1の初舞台の翌日、423が退ける頃を狙って痴漢は1を伴って映画館にやってきた。
鉢合わせたのを知って慌てて現場に駆けつけたが、時すでに遅し。
二人して、1の目の前で陰険な会話をしていた。
一連のやり取りを傍らで聞いていて、関西弁の男はへらへら笑って流していたが、
あの空気の重さといったら。その場にいるのが、嫌になるほどだった。
一人ずつならそれなりにいい奴なのに、二人そろうと最悪。だから他の者は逃げたがる。
結果、関西弁の男が損な役回りを引き受けて二人を引き離すのが常だったが、この日は
あえてそうしなかった。痴漢の考えが全く分からないわけではなかったからだ。
これからも1が映画館に通うとすれば、いずれ423の存在を知ることになる。
彼の美貌を目の当たりにしても萎縮することなく、自分もこの映画館で主役を張る
一人だと堂々とした態度でいられた者はいまだかつて存在しなかった。
全員が423が来る日と重ならないようにと気を配った。理由は、同じ舞台に上がるのが
畏れ多いのが半分、比べられてはたまらないのが残りの半分。
痴漢がそれに関して、423がいびっているかのように言わないのは、しぶしぶながらも
そんなことをするような人間ではないと認めているから。
おそらく面倒くさいというのが主要因であろうが、423は他の"女優"達を苛めたり
するような真似は決してしなかった。
先輩面などこれまた面倒がってしないが、弱い者に対して優しい面があって、自分から
しゃしゃり出るのは嫌うものの、困っているのを助けたのは一人や二人ではない。
日取りをずらす者達も、皆本当は423のことを慕っている。
ただ、同じ日に同じ場所で素肌を晒すのがいたたまれないだけ。
423が仕掛けたことでもなし、脇から口を挟んでどうこうなるものでもないから放って
おかれてきたが、痴漢としては1が前例にならうのが厭だったらしい。
1が423に引け目を感じ、彼の来る日を関西弁の男に聞く姿を想像したのか、
それとも痴漢のお気に入りだからといって1を苛めたりする423ではないと
判っていてもやはり気になったのか。
いずれにせよ初顔合わせの時に自分が居合わせれば1も少しは心強いのではないかと
思ってのことだと、最初は信じていた。
やり方を間違えていることは言う気にもならなかったが。
1を案ずるなら、常日頃423がらみの不平をぶつける相手の関西弁の男に話を通せば
いいものを、痴漢自らのお出ましとあっては423の態度が硬化するに決まっている。
423に対して、この素直さはお前にはないものだと当てこする気持ちもあっただろうが、
1の可愛さに目が眩んだついでに判断力までなくしたらしい。
自分が423だったら、絶対に苛めていた。
とりあえずその場は423が退いてくれて一旦お流れになった。
が、痴漢はわざわざ電話をかけて、あたかも423が尻尾を巻いて逃げ出したかのように
嘲笑うという極めてお粗末な挑発までして呼び戻し、事態をさらにややこしくした。
1に聞こえないように小声で『どういうつもりや』と尋ねたら、『女王陛下にご挨拶を
欠いて新人いびりをされてはたまらないからね』とほざいたのには頭が痛くなった。
ここでトップを張る423に新人が挨拶するのは筋を通しているように見えなくもないが、
出向くならともかく呼び付けるとは何事だ。
しかも、今まで新人が入っても、一度だって痴漢立ち会いのもとでのご挨拶など
わざわざセッティングしなかったくせに。
一歩間違えれば、1が背後の痴漢を頼みにでかい面をしていると思われかねない。
1がそんな子でないのは関西弁の男も既に承知していたし、聡い423ならすぐに
分かると思って痴漢の好きにさせておくことにしたが、つくづく呆れた。
前日に連れ帰った後、一夜を共に過ごしたと判った時は他のメンバーも色めきたったが、
ここまで惚けるとは思わなかった。
しかも、ただ惚けているばかりではない。かなりいやらしい思惑で、423を呼び出した。
当の1が痴漢が自分にぞっこんだということにまるで気がついておらず、あまつさえ
その痴漢の罠にかかって423に一目惚れしたのには少々可哀相になったほどだ。
あとで問い質してみたところ、関西弁の男の男が思った通りだった。
423が1を手ひどく撥ね付けるのを期待して、引き合わせたのだと白状しやがった。
後々1から423に近寄らないようにするのがその目的だった。
確かに、423は何かのときに当てにできる存在ではある。
彼を崇め奉る下僕は、金も権力も兼ね備えた者ばかりだ。
『だが1には刺激が強すぎるのも多いから、とにかく関わりを持たせたくなかった』
そう言ってこめかみを指で押さえる痴漢を見て、関西弁の男はため息をついた。
痴漢の心配も判るだけに、だったら素直に言えば良いものをと思わずにいられない。
しかし今までにやってきたことがことだから、1にコアな世界を見せないでほしいと
頼めなくなってしまったのだ。かえって面白がられてしまいそうで、怖くて言えない。
そこで1から423を避けるようにしたかったのだろうが、完全に失敗した。
痴漢同伴で御出勤などしなければ423も普通に接したはずなのに、つまらぬ策を
弄するから墓穴を掘った。奸計を巡らせてかなう相手ではないのに。
関西弁の男も、墓穴掘りには協力してしまった。
―――あの時423は完全に怒っていた。
疲れたから帰ると言ったのに呼び戻され、痴漢に"ど新人に抱かれろ"と言われた。
それ自体は無視しても良かったが、関西弁の男まで味方したから帰れなくなった。
口にはしなかったが顔に出たのを見た時に後悔したが、気づいても手後れな場合に
するのが後悔というものだ。
1が可哀相に思えてつい口を挟んでしまったが、423には関西弁の男が自分よりも
痴漢を優先したように見えただろう。
そんなつもりはなかったと後で散々言い訳したし、言われなくても判っていたから
残ったのだと言ってくれた。関西弁の男が1を可哀想に思った気持ちも。
『もう女とはでけへん、どころの騒ぎじゃなくて、そこらの男も駄目だもんね』
道を踏み外させた痴漢をなじると共に、共犯者を咎める目つきで関西弁の男を睨んだ。
『怪我に関しちゃ、自業自得だとも思ってる。リードしておけばよかったのに、
