銀河系の遥か彼方、地球から6万光年の距離に惑星Ziと呼ばれる星がある。
長い戦いの歴史を持つこの星であったが、その戦乱も終わり、
平和な時代が訪れた。しかし、その星に住む人と、巨大なメカ生体ゾイドの
おりなすドラマはまだまだ続く。
平和な時代を記した物語。過去の戦争の時代を記した物語。そして未来の物語。
そこには数々のバトルストーリーが確かに存在した。
歴史の狭間に消えた物語達が本当にあった事なのか、確かめる術はないに等しい。
されど語り部達はただ語るのみ。
故に、真実か否かはこれを読む貴方が決める事である。
過去に埋没した物語達や、ルールは
>>2-5辺りに記される。
ルール
ゾイドに関係する物語なら、アニメや漫画、バトスト等何を題材にしても良いです。
舞台となる場所、時間等は制約無しでバトストと書いて有りますが平和ても問題無いです。
自由で柔軟な発想の作品をお待ちしています。
例外的に18禁描写はご遠慮下さい。
鯖負担の軽減として【450〜470Kb】で次のスレを用意する事。
投稿された物語の感想等も大歓迎です。
4 :
鉄獣28号:04/07/15 10:34 ID:???
>>1の本文は今までの物を少しアレンジしましたがいかがでしょうか?
一応公式の方が100年後になってるのでやっぱり少し変えたほうがいいんじゃないか?とか思ったりしたもので・・・。
別に公式年代にこだわる必要は無いけど、良いんじゃないでしょうか
おつかれ。
「せいっ!」「やっ!」「てぇい!」「っ!」4つの影が一つの人影に同時に攻撃を仕掛ける。しかしその人影は軽く体を捻り一歩後ろに下がるだけでそれらを捌く。
「遅い…。」人影は大げさな体全体を使って足払いをして4つの影を転ばせる。「何だ?これだけ揃ってまだ1発も当たっていないぞ。手加減は無用だ。」人影の名はザクサル=ベイナード。
残りの4つの影は彼が暇潰しに稽古を付けている少年達。死の闇から幸と不幸を背負って帰還した幼い命。
「当たらない!?」ブラッドは起き上がりながら言う。因みに戦力差から言えばブラッド達とザクサルの純粋な戦力差は12:1程である。しかし今の状態は戦場の機体毎の交戦時平均交換率より分が悪い状態となっている。
「もっと視野を広げろ。それに頭数を利用しなくて如何する!多少の戦力差等実戦経験に勝る事はまず無い。その戦力を活かせ。先ずはそこからだ!」かなり厳しいお言葉である。
これはザクサル自身も実は舐めている苦い経験である。ここ何日かで2回そして彼等の様に訓練中に幾度となく経験した事だ。特にこの2回は納得のいかない物である。
激辛の食事を盛られたり、慣れの問題で予想外の黒星と…。「あいつは俺の敵だ…。イツカコロス。」そろそろ心身への焼き込み具合が酷くなって来ている。
「何でかな?何か物思いに耽っている相手に遊ばれてる…。」かなり正確な攻撃を繰り出しているマグナではあるが掠りもしない。「ちぃっ!?何もかも予測範囲内って感じだぜ!ボルク!合わせろ!」グレイが叫ぶ。
「…ん!!!」ボルクは頷きその次の攻撃をグレイの行動に被せる様にしてザクサルに挑む。「掠ったか。」それでも掠る程度でしかない。当然防御体制で受け流されている「少しは先に進めそうか?」口元が歪む。
次の瞬間4人は凍りついた様に足が動かなくなる。「どうだ?これが…殺気だ。」目を閉じて開く唯それだけで動きが取れなくなる。「ううう…。」何とか動こうにも膝が笑っていて全員転倒してしまう。
「少し早かったか?しかしこれで解った事も在るだろう。少し体を休めておけ。次で今教えられる事は全てだ。」ザクサルはその場から離れる。
少し離れた場所に有る5機のゾイドを見るとそれは少しづつ微妙だが以前と姿が確かに違う。「ふっ…乗り手に合わせて変異するか。これは面白い物が見れるやもしれん。」
鉄獣28号さんへ
こちらでも新スレ乙です。
>>5さんの言う通り年代は目安程度の意味しか持たなくなってしまいましたから。
公式の100年飛ばしで…。しかもそのまま続けそうですし。商品番号として〇Zー〇〇を使う気が多分無いでしょうし。
作例や機体にシールを貼らなければ年代を無視すらできると言うのに…_| ̄|○
新スレ早々…
【人名】
蛆捲きのアヴィターラ:ノーブルアーシーズに与する恐怖の医療愉快犯、我こそは最高の医者であると証明せんが為に患者や怪我人を探し回る狂人
実は良い人かもしれないがオカマ臭い言動、拷問部屋の隣で盗み看守から学んだ拷問の知恵で患者を拘束する等常識に捕らわれない医療方法で人々から恐れられている
相棒たる蠅や蛆達はお薬代わりなので清潔です、本名アヴィターラ=バロック
双頭のソウエン:ノーブルアーシーズに「与する四面獣天の1人、カイエンの兄で本名はソウエン=ミシマ、剣術、特に鞘から抜いた状態からの驚天動地の居合を操る達人
構えを鞘とする独特の抜刀術は実は余り腕力の無い彼に野太刀の二刀流をさせる程の技術的な変化を与えた、浮き世離れした爺むさい性格で修羅の道でしか生きられない方
尚来ている装束は共に修行をした後輩の形見である
ファング=W=グレイマン:アーヴェラー家に仕える執事兼ボディガード、白髪アフロとそれを含まず2mの身長と筋肉質の肉体美を持つマッチョなお爺さん
破滅的な腕力と持久力、敏捷性、防御力を持つ有る意味人間最終兵器、執事として礼節を重んじ敵対者にも敬意を払うのを忘れない執事の鑑の様な怪人
【技術】
エルダーコア:名前は未出でベルゼンラーヴェやバールの半身の様な一般的な方法では出現、制作が不能なゾイドコアで不明な部分が数多く様々な説が真しやかに語られる
有る物は古代Zi人の品種改造と言い、別の者は彼の地より齎された外道の秘術で作られたとか言う、そんな噂がたつ程の力と可能性を持つゾイドコア
不明な部分が多いが例外として解っている事はクローン不可でコアのままでもコアを産み出す謎の多い存在
【ネタ】
四面獣天:ノーブルアーシーズの力の象徴とまで言われる4人のエージェント、実際はベルゲンの手駒
凶王:オーバーロードと読む、一部の物からベルゲンを呼ぶ際に使われる敬称でそれ以上の意味は無いらしい?
「何て場所だ…いかにも、と言った雰囲気が出ている」
愛機の関節が凍りつかない様に気を付けながらも、ルガールは“山”の麓に辿り着いた。
不気味――この山を形容するのにこれほど相応しい言葉はあるまい。長大な横幅と7000m級の高さを持つ山だが、
吹雪に閉ざされたこの地では山のシルエットが薄暗い空に映し出されて恐怖すら感じさせる。
そして、山の麓から中腹に掛けて道路が通っていた。せわしなくトラックやグスタフが入山し、山腹に開いた洞窟に消えていく。
「この吹雪では、レーダーも効かぬか」
道路の至近距離にいるルガールの機体が発見されていない事こそ、何よりの証拠――の、筈だった。
だが、彼が気配を感じて機体を振り向かせた時には、もう十数機のゾイドが彼を取り囲んでいた。
「!? 気配が…?」
相手の方から通信回線を開いてくる。
<おい、アンタ何やってる!? 邪魔だからさっさと退きな!!>
彼らは、“ギルド”の者ではなくそれに反対する地元勢力だった。
権力者(平たく言えば“ギルド”)あるところ、何処にでもレジスタンスがあるのだ。
「待て! 私はこの山で“ギルド”が何をやっているのか調べに来ただけだ!」
ルガールの言葉を、相手は信じなかった。結局彼とリニアはレジスタンスの者達に連行され、行動を共にする事となった。
しかし、これによってルガールは思ったよりずっと簡単にアララテ山内部に侵入する事が出来た。レジスタンスは随分前から
周到に計画を練っており、侵入経路も予定済みだったからだ。
「なんか、いきなり捕まっちゃったね」
リニアが不安そうに呟くが、ルガールは全く動揺した様子が無い。
「逃げようと思えば、いつでも逃げられる。それよりも今は見るべき物を見る事だ」
見るべきもの――それは唐突に、彼らの前に姿を現した。
「大きい…何という、巨大な…」
「こ、これが…この山にお眠りなさっている、神様か!?」
方舟の威容に圧倒されていた彼らは、山の外から響くような轟音を聞いた。
“堕天使”の機体は雪の中に立っていた。
周囲には破壊された3体のセフィロトの残骸と、そこから浮き上がるエレメントが散乱している。
「弱いね…この程度の力でこの星を守るなんて、馬鹿げてる」
エレメントの回収を終えた時、コックピットに通信が入った。
<地元のテロリストが内部に侵入した! すぐに戻って迎撃を頼む!!>
「チッ…一体取り逃がしたが…まあいい、どうせ奴が入ってくる前に片を付ければいい話だ」
彼の機体はバーニアを吹かし、山の中へ戻っていった。
「まずいぞ、見つかったか!」
「徹底抗戦だ! 俺達の土地は俺達で守る!!」
レジスタンスの面々がヒートアップする中、ルガールはポケットに入れたあの三角形のプレートが微かな光芒を放つのを見ていた。
「このプレート…反応している…?」
ルガールの目は、方舟に引き付けられた。
「あれ……か?」
方舟に向けて機体を走らせようとしたルガールは、後方で大爆発が起きて振り返った。
レジスタンスのゾイドが一機、真っ二つに切り裂かれて爆散したのだ。そして、遥か上方の岩棚に黒いゾイドが居た。
「この山の秘密を知った者は、誰であろうと僕が殺す…」
そのゾイドはバーサークフューラーだった。だが、バスタークローの代わりに9枚の翼の様なユニットが装備されている。
そして、全身が黒く塗装されたその機体を見たレジスタンスの一人が、戦慄に身を震わせながら呟いた。
「あ…あれは……間違い無い! “バーサークフューラー・シャドーエッジ”を駆る、最強の能力者…」
9枚の翼が、それぞれ輝く刃を形成した。その姿はまるで、人類を裁くために舞い降りた堕天使をも想像させる。
「あれは……“堕天使”セディール!!?」
運命か偶然か、邂逅は果たされた。
第6章:光の超重砲
一条の細くも強い光が闇夜を切り裂いた。一瞬の出来事。それだけの一撃で数機のゾイドが隠れていた岩山ごと撃ち抜かれた。
「ったくアイツ等…セイスモサウルスを持ってるなんて聞いてないぞ!!」
「こんな仕事…引き受けなきゃ良かった…。」
別の岩山に隠れた状態で、一条の光が飛んできた方向に見えるさながら要塞のような建物を見ながら
ルナリスとマリンはそう愚痴っていた。事の発端は数日前。例によって覆面Xの仕事紹介によって、
他の賞金稼ぎ達と共に、治安維持部隊にさながら傭兵として雇われて、現在世間をにぎわせている
犯罪組織、“コロンズ団”と戦う事になったのであった。元々相手のコロンズ団は賞金首リストにも
登録されていた為か、それらに参加した賞金稼ぎの数は多く、単純な戦力で考えるならば、
傭兵を含めた治安維持部隊の方が遥かに上回っている。無論普通なら割と簡単にカタが付く楽な
仕事なはずであった。しかし、相手の犯罪組織はなんとセイスモサウルスを何体も隠し持っていたのだ。犯罪組織はそのセイスモサウルスを本拠地の周囲に展開させ、様々な方角から攻撃を仕掛ける治安維持
部隊を迎撃していたのだ。セイスモサウルスのゼネバス砲による精密な砲撃によって、既に多くの
ゾイドが接近する間も無く倒され、運良く接近できたとしても、結局そのセイスモに阻まれ、その
巨大な足に踏みつぶされたり、全身に装備された砲塔から放たれるレーザー砲によって破壊されて
しまうのであった。無論ミサイルなどを発射しても、結局セイスモのゼネバス砲や、レーザー砲に
よって撃ち落とされる。かと言ってビーム砲にしても、犯罪組織の本拠には強力なEシールドを
搭載している様子でそれも防がれてしまうのであった。今もセイスモサウルスの砲撃は続いている。
カンウとハーデスですらも瞬殺されかねないゼネバス砲の驚異に中々接近できずにいた。
「お〜!来た来たぞ〜!ホラ撃ち落とされた〜!」
「ハッハッハッ!!アレほどの大軍を相手にしてももろともしない俺達は無敵だぜ!!」
本拠の中から、モニターを介して治安維持部隊が次々にやられてちりぢりになっている様子を見ながら、コロンズ団の構成員等は笑っていた。と、歓喜の声に上がっているコロンズ団本拠内とは対照的に、外ではさながら阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。
「畜生!!もうやってらんねーよ!!」
「あ!!こら!!逃げるな!!」
と、傭兵として雇われた賞金稼ぎの中には逃げ出す者も出始めていた。
「なあ…私たちも逃げない?」
「う〜ん…。しかしな〜それだと報酬はもらえないし…。」
今回は流石に相手が悪いと、マリンとルナリスも逃げ出す相談をしていた。まあ普通なら勝てる戦いを
するのが傭兵なのである。この到底勝てそうにない戦いをするはずは無かった。命あっての物ダネなのであるから…。
「おい!!そこのお前ら!!そんなデカイのに乗っていながら何もやってないってのは
どういう事だ!!?お前らふたりはゾイキュアだろうが!!何とかしろ!!」
「そ…そんな事言われても…。あんなの食らったら私達のゾイドでもあっという間に串刺しにされちゃうよお!!というかどういう意味よそれ!!」
中々相手を攻略できずにいる治安維持部隊員のいらだちは、ついにマリンとルナリスに向けられていた。
「こ…こうなったら一発逆転で狙ってみるか?」
「ええ!?」
退くに引けなくなった様子で言ったルナリスの言葉に思わずマリンは驚きの声をあげてしまった。
「いいか?まず、私がお前の背後に付く。そして相手に向かって突撃するだ。無論相手は砲撃してくる
だろう。その時はお前がハイパーEシールドを張って、相手の砲撃を耐えれるだけ耐えるんだ。
そうして接近し、相手の本拠のEシールドの内側にまで到達したら、私が最大出力の大口径荷電粒子砲で相手をまとめて吹き飛ばす。」
「そ…そんな無茶なぁ!!下手したら私も貴女もゾイドごと串刺しにされてあの世逝きだよ!!うわぁぁぁん!!この若さで死にたくないよぉぉぉ!!!」
恐怖の余り気が動転していたマリンはついには泣き出してしまった。
「ええい!!泣くな!!かと言ってここでヤツ等を倒さんと、さらに多くの人がヤツ等の毒牙に掛かるかもしれんのだぞ!!」
「うう…こんな時だけ良い子ぶって…。元不良のクセに…。」
マリンはふてくされていた。ルナリスもこれには困った顔をした。
「確かに私だって死にたくないさ…。しかしな〜…。今ここで逃げたとしても、奴の射程範囲外に
逃げるも大変だぞ。下手をすれば後ろから撃ち抜かれるかも知れな…。」
「あ…。」
その時だった。逃げだそうとしていたマトリクスドラゴンが撃ち抜かれてしまっていた。
「…………。」
それを見たマリンは空を眺めていた。とその直後、操縦桿を握り占めカンウを立ち上げたのだった。
「わかった!!やるだけやってみる!!けど、ちゃんとヤツ等を吹き飛ばすのよ!!」
「お前こそちゃんと防いでくれよ!!」
開き直ったのか、はたまたヤケクソになったのか、先程までの恐怖に打ち震えていたそれがウソの様に
マリンはやる気になり、カンウは相手の前に出た。そしてハーデスがその背後に付くのであった。
「ゴジュラスギガとデスザウラーだと!!?ほ〜…あんな奴もいたんだな〜…。」
「だがよ!!俺達のセイスモサウルスに掛かればギガだろうがデスザウラーだろうが無力だと思わないか!!?」
「ハッハッハッ!!そりゃそうだ!!一気に撃ち抜いてしまえ!!」
カンウとハーデスの存在に気付いたコロンズ団構成員等はそう叫び、外のセイスモに両機の破壊を
命ずるのだった。無論直ぐさまセイスモのゼネバス砲がカンウとハーデス目がけて撃ち込まれてくる。
しかし、その一条の光は直撃する直前、カンウの前方に現れた空間のひずみによって消滅したのだった。それはカンウが張ったハイパーEシールドであった。
「ようし!!行くよ!!ちゃんと追いついて来てよね!!」
「誰に向かってそんな事を言っているんだ?」
そうして、カンウとハーデスは突撃を開始した。
―――――お前は悪魔だ…緑の悪魔の血を引く魔女だ…神に仇なした悪魔…忌まわしき存在―――――
「うわああ!!!!」
マリンが気が付いた時、何処かの病室の様な場所のベッドの上にいた。
「ゆ…夢か…。それにしても、今のは何だったんだろう…。何かを暗示しているというの?」
そう先程見た夢について疑問に思っていたその時だった。ドアを開けてルナリスが入ってきたのだった。
「おお!気が付いたな!」
「ルナリスちゃん!」
「ちゃん付けするな!」
例によってルナリスはマリンの頭を小突いた。そうして、マリンは痛がりながら頭をなでていた時だった。
とりあえず今日から再び本筋ストーリーの続きです。
>>5さん
大分遅れてのレスで済みませんが、やっぱり
>>1のアレはダメでした?
>>恐怖の亀裂作者さん
久々の設定補足来ましたね。自分もいつかやってみようかなとか思っていますが、
全然やってない今日このごろ。それと若者をご教授するってシーンもかなり良いと思ったり。
>>Inocent World作者さん
シャドーエッジって確か上山版オリジナルのレイヴン専用機でしたよね。
あれはかなり強かったですよね。荷電粒子砲の射程距離とかもクソ長くて。
「ああああああああ!!!!そういえばアレはどうなったの!!?」
マリンが不思議に思うのもおかしくはなかった。あの時、シールドを張ってコロンズ団の本拠へ突撃を
掛け、相手のゼネバス砲を何発か防いでいたと思ったその時、彼女の眼前が強く光った。と、その後の
記憶が彼女には無かったのだ。流石のハイパーEシールドも、幾重にも束ねられたゼネバス砲には耐えることは出来なかったのだ。
「やられたよ…。お前のカンウも…ハーデスもね…。」
「ええ!!?って事はまさか…。」
カンウがやられたと聞かされたマリンは思わず涙目になった。その様子を見た時、流石のルナリスも困った顔をしてしまった。
「安心しろ!確かにやられたが、両方とも死んではいない。今近くの修理工場で修理を受けている所だよ!」
「あ…。」
ルナリスの話を聞いた時、カンウが死んだと思い、今にも泣き出しそうになったマリンの顔に笑みが浮かんだ。と、そんな時、ルナリスはマリンの頭の上に手を置いた。
「ったく一時はヒヤヒヤさせられたぞ…。ダメージで言うなら、正面にいたカンウの方が大きかった
んだからな。無論それに乗っていたお前もしかりだ。故にお前はかれこれ一週間も寝てたんだぞ。
私自身も結構な怪我をしたし…。本当に済まない。あの時は正直私も気が動転していたよ。お前をこんな目にあわせて…本当に申し訳ないと思っている。」
ルナリスは申し訳なさそうに頭を下げていた。しかし、マリンはルナリスを悪く思う様子もなく、微笑みながら首を横に振った。
「気にしないで・・・ルナリスちゃんは悪くないよ・・・、って・・・い…一週間も!!?あ…。」
突然マリンは深刻な顔になった。それにはルナリスも動揺した。
「どうした!!?何かあったのか!!?」
「いや…お腹空いたな〜って思って。」
ずげげげげっ
例によってルナリスはすっ転んでしまった。
「わーったわーった!今何か買って来てやるよ!あと!言い忘れたが、ちゃん付けはするなよ!!」
こうして、マリンはルナリスが買ってきた何かの食べ物にがっつき、空腹を満たすのであった。
「そういえば、あれから一週間たったって言ったよね?という事はあの戦いはどうなったの?」
「作戦は結局中止…。戦闘継続不可能になってな…。まあ、倒せなかったとはいえ、本来の何割かの
報酬はもらえたがな…。むしろ治安維持部隊そのものの方が大変だろうな…。死人も沢山出たらしいし…。」
「そう…。」
事の真相を聞かされたマリンはゆっくりと窓の外を眺めた。窓の外には静かな町並みと真っ青な大空。
あの時の戦いがウソのように平和であった。そんな時、またもルナリスはマリンの頭を優しくなでた。
「とにかく、お前は寝て、傷を癒せ。」
「わかったけど、その頭に手を置くのは止めてくれない?子供じゃないんだからさ!」
マリンが困った顔でそう言った時、ルナリスは笑い始めた。
「ハッハッハッ!お前が私の名を呼ぶとき、“ちゃん”を止めたら止めてやるよ!!とにかくだ!!さっさと寝ろ!!」
ルナリスに言われた通り、マリンは大人しく寝ることにした。しかし、どうしても寝付くことが
出来なかった。確かに一週間も寝っぱなしだった事もあるが、他に気になる物というのもあったのだ。
「初めてカンウに乗った時に、私の脳に直接送り込まれてきたあの不思議な映像では、曾お婆ちゃんの乗ったカンウはあのゼネバス砲を巧みにかわしていた。きっとあれだけの砲撃を受けても曾お婆ちゃん
なら難なくかわしてしまうんだろうな〜…。やっぱり私じゃまだカンウの性能は引き出せないって事なのかな〜…。」
確かに、彼女の言うとおり、マリンはカンウの性能を完全に引き出しているワケではなかった。
それは単純な操縦技術の問題ではない。精神レベルでのリンクによっても先代パイロットのそれには
遥か及ばぬ物だった。確かにカンウには、あの大戦中に先代パイロットと共にゼネバス砲を巧みに
かわしまくった経験が残っている。にも関わらず、あの時かわす事が出来なかったのか。
それはマリンがカンウと完全に精神リンクする事が出来ていなかったからである。
ゾイドは、パイロットとの精神リンクによって機体ポテンシャルが上下する。本当に強いゾイド乗りは、
“操縦技術に長けた者”ではなく、“ゾイドとの精神リンクが上手く出来る者”なのである。
特に、ライガーゼロやゴジュラスギガなど、完全野生体を使用したゾイドという物は、通常ゾイドや
オーガノイドシステム搭載機、ブロックスなど、他の系統のゾイド以上に精神リンクによる性能の
上下が激しい傾向にある。つまり、精神リンクが上手ければ自分より遥かに格上の相手にも勝てる
強さになるが、逆にリンクが全然出来ていなければ格下の相手にすらやられてしまう可能性がある
ワケである。今のマリンとカンウにはその精神リンクが上手く出来ていなかった。確かにリンクが
上手く行ってないと言っても、全然出来ていないわけではない。それは今までの戦いを見れば明らかで
ある。しかし、やはり先代パイロットに比べた場合は遥かに足下にも及ばないというのが現状であった。
つまり、マリンはカンウの性能を完全には引き出していないのである。
しかし、マリンが気になっているのはそれだけでは無かった。マリンが気になっているもう一つの物。
それは先程見た夢であった。とはいえ、流石にこれに関してはいくら考えてもさっぱり分からなかった。
そうして、悩んでいる内にマリンはゆっくりと眠りにつくのであった…。
セイスモサウルスのゼネバス砲が放たれた。細くも強い光がカンウを襲った。速い。マリンとカンウの
運動能力をしてもかわせない。ハイパーEシールドを展開するも撃ち抜かれた。たちまち機体は火に包まれていく。そして、マリンも断末魔の悲鳴も上げるまもなく絶命し、消滅していく…。
「わあああ!!!!」
マリンが飛び起きた時、病室のベッドの上だった。
「ハア…ハア…。夢か…。」
マリンは一安心し、胸をそっとなで下ろした。しかし、その全身には汗がダラダラと流れており、心臓も高鳴っていた。
「大丈夫かマリン?お前うなされていたぞ…。」
ベッドの隣におかれたイスに、ルナリスが心配そうな面持ちで座っていた。そして彼女はまたもマリンの頭に手を置いた。
「その顔を見ると、やっぱりあの時セイスモにやられた事がトラウマになったみたいだな…。」
その言葉を聞いたマリンは気落ちした面持ちで下を向いた。
「“ギルド”の…いや、僕の計画の邪魔はさせない」
黒いバーサークフューラーが消えた。
と、その瞬間にレジスタンスのゾイド数機が同時に葬られた。格闘戦で――だ。
「馬鹿な、あの距離から一瞬で間合いを詰めるとは…」
ルガールがこれまでに経験した事の無い機動力だった。いつの間にか元の位置に戻ったシャドーエッジから、
セディールの挑発する様な声が聞こえる。
「力無き者は、方舟に近付く事を許されない…お前たちは――弱い」
「ほざけッ!!」
レジスタンスのゾイド達が一斉に、セディール目掛けて集中砲火を浴びせた。いとも容易く第一波の
ビームを避けたセディールに、ミサイルの雨が襲い掛かる。
その時ルガールは、シャドーエッジの背中から放射状に何かが放たれたのを見た。
訝る彼の前で、一瞬にして3機のアイアンコングが蜂の巣となった。
「!? ――何だ!?」
セディールは何の動きも見せていない。それなのに、目の前で爆散したアイアンコングはビームで撃ち抜かれていた。
それも、あらゆる方向からである。
再び、何も無い筈の空間からビームが放たれた。今度はルガールにもはっきりと見えた。
「『ビーム砲』が…飛んでいる!?」
全方位からの絡み合う射線に晒され、為す術無く弾け飛んで行くレジスタンスの機体。
セディールの機体が、ルガールの方を向いた。その時――
「後ろッ!!」
リニアの突然の叫びに、ルガールは瞬時に反応した。以前にも同じ様な事があったからだ。
彼の機体が飛び退いた空間を、まさしく背後からのビームが薙ぐ。
「奴は…ビーム砲そのものを飛ばして、たった一機で全方位からの十字砲火を可能とするのか」
どこかで見たような兵器だ――彼はその思いを口にしなかった。言ってはいけない気がしたからだ。
ルガールは飛び回るビーム砲一つ一つの気配を感じた。あるいは殺気。
それだけを頼りに、彼を囲い込む集中砲火をかわして行く。彼はもはやメインモニターすら見ていない。
「これが、奴の能力なのか…?」
どうにも、腑に落ちない。先程のスピードは「増速」の能力を使ったでも無いようだったし、この全方位攻撃も
確かに強力だが、これならあの砂漠で戦ったゴジュラスギガと大して変わらないのではないか?
この兵器も、あのスピードも全て――奴の「自前の力」なのだ。そう思うと、うそ寒い思いを禁じ得ない。
一瞬の疑問――それはコンマ数秒の隙を生み出し、ルガールの反応を遅らせる。
「しまっ――」
いつの間にか、彼の前に本体が来ていた。
「僕の“サタンジャッジメント”を、全てかわしている?」
セディールは楽しむ様な笑みを口の端に浮かべた。しかしその笑みは、残忍な冷たさをも秘めている。
「地元の連中にも、少しはゾイドの扱いを知っている奴が居たとはね…でも、僕の邪魔をするのなら」
彼の機体は一瞬にして、ルガールの機体の前に舞い降りた。
「誰であろうと、排除するまでだ」
大戦中に開発された格闘兵器、ビームブレード。この機体背部に背負った翼にはそれが搭載されていた。
セディールは静かにビームブレードを振り下ろした。グラビティバイソンの装甲が真っ二つに切り裂かれる。
だが、切り裂かれたのは本当に「装甲だけ」だった。正確を期するなら、装甲と追加された外部兵装――
シャドーエッジのコックピットに衝撃が走った。
装甲を脱ぎ捨て、ディバイソンの姿に戻ったルガールの機体はシャドーエッジの懐に飛び込み、
その角をコックピットに叩き込もうとしたのだ。セディールが間一髪で逃れたのは、彼自身の反射神経と、機体の運動性のおかげである。
それでも、セディールの凍りつく様な笑みが消える事は無かった。
再び禁忌の道へ足を踏み入れた自分…しかしまあ、ガン○ムに出来る事がゾイドに出来ない事はあるまい!(汗
>>鉄獣28号氏
あれって、最強のフューラーである筈だったのに全然強い描写が無くてがっくり来た(外見がカコイイので尚更)モンで
自分の大好きなネタの再利用として登場。さらにはファン○ルもどきも搭載。(・∀・)ウェーッハッハッハ
しかし、セイスモがこんな強敵に見えるのもやはり主人公弱体化のためですかね?前作ではセイスモが
まるで雑魚の如く描かれていたのと対象的でまたGood。
「確かに正直言うと怖い。つい今さっきも夢に出てきたくらいだから…。けど同時にいつかは
リベンジしないと私ダメになっちゃうんじゃないかと思う。マオ曾お婆ちゃんだって、カンウと共に
セイスモサウルスクラス、さらにそれ以上のゾイドが現れては消えていったあの大戦を戦い抜いたんだから、私はもっと腕を磨こうと思う…。」
「しかし、腕を磨くつーても限度があるだろう。第一相手はゼネバス砲だし、口で言う程甘くは無い
だろう。腕を磨く事は良い事だと思うし、結構な事だが、同時にやはりゼネバス砲に対抗できるような作戦を考える事もやるべきじゃないか?」
「作戦…。」
マリンは窓の外を眺めた。外はもう暗くなっていた。
「まあとにかくだ!!今は栄養を付けて体力を回復させるのが先決!という事で栄養ドリンクを用意してきたんだ!飲め!」
と、ルナリスはそう言うとコップに入った何かの液体をマリンに差し出すのだった。
「あ…ありがと…ルナリスちゃん…。」
「だからちゃん付けするなと…。」
マリンはそのルナリスいわく栄養ドリンクを飲む事にした。と、その時だった。
「ブッ!!!うあ…。ゲホッゲホッ…。」
飲んだ直後、異様な味に襲われたマリンは思わず飲んだ物を吐き出してしまった。
「何よこれ!!うげ〜…。気持ち悪い…。水…水…。」
本当にマズかったのか、マリンは気持ち悪そうな顔をしていた。それを見たルナリスも少し驚いた顔をしていた。
「やっぱり生卵をそのままかき混ぜただけじゃダメか〜…。」
「ええ!!生卵!!!?それが何で栄養ドリンクなのよ!!」
マリンは涙を流しながら激怒し、思わずベッドを叩いた。
「お前“ルッキー”を知らんのか!!?ボクシング映画のルッキー!!それの主人公がそう言う生卵かき混ぜた奴飲んでたからいけるかな〜って思ったんだが…・。」
「せめて醤油混ぜてよ!!ウチは卵かけご飯を食べる時はいつも醤油を混ぜるのよ!!」
「ならば青汁はどうだー!!」
「せめて美味しい青汁にしてー!!」
と、マリンとルナリスはケンカを始めてしまった。しかし、ケンカと言っても二人の間には憎しみの
念などが感じられなかった。むしろガス抜きと言うべき物であった。そして、マリンは知らず知らずのウチに元気になっていった。
「とにかく!!いつかアイツ等に仕返しするよ!!その為に腕を磨き、かつ奴等に対抗できる作戦を立てる!!」
「ああ!!」
数日後、退院したマリンとルナリスは互いにそう言い合って走り出した。時を同じくしてカンウと
ハーデスの修理も完了しており、そちらの会計も済ませると、二人と二機は新たな旅へと出発した。
打倒コロンズ団、打倒セイスモサウルスを誓い合いながら…。確かに彼女等は一度はなすすべ無く
敗北した。しかし、彼女等の希望と情熱は失われていなかった。本当の敗北とは敵に負ける事では
無く、己に負ける事である。そして、絶望こそが己に負けた証明。そう考えるならば、例え戦いで
破れても、希望を失わず、さらなる情熱を燃やす二人は負けていなかったと言えるであろう。
今回の書き込み量は少なめですが、次から新章に移るので、キリをつける為に
あえてこうしました。その辺ご了承してくれるとうれしいです。
あと、一応補足しておきますが、
>>20に書かれている”ルッキー”とは
有名ボクシング映画のロッ○ーが元ネタです。名前が微妙に違うのは
誤植でもなんでもなく、わざとに変えているワケです。
>>Inocent World作者さん
ちょっと失礼な突っ込みですみませんが、意思を持たないファ○ネ○もどきが
殺気を発する物なのでしょうか?それ一つ一つにコアブロックか何かが搭載されていて・・・
とかならまだ納得行くのですが・・・。どうでしょうか?
>しかし、セイスモがこんな強敵に見えるのもやはり主人公弱体化のためですかね?前作ではセイスモが
まるで雑魚の如く描かれていたのと対象的でまたGood。
まあそういう事になります。以前にも説明しましたが、やはり前作のそれにくらべて
本作の主人公は弱いという設定になっています。力にしても、技にしても、
ゾイドの性能の引き出し方にしても全てです。だからこそ、その力の無さを
武装や作戦でカバーしようという発想が生まれ、この後で
以前Ziちゃんねるの改造ゾイドコンテストに投稿したあの武装強化形態が
登場するというワケです。
(いつか新旧おりまぜた実力ランキングとかやってみようかな〜?とか思ってみたり・・・。)
>>22 作者ではないけど、殺気の大元はBFシャドーエッヅ本体では?
ビーム出せるようなエネルギーを本体から端末に転送できるんだから、
殺気も普通に伝達されてるんじゃないかと思った・・・のです。
>>23 それは正直盲点でした・・・。
でも、確認の為にもう一度読んでみましたが、操縦ならともかくとして、
ビームに関しては本体から末端にエネルギーを転送という描写は無かったような
気もしない事も無いので、これはファ○ネルもどきそのものに
エネルギータンクが備え付けられているという事では無いかと思いますが・・・。
まあ事の真相に関してはInocent World作者さんの説明待ちという事でしょうね。
鉄獣28号さんへ
おおっ!?遂にコンクールに応募した機体の出番が近付いたのですか!?
事ゴジュラスギガにはデュー・エルド氏の様に乗りたくても乗れない方が居るぐらい我儘な機体ですからリンクの状態で性能の違いは凄い事になりそうですね。
でもセイスモを集めるに苦労したんでしょうねコロンズ団の方々は。
Inocento Worldの作者さんへ
シャドーエッジ!!!最強のフューラー。離れた位置からの1機で方位攻撃。そして自前の荷電粒子砲。パイロットの能力者堕天使と合わせて凶悪な力を持っているようで。
セフィロトの天使を1機で撃破の後にまた合間をそれ程置かずに戦闘できる経戦能力が本当は恐ろしかったり…。
>>鉄獣28号氏&
>>23氏
おっと、何やら説明(描写)不足があった様で申し訳ありませんでした。
詳しく説明すると、ファ○ネルもどき一つ一つに操作系システムを通してセディールの殺気が
移って(流れ込んで)いると言う
>>23さんの回答が正しいです。
ユニット1つごとのエネルギーに関しては…タンクがあると大型化するんで、
マイクロウェーブの様な遠隔転送(だと思います。実はその辺の設定はしていなかったんだ恥ずかしいorz)
もしくは連続使用は出来ず、何度も本体に呼び戻して充電とか…
ん?ジェネレーター出力が滅茶苦茶な数値に(ry
>>恐怖の亀裂作者氏
稼働時間の設定も必要でした…でも、パイロット自身が超絶チューンアップをやらかした機体なので
その辺はご勘弁。てか、ボス級ないしライバル級キャラの機体がエネルギー切れで動かないとか寂しいですし。
今日はちょっと恐怖の亀裂作者氏に倣ってネタのまとめとか…
ギャラリーだけど、別にひとつひとつの攻撃方法に
細かい設定つけなければいけない必要はないと思うなぁ。
自分が語りたい話がスムーズに進むなら、それで十分ですよね
上手くまとまるかな?まず人物↓
“師匠(マエストロ)”ルガール
下の名前は不明、年齢は40代と思われる。先の大戦に学徒兵として参加し、そのまま戦いの中で大人になった。
そのため身体に「戦いの癖」が染み込んでおり、戦いの中に自分の存在を確認するある種危険な男。
ゾイドの操縦テクに関しては技術の差で能力者をも圧倒する程。
常に同じ服装でいるが、それらが本当に同一の物かは定かでない。
マサシ・トーラス=ホワイト
大戦初期からルガールの戦友であり、終戦までしぶとく生き残った仲間。
現在はジャンク屋を営み、自分やルガールの機体を改造するのが趣味でもある。
ゾイド乗りの腕は一流、彼の専用ジェノザウラー「マーシー」は大戦末期から乗り続けている。
しかし、「盗み撮り」の癖があるため軍でも度々問題を起こしていた。年齢不詳。
リニア
年齢14歳、下の名前は不明。世界で一人しか確認されていない「反能力者」である。
口数は少ないが、きっかけさえあれば感情を表に出す事もある。
妙に勘が鋭く、しばしばその力でルガールを助けている。ゾイドの操縦に関しては不明。
“堕天使(ルシファー)”セディール・レインフォード
“ギルド”最強の能力者。バーサークフューラー・シャドーエッジを駆り、数多の敵を葬ってきた。
性格は冷たく、如何なる敵にも情けを掛ける事は無い。
“ギルド”の一員としてではなく、彼自身が何かの目的を持っているようだ。年齢16歳。
主要人物もうちょい。
アレックス・ハル=スミス
年齢22歳、“ギルド”人事部長。しかし年齢より若く見える外見とその手腕のギャップに驚く者は多い。
彼自身も以前は軍部に在籍していたが、人事部に異動して部長の座を手にする。
自ら能力者のスカウトに出る事が珍しくなく、市街では割と名の通った男だ。
エメット・ノーブル
年齢13歳。能力者としては珍しく非能力者を見下さない。
優しい性格だが、それが災いして戦闘でも甘さが目立つ。
ガンブラスターに乗り、後方からの支援任務を良く引き受ける彼だが
その能力は未だ謎のままである。
マクドガル・ラディス
“ギルド”社長にして、実質的に現在世界最高の権力を持つ者。
終戦後の混乱の中、一代で“ギルド”の支配を確たる物とした男である。
自分の目的の為には手段を選ばず、“ギルド”が民間人に陰口を叩かれるのもそのせいだという。
「ここは…何処であるかな?其処なゴジュラシギガの御仁よ!この迷える大天才に教えては下さらぬか?」
施設第7層十字路で突然始まった一方的な質問。事は数分前に遡る…。
「ここまで来ると人外魔境も良い所だ。化け物も寄生体もやばい奴が多い…しかも気持ち悪いし!グロテスクだしっ!」
レクスはがくがくぶるぶるコクピットの中で震えながら1歩づつ確実に安全を確認しながら機体を侵攻させている。もうあのコアの影響範囲なのだろうか?
記憶が更に遡る。今の相棒を得る前のこの施設での出来事を。突然掘り当ててしまったコアのその輝きに何人かは気が触れてしまう。それも良識在る者達がこぞって。
自分は余り知識が無くその目の前で起きた事の重大性を後で知る事となるが”コアがコアを生む”言葉からして言えば別に何の問題も無い。
しかし重要なのはそのコアが”コアのままでゾイドに成っていない”事なのである。
今は知る事の重大性。これは嘗て繁栄を極めた文明の遺産。賢き者、古き英知の者の作り上げし人造コア。誰しもが軍の為、己の為に探し求める過去の秘宝”エルダーコア”
しかしこの場に冷静にこれを扱う事のできる者等居なかったのだ。そんな事をぼけ〜っと思い出しながら十字路に不用意に踏み込んだ時である。
「あっ?」二つの声が重なる。レクスの目の前には常識を疑う姿の巨大ゾイドが居る。しかも御丁寧に対レーダー用のみの調整をされいる様だ。
デスザウラーかと思いきや違う。如何見てもゴジュラス系統の機体だ。だがこのサイズで存在が確認されている”略称:フォレスト”や”伝説の大いなるGとまで言われるキングゴジュラス”でもない。
ましてやギガや通常機でもない。目を閉じてこめかみに指を当て揉み深呼吸をしてもう一度目を見開く…すると今度はとても良く見える場所と言うより頭部のドアップが目の前にある。
そしてコクピットの人影としっかり目を合わせてしまったのである。
如何見てもやばい。その出で立ちは白衣に牛乳瓶の底の様な眼鏡。寝癖大爆発!?のアホ毛の女性。しかも小脇には”ねくらのみかん”と書いて有る如何見てもバッタモンの仰々しい本を持っている。
怪しさ大爆発としか言い様のない存在。そして致命的な事にレクスはこう言う時の唯一無二の対処法である”絶対に相手の存在を認識しない”と言うセオリーを破ってしまっていたのだった。
更にあのコアの事を気にし過ぎていた為にあまつさえ声を掛けてしまう。「あの〜?何方様で?」
その声に女性は超反応で答える「我こそは希代の発明家であり神秘学、考古学の申し子そしてっ大・っ・天・っ・才・っ!」
そこで息切れしたのかかなり間を空けて「エルザ=ウッドバレー!!!四面獣天マーヴェラスエルザとは私のこっとっ。」
どうやら致命的に脳のネジの外れている御方だったようである。その上四面獣天と仰りました。
「ねえねえ?教えて?ここは何処?」どうやらここが何処だか解らないらしい…。と言っても場所と位置を教えた所で「それで?何処?」と言い兼ねない御方で有る事は間違い無い。
両肩に大きいと言う単語で足りないぐらいのドラム缶を背負ったDAH(ダブルアジャストハーモニクス)機構らしい(との本人の談)ゴジュラスタイプの機体で後を付いてくる。
ドラム缶をずるずると巨大ローラーで引き摺りながらその実担いでいても問題無さそうな力強い足取りでぴったりと彼とギガを追い回している。
「ね〜え〜?教えてくれたら〜ん私の洗脳プログラムを漏れなく受けさせて上げますから〜?」「結構ですっ!!!帰って下さい!!!」きっぱりと全力で断るレクス。
しかし状況は好転しない。背後からの追跡者の影は全く付かず離れずの距離で道を聞いてくる。既に20回は答えただろうか…しかし彼の偉大成る大天才様には地理に関する知識が皆無らしい。
「連れていって〜ぷり〜ずっ!」と道案内をせがんでくる。鬱陶しい事この上無い。更に面倒な事にそれまでは全く遭遇しなかった大物に頻繁に遭遇する様にも成る。正に彼女は疫病神だった。
唯…救いと言えば楽観的過ぎるが彼女の機体の戦闘力は冗談の域に達していてその装甲は敵の如何なる攻撃を以てしても傷付く事無くその攻撃は暴風の如き遠慮の無さで相手を土突き倒している。
「いっ!?」今度は大口径荷電粒子砲が確かに彼女の機体、それもコクピットを直撃した筈だが…無傷でいる。「あら〜?何か有ったかしら。え〜っと荷電粒子砲の直撃?そんなものでこのホロテックルーン装甲を相手にするなんて無・謀!」
博物館入りしていた横流し品旧デスザウラーの寄生体を長大な尾で薙ぎ払うかと思えば尾の先端の複列ドリルで器用に行動不能にしている。「やっぱり人外魔境…。」此方の意図は既にと言うより端から関係無い大天才様だった。
第7章:蒸気の力と輝く力
マリンとルナリスの二人はとある街の図書館にいた。二人はいつもの様に賞金稼ぎ業をやりながらも、
セイスモサウルス攻略法を考えていたのだ。図書館には学者を目指すと思われる青白い顔をした
数多くのガリベン達が数々の書物や文献の山に囲まれる形で勉強をしており、さらがら厳粛にも似た
不陰気に包まれていた。そんな中で、マリンとルナリスの二人は100年前の大戦に関する様々な文献を調べたりしながらその攻略法を口論しあっていた。
「やっぱりゼネバス砲になんとかして耐える必要があるよね。」
「確かにな。しかし、驚異はセイスモだけじゃない。セイスモが取り囲んでいる、まるで要塞みたい
な奴等の本拠も強力なEシールドが展開されているようでこちらのビーム攻撃を受け付けない。
かと言って実弾兵器を撃ち込んでもセイスモの全身から発射されるレーザー砲によって撃ち落と
されてしまう…。というか連中どこからあれ程の数のセイスモを調達したんだ?」
「接近すれば何とかなると思うけど、その接近が出来ないんだよね〜…。」
「連中、こちらのレーダー範囲外から攻撃してくるからな。その上その射撃も正確と来たもんだ。」
「う〜ん…。」
二人は互いに腕を組んで悩んでいた。いくら考えても何しろセイスモサウルス+コロンズ団要塞に
死角らしい死角が見えてこなかったからである。と、その時ルナリスが口を開いた。
「まずゼネバス砲に耐える方法だが…。やはり集光パネルを備えた凱龍輝しかないだろうな〜…。」
その時、マリンが突如イスをガタッと音を立てながら立ち上がった。
「そんな!!私はカンウのままで戦いたい!!今更乗り換えるなんて嫌だよ!!」
「別に凱龍輝に乗り換えろとは言ってないだろ!!」
二人は睨み合う。一触即発の状態。いつ殴り合いが始まってもおかしくない事態となっていた。と、そんなとき、何者かが二人の肩をポンと叩いた。
「何よ!!こっちは取り込んでいるっての………に…。」
肩を叩いた何者かの方向を振り返った時、二人は青ざめた。極道でも通用できそうな程のコワモテの
館員が立っていたのだ。それだけではない。周囲を見ると、図書館を利用していた他のガリベン達も
もの凄い形相のままマリンとルナリスをにらみ付けていたのだ。
「二人とも、他の人が迷惑していますので、静かにして下さいね。」
「ハイ…。」
二人は真っ青な顔のまま、ガクガクブルブルと震えながら大人しくイスに座った。
「やっぱり静かにしないとダメだよね…。」
「とにかく、ゼネバス砲に耐える防御力。連中にも対抗できるような高いレーダー性能。超射程かつ
強力な兵器。これらのウチいずれかは絶対必要だと思うな…。しかし、一つ腑に落ちない点があるんだ…。」
「腑に落ちない点?」
マリンは首を傾げた。そしてルナリスは言った。
「奴のエネルギー源だよ。要塞そのものを強力なEシールドで覆ったり、アレほどの数のセイスモを
配備してゼネバス砲を撃ちまくったり。普通、それだけの事をすればすぐにエネルギーは尽きてしまう
と思うんだが、あの戦いを見る限り、全くと言って良いほどエネルギーが尽きるような素振りすら
無かった…。一体どんなエネルギーを使っているというのか…。」
「ああああああああ!!!結局分からんづくしかぁぁぁぁ!!!」
元々お世辞にも良い方とは言えなかったマリンの頭脳はついに限界迎え、マリンは頭を抱えてそう叫んでしまった。無論その時…。
「あの〜、静かにして下さい。」
「ハ…ハイ…。」
またもコワモテな館員に肩を叩かれてしまい、さらには他のガリベンに睨まれた為、二人は青ざめたまま図書館を出ることにした。
「ったくお前のせいだぞ!!」
「ごめんなさ〜い!!私こういう頭脳労働はどうも…。」
図書館を出て街を歩いていた時、ルナリスは愚痴りながらマリンを小突く。マリンも一応自分が悪いという自覚があるようで、頭を押さえながら謝っていた。
「ったく…。とにかくこれからどうするよ!!」
「それについて、まず行動に移してみたい事があるんだけど…。」
「行動に移してみたい事?」
マリンの提案に、ルナリスは首を傾げてそう言った。
「ゾイドコアブロックを4つも買ってどうするつもりだ?」
ルナリスはマリンの行動の意図が理解できず、腕を組んだまま首を傾げていた。
そして、ルナリスの前には4つのゾイドコアブロックを、背中に背負わせたカンウの姿があった。
「いやね、ついさっきまで忘れていたんだけど、カンウにはブロックスとのリンクが出来る様に
改良されていた見たいなのよ。だから、コアブロックとリンクさせれば出力が上がるんじゃないかな?
って思ったワケ。出力が上がればEシールドの防御力も上がるワケだし。」
「そうか〜?まあお前のカンウは火を吐いたり普通のギガとは違うみたいだから、変な装置が付いていても不思議ではないが…。」
ルナリスはなおも首を傾げていたが、二人はゾイドに乗り込んだまま街の外へ出て、実験をする事に
した。とはいえ、まだ疑問がある様子で、ルナリスはマリンに尋ねた。
「さっきコアブロックとリンク出来ると言ったよなお前は。てーと何か?カンウにはフェニックスシステムでも付いていると?」
「まあそんな感じだと思うよ。ただ、カンウの場合“ギガスパワーシステム”って言う見たいだけど…。」
「ギガスパワー?何だそりゃ?」
「さあ…。私もよくは分かんないよ。カンウに搭載されたコアブロックとリンク機構をそう呼んでる事がカンウのコンピューターに表示されてたんだから…。」
と、分からない事づくしであったが、考えていても仕方がないので早速実験をしてみる事にした。
「んじゃあギガスパワーシステムオンっと!」
マリンがそう言いながら一つのボタンを押した。その直後、4つのコアブロックとカンウの
ゾイドコアがリンクし始め、共振し、エネルギーが増幅されていったのだった。
「うわ!!す…凄!!出力がドンドン上がってるよ…。」
出力計を見たマリンは驚嘆の声をあげていた。カンウの出力はそれだけ上がっていたのだ。しかも、
それ程の高出力を持ちながら、消費エネルギーは通常時と全く変化していなかったのだ。
「ようし!んじゃあまず軽くランニング行ってみようか?」
そうしてマリンは操縦桿を前に倒し、カンウを走らせた。それは巨大ゾイドとは思えぬ速度だった。
「うわ!!速!!」
「オイオイ…何か速すぎねーか?」
それにはマリンはおろかルナリスすらも思わず驚嘆していた。今のカンウの速度は時速300キロを超えていた。単純な速度だけではない。制動速度なども格段に向上し、運動性能も格段に上がって
いたのだ。この様子ならパワーやEシールドの防御力も格段に上がっているだろう。
「オイオイ!!何かよくわからんが行けるんじゃねーか!!?」
まだ驚いていたルナリスがそう叫んだ。とその時、カンウが急に減速し、そのまま動きを止めてしまった。
「おい…どうしたマリン?」
「ダメだよ…。これではダメ…。」
「え?ダメ?何で…。」
マリンの意外な言葉にルナリスは驚いた。そしてマリンは言うのだった。
「確かにこれなら消費エネルギーはそのままにカンウの出力を上げる事が出来る。けど、カンウの
コアとリンクしている4つのコアブロックは別だったよ…。カンウの高すぎる出力が仇となった
みたい…。つまり、カンウのコアと共振するにはコアブロック側に強力な出力が要されて、
結局コアブロックの方がへたばってしまうのよ…。かと言ってこれ以上コアブロックの数を増やすワケにも行かないし…。」
「コアブロックを4つ使ってもダメなのか…。マトリクスドラゴンやキメラドラゴンの性能を見れば
分かるとおりコアブロックが4つもあれば一般的な大型ゾイド並の出力になるんだが…。う〜ん…、
もっと高い出力のコアブロックがあればもっとマシにはなると思うんだが…。」
「まあ、凱龍輝みたいな、“足し算的”な出力強化なら別に長時間使用しても問題無いんだけどね・・・。
そんな事しても他のゾイドならいざ知らず、カンウにとってはスズメの涙も甚だしいし、かと言って“掛け算的”な出力増幅になるギガスパワーも・・・。」
二人はまたもや互いに腕を組み、首を傾げるのであった。
>>32に訂正です。
>不陰気→雰囲気
>>恐怖の亀裂作者さん
新たな変人キター!!って叫んでもよろしいですか?その上に謎のゴジュラスタイプも
それはそれで強いですし。
>>Inocent World作者さん
やっぱりそういう事ですか?
>もしくは連続使用は出来ず、何度も本体に呼び戻して充電とか…
でも、これだとプ○モ○四郎を思い出しますね。いわゆるそれの大会編の
日本一決定戦での対戦相手がそれに酷似した戦法を使ってたんですよ。
上半身と下半身が分離して攻撃するんだけど、自動歩行機械を備えた下半身は
一定時間単位で上半身と合体して充電しなおす必要がある。と、そんな感じの物でした。
あと、登場人物紹介いいですね。自分もいつかやってみようかな〜とか思ってみたり。
鉄獣28号さんへ
>新たな変人キター!!
一応”四面獣天”は奇人変人の集まりです!(断言)ボスからして…アレですしw
やっぱり図書館では騒ぐのは主人公の特権?なんでしょうか。
それは別としてやっと見付けた光明を上手く使いこなせないのは頭が痛くなるのでしょうね。
「それより〜そこの御仁。何故にこのディープダンジョンに挑戦するのかしら?クレジットは一つだしゲームオーバーは戦死ですよ?コンティニュー無しっすよ?」
その言葉は遂に常人には理解できない域に達しつつある大天才様の御言葉。ネジが外れているだけで開き足らずやばい妄想を現実とリンクさせている様だ。
これ以上異界への御誘いを受けるのを防ぐ為に「最下層の更に奥に有るエルダーコアを破壊する。それが目的だ!」強く言い放つ。
「なんとぉ〜!?エルダーコアがラスボスですって〜!?」レクスは間違えて火に油を注いでしまった様だ。「そうとなぁれぇばぁ!私の出番!其処な御仁共に戦いましょう!」
最早言い逃れ出来ない言葉から奇妙な連れが出来てしまったレクスであった…。
「さてと…。」ベルゲンは一応の調べ物の答えに一息付く。貴重な1人だけの時間を無駄にするのも良くないので先のヒュージスター襲撃の本来の目的を達成せんと情報端末に手を出す。
それは直にヒュージスターの内部情報にアクセスを始める。アヴィターラとソウエンに無駄足を践ませたのはこれの為である。アーヴェラーの情報を可能な限り入手する為の下準備が彼の本当の目的である。
それさえ果たせば今手元に有るエルダーコアの化石を蘇生できるかもしれないのだ。それにエルザが関与して情報操作の末それをファインの依頼品に積ませる事にも成功した。
その成果の方はアヴィターラから知る事が出来るだろう。「苦労してゾイドに乗る喜びを教え込んだ甲斐が有るって物だね。もう直ぐだ!”エボルシオンバロック”と”リザレクションエルダー”が動き出す。」
今回は大がかりな準備期間が必要だったが多分これが最後の大仕掛けだ。流れは全てが彼の望む方へ流れている。大小の誤差、突発的な相互作用を生みながら。
しかしそれが現実というものだと言う事を知るベルゲンにとってはどの事柄も些細な事でしかない。「後は…良し!この報道局だ!」何と彼は事も有ろうに有る情報機関にタレコミをする。
「何っ!?ガイロスの新型がネオゼネバスに極秘譲渡だと!?リミィ行くぞ!スクープだ!状況証拠も有るから信憑性は高いぞ。」「はい!ウィンテクターの準備をします。編集長自ら出陣は久しぶりですね?」
文屋のリミィ。実の所彼女も四面獣天の1人で取材と記事を書くのが大好きでこの新聞社に勤めているのである。
しかし彼女にも重大な問題が有る。それのためなら”何でもする”のだ。愛機のウィンテクターには撮影用の器具が装備されている。
しかしこの装備は下手な電子戦用のゾイドが足元にも及ばない様な力を持っているので有る。それだけには留まらない。
自衛用兵装もその分析能力を活かした自己診断型高機動誘導ミサイルランチャー。高性能予測照準無反動砲。オートエイミングハイパープレスレーザー砲。
物騒この上無い誘導兵器の数々で取材を阻む敵ゾイドを逃す事無く撃滅している。”逃す事無く”にだ。ここ何回かの取材飛行では間違って砲撃してきた不幸なキメラは既に100機をこえたと言う。
その全てはウィンテクターの砲撃で1機残らず撃墜されている。同じ文屋仲間からは”デッドエンドファインダー”と呼ばれる有名人だ。
「今回は居ないだろうな…ウィンテクターは容赦が無いからな。」編集長は必死で飛行経路を阻む部隊が無いかを調べている。
リミィはカメラのテストに夢中だ。「ズーム良し!次はブレが無いかを調べるよ。カメラを横に振ってみて!」それを聞いてカメラマンがカメラを左右に振る。「よ〜しブレも修正範囲内!大丈夫よ!」
準備が終了して一息付きながらリミィは思う。「誰もこれが作られたスクープだって事は知る事は無いでしょうね…個人的には気が引けるけど我が社の為!頑張るわよ!」
非常識な性癖が有る割には以外と新聞社思いであったりする。それが指し示す用に機体の姿に現れている。
無駄に大きいランフォリンクス型の機体の翼の中間にはカメラ等の取材用機器を守るようにミサイルポッドが付いている。
かなりのディフォルメの利いた胴体は本来足まで有る筈の皮膜は無く足には独立した姿勢制御用の翼が有る。頭部は球状レドームレーダーを持ち背中には大型レドームレーダーを含む各レーダーやセンサーが山盛りに装備されている。
これらを守る為の空力対策も取られておりサラマンダー球の巨体でレイノスを超える旋回性能と垂直上昇及びホバリング能力を持つ。胸部に複数のカメラを持ち獲物を狙う空の狩人。
しかし実の所スクープ写真よりも自身がスクープにされることが多いという甚だ不本意な機体である。
特に他社のスクープのフライシザースの大群が起した爆炎の空に映るこの機体の姿は報道界を震撼させたと言っても過言ではない恐ろしい光景だったそうだ。
結局良い打開策は浮かばず、数日の時が流れていた。二人は一時考えるのをやめ、気分転換を兼ねてとある街の和風温泉宿に泊まっていた。
「いや〜やっぱ温泉は良い湯だったね〜…。暖まった暖まった!」
そう言いながら、風呂から上がった後と思われる浴衣姿のマリンが部屋に戻ってきていた。
「…………。」
と、マリンはホクホク顔であったが、対照的にルナリスは怒っている様な顔になっていた。
「ねえルナリスちゃんどうしたの?何か風呂に入ってから急に怒り出すし…何かあったの?」
「ちゃん付けするな!!!」
ルナリスはマリンを思い切り怒鳴りつけた。そして、さらにイライラした様な面持ちで、別の方向を
向いた。しかし、彼女はチラチラと横目でマリンの方を見ていたのだった。
「……………。」
ルナリスの視線はマリンの胸に向けられていた。そして、彼女はそれを見れば見るほどイライラがこみ上げてきたのだった。
「貴様!!その程度で勝ったと思うなよ!!!」
「はあ?」
ルナリスはマリンを思い切り怒鳴りつけた後、ふてくされながら布団の中へ潜り込んでしまった。
「何なのよ一体…。」
一体何がどうなっているのかマリンはさっぱり意味が分からなかった。
「(畜生!!前から気になっていた事だが何でアイツの方が大きいんだ!!背は私の方が高いのに…。
何か悔しい!!悔しい!!悔しいぃぃぃ!!!うわぁぁぁぁぁぁ!!!!)」
布団の中に潜り込み、身体を丸めていたルナリスは心の中でそう叫び、涙で布団を濡らしていた。
「あ・・・いつの間に寝てたんだ・・・。」
ルナリスが気付いた時には朝になっていた。そして彼女はそのままゆっくりと布団から這い出て、そのまま窓の外を覗いた。外から明るい日光が差し込んでいた。
「ふ〜・・・。」
日光を浴びながら、ルナリスはゆっくりと体を伸ばした。と、そんな時突然バタンとドアが開いたのだった。
「ルナリスちゃんルナリスちゃん!!」
「な!!なんだ!!ってちゃん付けするな!!」
部屋に飛び込んできたのはマリンだった。そして彼女は言った。
「何か町外れでジャンク市やってるらしいから後で見に行かない!!?」
「ジャンク市・・・だと?」
こうして二人は食事や出発の準備、そして会計を済ませ、宿を出た後で町外れで行われていると言うジャンク市へと向かうのであった。
「ジャンク市ってのは何処でやってるんだ?」
「いや、だから町外れの方だって言ったじゃん!」
マリンに連れられる形で歩いていたルナリスは、そのままマリンと言い合っていた。と、そんな時、
町外れの方向に一隻のホバーカーゴが見えたのであった。そして、マリンやルナリス以外の他の
大勢の人達もそのホバーカーゴの方向へと向かっていた。
「みんなあのホバーカーゴの方に向かってるみたいだが・・・、何かあるのか?」
「いや、だからあのホバーカーゴの周りでジャンク市やってるんだよ。いわゆる旅のジャンク屋だって。」
「なんだと?」
ルナリスの目は丸くなった。確かにマリンの言う通り、町外れに止められたホバーカーゴの周囲を
取り囲む形で数々のジャンクパーツなどが置かれており、そのジャンク市は、この町にこれ程の数が
いたのかとため息が付く程の数のZiファイターと思しき者達で溢れかえっていた。
「結構賑わってるんだな。」
「でしょでしょ?案外意外な掘り出し物があったりしてさ〜・・・。」
そのジャンク市の光景を見ながら二人はそう言っていた。そもそもジャンク屋とは、基本的に
壊れて投機された機械などのパーツを回収、修理し、他の者に売ったりするのが生業である。
あの大戦時代にも、戦いのドサクサに紛れて破壊されたゾイドや様々なパーツを拾い集めたりと、
軍隊とは別の意味で命を張っていたという。現在においても、国家間の戦争こそ無くなった物の、
ゾイドバトルはもとより、大戦時代よりもむしろ増加傾向にあるゾイドを使用した犯罪等が起こって
いるが故、その際に破壊されたゾイドやパーツを拾い集めたりと、意外と今でもジャンク屋は大活躍
していたりする。さらに、ジャンク屋で売られる中古パーツは新品で買うよりも数段安く購入出来る
ため、資金不足に苦しんでいるZiファイターなどはジャンク屋でパーツを調達する事が多い。
「確かにどれも新品で買うよか安いよな〜・・・。」
様々なパーツに付けられた値札を見ながらルナリスはそう言っていた。
「ん?」
マリンが何気なくホバーカーゴの方向を見た時だった。ホバーカーゴの後部出口から、彼女が今まで
見た事も無い一機のゾイドがジャンクの山を載せた大きな荷車を引いて出て来たのだった。
「ねえねえルナリスちゃん!あれ何だろう・・・。」
「だからちゃん付けするなと・・・何だあれは・・・。」
それにはルナリスも驚きを隠せないでいた。確かに荷車を引いて出てきた一体のゾイドは彼女の今まで
見た事の無いゾイドだった。全身を覆う無骨で分厚そうな装甲に、背中の大型の大砲。さらには
頭部にはえた一本の長い角というそれは彼女らの見たことの無いゾイドであった。
「あれは・・・。ブラックライモスとかじゃ・・・無いよなあ・・・。」
「かと言ってレッドホーンとかでも無いと思う・・・。聞いてみる?」
「そうするか?」
マリンとルナリスは互いにそう言い合うと、互いに頷き、その謎のゾイドの方へと走った。
「あの〜!すみませ〜ん!」
丁度、そのゾイドが足を止めた時を見計らって、二人はゾイド前までやって来た時、マリンがゾイド
に乗っているであろうパイロットに対しそう呼びかけた。と、二人の事に気付いたのか、ゾイドの
頭部にあった分厚そうなコックピットが開き、中から一人の男が現れたのだった。
「何だい?お嬢ちゃん達!」
そう言って男はゾイドの頭部から飛び降りてきた。男の年齢は20歳くらいで、結構爽やかそうな感じだった。という事で、二人は早速質問をすることにした。
>>恐怖の亀裂作者さん
現実とゲームをごっちゃにする。正しく変人の真骨頂ですね・・・。
それと、また凄いゾイドが登場しましたね。もの凄い取材用ゾイド。
頭がレドームになっていて、さらに空を飛ぶという点は
ドラ○ナー3を連想させられたり・・・。
セディールの機体は一瞬にしてルガールの機体から離れ、工事ブロックの足場数本を吹き飛ばした。
「? 近距離戦なら、奴の方が上のはず…」
接近していては四方からの攻撃ができない。そう解釈する事もできたが、彼を包み込むような殺気が消えている。
次のアクションに身構える彼の目の前で、シャドーエッジは背を向けた。
その時、レジスタンスの生き残りが前後左右からセディールに迫った。
9枚の翼の内、4枚のビームブレードが閃き、レジスタンス最後の戦力が鉄屑と化す。
「これほどの戦闘力がありながら、何故私にとどめを刺さない?」
ルガールは既に理解していた。敵は機体性能も操縦技術も自分を上回っている。
にもかかわらず、敵は意図的に彼を殺さないでいる。何故なのか?
最初に「殺す」と公言した割には、その行動は不自然に思えた。だが――
「感じるぞ…お前が、方舟の“鍵”を持っているんだな?」
無線から唐突に聞こえた声にもルガールは呼吸1つ乱さない。それはまだ彼の考えている事が予感に過ぎなかったからだ。
「三角形で、金色のプレート。お前の持っているそれこそが…方舟の扉を開く為の、鍵だ」
今度こそ彼は動揺した。何故、自分がプレートを持っていると奴が知っている?
ルガールは自分の動揺を相手に悟らせない為に、感情を押し殺した声で無線に話しかけた。
「何故、私にとどめを刺さない? 貴様ほどの力があれば、容易い事だろう」
ここに来てやっと、モニターに相手の顔が映った。まだ少年と呼べる歳だったが、その顔には
熱というものが全く無く、高貴さすら感じさせる顔立ちに浮かぶ表情は氷のように冷たい。
「プレートを傷つけない為…と言う訳ではない。元々あれは、この世の兵器では傷1つ付けられない。
…力無き者は方舟に近付く事すら許されない。だが、お前には力がある――それが理由だ」
突然、ルガールの手にしていたプレートが手の中から消えた。次の瞬間にはモニターの向こうのセディールが、
くるくるとプレートを弄んでいる。
セディールは大仰に両手を広げ、その手からプレートが解ける様にして消え去った。
「特別に見せてあげよう、惑星Zi最大のオーパーツがその眠りから解き放たれる瞬間を!!!」
本文が長すぎますってよ…大幅に削減(ノДT)
>>恐怖の亀裂作者氏
奇人変人の集まりって…書くのが難しそうなキャラを4人も(;Д;)ノスゲー
>>鉄獣28号氏
サイクr(ryがついに来たのですかッ!?(゚∀゚)ウヒョー
ところでプ○モ○四郎って…パーフェクトガン○ムとか出る奴ですか?
施設第4層。盛大な野菜バーベキュー大会が終わり人員用施設の調査が始まっている。
「そんな…こんな事が有って良いのかっ!?」ある部屋を調べていた者から悲鳴に近い声が響く。
「どうしたんだって…冗談だろう?」今回は内部調査に参加したレミントンだったが早速貧乏くじを引く羽目になった様だ。
確かに戦力としての植物共を焼き払ったがそこに見えるのは生きながらにして植物の細胞の中に取り込まれてしまった人々。多分この施設に関連する者の家族と言った所だろう。
その光景は食事を楽しむ家族の姿だったがその幸せそうな姿がそのまま時を止めた状態でそこに有る。その姿が余計に痛ましい事この上無い。「…死を実感しなかっただけましだったのだろうか?」
誰ともなくそう呟く。「この樹液を取り払って可能なら回収。後で埋葬する…他の部屋でも同じ状況が有るかもしれない。連絡を急げ!」やはり他の場所でも同じような状況が多々有ったらしい。
やりきれない思いが調査部隊に蔓延する。しかしその奥には更なる惨状が待ち受けていた。
「これはぁ〜ちょっとぉ〜酷いを通り越していますぅ〜…。」ルディアは思わず目を背ける。中央付近。スライドフロア地下の人員用施設の中央部の状況である。
「そんな…生きながらに取り込まれている…。」シュミットは可能な限り感情を凍らせて状況把握に勤める。茨状の蔦に絡め取られ互いに必要なエネルギーを交換し合っおり人や動物を無理矢理生き長らえさせている。
助けを求める声が力無く発せられている。シュミット中で何かが切れる音がする。「ここは任せてもらえませんか?少佐?」その声に「了解しましたぁ〜後を頼みますぅ〜。」とルディアは許可を出す。
他の人員を退去させた後去り際に珍しく普通の語調で「ご免なさいね。」と言葉を残してルディアもそこから去る。「ありがとうございます少佐。」
今まで他人に任せきりにしてきていた事を初めて行う。茨を1本ずつ確実に切断しながら取り込まれた人々や動物に止めを刺す。助ける事とはこの状況では命を奪う事に他ならない。それを1人ですると言ったのだ。
時間は掛かるがそれを気にする事無く茨を取り払い人々を解放する。随分と沢山の人が居る。老若男女動物問わずここに避難した者を絡め取っていた様だ。
少し経つとそれの根の部分がうねり出した。「やっと来たか…化け物め。」
根が立ち上がりシュミットに向かって攻撃態勢を取る。ゆっくりと立ち上がりシュミットは天地上下の構えを取る。
その天地を構える手には柄の長く刃渡りがその倍ぐらいの片刃の刃が有る。「こいっ!短冊切りにして酢の物にしてやる!」
根はわざわざ部屋の端まで下がっていたシュミットに向かい猛然と突撃をする。
「植物の分際で雄叫びなんて100万年早い!鬼殺ァァァァァァァッ!!!」理性の枷が既に外れているシュミットもまたやばい雄叫びを上げて襲い掛かる。
根の方がリーチが長い為攻撃を開始するがシュミットに届く事は無い。周りの人間が遥先の位置の技術を持っている為それに埋もれ気味だが彼も常人からすれば相当の腕を持つ。
「破ぁぁぁ!凄っ!」伸ばした根の先はシュミットが持っている獲物の前に切り刻まれている。「!?」想定外の方向からの攻撃。しかしそれもシュミットの走る速度に追い付けない。
目の前に根の本体が迫るまるで鼠等に襲い掛かる猛禽類の様にシュミットは飛び掛かる。「我ァァァァァァァッ!」そのまま殴り刻み始める。
無造作に且つ自然に放たれる拳が細胞壁を派手に歪ませその手に握られている刃は接触した場所を切断する。不愉快極まりない根の悲鳴とスプラッターな音が部屋を抜けて部屋の外にいる者にも聞こえる。
「久々だな…ブチキレシュミットの降臨は。」そんな事を誰となく言う。その間にもその一方的な暴力の嵐は勢いを増して根を襲う。殴り倒し、切り刻み、踏み躙る。根は茎を切り飛ばされ手足の代わりを撥ねられ身動きが取れなくなる。
しかしシュミットは微塵の容赦もしない。十数分にも及んでそれの形が無くなるまで殴り刻み践み潰す。これの存在を許してはならないとでも言う様に。
それが終わると根から切り離されていた茎より上は生命力をとっくに失って絡み付いた者を手放している。こうして改めて見ても被害者の数は甚大で傍若無人の限りを尽くした茨の傷跡が痛々しい。
まだ息は有るが多分助からないだろう。しかしこれだけの頭数であの植物共が動いていたと考えるとかなり光熱費?が安い奴等だったようだ。そんな事を考えていると突然開いた扉に跳ね飛ばされる。
「すいません少尉!一応最善を尽くす為にこの階層の医療区画に移送します。」何処で嗅ぎつけたか突然のカリーナの乱入に前のめりに転倒したシュミットだった。
「あたたた…すいません少佐。」「全くぅ〜お茶目さんなんですからぁ〜。」鼻の頭の擦り傷に絆創膏を付けながらルディアはシュミットに言う。
「あれでお茶目かよ…。」それの状況を見て他の一同は思う。謎の物質と化した植物の根。それと枯れている茎と茨状の蔦。今回も極小範囲に破壊の限りを尽くした様である。
以前の時の事を思い出して他の者は溜め息を吐く。
ー回想ー
「中尉!何をするんですか!?止めてください!」悲痛なシュミットの叫びが聞こえるが後ろから羽交い締めしているファインはすまなそうに言う。
「残念ですが罰ゲームでありますよ。一緒のコンビだったと諦めてくださいであります。」そう言っているファインの姿はその罰ゲームの為ドレス姿をしている。化粧はまだらしい。
つまり今は彼を無理矢理着替えさせている最中なのだ。記憶は早送りされる。
「YAAAAAAAAAAAAAAAAAH!!!」大歓声が起こる。はっきり言って女装をさせられた2人は何が起こったか見当も付かない。
「うわぁ〜〜〜綺麗ですぅ〜〜〜っ!!!」かなり興奮気味のルディアがうっとりとした顔で言う。ここに来て気不味くて姿を見なかった2人はお互いを見てみる。
「…洒落にならん!!!」2人はそう思う。見慣れている顔がそこには無い。化粧と髪型一つでここまで化けるのかと思う。そして…不覚にも頬が朱に染まる。
「ななな何でシュミット少尉は真っ赤になっているのでありますか!?」「中尉こそ何頬を染めているんですかっ!?」相当パニックに陥っている2人に止めを刺さんと誰かが大きな鏡を持ってくる。
自分の姿を確認中…「…………………………ぽっ」更に不覚にも自分の姿に見とれてしまう。集中する周りの視線。鳴り止まない歓声。
次第に追い詰められていく…。別な意味で。自我の境界が曖昧に成りつつある。集中する視線と歓声に耐えられ無くなりまずファインが壊れる。
「うがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜っ!!!」突然壁に思い切り頭を叩き付け始める。「あらぁ〜?最後の一線を〜守るのに必死みたいですぅ〜。」
余りにも凄惨な仕打ち。最後の一線を守ろうと必死に血を流しながらも抵抗するファイン。出血が致死量手前に成りドレスを血に染め退場。
その後途端に豹変するシュミット…宴会は救急患者が2桁出る惨事に早変わりしたと言う。その渦中に気が抜けたシュミットがドレス姿で居た。
ー回想終わりー
鉄獣28号さんへ
まさか…〇〇〇〇プスですか!?かなり興味津々です。
それと〇ラグナー3とかの件はそれの胸辺りにランフォリンクスの頭部が伸びている感じでイメージすると…
…意外としっくり来て_| ̄|○
Inocent Worldの作者さんへ
本文長すぎは自分もお友達です_| ̄|○「…」物を多用するとフォント数で引っ掛かります。
〇ラモ狂四郎は色々なネタがあって面白いですよ。実はゾイドの改造(キット)の役にも立つかもしれません。
そして…方舟の中身クルーーーーーーーー!!!
