアは思った。昔から反発的な妹ではあったが、
少なくともこんな風な争いごとは嫌いだったはず。正確には、嫌いなのではなく苦手なのだが。
メイリンが怖がりだということは、ルナマリアも当然知っていた。だからメイリンはパイロットではなく
幾分か安全なオペレーターへと志願したというのに。ルナマリアもオペレーターならば、
ということでメイリンの軍属することを認めたようなものだった。でなければ、妹を危険な目に
あわすことなんか断固として反対していた。
143第十九話3/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/04(木) 22:00:44 ID:vNIYBKSZ
 メイリンの異変が特に顕著となったのはつい最近、一週間前。あのレジェンドに乗ったあたり
ぐらいから、まるで別人のようになった。いつもは何も変わらない、少し引っ込みがちな
性格なのだが。どこか芯が強くなった、そんな気がしてならない。MSは人を狂わせるもの
なのかとも思ったが、メイリンの感じは決して悪い感じではなかった。
 モニターからじっとルナマリアを見つめてくるメイリン。メイリンが頑固なことも、知っていた。
こうなっては、てこでも動かない。諦めた感じでルナマリアは溜め息をついた。
「いいよ、ここにいても」
 そう言うと、メイリンが顔を明るくさせた。ルナマリアは付け加えるように更に注意をする。
「ただし!!私から離れちゃダメよ。お姉ちゃんが守ってあげるから」
「う、うん。ありがとーお姉ちゃん♪」
 素直に礼を言ってくるメイリン。それは何だか照れ臭くなってルナマリアはそっぽを向いた。
「・・・・さて、と」
 フリーダムの方に顔を向けた時には、それまで暖かみのあった雰囲気から一変させて、
凍て付くような眼つきで睨んだ。今にも、怒りが爆発しそうな感じだった。
「・・・・・よくもまぁ、私の可愛い妹を怖い目に合わせてくれたわね・・・・・キラ・ヤマト」
 フリーダムは海面の上を静かに浮いていた。まるでルナマリアのことを嘲笑うかのように、
そこにいた。
 キラ・ヤマトの凄まじいまでの強さは、今まで何度も目の当たりにしてきた。とても強くて、
そして速い。当時はこんな敵に勝てるのだろうかと思っていた。けれど、今は何故かそれほど
恐ろしくは感じない。このジャスティスならばやれる、そんな気がした。
「・・・・・だったら、どうするの?」
 キラがルナマリアに向かって冷笑した。人を小馬鹿にしたその余裕の態度が、気に入らなかった。
その瞬間、何かが吹っ切れた。
「・・・・・ぶっ潰すわ!!!」
 デスティニーからかっぱらって来た対艦刀、アロンダイトを大きく振り回した。
144第十九話4/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/04(木) 22:01:45 ID:vNIYBKSZ
「・・・・君は、メイリンの姉の・・・・・名前は確か」
「ルナマリア・ホーク、二度と忘れられない名前にしてあげるわよ」
 それも、ここから無事に逃げ延びられたらの話であったが。キラを生きて帰すつもりはなかった。
「その強気な自信、命取りになるよ?」
「その言葉そっくり返すわ、最強さん。ほら、かかってらっしゃい」
 フリーダムに向かい合うように浮いていた。剣は構えず、だらんと下に崩したままだった。
構える必要なんかなかった。ただ、全神経を剣の持っている方の手に集中させて、いつでも
振るえるようにできればいい。
 キラはルナマリアのその余裕な態度が勘に触れたのか、顔を歪めた。
「・・・・後悔させてあげるよ・・・・一瞬で、終わらせるよ・・・・」
 ビームサーベルを片手に持ち身構えるフリーダム。ルナマリアの予想通り、乗ってきた。
恐らくキラは、真正面から斬り込んで来る。今までの戦いを見てきたら、その超高速による
斬り込み方法をキラは最も得意としてきた。狙ってくる場所はど真ん中、操縦席一つ。
どこを狙ってくるのかが分かっていれば、後はかわせばいいだけだった。
 キラがゆらりと不気味に動く。かと思えば、急に物凄いスピードで接近をしてきた。
さすがに、速い。けれど、見えなくはない。自分でまだ落ち着いているとルナマリアは思った。
ジャスティスの後ろに付いている大型飛行ユニット、ファトゥムを前面に射出した。
フリーダムはファトゥムの下を潜り、いとも簡単に抜かれてしまう。ジャスティスの、眼の前まで
迫ってきた。
「お姉ちゃん!!!」
 悲鳴にも似た、メイリンの叫び声が聞こえる。フリーダムが腕を後ろに引いて、突きの構えを
見せる。それでも後ろに引かずに、ルナマリアはふとにやりと笑った。
「終わりだ」
 キラの暗い声とともに、ビームサーベルを突き出してくる。その瞬間にルナマリアはバーニアを
全開まで開いき、ジャスティスは一気に後ろへと傾いた。バーニアが海面にぶつかり、
大きく水しぶきが飛び散った。
「何!?」
 操縦席に当たるか当たらないか、そんなぎりぎりのラインでビームサーベルをかわして
ジャスティスはフリーダムの下を掻い潜った。
145第十九話5/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/04(木) 22:02:50 ID:vNIYBKSZ
 予想外の回避にキラは驚いていた。しかし、急には止まれずフリーダムはそのまま
ジャスティスを通り越してしまった。フリーダムが、背を見せる。すかさずジャスティスは
ビームブーメランを取り出して、その背中に向けて投げつけた。すぐそれに気がついた
フリーダムはあっさりと薙ぎ払われてしまう。だが、それで良かった。その囮に構っている
間に、ジャスティスは急ぎフリーダムより更に上空へと昇った。間合いに、捉えた。
「捕まえた!!!」
 両手にアロンダイトを持ち構える。大剣では素早く振り回すことはできない、とフリーダムは
鷹をくくっているはずだが、その甘さが命取りになる。遠心力に任せて、ただ勢いに乗せて
振りかざせば、素早く重い一撃を産み出せる。縦に大きく振る。一撃目はかわされたが、
すかさず二撃目が入る。
「ぐっ!!!」
 よけきれない、そう判断したのかフリーダムは持っていたサーベルで防御の姿勢に入った。
完璧に接近戦へと引きずり込んだ。そう思ったルナマリアは我を忘れて思いっきりぶつかっていった。
激しい打ち合いになる。キラから、余裕の表情が消え失せた。さすがに、フリーダムよりもさらに
速いスピードはこれ以上出せなかったが、ほぼ互角に渡り合っている。ジャスティスの剣の
威力が強い分、徐々にフリーダムが圧されてき始めた。キラは接近戦は不利と見なしたのか、
後退を始めた。逃がすつもりはなかった。追撃を始める。
 しつこく付いてくるルナマリアにフリーダムは駆けながら振り返り、ビームライフルを撃ってくる。
かわすまでもなかった。飛んでくるビームをアロンダイトで薙ぎ払う。ライフルがまるで効果がない
ことを悟ると、危機感を感じてか更にスピードを上げ必死に引き離そうとするフリーダム。
 ジャスティスのスピードは
フリーダムよりも若干遅くて、段々と引き離されていく。
ルナマリアは舌打ちをして、已む無くライフルを取り出して乱射をする。当てるつもりはなかった。
ただ威嚇のつもりで撃ち、相手を撹乱させジャスティス間合いへと誘導させることができれば
良かった。ルナマリア
の期待通り、フリーダムはライフルを回避するために横にそれた。
ジャスティスは上を取り先回りをする。
「こっちよ!!!」
「なっ!?ぐっ、ぁぁあああ!!!」
146第十九話6/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/04(木) 22:03:55 ID:vNIYBKSZ
 ジャスティスの蹴りがもろに入り、フリーダムは海の中まで吹っ飛ばされていった。
すかさず更にもう一つビームブーメランを取り出してフリーダムの落ちていった海面へと
投げつけた。フリーダムが浮かび上がってくる。ブーメランがすぐ眼の前まで迫っていて、
キラは焦った感じで何とか切り払う。
「・・・・す、凄い・・・・・」
 フリーダムと互角に渡り合っているルナマリアを見て、メイリンが感嘆の声を挙げた。
「ちぇー・・・・外れたわ」
 なかなかしぶとくて、ルナマリアも面白くなさそうに苦い顔を浮かべた。しかし、接近戦に入れば
確実に押し切れる、そう確信できた。ジャスティスならば、フリーダムには負けないと思った。
 しかし、ここまで翻弄を許してしまったことがプライドに傷ついたのか、キラは怒りを
露にしていた。
「・・・・・あ、あまり、調子に乗らないでよね!!」
 そう言い放つと、フリーダムが全砲門をジャスティスに向けてきた。既に、ロックオンされている。
「お姉ちゃん、危ない!!」
「くらえ!!」
 二人の声と同時に虹色に輝く光弾が一斉に襲い掛かってきた。よける暇もない。
ルナマリアはシールドを構えて防御に集中させた。一気にぶつかってくる。重い一撃が、続く。
それでも、耐え切れると信じた。
「はぁぁああ!!!」
 知らずうちに叫んでいた。爆発すると、同時に更に重い衝撃が圧し掛かってきた。
「・・・・はぁ・・・はぁ・・・・ふふ、あ、甘く見すぎだったよ・・・・君は」
「お姉ちゃん、返事をして!!お姉ちゃん!!!」
 勝ち誇ったようなキラの声と、メイリンの悲愴な声が響いた。声が聞こえる、ということはまだ
生きているのだ。ならば、まだ戦える。フリーダム一体、恐るるに足りないと思った。
 アロンダイトで、煙ごと空を断ち切った。
「な・・・・そ、そんな!?」
 煙の中から現れたジャスティスに、キラはルナマリアの前で初めて慌てた表情を見せた。
それが何だかいやに滑稽に見えた。
「・・・・・”最強”・・・・・ねぇー♪」
 その言葉を嘲笑うかのように、ルナマリアは笑った。
147 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/04(木) 22:05:00 ID:vNIYBKSZ
キラ最強伝説敗れたりw
というか、別にルナマリアが強いわけじゃないんですよね。ただキラの補正を取っ払っただけですから
本来MSの戦いなんてコックピット潰されたら一発で死ぬのは誰だって同じなんですから、
種原作のようなあんな風な特別扱いをしてしまったら強さのバランスがおかしくなるのは当然ですね


俺のSSでは色んな人物の視点から書いてます
とりあえず、不平等なくみな同じ様に書いてきたつもりです
つまり俺のSSでは主人公は一人じゃないということです
今まで視点になった人(シンとことりは別格としても)キラ、アスラン、ルナマリア、メイリン、音夢
ほとんど主役のつもりで書いてきましたね。だから正義とか悪とかそういうものはいません
原作みたいに完璧に勧善懲悪を定めてしまうことはどうか、と俺はどうしても思ってしまいます
かと言って勧善懲悪を否定するつもりはありませんが

ラスト2、3話です・・・・後少しですが、↑のようなそれぞれの主役を意識して読むと面白いかもしれませんね
以上、考察スマソ
148名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/05(金) 01:01:29 ID:8cwfUFrg
キラだけじゃなくて、ルナたんにも補正あった気がするし・・・・弱くなるねww
ともかく、ルナたんカコイイ!GJ!
149名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/05(金) 12:00:47 ID:qpaTRi0O
なんかシンと戦う前にルナマリアがすべての決着をつけちゃいそうな雰囲気に
なってきたな…。必殺技のフルバーストも防がれたキラに勝機はあるのか!?
150名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/05(金) 13:28:42 ID:x/XDjT9P
ルナ格好いい! GJ……と言いたい所だけど。

補正がどうのより、シンが活躍するかどうかが気になる。これって
ルナに出番奪われたもドーゼンなんだけど。ホントウに大丈夫か、シン。

もうひとつ気になることが。キャラ補正除いたってことは、純粋に機体
性能で、やりあったってこと? これだと逆に∞ジャスティスに勝ち目
無いような……
151名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/05(金) 14:21:12 ID:ylDqCuUQ
言っちゃ悪いが本来は正直∞正義の方が強いかもしんないw
フルバーストって見栄えの意味でハッタリはあるけど特に単機相手の効率はどうなんだか
即撃墜の筈が粘られると予想外に苦戦するというのは本編でもあったパターン
152名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/05(金) 20:14:57 ID:qpaTRi0O
・全身ビーム刃の塊の接近戦特化型
・二重シールドで遠距離攻撃を完全シャットアウト
・戦艦を一撃でぶち抜くリフター(自動操縦)
まあ実は∞正義て後半の5機のガンダムで一番強いんだけどね・・・。
さっき補正無しのキラがここから逆転する方法を思いついたけど残り二、三話か・・・。
153名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/06(土) 00:25:26 ID:Af5BQFzY
ビームシールドの登場で、近接重視んが有利状態。クロスボーンガンダム方式か!
154名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/07(日) 10:13:41 ID:TAFpwRz4
まー…GJかな。

>シンには守り神か何かが宿っているのだろうか。それぐらい、あの男には運があった。

補正がキラ→シンに変わっただけかって、突っ込んじゃダメなんだろうか…

155名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/07(日) 12:14:18 ID:IYAWhQLQ
シンにもキラにも補正はついてないがホークシスターズには
ついてるかもしれない…。まー、もしルナが勝っちゃった時は
デステニとストフリを倒した∞正義最強ということで…。
156名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/07(日) 13:52:38 ID:XR8EWsf2
MSの性能で戦闘の全てが決まった。このままでは種死と変わらんぞ。
まぁ、この先で何か来ないと話が燃えない から、キラが頑張って何とかするんだろうけど。
ってなわけで、キラガンガレ超ガンガレ!
157あの人:2006/05/07(日) 17:01:11 ID:Hrzo3yFb
>>147
ここからシンの活躍の場を作るとなると……
キラが悪役っぽい手段で巻き返す、これでしょうか?
期待しつつ、GJです!


ここで、流れを無視して新作を投下します。
とりあえず、前もって謝っておきます。

……ことりもシンもでません(汗
158ANOther D.C.S.D. MSV戦記〜もう一つの運命〜:2006/05/07(日) 17:03:31 ID:Hrzo3yFb
――常に世界に戦争をもたらそうとする軍需産業複合体、死の商人、ロゴス!
――彼等こそが、平和を望む私達全ての真の敵です!
――私が心から願うのは、もう二度と戦争など起きない平和な世界です。
――よってそれを阻害せんとする者……世界の真の敵、
――ロゴスこそを滅ぼさんと戦うことを、私はここに宣言します!


プラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルの演説をきっかけに
世界中で始まった反ロゴス運動……そして、ジブラルタルに集結する反ロゴスを掲げた地球軍艦隊。
とはいっても、そのほとんどは東アジア共和国の戦艦である。
元々、地球軍にはブルーコスモスが多い。当然の事ながら、コーディネーターを忌み嫌うブルーコスモスが、
コーディネーターと手を組み、ブルーコスモスの母体とも言うべきロゴスを討とうとするはずもなく、
ロゴスが逃げ込んだ地球連合軍最高司令部……ヘブンズベースへ集結さえしている。
そんなわけで、ジブラルタルに集結した部隊にはブルーコスモスはいない……と思われたのだが、
実際のところ、紛れ込んでいたりする……当然、ヘブンズゲート攻略戦に協力するつもりはないが。


「ふン、つまらンな。なぜワガハイがこんな地味な役割なのだ?」
「仕方ないですよ、上層部からの命令なんですから。」
「ワガハイはもっと、こう、前線でドンパチ、陽電子砲を撃ちたいンだ!それなのに…」
「しかし、我々の役割はかなり重要ですよ?」
そう、重要だ。我々に課せられた任務、それはジブラルタルにあるという、
ザフトの最新鋭MSの奪取、もしくは破壊。成功すれば、これから始まるであろう、
ロゴスとザフト及び反ロゴスとの戦闘を有利に進める事ができる。
「こういうコソコソした作戦は、しょうにあわンのだがな。適当に陽電子砲でも撃ってみンか?」
「沈みたいんですか?思いつきで軽率な行動をしないでください。」
ちなみにこの艦、元々は陽電子砲は装備されていなかった。元々あった武装を全て外して
そこに無理矢理増設したのだ。そのため、艦全体のバランスが大きく損なわれており、
艦そのものの戦闘能力は平均のそれ以下になっている。海上戦艦の中でも最大級の大きさで、
武装が長いチャージタイムが必要な陽電子砲が一つだけ、というのは、ただのいい的だ。
「だがどうやってそのMSを探すのだ。場所はわからンのだろう?」
「すでにエクステンデットを2人、基地内に潜入させています。」
「あのエクステンデットか。子供だぞ。いいのか、あんなのに任せて?」
「最新型のエクステンデットだそうです。第81独立機動軍にいたのよりも性能は上だそうです。」
今、エクステンデットの多くはヘブンズゲートと月に集められている。
この状況下で、2人のエクステンデットを保有できるということは、
それだけ期待されているという事であり、この任務がそれだけ重要だということだ。
「しかしあのエクステンデットども、生身で行ったというのが心配だ。
 やはりここは、ザムザザーかゲルズゲーに乗せて行かせた方が…」
「潜入の意味、わかっていますか?」
この人に任せる任務じゃない気がする。
159ANOther D.C.S.D. MSV戦記〜もう一つの運命〜:2006/05/07(日) 17:04:48 ID:Hrzo3yFb
「ZGMF-X42Sデスティニー、それとZGMF-X666Sレジェンドか……」
基地内にロゴスのスパイが侵入し、逃げ出したらしい。おそらくさっき飛び立った
グフイグナイテッドがそれなのだろう。それを追いかけ嵐の中飛び立っていく
2体の機体……最新鋭のセカンドシリーズの後ろ姿を、オレは格納庫から眺めていた。
最新鋭のセカンドシリーズ……正確にはまったくの新型だ。
ユニウス条約に触れる核動力を搭載している事を隠すため、
核動力を持つMSに付けられる『A』という型式を外し、セカンドシリーズに偽装している。
……あの最新鋭のセカンドシリーズは、オレにとって少なからず関わりがあった。

オレは以前、量子通信を用いた兵装ポッドを装備したMA,MSのテストパイロットをした事がある。
それを元に、量子インターフェイスの更なる改良を施されたドラグーンを装備した機体、
それがレジェンドだ(まあ、その間にドラグーンを装備したザクとかも造られたが)。
そして飛び去ったもう一機のMS……デスティニー。オレはあの開発には特に大きく関わっている。
元々、デスティニーというのはインパルスの換装バリエーションの一つ、
複合兵装システム『デスティニーシルエット』として開発したものだった。
オレはその開発にたずさわり、テストパイロットもつとめた。今のオレの機体も、
ロールアウトされたデスティニーインパルスのうちの一機だ。だが、このシルエット、
複雑な合体機構をもつインパルスにとっては大きな負担となり、またビームに偏った装備は
エネルギーの消耗が激しく、とても戦争で使える物ではなかった。そのため、新たにMS
……実質、エネルギー切れの心配がない核動力MSとして1から造る事になり、デスティニーが造られた。
この2体が、今回ロールアウトされた新型セカンドシリーズだ。
だが……開発段階では、実際はもう一機造られる予定だった。
格納庫の奥、オレのコアスプレンダーに並ぶように置かれた、赤い戦闘機。
YFX-M55……試作型核動力コアスプレンダー。
デスティニーがインパルスの武装を元に開発された後継機であるのなら、
このコアスプレンダーは、インパルスのシステムを受け継いだもう一つの後継機。
本来なら他の2体と共に開発され、にミネルバに搭載されるはずだったのだが、
専用のチェスト、レッグ、シルエットが造られる前に、急遽開発が中断された。幻の新型機。
コスト面での問題で中止になったとか、AIや新機軸のフレームに欠陥が見つかったとか、
武装が一MSが搭載するには強力すぎるからだとか色々な噂があったが、実際は議長の独断による物だ。
どうして議長が開発を中断させたかはわからないが……開発者としてはなかなか惜しい事だった。
……まあ、それももう関係ない事だ。軍で開発が中断されれば、一技術者にはもう何もする事ができない。
スポンサーがいなければ研究も開発もできないのだ。それがあの機体の宿命だったという事だろう。

「……ん?」
格納庫の一角から一機のMS……グフイグナイテッドが飛び立っていくのが見えた。
デスティニーとレジェンドの援護だろうか、グフ一体ぐらいあの二機にかかれば問題ないと思うが。
続けて飛び上がる機体。グゥルに乗っている、赤いザクファントム……赤いザクファントム?
「あの機体……だがあの機体は…………まさか!」
オレは格納庫へ走っていった。あまり当たって欲しくない予感だったが、見逃せない予感だった。
160ANOther D.C.S.D. MSV戦記〜もう一つの運命〜:2006/05/07(日) 17:05:41 ID:Hrzo3yFb
「もう、のんびりしてるから……」
『そんなこといたってぇ〜』
なんとか新型MS……デスティニーとレジェンドの場所を発見した僕たちだったけど、
たどりついた、まさにそのとき、2機は雷鳴なり響く空へと飛びたっていった。
僕たちはすぐに、そばにあったMSに乗り込み追いかけようとしたんだけど……
『なかなか赤いザクファントムがなかったんだもん』
「……何で、わざわざ赤いザクファントムをさがしたの?」
『えっ、なに、知らないの?赤くて角があるザクは、通常の三倍の能力があるんだよ。』
「そうなの?」
『そうよ。CGをつかった記録映像で見た、まちがいないわよ。
 『戦いとは常に二手三手先を読んで行うもの』なのよ。』
「……おかしいな。僕が地球連合の人から聞いた話では、
 『赤いザクの砲撃は当たらないから、気にせず攻撃しろ』って話だったんだけど……」
『仲間の志気を喪失させないためについた嘘ね。戦場ではよくあることよ。』
「ふーん…」
まあ確かに、パーソナルカラーのMSが弱いはずはないよね。
『せっかく奪うんなら、そういう機体のほうがいいでしょ?帰ったらわたし専用にカスタマイズしてもらうの。
 とりあえず専用のウィザードね。ガトリング砲とかをくっつけて……』
「それはいいんだけどさ……結局どうするの。完全に見失っちゃたよ?」
『うっ』
そう、僕たちがノロノロしているうちに、ターゲットの2機は水平線の彼方へと消えていってしまった。
ニュートロンジャマーの影響でレーダーの精度は低く、目視できない状態での発見は難しい。
基地に通信をいれて聞きだせばわかるだろうけど、さすがにそれはまずいよね。
『……とりあえず、ここらへんで張ってみて、帰ってきたところを』
「先に見つかると思うよ。真っ正面から相手したら、こっちに勝ち目ないだろうし……」
エクステンデットは並のコーディネーターよりは強い。
僕たちは特に完成品に近いエクステンデットであり、またそのコンビネーションから、
同じ条件下での戦いで負けることはない……同じ条件下ならね。
核動力の最新鋭機2体と、量産期2体では同じ条件とはいえない。
赤いザクファントムは能力が三倍らしいけど、ウィザードを装備していない。
……ガナーとか、ブレイズを換装しているザクも置いてあったんだけどなあ。
『でもわたし、目はいいのよ。メインカメラを、こうやって最大望遠にすれば
 普通のMSに搭載されているレーダーよりも先に……って、あれ?』
「どうしたの?」
『むこうから、なにか……』
「なにか、って?」
『う〜ん……光の翼みたいなものが見えるんだけど……』
「じゃあ、デスティニー?」
『でもあっち、ジブラルタルの方角なんだけど……あっ、レーダーに……』
「ZGMF-X56S/θ……デスティニーインパルス?」
161ANOther D.C.S.D. MSV戦記〜もう一つの運命〜:2006/05/07(日) 17:06:33 ID:Hrzo3yFb
ミネルバのMSはクレタ沖の戦いでそのほとんどを失い、今搭載している機体は
インパルス一機(と、いうかコアスプレンダー一機と各フライヤー)のみ。
ミネルバには現在4人のパイロットが乗っており、本来ならインパルスを含めて
例の新型MS、デスティニー、レジェンドが搭載される予定だったのだが、
その開発が中断されてしまったため、結果、色々と繰り上がり、
一機、MSが足りなくなってしまった。それを補うために新しく
ザクファントムが搭載される事になっていた。グフではなくザクを搭載するというのは
換装性を重視したためだろう。元々、ミネルバとはそういう艦だ。


……だが、まさかそのザクファントムに攻撃を受けるとは思ってもみなかった。
ビームが機体をかすめ、そして避けたところにグフイグナイテッドが斬りかかってくる。
……性能はこっちが上だ。MSの操縦技術も平均以上の腕を持っている。
接近戦でグフに勝つ自信はある。砲撃戦でザクに勝つ自信もある。
だが、同時に相手をするとなると、かってが違ってくる。
いくら強力な砲と剣を装備していても、同時にそれを使用する事はできない。
砲撃をしようとすればグフが絶妙な間合いで斬りかかってくる。
接近戦をしようとすればザクが正確な射撃でビームを撃ってくる。
逆にこっちは、ビームをよければ斬りつけられ、それをよければビームが飛んでくる。
高い機動力とビームシールドをもつデスティニーシルエットでなければ
既に落とされていただろう。


「……しくじったか。」
スパイだという核心がなかったことと、例え攻撃を受けても1人で対処できるという
自信があったため、単機で出てきてしまった。
すでにインパルスのエネルギーはレッドゾーンに突入しようとしている。
これ以上戦闘を長引かせるわけにはいかない。多少のダメージは覚悟して、
とりあえず一機落とす。一対一ならば負ける相手ではない。
エネルギーの消耗を抑えるため、レーザー発振を止めたエクスカリバーを構える。
狙うのは機動力が低いザクファントム。スラスターを全開にし、一気に間合いを詰めた。
……いや、詰めようとした。しかし、その途中で制動がかかり、更に装甲に負荷が加えられる。
インパルスの足にグフの高周波振動鞭『スレイヤーウィップ』が巻き付いていた。
すぐにエクスカリバーで薙ぎ払い、スレイヤーウィップを切断し、グフから間合いを取る。
しかし、高周波振動によりVPSにかかった負荷は、インパルスのエネルギーを激しく消耗させていた。
インパルスから色が消えていく……フェイズシフトダウン。エネルギー切れだ。
なんとか空中での姿勢制御はできる。だが、もう相手の攻撃を避けるだけの余裕はない。
ザクのビーム突撃銃が向けられた。


だが、そのビームが放たれる事はなかった。
どこからからか放たれた機関砲がビーム突撃銃を貫き、ビーム突撃銃は空中で爆散していた。
そしてその直後、突然レーダーに未知の機体反応が現れ、そしてそれは
虚空から染み出るかのように俺達の前に姿を現した。赤い戦闘機……核動力のコアスプレンダー。
一体誰が?その疑問に応えるかのように、コアスプレンダーからオレに通信が入ってきた。音声だけだが。
『あーあー、テステス……もしもし?そこのインパルスのパイロットさん、ちょっと相談があるんだけど……』
162ANOther D.C.S.D. MSV戦記〜もう一つの運命〜:2006/05/07(日) 17:08:01 ID:Hrzo3yFb
「……ミラージュコロイド?」
まえぶれなく、突然現れた戦闘機。おそらくあれが、
わたしの持っていたライフルを壊した張本人なのだろう。
わたしはエクステンデットの中でも、射撃の正確さなら誰にも負けない自信があった。
月の表面からプラントを撃て、といわれたら当てる自信もある(そんなビームはないだろうけど)。
ガトリング砲の着弾点誤差を0.1%以下に抑えれる自信もある。
だから、大抵の戦闘はライフル一丁あれば片づく。コクピットを撃ち抜けば終わりだからだ。
今回はこちらの機動力と相手の機動力に大きな差があったため、なかなかあたらなかったけど、
他の機体だったのならもっと早く勝負をつけれたはずだ。
『だいじょうぶ?』
「ええ。でも、おかしいわね。三倍の能力があるはずなんだけど……」
備えあれば憂いなし。グゥルに取り付けていた予備のビーム突撃銃を装備し直す。
あの赤い戦闘機は、デスティニーインパルスの周りをぐるぐると回っている。
『あの戦闘機、いったい……』
「それよりも……まずあのインパルスよ!」
フェイズシフトがダウンしているということはエネルギー切れのはずね。
今までみたいに、すばやくよけることはできないはず。ライフルをインパルスへ向ける。
「バラバラにしてあげる!」
わたしはインパルスをバラバラにするべくライフルの引き金を……引く前にバラバラになった。
「えっ……分離した?」
過去の戦闘記録から知っていたことだけど……インパルスは4つのパーツからできている。
下半身を構成するレッグフライヤー、上半身を構成するチェストフライヤー、
ウエポンラックとバックパックを構成する各シルエット、
そしてパイロットが乗っているコクピットを構成するコアスプレンダー。
この4つが合体することにより、インパルスになる。逆にいえば、ただの戦闘機とそのパーツであり、
その戦闘能力は格段に落ちる。戦闘中にうかつに分離することはかなりの危険をはらむ。
まあ、コアスプレンダーには脱出ポッドの意味あいもあるから、
エネルギー切れの状態になった今の状況、あの赤い戦闘機が助けにきたとはいえ、
さっさとコアスプレンダーに変形して、逃げ出すつもりなのかも……ん?
「戦闘機……って、まさか……」
その可能性に気がついたとき、それは始まっていた。
赤い戦闘機の機首は180度折れ曲がり、翼は機体に収納された。
そして、インパルスから分離したチェストとレッグと……合体。
あのデスティニーもどきのシルエットもしっかりと換装した。
すべての合体過程が完了すると、灰色だった装甲に色が……
「……赤?」
真紅の装甲……記録映像で見たソードインパルスも赤かったけど、
あれは赤以外の色をした部分の装甲もあった。けどこのインパルスもどきは
頭の上から足の先まで完全に赤。わたしのザクファントムと同じ……ということは。
「気をつけて!あの赤いの、きっとインパルスの三倍よ!」
『たぶん、色とか関係ないとおもうよ……』
赤いインパルスは、両腕に装着したビームブーメランを手に取り投げつけてきた。
163ANOther D.C.S.D. MSV戦記〜もう一つの運命〜:2006/05/07(日) 17:09:38 ID:Hrzo3yFb
勝負は呆気ないほど早く終わった。
フラッシュエッジを囮に、高速で上昇した赤いインパルスは、
雲の中でミラージュコロイドにより姿を消し、空気抵抗で軌道を変えつつ、自由落下でザクに接近。
フォールディングレイザーを投げつけ、ザクファントムの乗っていたグゥルを破壊した。
海へ落下していくザクをテレスコピックバレル展伸式ビーム砲塔で撃つ体勢になる。
それを阻止するため、テンペストビームソードでグフが斬りつけてくるが、
逆に、エクスカリバーに両腕を切り落とされ、海へと蹴り落とした。
……ビームを撃とうとしたのは、グフを誘うためのフェイクか。
ザクとグフはそのまま海に沈んでいった。
しかし、爆発が起こらないところをみるとおそらく無事なのだろう。
相手はスパイ、追いかけなければならない……だが、赤いインパルスは動かない。
よく見ると、装甲の一部のフェイズシフトがダウンしている。
そのうえ、グフを蹴り落とした方の足はあり得ない方向に曲がっていた。
短い間とはいえ、インパルスのレッグとチェストでは核動力による
高出力運動に耐えきれなかったのだろう。
反撃の可能性は少なかったが、とりあえず司令部に連絡して帰投することにした。
先に逃げ出したスパイはデスティニーが撃墜したらしいが、残念ながら今のオレ達は
ほとんど戦闘力がない状態だ。水中を追いかけることもできない。
あとはアッシュやゾノに任せることにした。