恥をかかせたくて何もしなかったから。こっちもちゃんと殴り返したし、もういいよ』
痴漢への嫌がらせに本格的に食っても良かったのだが、後が面倒くさそうだから止めた。
『おっさん余裕こいてるふりしても胃に穴あきそうな顔してたから、勘弁してやったの。
本当はすごくむかついてたけど。どうせ、僕に袖にさせるつもりで声かけたんでしょ?』
そこまで理解した上で、マグロになったのが423の男前なところだと関西弁の男は思う。
積極的に動いて、1を自分の体に溺れさせるのは容易だったのに、あえてしなかった。
そうなったらどうするつもりだったのかと別の機会に聞いたら、内心密かに焦っていたと
答えた痴漢とはえらい違いだ。423が自分を嫌っている点に、ひたすら賭けていたそうだ。
本来、こんなせせこましい男ではないのだが、423に関わると卑怯で小心な男に
成り下がることがしばしば。
一番最初の負けっぷりが、その後を決めた。苦手意識がしみついている。
鬼門だと判っているのだから、さっさと白旗をあげて避けて通れば良さそうなものだが、
どうやらあの男のプライドが許さないらしい。
その訳の分からないプライドが最大の敗因だと、死ぬまでに気づくかどうか。
結局、1と423をひき合わせた件についても、痴漢は大敗した。
怪我をさせないのが基本のこの映画館において、423に流血させてしまった。
ど素人の1が無茶な挿入を果たそうとしたのが原因。しかもその時、痴漢は1の傍らで
手引きをしていたし、関西弁の男も423についていた。
肛門科の医師には、後で二人そろってこっぴどく叱られた。
『ほんっとうに、わざとじゃないんだよね?』と痴漢を睨んだ医師は、普段の柔和さが
嘘のように厳しい顔をしていた。
痴漢自身も不名誉なことと受け止めていたが、直接423には謝っていない。
不本意ながらも借りを作ってしまった、と関西弁の男に散々愚痴っておいて、
挙句の果てに『適当になだめといてくれ』と言って逃げやがった。
自分に対しては、借りがあるとはこれっぽっちも思っていないのか。
しかたなく代わりに詫びておいたが、423は思いっきり拗ねた。
怪我が完治するまで、口をきかないどころか映画館にもあらわれなかった。
治ったのを知ったのは、やはりこの控え室で。
昼寝をしていたところにいきなり現れ、もう一回謝れといわれた。
勿論、誠心誠意、謝らせていただいた。しかし、こちらもかなり良い思いをしたあれを
謝罪といっていいのかどうかは悩むところではあるが、まぁその話はおいといて。
痴漢の最大の敗北は、423が1を意外と気に入ってしまったことだ。
1がどれだけ惚れ込もうが、相手にされなければそれまで。他に目が向かなければ
それもまた良しという、大変に姑息な企みは423の気まぐれによりあっさりと潰えた。
ごくたまに気が向くと、自分から1をからかって遊んだりもする。
1の方も、馬鹿にされても懐いている。構ってもらえるだけで嬉しくてたまらないようだ。
痴漢は当然面白くない。
しかし、自分が仕掛けたことだけに、約一名にしか不服を申し立てられない。
423に対し嫌味な口の利き方をすることがますます増えたが、当然423も黙っていない。
とばっちりは、どちらとも言葉を交わすことの多い関西弁の男が、一手に引き受けている。
昨夜も痴漢に『あの性悪猫を紐でくくりつけておいてくれ!!』と怒鳴られてしまった。
一応は人の形をしているし別に飼っているわけでもないが、なぜか痴漢は423についての
苦情はすべて関西弁の男に訴える。
他の連中は423様に諫言することなど恐れ多くて出来ませんと逃げやがるし、医師は
423寄りとわかっているから痴漢も言いに行かない。
『飼育係はお前だろう』と言うのが痴漢の主張。
痴漢だけでなく、423のお守りは関西弁の男がするものだと皆が思っているふしがある。
関西弁の男の方でも通い猫くらいには思っているから、外で何かしでかしたら菓子折りの
一つも持って謝罪に行く心積もりはあるが、痴漢に対して詫びを入れる気は一切ない。
逆に『お前が原因やろ!ええ加減にせえや、こんボケが!!』と怒鳴りたくなる時すら
あるのを、ぐっとこらえている。
自分がそれを言ってしまっては、さすがに痴漢が哀れだからだ。
ただでさえ肛門科の医師と関西弁の男以外はこの件に関しては非介入を決め込んでいるし、
その医師も痴漢の大人げの無さをちくりと皮肉ることが多い。
可愛い1はと言えば423に夢中。ここのところ痴漢が不機嫌な時は大抵それが原因だが、
1本人はそれに全く気づいていない。
二人の仲が悪いから、423の話題になると痴漢がむっとする位にしか思っていない。
1が口にするからこそ、普段ポーカーフェイスを気取るあの男も露骨に顔に出るのに。
423を目の前にしたときの1は、その原因どころか痴漢の機嫌が悪いことすら気が
ついてないことがしょっちゅうで、見る者の涙と笑いを誘う。
当初は423も痴漢をからかうネタができて面白がっていたが、疲れて御休憩の時でも
お構いなしにじゃれ付いてくるので近頃は閉口気味だ。
他の男達は始めのうちは注意しようかどうしようか迷っていたが、最終的には全員一致で
『関西さんにお任せしました』ときやがった。
やってる最中ならいくら1でもそうそう邪魔はしないだろうが、そうじゃないから
ぽてぽてとやってきて、くつろいでいる423に構ってもらいたがる。
そのうちに絶対ぶち切れる、とひやひやしながら見ていると関西弁の男に言う奴もいたが、
聞いた瞬間、こいつはXデーを予想して賭けていると確信した。
心配してではなく、探りを入れにきただけだ。しかも、万が一本当に423がぶちきれても
関西弁の男が何とかすると思っているのが見え見え。
その日の内に人の苦労を賭けのネタにしやがった胴元を探し出し、テラ銭をふんだくった。
―――道理で1が誰にも捕まらずに来るわけだ。皆で道を開けてやっていたのだから。
423の元に辿り着くまで、誰に手を取られてその場で始まってもおかしくない場所なのに。
面白がるのも大概にして欲しい。最近は痴漢だけでなく423まで機嫌を損ねることが多い。
そのうち1の面前で罵り合いを始めかねないが、その時になってもおそらく1は自分が