「そのゾイドって初めて見るんだけど・・・何なの?」
「ああ?コイツはな・・・。」
男が微笑みながらゾイドの方を向いた時、突然遠くから爆発音が聞こえてきたのだった。
「何!!?」
「あ!!」
思わずマリンとルナリスが爆発のあった方向を向いた時、町の外のかなり遠くの場所にレッドホーン
やブラックライモス、イグアンなどのゾイドの軍団がいたのだった。
「何だ何だ?」
突然の事に、周囲にいた他の人達も野次馬のように集まってきた。
「また奴等か・・・。ハア・・・。やっこさんもしつこいね〜・・・。」
町の外にいるゾイドの軍団を見ながら、男は一人そうため息を付いていた。
「貴方あいつ等知ってるの?」
マリンがそうたずねた時、さらに男はため息を付いて答えた。
「いっつも俺達を付けねらってる盗賊だよ。」
「盗賊!!?ならちょっと待ってて!今私達がやっつけるから・・・。」
そう言ってマリンとルナリスがそれぞれの携帯電話を取り出し、カンウとハーデスを呼ぼうとした時だった。
「いや、別に良いよ。お嬢ちゃん達は下がってな。第一奴等は俺達の持ってるこのサイクロプスが目的なんだ。」
「サイクロプス・・・って言うの?そのゾイド・・・。」
マリンとルナリスは男が“サイクロプス”と呼んだそのゾイドを見上げた。と、そんな時だった。
ホバーカーゴの方から一人の20歳くらいの割と美人の部類に入るであろう女性が走ってきたのだった。
「ちょっとジャン!!何そんな所で突っ立ってるのよ!!早くあいつ等追っ払わないとお客さんに迷惑が掛かるでしょ!!?」
「悪い悪い!んじゃあレカ!行きますか!」
二人はそう言い合うと、直ぐ様サイクロプスと呼ばれるゾイドの中に乗り込んでいった。
そして、ジャンと呼ばれる男は頭部のコックピットに、レカと呼ばれた女性は背中の砲座っぽい場所に乗り込んでいた。
「行くぜ!!スチーム!!」
ジャンがコックピット内で思い切りそう叫んだ時、サイクロプスの背中から、轟音と共に物凄い量の煙が噴出し、そのまま走り出したのであった。
「ゲホッゲホッ!!オイオイ!!煙噴いてたぞ!!大丈夫なのかよ!!どっか壊れてんじゃねーのか!!?」
「というかさっきスチームとか言ってたけど、スチームって何!!?ゴホッゴホッ!!」
煙に撒かれた二人は咳き込みながらそう叫んでいた。どうやら“サイクロプス”が機体名称であり、そして“スチーム”と言うのが愛称の様子であった。
「ジャン!!とにかく一旦町から離れて奴等を引き付けましょう!!」
「分かったぜレカ!!」
スチーム内部の二人はそう言い合い、ジャンの操縦に従う形でスチームは走っていった。
「鈍重そうな割に結構速いんだな・・・。」
「でもあの人達だけで大丈夫かな〜・・・。」
やはり心配だったのか、二人は携帯電話でそれぞれのゾイドを呼ぼうとした。と、その時だった。
「大丈夫だよお嬢ちゃん方。」
「え?」
突然二人の背後から、彼らの仲間と思しき一人の一見コワモテそうだが人の良いおじさん的な中年の男が現れて言った。
「あいつ等なら大丈夫だ。ましてやスチームはあの程度の連中になど負けんよ。」
「そうなの?」
「本当か〜?」
少し心配しながらも、二人は事の次第を見守る事にした。そして、スチームは盗賊団ゾイドへ向けて突進していた。
「ようし!!一気に頭を潰すぞぉぉぉ!!」
いかにも熱い漢的な叫び方をするジャンのその声に呼応するようにスチームは他の物にかまわずに、
盗賊団ボスの乗っていると思われるアイアンコングへ突撃していた。盗賊団の砲撃をもろともせずに
スチームは突撃していく。その正面にイグアンが数機立ちはだかり、飛び掛って来るも、逆に跳ね
飛ばしていく。そんなスチームの側面をセイバータイガーが走りながら注意を伺っていた。
「レカ!左にセイバータイガーだ!」
「OK!爆裂鉄球砲スタンバイ!!」
スチームの背中に装備された大型砲がセイバータイガーの方を向き、発射された。トゲ付き鉄球にも
見えたその弾丸は高速で射出され、そのままセイバータイガーの両前足を吹き飛ばしていった。
「おお!中々いい射撃してるじゃない!」
「ああ!娘はああ見えて射撃の達人だからな。あの程度のスピードなどとまって見えてるだろうよ。」
「って事は貴方はあの人の父親さん?」
「おうよ!」
コワモテそうな中年の男はゆっくりとうなずいた。それには二人は唖然とした。何しろ中年の男と
レカの顔は全然似てないどころか、親子か?って思える程の格差があったからであった。まあ母親が
それだけ美人だったと言う事なのだろうが、この中年男と結婚している所は、二人にはとても想像し
難い物があった。まあ人は見かけによらないという事は確かにわかるが、それでもやはり想像出来ないのだ。
「うう〜ん・・・奥さんの趣味が悪かったと見えるな〜・・・。」
「それは失礼じゃないかな?もしかしたら外見じゃなくて内面に惚れたのかもしれないよ・・・。」
二人はレカの父親に聞こえないようにヒソヒソ声でそう言い合っていた。
と、その時だった。数機のブラックライモスが頭部に装備された超硬度ドリルを高速回転させながら
スチーム目掛けて突撃をかけてきたのだった。そして、そのドリルがスチームの装甲に突き立て
られた。マグネーザー程の威力は無いものの、意外と侮れない威力を持った超硬度ドリルである。
中型機レベルのサイズしかないスチームがそれをまともに食らえば一たまりも無い。と、
マリンとルナリスがそう思った時だった。なんと、逆にブラックライモスのドリルがグシャリと
潰れていたと言う意表を突いた展開になっていたのだ。一方、スチームはブラックライモスに
目もくれず、アイアンコング目掛けて突進していた。今度はアイアンコングの大型ミサイルが
スチームに撃ち込まれた。大型ゾイドも一撃で破壊する地味に強力なミサイルである。
であるにも関わらず、この一撃にもスチームは耐えてしまっていたのだ。しかもそのダメージもさほど大きい様に見えなかった。
「う・・・うっそぉぉぉぉ!!!ぶっちゃけありえなーいって!!」
「ハッハッハッ!!スチームは見かけ以上に頑丈なのがウリなんだよ!!」
驚きの声を上げる二人を尻目に、レカの父親は笑いながらそう叫んでいた。
「ようし!!一気に勝負をつけるぞ!!」
スチームはそのままアイアンコング目掛けて突っ込んでいき、その巨大な角を突き刺そうとした。
「なめるなあ!!いつもいつもやられると思ったら大間違いだぁぁぁ!!」
なんと、アイアンコングがスチームの突撃を受け止めたのであった。そしてそのままコングはスチームを持ち上げる。
「うっわあぁ!!やべえ!!」
「こらあジャン!!ちゃんとしなさいよ!!」
スチーム内部の二人は大騒ぎだった。
「うわ!!やっぱ助けに行った方が・・・。」
その様子を見ていたマリンがとっさに袖の中に手を入れて携帯電話を取り出そうとした時だった。
アイアンコングに持ち上げられたスチームが後ろ足を後方に向けて高く上げたと思うと、そのまま
前方に振ったのだ。なんと、その勢いによって持ち上げられていたスチームは地面に着地し、
さらにその場で踏ん張ると、逆にアイアンコングを振り飛ばしたのだった。
「ええええ!!!!!ぶっちゃけありえなーい!!!」
「ハッハッハッ!!スチームはなりは小さくともパワーはすげえんだ!!」
目が飛び出してしまう程驚いていた二人を尻目に、やはりレカの父親は笑ってそう言っていた。
「お・・・覚えていろー!!」
「またそれかよ・・・。」
結局、盗賊団はありきたりな捨て台詞を吐いて。帰っていくのであった。
「おー!!!スゲーぞあんたー!!」
「いや〜それ程でも〜!」
と、マリンとルナリスが唖然とする中、盗賊団を単機で撃破したスチームが凱旋してきた。それを皆が拍手で出迎えていたのだった。
>>恐怖の亀裂作者さん
生きたまま植物に取り込まれた人、とか凄い大虐殺とかあったグロネタから一転して
女装ネタという別の意味でのグロ連発でしたね〜。メリハリがあるような無いような・・・。
>>Inocent World作者さん
>ところでプ○モ○四郎って…パーフェクトガン○ムとか出る奴ですか?
その通りです。最近は復刻版も出てるので割と手に入りやすいと思いますよ。
それはそうと、謎が明らかになる?な所ですね。次が楽しみです。
セディールの手から解けるように消え去ったプレートは、方舟表面にあった窪みにピッタリ収まっていた。
そして、プレートを中心にして方舟の表面を幾何学的な模様が覆い始める。模様を形成する線は何色とも付かぬ光を発し、
瞬く間に方舟全体を覆い尽くした。
「“光輝の書”の記述が正しいのなら、方舟は言霊によって鍵を外される…」
――また、訳の解らない単語が出てきた。“光輝の書”とは何だ? 言霊というのは…
ルガールの疑問を見抜いたのか、セディールが独り言のように説明を始める。
「“光輝の書”は、この星の全てを記した伝説の書物。白紙のページには、読む者の思念に応じて違った内容が記されるのさ。
そして僕はそれを手に入れた! あの本には過去が、現在が…そして、未来さえも記されていた!!」
昂揚感に身を震わせながら、セディールは方舟の間近に機体を寄せた。
「流石に震えたよ…僕がこの世界を統べる王となる預言が、記されていたのだからね」
有り得ないと理性で認識していても、ルガールの精神は奥深くでそれを拒絶する。
そして、セディールの口は滑らかにキーワードを紡ぎ出した。
「扉を開こうか。『凍てし刻の流れよ、我の前に道を開け』」
地の底から響く様な轟音が聞こえる。途切れ目1つ見えなかった方舟の壁面に、薄く線が見え始める。
それは次第に太くなり、線で囲われた直径2m程度の壁面がかき消すように消滅した。
「来たまえ、力持つゾイド乗り!」
セディールは機体を降りると、自ら方舟の中へと飛び込んでいった。ルガールも後を追って機体を降りる。
黒く口を開けた入り口は、彼を誘っている様にも、威圧している様にも見える。
だが、ルガールは全身で感じていた。ここでセディールを追わねば、何か途轍もなくヤバい事が起こる。
「迷う暇など、与えてはくれぬ…そういう事か」
ひゅうっと息を吸い込み、ルガールは方舟の中へ飛び込んだ。この時、完全に忘れ去られていたリニアが後を追った事に
彼は気付かなかった。
――異世界。
この空間を言い表す言葉として、これほど相応しい物は無い。空間内を縦横無尽かつ立体的に走り回る幾何学模様は
ルガールが手を触れようとするとすり抜け、その度に形を変えるのだ。
方舟の中は幾つもの空間に分かれていたが、ルガールの通る空間にはゾイドのような物まで浮遊している。
ただそれは、彼の知らない異形のゾイド達であった。
「この方舟は…一体、どんな目的の下作られたと言うのだ?」
彼は進んでいるのかどうか、不安になってきた。先が見えない上に、どれだけ歩いても他の景色が見えない。
引き返そうと後ろを向いた時初めて、ルガールは後ろを付いてきたリニアの存在に気付いた。
「…何故、ここに居る!?」
つい語気を荒げるルガールに、リニアは臆する事無く答える。
「あなたを…守ろうと思ったから」
ルガールはそこで口を閉じた。確かに、自分は彼女に助けられてきたのだ。そう考えると、彼女を無理矢理押し返す事などできそうに無い。
いや、そもそも彼には、帰り道が把握できていなかったのだから、無理な話ではあったが。
「まあ、もう良い。とりあえず私から離れるな」
今彼に出来る事。それは、彼女を守る事だけだった。
「遅かったな。待ちくたびれて先に始めてしまったよ」
果てしなく広大な中央の空間に辿り着いたルガールとリニアを待っていたのは、床から突き出した黒い角柱に腰掛けたセディールだった。
リニアをコートの後ろに隠し、セディールとの距離を詰める。
「何を始めた? “ギルド”はこの方舟をどうするつもりだ?」
「“ギルド”! 連中はこれも便利なゴムボートぐらいにしか思ってないのだろうな!!
…僕はね、この方舟を永い封印から解き放ったのさ」
セディールが黒い角柱の頂点、古代文字の並ぶ面を一撫ですると、外の光景が床に映し出された。
――飛んでいる。方舟は山の上半分を内側から突き崩し、極北の空にその巨体を浮かべていた。
アレ?変な所で改行が…
>>恐怖の亀裂作者氏
>>48の回想で笑い死にしかけました。謝罪と賠償を(ry
>>鉄獣28号氏
今度古本屋に逝って探してくる事に致します。
サイクロプスって複座式でしたっけ?
どの階層にも一応の所必要な物は有る。
人に対してに限っての事だがこれは今まで余り触れられていないので兵員の中には位置関係の把握ができていない者も居る。
そもそも階層構成も高さ、奥行きを考慮すると…他の階層にめり込んでいたりする。それをこの山一つに納めれたのは特殊な構造の賜物と言う訳だ。
まず各階層は高さ300mの5層構造で出来ておりその中の一番下がレール等が張り巡らされている層で中央部スライドフロアの基礎を支えている場所でもある。
その他物資の輸送にも外角部を利用できる仕組みだ。実際には共和国軍が使用した形跡が多少あれど頻繁には使われていないらしい。
その上に人員用施設地下階層。中間層はゾイド用の通路、試験戦闘用のフィールドでもある。この他人員用施設の1階〜15階と高めの天井で作られている。
この中間層が最も大きいスペースを取られておりその結果亜音速のレベルまでのゾイドの飛行を一般的に可能にしている。
その上が上層。有る意味最も存在価値が疑われる場所で一応お情け程度に指令スペース等と中層を見下ろす屋上?がある。
最上層は通気口などの配管で殆どが埋まっている状況だ。因みに人間サイズの生物兵器の温床になっている可能性が高い場所でもあるが直接降ってくる者はまず居ないのが現状である。
これだけの物を作っている為当然直列して階層は繋がっていないのは明白でもある。スロープが各階層を繋ぎその場所が四隅である事から4層で右回転に一回りする位置関係になっている。
その対角線上に”ドールの胃袋”と謎の名称が付いている巨大な円柱状の空洞の中央に大型エレベーターが設置されている。これが300mで90°回転して他の階層に繋がる仕組みだ。
「…ってそこ!聞いているのか!?」と指差す先には当然の様に聞いていないとサインを示す様な寝息を立てている者が居る。「まあ其奴等は如何でも良いか先を続けるぞ!」
ブリーフィング中では無いので大目で見られている者達は第3小隊全員と一部同行していた者と24ゾイドを駆る機動歩兵部隊の面々。「取り敢えず構造を覚えておけ!この位置から外れた場所に何か有ったら報告しろ。以上だ。」
他の人員に説明を終えてブレックスは一息付く。「あいつ等は少し寝かせて置いてやろう…今の頼りは彼奴等主力小隊だけだからな。」恥も何も無く泥の様に寝ている彼等に背を向けた。
「助かったのは子供…しかも12歳以下とは奇妙な話だ。」何処に姿を消していたか定かではないフェイはカリーナを手伝いながら思う。
見た所彼等は発電機代わりに使われていたらしいとすると彼の植物共は先を見据えた行動を取っていたらしい。植物の癖に生意気な事である。
それはそうと助かった彼等の処遇に本気で困る状況だ。はっきり言って彼等は直球ど真ん中の敵国の者だ。それに非戦闘員という事を考慮しても状況を把握できる筈も無いだろう。
「う〜ん如何したものか…?」そう言って唸っていると「すいません。手伝ってくれないんですか?」絶対零度の突っ込みをカリーナから受ける。
取り敢えずはこの状態から危険状態に逆戻りする事は無い。フェイは真面な仕事をしないからと掃除をさせられている。
復旧は早く彼等は本当にそこに有る対象を取り込む事だけが目的だったというのも頷ける内容だ。杜撰で無駄にしか見えなかったであろう行動もその為と言う事になる。
まあ考察はここまでとしてさっさと整理を済まそうと作業を再開する。少しして何かを見付けるフェイ。「これは…?」
誰かの日記らしい。片付けがまだなので無くさない様にカリーナに渡す。「そうですね。何か有益な情報が得られる可能性がありそうですね。」この後その他にも幾つかの物が見つかる。
整理を終えた時には数十もの書類等が発見された。治療も終わったので今度はカリーナとフェイはそれと格闘を始める。しかしそこから得られた情報は予想を斜め上にいく厄介な代物だった。
「…。」全部を見終わり2人して声を失う。その概要はこういうものだ。
”植物の特性をゾイドに移植できないか?”これを発端として様々な品種改良(改悪)がこの第4層で行われたらしい。
その内植物単体で多少の物事を考える者や歩ける者が開発される。それにより開発は加速し更に多岐に渡る存在の作成からその中から更に実用性の高い者を選別。
それの改良と繰り返しが続き遂にはブロックスへのマッチングの成功。更なる高みへの挑戦が行われていたらしいのだがここで問題が一つ有る。
ブロックスへのマッチングまで漕ぎ着けるのは良い。しかしその植物の種の出所が見当たらない。出所の解らない物を研究している。
重要な部分にはさっぱり触れられていない…と言うよりひた隠しにしている。そこまでして隠し立てしている何かが在るのだ。
それから一時後、何事もなかったかのように、ジャンク市はいつもの活気を取り戻していた。
そんな中、やはりスチームの事が気になるのか、二人は互いにそれを見ていた。
「やっぱりあのゾイドは普通じゃないな・・・。」
「だよね・・・。背中から煙出てたし・・・。」
「いや、そういう問題は・・・あるか・・・。にしても、あれは一体何なのだろうか・・・。クラス離れした重装甲に重パワー・・・どこかの会社が作った最新型か?」
そんな時だった。レオブレイズのパーツだけで組まれたゴリラ型作業ブロックスゾイド“ブラウニー”
が何かの荷物を運びながらスチームの方に近寄ってきていたのだった。
「おーい!ジャンよー!一応燃料補給しとくぜ!」
「あ!ロバート親方!それなら自分でやっときますよー!」
「いいっていいって!たまには俺も働かんとな!」
ブラウニーにはレカの父親が乗っている様子だった。会話からすると、ジャンは彼に雇われた、
もしくは弟子という感じの様子である。そして、レカの父親=ロバートの乗ったブラウニーがスチームの背中のハッチを開き、何か固形物を中に入れて行くのであった。
「何だあれは・・・。」
「確かに何だろう・・・。普通ゾイドのエネルギー源って“金属イオン水”なのに、あれは・・・。」
その様子を見ていた二人は疑問に思っていた。ゾイドコアで稼動する以上、ゾイドのエネルギー源は
惑星Ziにおいて抱負に存在する金属イオン水である。しかし、今スチームの中に入れられていくそれは、金属イオン水とはまったく違う物だった。
「あの〜すみませ〜ん!それ何ですか〜?」
マリンは気になって思わず質問しにいった。ロバートは作業を行いながらもマリンの方を向いて言った。
「ああ、さっきのお嬢ちゃんかい?コイツは石炭だよ。」
「せ・・・石炭?」
マリンの目が丸くなった。そしてロバートは続ける。
「ほら、あのエナジーライガーとかは、ゾイドコアとは別にエナジーチャージャーっつー外部動力が
搭載されてるだろ?それと同じ様な感じで、このスチームには何故か蒸気炉が積まれてるんだよ。」
「じょ・・・蒸気機関!!?一体何世代前のエネルギーなのよ・・・ぶっちゃけありえなーい!!!」
マリンは思わず頭を抱えながらそう叫んでしまった。と、そんな彼女にルナリスが駆け寄ってきた。
「おいどうした!!何かあったのか!!?」
「ルナリスちゃん!!これ蒸気機関で動いてるって・・・。」
「な・・・なんだってぇぇぇ!!!!ってちゃん付けするな!!」
これにはルナリスもやはり驚いていた。とはいえ、しっかりお約束は忘れていないという点が良い。
確かに蒸気機関は惑星Ziでも使用されてきた。地球人によって高度な科学技術がもたらされる前の
事であるが、ゾイドコア以外の補助的な物として、それは使われてきていたのである。無論地球人の
高度な技術がもたらされ、それが普及していくにしたがって、蒸気機関は徐々に姿を消していく事に
なるが、石炭そのものの採掘や需要はまだ続いていたりする。なぜ石炭が必要なのかというと、
鉄など金属を精製する際に必要になったり、さりげなく今だに石炭を燃料としたストーブを使う家庭な
ども細々と残っていたりする。しかし、戦闘ゾイドに石炭燃料を使用した蒸気機関を搭載している
という事実は、やはり彼女等にとって驚くべき事であった。というか他の人間でも絶対ビビル。
「何で蒸気機関を積んでるんだよ!!今時んなもん付けるなんて愚の骨頂じゃないか!!」
と言う感じで、やはりルナリスも納得いかなかったのか、彼女はそう叫んでいた。そんな彼女等にジャンが近づいてきて言った。
「そりゃしょうが無いだろお嬢ちゃん?遺跡の中で埋もれていたのを見付けた時から付いてたんだから。」
「えええ!!?今なんと・・・。」
ジャンの発言はマリンとルナリスの二人にとって衝撃発言どころか、爆弾発言物だった。そしてそのまま二人はさらにジャンに問い詰める。
「今・・・今何て言ったの!!?」
「え?ああ〜・・・遺跡の中に埋もれていたのを見付けたって・・・。」
「遺跡!!?」
驚きながら叫ぶ二人に、ジャンは戸惑いながらも頷いた。
「って事はコイツは古代の遺産!!オーパーツゾイドって事!!?」
「だと思うよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
マリンとルナリスは沈黙してしまった。
「う〜ん・・・もはやここまで来ると100年前の旧式なのに普通に戦ってるあんたのカンウが普通に
見えてくるな〜・・・。というかもう100年200年の問題じゃないな・・・。」
「同感・・・。」
二人は腕を組みながらため息をつき、そう言い合っていた。そんな時、ジャンは困った顔をしていた。
「そんなに驚くような物かね?あのオーガノイドシステムやデススティンガー、あと噂に聞く伝説の
古代虎だって古代の遺産なんだろ?別に遺跡から大昔のゾイドが発掘されたからって今更驚くような事じゃねーと思うがな〜・・・。」
「でも、考古学的価値はあるんじゃない?」
「まあ、そう言われればそうだが・・・。まあそんな事はこの際どうでもいいだろう!!?せっかく
だからここで何かジャンク品買って行ってくれよ!!何ならこの俺!!ジャン=クロードがお勧め商品紹介するぜ!!」
「・・・・・・・・・・・・。」
周囲のジャンク品を指差し、ジャンは勢い良くそう叫んだ。しかし、対照的に二人は唖然としていた。
「ジャンクロード?」
「ジャンクの道?」
「違う違う!!俺の名前はジャン=クロード!!」
それから、二人はジャンク市の商品を色々見る事にしたが、やはりスチームの事が気になって仕方が無かった。
「蒸気機関であのパワーを生み出すとは・・・。古代の技術は凄いな。」
「うん・・・。以前キレヌさんが古代人にとってはデススティンガーも下位の存在だったって言ってた
から、もしかしたらあのサイクロプスってゾイドはデススティンガーより上位の存在って事なのかもしれない。いや、多分私のカンウや貴女のハーデス以上かも・・・。」
「やはり古代技術は馬鹿には出来ないって事だな・・・。」
「そりゃ盗賊団が、それを狙って何度も襲ってくる程の物だからね〜・・・ん?」
その時、マリンは何か閃いた。
「くっそ〜!!また負けた〜ったくー・・・。」
盗賊団のアジトにて、先程追い払われたの盗賊団が仲間達と共に愚痴っていた。ムシャクシャして壁などを蹴り付けていた。
「畜生〜・・・。」
ボスがそう言いながら酒を飲もうとしたその時だった。彼らの前にスーツ姿一人の男が現れたのだった。
「色々大変見たいですな・・・。」
「な・・・何だてめえは!!今俺達は気が立ってるんだ!!死にたくなければさっさと帰れ!!」
盗賊団のリーダーはテーブルを叩きながら思い切りそう叫んだ。しかし、男は表情一つ変えなかった。
「いやあ、実は貴方方に頼みたい事がありましてね?もちろんタダとは言いません。それ相応の法集金と言う物を支払うつもりです。」
その時、リーダーの表情が変わった。
>>62に訂正です
>法集金→報酬金
>>恐怖の亀裂作者さん
植物の謎はまだ続いているという感じでしょうかね?やっぱり。
>>Inocent World作者さん
お約束の不思議空間が出ましたね〜。この後さらに何が起こるのでしょうか?
>サイクロプスって複座式でしたっけ?
一応サイクロプスは複座・・・というよりコックピットと砲座が別れている構造になってます。
旋回砲塔式になっていたのは本作オリジナルの設定ですが。
重要な所がさっぱりと言うのはいただけない。その上策為的すぎる。「そう言えば…隠し部屋が多いらしいな。」
そう言うとフェイは辺りを触診し始める。見た目は怪しさ大爆発だ。しかし直にそれらしき場所を特定するフェイ。
「…もしかして?面倒な時にそうやって隠れていたんじゃ?」「ノーノーそんな事はしていないよ。存在感が薄いだ…痛い痛い!冗談です。」
折角見付けたので早速調べてみることにする。
「これは参ったな…とんでもない物を見付けたみたいだ。」参ったと頭を掻くフェイ。何時も重要な局面でこういう目に遭う。だからこそ余り目立たず行動していた。
しかし何故かこう言う時からは逃れられないらしい。きっぱり諦めてそれを調べてみる事にする。大事を取って部屋ととなりの医務室から人払いを頼み慎重に事を進める。
外には更に24ゾイドを含む機動歩兵部隊によって完全に包囲して貰うとまずそれの全体像を確認する。カプセルに入った何かはやけに人間じみていて近親感がこみ上げる。
「ったく…ゾイドにじゃなかったのか?」そのカプセルの中には件の植物に守られる様に包まれている人影。「お約束は飽きたんだがね…。」お約束の多分に漏れず女性というより少女。
そしてその纏わり付いている植物には念願?の実が生っている。「冗談じゃない!?生きている…標本じゃなかったのかっ!?」嫌な事は重なり合って起こる。
緊急蘇生装置が作動している「ここまで来てバイオハザードに発展するのか!?」冗談じゃない。”二度”も立ち会って居られるかと蘇生を止めようと試みる。しかし機械が独特な構造をしている為上手くいかない。
それでも何とか止められそうになるがその時「ナンデダメナノ?」そんな声が聞こえたような気がする。
標本の様に眠らされていた少女。それが何処から来たのかは知らされていない。だが大抵眠らされた者は起きている者にとっては招かれざる存在で有る事が多い。
フェイは判断に迷っていた。何で駄目なのか?と言う事である。生まれてきた者には一応生きる権利と義務が生じる。権利の方は人の都合だが義務の方はむしろ生命としての”さが”と言うものである。
そこで思考が完全なループを形成する。しかしそれは隣から伸びてきた指によって解決する。「良いじゃないか?そんなに難しく考えなくても。」その指の持ち主アービンははっきりとそう宣言した。
鉄獣28号さんへ
蒸気機関ッキターーーー!!!蒸気機関と言っても機構と燃料によってはかなりの力を持つらしいですからね。
サイクロプスの補助動力に使うのならどれだけの高性能蒸気機関なんでしょうね?
多分開発されそうもない気がしますが…。
Inocent Worldの作者さんへ
不思議時空?でもやっぱりやばそうな所ですね。方舟の中。
>>48気に入って貰えて光栄です。
「良いじゃないか。今は緊急時だしそれに何か重要な事を知っているかも知れない。言葉以外からでも知る事も出来るんじゃないかな?」
更に一息付いて「これは罠だ。しかも大がかりな仕掛けも在るだろう。既に1回目の調査隊派遣の時点で我々はその罠に嵌まっている。ここで一つ二つ避けた所で状況は変わらんだろうさ。」
アービンは妙に諦めた表情で言う。しかし直に鋭い表情になる。「ならば此方から掛かりまくってやれば良い。此方に有利な状況に作り替えて!受けに回れば敗北は必死だ!」
かなり前から気にしていたのだろうか?フェイにはアービンの姿がそう映る。「だから悩む必要は無い。逃げる準備だけして蘇生作業を続けてくれ。」そう言うアービンの顔は笑っていた。
「お〜お〜…何とも。全体像が解らないから不安も在るが続けますか。」機械を弄くって緊急蘇生行為を解除する。無理に蘇生させる必要が無くなったからだ。
ゆっくりと仮死状態からの蘇生を行う方が中の植物と少女に掛かる負担が少なくなる。折角のアービンの英断に答えるべくフェイは作業を進める。「はい。お茶をどうぞ。」
「ああ…ありがとうってええっ!?」お茶を受け取り飲み干した後に遅すぎる乗り突っ込み。カリーナがお茶を持って来ていたのだった。「どうですか?」カリーナの問いに「何とか成りそうだ。」と答える。
かなり古い物であったが古い分操作は単純に行える。目に見えて血色の良くなっていく少女と緩やかに拘束を解く植物…じゃなかった物。
「実が生っているから植物だとばかり思っていたが…こう来たか。」カプセル内の温度上昇で中が良く見える様になって初めて知る植物だとばかり思っていた物の全体像が晒される。
「…ここの人達の研究って。命懸けになってしまったこの研究って無駄だったのでしょうか?」唖然としてカリーナが呟く。その視線の先に在ったのは…ついぞ新しく実験をしようとしていた植物とゾイドの融合体。
コマンドゾイドより一回り程小さい。更に言ってしまえばOSのコントロールや機体と人員に掛かるストレスを軽減するインターフェイスと酷似した姿の背中辺りから植物が羽の様に生えている。それで少女を包んでいたのだ。
「冬虫夏草…と言うよりは冬竜夏草だな。」これには見ていた3人も唖然とする。「捻りすぎだろそれ。」もう後は機械に任せても平気と見てそこを離れ逃げる準備をする。
「そうですね…何かカプセルに罅が入ってきていますし…。」カリーナもそう言って医務室まで戻る。
隠し部屋の入り口の対角線上から離れる為壁際で息を潜める事10分程。話を聞き付けてベルフもアービンの横で構えている。
「ベルフ…お前幾ら何でも見境がないぞ?遂に本性を現したのか?」ロリコン説は既に指揮官レベルまで蔓延していたらしくいきなり咎められる。
「大佐…それはないでしょう…。」意気消沈気味であるがその目には怪しい輝きが宿っているベルフ。こんな素行では間違われても仕方がないだろう。
ガシャンと物音がする。「っ!?」カプセルの罅が致命的な亀裂になり破壊される音。破片が床に落ち音を立てている。「来るかっ!?」
真っ先に飛び出したのはベルフとフェイの2人。向きは違うが。ベルフは隠し部屋の中へフェイは医務室の外へ駈け出す。
「へぶっ!?」ベルフは転倒する。アービンが足を掛けていたのだ。「何方に用が有るか知らんが突然トラウマに生る様な事になっても困る。落ち着け。」
アービンはカリーナに銃を投げてよこし「お先にどうぞ」とゼスチャーをする。「え〜っ!?解りました…。」大体一連の状況で理由は解るのだが何かやりきれない気がしながらカリーナは隠し部屋に入る。
「あらっ?」カプセルの有った場所にはゾイドも少女も居ない。少し辺りを見回すと…部屋の端の空き箱の山が蠢いている。「そこね?」カリーナは刺激しない様にそーっと近付く。
一番大きな空箱に隠れてはいるがお供?のゾイドが如何にも大き過ぎて箱から羽根上の植物が飛び出している。カリーナがつんつんとその植物を突いてみると情けない声を上げてゾイドが飛び上がる。
そしてそのゾイドに匿われていた少女の姿を確認する。かなり怯えているらしく警戒心で体を震わせている。
何も言わずにカリーナは少女を空箱から引っ張り出すとタオルで体に付いていた薬液を拭き取り始める。下手に言葉を掛けても逃げられる事が有るので多少危険でもこうした方が手っ取り早い。
そう判断してカリーナは髪を念入りに拭き始めると少女の方もそれに習い髪を拭き始める。どうやら最初の関門は突破できたようだ。例のゾイドも警戒心を一応納めてくれたらしく成り行きを見守っている。
蛇足だが余計な刺激を与えない様にアービンはベルフを取り押さえていたが落としてしまった様でぐったりとしていたそうだ…。
「何だと?詳しく話を聞かせてもらおうか?」
リーダーがそう言うと、スーツ姿の男は一枚の名詞を取り出すのであった。
「申し遅れました。私、ズィーアームズ社、特殊機獣調査捜索科のイワカル=ターストと申します。」
「ズィーアームズっつーたら・・・天下の大企業じゃねーか!!それが一体俺達に何を頼みたいんだ?」
と、その時、イワカルは一枚の写真を取り出した。それはサイクロプス=スチームの写真だった。
「貴方方に頼みたい事は、このゾイドの強奪です。」
「だがよ・・・ソイツは丁度俺達も狙ってるんだが、ソイツの実力は半端じゃねーぜ。それに、第一今もソイツにやられてゾイドも修理中だし・・・。」
「大丈夫ですよ。ゾイドならこちらで用意した物を使って結構です。」
「何!!?」
盗賊団リーダーはイワカルに連れられて外に出た。と、その時、アジトの前に数々のゾイドが置かれていたのだ。
「す・・・すげえ!!これだけあれば奴にも勝てるかもしれないぜ!!」
リーダーは喜びのあまりそう叫んだ。彼等の目の前には、ダークスパイナー、ディメトロドン
ガンブラスター、ゼロパンツァーのアーマーを強引に装備させたレッドホーン、果てにはキメラドラゴンなど、数々のゾイドが勇壮に立っていたのだ。
「もちろん標的は可能な限り壊さない様に手に入れて下さいね。そして、その時には・・・。」
イワカルは電卓のボタンを押し始めた。そして、リーダーに表示された数字を見せた。
「と、これ位の金額を払わせてもらいます。」
「おお!!これだけあればコングクラスのゾイドが10機以上買えるじゃねーか!!スゲエぜ!!ようし!!任せろ!!この仕事絶対成功して見せるぜ!!」
リーダーは胸を叩いてそう叫んだ。
「楽しみにしていますよ・・・。フフフ・・・。」
イワカルはそう言うと、ニヤリと笑みを浮かべた。
それから、ジャンク市は大盛況のまま終了し、ジャンク屋の皆様はホバーカーゴと共に新たな地へと旅立っていった。
「ねえねえ、お父さん、レーダー見てると何か付いて来てるみたいなんだけど?」
ホバーカーゴの舵を取っていたロバートに、レカがそう言った。
「ん?何だ?誰か付いて来るって?また奴等の仲間か?」
「いや、別にそういうワケでも無いみたいなのよ。別に襲ってくるでもなく、ただ付いて来るって感じなんだけど・・・。」
「何か気味悪いな・・・。おいジャンよ!!ちょっと調べて来い!!」
「はいよ!!親方!!」
ロバートの言葉に従って、ジャンは勢い良くその場から飛び出し、格納庫内のスチームに乗り込んだ。
「んじゃ!ちょっくら様子見てくるぜ!」
ホバーカーゴの後部出口が開き、スチームは後方目掛けて走っていった。
蒸気を勢い良く噴出し、スチームはホバーカーゴ後方から追跡している何者かに向かって走っていく。
その時、スチームのメインカメラが何者かの姿を捉えた。機影は二機。大型の二足歩行タイプであった。
「オイオイ・・・ゴジュラスギガにデスザウラーなんて・・・冗談キツイんじゃねーのか?しかも白と黒。あんたらふたりはゾイキュアか〜っての!」
ジャンは半ばビビッていた。スチームのメインカメラをズームした時、そのゾイドは間違い無く
ゴジュラスギガとデスザウラーの姿があったのだ。というかこれはカンウとハーデスである。
すぐさまジャンはカンウとハーデスに向けて通信を送ることにした。
「おーい!あんたらさっきから俺達の後付けてる見たいだが、何かようか!!?」
「あー!!ゴメンゴメン!!私等別に怪しい者じゃあございません!」
スチームに砲塔を向けられたカンウとハーデスは、一応敵対心が無い事をアピールするために手を
上げ、カンウ内部のマリンはジャンの通信に対し、やはり敵対心が無いという事を表す為の返事を
送った。その通信と共に送られてきた映像を見たジャンの眼は丸くなった。
「って!誰かと思ったらあの時のお嬢ちゃん達じゃないか!」
それから、カンウとハーデスはホバーカーゴに乗せられていた。
「で、私達に何の様?」
やはりまだ怪しまれているのか、マリンとルナリスはレカに問い詰められていた。そして、マリンは半ば焦りながらも、こう返事をしたのであった。
「いや、たまたま進んでる道が同じだっただけですよ・・・。偶然偶然・・・。」
「嘘でしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
レカの速攻のツッコミに、マリンは黙り込んだ。
「あんた等いつも盗賊に狙われてるって言ってただろ?ならあんた等の近くにいれば自分から盗賊が
来るから、そこを私等が捕まえて一儲けする。これが理由だ。文句あるか?」
クールさを維持していたルナリスはそう答えていた。
「本当に・・・そうなの?」
「ああ・・・。」
レカとルナリスは睨み合いながらそう言い合っていた。その重苦しい空気に耐えられなかった様子で、マリンやジャン、あと名も無いジャンク屋構成員達も思わず後退りしていた。
「お嬢ちゃんの連れ、結構怖いな?」
「貴方のお仲間さんだって・・・。」
その時だった。突如として爆発音が響き渡ったのは。
「何!!?」
「まさかまた奴等が仕掛けてきたのか!!?にしちゃあ早すぎる!!」
皆とっさにブリッジに駆け集まった。
「お父さん!!一体どうなってるの!!?」
「わからねえ!!レーダーには一切反応がないんだ!!」
「は!!反応がない!!!?」
その時だった。またもや近くで爆発音が響き渡ったのだ。
「恐らくこれはレーダー範囲外から攻撃してると見える。いずれにせよ稼ぎ時だな!!いくぞ!!マリン!!」
「うん!!ルナリスちゃん!!」
「だからちゃん付けはやめろ!!」
マリンとルナリスはそうお決まりの度つき漫才をしながらブリッジを出て行った。
その時、ロバートはなおも何の反応もないレーダーを見ながら口を開いた。
「このままじゃやばいな・・・。直撃弾こそは無いが流石にな・・・。ジャンよ、とにかくスチームであのお嬢ちゃん達を手伝ってやってくれ。」
「言われるまでも無いっすよ!!このままじゃ俺達もヤバイからな!!」
「あ!私も行く!」
ジャンとレカはマリンとルナリスの後を追う様に、走っていった。その姿を見ながら、ロバートは悲しげな目をしながら言った。
「レカ・・・気をつけろよ。」
「俺には心配しないんですか!!?」
「わぁぁぁ!!」
いきなり涙を流しながらニュッと現れたジャンにロバートは思わずすっ転んでしまった。
「ええい!!とにかく行けぇぇぇ!!!」
ロバートはそう叫び、ジャンを掴んで思い切り投げつけたのだった。
「い・・・行ってきまぁぁぁ〜す!」
>>69に訂正
>「で、私達に何の様?」→「で、私達に何の用?」
>>恐怖の亀裂作者さん
高出力蒸気機関を搭載した兵器と言えば鋼○ジ○グの幻○要○ヤ○タノ○ロチがありますね〜。
あと、石○賢の漫画にも日露戦争の時代を舞台に、蒸気機関稼働ロボットを使用する
日本軍の特殊部隊の戦いを描いた話なんてのもあります。でもこの漫画、石炭が無くなったので
代わりに戦死した兵士を燃やすとかかなり石○賢らしいシーンとか沢山あったりします。
話は変わりますが、カプセルみたいなのに入ってた謎の少女。何か今後の鍵になりそうな雰囲気ですね。
鉄獣28号さんへ
〇川賢の漫画は殆どそう言う物ばかりだった気がしますね…?ゲッ〇ー〇ボとか。〇イキングとか。
そう言えばどんどん〇〇キュア化が進んでいますね。あの2人…。辛うじてクール決める方は兎も角最早もう1人は…。
>カプセル(以下略)
は幾らでも方向修正が利くので如何するか?迷っています。重要な事だけは確かなのですが。
「…。」突然視線を別の方向に泳がせる。ここは最深層。一休みを終えて”最後”の講習の最中の出来事である。
視線を泳がせた先に何が有るのか?4人の少年たちは辺りを見回すが別段変わった所は無い。「終わりだ。」
その声が聞こえた時には先の訓練と同じ様に足払いを貰い全員転倒する。
「…と言う事だ。全ての行動に意味が有る訳では無いと言う事だな。相手を気にする前に自分の周りに気を付ける事だ。今みたいな目に遭いたくなければな。」
転倒している4人にそう言うザクサル。今回は突然明後日の方に目を向ける事で相手の不安を誘い無理矢理隙を作るちょっと高等な戦略を披露していた。
実際でもゾイドが突然ありもしない方向を向くと気になるものである。何か起こらないかと心配をして…。
「!そろそろらしいな。」何かを察知したのかザクサルはその場から歩き始める。その足の向かう先にはグラハムとローキスが居る医療ポッドがある。
「済まなかったなベイナード君。迷惑を掛けた。息子共々にね。」以前とは顔の輪郭以外何一つ特徴が一致しないグラハムがそう答える。「いえ。暇潰しには充分でした。」
ザクサルはあっさり言う。「君にとっては殆どの事が暇潰し程度だね。そうそう…そろそろ”アレ”に手を付けないとな。」グラハムはそう言うと4人の少年達と共にゾイドの居る場所に歩いて行く。
「さて…後はこいつだな。」ローキスを見てザクサルは呟く。怪我の重かった分目が覚めるのが遅いのだろう。しかし以前の様に痛みに表情を歪める事は無いのであんしんして良いとザクサルは判断した。
グラハムは有る場所に向かう…コアが5つに分れた際に虫食いフレーム状になったコアに向かっている。「やはり…まだ生きている。」そう言うとしきりに何かを調べ始める。
「何をしているの?」ブラッドが尋ねると「本当はお前達の機体を分離した時に死滅する計算だったが…如何やら見込み違いだったようだな。うん。」本来の目的が失敗している事に表情が曇る。
そのコアはグラハムを嘲笑うかの様に胎動している。「そう簡単に”エボルシオンバロック”を防ぐ事はできんと言う事かベルゲン…。」しかしまだ抵抗は出来る。「全ては終わるまで解らないものだ。」
持てる知識と力を総動員して最後の抵抗を試みるグラハム「生態系を自分勝手な理由でどうこうして良い物では無い。喩え罪人であっても。」
グラハムが行おうとしているのはその存在する筈が予定ではなかったコアを戦闘用ゾイドに作り替える事。
少しでも”このコア本来の行動”を抑制できれば計算上は”エボルシオンバロック”を不完全に発動させる事が出来るかもしれない。
一縷の望みをあろう事か敵軍のネオゼネバスに頼る事になるがこの際贅沢は言っていられないだろう。
「さあ…早く来い帝国の犬共。お前達の欲しがっている餌はここだ。」戦闘ゾイドに姿を変えつつある6つ目のコア。
異形に異形を重ねたその姿に不快感を持たない者はその場にはいない。
「見付かりました!第5層への侵入口が!」一眠りして目を覚ましたシュミットが機体内のデータよりそれらしき場所を特定する。
「どれどれぇ〜…何か第4層からぁ〜1500mも下に有るみたいですねぇ〜。」ルディアは目をぱ白黒させながら言う。
メインシャフトの位置が変わらない事からかなりの距離を斜めに降りる事だけは確かな様だ。急角度でトラップ宜しくシュートや落とし穴は流石に無いだろう。
その場に機体を移動させ様子を伺う4小隊+α。
その頃髪や体を綺麗に拭いた少女は困っていた。何を言っても言葉が通じないのだ。「この子は…もしかして古代ゾイド人なのでしょうか?」カリーナは言う。
折角警戒心を解いて貰ったのに言葉が通じないとは思いもしなかった…誰も。しかし少女の方も自力で何とかしようと身振り手振りで何かを伝えようとしている。
「う〜んこの言葉はゲブル言語だね。え〜っと。う〜んそれはちょっと悲しくない?その名前?」何時の間にか復帰して少女の言葉をうんうんと頷きながら聞くベルフ。
それを聞いてその場に居た一同はベルフに注目する。「これぐらい朝飯前さ!因みにゲブル言語はマイブラザー2人も聞き取れるし喋れるよ!」何げに爆弾発言をするベルフだった。
「痛いって!止めてくださいよ。必死にやっているじゃないですか!?」ベルフは翻訳機を作らされている最中だった。この場合は自分達にでは無く少女に付けて貰う形になる。
人手が足りないと言う事で作業はベルフ1人で行っているので素早くと言う訳にはいかない様だ。その最中も少女はしきりに何かをベルフに訴えている様だが言葉が解らない為に聞き取る事はできない。
しかし幾つかの単語が耳に入ってくる”ネメシス”と言う言葉が最も印象深い物で復讐を意味する言葉である。
ホバーカーゴの分厚く巨大な側面ハッチがゆっくりと開いていく。左右のハッチが完全に開いた時、そこから左にカンウ、右にハーデスが出撃していくのだった。
「カンウのレーダーにも反応無し。ルナリスちゃんそっちはどう?」
「こっちもダメだ。というか索敵性能はそっちの方が上なんだから、そっちでもダメだと話にならん…。つーかちゃん付けすんな!!」
その時だった。西の方角からミサイルがさながら雨のように飛んできたのは。
「ってうわあぁぁ!!!!」
二機は雨のように降り注ぐミサイルにビビリながら、ギャグ漫画のような逃げ方でそのミサイルをかわす。
「まあとにかく…、これで敵の方向が分かったな。一気に行こうか!!?」
「そうだね…。ってうわ!!また来た!!」
敵の方角を把握し、一気に攻勢に出ようとした時、またもや西の方角から遠距離砲撃が来たのだった。
しかし、今度のそれはミサイルではなく、ビームの雨だった。
「ようし!!相手がビーム兵器ならこっちの物!!ハイパーEシールド展開!!」
マリンが一つのボタンを押したその時、カンウ周辺の空間に歪みが生じた。そして強力なエネルギー
の結界がカンウの周囲を覆うのであった。それこそカンウに装備されたハイパーEシールド。装甲
だけでも最強クラスの防御力がありながら、これまた最強クラスの対ビーム防御力を持つEシールド
を持つという半ば反則的な装備である。そして、マリンは敵のビームの雨をそれで防ぎ、一気に
攻勢に出るつもりであった。しかし…。なんとカンウに降り注いだビームがハイパーEシールドを
すり抜け、数十数百という数のビームエネルギー砲弾がカンウに直接降り注いだのだった。それにはマリンの目は丸くなった。
「ええええ!!!?きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
とっさにバックステップを行い、直撃ダメージを最小限にしたとは言え、Eシールドが通用しなかったという事実はマリンを驚かせる物だった。
「ちょっと…えええ!!!?一体どうなってるの!!?」
シールドを強引に破ったのではなく、すり抜けて行ったという事実がどうも納得出来なかった様子で、マリンは思わず涙目になっていた。
「落ち着けマリン!!シールドをすり抜けたという事は相手にガンブラスターがいたって事だろうが!!」
「え!!?ガンブラスター!!?た…確かに落ち着いて考えればあり得るかも…。」
ルナリスに諭され、マリンはようやく落ち着きを取り戻した様子だった。確かにガンブラスターは
二十門にも及ぶ数の長距離ビーム砲を持ち、さらに、そのビーム砲は一門一門がそれぞれ違った効果
を持っている。そして、それらをさながら機関銃の様に超高速連射しながらビームの周波数を変えて
いく事でEシールドをすり抜け、相手に直接ダメージを与える事が出来るのである。
「ちょっと待てよ!!」
突然マリンとルナリスの耳に入ってきた声はジャンの物だった。そしていつの間にかカンウとハーデスの背後にはスチームの姿があった。
「奴等の軍勢にはガンブラスターはいなかったはずだぜ。」
「じゃあこの状況はどう説明すれば良いんだよ!」
「今度のは別の連中の攻撃か何か…そんな感じじゃないかな〜?」
と、マリンが何気なく空を眺めた時だった。空高くには何十匹という鳥が飛んでいた。
「ハア…。こんな時にも鳥は空を飛ぶ…か…。のどかな物ね…。って…え…?」
マリンの目は丸くなった。突然、上空の数十匹という鳥がこちら目がけて急降下してきたのだった。
「って鳥じゃない!!!キメラドラゴンだぁぁぁぁぁ!!!!」
「何だとぉぉぉぉぉぉ!!!!?」
鳥と思われたそれは鳥ではなく、キメラドラゴンの大軍だった。何十という数のキメラドラゴンが
一斉に急降下しながらミサイルや爆雷をばらまき、ヒット&アウェイ的にまたも上空に急上昇する。
パイロットの心配を一切必要としない、無人機らしい無茶な戦法を行っていたのだ。
「きゃああ!!!」
「ぎゃああ!!」
「うわああ!!」
空からの重爆撃の嵐に皆は翻弄され、辺りは阿鼻叫喚の嵐となっていた。
「ハッハッハッ!!今度ばかりは流石に苦戦してるみたいだな。」
カンウ等が戦っている地点より遥か遠くの距離に展開する盗賊団の本体。その中心部に配置していた
一体のダークスパイナー内部にて盗賊団リーダーは意気揚々とした口調でそう口走っていた。
彼等の作戦はこうであった。ダークスパイナーとディメトロドンのジャミング波により、相手の
レーダーを封じ、その後でパンツァーユニットを装備したレッドホーン"パンツァーホーン"、
そしてガンブラスターによる一方的な遠距離攻撃。さらには空からのキメラドラゴン隊による対地爆撃という半ば虐め的な戦法だったのであった。
「"長角"には可能な限り当てるなよ。」
パンツァーホーンやガンブラスターを操縦する者達に、リーダーは念を押してそう何度も言っていた。
ちなみに"長角"とはサイクロプス=スチームの事を意味している。と、そんな時、最前線の近くで
物陰に隠れた状態でジャミングを行っていたディメトロドンから通信がリーダー機に送られてきたのだった。
「おい!どうした?」
「それが、何かゴジュラスギガとデスザウラーがいるんですよ。これって何でしょうね?」
リーダーはディメトロドンから送られてきた映像を見た。確かにそれはスチームと一緒に砲撃から逃げ回っているカンウとハーデスの映像だった。
「確かにギガとデスザウラーがいるな…。白と黒。さしずめふたりはゾイキュアって所か?だがよ、
流石のゾイキュアも俺達の猛攻には手も足も出てない見たいじゃねーか!気にする事はねえ!!
一気にブッ倒しちまえ!!ついでに奴等のゾイドも奪って大儲けだ!!」
「お―――――――――――!!!」
リーダーの号令に合わせ、他の部下は一斉に叫んだのだった。
一方そのころ、なおもカンウ等はミサイルやビームの雨、キメラドラゴンの空襲にさらされていた。
ミサイルやビームの雨はどうにかかわして被害を最小限にしており、キメラドラゴンは砲撃や、
低空飛行に移った所を跳んで叩き落としたりなどと対処していたが、やはり埒があく物では無かった。
「あ〜もうこれじゃあ相手に近寄る事も出来ないじゃないのー!!次から次へとミサイルやビームが…。ん?」
埒があかない現状に、マリンが愚痴を零していたその時だった。突如マリン正面のコンピューターディスプレイに何かが表示されたのだった。
「何?これ…。」
『RZ−064−GGA−ゴジュラスギガ−ギガスアーマード』
「これは…………。」
コンピューターディスプレイに表示された文字と画像を見たマリンは、黙り込んで見入っていた。
>>恐怖の亀裂作者さん
石○賢はガイ○ングの漫画は描いていなかったような気がします。
邪○王とかなら分かりますけど・・・。
それはそうと、言葉が通じないというのは本来ならば当たり前の事なのですが
フィクション世界では割と珍しいパターンだったりしますよね〜。
「山を…崩したのか!?」
驚愕するルガールの方を見もせずに、セディールは石柱の上に手を翳す。
「鈍いね。この山自体が、方舟を隠す為に古代人が作ったカムフラージュなんだよ」
セディールの指が滑らかに古代文字の上を走る。石柱が赤く輝き、セディールの足元から何かが現れた。
「本来なら、コイツを回収するだけで充分だけど…」
床から現れた物は、小さなカプセル――セディールはそれをポケットに入れると、ルガールに向き直った。
「方舟の力、どうせならもっと『有効に』使わないとね…!」
セディールの指が止まる。石柱に刻まれた古代文字が薄く光り、光の伝播は足元の映像に到達する。
次の瞬間、眼下に見えていた地上が蒼い光に包まれた。そして、真っ白な閃光。
視界に焼き付いた光が消えた時、ルガールが見た地上はただ巨大なクレーターに過ぎなかった。
「どうだい? “ノアの矢”…方舟に搭載された大出力ビーム砲の威力、素晴らしいものだろう?」
ぞっとするほど、冷たい微笑み。セディールの言葉には圧倒的な威圧感が籠っていた。だが――
「兄さん…もう、止めてください…」
ルガールの背後から、リニアが進み出た。顔色こそ青いものの、その表情は決然としている。
彼女の言葉に、最初に反応を見せたのはルガールだった。
「リニア、何をし……『兄さん』?」
そして次に、セディールが値踏みする様な目つきでリニアを見ていた。が、不意に口を開く。
「どうしたんだい、リニア? 能力者でもない男の後ろなんかに隠れて…さあ、こっちに戻って来い」
その口調はひどく優しかった。それ故に、次の言葉がリニアの耳に痛い。
ルガールにだけは知らせたくなかった――自分が“彼”と同じである事を。
「僕の、愛する妹よ…」
リニア・レインフォード――それが、彼女のフルネームだった。
セディールの冷たい圧力にも負けず、リニアは怒りを露にする。
「こんな事をして…虚しいと思わないんですか!?」
「無いね」
即答だった。情けも糞もあったものでは無いが、セディールはなおも猫撫で声で「説得」を続ける。
「君だって、同意してくれただろう? 所詮非力なロートルどもには、この世界を再建する力なんてありはしないのさ」
セディールの口は、隠されていた事実を語った。
「“ギルド”の能力調整で生み出された僕達…そして、自然の中で生まれてきた僕達の仲間…
僕等能力者こそ、欲望の淵に世界を沈めた旧人類を裁く為に神が選んだ新しい人類だ」
ルガールはこの時、初めて彼の野望の全容を知った。
「力持つゾイド乗り…君には、証人になってもらう。能力者が創る、僕を王とする新しい世界の証人に!!」
セディールは、非能力者を世界から一掃するつもりなのだ。
“ギルド”の手で人為的に作られた、最強の能力者と反能力者の兄妹。恐らく、幼児の頃から道具の様な扱いを受けてきたのだろう。
彼らが“ギルド”に、ひいては能力者を道具として扱う非能力者に憎しみを抱くのは至極当然の結果と言える。
「だから…全ての非能力者を抹殺するのか?」
――間違っている。セディールは、能力者と非能力者を「仲間」と「敵」と言う見方でしか計れていない。
「そうだ。君は、力があるから生き残る権利を与えた――僕が」
セディールの手が再び石柱の上を動き、眼下の光景が動き出す。
「…俺は…確かに、生き残りたいさ」
ルガールの言葉は静かだったが、そこに籠められた覇気を感じ取ってセディールは後退った。
「だが、それ以前に…能力者ばかりの世の中に一人で残っても、何の意味も無い」
足を踏み出したルガールの手は腰に伸び、コンバットナイフを掴んでいる。
「だから俺は…お前に与えられた『権利』など、不要だ」
言い終えると同時に、ルガールが飛ぶ。ナイフを構え、セディールとの間を詰める。
「残念だな――――死ね」
ルガールは突然、巨大な力で床に叩き付けられた。自分ごと床が陥没し、飛び散る破片と血の一滴一滴がぼやけて見える。
リニアの悲鳴が聞こえた様な気がしたが、それすらも彼の意識を繋ぎ止めてはくれなかった。
作られた人が主人公だった前作に比べて、今回は逆で…
>>鉄獣28号氏
前回の不思議空間より重要で長いです。
それにしても、ギガのシールドを同じ共和国のガンブラで突破するアイデアが密かにgood。
>>恐怖の亀裂作者氏
いやもう本当に
>>48は…その後10分ほどまともにキーボード触れませんでしたよ。
捕捉しとくと、セディールはゾイドに乗らずともある程度能力が使えます。なにしろ最強ですし(・∀・)
前スレが倉庫に落ちましたね
鉄獣28号さんへ
おお!?間違っていましたか…今度古本屋で調べてみましょう。石川県の漫画。
そして遂に奴が!奴が来るーーーーーーーー!!!
Inocent Worldの作者さんへ
何かセディールの行動が〇〇〇の海の〇ディアのガー〇〇ルっぽい。ヤヴァ〜!?
不思議空間を自由にできるのはきついですね。それと…〇スカさんの方がイメージが近いのでしょうか?
「でも如何してですか?確か古代ゾイド人と言っても公用語を扱える筈ですが…?」カリーナが怪訝な顔をしてベルフに聞く。
「それはそうだよ。ゲブル言語は特に一部の地域で上級階層の者同士の秘密の会話とかに使われる言葉だからね。」そこで言葉を切るベルフの表情は暗い。
作業をして少女のの話し相手をしてついでにカリーナの質問に答えているのだから返答は当然遅れる。少しして一段落付けてベルフは口を開く。
「如何やらこの子は特に特別な存在らしい。外部との接触を避ける為に公用語を教えられていなかったみたいだ。」そう言うと作業を再開する。
しかし公用語がそんな過去から有った事を考えると自分達って進歩していないのでは?と思ってしまうカリーナだった。
お付きのゾイドは少女の後ろを守る様な位置に付かず離れずに居る。危険は無さそうだと判断するや否やその場で横になって寝てしまう。随分と豪胆なゾイドだ。
さっきの臆病さとは見違える様な行動にカリーナはおいおいと突っ込みを入れたくなる気分だった。まあそれはそれとして彼を観察してみる。
体色は緑。実物は見た事が無いが映像資料として知っているインターフェイスと姿が酷似している…と言うよりそれに植物を植えた様な姿だ。となるとベルフの言葉が気に掛かる。
”特別な存在”である彼等が何故こんな所に居たのか?しかもカプセルは見た所4〜50年前の代物で遥昔の遺産である装置で眠っていない事も気になる。
しかし答えは言葉が通じる様になると意外と簡単に説明されたのであった。
右を見て左を見て少女は医務室から出る。しかも成るべく自然な振る舞いで。銀色の髪に赤く長いリボン。紫のインナーの上にプロテクター姿。
彼女はイド。何とか目的を達して最下層へ降りて行く所である。髪のリボンはエキドナから貰ったもので嬉しかったのか右側にぐるぐる巻きにしてしまい非対称な髪型に変わっている。
素早く銀の影が人目を忍びながら駆ける。普通の人間では有り得ない速度で移動し一瞬の隙を突き警備兵をやり過ごす。行きの時の様に必要無い場所は通らない。
と思っていたのだが如何にもお腹が空いたらしい。食堂を見付けると息を潜めて侵入し厨房へ移動。丁度余っていたらしいサンドウィッチを二つ三つ掴んで全速力で離脱。
行きに見付けた隠し部屋で休憩する。「気が滅入るよ〜。」そう言いながら獲物を頬張る。
「おい!!こら!!お前何してる!!?そんな所で突っ立って!!ミサイルやビームの餌食になりたいのか!!?」
マリンが正面のディスプレイに表示された文字や画像に夢中になっていた時、カンウの動きも止まり、
そのままミサイルやビームの雨にさらされていたのだ。別に大ダメージを受けたという様子は見えないが、このまま直撃を受け続けるのも問題だった。
「これは…もしかして強化プラン!!?何でこんな物がカンウのコンピューターに…?」
突然そう叫んだマリンはカンウを反転させた。
「ちょっと用事が出来ちゃった!だからその間その場を凌いでてくれないかな?」
「ちょっとまて!!敵の数は多いんだぞ!!」
「逃げるなぁぁぁ!!」
突然後退していくマリンとカンウ目がけ、ルナリス、ジャン、レカは焦りながらそう叫んでいた。
しかし、それを尻目にカンウはなおも後退していく。その後退先はホバーカーゴだった。
「おいおいお嬢ちゃん何やってるんだい!!」
「このままじゃやられちゃうじゃないか!」
戦闘をほっぽり出していきなりホバーカーゴの中に入り込んできたマリンとカンウに対し、
内部の名もないジャンク屋構成員A・B・C(以下略)は口々にそう言っていた。そんな彼等に対し、
カンウから下りてきたマリンが袖口から札束をドンと勢い良い音を立てて出してきたのだった。それには誰もが沈黙した。
「凱龍輝のアーマーとゾイドコアブロック2つ、あとディメトロプテラのマグネッサー3Dレーダーはある?」
いきなりのマリンの言葉に皆は拍子抜けしていた。
「ちゅ…中古品なら一応あるけど…。一体何に使うんだだい?」
「じゃあそれをこれから私が指示する場所に取り付けて!!早く!!」
「は…ハイィィィ!!」
有無を言わせぬマリンの注文に、ジャンク屋達はワケが分からないながらも素早く作業に取りかかっていた。
「カンウのコンピューターにプログラムされていたデータ通りに行けばこれで良いはずだけど…。ほとんど賭けだねこれは…。」
ジャンク屋達がパーツをマリンの指示する場所に取り付けていた時、内部でカンウ搭載コンピューターのキーボードを叩きながらそう呟いていた。
「ったくアイツ何やってるんだぁぁ!!?」
「このままじゃ本当にヤバイィィィ!!!」
「敵の姿さえ捉えられればなんとかなるんだが…。」
なおもミサイル、ビームの雨、またキメラドラゴンの空爆等から逃げ回っていたハーデス、スチームの中で、ルナリス等はそれぞれそう愚痴を零していた。
「ゴジュラスギガの奴が逃げ出しやがったな。意外とだらしない奴だ…。しかし、これはこれで
やりやすくなったのは事実。一気に蹴散らしてしまえ!!ただし…長角だけは傷つけるなよ…。」
斥候から送られた最前線の映像を見た盗賊団リーダーは皆にそう指示を送っていた。と、その時
だった。突如として空中のキメラドラゴン部隊の動きがおかしくなり、墜落したり同士討ちを始めたりし出したのだった。
「な!!一体どうしたんだ!!?」
その不可解な現象に盗賊団も、ルナリス達も驚きを隠せない様子だった。盗賊団リーダーは直ぐさまキメラドラゴンの無線操作を担当していたディメトロドンの方を向いた。
「おい!!一体どうなってるんだ!!キメラドラゴンの操縦がおかしいぞ!!」
「それが…いきなり妨害電波が発生して操作が…。」
「妨害電波だと!!?」
妨害電波、その四文字がリーダーの脳裏に浮かんだ時だった。今度は最前線に潜ませていた斥候機との通信も出来なくなっていたのだ。
「本当に妨害電波が出ているというのか!!?そんな馬鹿な!!連中にそれほどまでに強力な電子戦装備は無かったはずだ…。」
リーダーは焦りの余りコックピット内部の側面フレームを力任せに叩き、そう叫んでいた。
「これは一体どういう事なんだ?」
つい先程まで規律正しいチームプレイでハーデスとスチームを追いつめていたと言うのに、突如と
して狂い始め、同士討ちなどで次々に墜落していくキメラドラゴンを見ながら、ルナリスは唖然としていた。
「イヤイヤ!!これほどまでにしっかり決まるとは!!もはや反則レベルだね!!」
「!!」
いきなり背後から聞こえてきたマリンの声に反応し、ルナリス等は背後を向いた。そこにはなんと、
各部に凱龍輝のアーマーを装備したカンウの姿があった。まず腕に凱龍輝の尾を覆う装甲が取り付け
られ、肩には凱龍輝の脚部を覆う装甲が、さらに左手には月甲の腹部に当たる装甲と、同じく月甲の
尾に当たる装甲とを組み合わせた物が盾として装備され、右手には飛燕の尾に当たるパーツがやはり
盾として取り付けられていた。脚部には飛燕のイオンブースターが取り付けられていた。
一方背中のバスターキャノンを取り付けている部分の後方のウェポンラックに取り付けていた4つの
ゾイドコアブロックにはディメトロプテラのマグネッサー3Dレーダーとジャンピング用バーニアが
取り付けられ、バスターキャノン側面にはやはりディメトロプテラの翼の付け根部分のパーツが
取り付けられ、その上から、飛燕のマグネッサーウィング、また飛燕・月甲のゾイドコアブロックが
取り付けられた。ちなみに余った飛燕の頭部と背中の装甲は右側のバスターキャノンに取り付けられていた。
「そ…その姿は…。」
「ちょいとした武装強化よ!!さしずめギガスアーマードって所かしら?」
カンウのその異様にあんぐりと口を開けていた三人を尻目に、マリンが笑いながらそう言っていた。
「じゃあ…今キメラドラゴンが狂いだしたのって…。」
「そう、カンウの背中に装備したマグネッサー3Dレーダーから発せられるジャマーによって敵さん
のキメラコントロールウェーブを阻害したってワケよ。目には目を!ジャミングにはジャミングで対抗せよ!ジャマーで敵のキメラ遠隔操作をジャマーするってか!」
「寒いよそれ…。」
自身たっぷりに状況説明をしていたマリンの口から滑ったギャグが寒かったのか、三人は返って
凍り付いていた。確かにディメトロプテラのマグネッサー3Dレーダーはゴルドス・ゴルヘックスの
ノウハウが遺憾なく導入され、電子戦用レーダーとしてかなりの高性能を持つ物である。その上に
ブロックスであるが故に低コストという矛盾してしまうような優良なパーツであった。それが
ブロックスともリンク可能に改良されていたカンウとのリンクにより、性能が跳ね上がり、
反則だろ?と突っ込みたくなる程のレーダー範囲を持つに到っていた。
さらにマグネッサーウィングとしての効果も持っているそれはカンウを飛ばす事は出来なくとも、
マグネッサーシステムによる揚力をブースターの様に使用することで姿勢制御や跳躍力の強化にもなっていたのだった。
「でもさ!このジャマーのおかげで敵の一方的な遠距離砲撃も出来なくなった見たいじゃない?」
「そう言えばそうだな…。」
確かにそうだった。カンウのジャミングによってキメラドラゴンが狂い始めたと同時に、突如としてミサイル、ビームの雨も降り注がなくなっていたのだった。
「よし!!なら私もちと便乗させてもらおうか?」
「へ?」
そう突然機体を反転させたのはハーデスだった。そして、ルナリスとハーデスもホバーカーゴの方へ後退していくのだった。
「早くしてね〜!って私の言う立場無いじゃないけどさ…。」
ハーデスをカンウごと手を振って送っていたマリンはそう言っていた。そんな時、ジャンとレカが通信を送ってきた。
「おいおい、どうでもいいけど奴等はまだ健在なんだぜ。早い所手を打った方がいいんじゃねーか?」
「そうよ!貴女だって奴等を警察に突きだして賞金をもらおうって腹なんでしょ?ならしっかりやってよね!せっかくパワーアップしてるみたいだし…。」
「ハイハイ分かりましたよ…。」
マリンは頭をポリポリ掻きながらそう返事をしていた。
「リーダーどうしよう!!いきなり出てきた妨害電波のせいで奴等の位置が特定出来ないどころか斥候機とも音信不通です!!」
「く…。」
カンウのジャミング攻撃による影響は遥か遠くの盗賊団本体にも及んでいた。そして、不安がる皆を見ながら、リーダーは歯を噛みしめた。
「こうなったら有視界ギリギリまで近づくぞ!!返り討ちにされる可能性はあるが、このまま奴等を見逃すよりかはマシなはずだぜ…。」
「やっぱ…それしかありませんよね…。」
他の盗賊達もやや納得していたのか、彼等は前進を始めたのだった。
「今度は君かい?一体何が欲しいの?」
ホバーカーゴ内部に入り込んだハーデスから下りてきたルナリスにジャンク屋の一人がそう声を
掛けるが、ルナリスはそれを無視し、目を凝らしてジャンク品を見回していた。と、その時、
ジャンク品の中にもひときわ大型のライフルの様な武装があったのであった。
今回でやっと以前Ziちゃんねるの改造ゾイドコンテストに応募したソレが登場しました。
ただ、応募した際に書かれた設定とはいささか違う点もあったりするので
まあそのあたりはご了承していただけるとうれしいです。
あと、何でそんなに金持ってるの?というツッコミも無用と言っておきます。
それと、補足というか裏設定なんですけど、このギガスアーマードの形態が
カンウのコンピューターにプログラムされていたのは既にこの形態が
100年前の大戦時代においてひそかに考案されていたからという事になっています。
しかし、先代のパイロットは動き辛そうだからという理由で拒絶し、
結局使われる事のないまま大戦終了、そして100年以上が経過して、そのひ孫の手によってようやく
その形態の真価が発揮される事になる?・・・とそういう感じです。
>>82 よく見ると確かに落ちていましたね。
>>恐怖の亀裂作者さん
そのなんとか語が上層階級の言語って・・・
カプセルに入っていた謎少女は結構位の高い家柄だったって事でしょうか?