コーディネーターもナチュラルも関係なく、エースパイロットいう者がたまにいる。
だいたいはベテランのパイロットがそれにあたるのだが、場合によっては
もっと若いエースパイロットもいる……実際にデスティニーのパイロットはまだ16歳だ。
性別も関係ない。連合の『乱れ桜』や『白鯨』の強さを見れば明らかだろう。
だから、さっきの鮮やかとも言える戦闘をしたパイロットが、
女性で、16歳ぐらいだとしても、驚きはしない。
……赤いインパルスから降りてきたパイロットが、とても16歳には見えないことに驚いた。
「……本当に16か?」
「にゃにゃ?失礼しちゃうなぁ。これでもボク、もう大学でて、博士号も持ってるんだぞ〜。」
そんなふうには見えないが。だが、問題はそんな事ではない。
「どうしてあのコアスプレンダーに乗っていた。あれは重要な軍事機密だぞ?」
博士号を持っていようが、かってに軍の機体を使えばそれは重罪だ。
「元、軍事機密だよ。あれの所有権、もう軍は手放したから。」
「……手放した?」
「そっ、この度正式な契約の元、めでたく、ボクの私物になったんだよ。」
私物……核動力の機体を私物?
「まあ私物っていっても、開発を中断した軍の代わりに、自費で開発しないといけなくなって、
 そん状況をちくいち軍に知らせないといけなくなったんだけどね。」
「自費?MSを自費で造れるのか?」
「設備は貸してもらえるみたいだからね。開発費は問題ないよ。まあちょっと人手が足りないけどね。」
……人手、か。
「……その人手のことだが」
「んにゃ?」
164ANOther D.C.S.D. MSV戦記〜もう一つの運命〜:2006/05/07(日) 17:11:25 ID:Hrzo3yFb
「ふぬぬぬぬ……」
今日の艦長はいつにもまして青筋が立っている。
……結局私たちの艦は、命令である『ザフトの新型MSの奪取、もしくは破壊』に失敗した。
本当なら、その混乱に乗じてさっさとジブラルタルから離脱する予定だったのだけど、
物の見事にタイミングを失い、結局ヘブンズゲート戦に参戦することになってしまった。
本艦はこの戦闘において、その機動力の悪さから後方に配備されたもの、
大量に積み込んだゲルズゲーとザムザザーの陽電子リフレクターが大いに活躍、
デストロイのビーム砲から私たちをはじめ、数多くの戦艦を守り、
またローエングリンも破城装備としての本来の活躍を示し、艦長も大満足だった。
……そんなふうに活躍したものだから、他のブルーコスモスの部隊が月へと上がっていく中、
私たちは未だに地上でウロウロすることになった……ようするに左遷ですね。
「これも……これもあのエクステンデット共が、作戦に失敗したせいだぁぁぁ!!」
そうそう、あの2人はザフトの量産MSに乗って、どこかの地球軍基地にたどり着いたらしいです。
あのコ達、特に銀髪の男の子、けっこう可愛かったから好きだったんだけど……また会えるといいな。
「艦長、血圧上がりますよ?」
「ウルサイ!なんでおまえは、そういつもいつも冷めてるンだ!」
「艦長は熱くなりすぎですよ。」
今、ザフトはオーブを攻めているらしい。オーブにロード・ジブリールがいるからだ。
まあ、私は一応ブルーコスモスの端くれだけど、別にロゴスはどうでもいいし、
あんな可愛いコ達を戦場に送り込むような奴、さっさと捕まえてもらった方が衛生上いい。
だいたい、コーディネーターは嫌いだけど、別に殺す必要はないのよ。
可愛い子供たちに罪はないわ。むさい大人にはあるかもしれないけど。
そんなことを考えてると、通信機に入電があった。
「あっ……艦長。」
「なンだ!オペレーターの分際で、ワガハイの食生活にケチをつけるつもりか!」
血圧の話から食生活の話まで発展していたらしい。
「えっと、とりあえず塩分は控えめにしてください。あと、通信が入ってきました。」
「ン?だれだこんなときに。」
「はあ……あの……奥さんです」
「っ?!!!!!」
艦長の顔が一気に真っ青になる、そして思わずその場で後ずさり。何度見ても面白い。
「わ、わわわわわ、ワガハイは、留守だ!」
「艦長が艦を留守にしているはずないでしょう。」
副長がすかさずツッコミをいれる。
「とりあえず、通信つなげますね。」
「マテ!つなげるんじゃ…」
『あ〜〜な〜〜た〜〜〜』
びきっ、という音を立てつつ、固まった艦長。まあ今日も程々に平和だということだ。
165ANOther D.C.S.D. MSV戦記〜もう一つの運命〜:2006/05/07(日) 17:12:24 ID:Hrzo3yFb
戦争は終わった。
今、オレはジブラルタルにいる。完成した新型MSのテストパイロットをしているからだ。
結局、戦争中には完成しなかったものの、完成させることができたのは嬉しい。
一度は開発を中断され、日の目を見ないまま終わるはずだった機体。
まだ専用のシルエットは完成しておらず、各種シルエットや
デスティニーシルエットの4号機を換装しているが、まあ追々造っていけばいいだろう。


この機体が完全に完成したとき、オレはどうすればいいのだろうか。
このMSは民間(というか個人)で造っている機体であり、すでにオレは軍とは手を切っている。
オレは機体を開発するのが好きだ。それは技術者だからだ。軍人だからではない。
だから、オレ達が開発した機体を軍がどう使おうと知ったことではなかった。
しかし、メサイア防衛戦に参加してから、その考えは少し変わってきている。
「地球連合……はダメだな。一番戦争をしたがるところだ。」
ジャンク屋組合は兵器を開発してはいけない、と一応は言われているからかダメだ。
傭兵とかは、よく自費で武装を開発しているようだが、オレは傭兵をするつもりはない。
オーブあたりを目安に考えていたのだが、そのオーブが
地球連合の盟主国になってしまったからどうしようもない。
何処かに趣味でMSの研究開発をしているような研究所があればいいのだが……
まあ、今考えてもしかたがない。とりあえず、まずはこのMS……
ZGMF-X55S ……フォーチューンを完成させてからだ。それから考えても、遅くはないだろう……










とか考えていたら、突然ポロシャツ姿の議長が現れて、
フォーチューンに乗って東アジアの方へ観光旅行に行ってしまった。
そして、そのまま撃墜。


……どこかに、いい研究施設はないだろうか?


166あの人:2006/05/07(日) 17:16:42 ID:Hrzo3yFb
「とにかくフォーチューンの話を書きたい!」と思って書いた今回の話。
時期的にはアスランが脱走したときなので、まだシンとことりが出会ってません。
……すいません。DC分が壊滅的に足りてません(汗
……というか、SEEDアニメキャラも壊滅的に少ないですね。
登場キャラは、前回に引き続き、地球軍艦の方々(オリジナル)を採用。
あとDアストレイと、過去のサルベージのキャラですね。名前は意図的に出しませんでした。
そしてまた色々と捏造……最近捏造ばっかりしています。
フォーチューンに合体機能があったかどうかはわかりませんが、型式番号的には
あったほうが自然かなと。つまりγ線レーザー砲はコアスプレンダーに内蔵……
赤いザクファントムは「もしアスランが脱走しなければ……」と考えて。
あと年齢関係とか。シンとことりを同い年と仮定……ああ、地雷かも。

本スレ……誰か投下しないかなぁ……
167 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/07(日) 20:27:30 ID:ZKYKmxJt
どうしようかー・・・・まだ半分も書き上げてないなー・・・まだ暫くかかりそう・・・

>>150
>シンが活躍するかどうかが気になる
そこんとこは全く無問題ですね
キラもルナも主役のつもりですが、シンとことりは主役の中でも別格ですからw
大丈夫です、ちゃんと活躍します

>機体性能
やはりパイロットにもMSにも得意不得意というものはあると思うんですよ
俺が思うにフリーダムは遠距離が適した機体でジャスティスが近距離が適した機体
近距離ではジャスティスが有利で遠距離ではフリーダムが有利
だから機体性能以上に重要なのは、いかに自分の得意分野に引き込めるかが
勝敗の鍵を握るかと考えてます。勿論戦況を左右するのはこれだけではないですが

要はなのはさんとフェイトに当てはめれば分かりやすいかと思われますw

>>166
フォーチュン・・・・って何でしょうかね、機体名?
と、とにかくGJですw
168名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/07(日) 22:20:17 ID:yHLoBw33
>>166
赤いザクファントムはルナマリア専用か…。
て、何やってんのさくらwww!?
撃墜されたフォーチューンガンダムは天枷研究所が拾ってそうな気がする。
169名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/07(日) 22:32:49 ID:f8ouIwrd
>>166
GJ( -∀-)ノよぅ
フォーチュン久しぶりに聞いたな。確かにサイドストーリーすぎる
ところあるね。初代さんの話でもD.C.分が少ない時期に出されると
ちっとツライもんが…


>>167
ゆっくり書いてくれて十分。待つことに慣れている。
このスレには番外編書きさんをまだ待っているオレみたいの
もいるし。


しっかし、皆、書くの早いなぁ。オレなんか、まだ第四話書いてないぞorz
サボりすぎなだけだけど。本スレのもまだ書きあがらないし。
170名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/08(月) 21:49:17 ID:kT8g/mV0
>>166
ナレーターの人はDアストレイに出てたマーレ・ストロードかな?
しかし何気なく書いてあった形式番号でここまで発展させるとは
相変わらずスゲェ。0-デスティニーをどう使うのか楽しみになってきた。
171あの人:2006/05/09(火) 01:03:51 ID:SzIOHOzB
>>167
フォーチューンは保管庫64『初音島の休日』などに出てきた
D.C.S.D.オリジナルのMSです。ちなみに、
0=デスティニーやバードもここからのサルベージです。

>>168
保管庫76『それは舞い散るさくらの様に』によれば、
桜の木と同等の機能を持つ新機軸フレームを搭載した
フォーチューンを使った『フォーチューンプラン』の
実行を阻止するために議長の元へ行ったりしたらしいです。
撃墜された後、初音島を守る剣として再びさくらの元へ戻りますが、
保管庫73『【運命】の戦いの果てに』にてアイシアにパクられ、
再び撃墜。海の底へと…………確かに、天枷研究所なら回収してそうだ。

>>169
すいません。フォーチューンが書きたかったんです……
せめて、さくら視線で書けばよかったかな。
実は、もう一つ話があるのですが、さらに地雷っぽいので
そっちはD.C.分を補充してから書きます。

>>170
彼、一応アニメにも出てきてるらしいですね、ステラに撃たれている赤服だとか。
残念ながらマーレではないんですよ。カオスのテストパイロットの方です。
0=デスティニーは是非とも使いたいところですね。
あとEDのデスティニーガーネットとかも……量産機?
172名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/09(火) 18:30:29 ID:C6xx5VFO
>残存のロゴスメンバーも、何かしようとしていたみたいですけど
ヘブンズベースごとγ線レーザーで吹き飛ばされてしまいましたし、

↑今気付いたがANOtherポートレートのコレってwww。
ブルーコスモスが盗んだ機密物資とやらが今後の展開の鍵なのかね〜?
173名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/10(水) 20:46:42 ID:fko5rFhg
この二人ってあの二人だよな・・・懐かしい
いつも通りサルベージネタを上手くいかしててGJです!