発端だとは気づかぬままだろう。万が一気がついても、痴漢の味方はしてくれまい。
これで関西弁の男まで痴漢を責めては余りに可哀相だから、愚痴くらいは、と仏ごころで
聞いてやっている。
手がかかるのは、心と体の大きさが反比例しているようなあの男だけではない。
もう一匹が、目を覚ました。
「……腹減った」
そう呟いて関西弁の男の上から起き上がり、大きく伸びをしてベッドから降りた。
「……何時や」
「8時すぎ」
まだ寝てていいから、というように自分が抜け出た後を直し、ちゃんと食べるものを
自力で用意できる423を、一概に猫扱いするのは失礼かもしれない。
寝る前に関西弁の男が着せ付けたシャツは423には大きすぎて、中で細い体が泳いでいる。
初めて自分の服をパジャマ代わりに貸してやった時、あまりに大きすぎてTシャツの裾が
膝まで届いていた。あれからかなり身長は伸びたが、多分そろそろ止まる。
標準程度でおさまりそうだが、たとえこの先自分を追い越しても、423を可愛いと思う
気持ちに変わりはないだろう。
423は関西弁の男にだけは甘えたがりで、『二人でいるときには近寄るな』と全身で
言っている、と笑ったのは誰だったろうか。
関西弁の男とて、自分だけに懐かれるのは悪い気分はしないからいつも甘やかしているが、
自分にそういうところがあるとは423に懐かれるまで知らなかった。
正確には彼だからこそ、初めて知ることになった。
423は、その見かけに反してかなり逞しく、他人の庇護など必要としていない。
下僕共が彼を敬う姿勢も『本来私など423様には不必要でございますし、お側によらせて
頂くだけでも勿体無いのに、お仕えさせていただけるとはありがたや』といったものだ。
多数の、それも遥かに年上の人間達に敬われたら、自分だったら疲れると思う。
しかも423の下僕共は自ら家畜を名乗り、彼の足元にひれ伏している。
傍に居られさえすれば無視されても喜び、足で踏まれれば泣いてありがたがる変態共だ。
踏まれるのも自分からねだるのは畏れ多くてできないが、今か今かと心待ちにしている。
一挙手一投足を常時粘りついた視線で捉えられては、普通はかなり消耗する。
423の精神の強靭さを一番理解しているのは、その恩恵に浴する身の彼らだろう。
「・・・あれ、まだあったと思ったのに」
戸棚を開けて、423が舌打ちをする。
「なんや?」
「カップ麺なくなってた―――コンビニ行ってくる」
「わざわざ出てかんでも、冷蔵庫になんぞあるやろ」
「……うん」
すこし不満気にしながらも素直に冷蔵庫を漁り出したのは、食べたのが関西弁の男と
わかっているからだ。
他の誰が、423様の貯蔵品に手をつけるなどという大それた真似をするものか。
関西弁の男だって、423がストックしているジャンクフードにわざわざ手をつけたくない。
しかし、下僕達に頼まれてしまった。
423様の顔色を覗うことにかけては誰にも引けをとりたくない彼らは、かなり早い時期に
関西弁の男には懐いていることを察知した。
それこそ、"何で自分が"と関西弁の男自身が訝るほど初期の頃だ。
423が映画館を訪れる夜は差し入れをするから、あまり不健康なものを食べさせないで
欲しいという願い自体は、成長期だから当然かと思った。
そんな子供がここに通うのを止めろ、と言えなかったのは、既にその子供を賞味した
後だからではなく、彼にそういうことを言える人間が極めて少ないのが判っていたから。
『423様のなさりようをお咎めすることはできないが、お体は大切になさって欲しい』と、
いい年こいた如何にも名士然とした連中が、雁首揃えて悲愴な顔つきで訴えるのが
うっとおしくて、適当に肯いておいた。
次に423が訪れた時、薄汚いポルノ映画館に恭しく届けられた料亭の弁当は、どう見ても
3人前はあったが、それを一人で食べてしまった。
『セックスのあとで、お腹が空いていた』というのが本人の弁。
しかしいくら事後でも、大食らいには違いあるまい。
驚く周囲をよそに一人冷静だった医師は、その場で定期的な健康診断を受けるよう
423に勧めた。
面倒がりながらも医師の言うことを聞いて、現在に至るまで検査を受けている。
一応今のところ大丈夫らしい。
関西弁の男を含め、そのとき居合わせた者達はただの大食いだろうに何を大げさな、
と思った。痴漢は気づいていたらしいが、何も言わなかった。
医師が心配していたのは、下僕共の美食趣味だ。人間、金や力を持つと、ついつい
そちらに走りたがる。自分の崇拝の対象をもてなそうとすれば尚のことだろう。
医師の慧眼に違わず、貢ぎ物は高蛋白高栄養なものばかりだった。
2回目はどこかのホテルのケータリング。所せましと並べられた豪奢な料理に呆れる
関西弁の男に、医師は栄養成分表なるものを手渡し、『勉強しといてね』とのたもうた。
再び"なんで自分が"と思いつつも、それ以降423の食生活を気遣い続けているようでは、
飼育係と痴漢に揶揄されても仕方ない。
・・・・・・プリン体など、それまで関西弁の男の辞書にはなかった。
カップ麺を食べたがることからも判る通り、本人は別に美食家でも何でもない。
それでも、塩分や油分はなるべく控えた方がいいだろう。
一緒に暮らしてはいないから、目の行き届かないところもある。
その分も、二人でいる時は気を付けておきたい。
屋台でおでんを注文する時、こんにゃくや大根ばかりを食べさせようとする関西弁の男を
423がどう思っているのかは知らない。
食事中とり分けるものがある場合は、常にこちら任せだから気づいているかもしれない。
だったら、いい加減カップ麺も止めて欲しいのだが、戸棚にはいつも2つ3つおいてある。
関西弁の男はインスタント食品があまり好きではないし、423に食べさせまいとして
自分が食べ続けて血圧が上がったりしたら、それこそ馬鹿じゃないかと思う。
ある日突然倒れたりしたら、この猫の面倒は誰が見る。
何も事情を知らない1に、423の目を盗んでカップ麺を渡してやると喜ぶが、度重なると
今度は『1の体はどうなってもいいのか』と痴漢が怒る。
いっそのこと、捨ててしまえればいいのだが、関西弁の男の性格上それはできない。
痴漢が嫌がらせを兼ねて捨ててくれればいいのに『生活習慣病になるがいい』と言い捨て、