>>Inocent World作者さん
方舟から発射されたビームで周囲にクレーター・・・ってもしかして山のふもとの
町まで吹っ飛んでません?
あと、やっぱり大抵の能力者はゾイドに乗らないと意味が無いんですね?
そう言う意味では、「修行で身につけた力をゾイド戦にも応用する」という事をしていた
自分の作品の過去の摩訶不思議人達とは正反対な存在とも言えなくないですね。
「離して…! 兄さん、あなたは間違ってる!!」
「どうしたんだい? あの男に、変な事でも吹き込まれたのかな?」
抵抗するリニアを引きずり、セディールは引き上げておいた自機へと向かう。
「違う! 彼は優しくて…非能力者全てが悪ではないと、私に教えてくれた!」
セディールはふと足を止め、振り返った。その顔に浮かぶ表情は暗く、寒い。
「僕がそんな事を解らないとでも? 確かに、非能力者にだって能力者を化物扱いしない奴はいるだろうさ」
「だったら…!」
「けど、そんなごく少数の連中を気にして計画を中止するなんて有り得ない。目的の為には、多少の犠牲は止むを得ないんだ」
絶句するリニアに、セディールは再び猫撫で声で語りかけた。
「さて、君にも手伝ってもらおう…最後のピースを、目覚めさせる為に…」
セディールの手がリニアの頭に乗せられる。抵抗さえ出来ぬ間に、彼女の身体中を刺す様な激痛が襲った。
「いっ…ゃあぁぁぁッ!!!」
リニアの絶叫に呼応するかのごとく、金色に輝く方舟の頂点から放射状に青白い光の輪が広がって行く。それは
瞬く間に惑星Zi全ての空を通過し、惑星全域で一時的に電子機器が使用不能となった。
だが、最も大きな変化が起きたのは“ギルド”本社ビルの地下研究所だった。
パルスガードが常時機能している本社ビルでは、電波障害も受け付けない。しかしそれ故に研究員達は
その時起きた恐るべき異変を知る事ができたのだ。
「…!? セフィロトと…『D・M』が…反応している…!? な、何だこの数値は!!」
もはや計測器は役に立たない。“ギルド”が隠し続けてきた最大の秘密が、目覚めの時を間近に感じていた。
「社長! これは一体どういう事です!!?」
息を荒げ、ノックも無しに社長室へ突入してきたのはアレックス・ハル=スミスだ。
マクドガルは咎めるでもなく、ただ彼を見つめている。
「どういう事…とは?」
「まだシラを切るつもりですかッ…!! どうして、全人類が協力して機能を停止させたあの機体を破壊もせず、
本社ビルの地下に隠してなどいたのです!? あれは――人間の手に負えるものじゃ無い!!」
畳み掛けるアレックスに、マクドガルは冷淡な口調で返す。
「昔はそうだったろう…だが、今なら…能力者という力を得た今の我々になら、あの力さえも使いこなせる筈だ」
なおも反論を試みるアレックスに、彼は厳しい視線を向けた。
「それに、だ。そのための保険としてセフィロトを集めているのではないか。…ビジネスは時に賭けも
必要となるのだよ。失敗を恐れてばかりでは、前に進む事はできん」
アレックスは己の無力さを噛み締めた。どう説明すれば、この老獪な企業家に理解させられるのだろう?
――どう説明すれば、“あの機体”は触れてはならない物だと解ってくれるのだろう…?
ナンバー6のセフィロト“ミカエル”捕獲隊は救難信号を送っていた。
だが、その信号が届く事は無い。突如空を駆け抜けた強電磁波を防ぐ為、パルスガードが強力になり
味方からの通信さえも受け付けない状態となっていたのだ。
「クソッ! こっちは5個師団で包囲攻撃を仕掛けたのに…何故、奴は」
かつてガブリエルの捕獲にも向かった隊長は、周囲の惨状を見回す。
一直線に抉れた大地と、負傷した味方兵士やゾイドが辺り一帯を埋め尽くしている。
「こうも簡単に突破して行ってくれるのだ…」
だが、最も不思議な事はそれではない。「何故、見逃してくれたか」――である。
5個師団の包囲を易々と突破するほどの戦力差があれば、殲滅していく事も可能だったはずだ。
それをしなかったのはつまり、急ぎの目的があったと言う事であろう。
――そういえば、昨日も一度に3体のセフィロトが同じ場所を目指して移動していたと言う。
やはりセフィロトは何らかの目的を持って動いているのだ。
企業の一社員(あるいは兵士)である自分が、こんな事を推察しているのは愚かしい事だと思う。
だが、彼は理性を超えた所で自分の中に警鐘が鳴るのを感じた。
何か、当初の予定からどんどん話がずれて行く…自分の最も悪い癖であります_| ̄|○
>>恐怖の亀裂作者氏
「ッハハハ! 見ろ、人がゴミの様だ!!」とか叫びはしませんが…
「銀色の髪に長く赤いリボン」に思わず(゚∀゚)=3 ウヒョー
ちなみに、セディールは不思議空間を自由にしているのではなく
単に衝撃波みたいな物を出しただけです(既に異常)
>>鉄獣28号氏
「山のふもとの町」ではなく「港町」の方でしょうか?
能力者は“ギルド”が保護法を設定しているのでむやみにボコるとタイーホなんて事になりかねない。
それを逆手にとって能力者が威張る…これが初回の真実だったり。
同時に奪っていた牛乳を飲み一心地付いていると突然悲鳴が聞こえる。「ひぎゃぁぁぁ!」
銃撃音。そしてまた悲鳴。確かこの階層は化け物を排除したと言っていた筈なのだが…。これはおかしいとそーっと辺りを見る。
すると醜悪な人型。しかも道化服まで着ている。その上大きな鎌までも。化け物と言うよりはそれに近かりし処置を受けた人間。
その表情は陰鬱な愉悦に浸り亀裂の様な嗤い顔をしている。顔を隠す仮面の後ろで。
「ヒヒヒヒヒ…まだ居たかぁ〜っ!」血染めの道化師がイドを見付けて襲い掛かる。一撃目。体を屈めて避ける。
二撃目。その体を横にスウェーして袈裟切りを躱す。ここでイドの距離になる。肘撃ちから膝蹴り。そのご回し蹴りと綺麗に道化師の顔面にヒットする。
「ひぎゃはぁ〜っ糞餓鬼がぁ〜!!!」大鎌を投げ捨てて袖から巨大な金属の爪を取り出し構える。「死〜ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ〜!!!」狂気に染まった声で躍り掛かる。
しかし力の差は歴然だった。その攻撃はイドの体には掠りもせず逆にイドの攻撃は道化師に面白い様に当たる。だが全く手応えが無い。
「ヒィーヒッヒッ。残念だったなぁ?俺は粗悪な失敗作。ついでに癌細胞の集まりとくらぁなぁ〜。表面に近い程腐乱している訳よ?解るかいお嬢ちゃん?」
道化師が仮面を取ると腐乱した皮膚から腐汁が垂れ出している。臭いが無いのは特殊な処理の為の様だ。突然後方にも殺気を感じ取りイドは眼前の道化師を蹴り倒しその場を逃げる。
そこには色の違う服を着たもう1人の道化師が立っている。「…」此方は何も喋らない。その上関節が外れているらしく糸の切れた人形の様にだらーんと両腕を下げゆらゆらとしている。
「〜〜っ!?」表情が固まっているイドに対してゆらゆらしている道化師が口を開く「おい…お前がターゲットか?ならば捕まった方が身のためだぞ?」
何とか挟み撃ちと言う状況には成らなかったが厳しい状況にある。片方は腐乱死体の様な者。もう片方は無関節人間ときたものだ。両方とも体術で何とかできる相手ではない。
その上腐乱死体側は銃撃も通じなかったらしいので残る対処法は重火器か大質量で潰すのみ。この時点でイドには手が出せない相手である。もう片方の耐性も未知数だがおそらくは体術が通用しないだろう。
「逃げる!」あっさり逃げを打つイド。敵わない相手と交戦する必要は無いと脱兎の如く。
「賢明な判断だ…だが相手が悪い!」軟体の方が動き出す。その姿その体のスケールからは考えられないスピードで移動を始める。
「ひぃぃぃぃん!!!」様子見に後ろを振り向いたら結構近くに居るのでイドは悲鳴を上げながら逃げ回る。その内今度は腐乱死体まで付いてくるから始末に終えない。
「あ〜ひゃひゃひゃひゃ〜まて〜い!」まるで砂浜で恋人を追い掛ける様な声で腐乱死体が追い掛けてくるのでとんでもなく怖い。
そんな鬼ごっこが暫く続いたが終わりは唐突に訪れる。他に見付けた隠し部屋にイドはフェイントで飛び込む振りをして彼等の視界から消える。
すると追跡者は隠し部屋に飛び込む。それを見計らってプロテクターの中に忍ばせて置いた催涙ガス入りのスモークグレネードを投げ込み扉を閉める。
「げほげほ…。」引っ掛かったのを確認するまでも無くその場から素早く逃げ去るイド。そこには2人の道化師が残された。
通気口に逃げ込むイド。そのまま第2層のスロープ近くに移動する。そこで様子を伺うと案の定道化師達が居る。
しかも…「増えてる。」溜め息を吐くイド。3人もだ。原色の道化姿が目に痛い。毒々しい。等々枚挙に暇が無い。
それぞれ限界点突破っぽいおデブの奴。逆に如何見ても骨と皮だけにしか見えない奴。最後に…メカ。常識人から見れば思わず突っ込みたい所が満載の道化レンジャー(仮称)だ。
「特にメカ!何で君だけ無機質っ!?」余りにも破天荒過ぎたのかイドは思わず通気口から突っ込んでしまう。
「お嬢さん?今宵は私とデートでも如何かな?」通気口を周りから切り離されてイドは床に落ちる。それを抱き留めたメカから発せられた言葉だ。「ロリコン。」場が凍る様な声でイドが言う。
するとメカは膝を突きがっくりと項垂れる。「此奴…メカピエロさんに暴言を!」おデブが言う。もう疲れたもう如何でも良い。正直言って目が痛い。イドにはお手上げの相手だった。
「これはいけませんね…お嬢さん1人を相手に5人掛かりとは。いけませんよ!いけません!」突然声が響く。「誰だ!」道化レンジャーが振り向くとそこにはエリオット=マシウス中佐が大型シールドを構えて居る。
「昼行灯の交渉屋が出てくる場所じゃないぜ?ア〜ヒャヒャヒャ!!!」大鎌を振りかざしてエリオットに切り掛かる腐乱死体だが次の瞬間シールドに押し潰される形で床に倒れていた。「へぎゅ!?」
更に問答無用でシールド越しに踏み付けるエリオット。「いけませんねぇ〜。レディをお誘いするならせめてメカピエロ君の様にしないと…。」
お仕置きとばかりに更に連続で踏み付ける。「あぎゃ!?」遂に細胞分裂の限度を超えたのかそれっきり声を無くす腐乱死体。「おっと…如何やら本当の腐乱死体に成ってしまったようだ。」
更に空気が冷たくなる。何が昼行灯だと。其処に居るのは絶対零度の視線で次の獲物を狙う狩人だ。シールドを持ち直して構えるエリオット。
「如何やらここで邪魔者が入った様だな。」軟体が素早く動き出しエリオットを縛り上げるがそこにはシールドしかない。「早い!上か?」しかし上には居ない。そして近くにも居ない。
「逃げたぞ!」ガリガリが叫ぶ。エリオットはイドを抱えると素早く逃げ出していた。腐乱死体は油断につけ込んで片付けられても実質は残り4人を相手にして生き残れるはずが無い。
しかしエリオットの移動スピードは異常だ。走っているのではない。ディロフォースに乗っている。「…任務失敗だな。」軟体は呟く。幾ら何でもディロフォースとやり合う馬鹿は居ない。
荷電粒子砲で分解されるのが関の山だ。「逃げるぞ!このままここに居たら不味い。」メカピエロが状況を冷静分析する。生き残りの道化レンジャー達は散開して姿を消した。
「あの…ありがとうございました。」イドはエリオットに礼を言うと「当然の事ですよ。困っている人を見捨てるのは紳士にあるまじき行為です。」そう言うエリオットの歯がキラリと輝いた。
結局イドはそのままディロフォースを受け取り分れる。「貴方のおかげで此方の損害も少なく済みましたので当然です…がなるべくならもう会わない方が良さそうですね。如何やら敵の様ですし。」
それ以上は何も言わずにエリオットは去る。お見通しだった様だ。イドは去り行くエリオットに一礼をしてディロフォースを地下に向けて移動させる。ある通路を使い一気に第8層まで降り立つ。
その後は道なりに進み第9層に成るはずだった場所に到達する。辺りを見ると少し状況がおかしい。「?」辺りを見回すと散発的だが戦闘の跡がある。ディロフォースの足を止め辺りを探る。
何かが蠢く気配。ディロフォースも感じ取ったのか自然と身構える。それが現れるそれは巨大なミミズの寄生体。それの数はどんどん増えてくる。相手をするには無理があった…。
鉄獣28号さんへ
ライフルのような物。どんな物なんでしょう?
お金の話ならマリンさんの場合先のと言うより始めの説明辺りで結構賞金を稼いでいるらしいとあった気が?
ルナリスさんの方が気になったり…親の金を使うのを嫌いそうですから自立するんだ〜〜〜!と。
Inocent Worldの作者さんへ
映画版〇〇リガンみたいですね方舟。あっちは気性コントロール能力とでしたが…。
と言っていたら自腹払って見た嘗ての後悔が…_| ̄|○
「こ…これはまさか…あの幻のテラティックレールライフル!!」
そのライフル状の武装を見たルナリスは驚いた口調でそう叫んでいた。そして彼女はニヤリと笑みを浮かべるとやはり札束を取り出したのであった。
「これを買おう!!早速取り付けてくれ!!」
「え!!ええええ!!?これをですかぁぁぁぁ!!!」
ジャンク屋達はいきなり驚いた様に叫び出したのだった。それにはルナリスも拍子抜けしていた。
「お嬢ちゃん…この“テラティックレールライフル”は確かに威力や射程距離は抜群なんですがね…
重いは、反動は大きいは、エネルギーは食うはでロクに使える物じゃないんですよ!!?だから近々解体しようと思ってたんですが…。」
ジャンク屋は慌て顔でそう説明する。しかし、ルナリスは驚くどころか逆に笑みを浮かべていた。
「何だ…何か問題があるのかと思えばその程度か…。」
「その程度かって…かなり問題あると思うんですがね!!」
「それは私が何に乗ってるのか知ってて言っているのか?」
「あ…。」
ジャンク屋は上を見上げて唖然としていた。彼等はルナリスがデスザウラー=ハーデスに乗っていた事をすっかり忘れていたのだ。
「で、これからどうする?いっそこのまま逃げるか?」
「いや、業を煮やした敵さん近寄ってきたみたいだよ。」
何気なく問い掛けてきたジャンの言葉に対し、レーダーを眺めていたマリンはそう答えていた。
その時だった。再びミサイルとビームの雨が降り注いで来たのだった。
「ほうら来た!!」
「うわお!!」
カンウとスチームはとっさに横に跳んでかわした。そして、ミサイル、ビームが飛んできた方向を見た時、辛うじて目視出来る距離に盗賊団のゾイド部隊の姿が見えた。
「ほうらね?レーダーが使えないと分かって近寄ってきた。」
「まあいずれにせよこっちにとって好都合ってワケだな。」
相手の位置がわかればこっちの物だとばかりに、カンウとスチームは敵の方向へと歩き始めた。
「ねえ、思ったんだけどさあ・・・。」
「何だいきなり?」
突然声をかけて来たのはレカだった。そして彼女はこう続ける。
「さっき飛んできた奴等の砲撃、前のより下手だったように思えるんだけど・・・。」
「そう言えばそうだな・・・なんというか・・・正確性に欠けていたような・・・。」
レカの言葉にジャンも腕組みして考え始めた。その時にマリンが笑みを浮かべて言うのだった。
「そりゃそうでしょ?私のジャマーでレーダーは使えないんだから、手動で照準まで付けて発射した
んでしょ?ならレーダーを使ったそれより正確性に欠けるでしょうよ!よほど射撃の達人で無い限り・・・。」
「そういやそうだな。」
ジャンが納得したその時だった。再び大量のミサイルが飛んできたのだった。今度は上から降り注ぐ
形ではない。正面から真っ直ぐにカンウとスチーム目掛けて飛んできたのだ。
「うわああ!!やべええ!!」
「何々!!私に任せなさい!!」
焦る二人をかばう様にカンウがスチームの前に出た。そしてミサイルはカンウ目掛けて突っ込んで
くる・・・と思ったその時だった。突如ミサイルの弾道が捻じ曲がり、カンウから反れて行ったのだった。
「へ?」
「え?」
その怪現象を見たジャン等や盗賊達の目は点になっていた。
「これもジャマーの力よ!そりゃ普通のビームや砲弾にはどうにも出来ないけど、ミサイルとか誘導兵器の類ならジャミングで狂わせてやれば大丈夫ってね!」
一体何が起こっていたのかワケが分からなかったジャン達に、マリンはそう説明していた。まあ
とにかく、ジャマーが誘導兵器のロックオンを外してしまい、そのまま弾道を曲げてしまう。と、
そういう事なのである。一応そう言う事でジャン等は納得せざる得なかったが、それを知らない盗賊達は焦りに焦っていた。
「畜生!!一体どうなってるんだ!!というかあのゴジュラスギガ逃げ出したんじゃなかったの
かよ!!ええい今度はガンブラスター隊砲撃開始!!奴等を蜂の巣にしてしまえ!!」
リーダーの号令に合わせ、今度はガンブラスターが砲撃を始めた。20種類の長距離高出力ビームがそのままカンウ目掛けて飛んでいった。
「危ない!!ガンブラスターのビームはシールド張っても防げない!!」
レカが叫んだ。しかし、マリンもカンウも回避行動一つ取ろうとせず、その場にどっしりと構えていた。
「おい!!避けろぉぉぉ!!!」
ジャンが叫んだ時、カンウはガンブラスター隊のビームの雨に包まれた。
「ハッハッハッハッ!!今度こそ終わりだな!!」
カンウの撃破を確信した盗賊団リーダーはダークスパイナーごと大笑いしていた。しかし、その
大笑いはあっという間に驚愕に変わった。カンウからオレンジ色に輝く光がほとばしったと思うと、
カンウの各部に装備された集光パネルがガンブラスターのハイパーローリングキャノンのエネルギーを全て吸収してしまったのだ。
「オイオイ・・・冗談だろが・・・。」
盗賊団リーダー、そして他の部下達の目は点になり、鼻水を出しながら唖然とするばかりだった。
と、その時、カンウの背中のバスターキャノンの砲口が彼らの方を向いた。
「んじゃ!貴方方のエネルギー・・・お返しします!集光ギガスバスター!!!」
その直後、バスターキャノンから強い光を放つ高エネルギーの渦が盗賊団目掛けて飛んでいった。
マリンが集光ギガスバスターと呼んだそれは、集光パネルから吸収したビームエネルギーをバスター
キャノンから高出力ビームキャノンとして生成し、撃ち出すという無茶と言えば無茶だが、単純と
言えば単純な物あり、これもカンウのコンピューターになぜかプログラムされていた代物であった。
「うっひょぉぉぉぉ!!!!」
突如として起こる大爆発。盗賊達の多くはそのままギャグ漫画の様に吹っ飛んでいった。
「くっそぉぉぉ!!!怯むなぁぁぁ!!!」
半ば混乱状態に陥る盗賊団をリーダーはなんとか建て直そうと皆に向かってそう叫んでいたその時
だった。なんとそのドサクサに紛れて、スチームが大量の蒸気を噴出しながら盗賊団のゾイドを吹き飛ばし、ダークスパイナー目掛けて突撃をかけて来たのだった。
「これで終わりだぁぁぁぁ!!!!」
「何だとぉぉぉぉ!!!」
盗賊団は焦り顔で、ダークスパイナーの背中に背負わされたキラードームの火器をスチーム目掛けて
撃ちまくった。しかし、スチームの全身を覆う超重装甲には傷一つ付かず、逆にレカの照準によって
発射された爆裂鉄球砲の精密射撃によって右片足だけを綺麗に破壊され、その場に倒れこんでしまった。
我ながらネーミングセンスが悪い。と、それはさておき、主人公が電子戦担当になるという
斬新な事(?)にチャレンジしてみたワケですが、ジャミングについて
微妙に矛盾する点とかあるかもしれませんけどまあその辺大目に見てください。
>>恐怖の亀裂作者さん
何か怖い人がいる・・・。怖い人がいるよ〜・・・。まあそれはそれでいつもの事なんですが
今回のも一段と怖いんですよこれが。
>>Inocent World作者さん
また何かすごい怪物ゾイドが登場しそうな雰囲気ですね〜これは。
「ドール…。」イドは呟く。この施設の巨大な空洞型エレベーターシャフトの名前にもある存在。
実質は何処かのネジの飛んでしまった人が記したという本の内容に出てくる超巨大ミミズの事である。
ただ似ているからの名前であるがその与太話を少し前に真に受けて聞いてしまったイドは顔面蒼白になる。
元々色白であるためそれは普通の者が見ると死んでいるのでは無いかと思う程に…。
それを感じ取って心配でもしたのであろうか?ディロフォースは荷電粒子砲をドールの群れに向かって発射する。
恐怖を振り払う様にそれはドールを蒸発させる。戦闘用ゾイドは体の殆どが別の機械的な物に置き換えられてはいるが生物だ。ブロックスも含めて。
特に乗り手の感情を深く読み取り理解できる者達は歴史的に英雄と呼ばれる者達の手足になったと言う。
まあそれは如何でも良い事かもしれないが何方かと言えばゾイド寄りなイド達μテリアンは戦闘ゾイドと一般的に相性が良い。その為ディロフォースが反応したのだろう。
そのフォローはイドを現実に引き戻すのには充分な効果があった様だ。
首をふるふると振り頬を両手でピシャリと軽くはたき気合いを入れるイド。良く考えれば少し前の悪夢”道化レンジャー(仮名)”に比べれば気にする程でも無い相手だ。
そして飛び掛かるドールを素手で叩き落とす。床に落ちたドールはディロフォースが順次潰してくれるので楽な仕事だ。イドの後方からまた複数のドールが一斉に飛び掛かってくるが如何と言う事も無い。
特に後方はイドにとって楽に捌ける場所でもある。人とのやり合いでは使うなと言われていたが化け物相手に触手を使用するなとは言われていない。一気に展開した触手はネット状の格子を擬似的に再現してドールを捕まえる。
後はそのまま地面に叩き付ければ終了だ。攻撃力は高いがその反面防御力に難のあるミミズでは健闘した方だろう。前方に現れた一団は荷電粒子砲で一蹴されてしまい気付けばかなりの数の相手を倒していた。
「如何する?」軟体は他の3人に言う。「諦める訳にはいかんだろう。」ガリガリが答える。「そうだな。」メカピエロも相槌を打ち「今度は逃がさん。」おデブが決意を新たにする。
1人減ったが道化レンジャー(他称)はもう一度イド捕獲の為に必死に先回りをしていた。しかし…「こんな筈では…。」どうやら今日は解散記念日だったようだ。
「何だ?此奴等は?」ザクサルは不機嫌そうに道化服達の亡骸を見て言う。当然彼自身が仕留めている。
原色で目に痛い縞模様の道化服。「しかし道化レンジャー(適当に命名)には1人足りんぞ?」何処の常識かは詮索無用な言葉を呟く。
所詮は単純な改造で手に入れたらしい身に染みていない実力はザクサルの前では蟷螂の斧よりも脆かった様だ。
「実の伴わない力等幾ら持っても手から滑り落ちる砂の様な物でしかない。あさはかここに極まれりと言った所だな。」そう吐き捨ててその場を去る。
道化レンジャー(リタイア済み)は先に踏み込みすぎてザクサルの暇潰しの玩具にされてしまったのである。
「ひぃぃぃぃぃ!?」イドは悲鳴を上げる。目の前に先回りしていたらしい道化レンジャー(返事は無い(以下略))が立ったまま居て肝を潰す。
しかしこの状況を見れば誰が殺ったかは一目瞭然である。「おじさんのやった跡だね…ぶつぶつ…。」ディロフォースに跨ったままそこを通り抜ける。
悲しい事に道化レンジャー(ご冥福をお祈りいたします)は最後までイドに真面に相手にして貰えなかった様だ。
ディロフォースに乗ってイドが帰ってくる「おっ?帰って来たぞ!」ブラッド、マグナ、グレイ、ボルクの4人はイドに駆け寄って行く。「どうだった?」誰となくイドに言葉を掛ける。
その場で話を始める5人。それを見てザクサルは笑っている。更にそれを見ていた周りの者はひそひそと話し始める。そんな奇妙にのどかな風景。
それは技術者の介入で打ち破られる。「大佐!機体が完成しました。調整の為に試運転をお願いできますか?」「解った。丁度良い気分転換になる。早速やろう!」妙に気合いが入っている。
「これが機体です。」外見こそギガだが細身で内部を見るとブロックスのフレーム等がぎっしり詰まっている。背中にはかなり特殊な形状の2枚の翼と羽4枚を一纏めにした翼が付いている。
「ほう…面白い形をしているな。さしずめスード・ギガディアボロスウウィングとか言った所か。」ザクサルは面白そうに言う。技術者はばつの悪い顔をしながら「似て非なる物ですか?手厳しいですね。」
その表情を見てザクサルは言う「褒め言葉だ。出来が悪ければただのまがい物にも成らないからな。さていかせて貰うとしようか?」
異形の翼を広げ機体が起動する。その咆哮はまがい物でも確かにギガの物だった。
まずは軽く歩かせた後に走らせてみる。軽やかに歩行した後にスムーズに走り出す。速度も上々だ。
「ならば!ここから跳べ!」今度は方向転換後にジャンプさせる。急旋回気味に方向転換して向いた方向にジャンプ。
これも問題無く熟す。そのままマグネッサーに任せて浮遊させるザクサル。ただ見ているだけのギャラリーも居る事だ。
ニヤリと笑ってザクサルはある行為をしてみせる。するとギャラリーから大歓声が上がった。
その行為とはその場から無理矢理斜め後ろに上昇しながら移動する事である。言うは易し行うは難しのこの行為を楽々成功させる。
これは拍手が乱れる行動だ。幾ら内部がブロックに替わっていても翼と武装の全備重は通常のギガを超えている。
それがいとも容易く浮遊し無茶な方向に上昇するのだから感動も一際強い。特に設計立案をした技術者は涙すら流している。
その後30分程念入りに動作チェックをザクサルは上機嫌で続けたという…。
「ふっお主も無理をする。拙者がこうだからとは言え苦手な海に入らなくても良かろう。」ソウエンはコクピットの中で自らの相棒に語りかける。
それに反応こそしないがそのゾイドは力強く水を掻く足を早める。ソウエンの通り名を表すが如き双頭の虎。体格もゴジュラスやアイアンコングに匹敵する巨体。
双頭のソウエンが駆るタイラントタイガーである。共和国のゾイド開発の闇は相当に深いもので競合に掛けられて消え行くゾイドは数多い。
帝国が3種類程で試す物が共和国では何と3倍の9機だったりする事もある。その実広報では少ない数を上げて初期に切り捨てられる存在はひた隠しにすると念の要り様である。
このタイラントタイガーもその中の1機で開発はOS搭載機の開発が盛んだった時期の者である。それにより頭部が2つになり虎と言うより熊を思わせる体躯になったりと期待を持たれた。
だが現実は非情でブレードライガーが開発プランに上がるとそれ以前の全てのゾイドの開発を白紙にしてしまう。
ライガーは嘗てより共和国を支えたゾイドでありかのヨハン=エリクソンが開発した珠玉の設計思想を持ったゾイドだ。それの後継機という事で周りは過度に期待を持った反動という事だろう。
実際の所ブレードライガーはその後継機としての期待には答えられなかった。そんな裏目の闇に消えた筈のゾイドがタイラントタイガーの素体である。
ソウエンとタイラントタイガーが出逢ったのは全くの偶然からである。ブレードライガーは強い機体だった。
だが良い機体ではない。感情が剥き出しで凶暴なだけ。その奥には自らのシステムに対する憤りのみと彼の欲求を満たす存在では無かったのだ。
「そんな折であったな。お主に出逢ったのは。」格納庫の片隅でただ感情を押し殺し自らに押された欠陥機の烙印を敢えて受けるタイラントタイガーの素体。
一目で気に入ったソウエンはその時失ったシールドライガーの代わりに彼を選んだのである。
その後ソウエンの要望の元戦闘用としての装備を与えられたタイラントタイガーは第2次全面開戦でロブ基地に収まらなかったお陰もあり傭兵達と戦線を死守。
その際に数十機の小・中型ゾイドとレッドホーン8機、アインコング3機を撃墜する鬼神の如き戦果を上げる。しかしプロパガンタとして役に立たない戦果である。
公にはブレードライガーの戦果として記録されたという話だ。だがそんな事は彼等には関係無い。その後もデルポイへのネオゼネバス侵攻時も同じく凄まじい活躍を見せた。
ダークスパイナーに頼った戦略の裏を掛かれ2大隊が彼の餌食になったと言う。
その装備には天の叢雲の二太刀と銘打たれた長大なレーザーブレードを持ち四肢のストライクアンカークロー。二つの頭部に村正の小太刀と彼の言うハイパーレーザーサーベルを持つ。
特に天の叢雲の二太刀は二つの頭部に咥えさせて使用する前代未聞の兵器でありその威容は敵に恐怖を与えるに十分の迫力があるものだ。
射撃兵装は胴体側面の左右迂回型ミサイルポッドと前足の両肩に有る4連ショックカノンと天の叢雲の二太刀の邪魔をしない程度の装備をしている。
実際にはまだ胴体内にまだ隠し持っている装備が有るらしいがそれを含めても殆ど射撃は行わず群がる敵機をその刀で切り倒しているらしい。
不慣れな犬掻きならぬ猫掻きをしながら何とか海岸に到達するタイラントタイガー。機体に付いた水滴を払う様に体を震わせる。
「だから言ったのだ。無理はするなと。」そう言いながらも口から血の筋が消える事の無いソウエンは呟く。今回の仕事はこれで終了だ。
「暫くは眠らせて貰おう。先の結果等は血沸き肉躍る決闘の開幕の鐘の音でしかない。生き抜けよ!死竜王っ!!!貴様は拙者の糧と成れ!」
随分と勝手な事を言いソウエンは目を閉じた…。
鉄獣28号さんへ
主役が電子戦。良いですね〜。そもそもジャミングできる程の電波を喰らえばミサイルは機能不全は間違い無いので問題無いのでは?
ごっつい獲物どうなるか?ワクワク…。
今回はカッコの内をくどくしてみました。内容はちょっとアレですが…。
「う・・・うわぁぁぁぁ!!!!」
「な・・・なんだ・・・やっぱりまたお前等かよ・・・。どこからそんなゾイド調達して来たかは知らんが・・・もういい加減やめねえかな〜?」
相手がいつもの盗賊団とわかると、ジャンは倒れたダークスパイナーを見下ろし、そう言った。
そして、そのままスチームの角を後ろにいたカンウへと向ける。
「だからさ・・・今度こそはコイツ等と一緒に警察に行ってもらうぜ!」
「コイツ等って何よ・・・。」
その言われ方に不満があったと見えたマリンはそう愚痴を零す。
「さあ!盗賊さんよ!どうなんだあ!?」
「ハ・・・ハイ・・・。」
「わかれば良いんだ!じゃあ早い所そのゾイドから降りな!」
盗賊が大人しく返事をした事を確認すると、ジャンはそう言ってスチームのコックピットハッチを開いたその時だった。
「なんちゃってぇぇぇぇ!!!!」
突然ダークスーパイナーの背中のキラードームのガトリング砲がスチームのコックピットに向けられたのだった。
「何!!?」
「ジャンン!!危ない!!」
「はっはっはっはっはっはっはぁぁぁ!!!死ねぇぇぇ!!」
盗賊団リーダーが笑いながらそう叫び、ガトリング砲の発射ボタンを押そうとした時だった。
突然ガチュンという音と共にキラードームのガトリング砲が装備されたジャイアントクラブの付け根が吹き飛び、さらに今度はダークスパイナーの首そのものが弾け飛んだのだった。
「な!!何だぁぁぁぁ!!?」
盗賊団リーダーはワケが分からず、そのままコックピットから外に弾き出される。
「い・・・痛たたたたたた・・・。」
リーダーが必死に起き上がろうとしていた。しかし、彼の正面にいつの間にかにジャンの姿があった。
「大人しく降参したんじゃ無かったのかよ!!!」
ジャンはリーダーの顔面を思い切りぶん殴り、気絶させてしまった。
「これは・・・・・・・・。」
マリンはとっさに後ろを向いた。なんと地平線ギリギリの場所に、先程ジャンク屋から購入した
テラティックレールライフルを右腕に装着した状態で構えていたハーデスが立っていたのだった。
「フン・・・狙撃も悪くないな・・・。ガキの頃、社長たる者自分の身は自分で守れねばならないとか
言われて親父に格闘技叩き込まれるついでにライフル射撃を無理やり叩き込まれてた頃を思い出す
な・・・。あの時はあんなに嫌だったというのに・・・。皮肉な物だ・・・。」
ハーデスコックピット内部、なぜかサングラスを掛け、口にはハマキ型のガムを食わえた状態でルナリスが哀愁漂う口調でそう呟いていた。
「やっぱり思った通り盗賊風情を使うのは駄目でしたか・・・とはいえ、あのオーパーツゾイドの性能が断片的にも把握する事が出来ただけでもよしとしましょう。」
その様子を遥か遠くから見ていたイワカルはそう呟いていた。
「んじゃあコイツ等は私等がこのまま警察に連れて行くから・・・。」
夕日を背にし、ジャンやレカ達の前に立ったマリンはそう言っていた。そんな彼女の右腕の服の
袖から鎖が伸びて、あの後でボコボコにされたと思われる盗賊団をグルグル巻きにした状態で立たせていた。
「もうこれでコイツ等に襲われる事も無いのか・・・。敵ってのはいると腹立つが、いなくなると寂しくなると言うが・・・まさしくそれだな・・・。」
「物騒な事言うんじゃないの!」
グルグル巻きにされた状態の盗賊団の姿を見て、ジャンとレカはそう言いあっていた。
「まあそれはともかく。俺達はこのまま普通にジャンク屋を続ける。あんたらも賞金稼ぎ続けるんだろ?まあお互いがんばろうや!」
と、ジャンがそうカッコ良さげな言葉を口ずさんだ時、今度はロバートが前に出て来たのだった。
「正直あんたらには感謝しているぜ。奴等がどこからあれ程のゾイドを調達出来たかは知らんが、
俺達だけの力であの大軍を相手にするのは無理だったからな。今度パーツか何かに困っる様な事があった時はウチに来い!安く売ってやるからよ!」
「じゃあ・・・。」
こうして、マリンとルナリスはジャンク屋達と別れ、盗賊達を引き連れて進んでいた。
ちなみに、ハーデスは背中に装備されたマニューバスラスターユニットにウェポンラックを増設し、
そこにテラティックレールライフルを装着すると言う形を取っていた。
「なあ・・・思ったんだけどよ・・・。集光パネルに高性能なレーダー、そして高性能ライフル。
中古品とは言え、この3つが揃ったって事はセイスモに対抗できる目処が付いたって事じゃないか?」
「あ!それもそうかも!」
何気なく口ずさんだルナリスの言葉にマリンも頷きながらそう反応していた。
と、こうして追加パーツによる急ごしらえとは言え武装強化したカンウとハーデスであったが、
カンウにマグネッサー3Dレーダーを装備して電子戦にも対応出来る様にしたが為に、電子線担当にされてしまったという墓穴を掘ってしまうのであった。
「おい!!次の敵はどこにいるんだ!!?レーダー性能はお前の方が上なんだぞ!!」
「うあ〜・・・頭痛いよ〜・・・。」
元々お世辞にも良いとは言えない頭を持つマリンに、比較的頭を使う電子戦は苦以外の何者でも無かった。
何事もリスクは伴うもので、高い電子戦能力を手に入れた反面、
パイロットがそれに慣れるまでしばらく苦悩することになります。
今思ったんですが、いわゆる”メカもの”作品は数あれど、電子戦を
取り上げた作品って少ないですよね〜。ガ○ダムだって色々な理由付けて
電子戦が出来ない状況を作ってますし。
>>恐怖の亀裂作者さん
思ってみれば怖い人達も可哀そうに思えます。
しかし、別を見れば新登場ゾイドが2体登場してますから、それが
どんな活躍をするのか楽しみですね。
>>109 小説も読んで言ってる?
アニメだと基本的に視覚的にうったえる必要があるから電子戦を主にした話は展開できない
電子戦関連は多少でも小説で取り上げられてると思いますが
ルガールが目を覚ましたのは、気絶してから丸一日経ってからの事だった。
体中が痛い。あちこちの傷から血が流れ出し、骨も数本持って行かれたと見える。
「やってくれる、あの男…」
辛うじて動かせる左足を支えに、ルガールは身体を起こした。
周囲の光景が一変している。果てしなく広く、かつ白かった空間は暗く翳り、色とりどりの幾何学模様も消えていた。
ただ、石柱だけが赤い光を暗闇に投げかけている。
「…奴には…それを可能にする『力』が、実際に備わっているのだ…」
低く呟いた彼は、何かを感じて振り返った。
ルガールの鋭敏な耳は、既に何層も壁を隔てた距離から聞こえる爆発音を捉えていた。
「オイ…何だよ、ありゃあ…?」
24時間前――港から遥か遠くの山の崩壊を見ていたマサシは、山の残骸から空に躍り出た異物を見て声を無くした。
「…って! ルガールはあの山に居るんじゃなかったか!?」
マーシーを駆り、バーニアを吹かそうとしたマサシはモニター越しに凄まじい閃光を目撃した。そして衝撃。
急激に爆発したエネルギーは衝撃波を発生させ、周囲の凍土、基地、集落までも瞬く間に吹き飛ばして行った。
山から数km離れた港にも、当然その巨大な力は襲い掛かる。
「お…おおおぉぉぉッ!?」
マサシも愛機のコックピットに収まっていなければ、周囲に居た民間人と同様肉片と化していただろう。
とは言え、これほどの衝撃波はゾイドにさえ深刻なダメージを与える。彼の機体も関節や頭部に
損傷を負い、戦闘可能な状態には無かった。
「ケッ…これでいっそう確信したぜ。アイツは生きてるってな」
今まで、ルガールは何度でも「99%の死」から帰ってきた。その実績と信頼が、マサシに核心を持たせたのだ。
空に浮かぶ異物がこちらに向かってくる。マサシは港に停泊していた船の中で、辛うじて無事だった高速船に機体を飛び乗らせた。
もはや船の持ち主は居ない。操縦席を覆う赤い液体が何よりもそれを物語っている。
「悪ぃね、ちょっと借りてくぜ」
血染めの操縦席に飛び降り、マサシはアクセルを踏み込んだ。
「〜た。」ばっかだな最近…
>>恐怖の亀裂作者氏
似てるも何も、自分はス○リガンを見てこのアイデアを思いついたのですし。
見た方ならセディールの能力も容易に想像できるかと。
>>鉄獣28号氏
前兆は出すも、まだ本体は出さないと言う変な構成です。>怪物
まだセフィロトが何体も残ってますし、ネタは使い切らねば(エ∀エ)
ところで、某スレでここは新作が書きにくいと言われてましたがそういった空気を
作ってしまっているのでしょうか?
>>112 もし新規参加者にどんどん入ってきて欲しいと思うなら、
変えていく必要もあるかもしれないね。
ただ、このスレが盛り上がっているのは
こうしていつも書きこんでる3人がいるからであって
まだ何も書き込んでない人の意見を気にしても、仕方が無いと思うよ。
ゾイド板では、ここ以外でもゾイドSSって連載されてるでしょ?
もし投稿したくなっても、この「自分で〜」スレにこだわる必要は無いわな。
とりあえずそういう事を気にするInocent World書いてる物体氏は素敵だ。
と思った。あと、自分以外にも執筆者以外でここに書きこんでる人(
>>110氏)
っていたのね。
>>110さん
済みません小説は盲点でした。
>>Inocent World作者さん
>ところで、某スレでここは新作が書きにくいと言われてましたがそういった空気を
作ってしまっているのでしょうか?
失礼かも知れませんが、それは今まで気にした事もありませんでした。
細かい事は気にせずにバンバン書いて下さいって感じで考えていた物で。
>>113さん
変えていくとしても、どう変えるか?が問題でしょうね。
書きにくいという点に関しても、確かに最初は書くのに抵抗あるかもしれませんが
(自分もそうでした)、一度二度書いていくと結構気にならなくなる物だと思いますよ。
だから、そう細かい事は気にせずに書きたい事があれば書くのが一番ではないかと思います。
と、そう思う自分は無神経なんでしょうか?
115 :
113:04/07/29 22:22 ID:???
まぁ、気にしすぎるのも良くないからね。
ついでに、以下のレスにはあまり触れないで続けてくれると助かります。
>どう変えるか?
(書くのに抵抗あるとか気にするとかそういう問題ではなくて)
ヲチスレで出た「書き込みづらい」という理由には、
現参加者同士の感想とかのやりとりがだいぶ親密で新たに入って行きづらい、
あえて悪く言えば2chのスレなのに馴れ合いが過ぎる、という事があるのでは。
自分も投稿するなら他の人の作品も全部読んで、感想書かなきゃ…と
思わせるような空気があるとかね。
(実際そんな事しなくていいのは勿論わかってるよ)
ただ、自分は別にそんなの直さなくていいと思う。
それがこのスレの性質なんだから、合わないと感じた人は去って行くだけ。
現状うまくやって行けてるから、これからも頑張ってくれ。
第8章:リターンマッチ
「うああああ〜!!!やっぱり分かんないよ〜・・・。」
旅先で泊まったとある旅館の一室にて、マリンが一冊の本を前にして頭を抱えながらそう唸っていた。
「オイオイ一体何の本を読んでるんだ?」
興味本位でルナリスはその一冊の本を手に取って見た。とその時ルナリスの目は線になっていた。
「猿でも分かる電子戦・・・鋼獣書房刊・・・?なんだこりゃ!」
「その名の通り、電子戦の方法を記した本だよ。電子戦って適当に策敵とかジャミングとかすれば
良いと思ってたけど、これが中々奥が深くてさ、周波数をどうとかとか・・・私の頭じゃわかんない〜!!!」
「オイオイ・・・。」
またも頭を抱えてしまっていたマリンに、ルナリスは呆然とするだけだった。
「まあそれはともかくよ、これ見ろよ!今日の朝刊!」
ルナリスはそう言って、マリンに新聞を差し出すのだった。そして、ルナリスは新聞の中の一つの記事を指差す。
「コロンズ団が現金輸送ホエールキングを強奪だとよ!あの時、私等含めて治安維持部隊を返り討ちにした後いい気になって連中好き勝手やってるぜ!」
「た・・・確かに・・・これは早い所潰さないとマズイよね・・・。」
マリンの顔は真剣な物となった。
「本当にコイツ等色々やってるよね。無差別テロや政府要人の暗殺から、幼稚園バスジャックや子供のなめてたペロペロキャンディーの恐喝まで・・・。」
「マジで?マジでそんな事してたの?」
突然驚いた顔をしたルナリスに、マリンも拍子抜けした顔をしていた。
「まあ前者の無差別テロや政府要人暗殺とかはともかくとしてだ・・・。連中幼稚園バスジャックとか子供のキャンディー恐喝までやってるのかよ・・・。」
「ん〜・・・覆面Xから聞いた話では本当にやってるらしいよ。小さな事からコツコツと・・・って感じで・・・。」
「覆面X・・・アイツか・・・。」
ルナリスは覆面Xの異様を思い出し、どうもいけ好かない顔をしていた。
「まあとにかくさ、コイツ等をこれ以上好き勝手させてると、経済とか政治とか色々な面に影響が
出てくると思うのよ。もしかしたら私達にも何かしらの影響が出てくるかもしれないし・・・。
ルナリスちゃん!!貴女の実家の会社だっていつ奴等に襲われるか分かった物じゃないわよ!!」
「ちゃん付けするな!!あんなクソ親父の会社などどうなっても私はどうも思わんが・・・。やはり奴等をこれ以上のさばらせておくのはイカンだろうな・・・。」
「そんな事言って〜本当はパパンが心配なんでしょ〜?って痛!!」
真面目に事を言っていたルナリスを茶化したマリンは真面目に殴られるのであった。
「うわ〜ん痛いよルナリスちゃ〜ん!」
「うるさい!!つーかちゃん付けするな!!」
頭を抱え、今にも泣きそうになっていたマリンに対し、ルナリスはそっぽ向いていた。と、その時だった。
「そんなにまた奴等と戦いたいか?」
「うわああ!!!覆面X!!」
何時の間にかに現れた覆面Xに驚いた二人は思わず後ずさりしていた。
「ちょっと!!覆面X何時の間に!!つーか何で勝手に入って来てるの!!」
「いや、呼び鈴鳴らしたよ・・・。まあとにかくだ。」
「とにかくじゃない!」
二人の突込みを尻目に、覆面Xはその場にドッシリと座り込んだ。
「実を言うとな、治安維持部隊がコロンズ団への第二回攻撃作戦を計画しているそうだ。無論それにあたって傭兵として賞金稼ぎなども募集している。」
「何か都合の良い展開だね・・・。」
と、覆面Xは二人に一枚の紙を渡した。
「詳しい事はこの紙に書いてある。では、さらばだ!」
覆面Xはそう言うと、その場からフッと消え去った。
「消えた!!え!!?え!!?」
「覆面X・・・ただの変態かと思ったら・・・あなどれんな・・・。」
突然フッと消えた覆面Xに、マリンは戸惑い、ルナリスは半ば驚きを隠せないでいた。
その後、マリンとルナリスは紙に書かれた場所。つまりコロンズ団を鎮圧するために治安維持部隊が
終結しているとされるベースキャンプへと急ぐのであった。
「何だ!また君達かね!」
「またって・・・。」
傭兵受付係をやっていた治安維持部隊員の拍子抜けした感じの言葉に、二人は半ば怒りそうになった。
「またあの時みたいにゼネバス砲でズバーンってやられるのがオチってもんじゃないのかい?
はっきり言ってこれ以上面倒は見きれないよ?こっちだって余裕は無いんだからねえ!」
二人を見下すかの様にヤレヤレのポーズをしながら言う隊員に、二人は思わず殴りかかろうとしたが、なんとか抑え、そして二人は言った。
「私達だってあれから奴等に対する対策とか練って来たんですよ!!」
「それに成功報酬で構いません!!だから私達にも参加させて下さい!!」
二人の真剣な表情とその気合に押され、先ほどまで見下すような表情をしていた隊員の顔は真剣な物になった。そしてゆっくりと後ろを振り向きながら口を開く。
「わかったよ・・・ただし・・・本当に成功しなければ報酬は無いと思え?」
「あ!ありがとうございます!!」
立ち去っていく隊員に対し、二人は思わずおじぎをした。と、こうして彼女達は治安維持部隊と共に
コロンズ団討伐作戦に参加する事となる。彼女等はリベンジを果たす事は出来るのだろうか。
それから、ベースキャンプ中央に建てられた仮設基地内部にて、治安維持部隊員達や、傭兵として
参加した他の賞金稼ぎ達と共に、マリンとルナリスは作戦説明などを受けていた。
治安維持部隊の隊長が、部屋の奥に置かれた大型モニターを背にして色々と言っている。と、その時、彼の背後にあったモニターから映像が映しこまれた。
「これがこれから攻撃する事になるコロンズ団の本拠である。ちなみにこれは先ほど放った斥候に
撮って越させた映像である。これを見ての通り、全面を要塞のような分厚い壁で覆い、さらに
本拠その物を高出力Eシールドで覆い、ゾイドは多数のセイスモサウルスを配備しているという
ほぼ無敵に近い要塞と言えるだろう。現に以前の戦いでは敵本拠に少しもダメージを与えられず、
逆にセイスモサウルスのゼネバス砲の精密射撃によって接近する前にことごとく我が隊は打ち破られた。」
「・・・・・・・・・・・・。」
誰もが息を飲み、緊張していた。と、その時隊長はモニターを叩いた。
「しかし!!奴等を打ち破る手段が無いワケでも無い!!これを見ろ!!」
隊長はある方向を指差した。それはコロンズ団本拠の屋上部を指差していた。
>>118に訂正
>撮って越させた→撮って来させた
それと、一連の話題についての最後として自分なりの結論を書かせてもらいますが、
確かに
>>115さんの言う通り、入って行きにくいという雰囲気になっているのは確かでしょうね。
しかし、その一方でこのスレは荒れになりがちなゾイド板の中でも良スレの部類に入ると
言った感じの書き込みがあった記憶があります。いつだったかは忘れましたが・・・。
それに今の雰囲気を崩すとそれはそれでスレが殺伐とした物になりそうな気がするんですよ。
だから自分も今まで通りのやり方で良いと思いますがどうでしょうね?
前に書いた通り、最初は抵抗あったけど1度2度書いてみたらスレの雰囲気にも慣れて
そう気にせず書き込めるようになるなんて事もあると思いますから。
「この連中の本拠の屋上に置かれた大型レーダー。これをどうにかして沈黙させる事が出来るの
ならば、セイスモサウルスのゼネバス砲の命中精度は大きく低下するだろう。それだけでも状況は大きく変わる。故に我が隊にも勝機はある!!」
と、その時、一人の隊員が手を上げた。
「隊長!そのレーダーをどうやって沈黙させるんですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
痛い所を突かれた様子で隊長は肩を下ろし思わず黙り込んでしまった。
「そうだよ・・・それが問題なんだ・・・。ビーム兵器は大気によって減衰する上にシールドで防がれるし、
ミサイルを撃ち込んでも先に連中に気付かれて撃ち落されてしまう。とにかく、それについては現在考案中である。とりあえず今日はこれで解散!!」
「オイオイ・・・ちゃんと第二回攻撃に出るつもりならそういう所も考えとけよな・・・。」
ルナリスは相手に聞こえないよう小声でそう愚痴っていた。
「こりゃ結局行動に出るのはまだ後になりそうだね・・・。」
「ああ・・・これからどうするかだよな〜・・・。」
説明が終わり、他の賞金稼ぎ等と仮設基地から出た二人はやはりそう愚痴を零していた。
一方仮説基地内部では隊長やトップレベルの隊員等で、作戦会議などが行われていた。
外では他の賞金稼ぎ等がゾイドの整備を行ったり、雑談をしたりとしていた。
嵐の前の静けさ。現在のベースキャンプはこれから壮絶な戦いが起こるとは思えぬほど殺伐のさの
字すらも無いのどかな空気が流れていた。しかし、マリンとルナリスの二人は、自分達なりに
コロンズ団本拠の大型レーダー破壊の方法を考えていた。と、そんな時だった。
「お〜!嬢ちゃん達もこの作戦に参加してるのかい?若いのに大変だね〜!」
突然一人の陽気そうな賞金稼ぎが考え込んでいる二人に絡んできたのだった。
「どうせこの様子じゃあ作戦結構はまだまだ後になりそうだからね〜!あっちでおじちゃん達と飲まないかい?お嬢ちゃん達可愛いからおごっちゃうよ〜?」
「うわ!!酒くさ!!この人昼間っから酒飲んでるよ!!」
酒の匂いの混じった男の息に、マリンは思わず鼻を摘んだ。そして、そのまま口を開き・・・。
「あのね・・・おじさん、私達は・・・。」
と、出来るだけ穏便に事を済ませようとした時だった。ルナリスの超高速の指拳突きが男の顔面に
向けて撃ち込まれた。しかし、ギリギリで寸止めしている。それには男は驚いた顔をしていた。
「悪いな・・・後にしてくれ無いか・・・。」
「わ・・・分かったよ・・・あ〜怖い怖い・・・綺麗な薔薇には刺がある・・・女は怒らせると怖いね〜・・・。」
まだ酔っている様子であるが、男は物分りが良い様子でそう言いながら去っていった。そして、二人は気を取り直し、作戦考案を再開した。
「イチかバチか・・・賭けてみるか?」
「そうだね・・・。」
互いに見合わせたマリンとルナリスは真面目な顔で立ち上がった。しかし、マリンの手にはあの
"猿でも分かる電子戦"の本が握られており、その間の抜けたタイトルは緊張感を半減させる物だった。
「大変です隊長!!」
仮設基地内部で作戦会議を行っていた隊長等の元に、一人の隊員が駆け込んできたのだった。
「一体どうした?」
「とにかく外を見てください!!」
隊長や他のトップレベルの人達は疑問深そうな顔をしながらも、隊員に連れられて外に出た。
「んあ!!」
隊長は驚きの声を上げてしまった。なぜなら突如カンウとハーデスが起動し、ベースキャンプは大騒ぎになっていたのだ。
『こらあ!!お前達!!一体何をやっている!!』
隊長はマイクのボリュームを最大にし、カンウとハーデスへ向けて叫んだ。
「いや〜ね?私達がちょっと連中のレーダーを破壊してやろうと考えたのよね!」
『なんだとぉぉぉ!!?勝手な事をするな!!第一お前等のゾイドのその巨体じゃあすぐ気付かれて狙い撃ちさせられるのがオチだろうが!!っておい!!』
必死に声を張り上げる隊長を無視し、カンウとハーデスはブースターを吹かし、手近にあった山へと
ジャンプしていた。そして、山の頂上へと着地した両機はコロンズ団本拠のある方向を向いた。
「山の頂上だと!!?あれでは自分から見つかりに行くような物じゃないか!!自殺行為も甚だしい!!」
隊長の愚痴を他所に、カンウとハーデスにそれぞれ乗っているマリンとルナリスは色々と操作をしていた。
「これでよし!マリン!ジャミングを開始するんだ!あの変な本で勉強した成果を見せてやれ!!」
「よし来た!ジャマーオーン!」
ルナリスの掛け声に合わせ、マリンはコックピット内部の一つのボタンを押した。その直後、カンウの背中に装備されたマグネッサー3Dレーダーからジャミング波が発せられるのであった。
「隊長!あのゴジュラスギガより妨害電波が出てきます!」
「なんだと・・・?まさかあんなゾイドに電子戦能力を持たせるとは・・・少し邪道じゃないか?」
部下からの報告に、隊長はそう愚痴りながらも、なぜか知らず知らずの内に山の上の二機を見守っていた。
「よし!これで連中のレーダーで発見される心配は無くなった!」
ルナリスはジャマーが展開されている事を確認すると、背中に搭載していたテラティックレール
ライフルを腕に装着し変えるのだった。そして、レールライフルを辛うじて見えるコロンズ団本拠へ
向け、メインカメラから映し出される映像を可能な限りズームするのだった。
「実弾兵器のこのライフルならばシールドを心配する必要は無いし・・・、テラティックレールライフル
の弾速なら連中に気付かれる前にレーダーを撃ち抜く事が出来るはずだ・・・。」
ルナリスとハーデスはコロンズ団本拠へ向けたライフルの狙いを定めた。狙うは屋上部のレーダー設備。
「アイツ・・・まさか狙撃しようと言うのか?」
それを見ていた隊長は息を呑んでそう呟いていた。そして、他の者も思わず黙り込み、事の次第を見守っていた。
「ファイア!!」
いつの間にかにハマキ型ガムを口に食わえ、サングラスを掛けるというスナイパー的な格好になって
いたルナリスが、そうかけ声を上げると共に引き金が引かれた。ハーデスの持つ超エネルギーが
レールライフルそのものに送り込まれ、それによって超加速された特殊合金製の弾丸が超高速で撃ち
出された。“ギガ”の上を行く単位である“テラ”の名を冠するレールライフルの弾丸が空を斬り、
真っ直ぐに遥か遠く離れたコロンズ団本拠屋上のレーダー設備へと飛んでいった。
「ど…どうなった…?。」
誰もが唾を飲んで弾丸が飛んでいった方向を見守っていた。と、その時、ベースキャンプの方向へ向けてハーデスとカンウの手が振られていた。
鉄獣28号さんへ
遂に借りを返す時がきたと言う感じですね。如何成ることやら?
Inocent Worldの作者さんへ
やっぱりそうだったのですか。それは別としてもまだ中にやばい物の気配が…。
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やばっ!?雰囲気なんて考えてもいなかった自分は如何なんでしょう?
多分入り難い理由はこう言う空気が自然に出来てしまった事なんでしょうか。
それと感想が多くなったのは”ネタっぽさ”が増えたからではないかと…。
論議の内容を読んでの事ですが空気雰囲気は如何あれどこのスレには誰でも作品投稿と感想を書く事が自由です。
その前提は覆せないので如何してもと言うならこのスレに土足で踏み込むぐらいの勢いでメモ帳辺りで本文を書いて一気に小分けして貼るのが良さそうだと思います。
感想うんぬんが面倒なら一気に駆け抜けるのが一番ではないでしょうか?
それに…感想は大歓迎ですが強制ではないです。
更には話には常に楔が入って区切られている為途中に割って入られても余り気にする人はいないと思うのですが?
「…何時までする気でありましょうか?」背中を何人かの人に触られ叩かれ掻かれほんの少し削られる。
職種は医者と技術者と鉱物学者。背中を弄ばれている様な気分でじっとしているのは他人の陰謀の中心に仕掛人の趣味で添えられてしまったファインである。
当然弄くられている背中と言うのは甲殻皮膚で人体には余り影響は無い「痛っ!?」神経が有る部分まで傷が及んでビクッと体が動くと条件反射で甲殻皮膚がぶわさっと広がり周りの人を押し退けてしまう。
「すっ済みません。初めて見る物なのでつい…。」悪気が無いので講義出来ない。それに一応”仮想敵国”の陣営内なので無茶はできない。限りなく敵なのだが。
如何やら調べ物が終わったらしい。やっと体を自分から固定した状態より脱して一息付く。「受け取れ!は・な・は・だっ不本意だが研究材料のバイト代の一つだ。」
ラフィーレが飲み物を渡す。「どうもであります。でも何で技術屋さんが居たのでありましょうか?」その問いに「その内解る。機体受け渡しの為の物だそうだ。」妙にむくれた顔で言う。
更に飲み物を飲んでいるファインに投げ渡された物が有る。「こいつは私が壊してしまった物の弁償だ。」最新型らしきアナライズグラスで形は眼鏡型ではなくスペクタクルズ型のレンズは片側の物だ。
「それにガイロスの恥から果たし状が貴様に届いているぞ。しっかり相手をしてやれ。受け渡しゾイドで出ろと言う事だ。」
基本操作マニュアル全5ページを渡される…随分と薄いものだ。TFS(トレースフィードバックシステムの略)と説明されているだけで後はそれ以外の基本動作の使用の仕方が載っている。
「ペラペラでありますね。」一応新兵器のテスト小隊のパイロットだけありその程度の内容なら数秒程ページを覗けばそれで大抵なんとか成る。それを15分も見ていれば基本操作は充分覚えられる。
その後何か別のマニュアルを渡される。こちらはもっと厚い物で武装や特殊な機構に関する関する記述が記されて居る。「おお〜こちらは読み応えがありそうでありますね。」
そう言って目を通す内にどんどん表情が暗くなり顔色が青くなる。「おい!どうした!?」ラフィーレはそれを覗き見ると同じ表情顔色になる。
「これはまた…冗談がきついでありますね。」冗談で済ませたい程の机上の空論だった物が武装として搭載されているとの事だったのだ。
お久し振りです。前の投稿から結構間が開いちゃいました。
こちらでも色々あったみたいですね。
これからひとまず寝て、起きて、洗濯して、ゾイド狩りにでも出て、
それでもって誤植チェックをもう一度してから投稿します。
では次回予告。
「ギルガメスが出会った少年は、燻り(くすぶり)が心に眠っていたことを悟ったのかも知れない。
気をつけろ、ギル!彼には『ゼネバスの雷神』が力を貸す!
次回、『魔装竜 対 六ツ首竜』 ギルガメス、覚悟!」
四章構成。今回は…中々、長い。ですので一章ごとに投下予定。
自分、DIONなんで投稿がパッタリ止まってしまったら規制絡みかも。最近、多いように感じますから。
時期的に、コミケがもうすぐ。前座ということでお楽しみ頂けたら有り難いです。
「た・ぶ・ん・困った顔しているんでしょうね〜。それもその筈!この私がコソーリ混ぜた空・前・絶・後!強・力・無・比!過激にビックバンな装備の数々にっ!」
突然エルザが電波を受信したらしい。また惜しげも無く大音量の拡声で叫んでいるのでまた敵が寄ってくる。「もう嫌だ…。」と言っても敵は彼の都合に構ってくれないので1機づつ撃破している。
昨日今日と一番苦労しているレクスの災難は続く…。
「しかしつい最近統合技術討論会で事実上無理とか言っている物が当たり前の様に並んでいるな…。」ラフィーレはもう如何でも良いやと言った感想を述べる。
しかしこれからその極致戦用極小範囲放射線封印型核兵器みたいな物に乗る羽目になった当人は固まったままだ。バチコ〜ンと言う音と共にハリセンが舞う。
そして最後通告の様に感情の篭もらない声でラフィーレは言う。「諦めろ。これも運命だ。」それに反応して「本人をトップスピードで置き去りにして状況が進むのが”運命”でありますか!?」
「それに一応私達の命が掛かっている事を忘れて貰っては困る…月並みだが頑張れ!ファイト!オー!」そんな事を一方的に言って去って行くラフィーレ。
ファインが伸ばしていた救いを求める手は元より無意味と言う様に宙に浮いたまま何も掴めない。
全速力で状況に自分の意思が関わる事無く流され続ける状態。この後は強制戦闘だそうだ。「明日は明日の風が吹く…のでありましょうか?」流されるままに格納庫へ移動するファイン。
だが突然の揺れに不覚にも転倒する。「来たようでありますね…こうなれば自棄であります!相手を…殴り倒すだけでありますよ。ふふふふふふ…。」何かが裏側に張り付いている様な印象を受ける。
自嘲の張り付いた乾き切っている干涸らび気味の笑いを浮かべながらファインは格納庫へ急ぎ向かう。
「おっそいわねぇ〜?早くしないと沈んじゃうわよこの船。」アヴィターラはベルゼブブの体から伸びる蔦でヒュージスターを揺らしている。3時間程前の蔦とは大きさが半分にも満たない機体でそれ以上の力を出している。
ゆさゆさと揺さぶるのに次第に飽きたアヴィターラは次の行動を起こす。「ドリル!ドリル!ド・リ・ル!」蔦の先端が開きドリルが顔を出す。
そしてあくまでも低速で突き刺す速度もゆっくりでヒュージスターにドリルを突き立てる。嫌がらせだった。
>>125 魔装竜の人が帰ってキタ━*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*━!!
コミケにも現われるんですか?
>>126 「局地戦」が「極致戦」になってませんでしょうか?
突然ヒュージスターの天蓋が開かれると何かが高速で拘束されて射出される。「来たわね!カマ〜ン!」
上空で破裂音が響くと海やベルゼブブ。ヒュージスターにネジらしき物が降り注ぐ。しかし何もそれ以降は落ちて来ない。
「まさか…空中分解!?ってそんなのなしよねぇ〜?そうでしょ?そうと言ってぇ〜ん!!!」上空を見上げたままでアヴィターラは叫ぶ。
「御待ちどう様。大質量の出前です。」そう声か聞こえたかと思うとベルゼブブは何かに蹴り跳ばされる。海面を水切り石の様に回転しながら撥ねるベルゼブブ。
「うひょ〜〜〜ん!?もしかしてまた跳んでるぅ〜〜?」正解。しかしクイズ番組ではないのでマスコットも商品も無い。
その反動でそれはヒュージスターの上に降り立つ。人に近かりし形を誇示する様に腕組みをして夕日に移される機影。ベルゼンラーヴェである。
「格好いい〜〜ん!!!でも負けないわよぉ〜。お逝きなさい!グレープビット。」オービタルチェイサーの別名を持つ自立兵器の一種。
昨夜はサークルディジョネイターを放った厄介な存在である葡萄の実。やはり同じくサークルディジョネイターを放つ。
爆発がヒュージスターの甲板上で起きる。その百数十km先でウィンテクターはスクープを激写している。まだ他の新聞社は現地に到達していない。
「リミィ!写真は取れたか!?」編集長の怒声が聞こえる。「大丈夫です!望遠で爆発の瞬間を捕らえましたよ!」リミィは答える。「よし!次は動画だ!頼むぜ!」
遠くでそんなやり取りをしている。「以外とあっけなかったわねぇ…ってちょっと!?何よそれ?聞いてないわよぉっ!?」爆炎が消えると其処には腕組みしたままの機影がある。
その機体には傷一つも無い。高熱で周囲の塵が化学変化を起こして極小のガラス粒子になりベルゼンラーヴェを夕日に輝かせる。その他にも機体から輝く何かが風に乗り流れている。
「何よ何よ何よ!機体の外部装甲の温度ー12℃って?今これから夏って時に涼しげで羨ましいじゃないのよ!」アヴィターラは法衣の裾を咥えて毒吐いた。
今度は腕組みしたままで頭部と胸部から全領域用耐圧バルカンが発射されグレープビットを落とす。そのついでにベルゼブブに方向が向いている腕からショックガンランチャーが発砲される。
それはベルゼブブの蔦に阻まれるが阻んだ蔦は弾け跳ぶ。それはサイズ差を覆す程の勢いだった。
遠距離で撮影しているリミィ達は2機の機体のサイズの差がよく解る。
ベルゼンラーヴェの全高は脚部が胴体に対して大きい為今の状態で28m弱と言った所だ。
対するベルゼブブは全高が55m程で全長は蔦を含まず30mは優に超える。略倍近い差で重量なら最低でも8倍最悪16倍程差が有るだろう。
それを跳ね返す力を持ち得る機体。充分にトップを飾る記事になる事だろう…ベルゼブブを退けたならの話だが。
「しかしこれから如何すれば良いのでありましょうか?」いざ性能のお陰で防ぎ切った攻撃だが当然彼の知りうる技術ではこんな事はできない。
介入しこの力を持たせた誰かの事を考えると薄ら寒い事この上無い。次の行動をどうしようか考えている内に蔦の先端のドリルが迫る。
それを思わず両手で防ごうとしてしまった結果またベルゼンラーヴェの持つ驚異を堪能する事になる。
「嘘〜〜ん!?ドリルを受け止めてるわぁ〜ん!」開いた両手が二本のドリルをマグネッサーで押し止めている。良く見ればそれだけでは無い様だ。
ドリルの回転数が目に見えて落ちている。それはどんどん遅くなり最後には逆回転を強要しドリルが根元から脱落する。「ノ〜〜!?ドリルちゃんがご臨終〜〜!!!」
これは流石のアヴィターラもびっくりな出来事である。確かに手はバスタークローの機構が有り回転したりしていたいたが別動力で起動している物に干渉をする事は難しい。
その上惑星Ziではマグネッサーの使用で技術的に壊れ難いドリルを壊すのは最早異常だ。「…夢でも観ているのでありましょうか?」甲板の上に落ちているドリルを見て呟く。
「…そろそろ頃合ねぇ〜ん。逝くわよ〜ん。」そろそろフィナーレが近い。アヴィターラは早々に負けて引き返すのが今回の作戦だが決定的な何かを得たいが為全火器の一斉発射を行う事にする。
「喰らって逝きなさいなっ!ジェ〜ノサ〜イド!フ〜ルバ〜ストォォォォ〜〜!」絶対適当な言葉を叫びベルゼブブの全火器からベルゼンラーヴェを含む数編に無差別砲撃が行われる。
収束荷電粒子砲、大小のミサイル、ロケット弾、バルカン砲、ショットガン、ショックカノン等々の火器が断続的に火を吹く。ミサイルの爆炎で姿が見えなく成ったのもお構い無しの問答無用の攻撃。
「おっおい大丈夫なのか?」ラフィーレの言葉に「大丈夫ですよお姉様。」とセフィーナは笑顔で答える。
うわっ
>>127さんの指摘もそうですが周辺と書こうとして”数編”?なんだそれ?_| ̄|●
◆.X9.4WzziAさんへ
御久しぶりです。そう言えばもうそんな時期になりました。
今年はコミケ行けるかな?暑さでへばりそうなと言うよりどっぷりとへばっている自分が居て_| ̄|○
六ツ首竜がどんな奴か!?最近の奴かそれとも?