他の人も言ってるとおりDC分が足りないのは欠点だけど、まぁバトルスレだし
174名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/11(木) 03:30:01 ID:wILiCGoT
>俗に言う不殺主義者なのだろうか……戦場で手加減するというのは大抵、
 相当腕に自信があるか、覚悟がない理想主義者かそのどちらかだが……

キラさりげなく地球軍艦長に批判されてるしw。
赤いのが3倍て教えたのこのおっさんなんだろうな…。
175 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/12(金) 00:25:49 ID:CxwKWSsw
お待たせしました、書きあがったので二十話うpします・・・・
今までで一番文章量が多いかな?w
なぜか気合入っちゃってますね



随分アスランが丸くなってるなぁ・・・・もしかしたら彼が一番キャラが違うかもしれない
俺のSSには偏屈な人間は存在しませんので
176第二十話1/12 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/12(金) 00:27:44 ID:CxwKWSsw
「・・・・おい」
 シンが苛立ちながら呟くと、アスランたちが何事かと一斉に振り向いてきた。
「どうした、シン?」
「あ、お茶のおかわり?はいはーい、ただいまー♪」
 陽気な感じでミーアがそう言ってシンの目の前に置かれていたカップへと紅茶を注ぎ足していく。
シンは我慢の限界になり勢いよく席を立ち怒鳴り始めた。
「そうじゃないだろぉぉおおーーー!!!」
 ルナマリアがメイリンの救出に先立った後。デスティニーが動けるようになるまでまだ
時間がかかるということなので、ティータイムにしようなどと悠長なことを言い出し始めたミーア。
しかしアスランもことりもその提案にあっさりと賛成してしまい、戦線だというのにそこには
到底場違いなティーセットをどこからともなく取り出し、こうしてお茶なんかをのんびりしていたが、
シンはもう耐え切れずにいた。
「ル、ルナたちがあのフリーダムと戦っているんだぞ!!それなのに、こんなまったりと
していてどうすんだ!!」
「やーん、この子コワーイ」
 ミーアが茶化すような言い方をするのでシンがじろりと睨むと、さっとすぐさまアスランの
背中に隠れてしまった。どうにもミーアの喋り方がいまいち腹立たしかった。
 そこに苦笑しながらことりが場を和ませようとする。
「ま、まぁまぁ・・・・ほら、クッキーでもお一つどうぞ♪」
「いらねえよ、んなもん!!」
 ことりがテーブルの上に置いてあったクッキーの乗った皿を差し出してきたが、シンは
一声して拒絶してしまう。
「・・・・ぐすん」
「うぐ・・・・」
 するとことりが何だか泣きそうな表情をしてきたもので、シンもついたじろいでしまった。
「あーあ、泣ーかした」
 カップに口をつけていたアスランが眼を閉じたまま無表情でそう言ってくる。その声が
どこか面白そうな感じだったからなおむかついた。
177第二十話2/12 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/12(金) 00:29:00 ID:CxwKWSsw
「・・・・お、俺は・・・・ことりが焼いたクッキーしか食べたくない」
 慌てた感じでそう付け加えると、何とかことりの顔に笑顔が戻り一安心した。
「まぁ落ち着けシン」
 アスランがカップを置いてシンの方に顔を向けてきた。いやに落ち着いている、というか
緊張感に欠けているというか、とにかくアスランはいつものように冷静な感じだった。
「時には待つことも重要なことだ。この国には”アホウは寝て待て”という言葉があるそうだが、
今のお前にはピッタリの言葉じゃないか」
「・・・・・」
「・・・・か、果報ですよアスランさん・・・・・果報」
 横からことりが間違いを指摘してきて、アスランも恥ずかしそうに顔を赤らめた。ミーアも
そんな情けないアスランに何だか冷たい眼差しを向けていた。
 最近になって、アスランも歳のせいか随分と惚けてきた、基性格が丸くなったなとシンは
常々思った。
「ご、ごほん!!と、とにかく・・・・急げばいいという問題じゃない」
 アスランはポットを取り自分でおかわりの茶を注ぎ足してカップを握った。
「こういう時は暖かい物でも飲めば気持ちも落ち着いてくる。焦ったって、今は待つことしか
できないんだからな」
「・・・・・」
「それとも、お前はそんなにあの二人のことが信用できないのか?」
「・・・・そ、それは」
 アスランの、そんな言い方は卑怯であった。その様な言い方をされては、嫌でも
信じているとしか答えようがない。
「・・・・けど、信じているからこそ、今すぐにでも助けに行ってやりたいんだ!!」
「ならばこそだ。耐えることも、戦いだ。お前はそういうことをこの島で学んできたんだろう?」
 アスランの言うことはいつも正しい。納得がいかないことでも、結局は常に筋が通っているのだ。
そしてシンも、もう昔みたいな天邪鬼でないという自負を持っていた。
 シンは渋々席につくと、クッキーを一つ摘んで口の中に放り込んだ。
「・・・・・うまい」
 そう素直な感想を述べた。
178第二十話3/12 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/12(金) 00:30:02 ID:CxwKWSsw
「当然でしょー、私が焼いたんだから」
 ミーアがでかい胸を張って何故か威張って、アスランはふと笑みを浮かべていた。
ことりも何だか嬉しそうに微笑んでいる。
 そうこうしているうちに、突如ブザー音が鳴り響いた。デスティニーのロールアウトが、完了した
合図だ。
「噂をしていれば、というやつだな」
 アスランが重い腰をあげるように立ち上がると、続いてシンたちも同時に立ち上がる。
「デスティニー、いつでも発進できます」
「ご苦労」
 報告に来た兵士に向かってアスランが一言言うと、デスティニーの操縦席前まで行く。
シンはてっきりその場の雰囲気的に、そのままアスランがデスティニーに乗って出撃するのかと
思った。しかし、一向に操縦席の中に入ろうとしないで何か悩んでいるアスランが、シンは
不思議に思った。
「どうしたんだ?」
「・・・・・シン」
 アスランが振り返ると、意外なことを口走った。
「やっぱりお前が乗れ」
 そう言われて、シンも内心少し驚いていた。
「・・・・いいのか?今はもう民間人なんだぞ、俺」
「構いやしないさ、元々はお前の機体だったんだし。それにお前だって、アイツと決着を
つけたいんだろ?」
 アスランがそんな言い方をするのが、シンには意外だった。少なくとも、以前までなら
決してそんなことは言わず、何としてでもキラと戦うことを止めようとしたはずだった。
 シンが操縦席の前まで来ると、アスランが肩を掴んでくる。手に、少し力が
ぎゅっと握り締められた。
「・・・・俺は、本当はアイツとは戦いたくないんだ・・・・・できることなら、アイツには
上手く逃げて欲しいとさえ思っている・・・・・お前には、悪いとは思うけどな」
「・・・・・」
179第二十話4/12 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/12(金) 00:31:04 ID:CxwKWSsw
「けど、アイツを止めることができないんだったら、その時は俺も覚悟を決めなければならない。
これ以上の犠牲者が出る前に、せめてお前の手でアイツを・・・・」
 そこまで言ってから、シンはアスランの手を振りほどいた。
「ああ・・・・・あまり気負いするなよ。親友なんだったら、心配するのが当然だろう?」
 シンももしルナマリアやレイを討てと言われても、そんなことできるはずがなかった。
アスランの決断がどれだけ辛いものだったのか、シンには知る由もなかった。
「・・・・シン君」
 ふと小さな呟きが聞こえて、振り向いた。ことりがシンのことを見つめていた。悲しんでいるのか、
はたまた行こうとしているシンの事を怒っているのか。そんな複雑な表情をしている。
「ことり・・・・」
 ことりはきっと、自分に戦いの場に行って欲しくないんだとシンには言わずとも分かった。
デスティニーに乗って再び戦場の地へ行ってしまったら、もうこの平穏な場所に、ことりの元へと
戻って来れなくなるような気がして。
 一瞬でもそんなくだらない考えが過ぎってしまっい、必死に頭を振ってそんな考えを打ち消した。
「・・・・これで、最後だから」
 じっと、ことりはシンの眼を見つめてくる。嘘はついてないと、真剣な眼差しを向けた。
「俺は、必ずここに戻ってくるから・・・・だから、信じて待ってて・・・・ことり」
「・・・・うん」
 ことりは涙で少し潤んでいた眼を指で拭き取ると、そのまま親指をぐっと指し示してきた。
「約束、だよ」
「うん・・・・約束」
 シンもふと笑って、そして操縦席の中に入っていった。
 久しぶりのMS。もう乗ることはないと思っていた。けど、これが本当に最後の出撃。
システムが起動するとともに駆動音が重く操縦席の中に鳴り響く。操縦の仕方を忘れてしまって
いるのではないかと心配していたが、全て体が覚えていた。ランチを握ると、やけに冷たく感じた。
 モニターからことりの姿が見えた。しばらく眺めて、そしてもう振り向かなかった。
世界は未だ混乱が続いて、そしてこれからも激しさは増していくだろう。
 けれど、それはシンにとってはもう遠い世界の話だった。
180第二十話5/12 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/12(金) 00:32:38 ID:CxwKWSsw
 この世界、ことりとともに戦いのない安らかに暮らしていける世界を守っていくことができれば、
それで良かった。もしキラがその世界を破壊しようとするならば、そんなことはさせない。
「シン・アスカ、デスティニー行きます!!」
 掛け声とともに勢いよく初音島の空の真上へと昇った。
 空を駆けた。夜明けが間近で、みずいろに染まりどこまでも透き通り広がっている蒼の海。
上空から、島の全てが見えて、遥か地平線の先には既に明かりがちらついていた。
その情景に、シンはしばらく呆然としてしまった。とても、綺麗だった。何の変哲もない島の、
どこにでもある風景なのに。なぜここまで心を打たれてしまうのか。
 それはシンにとって、もはやここは特別な場所になっていたから。大好きなこの場所、
そして代えることのできない人たちがいる。そんなこの島をそう、絶対に守るんだ。
 昔には手に入らなかった、大切な今がここにあるから。