少しも関西弁の男に協力してくれない。本当に自分勝手で我が侭な男だ。
もっとも痴漢はこの控え室に一歩も足を踏み入れようとしないから、見つけ次第
処分して欲しいと頼んでも断られただろう。
20畳ほどのこのスペースは、本来ならフィルム倉庫にでもなるべき部屋なのだろうが、
ここで撮影された物はすべて別室で厳重に管理されている。
意外なことだが、423様が舞台に上がられるようになっても、下僕共の口からは
一度たりとも映像の流出を心配する声は上がってこない。
この映画館が長年培ってきた信頼によるものだろう。
物置になっていたこの部屋を適当に片づけ、粗大ゴミ置き場で拾ったベッドマットを
持ち込んで昼寝スペースにしたのは関西弁の男。
そこに423が入り浸るようになったのは、当然の結果だ。
初めての御泊りの翌朝、『あちらに御休みになられる場所はございましたか』と
探りを入れてきた下僕に、423はありのままを伝えた。
午前中にワンボックスや軽トラックが数台やってきた。
その日も寝ていた関西弁の男は、いきなりの来訪者にインターホンで叩き起こされた。
万が一のフィルム強盗に備えて厳重な警戒が施された部屋は奥の方にしつらえてある。
逆にそれが目的でないと判った時点で、却って無防備になりがちだ。
中に通したのを後で痴漢にねちねち愚痴られることになるとは、あの時思いもしなかった。
だって、いつもの水道屋だったし。痴漢や関西弁の男が通い出すよりも古くから、ここの
修理を手がけてきた爺さんが、『やっとまともにする気になったか』ってうれしそうに
脚立や工具を運び込み出したから、てっきり痴漢が手配したものだと思ったのに。
『私は頼んでなどいない』なんて言い方、しなくてもいいじゃないか。
爺さんが、『自分が信用できる業者でいいと言われたから適当に連れてきた』とかいう
おっさん達が物置に入って壁を壊し出しても、何が起きているのか良く分からなかった。
とりあえず、自分の昼寝の場所が今は塞がっていることと、発注した側の人間として
誰か立ち会っておいた方がいいだろうと思って階段の隅でぼんやり眺めていたが、
爺さんは『特急でやるけど、やっぱ一週間はみといてよ』と言った。
その時点で、さすがに変だと思って痴漢に電話をかけたが不在だった。
困った関西弁の男に、爺さんは痴漢の前に映画館を取り仕切っていた男の名をあげた。
彼なら知っている筈だという。
爺さんに従い前任者に尋ねてみたところ、あっさり認めたから『臨時休業のお知らせ』の
張り紙をして、舞台にマットを持っていって昼寝の続きをした。
いそぎの仕事も抱えていなかったし、しばらくは毎日自分が来ようと思っていたから
痴漢にも連絡はしなかった。
わりにまめに連絡をとりあってはいるが、たいてい向こうから掛かってくるから、
その時に話をすればいいかとも思ったのだ。
工事のことは勿論痴漢が頼んだと信じていたし、自分がついていることも承知して
いるから特に連絡してこないのだろうと勝手に決め付けて、翌日も昼寝を続けた。
やっぱり寝ぼけていたのかもしれない、と思ったのは工事が終ってから。
『どういうことだ!!』と、痴漢の怒声に安らかな眠りを妨げられたのは6日目の夜。
久々の大仕事だとかで、爺さんやその仲間たちは揃って張り切り、工事は1日早く終った。
工賃は日割りではなく、ぽんと一括先払いの現金だったとか。
一日でも早く上げようと頑張りもする筈だ。
爺さん達を見送った後は、仕上がりの確認は痴漢に任せることにして再び眠りに就いた。
いくら日がな一日寝くたれているとはいえ、日中は工事の騒音でそうそう熟睡できない。
そんなにお育ちがいいわけでもないが、慣れない騒音に身を浸すのはそれだけでも疲れる。
だから、今晩から明日の昼まで思いっきり寝ようと思っていたのに。
今度は痴漢に叩き起こされ、胸倉を掴まれて脳震盪になるかと思うほど揺すぶられた。
どういうことかは、こっちが聞きたいくらいだった。
寝ぼけ眼の関西弁の男は痴漢にしょっ引かれて、プロが頑張った成果と対面した。
―――あら。あんなに汚かった物置が、こんなに素敵になっちゃって。
関西弁の男は感心して、傍らの痴漢を見た。
『ようでけとるやん。何ぞ、あかんとこでもあるんか?』
自分には良く分からないが、痴漢が色々こだわりとやらを持っているのは長い付き合いで
知っているつもりだった。
返ってきた返事は、『誰がやった?!』という予想だにしなかったもの。
『誰って、水道屋の爺さんが、おっさん何人か引き連れて……知らんかったんか?』
当たり前だと怒鳴り散らす痴漢を前に、ならば一体誰がと首をかしげていると、
すぐに答えを教えてくれた。
『最近ここに、紐の緩い財布をいくつも抱えた性悪猫が住みついただろう』
それで納得した。痴漢が工事の終了まで現れなかったのは前任者の策謀だったのだ。
実は423がここに通い出す前から面識があったという彼は、先日電話で話した折りにも、
痴漢がきつく当たっているのではないかと心配していた。
彼のデビューに際しては前任者も一枚噛んでおり、何も聞かされていなかった痴漢が
423に対してますます臍を曲げてしまったと知って以来、気にかけているのだ。
そのことで、痴漢が時々電話で説教めいたことを言われているのは知っていた。
いかにも気のない返事を続ける痴漢を横目で見ながら、『それで誤魔化せるような
相手じゃなかろうに、いつまで逃げるつもりだ』と呆れていたのはつい先週。
そんなぬるい男ではないことは、痴漢もよく知っている筈だったから。
しかし、どうやら関西弁の男も痴漢同様すっかり忘れていたようだ。
まさか423の下僕共の片棒を担ぐ形で、痴漢に対して御仕置きするとは。
423様が御逗留なさるにはあまりにお粗末な設備だが、痴漢に言っても詮無いことと、
さっさと割り切って前任者に話を持っていくあたり、下僕共もなかなかやってくれる。
さすが、一般社会ではそれなりの地位についている男達だ。
ただひれ伏して、よだれをたらすばかりが能でないことを立派に証明してみせた。
痴漢は自ら招いたも同然の結果を前にして、固く握った拳を震わせていた。
普段の成金趣味からは信じがたいが、痴漢はこの小汚い映画館を彼なりに愛している。