「って事はオイ!!もしかしてレーダー破壊に成功したのか!!?」
「やったぜぇ!!!」
「何か良くわからんがとにかく何か良い事あったのかー!!?」
確かにコロンズ団のレーダー設備はテラティックレールライフルから射出された弾丸によって根本から
粉砕され、使用不能となっていた。その事実はベースキャンプにいた誰もが喜ぶべき事であり、皆は子供のように喜んでいた。
「ようし!!恐らくレーダーが破壊された事で連中は浮き足立っているはずだ!!今のウチに一気に勝負を掛けるんだ!!」
「了解です!!」
隊長は皆へそう命令し、隊員達は敬礼を送ると一気にそれぞれのゾイドへと乗り込んでいった。
無論それに合わせるように傭兵として参加した賞金稼ぎ等もゾイドへ乗り込んでいく。
「オイオイ…私等への礼は無しかよ…。」
ベースキャンプから喜び勇んで出撃していく治安維持部隊ゾイドの姿を、山の頂上から見下ろしながらルナリスはそう愚痴っていた。
「それはそうとルナリスちゃん!私達も行かないと!」
「わかったよ!あと、ちゃん付けはするなよ。」
二人はそう言い合った後、カンウとハーデスはブースターを吹かし、高く跳び上がった。
「おい!!一体どうした!!何が起こったんだ!!?」
「分かりません!!」
「分かりませんじゃねーだろうが!!これじゃあ何処から敵がくるか分からんだろうが!!」
突如としてレーダーが破壊された事により、コロンズ団本拠は大混乱に陥っていた。
「オイオイどうするんだよ!!レーダーが稼働しなきゃ砲撃誘導も出来ねーじゃねーか!!セイスモ独力のレーダーじゃ狙える距離も限られてくるんだぜ!!」
本拠の中だけではない、外で待機していたセイスモサウルス隊も砲撃の際に照準地点を測定する要で
あったレーダーが破壊された事により半ば混乱状態となっていたのであった。
「というか何でいきなりレーダーが破壊されたんだ!!?敵が来ているならレーダーに反応があるはずだろうが!!」
「だから分からないんですよ!!一応レーダーの破壊され方を見る限り遠くから狙撃されたに違い無いのですが、レーダーには一切反応が無かったんですよ!!」
「何だと…。」
オペレーターを怒鳴りつけていたコロンズ団ボスは、オペレーターの返答に呆然としていた。
「アッハッハッハッハ!!アイツ等パニック状態になってやんのー!!」
「ハア?一体どうしたんだ?」
いきなり腹を抱えて笑い出したマリンに、ルナリスは拍子抜けした顔で問いかけた。そして、マリンは答える。
「いやね、カンウの背中に装備したマグネッサー3Dレーダーで連中の通信とか少し傍受してたんだけどさ、それがまた面白くて面白くて…。アッハッハッハッハッ!!!」
「オイオイ…。」
またもや腹を抱えて笑い出したマリンにルナリスは目を細めながら再びハーデスの操縦へと集中した。
「くっそ〜…これじゃあ何処から敵が来るのかわからんぜ…。」
「ああ…レーダーが破壊された以上、敵が来ているのは目に見えているが…。」
各セイスモサウルスのパイロット達はセイスモの首を左右に振り、メインカメラをズームしながら
あらゆる角度を見回していた。またある者は機内に備え付けられたレーダーとにらめっこをしていた。
と、その時だった。突如として地面が轟音を盾ながら揺れ始めたのだった。
「うわああ!!何だああ!!?地震かぁ!!?」
レーダーが使えず、敵の位置が特定できない上に来た、その震動により、セイスモとそのパイロット
達は浮き足立っていた。とその直後だった。突然地面が大爆発を起こしたかのように吹き飛んだのだった。
「うあああ!!な…何だぁぁぁ!!!?」
その爆発は激しく、何機かのセイスモが巻き込まれた。無論その事はセイスモだけではなく、本拠内にいた者達も驚かせる物だった。
「おい!!いきなりどうしたってんだ!!?」
「わ…分かりません!!」
「ええい!!とにかく爆発に巻き込まれた者達を救助するんだ!!」
「ハ!ハイ!!」
コロンズ団ボスが直接マイクを握り、外にいた者にそう命令し、セイスモの周囲を固めていた小型、
中型ゾイド等が爆煙の上がっている場所へと近付こうとしていた。その時、爆煙の中がかすかに光った。
「な…何かいる!!」
「何だと!!?」
一人の男の恐怖に打ち震えた様な声に、他の者が反応し、一気に後ずさりした。その時、またも爆煙の中が光った。
「や…やはり何かいるぞ!!」
「とにかく撃て!!撃つんだ!!」
半ば浮き足立ちながらもセイスモパイロットは爆煙内部へ向けてゼネバス砲の引き金を引いた。
セイスモサウルスの口から、細いながらも強い光を放つ高エネルギーの渦が発射され、今だ晴れぬ爆煙の中へと吸い込まれていった。
「これでよしと…驚かせやがって…。」
「至近距離でこれだけの数のゼネバス砲を受けてやられ無い奴はいないよな。」
皆はほっとして胸をなで下ろしたり、額から流れていた汗を拭いたりして一安心していた。
確かに超長距離においても全てを撃ち抜く威力を持つゼネバス砲を、至近距離で食らって立って
いられる者などいない。と思われた…その時だった。今度は爆煙の中がオレンジ色の強い光を放ったのだ。
「な…何だ?」
「うあ…。」
爆煙の中から放たれるオレンジ色の輝きは幻想的ですらあり、皆は不思議とそれに見入っていた。
しかし、現実は甘く無く、その直後に爆煙の中から高エネルギーの渦が放たれ、一機のセイスモがそれに撃ち抜かれた。
「私等を含め散々色々なゾイドを撃ち抜いてきたゼネバス砲のお味、自分で味わって見るとどんな感じでした?」
煙が晴れた時、中からカンウとハーデスが現れたのだった。
「き!!貴様等ふたりは!!この間いきなり突撃して来たクセに俺達にまとめて撃ち抜かれたゾイキュア!!」
「いや!!だからそれどういう意味だって!!」
驚愕の声をあげるセイスモパイロットの一人の叫びに、マリンとルナリスは例によった突っ込みを
入れていた。ちなみに、事の次第を説明するとこうなる。まずハーデスが、その昔の大戦時に
自爆装置が起動した基地から穴を掘って脱出したというトビー=ダンカン少尉のデスザウラーばりに
コロンズ団本拠近くまで穴を掘り進み、地上にいた数機のセイスモサウルスを巻き込みながら一気に
外へと出る。そして、その後くるであろうセイスモサウルスのゼネバス砲による砲撃は、カンウに
装備されたハイパーEシールドと集光パネルの二重の防御によって防御、吸収し、吸収した分を集光ギガスバスターとして敵に発射したのである。
さらに言うと、なぜシールドと集光パネルの二重防御にしていたかと言うと、例え集光パネルでも、
ゼネバス砲の連撃を全て吸収しきるのは無理な事であり、その前にシールドを張ってある程度防ぎ、
防ぎきれなかった分を吸収するという手段を取っていたのだ。また、シールドと衝突したゼネバス砲は
シールドを破る際に、大きく力が減衰され、それがより吸収しやすくする結果となっていたのだ。
「くそ…。集光パネルかよ…。」
ゼネバス砲が撃ち返された事に、思わず一瞬固まるセイスモパイロット一同。しかし、カンウと
ハーデスは容赦しなかった。それぞれが一気に攻撃を仕掛けてきたのだ。重そうな外見からは想像も出来ない速攻でそれぞれセイスモへ向けて跳んだのだ。
「破!!!」
ルナリスのかけ声と共にハーデスの指拳突きがセイスモの首に突き刺さった。そして、突き刺さった
状態で一気に下へ振り下ろし、セイスモの首の装甲を大きくえぐったのだった。
「マリン!!聞こえるか!!?セイスモの弱点は首だ!!首を狙え!!」
「分かったよルナリスちゃん!!」
「ちゃん付けすんな!!」
と、二人が例によった会話を行いながらも、マリンはカンウのギガクラッシャーファングで別の
セイスモサウルスの首を噛み切っていた。そもそも、なぜセイスモサウルスの首が弱点であるかと
言うと、首という物はやはり生物全てに共通する弱点であると言えるからというだけではなく、
その内部構造にも関係してくる。セイスモサウルスは、尾から首まで身体全体を粒子加速器と
していることによって、超長射程を誇るゼネバス砲の発射を可能としている。故に、首に穴さえ開けて
しまえば、そこからエネルギーが漏れてゼネバス砲は発射不可、良くても威力減少となってしまうのである。特に、ベースとなっている型の関係で身体全体に占める首の割合の大きなセイスモは首こそが、
腹部の荷電粒子吸入ファンの次に大きな弱点であると言えた。と言っても、セイスモの装甲は並の
ゾイドでは到底破壊できない程頑強に作られているのであるが、カンウとハーデスには余り意味の無い物であるというのは言うまでもない。
>>恐怖の亀裂作者さん
何か核兵器が来ましたね・・・。よそはよそで色々取材やったり戦ったり忙しいみたいですが・・・
>>◆.X9.4WzziAさん
お・・・おお〜!!おひさしぶりです!!
六ツ首竜は多分何かの改造ゾイドだとは思いますが、それ以上にどんな面白い
意外な戦法を見せてくれるのか楽しみです。
雲海を切り裂き、一機のゾイドが飛んで行く。
「ふふ…もう、僕が『鍵』を持ち出した事に気付いたのか」
バーサークフューラー・シャドーエッジ。セディールが駆るその機体の後を、もう一体が追い掛けている。
その機体は、シャドーエッジと同じく輝く翼を持っていた。ただしこちらは6枚――その数は、即ち「ナンバー」を表している。
守護天使No.6“ミカエル”――それが、この機体のコードネームだった。
「面白い…始まりの天使ルシフェルと、それを討つ戦使ミカエルの闘いか」
セディールの表情は、一貫して笑みを崩さない。
「でも、神話通りに僕が負けるとは思わないで欲しいね!!」
楽しくて仕方が無い――そんな表情だった。
マクドガルの号令1つで、市街は真の姿を現した。
“ギルド”の手により行われてきた「改修工事」や「道路増築」、その他様々な工事で
地下に仕掛けられていた砲台やレーダー塔の数々が、道路を寸断して地上に現れたのだ。
要塞と化した市街のレーダーは、数千km離れた海上の巨大な物体を既に捉えている。
当然、市民には何も知らされない。理由も解らず交通渋滞が続く惨状に、彼らの怒りは募る。
しかし、最も混乱を極めているのは他ならぬ“ギルド”であった。
「おい!集まってきてる野良ゾイドの正確な実数、把握できてないのか!?」
情報部のメンバーが総出で電話とモニターに貼り付いている。が、それでも足りない。
「無理ですよォ! 滅茶苦茶な数で、広範囲レーダーじゃ赤い点しか映りません!!」
「海上の方舟は着実にこちらへ向かっています! …クソッ、何がどうなってるんだ!!」
市街と荒野を隔てる壁は高く、ゲートは全て閉じられている。今や市街に入る事も、そこから出る事もできない。
そして外の荒野では、無数の野良ゾイドが集結を始めていた。
「やっと着いた…って、ここもとんでもねえ有様だな」
マサシは中央大陸の北港に戻ってきていた。だが、来た時とは打って変わって街が戦場の様に荒れ果てている。
彼が空を仰ぐと、雲の中で幾度と無く交差する光が見えた。
ただ今帰還…しかし単発
>113氏
他のスレでも書いてる方居ますしね。内心、「オマエのせいで書き込みにくいんだよ!」と
思われてるのではないかと肝を冷やしたものですが。
それはそうと、「素敵」とか言われると照れます…
>>鉄獣28号氏
むしろ、「2chだから殺伐としなければいけない」みたいな思考を持つ方が評価した際に
このスレは「馴れ合い過ぎ」という事になるのでしょうけれど。
小説スレが殺伐とする必要は皆無…で、あると思います。
>>恐怖の亀裂作者氏
おっ、核兵器…
自分は正直、前作で核兵器ネタの使い方を誤ったので2作目の最後は某アニメの如く
茶番化してしまったのです。
ネタが消化しきれない。それが、目下の悩み事と言った所でしょうか…
【第一章】
薄暗くさえある曇天の下、長い…長い鉄橋が跨ぐ一筋の太い川も又、思いのほか濁って
いた。
橋下の河原は実に広々としている。そこでは黙々とゴミ拾いをしている少年が一人。彼
の体躯は小さく痩せているが、他の要素といえばボサボサの黒髪に大きめのTシャツ、半
ズボン、素足に運動靴と別段目立つものは見受けられない。但し大きめで粒らの瞳の輝き
と真一文字に結んだ口だけは特別な雰囲気が感じられてならない。
少年の額には既にうっすら汗が浮かんでいた。両の掌には軍手をつけ、左手に携えてい
るのは大きめのビニール袋だ。…その中には明らかに彼のいる辺りで拾ったらしいゴミ屑
が見える。何か目につくと袋に捨て、大きな石が転がっていると退ける、その繰り返し。
ふと、何かに気がついた様子で顔を持ち上げた少年。川下の方角を向くとにっこり微笑
み、大きく手を振ってみせる。
彼の視線の先に見えるのは一匹の竜。民家二軒分程の巨大な体躯、小さな頭と長い尻尾
を持ち、二足で大地を踏み締めている。背中から広がっているのは大きな二枚の翼と細長
い六本の鶏冠(とさか)、鈍い光沢を放つ皮膚は金属質で、鮮烈な果実のように赤い。そ
れが時折氷上を滑るような動作で水面を蹴り、飛沫を上げながら向かってくる。
徐々に減速した深紅の竜は、器用にも少年の目前で飛沫一つ上げずに停止した。…その
両手には幾つかの箱や筒が握られている。全てを合わせても竜の両手に収まってしまうが、
少年と比較すればどれも二倍近い大きさはある。竜は少年の大声と派手なジェスチャーを
交えた指示に従うと、それらを彼が懸命に掃除し地ならししたこの辺一帯に、驚く程丁寧
且つ素早く並べてみせた。…箱の一つはキッチンで、又一つは仮設トイレだ。貯水タンク
らしきものも見える。いずれもところどころ塗料が剥げ落ちており、使い込まれてはいる
ようだがひどい汚れはなく、小奇麗に掃除されているのが伺える。そして筒は…これだけ
は意外と錆が浮いている。太古の昔使われたという無闇に巨大な大砲の薬莢が古戦場で眠
っていたのを掘り起こし、風呂代わりに使っている代物だから仕方ないかも知れない。
これら、人の手に余るものの設営は彼らの連携により何らの滞りもなく終わったのであ
る。…するとこの竜、両手をついて大きく伸びをすると橋下の奥にまで潜り込み、大あく
びをしてうつ伏せになった。その上、ねだるような視線でピィと甲高く鳴き始める始末。
しかしこの、体格・容姿には凡そ似つかわしくない仕種の竜に気付いた少年はすぐに「お
兄ちゃん」の表情に変わり、急いでその首元にまで近付いた。
「あ…はーいブレイカー、お疲れさま!」
そそくさと何やらズボンのポケットから棒のようなものを取り出した少年。彼にブレイ
カーと呼ばれた深紅の竜は、それを見ると嬉しそうに鳴いて頬を寄せる。彼が竜の首元を
撫でると、皮膚の一見何も無さそうなところに穴が開き、彼が手にしたものと同じ棒がポ
ロリと落ちてきた。…これらは潤滑油を入れるカートリッジだ。このブレイカーと呼ばれ
た深紅の竜は金属生命体「ゾイド」の一種。人は疲れれば喉が乾き水分を求めるように、
ゾイドは疲れれば新鮮な潤滑油を求めるのである。
首から胸、腰、背中、そして尻尾の先まで、丹念に撫でてはカートリッジを取り替えて
やる。一通り終えるとブレイカーは満足そうに一息ついた。
相棒の様子に少年は微笑んだ。大きく伸びをすると気持ちを切り換える。…貯水タンク
をキッチンやトイレにつなげるたりするのは流石にゾイドの手に余るだろう。少年は設営
の続きに取りかかろうとした。
と、その時。聞こえてきたのは激しい怒鳴り声。橋の上からだ。眉を潜める少年。相棒
も怪訝そうに首をかしげる。…だが彼は頭上に耳を傾けてみた時、ちょっとおかしなこと
に気付いた。怒鳴り声は、少なく彼よりも若く、そして複数によるものだったからだ。
顔を見合わせ、頷いた少年と竜。…竜は少年の足元に左の掌を差し出す。長い爪の、な
んとも大きな掌だ。早速飛び乗る少年。するとこの大きな相棒は二枚の翼を大きく広げ、
彼を抱えて軽く地を蹴った。フワリ、と宙を舞う竜。すかさず右手と両足、そして尻尾で
力強く…しかし物音一つ立てずに鉄橋の底面を支える鉄骨群を掴む。
タンスの上に隠したへそくりを探すかのように、そっと左手を鉄橋の路面に押し上げる
竜。何ともコミカルな格好だが、しかし怒鳴り声する路面の様子を見た瞬間、少年の表情
は急変したのである。
アスファルトで路面を塗り固められた鉄橋の幅は相当広く、先程の人なつこい竜型のゾ
イドが翼を広げてもまだ余裕がありそうだ。
そこを、走って渡ろうとしているのは…かのゾイドの相棒よりも更に若い少年だ。色褪
せ、ところどころ解れたTシャツと半ズボンという見窄らしい出で立ちながら、一方で目
鼻立ちは育ちの良さを滲ませる程によく整っているため何とも不思議な印象を受ける。
少年は大きめの布袋を小脇に抱え、肩にも届きそうな亜麻色の髪を揺らし、時々後方を
伺いながら息せき切って走っていく。しかし歯を食いしばった必死の形相はすぐに豹変し
た。…いや「豹変せざるを得なかった」と言うべきか。何故なら彼の遥か後方から放たれ
た幾つかの小石に足を取られ、転倒を余儀無くされたからだ。
うつ伏せで勢いよく、全身をアスファルトに叩き付けた少年。…数秒は全身を痙攣させ
るのみだったが、やがて路面に指を、爪を立ててフラフラと上体を起こす。だが彼は気が
ついた。さっきまで小脇に抱えていた布袋が見当たらないことに。慌てて周囲をキョロキ
ョロと見渡す。右方…左方…更に左方…あった!
発見と同時に布袋目掛け、倒れ込むようにして掴み掛かった少年。大事な、大事な肉親
の形見を奪い返さんとするかのごとき焦りの表情。
だがそれは、彼の手に戻りなどはしなかったのである。…倒れ込んだ少年の目前で布袋
は土足で踏み付けられた。たちまち憤怒の形相を露にした少年。土足の主を見上げて睨み
付けようとするが、その背中目掛けて続けざまに強大な重量が覆い被さり、溜まらず息を
詰まらせる。
辛うじて目線を上げようとした彼の目前には、いつしか無数の足の檻が立ちはだかって
いた。それも、明らかに彼と同世代と思われる少年達によるものだ。
依然怒りの視線を投げかける亜麻色髪の少年。だが拙い抵抗も、左耳から踏み付けられ
完全に阻止された。その張本人は、先程土足で布袋を踏み付けた者である。やはり、拘束
された少年と大して年齢に差は無さそうだ。
使い古しの筆箱が、ノートが、物差しが宙に舞う。…土足の主の手によって、たちまち
中身を全て引っ張り出され、後方に放り投げられてしまった布袋。
しかし、最後にたった一つ、土足の主の手に残ったもの。…エレメンタリースクールで
使う、公用ヘリック語の教科書。意外にも奇麗な表紙。新品であることは遠目にも良くわ
かる。薄く笑う彼。と、次の瞬間!
「この! ゼネ公が! 一丁前に! ヘリック語なんか! 習ってんじゃ! ねえよ!」
教科書を高々と振り上げ、それで拘束した亜麻色髪の少年の頬を張る。何発も…何発
も! そしてその光景を、彼を取り囲む少年達はクスクスと鼻で笑いながら眺めていた。
少しづつ、頬が腫れていく。だが亜麻色髪の少年が瞳に湛える怒りの輝きは濁りなどし
ない。
彼を殴り続けた少年は流石に疲れたのか手を休めると、その腫れ上がった頬に唾を吐き
捨て呟く。
「全くよぉ、ゼネ公だぜ? トカゲ以下なんだぜ? トカゲが勉強したって無駄だっての」
「そうだよな。だから折角教科書を取り上げてやったってのに、先公ったら又新品を用意
してきやがって。俺達の苦労もちったぁわかって欲しいよなー?」
苦労って何だよ、と周囲がドッと湧く。
「けどまぁ、言う通りだな。
ベッサ、ゼネ公にはヘリック語なんて勿体無い。こいつは俺達が処分してやるから、お
前はゾイドの鳴き真似でも勉強してな!」
高々と教科書を振り上げる。目標は無論、後方の川! 亜麻色髪の少年はこの事態にな
って初めて青ざめた。渾身の力で拘束を振り解こうとするがびくともせず、苦し紛れで怒
鳴ろうとしたがその時。
振り上げられた手首を、突如襲った握力。…それはこの喧噪の真下でキャンプを設営途
中だった、あの黒髪の少年によるもの。相棒である深紅の竜の助けで鉄橋に上がった彼は
凄惨な事態を見逃さず、すぐさまこの者の背後に回り込んでいたのである。
「!? 痛っ、痛いっ、いたたたたた!」
不意の襲撃に加え、想像を越える力にたちまち上がる悲鳴。一方、締め上げる黒髪の少
年は怒りの余り今にも爆発しそうな厳しい表情で相手を睨み付けている。やはりと言おう
か、まだ世間の大人のように手加減して仲裁する程に人物ができているわけではないから
仕方ないのかも知れないが…。
「よってたかって何やってんのさ?」
努めて冷静に、低い声で問い質す黒髪の少年。だがそれとは裏腹に、彼の責めには依然
手加減の様子もない。溜まらず教科書を手放した相手。それを彼はタイミングよく掴むと、
そのまま相手の肘を捻るように後ろ手に回す。一気に甲高くなる悲鳴を追い風に、檻と化
した者達を睨み付けた。
急変した事態に崩れ掛かった檻。何者かが不意に口をつく。
「よ、よ、余所者が偉そうに説教かよ!」
そう言った者に対し、すかさず黒髪の少年の視線の刃が投げ返される。
「いじめに余所も糞もないだろ」
「…いたたたたたーっっ!」
屁理屈は単に黒髪の少年を煽ったに過ぎず、彼に拘束された者はますます酷い目に逢っ
ていく。…だが、その勢いは別の子供の一言でようやく中断するに至った。
「こ…こいつ、ギルガメスだ! チーム・ギルガメスの!」
僕のことを知っている者がいたのか…という表情でその者の方向に視線を投げかける、
黒髪の少年…ギルガメス(いや、ここからはいつも通り『ギル』と略しておこう)。だが
その隙に、ギルに拘束された者はその腕を振り解き、すぐさま子供達の群れに逃げ込んで
怒鳴った。
「ギルガメスってアレか! 小さいゴジュラスギガの背中にハサミつけて『ジェノブレイ
カー』とか言ってる馬鹿!」
ギルは流石に少々気色ばんだが、そうとは知らずにこの集団は矛先を彼に向ける。
「でさ、こいつ、いつも試合前には顔に古代ゾイド人みたいなペイントしてるんだろ?」
「うわーっ、恥ずかしいなそれ…! アニメの見過ぎだよ!」
「まあ仕方ないよ。そうやって格好つけなきゃ誰にも注目されないんだからーっ?」
揃ってギルの方を向いた彼らは一斉に嘲笑した。…この黒髪の少年が拳を握りしめて打
ち震えているのには気付いていないようだ。
しかしギルは何事か小声で呟くと、軽く呼吸して嘲笑の中に割り込んだ。
「ジェノブレイカーが赤いわけって、知ってるかい?」
「…え?」
依然、低い声での問い掛けに一瞬沈黙した集団。その反応に、ギルが内心(しめた!)
と思ったのは秘密だ。
「ゾイドの中にはね…人の肉が、大好きな奴もいる」
「う…嘘、だろ?」
本心を明かさないギルの表情に、思わず息を呑んだ集団。
「嘘なものか。ジェノブレイカーは太古の昔から人肉が好きだから、皮膚が血の色で赤く
染まったんだ。
僕の相棒は人肉の中でも子供の肉が大好きだから…ほぅらっ!」
掛け声と共にギルの背後から現れたのは、顎も外れんばかりに大きく開かれた巨大な赤
い口。それが一目散に子供達の頭上に覆い被さる。
「う、うわぁーーーーっ!?」
予想を越える事態。溜まらず一斉にひっくり返った子供達。遂に檻は、彼らの動揺と共
に崩壊したのである。
逃げようとする彼ら。だがいずれも腰を抜かしたのか、立ち上がることもできず慌てふ
ためくばかりだ。拘束されていた少年も又彼ら同様に驚きの余り、頭上を見上げるより他
ない。
「た、た、助け、助けて…!」
その言葉を彼らから引き出し、ニヤリと不敵な笑みをこぼすギル。
「さっさと帰らないと、食べちゃうぞ〜」
声と共にギルの相棒はガチン、ガチンと噛み合わせ、不気味な金属音を立ててみせる。
…子供達は這い回ってこの深紅の竜が張り巡らした顎の檻から抜け出すと、這這の体で逃
げていった。
小さくなっていく彼らの後ろ姿をギルは確認すると、溜め息をついて相棒と顔を見合わ
せた。
「…そんなわけないじゃん、ね?」
ピィと甲高く、相槌を打つように鳴いて応じた深紅の竜・ブレイカー。どちらが先とい
うこともなく、いつしかこのコンビは頬を寄せ合ったのである。
だがその仲睦まじい光景も束の間。もう一人の土を払う音を聞き、我に返ったコンビ。
拘束の解かれた亜麻色髪の少年は、既に立ち上がり、その身の汚れを軽く払うと先程ぶ
ちまけられた布袋とその中身を一つ一つ、拾い上げていた。零れそうな涙を懸命に堪えて
いたのは、キッと噛み締めた唇の様子から見て明らかだろう。一つ一つ拾い上げる度、頬
に吐き捨てられた唾の汚れを手の甲で繰り返し拭っていた。
「…大丈夫?」
亜麻色髪の少年が振り向くと、奪還した公用ヘリック語の教科書を右手で差し出すギル
の姿があった。…が、こちらを向いた少年の頬や手が汚れていることに気付いた彼。慌て
て残る左手を使い、ズボンのポケットからちり紙を袋ごと引っ張り出し、教科書と一緒に
差し出したのである。
不審そうに顔を上げ、ギルの表情を覗き込む少年。ちり紙を受け取り頬や手の甲を丹念
に拭く。ゴミをポケットに突っ込むと、ここでようやく教科書を受け取るに至った。
「ありがとう」
受け取った教科書を早速布袋に入れると、少年は丁寧にお辞儀しすぐに踵を返す。しか
しその間、微笑みも涙も見られない。あれだけの出来事の後で、どうして無理に平静を装
おうとするのか。ギルは首を捻る。…が、そんなことを考えている間にも姿勢の良い早足
で遠ざかったいこうとしたため、彼は慌てて声を掛けた。
「君…な、名前は…?」
ギルの呼び掛けに一瞬立ち止まった亜麻色髪の少年。首だけ彼の方を傾けて言った。
「ベッサ」
「ベッサって言うんだ。僕はギルガメス。ギルで…あ、あれ?」
ちょっと饒舌かなと思いつつ語りかけようとするギルだったが、その間にも、ベッサは
スタスタと先へ進んでしまう。
「お…おーい?」
本当に大丈夫なのか、無理はしていないか。いや無理しているからこそ早歩きしている
んじゃないのか。慌てるギルだったが、再びベッサは立ち止まるともう一度首だけ傾け、
微笑しながら答えた。
「…さよなら」
だがその微笑の、何と寂しそうなこと。どうしよう、今一度走って引き止めようかと思
案を巡らすギル。だが、彼は気付き、絶句した。ベッサの歩む鉄橋の、向こう側に見える
風景の異常。
緩やかな麓は、辺り一面が鉄屑で覆われていた。所々、山のように堆く盛り上がってい
る。…くれぐれも御注意頂きたい! 惑星Ziにおいて「鉄屑」と言ったら「ゾイドの死
骸」を意味する。つまり彼の目には、この光景がまるで墓場のように映っているのだ。だ
が、おかしな点はそれだけに留まらない。呆然と見つめている内にギルは気付いた。麓の
くせに、野生ゾイドの襲撃を防止するものが一切見当たらない! 城壁も、濠も確認でき
ぬまま、いつしか地面へと変貌していくこの麓は到底人の住めるところではない。そもそ
もこの麓に人が住んでいるのか?
いや、そんなことより…とギルが思い直したその時。
「何をやってるの、貴方達?」
その声にギルもブレイカーも一瞬身を縮ませる。おそるおそるコンビが振り向いた先に
いたのは、ビークルを上手に浮上させつつ彼らに声を掛けた女性の姿。紺色の背広で身を
固めた長身の、すらりとしたしなやかな肢体の女性。肩にも届かぬ黒い短髪にやや面長で、
端正な顔立ち。見目麗しき美女には違いないが、その表情は残念ながらサングラスに隠さ
れ伺えない。
「え…エステル、先生…」
ばつが悪そうに答えるギルだったが、それに応じるより先に、彼女はやんちゃな深紅の
竜に視線を投げ掛けた。
「ブレイカー、降りてらっしゃい。全く、どこの泥棒猫かわかったもんじゃないわよ?」
その指摘が誠に図星だったらしく、ガクリとうなだれた竜。先程の悪ガキ共には強烈な
ダメージを与えたその格好も、外側から見れば首だけ覗かせて尻尾だけダラリと垂れ下が
っているため、言われてみれば確かに庭先で焼いた魚を今まさにせしめんとする泥棒猫の
ようにも見える。深紅の竜は静かに飛び降りるとしおらしく、橋下に潜って丸くなったの
である。それを確認したエステルは微笑むと、ビークルを橋に乗り上げ、ギルの近くで停
止させた。
「ギル、貴方も設営、まだ終わってないでしょ?私も手伝うから。
早く済ませて明日のバトルに備えないと、ね?」
「あ、はい、すみませ…ん?」
ビークルに同乗しようとしたギルは、まさか二度も絶句するとは思わなかった。…原因
は、エステルの背後に映る風景だ。先程の悪ガキ共が逃げ帰ったその先。まず、橋の終点
のほぼ真正面に見えるのが学校の校舎と校門。そしてこれら建造物の向こうには麓よりは
やや角度のついた斜面が広がっているのだが、その辺一帯には白く真新しい住宅が犇めい
ている。中には依然工事中の建物もあるため、それらが全て完成したらこの斜面はまさに
白で埋め尽くされてしまうだろう。白はヘリック共和国の、象徴…。
眉間に皺を何本も増やしたギル。やり切れない気持ちで一杯になり、肩を落とし大きく
溜め息をついた。
コロコロと変わるギルの表情。その真意をすぐに理解したエステル。
「…ギル、ここはウェバン。何度も蘇ったゼネバス帝国の、最終防衛線となった街よ。ゼ
ネバスが崩壊した現在では共和国領としての再開発が進んでいるわ」
「共和国領の、ですか…」
ギルにはその説明で十分だった。川と橋を境にそれぞれ広がる風景の差異こそは、惑星
Ziの拭い難い現実なのだ。…しかし、そんなことより。
あの少年は、ベッサは、この酷すぎる土地でどうやって生きているのだろうか?
亜麻色髪の少年・ベッサは、鉄屑の街を歩いている。…街とは言っても、人らしき姿は
彼以外に全く見当たらないのだが。多くの人に踏み固められてできたと思われる鉄屑敷の
道にはやや街らしき雰囲気は感じられるが、道の左右に立ち並ぶのが見渡す限りの鉄屑の
山・山・山と来ては、誰も人が住んでいるとは思うまい。
鉄屑の山の中には、かつてゾイドだったらしい物体の一部も見受けられる。中には頭部
が恨めしそうに道に向かって視線を投げ掛けていたりもする。そんな中を懸命に、早歩き
で過ぎ去ろうとするベッサ。
一体彼は、どこまで進んでいくのだろう。その内に、日が暮れ、夜の帳が山道を覆い始
める。
そして、朧月夜。ベッサを見守り始める双児の月。
ようやく開けてきた道の向こうには、トタン屋根の掘建て小屋が数軒。…いずれも小屋
と言うには大きすぎる。例えベッサに家族がいたとしてもだ。
小屋の外には人がしゃがんだ姿程はあるブロックが数個、置かれている。外見は所謂
「人工ゾイド」ブロックスに使われるブロックと大差ない。電源と思われるこれらだが、
殆どのブロックは錆び付き、構成するパーツの隙間からはところどころ雑草が伸びており、
物悲しいことこの上ない。又、ブロックの傍らには建築用の重機が無造作に転がっている。
これらも同様に錆び付いており、ここに長期間放置されたままであることを伺わせる。
中央の掘建て小屋に向かったベッサ。住人は彼一人、この辺一帯には誰も住んでいない
と言い切っても良さそうなのに、わざわざポケットから鍵を取り出し、引き戸を開けて中
に入る。電気をつけた時、広がっているのは一面畳ばりの大部屋だった。…隅の方には机
代わりの段ボールや蒲団代わりだろう布切れ、それに勉強道具や食器が無造作に並べられ
ているが、それでも部屋全体を散らかすには至らない。子供部屋、いや子供一人が住むに
は余りにも広すぎる室内。
だが引き戸を閉め鍵を掛けたベッサ。さっきまではあれ程大事そうに小脇に抱えていた
布袋を無造作に放り投げると、靴を脱がず玄関先でごろりと仰向けになった。ひとしきり
じっと天井を見つめる。…が、やがて何を思ったのかうつ伏せになると、両の二の腕で光
を遮るように顔を隠す。
…すすり泣く声。
大部屋に、静かな響きが染み渡る。
と、その時のこと。
突如、明滅を開始した電気。その事態に合わせるかのようにゆっくりと持ち上げたベッ
サの顔には、意外にも驚いた様子は微塵も感じられない。…だが、我々が狼狽えても彼が
さっぱり動じないという異常な…実に異常な光景が、この直後に展開されたのである。
《又いじめられたのか、ベッサよ…》
地の底から沸き上がるような、低く、嗄れた声が室内に響く。と共に、蜃気楼のごとく
この室内にうっすらと浮かび上がってきたもの。…ゾイドの、首だ!ベッサの何倍も大き
いが、この掘建て小屋の一室には十分収まってしまう程度のごく小さな竜型ゾイドの頭部。
それがガラスの破片を纏うようにして、徐々に形となっていくではないか。
いや…驚くべきはそれだけではなかった。
一つ、この首はそれより下が、存在しない。つまり首だけの状態で宙を浮かんでいるこ
とになる!
二つ、この竜型ゾイドの緑色の眼は、三つある。左右、そして額にだ!
三つ、この竜型ゾイドの頭部は、Zi人の言葉を喋った!
だがそれ以上に不思議なのは、この竜型ゾイドの首の登場に対するベッサの反応である。
…ベッサは慌てて身体を持ち上げると、靴を脱ぎ散らかしたが早いか、この首に駆け寄り
すがりついた。まるで面倒見の良い祖父に甘えるかのように。
「ああ、トール…トール! うわぁぁぁぁ…」
この場に至り、初めて大声を上げて泣くベッサ。その名を呼ばれ彼の求めに応じる竜型
ゾイドの首は、表情には乏しいものの緑色の三つの眼を、暖かくぼんやりとした輝きで受
け止めていた。
ひとしきりの後。
ボソリと呟いたのは、トールと呼ばれた首だけの竜型ゾイドだった。
《そこまでされてもまだ、この地に留まるというのか?》
ハッと顔を持ち上げたベッサの表情は、この辛い現実に立ち返っていた。
《ベッサ、お主は強い子じゃ。親兄弟も、同胞すらも逃げ去ったこの地で尚、一生懸命生
きておる。その上、憎きヘリックの言葉を真剣に学び、あまつさえ共和国の者達と何とか
して交わろうと努力している。
じゃが、限界だってこの世にはあるよ…》
「トール!」
《何が「人は法のもとに平等」じゃ! 支給されるのはなけなしの奨学金が関の山、ゼネ
バス人というだけで丘の方に住むことは愚か、パンの耳すら売ってくれぬではないか!》
「大丈夫、パンの耳は売ってくれる人がいるから…」
《そういう問題ではない!》
「いいんだ、トール。君さえいてくれれば、僕は満足だよ」
《ベッサ、しかし…》
「だってもう、思い出せないんだよ。父さんや母さんの顔…。
僕を捨てた人達を探す位なら、僕を救ってくれた君と共に生きたい」
《……》
しがみつき、頬を寄せる少年、優しく受け止める竜型ゾイド。このままゆっくりと夜が
更けていくかに見えた。
《のお、ベッサ》
首だけのゾイドが今一度語りかける。
「なぁに、トール?」
ベッサの表情は穏やかだ。
《お主にこれをあげよう…》
言うとトールはその大きな口を開けてみせる。と、同時に溢れる光。驚き手をかざすベ
ッサ。恐る恐る、その輝きの正体に視線を送る。
そこには、金色に輝く光の玉が転がっていた。そっと手に取り拾い上げるベッサ。…玩
具の、ブロックのようだ。それも「人工ゾイド」ブロックスのコアに使われる「コアブロ
ック」に良く似ており、上下左右、そして前後に穴が開いている。只、本来の玩具用ブロ
ックよりはやや大きい。
見入るベッサの瞳も又好奇心で輝いていた。
「これは…?」
《儂からのプレゼントじゃよ。良く頑張っているお主への…》
「え、そ、そんな! 別に頑張ってるとかじゃなくて…」
少々狼狽え気味のベッサの言葉は、トールの不思議な言葉によって遮られた。
《それで儂以外にも友達を作りなさい。
組み上がったゾイドは、このウェバンの中でも最も清浄な土地に必ず降臨する…》
言ったトールの三つの目が突如明滅し始めた。
「え…ト、トール!?」
《少々、疲れたのじゃよ。心配しなくてもいい。
儂はしばらく休ませてもらうよ…》
同時に、この優しいゾイドの首が少しずつ、ガラスの破片のように崩れ始めていく。彼
が休息の時間に入ったことを悟ったベッサは慌てて呼び止めた。
「あ、トール!」
《んっ?》
「ええと、ありがとう」
消えゆくトール。表情には微笑みが伺えたかどうか。だがいずれにしろ、ベッサは彼を
癒してくれたこの優しきゾイドの首の「就寝」を、名残惜しそうに見つめていた。
「友達、か…」
溜め息をついたベッサ。裏の溜め池で身体を洗い、パンの耳をかじり、ヘリック語の勉
強をし、そしてようやく自由な時間を確保するに至ったがその間、この不思議な金色の球
型ブロックの使い道をずっと考えていた。ゾイドは地球に限らずこの惑星Ziにおいても
高い人気を誇る玩具だ。中でもエレメンタリースクール通いの児童にはブロックスを精巧
に再現した玩具に人気が集中している。
ベッサは部屋の隅の方にまとめておいたビニール袋を引っ張り出してきた。広げてみる
と「玩具」ブロックスのパーツがそれなりに入っている。…但し、よく見ればそれらはい
ずれも汚れていたり、傷付いていたりしている。
「久し振りだな。どれもお祭りの時、父さんや母さんに買ってもらったものばかりだ…」
袋を逆さまにしてパーツを出す。…散乱したパーツ群を物色していたベッサは、探し物
を一つ一つ抜き出していく。
彼が集めたのは、ブロックスゾイドの頭部だった。…最初に見つけたのは、左右に開く
大きな二本の牙を持った、まるでクワガタ虫のような顔。次に見つけたのは魚の頭蓋骨の
上に三日月を横にしたような兜を被り、長い銃身をくわえた奇妙な顔。次は、やや大きめ
の竜の鼻の上に長い一本角が生え、首の回りに大きなひだがついた如何にも勇ましそうな
顔。その次は、やはり竜の顔をしているが先程の奴よりも更に大きく、仮面を被ったよう
な意匠が施されているもの。しかしよく見ると、この頭部は上顎だけのようだ。「おっと、
こいつは下顎が別パーツになっているんだっけ…」思い出したベッサは早速パーツ群をか
き回し、見つけ出す。最後に、今までのものと比較すれば小振りな竜の顔だが、鋭い鼻先
から後方へと伸びた、二本の耳とも角とも形容できる意匠までが奇麗な三角形を象ってい
る。その上額にはエメラルドを彷佛とさせる緑色の透き通った部品が取り付けられた、こ
れらの中では最も凛々しい顔。
以上五つ。そしてこれらに加え、この五つ分に対応したパーツ類や、かつてこの地に暮
らしていた友達の(無論ゼネバス人の)忘れ物などを加えたのが今ベッサの目の前に散乱
するブロックスのパーツ群だ。
そして、もう一つ。
シャツの襟に手を突っ込んだベッサ。首に吊るしていた小さな袋を取り出す。…その中
に入っていたのは、先程まで彼と会話していたあの竜型ゾイドの頭部そのもの。
「エレメンタリースクールの入学祝いだったっけ…」
その時はまだこの近辺にあった玩具屋の前で、両親に駄々をこねて買ってもらったのを
良く覚えている。もっとも、胴体の方は彼らと別れ別れになるドサクサで紛失してしまっ
たが、頭部の方は今の今までずっとお守り代わりに懐に入れてきた。だって、この竜は…。
じっと見つめたベッサ。金色の球型ブロックを手に取ると何を思ったのか、先程見つけ
た六つの頭部を一つ一つ摘み、そして…球型ブロックにつけていった。
完成したのは、得体の知れないオブジェだ。球型ブロックの様々な方向から首が伸びて
いる。但し巨大な仮面の竜の下顎だけ取り付けられないのは御愛嬌だ。
作った当の本人。ひとしきり見つめていたが、急に吹き出し、笑い転げた。広すぎる室
内に谺する乾いた声色の物悲しさを、彼は自覚しているのだろうか。
「いくらトールの言うことでも、こればかりは冗談だよね?」
立ち上がったベッサは蒲団を敷き始めた。
もしあの優しき三つ目の親友が語ったことが本当だというのなら、明日は早く起きて、
確認しよう。きっと、答えは彼の言う「清浄な土地」にある。このウェバンの中にあって、
そんな場所は一つしかないのだから。
今日はここまで。今回の原稿も色々実験してます。
>>127 初めてそのAAでレス頂きました。嬉しい!
昔、結構長いことサークル参加していました。…別ジャンルなんですけどね。 >コミケ
>>130 お久し振りです。コミケの方は、もうひどい猛暑ですから気をつけて。
六ツ首竜は化け方に注目ってことで是非よろしく!
>>135 同じく、お久し振りです。今回は、エピソード編のノリで突っ走っています。
六ツ首竜の正体も戦法もそれに準じた作りになっていますね。
さて、溜まっていたゾイドを作り始めるか…。
一際大きな爆発が起こり装甲の破片らしき物が辺りに飛散する。「やりすぎちゃったかしら〜ん?」そんな風に言うアヴィターラ。
だが彼の目は鋭く爆発の中心部を睨んでいる。そして…「ねえん?そろそろ動いてくれないかしら?つまんないわよぉ〜ん。」
爆炎が収まり煙が晴れる…。
そこには腕組みしたままベルゼンラーヴェが立っている。その場から動いた形跡は無い。良く見なくても周りの色違いの装甲がボロボロになり辺りに散らばっている。
しかし色が統一されている装甲?は何一つ傷が無い。幾つか誇張された造形の装甲のみが無事でその他は装甲に見えたフレームのパーツだと調べれば解るだろう。
「うげっ!?卑怯よん!フレームのパーツまで装甲と同じ鋼材、構造で作ってるなんて〜!」こちらはエルザが持ち込んだ物では無くファインのアイデアらしい物。
そもそも装甲とフレームが別々になっている必要性がブロックス機構では非情に薄くキメラ等は殆ど武装と装甲で成立していると言っても過言ではない。
雫2世代になってロードゲイル、ディアントラー、スティルアーマーにこそフレームパーツは重要性を持ったがそれでも殆どフレームパーツは必要とされていない。
その証拠としてロードゲイルやスティルアーマーの両機は共有フレームがあり更にその内の一部はフライシザースからの流用品と言う始末だ。
それで思いついたのがフレームパーツと装甲パーツの一体化。安易な装甲材をフレームパーツに使用するだけの物だが実際の所関節接続部が強固になる為予想以上の成果が得られた。
その後エルザが忍び込ませたもう一つのプランと共に渡された事で更に強固なフレームとしてベルゼンラーヴェを支えている。
「全くも〜普通客さんが居たら先に脱いで置くでしょ〜よ〜。コートなんて物は〜。」動きを制限するコートを引き剥がされて本来の姿を表した機体は腕組みを止めてベルゼブブと対峙する。
コクピットの中では…「やっと動ける様になったでありますか。拘束具なんて一体誰が考えたのやら…。」どうやら本気で動けなかったらしい。そしてゆっくりと構えを取る一見腕組みを解いてただ立っているだけだ。
アヴィターラは油断無くベルゼンラーヴェを伺う。「隙なんて有った物じゃないわね。これならさっきの方が数倍ましだわ…。」空気が張り付く様に重く感じる。本番はこれからと言った所なのだろう。
ベルゼブブの至る所に有るバルカン砲が火を吹く。適当に言っただけあり弾薬は豊富で夥しい量の弾丸が迫る。
今度は軽やかなステップでそれを一団毎回避するベルゼンラーヴェ。脱落した装甲は全体の8割を占めていたので当然と言えば当然の身の軽さだ。
右腕を左腕で支えベルゼンラーヴェの下腕部よりグレネード弾が射出される。それは無茶な速度で飛来し途中で爆裂中身のベアリング弾がベルゼブブに飛来する。
「何時までも遊んで居るとは思わない事ね。」巨体を物ともせずにベルゼブブは海上を移動し回避行動を取る。他称の着弾で傷こそ付くがどれも擦り傷程度の物だ。
しかしベルゼブブの眼前には紫電を纏う歪んだ柱の様な物が2本迫っていた。
「はあっ!せいっ!」振り抜かれるボルカニックストライク。一撃目は何とか回避するも二撃目は回避方向と軸を同じくする回し蹴りで回避できない。
「舐めるんじゃ無いわよ!」収束荷電粒子砲がボルカニックストライクと激突する。ベルゼンラーヴェはそのまま蹴りを放つも荷電粒子砲に紫電を奪われただの蹴りとしてベルゼブブに接触。
収束荷電粒子砲1機を撃破するも本体には全くダメージは無い。「危ないじゃないのよ〜。普通の人ならアウトだったわねぇ〜。」かく言うアヴィターラはゾイドの操縦に関しては唯の人の域を超えていない。
機体性能と機転、幸運がベルゼブブを救った様である。
「離れなさいよ!」ミサイルが次々とベルゼンラーヴェに直撃しヒュージスターの甲板まで吹き飛ばす。「ったく何て装甲なのよ!あれで無傷って卑怯よ!やっぱり〜!」
しかしそれで受けた衝撃はコクピットで深刻なダメージとして誰かを襲っている。「ぐがっ。はがあっ!?」本来シートに座って受ける筈の衝撃が直に体を襲い周りに打つかれば当然痛い。
かなり強固な構造でできているらしく打つかったファインの方にのみダメージが残る。それでも痛みに負けずにバルカン砲で攻撃。また幾つかの火器を破壊する。「あら〜ん?そう言う事。」
どうやら”弱点”が早々に露見してアヴィターラの表情は陰湿な物に変わる。「それそれそれ〜ん!踊りなさ〜〜い!」嬉しそうに火器を乱射する。
それは無茶な状態から立ち上がろうとするベルゼンラーヴェに降り注ぎそれを許さない。ほんの少し前に乗ったばかりでは勝手が違う為その隙が盛大な弾薬の雨の元に晒される。
「くぅぅぅ…如何やら早速メッキが剥がれてお喜びの様で。喜んだり腹を立てたり忙しい方のようで。」
無理に立ち上がろうとするのを止めて砲撃の合間を待つ。幾ら何でも砲身が焼き切れたりすると後が厳しい筈。
機体の装甲の厚さを頼りにそれを只管待つ。次の瞬間に何時でも行動できるように。少し経って砲撃が止む。
素早く態勢を立て直すとベルゼブブを確認しようとするが機体の目の前には蔦の中に有る収束荷電粒子砲の砲口が胸部に突き付けられていた。
「お楽しみはこれでおしまいね。バッハハ〜イ!」かなりの距離から発射される荷電粒子はゼネバス砲に匹敵する威力になるだろう。
「でも甘いのよ!砂糖よりも甘いのよ〜!」電波を受信したのでは無くアヴィターラの機体に予め送信用のカメラを付けていた事で映される映像を見てエルザは控えめに言う。
その言葉が指し示す結果が起こる。
確かに収束荷電粒子砲はベルゼンラーヴェの胸部装甲に直撃している。しかしそれだけだ。”当たっている”だけなのである。照射が終わりアヴィターラは叫ぶ。
「エルザちゃんの馬鹿〜〜〜〜〜〜〜!何でホロテックルーン装甲付けてるのよ!この機体に〜〜〜〜〜〜!」嘆きの声が海上に響き渡る。
一部始終を撮影をしていたリミィは誰にも聞こえない小声で「当たり前じゃない。今回のお仕事は噛ませ犬でしょ。当然結果ね。」と言う。これがもし何も知らずに出会した特ダネならどれだけ良かったかと思う。
「あいつ等仲間割れでもしたのか?」編集長が訝しげに言う。「しょうがないですよ。彼等は極限までの力を持つ烏合の衆ですから。」自分にも当て嵌まるので自嘲気味な声でリミィは言った。
「やっぱりこれしか無いのでありましょう…気合いを入れて…うおおおぉぉぉぉ!」別サイクルの機関が作動して後頭部のカバー型装甲が展開する。するとカバーより非情に長い孔雀の尾羽を思わせる物が数十本展開される。
機体に何かの模様の様にも見えるラインで一瞬光が通る。何かを行う前の儀式の様に。その後胸部が輝きを増し何かの起動音がすると両手に強烈な光が宿る。今まで重力に逆らう事無く垂れ下がっていた尾も力が漲るとばかりに逆立つ。
その両手を一度合せて開くと両手の丁度中間辺りに何かを閉じ込めた境界面が逆ループを形成している小さなEシールドの球体が出現しそれは着実に成長、膨張していく…。
鉄獣28号さんへ
逆襲の始まりですね。でも考えてみるとセイスモサウルスの体って尾と首を最大まで曲げても45°位の角度しかいかない。
斜角45°は遠距離に行けば行くほど広範囲に射撃できますが真横に近付かれると撃てそうもありませんねゼネバス砲。
それにやっぱりコロンズ団の方々はレーダー便りの2線級のパイロットみたいですね。
Inocent Worldの作者さんへ
何かスーパーロボット物の基地みたいな町ですね。砲塔や何やらが道路から出てくる町って。
それでも怖いらしい野良ゾイドの群一体この世界の野良ゾイドはどれだけの戦力を持っているのやら?ガクガクブルブル。
◆.X9.4WzziAさんへ
何か凄そうですね。今度は遂にブロックスが相手。しかも謎の頭部付きとやばそうな雰囲気。
デモンズヘッドの頭部は多分引っ掻き用なのでしょうか。下顎が無いので…。
その後に某光の国からの平和の使者の展開を思い浮かべる自分はかなりのオールドタイプ…。
「次言ってみようかー!!」
一機のセイスモを倒したカンウはさらに手近なセイスモへと跳んだ。
「畜生!!何であんなにゴテゴテした重武装なのに速いんだよ!!」
セイスモパイロットは慌ててそう叫び、セイスモの加重衝撃テイルがカンウを襲った。しかし、カンウ
はその一撃を軽々と跳んでかわし、左腕に装備された月甲の腹部装甲+尾部装甲の組み合わせで作った盾をセイスモ目がけて振り上げてきたのだった。
「ギガクラッシャーアームハンマー!!!」
「ぬあにぃぃぃぃ!!!?」
盾をハンマーに見立てたそれを横っ腹にモロに食らったセイスモの装甲はひしゃげ、潰れ、大きく怯んだ所をカンウの牙が襲い、その首は噛み切られた。
「畜生!!!たった2体に何やってるんだ!!」
「でもコイツ等メッチャ強いんですよー!!」
近付けばこっちの物とばかりにカンウとハーデスの大立ち回りは続いた。その巨大さと重さを感じさせ
ない程の素早い速攻は、それまで遠くからねらい撃ちするだけが能でしかなかったコロンズ団セイスモ
パイロット達に対処出来るような物ではなかった。しかし、それも彼等が味わう真の恐怖の序曲に過ぎなかった。
「た!!大変です!!」
「ど!!どうした!!」
本拠内部にて突然響き渡ったオペレーターの叫び声に、それまでカンウ・ハーデスに対するセイスモの戦いを見守っていたボスが彼の方向を向いた。すると、オペレーターは地平線の方を指差したのだった。
「あ…アレを…。」
「うあ…。」
ボスは口に食わえていたハマキを床に落とした。本拠の周囲、あらゆる角度から夥しい数の大部隊が
接近していたのだ。無論レーダーが破壊され、しかも本拠のすぐ前で大立ち回りをしていたカンウと
ハーデスに気を取られていた故に、これほど接近するまで誰一人として気づかなかったのだ。
「お!!落とせ!!迎撃するんだ!!」
ボスの命令に、残存するセイスモが本拠周囲から襲ってくる治安維持部隊へ首を向け、ゼネバス砲を
発射した。しかし、レーダーによる照準誘導が無く、独力による手動照準を余儀なくされた彼等の
砲撃の命中精度は大きく低下し、以前のような正確さは影も形も残っていなかった。それどころか、
今度は治安維持部隊に気を取られた為に、なす術無くカンウとハーデスに倒されるセイスモもいたのだ。
「畜生!!」
ボスは怒りにまかせ、壁を思い切り殴りつけた。
「もとあと言えばあのゴジュラスギガとデスザウラーのせいだ!!あいつらに攻撃を集中させろ!!」
ボスの命令の元、カンウとハーデスへ向けて砲口が向けられた。ゼネバス砲の一斉放射。
数条にもわたる高出力の粒子線がカンウ目掛けて突き進む。しかし、その一つ一つが細く集束されて
いたはずの荷電粒子がカンウに直撃する直前に突如拡散したのだった。そう、それは集光パネルの
仕業だった。ゼネバス砲の荷電粒子エネルギーが集光パネルに吸収されていたのだ。
「私達!こんな事も出来るのよ〜!」
マリンが勢いよくそう叫んだ時、突如カンウの両腕が輝き、高エネルギーに包まれた。これは先ほど吸収したゼネバス砲のエネルギーであった。
「ギガクラッシュエネルギーハンマー!!アーンド!!エネルギーブレード!!」
とうカッコ付けた叫び声を上げた時、既に高エネルギーを帯びた左腕の盾兼アームハンマーが
セイスモの超重装甲を苦もなく打ち砕き、右腕にやはり盾として装備されていた飛燕の尾部が高エネルギーを帯びたブレードとなって別のセイスモの首を切り裂いていたのだ。
「フ!お互いやるな!」
高速で尾を叩き付けようとしてくるセイスモの攻撃をかわし際に首を掻っ切っていたハーデスの中でルナリスが笑みを浮かべてそう呟いていた。
「くそお!!止まれぇぇ!!」
カンウに倒された一機のセイスモが崩れ落ちた時、その影から幾多の小型機がカンウ目掛けて砲撃を
加えてきたのだった。無論その攻撃は全然通用してはいなかったが、やはりセイスモサウルスは
まだまだ数多く残っている中、辺りを埋め尽くす小型機の相手をすると言う事は難しい物だった。
「しゃーない!!危険ははらむけど・・・。」
マリンはコックピット内部の一つのボタンを押した時だった。突如カンウの各部に装備された月甲・飛燕のパーツが切り離されたのだった。
「何だ?どうしたんだ?マシントラブルか?」
突然の出来事にセイスモや小型機パイロット等は呆気に取られていた。と、その時だった。その
切り離された月甲・飛燕のパーツが突如として合体し、月甲・飛燕となって小型機に襲い掛かったのだった。
「うわあああ!!」
「ギャー!!」
「ヒー!!」
飛燕は音速で飛行し、そこから発生する衝撃波やブレードと化した翼の切断翼で小型機を次々に
切り裂き、月甲はその固い装甲を高速でぶつけるような体当たりでやはり小型機を次々叩き落していた。
「い・・・以外とやるもんね〜とか言ってみたり・・・。」
予想以上の成果にマリンも少し驚きを隠せないでいた様子だが、まだ安心は出来なかった。カンウの
両腕に凱龍輝の尾を覆っている分の集光パネルが残っているとは言え、大部分のそれは月甲・飛燕と
分離した際にあちらへと行ってしまっている。つまり、今の状態でゼネバス砲を受けてしまえば
やられてしまう可能性は大いにあるという事であった。案の定一機のセイスモの口腔がカンウへ向けられ、その内部が光ったのだった。
「きゃああ!!」
マリンは悲鳴を上げてカンウが横に仰け反った時だった。それまでカンウの頭部のあった空間をゼネバス砲の高エネルギーの粒子線が切り裂いていった。
「や・・・やっぱり怖い・・・。」
マリンが青ざめながらそう呟き、胸を撫で下ろしていた時だった。
「ぎゃああああ!!!」
と、突然背後から断末魔にも似た叫び声が聞こえてきたのだった。マリンがカンウごととっさに背後を
向いた時、そこには先ほどのゼネバス砲の流れ弾を食らってどてっ腹に穴がポッカリと空いている
セイスモの姿があった。そして、そのセイスモが崩れ落ちるように倒れこんだ時、セイスモパイロット達は青ざめるのであった。
「ゼネバス砲発射中止!!この距離では味方にも被害が・・・。」
一人のセイスモパイロットがそう叫んだ時だった。目にも止まらぬ速度でそのセイスモの背中にカンウ
が乗っかかってきたのだった。そして、すぐさまカンウは両腕でセイスモの首の根元を掴み、そのまま
プロレスで言う“キャメルクラッチ”の様に持ち上げてきたのだった。
「組み技の中であってこそ私の真の実力が発揮される・・・。」
「うわあああ!!何をするぅ!!」
その時である、バキンという金属のちぎれる様な甲高い音と共にセイスモの首が根元からもげたのは・・・。
元々、生物として首が上に上がらない様に出来ているセイスモサウルスは、戦闘ゾイドとして改造され
た後もその特性は変わらず、この様に強引に首を上に上げられてしまえば折れてしまうのは無理の無い事であった。
「よし!!次!!」
折ったセイスモの首を地面に投げ捨てると、カンウはその場から飛び上がった。そのまま目にも
止まらぬ速攻で別にセイスモに組み付き、やはり強引に首を上に上げて折っていった。
「うわああ!!撃て撃て!!」
「馬鹿!!撃つな!!同士撃ちしてしまうぞ!!」
「うわああ!!」
カンウとハーデスは、ゴジュラスギガ、そしてデスザウラーのイメージが変わってしまう程の超高速で
セイスモとセイスモの間を縫うように駆け回り、冗談の様な速攻で次々に倒していった。
と、そう言うと聞こえは言いが、本当の事を言うと、カンウ・ハーデスによって倒されたセイスモ
よりも同士討ちで倒れたセイスモ及び小型ゾイド郡の数の方が多かったりする。
「ようし!!ゾイキュアが奴等を引き付けている間に一気に制圧するんだ!!」
「いや、だからどういう意味ですかそれは!!」
カンウとハーデスが大立ち回りを演じていたウチに、既に他の者達がコロンズ団本拠前にまで到達して
おり、治安維持部隊長が全友軍機に、本拠内部への突入命令を通信で送っていた。無論その通信は
カンウのマグネッサー3Dレーダーもキャッチしており、例の突っ込みが入っていた。
「ボス!!連中が既に内部にまで進入してきました!!」
「なんだと・・・。この難攻不落と呼ばれた我がコロンズ団要塞が1時間もたたずに陥落するというのか・・・?いくらなんでもあっけなさ過ぎるだろ・・・。」
そのあまりの現実に、ボスや他の者達は愕然とするしかなかった。
>>恐怖の亀裂作者さん
フレームや武装、装甲などのブロックス理論の解説について結構良かったと思います。
集束荷電粒子砲やそれに耐えるホロテックルーン装甲ってのも凄かったですし。
>>Inocent World作者さん
何か街が凄い事になってますね。あと、マサシが帰ってきた街が荒れ果てていたってのは
野良ゾイドの軍団にやられたという事でしょうか?
>>◆.X9.4WzziAさん
それにしても貴方の作品は描写が細かいですね〜。その一方で、自分、「ゼネ公」という単語を
一瞬ゼネコン?って思ったりしましたが・・・。それにしても凄い人種差別というかなんというかですね?
あと、ゾイドに関してですが、このパターンはもしかすると模型として作ったのが
実体化するって奴でしょうかね?今後、その出来上がったゾイドがどのように登場して
どんな暴れ方を見せるのか楽しみに待っている事にしますよ。
マサシは目を凝らして、雲の中を飛び交う物の正体を見極めようとした。
だが、間一髪で彼が気付いて飛び退いた場所に、空から一条のビーム。そして爆発が起きる。
もはや正体を見極めるどころでは無かった。上空から降り注ぐ流れ弾は、既に廃墟と化した町を完璧な荒地へと変えて行く。
「飛行ゾイド…? あのスピードで空中戦が出来る飛行ゾイドなんか、居るのかよ」
やがて、それらは雲間から飛び出してきた。
「チィッ!! …しぶとい!」
ミカエルの戦闘力は、3体のセフィロトを一度に屠ったセディールですら手こずる物だった。
“サタンジャッジメント”を射出し包囲攻撃を狙うが、放たれたビームは全て巨大な翼に弾かれる。
「僕も久々に使うかな…」
ミカエルの姿は輝く鎧を纏った古代の騎士を連想させる。それは苛烈なほどに美しく、またその姿に
一瞬でも見惚れようものならば即座に塵にされるのだ。
しかし、その美しささえもセディールの心には届かない。
「最強の“能力”を」
シャドーエッジが消えた。うろたえると言う感覚を元来持たないミカエルは、瞬時に振り返る。
だが、ミカエルが振り返るまでの一瞬でセディールには充分だった。
「遅いッ!!」
ビームブレードが振り下ろされた。ミカエルは翼で受け止めたが、衝撃で雲の下へと叩き落される。
それを追って急降下するセディールの指は、荷電粒子砲の発射トリガーに掛かっている。
「チェックメイトだ、大天使さん」
急速に落下しながら放たれた荷電粒子砲は、体勢を立て直せないミカエルを貫いて地上へ伸びる。
町の廃墟全域を、巨大な爆風が覆った。
巻き上げられた埃や、建物の残骸が消えた後にマサシが目にした物は一機のゾイドだった。
その黒いバーサークフューラーの前には、淡く光る何かが浮かんでいる。
「? さっき上で戦ってた奴か…?」
黒い機体は光る物を掴み取ると、マサシの存在に気付いたらしく機首をこちらに向けた。
<お前は、誰だ>
その声と、モニターに映った顔は若い。しかし、口調や表情には背筋が寒くなる様な冷たさがある。
「人に名前を聞く時は、自分から名乗るのがマナーってモンだろ?」
マサシの返答に、少年は顔色1つ変えずに答えた。
<僕の名はセディール・レインフォード。“ギルド”の能力者で…>
「“ギルド”? じゃあ、ルガールを見なかったか!?」
自分から名乗れと言ったのに、それを自ら中断するマサシにセディールは少なからず不快感を覚えた。
だが、この男の言う「ルガール」とは誰の事なのか見当もつかない。
<それは、どんな男だ?>
「帽子被ってて、ロングコート着て、『ウへへへ』とか言って夜道に出そうな中年の男だよ!」
< 知 ら ん ! 他を当たれ…ん? 帽子にロングコート…ディバイソンに乗っていた男か?>
マサシはモニターに飛びついた。
「知ってるのか? アイツは何処に居る!? ルガールは…無事なのか!!?」
一瞬呆然とした様な顔になった後、セディールは高笑いした。怪訝そうな顔をするマサシに彼は言い放つ。
<そうかそうか、あの男はルガールと言ったのか。彼は、僕が……殺した>
マサシの呼吸が一瞬止まった。この少年は何を言っているのだ? こんな、年端も行かぬ子供にルガールが倒せる筈が無い。
いや、きっと伝説の便利屋を真似た阿呆が居て、この少年はそいつを殺ったのだ。そうに違いない――
しかし、セディールがシートの後ろに乗せていた少女をマサシに見せた時、最後の希望は潰えた。
<つくづく馬鹿な男だったけど、行方も知れなかった僕の妹を連れて来てくれた事だけは褒めてあげても良いね>
セディールの腕に抱かれているのは、紛れも無く彼の知るリニアだった。
>>恐怖の亀裂作者氏
スパロボもやった事の無い自分がこんなアイデアを思いついたのは某FFの影響だったりする訳で。
しかし「Eシールドの球体」見て一瞬螺○丸想像してしまったorz
>>鉄獣28号氏
上の通り、町が荒れていたのはセディールとミカエルの戦闘の影響(流れ弾とか)でした。
それはそうと、主人公チームがリベンジに成功しましたね。こうして強くなっていくのかと解りやすいです。
>>◆.X9.4WzziA氏
久々に来ましたね、新作! リメイク版ジェノブレイカーが想像すると目茶目茶カコイイので
密かに楽しみだったりします。
王道でも、イジメられてる少年を助ける主人公とかカッコ良過ぎですって。
その間機体の表面温度は3℃を超す。これでホロテックルーン装甲の加護はもう期待できない。表面温度をそれ以下に保つ事で驚異の屈折率を持たせているのだ。
つまり荷電粒子砲は最初に接触した粒子が屈折して荷電粒子砲に打つかる事で威力を削ぎそれを擦り抜けた物もまた屈折して同じ事を繰り返す。速度は亜光速なので目で確認する事は不可能だ。
だが最後に相殺する物の無くなった粒子が装甲表面から飛散するのでそうなっていると確認ができる。装甲には熱が残るのでその周辺は絶えず冷却が必要になると言う事だ。
そう特殊装備マニュアルの説明を思い出している間に逆境界面のEシールド球体はベルゼンラーヴェの掌サイズに成長する。
コクピット内でファインが甲殻皮膚を展開するとそれに合せて機体の背中のの部分が同じ様に展開する。「ぬおっ!?これは…凄い。」思わず感嘆の声が漏れるファイン。
どうやらラフィーレの言っていた”何か”がこれだったのだろう。つまりは彼自身の動きその物が機体の動きに略反映されると言う事である。その形こそ違えどそれは彼の意思の通りに動く。
そこにロケット弾が飛んで来る。「戦場で呆けるのは勝手よん。でも責任は自分で取ってね〜ん。」ベルゼブブからの攻撃である。しかし良く見れば接触信管だ。しかも正面のみの物。
蔦が殆ど火器の為その後をおの行動を縛る存在は無い徐に球体Eシールドを左手に掴み手の開いた右手でロケット弾をタイミング良く受け止める。推進用のロケットの火がロケット弾をうねらせるもそれ止まりだ。
アヴィターラの脳内に嫌な予感が映像として映し出される。「ちょっと待ってプリ〜〜ズッ!!!それは!そ・れ・は不味いわよ〜ん!?」良くある風景だ。この後起こり得る事は…。
「お返しだぁ〜!受け取れブドウダコバエ〜ッ!」気合いの入ったファインの声が響くとそれと同時に素早く向きを入れ替えたロケット弾をベルゼブブに投げ返す。その予感に従い逃げるベルゼブブ。
が行動を起こすのがほんの少し遅れたらしい。ロケット弾は見事に背を向けたベルゼブブの蔦の付け根に直撃。やけくそ気味な爆発と共に蔦が全て千切れ飛ぶ。当然の事だがベルゼブブ本体は海に沈む。
しかしこれだけの事をやってのけるゾイド。無傷とは行かなくともまだ健在な筈だ。海上に姿を表すのを待ち油断無く構えるベルゼンラーヴェ。
海面には千切れた蔦が恨めしそうに浮いている。波に任せてゆらゆらと漂う蔦の下に影が映る。
その影は間違い無く逃げている。しかしそれがベルゼブブかどうかは解らない。だがその現れた背中はその機体の物だ。
背中に口が有るとは何ともちぐはぐでモダンな?機体「いくぞ!奴の口に手を突っ込んで奥歯をガタガタ言わせてやれ!ベルゼンラーヴェッ!」
その姿からは考えられない初速でまるで弾丸が打ち出される様にベルゼンラーヴェは海上を滑る様に進む。実際に滑っていた…。
脚部の装甲を水上スキーの板の様に使い速度を殺さず波を打ち砕き派手な水しぶきを上げてベルゼブブの背中の口に迫って行く。
その左手には限界が近いのか球体を維持し辛くなりボコボコと表面が沸騰している様にも見える球体Eシールドが握られている。
推進に使われているだろう何かは軌道に沿って極小範囲のダイヤモンドダスト現象を外気に起こしている。やがてベルゼブブに追い付き宣言通り背中の口に左手を突っ込む。
そこで時が止まった様に両機は動きを止める。少しして先に動いたのはベルゼブブの方で頭部周辺を切り離し高速で抜け殻になった胴体から逃げ出す。
次にベルゼンラーヴェがその抜け殻をボルカニックストライクで空中に蹴り飛ばしその勢いで空中を伸身後転3回半捻りでヒュージスターの甲板に音も無く腕組み状態で降り立つ。
それと同時に抜け殻をEシールドが内側に閉じ込め内部で爆発が発生する。その爆発はEシールドの上部を突破して火柱を上げやがてそれは威力を失いながらEシールドを砕いていく…。
Eシールドが消滅した時には火柱も爆炎も時同じくして夕方の赤い空に消えていた。
「おい見たか!?今の?誰だあんな武器を作りやがったのはっ!?」その光景を納めながら編集長は体を震わせながら言う。「誰でも良いんじゃ無いですか?編集長。」リミィは素っ気なく答える。
「まあ…そうだがよ。何も思わないか?外界に対する被害を抑えながらあの爆発力。普通にそこらで起こったら周辺がクレーターに成って更に表面がガラスに変わっていそうな勢いだぞ。」
知り得る者なら怨嗟の言葉を吐くであろう核の光。シールド内部(正確には外部)で反射加速を続けたエネルギーが対称に接触すると一気にそれを球体内部に閉じ込める必滅の技術。
高度に発達した科学の力は魔術と変わりないとは良く例えた物だ。
「ったく…あれがエルザちゃん特性の”ニュークリアインフェルノ”ね。でもあの本。確か”ねくらのみかん”とか言ったかしら?真逆本物とはね。」
視界の後ろに輝く光を眩しく感じながらアヴィターラは言う。”本物”らしいその本に記された記述は一体どれ程迄の物なのか?それに恐怖を覚える。
エルザ曰く「昔の人達はEシールドの中を高速増殖炉に使って放射線を中和しながら莫大なエネルギーを少しの物質から取り出していたらしいのよ〜!」
との事だ。それを可能な限り忠実に再現した物がアレらしい。今の技術ではそんな発電施設はできない為ああ言う武器にしか出来なかったらしいが…。
Eシールドが放射性物質を中和できると言う事がこれではっきりした事になる。
リミィは編集長の命令で何か悪い状況になっていないかをウィンテクターで分析している。「…残留放射線濃度0,004!?使用前より減ってる。」その後も同じ結果が報告される。
「何?減っているのか!?これは頂きだな!」編集長は感嘆の声を上げてそのデータをコピーしている。何かの拍子にデータが破損しないとも限らないからだ。その他にも解った事が有る。
あの攻撃をした機体から常に冷気が流れていた事。”人型の手”が飾りでない事。その装甲が光学兵器を略無効にする事。剥き出しのフレームも異常な固さな事等だ。
「しかしまあ試作機止まりだな…上位量産機にも出来ないだろうなあれじゃ。」編集長はそう予想しながら呟く。事実その通りで有るので間違いは無い。
暫くその光景を夢の出来事の様に見ているファイン。「こら!返事をしろ!」その通信で我に返る。しかしまあ何と言うか「何か偉い物を掴まされた気が?如何見ても悪役はこっちでありますね。」
正直な感想は”手間と面倒の掛かる破壊神”だ。今自分は人生の岐路に居ると確信する。このままこれを持って帰り味方に合流するか?それとも何もかも棄てて機体毎雲隠れをして人目を忍んで暮らすか?
はたまたこの力で誰も成し遂げれなかった”漢の野望”世界制覇に乗り出すか?更にはこれを持ってして独善で悪を断つ剣になるか?しかしどれを取っても自分は得をしていないのじゃないか?と思う。
「貴様の選択は1番だ。そもそもその為の物だからな。」如何やら声に出して考え込んでいたらしい。余りの恥ずかしさにがっくりと膝を落とし赤面する事しか出来なかった…。
【第二章】
目覚まし時計が鳴り響く中、ギルは眠い眼を擦っていた。
ここは狭いテントの中。上体を持ち上げると枕元に畳んでおいた例の大きめのTシャツ
と半ズボンを引っ張り出し、器用に座ったまま着替える。
昨日に引き続き曇天の朝。テントの外に出ると、そこにはこれから就寝する予定で丸く
なっているブレイカーと(このゾイドは夜行性だ。気が向けば深夜に狩りをし、或いはこ
のキャンプの見張りをする)、朝食を調理途中のエステルの、背筋のピンと伸びた後ろ姿
が見える。白地で袖なし、シャツ襟で丈の長いワンピースは穏やかな朝に相応しい。そし
てまことにリズミカルな、包丁とまな板の調べ。ぐっと伸びをしたギルは「おはようござ
います」と一声掛けた。
「あら、おはよう」
振り返り、微笑む彼女の表情は眩しい。いつもこの瞬間だけはきゅっと胸を締め付けら
れるような気がしてならない。
「あ、あの…ちょっと、行ってきます」
「ああ、走ってくるのね?
