小説『OLやぐたんにせくはらするのだぴょーん』

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1L.O.D
業界大手の山崎出版第13編集部に勤める者達の
愛と友情と『セクハラ』の物語になる予定
2ゆんそな:01/10/16 11:06 ID:7rcge+8V
頑張ってやぁ
3TSUNAMI:01/10/16 11:59 ID:7w5n2U2k
エロモニ。のNO,105読んでね!!
4名無し募集中。。。:01/10/16 14:01 ID:Ga9hkvce
なんちゅうタイトルだ(w
5L.O.D:01/10/17 16:05 ID:HhXzFXcy



私の一日はいつもこの一言から始まる。

「おはよーさん」

二言目は日によって違う。

「なんや中学生が受付してるか思たわ!」

(うるせーよ、ババァ)

私、こと矢口真里はいつものように営業スマイルで
目の前で同じようにニコニコしながら
私をからかうオバサン・・・・・・
第13編集部編集局長中澤裕子のセクハラを乗り切るのだ。

いつものように。
6名無しさん:01/10/17 16:11 ID:HhXzFXcy
世界的に有名な建築家に頼んで作られたこのビルは
外見も中身も美しく、出版社というよりは
IT関連の先進的な企業のような面持ちだ。
5階までの吹き抜けを作ったエントランスには
柔らかい光が満ちあふれ
止まることのない出版業界を駆け刷り回る人間を
優しく出迎えてくれる。

出版業界大手 山崎出版

紙媒体に留まらず、CD、DVD、ネットを介した情報提供を武器に
どんどんとシェアを拡大し、数カ月前、ビルを建て直したのだ。
その真新しい入り口を抜けると、一番最初に見えるのが
受付嬢矢口真里、その人だ。
「いらっしゃいませ、どのような御用件でございましょうか?」
にこやかな笑顔。
嫌みは無く、見る者に元気を与えるような
そんな笑顔を社長がいたく気に入り
受付として雇われているのである。
「おぅ、矢口。元気してっかー?」
そうやって気さくに話しかけてくる茶髪のサングラスの男。
青年向け情報誌『DIVA』の編集長 寺田尽人。
若干27歳の若さでこの山崎出版でもNO.1の実力を
見せるヤリ手である。
「はい、元気ですよ。」
「いいバー見つけんや。今度、行かへんか?」
「よろこんでっ!」
寺田はヒラヒラと手を振りながら、去っていく。
彼はほとんどデスクにはいない。
彼の第7編集部には人がいないのである。
全員が外でじっくりと調査を重ね
連絡は全てPDA、またはノートパソコン、携帯で行われ
入稿までの全ての作業をデジタルで行っている。
この会社のスタイルを最も体現してるかもしれない。
矢口はニコニコしながら、業務に勤しむ。
「えーと、、、カードカード、、、、」
女が1人、のそのそと入って来て
ハンドバックを漁り、管理カードを探してる。
「なに、またないんですか?」
「いや、きっとあるべさ・・・・・・うーんと」
第13編集部局員安倍なつみ。
中澤裕子の部下なのだが、必ずといっていいほど
遅刻をし、このカードを探すのにも一苦労。
仕事はできないし、会社にとっては不必要だが
中澤が気に入ってるらしく
会社にはごまかし通してる。
「あった!」
「はいはい、そこに通して」
矢口はやぼったそうに指示する。
もう何年も前から管理カードを使って
入退社の管理をしてるのに
この安倍なつみは今でも時折、エラーを起こす。
今日はうまくいったようで
まるでクリスマスの前の子供のような顔をして
スキップをして、エレベーターに乗り込んだ。
「はぁ・・・・・・」
小さくため息。
山崎出版の受付口の二畳半。
そこが、矢口真里の居場所。
7名無し厨房。:01/10/17 16:12 ID:nS3z9X5g
面白いっ!
8つじののみ:01/10/17 16:27 ID:12DSCGJo
どこがえろいのれすか?
9名無し募集中。。。:01/10/17 16:37 ID:Sx2/EYTu
小説ものはsageでやらんと荒らされるよ
あと>>6は長いから半分くらいに切ったほうがいいと思う
10あみヲタ赤星(盗塁王):01/10/17 17:08 ID:e7cq3GxO
面白そうな予感!
11L.O.D:01/10/17 17:38 ID:HhXzFXcy
第13編集部は4階の一番奥。
ガヤガヤとうるさいが
仕事をしてる様子もない。
CDの音。
テレビの音。
しゃべる音。
お菓子を食べる音。
様々な音が、そこから聞こえるべき
ペンの走る音などを奪っている。
中澤はタバコに火をつけながら
窓の外を見る。
「天気えーなぁ」

 コトッ

自分のデスクに置かれるコーヒーカップ。
「ほんと、鳥さんが楽しそうに飛んでますねっ」
雑用係石川梨華。
お盆を抱えて、何も悪びれる様子もなく、そう言い放つ。
(鳥さんって・・・・・・)
つっこむ気力も無く、中澤が黙ってると
石川は寂しそうに頭を垂れ
他のメンバーにコーヒーをいれ始めた。
「ちょっと石川ぁ!コーヒーぬるいわよ!!」
中澤の一番近くに座ってるのは、保田圭。
走ってくる石川を眼鏡の奥深くの目で睨み付ける。
「入れ直しなさいよ」
「は、、はいっ」
すっかり怯えてしまって、コーヒーカップを受け取る手は
ガタガタと震えていた。
「ったく、コーヒー一つも入れれないのっ?」
誰に言うでもなく、それでいてはっきりと他人に聞こえるように
つぶやきながら、目の前のパソコンに目を戻す。
画面には仕事のものっぽい文字の羅列と
チャットの画面・・・・・・
12L.O.D:01/10/17 17:41 ID:HhXzFXcy
その反対側に座るのが、飯田圭織。
どこか彼方を見て、今日も交信中である。
「圭織」
中澤が声をかける。
「え?なに??」
「仕事してーや」
「あ、うん。新しいキャラのデザイン考えてたの」
そう言って、ペンを握りなおしたが
しばらくすると、またボーーーっとし始める。
この交信が終わって、実際に作業が始まれば
それなりに仕事ができるから、まだいい。
飯田と同期で、その横に座る安倍なつみは質が悪い。
飴を舐めながら、ヘッドフォンでなにかの曲を聴いてる。
机の上には何も無い。
その代わりと言ってはなんだが
机の下はお菓子で満杯になっている。
彼女は毎日のように遅刻をし
ずーっとちりぽりお菓子を食べ
家に帰るのだ。
仕事をさせれば、幼稚な文を書き
写植を貼り間違えたり
別な写真を指定したりと
キリがない。
中澤の悩みのタネだが、どこかほっとけなくて
会社に実情は話してなかった。
13L.O.D:01/10/17 17:42 ID:HhXzFXcy
その反対、後藤真希も似たようなもので
机の上に堂々と枕を置いて、眠ってる。
この社内の他の部署の人間に限らず
内外の男に好かれ、夜は遊び歩く毎日。
なので、昼間は寝ている。
安倍のように遅刻はしないが
ここまで大胆に寝られるというのも
また困ったものである。
しかも、彼女の机には化粧品やらパンフレット、
パーティー券、櫛、様々な物が散らばっている。
こないだ後藤がいない時にチラッと覗いたら
コンドームとピルが無造作に置かれてた。
さすがの中澤もそれだけは見逃せず
後藤を別室に呼んで、注意した。
机の汚さと言えば、その隣の吉澤ひとみも
相当なものである。
彼女の場合は汚いのではない。
けっして乱雑ではないのだが
この部屋において、その机は一見異常でさえある。
まず、テレビ。
15型だが、机に備え付けてる。
その下には2台のビデオ。
その横には高く積まれた格闘技の雑誌。
プロレス、K-1、パンクラス、シュート、ボクシング、相撲・・・・・・
種類は問わず、戦う者に憧れを抱き
四六時中、自分の席で延々と見続けるのである。
彼女の後ろには専用の棚があって
古今東西の格闘系ビデオが揃っているのだ。
試合があれば、終業前だろうが構わず帰るし
取材と称して、女性格闘家と知り合ったりしてる。
14L.O.D:01/10/17 17:42 ID:HhXzFXcy
吉澤の隣の石川の席も相当すごい。
ピンク。
椅子も机もそこに転がる全ての物がピンク。
たぶん、身につけてる下着もピンクなのだろう。
ちょっと狂ってるぐらいピンクで満たされた世界。
反対側が最年少の辻希美と加護亜依の席。
こちらもいつものように仕事なんかする様子もなく
お気に入りのブランドの話をしてる。
机の上は辻の方が汚い。
さっき食べてたメロンパンの袋はそのまんま出しっぱなしだ。
それを加護が見つけ、自分のゴミ箱に捨てる。
この2人はいつも一緒だが、どこか互いに補完しあって
生きてるっぽい。
プライベートでもよく一緒にいるらしい。
と、これが第13編集部の内情である。
ここでは、女性向けの雑誌を作ってるはずだった。
ただこの状況のため、なかなか制作は進まない。
15L.O.D:01/10/17 17:43 ID:HhXzFXcy
問いつめられるのは、中澤だ。
山崎出版の編集部のトップが全員揃う部局会議で
今日も問われる。
「どうなってるんだ?」
「今、今後の展開に関するプランを作ってる最中です」
「いいよ、いいよ」
「どうせ第13編集部だし」
「分かってるんでしょ、あなたも?」
「あそこは、掃き溜めなんだよ」


侮辱。

屈辱。


そんな時、中澤は会社を出て
近くの公園で缶コーヒーを飲みながら
一服する。
その前に、会社の入り口を通る。
そこには、矢口真里がいる。
中澤はこの子をからかうのが大好きだった。
ちっちゃくて、だけど、はっきりと意思を示すその目が好きで。
「あんま座ってると、痔になるで」
「お気づかいありがとうございます」
ツンっとしたよな顔。
たまらなくそそられる。
笑いかけ、手を振ると
営業スマイルで頭を下げられた。

いつもと同じように。
16ごめん、:01/10/17 18:10 ID:4YLP+V9y
面白くないわ
17蹴缶連中:01/10/17 18:29 ID:hWj9SBh8
頑張れ!
18名無し娘。:01/10/17 20:20 ID:8vpycC7s
LOD頑張れッ! 期待sage
19名無し募集中。。。:01/10/17 20:29 ID:tsNsSktD
これからの展開に期待
がんばれ
20L.O.D:01/10/18 07:30 ID:Kuq5ZJXl
タバコの煙が空に吸い込まれる。
高くなっていく空が恨めしい。
大きなため息一つ。
そこからは何も生まれない。
公園も人はまばらで
先の見えない雑誌創刊のネタになりそうなものもない。
他のベンチも開いてるのに
誰かが相席してきた。
中澤は隣を見る。
「どしたの、裕ちゃん?」
「なっちか」
安倍は膝の上でお弁当を広げる。
「もう昼休みかいな?」
「そうだよ。裕ちゃん、ここにいるんだと思って、出てきたんだ。」
そう言って、安倍は満面の笑みを浮かべた。
中澤も釣られるように笑う。
「おいしそうやね」
「食べる?」
「ちょうだい」
口を開けると、卵焼きを一つ、放り込まれる。
ちょうどいい甘さ。
「あれ?あんた好きなの、もうちょい甘いやん」
「いいの」
何も知らずといった表情でご飯を食べ続ける。
中澤は周囲を見た。
そして、安倍の耳にそっとささやく。
「キスせーへんか?」
安倍も周りを一瞥してから、うなづく。
ベンチの上に押し倒す。
人目につかない木陰のベンチ。
誰にも内緒。
昼間の情事。
21L.O.D:01/10/18 07:31 ID:Kuq5ZJXl
その少し前の事。
「昼、行かない?」
寺田が矢口を誘っていた。
「もうちょっとで交代なんで。」
「そっか、そこの喫茶店で待ってるわ」
「はい」
会議用に着てたのであろうスーツもラフに着崩して
その後ろ姿はかっこいい。
社内の女子社員のあこがれの的。
矢口も彼のファンである。
(よっしゃぁ)
心の中で叫び、
顔はいつもの20%アップで笑っていた。
22L.O.D:01/10/18 07:32 ID:Kuq5ZJXl
昼は、彼のオゴリでイタリアンレストラン。
うわさ通りにかっこよくて、上品で
だけど、時折見せる少年のような顔に
矢口は魅せられる。
業務が始まるのが、ものすごくいやだった。
別にあそこにいても、いい事はなにもないが。
会社のドアの前で中澤と安倍とかち合わせた。
部局長同士なのだから、顔も知ってるのであろう
寺田と中澤は会釈する。
「ん?あら、矢口さんやないの。おじちゃんにおごってもらったんでちゅか?」
「誰がおじちゃんやねん。」
「あんたや、寺田」
安倍は心配そうに2人を見てる。
「そんなん言うたら、お前、おばさんやないか」
「誰がおばさんか!!」
「お前や、中澤っ」
寺田が関西出身だというのは知っていた。
だが、2人がここまでの知り合いだとは知らなかった。
「ちょっと、やめてくださいよ。会社の前ですよ」
「ごめんね、矢口さん。こいつと一緒だとキャラが変わっちゃうよ。」
と、寺田が乾いた笑いを見せると
「ハッ!なに言うてんねん。私と一緒の方が本性やないか」
勝ち誇ったような中澤
矢口はいたたまれなくなって、声をあげる。
「寺田さんのこと、悪く言わないで!」
彼の手を引き、一歩先に会社の中へ入る。
安倍が中澤の袖を引っ張った。
「裕ちゃん・・・・・・」
「ん・・・・だいじょぶ。はぁー、寺田をからかうとおもしろいわぁ」
猫のようにうーんと身体を伸ばしながら、会社に戻る中澤。
安倍もそれに追随する。
23展開が:01/10/18 17:41 ID:gCXV7bIM
のろい
24名無し募集中。。。 :01/10/18 17:43 ID:8dk4CceU
さっさとセクハラしろやゴルァ!!
25名無し募集中。。。 :01/10/18 17:44 ID:0EqXM3Pw
え〜と・・・これはエロなの?
26ゆんそな:01/10/18 17:47 ID:PzI4POcf
ぼちぼち いきましょ
27L.O.D:01/10/18 20:58 ID:yZxr40bj
いつもと同じ。
誰1人として仕事していない部屋の中
吉澤なんか新日プロレスのタイトルマッチがあるだかで
もう帰る準備を始めてる。
石川がポーチを手に席を立ち、部屋を出た。
中澤はそれを見て、後を追う。
廊下で追い付き、指を絡ませる。
恥ずかしそうにうつむく石川。
女子トイレ。
2人で一つの個室に入る。
「おいで」
洋式の蓋を下ろしたままの便座に中澤が腰掛け、招く。
彼女に包み込まれるように石川は抱き締められる。
色鮮やかに彩られた中澤の指が胸のボタンを外す。
そして、ゆっくりとその形のよい胸を下着の上からもみしだく。
「仕事中にして欲しくなるなんてHやなぁ、石川」
「や・・・・・・」
「みんな、もう気付いてるで。」
「ん・・・ふぅ・・・・・・」
耳に息をかけるように小声で囁く。
「石川がこんなにスケベやて・・・・・・」
下着の中に手を入れ、膨らんだ乳首を摘まみ上げる。
ピクッと身体を震わせ、反応した石川。
「弱いねんな、乳首」
中澤の爪が少し強めにくい込む
「んぅうっ」
「声・・・出したらあかんで」
「は・・・・いっ」
「欲しい?」
「やぁ・・・・」
「出しな」
石川はそれまでギュッと握っていたポーチを開く。
中から出てきたのはナプキンではなく
バイブレーター。
小型の物で音は非常に小さい。
スイッチを入れると、陰媚に震えだし
石川の顔はそれだけでさらに赤く上気する。
「そんな顔して、Hやなぁ」
「中澤さんのせいです・・・・・・」
「フフッ・・・いやか?」
石川は強く首を振った。
28L.O.D:01/10/18 20:59 ID:yZxr40bj
-数カ月前-

「石川梨華です、よろしくお願いします」
めずらしく入社と同時に第13編集部に配属された彼女。
まだまだ初々しく、それが中澤の心を捕らえた。
他の仕事はさせないで、給湯室でうまいお茶とコーヒーの入れ方を
ずーーーっとやらせた。
時折行っては、キスをしたり、言葉でいじめたり
身体に触れ、少しずつ慣らした。
その間にどうしても合わなくて
会社をやめるものも入れば
睨み付ける者もいる。
石川はその性格からか甘んじて
中澤のセクハラを受け続けた。
29L.O.D:01/10/18 21:00 ID:yZxr40bj
トイレに誰か入ってくる。
「さぁ、言うてみ」
中澤の肩に大きく預けられた身体。
潤んだ瞳。
大きく開かれた足の間からはまだ触ってもいないのに
赤く潤い、濡れそぼっていた。
「石川梨華にバイブをください・・・・・・」
隣の個室に人が入る。
石川の秘肉を押し分け、バイブが入り込む。
唇を噛み、声を押し殺す。
陰唇をに触れた指と指の間にはネットリと
糸が引く。
自らの口に指を近付け
味わうように一本ずつ
石川の耳もとでしゃぶる。
その度に吐息を漏す。
ゆっくりと出入りするバイブ。
石川の身体を通じて、中澤もその振動を感じる。
心地良いバイブレーション。
隣の個室から人がいなくなった。
30L.O.D:01/10/18 21:01 ID:yZxr40bj
上機嫌の中澤はハンドバックを振り回しながら
エントランスに現れる。
石川の肢体を楽しんだ後
眠ってる後藤の唇を十分に堪能し
逃げまどう辻、加護を捕まえ、抱き締め
十二分にスキンシップした。
「待った?」
同期の平家みちよが灰皿の近くで
タバコを吸ってるのを見つけ、駆け寄っていく。
「なんや、姉さん、めっちゃ機嫌よさそやな」
「分かる?」
「あぁ、分かった。またやったな」
「やったってなんやねん。スキンシップやがな」
「はいはい」
受付でカードをリーダーに入れる。
矢口が冷たい目で睨み付けていた。
「よ、矢口さん。」
「どうも」
「なんやねん、そんな怖い顔してー。
 かわいいんやから、ほら、笑ってみ」
中澤の手が矢口の頬に触れる。
その手をやんわりとどかしながら
極上の営業スマイル。
「これでよろしいでしょうか?」
「うーん、なんか御人形さんみたいやなぁ。
 ほら、ニカーッて笑ってみ?」
笑顔を崩さない矢口。
中澤はそれでも嬉しそうだ。
「やぁーん、そんな矢口さんも好きやでー。じゃぁねぇーー!」
平家はごめんなぁ、というアクションを見せ
いつまでも手を振ってる中澤を引っ張っていった。
(超ウゼェ)
見えなくなる直前にアッカンベーする矢口。
31L.O.D:01/10/18 21:01 ID:yZxr40bj
そして、中澤と平家はいつものように居酒屋へ。
「姉さん、受付の子気に入ったんか?」
「そやねーん、なんか可愛いやろぉ」
「分からん・・・・・・私には分からん」
「そんなん言わんといてーなぁ」
「大体、なんや、両刀なん?」
「きゃぁあーー、両刀やて!
 みっちゃんのH!!」
「あかん・・・・・・この人、完全に酔ってるわ」
「お嬢ちゃん、こっち来!ビールとえだ豆とかわいい女の子頂戴っ!」

序章 終了
32名無しさん:01/10/18 23:27 ID:TBQrLQS3
ゆゆたむハァハァ…
33名無し募集中。。。:01/10/19 23:00 ID:N+S1rtQo
セクハラ裕子・・・うらやましすぎる

続き、期待してるよ〜ん
34名無し娘。:01/10/19 23:10 ID:2BDuwa4O
姐梨華かぁ、良いぞッLODッ!
35ゆんそな:01/10/19 23:18 ID:igZZO+iZ
むっちゃええやん! 続き期待!
36L.O.D:01/10/20 00:52 ID:0y19tOyM
第一章 Let's try 雑誌創刊。

「・・・・・・」
「ふぁ」
第13編集部局員 後藤真希。
会社の内外を問わず、彼女を知る者は皆
彼女とデートしたいと願うらしい。
この目の前の大きなアクビをして
喉の奥まで見えてる女と。
「おぉ、ごっちんー、元気か?」
「あー、裕ちゃん・・・・・・」
(朝からなんでそんなに元気なんだよ)
矢口の方はゲンナリだ。
「矢口ちゃん、ちゅー」
投げキッス
「なんの悪ふざけなんですか・・・・・・?」
「悪ふざけっ!?」
予想してたのより、かなり派手にリアクションされた。
しかも、その表情は愕然としてる。
という事はだ、悪ふざけではなかったという事か?
「なに、ちょー、悪ふざけやと思ったん?」
「思いますよ、私、女の子だし」
「いや、そんな細かい事気にせんでええて」
「裕ちゃーん、早く行かないと遅刻だよぉ」
眠た気な後藤に袖を引っ張られ
これ以上、矢口と一緒にいるのを諦めた。
「そやな・・・・・・じゃなー、矢口ちゃん」
(いつ、ちゃん付けで呼んでいいって言ったんだよ、このババァ)
矢口のムカつきはMAX。
37L.O.D:01/10/20 00:53 ID:0y19tOyM
「梨華ちゃぁーん、水ぅ・・・・・・」
「はーい」
後藤に言われ、石川が走ってく。
隣でテコンドーの全日本選手権をチェックしてた吉澤も
具合の悪そうな後藤を見てた。
「うぅ・・・・・・」
空いてるスペースでなにやら踊ってた辻、加護は
保田に睨まれ、やめてしまった。
「昨日は何時だったのさー?」
目の前の安倍もお菓子の袋の向こうから覗き込む。
「えー・・・・・・わかんない、朝方・・・・・・」
そう言って、石川が持ってきた水を飲むと
持参の枕に顔を埋めた。

  ガタッ

保田が席を立ち、『取材に行ってきます』と
極めて小声で言い、扉を荒々しく閉めていった。
「なに、カリカリしてるんすかね?」
石川に相手役を勤めさせ、自らはオープンフィンガーグローブまでつけた吉澤。
「さぁねー?」
めずらしく交信してない飯田が首をかしげた。
「中澤さんはどう思いますか?」
部屋の中に不気味なスパーンっという心地良い音が
何発も何発も聞こえる。
「痛っ!痛いよ、よっすぃー!!」
「私は、なんであんたが、今、組手をしてるかの方が謎やわ」
「?」
「よ、よっすぃー、前見るべさ!!!」
安倍の言葉はすでに時遅し。
吉澤のネリチャギ・・・かかと落としは
石川の頭頂部に炸裂した。
「ひぃいいいい!!」
「梨華ちゃんが泡吹いて倒れたのれすっ!!」

合掌

「・・・・・・どうなるですかー?」
最後の力を振り絞って、石川が力つきた。
いや、死なないけど。
38名無しさん:01/10/20 01:03 ID:LDEqhB3N
取り敢えず隣の個室に誰が居たかが気になるな…。
39L.O.D:01/10/20 01:05 ID:0y19tOyM
保田圭は自販機の前に立ち
サイフを忘れてきた事に気づく
(ついてないわねっ!)
そこら辺の椅子にドカッと腰掛け
イライラを静める。
(私は物を書くためにこの会社に来た。
 最初は他の部署でたらい回しにされて
 それもいつか望みの部署に行けるからって
 がんばったのに、結局行き着いたのは
 第13編集部・・・・・・やる気なんて起きないわよ)
足下に転がる缶コーヒーの空缶
拾って、狙いを定める。
空しい音。
はずれたみたいだ。
(私もはずれだったりして)
大きくため息。
顔をあげると、そこを寺田が走っていく。
(寺田尽人!?)
40L.O.D:01/10/20 01:06 ID:0y19tOyM
保田の尊敬するマスメデイアの担い手の1人である。
思わず立ち上がり、叫んでいた。
「寺田さんっ!!」
「お、なんや・・・・・・えーっと君はぁ
 13部の保田さん!」
「はいっ!」
バイト時代に鍛え上げた笑顔。
「どうかしたん?」
「あの、私、本格的なライターの仕事がしたいんです!
 寺田さんの力でDIVAに引っ張ってもらえませんか?」
「そやなぁ・・・・・・」
「お願いします」
頭を下げた保田には、寺田がにやりと笑ったのは見えない。
寺田はまるで悪知恵働かさせる小学生のような笑顔だ。
「今、13部が出そうとしてる雑誌あるやろ?」
「・・・・・・」
「出せたら、考えるわ」
「出せ・・・・・・たら?」
「そや」
「いいんですね?」
「おぅ。優秀なライターならなんぼいてもかまへんからな
 じゃ、ちょっと急いでるから行くわ」
走り去る男
残された女。
心がときめく理由は2人それぞれだが
ただでは終わらない、そんな様子になってきた・・・・・・
41名無し娘。:01/10/20 18:29 ID:bknDdZs0
>>38
俺も気になる。
小説スレで雑談スマソ…

LOD、期待してるんで頑張ってくれ。
42あみヲタ赤星(盗塁王):01/10/20 19:22 ID:7WW5yWZd
漏れも期待してます!
43L.O.D:01/10/20 23:02 ID:y3I/3x69
寺田がその足で向かったのは、矢口の所。
「真里ちゃん」
「て、寺田さんっ!」
エントランスにいた女子社員の目が痛い。
「晩御飯、どう?」
「ぜひっ・・・・・・」
「ダメだったかな?」
「いや・・・・・・」
寺田は真里の遠慮がちな態度と
その視線に気づき、周りを見た。
立ち止まってた他の連中は一斉に散る。
「大丈夫・・・・・・俺がいるから」
そんなクサイ台詞を吐いて、颯爽と出ていく寺田。
しかも、矢口の前に名刺を置いていっていた。
矢口はそれを手に取り、しげしげと眺める。
なんの変哲もない名刺のように見えたが
裏返して、驚いた。
電話番号とメールアドレス。
そして、今夜の待ち合わせ場所。
にくいというか、ここまで行くと
ちょっとおかしい・・・・・・
だが、恋する乙女矢口真里にはそんな事知ったこっちゃない。
全女子社員の、否、日本在住のDIVA読者の女の子を差し置いて
自分が誘われたのである。
思いっきり浮かれるのであった。
(今日、なに着てこう!?)
44L.O.D:01/10/20 23:04 ID:y3I/3x69
その頃、第13編集部では。
「ちゅー」
「ちゅぅー」
中澤は膝に加護を乗せ、口づけしようとしてた。
セクハラというか、ただのレズなような気がしないでもないが
キスしたまま、机の上に身体を置いて
そのまま覆いかぶさる。
「裕ちゃぁーん」
「誰か入ってきたらどーすんのさー?」
飯田と安倍がつっこんだ瞬間に、ドアが開く。
(やべぇ)
中澤の頭の奥でそんな事が浮かぶが
そこに立ってる人間を見て
安心した。
「なんや、圭坊か」
「ちょっと裕ちゃん!雑誌を作るのはどうなってるのよ!!」
「あぁ・・・・・・それはな・・・・・・」
「言い訳なんてどうでもいいの!」
「・・・・・・」
保田がキレてる。
(なにがあったんや?)
まったく見当もつかず、
皆、困っていた。
45L.O.D:01/10/20 23:05 ID:y3I/3x69
「この状況だからなぁ・・・・・・」
自分の下にいる加護を見る。
加護は上目遣いに保田を見る。
保田のこめかみは今にも切れそうだ。
「保田大明神なのれす」
「や、保田さん、お茶でも飲んで落ち着いてくださいー」
「うるさいわね!」
「キャァッ!」
石川が差し出したお茶を払う手。
陶器の割れる高い音と水の弾ける音。
「私は書く仕事がしたくて、ここに来たの!
 なのに、本も作れないでただあそこに座ってるだけ!!
 もう、いやなのよ!!」
「圭坊・・・・・・」
中澤の目の色が変わった。
いつもの笑みはない。
真剣な、刺すような視線。
「ホンマやな?」
「当たり前でしょ!!」
「どや、みんな?やる気はあるか?」
「圭織、イラスト描くよ!」
「格闘技ネタはOKっすか!?」
「お菓子書く!」
「とれんどのせんたんはふぁっしょんなのれす!」
後藤はいつも通り、睡眠中。
最後に安倍を見る。
ゆっくりと優しく笑いながら、うなづいた。
「いっちょやったるかっ!」
「「「おぅ!」」」
46L.O.D:01/10/21 17:11 ID:h3b1ppcY
夕日は沈み、空は紅から濃紫へと
その姿を変えようとしていた。
矢口真里は走っていた。
寺田との約束の時間。
幸い家に帰って服を着替えるような時間が空いてたのだが
その服選びに時間がかかった。
名刺の裏に一言、『あんま気取らないカジュアルでええよ』って
書いてはあったけど、ジーンズってわけにはいかないし
ちょっとでも大人に見せたくて
黒のレザースカートに白いブラウス
それに、ジャケットを羽織り
出て来たのである。
待ち合わせ場所は駅からはちょっと遠くて
走るはめになった。
(ごめんなさぁいぃーー)
寺田らしき人陰を見つける。
まっすぐにそこへ走ってく。
(!?)

  ズデン

本当に目の前だったのに。
転んだ。
「真里、、ちゃん?」
「はい・・・・・・」
「大丈夫?」
「大丈夫です」
幸い、服は汚れなかった。
なにもなかったように立ち上がり
寺田に笑いかけると
彼も笑い返してくれた。
「じゃぁ、行こうか」
「はいっ」
紫の時は過ぎ、街灯はその光を灯し
少しずつ夜へと近付いていく。
横浜の実家と家を往復するだけの毎日。
たまに告白されたりしたりで
付き合ってもなんか空回り。
会社に入って、あまりいい事もなく
ただあの受付口に座って
来る人に愛想笑いを浮かべるだけ。
そんな日々だったけど、
あこがれの人寺田尽人に選ばれて
横に立ってる。
嬉しくて、顔がニヤけてた。
「ここなんだけど」
オフィス街を抜け、少し小道に入ったところに
こじんまりと立たずむカフェスタイルのバー。
「素敵ですねっ」
矢口は少々上目づかいに彼を見た・・・・・・
47L.O.D:01/10/21 17:40 ID:h3b1ppcY
そのバーから300メートルほど奥に行った所にある
人情居酒屋なぞという名の飲み屋には
第13編集部の面々と平家がいた。
「ではっ!本格的雑誌創刊の船出にかんぷぁあああああい!」
中澤の音頭で、冷たく冷えたビールを一口。
「ぷはぁああ!」
ドンッとジョッキを置いたと思ったら
早速隣に座ってた安倍にちょっかいをかける
「なーっち」
「なんだべさ、裕ちゃん」
「裕ちゃん、キスしたいねーん」
「ちょ、、、なに、もう酔ってるの?」
「なっち、気つけやー。」
平家の助言もむなしく唇を奪われる。
「ん・・・・・・」
「ふぅ・・・・・・」
ズズッという唾をすする音まで聞こえてくる。
長い長いキス。
席の端の方にいる辻、加護、石川は食い入るように見ていた。
やっと離したと思ったら、中澤はジョッキを握りしめ
そこへと向かっていく。
「なんやなんや、そんなに裕ちゃんとキスしたいか?」
「え・・・・・・」
「うぁ・・・・・・」
「どっちからしたろかな?」
辻、加護の間に座って、交互に顔を見る。
戦々恐々としたその表情がなお愛しくなって
思わず柔らかそうな辻の頬を押さえた。
「ひぃっ」
「なんやのーそんな顔してぇ、怖いことはあらへんよー」
「裕ちゃんが怖いんだよね」
飯田の一言は耳には届かなかったらしく
全員がその意見にうなづく中
辻を押し倒す。
48L.O.D:01/10/21 17:41 ID:h3b1ppcY
「あ、、やぁ、、、」
「ふふっ、、、かわいい」

  チュ・・・・・・

軽くついばむようなキス
頬に触れていた手はさらりと前髪を撫でる。
赤く上気する顔。
再び唇を重ね、今度は味わうように
柔らかく蠢いていく。
息苦しさと引き換えに
触れられた心地良さが
辻の頭を撹乱し
その目はトロンとなっていく。
中澤のキスはうまい。
年の功、回数、そういうものは差し置いて
とにかく余計な物を考えれなくしてしまうのだ。
「やぁーん、かわいいっ、辻ぃ」
「な、中澤さんっ!私はどうなんですか?」
石川が自分の事を指差し、主張する。
「お茶汲みがなに言うてんねん」
冷たく返すとうつむいて、目の前にあったカクテルを飲み干した。
「大丈夫、梨華ちゃん、僕が守ってあげる」
石川の手を取り、語る吉澤。
しまいには、抱き締め合い、こんな事まで。
「よっすぃー!」
「梨華ちゃん!」
「はいはい、お暑いお暑い」
そんな2人を適当にあしらって
中澤は後藤の元へと行く。
49L.O.D:01/10/21 17:42 ID:h3b1ppcY
「ごっちん、飲んでるかぁー?」
「うん、飲んでるよぉ」
この時間になると、仕事の時間よりまともにしゃべれる後藤。
だから、時折、こうやって飲みにつれてきては
仕事の話をするのだ。
本日も雑誌の展開について説明するためにも
この人だけは絶対連れてこなければならなかった。
「で、かくかくしかじかというわけやねん」
「ふーん。おもしろそうだね」
「でな、ごっちんにも記事を書いてもらわなあかんねん」
「雑誌なんだからさぁ、特集とか必要だよねー」
「そやな、ごっちんいい事言った。特集記事は必要や」
さっきのおふざけモードは一転、仕事の話になり、
辻、加護以外は軽く談笑しながら
そこの会話に耳を傾ける。
「私、ちょっと帰るわ」
そんな時。
保田が立ち上がる。
「帰るんか?」
「うん」
「そか・・・・」
「じゃぁ、また明日」
軽くビール一杯。
足下もしっかりしてる。
「なんなんすか、あれ?」
吉澤の言葉に悪意はないが確かにそうだ。
「なんやろなぁ、圭坊はやっぱ苦手なんかなぁ、こういうの?」
「いや、あんたの所の局員やで、姐さん」
平家に言われ、中澤は首をひねる。
入ってきた時から独特の人を寄せつけないようなオーラがある。
確かに、第13編集部。
あの会社の掃き溜めのような言われ方をしているし
本を作るという事に対して
あまり意欲的ではないような所も
これまではあった。
そんな部分が保田には耐えれなかったのかもしれない。
「ま、そんな子やねん、あの子はっ!」
何かを断ち切るように、中澤の声は
自然と大きくなっていた。
「店員さん、ビール追加!!」
「私、豚串!」
「肉じゃがっておいしいれすか?」
「フローズンピーチください」
「梨華ちゃん、ピンクだけど結構来るよ、カクテルは・・・・・・」
50名無し娘。:01/10/21 19:55 ID:Zb/DR/s2
いしよしの予感…
51あみ(略:01/10/22 00:24 ID:FbfRVF8t
いしよしもいいけど、保田大明神ワラタ
52娘は名無し。:01/10/22 19:07 ID:ZgkMXR7z
続きに期待
53名無し娘:01/10/22 19:10 ID:IaxA5qoO
小説は下げて書いたほうがいいですよ。
また荒らされないように
54あみ(略:01/10/22 19:34 ID:El4ccurw
( `.∀´)<さげ!
55名無し募集中。。。 :01/10/22 21:56 ID:ZdUw1wdM
早くヤグタンにセクハラして下さい。
56L.O.D:01/10/22 22:39 ID:cBYGtFzT
やぐたんへのセクハラはお楽しみという事で
それまでは他のメンバーへのセクハラを
堪能してください。
57名無し募集中。。。 :01/10/22 22:48 ID:ZdUw1wdM
あい。わかりました。
58名無し募集中。。。:01/10/22 22:48 ID:IGV5W5eg
キターイ
59名無しさん:01/10/22 23:23 ID:/HNkqgsW
期待sage

寺田はなんで光男じゃないの?
60あみ(略:01/10/23 00:10 ID:nVOx8509
メロソやマツーラも出して頂戴
61名無し募集中。。。 :01/10/23 11:06 ID:hL/o6/r3
主役はやぐちじゃなくてなかざーですか?
62名無しさん:01/10/23 17:04 ID:JpeOZaSq
>>61
ダブルメインキャストって奴じゃないかな。

他の娘。達も単なる脇役じゃないのが、なかなかいいね。
63L.O.D:01/10/23 23:12 ID:5SkWKhOb
「顔、ニヤけてんでー」
ハッとして、顔を上げると
目の前には中澤裕子。
「おはようございます」
極事務的な口調で返す。
「昨日、寺田に誘われたんやて?」
「関係ないですよ、中澤さんには」
「矢口ちゃーん、ほっぺた赤くして
 なーに言うてるのー、エッチやなぁ」
言われて、なお恥ずかしくなってしまう。
思い出したくないが、頭の中はそれしかない・・・・・・

昨夜の事
大した飲んだ覚えはないのだが
矢口は酔ってしまっていた。
「大丈夫?」
寺田に身体を預けながら、フラフラと歩く。
「大丈夫ですよぉ」
「大丈夫じゃないって」
「分かりましたっ!」
矢口が急に離れたと思ったら
ニコニコと嬉しそうに笑いながら、
あらぬ方向を指差した。
「ホテルで休んでいきましょ!」
・・・・・・ラブホ

目を覚ました時には
1人でベッドに寝てて
枕元にはメモ。
『会社、遅れたらダメだよ』
64L.O.D:01/10/23 23:13 ID:5SkWKhOb
(あー、寺田さんと顔合わせたら、なんて言おう!
 絶対ヤバい女だと思われてるよー)
「おはよ」
「おわぁああ!!えと・・・・・・あの」
「昼、いい?」
「え?」
「もう誰かと約束した?」
「いや・・・・・・」
「用事?」
「いや・・・・・・」
寺田は今まで見たこともないような笑みを見せ
顔をスッと近付けてきた
矢口は自然と固まり、彼のなすがままになる。
「かわいかったで、昨日」
甘い息。
「じゃ、迎えに来るわ」
動けない。
何も目に入らない。
何も聞こえない。
ただ驚きと喜びだけが
彼女の時を止めた。

矢口真里はトイレの個室で頭を捻る。
(寺田さんは許してくれたのかなぁ・・・・・・
 いや、許すって・・・・・・
 ちゃんと服着てたもんなぁ、私・・・・・・
 ベッドに毛もなかったし、シャワーも浴びた後なし。)
悶々とする。
(私、酔って、脱いだりしてないよねぇ?
 っていうか、告白してたりしてないよね?
 マジやだよーそんなのぉーーー)
グルグルと頭の中をいやぁーな事ばかりが駆け巡る。
でも、ちょっと期待してる自分がいる。
(・・・・・・寺田さんだったら、どうやって触ってくれるんだろ)
65L.O.D:01/10/23 23:14 ID:5SkWKhOb
スカート。
背が低いから、規定よりちょっと短かめにしてある。
少したくし上げると、豹柄のヒモパンが。
昨日、思いっきり勝負パンツで来てしまった。
そのまま会社に来たので、エグい・・・・・・
スルリと脱ぎ、膝の辺りまで下ろして
また座り直す。
興奮していた。
指で触れる。
誰もいないトイレだと少しの音が大きく聞こえる。
「・・・・・・」
火照っているのは、十分分かった。
見ないでも、きっとそこは鮮やかな赤を放っていることだろう。
声を押し殺し、茂みをかき分け
陰唇の先端を弄る。
熱を持ち、次第に形を現す敏感な部分を
意図的に撫でるだけで
背中がビクッと反る。
「いっ・・・・・・はぁ・・・・・・」
次第に荒くなる息。
卑猥な妄想。
全裸の自分がベッドに寝そべり
隣には寺田。
優しく胸を撫でられ
矢口の鼓動は早くなる。

  ガタッ!

無意識にドアを蹴り
急に空しくなった
(なにやってんだろ、オイラ・・・・・・)
勢いで開けた胸元を閉じ
溢れ出た汁を拭い
トイレに捨てる。
空虚な感じ。
あんな自分に嫌気が差して
力まかせに蓋を閉め
トイレから出ていくのであった。
66名無し娘。:01/10/24 00:07 ID:hTTDLAg5
アァッ!矢口止めるなYO!
67白日:01/10/24 01:17 ID:agd2d7e/
爆発寸前だ。期待!
68名無しさん:01/10/24 11:01 ID:LjuLDgMZ
69L.O.D:01/10/24 15:07 ID:/xiaIOlA
辻と加護がただならぬ顔で中澤の前に立っていた。
当の中澤はなにやら書類に目を通している。
そう、記事である。
編集部らしい場面だが・・・・・・
「ど、どうれすか?」
「どうもこうも、お前等、誤字脱字多すぎの前に
 漢字で書けや、コラァッ!」
「ひぃいっ!!」
中澤の剣幕に5歩下がる2人。
「内容も文章もまだまだ甘いわ!!書き直せ!!」
書類を叩き付けると、2人は慌ててそれを拾い集め、
一目散に席に帰っていった。
「裕ちゃん、私も書いたよー」
次に持ってきたのは、安倍。
よほど自信があるのか笑顔だ。
なっち、天使。
70L.O.D:01/10/24 15:08 ID:/xiaIOlA
「・・・・・・」
「どう?」
「いや、ダイエットやけどな・・・・・・」
「?」
「最終的にどうすればいいかのとこやねん」
「うん?」
「がんばるて・・・・・・」
「え、だって、がんばらなきゃ」
「内容も新鮮味にかけるし、書き直してこーいっ!」
中澤は部屋の中を見回してみた。
飯田、普通にイラストを描いている。
保田、目が血走ってる。怖い。
後藤、ペンを持ったまま、寝てるようだ。
吉澤、何やら機材をいじってる。ビデオの編集か?
安倍、辻、加護、お菓子を食べてる。
「なっちぃ!!」
「へ?」
「先輩なんやから、率先して、記事書けーーー!!」
「・・・・・・」
(ハッ!!あかん、なっちが泣く!!?)
「安倍さん、これでも飲んで元気つけてくださいねっ!」
石川が出したのは、なにやら苺ミルクっぽい液体。
安倍は臆する事なく口に運ぶ。



「ブハァアアッッ!!」
「キャァア!」
「おわぁああ!!」
「汚いのれす!」
「石川ぁ!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃ!」
部屋の片隅で縮こまり、ガタガタと震えてる。
中澤が近付いてくるのを感じ
さらにビクつく。
「なぁ、石川」
「はいぃ」
「あれ、なに入ってたん?」
「スッポンエキスとか朝鮮人参とか牛の髄とか・・・・・・」
「髄はまずいだろうが、髄は!!」
今日もうるさい第13編集部。
71L.O.D:01/10/24 15:09 ID:/xiaIOlA
ちょっと洒落たカフェの一角に寺田の姿。
ノートパソコンで送られてきた最新の記事に目を通す。
その隣でカプチーノを飲むのは
彼が最も腕を認めてる第7編集部のホープ 松浦亜弥。
涼し気な切れ長だがパッチリした目が印象的だ。
「今、第13編集部の保田ってやつがうちに入れてくれ言うてんねん」
「へぇ」
「知ってるやろ、お前なら?」
「まぁ、そこそこは」
「どやねん?」
「文章書く力だけならあるんじゃないですか?
 人付き合いはヘタみたいですけど」
「そうか」
「第13編集部ですよ?」
「そやけどな・・・・・・」
寺田が言葉を濁す。
松浦にはその理由すら分からない。
あそこは仕事ができない人間の巣窟。
誰もが知ってる事実。
それを、山崎出版でもっとも力のある男が
言葉を濁したのである。
「なにか、あるんですか?」
「まぁ・・・・・・な」
「それは、中澤裕子と顔見知りなのと・・・・・・」
サングラスの奥の寺田の目が普段と様子が違う事に気づき
松浦は口をつぐむ。
「甘く見てたらあかんで、あいつを」
そう一言つぶやくと、寺田はジャケットを羽織り
金を置いて、先に出ていってしまった。
解せない。
なぜ、第13編集部にそんな事を言わせる理由があるのか。
72あみ(略:01/10/24 18:23 ID:agd2d7e/
マツーラ登場!さげ
73名無し娘。:01/10/24 22:57 ID:o9jN+z98
姐さんは元第7編集部か? sage
74名無し娘。:01/10/25 02:44 ID:ZFu/gAdm
あやや保全sage
75名無しさん:01/10/26 16:50 ID:GDvnKjIy
(〜^◇^〜)<保全
76ねぇ、名乗って:01/10/27 00:35 ID:kNuNpacb
从#~∀~#从< 続き!
77L.O.D:01/10/27 01:00 ID:5R9GrYM7
ため息。
それも、部屋全体に聞こえるような大きなため息。
「裕ちゃん?」
安倍がそのため息の主人を心配し、顔を覗き込む。
浮かない顔の中澤。
「どうしたんれすかね?」
「アレやで、きっと」
辻、加護も何事かとこっちを見てる。
「アレちゃうちゅーねん。
 広告取りに行くの忘れてたわ」
「え!広告って会社で紹介してもらえるんじゃないんすか!?」
「あかんわ。いい会社はやっぱネームバリューのあるライター
 編集長に付きたがるやろ・・・・・・」
「ちょっと、広告付かないってどういう事よ!
 最悪、発行出来ないんじゃないのっ!!?」
保田が声を荒げる。
身体もブルブルと震えてる。
中澤も次の言葉が出てこなくて
部屋はシーンとしていた。
そんな時、後藤の携帯電話が鳴る。
「後藤!寝てんじゃないわよ!!」
保田に叩き起こされた後藤は
よだれを拭きながら、電話に出た。
「あい・・・・あー、社長さん?
 んー・・いいよぉ、・・・・うんうん
 おやすみー」

  プツッ

電話を枕元に起き
またmy枕に顔をうずめた・・・・・・
「ごとーちゃぁーん」
中澤の猫撫で声
絶対、なにかある
「なにー?」
「社長さんて誰かなぁー?」
「知り合いのショップの社長さんだよ」
「それだっ!」
一体、何を思い付いたのやら?
78L.O.D:01/10/27 01:01 ID:5R9GrYM7
正直、風邪でダウン・・・・・・保全、お願いします。
79名無し募集中。。。 :01/10/27 01:13 ID:w7xrEleT
>>78
お大事に。
早期復帰を願ってます。
80ねぇ、名乗って:01/10/27 01:27 ID:dujh1kLe
( ^▽^) < ふぁい! お大事に
81名無し家族。:01/10/27 06:23 ID:ddp1QEBc
>>78
がんばって!…じゃダメなんだった。無理しないでね!
82名無し募集中。。。:01/10/27 12:20 ID:W9mj9Ui+
期待sage
ヤグターン
83L.O.D:01/10/27 15:53 ID:ut6uO0Hi
夜の街
バッチリ決めた第13編集部の面々
待ち合わせ場所、原宿
待ち合わせの時間、6:00集合。
「・・・・・・遅いわね」
現在、6:30。
「忙しー人だからねー」
後藤はヒマそうな辻、加護と遊ぶ。
「ねぇ、あの走ってる人、そうじゃない?」
飯田が化粧直し余念のない中澤の裾を引っ張る。
(ほんま若くて、かっこいい男やったらどないしよ!
 裕ちゃん、萌え萌え〜やでーー)
「やっほー」
後藤が声をかける。
(来た来た来たぁ!)
「後藤ちゃん待ったやろー?ごめんなぁ」
(・・・・・・チッ)
そこに立っていたのは女で
しかも、カーリーヘアのやたらR&Bっぽい
ダンサー系の衣装を来ていた。
彼女こと、稲葉さんは実は10、20代の女性に人気のファッションショップを
都内に何件も構えると同時にクラブ経営なども手掛ける
やり手社長だったりするのであるっ!
「で、突然ついてきたうちの会社のメンバーです」
そんな稲葉の目が中澤で止まる。
「?」
「あんた・・・・・・関西人やろ」
「へ?なんで分かったんですか?」
「匂いや、、、たこ焼きの匂いがすんねん」
あっさり意気投合。
そうして、2人&その他大勢は夜の街へ消えていった。
84L.O.D:01/10/27 15:54 ID:ut6uO0Hi
・・・・・・もう次の日になって、3時間は過ぎた頃
安倍と平家に支えられ、中澤は御帰宅。
「ここでいいですよ」
玄関先。
先に靴を脱いだ安倍は平家にそう言う。
「ほんまかー、私、明日早いから
 お言葉に甘えて、先に失礼させてもらうわ、、」
バタンッと音がして、玄関が闇に包まれる。
スイッチの場所。
分かってる。
「ん、、、」
中澤が少し眩しがり、声を上げた。
「大丈夫?」
「なっつぁーん、、、水」
「はいはい」
キッチンで水を注いでると
自力で部屋の中に入ってくる中澤。
ソファに身体を預ける。
グラスを手渡すと、喉を鳴らしながら飲み干し
ガラスのテーブルにそれを置くと
隣に座る安倍にしなだれかかる。
「なっつぁん」
「はぁい?」
「ごめんな、いっつも、、、、」
「ううん」
「・・・・・・」
「ねぇ」
軽く目をつぶった所に声をかけられ
中澤はまた目を開く。
「矢口さんの事、好きなの?」
「・・・・・・好きや」
「そか」
豆電球の小さな灯しかない部屋。
どっちからとは言わず、口づける。
しかし、今日の中澤はそれを拒む。
「なんやの、いきなり」
「?」
「そんな質問した後のキスはいややわ」
「いいじゃん」
「だって・・・・・・」
続きを言おうとした中澤の口びるを安倍は塞ぐ。
「言わないで、寂しくなっちゃうから・・・・・・
 私は、、、こうやって裕ちゃんの側にいれるだけでいいから」
安倍は俯く。
涙は見せない。
85L.O.D:01/10/27 15:55 ID:ut6uO0Hi
同じ暗闇。
こちらはその中でパソコンのモニターが
煌々と光を放っていた。
眼鏡にそれが反射している。
酒の席を早々に抜け出した保田。
(やっと出せる。あれだけのスポンサーなら大丈夫。
 誰かに読んでもらえる自分の文章が・・・・・・)
ターゲットは、スポンサーと同じ域の10、20代女性。
雑誌コンセプトは、雑多。
第13編集部らしさ、それはまとまりのなさ。
それを上手く活かすためのコンセプト。
とりあえず出さなきゃ、意味がない。
少しでもいい文をあの人に見てもらわなければ。
思いだけが保田を走らせる。

数日後、中澤裕子は一冊の見本を手にし、会議室の前に立った。
86矢口んぽ:01/10/27 17:53 ID:tM7/CmJr
87あみ(略:01/10/28 01:18 ID:lS4MsLO4
あっちゃん・・・
88名無し娘。:01/10/28 09:01 ID:b3dkl6Ft
風邪なおった?hozem
89L.O.D:01/10/28 12:31 ID:Y1jvBF12
仕事を終えた矢口真里がコンビニに寄る。
御飯を作るのも面倒だし、
いっつも買ってるファンション誌の発売日。
買い物カゴを手にして、まずは雑誌のコーナー。
すぐにいつものを見つける。
その手前。
『seed』
矢口も知ってる有名なショップの店員さんが
かっこいいポーズで映ってる。
手に取り、パラパラとめくる。
ただのファッション誌ではなく
ジャズや格闘技など幅広いジャンルについて書かれてる。
「おもしろそうじゃん」
ヒマつぶしにはいい。
女性誌にはめずらしくテキスト主体の雑誌のようだ。
おもしろいテレビもない夜中にダラダラと見るにはよさげだ。
矢口はそいつをカゴに入れた。
90L.O.D:01/10/28 12:31 ID:Y1jvBF12
会社の長い長い廊下
寺田は松浦と鉢合わせた。
「おぅ」
「編集長!」
「なに?」
「会議で第13編集部の雑誌を褒めちぎったって本当ですか?」
「よくやったやろ、あんだけの妨害工作の中で」
寺田の口から語られる真実。
「え?」
「会社としても、雑誌一つ作るにはそれなりのリスクもある。
 その役目を第13編集部には任せられないと思って
 スポンサー回さなかったり、色々したんやけど
 うまく人脈使って、大した出費もしないで
 一冊作っちゃったんだよ。しかも、そぅとぅおもろい。」
松浦は寺田が投げてきたものを受け取る。
それは、『seed』
創刊号の初版だ。
「ちゃんと読んでみろ。なんか懐かしいぞ」
少し微笑んで、寺田は去っていく。
それを開くと、ちゃんとしたレイアウトで
丁寧に作られた記事だというのがよく分かる。
あまり、雑誌としての文章ではないが
読んでて、興味をそそられる。
よく出来ている。
(これが、編集長の言っていた事?)
松浦の中でまだ答えは見えない。
91L.O.D:01/10/28 12:33 ID:Y1jvBF12
自販機で缶コーヒーを買う寺田の元にまた1人。
seedを手にした保田が現れる。
「読んでいただけましたか?」
「あぁ」
「どう、、、ですか?」
「まぁ、座りなよ。あ、なに飲む」
「いりません」
「そうか」
革張りのベンチ。
保田が座った横に腰掛け、コーヒーを一口流し込んでから
寺田はしゃべりだす。
「うちで書くのは辛いかな。」
「そう、、ですか」
「色が違うって言ったらいいのかな。」
「はい、、、、」
「でも」
「?」
「あの雑誌にはすごい似合ってたよ。」
「似合ってた?」
「すごくマッチしてたで、保田の文章。
 なんやろな、コラムっぽいのが合うんやろな。
 今度、うちのコラム欄空いたら会議にかけてあげるわ。
 ただ、seedは大切にしてやりや」
寺田尽人が関西弁でしゃべる時。
それは素直な気持ちが出ている時。
「はい」
保田はそれまでの気負いや色々な憑き物が落ちたような気がした。
本当はちゃんと見ていたから。
グータラ第13編集部の面々がグータラながら
ちゃんと熱意を持って、雑誌を作る姿を。
「じゃ」
「ありがとうございました!」
寺田の後ろ姿を見ながら、保田は背伸びした。
エントランスで待ち合わせしてる。
今日は創刊記念飲み会だ。
92L.O.D:01/10/28 12:34 ID:Y1jvBF12
「なー、矢口ちゃんもいかへーん?」
「行きません」
受付口。
さっきから中澤は矢口にベッタリで
今日の飲み会に行くよう
口説き落としている(w
「行こうよ、行こうよー」
「行きません。っていうか、仕事の邪魔!」
「仕事言うて、さっき雑誌読んでたやん」
「シィーーーッ!なに言ってるんですか、矢口はそんな事しませんー」
明らかにからかってる。
足音がして、そちらを見ると
保田が走ってきた。
「ごめんなさい、待たせて」
「ええねんええねん、ほな行こか。
 矢口ちゃん、最後にお別れのチュー」
「しません」
「ほら行くよ、裕ちゃん!」
「ごめんねぇ、、、、」
「本当にすみません、すみません!
 中澤さん、ああ見えて、本当に優しいんですっ!」
「コンビニで週刊ゴングとプロレス買っていいすか?」
「のの、カラオケも行きたいのれす」
「あかんで、編集長の演歌聞かされるわぁ」
みんな、ゴチャゴチャ言いながら出ていく。
残ってたのは、保田と後藤。
「行かないんですか?」
矢口が思わず聞くと
保田は笑って答えた。
「今回の一番の功績者が寝ちゃってるからね。
 起こさないと・・・・・・」
エントランスの上等のベンチで横になってる後藤の肩を掴み
思いっきり揺らす。
「ちょっと後藤!起きなさい!!飲みに行くわよ!」
「んあ?」
「ほら、置いてかれるわよ!」
「はーい」
寝ボケまなこの後藤は保田に手を引かれて
玄関から出ていった。
うるさいのがいなくなった、と
矢口は腰を下ろす。
そんな毎日。

第二章に続く
93名無し娘。:01/10/28 17:42 ID:v6+o7boc
>>L.O.D
第一章終了アリガト。

从 #~∀~ 从●´ー`●)をもうチョット見たかった。
94あみ(略:01/10/28 18:33 ID:Dk7/6VEK
多謝感激!
95名無し募集中。。。 :01/10/28 18:57 ID:sUS1T3Iv
ヤグタンにセクハラするのはやっぱり中澤?
96L.O.D:01/10/28 21:19 ID:cK9c+vzI
酔っ払いながら、登場。
プロットを作ってないので定かではないですが、4〜6章編成になる予定。
今回だったら、保田&後藤のように第13編集部の中での事と
中澤裕子のセクハラ列伝を軸にして、話は進んでいきます。

>>93
从 #~∀~ 从●´ー`●)は正直、半分デキてます。
第二章は安倍さん大活躍(予定)

>>94
初回の頃からありがとうございます。
コテハンレスは大好きなので、これからもよろしくお願いします(w

>>95
それを(略

感想レス、期待レス、保全、本当にありがとうございます。
M飼育だとレスつかないんで気力失ってたんですけど(苦笑)
では、また第二章で。
97名無し娘。:01/10/29 02:03 ID:MYPQobpq
>>L.O.D
読後感さわやかでよかったYO!

敏腕ライターあややを活躍させてね
98名無し募集中。。。:01/10/29 16:22 ID:0MHKdqDX
ヤグタンセクハラ期待保全
99L.O.D:01/10/29 17:35 ID:9n8FqeRS
第二章 sweet lover

何やらダンボールを抱えて、ロビーを横切る安倍なつみの視線は
自然とそちらに向いてしまう。
光に満ちたこのエントランスの中でも
最も輝いているであろうあの場所。
受付口。
会社の顔とも言えるあの場所に座る少女。
そして、その前でからかうように笑ってるあの人。
安倍の足は止まる。
いたたまれなくなって、声を上げる
「裕ちゃん!」
「あぁ、なっちかー」
「仕事サボってないで手伝ってよ!!」
「本当だよ。仕事もしないで、給料貰ってるんじゃねぇよ」
「はいはい、ごめんなぁ。じゃなぁ、やぐっちゃん」
矢口の憎まれ口すらかわいいのか
中澤はその頭を撫でた後、
安倍の元に走ってくる。
「なんや、妬いてるん?」
100L.O.D:01/10/29 17:35 ID:9n8FqeRS
「・・・・・・」
そっぽを向く安倍。
エレベーターの中。
「怒らんでや」
「触らないで」
言い放つと、伸ばして来た手は躊躇し
空中で制止する。
ドアが開く。
先に出たのは中澤だった。
「どいてよ」
「あかん」
手首を捕まれ、危うくダンボールを落としそうになるが
中澤はそれすらも無視して安倍を引っ張った。
向かう先はトイレ。
「裕ちゃん・・・・・・」
個室に連れ込まれる。
「そこに置き」
「うん・・・・・・」
「もうなっちには触れん」
キッときつくなる中澤の目。
逆にたじろいだのは安倍の方だ。
「え」
「中途半端にしてた私が悪かったわ。
 ごめん。謝っても許してもらえへんかもな。
 最初だって酔った勢いみたいなもんやったし。
 ほんま、、、、ごめんな」
そう言って、頭を下げる中澤の姿が目に入って
安倍の頭は混乱したようにクラクラとする。
101L.O.D:01/10/29 17:36 ID:9n8FqeRS
あれは、安倍が入社してすぐの頃
直接の上司だった中澤に誘われて飲みに行った時の事
いつものように酔いつぶれて
タクシーで送って、家の中で介抱していて
水を持ってきた安倍の腕を掴み
首元をサラッと撫でた手は意外と温かく
そのまま優しく抱き締められた。
「やわらかいんやな、なっち」
「・・・・・・」
心臓がバクバクした。
女の子と抱き合う事はあっても
こんなにマジで抱き締められたのは初めてで
どうしたらいいかも分からず
抱き締められたままでいた。
後から中澤が言っていたのだが
その時、安倍は彼氏と別れ際で毎日顔が死んでたらしく
元気づけようと思っていたらしい。
その日は、2人ともいつの間にか眠ってしまっていた。
そこから始まった2人の関係。
102L.O.D:01/10/29 17:37 ID:9n8FqeRS
「ワタシハヤグチガスキヤカラ」
最後に俯いた安倍の頬にキスをする。
それがお別れの印。
安倍はゆっくりとその頬に触れる。
ガタンッて個室のドアが閉まる音がして
中澤はそこから消える。
とめどなく溢れ出す涙を止める事は出来ず
崩れ落ちた・・・・・・・・・・・・

第13編集部の部屋に戻れば
中澤は何食わぬ顔で書類に目を通してた。
真っ赤になった目は誰の前から見ても
泣いた後にしか思えない。
石川が何事かと立ち上がったが
吉澤に止められ、また座った。
隣の席の辻、加護もはしゃいでたのに
何一つ話さなかった。
後藤は枕に顔を伏せていたが起きているようで
こちらの様子を伺ってるようだった。
机の上に置いた携帯が鳴る。
こんな時に限って、ちょっと切なげなメロディ。
大きくため息をついて、届いたメールを見る。
『飲みに行くよね?byケイ&カオリ』
チラッと目をやると、2人とも仕事している。
少し・・・・・・笑えた。
103あみ(略:01/10/29 20:34 ID:ZxMA8bWy
おー!新展開楽しみ♪
104名無し募集中。。。 :01/10/29 21:05 ID:1Jq3JF4J
そろそろ強烈にセクハラを誰かに施してくらさい。
105名無し娘。:01/10/29 22:50 ID:kapU8nEW
いけッ!姐さんッ!
106L.O.D:01/10/29 23:41 ID:9n8FqeRS
そういえば、寺田。なんで光男じゃないんだろう・・・(謎
107羊の(略:01/10/29 23:51 ID:vLTq+P+q
スレ名に釣られたのに感動してしまった(w
108L.O.D:01/10/30 00:13 ID:FlSRAfyQ
給湯室の中
中澤はタバコを吹かしながら入ってくる。
「中澤さん・・・・・・」
そこは石川の場所。
中澤もここに入ってくる事はそうそうない。
肩口を捕まれ、グッと壁に押し付けられる。
そして、奪うようなキス。
仕事部屋とは扉で仕切られてて
音は洩れにくい。
口の端からは漏れる声。
「はぁっ・・・・・・」
「・・・・・・」
無言で石川の胸元のボタンを開ける。
彩られた爪が少しきつめに食い込む。
「っ・・・・」
石川はそれに耐える。
中澤を見ると、ひどく不安そうな顔をしていた。
手を伸ばして、頬に触れる。
胸を触ってた中澤の手がひどく震えてるのが分かる。
「ごめん・・・・・・やっぱ、嫌やろな」
「・・・・・・」
手が、指が肌から離れた瞬間
何かがたまらなく不安になって
背を向け、仕事に戻ろうとした中澤に抱きついていた。
「石川?」
「やめないでください」
「あかんやろ、こんなん。・・・・・・セクハラやし」
「散々しといて、なに言ってるんですかぁ
 こんなブラまではずしておいて、、、、
 中澤さんがしないなら、私がします。」
石川は中澤を抱き締めた。
中澤の身体が最初は強張ってたが
次第に力が抜けていく。
「ほんま、あんたは優しい子やな」
「私は中澤さんが好きです・・・・・・
 矢口さんを好きな事も分かってます。
 だけど、こうやってされるの嫌いじゃないから
 せめて、私を抱き締めてくれる人が現れるまで、、、」
「・・・・・・虫のいい話ちゃう?」
「中澤さんだって私をもて遊んだじゃないですかー
 いーんです、ギブ&テイクなんです。」
そうやって、当たり前のような顔して
中澤に口付けると、耳元で囁く。
「石川、したくなっちゃいました。」
言われた中澤の方が赤くなってしまう。
109名無し娘。:01/10/30 00:20 ID:z7XOWpx7
(・∀・)イイ!(・∀・)イイ!(・∀・)イイ!(・∀・)イイ!