この方が淫靡な雰囲気が醸し出されるだの何だのといった屁理屈付きではあるにせよ。
傍で聞いていて一種のスノビズムだと思ったが、本人には言わない方がいいだろう。
だが、そこまでの気配りをする関西弁の男とは反対に、痴漢は心に浮かんだ不平や不満は
すべて彼にぶつけても構わないと思っているらしい。
早速この部屋の内装にけちを付け始めた。
しかし『趣味が悪い』と言われても。発注をしたのは自分ではないのだ。
同意や反論も、特にする気になれない。
―――それで死ぬわけでなし、ここまで熱くなるほどのことだろうか。
関西弁の男はそう思うのだが、何しろ相手は"こだわりを持つ男"。
お前、一人っ子だろうと言いたくなるのを我慢して、御意見を伺ってみた。
『べつにええやん、猫足もキンキラもあれへんし』
ビクトリアやロココだったら関西弁の男もさすがに厭だったが、アールヌーボーなら
まだましではないか、と。
それに対する痴漢の返事は『どうせならアールデコにすればいいものを』だった。
"天井の色が良くない"とか、"今更モリスか"とか、次から次へと文句が出てくる。
馬鹿らしくなって放っておいたら、モリスの業績についてどうだこうだと演説を始めた。
何でも、アールヌーボーで一括りにするのは間違ってるんだってさー……どうでもええわ。
あまりの眠さに、つい本音が零れそうになるのを我慢して、ひとまず痴漢を帰らせた。
明日の晩なら肛門科の医師も来るから、彼の口から上手く言ってもらおうと思ったのだ。
彼が、穏和な振りして言いたい放題の男であることを、これまたすっかり忘れていた。
次の日、久々に映画館を訪れた医師は、簡単ないきさつを聞いただけでこう言った。
『別に良いじゃない。誰も君に使えなんて言ってないんだし』
こめかみに血管が浮き出そうになっている痴漢とは対照的な、穏やかな笑みを浮かべて。
その様子を見ていると、今回のことも前もって承知していたのではと思えてくる。
じきにやってきた423は、痴漢に『下僕に何を命じた』と怒鳴られ、眉をひそめた。
改装済みの部屋に案内されるまで何も知らなかった423は、痴漢に向かって
『新参者が縄張りを荒らしてしまって誠に申し訳ございませんでした』とせせら笑った。
慌てて間に入った関西弁の男は、いっそない方がましな言い訳をしてしまった。
『単に壁紙が気に入らんだけや。"今更モリスか"やて。こいつこだわる方やから』
関西弁の男が痴漢を庇っているようで面白くなかったのだろう、と今なら判る。
『少し前によく見かけたからって、そういう言い方をするのはどうかと思いますが。
昔からあるものを、それこそ"今更"流行物扱いしなくても』
もうこの頃、痴漢相手には一言で済ませるようになっていた423が、珍しくやめなかった。
『あなたのお遊びを邪魔するつもりはなかったと思いますし、お許し頂けませんか』
『……お遊びとは、どういう意味かな』
返答次第では423を叩き出す口実になると思ったのだろうが、そうは問屋がおろさない。
『王子と乞食ごっこ。ここ以外は手付かずだそうですね。他の場所で思う存分―――』
『わーっ!!―――やめろて、おい、こら―――センセーっ!!』
逆上した痴漢がドアに拳を叩き込もうとしたのを羽交い締めにし、事態の収拾を
つけて欲しさに医師の姿を探してみたが、腕組みをして部屋の中央に立った彼は
何も聞こえない振りを装って 天井を見上げていた。
そういう男だと知っていながら、つい期待してしまった自分が情けない。
『壊したって聞いたら、今度は何を持ってくることやら―――僕は知りませんからね』
下僕共に貢ぐ口実をあたえるだけだと言われては、物に八つ当たりも出来ない。
だからといって、関西弁の男の足を思いっきり踏まなくてもいいではないか。
こんな時はさすがにぐれてしまいたくなる。
―――お前、本当は俺のこと友達だなんて思ってないだろう。
その後、調度品が貢がれても423が拒まなかったのは、痴漢へのいやがらせに違いない。
痴漢は文句を垂れ続けたが、もう聞いてやる気になれなかった。
滅多にない機会を与えられた下僕共は、ここぞとばかりに様々な物を送りつけてきた。
普段423に物を貢ぐことができない憂さを晴らすかのように。
423が彼らにたかるのは食事のみで、面倒くさいから金品は一切受け取らない。
受け取って、送り主に欲が出るのを警戒してのことではないだろう。
奴等にそんな根性があるとは思えない。
痴漢もそれを承知の上で、お礼に一つ、と423主演のフィルムを見ていくように下僕に
すすめてみた事がある。お前らの崇め奉る423様の痴態をご覧になりやがれ、と端から
嫌がらせのつもりではあったが、まさか話題にしただけで泣きだすとは。
勿論フィルムを見る筈もなかった。悄然と肩を落として帰ったのは、一人や二人ではない。
唖然とする痴漢に、医師は『変態をなめてかかっちゃいけない』と人差指を振ってみせた。
痴漢に苛められた下僕共はますます結束を強め、貢ぎ物は次々と映画館に届いた。
423は下僕共を止める気はないと関西弁の男に向かって言いきり、痴漢は苛立つ一方
だったが、ある日を境にぴたりと届かなくなったのには、今度は関西弁の男が呆然とした。
その前の晩『物が多い部屋って、余り好きじゃない』と423が呟いた時、間違いなく
二人きりだったはず。適当に入った安ホテルで、一緒にシャワーを浴びていたのだから。
盗聴器なんて役に立たないくらいの湯の音にまぎれ、耳朶を食むようにして囁かれた
あの台詞を、どうして奴等が知っている。
医師が種明かしをしてくれるまでの間は、同衾しても手出しはできなかった。
どうして急に貢ぎ物ラッシュが止まったのか。
密かに怯える関西弁の男と、423様が止めさせたはずも無し、と首をかしげていた連中に
『あれがそうだったんだと思う』と医師が話してくれた。
下僕の一人が御機嫌伺いに現れ、何か足りないものはないかと尋ねた折りのこと。
それまでずっと423は『特にない』を繰り返し、下僕共はまったく聞いていないかの
ように送り続けていた。しかし、その日初めて423は無言で首を振ったそうだ。
下僕は深く頷いて去ったが、今にして思えばあれは貢ぎ物が来なくなった前日だった。