いってらっしゃい。戻った頃には朝食、できると思うわ」
「…はい」
顔を洗い歯を磨き、それからブレイカーにお休みの挨拶。…この後、軽く周辺を走って
くるのが彼の日課だ。急斜面の土手に申し訳程度に作られた階段を登ると、もう一度大き
く伸びをした。
土手の上からキャンプを見下ろす。…ここがブレイカーの頭のてっぺんよりも遥かに高
いことにはすぐ気付いた。そして、この位置からなら河原のそこかしこに他のゾイドバト
ルチームが点在しているのがわかる(但し正反対に、対岸の方にはそれらしき集団は全く
伺えない)。つまりこの辺がウェバンのゾイド溜まりと言えそうだ。そしてこの土手の上
の斜面に、昨日橋の上で見掛けた白く真新しい住宅街が犇めいているのだ。
右手遠くには、学校らしき建物の校舎が見える。まだほんの僅かながら、山を降りてき
た児童が登校している。校舎の正面には例の…昨日の事件のあった橋が伸びているのだ。
「取り敢えず、あの辺まで走ってみるか」
それよりも早く、もっと空が薄暗い時にベッサは自宅を出ていた。鉄屑の山道を歩き、
橋に至る頃にようやく空が白んでくる。後はこの長い橋を渡り切れば良い。…ここまでは
只の日課に過ぎなかった。
だが、そこから先が違っていた。
橋も半ばになった時、学校に起こった異変にベッサは気付いた。一旦目を凝らし、それ
に気がつくと一目散に走り向かっていく。
校門を抜け、校庭に立つ。息を切らして見上げたベッサの驚きの表情。
「トール…何だよこれ…」
昨日、戯れに作ったあの玩具のブロックスゾイド(と言える程大層なものではないが)
にそっくりの物体が、そこには転がっていた。…但し! 但し、実物のゾイド同様の大き
さを誇るものだ。それが、いびきを立てて眠りこけている。顔が六つもある割には思った
よりも小さないびきではあるが…いや、そんなことはこの際どうでも良い。
他の児童もこの不思議な物体を取り巻き、不審そうに見つめ、話している。彼らの視線
から逃れるように、庭の茂みに隠れたベッサ。
震える手で布袋の中に手を突っ込む。出てきたのはまさに昨日作った、玩具のブロック
スゾイドだ。
肩に布袋を引っ掛けたまま、恐る恐る、両手で玩具をかざしてみる。…特に、反応はな
い。だが。
「…操ること、できるのかな?」
呟きながら、あのトールそっくりの三つ目の竜の顎を開ける。そう、この竜はもともと
ゼネバスの神話では「雷神」の異名を持ち、口から一撃必殺の稲妻を放つ勇者なのだ。標
的を求め、玩具の向きをクルクルと変えるベッサ。
やがて、止まった両手。向けられた矛先は、彼の所属クラスがある三階の真ん中辺りだ。
その後方の窓に、向けられた竜の顔。だってあの辺には、昨日僕を袋叩きにした彼奴らの
席が…。
「なんてね…あ、あれ?」
何かが弾ける音。…音の発信源の方角に視線を移したベッサは見る間に青ざめていく。
トールそっくりの竜の口から火花とも、電気ともつかない眩い光が溢れ始めている。ゆ
っくり、ゆっくりと開き始める口の方角には先程ベッサが狙いをつけた校舎の一角が…!
「う、うわぁっ!?」
慌てて玩具の竜の口を閉じ、空に向けるが後の祭り。
校庭に響く雷鳴。恐ろしく切れ味鋭い。…竜が、稲妻を吐いたのだ。謎のオブジェを中
心に巻き起こった風圧はベッサを、そして登校中の他の児童をも吹き飛ばしていた。
幸い、彼の咄嗟の判断により、稲妻は校舎を破壊するには至らなかった。だが、屋上付
近が抉れ、その下にある教室のガラスも又ことごとく割れ、砕けて落下している。
校庭を、校舎を、子供達の悲鳴が覆い尽くした。
ギルも又、この奇妙な物体の存在を確認し、早速校舎に向かって走っていた。…又面白
いゾイドと出会えるならと、好奇心タップリで近付いていったがその期待は先程の落雷で
見事に打ち砕かれたのである。すかさず身体を亀のように丸くうつ伏せたギル。一瞬の間
の後、慌てふためきつつも立ち上がる。
「野良ゾイド!? 野良ブロックス!? …ぁぁぁ何だろ、何だろう!?
いやそれより! こんな時、僕がやらなければいけないのは…!」
早朝の珍事に集まる野次馬、野次馬…。彼らを押し退け、ギルは走る。その行く先は只
一つ…!
「エステル先生! 校庭に、野良ゾイドが、うはぁっ!?」
土手の急な階段に思わず足を取られる。まっ逆さまに落ちていくギル。目をつぶって転
落を覚悟したが、その危機は済んでのところで回避された。…地面すれすれであの優しき
深紅の竜が両手をかざし、彼を受け止めてくれたからだ。只肝心のブレイカーも咄嗟の判
断、勢い良く滑り込んだ挙げ句、土手に五体をぶつけてしまったのは御愛嬌というもの。
「あ…ありがとう、ブレイカー! 先生は…!?」
慌てるギルに応え、エステルのいる方角を見つめるブレイカー。…既に彼女は火を止め
包丁を置き、あの長尺な対ゾイドライフルを持ち出したところだ。両手にギルを乗せてブ
レイカーが駆け寄ると、先程とは打って変わって厳しい表情でコンビを出迎えた。
「全く、何でこんな町中に野良ゾイドが現れたりするの!? ギル、準備はいい!?」
「は、はいっ!」
エステルの額から浮かび上がる光。古代ゾイド人の証・刻印が発動した!
「例え、その行く先が!」
刻印発動の「詠唱」。見つめ合う師弟。ギルも共に叫ぶ。
「『いばらの道であっても、私は、戦う!』」
二人の声と共に、ギルの額にも刻印が浮かび上がった!
不完全な「刻印」を宿したZi人の少年・ギルガメスは、古代ゾイド人・エステルの
「詠唱」によって力を解放される。「刻印の力」を備えたギルは、魔装竜ブレイカーと限
り無く同調できるようになるのだ!
深紅の竜の胸のハッチが開く。ギルが早速乗り込むと、すぐさま立ち上がった全方位ス
クリーン。
「ギル、私もすぐに行くわ!」
「はい! ブレイカー、行くよ! マグネッサー!」
たちまち全身に埋め込まれたリミッターが音を立て、光溢れて解放され、翼を大きく広
げると土手目掛けてふわりと跳躍。その巨体で滑空をも可能とするマグネッサーの力だ。
そしてもう一歩!
軽やかに舞い上がると、何とも容易く土手上に着地してみせたブレイカー。
「ブレイカー、封印プログラムは解除しているよね?」
勿論と、スクリーンを介して合図を返す。力強い微笑みで応じたギル。人間に飼育され
る通常のゾイドは余程小型のサイズでない限り都市に乗り込むことが禁じられる。それは
法律のみならず各ゾイドに「封印プログラム」をインストールすることにより徹底される
わけだが、この深紅の竜型ゾイドは通常、効いた振りをして誤魔化している。…だから今
の彼らを物理的に縛るものは、ない。
校門を飛び越え、あの謎の物体が現れた。野次馬達が、慌てて散り散りになっていく。
ゴロリゴロリと身体を転がしつつ、その全身についた六つの首・十二個の瞳は明らかにこ
ちらへ興味を示している。…又、あの三つ目の竜の口が輝いた! 慌てて臥せるブレイカ
ー。その上を走り抜ける稲妻。そろり、首を持ち上げ相手の様子を伺うが、六つの首は猛
り狂うと言うよりは赤子のような表情で興味深げにこちらを見つめている。徐に翼の裏側
に隠した双剣を展開させると、ギルが叫び、ブレイカーが吼える。
「翼のぉッ! 刃よぉッ!」
深紅の竜はそのままの低い姿勢で強く大地を蹴った。
「おい、止まってくれ、止まってくれよぉッ!」
掌中の六つの首を動かしながらベッサが叫ぶ。口を開けたり、閉じたり。首を取ったり
つけ直したり。…だが、目前の謎の物体はそんなことはお構い無しに、ゴロリとゆっくり
転がりながら校舎を出て行こうとする。まさかこんなことになるなんて! 悪化する事態
にベッサは狼狽えるばかりだ。
「おーい、そこにいるのはベッサか!?」
大人の声。…この学校の教師の一人が、慌てて校舎から出てきて児童を避難させている
ところだ。
「ここは危険だ! 早く裏門から逃げなさい!」
「は…はいっ!」
教師の指差す方向にベッサは走る。但し謎の物体の方角を何度も睨みながらだ。他の児
童も逃げる中、校舎をくぐり、裏門付近まで到着する。他の教師が誘導してくれているの
を見て、彼は安堵した。
だが、この時起きた異変。…わき見するベッサの横を、他の児童も又走って逃げている。
何度目かの…何度目ものわき見。すぐさま向き直したその時、正面に映っていたのは裏門
ではなかった。それは他の児童の、頭だ!
ぶつかり合い、もつれ合って何人もの児童が転倒していく。勿論ベッサもだ。慌てて受
け身をとろうとする。…だがこの数秒余りの間に、指の感触が一気に軽くなっていくのを
感じて彼は狼狽えた。
ベッサの目前を、例の金色の球型ブロックが転がっていく。同時に散乱する首のパーツ。
それらに向かって慌てて飛び付き、一つ一つ拾い上げていく。…そんな最中、教師の怒号
が谺した。
「おーい! 彼奴、消えていくぞ!?」
ブレイカー渾身の右の翼の刃をクワガタ虫型の首がガッチリと受け止める。そしてすぐ
さま顔目掛けて放たれる稲妻。屈むブレイカーを嘲笑うかのように、謎の物体は刃をクワ
ガタ虫型の口で器用に手繰り、近付いてくる。負けじと左の刃を振りかざすブレイカー。
だが今度は鼻先角の竜の顔が、首のひだで鮮やかに弾いてみせる。
「野良ゾイドなのにここまでやるかよ!?」
ギルも又驚くばかりだ。しかし、いつまでもこのままでいるわけにはいかない! …す
かさず放った左の爪の一撃。大きく弧を描いて放たれたこの攻撃には、誰もがこの謎の物
体に一矢報いることを確信した筈だ。
だが、それが大きく空を斬った。…前のめりになるところをどうにか踏み止まるブレイ
カー。
「て、手応えが、なくなった…?」
冷静に受け止め直そうと、すぐさまスクリーンを見つめる。…するとどうしたことだろ
うか、この有り様は。
うっすらと、この謎の物体が透き通っていく。驚いたブレイカーは腕を突っ込みかき回
してみるが、何らの感触もない。そしてそのまま…。
謎の物体が、完全に消えた。ギルもブレイカーも、呆然となるばかりだ。
「ごめんなさい、待たせたわ! …あ、あらら?」
ビークルに搭乗してやってきたエステル。ワンピースの長いスカートを敢えて結んで動
き易くし、この場に馳せ参じた。…しかし、そこまでさせた肝心の相手は既にどこにも見
当たらなくなっていたのである。
学校のチャイムが鳴る。…但し、まだ朝の一時間目開始を告げるものだ。
沢山の父兄が、校門をくぐっていく。先程の事件により今日の授業は中止が決定した。
ゲリラによるテロ攻撃も想定されたため、父兄が子供を引き取りにやってきたのだ。そし
て複数の警官が彼らを校門でも、校内でも巡回し、或いは突っ立ってジロジロ睨む。万が
一ゲリラが紛れ込んでいるかも知れないという判断によるものだ。
とある教室。教師がいないのか、沢山の児童が無軌道に席を外し、お喋りをしている。
そんな教室の隅で独りヘリック語の教科書を眺めているのはベッサだった。一見、優等生
に見える。だが正直なところそれらしく振る舞うことで、先程の事件で動揺する心中を覆
い隠しているのに過ぎない。…そして、そんな彼の後方で、突き刺すような複数の視線が
発せられていることに、彼自身がまだ気付いていなかった。
不意に、担任教師の入室。中肉中背、そろそろ中年の域に差し掛かった男性だ。席を離
れた児童が慌てて席に戻っていく。
「さあみんな、静かにしろよー。今日はもう授業をやらないから、これで解散だ。みんな
のお父さんやお母さんも続々と来てくれているので、すぐに下校の支度をして下さい。
今日の事件の犯人はまだ捕まっていないから、みんな気をつけて帰宅して…」
「犯人はそこに、いるじゃないか!」
何人かの児童が急に立ち上がり、一斉に指差す。…その先にいるのは、ベッサだ。不意
の声に彼の背筋が強張った。
「こいつだよ、このゼネ公がやったんだ!」
「そうだ! こいつ変なブロックスを学校に持ってきてた。あれで操ってたんだ!」
一気に騒然となる教室。ベッサは思わず立ち上がる。
「い、言い掛かりだ!」
「先生! こいつの持ち物を検査してよ! こいつ、絶対隠してるよ!」
「静かにぃッ!」
大喝する教師。その野太い声に教室は再度静まり返るが、当事者達は依然睨み合ったま
まだ。
「…ごめんよ、ベッサ。袋と机だけ、見せてくれるか?」
申し訳なさそうな教師の表情に、ベッサは無言で頷いた。…布袋の中を見、ひっくり返
す。筆入れとノート、そしてパンの耳を入れたビニール袋が出てきた。次いで机の中を覗
き見る。…。……。
「ありがとう。…お前達、ベッサに謝りなさい」
低い声にベッサをなじった児童達は肩を竦めるが、依然無言のままだ。教師から視線を
反らす者もいる。…徐に出席簿を手にした教師は、それで彼らの頭のてっぺんを一発一発
引っぱたいた。それによってようやく、不承不承彼らは頭を下げたのである。
「…じゃあ、今日は解散。号令して!」
「起立! 礼! …」
教室内の誰よりも速く玄関口まで辿り着いた。既に沢山の父兄が押し寄せている。下駄
箱から下履きを取り出そうとしたベッサだったが、手を滑らせ、簀子の上に落とした。お
っと、と声を上げ拾い直す。
この瞬間、ベッサの身体は沢山の父兄の影に隠れて見えない。…手早く彼は、下駄箱の
下の隙間から引っ張り出した。そう、あの金色のブロックスと六つの頭達をだ。教室に入
った時は父兄ではなく沢山の児童でごった返していたため、同様の手口でここに隠してい
たのである。
周囲の視線を気にしつつそれを布袋に収めた彼は呟いた。
「…先生、ごめん」
土手の斜面で、ギル、ブレイカー、それにエステルまでもがぐったりしている。ギルは
仰向けに、ブレイカーはうつ伏せに、エステルは座って膝を抱えて肩を落としたまま、
『『『はぁぁぁ…』』』
…と脱力感一杯の溜め息。何とも情けない格好だが、これでもチーム・ギルガメスでは
ある。彼らのダメージの原因はここウェバンの警察による事情聴取にあった。非常事態と
は言えブレイカーの封印プログラムを解除したのは事実。その働きに免じてブレイカーの
内部まで取り調べは受けなかったものの、二人と一匹はウェバン警察ゾイド部隊に大目玉
を喰らう結果と相成った。
不意に、エステルの左手につけた腕時計程の大きさの端末がアラーム音を鳴らす。
「…はい、こちらチーム・ギルガメス。はい…はい…」
スイッチを切ったエステルが告げる。
「ギル、ブレイカー、今日の試合は明日に順延だって」
無言で手を振って返事するコンビ。こんな事件が起こっては仕方あるまい。今頃他のゾ
イドバトルチームも取り調べやら何やら受けているに違いない。
不意に、ブレイカーが首をもたげた。…何者かが近付くのに気付いた彼は、確信すると
ピィピィ鳴いて鼻先でギルをつつき始める。だるそうにゴロゴロ転がりながら相棒の胸部
ハッチまで近付くと、這いつくばりながらコクピット内に乗り込んだギル。
数秒の後。慌てて転びながらも、さっきまでとは打って変わって元気そうに飛び出して
くる。
「先生! エステル先生!」
「どうしたの、ギル? そんなに慌てて…」
「もう一度、刻印を…!」
「刻印ね? はいはい…例え、その行く先がー」
たちまち刻印を発動させ、ギルは勇躍ブレイカーに乗り込んだ。
「土手上には登らないようにねーっ」
エステルの声を尻目にブレイカーは橋の方に歩いていった。一方彼女は立ち上がり、伸
びをしながら作り掛けの朝食をどうにか調理し直そうと思い立ったのである。
とぼとぼと、校門を出てきたベッサ。橋の入り口に差し掛かる頃には、さっきも絡んで
きた児童がすぐに追い付き、後をつけてきていたが、それは承知の上だ。どうやって振り
切ろうか、そう思ったところに。
ベッサの行く道を不意に覆った黒い影。彼がふと見上げれば、昨日出会った深紅の竜が
宙に浮いている。橋から見えているのは上半身だけ。…胸のハッチが開き、ギルが現れた。
「いぇ〜い、そこのお兄さん! ゾイドのタクシー、乗ってかない…あ、あれ?」
Vサインをしながら芸のない口上をしている間にも、何の興味も示さず通り過ぎていく
ベッサ。
「お、おーいベッサ! ベッサったら!」
言われて彼は初めて振り向いた。ハッチから飛び降りたギルが近付く。実は彼らの背後
で舌打ちの音がしたのだが、それはブレイカーが全身でガンガン鳴らすリミッターの音に
紛れ、聞こえなかったようである。
ギルが正面に立った時、初めてベッサは気付いた。昨日はなかった妙な印(しるし)が
彼の額で明滅していること。そして、それがどうやら化粧やシールの類いではなさそうだ
ということに。
だが、ギルはそんなことなどお構い無しに話しを切り出す。
「今日は、大丈夫だった…?」
無言で頷く。胸を撫で下ろすコンビ。…と、そうしている間に又しても去ろうとするベ
ッサ。慌ててギルは引き止める。
「ちょ、ちょっと待ってよ! …あのさ、この子に乗ってみない?」
ギルに紹介された相棒は胸を張って格好をつけてみせる。
「僕は、ゾイドの操縦なんてできないけど…」
「任せて!」
太い川の水面ギリギリを浮かんでいるブレイカー。胸部コクピット内にいるのはギルと、
彼の膝の上に乗ったベッサだ。座席に備え付けられた固定具はもともとパイロット一人の
みを固定するものだが、幸いベッサはギルよりも更に体格が小さいのでどうにか二人まと
めて固定できた。
「…いつでも、いい?」
ギルの呼び掛けに頷くベッサの表情からは驚きの色が隠せない。恐らくブレイカー級の
ゾイドに乗ること自体初めてだろう。その上非常に珍しい全方位スクリーンときた。
「よーしそれじゃあ! ブレイカー、いくよ!」
声と共に輝いたギルの刻印。慌てて振り向くベッサだが、その彼に未体験の重力が急激
な勢いでのしかかった。
「う、うわぁーっ!? 何? 何!?」
キョロキョロと左右を見渡すベッサ。…だがこの時、彼はその身に襲い掛かる重力が相
当な快感であることに気付かされた。何しろ叩き付けるような飛沫で全方位スクリーンが
覆い尽くされた挙げ句、その冷たさがうっすらとベッサ自身にも体感できるからだ。それ
は本来感じるはずのない風までも感じ、まことに心地よい。彼の心を様々な疑問と、そし
て感動が交差していく。
「何故? 何故冷たく感じられるの!?」
「それはね、ブレイカーはパイロットとの同調で能力を発揮する『オーガノイドシステム
搭載ゾイド』だからさ。冷たく感じるのはその副作用ってわけ。…そーれ!」
「え、ちょっ、ちょ…わぁっ!?」
水面を高速で駆けつつ、蹴り込む。すかさずギルはレバーを引き、ブレイカーが応じた
その答えは、この深紅の竜の見事な二回転ジャンプとなって体現された。…普通のゾイド
に乗っていたらこんなアクションをしたら大概吐いてしまうだろうが、そこはオーガノイ
ドシステム特有の「ゆりかご機能」により体調を管理され、回避している。だが今のベッ
サにはそんな蘊蓄は無用というもの。
「凄い! 凄い!」
「まだまだ、こんなもんじゃないよ。…さあブレイカー! おもてなしはこれからさ!」
相棒の呼び掛けに対する答えは、曲芸じみた様々なアクションとなって土手上の道を行
く人々を唸らせたのである。
橋の向こう側の土手で、ブレイカーはうつ伏せ首を持ち上げている。胸部ハッチから、
小さなお客、次いで相棒が河原に降りるが、その間おとなしく姿勢を維持している。
小さなお客は未知の驚きに目を輝かせ、相当興奮しているようだ。
「…楽しかった?」
「うん! うん!」
「それは良かった! なぁ、ブレイカー?」
ピィと甲高く鳴いて相槌を打つ深紅の竜。
「ベッサも、十五才になったらジュニアトライアウトを受けて、ゾイドウォリアーを目指
すといいよ。
そうすれば、いつかきっと最高の相棒に出会える日がやってくる」
ギルの一言に、顔を曇らせるベッサ。…おや、まずいことを言ったかなとギルは思った
が、次の一言は彼の予想範囲内だった。
「あ、あの…人種が違っても、トライアウトは受けられるの…?」
「勿論! …額にこんなのが浮いてても受けられるから」
自らの額を指して即答する。息を呑むベッサ。しまった、自分こそ余計なことを聞いた
のかと後悔の表情を浮かべたが、それすらもギルは予想通りだ。
「これ…ブレイカーと出会った時、勝手に浮かんだんだ。何かの病気かとも思ったし、自
分が本当に父さんや母さんの子供なのかと悩んだこともあったけれど、エステル先生が
『ブレイカーに乗れる資格の証』だって」
「え…すてる、先生?」
「うん。僕の先生。…大事な人」
急に顔を真っ赤にし、照れくさそうに伸びをする。
「とにかく! ゾイドウォリアーになれば、最高の相棒も、理解してくれる人も絶対現れ
るから! そうすれば、辛いことなんて全て吹き飛ぶさ!
ゾイドはね、乗り手の気持ちに必ず答えてくれる。だから、ベッサも…ね?」
無言で何度もベッサは頷いていた。…だがその瞳の輝きの微妙な変化までは、ギルもブ
レイカーも最後まで見抜けなかったのである。
駆ける、ベッサ。無言で。何度も、何度も目を擦りながら。
(ゾイドはね、乗り手の気持ちに必ず答えてくれる)
頼んでもいないのに、彼の耳で繰り返されるあの言葉。その度に心臓をナイフで斬り付
けられたかのような痛みを感じ、彼は遂に涙を零した。零しながら鉄屑の山を駆け抜けて
いく。
「じゃあさっきの事件は、僕が望んだことだというの!?」
(ゾイドはね、乗り手の気持ちに必ず答えてくれる)
(ゾイドはね、乗り手の気持ちに必ず答えてくれる)
(ゾイドはね、…)
「うるさい! うるさい! うるさい!」
転んだ。…起き上がった、ふらふらと。かくして無人の山道を駆け抜けていったベッサ。
その背後には慟哭が谺していたのである。
遂に今日も最後まで曇天のまま、夕焼けも見られぬ誠に風情のない夕方。
お湯を一杯に満たした薬莢風呂の湯舟に浸かるギル。周囲は衝立で囲ってある。…向こ
うではエステルが夕食を作っている真っ最中。包丁の音が聞こえる。
至福の時。しかし、頭上の鉄橋を見、次いで衝立の上から見える町並みの様子に溜め息
もつく。…何しろ彼らのキャンプ地側の斜面はそこら中街の灯で埋め尽くされているのに、
ベッサの帰っていった側にはそれらしきものが全く見かけないのだ。ここウェバンの街の
実態を改めて思い知らされる。
一方、エステルはずっと釈然としない気持ちを抱えながら調理中だった。…今朝の事件。
あんなゾイドとはとてもじゃないが言えない代物に心当たりなどないが、しかしどこか引
っ掛かる。
不意に、包丁の音が止まった。但しギルはすっかり風呂を満喫中であり、異変には気付
かないようだ。
「ギル!?」
「…は、はい?」
慌てて上半身を風呂から出し、エステルの方を向く。
「明け方、ちょっと出掛けてくるから」
「え、明け方、ですか…?」
「ごめんなさいね、変な時間で。近くに昔の友人が住んでるの。ちょっと変わった人だか
ら…」
「い、いやそんなこと…それじゃあ、いってらっしゃい」
「ありがとう。朝食は作っておくからね。貴方も早起きして、ちゃんと走るようにね」
掘建て小屋の窓から、ベッサは夜空を眺めていた。幸い、昨日同様に朧月夜にはなって
きた。
部屋の電気が明滅し始める。部屋の中央にガラスの破片が集まり巨大な竜の顔を象って
いく。…首だけの三つ目竜・トールの登場だ。その姿を見たベッサはいつも通り、愛おし
そうに駆け寄っていく。
「トール…トール…」
《ベッサ、今日はいじめられなかったか?》
「…うん」
《そうか、良かった良かった。…で、あのブロックスはどうだった?》
本来なら胸が張り裂けそうなその質問に対し、ベッサは作り笑いで取り繕う。
「凄いね…凄い、びっくりした」
《おお、そうかそうか…》
「…でも、ごめん」
《ん? 何がじゃ?》
「最初は半信半疑だったんだ。だからちょっといい加減に作っちゃった。…後で、もっと
格好良く作り直す」
《そうかそうか、よしよし。頑張って、格好良いゾイドを作りなさい。
お主が誠心誠意を込めて作ったゾイドは、お主の気持ちに必ず答えてくれる。だから、
頑張りなさい…》
あの年上の友達と同じことを言われ、唇を噛み締めたかったベッサ。しかしどうにか堪
え、表向きは平静を装っていた。
「うん、ありがとう。できあがったら必ずトールに見せるよ」
掘建て小屋の外に、ベッサは出た。右手には例の布袋が。左手にはブロックスパーツを
集めたビニール袋が握られている。
(ゾイドはね、乗り手の気持ちに必ず答えてくれる)
(お主が誠心誠意を込めて作ったゾイドは、お主の気持ちに必ず答えてくれる)
大きく首を振って幻聴を振り切るベッサ。徐に地べたに座ると、やがて双児の月明かり
を頼りに、玄関先で布袋とビニール袋を広げ始めたのである。
それに従い同じポーズでがっくりしているベルゼンラーヴェ。夕日に照らされとてもシュールな光景だったと言う…。
「良し!出来たよ。これを首に掛けてね?」ベルフはやっと完成した翻訳機を少女に手渡す。
すると少女は何の疑いもなくそれを身に付ける。どうやら本当になんたら言語は存在するらしいと周りは理解したようだった。
「何か喋ってみて?」ベルフがそう言うと少女は堰きを切ったように喋り出す。先ずは改めて自己紹介をする。
「私はネメシス。この子はレビオス。宜しくお願いします。(中略)…なので急いで下さい!」その話で大体今置かれた状況が輪郭を持って彼等に重く伸し掛かる。
つまりは…彼女達が封じたコアが旧対戦時に見付かりそれが復活した為に彼女達は目覚めて協力者の力の元何とかそれをもう一度封印する事に成功したらしい。
そしてその人達の助けでもう一度彼女達も眠りについたらしいのだ。それがまた動き出したらしいのだが今度は昔のカプセルで無かった為に出遅れたと言う事なのだ。
「出遅れとは…もう遅いのかもしれないがやるしかないという事か。」アービンは溜め息を吐く。それを見て少女は言う「まだ間に合います。本格的に動き出すにはまだ力が足りないみたいです。」
床を…その先の地下を見詰める様な表情で少女はそう言った。
「えっ?名前が…不吉ですか?」少女はそう言い首を傾げる。それを切り出したのは珍しくアービンだった。ネメシスと言う名前は何処かの言葉で復讐の女神の名前。
そう言う観点から言えばそのコアがネメシスなら話は解るが少女がネメシスではしっくりこない上に可哀想でならない。更にはとてもじゃないが”声を掛け辛い”のである。
これが一番の理由だった。そこでこの緊急時に”お名前募集!君が名付けの親だ!”と変な空気が辺りに漂う。
何とも言えない空気の中何とか幾つかの名前が上がるが本人は決め兼ねている。それもそうだろう今までその名前で通して生活をしてきたのだ。
しかし名前で呼ばれる事が殆ど無かったのも事実である。しかしどうもぴんと来ない名前が多いのも事実である。
特に誰かが出してくれた名前は死んだ祖母の名前とちょっと譲り受けるのには重い名前で気が引けてしまう。
それだけ名前とは大事な物であると言う事なのだろうか?そんな中何処の誰とも知らずその空気を変える歌を口ずさんだ。
”あなたは今何処にいますか?”
”あなたの目に私は映りますか?”
”私は思い出のあの場所で愛を詠っています”
そんな出だしだった。
”あなたに私の思いは届いていますか?”
”あなたの心に私は居ますか?”
”私の心はずっとあなたの傍へと願っています”
それは誰かがまた別の誰かに捧げた思い。遠く離れた場所に居る。もしくはもう居ないのかもしれない誰かに届くようにと。
”唯思うだけでは叶わない願い”
”思い無くても願いが届く場所へと”
”数多の願いを空の彼方へ”
”人の数だけ居ると信じたラミューズにこの思いを託して”
素人らしく意味の通らない場所が有るのがいかにもと言う歌。しかしその歌に託された願いは陰鬱な場の空気を打ち消し胸が軽くなる。
そんな気さえする愛と優しさを持つ言霊の力。もしかしたらその思いと願いは叶ったのだと思わせる程に…。
「おい。その歌なんて言うんだ?」それを詠った者の隣に居る男が聞く。「実は知らん。ただ誰かが歌っていたのが耳に残ってな。」そう答えが返る。
しかしそれを一番期待していた者が1人…突然イベントの中心に放り込まれた少女である。その表情を見て「決まったな。」アービンは頷く。
結果はアービンの予想通りその歌に唯一固有名詞として存在するその名前に決める。このラミューズも何処ぞの言葉で女神を指す言葉だがこちらは愛の女神と言う意味だ。
うってかわって縁起の良い話である。この後の話で何かの目的とは言っても判明してはいるがその為に”俗世的な物から隔離”するための手段として公用語を教えられなかったらしい。
今となっては如何する事も出来ないのだがこの話で少女ラミューズがネメシスと呼ばれた理由が明確になる。
有る何かが起こった時お供のレビオスと一緒にその対称に”復讐”するのが彼女の仕事だったと言う事なのだ。
良くある寝起きの記憶の混乱や欠落も無くその事や彼女の居た場所の消滅も彼女自身が招く事になったと言う事も位表情をしながらも打ち明けてくれた。
そしてまた今回もその困難に立ち向かおうとしているのである。
鉄獣28号さんへ
やっぱり例の言葉は文面が無くても忘れていないみたいですねw
一応例の装甲は新しい記述の通り限定条件下でのみ光学兵器を反射する物です。
とても固いフレームも説明を付ける予定です。
Inocent Worldの作者さんへ
ルガールさんの服装が正確に言及されていますが「ウヘヘヘ」以下が何か痴〇や〇〇者を思わせて笑ってしまいました。
内容は非情にせっぱ詰まっている筈なのにそっちに目が行ってしまい_| ̄|○
◆.X9.4WzziAさんへ
本体がこれから組上がるみたいですね。
分解した事で消えてしまったようですが物凄い技術を使用している見たいですねプレゼントのコアブロック。
それに事件の現場に駆けつけた後にこってりと絞られてしまう…何故に!?と言う気持ちで一杯そうな2人がナイスな感じでした。
何か消し忘れで”をお”とか特製が”特性”になっていたりで読み難い所があると思いますがご容赦を…。
「さ〜て!セイスモもあらかた倒した事だし。後は内部に突入した皆様次第という所かな?」
戦いも一段落付いた事を確認するなり、二人は一息付き始めた。一方本拠の方は小型機や歩兵を中心と
した突入部隊がなおも内部へと突入していく。後は彼等が本拠内部を制圧してくれさえすれば勝利は
確定するのである。が…。突然カンウに向けて砲撃音が響き渡ったのだった。
「うわ!!何!!?まだいたの!!?」
いつのまにかに月甲・飛燕と再合体していたカンウは右腕に装備していた飛燕の尾部を盾として
その砲撃を防ぎ、事なきを得ていたが、まだ残っていたという事実は戸惑わざる得ない状況であった。
ちなみに、カンウの装甲の方が盾より強固なのに、あえて盾で防いでいたという事実はマリンが意外に気の弱い所もあるという点と、セコイという点を暗示していた。
「お前らよくも好き勝手やってくれたなー…。もうゆるさん!!」
「うわあ!!最後の最後で凄いのが出てきたよぉ!!」
最後の最後に出てきたそれは正しく強敵だった。全身の至る所にキメラパーツを装備し、まさに
動く要塞、動く火薬庫となったセイスモ。アルティメットセイスモだったのだ。
「貴様等にやられた部下の敵は俺が討つぅぅぅ!!!!」
その時、ゼネバス砲を除くアルティメットセイスモに装備されていた全ての火器がカンウとハーデスへ
向けて発射された。二人はとっさに跳んでかわすが、仲間の敵討ちという彼の意志は犯罪組織の
構成員にしておくには勿体ないほど男気にあふれていた。
「おうおう!!何か凄いのが出てきたな!隊長機か?」
「にしても恐ろしい数のストームガトリングね…。こちらの集光パネルを叩き割ろうって魂胆かしら…。」
「うおおおおおおおおお!!!ゆるさんぞおおお!!!」
アルティメットセイスモはなおも全身の火器をカンウとハーデスへ向けて乱射する。両機は巨大ゾイド
とは思えぬ高機動でその砲撃をかわしていくが、その弾幕は厚く、攻撃できずにいた。
「このままじゃラチが空かないわね〜…。ちょっと目でも眩ませてみる?」
「目を眩ませるって?どうやってだ?」
「こうやってだよ!!ギガファイヤァァァァ!!!」
その時、大きく開かれたカンウの口から灼熱の火炎がアルティメットセイスモ目がけて放射された。
炎はたちまちアルティメットセイスモの身体を包み込み、砲撃が止んだ。しかし、それだけではなかった。
「うわああ!!何だこの炎は!!ん!!?おい!!どうした!!しっかりしろ!!」
アルティメットセイスモに乗っていた隊長はアルティメットセイスモが突如として怯え始めた事に
気付いたのだった。炎に撒かれていたとしても、アルティメットセイスモそのものが受けたダメージは
これといって大きな物では無かった。しかし、それにも関わらずアルティメットセイスモは怯え、大きく怯んでいたのだ。
「一体何が起こったの?」
その減少に、マリンとルナリス、また他の者達もワケが分からず見入っていた。とその時、ルナリスが何かに気付いた様子で手を叩いたのだった。
「そうか!!分かったぞ!!生物は本能的に火を恐れる性質がある!!恐らくアルティメットセイスモにも同じ様な事が起こったんだ!!」
「でもそれだとビーム砲やミサイルはどうなるの?って事になるけどどう?」
「う………。」
痛い所を突かれたルナリスは一瞬黙り込んだ。
「とにかくだ!!このチャンスを利用しない手はないぞ!!」
「うん!!」
その時、カンウとハーデスはアルティメットセイスモへ向けて跳んだ。目にも留まらぬ速度で迫る。
「うあああああ!!!」
不意を付かれた隊長は思わず叫んだ。しかし、カンウとハーデスはアルティメットセイスモの両側面を駆け抜けて行くだけだった。
「何だ…?ノーコンか…。」
何事も無かった事を確認すると、隊長はそっと胸をなで下ろした。とその時だった。なんとゼネバス砲
を除くアルティメットセイスモに装備された全ての火器の砲塔が砕けたのだった。
「うあああ!!ま…まさかさっきの一瞬で!!?ウソだろ!!?」
戸惑う隊長。しかし、彼女等の攻撃はまだ終わってはおらず、超高速のままハーデスが突っ込んできたのだった。
「そろそろトドメ行ってみようか!!」
「うあああ!!!」
超高速のまま、ハーデスはセイスモの腹を思い切り蹴り上げたのだった。セイスモの腹部装甲はひしゃげ、さながらゴムまりの様に吹き飛んでいた。
「オーライ!オーライ!」
セイスモの吹っ飛んだ先にはカンウの姿があった。そしてカンウはセイスモをキャッチするとそのまま高速で振り回し始めたのだった。
「うああああ!!!」
隊長の絶叫が響き渡った。その回転は徐々に上がっていき、たちまち竜巻が巻き起こっていたのだ。
「本当は“改”バージョンで行こうと思ったんだけどさ…。バスターキャノンがジャマで使えないから
通常バージョンで行くよ!その力は遠く西方大陸にそびえる天導山から吹き下ろす風のごとし!!
飛んでいっちゃえよ!!天・導・山おっろぉぉぉぉぉぉぉし!!!!」
「うおおおおおおお!!!」
カンウが手を離した時、その遠心力とそれに伴う竜巻によってセイスモの巨体は高速回転したまま
天高く吹っ飛んでいくのだった。しかし、そのセイスモよりも高い場所にハーデスの姿があった。
「フッフッフッ…。最後はカッコ良く極めさせてもらおうじゃないか…。」
マニューバスラスター噴射によって高く跳び上がっていたハーデスはそのままセイスモへ向けて突っ込んでいく。
「死竜!!昇天蹴りぃぃぃ!!!」
ハーデスの蹴りがセイスモに叩き込まれた。その蹴りはセイスモの超重装甲を薄紙の様に破るどころか、その身体を真っ二つに引き裂いていった。
「あ…………。」
その光景を見ていた皆は呆然としていた。そして、それによって数多くのコロンズ団員達が投降し始めるのだった。
それから、難攻不落と呼ばれ、あれほど治安維持部隊を苦しめていた犯罪組織、コロンズ団は余りにも
あっけなく制圧され、全員御用となった。しかも、あの時ハーデスの蹴りで真っ二つになったセイスモ
に乗っていた隊長も、さりげなくあの大爆発の中で生きており、普通に逮捕されていた。
彼らの敗因として、あえて言うならば、本拠に設置されていたレーダーや、それに連動したゼネバス砲
など、それらに彼等が頼り切っていたという事が上げられる。故人いわく、「策士策に溺れる」という事である。
「いや〜なんか思ったよりあっけなかったな〜・・・。」
「え〜でも私は怖かったよ。集光パネルが本当に全部吸収してくれるか心配で心配で・・・。月甲・飛燕と分離して格闘戦に持ち込んでた時なんかもうハラハラドキドキで・・・。」
「それを言ったらこっちだってゼネバス砲受ければお終いなんだからかわらんだろうが!」
コロンズ団が壊滅した翌日、治安維持部隊ベースキャンプにて、報酬金の振込み等に関する手続き等を
済ませた後、二人はのんきにもそう言い合っていた。治安維持部隊にはまだまだ数多くの仕事が山済み
で残っており、忙しそうにしていた様子だが、傭兵として参加していた賞金稼ぎ達にとってはどうでもいい事であり、皆報酬を貰うとそれぞれの場所へと散っていた。
「でも、何かこうスーっとした気分だよ・・・。」
「ああ・・・やっと奴等を倒す事が出来たんだからな・・・。」
カンウとハーデスを見上げ、二人は体を延ばしながらそう言い合っていた。と、マリンは突然悲しげな表情をし始めた。
「でも、何か寂しくなった・・・かな?」
「あのジャンク屋が言っていた事か・・・。敵はいると腹立つが、いなくなると寂しくなる・・・か・・・確かにそうかもしれないな・・・。」
と、マリンは気を取り直した様子で一歩前に出たのだった。
「でも人間が滅びない限りは犯罪は無くならない!だからその犯罪者を狙う私達賞金稼ぎも同様!そうでしょ?だから、次の場所に行きましょうよ!」
「そうだな・・・。」
コロンズ団との因縁を断ち切った二人は、新たな気分の下、再び旅立つのだった。
3章にも渡る難敵(?)を倒したのもつかの間、次回はさらに恐ろしくも危ない敵が登場します。
ちょっとバチ当たりそうな点があったりしますが・・・
>>恐怖の亀裂作者さん
久しぶりにカプセルの中にいた謎少女が登場しましたね。
その際に結構難しそうな翻訳機を簡単に作ってしまうなんてのも凄いと思いましたし。
>>Inocent World作者さん
かなり高レベル同士の戦いになってますね・・・。それはそうと、マサシの説明の
ウヘヘはやっぱり彼がいつも言いたかったのに言わせてもらえなかったロ○コ○という
言葉に関しての鬱憤晴らしなんでしょうかね?
>>◆.X9.4WzziAさん
本体である操る方と、直接動く方の2つが存在する・・・これはどういう仕組みになってるんでしょうね〜
これはどこか呪いのわら人形なんかを彷彿とさせる物がありますが・・・
やっぱり何かの不思議なオカルト的な力が作用しているのでしょうか?
ルガールの前にまず現れたのは、山と共に消えたと思っていた愛機だった。
恐らく、ルガールを追って箱舟に乗り込んだのだろう。どうやったかは知らないが、利口な相棒だ。
次に、壁を吹き飛ばして異形のゾイドが姿を現す。見た事も無い形態だが、8枚の輝く翼には見覚えがあった。
「…8…番目の、セフィロトか!」
それはセディールが取り逃したセフィロトの一体“ラファエル”だった。
ルガールは迷う事無く愛機のコックピットに納まった。既に足の一本と体中の骨が逝ってしまった状態での戦闘など、
まともな神経の人間なら選ばない。ただ彼にはその必要があったし、ある意味ではまともな神経の持ち主ではなかった。
ディバイソンが横に跳躍し、その後をラファエルの光弾が突き抜ける。と、回避を確認する間も置かず17連砲が火を噴く。
その砲弾はラファエルに届くことなく消え去った。
「! 奴の能力か…」
これが、ラファエルの能力だった。栄光を司る守護天使であるラファエルの力は、物質の形態の鋳型、
内的存在の具現化を操る力である。
ラファエルは砲弾の最も基本的な鋳型である「無生命」に擬似生命を与え、
矛盾を発生させる事で「砲弾を存在できなく」したのだ。
「理屈はどうあれ、確かな事は砲撃が通用しないと言う事か」
ルガールには細かい理屈など必要ではない。それが戦闘にどんな影響を及ぼすかが最優先事項なのだ。
「ならば、格闘戦はどうだ!?」
ディバイソンとは思えぬ機動性で間合いを詰めると、ルガールはそのまま超硬角をラファエルの胸部に叩き込んだ。
通常ならコアを破壊できている筈だった。が、ルガールはセフィロトがただのゾイドでない事を知っている。
彼の不安は見事に的中した。
ラファエルがその手に何かを握っている。青白く光り、球体状のそれはまるで――
「ゾイド…コア…? …まさか」
ラファエルがその手に握っているのは、まさしく愛機のコア――正確を期するならば、ゾイドと言う生命の基本的な鋳型である
ゾイドコアを、ラファエルの力で具現化したものだった。
だが、具現化されたものとは言えそれは一つの事実を示している。
それは「ルガールの愛機の命はラファエルが握っている」と言う事だった。
ググってもラファエルの記述にある「内的物質」の意味が解んねぇ(ノДT)ウワァァァン
>>恐怖の亀裂作者氏
狙ったとおりに…とは言いませんがネタの核心を掴んでくれて幸いです。
ノートにイメージ画を書いた時に「夜道に出る変質sh(ry」の様になってしまった事から思いついたのですが。
>>◆.X9.4WzziA氏
出た出た…しかしやはり首をつけただけでは未完成?
「もっとカッコイイの」に密かな期待…
>>鉄獣28号氏
コロンズ団編決着ですか。次はどんな強敵が出てくるのか楽しみです。
前作と違って主人公のレベルを下げると同じ様な敵でも意表を突いた強さが見えたり…
192 :
↑:04/08/03 16:34 ID:???
あっ、ヤバイ…名前の所に「書いてる物体」入れ忘れた
【第三章】
白み始めた曇天の夜空の下、ブレイカーが歩く。鉄屑の山々を時に踏み越え、時に避け
ながら。…豪快に山々を掻き分け疾走したいところだが、頭上を何度も特大のサーチライ
トの光が通過するためそれはできない(光源は無論、ウェバンの山麓からだ。何しろ昨日
の今日、監視も厳しくなる)。光の通過の度物陰にコソコソ隠れるのは実に「らしくない」
光景ではある。
そしてブレイカーの小脇に抱えられたビークル上で、渋い表情なのがエステルだ。いつ
も通りの紺の背広姿は既に臨戦体勢が整った証。…しかし、何しろ地図がない。そのため
この深紅の竜の視力のみが頼りなのだが、手掛かりが掴みにくく目的地に中々たどり着け
ないでいる。
ブレイカーの胸部ハッチから、ビークルのコントロールパネルへとケーブルが伸びてい
る。このゾイドの視点で得た情報が様々な形で確認できる寸法だ。エステルはそれに目を
移しては周囲に視線を戻すという作業を延々と行なっている。
「ブレイカー、急ぎましょう。手掛かりは動かない熱源。きっと彼の住処から発せられる
ものだから」
キョロキョロと首を振り、周囲を見渡しながら歩くブレイカー。その内に、エステルの
想定した通りの熱源が発見された頃には早朝五時を回っていたのである。
あの、掘建て小屋の前。こんな人っ子一人住んでいない鉄屑の山々の中、この建物の存
在はあからさまに不自然だ。
背後でブレイカーがうつ伏せる中、引き戸に手を掛ける。…しかし、びくともしない。
額に刻印を浮かべたエステル。鍵に手をかざす。カタカタと音がする。もう一度引き戸に
手を掛けると難なく開いた。
玄関から室内を見渡す。…電気がついていないのは無論だが、人の気配が一切ない。
(あの子は、既に登校したのかしら? 学校までは相当距離があるからね…)そう推理し
たエステルは、ひとまず靴を脱ぎ、玄関に上がる。…柔らかな物腰で畳の上に正座。その
後ひとまず深呼吸すると、室内に響く程度の音量で喋り始めた。
「さあ、トール。悪いけれど上がらせてもらったわ。そろそろお出迎えしてくれても良い
んじゃないの?」
その声に、部屋の空気が動き始めた。…ガラスの破片を纏って実体化する三つ目の竜!
《お…おお! …エステルか? エステルなのか!? これは夢か、幻か…!》
「それは私の台詞よ…。まさか千年振りに貴方に会えるとは思わなかったわ、『雷聖竜セ
イスモサウルス・ゼネバスの雷神』トール。
時には敵として戦場を渡り合い、時には友として背中を預け合ったあの頃が懐かしいわ」
エステルのあの鋭い瞳が潤んでいるかに見える。
《ホッホッホッ、その徒名で呼んでくれるか、『黒騎士の娘・蒼き瞳の魔女』エステルよ!
千年前がまるで昨日の出来事のように思い出せるわい!
しかしお主が来たということは…もしや、外では彼奴がいるのか!?》
トールの声に外で畏まっていたブレイカーがうつ伏せ、引き戸越しに顔を覗かせて挨拶
する。
《おおブレイカーよ! 『紅き鎧の魔装竜』お主も元気そうで何よりじゃ!》
ブレイカーはピィピィと、この時とばかりは隠密でやってきたのを忘れて甲高く鳴いて
みせた。まさに三つの生命が時間を超えて再会したこの瞬間を、彼らは思う存分堪能した
のである。
「…ところで」
徐に、話しを切り出したエステル。
「トール。旧交を暖め合うために、私は貴方に会いに来たのではないわ」
急激に鋭さを取り戻していくエステルの眼光。畳ばりの大部屋を、一気に緊張感が走る。
《ほう?》
「昨日の早朝、橋の向こうにあるウェバンのエレメンタリースクールに、不思議な形の野
良ブロックスが出現した。
野良ブロックスは校庭で突如荷電粒子砲を発砲し、暴れ始めた。…私の教え子が止めよ
うとしたら突如そいつは消滅した」
《何…!》
「そいつは金色でやや大きい球型のコアブロックに頭が六つついている、実に奇妙な形を
していたと言うわ。そしてその一つが…」
言い掛けたところで、エステルは気付いた。ゼネバスの雷神とまで称されたあのゾイド
が、驚きの余り戦慄いていることに。
空も白み始めてきたこの鉄屑の山道を、ベッサは早歩きして来た。もう一息で橋が見え
てくる。…途中、遠くで鉄屑の山々を掻き分けるような音が聞こえたため、彼は登校ルー
トを変更した。ここら辺一帯は野良ゾイドが簡単に侵入できること位、彼も十分承知して
いたからだ。もっとも今日に限っては、彼の推理は少々外れていたのだが。
右肩に引っ掛けた布袋が、今日はかなり大きく膨らんでいる。それは当然だ。…作り直
してやったのだから。
急ごう。急いで今度こそきちんと従わせよう。ベッサは一層歩を速めたのである。
《我らセイスモサウルスの一族は、本来人と交わらず、ひっそり暮らしてきた。…ささや
かな平和を捨ててまでして戦乱に身を投じたのは、『大義』のためじゃ。惑星Zi征服の
野望を抱くヘリック共和国軍を大陸から追放し、新たなる平和と秩序を確立する…そう訴
えるゼネバス皇太子の三顧の礼に応えたのじゃ。
その節は、お主とブレイカーのみならず『黒騎士』そして先代の『蒼き瞳の魔女』の世
話になったものじゃな…》
「困っている者を助けるのはゾイド乗りの掟。あの時は当然のことをしたまでよ」
《ふふ、相変わらずじゃな…。
あの後も、我らは戦い続けた。ゼネバス人もそれに答えてくれた。足を失えば新たに足
を作ってくれた。コアに傷を追った時は、この身に合う特注のコアブロックをわざわざ作
ってくれた。…そうやって九百と五十年余り、彼らと友に戦い続けてきた。
じゃが、イブは中々振り向いてくれなかった。我らは最後にはここウェバンにまで追い
やられ…遂に、全滅した。この地は「流刑者の街」となり、罪人とされたゼネバス人はゾ
イドの解体・廃棄作業を強制された。そして儂は生きながらにして解体された挙げ句、こ
の地に打ち捨てられたのじゃ》
トールの目に光るものがある。…湿気が水滴を作った、只それだけのことではあるが、
それにしても。
《ゼネバス人は長い強制労働によって大半が死に絶えた。僅かに生き残った者もいたが、
そんな彼らにヘリックの連中はどうしたと思う?
『永きに渡る怨恨の清算』と称して軍の大半を引き上げたのじゃ。…ゼネバス人を経済的
に自立が不可能な状態にまで追い込んでおきながら!
一方でヘリックは『友情の証』として自国民をこの地に沢山入植させた。何が起こるか、
わかるじゃろう?》
厳しい面持ちで聞き入るエステル。…僅かなゼネバス人はヘリック人入植者に迫害され
た。耐え切れなくなった者は多くがこの地を離れたに違いない。
《ベッサはそんなゼネバス人の、最後の一人じゃ。…両親がこの地を逃げ去った時、捨て
られたらしい。
儂はあの子が野盗に捕まったところを睨み続けるより他なかったのじゃ。ところが、そ
うしたらイブの気紛れか、首だけはどうにか形になり、動けるようになった。もっとも夜
中だけじゃがな。
かくしてベッサを救った儂は、あの子の親代わりとなった。…ゼネバス人を守れなかっ
たせめてもの罪滅ぼしとしてな》
「罪滅ぼしだなんて、貴方に罪はないわよ…」
《強者は破れることが罪じゃよ。多くの弱者を巻き込む》
ここまで喋って一息ついたトール。一方、聞き入っていたエステルは驚きこそしなかっ
たものの、相応の覚悟の上で話しを聞いていた。この義に篤いゾイドの身に起きた不条理
極まりない現象、これを理解するには過去にしかヒントがないだろうと考えていたからで
ある。
《ベッサは優しい子じゃ。それに真面目じゃ。ヘリック人の作った学校に通い、ヘリック
語の教科書を学び、ヘリック人の中に溶け込もうと努力している。
じゃが、ヘリック人の友達は中々できない。それどころか毎日嫌がらせを受けて帰って
くる。…あの子が公用ヘリック語の教科書を二度盗まれ三度受け取った先日、儂はあの子
にプレゼントをした》
「貴方のゾイドコアのコピーを与えたのね?」
《玩具のコアブロック程度の大きさじゃ。ゾイドコアの全てをこんなものの中に収めるの
は未だ不可能じゃよ。性格や知識のコピーなど到底できぬから、主人に対しては非常に従
順じゃ。
だからお主が語ってくれた話し、儂は信じたくはない。ベッサは永い艱難辛苦の日々の
内に、憎しみの炎を心の奥底に宿していたことになる…》
「トール、憎しみを抱かない者なんていない。でも、だからこそ耐えるべき時は耐えなけ
ればいけない。
幸い、昨日の事件は大惨事には至らなかった。ベッサ少年も反省している筈よ」
《ベッサ一人が我慢すれば解決するのか?》
「…!」
《あの子はもう、登校した。今頃は学校に到着している筈。…この部屋に儂の与えたブロ
ックは残っていない。大方持っていったんじゃろう。何しろ格好良く作り直すと言ってい
た位じゃ。
ベッサがどんなブロックスゾイドを組み立てようと、あの子を虐げる口実になるのは間
違いない》
今日も変わらず鳴り響く目覚まし時計。ギルが眠い眼を擦るのも同じだ。狭いテントの
中で座ったまま着替えるのも。
曇天の朝も相変わらずだ。但し朝というのに薄暗い位で、遠くで心無しか雷鳴が聞こえ
る。もうじき降るかも知れない。
いつもなら、テントの外にはこれから就寝する予定で丸くなっているブレイカーと、朝
食を調理途中のエステルの、背筋のピンと伸びた後ろ姿が見える筈だが今朝、その姿はな
い。一瞬ボオッとしてしまったギルであったが、昨晩を思い出しようやく合点した。そう、
エステルは昔の友人に会いにいくと言っていたではないか。だとしたら、きっとブレイカ
ーもお供についていったに違いない。…何しろギルなんかより遥かに付き合いが長いのだ
から。
テーブルには皿が二枚、メモ書きが一枚。皿はサンドウィッチが盛り付けられラップの
掛けられたものと、卵だけが乗ったもの。メモ書きの中身はこうだ。
「目玉焼きはできたての方が良いでしょう。いつも通り、軽く走ってから食べて下さい。
遅くとも九時頃までには戻ります」
そしてキッチンにはスープの入った鍋が置かれている。相変わらず、律儀で、几帳面な
人だ。
顔を洗い歯を磨くと大きく背伸びをし、軽く両手を振り回す。…チーム・ギルガメスの
試合は今日こそ開催される筈だ。そう思うと自然と力もはいってくる。
階段を駆け上がって土手上に登り、昨日のルートを走り始めたギル。…昨日のように、
右手遠くに見える学校の方へ向かってみよう。なあに、まさかあんな不思議な物体が今日
も現れるなんてことはないだろう。この瞬間まで、彼は実に軽やかであった。
橋は濃い霧に包まれ、前方が良く見えない。空が白み始めたというのに。ベッサは急い
だ。
緩い下り坂に差し掛かる。自然と軽くなっていく彼の足取り。
やがて、彼の望むものが見えてきた。霧の中からぼんやりと浮かび上がった校舎。そし
てその中央に、彼奴は確かにいたのだ。…膝を折り、校庭に尻をつき、俯き加減で佇む姿
はまるで孤独に打ち拉がれた少年のようだ。だが、そのままの状態でも校舎より大きく、
意匠も又ゾイドそのもの。両腕には巨大な鉤爪。両足も又太く、鋭く長い爪が生えている。
背中には何枚もの羽根が見える。そして何より、胸にはあの金色の球型ブロックが緩やか
に明滅し、それを基点に長い首が前後に三本ずつ生えている。…右の手前はクワガタ虫、
後ろは兜魚の顔。左の手前は一角竜、後ろはようやく下顎のついた仮面竜。そして中央後
ろは凛々しい竜の王者の顔がついていた。しかし、中央手前…間違いなく他の五本の首を
統べるだろうポジションには、何故か顔がついていない。
「そこにはトールがつくんだ」
あの優しい首だけのゾイドと同形の玩具は、又いつものように小さな袋に入れて首に吊
るし、懐にしまっていた。ベッサは立ち止まると、それをシャツの上から握り締める。…
激しい動悸。気がつけば己の呼吸も荒い。ひとまず大きく深呼吸。次いで肩に吊るした布
袋を見遣ると自然と浮かんできた微笑み。
最高の相棒は、目前だ。これに乗って、トールを迎えに行こう。迎えたら…。
「迎えたら、どうしよう」
様々なイメージが一瞬過る。だが、大きく首を何度も横振りすると、今度こそ走り出し
た。
「ま、ま、又かよ! どうなってるんだよこの街は!」
狼狽えながらもどうにか悪態をつくギルだったがそれも束の間、すぐに涙目となる。何
しろ霧の向こうの校舎には、昨日よりも更に巨大な野良ブロックスが鎮座しているのだ。
「又今日も、試合中止か…。あんまりだ! あんまりだーっ!」
ゾイドウォリアーにとって、試合の有無はそのまま生活に響いてくるから彼が怒るのは
無理もない。早速引き返そうとする…が、ギルは大事なことを思い出して立ち止まった。
「先生も、ブレイカーも出掛けちゃった…」
全身を、正体不明の寒気が襲う。どうしよう、どうすれば良いんだ!? 両手で頭を抱
え悩んでいるその時。
霧を引き裂き、谺したのは銃声。
ギルの背筋が凍り付く。
「あのブロックス!?」
違う。…校舎の前に掛かる、橋の方からだ。野良ブロックスには変化が見られない。
どうしよう。物凄く嫌な予感がする。躊躇し俯く。
だが、やがて意を決するとギルは上を向き、走り出した。
「だって、そこに困っている人がいるかも知れないじゃないか!」
気がつけば横転していたベッサ。…走っているその最中、左の腿に刀で斬り付けられた
ような衝撃を受けたからだ。痛みは引く様子もなくそれどころか頭のてっぺんにまで侵食
しているかのようだ。この位大したことない、そう自らに言い聞かせて両手を地面につき、
立ち上がろうとする。…だが、持ち上がるのは上半身と右足のみ。何が起こったというの
か? 腿の辺りを左手で触る。生ぬるい感触にもしやとベッサは慄然し、掌を見つめた。
…彼は声を失った。真っ赤に染まった掌。そして鉄と硝煙の匂い。
「そこまでだ、ゼネバスの少年」
その声と共に、霧の中から人の群衆が現れ始める。十人? 百人? いや、その倍以上
はいる。老若、男女。…子供の姿まで見える。それもベッサと同い年位の。中にはベッサ
をよってたかっていじめたあの連中までいるではないか。皆、着慣れた袖の長いシャツに
丈の長いズボンかスカート。動き易く、汚れても良さそうなくたびれた格好。だが彼らは
皆、携えていた。鉄パイプや農作業具、果ては護身用の木刀・警棒など、容易く人を殴り、
場合によっては殺しかねないものを。
群衆の中央から一歩出たのは、初老の、背の低い男性だ。猟銃を両手で握っている。
「…そ、村長、さん?」
「お前に村長などと呼ばれる理由はないな。まして、名前で呼ばれるのも汚らわしい。
それにしても、だ。昨日と言い今日と言い、まさかこんな化け物を呼び寄せるとは!
何とも恐ろしい少年だ。
教師共も甘い、甘過ぎる! 全く、孫達が教えてくれなかったら今頃どんな惨事になっ
ていたことやら。
だがそれもどうにかこれで防ぐことができる。おとなしく、地獄に落ちるがいい」
猟銃を構え、憎悪の目で照準を合わせる村長。彼を先頭に一歩一歩、得物を構えてにじ
り寄る群衆。呆然たるベッサ。表情からは真っ白になる程血の気が引き、両手を、唇を戦
慄かせるばかり。
しかし、この両者に割って入った大声。
「待てぇッ! 待てぇーーーーっ!
待てったらーーーーっっ!」
それと共に乱入してきたのはギルガメスだ。
息を切らして走る、走る。流血寸前のその場に近付いた時、横転したまま立ち上がれず
にいる少年を確認すると「ベッサ、大丈夫か!?」と再度の怒鳴り声。呼ばれた彼はそれ
が救援であることすら認識できぬ様子でギルを見つめるばかりだ。
橋の中央に立ち塞がったギル。猟銃の照準越しに放たれた刺すような視線の正面に彼が
立ち塞がると、群れの視線もそこに集中する。一瞬たじろいだギルだが、深呼吸して大喝。
「何なんだ! 何なんですかあんた達は!
ベッサが何をやったか知らないけれど、子供でしょ!? よってたかって嬲り殺しにし
ていいんですか!」
それと共に群衆を睨み付ける。ゾイドバトルの試合でも中々お目にかかれない、ギルの
放つ鋭く厳しい視線に今度は群衆全体が怯むみどよめくが。
一発。二発。村長が曇天に向けて放ったのは空砲だ。慌てて耳を押さえるギル、そして
群衆。
「余所者は、下がっているがよい。この少年は儂らが裁く」
その一言は消えかけた火に油を注ぐようなもの。ギルはすかさず立ち直ると睨み返し、
そして怒鳴る。
「だから『裁く』って何なんですか! そんなに偉いんですかあんたは! 相手は子供で
しょう!? 無抵抗でしょう!?
大体、その『余所者』って言い方も気に喰わない。僕にだって名前が…!」
言い掛けたところで、瞬時にギルの耳元を襲った衝撃。…発砲、された。怒声を断ち切
られ、棒立ちになる。おまけに膝が震え出した。
「やかましい! いいか余所者、貴様がゾイドウォリアーのギルガメスであることは孫達
から聞いておるわい。このゼネバスの少年を助ける愚か者だということもな!
折角だからお前にもよくわかるよう、教えてやる。…ここはウェバン、ゼネバス終焉の
地じゃ。そして最後までゼネバスに与した『天下の大悪竜』セイスモサウルスの長・トー
ルを葬り去った地でもある。
しかし! 大悪竜トールは己がゾイドコアのコピーを何処かに隠し、最後までその在り
処を明かすことはなかった。我らの父母も捜索に努めたが、今の今まで発見できぬままと
きた。
…発見、できるわけがなかったのだ! 何しろ玩具に偽装して隠されていたのだからな
あ!」
「え、おも…ちゃ? まさか、まさか…」
「そのまさかだ!
そこのゼネバスの少年の持つ布袋には、隠されておる。大悪竜トールのコピーゾイドコ
アを使った玩具、即ち、そこの学校で間抜けそうに眠っている野良ブロックスの分身が
だ!」
呆気にとられるギル。余りに突拍子もない話しだ。しかし一方、ベッサは図星を指され、
動揺の色を隠せない。…まさかそんなことと思いつつ後方のベッサを一瞥するギル。だが
当のベッサは視線を反らす。(ちょっ、ちょっとベッサ!?)ギルは狼狽えたが、しかし。
「だから我々は、そこのゼネバスの少年を処刑する。惑星Ziの平和のために、な」
村長の決意に満ち満ちた声に、ハッとなったギル。
「…て」
俯き加減でギルは何か口走る。が、掠れ声では聞き取れない。
「? …どうした、余所者。文句がないならそこを退け」
「…てよ。…待てよ。待て、待て、待てって言ってるだろッ!」
再度の大喝は腹の底から絞り出すような声。それと共にもう一度、あの鋭い視線を今度
は村長に向けて放つ。
「村長さん、もしあんたの言うことが本当だったとしても、まだ誰も死んでないでしょ
う? 傷付いてないでしょう? 誰も酷い目にあってないのに勝手に人を血祭りに上げて
いいんですか?
それにあんた、彼とまともに話ししたんですか? …話すべきなんじゃないんですか?
もっと沢山、話さなきゃ、いけないんじゃないんですか?
そういうの、やるべきこと全てやって、それでもまだやり足りない。だから全力を尽く
すのが大人のやるべきことなんじゃないんですか?」
だが村長は、ギルの問い掛けに対しフンと鼻で笑った。
「そこまでする必要は、全くないな」
「な…!?」
「何故なら、儂らはヘリック人で、そこの少年はゼネバス人だからだ」
声を失ったギル。今、彼と村長達との間に立ち塞がっているのは余りに高く、厚く、強
固で且つ見えない壁だ。
彼の心境などお構い無しに銃を突き付ける村長。続く村人も得物を構えて臨戦体勢を整
える。
「もう一度だけ言う。退け。退かねばそこのゼネバスの少年と同じ目にあう」
最後通告。…だがその一言を口走る村長を睨み付けたギル。小声で何か呟くと、ふらり、
ふらりとまるで海藻のような動きで目前の集団へ近付き始める。
「そうですか、そうですか…」
表情から伺えるのは喪失感。狂気さえ孕んでいるのではないかと思わせるその瞳。しか
し何より恐るべきは、丸腰なのだこの少年は! その勇気はあっさりと無謀を通り越し、
奇妙な威圧感を発して村人を怯ませ後ずさりさせていく。
そして、気がつけば村長の真正面。
猟銃の長さよりも短い距離に、二人は立っている。
ギルより、村長の方がやや背が高いか。
だが背の低い方がとった行動に、高い方も周囲の者達も一瞬呆気にとられた。
恐ろしく明るい笑顔を見せたギル。…その刹那!
「○×△□※@#$%ーーーーっ!?」
悶絶し、股間を押さえて崩れる村長。ギルの膝蹴りだ! 村人達も、ベッサも予想外の
反撃。
しかし反撃はそれだけでは済まない。崩れたところで、ギルの背丈程度にまで位置の下
がった村長の頬を、力任せにぶん殴る。我を忘れていた村人達がギルを取り押さえようと
するが、それよりも早く、よろめき横転した村長の両手から猟銃をもぎ取ったギル。
「逃げろベッサーーーーっ!!」
そう叫んだが速いか猟銃を構え、銃口を村長向けて突き付ける。思わぬ計画のほころび
に振り上げた手を止めざるを得ない村人達。
そして、ベッサ。
事態の余りに急激な変化に驚きを隠せないままだが、ギルに呼び掛けられ、初めて自分
は助かるかも知れないことに気が付いた。両手と右足にも力が入る。…しかし、自分だけ
が助かって良いのか?
「ギルは!? ギルはどうするの!?」
「いいから! いいから逃げろ!」
振り向かず、しかし大声で促す。(ごめん、ごめん…)ベッサは溢れそうな涙を必死で
堪えながら、右膝を杖代わりにふらふらと立ち上がる。左足を襲う激痛に顔を歪めよろめ
くが、それでも、それでも彼は、ついさっき歩いてきた道を戻り始めた。逃げる彼の様子
を横目でちらりと見て少々安堵したギル。だが自分自身といえば、生身の人間に武器を突
きつけ脅すという行為(しかもそれが成功する保証は全くない!)に対して動揺が隠せな
い。息荒く、よく見れば引き金に掛かった人差し指も震えている。…当然だ! 何しろゾ
イドバトルでは破竹の連勝を続けるこの少年は、実生活で喧嘩に買ったことなど一度もな
い。そんな彼が理由あってのこととは言え人に猟銃を向け、脅迫しているのだ。
だが、それでもギルは叫ぶ。
「動くな!」
じろりと周囲を見渡し、チャンスを伺い飛び掛かろうとした村人達の機先を制した。そ
の気迫に誰もが息を呑む。 村人達も、横転し鼻血を押さえた村長もだ。
ギルの乱れた吐息、そしてベッサの不安定な足音。それだけがこの場を包んだかに見え
たが。
…。……。
ガツン。
鈍い金属音を聞いたギル。一瞬真っ白になった視界は、ゆっくりと斜めに傾いた。
掘建て小屋の外ではブレイカーがリミッターを解除し、いつでも発進できる体勢を整え
ていた。程なくして小屋の引き戸が開き、出てきたエステル。それを確認したブレイカー
は主人の前に恭しくビークルを差し出す。
「ありがとう」
しなやかな跳躍。飛び乗ったエステルが頷いてみせるとこの優しき深紅の竜は翼を大き
く広げ、そして、舞い上がった。
「急ぎましょう。取り返しのつかない事態になっているかも知れない…!」
事態の深刻さは掘建て小屋の外で聞き耳を立てていた深紅の竜も承知の上だ。一声吠え
ると勢いをつけた。
「ふざけたことしやがってこのクソガキが!」
「こいつをぶっ殺せ!」
真後ろから鉄パイプで殴られたギル。うつ伏せに倒れると群がってきた村人達に取り囲
まれ、よってたかって殴りつけられていた。…既に猟銃は奪い返され、その手にはない。
鉄パイプや警棒が容赦なく彼の頭や背中、尻などを襲い、ギルは堪え切れず亀のように丸
くなる。皮膚は裂け、或いは蒼く腫れ上がっていく。
村長は出血した鼻をハンカチで押さえ立ち上がると、この狂った宴に乗り遅れた者達に
向かって激を飛ばした。
「何をボオッとしておる! お前達はあのゼネバスの少年を殺せ!」
その声に、歓声を上げる村人達。橋の向こうのベッサ目掛けて猛然と襲い掛かっていく。
再三に渡る事態の急変に、無理にでもと歩を速めようとするベッサ。左足を引き摺る度、
鮮血が足跡となる。彼の足跡を踏みにじり、追い掛けていくのは村人達。後にはベッサの
同級生達も続く。
振り向かず、懸命に進むベッサ。
そんな彼を止めたのは非情な銃声。…瞬間、力を失った右膝。ベッサは崩れ落ちた。
だが、だが、それでも、それでも。
顔を起こし、両手の指に力を入れる。這ってでも、前に進もうとするのを止めない。
しかしその両手に。
「捕まえたぞこの糞ゼネ公が!」
容赦ない鉄パイプの一撃が振り降ろされる。
「やっちまえ!」
「肩に掛けてる袋を奪い取れ!」
後に続けとばかりに様々な凶器に乱れ打たれる。両足に重傷を負った状態ではギルのよ
うに丸くなることもできない。頭を、両手を、背中を、そして流血する両足を叩き、殴り、
足げにする村人達。それでもせめて、あの布袋だけはと懐に引き込もうとするベッサ。し
かし村人達はそれすらも許さない。たちまち肩掛けを引きちぎられた布袋。そして。
ベッサが組み立てた、あの六つ首のブロックスが高々と掲げられた。
「見つけたぞ! やっばりこいつだ!」
歓声が上がる。
「そいつをぶっ壊せーーーーッ!」
絶叫と共に、アスファルトに叩き付けられたブロックス。無惨に散った、七色の破片。
「壊せ! 二度と組み立てられないよう、粉々にするんだ!」
「このゼネ公も、ぶっ殺せ!」
相次ぐ歓声と共に、狂気の宴が始まった。
後方では掘建て小屋が、燃え始めていた。気付いたエステルの、ひどく悲しい顔。しか
し、それでも先を急がねばならないのだ。
業火の正体は、掘建て小屋のもう一方の主人が吐いた怒りの炎。
その中で、トールは毒づいていた。
《済まぬエステル。最早儂にはこうすることしかできぬ。
それにしても! 全く、イブは何故そこまでヘリックを贔屓にするのだ! そんなにゼ
ネバスが嫌いか? 共にお主が作った『人』だというのに!
そんなにヘリックを愛するなら、一度は蘇った我が魂をくれてやる!
イブよ、我が最愛最後の友人を助けたまえ!》
白んでいく空。光の粒と化していくトールを崩れ落ちる掘建て小屋が呑み込んでいった。
橋の入り口では黒髪の少年が、途中では亜麻色髪の少年が、取り囲まれ、叩かれ、殴ら
れ、唾吐きかけられていたこの光景は、果てしなく続くかに見えた。
傍らでは村長がギルに負わされた鼻血を拭いている。それを取り巻く何名かの側近。
「…それでは村長、このまま二人とも始末して良いのですね?」
「構わぬ。どうせお主らも、そこまでせねば気が済まぬじゃろ?」
村長も側近達も、不敵な笑みを浮かべた。
「死体はコンクリート詰めにして川にでも流してしまえ」
一方まだどうにか意識のあったギルは、ちらりと横目でベッサの行った方角を見つめる。
無論、彼の身を案じてのことだが、だが彼の目に映ったのは、まさにベッサが銃撃され、
取り押さえられる瞬間だった。
人だかりの外に、血まみれになった両足だけがはみ出ている。足自体に力はないが、引
き摺ってでも前に進む意志は伺えた。だが、それが度重なる暴行に徐々に力を失っていき…。
だらりと伸び切ってしまった両足。
「ベッサぁっ!? ベッサぁーーーーっ!」
「こいつまだ生きてやがる! もっと強く殴れ!」
更に激しさを増す殴打に、溜まらずギルは頭を抱える。ベッサの方は。
「おら、もっと殴れぇっ!」
「おいおい、もう死んじまったかも知れねぇぞ?」
「いいや、ゼネバスは潰しても潰しても蘇る化け物みたいな連中だぜ?」
「同感だ。…ようし、それじゃあもっと!」
完全に力を失い、それがベッサという少年なのか、さっきまでベッサという名前だった
只の肉塊なのかすらもわからない状態で、それでも殴り続ける村人達。
一方、近くでは子供達が、ベッサから奪い取った「さっきまでブロックスだった破片」
を何度も地面に叩き付けて、或いは棒で殴り続けて、粉々にしている真っ最中だ。
鈍い打撃音と歓声に彩られた狂気の宴はまさに最高潮。
だが、遂に宴の終焉をもたらしたもの。
「はっはっはっ! もっとやれーーーーっ!…えっ?」
何度か明滅し、群衆を包み込んだ光。まるで近くで見つめる雷のように眩しい。
余りの眩しさに、思わず手を止めた村人達。ギルも横目でその光源を追う。
光源は、学校の校庭から発生されていた。
「ああっ、又光った!」
「…おい、何だよあれ!? あの野良ブロックスの首!」
そこはトールのためにとベッサが開けておいた、顔のついていない部分。六つ首の中央
手前・残り五つを統べるポジションだ。その部分に幾条もの閃光と、光の粒が結集してい
き…。
形となったのは三つ目の竜の顔。
「セ、セイスモサウルス!?」
「トールだ! 大悪竜トールの顔だ!」
胸部に取り付けられた金色のコアブロックが妖しく明滅する。脈打つ鼓動、そして。
遂に完成し、ゆっくりと立ち上がった「六ツ首竜」。三つ目竜の顔が天高く吠えると残
りの顔五つも追随。六種類の奇声が入り乱れる、何とも不気味な六重奏。
「村長! どういうことだこれは!?」
「あのゼネ公のガキを殺してブロックスを壊せば、彼奴は動かないんじゃなかったのか
よ!?」
「ぬぬぬぬ、これはどうしたことじゃ…?」
急変する事態に血相を変えて詰め寄る村人達。村長も絶句するばかりだ。
だが、六ツ首竜は彼らが思考する余裕すら、与えるつもりはなかった。三つ目竜の顔が
空を仰ぎ、口を大きく開ける。…電気の粒が集まっているかのように見える。
程なく首が降り降ろされた時、口から放たれたのは一条の閃光。…その方角には数人の
村人達がいた。
三つ目竜の吐いた閃光に彼らが包まれた時、皆の耳にまで聞こえてきた。…熱したフラ
イパンに、冷水を引っ掛けたような音が。
閃光が止んだ後、辺りにはどす黒い焦げ跡と、さっきまで村人だったらしい手やら足や
らのパーツが転がっていた。
たちまちパニックに陥った村人達。悲鳴を上げ、散り散りになって逃げようとするが、
その度六ツ首竜が閃光をカーテンのように放ってみせる。一人、又一人と焦げ跡に変貌す
る村人達。…血煙が、ギルの顔にも引っ掛かる。と、気が付けば、永遠に続くのかと思っ
ていた殴打の衝撃が止んでいる。彼はリンチから解放されていた。では、取り囲んでいた
村人達は? …顔を持ち上げ、声のする方を見つめる。
村人達は、橋の向こうへと逃げ去ろうとしていた。ベッサへのリンチは中断され、多く
は横たわっていた彼をも既に踏み越え、泣きわめき、慌てふためきながら走っていく。…
彼らがかつてゼネバス人を追い込んだ、麓の鉄屑の街へと。
だがそれは、他ならぬ六ツ首竜が許さなかった。三つ目竜の首が高々と振り上げられ、
今度は先程までとは比較にならない量の電気の粒が結集している。
そして放たれた、太く稲妻のように波打つ閃光。それは瞬時に、群れの前方と後方を遮
った。…いや、違う! 橋の一部を、切り取ったのだ!
ゆっくりと落下していった橋の一部。村人達の断末魔の悲鳴は、下方の大河に呑み込ま
れていった。
一部始終を、呆然と見つめるより他なかったギル。だが、そんな彼に。
「た、た、助けてくれ!」
すがりついてきたのは村長、そして生き残った村人達。
「頼む、助けてくれよ! お前しかいないんだよ!」
「お前、ゾイドウォリアーなんだろ!? 魔装竜ジェノブレイカーのパイロットなんだ
ろ!? その力で彼奴をやっつけて…」
「いい加減にしろっ!」
ギルはアスファルトに向かって大喝していた。…乱れた息を整えながら、ようやく周囲
を一睨みする。
「あんた達、ほんの数分前に何をやったか、忘れたのかよ!」
だが彼らの応酬を余所に、遂に歩き始めた六ツ首竜。校舎を跨ぎ、一歩一歩ゆっくりと
進んでくる。死神が、鎧を引き摺るような音を立てて。
「ひぃぃぃぃっ! お助け…!」
ギルを盾にする村人達。一方、ふらふらと立ち上がったギル。両の瞳一杯に涙を溜めな
がら、恐らくはベッサの相棒となる予定だったのだろうこの六ツ首竜を睨む。両者の距離
が十数メートルを切った時、六ツ首竜の中心・三つ目の竜の顔は鳴いた。…泣いた。子供
のような声で。
ギル達の脇を歩いていく六ツ首竜。不意に、足を止めるとゆっくりと身を屈め、右手を
降ろす。…その先には、既に解放されてはいたが生きているのか単なる肉塊なのかもわか
らぬギルの友人が横たわっている。そっと拾い上げた六ツ首竜。三つ目竜の頭部ハッチが
開くと、このブロックスはギルの友人を丁重にその中へ招き入れた。
やがて、踵を返した六ツ首竜。背中に生えた何枚もの羽根が高い金属音を立て始めると、
軽く地を蹴って空へ浮かぶ。
六ツ首竜は自慢の首を放射状に伸ばすとうつ伏せの状態になり、ゆったりと、余りにも
ゆったりとした速度で滑空を開始した。助かったのかと一瞬は喜んだ村人達だったが、六
ツ首竜の行く先に気付いて誰もが愕然となった。…そう、この野良ブロックスはウェバン
の、ヘリック人達が住む白い建物の並んだ住宅地へと向かったからだ。もう終わりだと嘆
く者。呆然となる者。狂ったように笑い出す者。生き残った村人達の誰もが死ぬよりはマ
シな程度でしかないダメージを受けている一方。
只一人、崩壊した橋の向こうを見つめていたギル。…既に空は完全に白んでいる筈だが、
曇天はいつにもまして暗い。遠くで雷鳴も聞こえる。いよいよ、降るのだろうか?
と、その向こうから、爆音も高らかにようやくやってきたもの。深紅の竜・ブレイカー
だ。
橋の上に着地したブレイカー。と、その両腕が抱えたビークルから「ギル!?」と叫ぶ
が速いか飛び降りてきたエステル。駆け足で愛弟子の前に馳せ参じた。…だが、傷だらけ
の彼の全身に美貌の女教師は息を呑まざるを得ない。
「…ごめん、なさい」
唇を噛み締め、顔を伏せる。他に、何とも言い様がなかった。如何に愛弟子といえども
今回ばかりは相当な悪態をつかれるのを覚悟したエステル。
だが意外にも、穏やかな表情でギルは首を横に降った。
「いえ、もう、いいんです。…帰りましょう、先生」
そう言って、彼女の横を通り過ぎていこうとする。(え、かえ…る!?)何気ない言葉
にハッとなったエステル。ギルの腕を捕まえる。
「ちょ…ちょっと待ちなさい、ギル!」
だが、ギルはエステルの手を無理矢理振り解こうとする。そうはさせじと力を込める彼
女。容易くギルを真正面まで引き寄せ、怒鳴った。
「何故帰ろうとするの!? あのブロックスゾイドは街の方へ向かったというのに!」
「どうせ今日の試合は中止。…彼奴らは自業自得だから、ベッサの相棒に一人残らず殺さ
れてしまえばいいんですよ」
女教師に視線を合わせる愛弟子の瞳はひどく虚ろだ。
「…貴方、自分で何を言ってるかわかってるの?」
「もしかして、先生やブレイカーがいてくれたらこんなことにはならなかったかも知れな
い」
「そ、それは…」
「けれど、ベッサを助けたなら助けたで、彼奴ら、きっと地の果てまで追い掛けて、ベッ
サを殺すまで諦めないんですよ。
でも! 人種が違うからって、昔戦争に勝ったからって、そこまで人を卑しめることが
許されるものなんですか!? そういうの、いつまで続けるっていうんですか!?
とにかく、僕はあんな奴らのために戦うのは嫌だ! ああいうのは一度痛い目にあえば
…」
エステルの、痛烈な平手がギルの頬を張り、彼の言葉を遮った。
手形の浮かんだ頬を押さえ、向き直した愛弟子。自分自身の瞳にも、そして真正面の女
教師のそれにも一杯の涙が溢れていたことに彼は気付いた。しかも、彼女は打ち震えてい
る。その根源は怒りか、悲しみか。
「ここであなたが戦うのを止めたら、やっぱり罪もない人が巻き込まれるのよ?」
返す言葉がない。エステルも又、返事を求めてなどいない。この師弟の間には、もっと
大事な言葉がある。
まじまじと、見つめあう二人。…やがて、どちらが先に口走ったのか。
「『例え、その行く先が…』」
エステルの額の刻印が解放されると共に。
「『いばらの道であっても、私は、戦う!』」
二人の声が揃うと、ギルの額にも浮かび上がった刻印。
不完全な「刻印」を宿したZi人の少年・ギルガメスは、古代ゾイド人・エステルの
「詠唱」によって力を解放される。「刻印の力」を備えたギルは、魔装竜ブレイカーと限
り無く同調できるようになるのだ!
二人の遥か後方ではうつ伏せになったブレイカーが、一体どうなるのかとハラハラしな
がら見つめていた。だがようやくギルの刻印が解放されたのを確認すると、安堵した表情
で首を持ち上げ、胸部コクピットハッチを開けて主人を招き入れる準備をする。
…歩いて近付き、飛び乗ったギル。
この主従のすぐ手前では、ビークルに乗ったエステルがレインコートを着用し、あの物
干竿のような対ゾイドライフルの使用準備を進めていた。
「ブレイカー、いくよ」
努めて低い声で合図を送るギルだったが、ブレイカーは主人がその気になってくれて嬉
しそうだ。
深紅の竜が天高く吼えた時、遂に、曇天が雨粒を落とし始めた。
ラファエルの指に力が入り、ディバイソンのコアを締め上げる。
同時に、ルガールは愛機が身を捩って暴れ出すのを止めようとした。だが、もはや操縦桿は役目を果たさない。
「セフィロト…これほどの力があるのなら、何故こんな所で油を売っているのだ」
ルガールの声に篭る感情は、ただ怒りだった。
「その力…俺の邪魔立てに使おうと言うのなら!」
煮え滾る怒りとは裏腹に、彼の神経は研ぎ澄まされて行く。
「俺自身の意思で、貴様を殺すッ!!」
2機は極度の接触状態にあった。この距離で攻撃を外す事など、ありえない。
しかし…ラファエルの手にはコアが握られている。こちらがとどめを刺すのが先か、愛機のコアが四散するのが先か。
純粋な速さの勝負。ルガールは突き立てた角で抉る様にラファエルの鎧を剥がすと、17連突撃砲を向ける。
同時に、ラファエルの指に力が掛かる。ディバイソンのコアは暫し躊躇うように歪んだ後、砕け散った。
だがその時既に、ルガールの指はトリガーを引いた後だった。
ラファエルの身体が爆散する。そして、その前でゆっくりと生命力を失ったディバイソンが崩れ落ちて行った。
「…すまん……!!」
ルガールの脳裏を、愛機と共に駆け抜けた時間が通り過ぎて行く。
謝罪の言葉も見つからない。ただ、愛機の命と引き換えにしてまで敵を倒す理由は1つだった。
「俺は…あいつを……止める」
全ての非能力者を救いたいなどとは、毛頭思わない。だが、救うに値しない人間を選り分けている暇も無い。
ただ、セディールの愚行を止める事でのみ愛機への償いが出来る気がした。
「…お前が…お前みたいなガキが…何故、ルガールを殺す!!?」
マサシの喉から、絶叫に近い声が迸った。セディールは嘲るような笑みを崩さない。
<彼は愚かにも、僕の厚意を無駄にしたばかりか、僕に逆らってまでこんな世界を守ろうとしたのさ!
お笑いだね。腕は大した物だったけど、精神が旧人類のままじゃどうしようも無い…>
セディールはリニアをシートの後ろに押し戻すと、操縦桿を握った。
<で? アンタは、お友達の敵討ちでもするつもりかい?>
マサシの中で、何かが切れた。
「ッ…!! 貴様ァァァァァ!!!」
白いジェノザウラーが、黒いバーサークフューラーに飛び掛る。
マサシは右腕部のマルチウェポンパック「盗幻鏡」からビームブレードを出力すると、薙ぎ払う様に斬撃を繰り出した。
セディールは左方のブレードでそれを弾くと、機体を大きく回転させる勢いで右方のブレードを振う。
間一髪でかわしたマサシの額には、汗が玉となって噴き出している。
「コイツ…」
9枚の翼はバスタークロー同様自由関節アームで動かしている。それ故、攻撃範囲も広い。
あまりにも手数が違いすぎた。まるで9本のブレードは意思を持っているかのようにマサシを襲い、シールドで
受け流すだけで精一杯だった。とても反撃に出られる状態ではない。
「…何て戦闘力だ!」
マサシは一端距離を取って、続け様にレーザーライフルを撃ち込んだ。
だが、セディールは完璧に射線を読んでいると言わんばかりに全ての射撃をかわしていく。そして、シャドーエッジの
背部から放射状に何かが放たれた。
「…ミサイル?」
身構えるマサシの機体を、全方位からのビームが襲う。
「…ッ!! 何だ、この攻撃は!?」
飛び回るビーム砲の一機を視界に捉え、レーザーライフルで撃ち落とそうとするが、次の瞬間にはライフル自体が破壊されている。
何とか接近しようとバーニアを吹かすマサシに対し、セディールは突然動きを止めた。
<まだアンタのお友達の方が手ごたえがあったなぁ…まあ、よく頑張ってるから特別に見せてあげるよ。僕の能力を>
総毛立つ様な戦慄がマサシを襲ったが、時既に遅し。
<僕の能力はね、空間を操る力さ…『空間破壊刃(ディメンション・ブレード)』!>
マサシの目の前の空間に、切込みを入れた様な亀裂が現れた。
本日も脳が蕩けそうな晴天…
>>◆.X9.4WzziA氏
リンチ→六ツ首竜覚醒の流れに只管ポカーン…リアル過ぎ、と言いますか。
それにしてもギルの精神sugeeeeeeee!
第9章:激闘!!獣王教団
「ラーイーガー」
「ラーイーガー」
薄暗く、そして広く広大な地底の大空洞。そこにタイマツの火の光を浴びて輝く巨大なライオン型
ゾイドの石像を拝みながら、何百人という人々が不気味な呪文の様な言葉を詠唱していた。
その光景はさながら怪しい宗教団体と思えるような物であった。というか、モロに宗教団体だった。
と、その時、ライオン型ゾイド像を背にする形で、青い布で全身を覆い隠した男が現れたのだった。
「おお!教祖様だ!教祖様が現れたぞ!」
「教祖様!教祖様!」
人々はその青い布に身を包んだ男=教祖に向かって声を上げ、騒ぎ始めたのだった。客観的に見ると
犯罪者チックな怪しい男であったが、人々の騒ぎ様からすると、その人望は厚い様子であった。
と、その時、その教祖の口が開き、彼らに向かって演説を始めたのだった。
「選ばれし我が“獣王教団”信者達よ!!この世で最も強く、そして優れたゾイドな何だ!!?」
「ライガー!!」
「この世でもっとも優れたプロ野球チームは何処だ!!?」
「ライガーズ!!」
人々、信者達は教祖の熱弁に対し、一斉に手を上げ、そう叫んでいた。
「そう!我が獣王教団が神として崇める“獣王神”!!そしてその獣王神がこの世に使わしたライガー
こそがこの世で最も強く、そして優れたゾイドなのだ!!現にあの100年前の大戦はライガー大戦と
呼ぶべき物である程にまでライガー系ゾイドがところせばしと活躍していた!!しかし今はどうだ!!
人々は“三体の古代虎”と言う下等なゾイドなどにうつつを抜かしている!!それではいけないんだ!!
来るべき審判の時の為!!我等獣王教団は獣王神様の教えに乗っ取り、世界中に獣王神様の教えを!!
この世で最も優れたゾイドであるライガーの素晴らしさを!!広めていかねばならんのである!!
そして、来るべき審判の時、獣王神様を信じる我が獣王教団こそが生き残り、そして永遠の幸せを手に入れる事が出来るのである!!ラーイーガー!!!」
「ラーイーガー!!ラーイーガー!!」
教祖の危ない演説が終わるや否や、教祖、そして信者達は一斉に呪文のようにライガーという言葉を叫びつづけるのであった。
「所で、ワイツウルフの方は大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。あのタイガスという若者はあの機体のポテンシャルを十二分に引き出しています。
それに、彼から定期的に送られてくるデータはどれも興味深い物ですから、今後の新型開発にもかなり役立つ物かと・・・。」
ゾイド開発において世界一と名高いゾイテック社。その本社のある一室にて、ある二人がなにやら
話し合っていた。そして、その二人も一人は男性、もう一人は女性の様子であった。
「しかし、ワイツウルフは“アレ”の土台となるだけの存在であろう・・・。」
「だから、サビンガを彼と関わりの深い人物に渡しましたよ。“アレ”が覚醒するかは彼等次第ですが・・・。
とはいえ、仮に“アレ”が覚醒したとしたら・・・、彼、さぞかし驚くでしょうね〜・・・。」
「じゃあ、現在開発が進められているという“RT”と“UTG”の開発はどうなってるんだ?」
「そちらも順調に開発は進んでいますよ。しかし、“RT”はともかくとして、“UTG”は本当に
開発する必要があるのでしょうか?いくら治安維持部隊からの直接的な注文とは言え・・・あれは強力すぎる物ですよ・・・。」
「それについてだがな、しばらく前にスライシティーでバールドコネクションによって放たれた巨大ゾイドが暴れたって事件があったろ?」
「確かに・・・そういう事もありましたね。」
「その際、治安維持部隊の装備はその巨大ゾイドにまったく役に立たなかったそうだ。故に、同じ事が
起こった時の為に、あちらさんはさらなる強力なゾイドを配備しようとしている。それに、そう言う
ゾイドはテロとかの抑止にも使えると考えている様子だしな・・・。昔の人は強力な軍隊は存在する
だけで戦争の抑止になると言っていたが、まさにそれと同じ事をやろうというワケだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「これじゃない!!これでもない!!」
場所は代わり、ゾイド開発においてゾイテックと世界を二分するとすら呼ばれる大企業である、
ズィーアームズ社。その本社内の大資料室において、一人の男が部屋中を駆け回って本をあさっていた。彼はかつてデスレイザーのテストと称してマリンとルナリス等に襲い掛かっていたあのドラゴス-=チュウニッチであった。
「ちょっと!ドラゴスさん!何やってるんですか?昨日のテレビであった昔の大戦中の記録映像を見てからまるで人が変わったみたいに・・・。」
一心不乱に本をあさっていた彼を、彼より若干年下の様な一人の女性が心配そうな顔で声をかけていた。
「こ!!これだ!!」
と、ドラゴスが声を上げて一冊の古ぼけた本を取り出し、そして彼はその場でその本を広げたのだった。
「ドラゴスさん一体何をやってるんですか?」
ドラゴスの散らかした本を本棚にいそいそと直しながら女性はドラゴスに問い掛けていたが、彼は全く耳を傾けようとせずに手に持った一冊の本に見入っていた。
「ドラゴスさん!その本は一体何なんですか!!?」
「あーもーうるさいなーリューコ!!ちょっと静かにしてくれ!!」
ドラゴスはしつこく問い詰めてくるリューコと呼ばれる女性の声に対し、うるさそうにそう愚痴りながら本のページをペラペラと捲っていくのだった。
「エースパイロット名鑑…鋼獣書房刊…?なんでそんな物・・・。」
ドラゴスの反対側に回りこみ、彼の持つ本の表紙を除いたリューコはそう呟いていた。その本はその
タイトルの通り、その昔の大戦で活躍したという数々のエースパイロットについてのデータなどを記した本だった。
「こ!!これだあ!!」
「きゃああ!!」
ドラゴスが何かを見つけた様子でいきなり大声で叫び、そのまま腕をピンと伸ばした際に、その本がリューコの顔面にぶち当たり、思わず彼女は悲鳴をあげていた。
「痛たたたた・・・一体何ですか〜?」
痛々そうに顔を抑えていたリューコを尻目に、ドラゴスは笑みを浮かべ、その本を読み始めていた。
「これだ・・・あの100年前の大戦時代、“緑の悪魔”とあだ名された“マオ=スタンティレル”。
間違い無い!!あの時あの緑色のゴジュラスギガに乗っていた女そっくりだ!!」
「え〜どれどれ?わ〜キレイな人ですね〜。」
なぜかカメラ目線でピースを送っていた一人の女性の写真に、緊張感の無いような声で口ずさむ
リューコとは対照的に、ドラゴスは体中を力ませたような状態で本に書かれていた文章を読み始めるのだった。
>>Inocent World作者さん
ルガールさんのディバイソンが・・・
グラビティー化した後の性能をフルに発揮できないまま(?)敵と相打ちなんて・・・。
その一方でマサさんのジェノザウラーも地味に結構強い武器が備わってますね。
能力者の能力もまた凄いのが出てきましたし。
>>◆.X9.4WzziAさん
それにしても凄い虐待ですね〜。なんか某刑事ドラマの「なんじゃこりゃー!!」みたいなシーンもありますし。
それはそうとして、そう言う人間の心理に関する描写が細かく、かつリアルで怖い位ですね。
袋叩きとか、六ツ首竜の村人虐殺とか特に・・・。
しかし、トールとか色々なゾイドや人が昔から生きているって言うのは凄いですね。
トールなんかは伝説にもなっているみたいですし。
鉄獣28号さんへ
来ましたね大技が。中の人が無事なのはゾイドのサバイバビリティのお陰なんですね。
良く無茶な事している人がバトストにもアニメ二も居ますし。
それよりも…ラーイーガー!何かステキな教団ですね。色々な意味で。
Inocent Worldの作者さんへ
ディバイソンがご臨終。南無〜。
一応”内的〜〜”な事は例の天使が”物質の形態の鋳型、内的存在の具現化を象徴”しているのでとっても解り難いです。
能力を御話的に自分の頭で妄想すると…確立統計学?の「〇レーディンガーの猫」が該当するのではないかと。
ラファエルが手に握るコアはその場に存在しません。そこで先ず本来コアの有る場所を”コアの無い場所”にラファエルは指定します。
その後自分の手に有った事として手の中に以前の手順で存在が宙に浮いてしまった”ディバイソンのコア”を握ります。特にディバイソン自身がコア周辺部にダメージを受けたと言う記述が無かったので。
それが一瞬で起こった為に驚いたのでしょう。正確にはコアでないというので存在を共有させた事になりますが。
極端に言えばそこにない物を有った事にする。内的存在は変な喩えで紙に包まれたガムの宇宙とか、世界の外側の世界とか、ページで隣り合わせになっている宇宙。
そんな不可視なもう一つの世界が色々な物の中に有ると仮定してその内側の方にある世界の存在となります。
良くある?話ではエネルギー開発に使用したり、魔法に使用したりと便利な設定。
◆.X9.4WzziAさんへ
前に〇〇人虐殺の扇動の容疑で戦争犯罪者として〇シェ〇〇ッチ元大統領が指名手配なんて話も有りましたね。
人心は簡単に扇動できますし長い間続いてきた戦乱なら人が別の人種の人に敵愾心を持つのはどうしようもない事かもしれません。
御話的には雷神トールがいたとなればそれも際立つと言う事でしょうか?
しかも体がブロックスでも荷電粒子砲を使えるみたいですし。
なんかここ二日ゾイドインフィニティをやりに市街まで出勤していたら熱射病でシステムダウンしていました。
>鉄獣28号 氏
物語に出てくるキャラクターの「可愛さ」を読者に伝えるのって
結構難しいですよね。マオは事あるごとに敵方とかから美少女だの何だの
言われてましたが・・・ねぇ。
ただ、今はその本人のいない世界だからこそ、その可愛さが表現しやすく
なっているかも。ふと、これはチャンスかもしれないと思いました。がんばってください。
>◆.X9.4WzziA 氏
ゾイドの設定は民族問題を抱えているのですよね。
魔装竜シリーズの世界ではゼネバス人がヘリック共和国@世界最強国に虐げられていたり
子供が心無い大人に虐げられていたり、随分はっきりした強弱関係がバックにあるんだなー
と前から思っていましたが、この話に至ってそれが遂に爆発したという感じでしょうか。
正直、こんなに攻めの姿勢な物語が投稿されるとは思ってませんでした。
ギル君がこの敵に対して(彼の中で)どう決着をつけるのか、しばらく注視したいと思います。
【第四章】
叩き付けるような豪雨の中、飛び去っていくのは民家一軒程度の大きさの小型の竜。青
く、網状の羽根が美しいこのゾイドの名はプテラス。人呼んで「小翅竜」。
小翅竜の頭部コクピット内。パイロットが状況を無線で伝えているようだ。
「…PT−03より本部へ、PT−03より本部へ、6時を以て当機は帰投する。通報の
あったブロックスゾイドを確認。画像を送信するので確認されたい。
当該ブロックスゾイドはウェバン山麓の居住地域に侵入。時速約20キロ程度で滑空し
つつ、山頂方面に向かって徐々に移動、無差別な破壊活動を展開中。…搭乗者との通信を
試みるも回答無し、無人の可能性も考えられる。
被害は拡大の一途を辿っている。大至急、住民に対する避難勧告及び救助活動を行なう
一方、掃討部隊を送り込み、当該ブロックスゾイドの速やかな拘束・破壊を要請する」
今朝、見える筈の朝焼けには雨雲が覆い被さった。そして、白い住宅が群がるこの街に
覆い被さったのが六ツ首竜だ。
六本の長い首を扇形に広げた状態で、一般的なゾイドのイメージからすれば余りにもゆ
っくりと、滑空しつつ進むこの巨大なブロックスゾイド。建物で言えば二階建ての民家よ
りも低い高さに浮かんでいる。…たったこれだけの条件で大量虐殺が可能なのだ、このゾ
イドは! 無数に立ち並ぶ白い街並目掛けて突っ込み、ことごとく二階を薙ぎ払うか、一
階の屋根をその下の部屋に落とすかして前進していく六ツ首竜。各所で断末魔の悲鳴が聞
こえ、壊された住宅からは次々と火の手が上がっていく。どの家庭でも朝食を作っている
時間帯だということが災いしており、その上この豪雨にも関わらず炎の勢いが弱まる気配
は全く見えない。
この事態に至ってようやく鳴り響いたサイレン音。目覚まし時計代わりというには余り
にも大きなその音と共に、ようやく駆けつけた警察部隊が避難勧告をメガホン片手に連呼。
それに対し、早朝の大事件に慌てて起床した一般市民達は、殆ど寝巻きのまま避難用具な
ど大して携行できぬ状態で、警察部隊の誘導で戦場と化したこの住宅地を我先にと逃げ走
るより他なかった。その中には年寄りや赤ん坊を抱えた警察部隊所属のパトルローバーな
ども見受けられる(その小さな体格から3Sクラスに分類され、ある程度自由に市街地を
行き来できる)。彼らはどうにか逃げ出すことに成功できたものの、この土砂降りの中、
麓で燃え盛る業火を道の途中で呆然と振り返るより他なかったのだ。
通った後を廃虚と火の海で包み込みつつ、山麓の傾斜と平行な角度で六ツ首竜は進む。
だがこの巨大な扇に向けて、何発も放たれた銃声。たちまち火花が飛び散り、煙が上がる。
銃声の出所は山麓の中腹からだ。そこには何十匹ものゾイドが集結し、横隊を幾重にも
並べた陣形で六ツ首竜を迎え撃とうとしていた。…そのいずれにも、惑星Ziを背景に稲
妻を被せたあのヘリック共和国軍のマークが施されている。さてこの部隊は二種類の小型
ゾイドの群れと(とは言っても高さだけなら民家の二〜三階程はある)彼らにかなり遅れ
ながら近付く一種類の巨大ゾイド数匹で構成されていた。小型ゾイドの一方は黒色と銀色
を基調とし、人のように直立して活動する竜。人呼んで「小暴君」ゴドス。強靱な脚力を
誇り、その上直立竜ならではの器用な性質から現在も市街戦の主役ゾイドだ。そしてもう
一方は紺色と銀色を基調とし、背を屈め尻尾と首を地面に平行に伸ばす所謂「T字バラン
ス」の姿勢で活動する竜。人呼んで「弩竜」ガンスナイパー。これの祖先は尻尾に蜂のよ
うな毒針を持っていたが、やがて弾丸の射出口と化して遠方の敵を狙撃できるまでに進化
したのがその名の由来である。一方、巨大ゾイドの体躯は六ツ首竜と同等、水色の体色に
紺色の背鰭、弩竜ガンスナイパー同様にT字バランスで歩行するが、巨大な顔と長刀のご
とき美しさを誇る尻尾が鮮烈な印象を与える。人呼んで「大刀暴君」ゴジュラスギガ。近
付けば頭突きと鉤爪のコンビネーション、離れれば徒名にもなった尻尾の一閃。おまけに
相当な力持ちで強力・大型の火気類を多数携行できる、まさに格闘・銃撃両方に対応した
万能ゾイドだ。この作戦ではいずれも背中に長尺の大砲二門ずつを背負っている。尚、彼
らの名誉のために申し上げると、遅れをとっているのは作戦の都合ともう一つ、巨大ゾイ
ドの都市内での歩行は相当な異常事態であるため道の確保に手間取っているからである。
さて、弩竜の群れ。敵機に尻を向けるような一見ユーモラスな格好で、再び尻尾を六ツ
首竜に向ける。寸分の狂いなく一斉に並べてみせるその動きは流石にプロのもの。そして
二度目の銃声と共に、小暴君の群れが姿勢を低くして突撃を開始した。あるゴドスは背中
に銃器を携え、又あるゴドスは両手に銃器を抱えながら、咆哮しつつ正確な射撃を展開し
てみせる。
対する六ツ首竜。徐々に速度を落とし、やがて空中で静止した。それを見た小型ゾイド
達は射撃の効果があったと判断したか、咆哮のトーンを高めながら突進し、射撃の激しさ
を増していく。
静止したままの六ツ首竜は徐に、太い足のみを地面に降ろした。真下にある住宅の残骸
が更に砕ける。その後、ゆっくりと上体を持ち上げていく六ツ首竜目掛けて小暴君、弩竜
の各部隊は怒濤の銃撃を加えていくが。
遂に六ツ首竜、直立。…でかい。突撃を仕掛ける小型ゾイド達の、一体何倍あるのだろ
うか。胸部には妖しく煌めく金色のコアブロック、そしてそれを中心に六本の長い首と二
本の巨大な腕が放射状に広がっている。まるで悪魔が掌を大きく広げたような姿は、豪雨
の風景から僅かながら滲み出ていた光源を覆い隠した。不意の出来事に、小型ゾイド部隊
の各ゾイドもパイロット達も息を呑む。
敵の僅かな動揺を六ツ首竜は肌で感じたのか、すかさずあの禍々しい叫びを披露してみ
せる。…地の底から聞こえるかのごとき六重奏に、さしものゴドス、ガンスナイパー部隊
も足を止め、中には後ずさりしだすゾイドまで出る始末だ。
「馬鹿野郎、ゾイドを怯ませるな!」
声の主は隊長機と思しきマーク入りのゴドスからだ。この部隊の隊長が、コクピット備
え付けのメガホンで周囲に向けて怒鳴り散らす。
「しかし隊長、敵機の醸し出す威圧感は異常です!」
「そんなことが言い訳になるか! 如何なる敵機・災害であろうと最善を尽くし、必ずや
粉砕して国民を守るのが我らヘリック共和国軍だ!
予定通り『草刈り鎌』を敢行する。我々の露払いの後GG(ゴジュラスギガ)部隊によ
る一斉射撃で敵機を沈黙させる。『草刈り鎌』敢行後は速やかに左右に散れ。…わかった
ら、さあ、私に続け!」
そう叫ぶや否や隊長機が一歩前に出、疾走を再開した。他のゴドスが慌てて追随する。
住宅を盾に、或いは踏み潰しながら急な勢いでゴドス部隊が六ツ首竜に近付いていく。
そのすぐ後から尻を向け尻尾を伸ばした状態で、正確な射撃と共に近付いていくのがガン
スナイパー部隊だ。
対する六ツ首竜。扇形に広がった首の根元を注意して見れば、回転軸が三つありその一
つ一つに首が二本ずつ生えていることがわかる。その三つの回転軸を動かし、首の広がり
を扇形から前後三本ずつに切り換えた六ツ首竜。小型ゾイド部隊の攻撃をまるで意に介さ
ないかの様子で大地を踏み締め、傾斜を上がり始めた。
「畜生、これだけの銃撃で平然としてやがる!」
「それももうすぐ終わりだ! 第一陣、ゴドスキック、てぇーーーーっ!」
隊長の号令と共に、最前列を行く十匹程のゴドスが突如身体を大きく時計回りに捻り、
敵機に向けて背中を向けた。と同時に、右足がまさしく草刈り鎌のような角度で後方(つ
まりゴドスの背後であり敵機のいる方角だ)に向けてしなやかに伸びる。…通称「ゴドス
キック」は大地を疾走するこの勇猛な小型ゾイドの脚力を考慮し、前に蹴るよりも強力な
後ろ蹴りを決めるものである。名パイロットと歴戦のゴドスの組み合わせによる正確な一
撃は、自身の何倍もの巨大ゾイドの足を折ることが可能であり、それ程の一撃を陣形を組
んで一斉に浴びせるのが「草刈り鎌」戦法だ。
十匹分の踵が、六ツ首竜の腿や脛、膝、足首など目掛けて立て続けに命中した。「巨大
ゾイドは足元から攻める」のが原則だが、その通りの攻撃がものの見事に命中し、六ツ首
竜はグラリと直立姿勢を崩した。訓練された動きで早速左右に分かれた第一陣。
「よし、効果ありだ! 第二陣、てぇーーーーっ!」
メガホンによる隊長の号令は、叩き付けるような雨音を切り裂く程大きい。その声のも
と、追い付いた第二陣がすかさずゴドスキックを放とうとするが。
…彼らの名誉のために断っておくなら、作戦自体は完璧だった。相手が悪すぎたのだ。
腰を軸に、自慢の長い首を大きく振り回した六ツ首竜。この巨大なブロックスゾイドを
中心に竜巻きのごとき勢いで描かれた円の軌道は、自身に群がったこの小暴君達を第一陣
・二陣ともまとめて薙ぎ払い、横転させる。
ここから先は、六ツ首竜の独壇場だ。
右の手前・クワガタ虫の首。その左右に広がった巨大な牙でゴドスを上下・左右に噛み
切っていく。
左の手前・一角竜の首は、鼻先の鋭い角を一撃ごと正確にゴドスの頭部コクピット部分
を貫いてみせる。
急変した事態に後方のガンスナイパー部隊が慌てて援護射撃するが。
左の後ろ・巨大な仮面竜の首が、ゴドスを頭からくわえるとガンスナイパー部隊の方角
に放り投げていく。繰り返される攻撃は想像だにしない奇襲。味方を銃撃すべきかどうか
判断する余裕も与えられず、急激に混乱していく後方の部隊。
右の後ろ・兜魚の顔はそこにつけ込み、何発もの熱弾を撃ちまくっていく。
ゴドスとガンスナイパーの肉体を構成する黒色・紺色・銀色、そして頭部コクピットを
守るキャノピーの橙色が、鮮血と混ざり合って白い住宅の残骸をキャンパスに描かれた、
それはさながら地獄絵図。刺すような雨足が赤色を洗い流してくれてはいるが、凄惨な構
図は変化の兆しを見せない。
そしてこの事態に後方から近付いてきたGG部隊の面々は、皆地団駄を踏んでいた。
「どうしたゴドス部隊! 応答しろ!」
「駄目だ、生命反応が立て続けに消滅している。
…GG−01より各機へ、GG−01より各機へ! これよりバスターキャノンによる
一斉射撃を行なう」
パイロットのある者は険しい表情を浮かべ、又ある者は唇を噛み締めている。友軍を巻
き添えにして敵を葬り去るより他ない状況だから無理もない。だが、異議を唱えるわけに
もいくまい。
横一直線に並んだゴジュラスギガの群れ。左右の脛の外側から、ゴドスやガンスナイパ
ーの頭部よりも大きな固定器が一斉に地面に降ろされる。背中に抱える二門の大砲(通称
バスターキャノン)を発射する際の反動を防ぐためのものだ。
群れが身構えると共に、たちまち砲門に、エネルギーの輝きが集まっていく。
「…バスターキャノン、てぇーーーーっ!」
耳が張り裂けんばかりの爆音が、十数発。眩く尾を引きながら、発射された熱弾。如何
に目標のブロックスゾイドの強さが計り知れないとは言え、これだけの攻撃に粉砕されな
いわけがない。
対する六ツ首竜は、小型ゾイドの殲滅に力を注ぐ余り、一斉射撃への反応が見られない。
遂に決着したかに見え、パイロット達は拳を握り締めるが、それも束の間。
六ツ首竜の、一本だけ乱戦に加わらなかった竜の王者の首。それがふと熱弾が放たれた
坂の上を見つめると、睨み付け、そして金切り声で鳴き始めた。…呪いの言葉を吐くよう
な調子。すると今までこの悪魔のようなブロックスゾイドに粉砕されたゾイド達の死骸が、
突如として身体を持ち上げ、竜の王者の見つめる方角に向かって磁石に引き寄せられるよ
うに集まっていく。
死骸が折り重なってできたそれは、巨大な盾のよう。
無数の熱弾がその盾向けて、怒濤の勢いで命中。爆音は何秒もの間、雨音を消し去った。
辺りを白煙と水蒸気が覆うがそれすらも豪雨はすぐに消し去っていく。
視界が開けてきた時、ゴジュラスギガの群れと、パイロット達は見た。…微動だしない
悪魔。そしてその中心となる三つ目竜の首が雨雲を仰ぎながら無数の光の粒を口内に引き
寄せていたことを!
雨中に地面と水平のオーロラを描いた三つ目竜の首。その軌跡と共に、真っ二つになっ
たり、或いは両足を切り裂かれていくゴジュラスギガの群れ。
ものの数分の内に、大小様々なゾイドの死骸・破片が無数に散らばる惨状を呈したウェ
バンの麓。…だがこの事態を引き起こした当のブロックスゾイドは無表情だ。辺りがしだ
いに雨音を取り戻す。やがてゆっくりとした足取りで麓を歩き始めた六ツ首竜だったが。
不意の爆音は、後方から。沢山の住宅そしてゾイドの残骸が無数に散らばる麓の下方か
ら、傾斜に沿って急激に伸びていく深紅の光球。何事かと振り向こうとした三つ目竜の首
だったが、光球はそんな余裕を一切与えず鈍いがよく響く金属音と共にこの巨大なブロッ
クスゾイドをうつ伏せにひっくり返す。
光球の正体こそは、我らが魔装竜・ブレイカーだった。左右の翼を前方にかざして体当
たりを決めるとそのまま六ツ首竜の上に馬乗りになり、翼を使ってまるでチョップのよう
に背中を激しく叩き始める。…だが、敵も去るもの。うつ伏せになったままの状態で、覆
い被さってきたブレイカーをその腕で払い除ける。弾き飛ばされたブレイカー、すぐさま
立ち上がるが六ツ首竜にとってもそれは急務。
かくして、対峙した二匹の竜。麓の上から見下ろすのは六ツ首竜。下から追いすがるの
は魔装竜。睨み合う両者。勢い止まぬ豪雨に混じり、何度も轟く落雷が、視殺戦の効果音
だ。しかしながら、背丈だけ見れば前者が後者の二倍近くある。
(大きいな。間近で見れば見る程。だけど…)
ブレイカーの胸部コクピット内。憮然たる表情で全方位スクリーンに映し出された強敵
を睨むギル。あれだけの事件の後、果たして気持ちを切り替えることはできたのか、どう
か。
首を左右に何度か振り、唇を噛み締めると一転、叫ぶ。
「ブレイカー二匹分程度の間合いなら、僕らに有利だ。…翼のぉッ!」
左右に翼を広げ、その内側から双剣を展開して先端を合わせる。
「…刃よぉッ!」
思いのほか軽やかに地を蹴り、ふわりと浮かんだブレイカー。着地点は六ツ首竜の目前
だ。片足立ちの状態で全身を大きく反時計回りに捻ると、その勢いでこの深紅の竜の格闘
武器「翼の刃」が六ツ首竜の左膝に命中。鈍い音。鉤爪を振り降ろして払おうとしたが間
に合わず、グラリとよろける。
「もう一丁!」
今度は時計回りに捻る。再び鈍い音。更に反時計回りの捻りで三度目の鈍い音。慌てて
反撃しようと試みる六ツ首竜だが自慢の首で覆い被さろうとする前に刃で斬り付けられ、
頓挫する始末。…首の長さ、それに三つ目竜や兜魚の顔が吐き出す優れた飛び道具は遠距
離専用の武器。つまり六ツ首竜は相手と離れた方が有利なゾイドなのだが、しかしブレイ
カーは六ツ首竜の懐にまで一気に詰め寄ったため、相手の得意技を見事封印することに成
功している。更に一発、又一発と翼の刃が両膝を襲う。
しかし六ツ首竜。よろめきながらも全ての首で空を見上げ、解き放った奇声の六重奏。
それと共に怒濤の踏み込み。間合いはほぼ密着にまで詰まり、この禍々しいブロックスゾ
イドは巨体を武器にのし掛かる。
「うわっ、お、重っ!?」
ブレイカーと同調(シンクロ)するギルの身にも、激しい圧力は伝わってきた。相手は
そもそもブレイカーよりも遥かに巨大なのだ。その上、坂道から落ちる時に掛かる重力を
も味方にした六ツ首竜の攻撃は、相手の攻撃を封じ込め、覆い被さることに成功した。土
砂やゾイドの残骸などと共に転げ、滑り落ちていくブレイカー。翼を広げて食い止めよう
とする。土砂を、瓦礫を、ゾイドの死骸をまき散らす中。
動きが止まった瞬間、麓の上方に退避した避難民や警察部隊の視界に入り込んできたも
の。…仰向けになったブレイカーの上に跨がり、絶叫する六ツ首竜! 相手の両の翼を広
げ伸ばしつつ、それぞれ巨大な鉤爪で押さえ付けている。力を振り絞るブレイカー。ギル
も呼吸を合わせてレバーを持ち上げようとする。だが、六ツ首竜の腕力も相当なものだ。
鉤爪が、翼が、軋む、軋む。
「畜生、どうすれば…!?」
ギルの意思を反映するかのように、残る両腕で押し返し、払い除けようとするブレイカ
ー。だが肝心の六ツ首竜の顔の表情を見た時、さしものコンビも血の気が引いた。
あの三つ目竜の顔。雨雲を見上げつつ光の粒を口内に集め始めているではないか。
慌てて腕を伸ばし、首根っこを捕まえたブレイカー。だがそれは、六ツ首竜も望むとこ
ろ。かの伝説の吸血鬼(バンパイア)が人の喉元目掛け牙を突き立てようとするかのごと
く、光の粒を溜めた顔を近付けてくる。この至近距離で口を開けたら…! すぐさま両掌
を伸ばし、敵の口を押さえ付けるブレイカー。何とかして口を開けようとする六ツ首竜。
力と力の攻防! 敵の口内から僅かながら光の粒が漏れている。バチバチとブレイカーの
掌で放電するその威力はシンクロするギルにも伝わってくる。…赤に青に、変色していく
指。熱い。焼けただれるようだ。
刻印が輝く額に、そして頬に流れ落ちる汗。拭おうともせず全方位スクリーンを睨み付
けるギル。その向こう、禍々しいブロックスゾイドについた三つ目竜の顔の瞳の部分には、
うっすらと人影が見える。歪む表情。唇を噛み締めながら何事か、何度も呟くギル。
その時、ブレイカーのピンチに割って入った数発の銃声。麓の下方からだ。
「お待たせ!」
ビークルを駆って追い付いた、レインコート姿のエステル。ゴーグルの下から鋭い視線
を放つと、対ゾイドライフルを正確に連射。弾丸はことごとく六ツ首竜に命中、火花を散
らす。…只、成果は別の話しだ。被弾した敵の装甲には弾痕が伺えるものの、打ち破るに
は至らない。しかしながらエステルの裂帛の気合いには驚いたのか、六本の首がキョロキ
ョロと視線を投げ掛けている。
「流石に、硬いわね」
組み合う両者の周囲を回るビークル。隙を伺って二本、三本と首が噛み掛かってくるが、
美貌の女教師はこの豪雨の中を軽やかに避けてみせる。
そして、その最中。
「ギル、ギル、聞こえて? 貴方達の頭の方向に止まるから、合図したらブロックスゾイ
ドにしがみついて!」
呼ばれた生徒の方は、女教師の指示の真意をすぐさま理解した。…だが意外にも、やり
切れない表情を見せたギル。
「…んですか?」
「え…」
「…殺すんですか? 殺すんですか!? 結局、ベッサをころ…」
「ギルッ!」
錯乱し掛かった生徒を一喝した女教師。ゴーグルを額に上げる。…様々な感情がないま
ぜとなった瞳の輝き。
「お願い。私を、信じて」
全方位スクリーン越しに見つめられたギル。やがて、頷いた表情は落ち着きを取り戻し
ていた。
一方、容赦なく襲い掛かる敵。三つ目竜の攻撃を封じられはしたが残る五つの首は自由
に使える。クワガタ虫・兜魚の首が、一角竜・仮面竜の首が、ブレイカーの首や肩、翼の
付け根などに襲い掛かる。ダメージに合わせてコクピット内を、舞う鮮血。…だが、どん
なに痛もうが少年は、合図を待つ!
作戦通り、ブレイカーの頭の方向・やや離れた位置に止まったビークル。素早く照準を
合わせ、エステルは叫ぶ。
「掴まって!」
「はいっ!」
合図と同時にレバーを戻す。そして、再度入れ直す。
そのタイミングと同時に、三つ目竜の口から手を離したブレイカー。そしてそのまま、
覆い被さっていた六ツ首竜の本体にしがみつく。
まさに、てこの原理。ずっと押さえ付けられていた拘束が外れ、口から閃光を放った三
つ目竜の顔。…だがその時には、宿敵の本体は既に自らの胸に飛び込みしがみついていた。
…結果、閃光は虚しく地表に穴を開けるより他なかったのだ。
この瞬間、がら空きになった三つ目竜の口内。どんなにゾイドの装甲が硬かろうが、内
部は大したことはないものである。
「さよなら、トール」
呟きと共に、エステルはトリガーを引いた。…熱弾一閃、三つ目竜の下顎を砕く。
グラリ、落ちていく上顎を見て、思わず息を呑んだギル。だがエステルはすかさず額の
刻印を輝かせると、トリガーから片手を離し、上顎目掛けて気合いの叫び。
「かぁーーーーーーーーっっ!」
重力をも操る古代ゾイド人の超能力。極めて緩やかな速度で、上顎は地表に落ちるに至
ったのである。
ホッと胸を撫で下ろすギル。反対に、呆然とことの成り行きを見つめるより他なかった
ブロックスゾイド。この隙に、すかさず敵を押し返したブレイカー。
「…か、軽い!?」
想定はしていたが。
ゾイドは体格差を始め、超え難い実力差が確実に存在する。…それを埋めるのがパイロ
ットの存在だ。優れたパイロットが搭乗すればゾイドの士気は高まり、実力差をも確実に
埋めてくれる。だからゾイドは常に優れたパイロットを求めるのである。
そもそもベッサがこのブロックスゾイドの操縦は愚か(操縦できたとは思えない)、生
きているのかさえもわからない。だが、ベッサが搭乗している三つ目竜の首が吹っ飛んだ
今、敵の力に衰えが垣間見えたのは明らかだ。
反撃の狼煙が、上がった。
土砂降りの雨はますます勢いを強めていく。その中を降り立ったビークル。軽やかに飛
び降りたエステルは、住宅の残骸と荒れた地表とが入り乱れた、この道なき道を走る。
やがて、そこに到着した。横たわるのは、先程彼女が打ち砕いた三つ目竜の上顎。
すぐさま近寄ると、頭頂部のハッチを得意の超能力でこじ開ける。
エステルは見た。眠るベッサを。抱きかかえてみる。…不思議なことに、所々傷を追っ
ていたと思われる部分は奇麗に塞がっている。少年の胸に耳を当てる。聞こえる鼓動にホ
ッと胸を撫で下ろしたエステルだったが。
「動くな!」
エステルが移した視線の先には、共和国軍謹製のパイロットスーツを着込み、銃を構え
た十数人の兵士の姿が見えた。手慣れた勢いで彼女が乗った上顎を取り囲む。
「…何の用?」
努めて低い声で、冷たく言い放つエステル。
「その者は今回の事件の犯人と思われる。引き渡してもらいたい!」
兵士の言葉に、つけていたゴーグルを外したエステル。…切り裂く眼光! 思わず視線
を合わせてしまった兵士達が息を呑んで後ずさりし、中には立ち眩みまで起こす始末だ。
「…つまり貴方達は、年端もいかない少年でさえもゾイドのコクピットから出てきさえす
れば犯人と決めつけるわけ?」
「な…!」
どうにか立っている者の一人が銃口を向けたが、隊長と思しき青年が横に手を伸ばし、
彼を遮る。そして自らは銃をしまうとエステルのもとに近寄り、じっとベッサを見つめた。
「…ところどころ、やけに皮膚が奇麗ですね。ゾイドに治癒されたのでしょうか?」
まじまじと見つめた青年は一転、すぐに背後の部下達に指示を出した。
「救急隊を呼べ! 少年の負傷は一応治癒されているようだが、変調の危険もある!」
その声に慌てて敬礼を返した兵士達が散っていく。
「ありがとう。…私はチーム・ギルガメスの監督、エステル。いつでも出頭し、事実関係
を説明する用意があります」
「そうして頂けると助かります。それでは…」
すぐに担架と傘が用意され、兵士達はベッサを運んでいった。
その後ろ姿を見つめて呟くエステル。
「これも、ヘリックか…」
激闘が続く向こうへ視線を移すと、早速ビークルに駆け戻った。
翼の刃がしなやかに一撃、又一撃。その度、鈍い音が豪雨の中を谺する。
ゾイドを格闘によって粉砕する場合、関節・それも足の関節(付け根・膝など)を狙う
のは基本中の基本だ。しかし、こうも奇麗に命中していくようでは…。
今一度、覆い被さろうとするブロックスゾイドだったが、踏み込むことすらできず、只
ひたすらサンドバックとなって技を喰らい続けるより他ない。再三に渡るダメージに加え
て相当な自重により、既に立つのがやっとの両足。胸部に埋め込まれた金色のコアブロッ
クが輝きを弱め、残る五本の首が苦しそうに口を開ける。対するギルそしてブレイカー。
ここに至って表情を一切変えず、黙々と攻撃を放つのみ。
そして、決着の時。
「ブレイカー、魔装剣!」
ギルの合図と共にブレイカーの頭部の鶏冠が前方に展開し、煌めく短剣となる。
対するブロックスゾイドも五本の首を振り上げ、空高く吼えてみせる。
両者とも、一歩大きな踏み込み。土砂が波のごとく跳ね上がる。右から刺しに掛かった
ブレイカー、上から首ごと叩き付けるのはブロックスゾイドだ。
しかし、今ならブレイカーの勢いが優る。強烈なブロックスゾイドの一撃により背後で
土砂が、破片が、飛沫が跳ね上がる。…だがそれよりも早く、ブロックスゾイドの懐を貫
いていた魔装剣の一撃。
「1ぃっ、2ぃっ、3んっ、4ぃっ、5ぉっ、これで…どうだぁっ!」
ゆっくりと魔装剣を引き抜く。
ふらふらとよろめくブロックスゾイドだったが。
「立てェーーーーっ!」
大喝したのはギル。
「立てェッ! そんなに憎いなら、立ち上がって僕らを倒せェッ!」
主人が起こした不意の絶叫にブレイカーも驚く。だが深紅の竜も、真意を理解したのか
マイクを通じて叫ぶギルと共に、高らかに吼えてエールを送る。
それが聞こえたのかどうなのか。再び姿勢を戻し、直立したブロックスゾイド。
だが、ここまでだった。胸部のコアブロックが金色の光を失う。と、同時に起こった見
ている者が誰も予想だにしない出来事。
溶け始めた、ブロックスゾイド。直立した状態のまま叩き付けるような豪雨を浴びて、
まるで粘土のように溶け出し、崩れ落ちていくでは無いか。血相を変えたギル。声になら
ない悲鳴を自分自身があげたのも知らず、無我夢中で全方位スクリーン向けて手を伸ばす。
それを受けて雨に濡れぬよう覆い被さろうとするブレイカー。…だが、相手の体格は余り
に大きい。その上よじ登ろうと爪を立てたら装甲までもが崩れ始めた。ギルにも伝わって
きた、血液のような滑る感触。何とかコアブロックだけはと懐に抱きかかえようとしたが
それすらも弾けていき…。
辺りには大量の泥だけが残り、それすらも麓の下方の川へと流れていった。
呆然と、立ち尽くすブレイカー。コクピット内のギルも二の句が継げない。
「もし、遺体が残ったら…」
不意に無線で聞こえてきたエステルの言葉に、我を取り戻したギル。
「共和国軍は戦闘記録を徹底的に調べ上げる。ベッサを守るのには非常に不利な材料とな
るわ。彼が搭乗していたお陰で士気を高めていた可能性があるからね」
「だから…自決、ですか…」
金色のコアブロックは最後の力を振り絞って、自らを分子単位にまで分解させたのだ。
やり切れない。腹の底から声を絞り出すより他ない。
依然散る様子も無い分厚い雨雲を見上げるコンビ。
豪雨は二人と一匹目掛けて、容赦ない勢いでいつまでも叩き付けていた。
この不愉快な雨は三日三晩、続いた。
ようやく晴れた、今朝。
河原ではチーム・ギルガメスの面々がキャンプの後片付けをしていたところだ。もっとも
返却すべきキッチンなり仮設トイレなりは全滅に近く、今行なっているのはさしずめ被害状
況の確認といったところか。…今回の事件を解決するに当たり、多大な功績のあったチーム
・ギルガメスには共和国軍から感謝状と金一封、それに被害にあったレンタルキャンプ道具
などの肩代わりをしてくれることとなった。お金の方は中止になったゾイドバトルの試合で
もらえる筈の賞金に比べれば微々たるものだが、肩代わりの方は有り難い。
ギルはいつも通りの大きめのTシャツに半ズボン、素足という出で立ち。エステルも背広
をびしっと着込んでいる。只、二人とも軍手をはめている。さっさと後片付けを終わらせて
この地を出発したい考えだ。
ブレイカーが土砂や瓦礫を持ち上げ、ギルとエステルで探索する(もっとも力仕事はやは
りギル担当の様子だが)。それにしても、エステルの表情が少女のようにクルクル変わる。
時には完全防水のトランクを発見、中に入っていた着替えが無事なことに目を輝かせ、時に
折角ギルのために作った朝食が雨水まみれで見つかり顔をしかめる。…ギルは、彼女が無理
して演じているのではないかと思うと却って辛かったのである。
だからこそ、ギルは言葉を紡いだ。
「あ…」
「…?」
言い掛けたギル、振り向くエステル。
「あの…ご、ごめん…な、さい…」
ぼそぼそと呟き、顔を伏せてしまう。だがエステル。軍手を外すとギルの頬を撫でつつ伏
せ掛かった顔を持ち上げる。
「私もよ。…ごめんなさい」
魔女とまで恐れられた女性が見せた、穏やかな微笑み。やっぱり、この初心な少年は顔を
伏せるより他なかった。…この三日の間、チーム・ギルガメスの面々はウェバンの警察署で
寝泊まりしていた。事件の重要人物として、彼らは証言する義務と必要があったからだ。そ
して、舌足らずなギルに代わって事件の詳細を証言してくれたのは彼女だった。今思えば、
決戦前、駄々をこねた自分が本当に情けない。
不意に首をもたげたブレイカー。何かに気が付いた様子でピィと甲高く鳴いてみせる。
「あら、もう降りてきたの?」
程なくして、土手の上の方では大量の3S級ゾイドがゾロゾロと湧いて出てきた。続いて
護送車と思しき台車付きの箱を引っ張るバトルローバーが現れたのである。…これらは皆、
ベッサを護衛するためのものだ。彼への嫌疑は、結局のところ「ゾイドの操縦経験無し。動
機も不十分」そして何より、彼に暴力を振るい、被害者ともなった村長以下村人達が一切口
をつぐんでしまったこともあって無罪となった(祟りを恐れたのか、それとも「あの六ツ首
竜はベッサの作った玩具が形になった」と証言して精神病院送りになるのを避けたのかどう
かはわからない)。但し、釈放というわけにはいかなかったのである。何しろ、ベッサまで
もが一連の事件に対し口をつぐんだままで、ギルやエステルの証言だけが宙に浮いた格好と
なっている。それに、結局あのブロックスゾイドが何故現れ、動いたのかを説明する材料は
何も無い。そこで共和国軍の方から孤児として国立の施設に送ることが提案され、それをベ
ッサも受け入れた。表向きは身寄りのない少年の保護、実態は奇怪な事件の鍵となる少年を
絶えず監視し、謎を解明するために。
ギルは軍の真意をエステルに説明され辛い気持ちになったが、それでもベッサが無罪とな
ったことだけは嬉しかったのである。
土手上の囲みの中から、少年が現れた。…ベッサだ。
「ほら、行ってきなさい」
エステルに肩を押され、別れの挨拶に出向いたギル。ブレイカーも後に続く。
河原に一人、降りてきたベッサ。服は軍が一切新調してくれたので小奇麗にまとめている。
だが少々、やつれた様子だ。
「あ、あの…その…」
もじもじするギルを見兼ねて、後ろからブレイカーが大きな指でギルの頭を軽く小突いた。
だが彼は思ったよりも痛かったらしい。頭を押さえ、しかめっ面で文句を言うと、ベッサの
表情に笑みが宿った。ギルもそれに気が付いて、ようやくリラックスした。
「…怪我とか、大丈夫?」
無言で、頷くベッサ。
「前にも言ったけれど、十五才になったらジュニアトライアウトを受けて、ゾイドウォリア
ーを目指すといいよ。
そうすれば、いつかきっと最高の相棒に出会える日がやってくる」
だがギルの言葉に、ふと、寂しそうな表情を浮かべたベッサ。
「…ベッサ?」
視線を外すと襟から紐を引っ張り出したベッサ。…先端に括られた小さな袋。中身を見せ
られたギルは、声を失った。
あの、砕け散った筈の金色のコアブロック。そのジョイント部分には取り付けられていた。
…三つ目の竜の頭部が。
放心したギルを余所に、それを袋に入れ、元通りに懐にしまったベッサ。
「ありがとう…」
この年頃としては馬鹿丁寧な位に深々と頭を下げる。そして、踵を返して一言。
「さよなら」
ベッサは土手上まで、又一人で上がっていったのである。
とぼとぼと、歩き戻ってきたギル。ブレイカーも心配そうについてきた。
「…ギル?」
生徒のただならぬ表情に気付いた女教師。
俯いたままの生徒の肩が、震え始めた。
「大丈夫、ですよね…」
「え…」
「ベッサ、あんなに凄いゾイドがついてくれるんだから…」
最後の方は、嗚咽が混ざって言葉にならない。
彼の言葉の意味を悟った女教師は軽く溜め息をつくと、そっと生徒を抱き締める。彼女
は、土手上でバトルローバーに引っ張られていく護送車をじっと見つめていた。
ベッサが懐にしまった金色のコアブロックが、懐で又妖しく明滅を始めたのかどうかは
誰も知らない。
(了)
取り敢えず、本稿全て投下し終えました。いや、疲れました…。
途中、レスを下さいました方々に感謝。ネタ的に非常に返事しにくかったので、
第二章投下以降は見送らせて頂きました。申し訳ありません。
いつも「子供も読めるように」とは意識していますが、今回は特にそれを意識して書きました。
但し「きれいごとは言ってはいけない」とも考えていましたから、なるべく手加減せず書いたつもりです。
ジャンル「ゾイド」はこういう話しも書ける筈なんです(こういうのばかりでは困るけど)。
まあ、次は痛快な活劇を書きたいですね…。正直、今回は書いてて滅入りましたし。
書きたいことは色々あるのですが、大半を原稿に反映させたつもりですので今日はこの位で。
ラミューズは表情を引き締めてレビオスを見るが刹那にその表情が驚愕を帯びた物になる。
「減っている…実の枷が。もっと有った筈なのに…。」その言葉に一同は一斉に寝ているレビオスを見る。
今彼の背中の植物に付いている実は8つ。しかし彼女の言うには…「38個有った筈なのに…。」「細かっ。」減っているのは事実の様だ。
「何でそんなに数に拘るの?」カリーナが話しかけると「あれは10個で一括りなんです。それ以下では本来の用途に使用できません。」
とんでもなく寒い予感がする。「その使用方法ってまさか?」「そのまさかです。相手を捕縛して完全に動きを封じる為の物です。」折角前向きになったと思えば直に失速する。
どうにも上手くいかない様に誰かに裏で踊らされている気がする。現状が既にそうなのだが更に悪化の方向に直走るのはご都合主義この上無い事だ。
「どうやら最悪の事態が用意されてると言う事か…。」アービンは深く帽子を被り直しながら言った。
「大型エレベーターの使用許可が下りた。」レミントンから第2小隊、第3小隊に通達が来る。「何とかして第5層までは侵攻する必要が有るらしい。」
大まかな内容を聞かされぬままだったらしくレミントンの表情も暗い。「中佐は〜エレベーターシャフトの形状に疑問とぉ〜敵戦力の存在を〜危惧しているみたいですねぇ〜?」
ルディアがそう言うと「姉さん?話が止まるから喋るのを少し待ちましょうね。」そう言ってリディアは姉の口を塞ぐ。
「ひゅぐ〜っ!ひゅぐ〜っ!」と必死に何かを訴えながらルディアは抵抗するが後ろから押さえられている為に如何にも出来ない。
「ルディアの言う通りだ。何せエレベーター自体が幅1km奥行き3kmの3平方kmと変な形だ。当然それ以外の場所は空洞で飛行ゾイドの運用は充分に可能だ。それが頂けない。」
メインシャフトと外壁に支えられ螺旋状に回転して降下する仕組みはエレベーターと言うよりは螺旋構造の昇降口を持つ立体駐車場を化け物サイズにしたような物だ。
違いはそれが道では無く移動式の大型テーブルフロアだと言う事だ。安全性は期待できない次の到着場所が1500m下というのも問題である。
その間はこのエレベーターに釘付けに成り逃げ場が無いのも不安材料の一つとなって深い影を落とす。それが指す意味は…”特攻”ど同意義であり失敗は許されないのだ。
手持ちで飛行可能な機体は緊急で用意された第3小隊の3機のみ。
カイエンのツイステッドゲイル、ミズホの借受け機体のラビットホーン、これまた一時協力の敵戦力サーラのストームラプター。
カイエンはともかく他の2人は戦闘経験の無さをミズホは超人的な空間認知能力でサーラは才能でカバーしている状況だ。
今ここで飛行ゾイドを使えそうな者は居ない。ディオスは機体の修理で同行は無理と来ている。セイスモサウルスは貴重な対空戦力なのだが…。
「待つか…。」ディオス他何とか来てくれた増援のセイスモサウルスを待つ事になる。また夜掛けと言う事になってしまった。
「しかし予想以上でありますね…このフレームは。」自分で設計していながら鋼材と処理の違いで予想を超える段違いの性能を見せたフレーム強度に驚く。
主任技術者らしい女性が胸を張って答える。「そやな。あんさんの”超重装甲の圧縮軽量化技術”は大したもんや。厚さ、重さ1/3で同じ強度もっているんやから。」
更に「その上誰か知らん奴が上乗せした鋼材に関する提供技術を合せたもんやから下手な機体の装甲より分厚いフレームに成りよった。形状のお陰で圧力に対する力も桁違いやし。」
実際に特殊合金圧縮超重装甲をそのフレームの大きさの為3枚重ねで脚部は6枚重ねになっている。「理論上は実体を持つ攻撃っつうてもマッドとかギガとかとどつき合でもしない限り安心やね。」
不吉な事を言う人だとファインは思う。つまりは大質量の物体の運動エネルギーにはやはり敵わないと言う事だ。
「しっかしあのかばちたれは化粧を全部落としていきおった。舐め腐ってからに…ぶつぶつ…。」かばちたれとはアヴィターラの事だろう。まあ如何見てもそうなのだから仕方がない。
「でもや!うちに任せとき!あんさんが使いそうな武器と取れた代わりのアタッチメント付き装甲付けるさかい大船に乗った気でいてえなっ!」嵐の様に言いたい事を言って技術主任の女性は去って行く。
実際はもっと色々喋っていたが覚えていられたのはこれぐらいだったと言う。しかし機体を見上げる…あれだけの事をやって実質無傷。嘗てのデスザウラー等の一部のゾイドのみがやってのけた偉業だ。
それを簡単にやってのけたベルゼンラーヴェ。その上無駄に強力な武器まで付いている。如何した物かと考えるファイン。まず面倒な事になるのは確かな事だった。
十数分後…機体にはゾイドサイズに大型化されたフレキシブルウェポンドライバー1機と2丁の拳銃が有る。
「ず…随分と見慣れた気がする武器を持っている様でありますが…?」その感想に「当たり前やん?あんさんが使い易い様に武器も合せたんやし。」
随分と間違った方向に親切だ。「特に!フレキシブルウェポンドライバーはほんま物のブロックスつこうてるさかい形態変化は一瞬や!」
「それに拳銃の方はリボルバーやらオートマチックな形しとるけど伊達やさかい相手の油断を誘い易い様になっとる。その上薬莢も出る優れ物や!」
更に余計すぎて素敵な偽装構造。「最後に!これは重要や。一応の機構やけど実体弾を装填するとそれもしっかり打ち出せる様になっとる。後は工夫次第って事やね。」
至れり尽くせり。その他には胸部に接続されている無駄に大きい肩アーマーには予備弾薬と追加兵装用の固定ラックがある。
そう機体を眺めていると…「あんちゃん!良くやったな。」例の主任技術者の部下らしき男が声を掛けてくる。
「はい?」生返事で答えてしまうファイン。「まあ良い。所であんた?水中戦得意だろ?」突然核心を突かれてドキッとする。「如何してそんな事が解るのでありますか!?」
「ははは…動きを見れば大体な。あんた移動する時に無意識に抵抗の少ない形に機体を動かしていたからな。水中で動く時は特に重要になるからまる解りだぜ?」
咳払いをして「家の主任が付けた武器だが一応水中でも使えるぜ。その上打撃戦もいけるぞ!あんたらの技術のお陰さ。」にっこり笑って男は言う。
「すいませんであります。わざわざ教えて下さって。」お礼を言うと「気にするな!簡単に壊して貰っっちゃ困るからな。」
準備を終えてファインは機体の乗り込もうとする。「ご足労お疲れさまです。」セフィーナが言う。「何方かというと吊るされて来たのでご足労はなかったであります。」
フェニスの視線が痛いがこの際無視する。「まあハリセンで無駄にはたかれたり命を掛ける羽目になったり践んだり蹴ったぎ!?」ラフィーレの手からハリセンが消えている。
当然彼の顔面を正確に捕らえて離さない熱烈さだった。「まだその機体には不明な部分が多いみたいです。お姉様では動かなかった機構が有ったりしましたし。」
セフィーナの表情はにっこりしているが実際には不安なのかもしれないそんな風に見えた。
◆.X9.4WzziAさんへ
お疲れさまです。世の中上手くは行かないと言うのが感じられました。
戦闘の方はとんでもない性能で六ツ首竜の暴れ振りが印象に残ります。
でかい上に暴力的な攻撃力でゾイドを殲滅。住宅街を破壊して回る異形のゾイド。
怖いんでしょうね…。
良くシリーズ作品を見直すとジェノ系列等のデスザウラーを元とする荷電粒子砲搭載機の系譜を根絶しようとしていたり。
いい大人が子供を見下してこのゼネ公と罵ったりとか厳しい状況が帝国系に多いみたいで。
平和って遠いな〜と思う始末です。
--------
何か自分の書き物が最近何処までが”ゾイド”なのか?に無謀に挑んでいる気がして成りません。如何なんでしょうね?
それはむしろ亀裂と呼ぶよりは、目の前の空間が消滅して行く…そんな表現の方が近い。
「貴様ッ! 何を…した!!?」
<アンタのゾイドが存在する空間…それを、丸ごと破壊させてもらった。空間そのものが破壊されるとどうなるか、解るか?>
マサシは全身に掛かる空間崩壊の巨大な圧力に耐えるばかりで、口を開く事などできはしない。
<回答無しね…じゃあ、答えを見せてあげよう>
一瞬だけ、マサシの周囲に黒い――正確を期するなら、目視できない――球体状の亜空間が出現した。
目視できないのは、その「空間ではない空間=亜空間」が可視光線までも遮断してしまう為だ。
口を開けた亜空間に、穴を埋めようと周囲の正常な空間が流れ込んでくる。この世の物でない圧力を受けたジェノザウラーは、
原形を留めぬほどに粉砕された。パイロットも無事では済まない筈だ。
だが、マサシは身体中のの骨や筋肉が押し潰されるのを感じながらも生きていた。ただそれは、
最期の瞬間まで苦痛を与えようとセディールが仕組んだ残酷な半殺しに過ぎない。
人知を超えた重力の塊から解放されたマサシは、薄れ行く意識の中セディールー笑いセディールの高笑いを聞いた気がした。
「…おっと、もう方舟がこっちに着いてしまう頃だったね」
既に殆ど頭上まで迫った方舟の巨体を見上げながら、セディールは機首を転じた。
「“ギルド”までさっさと行かないと、みんな無駄になる」
バーニアを吹かして飛び去るシャドーエッジ。折しも、この時ルガールはコックピットブロックの脱出ポッドで
方舟を後にしていた。
「これだ! 野良ゾイドならパルスガードが機能していない…これで、機能停止させられる!!」
アレックスは監視付きで自宅謹慎(実質監禁)処分となっていた。だが、行動派の彼がじっとしている筈も無く
自宅のコンピュータから“ギルド”のサーバーにハッキングを掛け、野良ゾイドを大人しくさせる方法を模索していた。
そして彼は見つけた。大戦時局地的に使用された、コンバットシステムを強制フリーズさせるウイルスを
軍事衛星から地上に放射し、戦略級の戦力を無傷で手中に出来る不殺兵器“シギュン”を。
唯一の問題――それは、コントロールシステムが市街の外にあると言う事だった。
げ…12行目の「セディールー笑いーセディールの」って何だ…_| ̄|○意味不明だし
文章を何回も消して直してたら消し忘れがあったのか…
正しくは「セディールの高笑い」ですよ m(VVW)mスミマセンデシタ
>>鉄獣28号氏
状況がやばくなったら容赦無く捨てられるのが追加装甲の宿命ですw
遂に姿を現した最強の能力。対抗する術は果たしt(ry
何かライガー真理教…じゃなかった、その獣王教団。そしてデスレイザーの人。
敵っぽい人たちが続々ですなぁ(* ̄∀)
>>恐怖の亀裂作者氏
(゚Д゚)ポカーン…哲学者の方ですか?
しかし特攻。1stガンダム見て特攻ネタはトラウマにorz
>>◆.X9.4WzziA氏
お疲れ様でした! 良いですよ〜リアル描写好きです。
重力まで操作する古代ゾイド人って能力者よりスゲーとか思ったり。
「え〜何々?“緑の悪魔マオ=スタンティレル。最終的な階級は大尉。人を見かけで判断すると
痛い目を見るという一番良い例。一見華奢で小柄な外見をしているが、冗談のような馬鹿力を持ち、
素手でアタックゾイドの装甲を殴り割る。また、そのタフさも常識を超越したレベルに達しており、
後頭部をゴーレムに殴られても絶命する事は無く、マオなだけに魔王と呼ばれる事もあった。“ってバケモンじゃねーかこりゃ!!」
「一見可愛い外見してるのに本当に凄いですね〜。でも流石にそんな化け物には見え無いんですが私には・・・・」
「だが・・・この本が嘘を書いているとも思えない・・・。」
本に書かれているマオ=スタンティレルの紹介文の中の一文を読んだドラゴスとリューコは呆然と
していた。と、その本の内容に唖然としていた二人であったが、ドラゴスは気を取り直して続きを読み始めた。
「え〜と?“ただ、彼女は単純に力が強いだけではなく、数々の格闘技に精通しており、その技術を
ゾイド戦においても活用しており、格闘戦では無敵を誇った。それだけでなく、気功術を使う事も
可能とし、同じくそれもゾイド戦に応用し、さらには本人曰く「殺気」という物で光学迷彩などで
完璧に隠蔽されているはずである敵もあっという間に発見し、果てには回避不可能と名高いゼネバス砲
を鼻歌交じりで回避してしまう冗談のような反射神経も持っていたという本当にワケのわからん事
に・・・“ってこっちがワケわからんぞ!!そんな人間が実際にいるわけねーだろが!!」
「でもその本はノンフィクションなんでしょ?それに、嘘を書いているとは思えないって言ったのは貴方じゃない・・・。」
「う・・・。」
その冗談のような文章に取り乱していたドラゴスを、リューコはキツイ一言で静めていた。
「あ〜“また、彼女は料理の腕も神童レベルの実力を持っており、戦後は料理店を開いた・・・。”これは割と普通だな・・・。」
「ところでドラゴスさん?これが一体何かあるのですか?」
「ああ、それだが、本題はここから入るんだ。」
「え?」
ドラゴスはさらにページを捲った。その本はエースパイロットのプロフィールだけでなく、
そのエースパイロットが愛機としたゾイドについても詳しく紹介されており、そのページには一体のゴジュラスギガについて詳しく紹介されていた。
「そのゴジュラスギガって・・・昨日の大戦時代の記録映像に登場してた奴そっくりですね。」
「そっくりなんじゃない!これが奴なんだ・・・。そして、この間俺のデスレイザーをボロボロにした
奴もまた・・・。この本によるとこのゴジュラスギガ。パイロットからカンウという愛称で呼ばれていた
そうだが、このメタリックグリーンのカラーリングこそが緑の悪魔と呼ばれる由来となっている。
そして、奴もメタリックグリーンのカラーリングとなっていた。それだけじゃない。お前だって昨日の記録映像番組でこのギガが口から火を吐いていたのを見ただろう!!?」
「た・・・確かに口から火を吐いてたね・・・。」
「そうだ。そしてこの資料によると、このギガは実力を認められたのか、はたまた実験台扱いに
されたのか、機体そのもののレスポンスの強化などを初めとし、他のギガには無いような様々な面での
改造が施されていたという事だ。まあパイロットがパイロットなだけに強化しないとやってられないの
であろうが、この口から火を吐く機構もこのカンウのみが搭載されていた装備の一つなんだ!!」
と、ドラゴスの力説に知らず知らずに聞き入っていたリューコははっと我に返った様子で問い直した。
「それはそうと、それが何かあるというの?ドラゴスさん?」
「ある!!なぜなら俺の推測が正しければ、この間俺のデスレイザーをボロボロにしたギガはこの
カンウ自身かもしれないからだ!!なぜなら奴もこの本に載っているカンウそのままだった上に、
口から火を吐き、デスレイザーの装甲をドロドロに溶かしやがったんだ!!」
と、その時だった。リューコの顔に笑みがうかび初め、ついには笑い出してしまったのだ。
「キャハハハハハハハ!!いくらなんでもそれは無いでしょう!!?だって100年前のゾイドよ!!
とっくに寿命が来てるって普通なら!!だからさ、単なる同型機でしょ同型機!!」
「しかし、奴は実際に現役の戦闘ゾイド、いや、それ以上の動きを見せていた。それに言ったはずだ!!
口から火を吐くのはこのカンウのみだと!!しかも“黒い三銃士”も奴に敗れたのだぞ!!」
その言葉を聞いたリューコは突如として笑うのを止め、深刻な顔になった。
「ど・・・ドラゴスさんならいざ知らず・・・黒い三銃士まで負けるなんて・・・一体・・・。」
「何かその言われ方ひっかかるぞ・・・。それはそうとして、あのギガに乗っていた女は間違いなくこの
マオ=スタンティレルの血筋の者だ。あのギガがなぜ100年間も変わらずいれるかというのはわからんが・・・。」
「じゃあドラゴスさんは何でそのゾイドにこだわるの?」
「決まっているだろうが!!俺は奴にデスレイザーをボロボロにされたせいで減棒処分食らったん
だぞ!!この汚名を返上するのは奴をこの手で倒すしかないんだよ!!!」
再び力説し始めようとしていたドラゴスに、リューコは拍子抜けした様な様子で彼の方をポンと叩いた。
「それはいいけどさ!今度再度外に出てのテストがあるから、その辺も頑張ってよね!」
「て・・・テストだと?」
「そうだよ。そのテストの内容は色々な環境条件かでの動作結果を調べる・・・って言うけど早い話が
遠足みたいな物ね。あと、私も“パラブレード”に乗って同行するから。」
「な!!何だと!!?何でお前までくるんだよ!!」
「しょうがないでしょ?ドラゴスさん一人だけを行かせたらまた何かしでかしそうだし・・・。」
「う〜・・・。」
痛い所を疲れた様子でドラゴスは黙り込んでしまった。
「ファックション!!!」
「何だ?風邪か?」
「誰かうわさしてるのかな〜・・・。」
いきなりくしゃみをしたマリンは鼻をすすっていた。と話は変わってマリンとルナリス等はある町の
喫茶店にいた。実を言うと、この喫茶店。ただの喫茶店ではなく賞金稼ぎ等が集まり、互いの情報を
交換し合ったりするという言わば溜まり場的な場所となっていたのだ。無論マリンとルナリスも他の賞金稼ぎから情報を聞いたりしていた。
「二人共知ってるか?近頃謎のゾイドにZiファイターとかが襲われるって事件が多発してるのを。」
「ええ!!?それって・・・。」
男の言葉に二人は思わず同じ事を叫んでしまった。実を言うと、以前にも凄腕と評判のZiファイターとそのゾイドが襲われるという似たような事件があったりしたのだ。
>>248に訂正です。
>痛い所を疲れた→痛い所を突かれた
>>220さん
>マオは事あるごとに敵方とかから美少女だの何だの言われてましたが・・・ねぇ。
まあ、肝心の本人にはその自覚は全く無いんですけどね。本人が美人と気取っていても
周りがそう見てくれないってのは良くあるパターンですが、自分が知る限りその逆のパターン。
つまり周囲は美人と賞賛するのに、本人が全くそう思って無いというのはあまり無いと思いますからね。
だからこそあえてそう言う設定にしたという事になります。
それ以外にも100年後の時代ならでわの、”現代人のイメージする昔の偉人の人物像と
実際の本人は違ったりする事もある”という事に関したネタもやろうかな?と考えていたりします。
>>恐怖の亀裂作者さん
関西弁(?)の新キャラっぽいのキタァァ!!
それにしても圧縮超重装甲と言い、色々面白い兵器がバンバン登場しますね〜。
>>Inocent World作者さん
空間そのものを消滅させる・・・どことなくその兵器はロ○トユ○バースに登場した
リー○レー○ガンを彷彿とさせますね。それに、また何か新たな凄い兵器が登場しそうな雰囲気ですし。
>>◆.X9.4WzziAさん
お疲れさまです。それにしても描写がリアルで凄かったですね。最初のシーンなんか
怪獣映画を彷彿とさせる程でしたから・・・。
>ジャンル「ゾイド」はこういう話しも書ける筈なんです
それには自分も同意ですね。”こういう”に関する事柄が違うとは言え、
自分もそれに似たような物を目指してますから。今までだってとんでも拳法とか
とんでもな人物とか色々な要素を出してきましたし・・・。
「あんさん!気い付けとき。あんさん等の部隊の居る所相当やばい場所だったみたいや。油断しとると足元救われるで!」
突然内線で話に割って入ってくる技術主任。「あら?マリエラさんはそんなに気にして如何したのですか?」セフィーナが首を傾げながら言う。
「まあまあ指令…じゃなかったオーナー。一応技術が如何こう言うてもうち等が作ったさかいベルゼンラーヴェはうち等の子供みたいな者や。」
何か訝しげな言葉が耳に引っ掛かるファイン。「気にしない気にしない。一応会社のトップや。何か遭った時には戦闘指揮を執って貰う時のための物や。」
「そうですよ。一応オーナーは最後の武器ですから。」胸を張って電波な事を言うセフィーナに恥ずかしいとばかりラフィーレは拳骨でセフィーナの頭を軽く小突く。
「…何か嫌な予感がするでありますね。少し時間を待って貰っても宜しいでありますか?」そう言うと「なら潜航だな。艦長頼む!」ラフィーレは指示を出す。
「了解!潜航開始だ気合い入れろよ。」「ヤー!」完全に指令系統が複数のルートで出来ているらしく問題無く行動が実行される。「海から行くのか?」そうラフィーレが聞く。
「その方が相手に警戒させ易いでありますから。」牽制としての陽動なのだろう。出方が解り難ければ相手はそれを警戒せざる負えなくなる。
戦略に関しては奇を衒う物ばかりで実現性が無い事を良く言っていた男だが戦術に関しては正反対でかなり鋭い行動が多いと何か”惜しい”と言うのが彼の専らの評価だった。
士官学校時代から全く変わっていないなと内心安心している馬鹿な自分がちょっぴり情けなく感じるラフィーレだった。
「まあ…こうしてもう少しお喋りできるって言うのやから少し付き合って〜な。」マリエラに強引に引き摺られ格納庫から去って行くファイン。しかも良く見ると作業用のクレーンローダーで持って行かれていた。
「何でこう吊るされてばっかりなのでありましょうか?」そう言うと「気にしない気にしない!問題は別や!」有る部屋に入る。
「これ見てみい?どうやったらこんなに整合性を持った資料を作れるんや?相手は相当の奴やで。」手渡された機体制作依頼概要を覗き込む。
「…え〜っと?これは…もしかして図書館のお隣さんのエルザさんじゃ?」世の中が狭い気がしてならない。今更ベルゲン達に一杯喰わされた事を確認するファインだった。
「エルザって…あのエルザ?ほんまかいな。あの”ねくらのみかん”の原本持っているって言う?」
マリエラは目を白黒させる。一応この”ねくらのみかん”と言う本は地球人エーリッヒ=シュテーマンの著である。
彼はグローバリーV不時着直後からデルポイの遺跡を調べ廻っていた事で近代史の学者には有名な人物である。
それはさて置き当人が晩年に記したというこの本は地球の技術とこの星の技術。更には遺跡で発見した技術とおぼしき記述を出来る限り正確に記している。
何故胡散臭い名前にしたかは当人曰く「あれは触れざる技術の集大成。記された狂気に耐えられる者等居ないだろう。」との事だったそうだ。
胡散臭い名前はパチ物を連想させ要らぬ災いの種にならない様にとの配慮だったらしい。
「でも甘いのですぅ!この私からすればもっと捻るべきだったのですよ〜〜!」またかとレクスは呟く。如何やらあの機体グロウエイムと言うらしいがかなりやばい物だと認識する。
ここまで来れば驚異的な変異を遂げた存在が多い中未だに傷一つ付かずに攻撃を受け止めその後撃滅している。仰々しい火器の数々を使わずしてだ。
どれも使用すれば一撃で相手を仕留める事も出来るだろうにだ。「無駄玉はビンボーへの直滑降!貯めて貯めて小銭を稼ぐのよ!」もう何の事やらさっぱりだ。
命懸けの癖に妙に緊張感が無い。あの域に達する事が出来れば自分もああ成るのだろうか?何か寒い気分になるレクスだった。
「まあしっかしバイト先のお隣さんとは出来過ぎな話やね。多分その頃からもう準備していたんとちゃうか?そいつ等。」多分そうだろうと思うファイン。
その頃から既にベルゲンは彼のバイト先に入り浸っており別口のバイトとして良く厄介事に巻き込んでくれた記憶が痛く感じる。「ああ…お付き合いする人は考えないと駄目でありますね。」
やりきれない気分にどっぷりと浸かるファインだった。
半人半鳥に組んだ大型ブロックスを見上げベルゲンは笑う。今度は直々に彼に会いに行くのだ。
上手い事奇襲を予測してくれた事でダンスの時間に間に合う目算が立った。「奴も動く…この挟み撃ち如何切り抜ける?フリッケライドラグーン?」
今回はこれでもう出番は終わりである。まだまだ潜んでやらないといけない事が山積みの課題になっている。
しかし今は今度起こり得る事態に期待が膨らんでいた…。
今ラミューズは地上に居る。其処にはラインハルトの依頼で回収したフクロウナギのコアがある。
「御免ね。どうしても力を貸して欲しいの…レビオスお願い。」そう言うとレビオスは空中に飛び出しコアの上空で正八角形の頂点を打つ様に実を放つ。
数分後…其処にはレビオス同様の植物の翼を持つ大型のフクロウナギの戦闘ゾイドが休んでいた。
「これはまたとんでもない事をしてくれる。」アービンも流石に目を見張るそのゾイド。樹の翼には実が撓に実り捕縛結界を形成するには充分だろう。
機体自体も腹部下に巨大な一輪の車輪。背には第4層で植物共が使用していたプラントソードロッドが4本程ある。
尾は火器が集中していてさながらガンブラスターのハイパーローリングキャノンの風体を持っていた。
「あれは…お気に入りです。」如何やら過去の協力者にガンブラスターを使用させて貰っていたらしくその色は黄金色だった。
「お気に入りって物騒な…。」誰かが言う。それもそうで嘗ての通称黄金砲はその一斉射でデスザウラーを蜂の巣にしそれだけでは開き足らずその他の機体も一緒に撃破していたと言う。
そんな危険なアイテムがお気に入りと言われれば引くのは当然かもしれない。
「ふふふ…目覚めたか。だが遅かったな。」最下層で戦闘ゾイドにされつつあるコア。それは突然気だるそうな声?を上げる。
「馬鹿な?既に覚醒を果たしていたか!?」グラハムの表情は血の気を失う。「まあドクター。気にする事は無い。私は言うなれば”精霊”の様な物だ正確な存在では無い。」
「精霊だと?付喪神の間違いでは無いのか?」皮肉を言って牽制する。が「それならそれで良い。我は人の咎より産み出されし偽りの機竜神。ヴィゾールの剣。砕かれし身返してもらうぞ?」
その言葉?と共にレイバークラブを含む5機のゾイドが一斉に無人で動き出し飛び出して行く。「しまった!?」グラハムは叫ぶが手は無い。
「貴公の力存分に使わせて頂こう…ふはははははははは。」声はそれを言い残し消え去った。グラハム自慢のゾイドだ。追い付ける機体等存在する筈も無かった。
全ての歯車があらぬ方へ噛み合い始める。狂った過去と引き裂かれつつ或る今日。災厄の亀裂が全てを飲み込みつつある明日。
そして時は未来に無慈悲な危機を齎す。現実とあるまじき虚構が一つに重なった今この星に区切りが呼び込まれつつある…。
鉄獣28号さんへ
何かドラゴスさんがお馬鹿さん扱い。リューコさんばっさりやり過ぎw
Inocent Worldの作者さんへ
あんまり哲学は得意でないです。その筋方面が好きなだけなので…。
マサシさん昇天。南無〜(もう使えませんどんぶりは2回まで)
ストッパー機能兵器キターーー!間に合うのか?
変な輩まで登場したので…
【人名】
マーヴェラスエルザ:四面獣天の1人で狂気のマッドサイエンティストで本名エルザ=ウッドバレー、
見た目はオタクっぽい女性で”ねくらのみかん”の原本を所持している、裏で色々と情報操作をするのが主なお仕事
文屋のリミィ:とある新聞社に勤める四面獣天の1人で本名リミィ=ティアーズ、デッドエンドファインダーの異名を持ち特ダネを探す日々を送る、
エルザとのコンビで情報操作を行うが写真の力は偉大でエルザより扇動効果は高いらしい
マリエラ=リアトーラ:えせ関西弁のノーブルアーシーズ技術主任、実際は思慮深い正確なのだが切符の良さや言動が災いしてそう思われてはいない
その技術開発能力はエルザと同等、応用力はエルザより上ととても有能な御方、口が軽いのが問題材料
ヴィゾールの剣:施設最下層に有るコアの外部意思端末、正確には人では無いが生前は人でコアに吸収されてしまったとか?
その力で自らのコアを元にするゾイドを自由に操れる力を持つ、正確は到って尊大、高慢で明らかに相手を見下している
【技術】
ホロテックルーン装甲:ホロテックの技術を応用して作られた対光学兵器用装甲で屈折率を計算し尽くした表面で接触したそれをそのまま打ち返す
その効果で相手の兵器を無効化する、使用には装甲表面が超伝導状態になる3℃以下でないと成らないが質量が純粋な光より重い物はこれを撃ち抜く事は理論上不可能
特殊合金圧縮超重装甲:超重装甲の圧縮技術に特殊合金を使用して超重装甲の1/3の厚さで同じ強度を持つ装甲
ベルゼンラーヴェはこれをフレームの材料としているのでデスザウラー以降の決戦ゾイド級の格闘攻撃以外ではフレーム損傷は事実上無い
ルガールは脱出ポッドのレーダーから、微弱ながらよく知る反応を見つけ出した。
「…マサシ? こんな所で何をやっていると言うんだ?」
ポッドを地上に近づけていく。次第に、凄惨な町の廃墟が目に入ってきた。
そして、そこにその機体はあった。無残に破壊され、とてもパイロットの生存は望めないような状態で
横たわるマサシの機体――マーシーが。
「…!? マサシッ!!」
ポッドから飛び降り、ルガールは走った。何かの間違いだ。そう、最も信頼できる仲間である
マサシが――自他共認める腕の持ち主であるマサシが、そう簡単に負けるはずは無い…
しかし、コックピットを覗き込んだルガールに突き付けられたのは、無慈悲な現実。
四肢が奇妙な方向に捻じ曲がり、コックピット内を鮮血に染めたマサシが確かにそこに居た。
もう虫の息と言って差し支えない。どんな攻撃を受ければこんな状態になるのか、見当もつかなかった。
「マサシ! マサシ!! …オイ、目を覚ませ!!」
ルガールの声にはどこか懇願する様な響きが含まれていた。そして、その声に呼応するかのようにゆっくりとマサシが目を開ける。
「…オゥ…どう、した。そんなに…取り乱して。お前、らしくも、無ぇ…」
こんな時は冷静すぎる自分が呪わしくなる。実際、ルガールは取り乱してなど居なかった。例え親友の死であっても、
人の死で動揺するにはあまりに多くの死を見てきたからだ。
そして、無意識の内に悟った真実は「マサシが生きているのは不思議である」と言う事――
それは裏返せば、「いつ死んでもおかしくない」…そんな意味合いになる。
「ケッ…思い出すじゃねえ、か。戦争中…俺、が、重傷…で、病棟に運び…込まれた時…
お前、さ。一晩中…無表情で…俺の隣、に、居て…くれたよな…」
「…さあ、覚えてないな」
ルガールは敢えて、感情を表に出すまいと務めた。声を放って泣くには、自分はあまりに歳を取り過ぎたのだ。
マサシの途切れがちな言葉は、彼の心を見透かしたように無愛想な言葉を無視して続けられる。
「…だが…どう、やら、今度…は、無理らし、い…な…」
ルガールは「馬鹿なことを言うな!」と叫びたい衝動に駆られたが、出来なかった。
それが事実であり、またそれを理解しているマサシにとっては気休めでしかないと知っていたからだ。
「そうか。…ここで、何があった?」
マサシはケラケラと力なく笑った。
「それは…こっちの、台詞だろ…自分も、足引きずって、傷だらけ、でよ」
そこまで言って、マサシはルガールの表情に気付いた。
「…黒い、フューラーに…乗った、ガキが…お前を、殺したと…ほざきやがっ…た、のさ。
奴は…リニアを…連れて、いた。俺は…奴と戦い…敗れ、た」
ルガールの顔が、色を失った。
「空間、を…操る能力…それが…奴の…力、だった…」
虚脱したように自分を見つめるルガールに、マサシは小さく鼻を鳴らして言葉を搾り出した。
「なあ、ルガール…伝説の便利屋、に…最後の…依頼がある…」
もう便利屋稼業は廃業していたが、そんな事は関係ない。
「…何だ。言ってみろ」
「あの、セディールとか言う…ガキ、を…ブッ殺せ。報酬は…俺の店にあるパーツ、全部お前に…くれてやる」
ルガールは無理矢理笑って見せようとしたが、できなかった。仕方なくいつもの抑制された声で答える。
「…OK、その依頼…確かに引き受けた。なお、任務完遂前にクライアントが死んでも任務は続行するのでそのつもりで」
マサシの顔に、今度は心底嬉しそうな笑みが広がった。
「交渉成立…だ、な。信じてる…ぜ……」
――それが、最後の言葉だった。
ルガールは町の端に辛うじて残っていた花を手向けると、脱出ポッドに乗り込んだ。
ふと気付くと知らない内に、彼の頬を涙が伝っていた。それも、灼ける様に熱い涙が。
「…任務を、開始する」
土煙を巻き上げ、飛び立つ脱出ポッド。ルガールが振り返る事は無かった。
>>鉄獣28号氏
?戦艦モノでしたっけ?>ロス○ユニ○ース
最近記憶が曖昧で…ナデ○コとか戦闘妖○雪風とか(以下略
当方2度目の衛星兵器。前回とは全く用途が違う罠です。
それはそうとパラブレード来ますね。竜ペアでヤツが来るのでしょうか。
>>恐怖の亀裂作者氏
マサシまだ死んでない…とまあ今回本当に逝きましたが。
哲学方面好きと言うだけで既に住んでる世界が違う感じがしますな。
関係無いけどホロテックルーン装甲って夏場は涼しそう?
「もしかして・・・赤い怪物って奴?」
「いや、俺が聞いた話では違うと思うぜ。ただ、不思議な事にライガー系やレオ系みたいな、いわゆる
ライオン型は一切襲われてないんだよ。それどころか、襲われた人は口々にライオン型ゾイドの集団に有無を言わさず襲われたって言ってるし・・・。」
と、男がそう言った時、別の賞金稼ぎが現れた。
「ったく俺を始め、ライガータイプに乗ってる人間にはいい迷惑だぜ!何しろ犯人がライオン型ゾイド
の集団という事で、俺たちライガー乗りまで犯人扱いされる始末。本当にハラ立つぜ・・・。」
その賞金稼ぎはそう愚痴りながらコップに入った飲み物をグイっと一飲みにすると何処かへ去っていった。
「まあとにかく、連中の逮捕にみんな躍起になってるって事さ。賞金額もかなりな物になったらしい
しな。それにしても、治安維持部隊の連中も大変だなと同情したいね。あのコロンズ団がやっとの事で
崩壊したと思ったら今度は謎のゾイド襲撃事件。俺がこんな事言う立場じゃないが、君等も気を付けた
方がいいかもな!聞いた話じゃあ、犯人は恐竜型、特に獣脚類タイプを目の敵にしている傾向にあるらしいから・・・。」
「そ・・・そうなの・・・。」
「とにかく犯人は変態かな〜・・・?」
時を同じくして、別の場所の広大に広がる荒野にて、二体のゾイドがレオゲーターの大軍に追い掛け回されていた。
「オイオイ!!いきなり何だよこりゃあ!!ラッキー!!お前まさか何かやったんじゃねーのか!!?」
「そんな事知らないわよ!!タイガス君だってどこかで恨み買ってたんじゃないの!!?って言いたい所だけど、今はケンカしている場合じゃない!!とにかく逃げなきゃ!!」
「右に・・・同じ。」
何処の団体の者かは一切不明のレオゲーターの大軍に追い掛け回されていたのは、かつてゾイドバトル
でマリンとカンウをあと一歩の所まで追い詰めた強豪。タイガス=ハンシーンと、彼の乗るワイツ
ウルフ“トランサー”。そしてもう一機はゾイテック社がワイツウルフとほぼ同時期に出した最新小型
ブロックスゾイドである“サビンガ”であった。サビンガには格闘戦に秀でたムササビヘッドと
索敵能力に秀でたモモンガヘッドという二種類の頭部が存在するのだが、このサビンガはモモンガ
ヘッドを搭載していた。そして、そのサビンガにはタイガスからラッキーと呼ばれた女性が乗っていた。
と、説明を行っている間にも二機はレオゲーターの大軍に追い掛け回されていた。まるで本当に恨んで
いるかのように執拗に追い駆けつづけてくるレオゲーターの大軍に、流石の二人と二機もゲンナリしてきていた。
「お前等いい加減にしろぉ!!」
その時、目にも止まらぬ速度でトランサーが反転し、先頭のレオゲーターの一機に右前足の爪を叩き
つけたのだった。中型クラスとは思えぬ程の威力にレオゲーターは一瞬にして潰れ、ひしゃげ、
そのまま吹っ飛ばされた。さらに後続の別のレオゲーターにぶつかり、そのままドミノ倒しの様に
幾数にも及ぶ数のレオゲーターを巻き込んでいった。しかし、そのドミノ倒しをかわしたレオゲーターもおり、そのままトランサーとサビンガに突っ込んできた。
「ええい!しつこーい!!行くよティニィ!!」
次の瞬間、“ティニィ”と言う発音しにくそうな名前で呼ばれたサビンガが高速でレオゲーターと
レオゲーターの間を縫うように飛び、飛び去った直後にレオゲーターの体がスッパリと綺麗に
切断され、次々に崩れ落ちた。そう、ティニィは両側面装備された飛行ウィングとブレードを兼ねる
ウィングスラッシャーで敵を切り裂いていたのだ。ティニィが格闘戦用ではないモモンガヘッドであるとはいえ、その威力は小型機のレベルを超えていた。
「まだ来んのかオラオラオラー!!!!」
なおも諦めずにしつこく追いかけてくるレオゲーターに、今度はトランサーのエレクトロンハイパー
キャノンが火を吹き、マシンガンの様に超高速連射された電撃弾は次々にレオゲーターに穴を空けていくのだった。
「よし!!今の内に逃げるぞ!!」
「うん!!」
レオゲーターをあらかた倒し、残存する機体の動きも鈍った所を見計らい、そのままトランサーとティニィは走り去っていった。
「それにしても・・・何だったんだろうな・・・。」
「さあ・・・。」
どうにか切り抜けたとは言え、二人はワケが分からないという様子だった。
「フンフ〜ン♪」
一方、ある町の外れにてマリンが鼻歌を歌いながらカンウの頭部に細工を施していた。
「おい!お前さっきから何やってるんだ?」
マリンの行動が気になった様子で、ルナリスもわざわざカンウの頭部にまで上ってきてそう問い掛けていた。
「出来た♪」
「何が出来たんだ?別にこれと言って変わった様子は無いがな〜・・・。」
その直後、ルナリスの言葉に、マリンは思わずムッとした。
「ルナリスちゃん!!もうちょっと良く見てよ!!変わりまくってるじゃない!!キャノピーが!」
怒りながらマリンが指差した先にはオレンジ色のキャノピーがあった。
「まあ確かにオレンジ色になってるが、それだけの事じゃないか。」
その時、マリンは人差し指を左右に振りながら鼻で笑い始めたのだった。
「チッチッチッチッ!それが素人の浅はかさだよ!ルナリスちゃん!」
「何だと!!?というかちゃん付けするな!!とにかくこのキャノピーが何なんだよ!!」
「これ、集光パネルって言ったらどうする?」
「集光パネルだと?」
「うん!丁度この町のジャンク屋を尋ねた時、うまい具合に集光パネルが手に入ったのよ。
だから、あの凱龍輝みたいにキャノピーも集光パネルとして機能出来るように、キャノピーを
集光パネルと交換したってワケよ。それに、通常キャノピーに使われている素材より頑丈だしね。
それを上手くカンウに合わせるように加工するのには苦労したけど・・・。」
と、ルナリスは腕を組んだ。
>>恐怖の亀裂作者さん
ガンブラスターが黄金砲を持っているという事は旧時代のヤツが残っていたんでしょうか?
話は変わって再び設定の説明が来ましたね〜。自分もそんなのやろうとか考えてるんですが
今だに全然やってない・・・。
>>Inocent World作者さん
>?戦艦モノでしたっけ?>ロス○ユニ○ース
確かにそうです。ス○いヤーズと同じ作者のアレです。
それはそうと、マサさんが・・うあ〜・・・。惜しい人を亡くしてしまいました。
この手のキャラはどんな事があっても何故か生き残ってるっていうイメージがあっただけに
かなりの衝撃でした。マサさんは最期に自分が持っている全てのパーツをルガールに
託した様子ですが、ルガールはそれを一体どう使うのか気になります。
「くぅぅぅぅぅ!」グラハムは歯軋りを立てて悔しがる。
これはそもそも以前から共和国内で極秘裏にあーでもないこーでもないと長々議論を続けた結果なのだ。
遙以前から真しやかにこの山には竜神が眠っていると伝えられて来ていた。初の廻合はゼネバス帝国。
デスザウラー敗北により追い詰められた彼らは藁をも掴む気持ちでこれを掘り当てる。しかしその頃既に大陸間戦争が勃発し既に帝国は滅びていた。
しかも堀当てるや否やコアは周囲を巻き込んで自らの体を構成し始める。流石に彼等も危機を感じたか共和国軍に通報。
その後封印の獣と目覚めた少女達と共にコアを封印。深みに沈める事に成功した。
そしてそれをひた隠しにする為にこの施設が秘密裏に建設されたのである。しかし今になってゼネバスの者達と同じ過ちを彼等の直接の上官は行ってしまう。
直に汚染は始まり多数の命が奪われ貪られた。更には屍すら利用される始末。グラハムは何とか禁忌の技術を持ってして被害を拡散せずに保ち続けていたがそれも限界に来ている。
予想外の外部意思端末。このコアは自らの腹を満たす為にそれを起動させ行動を起こす。目的は封印の獣と盟主である少女だろう。
「もう少し早く目覚めて居れれば!」グラハムの拳は地に振り下ろされた。
「何!?下方より高熱原体5つ?早いな。気付かれたか!」レミントンは機体を立ち上がらせて身構えさせる。
ここはエレベーター内の大型テーブルフロアだ。セイスモサウルスの到着とパイロットの休憩を終えていざ出陣。その後30分丁度中間点での事だ。
しかしそれらは二手に分かれその内2機がこちらに向かって来るらしい。姿を確認する。
「ちっ!よりにもよってエルダー5か!タイミングの悪い…。」ブラックオニキスが挨拶代わりの荷電粒子砲を撃つ。
しかしそれは魚と蛇、鳥の掛け合せに到着する前に軌道を捩じ曲げられ明後日の方向に流れて行く。「どう言う出力だよ!その電磁誘導シールドはっ!?」
蛇の口から希硫酸弾が降り注ぐ。「それは却下ですぅ〜!」エレクトロンドライバーが希硫酸弾に直撃し化学変化を起こして相殺される。その直ぐ後ろからは光子バズーカの光が相手に直進する。
今度ばかりはその場を離れて回避する敵ゾイド。その間にもう1機は後ろに回り込もうとしていたが対空砲火の前には如何にも突破口が開けない様だった。
飛んでいる方にも強引に仕掛けられない理由はある。先ず第1に一度失速すると現状復帰に時間の掛かる場所であるという事。
もう一つは姑息にも弾薬の消費を狙っていると言う事だ。直に思惑を理解できる物ではあるがかといってそれを止めれば相手に嬲り殺しと非情に厳しい状況だ。
しかも相手は値踏みでもする様に攻撃を仕掛けるゾイドを代えている。要するに彼等にとっては”遊び”に過ぎないのだろう。
だが油断が過ぎたのか砲撃の合間にフロア下部に隠れていたカイエン、ミズホ、サーラの一斉攻撃に翼を貫かれ失速闇に墜ちて行く。
「…何とか退けた様だが。残りの3機を追うのは無理か。」一度作動すると到着まで移動方向を指定できない為彼等は第5層に行くより手は無かった。
地上では爆音が響いている。やっと準備の出来たフクロウナギ型のテールディザスターはレイバークラブを含めた3機にエルダー5の襲撃を受けていた。
「う〜〜〜!」ラミューズは必死に機体を動かし難を逃れているが飛び立つ事が出来ずに尾の黄金砲が使用できない。嘗ての仲間が残してくれた形見。こんな所で奪われる訳にはいかない。
何とか砲撃を躱していたが岩につまづいて機体が横倒しになってしまった。「嘘っ!?こんな所で!」死を覚悟し目を閉じたが一向に止めが来る事は無かった。
「お痛は其処までだよ。無駄飯蔵喰らいの大王クラゲ。」止めの一撃を軽々と指一つで受け止めている鳥人型ブロックス。ベルゲンの駆るテレマ・スクラフトスの姿が有った。
テレマ・スクラフトスの火器で作られた人差し指が光る。次の瞬間竜頭の触腕が解けて消えた。「なっ!?ベルゲン=リッテンバッカー!」トライフォートレスでレイバークラブを含む2機を相手にしていたベルフは叫ぶ。
相手の大王クラゲは竜の触腕を持ち本体からは電撃、ビーム砲と小型の空中要塞を思わせる存在だ。それを楽々と相手をする常識外れのブロックス。ラミューズとベルフの額に冷や汗が流れる。
「こいつは任せておきなよ。どうせ行きがけの駄賃だからね。」自信に満ちた声は機体の掌に纏わり付く青の稲妻を呼び覚ます。「陽勁門奥義…蒼電雷火。」
掌より大王クラゲに送り込まれた電撃は隅々まで行き渡り各部より爆発を起して大王クラゲは墜落する。「さあ。先ずは一匹。次は何奴かな?」大王クラゲには目もくれずに相手を物色するベルゲン。
テレマ・スクラフトス。これも一応モデルの存在する機体だ。しかしそれとは程遠い姿なので今はさほど問題無い。
それよりも問題なのはベルフの機体に弾き出された想定スペックについてだ。如何やら頭部に完全休眠状態のエルダーコアが有る。
それが普通と違う所なのだろう。しかしブロックスの基礎には顔が命と言うとんでもない常識が或るのを忘れてはならない。
ブロックスシステムは頭部を何に設定するかでスペックが全く違う物になる。共和国軍基地では頭部無しが良く発見される。
作業用の機体だ。レオブレイスの頭部が無い組み替え機体だがそれだけで1/10程の出力と10倍の稼働時間が得られるとお得だったりする。
逆もまた然り。あの機体の頭部は唯存在するだけであれだけの事をやってのけると言う事なのだ。
レイバークラブを跳ね飛ばし転倒した所を践み潰そうとしたベルフだがテールディザスターがまだ動きが取れない様なのでサポートに回る。
「すみません…。」謝るラミューズを他所にベルフはテレマ・スクラフトスの動向に注視する。
牽制がてらに指の収束ビームガンを散蒔き動きを制限しながら…こちらを覗いている。相手もこちらに興味津々と言った所なのか迎撃に穴が多い。
しかしじきに動きが変わる。頭部が突然叫び出しエルダーコアの覚醒が確認される。「来たね?本番はこれからだ。」そう言って空中の光点を見上げる。
視界と警戒範囲から脱している大王クラゲは機能を急速回復、増幅させ今度こそラミューズ達を地獄に落とさんと動き出そうとしていた。
しかし…「ESBストライクッ!」空の光点が大王クラゲに墜落する。その直撃は大王クラゲを地面に数mめり込ませその光が弾けると本体が激しく凹み火花を上げる。
少し離れて地面を軽く浮き上がらせて着地した姿はテレマ・スクラフトスと敵対するかの如き竜の面。帰りをずらして奇襲を掛けた相手に更に奇襲を掛けたベルゼンラーヴェ。
「お待たせであります!只今を持って原隊復帰するであります!」両手に握られた拳銃でレイバークラブとライオン顔で下半身が蟻。ミルメコレオの頭部を撃ち抜く。
「ヘイブラザー!ナイスな出遅れだね!お陰で助かったよ…って思い切った姿の機体だねそれ。」やはりフレームの基礎骨格こそ獣脚類の恐竜であるが装甲の被せ具合で人型にしか見えない機体。
それを見ての第一声は予想通りだった。
その銃口をゆっくりとテレマ・スクラフトスに合せながらベルフ達の居る場所に移動するベルゼンラーヴェ。
「如何やら…そっちはまだ目を覚ましていないみたいだね。」聞き慣れたと言うより耳に痛い声が拡声器でファインの耳に入る。
「おや?自ら出陣とは穏やかでないでありますね?今回は如何いった用件で?」声にこそ含みは無いが思い切り皮肉が篭もった切り返し。
「今日は…君に用が有る!食い物の恨みは恐ろしいってね!」そう言うか早いかテレマ・スクラフトスは両手に光を宿して突撃する。
回りに居るエルダー5等眼中に無いと言うが如く。
テレマ・スクラフトスは両手をで何かを包む様な形を取ると指より発射された収束ビームがマーブル模様の球体を作り出す。
それだけでは無く周りが白くぼやける霧を産み出す。「ビームが空気を冷却する…不味いであります!」どう言う仕組みかは解らないがあれは…。
「不条理の急先鋒!冷凍ビーム。それもアブソリュートゼロッ!!!」銃弾を冷凍ビーム球体に撃ち込むが接触と同時に弾丸が凍り付き砕け散る。
エネルギーを纏っていてそれなら手は一つ。ぎりぎり効果発生まで間に合う「ニュークリアインフェルノ!」二つの球体が2機の丁度中間点で衝突する。
結果はEシールド内で熱エネルギーが対消滅を起こし事無きを得る。「ふふふ…マーブルサクションゼロクラッシュを消すとはお見事と言いたい所だけどまだまだだ。」
そのままテレマ・スクラフトスは蹴りを放ちベルゼンラーヴェを吹き飛ばす。無理な体勢からではあるがマグネッサーで宙に浮いた状態の機体なら楽に蹴り飛ばせる。
しかしその蹴りもさほどの威力は無い。ただ距離を開けるだけの為の攻撃。「何時まで眠っているんだ?目を覚ませ。皆がお前を呼んでいるぞ。」
何も無い空間からの声?らしき物が聞こえる。「ふ〜ん。お前がヴィゾールの剣か。嫌みたらしい声だ。」余り人の事を言えないベルゲンの言葉。
「!?我を知る者が居るだと…消せ!此奴を生かして帰すな!」機能を回復、能力を調整増強した3機がテレマ・スクラフトスを一斉に攻撃する。
「チェンジアウト。」その声と共に機影は形を失い3機の一斉攻撃を難なく躱す。「つまらないよ。所詮はカビ臭い頭の使う3流の手に過ぎない。」
そして「サンダーグロウブ。」ベルゲンは感情の篭もらない声で攻撃を命令、実行させる。
鉄獣28号さんへ
コクピットに集光パネル。一段と固くなった様で。レオゲーターと言えばやっぱり集団戦法。
鬱陶しさ目一杯って感じですね。
>〇スト〇ニ〇ー〇
アニメでは伝説の椰子蟹と言われてその後のアニメ制作事情を浮き彫りにする出来事だったそうですが…。
設定とかは好きなんですけどね…プラズ〇〇〇ストとかリープ〇ー〇ガンとか。
Inocent Worldの作者さんへ
おおっ!?早合点すいませぬ。遺言によりお店の商品が成功報酬となりましたが先に手を付けるのでしょうか?
やっぱり手に付けないと話が続かない!?
あの装甲は見た目は涼しげですが多分実際に有るとするとは起動中は触ると危険です。
焦って走らず静かに離れて佇むのがその装甲の前でのたしなみ…です。
<応答しろ、セディール…何があった?>
“ギルド”社長・マクドガルからじきじきの通信だ。セディールは無線機に落ち着いた声で応答した。
「アララテで事故がありまして…方舟が暴走、市街に向かっています。そちらでも何か?」
マクドガルの声は、慌ててこそ居ないが苛立っていた。
<市街周辺を野良ゾイドの集団が囲んでいる。今、隔壁を挟んで能力者部隊と睨み合いだ>
「では、僕が戻って指揮を取りましょう」
一方的に無線を切るセディール。しかし、珍しい事ではないのでマクドガルは掛け直さなかった。
彼はあまりにもセディールを信用し過ぎていた。確かに、彼は実験で生まれた唯一の成功例である兄妹の片割れではあるが…
それだけが理由ではなかった。
マクドガルには、子供が居ない。彼の妻は、“Ignorance catastroph”に巻き込まれて命を落としたのだ。
それ故に彼は、心の何処かで子供を求めていたのかも知れない。例えそれが、鉄のカプセルより生まれ出でた命であっても。
「私を救っておくれ…我が息子よ…」
ルガールは遠くから見える市街に脱帽していた。
街が燃えている。閉鎖された高い隔壁の周りには、数も知れない野良ゾイドが群がっている。
「さて…ろくな任務にも就かぬ間に、会社が危ないとあってはな…やはり、私は便利屋か」
そんな独り言を呟いた時、手元の無線が鳴った。
<ルガールさん、戻ってきましたか! 本社で何かあった様で…それが野良ゾイドをおびき寄せています!>
待ち侘びた、と言わんばかりのアレックスの口調に対し、ルガールは落ち着いて無線を耳元に引き寄せる。
「ふむ、コレでは私も街に入れん。何か、抜け道などは?」
<ありません! 要塞化した市街の守りは完璧で…>
アレックスが最後まで言わぬ間に、ルガールは「そうか」と言って操縦桿を前に倒していた。
脱出ポッドは、中距離ならば小型飛行機の役割も果たす。ルガールのポッドは加速し、野良ゾイドの群れの上を飛び越え、
更には100m以上あろうかと言う隔壁をも乗り越えた。当然、野良ゾイドの対空砲火はあったが
とてもルガールに当たるような物ではない。
ポッドは減速しながら市街中心部へ降下して行き、アレックスの家の前に「着地」した――道路を吹き飛ばして。
彼の家を見張っていた“ギルド”の警備兵は、ポッドを降りたルガールに銃を向けた。
だが、一瞬の早業――ルガールは懐に忍ばせた拳銃を両手に構え、左右二人の警備兵が持つライフルの銃口に弾丸を撃ち込んだのだ。
一瞬の戸惑い。その一瞬に、警備兵は昏倒していた。
「アレックス! ここに居るのだろう!?」
通信の発信源から、彼がこの家にいることは解っている。それを証明するように、本人が飛び出してきた。
「ルガールさん! …頼みがあります。野良ゾイドを止める方法が解ったのですが…」
アレックスは手に持ったノートパソコンのモニターを見せた。
「…この、衛星兵器“シギュン”ならば、野良ゾイドを殺すことも無く、かつ安全に彼らを止められます。
ですが、大戦中の兵器ですのでコントロールシステムは市街の南西部…“星の傷”にあると考えられます」
“星の傷”――そこには大戦の遥か前から、中央大陸南部を2分するほどの巨大な断層が存在していた。
だが、“Ignorance catastroph”の爆発と共に起きた巨大地震によって断層が崩壊、結果、深さ30km、
横幅600kmに及ぶ巨大な亀裂を形成するに至った。
これが、“星の傷”…文字通り、惑星Ziが負った裂傷である。
「本来、星の傷周辺には非常に強力な野良ゾイドが出現する為近づけないのですが…今なら市街周辺に集まっています。
ルガールさんには星の傷へ行ってもらい、コントロールシステムを確保…後、“シギュン”を以って野良ゾイドの機能を停止
させて頂きたいのです。非常に危険ですが…あなた以外に、この任務が遂行できる人は居ません」
アレックスは、自分がどれほどの無理を強いているか解っていた。だから、断られても不思議な事は無かった。
「その任務、引き受けねばなるまい。ただ…私は方舟の戦いで愛機を失ってしまった」
それは、機体さえあれば受けると言う意味だった。アレックスが胸を叩く。
「そうでしたか…しかし! お任せください、“ギルド”で復活させた絶滅種のテスト機があります」
ルガールとアレックスは、野良ゾイドの空爆に混乱する街を駆け抜けて“ギルド”へ向かった。
捕捉入れますと。
・隔壁では空戦ゾイドを防げないので市街のいたるところに対空砲などが設置されている
・マクドガルの年齢は50〜60辺り
>>鉄獣28号氏
えー…実は、マサシが残したパーツは殆ど使いません(汗
戦後に利用法があるかな?程度に考えてましたので。
しかし…ライガー乗りにとばっちりって、本末転倒では!>獣王教団
>>恐怖の亀裂作者氏
手につける予定はありませんでしたが、御二方の意見を見て「あ、そっちの方がいいわ」
とか思ったので今ネタを接合中。「マサシが俺にくれた力だッ!!」みたいな事もやりたいし…
て、対消滅って…反物質?
「まあ確かに、そう聞くと理にかなってると思えなくも無いな〜・・・私もあやかって見るか?ってお前って意外と手先が器用なのか?」
「うん!実家はゾイド修理工場だからね!それなりの事は出来るよ。」
「ん?」
ルナリスは拍子抜けした。
「ちょっと待てよオイ!以前実家は飲食店やってるって言ってなかったか!?」
「あれ?前に言わなかったっけ?私の家は飲食店とゾイド修理工場の兼業って。」
「兼業?」
「うん。元々はゾイド修理工場だけだったらしいんだけど、ずっと昔に曾お婆ちゃんが飲食店を始めて、
それからずっとゾイド修理工場と飲食店の兼業をやってるのよウチは。だから、ウチの家系は代々ゾイド修理の技術と料理の技術の両方を叩き込まれるの。」
すると、先程まで拍子抜けした顔をしていたルナリスが平静を取り戻し、さらに笑みを浮かべた。
「お前も意外と大変なんだな〜。その上に格闘技とかも身に付けたんだろ?フ・・・そう聞くとグレた私が恥ずかしく思えてきたよ・・・。」
「ルナリスちゃん・・・。」
「ちゃん付けすんな!」
「きゃああ!!」
哀愁漂う(?)シーンから一転、マリンはルナリスの鉄拳制裁を受け、そのままカンウの頭から落下してしまうのだった。
「うわああ!!オーイ!!大丈夫かー!!?」
「大丈夫なワケないでしょが・・・。」
カンウの頭部から身を乗り出し、心配そうな顔で問い掛けるルナリスに対し、カンウの頭部から落下し、
地面に叩き付けられていたマリンはピクピクと全身を痙攣させていた。
「オイ!大丈夫か?」
すぐさまカンウから降りてきたルナリスは倒れこんでいるマリンへと駆け寄った。とその時、マリンはルナリスの足をガッシと掴むのだった。
「この仕打ち、どうしてくれようか・・・。」
恨めしそうな顔、声でそう言った時、マリンはルナリスの足を持った手をグイッと上に上げた。
「うああ!!」
無論ルナリスは引っくり返り、頭から地面に叩きつけられた。
「貴様!!よくもやってくれたな!!?」
「うるさい!!貴女には私の報復をたっぷりと受けてもらうよ!!」
「というかそれはお前がちゃん付けをやめないからだろ!!?」
「うるさい!!問答無用!!」
険悪なムードの中、二人は殴り合いを始めてしまった。
「おー!ケンカだケンカだー!!」
「おー!!本当にケンカやってるぞー!!しかもやってるのが女の子二人だよ!!火事とケンカは江戸の華って言葉が昔あったが、本当に華って感じだな〜!」
「ヤレヤレー!!」
「そこだ!!いけ!!ヘッドバットだ!!ブレンバスターだ!!」
「俺にも混ぜさせろー!!」
「うおー!!」
「ぎゃおー!!」
二人のケンカに周囲から野次馬が終結し、さらにはそれに乗じてケンカを始めてしまう者まで現れるのだった。
「あ・・・・・・・・・・・。」
その凄惨となった周囲の状況に、マリンとルナリスは思わず手を止めて呆然としたのだった。
それから数時間後、警察署の中からゲンナリした顔で出てきたマリンとルナリスの姿があった。
あれからケンカはさらにヒートアップし、警察沙汰になってしまったのだ。無論二人も警察のお世話に
なった。逮捕にまではならなかったとは言え、たっぷりと説教を受けた上で二人は開放されたのだった。
「お前のせいだぞ…。」
「ルナリスちゃんのせいだよ!」
「んだと!!?というかちゃん付け…。」
再びケンカが始まらんとしている険悪なムードとなった中、ルナリスは腕を振り上げ、またもマリンを殴りつけようとしたが、理性で必死に押しとどめた。
「もうやめよう…。これ以上何かあったら説教どころじゃすまんと思う。」
「そうだね…。ルナリスちゃん。」
「だからちゃん付けはやめろよ…。」
不毛な争いが無駄だと分かった二人は元気無さそうしながらも仲直りするとにそのまま立ち去っていくのだった。
「何だ…。ケンカやんねーのか。つまんねーの!」
マリンとルナリスが去った時、二人が再びケンカが始めると見越して準備までしてきた周囲の人間は
口々にそう愚痴っていた。というかコイツ等ケンカ以外に娯楽が無いのだろうか?
それから、気を取り直した上で二人は情報収集などを兼ねて街を歩いていた。と、そんな時、
頭の上の髪だけがキレイに剃られているという、いわゆるカッパカットをし、牧師だか神父だかよく
わからんがそれっぽい宗教的な格好をし、しかもその手には分厚い本を携えた中年の男が二人に近付いてきたのだった。
「貴女達は〜獣王神を〜信じますか〜?」
「ハア?」
いきなり意味不明な事を聞かれた二人は思わず口をあんぐりと開けていた。対照的に男はにこやかに微笑んでいる。
「もしかして、何かの宗教の布教活動でもやってるの?おじさん…。」
「そ〜で〜す!私〜ザビエルは〜獣王神様を〜崇拝する〜獣王教を〜世界に広めるために〜布教活動に〜励んでいます〜!」
「…………。」
まるでミュージカルの様にも思える、ザビエルと名乗る男の妙な軽い言葉に二人はやはり開いた口が塞がらなかった。
「どうですか〜?貴女達も〜だまされたと思って〜獣王教信者に〜なりませんか〜?」
そう聞かれた直後、二人はとっさに円陣を組み、ザビエルに聞こえない様に議論し始めた。
「どうするよ?何かいかにも怪しい宗教って感じだよ。」
「そりゃ決まってるだろうが。そんな怪しい宗教には入らん。」
「でも、あんまり事を荒たげると大変な事になりそうだよ。今までのパターンからすると…。」
「だから、穏便に断ろうって事か?何か難しそうだな…。」
円陣を組んだままそう議論し続ける二人に、ザビエルはにこやかな笑顔で近付いてくると、二人はとっさに円陣を解くのだった。
「そろそろ〜返事を〜お聞かせくださ〜い!獣王教に〜入りませんか〜?」
「いや〜ウチ仏教なので〜…。」
「私も似たような物で〜…。」
ザビエルに対して苦笑いをしながら二人は苦しい返答を行うと素早く走り去っていった。が、しかし、何と後からザビエルが追いかけてきたのだった。
「あ〜!待って下さいよ〜!獣王教は良い宗教で〜すよ〜!」
「うわああ!!追いかけて来たよぉ!!!」
「しかも速!!」
ザビエルの足は速かった。その動きにくそうな服装からは想像も出来ない程の健脚を見せていたのだ。
オリンピック級、いや、それ以上の足を持っている二人との差を見る見るウチにつめていく。
「待〜って下さいよ〜!」
「このままじゃ地獄の果てまで付いてきそうだぞ奴は!!かと言って殴ったらまた何か起こりそうだし…。」
「うわぁぁぁん!!怖いよぉぉぉぉぉ!!」
ザビエルの余りの異様についにマリンは泣き出してしまった。と、その時、街外れの駐機獣場にとめてあったカンウとハーデスの姿が見えてきたのだった。
「こうなったら!!ゾイドにのって一気に逃げるぞ!!」
「うん!!」
素早くそれぞれカンウとハーデスに乗り込んだ二人は、起動後、即出力を全開にしたのだった。
「あ〜!あれはゴジュラス〜ギガ〜と〜デス〜ザウラ〜!白〜いゾイドと黒〜いゾイド〜正しくふたりはゾイキュアで〜す!」
なおもミュージカル風言葉をやめていなかったザビエルはカンウとハーデスを見上げ、そう叫んでいた。
そして、そんな彼を尻目に、カンウは追撃モード全開、ハーデスはマニューバスラスターを全開し、飛ぶような速さで逃げていった。
「お〜!逃げられてしまいま〜した〜!残念で〜す!けど…。」
「やっとまいたな…。」
「それにしてもしつこかった〜…。というかまだ追って来そうで怖い…。」
「それと…。獣王教って何だったんだろうな…。」
どうにかザビエルから逃げ切った事で、二人は胸をなで下ろしていた。と、安心するのもつかの間、
カンウのマグネッサー3Dレーダーがこちらへ向けて接近する機影をキャッチしたのだ。
「な…何か来るよ!」
「何か来る?どうせあの街に行こうとしている別口のゾイドだろ?」
「で…。でも…何か数がハンパじゃないんだけど…。」
「何?」
カンウのコックピット内ディスプレイに表示されたレーダーがキャッチした情報を見ていたマリンは
呆然としていた。まだかなり距離が離れているとは言え、その数は大軍団と呼ぶにふさわしい物だったのだ。
>>189で書いた、バチが当たりそうな事とは今回新たに登場したザビエルの事です。
名前は思い切りフランシスコ=ザビエルから取った物なんですが、キリスト教の人がいたら済みません。
自分は別にキリスト教というワケでは無いのですが、バチ当たったらどうしようとか思ったり・・・。
>>恐怖の亀裂作者
竜神と呼ばれる謎のゾイド・・・一体どんなのなんでしょうね?
話は変わって冷凍兵器に対するツッコミには笑いました。
>>Inocent World作者さん
何かギルド社長って自らが息子と信じるセディール自身に殺されそうな気が・・・。
それと、絶滅種のテスト機とは何でしょう?
>>273に訂正です。
>>>恐怖の亀裂作者→恐怖の亀裂作者さん
”さん”を付け忘れていました。レスの無駄使い済みません。
幾重にも分散し最小構成単位の各部パーツになったテレマ・スクラフトスは3機を球状に取り囲み放電を開始する。
電撃の檻に閉じ込められて内部機関をショートさせて3機の機能が停止する。しかしコア自体は全く無事なようで既に内部回路の修復を始めている。
機体を再構成したテレマ・スクラフトスは上空からそれを見下ろしている。「しぶとい…あ〜あ面倒になってきたね。帰ろっかな?」
間違い無く煽りだ。「ぐぬぬぬ…お遊びはこれまげっ!?」突然言葉が途切れる。
ベルゲンは有る場所を見て感心する。「凄いね。あんな不条理の正体を見極めるなんて…機体はともかく乗っている方は着実に力を付けてる様だ。」
視界の果て最早舞台袖と言うべき所でベルゼンラーヴェは必殺の蹴りボルカニックストライクの上位版”Eシールドボルカニックストライク(ESBストライク)”を放っている。
ベルゲンは少し考えて理解する。声?の方向に付いてだ。確かに今ベルゼンラーヴェの居る周辺から声?は聞こえてきた。しかし実際に物質が無いのにそれが喋る事は出来ない。
音声を発生させる為のプロセス全てが満たされていないと言う事になる。其処から導き出される答えは不満だが一つ「空間をスピーカー代わりに使用しているとはね。それが裏目にでたみたいだ。プッ!」
その頃「何っ!?」グラハムは慌ててその場から避難する。何とコアが何も無い空間からの衝撃を喰らい派手に生け贄に成ったゾイド達の残骸へ突っ込んだのだ。「…。」何が何だか訳の解らない状況だった。
「あががが…馬鹿な。空間の歪みで”隣り”を蹴り跳ばすとは…。」つまり彼自身はコアの中から動いておらずコアの隣りに言葉を出すスピーカー代わりの空間を持って来ていたのだ。
その為その場に歪みすら産みだすEシールドの消滅の衝撃波がコアに直撃してしまう悲劇?を生んだ。事象には原因が有ると言うが…「真逆…当たってしまうとは驚きであります!?」実は唯の思い付きだったらしい。
「鋭い勘だね〜。惚れ惚れしちゃうよ〜!」緊張感も無く茶化すベルゲン。「うぬぅ…しかし時間稼ぎは出来たらしいな。行け!そいつ等を叩き潰せ!」
猛然とベルゼンラーヴェに突撃してくる奇妙で巨大な影。3機が連結融合した重力の法則を無視する様な菱形のトーテムポール。「お〜?これはまた歪みに満ち満ちたお姿で…。」しかし距離が離れ過ぎていた。
それに周りの状況も確認せずの見切り発車的な行動。当然…狙いから外れているベルフ、ラミューズの機体の攻撃を真面に喰らう。
特にラミューズの機体であるテールディザスターの尾。嘗ての相棒大陸間戦争期のガンブラスターより譲り受けた黄金砲。
素材がレイフォースに配属された物とは違い強力なエネルギーを誘導出来る為あっと言う間に菱形トーテムポールを穴だらけにする。
派手に体液と機体駆動用の潤滑物質、エネルギーを産み出す燃料溶液を吹き出し炎に包まれながらもベルゼンラーヴェに迫る。
「ハイパーレールガン作動準備良し!」膝を折り片膝を突いて背中から機体サイズのフレキシブルウェポンドライバーを構える。
それは素早く分解再構成を行い物干し竿の様な誘導レールを持つ大型レールガンが完成する。必死に射撃前に攻撃を止めようと無秩序な攻撃が乱れ飛ぶ。
「しょうがないでありますね…。」レールガンを構えたままベルゼンラーヴェをジャンプさせる。その後ESBストライクを虚空に放つ。
すると歪み縮められた空間が元に戻る時の張力で機体がその正反対方向に矢の様に後退する。地面を派手に削りながら停止した機体は満を持してトリガーを引く。
一応この機体ベルゼンラーヴェにもちゃんとした開発コンセプトが有る。この機体は”Eシールドの防御以外での活用”に執着した機体だ。
勿論出来合いであるがフレキシブルウェポンドライバーにもそれは応用されている。飛び出した弾丸はEシールドを纏い発射される。射線の空間を派手に圧縮させながら弾丸は目標に命中する。
すると菱形トーテムポールは着弾点から縦に両断。更に穴だらけになった場所がさながら枝毛の拡大図の様に裂ける。火は消えたが更に噴水の様に機体内の液体を吹き出して倒れる。
「そんな筈は…我が分身共が容易くあしらわれる等。」また蹴り跳ばされるのを恐れて場所を変えながら声を出す。
上空で成り行きを見ていたベルゲンは満足そうに頷く。「後はもう一揺さ振りと言うところかな?おっ?来た来た。」
菱形の救援としてか更に残りの2機が駆け付ける。それはそこに居る敵戦力を無視して菱形に近付くとそこからコアらしき物を3つ回収して施設内に逃げ去る。
「あ〜〜〜っ!逃げた!(であります!)」それを見て一斉に機体が追撃行動に入るがベルゼンラーヴェの前にはテレマ・スクラフトスが立ち塞がる。
冷たい気配に素早く後ろに飛び退く。そこには件のマーブルサクションゼロクラッシュが発動して周囲を凍り付かせている。
地面や空気が凍り付き厚い薄いとマーブル模様を連想させる氷が重力に耐えられずに砕け墜ちる。周辺温度も一気に5℃以上低下した。
「そうそう。お菓子の恨みはまだ晴らしていないよ?」ベルゲンは相当根に持っている様だ。その後凍て付く手刀がベルゼンラーヴェを襲う。
「うわたぁ!?何時の話でありますかぁ〜!?」実の所ファインには思い当たる節が多すぎて理解できていなかった。
「何時の話か…何をやっていたんだか?」身も凍る様な一騎討ちを観ながらもアービンは部下の素行を考える。
そもそもファインはOSゾイド開発時期の後半にガイロス帝国軍から行方不明扱いにされている。デルポイで拾えたのは運が良かったのだ。
本当に良かったかは別として。その間の無作法を考えると頭が痛くなる気分のアービン。しかし派手な金属音で思考は現実に引き戻される。
それを観ると遂にベルゼンラーヴェの左腕をテレマ・スクラフトスが掴んだ瞬間だった。
左腕に止めを刺そうと機体の左手で収束ビームを浴びせようとしているテレマ・スクラフトスだが突然左腕を掴んだ右手を離しバックステップをする。
直後にそれまで居ただろう場所を3発の弾丸が通り抜けて行くところ。ベルゼンラーヴェの右手の銃からの銃撃だった。「相変わらず勘が良いでありますね!」
舌打ちをしながら掴まれた左腕の温度を段階を上げて通常温度に戻そうとする。しかし一気に氷点下にまで下げられた腕の中に電池代わりに置いて有るブロックは起動しない。
出力に圧倒的な散つきが有る為の保険としてブロックが仕込んで有るが如何やら極低温でいかれてしまったらしい。その為に温度の上昇も極めて遅い。
「左腕には期待できないという事でありますか!バーミリオンクレイモアッ!」右手に握られている銃が鈍く紫色に輝く。
「ちっ…まだまだ手は有るみたいだね。」姿勢を低くして構えるテレマ・スクラフトス。頭部後方に有る2対の鳥の翼が羽ばたき開く。
「鳥と竜。何処かの話では不倶戴天の敵同士だったね。そっちはちょっと竜とは正確には言えないか。」距離を置いて2機が静止する。構えた手にはそれぞれ銃と拳。
握る拳には凍て付く電撃。構える銃には燃え滾る光。やがて静止した時間は解け出す様に動き出す。
鉄獣28号さんへ
驚異の宣教師!かの者神の摂理を説き迅雷の如く引く者を狩り立てる。
恐るべし宗教の力!間違い無く迷惑防止法に引っかかりそうな勢いが…。
Inocent Worldの作者さんへ
絶滅種!?どんな奴が出て来るのか?ワクワク…。
>対消滅
は熱エネルギーが対称だったので熱伝導で自然に辺りが平均化する温度になって消滅しました。
それにシールド内で空間から切り離されているのでよしんば発生してもそれは対消滅現象を起こして別の空間を発生させてそっちに行ってしまう筈?
世界には決まった法則が有り法則を超える物は超えた世界に行ってしまうのではないか?と思っているので…。
--------
因みに”コアが残骸に突っ込む”とか”空間の張力で後方に吹き飛ばされる”は空間に関する話でワープに関する技術の空間圧縮に関する技術が元になっています。
AとBとCと言う地点が有りAとCをBを通過させずに繋ぐ為に空間を折り畳むとBの空間座標がずれてAとBの間、BとCの間が一時的(若しくは恒久的)に消滅する。
と言う話の応用です。それを一気に元に戻したら?それが片方からの一方的な力で行われたら?と言う仮定で妄想してみました。
多分重力砲とか空間湾曲を起こすEシールドを作り出せる技術が有るなら可能ではないかと思いまして?
「と…とりあえずルナリスちゃんの所にも情報を転送するよ…。」
「だからちゃん付けすんな!ってうわ!!」
ディスプレイに表示された機影の数を見たルナリスもそれには驚きを隠せないでいた。そして、ゾイド共々青ざめながら、二人と二機は互いを見合わせる。
「でもよ…だからと言ってこちらを狙ってるとは限らないんじゃないか?」
「そうだよね…。私もそう信じたいよ…。」
そう言う事で、カンウとハーデスはこちらへ向かってくるゾイド軍団の進行方向から見て左垂直の
方向へ向けてそそくさと走り出したのであった。と、その時だった。マリンがレーダーを見た時、その大軍団の機影が進行方向を変えてこちらへ向かってくるのが見えたのだ。
「う…うわああ!!違うよ!!やっぱり私達を狙ってるよ!!」
「何だってぇぇぇ!!!?ってマジでこっちに来てるよ!!」
カンウから転送された情報を確認したルナリスもそれには青ざめていた。
「いいい…一体何で…。」
「知るかよ!!お前もしかして何かやったんじゃねーのか?」
「それを言うならルナリスちゃんだって…。」
「ちゃん付けするな!!」
二人はガクガクブルブルと震えながら口喧嘩を始めてしまった。無理もない、いきなりワケも分からず
に何者の大軍に追われていたのだ。これで錯乱しないはずはない。が、地平線の彼方から辛うじて
謎のゾイド軍団が目視出来た時、二人はとっさに口喧嘩をやめた。
「喧嘩はやめて…逃げましょう?」
「右に同じ…。」
真っ青になりながらも、カンウとハーデスは共に走り出した。無論謎のゾイド軍団は追跡してくる。
「うああ!!やっぱり追いかけてくるよ!!」
「何だってんだよ!!」
カンウとハーデスを走らせながらも二人は後方のゾイド軍団の方向を向いた。そのゾイド軍団は
レオゲーターやを中心とした…。と言うよりライオン型ゾイドばかりで構成されていたのだった。
「オイオイ…ライオン型ばかりって…まさか…。」
レオゲーター軍団はなおも追跡を続けてくる。そして、単純な走行速度で言うならばあちらの方が速く、どんどんと距離は縮められていった。
「まさかあの噂に聞くライオン型以外のゾイドを無差別に襲撃するライオン型軍団!!?」
「うっひょ――――――――!!!!」
二人はますまず青ざめた。レオゲーター軍団は本当に大軍団と呼ぶべき大軍であり、さながら巨象に群がる蟻と呼ぶ程の数えるのが面倒臭くなる程の数だったのだ。
「うわああ!!ドンドン差が縮まってくるよぉぉぉ!!!」
二機はなおも逃げる。しかし、レオゲーター軍団との差はどんどんと縮まっていき、ついにはすぐ後ろの方にまで接近されていた。
「ったくお前らぁ!!」
と、とっさにハーデスが機体を反転させ、一機のレオゲーターに掴みかかったのだった。
「お前ら!!一体何をするつも…。」
ルナリスは途中でだまり込んでしまった。ハーデスが掴んだレオゲーターのコックピットには
パイロットが乗っていなかったのだ。そして、そのスキを突き、他のレオゲーターが一斉にハーデスへ向けて跳びかかってきたのだった。
「ルナリスちゃん!!」
マリンはとっさに叫んでいた。何十という数のレオゲーターが、ハーデスの姿が見えなくなる程に
までハーデスへと群がり、そのままおしつぶさんとしていたのだ。無論マリンはカンウで救出に向かおうとした。しかし…。
「ちゃん付けすんな―――――!!!!」
ハーデスから、さながらマシンガンの様に高速連射された指拳突き、そして蹴りが放たれ、
レオゲーターの大軍を吹っ飛ばしたのだった。そして、それでもなおハーデスにまとわりついていたレオゲーターを振り払うと、ハーデスはカンウの方へと走ってきた。
「ルナリスちゃん!!って痛!!」
ハーデスはカンウの頭を軽く小突いた。
「だからちゃん付けするなと言っているだろうが!とにかく逃げるぞ!」
「え〜ん痛いよ〜…。」
二人と二機はそのまま逃げた。しかし、レオゲーターも素早く体勢を立て直し、執拗とも言える追撃を続けていたのだ。
「それにしても…あのレオゲーターが無人機とは…。ん?そうだマリン!お前のジャマーであのキメラドラゴンみたいに狂わせる事できるか!!?」
「あ!!その手があった!!ルナリスちゃんの言う通り、あのレオゲーターが無人機なら何処か別の
場所で司令機がコントロールしているはずだから、それをジャマーで狂わせてしまえば…。」
マリンはポンと手を叩き、そのままジャマーをONにし、マグネッサー3Dレーダーからジャミング波が広範囲に放射された。
「よしよし!狂え狂え!」
流石にダークスパイナーのジャミングウェーブの様にゾイドそのものを狂わせる事が出来るという
ワケではないが、無人機の遠隔コントロールを狂わせる事は可能であった。しかし、それであるにも
関わらず、レオゲーターの大軍は何事もなかったかのように追跡を続けるのだった。
「え?何で?」
「おい…ちょっと待て…、お前のジャマー壊れてるんじゃねーのか?」
「そんなはずは無いんだけど…。」
マリンはカンウ搭載コンピューターのキーボードを叩き、レーダーの状態を確認する。無論故障
どころか異常な所は何処にも見当たらず、ジャミング波もいつも通りに放射されていた。
「え?え?」
この不可解な状況にマリンはワケが分からず、困惑寸前にまで陥っていた。
「まさか遠隔コントロールは受けてないって事か!!?ええい!!こうなったら…。」
素早く反転したハーデスの口が光った。大口径荷電粒子砲が発射されたのだ。高エネルギー粒子の渦が
最前部を走っていたレオゲーターを消し飛ばし、周囲が闇に見える程にまでの強烈な発光、そして大爆発が巻き起こった。
「ようし!!今のウチに逃げるんだ!!あと、ジャミングをかけるのを忘れずにな!」
「え!?う…うん…。」
ルナリスが大口径荷電粒子砲を使った理由は敵を吹き飛ばす為ではなかった。そこから発せられる
強烈な発光と爆発を目くらましに利用したのである。最前列のレオゲーターが消し飛んだ時、後方に
いたレオゲーターは急ブレーキを掛けた為に、さらに後方にいたレオゲーターと衝突し、さらにそれが
繰り返される事で全部隊を巻き込む大惨事となっていた。そして、残存するレオゲーターが体勢を立て直そうとした時、既にカンウとハーデスの姿は無かった。
>>恐怖の亀裂作者さん
トーテムポール型(?)ですか〜。何か想像すると面白い物になりそうな気がしました。
またしても周囲の気温は下降を始める。初夏とは言え高山地帯であるこの場は夜とも成れば気温はぎりぎり二桁になる程だ。
しかし今は更に5℃以上平均気温より低くなり更に低下の様相を見せている。それを発生させている元凶のテレマ・スクラフトスは冷気の他に電気とかなり相性の良い能力を持つ。
機体の手が超電導状態に突入しその電子の輝きは増し迸る放電も大きくなっている。
対するベルゼンラーヴェは装甲こそ氷点下以前で超電導状態に有り一応通電式ラインアース等の電撃に対する対抗策は有る。
だが所詮は一般レベルの物でありフルパワーのイクスのエレクトロンドライバーや見た所相手であるテレマ・スクラフトスの攻撃を全て防ぎ切れる程の物では無い。
折角温めている左腕もこの気温低下で温度の上昇を抑えられている。
凍り付いた樹木の葉が落ち甲高く美しい音色を上げる。それを合図に2機は行動を開始する。ベルゼンラーヴェは全領域耐圧バルカン砲4門から一斉に弾丸を散蒔く。
高まりに高まった冷気を盾にテレマ・スクラフトスは弾丸の速度を奪い傷は浅く付く程度になる。「貰…った!?」ベルゲンは勝利を確信したが直にそれを取り消す。取り消さざる負えなくなる。
今までの銃撃が機体内蔵の火器である事に気付いては居たが至近距離で右手の銃を使用するとは思わなかったのだ。その銃弾1発は強力な電荷とEシールドを纏いテレマ・スクラフトスの胴体を直撃する。
略それと同時にベルゼンラーヴェはその身に電撃を受けてラインアースが爆発。機能を停止する。地面に大半を逃がした上でのこの威力は驚嘆に値するものだった…。
「相打ち…でも借りは返したよ。後でしっかり領収書を切って置くよ。それじゃあバイバイ。」胸部に重要な物が無いとは言え胴体に大穴を開けて機体が健在なのはブロックスならではと言う事なのだろうか?
反対に単純に部品交換すれば何とか成るとは言え機能を停止して火花を上げて居るベルゼンラーヴェとは対照的なテレマ・スクラフトスの姿が有る。こちらも派手に火花を上げ有っては成らない場所から放電をしている。
破損の激しい者が勝利し破損の少ない者が敗北する。「…大した男だ。予想だにしない被害を被ったらしいがな。」アービンは参ったと言う様な顔で呟く。彼等に共通する”限定条件下での最凶の存在”と言う触込みを強烈にアピールする結果だった。
「しかし凄いね。その銃は…そっちと同じく最高の高度を誇る胴体フレームの”スパインアーマチュア”をブロック毎吹き飛ばすなんて。」
少し間を置いて「左腕を潰したのは正解だったよ。もう1丁と合せて2丁で来られたらこっちが跡形も無かったろうから…まあ終わり良ければ全て良しだ。じゃあね〜。」
そう言い残すと本当に遊びだった事を証明する様にテレマ・スクラフトスと共にベルゲンは夜空の闇に消える。色々な意味で鮮やかな勝ち逃げだった…。
山頂部。それを観ていた影が或る。「ふん…奴を…あの機体に覚醒を求めるのか。ベルゲン。」グウェインは火花と煙を上げているベルゼンラーヴェを観て言う。
包囲網は完全に成りつつある。後は一気に最下層に攻め入るだけの状態に成った今の状況は彼にとっても僥倖である。後はあそこで寝ている機体が起きれば如何にかなるとベルゲンは践んでいるらしい。
これまでの一件の成り行きをここで見下ろしていた彼は大体の機体の能力に予測を付けていた。
ベルゼンラーヴェ。機体の特性は非常に興味深い物でEシールドの攻撃使用、空中等での高速機動への転用。多分通常の使用も充分行けるだろう。全てに於いて逆転の発想で作られた不条理の塊と言った所だろうか?
エルダーコア搭載の機体には大抵何かしらの不条理がその力として内包されている。まだそれは姿を見せてはいないがエネルギー係数の上下の差が激しい事から何かの為に膨大なエネルギーを生産する。
それも一瞬で賄う事の出来る可能性が有るだろう。
テレマ・スクラフトス。こちらは略全ての構成パーツがブロックス共通規格で統一。冷気と電撃を操る氷河の雷鳥とも言うべき存在。その相性の良さでベルゼンラーヴェに勝利するも本来はもっと必要な物が抜け墜ちていると推測される。
抜け墜ちた部分に何らかの力が有ると思われるがエルダーコアの起動状況は良好。そのわずかな差と本人予測の的中でベルゼンラーヴェを破る。どうも欠損部分が被い為予測の予測と確実さには掛けるが思い当たる物が有る。
この機体は極端に秀でた物が無い代わりに平均的な能力が高次元で保たれていたと思われる。特に秀でた力を発揮しなかった事がそう予想を付ける原因になる。
それらの近そうに見えて全く異なる能力とは正反対に機体のシルエットは非常に似通った物で脚部が長く大きいのもそれを印象付ける。
鉄獣28号さんへ
右も左もライオン野郎ばかりだ!おい!味方は何処にいる!?くそっ!(何かから引用)
な感じで怖い…。無人でもオッケーとは厳しい話です。
遠目に見ても、市街は大混乱の様相を呈していた。
降り注ぐ爆弾、砲弾の嵐。カタパルトからスクランブル発進する飛行ゾイドが立てる爆音に、怒りに満ちた市民達の喧騒。
「所詮、恐怖政治で繋がっていた街などこんな物だ」
ルガールの冷徹な視線を乗せて車は走る。破壊された正門を潜り抜け、彼らが目指したのは格納庫だった。
「ここです――来て下さい」
アレックスに招き入れられ、シャッターを押し上げた瞬間ルガールの目に巨大な何かが飛び込んできた。
整備用のベイに入りきらないその巨体を見た時、彼は心の奥で「ゾクゾクする様な興奮」が湧き上ってくるのを感じた。
「…マッドサンダー……」
味方からは“雷神”、敵からは“狂雷”と呼ばれた伝説の巨獣が、そこに居た。
「大戦前に絶滅していましたが…“ギルド”の最新技術で、化石から取り出した因子を培養する事に成功したんです」
「何故、私にこれほどの機体を?」
率直な疑問だった。何も、マッドサンダーを持ち出さずとも任務遂行は可能であるはずなのだ。
その問いに、アレックスは思いがけない言葉を口にする。
「…ルガールさんには、コレを乗りこなす『力』があります。『力』を持つ者は、それに相応しい剣を持つべきである…
…と、私は思うんです」
その言葉はかつてマサシが信条とし、ルガールに語って見せた言葉だった。
〔腕が良くても、機体の性能が付いて行かなけりゃ意味がねえのさ。力を持つ者は
それに相応しい剣を持つべきだぜ、ルガール…〕
「…? どうしたんですか?」
黙りこんだルガールに、アレックスは不安げに問い掛けた。
しかし、彼は突然笑い始めるとマッドサンダーのコックピットに飛び乗って叫んだ。
「最高の機体を用意してくれた事に感謝する! ただ、少々改造を加えたい!」
「どんな改造です?」
「聞き及ぶ所では、この機体はまだ実戦経験が無いそうだな。…それではやはり反応に限界が出る。
私の手持ちの戦闘データを移植すれば、瞬時に反応できる筈だ」
ルガールはコートから一枚のメモリーカードを取り出した。
「あの、そのデータってもしかして…」
「ああ、ご推察の通り…今は亡き、我が愛機の戦いの記録だ」
ルガールの手が、優しくカードをスロットに差し込む。
その時、一瞬だけマッドサンダーが身体を振わせた――まるで武者震いするかのごとく。
データを移植しても、死んだディバイソンは戻ってこない。
だが、別の機体となってもルガールの愛機は、彼に暖かい既視感を与えてくれた。
「お帰り、相棒」
思わず口をついて言葉が出る。それは謝罪と感謝を含んだ、再会の挨拶。
シートに身を沈める彼に、アレックスがおずおずと声を掛けた。
「えー…知っての通り、外はぐるりと野良ゾイドが囲んでいます。ですが、どう言う訳か現在は北の方に戦力が集中している
様子なので、星の傷に向かう道は手薄です。南方のゲートならば、マッドサンダーの性能とあなたの腕で突破できるでしょう」
「私の腕、過信してはいまいか?」
茶化すようにルガールが笑うと、アレックスも笑った。
「過信するくらいで丁度良い、ですよ」
重厚なハッチが閉じる。マッドサンダーの瞳が輝き、施設と機体を繋ぐケーブルがはじけ飛ぶ。
「行ってくる…私が任務を完遂するまで、せいぜい持ち堪えてくれ」
「お安い御用で」
コックピットのサブモニターに、機体のスペックが映し出される。超巨大ゾイドであるにも拘らず200km/hを越える最高速や、
圧倒的な攻撃力、防御力はルガールを充分に満足させるものだった。
「さあ…慣らし運転と行くか!!」
大地を揺らし、マッドサンダーは弾丸の如くゲートの外に躍り出た。
未来の超技術で200km/hを叩き出すマッドサンダー…こんな世界観だからこそ可能?
ところで重要な捕捉を忘れていました。
・ルガールの一人称は、普段は「私」だがキレた時や感情が昂った時は「俺」になります
>>鉄獣28号氏
Nooooooあんまり先読みしないで_| ̄|○
何故か「よしよし!狂え狂え!」がツボに入った今日この頃…
>>恐怖の亀裂作者氏
個人的に、最も法則を越えているのは禁ゴジュの装甲とGカノンだt(ry
某所で聞いた話では、本当ならマイクロブラックホールカノンなんか使った日には世界の終わりだとか。
重力の法則を無視してしまうトーテムポール、自分も是非見てみたい!
「ハア!ハア!ハア!何とか…まいたな…。」
「うげ〜…ったく何よあの大軍は〜…。確かにあの時聞いたライオン型ゾイドの群ってのは分かるけど…あんな大軍団は無しでしょ〜?」
あれから、数キロの彼方にあった岩山の陰で、二人はゾイド共々息を切らせていた。そして、岩の陰
から顔をゆっくり覗かせると、レオゲーターの大軍が広野を掛けていくのが見えた。ジャミングを掛け
ていたおかげで気付かれる事もなく走り去っていくレオゲーターを見た二人はほっと胸をなで下ろした。
「は〜…。危うく死ぬかと思ったよ…。」
「それにしても…。無人機という奴は遠距離からコントロールされる機体が多いのだが…。まさか“スリーパー”か?」
「スリーパー?」
初めて聞く言葉にマリンはルナリスの方を見つめた。それに気付いたルナリスも、その説明を始める。
「いわゆる自動操縦型って奴だよ。無人機と言えば無人キメラブロックスみたいな遠隔操作型を
連想される事が多いが、さらに昔の時代では無人機と言えば自動操縦型が主だったそうだ。と、
自動操縦と言ってもコンピューターの性能の関係で大した物では無かったらしいけどな。」
「へ〜…。ルナリスちゃんやっぱり貴女博学ね〜。」
感心するマリンの頭をルナリスの右手がガッチリと掴んだ。そしてただでさえタカのように鋭い目付きがさらに鋭くなる。
「だからちゃん付けするなと言ってるだろうが…。何度言えば良いんだぁ?」
「ゴメンゴメン!わかったよ!ルナリスちゃん!」
「だからちゃん付けするなつーたろうがぁぁ!!」
ニッコリと微笑んで答えたマリンの顔面が思い切り岩に叩きつけられた。そしてそのままルナリスはマリンの頭を掴んだまま、マリンの顔面をグリグリと岩にこすりつける。
「あ〜もう痛い痛い!痛いってば!ゴメンゴメン!ゴメンナサ〜イ!」
流石にこれには痛かった様子で、マリンは泣きながら謝っていた。というかこれは痛いで済んでる方が凄いと驚くべきなのだろうか…。
「で、さっきの話だけどさ!何で無人キメラは自動操縦じゃなくて遠隔操作が使われてるの?ルナリスちゃん!」
その直後、マリンの顔面スレスレの所にルナリスの足が飛んできていた。しかも、二人が初めて会った時にルナリスが使った、あの懐かしのつま先から刃まで出ていたのだった。
「だから、ちゃん付けするなと…。」
と、そう言い掛けた時、ルナリスは足を下げた。
「それは次の機会においておくとして、無人キメラが自動操縦じゃない理由だが、開発当初は確かに
無人キメラも自動操縦で開発されたらしい。しかし、無人キメラはあまりにも凶暴すぎた。敵どころ
か味方や野生ゾイド、一般市民にまで無差別に牙をむく危険な存在だった。故に無人キメラは
遠隔コントロール式にされたり、有人型にされたり、とそう言う事だよ。」
ルナリスの説明にマリンは本当に感心していた。
「やっぱり貴女博学ね〜!」
「爺ちゃんから聞いたのさ…。爺ちゃんも昔、無人キメラの開発に携わっていたそうだから…。」
「ルーガスさんが…?へ〜…。ルナリスちゃんのお爺ちゃんも伊達じゃないね〜…。」
その時、ルナリスがもの凄い形相になり、手をプルプルと痙攣させながら、その拳を固く握りしめていた。
「やっぱりお前この辺でぶっ殺しとこうか…?」
「わあ!!ゴメンゴメン!!ルナリスちゃんゴメンなさーい!!」
「また言ったぁぁぁぁ!!!」
「ひぃぃぃぃぃ!!!!」
広大な広野にマリンの甲高い絶叫がこだました。
「あ〜…。あれから何度追いかけ回された事か…。」
「そうだね…無事で入れるのが不思議なくらいだよ…。」
とある街にタイガスとラッキーがトランサーとティニィの二機ともどもゲッソリした面持ちで到着して
いた。二人の会話からすると、二人はあの後もレオゲーターの大軍にさんざ追いかけ回された様子である。
「あ〜疲れた…。もう寝たい…。」
「俺もだ…。」
今にも倒れ込みそうな程にまで疲れ切った二人と二機はゆっくりと駐機獣場へと移動した。と、その時、タイガスの目がパッ!!と見開いたのだった。
「ん?あれは…。」
「ど…どうしたの?」
タイガスの視線の先には、数々のゾイドの中でもひときわ巨大な二機のゾイドの姿があった。
ゴジュラスギガとデスザウラーがそれぞれ隣り合って立っていたのだ。これは紛れもなくカンウとハーデスだった。
「へ〜ゴジュラスギガとデスザウラーか〜…。白と黒でふたりはゾイキュアという感じだね。」
「アイツ等もこの町に来ているのか?」
「アイツ等?」
「いや、何でもない。とにかく宿を探そう…。いい加減疲れた…。」
タイガスはトランサーを止めると、コックピットから下りた。
「何か気になるな〜…。」
そして、ラッキーもタイガスの後を追った。
時は同じく、この街に到着した二機のゾイドの姿があった。それはズィーアームズ社から出発した、
ドラゴスの乗るデスレイザーとリューコの乗るパラブレードだった。
「ふ〜!やっと付いたな…。」
「ドラゴスさん!これから宿に入ったら今日のテスト分のレポート作成ですからね!」
「分かったよ〜ったく…。」
二人と二機はそのまま駐機獣場へと移動していたその時だった。ドラゴスの目がパッと見開いたのだ。
「んあ!!あ…あのゾイドは…。」
ドラゴスの視線に移った物は、駐機獣場にたたずむカンウとハーデスだった。
「あいつら〜…この街にいたのかぁ!!!」
ドラゴスはデスレイザーを止めるとコックピットから飛び降りて走り出した。
「こら!ドラゴスさん!逃げちゃだめです!」
無論リューコもドラゴスの後を追った。
「え〜・・・宿宿宿と・・・。」
タイガスとラッキーが疲れた体に鞭打って宿を探して歩き回っていた時だった。突然二人の前にザビエルが現れたのだ。
「私〜!獣王教宣教師のザビエルと申しま〜す!そこの貴方達〜!獣王教に入りませんか〜?」
「悪いなおっさん・・・。また今度にしてくれ・・・。」
今にも倒れそうなほど疲れきった二人にザビエルの話を聞く余裕は無かった。そして、二人はそのままフラフラと立ち去っていく。
「何処だ何処だ何処だ!!あいつ等は何処にいる!!」
物凄い形相でドラゴスが周囲をキョロキョロと見渡しながら歩いていた。
「ドラゴスさん!一体どうしたんですか!?早く宿を探さないと!」
「うるさい!!あいつ等がこの街にいる事が分かった今、そんな事をしている余裕は無い!!」
ドラゴスはなおも物凄い形相で周囲を見渡し、街の中にいる人間一人一人の姿を確認していた。
彼の標的は無論マリンとルナリスである。以前二人にデスレイザーをボロボロにされたせいで彼は
減棒処分を食らったのだ。故に彼は汚名を返上するため、そのリベンジに燃えていた。と、その時、ドラゴスとリューコの前にもザビエルが現れたのであった。
「私〜!獣王教宣教師のザビエルと申しま〜す!そこの貴方方〜!獣王教に入りませんか〜?」
「うるさい!!今それ所じゃねーんだよ!!死にたくなかったらそこをどけ!!」
ドラゴスは物凄い形相のまま歩き去っていった。そして、目を丸くしているザビエルにリューコが頭を下げる。
「すみませんね。ドラゴスさんちょっと機嫌が悪いみたいなんですよ。じゃあ・・・。ドラゴスさ〜ん!待ってくださ〜い!」
そして、リューコもドラゴスの後を追うのであった。
「は〜・・・やっと見つけた〜・・・。」
どうにか宿屋を発見したタイガスとラッキーの二人は宿屋のカウンター前で一息付き、手続きを始めた。
と、そんな時、宿の主人が申し訳なさそうな表情で二人に話し掛けてきたのだった。
「お客様、他の人との相部屋になるけどいいですかな?」
「相部屋?」
「そうです。ちょっとどの部屋もお客様でいっぱいなんですよ。だから他のお客さんとの相部屋にしなくちゃいけないみたいで・・・。」
「あ〜かまわんかまわんよ。俺達は疲れてるんだ。早く休みたいよ。」
「そうですか・・・。では此方へ・・・。」
余程疲れていた為、一々細かい事を気にする余裕も無かった二人はすぐさま相部屋をOKし、宿の主人によってその部屋へ案内された。そして、相部屋となる部屋についた時、主人はその部屋の扉にノックをした後、その部屋に泊まっていた者に相部屋になる事を告げていた。
「OKが出ましたよ。それでは・・・。」
「あ・・・ああ・・・。」
という事で、主人が出て来てそのまま去った後で、タイガスとラッキーはそのまま部屋の中に入っていった。
気付いてみたらもう450KB行っているじゃあーりませんか!
という事はもう次スレの準備が必要になるのでしょうかやっぱり?
>>恐怖の亀裂作者さん
相打ちに近い状態とは言え、冷気と電撃の勝利に終わりましたか。
領収書を切っとくというセリフはつぼに入りましたw
>>Inocent World作者さん
マッドサンダーキタァァァ!!それでとんでも能力者ゾイド軍団や未知の怪物にどう立ち向かうのか楽しみです。
「ちぇっ…折角格好良く決める筈だったのにな〜。資料に無いあの銃は追加武装か。あれだけで差を埋められたとはね。」
とか愚痴を言いながらも内心は喜びで一杯のベルゲン。遂にあの2年ほど前の相棒に煮え湯を飲ます事に成功したからである。
それ以前は何時も彼の悪戯に翻弄される毎日だったのだからしょうがない。本の間に派手に音を立てるびっくり箱ならぬびっくりしおり。
そして食べ物には食べられなく無い程度の料理や飲み物に合わない調味料。糞餓鬼がそのまま大人に成った様な彼に遊ばれっぱなしだった。
「それにしても…欠損パーツが多いなったくテレマ(意思)なんて大した名前だけ有って各部を蘇生しないと本当の力が出ないなんてあんまりだ〜〜っ!!!」
意思の化身テレマ・スクラフトスのコクピットの中で怒り狂った猿の様にキーキー泣き叫ぶベルゲンだった。
「…。」電撃のショックで気を失っていたらしい。正面から真上になったコクピットハッチが開かれる。「おい!生きているか?」アービンの声だ。
「す…すいませんであります。帰投早々情けない姿を晒して。」まだ現実と夢の境界線を彷徨いながらファインはアービンに答える。
「取り敢えず良く帰って来た。機体の部品交換なら直に済む。外にでも出て夜風に当たれ。今夜は氷点下だから直に目が覚めるぞ?」
怒った様な顔と笑っている様な顔の中間点な表情でアービンは言った。
「どうだ?」整備班長に状況をアービンは聞く。「おお…凄いな此奴は。あれだけの電撃を喰らって配電系統以外は全く無事だ。銃火器の機構も歪みは無い。」まるで宝石でも観る様な顔で言う。
更に詳しく聞いた話では通電式ラインアースは使用している部品がわざわざランク落ちした素材を使用していた事を知る。「細かい所は任せたと言う事か。下手に手に入り難い素材を使われるよりはましか。」
直に現時点で手に入り易く効率の良い素材でラインアースの制作を命じる。他にも回路の焼き切れたブロックの交換。可能な限りのスペックの調査と作業はまたしても山積になる。
しかし今は何も不平不満を言わず整備兵達は作業を続ける。ラミューズの話が嘘だと言う証拠が全く無い。その為必死になっているのだ。
少ししてラミューズとベルフが戻ってくるが如何やらエルダー5に逃げ切られた様だった。その表情は暗く息切れすらしていたという…。
「…この方は古代ゾイド人所縁の方でありますか?」ファインはラミューズを見てベルフに聞く。
答えはベルフからでは無く少女本人から肯定される。「はい。私は古代ゾイド人です。宜しくお願いします。」礼儀正しく礼をするので釣られて礼をする。
「所で…あれに見覚えは無いでありますか?」ベルゼンラーヴェを差してファインは聞いてみる。「え〜っと…この感覚は暗黒大陸のゾイドみたいなので良く解りません。」
しっかり否定されるが「でも似ている物は知っていますよ?確か…暗き森の主。名前の怖さと反して気性の大人しい存在です。それを元にしたコアなら戦う意思が薄弱な筈です。」
これではっきりする。多分あの機体の全てを統括するコアはそれに準ずる物なのだろう。目を覚ますのを拒否している事は確かだろう。
誰かから聞いた話がある。もしコアに触れるなら触ってやるとそのコアの声が聞こえる事が有ると言う話だ。
それが現実なら縋りたい気分でファインはベルゼンラーヴェの後頭部に居る。そこは孔雀の尾羽根を模したパーツを格納するカバーの基部。
そこを少し弄くるとカバーが外れハッチが開きエルダーコアが顔を出す。形も独特でくの字型で中間が動かせる為この位置に置かれたらしい。
それにそっと手を添える。恐れず手にしていた手袋も外して。それに習い誰かがそれを出来るかもしれないと手の開いた者全てが手を添える不思議な光景がそこに有る。
記憶…如何やらこのコアが見知った記憶が目を閉じた目蓋に鮮明に映る。辺りの様子から察するに手を添えた全ての者にそれが見える様だった。
ぼやけた画像が輪郭を持ち色の無い世界に彩りが加えられていく。それは寿命を遙に超える長い戦史。コアからコアに託された記憶。そろそろそれをコアが見せてくれる様だった。
住み家の森を焼き尽くす閃光。直にそれを被い隠し踊り狂う闇。それを必死に打ち払うコア本体。それは図った様にベルゼンラーヴェと同じ姿。
違いと言えば脚の大型Eシールド発生機を兼ねる脚部装甲群が無い事と銃を握っていない事。そして当たり前だが戦闘用に改造されていない事だ。
必死になって後ろに居る眷属と思われるゾイド達と見た事も無い姿の人の原種らしき者達を庇い闇に燃える影と対峙しているその姿は一目見て解る。
異形の竜神…あの声?ベルゲンが言ったヴィゾールの剣の事だと妙な確信が芽生える。
記憶が途切れて別の映像になる。その後の戦闘で倒れてしまったか相打ちになったかしたのだろう。
今度は目映く光る機械群が見える。それは古代ゾイド人の技術の物で何が何の機械だかさっぱり解らない。
しかしこれは貴重な映像資料だ。この画像を保存出来ないのが悔やまれる。ここでは今のベルゼンラーヴェに近かりし姿になっている。
やはり敵対している者が居る。今度はテレマ・スクラフトスだ。見間違える事の無い鳥顔で後頭部に巨大な翼2対。
テレマ・スクラフトスにも相違点は有る。まあブロックスは置いて置く事にするが…腰部辺りに更に巨大で勇壮な翼が存在しているのが印象的だった。
この後も場面は変わる変わるして今に続いて行くがどの映像でもそれらしき何らかのゾイドと争う映像ばかりだった。
これを見たならベルゼンラーヴェ≦元の存在が戦いに疲れ果てている様に感じてもしょうがない気がする。機の滅入る記憶だった。
全てが終わり添えた手を離し一斉に目を開く一同だがファインだけ姿を既に消していた。「いかん!奴を別のゾイドに近付けるな!」アービンは怒声を上げる。
フレキシブルウェポンドライバーのホバーボード機能を使い施設に侵入するファイン。気になる事が有り行動を起こしたのだが勘違いしたアービンから施設内放送で雷を喰らう。
釘を刺す目的の様だ。ベルフから隠し部屋に付いての情報を得ているのでそれを丹念に探す。殆どどれも最近侵入した跡が有り目的地ではない。
2時間程探し物を続けるが成果は得られずゾイド用の通路に出る。
「…お礼参りはお断りでありますが何か?」自分を被い隠す影を頂点周辺を睨み付けてファインは言葉を吐き捨てる。
この姿も先の記憶で覚えが有る。胴体にめり込んだ巨大な顔。細くしなやかな2対の腕。頭部上方に有る寄せ餌に使うのだろう提灯。
類人猿型に間違ってディフォルメされたチョウチンアンコウ。ランプバイアンと呼ばれるデルポイの昔話の巨人だ。
その巨大な腕が空を切り裂きながら迫ってくる。慌てて避けるが間に合わずに空中に放り出される。この時ばかりは甲殻皮膚様々だった。
ホバーボードの推力を頼りに滑空するが相手の移動速度は当然スケール分大きい。その直後に現れた白い影に助けられなければ壁のしみに成っていた所だった。
「サーラちゃん参上!」ストームラプターの手に掴まれて情けない姿だった。
鉄獣28号さんへ
6者6様に一つの町に集合!例の方もちゃんと居る。
獣王教の野望は達成できるのか?それとも狼とモモンガ、4匹の竜の前に屈するのか!?
盛り上がって参りました〜〜!
やっぱり電撃は金属の大前提が或るゾイドにとっては有効な装備が有ってもやばいと思います。
それに相手も自分も電気抵抗が驚く程少ない以上はああ成って当然かな〜?と。
Inocent Worldの作者さんへ
200km/h。絶滅種だけあって安定性を重視したみたいですねマッドサンダー。
ゲーターでも同じ速さで動けるので300km/hを出してもおかしくない技術の向上振りだと思います。
もう450KBオーバーですか。今回はペースが早かったですね。今日から明後日までに立てた方が良いのでは?と思います。
野良ゾイドの群れが、突き進むマッドサンダーに向かって来る。
その数およそ60体。ゴドスからゴジュラス級まで、多種多様なゾイドが市街を取り囲んでいた。
「では、コイツの性能を見せてもらおうか」
ルガールは呟き、マグネーザーを起動した。高い唸りを上げ、巨大なドリルが回転する。
「予想以上の運動性能だ…それに、私の言う事を聞いてくれる」
一閃。180度の旋回と共に、無数の野良ゾイドが破片を撒き散らして宙を舞った。
後方から向かって来るアイアンコングに、背中のビームキャノンを撃ち込む。それだけでコングは大破し、動かなくなった。
格闘も射撃も、圧倒的な破壊力だった。更に、前方からジェノザウラーが浴びせかける荷電粒子砲が全く気にならない。
「これが、伝説に名高い反荷電粒子シールドか…」
ルガールは溜め息をつくと、野良ゾイドの群れを突っ切って郊外へと出た。
何しろ時間が無い。機体性能に酔いしれて野良ゾイドを虐殺していては、街が持たないのだ。
だが、ルガールはここに立ち寄った。今は全てが彼の所有物となったジャンク屋、「TASHIRO」に。
「マサシ…お前に貰ったパーツ、使いこなしてみせる」
ルガールが格納庫から持ち出したのは、たった一つのタンク(とは言えベルトコンベアを使わざるを得ない大きさだったが)。
その中には、一見木工用のニスにも見える透明な液体が詰まっていた。
彼の脳裏に、再びマサシの言葉が甦る。
〔こいつはなぁ、“レイディバイダー”つって…装甲のコーティング材なんだがな。コイツをかけると、敵の光学兵器に対して
凄え耐久性を持つようになるのさ。どうだ? 今なら安くしとくぜ…〕
「悪いな…代金は、死ぬまでツケといてくれ」
作業用アームを操作し、ルガールはレイディバイダーを機体に散布していった。
「何だか、盗みを働いているような気分だ…」
作業を終えると、ルガールはコックピットに戻った。すぐに店を出ると、星の傷を目指して走る。
それは驚くほど近くにあった――ただ、大きすぎて見えなかっただけで。
地平線の向こうまで続く巨大な亀裂が、そこに口を開けていた。
(●ニ●)。○(まずったな…もっとマグネットコーティング的な物にすれば良かった)
>>鉄獣28号氏
この後で、やっと能力者の本領が次々と発揮されます…思い出したようn(ルシファーブレード
相部屋で事件の予感がいたします! ただなんとなく!!
>>恐怖の亀裂作者氏
流石に、マッドが300kmオーバー出したら無敵じゃないですか(^^)
それはそうと、次スレの`プレはここと同様でおkでしょうか?
「それじゃあ失礼しますんで〜・・・。」
タイガスが彼なりに礼儀正しく(?)相部屋となる部屋に泊まっていた人間に挨拶をしようとした時、突然タイガスは噴出したのだった。
「あ〜ら久しぶり〜!どう?伝説の古代虎は見つかった?」
その部屋に泊まっていたのはマリンとルナリスだった。しかも二人はちゃぶ台を囲んで食事をとっていた。
「まあ・・・駐機獣場にお前等のゾイドがあったからこの街にいるってのは大体予想がついたが・・・。まさか同じ部屋に泊まる事になろうとは・・・。」
「ねえ?タイガス君?この二人誰?」
「貴女もね!」
タイガスはともかく、ラッキーにとってマリン、ルナリスは初対面の相手であり、やはり互いの自己紹介を始めた。
「私はマリン=バイス!15歳」
「ルナリス=バッハード・・・17歳だ!」
と、言う風にマリンの後に次いでルナリスが自己紹介をした時だった。
「え?えええええ!!!!?」
「バッハードって・・・まさか・・・。」
突然タイガスとラッキーの二人が目を丸くして驚いていたのだった。それには思わずマリンとルナリスも退いた。
「ま・・・まさか・・・バッハードって・・・。」
「あのば・・・ば・・・バッハードコンツェルンの・・・?」
「認めたくはないがその通りだ。」
と、その時だった。突然二人が土下座したのだ。
「お・・・お見逸れしました・・・。」
「オイオイ!んな事するなよ!こっちが恥ずかしくなるじゃないか!」
「そうだよ!ルナリスちゃんは確かになんとかかんとかなんとかの令嬢だけど、社長になるのが嫌で不良になった上、今は家出中なんだから!」
その時、マリンの顔面にルナリスの蹴りがめり込んでいた。
「余計な事は言わんでいい!!というかちゃん付けするなちゃん付け・・・。」
「は・・・はは・・・。」
二人のやり取りに、タイガスとラッキーは唖然とするだけだった。と、その直後、まだ怒りが収まって
おらず、物凄い形相のままだったルナリスが、マリンにストンピングしながらラッキーを指差したのだった。
「そこのお前!!さっさと自己紹介しろ!!」
「わ・・・私は・・・。ラッキー=トルワート。19歳です。」
「へ〜。私達より年上なんだ〜・・・。」
と、今更になってようやくラッキーのフルネームが明らかになるのであった。ちなみにタイガスは20歳であったりする。
「それにしてもタイガスさんよ〜。貴方もスミに置けないね〜。あの大会からそれ程時間がたったワケでもないのにいつの間に彼女なんて作ったりして。」
マリンがそう茶化した時、タイガスとラッキーはレッドホーンの様に赤くなった。
「勘違いするなよ!!!俺とラッキーはただの幼馴染で・・・。」
「ハイハイ分かった分かった分かったよ〜・・・。」
マリンとルナリスの二人は手を叩きながらタイガスとラッキーの二人を茶化していた。
「そんな事より・・・タイガス君。この二人とは知り合いなの?」
「知り合いというか、この間ルードシティでのゾイドバトル大会で戦ったんだよ。」
「ん?ああ!思い出した!!あの大会でタイガス君のワイツウルフと戦ってたゴジュラスギガが、この街の駐機獣場に止められてたゴジュラスギガとそっくり!!」
「というかそれはウチのカンウなんだけどね・・・。まあそれはそうと、二人も食べてく?」
マリンはちゃぶ台を指差した。前述した通り、二人は食事中だったのである。ルナリスもそれを
思い出し、座り込むと食事を再開していた。もちろんその料理は宿屋から出た物ではなく、マリンが自炊した物である。
「め・・・メシって・・・。」
ちゃぶ台に置かれていた料理を見たタイガスは呆然としていた。その料理はご飯に味噌汁に焼き魚、豆腐、漬物と、良く言えば庶民的、悪く言えば質素そのものだった。
「二人とも・・・意外と質素な食生活してるのね・・・。」
と、そんな二人の反応に、マリンも少しカチンと来ていた。
「質素で悪かったわね。まあ確かに質素かもしれないけど、栄養面はしっかり考えてるつもりだけど?」
「ご・・・ごめんなさい!怒ったのなら誤るわ。」
「え?あ?え?」
意外と素直に謝ってきたラッキーに、マリンも拍子抜け、怒る気が自然と失せていた。
「まあとにかくお前等も食えよ。美味いぞ?」
さり気なく食事に集中し、もくもくと料理を口に運んでいたルナリスが一漬物を一切れずつ掴んで
タイガスとラッキーに差し出した。そして、二人はそれを口に運んでみる。
「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!おいしい!!」
「何だこの味はぁぁぁぁ!!うめえ!!」
たった一切れの漬物に二人は感激してた。という事は、その漬物はかなり美味だったという事である。とはいえ、そのあまりにも極端なリアクションにマリンとルナリスは退いていた。
「こ・・・コイツの実家は飲食店らしいからな!下手な高級料理なんぞより、コイツの作った味噌汁とかの方が遥かに美味いぞ!」
「ルナリスちゃんそれ言いすぎだよ!」
「そうか〜?つーかちゃん付けはやめろと何度言えば気がすむんだよ!」
例によってルナリスはマリンの頭を小突いていた。
「本当だ!!これも美味しい!!」
「うめえ!!何だよこの味は!!」
いつのまにかマリンが用意していたタイガスとラッキーの分の料理にがっつきながら、二人は感激し続けていた。と、その時ラッキーがマリンの方を向いた。
「これってやっぱり何か特別な製法でも使ってるの?」
「いや、いたって普通だけど・・・。」
「普通!!?どうやったら普通でこんな味が出せるんだよ!!」
「そ・・・それは・・・。」
そんな質問に関してはさすがにマリンも困った顔をしていた。なぜなら彼女は上手く説明出来る自信など無かったからである。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
マリンは黙り込んだ。なぜ美味いのかという理由を考えていたのだ。周囲に沈黙が続く。と、その時ラッキーが物凄い勢いでマリンの手を掴んできた。
「きゃあ!!いきなり何!!?」
戸惑うマリン。そしてラッキーの目はなぜかキラキラと輝いていた。それにはマリンも退いた。
「そんな事はどうでもいいわ!マリンさんと言ったわね!私にもその料理の方法教えてくれないかしら!?」
「え?ええ!?べ・・・別にかまわないけど・・・。さん付けする必要は無いよ。貴女の方が年上でしょ?」
「いいえ!!こんな美味しい料理を作れる貴女を呼び捨てなんて私にはできませんよマリンさん!!?」
「えええ!!?」
それにはマリンは戸惑いを隠せないでいた。そんな時、ルナリスがマリンの頭をポンポンと叩いた。
「ハッハッハッハッ!これでいつもお前にちゃん付けされる私の気持ちが分かっただろう!これにこりたら・・・。」
「ルナリスちゃんと一緒にしないで!!」
「何だとぉぉぉぉ!!つかちゃん付けするなぁ!!」
ルナリスの怒りの鉄拳制裁がマリンの顔面に叩き込まれ、そのまま二人は取っ組み合いの喧嘩を始めるのだった。
「死ねぇマリン!!」
「貴女が死んでよね!!」
「二人ともケンカはやめて下さい!!静かにしないと他のお客さんに迷惑でしょ!!?」
ラッキーは必死に二人のケンカを止めようとしていたが、ケンカはなおも続いていた。
「あ〜うるさい・・・これだから女という奴は・・・。それにしても美味いなこれ・・・。」
大騒ぎな他の3人には目もくれず、タイガスは一人黙々と料理を口に運んでいた。
「お客さん!お願いですから宿内でケンカはしないで下さいね!?他のお客様にも迷惑がかかりますでしょ!?」
「ハイ・・・済みません・・・。」
「というか何で俺まで・・・。」
それから、宿屋の主人の前の正座させられた四人は主人から延々と説教をされていた。マリンと
ルナリスは先ほどケンカをやっていただけに、全身がボロボロになっており、タイガスの手にはハシと茶碗が握られていた。
「だいたい貴方もご飯食べてないでケンカをとめるとかしたらどうなんですか!?本当に我が方としてもこまるんですよ!」
こうして、主人の説教は延々と1時間以上にもおよび続いた。
「あ〜・・・。やっと解放された〜・・・。」
「は〜・・・。」
それから、やっと解放された四人は、部屋に戻った後、倒れこむように布団に寝転んでいた。特に
マリンとルナリスのダメージは絶大だった様子で、タイガスとラッキー以上に苦しそうにしていた。
「体中が痛い・・・。もう死にそうだ・・・。」
「あれ〜?死んだはずの曾お婆ちゃんと曾お爺ちゃんが川の向こうで手を振ってるよ〜?」
「マリンさん!!それはヤバイですよ!!気をしっかり持ってくださいー!!」
にこやかな笑みを浮かべながら朦朧としているマリンの肩を掴み、ラッキーは必死に前後左右に振っていた。マリンの頭は力も無くブンブンと振り回されている。
そろそろ本当に次スレ準備が必要でしょうか?
>>恐怖の亀裂作者さん
過去の記憶から考えて、過去からの恐怖みたいな事が起こりそうな気がしますね。
>やっぱり電撃は金属の大前提が或るゾイドにとっては有効な装備が有ってもやばいと思います。
確かにそうですね。自分の話でも、以前そう言う描写をやりましたし。電撃兵器は
相手が金属であるならば装甲の強弱に関係無くダメージを与えられると言って。
>>Inocent World作者さん
ニスみたいなので対ビーム防御力強化とは便利な世の中になった物ですね。
とは言え、いわゆる○○コーティング系はそんな感じな物が多いのではと思ったり・・・。
>それはそうと、次スレの`プレはここと同様でおkでしょうか?
自分はOKだと思います。
過去ログ一覧の「Vol5」のところにある (前スレ は削るということでよろしく。
何かずれてしまいましたが立ちました。
自分でバトルストーリーを書いてみようVol.13
http://hobby5.2ch.net/test/read.cgi/zoid/1092163301/l50 鉄獣28号さんへ
頭が力無くゆんゆん振られているマリンさん…何か良さげ。終始完全無視のタイガスさんも捨てがたい魅力が…。
>過去の記憶から考えて、過去からの恐怖みたいな事が起こりそうな気がしますね。
やっと以前の5日目終了時の台詞通りの話に修正が出来てきました。6日目夜からは下手なスーパーロボット物な乗りが出て来ます。
上手く行けるかな?
Inocent World
これで側面も安心!いざ行かん!目的地へ!な感じですね。
盗みを働いている気分だ…は何か複雑な心境なんでしょうね…。
すいません。
Inocent Worldの作者さんへ
でした_| ̄|●焦って投稿してケアレスミスを…。
スレの終了際に。
【人物】
ラミューズ:本名不詳ネメシスと呼ばれていたらしいがそれは本人の名前でないらしい、古代ゾイド人で特別な目的の為に育てられた為に公用語を話せない
この手の人には珍しく記憶障害等が無いのでそう言う才能が有るのかもしれない
エーリッヒ=シュテーマン:科学技術書”ねくらのみかん”の著者で既にこの世の方ではない、折角胡散臭いタイトルで世の目を欺いていたがエルザの所為でそれが技術書有ると見抜かれてしまった
【ネタ】
ねくらのみかん:科学技術書でエーリッヒ=シュテーマン著、と蛆の最先端の地球の技術、古代の遺跡に記された未開の技術文献を編纂した貴重な書物
タイトルを決める際に胡散臭くなったのはこの本に記された技術は後に災いを起こしかねないと戯言が記されている様に誤認させる為らしい
エルダー5:施設最下層のエルダーコア”ヴィゾール”より取り分けられたコアにより作られた戦闘ゾイド、ライナス=レンバートンの記憶を利用してμテリアンに本能を分離し目覚めたヴィゾールの剣の命令の下に行動する
元が一つのゾイドの為合体何て事も出来る
暗き森の主:ベルゼンラーヴェのエルダーコア、初代は生命体としてのゾイドだったがその後にエルダーコアに加工されて今に到る
気性は大人しく戦う意思に乏しいがその反面戦闘力は気性に反比例するように高く休眠中でも部分覚醒とは言えテレマ・スクラフトスと略互角に渡り合う
テレマ・スクラフトス:ベルゲン曰く”意思の化身”と呼ばれる強力なゾイド、冷気をビームに込める、体内の電気を自由に操るととても器用な存在
その上まだ不完全なので本来の力は暗き森の主同様未知数
>>恐怖の亀裂作者さん
次スレ立てご苦労様です。
そろぞろ自分も次スレの方に書こうかと思いますがどうでしょうか?
出来れば登場人物紹介なんかも書いたりなども考えていますが・・・。
鉄獣28号さんへ
もう良いと思います移動しても。そろそろ480KBに成りますし。
>出来れば登場人物紹介なんかも書いたりなども考えていますが・・・。
そっちも問題無いと思います。
>恐怖の亀裂作者さん
了解しました。という事で次スレに書こうと思います。
ただ、登場人物紹介を書こうと考えていても、これはやや時間がかかるかも知れません。
あと29KBもあるんで、まだまだ使えると思いますけど
キリが良いところだったら新スレに行った方がいいのかな?
なんにせよ全体の16分の1は残っているわけで。
>>311 後は雑談とかに使えばいいんじゃね?前スレもこの辺りに来た時はそんな感じだったし。
雑談してたっけ?
ずっと放置されてて,誰かが倉庫格納依頼出してた覚えしか無いよ
じゃあちょっと提案するけれど、スレを浮上させませんか?
折角だからもっと沢山の人に読んでもらいたいし。
スレが終了目前なら多少変なレスがついても無問題だと思う。
そうですね。たまには虫干ししますか
とりあえず名無しで読んでる人たち、一番好きな話は?
その前に虫干し。
とりあえず漏れは緑の悪魔シリーズ好きかなぁ。
何か、読んでて爽快感あるし。
たまに書き込んでます。
IInnosent Worldの作者の腕前、割と買ってる。
オーソドックスながらまとめ方が上手いよ。しかもめきめき上達してるし。
あと魔装竜シリーズが挑戦的で面白い。
慣れるまでは主人公チームに感情移入しづらかったけど、
ゾイドバトルシステムのうんちくとかヘリック共和国統一後の世界とかの
作者独自の世界設定部分があくまでさらっと説明できてる所が上手いと思う。
保管庫、最近は更新がないですね。
投稿ペースも早いんだけど。
「死神の羽音」
EZ-018サイカーチス。
歩兵や小型ゾイドのパイロットは、その羽音を聞いただけで震え上がるのだ。
何故なら、低空からの機銃掃射は悪魔の振るう大鎌のように彼らを薙ぎ倒すのだ。
生き残るには、耳をすまさなければならない・・・。
死神の羽音を聞き逃さなぬように・・・・。
ずっと前のスレに書き込んでた開戦前夜シリーズとか、
ドイツ空軍VSヘリック共和国軍スレとか、お絵描き板の仕立屋氏の作品とか
西方大陸を舞台にしたオリジナルストーリーって結構あるけど
いつか許可とってそれらをまとめて、「エウロペ年代記」とか作ったら
なんか面白いもんができそうだなとか思っていたり。
そんな夢物語
323 :
322:04/08/17 22:07 ID:???
1行目
×書き込んでた
○書き込まれてた だ・・・。
いっそ全部のストーリー混ぜ込んでしまうってのはどう?
空想歴史読本みたいな感じで
歴代のこのスレ限定で? 面白そうだけど偉いことになりそうだ
ゴジラ×メカゴジラの世界観はゴジラシリーズ以外の東宝特撮映画のストーリーが
全て過去に起こっていたという感じだったらしいが、それみたいな物かな?
ターンAの黒歴史も、過去のガンダムシリーズが全部入ってると言う事になってるし。
>>326 ガンダムと違って完全にパラレルなゾイド世界が出てきてないから
(一応歴代スレに投稿されてきたのはすべて、公式のゾイド年表に
合致するように作られたサイドストーリーのハズ・・・)
やるとしたら、新たに既存の各作品から色んなキャラとか使わせてもらって
1本作るような形になるのだろうかね。
あ、でも年代とか違うよな・・・
やはり架空歴史本(民明書房刊)か。
>>327 >>324で書かれた様に、空想歴史読本みたいに色々なのがごちゃ混ぜになった
年表みたいなのをやるって言うのも面白いと思うね。
空想歴史読本は面白いよ。人類が核戦争で5回くらい滅びてるしw
つーかドジソ見てみたい。今までのスレ参加者の代表作を集めたようなやつ。
とりあえず漏れは、キャラクターの外見が想像できないな…
本文中に描写があるものが多いと思うけど?
332 :
共和国軍パイロット:04/08/31 18:26 ID:oodfiQ3H
俺は共和国軍のスペクターってもんだ。
最近、俺の乗っていたゴジュラスが
帝国のレッドホーンに破壊された。
そして今はアロザウラーのパイロットをやっている。
しかしこのアロザウラーゆうことを聞いてくれない。かなりイヤになる。
だから俺は隊長に「他のゾイドに乗せてくれ!アロザウラーはダメだ!」
そしたら隊長は「できるかボケ!こんなこと行ってるヒマがあったら
アロザウラーの操縦練習でもしとけ!」と言ってきた。
もうね、アホかと、バカかと。
てめえ部下の気持ちわかってんのか?!今てめえが最新の凱龍輝に
乗ってるからそんなこと言えるんだよ!!
アロザウラーに乗ってみろ!俺の気持ちがわかる!
と怒りながら俺は自分のアロザウラーのもとへ言った。
続く。
sageわすれてたスマソ
その時だった。「敵襲!敵襲!」帝国軍の奇襲だった。
俺はすぐに自分のアロザウラーに乗った。
しかしアロザウラーゆうことを聞いてくれない。
そのとき大きな影かうごいた。
「デ、デスザウラー」・・・見方のひとりが呟いた。
次の瞬間俺はデスザウラーの爪に飛ばされた。
そしてデスザウラーの口に光が集まっていく。荷電粒子砲だ。
俺はすぐにアロザウラーを思いっきりジャンプさせた。
そして着地した場所はデスザウラーの荷電粒子吸入ファン
の所だった。デスザウラーの弱点が目の前にある。
信じ切れないような幸運。勝機はこの一瞬しかない。
2連ビームと火炎放射を同時に叩き込む。
ファンを守るように装備されたデスザウラーの4門の砲塔から
反撃がくるが。トリガーは緩めない。
一撃ごとに、アロザウラーの装甲板が弾け飛んでゆく。
右腕がちぎれ、キャノピーも砕けた。
「頑張れ!相棒!」
無意識に俺は叫んでいた。
続く。
基礎を固めれば化ける…か?
その瞬間、吸入ファンの内部が激しくショートするのが見えた。
黒煙、そして炎が吹き上がる。デスザウラーの巨体がのたうった。
だが、アロザウラーも耐え切れず振り落とされ、地表に叩きつけられた。
衝撃で左足が折れる。ヘルメットと6点式のシートベルトで固めていた俺も、
意識が飛びそうだ。その朦朧した目に、苦痛と怒りに耐えて
起き上がろうとするデスザウラーが映った。
巨大な爪が、アロザウラーに向けて振り上げられていく。
逃げられない。愛機は満身創意で、俺には操縦桿を引く力さえない。
だが絶望の中で、どこか俺の心は晴れやかだった。デスザウラーをここまで
追い詰めたのだ。ゴジュラスにもできないことだ。誇っていい。
自分と、自分の愛機を。そう思って目を閉じた。
その瞬間、同時に3つのことが起きた。
デスザウラーの腕が振り落とされ、怒りで無防備に
間合いに入ったデスザウラーの吸入ファンに隊長の
凱龍輝の長大な尾が突き刺さり、アロザウラーのコクピット射出装置が、
自動的に作動した。
デスザウラーとアロザウラーは死に、俺は生還した。
5日後、傷の癒えたスペクター大尉は、自ら志願してアロザウラー隊を率い、
共和国軍基地の守りに着いた。新たな愛機の中で、スペクターは
ゾイドの不思議を思う。自らの意思で乗り手を選び、
自らの意思で命を捨ててでも乗り手を守る機械獣の不思議を。
右に激戦の跡地が見える。スペクターは静かに敬礼をした。
後悔と感謝の意をこめながら。
END
…ビミョー
微妙でしたか・・・・・・スマソ
ちょっとアロ同梱のファンブックEXの影響が強すぎですね
というか、まんまソレな気がする。
次もがんばれ!
アロのやつを兵士視点でかたってみた みたいな感じだと思ったけどね。
ばんがれ。何度も書くことが大切だと思う。書けば良いってもんでもないけど。
343 :
共和国軍パイロット:04/09/01 14:58 ID:iZhQESqY
やはり皆様知っていましたか。
こんどは自分で考えて必ずオリジナルストーリーを
書きます!!感想を書いてくれた皆様、ありがとうございます!!
344 :
共和国軍パイロット:04/09/01 15:50 ID:ADa0+ZMA
BLADE COMICS JINKI・EXTENDよろ〜
>>344 アニメ化決定したよねぇ〜。(出すのがちょっと早い気もするが)
スパロボ参入なるか?
いや、スレじゃなくて板違いだね
ここは日記帳じゃないので、チラシの裏へドゾー
アケ板にこんなのあった。
脳みそ沸いてるのではなかろうかと
>ゾイドって生命体だよね・・・
>ってことはある程度自由意思はあると思う。
>で、軍隊に配備されるわけだが、中にはパイロット泣かせな奴もいるとおもうのだよ。
>そんでもって、軍隊といえど人間の集まりだから新人虐めとかあるんだろう。
>そうすると、新人にそういうのわざとまわしてうまく扱えないのをいいことにみんなで
>散々いびってみたりするわけだよな・・・
>
>新人の少し落ちこぼれの新人パイロットをいびるベテランパイロットのお局様。
>「新人パイロット用に調整された補助システム搭載のカスタムOS搭載ゾイドも
>まともに扱えないなんて、あなたパイロットとして才能ないわね。やめたら?」
>「そ、そんな!操作がうまくいかないのはこの子がまだ私に懐いて・・・」
>「自分がうまく操作できないのをゾイドのせいにするの?最低ね。それにゾイドに
>懐いてもらう?ゾイドは服従させるものよ!あなたは早々にパイロットを辞めなさい!」
>
>「うぅ・・・グスッ・・・お願いだからいう事聞いて・・・お願いだから・・・」
>「がお〜(やだ〜)」
>「君がうまく動いてくれないと・・・私、パイロット辞めさせられちゃうの・・・だから・・・グスッ」
>「・・・・・・ぐぅお〜ん(しゃーないなー)」
>
>
>みたいな・・・・・・
>そんなわけねーな!
セリフ以外のなにが悪いのかワカンネーどうしょ。
時は、ネオゼネバス帝国とヘリック共和国の戦争が、終結を迎えようとしていた頃・・・。
戦場は、硬直状態だった。
ネオゼネバス、ヘリック共に、相手に決定打を与える術を持ち合わせておらず、両軍は
にらみ合いを続けていた。セイスモサウルスのゼネバス砲も、ディメトロプテラと凱龍輝
によってほぼ無効化され、戦局を変えうる力を失っていた。
現在では、互いに相手の出方をうかがい、各地で小規模の戦闘を行っているに過ぎな
かった。逆を返せば、それは次の全面衝突が「最終決戦」になることを意味していた。
共和国拠点に、星空を眺めながら想いにふける一人の兵士がいた。
レイ・グレック。
ネオゼネバス皇帝、ヴォルフ・ムーロアと戦う運命の元に立たされた戦士。
彼は、ある一つの思いにとらわれていた。
「この戦争に、終わりはないのか・・・・。」
以前、エナジーライガーの暴走を止めた際、彼は確かに一瞬、戦争の終わりを予感した。
しかし、それが限りなく甘い妄想に近いことは、誰よりも彼が知っている。
現に、戦争は今も続いているのだから。
「このまま戦い続けて・・・・一体何が残る・・・・?」
彼はそう呟いた後、思いを振り払った。
先のことなど考えても、どうにもならない。今は、今できることをしていこう。
そういって、彼は立ち上がり、基地の中に歩いていった。
同じ頃、ネオゼネバス皇帝、ヴォルフ・ムーロアも、似たような想いに捕らわれていた。
一国を支配するには優しすぎる彼は、内心これ以上戦争を続けたくないと思っていた。
「だが、どうすれば戦争を止められる・・・・・。」
ネオゼネバス帝国民は、ヘリック共和国との戦争に全面協力する姿勢を見せている。
今更和解しようとしても、とうてい無理だろう。
「やはり、戦って勝つしかないのか・・・・。」
そう考えたとき、彼はあるゾイドのことを思い出した。
以前より、セイスモサウルスと平行して帝国技術陣に開発を要求していた機体。
ゼネバスの象徴、デスザウラーを更に強化させて誕生した、「あのゾイド」の事を。
戦場に投入さえすれば、ほぼ間違いなく敵軍を壊滅に追い込むことが出来る禁断の
最終兵器を。
「いや、ダメだ!」
その考えを、彼は振り払った。
「あのゾイド」はまだ不完全だ。限りなく不安定な性質を持ち、人の制御下に置くこと
が難しくなってしまっている。いや、出来ないと言っても過言ではない。
そんなものを、使うわけにはいかない。
「・・・・・・・・・・。」
ヴォルフは、何かを振り払うかのように、皇室へ戻っていった。
次の日、共和国拠点は蜂の巣を突いたような騒ぎになった。
ネオゼネバス軍が、ヘリック共和国拠点をめざし、進撃中という報告が入ったからだ。
再びの全面衝突の時。
格納庫中を走り回る整備員達、愛機のコクピットに座り込む兵士達。
その中に、レイもいた。
しかし、彼はある考えに捕らわれていた。
「・・・おかしい。」
あのヴォルフが、こんな大きな行動を、それも「今」起こすとは思えない。
「一体どうしたんだ・・・・?」
そう思いつつ、レイはライガーゼロ・ファルコンのコクピットに座り込み、愛機を起動させた。
その数日後、にらみ合いににらみ合いを重ねた両軍は、遂に衝突した。
総力戦。この言葉はこの戦いにこそふさわしい。それほど熾烈を極めた戦いだった。
ライガーゼロ部隊が前線を引き裂き、ガンブラスターがブロックス部隊を薙ぎ倒し、ゴジュラ
スギガが近づく敵機を片っ端からねじ伏せ、凱龍輝が敵のエネルギーを取り込んだ後集光
荷電粒子砲として撃ち返した。マッドサンダーのマグネーザーは、デスザウラーの超重装甲
を一撃で貫いた。
帝国も負けてはいなかった。閃光のようなエナジーライガーが一瞬で敵機を鉄屑に変え、
バーサークフューラーがライガーゼロと組み合い、デススティンガーが地中にゾイドを引き
ずり混み、そしてセイスモサウルスのゼネバス砲の横薙ぎ放射が共和国ゾイドを十数機
まとめて吹き飛ばした。
どこを見ても戦いという状況の中、レイ・グレックは駆け続けていた。
最も敵が多いと思える場所に飛び込み、薙ぎ倒していく。
鬼神の如き戦いを続けるレイのゼロを、突如として赤い閃光が襲った。
「ちぃ!」
反射的に回避する。そして向き直ったそこにいたのは、エナジーライガーだった。
それも、見覚えがある。ヴォルフが乗っていた皇帝専用機だ。
「また会ったな、レイ・グレック!」
ヴォルフが叫ぶと共に、エナジーが突撃する。時速660kmの超高速の突進。通常の
ゾイドなら、反応する事も出来ないだろう。しかし、ファルコンの速さはその光のような
突撃をかわした。
「ヴォルフ・ムーロア!今度こそお前を倒す!」
ゼロ・ファルコンのバスタークローが高速回転し、エナジーの喉元をねらう。しかし、
前回の戦いでファルコンのポテンシャルを知ったヴォルフも、それを冷静に回避する。
時速500kmを超えたスピード同士の戦いは、他のゾイドの介入を許さず、必然的に
1対1の戦いとなっていった。
その頃、戦況は、完全にヘリック側に傾いていた。
ロードゲイルなどのキメラの指揮機のほとんどが破壊され、キメラ部隊が力を失っていく。
既に帝国軍と共和国軍の戦力差は、5000機以上にもなっている。セイスモサウルスが
健在とは言え、この戦力差は如何ともしがたい。帝国軍がじりじりと後退していく。もはや
勝敗が決定的になろうとした、その時だった。
突如として、非現実的で巨大な閃光が上空から放たれた。大出力荷電粒子ビームの閃光。
その一撃によって、共和国ゾイド数十機が巨大なクレーターを残して消滅した。
両軍の兵士達が一斉に顔を上げる。
そこにいたのは、ホエールキング。あらゆるゾイドの中でも最大の体格を持つ輸送ゾイドだ。
だが、ホエールキングに荷電粒子砲は搭載されていないはず。ではどこから?
ホエールキングが近づくと同時に、「それ」が姿を現した。
ホエールキングの腹部に増設された輸送用の拘束具。そこに、白いデスザウラーが積まれ
ていた。しかし、通常のデスザウラーとは明らかに違う。背中には見慣れぬバックユニットが
増設され、目の色は赤ではなく、冷たいまでの蒼。何より兵士達が疑問に思ったのは、輸送
用の拘束具が、まるでデスザウラーの動きを完全に封じるかのように作られていることだ。
空を見上げたヴォルフは、驚愕に目を見開いた。
「馬鹿な・・・・・メガザウラー・・・?」
ここにいるはずのないゾイドが、目の前にいた。
メガザウラー。
ゼネバスの象徴的ゾイド、デスザウラーにキメラ技術を応用し、複数の人工ゾイドコアを融合
させて造り上げた強化ゾイド。コアの拒絶反応をエネルギー化することにより、理論上では、
半永久的に大口径荷電粒子砲を放ち続けることが可能な最終兵器である。
だが、その無理強いた強化は、デスザウラーの凶暴性を一気に増大化させた。ヒトによる
制御が限界を超えてしまい、己の意志で活動を続ける恐れまでもってしまったのだ。その
ため、運用はもちろん、起動させることすら禁じられ、封印されたのだ。
「何故・・・あれがここに・・・・。」
ヴォルフが疑問に思ったのも無理はない。自分はあのゾイドの出撃命令など出していない
のだから。いや、出すはずがない。
メガザウラーの出撃は、帝国将校達の独自の判断であった。元々帝国将校の多くは、メガ
ザウラーの封印に反対であった。究極の破壊力が目の前にある。それは、彼らの闘争心
に火を付けるには、十分すぎる物であったのだ。
メガザウラーは、大地に降り立ち、拘束具が解除されたと同時に大口径荷電粒子砲を
放った。それだけで、共和国軍の一角が消し飛んだ。荷電粒子を吐き続けたまま方向を
変え、ゾイドを次々に消し去っていく。あのマッドサンダーさえ、粒子ビームを放射し続け
られ、シールドを破られて消滅した。凱龍輝とゴジュラスギガが前にでた。凱龍輝の集光
パネルが一時粒子砲を防ぐが、すぐに内部回路が焼け付き、凱龍輝は光の渦に消えた。
だが、その隙にゴジュラスギガが、格闘戦が可能な至近距離にまで近づいていた。
突撃するギガ。風を巻いて、肉弾戦を繰り広げる巨大ゾイド。
格闘戦ではギガの方が上手だった。ギガのハイパープレスマニュピレーターが、超重装甲
を飴のようにねじ切り、左腕をもぎ取った。粒子砲をシールドで受け流しながら、更に爪を
たたき込む。少しづつ後退していくメガザウラー。追撃するギガ。ゴジュラスギガがメガザ
ウラーを追いつめた、その時―――
突然、メガザウラーの出力が増大し、先程までとは比較にならない荷電粒子ビームが
ゴジュラスギガを跡形もなく粉砕した。そしてメガザウラーは、辺りのゾイドに手当たり
次第に攻撃を加えていった。味方であるはずの、帝国ゾイドにまで。
ヴォルフが危惧したとおりになってしまった。生存本能によって、遂にメガザウラーは人の
制御を離れ、暴走を始めてしまったのである。突然の出来事に対応できず、次々とゾイドが
大口径粒子砲の光の奔流に飲み込まれていく。
異変に気づいたレイが振り返ったときには、戦場は酷い有様になっていた。たった1体の
ゾイドから、数千機以上のゾイドが逃げまどう。地獄絵図とは、こういう事をいうのだろう。
この場面に、レイは意外にも親近感があった。自分がまだ閃光師団にいた頃。ヴォルフを
守るために出撃したブラッディデーモンによって、仲間が危機にさらされていた状況。あの
時と今は、敵が混ざってることをのぞけば、全く同じと言っていいほど状況が似通っている。
だとすれば、やるべき事は同じだ!
「行くぞ、ゼロ!」
ファルコンの機首を、メガザウラーに向けた。そして突進。時速570kmの超高速。ヤツに
気づかれる前に懐へ飛び込んで、一発お見舞いしてやる!
メガザウラーが気づき、顔を向けた頃には、レイはメガザウラーの50m手前の所にいた。
粒子砲をかわしながら、一瞬でメガザウラーの死角に潜り込む。
炸裂するバスタークロー。超重装甲が削り取られ、甲高い悲鳴を上げる。
しかし、内部回路に達する前に、爪が眼前に迫ってきた。反射的にかわし、距離を離す。
すぐに荷電粒子砲が来た。辛うじて回避する。左のバスタークローが蒸発した。
機体バランスが崩れ、動きが鈍る。そこに、尾の一撃が来た。凄まじいパワー。
一撃で意識が飛びそうになる。
再びメガザウラーの頭部に光が灯る。圧倒的なエネルギー粒子が、メガザウラーの体内
で渦巻く。そして、荷電粒子の光が放たれようとした瞬間―――
赤い閃光が、メガザウラーの左足の横を通り過ぎ、メガザウラーの左足首が切断された。
体勢を崩し、荷電粒子ビームは明後日の方向へと放たれた。
閃光の正体は、ヴォルフのエナジーライガーだった。
「協力するぞ、レイ・グレック!」
そう叫ぶと、ヴォルフはメガザウラーに向かって突進した。あの化け物をこの世に生み出
したのは、半分は自分の業である。だからこそ、自分がこの手で止めなければならない。
狙うのは、ヤツの右足。そこを潰せば、メガザウラーの動きを封じたに等しい。
赤いウィングブレードに光が集まっていく。必殺の「ウィングスラッシュ」だ。
一閃。切れた。だが浅い。完全に切断しきれなかった。
方向を変え直す。しかし、その時既に、荷電粒子砲の砲門がこちらに向いていた。
跳んでかわす。直撃は避けたが、足を消し飛ばされた。動けない。
巨大なキラークローがエナジーの胴体を穿った。エナジーの機体がくの字に折れ曲がり、
大地に叩きつけられた。ガトリング砲が砕け、鬣がへし折れる。
メガザウラーが足を引きずりながら近づいてくる。エナジーのエネルギーを取り込み、金属
細胞の再生を促すつもりだ。爪が迫る。ヴォルフが死を覚悟した。
しかし、メガザウラーの爪は、一発の砲弾によって遮られた。ヴォルフが振り返ると同時に、
メガザウラーに大量の砲弾が降り注いだ。ネオゼネバス軍とヘリック共和国軍のゾイド達が、
共通の敵に向かって一斉に攻撃している。あまりの砲弾の量に、超重装甲も拉げ始める。
朦朧とした意識の中、ヴォルフはエナジーの横に、レイのファルコンが並ぶのを見た。
「レイ・・何をするつもりだ・・・・・。」
そう呟き、レイがゼロのコクピットから降りるのを見た後、ヴォルフの意識は闇に飲まれた。
レイは、エナジーのエネルギーチューブをファルコンに連結させていた。
かつて、エナジーライガーが暴走した際、ファルコンは莫大な余剰エネルギーをバスター
クローから一気に放出した。あの時の事は、今でも鮮明に覚えている。
あれなら、もしかすればメガザウラーの荷電粒子砲に対抗できるかもしれない。
エネルギーチューブを連結し、コクピットに再び乗り込んだレイは、バスタークローの砲身を
メガザウラーに向けた。
その頃、メガザウラーは片足を軸に回転しながら荷電粒子砲を放出。それだけで、周りにいた
数百機のゾイドが光に消えた。
メガザウラーのダメージは、深かった。超重装甲のあちこちに亀裂が走り、右腕は力を失って
ダランと下がり、巨大な足もガクガクと震えている。
しかし、それでもメガザウラーには戦う力が残っていた。凄まじい戦闘本能が、満身創痍の
体を動かす。
レイが、エネルギーゲージを凝視する。
暴走時だったエナジーと連結したときと違い、通常のエナジーのエネルギーでは「溜め」に
時間が掛かる。それまでにメガザウラーに気づかれたら、終わりだ。
「50%・・60%・・70%・・80%・・」
その時、メガザウラーがファルコンに向き直った。口の中に眩い光が見える。
「95%・・100%!よし!いけえぇぇぇぇ!!」
トリガーを強く引く。
バスタークローから、膨大なエネルギーが光の渦となって放出される。メガザウラーも粒子砲
を放つ。2本の巨大エネルギービームは、真っ正面から衝突した。
閃光、振動、衝撃、そして轟音。
これらが全て、ほぼ同時に辺りを包んだ。
2つのエネルギーの衝突は、凄まじい振動と爆発を引き起こした。大地が抉られ、空気が燃え
上がり、ゾイドの残骸が紙切れのように舞い上がる。
その衝撃波に、ファルコンの機体がひっくり返りそうになる。いや、ひっくり返っても全くおかしく
ない。それほどの衝撃だった。
しかし、レイのファルコンは、大地に足を深く踏みしめ、衝撃に耐えている。
装甲が削れ、爪が割れ、足の関節が悲鳴を上げる。
「頑張れゼロ!頑張れ!!」
レイが叫ぶ。その声に答えるように、ゼロファルコンは更に強く足を踏みしめた。
ヴォルフが意識を取り戻したのは、ちょうどその時であった。
うっすらと目を開ける。眼前に巨大な光球が見える。メガザウラーの粒子砲と、レイのファルコ
ンが放つエネルギーの衝突。一見は互角。しかし、ファルコンの機体がもはやボロボロである。
吹き飛ぶのも時間の問題だ。
「くっ・・・・・!」
ヴォルフが、トリガーに手を伸ばした。
レイは、半ば死を覚悟していた。
この圧倒的な衝撃波に耐え抜くには、ファルコンはダメージを受けすぎている。愛機の力が
弱まっていくのが、座っているだけで分かる。
「駄目か・・・・・。」
レイが諦めかけたそのとき。
一筋の閃光が、メガザウラーの右足を直撃した。ヴォルフのエナジーが放ったエネルギー弾だ。
メガザウラーがよろける。一瞬だが、パワーダウンした。
「今だ!いけえぇぇぇぇぇぇ!!」
レイが叫ぶ。ファルコンのエネルギーが粒子砲を押し切り、メガザウラーは頭を消失した。
メガザウラーがゆっくりと倒れた。その瞬間、戦場から歓声が上がった。共和国も帝国も関係
なく・・・。
レイは、肩を激しく上下させながら、エナジーライガーに向き直った。コクピットはほぼ無傷だ。
コクピットから下り、近づいていく。
エナジーのコクピットが開いた。ヴォルフは外傷こそあまりないが、もはや動ける体力があり
そうにない。
「レイ・グレック・・・・・。」
ヴォルフが呟く。
レイは、無言で近づくと、ヴォルフに肩を貸し、コクピットから助け出した。
二人の目の前には、戦うことも忘れて歓声を上げる帝国軍と共和国軍がいる。この光景を見て、
二人は同時に思った。
「いつか必ず、この戦いは終わりを告げる。そう信じたい・・・・。」
<The end>
361 :
名無し獣@リアルに歩行:04/09/07 09:44 ID:p+/n2P38
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/ ス__,、___ゝ|
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(⌒ ) (__)
また復活したのか?
このスレ、倉庫格納依頼出してるんだけど
倉庫入りしないんだよね。
なんでだろ。
あと2KBでdat落ちなんで、気にしなくていいかと。
俺は良くできてると思うよ。
いらんことはせんでええから。
>>349〜
結構好きだな。磨けばやっぱり化けるんじゃないか?
もう次の次のスレまであるんだよね〜
もう容量限界まであと少しではないですか!
めでたしめでたし
銀河系の遥か彼方、地球から6万光年の距離に惑星Ziと呼ばれる星がある。
長い戦いの歴史を持つこの星であったが、その戦乱も終わり、
平和な時代が訪れた。しかし、その星に住む人と、巨大なメカ生体ゾイドの
おりなすドラマはまだまだ続く。
平和な時代を記した物語。過去の戦争の時代を記した物語。そして未来の物語。
そこには数々のバトルストーリーが確かに存在した。
歴史の狭間に消えた物語達が本当にあった事なのか、確かめる術はないに等しい。
されど語り部達はただ語るのみ。
故に、真実か否かはこれを読む貴方が決める事である。
過去に埋没した物語達や、ルールは
>>2-5辺りに記される。
ルール
ゾイドに関係する物語なら、アニメや漫画、バトスト等何を題材にしても良いです。
舞台となる場所、時間等は制約無しでバトストと書いて有りますが平和でも問題無いです。
自由で柔軟な発想の作品をお待ちしています。
例外的に18禁描写はご遠慮下さい。
鯖負担の軽減として【450〜470Kb】で次のスレを用意する事。
投稿された物語の感想等も大歓迎です。