「なんでー、なんであんなに速く動けるのー!?」
 気の抜けそうな、メイリンの声が通信から響いてきた。
「速い!?ただ逃げ足が速いだけでしょ!!」
 メイリンに続きルナマリアの叱咤する声が響いた。
 戦線が膠着してきた。もうだいぶ長い間、こうして攻防かどうかも分からなくなるような
戦闘を繰り広げている。
 ルナマリアが参戦してから、メイリンが再び息を吹き返して、戦意が向上してまた攻撃に
鋭さが戻った。どちらの機体でも、一騎討ちであれば勝算の見込みは充分にあった。
けれど、二人とも上手い具合に、決して突出しようとはせず、二人で見事な攻撃と防御の
役割を形成していた。それが厄介なものだった。
 ジャスティスばかりに気を取られていたら、背後からいつの間にかレジェンドのビット
が襲い掛かってくる。故に邪魔なレジェンドから先に叩こうとすればレジェンドは防備一心になり、
その間にジャスティスの斬艦刀が舞い上がる。かといって二人同時に相手をしようとするならば、
双方の牙が同時に襲い掛かってくる。姉妹ならではの、実に絶妙なコンビネーションを
産み出していた。その二人でも特に厄介な方が、やはりルナマリアのジャスティスだった。
181第二十話6/12 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/12(金) 00:33:42 ID:CxwKWSsw
 幸いにルナマリアにも弱点はあり、遠距離からの攻撃はさけてなんとしても接近戦に
持ち込もうとする傾向が見受けられた。
 つまり、ルナマリアは接近戦には長けているが、遠距離攻撃は苦手としていることが分かる。
だからこうしてジャスティスの間合いに入らないようにかわしながら遠距離からの攻撃を
とっていたのだが、しかしこれではあまり大きいダメージは望めずに一向に埒があかなかった。
ビームサーベルで刺してしまえば一撃で終わるものの、けれどジャスティスとの接近戦に
入るのは自殺行為だった。
 やはり、どちらが攻勢に出ているのか分からない、そんな逃げの戦になっていた。
そんな戦い方をしている自分を、キラは不甲斐なく思った。ここまでてこずらされてしまうというのは、
二人の実力を認めざるを得なかった。
「・・・・凄いね、メイリン」
「え?」
 攻撃の嵐が止んだ束の間、キラはメイリンへと話しかけた。
「君の姉さん、予想外の強さだよ・・・・・君があれだけの大言を言ったことも、満更ではなかった
かもしれないね」
 ルナマリアは恐らく以前にもミネルバにいて、何度か戦場でまみえたことがあったのだろう。
その当時ミネルバにはシン・アスカ、そしてクルーゼの面影を呼び起こすあの危険な男の、
二人の印象しかなかった。ルナマリアはその時は記憶にも残らないほど目立たなく、
故にキラ自身も全く覚えがなかった。
 それが、よもやここまで手強い人材がまだ埋もれているとは、キラの明らかな計算ミスだった。
「ん・・・・・?ちょっとメイ、あんた何言ったのよ?」
「あ、あはは・・・・・な、何だったかなぁー・・・・」
 ルナマリアが睨むと、メイリンは苦笑して話を逸らそうとした。キラは声高を変えずにそのまま
話を続けた。
「それだけの強さと、そして器量があるならば君も分かっているはずだ。本当に正しいものは
何かということを。あの人間、今プラントを支配しているあの男は危険だ」
「・・・・・・」
 ルナマリアは何も言わずに、じっとモニターからキラのことを睨むように見つめてきた。
182第二十話7/12 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/12(金) 00:34:50 ID:CxwKWSsw
「そして、そんなあの男の理想に賛同したシン・アスカだって、同じくらい危険だ」
 そんなことを言っても、ただの詭弁でを吐いているだけでしかないと、自分でもキラは分かっていた。
 本当は、そんなことはどうだってよかった。ただ私怨のために、シンが怖いから消してしまいたかった
だけだったのだから。
「だから」
「・・・・だから、私にオーブへと降れって言うの?」
 ルナマリアは眼を閉じて心底呆れたように溜め息をついた。ルナマリアが降ることはないと
当然思っていたが、念のために言っておいた。
「・・・・・くだらないわ」
「何がくだらない?」
「そんな理想とかいうのを掲げて無理やり戦う意義を作ろうとしていることが、よ。
オーブの理想・・・・とかっていうやつ?私はどーにもそういうややこしい話は苦手で、
そんな高等な理想なんてものはよくわかんないけどさー」
 するとルナマリアは眼を見開いたかと思えば、皮肉っぽく笑った。
「あなた、本当はただシンを殺したいだけなんでしょ?」
 キラの眉が、微かに動いた。
「・・・・やっぱりねー。考え方がくらーい、そういうのって。理想のためとかいって口実作って、
本当はただ気に入らないから消しちゃおうなんて、子ども以下の発想ね。そんな危ない人間、
やっぱ信用できないわ」
 ルナマリアははっきりとそう言い放ち、斬艦刀を振りかざして身構えるジャスティス。
 何が面白くないのだろうか。本心を見透かされたことが、あるいは本音をつかれたことか。
とにかく、眼の前のこのルナマリアが気に入らなかった。
「それに、私はシンのことが好きだからね。大好きな友だちの為に戦う。だから、私に
理想なんてものは必要ないの。戦う理由なんて、そんな単純なもんでしょうが♪」
 メイリンも、ルナマリアの言葉に同意したかのように、ビームシャベリンをフリーダムに
向かって構え始めた。
 ルナマリアの言葉には理念も理想も、何もない。
 けれど、なぜこうも間違っていないように耳に響くのだろうか。
183第二十話8/12 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/12(金) 00:36:00 ID:CxwKWSsw
 つまり、このルナマリアという女は直情的な人間なのだろう。既にして確固たる自分の
信念があり、決して回りに流されることなく自分がどういう立場にいるのかということを
常に自覚している。シンも似たような傾向の類の人間ではあるが、こういう割り切って
しまっている人間の方が迷いというものも少なくてずっと手強いのかもしれない。そして
感情的な人間ほど流れてくる言葉というものは、時々強い力の源となることが多い。
詭弁ばかり並べた理想なんかよりも遥かに人間的であり、人の心さえ突き動かす動機と化する。
 キラ自身もまた例外ではない。あのシンの前ですら心は冷め切ったままだったというのに、
この女の言葉により今は秘かに揺らいでいた。憎悪が熱く煮えたぎり、体が疼くのだ。
そういう時は感情的になりすぎて、まともな思考ができなくなり極めて危険な状態だった。
キラもそういう戦い方は嫌いであった。けれど、今は感情に溺れてもいいと思えてくる。
そんな風に思えてくるからこういう言葉は人を魅惑させて、そして怖いのだ。
 しかし、一度湧き上がってしまった感情なんて、抑えるつもりもなかった。こういった手強い
強敵とは、真正面からぶつかるしか対処法がない。
「・・・・・僕は、シン・アスカが怖い・・・・・だから、彼を殺したいんだ」
「やっと本性を現したわね・・・・・これで、遠慮なくぶっ潰せるってもんだわ・・・・」
 実際に言葉にしてみても、それはなんてことはない。精神的な問題なのだから。むしろ
心の中にまだ残っていた邪魔なわだかまりを消し去ることができて、吹っ切れることができた。
手加減は、もはやしない。
 これ以上時間をかけることはできなかった。短期決戦に挑むしかない。
 まずはレジェンドを先に潰して、そしてジャスティスに挑む。しかし、レジェンドの周りは
常にジャスティスによって守られていた。接近戦に入り一撃で潰すのが最も最速の攻略法で
あったふぁ、それは同時に自らの危険も省みず突撃するという諸刃の剣にもなる。普段で
あればそんな無謀な攻撃法を取るような真似はしないが、時間がないのも事実である。
 それに、今ならやれるという気がした。根拠はない。気分が、そんな風に思わせてしまうのだ。
どちらにしろ、戦場にたった瞬間に危険は常に孕んでいるのだ。その程度の危険、そう思った
だけだった。
「・・・・来るわよ、メイ」
 ルナマリアが空気を察してメイリンへと警戒を呼びかけた。
ビームサーベルを握り締める。狙いは、レジェンドただ一体。そう定めた時には、駆けていた。
184第二十話9/12 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/12(金) 00:37:10 ID:CxwKWSsw
 天空を駆ける。同時にジャスティスも動いた。真正面から突っ込んでくる。異様な速さで、
斬艦刀が空を舞う。ビームサーベルを盾にして、斬艦刀を受け流す。ジャスティスには
見向きもせず下を掻い潜りそのまま突撃する。
「抜かれた!!!メイ!!!」
 ルナマリアが叫んだ。ジャスティスが追ってくるが、もう遅い。レジェンドがシールドを
構えていて、そこに渾身の力でぶつかった。持っていたシールドがぶらつくが、さすがに
戦意も戻っており一撃では落ちない。反転をすると更にもう一撃加えようと突撃する。
「メイ!!逃げて!!!」
 しかしメイリンはルナマリアの声も聞かずに逃げようとせず、むしろシャベリンを構えたまま
フリーダムの方へと向かってきた。
 何を血迷ったのか、キラはそう思ったが、すぐに攻撃することへと専念した。フリーダムが
腕を引く。レジェンドはそのまま槍を振りかざすことなく、フリーダムのサーベルを受け止めた。
すかさず予備のサーベルを引き抜き、レジェンドに向けて突き出した。レジェンドはシャベリンを
分離させると、フリーダムのそのもう一撃さえ防ぎきった。それには、さすがのキラも驚きを
隠し切れなかった。
「何!?」
「お姉ちゃん!!」
 メイリンが必死な声で姉の名を呼びかけた。その掛け声とともに、フリーダムの背後に
颯爽と現れたジャスティス。レジェンドは、フリーダムの注意を引き付けるための囮だったのだと、
そう気づいたときには遅かった。回避しきれない。
「もらった!!!!」
 残艦刀が鈍く煌く。やられる、と思った瞬間に突然の被弾を受けた。フリーダムにじゃない、
ジャスティスに当たったのだ。
「えっ・・・・・!?」
「な、何!?」
 二人は予想外の攻撃に困惑を見せた。キラはその機を逃さず、全砲門をレジェンドへと向けた。
零距離からのフルバースト。躊躇なく、撃ち放った。
「え・・・・きゃああああ!!!」
「メイ!!!」
185第二十話10/12 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/12(金) 00:38:13 ID:CxwKWSsw
 メイリンの悲鳴にルナマリアが当惑した。その隙にキラは更にジャスティスへと向かって
持っていたサーベルの一つを投げつけた。さすがに反応は速く、切り払われる。しかし、相手は
 シールドさえ構えていなかった。ビームライフルを取り出してジャスティスに目掛けて乱射する。
「ぐっ、ああああ!!!!」
 ライフルの銃弾をまともに受けたジャスティスがバーニアを停止させてそのまま海へと
落下していった。メイリンは、まだ生きていた。とっさに上体を傾けて直撃は何とか免れることが
できたようだった。しかし、背中に装備されていた円盤型のプラットフォームまではかわしきれず、
完全に破壊することができた。これで、メイリンはドラグーンを使えなくなった。キラに再び
余裕の表情が戻った。
 しかし、先ほどのジャスティスへと攻撃したのは誰なのか、ふと思い出した。その時、
レーダーに大多数の機影が捉えられた。
 ムラサメ部隊。駐留していたオーブ艦隊、援軍だった。
「・・・・・マ、マジで?」
「・・・・ウ、ウソ・・・・!?」
 ジャスティスが海中から上がってきて、ルナマリアが苦い表情を浮かべる。メイリンは苦痛に
苦痛の表情を上げて、諦めにも似た様子を見せていていた。
 およそ30機。メイリンが張ったセキュリティをようやく解除できてここまで辿り
着けたのだろう。
「遅れてしまい申し訳ありませんでした、キラ殿」
「いえ、いいタイミングでした」
 部隊長から通信が入ってくる。
 これで勝った。キラは勝利を確信した。
「・・・・お、お姉ちゃん」
 不安げに姉に呼びかけるメイリン。さすがにルナマリアの表情にも、もはや笑顔はなかった。
あの二人はムラサメ隊に任せておけばよかった。二人を引き付けている間に島へと戻り、
今度こそシン・アスカを抹殺すればいい。運気が、こちらに向いてきたのだ。
「ご指示をお願いします」
「分かりました。全部隊・・・・・」
 攻撃命令を下そうとしたその瞬間に、島の方角から光が差し掛かってきた。一筋の光が、
真っ直ぐムラサメ部隊へと差し込み、一瞬で5機のムラサメが落ちた。
 何が起きたのか理解できずに、キラはただ愕然とした。島の方から、一機のMSが向かってきた。
186第二十話11/12 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/12(金) 00:39:27 ID:CxwKWSsw
「・・・・ようやく、主役のご登場ってわけね・・・・♪」
「え・・・・・シ、シン・・・!?」
 ルナマリアとメイリンが明るい歓声を挙げた。島からやってきたあのMSのシルエットは、
忘れようとも忘れられるものではなかった。デスティニー。
 最悪の事態に陥ってきた。デスティニーの参戦は、キラの想定外の展開だった。デスティニーを
出される前、生身のままの状態で打ち倒すはずだったのに。シン・アスカ。あの男が
来てしまったのだ。
「・・・・おいおい、ずいぶん派手にやられたな。ルナマリア、それにメイリンも」
 シンが感心したように二人へと声をかけた。その皮肉っぽい第一声には二人も苦笑いを浮かべる
しかなかった感じだった。
「あ、あはは・・・・な、何のまだまだやれるわよ!!!」
「うう・・・・・酷い。これでも頑張ったのに・・・・」
 少なくとも、ルナマリアの方は先ほどの攻撃でも損傷は軽微であり、まだ充分に動ける
様子だった。メイリンの方も、いくらドラグーンが使えなくなったからといって、まだ戦意は
衰えておらず、むしろシンが来たことにより諦めかけていた気分がまた復活していた。
脅威には、何ら変わりはなかった。
 シンも二人が無事だということが分かると安心したように笑った。
「ま、無事だから良かったさ。てっきりフリーダムにやられたんじゃないかとばかり、
心配してたんだぞ」
「私らを甘く見すぎよ、シン」
「うん。まだ・・・・・戦えるもん」
 ルナマリアとメイリンが、フリーダムの方へと睨んできた。そして、シンも鋭い目つきを
送ってくる。一瞬キラはたじろいでしまった。気迫だけで、もはや圧されてしまって
いるのだろうか。
 一人はただの素人で、一人は今まで何の戦果も上げることのできなかった無名の
兵士。そして、今ではもはや民間人になった人間に、押されているのだ。現実での実力差は
一対一ならば確かに勝っているはずだった。
「二人は、離れててくれ・・・・ここは俺一人でも充分だから」
 シンが静かにそう呟いて、デスティニーを前に進めてきた。殊更あのデスティニーが、一番
不気味だった。
187第二十話12/12 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/12(金) 00:40:29 ID:CxwKWSsw
 以前までのシンならば、このフリーダムの姿を確認した瞬間に、どんなに遠く離れていて
感じるほどの憎悪と怒りで溢れかえっており、我を忘れて突撃してきたというのに。
 しかし今は、それを、全く感じない。あまりに、静かで。だが力強い気迫を絶えず感じた。
その静けさが、不気味さを助長させて寒気まで感じた。
「・・・・ぐ、こ、この!!!」
 デスティニーの威圧感に耐え切れなくなったムラサメの数機が、焦ってデスティニーの方へと
突撃を開始した。デスティニーは動かなかった。
「邪魔だ!!!!」
 シンの大きな一声が聞こえたと思った瞬間に、デスティニーに攻撃をしかけようとした
ムラサメが、一瞬の間で撃ち落されていた。
 何をしたのか、見えなかった。
「・・・・・これで終わりだ、キラ」
 シンに睨まれた瞬間に、体が震えた。
 恐怖を、感じていた。今のシンは、キラが知っているシンではなかった。当時のあのただ
荒々しいだけのシンなんかと比べ物にならないほど、今眼の前にいるこの男は手強い。
勝ち目がなかった。肌で、そう感じた。
「くそ!!キ、キラ殿、ご命令を!!!」
「数でならこちらが圧倒的に有利です!!やれます!!」
 勝手なことばかりを口走るオーブの兵士たち。正気かと、キラは我が眼を疑った。
実力の差が、まるで分かっていなかった。
 しかし、ようやくここまで追い詰めることができたのだ。このまま、止めを刺せなくていいのか。
「・・・・ぜ、全部隊・・・・」
 デスティニーの眼が、キラを睨みつけるかのように光り、それを見て言葉を失った。恐怖に
駆られながらも、キラは悔しさを噛み締めながら声を震わせて叫んだ。
「全部隊退却!!!この領域から迅速に離脱してください!!」
 オーブの兵士だけでなく、シンたちまでその言葉にしばし唖然としていた。
 目的を達することもできなくただ逃げ帰ることしかできないとは。いや、勝つことはおろか、
この状況下からの脱出を試みることさえもはや至難の業となってしまった。
 シンは自分を逃すことを許さず、追撃してくることになるだろう。決死の退却戦だ。
「・・・・殿は、僕が引き受けます」
 敗北。その言葉が、頭によぎった。
 なぜここまで追い詰められることになってしまったのか。自分の甘さが、このような事態にまで
発展させてしまったのだろうか。こんなところで死んでは、一体何のためにここまで来たのかも
分からなくなる。
 しかし、生きてさえいれば、またチャンスは来る。この場からの脱出し再起を伺うことこそが、
次の戦いへとまた繋げることができる。
 サーベルを構えて、キラはデスティニーの方へと睨み返した。
188 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/12(金) 00:41:32 ID:CxwKWSsw
・・・・うん、特に言うことないやw
キラ?ああ、全員から否定されてかわいそうですねぇー
本当にそれ以上言うことないですw



次回最終回です。最後の追撃戦ですね
ではおやすみなさい・・・・
189あの人:2006/05/12(金) 00:53:46 ID:X+b+GmF9
GJですっ!
仲間のピンチに颯爽と駆け付けるシン。主役のご登場ww
次回で最終回なんですか……最期まで見届けますっ!


>>172
『ANOther』にはこっそり色々と仕込んでいますからね……
サルベージは元より、今まで自分が本スレに投下した話の
裏設定的なものとかも……船ごと沈んだあのカニとか。
>>173
あの二人ですね。色々と捏造が入っていますが……。
バトルでもDC分が足りるようにがんばってみます。
>>174
生粋の軍人から見たら、不殺主義者はこんな感じだと思いました。
ちなみに、批判しているのは副長さんの方なんです。
名前がないとわかりづらいかな……あと、赤いの3倍という情報は、
記録(?)映像からの情報で、この艦の人たちとは関係ないz(ry
190名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/12(金) 02:28:34 ID:hFXVyw3K
GJ!シンの最初で最後のMS戦。本編と比べるのがアホらしい位燃える展開だな。
最終回でついに番宣や3期OPでやってたあのバトルが見れるのだろうか?
191名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/12(金) 15:55:39 ID:DZTzjpWr
気が付けば20話…
そして次回は最終回!
早いものですね……

GJも後2回しか言えないだなんて……
デスティニーinシンの発進シーンではつい保管庫にあるEDを思い出してしまい軽く鳥肌が……


最終回も期待してます!
 G J !!
192名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/12(金) 21:15:45 ID:GllnfKpB
GJ( ゚∀゚)ノよぅ!

なんだけど、…でも…でもぉ!どうしても一言言いたい。
ストフリなんだよね。レジェンドのドラグーンが使えるのに
何でストフリのドラグーンの出番がないんだァー!?
それが、ひたすら違和感あった…。
193名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/13(土) 04:13:45 ID:DYMqejRo
>接近戦に入り一撃で潰すのが最も最速の攻略法で
>あったふぁ、

揚げ足をとるつもりじゃないが
緊迫したシーンでなんだか和んでしまったw
194名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/13(土) 15:02:38 ID:SuInPq1B
>>192
最後の切り札用にとってあるんだと思っていたがこの期に及んで
使う気配が無いのを見ると可能性としては・・・

1.キラの場合ビット使うよりMSの操作に専念した方が強い。
2.地上で使えるわけ無いじゃん。不可能を可能にしたメイリン凄い。
3.「やっぱあのデザインダサいよ…。」とラクスに相談した結果
   外装と武器をフリーダムのに変えてもらった。
195名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/13(土) 22:46:11 ID:E3nEvI+X
今頃ドラグーン使っても片っ端からシンに撃ち落されそうな感じだな。
そんなにことりの焼いたクッキーが食べたいのか・・・。
196名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/13(土) 23:03:28 ID:8MdoAz6I
それはそれで燃える。
>>194を見て思った。レジェンドのドラグーンが使えているのを見て、
地上でドラグーンが使えると判断したキラがストフリのそれを射出。
しかし、飛ばずにドラグーン落下・・・キラ「えぇ?何で?」

でも、いい気がした
197あの人:2006/05/14(日) 01:03:23 ID:qjDe7k0D
>>194
メイリン「ドラグーンは重力下では落下してしまう……
     なら、上昇した状態で展開して、落ちてきたところを回収、
     これの繰り返しをすれば問題ない!
     平行方向の加速度は垂直方向の加速度に関係ないわ!」
とか考えてみたり。空気抵抗とかもありますが……。
コントロールは難しそうですが、それをできるのがメイリンだ!
というわけで、自分は2を。
198 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/14(日) 20:24:51 ID:V54ozdro
>>193
誤字ハケーン・・・・('A`)
あったふぁではなく、あったが、って書きたかったんですね・・・・はい
見直しもしてないので探せばまだまだ見つかることでしょうねw

>>194
近いのは2、ですね。ウィキで調べてみたらやっぱドラグーンは大気圏内じゃ
使えないのが分かりましたので、じゃあ今後は使わない方針でということで・・・w
1寄りも少しありますね。やっぱ飛び道具を使っているうちはまだまだ半人前です
さすがキラきゅん、実力だけは一流ですね。



本音を言ってしまえば、「あーそういえばストフリにもドラグーンあったなぁー」、
さっき思い出しました。どんだけいい加減な設定だよw

>>197
もうメイリン凄すぎやんw
199名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/15(月) 23:46:45 ID:pG/XNzJi
>>197
すごい速さでレジェンドの手足を動かしてキャッチ&ホールド
を繰り返しながら戦闘してたのか!?
200名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/16(火) 02:33:10 ID:rV++Tovb
>>199
キャッチもホールドも同じ意味じゃないか
201名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/16(火) 23:49:38 ID:uL5I2Ciw
デスティニー、フォーチューンと来て、まだ運命って意味の単語は残ってる訳だが
ちょっと考えてみようかな
202名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/17(水) 16:27:22 ID:zMbtp5JH
・ZGMF-X99Sドゥームガンダム
議長がフォーチューンと一緒にこっそり作っていた自己再生・自己修復・自己進化
の三大理論を元にしたMS。一部同時期に開発していたデスティニーと共通パーツを使用。
誘拐した魔法少女を生体コアに使うことであらゆるものを取り込んで無限に巨大化するらしい。

…で、最後はデスティニーが両手からry
203板違いスレ発見:2006/05/17(水) 16:54:57 ID:aiezgyKS
204名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/17(水) 23:05:05 ID:ve432296
>>202
シン「セキハテンキョケン!」
205名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/20(土) 02:04:18 ID:tBy72SZh
>>203
確かにorz
206名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/20(土) 02:42:38 ID:f54H11lu
アニメキャラの話題のうち、単体キャラ/カップリング/グループ/キャラ対決など
特定のキャラ限定の話題を扱います

シンとことりとキラと音夢とルナマリアとメイリンに萌えるスレだしいいんでね?

多分。
207名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/20(土) 03:24:59 ID:Hm7lecW4
屁理屈乙
208名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/20(土) 16:11:49 ID:gOTs0Pm2
ここはもともとシン・アスカと白河ことりが交流するスレから派生した姉妹スレで
スレ名はこうだけど根本はシン・アスカと白河ことりが交流するスレだからOKだと思う
209 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 17:51:59 ID:wKmTgNZw
最終回いきます
文の量も最終回だからやはり多いですねぇw
210最終話1/10 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 17:53:02 ID:wKmTgNZw
 島の遥か先の方で、閃光が見えた。一筋の光が真っ直ぐ伸びていくと、その途上に
いくつもの赤い爆発が起きて、まるで花火のように消えていった。
 嫌な光だと、ことりは思った。あの光の中で、また何人かの人が亡くなってしまったのかと
思うと、それが信じられなかった。
 世界各地で紛争というものは毎日行われている。平和な日本に住んでいることりには
そんな人が人を殺すなんていう悲しい現実を知らずに、暢気に生きてきた。
 けど、そんなことりにも分かった。これは、戦争なんかじゃない。ただの殺し合いである
ということが。戦争ならばいいというわけではないけれど、それでもあの渦中の中に
シンやルナマリア、メイリンといったことりの大切な人たちが巻き込まれてしまっていると考えるだけd、
不安でたまらなくなる。
 こんな事態にまで発展させた原因。キラ・ヤマトを、やはりことりは許せなかった。
「・・・・返して」
 ぽつりと小さく呟く。この戦いで本当に昔に、あの昨日までの争いのなかった日々に
戻れるのだろうか。みんな、そのために戦っていた。それなのに、自分はこんなところでたた
昔に戻って欲しいと祈っているだけで、何もできなかった。そんな自分が、ことりは嫌だった。
「心配か、白河さん?」
 アスランが隣に来てことりの様子を見に来た。少し不安げな様子を見せてしまって、
アスランは苦笑した。
「無理もないか。けど、シンたちは負けないさ。アイツらは、白河さんが思っている以上に強い」
「・・・・・・」
「俺としては、複雑なところだがな」
 アスランが何とも言えない表情で戦闘が行われているであろうと思われる場所を見つめた。
 親友と憎み、争うことになってしまったアスラン。今、どんな気持ちで見つめているのだろうか。
ことりには皆目見当がつかなかった。
「あ、アスラーン!!セイバーの発進準備、できたわよー」
「ああ」
 ミーアの甲高い声が響いてくる。
 セイバーという機体がまだ残っていたらしく、先ほどからその発進準備を進めていた。
 アスラン曰く、アレ弱いから嫌なんだよな、らしかった。ただないよりはましでやむを得ず
それで出撃をするのを決めたみたいである。
211最終話2/10 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 17:54:06 ID:wKmTgNZw
「・・・・・あ、あの!!」
 ことりに背を向けてセイバーの方に向かおうとするアスランを、ほぼ無意識的に呼び止めていた。
アスランが不思議そうな顔をして振り向いた。
「どうした?」
「あ、あの・・・・・」
 少し躊躇してから、ことりははっきりと伝えた。
「わ、私も連れて行ってください!!」
 そう言ってから、自分でも何を言っているんだろうと思った。
 けど、じっとなんか待っていられなかった。何もできないだろうけど、それでも何かをしたいのだ。
アスランがじっとことりのことを見つめてくるが、やがて小さく溜め息をつく。
「分かった。いいよ、乗って」
「え・・・・・い、いいんですか・・・・?」
 こうもあっさりと了承が出るとはことりも思っていなかったので、その答えが意外だった。
「俺も、危険だったら君を連れていったりなんかしないさ。けど、俺たちがあっちに着く頃には、
恐らくはもう戦闘は終わるだろうから、許したんだ。
 そう言ってからアスランがからかうように微笑んだ。
「それに、早く君も彼氏に会いたいことだろうしな」
「えっ!?い、いえ、決してそんなことではー!!」
 ことりが顔を赤くさせて首を振った。
「・・・・アスラン、意地が悪いわよ」
 ミーアが呆れた感じでアスランのことを見つめていた。
 夜が、明けそうだった。朝陽とともに、この悪夢も光とともに明けて欲しいと、ただ願うこと
しかできなかった。
212最終話3/10 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 17:55:31 ID:wKmTgNZw
 退却。キラは、はっきりとそう言った。その決断にシンもしばし唖然としてしまった。
 ここまで無茶苦茶にしておきながら、不利になったら逃げ出そうとするふてぶてしさ。
実にふざけた人間だと、シンは思った。
 しかし、ここまで追い詰めた末に勝ち目がないことを冷静に悟り退却するという策を取った。
その迅速かつ極まりない決断には、感服させられるところもあった。相手の力量を知り
無謀な突出は控え自ら身を引くその潔さ。エースの名は伊達ではないということなのだろう。
 しかし、考えが甘かった。シンは、逃がすつもりなどなかった。ここで止めを刺さなければ、
この男はまた同じことを繰り返してくることは眼に見えて分かっていた。二度と立ち上がれないように、
確実に仕留めなければ。
 キラが更に指示を出して、ようやくといった感じでムラサメ隊が退却を始めた。
「逃がすもの・・・・・って、え?」
 すぐさま追撃をしようとした矢先、デスティニーの真横に強い風が通り過ぎていく。
シンよりも速く、ジャスティスが先にフリーダムへと猛攻撃を仕掛けた。
 キラもすぐに反応をして、ジャスティスのアロンダイトをビームサーベルで受け止める。
更にもう一撃、振りかざす。激しい打ち合いとなり、互いの刃と刃の間に火花が飛び散りあった。
 ほぼ互角に渡り合う二機を、シンはしばし呆然と傍観していた。そこにレジェンドが
デスティニーとなりに来て、メイリンが慌てた感じでシンに向かって呼びかけてくる。
「な、何ぼーっとしてるの、シンったら!!早くお姉ちゃんを助けないと」
「い、いやだけど・・・・相手はフリーダムだぞ!!危険だ、お前たちは」
 下がっていろ、そう言おうとするが。するとメイリンが怒った感じで睨んでくる。
「そ、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!!急がないと、フリーダムが逃げちゃうよ!!」
 そう言い放ち、メイリンは飛び出すかのようにルナマリアの加勢へと向かった。
 メイリンはあんなに積極的な人間だったろうかと、シンは不思議に思った。
 その間にもジャスティスに続きレジェンドも加わり、打ち合いは更に激しさを増した。
ルナマリアもさながら、メイリンのその動きも素人とは思えぬほど相当に速い。
あのフリーダムの動きに付いていけているのだから。右から、左から同時に斬撃がフリーダムへと
降り注ぐ
 しかし、そのフリーダムも確かに圧されてはいるものの、二人を同時に相手にしても
未だ踏み止まっている。キラはやはり、想像を遥かに超えた強さだった。
213最終話4/10 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 17:57:00 ID:wKmTgNZw
「な、何で!?何でこれで落ちないの!!!」
「ぐっ・・・・ま、まだまだ!!!!」
「な、何て速さをしてるんだ、この二人は!!」
 ジャスティスとレジェンドは、更に速さを高めていく。さすがのキラも、その鋭い攻勢に
苦渋の顔を浮かべていた。
 あと一撃加われば、崩れる。シンがそう確信した時には、駆けていた。ビームサーベルを抜き放つ。
 キラははっと気づき、一瞬でもう一つのサーベルも取り出してシンの一撃を受け止めた。
「なっ!?」
 シンは驚いた。今の一撃が受け止められるなんて、思っていなかった。
 しかしその間に、フリーダムの真横からジャスティスが、正面からはレジェンドが一斉に
集中攻撃をかけた。シンもすかさずビームサーベルを振るった。三機同時の一斉攻撃。
 キラもこれにはさすがにたまらず、何とか凌ぎきると急ぎ距離を取って離れてしまう。
「ぐぅ、やっぱ逃げ足だけは速いわね・・・・!!」
 ルナマリアが面白くなさそうに呟いた。決して逃げ足だけではない。キラは三機を同時に相手に
しているのだ。その強さは常人の領域を超えていた。けれど、三機ならば押し切れるということだ。
どんなに鬼人の如き強さを持ち合わせていようと、所詮は人間。囲めば、絶対に倒せる。
 すぐに後を追おうとしたが、ふと何かが迫ってくるのを感じてシールドを構えた。
予感通り、真横にビームが被弾した。既に退却したと思っていたムラサメ隊が、引き返してきたのだ。
「な、何で戻ってきたんだ!?これ以上は、僕ももたないんだぞ!!」
 キラが驚いた表情をして、激しく怒鳴り散らした。あの慌てようから、相当追い詰められている
という事実が分かる。
「我々が囮となりますので、キラ殿は脱出を!!」
 そう言ったのは、ムラサメ隊の部隊長と思われる人物だった。
「なっ!?何を!!」
「キラ殿はオーブにとって必要な人。ですから、ここは我々が引き受けますので、どうか
生き延びてください」
 続いて他の兵士たちも同調した。
214最終話5/10 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 17:58:43 ID:wKmTgNZw
「だ・・・・だけど!!」
「ふーん、感動的なシーンね・・・・・」
 ルナマリアのジャスティスが前に出て彼らの言葉を笑殺する。
「けどね・・・・悪人に加担したところで、邪魔するなら・・・・・私は何の迷いもなく斬るわよ?」
 斬艦刀を振りかざして威圧するジャスティス。それだけで、ムラサメ隊は怯み動揺が走った。
「う、うろたえるな、相手はたったの三機なんだぞ!!数で押し切れ、四方から包囲をしろ!!」
 隊長機のその言葉をきっかけに、ムラサメ隊が動き出した。
「ま、待つんだ!!」
「今のうちに、どうか脱出を」
 既に、部隊が動き出していた。これはもはや止められないと判断したのか、諦めを悟り
キラは渋々頷いた。
「・・・・皆さん・・・・分かりました、後をお願いします・・・・」
 フリーダムが背を向け本格的に退却を開始し始めた。
「あー!!シ、シン、キラさん行っちゃうよ!!早く追いかけないと!!」
「わ、分かってる!!!」
 メイリンの声を掻き消すほどの大声で怒鳴った。フリーダムの後をデスティニーを含めた
三機が全速力で追撃を開始した。
 しかし、バーニア全開にさせても、フリーダムの速度には追いつかずにみるみると
距離を離されていく。更に左方前方からはムラサメ隊による激しいビームライフルの嵐が
降り注いでくる。
「シ、シン、さすがにこの状況はマズイわよ」
「どんどん離されていくよ!!」
「分かってるって!!何度も言わすな!!」
 フリーダムを、ここで逃がすわけにはいかない。かといって、ただこのまま後ろを追いかけて
いってもフリーダムには追いつけず、ムラサメ隊により蜂の巣にされてしまう。
 シンは頭を必死になって働かせて考える。そして最速の決断を思い浮かび、叫び二人に指示をする。
「ルナ、挟み撃ちだ!!!」
「は?」
「俺が右から、このままフリーダムを追う、お前とメイは左から攻めろ!!」
「左・・・・って!!ムラサメ隊がいるじゃない!!」
215最終話6/10 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 17:59:55 ID:wKmTgNZw
 何を言ってるんだといった具合にルナマリアが激怒するが、更に説明を続ける。
「俺が何とかして、フリーダムをあの部隊の後方まで追い詰める。お前たちは単機で
あの部隊の中央から攻めて掻き乱せ。部隊を撹乱させ動けなくさせたら、そのまま部隊の
後方まで駆け抜け、出てきたところをフリーダムに強襲する形を取る。できるか?」
 とにかく、これ以上ムラサメ隊に邪魔をされては追撃不可能となってしまう。中央から
ぶつかり部隊の進行を防いでいてくれれば、シンでもフリーダムを誘導するぐらいの自信はあった。
 部隊の後方から飛び出してきたジャスティスとレジェンドによる強襲でそのまま落ちてくれれば
一番だったが、さすがにキラもそこまで甘くはないだろうと睨んでいた。
 最低限、フリーダムの足を止めてくれればそれで充分だった。
 ルナマリアは一瞬唖然としていたが、やがてその顔は笑顔に変わり余裕の表情を見せた。
「私を誰だと思ってるの?任せときなさい、シン♪行くわよ、メイリン」
「え?え?ど、どういうこと、お姉ちゃん!?」
「いいから!!早く来なさい」
 未だ釈然としないメイリンを連れて、ジャスティスとレジェンドが離れていった。
 これで布石は整った。あと成功するかどうかは、運頼みでしかない。
 朝陽が、差し掛かってきた。海面が陽の光に反射してきらきらと輝き放ち、デスティニーと
フリーダムを照らしていた。これで、フリーダムはもはや闇に乗じて姿を眩ますことも
不可能となった。運気は、確実にこちらに傾いているという気がした。
 キラは、確かに強い。これほど強いパイロットは、後はアスランぐらいしか知らなかった。
 しかし、どんなに強くたって、所詮はただの人間なのだ。どんなに最強と褒め称えられようと、
神なんかではない。一人の人間の力なんてものには限度がある。
 己の力を慢心しすぎた。敢えて敗因を挙げるなら、それが一番の要因であっただろう。
 しかし、そんな馬鹿げた蒙昧な夢想のせいで、どれだけの人間を苦しめてきたことか。
 ふと、ことりの泣き顔を思い出してしまった。
 あんなにことりを悲しませたキラを、絶対に許すわけにはいかない。
 先ほどから、全速力で追いかけているというのに、一向に追いつかずむしろ距離を離されて
いくように思われた。本来ならもっと速度が出てもおかしくないはずなのに、デスティニーの
出力がどうしても上がらないのだ。
 現在のデスティニーは本来の七割の性能しか出せないとミーアが言っていたが。
 たかが三割と鷹を括っていたつけの分が、ようやく親身に感じるようになってきた。
 もっと速く、追いつけ。シンはそうデスティニーへと祈った。
216最終話7/10 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 18:01:08 ID:wKmTgNZw
 左方を見ると、ルナマリアが正面からムラサメ部隊へとぶつかっていくところが見えた。
アロンダイトを振りかざすだけで、一瞬にして二、三機のムラサメが沈んでいく。
ジャスティスが駆けていくところに、道ができていく。
 いつもなんかとは比べ物にならないほど、今日のルナマリアは冴えていた。その実力には
シンもつい感心してしまうほどであった。
「お、落ち着け!!陣形を整え、包囲をして迎撃の態勢を取れ!!!」
 隊長機らしき機体から声が響くが、周りはルナマリアの勢いに圧倒されていて上手く
統制が取れないでいた。レジェンドもルナマリアの後方から続き、ジャスティスが討ちもらした
敵機を確実に仕留めていっている。
 やがてジャスティスが隊長機を発見すると、真っ直ぐにその場所まで駆けていく。
隊長機は焦りながらジャスティスに向けてビームライフルを乱射するが、全てアロンダイトに
弾き飛ばされてしまう。あっという間に隊長機の眼前まで迫った。そう思った時には、
既に隊長機は悲鳴を挙げる暇も与えられず真っ二つに討ち取られていた。
 隊長機を失った部隊は統率が取れなくなり、散を乱して潰走状態となる。
 大抵は、大将が討ち取られるとその部隊は崩れやすくなるが、オーブ軍がいかに統率が
整っていないかが一目瞭然で分かる。
 キラが忌々しそうにジャスティスを睨んでいた。
 ジャスティスとレジェンドは反転するとそのままムラサメ隊の中を潜り抜け出口を目指して駆け出した。
 速すぎた。このままでは、タイミングが合わずにフリーダムを誘い込む前に出てきてしまう。
「ルナ!!!もうちょっと人に合わせるということができないのか!!」
 シンが怒るように怒鳴ると、負けじとルナマリアの方も声を張り上げた。
「遅いのよ!!これ以上速度を落としたら、挟み撃ちをする前にキラに逃げられるわ」
 ルナマリアの言うことは最もだったが、現に未だフリーダムを誘い込めないでいた。
 無理な作戦だとは思わない。デスティニーが、思ってた以上に動かないのだ。
シンは唇を噛み締めた。
「・・・・さ、誘い込めないのなら、無理やり誘い込むまでだ!!!」
 シンは速度を保ったまま脇に装備されていた高エネルギー長射程ビーム砲に手を伸ばそうとする。
風圧で、思うように動かない。
217最終話8/10 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 18:02:09 ID:wKmTgNZw
「なっ、正気か!?この速度で、撃てるものか!!!」
 焦った感じで、キラが叫んできた。そんな言葉、耳に入らない。
「今撃てなきゃ、お前を討つことができないだろうがぁぁあああ!!!」
 無我夢中で、引き抜くようにビーム砲を前方へと向けた。圧力が重くデスティニーに圧し掛かってくる。
 不意に、肩に激痛が走った。キラに撃たれた場所だ。
 こんな傷、痛くないと思った。引き金は決して離さない。最大出力で撃ち放った。
「いけぇぇえええ!!!」
 巨大な粒子の塊が、一直線に差し掛かった。止めないで、放ち続けた。ビーム砲が悲鳴を
あげるように軋む。
 壊れてもいい。最後に一撃、攻撃できる余力さえ残っていればいい。
 粒子の塊がじりじりとフリーダムの方へと向かっていく。避けるために、左へと傾く。
 同時に、フリーダムの速度が落ちた。一気に距離を縮める。
「逃がすかぁぁああああ!!」
 右方から攻め、サーベルを構えて振り上げる。フリーダムはかわしたが、なおも執拗に
追いかけるデスティニー。
 キラはデスティニーとの交戦をさけるために、止むを得ず更に左へと後退していく。
ムラサメ隊の後方へと近づいていく。
 ルナマリアとメイリンはどうした。誘き寄せるのは成功したが、まだジャスティスの姿がなかった。
 しかし次の瞬間には、眼の前にいたムラサメが爆発した。爆風とともに飛び出してくる機体、
ジャスティスが待ち構えていた。
「はぁぁぁあああ!!」
 アロンダイトの重い斬激が舞った。フリーダムはシールドを構えてそれを防ごうとしたが、
斬艦刀はシールドごと破壊してしまう。よろめくフリーダム。
「メイ!!!」
 ルナマリアが叫んだ。爆風の中から更に遅れて出てきたレジェンドがシャベリンを振りかざす。
フリーダムがレジェンドへとサーベルを突き出してきた。サーベルはそのままレジェンドの肩へと
突き刺さった。しかし、フリーダムの突き出した腕を掴み、捉える。メイリンの勢いは衰えない。
「そこ!!!!」
 捨て身のレジェンドの一撃にフリーダムの右腕ごと吹き飛ばされてしまう。態勢が更に乱れる。
218最終話9/10 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 18:03:14 ID:wKmTgNZw
「くそっ!!!」
 背を向けてその場から脱出しようとするフリーダム。しかし、もう遅い。捉えた。
キラはすぐに後ろから接近してくる機体に気づき、急ぎ反転させた。
 デスティニーが、フリーダムのすぐ眼の前まで迫る。全砲門を開く。フルバースト。避け切れなかった。
「シン!!!」
 誰かの声がした。その瞬間、頭の中が真っ白になって、何かが弾けた。
「うぉぉおおおお!!!」
 デスティニーの背面のフィンが展開して、光の翼が現れる。爆発的な速度でフリーダムの
フルバーストをかわした。
「な、何だと!?」
 更に無秩序にビームを乱射させるが、絶対に当たらない。たかがフリーダムの攻撃、
当たるはずがないと思っただけだった。
「な、何で当たらないんだ!!!」
 キラが動揺している間にフリーダムの背後に回りこみ、振り返ろうとした頭部をデスティニーの
腕が鷲掴みして捉える。
「なっ・・・・!?」
 キラは、言葉を失って絶句した。
「・・・・捕えた」
 シンが苦しげな表情をしながらも、にやりと笑みを溢した。
 デスティニーは容赦なく掌に隠されていたパルマフィオキーナ、光り輝く手でフリーダムの
頭部に撃ちかました。たちまち頭部は吹っ飛び、フリーダムのシステムが急激に低下した。
「く、くそ!!!メインカメラが!!!」
 慌てた表情で操縦桿を動かしているが、フリーダムは完全に停止したままで、一向に
動く気配はなかった。
 シンは冷たく静かに言い放った。
「・・・・・キラ、アンタは強かったよ・・・・・だけど、アンタは神でも何でもない・・・・・
一人では、ただの人間と何ら変わらないんだ!!!」
「よ、よせ!!!!」
219最終話10/10 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 18:04:29 ID:wKmTgNZw
 キラの制止の声にも耳を傾けず、そのままフリーダムを海面へと投げつけた。
フリーダムは動くこともできずに、ただ重力に引かれて落ちていく。脇にあるビーム砲を
フリーダムへと差し向けた。
 これで、最後だと思った。
「地獄に落ちろ!!!キラァァァアアア!!!!!」
 最大出力で撃ち放つ。ビーム砲が耐え切れずに、爆発を起こした。デスティニーも
それに巻き込まれて、とうとう腕が吹き飛んでしまった。
「ぐぁぁああああ!!!!」
 キラの恐怖に駆られた断末魔と同時に、巨大な粒子が海面へとぶつかり大きな爆風が辺りを
包み込んだ。衝撃が、デスティニーの機体にまで伝わってくる。
 振動が収まると、先ほどまでとはうってかわって静寂が辺りに訪れる。
 まだ、煙で海面が見えない。
「・・・・・お、終わった・・・・・の?」
 メイリンがおずおずと尋ねてくる。シンもルナマリアも答えずに、黙ったままただ海面の方を
見つめていた。
「・・・・・・」
「・・・・・いや・・・・」
 シンが小さく呟く。煙が晴れてきた。
「・・・・・敗けだな、俺たちの」
 そう言ったシンだったが、なぜか悔しさは沸いてこなかった。
 海面にはフリーダムの姿は消えていて、どこにもいなかった───
220エピローグ11/16 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 18:05:44 ID:wKmTgNZw
 陽は、すっかり昇りきっていた。
 既にムラサメ隊の残存兵力の姿も消えていた。
 ようやく肩の力を抜くと、肩だけでなく何だか全身が非常に痛い気がしてきた。
機体だけでなく、体のほうももうぼろぼろの状態だった。
「・・・・あー・・・・眠っ・・・・」
「もうダメー・・・・これ以上動けないよー・・・・」
 二人もようやく今まで張りっぱなしだった気を緩めて落ち着くことがえきたらしい。
メイリンなんかはだらしなく操縦席に突っ伏してしまう。
「ほらメイリン、しゃきっとしなさい」
「だってぇー・・・・もうくたくたなんだもんー」
 そんな他愛もない会話を交わしながらシンのことはほったらかして二人でとぼとぼと島の
方へと引き上げようとする。
「ってちょっと待てーーー!!」
 シンは我慢できなくなり声を張り上げて二人を呼び止めた。気だるそうにルナマリアが振り向いた。
「ん?なーにシン?」
「なーに、じゃなくて!!もうデスティニーはぼろぼろで全然動かないんだよ!!
こういう場合、島まで引っ張ってってくれるもんだろうが」
「えー・・・・だって、私たちもぼろぼろだしー」
「気合で何とかしなさい」
 無茶苦茶なことを言いまくる二人。一体どうやれば気合なんかで半壊した機体を
動かすことができるというのだろうか。
「・・・・せ、せっかく心配したから急いで助けに駆けつけたっていうのに・・・・友達がいのないやつらめ」
 ぶつぶつと一人で愚痴を言い始めるシン。そんなシンの姿がおかしくなったのか、二人が笑った。
 そんな時、通信機からおーいという呼び声が聞こえてきた。セイバーがこちらへと向かって
きていた。
「あ、役立たずの上司のお出ましだ」
「だ、誰が役立たずだ!!」
 ルナマリアの発言に怒りを露にするアスラン。
221エピローグ2/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 18:07:50 ID:wKmTgNZw
「シン君!!大丈夫!?」
 するとアスランの隣から突然ことりが乗り出してきたので、シンは驚いてしまった。
「うえっ!?こ、ことり・・・・?どうしてここに・・・・ア、アスラン、アンタはことりを戦場なんかに
連れてきて!!!」
「お、落ち着けシン!!そこの所も計算済みだ。俺たちが到着する頃には、もう戦闘は
終了しているだろうって」
 そんなことを言うアスランだが、しかし未だ戦闘が継続中だったらどう責任を取るつもりだったの
だろうか。
「ごめんなさい・・・・私・・・・・その、心配で・・・・」
「い、いや、ことりは悪くないって。悪いのは全部この凸のせいだから」
「・・・・なんだと?」
 睨んでくるアスランをとりあえず無視して、その隣で悲しげな表情をしていることりをシンは
慌てて取り繕った。アスランが咳を一つすると、真剣な表情になって尋ねてくる。
「それで・・・・キラは?」
「上手く逃げることができたよ。良かったな」
 皮肉のつもりでシンは言ったのだが、それでもアスランはそうかと呟いてどこか安心した
感じだった。
 後一歩というところまで追い詰めた。しかし、逃げられた。ほとんど全壊に近いところまで
叩きのめしたのだが、まだ生きているのだ。しばらくは恐らく再起不能ではあるだろうが、
いつまた襲ってくることがあるやもしれない。やはり、討ち逃したのは失敗だと思ったが、
今更どうしようもなかった。
 そしてそれ以上に、シンも今は一度休みたかった。もう精神的にも限界が近い。
「とにかくお疲れ様、みんな。一度島の方まで帰島してくれ」
 アスランがそう言うとそれぞれが気だるそうに返事をして、シンを置いて島へと引き上げようとする。
「だ、だから、動けないんだってば!!」
 港まで引っ張っていってもらい、デスティニーを降りたらまず最初にことりが思いっきり
抱きかかってきた。恥ずかしくなって顔を赤くさせるシンのことをからかうアスランとルナマリア。
 けど、決して嫌ではなかった。こんなふざけたやりとりであろうとも、今となってはそれが
楽しくて、嬉しかった。
222エピローグ3/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 18:08:53 ID:wKmTgNZw
「みなさん、ぜひこれからうちにいらしてください。私は何もできませんでしたが、せめて
みなさんにごちそうをしたいと思いますので」
 ことり提案に皆が喜んで賛成する。
「すまないな、白河さん」
「焼肉パーティーしましょー♪」
「あ、朝からそんなボリュームあるの食べるの・・・・お姉ちゃん」
「あー・・・・私も行ってもいいのよねー?」
「勿論ですよミーアさん♪ほらシン君、おうちに帰ろう。アイシアちゃんもお姉ちゃんも、みんな
待ってるよ」
 ことりが笑顔で手を差し伸べてくる。しばらく呆然としてから、シンも笑ってことりの手を
ぎゅっと握り返した。



 家の前までくると、いつから待っていたのだろうか。アイシアと音夢、それと暦が玄関の
前で待っていた。シンとことりの姿を見つけるとアイシアが一目散に駆け出してきて
飛びついてきた。シンとことりが互いに顔を見合わせて苦笑した。音夢と暦も笑顔で出迎えた。
 それからはもう夕方近くまで白河家にて大騒ぎして、そのまますぐ部屋に戻ると死んだように
深い眠りについた。起きた時にはすでにアスラン、メイリン、ミーアの姿はなく、ルナマリアだけが
また島に残った。デスティニーも軍に引き上げられて、島から戦いの形跡は全て消えていた。
 次の日からまたいつも通りに学校があり、いつものように登校する。シンは疲れてるから
さぼりたいなどと駄々をこねたが、ことりとアイシアが無理やり引っ張って止む無しに
登校を強いられた。
 教室に入ると、キラのいた机には今は誰もいなくて、その後すぐにその机も撤去された。
しばらく教室では突然島に現れた巨大な人型兵器の話で終始盛り上がりを見せていたが、
その話題も二、三日もすると話す内容も尽きてしまい、みんな興味をなくしたかのように
誰も口にしなくなった。
 シンたちがこの島を救ったという事実も、誰にも知られることなくこの事件は終焉を迎えた。
 まるで、この事件自体が夢であったかのように、また平凡な日々が続いた。
223エピローグ4/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 18:09:55 ID:wKmTgNZw
「・・・・今更そんな話をされてもなぁ」
 一週間後、学校の屋上でシンとことりはルナマリアの話を聞いていた。
 キラはやはり、裏でオーブのバックアップがあり、この学園に転入してきたらしい。
オーブ政府側としてはキラ・ヤマトと一部の者たちによる独断の犯行によるものだと
否認しているらしい。現在もザフト側はキラ・ヤマトの行方を追っているが、依然行方知らず
ということらしい。
 しかし、シンにとっては今更どうでも話であった。手すりに肘を抱えて興味なさげに聞いている
シンに気がつくと、ルナマリアもどうでもいい話ね、と言って肯定した。
「ま、とりあえずキラのことは軍の方に任しといて。もうこんなことがおきないように
キラに対しては厳重に注意するから。あなたたちの安全はちゃんと保障するわよ」
「まぁ、それはいいんだが。それよりも、俺はルナマリアがいつまでここにいるのかが
気になるんだが」
「あら、私がいちゃいけないのかしら?」
 顔は笑っているが何だか少し怒っている感じのルナマリアだったが、シンは遠慮なく頷く。
「・・・・あ、あんたねぇ・・・・ちょっとは」
「ま、まぁまぁ・・・・・」
 ことりが苦笑しながら仲裁に入ると、ルナマリアも仕方ないといった感じで小さく溜め息をついた。
「何だか学園生活にすっかりハマっちゃってねー♪」
「・・・・・あっそ」
「さて、もうお昼だし。私は学食でAランチででも食べてこようかなー。あれ美味しいのよねー♪
ではお二人さんはごゆっくりー」
 意味ありげな台詞を残して、扉を閉めていくルナマリア。
 屋上にはシンとことりの二人だけになった。シンはぼんやりと校庭を眺めていた。
「・・・・どうしたの、シン君?」
 ことりがそう尋ねてきて、シンもはっとするようにことりの方を見上げた。
 どこか、いつの間にか空元気であったのだろうか。ことりにそんな心配をせてしまうとは。
ことりは何でも自分のことが分かるんだな、とシンは改めて思った。
「・・・・あの男の人のことを、まだ心配しているの?」
「・・・・いや」
224エピローグ5/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 18:10:58 ID:wKmTgNZw
 ことりが少し悲しげな表情を見せるが、キラなんて再び襲い掛かってこようと、また叩き
のめせばいいだけだった。ただ軍の警戒も強くなり、キラが初音島に来ることはたぶんない
ような気がした。それよりも。
「・・・・なぁことり」
 シンがぽつりとことりの名前を呼んだ。ことりは笑顔で応えてきた。
「何ですか?」
「・・・・俺は、この島を・・・・・この場所を守ることができた・・・・・んだよな?」
「うん、そうだね・・・・・」
 けど、どうしてだろう。あまり守ったという実感が湧かないのは。
 あの時、デスティニーから初音島を見下ろした時には、確かに自分の幸せの形というものが
はっきりと見えていた。
 しかし、キラを倒して平穏な日常を再び取り戻しても、あまり感動というものはなかった。
 この日常があって当たり前の物、そんな風に感じてしまった時、感動なんてものも一瞬の内に
儚く消えてしまった。苦労して手に入れたものが、自分のも想像していた物と違っていた。 
 今の気持ちは、そんな喪失感に似ていた。
「・・・・何だか、本当に守りきれたのかどうか、不安で・・・・」
 もしかしたら、気づかぬうちに何か大切な物を失ってしまったのではないだろうか。
気づかないぐらいだから別に大したものではないのだろうけど、けれどそれが原因で
こんなに気落ちしてしまっているのではないかと思えてくる。
 シンがそのまま塞ぎこんでしまう。ことりは何も言わずに隣にいた。
「・・・・」
「・・・・ねえシン君」
 口を開いたのはことりの方だった。
「今幸せ?」
 唐突に、そんな質問をされて、シンはなぜか言葉に詰まった。
「じゃあ、幸せじゃない?」
「それは・・・・・・」
225エピローグ6/6 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 18:12:02 ID:wKmTgNZw
 更に続けてそう尋ねられた。さすがにそれはないと思い、首を振った。
 ことりもアイシアも、みんな無事なのだから、何の不満もないはずだった。
 首を振ったシンを見てことりは弾けるように笑った。
「じゃあ、シン君は幸せなんだよ、きっと。何にも不満がないってことは、裏を返せば幸せだって
ことでしょ。本当に幸せなんていうものは、きっと自分じゃ当たり前すぎるものだから
そんな気づかないものなんじゃないかな?」
「・・・・・そういうものなのかなぁ・・・・」
 ことりの言うことは正しい気がする。キラにその当たり前の日常を壊されそうになったのが
眼に見えていたから、あの時ははっきりと自覚できたもので、本来幸せなんていうものは
普段気づかないものなのかもしれなかった。
 けれど、頭で納得できても未だ釈然とせずぼんやりとしていた。
「・・・・・」
「・・・・・シン君、シン君♪」
「んー・・・・?って!?ッッッ!!!!」
 振り返ろうとしたら、ことりの顔が真横にあった。
 正確には、意図的にそこにいたとしか思えず、頬に暖かい感触が広がった。
 ことりはえへへと子悪魔っぽく可愛らしい笑顔を見せる。
「でも、私は忘れないよ。シン君が私のことを助けに来てくれたこと・・・・・カッコ良かったなぁー・・・・
あの時のシン君」
 ことりの言葉も、頭に入らず顔を真っ赤にさせてカクカク震えているシン。
「あ、あれ・・・ど、どうしたの?」
「ここここことり、い、今何した?」
「え?助けてくれた王子様にご褒美のキス♪やっぱ。こういうのは定番っすよ〜」
「や、やっぱり・・・・ぐは・・・・」
「あぁ!!ちょ、ちょっとシン君!!・・・・・はぁ、ダメダコリャ・・・・」
 ことりの呆れた感じの溜め息が聞こえた。
 相変わらず今日も平和で、やはりこんなものかと何となく納得する。
 真上を見ると、空は青空で澄み切っていた。
226 ◆hA/Opjl6aY :2006/05/20(土) 18:13:04 ID:wKmTgNZw
ようやく終わりました。長かったw
実は昨日まで風邪引いてまして、それで投稿が遅れてしまいました('A`)<ゲホゲホ

本当はキラ殺したかったんですが、さすがに反感が強いかと思いますので、生かしときましたw
無事終われてよかったです。読んでくださった皆様には本当にありがとうございます
本スレもまだ続くのであれば今度は絵に集中しようかなぁー
それでは失礼します


誤字
エピローグ11/16→エピローグ1/6
227名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/20(土) 18:48:47 ID:hk6mtfe1
>>203
むしろこっちでしょ
http://anime.2ch.net/anichara/
228あの人:2006/05/20(土) 23:20:23 ID:YJSop+N4
長期連載、お疲れさまでした。

セイバー直してたんだ……
フリーダムに組みかかって自爆、とか、四肢がバラバラに、とか、
コクピットの横を貫かれて海に落下して爆散、とか、
なってしまうのかとハラハラしましたが、ならなくてよかったです。
……アスランと一緒のMSには乗りたくないですねw

シンとことりには、このまま幸せになってもらいたいですね。
でもそこに現れる逆襲のr(ry
とにかく、お疲れさまでした。病み上がりは気をつけてくださいね。
本スレでまたお会いできることを楽しみにしています。
それでは、最後に……GJ!!
229名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/20(土) 23:33:06 ID:sKJ2JtFd
GJ( ゚∀゚)ノよぅ!
凸!セイバーは決して弱くな〜い。活躍しなかっただけだぁ。
それも、お前のせいで。

風邪は気をつけてください。直ったと思っても次の次の日またって
パターンもあるし。
230名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/21(日) 00:15:36 ID:q5CBncnY
GJ!運命の長距離ビーム砲がここまでカッコよく使われたのは始めて見たw
エピローグの様子だとちゃんとキスできるようになるまであと何年もかかりそう
だけど二人の関係はこれくらいが丁度いいのかな。

今まで本当にありがとう。最高に楽しかったです!
231名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/21(日) 11:40:36 ID:vGu2Xmyg
どうでもいいけど
デスティニーのビームサーベルはフラッシュエッジと解釈すればいいのか
232名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/21(日) 15:38:44 ID:peCoYRQH
また考えてないと言われるような……
233名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/21(日) 16:21:01 ID:FsBeWN0D
>>226
ホント面白かったよ!グッジョブ!
個人的にはキラは始末して欲しかった・・・w
234名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/21(日) 17:06:50 ID:nRcnskkY
>>226
この後のルナマリアの学園生活やレイジングハートを装備したさくらの現状も
ちょっと気になるがキラ倒しちゃったしことりとシン関連のイベントはこれで
終了かな。長い間お疲れ様でしたー。最後まで読めて良かった。
235名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/21(日) 17:52:52 ID:sDTD/Aqa
ひとつの戦いはおわった……




だが………





それが始まりだった………





D.C.SEED DESTINY〜サクラノキヲク〜




『また戦争を起こすって言うのか!?アンタたちは!!』




近日公開




すまん……勢いで書いた
これ以上は無理だ

本スレでも書いたが、動画が出来そうだったらそっち頑張る
236名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/22(月) 17:32:01 ID:bgdurej3
デスティニーがストライクフリーダムに完全勝利。
バンダイの人達も草葉の陰で喜んでる事でしょう。

>フリーダムはシールドを構えてそれを防ごうとしたが、
>斬艦刀はシールドごと破壊してしまう。よろめくフリーダム。

・・・あれ?確かストフリってビームシールド・・・ま、いっか。
237名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/24(水) 17:36:52 ID:p4OmE0Vu
 シンが、笑った。軍にいた頃は、少なくともアスランの前でこんないい笑顔を見せたことは
殆どなかった。今なら、シンは変わったとアスランにははっきりと思えた。どこが変わったのかと
問われても、あまり上手く説明できそうに無かったが。それでも、シンからは昔の粗暴な頃とは
違う、何か力強いものを感じる。
 何が、シンをそこまで駆り立てているのか。そこで、例の彼女のことが浮かび上がってくる。
白河ことり。シンを変えた一番の要因は、彼女しかなかった。人の心をここまで豊かに
することができる。それが白河ことりという人間の強さで、そして優しさなのだろうか。
「アスラン、アンタじゃ俺を止められないぜ。俺は行くんだ」
 それだけ言って、再び背を向けて行こうとするシン。今度は、振り返らない。
自分で決めた、固い決意だった。アスランは説得するのを諦めて溜め息をついた。
「おい、シン」
「ん?・・・・・って、おわっ!?」
 アスランは手に持っていたライフルを投げ渡した。シンは落としそうになるが、何とか
上手くキャッチをする。
「・・・・・アスラン?」
「どうした、行くんだろう?人手は、多いに越したことは無い」
 狐に騙されたかのように唖然としていたシンだったが、やがてはっと何かに気がついた
表情をした。
「・・・・試してたな、俺のこと」
「何のことだ?もしお前がキラを殺しに行く、なんてことを答えていれば、俺は容赦なく撃ってたぞ。
感情に囚われた人間を連れて行ったところで、本来助けられる人質にも要らぬ危険が
及ぶだけだからな」
「・・・・・うわぁ・・・・性格悪ッ・・・・」
 そんな風に邪険に呟くルナマリアだが、口元はにやついていた。シンもしてやられたといった顔をしていた。
「け、けど、俺がことりを助けに行く理由だって、感情的だぞ?」
「動機が違うだろ。憎しみと誰かを助けたいという気持ちには、雲泥の差がある」
「・・・・ア、アンタの命令なんかに従うつもりなんt」
「別に従わなくてもいいさ」
238名無しさん@お腹いっぱい。:2006/05/25(木) 19:59:53 ID:a5WSP932
とりあえず、番外編書きさん待ちか( -∀-)ノよぅ
239名無しさん@お腹いっぱい。
ANOtherシリーズの新作を密かに楽しみにしている俺ガイル。