それで貢ぎ物がうっとおしくなっていると判断できるのには、感心を通り越して呆れた
423のことをよく理解しているからだろう。もともと、彼は物にあまり執着しない。
金は浪費するより切りつめる方が性に合っているらしい。
しかし、下僕の積み上げる札束よりも道で拾った10円玉の方が嬉しいという感覚は、
健全なのか歪んでいるのか判断に苦しむところだ。
随分と物が増えたこの部屋だが、そのわりには狭くも雑然としているとも思わない。
皆で相談したのだろう、方向性がある品物選びをしているため、トータルでバランスが
とれている。金額面でも、恐ろしいことになっているらしい。
家具は関西弁の男が見ても判ってしまうアンティークの有名どころばかりだったから、
おのずと価格は知れてしまうが、それ以外も充分とんでもなかった。
この羽毛布団1枚で、車が買えると聞いたときには、他人の金なのにクーリング・オフと
相談センターという二つの言葉が頭の中をくるくる回った。
痴漢によると、一羽からほんの少ししか取れないのを集めて作った超高級品なんだそうで。
―――ただの布団じゃねえか、こんなもん。
その素性を確かめていたらいちいちそうやって絡んでしまいそうだから、自分からは
なにも聞こうとはしなかったが、雑貨はいずれもどこぞの王室御用達とかそんなもの
ばかりらしい。痴漢が423を女王様呼ばわりするのは、後にエリザベス女王杯で大敗を
喫したのがきっかけではあるが、その種はすでにあの頃蒔かれていたのかもしれない。
一番最初にガラス工芸で有名な作家の飾り棚が届いた時に、これは来る、と思った。
痴漢もまた本物志向という名のブランドオタクだからだ。
しかも、“知る人ぞ知る名品”が大好き、というかなり嫌らしいタイプ。
だからある程度の覚悟はしていたが、関西弁の男の予想をはるかに超えた、
見事な燃えっぷりだった。
―――まさか毎日聞かされることになろうとは。
いい年をした男が、電話してきてまで言うことではなかろうに。
『それに合わせたつもりだろうが、あれの方がいい。どれから選んでなぜこれなのか、
私にはさっぱりわからないがね』
関西弁の男には、痴漢が何を言っているのかさっぱりわからなかった。
自分には耳なじみがないせいか、すぐに忘れてしまったが、こそあど言葉の部分には
外国語が色々入っていた。それを淀みなく列挙するとは、嫌いなわりには詳しすぎる。
一時期、はまっていたことが窺えたが、これも言わずにおいた。
あの蘊蓄垂れとつきあう1は偉い、と思うが、右から左に抜けているだけかもしれない。
―――瑣末事にこだわって延々と語りを入れる痴漢がついに見つけたハニーは、にこにこ
笑いながら一部始終を聞いてくれるけれども、実は何も頭に残っていない1なのでした。
世の中うまく出来ている。
関西弁の男も、日頃からそんなすさみきった目で二人を見ているわけではない。
1は一所懸命に人の話を聞こうとする良い子だし、痴漢も些か足りないところのある彼に
説明する時は、かなりセーブしている。
二人でいるところを目にする度に、あいつも大人になったと感動せずにはいられない。
1もまるきり馬鹿ではない。なまじお勉強はよくできるから、余計に抜けて見えるのだ。
極端に一点に集中するかわりに、それ以外ではぼんやりと弛緩して注意力散漫になり、
人の話もあまり耳に入っていないから、自然と会話のテンポもずれてしまいがちなだけ。
性格は悪くないので"天然"で許されているが、本人は気にして努力もしているようだ。
誰に頼まれなくても語りつづける彼のダーリンは、ヒアリングの良い教材になっている。
お付き合いをなさることで、お互いに向上が望める素晴らしいカップルでございますとも。
だが、今の状態がこの先も続くようなら。
『お前こそバカ犬を繋いどけや!!うちの猫のそばでキャンキャン吠えさすな!!』
と、いつか怒鳴ってしまいそうだ。……多分、やらないけれど。
言ったその時は楽になれても、後で自分が嫌になるだけだから心の中で叫ぶにとどめる。
痴漢だけでなく、自分もまた卑怯で小心者なのだ。類は友を呼ぶ。
向こうは友達と思ってないようだが、それでもごくたまに、友達ぶることもある。
『友人として一言いわせてもらう。いいかげんあの性悪猫と手を切れ』とか。
いつだって一言で済ませたことのない男に言われても、あまり説得力は感じない。
ウワー、マジヤバー(泣 ......タダイマ、478KB...... 残り削って出直してきます。スマソ>ALL
ゴメンヨー。オヒッコシ、スンデカラ、ヤレバヨカッタヨー(泣.........イッテキマス。
お気になさらないで、書き込んでください。涼気だの基地外うp再びだの……スマソ>ALL
えー!削っちゃうですか…??いやん…。今日、嫌な事あったけどここ来て全部忘れた!!(w幸せー!!
何から言っていいかわからんほど面白かったけど、痴漢の話が右から左の1タンに萌えてしまた。
423萌え・・。変態下僕に共感してシマタ(汗
金も権力もないが下僕に加えてホスィ・・。
痴漢はとことん1たん馬鹿なのねw
関西弁さん一回びしっと言ってやってくだせぇ。
続き楽しみに待ってます・・ハァハァ。
次スレ立ったあとで、できるだけ書いてみます。
本当は前スレにコソーリ貼るつもりだったけど、1000ゲッターに見つかったら
一発でパアだったので。前スレはカウントが、今スレは容量がやばかったのじゃ…
テキストファイルで50KBない所にかけたのじゃが、ちと怖くなってストップ。チキンハートでスマソ。
そろそろ次スレの話がでてるのに前スレがあるから、なんか書いて貼っちゃえ、とオモテ
書いたのですが、長くなりすぎました(泣
>916
ウワキハケーン!>関西弁の男の男が思った
…もちろんただの間違い。正しくは「関西弁の男が思った」です。
カウントもまた間違えた。いつもこんなで、本当にスマソなのじゃ(泣
>913
×次スレ120
〇今スレ120
前スレに貼る気満々だったことがよくわかる…多分まだやらかしてますが、
まとめて書きます。それまで脳内校正よろしこ…チャント、ミタツモリナノニナー…
いつも萌え萌えで脳内校正バッチシ(とゆーか気付かねー)なので安心してくださいね!