最高だよ…
110L.O.D:01/10/30 00:49 ID:vtnEQo5b
  ガタッ

立ったまま、恥ずかしめを受ける石川。
震えた手が壁に触れる。
ピチャピチャッと静かなトイレの中では
その音はより卑猥に聞こえ
耳から入ってきて、脳の中で増幅される。
下を見れば、自分の茂みをかき分け
丹念に、真っ赤な秘部を刺激し続ける中澤がいた。
ロクに直視できるような状況ではないが
中澤にずっと見てろと言われて
目を背ける事が出来ない。
指は滑らかな動きで肉を分け
その先にある芽を弄る。
「んぁっ!」
「・・・・・・」
喘ぐ自分の声さえ刺激になる
もうすでに頭の中は真っ白で
他の事なんて考えれない。
「気持ちええか?」
「はいっ、、、、」
「ふぅーん、こんな会社のトイレで気持ち良くなってまうんか」
「はい・・・・・・・・・・・・」
111L.O.D:01/10/30 00:50 ID:vtnEQo5b
「変態。」
そんな言葉がタマラナイ。
身体全体が痙攣して
もっと欲しいと戦慄く。
そんな様を見て、中澤は笑う。
「欲しいやろ」
「・・・・・・」
「欲しいんなら言わないと」
「・・・欲しいです」
「何が欲しいん?」
「バイブ、、、、」
「こんなにしておいて、ただのバイブでええの?」
中澤の指にまとわりついて
キラキラと、、、ヌメリながら光るものの正体。
「いやです、、、、」
「どんなのがええの?」
「太いのが欲しいです、、、」
石川は自分でも気付いていない。
その顔が笑っている事に。
112L.O.D:01/10/30 00:51 ID:vtnEQo5b
辻が席を立つ。
「どこ行くん?」
隣の相方 加護は声をかける。
「トイレ」
「ん」
付いてくるとも言わず
おとなしくルービックキューブに
目を戻した加護を見届けて
辻は足早にトイレに向かう。
またいつもの場所であの2人は。
みんな知ってる。
知ってるけど、誰もなにも言わない。
別にそれを言ったところで何もならないから。
ただ安倍は不安そうな顔をしてた。
トイレに入る。
押し殺された空気。
だけど、そこからは陰媚な匂い。
なにかが薫るわけではなく気配と言えばいいのだろうか
辻は隣の個室に入り、スカートの中に手を入れ下着を抜き取る。
石川や中澤に比べ、毛は薄いが
十分すぎるほど女の色を放っていた。
隣との境に頭を付け、人に見られると恥ずかしいくらい
股を拡げ、指を這わせる。
いつからだろう、こんな事し始めたの。
編集部の飲み会でボーリングに行った時に聞いた
石川の叫ぶ声だろうか、それとも・・・・・・
辻は石川の事が気になっていた。
ただそれを恋や愛と言うのかは分からなかった。
女の子らしくて、細くて
まるでアニメや漫画に出てくるような
理想的な女の子象。
そんな物にあこがれてるのかもしれないと辻も思ってたが
ただ辻は石川の事を考えるとドキドキしてしまう。
その石川が中澤に性的な事をされ
喘ぎ、声を漏し、腰をくねらせ、感じている。
そう思うだけで、興奮してきて、溢れ出す。
「りか、、、、ちゃん」
狭い二つの空間で交錯する思い・・・・・・
113名無し娘。:01/10/30 00:56 ID:z7XOWpx7
・:*:・( ̄∀ ̄ )。・:*:・ポワァァァン・・・

イッチャッタヨー
114名無し募集中。。。 :01/10/30 14:05 ID:SutfFKD9
くぅ〜たまらんぜ!
しかし、オレはヤグタンがセクハラを受けるまでガマンする!!
115あみ(略:01/10/30 16:21 ID:9clGdziI
たまらん!!今夜も頼むでぇー!
116名無しさん:01/10/30 16:30 ID:9Lj9HzBc
なるほど一章で隣りのトイレに居たのは辻かぁ。
117L.O.D:01/10/31 09:27 ID:gXyxk57E
終業のベルが鳴り
矢口もまたその業務を終える。
携帯電話を見ると、寺田からメールが入っていた。
待ち合わせの時間と場所が書いてある。
向うは忙しい身だが時折こうしてメールを送ってきて
御飯を食べたりしている。
フと振り返ると、浮かない顔でタイムカードを通す女。
(なっち、どうかしたのかな?)
中澤がなっち、なっちと呼ぶので覚えてしまった。
(どうせ明日の朝も会うし、いっか)
矢口の足は更衣室に向かう。

一方、その頃、第13編集部。
「あかぁーん、書き直せぇ!この写真の入る場所もおかしいやないか」
「へい・・・・・・」
辻は記事にダメ出しをされ、しょぼくれる。
「のの・・・・」
「帰ってていいのれすよ、、」
心配だが用事のため残業が出来ない加護を見て、笑ってみせる。
他にメンバーはもう帰ろうとしてる石川ぐらいしかいない。
少し寂しくて、そんな事を思ってると
カッターを使ってた手が滑った。
「痛っ!」
紙を押さえてた指から血が溢れる。
「ののっ!!」
それを見た石川は飛んできて
ティッシュを手にして
傷口を圧迫する。
辻の前で跪き、眉を八の字に曲げ
顔を見上げるその姿にドキっとした。
「梨華ちゃん、、、、」
「痛いの治った?」
「グスッ、、、、ふえーん」
思いっきり抱きつく。
石川はそっと頭を撫でてくれる。
118あみ(略:01/10/31 18:27 ID:d26Ipugg
あのー 質問なんですが、リクエスト何か受け付けてくれるんでしょうか?
ストーリーがだいぶ先まで出来てるなら無理か?
119L.O.D:01/10/31 19:12 ID:Sge8XX3+
入れれる限りは入れて来ますよ。
今回の辻トイレネタも誰か知りたいという声を元に
やってみました。
120名無し募集中。。。 :01/10/31 19:30 ID:Eg3tLt30
なちまりの絡みきぼん
121あみ(略:01/10/31 20:30 ID:d26Ipugg
んじゃね、やすごまで何かひとつお願いします。
122L.O.D:01/10/31 21:18 ID:Sge8XX3+
いつも通り。
いつもの時間。
他の社員よりちょっと遅め。
そして、えらく慌ただしい足音で彼女は現れる。
「おはよ・・・・・・」
「おはようござ・・・・・・」
まで言って、矢口は考える。
昨日の安倍のひどく落ち込んだ顔を思い出した。
今、目の前にいる安倍も少し目が腫れてるっぽい。
「ねぇ、なっち」
「!?」
バッグの中を漁ってた安倍は矢口を見る。
「元気・・・・・・ないね」
「え・・・・・・」
「いや、いっつもさぁ、こうなんちゅーの。
 おはよっ!!って慌てながらだけど
 すっごい元気に入ってくるのにさぁ
 おはよ・・・なんて入ってくるとさ
 こっちも心配しちゃうわけよ・・・・」
うつむく安倍
(やばっ、気に触る事言っちゃったかな・・・・・・)
矢口はビビリながら、その顔を覗き込む。
パッと上がった顔は以外にもサッパリしてた。
「大丈夫っ。あ、そだ、なんでなっちの事知ってるの?」
「だって、そこの編集長が」
「あぁ、裕ちゃんが・・・・・・」
そう言って、2人とも最初は苦笑いしてたが
いつの間にか大爆笑し始め
業務も忘れて、談笑を始める。
123L.O.D:01/10/31 21:19 ID:Sge8XX3+
「・・・・・・なっちはまだこんのかいな」
中澤はカリカリしていた。
自分が振ったショックで休まれたのかと思い
気が気でない。
それに重ねて、他の記者のスローペースぶり。
これは編集長として頭の痛い問題だ。
「圭坊、なんかええネタないかー?」
「そうねー・・・・・・」
ただ今の保田に思考回路
『秋→センチメンタル→寒くなる→あったかいもの→鍋』
「鍋なんてどう?」
「おもろいな。でも、そんなん詳しい奴は・・・・・・」
中澤は編集部内を見回す。
飯田、交信中。
辻、加護、自分の記事と格闘中。
吉澤、なにやら人形を二体手にして、組みさせてる。
後藤、寝てる。
「後藤・・・・・・」
「あぁ、知ってるかもね。」
保田は視線を後藤に落とす。
「ちょっと後藤、起きてくんない?」
「ん、、、?」
「あんたさ、鍋とか好き?」
「あー、あんま肉とか魚は・・・・・・」
「特集、鍋にしようかと思うんだけど」
「チゲ雑炊がね、おいしいの
 あとねー、カルビクッパもいいよねぇ」
後藤は1人で『鍋』というよりは『雑炊』の話をし出す。
保田の目は明らかにどうしようかという疑問の視線を
中澤に投げかけていた。
「まぁ、雑炊でもええんちゃう?」
「いいの?」
「この時期やし、いいやろ。」
「・・・・・・後藤、あんた自分の記事は?」
寝起きでボーッとしてる後藤はニヘラと笑ったかと思うと
真っ白な紙をヒラヒラと振ってみせた。
「出来てないのね」
「ん」
「分かった。私と一緒に取材に行くわよ。」
「はーい」
普段は寝腐ってる後藤だが
保田の言う事は素直に聞く。
マフラーを巻いて、嬉しそうに保田の後を付いていく後藤を見て
ポツリと一言。
「意外といいコンビなんやなぁ・・・・・・
 っていうか、吉澤、お前なにしてんねん!!」
「へ!?」
吉澤の手元ではフル可動人形が2体、上になり下になりくんずほぐれつ
夜のプロレス状態になっていた(w
124あみ(略:01/10/31 22:28 ID:d26Ipugg
やすごまの予感 期待大!
125L.O.D:01/11/01 00:05 ID:PQhTv2wH
取材を終え、一息つこうと松浦は
会社のエントランスでコーヒーを飲んでいた。
人々が行き交う。
着ているスーツ、歩き方
年、性別、何もかも。
冷静に見る。
第三者の目で。
その流れの中にいる自分もまた
他者から見れば、流れの一部なわけで
そんな中から自分は何を感じ取るか
それが記者には大切だと松浦は思う。
主観だけじゃなく
それでいて、自分の言葉で
自分の思いをそこに込める。
それが『かっこいい』と彼女は思う。
そんな事をフと再確認させられた瞬間の目の前を
保田と後藤が通っていく。
保田圭、山崎出版NO.1売り上げのDIVAのライターになるべく
編集長寺田に直談判した女。
その文章は余り有る知識をひけらかすのではなく
ちりばめた感じ。
悪くはない。
たぶんDIVAの方向性に合ったら、間違いなく寺田は
彼女を引っ張ったであろう。
その後ろの後藤真希もまた有名である。
夜は遊び歩き、昼は寝てる、別名眠り姫。
それでも、どこか他人とは違う何かオーラが出ていて
現に今も眠そうに目をこすりながら歩いてるのに
男性社員は彼女を見ている。
松浦の中で膨らみ続ける寺田の言葉
それを解明するべく、松浦は第13編集部を追う事にした。
126L.O.D:01/11/01 00:06 ID:PQhTv2wH
辻は指に巻かれた絆創膏を見ていた。
何をするでもなく、ただジーっと。
「のの、、、のの?」
「え、あ?なんれすか?」
加護が飴玉の袋を持ってた。
「あぁ、お菓子ー」
「指、痛い?」
「ううん」
その2人の間に不用意に石川が割り込んでくる。
「いいなぁ、梨華にもちょうだい?」
石川の顔がそこにある。
石川の唇がそこにある。

(梨華ちゃん、、口移しでいい?)
(え、恥ずかしいよ)
(いいじゃん)
(だって、、、、、)
力づくで石川の身体をグッと抱き寄せる。

「ののーーーー?」
「ののちゃん、生きてる?」
「はっ!!」
モロ目の前に石川の顔が近付いてて、驚いてしまった。
どうやら交信していたらしい。
石川は口をモゴモゴさせる。
もう飴は食べていた。
「はい、ののにプレゼント。」
辻の手を取って、石川が何かを握らせた。
石川はスキップしながら席に戻る。
手を開いてみると、それはただのゴミだった。
石川が食べた飴玉のごみ。
「しょーもなっ!」
加護が石川を見ながら叫ぶ。
照れ笑いを浮かべる石川をよそに
辻はまたそっとそのゴミを握りしめた・・・・・・
127あみ(略:01/11/01 08:58 ID:gMQM8tEP
微妙に気になる いしのの+加護
頑張れ!
128わがまま野郎:01/11/01 11:47 ID:8oUt/tfX
先生!メロソも出してください!!
129L.O.D:01/11/01 14:03 ID:yUwYeqhl
その日の安倍は昨日の様子とは一変
ウキウキと楽しそうである。
あれだけ心配してた中澤も拍子抜けして
何が何だか分からず
逆に安倍に声をかけづらくしていた。
時折、携帯電話を取り出しては
早々とメールを打ち、
それを繰り返す合間に
記事を作っていた。
隣の飯田が話を切り出す。
「ねぇ、なっち、なんかあったの?」
「んー、、なんでもないべさ」
と言って、中澤をチラッと見た。
一体なんだというのだ。
「すっごい楽しそうだよ」
「いいCD買ったんだぁ」
嘘。
だけど、周りの人間は誰も見破れない。
よほどよかったのだろうと思う。
「どんなの?」
「アフリカの民族音楽っぽいのとか入った
 癒し系のCDなんだけど、なんとなく買ってみたの」
「今度、聞かせてよ」
「いいよー」
笑顔。
見るだけでこっちも幸せになりそうないい笑顔だ。
中澤の顔は反対に翳る。
それを見る石川も不安そうになる。
辻がさらにそれを見て・・・・・・ないじゃん。
130L.O.D:01/11/01 14:04 ID:yUwYeqhl
メロソは今後の展開のどこかで出ます。
しばしのお待ちを。
131わがまま野郎:01/11/01 16:38 ID:t8MpVPNu
先生ありがとう!頑張ってください。
132L.O.D:01/11/01 22:30 ID:yUwYeqhl
心地よい音楽が部屋を満たす。
中澤は間接照明に彩られながら
ソファに座り、ビールを口にする。
テーブルには手料理。
そして、横には石川が座ってる。
「緊張してるん?」
「いえ・・・・でも、なんだか、大人な雰囲気ですね。
 石川、こういう部屋、憧れなんですよ。」
「なんだったら毎日来てもええんやで」
「そんなぁ」
中澤に勧められるままにビールを飲む石川。
その頬は心なしか赤い。
それがアルコールのせいなのか
気分なのか分からない。
「石川ってよー見たら、綺麗系の顔なんやな」
「中澤さんも綺麗ですよ」
「・・・・裕子って呼んでや」
指が髪を撫でていく。
それだけで気持ちいい。
オレンジ色の照明が石川の濡れた唇を演出していた。
ゆっくりとソファに沈む身体・・・・・・

床に置かれたバッグの中で震える携帯には気付かない。
133L.O.D:01/11/01 22:30 ID:yUwYeqhl
「寝てるのかなぁ」
辻はつぶやく。
1人の部屋。
ぬいぐるみを抱えながら
ベッドにパタンと倒れ込んだ。
「梨華ちゃん」
急に石川の顔が見たくて
御飯に誘ったけど
返事が来ない。
疲れて、早々と寝てしまったのかと
辻は思っていた。
「はぁ」
ため息が出る。
いや、違う。
そう思い込んでたのだ。
辻にだって分かってる。
石川と中澤の関係。
だから、辛い。
叶わない恋。
134L.O.D:01/11/01 22:31 ID:yUwYeqhl
安倍は待ち合わせの相手を見つけ、
嬉しそうに笑いながら近付く。
「ワッ!」
「うぉ、ビックリしたぁ!!」
ちっちゃい後ろ姿。
矢口真里。
メールのやり取りで今日は遊びに行こうと
約束したのである。
朝、話してただけでなんか気が合うと
2人とも感じていた。
予約してたイタリアンレストランに来て
まずは軽くワインで。
「いやぁ、それにしてもまりっぺが
 こんなにおもしろい子だとは
 思わなかったべさぁ」
「なっちがこんなに訛ってるとはねー」
「あ、訛ってるのは言わないでよー。
 直らないんだよねぇ・・・・・・」
そんな他愛もない話をしていたが
やっぱり一通り食しお酒も進み
二件目なんて頃には
いい年頃の女。
恋の話にもなる。
「いい恋したいねぇ」
「ねぇ」
「どうなの、その辺」
「矢口はねぇ」
矢口の目が伏し目がちになる。
安倍はグラスに残ってた残りのビールをくっと流し込んだ。
長い夜になりそうだ。
135あみ(略:01/11/01 22:39 ID:t8MpVPNu
あぁ〜ののたんのかなわぬ恋 せつないね。
136名無し募集中。。。 :01/11/01 22:56 ID:LDC1Ma6q
なちまり萌え
137夢遊娘。:01/11/01 23:20 ID:cyunaZOQ
タイトルにつられて読みましたが、すごくいい話ですね。
感動巨編期待!
138L.O.D:01/11/02 01:35 ID:4rY4u9ZN
矢口真里、18歳。
恋は多いが、良い思い出はなし。
最初の恋人は引っ越しで転校、消滅。
中学の頃の恋人は甘い思い出も多いが、ガキくさ過ぎた。
高校の頃の彼はダンスがうまかったけど
警察のお世話になって、消滅(w
他、色々
そんなイヤーンな恋愛を重ねると
人間、恋愛不信にもなってくる。
今、寺田がモーションかけてきているが
正直、戸惑ってる部分もあった。
彼はかっこいいし、しゃべりもうまいし
居て楽しいし、博識ですごくいい人だ。
だけど、恋愛となったら
いつかそういうのが見えなくなって
喧嘩もしたりして
嫌になってしまうかもしれない。
なんかそういうのが寂しくて
恋に踏み出せないでいた。
「確かに、寂しいねぇ」
「でしょー・・・・・」
「どうだい、なっちと・・・・・・」
「え?」
矢口はキョトンとした顔で安倍を見る。
言った方の安倍が照れたようなそぶりで返す。
「なーに言ってんのさぁ」
「え、、、あ、、、うん、、、そうだよね」
「?」
矢口の童謡したようなそぶりが安倍には分からない。
139L.O.D:01/11/02 01:36 ID:4rY4u9ZN
帰り際、2人は手をつないで歩く。
酒が入って、少し風が冷たくても
あったかく感じる。
「星見えないや」
安倍は立ち止まり、空を見上げた。
「北海道って星綺麗?」
「綺麗だよ。実家の室蘭なんか一面星だらけだべ」
「へぇ、見てみたいなぁ」
しばらく2人で空を見てて
ちょっと寒かったが
矢口はまだ帰りたくなくて
一緒にいたくて
近くの公園のベンチに誘った。
行く途中に缶コーヒーを買い
2人で飲む。
「はぁ・・・・・・」
息が白く曇り
スーッと空に昇り
散っていく。
そんな儚げな様が矢口の気持ちを揺らがせる。
安倍の肩に頭を寄せる。
「あらぁ、どうしたのさぁ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「なっち・・・・・・」
「んー?」
「寒いから抱き締めて」
寒いのを言い訳にした。
ただ誰かに抱き締めてもらわないと
さびしくて
あの白く曇った息のように
空に散らばりそうだから。
ギュッと抱き締めてもらえたら嬉しかった。
安倍は優しくそれでいて力強く
矢口を抱き締めた。
「あったけー」
「そうかい」
安倍の顔にこぼれる笑顔。
だけど、それは少し切なそうなものだった。
140名無し募集中。。。 :01/11/02 11:36 ID:LslpuDE5
なちまり萌え!
141あみ(略:01/11/02 12:06 ID:rdolIijf
くぅーーー!!たまらん!
142ねぇ、名乗って:01/11/02 20:39 ID:+7kvsaGL
(・∀・)イイ!(・∀・)イイ!(・∀・)イイ!(・∀・)イイ!(・∀・)イイ!
143L.O.D:01/11/02 23:20 ID:Cj/ZXIQb
今日も石川の喘ぎ声を聞きながら
隣の個室で自慰行為を続ける。
水が流れる音。
静かに2人は出ていく。
辻は息を整え
乱れた服を直し
表の様子を伺いながら
ドアを開ける。
手を洗って
廊下に出ると
そこには中澤が待っていた。
「中澤さん・・・・・・」
「辻ぃ、なっがいトイレやなぁ」

安倍は作業をする手を止めて
今はいない主人の席を見る。
(裕ちゃん・・・・・・)
好きだ。
それがどんな始まりであろうと
今の気持ちに嘘はない。
だけど、その人は別な人が好きだという。
その別な人とひょんな事から仲良くなった。
きっとあの人はいつか彼女を口説くだろう。
ギュッと胸が締め付けられる。
あの人が自分ではなく
彼女を抱いた時
自分はどんな顔をして
あの人の顔を見ればいいのだろう。
144L.O.D:01/11/02 23:21 ID:Cj/ZXIQb
「はぁ・・・・・・」
矢口もまた溜息をつく。
眼前に寺田の姿が見えた
「今晩、空いてる?」
「・・・・・・ごめんなさい、今日は」
「そか、また今度」
そう一言告げ、彼は忙しそうに行ってしまった。
きっと付き合っても
そんなすれ違いばかりが生じて
ダメになる。
寺田と入れ代わりにやって来たのは、中澤。
「なんですか?」
「受付嬢がなんて顔してんねん。笑いぃ」
「こう?」
「ん、よし。やぐっちゃんは笑顔がええねん」
艶かしい唇。
ローズレッドに彩られていた。
「口紅、いい色だね」
「そか?今度、プレゼントしたろか?」
「え?いいの?っていうか、なに、口説くつもり?」
中澤の目が真剣になる。
矢口の顎をスッと撫でる指。
「口説かれたいんか?」
「え・・・・・・」
「うちはいつでもええんやで、、、」
矢口の頭の奥で声が響く・・・・・・
145あみ(略:01/11/03 00:18 ID:W4eCCfR0
いよいよかな・・・ドキドキ
146名無しさん:01/11/03 00:44 ID:XqRXdkyp
姐さん本当にタラシやなぁ(w
tsumagiの関係も実際そうなんじゃないか?
と想像してしまふ(w
147吉子:01/11/03 01:29 ID:/swNGHW/
できればよっすぃーもたくさん登場させて(萌
この小説おもしろいねぇ
148L.O.D:01/11/03 01:51 ID:K/MgnnnW
よすこは次の章で。。

それよりも、狛犬師匠(勝手に心の師と崇めている、w)復活。
やっぱね、なんか違うよ、うん。
149L.O.D:01/11/03 10:24 ID:NHzDxFJI
石川が走っていた。
その右手には携帯電話を握りしめて。
中澤から来たメール。
会社から大きな通りの方へ少し行った所にある
コーヒーショップで待っている、と。
どんな話をされるんだろう。
やっぱり振られるんだろうか
不安だけが胸に渦巻く。
店の前で立ち止まり
深呼吸してから
ドアノブに手をかけた。
一番奥の席に人陰。
「なかざ・・・・・・」
そこには、辻が座っていた。
「のの・・・・・・」
「梨華ちゃん」
「中澤さんは?」
「来ないのれす」
「そっか。ののも中澤さんに呼ばれたの?」
「・・・・・・」
黙っている辻。
石川はとりあえず向い側に座る。
俯いて、ひどく緊張している面持ちの辻に声をかける。
「のの?」

  ビクッ!

辻の手の中にあったグラスから
水がこぼれた。
「なにかあった?」
「・・・・梨華ちゃんは中澤さんが好きなの?」
震える唇が紡ぎ出す言葉は
酷くかぼそかで、弱々しく吐き出される。
「・・・・・・!?」
「ののはぁ、梨華ちゃんが好き」
意を決するように上げられた顔。
その目は強くて、優しい。
「中澤さんと梨華ちゃんがHしてるのを聞きながら
 隣の個室でいっつも1人でしてた。
 梨華ちゃんの声が頭でグルグルしてた。
 ずっとずっと一緒にいたかった」
梨華の手を掴み、そっと握りしめる。
「私じゃダメ?」
「のの・・・・・・」
石川はその触れあった手から流れる暖かな心と
自分への思いを感じると共に
今まで一緒にいた時間の中の辻を思い出す。
ふざけてる辻
泣いてる辻
笑ってる辻
怒られてる辻
自分を姉のように慕い
時には困らせ
付いてきていた。
「ごめん・・・・ここでは答えれないよ」
「そっか・・・・・・」
お金を置いて、去っていく石川の背中を見つめる
辻の頬を流れる一雫。
150名無しさん:01/11/03 10:50 ID:dTlt9yHQ
>>146
tsunagiなのにtsumagiってレスしてた・・・


(;〜^◇^〜)<いやぁ〜もう、はずかしぃ〜。
151L.O.D:01/11/03 10:58 ID:NHzDxFJI
「ねぇ、なっち」
「?」
「中澤さんって本気なの?」
明るい雰囲気のバーのカウンターに座る安倍と矢口。
「ほん、、き?」
「今日ね、『うちは矢口の事好きなんや』って」
「裕ちゃんは本気だよ、いつでも」
そう口に出して、安倍は笑う。
語れない言葉。
「だけど、女同士だよ」
「・・・・そういうもんかなぁ」
「だってさぁ」
「そんな事関係なくその人が好きになっちゃう事ってあると思うけどなぁ」
矢口は安倍を見る。
彼女の目はカウンターの向うの並ぶ酒のボトルを
いや、その向うにある何かを見てた。
「なっちはそういうの大丈夫なの?」
「んー、、、なのかも」
「そか」
二杯目のスクリュードライバーに口をつける。
その時、店のドアが開いて、誰かが入ってくる。
「裕ちゃん・・・・・・」
「あぁっ!やぐっちゃんやないのー。
 なっちと2人でなにしてん?」
中澤と、その後ろには石川の姿が見える。
翳る安倍の顔。
石川もそれに気付き、気まずそうにする。
しかし、中澤は矢口の隣に座ってしまった。
「一口ちょーだい」
いいよの声も聞かず、矢口のカクテルに口をつける。
薄く残ったローズレッドの口紅。
152L.O.D:01/11/03 10:59 ID:NHzDxFJI
「中澤さん、こっちに・・・・・・」
「えー、、、まぁ、ええか。
 お姫さまにはかなわんわ」
2人から少し離れたテーブル席に座る中澤と石川
「ビックリしたね」
「・・・・・・うん」
矢口が安倍の憂いを帯びた表情に気付かない。
耳の端で捕らえる中澤の声
電話で話してる。
ガタッという椅子を引く音。
それよりも幾分か荒々しく聞こえる。
勢い良く立ち上がったような
「はぁ!?社長が記事の差し換えを!?」
中澤が店内中に聞こえるような声で叫んだ。
石川が周りに謝ってる。
「なっち!」
ツカツカとこっちに歩いてきた中澤の目は
今にも炎が出そうなぐらい
燃えたぎっていた。
「は、はい」
「会社戻るで」
「えぇっ!?」
「どうしたんですか、中澤さん?」
矢口が聞くと、さっき安倍に見せた険しい表情よりは
和らいだ顔で笑っていた。
「あのアホんだら社長が会議にもかけないで
 うちらの特集記事、ボツにしおった」
153L.O.D:01/11/03 11:35 ID:NHzDxFJI
>>150

( ^▽^)<中澤さんが好きなのは、tumamiですよね?
从#~∀~#从<お前もつまんだろか?
( T▽T)<振り回されてるぅ、ののちゃぁーん
( ´D`)<カモナ梨華ちゃんなのれす。
(●´ー`)<やれやれだべ。

どうなるやら
154あみ(略:01/11/03 11:36 ID:jgjE0oc0
朝からご苦労様です。
155わがまま野郎:01/11/03 15:14 ID:jgjE0oc0
こうゆうのも見たいれす ↓

(0`〜`0川´〜`)||
156L.O.D:01/11/03 16:35 ID:4CXiN9Do
会社へと向かって走る3人の編集者。
自分達が作った物を否定される悔しさ。
しかし、石川の心はそれ以上に揺れ動いていた。
辻の温もり。
そして、さっき矢口に見せた中澤の顔。
自分はどこに行けばいいのか
何をすればいいのか
今、横を走る中澤を見ると
少しドキッとする。
会社の前に来ると、ちょうどよく社長が帰宅するべく
車に乗り込むところだった。
(待てや、ゴルアァアア!!)
という言葉を飲み込んで
「社長!待ってください!!」
と、中澤が叫ぶ。
「ん・・・・・・君はぁ」
「第13編集部の中澤です」
「あぁ、読ませてもらったよ」
「差し換えってどういう事ですか?」
「雑炊ってのはぁ、、、奇を衒いすぎじゃないかね?」
「鍋特集なんてのは女性雑誌では当たり前です!
 そこに御飯を入れて食べる旨さを
 社長も御存じではないですか?」
「あれは、、料理といえるか?」
キレそうになる理性を抑え、口をつぐんだ。
「どうだね?」
「・・・・・・」
「俺はおもしろいと思いますがね」
社長の後ろに立つのは、寺田尽人。
「寺田君」
「このネタはこいつらじゃないと書けないかなぁ」
さらに、その奥の柱からこっちをジッと見てるのは松浦だ。
「しかしだねぇ」
「いやぁ、社長のお気持ちも分かりますけど
 どないですか、ここは一つ俺の顔に免じて
 この話、俺に預けさせてくれませんか?」
「はぁ?」
中澤があげたすっとんきょうな声。
そりゃそうだ。
一体、何を言い出すのだ、この男。
「うちで今、女性格闘家の特集やるんですわ。
 それで、第13編集部の吉澤と
 社長のお気に入りの記者に記事を書かせて
 勝負させるっての、どないすか?」
「よ、吉澤かぁ」
「どうするの、裕ちゃん」
心配そうに中澤を見る部下2人。
中澤の脳裏にはさっき電話をしてきた保田の声が聞こえた。
人一倍責任感が強くて、記者という仕事を愛してる
あの子がうろたえて、震えた声で電話をしてきた。
「受けてたってやろうやないか」

その頃、矢口は
「・・・・・・・・・・・・。」
1人で飲んでいた。

第二章終了。
157L.O.D@休憩:01/11/03 16:56 ID:4CXiN9Do
というわけで、第二章はしんみり責めてみました。
入り乱れる乙女心
それをかき乱すような中澤の行動。
第三章はジョン=ウーばりのアクションと
ハードなストーリーを散りばめつつ
セクシーに行こうかと思う次第で。
158あみ(略:01/11/03 17:49 ID:mevZwihF
お疲れ様です。いよいよよっすぃー登場ですか? いいらさんとメロソもお願いします。
159レク:01/11/03 19:34 ID:+1oIyGX/
おもろいっすよ!
おもしろいっすよLODさん!!!!!
160ねぇ、名乗って:01/11/04 00:28 ID:gNaZ3wSG
スレ立ち上げからずっとROMってきた者ですが・・・
書かずにはいられない。
LODさん。貴方、素晴らしいです(w
つい読みふけっちゃいますよ。
161夢遊娘。:01/11/04 00:29 ID:F0oJAYJZ
2章、お疲れ様でした。
次章も楽しみにしてます。いしつじ展開にドキドキしました!
162名無し募集中。。。 :01/11/04 01:28 ID:GDhoebhM
ずーっとヤグタン待ちなんですけど・・・まだですか?
ハァハァ・・・ヤグタン・・・
163名無し娘。:01/11/04 13:00 ID:LJXI7Rgg
恋せよ乙女。
切ない…切ないねぇ
164L.O.D:01/11/04 16:22 ID:7ZrHl7ac
第三章 REAL

目が覚めた。
目覚めは悪い方ではない。
ベッドから起き上がり、思いっきり背伸びした。
窓辺のレースのカーテンからは白い光が零れだし
フローリングの床に映り込む。
そんな中、目覚まし代わりに
スピーカーから聞こえるのは
・・・・・・イノキ・ボンバイエだ。
「シャァアア、コノォ!」
吉澤ひとみ。
生粋の格闘ヲタクである。
165L.O.D:01/11/04 16:23 ID:7ZrHl7ac
トレーニングウェアを着て
4キロのコースを走り
朝御飯に味噌汁、納豆、目玉焼き。
至って普通のメニュー。
それを食べ終わると
服を脱いで、シャワータイム。
汗を流したら
ゆっくり新聞に目を通す。
着替えて、化粧して
一杯の牛乳を飲み
自転車に跨がって
今日も出勤。

受付嬢の女の子はちっちゃくてかわいい。
矢口真里はカードリーダーにカードを通した吉澤にこう言った。
「よっすぃー、がんばってね」
「がんばって?」
矢口は吉澤が勤める山崎出版第13編集部編集長の中澤のお気に入り。
「ま、いづれ分かるさ」
矢口の言葉を100%理解出来ないまま
吉澤は階段を昇っていく。
ただ歩くんじゃなくて
走っていく。
扉を開ける。
第13編集部。
全員の視線が自分に突き刺さった。
「おはよーございます・・・・・・」
おかしい。空気がおかしい。
「吉澤、ちょっと来い」
・・・・中澤の目が光ってる。
(なにか、ミスしたっけ)
何も分からないまま、中澤の机の前に立たされる。

その3秒後、アノ話を聞かされ
吉澤ひとみはなぜか側転した・・・・・・
166L.O.D:01/11/04 21:23 ID:7ZrHl7ac
だ、誰か・・・・メロソの各キャラを教えてください・・・・・・
167あみ(略:01/11/04 22:48 ID:HROUih7U
村田めぐみ…リーダーであり きっついボケキャラ
大谷雅恵…爆裂下半身を持つややボケキャラ
斉藤瞳…ギャル系? 一応セクシー担当おねーさまキャラか?
柴田あゆみ…マターリ系?最近ピンで仕事が多い。石川の友達らしい。

このぐらいしか分かりません・・・すんません先生!
168あみ(略:01/11/04 22:54 ID:lDaJOkek
娘。に例えるなら・・・

村田→飯田
大谷→安倍
斉藤→保田
柴田→石川

チョト違うかな? ごめん
169名無し娘。:01/11/05 01:00 ID:S9MzQHtI
吉澤は嬉しいのか?悲しいのか?(w
170L.O.D:01/11/05 17:10 ID:QaVNXlON
その日の帰り
吉澤はそのままいつも通ってる道場に向かう。
初めは体力作りのつもりだったが
やっぱりマジでハマってしまった。
初めて格闘技を見たのは
ずっとずっとちっちゃい頃
父親がボクシングの試合をよく見てて
一緒になって見てた。
中学の頃はジャニーズにもハマって
キャァキャァ言ってた。
だけど、やっぱり戦う人に憧れて
次第に格闘技を見るようになった。
その頃はK-1なんかもやっていて
クラスに詳しい人もいたりして
どんどん総合格闘技なんかもチェックし始めて
いつの間にやら生活は格闘技を中心に回るようになっていた。
だけど、試合やインタビューを通して
そこに垣間見る選手の努力や気持ちを
忘れる事は出来ない。
それが観客の気持ちと連動した時なんて
見てるこっちも興奮してしまう。
なんて事を考えながら、縄跳びやアップを終え
身体は暖まり、ウェイトに入る。
こんな時に吉澤は記事のネタを思い浮かびやすいが
今回は事が事なので
軽く考えてもいられない。
171L.O.D:01/11/05 17:25 ID:QaVNXlON
「っていうわけやねん」
「えぇーーーーーっ!」
あまりに驚いて、側転。
「なんでやねん」
中澤のつっこみ。
まぁ、妥当なつっこみだろう。
「いや、つっこみたいのはこっちっすよー」
吉澤はチラッと保田と後藤を見た。
保田が両手を合わせて、頼んでる。
後藤は寝てた。
「格闘技の記事なんですよね?」
「そうや。だから、お前やねん」
「分かりました。吉澤に任せてくださいっ」

安請け合いしたわけじゃない。
保田と後藤ががんばって取材して
あの記事を書いた事を知ってるから。
その後、自分の席に戻って
寝てる後藤を見てみると
泣いていた。
(どんな事やろうかなぁ)
記事を載せるのは、DIVA。
読者は、1〜30代男女。
有名な選手のインタビュー・・・・・・
現在の格闘技界の動き・・・・・・
頭の中をグルグルと回る。
172L.O.D:01/11/05 17:25 ID:QaVNXlON
「じゃ、頼んだぞ」
「まかせてください」
社長に向かって笑いかける四つの影。
その様子を窓の外から覗く者が1人・・・・・・松浦亜弥。
屋上からロープを使って、覗いてるのだが
こいつ、何者だ?
(社長秘書軍団か・・・・・・)
山崎出版の元記者、もしくは、面接で気に入った女の子を
手元に置くために秘書にしてるというウワサは
なかばはずれてもいなさそうだが
松浦はものすごく1人、気になっていた
柴田あゆみ。
実は情報通松浦を持ってしても
彼女の情報だけは何一つなかったのだ。
その横に並ぶ3人の事はなんとなく知っている。
大谷雅恵と村田めぐみは社内でも有名な宴会班。
斎藤瞳は幹部クラスに太いパイプを持ってるらしい。
彼女達が寺田以外の編集長クラスの人間を落として
圧力をかければ、寺田も社長側に付かざるを得ないというわけか。
(これは大変だなぁ)

  スルスル・・・・・・

松浦が逆さに釣られたまま、昇っていく。
173あみ(略:01/11/05 23:56 ID:l4h0Fjei
メロソ登場か!
174  :01/11/06 00:08 ID:mmfTNsK4
マツーラが凄い事になってきた・・・(w
175名無し娘。:01/11/06 00:37 ID:G5WaS++M
あややってこんな役、似合うなぁ(w
176ねぇ、名乗って:01/11/06 00:54 ID:yShxmgTC
マンセー! L.O.D!
177トロピカ〜ル名無して〜る:01/11/06 06:09 ID:Ol7LoUUl
秘密諜報員あやや…
178L.O.D:01/11/06 09:41 ID:+fifgN+J
翌日
吉澤はボーっとボクシングバンダム級のビデオを見ていた。
一体、何を記事にしたら、雑誌は売れるのか
そして、格闘技のおもしろさは伝わるのか。
問いはそのまま格闘技という世界の広さと同じくらい
どんどんと心の内に広がっていき
その端は見えなくなり
また改めて問いかける事となってしまう。
「よっすぃー、がんばってね」
石川が差し出したのは、ベーグル。
「あ・・・・・・」
気づかって、買って来てくれたらしい。
しかも、吉澤が好んでる店のやつだった。
「ありがと」
「なぁなぁ、よっしぃー。」
「わたしたちも手伝う事ないれすか?」
膨大な資料の向こうから顔を覗かせる辻と加護。
「まだないよ。って2人とも自分の出来てないんでしょ?」
「・・・・・・」
顔を見合わせてる。
その仕種が可愛くて
ちょっと笑った。
ちょうどよくビデオが終わったが
ネタが一向に思い付かない。
スクッと立って、向かったのは屋上。
「はぁ・・・・・・」
流れるような車の交差。
人々も足早に歩いていく。
そんな中で格闘技という非日常が
この世界の中でどういう意味を持つのだろう。
自分が大好きなコトをみんなに伝えたかった。
だけど、それをうまく言葉に出来ないのだ。
「飲む?」
「保田さん・・・・・・」
隣の鉄柵に現れたのは、保田だった。
突然、声をかけられ、驚いたが
未開封の缶コーヒーを受け取り
一口飲んだ。
「ごめんね」
「いや、そんな・・・・・・」
「まぁ、うちの編集部じゃぁね。
 雑誌自体つぶされそうなんだし」
「・・・・・・」
「でもさ、私達だって一応、記者なんだしさ
 誰かに何かを伝えるために仕事してるわけで
 そういう思いをつぶそうとするなんてさ
 ムカつかない?」
初めてだ。
保田が第13編集部の誰かにこんな思いを話すのは。
吉澤は保田を見た。
猫のような目は自分に向かって笑いかけてた。
「ムカつくっス」
「頼んだぞ、吉澤」
「まかせてください」
「困った事あったら、相談しろよ」
自分の記事の事もあるのだろう。
背を向け、手をひらひらと振る。
「・・・・・・あの!」
「早速かよ!!」
「カメラの使い方が分からないんすけど」
179L.O.D:01/11/06 09:52 ID:+fifgN+J
矢口真里は背筋を伸ばし、シャンとした姿で
受付口に座っていた。
視界の端に入ってくるのは秘書軍団。
「おはよう、矢口さん」
「おはようございます」
村田が通っていく。
「今日もちっちゃいわねー」
「どうも・・・・・・」
大谷が通っていく
「かわいい・・・・」
「・・・・・・」
斎藤の流し目
「・・・・学力低くて、秘書になれなかった」
「・・・・・・!!?」
柴田がポツリと言い放つ。
去っていく連中。
矢口の顔が歪んでいる事には気付かない。
(殺すぞ、ゴルァ)
「もー、やぐっちゃん、笑いー」
「あー、中澤さん」
一難去ってまた一難。
中澤がカウンターごしに顔を近付けてきてる。
「今晩空いてる?」
「また飲みに行くの?」
「なんや付き合えないとでも言うんか?
 裕ちゃんの酒が飲めへんのかっ!?」
最近、安倍と仲良くなったせいか
すっかり中澤とアフター5を付き合う事が多くなった。
最初はただウザかったのに
やっぱり、一応この人は
自分より大人なわけで
人生の愚痴だとか悩みを聞いてくれたりもしたし
なぐさめてもくれたし
怒ってもくれた。
いつの間にやら仲良くなっていた。
「はいはい、そんな大声あげないでくださいよー」
「よし、また後でな」
と言って、会社の中に戻ってしまった。
外に出る用事はなく
矢口にその事を伝えに来ただけらしい。
(ヒマなのか、あの人?)
180L.O.D:01/11/06 10:04 ID:+fifgN+J
中澤が第13編集部に戻ると
吉澤を囲んで、みんなが集まっていた。
「なになに、どないしてん?」
「カメラの使い方がわかんないんですよー」
「カメラァ?カメラなら圭坊やろ?」
「それが私にも分からないのよー」
それまで交信してた飯田が割って入ってきて
吉澤の手からカメラを取ると
なにやら凝視しだした。
みんな、その様子を固唾を飲んで見守る。
「壊れてるね」
「え!?」
「分かったのれすか!!?」
「うん、壊れてる」
「圭織、どうやったんだべ?」
「カメラの声を聞いたの」
「・・・・・・怖っ」
飯田はいたく真面目な顔でそう言った。
まんざら嘘でもないようだが
それにしても、これは超状現象の域だ。
「カメラ、どっかから借りてこないと」
「そやな。みんな、各部署回って聞いてこよか」
皆がうなづく中、後藤だけは寝ていた。

1時間後
「あった?」
「ない!」
「ないっすよー・・・・・・」
「ほんまなんやねん、この会社」
どこの編集部もカメラを貸してくれない。
「どっかプロに頼む?」
「それしかないかなー」
そんな中、中澤の目は飯田を見ていた。
「どうしましょう、中澤さん!」
必要以上にうろたえてる様子の石川が
中澤に振ると、彼女は膝を叩いた
「これや!」
「へ?」
「圭織、あんた確か速写の天才ちゃうっけ?」
みんなが注目する中、飯田が口を開く
「目で見た1000/1秒までの画像ならメモリーできるよ」

(デジカメよりすごくない?)

かくして、吉澤はデジカメより高性能なイラストレーター
飯田を手に入れ、取材へと出るのであった。
181あみ(略:01/11/06 10:38 ID:1v+K92Qo
おはようございます。
しばちゃんが毒を・・・(SAD
182名無し募集中。。。:01/11/06 16:02 ID:Nu7pde3U
 
183 :01/11/06 16:26 ID:z36lMqce
と、その時、とんでもない予想だにしない想像を絶する凄まじい光景が飯田の目に飛び込んできた!!!
184L.O.D:01/11/06 17:03 ID:1DirwHav
>>183
下半身にナニを生やした辻が加護を襲おうとしてたとか?

注:この小説はおな趣味には走りません。
185L.O.D:01/11/06 20:46 ID:eycHU9hx
いつも試合に行ってるインディーズ女子プロレスの練習場。
ドアを開けただけで、汗と熱気が分かる。
「どうも、吉澤です」
「あぁ、どうも」
本当に小さな団体で、総勢20人くらいしかおらず
スタッフのはてまで吉澤の事は知っており
今回の取材の事を話すと
快く承知してくれた。
「じゃぁ、飯田さんはよさそうなポーズをスケッチしててくださいね」
「うん、分かった」
と、言ってる飯田の手には何もない。
どうするのか聞きたかったが
大丈夫と言ってたから、大丈夫なのだろう。
スタッフに案内されたリング横の応接セットには
この団体の社長であり、エース選手が座っていた。
「ひさしぶり」
「よろしくお願いします」
「よろしく」
ってな感じでインタビューを始めたのだが
吉澤の耳にはリングに打ち付けられる音だとか
ロープがたわむ音がついて離れない。
社長もそれに気付いて、笑った。
「やってく?」
「いいんすか?」
「OK。OK。」
リング下では飯田が目を見開いて
こっちを見ていた。
ちょっと怖い。
186L.O.D:01/11/06 20:47 ID:eycHU9hx
「受け身やろうか」
「はい」
練習生が見本に回ってみせる。
吉澤もそれに続いて、綺麗に回ってみせる。
「おぉー、うまいうまい」
一通りの受け身を終え
今度はロープワークに移る。
日頃、道場で練習してるだけあって
見劣りしないくらいの走りを見せた。
「よっすぃー、記者やめてレスラーなりなさい」
「命令ですか?」
「勿体無いなぁ」
次はコーナーからの飛びだが
さすがにこれは他の選手も止めた。
・・・・・・だけど、飛んじゃうし。
「本当に転職しない?」
「え・・・・・・」
レスリングの練習。
さすがに額から汗がこぼれてる。
練習生と手を合わせた瞬間
練習生の顔色が変わる。
指一本の差で、次の一手に移る隙を奪うのである。
もうこれは天才的としか言えない。
「よっすぃー・・・・・・楽しい?」
「楽しいです!」
とびっきりの笑顔。
神はなんて罪作りなのだろう。
これほどまでの天才を作りながら
彼女はその道とは別の道を歩いている。
その後もトップレスラーの技をガンガン受けるも
練習のせいなのか、天然なのか
完璧なまでの受け身でスクッと立ってみせるのであった。
「ありがとうございましたー!」
最後に社長が一枚の名刺を渡してくれた。
そこには、社長自らの携帯番号が。
「誰か怪我したら呼んでいい?」
「えぇ・・・・・・」
187L.O.D:01/11/06 20:47 ID:eycHU9hx
第4編集部記者 平家みちよが取材バッグを担いで廊下に出てくる。
何気なく進行方向とは反対側を見た。
(あれは・・・・・・)
自分の所の編集長が、社長秘書斎藤瞳と話してる。
話してるというか、一方的に言い寄られてる感じだ。
(どないしたんやろ?)
なにかトラブルでもあったのか
それとも、バカ社長がまた強権発動して
記事を変えさせたのか。
時計を見た。
時間がない。
エレベーターに飛び乗り
エントランスについたら走る。
受付口では中澤がコーヒー飲みながら
矢口と談笑してた。
「姐さん、こんな所で茶売ってる場合かいな?」
「なんやの、矢口とうちの愛の確認を邪魔するんか?」
「なんですかぁ、それ。別にそんな事してませんよ」
「えー、裕ちゃんと愛の確認中やないかー」
「知らないですって」
「矢口さん、ほんまごめんなー、こいつ、アホやねん」
「アホぬかすな、コルァ!」
「こわぁ!中澤さん、こわぁ!」
「だから、やぐっちゃん、裕ちゃんて呼んでみ」
そんな中澤はほっといて
平家は会社から飛び出て行った。
188L.O.D:01/11/06 20:48 ID:eycHU9hx
同じ頃、某トイレでは
(よっすぃー大丈夫かなぁ?)
便座に腰掛ける石川梨華。
するよしないよはさておいて
ナニをしてるわけでも、用を足してるわけでもなく
閉めた蓋の上に座ってるのである。
彼女は中澤を待っていた。
しびれを切らして、
メールしようと携帯を出した瞬間
誰かがトイレに入ってきて
秘密の合図。
ノック・・・・・・







少し間を開けて、3回ノック。
石川はそーっと覗き込むように開けた。
「梨華ちゃん・・・・・・」
辻がいた。
189L.O.D:01/11/06 21:32 ID:eycHU9hx
第13編集部では、飯田が保田のプリンターを抱えて
どっかに行ってしまい、皆でその帰りを待っていた。
「圭織、どこ行ったんだべ?」
「さぁ?」
扉が開き、飯田はその手に抱えきれないぐらいの写真を
ドサッと机に置いたのだ。
「か、圭織?」
怖る怖る保田が声をかける。
「なに?」
「これ、吉澤と行った時のだよね?」
「うん」
「・・・・・・しゃしんみたいなのれす」
「いや、これ写真でしょー?」
辻、加護がその山の中から一枚取り出して
こねくり回してるが
まさしくそれは高画質写真であり
手書きのイラストではない。
「絵じゃないの?」
「うん、印刷したの」
どうやって?
ますます深まる飯田の謎。
そんな様子を松浦が天井から覗いていた。
(飯田さんにあんな機能がついてたなんて・・・・・・)
あんたも十分、怖いがな。
190L.O.D:01/11/06 21:40 ID:eycHU9hx
吉澤が廊下を走る。
今日は『格闘技通信』発売日だ。
あやうく忙しさに忙殺され
買い忘れるところだった。
「待っててねーーーーー」
そんな100Mスプリンター並の速度で走っていく吉澤に近付く影。

  シャァアアアアアアアアア!!

荷物運搬用の台車に乗ってるのは、村田と大谷。
それを押してるのは柴田。
吉澤も相当な速さだが
それにグイグイ近付いてるこっちの速さは尋常じゃない。
どんどん差が縮まっていく。
「ん?」
吉澤が異変に気付いた時には遅かった。
邪魔する者は全て轢き殺し
社長秘書軍団を乗せた台車が目前に迫っていた。
「うわぁおぉおおおおおおおお!!」
191L.O.D:01/11/06 21:59 ID:eycHU9hx
うつむいた顔。
無言の空間はその重圧に押し殺されそうなぐらい息苦しい。
それを撃ち破るように口を開いたのは、辻の方だった。
「なにしてるんだろうね」
石川はその問いに反応出来ない。
意味もなく、その個室にいる2人。
ここは、中澤と2人の場所だったはずなのに
今、ここに中澤は来なくて
代わりに辻がいた。
「ののは、中澤さんに言われて来たの?」
「梨華ちゃんがいるからって・・・・・・」
理由は分からない。
分かってるけど認めたくない。
涙が溢れ出す。
別れの言葉なんだと思う。
きっとそうなんだと思う。
「梨華ちゃん・・・・・・」
辻の声が酷く耳に残る。
だけど、今、この悲しみを辻に向けるのは辻に悪い気がして
石川は個室から逃げ出そうとした。
「梨華ちゃん!」
力いっぱい叫び
石川の細い身体を抱き締める辻。
「離して!」
「やだ!」
「離して!!」
「いやらもん!!」
ハッとして、辻を見た。
泣いていた。
辻のふっくらとした頬を濡らしていた。
「なんで泣いてるの?」
「わかんない」
「離して・・・・・・?」
「やだぁ」
まるでだだっ子のようにそう言う辻に負け
石川は座り込んだ。
「りかちゃんがぁ、、なかざーさんをすきれもぉ
 ののはいいから、いっしょに、、いてくらさい」
胸に突き刺さる言葉。
耳から入ってきたその言葉は
何度も何度もリフレインする。
まるで自らに警鐘を打鳴らすように
響き渡る。

『私は中澤さんが好きです・・・・・・
 矢口さんを好きな事も分かってます。
 だけど、こうやってされるの嫌いじゃないから
 せめて、私を抱き締めてくれる人が現れるまで、、、』

(中澤さんは知ってたんだ、ののが私を好きな事)
ループする思い。
石川は中澤なりの優しさに気付く。
それじゃなきゃこんな事しない。
そっと優しく辻の身体を抱き締めた。
192L.O.D:01/11/06 22:05 ID:eycHU9hx
(そろそろ終わったかいな?)
中澤が時計を見ながら廊下を歩いていく。
全てが仕掛けた事。
少し胸が痛む気もするが自業自得。
そんな事を思いながら
天井を見ると
頭が突き刺さった人がブラ下がっていた。
「はぁ?」
よく見ると、自分の目の前は悲惨な状況になっていた。
とりあえず、このブラ下がってる人の脚を引っ張ってみると
抜けそうだったので、グッと力を込めてみた。
落ちてきたのは、吉澤ひとみ。
「よ、吉澤、どないしたんや!?」
答えがない。
後ろで足音がした気がする。

  ゴンッ!!

続く鈍い音
193あみ(略:01/11/06 22:39 ID:1v+K92Qo
( ^▽^)< しないよ!
ののたん・・・
194160=174:01/11/07 00:55 ID:jF4XMDvq
おお、サスペンスも有りなのか?!

期待sage
195レク:01/11/07 01:15 ID:UFak6LgI
よっすぃ〜中心だ!!!!!!!!!
YATTA!!!!!!!

期待sage
196名無し娘。:01/11/07 01:48 ID:9V/LpSxC
>ループする思い。

ココ最高、カコ(・∀・)イイ!!
197L.O.D:01/11/07 10:06 ID:IpDkumET
数日後・・・・・・
「あくどいなぁ、あいつら」
寺田は松浦から送られて来た最新ホットピクスに目を通す。
超小型カメラで撮影された吉澤ひとみ、中澤裕子惨殺の真実。
はっきりと秘書軍団の姿が映っていた。
ここまで来ると、明らかに犯罪だが
社長の権力で記事は揉み消されていた。
198L.O.D:01/11/07 10:07 ID:IpDkumET
今回の任務の適任者とトップを失った第13編集部は
騒がしい所じゃない事態に見回れていた。
「どうするのよ!」
「期日はいつなんですか!?」
「あ、明日よ・・・・・・」
「えぇーーーーーっ!!?」
「ど、どないしよ!!」
加護もあわてすぎて関西弁に戻ってるし。
そんな中、1人動じてない人がいた。
目をこすりながら、ゆっくりと上半身を起き上がらせる。
「んー・・・・・・」
後藤真希。
「ごっちん、どうしよ!!
 よっすぃーと中澤さんが殺されちゃったの!」
「へぇ・・・・・・」
「驚き薄っ!」
「でね!!よっすぃーが明日までに記事を書かないと
 第13編集部つぶされるの!」
「そうなんだ・・・よっすぃーいないんでしょ?
 書けないじゃん。」
ものすごく冷静に言い放つ後藤と
ものすごく興奮している石川。
「それでどうしようか話してたの!!」
「・・・・・・じゃぁ、私が書くよ」
吉澤の整理整頓されてたはずの机の上の
(飯田が載せた写真だとかここぞとばかりに経費で落としたビデオとかが
 山積みになっているせいで、汚い)
一番下から原稿を取り出した。
書きかけの原稿。
後藤は自分の机の上を見たが
ペンの一本もなかった。
「これ使いなさい」
保田が差し出したのはいつも彼女の胸ポケットに入ってる万年筆
「ありがと」
受け取り、蓋を開く。
インクの匂い。
息を吐き、筆を置く。

  ビリッ

「・・・・・・」
紙が破けた。
199L.O.D:01/11/07 10:08 ID:IpDkumET
そんなこんなで約束の日は来る。
寺田の前に出された二つの記事。
社長秘書軍団は村田と柴田。
第13編集部は飯田と保田。
「ほな、読ましてもらうわ」
寺田は順々に目を通していく。
その姿はどことなくオーラを発しており
出来る男の匂いを出している。
数分の出来事。
(これで私達の運命が決まる・・・・・・)
保田はゴクリと息を飲んだ。
「そやなぁ、両方ともそれなりに味があっておもしろかったんやけどな」
「!?」
「どうなるですかぁー!?」
「この際だから、自らの手で決めてもらおうか」
寺田が居た場所からモクモクと煙が吹き出す。
「なに!?なんなの!!?」
「柴田、逃げるわよ!」
突然の状況に秘書軍団も混乱してる
寺田の声がスピーカーから聞こえる。
『それでは皆様、東京ドームの地下で会いましょう、チャーオ』
200あみ(略:01/11/07 10:37 ID:7fmIFH9u
嵐の予感
201ねぇ、名乗って:01/11/07 16:37 ID:vDMhwkQO
え、死んだの?
202ねぇ、名乗って:01/11/07 18:32 ID:12Vmnwpr
『レディース&ジェントルメーーーン!!』
蝶ネクタイをつけたマッシュルームカットの男まことがマイクで叫ぶ。
ただそれだけで狂喜乱舞したように騒ぐ観客。
東京ドーム地下6階。
まるで某有名格闘マンガのようだな・・・・・・
「なんだ、こりゃ・・・・・・」
「すごいれすねぇ」
「こら!のの、砂遊びしちゃダメ!」
その中央には砂地の闘技場。
第13編集部の面々と社長秘書軍団、それに寺田もいた。
まことからマイクをもらった寺田が説明した分には
『ガチンコで記事掲載権を獲得しろ』との事で、
要はここで喧嘩しろとの事なのであろう。
秘書軍団は勝ち誇った様子
なにやら秘策でもあるらしい。
しかし、こっちには肝心の吉澤がいない。
さて、どうしたものか・・・・・・
「かっけぇーーーーーーーー!!」
「!!?」
振り向けば、奴がいた。
頭の包帯がものすごく痛々しいが
それは間違いなく吉澤ひとみである。
その後ろには中澤もちゃんといる。
「よっすぃーー!!」
「中澤さん!死んだんじゃなかったんですね!」
中澤がツカツカと寺田に近付き
マイクを奪う。
「その勝負受けたろうやないかぁっ!!」
怖すぎる。
その一言でまるでこの部屋自体が揺れるような怒号と化す。
秘書軍団は柴田、第13編集部は当然吉澤が残る。
「よっすぃ・・・・・・」
石川は胸の前で手を組み、祈る。
吉澤の目はキラキラしてた。
しかも、柴田じゃなくて観客を見回してる。
(徳川のジッチャン、どこ!?)
そんな場合じゃないぞ、よっすぃ。
柴田は一気に間合いを詰めていた。
(はやっ!)
203ねぇ、名乗って:01/11/07 18:33 ID:12Vmnwpr
最初の一撃は真横から降り下ろされた掌打。
吉澤の体格のいい身体が横に揺らぐ。
柴田の細い身体から放たれたとは思えないぐらい
重くて力強い一発だった。
(なるべく喰らわないようにしなきゃ)
サイドステップで身体を入れ替えていこうとするが
まるで全てを見切ってるかのように
それに合わせてついてきてしまう。
(うまいなぁ)

  キュッ

吉澤は足の指で砂を摘む。
柴田の目をめがけて、蹴りを撃つ。
パァッと広がり、柴田の身体がくの字に曲がる。
(チャァーンス・・・・・・!?)
一歩踏み出した時に異変に気付いた。
目の前に柴田はいない。
それだけじゃなく、自分の首に後ろから近付く気配。
(絶対こいつただの秘書じゃないよーーーー!)
首に絡み付いてくる腕。
対処するヒマもないほど、早くスリーパーが入った。
頸動脈が圧迫され、見る見る内に吉澤の顔色が変わっていく。
「シャァアアアアアアアア!!」
柴田の身体が浮き、一本背負いのごとく前方に投げられていく。
そのまま浴びせるように自らの身体ごと落ちていき
首に巻き付いた腕をはずした。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
(おかしい、、、ただの編集部ものだったはずなのに、、、)
目の前の敵の人間を超えた攻撃にグラップラーひとみは戸惑っていた。
204ねぇ、名乗って:01/11/07 18:34 ID:12Vmnwpr
辻と加護が観客の波をかき分け
反対方向のコーナーへ近付いてく。
事の始まりは飯田の一言
「電波が・・・・・・」
「電波?」
「電波が飛んでる」
どうやら交信中に謎の電波が紛れこんだらしく
飯田はその発信元まで付き当てていた。
それが反対コーナーだったのである。
「加護さん、見つけましたよ」
「なにをですか、辻さん」
「あれですよ、あれ」
「おぉぅ!あれはもしかしてプ○ステ2のコントローラー!」
村田が必死になってボタンを押してるのはまぎれもなく
プ○ステ2のコントローラーだ。
「やらせてほしーのれす」
「こ、こいつら!?」
慌てふためく秘書軍団。
「やらせてーなー」
「ダ、ダメよ!」
「やらせてーやらせてぇーーーー」
「どっかいけーーーー」
205ねぇ、名乗って:01/11/07 18:34 ID:12Vmnwpr
秘書軍団は格闘技場を逃げまどうが
辻と加護は思ったより強情でどこまでも追ってくる。
その間も真中では吉澤と柴田は戦っていた。
「リーダー!入力しないと技が!!」
大谷に言われてパニクった村田は斎藤にパス。
「えぇ!技表持ってないですよ、私!!!」
斎藤は大谷にパス。
「あぁああっ!なんかボタンがいっぱいあるよ!!」
大谷から村田にパスしようと投げられたコントローラー。
「だっしゃぁああああ」
「のぉおおおおおおお」

  パシッ!

そこに出くわした観客は後々語った事には
「人間魚雷ですよ。ええ、本当に見事な。
 真直ぐに飛んで、完全な姿勢でしたね、あれは」
観客席につっこみながら、加護は立ち上がり
辻の元に戻っていく。
「で、これどうすんの?」
「さぁ?」
目を戻せば、秘書軍団がこっちに向かってきている。
とりあえず、逃げ!
「きゃぁあああああ」
「楽しいーーーーーーー」
「待て、このガキがぁあああああ!!」
206ねぇ、名乗って:01/11/07 18:39 ID:12Vmnwpr
加護はとりあえず適当に昇竜拳のコマンドなんて入れてみた。
柴田が吉澤の顎に昇竜拳をブチ当ててる。
続いて、辻が竜巻旋風脚のコマンドを入力。
柴田の足のふくらはぎ部が開き、ジェット噴射!
ま、回ってる・・・・・・
「えーとぉ、どうするれすか?」
「どないしよ」
「とりあえず、パスしようか」
「そやな」
「パースッ」
辻がパスしたのは、そこにいた馬。
・・・・・・馬?
「ヒヒーン」
「り、りんねちゃん、コントローラーが・・・・・・」
「私、知らないよ!」
馬が持て余して後ろ蹴りで吹き飛ばしてしまった。
見事なアーチを描き、コントローラーは反対側へ。
秘書軍団が慌てて、それを取りに行くのを見て
辻と加護も走る。
「競争!」
加護さん、胸揺れてますよ。
207ねぇ、名乗って:01/11/07 18:40 ID:12Vmnwpr
で、肝心のコントローラーは山崎出版外商部海外担当の元へ。
「What's this!?」
「Oh!It's videogame's controrler!」
「Playstation?」
「Ahan」
「分からないよーーーーーー」
「ぷ、ぷりーず ぎぶみー」

  ズザァアアア!!

辻、加護参上
「ミカちゃぁーん、それ貸してーーー」
コントロールを持ってるのはレファ。
ふざけて、後ろに隠したりしてる。
ミカと呼ばれた少女は流暢な英語でそれを渡すように諭すが
そんな状況が楽しいのかレファは手を見せず
出たと思ったら、隣に座ってるアヤカの膝の上。
「よこしなさい!」
「No!」
無理矢理奪おうとする秘書軍団と
反射でそれは阻止しようとする外商部。
コントローラーは勢いでまた飛んでいった。
「ど、どこ!?」
「どこれすかー?」
「あれ!!」
208ねぇ、名乗って:01/11/07 18:46 ID:12Vmnwpr

  ヒューーー、ガッ!!

「痛っ!!」
矢口真里は頭を押さえる。
なにやら固い物が頭を直撃した。
床に転がるその衝突物。
「いったいなぁ・・・・・・」
一秒足りとも目の離せない攻防が続いてる中央。
(よっすぃーかっこいいなぁ。
 ってこれ、なんのコントローラーだろう)
なんとなくボタンを押してみた。
柴田がパンチを出してる
(えっ!!?)
呆気に取られたような表情。
そりゃそうだ。
偶然かも知れないが
自分がボタンを押した事によって
柴田がパンチを放ったのだとしたら
これはとんでもない事である。
もう一回、押してみる。
次はキック!!
(なんじゃこりゃぁあ!?)
矢口は周りの誰にもその事が言えず混乱していると
今度は秘書軍団と辻加護がやってくる。
「渡せぇええええええええ」
「矢口さぁーーーーーーーん!」
こういう時は知り合いにパス!
したと思ったのに、勢い余った連中はそのままつっこんでくる。
「がふぅうううう!」
矢口の身体が吹き飛んだ。
「矢口さん、ありがとぉお」
「ありがとなのれすぅ」
「てめぇ、今年ボーナス無し!」
209あみ(略:01/11/07 18:46 ID:bJCLyKQL
場外乱闘の予感
210ねぇ、名乗って:01/11/07 18:49 ID:12Vmnwpr
コントローラーを持ってる加護の腰辺りに大谷がタックル。
コントローラーが手からはずれ、宙に浮く。
「今だ!」
村田が手を伸ばす。
しかし、辻がその村田の肩を蹴り飛ばしキャッチした。
バレーの回転レシーブの要領で着地したが
運悪く秘書軍団に囲まれる結果となる。
「さぁ、おとなしく渡すのよ」
「やだもんねぇ」
力づくで奪い、キーを押す。
しかし、柴田は反応しない。
「ちょ、ちょっと壊れたんじゃない!?」
「どうするの!?」

その頃、中央でも異変が起きていた。
柴田が動かなくなったのである。
第13編集部の面々は吉澤が倒したものとばかり思っていたが・・・・・・
「結構、複雑だったね」
飯田がポツリという。
「圭織、、なんかやった?」
「うん。頭の中をちょっと」
「・・・・・・怖ぁ」
頭から流血はしてるし、腕とかあばらもやられてるであろう
吉澤の方はというと警戒していた。
それは倒れてるフリなのではないかと。
(勝ったのかな?)

「えいっ!!」
秘書軍団、渾身の一押し!
「ロケットパンチ!?」
吉澤の顔面に炸裂した必殺ロケットパンチでK.O。
こうして、戦いは幕を閉じた。
211ねぇ、名乗って:01/11/07 18:50 ID:12Vmnwpr
数日後、発売されたDIVAには記事が両方とも掲載され
さらにはこの珍動までバッチリ入っていて
その売り上げたるやとんでもない事になってたらしい。
一方、第13編集部の方はというと
吉澤に届いたファンレター、ラブレターの類の
整理に追われていた。
「それにしても、負けたら全員解雇とかじゃなくてよかったわよね」
保田が言う。
「え・・・・・・そんな話してたっけ?」
中澤は初耳なようだ。
「そういうんじゃなかったっけ?」
安倍も分からないらしい。
「本作れないからこんな仕事してるんじゃないんれすか?」
「最初はどんなだっけ?」
辻加護に言われたので見てみよう。
212ねぇ、名乗って:01/11/07 18:50 ID:12Vmnwpr

 「いやぁ、社長のお気持ちも分かりますけど
  どないですか、ここは一つ俺の顔に免じて
  この話、俺に預けさせてくれませんか?」
 「はぁ?」
  中澤があげたすっとんきょうな声。
  そりゃそうだ。
  一体、何を言い出すのだ、この男。
 「うちで今、女性格闘家の特集やるんですわ。
  それで、第13編集部の吉澤と
  社長のお気に入りの記者に記事を書かせて
  勝負させるっての、どないすか?」
 「よ、吉澤かぁ」
 「どうするの、裕ちゃん」
 心配そうに中澤を見る部下2人。
 中澤の脳裏にはさっき電話をしてきた保田の声が聞こえた。
 人一倍責任感が強くて、記者という仕事を愛してる
 あの子がうろたえて、震えた声で電話をしてきた。
 「受けてたってやろうやないか」
                            』

「誰も第13編集部解散なんて言うてへんがな」
「じゃ、誰が言い出したんだべ?」
「・・・・・・誰?」
213元三村:01/11/07 18:51 ID:VSNaQ/4e
ワラタ
がんがれ作者
214ねぇ、名乗って:01/11/07 18:51 ID:12Vmnwpr
部屋の隅でガタガタと震える影。
石川梨華。


 「ごっちん、どうしよ!!
  よっすぃーと中澤さんが殺されちゃったの!」
 「へぇ・・・・・・」
 「驚き薄っ!」
 「でね!!よっすぃーが明日までに記事を書かないと
  第13編集部つぶされるの!」
                          』

「うちらが死ぬとか言う話になったのもお前のせいかぁあああ」
「ごめんなさぁあいぃいい」

合掌。
215ねぇ、名乗って:01/11/07 18:54 ID:12Vmnwpr
吉澤が病室のベッドで外を見てた。
その隣では後藤が林檎を剥いている。
「秋ですねぇ」
落ち葉はらり。
「あの木の葉っぱが全部落ちたら、、、」
「そんな事言わないの、、、」
「そうだね」
重い雰囲気。
そんな話だったか?
「ごっちんが記事書いてくれたんだね、、」
「ちゃんと書けてた?」
「うん」
「よかった・・・・・・」
見つめあう2人。
そっと近付いて・・・・・・
「よっすぃ、、、」
「ごっちん、、、」
後藤の手は布団の中に伸びる。
「なーんちゃって」
「あははははは」
216ねぇ、名乗って:01/11/07 18:55 ID:12Vmnwpr
「そんなんは別にええんやけどな」
一方、こちらは夜のバー。
中澤の隣で矢口が寝てる。
安倍もうつらうつらしてる。
「なっち」
「んぅ?」
「もう帰るで」
「うん」
金を払い、店を出る。
ちょうどよくタクシーは止まった。
「私、この子送ってくから、乗ってき」
「ありがと、、じゃぁ、矢口よろしくね」
「うん」
タクシーのドアが閉まる。
中澤は壁によりかかり眠たげにしてる矢口を見た・・・・・・
「矢口・・・・」
217ねぇ、名乗って:01/11/07 18:56 ID:12Vmnwpr
涙がこらえれない。
溢れ出して、ポタリと落ちれば
スカートを濡らす。
タクシーの運転手も気になってるようだが
声もかけれないぐらい泣いていた。
安倍の身体は震えていた。
言えない。
たまには、我侭を言って
中澤を困らせたり
前なら出来たのに
今、矢口を見て優しく微笑む中澤を見たら
もうその人は自分の横にいないんだと
思い知らされてるようで
さっき飲んでる時もそんな言葉が
胸を締め付けていて
そんな自分が嫌で
そんな思いが嫌で
無理矢理、酒を飲んだ。
・・・・・・華やかな街並
艶やかなイルミネーションが今は痛々しい。
218ねぇ、名乗って:01/11/07 18:57 ID:12Vmnwpr
シャワーを浴びて、タオルをその身体に巻き
現れた石川梨華からはえも言われぬ色気が出ていた。
その目はベッドの中にもぐり込んだ彼女を見ていた。
「のの」
名前を呼ぶ。
目だけを覗かせてる。
ベッドの端にゆっくりと腰掛け
タオルを外して
布団の中へ足を入れる。
触れた肌と肌。
「り、、か、ちゃん、、、、」
辻の声が耳元で鳴る。
なんて可愛らしくて甘い声。
入り交じる期待と不安。
「キス・・・・・・しよっか」
辻の目に映るのは頬に髪がかかった淫媚な姿。
心臓がドクッっとなる。
石川の顔が近付いてきて
粘膜と粘膜が触れあう。
そこから生まれる言葉にはならない何か。
少なくとも自分より経験豊かなその手の持ち主は
器用に身体をなぞっていく。
このまま快感の海に落ちてしまえたら
どんなに幸せか・・・・・・

窓の外には雪が散らつき始めた。

第三章 終了。
219L.O.D:01/11/07 19:01 ID:12Vmnwpr
第三章終了記念。早かったなぁ、今回・・・・・・
途中で2重カキコにひっかかったし。
一応、予定では次の章で終わるはずです。
いよいよ、中澤の手が矢口に・・・・・・
220元三村:01/11/07 19:03 ID:VSNaQ/4e
早くも期待!
221名無し募集中。。。 :01/11/07 19:17 ID:c5YSlCf8
ねぇ、名乗って=L.D.Oだったのか・・・知らなかった。
222L.O.D:01/11/07 19:22 ID:12Vmnwpr
>>221
ゴメソ。名前を打ち込むのすら面倒なくらい
早く更新したかったっす。
223レク:01/11/07 21:17 ID:UFak6LgI
ヘタレ石川に乾杯!!!!
おもろいっす〜〜〜〜!!!
224あみ(略:01/11/07 22:25 ID:7fmIFH9u
次回も波乱の予感
225ねぇ、名乗って:01/11/07 22:44 ID:7RpU4uRZ
次の章で終わり?もうちょっと続けてほしいです。
226ぽる:01/11/07 23:50 ID:6/7Cv2Nd
おもろいっす!
次も期待してるんでがんがってください!
22799:01/11/07 23:51 ID:UWUmQYVH
age
228194:01/11/07 23:52 ID:+NR9o1Ob
がはっ!一日来ない間にスゲー事になってる(w
第三章終了、お疲れさまです。センセ。
229ねぇ、名乗って:01/11/07 23:59 ID:4DPe5bCx
あまりの展開に途中で小説のっとられたのかと思ったよ(w
次章にも期待
230L.O.D:01/11/08 00:15 ID:XPVFhRyu
今回の更新速度の原因は、俗に言う『神が降りた』状態のせい(w
231194:01/11/08 00:30 ID:S+ndHUhI
神降臨でしたか(w
232名無し娘。:01/11/08 01:53 ID:6x4o4pB4
第三章お疲れ様でした。

俺個人の感想

ネタっぽい所は要らなかったんじゃ?
ガチで行って欲しかった。
って、コレはコレで面白いんだけどね(w
233ねぇ、名乗って:01/11/08 03:44 ID:ww63gIq8
>>188で辻と石川はトイレにいるのに>>189でも辻がいる。。。
234ねぇ、名乗って:01/11/08 04:12 ID:sr+uTeK8
このスレが今の羊小説スレの中では、最も見ごたえがある。
235ねぇ、名乗って:01/11/08 07:09 ID:lBFFDoxX
>>234
新メンが出てくるエロ小説見たいのですが、よかったら紹介してくれませんか?
236L.O.D:01/11/08 07:20 ID:Yss93PAL
>>233
痛っ
237L.O.D:01/11/08 15:36 ID:4whfKPmX
第四章 plastics

目が覚めると、そこは知らない人の部屋。
だけど、耳から聞こえるその声は知らない人ではなく
飛び起きた。
「おはよ」
朝のシャワーを浴び終わった中澤裕子がいた。
「え・・・・・・ここ、どこ?」
「私の部屋やで。あんたの家、知らんから」
矢口はまだ眠ってる目をこすって
よく部屋の中を見た。
センスのよい家具。
必要以上の物は置かず
物凄く整理整頓されていた。
ソファに毛布がかかってる。
「あ、布団・・・・・・」
「あぁ、別にええんよ。いつもの事やから」
服を見ると、かわいらしいネグリジェに着替えられていた。
「・・・・・・脱がせた?」
「しゃーないやん。自分で脱ぎだして途中で寝てもうたし」
コーヒーの匂い。
「矢口はコーヒー飲まれへんよな?」
「うん」
「紅茶でええか?」
「うん」
昨夜、自分が着てたスーツは綺麗に畳まれている。
今日が休みでよかった。
頭が少し痛い。
238L.O.D:01/11/08 15:37 ID:4whfKPmX
「水の方がええかな?」
「水がいい・・・・・」
ベッドからはい出して、ソファに寝転ぶ。
なんか居心地がいい。
まるで何度も来た事があるように
身体がその風景に馴染んでいる。
「はい」
「ありがと」
水を持ってきた中澤が隣に座った。
彼女は自分の顔をじぃっと見てた。
「な、なに?」
「かわいい」
「なんも出ないよ」
「じゃ、溢れさせたろか?」
中澤の顔は真剣で
ふざけてるようにも思えず
胸を締め付けるような
思いだけが突き刺さってくる。
「裕ちゃんって呼んでみ」
「ゆ、、ゆうちゃん」
その後、中澤はフッと力なく笑っただけで何もなかった。
239L.O.D:01/11/08 15:38 ID:4whfKPmX
安倍なつみはあまり軽やかでない足取りで
街の中を歩いていた。
降っては溶けていく雪。
もうこの時期なら地元北海道は真っ白なはずだ。
デパートの中に入る。
どこもかしこもクリスマスの準備が始まっていた。
白地に金色の文字が踊るような雰囲気。
エスカレーターを昇り
着いたのは、おもちゃからバスセット、文房具
食器、洗面道具、化粧品など様々な
おもしろいグッズを取り揃えた大きなお店。
キョロキョロと辺りを一望して
目当ての物を見つけたらしい。
手に取ったのは、小さい真っ白なツリー。
一人暮らしをするようになって
片付けるのが面倒で
そんなもの買いもしなかったのに
今年の冬はそんな物の一つもないと
押し寄せる悲しみに負けそうで
急に欲しくなってしまった。
ツリーの飾りを選んでいくその指が
少し震えてる事は誰も知らない。
240あみ(略:01/11/08 16:55 ID:ZIgHUWmu
いよいよ最終章ですか・・・
241名無し募集中。。。:01/11/08 17:02 ID:qDIHwfJl
せ、セクハラ・・・
242L.O.D:01/11/08 17:51 ID:4whfKPmX
「中澤さぁーん、これでいいですかぁ?」
加護がニコニコしながら記事を持ってくる。
受け取り、目を通してみるが、まぁ、それなりに書けている。
少なくとも、最初に出した時よりは
レイアウトも上手くなってるし
情報の量もちょうどよい。
「これ、ええな」
「どれですか?」
加護が好んで書くのは、ファッションの事
自分の好きなブランドの事だけでなく
地域に密着した仕立てさんやら
古着屋の店長へのインタビューなど
読者に近い感覚の記事が書けるのは
大きな力と言えるだろう。
「うん、OK」
「やったぁ」
嬉しそうに席に戻っていって
まだ出来てない辻の奴を手伝おうとしてる。
そんな光景を見て、中澤は微笑んだ。
(人事の過小評価だったの?)
こちらは天井裏の松浦亜弥。
第13編集部の様子を覗いて、早三ヶ月は過ぎようとしていた。
彼等の仕事ぶりを細かく調査し
実際の記事も目を通した。
正直、驚いた。

第13編集部は、屑の掃き溜めなんかじゃない。

その理由は、部数に現れている。
300円という料金設定の割に多い記事。
その記事の中身もバラエティに飛んでいて、おもしろい。
確実に伸ばしてきていた。
松浦の携帯が震えた。
(はいはーい、メールが届きました、と。
 編集長からだ・・・・・・え?)
243L.O.D:01/11/08 17:51 ID:4whfKPmX
山崎出版で一番大きな会議室。
扉が閉まり、その空間は寺田1人になる。
苦虫をつぶしたような顔で
一発机を叩く。
「なんでやねん!」
たった今、この場で決められた事。
『中澤裕子、山崎出版富山支局長に』
一部の幹部と他の編集長レベルの人間がグルになり
数の力で反対する寺田を押し切った。
松浦に送ったメールが返ってくる。
(決定なんですか?・・・・・・
 大、大、大決定やちゅーねん)
タバコを一本取り出した。
火をつければ、たちまち眼前に煙が立ち上る。
寺田の脳裏に浮かんだのは、あの日の事。
244あみ(略:01/11/08 18:54 ID:YhjsFAhP
離別の予感
245L.O.D:01/11/08 21:19 ID:4whfKPmX
「な、ちょっとそこで休んでいかへん?」
後輩の女の子を酔っぱらいエロ課長状態の中澤裕子が
ラブホテルに誘い込もうとしてる。
「やめや、姐さん!恥ずかしいで!!」
それを引っ張って、とりあえずその場から逃げ出そうとしてるのは、平家みちよ。
「あはは、ええやんか。中澤はうまいでー」
タバコ片手にその様子を見て爆笑してる寺田尽人。
DIVAの前身であるmorning cafeという雑誌を企画した
山崎出版若手エリート3人が顔を揃える。
それまで今一つパッとしなかった山崎出版は
この3人が吹き込んだ活力が元となり
急成長していった。
編集長寺田尽人。
時代を見抜く力。
そして、そこに切り込んでいく強さの持ち主。
ライター平家みちよ。
多彩なボキャブラリィ。
森羅万象、様々な事に通じる知識の持ち主。
アートディレクター中澤裕子。
人情と信頼。
一緒に仕事のした事のある人間じゃなくても
例えば横で酒を飲んだとしても
誰もが彼女の人の良さは分かってくれる。
246L.O.D:01/11/08 21:20 ID:4whfKPmX
それまでにも様々な若者向けの雑誌が存在したが
3人の作ったmorning cafeは
次々と新たなムーブメントの発端を作りだしながら
最初に宣言した5年間の活動を停止。
それぞれに部署を与えられたのだが
中澤だけは入社してからの犯罪スレスレの淫行を咎められ
事実上の左遷状態。
使えない女子社員の巣窟 第13編集部局長となったのである。

「ちわー・・・・・・」

  ガチャ

ドアの果てから錆びていた。
鈍い音がして、グルリと回るドアノブは今にも取れそうで
そっと押すと、蛍光灯の何本かは切れていて
部屋の中は薄暗い。
「誰だべ?」
247L.O.D:01/11/08 21:21 ID:4whfKPmX
そこには、少女が1人座ってた。
白い肌。柔らかそうな頬。
そして、今にも壊れそうなぐらい綺麗な目。
「あー、ここの局長になった中澤やけど・・・・」
「あっ!あ、安倍なつみです!!」
立ち上がって、頭を下げ
そのままの勢いで給湯室に向かう彼女。
「お茶煎れますね!、、、きゃぁあ!!」
何もないところで転んだ。
「だ、だいじょぶか?」
「え、あ、はい!」
目が合った。
その奥に見える純真な心。
「かわいい・・・・・・」
「へ?」
「あんた、ちょっと笑ってみ」
少しぎこちなかったが、満面の笑みを見せる。
248L.O.D:01/11/08 21:21 ID:4whfKPmX
「局長命令や、笑っとき、いっつも。」
「はぁ・・・・?」
その時、安倍はその言葉を理解できなかったが
仕事もしないで中澤と過ごす日々は
今まで暗いこの部屋で1人過ごしてた時より
何倍も何十倍も楽しくて
自然に笑ってた。
年末にはさすがにこのままの部屋ではダメだと大掃除して
少しずつメンバーは増え・・・・・・

そんなある日、寺田は中澤を飲みに誘った。
「どないやねん、最近。」
「あんた、売れてるなぁ。おごってや」
「なんで、おごらなあかんねん。給料もらってるやろ」
「ケチやなぁ」
そう言って、笑った中澤は
一緒に仕事してた時とまったく変わらない笑顔だった。
その時もタバコの煙は漂っていた。
自分のと・・・・中澤のと・・・・・・
249L.O.D:01/11/08 21:22 ID:4whfKPmX
「大丈夫やろ、あいつなら」
そうやって思い出してみれば
中澤裕子という女はどんな時も
どんな場所にいても、どんな局面でも
必ず自分を信じて、突き進む人間だった。
きっと大丈夫。
「なんとかなる」
まるで、自分に言い聞かせるように
そうつぶやくと、寺田は灰皿にタバコを押しつぶした。
携帯が鳴っている。
「おぅ、寺田や!」
250L.O.D:01/11/09 00:32 ID:8Jnp3eY7
矢口の前に中澤が立つ。
いつになく真面目な表情。
「元気?」
「まぁ」
「痛くない?」
「はぁ?」
「いやぁ、エロかったなぁ」
「はぁっ?」
「エッティやったでぇ」
顔を近付けてくる。
必要以上に大きな声でそんな事を言うもんだから
周りにいた人は何事かと聞き耳を立てている。
「ちょ!なに、言うの!!」
「恥ずかしいか?恥ずかしいのんか?
 恥ずかしい声出して喘ぐんか?」
これじゃ只の変態である。
真っ赤になった矢口を見て
中澤は豪快に笑いながら
手を振った。
「あ、タバコないわ」
「べぇーだ!!」
あっかんべぇー。
中澤裕子の背中に。
慌てた様子の安倍が走ってきた。
「矢口!裕ちゃんはっ!!?」
「ど、どうしたの、なっち?」
251L.O.D:01/11/09 00:32 ID:8Jnp3eY7
「裕ちゃんがいきなり飛ばされちゃうんだよ!」
「へ?」
「富山にっ」
安倍の顔は青ざめてて
今にも泣きそうで
矢口は体を乗り出す。
その頬に触れる手。
「矢口も行く」
玄関を飛び出し
会社の前の道、左右を見ても、どこにもいない。
「どこ!?」
「分からない」
「なっち、分からない!?」
「・・・・・・公園」
中澤のサボリ場所。
会社の近くの公園のちょっと人目から見えないベンチ。
走って、安倍の後ろを必死でついていく。
煌々と太陽に照らされ
きらめく真っ白な雪の中
チャコールグレーのコートに身を包んで
中澤は1人、タバコを吸ってた
252L.O.D:01/11/09 00:33 ID:8Jnp3eY7
「なんや、来たんかいな」
「裕ちゃん!」
安倍は顔をくしゃくしゃにして抱きついた。
「風邪引くよ・・・・・・」
「ありがと」
ずっとにぎりしめてた真っ赤なマフラー。
泣きながら、中澤の首に巻いてく。
あの事は口にしない。
「なにつったってんねん、矢口ぃ。
 そんな格好でおったら寒いやろ。
 こっち来、あっためたるから」
少しきつめの関西弁。
毎朝、毎朝、なにを思ってかかけられた
セクハラまがいの言葉の数々。
いやでいやで仕方がなかったのに
いつの間にかそれがなきゃ
寂しくなっていた。
こんな時代に生まれたから
誰かを信じたり
誰かに頼るのが
なぜか恥ずかしくて
誰かに優しくされてるのに
素直になれなかった。
「裕ちゃん・・・・・・」
矢口真里が踏み締めたその足跡には
色々な感情が籠ってる。
「なっちもあんた、手冷たいやないの。
 ほら、手袋履いて」
泣きじゃくる2人の少女の頭を撫でる中澤の顔も
次第に歪み、涙が零れた。
253レク:01/11/09 00:44 ID:eF+u2OT7
感動の予感sage
254ねぇ、名乗って:01/11/09 22:49 ID:hLGBHK1j
大感想。次回に期待します。
255名無し募集中。。。:01/11/09 23:14 ID:Z7B6krVI
終了ですか?
もっすごい感動してます・・・
256194:01/11/09 23:38 ID:i11X0bMz
ハンカチの用意sage
257L.O.D:01/11/10 00:11 ID:rbeHT71p
Last up:今、全部紙に書き終わりました。
    これから打ち直しながらアップするので
    何分かかるが分かりませんが。
258L.O.D:01/11/10 00:24 ID:rbeHT71p
「嘘だよね?」
石川梨華はつぶやく。
掲示板にはり出された。
突然の人事。
隣に立ってる辻は無言でその手を握った。
「嘘だよね、のの?」
「嘘じゃ、、ないれす」
「嘘じゃないのかなぁ」
「嘘じゃないれす」
「嘘じゃ、、、、ないんだね」
「嘘じゃないれす」
「嘘だったらいいなぁ」
「嘘じゃないんれすよ」
「嘘、、、、、」
強張ってた石川の体から力が抜けていく。
「梨華ちゃん?」
辻は石川を見る。
唇を噛み締め、泣くのを堪えてた。
それも限界に近付いて
吐き出された吐息。
石川の手を引っ張る辻。
行くのはいつものトイレ。
ドアが閉まった音。
石川は辻の体を思いっきり抱き締める。
代わりでもいい。
今はその悲しみが抱き締められた自分の体を通り越し
中澤に向けられてても
そうする事で石川が楽になるなら
それでいいと、辻は思う。
259L.O.D:01/11/10 00:27 ID:rbeHT71p
石川が泣き止んで、第13編集部に戻ると
中澤はいつものように机に座ってた。
「あんたら2人でどこまで行ってんねん。
 トイレでエッチでもしてたんかぁ?」
いつもの中澤。
「ちょっと石川!お茶煎れてよ!」
保田が茶碗を振り回してる。
「は、はい!」
いつもの保田。いつもの石川。
「なっち、この色よくない?」
「はぁ、なんかじゃがいもみたいだべ」
いつもの飯田。いつもの安倍。
「zzz・・・・・・」
「よっしゃ、いけ!」
いつもの後藤。いつもの吉澤。
「のの、どれがいい?」
加護がいつものように手を差し出してきた。
その小さな手には飴玉が何個も乗っていて
辻は無造作に一個取る。
口の中に広がる苺ミルクの味。
「おいしい?」
いつものように答える。
「おいしいのれす。」
「加護ちゃん、私にも頂戴」
2人の間を割るように石川が手を伸ばすと
加護は逆に手を引っ込めた。
「あ、ちょっとぉー」
「梨華ちゃんにはあーげない」
「待ってよぉ、のの、なにか言ってー」
「飴、おいしいれすよ」
「・・・・・・そうじゃなくて」
いつもの第13編集部。
みんな分かってるから。
260L.O.D:01/11/10 00:37 ID:rbeHT71p
がやがやとうるさい居酒屋。
カウンター席に並んで、湯豆腐に手をつける。
「はいよ」
「あんがとさん」
空になったグラスにつがれるビール。
平家はそれを一口、口をつけてから切り出した。
「行くんか、ほんまに?」
「しゃーないやろ」
のうのうと言い放つ中澤の顔は迷いも何もない。
「なに、気取ってんの」
「気取らせてや」
「ほんまは弱い女のくせにぃ」
「うっさいわ」
「かわいないなぁ」
「・・・今日は朝まで付き合うてもらうか」
ニヤリと笑って、顔を近付ける中澤。
湿っぽい酒は旨くない。
平家も思わず笑ってしまって
グラスを倒しそうになって慌てる。
そんな瞬間さえ愛おしい。
261L.O.D:01/11/10 00:39 ID:rbeHT71p
午前4時。
平家と別れた中澤は1人、歩いていた。
会社の近く。
真っ白な雪が遠くに見える街並のネオンには似合う。
フッと足を止め、空を仰いだ。
頬に降り注ぎ、融けて
溢れ出す涙と交じり合い
濡らしていく。
ポケットの中の携帯電話に手を伸ばす。
コール、1、2、3、4、5
『あい・・・・・・』
「やぐちぃ」
『ゆーちゃん・・・・・・?』
「酔っぱらってもうてん」
『ん』
「迎えに来てほしーんやけど」
『えー・・・・・・』
「歩けへんねん」
『仕方ないなぁ、どこなの?』
「あの公園にいるわ」
『分かった』
雪を踏み、公園の中に入って
ベンチに座って、ボーッとしてみる。
サボる時は、いつもここに座り
タバコを吸いながら、雲の流れを見ていた。
オフィス街に作られたこの公園は
人を癒すために作られたはずなのに
人々はその雲よりも早く流れ
少しよそよそしかった。
そんな光景を客観視できる環境は
中澤にとって重大な糧となり
考え込んで重たくなる頭をクリアにしてくれた。
だけど、こんな時間に人はいない。
タバコが少しいつもより苦く感じた。
262L.O.D:01/11/10 00:53 ID:rbeHT71p
「寒っ」
目と鼻の先にあるカフェにでも入ってればよかったと
今になって後悔したがそれも面倒で
やっぱりここにいる事にした。
少し周りを見回してみる。
この風景を見るのもあと少し
この場所に居るのもあと少し
サボってると、安倍がやって来て
横に座って、2人で過ごした









そういえば、高校の時も
サボって河原にいると
自分を慕ってた後輩の子もやってきて
何をするでなくずっと空を見ていた事があった。
もしかしたら、安倍にその子の姿を
重ねていたのかもしれない。
「ゆーぅちゃん」
声が聞こえて、ハッとした。
「やぐち・・・・・・」
「かえろっ」
この子だけは特別なのだ、きっと。
最初はからかってるだけだったけど
眠る前の一瞬、彼女の顔が浮かぶようになって
どんどんハマッていた。
理由なんかはない。
彼女がいるだけで幸せだった。
中澤は矢口の方を抱き寄せ、立ち上がる。
263L.O.D:01/11/10 00:56 ID:rbeHT71p
終章 Train,Train.

駅のホームに列車が滑り込んできて
別れの時を告げる。
第13編集部の面々、寺田、松浦、平家、矢口・・・・・・
「圭織、しっかりしぃや」
「圭坊、後、頼んだで」
「なっち、天使みたいな笑顔忘れんといてや」
「後藤、寝過ぎはあかんよ」
「吉澤、あんた浮いた話とかないん?」
「辻、お菓子は控えや」
「加護、いいもん持ってるからがんばり」
「石川、今度、うまいコーヒーの煎れ方教えてな」
寺田の前に立つ。
「がんばれよ」
「つんくこそがんばりぃ」
「その名前で呼ぶな」
その後ろに立ってる松浦を見る。
「その年でストライプのパンツはどうかと思うで」
「え!?」
次は、平家。
「また飲みにいこうな」
「うまい酒送ったるわ」
「楽しみに待ってる」
最後。
矢口の前に立った中澤の表情が少し翳った。
みんな心配そうにそれを見てた。
「あんなぁ」
「なぁに、裕ちゃん」
「一つな、忘れてた事があってん」
「なに?」
「うちぃ、矢口とエッチしてへんねん」
「はぁ!?」
「いや、これは心残りやろ!!
 セクハラ魔王中澤裕子としては
 せっかくのラブリー矢口を喰わないで
 遠くに行くのは惜しいねん!!」
妙な力説。
平家すらつっこめないほどの。
全員がそれに圧倒されていたその瞬間
中澤は小脇に矢口と荷物を抱えた。
「じゃ、そういう事で」
「え!?なに!!?降ろしてよ、裕ちゃん!!
 ちょ、マジ!え、ウソ!!なっちぃーー!!
 たーーーすぅけーーーーー・・・・・・」

  プシュー・・・・・・

列車の扉が閉まる。
窓から泣き顔の矢口と
爆笑してる中澤の姿が見えた。
タイミングよく、ベルが鳴り
警笛の音も聞こえてきた。
発車する列車。
中澤が手を振ってる横で名残りおしそうに
ずっと窓に張り付いてた矢口。
「行っちゃった」
中澤裕子の矢口真里へのセクハラは続く。

fin
264L.O.D:01/11/10 01:11 ID:rbeHT71p
朦朧とした意識が少しはっきりしてきて
寒いな、と思ったら、毛布を着てなかった。
2人用のソファ。
矢口真里は隣を見る。
中澤裕子がきっちり毛布を巻き込んで、眠っていた。
「・・・・・・もぅ」
毛布の端を引っぱりだし、体を潜りこませる。
中澤の体と触れ、その温もりが伝わってくる。
と、思ったら、彼女は寝返りを打って
毛布を全部持っていってしまった。
「もーーー、ムカつくぅ!」
安らかな寝顔。
自分が山崎出版の受付口に座ってる時に見せる
イタズラっ子のような笑顔も
フッと見せる妖艶な顔も
矢口の胸に刻まれてる。
「ズルいよ・・・・・・こんなの」

  kiss

重ねられる唇。
「ん・・・・・・」
中澤が目を覚ます。
「おはよ」
「・・・・・・!?」
「毛布ちょーだい」
唇が濡れてるのに気付き、
矢口を見つめる目。
「矢口・・・あんた・・・・・・」
自分から毛布を奪って温かそうにする矢口の
意味ありげな笑みに、また目をつぶって・・・・・・

そして、一言。
「好きやで、矢口」

第四章 終了。
265L.O.D:01/11/10 01:13 ID:rbeHT71p
終章 Train,Train.

駅のホームに列車が滑り込んできて
別れの時を告げる。
第13編集部の面々、寺田、松浦、平家、矢口・・・・・・
「圭織、しっかりしぃや」
「圭坊、後、頼んだで」
「なっち、天使みたいな笑顔忘れんといてや」
「後藤、寝過ぎはあかんよ」
「吉澤、あんた浮いた話とかないん?」
「辻、お菓子は控えや」
「加護、いいもん持ってるからがんばり」
「石川、今度、うまいコーヒーの煎れ方教えてな」
寺田の前に立つ。
「がんばれよ」
「つんくこそがんばりぃ」
「その名前で呼ぶな」
その後ろに立ってる松浦を見る。
「その年でストライプのパンツはどうかと思うで」
「え!?」
次は、平家。
「また飲みにいこうな」
「うまい酒送ったるわ」
「楽しみに待ってる」
最後。
矢口の前に立った中澤の表情が少し翳った。
みんな心配そうにそれを見てた。
「あんなぁ」
「なぁに、裕ちゃん」
「一つな、忘れてた事があってん」
「なに?」
「うちぃ、矢口とエッチしてへんねん」
「はぁ!?」
「いや、これは心残りやろ!!
 セクハラ魔王中澤裕子としては
 せっかくのラブリー矢口を喰わないで
 遠くに行くのは惜しいねん!!」
妙な力説。
平家すらつっこめないほどの。
全員がそれに圧倒されていたその瞬間
中澤は小脇に矢口と荷物を抱えた。
「じゃ、そういう事で」
「え!?なに!!?降ろしてよ、裕ちゃん!!
 ちょ、マジ!え、ウソ!!なっちぃーー!!
 たーーーすぅけーーーーー・・・・・・」

  プシュー・・・・・・

列車の扉が閉まる。
窓から泣き顔の矢口と
爆笑してる中澤の姿が見えた。
タイミングよく、ベルが鳴り
警笛の音も聞こえてきた。
発車する列車。
中澤が手を振ってる横で名残りおしそうに
ずっと窓に張り付いてた矢口。
「行っちゃった」
中澤裕子の矢口真里へのセクハラは続く。

fin
266L.O.D:01/11/10 01:21 ID:rbeHT71p
『終了記念』
最後の最後でミスりました、申し訳ございません!
しかも、削除しようと思ったら愛の種関連の削除スレ見つからないし!
どなたか、発見したら連絡か、依頼しておいて下さい(涙
263レス目ね。

一ヶ月足らずでA4にして90枚の作品を仕上げたのはひさしぶりです。
楽しんでいただけたでしょうか?
それでは、また。
267194:01/11/10 02:23 ID:LdJz33Mt
長編感動巨編、お疲れ様でした。

A4用紙90枚ですか・・・(w
そう言えば、私の彼女に1日で
A4用紙9枚分のメールを送って来た
ストーカーがいたなぁ・・・(w

次回作をマターリと待たせて
頂きます。ホント、お疲れ様でした。
268あみ(略:01/11/10 09:02 ID:Mrlhm7kW
(T▽T) 非常に良かったです。感動をありがとう!
269三村:01/11/10 10:50 ID:OSTrpV3t
age
270名無し募集中。。。:01/11/10 11:17 ID:7cXuGpbC
続編はあるのですか?
1年後帰ってきたとか、富山でのストーリーとか・・・
271ねぇ、名乗って:01/11/10 15:55 ID:Y6zNlBU3
お疲れ様ですぅ〜!
めちゃよかったです。
じっくり休んで気が向いたら、次回作もお願いします!
272194:01/11/11 01:22 ID:pUwKuBdH
ここに来る人って、良い人ばかりだ(w
273レク:01/11/11 01:38 ID:D1JPPbJ5
感動だ…
274ねぇ、名乗って:01/11/11 03:53 ID:fi7JQi3Q
題名につられてやってきましたが、物凄い感動したので
ビックリしてます(w
なっちの失恋(?)あたりから最高でした。
275ねぇ、名乗って:01/11/11 12:51 ID:vCz7p96S
保全
276ねぇ、名乗って:01/11/11 20:16 ID:pLhZn/B/
最高でした。最後は大感動。
次回作、気が向いたら書いて下さいね。
277ぬもぉ〜:01/11/11 21:23 ID:NdOTiaE8
良いお話!!次回作書いて〜!!
278L.O.D:01/11/11 21:37 ID:5Oeu9rHW
今、2つのネタがあって、少し書き出してはいるんですが
展開がちょっと見えないのでもうちょっと書けてから公開予定。

OLやぐに関しては、サイドストーリー的な物は考えてません。
いつかやるかもしれませんが(w
279194:01/11/12 01:38 ID:c5b5sij+
おお、次回作の構想が。
楽しみにしてます〜。
280ねぇ、名乗って:01/11/13 16:17 ID:Gxii8v1l

 おもしろすぎる〜
 裕ちゃんかっけー!!
 次回作も楽しみ
281L.O.D:01/11/13 22:50 ID:XH4h5BEw
正直、すまんかった。武藤敬司のDVDで昔の試合見ながら
新作のネタを練ってた。だけど、ネタ元、設定完成。
しばし、お待ちを。
282名無し娘。:01/11/14 03:20 ID:TTXt0fE+
( ● ´ ー ` ● )L.O.D ありがとう

感動した。俺の中で「私の場所」に並んだぞ。
283名無し募集中。。。 :01/11/14 03:41 ID:cfQ59Z1y
さっき初めてL.O.DたんのHPに逝ったよ。
プロレス大好きなんだね。
284L.O.D:01/11/14 21:56 ID:hGUhBAJg
No.1 『A true lie 〜Sayaka Ichii〜』

12月31日、市井紗耶香の誕生日。
それを過ぎて、2000年1月1日という日を
3時間ほど過ぎた時、
彼女は自分の部屋で机に向かってた。
BGMは、Dreams come trueの自分で編集したMD。
紅白の後、ささやかな打ち上げと
自分の誕生パーティーみたいなのがあって
帰ってきてシャワーを浴びても
興奮に似た高揚感は拭い去れず
この気持ちを詩にしたくて
目の前に大学ノートを拡げ
シャーペンを回しながら
こうしてボーっとしていた。
うまい言葉が見つからない。
そんな時、消しゴムの横に置いておいた
携帯電話が震えた。
285L.O.D:01/11/14 21:57 ID:hGUhBAJg
(誰だよ、こんな時間に)
液晶を見れば、後藤からのメールだった。
「ごとー・・・・・・」
『寝ちゃったかなぁ?』
急いで打ち返す。
『起きてるよ』
『よかった、さっき一緒に言えなかったから今、言うね。
 お誕生日おめでと&新年明けましておめでとう』
『ありがと』
『これからもよろしくねー』
打ち返そうとした市井の指は止まり、
携帯電話をギュッと握りしめた。
「これから・・・・・・」
市井の中で強くなる想い。
英語の勉強だとか、自分で曲を書く事だとか
自分の言葉で自分を表現するための勉強だとか
もしかしたら、それはモーニング娘。にいても
実現する事なのかもしれないけど
正直、今の娘。にそんな余裕がない事ぐらい
自分でもよく分かってる。
ましてや、プッチモニが始まって
さらに忙しくなった感もある。
だが、そういう忙しさの中に成長があったからこそ
ステップアップを考えたのだ。
市井紗耶香は、嘘をつく。
『よろしくな!さ、もう寝るぞ』
『うん、おやすみ、ダイバーイ』
286L.O.D:01/11/14 21:57 ID:hGUhBAJg
翌日。
ハロプロのリハーサルでフロアは少し殺気立っている。
時間がない。
より完璧な物を見せようと
自分達も、スタッフも、つんくさんも、夏先生も
お互いの神経を集中させ
声を荒げ、がんばるのだ。
「後藤、この2カウントの後の手はもうちょっと上やで」
「うん」
鏡越しに中澤に注意される後藤が見える。
(もう私が注意しなくてもいいよね?)
目が合った。
市井は思わず反らす。
夏先生の檄は後藤に飛んだ。
「後藤!指先にまで気使えよ!」
(大丈夫)
自分に言い聞かせるように心の中でつぶやく。
後藤だってもう娘。になってそれなりの時間が経って
一人前とはいかないにしろ
自分がいなくたってやってける。
他のメンバーが支えてくれる、きっと。
そう思い込んだ。
思い込まなきゃ、誰にもこんな事言えなかった。
287L.O.D:01/11/14 21:58 ID:hGUhBAJg
一番初めに相談したのは和田さん。
最初はうなづいて、話を聞いてくれたし
今、自分がそう感じてる事は
決して悪い事ではなく逆にいい事だと言ってくれた。
ただ、それを実際に実現していく事の難しさや
仕事としての利害まできちんと説明してくれた。
こういう細かい所があるから、和田さんは信頼できる。
その時は思いを飲み込んでおいた。
ある日、プッチモニの仕事で保田と帰りが一緒になった時の事。
「紗耶香、なんか考えてるでしょ?」
突然の一言で、自分としても予想以上に動揺した。
別に悪い事じゃないのに
それが酷くイケナイ事のように思えた。
「言いなさいよー」
保田の目はマジなようで、奥の方では笑ってた。
市井は少し安心して、肩に頭を乗せて、こう言った。
「外国行きたいなーってね」
「あんた、英語の成績悪いじゃん」
「あー、英語ねー。勉強したいね」
はぐらかす。
また一つ嘘をついた。
288L.O.D:01/11/14 21:59 ID:hGUhBAJg
はっきりと『脱退』という形になって
話に現れたのはいつ頃の事だろう。
親と事務所でイザコザがあったりしたらしいが
別にそれは市井とは無関係の中で起きた事だ。
ちょうど新メンのオーディション真っ最中で事務所が
ものすごく忙しかった頃だと思った。
市井はつんくにも自分の思いを語る。
深夜のレコーディングスタジオ。
空いている一室で2人で。
ゆっくりとしてるヒマはつんくにはないので
手短にそれでいて深く話したのだが、
つんくはタバコに火をつけながら
閉ざしてた口を開く。
「もうモーニング娘。の解散までの予定は立ってんねん」
「え?」
「あと3年以内に後藤以前のメンバーに脱退してもらって
 今回の新メンバー以降のメンバーで1年は活動する」
「どういう、、事ですか?」
「事務所との契約や。今、他のハロプロのプロデュースをやってるんも
 全部、そういうもんやねん」
「じゃぁ、その後はどうなるんですか?」
「みんな事務所との契約はフリーになる。
 事務所が残したいと思ったメンバーは残すやろし
 やめる奴はやめる。芸能界に残る奴は他に事務所探す。
 もし、市井が今、そういう勉強をしたいなら俺は止めへん。
 シナリオ通りに進むから」
市井の目はつんくを睨んでいた。
「じゃぁ、将来・・・・・・1年以内に私が歌手として
 復帰したいと言い出したら、どうなりますか?」
「・・・・・・それは、待ってくれ。俺だけでは何も言えない」
その日の話はそんな所。
ただとんでもない事を聞かされて
次の日は元気がなくて
周りには迷惑をかけた。
289L.O.D:01/11/14 22:00 ID:hGUhBAJg
新メンが合流する頃にはもういつ脱退を発表するかまで決まっていて
市井はメンバーにそれを告げる事なく
レコーディングをこなしていた。
つんくさんから、加護の教育係の話をされ
後藤は少し不安そうな顔をして
自分の教育係だった人の方を見たが
彼女は知らん顔でそっぽを向いている。
(新メンも来たし、後藤にはしっかりしてもらわないと)
自分の中で完結していた。
いやそれすらも嘘なのだ。
市井はもう聞かされている。
自分の未来を。
今後のモーニング娘。の軌跡も全て。
神が人生と言う名で人間の生き様を決めてしまってるかのように
もうこのグループの人生は定まっているのだ。
(それって・・・・・・シアワセ)
大人達は全て予定調和で回っている・・・・・・
290L.O.D:01/11/14 22:00 ID:hGUhBAJg
5月21日、市井紗耶香脱退。
22日の朝、目が覚めたらそんな全てが夢だったって
オチだったらどうしようなんて事を考えながら
目が覚めた。
スケジュール手帳の今後には何も書いてない。
本当に脱退してしまったのだ。
不意にテレビをつけた。
朝のニュース番組で取り上げられてる自分の脱退。
不思議な感じだ。
泣いてる後藤の顔が映る。
「ごとー・・・・・・」
フと目をやると、携帯のランプが点滅してて
メールが来てる事を知らせる。
昨日は帰ってきたら、倒れてしまい
何も出来なかった。
メンバーやスタッフ、様々な人からメールが来ている。
その中から後藤のメールを探し、まっ先に開いた。
「これからもいちーちゃんらしいいちーちゃんでいてください
 ごとーは元気一杯、進んでいくからねっ・・・・・か」
市井の顔が翳る。
最後の最後、後藤の顔だけ見れなかった。
後藤の顔を見たら、どうにかなっちゃいそうで
離したく無くなっちゃいそうで
娘。をやめるのも撤回してしまいそうで
見れなかった。
それなのに、こんなメール。
市井の目から溢れ出す涙。

後藤真希がついたホントの嘘。
291L.O.D:01/11/14 22:06 ID:hGUhBAJg
全ての事が一つ一つの歯車のように
決められたペースで動かされてる。
その一つ一つは自分達は回っているだけで
どれだけ大きな機関の中の一部なのか
また、そこに居る意味を知らずに
動き続けていくのだろう。
だけど、人という存在は時として
そんな誰かに引かれたレールからはずれ
自分の思った通りにやりたくなる。
  
     アイドル
     『偶像』
292L.O.D:01/11/14 22:11 ID:hGUhBAJg
新作は、まずはこのように短編の連なりで構成していきます。
お楽しみに。
293名無し娘。:01/11/14 22:15 ID:4ooMNqkO
それぞれの短編がどの様に絡み合ってくるのか?
期待sage
294L.O.D:01/11/14 23:04 ID:hGUhBAJg
No.2 『a stinging pain 〜Yuuko Nakazawa〜』

中澤裕子にとって、モーニング娘。はもう一つの青春だったという。

「もー、ええ加減にしぃ」
一番年上、ちょっと恐めという見た目のキャラのせいで
本人の性格には似合わないリーダー役になった中澤の声が
今日も楽屋中に聞こえてる。
原因は辻、加護。
入った当初は借りてきた猫とは言わないがまだ静かだったが
最近は迎える所、敵なし。
どこでも自分達のペースで遊びまくる。
まぁ、そうは言っても
ちゃんと仕込んだおかげか
仕事に対してはちゃんと情熱を持ってやってるし
歌やダンスもちゃんと練習してる。
「えへへ」
「ごめんなさぁーい」
だらしない笑顔。
またそれもかわいらしい。
別に他のスタッフに迷惑がかかってるわけでもないので
それ以上は怒らないで、放置しておくと
今度は飯田にからみだした。
(・・・・・・からんでるというか、一緒に遊んでるのか?)
正しい事は分からないが、まぁ、相手は中学生。
自分の半分程度しか生きてない人間に対して
あんまりむやみやたらに怒る気にはなれないものだ。
最初にそんな衝撃を受けたのが、吉澤と2人で
占いのページに見入ってる後藤真希の加入だった。
295L.O.D:01/11/14 23:05 ID:hGUhBAJg
金髪。
中学生。
まぁ、後の方の事だけ言えば
福田明日香も中学生ではあったのだが
金髪。
マネージャーによって、派手な服装、髪禁止という
まるで学生生活並の規則があった娘。において、
それはかなりのインパクトがあった。
また、後藤真希という人となりも衝撃的だった。
どこであろうが寝る。
本番中にボーっとする。
市井が教育係になったからあまり直接的に言うのはやめようとは思ったが
有り余って、呼び出して注意する事も何度もあった。
LOVEマシーンを初めてファンに披露する日
舞台袖の不安そうな後藤も知ってる。
だけど、舞台上に出て来たらなんとも様になっている。
よく分からない子。
それに、プッチモニのラジオで見せてたような
楽屋トークのような明るいしゃべりを
番組でもすればいいのに
他のメンバーがしゃべってると
黙りこくって、顔が強張ってる。
そんな姿がファンの間で生意気そうとかクールっぽいとか
ささやかれてるのに、本人はいざ知らず。
それでいて、仕事にやる気がないわけではなくて
レコーディングやコンサートは地味に人一倍燃えている。
そんな人。
296L.O.D:01/11/14 23:05 ID:hGUhBAJg
わけが分からない。
いつでも笑ってろとは言わない。
だけど、せめてちょっとは緊張してほしい。
緊張はしてるんだ。
仕事に前向きに、、、、
いや、彼女はいつでも前向きだし
一生懸命だ。
じゃぁ、一体、後藤真希はなんなんだ。
長い間、一緒にいて少しずつ分かった事。
そして、気付かされた事。

後藤がテレビの中で歌ってる。
ソロワーク。
生放送でも曲が始まれば
なんと堂々とした歌を歌ってみせるんだろう。
「うまなったなぁ、ごっちん」
彼女は彼女なりに努力してる。
娘。に入ってきたなり、メインになり
その存在感たるや凄まじいもの。
眠たい時には寝てしまうし
つまらなかったらつまらなそうな顔をしてるし
テレビでもそれはあまり変わらない彼女。
でも、歌もモーニング娘。も大好きで
とってもとっても大切に思ってる。
口に出しはしないけど
そんな事が中澤の心には伝わってくる。
後藤が見事なステージングを終える。
心の片隅に置いておいた本音が顔を出す。
「そろそろええかな?」
297L.O.D:01/11/14 23:06 ID:hGUhBAJg
それは、LOVEマシーンの時だった。
発売、ミリオン、紅白・・・・・・
少しずつ大きくなるモーニング娘。という存在。
別にダンスが辛くなったわけでもない
ただ、フッと考えたのだ。
なんのために歌を歌ってるのか。
街のどこそこで流れる自分の歌。
デビューしてがむしゃらにやってきた結果は
確かな数字となって表れたし
お茶の間のみんなに顔も知られたし
ファンも増えた。
けど、反対に、何かが生まれた。
それをつんくに告げたのが2000年の正月のハロプロ。
ちょうど石黒の脱退と同時。
オリメンが欠けるという感覚が
中澤を焦燥に駆らせた。
歌手としての中澤裕子。
モ−ニング娘。としての中澤裕子ではなく
1人の歌手として、歌にどうやって関わっていけるか
思いは募るばかりで
その次のソロシングルはある意味、実験的に作られていった。
298L.O.D:01/11/14 23:08 ID:hGUhBAJg
中澤はその一方で真実を知っていた。
モーニング娘。という作られたドラマ。
メンバーの意識などの舵をまかされた人間として
早い段階から、そのストーリーは聞かされていた。
脱退時期は自由。
各々、脱退後の生活は基本的には自由だが
事務所に残る事も出来る。
中澤には、福田や市井のような芸能界から離れて生活する理由も
石黒のように子供が出来たなんていうネタもなかったため
とりあえず事務所、芸能界には存続という道を取った。
運良くソロでの仕事は立続けに来てたし
しばらくは困る事はなさそうだった。
それも、あと少しの間の話と知ってるから。

ただ、中澤は引っ掛かっていた。
自分が脱退を告げた時の1人の少女の涙が。

今はまだ真実を伝えれない痛み。
299L.O.D:01/11/14 23:16 ID:hGUhBAJg
No.3 『my whereabouts 〜Mari Yaguchi〜』

「ミニモニイェイイェイ!」
身長145センチ、18歳。
まぁ、身長はネタとして最高なのだが
正直、こんな役が来るとは思わなかった。
「やぐちさぁ〜ん」
辻と加護は何かことあるごとに
矢口を頼るようになるし
タンポポもモデルチェンジ。
タクシーの中、出るのは溜息ばかり。
家に着くと、いつもと変わらない家族がいた。
「おかえり」
「ただいま」
300L.O.D:01/11/14 23:17 ID:hGUhBAJg
本当に帰ってきた時にあの笑顔がなきゃ
今頃、どうなってたか分からない。
一人暮らししてるメンバーなんかは
何してるんだろう。
自分の部屋で携帯を握りしめながら
ベッドに寝転んでいた。
まるで何かに焚き付けられるように跳ね起き
CDラックを漁る。
どこにもなくて
コンポを見た。
点滅するトラック数。
「なんだ・・・・・・」
つぶやいた声がやけに大きく聞こえた。
落ち着いて、再生ボタンを押せば聞こえてくる。
穏やかな音。
『TANPOPO1』
ラストキッス。
最初は自分のフレーズ。
自然に口づさんでいた。
いつからだろう。
こんなに歌が好きになったの。
昔から好きで好きで好きで
たまらなくて歌手になりたくて
だけど、加入してすぐの時は
そこに自分の歌はなくて
必死になってやってきた。
そんな中で歌ったこのアルバムが今は愛しい。
仕事だから。
分かってる。
一生懸命やる。
でも、少しずつ気持ちと肉体が分離してた。
嫌いじゃない。
みんなの前で笑ってたい。
なのに、どうして、こんなにも心は
歌う事を求めるのだろう。
携帯電話が鳴っていた。
カントリー娘。の着信という事は石川なわけで。
301L.O.D:01/11/14 23:18 ID:hGUhBAJg
「はい?」
『あ、矢口さん、もう休んでましたか?』
空いてる手はリモコンを探り
BGMを消す。
「いや」
『タンポポですねっ!』
「え、あ、うん」
『石川大好きなんですよー、よく聞きます!』
「ふーん。で、なんか用事?」
『えーっと、用事っていうわけでもないんですけどぉ』
電話口の石川がどもってる。
感傷に浸ってる余裕もなく
先輩らしく気取ってみる。
「どした?」
『つんくさんに喉、大丈夫かって言われて・・・・』
「喉?」
『はい・・・・びょ、、病院に行け・・・って』
涙声にみるみるうちに変わってくのが分かる。
喉は歌手の命。
それを指摘されたのは、さすがにキツかったのか。
いや、石川の喉は昔からつんくは心配していたのだ。
オーディションの時から調子は悪く
本人は出来る限りの最大限のケアをしていた。
「そか・・・・・・ほら、でも病院に行ったからすぐ
 どうのって話でもないじゃん!」
302L.O.D:01/11/14 23:19 ID:hGUhBAJg
『はい・・・・けど、手術とかってなったら・・・・・・』
「んー・・・・・・」
『お仕事とか休まなきゃいけないわけじゃないですかぁ』
「そうだねぇ」
『タンポポだって新曲出るのに・・・・・・』
「うーん・・・来年の春までスケジュール組まれちゃってるからね」
『私、抜きですかね・・・紅白は、、Mr.moonrightかなぁ?
 華やかだし、いいですよねっ。特別衣装でよっすぃーも・・・・・』
「石川!」
『ご、ごめんなさい・・・・・・』
「大丈夫だから。きっと大丈夫だから」
はげます言葉。
わけもなくただ言ってるけど
その言葉が一番落ち着く事を知ってる。

加入したての頃、ただただ先輩メンバーが怖くて
後ろをついていってて
その背中を見てるしか出来なかった。
そんなサマーナイトタウン。
抱いてHOLD ON MEがリリースされて
ASAYANでの初めての収録の時
心臓がドキドキと打ち鳴って
気持ちが高ぶりすぎて
なぜか涙が出てきた。
そんな矢口を見つけて
ギュッと抱き締めて
福田がつぶやいた言葉。
『大丈夫だから』
少し低い声で。
そっと、優しく
囁きかけるように
胸の中にスーッと入ってきて
ドキドキが収まった。
矢口は不安な時、怖い時、誰にも知られずつぶやく。
303L.O.D:01/11/14 23:20 ID:hGUhBAJg
楽屋の中はいつものごとくうるさい。
辻、加護が遊びまわり、中澤がそれを叱る。
安倍はそれを見て、笑ってるし
後藤達は雑誌を囲んだりしてる。
飯田と保田は化粧をしてて
ちょっとヒマしてると
すぐに中澤が寄ってきて
撫でられる。
「やーぐち」
「なにさぁ?」
「ヒマなんか?」
「ん」
「じゃ、チューしちゃる」
「チュー」
社交辞令。
とは言い難いぐらい熱烈なキス。
「ながぁー」
チラッと石川を見たら、頬を赤くしてた。
無性におかしくて、笑いながら
中澤の肩を押す。
「キャハハハハハハハハハ」
「なに、なんやの、この子!
 狂ったと違うか!?」
「ちがうよぉーー、キスしてるの見て
 石川が赤くなってるんだよぉお!」
「あ、ほんとだぁ」
「や、違いますよぉ!」
「ヘイ!梨華ちゃん!僕がもっと長いキスしてあげようか?」
「よっすぃーかっけーのれすぅ」
「いよっ、よっすぃー!」
楽しい楽屋。
なんて気持ちいいんだろう。
そう、ここはモーニング娘。
日本のトップアイドルという空間

なのに、中澤は・・・・・・
304L.O.D:01/11/14 23:20 ID:hGUhBAJg
「バァーカ」

  ガシャンッ

積み重ねてたCDが崩れる。
涙は枯れた。
頭が痛い。
気持ち悪い。
「はぁ・・・・・・」
溜息一つ。
意識が少しずつ無くなっていく。
目をつぶる。
浮かび上がるのは、中澤の姿や声。
昔、見てたあの人の背中。

だけど、もうそんな事言ってられない。
中澤がいなくなってもモーニング娘。は止まらない。
どこか頼り無い飯田新リーダー。
後ろから睨みを利かす保田サブリーダー。
20になってやっと先輩の自覚が出て来たのか安倍なつみ。
そして、一番ちっちゃいけど、自分。
新たにメンバーが加わるという状況の中で
この4人だけじゃない。
後藤達もみんな結束して
さらなる高みに向かわなければいけない。
というのは、表向きの話。
矢口はベッドの上に倒れ込む。
手探りでコンポのリモコンを探る。
力なく押すボタン。
今日も聞こえてくるラストキッス。
いつから見失ったのだろう。

歌手としての自分を。
305L.O.D:01/11/14 23:25 ID:hGUhBAJg
(休憩中)
勢いで上げれるだけ上げました。
ちなみに、時間軸が交錯する部分があり
なんでもうこんな事知ってるのと思われるかも知れませんが
全てが予定調和で進んでる世界ゆえお見知り置きを。
306名無し娘。:01/11/14 23:30 ID:4ooMNqkO
>>L.O.D
更新速度スッゲーね(w
ガンバテ
307194:01/11/15 00:27 ID:IE54riDA
>>L.O.D
お、執筆再開ですか。
ガンガッテくらはい。
308トロピカ〜ル名無して〜る:01/11/15 01:02 ID:5AtTMJaO
>>L.O.D
いきなり引き込まれますな!最初は単なるいちごま物かと思ったけど
なんのなんの、娘。のダークサイド(?)な部分に触れる話とは!

こりゃ期待大ちゅうことでね。
309ねぇ、名乗って:01/11/15 05:54 ID:BB19el5e
♪ウレシイデキゴトガフエマシタ♪

さがりっぱなしだからって覗かないでいると、こういうことがあるので怖いっす。
といいつつsageとく自分w

大切に読まさせてもらいます。
310あみ(略:01/11/15 09:24 ID:rG67ryMD
新作も期待∞でございます。
頑張ってください。
311L.O.D:01/11/15 16:10 ID:MlC2BbG1
No.4 『be born 〜Aya Ishiguro〜』

買い物から帰ってきて
郵便受けの荷物に気付いた。
一本のビデオ
差出人は中澤裕子。
紙のパッケ−ジを破るように開けると
何の変哲もない黒ケースのビデオ。
背ラベルには大阪城と書かれていた。
そして、一枚の手紙。
「元気してる?モーニングを卒業したら、
 少し楽になるかと思ったのに
 大した変わりはありませんでした。
 大阪城の時、途中で帰ってしまったみたいだから
 製品版とは別カットのビデオ送ります。
 裕ちゃんたっぷりやで」
ビデオデッキにセット。
怒号のような歓声が聞こえる。
まだ子供は寝ていて、起きる気配もない。
コンサート。
全てを飲み込んでしまうような空気。
その中に立った時の気分は
何とも形容しがたいものだ。
最初はミニモニ。
中澤が編集ポイントを指示しておいたのか
矢口のカットが圧倒的に多い。
「裕ちゃん・・・・・・これ、自分の趣味だろう」
312L.O.D:01/11/15 16:10 ID:MlC2BbG1

フッと思い出したのは
何かのレコーディングの時。
待ち時間の間、みんなで
未編集のライブ映像や
PVを見てた事があった。
キャアキャア言いながら
あーでもないこーでもないと言い合う
あの雰囲気嫌いじゃなかったけど
少しずつ自分が歌いたかった歌から
娘。自体が離れていってしまってる気がして
耐えれなくなる前にやめようと思ってたら
妊娠していた。
なんか、それもRockな気がして
つんくに報告する時は笑っていた。
「出来ちゃいましたっ」
「ええんちゃう?」
「アハハハハ」
あまり、娘。をやめるという事に
未練はなかったけど
だけど、今でも時折夢に見る。

スポットライトを浴びて
ステージに立つ姿を。
313L.O.D:01/11/15 16:11 ID:MlC2BbG1
中澤が送ってきたビデオを見ながら
ミシンを取り出す。
一緒に転がり出したのは、一冊のノート。
娘。という濃密な時間が生んだ数々の洋服。
安倍、中澤、飯田、福田、矢口、保田、市井、後藤・・・・・・
覚えてる限りのメンバーの姿を
思い出して書いた物。
レザーのパンキッシュな悪い感じの衣装。
その全てはいつか来る未来への一歩だった。

子供が泣く声が聞こえる
駆け寄って、抱き上げると安心したのか
また眠ってしまった。
今はまだ遠い未来。
だけど、それも、この子の成長が
早く感じるのと同じように
すぐやってるのかも知れない。
そんな風に石黒彩は思っていた。
314L.O.D:01/11/15 16:50 ID:MlC2BbG1
No.5 『thought 〜Kaori Iida〜』

甘いヴァニラの香りが部屋を満たす。
頬にかかる長い髪を払い
飯田圭織は筆を手にする。
サイドテーブルに置いた
アクリルガッシュのチューブを取り
ガラスの調色皿に色を出していく。
イーゼルには彼女が下書きした絵。
歌う事の他にもう一つの趣味。
最初は絵を書く事を楽しむなんて余裕はなくて
もっと鬱々とした表情でこの前にいた事だろう。
仕事場やレコーディング、仲間内・・・・・・
言い出せなかった事や、表現できなかった事
くやしかった事、辛かった事
悲しかった事、色んな事
その日にあった嫌な事を
筆に載せ、真っ白なキャンバスを汚していく。
音楽もかけずただ無心で
ボーッとする1人の時間が
すごく大切だった。
315sage:01/11/15 16:51 ID:MlC2BbG1
娘。になったばかりの自分は
本当にお子様だった。
芸能界という華やかな場所へのあこがれと
『自分』の歌を聞いてほしいという思いが先行して
メインを取れなくて泣いた日も
数えきれないぐらいある。
だけど、歌を歌うって事は
もっともっと懐の大きな事で
誰か1人が目立っても
いい歌は生まれないものなのだ。
自分達だけじゃなくて
スタッフやファンのみんなの支えがあって
歌うという事が成り立ち
自分達が娘。という場所にいれるという事の素晴らしさを
この3年以上の活動を通じて学びとっていた。
それだけに、中澤がいなくなった娘。が恐ろしくもあった。
自分がリーダーをまかされ
まとめなくちゃいけない。
そんな不安が押し寄せる。
新しいメンバーがお披露目になる前夜
飯田はキャンバスの前にいた。
今までのメンバー追加で
教育係になった事はあっても
全員をまとめるなどという事はした事がない。
だけど、追加はいつも娘。に緊張感を与え
進化していった。
自分がリーダーで、新メンが加わって
どんな娘。を見せてくか
何度も乗り越えた波。
飯田圭織は強くなった。
316ねぇ、名乗って:01/11/15 17:01 ID:lsiO96gZ
さげ
317L.O.D:01/11/15 17:06 ID:MlC2BbG1
「はーい、みんな行くよー」
最初、自分がリーダーと言われた時は
なにがなんだか分からなかったし
何をどうしたらいいか分からなかったし
本当に自信がなくて
中澤に何度も確認したりした。
正直、自分自身は強くなったかも知れないが
リーダーとしてちゃんとやれてるか
分からない。
「いーだーりーだぁー」
「どした、つーじー?」
収録前。
長い長い廊下を歩いてると
さっきまで加護と一緒にいた辻が
腕にからみついてきた。
なんか妹みたいでかわいくて
手をつないであげた。
「えへへ」
「つーじー、お菓子食べ過ぎ!
 ほっぺた、まんまるだよ」
「たべちゃうんだよ」
と、つぶやいたものの
あんまり悩んでる様子もなく
へらへらと笑ってる。
「腹筋とかしてる」
「へへ〜」
「サボってるなぁ」
318L.O.D:01/11/15 17:07 ID:MlC2BbG1
まだ9人の時はよかった。
なんだかんだでみんなもう1年間も娘。にいて
しっかりしてきてるから。
だけど?氓R人になったら、頭がクラッシュ。
どこに誰がいて、なにをしてるか確認するのが
大変になってしまう。
日々に疲れて、泣き出しそうになった時
保田が飲みに誘ってくれた。

ゲイバーではなかったが、
落ち着いた雰囲気のお店。
そこには、和田さんがいた。
「おぉ、飯田。綺麗になったなぁー」
「なに言ってるんですかぁ
 こないだも会ったじゃないですか」
そんな会話から始まったんだ・・・・・・

私の今後はその夜から悩みの種となってしまった。
319L.O.D:01/11/15 17:08 ID:MlC2BbG1
今、気付いた。
なんで名前にsageって書いて
メール欄にL.O.Dって入れてるんだろう、、、、鬱
320あみ(略:01/11/15 17:21 ID:rG67ryMD
ちょっとお疲れですか?(w
321194(就業中):01/11/15 17:32 ID:5ardpg3z
それともかなりお疲れですか?(w
322L.O.D:01/11/15 17:49 ID:MlC2BbG1
No.6 『The broken toy 〜Rika Ishikawa〜』

それは、ずっと前から分かってはいた事だけど
有耶無耶にして、隠してきた事。
乾燥しないように気をつけたり
なるべく温めたり
一人暮らししてても
なるべく栄養は取るようにして
気づかってきたのに
もうダメになっちゃった。
つんくさんはさっきから黙ったまま
何も言わない。
唇を噛み締めて、溢れだしそうな涙を堪える。
「あかん・・・・・・かな」
やっとの事でつんくさんがしぼりだした一言は
物凄く残酷に私の胸に突き刺さった。
カントリー娘。の新曲のレコーディング中。
私の声が突然、掠れた。
喉の痛みはいつまで経っても取れないし
ボイストレーナーの先生が来て
見てもらった所、どうにも調子が悪いらしい。
「しゃべらんでええからな」
そう最初に前置きして、つんくさんはしゃべりだした。
「ほんまはな、オーディションの時
 そうとう喉を傷めてる事は分かってたんや。
 元々、あんま強くないんやろな。
 だけど、まだ直る余地がありそうやったし
 新しいモーニング娘。の像として石川は大切で
 最終的に追加したんやけど・・・・・・」
323L.O.D:01/11/15 17:49 ID:MlC2BbG1
一つうなづく。
つんくさんの顔から影は引かない。
「頑張りすぎてん、お前。」
顔をあげる。
頑張りすぎ。
「ちゃんとレッスンに通わせて、治せばよかったんやろうけど。
 そんな時間もあげれへんかったなぁ・・・・・・
 ごめんな、石川。」
急な話で何が起きたのか分からない。
なんでつんくさんが謝ってるのだ?
「あ・・の・・・・どうなっちゃ・・・うんですか?」
「最悪、、、手術やな」
目の前が真っ暗になるとは
本当にこの事だとその時思った。
まるで目隠しをしたように
全てが見えなくなり
フラッと体が揺らいだ。
苦々しいつんくさんの表情だけがチラッと見えた。
324L.O.D:01/11/15 17:50 ID:MlC2BbG1
とりあえず、レコーディング出来た部分だけをつなぎ合わせて
カントリ−娘。の新曲は発売。
しかし、全てのテレビ番組をカラオケでこなさなければいけないほど
石川の喉は限界に達していた。
仕事に穴は開けれない。
石川の真面目な性格のせいか
本来ならばしゃべる事すら困難なはずなのに
独特のアニメ声でハロモニのチャーミーなどをこなしてく。
中澤を始め、メンバーも皆、その姿を
心配しながら見る事しか出来なかった。
娘。の新曲。『Mr.moonlight 〜愛のビッグバンド〜』は
吉澤をメインに後藤と安倍が歌う事が決まり
レコーディングは開始するも
石川は唄えなかった・・・・・・
ブースに入り、声を出そうとするも
今回はいつも以上に高めの音であり
無理がかかる。
頭を横に振るつんく。
石川も諦め、出てくると
自然と涙が溢れて
思わず保田に抱きついた。
「よしよし」
頭を優しく撫でる手。
肩に添えられた腕がすごく温かくて
嬉しかった。
325L.O.D:01/11/15 17:51 ID:MlC2BbG1
そんな石川を見てられなくなったのか
つんくが一言告げる。
「石川、次のタンポポのシングルまでには
 なんとか声が出るようにしとくわ」
「ほん、、と、、うです、、か?」
「一発限りや、早く曲作るから完璧に覚えてきてくれ」
「ありが、とう、、ござ、、います、、」

頑張ってきたのに。
歌は本当に自信がなくて
ダンスは体が柔らかくてちょっと助かったけど
一生懸命、人の2倍も3倍もがんばって
必死で練習して
コンサートでもみんなに見えるように
大きく踊ったりしたのに
なんかそんな努力が全て
水の泡になってしまったような感じだった。
頑張ったから、壊してしまった。
一番大事な物。
唄えなきゃ、意味がない。
もう使いたくない言葉だけど
こんな時はどうしてもネガティブになってしまう。
ポジティブならゆっくり休んで
喉を休めて、早く唄えるようになろうと
思うのだろうが、そうもいかなかった。
枕元に転がってたぬいぐるみを抱き寄せる。
きっと紅白やレコード大賞もこの調子じゃ唄えない。
自分だけじゃどうしようもできない、そんなジレンマ。

石川梨華を襲う不安・・・・・・それも全て、予定調和?
326レク:01/11/15 21:02 ID:mEC4ItU+
久しぶりにきたら更新されてる…
しかも妙に深い内容…
やっぱりすごいや…
327L.O.D:01/11/15 22:19 ID:MlC2BbG1
No.7 『Instinct which can sleep 〜Hitomi Yoshizawa』

天才的に可愛い
それが、一番最初の吉澤ひとみ評であり
付きまとってきたイメージ。

西洋人形的な顔だちに
スラリと高い背。
醸し出す中性的な色気。
かと思ったら、素爆裂天然ボケキャラ。
つかみ所のなさで言えば
飯田以上かも知れない。
黙ってればかわいいのに
しゃべりだしたらとまらない
そんな吉澤ひとみが
センターを取った。

中学時代はバレーボールに熱中してた。
女子校でかっけー感じの吉澤は
それはそれはもてたらしいが
ジャニーズのファンもやってる辺りが
実に中学生女子らしい。
そんな彼女が目にしたのが
LOVEマシーンを踊るメンバーの姿だった。
「かっけー!」
と言ったかは謎だが
バレーをやめ、新しい事に挑戦しようとしてた矢先の事
追加オーディションは開催されたのであった。
328L.O.D:01/11/15 22:20 ID:MlC2BbG1
だから、吉澤ひとみにあまり歌手という執着はない。
正確に言えば、なかったという方が正しいだろう。
全てはプッチモニに集約される。
「えーっ!?」
市井が抜けた直後の事。
プッチモニへの加入を告げられ
ちょこっとLOVE、並びに新曲のマスターという課題を課せられた時
それまでダンスの経験0の吉澤の試練が始まった。
娘。の活動の合間を縫うように練習する。
後藤や保田が練習に付き合ってくれる。
「大丈夫?」
「大丈夫です・・・・・・」
「よし、もっかいサビから」
繰り返し繰り返し練習して、少しずつモノにしていく。
それは、バレーの練習と同じで
体に染み付かせてくものだった。
(辛いなぁ)
「吉澤、顔は笑顔!」

  ニカッ!!

(怖いっすよ、保田さん)
「よっすぃー、足もうちょっと上げてー」

  タッタッ!

(ごっちん、よく足上がるなぁ、、、)
(やっぱ合わないのかなぁ、こういうの)
(ダンスとか苦手なんだよなぁ)
(した事ないし)
(ハァ・・・・・・・・・・・・)
「休憩!」
保田のかけ声でハッとする。
「慌てないでいいからね」
「は、はい」
まるで心の中全てを覗かれてるみたいだった。
329L.O.D:01/11/15 22:21 ID:MlC2BbG1
その後、ラジオが始まって
少しずつ距離が縮まっていって
新曲が出る度に苦しんで
だけど、持ち前の根性で乗り切って
そんなある日、保田に相談してみた。
「娘。の中で目立つにはどうしたらいいんすかね?」
「私に聞くー?」
「あー、そっか」
「納得してんじゃないわよ!」
「ごめんなさい・・・・・・」
「そうねぇ」
大人びた落ち着いた色身の口紅をスッと引くその姿は
妙に色気があって、綺麗だった。
「自分に素直に生きたら?」
「・・・・・・素直ですか?」
「そ、ラジオの時みたいにさ、わけ分からないキャラでいいじゃん。
 まぁせめて、しゃべる事をもうちょっと整理してくれたら嬉しいかな」

吉澤ひとみは考える。
なぜ歌ってるのか。
なぜ踊ってるのか。
なぜモーニング娘。なのか。
答えは出ない・・・・・・けど

Mr.moonlightの収録直前
軽く息を吐く。
何台ものカメラ。
何十人というスタッフ。
みなぎる本番の緊張感。
まぶしいほどの光の中で目を軽くつぶった。
そこは、中学時代に立ったあのコートと同じ。
自分が出来る事をやり切るだけ。
『あーいをーくーだーさぁーい』
高橋の歌声が聞こえ、曲が始まり、大慌てのダンス。
心の中でつぶやく
(自分に素直に・・・・・・)
一つ一つのダンスをかっこよく。
プッチモニで鍛えられたから。
やっと見えてきた自分の歌。

歌手 吉澤ひとみはここから始まる。
330L.O.D:01/11/15 22:21 ID:MlC2BbG1
(休憩中)
なんでよっすぃーだとネタっぽくなるんだろ(w
331読んでますよ♪:01/11/15 22:35 ID:jG/gK5VJ
矢口ラヂヲ聴きつつ
332L.O.D@書いてますよ:01/11/15 22:46 ID:MlC2BbG1
矢口ラヂオ聴きつつ。

やぐたむ・・・・高校中退じゃすまないぐらいアホやねんな、、
333331@ついレス:01/11/15 23:13 ID:jG/gK5VJ
やぐ・・・
334331@うっかり送信:01/11/15 23:24 ID:jG/gK5VJ
入試であんなクイズばっか出題されてたら高校すら・・・
335あみ(略:01/11/15 23:35 ID:/jcH3pfM
ペース はやっ!
336L.O.D:01/11/15 23:47 ID:MlC2BbG1
No.8 『Tears 〜Maki Gotou〜』

仕事が終わって、いつもの通り家に帰る。
もう店は終っていて、表から入ると
母と姉が片づけをしていた。
「おかえり」
「ただいまぁ」
「お腹は?」
「んー、空いた」
余った食材を冷蔵庫から出してきて
手早く軽い物を作ってくれる。
「ユウキは?」
「ゲームしてる」
「そか」
姉としても気になる所。
三ヶ月の謹慎。
芸能人として、仕事をしっかりやるのは当然の事。
1人のタレントとしてやってはいけない事をやったのだから
仕方がないような気もするが
そんな事言ったら、安倍なんてどうするんだ。
自分達をよく知ってる和田薫という男が
その謹慎を下したのだから、分からない。
出汁のよく聞いた味噌汁と御飯を
胃の中に流し込んで、たくあんまで
しっかり味わってから家に入る。
337L.O.D:01/11/15 23:48 ID:MlC2BbG1
階段を昇り、自分の部屋の向かい。
光が漏れてる。
ユウキの部屋。
「ごとー、おそいぞーーー」
「!?」
思わずドアを開ける。
そこには、市井紗耶香がいた。
ユウキのギターをつま弾くその姿。
「なにしてんの、いちーちゃん・・・・・・」
「ちょっとギターをね」
彼女が座るベッドの上には見なれないギターケース。
「買ったの!?」
「おぅ」
ユウキ無視で展開される会話。
まぁ、ゲームしてるから別にいいのだが。
「ギターを弾けるったらユウキくらいしか思い付かなくてさぁ」
「ちゃんと教えなさいよー」
「うっさいなぁ、明日も早いんだろー」
「明日は昼からでしたぁー」
あっかんべーして、部屋に入って着替えてると
市井が無断で入ってくる。
下着を変えてる途中だったので
ものすごく間抜けな格好だった。
「あはは」
「ちょ、ちょっといちーちゃん!」
「着替えなんていっつも見てたろ」
「だけどさぁ」
「お、胸おっきくなったな」
エッチィ顔をして手をワキワキと動かしながら、近付いてくる。
着替え終わった胸を両腕で隠して、逃げまどってみせると
せまい部屋の中で散々追いかけっこ。
338L.O.D:01/11/15 23:49 ID:MlC2BbG1
「はぁーーー」
市井は笑ってた。
ひさしぶりにあった市井は髪を茶髪にして
眉毛は細くなっていた。
「いちーちゃん、茶髪似合わないんだね」
「言うなぁ!」
「んー、やっぱごとーはこっちがいいな」
スッと額に触れ、後ろへ流れてく指。
前髪も全て後ろへ。
「顔、変わった」
「そうか?」
「うん、大人の顔になっちゃった」
「嫌い?」
「ううん」
「そだ、ごとーに言うの忘れてたよ」
「なに?」
「私、復帰するから」
「復帰?」
「うん、CD出すの」
「へぇーーー、おめでとっ!」
嬉しかったはずなのに。
339L.O.D:01/11/15 23:50 ID:MlC2BbG1
ソロの収録。
メンバーは誰もいない。
誰もいないから、ぼーっとしている。
周りは知らない人ばかりだし
あんまはしゃぎもしない。
これが加護とか吉澤とか
一緒になって騒げるような人間がいれば
バカ話の一つもするのだが。
(はー、ちょっと緊張)
そんな一つ一つの姿が
他人には堂々としているように見えるらしい。
別にクールじゃないのに。
『あふれちゃーうぅ、ビーインラァブゥ!』
歌い切る。
ソロが始まった事で、なお歌に向き合う事が増えた。
歌を歌う事の意味。
売り上げという形で表れる結果。
そして、コンサートで出会う多くのファンの歓声。
340L.O.D:01/11/15 23:50 ID:MlC2BbG1
それ以上の何かが後藤の胸を渦巻く。
言葉には出来なくて
なぜか悔しくて
涙が一筋こぼれる。
どうしたいのか分からない。
ただ歌うだけじゃ満足できなくなっていた。
移動する車の中で携帯をいじる。
瞬間的に市井へメールを書いていた。

『歌を歌うってどういう事なんだろう?』

すぐに、返事が返ってくる。

『それは、もう後藤の胸の中にある』

市井の顔が思い浮かぶ。

『ロマンチストだねー』
『へへーん』
『なんか今までは歌う事がただ好きだったけど
 今は、なんかもっと歌いたい』

市井から返ってきたメールには、不可思議な言葉。

『和田さんに連絡を取りな』

『どういう事?』
『分かるから』
341L.O.D:01/11/15 23:56 ID:MlC2BbG1
(打止め?)
とりあえず、前半中盤までは2日で来ました(w
はやっ!!
少しずつネタを小出しにしてますが
事実を軸にしながら、少しずつ妄想というかネタを入れてきます。
カギを握るのは和田薫。
歌手として、これからの娘。はどうなっていくのか
石川の喉は、他のメンバーは・・・・・・
342あみ(略:01/11/16 00:20 ID:UzpOopTs
お疲れ様でした。また明日。
343名無し娘。:01/11/16 00:22 ID:D0F9crMh
皆、悩んでるんだねぇ。
344ヨミマシタ♪:01/11/16 00:45 ID:F6LgDkbL
なんかノってるなあ。いいなあ。
でも体調には留意ね。
345トロピカ〜ル名無して〜る:01/11/16 00:59 ID:FvCX1yPM
「OLやぐたん」みたいのも面白いけど、
やっぱりこういう現実に則したストーリーのほうが
感情移入しやすくてイイね。続き期待しとります。
346ねぇ、名乗って:01/11/16 03:40 ID:hW76A/2L
今回はエロなしでしゅか?
347194(就業中):01/11/16 10:06 ID:RXNn2C2a
情景が浮かんでくるなぁ・・・・
やっぱ(・∀・)イイ!
348L.O.D:01/11/16 14:55 ID:S2SZkYVa
保田、安部、加護の下書きが終了。
6時から飲み会のため、それまでにどれだけ書けるのやら。
9時頃から更新します。
349L.O.D:01/11/16 22:03 ID:z+L59kDF
No.9 『endeavor 〜Kei Yasuda〜』

今、目の前に市井紗耶香がいる。
レコーディングブースの中で気持ちよさそうに歌ってる。
保田と安倍はテレビとラジオの仕事の合間を縫って
市井が出すフォークソングカバーアルバムのコーラスを
録りに来たのだが、まだ市井が歌っていた。
「紗耶香、上手だねー」
隣に座る安倍が耳元に顔を近づけ、小声で言う。
「うん」
うなづいて、顔を上げた時
こっちを見てた市井と目があった。
なんか恥ずかしい。
レコーディングを終えたのか、
ヘッドフォンをはずしてこっちへやってきた。
「なっちーーー、圭ちゃぁーーーーん」
「紗耶香!!」
安倍は素直に抱き着きに行くが
保田は腕を組み、笑っている。
「もー圭ちゃんは素直じゃないなぁ」
「なによっ、それ」
市井が手を広げ、迎え入れる準備万全だが
顔を真っ赤にして、横を向いてしまった。
スタッフも失笑してる。
「さっ、二人とも、私のためにがんばってくれ」
「なんかその言い方ムカツクわねー」
「さぁさぁ、行こう、圭ちゃん」
引きづられながら、ブースに入り
ヘッドフォンをかけると
なぜか隣に市井の姿を感じた。
彼女はガラスの向こうにいるのに。
いつか約束したこと。
350L.O.D:01/11/16 22:03 ID:z+L59kDF
「必ず帰ってくるからね」
そう、その時、メンバーもファンもその言葉だけを信じていた。
その言葉しか信じるものがなかった。
モーニング娘。をやめ
芸能界に帰ってくるのは難しすぎる。
結婚し、芸能界を引退した石黒の顔出しまで規制するような会社だ。
どこか他の事務所や、レコード会社からデビューとなったら
どんな手を使ってでも阻止するだろうし
それでいて自分の会社からでも
デビューさせるか保障はない。
だけど、今の保田は市井が復活したことを
微塵も不思議に思わない。
それは、全て予定されていたことだから。
351L.O.D:01/11/16 22:04 ID:z+L59kDF
13人で活動するようになって
数日後の事だった。
突然、和田薫から電話が来た。
あまりに不自然だったが
とりあえず出る。
「お疲れ様でーす」
『今日、夜、用事あるか?』
「ないですよ」
『じゃぁ、飯田も連れて飲みにいかないか』
そこで保田は安倍は?と言いそうになった。
だけど、思いとどまる。
きっと、わざとはずしたのだ。
なにかある。
「圭織に連絡してみますね」
『頼んだ。店はこないだ中澤と行ったホテルのバーな。』
「はいはーい、分かりました」
切れる電話。
一体、どんな話なんだろう
予測もつかないまま向かった。
そのバーは一ヶ月ほど前、中澤に連れてこられた場所。
ジャズのスタンダードナンバーが流れる空間は
保田にとって居心地がよく
時折、暇を見ては通っていた。
飯田も来て、軽く一杯ワインで乾杯した後
和田の顔が真剣な表情に変わる。
「まぁ、分かってはいると思うけど話があるんだ………」
「えぇ」
「もうお前達も知っていい頃だと思うから」
その後は自ら間を作るように
グッと飲み干した。
「実はモーニング娘。は全て予定調和で動いている。
 出来た時から解散まで全て決められているんだよ」
352L.O.D:01/11/16 22:05 ID:z+L59kDF
「解散……までですか?」
「2002年春飯田、保田脱退。秋から冬に安倍、矢口脱退。
 加護と辻を中心に音を作りながら方向性の拡大
 メディアミックスを強化して、日本を圧巻。
 2003年12月31日を以って
 娘。解散といったところだな。」
「じゃぁ、裕ちゃんや紗耶香の脱退も?」
「本人からの意志もあるがな」
保田は話を聞きながらグラスの中のワインを揺らす。
天井からの淡い光が美しい煌きを放つ。
そんな事初めて聞いた。
芸能界は自分というキャラを作って、売っていくものだとは
痛いくらい分かっていたけど
そんな所までもう決まっていて
レールの上を走るだけだと分かると
少し空しくなった。
「今日は、私達の脱退のことなんですか?」
飯田は少し怒っているように見える。
「いや、違う」
「え?」
「その後の事だ」
「脱退した後?」
「そう、そういう台本みたいなものを作ってるのは全部、事務所だ。
 つんくすら契約で操られてるに過ぎない。
 俺はもうそういうのが嫌でEEJUMPを作ったのに
 ユウキを消された。」
「あれは、和田さんが………」
「違う、俺じゃない。」
「そうなんだ………」
「脱退した後はお前達の自由だが
 俺はお前達に歌わせる場を与えたい。
 そんなバカみたいなものに付き合わされて
 歌を歌えなくなるなんておかしいじゃないか。
 俺は、道を用意してある」
「どんな…道ですか?」
知りたい。
自分の未来を。
例え、それも一つの決められた形であろうとも
今、見れるなら見てみたい。
和田が少し笑った気がした。
353L.O.D:01/11/16 22:09 ID:z+L59kDF
No.10 『ANjeL's soNG 〜Natumi Abe〜』

小気味良い野菜を切る音と
心地よさそうな鼻歌が
朝のキッチンに響く。
熱せられたフライパンに
野菜が放り込まれ立てた
ジュゥッという音もまたいい。
先ほどからテレビでは
今日も天気がいいと言っていた。
窓の外を見る
青空に浮かぶ雲。
彼女はささやく。
「がんばろ」
安倍なつみ、20歳の夏。
354L.O.D:01/11/16 22:10 ID:z+L59kDF
朝食を終え、彼女が向かったのは
ボイスレッスンのスタジオ。
他のメンバーはいない。
各々ユニットの活動に趣を置く期間であり
安倍は、娘。本体での仕事とラジオ以外の時間は
比較的拘束されることなく
自由に過ごせる期間だったが
ダラダラと過ごすことなく
己を磨き続けていた。
ここまでの3年半という道のりは
娘。をアイドルとだけ形容するには
少々難があるものであった。
そして、安倍はその月日の意味を痛いほど知っている。
それに、歌う事が好きだから。
加えて、これには理由があった。
プロデューサーつんくからの命令である。
モーニング娘。は低年齢化、エンターテイメント化が進んでる事には間違いはなく
その部分での時間的問題、技術的問題があらゆる局面で
デビュ−したての頃やLOVEマシーンの頃などとは変わってきていた。
355やっすー名無しに勘当:01/11/16 22:12 ID:z23gsKoI
ノンフィクションみたいな錯覚に陥るな(あってくれと思う願望が強いんだが)
356L.O.D:01/11/16 22:17 ID:z+L59kDF
だが、失ってはいけない物もある。
それは、プロ意識。
歌でもダンスでもプロとしての自覚を持つ事は、娘。がデビューした時に
つんくや、マネージャー和田薫、その他のスタッフに強く言われた事で
それを、中澤やオリジナルメンバ−達が受け継ぐように言い続けたのである。
娘。がどんな曲を歌おうともどんな姿になっていこうとも
つんくが要求するどんな声も表現してみせ
見てくれた人が感動するような歌を歌う。
安倍なつみ、モーニング娘。の核の胸の中に
確かに息づくそんな思いは
ボイスレッスン、ダンスレッスンに通う事や
色々な本や音楽、映画を見る事に通じていた。
どんな事があろうとも、モーニング娘。安倍なつみは
負けない、折れない、突き進む。
だけど……
357L.O.D:01/11/16 22:18 ID:z+L59kDF
CDラックを整理してた。
未だに封を開けてないTANPOPO1。
椎名林檎やらJAM、もらった洋楽のアルバムなど
ざっくばらんに収められていた。
その中で一枚
手に触れた瞬間に
まるで熱湯を沸かすやかんに触れたような速さで
手をひっこめる。
顔がサーっと青くなり
頭が痛む。
「くぅっ……」
歪む表情。
やっぱりだめなんだ。
もう一度、手に取り、力の限り
床に叩き付けた。
ケースは乾いた音を立てて
転がっていく。
思わず踏みつけた。
パキッと音がして
割れる。
全て。
だけど、消えない心の傷。
足の裏が痛い。
滲み出した血。
どんなにがんばっても
忘れる事の出来ない事。
358L.O.D:01/11/16 22:18 ID:z+L59kDF
2002年 初頭。
まだ世間的には公表されていないが
飯田、保田の脱退が内密的に決定され
こないだ楽屋でどこかのサイトを見てた保田が
ソロデビューアルバムの曲目がすでに流出してると
スタッフに問い詰めていた。
前々からUFAではよくやる手なので
あまり気にはしてなかったらしいが。
そして、その卒業記念として4枚目のアルバムの制作が始まる。
13人もいれば、レコーディングはなかなか進まず
年上のメンバーは必然的に後回し。
中学生のメンバーは眠た気だが
それ以前にもう午前2時なわけで
労働基準法からは大きく逸脱してる。
安倍は暇持て余し、ロビーに出ると
保田がソファでコーヒーを飲んでいた。
「けーいちゃん」
「あぁ。なっち」
「隣、いい?」
「うん」
保田の手の中の紙コップからは
湯気がゆらりと立ち上っていた。
「いる?」
「圭ちゃんの飲みかけかぁー」
「いや、ほとんど手つけてないんだけど」
「なんで買ったの、もったいないお化けでるよ!」
純真で、傷つきやすい少女。
なのに、この世界で4年も戦ってきたんだ。
「最近、考え事するときにこういう暖かい物を
 持ってると、和むんだよねぇ」
「おばーちゃんが縁側でお茶持ってるみたいなのかい?」
と言って、安部は笑う。
もう長い事一緒にいるから分かる
無理して笑ってる。
359L.O.D:01/11/16 22:19 ID:z+L59kDF
「こんなレコーディングも最後だと思うとね」
「圭ちゃんと圭織がいなくなったモーニングなんて
 どうなっちゃうのか分からないよ………」
たまに見せるこんな弱音が心を揺さ振る。
だけど、自分の口からは言えない。
彼女は全てを知らないから。
保田はキュっと唇を結んだ。
「矢口もいるから、大丈夫」
ただの気休め。
なのに、安倍は笑ってみせる。
「そうだね、まりっぺいるもんね!」
ちょうどいいところにとことこと
矢口がやってきた。
「あらやだぁー、おばさん二人で井戸端会議?
 いやぁーだ、年は取りたくないものねー」
「誰がおばちゃんだぁ」
「矢口!ちょっとおとなしくしてなさいよー」
「いやぁーーーーー、キャァアアアア、怖い!怖いぃ!!」
じゃれあう3人。
だが、安倍が急に離れ
「トイレ行ってくる」
とつぶやいて、走って消えた。
矢口と保田は目を合わせる。
「ごめんね」
「仕方ないさ、圭ちゃんと圭織のステップアップのチャンスだもん」
「矢口はどうするの?」
「ソロ?やりたいねー」
「うーん、今後のこと」

決められた未来。
用意された道。
それに乗る事も
それからはずれる事も
全て予定の中の出来事。
360L.O.D:01/11/16 22:20 ID:z+L59kDF
No.11 『Expression 〜Ai Kago〜』

2002年12月 4大ドームツアーの最後 東京3daysにて、安倍、矢口が脱
退。

後藤もソロでの活動が本格化して
すでに脱退は色濃い。
そんな中でしっかりしなきゃいけないのは
やっぱり先輩メンバーなわけで

加護亜依、中学3年。
身長158センチ
・・・ミニモニじゃなくなった。
真っ黒なストレートヘアを
豊かな胸元まで垂らし
ダンスはかっこよく
トークは完璧。
ゲストもメンバーもいじり倒し
おいしいボケはかっさらう
小悪魔加護として
新たな娘。像となっていた。

安倍が持っていたアイドル然とした姿から
加護が持っている天性の明るさに
娘。全体が引っ張られたのである。
361L.O.D:01/11/16 22:24 ID:z+L59kDF
ミュージックステーション
相変わらずやる気のないタモリも
加護となれば話は別。
「どうなの、加護?」
「どうもこうもないですよ、タモさん!」
タモさん、呼ばわりだよ。
「メンバー減ってるのにもっとうるさいんですよ、楽屋!」
「それは加護とか辻が騒いでるからだろー」
「いや、意外とね、愛ちゃんなんかがよくしゃべるんですよぉ」
なんとそつない受け答え。
ガキキャラの払拭はプラスとなっている。
もうわざわざミニモニのようなキャラをやらなくても
十分に注目されるだけの力が今の娘。にはあった。
曲調も4期メンバーからのダンスミュージック系のサウンドに限らず
ミディアムバラードのような初期っぽい曲も歌っている。
それでもオリコン1位を取れるだけのファンを得
全ては計算通り社会現象となっているのであった。
362L.O.D:01/11/16 22:25 ID:z+L59kDF
タンポポの仕事帰り、石川の家に寄った。
さすがに全部ピンクは飽きたのか
アメリカンカントリーっぽいテイストになっていた。
紅茶の匂いが鼻をくすぐる。
「あいぼん、オレンジジュース?」
「ミルクティー」
「えぇーー!?飲めるの?」
オーバーリアクションチャーミー。
手術には至らなかったものの
長い長い休養期間とリハビリを置いて
完全復活した石川はボイストレーニングも相当したらしく
本来の明るいソプラノを取り戻していた。
「いいじゃん」
「もー背伸びしちゃってー」
ミルクポットとレモンの輪切り、紅茶、カップを
お盆に乗せてやってくる石川。
細身の頬をフワリと隠すやわらかいウェーブヘアは
彼女の持つ女らしさを際立たせている。
「あれー?また大きくなってない?」
「伸びてるかな?」
「うん、伸びてる伸びてる」
加護の目に幾つもの写真立てが見えた。
テレビの横に置かれた保田との2ショットやら
最後に13人で撮ったやつ・・・・
「おばちゃん、怖いわぁ」
「そだ!保田さんがね、パネル作ってくれたの!」
隣の部屋に行き、運んできたのはなんと等身大チャーミー石川の写真パネル。
「・・・・チャーミ−」
「かわいい?」
「かわいいかわいい」
「やー、なんで無表情なのーー!」
363L.O.D:01/11/16 22:25 ID:z+L59kDF
背が高くなっても
年を取っても
変わらない物があればいいのに

番組の収録の途中、後藤の姿を見てた。
またちょっと痩せた気がする。
飯田や、矢口、次々にやめていった時
そのまま後藤もいなくなってしまう気がした。
「かごーー」
後藤が呼んでる。
ととっと近寄っていって、抱き着く。
どんなに歌がうまくなっても
どんなに成長しても
後藤真希は加護の教育係。
時には甘えたくもなる。
「えへー」
「ぎゅぅーーー」
「ぎゅぅーーー」
「髪伸びたねー」
「伸ばしたよー」
「後藤と同じくらいかな?」
加護の黒髪と後藤のミルクティー色が混じる。
それだけでちょっと嬉しくて
満面の笑み。
「がんばってる?」
「うん」
「よしよし」
そういって笑い返してくれる後藤に
昔のクールな感じはない。

このまま誰もやめないで・・・
せめて、このまま・・・・・
加護は胸の中でそっとつぶやいた。
364ねぇ、名乗って:01/11/17 01:23 ID:mPhzmYKG
どの時期がストーリーの中心になるのかわからないけど
時間の進み方が速いっすねぇ。もう2003年ですか…
365:01/11/17 03:26 ID:kb3NrYeH
見逃してる人、多いのでは。
完結したらageるのかな?
366L.O.D:01/11/17 22:15 ID:tqp5++Y9
No.12 『PINK 〜Nozomi Tuji〜』

歓声というよりむしろ怒号といった感じ。
武道館が揺れる。
2003年 春コン。
正月コンサートからレギュラー番組ハロモニと
ラジオのみの出演が続いたフラストレーションは
一気に爆発した感じだ。
ステージが光に包まれ、現れたのは
ピンクの髪の少女。
『行くぞぉーーーーーーーー!!』
激しいビートに乗せて、ソロダンスを見せる。
先輩達が抜けた途端、ストレスなのかやる気になったのか
はたまた封印が解けたのか
完全美少女 辻希美。
しぼり込まれた体に力強いダンス。
加護とは違い、あれから止まった153センチの身長。
目一杯動かして踊る姿はまたかっこいい。
もう一人、光の中に現れる。
吉澤ひとみ。
飯田が抜けて、一番身長が高くなると
さらに目立つようになった。
長い手足をしなやかに流す。
順に加護、石川、高橋、小川、新垣、紺野と現れ
新モーニング娘。のコンサートが始まった・・・・・・
367L.O.D:01/11/17 22:15 ID:tqp5++Y9
「加護とぉー」
「辻のぉー」
「突撃!隣の楽屋ーー!」
「今週のカメラはあしゃこでーす!」
グルッとカメラが回って
紺野が自分のアップを写す。
「あの・・・こんばんわ・・・・・・
 紺野です・・・えっと、がんばります」
1年経っても何も変わらないこのトークも
もはや味という感じだが
この2人も姿こそ違えど
2人揃えば、向かう所敵なし!!
「では、行きますか、辻さん」
「そうですね、加護さん。
 今日の楽屋は中澤裕子さんでーす」
「さっそくお邪魔しましょーーー
 オルァアア!金出せやぁ、ゴルアァア!!」
「ゴルアァアアア!」

  ガチャ

中澤と矢口がこれまた濃厚なテレビでは放送できないような(略)
しかも、その状況にありながら安倍は
テーブルの上で体育座り&うつむいてる。
シュールだ。あまりにシュールな画だ。
「えっと・・・・・・」
あまりの事態に加護がリアクションを取れないでいると
辻がナイスフォローを見せる。
368L.O.D:01/11/17 22:16 ID:tqp5++Y9
「安倍さーん、お菓子食べますかぁ?」
「あ、ポッキーだべさ」
「嬉しいのかよ!」
それを受けて、加護のツッコミ。
2003年でもまださまぁ〜ずは健在らしい。
「というわけで、、中澤さんでしたぁ〜、、、、、」
勝手にカメラがバックしてる。
紺野のアドリブボケにつっこんだのは矢口
「終わりかよ!」
だけど、その姿は仲良くテーブルの上に体育座りで
ポッキーを食してる辻と安倍のせいで見えやしない。
「見えないよ!なっち、どけて!!」
「あぁ、映らないのかい?矢口はちっちゃいからねぇ」
「いやぁ、ほんま辻、いい色やなぁ。
 ヅラみたいやでーー、かわいー!」
「痛っ!痛いっす、中澤さん!!」
その横では中澤が辻のピンクの頭を撫でてたと思ったら
額の生え際辺りに指を立てて、なにやら剥がそうとしてる。
「ヅラじゃないんだってば!!」
「辻が泣いてるべさっ!!」
「ひーん」
「・・・・じゃ、撤収しよか」
「はい」
壮絶な現場・・・・・・
だが、それすらも許容できるほど娘。はバラエティに強くなっていた。
369L.O.D:01/11/17 22:16 ID:tqp5++Y9
窓から差し込む光。
くしゃくしゃの髪の毛。
部屋にはバカデカい飯田圭織のポスター。
モーニング娘。をやめた後はモデルなどの単発の仕事を引きうけながら
FMラジオのパーソナリティや歌手を続けていて
自分で気に入った写真などが出来ると
辻に送ってくれた。
背が高くて、細くて、大人の女の色気がプンプン出てる。
やっぱり憧れの対象だ。
だから、飯田が卒業した時
自分でもどうしたらいいのか分からなかったけど
とりあえず痩せる事にした。
約束だったから。
そして、12月には矢口がやめた。
それ以前から加護が大きくなってしまって
ミニモニは解散してたが
やっぱり矢口はリーダーですごく頼ってたから
精神的に参ってしまってた。
事務所もそれはよく分かっていて
モーニング娘。自体の露出は極力抑えられる事となったのである。
その結果がピンクの髪の毛。
好きな事を好きなようにして
取り戻した自分のペース。
元々の暴虐無尽に楽しい事大好きな性格と
そのテンション高めの髪の毛のおかげで
元気な女の子キャラがピタッとハマり
辻の変身は成功したのであった。
だけど、辻は知っていた。
自分達が活動できるのは、あと1年だけな事を。
あと1年。
あと1年で自分を出していかなきゃ
この芸能界には残れない。
どんな形でもいいからこのスポットライトの中にいたい。
370L.O.D:01/11/17 22:21 ID:tqp5++Y9
本日は、色々と忙しくてまだ辻編しか書けてません・・・・・・
あとは、新メン4人分の短編で前半部分が終わるので
早く書けたらいいなぁ・・・・・・(願望)

<ストーリーの中心。
えー、、後半部分でこの短編の意味が分かるかと。
371トロピカ〜ル名無して〜る:01/11/17 23:21 ID:RYZI8pj1
まあ焦らずにコツコツとがんばっておくんなまし
372L.O.D:01/11/17 23:35 ID:tqp5++Y9
No.13 『Black Rain 〜Risa Niigaki〜』

小さい頃から芸能人になるのが夢だった。
幼稚園、、もっと昔からオーディションを受けてたし
レッスン場にも通ってた。
そんな自分の目の前に現れたのは
アイドル モーニング娘。
きらびやかな世界の中でもさらに輝いて見えた。
同じ年頃の女の子がブラウン管の中で
歌ったり、踊ったりしてる。
新垣の夢は、芸能人という枠組から
さらにモーニング娘。になる事と
鋭くなっていった。
373L.O.D:01/11/17 23:36 ID:tqp5++Y9
で、実際、なってみたら
やっぱり彼女達は芸能人のオーラこそあれど
それ相応の年頃の女の子。
そんな中、保田がノートパソコンでネットをしてた。
(ダーヤスって呼んだら怒られるかな・・・・・・)
目をやると、それは間違いなく
2ちゃんねるモーコー板。
(狼かよ)
「保田さん、インターネットですか?」
「えっ、、あ、うん」
保田は限り無く慌ててる。
なにか困るような事でもあるのだろうか
(みんな知ってるよ、ダーヤスが2ちゃんねらーだって)
保田の指が画面を切り替える。
(なんで・・・(〜^◇^)<『BDOH』・・・・・・)
そこへ矢口が近寄ってくる。
新垣は瞬間的においしいと思う。
これで矢口も知ってる風のリアクションをすれば
マジヲタ新垣としてはたまらない。
「あ、圭ちゃん、また見てたのーー?
 なんかおもしろいスレあった?
 だからぁ、矢口は毛も生えてなければ
 チ○ポも生えてないってばぁーー!
 よっすぃーは生えてるけど」
「ちょ、矢口ぃ。お豆ちゃんもいるのに」
「あ、そっか。お豆ちゃんはこういうホームページは
 見たら、ダメだからねー」
(もう見てますけどね)
新垣里沙のモーニング娘。観察は続く。
374L.O.D:01/11/17 23:37 ID:tqp5++Y9
中に入ってみて、よりモーニング娘。のおもしろさが分かった。
芸能人らしさを持ち合わせながら、ギリギリのところで
近くにいそうな女の子感、そんなものを漂わせる感覚。
だから、本来のアイドルと呼ばれるような
水着のようなグラビアはほとんどないし
その代わり、バラエティの仕事は多い。
旧メンがト−クに慣れたのと
辻加護という存在があっての事だろう。
なんて内部の人間が思ってみるのも
なかなかおかしい状況だが
後藤はいつも寝てるし
辻は食い意地が張ってる。
モーニング娘。に入ってみて
正直、辛いこともある。
だけど、人前では泣かない。
プロだから。
毎日、仕事が終わって帰ると
ベッドに倒れ込む。
なんかそんな自分・・・・・素敵やん?

旧メンがどんどん消えていき
曲の割り当ても増えてくる。
モーニング娘。の歌を歌う。
モーニング娘。としてテレビに出る。
すごく幸せな日々。
375あみ(略:01/11/17 23:52 ID:sigMFM/S
今日は更新せぇへのか思たらしてたよ・・・お疲れさん
376:01/11/18 00:01 ID:ZEUJoyf2
素敵やんって
・・・紳助?
377L.O.D:01/11/18 00:18 ID:ViE9XhZc
ダウンタウンのごっつのネタ(w
378:01/11/18 00:27 ID:ZEUJoyf2
>>377
「Mr・BATER」?
っていうか浮かんできたのがコレくらいなの。
379194:01/11/18 02:24 ID:wR90hclg
>>378
グッバイさよなら再見アディオス
また逢う日〜まで〜ってやつですか?(w
380あみ(略:01/11/18 12:32 ID:OjVpYFQa
パーティーいかなあかんねん!
時間あらへんねん!
381名無し募集中。。。:01/11/18 16:10 ID:RdSIj4wU
凄いですね〜
感動してます(w
382L.O.D:01/11/18 17:54 ID:Rdx352Ui
No.14 『Heart 〜Makoto Ogawa〜』

初めてメンバーと顔を合わせた時
さすが芸能人だって思った。
だけど、自分がそこに入った時
自信がなくなった。
プロデューサーつんくの指示にその場その場で答えるメンバー。
焦りがあった。
うまくやらなきゃ、うまくやらなきゃ
そんな気持ちが出過ぎて
逆にうまく唄えなかったデビュー曲。

愛ちゃんは、美人だし歌もうまいのに、訛ってるし
里沙ちゃんは、明るくて前向きで
あさ美ちゃんは、のほほんとしてるのにみんなに好かれてる。
自分はどうなんだろう。
トークもあんまりうまくないし
それに司会者の人もやりにくそう。
うたばんでもあんまり振られないし。
合わないかな、この仕事。
そんなことを思ってた。
383L.O.D:01/11/18 17:55 ID:Rdx352Ui
でも、歌は大好きだし
ダンスも好き。
コンサートや歌収録の時は頑張ってる。
お客さんに自分の存在を知ってほしい。
トークじゃダメだけど
魅せる時に魅せる。
自分の心の中で決めてやってると
「保田さんみたいにギラギラしちゃってるよー」
と、石川に言われ
「悪くないかも」
とつぶやいたら
保田がこっちをチラリと見て
「まだまだあげないわよ、私の座はー」
微笑んでたのに。

コンサートの前
緊張して泣きそうになってると
飯田がくしゃくしゃと頭を撫でながら言う。
「歌を楽しむんだよ」
中澤からリーダーを引き継いだ彼女は
それまでのモーニング娘。も知っている。
そんな中で新しいモーニング娘。を作り出す。
そして、そこに一貫して存在するのは
歌への愛。
「小川は真面目だから背負い込んじゃうんだね。」
優しく笑ったその顔はすごく安心できる。
「努力すれば見てくれる人がいるから。
 自分を信じて進むんだよ」
握った手。
スラリと長い指。
絶対的な自信がみなぎってる。
そう、自分を信じて。
「行こう」
飯田が背を向ける。
向かうはみんなの所。
かけ声が始まる。
384L.O.D:01/11/18 17:55 ID:Rdx352Ui
そして、卒業していった先輩メンバー。
色々な事を教えてくれた。
だから、小川は自分らしく歌う。

辻と加護がメインボーカルを取る。
その背中を見ながら
負けないくらい元気良く目立つように踊ってみせる。
そう、例えメインじゃなくたって
自分がメインだと思えばいい。
隣で歌う高橋を見る。
コーラスワーク。
アイコンタクト。
客を煽ってく。
一生懸命。
やれるだけやる。
この目の前にいるファンはみんな自分の物。
気持ちがいい。
ここは私のステージ。
385L.O.D:01/11/18 17:59 ID:Rdx352Ui
(休憩中)
調子がよければ、本日中に前半終了か(予想)
386あみ(略:01/11/18 19:16 ID:/9+n78HB
頑張りや!
387L.O.D:01/11/18 22:51 ID:9zU5JCZN
No.15 『What was lost? 〜Asami Konno〜』

紺野あさ美は劣等生と言われながらも
モーニング娘。に加入した。

劣等。

この言葉はこのグループが誕生した要因とも言える
重要なファクターであり
また、華やかな芸能界において
娘。のメンバーはある意味、劣等であった。
歌はうまくないし、ダンスも素人
かわいいのはかわいいが
どこか、そこら辺にいそうな感じ。
だけど、それが一番大切な事。
その点において、紺野あさ美は
恐ろしいほど、それを体現していたのである。

まぁ、本人は例のごとく気付いてないのだが。
388L.O.D:01/11/18 22:51 ID:9zU5JCZN
楽屋
「あーしゃこ、パーンチ!」
そう言って、強烈な右フックを見舞ってきたのは、吉澤。
紺野はそれを捌いて、眉間に一撃を加える。
「かっけー!」
「いや、、、そんな」
「私もなー、バレーじゃなくてやっときゃよかったなぁ」
シュシュッとシャドーボクシングの真似
こないだのオフはちょうどバンダム級の試合があって
吉澤につれていってもらったのだが、おもしろかった。
「また、、今度、、連れてってください」
「うん!行こう!!」
「あさ美ちゃぁーん、はいっ」
その吉澤に腕をからめつつ
貸してた本を差し出す石川。
「おもしろかったですか?」
「テレビよりよかったよぉー」
「ですよね。」
「そだ。綺麗なカフェを見つけたのっ!
 今度、一緒に行こ!」
「ぜ・・・・・・」
389L.O.D:01/11/18 22:56 ID:9zU5JCZN
「パフェ食べる!」
紺野と石川の間に割って入ってきたピンク色のは辻。
「大きいパフェあるから、ののも行こうね」
「食べる!食べる!!」
辻の嬉しそうな顔と言ったら・・・・・・
紺野もそれを見てるだけで嬉しくなる。
「そんなに食べたら太るんやでー、のの」
辻の顔を背後からムニムニと引っ張る加護。
「別腹で」
辻が真顔で返して、楽屋中爆笑。
「ののも気持ちいいけど
 あしゃこのほっぺたには
 かなわないよーーー」
その後、みんなにほっぺたを触られるが
紺野は別な事を考えてた。
(お家帰ったら、おもち食べようかな・・・・・・
 実家から送ってきたいもでこふきいももいいな・・・・・・)
390L.O.D:01/11/18 22:56 ID:9zU5JCZN
レコーディングブースに入り
ヘッドフォンをつける。
バックトラックが聞こえてきて
小川や新垣辺りだったら
体でリズムを取って歌うのだが
紺野は硬直してる。
『力抜けよー』
「は、、はい」
3回ほどテイクを重ねた頃、少し緊張が溶けてくる。
『そろそろ本気で録るかぁ』
「は、、はい」
深く息を吸う。
そして、吐き出す。
それから始まる本当のレコーディング。
他人より回り道をしてもいい。
劣等生なんだから。
間違える事を恐れない。
また歌えばいいんだから。
つんくもそれを分かってるから。
何テイク重ねても
頑張る紺野のベストの声を録る。
まだまだ劣等生紺野あさ美の戦いは終わらない。

だけどそれは、本人は例のごとく気付いてないのだが
娘。がいつからか失った物だったのかも知れない。
391L.O.D:01/11/19 00:02 ID:4Z7eL5NB
No.16 『Harmony 〜Ai Takahashi〜』

紺野のレコーディングが終わって
ブースに入ったのは、高橋。
「よろしくお願いします」
『じゃ、行こか』
合唱部で培ったものが自分の要だった。
ここで求められるのは、それよりも上の物だった。
自分の声で歌う事。
声を合わせることや綺麗に歌い上げる事じゃなくて
自分の気持ちを込める事。
『もう一回』
不器用だから、突然の要求にアドリブで
答える事が出来ない。
『そやなぁ』
ガラスの向うでつんくが眉をしかめる。
(また、うまく唄えなかった)
シュンとする。
『すまん、ちょっと休憩しよ』
ブースから戻ってきたら
つんくが手招きしてた。
「なんかもうちょっとおもろい事出来ると思うんやけどな。
 うまく固まらないねん。長丁場になるかもしれへんけど
 今の間に、気持ち切り替えておけよ」
「はい」
392L.O.D:01/11/19 00:02 ID:4Z7eL5NB
真直ぐトイレに向かう。
用があるわけじゃないが
鏡の前にいたかった。
ちょうどそこには加護がいた。
「あれ?もう終わったの?」
「いや・・・・まだなんだけど
 途中で止められちゃったの」
「またなんか思い付いたなぁ、つんくさん」
1人納得したようにうなづく加護。
「なにか?」
「こういう時はねーそんな顔してたらダメだよー。
 すっごい事されるから!」
「されるの!?」
「チャンスだよ!」
肩を叩かれた。
なにがなんだか分からないけど
少し気持ちが軽くなる。
「チャンス・・・・・・」
393L.O.D:01/11/19 00:03 ID:4Z7eL5NB
ブースに戻る。
つんくがうなづく。
『高橋、フェイクって分かるか?』
「フェイク・・・・・・?」
エンジニアが一枚のCDをかける。
黒人シンガーの見事なボーカル。
感情にまかせ、声をあげていくメロディ。
ラララで始まり、伸びていくコーラス。
ものすごくかっこいい。
『自分がこいつになったつもりで
 ちょっと一回やってみよか。
 Bメロの後のコーラスの部分に
 自由に入れてみ』
そんな事したことがなかったけど
体で音を感じる。
(かっこよく)
思い切った。
『もっとなんかしゃがれたっぽくいってみよかー』
「はい」
フッと目をやると、ガラスの向うの加護が
がんばれって言っている。
それにうなづいて答える。

歌が好きだ。
大好きだ。
ずっと、ずっと歌っていたい。
楽しく。
そう、歌を歌う事を楽しみたい。
394L.O.D:01/11/19 00:06 ID:4Z7eL5NB
一番最後の1人が書けなかったぁーーーーー(泣)

残るは1人。唯一無二のあの人です。
395トロピカ〜ル名無して〜る:01/11/19 00:42 ID:/Qsmo3Fr
あとは福(略 か…続きに期待
396L.O.D:01/11/19 00:52 ID:4Z7eL5NB
No.17 『evolution 〜Asuka Fukuda〜』

彼女は一番最初に全てを知った。
いや、全てを見透かしてしまったのだ。
多感な年頃の彼女の鋭く研ぎすまされた目が切り刻んだ
薄汚く汚れた世界はとてもじゃないが吐き気がして
居ても立ってもいられなくなってしまった。
音楽を嫌いになりたくなかったから。
逃げ出したわけじゃない。
きっとそんな事をしないでも
いい音楽は作れる。
そう信じてるから。
自分の音楽を求めて
彼女は旅に出た。
福田明日香、早熟で幼かった歌手の空白の3年間。
397L.O.D:01/11/19 00:53 ID:4Z7eL5NB
『社会の勉強がしたい』
世界中に素敵な歌唄いがいるから。
そして、歴史には様々な人々の感情が込められてるから。
こ難しい哲学書も小説も漫画も嫌いじゃない。
自分の領分、知識が増えるから。
勉強する事は嫌いじゃないし
大切な事だと思う。
別に学校の勉強じゃなくても
色々な事。
学ぶべき事。
モーニング娘。になって
走り抜けて
フッと振り返ると
その間の自分は何を勉強したんだろうという気持ちが
福田の胸に押し寄せた。
そんな頃だった。
テレビ局の廊下で、和田が携帯電話に向かって怒鳴った。
「俺はあんたの駒じゃないっ!」
あまりの声に足がすくんだ。
和田はすぐに自分の存在に気付いた。
「福田・・・・・・」
398L.O.D:01/11/19 00:54 ID:4Z7eL5NB
「どういう事ですか・・・・・・?」
気付いていた。
チーフマネージャー和田薫、プロデューサーつんくに
モーニング娘。の全ての行動に関する
決定権は存在しない事。
全ては台本に沿って進んでる事。
予定調和の中のお話。
「そう・・・・・全ては決められた枠の中で
 作られた道の中を走っていく。
 売り上げ枚数すら操作されてるんだぞ!」
知ってしまった 真実。
福田は冷静にそれを受け止めた。
「じゃぁ、逸れればいいじゃないですか」
「え?」
「Rockすよ、それが」
「ふく、、、だ?」
「そんな腐ったやり方で出来た音楽じゃなくて
 いい歌を唄いたいんで、娘。やめます。
 そして、戻ってきますよ。」
「どこに?」
その時の福田明日香の目を和田は一生忘れないだろう。
怒ってるようで、その奥に優しさを秘めた瞳。
「モーニング娘。に」
「娘。に?」
「そうっすよ。私は、、、モーニング娘。福田明日香ですから」
399L.O.D:01/11/19 00:54 ID:4Z7eL5NB
それは、モーニング娘。の歴史の中で初めての卒業だった。
インディーズ手売り5万枚。
第一次メンバー追加。
台本では、まだ数曲はツインボーカルにするつもりだったらしいが
そうは行かない。
福田明日香が壊したモーニング娘。は
片翼を失った鳥のようにフラフラしながらも飛び続ける。
その中で書き変えられてく台本。
本来の流れに戻るように。
だけど、福田が作った波紋は
市井の脱退、後藤の加入へと広がっていった。
そう、福田の頭の中で書かれた青地図は
台本より先を描いていた。

私はモーニング娘。
そう、はっきりと強く言える。
歌が好き。
声を大にして言える。
作られた道などおもしろくない。
まだまだ唄い足りない。

to be continued・・・・・・next 『We are MM。』
400194:01/11/19 02:06 ID:K0Hqsbid
前半終了ですか?お疲れ様です。
今回も引きこませてくれますなぁ。
ってなわけで後半も期待してます。
401あみ(略:01/11/19 02:11 ID:rfVCs2mc
Rockn' Roll is not dead !!
おやすみ。
402:01/11/19 06:54 ID:N+C5tYtW
おつかれーしょん。
続きを推理しつつ楽しめるなんて幸せさ。
リアルタイム万歳!
403て(略:01/11/19 15:45 ID:C3u0wTJf
新作やってたんですね。
一瞬続いてるのかと途惑いました。(w
俺も推理しようっと
404L.O.D:01/11/19 20:58 ID:M35JlPcc
>>403

自分で略すな、自分で(w
405L.O.D:01/11/19 22:58 ID:M35JlPcc
『we are・・・・・・』

1990年代後半。
アイドルグループという存在は
芸能界の表舞台には影すら見えなかった。
それまでの何度か訪れたアイドルブームで
全てを消費し、消えていった。
もう誰の目にもアイヅルグループなぞという存在は
目新しい物として映りえなくなっていて
商品価値はなかった。

そんな中開かれた
シャ乱Qロックボーカリストオーディション。
例たる物か、オーディションの勝者だけでなく
次点の者のデビューも最初から内々には決まっていたのではあるが
その時は、誰もグループ、それもアイドルという形は
考えもしなかっただろう。

そこに現れたのが、安倍なつみだった。
406L.O.D:01/11/19 22:58 ID:M35JlPcc
抜群の可愛さで、即決勝を手にしながら
敗者となった彼女に足りなかったのは、パンチ。
ロックボーカリストオーディションゆえ
デビュー曲はそれっぽい曲となるが
彼女の声にその要素がなかったのだ。
ただつんくは引っ掛かった。
そこまでのオーディションの中でなかったものが
安倍にはあった。
『歌で何かを伝えたい。何かを伝えるために唄い続ける』
うまく唄う事は誰もが練習すれば
音程通りに歌えるようになるし
少しの才があれば、誰もが聞いて
うまいと思う歌を唄えるだろう。
だけど、ボーカリストとして大切なのは
そんな事ではなく
その歌に何があるか。
そして、同じ理由でつんくがリストアップしたのが
オリジナルメンバーの5人だったのだ。
飯田圭織
石黒彩
中澤裕子
福田明日香
安倍なつみ。
ただその時のつんくは
今後の活動につながるかどうか分からないが
もう一度、こいつらの声が聞きたかったのである。
話はすぐにシャ乱Q時代からのマネージャー和田薫に行き
番組スタッフへ。
その後のプロデュースなど考えていなかったから
つんくは楽曲提供をこばんだりという経緯を経て
愛の種、インディーズ手売り5万枚が始まる。
その時点で、すでに事務所が描いた台本は始まっていたのである。
つんくすら気付かないほど内密に・・・・・・・・・・・・
407L.O.D:01/11/19 23:00 ID:M35JlPcc
(今日、発見した事)
この小説の前半を読んだ後に、
福田明日香卒業ライブのビデオを見ると
(・∀・)イイ!!かも知れない。
408194:01/11/19 23:29 ID:5QEglCe0
むむ。最近娘。にハマリ出した漏れとしては
ライブビデオを買うのは定めですか?
409L.O.D@続き書けちゃった:01/11/19 23:29 ID:M35JlPcc
2000年、秋。
とある音楽屋に2人の少女の姿があった。
「紗耶香さぁ、楽器覚えたいっていうけど
 とりあえずなにやんの?」
美しい低音の声。
隣の少女は帽子を深くかぶり、サングラスもかけてた。
「キーボードは曲作るのに欲しいし
 ギターもやりたいし・・・・・・」
「ギターねぇ」
目の前にはズラリとアコースティックギターが並んでいる。
「お金はあるんでしょ?」
「まぁね」
「一本買えば?」
「買わなきゃ始まらないか」
「そうだそうだ」
ものすごく楽観的な会話。
元モーニング娘。福田明日香と、市井紗耶香。
家のパブの地下が実は楽器置き場になっていて
ドラムを叩く福田を連れて
市井は楽器を買いに来たのである。
「すんませーん」
声をあげると、店員がやってきたが
いぶかしげな顔をする。
そりゃそうだ。
見るからに怪しそうな格好をしてるのだから。
410L.O.D:01/11/19 23:30 ID:M35JlPcc
「なにか?」
「ギター欲しーんすけど、初心者なんで
 どれがいいか分からなくて」
「とりあえず、触ってみますか?」
店員は背伸びして、上にかかってたギターを一本手にする。
椅子を出してきて、そこに市井を座らせた。
少し大きめのボディ。
ヒョロヒョロっと見える市井の体にしては
少しオーバースケールな気もするが
なんかそこがまた味になっていた。
「あぁ、いい感じだよ」
「マジで?」
「似合ってますよ」
「似合ってるかぁー・・・・・・」
白くて細い指がそっとCのコードを押さえる。
「じゃーん、なんちゃって」
「あれ?どこで覚えたの?」
福田が聞くと、市井は顔をあげて笑顔で返す。
「ほら、ライブの時にギターの人に教えてもらって」
「あぁーー」
「ボーカルかなんかだったんですか?」
次のギターを取ろうとしてた店員がその会話を聞いて
思わず質問すると、2人は顔を見合わせ
きしししと笑った。
「ま、そんなとこっす」
411L.O.D:01/11/19 23:51 ID:M35JlPcc
ギターケースを抱えた市井と
キーボードを持たされた福田が並んで歩く。
「そういやこんなのひさしぶりだね」
「そだねー。仕事ある時は出来やしなかったからね」
「映画でも見てく?」
「いいねぇー」
「なんかそこら辺にあったよ、確か」
平日の昼間。
街中にはあんまり人通りがなくて
映画館の中も人がいない。
ポップコーンは欠かせない。
広い劇場の中に2人だけ。
中央辺りの特等席に並んで座る。
なんてゆったりとした時間。
映画が終わったら、2人はカフェに向かう。
福田が時折通ってる店で
季節のフルーツを使ったタルトがめちゃめちゃ美味しい。
コーヒーに口をつけながら
市井はフーッと溜息をついた。
412L.O.D:01/11/19 23:51 ID:M35JlPcc
「お、どうした?」
「んー、明日香といると和むなぁ」
「そうかい?嬉しいね」
「ずっと走ってたからね・・・・・・」
「そか」
「私が卒業するきっかけを作ったのは明日香だからね」
「あたし?」
「おぅ」
「それはいい事かい?悪い事かい?」
ふざけて、ジゴロ風に聞いてみる。
すると、目が遠い遠い空を見据えながら、つぶやいた。
「悪い事じゃないと思う。きっといい未来が待ってるから」
「クサッ」
「なんだよ、それー、クサいって言うなーーー」
「紗耶香がカッコつけると、なんかこーなぁ
 お尻の辺りがムズムズするんだよなぁ」
「へーんだ、どうせ市井はロマンチストですよーだ」
すねた風の顔をしてるが
すぐに崩れて
笑ってしまう。
そんな時間が当たり前のように存在する事が嬉しい。
413:01/11/20 00:40 ID:+FpUOAcS
インターバルなし?!
いや、ウレスィーのだが(w
414レク:01/11/20 00:45 ID:+PcB8ZE/
神 降 臨 !
更新早ッ!
 
415トロピカ〜ル名無して〜る:01/11/20 01:26 ID:DVdVq45L
L.O.Dがんばるなぁ〜
416194(就業中):01/11/20 10:58 ID:UV+Wq3M0
午前中は更新無いと思ってたのだが・・・
無理はなさらず体には気をつけてくださいね〜
わし、流れ星見てから体調悪くて・・(w
417あみ(略:01/11/20 12:38 ID:rPD5p4kW
25日にヽ^∀^ノがMUSIX!出演!?
418て(略:01/11/20 18:49 ID:6EBlEOg8
凄いな〜
このペースを維持できるなんて・・・
419L.O.D:01/11/20 21:50 ID:M8kkUd8g
ガチャっとドアが開けた途端、目の前に突き出された袋。
「なにー、裕ちゃん、買ってきたの?」
「いや、真矢さんの酒、全部飲んでもうたらあかんかなーってな」
その袋の後ろから現れた懐かしい顔。
中澤裕子。
どうやら中身は彼女の大好きなビールらしい。
「ま、上がりなよ」
「お邪魔するでーー」
リビングにはおもちゃが散らばってる。
真中で遊ぶあどけない子供を抱き上げる彩。
「こんばんはー、レムくん…痛っ!」
中澤の顔を無意識に叩く。
思わずガンを飛ばすと、そっぽを向いてしまった。
「こいつ、肝っ玉座ってるなぁ?
 彩っぺとはえらい違いや」
「うるさいよ。さ、レムは遊んでてね」
キッチンへ向かう後ろ姿。
「手伝おうか?」
「いいよ、お客さんなんだし」
「じゃ、ゆっくりくつろがせていただくよ」
早速、ビールのプルタブを開ける音がしてる。
「えっ、乾杯しようよ!」
「あ、なに、乾杯したかったん?」
「マジでくつろいでるじゃん」
「いやぁ、遠慮いらんのかなぁーて」
そんな事言って、フザケ合い。
テーブルに並ぶのは手作りのつまみ。
420L.O.D:01/11/20 21:51 ID:M8kkUd8g
「料理うまくなったんちゃう?」
「まぁ、裕ちゃんよりはね」
「そやねん、彼氏に食べさせる分しか作りたくないねん」
「そんな彼氏もいないけど」
「ケンカ売ってるんか?」
「はい、乾杯」
「かんぱぁーい。って話反らすな!」
子供の事、夫婦生活(モちろん夜の事も)
メンバーの事
色々な事を酒のつまみに
話に華が咲く。
「彩っぺがやめて、もう2年になるんか?」
「1年半かな」
「そっか、正月やったもんな」
「で、どうなの、服飾の勉強は?」
いじわるい質問。
「見たい?」
予想してた答えとは違って、少し驚く。
「見るってなんか作ったんか?」
421L.O.D:01/11/20 21:52 ID:M8kkUd8g
「こないださ、明日香が遊びに来たんだよ。
 っていうかよく来るんだけどさ。
 その時に話してて、書いた服」
開かれるスケッチブック。
メンバー一枚ずつ書かれている。
旧タンポポのような幻想的な物
現在の娘。を意識したダンサブルな物。
すごくハードな革のジャケット
少しずつラインが違ったりして
手間がかかってるようだった。
「ええなぁ」
「裕ちゃんも聞いてるんでしょ、明日香の話」
「なにがや?」
「え?」
「復帰する気なんか、あいつ?」
「・・・・・・遅れてる」
「え?ヤバい?私、ヤバいんか?
 あかんわ、電話しちゃろ!」
酔ってるのか、酔いも吹っ飛んだのか
中澤は急いで携帯電話を取り出しながら
大きな声でそう言った。
422L.O.D:01/11/20 21:53 ID:M8kkUd8g
2001年11月。
男装の吉澤ひとみに抱きつく石川梨華。
「よっすぃー、かっこいー」
「ヘェィ、マイラバー梨華」
「よっすぃーはおいらのものだぞぅ」
「オォゥ、マリマリマリィー」
楽屋でふざけるメンバー達。
「10分前でーす」
「はーい、みんな行くよー!」
飯田が先頭に立って、立ち上がる。
中澤がいなくなった13人の新生モーニング娘。初めてのライブ
新メンバーの緊張した面持ちを見て
保田が苦笑いする
(あぁ、こんな時もあったんだなぁ)
なんて思っていると、
辻と加護が彼女達の所に行って
手をつないだり、はげましたりしてる。
(へぇー)
「おばちゃぁーん、見ないでよぅ、エッチィ」
「誰がおばちゃんよっ!」
「あははー、おばちゃんが怒ったぁ」
新メンバーも笑ってる。
もしかして、それを狙って、保田をいじったのだろうか。
保田はそう受け取るようにして、笑って返した。
舞台の直前で円陣を組む。
「?氓R人で最初のライブです」
飯田の声。
「なんか天気も悪いし」
「床も滑るみたいだけど」
「怪我はないようにね」
「うん」
「お客さんにいい物見せましょう」
「新メンも負けないように」
「がんばってぇーいきまーっ」
「「しょーいっ!」」
423L.O.D:01/11/20 21:54 ID:M8kkUd8g
そんな風に新メンにとっては何も考える余裕もなく
怒濤のように過ぎ去っていった初ライブだったが
次のライブは、飯田と保田の卒業ライブとなってしまったのだった。
小川はモニターをじっと見つめていた。
映っているのはプッチモニ。
髪を伸ばした保田の真剣な表情はまるで鬼神のようであったが
それとは別な物を見てた。
かっこよくキメるダンス。
娘。の最後の砦とも言えるような低くていい声。
『BABY!恋にKNOCK OUT』の途中から
3人共、涙声で唄えなくなってしまう。
観客がそれを助けるように声を合わせ合唱する力に押されるように
叫ぶ保田
『行くよぉおおおおおおおおおお!!』
後藤と吉澤も引っ張られ、
マイクを握り直した。
ものすごくかっこよかった。
どこまでも自分を高めるために妥協せず
古く言えばまるで武者のような人。
日々、是鍛練。
頬を流れる涙に気付く。
脳裏に練習の時に一緒に踊ってくれた保田の横顔が見えた。
424L.O.D:01/11/20 21:54 ID:M8kkUd8g
終盤のMC。
飯田が1人1人に声をかけてく。
隣の紺野が終わって、自分の番になって
高橋は少しうつむいた。
「たっかはしっ」
少女みたいな人。
一番背が高くて、綺麗なくせに
純真で傷付きやすくて可愛い人。
顔を上げると、これまでにないくらいの笑顔で
自分を見てくれていた。
「高橋にはね、感謝してるよ。
 なんか歌を愛するって事を
 よく考えさせられたね。
 レコーディングの時とか
 困ってる姿を見てさ
 圭織もあんなに悩みながら唄ってたんだって」
大きな手が優しく頭を撫でる。
「あとねー、圭織、高橋の髪すっごい好きなの。
 ほら、ずっと黒くて長かったでしょ?
 だからね、やっぱいいなぁって思うよ。
 圭織からのお願いは、これ続けてほしいね」
「続けますっ」
自分から抱き締めに行った。
飯田の長い手がそっと肩にかかる。
なんて暖かいのだろう。
425神(略:01/11/20 21:55 ID:Aij+/Fu9
こんなペースで書いて日常生活に師匠はでないのだべか。
426L.O.D:01/11/20 21:56 ID:M8kkUd8g
数日後
飯田は来慣れたバーに入る。
カウンターに保田の姿があった。
音を立てぬように隣の椅子へ座った・・・・・・
「御機嫌よう」
「ひさぶりだね」
「あはは」
「あとで裕ちゃんとなっち来るんだけど」
「OK」
保田はルビーのような赤いカクテルの水面を見つめる。
「圭織はこれからどうするんだっけ?」
「歌唄ってくよ。来る仕事は拒まずでね」
「私も・・・・・・唄いたいね」
飯田は所属を和田薫の元へ変え
歌手だけではなく幅広い活動を視野に入れて
動き出そうとしていた。
その一方、保田はなにも契約をしていなかった。
「どうするの?」
「ニューヨークに行くよ」
「はぁ?」
「ちょっとダンスも歌も磨いてくるよ」
そう言う保田はどこか確信犯的な余裕を見せていた。
飯田の顔は明らかに心配してる。
「NOVA通わなくて大丈夫?」

その翌日、メンバーと家族のごく少数の人だけしか知らない中
保田圭はニューヨークへと飛んだ。
427L.O.D:01/11/20 21:58 ID:M8kkUd8g
>>425
一応、ここまでで晩飯食い終わってから
およそ3時間くらいで書いた分っすよ。
428194:01/11/20 23:23 ID:Uw2iQ2xJ
おお、神よ・・・・
>>423>>424で涙こぼしそうになったよ。
不覚にも。
429L.O.D:01/11/20 23:54 ID:M8kkUd8g
2002年 初秋
安倍は福田からのメールへ返事を打っていた。
その後ろから抱きついてきたのは、矢口。
「なーっち、ヒマだよぉ」
「はいはい、待ってねー」
「なに、彼氏?」
「彼氏かもねー」
「出来たの!?」
「・・・・・・福ちゃんだよ」
「明日香かー」
「矢口も行く?」
恋愛ネタではない事が分かって
つまらなそうにテーブルの上の
お菓子に手を伸ばしてた矢口だが
安倍の言葉に振り向いた。
「へ?」
「福ちゃん家」
あの時のメンバーはもう2人しかいない。
福田明日香と共に唄った人間は・・・・・・
「行く!」
430L.O.D:01/11/20 23:55 ID:M8kkUd8g
2人を乗せたタクシーは暗くなり始めた街を行く。
安倍はずっと窓の外を見てた。
矢口はあえて声をかけなかった。
安倍の頭の中で色々な事が交錯する。
ずっとずっとみんな一緒だと思ったのに
福田がいなくなって
1人では娘。を支えれなくて
後藤が入って
ストレスが一気に来ちゃった。
一時期は本当に鬱みたいな状態で
家から一歩も外に出たくない時があって
そんな時は福田にメールした。
すると、電話がかかってきて
朝が来るまで話してた。
あの少し低い声で『イモ』って言われるの
嫌じゃない。
かわいいかわいい妹 福田明日香。
福田の家の前につく。
彼女の家は店をやっていて
2人はそれとは別の入り口から入る。
「お邪魔しまーす」
「なっちーーーー?」
「そうだよー、下にいるのーーー?」
「うん、おいで!」
431L.O.D:01/11/20 23:56 ID:M8kkUd8g
福田家の地下。
別に埋蔵金があるわけではないが
そこは、完全防音のカラオケルーム。
階段を降りる。
壁にかけられたギターや、ベース。
それにドラムやキーボードも置いてある。
「紗耶香!?」
「うぃーっす」
完全にソロとなった市井までいた。
市井は、自分で作曲する時
ここにやってきて、福田の手助けを受けながら
曲の制作の第一段階 プリプロを進める。
「で、なにすんのさ?」
遊びに来いとは言われたが
特になにがあるかも聞いてなかった
安倍はひとまず尋ねてみた。
「いやぁ、なにってあれもないんだけどさ。
 とりあえず座ってよ」
木製の古ぼけた椅子を出され
それに腰掛ける。
「話があったんだ」
「話?」
「ほんとは和田さんから言ってもらうのがいいのかもしれないけど
 忙しいらしいから、私が言うね・・・・・・
 実はモーニング娘。ってのは全て台本に基づいて動いてるんだ。」
「台本ってなにさ?」
矢口にはその意味が分からない。
ドラマならいざしらず、
モーニング娘。が台本で動いてるとは
どういう事なのだ。
「うちらは結成の時から解散まで全部決められてたんだよ、すでに」
ギターを置いた市井がつぶやく。
その声は重く、寂しそうに聞こえた。
432L.O.D:01/11/20 23:57 ID:M8kkUd8g
「決められてたって、オリコンとかは!?」
「操作」
「紅白も?」
「事務所が局とグル」
「みんなの脱退は!?」
「本人の意思もあるけど、事務所の圧力もあるでしょ」
矢口の沈痛な表情とは裏腹に
安倍の顔は冷静だった。
「なっち・・・・・・」
「芸能界はそういう場所なんだよ・・・・・・
 歌う事よりもお金なんだよ・・・・・・」
その胸の中は誰よりも痛々しかった。
大人の欲望で汚された天使の羽。
「でね、和田さんは事務所に反抗してるんだ」
「つんくさんも同じ思い」
立ち上がった福田がパソコンの中の
スケジュール表を次々にクリックしていく。
過ぎ去る年月。
2004年。
あと2年後。
「モーニング娘。を復活させる」
433あみ(略:01/11/21 01:26 ID:cxBWXRJE
地下室で●交パーティーとかやってへんやろな・・・
茶化してゴメソ
434:01/11/21 05:58 ID:y750g+B9
今日もすごいのねん。
何かにとり憑かれてるみたいでちょっと恐いかも・・・
ローソクが最も輝くのは消える直前、なんて申しますが(w
何となく作者の身を案じてしまったりします。
・・・だいじょうぶ、だよ、ね?
435L.O.D:01/11/21 07:44 ID:LpMj6zY4
>>433
それ、次のやつのネタ・・・・・・(嘘)

>>434
別にもうプロットが完成した時点で
ストーリーは出来ちゃってるから
なにも辛い事はないけど
私事で神経性胃炎と偏頭痛を少々・・・・・・
436あみ(略:01/11/21 15:55 ID:EjVlZkfS
大丈夫ですか?無理なさらず、お大事に・・・
437ねぇ、名乗って:01/11/21 16:15 ID:irjdEMkh
NHKは、特殊法人なので操作は無理かと・・。
438て(略:01/11/21 17:16 ID:XwBcUqYT
一休みですか?
体は大事にしてください
439L.O.D:01/11/21 19:54 ID:wt3hcBK4
>>437
そうだよなぁ、キャスターがエロ本読んじゃいけない局だもんな。
まぁ、なんらかの欠員、もしくは選考上の出来事とでも
捕らえてくださいな。。
440L.O.D:01/11/21 21:51 ID:wt3hcBK4
昼からの娘。本体でのテレビ収録が終わって
ミニモニ。でのレコーディングを行うためにスタジオにいた。
なんだかんだ意見があったが
新垣を入れる事によって
『ちっちゃい戦隊ミニモレンジャー。』
というピンの特撮番組まで持つまでになった。
しかし、他のユニットがCDリリース時期のみの仕事が多いというのに
ミニモニは完全に忙殺されていた。
時間、すでに午前0時。
新垣より辻、加護の方が眠たそうに見える。
「起きろーーーー」
「起きてよ、辻ちゃぁーん」
矢口とミカが揺り起こすも意識が朦朧としている。
2002年、ミニモニは4枚のシングルに1枚のアルバムをリリース。
お子様を虜にしてるのは間違いなく
娘。のライブはヲタとお子様の率が7:3を越えていた。
「新垣、大丈夫?」
「大丈夫です」
いたって眠かったのだが、新垣はそう答える。
「ちゃんと眠れてる?」
「・・・・・・あんまり」
「だろうなぁ、クマ出来ちゃってるもん」
そう言いながら、矢口は化粧箱を漁っていた。
取り出したのは、コンシーラー。
「女の子だもん、とりあえず隠しておこう。
 こいつらもちょっとは化粧しろっつーのな」
(矢口さんは化粧取ったら、誰だか分かりませんなんて言えない)
441L.O.D:01/11/21 21:52 ID:wt3hcBK4
新垣里沙。
生っ粋の2ちゃんねらー。
そして、まるで石川の黒い日記帳のように
性根からダークな性格・・・・・・
まさしくヒール(悪役)に相応しかった。
加入した時からファンに一斉に叩かれ、話題を争奪。
その後もヲタどもをキリキリさせるような
アンチファンな発言を繰り返す。
初めてのライブの『ラブラブ』は今後も語り継がれるであろう。
それはいいとして
「まずは、矢口から録るか?」
「はい」
つんくに言われ、ブースへ向かう矢口の背中を目で追う。
2ちゃんでよく見かける矢口卒業間近の文字。
まだ一言も本人の口から聞いてない。
栗色に戻して二つしばりにした髪の毛から覗く顔は美しい。
ちっちゃいけど。
今回の曲も対幼稚園児用であり
ストーリー的には喧嘩した子供同士謝りたいんだけど
謝れない複雑な心境を曲にしてある。
(まったく歌詞に意味ないけど、まぁ、売れるんだろうな)
そんな事を思いながら、矢口を見ていた。
初代リーダー中澤裕子に愛された人。
そして、2代目リーダー飯田圭織、同期の保田圭もいない今
娘。を実質的にまとめてるのは矢口だった。
安倍がまったくそういう能力がないんだから仕方ない
(なっち、天使・・・・・・ってな)
今、矢口が録った歌がスタジオに流れる。
細くてきらびやかな糸のような声。
矢口真里がなんのギミックもフザケもなしに唄う。
「なんかもうちょいヒネってええよ。
 飛び道具は矢口の18番やろ」
『はしゃいじゃーってよいのかなー?』
「なんで松浦やねん」
(似てないよ、矢口さん)
442L.O.D:01/11/21 21:58 ID:wt3hcBK4
とりあえずはここまで、ラブラブ♪
443L.O.D:01/11/21 22:56 ID:wt3hcBK4
2003年、お正月も明けた一週間後の事。
ひさしぶりのオフになった。
紺野あさ美はこたつに入り
焼き立ての餅に醤油をつけ
海苔を巻きながら
年末と正月の特番の再放送なんかを見ていた。
ちょうどその時はうたばんで
安倍と矢口が出ていた。
グル−プ名すら決まってないデュオ。
だけど、石橋が嬉しそうに安倍をいじり
矢口と仲居が普通に会話してる。
「・・・・番組、成立してないですよ」
まったくだ。
それでも、娘。の時と変わらない視聴率を
たたき出してるのだから
本当にすごい。
最後の東京ドームの3日目が終わって
ボロボロ泣いて、泣きすぎて
もう涙も出なくなり
打ち上げで思いっきり酔っぱらった
安倍は自分に絡んできた。
(お酒・・・・くさいな)
「紺ちゃぁーん、なっちねぇ、寂しいよぉ」
「はい・・・・・・」
「圭織も彩っぺもいなくなって
 紺ちゃん、1人だよ、北海道ぉ」
(北海道になんかこだわりがあるんだろうか・・・・・・)
444L.O.D:01/11/21 22:56 ID:wt3hcBK4
「あぁあ、明日から娘。じゃないんだぁ」
オリジナルメンバー。
そして、モーニング娘。の核。
この人ありて、モーニング娘。とも言える存在。
「ちょっとなっちー、酔いすぎじゃないのー?」
そう言う矢口も顔が赤い。
「飲まなきゃやってられるかぁーいっ」
「キャハハハハハ」
本当に仲がよい2人。
なんて楽しそうなんだろう。
自分もこういう風に
何も考えないで笑える友達が欲しい。
「あぁー、紺ちゃん、泣いちゃダメだよぉう」
「いや・・・泣いて・・・・・・ないです」
「よしよし、うちらも寂しいんだからね」
なちまりが紺野を挟むようにして抱き締めてくる。
それを見た辻が飛んできた。
「やぐちぃさぁああーーーーん(泣)」
「あぁぅっ!辻、痛いよっ!もー、しっかりしてよね」
それを皮切りに集まってくるメンバー。
しかし、2人はまだ紺野を離さない。
(・・・・・・ちょっと息苦しいです)
445L.O.D:01/11/21 22:57 ID:wt3hcBK4
やっと離してくれて、
紺野は顔を上げた。
安倍が自分の顔を見て
ニッコリと笑った。
誰もが知ってる安倍なつみの笑顔。
何もかもを包み込むような優しさ。
「紺ちゃん、目綺麗だね」
「・・・・・・」
顔が近付いてくる。
体が少し強張った。
軽く息が首筋にかかる。
頬に軽いキス。
それで離れてしまった。
「あぁー、口にしとけばよかった。
 紺ちゃんとした事なかったんだよなぁ」
「安倍さーん、私としましょっ!」
「なんか梨華ちゃんはいやだべさ」
「なんですか、それはぁーーー」
「マリー!僕と一緒に逃げないかぃ!?」
「ダメ、ダメなの、よっすぃ!」
そんな先輩メンバーの漫談と寸劇を見てると
加護がそっと近寄ってきて
手を握った。
「がんばろな」
「うん」
誰も安倍と矢口が抜けたモーニング娘。なんて想像していない夜だった。
446あみ(略:01/11/21 23:06 ID:p70HY6TI
病に蝕まれてる体に鞭を打ち、書いてるよ!
改めてL.O.Dさんの凄さに敬礼!!
447L.O.D:01/11/21 23:31 ID:wt3hcBK4
2003年2月の雪が降る寒い日。

朝早い街を歩く市井紗耶香の頭の上で
後藤真希の歌声が聞こえた。
巨大なエキシビジョンに映されたその姿は
やっぱり魚顔で思わず吹き出しそうになったが
ものすごく可愛かった。
クールビューティーという言葉がものすごく似合う。
現に一般の人のイメージとはそんな感じなのだろうが
市井にしてみれば笑いの種でしかない。
(うきゅーって言って抱きついてた後藤は
 もういないってか・・・・・・)
片手に持ったギターケースに雪が積もる。
薄手の革で出来た手袋でそれを払うと
市井は歩き出した。

街中が騒いでる

『後藤真希単独武道館ライブ』

2、3日前
後藤からメールが来ていた。
(武道館でライブか・・・・・・)
そこは市井紗耶香がモーニング娘。をやめた場所。
そこに後藤真希はソロ歌手として立つ。
最初はドームの予定だったのだが
後藤は強く武道館でのライブを事務所に訴えたらしい。
いじらしいものだ。
あと少しすれば事務所経由か郵便で
VIPチケットでも届くのだろう。
仕事じゃなければいいが。
448L.O.D:01/11/21 23:31 ID:wt3hcBK4
同じ頃、後藤はハロモニの現場で
吉澤に抱きついてた。
「よっすぃー。。」
「ごっちーん。。」
「あ、いいなぁ。のの、キスしよ」
「梨華ちゃん、歯に海苔ついてる」
「え!?」
マネージャーがドアを開けて
後藤を呼ぶ。
「仕事だぞ」
「え、あ、はーい。じゃ、そういうわけだ」
「あとでメールすんねー」
「がんばってー」
笑って、手を振る。
楽しい。
バカやって、ふざけあって、微睡んで。
ものすごくマイペースにやっても
なんかそれが逆に味となってしまう。
だけど、ソロはそういうわけにはいかない。
車で運転席に座ったマネージャーが言う。
「武道館は押さえたからな。
 分かってるだろ、約束。」
「・・・・・・」
「なんだ、その顔は」
「分かってるよ」
ふてくされたような声。
気に食わない。
なんで、なんで命令されなきゃいけないのか
これは怒られるのとは違う。
ただマリオネットのように操られてるだけだ。
そんな事ばかりがありすぎて
後藤の胸が締め付けられる。
約束。
それは、事務所からの命令。
『武道館で脱退の表明をする事』
自分から脱退したいと言ったわけでもない
ソロがやりたいとも言ってない
むしろ、娘。を続けたい。
なのに・・・・・・なのに・・・・・・・・・・・・
449L.O.D:01/11/21 23:48 ID:wt3hcBK4
激しいギターのノイズが響きだし
ステージ上を幾筋ものビームが走っていく。
2003年3月21日、日本武道館。
2週間前に発売されたアルバムはオリコン1位
同時リリースの新曲も週間1位の座に輝き
1人のソロ歌手として
成功を納めてた。
音が止み、ヲタの歓声だけが聞こえる。
巨大スクリーンに映された後藤真希。
舞台裏の生の映像。
鳴り響く新曲のイントロに
うなりをあげる歓声。
色々な物が入り交じる中に
1人、ステージ上で光を浴びる。
気持ちいいのとは裏腹に冷静な後藤がいた。
(あと2曲終わったら、MC・・・・・・
 そっからアルバムの曲やって
 溢be・・で、最後に・・・・・・)
450L.O.D:01/11/21 23:48 ID:wt3hcBK4
ピアノに寄り添って
バラードを歌い上げる。
オープニングとは反対に
今はシーンと静まっていた。
後藤は空を仰ぐように深呼吸し
客席をグルリと見た。
客電がついて、みんなの顔が分かる。
マイクを持ち直して
口を開いた。
『えっとぉ、、私、後藤真希は
 次のモーニング娘。春のコンサートを持ちまして
 卒業させていただく事になりました。』
誰も知らなかった。
ネットでは様々な憶測が飛んで
1年もうわさされてたのに
現実に本人の口からそれが出ると
誰もリアクションできなかった。
『理由はちょっとかっこいい音楽でも
 本格的にやろーっかなって感じで・・・・』
溢れ出す涙。
抑えきれない気持ち。
今、ここに立って改めて気付かされる
モーニング娘。への愛。
メンバー、つんく、スタッフ、みんな
やめたくない、やめたくない、やめたくない
けど、やめなければいけない。
市井紗耶香が去ったこの場所で言いたかった。
春コンはあるけど
娘。としての自分はここに置いていこう。
そう、後藤は1人胸の中でつぶやくのだった。
451L.O.D:01/11/21 23:50 ID:wt3hcBK4
明日は早いので、もう寝るー。
次更新:辻、加護覚醒。
452トロピカ〜ル名無して〜る:01/11/22 00:14 ID:knQWF8zK
うわー後藤ー泣けるよーL.O.Dはうますぎだー
453:01/11/22 00:36 ID:UXDVNPhS
今日も燃えてるねっ!

・・・ふくいち、ってさあ
「CHAMU&ASKA」
だよなあ、なんてね。
454194:01/11/22 00:58 ID:jF3x8M+W
もの凄い勢いで神が感動巨編を創るスレだな・・・
楽しみにしてますが、体には気をつけて・・・
455レク:01/11/22 01:57 ID:6cEtyJTa
本気でオモロイ(ってどこでも言ってるような気がするけど
全部本当に面白いから言ってるわけで…
気にしないでください
456L.O.D:01/11/22 22:46 ID:FCS8WskG
リアルタイム書き&上げで今日は行きます。
・・・・・・忙しくて書くヒマなかったよ。

BGM:サードアルバム。60センチのスピーカー、ウーハー全開で。
457L.O.D:01/11/22 23:14 ID:FCS8WskG
安倍矢口の脱退は
完全に新生モーニング娘。としてのリスタートをする事を余儀無くした。
今までの歌を唄う事はあまりにも安倍の姿を意識させ
また、それを現メンバーが超える事は出来ないと判断し
いつもの手段だがユニットでのリリースを先行させ
メンバーの気持ち、ファンの気持ちを
いいようにリセットして
進化した娘。を準備期間を設けたのである。

その期間・・・・・・3ヶ月。
458L.O.D:01/11/22 23:15 ID:FCS8WskG
矢口も抜けて、2人になったタンポポ。
というか、むしろミニポポなのだが。
そこに、紺野と小川を加え
リリースした新曲の発売日が
2003年1月21日。
定番の正月ハロプロを終え、レコーディング。
仕事の合間を縫って、ダンスレッスン。
そして、今回は徹底的なボイスレッスンがあった。
娘。随一のハモリ要員矢口が抜けた事により
綺麗なハーモニーを作れなくなると
タンポポの意味がなくなる。
同時に石川の喉の様子見という意味もあった。
安倍、矢口の脱退ライブの直後に病院へ行き
正月ハロプロは完全に口パクでやり通し
入院。
2週間という時間の中でどれだけの効果を出せるか
ある種のかけだった。
それまでは一切の会話を禁止されていた石川。
最初のボイスレッスンで出した一言は
溜息だった。
459L.O.D:01/11/22 23:16 ID:FCS8WskG
「ネガティブかよ!」
反射的に加護がつっこむのだが
抱き締められ、ドキマギする。
「あいぼーーーんっ!」
「うわぁ、なに、なんやねん」
「あー、あーーー、あーーーーー
 大丈夫?私の声おかしくない?」
「いや、おかしいよ」
「え!?」
「梨華ちゃんの声おかしいって」
「うそー!まだ直ってないのかな・・・・・・」
「おかしいアニメ声だよ」
「もーー、ふざけないでよー!!」
新メン無視でいちゃつく2人。
ボイトレの先生もいつ止めたらいいのか悩んでる。
かくして、タンポポの新曲は
加護と高橋のあいコンビによる主旋律と
石川、紺野のへたれコンビによるハモリで魅せる
旧タンポポのような美しさを持ったAメロ、Bメロ
転調して、4人のユニゾンでポップにキメるサビと
二つの時期を経たタンポポの新しい姿を見せた。
一番変身したのは加護だろう。
正月のハロプロの一曲目でこの新曲を披露したのだが
真っ黒なコートにレザーのブーツでうっとりと目をつぶり、少し上を向いた顔。
詰み立ての朝露に濡れた果物のように濡れた唇は
それまでのガキキャラの加護亜依とはまったく別の人物になっていたのである。
旧タンポポで矢口が演じた大人びた少女を受け継ぐかのように
加護亜依は進化したのだ。
それは、自分が一番先輩メンバーになるんだっていう
考えもあったかも知れないが
それよりも、相方の事が影響したのかもしれない。
460レク:01/11/22 23:36 ID:6cEtyJTa
悪いけど指摘。
<<458の三行目は小川じゃなく高橋なのでは?
あと娘。ニュースによると福田復帰の噂が……
ここの小説をなぞる様でちょっと恐いですね…
461L.O.D:01/11/22 23:44 ID:FCS8WskG
うわ・・・・・・(死
462L.O.D:01/11/22 23:47 ID:FCS8WskG
1日の仕事が終わって
家に帰ってくるなり
ベッドに倒れ込む。
着替えもしないで
そのまま。
何も考えたくない
考えると悲しくなるから。
助けてほしい
だけど、誰もいない。
自分がしっかりしなくちゃいけないんだろうけど
振られると焦っちゃって、何も言えなくなる。
前ならこんな時お菓子を食べながら
ボーッとしてた。
だけど、ダメなんだ。
お菓子は食べちゃダメ。
太るから。
痩せなきゃ。
鏡を見る。
少し顎がすっきりした気がする。
お医者さんがちゃんと見てくれて
食事管理もしてくれて
ちゃんとおいしいものも食べてるし
好きな食事ができる。
別にそこで辛い事はないんだけど・・・・・・
携帯が鳴ってた。
463L.O.D:01/11/22 23:48 ID:FCS8WskG
「あい・・・・・・」
『なんやのー、寝てた?』
「中澤さん?」
『そやでー、裕ちゃんやでー』
「どうしたんですかぁ?」
『辻の声でも聞こかなー思うてなぁ
 そや、チューしとこ。チューーー』
この人、絶対酔ってる。
だけど、電話してきてくれた事が嬉しかった。
「チューーー!」
『お、やっと辻らしくなったな。
 元気しとったか?』
「ううん・・・・・・」
『元気なかったんかいな?』
「うん」
『寂しかったんか?』
「うん・・・・・・」
『みんなおるやろ』
「でも・・・・・・」
『娘。はみんな仲間だよ。
 圭織よく言うてたやん』
464L.O.D:01/11/22 23:48 ID:FCS8WskG
「・・・・・・」
『なんや思春期の女の子っぽいなぁー』
・・・・・・楽しんでないか?
電話の向うの中澤はビールを飲み干したのか
プハーッという心地よさそうな声を上げた後の言葉が
辻の胸に突き刺さる。
『なーに、我慢してんねん。
 辻希美は天真爛漫が一番や』
「てんしんらんまん・・・・・・?」
『好きな事を好きなようにしとるのが一番ちゅーこっちゃ』
「好きな事?」
『辻、モーニング好きか?』
「好き」
『歌、好きやんな?』
「好き」
『その気持ちが大切や。
 歌を愛する気持ちを失ったら
 娘。も終わりやで
 好きな事し。
 ちょっと気分転換に
 髪の毛の色でも変えたらどう?』
465L.O.D:01/11/23 00:02 ID:xSHSHRpy
その一言が鬱々とした物を吹き飛ばす。
翌日、思い切ってマネージャーに相談。
最初はしぶっていたが
泣き通してみた。
その日、テレビの収録の後に
ラジオの録音があった。
それが終わってから
予約しておいた美容室に行った。
「どうしよっか?」
いつもコンサートスタッフで入ってくれていて
娘。のメンバーもよく来てる。
「えっとぉ、短くて、ピンク。」
「ピンク!?」
「そう、3人祭みたいなピンク」
「ピンク・・・・・・?」
「うん!」
ものすごく嬉しそうにうなずく辻。
466L.O.D:01/11/23 00:03 ID:xSHSHRpy
ここしばらくの辻を知ってる美容師さんにしてみれば
それをする事によって辻がそんな気分から立ち直るのであれば
それもまたいい事なのかと思う。
ヘアメイク一つで人の気持ちを助けれるとは
なんて素敵な事なんだろう。
だけど、女の子は得てしてそういう所があるかもしれない。
1時間後
思いっきり髪の毛の色を抜いた辻がいた。
ほぼ白に近いくらいの薄黄色。
それから数日後、また訪れた時には
それも落ちて、限り無く白に近くなっていた。
まずは、少し赤を入れる。
ベースカラーを作る事によって
予想以上薄まる事を抑える。
そして、ピンク。
はっきり言って、ヅラをかぶった方がよほど早いのだが
でも、辻がやりたいのは鮮やかなショッキングピンク。
偽者の苺色。
頬に少しかかるくらいで切られた髪の毛。
まるで人形のような存在。
新しい辻希美がそこにいた。
467L.O.D:01/11/23 00:21 ID:xSHSHRpy
うたばんの収録。
もちろん話題は辻加護がかっさらう。
仲居が
「うぉ、辻、おめぇ、なんかすげぇ髪してんな」
と、言えば
「加護もなんかしとやかーになってんだけど
 とりあえず・・・・・・」
石橋の見事なフリ。
カメラが3人を抜く。
「「チュ」」
その隣で石川がやってるのは別枠で。
「ちょっとーー、私も映してくださいよーー」
「あぁ、梨華ちゃんはいいから」
「うん、石川いいよ、カントリーだし」
「うんうん、黒いし」
「映りたいですよー」
で、そこに吉澤のアップ。
「私も映りたぁ〜い」
まだそのキャラなんですか、吉澤さん。
ってなわけで、新生モーニング娘。は始まったばかり。
そこに安倍や矢口はいない。
頼る人はいない。
自分達がしっかりしなきゃいけない。
だけど、彼女達はまだ知らなかった。
このグループの真実を。
468L.O.D:01/11/23 00:23 ID:xSHSHRpy
(休憩中)
1時間半でここまで。
まぁ、なかなかよしって感じかね。

で、実は明日から3日間更新できない予定なので
ちょいと無理するべか。
469トロピカ〜ル名無して〜る:01/11/23 00:27 ID:RSrgbgct
のの…
470ねぇ、名乗って:01/11/23 00:57 ID:jqIBgDEQ
L.O.D殿、あまり無理なさらずに…
471L.O.D:01/11/23 00:58 ID:xSHSHRpy
「ほらぁー、なっち!遅れるよ!!」
「待ってってばぁ」
しっかりとメイクを終え
衣装の乱れをチェックする。
安倍、矢口のディオ『tunagi』のデビューシングルを際し
テレビラッシュが始まっていた。
毎日のようにテレビ局間を飛び回る。
せっかく同じ局内にいても
中澤や市井、飯田に会いに行くヒマもなかった。
そんな中で
ある日、歌収録前の移動する廊下で
ゾロゾロと歩く娘。達とすれ違った。
「あ・・・・・・」
先頭は紺野で立ち止まって
ポケーッとこっちを見てる。
「・・・おはようございます」
「おはよー!」
「よっすぃーー!!ますますかっこよくなってるーーー」
「そうすかね?」
472 L.O.D:01/11/23 00:59 ID:xSHSHRpy
石川が聞いてきた。
「娘。の新曲聞きましたか?」
「梨華ちゃん、こないだ音はずしてなかった?」
「・・・・・・言わないでください、もう」
「だいじょぶ、うまかったよ」
そんな雑談。
マネージャーの声が聞こえる。
「じゃ、うちら急いでるから」
「はい、また今度ーーー」
列の一番後ろ、辻、加護。
安倍は笑いかけ、手を振る。
矢口もガッツポーズを作ってみせ、エールを送る。
5歩ほど歩いたところで
辻は振り返った。
もうそこに、矢口はいなかった。
「のの、行くよ」
「うん・・・・・・」
肩をそっと抱き寄せたのは加護
長い髪の毛が鼻をくすぐる。
「びゃくっしょい」
「きたなっ!!」
473L.O.D:01/11/23 01:03 ID:xSHSHRpy
・・・・・・なんとか綺麗に落とせた。
というわけで、明日から三日ほど更新できないのですが
帰ってきたら、鬼のような量の更新が出来ると思います。

次更新:後藤苦悩
474あみ(略:01/11/23 01:10 ID:m2OrxBcV
お疲れ様です。 良い週末をお過ごしくださいまし。
475194 ◆BONOl.Ok :01/11/23 01:15 ID:kah/p2So
のの・・・・

神の次は鬼が降臨か・・・・
楽しみにしてます!(←こればっかだな。俺)
476て(略:01/11/23 22:01 ID:0ZpCfFNJ
良い週末を…
477保全って:01/11/24 09:16 ID:m75D7DIf
丸一日くらいならほっといても大丈夫なのかなあ。
底のほうには「2・3日モノ」が沈んでたりするけど・・・
478ねぇ、名乗って:01/11/24 13:18 ID:EogytQ4t
sageてても書き込んでさえいれば倉庫落ちってしないものなのかな?
いざとなったら上げたほうが安全かもね。
ともかく続きを楽しみにマタ〜リと待ってま〜す。
479L.O.D:01/11/24 14:25 ID:j68xuEjV
sageでも書き込みがあればOK
480194 ◆BONOl.Ok :01/11/25 00:59 ID:d6gEuqym
保全sage
481て(略:01/11/25 19:15 ID:wMzt8c0t
保全sage
482L.O.D:01/11/25 19:20 ID:hOr1whf+
帰宅ー。
今から2日分の更新するでーー。
っていっても、ノートに書いてるんで
打ち直しながら行くっす。
483L.O.D:01/11/25 19:53 ID:hOr1whf+
レコーディングスタジオ。
後藤はせわしなく動くスタッフを見ている。
つんくの元に他のスタッフがプレスされたばかりの
CDを持ってきた。
「あの!」
思わず後藤は声を出す。
歌を欲していた。
誰のでもよかった。
1秒でも1曲でも多くの歌を
聞いていたかった。
「誰の・・・・・ですか?」
「これか?」
つんくが振り返る
ケースに貼られたシール
そこにはっきりと書かれたクレジット
Sayaka Ihii。
エンジニアのCDプレーヤーを借り
再生ボタンをクリックする。
流れてきたのは、刻まれるアコースティックギターのストローク。
おそらくは市井本人が弾いてる。
自分の言葉で、自分の声で
自分の歌を唄っていた。
「ずるい・・・・・・」
か細い声でそっと吐き出された言葉。
全員の耳に届いてるかも謎だが
それは部屋の空気を凍り付かせた。
「私も唄いたいです!!」
484L.O.D:01/11/25 19:54 ID:hOr1whf+
十数分後
スタジオの空き部屋で
つんくは後藤と向かい合った。
歌が好きで
人の目を集める素質は十二分にあった。
アイドルとしての成功は目に見えていて
事実、モーニング娘。に加入した当初から
新しい顔として活躍し
ソロになっても十分なセールスをたたき出していた。
一見、クールビューティーだが
実際は家族思いの優しい子。
普通の女の子なのだ。
最初に口を開いたのは、後藤。
「ずっと仕事って割り切ってました。
 売れればいいんだって。
 だけど、少しずつ物足りなくなって
 みんながやめていって
 唄うって事を考えた時
 そういう事じゃないんだって思ったんです。
 音程がいいとか声がいいとかじゃなくて
 歌を愛してなきゃダメなんだって
 気付いたんです、最近・・・・・・」
「すまんな、後藤。大人のゴタゴタに巻き込んでもうて」
何も言わず、首を振る。
きっと、つんくなら分かってくれると思ったから
「和田さんに電話で相談したやろ?」
「はい」
「俺のところにも連絡が来てて
 最近の後藤の様子、
 見てたんやけどな。」
「・・・・・・」
「すまんっ!後藤だけは
 俺でも、和田さんでも
 どうしようもできないねん!」
うつむいたつんくの顔からは
何も読み取れないくらい痛々しく
歪んでいた。
485L.O.D:01/11/25 19:59 ID:hOr1whf+
その日の遅く
ひどく浮かない顔で後藤は帰宅した。
もう店は終っていたが
灯はついていた。
「ただい・・・・・・!?」
「遅いわよ、後藤。」
サングラスの奥から覗く目
特徴的な釣り目
その人は、保田圭。
「圭ちゃん!」
「おかえり」
「いつ戻ってきたのー!?」
「今日」
「言ってくれればよかったのに!
 驚かせるなんてひどいなぁーーー
 で、なんで帰ってきたの?」
矢継ぎ早に質問し、しゃべる後藤を見る
その顔はあまりに穏やかで
後藤は反対に言葉を失う。
「つんくさんからね、電話が来たのよ。
 後藤がしょぼくれてるから
 帰ってきてくれないかーってね。
 あんた、明日オフでしょ?
 今晩は付き合ってもらうわよ」
ニューヨークでさらに酒の味を覚えたのか
粋にクイッと日本酒を傾けながら
震える肩を抱き寄せた。
「話なら私が聞くからさ」
心に染みる言葉。
その瞬間、胸にスーッと入り込んで
楽な気持ちにしてくれるそんな一言。
486L.O.D:01/11/25 20:09 ID:hOr1whf+
市井のペンが止まる。
(圭ちゃん、うまくやってるかなぁ)
東京から遠く離れた場所で
曲作りのために何名かのメンバーで
合宿をしていた。
さっき電話があって
後藤の現状を話され怒られた。
「なにやってんのーってか・・・・・・」
自分に変わるきっかけをくれたのは
後藤だった。
歌という物に向かわせてくれたのは
後藤だった。
それだけ市井の中で
後藤真希という存在は
大きい物だった。
その後藤が今、
あの時の自分と同じように悩んでる。
未来の自分を。
そして、自分が唄う歌を。

  カタッ

コーヒーをテーブルに置く音
ハッとして見ると、福田がいた。
「キスしたくなったよ、今の横顔」
「明日香に限って、そんなァ〜」
「でも、それぐらいかっこよかったよ」
「マジで!?どーしよ、惚れられたら」
市井の目の前に広げられたノート。
パソコンを持ち歩いているが
詩はちゃんと手書きする事にしていた。
「進んだ?」
「いんやぁー、サビのとこ浮かばねーや」
「パーティーソングっぽくしたいよね」
「みんなで唄う感じのね」
2人が口づさんだのは、『Happu Night』

未完成の歌詞にはもうタイトルが付けられていた。

『We are・・・・・・』
487L.O.D:01/11/25 21:00 ID:hOr1whf+
外では蝉が鳴いていた。
今年の夏は少し暑かった。
娘。の新曲はそんな夏の海にぴったりのハッピーチューンで
今年も話題はいただいたようなもんで
紅白もレコ大も目ではない。
そんな折、マネージャーが突然、全員を収集した。
座るよう指示され、銘々、椅子などに腰掛ける。
「・・・・モーニング娘。を解散する」
重々しい空気の中での発表。
誰もが耳を疑った。
「12月31日に東京ドームを押さえた。
 そこでラストコンサートを行う。」
「なんで・・・・ですか?」
吉澤は不安そうな顔を隠しながら聞く。
「別に、なんの問題も・・・・・・」
石川は立ち上がり、今にも泣き出しそうな目を向ける。
辻と加護はうつむいたまま、何も発しない。
「解散する理由は!?」
「まだやりたいです!」
弱々しく追随するようにうなづく紺野。
高橋が泣いてる小川や新垣を慰める。
「もう・・・・決まってる事だから」
扉は締められた。
理不尽で一方的な要求。
8人の間に言葉はない。
モーニング娘。が終わる。
1秒前まで考えもしなかった未来が訪れる。
加護がその沈黙にはじき出されるように
楽屋を飛び出し、辻はそれを追った。
石川も続こうとするが
手を掴まれ、行けなかった。
「よっすぃ・・・・・・」
吉澤の唇にうっすらとにじむ血。
吐き出したくても吐けなかった言葉が
溢れ出す。
「あの2人なら大丈夫だから」
同期だから思いやれる事。
488L.O.D:01/11/25 21:01 ID:hOr1whf+
「あいぼん・・・・・・」
辻がつぶやく。
ダンッとトイレの壁に
叩き付けられた拳。
「ウチらは知ってたのになぁ・・・・・・」
「責めちゃダメ」
「なんで解散せなあかんねん」
「決められてるから・・・・・・」
「くやしいわ、うちっ!」
加護をギュッと抱き締める辻の腕。
いつも一緒にいたから。
先輩がいなくなった今
2人が先頭に立って守ってるから
なお辛い事実。
そして、2人は先だってそれを聞かされていた。
甘かった。
頑張ればどうにかなる事じゃなかった。
一体、事務所が何を欲してるか分からなかった。
お金ならまだまだ働かせればいい。
オリコン1位も取れるし悪くはない。
何が気にくわないのだ。
頑張ったのに・・・・・・娘。はなくなる。
489L.O.D:01/11/25 21:02 ID:hOr1whf+
「あんね、こないだ矢口さんから電話が来たんだ」
「矢口さんから?」
「焼肉行く約束したんだけど、
 あいぼん、行く?」
「・・・・・・ん」
辻は人知れず感じていた。
焼肉の場できっと矢口がなにかを話す事
それがなにかはまだ分からないが
きっと今の自分達にとって
なんらかのアドバイスになるような気がして
辻はつぶやいた。
「だから・・・元気出そ」
「そやな」
「うちらは、笑顔が一番だよ」
「うん、いっちょがんばろか」
涙を拭いて、ニッコリと笑ってみる。
モーニング娘。の昔からの風習。
収録の前やライブ前に笑顔の確認。
「って、のの、なんやいっちょまえな事言うてるな」
「ののだって大人になったんだもんねー」
そう、少し大人になったから
2人で1人じゃなくて
2人で4人分の力。
辻希美と加護亜依は止まらない。
490L.O.D:01/11/25 22:02 ID:hOr1whf+
吉澤の手の中のマグカップに入った紅茶は
とうに冷めていた。
どちらからとも言わず
石川の家に来ていた。
「入れ直す?」
「・・・・・いい」
あの後戻ってきた辻、加護のおかげで全てを知った。
まるでこれまでの人生を
神様に操られてる気分だ。
気持ちが悪い。
「ねぇ」
「なに?」
「シャワー借りていい?」
「いいよ・・・・・・」
タオルを渡され、服を脱ぎ
シャワーのコックをひねると
少し冷たいお湯が出てきた。
吉澤ひとみ、17歳。
モーニング娘。に加入した時より
また身長が伸びた。
若い肌の上を
水滴がスーッと流れていく。
これから何をすればいいのか
まったく思い付かなかった。
見せつけられた芸能界の汚濁。
嫌になった。
けど・・・・
シャワーから上がって頭を拭いてると
リビングから石川の泣き声が聞こえた。
「ひっぐ・・・うぅ・・・・・・」
「梨華ちゃんっ!!」
「よっすぃぃ・・・・・うあっ・・・ひぅ!」
491L.O.D:01/11/25 22:04 ID:hOr1whf+
止まらない不安
見えない未来
見せられた現実。
そのどれもが涙になって
流れていた。
「誰か・・・・・・助けて」
そんな声をいつの間にか出していた。
遠くに聞こえる携帯の音。
慌てて、探す。
今はその音が救世主の声に聞こえる。
「はい・・・・・・」
『あー、吉澤もいたの?
 ちょうどよかった』
「や、保田さん!?」
石川も顔をあげる。
『ここのシステムさぁ、家の人が開けないと
 入れないのよね。開けてくんない?』
「いるんですか!?」
願えば、叶う事もあるのかと
体から力が抜けた。
「で、こんなタイミングよく来たのもわけがあんねん。」
やってきたのは、保田だけではなく、中澤もいて
2人は持ってきたワインとチーズをつまみながら
まずは石川と吉澤を落ち着かせた。
「え?」
492L.O.D:01/11/25 22:04 ID:hOr1whf+
「あんた達、まだ唄いたい?」
あまりにも単刀直入な質問
「圭坊、いきなりやな」
「こういう事は早め早めよ」
しかし、それでいて
その答えは間違えれば
これまでの自分を否定しそうで怖かった。
この2人がいなくなり
安倍、矢口、飯田
それに後藤までいなくなって
がんばってきたのはなんだったのか。
なんのために唄ってきたのか。
石川と吉澤は目の前の2人の目を見た。
優しく、自信に溢れる目
「歌えるんですか?」
この人達は自分達がまだ知らない何かを見ている。
493L.O.D:01/11/25 22:05 ID:hOr1whf+
「全部、娘。が出来た時から決まっていた。」
「そこから最初に抜け出したのが
 明日香やねんな」
「決められたレールから抜け出して
 もっと素直な気持ちで
 進むための卒業。」
「わっかるかなぁー?」
なにがなんだか分からない。
保田と中澤は微笑む。
「2004年始まった途端に
 レコーディングが始まるねん」
「スーパーボーカルグループ
 モーニング娘。のね」
夢のような話で欠片一つでも
その時の2人には理解できなかったが
だけど、一つ分かった事がある。

『まだ唄いたい・・・・・・』
494L.O.D:01/11/25 22:12 ID:hOr1whf+
(休憩中)
松浦の新曲、つんく自身が唄った方が絶対うまいと思う(w
フェイクの作りまでつんくだもん、これ・・・・・・

ってなわけで、市井休憩。
次更新:2004
495L.O.D:01/11/25 23:00 ID:0Ck4VneU
『2004』

春。
とあるスタジオ。
正午を少し過ぎた頃
つんくは空腹を覚え
何を食べようかと店屋物のチラシを
手にした時
扉が開いた。
「おはようございまーす」
飯田圭織と、吉澤ひとみ。
今は同じ事務所で活躍してるモデルさんである。
間もなくやってきたのは
石川梨華。
ラジオパーソナリティをしながら
泣きの演技で有名な女優になった。
しばしの雑談。
3時を過ぎた頃、姿を現したのは
安倍なつみと矢口真里。
その手には一枚のMOディスク。
「はい、お届けものでーす」
「おぅ、サンキュ」
496L.O.D:01/11/25 23:01 ID:0Ck4VneU
「レコーディングだったんですか?」
「そだよー」
「ノド、大丈夫っすか?」
吉澤の質問にニヤニヤしながら
声を合わせて答える。
「プロだもん」
安倍と矢口のデュオグループ『TUNAGI』
「TUNAGIは3人ちゃうんかい」
そこへ中澤裕子が突然出てきた。
関西の仕事を終え、飛んできたのだ。
今ではすっかり司会やら演技やら歌やらで
マルチな仕事ぶりを見せている。
「矢口ーーーーー!」
「裕ちゃん!!」
熱い抱擁、そして、キス。
「中澤さーん、石川にもしてくださぁ〜い」
「なんか、チャーミーちゅーより
 ビューティーって感じなったな」
「そうですかァ?じゃぁ、今度からは石川、
 セクシー石川ってことで・・・・・・」
「セクシーはおいらの称号だぁっ!」
まったくうるさい人達だ。
かくして、ひとまずレコーディングは始まった。
すでにバックトラックが完成された楽曲の中で
このメンバーで入れれる曲を選んで
順に唄い込んでいく。
基本は初期の娘。と同じ
安倍メインで多彩なハモリを見せるスタイル。
矢口、飯田、中澤は上のハモリが多いため
まだまだ曲は未完成である。
安倍は自然と笑っていた。
「なに、ニヤけてんのさぁ」
飯田に見られ、さらに笑う。
「なーんかね、嬉しくてさぁ」
「まぁね」
時間が経つごとに部屋を満たす
あの頃の空気。
そして、ブースの中で見せる
これまでに培ったものの全て。
アイドルでは収まりきらなかった
いや、ボーカリストになった
彼女達の戦いが始まったのである。
497L.O.D:01/11/25 23:43 ID:0Ck4VneU
「はいはーい、みんながんばってるかぁーい!」
「お疲れ様でーす」
「ふぅ・・・・・・」
時計の針が午後5時を回った頃
疲れを通りこして
ハイテンションになった市井紗耶香と
至って冷静な福田明日香
市井に全てを吸い取られたっぽい
保田圭が到着した。
「これ、残りの曲のトラックっす」
市井がつんくに手渡す。
今回の楽曲のほとんどは
フリーで活動してるこの3人が
つんくとのメールのやり取りを繰り返しながら
曲、詞、トラックを作ってきた。
とりあえずのメロディと軽いリズム他を入れた
MDを他のメンバーに送りつけ
覚えてこいという話だったりする。
「これで来てないのは、彩っぺと
 辻、加護に5期メンと・・・・・・」
「後藤だね・・・・・・」
498L.O.D:01/11/25 23:44 ID:0Ck4VneU
数日前
ラジオでレギュラーの収録のため
廊下を歩いていた市井が
後藤とすれ違った。
「おーっす」
「いちーちゃぁん」
「元気か?」
「うん・・・・・・」
「あとで、メールっすから」
「分かったー」
「・・・返事、絶対ちょうだい」
いつになく真剣な市井に
少し押される後藤。
強くうなづく。
「うん」
499L.O.D:01/11/25 23:45 ID:0Ck4VneU
ディレクターとの打ち合わせが終わり
時間が空いたので
携帯を取り出し
メールする。
『圭ちゃんから日程聞いてるよな?』
(うん・・・・・・)
『仕事?』
(たぶん)
『そかぁ』
(行きたいよぅ)
モーニング娘。の解散により
つんくは完全に後藤からも引き離される形となり
マネージメントに影響を与える事もなくなった。
(みんなに会いたかったな)
「市井さん、本番一分前です」
「はーい」
『がんば』
テーブルの上に置いた携帯電話。
今はこれだけが
みんなを繋いでいる。

その日の真夜中
市井は机に向かっていた。
MDが一枚転がっている。
出来たばかり、仮歌のままの13曲。
今の自分達だから唄える歌を・・・・・・
その隣に広げた便せんの最初の文字は

『Dear・・・・・・』
500レク:01/11/25 23:46 ID:pikPRsNK
更新ふぁいと♪(キショイ
501L.O.D:01/11/25 23:56 ID:0Ck4VneU
・・・・・・500取られた
502L.O.D:01/11/26 00:00 ID:83SNXqGx
「明日香見て見て」
仕事を終えやってきた加護と辻の髪を
ものめずらしげにいじる福田を保田が呼ぶ。
ノートパソコンには、2ちゃんねる。

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2004年、夏 娘。復活を予想するスレ

1 :名無し娘。 :04/3/11 03:09 ID:I0w8yuYk
   しないよ
2 :娘。LOVE :04/3/11 08:06 ID:rTG9hjiL
   するよ
3 :名無し娘。 :04/3/11 11:59 ID:4dmnVFew
   するかもしれないけど、しないよ
4 :王大人 :04/3/11 14:01 ID:AScg1dht
   死亡確認!
503L.O.D:01/11/26 00:08 ID:83SNXqGx
「するよ」
顔を見合わせ、笑う。
「行くぞ、福田」
「うぃーっすぅ」
つんくの声に答える福田はすごく明るかった。
卒業してから初めての本格的な
レコーディングになるだろう。
変わらない仕種。
「曲はどれでいく?」
「rainy nightで」
保田がニューヨークから持ち帰った
本格的なスウィングジャズの音
身体全体をリズムに乗せ
歌い上げる。
圧倒的歌唱力。
絶対的存在感。
福田明日香がそこにいた。
(やっぱ明日香は明日香だね)
そんな事を思いながら
保田はパソコンを閉じた。
その隣に安倍が座る。
「明日香の歌につられてきたな」
「バレた?」
たぶん歌手として
福田を一番愛してるのは
安倍なのだろう。
もうすでに涙が溢れそうだ。
「だってさ、また福ちゃんと
 モーニングとして唄えるなんて
 思ってなかったんだもん」
「明日香は卒業した時から
 こんなすごい事隠してたってんだから
 すごいよねぇ」
2人は目をブースの中に戻す
つんくと細かいチェックを繰り返してた。
福田が過ごした5年は
他のメンバーの足跡と共に
刻まれていた。
504L.O.D:01/11/26 00:16 ID:83SNXqGx
次にブースに入ったのは、辻
2003年。の娘。を引っ張ったという自信は
辻の中で大切なファクターになっていた。
卒業した先輩メンバーが
色々な場所で活躍してるのを
ずっと1年間見ていた。
今度は自分の番。
ファンに何を見せるのか
気張らないで
自然体の辻希美でいいんだ。
曲は福田がドラムを叩きながら作った
ハードロック調のナンバー。
メインボーカルは4期メンバーの4人。
骨太な感じは吉澤にまかせ
辻はキッチュでクールなロリータパンクっぽい
ボーカルでつっ走ってみる。
思い切ってシャウト。
割り当てられたフレーズを
ただ唄うのではなく
自分なりに消化して
表現する事・・・・・・
505ねぇ、名乗って:01/11/26 00:25 ID:TmM6Rr9H
辻がかっこよく見える。
506L.O.D:01/11/26 00:31 ID:83SNXqGx
その頃、スタジオのロビーでは
中澤がコ−ヒーを飲んでいた
ひさしぶりにみんな集まると
ものすごくうるさいが
逆に落ち着く気もする。
あんなに長い時間一緒にいたのだから
当たり前かも知れない。
「フゥ・・・・・・」
小さくため息。
「お疲れですかぁ?」
「なんや、おったんかいな」
加護の愛くるしい笑顔。
「大きなったな」
「そうですか?」
「背ちゃうよー」
「え?」
「歌手として大きなった。
 さっき唄ってるの見て
 思ったんや」
ポンと頭に置いた手。
「えへへ」
「みんな、娘。から離れて
 1人になって、やりたい事やって
 みんなが自分の意見を持つようになって
 いい歌唄って
 こんなんがやりたかったんやろな、ずっと」
507L.O.D:01/11/26 00:31 ID:83SNXqGx
遠くを見る目
ずっと娘。を見てきた目
離れても、ブラウン管の中
メールの一文から
ずっと娘。を見守ってくれた人
中澤の言葉はあたたかい。
そこに、5期メンバーが
和田に連れられてやってきた。
「おはようございまーす」
「おはよ」
今は和田の事務所に移り
4人グループとして活動する4人は
安定した歌唱力を持った
実力派として売れていた。
「コーラスしっかり頼んだで」
中澤に言われて、より身が締る。
「はいっ」
4人を見送り、残ってたコーヒーを飲み干した。
「ったく、ほんまレコーディング長いな」
「でも、、楽しいですよ〜」
「そやなぁ」
廊下の向こうから安倍と矢口の
自分を探す声が聞こえてきた。
中澤はニカッと笑い
加護にこう言った。
「あの2人来ても、見てへんって言うてや」
「えっ?」
逃げていってしまった。
すぐに安倍と矢口がやってくる。
「加護、裕ちゃん知らない?」
「知らないですよぉ」
もしかしたら、今の状況を一番楽しんでるのは
中澤なのかもしれない。
508L.O.D:01/11/26 00:41 ID:83SNXqGx
午後10時を軽く過ぎた辺りだったろうか
「差し入れでーす」
などと言いながら
フラッと入ってきたのは
石黒彩。
「彩っぺだよぅーーー」
その場にいたみんなに囲まれる。
「変わんないねぇ」
安倍がそう言うと
「なっちがまだイモなだけ」
福田がイジめ
「なっつぁんだって色々あったもんなー」
中澤がフォローし
「あんま変わらないけどね」
飯田が落とす。
つんくはその様子を見ながら
ホッと一息つく。
最初はこの5人の歌が大好きなただの素人の集まりで
トップアイドルになり
そして、ボーカリストとして
成長していった。
全てが決められていた
モーニング娘。という
特殊な世界の中で
1人1人がちゃんと
プロとして育っていた。
「長かったな」
和田薫が横に立つ。
福田と一緒になり
この企画を裏で進めた張本人。
「お世話なりっぱなしすね」
「いいんだよ、俺はいい歌が聞ければ。
 あとは、ファンの人にちゃんと
 あいつらの歌が届けれればね」
そう、最初はつんくの
フッとした思いつきから
生まれてきたグループ。

ボーカリストグループ
モーニング娘。の
新たな1ページが始まる。
509L.O.D:01/11/26 00:44 ID:83SNXqGx
っだぁーーーーーーーーー!!(叫
レコーディング編終了。
ちなみに、2004年の辻はそぅとぅかっこいい感じで。

次更新:LIVE

では、おやすみなさい。
510トロピカ〜ル名無して〜る:01/11/26 01:15 ID:nC6lOY1L
>>L.O.D
おやすみ〜♪
盛り上がってきたねぇ
ピンク頭でかっけー辻は正直イメージできんけども(w
最後まで更新がんばってナ〜
511194 ◆BONOl.Ok :01/11/26 01:16 ID:8VbjPS9B
一気の更新、お疲れでやんす>L.O.D

何かこの物語、俺の中で徐々に事実になっていく・・・(w
512レク:01/11/26 03:22 ID:aGwwypCk
最近福田復活の噂をよく耳にするっすよ。
もしかして発信源はここ?(www
ついでに500GET!!!2chで初のキリバンっす(w
513あみ(略:01/11/26 14:38 ID:oGlV8q26
おかえりなさいL.O.Dさん
仕事ほったらかして、読んでました・・・。
514:01/11/27 01:27 ID:AWdj7v6x
また来ま〜す
515L.O.D:01/11/27 01:31 ID:w807truS
正直、シーマンやってて書いてない。

今日は休憩です。
516このセリフしか知らない:01/11/27 07:56 ID:85mg5hPL
>>515
普 通 だ ね
517L.O.D:01/11/28 00:14 ID:ZmF8AC9g
夏休みの季節
普通の子なら今頃
ウダウダ寝てるような暑い日
一部屋じゃ足らなくて
二部屋ブチ抜きの大部屋が楽屋。
これまでのアイドルグループとは一線を画す新しいグループ。
20世紀の最後を走り
21世紀に名を馳せる
モーニング娘。
とはいえ、やっぱりこの人達も
案外普通の女の子で
楽屋でもそれは全開である。
「バナナ食うなぁ!!」
中澤が怒鳴る。
「え・・・・バナナは・・・・・・吸収が・・・・・・」
紺野がオドオドしながら、説明しようとすると
「あしゃこ、逃げて!!」
「中澤さんはバナナが大っ嫌いなのー!」
吉澤と石川が笑いながら、紺野を廊下へ連れ去った。
「ほんま死ぬかと思ったわ」
「災難だよねー」
「バナナ一つであんなに叱られるなんて
 誰も思わないべさ」
飯田と安倍が冷やかすように中澤を見る。
「裕ちゃん、怒っちゃやだぁー」
「そうだよ、シワ取れなくなるぞぉー」
矢口が頬にキスする横で
石黒は眉間を一生懸命指で伸ばしてあげてる。
「「チュ!」」
「おばちゃぁーん」
「怖いですよ、保田さん」
「アハハハハハハ!!!」
「里沙ちゃん、笑い過ぎだよ」
保田が辻加護と遊んでるのを見て
小川がつっこみ、新垣爆笑。
高橋が苦笑しながら止めている。
518L.O.D:01/11/28 00:16 ID:ZmF8AC9g
そんな中・・・・・・
市井は1人、椅子に座ってギターを抱え
ただ1人来ていない彼女の事を想っていた。
「さーやか。」
福田が声をかける。
「あぁ」
「だいじょぶ、ごっちんにもきっと届くさ、君の歌は」
やわらかな笑顔が今は暖かい。
市井はそっと手を伸ばす。
「なーんだよぅ、甘えたいのかぁ」
「へへー」
「紗耶香ちゃぁーん」
「なーんてね」
気がまぎれる。
福田の胸に耳を当てる。
高鳴る胸の鼓動。
きっとそう
みんな同じ
胸が、どんどん高鳴ってる。
それは、メンバーだけじゃない。
スタッフも
外で待ってるファンもそう
胸が、早く打ち始めてる。
ドキドキしてる。
半年前の東京ドームで一つの時代の終わりを告げた。
そして、今日は新たな世界への旅立ち。
それは、今までの物とはまったく異なる世界。
519L.O.D:01/11/28 00:17 ID:ZmF8AC9g
東京ドームの周辺ではあの頃と同じように
フリの確認をする者もチラホラいた。
誰も知らない世界が待っている。
『よろしくお願いしまーす』
安倍はグルリと見回す。
降り注ぐライト。
誰とも言わず、つぶやいた。
「がんばろうね」
ステージの作りはホ−ム側のバックにはお客を入れず
2階建てのメインステージとバンド用のピッド。
背面には巨大エキシビジョン。
そして、そこから長い長い花道が3本伸び
センター席のド真中に作られた特設ステージ。
左右から伸びた花道は徐々に上に上がっており
アリーナ席からでもよく見えるようになっている。
福田や石黒がライブスタッフと綿密な会議を行って作られた。
自分達のライブのためのステージ。
あと、数時間すれば、ここ一杯にお客が入り
声が聞こえてくる。
沸き立つ心を押さえきれなくなってしまいそうだった。
520L.O.D:01/11/28 00:31 ID:ZmF8AC9g
少し冷房が効き過ぎたタクシーに揺られ
次の仕事場へ。
毎日、同じような事を答え
同じ歌を唄い
同じ笑顔を浮かべてる。
静かで美しい存在。
まるで、モナリザのような
不思議な対象。
それが、ソロ、後藤真希の姿。
「疲れたか?」
マネージャーの声。
後藤は窓の外を見て見向きもしない。
「・・・・・・」
耳にかけたヘッドフォン。
コードは膝の上のバッグにのびる。
MDウォークマン。
聞こえてくるのは彼女達の声。
自分がいないモーニング娘。の声。
新曲から、過去の曲を新たに構成し直し
録り直した物まで13曲。
御丁寧に楽譜割り付きで郵送されてきた。

テレビ局の中
楽屋前のクローク。
音の洪水の中で
誰かが自分を呼ぶ声がした。
振り向いても
そこには誰もいない。
「後藤?」
3歩先まで進んだマネージャーが振り返っていた。
「なんでもない」
不機嫌な声でヘッドフォンをつける。
確かに聞こえたあの声は、誰の声?
521L.O.D:01/11/28 00:45 ID:ZmF8AC9g
7時半。
唸るような音が聞こえてくるバックステージ。
重ね合わせる手。組まれた円陣。
「いよいよライブやな。」
「うん。」
「また会ったのもなんかの運命だよ。」
「待ってるお客さんがいる。」
「いい歌を歌おう。」
「よし。」
「がんばりまー、」
「「っしょーい!」」

センターに置かれた巨大なエキシビジョンに
フラッシュしていく今までの歴史と共に、
大きくなる歓声。
全ての光が消え、一点に収束する。
バックステージを歩いてくメンバー一人一人の顔、
そして、始まったカウントダウン。

「なに、馬鹿な事言ってんだ。」
怒鳴りつけられ、後藤の手に力が入る。
「仕事に穴を空ける事がどういう事か
 分かってるだろ?弟でじゅうぶ、、、」
マネージャーは一瞬で口をつぐむ。
「あんたたちがつぶしただけじゃん。
 あいつは歌もダンスもギターも大好きなのに。
 私はあんたたちの言いなりじゃない!」
投げつけたバッグはもろに顔面にブチ当たり、
体が後方に倒れていく。
携帯を握り締め、飛び出す後藤。
玄関まで追い付かれることなくたどり着いた。
肩で大きく息をし、後ろを見ると、あいつは寸前まで来てる。
タクシーに乗り込み、叫んだ。
「東京ドーム!」
522L.O.D:01/11/28 00:46 ID:ZmF8AC9g

衣装変えと、ユニットの関係でいち早く戻ってきた吉澤は
自分の携帯電話が机の上で震えてるのを見つける。
「ライヴ中だっつー・・・・・・ごっちん!?」
液晶に映る後藤真希の文字。
通話ボタンを押す手に力が入る。
「ごっちん?」
『今からぜーったい行くからね!』
「へ?」
『絶対にみんなと同じステージに立ってみせる』
「ごっちん、仕事でしょ?」
『あぁ、逃げた』
「はァ?」
『とにかく、和田さんにも電話するから、よろしくね!!』
「よろしくって」
電話は切れた。
メイクさん達もみんな、吉澤を見てる。
遠くからみんなのドヤドヤと帰ってくる音。
矢口が真っ先につったってる吉澤を見つける。
「どしたの、よっすぃーー?」
「ごっちんが・・・・来るそうです」
ポツリとつぶやいた言葉。
全員がキョトンとした。
523L.O.D:01/11/28 00:57 ID:ZmF8AC9g
つーわけで、更新終了。
524トロピカ〜ル名無して〜る:01/11/28 01:03 ID:fe6+Q/eE
来た!ごとー!!

ちなみに>>521は「がんばっていきまーっしょい」だよね
余計なお世話かも知れんが
525L.O.D:01/11/28 01:08 ID:ZmF8AC9g
>>524
紙に書いて、ミスに気付いて
打ち直す時に直したはずなのに
なぜか直ってなかった・・・・・
鬱だ。氏(略
526レク:01/11/28 01:59 ID:9wHUn/06
ゴトーカッケ―(ジブン勉強ハドウシタヨ?
527あみ(略:01/11/28 09:12 ID:KDvqHHSQ
仕事する前に、L.O.Dさんの小説読む。
これ最強!
528194 ◆BONOl.Ok :01/11/28 10:19 ID:QWyASx/T
仕事中に師匠の小説を読む。これ最強。
まあ、ど素人は普通に仕事でもしてなさいってこった。
529て(略:01/11/28 17:37 ID:MHdDlcEg
高校や塾行く前にL.O.Dさんの小説読む。
これ最強!
530L.O.D:01/11/28 22:02 ID:IQF5G95c
バックステージで深呼吸一つ。
観客席を走る赤い光線。
第2部が始まる。
暗転のステージに飛び出していく
『OH NO HOLD ON ME
愛がない男ね  』
まったくのオリジナルメンバー。
安倍と福田のツインボーカルに
石黒、飯田、中澤のハモリ
矢口、保田、市井のバックコーラス。
二番に入れば、福田、石黒、市井が抜け
矢口、保田が前に出てくるのと同時に
後藤と4期メンバーが出てくる。
飯田の『ねぇ、笑って』もバッチリ決まり
照明はスーッと消えていく。
もう一度、ついた瞬間
サウンドが一変する。
今回のライブに先駆け発売されたアルバム
『MM。』に収録されたリアレンジバージョン。
バンド特有の激しさと艶かしさに気を取られ
さらにメンバーが変わった事に気付かない。
保田、飯田が抜け、5期メンバーが登場。
常に真中でお客に笑顔を振りまく安倍。
その後ろでずっと支えるようにハモる矢口。
福田、保田の代わりは吉澤。
プッチモニに入る事になって、
ちょこっとラブを練習してた時と同じように
一生懸命練習を繰り返してた。
ラップで中央に寄った時
石川は他の3人に負けぬように
そのほっそりとした腰を意識させる。
時がこの曲を進化させていた。
最後、ジャァーンッツと打鳴らされたシンバルを合図に
安倍、矢口もステージを去る。
4期メン、5期メンだけの新娘。のシングル曲がかかる中
矢口は通路を走って、安倍に追い付く。
「抱いて2回連続なんて初めてだね」
「だねー」
「代表曲だもんね」
「初めてのオリコン一位だかんね」
「なんか、、、嬉しいね」
手を握る。
ほてった手。
531L.O.D:01/11/28 22:36 ID:IQF5G95c

「げ・・・・・・財布ない」
後藤真希がつぶやく。
携帯電話だけ握りしめて来たから
財布を忘れた。
誰かが助手席を叩く。
「なんぼですか?」
「和田さーん!」
開けられた窓から和田薫が言う。
「早く行け。衣装は用意できてる」
「衣装?」
「たぶんこないだの新曲に合わせて
 作ってるから、着れない事はないから。
 ほら、早く!!」
せかされ、後藤はタクシーを飛び出した。
東京ドームの中に入ると
スタッフが先導してくれる。
(早く・・・・早く・・・・・・!!)
「ここです!」
楽屋前に貼られたモーニング娘。の文字。
そっと指で撫で
それから、ノブに手をかける。
ゆっくりと回・・・・・・

  ガンッ!!

思いっきり顔面をドアにぶつけた。
不意に開けた輩がいるから。
「ごとー!!」
痛くてうづくまってたが
その声を聞いて
顔をあげる。
「いちーちゃ・・・・・ごふっ!!」
市井が手に持ってたギターが当たって
後藤真希、ダウン。
「あぁっ、後藤ぅ!」
「へへぇ、来ちゃった」
「話は後だぁ。着替えろ!」
楽屋に押し込む。
532L.O.D:01/11/28 23:05 ID:IQF5G95c
この事がとんでもない事になってたのは
他のメンバーには後々知らされるのだが
和田が気を利かせて作ってた
後藤の衣装はアンコール後のもので
メイクの時間などを考えると
このまま進めていては
間隔が空いてしまう自体に陥るのが分かり
まずは中澤が呼び出され
状況説明される。
とりあえずMCで伸ばすかという話になり・・・・・・
お決まりの1人1人の挨拶。
終わって、進行の中澤に注目が集まる。
「ほんまなんやねん、この人数」
「なにってこれがモーニング娘。だよ!」
矢口の間を置かぬつっこみ。
まったくのアドリブ。
「でも、これだったら1人ぐらい知らないのいても
 バレなそうですよねー」
「昔のののだったら、一発で分かったのになぁ」
「そ、それは禁句」
辻の懸命なフリを加護が痛いネタで切り返すと
石川が慌てるが、2人はなんのその笑ってる。
「で、どうなのよ、福ちゃん?」
「そうだよ、福ちゃん、ひさしぶりのステージだよ」
「ステージねぇ・・・・・・やっぱさぁ、いいねっ!」
おどけて、福田がマイクを客席に向けると
一双の歓声が起きた。
「新、、、、5期メンはどうや?」
「裕ちゃん、まだ間違えてる」
隣に立ってる石黒が小声でポツリというと
客席からも笑い声。
533L.O.D:01/11/28 23:06 ID:IQF5G95c
「しゃーないやぁーん。この子ら来る前にやめたしっ
 で、どうや。このメンバーでやるのは」
「正直、怖かったです」
はっきり言い放つのは新垣。
「怖いかぁ」
「でも、優しかったよね」
「うんうん」
小川が高橋に話し掛けるように言い
高橋もうなづく。
「紺野はぁ?」
「えっと・・・・・あの・・・・・・・・・・・・」
「3、2、1」
「終了ーーーー!」
「えっ・・・・・・・・・・・・」
「お前等、陰険やな」
安倍、矢口が勝手にカウントし叫ぶと
言葉を失い、何が起きたのかと
オロオロする紺野。
「あしゃこは本当、かわいいねぇ」
吉澤が1人納得するようにうなづく。
紺野は照れて、うつむく。
「せんせー、あさ美ちゃんが顔、緑色ですー」
挙手して、加護が叫ぶ。
「緑かよ!」
矢口のつっこみもキレイに決まり
そろそろ中澤がまとめる。
「って、圭ちゃんも紗耶香もなに泣いてんねん」
「いやぁー・・・・・・」
「ねぇ」
「次はあんたら2人のコーナーやん」
「そだね」
534L.O.D:01/11/28 23:07 ID:IQF5G95c
照明が2人のスポットに変わり
他のメンバーは消える。
肩からギターを背負い直し、
メインステージから
センターステージへ移動する。
はっきりと聞こえる『紗耶香!』『保田!!』の声
スタンドマイクの前に
背中合わせに立つ。
やわらかくタッチするストローク。
CDにも収録してない2人の歌声。
曲はプロデューサーつんくがこの世に名を売った名曲 『シングルベッド』
「流行の唄も歌えなくて ダサいはずのこの俺
 おまえと離れ 一年が過ぎ いい男性になったつもりが」
「それでもこの年齢まで俺が 育てた裸の心は
 おシャレをしても 車替えても 結局変化もないまま」
甘いアルトの声が混ざり合う。
「早く忘れるはずの ありふれた別れを
 あの時のメロディーが 思い出させる」
「シングルベッドで夢とお前抱いてた頃
 くだらない事だって 二人で笑えたね
 今夜の風の香りは あの頃と同じで
 次の恋でもしてりゃ 辛くないのに」
矢口との三つ巴戦に負け、
タンポポに入れなくて
悔しくて泣いた日。
いつか2人でユニットでも
出来たらいいねと
笑えた日。
そんなあの日の延長線上に
今、しっかり立ってる。
溢れ出す涙で
声が震える。
保田の手が肩に置かれる。
市井はギターのストロークをやめない。
みんなに自分達の歌を聞いてもらうために。
535194 ◆BONOl.Ok :01/11/28 23:33 ID:M67/o8ZT
そろそろハンカチ用意の予感・・・
536あみ(略 改め(☆_☆)◇AMi.Btgr:01/11/28 23:50 ID:COqrXxKo
予感的中・・・涙腺が緩んできたよ
537L.O.D:01/11/29 00:24 ID:SH5DdFQe
アンコール前のラスト。
メンバーは皆、ステージ上で『We are…』を唄っている。
後藤は胸の前でギュッと手を組む。
エレキギターの音がスーッと香るように消え
照明が真っ白な全景になる。
ワーーーーーーッというファンの声が
ここまで聞こえてる。
戻ってくるメンバー。
「おかえ、、、、ただいまかなぁ?」
気の効いた言葉をかけようと思ったが
混乱してしまって
わけがわからなくなる。
中澤に抱き締められたり
辻、加護が飛んできたり
石黒に頭を撫でられたり
みんな、後藤に触れていく。
そして、衣装の速替え。
準備が整ってる後藤はそれを見てる。
ボーッとしてると
突然腕を引っ張られた。
市井の隣。
そう、最後の円陣。
気合いを入れて。
「さぁ、ラストやでぇ!」
「おぅ!」
「ごっちんも来たしなぁ!!」
「おぉう!」
「キメよか、一発!!」
「うぅっす!」
『所定の位置に移動しますよ』
スタッフの声。
「うーっしゃ!」
「行こう!」
「「がんばっていきまーーーーっ」」
「「っしょぉーーーーーーーいい」」
538L.O.D:01/11/29 00:24 ID:SH5DdFQe
メインステージ。
センターステージ。
左右花道。
計17本の光。
ポップアップで飛び出して、ポーズ。
『Uhu〜uh』
花道の合流地点で市井と矢口
『ディヤー』
センターステージの真中で飯田
『ディスコッ!!』
メインステージの中央に現れたるは後藤真希。
ドーム全体が後藤コールに見舞われる。
モーニング娘。の転機となった曲
そして、それ以降の娘。にも
メンバーにも影響を与えた
後藤真希の存在を
世に伝えた一曲。
『LOVEマシーン』
アレンジは同じだが
譜割が遥かに異なっていた。
『じゃないっ』を
市井と辻が同時に言ったり
メインが小川と高橋に移ったり
保田、飯田、吉澤、石川の4人がセンターステージの上で
踊りまくったり。
安倍は、福田とすれ違う時に
手を伸ばした。
ちょうど自分が唄わない場所。
「福ちゃん!」
「なっち!」
「楽しい?」
「最高!」
福田がいないモーニング娘。で唄った曲
フリを覚えるのに一苦労してたけど
でも、本当に楽しそう。
ステージの中で一番高い所に立つ。
サビの直前。
おもいっきり叫んだ。
『みんな、愛してるよぉーーー!!』
あんなに気持ちのいい事はなかった。
539L.O.D:01/11/29 00:25 ID:SH5DdFQe
その後、シングルを続けて唄い
本当の最後。
『ラストだよぅ』
『あぁ、なっち泣くな泣くな』
『圭ちゃんの方が酷いよ』
『なによ!』
『で、このラストは本当に
 みんなで一生懸命悩んだんです』
『最後に相応しい曲をね』
『やりたいなーって』
メンバーのしゃべりにかぶるように
聞こえてきた重厚なオーケストラの音色。
そこにフワッと乗ってくる安倍のボーカル
『東京で1人暮らしたら
 母さんの優しさ心にしみた』
後藤が目をつぶりささやく
『東京に1人でいたから
 あいつを好きになれたの』
石黒の情感たっぷりの歌
『失恋しちゃったわ
 泣いてもいいかな』
矢口と保田が見つめあう
『次の休みに少し帰るから』
後藤以前のメンバーのハーモニー
『涙 止まらなくても
 昔のようにしかって My Mother
 涙止まらないかも
 わがままな娘でごめんね Mother』
アレンジがバンドサウンドになっていく。
ロックバラード調の力強くて優しい雰囲気。
540L.O.D:01/11/29 00:26 ID:SH5DdFQe
2番の唄い出しは、石川、新垣
『東京で1人暮らしても
 私は昔の私のまんま』
吉澤と紺野がリズムを取りながら唄う
『お化粧するのおぼえたわ
 あんまり うまくないけど』
辻と加護、小川と高橋の4人がハモる
『楽しい日があった
 あいつがいたから
 恋はステキね 寂しくなかった』
新娘。の8人がユニゾンで唄うサビ
『涙止まらないのは
 安心したせいだよ My Mother
 涙止まらないけど
 また 恋するけれどいいでしょ Mother』
間奏。
スッとセンターに出てくる福田
『流れ星を見たら
 何を祈ろうかな』
その側に寄りそうに集まる安倍と矢口
『Sha la la』
中澤達も合わさる
『Sha la la la la』
新娘。の幅広い混声。
『Sha la la la la la la lah』
完全なるハーモニー。
ただのアイドルグループでは終われない
スーパーボーカルグループになった
モーニング娘。だから出来る事。
1人1人が成長したから聞かせれる歌。
この曲には色々なメンバーの思いが籠ってるから
『涙止まらなくても
 昔のようにしかって My Mother
 涙止まらないかも
 わがままな娘でごめんね Mother』
安倍の屈辱だったり
後藤が娘。で一番好きな曲だったり
市井の復活アルバムに入ってたり
みんながこの曲に向かい合う。
そして、一つの方向に収束する。
この曲を唄いあげる事。
それが、モーニング娘。の始まりであり
終わりでもあった。
541L.O.D:01/11/29 00:34 ID:SH5DdFQe
「やーすださん」
「ん・・・・・・」
加護の声で目を覚ます。
いつの間にか眠ってたらしい。
「遊びましょー」
「えぇ・・・・・・」
「パソコン使わせてくださーい」
目を加護が指差すパソコンに向ける。
95ページにも渡る小説。
「なになに、モーニング娘。の始まりであり終わりでもあった・・・・・・」
「読むんじゃなぁーい」
「なに、これ?」
「ちょっとね」
じゃれあう2人を背後から見つめる影
(あの小説、ダーヤスが書いてたんだ)
「お豆ちゃぁーん、飲み物はなにがいいべ?」
(てめぇは豚だろうが)
「あ、安倍さん、自販機行くんですか?
 私も行きますーーーー」
立ち上がって、目を保田のパソコンに戻す。
スピーカーから聞こえる声。
市井紗耶香の声・・・・・・・・・・・・

fin
542L.O.D:01/11/29 00:40 ID:SH5DdFQe
『We are・・・・・・』終了記念カキコ

終わった、終わった。
予定期日にピッタリ思い描いてた通りにラスト出来たーーー。
FOLK SONGSも童謡も買いました。
ののが意外にも歌声が安定してたり
新垣の歌声が小川より低かったり
よっすぃは自分の声を手に入れたのかなって思ったり
なっち、天使!だったり聞き所は満載ですね。

さて、次はなに書くかな。
543(((☆_☆)/:01/11/29 00:43 ID:j7Bx4KsP
お疲れさんです。
感動をありがとう!
オチもヨカタヨ!
544ねぇ、名乗って:01/11/29 01:39 ID:6qs6HxCi
感動しすぎたよ。天才ですねL.O.Dさん
545ねぇ、名乗って:01/11/29 01:39 ID:6qs6HxCi
ageてしまった。sage.
546ねぇ、名乗って:01/11/29 01:56 ID:yW3m3ceD
オチが良かった。
547:01/11/29 02:36 ID:g8Saw7A4
お疲れさまでした。
運良く完結に立ち会えてよかった。
楽しみがひとつ減って寂しい気もするけど
いずれ戻ってくるその日までの短い休息ってことで。

また書いてくださいね。

・・・復活ライブの曲順キボウ
548トロピカ〜ル名無して〜る:01/11/29 02:54 ID:AIDomsep
いやーいがったいがった!そーか最後はふるさとかぁ…
549ねぇ、名乗って:01/11/29 03:32 ID:Lm+jJEBh
まだまだスレは使えますよ〜!
550ねぇ、名乗って:01/11/29 03:55 ID:2KJ7X7QU
>L.O.Dさん

すげー良かったです。
娘。ひとりひとりに注ぐ眼差しがとても優しいから
読んでいると心があったかくなったよ。
感動をありがとう。
また楽しませて欲しいよ。
551L.O.D:01/11/29 07:35 ID:bjHZJBav
曲順かぁ・・・・・・
新曲とか新娘。が出したシングルのタイトル
考えるの面倒でそういうシーン書かなかったりしてます(w

ちなみに、ふるさとは
前書いた娘。小説でも最後のシメに使ってるんですが
ヲタ的にもメンバー的にもこれがあっての
ラブマ、後藤真希加入だと思うんで
ちょっと自分の中では特種な曲っす。

おそらく次は短編か、アンリアルで。
552194改めぼの ◆BONOl.Ok :01/11/29 09:42 ID:En3wCxBT
職場で涙ぐんでしもうた・・・
『We are・・・』終了お疲れさんです>L.O.Dさん
553(((☆_☆)/:01/11/29 12:16 ID:AXpL9UVw
ゆーか、L.O.Dさんは、圭ちゃんなの!?
554ぼの ◆BONOl.Ok :01/11/29 14:24 ID:En3wCxBT
>>553漏れも一瞬だけそう思った(w
555レク:01/11/29 17:28 ID:UaBR5uJI
感動の大作終了。
おつかれさまです。
556L.O.D:01/11/29 18:09 ID:864JoPPU
圭ちゃんなわけないべさ(藁)
557(((☆_☆)/:01/11/29 19:21 ID:AXpL9UVw
>>556 (●´ー`●)かよっ!?
558ねぇ、名乗って:01/11/30 00:44 ID:aF2G97ty
(・∀・)イイ!!
559ぼの ◆BONOl.Ok :01/11/30 15:11 ID:RuzgEQg/
保圭・・いや、保全sage
560名無し娘。:01/11/30 22:19 ID:a09aueyA
>>L.O.D

涙々…ヤッパアンタスゲーわ。
ラストも(・∀・)イイ!! けど、安倍の短編話もスゲー(・∀・)イイ!!
561L.O.D:01/11/30 23:04 ID:z0RCmsxl
『気まぐれブラリ旅(謎)』

実はなっちの短編が一番最初に出来たんですよ。
その後に市井を書いて・・・・・・

さて、新作ですが
なんかね、エロかもしれない。
しかも、アブかもしれない。
というか、もう軽く書いてるかもしれない。
一時間後にはアップしてるかもしれない。

けど、続けれるかが不安だったりする(w
562ねぇ、名乗って:01/11/30 23:25 ID:nLrTcB/d
L.O.Dさんなら大丈夫ですよ。
563L.O.D:01/12/01 00:03 ID:DeEOyGmH
『Buttefry's sleep』

私の名前はない。
親もいない。
記憶にある時には既にこの屋敷で
今、目の前にいる少女マリと一緒にいた。
私の肩ほどまでも背のない彼女は
私の御主人様。
彼女は私の事をヒトミと呼ぶ。
彼女の父親はお金持ちで
偏屈な彼女の遊び相手に
借金の方として身売られた私を買い
宛てがったらしい。
そう、この身体、全て
マリの物。
しかし、彼女は私にまるで
家族同然のような顔をする。
だけど、時として
私はモノ以下に扱われる。
『キレイだよ、ヒトミ。
 性別を超えた身体。
 まるで異国の人のような端正な顔。
 美を超えた完全な存在』
彼女は微笑む。
身ぐるみをはがれ、
彼女の部屋に作られたプレイルームで行われる痴態。
彼女の性癖。
人体改造。
彼女の父親がその癖に気付いたのは
本当に幼い頃で
それ以来、彼女はこの館に閉じ込められた。
そして、私も彼女のおもちゃ。
生きながら、両方の性別を手に入れた者
造られたアンドロギュヌス。
でも、別に後悔はしない。
生きているから。
564L.O.D:01/12/01 00:03 ID:DeEOyGmH
だけど、雨の降る夜などは
自室のベッドの上にいると
急激に寂しさが襲ってきて
不安になる。
一体、私のどこが完全だというのだ
この膨らみかけの胸や
股に生えた肉塊は
ただの性という欲望の対象。
どこが綺麗だというのだ。
分からない。
分からない。
生きながら、
死んでいる。
そんな気分が
私の胸を抱き締め
殺そうとしてくる。
そんな時、マリはいつも
フラリと部屋に入ってきて
ベッドに潜り込み
一緒に寝ようとする。
こんなに不安にさせてるのは
彼女だというのに。
少しそのままでいると
彼女は手を伸ばしてくる
「ヒトミ・・・・・・」
洋服をくぐり抜け
滑り込んでくる指。
乳房の上をゆっくりと撫で
自分の方に抱き寄せる。
私は反抗も声も出さず
ただその遊びに付き合う。
マリの指は優しく乳首に触れた後
腹への線をスーッと辿っていく。
下着をつける事は許されていない。
「おっきくなってる・・・・・・」
耳元でささやかれる言葉
それにすら反応してしまう肉棒。
自己嫌悪にすらなりそうだ。
どうして私はこんなに淫らなのか。
マリの声一つで興奮してしまう。
少し冷たい手が触れ
ビクッと反応する。
「気持ちいー?」
565L.O.D:01/12/01 00:04 ID:DeEOyGmH
「ふっ・・・・・・んぅ・・・・・・」
ゆっくりとスライドされると
声が漏れる。
蹂躙される身体。
布団の中で私の肢体を跨いでいくマリ。
柔らかくて暖かい物が肉棒にまとわりつき
ズルッと音を立てた。
「ふぅんっ・・・・・・」
「うぁあ・・・・・・あぁっ」
別な生き物のごとく私の男性器をねぶる舌。
布団をはね除けると
淫微な表情のマリが見える。
赤くした頬。
口元から垂れた唾液が厭らしい。
空いた手で肉棒の下に位置する
濡れた女性器に指をねじ込む。
「ひあぁああっ」
腰が跳ね上がる。
マリの嬉しそうな顔。
私は声を荒げ、見悶える。
なのに、マリは指を速め
身体の奥へと突き立ててくる。
「んあぁっ!あぁぁっ!!」
「イっちゃう?」
私は力強くうなづく。
その瞬間、放出される大量の精液。
身体の内部に埋め込まれた睾丸を
薬で活動を活発化させてるため
尋常ではない量が出
マリの顔を汚す。
そうやって造られたから。
マリの顔を汚すために
私の股には男性器がついてるし
こんなに多くの精を迸るのだ。
いつの間にか不安は消え去る。
そう、自分を求めてくれる人がいる。
ただこの人のために生きてればいいんだ。
566L.O.D:01/12/01 00:05 ID:DeEOyGmH
ある日、本を読んでると
階下からマリが自分を呼ぶ声が聞こえた。
「はい?」
「降りておいで」
彼女は私が望むとなんでも買ってくれた。
どんな部屋も好きに使わせてくれたし
不自由はなかった。
ただ・・・・・・
私はこの館を出た事はない。
檻に閉じ込められた小鳥。
リビングに行くと
彼女が選んだ洋服などが並んでいた。
幸い、雑誌などを買う事も許されていて
彼女ともセンスが似ていたから
あまりはずれなんてことはない。
例え、はずれであろうと
私は彼女の持ち物なのだから着るしかないのだが。
その中からマリは一着選ぶ。
拘束具。
黒のエナメルは昼の光を浴びて
ぬらりとした光を放つ。
緩やかに締め付け
最後の点検をマリがする。
「やっぱヒトミぐらいの肉感がある子は似合うね。
 こいつじゃ無理だ、キャハハハ」
「・・・・・・」
マリの隣に立つ家政婦の格好に首輪をつけられた少女
名前はナツミ。
私と同じマリの持ち物。
幼き頃からマリの世話をまかされている。
ぽっちゃりとしていて
純真そうな瞳は
今日も潤んでいる。
一度だけ彼女の裸を見た事がある。
幾筋も走る赤い痕。
567L.O.D:01/12/01 00:05 ID:DeEOyGmH
シンと静まった夜中聴いた
乾いた鞭の音。
絶対にマリは私に鞭を打たない。
あの音はナツミが調教される時の音。
私の唇を塞ぐマリの唇。
漏れるのは、吐息。
「立っちゃうんだもんね、ヒトミは」
「はぁっ・・・・・・」
まるでパブロフの犬。
キスをするだけで立ってしまう。
悲しい習性。
細めのジーンズの前部分が痛々しいぐらい膨らんでいる。
「したい?」
「はい・・・・・・」
「だめー」
「え?」
「だって、今、出したら
 あとで薄くなるもの」
キスしたくせに。
ずるい人。
ナツミの視線に気付く。
私の股間を見て
彼女も興奮していた。
だけど、私達が交われるのは
マリが望んだ時だけ。
「さ、他の着てみよっ」
マリは笑う。
なんて明るい笑顔。
私はこの子のために生かされてる。
568L.O.D:01/12/01 00:06 ID:DeEOyGmH
トントンと扉を叩く音。
私は扉を開ける。
ナツミが御盆を持って立っていた。
「お、、お薬です」
震えた身体。
「大丈夫ですか、、、?」
「はい」
紅潮した頬が
何かされてる事を
明確にする。
「お話しませんか?」
私から誘う。
きっとマリはお風呂に入ってる。
少しの時間
ベッドに座るナツミ。
豊かな胸
柔らかそうな腰回り。
男としての自分が暴走しそうになる。
「ヒトミさんは幸せですか?」
突然の質問に言葉を失う。
なんて答えたらいいか分からなかった。
「私は・・・・幸せなんです。
 マリちゃんが本当にちっちゃい時から
 一緒だったから」
そういう彼女の横顔に偽りはない。
「私は彼女を愛してます」
「私は・・・・・・」
言葉を続けれない。
私は彼女が好き?
私は彼女の所有物。
違うの?
ナツミを呼ぶ声
「じゃぁ、また」
走り去るように部屋を出てく彼女。
私はつぶやく
「私は・・・・・・なに?」
569L.O.D:01/12/01 00:10 ID:DeEOyGmH
一回、姐×ちゃむで下書きした事のある物を
やぐ×よしにしてみたんですが・・・・・・
570ねぇ、名乗って:01/12/01 00:15 ID:gLj1I0FE
早速引き込まれた
571194 ◆BONOl.Ok :01/12/01 00:50 ID:klwsbwm4
はうっ!もう新作が?!
572ねぇ、名乗って:01/12/01 00:53 ID:wu8oi/ho
L.O.Dの小説にひきつけられます。
573名無し娘。:01/12/01 02:30 ID:xuFKpBYT
スゲーよ、アンタは頭に何個引き出しがあるんだ?(w

何ッ!从#~∀~#ヽ^∀^ノだとッ!
ソッチで読みたかったな…。
574トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/01 11:33 ID:AqsfiEPW
矢口だからこそ萌えますです…
575(((☆_☆)/:01/12/01 20:38 ID:rltIJ0V3
はやっ!新作おめでとう!
背中あたりがゾクゾクしまんなぁ〜
576L.O.D:01/12/01 23:12 ID:zC+y4IuP
深夜
マリが部屋にやってきた。
私は読書をやめ
彼女の相手をする。
何も言わず、ベッドに横たわるその肢体は
私の方が年下なのだが
とても幼く見え
またそれが逆に興奮を誘っていた。
私は言われるまでもなく
彼女のネグリジェの中に手を伸ばす。
1人でしていたのだろうか
熱くなっていた。
足を拡げさせ
指で肉壁を押し広げると
生々しい女の匂いがした。
ツーッとその筋をなぞり
舌で触れる。
鼻元に漂う香り。
頭がおかしくなりそうだ。
ズボンの中のモノはすでに大きくなってきていて
それがむずがしい。
今日のマリは身体を入れ替え
それを処理しようとはしてくれない。
マリの手は私の首の方に伸び
力いっぱい抱き寄せ
奪うようにキスした。
「んぅう」
「はぁ・・・・・・」
「立ってます・・・・・・」
「知ってる」
「・・・・・・」
「抜きたい?」
妖艶な笑み。
私はうなづく。
私の腰にからみつく足。
そして、一気に身体が反転して
上下が入れ代わる。
腕で肩口を押さえ込まれ
私は身動きを封じられた。
彼女のされるがままになるしかない。
577L.O.D:01/12/01 23:12 ID:zC+y4IuP
ベルトに手をかけ
それをはずし
彼女は何を思ったのか
私の首に巻いた。
「ヒトミはマリの物だよね?」
「はい・・・・・・」
確認の行為。
時として行われるそれに意味はない。
当たり前の事なのに。
でも、マリにとってみれば
それはものすごく何か意味のある事なのかも知れなかった。
私はただ抱き締められればそれでよかった。
ベルトの首輪の端をつぶれるほど握り
マリに引きづられ、部屋を出る。
四つん這いで廊下を歩かされる恥辱。
冷たい木の板がさらけだされた身の存在を明確にする。
廊下の壁に背を押し付けられ
腰を落とされる。
マリの冷えた足の指が
グニグニと私のいきり立った肉棒を刺激する。
「ひぐっ!」
いきなりの痛覚に私は呻く。
思いっきり踏みつぶされた。
まるで子供がアリでもつぶすように
足の裏全体で。
「えいっ!えいっ!!」
「ぐくうっ・・・・・・」
「えい・・・・・・」
弱まる声。
私は不安になる。
「マリ・・・・・・?」
上げた顔に喰らったのは、張り手。
頬に全力で張られた。
「っつぅう・・・・・・」
「うるさいっ!」
マリの様子は明らかにおかしかった。
いつもの行為ではなかった。
でも、私はその時かける言葉を知らなかった。
さらに数発殴られて
マリは走って行ってしまった。
578L.O.D:01/12/01 23:13 ID:zC+y4IuP
「・・・・・・・・・・・・」
私はその場に座って待っていた。
他人からすれば、ものすごく頭が悪い事なのかもしれないが
私にはそうする事しか出来なかった。
飼い主が戻るのを待つ犬。
それでよいと思っていた。
数分後、ナツミがやってきて
毛布を一枚身体にかけてくれて
部屋に戻ろうと行ってくれた。
どうやら、それはマリの言葉だったらしい。
私はナツミに連れ添われ
部屋に戻った。
彼女は熱いコーヒーを私に入れてくれて
たっぷりのミルクと砂糖をくれた。
冷えた身体には嬉しかった。
「なにか・・・・あったんですか?」
聞いてはいけないのかも知れない。
「お父様が倒れられました。」
「早く行かないと・・・・・・」
「来るなと言われたのです。」
「え?」
「お電話口でお母様にはっきりとそう言われたのです」
「・・・・・・」
返す言葉はなかった。
579L.O.D:01/12/01 23:31 ID:zC+y4IuP
その日、夢を見た。
とても不思議な夢だった。
私の目の前には青白く光る箱があって
それ以外は闇に包まれていた。
私はそっと箱を覗いてみた。
全部ガラスで出来ていて
溢れ出す光は全方向から出ている。
ずっと見ていると
1人の少女が見えた。
セーラー服の少女。
背は高く、かわいらしい。
少しして気付く。
その子はまったくもって私にそっくりだと。
「どういう事?」
私がしゃべった言葉が
夢の中だからなのか
はっきりと、それでいて反響音のように
リフレインして聞こえていた。
長い夢だった。
私はその箱の中にいる私の一日を見ていた。
ちっとも飽きなかった。
大勢の人がいる中で
彼女は机に座って
本を読んだり
何人かの人としゃべったりしていた。
その部屋の前の方でしゃべっている偉そうな人に
居眠りをしてるのが見つかって怒られたりもしてた。
それが終わると、彼女は広い建物に行き
ボールを使ってスポーツをしていた。
どういうルールなのか
さっぱり分からなかったが
真剣なその表情が美しかった。
帰り、お店に寄り
雑誌を立ち読み。
家に帰ると、家族がいて・・・・・・
「家族・・・・・・」
つぶやいた。
食事をしてた。
暖かそうな食卓。
お風呂に入り、
眠るまでの数時間
彼女は勉強したり
部屋を片付けたり
色々して
眠ってしまい
部屋の電気を消すと
箱の光も消えた。
そこで目が冷めた。
なんだったのだろう、あの夢は。
580L.O.D:01/12/01 23:33 ID:zC+y4IuP
更新終了。

姐ちゃむは次の更新で出てくるかも。
581(((☆_☆)/:01/12/02 00:28 ID:q4iRpARL
全身がゾクゾクする感覚に捕らわれる・・・
582トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/02 03:12 ID:vop8Lxzq
なにかエロゲーの香りがします…(失礼w
583:01/12/02 05:09 ID:t8i2Zkik
人物相関をよめないところがイカス。
履歴書にも書けるであろう鬼更新は
今回も健在っぽい(w
584L.O.D:01/12/02 10:17 ID:JGKdXfXk
エロゲーというものを一切プレイした事なかったり(w
585名無し娘。:01/12/02 19:11 ID:vJLKGyR+
>>580

L.O.D( ● ´ ー ` ● )ありがとう。
586L.O.D:01/12/02 23:53 ID:d82QRXki
「サヤカ、地下室からLE-30とサルチペルド30錠取ってきて」
「うん」
私は真っ白な部屋の中で寝ていた。
麻酔が感覚を奪っていた。
「どや?気持ちいいやろ?」
切り開いた私の腹の中に手をいれ
いじわるそうに笑う彼女は
モグリの医者 ユウコ。
マリは彼女に絶対の信頼を寄せ
これまでの手術を要する人体改造を
彼女に任せていたし
ユウコもそれに応えるだけの腕を
持っていた。
ただ、アルコール中毒で
勤務中に飲んでいたのがバレて
しかも、そのまま執刀。
ミスはなかったが
免許は剥奪されていた。
「あんたの事、ほんま小さい頃から見てたけど
 綺麗になったな・・・・・・
 マリの好きそうな顔してるもんなぁ。
 あんたの身体は大概いじったけど
 顔だけはいじった事ないなぁ」
くわえタバコで器具をいじる姿は
ただの酔いどれの女医には見えない
まるでその腕に天使の羽でもついているような
神々しさを放っている。
「ユウちゃん、これだよね?」
部屋に戻ってきた少女。
私と同じ身売りの身で
ユウコが買ってきたらしい。
サヤカと呼ばれ、彼女の助手として
きちんと働いていた。
「ヒトミー、分かるかー?」
「・・・・・・」
身体が動かないのだから
反応のしようがない。
「もう終わって、あと縫うだけやねんけど。
 薬出しとくからなー。
 紙にも書いておくわ。
 あとは、目が覚めたら・・・・・・」
ユウコの手が私の目蓋に触れ
そっと降ろす。
催眠術にでもかかったように
私の意識は遠のいてゆく。
587L.O.D:01/12/02 23:54 ID:d82QRXki
真夜中
私は目を覚ます。
自分のベッド。
さっきの白い部屋は
この館の中に作られた手術室。
傷の痛みはない。
身体が動く。
右腕を伸ばして
指を動かすと
きちんと動く。
ホッと一息つくと
私は隣に誰かがいるのに気付く。
サヤカだった。
「あ、起きたんだ」
心地よい低音の声。
「はい」
「痛みはない?」
「ないです」
「よかった」
座ってた椅子をベッドの脇に近付け
私の顔に触れるサヤカの手は
ひんやりとしてた。
「チェックしなきゃ、ダメだから」
私のズボンに手をかける。
ひきずり降ろすと
前よりも一段と大きくなった
異質の物がそこにあった。
サヤカは臆する事なく
それに手を伸ばす。
「熱いね」
「ひあぁ・・・・・・」
口に含み、溢れ出す精を吸い出す。
ズズッという音が体内から聞こえそうなぐらい
強く吸われ、私の頭の中は真っ白になる。
別に舌を使うでもなく
ただ吸われてるだけなのに
イキそうになる。
薬のせい。
私はサヤカの口の中に思いっきり
放出した。
月明かりが窓から差し込み
彼女の横顔を照らす。
ほっそりとした喉が動く。
飲み干していた。
「あの・・・・・・」
私は声をかける。
サヤカの振り向いた顔は
白く透き通りそうなほど
綺麗だった。
「私の身体、気持ち悪くないですか?」
「ユウちゃんと一緒にいて慣れたよ」
彼女の元に訪れる客は皆
私のような人ばかり。
人体の叡智を超えた者ばかり。
「それに、イっちゃう瞬間の顔、可愛かった」
「・・・・・・」
「何歳だっけ?」
「16です」
「一つ下だ」
「へぇ」
「ヒトミはどうしてこんな身体に?」
私は自分がどんな顔をしてるか分からなかった。
考えた事がなかったから。
「生きるため」
「・・・・・・」
「こうしなかったらきっと私は
 今、生きてないです」
つらつらと私の口から吐き出された言葉は
本当に私の言葉だったのだろうか。
そんな思いが次の日、打ち砕かれようとも知らずに。
588L.O.D:01/12/02 23:55 ID:d82QRXki

朝から、マリは憂鬱な顔をしていた。
どうしたの?の一言をかけれず
朝の食卓を終える。
その後も遊んでとやってくる事もなく
昼まで過ごす。
3時前に突然、ノックがあって
私ははねるようにして
ドアノブを開けた。
立っていたのは、ナツミだった。
「お出かけしますよ」
ナツミの手には服が握られていて
着替えさせられる。
「マリは行くの?」
「いえ」
「私1人?」
「ガイドがいますから」
「え?」
彼女の言葉を理解できぬまま
玄関を出る。
車が一台。
大きな大きな黒塗りの車で
マリが年に数回
親元へ行く時に使う車だった。
「そんな・・・・・・この車は」
「早く乗ってください、、」
ナツミの表情は寂しげで
私は何も言わなかった。
思い出す。
マリの父親の容態が危ない事。
もしかしたら、彼は死に
財産相続云々という話になった時
私の存在が邪魔だったのかもしれない。
どこか山の奥で殺されるのだろう。
私は笑ってみせた。
「すごーい、こんな車乗れると思ってなかったよー。
 行ってきますっ!!!」
「・・・・・・」
後部座席に乗り込み、窓を開けた。
廊下をずっと走ってくるマリが見えた。
「運転手さん、待って!」
私は叫ぶ。
「ヒトミ!!」
「マリ!」
「ごめん!ごめんね!!」
「ううん、いいから。」
「これ、、少ないけど持っていって。
 そして・・・・必ず生きていて。」
車が動き出す。
マリとつないでいた手の隙間から零れ出した札束。
数枚が風に舞い、消えていく。
マリや、ナツミ、館の姿が少しずつ小さくなって
やがて見えなくなった。
まだ雪が降る前の事だった。

to be continued.
589L.O.D:01/12/02 23:58 ID:d82QRXki
第一章終了。
590ねぇ、名乗って:01/12/03 00:05 ID:CiOYpN65
おお
591ぼの ◆BONOl.Ok :01/12/03 01:26 ID:zaIz7m2A
相変わらずの更新速度ですね。

確かにエロゲーの匂いがする・・・(w
592(((☆_☆)/:01/12/03 05:56 ID:UwOTjb8B
おつかれさまです。
夕べ早く寝たんで朝起きるなり読んでしまった。
593トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/03 09:57 ID:K1LGZLg6
>>591
でしょう?(w

ヒトミはどうなってしまうのか?これからの展開に期待…
594ぼの ◆BONOl.Ok :01/12/03 10:17 ID:hCydvJUh
>>593
ま、俺も実際にエロゲーをプレイしたことは
1・2回しかないのだが(w

いろんな意味で背徳な感じ・・・
595(((☆_☆)/:01/12/03 20:57 ID:6K5RkJu2
(★_★)ノ ← 正直、エロゲーをやた事ない(欝
596レク:01/12/03 21:53 ID:6KB5pGxW
エロゲーはよく考えてからプレイするやつ選ばないと
糞ゲーとおもろいやつの差が激しいので(w 実体験
無理にやってはまると抜け出せなくなるのでご注意を(w
597ねぇ、名乗って:01/12/03 23:08 ID:TGY6IE8X
さすがですね。
598L.O.D:01/12/03 23:29 ID:X9m3v+n/
『erective Minerva.』

長い旅だった。
あの場所から数時間も車に揺られ
やってきたのは遠い街。
大きな都会で
道を行く人は誰もが小切れない服を着
颯爽と歩いていく。
私はそんな人を見ていた。
車は路地裏に入り
一件の店の前で泊まった。
毒々しいピンクの照明のついた店。
私は運転手に連れられ
そこに入っていく。
カウンターでボーイらしき男に声をかけると
今度は店主らしき女性が出てきて
運転手と会話していた。
私は居場所もなく、ただそこに立っているだけだったが
運転手は私に何も言わず、帰ってしまう。
「あなたがヒトミね」
「はい」
フッと振り向いた店主の目は
猫のようにスゥと釣り上がっていて
まるで何もかもを見透かしてしまうような気がする。
「マリに相当かわいがられてたみたいね」
「お知り合いなんですか?」
「まぁ、昔にちょっとね。
 部屋に案内するわ。
 ついてきて」
部屋?
というか、なぜここに連れてこられたかも
まったく分からなかった。
長くて暗くて湿っぽい廊下を渡り
通されたのは、3階の一番奥の部屋。
「ここじゃ一番いい部屋なんだよ」
コンクリートがむき出しの壁だが
ベッドは広いし、
家具はみんな揃っていた。
「あんた、本が好きなんだって?」
「たまにですけど」
「マリがさ、わざわざ買ったんだよ、あんたのために。」
古びた部屋の家具の中で
一つだけすごく新しいツヤツヤとした
木製の本棚があった。
引き戸で2段構造で
多くの本を仕舞えるようになっていた。
「あいつが、ここに送ってきた子でも
 きっとあんたは特別なんだね」
店主の手が私の頬を撫でた。
「みんな、もっとボロボロになって
 人間以下のボロ屑の状態で来るんだよ。
 まともに話せる奴の方が珍しい」
「ここは、なんなんですか?」
「え、ちょっと、なんの説明もされてないわけ?」
599L.O.D:01/12/03 23:29 ID:X9m3v+n/
「はぁ・・・・・・」
「えーっと、、驚かないでね。
 ここ、売春宿なわけ。
 自分の身体でセックスして
 お金を儲けるの」
「売春・・・・・・」
そう、それはマリが与えてくれた最大の優しさ。
帰る所を失った子猫の
一番安全な居場所。
この店主がマリの知り合いという事も分かってるから
特に怖さはなかった。
それに、この身体などずっと昔から
他人の物。
「特にうちは非合法でやってて
 お客の要望とあれば
 どんな事も叶える店。
 幼女だろうが、死体だろうが
 あんたみたいな改造者だろうが
 なんでもアリさ。
 あぁ、そう、忘れてた。
 私、店主のケイ。よろしく。」
ポケットからタバコを取り出し
火をつける仕種も
髪をかき上げる仕種も
さばさばしてて
どこかかっこいい。
「でもさー、あんたの身体はこれ以上
 いじりたくないんだよね、私的には」
「へ?」
「だってさー、めちゃめちゃ売れそうなんだもん」
その言葉は適中する。
一ヶ月足らず、毎日、男女問わず
どんな事も引き受けてる内に
リピーターが増え
店でトップの売り上げを上げていた。
完全会員制高級売春宿『Minerva』
600L.O.D:01/12/03 23:30 ID:X9m3v+n/
表向きはごく普通のバーなのだが
その上の住居に女の子を住ませ
政界や財界の大物だけに留まらず
ここの会費を払えるほどの大金持ちと相手させる。
予約制になっており、それ以外の時間は
完全に自由を保証されている。
私は別に趣味もないし
休む理由もないから
入れれるだけ仕事を入れていた。
誰かに抱かれる事で
自分が1人じゃないと感じれるから。
そんな生活の中で友達も出来た。
同じ店の女の子。
1人はリカ。
向かえに住むすごく女の子らしい子。
倒れてしまいそうなほど、細い身体がうらやましい。
もう一組はノゾミとアイ。
双児の2人はすごく仲が良く
一時も離れない。
私達は時折、4人でカフェに行ったり
服を買いに行く事を楽しんだ。
その日も『郵便でーす』とノゾミとアイの声がして
私は普通に扉を開けた。
「はいは・・・・・・」
「はい、お手紙なのれす」
ここに来て、初めて手紙と言うものが来た。
ちゃんと切手も貼ってるし
捺印もある。
外から来たものだ。
宛名を見た。
ユウコ。
急いで封を開けた
「薬とその後を見たいから
 なるべく早めに下の住所に来なさい・・・・」
「ヒトミちゃん、帰るんか?」
「え?」
「寂しいれす・・・・・・」
うつむいて、今にも泣きそうな2人。
「帰らないよ!ただ私の身体を見てくれてた
 お医者さんがたまに遊びに来いって」
「帰ってくるん?」
「うん、行ったら、すぐ帰ってくるよ」
「わぁーい」
私はじゃれついてくる2人を
ギュッと抱き締めた。
だけど、胸の内でアイの言葉を繰り返してた。
(帰ってくる・・・・・・)
私には帰る場所などないと思っていた。
あるとすれば、マリの胸の中。
そして、あの屋敷。
今はこうして仲間がいる。
別にセックスは嫌いじゃないし
むしろ、そうしなきゃ私は生きていないわけで
この場所を与えてくれたマリに
感謝をしたい・・・・・・

翌日、私はカバン一つ持って休暇を取り
ユウコが待つ郊外の森の中へと行く。
601L.O.D:01/12/03 23:36 ID:X9m3v+n/
つーわけで、本日の更新終了。

実はこの設定自体は俺が小説を書き始めて
初めて書き上げた長編の物なんです。
今までに見た事のない娘。小説ってのが基本理念なもんで
ちょっと冒険してみましたっす。
602ぼの ◆BONOl.Ok :01/12/04 01:34 ID:HVdJc9Z8
冒険マンセーっす。
603トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/04 03:21 ID:ZXbjnV5D
ミネルバでの生活をもっと細かく描写して欲しかったけど…
ヒトミはまた戻ってくるのかな?

>>596
確かにハマると抜けにくいね。おいらはエロゲから足を洗って久しいが
毎月E-Loginを買っていた頃が懐かしいなぁ…
まさかエロゲを抜けてモヲタになるとは思ってもみなかったが(w
604(((☆_☆)/:01/12/04 04:11 ID:tf7t6ljD
夜中(早朝?)に目が覚め読んでしまう。完全に虜だなこりゃ・・・。
605L.O.D:01/12/04 21:39 ID:kvDcPZ4J
「いらっしゃい」
出迎えてくれたのは、サヤカ。
「今、診察中だから」
奥の方から女の人の呻き声が聞こえる。
「タトゥーを彫ってるんだ。
 麻酔無しでいいってゴネてさ」
ひさしぶりに見たサヤカは少し女っぽくなっていて
綺麗だった。
私は彼女の顔に見とれてると
彼女は笑いかけてくれた。
「あ、そうだ。先に言っておかなきゃいけない事があるんだけど」
「なんですか?」
「マリさんの事なんだけど、実は・・・・」
「実は?」
「その後、何も分からないんだよね。
 館も全部取り壊され
 彼女もナツミさんも
 みんな、どこにいるのか
 まったく分からなくなっちゃったんだ」
その瞬間、頭の底で聞こえた声。
『必ず生きていて』
マリの最後の言葉。
それはこの事だったのかもしれない。
診察室から出てくる男の人の背中に描かれた
美しい馬の柄。
「おぅ、来とったんかいな」
「お邪魔します」
「早速、診断始めるわ。
 サヤカ、手伝って」
「はい」
椅子に座って、待っていた。
鼻をつくようなメンソールの匂い。
真っ白で統一された世界は
逆に歪んでるような気がする。
606L.O.D:01/12/04 21:39 ID:kvDcPZ4J
「で、どないなってんかいな」
「ユウちゃん、いきなり胸揉まないでよ」
ユウコの隣に立つサヤカがそう言うと
彼女はいじわるそうな笑みを浮かべた。
サディストの顔。
「なんや、サヤカ、焼きもちか?
 夜になったら、ちゃんと揉んだるから」
「そういう問題じゃなくてー」
白衣を着直したユウコの顔が変わる。
今度は仕事の顔。
「辛い事とかないか?」
「ないです」
「今、仕事してるんやっけ?」
「ちょっと」
「どない仕事か聞いてええか?」
「売春・・・・・・」
「よかった」
真剣な表情がやわらいだ。
「見せ物小屋でも売られたか思たわ。
 たまにおんねん、うちに改造させた子売ってまう奴。
 なんかムカつくんだよなぁ」
「自分の患者は子供みたいなもんだって言うもんね」
「万が一、うちが手術した事でその後が決まるなら
 めっちゃ大切やん、その手術。
 やっぱ、した後も自分の目で見たいしなー」
医者としての姿。
「裸になって」
私は言われた通りに裸になる。
別になんの抵抗もない。
「使いこんでるなぁー」
「へへっ」
「どうれ、一つお姐ちゃんが味わっちゃおうかなぁー」
「もうやめな、ユウちゃん。」
呆れて、制止するサヤカ。
なんか本当の姉妹のような2人。
私はクスリと笑った。
触診などの検査をして
別になんの異常も見れなかったが
その日は泊まる事にした。
607L.O.D:01/12/04 21:40 ID:kvDcPZ4J
眠る前の数時間
私はサヤカの部屋にいた。
私の今の生活の事
仲間の事
店主のケイちゃんの事
お客さんの事
サヤカもやってきた患者さんの事や
失敗談、おもしろ話を聞かせてくれる。
なんか心がやすらぐ。
そう思った時
この部屋になにか匂いが漂う事に気付いた。
「これ、なんの匂い?」
「あぁ、お香だよ。
 キンモクセイの」
窓辺でひっそりと煙を立ち上げるお香。
心が静まる。
「よく寝れるんだ。これを焚くと」
「いいなぁ」
「きっと街でも売ってるよ」
「かな?」
「うん」
「そろそろ寝る?」
「寝ようか」
消されるランプの灯。
私は引きづりこまれるように
眠りについた。
608L.O.D:01/12/04 21:40 ID:kvDcPZ4J
また、あの時見た夢と同じ
ガラスの箱の中に私そっくりの女の子が見える。
同じぐらいの年頃の女の子達がいっぱいいて
ダンスを踊っていた。
ジャージ姿で汗を流して踊ってる。
休憩時間に入ったらしく
笑顔がこぼれる。
(あ・・・・・・)
隣にいる女の子
それはリカだった。
飛びかかってきたちっちゃい2人は
ノゾミとアイにそっくり。
(楽しそう・・・・・・)
その空間の中の4人もすごく楽しそうにしてる。
座って、なにかを飲んでたもう1人の私に近付いて
ペットボトルを奪って、口をつける少女。
(マリ!)
その子はまさしくマリそのもの。
そして、その子の頭をポカリと叩いたのは、ナツミ。
部屋の中の鏡の前でまだ練習してるのは、ケイ。
これ以上、視点が動かない。
不便なものだ。
無重力のような感じで
動きが自由にならない。
(くそっ!)
突然、目の前を通っていく金髪の女性。
見るからにユウコだ。
(ここはなんなの?)
609L.O.D:01/12/04 21:43 ID:kvDcPZ4J
Minervaにはちゃんと帰りますよ。
たぶん今までで一番
背徳のシーンになる気もしますが。
610(((☆_☆)/:01/12/04 21:53 ID:V3CLGNBm
今夜は早い時間の更新で・・・正直ありがたい〜♪
611トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/05 11:53 ID:E2Mr+E1G
ヒトミの夢の中の世界とどうリンクしていくのだろうか…
612L.O.D:01/12/05 15:21 ID:eg6ypI+d
「まぁ、いわゆるパラレルワールドっちゅー奴やろな」
「ぱられる?」
「そや、この世界とは別の世界の事。
 今の自分とはまったく異なる処遇の自分がいる場所」
「で、なにしてたの、自分は?」
「なんか踊ってました・・・・・・
 で、そこにはマリやユウコさんもいたんです」
「綺麗やった?」
「え?」
「なんやねん」
突き刺すような2人の視線に
機嫌悪そうに切り返すユウコ。
「でも、見てみたいなぁ・・・・・・
 もう1人の自分がなにしてるか」
「おもしろそうつーたらおもしろそうやわな」
時計が大きな音を立てて
10時を知らせる。
「あぁ、もう行かないと」
「汽車やもんな」
「またおいで」
「はい」
一路、Minervaへ。
613L.O.D:01/12/05 15:22 ID:eg6ypI+d
店に帰る前に
街中のお香を置いてる店へ寄る。
「いらっしゃいませ」
「あの、キンモクセイの香りの探してるんですけど・・・・・・」
「こちらなんかいかがですか?」
手頃な値段だし、台やらなにやら一通りついてるセット。
「じゃぁ、これで」
その隣で試香してる人の匂いがしてくる。
甘い匂い。
その瞬間、リカの顔を思い出す。
(ノゾミとアイはなにか食べ物でいいし)
「あのっ!」
「はい?」
「なんかストロベリーの香りとかありますか?
 甘い感じの匂いで・・・・・・」
「ございますよ」
「プレゼントにするんで、包んでください」
店員はやさしく微笑み、うなづいた。

ドアを開け、店に入る。
カウンターにいたケイがうんざりという顔で
私を見る
「はやく帰ってきてよー、ヒトミぃ」
「どうしたんすか?」
「あんたの予約の電話、こんだけ来てたんだからねっ!」
山のような紙。
「すいません・・・・・・」
「ま、人気があるって事よ。
 身体は大丈夫?」
「大丈夫でした」
「そっか、身体は壊さないようにね」
「はい」
「今日の仕事はどうする?」
「やります。あーっと、リカちゃん空いてます?」
「3時間後に休憩」
「分かりました」
荷物を持って、3階へ上がる。
自分の部屋の向いは
リカの部屋。
フと扉に耳を近付けると
漏れてくる音。
「んぅあ、、、」
「ほらっ!!」
鈍い鞭の音。
頭の奥にこびりつくように
鮮明に映る石川の細い身体。
「・・・・・・」
耳を離し、私は自分の部屋のドアを閉めた。
614L.O.D:01/12/05 15:53 ID:eg6ypI+d
「ヒトミさぁーんっ!」
「ほら、気持ちいいんでしょ?」
私は激しく腰を動かす。
女の客。
常連さんでひいきにしてくれている。
私はあまりお客さんの素性を聞かないが
身に付けてるものからいって
相当いい所の人らしい。
まだ中年というほどでもなく
若々しい身体を私はついばむ。
「はいぃ」
「欲しい?」
「欲しいですぅ」
首筋に舌を這わせ
ゆっくりと耳へ移動し
軽く噛み
穴の中へ伸ばしていく。
フッと一息、甘い息。
顔を掴み、優しくキス。
力強く抱き締め
戦慄く腰を沈める。
「はぁ・・・・・・」
「ひあぁ・・・・・・」
615レク:01/12/05 15:54 ID:RgaIJ0yV
調教系エロゲーの雰囲気がでてますね(w
このあとの展開がとても楽しみです。
616L.O.D:01/12/05 15:54 ID:eg6ypI+d
シャワーを浴びていると
ノックもなしに誰かが入ってくる。
「まだ時間じゃないですよ」
客かと思い、声をかけた。
「おやすみでしょ?」
バスタオル一枚のリカ。
「リカちゃん・・・・・・」
「一緒にシャワー浴びよ」
「う、うん・・・・・・」
少し灼けた素肌にはっきりと残ってる縄の跡。
私の指は自然と、それをなぞる
「痛くないの?」
「痛い・・・・っていうより、苦しいかな」
濡れていくリカの髪の毛。
私の背中に手が回る。
抱き締められていた。
「・・・・・・」
ただ無言で抱き返す。
シャワーの音だけが生々しく
聞こえていた。
「キスして・・・・・・」
要望通り、リカの唇に重ね合わせると
精液の匂いがした。
「臭い?」
「いや」
「・・・・・・」
構わずそのまま中までしゃぶる。
「嬉しい・・・・・・」
リカはそう言って、うっとりと目をつぶった。
「なにか・・・・あった?」
私を見上げる目は
悲しく笑っていた。
617L.O.D:01/12/05 15:55 ID:eg6ypI+d
両親の借金の形へ売り飛ばされたリカ。
回り回って、ここにたどりついた。
売り上げの80%を借金返済にあてており
ものすごく質素な生活をしている。
ソファに座らせ、コーヒーを飲みながら
私はキンモクセイのお香に火をつける。
「いい匂いだね」
「リカちゃんにおみやげ」
さっき買った同じものにストロベリーのを足した袋を手渡す。
「ありがと!」
「どういたしまして」
壁を背に座る私によりかかってくる。
「甘えちゃって」
「へへっ」
「で、借金はあとどれぐらいなの?」
「もうちょっと」
「終わったら、どうするの?」
「お家に帰るよ・・・・・・」
「そかぁ」
私はコーヒーを飲もうと手を伸ばした腕を止める。
横から抱かれる。
「私ね、ヒトミちゃんがいなきゃ狂いそうになっちゃうの」
「・・・・・・」
「昨日も寂しくて寂しくて、悲し過ぎて・・・・・・」
ソファの上に押し倒された。
私は抵抗しない。
「ずっと一緒にいちゃダメ?」
「だって、リカちゃん・・・・・・」
「私の家に行かない?」
「・・・・・・」
私は答えれなかった。
彼女にマリの事を言ってなかった。
ここにいれば、マリはケイの事も知ってるし
また会える事もある・・・・・・
私はここを離れるわけには行かないのだ。
「ごめん」
「そっか・・・・そうだよね」
「待ってる人がいるから」
「・・・・私ね、きっと明日働けば終わりなんだ」
「よかったじゃん」
「家に帰れるんだもん、喜ばなきゃダメだよね?」
「そうだよ、お父さんお母さんや家族に会えるんだよ」
「だよね・・・・・・」
「・・・・・・」
あとは無言で抱き合った。
窓の向うはうっすらと明るくなっていた。
618L.O.D:01/12/05 16:09 ID:eg6ypI+d
深い眠りから私は無理矢理起こされた。
ケイが自分を睨んでいる。
「ヒトミ!!起きて!」
「はい?」
「はやく!!」
寝ぼけマナコで引きづり出されたその先は
自分の向かいの部屋
リカの部屋。
「鍵使っても開かないのよ!」
「どうしたんですか?」
ケイにしがみついて泣いてるノゾミとアイ
なにがあったんだろう?
他の女の子もいっぱい出てきていた。
「いや、お客様がリカの様子がおかしいって
 帰り際に言われたから話を聞こうと思って
 来たんだけど反応がないのよ」
私は拳を固め
思いっきり殴ってみた。
腐り掛けの木造の扉は
いともたやすく壊れる。
そして、私の目に映ったのは
天井の照明から首を吊った少女の姿
「リカちゃぁああああああああああああああん!!!」
私は駆け寄り、縄をはずす。
きつくしぼられた縄。
チアノーゼを示す唇。
意識がもうない。
「はいっ!」
ケイから渡されたナイフで
縄をかっ切ると
崩れ落ちるように
リカは解放された。
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
頭が真っ白だった。
粗い息の向こうで私は自分の意識が
遠のいていくのを感じていた。
619(((☆_☆)/:01/12/05 20:03 ID:eLxtjhHb
人間て・・・悲しいね・・・
620ねぇ、名乗って:01/12/05 21:03 ID:7pA4788s
>>613

>鮮明に映る石川の細い身体。

「石川」じゃなくて「リカ」なのでは?
621L.O.D:01/12/05 21:34 ID:usbg5rlt
なんか毎回一ケ所間違いあるな・・・・・・
622 ◆MCq/r89. :01/12/05 22:56 ID:nbGMC7vz
>L.O.D
このお話の題名は何ですか?
623L.O.D:01/12/05 23:17 ID:usbg5rlt
『nightmare』なんてどうでしょう?
というのも、章のタイトルしか考えてなかったから。
624ぼの ◆BONOl.Ok :01/12/05 23:27 ID:F+MiIYjn
悪夢sage
625 ◆MCq/r89. :01/12/06 00:08 ID:IJuUVGzs
>623
即答ありがとうございます。今回分の更新情報から変えました。
626レク:01/12/06 02:03 ID:WdGO1hZQ
途中でカキコしてゴメンナサイです。
627トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/06 02:50 ID:JShFH8jN
石川はホントこういう役ハマるなぁ〜
これからの展開に期待…
628L.O.D:01/12/06 22:03 ID:Qp4eMtEh
今日の更新分は今から書くわけなのだが

楽屋から生放送すれよ!
629L.O.D:01/12/06 22:50 ID:Qp4eMtEh

「おーい」

「おーい」
???
私の声が聞こえてる。
「あ、起きた」
「・・・・・」
あのガラスの箱の中から
私を見てる私
私!?
「起きてる?」
「ん・・・・・・」
「寝起き悪いんだなぁ」
「誰?」
「吉澤ひとみ」
なんで、私だって分かってるのに
誰なんて聞いてるんだろう。
「でー、ここどこ?」
「さぁ」
自分は自分だからテンションが噛み合ってる。
のんびーりした空気。
「あなた、名前は?」
「ヒトミ」
ガラスの中の私は大して驚く様子もない。
「夢だよね?」
「ユウコさんはパラレルワールドだとか言ってたけど」
「中澤さんかぁ」
私達は自分達で見つめあい
しばらく黙っていた。
私は手を伸ばして、箱を抱える。
壁かどうかも分からない闇に背をもたれ、座り込む。
「どうしたの?」
箱の中の私が聞いてきた。
「リカちゃんがね、自殺しようとしたんだ」
「梨華ちゃんが!?」
「私も一緒に行くって言えば
 こんな事にならなかったのかなぁ」
「助かったんだよね?」
「うん」
「よかったぁ」
まるで、自分の事のように安心する彼女を見て
私は胸の中にある箱をギュッと抱き締めた。
彼女の手が箱に触れ、温もりが伝わってくる。
「あなたは、どうしたいの?」
「私は・・・・・・マリがいるから」
「マリ?」
「私の御主人様」
恥ずかしくない。
自分だもの。
どこかにいるもう1人の自分だから
私はちゃんと告げる。
全て脱ぎ捨て
私の身体を見せる。
さすがに驚いていた。
「私は借金の形に売られたんだ。
 マリはそんな私に優しく接してくれた。
 その代償に私は身体を捧げたの。」
「へぇ・・・・・・」
「気持ち悪いかな?」
「いいんじゃない?
 1人の人を思えるって大事な事でしょ」
私達、2人は時間が来るまでずっと話していた・・・・・・
630L.O.D:01/12/06 23:10 ID:Qp4eMtEh
「おはよ」
自分の部屋
ユウコが覗き込むように笑う。
「あ」
「顔色も悪ないな」
隣に立ってたサヤカが額にかけられたタオルを変える。
「2日、寝てたよ」
「・・・・・・リカちゃんは!?」
「落ち着いたから」
「そか」
ユウコは扉を覗き込む二つの影を見つける。
「目覚ましたで」
「ホント!?」
飛び込んでくるノゾミとアイ。
「ヒトミちゃん、大丈夫れすかぁ?」
「心配したんやでぇーーーーー!」
「ごめんね」
そっと部屋を出ていくユウコとサヤカ。
「お店、休みやったんよ」
「えぇ?」
「こんな騒ぎじゃどうしようもないのれすよ」
「ケイちゃんは?」
「おばちゃんも寝込んじゃってるもんなぁ」
「れす」
ノゾミの目はさっきからテーブルのところにある
フルーツバスケットを見てる。
「リンゴ食べる」
「うんっ!」
「ナイフ持ってきて」
私は少しだけ身体を起こして
ナイフを握る。
数分後、不格好なリンゴが・・・・・・
「・・・・・・」
「不器用なんれすね」
「やな」
「た、食べれるから」
「まぁ・・・・・な」
静かなのがおかしくて
笑ってしまう。
つられて、2人も笑う。
631L.O.D:01/12/06 23:51 ID:Qp4eMtEh
ケイの晩御飯を準備してやり
持っていってやる。
布団の中で本を読んでいた。
「ありがと」
無愛想につぶやき
口をつけてくれる。
と、思ったら寸前で止まった。
「誰が作った?」
「ノノ」
「安心だ」
「なんすか、それ」
BGMにかけられたラジオから聞こえるのは
オールディーズのロック。
しばらくの間、それに耳を傾けていたが
私は突然、ポツリと言った。
「悩んでるんですよ」
「なにを?」
「リカちゃんが一緒に家に来ないかって」
「行けば?」
あっさりとした答えだった。
「いいんすか?」
「マリの事はいいの?」
「・・・・・・」
「まだマリの事を思ってるんだったら
 その思い断ち切るなり捨てるなりしなきゃ
 リカに失礼じゃない?
 気持ちなんてものは
 遷ろう物なんだから
 変わってしまっても
 おかしい事ではないけれど
 ・・・・・・どう?」
「そうっすね」
ラジオから漏れるような音で聞こえてきた音楽は
ジャストタイミングで悲しげなバラードに変わり
私に考える時間を与える。
「旅に・・・・出ようかな」
632L.O.D:01/12/06 23:54 ID:Qp4eMtEh
本日、更新終了。
633ねぇ、名乗って:01/12/06 23:54 ID:sj2oMV7o
すばらしい
634ぼの ◆BONOl.Ok :01/12/07 00:52 ID:uHY/ey0f
ほんの一瞬だけ交錯する多重世界・・・・

なんか現実味あるなぁ・・・
635名無し娘。:01/12/07 01:51 ID:srq4EiiL
非現実の中で生きるリカ。現実の中では呼吸さえ出来ない…。
鳥篭から外洋に出れるのか?

『nightmare』とはよく言ったもんだ。
636トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/07 03:58 ID:L2N6fx5j
いよいよ絡み始めた夢と現実
どっちが夢でどっちが現実かわからないが…
637(((☆_☆)/:01/12/07 05:07 ID:KJrGOz7h
現実逃避したい・・・
638:01/12/08 04:35 ID:kbBHwvZB
全国ネットで誕生日を迎えられるなんて
やっす、幸運なのだな。
来年もオイシイといいね(w
639L.O.D:01/12/09 02:18 ID:HVuAzIPR
「寒っ」
一週間後の事。
私は、コートのえりを握った。
真っ白な空間がどこまでも続いていた。
それは、私の記憶の中では
館があって、マリやナツミがいた場所。
「なくなったんだぁ」
そう言葉に出す事で事実を受け入れようとしていた。
カサついた唇を指で撫でる。
マリの唇の感触を思い出すように。
「・・・・・・」
溢れ出す涙を止めれないが
私は独り言を言っていた。
「寒いんだから、凍っちゃうんだよ・・・・」
頬に伝い、その瞬間から凍っていく跡筋。
拭っても取れず
私の身体に刻み込まれていくようで
それが、私のマリへの愛なんだと思う。
「はぁ・・・・・・」
息が白く煙り、空に消えていく。
私の背が後ろを振り返り、
一歩、踏み出そうとした足を止めてしまった。
「リカちゃん・・・・・・」
「向かえに来たよ」
と、つぶやいて走り出し
私の首に腕を回す。
「いなくなっちゃう気がしたの、そのまま」
「・・・・・・」
「何も言わないでいなくなるなんて、やだよ」
「・・・・・・ごめん」
「最後に・・・・・キスして」
答えも待たずに突き出された唇に
私はそっとキスをした。
強く抱き締め、淡い息を吐き
少しだけ彼女の体温を感じる。
「もう戻らなきゃ、家に帰る汽車がなくなるや。
 ヒトミちゃんはまだここにいるの?」
「いや、わたしも戻るよ・・・・・」
「そっか。じゃぁ、駅まで送って?」
「いいよ」
私の方から手を握り
何もない平原を走り出した。
それが、彼女との最後の思い出。
640L.O.D:01/12/09 02:19 ID:HVuAzIPR
その日の夜。
私は、宿で最後の一本のお香を取り出す。
「買ってくればよかったなぁ」
火をつけると、ゆらゆらと煙が昇る。
キンモクセイの香り。
シャワーを浴びたままの濡れた身体。
部屋は暖房があるものの寒くて
ベッドに潜り込む。
「・・・・・・」
ひさしぶりに1人の夜かもしれない。
少し奮発して1人部屋でよかった。
私は、わけもなく興奮した肉棒を握り
グラインドし始める。
自慰。
店にいた時はそんな事をする気も起きなかったが
一週間もしてないと
なんか無駄に欲が起きてくる。
「ふあ」
漏れる声。
少しずつ速くなる手
胸を揉みしだく。
次第に下からも汁は溢れだし
音を立て始める。
いつの間にか眠っていた。
『エッチ』
頭の中に響くような声がして
我に帰る。
そこは、あの場所。
箱の中の世界の彼女も眠ってたらしく
こっちを見ていた。
「イッちゃったの?」
「たぶん」
「いいなぁ」
箱の中の私はその国では有名な人で
自由に出歩く事も出来ず
恋愛もままならないし
窮屈な生活を送ってるらしい。
「お仕事は辛い?」
彼女は首を横に振る。
「楽しいから」
「そっか」
やさしく笑う私。
彼女も笑う。
同じ顔をした
別な世界の私。
環境もなにもかもが違うのに
私は彼女と生きていた。
641L.O.D:01/12/09 02:36 ID:HVuAzIPR
二章終了書き込み忘れsage

新章、というか、最終章突入。
642ぼの ◆BONOl.Ok :01/12/09 02:43 ID:BebN52iV
急にお香が欲しくなった(w
643(((☆_☆)/:01/12/09 08:41 ID:E5FD7ey1
毎晩 djから困る・・・
644L.O.D:01/12/09 11:32 ID:IHaL4uG+
『nightmare』

小さい頃はその全てが夢だったらいいと
心のどこかで思っていた。
悪い悪い夢で
いつか目が覚めて
全ては本当の世界に帰ればいいと。
箱の向うの世界は本当の世界なのだろうか?

「ごっちーん?」
私は相棒 後藤真希を探す。
ラジオの仕事だっていうのに
ブースにもいないし
トイレにもいない。
もう少しで打ち合わせが始まってしまう。
走り回った。
ヒョンなタイミングで彼女は
廊下の向こうから顔を覗かせた。
「もぅ、仕事始まるよー」
「あぁ、ごめん」
ライターを仕舞う仕種。
隣に立った彼女からタバコの匂いがする。
「圭ちゃんですら仕事中は吸わないのに」
「クセだから」
そうつぶやいた後藤の目はひどく悲しい。
私は彼女の過去に何があったのか
それとこのタバコの事がどう関係してるのか
聞いた事は一度もない。
他人の心に踏み入る事など
ありえなかった。
娘。の楽屋にいれば
いつも一緒にいる安倍や矢口だって
ましてや、辻と加護だって
互いをどう思ってるのかなんて
分かりはしない。
そんな世界。
誰かを心の底から愛し
求め
忘れずに
思い続けるなんて
ありえない。
645L.O.D:01/12/09 11:32 ID:IHaL4uG+
私は、仕事の帰り道
深く息を吸い込んだ。
あの日、聞いた彼女の話。
真っ白な雪原の中で
全てに別れを告げ
抱き締めた時の事。
きっと、こんなに寒い時だったのだろう。
相手の名前はリカ。
石川にそっくりな少女。
立ち止まり、冬の空を見つめる。
ちらつく雪。
抱き締める真似をする腕は
空を切り
ただ空しさだけが襲ってくる。
「コンビニでも寄ろう」
雑誌を立ち読みして
財布を見てみると
若干の余裕。
おでんを買う。
無愛想な男性店員。
こんな時に自分の曲が流れてきたりして
ちょっと気まづくて
早足で店を出る。
家に帰り
部屋に入って
夜食を食べ終わり
片付けるものもなく
ベッドに横たわりながら
ボーっとする。
眠い。
枕元のボードの上。
キンモクセイのお香。
焚くと、すぐに眠れる。
そして、彼女に会える。
646L.O.D:01/12/09 11:33 ID:IHaL4uG+
同い年の
同じ格好をした
自分ではない
自分がそこにいる。
男性と女性を手に入れ
その美しさは
未分化ゆえの
不確かさ。
でも、私は彼女の事を素直に
綺麗だと思った。
ゆっくりと目を開けると
ヒトミは歌っていた。
「誰の歌?」
知ってるわけないのに聞いてみた。
「今日会ったストリートの人が歌ってたの」
「いい歌だね」
「友達になったんだ、マキっていうんだけどね
 笑顔がすごくかわいいんだ」
「その子ってさぁ、なんか魚ってる?」
「ウォ?」
「魚顔っていうか、、、」
「あぁー・・・・・・
 ひとみの世界にもいるの?」
「うん、友達」
「じゃぁ、私達も仲良くなれるかな?」
そう言って、はにかむ彼女はかわいらしい。
「あとね!」
声が一段高くなる。
「?」
「マリから手紙が来たの!」
「やったじゃん!」
「うん!」
私が入ってる箱をたぐりよせ
そっと抱き締める。
「一緒に暮らさないかって・・・・・・
 今、近くに住んでるんだって」
「よかったね」
彼女の顔を見ていると
といっても、まったくもって
自分の顔なのだが
なぜだか癒される。
私はこんなに笑えてるだろうか。
心の底から笑えてるだろうか。
647L.O.D:01/12/09 11:34 ID:IHaL4uG+
今日、調子いいかも。
一日で一章書けるかな?
648L.O.D:01/12/09 12:02 ID:IHaL4uG+
私は笑う。
作り笑いで笑う。
仕事だもの。
「お疲れさまでした」
そうつぶやいて、
その場をあとにする。
別にそれが普通の事だし。
「よっすぃー」
突然かけられた声に
驚きながら、振り向くと
矢口が立っていた。
私は視線を落とす。
「どうしたんすか?」
「御飯行かない?」
「焼肉?」
「なんでもこーい!」
ちっちゃくてかわいい人。
だけど、私より年上で
たまに頼れるお姉さん。
もう1人の私は
もう1人の彼女を愛し
彼女の物だとまで言う。
なにをすれば
なにをされれば
そんなに愛し
愛されるのか
思い合えるのか。
私は矢口のおごりという事で
いきつけの焼肉屋に連れていってもらった。
ウキウキとした表情で
肉をひっくり返す様は
半ば勇ましくもある。
「でだ」
「?」
「よっすぃー、身体大丈夫?」
「へ?」
「元気ないよ、最近」
メニューの牛タンを指差しながら
大丈夫かなぁとつぶやいてた
3秒前とはまったく違う顔。
「はぁ・・・・・・」
「仕事のこと?」
「まぁ」
「ほらぁ、一応、先輩なんだしさ
 なんでも言ってよ。」
649L.O.D:01/12/09 12:03 ID:IHaL4uG+
私はポツリポツリと夢の中で会う
もう1人の自分の事
別な世界の事。
ヒトミとマリの事
リカの事
今まで聞いた全てを話し
そして、もう1人の自分の存在が
今、ここにある自分の意味に
問いかけてる事を言う。
「そか・・・・・・」
矢口は箸を置く。
「考え過ぎですよね」
「でも、悩んじゃうよね。
 矢口もたまにあるよ。
 本当に私が笑ってるのは
 いつなんだろうって
 分からなくなる」
「矢口さんもですか?」
笑顔がかわいい人。
どんな話題でも真っ先に
明るい声で笑い
リアクションして
トークを進めて行く矢口。
「仕事だからさ、するって事もあるじゃん。
 プライベートですっごい嫌な事あって
 全然笑えない時なのに
 ラジオだったりとかさ
 DJ.マリーだったりさ
 来ちゃってたら
 やるしかないし」
「辛くないですか?」
「うーん、辛くないようにしてる。
 自分の時間ってのを大事にしたり
 リラックスできる時間だとか
 ちゃんと笑える時間を
 意識的に作ってるよ」
「そっかぁ」
「他人に相談する事も結構解消法になるよ。
 あっ!だけど、、圭織はダメ!!
 めちゃめちゃ長くなるから!!」
「あははっ」
笑えてる。
たぶん矢口さんの気づかい。
ちゃんと笑えてる気がする。
私の笑顔を見て
矢口さんは優しい笑みを浮かべた。
ここにいた。
私を思ってくれる人が。
650L.O.D:01/12/09 12:20 ID:IHaL4uG+
「じゃ、バイバイ」
最終列車で帰る彼女は私に手を振る。
歩き出そうと振り向く背を見て
私は声をかける。
「矢口さん!」
「?」
「待ってください!」
タクシーはまだ来ない。
「どうしたの?」
「・・・・・・」
無言で抱き締める
「え!?」
「このままじゃ人間不信になりそうでした。」
「・・・・・・よっすぃ」
「はぁ・・・・じゃぁ、おやすみなさい!」
断ち切るように私は離れた。
矢口はドギマギした顔で
去っていく。
腕の中に残る彼女の感触。
人の温もりを感じたのなんて
いつ以来だろう。
651L.O.D:01/12/09 12:21 ID:IHaL4uG+
生まれて
生きてきて
愛を感じた事なんて
もう覚えていない。
勉強や仕事に何もかも流されるように
単調な生活を繰り返すだけ。
自分にノルマを課して
一歩一歩、長い石段を踏むように
少しずつ死に近付くだけ。
そんな生活が嫌になった。
私は悪夢から脱出する。
「はぁあーいっ、よしこよぉん!」
自分を偽らずに。
「キャァーー、よっすぃ!」
「かっこいい!」
自由に。
自由に。
自由に。
例え、その場所が与えられた場所だとしても
押し込まれた空間だとしても
常に、自分を持ち続ける事。
そして、愛す事。
きっと自分を見てくれる人はいるから。
自分を大切に思ってくれる人はいるから。
自分の殻に閉じ篭らずに
アグレッシブに。
与えられるだけではなくて
ちゃんと与えて。
そうすれば、きっと伝わるから。
私は、箱の外の世界を見た。
自分じゃない自分を見た。
いつの間にか見失いかけてた自分を見た。
私はモーニング娘。吉澤ひとみ。
その前に、1人の女の子として
1人の人間として
ここに存在してる。
そう、あの箱の外に
もう1人の私がいるように
私は、大勢の中の1人ではなく
私は私。
652L.O.D:01/12/09 12:30 ID:IHaL4uG+
私は目を覚ます。
裸でベッドの上に横たわる2人。
私の顔を見て
微笑むマリ。
「ヒトミちゃん、笑ってたよ」
「楽しい夢を見たんです」
「どんなの?」
「もう1人の自分にまた会ってました」
「いいなぁ、マリも見たいな」
そう言いながら、身体をくっつけてくる。
私はそっとおでこにキスをする。
「愛してます」
「マリもだよ」
この世界もまた
混在するもう一つの世界に過ぎないとしても。
「ずっと一緒にいてください」
「離さないから」
誰かを思う事は同じ。
そして、皆、生きている。
「・・・・・・」
重ねられた唇。
例えば、毎日がつまらないと感じたり
意味がないと感じても
案外、フとした事で
それは開けていったりするもの。
毎日を生きるために
少しの笑顔と、愛を。

fin
653L.O.D:01/12/09 12:37 ID:IHaL4uG+
『nightmare』終了カキコ

意外と速く終わっちゃいました(死)
見切り発車で始めたため
中編程度にはしようと思ったんですが
楽しんでもらえたでしょうか?
どうもエロ一辺倒は苦手ですね。

次の作品は、長編なんでちょっと設定とプロットを練るために
しばらくの間、リク短編でもやりますか。
リクエスト(カップリング、シチュエーション)よろしく
654名無し募集中。。。:01/12/09 15:18 ID:PfRxfaUp
ごまなちこんで丸顔トリオ
逝ってきます
655(((☆_☆)/:01/12/09 18:43 ID:jDhOJ3Jb
なんか意外なんがええなぁ〜



ん・・・



そやな・・・


スズキアミダシテクダサイ
656L.O.D:01/12/09 19:00 ID:0XHLLh/5
ソレハイガイッテイウカ・・・・・萎
657名無し募集中。。。:01/12/09 19:14 ID:nmLBnQ/p
意外なごまゆう希望!
658ねぇ、名乗って:01/12/09 19:19 ID:bbwYFte0
新メンのエロ見てみたいかな…
あんま見たことないんで…
はい…
659ねぇ、名乗って:01/12/09 19:38 ID:3REJb9mO
ここにもエロ小説以外のものを創作する人がいたんですね。
660ねぇ、名乗って:01/12/09 20:19 ID:vfPzp9vd
nightmare良かったっス〜
『OLやぐたん…』もそうだったけどエロに始まり感動で終わるとゆう書き方がウマー

リクエストとしてはソニンたんを出してもらえたら嬉しいのれす…
661リクエストは:01/12/09 21:13 ID:6nszAoCa
吉澤ひとみの芸能界美少女百人ギリ

吉澤ひとみと中谷美紀のジゴロ対決

無茶ゆーたらあかんわな・・・(w
662L.O.D:01/12/09 21:55 ID:0XHLLh/5
>>661

その吉澤は短小包茎の早漏だったりするんすかね?(マテ
663名無し娘。:01/12/09 22:11 ID:SjN7J4gC
>>L.O.D
『nightmare』ありがとう。

アンタはこう言う話上手いなぁ。チョット尊敬。
出てくる娘。に対するアンタの「愛」を感じるよ。
マンセーレスばかりだと飼育っぽいから漏れは不満でも書くか(w

・リカが独り立ちする過程をもっと詳しく書いてくれ。アレじゃ分からん。
・おな趣味エロをもっと…(w

あと、短編陸はアンタなんであえて「悪意ある娘。」で。
664L.O.D:01/12/09 22:43 ID:0XHLLh/5
モーニング娘。所属事務所破産の文字が新聞に踊る。
ワイドショーやらなにやらが事務所におしかけ
トップアイドルのこれからを問う。
今回の破産劇、その真実は
その当人、モーニング娘。達にあった。

とあるテレビ局の楽屋。
13人に増えたモーニング娘。だけに
昼時は戦争になる。
楽屋前に置かれたダンボールが部屋の中に運ば・・・・・・
「!!?」
「「いただきまーす!!」」
全員が一丸となって襲いかかってくる。
逃げ出したマネージャーの目は
部屋の隅でもくもくと何かしてる
後藤の姿が映った。
(後藤が御飯の時にはしゃが・・・・・え?)
そう、彼女の膝の上にはすでにお弁当があり
半分ほどなくなっていたのだ。
(・・・・あいつ、勝手に食べてたな)
呆れ顔で部屋の戸を閉める。
後藤はそんな事を意に介さず
二個目のお弁当に手を出した。
そこへやってきたのは、安倍なつみ。
「ごっつぁーん?」
「んぁ?」
「マヨネーズあるかい?」
「うん」
コクリとうなづいて脇のバッグから
業務用マヨネーズを取り出す。
後藤さん、自宅から持ち出しっすか?
安倍はそれを受け取ると
急いで、待っている紺野の元へと駆け寄る。
すっかりベタぼれらしく
サラダが隠れるくらいに
マヨネーズをかけてあげてる。
「ごっちん、タルタルソースー」
吉澤が来て、醤油をかける前の白身魚フライを指差す。
「はいはい」
「二個目のお弁当?」
「へへぇ」
「太るぞー」
「よっすぃもほっぺ、プニプニだぞー」
665L.O.D:01/12/09 22:43 ID:0XHLLh/5
食事が終わって
紺野がマヨネーズを抱えて持ってくる。
「あの、、、ありがとうございました」
「マヨネーズ好き?」
「はい、、、」
「後藤も好きなんだぁ」
ゆるーい笑顔で笑い合う2人。
「あ」
後藤はつぶやく。
紺野の口元についたマヨネーズを見つけ
手を伸ばして、拭い取り
その指を舐めてしまう。
「ついてたよ」
「あ、ありがとうございます」
ペコリと頭を下げて
他のメンバーの元へ行く。
新しい弁当に手を伸ばそうとして
手を止めた。
安倍の視線が痛かった。
はっきりと、しっかりと
こっちを見てた。
まるで見せつけるように
紺野を抱き寄せ
キスをする。
目を離せない。
(・・・・・・甘いもの食べたい)
気にすれよ!
666L.O.D:01/12/09 22:57 ID:0XHLLh/5
仕事が終わって
安倍は紺野を抱き締めながら言う。
「どこ行く?」
「え?」
「お腹空かない?」
「あの、、、、」
「お好み焼きでも食べにいこっか?」
「え、、、あ、、、」
抱きかかえて連れ去っていった。
メンバーはそれを見届けるしか出来ない。
「惚れてるね」
「うん」
「ごっちんはもう帰るの?」
吉澤の膝の上にだっこされた石川が
せっせとお菓子を整理する後藤に聞く。
「うん、帰る」
「御飯食べに行こうかなーって思ってたんだけど」
「うちらが!」
「行くのれす!」
辻と加護が挙手。
2人は仕方ないという。
「行ってらっしゃーい」
「やったぁー、梨華ちゃんのおごりー」
「おごらないよー」
「ありがとうなのれす」
「梨華ちゃん太っ腹!」
「よっすぃまでぇ」
いちゃつくなよ、いしよし。
後藤は脇目も振らず、お菓子を整理する。
「じゃねー、ごっちん」
「うん、ばはーい」
残された飯田と矢口と保田は見た。
5期メンの残り3人がひそかに
4期メンの後をつけていくのを。
「まぎれこんでおごってもらう気かな?」
「さぁ?」
「ま、いいわ。私達も飲みに行くわよっ!」
保田がはりきる。
ゲイバーっすか?
「電気、よろしくね」
「んぅー」
「ばいばーい、ごっつぁん」
「ばいばい」
パンパンになったバッグ。
ポンと叩いて、うなづく。
「よし」
おいしょとかけ声かけて
ショルダーバッグを担ぎ上げる。
そうとう重そうだが
怪力後藤は楽々と持っている。
「帰るか」
電気を消された楽屋。
思春期の女の子の匂いと
保田臭。
それに、食い散らかされた
数多くのお菓子や食べ物の入り交じった
複雑な香りが漂っていた・・・・・・
667名無し娘。:01/12/09 23:01 ID:SjN7J4gC
アヒャヒャヒャヒャ L.O.D最高ッ!ネタかよ(w
こう言う期待の裏切り方って大好き。
これからも読者を「良い意味」で裏切り続けてくれ。
668L.O.D:01/12/09 23:07 ID:0XHLLh/5
暗闇。
安倍は紺野を抱き締めようとする。
「ダメ、、、、です」
「いや?」
「、、、、、」
「うちは、こんなに紺野の事好きなんだけどなぁ」
拒めず
キスを受け入れる。
重ね合わせた唇から漏れる吐息。
唾液が混ざり合う音は卑猥で
そのせいで顔が赤くなる。
「ね、しよ?」
「、、、、や」
首に手を添えられ
ゆっくりと優しく
横たわらせられ・・・・・・!?

  ガッ!!

「ハッ!」
「!!?!」
見事なまでに顎を捕らえた拳撃。
紺野の丸っこい手が
安倍の脳を揺らした。
グッタリとなり
崩れ落ちてくる身体に
紺野は押しつぶされる。
「安倍さん!?」
目は開いてるが、完全に白目を剥いて
イッてしまっていた。
「しっかりしてください、、、、、重いです、、、、」
身体を入れ替え、なんとか抜け出すと
紺野は1人でベッドに向かった。
669L.O.D:01/12/09 23:22 ID:0XHLLh/5
一方、後藤真希は
「ぐー・・・・・・」
口の端からイカの薫製を出したまま
爆睡していた。
散らかった部屋の中の
80%はおそらく
食べ物のゴミであろう。
コンビニの弁当。
ペットボトル。
ポテトチップス。
ポッキー。
ありとあらゆるゴミがあった。
テーブルの上のクッキーしけってるし!

夜中3時。
意識が回復した安倍は
大人しく紺野の横に寝ていた。
初めて会った時は
どんくさそうな子って感じだったけど
ある日、彼女がホームシックになって
一本の電話がかかってきて
真夜中にここへやってきて
抱き締めてあげた時
すごいかわいくて
惚れていた。
柔らかい頬。
暖かい身体。
全部が好き。
なにかを食べてる顔はとくにかわいくて
思わず、いっぱい食べさせたくなる。
食べてる幸せそうな顔を見るだけで
嬉しくなれた。
彼女の手を握る。
さっき自分を失神KOした手。
プニプニした赤ちゃんのような
かわいらしい手・・・・・・
670L.O.D:01/12/09 23:38 ID:0XHLLh/5
翌日の昼。
紺野がとことことやってきて
後藤の前に立つ
「?」
今日もまた早弁してた後藤は顔を上げた。
(顔貸しなとか言われるのかな?)
絶対、ありえないだろ。
「あの、、、、」
「なに?」
「後藤さん、お料理上手ですよね?」
「んー、まぁね」
「今度、なんか作ってきてもらえませんか?」
「いーよぉ」
食べてくれる人がいると
作りがいもあるってもんだ。
「じゃ、石川も作ってくる!」
「トイレ味の焼そばだけはかんべんなのれす」
「そ・・・」

  ガタッン!!

椅子が激しく倒れる音。
全員がそっちを見る。
安倍の肩が震えてた。
「なっち・・・・・・?」
矢口が声をかけるが
なにかにはじき出されるように
楽屋を飛び出していく。
紺野はそれをポカーンと見てる。
小川に手を引っ張られるも
何が起こったのか分からない。
「追わないと!」
「へ?」
「安倍さんは、あさ美が後藤さんに料理を頼んだからっ!?」
そこまで言われて、やっと気付いた。
追わなきゃ。
671L.O.D:01/12/09 23:40 ID:0XHLLh/5
探す
いない
探す
いない
どこにいるのだろう
空いてる楽屋
暖房の脇
椅子の下
自販機の影
カップジュースの受け口
掛け軸の裏
どこにもいなかった。
「はぁ、、、、はぁ、、、、、」
疲れて、廊下で座り込むと
目の前にはトイレ
余力を振り絞り開けてみると
中からすすり泣く声
「安倍さ、、、、、、ん?」
「ひっく、、、、うぅ、、、、、、」
「ごめんなさい、、、、私、にぶくて、、、、、」
「うぅっく、、、、、、んぅ」
「安倍さんの作った御飯食べたいです、、、、
 帰ったら、作ってくれますか?」
「紺ぢゃぁーーーん」
泣き顔の汚い安倍は
個室から出てくる。
紺野は胸で抱き締めた。
「ラヴ、ラヴ。ですね」
「・・・・・・里沙ちゃん」
あの伝説のポーズを繰り返してみせる新垣を
末恐ろしげな目で見る高橋。
こいつに怖いものはないのか?
672名無し娘。:01/12/09 23:41 ID:SjN7J4gC
>>L.O.D

途中だったんだね…失礼した。ゴメソ
673ぼの ◆BONOl.Ok :01/12/09 23:46 ID:hdcLNpJn
ありゃ、新作に突入してましたか・・・

紺野最強伝説?
674L.O.D:01/12/09 23:48 ID:0XHLLh/5
数日後
局内で大きな鍋を暖める後藤の姿を何人もの人が見た。
それは楽屋に持ち込まれ
弁当の御飯の上にかけられた。
麻婆豆腐。
後藤真希お手製だ。
っていうか、作ってそのまま手でもってくるにしても
直径30センチオーバーの鍋はデカすぎるだろ。
「おいしいね、紺ちゃん」
「うん」
後藤はそう言い合って、笑う安倍と紺野を見る。
仲むつまじい風景である。
「ごっちん、この豆板醤がちょうどいいっしょや」
「ありがとうございました、、」
「ううん、よかったよー、喜んでくれて」
と答えながら、後藤は4個目のお弁当に
麻婆豆腐をかけていた。

そう、、、事務所は局でまかないきれなくなった
モーニング娘。の食費を負担。
それも追い付かなくなって
破産に追い込まれたのである!
「事務所どうなるんですか?」
「わからんべさ・・・・・・」
そんな中でも後藤だけはしっかり食べていたのであった。

end
675L.O.D:01/12/09 23:53 ID:0XHLLh/5
『eat is happy?』でした。
リク短編となると途端にネタに走りたくなるのです(w
前、いしよしリクされて、保田に怒られてトイレの個室に
閉じ篭った石川の所に吉澤が来、キスの次をしようとして
石川が『しないよ』って言うなんての作ったな・・・・・・

>>672
いや、本当はあの後は寝て、明日書こうかなとか思ったんですけど
どうしても仕上げたくなってしまったんです。
こちらこそすいません。。
676名無し募集中。。。:01/12/10 01:05 ID:4daqwAKN
L.O.Dの書くごまゆうがみたい。
特に中澤卒業前後の背景で。
677(((☆_☆)/:01/12/10 05:54 ID:iw56Vis7
次は漏れのリクエストかな!?
678名無し娘。:01/12/10 07:56 ID:Na9aMWeU
素晴らしい!新餓鬼にワラタ。
L.O.Dさんんのいしよしがみたいです・・。
679654:01/12/10 07:57 ID:L+04FBml
リクしたものです。
ご馳走様(w
満足の行く作品でした。
その後どうなるんでしょうか?(w
680L.O.D:01/12/10 08:26 ID:/vs3+lO2
>>677
鱸網言うたら、ふるさと惨敗しか思いつかないっす(泣

新メンエロは5期メン決定翌日にごまこんで短編やったなぁ。
マターリ待っててください。
681(((☆_☆)/:01/12/10 09:35 ID:aOfTfztg
ワガママ逝ってゴメソm(__)m(涙

じゃあ、よすぃーにマツーラやメロソの柴田とかソニソが絡んでくるのが読みたいです。(仕事中にこんな事ばかり考えてる)
682名無し募集中。。。:01/12/10 11:03 ID:QRlPPRXL
みっちゃんにマツーラきぼんぬ。
683ねぇ、名乗って:01/12/10 11:31 ID:lYXR/bwx
684L.O.D:01/12/10 19:46 ID:v5yMqHLI
ごまゆうでごっつい切な系行きます。
頭から終わりまで完全に思い付きました。
685L.O.D:01/12/10 21:46 ID:v5yMqHLI
『Please cigarette & one more kiss.』

楽屋に漂う薄紫の煙。
それは、あの人も吸っていたタバコの匂い。
慣れた手付きで箱の底を叩き
また一本取り出す。
保田は見兼ねて
その手を掴む。
「もう、、やめな」
訪れる静寂。
誰も言葉を発しない。
バタバタと歩き回っていた辻と加護も
ただそこに立って、
その様を見ていた。
「・・・・・・」
後藤は言われた通り
取り出したタバコを箱に戻して
保田が見終わったらしき雑誌を取る。
うまく噛み合わない歯車。
全員がその痛みを味わっていた。

最初は、反りの合わない2人だった。
マイペースな後藤。
新メンとして入ってきたからには
ちゃんと教育しなきゃと躍起になってしまう中澤。
市井を挟み、時には飛び越え
ぶつかってしまう事も多々あった。
それがいつから、もっと別な物に変わっていったのだろう。
686L.O.D:01/12/10 21:46 ID:v5yMqHLI
2001年の正月ハロプロの打ち上げ。
会場を抜け出して、
後藤は階のロビーでジュースを飲んでいた。
「なんや、こんな所におったんか」
廊下の影から顔を出した中澤。
片手にはビールで少し酔っぱらっていた。
「タバコ吸うてもいいか?」
「うん」
カチッというライターの音。
「吸う?」
悪戯顔で、一本取り出し差し出した。
後藤は驚いて、中澤を見る。
「ん?」
「だって、後藤、未成年だよ」
「姉ちゃんのとか隠れて吸うてるやろ?」
「・・・・・・」
その指でタバコを挟む。
本当の事を目の前の人は知らない。
まだ一回もタバコなんて吸った事ない事を。
言ったら、怒られるかな?
けど、リーダーが薦めてるんだし
まぁ、いっか。
火が着いて
見よう見まねで吸ってみる。
先の方がオレンジ色の眩い灯を放ち
紙が焦げていく。
中澤はフゥーっと息を吐き、
ビールを一口含む。
「やっぱライブ終わった後の酒はうまいなぁ」
ポツリと言った後、タバコを握る後藤の手を掴み
唇を奪った。
「んぅっ・・・・・・」
「ふ・・・・・・」
ポップとタバコの苦味が
後藤の口の中を満たしてく。
あまりビールは得意じゃない。
687L.O.D:01/12/10 21:47 ID:v5yMqHLI
「ごっちーん」
「どうしたの?」
酔っぱらって、甘えてる。
優しく頭を撫でる。
「今日のごっちんかっこよかったでぇ」
「そう?」
「惚れるとこやったわ」
「へへっ」
「ほんまはもうとっくの間に惚れてるんやけどな・・・・・・」
「え?」
中澤は微笑む。
まるで、その言葉が嘘だったとでも言わんばかりに。
だけど、言葉を失った後藤を見る目に嘘はなかった。
「好きやねん」
「・・・・・」
まるでさらわれるようにスッと抱かれ
後藤はそれを拒まなかった。
「今夜、抱いてもええか?」
何がどうなのか分からない。
この人はモーニング娘。のリーダーで
娘。を一番愛してて
怒ると恐くて
お酒が大好きで
タバコも好きで・・・・・・
中澤裕子だ。
「嫌か?」
「嫌じゃないけど・・・・・・」
「女の子同士が嫌ってわけやないやろ。
 吉澤ともよーしてるし・・・・・・
 こないだ石川ともしてたやん。」
「じゃぁ、裕ちゃんだって・・・・・」
指が唇を塞ぐ。
「好きなんは、後藤だけや。
 愛してほしいねん・・・・・・」
潤んだ瞳は
男なら誰もがその場でOKしてしまいそうなほど
淫微な感じがして
後藤は自分の気持ちに整理がつかないまま
夜を迎える。
そう、この夜から2人は始まった。
688L.O.D:01/12/10 21:48 ID:v5yMqHLI
「はっ・・・・・ふあ」
「裕ちゃん・・・・・・」
「そこ・・・・ええわ・・・・・・」
暗闇の中で
白い肌が重なりあう
ピチャピチャと卑猥な音をわざと立てる後藤の舌。
手で口元を押さえるも
漏れる声を止める事も出来ず
中澤はされるがままになる。
「裕ちゃん、かわいいね」
「ごっちん、、、うまいなぁ、、、
 吉澤に仕込まれたんか?」
「聞かないで」
中澤が身体を少し起こし、胸に触れる。
年の割によく育った身体のラインを
やわらかく撫でていく指が
背に行った時
後藤は身体をしならせた。
「っ・・・・・・」
「感じてるん?」
「おかしーよね、、こんなとこ?」
「ええやん、かわいいで」
そのまま、上にいる後藤を抱き寄せて、
キスをしながら、背中を撫で回す。
「ひぅ・・・・・・」
「・・・・・・」
「はぁんっ・・・・・・」
「柔らかいなぁ」
力強く抱きすくめられ
後藤は逆に力を抜き
中澤に身体を預ける。
いつも吉澤としてるお互いを攻めるだけのセックスじゃなくて
ただ抱き締められるだけで気持ちいい。
これが大人なのかなと思う。
689L.O.D:01/12/10 21:49 ID:v5yMqHLI
休みの日にデートした。
仕事が終わったら、後藤の家で飲んだりした。
たまに中澤の家で後藤が料理してあげた。
やっぱり焼き魚は好きで
お母さんから一匹もらって
焼いてあげると
おいしそうに食べてくれて
すごく嬉しかった。
そんななにげない事が
積み重なっていく・・・・・・
それだけ思いは深まり
後藤にとって中澤はとてもとても
大切な人になっていって
毎日が中澤を中心に回り出した時だった。

中澤の卒業発表は本当に突然の事で
矢口はボロボロ泣きながら
中澤の身体を叩くし
辻、加護も声をあげて泣いていた。
みんな、みんな、泣いていた。
そんな中で中澤は1人1人を抱き締めた。
後藤の番
胸の中でつぶやく
「ズルいよぉ」
「すまんな」
離れる身体。
後藤は崩れ落ちる。
今、気付いた。
何度も重ね合わせた肌。
数えきれない位
耳元でささやかれた
『愛してる』の一言が
もう聞けなくなると思った瞬間
身体の力が全て抜けた。
失った。
今、一番大切な人が
この手から離れてく。
吉澤や保田が後藤の肩を抱く。
涙で霞む目に映ったのは
同じように泣いていた中澤の顔。
噛み締める唇に滲んだ血が
沁みて少し痛かった。
690L.O.D:01/12/10 21:54 ID:v5yMqHLI
流れてく日々を止める事も出来ず
卒業の日を迎える。
まだもうちょっとミュージカルの練習があって会えるけど
今日が事実上のお別れ。
会場に行く前に後藤はコンビニの前の自販機で
中澤が吸ってるタバコの箱を二個買った。
楽屋。
中澤はいつものようにもういた。
「おはよーございまーす」
「おはよ」
荷物を置いて
さりげなくタバコを取り出す。
「ねぇ」
中澤にかけた言葉。
「なん?」
「火貸して」
「なににつか・・・・・」
テーブルの上の後藤の手の中にある箱を見つけ
中澤は言葉を止め、バッグの中から
ライターを取り出した。
安そうな100円ライター。
「誕生日、ジッポ買ってあげればよかったかな?」
「あー、欲しいなぁ。でも、あれ、手入れ面倒くさそうやろ?」
「娘。命って入ってるの」
「彫りでか?」
「うん」
「なんや、暴走族みたいやな」
「似合ってるよ、裕ちゃんに」
そんな会話をしながら
後藤が中澤の手から受け取ろうとしたライターは
クルッと回って、中澤がホールドする。

  シュボッ

揺らぐ赤い炎。
「今回だけのサービスや」
後藤ははにかみながら
中澤がつけた火で
タバコを吸う。
「ったく、なんで同じ銘柄吸うねん。
 どっちのか分からなくなるやろ」
「いいじゃん・・・・・・」
その後はなにもなかったように誰もが振る舞う。
ライブが始まる数時間前の事。
691L.O.D:01/12/10 21:55 ID:v5yMqHLI
その日から後藤真希は笑顔を忘れた。
代わりにタバコを吸うようになった。
何かを待つ時も
いらついた時も
手持ち無沙汰な時
ポケットの中には
タバコと100円ライター。
身体に悪いと思っていても
誰も止められない。
それがなきゃ
彼女は彼女で無くなりそうな気が
みんなしているから。

end
692L.O.D:01/12/10 21:59 ID:v5yMqHLI
どうでしたでしょうか?
693(☆_☆):01/12/10 22:45 ID:/a0jyuJT
さすがに、短編でも綺麗にまとめますなぁ〜
好きな人と同じ銘柄のタバコを吸いたいか。
何か分かる気がする・・・

儂も大昔にそんな事もあったなぁー(しみじみ
694ロバート:01/12/10 23:05 ID:t5cQgEdX
age
695名無し募集中。。。:01/12/11 00:55 ID:yTfLKyST
凄げー!!!
ごまゆう希望したものです。
ありがとう〜!!感動っす!!
昨日MUSIXで一年間の思い出はで・・・後藤が中澤がカエル食べて泣いた事っていってて又萌えた。(W
この二人の絡みって少ない気がするけど・・・意外と後藤ってソロでラジオ出たりTVとか出た時中澤の話が多いんだよな。
作者さんの創造凄いよ。ホント。マジでありそう(W
そんな事ないだろうけど(W
696:01/12/11 03:20 ID:snz/1Q/e
http://choco.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1006121438/l50
上記スレ>>66-74の続き

を書いてみてほっすい!
他人の設定をどう料理してしまうのか興味あり。
697L.O.D:01/12/11 07:10 ID:SZ/10MUg
>>696
なんか、書きづらい雰囲気やなぁ(藁
まぁ、リレーとかものすっごい好きなんだけどね。
698:01/12/11 07:54 ID:snz/1Q/e
>>697
だいじょぶ。
誰も見てないってあのスレ(w
699L.O.D:01/12/11 21:22 ID:61pu8m65
今、私の手元には一冊の本がある。
まだ店頭にも並んでいない貴重な物と言えるだろう。
それ以前にこの本はもっと重要な意味を持っている。
著者は中澤裕子。
出版は宝島社。
ある種、娘。時代から持ちつ持たれつの関係ともいえる
両者が手を組み、出した本のタイトルは
『Underground Morining musume。』
そう、これは長い間
モーニング娘。を引っ張ってきた
中澤裕子本人が書いた告白本である。
モーニング娘。にまつわるあらゆる話題が
ここには詰め込まれており
売れる事は間違いないが
それは、モーニング娘。自体の抹消さえ
孕んでいたと言っても過言ではない。

この本の最初の一文は
こう綴られている。

『モーニング娘。は決して仲良くはなかった』
700L.O.D:01/12/11 21:23 ID:61pu8m65


  パシンッ!!

シンと静まった楽屋に響いた張り詰めた音。
叩かれた矢口は赤くなった頬を押さえ
睨み付けた。
「ギャァギャァうるさいんだよっ」
安倍はそう言い放ち、
それ以上の怒りは足下にあった
椅子にぶつけた。
大きな音を立てて
壁にぶつかる椅子。
すぐ真横に座ってた飯田は怯えた目で
彼女の行方を追う。
反対側に座ってた後藤は
少しだけ市井の方に身を寄せる。
保田は矢口に声をかけ
中澤はただそれを傍観していた。
石黒が抜けた後のモーニング娘。
安倍のイラつきは誰が見ても尋常ではない。
それは、ふるさとの失敗
後藤の加入、ラブマの成功
それらが織り成す
安倍のメインの座を揺るぎが
不安となって
吐き出されていたのだった。
市井は立ち上がり
ドアを開け放つ。
いたくなかった。
「いちーちゃんっ!」
後藤がその後を追ってこようとしたが
彼女は目の前でドアを閉める。
走っていた。
駆け込んだのは、トイレ。
「っかは・・・・・・!!」
さっき食べた弁当を全部吐き出す。
気持ち悪い。
ソロデビューの話が事務所から来ている。
あんな状況の娘。からは切り離して
音楽に専念できるという。
それは、今の市井にとって
ものすごく宝石のように
輝いてみえたが
後藤の事が気になった。
まだ意外と幼い後藤は
自分を頼っていたし
そうしないと
あの空間の中で
押しつぶされてしまうのではないかと
思ってしまうから。
701L.O.D:01/12/11 21:24 ID:61pu8m65
映画『ピンチランナー』がクランクインして
しばらくした頃の事。
安倍が走るシーンが終わって
肩で息をしてた。
「お疲れ」
市井は声をかける。
安倍は曖昧な笑顔を向けた。
その時だった。
「近寄るな、デブ。臭い。」
生理で具合悪そうにしていて
それまでバスの中で寝ていた
最高に不機嫌な後藤が
次のシーンを録るために現れながら
かけた言葉。
スタッフも他のメンバーも凍りつく。
震える安倍の身体。
「なっち!?」
思い出される幼き頃の記憶。
靴を隠され
教科書をよごされ
いじめられた日々。
トラウマとなったまま
かさぶたになり
治ったと思い込むようにしていただけの事。
後藤の一言が安倍を壊す。
ウザったそうに髪をかき上げ
台本を置いた姿は
今まで見せた事がないほど
狂気を帯びていた。
702L.O.D:01/12/11 21:24 ID:61pu8m65
メンバーの増加
市井の脱退と
後藤にも様々な不安がのしかかる。
その内に神経は研ぎすまされた刃と化していく。
「ごとうさ・・・・・・」
自分が教育係にあたってる加護は完全無視。
辻はとりあえず放置。
同じ年の吉澤はガンを飛ばして寄せつけない。
石川にいたってはあからさまにいじめた。
新メンと同じ部屋は絶対に嫌がり
コンサートや地方の部屋は
先輩メンバーの仲の悪くない人と
必ず一緒になった。
保田が風呂から上がり
ベッドを見ると
ロクに着替えもせず
眠っていた。
(寝てる顔は可愛いのにね)
「後藤!」
「・・・・・・」
「寝るんだったら、着替えな」
「ん・・・・・」
「風呂入るんだったら、まだあったかいから」
肩を掴み、揺らす。
嫌がり、反対を向く。
「ちょっと!」
「うるさいなぁ!!」
手を振払われ
保田はカッとなって
後藤の頭を殴った。
「痛っ!」
「どこの誰がそんなわがままに教育したのよ!
 紗耶香が見たら、呆れるわよ。」
「・・・・・・」
涙が溢れだして、止まらない。
自分でも何にイラ立ち
反抗してるのか分からなかった。
ただ、新メンと馴れ合う事で
市井の匂いが娘。から消えていき
そして、自分の存在する意味すら
消えてしまいそうに感じたから。
「とりあえず、着替えるなり
 風呂入るなりしなさい」
保田の言葉が心に響く。
後藤は素直にうなづいた。
703L.O.D:01/12/11 21:25 ID:61pu8m65
その後の娘。は中澤がいたおかげで
誰もぶつかる事なく保っていたのだが
それも崩れる日が来る。
飯田はずっと眠れなくなっていた。
仕事があるし
寝なきゃいけないけど
布団に入っても
寝つけなくて
また起きてきて
絵を描いていた。
描いてはまた、新しいキャンバスを取り出す。
内々に告げられた次期リーダーの話と
ソロデビューの話。
自信がない。
その言葉が思い浮かぶと
すごく頭が痛くなってきて
カウンターに置いてある
ケースから二錠、薬を取り出して
水を注ぎ、飲み干した。
しばらくすれば、頭痛は治まる。
筆を置いて、ソファに寝転がる。
このまま眠ってしまったら
どんなに楽だろうか。
手の中に、まだケースはあって
その鎮痛剤とは別の薬が入ってる。
こないだ病院に行ってきて
もらったらばっかりだから
新しいのがいっぱいあった。
それを飲んで、
このまま楽になってしまえたら
そう、思いながら
少しだけ目をつぶった。
704L.O.D:01/12/11 21:28 ID:61pu8m65
本はそこまでしか書かれていない。
本当に、中澤裕子が知る娘。の隅々が描かれた本は
何のために描かれたのか。
中学生だろうがなんだろうが
深夜まで働かせるような
労働環境の悪い事務所のため?
それとも、可愛らしいアイドル モーニング娘。に
夢を抱くヲタクや子供の幻想を壊すため?
もしくは、そんな娘。をずっと見る事しか
してこなかった自分への罰なのかも知れない。

あなたは、この本を読みますか?

end
705L.O.D:01/12/11 21:32 ID:61pu8m65
即興で書いてみた『悪意ある娘。』です。
後藤より、最初のなっちの方がちょっと恐い気がします(藁)
で、やっぱ例によって後藤を救ってしまったんですが
悪意あるという事で、カヲリーダーに逝っていただきました。
死んでません。

しかも、本のつづりが間違ってる。
706(☆_☆):01/12/11 22:13 ID:l3NAedhk
その本読んでみたい!
しかし、なへ宝島社なんや!?
707L.O.D:01/12/11 22:20 ID:61pu8m65
たぶん、ビバ彦さんの愛が届いたから(謎)
これ、読み返してみたら
なんか裏We are・・・・みたいやね。
708 ◆MCq/r89. :01/12/11 23:09 ID:M+A9G0aS
何だか現実のように感じられて怖いです(誉め言葉ですよ)。
コンスタントに作品を提供してくれるL.O.Dさんに感謝です。
ところで、題名は?
『悪意ある娘。』それとも『Underground Morning musume。』または
『モーニング娘。は決して仲良くはなかった』
709L.O.D:01/12/11 23:19 ID:61pu8m65
『Underground Morning musume。』で。
710トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/12 12:18 ID:7L8oxV5M
3日ぐらい見てなかったらナイトメアは終わってるわ
新作短編シリーズ始まってるわでビクーリしたよ(w
711L.O.D:01/12/12 20:57 ID:KGSiF49M
新作のネタがない(死)
712ねぇ、名乗って:01/12/12 21:18 ID:aU6Api2F
辻・加護でマターリしたやつを
713(☆_☆):01/12/12 21:23 ID:EtvGo7GY
それじゃ・・・鱸(略
714L.O.D:01/12/12 22:11 ID:KGSiF49M
ニコニコとした笑顔で
ライトの中に現れたその子を
誰もが今世紀最後のアイドルと信じて疑わなかった。
90年代を代表するあのプロデューサーが
最後の歌姫を選びだすために行った
オーディションで頂点に立ち
そして、今、ここにいる。
鈴木あみ。
新曲の名は、『Be Together』
初登場オリコン1位。
デビューからのシングルの順位を見ても
彼女がこの世紀を締めくくると言って
過言ではない。

同じ日、CDを発売したグループがいる。
モーニング娘。
同じASAYAN出身だが
こちらはシャ乱Qつんくプロデュースの
ただの素人の集まりにしか見えない。
歌謡曲テイストが他の曲の隙間を縫って
調子よかった今までのシングルに比べ
新曲『ふるさと』は勢いがなく
オリコン5位に終わる。
沈痛な表情の娘。達をカメラは捕らえるが
すぐにシャットダウンされ
部屋からメインを張っていた安倍の
泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
誰もがこのグループの終わりを
予感している。
715L.O.D:01/12/12 22:12 ID:KGSiF49M
その日のASAYANの収録後
鈴木あみは私服に着替え
帰宅するところだった。
視界の中に映る安倍と矢口の姿。
「お疲れさまでーす」
明るい声。
はつらつとした元気のよさが売りの
彼女らしい。
それに対し、安倍は鬱々とし
耳で聞き取れないほどの小声で
何かをつぶやいていた。
スッと立ち上がり
サングラスをはずす矢口。
「いやぁ、すごかったねぇーーー。
 オリコン1位だよぉーー」
「へへっ」
突然、ほめられ、愛想笑いを浮かべるが
安倍の事が気になる。
かといって声もかけれないし
矢口に聞くこともできない。
というか、名前知らないし。
「まっ、この世界から消えてもらうんだけどね」
腹に感じた激痛。
あみの身体はくの字に曲がり
崩れ落ちていく。
「よっと」
矢口は肩でそれを押さえながら
安倍を呼ぶ。
「なっちー、助けてーー」
「・・・・・・」
まるで屍のようになった安倍は矢口の肩にもたれかかる
あみの身体をまるでぬいぐるみでも掴むような仕種で
ムンズと掴み、引きづっていく。
自動ドアが開き・・・・・・
警備員の目。
「いきなり倒れちゃってっ!、、、、これ、うちの車なんで運びます!!」
開けたドアに投げ入れる。
素早く閉め、一気に加速。
あっという間に車は見えなくなった。
716L.O.D:01/12/12 22:13 ID:KGSiF49M
目を覚ましたその場所は
案外小奇麗な部屋で
間接照明の淡い光は
大人の色気を放っていた。
身体が動かず、揺らしてみる。
ガタガタっと椅子の足が床に打ち付けられる音。

  ガッ!!

拳で頭を殴られ、鈍い音がする。
「うるさいでぇ、静かにし」
高そうなブランデーをラッパ飲みで口をつけるのは、中澤裕子。
記憶があるのは、矢口が話し掛けてきたとこまで。
「!!?」
目の前のソファで座っている安倍の惚けた顔。
それに、キスをするのは矢口真里。
その矢口の顔を手で寄せ、ブランデーを口移しにする中澤。
「なっ、、、、なんで」
「あ、起きたの?」
「ガッタンガッタンやってたがな」
「しらなぁーい、矢口、なっちとキスしてたし」
「ほんまなぁ、なっちは私の物やのに」
「矢口のだもん!」
「まぁ、そんななっちを壊してもうた
 世紀末のアイドルさんには
 ちょっとお痛しちゃいましょ」
「やめてよ!なに、なんなの!?
 ASAYAN!!?」
錯乱する頭。
「ビデオでも録る?」
「裏で流してまうか?」
「確かあみちゃん、ロリータビデオとかって
 流れてなかったっけ?」
「小室さん、ほんまロリコンなんやろ?」
好き勝手に言うモーニング娘。
中澤の手の中でビデオのレンズが反射して
ギラリと鋭い光を見せる。
「じゃ、あみちゃんも毛なかったりするのかな?」
「なに、剃らせてるんか?」
「確認するのだぴょーん!」
717L.O.D:01/12/12 22:14 ID:KGSiF49M
倒錯の世界。
安倍を愛すが故に
中澤と矢口は
あみを捕らえ
壊していく。
キス。
愛撫。
快感と屈辱。
痛み。
疲労。
繰り返される行為。
意識は薄れていき
何が本当なのか
今、どこなのか
何がどうなってるのか
分からなくなっていく。

「あ」
矢口は小さな声をあげた。
「ん?」
中澤は力の入らないダッチワイフ状態の安倍から
唇を離して、振り向いた。
「動かなくなっちゃった」
「そっか」
「死んだかな?」
「失神してるだけちゃう?」
胸に押し当てられた耳。
トクントクンと脈打つ心臓。
「あ、生きてる生きてる」
「そやろ、そう思ったんや。
 裕ちゃん、てんさぁーい」
「裕ちゃんばっかりずるいよぉ
 私にもなっちと・・・・・・」
眠たい。
身体も動かないし
寝たら、こんな悪い夢
きっと終わる。
おやすみ。
718L.O.D:01/12/12 22:15 ID:KGSiF49M
1年後
私はテレビの前で彼女達を見た。
無意識にスイッチを消す。
学校にも行かず
外にも出ず
引きこもりのような日々。
彼女達から離れたいのに
彼女達は大きくなって
こんな場所まで襲いかかる。

あの後、その夜の事を知った小室さんは
私を気持ち悪がり
レコーディングも一切立ち会ってもらえず
プロデュースそのものを打ち切られ
私の芸能生活は終わっていった。

覚えていますか?
私は、鈴木あみ。
20世紀最後のアイドル。
そして、モーニング娘。に買った勝者。
だけど、もういません。
なぜでしょうか?

私は本当は負けたんですか?
719L.O.D:01/12/12 22:16 ID:KGSiF49M
『lost child』でした。
って書いちゃったよ!
鈴木あみだよ!!
しかも、ブラックだよ!

総合スレの方、、、、注意書きよろしくお願いします(藁)
720(☆_☆):01/12/12 22:32 ID:q077QWlv
さよなら網〜誤・・・don't need say good bye(泣
721トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/13 03:00 ID:Bx1Y6/7o
またえらくダークですな
722L.O.D:01/12/13 23:32 ID:ZyK+i/no
『愛しい貴方へ』

「おいしい?」
この子とのデートはいつも食事。
「おいしいれすっ!」
「よかったぁ。雑誌で見つけてさぁ
 絶対、ののを連れてきてやろうと
 思ってたんだよねっ」
へへぇっーと弛んだ笑顔には
クリームがちょこんとついていて
手を伸ばして、それを舐める。
「仕事、どう?」
「忙しいですよぉ」
「ミニモニ。がんばってる?」
「新曲が出るんですよっ」
スプーンを持ったまま、探そうとバッグを漁り始める姿は
まるで幼児のようで苦笑いしながら
スプーンを取り、半分ほど食べ終わった
大きなパフェのガラスの器の中に
入れてやった。
涼しげな青のガラスは
窓の向うの歩く人並みをも映す。
「これです」
MDウォークマンを渡されて
イヤホンをつける。
「矢口、、、、がんばってるなぁ」
「リーダーはいっつもしんどい、しんどいって
 言ってるのれすよ」
「まぁ、あの年でミニモニ。はなぁ・・・・・・
 私は恥ずかしくてできねぇや」
「そうだ、保田さんからお手紙を貰ったんれすけど
 ののは読めませんでした。」
これまた立派な筆文字で
中学生の中でも
日本語識字能力の低い辻では
読めない事うけあ・・・・・・
「私も読めねぇ」
「・・・・・・」
「やっぱ絵はヘタだね」
手紙のはじっこに描かれた似顔絵。
しかも、筆で。
そして、その下には
今、辻の目の前にいる彼女の名前がつづられていた。
市井紗耶香。
723L.O.D:01/12/13 23:33 ID:ZyK+i/no
出会いはすれ違いから始まった。
たった一ヶ月の期間。
モーニング娘。という中にいただけ
辻もまだおとなしくて
周りの人が微妙に怖かった。
加護が一緒にいれば、別だが。
市井も新メンには話かけづらくて
新曲のレコーディングでも
アドバイスぐらいしか出来なかった。
そして、市井卒業。
再び顔を合わせたのは
同じくライブの時で
後藤の頭を撫でてる市井に飛びついてきて
いつものふにゃふにゃの笑顔で笑ってた。
話はその数日後から始まる。

後藤の携帯に一通のメール。
「あ、いちーちゃんからだ」
収録の合間で
お菓子を食べながら待っていた。
ヒマつぶしにはちょうどいい。
メールを開いてみる。
『辻の番号教えて、、、、?』
「なんでだろ?」
なんで、辻の番号?
すぐに返事が返ってくる。
『おいしいイタリアンの店見つけたんだ。
 誘いたいんだけども』
『なら、私を連れてってよー』
『後藤、スパゲティ、音立てて食うもん』
『・・・ふーんだ』
『今度のオフ遊んでやるから』
『やったぁー!じゃ、辻に聞いておいてあげるから』
『はいはい、ありがとな』
ちょうどよく外で遊んで帰ってきた辻を呼び
市井が御飯をおごってくれると話すと
考える間もなく首を縦に振った。
まぁ、心配することもない。
相手は元モーニング娘。だ。
724L.O.D:01/12/13 23:33 ID:ZyK+i/no
で、そのメールの相手、市井はというと
机に置いておいた携帯がメロディを鳴らす。
メールじゃない。
知らない番号。
しかも、ワンコじゃなくて
ずっと鳴ってる。
通話ボタンを押すと
元気な声が聞こえてくる。
『あのぉ、辻れすけどぉ』
「おっす」
『御飯おごってもらえるんですかぁ?』
(後藤の奴、話を曲げたな)
「そうなんだよ、すごいおいしい店見つけてさっ!
 辻がよろこびそうなパフェがあるんだっ」
しゃべってる内に驚きは高揚に変わり
一つ一つの言葉が跳ねるようになる。
『えっと、いちーさんは時間とか、、、』
「だいじょぶ、辻の休みに合わせてくれればいいから」
『はいっ、オフになったら
 絶対、絶対行きましょうねっ』
「うん。じゃぁねぇー」
電話が切れて
ほっと一息つく。
おいしい物となれば
見境のない辻でよかった。
これが吉澤辺りだったら
どう誘えばいいか分かりはしない。
いや、誘う事自体がナンセンスなのだが
市井の気持ちは止まらない。
あの子に伝えるために。
市井の目は携帯をジッと観てた。
今、さっきこの向こうにあの子がいた。
きっとあの時見せた笑顔と
同じくらい笑ってたと思う。
市井の頬もにやけてた。
725L.O.D:01/12/13 23:34 ID:ZyK+i/no
その日の夜中。
ベッドの上でうつらうつらしてた市井に
また電話。
「誰だよー、、、」
今度は矢口真里。
「はぁーい?」
『ちょっと紗耶香、どういう事だよぉ』
「あ?」
『おいらじゃなくて、辻!?』
「あー」
『辻かよ!』
「矢口、おもしろくない、、、」
『いや、そうじゃなくて
 辻だけ誘うなんて
 なんかあるんでしょーー!』
「別にぃ」
『そうかいそうかい、矢口には
 なんにも言ってくれないのかい。
 ・・・・・・はい』
電話口がザワついてる。
というか、明らかに安倍の声が聞こえた。
しかも、その他に複数の人間。
『紗耶香!今度は辻なの!?』
市井は耳から携帯を離す。
狛犬が吠えている。
「今度はってなんだよぉー。」
『他のメンバーにはみんな手つけておいて
 私だけじゃないのよっ!!』
怒る論点間違ってますよ、保田さん。
726L.O.D:01/12/13 23:35 ID:ZyK+i/no
『さーやかぁー、辻はねぇー
 ほんとめんこいよねぇーーー』
いきなりのライバル出現!?
どうも酔っぱらってるらしき安倍が
保田から電話を奪ったらしい。
「う、うん」
『かわいがってあげてねぇ、、、、、
 なちおパパは見守っててあげるから』
「ありがと、、、」
『圭織に変わるね』
「待って!」
市井は思わず叫ぶ。
『?』
「充電切れそうだから、圭織にはよろしく言っておいて!」
『あ、うん、分かったよー
 じゃぁねー』

  プチッ

「・・・・・・危なかった」
充電など切れそうもない。
当然である。
充電器につけたまま話してるんだから。
ただ圭織の説法を聞きはじめると
朝を迎える気がしたので
回避したのである。
賢明な策と言えよう。
携帯を置いて
枕を抱き寄せ
天井を眺めてた。
何度、この名をつぶやいたか。
「辻、、、希美」
ちっちゃくて
かわいらしい。
妄想も有り余って
枕にキスをする。
そんな夜。
727L.O.D:01/12/13 23:37 ID:ZyK+i/no
新作長編になります。
たぶん前人未到の新カップリング『ののちゃむ』
敢えてここは、『さや』ではなく『ちゃむ』で。
728ねぇ、名乗って:01/12/13 23:56 ID:DA3+PBY3
ののちゃむ・・・確かに珍しい組み合わせやね
期待してます
729トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/14 00:20 ID:SRAkzeEp
「いちのの」でなく「ののちゃむ」っスか…イイネ!
長編ということで期待はするけどもまあ無理せずにナ
730名無し娘。:01/12/14 01:05 ID:KwNGR3dp
>>L.O.D
『Underground Morning musume。』ありがとう。

今、時間無いんで感想は後日に…。
731レク:01/12/14 01:17 ID:1da+FIDY
(・∀・)イイ!!
苦笑いする市井に萌え
732グランド:01/12/14 04:19 ID:Czq6ZVIg
名作の予感・・・・
733(☆_☆):01/12/14 06:05 ID:cc41ONvk
新作おめでとう〜☆
ちゃむ×のの×かおがどう絡んで逝くか楽しみ。
734:01/12/14 17:02 ID:mpnezLVu
なんか、事実が作者のあとを追っているような。
明日香やら、タバコやら…

>作者
アナタハナニモノデスカ(w
735L.O.D:01/12/14 17:03 ID:YvyRQf7W
次の日、辻は飯田に呼び出され
恐る恐るやってくる。
(またふくろうの話をするんれすか、、?)
使ってない楽屋。
正座して待ってる飯田。
「つーじー、そこに座って」
「あい」
「あのね」
(き、来たのれす)
「御飯はおいしいよね」
(御飯のお話れすか?)
「雀さんも御飯が好きなの」
(雀さんのお話なんれすか!?)

3時間後
ぐったりとしてる辻がいた。
「・・・・・・」
「ね、だから、知らない人には
 付いていっちゃダメって事」
「・・・あい」
「よし」
ようやく解放。
フラフラと歩いてく。
(お腹が空いたのれす)
とりあえず楽屋に戻れば
自分のバッグにお菓子は入っている。
他のメンバーは誰もいなくて
バッグにとびつくと
そこには、一枚の紙切れ。
「ごちそう様 バーイ、、、なっち。」
736L.O.D:01/12/14 17:04 ID:YvyRQf7W
ダンスレッスンが終わって
終電にほど近い列車に揺られ
途中で買ったハンバーガーに手をつける。
寝ている人や酔っぱらってる人がいっぱいいる。
フと思い出す市井との約束。
御飯につられて返事したが
思えば、市井の事をあまり知らない。
イメージとしては
 ごっちんのおねーちゃん
 おばちゃんのライバル
 矢口リーダーのお友達。
・・・・・・うーん。
いまいち実情が掴めない。
会ったところで、なにを話せばいいのか
ボーっと考えてる内に
一緒に買ったシェイクが温くなるのでは、と
ハッとして、いそいで袋を開けると
紙パックのシェイクはまだ冷たくて
乾いた喉には心地よい。
「まー、いっか」
そうつぶやいて、もう一度
ハンバーガーにかぶりつくのであった。
737L.O.D:01/12/14 17:23 ID:YvyRQf7W
その日はミニモニの収録で
矢口がいた。
辻は思い切って聞いてみる。
「あのぉ」
「んー?」
「市井さんってー」
「紗耶香?」
「どんな人なんですかぁ?」
「どんな人、、、、、どんな人、、、
 明るくって、ロマンチストで
 強がりで、泣き虫で・・・・・」
「・・・・・・」
「気になるの?」
「いや、御飯食べに連れてってもらうのに
 辻、市井さんの事、なんにも知らないから」
矢口は柔らかく笑い
辻の頭をポンと叩く。
「だいじょーぶ、やさしいよ」
「怒ったりしないですか?」
「辻がいい子にしてればね」
「へぇー」
「ちゃんと挨拶はするんだよ」
「あいっ」
加護の所に戻っていく辻の後ろ姿が
鏡に映る。
そして、ため息一つ。
理由がある。
市井紗耶香、その人は
メンバー全員が愛した人。
738L.O.D:01/12/14 17:24 ID:YvyRQf7W
明るくて、はつらつとした部分と
大人しく、熟考する部分。
動と静を合わせ持ち
また、儚げで・・・・・・

見た人を魅了する力が
卒業する前の市井からは出ていたが
それはメンバーも同じ。
彼女の少女性、格好良さ
それぞれに違う部分を
1人の人間の中に見
愛していた。
市井もきちんとそれに答えてくれた。
矢口もその1人
年下なのに、たまに姉のようで
しゅんとしてると妹のよう。
矢口は矢口なりに彼女を愛してたのだ。
だけど、彼女を抱いた事はない。
キスまでは許しても
その後の事を許してはくれなかった。
それは誰もが同じ。
だから、少し悔しい。
辻は市井に選ばれた。
愛されてる。
きっと、市井は今度、辻に会った時
彼女に思いを伝えるだろう。
その時、辻はなんて言うのだろうか。
チラッと辻を見た。
加護と一緒になって、
ミカをいじめてた。
「・・・・・・」
幼い。
辻は彼女の愛を受け止めれるだろうか。
739L.O.D:01/12/14 17:28 ID:YvyRQf7W
>>734
一応、ただの妄想なんですけどねぇ。

今日の更新はまだまだ続きます。。
740(☆_☆):01/12/14 18:10 ID:cc41ONvk
阪神星野新監督よりL.O.Dさんの素顔が気になる今日この頃
741L.O.D:01/12/14 19:40 ID:Gb15r0Z6
急用にて、1時頃になる可能性大・・・・・・
742名無し娘。:01/12/14 23:05 ID:RsIV4l7A
>>L.O.D
『Underground Morning musume。』感想。

・きっと現実の娘。は、仲良しグループでは無いだろうからねぇ。
どこぞの本にも書いてあったが、なっちは「敷居の高い女」らしいから
壊れた時はカヲリムより怖いだろうなぁ(w
・なっちの逆襲も見たかったぞ。センター取った者同士の確執とか。

新作も頑張ってね。
743レク:01/12/15 00:36 ID:a1T9vEDs
ふくろうの話・・・
娘。物語の今月号読んだんですか?
744L.O.D:01/12/15 00:39 ID:9U3Dtc+I
オフは突然やってくる物である。
雑誌の取材がキャンセル。
辻は携帯を手に取る。
「かけんの?」
矢口がニマニマしてる。
もう約束してから二週間が経っている。
「・・・・・・」

  カタッ

携帯は机の上に置かれて
辻は楽屋を出ていってしまった。
「ののっ?」
加護が開け放たれたドアの外を見た時には
もう辻の影もなかった。
「紗耶香の気持ちも分かるけど
 辻としてもよく知らない人と
 御飯食べに行くのはねぇ・・・・」
保田が溜息まじりに言う。
「私、行っちゃおうかなぁー」
雑誌をパラパラとめくっていた後藤が
本当に今、思い付いたようにつぶやいた。
「ダ、ダメだってば!」
矢口が短い腕を伸ばして、主張。
「なんでー?辻が行かないってんだからさぁ。
 いちーちゃんと御飯食べたぁーい」
「ダメッ!」
石川はそのやり取りから目を反らすと、
椅子に座り、少し沈んだ顔の
吉澤を見つける。
彼女は後藤を見てた。
(ははーん)
石川は後藤の肩を叩き
「まぁまぁ、ごっちん」
顔を掴んで、吉澤へ向ける。
「今日は彼と御飯に行ったら、どう?」
「んー・・・・・・」
「行こ!!」
745L.O.D:01/12/15 00:40 ID:9U3Dtc+I
石川の意を汲んでくれたのか
吉澤はとびっきりの笑顔で
後藤に腕を絡める。
「お腹空いちゃってさ!」
「んじゃぁ、よっすぃーに付き合う」
「行ってらっしゃーい」
明るく見送ろうとする石川。
すれ違い様、耳元で囁く。
「ありがと」
2人の姿が見えなくなって
矢口は石川の脇腹を殴る。
「よくやった、石川っ!」
「あうっ!」
「あ、ごめん、痛かった?」
予想以上に顔を歪めたので
慌てふためく矢口。
「ううん、大丈夫です」
いつの間にか誰ともなく無言になり
沈黙の後、飯田がポツリと言った。
「紗耶香なんて、もういない人なのにね
 ・・・・・・おかしいよね」
いつまでも素直に市井を思い続けれる
後藤に自分達を重ねてる。
心のどこかで
もうあんな恋は二度と
出来ないじゃないか
って疑ってた。
746L.O.D:01/12/15 00:41 ID:9U3Dtc+I
タレントクロークのソファに座って
ポケットに入ってた小銭で買った
オレンジジュースを飲む。
その気持ちは辻にとって
初めての体験である。
例えるなら
デートに誘うため
女の子の家に電話をかける
男の子みたいな
甘酸っぱくて
もどかしい緊張。
それは、心地よくて、怖い。
不思議な感じ。
最初は何を言おう。
どうやって切ろう。
思いは加速して
会った時の事なんかも考えてしまう。
堂々巡りの悩みは尽きない。
そこに通りかかるは
さっき送りだされたはずの
後藤と吉澤。
「あー、、のの」
吉澤はやっぱり辻が心配で
声をかけてみた。
案の定、不安そうな表情を浮かべてた。
「怖い?」
「・・・・・・」
「いちーちゃんは、待ってるよ」
あんな事を言ってた後藤が
辻の横に座って
その肩を抱き寄せた。
「後藤が保証する。
 いちーちゃんはきっと
 おいしいもの食べさせてくれる」
「・・・・・・」
俯いた辻の顔。
おいしいものと聞いても
元気を出さないなんて
そうとう病んでいる。
吉澤は後藤の裾を引っ張り、耳を借りる。
(市井さんにうちらも行っていいか聞いたら?)
(よっすぃ、ナーイス)
後藤がその場を離れる。
吉澤は短い吐息を吐いて
自分に笑った。
(なにしてるんだろ)
後藤に思いを打ち明けた事はなかった。
後藤が市井を未だに思ってる事も知ってるから。
性格が為してるものなのか
なんてお人好しなんだろう。
747L.O.D:01/12/15 00:45 ID:9U3Dtc+I
『おぅ、後藤』
「あんねーオフになったんだけどぉ
 辻がね、1人じゃ不安だっていうのね」
『・・・・で、後藤も一緒』
「よっすぃも」
『分かりました、場所はね・・・・・・』
「うん、OK。待ってるから」
走って戻ると、辻は少し元気を取り戻してて
吉澤とつつき合って、笑ってた。
「ね、辻、一緒にごはん行く?」
「ごっちんとよっすぃと一緒?」
「うん」
「行くっ」
後藤は吉澤の耳に顔を寄せる。
(ありがと)
悲しげな笑みを浮かべる吉澤。
そのありがとうは、何に対して述べられたのか
後藤が市井に会える事に対するなら
それは、喜ぶ事は出来ない。
だけど、不安は次の一言で少しだけ
霧散した感じが
吉澤にはした。
(いちーちゃんが喜ぶよ)
後藤の目は、はしゃいでる辻を見ていたのだった・・・・・・
748L.O.D:01/12/15 00:47 ID:9U3Dtc+I
今日の更新終了。
749L.O.D:01/12/15 18:33 ID:z21q2YhZ
とある大きな通りの一角にある
コ−ヒ−の専門店に入る三人。
「ここれすかぁ?」
アメリカンスタイルの少し古ぼけた木目が
なんともいい味を出してる壁やら天井やらを見回す辻。
「ううん」
「?」
思い掛けない後藤の返答に
辻はメニューを見ようとした目を
後藤に向ける。
「後藤さぁ、店の場所忘れちゃって
 無駄に歩くのもやだからさ
 その店、教えてくれた人呼んだんだ」
「ふーん」
疑う事もなく辻はまたメニューを見る。
「飲み物頼みなよ、のの」
「えーっとぉ」

20分ほど過ぎた頃
自動ドアが開いて
細身の女の子が入ってくる。
真っ白なハットに
鮮やかな青色のシャツを合わせて
さっそうと歩けばかっこいいのに
よたよたと迷いながら歩く。
後藤が席から身を乗り出し
手招くと、その人は気付いたようで
こっちに向かってきて
辻の前に座った。
「よっす」
メロンフロートのスプーンは氷とアイスの
微妙に美味しい所に刺さったまま。
「あっ」
辻はキョトンとした顔で
彼女を見てる。
750L.O.D:01/12/15 18:33 ID:z21q2YhZ
「おいしそうだなぁ、私もなんか飲むかな」
ハットを脱ぐと、前会った時より
伸びた明るい茶色の髪の毛が
サラリと流れて
肩口にかかる。
吉澤から受け取ったメニューを開く。
その先に見える顔。
「あーっ、アイスカフェラテ」
「かしこまりました」
市井はこちらへ向き直り
誰となく問う。
「雑誌キャンセルになった?」
「うん」
「そうです」
「・・・・・・」
「って、辻ちゃん、それ食っちゃって
 パフェ食べれるの?」
「・・・・・・」
「の、のの?」
「あー・・・・」
「・・・・・?」
「大丈夫れす」
後藤が伏し目がちに笑う。
見てしまったから。
あの日、自分に笑いかけてくれたのと
同じくらいの笑みを
いや、それよりももっと
優しい笑みを浮かべる
今も忘れれない人が目の前にいる。
だけど、素直に笑う事が出来た。
それは、後藤が知らない誰かに向けられた笑顔じゃなかったから。
悔しいけど、市井が辻を好きなら
応援しようと思えるから。
「どしたのさぁー、辻ぃ。
 笑って、笑って!」
ちょっと考える風に小首を傾げて
悩む仕種。
「辻はかわいいなぁ」
市井の一言。
辻の顔がちょっとほころぶ。
かわいいと言われていやな子は
そうそういない。
751L.O.D:01/12/15 18:34 ID:z21q2YhZ
その後も、後藤と吉澤はうまくフォローしながら
市井と辻の会話をスムーズにつなげてこうとして一苦労。
市井が連れていってくれた
イタリアンのお店はすごくおいしかったし
デザートのジェラートもすごく上品な味で
石川でも連れてきたら
喜ぶんじゃないかと思った。
別れ際、市井はハットをかぶり直しながら、聞く。
しっかりと辻を見ながら。
「美味しかった?」
「あいっ」
「よかった」
「じゃ、いちーちゃん、
 うちらもう時間だから」
「おぅ、気をつけてな」
「いちーちゃんこそね」
「ありがとうございましたぁ」
歩き出す三人。
市井は手を振っている。
辻は笑顔で手を振り返してる。
しばらく歩いて
後藤が振り返れば
彼女の背中が遠くに見えた。
まるで、それは今の自分と彼女を
揶揄してるようで
少し悲しくなった。
752トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/16 02:19 ID:pR8/l/xd
複雑に絡み合うそれぞれの想い…面白くなってきたね
753(☆_☆):01/12/16 10:33 ID:THzI8J4w
大食い王・ののたんのハートをキャッチした、いちーちゃんに今後の動向に期待。
しかし、心配する圭織の存在も無視出来ない。
754L.O.D:01/12/16 19:00 ID:aMSInk8P
浴室に響く心地よさ気な鼻歌。
市井の脳裏に浮かぶのは
かわいいあの子の笑顔だけ。
目の前にパフェがやってきた時の
ニマニマーっとした顔や
ついてたポッキーを自慢げに食べる辺り
なんかお子様っぽくて
またそれもいじらしい。
手を伸ばして、シャワーの栓を捻る。
シャンプーが流れ落ちてくその一方で
目をつぶりながら考える。
といっても、考えても考えても
あの子への思いは溢れ出すばかりで
どうしようもできない。
立ち上がり、浴槽に身を沈める。
ちょっと熱めのお湯。
「うぃー・・・・・・」
手で湯をすくい
顔にパシャッとかけ
長くなった髪を
後ろに持っていく。
濡れた髪はオールバックのようになり
ポタポタと水滴を背の方へと垂らした。
「言ってみようかな・・・・・・」
風呂から上がる。
タオルで身体を拭く。
自分の部屋へ行く。
携帯電話がそこにある。
ジッと見てみた。
ちょっとした操作で
あの子へつながる。
あの子の声が聞こえる。
かけてみよう。
出てくれるだろうか。
仕事中かな。
ワンコだけ。
仕事が終わったら
かけてくれるかも。
市井が携帯を握り締める。
指はボタンを押す。
コール音。
755L.O.D:01/12/16 19:00 ID:aMSInk8P
『紗耶香ーーーーー』
「裕ちゃぁーん」
・・・・・・中澤かよ。
『どないしてん?』
「いや、、、相談が、、、」
『なに?』
「時間あるの?」
『もう終わって、飲んでるところよっ』
「あー、、、んじゃ、、、、
 あのね、私さぁー、、、」
『やっと裕ちゃんへの愛に気付いたって?』
「違っ!」
『そやなぁ、紗耶香のファーストキスを奪って以来
 どこかでけじめをつけなあかんかな、と
 思ってた、うちも、うんうん』
「・・・・・・」
『で、そちらの親御さんにはいつ会いに行けば
 ええんやろか、、、、?』
「違うよ、裕ちゃん。私が好きなのは、、、辻」
『つぢ?』
「そう、辻」
『辻、、、、、、、なんでうちが辻に負けんねん!!』
「負けるとかそういう問題じゃ」
『辻なんか色気も知性もないただお子様やで!』
「言い過ぎだよ、、、、」
『そんなんやったら、キスの時
 歯ガツーン当たってまうで!!』
「そうかもね」
一瞬、ためらいがあって
中澤の声は変わっていた。
『そんなに好きなんか?』
「うん」
『あいつ、ごっつうといんよ』
「知ってる」
『付き合っても、そんなデートとか行けへんよ』
「かもね」
『ま、うちは止めへんよ』
「なっちですら止めなかったもんね」
『あれはミスったわ』
笑いが起きる。
電話の向こうの中澤はどんな顔をしてるんだろう。
痛いほど、愛されてる事が分かってる。
756L.O.D:01/12/16 19:01 ID:aMSInk8P
だけど、愛されてたからあの時も
自分の夢へと踏み出せた。
だから、今も愛してるからこそ
見ていてほしい。
自分の愛への第一歩を。
「今から、告ろうかなって思うんだ」
『そか』
「今日、一緒に飯食いに行ったんだけど
 なんかもうほんとかわいくて仕方なくて
 抱き締めたくてたまらなかった」
『・・・・・・』
「このままじゃ好きっていう気持ちで
 心が破裂して、死んじゃいそうだから
 言うだけ言ってみようかなって」
『、、、がんばりや』
妙に落ち着いた中澤の声は
心の熱を奪っていく。
「うちら、うまく行くかな?」
『あの子は、、、かわいい子やで』
「知ってる」
『まだ殴られた事ないやろ』
「え・・・・・・?」
『一発で意識飛びそうになるんよ』
「・・・・・・」
『喧嘩だけはせんようにな、、、ブッ』
切れた。
なんつー不吉な助言なんだ。
最初から最後まで実に中澤らしかったが
逆にそれが市井にしてみれば嬉しくて
そっとうなづいて
辻にかける。
1回
2回
3回。
757ねぇ、名乗って:01/12/16 22:39 ID:2hp1OB6v
最高です。
758L.O.D:01/12/16 23:33 ID:cK04s0wZ
辻は自分のベッドの上で
飼い犬のマロンと遊んでいた。
「へへぇーっ、気持ちいい?」
毛のあいだをくぐり抜けていく指。
じゃれあって、上に乗ってきたりする。
「おもーい、ののと同じになってきたのかーーー?」
鼻っつらに落ちてる携帯電話が震えてる。
「んしょ」
体勢を直して
通話ボタンを押す。
「はーい、辻でーす」
『市井だけど、、、』
「あ、こんばんは」
少し緊張した市井の声。
マロンはかまってもらえないのかと
去っていってしまう。
『今日のお店、どうだった?』
「すっごいおいしかったです」
『そっかぁ、あのさ・・・・・』
「?」
『実は、今日、辻に言いたい事があったんだ』
辻にはなんのことだか分からない。
仕事の事で怒られるわけがないし
元メンバーの市井さんが何を言いたいのか
なんだか分からなくて
受け身も取れていない。
『私さ、辻の事が好き、、、なんだよね』
(スキ?)
理解不能。
彼女はスキって言った。
スキってなに。
そして、この気まずい沈黙は?
スキ。
スキの意味は?
好きって事?
すき焼きのすきじゃないだろうし
ファンとして?
「ほぇ?」
気の抜けた声を出してしまった。
759L.O.D:01/12/16 23:34 ID:cK04s0wZ
『なんつーたらいいのかな、、、
 かわいいし、、、その、、、、
 付き合いたいっていうか、、、』
付き合う。
それは、彼氏と彼女になるって事。
んー、だけど、市井さんは女の人だから
彼女と彼女になるってわけだ。
『辻は、、、私の事、どう思ってる?』
どう。
どう思ってる。
彼女は先輩。
やめていった先輩。
OB 。
かっこよくて
輝いてた
元モーニング娘。
青色7のメインもやってたし
プッチモニのメインだった。
そして、ごっちんが今も好きな人。
「どう・・・・・・」
『あー、そうだよね、あんま話した事もないもんね』
苦笑いしてる。
昼間会った彼女の顔を思い出す。
笑顔がかわいかった。
色白で
涼しげな目。
だけど、笑うと顔全体から
元気が溢れてた。
『んじゃぁ、友達になろっ!』
「友達っ」
『うん、友達』
「はいっ」
『私もさ、一応、元メンバーだしさ
 なんか相談とかしてよ。
 ヒマだから、いつでもOKだしね』
「はい」
『遊びに行ったりしような』
「あのぉ」
『ん?』
「またおいしいお店連れてってください」
『おぅー、辻のために色々探しちゃうぞ』
「お願いしますー」
『うん、わかった。じゃ、また今度な』
「はい、おやすみなさーい」
電話が切れても、市井の声が耳の奥で聞こえる。
優しいお姉さんがもう1人増えた。
そんな感じなのだろうか・・・・・・
760L.O.D:01/12/16 23:36 ID:cK04s0wZ
本日の更新終了。

というわけで、ひとまずなところまで来ましたが
やっぱりすんなりとは付き合えないわけで。
761グランド:01/12/17 03:38 ID:QJ2/owAZ
ののちゃむ萌え〜
762トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/17 03:56 ID:Yo1AWoo2
好きと言われていろいろ思案をめぐらすのの萌え…
763(☆_☆):01/12/17 06:10 ID:VTKkFBsr
いちーちゃんは、炉(略・・・・・
764ねぇ、名乗って:01/12/17 23:27 ID:2XYufd6U
やっぱうまいな・・・・・・。
765ねぇ、名乗って:01/12/17 23:28 ID:2XYufd6U
sageます。すいません。
766L.O.D:01/12/18 09:20 ID:1JHTl9CU
今日は更新できるといいな・・・・・・
767L.O.D:01/12/18 22:02 ID:cAjDA1sy
夏になり、おいしい食べ物が出てくる季節。
市井紗耶香は今日もまた
愛しいあの人がお昼御飯なに食べたか気になっていた。
(弁当2個に、お菓子何個食ったんだろー、、、、)
そんな食生活をしていれば、
当然のごとく、太るわけで。
携帯電話の裏のプリクラは撮る度に
確実に太ってきている。
「後藤も結構いったけど
 つ、、、ののもすごいなぁ」
言い直したのは、1人の時だから
顔見てなんてとてもじゃないが言えない。
「事務所から食べるの禁止なんて言われなきゃいいけど」

予感適中!!
シャッフルの衣装合わせの後、辻と加護は別室に呼ばれる。
待ってたのは女マネージャー。
「分かってるわよね」
神妙な顔でうなづく2人。
さすがにアレは2人とも焦った。
加護は3人祭の腹出し衣装の腹の出具合に驚き
辻はさらしを巻くと、吐きそうになったという・・・・・・
「さすがにね、ちょっと今の体重じゃ
 健康にもよくないし、痩せなさい」
「あい・・・・・・」
「お菓子禁止!買い食い禁止!」
「・・・・・・」
「分かった?」
「あい・・・・・・」
しょぼくれて、部屋を出ていく。
溜息をつくマネージャー。
仕方ないのだ。
この仕事のスケジュールでストレスが溜まるなど当たり前。
ましてや、成長期のあの子達が食べ盛りなのも分かってるが
ミニモニとして矢口の隣に立った時なんか
なおの事太って見えてしまう。
これは見られる事を仕事にしてる芸能人としては
かなり痛い。
「はぁ、、、、」
マネージャーの苦悩は続く。
768L.O.D:01/12/18 22:36 ID:cAjDA1sy
楽屋に戻ってきた辻に石川が声をかける。
「ののー、これ残ってるんだけどいる?」
「あー・・・・・・」
おいしそうなクッキーの箱。
一瞬、手を伸ばしたが
加護に引っ張られ
あきらめる。
「いらないのれす、、、」
どよーんとした空気は次第に楽屋まで広がる。
「空気が、、、重い」
はしゃがない辻、加護。
逆にはしゃぎづらい安倍、矢口。
その雰囲気にオロオロしだすリーダー飯田。
「で、なんて言われたの?」
それまで雑誌を読んでいた保田が
突如として切り込んできた。
全員の視線が集まる。
「な、なによ」
「おばちゃぁーん」
「えぐっ、、、ひぐっ、、、、、」
しまいには泣き出す始末。
「ちょっとどうしたのよー」
「お菓子ダメってぇーー、、、、」
「・・・・・まぁね」
「お弁当じゃお腹空くーーーー」
「でもさ、いい機会じゃない。
 このままじゃミニモニやってても
 デブモニって言われるわよー」
「い、いやなのれす!!」
「絶対いやや!」
保田、脅しに成功。
こうして辻と加護のダイエットは始まったのだが
反対に誘う口実がなくなったのは、市井。
769L.O.D:01/12/18 22:37 ID:cAjDA1sy
ダイエットをしてるなら
どっかに御飯。なんてわけにもいかず
かといって、遊びに行くのも
たかがしれてる。
どうすればいいのやら・・・・・・
市井は床にゴロゴロと転がりながら
考える。
(うーん・・・・・・)
手頃なのはカラオケ。
映画というわけにもいかないだろう。
というか、絶対辻だったら、寝る。
ゲームセンターなんかは場違いだし
バッティングセンターは仕事場の近くになんて
きっとないであろう。
決定。
カラオケ。
(うっし)
携帯でメール。
今度のオフはカラオケに行こう。
しばらく返事がない。
きっと仕事中なのだろう。
(ま、いっか)
ベッドの上に携帯を放り投げて
市井は部屋から出ていった。
770トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/19 02:35 ID:46y++y4N
更新おつかれさんです。ちゃむの暇人ぶりが笑えるな…
771L.O.D:01/12/19 10:59 ID:824uoF/F
「で、だ」
数日後。
仕事の合間の空いた時間。
うまい事待ち合わせして
市井は辻と遊ぶ事になったのだが・・・・・・
「なんであんた達もいるの?」
「あんたってなにさぁー!」
「なっちとまりっぺだってカラオケいきたぁーいぃ」
「・・・・・・はいはい」
保護者?同伴。
安倍と矢口まで一緒に来てしまった。
市井はさっさと辻の手をとり
ギュッとつないでやった。
(あら?いやだぁ、いきなりそんな、、、)
(なっち、今回はさっきの話通りの作戦だよ)
(まかせときなさーい)
後ろでこそこそしゃべってるバカコンビはいいとして
市井は辻としゃべる事に必死である。
「ダイエットがんばってる?」
「えと、、、うん」
「お腹空くよな?」
「そういう時は、、、、」
ポケットから出てきたのは、酢こんぶ。
「これ食べてろって、、、」
市井は酢こんぶを見て、後藤を思い出す。
一時期、取り憑かれたようにこれを食べていた。
なにが原因だったのか分からないが
本当に四六時中、移動中も仕事の合間も
あらゆる空間、あらゆる時間
これを食べていた。
「がんばれ、、、」
「あい、、、」
いきつけのカラオケはすぐそばにあって
メンバーの顔を見れば、すぐに
いつもの部屋に通してくれる。
「さーて、紗耶香もいる事だし」
「なに、歌おうかなぁー」
安倍と矢口はチラッと市井を見て
また目を本に戻す。
772L.O.D:01/12/19 11:05 ID:824uoF/F
「なんなんだよ、もー」
辻を見ると、なんだか嬉しそうな顔をしてる。
「お、どした?」
「市井さんの歌ひさしぶりに聞くから」
「へへーん、一応、やめた後だって
 歌ってはいたからねぇー」
流れてくるのは、真夏の光線のイントロ。
マイクは4本。
『ほら、辻も持ちな』
「へ?」
『コーラスぐらいできるっしょ?』
「うん」
『AH- 青い空が微笑んでくれた
 ドライブなんてグッドタイミング
 こんな日もあるのね      』
安倍と矢口の見事なコーラス。
一緒にやってた時より
もっと伸びやかで艶やかな
綺麗な声になっていた。
『AH- いいことが重なりすぎてるわ
 雨男の彼が口笛なんて吹いて(FU-)』
『それでもいいっか!(イヤーン)
 ついて行くわ
 ちょっぴり3枚目だけど    』
身体が動き出す。
やっぱり歌は楽しい。
辻の顔を見る。
一生懸命コーラスを入れてる。
市井もこの曲ではハモリだから
一緒にリズムをとってみる。
『AH-』
『去年と』
『この夏は』
『違うわ』
『あなたがいる 寂しくない
 エンドレス エンドレスサマー』
『AH-』
『本当は』
『大好きって』
『みんなに』
『叫びたいわ 窓を開けて
 エンドレス エンドレスサマー』
なんかシークレットライブ状態。
歌い終えた途端、安倍が本をめくりだす。
「なっち、ペース早いねぇ」
市井がそう言うと
顔も上げないで答える。
「紗耶香とカラオケなんてひさしぶりだから
 歌ってほしい曲があるんだよ」
「なんか照れるなぁー」
リモコンのキー操作も終わり、転送。
画面が切り変わって
流れてきたのは、青いスポーツカーの男。
「うわぁあ」
「辻も歌いますーーー」
安倍以外の3人が立ち上がり
ギターをかき鳴らすフリ。
市井がかっこつけて
マイクをバッと天に突き上げて
歌い出し。
『あまったれんじゃないわよ
 自分でしな Baby    』
『Baby!』
『あまったれんじゃないわよ
 男らしく Baby     』
『Baby!』
こうして狂乱のセルフカバーモー娘。ライブは
過ぎていくのであった。
773L.O.D:01/12/20 01:48 ID:F5UzVP0P
店員が持ってきた新しい烏龍茶を
市井から受け取り
辻は歌いまくり、踊りまくって
乾いた喉を潤す。
曲を選んでた矢口が
フと顔を上げて、
市井に聞く。
「そういえば、紗耶香」
「ん?」
「事務所との話、どうなったの?」
「あぁー」
事務所。
お仕事の場所。
たぶん、矢口が言ってるのだから
UFAなのだろう。
そことの話。
市井が。
今は芸能界にいない
市井が事務所と話してる。
そんな事をダーっと考えてる辻に気付き
市井は笑いかけた。
「復帰するかもしれないんだ」
「おめでとうございますっ」
「早いよ、辻ぃ」
「あ」
「へへっ、ありがと」
そう言って、はにかみ笑顔の市井。
「レコーディングとか決まってないのかい?」
「まだ来てないけど、
 まっ、忙しくなるだろうな」
「じゃー、御飯とか行けないんれすか?」
辻のなにげない一言で
一瞬だけ空気が冷たくなった。
市井は辻の頭を撫でる。
「だーいじょぶ、どんな状態であろうと
 私は辻とうまいもんを食いに行く!」
774L.O.D:01/12/20 01:48 ID:F5UzVP0P
顔を見合わせて、笑ってると
安倍が辻をからかう。
「で、辻ちゃん、紗耶香の事
 どう思ってるのさー?」
「え?」
「告られたんでしょー、もう」
まるで女子中学生のノリ。
「やめてよ、なっちー」
「えと、、、、」
辻の顔が真顔になる。
少し俯いて
恥ずかしそうにつぶやく。
「好きですよぉ、、、、」
「!?」
「へ?」
「す、好き?」
「おしゃれだし、綺麗だし、、、、」
好きなところを一生懸命数えてる。
なんかその姿が可愛くて
可笑しくて、お姉さん3人は
笑ってる。
「辻ー、矢口は?矢口の事どう思ってる?」
「なっちと辻ちゃんはマロンメロンだもんねー」
「はんっ!ユニットだったら、こっちはミニモニ。だぞ!」
安倍にヒョイと抱きかかえられ
安倍と矢口の間に座らされる辻。
反対側の席から市井はその様を傍観してると
辻は自分の取り合いをする2人の顔を
ボーっとした顔で眺めてる。
苦笑してると、辻もこっちに気付いて
なにやらくすぐったげな笑みを浮かべた。
少し進展。
ちっちゃなちっちゃな辻の歩幅程度の。
775L.O.D:01/12/20 01:53 ID:F5UzVP0P
甘っ!!LOVEさんのなち真里の影響からかめちゃ甘いよ、、、

さすが師走やね。小説の更新もままならないぐらい忙しい、、、
776トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/20 02:36 ID:bdZGOVNX
たーしかに。>>774なんかLOVEの文かと思ったよ(w
まあいつも言ってるけど無理せずマターリ行きましょうよ
777L.O.D:01/12/20 18:43 ID:NjZ7enL7
その日の夜遅く
辻から来たメールに気付いて
市井はキーボードを叩く指を止めた。
「復帰しても、遊んでください、、か」
うつむきながら、『好き』とつぶやいた時の
姿を思い浮かべる。
その言葉が少し浮ついて
どれほどの重さか分からなくなる。
好きってどれぐらい好きなんだろうか。
辻の事だ。
もしかしたら、お友達としてなのかも知れない。
急に不安になる。
そうだとしたら、ぬか喜びだ。
「あぁっ・・・・・・」
メールで聞いてみたい。
どんな答えが返ってくるんだろう。
思い違いだったら恥ずかしい。
こんなに年の差があるし
しかも、女同士だし。
市井の中で色んな思いが駆け巡る。
「違ったら、嫌だなぁ」
小声でつぶやいて
少し力んでた身体から
力を抜いてみる。
手を伸ばして
CDを鳴らす。
ミディアムテンポの黒人女性シンガーのバラード。
スウィングするリズム。
心もそれと同じように
揺れ動いていた。
「はぁ・・・・・・」
大きな溜息。
自信なんてない。
なにせ、あの子はとんとにぶい子だから。
あの仕種は好きという事を恥じらっただけなのかも知れない。
こんな相談、誰にすればいいのか分からない。

その瞬間、手の中で携帯電話が鳴った。
778L.O.D:01/12/20 19:02 ID:NjZ7enL7
「後藤・・・・・・」
『あれ?いちーちゃん、暗いね?』
「いやぁ・・・・・・」
『喧嘩した?ってわけでもないよね?
 なっちとかも自慢してたし・・・・』
「辻がさぁ、、好きって言ってくれたんだけど」
『よかったねぇ』
「ほんとに私の事、好きなのかなぁ?」
『ハァ?』
「恋人として好きなのかなぁ?」
『あー、、、辻だもんね』
「な、心配だろ?」
『・・・・・・っていうか』
「?」
電話の向こうの後藤は少し不機嫌な声を出す。
『私も、いちーちゃん好きなんだけど』
「お前なぁ・・・・・・」
『でも、いちーちゃんは辻が好きなんだよね』
「あぁ・・・・・・」
『バイバイ』
「ちょ!ちょっと待て!!」
『なに?』
「なんだよ、そりゃ。勝手じゃん!」
『いちーちゃんの方が勝手じゃん!!
 ずっと好きだったのにさぁ!!』
「そんな事言ったって・・・・・・」
『応援してあげたいけど辛いんだもん!!』
電話は切れてしまう。
電源ごと切ってしまったのか
壁に叩き付けて壊したのか
その後、後藤の携帯はつながらなかった。
携帯を握りしめたまま
立ち尽くす。
779L.O.D:01/12/20 19:02 ID:NjZ7enL7
今、後藤に会いに行けば
抱き締めてしまいそうだ。
後藤だけじゃない
みんな好きだった。
それぞれに好きだった。
だけど、その中で辻は1人
心の底までやってきて
新しい冒険への扉を開けるための
鍵を一つ置いていってしまったのだ。
キュッと唇を噛み締める。
ダイヤル音が聞こえた。
つながったのは、保田。
『どうしたの?』
「お願いがあるんだ」
『なに?』
「後藤に会ってきて」
『なんかあったの?』
「怒らせちゃった」
『そ』
「お願い」
保田は黙ってる。
好敵手だと思いながら
親友だって信じてるから
その沈黙の意味を知ってる。
『あんたは?』
「辻に、、会いに行く』
『ねぇ』
「ん、、、?」
『今の紗耶香、すごくいい歌が歌えそうだね』
「そっか」
『いい恋してるじゃない』
「うん」
『まだ始まったばかりだけどね』
「うん」
『誰かいないかなぁ・・・・・・』
「いないね」
『なんでよ!!』
電話口で怒る保田の声を聞いて涙が出てきた。
涙を拭いたら、走り出そう。
まだ起きてるだろうから
タクシー掴まるかな。
そんなに手持ちないし
電車、まだあるな。
急いで行けば間に合うかな。
780トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/21 02:31 ID:SlMOlxp5
相変わらず会話の運び方がうまいなー
セリフ一つ一つがちゃんと娘。たちの声として聞こえてくるもんな…
781L.O.D:01/12/21 16:44 ID:nnBdiOYt
昼間はあんなに聞こえた蝉の鳴き声は静かで
辻は1人で公園のブランコを漕ぐ。
家の近く。
一回だけ市井が遊びに来た事があって
この公園の事を覚えてたらしく
ここで待ち合わせした。
慌てた様子で電話の向こうからしゃべる市井の
声は少し震えていて
何があったのかは分からなかったが
早く会いたかった。
一緒に遊ぶようになって
二ヶ月近くが経っていた。
すごく自分を可愛がってくれるし
電話で色々な事を話した。
今の娘。の事や、娘。になる前の事
いっぱい話して
好きになった。
一緒にいると楽しい。
これはきっと好きなんだと思う。

  キィ

ブランコを漕ぐのをやめて
空を見ると、星は見えないが
大きな月は見えた。
雲一つない空。
「辻っ」
入り口から駆け寄ってくる市井の呼吸は乱れていたのに
辻を見つけたら、真直やってきて
力一杯抱き締めた。
辻も優しく腕を回す。
「辻は私の事好きっ?」
「えと、、、はい、、、」
「それってさ!付き合っていいって事っ?」
「うん、、、、」
「私が辻に感じてるドキドキ
 辻も感じてる?」
782L.O.D:01/12/21 16:45 ID:nnBdiOYt
市井の胸の中で目をつぶる。
聞こえてくるのは胸の鼓動。
走ってきたからか
それとも、一緒にいるからか
高鳴っていた。
「うん、、、、」
「キス、、、していい?」
「、、、、、、」
近付いてくる市井の吐息を感じた。
それは加護とふざけてするキスとは別のキス。
辻の身体がビクッと震えた。
「あっ、、、」
「?」
「あの、、、、」
「ごめん・・・・・・」
市井が少し寂しそうな顔をした。
肩を抱いてた手が離れる。
なぜか突然、キスが怖くなった。
きっと市井は好きなんだけど
このキスは違う気がして
拒んでしまった。
なんかすごく悪い事をした気がして
落ち込む。
「ごめんなさい、、、、」
「いや、いいんだ。私が早まっただけだし」
「でも、市井さんは、、」
「・・・・・・」
2人はベンチに座って
少し黙ってる。
虫の音だけが聞こえてくる。
頃合を見計らったように
市井が言う。
「後藤と喧嘩しちゃってさ」
「え?」
「後藤が私もいちーちゃんが好きとか
 言い出しちゃってさ・・・・・・」
「ごっちんは?」
「携帯の電源切られちゃった。
 そしたら、なんか急に辻に
 会いたくなっちゃって、、、」
「ん」
「ごめんな、こんな時間に」
「いいんです。落ち着きましたか?」
「あーっと、つ、、、、」
市井が言葉に詰まる。
辻は不思議そうな顔で見た。
783L.O.D:01/12/21 16:45 ID:nnBdiOYt
「ののって呼んでいい?」
「いいですよぉ」
「私はなんて呼んでもらおっかな」
「んー・・・・・・」
「なにがいいだろ」
「さやりん」
「お、なんかくすぐったい感じ」
「さーやりん」
辻がふざけたように甘い声で
そう呼ぶと、市井は満面の笑みを浮かべる。
「それでいっかー?」
「私の事も呼んでくださいよぉー」
「敬語もダメー」
「えー、じゃぁー呼んでー」
「のの」
「へへぇ」
くだけたような笑顔、
2人は手をつないで帰る。
途中で寄ったコンビニエンスストア。
2人で棚を見る。
辻がシュークリームをじっと見てた。
「食べる?」
「あ、、ダイエット中だから、、、」
「今日は記念日。おごってあげるから」
市井はそれを二つ手にレジへ向かう。
華奢な身体。
その背中に、胸が痛む。
(これが恋なのかな、、、?)
「のの、行くよ」
ボーッとしてて、声をかけられるまで気付かなかった。
走っていって、手を握る。
784L.O.D:01/12/21 16:46 ID:nnBdiOYt
コンビニの前。
コンクリートの段差に座る。
市井は袋を捨て、シュークリームをくれる。
「いっただきまーす」
1人1個。
辻はひさしぶりの甘いものに
心がウキウキしてくる。
一口食べると、ちょうどいい生クリームと
カスタードクリームの甘味が広がっていく。
皮もいい感じに焼けてて、良い。
市井の顔を見ると、口の周りにクリームがついてる。
「さやりん、クリームついてる」
不意に顔を近付ける。
(今、キスしたらクリームの味がするのかな、、、)
そんな事をフと思ってると
市井は驚いたらしく、身体を強張らせてた。
シュークリームを持ってる手とは
反対の手を市井の身体に添えて
唇を奪う。
それは思い通り、クリームの味がした。

その後の帰り道、2人はなにもしゃべらず
ゆっくりとした足取りで歩く。
そんな時間も、ただ手をつなぐ事だけで
市井の温もりがそこから伝わってきて
嬉しくなってくる。
家の前。
お別れの時間。
「じゃ、またね」
「ばいばい、さやりん」
「じゃなー、のの」
道の角を曲がって、姿が見えなくなるまで
手を振った。
そんな夜。
785ねぇ、名乗って:01/12/21 17:06 ID:OKEwacci
おもしろすぎる。
ヤッスーの使い方が(・∀・)イイ !
786ねぇ、名乗って:01/12/22 00:39 ID:/PRQfG3R
hozem
787名無し娘。:01/12/22 03:28 ID:LFAt59fg
くすぐったいなぁ(w
788名無し募集中。。。:01/12/22 07:19 ID:4TGYcde+
もう、とろとろに溶けそうだよ・・・
789ねぇ、名乗って:01/12/22 07:25 ID:TNcE9Ftd
なんかしらんが萌え〜(w
790L.O.D:01/12/23 01:55 ID:5Lp2pqeC
吐きそうなほど、忙しい保全(藁
791ぼの ◆BONOl.Ok :01/12/23 02:03 ID:77I67jC8
旅行帰りsage
792L.O.D:01/12/23 10:13 ID:A0WOjqVp
タクシーに飛び乗った保田は
考えられる限りの後藤の行動をシュミレートする。
その中で得られた答えは
・・・・・・どれも確証のない物ばかりだった。
きっと自分の所にはやってこないだろう。
吉澤の所に行くだろうか。
保田は吉澤の気持ちも知っていた。
一つの願いを込めて
電話をしてみた。
『はい』
「あー、吉澤、保田だけど」
『分かってますよ』
明るい笑い声。
「あんさー、、、後藤がさ」
『?』
「紗耶香にフラれてさぁ・・・・」
『はぁ、、、』
「携帯つかながらないんだよね」
『えっ!?』
「探すの手伝ってくれる?」
『当たり前っすよ!』
「どこにいると思う?」
『地元の友達のとこですかねー?』
「とりあえず、今さ
 あいつの家の方行ってるから。
 吉澤も頼んだね」
『はい』
793L.O.D:01/12/23 10:14 ID:A0WOjqVp
闇を走る。
息が切れる。
辺りを見回す。
いない。
それの繰り返し。
家を飛び出した後
どこにもいない。
足が運ぶまま
探す。
バレーをやっててよかった。
基礎体力だけはある。
深夜の街を疾走する少女、吉澤。
立ち止まる。
静まった街には
車の発進する音しか聞こえない。
人の話声はない。
街灯と時折あるコンビニの光だけが
闇に埋もれそうな街を照らし
走る足下を照らし
沈みそうな気持ちを
救ってる気がして
後藤を思う気持ちはなお膨らんでいく。
好きだった。
いつからか覚えてもいない。
プッチモニになって
仲良くなって
その辺りだろうか
テレビじゃつまらない顔をしてるのに
一緒にいて
笑ってくれた時の笑顔がかわいくて
好きになってたのかもしれない。
「ったく、、、どこ行ったんだよ、、、」
794L.O.D:01/12/23 10:15 ID:A0WOjqVp
膝に手を置き、息を整える。
結構、遠くまで来ていた。
ビニール袋のガサガサという音が聞こえて
顔をあげると
後藤がアイスキャンディーをしゃぶりながら歩いてた。
吉澤に気付き、走り出そうとしていた。
「ごっちん!!」
「やっ・・・・・・」
空いてる手を捕まえて
こっちを向かせた。
泣き腫らした目。
頬についた幾筋もの跡。
「なにやってんのさ・・・・・・」
「・・・・・・」
「携帯つながらないし」
「・・・・・・」
「保田さんが心配して、電話くれたんだよ」
「・・・・・・」
隙あらば逃げ出しそうな勢いの後藤を見兼ねて
吉澤は力づくで抱き締める。
「くぅっ、、、」
「なんで私のところに来てくれないのさぁ、、、」
「・・・・・・」
「友達でしょ、、、」
「うん・・・・・・」
「なんで来てくれないのさ、、、、」
後藤を抱いてた腕に力が入らなくなって
吉澤は泣き出してしまう。
なぜだか悲しくなってきた。
後藤に選ばれなかった。
なんか悔しくて
自分の思いとは裏腹に
後藤は自分の事をあまり好きじゃないのかとか
考えてしまって
道の真中で泣き崩れる。
「よっすぃー・・・・・・」
「うぅっ、、、ひくっ、、、、」
「ごめん、、、」
「ひっく、、、、うぁっ、、、、、」
「ごめん、、、ごめんねっ」
泣き止まない吉澤につられて
また涙が溢れ出す後藤。
しゃがみ、何をするでもなく
ただ泣いていた。
手から滑り落ちたアイスキャンディーは
真夏の暑さに少しずつ
コンクリートの上で溶けていた。
2人の涙もそんな風に
混ざりあって溶けてしまえれば
どんなに楽だろう。
思う者と思われる者
だけど、気持ちはすれ違ったまま
ただ涙は流れていた。
795L.O.D:01/12/23 10:19 ID:A0WOjqVp
ひさしぶりに更新出来た・・・・・・
ちょっと休憩で紺野SPでも見よ。
796L.O.D:01/12/23 12:23 ID:A0WOjqVp
レコーディングスタジオ。
市井の復帰のためのアルバムは少しずつ出来ていた。
別な仕事を終えてやってきた中澤が
スタジオに入ってくる。
「おはようございまーす」
「おはよう」
荷物を市井の座るソファに置いて
隣に腰掛ける。
「おはようさん」
「うっす」
「で、どうなのよ」
「なにが?」
「辻」
中澤はペットボトルのお茶を飲みながら
市井を見ると
彼女は頬を染めていた。
(ちきしょう、かわいいや)
市井のファーストキスを奪ったのは自分。
あの時も恥ずかしくて、頬を染めてたこの子。
いつもは、ちょっと男言葉で粋がってるのに
そういう事は恥ずかしがり屋で
そのリアクションが好きで
何度もキスした。
その内、市井も慣れてきて
しようとすると受け入れるのだが
やっぱりその度に頬を赤くして
そんな純情さを忘れないでほしいと
いつも思ってた。
それは、中澤にとって恋愛ではなかったが
メンバー愛ともまた違うものだった。
まるで母親のような、姉のような気分。
やはり市井は少し特別な人だったかも知れない。
797L.O.D:01/12/23 12:23 ID:A0WOjqVp
「最近、会えてないし、電話もなかなか出来なくてさぁ」
「気つけやー、寂しくて、加護辺りとくんずほぐれつしてるかもよ」
「くんずほぐれつって、もー、、、」
「圭織も辻の事好きやしなぁーー」
「そうなの!?」
「あいつなぁ、抱いて寝ると気持ちいいねん」
「えっ!?寝たの!!?」
「ちょうどいい感じにフカフカしてな、、、
 なっちもよかったけど。
 でも、やっぱサイズ的に矢口が一番やな」
「・・・・・・裕ちゃん」
つっこむ気も失せて
市井は苦笑した。
中澤裕子とはそういう人だ。
大人の余裕というやつなのだろうか
メンバーにキスしまくって
酒に酔えば、甘え、
時には真面目に怒って
本気で抱き締めてくれた。
涙もろくて
感動屋で
かわいい人。
「ま、うちはさ、紗耶香を応援するよ」
「へへ」
「鮭も海へ旅に出て、生まれた川に戻ってくる言うしな。
 やっぱこう色々な恋愛を経験して、最後は、、、、」
市井のグロスのついた唇をそっと
艶やかな紫に彩られたネイルの指で
撫でていく。
「うちのところに来るんやで」
「なんでだよ」
「いやなん?」
「矢口いるだろぉ。浮気になっちゃうぞ」
「矢口はあれやねん。ぬいぐるみみたいなもんやねん」
「なんじゃそりゃ」
中澤は立ち上がり、背伸びした。
「中澤さん、行こっか」
「お願いしまーす」
ブースに入る前に振り返って、一言。
「紗耶香」
「ん?」
「がんばりや」
798L.O.D:01/12/23 12:51 ID:A0WOjqVp
仕事帰り。
静かなバー。
芸能人も結構来てるらしくて
娘。がいても騒ぐ人などいない。
安倍としては、どちらかというと
居酒屋みたいな雰囲気の方が
好きなのだが
誘ってくれた飯田の意向に合わせた。
まぁ、こんな雰囲気で飲むのも
たまにはいいかも知れないし
嫌いってわけでもない。
「で、話って?」
リーダーになってからの飯田は
いつも気を張ってて
頑張ってた。
「あのね、、、」
「うん」
「圭織、紗耶香好きだったのね」
「うん」
「ずっと」
「やめてからも?」
「うん」
「圭織、バンドの人とかと付き合ってたじゃん」
「でもね、どっかで紗耶香の事が好きだったの
 夢に出てきたりとかね」
「ふーん・・・・・・」
口には出さない。
安倍も本当はそうだった。
寝る前のほんのちょっとした瞬間
あの頃と同じように
隣に紗耶香がいて
ちょっと手を握ったりして
居てくれたら
幸せな一時だった。
「おかしいよね」
「おかしいかな?」
799L.O.D:01/12/23 12:52 ID:A0WOjqVp
互いの顔は見ないで
ブランデーの収まってる棚に映る
自分達を見てた。
「最近ね、ちょっと収まってきたの」
「そっか」
「でもね、たまに寂しくなっちゃうんだ」
「うん」
「もう忘れるべきだよね」
「ねぇ」
安倍はフと問いたくなった。
「辻ちゃんの事は好きだったの?」
「え」
「入ってきた時、すごくかわいがってたじゃん。」
「あー」
「最近、あんまり話してないし」
「だってさ」
と、つぶやいて
飯田は俯き
言葉を濁した。
安倍は次の言葉を催促する事なく
間を持たせるように
カクテルを飲む。
少し辛め。
そんな気分だった。
甘い酒で酔うより
こんな話の時は
こういう味がいい。
「辻は紗耶香の物だから」
楽屋で嬉しそうに
紗耶香の事を話す辻。
今日は口が滑って
さやりんなんて呼んでた。
石川と吉澤にそれを突っ込まれて
照れていた。
ただのお子様から恋をする女の子の顔になっていく。
自分達もそんな事があったのだ。
そして、今、ここにいる。
「そだね」
安倍は短く答えた。
800ねぇ、名乗って:01/12/23 23:42 ID:vPXAyV6C
やっぱりいいね。
801ねぇ、名乗って:01/12/23 23:43 ID:vPXAyV6C
すまない。sage
802ねえ、名乗って:01/12/24 22:06 ID:IJxWiZGi
下がるの早いきがする・・・
とりあえず保全
803ねぇ、名乗って:01/12/25 00:59 ID:aKeRWSQf
dat逝き阻止
804L.O.D:01/12/25 10:29 ID:cXMRbdjA
移転したのに気付かないで、あせったクリスマスの朝、sage
805ねぇ、名乗って:01/12/25 16:50 ID:fXTT8aY0
dat逝き阻止age
806L.O.D:01/12/25 18:19 ID:9uC5F2NF
移動中のバス。
辻はここぞとばかりに市井とメ−ルのやり取りをしてた。
向うの仕事も本格的に始まってきて
連絡すらつかない事もしばしばで
こんなリアルタイムでメールできるなんて
ひさしぶりの事だった。
周りはみんなMDを聴いたり
静かにしてる。
隣の加護も目をつぶって
黙っていた。
市井からの言葉は少し甘ったるい。
頬がゆるんで微笑んでしまう。
そうこうしてる内に
次の現場に到着して
メイクも済み
飯田のかけ声。
「はーい、みんな行くよー」
加護がまだ携帯を握る辻の袖を引っ張る。
「行こ、のの」
「あー、、、」
「みんな、行っちゃう」
「うん、、、、、」
途中まで打たれたメール。
液晶は辻がいなくなった後も
輝いて、後に消えた。
807L.O.D:01/12/25 18:20 ID:9uC5F2NF
「辻ー?」
「あい?」
「お腹空いたかー?」
無言でうなづく。
ハロモニの収録中。
中澤はおかしそうに笑っていた。
「話はちゃんと聞いててやー」
「・・・・・・」
中澤の言葉通り。
今、まったく聞いてなかった。
携帯が気になってた。
ばいばいって言えなかった。
心配してないだろうか
辻の顔が曇る。
「・・・・・・のの」
隣にいた石川はそっと手を握った。
辻は気付き、石川を見る。
そして、俯く。
本番中だから泣かない。
次に顔を上げた時は
少しだけ笑っている。
でも、石川は手を離さないでおいた。
808L.O.D:01/12/25 18:20 ID:9uC5F2NF
案の定、楽屋に帰ってから
飯田に呼ばれた。
「恋愛するのはね、すごい大事な事だとね
 圭織、思うの。恋愛は大事。」
「あい」
「だけどね」
何もしゃべらない空白の時間が怖い。
前はそんな事なかったのに
最近、悲しみが襲ってくる。
何もしないでいると
なにやら不安な心が押し迫ってきて
どうしようもなくなる。
そこから色々な事を考えてしまう
お仕事の事も市井の事も
色々・・・・・・
「やっぱりお仕事だからね」
「・・・・・・」
「のの?」
涙が出てきたのに、自分でも気付かず
ただ頬を流れていった。
「いいらさんっ!」
そのままでいると
真っ暗な海に1人投げ出されてしまうような
暗黒の闇が待っていて
なりふり構わず
今、自分が怒られてる状況であろうと
飯田に抱きついた。
それしか術がなかった。
飯田は優しく頭を撫でてくれる。
「圭織の言った事分かった?」
何度もうなづく。
本当はそんな事どうでもよかった。
「ごめんね、泣かせちゃって」
きっと中澤だったら、
『なに、泣いてんねん。
 泣いて済むとでも思ってるんか
 おい、こら、顔上げや』
とかって言われるところなのだが
飯田はそうはしない。
「どうして泣いちゃったの?」
「んっ、、、、悲しくて、、、、」
「なにが悲しいの?」
「わかんな、、、いけど、、、、」
「泣いていいよ」
そう言って、飯田はより強く
辻を抱き締めた。
809L.O.D:01/12/25 18:22 ID:9uC5F2NF
sageでもdat逝きは防げるわけで。
っていうか、下がるの早っ!!
810名無し娘。:01/12/25 22:53 ID:APwWJkUD
>>L.O.D

そろそろ新スレ立てたら?
811L.O.D:01/12/25 23:01 ID:9uC5F2NF
楽屋に戻ると
みんな帰る支度をしていた。
自分の携帯を手に取ると
市井からの返事は来ていなかった。
(怒ってるのかな)
しゅんとしていた気持ちがさらに弱まる。
(のの・・・・・・)
石川はそんな辻の様子を危惧していた。
この頃、特に食べるのも自制してるみたいだし
お仕事中にも時折、楽しくなさそう
というより、辛そうな顔をする事もしばしば。
気になっていた。
ちょうど近くに矢口がいた。
「矢口さん、矢口さん」
「なに?」
「あのぉ、御飯行きませんか?」
「石川のおごり?」
「なんで、矢口さんにおごらなきゃいけないんですかっ!」
「チェっ」
小さく舌打ちして、すねたような顔の矢口の耳元に
顔を近付けて囁く。
「ののが心配なんです」
「あー、、、」
「矢口さんも気になりません?」
「まぁね」
「ね、だから、ののも誘って」
「おぅ、分かった。私、タクシー捕まえるから」
「のの連れて、玄関行きますね」
「うん」
矢口がサングラスをかけ、荷物を手に楽屋から出ていく。
石川は頃合を見て
辻に声をかけた。
「のーの。」
「あい?」
「御飯食べに行くよ」
「え?」
812L.O.D:01/12/25 23:02 ID:9uC5F2NF
「矢口さんと焼肉行くんだけど
 ののも一緒にと思って」
「行くっ」
最近、外で食べたといえば
弁当ばかりで
お店に行くなんてしばらくぶりな気がする。
「じゃ、早く用意して」
「うん」
石川は嬉しそうに鞄に持ち物を詰める辻を見て、ちょっとだけ安心した。
片付け終わると、石川の腕に腕をからませる。
「市井さんに怒られるぞ」
「へへぇ」
どれだけ嬉しかったのだろう。
だけど、少しだけその気持ちが分かる。
仕事は日増しにきつくなってる。
ミニモニ。もやってる辻はきっと
自分より量としてはいっぱいしてるし
それだけストレスも溜まる。
辻にとって食事とは唯一の楽しみともいえる趣味であり
ストレスを吐き出すための行為だったのだろう。
それが半ば禁止される状況で
さらに市井に会えないとなれば
どんなに辛かったのか。
玄関に矢口が見えると
スキップして飛んでいき
身体ごとぶつかっていく。
「いったいなぁ」
「えへへ」
痛い痛いという矢口の顔は笑ってて
それを見て、辻もまた笑ってる。
矢口と石川の目は合う。
元気そうな辻の姿が2人とも嬉しかった。
813L.O.D:01/12/25 23:06 ID:9uC5F2NF
この小説終了→新スレ移行という流れで考えてたんだが
もうそろそろ移行した方がいいのだろうか?
814名無しさん:01/12/26 06:10 ID:Ax9Mi8Is
>>808
軽く泣きそうになっちゃいました。
新スレ立ててもいいんじゃない。
815アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :01/12/26 06:22 ID:1g/VP5Cy
ここは感想スレにして、新しいスレたれましょ
816L.O.D:01/12/26 14:30 ID:8ffKt2p+
スレたてて更新までしておいて、
こっちに張るの忘れてた、、、


http://tv.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1009338054/l50
817:01/12/27 08:59 ID:e4aCmebG
新スレおめ(略
「ののちゃむ」このスレの残りでは足りないほど
長編ってこと?
読むほうとしては喜ばしい(w
818ねぇ、名乗って:01/12/27 10:52 ID:RPUu6rhW
819トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/28 03:34 ID:lh2PPkTh
え?新スレたってんの?
820ねぇ、名乗って:01/12/29 23:57 ID:C8H/ydC9
たてたみたいですね
821ねえ、名乗って:01/12/30 01:50 ID:Qr/1Ic+7
保全したほうがいいの?
822名無し娘。:01/12/30 03:24 ID:UKSEhS8i
>>821

しなくて良いだろ。
823L.O.D:01/12/30 22:39 ID:WyUwPEhm
保全しても、何も出ないよ(藁)
このままdatに送ってあげちゃってください。
とかなんとか言いながら、更新しちゃってるし
824ねぇ、名乗って:01/12/31 12:50 ID:jE4kiZde
age
825旧♪:02/01/02 14:19 ID:EePtVRrD
「ののちゃむ」完結まで保全
826名無し募集中。。。
hozen