いつもありがとうです!職人タン
941 :
チキン:02/03/25 12:45 ID:Tqg/473R
どえらいバイト数になってシモタ......。学習能力なさすぎ。申し訳ございません。
テキストそのままとは思わなかったけど、まさか2/3でここ迄になるとは。しかも950いく前に。
大顰蹙の余り、人がおらんくなったぞなもし(泣
ヤパーリ危ないじゃろな>次スレ立ったあとで、できるだけ
バイト数がどうなるかが読めない。「このスレッド大きすぎます」・・・いやじゃ(泣
942 :
チキン:02/03/25 12:48 ID:Tqg/473R
次スレにうpさせてもらえんかのう?>ALL
勿論、ちぎります。あと10話なので,二つに分ければ20話。......イツモイツモ、ナガクテゴメンヨー
943 :
チキン:02/03/25 12:51 ID:Tqg/473R
あ、『御猫様』の残りのことです>941&942
あっ、すみません、次スレ持ち越しなら、次スレ移行時まで待っております。
946 :
チキン:02/03/25 13:07 ID:Tqg/473R
アリガトー>344
ちぎりうpで、ぎりぎりまで頑張ってみる。
じつはスレ立てバージンというのも逃げてた理由の一つ。950踏み逃げさしてくり(泣
手を切るとか切らないとか、そんな関係でもない。
たしかに懐かれているとは思うし、自分は423にとって特別な存在だとの自負もある。
舞台で疲れると必ず関西弁の男の膝に乗りたがる甘ったれの猫は、めったにあそこで
誘いをかけてこない。舞台でするプレイと自分とのセックスを区別していると思うのは、
まんざらうぬぼれでもないだろう。
日頃は相手が着たままでも気にもかけないか、プレイの一環として脱がせるかなのに、
二人だけの時は脱ぐのが遅いと怒って追いはぎじみた真似をすることもある。
そうして、二人揃ってすべて脱ぎ捨てた後、ひたすらくっついていたいというように
素肌を押し付けてこられては、勘違いしてもしかたあるまい。
しかし、もし423の身に何かあったとしても、関西弁の男を頼ってくるとは思えないし、
万一頼られても力になれない可能性は大きい。
怪我をしても治るまでは姿を見せなかったように、事がすべて解決するまでは来ない
かもしれない。どんな手傷を負おうとも、一人で治したがりそうで恐い。
そんな時こそ我が侭を言って欲しいのだが、半ば諦めてもいる。自分では駄目だろう。
下僕共に頑張ってもらうしかなさそうなのが、ちょっと悔しい。
けれどもこの猫は、くつろぎ場所の一つとして自分の膝を選んでくれている。
そのことを嬉しく思うのと同時に、自分が死んでしまったらその時は、と心配にもなる。
他に行く場所はあるのだろうか。
単なる思い込みということだってありえる。自分の他にも、こうして甘える相手が
いるかもしれない。
もしそうだったら、裏切られたような気分になって少し寂しくなるだろう。
それでも、他に行く所があったと安心する気持ちのほうがきっと大きい。
大切にしてやりたいと思っているが、愛だとか恋だとかいうものとは少し違う気がする。
情が移った、というほうがしっくりきそうだ。
一緒にいてぼんやりしている時の自分は、縁側で猫を膝に乗せた爺と変わらない。
実際、傍が思うほどお熱くもない。むしろお互いの年齢からすると枯れている方か。
誘われればそれなりにいたしもするが、いまさらがっつくような間柄でもなくなった。
猫の盛りよろしく、一年を通じ春秋の頃の数回で終わったこともある。
くどいようだがいい年をして、そういう事を他人に聞いてくる男が身近にいたのには
驚いた。自慰の回数を競い合う中学生じゃあるまいし、くだらなすぎる。
何でまたそんなことをと冷たい目で見たら、さすがにこそこそ逃げていったが、その姿を
しっかり医師に目撃されてしまった。後日、本人不在の酒席で笑い者にした彼は鬼だ。
『あんまり笑っちゃ可哀相だけどね』だなどと、どの口でぬかすやら。
医者の姿をした鬼は、次の瞬間爆笑している者たちを寒冷地獄に突き落とした。
『遅まきの初恋って、どうしてああも笑えるんだろう』
初恋と、痴漢。
あまりと言えばあまりな取り合わせに関西弁の男を除く皆が鳥肌を立てた中で、果敢にも
レジデントが異議を申し立てた。『ちょっと寒すぎる』と言った彼を、医師は一蹴した。
『そりゃ初恋って言うのは冗談だけど、別におかしくないじゃない? 妙にうぶな所が
あるから、423ちゃんにさんっざん転がされて馬鹿にされてるんだしさ』
歯向かって転がされる前に、とっとと降伏している男達は全員が黙りこんだ。
『ま、仲良きことは美しきかなってことで、暖かく見守ってあげようじゃない。しかし、
あの男が、いまさらどの面下げて、と思うと感慨深いよ。さっきの話も要するに
“こんなに幸せでいいのかしら、なんだかこわい”ってことでしょ? 乙女だよねえ』
しみじみと述懐する彼が本音も交えて言っているのは判る。自分と同じく、あの男の
古傷を知る数少ない人間の一人として、祝福する気持ちでいることも。
しかし、もう少し言い方があるのではないか。
そっちは避ける体勢を整えてから言っているのだろうが、こっちは隣に座っていた
レジデントが吹き出したビールがまともにかかってしまった。
他にも何人かやらかしており、テーブルの上は大惨事になった。
『ちゃんときれいにしといてよ。やだな』
しっかり皿を抱えて逃げた医師は、元凶のくせに何もしなかった。
最初から当てにせず、さっさと片付け始めた自分が憎い。
こうして思い返してみると、世話焼き爺以外の何者でもない。ちょっと嫌になる。
世話を焼きたいのはこの猫だけなのに。
関西弁の男の可愛い猫は、冷蔵庫にあったサンドイッチを食べながら朝からワインを
飲んでいる。両方とも、昨夜下僕の一人が差し入れたものだ。
前に下僕の一人をとっつかまえて、起き抜けに食べる物も欲しいと頼んだ。
自分が便乗して欲しがっていると思われたら厭かも、と細かいことを気にしつつ、
そんなに豪華なものでなくてもいいから、と頼んだところ、下僕に『かしこまりました。
今後もよろしくお願いいたします』と頭を下げられてしまった。
なんだかなぁ、と頭を掻きながらこちらも下げた。奴等は本当によく分かっている。
423は、ほうっておけば自分の容姿はおろか、健康も省みない所がある。
朝からワインを一本開けてしまったり、洗濯石鹸でその絹糸の髪を洗おうとしたり。
下僕共も、前者については関西弁の男に早いうちから頼んでいる。
後者は貢ぎ物で解決をしようとした。
痴漢とは対照的に、余程匂いがきつくない限りどこのブランドだろうが頓着しない
423だから、ボディケア用品も下僕の貢ぎ物をそのまま使っていた。
それに関しても本当は一説ぶちたい痴漢は、医師に『よくそんな所まで気がつくねえ。
本当に気になるんだなぁ』と言われて以来少々おとなしくしている。
気になるんじゃなくて、気に障るんだと言い返したくても相手が悪い。
渋々引き下がったのだろうが、医師もたまにはいいことをしてくれる。
そんな423が唯一これと決めているのは、その身に纏う香り。関西弁の男が贈った物だ。
気を遣ってか、以来下僕達は無香性のものしかよこさなくなった。
423が、廃盤になったけど好きだった、と有名な香水の話をしたときに、何とかして
やれないかと思ったのだ。あとから考えれば下僕に相談してもよかったのだが、
その頃はまだ彼らを薄気味悪いと思っていたし(今でも多少思っているが)、
聞けた義理でもないとの遠慮もあった。結局、痴漢を頼ってしまった。
後から騙されただのなんだのと文句をいっていたが、当然無視した。
あんな感じで、と423が懐かしんだ香りを例に挙げたが、それが女性向けだったのも
誤解の元になった。しかし誰も、女にやるとも423にはやらないとも言わなかった筈だ。
ファーストだミドルだとこれまた呪文を唱え出した痴漢の助けを借りて出来上がった
特注品は、無くなりかけるとこの部屋の目に付く所に空瓶がおかれる。
関西弁の男は黙ってそれを片付け、新しいものが届き次第その辺に置いておくと、いつの
間にか無くなっている。そういうのも楽しいと思う自分は、もう立派な乙女かも知れない。
そんな風に関西弁の男に乙女心を植え付けた当の423様は、朝から機嫌が悪そうだった。
黙々と食べ終え、ベッドに戻ってくると何も言わずに潜り込んできて、関西弁の男の胸に
顔を埋めた。やっぱり昨夜のことが気に触りまくっている。
昨夜は423は早々に疲れ果てて、関西弁の男の膝の上でうとうとしていた。
体力がないわけではない。むしろ腕力も含めて人並み以上。中途半端に疲れている時、
思いっきり疲れてぐっすり寝たいからという理由で映画館に来ることがあるのだ。
昨夜もそうだった。
気持ち良く疲れて、そのまま眠ったところを関西弁の男がこの部屋に運ぶ筈だったのに、
子犬がじゃれついて起こしやがった。今度こそ切れると誰もが思っただろう。
幸いにして不発に終わったが、単に先延ばしされただけだ。関西弁の男も、脱力している
時はともかく平常時にこの猫を押え込みつつ、痴漢からも庇えるかというと自信がない。
そう。なにが恐いといって瞬間最大でいけば、423は痴漢や自分と変わらないくらいの
力持ちなのだ。だてに大飯を食らってはいない。
絡んできた酔っ払いの顔面に拳を軽く一発、頬骨を骨折させたこともある。
『もう少し上だったら、眼球が潰れるか飛び出すかしてたって』と医師に聞かされて
ぞっとした。下僕共が一人歩きをさせるわけだ。
ちなみに関西弁の男が気がついてないだけで実は、というのはもうノイローゼに
なりそうだから、最初から除外している。
―――それくらい神経が太くなくては、とても423様のお側にはいられませんとも、ええ。
それはさておき。
423がこの怒りをぶつける先は100%痴漢だ。1は攻撃対象外だろう。
これまで大きな争いにならなかったのは、常に423が痴漢に対し譲ってやっていたから。
その423がついにリングに上がれば、痴漢もここぞとばかりに始めるだろう。
口で罵りあうのならまだいい。問題は、両名が切れて腕力に物を言わせようとした時。
瞬間最大出力は互角で、リーチや持続力は痴漢の方が上。
だが、やるとなれば423はかなりえげつない手を使うに決まっている。
似非紳士の痴漢は普段は温厚そうなふりをしているが、切れたときの見境のなさは
何度もこの目で見ている。
その二人の間に割って入って両名に怪我をさせまいと気遣いつつ、とろこい1も
避難させていたら、死ぬかもしれない。
医師が1を逃がすのを手伝ってくれると思いたいが、あとはどうだか。
リングサイドで、関西弁の男の怪我の具合まで含めた賭けをしてしまいそうだ。
自分だって片方がうちの猫じゃなければ、さっさと見物にまわっている。
せめて痴漢が負けてくれれば。
しかし、この先一生愚痴をきいてやるからと言っても、あたり前だが絶対に引くまい。
956 :
チキン:02/03/25 13:28 ID:Tqg/473R
完結編に続きますが、一度引っ込みます。
誠に申し訳ありませんが、どなたか次スレ立ててください。
957 :
チキン:02/03/25 13:58 ID:Tqg/473R
どなたか、じゃまずいか。949で止めておくのじゃった。
この際バージンブレイクしてみたいともオモタけど、最近ミスばっかりだから怖いのじゃ(泣
960踏んだ方、お願いできんかのう…。
958 :
チキン:02/03/25 16:11 ID:Tqg/473R
今頑張ってます>次スレ立て
不細工な仕上がりになると思いますが、頑張るのでよろしこ(泣
大失敗こいた。スマソ(泣
>960=チキン様
スレ立てお疲れさまでしたm(__)m
それと関連スレに入れていただけるなんて…
おそれ多くも道理で閲覧増えた訳で(藁
次スレまでの時間にテンプレ何とか考えないとまずいですよね…
>961
あうう。後悔しきりです>新スレ
タイトルは『男って痴漢にあったら、正直>1 【2幕目】』とかのが良かったと思うし、
1のラストに>2−4のリンク貼り付けすればよかった。
それで、>2のラスト『まあお前、初心者は、ROMって勉強しろってこった。』の次に
過去ログおよび関連アドレス貼ったら、もっとスリムになったのに。
所詮ろくなスキルもないミテミテ厨房のお婆じゃから、上手にできんとわかっておったけどのう。
ちぇっちぇっちぇーーっ,ざんす。
ほんに、申し訳ないことしたぞなもし>ALL
置換ウマー
964 :
てすと: