銀河系の遥か彼方、地球から6万光年の距離に惑星Ziと呼ばれる星がある。
そこはうち続く戦乱と、荒ぶる自然の世界。
人々は、この星に棲む巨大なメカ生体-ZOIDS-を戦闘機械獣に改造し、今日も戦場へと赴く。
この戦いに勝利することが、永遠なる平和を勝ち取るための唯一つの方法と信じて…。
空前の大戦争を記録する為に作られたゾイドバトルストーリー。
しかし、そこには語られる事のなかった多くの物語がある。
歴史の狭間に消えた物語達が本当にあった事なのか、確かめる術はないに等しい。
されど語り部達はただ語るのみ。
故に、真実か否かはこれを読む貴方が決める事である。
過去に埋没した物語達や、ルールは
>>2-5辺りに記される。
ルール
ゾイドに関係する物語であるならば、アニメ、漫画、バトストなど何を題材にしても可。
舞台となる場所、時間などには、特に制約はありません。
ゾイド板ならではの自由で柔軟な作品をお待ちしております。
ただし、例外として18禁描写はご遠慮下さい。
鯖負担になるので、
>>250に書き込んだ方に次スレのスレ立てをお願いします。
投稿された物語の感想等も大歓迎です。
4 :
先任伍長:03/11/01 17:40 ID:???
スレ立てお疲れ様です
スレ立てお疲れさまです。
スレをまたいでの作品になってしまいましたがネタも少しづつ確実に処理を続けているのでこのスレで終わると思います。
変な毒電波にやられない限りはきっと大丈夫…。
と言う事で再開!?
ーーーーーーーーーー
しかしそのゾイドに不審な点が多い事にザクサル=ベイナードは気付く。
体色がおかしい事と体中に何かから抜け出したような体液が残っている事、そしてその体液の色が蛍光色の気味の悪いものだった事。
この事で彼はこのゾイドは完全野生体とは言ってもこの施設の奥底自分が外に連れ出そうとしているゾイドの破片が独立行動し始めたあの寄生体であると判断したのだ。
「ここまでの速度で成長するのか…?楽しいなぁ〜。」その表情に邪悪な笑みが生まれる。
「ワームブレイカーの片割れのなれの果てが!」そう叫ぶとその巨体目掛けて襲い掛かる…。
彼の機体にワームブレイカーを構成していたブロックスをチェンジマイズさせ始める。
時間を稼ぎ相手の体格に合わせたパーツ構成の機体に変化させようとしているのだ。
相手のゾイドはT−REXやゴジュラスタイプの恐竜に背中から尾の部分に掛けて剣竜の様にスパイクが付いている。
肩の部分からは巨大な昆虫状の羽根が3対生えていた。
「何とも節操も無い姿だな…。」更に相手を良く見た彼は額に手を置く…手の在る筈の部分には角竜の頭部。
キメラブロックスも尻尾を巻いて逃げ出しそうな姿だった…。
その上戦力は未知数。久々に追い詰められる側に回ったザクサル=ベイナードはそれでも嬉しそうな顔で嬉々として相手に襲い掛かるのであった。
狩りを行なう物は自分であると誇示するかの様に…。
腕部の角竜の角がザクサル=ベイナードの機体に襲い掛かるしかし無理な姿が災いしてあっさり避けられる。
だがそのスピードは非常に速く通り抜けた後に軽い衝撃波が発生するほどだった。
「まだまだだな!」機体に付いている3連キャノン砲は先行開発された初期型のディスペロウの物でマトリクスケンタウロスはバスターイグルと先行開発型ディスペロウにレオストライカーを一つに合体させた機体で砲撃兵器には不安は無い。
3連キャノン砲を撃つ。が相手の”野生キメラ”は表皮も非常に固いらしく傷一つ付いて居なかった。
「出力が足りなすぎるという事か。」バスターキャノンを発射するが今度は手の頭部に阻まれる。バスターキャノンを喰らった頭部は悲痛そうな鳴き声を上げるが単に痛いだけな様で爆炎が無くなると全く傷ついた後は無く怒りの咆哮を上げて突撃してくる。
上半身のレオストライカーの部分をアルティメットモードに変更してザンスマッシャーを叩き込むがやはり完全なパワー不足で全くダメージを与えられていない。
突撃を諸に受けて施設の壁と天井と床に2回づつ程激突しながら吹き飛ばされる。
「全くもって不愉快な相手だな。」少しづつおいつめられては居たが大型チェンジマイズ出来れば充分撃破できると踏んだのか焦る様子は無い。
しかし次の攻撃には驚愕せざるおえなかった…。「馬鹿な!?幾らキメラ見たいな物だからと言って!?」
彼の機体の目の前を強力な光量質量のビームが通り抜けていったのだ。更にその先には腹を前に突き出した”野生キメラ”の姿が写る。
その腹部にはあの寄生体特有の臓器が蠢きその中心部にはレンズ状の機関が在りそこから発射された様だった。
「機獣大戦争と言った所か!」冗談にしか見えない状況が目の前で繰り広げられている…ザクサル=ベイナード自信もこの先に起こる事は予測不可能な域に達している事を認識しなければならなかった。
予想を遥かに越える結果がもたらされるだろう…追い詰められながらも彼の胸は期待に満ち溢れていた。
「だが!ここまでだ!」接続用のパーツが出来上がるのを確認するやいなや高速でチェンジマイズを敢行する。
数秒後そこに立って”野生キメラ”を見下して居るのは更に一回り大きい竜型のブロックスだった。
「ふはははは!これが今のブロックスの最強の組み合わせアークデバステイター+だ!」
何故「+」が付くかはその見た目が示す通りワームブレイカーが被っていたギガの外装をそのまま使用しているからだが、
その姿はキングゴジュラス同等のサイズと旧戦争時代の大型恐竜ゾイドと同じ構えを基本にしていた…。
”野生キメラ”からのビーム攻撃がアークデバステイター+を直撃するが外装と直結したハイパーEシールドに完全に阻まれる。
防ぎ終わると反撃とばかりに胸部から腹部に掛けて目一杯装備されている火器を一斉掃射する。
出力の上昇により威力の上がった砲撃は苦も無く相手の表皮を突き破り内部で炸裂、
後には重金属の破片が辺り一面に散蒔かれていた…。
「ふふふ…ここまで役に立ってくれるとは流石に頭が下がるよ。」何の悪びれも無くつい今しがた虐殺とも言うべき処置をしたゾイドに礼を言う。
アークデバステイター+へのチェンジマイズによりレコーダーの入っているコアブロックを発見できた事とたまたまの兵曹の威力試験が出来た事に上機嫌なザクサル=ベイナードだった…。
施設地上部入り口…。
デスアナライザーFFとデスザウラーSTそしてロードゲイル「アナイアレイター」が待機状態で3機並んでいる。
シュミット=エーアストはデスアナライザーFFのコクピットで施設に侵入したファイン=アセンブレイスの足取りを地図に書き込む作業をしていた。
「自動でやっているのに何でここに居るんだろう?」彼は疑問に思っていたが直に理由を思い出す。
施設の地下からの通信を受けそれを施設内のファイン=アセンブレイスに連絡を取ったら入り口付近で戦闘していると聞き、
パニックになっていた事を忘れていたのだ。
「情けない…少佐にばれたら真綿で首を締められるような緩やかな嫌みを言われそうだ。」と呟く。
「嫌みがぁ〜何ですか〜。」どうやら全て聞かれていたらしい…。
「事情は〜解りました〜。」とルディア=カミル。ついでにパニックに陥っていた間の情報の確認も彼女の方が行なっていたらしく、
今共和国軍の生き残りと一緒に行動している事等も知っていたようだ。
「残念ですがぁ〜その方は多分救助できないと思いますぅ〜。」「そんな見捨てるなんて…。」
「現実を〜受け入れてください〜。多分必死でこちらに状況の〜通信を入れていたという事は〜、その方が自分は助からないと思ったからだと思いますぅ〜。」
「…」シュミット少尉は黙ってしまう。相変わらず通信や連絡の際の自分の任務の遂行の仕方、
相手の言葉を正確に受け止められない事。偉そうな事を言いながら何も出来ていないと言う事を痛感するシュミット=エーアストだった。
「まあ気を取り直してくだい〜。完全に無理と言う事では在りませんし〜…。」言っている事が段々支離滅裂となって来ているルディア=カミル。
自分の言葉がシュミット=エーアストを落ち込ませてしまった事に責任を感じているのだろうか?しかしシュミット=エーアストは「大丈夫ですよ少佐。それよりも自分も別口から施設調査を始めた方が良いのでは無いでしょうか?」
「駄目ですよぉ〜今ここを手薄にすると〜また”お客さん”が出てきて大変な事に成ったときに〜手も足も出ませんよぉ〜。」あっさりと申し出を却下するルディア=カミルこれ以上戦力を分散させるのは得策でないと判断したのだ。
「後ぉ〜半日もすれば〜再編成された〜調査隊の方達が来るのでぇ〜もう少し待って下さい〜。」彼女の間の伸びた緩い喋り方はこう言った時には非常に便利でシュミット=エーアストは気を削がれ上申をするのを止めてしまう。
テントから出て行くシュミット=エーアストに「もう少しの辛抱ですよぉ〜。」ともう一度釘を刺すがその必要は無さそうだった…。
「ふっ不便でありますね…。」食料の山を施設厨房に運びながらファイン=アセンブレイスはあからさまに不満を述べる。
「しょうがないじゃない。施設の調理師さん達も不便不便って言っていたんだから…。」とミズホ=浅葱。
これで3往復目だった事も彼等が余計に不満を増幅させるのに一役かっているようだ。
「まさか調味料が別々に箱に入っているとは思いもしなかったであります。」彼等は厨房で食料を本気で調理しようとしていたのだ。
「!」何かの気配に気付く。厨房に何かが侵入しているようだ…箱を床にそっと置き大型ニードルガンを構えて食堂に入る…。
「今から食事か?ついでに一人前追加で頼む。」後ろから声がする…またかと思いながら振り向かずそのまま後ろに下がり箱を持ち上げる。
「神出鬼没と言うよりは保護者気取りでありますか?」声には明らかな不満が篭もっている。顔も見る必要は無いその相手はザクサル=ベイナード。
はっきり言って彼にとってはただの厄介者出来れば二度と遇いたくない者だった…。
「ふふふ…楽しい事になってきたな。」上機嫌のザクサル=ベイナード。対してファイン=アセンブレイスとミズホ=浅葱は不機嫌極まりなかった。
「何?”死を運ぶ紅き狂風”だかなんだか知らないけどこう言う時に役に立たないなら今更余裕かまして出て来ないでほしいわ。」「そうでありますね〜偉そうに一人前追加とか言ってるでありますよ。」
性格のベクトルがやや近いらしく二人して「聞こえるように」嫌味を言いながら調理をしている。
緊急時である為簡単な調理にしようと思っていたのだが食堂付近に近付く化け物達を相手にザクサル=ベイナードが虐殺を楽しんでいるので共謀して彼が食べる分に悪戯を仕掛けることにした。
しかし普通の手では通用しないだろう「こちらも痛い目に遭うでありますがやりますか?」「勿論!」どうやら腹を括ったらしく作戦を決行する…。
細心の注意を払いながら食堂から彼が居なくなり更に近くから物音が完全にしなくなってから調味料を入れる古典的な調味料の量を間違えたと言う言い訳付きの自爆作戦だった。
少し経って調理が終わり何故か3人同じテーブルで食事を取る事になってしまう…。予めファイン=アセンブレイスは盗聴器のスイッチをONにしていてる。
それは外で待機している部隊に繋がっておりそれを更に受信している部隊は、
「おい!今命懸けで自爆王が悪戯を仕掛けているぞ!」「何だって?相手は?」「ザクサル=ベイナードだってよ。」「生きて帰れるのか?」「解らんな。」と結果を心待ちにしているようだった。
「いいんですか?少佐?」「構いませんよぉ〜シュミット君。昨夜の不法侵入の仕返しには丁度いいですぅ〜。」幾ら楽しみが無いとは言え外野の反応は異常だった…。
テーブルに座っている当事者3人近くの空気は無駄に殺気立っている。それぞれの表情も何かを狙いながらも口々に笑みがこぼれていた…。
「いただきます!」自棄に気合いの入った声と共に3人は同時に食事を取り始める…。
激辛と言うのも痴がましい異常な辛さの物を揃いも揃って眉一つ動かさず食べる。
…その内ミズホ=浅葱の表情が歪む「もう駄目…。」そう言うと椅子を蹴り倒し水道に走っていく。
「辛くはないか?」ザクサル=ベイナードは額に汗を掻きながらファイン=アセンブレイスに問い掛ける。
「辛いでありますね。」表情一つ変えずに食べ続けるファイン=アセンブレイス。
そう…ファイン=アセンブレイスは予めミズホ=浅葱とこの流れを作る下準備を怠っていなかった。
予め手品の仕掛けとそれを気付かせない為に始めにミズホが席を立つ。
それでも信用しないだろうとある香辛料を予めザクサル=ベイナードの分以外に混ぜて置く。
その効果で実際の辛さより50%程辛みを押さえることが出来るのだ。
「ちょっと待て!そっちを少しくれ。」異常に気付いたかファインの食べている物を奪う。
「同じか…。」しかし罠は2重で片側は普通に盛ってありもう片方を細工した物を盛っている為反対側を食べた彼は普通に辛い。
受け取るとそれを混ぜてさっさと胃袋に収めてしまうファイン。謀略?は成功し眉一つ変えずに全てを食べ終わりその上食べ足りないとミズホの残した分も証拠隠滅の為食べきる。
「おっ覚えておけ!次に会うときは必ず貴様を殺してやる…!」結局食べ着れずに吹き出してしまい敵の面前で恥を掻いたザクサル=ベイナードは捨て台詞を残して去る。
どうやら仕掛けをその後に気付いたらしく悔しそうな顔をしていたのを確認し「甘いでありますよ…ケホッ…。」極端に辛い物と甘い物が好きな彼であったが流石にこれは無理だったらしい。
完全に去ったのを確認すると血相を変えて飲み物を飲みに行くファイン=アセンブレイスだった…。
酒飲んで酔っ払った状態で書いてたら無茶な内容になってる…_| ̄|○
話の方向を修正しないと…
ーーーーーーーーーーーーーーー
それ以後の探索はそれまでの一件のおかげで敵戦力が少なくなっている事も幸いし大規模な戦闘になることは無かった。
幾つかのエリアを迂回する様に制御室と資料室を探す…。「資料室は3層だよ。」先の一件で連帯感が向上しそれとなく助け船を出す様になってきたミズホ=浅葱。
「3層…随分と下でありますね。」ファイン=アセンブレイスは答える。まだ体が熱い様で今更掻き始めた汗を拭いながら歩いている。
この辺りは激しい戦闘があったのか壁や天井、床に何かに引き裂かれたような跡が多々在るようでその見た目は言うならば目がそこら中に在るような不気味さを醸し出していた…。
「出そうでありますね…。」「え〜。また?」何度も化け物が出るのを予測し、
9割がた化け物に接触した実績は彼等を嫌な気分にするには充分な威力だったようだ。
しかし今回は今までとは違う者がそこに居た…。
それは自分の縄張りに入ってきた獲物を見ると舌舐りをする。
獲物は2匹で何方も彼には美味そうに見える。もう少しで獲物に手が届く位置…彼はここ数日何も食べていない。
間合いの目の前で立ち止まった彼らを見ると苛立ちを唸り声に込めながら立ち上がった。
「そんな事って…。」ミズホは狼狽えるが無理も無い。
彼はこの施設で高速大型化技術の再確立の為のモルモットとして連れてこられたコマンドウルフの素体になる狼型の野生体なのだ。
その背中には寄生体が取り憑いた跡とそこから2本の槍状先端を持つ触手をゆらゆらと揺り動かし嬉しそうに少しづつ間合いを積めてくる。
「これまた厄介極まりないでありますね…。」今までとは全く違う相手。
しかも一流のハンターで有る事だけで無く寄生体と完全に共生している。このエリアに化け物が居なかった理由が一瞬で理解できる。
…右前脚が微かに動きを止める。彼は狙いをミズホに決めた様で次の瞬間触手が真っ直ぐ彼女に向けて伸びていた…。
14 :
先任伍長:03/11/06 06:45 ID:???
硝煙の果てに
水の補給に立ち寄った街は、やけに騒がしかった。
西部西方大陸に位置するこの辺りでは人口密度は極端に低かった。
幾重にも連なる山脈と広大な砂漠地帯が続くこの土地の可住人口が低い為だ。
ここでは砂漠地帯に稀に存在するオアシスか、山地に僅かに広がる平地にしか住む事はできない。
だから旅人にとっては、そういった街は補給地として欠かせなかった。
一度、補給地となる街を見失えば、旅人はそのままのたれ死ぬしかない。
この土地は通過するだけでも危険な場所なのだ。しかし裏を返せば監視の目を逃れながら大陸南部に渡るのならば、西部を経由するのはもってこいのルートだった。
どうみても可住人口をはるかに上回る集団を横目で見ながら、ライアーは面倒くさそうに店が建ち並ぶ町の中心部に歩いていった。
だが、頭部を被うフードの下からのぞく鋭い目はその奇妙な集団を注意深く見つめていた。
ぼろぼろのマントに、擦り切れた旅装のライアーは、このあたりではそう珍しくも無い冒険者に見えた。
西方大陸の中でも古代の遺跡が比較的多い西部は、金目の遺物を目当てにしてくる冒険者が絶えなかった。
個人レベルのものから、企業に近い形を取るものまで一攫千金を狙う冒険者が尽きることは無かった。
それどころか冒険者の落とす金を目当てとして、大規模な遺跡群の近くに集落が出来る事さえあった。
かつての古代文明の遺産を西方大陸の諸国家や、大陸の権益をもつ帝國と共和国に持っていけば、それなり以上の利益が出るのだ。
ただし、遺跡にもぐって帰ってこない冒険者も多かった。遺跡調査の冒険者は山っ気の強い商売だった。
15 :
先任伍長:03/11/06 06:53 ID:???
だが、今この街にいる集団はそういった冒険者とは毛色が違っていた。
冒険者たちの中には、内部抗争から武装するものも多かったが、今いる集団はそんな片手間の武装とは違っていた。
軍隊というほどではないが、いかにも戦闘慣れしている連中が多かった。
――冒険者で無いとしたら傭兵なのか・・・
ライアーはそう結論付けると首をかしげた。人口密度の低い西部でこれだけの規模の傭兵が必要な理由がわからなかった。
西部だけではなく西方大陸では傭兵は比較的ポピュラーな存在だった。
大陸全体に勢力を伸ばすほどの国家が存在しないこの西方大陸では、土地の防衛を請け負う傭兵の存在が不可欠なのだ。
この辺りでは山賊の襲撃などから一時的な防衛を請け負う個人契約の傭兵が一般的だが、大陸には都市国家の防衛を一挙に担うだけの戦力を持った大規模傭兵団の存在も珍しくなかった。
ライアーが見ている集団は、まとまりの無さからすると傭兵団では無さそうだった。おそらく個人か数人レベルの傭兵をかき集めたのだろう。
それにしてもこれだけの集団を雇用するのにはかなりの金銭がかかるはずだった。一体誰が彼らを雇っているのか。多少なりとも興味が出てきていた。
だが、急にライアーの肩に手が置かれた。脱走兵となってからライアーは周囲を警戒するのを怠ったことは無かった。
だから、突然の気配にライアーは慌てて振りかえっていた。右手だけはそっと懐の拳銃を掴んでいた。
ライアーが振り返った先にはぱっとしない風貌を持つ中年の男が立っていた。
「!」咄嗟にミズホ=浅葱は体の大半を覆っている甲殻皮膚で触手を叩き払うが甲殻皮膚に罅が入る…。
「痛っ!」彼女の物には痛覚神経が通っているのだろうか痛みを訴える声が思わず漏れる。
狼型野生体はチャンスと見たかもう一度触手で攻撃を試みるが次の瞬間、
何時の間にか彼の真横に忍び寄っていたファイン=アセンブレイスの蹴りを脇腹に深々と喰らい慌ててその場を離れる。
「ゾイドの攻撃では流石に保たないようでありますね。」罅の範囲は広い様だがダメージとしては余り重くは無い様でミズホは構えを取って攻撃に備えている。
どうやら自分が弱いと見られて不服なミズホは「それ貸して!」と強引にプラズマグレイブ形態のフレキシブルウェポンドライバーを奪い取る。
「無理は無しでありますよ!」そう言ってファインは至近距離格闘用のシュトゥルムシュナイダーを両手に持って構える。
今回の相手の場合は長距離と近距離双方で不利なので相手の間合いより遥かに深い接触擦れ擦れの位置が一番安全と言う異常な間合いを持っているのだ。
彼は苛立ちの唸り声を上げる…獲物の癖に脇腹に蹴りを入れて来たのだ。
目標を蹴りを入れた奴に変える。距離を取って地道に仕掛ければ何時か疲労で隙が出来る。
その後に奴の腹から噛みきり真っ二つにしてやろう…自分の頭の中でその光景を浮かべながら獲物を睨み付ける。
しかしその行為は無駄に終わる。獲物は既に彼の視界から消えて無くなっていたのだ。
其れ処かさっき一撃を入れた獲物までも居ない。彼は完全に獲物を見失っていた…。
「匂いはここにまだ在るのに何故だ!?」必死に消えた獲物達を目で探す。しかし在るのは匂いだけで一向にその姿を捕らえる事は出来無い。
突然彼の足元からプラズマグレイブの刃が壊れた床の切れ目から飛び出してくる。だがその程度の奇襲で手負いになる程の事は無く狼型野生体は緩やかに姿勢を変え躱す。
彼は忌々しく床や壁の傷を見る。彼自身が獲物を狩る時に付いたものだ。
「外した!」大慌てでその場所から逃げ出すミズホ=浅葱。程無くして隙間から自分の甲殻皮膚を傷物にした触手が床下のパイプに突き刺さる。
ついさっき大きな床の亀裂よりファイン=アセンブレイスと床下の配管設置用のスペースに潜り込んだのだが今は彼女一人しか居ない。
「何処に行ったのよ!?」モグラ叩きのモグラまがいの事をさせておいて当の本人は何処にも居ないのだ。
何度も下からプラズマグレイブを突き上げ必死に逃げ回りながら見捨てられたのか?と思い始める…。
「役立たずだったかなぁ?」取り敢えずはただ只管逃げ惑っているしか無い自分に自分が切れていた。
「でやぁ〜!」前足に向けてプラズマグレイブを突き立てる。やはり狼型野生体には当たらないがこれが狙いだった。
そのまま床を切り裂きながら逃げた狼型野生体を追いかける…彼は予想外の行動に構えるのが遅くなりまともに右前脚に切り傷を負う。
更にそのまま追いすがるミズホ。さしもの彼もこれは溜まらんと逃げ出す。
離れて必殺の間合いに誘い込もうとしているのだ…3,2,1…その時は来たが目の前に写ったのは蹴りを入れてきた獲物。
背中に何かが突き刺さる痛みが走ったかと思うと目の前に彼の脇腹に突き刺さった忌々しい足が迫っていた…。
顔面に必殺の間合いからの蹴りを喰らい気を失う狼型野生体。その背中にはシュトゥルムシュナイダーが刺さっている。
「ふう…これが精一杯でありますね。」一仕事終えた開放感からその場に座り込むファイン=アセンブレイス。
しかしその彼の目の前にはプラズマグレイブが迫って来ていた…。
「だぁーっ!?ストップでありますよぉ〜。」物音に乏しい空間に情けない悲鳴が木霊する…。
結局今回の戦闘はファインのズボンの後ろ側が焼け落ちる事で幕を閉じた。
「やっぱり詰めが甘いですねぇ〜。」
秘かに全ての装備に忍ばせて置いた盗聴器からの情けない悲鳴を聞きながらルディア=カミルはシュミット=エーアストと紅茶を啜っていた。
「その言い方は酷いんじゃ…。」「駄目ですよぉ〜。そんな態度だから彼は付け上がるんですよぉ〜。」と続ける。
「少しは〜彼も〜痛い目に遇うと良いんですぅ〜。」「何か恨みでも?」「そうなんですぅ〜…」
その小言は少しづつ明らかな脚色が掛かりながら続いている。
「言いたい放題でありますね…。ついでに勝手に人の荷物を勝手に開けて欲しくは無いでありますよ。」
彼も彼で盗聴器を通信用機材の中に仕掛けて置いたので彼女等の話は筒抜けだったりする。ろくでもない部隊で在る事は間違いなかった…。
ズボンの穴を補修用の繊維で穴埋めをしながら盗聴器に向かって小言を吐く。
「そう言えばここは何処なのでありましょうか?」「ここは制御室の入室コードのデータが有るエリアの筈だけど…。」ミズホ=浅葱は答える。
「ところで勝手に荷物を開けるって?」「ああ…あの二人が飲んでいる紅茶はニクス原産の自家栽培の物でありますよ。残り少ないのに勝手に飲まれては迷惑であります。」
「そうなの…。」気絶しているだけの狼型野生体の事はすっかり頭から離れている様だった。
物凄い勢いで彼がこの場から逃げ出すまでの10分間程誰も気に掛けて居なかった事の方が問題である筈だがその後彼に出逢う事は無かった…。
俗に言う「戦力の拮抗による膠着状態」の効果が得られたらしい事は確かな様だった。
4〜6スレ目までがdat落ちしたようですな。
書きこみが続いてたためか、2〜3スレ目は残ってるけど・・・
20 :
新たな力:03/11/15 14:42 ID:???
「……………………。」
共和国軍移動要塞ジャイアントトータス内部の訓練ルームでの出来事。
だだっ広い訓練ルームに屈強な男達がその場に座り込んでじっと息を潜めていた。
事の発端は、その日の朝。下士官連中の訓練を命令されていたマオ=スタンティレル少尉(18)は
訓練メニューの一つに禅を組み入れ、訓練を付ける下士官連中に座禅を組ませていたのである。
「軍人たる者、何事も平常心という物が大切だ。これはその平常心を養うための訓練だ。」
などとそんな事を言って、マオは全員に座禅を組ませ。そして、自らはハリセンを持ってあちらこちらを
歩き回っている。
「そこぉ!!今一瞬頭が動いた!!」
パーン!!
そう言ってマオは下士官の1人をハリセンで叩いた。音そのものはもの凄く派手ではあるが、
やはりハリセンであるからして、痛みそのものはそう大した物では無い。
「すみません少尉!!」
叩かれた下士官はマオにもの凄く焦った顔でそう誤って再び座禅に集中する。
如何に下士官よりも階級が上だと言えど、自分よりも遥かに小さく、年も下まだ子供っぽい部分もだいぶ
残っているマオに対し、下士官連中があそこまで半分恐れている程にまでヘコヘコしているのは理由がある。
答えは単純。マオが強いからだ。マオはその華奢な外見からは想像も付かないほどのバカ力と運動能力、
また高い格闘技術を持っている。恐らくその場にいる下士官が束になって掛かっても勝ち目は無いと
思われるほどの強さだ。まあ詳しいことは過去の作品を読んでもらうと言うことにして、とにかく
マオは強い。まあ、先の戦いでちょっとばかし大けがをしてつい最近まで養療中だった故、
今はそのせいで若干弱くなっているが、それでもやはりここらの下士官が数十人まとめて掛かってきても
やはり勝ち目はないだろう。
しかし、その反面結構心優しい面もあったり、いつも強気に振り待ってはいても、実は泣き虫な所も
あったりして、(泣き虫についてとやかく言われないのは、それを補って余りあるほど強いからである。)
さらには料理も滅茶苦茶に美味い。
21 :
新たな力:03/11/15 14:44 ID:???
その上まだ子供っぽい部分があるとは言え、とびきりの美人でもある事もあり、共和国軍内部での人気は
高く、「竜王の姫君」などという異名で親しまれている。まあ、対照的に、帝国軍ではその強さから
「グリーンデビル」という異名で呼ばれて恐れられているわけだが…。
とにかく、完全に禅を組めていない者や禅を組んでもちょこちょこ動いたりする者をマオは手に持った
ハリセンでパンパンと叩いていた。
「いやー…流石にスタンティレル少尉はスゲーや…。」
「ダテに神聖寺とか言う所で修行してたワケじゃねーな。」
などとマオがいる位置からだいぶ離れた位置にて座禅を組んでいた下士官二人がそんな会話をする。
「こらそこの二人!!私語は厳禁だぞ!!」
でもちゃっかりバレていたりする。
「ホントさー!!あんたらだらし無さ過ぎるよ!!もっとマシに座禅を組めないわけ!!?」
流石にパンパン叩きまくるのがうざったくなったのか、マオが下士官連中に対してそう叫んだ。
「少しはラインの姿を見習ったらどうよ!!」
マオはそう言って自身の直属の部下であるライン=バイス軍曹(20)を指さした。
「おお!!」
下士官がラインの姿を見て思わず驚いた。ラインの座禅は見事な物だった。姿勢もキレイな物であり、
その場からピクリとも動かず、目をつぶり、息をひそめ、ひたすら禅を組んでいた。
「あれこそ禅の持つ無我の境地!!あんた等も見習いなさい!!」
マオはさらにそう叫んだ。
「いや〜流石に凄いな。流石スタンティレル少尉直属の部下だ。」
下士官に1人がそう言う。
「確かにな、まああれ位じゃなきゃスタンティレル少尉の部下はバカバカしくてやってられないよなー。」
「聞こえたよ…。」
次の瞬間1人の下士官は一気に青ざめた。しかし、それも気にせずマオのハリセンの嵐がその下士官を
バシバシと叩きまくる。しかし、ラインはそれにも動じず禅に集中している。
22 :
新たな力:03/11/15 14:46 ID:???
「おお流石はライン。ここまで来ても動じないか…。」
マオは感心しながらそう言った。
「グウ…。」
すってぇぇぇん!!
その場にいた全員がすっ転んだ。
「こぅらライン!!寝てたんかい!!ったく人を喜ばせておいて…。」
そう言ってマオはラインを思い切りハリセンでぶっ叩いた。
「え?え?何がどうしたんっすか?」
目が覚めたラインは後頭部を左手で押さえ、顔を左右に交互に振り向けながらそう言う。
「ったく…私がお手本をみせてあげるよ…。」
マオが少し怒った口調でそう言うとその場に座り込み、座禅を組んだ。
「すげえ…ピタリとも動かない…。」
マオはピタリとも動かなかった。あっという間に無我の境地に到達したのだ。
「スゲエ!!何かよくわかんねーけどとにかくスゲエ!!」
ラインも妙に感激しながら言う。
「グウ…。」
すってぇぇぇぇん!!
その場にいた全員が再びすっ転んだ。
「少尉まで寝てどうするんですかぁぁぁぁ!!!」
などなど、いつの間にかに殺伐とした空気が一転してギャグとなっていた。
みなさまお久しぶり。はい、久々の新作です。
これからもまたちょくちょく書いていきます。
エナジーライガーの設定が物凄いことになってるらしい…。
こいつでSS書く気のある猛者っている?
>>24 逆にネタには使いやすいのでは?
まぁ詳しい性能とかわかったら書いてみたくもあり。
>>26 できれば商品同梱の話を読んでからがやりやすそうだ。
忙しくて書けませんでした…。
新たな力の作者さんどうもです。
エナジーは買ってみないと本当に解りづらそうですね。
ーーーーーーーーーーーー
ズボンの修繕も終わり一部屋一部屋を虱潰しに探して回るが目当ての物は一向に見付からなかった…。
「それがどんな物か解らないでありますか?」「御免…解らない!」こんな言葉を何度も続けながら探し続ける。
「ねえ?これなんだろう?」ミズホ=浅葱の質問に「これは…?隠し金庫でありますね…施設の破損が無ければまず見付からなかった筈でありますよ。」
そう言ってファイン=アセンブレイスは部屋を更に物色し始める。伊達眼鏡のスイッチを押しながら探しているその様は変質者や盗撮マニアの様に不気味写るミズホ。
「それ…止めない?」思わず声が出る。「?」本人には分からない様でそのまま鍵もしくはそれに相当する物を探している。
「…」結局1時間も念入りに捜索をしたが結局何もこれと言った物が見付からず部屋の隅でどんよりしているファインとミズホ。
「鍵は…本人が持ってたのかな…。」「あうう…何とも厳しいであります。」特に張り切って捜索していたファインの付近は近付き難い何かが在る様にさえ感じるミズホ。
「まっまあ元気出して!いい大人が鍵の一つや二つでくよくよしないの…。」そう言った時だった。
カチャッ!
「!?」そろって金庫の方を見る二人そこには開いている金庫が…。
「音声認識〜〜〜っ!!!」揃って叫ぶ。何とも言い難い脱力感が二人に襲い掛かる。
見付かる筈の無い物を探していたショックは大きい。しばらくの間無言で重苦しい空気が部屋の中と、
鍵を探すのを命令した外の待機組の双方に流れていた…。
「…」金庫の中には紙の切れ端と写真が一枚、それとカードキーが一枚あった。
「子供の写真…。」5〜6才ぐらいだろうか?その背中には痛々しい大きな傷そして…、
先の狼型野生体の背中から出ている触手が生えていた。「!これはまさか?」思わず声が大きくなる。
その裏にはこう書かれていた「愛する息子たちへ父の愚行を許してくれ」それはインクでは無く血で書かれていた…。
ファイン=アセンブレイスが必死に写真の裏の言葉の意味を写真の子供共々状況を把握しようとしている裏でミズホ=浅葱は紙の切れ端を手に取っていた。
「36D1?」その文字の途中で切れているので残りが何かは解らない。
「あの〜カードキーはぁ?」間の脱けた声が通信機より聞こえてきた事で我に返った二人はカードキーを調べようとしているが、
表面が焼けて形が歪んでいる為有用な情報は得られなかった。
写真は見た通りかなり以前に撮られていた物で日付は15年以上も前の物だ。
「一体誰なんで在りましょうか?」「私に解るわけ無いでしょ。」「私なら解るかもな?」3人目の声が聞こえる。
「何っ!?」銃口を背中に突き付けられファインは彼の促すままに写真を渡す。
「これは…ライナス!?」その声の主はいつの間にここに来たのだろうか?
フェイ=ル=セイフだった…。
30 :
新たな力:03/11/16 11:19 ID:???
「わぁ〜。見違えるようになりましたね〜。」
訓練を終え、格納庫にやって来たマオがそう言った。先の戦いで大破し、現在修理中であった、
マオの愛機のゴジュラスギガ「カンウ」はもうすっかり新品同然に修理されていた。
「いやいや〜、修理というより殆ど新品のパーツと交換と言った感じだよ。さらにここから機体各部の
レスポンスの強化とか色々手を加えなきゃならないし。」
カンウ修理の陣頭指揮を執っていた、マオの双子の姉であり、ジャイアントトータスの艦長でもあり、
ジャイアントトータス隊の隊長でもあるミオ=スタンティレル大佐がそう言った。
確かに彼女の言ったとおり、カンウの修理は完了していたが、修理する際にマオと約束していた、
修理ついでの強化に関してはまだまだのようであり、カンウの至る所を技術者が色々とやっており、
全身から火花が散っていた。
「だからまあアンタのギガが戦えるようになるのはまだ先だね。その間はアンタも養療中で空いた穴を
ふさぐ為に自分の体でも鍛えてな。」
「早い所お願いしますよ〜…こんな時に敵に攻められて戦うこともなく撃破されてしまったら
たまった物では無いですからね〜…。」
「わかったわかった。早めにやっとくよ。ああそうだ。貴様の下で働きたいと志願してきた変わり者が
いるんだが、コイツの世話を頼めないかな?」
「へ?」
いきなり話を変えてきたミオに立ち去ろうとしていたマオが思わず立ち止まる。
そして、ある種のお約束のようにミオの背後から1人の女性がマオの前に出た。そして、素早くマオに対し敬礼を行った。
「サリーナ=カラオス軍曹(19)であります!!」
身長はマオより少し上、首下まで延びた蒼い髪の毛が特徴の女性だった。
「あ…ああ…。」
ちょっとテンション低いながらも一応敬礼で返すマオ。その直後、サリーナはいきなり目を輝かせながら
マオの両手を掴んで嬉しそうに言った。
「マオ=スタンティレル少尉!!この間は有り難うございました。その少尉の下で働けるなんて…、
私感激です!!」
「へ?」
31 :
新たな力:03/11/16 11:20 ID:???
いきなりの事でマオは拍子抜けしてしまう。サリーナ自身もそれに気付いたのか、言い方を変えてきた。
「あの〜、じゃあ聞きますが、キメラの大群から袋叩きにあっていた満身創痍のアロザウラーを
助けた事ってありませんか?」
「え〜…、あぁぁぁぁぁぁぁ!!何かそう言う事あったよ確かに!!何故かキメラの大群から
袋叩きにあっていたアロザウラーを助けたのって!!」
「そのアロザウラーに乗っていたのが私なんです!!」
「うっわぁぁぁぁぁぁ!!ベタベタでお約束ぅぅぅぅ!!」
目を輝かせながらマオに言うサリーナに対してミオは思わずそう突っ込んだ。
「とにかく前々から貴女にあの時の礼をしたくてたまらなかったんです。だから、あの時の借りを
返すためと、貴女の所属しているジャイアントトータス隊に配属出来るように頑張って頑張って
ついに凱龍輝のパイロットにまで昇格したんですよぉぉぉぉ!!」
「うっわぁぁぁぁぁ!!これまたベタベタすぎというかほとんどご都合主義全開な展開だぁぁぁぁぁ!!」
思わず突っ込むスタンティレル姉妹。
サリーナについての詳しくは「味方陣地まで何マイル?」を参照してもらいたい。
「まあ、作者の都合とか色々な諸事情によって今だに軍曹どまり何ですがね…。で、アレが私の凱龍輝です。」
そんな二人には目もくれずにサリーナが勢い良く指さした先には紛れもなく凱龍輝の姿があった。
サリーナの凱龍輝は見た感じはどノーマルな物であったが、とりあえず背中にディスペロウの3連砲を
装備したりはしていた。
「私はガイガイガーと命名しました!!」
「うっわぁぁぁぁぁぁ!!スッゲェェネーミングセンスだぁぁぁぁぁ!!」
これまた突っ込むスタンティレル姉妹。
「どうしてこうウチの隊に配属されてくるヤツはドイツもコイツもロクでもないヤツばっかなんだ…。」
壁に右手を付いた状態で寄っかった状態でミオが暗そう言った。
32 :
新たな力:03/11/16 11:22 ID:???
確かにジャイアントトータス隊は回りからは、エースクラスのそろった精鋭部隊として見られているが、
その実態は奇人変人の集まり部隊である。そしてその筆頭とも言えるのがさりげなく主人公のマオ自身
だったりする。回りからは前に述べた様に、「竜王の姫君」というあだ名で親しまれているが、
その実態はまっとうな人間にとってはアホらしいとしか言いようがないほど科学も物理もクソも無い程に
まで怪しげな拳法を自由自在に使いこなし、圧倒的とも言える力で敵を倒す文字通り「悪魔」なのである。
現に、前も述べたが帝国軍からは「グリーンデビル」と呼ばれて恐れられている。
なぜグリーンデビルなのかと言うと、マオの乗るカンウのカラーリングが、
通常のギガでは青くなっている部分が緑色になっているからである。
で、他にも思いっきり悪役メカ的なノリのデコレーションを付けた漆黒の凱龍輝「ルシファー」を操る、
自称共和国一の悪女「デビーナ=ルミナート少尉」とか色々な奇人変人がゴロゴロいるワケである。
まあ、一見ふざけて見えても軍人としては優秀なので大してとがめられるような事は無いのだが…。
とにかく、サリーナはマオの下で働くことになった。
「マオ=スタンティレル少尉!!これからお願いします!!このサリーナも頑張ります!!」
「まあまあサリーナちゃん、そう固くならずにリラックスと行こうよ…。」
マオは少し困り顔な感じで微笑んでそう言った。
「…………。」
と、いきなり黙り込むサリーナ。
「サリーナちゃん?どうしたのかな?」
「いや、私はマオ少尉はもっと厳格な人だと思っていた者で…。」
「ハッハッハ!!そりゃあ買いかぶりすぎだよ!!まあ噂が一人歩きしてるって事かな?」
マオは笑ってそう言った。
「だってそうでしょ?回りは私を竜王の姫君とか呼んでるけどさ、ついこの間まで…、
丁度このジャイアントトータス隊に配備された直後の戦闘までそんなあだ名で呼ばれていたなんて事自体
知らなかったのよ私は。私はただただ一心不乱に戦っていただけ。実際英雄なんてそんなものよ。
とにかくさ、気にしない気にしない。」
「ハイ!!」
まだ固くなっているのか、それとも地なのか、サリーナは大きい声でそう返事をした。
33 :
新たな力:03/11/16 11:23 ID:???
「じゃあ、早速だけどジャイアントトータスの格納庫の回り10周ランニング行ってみようかー!!!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!ジャイアントトータス格納庫の回りって…このだだっ広い所をですか…?」
確かに、ジャイアントトータスの格納庫は小型から巨大ゾイドまで多種多様なゾイドを数十数百と
格納するために、相当な大きさになっているのだ。そのために、ジャイアントトータス内部の移動に
俗にアタックゾイドと呼ばれる超小型機などや定期的に内部を走っているモノレールなどが使用されていたりする。
とにかくそれだけの広さを持つ格納庫の回りを10周するというのは相当の物である。
「大丈夫大丈夫、私も一緒に走るから…。」
マオは笑顔でそう言うなり、直ぐさまに走り出した。
「あ!!待って下さい少尉―!!」
そう言って後からサリーナがマオを追いかけた。と、二人が格納庫内部を走っている頃、
ラインが相変わらずカンウ強化の陣頭指揮を執っていたミオになにやら話しかけいた。
「あの…大佐…。ジェネラルの事で質問があるんですが…。」
ジェネラルとはラインの愛機の名であり、今までラインが乗ってきた全てのゾイドに付けられてきていた
名でもある。ちなみに現在のジェネラルはミオ自身が趣味で最新技術を投入しまくって強化した
シールドライガー。俗にスーパーシールドライガーと呼ばれる代物であった。
「コックピットの左側の一番奥にあからさまに「押すな」と書かれた変なボタンがあったんですが…、
あれは何っすか?」
その時、ミオのかけている眼鏡が格納庫内天井の照明からの反射で一瞬光った。
「そのボタンは私が押して良いと言うまで押すんじゃないよ…。」
それだけを言い、ミオは直ぐさま作業に戻った。
「え…。」
ラインにはさっぱりワケが分からなかった。そして、ミオ自身もそれ以上のことは何も言わなかった。
>>24 エナジーネタのSSは既に自分が執筆中だったりしますw。
今やっているストーリーが完結したら直ぐさまやろうと思っていますよ。
>>34 実機も無しに書けると言うのか…。ちょっと引いた。
38 :
新たな力:03/11/17 12:39 ID:???
「ハア…ハア…。少尉〜待って下さいよ〜…。」
一方格納庫内周りのランニングを行っていたマオとサリーナ。サリーナはすっかり息が上がっていた。
「やっぱり最初から10周はきつかったかな?」
サリーナに合わせて速度を落とすマオ。しかもさり気なく自分だけ全然息が上がっていない。
まあ、コイツは冗談のような体力持ってるからどうでもいいのだが…。
「まあ確かにいきなり10周はキツイかな?わかった。もう休んで良いよ。」
そう言うとまた走り出した。
「うっわ〜…あれほどの距離を走って全然顔色一つ変えない所かまだ走るなんて…少尉のどこにそんな体力が…。」
サリーナは唖然としながらも感心して走り去るマオを見つめていた。
「こうなったら私も頑張ります!!」
マオの姿を見て感心したサリーナは休むのをやめて再びマオの後を追って走り出した。
とはいえ体力に違いがありすぎるのですぐに息が上がって止まってしまったりするのだが、
それでもサリーナは休み休み走ったりした。
「まだまだ…怪我する前の体力を取り戻すには徹底的に走り込まなきゃ…。」
常人から見れば今のマオも十分化け物なのだが、マオ自身から見ればまだまだであった。
やはり、先の戦いでの怪我による養療期間の間、体を動かさなかったせいで若干体力が落ちているのである。
カンウの強化が終わるまでに完全に体力を取り戻す。ゾイドの性能が上がっても、自らがそれに付いて
いけなければ意味がない。とにかくマオの頭にはそれでいっぱいだった。
「妙に訓練熱心ですねー。少尉…。」
「ラインか…。アンタも走るの?」
いつの間にかにマオの後に付いてきていたのはラインだった。
「なーに、たまにはこうして自分の足で走るのも悪くない物ですね…。それはそうと、
後ろをハアハア言いながら走ってるのは誰ですか?」
後ろを向きながら言うライン。ラインから相当に離れた後方にサリーナがハアハア言いながら走っていた。
39 :
新たな力:03/11/17 12:41 ID:???
「あら、サリーナちゃんまだ走ってたの?休んで良いって言ったのに…。」
一端その場に止まってサリーナに対してそう言うマオ。それにサリーナも一端止まる。ハアハアともの凄く息が上がっていた。
「ハアハア…いや…少…尉も…走って…るから…自…分も走ら…なきゃ…と…。」
「あらら〜…あまりムリしなくても良いのに〜…。」
「そうそう、少尉と一緒の事やってると身がもたな…グゲ!!」
笑いながらそう言うラインの顔面にマオの突きがヒットする。
「グギャァァァァァァ!!」
その場でのたうち回るライン。
「あ…あの…あの人は…大丈夫ですか…?」
「大丈夫大丈夫、いつものことだから。」
のたうち回ってるラインを指さして、心配そうに言うサリーナに対してマオは笑いながらそう言った。
「とりあえず…、サリーナ=カラオス軍曹です!!よろしくお願いします先輩!!」
「せ…先輩なんて水くさいな〜…ラ…ライン=バイス軍曹だ…よろしく。」
ラインとサリーナは互いに握手をする。
そんなこんなで、マオとラインは再び走り出した。それをその場に立ち止まった状態でサリーナは見つめていた。
「マオ少尉もそうだけど…ライン先輩も素敵な人だな〜…。」
「やめときなさい。アイツに手を出すと妹を敵に回すよ…。」
「ひあ!!」
まるで背後霊のようにサリーナの背後にすっと現れたミオにサリーナは思わず驚いてしりもちを付いた。
「た…大佐…。お…驚いた〜…。」
サリーナは額を拭って再び立ち上がった。
「とにかく、アイツに手を出すのはやめときなさい。じゃないと妹を敵に回すよ。ってさっきも言ったけどさ。」
「え?一体どういう事ですか?」
意味が分かっていない様な感じで再び質問するサリーナ。
40 :
新たな力:03/11/17 12:42 ID:???
「なーに、いずれ分かるよ。妹はね…自分はアイツをポコポコ殴ってるクセに、自分以外のヤツがアイツを
傷つけるのを激しく嫌うんだよ。その事でこの私にすら突っかかっていた事もある。もちろん返り討ちに
してやったがね…。とにかくあの二人の仲を裂くようなマネはしない方がいい。じゃないと死ぬよ。」
「え?死ぬって…冗談でしょ?」
笑いながらも驚いた口調で言うサリーナ。
「この私が冗談を言っている様に見える…?」
ミオの目は真剣そのものだった。
「………。」
サリーナは言葉が出なかった。
「さーて、作業の続きに入ろうかねー…。」
と、サリーナが納得したと分かると、ミオはすぐにその場を立ち去った。サリーナは唖然としながらその場に立ちすくむだけだった。
「ハックション!!」
「あれ?少尉、風邪っすか?」
「誰かが噂しているのかな〜…。」
まだ走っていた二人はそんな会話をしていた。
お久し振りです。何やら祭りの予感がしましたもので。
自分も、エナジーネタでSS書こうかと思います。無論、チーム・ギルガメスが相手になるということで。
エナジーの設定に目を通した時、脳裏に浮かんだアイディアが幾つかありました。
今のところそれを膨らませている段階です。
まあ最終的な執筆はやはりキットを買って、作ってからということで。年末発売でしたっけ?
一月中に投稿できればいいな、と思っています。
元気があれば、エナジーSSだって書ける!いくぞー!
「ビックリさせないで欲しいでありますね…見覚えある人らしいですか何か在ったのでありますか?」
フェイ=ル=セイフに質問をするファイン=アセンブレイス。
「お医者先生?何処かで”遇”ってませんか?」かなり無礼な言動で質問するミズホ=浅葱。
「…そろって嫌がらせかな?」フェイにあっさりさばかれる。
「彼はライナス=レンバートン今のここの状況を作り出した元凶の一人だよ…もうこの世には居ないがね。」
「どうして?」当たり前のようにその先を催促するミズホ「まあまあ落ち着いて…。」更に続ける。
「彼は本来双子…一卵性双生児として産まれる筈だったが、心臓の部分にもう一つの脳を持って一人で産まれてしまったんだ。」
そうそう有る話では無い…。サービス精神の旺盛な彼は自分がライナスの主治医をしていた事やあれこれ話し出す。
「あの〜そろそろ本題にいってくれないで在りましょうか?」30分以上その変遷を聞かされて待機組も含み聞くのが苦痛に成って来ている。
当然の発言だった…。「そうか…すまんな。」
取り敢えず要約すると
1,心臓にある脳の活性化が原因で写真の様な症状になりそして最後には病死したと言う。
2.この部屋の主は彼の父親でその後息子の遺体より触手及び心臓と直結していた脳をサンプルとしてこの施設に持ち込んだと言う事。
3,或る実験に於いて不注意でそのサンプルにゾイドの大型化及び活性化を促す薬品を過剰投薬により蘇生。
4,蘇生した器官が逃走、その後施設地下で発見された大型コアに取り憑き今の現状にゆっくりと成っていったらしい。
他にもこのデータを用いて戦死した兵員の遺体を使用した実験等が非合法に行なわれていたらしい…。
何とも厄介極まりない施設だったらしい事は確かな様だ…。
43 :
新たな力:03/11/18 10:53 ID:???
一方その頃、帝国軍において世にも恐ろしい作戦が計画されていた。
「巨亀撃破作戦!!」
とある帝国基地の作戦室において1人の将校がそう叫んだ。
早い話がジャイアントトータスを撃破しようと言うのである。
「しかし、口で言うほど簡単には行くまい。我が軍のゼネバス砲すらも通さぬ装甲を持っているのだぞ。」
別の将校が口を挟んだ。ジャイアントトータスの装甲は超重装甲を遥かに凌ぐ固い甲羅を持っている上に、
全面が超強力な反荷電粒子シールド処理が施され、ゼネバス砲の一斉放火すらも受け付けない滅茶苦茶な
物であった。さらに全身に強力な武装を装備していたり、陸海空と場所を選ばなかったりと、
反則も同然な超強力巨大要塞ゾイドだったのである。帝国にとって唯一の救いは、現時点において
ジャイアントトータスはあれ一艦だけであり、さらに2番艦、以降の生産の予定があるという
情報も今のところ無いという点である。
しかし、現時点において圧倒的優勢である帝国軍もジャイアントトータス隊に対してのみは
連戦連敗を喫していた。ジャイアントトータス単体の戦力もさることながら、また構成員も
高性能ゾイド+エース級のパイロットがそろえられており、滅茶苦茶に強いのである。
さらに、戦術で追いつめようという手を使うにしても、あちらにも相当な戦術家がいるようで、
それも通用しにくいのである。
確かに所詮は一戦艦と一部隊がどう頑張ろうが戦況に影響を与えるワケではないのだが、
これ以上ジャイアントトータス隊に連戦連敗するような状況が続けば、全軍の士気に影響する。
さらにジャイアントトータス隊の存在が共和国軍を勇気付ける形となって逆転される可能性も捨てきれない。
故に早いうちに破壊する。この計画の目的はそこにあった。だが、それをどうやって破壊するかが問題だった。
「巨亀がどんなに強力な装甲を持っているとて絶対無敵なワケがない。どこかに弱点があるはずだ!!」
将校は力強くそう言った。
「しかし、どうやってその弱点を発見する?」
44 :
新たな力:03/11/18 10:55 ID:???
「先発隊として高速部隊を向かわせ、ジャイアントトータスに張り付かせ、弱点を探させる。
なーに、排気口とか、接近すれば弱点になりそうな物はいくらでも発見できるだろうよ。
しかも、情報部からの情報によれば、これから数日後に巨亀は補給を受けるという。
その補給中に攻撃を行えばいい。上手く行けば補給の為に開いたハッチから内部に進入しての破壊も可能だ。
しかも、あちらの虎の子グリーンデビルは先の正体不明機との戦いで大破して修理中という話だ。
一緒に修理中のグリーンデビルも一緒に倒すことも出来るかも知れない。
グリーンデビル以外のゴジュラスギガもセイスモサウルスに掛かれば恐るるに足りず。
とにかく、これらの事柄でジャイアントトータスの足を止めた後に後続に設置したセイスモサウルスや
デスザウラーなどで一気に撃破する。どうよ。」
「う〜む…確かに正攻法で行くのは問題があるかも知れないが、補給中で動けないという時にであるなら
理にかなった有効な作戦だな。単純な所がむしろいい。」
「よし決定!!」
満場一致でその作戦は可決された。たちまち部屋中に将校達の拍手があがる。
そして、早速作戦準備に掛かった。部下達に作戦の説明を行う者。使用ゾイドの調整や、配置などの検討。
などなど、作戦の為に様々な者達が様々な事を行った。
全てはネオゼネバスの癌とも言えるジャイアントトータスの撃破のために。
案の定、それから数日後、ジャイアントトータスは数機のホバーカーゴからなる補給部隊と接触。
補給を受けていた。その辺の基地並の大きさを持つジャイアントトータスの補給は相当な物であり、
補給部隊ホバーカーゴの数たるや10機以上の物だった。
そして、ジャイアントトータスの巨大なハッチが開き、補給物資の搬入が行われた。
それに並行して補給中で動けないジャイアントトータスを護衛するためにジャイアントトータス艦載機が
出動して各方面からの護衛を行っていた。
「じゃあ、行ってきます少尉。」
相変わらずカンウの強化が終わっていず、出動不可のマオにラインとサリーナはそれぞれ敬礼し、
それぞれの愛機、ジェネラルとガイガイガーに乗り込んだ。
45 :
新たな力:03/11/18 10:58 ID:???
「ハア…、カンウの強化はまだ終わらないのかな〜…。」
出撃していくジェネラルをガイガイガーを見送り、手すりに寄っかかりながらため息ついてそう言った。
マオはカンウの方を見る。拘束具に固定された状態で突っ立っているカンウに大勢の作業員が色々と
カンウの全身をいじくっている。そして全身から飛び散る火花。これは今までも変わらない。
そして今度は窓から外を眺める。分厚い超強化防弾ガラス製で覆われた窓。そこから見えるのは
ジャイアントトータスと補給部隊のホバーカーゴの周りを歩きながら警戒する友軍機。
空を見ても、青く雲一つない晴天を覆い隠すかのように友軍飛行ゾイド群があちこちを飛び回っている。
「まあ、これだけやっても敵が来るときは来るんだろうねー…特にこういう補給中とかさー…、そういう事ってよくあるよね〜…もはやパターンのごとく…。」
マオは手すりに寄っかかった状態で薄目でそう独り言を言った。
その時だった。
どごぉぉぉぉぉ!!
突然の爆発音。超遠距離からほ砲撃だろうか。直撃だった物の、超重装甲を誇るジャイアントトータスの
装甲には大したダメージにはならなかったが、一瞬艦内がブルっと軽く振動した。
そして、その砲撃をかわぎりに大量の砲弾とミサイル、ビームと共に、ジェノザウラーやBF、
機動性強化型のキメラブロックス軍団等々をはじめとする高機動ゾイド部隊が、ジャイアントトータスに
襲いかかったのだ。帝国軍の奇襲攻撃である。マオが何気なく言った事が現実の物となった。
「わっとっとっと!!言った側から帝国軍の攻撃かいな!!…でも…もしかしてこれって私は予知能力が
あるって事?すっごぉぉぉい!!」
勝手にテンション上げて喜ぶマオを後目に、サイレンが艦内に鳴り響き、他の隊員達が走り回っている。
そして、艦内に残されたゾイドも多数が出撃していく。
「そんな事をしてる時じゃなかった…。」
気を引き締めてマオはカンウの方向へ走った。
46 :
新たな力:03/11/19 09:15 ID:???
「うっりゃあ!!」
ラインの気合いを入れた一発でジェネラルがジェノザウラーの一機を殴り倒す。
ジェネラルはシールドライガーと言えども、その性能は最新鋭機にも劣らない。
むしろシールドライガーの形をした別のゾイドと呼んだ方が良いのかも知れない。
その反面操縦性がクソ悪だったので、結局コレ一機のみであり、高速ゾイド操縦に関して天才的な
センスを持つラインの手に渡り、マオとカンウを補佐してきた。
ジェネラルは起きあがろうとするジェノザウラーを地面に押さえつけ、背中のパルスレーザーライフルを
噛み砕く。その時、後方から別のジェノザウラーが突撃してきた。とっさに横に跳ぶジェネラル。
突撃してきたジェノザウラーはそのまま倒れ込んでいたジェノザウラーに激突してそのまま互いに
重金属のぶつかり合う鈍い音を鳴らしながら数十メートル転がっていく。
そこにラインはジェネラルのミサイルの連発を叩き込んでまとめげ撃破した。
一方サリーナとガイガイガー。月並みではあるが、こちらもそれなりに頑張っていた。
キメラドラゴンの突撃を上に跳んでかわし、素早く反転して至近距離からの3連砲発射で撃破する。
サリーナはアロザウラーに乗っていた頃と違い、エース級と言ってもいいほど強いパイロットに成長していた。まあ、これだけの事が出来ないと凱龍輝パイロットはつとまらないって事もあるが…。
「ったく例によって敵の数が多いなー!!」
「しかも何か敵さんはジャイアントトータスを狙ってるっぽいですよ先輩!!」
ジェネラルを高速で走らせながら叫ぶラインにサリーナがそう言った。
確かに、現時点で確認できるだけの帝国軍部隊だけでも相当な数があった。しかも、それらのゾイドの
多くは防衛部隊を無視してジャイアントトータスへの攻撃を集中していた。
ジャイアントトータスに直接砲撃を行う者もいれば、ジャイアントトータスに直接張り付こうとする者もいる。
47 :
新たな力:03/11/19 09:21 ID:???
いかに現時点に置いてもっとも無敵に近い装甲を持つジャイアントトータスと言えども、弱い部分は
当然存在する。それは装甲と装甲の隙間の内部機械や関節、頭部に存在するブリッジ部分がそうである。
ジャイアントトータスが動けないウチに取り憑いてそこを叩く。それが帝国軍の狙いだった。
そして、それを阻止するために共和国軍はジャイアントトータスを取り囲む共和国部隊が必死に一機一機叩き落としているのである。
とにかく今のところはジャイアントトータスに大した被害は無いが、補給作業中に襲われた為に
動けないだけでなく、帝国軍に関しても後方にまだまだ大軍が残されていると想像できる以上、
ピンチには変わりなかった。
「大佐!!カンウの強化作業はまだですか!!?」
カンウの元にたどり着いたマオはミオに対して叫ぶようにそう言った。まだ作業中だったようで。
今に置いてもカンウの至る所で作業員が作業を続けている。それだけではない。戦闘で損傷した、
またはエネルギーや弾薬切れを起こして帰還してきた味方機の作業やジャイアントトータスの
ダメージ部分の修理等、全ての作業員が分担して事を行っていた。この忙しさに、ミオ自身も
直接カンウの強化作業を行っていた。
「乗ってな。あと少し…。」
作業を続けながらマオに対し、ミオはそう呟いた。
「了解…。」
マオは敬礼しながらそう呟き、静かに、そして迅速にカンウのコックピット内部に乗り込んだ。
「この感じ…久しぶり…。」
久方ぶりのカンウのコックピットにマオは目を瞑った状態で座り、静かにコントロールスティックを握った。
キャノピーの向こうでは作業を続けている作業員や、作業を終えて別の作業を行うためにカンウを
離れる作業員、そして別の所で作業をしている者など、様々な人達が見えた。
「そうだ…みんなも戦っているんだ…。」
マオはそう呟いた。戦っているのはマオ達ゾイド乗りだけではない。それは皆も同じである。
ゾイドを作る者、ゾイドの各部品を作る者、ゾイドの修理や整備をする者、それらがいてこそゾイド乗りは
初めて戦うことが出来る。それだけではない。各兵士達が使う拳銃や衣服などを作る者や、
食料を生産する者とその食料を調理する者。様々な物を様々な人々に運ぶ物。それら様々な役職の人達が
いてこそ初めて戦えるのである。
48 :
新たな力:03/11/19 09:26 ID:???
今、目の前で作業をしている者達も、直接武器を取って戦場に出なくとも、彼らはゾイドの修理や整備を
行っている。いわば間接的に戦えるのである。彼らがいなくては戦え無い。
今マオが乗り込んでいるカンウも、作業員の修理や整備が無くてはただの鉄の塊に過ぎない。
「よし!!いっちょ頑張ってくるか…!!」
そう言ってマオは自分の頬を両手で叩いて気合いを入れた。
その時だった。突然間近で爆発音が聞こえてきた。カンウの前方数百メートル先に爆煙が見える。
そして爆煙の中から現れたのは一体のバーサークフューラーだった。
補給作業中だった為と、ゾイドの回収、そして出撃の為に開いていたハッチから進入してきたのである。
「こんな時に!!?まだ脚部の作業が!!」
丁度カンウのひざの部分で作業を行っていたミオがそう叫んだ。
カンウの強化作業は大方終わっていた。しかし、脚部のほんの一部の作業が完了していないために
まだ動けないのである。しかし、それもお構いなしにBFは一気にカンウに接近してくる。
「わわわわ!!!やっばぁぁぁぁぁぁ!!」
目に涙を浮かべながらマオがそう叫んだ。
「動けないグリーンデビルなど置物も同然よ…。」
カンウが動けないと悟るとBFのパイロットは不適な笑みを浮かべ、操縦桿のボタンの一つを押した。
BFの背中のバスタークローが前に向けられる。そしてバスタークローの中心部分が光を放ったと思うと、
その光が一点に集中して弾丸の様に打ち出された。俗に言うビーム砲である。
その狙いは寸分違わずにカンウのキャノピーに向けられていた。
いかに超重装甲級の装甲を持つゴジュラスギガと言えどもキャノピーに直接攻撃されてしまえば
一溜まりも無い。カンウは助かってもマオは助からない。
(…しかし…それでも案外助かってしまいそうなのがこの作品の怖いところだったりする)
「わわわ!!」
マオはとっさに操縦桿を後ろに倒す。それに反応してカンウの頭部が上に向けあられた。
49 :
新たな力:03/11/19 22:25 ID:???
一筋のビーム砲はカンウの下顎にぶつかって消滅した。カンウの装甲には傷一つついていない。
「ふわぁ〜…危なかった〜…。」
マオは目を瞑った状態でそう言いながらそっと胸をなで下ろした。
しかし、カンウがまだ動けないのは変わらなかった。BFは攻撃の手を緩めない。
今度はBFの背中のバスタークローがキィィィンと言う音を立てながら回転する。
バスタークローで攻撃するつもりである。いかにバスタークローといえどもゴジュラスギガの装甲を
易々と破ることは出来ない。しかし、間接部分やキャノピーなどと言った部分なら破壊は可能だ。
さらにカンウは動けないわバスタークロー自体も取り回ししやすいわで八方塞がりだった。
バスタークローが来た!!狙うはカンウの頭部のキャノピー。2本のバスタークローがそれぞれ
左右からカンウの頭部を狙う。バスタークローの高速回転からなる回転音がカンウのコックピット内にまで
伝わる。物凄い速度。例え動ける状態であっても並みのゾイドでは回避など出来るものでは無い。
BFのパイロットは勝利を確信した。
「やった!!俺はいかなるデスザウラーやセイスモサウルスも倒すことの出来なかったグリーンデビルを
倒したのだ!!しかもバーサークフューラーでだ!!俺は英雄になったのだ!!それだけではない!!
階級も給料も格段に上がるだろう。田舎に残してきた家族にもっといい生活をさせることが出来る!!
やった!!やったぞぉぉぉぉぉ!!」
目を閉じて感激しながらそう心の中でBFパイロットは叫んだ。そしてゆっくりと目を開く。
彼の目の前、BFのメインカメラから投影される画像にはBFのバスタークローによって、
頭部のキャノピーを中のパイロットごとズタズタに引き裂かれ、切りつぶされたゴジュラスギガが映りだされる・・・・・・・・・はずだった・・・。
「・・・・・・・・・・・・!!!!」
目を開いたBFパイロットは声にならない叫び声を上げた。
カンウが両腕の爪でバスタークローを掴み、受け止めていたのだ。カンウが動けないと言っても、
それは客部だけの話。作業が既に終わっている上半身は普通に動くのである。
カンウに握られたまま回転するバスタークローは火花を飛び散らせながらたちまち回転力を失っていく。
そして回転が完全に止まった後にカンウがそれぞれのバスタークローを握りつぶした。
50 :
新たな力:03/11/19 22:27 ID:???
強引に回転を止められてしまったためにバスタークロー回転モータが煙を出していた。
「・・・・・・・・・!!!!」
BFのパイロットの顔は恐怖に引きつっていた。
「う・・・うわぁぁぁぁぁぁ!!やっぱバケモンだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
BFのパイロットは恐怖におののいた顔でそう叫び、機体を全速力で後退させようとした。
しかし、カンウの動きはそれ以上に速かった。BFが後退に入る前にカンウの右爪がBFの重装甲を
豆腐のように切り潰し、BFの首元に深く食い込んだ。BFはたちまち機能を停止させてその場に倒れこんだ。
「フゥ…。」
一息ついて額を拭うマオ。カンウもそのまま腕を下ろす。
「よーし、BFのパイロットは生きてたらそのまま捕虜にしとけ。」
ミオが近くにいた者にそう命令した時だった。
「畜生!!こうなったら1人でも多く道連れにしてやるぅぅぅぅ!!」
BFのコックピットハッチが開いたかと思うと中のパイロットがヤケクソになったのか、そう叫びながら
機関銃を辺りに滅茶苦茶に乱射し始めたのだ。格納庫中に響き渡る発砲音と金属音。
やたら滅多等に撃ちまくっている為になかなか近づけない。しかもその時その辺りにいたのは
殆どが作業員でどうにもならなかった。作業員達皆はゾイドや壁の向こうに隠れる事で銃弾から身を守っていた。
「ったくみんなだらしない!!」
マオはカンウのコックピットを開いて飛び出そうとした。その右手には拳銃が握られている。
「お前は黙ってそのままギガに乗ってろ!!!」
ミオが叫んだ。マオは一瞬ピクっと体を振るわせて一瞬静止する。
「しかし…。」
「いいから黙って乗ってろ!!!」
カンウの上のマオを下から見下ろした状態でミオが叫んだ。マオは大人しく命令に従ってカンウの中に
もどり、キャノピーを閉じた。
51 :
新たな力:03/11/19 22:31 ID:???
ミオはなおもマシンガンを乱射するBFパイロットの方を向くと飛んできた銃弾を一発、
右手の人差し指と中指で挟み込む形で受け止め、一発銃弾を掴み、そのまま親指で銃弾を弾いた。
その直後に銃弾はBFパイロットの持つマシンガンを撃ち抜いた。
「な!!!」
信じられない光景に一瞬ひるんだBFパイロットにミオは一気に接近する。冗談の様な速さ。
そのままBFパイロットの腹部の軽量特殊合金製のプロテクターを素手で殴り割った。
「連れていけ…。」
ミオが他の者にそう命令し、気絶したBFパイロットを連れて行かせた。
「それにしても大佐は強えーやー…。」
「マオ少尉も強いが大佐はもっと強いからなー…。」
気絶したBFパイロットを担ぎ上げて独房へ連れていく二人がそのような会話を行っていた。
とにかくマオも強いがミオはもっと強いのである。先ほど見せた銃弾を素手で受け止める芸当すらも
やってのける程である。ただ、マオとミオの決定的な違いはマオは元々超弱かったのが、
数々の努力と修行によって今に至るほど強くなったのに対し、ミオは元々強いのである。
いや、何でと言われるとこちらとしても困るのだが、とにかく強いのである。さらに、技術者としても
指揮官としてもとてつもない程の能力を持っている。ただ、何者も完璧なものなど無いとは言ったもので、
料理だけはとてつもなく下手だったりする。料理が出来ないわけではないのだが、とにかくマズイのである。
対照的にマオの料理は超美味い。
話が横にそれてしまったが、とにかくジャイアントトータス内部に進入してきたBFとそのパイロットは沈黙した。
「ちょっと吐いていいですか?」極端に気持ちが悪くなったらしくミズホ=浅葱は手を上げて”お医者先生”に言う。
「ちょっと待て!エチケット袋出すから…!」慌ててエチケット袋をミズホに渡すフェイ=ル=セイフ。自分で蒔いた種だが吐かれると流石に困る。
折角命懸けでここまで辿り着き運良く戦闘要員を発見したのに重要な手掛かりが在る可能性が高いこの部屋をこれ以上荒らされるのは非常に危険だ。
手掛かりが尽きれば最悪この施設を中心に類稀なる未曾有のバイオハザードとゾイドハザードが同時に勃発する事が目に見えている。
階電波や暗号通信をこの施設から傍受し易い様に大量に流し、帝国軍に調査隊を派遣させたのも無駄に終わるのだ。
「遠足でありますか?」コートから当たり前の様にエチケット袋を取り出したフェイをみるファイン=アセンブレイスの目は疑い深く彼を見ている…。
「そう言う訳じゃない!手掛かりが無くなる可能性が…」必死になって弁解している彼を見る限りそれはまちがいない様だ。
結局知ってしまった事は常識的及び良識的にもとても悪い情報で知ってしまったからには最早後戻り出来ない内容で在る以上じっとしてる訳にもいかない。
またしても部屋中を物色する事になったのである…。
「面倒臭い〜。」「まあまあ…そう言わずに探すでありますよ。」「すまんなまた家捜しをさせる事になってしまって…。」
「中尉!頑張ってください。その中で探し物が一番上手いのは貴方ですから…。」
先程まで全く会話に参加してなかったシュミット=エーアストはやっと会話に割って入れた事に心底安堵している様な声に聞こえたが直に別の会話に流される。
「3人ともぉ〜頑張ってください〜。」何時もこの調子のルディア=カミルもエールを送る。
日も傾く頃ようやく作業を終えた彼らは成果を抱えて一度施設人員用入り口の前まで戻ってきた。
制御室は完全に区画が独立し一度2層に降りてから登らなければならない事も解った為、
明日早く近くの区画までゾイドで移動し壁を打ち破る事に成ったのである。
しかし入り口付近は何処から湧いて出て来たかまた別の化け物に占拠されていた…。
53 :
新たな力:03/11/20 12:46 ID:???
「大佐―…、このBFどうするんですかー?いつまでもここに転がして置くわけにはいかないでしょう?」
カンウの頭部を直接ミオに向け、マオがそう問いかけた。
ミオがBFの方を向く。BFの機能は停止していたが、あくまで傷を付けたのは首元だけであり、コアは死んでいなかった。
「ああ…このBFならちょっと手を加えて凱龍輝として再生でもさせるさ。」
「凱龍輝に…?でも、確かにコアとか共通ですけど、性能とか特性とか違いますからその差異に戸惑うんじゃないですかね?」
「なーになーに。その位なら後からの教育でどうにでもなるさ。とにかく今は少しでも戦力が欲しいんだ。
そうだ!!今度BFは凱龍輝として再利用出来るから、撃破せずになるべく捕獲することって意見書を上に提出しておこう。」
そんな事を言いながらミオは再びカンウの作業の続きに入った。
それから数分後、カンウの強化作業は全て終了した。
「よーし作業終了!!妹よ!!思い切り暴れてくるがいいさ!!」
ミオはカンウを見上げてそう叫んだ。
「はい!!では行ってきます!!…とその前に大佐…。カンウの背中に何か付いてるんですけど…。」
確かにマオの言った通り、カンウの背中、バスターキャノンを取り付けている部分の後ろに見慣れぬ物が
装備されていた。丁度ボルドガルドのブレイクスパイクで守る形で4つのゾイドコアブロックスがギガの背中に装備されていたのである。
「あ〜…まあ…強化の一環だよ。効果の程は後のお楽しみって事で。」
「はあ…?」
疑問を抱きながらもマオはカンウをゆっくり前進させ、格納庫を移動しながら出口へと向かう。
それを眺めていたミオは突然カンウの向かう反対方向に走りだした。
ジャイアントトータスの入り口のハッチ部分に到達したカンウ。
「うっわぁぁぁ〜まだまだやってるね〜…。」
54 :
新たな力:03/11/20 12:49 ID:???
外はまだまだ戦闘が続いていた。至る所で爆発音が聞こえている。そんな中、どさくさに紛れて
小型キメラ群が何機かカンウのいるジャイアントトータスハッチ部分に向かって走ってきた。
恐らく内部に進入して内側から破壊しようと言う魂胆なのだろうが、カンウの一蹴りでその野望も
一瞬にしてうち砕かれた。
「さーて…行くかね〜っと。」
「ちょっと待ちたまえ妹よ!!」
突然ミオからの通信。マオがカンウの後部カメラからの映像をみると一機のマンモスが後ろから走ってくる。
「私も参戦させてもらおうか。どうせジャイアントトータスは動けないし。」
「ってえぇぇぇぇぇ!!?そのマンモスまさかお姉ちゃんが乗ってんのぉぉぉぉ!!?」
「こらぁぁぁ!!ここでは大佐と呼べと何度言えば!!」
とにかくそのマンモスにミオが乗っていた。
「どうも済みません大佐…しかし…大佐は指揮官ですよ…それに今時マンモスなんて…死にに行くような物ですよ…。」
ゾイドマンモス。現存するゾイドの中ではもっとも旧式の部類に入る大型ゾイドである。
ロールアウト当時は重装甲と超パワーで相当に大暴れした機体であるが、今や完全に旧式化。
現在では馬力を生かしての土木作業用ぐらいにしか使用されていない機体である。
小型機相手にはどうにかなるが、現在第一線で活躍している大型機が相手では勝ち目など無い。
そんな棺桶とも言われかねない機体でミオは戦線に出ようとしていたのだ。
「なーになーに大丈夫!!大丈夫!!このマンモスは私が強化したスーパーマンモスだよ!!
心配すること無いって!!」
「ホントですか〜?というか背中に背負っているコンテナみたいなのって何?」
目を細め、疑問を抱いた感じでそう言うマオ。確かに彼女の言うとおりマンモスの背中にコンテナが積まれていた。
「これもアンタのギガの背中のブロックス同様に秘密兵器の一つよ!!ホラホラ!行った行った!!」
ミオがそう言うとマンモスがカンウを押した。カンウがそのまま外に押し出される。
55 :
新たな力:03/11/20 12:53 ID:???
ジャイアントトータスのハッチ部分と陸地にある段差から思わず落っこちそうになるが、どうにか着地。
「わわわ!!あっぶなーい!!!…でも…カンウが押し出されるなんて…強化ってのもあながちハッタリでは無いみたい?」
とにかく気を取り直して、カンウとマンモス、そしてマオとミオのスタンティレル姉妹は出撃した。
「ででで出たぁぁぁぁぁ!!グリーンデビルだぁぁぁぁぁ!!」
「人をお化けみたいに言うなぁぁぁぁぁ!!」
そう叫んで撤退しようとしたジェノザウラーにマオがそう言ってカンウで一気に殴り倒した。
マオとカンウが戦線に参戦したと同時に戦場の勢いというのが共和国側に傾いた。確かにマオとカンウが
いかに強かろうとたった1人で広大な戦場の戦況をくつがえすには到らない。
しかし、強力なゾイドや強力なエース。そして強大な影響力を持つ者はそこにいるだけで味方を勇気付け、
そして敵を浮き足立たせる。マオとカンウの起こした現象こそまさにそれだった。
「マオ少尉!!やっと強化が完了したんですね!!」
サリーナがそう言って彼女の乗るガイガイガーがカンウに走り寄った。
「ほらほらお二人さん!!戦闘中だよ!!」
ミオがそう言ってマンモスがカンウとガイガイガーの前に出た。
マオとカンウの参戦で敵が浮き足だったとはいえ不利な状態には変わりなかった。
何しろジャイアントトータスは動けない故に敵の攻撃をもらいまくっているのだ。
それでも、やはりカンウの参戦によって参戦前よりはマシな状況になってきた。浮き足だった敵機は
一瞬動きが鈍り、そこを付かれて他の機体に破壊されていった。一度撤退していく機体も少なく無い。
「こうなったらグリーンデビルは可能な限り近づかずに他の敵機を可能か限り撃破しろ!!」
最前線で陣頭指揮を執っていると思われる帝国兵士がそう叫ぶと共に、敵機は一斉に体勢を立て直した。
「させる物ですか!!」
マオはそう叫ぶと共にカンウがカンウから遠ざかろうとするスティルアーマーを蹴り飛ばした。
そのまま追撃モードで一気に迫るカンウと護衛するように追随するガイガイガー。
マオとカンウから逃げるのは口で言うほど簡単な事ではなかった。敵味方の入り乱れる会戦ではなおさらである。
56 :
新たな力:03/11/21 10:56 ID:???
「あのマンモスは弱そうだぞ!!まずはアレを狙え!!」
それでもカンウから逃れた者が、カンウの後方にいたミオの乗るマンモスに狙いを定めて突進した。
BFだ。バスタークローを振りかざし、高速回転させながらマンモスに向けて一斉に突っ込んできた。
「大佐!!」
カンウの頭部ごと後ろを向いた状態でマオがそう叫んだ。
が、次の瞬間信じられない事が起こった。
ドン!!
重金属のぶつかり合う鈍い音と共に宙を舞ったのだ。BFが。早い話がマンモスが突っ込んできたBFに
牙を引っかけ、逆にBFを上に吹っとばしたのだ。
「へ…?」
その光景を目の当たりにした皆が一斉に目を点にした。
「だーから言ったでしょう?強化してるって!!」
マンモスの中で眼鏡を輝かせながら不適な笑いを浮かべてミオがそう言った。
「いや!!いくらなんでも強くなりすぎでしょう!!?」
マオが両手をピクピクと振るわせながらそう言った。
「なーにを言っているのよー!!アンタ自身に比べればどうと言う事無いでしょう?」
「た…確かにそうだけどさ〜…。」
痛いところを突かれてマオはうろたえる。
「い…今のウチに…!!」
戦場のど真ん中で二人が雑談を始めたスキに何機かの帝国ゾイドが走りすぎようとしたのだが、
全てカンウとマンモスに吹っ飛ばされた。中の二人は雑談したまま。
とにかくマンモスは強かった。敵機の砲弾を弾き、かわし、敵を強力なパワーで粉砕していく。
ここまで来るとマンモスの性能のお陰なのかミオの実力なのか分からない程である。
「しまった!!何機か逃した!!」
マオがそう叫ぶと同時に帝国高機動ゾイド群の一群がカンウとマンモスの猛攻をかわしてそのまま
ジャイアントトータスに攻撃を仕掛けるためにヤケクソ気味に全速力でジャイアントトータスに突っ込んでいく。
57 :
新たな力:03/11/21 10:59 ID:???
「そうはさせないよ!!」
全速力でジャイアントトータスに迫る帝国ゾイドの一団の眼前が突然オレンジ色の光を放った。
帝国パイロット達は一瞬目が眩み、動きが一瞬鈍った。
その時だった。オレンジ色に輝く何かから突如として高出力ビームが発射された。
そしてそのまま左から右へと横薙ぎに放射される形で帝国ゾイドの一群は一瞬にして消滅した。
「いっちょあっがりー!!っていうかやっと活躍出来ましたー!!」
そのオレンジ色に輝く何かはガイガイガーだった。そしてサリーナは右手でVサインを形作っていた。
そんなこんなで浮き足立った敵をちょくちょくと片付けていくわけだが、マオがある事を思い出した。
「あ、ラインは今どうしてるの?」
「あ・・・そういえばライン先輩の姿が見えませんね。」
ラインは今ごろ何をしているのか、とにかくラインとの合流を考えたマオは、敵のディメトロドンや
キラードームをあらかた潰した上で、ラインのジェネラルに対して通信を送った。
「おーいライーン、生きてるかーい?」
戦場の殺伐さが感じられないほど気の抜けた声でマオは通信を送る。その隙を突こうとロードゲイルの
命令で突っ込んできた数機のキメラドラゴンを足で蹴り飛ばしながら・・・。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「わぁぁぁ!!一体何よ!!?」
通信と送った途端にラインの物と思しき叫び声がカンウのコックピット内に響き渡った。マオも思わず耳を塞ぐ。
その頃、ラインとジェネラルは苦戦していた。幾数にもなる高機動キメラに攻撃を受けていたのだ。
どうにか攻撃をかわして反撃の糸口を見つけようとするがなかなかそうはいかなかった。
「やっばい!!ラインが大ピンチじゃない!!大佐!!ちょっと行って来ます!!」
「ああ、存分に行って来るがよいぞ。」
大急ぎでラインとジェネラルの反応があった地点に向かってカンウとガイガイガーは走り出した。
「そろそろ頃合だな・・・。」
マオとサリーナに手を振って見送るミオがそう呟いた。
「あれはなんでありましょうか?」その相手は人に近い姿勢を取っているが見た目は人とはかけ離れている。
「馬鹿な!…」そう声を荒げるフェイ=ル=セイフの口を慌てて塞ぐファイン=アセンブレイスとミズホ=浅葱。
「しーっ気付かれるでしょ…。」世話のかかる”お医者先生”をなだめる。
「ここで誰かセカンド共を大量殺戮した奴が居るらしいな。」その言葉を聞いて顔が蒼くなるファイン。
「まあやってしまった事は如何しようも無い。とにかく今回は奴等の一番でかい奴を確実に葬り去る必要が出来ただけだ。」
「と言うと?」質問をする二人。
「取り敢えずあの一番でかい奴は”女王”だ言葉で解る通り奴からは”サード”が産まれてくる。放って置くと確実にバイオハザードだ。」
一区画前の狭い部屋に入って会議をしている…目前でダラダラと話していたら見付かるのは目に見えている。
「しかしここに入ってから”セカンド”とか”サード”と言われても今一つ解り難いのでありますが?」
状況が完全に把握出来ていない帝国兵なのである程度の予想は付くが自分の口からがっかりする様な発言は絶対に避けなければならない。
味方全体の士気に間違い無く影響する言葉を断じて言う事は出来無いのだが…。
「ああ〜彼等の世代のことですねぇ〜?」と言ってしまうルディア=カミル。
「言ってしまったでありますね…。」これで終わった…と折角我慢していたフェイとファインは肩を落とす。
「そう!正解です!」空気の読めない上官共にため息を漏らすしかなかった…。
59 :
新たな力:03/11/22 09:45 ID:???
「うぉぉぉ!!ちっくしょう!!」
スーパーシールドライガー「ジェネラル」のコックピット内でラインは叫んだ。
近辺にいた友軍は他のゾイドとの戦いに忙しいために援護は期待出来ない。
その状況で幾数もの高機動キメラの相手は相当にきつい物だった。敵の高機動キメラは
ジャイアントトータスに取り付こうとしていた。それを一機一機片付けていくのだ。
そこをうざがられたのか、キメラ攻撃対象がジェネラルへと変更され、一斉にジェネラルに攻撃を開始した。
キメラは単機での実力は対したことはないが、相当に数が多い。さらに素早い上に、死を恐れぬ捨て身の
攻撃を仕掛けてくるがために苦戦は必至だった。
「ちっくしょう!!誰か援護してくれよぉぉぉぉ!!」
ヤケクソ気味にラインが叫んだ。と、その時だった。
「時は来た!!例のボタンを押せ!!」
「へ!!?」
突然の通信。声はミオの物だった。
「おぼれる者はワラをも掴むぅぅぅ!!!」
ラインはそう叫び、何も考えずにコックピットの端に配置されてあった、それまで押すなと
厳命されていたボタンを力いっぱい押した。何が起こるかは分からない。しかし、この状況では
これに賭けるしか無かったのだ。
「おーい!!ライーン!!助けに来たよー・・・ってうわぁぁぁぁ!!」
ジェネラルの元へ走ってきたカンウの中でマオがラインにそう呼びかけた直後の事だった。
ジェネラルが突然大爆発を起こしたのだ。そしてジェネラルの残骸と思われる金属片が辺りにばら撒かれる。
「ライィィィィィン!!」
マオは思わず叫んだ。いつも普段からラインをアゴでこき使っているマオだが、こういう状況下に
おいては誰よりも悲しんだのはマオだった。本当はやさしい奴なのである。と聞けば聞こえはいいが、
その実態はただ泣き虫なだけなのであった。そこ、ぶち壊しじゃないかとか突っ込まない。
「よくもラインを殺したなぁぁ・・・。こぉぉぉのぉぉぉぉぉ・・・お前ら皆殺しだぁぁぁぁぁ!!」
マオはマジで切れた。そしてその怒りに精神リンクを行っていたカンウも呼応し、吼えた。
戦場中にマオとカンウの叫び声が響き渡った。相当な気迫。味方のサリーナも思わず退く。
60 :
新たな力:03/11/22 09:47 ID:???
「覚悟しろお前らぁぁぁぁぁぁ!!」
浮き足だつ敵に対し非情にカンウが一気に追撃モードに変形し、突撃をかけた。その気迫に押されて
キメラ軍団が逃げ出そうとした。その時だった。
「少尉―!!勝手に殺さんで下さいよ!!」
ずげげげげ!!
突然のラインの声。それに驚いてカンウはそのままその場にすっ転んでしまった。
「え!?え!?ライン!!あんた生きてるの!!ってどうなってるのよ!!」
「そんなのこっちが知りたいっすよ!!」
焦り顔で叫ぶマオに対してラインがそう言い返した直後、ジェネラルの爆発によって起きた爆煙の中から
素体状態のライガーゼロが現れたのだった。
「ゲ――――――――――――!!シールドライガーがライガーゼロに化けたぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
マオは思わず叫んでいた。
「うろたえるな!!」
ミオがマオとラインに対して通信した状態で叫ぶ。
「大佐!!あれはどうなってるんですか!!?あれは大佐が作ったんでしょう!!?」
マオがミオに対してそう問いつめた。
そもそもラインが使っているスーパーシールドライガーはそもそもミオが趣味で制作した改造ゾイド。
確かに高性能機にはなったが、あのDCS−Jも子供だましに思えるほどの操縦性が劣悪な機体に
なってしまった。しかし、それを乗りこなす事が出来たラインがそれを操縦することになったという
いきさつである。
「一体どうなってるんですか!!?」
ラインも相当に疑問深そうな顔でそう言った。
「ああ、早い話がアンタのゾイド。実はシールドライガーの外殻で偽装したライガーゼロって事よ。」
ずげげげげげげ!!
例によってゾイドごとすっ転ぶマオとライン。
そう来たか・・・ホントに別のゾイドだったのかよ(w
そりゃジェノザウラーも殴り殺せるわ(w
個人的になんとかの皮をかぶった○○ってのは燃え。
62 :
新たな力:03/11/23 14:14 ID:???
「ちょちょちょちょっと待って下さいよ!!いくら何でもムリがありすぎでしょう!!?
特にコックピットですよ。シールドライガーはキャノピー式で、ライガーゼロは装甲式ですよ!!
そこをどうやって説明するんですか!!?だいたい…。」
「うるさいだまれ!!」
「………。」
ミオの一言で問いつめていたマオが凍り付くように静かになった。
そんな時だった、キメラの何機かが体勢を立て直して再びライガーゼロの姿を現したジェネラルに
攻撃を仕掛けてきたのだ。
「!!!」
それに気付いたラインは操縦桿を傾け、攻撃を回避しようとした。その時だった…
「!!!!!!!!!!」
ジェネラルが跳んだ。以前とは比べ物にならない速度と高さ。その場にいた誰もが唖然とした。
シールドライガーの重い外殻を脱ぎ、軽くなったジェネラルの性能は想像を超える物だった。
シールドライガーの外殻を装備していた状態ですらライガーゼロ級の性能を有していたことから、
その高性能さが伺える。
今度はジェネラルがその右前足でキメラを一体殴りつける。キメラはたちまちサッカーボールの様に
吹っ飛び、さらにその後ろにいた数体のキメラをも巻き込んで粉砕された。
ただ速度が速いだけではない。パワーも相当なレベルにあった。
「何かよくわからんけど強い!!これがお前の真の実力なのか!!?」
ラインは感激しながらそうジェネラルに話しかけた。
「そうだろそうだろ!!シールドライガーの外殻はあくまで性能を押さえるためのリミッターだったんだから!!」
またもミオが通信でそう自身ありげにそう言った。
「え?そもそもリミッター掛ける意味って…。」
マオが焦り顔で言う。
63 :
新たな力:03/11/23 14:19 ID:???
「事の発端は私がゴジュラスギガとの共闘を想定した強化ライガーゼロを制作しようと思った事が始まりだ。
そしてその実験機とも言える機体は確かに高性能になったが…、というか高性能になりすぎてしまい、
とても操縦出来ない代物になってしまった。しょうがないので私は性能を押えるためのリミッターを兼ねた
シールドライガーの外殻で機体を覆った。それでも高性能かつ操縦性が悪いのは変わらなかった。
しかし、ラインはそれを見事に操って見せたでは無いか!!」
「いや!!だから何で外殻を着せるの!?っていうか何でシールドライガー!!?」
「ああ、シールドライガーの偽装に付いては私の趣味だ。」
「………。」
意表を突いたミオの一言にマオは黙り込んだ。
「じゃあ…何で今まで実はライガーゼロって黙っていたんですか?」
「敵を騙すにはまず味方からって言うでしょ?それに外見がシールドライガーなら敵も油断するし。
それに、いくらシールドライガーの偽装をしたゼロをラインが操ったと言っても、
いきなり本体のライガーゼロを動かせるとは思えない。それだけ高性能かつ操縦性の悪い機体なのよ。
だからしばらく黙って置いて、練度を積ませたのさ。そして、ライガーゼロとしての本体を
表しても良いと私が判断したからこそいま、ゼロがいる。」
「なーるほど〜…。」
ミオのうんちくにマオは両腕を組んで納得していた。
「わぁぁぁぁぁぁぁ!!どうでもいいんですけど!!せめてアーマーくれませんかねー!!?
こちとら素体状態で装甲もクソも無いですから一発食らったらアウトなんですよぉぉぉぉ!!」
一瞬忘れ去られていたラインが叫んだ。そしてジェネラルめがけて段幕を張るキメラ軍団の猛攻から
ジェネラルは必死に逃げ回っていた。いかに高性能でも素体状態では小型機の攻撃でも致命傷になりかねない。素体状態で戦闘を続けるのはムリがあった。
「ライン!!あと1分くらいもたせな!!良い物をプレゼントしてあげるよ!!」
64 :
新たな力:03/11/23 14:23 ID:???
ミオはそう叫ぶと共に、あるボタンを押した。その直後にマンモスが背中に背負っていたコンテナが開き、
中から青いカラーリングで今まで見たことのない飛行ゾイドが出てきた。
「フェニックス発進!!」
ミオがそう言うと共にミオがフェニックスと呼んだその飛行ゾイドはその大きな翼をはためかせ、そして
飛び出していった。フェニックスは瞬く間に音速に達し、マオ達のいる地点に向けて飛んでいく。
「空を見ろ!!鳥だ!!飛行機だ!!ファービーだ!!って分からんわんなもん!!」
見たこともない飛行ゾイドが大空を飛んでいるのを目の当たりにした両軍兵士達は一斉にフェニックスをゆびさして叫んだ。
一方その頃、例によってラインとジェネラルは敵の弾幕から逃げ回っていた。ジェネラルの被弾を
防ぐためにマオがカンウを盾にし、そしてサリーナのガイガイガーと共に掃討に当たっていたのだが、
それでもキメラ軍団は後から後からわいて出てきた。
「1分たちましたよ!!一体どうすれば・・・!!?」
その時だ。敵の弾幕から逃げ回るジェネラルに向かってフェニックスが真っ直ぐに飛んできたのだ。
「敵の新手か!!?」
当然初めて見るフェニックスを敵の新型と勘違いし、ラインとジェネラルは身構えた。
「うろたえるな!!これが先ほど言った良い物だ!!!」
ジェネラルのコックピット内に響き渡るミオの通信音。
「え!!?良い物って・・・ただの飛行ゾイドじゃないですか!!アーマーがほしいって言ったんですが・・・
ってえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
次の瞬間フェニックスの全身の各パーツがバラバラに分離し、強化ライガーゼロ=ジェネラルの全身に
アーマーや武装として装着されたのだ。ライン=バイス仰天!!
「どうよ!!フェニックスと合体したこの形体こそライガーゼロフェニックス!!!」
「ライガーゼロフェニックス・・・。」
ミオがゼロフェニックスと呼ぶ形体となったジェネラルを見たマオがそうつぶやいた。
「それでは自分が一人でつついて来るであります。」そう言うと部屋を出るファイン=アセンブレイス。
取り敢えずフレキシブルウェポンドライバーは対物ライフルの形態を取らせている。
曲がり角からの狙撃を敢行しようとしているのだ。
相手までは400m程。通路が大き目とは言え今居る曲がり角の地点には正面と後方以外からの攻撃を受ける可能性は薄い。
天井や床、壁はダメージを受けた形跡も無く構えるには最適だと判断したのである。
「作戦開始!」ライフルの引き金を引く…弾丸は狙いをさだめた通り”女王”に向かって一直線に向かっていくが次の瞬間信じ難い光景を目の当たりにする。
それは突然跳び上がり易々と弾丸を避けて見せたのだ。「ありゃ!?そんな芸当を持っていたのでありますか?」
幾ら正体不明の生物とは言えそこまでの芸当が易々と出来るものでも無い。
今の事によって攻撃が相手にばれたのは確実だ。”女王”掛け声により護衛と思われる者達が大挙して彼の居る場所に殺到する…。
が…何の考えも無しに来たらしく途中で通路に寿司詰め状態に成ってしまう。命令を遵守する余り自分達のサイズを忘れてしまっていたらしい。
「好都合でありますねって!?」突然彼等が口を一斉に開け液体を飛ばしてくる。慌ててその場から逃げるが元居た場所が少しづつ煙を上げながら解けている。
「体液は溶解物質でありますか!?」どうやら完全に機先を制されてしまったらしい…。
後手に回る羽目になったが諦めて目の前の彼等の頭部に確ライフル弾を打ち込む。
意外と彼等の外骨格の表面に受け流され気味ではあるが次第に要領を覚えて確実に頭部を打ち抜いて行く。
護衛の頭数は少しづつ減っていく…作戦は始まったばかりだが在る意味幸先の良い展開に成りつつ在った…。
66 :
新たな力:03/11/24 11:23 ID:???
「早い話がこのガイガイガー、つまり凱龍輝同様にブロックスをアーマーとして使用したって事ですね?」
さりげなくすっかり忘れ去られていたサリーナがそう言った。
「ご名答、しかしゼロフェニックスはそのアーマーとなるブロックスのコアとゼロそのもののコアとの
共振作用によってコア出力が増幅されるようになっている。まあ、ノーマルのぜロじゃあそこまでやって
やっと凱龍輝と同レベルって所だがね。しかし、先ほど述べたようにラインの乗っているゼロは私が
強化したゼロ。さらにそれがブロックスコアとの共振作用によって出力が増幅されるんだ。
その戦闘力は計り知れないね。まあそんな事はどうだっていいんだ!!さあ行けライン!!
ゼロフェニックスとして進化した愛機と共に大空という新たな戦場に飛び立つんだ!!」
「すみませんが無理っす・・・。飛行ゾイドの操縦なんかした事無いんですから・・・。」
ガン!!
速攻のラインの突っ込みに、ミオは思わずコックピット内のディスプレーに頭をぶつけた。
「し・・・しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ミオは頭を抱えながらそう叫んだ。本来ゼロフェニックスはゼロのアーマーとなるフェニックスにも
パイロットを乗せ、そのパイロットに飛行を担当させるのであるが、ジェネラルと合体したフェニックスは
無人機だったのだ。発進後、ラインのジェネラルに向かって飛んでいくという手順はミオがあらかじめ
プログラムしたデータなのだが、その後のことは考えてなかった。
「しまったぁぁぁぁぁぁぁ!!ミオ=スタンティレル人生最大の不覚!!かくなる上は腹を掻っ捌いて・・・。」
「わぁぁぁぁぁぁぁ!!大佐ぁぁぁぁ!!お止めくださいぃぃぃぃぃぃぃ!!」
ミオのマンモスの近くにいた友軍機が一斉にマンモスに走りよってミオを止めようとしていた。
そういう意味ではミオもかなり部下からの信頼厚い人物であることが理解できる。
「・・・・・・・・・。」
ミオのマンモスの周辺の大騒ぎをモロに通信で聞いていたマオ達は一斉に唖然とした状態で黙り込んでいた。
67 :
新たな力:03/11/24 11:26 ID:???
「しょ・・・しょうが無いっすね・・・。じゃあこの羽だけ外して戦うことにしますよ・・・。」
そう言ってラインはジェネラルの背中に装備されたフェニックスのマグネッサーウィングを切り離す為に
切り離しボタンを押そうとした時だった。
「ちょっと待って!!飛行は出来なくてもホバーリングくらいは出来るんじゃないの!!?」
「え!!?」
マオはそう言って切り離しを止めた。
「考えても見なさいよ!!・・・というかライン!!アンタ以前ジェノブレイカーに乗ってたでしょうが!!
その時のことを思い出しなさいよ!!ジェノブレイカーの操縦法をこの機体に応用すれば
ホバー走行とか低空飛行位は出来るんじゃないの!!?」
確かにラインは以前、ガイロス帝国から譲渡されたジェノブレイカーに乗っていた事があった。
「た・・・確かに・・・ジェノブレイカーの操縦なら出来る!!そうか!!それなら!!」
ラインはそういうとジェネラルを走らせた。ものすごい速度。たちまち300キロ以上の速度に達する。
そして今度はマグネッサーウィングをはためかせる。ジェネラルが飛んだ。そのままホバーリングに近い
状態で低空を飛行していく。
「よし!!いい!!行けるぞ!!」
ラインは叫んだ。そしてそのまま先ほどのキメラ軍団に攻撃を仕掛けるために機体を旋回させた。
「先ほどのお返し!!させてもらうぜ!!」
その直後だった。前方にいたキメラ軍団が光の渦によって薙がれ、たちまち消滅した。
「あ・・・すみません先輩!!ある程度は残しておこうと思ったんですが全部やったいましたー・・・。」
犯人はサリーナだった。サリーナのガイガイガーの荷電粒子砲がキメラ部隊を一気に薙ぎ払ったのだ。
凱龍輝は全身に装備された集光パネルによって、敵のビーム兵器を吸収した上での集光荷電粒子砲を
撃つのが本分なのであるが、ゴジュラス系技術とブロックス技術の応用によってゴジュラスギガには
遥かに勝るべくも無い物の、同じ素体である帝国のBFと比較すると格段に高い出力を持っている。
その為、凱龍輝独力の荷電粒子砲であっても、相手が小型機ならば部隊単位で消滅させることも
不可能では無い物だったのだ。
幸先の良い展開には成りつつ在るが予定とはかなりかけ離れたものになって来ている。
作戦概要は”女王”と”護衛”を引き離しファイン=アセンブレイスの狙撃位置に誘き寄せ逃げる。
その後センサー作動式に起動条件を変更したプラズマネットに”護衛”達を閉じ込め殲滅、
その後”女王”を確実に攻撃、殲滅。これが基本概要である。
実際には何処に逃げてもプラズマネットで”護衛”を閉じ込めれる様に所定位置より半径100m間は完全に封鎖している。
天井や床等から逃げられない様に爆薬もセットしている。殺傷力と破壊力も考慮し威力的には作動すると壁を埋める事も出来る。
取り敢えずは逃げ出すことが出来れば良いのではあるが…実際は一体づつライフルで排除しているのが現状だ。
準備した物は今のままでは全くの役立たずなのが現状であった。
「此方シュナーベル3我作戦ニ失敗セリ!」格好を付けて少しは面目を保とうと適当なコードネームで施設居残り組と待機組に連絡を取る。
「こちら〜シュナ〜ベル1了解しましたぁ〜。」「了解してどうするんですか!?」「此方ワイズダック2ミサイルでも打ち込むか?自爆王?」
どうやら施設入り口周辺には増援も到着していた様で整備班の誰かが近くに居たらしい…。
「冗談はそれくらいにして逃げてくる!」「速くしないとトラップを作動させるぞ!」施設居残り組よりの催促も来る。
予定通りにいかないのなら強引にでも方向を修正するのが軍隊の在る意味あるべき姿。
手榴弾を寿司詰めの”護衛”に向けて投げると、矢の如き速さでその場を逃げ出すファイン。
数秒が過ぎた頃爆発音が通路内に響き渡る。
その爆発で立ち込める煙の中から一番に姿を表したのは何故か”女王”だった…。
69 :
新たな力:03/11/25 14:45 ID:???
「あ・・・そう・・・。」
ラインは一気に拍子抜けしてしまった。とか何とか言っていたら、敵陣の奥深くからまたもやキメラが
雪崩のように物凄い大群で押しかけてくるではないか。
「うっわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!敵の戦力は底無しかぁぁぁぁぁぁ!!」
例によって半泣き状態で叫ぶマオ。
「おい!!こーなったらお前ら敵陣に突っ込んで敵の頭を抑えて来い!!」
ミオが叫んだ。
「え!?でもジャイアントトータスの防衛は!!?」
「そんなのこっちでやる!!それにジャイアントトータスは簡単には壊れはせん!!
とにかく敵の頭を抑えない限り敵の攻撃は無尽蔵に続くぞ!!」
「・・・・・・。」
マオは一瞬沈黙した後、軽くうなずいた。
「こうなったらいっちょやって見ますかぁぁぁ!!ライン!!サリーナ!!私に付いて来なさい!!」
そう言ってマオはカンウを追撃モードに変形させて一気に走り出した。
「ええ!!?この大軍の中を突っ切るんですか!!?」
サリーナがマオに対して叫んだ。
「だがな・・・そうするしかなかろう・・・。ここでずっと防衛に集中していてもラチがあかないからな・・・。」
ラインはそう言い、ジェネラルを発進させて先行するカンウを追いかけた。
「・・・・・・・・・どうしよう・・・・・・。」
サリーナは決意が固まらずにいた。サリーナはかつて、キメラに袋叩きにされた事があった。
敵陣の奥深くに行けば、そのとき以上の数のキメラ。さらには数多くの帝国ゾイドがいるだろう。
そう思うとサリーナは怖くなってきた。そのときだった。
「ギャオォォォォォン!!」
ガイガイガーが吼えた。その咆哮に敵を恐れる恐怖はなかった。むしろ敵に立ち向かう勇気。
仲間を助ける為の友情等、そういった物が感じ取ることができた。
70 :
新たな力:03/11/25 14:47 ID:???
「は!!!」
サリーナは、ガイガイガーと出会ったときのことを思い出した。それはまだサリーナがアロガイガーと
名づけていたアロザウラーに乗っていたときの事。その時の敵もキメラの大群だった。
後から後から無尽蔵に沸いて出るキメラブロックス軍団。仲間は次から次へと沸いて出てくるキメラの
攻撃によって次々に倒れていく。そして仲間が倒れていくにしたがって強くなる恐怖心。
現状を打開する方法はただ一つ。キメラ軍団の最奥にいるキメラを指揮するロードゲイルを倒すしかない。
しかし、現状の戦力でキメラ軍団を突破し、さらに単機でも高い戦闘力を持ち、パイロットもエース級の
ロードゲイルを倒すことは至難の業だった。以前、キメラブロックスの大群に袋叩きにされた時のように
思わぬ助け舟が現れるなどという都合の良い展開も2度は起こるはずもない。
この時のサリーナは死を覚悟した。しかし、サリーナは思った。
「どうせ死ぬならただでは死なない!!敵を何体か道連れにする!!そうすれば少しは味方の役にも立つ!!」
サリーナがそう思うと同時に愛機のアロガイガーも吼えた。アロガイガーも同じ事を考えていたのだ。
その直後、サリーナとアロガイガーは信じられない力を発揮した。満身創痍だった機体の出力が
信じられないほどにまで高まり、サリーナが気づいたときには既に戦場に展開するキメラ軍団を蹴散らし、
一気に敵陣の最奥にまで走り込んでいたのだった。
「火事場の馬鹿力」
サリーナは以前、そういう言葉を耳にしたことがあった。極限状態となった時、人は普段からはとても
信じられない力を発揮するのだ。そして、まさに今この時こそ、その火事場の馬鹿力を垣間見たのだった。
しかし、敵はまだ健在である。キメラを蹴散らしたといってもアロガイガーの前方にいた者のみであり、
全体から見ればほんの一部に過ぎない。しかし、今目の前にいるのは指揮機であるロードゲイル一体のみ。
これを倒せば他のキメラは全て沈黙する。そう思ったと同時にサリーナとアロガイガーはロードゲイルに
攻撃を仕掛けていた。だが、ロードゲイルのパイロットは間違いなくエースだった。
71 :
新たな力:03/11/25 14:50 ID:???
アロガイガーの突撃にも何も臆せず左腕のマグネイズスピアを正確にアロガイガーのコアに撃ち込んだのだ。
終わった・・・。
サリーナは思った。しかし、アロガイガーはまだ死んではいなかった。アロガイガーを倒したと思い、
ロードゲイルパイロットが油断した隙を尽き、アロガイガーの牙がロードゲイルの頭部を噛み砕き、
そして両腕がその奥にあったゾイドコアブロックを破壊し、さらにその牙と爪から電撃を流したのだ。
ロードゲイルが完全に沈黙した事を確認するなりアロガイガーはまるでわが人生一片も悔い無しと
言った風な感じでそのままゆっくりと息を引き取った。
ロードゲイルが沈黙したことによって、戦場を埋め尽くしていたキメラも同様に沈黙した。
その後、アロガイガーに変わる機体として渡されたのが、今ガイガイガーとしてサリーナが乗っている
凱龍輝だった。その当時のサリーナは何かの冗談かと思ったのだが、その時のアロザウラー単機で
キメラ軍団を突破し、ロードゲイルを倒したことが上から高く評価されたのだと言う。
そして、サリーナはアロガイガーへの感謝といつまでも忘れないという決意の気持ちから、
その凱龍輝にアロガイガーと同じガイガーの名を継承し、ガイガイガーと名前を付けた。
「そうだ…。私は逃げてはいけないんだ!!それに…以前にマオ少尉に助けてもらった恩返しも
していないじゃないか…。ようし!!」
そう言ってサリーナはガイガイガーのイオンブースターを全開にし、カンウとジェネラルを追いかけた。
そして、さらにそれを追うように、他のゴジュラスギガやライガーゼロ、ディバイソン等、友軍機も
敵陣へと攻撃を開始した。
一方、もっとも先行しているカンウとジェネラルは敵陣の奥へ向けて突っ切っていた。
前方に展開するキメラの大軍を蹴散らし、飛んでくる砲弾の雨をかわし、弾きながら一気に突っ込んでいく。
「くぅぅぅぅぅ!!後から後から!!」
カンウとジェネラルは相当な数のキメラを倒していた。しかし、それでも地平線の彼方から後から後から
キメラがわいて出てくるのであった。このままではラチが空かなかった。
72 :
新たな力:03/11/25 14:57 ID:???
「私が道を作ります!!」
突然カンウとジェネラルのコックピット内部にサリーナからの通信音が響き渡った。
その直後に背後からまばゆい光が放たれたと思うと、そのまま一筋の光の渦がもの凄い速度で現れ、
そして前方に展開するキメラの一群をそのまま薙ぎ払ったのだった。
「サリーナちゃん!!」
マオが叫んだ。キメラの一群を薙ぎ払ったのはサリーナのガイガイガーだった。
「私も行きます!!」
ガイガイガーは直ぐさまカンウとジェネラルと合流し、そして共に走り出した。
かつては共和国軍を苦しめる存在だった荷電粒子砲搭載型ティラノサウルス型ゾイド。
敵に回すとやっかいだが、味方に付ければこれほど心強いヤツはいないだろう。
「けど、このキメラ部隊はどうするよ。後から後からわいて出てくるよ!!」
マオは再度そう叫んだ。確かにキメラの数は雪崩のように圧倒的だった。ガイガイガーが消したキメラも
所詮はごく一部に過ぎない。このままでは物量という名の荒波によって蹂躙されてしまう可能性もある。
「ここは俺達に任せてくれ!!」
マオ達が後ろを向くと、いつの間にかに数多くの仲間が後方から走ってきていた。そして、キメラ軍団に
攻撃を仕掛け始めたのだ。
「そうだ…戦っているのは私たちだけじゃないんだ…。ようし!!一気に敵の頭を潰すぞぉぉぉぉぉ!!」
マオはそう言うとカンウを再び発進させた。そしてジェネラルとガイガイガーがそれぞれカンウの隣に
付いて走って言った。
新たな力の作者さんへ
サリーナさん何か良いキャラですね。きぐるみゼロも良い!!!
書き込みのペースもよい感じですし…此方は体調不良が重なって中々進みません。
そろそろ脳内メモリーに残しておくとやばそうなので忘れない内にまた1レス借ります。
【人名】
ミズホ=浅葱:共和国軍所属の特別中尉今回の施設が初の任務先で事件に巻き込まれる、体の大半を背中よりの甲殻皮膚で覆うことが出来る、
その大きさもかなり大きい為体を覆っている時の体躯は本人のサイズから最大二回り程大きく見える
ライナス=レンバートン:故人で今回の事故の原因となってしまった臓器の持ち主、
フェイ=ル=セイフが治療を担当していたが技術的な問題で如何しようも無かった
【技術】
シュトゥルムシュナイダー:略殴り合いの間合いで使用するナックルガードを兼ねた装備で先端とその後ろに二枚の刃が有り、
先端の刃が対象に接触すると衝撃がスイッチになり後方の刃が更に対象の更に奥に突き刺さる、
尚作者の不手際で後方の刃が取り外し可能な事を書き忘れていました申し訳ございません
【生物兵器】
ファースト:人間及びそれ等の生物(戦闘ゾイドも含む)にライナス=レンバートンの臓器細胞の強化レプリカを定着させて生み出される、
対象によって特徴は変わるが基本的には目の前の対象を撃滅する事ただそれのみに行動を起こす
寄生対象とは共生の関係にあり先の”レギオン”等の様に対象の保存、生存を最優先にする事も有る、
最終的には寄生対象が生命活動を完全に停止するとその対象のデータを元に”セカンド”に羽化する
「なんですとぉ〜!?」突然の”女王”の登場に完全に引くファイン=アセンブレイス。
この場合”護衛”が直に来ると思っていたのだがどうやらあてが外れてしまったらしい。
これでは作戦以前の問題である。”女王”がこちらを向く…。
その頭部は複数の生物の特徴を無秩序に取り入れた豪華なものでゆっくりとその覆いを開いてゆく。
基本は人間がベースだったのであろう…血の気の無い女性の顔を守るように上下にワニの様な顎。
左右には昆虫の顎更にその後ろに全ての装備をしまう植物の蕾…悪趣味極まりないものだった。
その後ろには巨大な肩より2本づつ逞しい腕その手には太く短い鉤爪が生えている。
やや胴長の体型に綺麗に折り畳まれて太く短く見えていた足、全ての部分は一部を除いて外骨格に包まれた完全重武装。
そうとしか言い様のない半生体機動兵器の様な姿をしていた。
”女王”の肩が煌めいたと思うと突然後ろの壁が爆発する…。
「っ!?加速粒子砲!?」発射時の衝撃波で倒れた為に消滅を免れたファインであるがその威力を目の当たりにして息を飲む。
「不味いでありますね…作戦所では無い様であります。」肩のレンズから蒸気が上がっているその後ろには機械の様な物も見える。
「こうなれば!」懐に隠し持ったスイッチを押す。”女王”の丁度体半分の辺りの壁が爆発する。
煙に隠れてその場から離れると同時にフレキシブルウェポンドライバーを超小型ミサイルポッドの変形させる。
もう一つ後ろの曲がり角まで移動し射撃態勢を取る…今出来る最良の行動。
それは”女王”の「加速粒子砲」を封じる事それだけだった…。
75 :
新たな力:03/11/26 19:34 ID:???
一方帝国軍本陣では大騒ぎだった。
「グリーンデビル参戦だとぉぉぉぉ!!?修理中では無かったのか!!?」
「それだけじゃありません!!あの凱龍輝と見たことも無いアーマーに身を包んだライガーゼロもいます!!」
前線からの報告を受けて叫ぶ、隊長機であるセイスモサウルスに乗った司令官に対し、それを護衛する様に
セイスモの周りに配置されているデスザウラーのウチ一機のパイロットがそう言った。
「グリーンデビルはキメラ部隊を蹴散らしながらこちらへ向かっています!!」
「そうか…。」
司令官の顔に笑みが浮かんだ…。
「こうなったらやるしかあるまい…。なーに、ヤツにも弱点はあるよ…。」
司令官はそう言うと自機であるセイスモサウルスの歩を進めた。
一方マオ達は敵陣のかなり深い所まで来ていた。マオのカンウを先頭に、ジェネラルとガイガイガー。
さらに他のゴジュラスギガやライガーゼロ等が一気に帝国軍本陣に攻撃を仕掛けていた。
本陣が近くなるにつれて、キメラを操るロードゲイルやデススティンガー等の重装甲機をよく見かける様に
なっていた。本来なら先行させている高速ゾイドやキメラにジャイアントトータスを沈黙させた後に
この重装甲ゾイド部隊を投入して一気に畳み掛けるという魂胆だったのだが、ここで阻止されてしまった。
サリーナとガイガイガーが荷電粒子砲で道を作り、ラインとジェネラルがウィングの裏側部分に装備された
12連ビームで群がる小型機を撃ち落とし、そしてマオとカンウが重装甲ゾイドを蹴散らしながら本陣の奥、敵の頭に向けて突撃した。
その時だった。前方から一筋の光が現れた。細いが強い光だった。その光はカンウの頭部めがけて突き進む。
セイスモサウルスのゼネバス砲である。それは一瞬の出来事だった。しかし、マオはカンウの頭部を横に傾けてやすやすと回避した。
「やはりこの混戦の中でのゼネバス砲すらも避けるか・・・。」
セイスモサウルスのコックピット内部にて、帝国軍司令官はそう呟いた。
マオはゼネバス砲を回避することができる。なぜ回避できるのかと言うと、それについてある将校が
質問をしたのだが、「殺気を感じたから。」などという非理論的な解答が返ってくるだけだった。
76 :
新たな力:03/11/26 19:37 ID:???
しかし、それだけではない。仮に殺気を感じて回避しようとしても、光の速度で飛んでくるゼネバス砲を
そうそう避けることはできない。それでも回避できるのは、マオ自身の目の動体視力、反射神経、
そしてカンウ自身の反応速度などが高いレベルによって備わっていることによって初めて実現される物なのである。
まあ、ミオはジャイアントトータスの巨体で回避するなどという荒業をやってのけたりするのだが・・・。
「あらあら・・・大将様自らご出陣ですか?帝国軍必死ですな〜・・・、そんなに私を殺したい?」
ゼネバス砲を軽くかわした後、体勢を立て直したカンウの中でミオは余裕たっぷりの表情でそう呟いた。
そして、カンウの前方数キロの彼方に数機のデスザウラーに守られるように一機のセイスモサウルスが
現れるのだった。
「ここで貴様、グリーンデビルが現れるのは計算違いだった・・・。しかし、考え方を変えれば、
ここで貴様を倒せば戦況はひっくり返る事にもなる・・・。行け!!」
帝国司令官はそう言うと同時に、デスザウラーが一斉にカンウに向けて突撃した。瞬く間に距離を取る。
「うおぉぉぉぉぉ!!こうなったら死なばもとろもだぁぁぁぁぁぁ!!」
デスザウラーのパイロットはヤケクソ気味でそう叫ぶと同時にデスザウラーの巨大な右腕を思い切り
カンウに向けて振り下ろした。しかし、その右腕がカンウの体に当たることは無かった。
カンウは左腕でデスザウラーの右腕を払いのけると同時にデスザウラーの腹部に思い切り突きを打ち込み、
さらに追い討ちをかけると同時にエルボー。さらにショルダータックルを叩き込んだのだ。
デスザウラーの鉄壁の超重装甲が豆腐のように潰れ、ひしゃげ、コアごと粉砕されていた。
たちまち生命力を失い、デスザウラーは倒れこんだ。
デスザウラーとそのパイロットは決して弱くは無かった。ただ、マオとカンウが強すぎるのである。
まあ、そんなマオもザコ扱いする奴も当然存在するわけなのであるが・・・。
とか何とか言っていたら、デスザウラーを一機撃破した一瞬の油断を突き、今度はデスザウラーが
側面から1機ずつ、合計2機まとめてカンウに飛び掛ってきたのだ。
77 :
新たな力:03/11/26 19:39 ID:???
「な!!!」
慌てて後ろに飛んで回避しようとするマオ。しかし、その後ろにもデスザウラーがいたのだ。
そしてカンウは合計3機のデスザウラーに組み掴まれたのだ。
「しまった・・・、その手があったか・・・。」
いかにカンウとて3機のデスザウラーに組みつかまれてしまえば身動きが取れないのは当然の事であった。
「ハッハッハ!!いかにグリーンデビルとてこうして体の自由を奪ってしまえばその辺のゴジュラスギガと
変わらんな。どれ、早速ゼネバス砲の餌食にしてやろう・・・。」
帝国司令官は笑いながらそう言うとゼネバス砲の発射用意に入った。セイスモサウルスの口の中から
かすかな光が放たれる。ゼネバス砲を発射する前のエネルギーチャージだ。
マオはカンウをどうにか脱出させようとするが、3機のデスザウラーが最大出力で押さえ込んでいる為、
全然動くことはできない。
「万事休すか・・・。」
マオがそう観念した時だった。突然カンウのコンピューターがマオの操作無しに勝手に動き出した。
「キガスパワーシステム!!スタンバイ!!」
「ギガスパワーシステム!!?何それ!!」
コンピューターから発せられた人工の機械音声に対し、マオはそう叫んだ。
その直後だった。カンウの背中に装備された4つのコアブロックスが微妙な振動を始めたのだった。
そして、その微妙な振動がカンウ自身のコアと共鳴反応を起こし、そして共に共振し始めたのだ。
「うそ!!カンウのパワーが上がってる!!」
カンウの出力計を見たマオは驚きながらそう叫んだ。それはライガーゼロフェニックスと同じ現象だった。
ブロックスの人工ゾイドコアと、非人工の天然ゾイドのゾイドコアの共振よって、コア出力が
増幅されたのだった。
>新たな亀裂作者さん
貴方の作品も、色々と興味深い設定とか出てきて面白いですね。
甲殻化できる人間とか・・・
流石にこれは驚きました。
後、自分のペースが速いのは、前々から作り置きして、フロッピーに保存していた物を
ここにコピペしているからです。直接書き込むよりもこういう方法の方がいいのではないでしょうか?
>>78に訂正です
「恐怖の亀裂」を「新たな・・・」に書き間違えてしまいました。
どうも済みませんでした。どうも寝ぼけていた(?)ようです。
フレキシブルウェポンドライバーには常に余剰パーツが出る。
弾倉と各種砲身それ等が必ず余るがそれ等を組み合わせることがちゃっかり出来たりする。
ファイン=アセンブレイスは超小型ミサイルランチャーだけで無く残りの弾薬を全て注ぎ込む事で”女王”の加速粒子砲を破壊しようとしているのだ。
「これが正真正銘の切り札でありますよ…。」
やはり”女王”は大したダメージを受けている様子は無かった…外骨格に罅や割れ落ちた場所は有るがどれも致命傷処かかすり傷にも為っていない。
肩は特に丈夫な様で傷一つ付いていない所を見る限り彼女の体組織の内最も堅いのだろう…そしてそれは間違い無く生体調整機能に直結していると彼の勘は注げていた。
勘に頼る何てナンセンスだと思いながらも何処かで信じている自分が可笑しかった。
もう迷っている暇は無いと言う事と失敗すればまず命は無いと言う緊張感を底から崩してくれた事はありがたい事に思えた。
その頃ミズホ=浅葱とフェイ=ル=セイフは先の通信とその後のやり取りで”女王”が先行してきたのを知り彼等の知らない所で下準備をしていた。
「そこをこっちに持ってきてくれ!」「はいは〜い!」破損したパイプや建材の瓦礫をフェイの指示に従い配置、設置していくミズホ。
「急がないと彼共々全滅だ。」彼には考えが有った”女王”と言えども生物である事には違いは無い。
今まで帝国軍に軽くはめられたり意表を突かれたりと借りがある。その借りを返して有り余る貸しに出来るこのチャンスは見逃すことは出来なかった。
ファインには作戦が一つでも算段が狂ったら決行前に開けて置いた出口から逃げろと言われているがまだ出来ることは有る。
逃げるのはそれからでも遅くないと二人は考えていた…。
81 :
新たな力:03/11/27 13:10 ID:???
「どうだ!!?これこそあんたのギガに組み込んだギガスパワーシステムよ!!4つのコアブロックスが
あんたのギガのコアと共振することでコア出力を増幅させる!!それも、燃費はそのままでだ!!
しかし、それだけじゃない!!ゾイドそのものだけではなく、バスターキャノンの威力も高めるし、
ボルドガルドのブレイクスパイクはコアブロックスを保護するだけではなく、追加レーダーとしても
機能するために、レーダー性能も向上するのよ!!!」
ミオがカンウに通信を送った状態でそう叫んだ。
「何かよく分かんないけどとにかくスッゴイシステムって事ね!!ようし・・・これなら・・・。」
マオは再び精神を集中させる。マオの意識がカンウと精神レベルでリンクしていく。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぎゃおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
マオの叫びとカンウの咆哮が重なったその直後、カンウを組みつかんでいた3機のデスザウラーが
まとめて宙を舞った。ギガスパワーシステムによって出力が増幅されたカンウがそのまま組みつかんでいた
デスザウラー3機、合計1200トンをまとめて吹っ飛ばしたのである。
「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?」
その光景に誰もが唖然とした。武装含めて200トン余りしかないカンウが3機のデスザウラー、
合計1200トンを吹っ飛ばすのは冗談以外の何者でもなかった。しかし、そんな冗談のような馬鹿げた
光景は今、実際に起こっていたのだ。
「甘いぞ!!いまさら何をやってももう遅いわ!!」
帝国司令官が叫ぶと同時に、セイスモサウルスの口から一筋の光が放たれた。ゼネバス砲である。
そのゼネバス砲は寸分たがわぬ正確さでカンウの腹部を捉えていた。
「マオ少尉!!」
サリーナのガイガイガーが集光パネルで阻止しようと飛ぶが既に遅い。光速で飛ぶゼネバス砲は
例え対象が数十キロのかなたにいたとしても、一瞬にして命中させる。回避など不可能な代物なのだ。
普通なら・・・。
82 :
新たな力:03/11/27 13:13 ID:???
「甘いのはそっち!!もう駄菓子屋の10円チョコレートより甘いよぉぉぉぉぉ!!」
マオはそう叫ぶと同時に吹っ飛ばしたデスザウラーのうちの一機をカンウが右腕で掴み、そのまま
自身の前方に叩き付けた。
「うわわわわわわわわ!!!」
デスザウラーのパイロットが叫んだ時、ゼネバス砲はそのデスザウラーを貫いていた。
そう、マオはそのデスザウラーを盾にする事でゼネバス砲を防いだのである。
たちまち大爆発が起こる。すざましい爆風と共に巻き起こる大爆煙。さりげなくカンウは後方に
逃げていたので無傷だった。しかし、デスザウラーはまだ2機残っている。そしてその内の1機が
背後からカンウに向けて荷電粒子砲を放とうとしていた。
「少尉危ない!!」
ラインがそう叫ぶと同時にジェネラルの背中に装備された、ライガーゼロフェニックスの最終兵器、
「チャージミサイル」が発射され、そのままデスザウラーの背中の荷電粒子吸入ファンに撃ち込まれた。
たちまち生命力を失ってデスザウラーは倒れこんだ。
一方そのころ、1機のデスザウラーが起こした大爆発による爆煙の中でセイスモサウルスが辺りを
キョロキョロと見回しながらゼネバス砲の発射用意をしていた。
混戦状態にあるこの状況下においてはレーダーは役に立たない。
そして、敵はこのどさくさにまぎれ、爆煙をわって一気に攻撃を仕掛けてくるに違いない。
少なくとも、グリーンデビルはそうするはずだ。帝国司令官はそう内心思っていた。
「それではぁ〜シュミット君?行きましょうか〜?」「了解しました!」侵入開始地点の入り口に、
ロードスキッパーに跨って突入しようとしているルディア=カミルとシュミット=エーアスト。
見た目こそ旧式だが素体はつい最近戦闘用にされた物で出力も機動性も過去の物とは寸分も変わらない。
変わったと言えば作戦行動時間で旧大戦時の3倍〜4倍程に延長され装甲材の強化、頭部に対ゾイド用チェーンガンの追加がされている事。
二人は手にチェーンバードライフルを持ちスイッチを入れる…先端砲身廻りの重金属製の刃が勢い良く周回運動を始める。
「目的はぁ〜先程ぉ〜識別コードが設定された”サード”のぉ”ロイヤルガード”を殲滅する事ですぅ〜。」
「了解しました!行きましょう少佐!」そう言うと勢い良く突入を開始するロードスキッパー。
しかし2体のロードスキッパーには見慣れない物が半分づつ搭載されていた…。
程無くして”ロイヤルガード”と接触する。彼等は溶解性の体液を浴びせ掛けるが装甲部分の超抗耐性樹脂板には全く効果が無い。
遠くの相手を対ゾイド用チェーンガン、近くの相手をチェーンバードライフルで蹴散らす。
接触部分がチェーンソーに為っているチェーンバードライフルは生命体としては略最高位に達する彼等の外骨格を簡単に引き裂き、
ライフルからの徹甲弾は一発で複数の場所、相手にダメージを与える。本来なら”ロイヤルガード”が得意である白兵戦もこれでは冴えもしない。
「そぉ〜れぇ〜!」精一杯の気合いを込めて振り抜かれたルディアの一撃は外す事無く数体の”ロイヤルガード”の首を撥ねる。
「破!」無駄の無い動きの突きでシュミットの攻撃は2体程の胴体を貫く…。
静と動、突きと薙ぎ払い、行動は違えども二人の攻撃は完全に交差せず寸分の無駄無く”ロイヤルガード”の数を減らして行く…。
兵器実験部隊である為彼等もファイン=アセンブレイス同様に白兵戦、狙撃等の技術は非常に高い。
その身自体も高レベルの兵器の如き彼女等と本能のみで群体行動を執る”ロイヤルガード”達とでは単体での戦力の差は如何ともし難く、
地の利を全く活かしていない為その数を少しづつ減らし続ける事しか彼等には出来無かった…。
作業が終了する。
フェイ=ル=セイフの算段はこうなる…今の位置には必ずファイン=アセンブレイスと”女王”が通る。
この天井に大量の廃材等を設置しブロックの区切りに火薬をセットした。その一部の廃材は落下後に突き刺さる角度にも置いて在る。
爆薬のスイッチは今彼がコントロールしている為連絡を取っておけば後は彼が使用するだけだ。
自由落下のエネルギーを利用した”吊られて居ない吊り天井”と言う訳だ。
「ファイン!その先の10ブロックの地点の天井に罠を仕掛けた!スイッチを2ブロック以内で使用すると作動できる!」
「了解であります!急いでその場から離れて下さい!」「頑張って!」そう言うとミズホ=浅葱と共に移動を開始するフェイ。
天井を駆け抜け床に降り立つ…しかしそこには何処から湧いて出たのか”セカンド”が居たのである。
「ここまで来てこれか!」懐から拳銃を出し構えるがミズホに止められる。「ここはあたしの出番ですよ…。」
そう言うが速いか一瞬で甲殻皮膚を纏い”セカンド”の群れに飛び込む。「やっぱりね!」
そう言った瞬間1体が4つに分断される…彼女の言う”やっぱり”とは彼等が物音に反応して距離を測って居る事だった。
目の前に居るフェイには目もくれず自分に反応した。これなら彼等の中心に居る方が彼女にとっては都合が良い。
”セカンド”は完全にミズホを見失う。フェイはこのやり取りの後全く動いて居ない為彼も”セカンド”には発見されなくなっていた。
物音も立てず緩やかに構えを取る…彼女の本業はゲリラ戦しかも一人で数部隊を相手に音もなく相手に忍び寄る身のこなし、
一撃で相手の息の根を止める甲殻皮膚の攻防一体の刃。
既にこの戦闘の結果は決まったも同然だった。
85 :
新たな力:03/11/28 11:13 ID:???
そのとき、煙の向こうからかすかに何かの影が見えた。その影は間違いなく二足歩行肉食恐竜タイプのシルエット。
「そこだ!!グリーンデビル!!」
すぐさまゼネバス砲を発射した。その直後、ゼネバス砲はその影を正確に撃ちぬいた。
「やった!!グリーンデビルを倒したぞ!!」
帝国司令官はそう言って額の汗をぬぐいだ。その直後だった。煙を割って先ほど撃ちぬいた影が飛び出してきたのだ。そしてセイスモの眼前に倒れこむ。
「な!!」
先ほどセイスモが撃ちぬいたのはカンウではなかった。3機のデスザウラーの内の残る最後の1機だったのだ。
「アッハッハッハ!!味方まで殺すなんてアンタ人としてサイテーねー!!せめて自分の仲間くらいには
やさしくしなさいよー!!」
戦場に響き渡ったその声はマオの物だった。しかし、声はすれど、姿はまったく見えない。
「くっそぉぉぉぉぉ!!どうなってるんだぁぁぁぁぁ!!」
仲間を失い、浮き足立つ帝国司令官。その目の前に再び影が現れた。これまた肉食恐竜タイプのシルエット。
「今度こそぉぉぉぉぉぉぉ!!」
帝国司令官がそう叫ぶと同時に再びゼネバス砲を発射した。
その直後だった。ゼネバス砲を発射した方向からオレンジ色の光が発せられてきたのだ。
そして、そのオレンジ色の光はセイスモの方向へと返ってきた。
「なにぃぃぃぃぃぃぃ!!?」
その直後、そのオレンジ色の光をモロに受けたセイスモサウルスの右前足は完全に消失した。
86 :
新たな力:03/11/28 11:15 ID:???
「これぞ集光荷電粒子砲!!どうよ!!自分のゼネバス砲のお味は!!」
セイスモの前方の煙が晴れたとき、そこにいたのはガイガイガーだった。ガイガイガーが集光パネルで
ゼネバス砲を吸収し、集光荷電粒子砲として逆に打ち返したのだ。
「畜生!!ならグリーンデビルはどこにいるんだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
帝国司令官は自機のコックピット内のディスプレーに両手をたたき付けてそう叫んだ。
「まあそう泣きなさんな!!ご希望通り出てきてあげるよ!!お・じ・さ・ま!!」
マオがそう言うと同時に、セイスモの左側の煙を割ってカンウが突っ込んできたのだ。
そして間髪いれずにカンウの右爪が思い切りセイスモの横っ腹に叩き込まれた。とてつもなく速く、
そして重い一撃。セイスモの超重装甲が思い切りひしゃげ、そのままセイスモは横に吹っ飛んだ。
「さぁぁぁぁぁぁて!!とどめいっきまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっす!!」
マオが余裕たっぷりの表情でそう叫ぶと同時にカンウが跳んだ。
「くそ!!こうなったらイチかバチか!!」
帝国司令官は焦り顔であるボタンを押した。その直後だった。セイスモの背中の砲塔の一つから、
グレーネードランチャーの様な物が発射されたのだ。
「そんな物が当たったくらい・・・!!」
マオはお構いなしにそのままカンウを突っ込ませた。その直後の事だった。
カンウの頭部に直撃したグレネードは破裂と同時にとてつもない光を放ったのだ。
確かに普通のグレネードも破裂と同時に光を放つが、この光は通常の光とは明らかに違った。
その光はその周囲数百メートルを包み込んだのだ。
「うわ!!何だこの光は!!」
「ま・・・まぶしい!!」
ラインとサリーナは一斉に目をつぶった。その光はそれだけ強烈な閃光だったのだ。
カンウは膝を地面に付いてその場に止まっていた。
「あんた・・・一体何をした・・・。」
目をつぶった状態でマオはそう言った。
「はっはっは!!これぞスーパースタングレネード!!早い話が目潰し兵器よ!!
貴様の目はもう見えまい!!目の見えない貴様など怖くもなんとも無いわ!!」
一人だけサングラスをかけていた帝国司令官は先ほどとは打って変わって自身ありげに叫んだ。
87 :
新たな力:03/11/29 10:03 ID:???
「な!!ひ・・・卑怯な・・・。」
ラインは叫ぶが目がくらんで目が開かない。それはサリーナも同じだった。着弾点から大分離れた所に
いた二人ですらこうなのだ、ほぼその中心部分にいたマオはどうなっているのか・・・。
マオの目は完全にふさがれていた。それだけでなく、カンウの両目のハイブリットセンサーも同様に
機能を停止し、光を完全に失っていた。
「目の見えない貴様など楽勝よ!!!外観を見ることも出来ずに死んでいくがいい!!」
いったんカンウから距離を取ったセイスモの中で帝国司令官がそう叫ぶと同時にゼネバス砲を再びカンウに向けて発射した。
しかし、そのゼネバス砲はカンウに当たることはなかった。軽く横に体を反らしてかわしたのだ。カンウが。
「何!!?ハハ…単なるまぐれか…。」
帝国司令官は笑ってそう言うと再びゼネバス砲を発射した。しかし、これもかわされた。
「何!!?ならこれならどうだ!!」
セイスモをカンウに突撃させ、今度は尾の加重衝撃テイルを放った。しかし、カンウは全く動じずに
尾のロケットブースター加速式クラッシャーテイルで逆に跳ね飛ばしてしまった。
ギガスパワーシステムによって出力を増幅されたカンウの尾によってセイスモの巨体が宙を舞い、
そのまま地面に叩きつけられた。
「そんな馬鹿な!!スーパースタングレネードで目が見えないはずなのに…!!」
帝国司令官は半泣き状態で叫んだ。その顔には半ば絶望が見えていた。
「ハッハッハ!!あんたバッカねー!!よ〜く考えてごらんなさいよ!!」
笑いながらそう叫んだのはマオだった。
「最初から目の見え無い奴に目潰しなんてナンセンスの極みでしょう?」
「うっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
その場にいたマオを除く全員が思わずそう叫んだ。数百数千という数の人間の声が一斉にハモる。
「確かにこの目は見えずとも、この私には研ぎ澄まされた心の目がある。そんな私に目潰しは無駄無駄!!」
マオがそう言った直後にカンウの右足がセイスモの腹部を思い切り蹴り上げていた。
腹部の荷電粒子吸入ファンごとコアをうち砕かれ、一瞬にしてセイスモは昇天した。
88 :
新たな力:03/11/29 10:30 ID:???
例によって指揮官を失った帝国軍はたちまち総崩れとなり、あっという間に壊滅した。
軍規ガチガチのゼネバス軍はこういう事になると意外に脆いのであった。
そして、他のゾイドと共に、カンウ、ジェネラル、ガイガイガーはゆっくりとその戦場を後にし、
ジャイアントトータスへと帰還するための帰路についていた。
「それにしても少尉の目が見えなかったなんて…。」
「それで普通に見えるのと変わらない程の動きを見せるなんて凄いです!!」
ラインとサリーナは共に感心しながらそう言った。
「ああ…アレは真っ赤なウソよ。」
「ウソだったんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
その場にいたマオを除く全ての人間、共和国パイロットや看護兵や衛生兵、ジャイアントトータス内部の
食堂のコックやトイレ掃除係、果てには独房内の捕虜にいたるまで、全ての人間の声が一斉にハモった。
「でもまあ、一時期目の見えない時期ってのはあったわよ。」
目を閉じた状態でマオはそう言った。マオの目はまだ閉じたままだったが、あの時、距離をおいていた
ラインやサリーナはとっさに目を閉じたいりしており、さらに機体のカメラアイが自動的にカメラ映像の
明暗を調節していたおかげで今では普通に目を開くことが出来るようになっていた。もちろの他に異常は
見られ無い。しかし、マオの方は相当に至近距離であり、さらにキャノピーからなる有視界で直に閃光を
見てしまったために、医者に見せることになった。
「これでおしまい。」ミズホ=浅葱は腕に纏わせていた甲殻皮膚を激しい音を立てながら周囲に展開する。
彼女の廻りに居る”セカンド”はその音に反応して彼女の居た場所に殺到するが既にミズホはその場には居ない。
団子状になってじたばたする”セカンド”達はそれが呼び水に為り更に集結する。
そこに腕から離れ帯状の刃に成った甲殻皮膚が襲来する。
数秒が過ぎた頃には”セカンド”の残骸が床一面に転がっていた…。
「さあ!早く逃げましょ!」「ああ…。」大した手間も無く”セカンド”を片付けたミズホは気にする事無くフェイ=ル=セイフとその場を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーー
ルディア=カミル、シュミット=エーアストの両名はやっとの事で”サード””ロイヤルガード”を排除する。
「時間がぁ〜掛かりましたねぇ〜。」「そうですね…速い事”これ”を中尉に届けないと…。」
二人のロードスキッパーに二つに分けて持たされている物は一組で或る武装になる。
これもファイン=アセンブレイスの自作兵装でフレキシブルウェポンドライバーとは違い彼にしか使用出来無い特別な物だった。
「早くぅ〜しないとぉ〜彼が死体にぃ〜。」「縁起でも無い事を簡単に言わないでください!」
その先を制するが…「確かぁ〜”加速粒子砲”とか言ってましたからぁ〜消滅してるかもしれないですねぇ〜。」
「…」何も言えなくなる。「まあ冗談もこれくらいにしてぇ〜そろそろ行きましょう〜。」
マイペースと言えば聞こえは良いが彼女のそれは完全に相手を翻弄する傍迷惑なものだった…。
”女王”の動きを伺いながら攻撃のチャンスを待つファイン=アセンブレイス。
油断無く廻りを見回りながら”女王”はゆっくりと移動をしている。
こちらに誘き寄せる為に逆に移動をしようとする度にプラズマネットが作動し彼女の行動を痛みと共に制限する。
苛立ちの声を上げながら無造作に腕を振り回しプラズマネットの発生機毎破壊し少しづつ近付いて来る。
「そろそろ頃合いですね…。」スイッチを押す…すると”女王”の四方をプラズマネットが囲い身動きを制限する。
「さあ!ショータイムと行きましょうか!」通路に飛び出し全火器を発射する。それは真っ直ぐ”女王”に向かい直進する。
プラズマネットに阻まれ身動きがとれなく成った”女王”にロケット弾、超小型ミサイルが炸裂する…。
激しい爆発音が施設に木霊する。その後立て続けにショットガン等近接用の火器を残した全ての弾薬を撃ちまくる。
手応えは充分に在る願わくば「加速粒子砲」の発射口である肩にダメージが与えられている事を祈るしかない。
弾切れに成るまで打ち尽くす。ミサイルやロケット弾は連続で単一目標に撃っても余り意味がないので残して有る”保険”と言った所だ。
煙が少しづつ晴れていくがそこに居る女王の姿にファインは戦慄するしかなかった…。
「略全部ダミー…そんな馬鹿な!?」今まで見た”女王”の姿は女性の顔とごく一部を除いて追加装甲の様な物だったのだ。
今そこに立っている”女王”は人間と略変わらないサイズで肩に有った「加速粒子砲」は背中の巨大な塊に繋がって存在している。
しかし「加速粒子砲」の後方に有った部分が丸ごと消滅している為発射出来ても以前の様なゾイドすら吹き飛ばしそうな威力は無いだろう…。
背中の塊からは太く長く丸い尾が存在しその体を後ろに倒れないように支えている。
腕の無い姿に長く太くしなやかな足。背中より触手が多数生えており異質さに拍車を掛けていた。
「ふふふ…どうやら正体を見られてしまった様ね…。」”女王”の口から人の言葉が放たれる。
”女王”に至っては人の知能すら持ち得ている…フェイ=ル=セイフの立てた予想はその限度を超えた位置で証明された事に成る。
「私の名は…そうですねエキドナとでも名乗って置きましょう。」そう言うとエキドナは少しづつファインに向かって歩き始めた…。
「くっ!?と為ると”あれ”は使えなさそうでありますね…。」ショットガンと3連マシンガンを構えた状態で少しづつ後ずさるファイン=アセンブレイス。
「如何したのかしらね?さっきまでの威勢の良さは何処に行ったのかしら?」明るい紫色の外骨格と甲殻皮膚を揺らしながらエキドナはゆっくりと近付いて来る。
見た目以上に敏捷性も有りそうだ…逃げる事は略不可能だろう試しにショットガンを発砲するがそれは本体に着弾する前に多数生えている触手に阻まれる。
「様子見?と言った所かしら?」歩調を変える事無くゆっくりとエキドナはファインに接近し続けている。
「…」ファインは不信に思っていた。ザクサル=ベイナードの様な者も居る為ファインはエキドナも彼同様の存在ではないか?と仮説を立てたのである。
「所で貴方は何でこんな所に居るのでありますか?」かまを掛けるつもりで質問をする。
「答える義理は無いわね。」「まあまあそう言わずに…。」何とかして糸口を掴みたいのだが相手も簡単には答えないだろう。
「…”お医者先生”知恵をお貸し下さいであります!」「お前までそう言うか!」「と、取り敢えずここの関係者の名前でも教えて下さいであります!」
「何を話しているのかしら?」突然の言葉にファインは蒼白になる。この少ないやり取りの間に間合いを詰められてしまったのだ。
「その声は…マリアム=レンバートンか!?」通信機から物凄い音量でフェイの言葉が飛んで来る。
「!」距離を完全に詰め触手でファインの体を完全に絡め執る手前の状態でエキドナの動きが止まる。
「その声は!?フェイ=ル=セイフ!」そう言うと触手で通信機を払ってファインを完全に絡め執る。
「どうやら予想が当たった様でありますね…。」相手が人であるその事は有る意味正体不明の知性生命体と戦闘するよりは遥かに気が楽に成る。
根本的な危機は解決されてはいないが幾分か余裕が出来た。後はこの大量の触手に絡め執られた体を如何するか?
その事だけであった…。
「折角恥ずかしい名前まで名乗ったのに無駄になったわね…。」少し面倒そうな顔をするがエキドナは触手に絡め執ったファイン=アセンブレイスを抱え移動を開始する。
「こんなに軽々と…一体何処に行く心算でありますか?」「衛生管理区画よ。患者も居る事だし。」「患者〜!?」何を言っているのかさっぱり理解出来無い。
そうこう言う内に少しづつ出口周辺の区画から離れ見た事の無い区画へ着いていた。
腰に有る緊急用のビーコンにスイッチを入れていたが作動を確認してい無い為居場所がレーダーに示されているかは解らない。
触手は強靭で全く解けず傷一つ付ける事も出来無い…。
「ここは私の専用のラボ。症状が酷く成らない内に治療しないと…。」「だから!何で治療を受けなければ為らないのでありますか!?」、
拉致されて何も解らないまま”治療”を受ける等正気の沙汰ではない。
「貴方の治療は不完全なのよ!良く聞きなさい?そのままの状態で放って置くと体中から無理矢理押えられた甲殻組織に体中貫かれるわよ!」「ひぃ!?」
「どっ如何言う事でありますか!?不完全って!?」かなりのショッキングな事実だったそれならフェイ=ル=セイフがわざわざ危ない橋を渡る様な無理をする理由にも為る。
「わざわざ危険な真似をしてまであの男が来るわけないでしょ?完全主義者だから次の治療の為に付いて来ていたのよ…。」
そう言うと突然頭を何かで殴られた様な感覚の後ファインは意識を失った…。
「さてと…さっさと終わらせないとね。」「あのう〜家の宿六はぁ〜大丈夫ですかぁ〜?」「大丈夫よ。それよりも随分と速いお出ましね?」
ロードスキッパーに乗って来ただけあってルディア=カミルとシュミット=エーアストは早々とこの衛生管理区画に到着していた。
「すごい格好ですね…。」改めてエキドナの全身を見て驚嘆の声を上げるシュミット。「手が無いから結構不便なのよ…。」
そう言いながら触手を巧みに使い医療用のカプセルにファインを寝かせる。「大体2時間ぐらい掛かるわね…何か要望でも在る?今の内なら治療の際に如何にでもなるけど?」
「それならぁ〜バランスが悪いと言っていたのでぇ〜左右のバランスを平均に取れる様にして下さい〜。」何処で聞いて居たのかあっさりと答える。
疑問が深まるシュミットだった…。
93 :
新たな力:03/11/30 11:27 ID:???
「大丈夫です。ショックによって一時的に見えなくなっているだけで、一時すれば元通り見えるようになりますよ。」
ジャイアントトータス医療室で、軍医長がマオにそう言った。
「じゃあ私はもう行きますね。」
そう言ってマオは立ち上がる。
「ちょっと待ちなさい!!君は目が見えないんだよ!!その状態で歩いては危険だ!!」
慌ててマオを止めようとする軍医長に、対しマオは笑った。
「ハッハッハ!大丈夫大丈夫!この目は見えなくても心の目でしっかりと見えてますから!!」
「心の目?君!!ふざけるのもいい加減にして下さい!!だいたいそんな非理論的な…。」
「それを証拠に…、軍医長さん、貴方のズボンのチャックが開いてますよ…。」
「あぁぁぁぁ!!マジで開いてる!!ってえぇぇぇぇぇ!!!?目が見えないはずなのに…。」
慌ててズボンのチャックを閉じながら叫ぶ軍医長にマオは再び笑った。
「だから言ったでしょ?心の目は見えるって…。」
そう言ってマオはその場から立ち去った。
「………。」
軍医長は唖然とするしかなかった。
マオが医療室を出ると、そこにラインとサリーナが今にも質問したげな顔でマオの方を見つめて立っていた。
「やーやー、どうしたのお二人さん。」
マオはわざとに陽気にそう言う。ちなみに目はまだじっと閉じられたままである。
「さっきの事…聞きたいんですが…。」
ラインは小声でそう言った。
「確かに私は別に最初から目が見え無いってワケじゃあない。元から普通に見えてたよ。
けど、軍に入る前の修業時代…。そう、丁度西方大陸の神聖寺で修行していたとき、ちょっとした事故で
目が見えなくなったのよね。でもね、怪我の功名とはよく言った物でね、そのおかげで心眼。つまり
心の目の開眼に成功したのよ。確かに目が見えなくなったときはどうしようかと思ったけど、
一回心眼をマスターしたら特に不自由は感じなかったわね。何しろ目が見えていた時より見えるんだから…。
どの位見えるかというと…。視界が全方位にまで広がる感じかな…。」
「…………。」
94 :
新たな力:03/11/30 11:28 ID:???
ラインとサリーナは唖然としていた。マオとのつき合いが長い(…と言うと何か怪しまれそうだが…)
ラインですら唖然としているのだ。サリーナの唖然具合は想像を絶する物があろう。
しかし、マオはなおも話を続ける。
「驚くことは無いよ。神聖寺には盲目の人とかもいて、それゆえに心眼を身につけた人とか結構いたからね。けどね、神聖寺の修行を終えた次に立ち寄った東方大陸のカランの塔での修行の時、そのカランの塔の
頂上に済んでいる仙人様が不思議な薬をくれたのよ。その薬を飲んだら元通り目が見えるようになってね、
それで今に至るってワケよ。でもその時は心眼に慣れてたからむしろ目が見えている方が生活しにくかった
な〜…ってアレ!!?二人ともどうしたの!!」
ラインとサリーナは唖然としたまま硬直していた。それを見たマオは何をやっていいのか分からず、
ただただ慌てるだけだった。もちろん目を閉じたまま…。
>新たな力作者氏
前から気になっていたんだけど、一回の書き込みで詰め込む文章の量をもう少し増やせないだろうか。
250レスで終了させざるを得ないスレッドなのにもう100レスに達しようとしている(まだ一ヶ月経ってない)。
で、貴作品の投稿レスは46レスもある。スレを独り占めとは言わないけれど、相当消費しているのは事実。もうちょっと考えて投稿して欲しい。
これでは他の職人も投稿し辛いんじゃないかな?
>>95 すみません。ですが自分としてもそこら辺の調整とか難しいんですよ。
下手に詰め込みすぎても「字数が多すぎます」って出ますしね。
次から気を付けることにします。例えば「」の付く文章が続く場合は
恐怖の亀裂作者さんのやり方を真似てみることにします。
>>95 >これでは他の職人も投稿し辛いんじゃないかな?
いくら何でもこれはどうかと・・・・
投稿し辛いとかそう言う問題じゃなくて、投稿してないだけなんじゃないかな?
だから必然的に書き込む数の多い新たな力作者氏が半ば独擅状態なっているのでは?
>>96 「」の会話文は詰めこまれると逆に読みづらいです。今のままがいいな。
>>97 はい、投降・・・じゃねぇや投稿に持ちこめてないだけです。
投稿しづらいなんてことは全然無い。
いちおう全部書き終えてからこっちに持ってこようと考えてるので。
で、提案なんですが、250レスで終了・・・ではなくて、ここらでそろそろ
スレッドの容量で決めた方がいいのではないかな。
こんなレスがつくこともあるし、最近はスクリプトの砲撃も受けているから。
テンプレにも、感想レス歓迎ですとあることだしね。
とりあえず300KBまで使うとか。
>>98 >「」の会話文は詰めこまれると逆に読みづらいです。今のままがいいな。
ならばいままで通りで行くことにします。
>とりあえず300KBまで使うとか。
初歩的な質問で何か笑われそうなんですが、どこを見ればその容量の数値とかわかりますか?
100 :
98:03/11/30 22:26 ID:???
>>99 あ・・・俺はかちゅーしゃ使ってるからスレッドを読み込むと
自動的に容量が表示されるんだけど、IEだと出ないね。
とりあえずスレを全部ローカルに保存してみると、容量がわかると思う。
あと300KBの件は試しに口に出してみただけだから
他の参加者の意見も聞きたいです。
新たな力の作者さんへ。要領は最後のレスの下
130 KB [ 2ちゃんねるも使っている 完全帯域保証 専用サーバ Big-Server.com ] 30,000円/月
の最初の部分に在ります。因みに只今130KBです。容量を気にするなら数字を半角にしてみたり等幾つか方法が在ると思います。
「」が連続してしまうのは文字数オーバーのエラー表示の後必要の無さそうな所を消しまくっていたらそうなってしまいました…。
これだけ書いている癖にまだまだそこら辺のさじ加減が上手くいかない為に発生する事態です。_| ̄|○
ーーーーーーーーーー
「それからぁ〜子供受けが今一なのでぇ〜ヒーロー性の在る形でお願いしますぅ〜。」ルディア=カミルは続ける。
「しょっ少佐!?一体何を言っているんですか!?」その言葉にシュミット=エーアストは驚愕するがエキドナの助け船が入る。
「見た目が”良い物”は機能美にも優れている事が多いから大丈夫よ。そもそも左右のバランスをとる事が重要だからそう言う形の方が楽ね。」
「い、いえ…少佐が嫌がらせで言っている様にしか聞こえなかったので…。」「そうですよぉ〜。」あっさり容疑を認めるルディア。
「…」「…」「…」なんとも言え無い空気にラボは支配されていた…。
日も暮れ夜も徐々に深まりつつある。1時間半程経過し追加及び成型の終了した甲殻皮膚がカプセル内でゆらゆらしている…。
「こんな感じかしら?」エキドナは仕事が終わったとばかりにラボを後にしようとする。
「何方に行かれるのですかぁ〜?」当然の質問だ。「このままここに居ると”奴”に気付かれるから移動するのよ。」
「まだ何か居るのですか?」これも当然の質問。「私が”サード”を散蒔いて居たのは”奴”の出現を牽制する為よ。」
続けて「でもそこの”患者”さんに増殖機能を奪われてしまったからもう種切れ。まあ結局知能と精神面は受け継いでくれなかったから失敗だったけどね。」
その身を兵器と化してでも止めなければ成らない存在…それに対抗しうる力は今この場所には無い。
それが少しづつ迫って来ている可能性はかなりのものであろう事は確かだった…。
一方その頃、マオ以外のゴジュラスギガパイロットとライン以外のライガーゼロパイロットがミオの元に押し掛けていた。
「俺達にもアイツみたいに何か鳥みたいなの付けて欲しいですよ!!」
ライガーゼロパイロット達は一斉に声をハモらせて叫ぶ。
「俺達にはあのギガなんとかパワーってのを付けて欲しいです!!」
その後に続くようにゴジュラスギガパイロットが声をハモらせて叫んだ。
「大丈夫大丈夫。フェニックスの数はそれなりにそろえてある。それに空軍力の増強としても
考えていたから、全てのゼロにフェニックスを付けてもむしろ相当数のフェニックスが余るから安心しな。」
「いやったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ミオの返事にライガーゼロパイロットはまるで子供のようにはしゃぎながら叫んだ。
「ただし、ゴジュラスギガパイロットの諸君。てめーらはダメだ!!」
「何でですか大佐!!もしかして自分の妹だけひいきしてませんか!!?」
ミオの非情な返事に対し、ゴジュラスギガパイロットからブーイングの嵐が巻き起こった。
「確かにあのギガスパワーシステムを搭載すればお前達のギガも相当に強くなるだろう。しかし、
それをお前達が操ることは出来るかな?言っておくが、アレは高性能化と引き替えに、相当に操縦性が
悪くなるぞ。」
「え?でもマオちゃんは普通に操ってたじゃないですか…。」
ギガパイロットの1人がそう言った。
「妹のギガを修理していた時、奴のギガは関節をはじめ、各部の機構がもはやボロボロになっていた。
それが何を意味するかわかるか?」
「え?単なる戦闘でのダメージとか整備不良とかじゃ無いんですか?」
1人のギガパイロットの返事に対し、ミオは首を横に振った。
「違うね。だからお前達ではダメなんだよ。いいか?奴のギガにあった各部機構のダメージ。それは
奴自身の操縦によるものだ。つまり、奴の操縦がギガのポテンシャルを超えてしまっていたんだ。
それに何かワケのわからんとんでも拳法技とかもよくするし。それに付いて行っていたあのギガは
尊敬に値するよ。とにかく奴の操縦はギガの性能を超えていた。このままにしておけばヤツのギガは
さらに余計な負担がかかってさらにだメージを受けてしまう。その問題を解決するには奴のギガの
性能を上げるしかない。そこで目を付けたのがゾイドコアブロックとの共振でコア出力を増幅させる
フェニックスシステムさ。私はそれをさらにゴジュラスギガ向けに改良し、奴のギガに搭載したのさ。
もちろん奴のギガ自身もその出力アップに耐えられるように機体構造なども強化している。
それとも何か?お前達も妹同様にギガの性能を超えた操縦が出来るってのかい?」
「す…済みませんでした大佐…。」
ギガパイロット達はそう言うと、そのままゆっくりとおじぎをした。
「そう気を落とすな!!ゴジュラスギガは元々強いんだからさー!!それにあんたらもギガの性能を超える
操縦が出来るようになったらギガスパワーをつけたげるよ。」
ミオはそう言って笑っていた。
おわり
とりあえず一連のストーリーはこれにて一旦完結です。
話は変わって、提案したいことがあるのですが、もうこれからは250と言わずに
200くらいで次スレに移行するというのはどうでしょうか?
>新たな力 作者さま
乙。毎回ハチャメチャでオモロイです。
>話は変わって、提案したいことがあるのですが、もうこれからは250と言わずに
>200くらいで次スレに移行するというのはどうでしょうか?
話は変わって、これには反対します。本来なら250制限も早過ぎる位なのに、
それを更に加速して200となると「重複スレ立てすぎ」の感が強いかと思います。
本来なら500KBまでなら書き込めるのに、250レス制限だとせいぜい300KB弱までしか埋まりません。
IEならスレッドの最後に、専用ブラウザならもっと直接スレ容量が確認できますので、
その点を確認し、なるべく容量を無駄なく使う=400レスぐらいまではスレ移行しないようにするべきかと。
106 :
98:03/12/01 12:10 ID:???
>200くらいで次スレ
え・・・!?昨日の話と逆だよね。
なんでそんな提案するのか理由を聞きたい。
個人的には
>>105に賛成なんだけど。
>>105&
>>106 どうもすみません。てっきり今の段階では250行く前に容量をオーバーしてしまうのだと
勘違いしていました。
本当は250でも余りあるくらいなんですね。
どうもすみませんでした。
小官、現在巻き込まれてアク禁中・・・このカキコも友人の助けを借りてだったりする。
容量の話は、最初の方のスレ(1か2くらい・・・)で表示されなかったり遅かったりしたから出来たルールなんだよね
今1と2を見ると、250から70くらいで容量が大きすぎるという話が出ている様子
でも
>>98でも言われているように長文以外のカキコも増えてるから容量で判断しても良いんではないかと自分も思う次第
>>105に全面的に賛成
だって250近くでカキコするのってなんだか気が引けるんですもの(本音
先任伍長さんへ
アク禁…ご愁傷様です当方はヤフーで引っ掛かった事が在るので結構気持ちが解るので叫びたいですよね?
「なめんなやゴルァ!何で他人の尻拭いでこんな目に遭うんじゃボケェ!」とキーボードを床に叩き付けた事も有ったりします。
新たな力の作者さんへ
お疲れさまでした。まさか「あれ」のネタが来るとは…「しかし〇〇テメーは駄目だ!」名台詞ですね。
容量は何時かの変更時にアップしたからだと思います。
250は目安見たいな物なのでそれを過ぎたら容量を気にした方が良いと言う感じで行けば良いと思います。
実は前のスレ250狙ってましたが意外と上手く行かないものですね…。
本文はここから書けそうにないのでまた早々とでっち上げ者達の処理を…。
【人名】
マリアム=レンバートン:当施設衛生管理区画の責任者でライナス=レンバートンの実母、
事件発生後何者かを牽制する為に自身を生物兵器に改造、エキドナを名乗り第一層に陣取る、世代は”セカンド”
【技術】
チェーンバードライフル:チェーンソーとハルバート、ライフルを一つにした武器、
ハルバートの刃の部分がチェーンソーに成っており輪郭が羽を広げた鳥に見える為この名前が付いた、なおライフル部は取り外して別の武器、弾薬を搭載可能
超抗耐性樹脂板:精製の時点での分子構造に手を加え隙間を空気の分子一個分にまで狭めた樹脂装甲板、
これにより気化反応で機能する溶解性物質の殆どを無効化する他耐火性も在るので極一部に再配備された24ゾイドの追加装甲板にされた
【生物兵器】
セカンド:ファーストより現れる第2世代生物兵器、基本的にはファーストの素体を発展させた様な姿をしているが、
その能力は倍以上の者となる、エキドナの”女王”のみは特別でそれ以外の固体はとくに生殖、増殖能力は持っていない
エキドナ:人間から無理矢理セカンド化しその際に多数の生物の情報と機械的な機構を内包した強化生物兵器、
外装に巨大な装甲と生殖機構を纏い加速粒子砲で対象を粉砕、消滅させる他本編では描写がなかったが、格闘能力も非常に高くサイズの分だけ全ての能力を増大させた決戦兵器的な存在、
強力な重火器や戦闘用ゾイド以外では略太刀打ち出来無い存在と化している
110 :
98:03/12/02 23:01 ID:???
>>108 復帰を心待ちにしています。
組織に所属してない主人公の活躍というのは新鮮ですね。
>>109 アク禁は困りますけど暴力はいけないと思います!w
>>98スマソ…因みにキーボードは今も元気に使用中です。
ーーーーーーーーーーーー
「見たところ器用そうな”患者さん”だからここにメモを置いておくからそれを見せてやりなさい。」二人に口を挟ませない様に言葉を続ける。
「後…気を付ける事ね。少なくともまだ貴方達が私の知り合いや夫に遇うかもしれないけどその時は躊躇わずに討ちなさい。放って置くととんでも無い事をしかねないから…。」
そう言い残しエキドナはラボを後にした…。
ーーーーーーーーーーーー
レクス=アームズはやっとの事でスライドフロアを抜け出し大型エレベーターの在るべき場所に到着する。
「おかしいな…?一層で止まったままだと?」そこは穴が開いたように成っておりポッカリと開いた空間を見ていると吸い込まれそうな感覚に陥る。
首を激しく振りそれを排除する…。
彼は昨夜の戦闘で大型エレベーターが破壊された事は当然知らない。エレベーターが作動しない事を知ると直ぐ隣にある緩いスロープを通って4層に移動を開始しようとしていた。
しかしエレベーターホールを何かが登って来る物音を聞きギガを立ち止まらせる。
「何か来る?」鼻っ柱を押えようとジェットアンカーを構える…。
しかしその異常な光景を目にしてトリガーを引くのが遅れてしまったのである。
目の前を通り抜けていった者は帝国兵を乗せ壁を高速で登る小型のゾイド。
そしてその後を触手を振り回して浮游して追いかけるクラゲ型の化け物の群れ。
その在る意味幻想的な光景は彼の行動を送らせるには充分すぎる威力であった。
「…」遅れて発射されたジェットアンカーはクラゲの群れを一蹴する。
しかしその下から親玉?と思われる大型の化け物が出現した…。「またか!?」自ら貧乏籖を引いてしまった事を悔やむレクスだった…。
通り過ぎて行った者に興味はあるが目の前の出来の悪い大クラゲを何とかしなければならない。
面倒とばかりにレクス=アームズは相棒にギガクラッシャーテイルを使用させる…。
ロケットブースターが点火し音速に迫る勢いでギガクラッシャーテイルが唸る。
それは狙いを違わず直撃し大クラゲはバラバラになる。こればかりは格が違いすぎた為今までの戦闘では最速の決着だった…。
「やれやれ…しかしあれは一体?」そう思いながらも追い付く事は最早不可能なのでスロープを移動し始める。
目標は第9層の採掘場の更に奥に居る。面倒な事はさっさと終わらせてここに来ている帝国軍を如何突破するか?
先の先を見越して考えを巡らせているであった…。
ーーーーーーーーー
時間はかなり前になるが謎のコアの前に独り残されたデススティンガーのパイロットは自爆をしてでもコアを破壊しようとしていた。
たまたま残骸と成った愛機の通信システムが生きていたので外に向けて全周波数通信を行ない後は愛機の火器のエネルギーを自爆させるのみと成っていた。
しかし…通信機に突然目標であるコアから通信が届いたのだ。
「何っ!?」全て文章のみの物だったが良く見ればコアは色々な機材を吸収している形跡が在る。もしかしたら有用な情報が得れるかもしれない。
モニターに表示される文面を目を皿の様にして見ると在る位置から爆破をしてくれという内容で目を疑う。
結局先にザクサル=ベイナードが見せた爆破を思い出し藁をも掴む気持ちでその位置から爆破を試みる事にした彼は大幅な狂い無く設置を完了し爆破をした。
爆風と飛び散る周辺の残骸、破片、彼自身もそれ等によって擦傷等を被るがその目はコアに釘付けになっている。
粉塵が晴れたその先には多少の穴が開いたコアとその中から飛び出る4速歩行型のゾイド。
彼はその後半ば強引にそのゾイドに拉致され地上に向かって無理矢理運ばれて行く…。
レクス=アームズはたまたまその場を目撃しただけに過ぎなかったのである。
衰弱が酷い帝国兵を抱え只管地上を目指すゾイド…その目的、何故彼を連れていくのかは勿論誰も知る由は無い。
その足取りは第3層以降第1層衛生管理区画に現れるまでの間在る者以外見かけ無かったのは言うまでも無い事だった。
「テイコクグン、シンガタゾイドノ、カイハツニ、セイコウセリ…。」
帝国軍内部に潜入させていた諜報員から送られてきた情報を見た共和国軍上層部を震撼させた。
ただでさえ現在の共和国軍は不利な状況下なのである。その状況にさらに敵の新型ゾイドが
投入されてしまったらどうなるだろうか。そう思うと共和国軍上層部の将官達は一斉に青ざめた。
「で…結局こうなるのね…。」
2つの月を分厚い雲が隠し、光など殆ど存在しない暗闇を切り裂いて音もなく飛行する
サラマンダー編隊。そしてそのサラマンダー編隊の下に数本の超合金ワイヤーによって危なげに
釣られたゴジュラスギガ「カンウ」の中、外界と同じく真っ暗闇にあるコックピット内部において、
マオ=スタンティレル少尉はため息を付きながら呟いた。
「ゴジュラスギガによる単独強行偵察。」
それが共和国上層部の出した結論だった。
「いかなる犠牲を払ってもこの新型ゾイドのデータを持ち帰らなくてはならない。」
この作戦には共和国の未来が掛かっていた。そして、この作戦の為にゴジュラスギガが選ばれた理由はこうだった。
「現時点において共和国軍最強のパワーと防御力を持ち、なおかつ高い機動力も持ち合わせている。」
敵陣に対しての単独強行偵察という作戦においてギガ以上に合う機体は無かった。
そして、数あるギガパイロットの中からマオが選ばれたのは対セイスモ戦などで数々の功を
あげているからである…と聞けば聞こえは良いが、その実態はただ主人公だからというだけの理由だったりする。
「しっかし最近の私はいいように扱われてるな〜…。」
確かに、最近のマオは懲罰部隊ほどでは無いにしろ、様々な任務にかり出されていた。
確かにゴジュラスギガは汎用性が高く、また、厳しい環境条件下に置いても作戦行動が
とれる機体なのだが、一番の理由はマオが強いからであった。ぶっちゃげた話、軍上層部にとって
軍の何でも屋のような扱いを受けていたのだ。
「そのうちトイレ掃除とかもさせられたりして…。あと一万個の屋外トイレの建設とか…。」
しかし、なんだかんだ言っても、新型ゾイドは帝国軍側としても重要な物である。
それがロールアウトするまで、いかなる犠牲を払っても守らなくてはならない。
そう思っているはずである。当然その新型ゾイドを格納している基地にも護衛の為にデスザウラーや
セイスモサウルスが配備されているのは容易に想像できる物であった。
いかにゴジュラスギガであっても、それらの護衛を突破して新型ゾイドのデータを取って
帰ってくるのは難しい。特にセイスモサウルスがクセ物である。
この任務はゼネバス砲をも回避し、セイスモサウルスをおきなみ撃破しているマオにしか
出来ない任務だった。マオはとカンウのコンビは元々強かった。デスザウラーを何機も撃破した
ゴジュラスギガパイロットのスーパーエースであった。セイスモサウルスと初めて戦った時は相当に
苦戦した物だったが、その戦いの中からセイスモサウルスの特性を理解したマオは、そのセイスモに
とっても意にも介さなくなっていた。ゴジュラスギガを倒すためのゾイドとして開発された
セイスモサウルスが、逆にマオとカンウをより強くすると言う結果になったのであった。
そもそも彼女がなぜ遥か彼方から不意打ちの様に飛んでくるゼネバス砲を回避出来るのかと言うと、
それについて、ある将校が彼女に質問したのだが、「殺気を感じたから。」などという非理論的な解答が帰ってくるだけだった。
早速新作と言う訳ですが、ひとつ謝らせて下さい。
旧バトストを知っている人ならピンと来ると思いますが、
これ、モロに旧のゴジュラス秘密指令のパロディーだったりするのです。
こういうのってダメですかな?
いや、いいんじゃないですか?
前に書くって言ってたアレですよね?
だとしたら「開発中の新型ゾイド」の特性からして良いパロディだと思います。
いつものように勢いで書きまくっちゃってください。
>>115 やられた!同じ事考えてた。
わぁ悔しいw
ゴジュラスギガ秘密指令の作者さんへ
見た瞬間急いでコアボックスを引っ張り出して確認してしまいました。問題のゾイドが”あれ”なのか?
それとも最近話にも登らない”彼”なのか?興味は尽きません。
ーーーーーーーー
「穴?それに帝国兵は…?」口の中を綺麗にし余りの辛さに起こした眩暈の回復後コアの前に戻ってきたザクサル=ベイナードの一言だった。
修復は殆ど終わっているがその後自体は消えはしない。「どうやら面白い事が在ったらしいな…。」
その場面に居合わせる事が出来無かった事を本気で悔やむのだった…。
ーーーーーーーー
エキドナはラボを出て第2層以降に続く人員用エレベーターに向かっていた。
今の体躯では階段は使用出来無い。自身に戦闘能力が全く無かった為一か八かで今の状態になる事に成功した。
こればかりは自分が彼、ライナス=レンバートンの親であった事に感謝するしかない。
あらゆる素体で夫であるグラハム=レンバートンは実験をしていたらしいが成功例は一つも無かった事を自室の端末で確認をしている。
そこで彼女は一つの仮説「血縁者なら知能等の欠如が回避出来る」を立て自らを実験に使用しその仮説を立証した。
「もっと考えて能力を選択しておけば良かったわね…。」正直言って今の状態は欠点の目白押しなのである。
戦闘力の向上と戦術的行動…二つが噛み合ってこそその威力が発揮される。
言うなれば今の状態は「新米パイロットがエース専用のワンオフ機体を使用している」非常に危険な状況だった。
そうこう考え事をしている間に敵の接近を許してしまっていた様だ。
それは2体一組で行動する様に調整されているらしく息のあった足取りで素早く近付いて来る。
「あら?お客さんが居たらしいわね…。」その場に立ち止まり相手の動きを伺う…。
頭部には口以外の物は無くのっぺりとした顔、大きな両腕に更に不釣り合いな指と融合した巨大な鉤爪、
広い胸板には鑢の様な鱗、跳躍力を象徴するかのような足。
「いくらキメラブロックスに敵わないからと言って本物を作る必要なんて無いのに…。」
かなりの毒の入った批判を口にすると触手を展開しエキドナは戦闘体制をとった…。
「見えて来た来た敵キッチン!!」
「キッチンじゃなくて基地でしょう?これから作戦開始と言うのにふざけないで下さいスタンティレル少尉!!」
目的地である帝国軍基地に近づいて来た時に言ったマオの言葉に対し、サラマンダーパイロットの
1人が真面目にそう突っ込んだ。
「基地にもキッチンくらいあるでしょうが…。せっかく殺伐としたムードを和ませようとしたのに…。」
マオはふてくされてそう言った。サラマンダーパイロットは共和国軍本部から派遣されて来た
者達である、その殺伐としたキャラクターは、ギャグもこなせるマオとは合わなかった。
「ったく…噂の「竜王の姫君」がこんな子供だったなんて…。」
などとグチこぼしている者もいる。ちなみに竜王の姫君とはマオの異名である。
ゴジュラスギガのパイロットの中でもとびきりの強さを持ち、なおかつとびきりの美人でもあるから
そう名付けられた。と言っても、マオの活躍を賞賛した周りが勝手に付けた異名であり、
本人は最近まで知らなかったし、そう言われるのもあまり好きではなかった。
しかし、マオ本人の知らぬ異名は帝国軍にも存在する。
そのもう一つの異名は「グリーンデビル」マオの愛機であるゴジュラスギガ「カンウ」は
通常のゴジュラスギガの青い部分がメタリックグリーンのカラーリングになっており、さらに
悪魔のごとき強さを持っているという意味でグリーンデビルと名付けられたのだった。
捕虜にした帝国兵士からその事実を知ったマオはかなり微妙な面もちだった。
その事を知った始めの頃は戦う意味に付いて悩んだ物だが、今では別にどうでもよくなっていた。
深く考える頭が無いワケではない。ただ、早い話が「開き直った。」という事である。
「男が細かいことにこだわるなぁぁぁぁ!!戦士が細かいことをグチグチ気にしてるたら、
この戦いは生き残れないよ!!細かいことを気にして良いのは戦術家や戦闘指揮官とかだけ!!
まあ私は女だけどさ…。」
マオが言ったセリフである。さりげなく名言扱いになっていたりする。
と、マオはそのような事を言ってはいるが、決してバカではない。士官学校の学科の成績はあまり
良い方では無かったが…。とにかく端から見ていると行き当たりばったりに戦っている様に
見えたりするのであるが、実は年密な計算…とまではいかなくともかなり理にかなった戦い方を
しているワケである。
そんなこんなと言っている間に基地のかなり近くまで来ていた。
「とにかく切り離しますよ。御武運を。」
サラマンダー隊の隊長が冷静な口調でマオにそう言うと、機体の高度を丁度下につり下げられている
カンウの高度が100メートル以下くらいになるまで下げた。
「いよいよね…。」
顔を引き締め、操縦桿を握るマオ。そして、サラマンダー隊は一斉にカンウを切り離した。
それと同時に厚い雲に穴が空き、月の光が射し込んできた。月の光を背にしてカンウは地上へと降下していく。
ドザザザザザ!!
そう音を立て、カンウの足が地面に付き、数十メートル滑りながらカンウは地上へと降り立った。
カンウが無事に着地した事を確認すると、サラマンダー隊は直ぐさまに撤退していった。
「ようし…行くよ…。」
マオはカンウの操縦桿を前に倒し、カンウは前に広がる敵基地に向けて走り出した。
「共和国軍の奇襲攻撃だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
カンウが帝国基地の分厚い超合金製の扉を強引にぶち破って進入してきた時、帝国兵士の1人が叫んだ。
そのままカンウは追撃モードに変形して一気に突っ走った。
突然の強襲に慌てていた物の、帝国軍の守備隊がすぐにカンウの迎撃に向かってきた。
しかし、カンウはそんな物を無視して一気に突撃する。まるで捨て身に近いカンウの突撃に守備隊も
思わず避けてしまう。最後まで弾を撃ちまくって迎撃する勇敢な者もいたが、相手は
ゴジュラスギガ。無謀でしかなく、そのままカンウに蹴り飛ばされ、踏みつぶされた。
作戦時間はたったの15分。その限られた時間内に新型機と接触してデータを取り、なおかつ
15分後に再び基地の上空へと戻ってくるサラマンダー隊に拾ってもらわなければ、この作戦は失敗なのだ。
だから何としても15分以内に新型機と接触しなければならない。そう思うとマオは自然とカンウの
速度を上げていた。もう多少のダメージも気にしない。例え壁と接触しても無視。とにかくカンウは一気に突っ走った。
一方帝国軍守備隊はパニック状態であった。無理もない。深夜に堂々とゴジュラスギガが扉を強引に
突き破って現れたのだ。さらに、守備隊の大部分は基地の外に出て防衛線を張ったのである。
いかにゴジュラスギガとて単機で基地に突撃してくるとは思えない。それこそ無謀の極みである。
故に共和国の大部隊が攻めてきたと勘違いしていたのだ。そのため、一時的に基地内は空に
近い状態となった。幸運の女神がマオに微笑んでいたのだ。
追撃モード全開で一気に通路を走るカンウ。基地内の通路は敵に攻められた時の事を考慮してか、
迷路のように複雑に入り組んだ形となっていた。しかし、既にカンウのコンピューターには、
諜報部から送られていた基地の通路の見取り図がインプットされている。さらにその見取り図に
コンピューターが最短距離を計算して表示していた。そのためスイスイとカンウは進んでいく。
その時だ。後少しで目的の場所に到着すると言う所で一機のデスザウラーがカンウの前に立ちふさがったのだ。
「ったく後少しってぇ所で!!」
デスザウラーはカンウに対し、頭部のや腹部のビームガンを連射する。荷電粒子砲を使わないのは
基地が壊れるのを恐れているからである。しかし、そこがマオにとって好都合であった。
とにかくここで時間を無駄に食っているわけにもいかない。そのままマオはカンウをデスザウラーに
突っ込ませた。いかにデスザウラーとて、ゴジュラスギガギガが全速力で突っ込んでくるのは驚異で
しかない。その時、デスザウラーの攻撃が一瞬止まった。
「そこで!!」
マオがそう叫ぶと同時にカンウはデスザウラーと激突するスレスレの所で右に道をそれ、素早く
デスザウラーの後方に回り込むと同時に背中の荷電粒子吸入ファンに尾を思い切り突き刺したのだ。
そのままデスザウラーは生命力を失って倒れ込む。さらに、デスザウラーの体が地面に
叩きつけられるその直前に、カンウが思い切りデスザウラーの背中を左足で蹴り、そのままの
勢いで目的地に向けて一気に跳んだのだ。巨大ゾイドとは思えぬ驚異の跳躍力。
そして、そのままカンウは目的地の場所へとたどり着いた。
固く閉じられ、さらには「関係者以外立入禁止」とわざとらしく書かれた扉を思い切り蹴破った
カンウの中でマオが見た物はさながら工場の様に数々の設備がそろった広い部屋だった。
そして、その直後にマオの目に飛び込んできたのはその部屋の真ん中に立つ一体のゾイドの姿だった。
その2体は足を早めて鉤爪を振り翳して襲い掛かるが壁の中より突然エキドナの触手が飛び出してきたので身を翻して逃げる。
そしてそのまま通路から完全に姿を消す…。「おかしいわね?そこまでの戦略が使える程にまで知能の向上が出来たのかしら?」
誘いで有る可能性も多々有るが進行方向に行ってしまったので伸ばした触手を近くに戻し目の前に展開してT字路まで前進する。
「キシャァァッ!」「キシェェェッ!」両側から1体づつ挟み撃ちの状態で襲われる。
が触手相手に仕掛けてしまった為両者は激突し倒れる。直に起き上がりまた左右に離れるが挟み撃ちが解った以上対処のしようはある。
後ろに下がり腰を落として身構えると壁に向かって触手の一部から加速粒子砲を発射する。
元々複数の種類を用意して居たが見た目は全く同一で見分けは付かない為奇襲用に取って置いたものだ。
右側の通路から気味の悪い悲鳴を上げ1体が倒れる音が聞こえてきた…残り1体。
「キシャァァッ!」左側からの突撃に対応出来ず触手の数本を引き裂かれる。
「くうっ!?」先の戦闘の様に外付けの器官を破壊された訳では無い為体に激痛が走る。
ここで怯んでしまうのも非戦闘員である為で戦闘訓練等を積んだ者であればその場を直ぐ離れ相手を見失わない様にする。
この隙は致命的なものだった…。
その隙に化け物に組み伏せられ身動きが取れ無くなってしまったのである。
「このままでは…。」腕が無くなってしまった事が本当に悔やまれる。体を激しく動かし振り放そうとするがサイズこそ違えど重量は自身に迫る者の様で上手く行かない。
止めとばかりに振り上げた右腕を振り下ろそうとする化け物だったが…。
次の瞬間右腕が肩から吹き飛んでいった。
硝煙の果てに・・・一ヶ月ぶり
何が面白いのか、ライアーの肩に手を置いた男は満面に笑みを浮かべていた。ライアーはその笑みに毒気を抜かれながらも、男の目は笑っていないことを見逃してはいなかった。
「あんたも例の防衛隊に雇われた傭兵かい」
馴れ馴れしく聞いてきた男に、ライアーは困惑して見返した。防衛隊とは何のことなのか。
名前からすると自警団かなにかのようだが、こんな場所に組織だった防衛が必要なほど価値のあるものがあるとは思えなかった。
ライアーが黙ったままでいると、男は怪訝そうな顔になっていった。
「何だ、お前さんは傭兵じゃないのか、声をかけて損したよ」
損をしたという割には、男の顔から笑みが消えることは無かった。ただ単に話相手が欲しかっただけではないのか。そう考えてライアーはたずねた。
「あの集団がその傭兵らしいが・・・防衛隊というのは何のことなのだ」
やはりライアーの見たて通りに、男は得意げに解説を始めた。
「この街の近くに古代文明の遺跡があるのをしっているか」
ライアーは首をかしげた。この辺りの地理には詳しくないが、遺跡が数多いことは予想できた。
あまり知らなさ過ぎるのも怪しまれると思ってライアーは頷いた。
「まぁ、その遺跡自体はどこにでもあるようなちっぽけな遺跡だったんだがな。発掘される品物も壷やら意味のわからん石碑くらいで、二束三文で好事家に売り払ったらおしまいだったんだがな。
実は数ヶ月前に馬鹿な冒険者がドジって遺跡の奥を爆破しちまったんだ。その連中は爆発に巻き込まれて死んじまったんだが、その後で遺跡に行った奴が凄いのを見つけたのさ」
何だと思う。そう聞いて男はライアーの目をのぞきこんできた。年の割には真っ直ぐな男に、ライアーはため息をつくといった。
「俺は冒険者じゃない。遺跡のことなんざ知らん」
男は露骨に肩をすくめるといった。
「あんた、まだ若いのに夢ってもんが無いのかい。男として生まれてきたのなら浪漫の為に生きるべきだぜ」
ライアーは黙って男を睨みつけた。夢だの浪漫だのと何を下らないことを言っているのか。
そんなものは満ち足りたものが、さらに贅沢を求めるだけの言い訳だ。そうとしか考えられなかった。
さすがにライアーの厳しい視線に、男は居心地悪そうになって続けた。
「ああ、どこまで話たかな、そうだった、それで遺跡の中から出てきたものだが、聞いて驚くなよ。
中にはゴジュラスの残骸があったのさ」
怪訝そうな顔でライアーは首をかしげた。古代遺跡の中にあったということは、少なくとも数百年は前の遺跡だ。
なのに、何故70年前にロールアウトしたゴジュラスがあったのか、理解に苦しむ話だった。
「おっと、勘違いするなよ。ゴジュラスとはいっても、今共和国で使われている奴じゃない。ゴジュラスと同じ野生体を使っているというだけだ。
それにとっくに寿命が来ていて、運ともすんともいいはしなかったそうだ。ただ、問題はそのゴジュラスもどきがちゃんと改造されていたということなのさ」
ようやくライアーにも話が見えてきていた。
「つまりは古代文明がつかっていた機体ということなのか・・・それは確かに驚くものだな」
男は自身のことかのように得意げに続けた。
「そうだろう。ま、それなら奪って手に入れようとするものも出てくるというわけだ。何でも話を嗅ぎ付けた盗賊団が狙っているらしい。
それで今実際に発掘している何処かの財閥だかが傭兵を大勢雇っているのさ」
「話はわかったが・・・このあたりの盗賊団に備えるには、いくらなんでも多すぎるんじゃないのか。それだけの発掘を行うような財閥なら自前の軍隊ぐらいありそうだな」
「俺も詳しいわけじゃないんだが、どうやらその盗賊団というのは、どこか国家のカモフラージュ何じゃないかという噂がある。
表向きはこの辺りに部隊を派遣できないからというんだな。使用するゾイドや火器も、共和国、帝國入り混じっているらしい
確か隊長らしいのは白いシールドライガーだと言う話だが・・・」
そこまでいって男は、ふとライアーの様子がおかしいことに気がついた。ライアーは頭に手を当てていたが、急に笑い出した。
周囲を歩く住民たちが、いきなり狂ったように笑い出したライアーを迷惑そうに見ていたが、そんなことは気にならなかった。
ライアーは予想よりずっと早く訪れた邂逅のチャンスに身をよじって、泣きながら笑っていた。
男はその様子をさめた目で見ていた。
一ヶ月ぶりにカキコしたものの、実はこれ前に書いたもの
ROMってた一ヶ月の間に話し忘れちゃった(ぇ
しばらくモラトリアムってるかもしれないです
「あれが…噂の新型ゾイド…?」
そのまま新型ゾイドに向けてゆっくりと歩を進めるカンウ。そしてマオはカンウのコンピューターの
キーボードを叩き、予定された操作をすると、コンピューターが親型ゾイドのコンピューターを
ハッキングし、新型ゾイドのデータを取り始めた。
「それにしてもこの新型ゾイド…タイガータイプ?いや、どちらかというとライガータイプに似てる…。」
マオはその新型ゾイドがライガータイプであると感じた。何か根拠があるわけではない。しかし、
何となくそう思ったのだ。とはいえ、目の前にある新型ゾイドは、ごく一部の例外を除いて
スマートな外見を持つ事が多い従来のライガータイプと違い、無骨な外見をしていた。
頭部には旧大戦時代のゾイド。オルディオスを思わせる一本の鋭い角が装備されており、
さらにボディー側面には巨大な2連砲とガトリング砲が装備され、最後にもっとも目に付くのは
背中の、丁度首の後ろの部分に装備されたまるで巨大なドラム缶のような謎のユニットであった。
そのドラム缶の様な何かからチューブが延びて2連砲やガトリング砲とつながっている所から
何かのエンジンかなにかと思われるのだが…。
「見た感じ、ライオン型と言ってもスピードよりパワーと火力で迫るタイプって感じと見た…。」
マオは腕を組んでそう独り言を言っていた。ハッキリ言ってコンピューターがデータを
取り終わるまでやることがないと言えばそれまでなのだ。敵機の反応も今のところはない。
退屈過ぎて、あくびが出そうになったその時だった。コンピューターのディスプレーからある文字が表示されたのだ。
「ヨソウサイコウソクド…ジソク660キロメートル…。」
「ブッ!!」
マオは思わずツバを吹き出してしまった。
「ちょっと待ってよ!!660キロって…ライガーゼロの倍の速度じゃない!!一体どうなってんのよ!!それともコンピューターの故障か何か!!?」
ツバが付いて汚れたコンピューターのディスプレーをハンカチで拭きながらマオは叫んだ。
その時だった。マオが入ってきた入り口からセイスモサウルスが現れたのだ。
「やば!!もう戻ってきた!!」
「たった一人で乗り込んでくるとはお前も・・・ってグリーンデビルじゃん!!」
マオとセイスモのパイロットは同時にそう叫んだ。
一方、コンピューターの解析はあと少しで終わるところなのだが、ここで撃破されては元も子もない。
という事で、大急ぎでコンピューターの接続を解除した。
接続を解除し、体勢を立て直すマオとカンウ。しかし、セイスモサウルスはゼネバス砲の発射用意に
入っていた。破壊面積の狭いゼネバス砲ならば発射しても被害は少ないと見たのだろう。
さらに、カンウのコンピューターの時計には作戦開始から既に14分が経過していた。
後1分でサラマンダー隊に拾ってもらわなければ、この作戦は失敗だ。
マオの額から一筋の汗が流れた。
「ええい!!南無三!!!!」
マオがそう言って操縦桿の一つのボタンを押した直後、カンウの背中に装備された2門の巨大砲塔
バスターキャノンから高熱の砲弾が発射された。しかし、狙いは目の前のセイスモではない。
狙った場所は自分の真上。つまり天井であった。次の瞬間、カンウの真上で爆発が起き、
天井の一部が崩れ落ちるが、完全に貫いてはいなかった。
「えええい!!」
マオはそう叫ぶと同時にセイスモめがけて走り出した。慌てて発射するセイスモのゼネバス砲を
スレスレでかわし、カンウはセイスモの背中に飛び乗った。と同時にそのまま天井の、先ほど
バスター砲を撃ち込んだ部分に向かってジャンプしたのだ。
「何ぃぃぃぃ!!?俺を踏み台にした!!?」
セイスモのパイロットがそう叫ぶと同時に、天井の、バスター砲の直撃で大きな亀裂が
入っていた部分をカンウがそのまま頭突きでぶち破り、さらにそのまま基地の上、つまり屋上へと跳び上がったのだ。
巨大ゾイドとは思えぬ跳躍力である。それもこれもマオのなせる技か?
その時だった。天井の屋上に跳び乗って安心したマオの前に、同じく屋上部分に立つ黒い巨大な
何かの姿があったのだ。
「デスザウラー?いや、違う…あれは…。」
その形状はデスザウラーに酷似していた。いや、デスザウラーなのだが、所々が違っていた。
デスザウラーの改造タイプであろうか…。
>先任伍長作者様
古代のゴジュラス・・・面白そうですね。
あと、自分の作品に訂正ですが、
天井の屋上に→基地の屋上に
最近から過去スレにさかのぼって見てますが、カンウつええw
セイスモ登場編と先のカンウ修理中編が話(とインフレ)のピークでしたな。
今度の話はどこまではちゃめちゃやってくれるのか。
こうなったら黄金砲仕様ガンブラでデス一掃なんかやってくれるの希望。
最近ゴルヘックスの子ともども影薄いし。<ガンブラの人
自分も書いてみようかな。話はいくつか考えてあるし。
>「キッチンじゃなくて基地でしょう?これから作戦開始と言うのにふざけないで下さいスタンティレル少尉!!」
>「共和国軍の奇襲攻撃だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
なんとなく情緒不安定やな、この世界の軍人ってw
そう思えるのはエクスラメーションマークと「ああああああ」が多いせいか?
>自分も書いてみようかな。話はいくつか考えてあるし。
うぉ、更に執筆者が降臨ですか?楽しみにしててもいい?
最近は賑やかでほんと面白いですよ。
わ〜い!先任伍長さん帰還おめでとうございます!話も突然の展開に流されて行く主人公が新鮮な感じです。
>>131さんの話も楽しみです。
当方は突然思いついて書き始めた物なのですが、
しかし…長くなったなあ…元々30ぐらいで終わるかな?とか思っていたらちょっと描写を増やしてみたら余裕で3倍越えた。_| ̄|○
それに生身がメインっぽくなってる事に気付いてガァァァァン…。
第1層で生身戦闘編は略終わりになる予定?なので落ちを飾る兵器を披露する事にしてみました。
残り物の処分を…。
【人名】
グラハム=レンバートン:ライナス=レンバートンの実父でマリアム=レンバートンの夫でマッドサイエンティスト、
何処かに潜伏し化け物を生産し続けている
【生物兵器】
エキドナ(本体):圧倒的な戦力を誇る「重武装形態」の中身で中枢器官に当たる物、
加速粒子砲の出力は激減しているが複数の特性のある同一形態の触手に含まれている為奇襲等に使用できる、
他の触手はプラズマトーチ、スタンロッド、インパクトニードル、スマッシュロッドの戦闘用の他に一般的な作業用のアシスタンスアームを持つ、
「重武装形態」と違い器用さで戦力を補うスタイルとなる
サード:エキドナから産まれた生物兵器だが本来の目標である「知能、精神、思想の受け継ぎ」に失敗している為本能にそって強力な攻撃を仕掛けてくる、
「ロイヤルガード」は口から溶解性物質を吐き出し対象の動きを止め格闘攻撃で止めを刺す戦法を取る、
エクステンショナー:エキドナが交戦した生物兵器で世代はファーストだがグラハム=レンバートンが調整を徹底的に行なった結果により多少の知能と高い戦闘力を持つ、
他にも種類が居るようだが詳細は不明
その時だった。その改造デスザウラーの目からカンウに向けて黄色い光が発射されたのだ。
至近距離であり、さらに広域に放射されたそれはマオとカンウでもかわせぬ物だった。
「わぁぁぁぁぁぁったったった!!口からビームの次は目からビームですかにょぉぉ!!?」
最後の部分がワケ分からなかったが、そんな事を思わず叫んでしまうマオ。しかし、それだけだった。
ただただ、カンウに向けて黄色い光が放射されただけであり、他に何も起こらなかった。
さらに、その黒い改造デスザウラーはそれ以外何も仕掛けてこなかった。
「一体何だったんだろ…。」
直ぐさま現れたサラマンダー編隊に拾ってもらって帝国軍基地を後にしたカンウの中でマオは
そう呟いた。その間も、改造デスザウラーはただただカンウを見つめるだけで何もしてこなかった。
一体何だったのか…。
「コラァ!!貴様なぜヤツを黙って見逃したんだ!!?新型機のデータを取られたのだぞ!!
なぜ攻撃しない!!しかもアレ!!噂のグリーンデビルだったぞ!!」
カンウとサラマンダー編隊が飛び去った後、先ほどカンウに踏み台にされたセイスモのパイロットが
謎の改造デスザウラーのパイロットに駆け寄ってそう叫んだ。慌て顔で叫ぶセイスモパイロットを
尻目に、改造デスザウラーパイロットは余裕の表情を浮かべていた。
「なーに…そう慌てなさんな。すぐにヤツをぶっ壊して見せますよ。この追撃用に改造された
デスザウラー。「デスシャドー」と我ら「暗黒の狩人隊」から逃げ切れた者はおりません…。
そのグリーンデビルとやらも例外では無いですよ。それを今から証明してご覧に入れましょう。」
デスシャドーと呼ばれる改造デスザウラーパイロットがそう言うと同時に、彼の部下と思しき
謎の3人が彼の背後に現れた。
「では、早速ネズミ狩りに行ってきます。」
暗黒の狩人隊の4人はそう言ってセイスモパイロットに敬礼を送ると、4人ともそれぞれ
デスシャドーに乗り込むと、直ぐさま出撃していった。
デスシャドーはその巨体とはうわはらに、ネコの様に素早く、あっという間に深夜の闇にとけ込んで見えなくなった。
「不気味なヤツらだ…。しかしヤツの言った通り、ヤツラに狙われて助かったヤツは今だ
1人としていない…。流石のグリーンデビルもこれで終わりかも知れんな・・・。」
デスシャドーを見送っていたセイスモパイロットはそう呟いた。
「あぁぁぁぁぁ!!今思えばアレあの時にぶっ壊しとけばよかったんじゃん!!!」
サラマンダー編隊に釣り下げられた状態にあるカンウの中で思い切りマオは叫んだ。
「いいえ。あなたの任務はあくまでデータ収集であって破壊ではないでしょう?それに、
仮にあそこで例の新型機を破壊したとしても、あの機体の設計図そのものは健在なのでしょうから、
すぐに第二の新型機が作られるのは目に見えてますよ。だからこそ上層部はデータ収集を
優先したのでしょう…。それはそうと、ちゃんとデータは取れたのですか?」
「まあ…色々あって完全とは言い難いけどそれなりのデータは取れたつもりだけど…。!!!」
サラマンダー隊隊長の言葉に対し、マオがそう言った、その時だった。
「危ない!!みんな!!右に避け…。」
殺気を感じ、サラマンダー隊に回避するようマオがそう言った時にはすでに遅く、何処からともなく
飛んできた大口径の高出力ビームの横薙ぎ放射よってサラマンダー隊は全機撃ち落とされていた。
「わわわわわわわわわ!!!」
サラマンダーを撃ち落とされた為に、当然そのサラマンダーに釣られていたカンウも必然的に落下する。
「ったく…言わんこっちゃ無い…。」
カンウはマオの操縦とカンウとマオの頑丈さによってどうにか無事に着地、しかし…
サラマンダー隊はそうではなかった。
「………。」
サラマンダー隊はビーム砲によって装甲や各部機構は溶け上がり、さらに落下の衝撃によって、
機体は原型もとどめてはいなかった。
「誰か脱出者は…?」
マオは周りを探すがそれらしい者はいなかった。それも無理はない。高出力ビームの横薙ぎ放射に
よって、脱出する暇すらも無かったのだ。
>>131 どうもありがとうございます・・・
自分はギャグ物として考えて書いているので多少無茶な描写があっても
ギャグとしてとらえてもらえればいいと思っています。
まあ、次の話は「あのゾイド」を本格的に扱った話にする予定なので
本格的に苦戦させようとは思っているのですがね・・・
戦術での苦戦にするか、実力での苦戦にするか・・・
いっそのこと帝国側にも「超人」を出してみようか・・
とかいろいろ考えていたりするわけです。
これは「小さな巨獣」セイスモサウルスが猛威をふるう前の時期の話だ。
俺はとある地域を管轄する砦の電子戦部隊に所属していた。
長い間、軍がガイロス帝国から頂戴したゲーターで生き抜いてきた。
その苦労が実ったのか、大型ゾイドを受領することになった。
ダークスパイナー。ゴルヘックスのせいで影が薄くなったがいまだに重宝されるジャミングウェーブと
量産型ジェノザウラー級の戦闘力を併せ持つゾイド。
共和国兵はキメラ共々姑息だの卑怯だの言うが、こいつはネオゼネバスがただでさえ少ない人員の消耗を
避けるため、必死にアイデアを絞り出した結果だ。上層部の「無駄に兵を失わないように」
という思想をキメラとスパイナー、そしてのちのセイスモで体現しているらしい。
そんなスパイナーの受領から数日後、偵察隊のサイカーチスから、共和国軍の部隊が
砦に迫っているとの知らせが入った。格納庫へ向かう人の流れに乗り、居住区を後にする。
まだ食べかけの保存食(飴)がテーブルの上に残っていたが、そのままにしておいた。
日が暮れるころにはまたこの部屋に帰ってこれると思っていたからだ。
格納庫で戦友たちと会話を交わす。一番の友はキメラ部隊の指揮官としてロードゲイルに乗り込む。
奴は特に個性的なわけではないがいい奴だ。俺より一足先に出世していた。
互いの無事を約束したのち、奴を見送る。電子戦部隊の出撃は主力部隊の後だ。
この地域での最大の拠点であるこの砦には高性能な機体が多く配備されている。
目の前を死竜・デスザウラーとその護衛機が通り過ぎていく。
俺は特にこれといった感慨を持たずに、スパイナーのコックピットで出撃の指令を待っていた。
なんてこった。まさか、こんなにあっさりと・・・!
俺はくず鉄と化した電子戦用ゾイドたちを押しのけ、戦線離脱していた。
名誉のために言っておくと、恐怖のあまり自分一人で逃げたわけじゃない。
俺のほかにも何人かが、散り散りになって戦場を後にしているはずだ。
あの後起きた戦闘で先陣を切ったのはやはりキメラ部隊。数にものを言わせた攻勢は伊達じゃない。
しかしながら、敵もさる者。長きに渡る戦いでキメラ部隊への対処法を編み出していた。
それは・・・単純に指揮官機を墜とすこと。そうすればキメラは沈黙、あるいは暴走する。
次々とロードゲイル、ディアントラーが倒されていく。戦友のゲイルも危ない。
電子戦部隊も後方からできる限りの弾幕を張った。そしてデスザウラー。
ゴジュラスギガはこの戦場にいない。なら怖いものは何もない。圧倒的な強さで自軍に勝利をもたらす。
そう思った矢先だった。敵機を幾らも撃破しない内に、背中の吸入ファンに光の帯が突き刺さった。
数本の光線でコアと中枢を撃ち抜かれた(ように見えた)デスザウラーは爆砕した。
あまりにも理解しがたい光景を目の当たりにし硬直していた俺たちに、ライガーの群れが襲い掛かった。
そこかしこで起きるレーザークローの閃光、火花、そして爆発。
砦の上層部は砦の放棄と撤退を決定した。我先へと逃げ出す帝国兵。
しかし、ただでさえ距離を詰められている。足の遅い機体に乗っている奴はどうしても逃れられない。
俺のスパイナーも逃げきれずにライガーゼロに襲われた。やばい。
そこへ何者かが突進。体当たりで俺をゼロから庇った。
その機体はシェルカーン。戦友のゲイルが助けてくれたのだ。
戦友はキメラ部隊を殿とし、そいつらの指揮にあたった。他のキメラ指揮能力を持った奴はすでにいない。
事実上、一人で共和国の攻撃に耐える形となった。あいつはまだ戦い続けている。
「お痛が過ぎるな、やはり失敗か此奴等は…。」
そう声が聞こえた場所には右腕下腕部異常に盛り上がりエキドナ同様の加速粒子砲の生体構造を持った共和国兵士が居た。
「グラハム教授がお待ちかねですよマリアム博士。」そう言うと無造作に”失敗作”に止めの一撃を放つ。
”失敗作”は上半身を失いゆっくりと消失を免れ残った下半身が倒れる。
「異常ね…どれだけの事をしたらそんな事が出来るのかしら?」「それはお互い様でしょう…さあ早く。」そう言うと2tは有るエキドナを片手で起こす。
「同行しても宜しいでありますか?」更に共和国兵士の後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「何奴!?」共和国兵士は即座に右腕を後ろに構えて加速粒子砲を発射する…。
手応え有りと思い後ろを向くと確かに加速粒子砲の範囲内にその場から動いた後無く人影が立っていた。
「なっ直撃を受けて消滅していないだと?」流石に突然起こった予想外の事実に戸惑いを隠す事が出来無い共和国兵士。
「しょうがないでありますよ…此方は粒子砲対策を元から行っている物を着ているのでありますから。」
人影が近付くに連れてその異常なシルエットが見えてくる。それはかつて24ゾイドが主力の一環を成していた時部隊のパイロットが身に付けていた強化服を改造した物だった。
その他に背の部分は何かを展開した様に見える。「馬鹿な…ロードゲイル型のパワードスーツなのか!?」
たまたまそう見えたのだろう…ファイン=アセンブレイスの趣味のみで作られたシュピーゲルクライトを追加装備した彼自身だった。
「如何でありますか?”禍返鏡”の拡散力は。」その後ろには装甲の流れに沿って拡散した加速粒子砲の着弾跡がまざまざと壁等に刻まれていた。
背には先程までの治療によって甲殻皮膚はそれぞれが首の後ろの少し下にある盾型の甲殻皮膚に神経節で繋がれている6対の翼の様に見える。
脅しを利かせて一歩づつゆっくりと歩み寄る。距離は30m程。
「お早いお目覚めね?何をしに来たの?」軽いパニックを起こしている共和国兵士を無視してエキドナはファインに尋ねた…。
「お礼をしに来たのでありますよ。経緯はどうで有れ命の恩人に成るのでありますから。」そう言ってそのいでたちに全く似合わない笑みとウインクをするファイン=アセンブレイス。
「きっ貴様!俺を無視するとは良い度胸だ…加速粒子砲等無くても…。」そう言うが速いか天井に跳躍し天井を蹴ってクロスレンジの殴り合いの間合いに飛び込む共和国兵士。
しかし其処に待っていたのは正面から腰の辺りに折り畳み収納されたシュピーゲルクライトを軸にした浴びせ蹴りだった…。
「砂糖水の様に甘いと言う事でありますよ…。」真面に後頭部に浴びせ蹴りを貰い偶然床に有った穴に上半身が突き刺さった共和国兵士に言う。
聞こえているかどうかは強化されているとは言え微妙だった…。
「やりすぎたでありましょうか?」体をピクピク震わせている共和国兵士を見て激しい後悔するファイン。
「大丈夫でしょう…そう簡単に倒れる様なら”監視役”になんてしない筈よ。」治癒が始まっているが痛みが残る触手を庇う様にしてエキドナが近付いて来る。
「余り近付かなくても此方から行くであります。」痛みに表情が歪んで居るのが解るので共和国兵士に警戒しながら移動する。
真後ろを通り過ぎた時物音に変化が起こる。
「くそっ…グラハム教授に報告しなければ…。」そう捨て台詞を残しあっと言う間に視界から消え去った共和国兵士。
てっきり奇襲を掛けてくるものと思いソバットの用意をしていたがあっさり空を切る…かなり間抜けな光景だった…。
しかしまだ何かの気配がする。目覚めて以降身体感覚が向上したのであろうか?体が軽く感じるのも何かの異常なのか?と不安になる。
「浮かない顔をして何か異常でもあったの?」エキドナにまた尋ねられると「体の感覚が異常に良くなった様な気がするであります。」と答える。
「ああ…それね。死人兵士化って知ってる?それが起こって居たのよ。珍しい症例ね。」
「はい?それって冗談じゃ…。」「冗談じゃないの。症状が酷いと痛覚の麻痺とか起こって大変な事に成ったりするのよ。」
一連のやり取りで自身の体にとても珍しい事態が連続して起こった為に今の状況になったらしい事がエキドナより聞き出せた。
「まさか…全滅…。」
マオはそう呟いた。その時だった。
「ス…スタン…ティレル…少…尉…。」
サラマンダー隊隊長の声。幻聴ではない。紛れもなく彼の声だった。生存者がいたのだ。
「と…とにかく!!い…今すぐ助けに行きます!!」
マオはそう言ってカンウのキャノピーを開こうとした。しかし…
「自分の…事はほって…おいて…行って下さい…。」
「ええ!!?何冗談を言っているのよ!!貴方はまだ生きているって言うのに…。」
息絶え絶えに言うサラマンダー隊隊長の言葉にマオは半分怒りながらそう叫んだ。
「いいから…行って下さい…。貴女はゴジュ…ラスギガのコン…ピューター…に保存された…
新…型機の…データ…を…持ち帰…らなくて…はならな…いんですよ…。自分の事は…無視して…
速く行くのです…。ここで…自分の死を…仲間の死を…無駄に…する気ですか…?」
「そんな事言わないでよ!!他の人は死んでるけど…貴方はまだ生きてるじゃない!!
だから一緒に帰ろうよ!!」
マオは大粒の涙を流して泣いていた。マオは強いが、それと同時に泣き虫だったりするのである。
「ハ…敵に対しては…悪魔扱いされる…ほどの貴女も…味方には…優しいのですね…。
自分なんかの為に…涙なんかを流して…ですが…行って下さい…。それと…泣くのはやめて下さ…。」
サラマンダー隊隊長はそれ以上喋ることはなかった。
「スタンティレル少尉…了解…。」
事切れたサラマンダー隊隊長の骸を乗せたサラマンダーの残骸に対し、マオは涙を流しながら敬礼を
送り、そしてすぐに涙を拭ってカンウを発進させた。サラマンダーが撃墜された以上、マオは
カンウの足で味方陣地まで新型機のデータを届けなければならない。
マオはカンウを追撃モードへと変形させ、そのまま一気に走り出した。
「さて…狩りのスタートだ…。」
「獲物がちゃんと逃げてくれないと狩りってのはつまらないからな…。」
カンウとサラマンダー隊が落下した地点より数キロ以上の彼方に4つの黒い巨大な陰。
暗黒の狩人隊とデスシャドーの姿があった。サラマンダーを撃ち落とした高出力ビームは紛れもなく
デスシャドーの大口径荷電粒子砲であった。
「よし…行くか…。」
カンウの姿が見えなくなった事を確認すると、そう言って暗黒の狩人隊と彼らの乗るデスシャドーは
余裕を持って発進した。
なぜ彼らがこのような回りくどいことをするのか。それは、自信があるからである。
自信があるからこそそれをゲームとして楽しんでいるのだ。獲物を狩る狩人の様に…。
「もういい加減に帰ってよ!!!」
ディメトロドンのレーダーを思い切り蹴り砕くカンウの中で、マオは思い切りそう叫んだ。
かれこれ、マオは帝国軍の防衛網を10個くらい突破していた。
あくまでマオの任務は新型機のデータを共和国本陣に持ち帰る事。故に、敵部隊と遭遇しても、
無駄な戦闘はひかえ、カンウのパワーとスピードと頑丈さに物を言わせて一気に強行突破という
方法を繰り返していた。
やはり、帝国としても新型機のデータはなんとしても死守しなければならない物なのは当然の事で
あり、追撃部隊の数は半端なものではなく、また、その防衛網も相当な物があった。
それは同時に帝国軍の戦力は無尽蔵という事を誇示しているかに思えた。
追撃モード全開で共和国軍領地に向けてまっすぐに突っ走るカンウ。しかし、その前方からは
次から次へと帝国軍の防衛部隊が立ちはだかるのだった。
どうにか突破できていた物の、マオに安らぐ暇は無かった。
「以前、アロザウラーに乗ってた頃のサリーナちゃんもキメラの大群に追い掛け回されたらしいけど、
今の私と同じ心境だったのだろうか・・・。」
必死に走るカンウの中で、保存食として携帯していたビーフジャーキーに噛り付きながらマオは
内心そう思った。マオの言ったサリーナとは、マオの部下として凱龍輝に乗っている者の事である。
彼女は、マオと部下になる以前。まだアロザウラーに乗っていた時に、キメラの大群に友軍を
全滅させられ、ただ一人と一機で味方陣地まで必死に逃げたという。その時にキメラの大群に相当に
追いまわされたのだという。そして、あと少しという所で、キメラにつかまって袋叩きに
あっていた所をマオとカンウに助けられたのである。そして、それがサリーナがマオの部下になることを志願した理由だった。
>>緑の黄昏作者様
いらっしゃませー。硬派っぽくていいですね。
帝国視点っというのは自分の今後の参考にもなるのではと思ったりしています。
俺も何か書こうかと思っていたが…
皆 さ ん レ べ ル 高 す ぎ!!!
半端じゃねぇ…
「ついでだから教えておくけど右手の甲のレンズ状の物はとても堅いから無闇に右手で殴っちゃ駄目よ。相手が死んじゃうから…。」
とんでも無い事をさらりと言うエキドナに青くなりながらも右手で思いっ切り何かを殴らないで良かったと思うファイン=アセンブレイス。
「しかし嫌がらせにしてはよく出来ているでありますね。背中の物…。全く違和感無しに思いどうりに動きますし。」
「ああ…あれは上官さんがヒーロー性が足りないって言ったからサービスでその形にしたのよ。」「…」ルディア=カミルの笑っている顔が脳裏に浮かぶ。
「あの人はちょっとずれていますから気にしないことであります。」そう言いながら何時ぞやに冗談で口走った事を心底後悔をしていた…。
気配は少しづつここに迫って来ている。少しづつ加速しながら一直線に来ているのだ。
対象は足元か天井から現れるのだろう…気配が大きくなるにつれて建造物を破壊する音が辺りに響き始める。
「上か!?」腰の両側に接続されているフレキシブルウェポンドライバーを使い天井を蜂の巣にする。
しかしそれは全く傷を受けた様子は無く蜂の巣になってボロボロになった天井と共に姿を現す…。
「っ!?どうやら対人兵器の類は全く通用しない様でありますね!」煙に巻かれて辺りの視界が悪い内に1ブロック程後退する。
エキドナは更に2ブロック程後退していた。
姿を現したそれは体中を外骨格で包んだアルマジロと蜥蜴を足して割った様な姿をしている。
背にはあからさまに後付けと思われる武器を内蔵している双胴型のブースター。手足の甲に無数の刺、尾には剣竜の類が持つスパイク構造。
「なんとまあ思い切った姿でありましょうか…。」シュピーゲルクライトを展開装備しながら呟く。
それはよだれを垂らしながら口を開け舌に装備された加速粒子砲から粒子弾を射出する。
シュピーゲルクライトに拡散、純粋な電気エネルギーを吸収され威力を失い辺りに跡を残す。
「危ない危ない…どうやら夫婦そろって加速粒子砲がお気に入りのようでありますね…。」
根本的な打開策はやはり”仕留める”事しかないとファインは半ば投げやりな感覚である物を構えた…。
それから数時間、朝が近いのか、空が明るくなってきた。こうなると闇に隠れるという方法が
取れなくなるが、その反面共和国領地国境も近くなってきている。この距離ならば友軍の救援も
期待できる。マオはそう思って安心したときだった。
「!!!!!」
マオとカンウは突然その場に硬直した。まるで突き刺さるかのような強烈な殺気を感じたのだ。
マオは操縦桿を後ろに倒し、カンウを後方へと跳ばせた。
その直後だった。つい先ほどまでカンウがいた場所の地面を突き破って巨大な剣のような物が
出てきたのだ。マオがカンウを後方に跳ばせていなかったら確実に殺られていただろう。
「ほお・・・中々やるな・・・。」
抑揚の無い冷徹な声と共に、地面を割って現れたのは、基地の屋上で遭遇したデスシャドーだった。
その右腕には腕に固定される形で先ほどの巨大な剣が装備されている。
「今度はあの時と違って逃がしてはくれないのね・・・。」
「当然。」
カンウを後ずさりさせながら言うマオに対し、デスシャドーのパイロットがそう言うと同時に、
その周りからさらに3機のデスシャドーが地面を突き破って現れたのだった。
「あっら〜・・・・・・・って言ってもこれは驚いている事を意味してるのであって、イスラム教の神様の名前じゃないよ・・・。」
「何をワケの分からぬ事を言っている・・・。」
マオはそんな事を言っているが、内心本気で焦っていた。デスシャドーから放たれる殺気は、
マオがかつて体験したことの無い強烈な物だったのだ。
「我々、暗黒の狩人隊に直々に狩られる事を幸運に思うことだな。」
「もうすぐ日も近いってのに暗黒もクソも無いけどね・・・。」
自身たっぷりに言うデスシャドーパイロットにマオがそう突っ込みを入れた。
「まあいい・・・これからお前は死ぬのだから、好きに言わせてやろうじゃないか・・・。あと・・・、
こちらも冥土の土産に一つ教えてやろう。先ほど・・・、基地の屋上で貴様に浴びせた黄色い光線・・・。
あれは一種のマーキングさ・・・。」
「マーキング?」
暗黒の狩人隊隊長の言葉にマオがそう口をもらした。
「そう・・・、このデスシャドーから発せられた黄色い光を浴びた機体からはこのデスシャドーにのみ
判別可能な特殊な電波を発する・・・。故にいかなる者も、このデスシャドーの追撃から逃れることは出来ない。」
次の瞬間、デスシャドーの内の一機が腕に固定された巨大な電磁剣をきらめかせ、切りかかって来た。
巨体からは想像もつかないほどにまで素早い攻撃。機体性能だけではない。パイロットも相当の
実力者である証拠である。しかし、マオとて並みのパイロットではない。カンウを素早く後ろに
跳ばせて電磁剣をかわし、さらにその直後に再びデスシャドーの懐に飛び込んでその胸部装甲に
正拳突きならぬ正爪突きを叩き込んだのだ。とてつもなく速く、そして重い攻撃。デスシャドーの
胸部装甲は豆腐の様につぶれ、大きく怯んだ。さらに間髪入れずにカンウの尾の
ロケットブースターが点火。クラッシャーテイルをデスシャドーの左足を思い切り叩き込んだのだ。
これも同じく速く、重い一撃。デスシャドーの左足はやはり豆腐のようにひしゃげ、潰れ、
デスシャドーの巨体はそのまま地面に倒れこんだ。さらに、倒れこんだデスシャドーを
軽く踏みつけたカンウの中でマオは余裕の表情を見せつけた。
「確かに逃げられないでしょうが、その時はぶっ倒しゃあいいんじゃない。」
マオはそう言った直後に足蹴にしているデスシャドーの胸部装甲をコアごと踏み潰した。
「フン・・・、楽しませてくれるようだな。獲物は強いほうが狩りがいがあるという物・・・。」
暗黒の狩人隊隊長は顔色を全く変えずに抑揚の無い声でそう言った。
>>144 まあそう弱気にならずに、がんばってください。
俺のバトスト、キャラネタばっかでスレ違いになる悪寒。
脳内設定で「実はアーサー・ボーグマンに娘が」とかやってる俺は香(ry
俺的に最強のオリジナルストーリーは「ゴジラVSキングゴジュラス」
なんだけど・・・見たことはありますかね?
>144
禿同……ネタはあるんだけどこうハイレベルなものばっかだと躊躇しちまうよ。
ましてや遅筆な漏れは尚更。
>>150同志よ!
よ漏れも書いてみようと思うんだけど・・・ていうか書いているんだけどなかなか筆が進まない。
このスレが立った時から書いてるのに(遅
次々と作品を投下できる職人方は偉大だ・・・
漏れの書いたバトストなんか3〜4話書く→最初の1話と最後の4話でキャラの性格が変わり、
設定が矛盾&破綻して書き直し・・・の繰り返しで一向に投下できん。
デビューは遠そうだ・・・。
>>151 自分は、無理なく伏線を仕込むってことの難しさにうち震えております。
ネオゼネバス建国あたりの話を書こうと思って随分時間が経ってしまいました。
そうこうしているウチに、『プロイツェンの反逆〕が出て公式戦史と
初期の構想に矛盾が生じる始末…!
>>152 新規設定とかバトスト新作が発表されるとツライよね。
漏れは西方大陸緒戦から(今更かよ)なのであまり新規設定はでないから大丈夫と思うけど。
やっぱりバトスト書く時は初期設定きっちりメモに書くくらい決めてから書いた方がいいのかなぁ。
あんまりカチカチなのは嫌だけど、破綻だらけも話はみっともないしなぁ・・・
まぁお互いいいもの書けるように頑張りましょう。
・・・しかし長いんだよなぁ、漏れの処女作。最後まで破綻せずに書けるかなぁ。
しかも読む人が退屈しないように作らなければいかんしなぁ・・・
人工知能改 ◆ozOtJW9BFA さん気にし無い気にし無い。
そのスレ見てここを見付けたから今書いてます。最近浮上しないけど落ちたのでしょうか?
あまり正規の人を使うと作品柄一発ネタが使えないので今のようになっていますけど…。
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背中と言うより腰後部に尾の様に垂れ下がっている物を掴むと無造作に振り抜く…。
その姿は長大で3mはあろう長さを更にワイヤー状の物で引き伸ばしが出来る物だ。
正確に言えば各部パーツをワイヤーで繋ぎそこに刃を付けた物で巨大アルマジロ型?の化け物に纏わり付く。
「はあっ!」ファイン=アセンブレイスが気合いを込めてそれを引く動作をすると纏わり付いた物が刃を立て勢い良く巻き取り運動を始める。
凄まじい悲鳴で耳が一瞬聞こえなく成るが確かな手応えと表面外骨格に大きな螺旋状の切り傷を残して彼の手元に剣状の姿で戻る。
「これでどうにかなるでありましょうか?」強化服の力を借りて手に握られているスナップブレイカーを構え直す。
「ふむ…中々やるな。しかしネクロドラグーンとて人だ。あのバルツゥースを止める事は出来無い。」
監視カメラからの映像を見ながらグラハム=レンバートンは笑う。
情報は随分前から手に入れていたらしくモルモットが自ら実験に付き合ってくれる事に満足している様だった。
「さあ?どう出るものか?」興味は尽きない。彼にとっては生物兵器も人も同様の物でしかない。
カメラの先で戦闘はゆっくりと行われている…。
背中のバルカン砲でファインを蜂の巣にしようとバルツゥースは身を屈めながらバルカン砲を発射するが微妙な三次元曲面の装甲に受け流される。
「危ないですね…少し捻りが少なければ直撃でありましたね。」何とか直撃を回避するが今まで一方的に押されていて既にエキドナと共に12ブロックは後退している。
スナップブレイカーとシュピーゲルクライトを駆使し何とか致命傷を避けているが何処まで持つかは解らない。
「こっちは加速粒子砲が少しダメージを与えられるだけね。」頼みの綱のエキドナもこの状況では非常に厳しい。
「!」気が付くとそこは”吊られて居ない吊り天井”のブロックの近くに来ていた…。
「ちょっといいでありますか?」「何?」「後3ブロック後ろに罠があるのでそこでたちどまらないで下さい。」
エキドナに”吊られて居ない吊り天井”の事を教えて先に5ブロック後ろに行く様に言う。
「解ったわ。気を付けなさい…まだ何か隠しているかもしれないから。」その注意に左手を振って答えるファイン=アセンブレイス。
その直後にバルツゥースの打ち噛ましを喰らいファインは吹っ飛んでしまう。
「うわぁっ!?」空中を回転して飛んでいる…とんでもない力で跳ね飛ばされて一足早く4ブロック後退する羽目になる。
「くそっ!こうなれば!」背中の甲殻皮膚を最大展開するとその広い幅で縦回転を止めブレーキを掛ける様に減速して何とか着地する。
「ふわぁぁぁ〜目が回ったであります…。」膝から崩れ落ちる様に倒れてしまう。目の前がぐるぐる回っているが軽くヘルメットを殴り意識を正常に戻す。
3〜4回は殴ってようやく視界の修復に成功しフレキシブルウェポンドライバーを構えて立ち上がる。
このフレキシブルウェポンドライバーは1対の試作品で先にまで使用していた出品用とはバージョン違いになっている。
その一つとしてこのサイズではオーバーキルの領域に達するプラズマコートレールガンを実装に成功している。
実際の所強化服とシュピーゲルクライトの両方が無ければ使用は出来無いが、
威力に関しては構造的弱点に直撃すれば大型ゾイドにも大ダメージが期待出来る特殊徹甲弾を使用した物になっている。
「これでどうでありますかっ!」エネルギーがプラズマコートレールガンに注がれ砲弾が射出される。
それは狙い違わずバルツゥースに吸い込まれる…エキドナは直撃を避けるため事前に天井にぶら下がって回避をしていた。
激しい着弾音とプラズマ拡散の閃光に包まれ目の前が真っ白になる。止めに成るか如何かはまだ解らない。
残り4発…実際には2回分で心許ない分油断無く構えるファインだった…。
98の「気付くとそこは」の「そこは」必要なかったですね。また遣ってしまいました。
>>152さんへ
伏線を無理に仕込もうとすると大変な事になる可能性があります。
例として自分の物を揚げると前のスレの時点で適当に書いたネタをやっと97冒頭で処理できてホッとしていたりします。
下手をするとそのまま忘れ去るところでした…_| ̄|○
話にもよりますが「噂」何かが一番伏線にし易いと思われます。
無い知恵を絞って伏線に成りそうな物を無理矢理投下した為に長編になってしまいましたし…。
時間軸は確実に動いていますが終わりに向けて必要ならまだネタ等を蒔かなければならないので、
非常に長く掛かってしまいそうです…。
「狩り・・・って・・・。別に採って食うワケでもないのに・・・。あんた馬鹿じゃないの?」
マオは挑発する意味を込めてそう言った。早い話が、こうやってあえて相手を怒らせて判断力を
鈍らせるという作戦である。
「スキが無いヤツを相手にする時は、スキを探さずに、そのスキを作ってやればいい。」
こう言う言葉が残っている程である。マオは以前、遠距離砲撃ばかりをしてくるうざったらしい敵に
「腰抜け。」だの「臆病。」だのと罵倒の嵐をお見舞いし、怒って接近してきた相手をそのまま
軽―く撃破したこともあった。しかし・・・、
「それで?」
暗黒の狩人隊隊長には通用しなかった。しかも、顔色一つも変えずに・・・。
「出た!!「それで・・・?殺法!!」自分がやる上ではこの上ない戦法だけど、敵がやると何と憎たらしいんだ・・・。」
マオは心の中でそう叫んだ。マオも、敵から逆に挑発を受けた際は「それで?」だの「それがどうしたの?」
だの、あたかも開き直ったかのように見せかけた言葉を連発し、逆に相手を怒らせて、これまた
撃破するという戦法をたまに使ったりしていた。
「言わせておけばこのアマァァァァァァァァ!!!」
突然2機のデスシャドーがカンウに襲い掛かった。隊長には通用しなかった挑発も、部下の皆様
(というか2人だけど・・・1人は倒したし。)には思い切り通用していたようで、怒りを丸出しにして
2機まとめてカンウに飛び掛ってきた。
しかし、冷静さを欠いた2人とデスシャドーはマオの敵ではなかった。
最初に1機がその右腕に装備された電磁剣を大きく振りかぶって横一文字に斬りかかってきた。
目にもとまらぬ速さ。並のパイロットならばここで真っ二つになっているだろう。しかし、
マオには通用しなかった。もの凄い速度で斬りつけて来る電磁剣をかわすだけでなく、
さらに刃の無い平らな部分に左足で乗っかかり、さらに、デスシャドーの丁度、人間で言う喉仏の
ある部分に思い切り右足で蹴り上げたのだ。
デスシャドーの喉と顔面が大きくひしゃげ、400トン以上のデスシャドーの巨体が宙を舞った。
「うお!!」
宙を舞ったデスシャドーはさらに後方にいたもう1機のデスシャドーにモロにぶつかり、そのまま機能を停止した。
「だらしのない部下を持つと苦労するわね…。それはそうと、どうしてみんな女の人に対して
アマとか言うんでしょうね。別に尼さんになってるワケじゃないのに…。まあ、私は一時期お寺で
修行したことがあるから別に問題は…無いのだろうけど…?」
「ふ…、たしかにそうだろうな…。」
機能停止したデスシャドーをまた足蹴にするカンウの中で笑ってそう言うマオに対し、残る1機の
デスシャドーに乗る、暗黒の狩人隊隊長も鉄仮面のようだった顔を軽く微笑ませてそう呟いた。
「だが、こんなバカどもでも私の可愛い部下達だ。その落とし前は付けてもらおうか…。」
そう言ってデスシャドーを一歩前進させた。それに対し、カンウは後退していた。
「コイツ…、やはりさっきの3人とはケタが違う…。」
デスシャドーから発せられる隊長の気迫は他の3人とは全く異質の物だった。マオの額から一筋の
汗が流れた。
そして、その汗が顎に部分にまで流れ、そのまま下に落ちると同時に、デスシャドーは無言のウチに
斬り掛かってきた。横一文字の一撃。カンウはとっさにかわすも、肩の装甲を軽くえぐられた。
「面白い…。」
隊長はこう一言呟いた。カンウもデスシャドーの左肩の装甲を軽くえぐっていたのだ。
「ハハハ…。」
「フフフ…。」
二人とも笑っていた。隊長は本格的に狩りがいのある強い獲物とまみえた事による
喜びによって笑い、マオは半ばハッタリ半分で笑っていた。
人工知能改さん以下の皆様方は書こうと思っているけど進まないと言っていますが、
まあそう堅くならずに気楽にやってはどうでしょうか?
多少の矛盾は無礼講ですよ。
自分なんか後付け設定や矛盾の嵐ですし。まあそれほど気にする必要はありませんよ。
気楽に行きましょう気楽に。
ここは本当に平和ですね・・・(感動)
とりあえず家で全体の話を練って来ます。
閃光の中から粒子弾が飛び出しファイン=アセンブレイスに直撃する。
「!?」シュピーゲルクライトは全くの無傷でエネルギーをチャージしているが右腰のフレキシブルウェポンドライバーの砲身が消失する。
「くそっ!?なら!」残りの左側のフレキシブルウェポンドライバーのプラズマコートレールガンを発射する。
1発打つ毎に反動で左回転し2発とも同様にシルエットが見え始めたバルツゥースに直撃する。
閃光に消える前に仰け反っている姿が見えたが最早油断はできず粒子弾が飛んで来ると断定し防御姿勢をとる。
エキドナはそのやり取りの約1分程の間に3ブロック後退しファインの目の前を通り抜けて更に1ブロック後方に移動する。
「堅いわね…。外骨格に何か別の構造か素材が使われているのかしら?」後に退けない状況に元々成っているエキドナは至って平然と分析をしている。
逆に退けるが退く事に消極的なファインは焦りまくっていた…。「チャージ状況は!?」シュピーゲルクライトのエネルギーチャージの状況を忙しなく確認している。
突然気付いたか腰部のフレキシブルウェポンドライバーを切り離し自走帰還装置をONにして逃がす…。
「そんな物まで搭載してたのね…。」冷静にしていたエキドナだが常識的に考えられ無い今回の御馬鹿な装備には失笑を隠せなかった。
エキドナの脇を通り抜けて外に出ていくフレキシブルウェポンドライバー。
それを見送る事無くバルツゥースの動向を必死に伺うファイン。そろそろ視界もはっきりしてくるだろう。
その状況によっては罠を作動させその間に逃走する事になる。が相手はブースターを装備している。そうでなくても丸まって転がって来そうな気もする。
あのフォルムを見るとどうしてもその事が頭から離れない。そうこうしている内にチャージが終了したとバイザーのサブモニターに報告が入る。
目の前に居るバルツゥースのブースターはまだ健在だった様だがバルカン砲が脱落、破損している事を確認する。
ファインはここでもう一度格闘戦を挑む事にした…。
162 :
150:03/12/12 01:00 ID:???
似たような考えの人も結構いるみたいね。
自分の場合現状ではスルーされてるけどいつ開示されるか不安で一杯のネタ
(ぶっちゃけ凱のバトストでうやむやのうちに処理されてる共和国軍の中央大陸撤退ネタ)
なんで早いとこ書いてしまいたいのだが…
遅筆に加え年末進行と体調不良のトリプルパンチで年内はまず無理ぽ。
俺とスパイナーは、デスザウラーを難無く倒した光線が飛んできた方向に逃げ続けていた。
あのゾイドに特別な感慨は持ってはいない。が、いつか戦場で見た圧倒的な力強さは
今も目に焼きついている。敵味方を問わず、立場も越えて人々を惹きつける「死竜」。
そんなデスを大した奇策を用いずに(ただ隠れて射撃を行なっただけ。それはそれで賞賛モノだと思うが)
倒したゾイドとゾイド乗りを見てみたい。
もっとも、物影に隠れやすいサイズとあの太さのビームを併せ持つゾイドは限られてくるわけだが・・・。
スパイナーの首を後方に向ける。空中で戦い続けている戦友の姿が見えた。
今度はあいつが撃たれかねない。俺一人でも射手を倒す。俺はスパイナーを急がせた。
森の中に入った頃、強力な妨害電波が襲ってきた。スパイナーのお株を奪ったゴルヘックスのものだ。
小サイズながら単機でディメトロドンを上回る電子戦能力を持つ機体。数はおそらく一機のみ。
まあ、単独行動の上にそれなりの対抗装備を施されているスパイナーには効かないわけだが。
大体、近くにいますよと触れ込んでいるようなものだ。奴を叩き、残りはジャミングウェーブで同士討ち。
(わずかな好奇心で一度やりたいと思った)この黄金パターンで勝てる。いや、勝つ。時間が無いんだ。
レーダー索敵を誤認させる特殊な電波を発生させつつ、敵部隊に近づく。一気に仕留めるつもりだ。
発見されるかどうかのギリギリの間合いからの全力疾走。茂みを掻き分け連中の鼻先に踊り出る。
突然の珍客に、さすがに驚きを隠せない共和国部隊。
ガンスナイパーWW一機。
ダブルソーダ一機。
グスタフ一機。
そして・・・予想通りだ。デスを撃ったのはこいつだ。あのときはまさかと思ったが
カノントータス数機。
右手を握り締めると「?」静電気特有のショックが走る。絶縁体で構成されているナックルガード内側ではあり得ない事だ。
「そろそろ見たいね…右手のナックルガードを外して見なさいな。」エキドナに促されファイン=アセンブレイスはナックルガードを外す。
「なんですかこれ!?」右手の甲レンズ状の物の中に何かが激しく反射して飛び回っている。
「それは電気エネルギーよ。まさかそれまで出来るなんて夫が歯ぎしりしている様子が目に浮かぶわ。」一息ついてまた続きを言う。
「思いっ切り右手で殴って見なさい。衝突のショックでレンズの中の電気エネルギーが外に流れ出すわよ。どう言う事かは解るわよね?」
虚構の空間に豆電球が灯った気がするファイン。「これなら!」何を考えたか高圧電線がはみ出ている部分に走り寄りレンズを接触させる…。
予想どうりと言うかお約束と言うかレンズに電気が溜まり青く激しく輝き出す。
「おおっ!?何と生身でそれが出来るとは…これは解らなくなって来たな。結構結構…。」
エキドナの言う通り少し悔しさの余り歯ぎしりをしてからのグラハム=レンバートンの一言だった。
「グラハム教授!大変です!」先の共和国兵士が部屋に飛び込んで来るが「まあまあ…報告の内容は解っている。それよりもメインイベントに間に合って良かった。」
そう言うとカメラからの映像に目を向ける。「そろそろだね。さあ観戦といこうか。」とことんマイペースな男だった…。
俄然やる気が湧いてきたファインは右手をナックルガードの中にしまうとスナップブレイカーを構え走り出す。
バルツゥースもその間にこちらに近付いてきた為2ブロックづつ前進した所でバルツゥースの間合いに入る。
「おっと…」繰り出されたパンチをかわし逆襲に出る。「クライトオープン!」別に掛け声を掛ける必要は無いが気合いを入れる意味は有る。
シュピーゲルクライト各部スリットが解放されプラズママインの射出口が晒される。
「開店記念の大盤振る舞いでありますよ!遠慮なく貰って逝って下さいなっ!」前面の射出口からプラズママインが大量放出される。
クロスレンジ一歩手前で放たれた光の球達は激しくバルツゥースにぶつかり淡い光の煌めきを残して破裂する。
炸裂範囲がかなり狭い為大量に射出できるのが強みの「隠し玉」であった。
「楽しいよ!!君のような強い人に会えたのだから!!」
「ひあ!!」
さっきまで鉄仮面のようにクールな隊長が、思い切り笑って再び斬りつけてきた。今度は縦一文字の
一撃。カンウは横に跳んでどうにかかわすが、デスシャドーの電磁剣はそのまま地面を深くえぐり取っていた。
中のマオの顔に一斉に大量の冷や汗が流れる。それだけ強力な殺気と気迫を放つ一撃だったのだ。
間髪入れずに再び斬りつけてきた。今度は横一文字の一撃。速い。しかし、マオとていつまでも
逃げるワケにはいかなかった。マオはカンウをとっさに追撃モードに変形させ、その身をかがめ、
横一文字の一撃を回避した。しかし、背中に装備していたバスターキャノンの上半分が背中から
切り離された。一瞬の出来事である。斬れたバスターキャノンの断面がキレイに残っている程速い一撃だった。
しかし、それによって同時にスキも出来た。マオはそのまま追撃モードのままカンウを
デスシャドーの懐まで飛び込ませ、スキが出来たデスシャドーの右腕に思い切りカンウの
ギガクラッシャーファングで噛みつかせたのだ。カンウの牙が思い切りデスシャドーの右腕に食い込む。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!ギガスパワー発動!!!」
マオが全身に力を入れ、渾身に叫んだ。それと同時にカンウの目が強い光を放った。
次の瞬間、デスシャドーの右腕はカンウによってやすやすと引きちぎられていた。
「な!!!ヤツのパワーが突然跳ね上がった…何が起こったというのだ…。」
愕然とする隊長を尻目に、カンウは食わえていたデスシャドーの右腕をペっと吐き出した。
鈍い金属音を立てて地面に叩きつけられるデスシャドーの右腕を、カンウは踏みつぶした。
「これで剣での攻撃は出来なくなったわね…。」
マオはニヤリと微笑んだ。
「ギガスパワーシステム」
数あるゴジュラスギガの中でも、カンウにのみ装備されたオーバーブースト装置である。
背中に追加装備した4つのゾイドコアブロックスとカンウのゾイドコアを共振させることで
カンウの出力を飛躍的に高めるのである。パワー、スピード、反応速度の全てが向上し、
400トンを誇るデスザウラーを軽々と投げ飛ばすパワー。最高巡航速度250キロを記録する
スピード。(「戦闘瞬間速度に関して300キロを超えていた…かも…。」という証言もあったりしたが、
それはどちらかというとマオの腕による物ではないかという説が強く、カンウの性能とは思いにくい。
というか流石にそれはないだろうという説が支配的である)
マオの多用する拳法技の切れ味を、機体の回避性能などをさらに高める反応速度。などなど、
全ての点において飛躍的に上昇する。しかも、特筆すべき点はカンウ自信の燃費はそのままで
それだけのパワーアップが出来るという点にある。
しかし、当然リクスという物も存在する。元々から高出力過ぎるゴジュラスギガのコアを
共振させるには当然強力なエネルギーを要し、共振させるコアブロックスの方が長時間の使用に
耐えられないのだ。そのため、ギガスパワーシステムはここぞと言う時にのみの使用に
限定されている。さらに、そのギガスパワーがカンウにのみしか搭載されていないのは、
高性能化と引き替えに、操縦性を悪化させてしまう為である。それ故に、パイロットが
ゴジュラスギガの性能限界を超えてしまい、このままではゴジュラスギガによけいな負担を
掛けてしまうと判断されたカンウにのみ、救済処置としてギガスパワーが搭載されたのである。
もちろん通常時における基本能力に付いてもそこそこの強化などがなされているが…。
ちなみに、これをも普通に操るのはマオの腕とカンウとのリンクによる物である。
マオに「非科学的」だの「非理論的」だのという言葉は通用しない。また整合性を求めるのもナンセンスだと言って良いだろう。
大量のプラズママインを受けてバルツゥースに隙が生じる…。その間にスナップブレイカーの間合いに深めに移動する。
「生体反応が3つ!?」バイザーのサブモニターに警告表示が出るがファイン=アセンブレイスはそのままバルツゥースの首筋に向かって切り付ける。
立ち直ったバルツゥースは寸前の所で右腕を盾にし首を守るが強化服によって振り抜き等の動作が強化されていた為肘の少し上の部分までを縦に切断されてしまう。
既に加速粒子砲の発射準備が済んでいたバルツゥースは粒子弾を発射する。
がたまたま目標を外れ一回転してしまったファインの甲殻皮膚の一つ”布刃”の広幅の部分に顔をはたかれ明後日の方向に飛んでいってしまう。
「!」偶然回転してしまった事が幸いしバルツゥースの首に今は阻まれる物無く刃の届く位置に居る。
「はぁぁぁぁぁ!」気合いと力の篭もった一閃…切断した確かな感触と真後ろに傾いで飛んでいくバルツゥースの頭部。
ゆっくりと振り返り頭部が無い事を確認しファインはバイザー無いの生体反応センサーに再度測定をさせるがその必要は無かった…。
「ぐはっ…。」突然衝撃が体中に走りまたしても打ち噛ましを貰っていたのだ。
今回は床を少し走った後戦闘で起きた床の起伏にぶつかり今度は横回転で元居たブロックに強制送還される。
床に上手く転がった事でダメージはさほど無いが立ち上がって目にした物は一番有ってはならないと思っていた事だった。
「本当に転がっているわね…。」ぼそりとエキドナは言う。最早殆ど機能しないブースターで出来る限りの加速をして体を丸め転がって来ている。
「…嘘ぉ!?」急いでスイッチを探し出しやや早めに押す。今更ながらサブモニターには「生体反応2つ」と表示されている。
上手くとはいかなかったが大質量に押し潰される形でバルツゥースは回転を止めるが反応は消えていない。
シュピーゲルクライトの胸部最前部のパーツを首の両方のアシストコネクターに接続してヘルメットに装着する。
「次で仕留める!」展開部分を腰部後方に別の形で収納して突撃を開始した…。
「ふふふふ…楽しく成ってきたぞおっ!」グラハム=レンバートンは興奮の余り身を乗り出してモニターの一つを掴む。
「強い…良く生きて帰って来れたものだ…。」隣の共和国兵士は装備を合わせて自身との戦力差を噛みしめる。
「しかし教授このままではバルツゥースが…。」「気にし無くても良い!これでめどは付いた。この戦闘が終わったらベイナード君に合流するぞ。」
「了解しました。」しかしグラハムの目はモニターの中で起こっている戦闘に釘付けだった…。
ファイン=アセンブレイスの頭部のヘルメットには胸部から独立した事で真の姿を現した”角”が有る。
「あらぁ〜?熱血特攻神が降臨しましたかぁ〜?」エキドナの後ろに派手な音を立ててルディア=カミルとシュミット=エーアストが到着した。
「ああ…降臨してますね…。」二人の会話にはエキドナの知能を持ってしても理解するのに10秒は要した。
スイッチが入ってしまった事により性格が変貌したと言う事である。
「ブーストッ!」必要の無い掛け声と共に後方のシュピーゲルクライトから大ぶりのプラズマ球が漏れ出す。
それはシュピーゲルクライトに衝突して反発力を生む。そのエネルギーの一部はまた吸収され残りは推進力となってファインを前に押し出す。
元から展開機構を持たない下半身部のシュピーゲルクライトにはビットローラーが装着されていて加速の手伝いをしていた。
少し加速してから彼はジャンプする。上昇にもブーストを使用し天井に到達、
着地地点をバルツゥースの少し手前に定めて天井を蹴るここまでブーストは掛けたままだ。
「ホーンザンバー!!!」ヘルメットのホーンザンバーは高熱を帯び白く輝き出す。
その切っ先はバルツゥースに向けて重力落下とブーストの力をもって振り下ろされようとしていた。
あ…まただ… 102×バイザー無い ○バイザー内でした。
ーーーーーーー
バルツゥースの体は亀裂だらけに成っている。このスピードでホーンザンバーを叩き付ければ外骨格はバラバラに吹き飛び内部に深手を負わせられる筈だ。
ファイン=アセンブレイスはそのままホーンザンバーを振り下ろす。しかし予想と反して深手を負わせるまではいかなかった…。
突然自身の亀裂を突き破り中身が飛び出したのだ。バルツゥースは3つの生体反応を持っていたがその内の1つらしい者が姿を表した。
目標を外して外骨格を叩き割る感触だけが衝撃としてファインに戻ってくる。「外したかっ!?」悔しさを隠さず上を見る。
浮游しているそれは自分の背中にある甲殻皮膚を巨大化させ独立させているかの様な姿をしている。
違うのは複眼が多数ある事と先の方が平たくなっている触手が甲殻皮膚の代わりに有る事。
触手が一斉にファイン目掛けて押し寄せてくるがスナップブレイカーを展開して薙ぎ払うと幾つかの触手は蛍光色の体液を流しながら切断される。
形容し難い悲鳴を上げ触手をバタバタさせながらその場から離れるバルツゥース。
少し離れた場所から今度はレーザーを発射してくる。それは床や壁で乱反射しながら自身とファインに目掛けて降りかかる。
がファインは更に反射、自身は吸収と全く決定打に欠ける物だった。「再吸収!?」余りの無意味な行動に一瞬目を疑う。
しかしバルツゥースの前方から一つに収束されたレーザーが発射された事でそれが予備動作だった事が発覚する。
「ぬあっ!?」シュピーゲルクライトの加速で無理矢理右に避けるファイン。レーザーの照射地点は刺激臭と大きな穴が開いている。
「くそっこうなれば!」素早く前進しスナップブレイカーを巻き付ける。
しかし今回は引く事は出来ず何とバルツゥースにぶら下がった状態で振り回される。
2〜3周振り回された時にブーストを掛け背中に取り付くと巻き付けたスナップブレイカーを思いっ切り引く。
数秒後バルツゥースは生命力を失い床に落下するが生体反応はまだ1つ残っているが何処に居るかは全く解らなかった。
「何処に居る?」必死に気配や物音を気にしながら辺りを注意して見回していたがやはり目標は見付からない。
その時生態センサーに警告が届く。その内容はついさっきまで戦闘して倒した筈の2つの生体反応が復活し反応が3つに戻っていた事だった。
更に4つ目の反応まで現れる…どうやら始めからここに居た者は4つ目の反応の指揮下に置かれている者達だったらしい。
4つ目が本当のバルツゥースだったのだ。ファイン=アセンブレイスは表情を曇らせる。
「また全部ダミーか!」悔しそうに唸る。
3つのそれぞれがそれとしての本体を表す…。背中の大きな外骨格。触手を束ねる集中器官。
3体目は尻尾そのものが擬態を解きずんぐりとした蛇の様な姿を取る。
「尻尾その物だったのか!?」そう言えば尻尾で全然攻撃して来なかった事に今頃気付く。
4つ目が床を突き破って姿を現す…それは機械的なもので見た目は円の1/4を一つの基本として装甲同士を多数の関節で繋がっている。
脚部には鉤爪と足の裏に球体キャスター状の物。1/2を基本にした胴体に3つ接続され背中にカウンターサイズの様な3本の副椀。
頭部に寄生体を守るように円状の装甲が装着されている。
それは3つのパーツを合体させると猛然とファインに向かって突撃してくる。
近付いて来るその間に右手のナックルガードを外しスナップブレイカーを元の位置に戻す。
「こい!」右手にシュトゥルムシュナイダーを装着し構える。その刃にもレンズから漏れ出した電気エネルギーを帯び始めている。
ホーンザンバーが輝き出しシュピーゲルクライトのブーストとビットローラーでファインも突撃する。
お互いが擦れ違う…ファインの強化服の右肩が吹き飛び鉤爪の浅い切り傷から血が流れる。
バルツゥースは頭部装甲をざっくりとホーンザンバーに切断され寄生体から体液が吹き出している。
直にファインは飛び上がりまた天井を蹴る。
「トラストブレイカー!!!」繰り出した蹴り足のビットローラーが電気を帯びて高速回転し爪先と踵の装甲が爪状に真下に向く。
身動きの取れ無いバルツゥースに激突し激しい衝突音と電気の過剰通電の音が響き渡る…。
「フ…フフ…、不利に思わせておいて、まだこれほどの力を隠し持っていたとはな…。」
隊長は額から一筋の汗をたらしながらそう呟いた。
「もう朝が近いし〜、そろそろ終わりにしない?」
マオはそう言ってカンウをデスシャドーに向けて突撃させた。とてつもない速さ。普段のカンウも
速いがこの時のカンウはさらに速かった。最新鋭の高速ゾイドでもそうそう逃げ切れる物で無いほどに…。
「なめるなぁぁ!!」
デスシャドーも残った左腕を掲げて跳んだ。カウンターを狙うつもりである。しかし、そのカンウは
右腕でそのデスシャドーの左腕を払いのけ、左爪をデスシャドーの腹部に叩き込んだのだった。
「な・・・強すぎる・・・。」
デスシャドーはその左手で自らの腹部を抑えながら地面に両膝を付いた。
「もう終わろうよ。今なら別に殺しはしないよ。それに、今助かっておけば後々また狩ができるよ。」
デスシャドーを見下ろしながらマオはそう言った。
「フ・・・フフ・・・グリーンデビルと呼ばれていながら甘い事だな・・・。」
隊長が苦笑いしながらそう言うと同時にデスシャドーの全身の各部から黒い煙が噴出した。
デスシャドーの機能不調ではない。これは煙幕である。
「な!!!」
「どうだ!!これぞスーパーディスチャージャー!!もう何も見えまい!!この暗黒にも似た
空間での戦いこそ暗黒の狩人の真価が発揮されるのだ!!何も見る事もなく狩られるがよい!!」
数百メートルという広範囲にわたって散布された漆黒の煙によって生み出された暗黒の世界に
重金属がぶつかり合う鈍い音が響き渡った。その鈍い音の数は数十にも及んだ。
そして、煙を割って外に叩き出されたのは全身の装甲がベコベコにひしゃげたデスシャドーだった。
「そんな馬鹿な・・・何も見えないはずなのに・・・!!。」
デスシャドーを必死に起き上がらせながら隊長は叫んだ。
「目で見ようとするからそーなる・・・。大切なのは敵の発する殺気や気配。または空気の流れを
読むことで位置を把握する事だよ。まあ私の場合は心の目で見てるんだけどね・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
隊長は愕然とした。しかし、端から聞けばウソとしか思えないマオの説明も、実際にマオの強さを
目の当たりにした隊長にとっては「本当かも・・・。」と思うしかなかったのだった。
しかし、殺気や気配で位置を把握するというのは前例が無い分けではない。今なお高速ゾイド乗りの
間では最高の英雄かつ最強のゾイド乗りと称えられているアーサー=ボーグマンが乗った
初期型ブレードライガーは、レーダーやセンサーでも反応しないほどにまで精巧に隠蔽した敵を
その敵から発せられる殺気や気配と言った物を察知する事で位置を特定したという。
「ちきしょぉぉぉぉぉぉ!!!」
隊長はヤケクソになった。最初のクールさなど既に何処かへ消えていた。デスシャドーは再び
カンウへ突撃した。
「大切な命を無駄にしないほうがいいと思うのだけれども・・・。」
マオがそう言うと同時にカンウの右上段蹴りがデスシャドーの首の喉の部分に叩き込まれた。
「ぐはぁ!!」
デスシャドーは宙を舞い、そのまま背中から地面に叩きつけられる。受身をとる事もできなかった。
「とどめいきまぁす!!」
カンウがデスシャドーの真上に跳び上がった。
「ギガクラッシャァァァァァギロチンドロォォォォォォォップ!!!」
マオの叫び声が響き渡ると同時に、カンウの右足が丁度プロレスのギロチンドロップの様な形で
デスシャドーの首に叩き込まれた。
「奴は本当に悪魔だ・・・。悪魔を狩ることなんて出来る訳無いじゃないか・・・。ハハ・・・。」
デスシャドーとそのパイロットである隊長はともに沈黙した。
「・・・・・・・・・・・・。」
それを確認したマオは無言のうちに立ち去った。空には朝日が昇っていた。
英雄の帰還・序章
「見えない…奴は一体何処にいる!?」帝国の第4強襲小隊は酷い有様だった。
たった一体の敵にじわじわと追い詰められていく。隊長機のジェノザウラーから部下に檄が飛ぶ。
「止まるな!!弾幕を張りつつ勢力圏まで後退するんだ!!」
あと少しで帝国の勢力圏に戻れる…そんな油断があったのかもしれない。
その時、しんがりのブラックライモスが2機同時に吹っ飛んだ。「クソッ!!後ろか!」
敵は光学迷彩を装備している。それだけは確かなことである。しかし、熱源探知に映らないとは一体どういうことなのか?
一機、また一機と味方が破壊されていく。隊長はとうとう我慢の限界に来た。
「撃ち方やめ…お前たち、最高速度で逃げろ。ここは私が何とかする」
「そんな、見えない敵にどうやって立ち向かうって言うんですか!!戻ってください、隊長!!」
ジェノザウラーが遠ざかった時部下達は、見えない敵の殺気も消えたように感じた。
「いいねぇ、あんた…軍人の鑑じゃないの、部下の為に犠牲になるなんてさ。
その闘志に敬意を表して、光学迷彩は使わないでやるよ」
何故敵機の通信が聞こえたのか隊長がいぶかしんでいると、夜闇の中にゆっくりと
見たことの無い虎形(らしき異形の)ゾイドが現れた。
「その声…お主、子供だな?」隊長は憤りを隠せなかった。「共和国の連中め…こんな子供まで戦争に駆り出すとは!!」
また敵からの通信が入った。「その通り…だが、あんたに負けるとは思わないね」
確かに、今までの戦闘でコイツの戦闘力は充分に解っている。だが、隊長は光学迷彩さえ使わせなければ
勝機はあると思っていた。
「行くぞっ!!」ジェノザウラーのパルスレーザーライフルが2度、暗闇を切り裂いた。
ところが、敵もさる者、謎のゾイドの背中の武器でレーザーを相殺したのだ。空中で爆発が起き、
一気に視界が悪くなる。
隊長は荷電粒子砲を使うわけにはいかなかった。敵が虎型ならば高速ゾイドだろう。チャージ中に格闘で殺られる
危険が大きい。
突然、ジェノザウラーが上を向いた。「!?」すぐ後に真上から砲撃が来る。「ぬうぅっ!!」
何とかかわしたが、隊長は冷や汗が止まらなかった。あの一瞬で真上に跳躍しているとは、何という運動性能
なのか。そして、それを可能にするパイロットも只者ではない。
砲撃が直撃した地面を見ると、奇妙な弾痕が残っている。
硝煙の中からあのゾイドが現れた。「驚いたか、隊長さん?コイツの武器はどれも特別でね…
今撃ったのは『サイバーメタルキャノン』っつってな、発射時の熱エネルギーで弾丸の装甲を溶かして
液体金属化するんだ。弾の中には液爆が入ってるから、4000度の液体金属と液爆のダメージを同時に
受ける訳だな。お解り?」
「…何故、そんな事を教える」どうしようもない無力感が隊長を苛む。
「立派な軍人には冥土の土産を、ってことさ。ジェノザウラーの燃料を見てみな」
残量は0に等しく、とても戦闘を継続できる状況ではなかった。
「フフ…ここまでか…」敵機の爪が眼前に迫ってくる。一瞬の衝撃の後、隊長は何も解らなくなった。
しかし、その後共和国のゾイドが次々と現れた。「ったく、今まで何処に隠れてたんだか…まあいい、
捕虜の処分は任せますよ、正規軍の皆さん」隊長は死んではいなかった。
そういった彼こそ、共和国が雇った最年少の傭兵・ロイ=アーベルその人であった。
遺跡から発掘されたディアブロタイガーを黒くペイントし、自ら乗りこなすこの少年は僅か12歳。
その機体色と天才的な操縦から敵味方問わず「漆黒の天使」と呼ばれているが、その操縦技術は
ある人物に鍛えられた物だった。伝説のエースパイロット・アーサー=ボーグマンに…
…とか書いてみましたが、どうでしょうか。
何話かごとにこうやって補足を入れないと解らんようなマニアック話(その割に主人公は子供)
なもんで、ブーイングは覚悟の上ですが…
・帝国軍部隊長のモデルはジニアス=ミスフィード
・12歳でも傭兵になれるのかとかは聞かないで下さい
・共和国ならサイクロプスを使うべきかと思いましたが、主人公は高速ゾイドという固定観念が抜け切れなくて…
・サイバーメタルキャノンの設定は脳内設定です
こんなところですかね
>>176 およそ誰も主人公機に使わないようなセイウ…ゲフ,ゲフフン
トラ型ゾイドの登場にはびっくりしました。
なんだかすげく新鮮ですね。
いまのところはわかりやすいので、補足はなくても充分読めましたが。
「設計ミスだったんだよ本体の構成部分がね。後旋回能力に欠ける。」グラハム=レンバートンは言う。
「見事に弱点を付かれています。決まりましたね。」共和国兵士が言うと彼も頷き認める。
「失敗は付き物だ。さあ行こうか…。」モニターを離し第1層管理区画より出る。
直通のエレベーターは第9層に止まる事無く彼等を運ぶ。その後破壊されたのは言うまでも無い。
斜め30度の角度に調節させた蹴りは足裏部分の装備とシュピーゲルクライトの推進力で4倍程の大きさのバルツゥースを貫通する。
機械的な部分が体の構成上隙間だらけだった事がその事態を引き起こしたと言う事になる。
「あらぁっ!?」勢いが止まらないまま床に近付くファイン=アセンブレイスは焦っていたが足元の機構は自動的に接地の為に下を向いていた爪先と踵が元に戻る。
そのまま着地してビットローラーでバルツゥースの後方に回る。右手を翳しシュトゥルムシュナイダーを握り直す。既に帯電したエネルギーは火花を散らし始めている。
「こいつで終わりだっ!」右手から放電兆しが現れ始める。シュピーゲルクライトのチャージされたエネルギーは残り少なくなっている。
ブーストの連続使用が祟ったのであろう。残量は略次の行動で0になる事だけは確かだった。
ブーストとビットローラーを最大出力で起動させる。バルツゥースは感電とダメージで素早さこそ失っていたがまだ生命活動を停止していない。
カウンターを狙っているのか防御体制を取る。「出来るものならやって見ろ!いくぞっ!閃華電光!エレクトロンバンカァァァァー!!!」
床を引き裂きながら加速し一気にバルツゥースに接近する。バルツゥースは触手のレーザーで迎撃するが床等を破壊しながら突っ込んで来るファインには届かない。
更にこのブロック自体が高温になっており陽炎の発生でそれに導かれ殆どのレーザーは天井に逸れて行く。
格闘戦の構えを取るバルツゥースだが既に彼の間合いにはファインは存在しなかった…。
激しい閃光と爆発音が発生しその少し後何かが落下した音と共に更に大きい爆発音が響く。
遅れて衝撃がその場に居る者に襲い掛かる…。
閃光が消えた後には8ブロック以上先でバラバラに為っているバルツゥース。その3ブロック程手前に尻餅を付いていたファイン=アセンブレイス。
生態センサーから反応が消える。今度こそバルツゥースを排除に成功したのだ。
止めと言う事で最後に到着したシュミット=エーアストが全てのパーツを破壊し終えると一行はやっとの事で外の空気を吸いに出口に向かった…。
やはりエキドナの姿は見る者を圧倒させる。誰もが彼女が元は同じ人間だとは思えない様で危険性が無いと判断すると突然珍しいからか人集りが出来る。
「わぁ〜人気者ですねぇ〜。」ルディア=カミルが何故か嬉しそうに言う。「何か在ったのでありますか?」熱が冷め元の状態に戻ったファインは言う。
「いえいえ〜話し込んでいる内にぃ〜意気投合してしまいましたぁ〜。」と答える。
「そうでありますか…シュミット少尉何か異常とか有りませんでありますか?」「はい。匂いを嗅ぎつけられて中尉の荷物が荒らされた見たいです。」とシュミットは答える。
「…」荷物は散らかされ土産物屋で買ったと言うより狩った食べ物の特産物がごっそり無くなっている。
ついでに例の紅茶も無くなっていた…。「一体誰がやったか全く解りませんでありますね?」右肩の痛みが疲れと共にどっと出た気がするファインだった。
「うまいな…これは。」フェイ=ル=セイフは戦利品を味わっている。
「美味しい〜。」ミズホ=浅葱も同様にくだんの紅茶と土産物を口にしていた。
先にかなり緩い捕虜待遇で彼の荷物の中を全部警戒用のテントの中に持ち込んだ二人はこれまでの間取られていた調書への証言を終え今に至っている。
「そ〜こ〜で〜あ〜り〜ま〜し〜た〜かぁ〜…。」恨みがましい声をたてながらファインがテントに入ってくる。
「っ!?」喉に噛んでいた途中の物を飲み込んでしまい顔が青く成るフェイ。
「何?」対照的に全く同じた様子も無く切り返してくろミズホに「後で言ってくれれば持って来たで有りますのに…。」
その残り一部をこっそり持ってファインはテントに入って来たのである。
英雄の帰還の作者さんへ
書き込みお疲れさまです。
ルールにも有った通り気軽に書いてくださいとの事なので全く問題無いと思います。
それに色々な作品を書く方が増えると使い方が解らなかった表現方法とかも見付かったりする他に御馬鹿辞書に新しい単語を楽に登録できる。
とか見ている人や書いている人にとっても有益になる可能性が有るので、
初期〜中期(今を後期として)のネタ型の書き込みがもっと有っても個人的にはOKだったりします。
設定関連はやっぱりオリジナルが多くなる可能性が有るのでやばいと思う場合は
1,説明文を付ける
2,書く際に越えてはいけない一線を自分なりに引く
3,自分の知識の範囲で説明できる物にする
が有効だと思います。
と言っても技術が確立されていない物も多いのでそこはやっぱりもっともらしい”脳内設定”で切り抜けるしかありませんね…。
それから数時間。丁度正午頃にマオとカンウは共和国基地に到着し、ディスクに保存した新型機の
データを提出した。そして、サラマンダー隊が眠っているだろう敵陣地にの空遠くに向けて敬礼を
送った後、自身の帰る場所である。移動要塞ジャイアントトータスの戻った。
「お疲れ様!」
マオを誰よりも先に出迎えたのはマオの部下であるライン=バイス軍曹(20)だった。
「ただいま・・・。」
敬礼を送るラインに対し、マオも敬礼で返すのだが、やはり流石に疲れたのか力が入っていなかった。
すぐさま自室に戻ったマオはベットの上に寝転がるように倒れこんだ。
「今度の任務もキツかったけど・・・どうにかやりとげた・・・。けど・・・。」
マオは不思議と喜べなかった。どうもふに落ちない点があったからである。新型機のデータを
取った際、ブラックボックス化されており、データを取る事ができなかった部分がいくつか
あったのだ。あのドラムカンの様な何かこそその筆頭とも言えるだろう。
そして、そのデータを取れなかった部分にあの新型機の真の秘密があり、それが今後共和国を
苦しめるのではないか・・・。マオはそう考えると疲れているにもかかわらず、眠れなかった。
マオが、帝国軍の新型ゾイド「エナジーライガー」と戦場で再び遭遇する数週間前の事だった。
終わり
>英雄の帰還作者さんお疲れさま。
って恐怖の亀裂作者さんと似たこと言ってる・・・
それはそうと、貴方は共和国にディアブロタイガーを使うのは・・・と
言っていましたが、傭兵という設定なら問題無いと思います。
あと、自分のストーリーはこれにていったん完結です。
次はVSエナジーライガーを主眼にするつもりですが、同時に色々な要素も
組み入れたいつもりなので、直接書き込むのはかなり後になるかもしれません・・・
>>177、180、182さん有難うございます。話が一段落するまでは正体隠して書きますんで。
特に
>>182さん。毎回楽しみなんで次もガンガってくだつぁい。
彼がアーサー・ボーグマンと出会ったのは9歳の時だった。
ロイは元々共和国勢力圏内の町に住む子供だったが、何しろ戦争中である。ある時帝国軍の奇襲部隊が
町に侵攻してきた。その数およそゾイド45機。共和国の常駐部隊は15機のゾイドを有するのみだったので、瞬く間に
町は破壊されていった。そんな時折も折、任務を終えて基地に帰ろうとしたアーサー・ボーグマンの目に
火の手が上がる町が見えた。味方を見殺しにする訳にはいかない。
アーサーはDCS−Jの機首を町に向けた。
しかしその時、倒れた味方のコマンドウルフが突如動き出した。「何だ…!?」
そのコマンドに背後からセイバータイガーが飛び掛る。「危ないぞ!!」
だが、セイバーは次の瞬間首のケーブルを破壊されてその場に崩れ落ちた。
アーサーがコックピットに通信を入れる。「大丈夫か!?それにしても、コマンドウルフでセイバーを落とすとは
大したもんだな。味方の生き残りは?」
だが、モニターに映ったのは一人の子供とその後ろで血を流している共和国兵だった。
「!!?おい、何だ、君は誰だ!?」アーサーの目がおかしくなければ、この少年がセイバーを瞬殺した事になる。
「母さんも…父さんも…妹も…みんな、みんなあいつらに殺された……!!!」
少年は震えていた。当然だ。自分の住む町にいきなり帝国の連中が攻めてくれば誰だってこうなる(はず)
だが、アーサーが訊きたかったのはそんな事ではない。「君は、何故ゾイドに乗れる?
何故コマンドウルフでこんな動きが出来る?」
自分でもコマンドでセイバーを落とすのは苦労するだろう。年端もゆかぬ少年が自分と同等以上の
操縦を見せている事にアーサーは興味を示していた。
遠くから砲撃音が聞こえる。帝国軍の本隊がやってくるのだ。
「嫌だ!!あいつらを殺して俺も死ぬ!!!」ロイは抑えようの無い怒りに駆られていた。
だが、アーサーがそれを阻む。「大隊には数百機のゾイドが来る!!逃げるんだ!!」
(これ程の才能を有する者を見殺しにしてなるものか…)
「それに君、そのコマンドウルフは共和国の所有物だ。乗っている以上君も一緒に撤退してもらう。」
半ば強制的にアーサーがロイを街の外まで出すと、その後は諦めたのかおとなしくなった。
「まあ…気の毒ではあったがね。そうだ、奴らに復讐したいのなら共和国軍に来ればいい」
「17歳までは兵役に就けない。あんたも知ってるだろう」ロイはふてくされている様にも見える。
「そう。正規軍には入れないが、傭兵なら年齢に制限は無い。なにしろ今共和国は猫の手も借りたい状態だ」
それに、この少年なら…基本の戦闘術を仕込み、軍に馴染めれば多大な戦果を出せるはず。
そして何より、戦争中ならば戦いの場には困らない。戦闘を繰り返す内に復讐を忘れてくれれば…!!
「負の思念は強さと、災いをもたらす。この子にはそんな事をさせたくない…」
その日のうちにアーサーとロイは共和国拠点・ロブ基地に到着した。ロブ基地にはしばしば難民も来るので、
誰もロイのことを聞きとがめたりはしなかった。
「とはいえ、君には少し軍で生きる為の特訓を積んでもらわないとな」
アーサーは笑顔で言った。とても戦争中とは信じられない、明るい笑顔で。
補足
・1&2章は3年前=ZAC2099年の話、序章はZAC2101の話。
・ロイはコンバットシステムがフリーズしたコマンドウルフに乗り込んだ。パイロットは気絶していた。
・コマンドでセイバー倒せんのか、とは訊かないで下さい
・実際は傭兵にも年齢制限ぐらいあると思われ
・アーサーのキャラが変わっちゃってますね…スマソ
一端話から逸れてZAC2101年現在。
ニューへリックシティ・へリック共和国国立工科大学。
大学とあるもののその実態は共和国の最高研究機関であり、生徒数よりも
研究員の方が多いといった物だった。
そして今その地下室には巨大な培養プールがある。多くの研究員はプロジェクトの全容を知らない。
すべてを知るのは最高委員長ランドル・エインズワースとその腹心だけだ。
国家に関わる重要機密であるにもかかわらずルイーズ大統領はこの計画について何も知らされていなかったのだ。
ランドルの孫であり、共和国正規軍最強のパイロットとも目されるライル・エインズワースがラボに
入って来た。「おじいちゃん、計画は進んでいるのかい?」
「ああ。もはやコイツの神経形成も最終段階…あとはコアが覚醒すればな」
ランドルはプールの中の巨大なゾイドに視線を落とした。彼はこの計画の為に
全てを掛けてきた。開戦前からプロジェクトは始まっていたのだ。
「急いでくれよ…これさえ完成すれば帝国軍なんか1週間で灰にしてやるんだからな」
ライルは機体性能に頼りすぎる二流パイロットではない。かといって、自分以下のポテンシャルのゾイドにも
乗らない。「適材適所が一番さ」彼の口癖でもある。
ライル・エインズワースが駆るゾイドは改造ゴジュラス、DFG
(ディープ・フォレスト・ゴジュラス)であり、その火力はMk2Sすらも遥かに凌ぐ。
格闘戦もこなす事ができ、強化装甲を装備した尾・ゴッドテイルの破壊力は絶大だ。
だが何より、パイロットの腕によってこの機体はデスザウラーすら瞬く間に粉砕する事が出来る。
そんな芸当を可能にする唯一のパイロットこそ、ライルなのだ。
「ランドル博士ー、神経形成終わったんでテスト行ってみましょうー」
「むぅ…」ランドルが重々しく手元のレバーを引く。培養液が盛り上がって「中身」がせり上がって来た。
だが、そのまま「それ」は動かない。「まだ生命力が戻っていないようだな…」
「博士、どうします!?」ランドルは迷わなかった。「OSを搭載するぞ。用意しろ」
「そんな、博士!!あの化物にOSなんか搭載したらコントロールできません!!もう少し待てば
コアも生命力を取り戻し…」
「黙れ!!我々に求められているのは早さなんだ!!時間が無いのだよ!!!」
研究員が倉庫からOSのサンプルを持ってきた。「これはまだ出力の調整が済んでいません…もう少し時間を」
「出力が高すぎる、という事か?構わん。今直ぐにぶち込め」
無理矢理ではあるが彼の指示通りにやって失敗した例は無い。研究員は指示に従う事にした……
格納庫を調べたのですが、どうしても見つからないので尋ねます。
西方大陸の国家について、帝国と共和国の間に挟まれた小国の悲劇を
語った小説がこのスレであったのですが…
どなたが書いたか、またどこにあるのか御存知の方はいらっしゃいますか?
帝国でもまた、プロイツェンのあずかり知らぬ所で同様の計画が進んでいた。反プロイツェン派
がうまく指揮を取っていた為彼が気付く事は無かったが。
もちろん反プロイツェン派の筆頭であるカール・リヒテン・シュバルツ中佐も計画は知っていたが、
彼自身は反対していた。「みんなこいつの話を聞いたことが無いのか!?戦争どころの騒ぎじゃ
済まないに違いない…我々は平和の為に戦っているんであって、共和国を…惑星Ziを
滅ぼす為に戦うのではない!!」
だが研究の責任者イオ・マクスフェルは頑として彼の意見を聞かなかった。
「案ずるな。如何なるゾイドも操縦可能になるシステム『Vessels(ベッセルズ)』が
既に完成している。戦争さえ終わればコア保存でお蔵入りだ。」
シュバルツは不安を拭い切れなかった。だが、Vesselsの効果はテストで証明済みだ。
あのジェノブレイカーがどこにでもいる一兵卒に操縦できたのだから。
Vesselsはゾイドの意思を奪うことでパイロットの操縦通りに動く様にするコンバットシステムだ。
これを使ったゾイドは操縦と戦闘本能のみで戦う。ただの戦闘マシーンとして…
だが、そうでもしなければ「それ」は動かせない。計画の続行を貫き通すイオ自身が
計画の恐ろしさを最も知っていた。
それでもなお止めない理由―それはイオの過去にある。
彼は旧大戦時に、息子トラン・マクスフェルを失った。その事で誰よりも戦争を憎むようになったイオ
の目の前でまた戦争が起きている。イオはただ戦いを終わらせたいだけだったのだろう。
もっとも、その方法は間違っていたかもしれない。いや、間違っていた。
暗黒大陸テュルクに一体だけ残っていたある素体。それと旧大戦時のデータを元に
製造が進む一体のゾイド。関係者全ての予想を超えた危機が、形を取りつつあった。
「そろそろいいだろう。ここからがこの『アーマゲドン・プロジェクト』の真髄だ」
イオがロックを解除し、ボタンを押す。プールの中で巨大なゾイドが低い唸り声を上げた…
「まあまあ…焦らずに行きましょう。見付かると全部隊を指揮している人から文句が来ますよ。」
突然シュミット=エーアストの声が足元から聞こえたので目を丸くして地面を見ると…明らかな穴が有りそれを板で塞いでいただけだった。
「何時からそんな気の利いた事をシュミット少尉は出来る様になったのでありますか?」ファイン=アセンブレイスは聞く。
「そいつは俺の入れ知恵だよ。」ファインは余り聞きたく無い者の声を聞く。
「よくあそこまで機体を壊したもんだ。全く特攻馬鹿様々と言った所か?ええっ?」整備班の指揮者で事実上彼の部隊指揮官のアービン=クラフト大佐である。
「そっそれは…。」必死に弁解しようとするが言葉をアービンに遮られる。
「言い訳など聞きたくは無い!その上シュピーゲルクライトと専用フレキシブルウェポンドライバーまで壊すだと?何とやりあった?」
「ランク上の生物兵器であります!」「ふん…無茶ばかりしおってからに。やはり直接指揮しないと駄目だな…。」
周りはその穴より出て来たルディア=カミル他少数とフェイ=ル=セイフ、ミズホ=浅葱で飲み食いをしていた。
ファインとアービンは戦況報告をしていたので最終的にお情けで残された物を後でこそこそと物陰で食べる羽目に為ったのである。
今回の夜間警戒は森林迷彩されたライトニングサイクスとディアントラー、ダークスパイナーの管理の元レーザーストーム、グランチャーと豪華な面々で行われた。
しかし施設入り口周辺は攻めるには不利な地形であり、地下からの部隊は大型エレベーターの機動不能から襲っては来れない様で襲撃は無かった。
少なくとも少数で陣取り今まで警戒していた彼等には丁度良い休息になっていた。
明日からの作戦行動は少しは楽になるだろうと彼等は思っていた…。
だが運命の輪は彼等の現実感を揺るがし打ち砕く準備を終えている。後は彼等がその領域に踏み込むだけと為っていた。
それから半年もの間アーサーは、前線での仕事をこなしつつロイの訓練に尽力した。
やはり彼には素質があった。見る間に成長し、高度な戦術を身に付けていく。
「もう練習用のコマンドウルフじゃお前には役不足だな…」アーサーとロイはある時ゾイド探しに出かけた。
傭兵とはいえこの少年の才能を生かすにはそれなりのゾイドが必要だと思ったのだ。
「この遺跡なら手頃な野良ゾイドとかが居そうだな。」ミューズ森林地帯の北西にある遺跡で
丁度いいゾイドを探す事にした。
「…何か奇妙な反応がある…中型ゾイドなんだが、出力が1255万。ゴジュラスを上回っている…?」
その反応を目指して遺跡の最深部へと踏み込んだアーサーとロイが見たのは一体の黒いゾイドだった。
そのゾイドがアーサーのDCS-Jに襲い掛かってきた。だが、整備不良のせいか勝手に機能停止
してしまった。「とりあえず、コイツを基地で調べてみるか…見たことないタイプだし」
その機体を持ち帰り、ロブ基地に居る研究員に頼んで極秘でこの機体を調べてもらった。
スペックを見てアーサーは驚いた。装甲は未確認の金属でできている。(分子配列から研究員は『サイバーメタル』と名づけた)
武装も素体も、ほとんど正体不明のゾイドだった。ただ一つ解る事は、
非常に強力なゾイドであるという事だけだった。
アーサーが試しに乗ってみたが、DCS-J以上に扱いにくい。しかしロイは乗りこなした。
アーサーはこの時少年の能力の正体を知った。ゾイドと精神リンクできるパイロットは少なくないが、
ロイはゾイドとのシンクロ率が桁違いに高いのだと。
遂に、傭兵採用試験の日が来た。「よし、がんばれよ!」アーサーは「傭兵の視察」という形でロイの応援に来たのだ。
傭兵に求められるものはとにかく戦果を挙げられること。その為実戦形式でテストが行われる。
ターゲットは、鹵獲したセイバータイガー一機。
次々と傭兵志願のパイロット達が試験を受ける。だが、60人程受けて合格したのは僅か4、5人。
ロイの順番がすぐ前に迫っている。ロイの前にいたパイロットのゴドスは頭部を吹っ飛ばされた。
「何だ、骨の無い連中ばかりだな…次!!」ロイは前に出た。
周りのパイロット達から視線が集まる。「何だ、あのゾイド?」「変な形だな…ブラフか?」
笛が鳴った。セイバーが走って来る。「改めて戦うのは初めてだな…行くぞ!!」
セイバーの撃ったビームをサイドステップで避け、逆にSMCを撃ち込む。セイバーの右前足が
ショートしている。「むぅ…中々やる。だが、射撃だけでは勝てんぞ!!」
セイバーが一気に間合いを詰め、ストライククローを叩き付けてきた。だが、
ロイは微妙にヒットポイントをずらし、掠るだけに留めた。逆にセイバーに隙が生じた―
「…もらったっ!!!」サイバークローがまともにセイバーの側頭部を直撃した。一発でセイバーの機能が停止する。
「そこまで!ロイ・アーベル、合格!!」
「!?ぃよっしゃぁぁ!!」共和国最年少の傭兵が誕生した顛末は、こういったものだった。
硝煙の果てに
ライアーは内心で落胆しながらも、新たに同僚となった傭兵たちを見渡した。
遺跡防衛隊は大きく分けて三つの集団から構成されていた。
最初の部隊は比較的大型のゾイドが集中して配備された。大きくともコマンドウルフがせいぜいだったが、それでも軍隊が存在しないこの地方では強力なゾイドだった。
次に編成されたのは小型のコマンドゾイドや重火器を配備した部隊だった。
コマンドゾイドは重機関銃や対物ロケット砲で火力を増強していた。あとは牽引式の対装甲砲がほとんどだった。
ようするにコマンドゾイドと重火器を装備した歩兵部隊で敵となる襲撃集団を拘束するつもりなのだ。
第一の部隊であるゾイド部隊は拘束された敵部隊を迂回して叩く機動防御部隊というわけだった。
おそらく防衛隊の作戦立案には軍隊経験者が関わっているようだった。傭兵が取る戦術にしては理路整然としていた。
ライアーが所属するのはその二つではなく、遺跡の最終防衛ラインに位置する部隊だった。
一応は最後の守りとも言えるのだが、ライアーの見たところこの部隊は予備部隊のようだった。
しかも支給された火器をみるかぎり、あまり期待されている様子は無かった。
第三の部隊は、十人程度で分けられた分隊規模が基幹となる戦力だった。集団戦闘にはあまり適した編成とはいえないが、遺跡の周囲に分散配置するのにはそうするしかなかったのかもしれない。
分隊には支援火器として一丁の軽機関銃と一門の無反動砲が支給されて、個人携帯火器に突撃銃を支給された。
軽機関銃と無反動砲は銃手のほかに装填手が一名つくから、10人編成の分隊だと突撃銃のみの銃手が6名ということになる。
それだけを見ると正規軍の小銃班のように見えるのだが、ライアーの見る限り実行戦力はもっと低いと思われた。
実戦経験があるというだけで分隊長になった年かさの男は、さっきから下らない冗句ばかりいっていた。
どうみても緊張を紛らわすだけのようだったから、危なっかしかった。
無反動砲手は、青い顔をしていた。だがそれも無理は無かった。素人目には無反動砲は強力な火器だが、見た目ほど装甲目標に対しては威力があるわけではない。
それに無反動砲のバックブラストは強烈だから砲手は周囲から集中してそげきれるのは間違い無かった。
むしろ落ち着いた表情をしている軽機関銃手の方が頼りになりそうだった。
三十代半ばに見えた銃手の男は話を聞いてみると10代から傭兵暮らしをしていたというから実戦経験は豊富そうだった。
ただし、あまり大規模な戦闘は参加したことが無いというから、予備部隊に回されたという話だった。
あまりライアーは志願はしてみたものの戦力になりそうも無い部隊に配属されて辟易していたが、この部隊が戦闘に巻き込まれないように祈るしかなかった。
どうみてもこんな部隊では敵部隊の襲撃に耐えられるはずも無かった。
一人地味に続けてみる
>>193 申し訳ありません。先任兵長のページならいつも愛読しております。
そこではありません…
クラウン王国がどうとか、傭兵団を結成したはいいが、ウルトラの砲撃に
巻き込まれて、囮とされて吹き飛ばされてしまう話です。
えと、補足ですー。
・194、195ははZAC2099年の話。
・VesselsはCDZのゲームから拝借。でもありそうな気も。
・プロフェッサー・イオはGB版ゾイドに出てきた香具師。設定は変えたけど…
・DFGがデスザウラーより強いのは本当
と。
ZAC2100年:10月
あれから約1年。最強クラスの傭兵として多大な戦果を挙げていたロイの元に予想もしなかった訃報が届く。
アーサー・ボーグマンが死んだ、と…
ロイは茫然自失した。自分を傭兵として育ててくれた恩師とのあまりにも早い別れ。
帝国が造り出した恐怖のゾイド、デススティンガーとの戦いで命を落としたというのだ。
だが、他の兵士達はその様な事微塵も知らなかった。司令部は士気の低下を恐れ、一部の者
以外にはアーサーの訃報を公表しなかった。彼の死は隠蔽されたのだ。
数日後、悲しみに沈むロイはあることを思い出した。ガリル遺跡から帰還した時アーサーが言った言葉だ。
「これからは戦いも激しくなるだろう。本国も安全とは言い切れない。…娘がデルポイに居るんだ。
もし私に何かあったらその時は君があの子を守ってくれ…」
「…俺なんかに任せていいのか」ロイはアーサーに「何かある」なんて考えたくも無かった。
「君だからこそ信頼して言ってるんだ。最近噂も聞くしな」
ロイに迷う事など何も無かった。その後すぐデルポイへの輸送艦に潜り込み、アーサーの故郷を目指した。
「とはいえ、中々の都会…」何しろ、共和国の首都だったのだから。
重大なミスを見つけたんで緊急補足。
へリック共和国国立工科大学があるのはニューへリックシティではなく
本国の首都ですた。
共和国首都の南に位置するへリック国立工科大学。
数少ない生徒が講習を終え、帰路に着く時間となった。(夜の7時くらいか)
「ボーグマン…アーサーの家はここか」街の一角にある民家の前でロイは立ち止まった。
チャイムを鳴らすと、中から中年の女性が出てきた。「あら、こんな時間に何か用かしら?」
「娘さんはいらっしゃいますか」本音を言えば、こんな役回りは嫌だった。だが、確かに
アーサーの言う通り、デススティンガーのようなゾイドまで出で来る以上ここも安全とは言い切れない。
「アイリスはまだ帰ってませんよ。そろそろ学校も終わった頃だと思うけど…」
折も折、その時脇道から当の本人、アイリス・ボーグマンが現れた。
「あれ、お母さん…お客さん?」ロイの顔を覗き込むアイリスの瞳は、とても澄んでいた。
(この子の純真な瞳を涙でいっぱいにしろというのか、アーサー…)
「あ、それで…何の用でしたっけ?」言わなければ。自分は何の為にここに来たのか。
司令部は情報漏洩を恐れ、アーサーの家族にすら彼の死を教えていなかった。
そういう意味ではロイのやっている事も命令違反だが…
「俺は…へリック共和国軍傭兵部隊所属、ロイ・アーベルです。司令部は隠したがっていますが、
話さない訳には行きませんからね…実は」
「とうとうアーサーも逝きましたか…」ロイが言う前にアイリスの母親が言った。
「私は、ずっとこの日が来るのではないかと恐れていたの…ありがとうね、傭兵さん」
「……は?」ロイはこんな反応予想もしていなかった。アイリスの方は予想通りの反応を示したが。
「そんな…お父さんが死んだなんて!!嘘でしょ…!?」
「嘘の訃報を伝えにここまで来たりしませんよ、アイリスさん。」ロイはもう見てられなかった。
こんな事は早く済ませるべきだ。「彼の遺言で、あなた達を現時点で最も安全な所に連れて行く事になっています。
具体的には、デルポイの東部の山脈辺りが最適です。」ロイは地図を見せて言った。
アーサーの妻、ホリンはこれを承諾した。「ある程度覚悟はしてましたから…」
だが、アイリスはこの申し出を拒否した。「嫌よ!!ここはまだ安全だし戦争も共和国優勢になってるんでしょう!?」
アイリスは結局ホリンの説得によって(そしてロイが半ば強制的に)避難する事にした。
2日後、荷物をまとめて町を出る途中大学前を通った。その時、ロイは見覚えのある人物を見つけた。
「お?あんた、確か正規軍最強のゾイド乗り…ライル・エインズワースじゃあないか」
「噂は聞いているよ。最年少、最強の傭兵…ロイ・アーベル君か。何をしている?」
「今じゃあ何処も安全とは言い難いんでね…避難する人の護衛さ」もちろん避難を呼びかけたのが自分だなどと
言えない。理由を聞かれて正規軍にばれれば、処刑が待っている。
ライルと別れ、街の外に出た。同じく避難する人々の列が出来ていた。
「同じ様な考えの人が結構居る訳か…当然かもな」
避難民の列に混じって行くロイ達。あと3日もすれば、目的の避難所に辿り着く。
アイリスは旅の間ずっと暗い顔をしていた。「父親が死んだんだ、別に不思議でもない」
ロイはそう思う事にしたが、その一方何とか彼女を救えないかとも思っていた。
だが、あと1日歩けば目的地に着くという夜。コックピットに座ったまま眠るロイをアイリスが起こした。
「ん?どうかしましたか…」アイリスは手振りで「静かにして」と言った。そして自分も声を落としてこう言った。
「あなた、これが終わったらエウロペに帰るんでしょ?…私も一緒に連れて行って欲しいの」
「…何を。わざわざ戦場に行こうなんて一体何を考えてるんです?」
「お父さんが死んでるのに何も出来ないなんて私、耐えられない。自分にできる事をするべきだと思うから…」
「できません…一般人を戦争の真っ只中に連れて行くなんて、いくら頼まれても承諾しかねます
それに、お母さんにこれ以上心配をかけてはいけないでしょう」
アイリスは首を横に振った。「いいえ、これはお母さんと話し合った結果よ。
それに、どうしても駄目と言うならあなたを脅迫してでも連れてってもらうんだから。」
「止めて下さいよ。何を以ってしてあなたが俺を脅迫するって言うんです?」
「お父さんの死を公にしないのは士気の低下を防ぐ為って言ったよね…連れてかないと、新聞社にばらし…」
「あー、解りましたからそいつは勘弁…」
>>199 これは失敬(汗
しかし、それを聞いても思い出せないなぁ・・・いつ頃書き込まれた話ですか?
>>保管庫作った人
過去ログ見られなくてちょっと困ったけど、お陰で以前書いたマイバトストをHPに貼れますた。thx
ZAC2101年。あの後共和国軍はニクシー基地を落とし、西方大陸戦争に勝利した。
ロイとアイリスはまだ行動を共にしていた。アイリスはデルポイに帰りたがらなかったし、
ロイも彼なりにアーサーとの約束を守ろうとしているのだった。
しかしその頃、共和国首都・へリックシティに一隻のホエールキング(鹵獲)が舞い降りた。
へリック共和国国立工科大学・地下研究所にはランドルの笑い声が響いていた。ぞっとする様な、忌まわしい笑い声が。
「遂に、遂に復活の時が来た…!!」プールから巨大なゾイドが搬送されていく。グスタフ3機掛かりで運ばれていく
「それ」を見ながらランドルは呟いた。「こいつさえ居れば…戦争の終結など容易い。『力』だよ…
我らは国の境界も、血筋も越えてこの星の支配者となる…!!」
エウロペに戻ったライルから電話が入った。「おめでとう。あれが完成したそうだね…」
「じきそちらに届くだろう。それまでお前は任務をこなしているんだ…軍の連中に不審に思われるなよ」
ライルは1度笑って電話を切った。ライルともあろう者が主戦場を離れているのは、共和国が優勢な為ともう一つ。
近々大規模な作戦があるというので召集が掛かったのだ。
格納庫で整備されるDFGを見ながらライルは昂揚と、何か得体の知れぬ不安を感じていた。
運命とは不思議な事に、時に見計らったかのようなタイミングで動き出すものだ。
共和国の首都からWKが飛び立つ頃、帝国本土のある町でもイオが不敵な笑みを浮かべていた。
イオの目の前には、跡形も無く吹き飛んだ自らの研究所があった。町の住民は先刻見た物に怯えて家に閉じ篭ってしまっている。
「ゾイドには…奴にはこれが何なのか解ったのかも知れんな」右手にVesselsのディスクを持ったまま
イオが呟いた。意思を殺される前に逃げ出すとは、なかなかどうして賢いじゃないか。
イオは街の反対側の帝国軍基地に向かった。「科学者として、実験が失敗した時にすべき事は、」
格納庫に潜り込み、バーサークフューラーに乗り込む。実はここ、鉄竜騎兵団の基地なのだ。
「原因の考察と…実験の後処理だ!」イオはそのままBFを起動した。ブースターのスロットルを一気に開ける。
「この程度のゾイドが主力とはな…帝国軍も堕ちた物だ」彼は旧大戦時、ギルベイダーのパイロットでもあった。
夜闇に紛れ、イオ・マクスフェルは失踪(疾走)した。
目指す先は西方大陸――
毎度です。補足逝きますよー。
・言うまでも無いと思いますが、アーサーに妻子がいるかは知りません。
・何話かで一気に2、3年進んでしまいますた。ストーリー上仕方ないけれど。
・アイリスがロイを脅迫したシーンは無理があるんで脳内補完よろ。
・イオがギルのパイロットだったなんて設定はありませんが、乗れるのは本当です。
・ロイは一応兵士なんで一般人のアイリスには敬語で話してますが、次ぐらいからは打ち解けたという事で口調変えますよ(藁
・念のため先に言って置きますが…ランドルが復活させたのは皆さんの予想通り「アレ」です。
しかし断じて「340」氏のパクリではありません。このアイデアは元々ありました。
・やっぱり段々キャラ話になってきてしまった…鬱だ
とかですね。
「よう、あんたか。また会ったな」ロイの視線の先にはライルがいた。西方大陸に残留する共和国軍兵士が
ロブ基地に集められているのだ。「君も聞いているのかい?何でも大規模な作戦があるとか」
周りを見れば、同じく集められた軍人や傭兵で会議場は溢れかえっている。
その時、格納庫に大音声が響き渡った。「諸君、よく来てくれた」
上を見ると、2回のラウンジにザイファー・ガラント中佐がメガホンを持って立っている。
ザイファー中佐は、ここの司令官であったハーマン少佐がニクスへ向かった後ロブ基地の指揮を取っている。
「もう聞き及んでいる者も居るかも知れんが、この度西方大陸において帝国残党のゲリラやテロが
増加して我々の損失は増えるばかりだ。そこで、残留兵力のほぼ全軍を以って
『帝国軍残党討伐作戦』を決行する。連中の拠点などについては各部隊ブリーフィングの際に説明される。
近くに特務増設格納庫を準備した。武器、ゾイドの整備を済ませ、充分に休んで作戦に備えよ」
たちまち、兵士達は外に出て行った。ロイとライル、そしてこっそり忍び込んだアイリスは
そこでしばらく話した。「とうとう司令部も大博打に打って出たな…」
ライルはほぞを噛んだ。これは予想外だ。まさか司令部がこんな愚行に出るとは考えもしなかった。
「ちぃっ!!作戦司令部のKitty Guy共め!」ロイとアイリスはこれを聞いて吹き出したが、
ライルは本当に不愉快だった。ザイファーのようなクソ真面目な軍人が指揮を取っていると「あれ」の運用計画が
狂ってしまう。(「こうなったら奴もろとも…!!」)顔をしかめたまま、ライルも会議場を出て行った。
結局ロイも、ディアブロタイガーの整備を終えた後は仮兵舎で休む事にした。
一人で登録しているのでアイリスも一緒の部屋に入る事となった。ロイは別にその事にはあまり関心が無かった。
にわかに感情が昂ってはいたが、それは明日の任務への緊張から来るものだった。アイリスは何だか
落ち着かなかったが。(「あ…何照れてるんだろ、私…」)年下のロイがこんなに落ち着いているのに
4歳も年上の自分が照れてどうする。アイリスはしばらく部屋の中を歩き回っていた。
「…座れば?どうしたんだ、アイリス…何かさっきから落ち着きが無いけど…」
「どうしてそう、平然としていられるのか…はぁ…」意識せずには居られない。本人こそ気付いていないが
ロイは12歳にしてはかなりかっこいい。しかも相部屋だ(笑)
「…アイリス、君は明日の任務に来ない方がいい…今までの物とは危険度の桁が違う。」
アイリスはちょっとびっくりしたが、すぐに笑ってこういった。
「何を今更…一人で待ってるほど退屈な事はそうそう無いわよ」
ロイもそれ以上は言わなかった。心のどこかでは彼女に来て欲しかったのかもしれない。
月の一つが中天に輝く。もうとっくに夜だ。「それじゃあ、明日に備えて寝るとしようか」
決戦の日―――
「では諸君…幸運を祈る」ザイファーが率いる第1大隊が最初に出撃して行った。先頭には、ザイファーのディバイソンMk2
が自ら駆けていく。「では、そろそろ僕達も行くとしよう…第4大隊、出る!!」
運命のいたずらか、ロイの居る第4大隊の部隊長はライルだった。ロイはまだライルが戦っている所を見たことが無い。
噂に違わぬ名パイロットであるかどうか、見定めるにはいい機会だった。
目標地点の近くまではホバーカーゴで移動する。「便利なゾイドが見つかったもんだな…グスタフじゃなくて
良かったよ」何しろ、ゾイド100機近い部隊だ。ホバーカーゴでも数機に分割しなければならない。
2日程して、目的の敵拠点の近くに到着した。「巧妙だな…遺跡で基地を隠している」
思ったより大規模な基地だった。だが、かつての帝国正規軍も今ではただのゲリラでしかない。これなら落とせる。
参謀が幾つかの作戦プランを読み上げる。「やはり、1日ほど様子を見て…」
「必要ない。我々の兵力なら地形を生かし、強襲ですぐにでも落とせる。総員戦闘準備!」
ライルはとにかく手っ取り早くこの任務を終らせたかった。急がなければ「あれ」の存在が上層部にばれてしまう。
部下達の準備が終わるか終わらないかのうちにライルは飛び出した。「何だ、あれは!?」拠点の外周に配置された
防衛線に単機で突っ込むライル。他のメンバーも慌てて後を追う。「ら、ライル隊長!!いくら何でも単機では返り討ちに―」
防衛部隊のレッドホーンがリニアキャノンで攻撃してきた。だが、3発全てDFGの重装甲には効かなかった。DFGの両腕から
計12発のミサイルが放たれた。弾幕を張っていたイグアン数機が吹き飛ぶ。「ゴジュラスの…改造型か!!」
逆方向からアイアンコングが2機、ハンマーナックルを振りかぶって走って来た。先に仕掛けてきたほうをゴッドテイルで
薙ぎ払った。右半身が砕け散ったコングの巨体が宙を舞う。もう一方は触れる間もなくハインドバスターでコアを貫かれた。
「…!!これが…『最強』の名を冠した男の力か!!」
帝国側もいつまでも圧倒されてはいない。基地の中からジェノザウラーやアイアンコングMk2Sなどの強力なゾイドが
次々と現れた。「あの蒼いゴジュラスを破壊しろ!!」グレートセイバーとジェノザウラーが2方向からライルに飛び掛る。
速い。普通のパイロットならばこれで殺られている。だがライルはDFGの姿勢を低くすると、背中に装備した巨大な
ミサイルを発射した。ジェノザウラーはその俊敏性で何とか回避したが、グレートセイバーはギガントミサイルの
直撃を受け、木端微塵に吹き飛んだ。「化物め!!」ジェノザウラーがハイパーキラークローでDFGを捕まえた。
そして掴んだまま、荷電粒子砲のチャージを始めた。自機の手ごと荷電粒子砲で消し去るつもりなのだ。
「…で?」DFGの腕が伸び、ジェノザウラーの頭部を掴んだ。「!?何だ…このパワーはッ!!?」
ジェノザウラーの頭が軋む。「君程度のパイロットが僕に勝てるとでも?…ジェノザウラー如きで」
DFGのパワーアームに力が入った。同時に、ジェノザウラーの頭が握り潰され、チャージした荷電粒子エネルギー
もろともジェノザウラーは爆発した。「何なの…あの人…?」ロイの後ろに隠れて乗っているアイリスはこの光景に
戦慄を覚えた。「…俺達も行こう。」ロイも戦闘エリアに飛び込んでいった。
数時間後、基地は陥落した。だが、味方の損害が多過ぎた。約26人の味方兵が犠牲になったのだ。ロイは俄かに怒りが
込み上げてきた。「ライル…何故あんな無理なやり方で基地を落とした?あれでは味方の損害が増えるのは解ってたはずだ。
森林を生かして奇襲を掛けるとか、他にも戦法はあっただろう!?」
ライルはゆっくりと振り返った。「味方の損害…だから何だと言うんだ?」ライルの顔に奇妙な表情が浮かぶ。
「ロイ…君は何か勘違いしているね…これは戦争なんだよ。味方に損害を出さずに勝とうなんて無理に決まってるじゃあないか」
「それでも…損害を少なくしながら味方を勝利に導くのが指揮官の仕事だ!!…何を焦っている、ライル?一体どうしたというんだ!!」
ライルは顔をしかめた。「うるさいんだよ…傭兵の分際で!!」ロイは耳を疑った。いつものライルはもっとクールで皮肉屋だ。
だが今は余裕が感じられ無い。「金で雇われてるんだ、お前らはただ与えられた仕事をこなせばいいだけなんだよ!!
一目置かれてるからって調子に乗って余計な口を出すな!!」ライルは一呼吸置いて、突然DFGに乗り込んだ。
「いいだろう…ゾイドに乗れ、ロイ。いい機会だ、ここで君を始末する。後々邪魔になるだろうからな」
ロイは愕然とした。「…な、何を言っている…?」ライルが、自分に戦いを挑んでいる――?
考えていると、足元に銃弾が飛んできた。ライルがDFGのコックピットから拳銃で撃ってきたのだ。奴は本気だ。
迷っている暇など無かった。ロイはディアブロタイガーのコックピットに滑り込んだ。「ここではやれない。まだみんなが
作戦の後処理をしているから…近くに荒地がある。そこならいいだろう」
部隊のみんなまで巻き込むわけには行かない。はっきり言ってライルに勝てるかどうかは解らない。だが、こうなった以上
やるしかない―コイツをこのままにしていてはいけない。死んだ隊員のためにも。
荒地にて対峙する2人の間には月の光が射し込んでいた。
何か漏れだけ連続投稿で悪いですね…早く書き上げたくて。
では、
>>210-214の補足でます。
・ザイファー・ガラントはPSゾイド2のキャラです。…中佐かどうかは知らないけど
・無意識の内にキャラ萌えの話になっちゃってます…スマソ
・214の辺りは無理があるけど、切れたライルはちょっと頭がイッちゃってるという事で。
…あぁ、報われない…
>>216 とりあえず自分は完結してから読むつもり
「さぁ、エウロペの塵となれ!!」ライルが先制攻撃を仕掛ける。12発のミサイルが、ロイに襲い掛かった。
ディアブロタイガーは最高速度こそブレードやゼロに及ばないが、関節の特殊な機構によって運動性能が非常に高い。
ロイはミサイルを全弾かわすと、DFGに急接近した。「当たるかよ!!」狙いはDFGのコア。サイバーファングなら何とか貫けるはずだ。
だが、急に伸びてきたパワーアームを避け切れず、ディアブロタイガーの左足を掴まれた。パワーアームの威力は
先程見たばかりである。「握り潰してやる!!」だが、突如ディアブロタイガーが消えた。「何ィ!?」
ライルが光学迷彩だと気付く前に、DFGの肩にサイバーメタルキャノンが炸裂した。関節がもげ、アームごと右腕が地に落ちる。
CMCはエネルギーのチャージが可能な兵器であり、最大チャージでは荷電粒子砲と同等以上の威力を発揮する。
ライルに一瞬の隙が出来た。「もらっ…」「させるか、死ねぇー!!!」狙った先の腹部からハインドバスターが飛んできた。
至近距離から強力な一発をもらって、ロイは15mほど吹っ飛ばされた。「ぐあぁぁっ!!」機体へのダメージは大きくない。だが
ステルスジェネレーターが破壊されている。「どうだロイ、光学迷彩はもう使えないぞ!?」ライルの攻撃は正確だ。避けるのは
難しい。しかしロイはこう言った。「それがどうした、元々お前が相手じゃ光学迷彩なんか意味が無い!!」
「フン、逃げられないからって虚勢を張るなよ、ロイ…もうすぐ僕は最強の力を手に入れるんだ。君なんかに邪魔はさせない!!」
「!?どういう事だ、ライル!最強の力って一体何の事だ!!?」ライルは一瞬驚いたような顔をした後、歪んだ笑みを浮かべた。
「お喋りが過ぎたようだ…これで君の処分は決定だ。」DFGが全身に満載したミサイルの全てが火を噴いた。
「全弾発射ァー―!!!」
>英雄の帰還書いてる物体氏
その「補足」って奴、いい加減みっともないからやめようよ。全然補足になってないから。
>>219 あ、確かに…スマソ。何か解りづらい話なんで説明入れないと解らないのではないかと
思ってしまって…
でも、読んでくれてる人がいるんだ…本編、頑張ります。
>>220 自分は補足も読んでますよ。裏話的で好きです。
・・・いうまでもなくこのスレは各人が好きな事を書きたいように書くのが趣旨なので
作者が補足を入れたければ入れる、入れたくなければ入れない、それでいいんじゃないでしょうか。
222 :
220:03/12/21 21:00 ID:???
…結局、どうするべきでしょうか…
>>222 まぁそのあたりは自分で決めることですね。
ここも2ちゃんだから、今後もどんな煽りが入るかわからないけど、
それに自分で対応する事ができないとやってけないと思いますよん・・・
(質問があったら補足するくらいをオススメしておくけど。 現状の補足って
「こういう風に読んでね、正しい感想はこうです」って自ら言ってるみたいなので・・・スマソ)
>>220 例えば
>>215の場合なんだが、
>・ザイファー・ガラントはPSゾイド2のキャラです。…中佐かどうかは知らないけど
これはOK(中佐かどうか云々は蛇足)。PSゾイドを知らない人にとっては文字通り「補足」。
>・無意識の内にキャラ萌えの話になっちゃってます…スマソ
これはNG。あなたの切り口に興味を持ってくれた人に対して失礼だろう。
作品の傾向に貴賎はない。大事なのは完成度と、読者への感謝の気持ちだと思うよ。
あとこのスレに限ればゾイドがきちんと題材になっていれば問題ない筈。
>・214の辺りは無理があるけど、切れたライルはちょっと頭がイッちゃってるという事で。
これもNG。書き足りなかったことが悔しいのはわかるけど、我慢しようよ。
どうしても我慢できないなら、名無し獣弐さんに補完の際修正を申請するとか、別の対策を考えるべき。
こんな感じかな?要は、詫びを入れるのは補足じゃないってこと。
225 :
211:03/12/21 22:45 ID:???
>>222 もしあなたが書きたくもないのに「説明しないと分かりにくいかも」という変な義務感で
書いているのなら止めた方がいいと思う。
思うにあなたはバトストとの矛盾点などを突っ込まれる事を極度に恐れているのでは?
自分もいまバトスト書いているので気持ちは痛いほどわかりますが、バトスト書くと決めたからには
突っ込みの一つや二つ恐れずにどっしり構えて楽しんで書いてればそれでいいんですよ、きっと。
だから無理に補足を入れてそこで「今のは無理がどうたらこうたら」とか
「〜スマソ」とか謝る事もないし。
補足を書く事自体は本編を説明セリフだらけにするのを回避する一つの手段だから、
有効に使えばいいと思いますよ。
皆さん良い人ばかりですね。
自分も、うpする勇気が湧いてきたよ!
・・・まだ書きあがってないけどナー
皆さんありがとう…!!いろいろ考えた結果
「補足らしい補足」のみ入れることにします。
さぁ、12話の続き逝くかー!!(爆
視界を覆い尽くすほどのミサイルの雨が飛んでくる。ロイは避ける方法を考えたが、どう考えても全ては避けきれない。
「避けられないなら…!!」ロイはCMCを連射した。狙い通りミサイルが次々と誘爆し、隙間が出来た。「そこだっ!!」
ミサイルの合間をすり抜け、DFGに接近する。だが、後ろで一斉にミサイルが爆発した衝撃でディアブロタイガーのバランスが
一瞬崩れた。ライルはそこを見逃さなかった。「お前が避けてくるのも計算済みだ!!」DFGが機体を反転し、ロイにゴッドテイルを
叩き付けた。非常に強力な一撃。ディアブロの装甲が弾け飛ぶ。「うあっ!!」ロイは右肘を強打した。だが、痛がっている暇は
無い。再びミサイルの雨が降り注いだのだ。「あいつ…一体何発のミサイルを搭載している!?」
機体を丸々一回転させ、爆風から逃れる。だがまた凄い衝撃が襲った。同時に、ライルが畳み掛けるようにゴッドテイルを振ってくる。
「2度同じ手は喰らわない!!」ジャンプで尾を避け、CMCを連射する。DFGの装甲で爆発の連鎖が起きた。だが、大してダメージは見られない。
(「奴は俺の動きの一歩先を読んでいる…どうする?」)ロイがミサイルを避ける事までも計算されているのだ。
「これで…終わりだァーッ!!!」ライルがまたミサイルを大量発射する。だが、今までよりも更に数が多い。「これが本当の全弾発射だ!!」
(「一歩先を読まれているならば…」)ライルはDFGを左に走らせた。ロイはミサイルの数を僅かに少なくした左に避けるはずだ―
ライルはそこまで予測してミサイルを放ったのだ。だが、ロイが出てこない。「馬鹿な、右か!?」右にも居ない。その時、DFGの
コックピットが翳った―「読まれているならば、俺はその先を行く!!」ライルが上を向いた時にはもう遅かった。
日輪を背に真っ直ぐ飛んできたディアブロタイガーが、縦一直線にDFGを貫いた。
「ライル・エインズワース…成仏しろよ…」大爆発し、炎と煙を上げ続けるDFGに向かって、ロイは呟いた。
後ろでアイリスが身を起こす。「あの人を狂わせた『力』って、一体何なのかな…」
そういえば、いつの間にか夜が明けて日が昇っている。何時間戦っていたのだろうか。「解らないが……とにかく、
ロブ基地に戻ろう。ザイファー中佐に事の詳細を報告しなければ…」
その後、残ったメンバーで第4大隊はロブ基地に帰還した。ロイの報告を聞いたザイファーは驚愕の極み、といった様子だった。
「なんと、ライルともあろう者がか!!…何が起きているというのだ…何か、得体の知れない不安が頭から離れん」
その時だった。ロブ基地が激しく振動したのだ。「何だ、地震か!?」違う。外で別の音がしている。
ロイ達が表に出ると、ロブ基地の前に一機のホエールキングが止まっている。
そして、そのままWKは爆発した。ただ見ているしかなかったロイ達の前で、爆炎の中からゆっくりと、あまりにも巨大なゾイドが
姿を現した。アイリスが震えている。「ロイ、これ…私、学校で見たことがある。絵と設計図面だけだったけど…間違いないわ。
これは…」ザイファーが続ける。「…キング…ゴジュラス……!!!」
ロイは震えてこそいなかったが、鳥肌が立つのを感じた。なんという存在感なのか。攻撃も、威嚇もされていない。だが、KGは
ただそこに「居る」だけでロイ達を圧倒していた。
KGが向きを変えた。ゆっくりとした足取りで、それでも意外なほど早く。やがてロブ基地からKGは見えなくなった。
ザイファーが通信機を取る。「司令部…作戦は中止する。帝国の残党などに構っている暇は無い…」
そんでは、補足リニューアルしていきます。テストもかねて。
・アイリスが行っていた学校は「へリック共和国国立工科大学付属高等学校」でした。アイリスは16歳。
・高校の図書室にKGの設計図なんかがあったのは地下で色々やっていたから
・DFGのミサイルが爆発時に放つ衝撃波はほとんどギガントミサイルのもの
・「日輪を背に」という文を出したかったんで書いたら後で気付きました。
>>214では夜だったんです。
なので無理矢理「いつの間にか夜が明けて」としました。本当はそんなに何時間も闘わせる気は無かったんですが…(汗
補足はこんなもんでどうですか?
「ランドル博士…息子さんが、戦死されたようです」本土の研究所でランドルはその報告を聞いた。
途端に、ランドルの顔には狼狽と怒りの色が見えた。ランドルは突如懐から何かを取り出し、研究所の屋上に出た。
「博士!!何をする気ですか!?」ランドルはその「何か」を空に掲げた。「もはや終わりだ。何もかも…」
ランドルが手に持っていたのはスイッチのような物だった。「博士、それは…?」彼はそれを押した――
その時だった。飛行中のWKの中でキングゴジュラスが動き出したのは。彼の持つスイッチはKGの起動スイッチだったのだ。
丁度WKはロブ基地に不時着したが、内側からすぐに破壊されてしまった。ランドルはそれも大体計算の内だった。
「さぁ、我が息子よ…ライルの仇を取ってくれ」研究員の一人がランドルに銃を向けた。「博士、あなたは自分が何をしたのか
解っていない…OSまで搭載したあの化物を!!野放しにするなんて!!」ランドルは振り返った。
「貴様らに何が解る!?…さぁ、そこを退け!!私もエウロペに渡る!!」ランドルが研究員達に迫る。全身から怒りと狂気
がにじみ出ている。研究員達は尻込みした。「退け…退け…!!そこを退け!!!」ランドルの杖が鈍く光る。まるで
ライフルの様にランドルが杖を構え、指を動かした―重い爆発音が響き渡り、研究員が1人倒れた。
胸から血を流している。ショットガンが内蔵された仕込み杖だったのだ。「死にたくなければ、そこをど…」
研究員の拳銃が火を噴いた。「あんたにこの星を…滅ぼさせはしない」ランドルの胸から血が流れ出す。「ククク…
これが…結末か…」ランドルは後ろに倒れ、そのまま事切れた。
「クッ…やはり地上から追いつくのは無理か!!」焼け野原と化した町の跡を見てイオは悪態をついた。
マッハ4.2で飛んでいるゾイドが相手だ、無理もない。「となると…奴の行き先を予測して先回りするしかない様だな」
これまでの経緯からして、軍の基地などが多く狙われている。現場には原形を留めないゾイドの残骸が無数に転がっている。
「奴め…未完成だったMOD(マントラ・オーバードライブ)を自分で完成させおったか!!」これでますます危機が増えた。
「奴」はただ無造作に破壊を繰り返すのではない。意思を持ち、ゾイドを襲うのだ。
MODは破壊した敵ゾイドのコアをエネルギーとして吸収するシステムだ。コア1つでも膨大なエネルギーが得られる。
ますます被害が拡大するに違いない。「奴が狙うのは…」イオはある結論に辿り着いた。奴が狙う物は強力なゾイドコア。
「間違いなく、奴は何かを目指している…この大陸に奴を満足させるだけのコアを持ったゾイドが居るというのか?」
そんなゾイドは今も昔も1つしかあり得ない。「成程…キングゴジュラスか…共和国の連中め」
見たところ奴は各地で寄り道をしている。共和国の連中は恐らくKGをロブ基地で降ろしたはずだ。そこからのルートを計算
する。「BFで一直線に飛ばせば間に合う…後は」イオは自分の脇に置いてあるディスクを見た。
Vesselsを通信機の電波に乗せて奴に送り、動きを止めるのだ。
イオが復活させたゾイド…それはかつて、KGと互角以上に闘ったという伝説のゾイド。
機体名を、デスバーンと言った。
任務中だった全部隊がロブ基地に呼び戻され、ザイファーから事の詳細を聞いた。今や戦争どころの問題ではないのだ。
このままでは本当に惑星Ziが滅びてしまう。KGにはそれだけの力があるのだ。
皆、出撃の時を待っていた。ロイのディアブロタイガーも整備を終え、万全の体制となっている。
ザイファーは共和国政府に許可を取ってはいなかった。彼の「この星を救う」という揺るぎない思いがそうさせたのだ。
「…共和国の勇士達よ。今、この星の命運を決する時が来ようとしている。敵はあまりにも強大だ。だが、決して諦めるな!!
我々があの悪魔を止めなければこの星の歴史はここで終わる。自分自身の為に、守りたい物の為に、
自身が信ずる物の為に闘え。審判の時が来た!!全部隊、出撃!!!」
ロブ基地に収まりきらないほどの大軍が、エウロペの大地を行進して行く。KGを目指して――
ロイがいるのは高機動ゾイドで構成された先鋒隊。何かに駆り立てられるかのようにロイは誰よりも速く駆けた。
先程情報が入ったのだ。KGを復活させたのはライルの祖父だと。「あいつを狂わせた『力』…絶対に止めてやる!!」
ふと、ロイの視界に一機の紅いゾイドが飛び込んできた。機体を止め、そのゾイドをよく見る。「ジェノザウラー…?
いや、あれは確かアーサーが言っていた…ジェノブレイカー!?」こんな所で部隊に損害は出せない。自分が一騎打ちで
仕留めるしかない―ディアブロタイガーが戦闘態勢に入ろうとしたその時、相手から呼びかけがあった。
「そこの黒いタイガーのパイロット!主要な戦闘が終結したエウロペで全残留軍が行進とは何事か!?」
「あんたが帝国軍なら教える義理は無い…退いてくれ」ロイの手はCMCのトリガーに掛かっている。いつでも先制攻撃を
仕掛けられるように。「以前は帝国軍に所属していたが、今は違う!!もう一度訊くぞ、何が起きている!!?」
ロイはフッ、と笑った。どうせ奴に負けたらこの星は消えてしまうんだ、教えてもいいじゃないか。「まず、名を名乗れ」
ジェノブレイカーのパイロットは言った。「私の名は、リッツ・ルンシュテッド」
最近全然更新して無いうちにもう7スレ目が終わりそうに。
1月9日までには最低6スレ目までは保管します。
また変更したい点などがありましたら言っていただければ保管のさいに変更致します。
その時は何スレ目、レス番号、何行目かを書いてくれるとありがたいです。
最近エナジーやらその他の事情で書き込みが出来ませんでした。見る専門…_| ̄|○
4日目夜の部待っている人が居なくても見きり発進です。
ーーーーーー
東方大陸…つい数年前まで共和国と二つの帝国が足を踏み入れる事は無かった場所。
今は共和国反抗の切り札を抱える場所と為っていた。ゾイテックの技術供給の元その切り札は出撃の時を待ちわびていた。
有る海岸線に有る工場施設。
「緊急事態です!中央大陸より何かが接近しています!数は…たった1機です!」
警戒に当たっていた仕官から防衛隊長への通信が入る。「何故慌てている!1機じゃないのか!?」当然の如く怒鳴り声が彼に戻っていく。
「しかし隊長!反応がおかしいんです!タイプはデススティンガーですがエネルギー反応が桁違いです!」
「了解した!直に施設を放棄する!今の我々には切り札意外に手が無い!ここであれを失う訳にはいかん。」
その通信に割って入る者が居る。「少佐殿は部隊を率いて撤退してください。ここは私達に御任せを。」女性仕官のようだがその声は自信に満ちていた…。
「了解した!リエット大尉後は任せる!施設はどれだけ破壊しても構わん。敵戦力の排除を最優先してくれ!」「了解しました。」
彼女の名はリエット=ラブルマン。新兵の教導隊で教鞭を振るっているがその教育内容は”実戦教育”で何故かギガに選ばれてしまった新米パイロット達を指導している最中だった。
「聞いたわね?今から仕上げの試験をします!相手はデススティンガータイプ。でもエネルギーレベルが異常な奴。多分暴走体と同じぐらいの難敵よ。」
「了解!」3人の声が同時にコクピットに届く。「ちょっと待って…今の所解るデータが入ってきたわって!?これは…?」
「不味いな…大尉が黙ったぞ。」パイロットの一人が呟く。「本物の厄介者みたいだね。」もう一人も相槌を打つ。
「面倒くせぇ〜な〜…。」最後の一人が不満の表情を明白に見せる。
「本当に面倒な相手見たいよ…私も手伝うからあれを始末しなさい。それが最低基準よ。作戦開始!焦ったら死ぬわよ!」
ターゲットが海から上陸して来る。その報告された内容と反比例するかの様な装甲に亀裂が激しく走ったデススティンガーが姿を表した。
>>235 いつもお疲れさまです。
実は、今度から500KB直前まで使いきる方向で進んでいるのですよ。
「荷電粒子砲が破損しているな。リック!クロス!様子見に仕掛けて見るから畳み掛けれそうなら追い打ちをしてくれ。」
「了解!マックス兄さん。」リック=ルートからマックス=ルートに返信が届く。「りょ〜かい…頑張ってくれや兄貴。」クロス=ルートも返信する。
マックスのギガは海岸線から離れ舗装された施設飛行場に侵入してきたデススティンガーに真後ろから尾を狙って襲い掛かる。
無造作にデススティンガーは尾を振り下ろすとマックスのギガはその尾を押えて状態で力み始める。
「リック!クロス!本当に桁違いだ!弱い者虐めに見えても3機でいかないと無理だ!」
何とか尾を横に払って離れるマックスのギガ。「もう少し待って!今ので予測値を算出するわ。無理かもしれないけど下手に仕掛けないで!」
彼女の愛機オリジナルケルベロスブレイドのカスタム機ドラグベルセルクはその驚異の予想戦力を算出する。
「聞いて!そいつの戦力は私達より上よ!貴方達のフォーメーションアタックの使用を許可するわ。ここで止めないと帰還作戦のスケジュールが1年は遅れるのよ。」更に、
「施設に遠慮なんかする必要は無いわよ。許可は出ているからね。」そう言い終わるが速いかドラグベルセルクは背中の2機のドラゴンヘッドバイトアンカーを発射する。
2体の竜はデススティンガーのストライクレーザーバイトシザースを押え噛み砕く。
デススティンガーの目は完全に3体のギガから離れていた。怒りの唸り声を上げてドラグベルセルクにレーザーの雨を振らせるがそれは届かない。
クロスのギガがHエネルギーシールドを発生させて盾に為っていた。
「ったく防御は俺等任せかよ…。」不平不満は多いが面倒臭がりが好を総じてか状況判断能力に長けている様だった。
次の瞬間デススティンガーは左右より追撃モードで突撃した2機に装甲を踏み抜かれる。
そのまま交差して駆け抜けた後には3〜4ヶ所穴の開いたデススティンガーがもがいていた…。
「まだ生きている…。」嫌な空気が漂い始めた気分に捕らわれる4人だった。
硝煙の果てに
戦闘が始まったらしいということは、分隊長の慌てた様子ですぐにわかった。
突然入ってきた通信からは悲鳴や怒号が絶え間なく聞こえてきた。分隊長は通信機のボリュームを絞らずにそれを聞こえたままにしていた。
さっきから青かった無反動砲手は、今にも卒倒しそうだった。他のものも通信機にわめく分隊長を不安そうな眼で見ている。
ライアーはすぐにも分隊長から通信機を奪いたかったが、分隊員全員が聞いている中では無駄だった。
やがて通信機から手を離すと、青ざめた顔で分隊長がつぶやいた。話が違う。そうささやくのを分隊の全員が聞いていた。
不安そうな顔をしながら分隊員達が顔を見合わせた。ライアーはその様子をさめた目で見ていた。
この分隊がすでに戦力にならないのは明らかだった。経験不足の分隊長が不用意な行動をしたせいで分隊員達は不安がっている。
しかも分隊長はそれに気がついていない。本来ならここで知り得た情報を全て教えるべきなのだ。
分隊員達が不安がっているのは戦闘そのものというよりも、情報を与えられていないからだという方が大きい。
だから取り敢えず情報を与えておけば最悪の事態は回避することができるはずだ。
ライアーがそう考えていると、機関銃手が分隊長を問いただすようにいった。
「襲撃してきた敵の規模はわからないのかな」
分隊長は一瞬驚いたように目線を上げると呆然としていった。
「軍隊だ、ただの盗賊とは思えない。シールドライガーにヘルキャットなんて正規軍並の装備じゃないか」
それを聞いて分隊員達がさらに慌て出した。こちらの戦力はコマンドウルフを中核とした機動防御部隊だったが、大型ゾイドを含む部隊だと拘束部隊の戦力が不足するかもしれない。
その場合、拘束部隊と機動打撃部隊は合流を阻止されるのに等しい。つまりは各個撃破されるということになる。
・・・ということはここまで敵が来る可能性が高いな。
ライアーはのんびりとそう考えると無反動砲手の方を見た。
おそらく敵がくればこの半数は逃げ去ってしまうだろう。劣勢な傭兵などそんなものだ。
逃げるのには不便だろうから無反動砲くらい置いていってくれないかな。
そう考えながらライアーは敵が出現しそうな方角に双眼鏡を向けた。
勿論だがライアーは逃げる気はさらさら無かった。敵がシールドライガーと聞いたときから劣勢は覚悟していた。
むしろライアーにとって見れば機動防御を行う二部隊がどうなろうと知ったことではなかった。
たが、敵部隊の戦力を削ぐことはできるだろう。そして今の敵部隊のような高機動部隊は一般に市街戦は苦手だ。
だからライアーは数の減った敵部隊が遺跡内部に侵入したところを仕留めるつもりだった。
そのつもりですでに遺跡の入り口にあたりはつけてある。あとは敵部隊が来るのを待つだけだ。
しばらくして分隊長が握り締めていた通信機から声がした。全員がぎょっとした目で通信機を見た。
敵部隊突破を告げる無線にライアーだけが不気味な笑みを見せていた
リッツと言うパイロットに見覚えは無かった。だが、その機体を見たときロイは一瞬呼吸を忘れた。
「『R』マークのジェノブレイカー…アーサーが戦った相手か!!」リッツもまた身を乗り出した。
「まさか、赤い紋章のブレードライガーのパイロットを知っているのか!?」間違いない。破壊されたブレードから回収されたデータには
このジェノブレイカーが映っていた。アーサーと共に、デススティンガーを倒した男だ。
表現し難い奇妙な感情がロイの心に湧き上がってきた。怒りと感謝が交じり合ったような。
「それで、3度目だが…何故共和国軍が大挙して行進している?」ロイはリッツの声で我に返った。
「…デルポイのマッドサイエンティストがキングゴジュラスを復活させた。そいつを破壊する。」
リッツも伝説程度には聞いていた。その昔存在した、無敵の破壊神のことを。「キングゴジュラスか…!!
まさかそんな物が生きていたとは」ロイの後ろで味方が止まっている。時間が無い。
「解ったら素直にそこを退いてくれ…軍を抜けたあんたに闘う理由など無いだろう?」だがリッツは動かない。そしてこう言った。
「…私も同行させてくれ。少しでも助けが必要なはずだ」ロイはかなり驚いたが、あのアーサーと互角に戦った男だ。
この状況で断る理由は無い。「…いいとも。アーサーと互角に闘りあった実力、見せてもらう」
夜のエウロペを疾走する先鋒隊の最前線には、黒いゾイドと紅いゾイドが並んでいた。
どうも、お久し振りです。原稿を発表しに来ましたが、その前に一言申し上げておきたいことがございます。
これから発表する原稿は、元々は同人誌用に執筆したものです。
第一稿の最終修正日が今年の1月20日(!)というこの原稿が掲載された
同人誌の発表を以て、意外と長かった自分の同人活動は終わりました。
只、この同人誌は諸事情により、発表とは名ばかりで殆ど日の目を見ていないのです。
そのため、今回はこの場をお借りしまして、自分の中でもっとも出来がいいと
思う作品を一本発表させて頂きたいと思います。
つきましては、万が一本稿が掲載された同人誌を御購入の方がこのスレッドを御覧でしたら、
申し訳ございませんがこういう試みはこれっきりなのでお許し願いたいと思う次第です。
本稿は三章構成。今日から三日に分けて投稿します。 又、同人誌掲載時より若干の修正を加えております。
あと、特に一つだけ補足。本稿途中からアルテ・ヤンバーというリポーターが登場します。
同人誌ではバトル中心の作品が多かったため彼にも活躍の場があったのですが、
こちらで発表の作品では必ずしもそうではないため中々登場する機会がありません。
…にもかかわらず本文ではまるで以前から活躍していたような語り口で紹介されます。
こういう事情なので、それだけ御理解頂けると幸いです。
「ギルガメスが出会った老人は、伝説の戦士かもしれない。
今、その伝説が牙を立てて襲い掛かる。
気をつけろ、ギル!ゼーゲルのブーメランスナイプに死角無し!
次回、『魔装竜 対 翻旗石竜』 ギルガメス、覚悟!」
【第一章】
古びた土塗りの壁に囲まれた路地を抜けると、そこには空き地が広がっていた。民
家二、三軒分程の広さで、中央には明るい日差しが照りつけるものの、周囲には沢山
のアパートが乱立し影を落とす。非合法の闘技場を連想させずにはおれない光と闇の
コントラスト。
そこに相対するのは金属の鎧を纏った二匹の竜。いずれも成人よりは背が高く、後
ろ足で大地に立ち、背を屈めて前足と長い首を前方に向けている。全身鋼の色だが頭
から首、そして胴体に掛けては透き通るような青色を纏い、武骨さに彩りを添えてい
る。墨小竜・バトルローバーだ。
竜達の背中にはいずれも少年が乗っている。両者とも幼い顔立ち。「ジュニア・ト
ライアウト」の受験が認められる十五才には達していそうにないことが伺える。
だが、彼らは今まさにゾイドバトルに挑んでいる。無論正規のバトルではないし、
かといって賭試合の類いでもない。…これは草バトルだ。バトルローバー程度の大き
さのゾイドを使い、路地裏の空き地でバトルをするのは惑星Ziのどの都市でも見掛
けることができる。
二匹の竜達が頭部をぶつけ合い、掴み掛かり、懐に潜り込もうとする。やり取りを
遠巻きに数体と数人が次の出番を今か今かと心待ちにしている。その周囲を囲み、声
援や野次を飛ばすのは沢山の少年少女達。この星では誰もがまずこの群衆に混ざるこ
とでゾイドバトルへの想いを馳せる。そしてその何割かはこういった広場や学校の競
技場で立ち合うようになり、又その何割かはゾイドウォリアーの資格取得試験「ジュ
ニア・トライアウト」へ挑戦するに至る。…広場の片隅には老人が独り、ベンチに座
っていた。口鬚と顎鬚を蓄え、ベレー帽を被ったその老人は両手に収めた杖にもたれ
掛かりながら、時折コクリ、コクリと首を揺らす。昼寝を楽しむ彼の周囲には数人の
児童が戯れていた。
さて群衆の中に、一人だけひどく場違いな少年がいた。もっとも何も知らない者が
みればごく自然な光景なのだが。彼の体躯は周囲と比べれば比較的小さく又痩せてい
るが別段際立っているものではない。その上彼の格好はボサボサの黒髪、大きめのT
シャツに半ズボンという上下、素足に運動靴と周囲に十分溶け込む要素ばかりの構成。
しかしながらその大きめで円らな瞳の輝きと、真一文字に結んだ口だけは周囲とは別
格の何か特別な雰囲気を発している。…ギルガメスは路地裏の喧噪を聞き付け、ちょ
っとした懐かしさを抱きこの広場に迷い込んでいた。
草バトルは今まさにピークを迎えようとしていた。恐らく最年長であろう二人の少
年がバトルローバーにまたがり中央に歩み寄る。一人は髪型から服装まで小奇麗にま
とめているのに対し、もう一人は後ろに縛る程長く伸ばした髪と肩までまくったシャ
ツが目立つ、なんともラフな格好。
試合は当初均衡を保っていたが、徐々にラフな格好の少年が優勢になっていった。
相手のローバーの身体を両手で押し上げ、そこに蹴り込み、頭突きをかましていく。
小奇麗な少年は防戦一方だ。必死に堪える。堪えるが、遂にラフな格好の少年の気迫
が優り、相手を転倒させた。小奇麗な少年の方はすぐさま立ち上がろうとするが、そ
こに試合時間を計っていた少年が笛を鳴らし、試合は終了した。
「ウォルド兄ぃっ、どうだぁーっ!」
ラフな格好の少年が叫ぶ。右手で作った拳が若々しい。
「アーリー、本当に強くなったよな。ったく、これでも俺、今年ジュニア受ける筈な
んだけどな…」
「まっ、俺も飲み込み早い方だからさ!明日もよろしく頼むぜ、兄ぃ!」
アーリーと呼ばれた少年が胸を張る。ウォルドはちょっと悄気た風な表情でローバ
ーから降りた。
勝者は敗者を一瞥すると再び拳を握り、広場の片隅に向かって叫ぶ。
「おっちゃん、見ててくれたーっ!?」
返事がない。老人は依然として微睡んでいるかのようだ。舌打ちするアーリー。
「さぁっ!誰か俺と試合しろよ!」
アーリーがローバーに乗ったままぐるりと周囲を見渡す。…皆、怖じけついたよう
だ。群衆も、アーリー達より前にバトルをしていた者達も。
(くそっ!今日もかよ…)
ぶつぶつ呟くアーリー。…だが、彼にとって今日は特別な日だった。
周囲を見渡す内に、アーリーは見慣れぬ少年がいることに気が付いた。彼のことは
どこかで見たことがある。…まさか、まさか!
ためらわず、その少年の前にローバーの歩を進める。
予期せぬ展開から軽い緊張が走るギル。アーリーのギラギラした雰囲気には不思議
な圧力が感じられる。それでいて何か人なつこそうな眼。
「ねえ、あんたギルさんでしょ?…チーム・ギルガメスの」
周囲の少年少女がざわめき出す。
生唾を呑み込むギル。無言で、視線を返す。
アーリーは期待通りの回答に不敵な笑みを浮かべた。ローバーから降りると胸を過
剰に反らしてギルの正面に立つ。…年不相応に大きな体格。ギルよりも頭一つ以上は
高い。アーリーはジュニア・トライアウト未受験、ギルは既受験…つまり前者が年下
の筈だが、体格は完全に逆転している。
見下すような視線を飛ばしながら、アーリーが呟いた。
「俺とさぁ、試合してくんねぇかなぁ?」
アーリーの表情を覗き込むギル。口元の笑みとは裏腹に、その眼からは実に物騒な
雰囲気が伺える。
「…わかった。やろう。僕にゾイドを貸してよ」
努めて抑揚を押さえた低い声と、それ相応の視線を返して呑まれかかった雰囲気か
ら逃れた。
望み通りの返事を受けたアーリー。他の少年に声を掛け、ギルの支度を手伝うよう
促す。
「…テイクダウンだからな、一応言っとくけどさぁ。んで、三分ルールな。あいつら
が計ってくれるからよ」
アーリーが簡単にルールを説明する。「テイクダウン」とは相手ゾイドを転倒させ
れば一点獲得とし、制限時間内により多く得点した方が勝ちというもの。実にシンプ
ルだが、ゾイド同士の戦いの基本である格闘戦のエッセンスが全て凝縮されていると
言って良い。
ギルはあてがわれたローバーに頬を寄せ、なだめすかす。徐々に…徐々に落ち着い
てきた。やがて彼が呼び掛けるとゆっくり腰を落とし、騎乗を誘った。
かくして広場の中央で対峙する二体のバトルローバー。
「よーし、そんじゃあ準備はいいか?」
「…いつでもいいよ」
慣れないゾイドの鞍上にしては、意外な程落ち着き払って返事する。アーリーは少
々鼻に付いたのか、軽く舌打ちしてギルをひと睨みした。
試合開始の笛が鳴った。
「ぅおおおおおっっ!」
絶叫し、ローバーを頭から突っ込ませるアーリー。先手必勝!今までずっと心掛け
てきた気迫の攻め。
だがアーリーは、上には上がいることをものの数秒も立たぬ内に思い知らされるこ
ととなる。
相手の突進とほぼ同時に、ギルは騎乗するローバーを腰低く屈めさせながら左足で
大きく一歩踏み出した。その刹那。
「せりゃぁぁぁぁっっ!」
ギルは相手が放つ頭突きを間一髪躱しつつ懐に潜り込むと、勢いのまま騎乗するロ
ーバーの首で相手を胴体ごと薙ぎ払う。
ドスン。弧を描くような軌道でアーリーはローバーごと横転した。
一瞬で静寂に包まれた広場。
誰もが息を呑む。
何より、アーリー自身が何が起こったのか理解できていない。倒れた状態で目を見
張ったまま一秒、二秒…。得点記録役の少年が慌ててタリーマークの最初の縦線を黒
板に記録した。
「これが…ウォリアー…!」
弟分が一瞬にして横転した様子にウォルドは唸るより他ない。
ギルはローバーをアーリー達から引き離す。そして軽く深呼吸すると一声叫んだ。
「来いよ!」
叱咤の声にアーリーは我を取り戻した。ローバーが足元をふらつかせながら体勢を
立て直す。
(…野郎、面白れぇじゃねえか)
アーリーはぶつぶつ呟くとギルを睨み付ける。
「おうっ!やってやろうじゃねぇかこのクソチビ!いくぞおらぁっ!」
叫ぶが早いか、ローバーを再び突っ込ませる。
ギルも又、一際厳しい視線を返しつつ相手の気迫に応えた。
この後に起こった広場の様子を常連達が外から見つめたら、余りに異質な雰囲気に
驚くことだろう。…群衆は、皆一様に弱り果てていた。中央で展開される草バトルの
有り様に、誰もが目をそむけたがっていた。だが…できるものが一人もいない。そこ
に蠢く「磁場」のようなものが彼らを釘付けにすることを余儀無くしている。
「ねえ、ウォルド兄ちゃん…」
児童が小声で話しかけてきた。
「ん?どうした?」
「あの二人、もう何分戦ってるのかな?」
聞かれたウォルドは腕時計を見た。余計な情報を目にして少々滅入る。
「三十分経ったよ」
「そう…そっか…。さっさと謝っちゃえばいいのにね…」
ギルとアーリーの草バトルは延々と続いていた。三十分と言ったらもうかれこれ9
ラウンドは消化していることになる(※ラウンド終了により試合は一定時間確実に中
断されるため、三十分で10ラウンド消化は不可能である)。…黒板に目を移せば、
片方にだけズラリと並んだタリーマーク。それ程までに、両者の実力差は明らかだっ
た。
アーリーが、肩で息をしている。その上紅潮し、目を真っ赤に充血させる姿なんて
観戦する少年少女達の誰もが初めて見る光景だ。ギルにローバーごと横に、前に、そ
して後ろに何度も転倒させられる。そのたび悲鳴とも溜め息ともつかない声が漏れる。
だが、それ以上に彼らが困惑したのはギルの様子だ。ここまで相手がお話しになら
ないのなら、もういい加減うんざりしていい。嫌みの一つでも言って良い筈である。
…ところがこの少年、嫌みどころかますます気合いのこもった叫び声を上げ、ひたむ
きに戦っている。彼のゾイド裁きが生み出す技の数々は苛烈さを増すばかりだ。寧ろ
不自然と言って良い彼の姿に対し、誰もが理由を知りたくなっていた。
10ラウンド目の終了を告げる笛が鳴り響いた。
「畜生!畜生、何で一点も取れねえんだよっ!」
独り言はとっくの昔に呟きでは無くなっていた。
「もう三分だ!もう三分、相手してくれよ!」
口調とは裏腹に嘆願に近いアーリーの叫び。ギルは、彼としては当然のようにロー
バーを中央に戻す。まだやるつもりか…と、群衆の困惑が最高潮に達したその時。
「アーリー、もういい加減止めろよ!」
少年の一人がたまらず叫んだ。その先をアーリーが物凄い形相で睨む。ギルもつら
れて視線を運ぶ。
「あんだこらぁ!もう一遍言ってみろ!」
声を荒げる。だが叫んだ少年も流石に怯まない。この様子に同調する者も現れ始め
た。
「負け過ぎなんだよ!おまえが俺達の中でも相当強えのはみんな知ってる。でもさ、
相手はウォリアーなんだぜ?今のおまえじゃ勝てっこねえんだって!」
「そーだそーだ!そろそろその辺で『参りました、ごめんなさい』と言って謝ってさ、
現実見て頭冷やせよ!」
アーリーがローバーから飛び下りるや否や、第一声を発した少年目掛けて全力で走
り、胸ぐらを掴む。突然の騒ぎに飛び交う児童や少女達の悲鳴!慌ててウォルドが止
めに入ろうとする。
しかし彼の暴走に、意外な人物が介入してきた。
「そこまでじゃっ!」
低いが一際大きな声が広場に響き渡る。群衆の平均年齢を大きく上回る声色。ギル
が、アーリー達が声の放たれた方向を一斉に見つめる。
広場の片隅で昼寝していた老人が、杖を両手でついて立ち上がっていた。先程まで
の好々爺然とした姿がうってかわって周囲を威圧する雰囲気と鋭い眼光を放っている。
単に年輪を刻んだだけでは発することのできない何かがこの老人から感じられてなら
ない。
静寂が、群衆の中にゆっくりと割って入ってきた。
「お…おっちゃん…」
「アーリー、そこに直れ」
おずおずと従うアーリー。少年の胸ぐらから手を離し、老人の前で地べたに正座す
る。
「勝てないのはな、おぬしが甘ったれているからじゃ」
「な…!」
「人に格好良いところを見せようなどというつまらん了見ではな、己が誇りを賭けて
戦う者に勝てるわけがない。技は心についてくるものじゃ」
アーリーも、ウォルド達少年少女も老人の言葉に聞き入る。…そしてギルも。彼は
はからずも師と同じ教えを説くこの老人に興味を抱いた。名のあるゾイドウォリアー
なのだろうか?
「アーリー…おぬしは今日、新たな目標を見出した筈じゃ。今日の試合はここまでに
しなさい」
「そ、そんな!おっちゃん、やらせてくれよ!頼む!」
「おぬし…わしの言葉が聞けぬのか?」
「い、いや…そんなことは…で、でも!」
目に涙を浮かべ始めるアーリー。つい三十分程前の荒々しさが嘘のようだ。…と、
その時。
「…続けようよ」
意外な声とその主に向かって一斉に注がれる皆の視線。
「バトル、しようよ。僕は君が諦めるまでやめたりはしない」
不可解な言動に周囲がどよめく。老人は怪訝そうな表情でギルの瞳をまじまじと見
つめる。
「わしは、これでも助け船を出したつもりなんじゃがのお…。何か不満でもあるのか
な?」
「…彼はまだ戦えるじゃないですか」
ギルの一言にアーリーが睨み付ける。憎むべき対戦相手に同情されたような展開。
彼は却って怒り心頭に達した。
「…んだと、このクソチビ!」
「やれるならとことんまでやろう。ここで止めちゃったら後悔しか残らないよ」
「言われなくても、わかってんだよ!」
アーリーのヒートアップが止まらない。怒りの表情にウォルド達少年少女が陥った
激しい当惑。…しかしそれも、ほんの数秒の出来事だった。
「ギル、それは私が認めないわよ?」
勇者が驚きの余り肩をすくめた。…恐る恐る背後を見つめるギル。彼がさっき歩い
てきた現実世界からの薄暗い入り口には、昼下がりの逆光を背にした美女が一人。す
らりとしたしなやかな肢体の持ち主であることは、彼女のシルエットを見た誰もが突
きつけられた現実である。紺色の背広で身を固め、やや面長で端正な顔立ちに、肩に
も届かない位さっぱりとした黒い短髪。このどこか浮き世離れした雰囲気を醸し出す
美女の真意は残念ながらサングラスに隠れて見えない。だがギルは知っている。その
下には切れ長の、恐ろしく鋭い眼光を放つ蒼い瞳が隠されていることを。
「エ…エ…エステル先生!?」
自然と、潮が引くように群衆が道を開ける。エステルは広場の中央に歩み寄ると、
ギルの乗るバトルローバーに近付いて言い放った。
「ギル、降りてきなさい」
ギルは一瞬躊躇した。だがサングラス越しながら投げかけられるエステルの視線に
は、結局目のやり場を失わざるを得なかった。アーリーを向いてひどく済まなそうな
表情を見せるとゆっくりローバーから降り始める。アーリーはたまりかねて立ち上が
ると、エステルを指差して怒鳴った。
「なんだよ!あんた何仕切ってんだよ!」
動じないエステル。サングラスを外す。…突き刺さる視線!魔女の眼光は荒ぶる魂
を一刀両断した。たまらずへたり込んでしまうアーリー。
「くやしかったらウォリアーになって、正式に試合を申し込みなさい。いつでも相手
になるわ」
一方のギルは、何の予備知識も無しにエステルと視殺戦を演じる羽目になったアー
リーの身を案じながら、試合で力を貸してくれた相棒をねぎらっていた。ローバーが
首をもたげてくる。頬を寄せさすると、その辺りから潤滑油を入れるカートリッジが
出てきた。厳しいバトルで空っぽになったそれを新しいものと取り替える。ゾイドに
とって油は人間における水分と同等であり、それ相応の働きをしてくれた時は新しい
油を与えて労をねぎらうのである。その油もゾイドの好みによって種類が豊富である
ため、ゾイドと接する時間が長い者は常に何種類かのカートリッジをポケットに忍ば
せているものである。
エステルはゾイドに礼を尽くしたギルに満足すると、今度は老人に向かって口を開
いた。
「ライゼンさん、先日は試合を承諾して下さってありがとうございます」
言いながら深々と頭を下げる。その一言に群衆はどよめいた。…何より、ギルにと
っては寝耳に水であった。
「いやいやこちらこそ、場を収めて下さいましてありがとうございます。それにして
も奇遇ですなぁ」
「ちょ、ちょっと先生!試合って来週の…!?」
「そうよ。こちらにいらっしゃるライゼンさん率いる『チーム・ヴィント』が10日
後に組まれた試合の相手よ。ギル、御挨拶なさい」
「…は、はい!こんにちは、ギルガメスです!『チーム・ギルガメス』のパイロット
です!よろしくお願いします!」
慌てて頭を下げる。ついさっきまで試合で見せていた激しさがうってかわって初々
しさを丸出しにする。ライゼンも帽子を取って返礼する。
「君は面白い少年じゃな。試合が楽しみじゃよ、ハ、ハ、ハ…」
ギルは驚きの色を隠せなかった。好々爺然としていたり、厳しい先生のような一面
を見せたりと様々な表情を見せる老人・ライゼンは試合場において如何なる変貌を遂
げるのか。
ギルとエステルは様々な出会いをしたこの場を離れていった。それでも数分間程は
ライゼンを除いて人もゾイドも異様な雰囲気に呑まれていたが、やがてアーリーが我
を取り戻すと、慌てて無様な自分の相棒を演じてくれた者の労をねぎらい始めた。
「アーリー、珍しいじゃないか?ローバーのカートリッジを交換してやるなんて!い
つもは負けると八つ当たりだってのにさ!」
「うるせぇよ!」
外野の野次など関係なかった。自分より明らかに強い奴を目の当たりにした者が見
せる、ごく普通の行動である。
皆がライゼンに話し掛ける。チーム・ギルガメスの躍進はここに集まった皆もよく
知っている。しかも今日は目の前でその一端を見せつけられたのだからたまらない。
皆が「頑張って!絶対勝って!」と激励する。そしてウォルドとアーリーも。
「ライゼンさん、頑張って下さい!」
「おっちゃん、あいつを絶対打ちのめしてよ!」
「まあ、見ていなさい。…そうじゃ、おぬし達、わしのセコンドについてくれるかの?
久し振りの試合、みんなで楽しもうじゃないか…」
****
今日はここまで。さぁて、一人コミケ開催。250レスも越えて、これからハラハラドキドキです。
レスを遡ってみるとギリギリまでスレッドを使うことになったみたいだけど…。
「完全な解析が終わったわ…擬態よ!デススティンガー自体は中身に擬態している者に取り込まれて居るみたい…。」
更にリエット=ラブルマンは続ける。
「そのくせレーザーとか使ってくると言う事は機能を吸収、学習しているようね。」
「そんな事解ったって…対処出来なきゃど〜しよ〜も無いだろ…。」クロス=ルートは不満を露にする。
「そこら辺を何とかするのが僕たちの仕事じゃないかな?クロス?」リック=ルートになだめられる。
「ほらよっ!」クロスのギガのロングレンジバスターキャノンがデススティンガー?の頭部を直撃する。
更に「よし!そこだっ!」マックス=ルートのギガの4連ショックカノンとバスターキャノンが胴体を、
「追い打ちね。」リックのギガに装備された背部8連大型ミサイルポッドと12連ロケットランチャーが全体に雨の様に突き刺さり爆発が起こる。
その間にドラグベルセルクは少し距離を置きセンサーの反応を見ていた。
「離れるぞ!二人とも何かやばい気がする。」そう言い終わる前に頭上からレーザーが3人のギガに降り注ぐ。
「うわっ!?」「ミサイルポッド廃棄。」「よっと…。」3人は3様に回避、防御行動をしてダメージを押える。
8連大型ミサイルポッドの爆発によって目の煙が払われ前がはっきりすると彼等の目の前にはデススティンガーとは言え無くなった者がその巨体を表す…。
「…無理だろっ!?何処にその体が収まっていたんだよっ!」マックスとクロスが同時に突っ込むのも無理は無い…。
デススティンガーやドラグベルセルクはおろかギガすら3倍近い体格差の者が出現したからだ。
「風の中のタ〜イガ〜♪砂の中のモ〜ルガ〜♪みんなの声聞〜いた〜♪見送〜られることも〜無く〜♪」
惑星Ziの中央大陸にて繰り広げられるネオゼネバス帝国とヘリック共和国軍との大戦争。
戦況は帝国軍が圧倒的優勢でありながら、士気を全く下げずに反抗を続ける共和国軍の前に
苦戦していました。その理由は共和国に味方を勇気付け、敵を恐れさせるほどの本当に強い
ゾイド乗りがまだ残っていたからでした。「ならばその本当に強いゾイド乗りを潰せばいい。
そうすれば共和国軍の士気は瞬く間に下がり、兵力で優る我が軍は勝てる。」とそう考えた
帝国軍上層部はエースパイロットを狙ったピンポイント作戦を実行しました。そして、
そのピンポイント作戦の第一のターゲットとなったのは緑の悪魔「グリーンデビル」と
帝国軍に恐れられる、マオ=スタンティレル少尉(18)とその部下のライン=バイス軍曹
(20)でした。今回の「プロジェクトZ〜挑戦者達〜」はたった2人の人間を倒すためだけに
数億数兆という莫大な軍事費をつぎ込んだ酔狂な…いや、熱い漢達の熱いドラマをお送りします。
「中央大陸戦争、なおも反抗を続ける共和国軍」
「美しき緑の悪魔マオ=スタンティレル、その外見からは想像も付かぬ戦闘力」
「三国志武将の名を持つゴジュラスギガ、次々に倒されるデスザウラーやセイスモサウルス」
「前線兵士の悲痛の叫び、誰かあの悪魔を倒してくれ!!」
「悪魔を倒す前にまずその取り巻きをつぶせ!!狙われたライン=バイス」
「ついに動き出した!!超人兵団スケルトン!!」
「最新型ゾイド投入!!その名はエナジーライガー」
「緑の悪魔の意外なる過去、いじめられ続けた少女時代」
「起死回生の戦法!!その名は風林火山!!」
「プロジェクトZ〜挑戦者達〜・ゼネバスの意地、緑の悪魔激殺指令」
まだ未完成の状態なのですが、盛り上がっていたので思わず書き込んでしまいました。
今回は冒頭部分をNHKの某番組っぽくやってみました・・・。
とりあえず500KBあたりまでは続けるそうなのでまだ書いても良いんですよね。
現在の進行状況はおよそ50%くらいだと思います。
あと、自分の作品についていくつか言っておきたい事があります。
公式バトストの方では年月がどんどん流れてますが、
(例えばエナジーの登場はギガ登場からあの世界では2年近くたっている。レオゲにいたっては3年)
キャラの年齢は変わらない事にしています。こち亀などの漫画が年月というのはリアルタイムに
流れているのにも関わらず、キャラはまったく年をとらないのと同じ理屈です。
下手に年をとらせていたら、ドラゴンボールみたいに大変なことになりそうですから・・・。
まあ、あなた方にとってはどうでも良いことかも知れませんが、これだけは言っておきたかったです。
>>255 おお!!帰ってきましたか!
禁ゴジュでも勝てなさそうなマオ&カンウにどうやって立ち向かうのか…
帝国の人たちの苦労が伝わってくるシリーズです(藁
これからも頑張ってくださいね。では〜
キングゴジュラスの威容が前方に見えてきた。ロイは部隊の全員に共同回線で呼びかける。
「視認できる距離はもう奴の射程距離内だ!!みんな、充分に気をつけて接近し、本隊が来るまで奴を足止めするんだ!!」
リッツとロイが先陣を切って加速する。だがその時、KGが歩を止めて北西を向いた。何かを感じているかのように。
ロイは左を見た。すぐそこにオリンポス山が見える。「いつの間にメルクリウス湖まで来ていたのか…何て機動力だ」
KGが睨んでいる方角には森林と砂漠が広がっている。だが、地平線ギリギリに何かが見える。しかも大きくなっている。
「いや、あれは…近付いている。飛行ゾイドか?」KGを警戒させるほどのゾイドなどロイは知らなかった。
だが、目に見える距離に来てロイはその輪郭を認めた。「ギルベイダー…!?」通信でリッツが答える。
「違うぞ、よく見るんだ。ギルベイダーよりも一回り大きい…歴史資料にはあのゾイドが載っていた。」
「で、何者なんだ?」ロイはKGから視線を離さずに訊いた。「デス・バーン。ギルベイダーの亜種を改造して造られた帝国最強のゾイド…」
サラマンダー改造型、マーキュリーで上空を飛んでいたラガート・ノーティス中尉から通信が繋がった。「私もデスバーンについては
知っています。KGと互角に戦える唯一のゾイドだと…大型ビームスマッシャー、ハイパープラズマキャノンを始めとする超強力武装で
全身を固め、スピードはマッハ4.2。戦闘力はギルベイダーの比ではありません」
リッツが振り向くと、メルクリウス湖の湖畔で2体の巨大ゾイドが対峙している。「これは本当に…最悪の事態かも知れないな…」
先鋒隊が足止めするまでも無かった。キングゴジュラスとデスバーンは遂に、メルクリウス湖畔で戦いを始めたのだ。
一度は着陸したデスバーンがその巨大な翼を広げ、再び空に舞い上がった。翼が光る。
ラガートが叫んだ。「いけない、みんな離れてください!!」ロイは瞬間的に後ろに飛びのいた。その直後―
デスバーンの翼から赤い光がKGに向かって放たれた。「メガ・ビームスマッシャーです!!」KGは身を屈めてかわしたが、
背びれが2つ吹っ飛んだ。「何て威力だ…荷電粒子砲でも無傷だったあのKGに傷を負わせるとは…」
レーダーに無数の機影が映った。本隊がやってくるのだ。「いっそのことKGとDBの相打ちを狙ったらどうですか?」
1人の共和国兵が言った。だがその時、通信回線に何者かが割り込んできた。「待て、それだけはならん」
右手の森林から一機のバーサークフューラーが出てきた。「奴には…デスバーンには、『マントラ・オーバードライブ』が
組み込まれている!!2体が戦いで弱った所に集中砲火を叩き込み、まとめて破壊するんだ!!」
リッツがその声を聞いて右を向いた。「まさか…プロフェッサー・イオ!?何故あなたがここに!!?」
「知ってるのか、リッツ?あいつは誰だ?」「彼は、俺が軍にいた頃ジェノブレイカーの整備をよく手伝ってくれた
科学者の、イオ・マクスフェルさんだ」イオは厳しい表情のままこう言った。「科学者として、実験が失敗したら事後処理をしなければ
ならん。デスバーンは…私が復活させたのだ。」
「何であんな化物を!!制御もできないのに何故野放しにしている!?」
「制御する術が無いわけではない…奴を制御する為に私がこれを開発したのだ。」
イオは懐からVesselsのディスクを取り出した。「これはVesselsと言って、ゾイドの意思を奪うことでどんなゾイドも
操縦が可能になる。実用化はされていないがな…」ゾイドの意思―それを聞いた時ロイはふとKGを見た。奴にも何か意思があるのか、と。
その時、ロイは唐突にKGの思念が見えた。ただ一つの意思が。
「・・・コ ワ セ・・・・ス ベ テ ヲ・・・ツ ブ セ・・・・!!」
ロイは全身に震えが走るのを抑えられなかった。氷の様に冷たく、それでいて激しい怒りに満ちたKGの思念。
「ただ破壊の為だけに存在すると言うのか…?何を以って、何故お前は全てを破壊する!!?」
もちろん答えなど無かった。ただKGの腹部から無数のミサイルが飛んできただけだった。
「クソッ!!みんな、Eシールドの用意をしろ!!」ミサイルの雨が先鋒隊に降り注ぐ刹那、後方からこれまた無数のビームが飛んできて
ミサイルを防いだ。「…これだけの弾幕を張れる奴は居ないはず…?」
それははるか後方から本隊が放った物だった。先頭にザイファーのディバイソンMk2が、部隊の中心には
アルティシア・フィールド大佐の駆る改造型ウルトラザウルス「インビンシブル=アルマダ」が、その周りにも
残留軍や傭兵の精鋭たちが戦場に近付いてきた。「感謝してよね、ウルトラザウルスまで見つけてきたんだから」
リッツが(いろんな意味で)辟易して言った。「…何だ、あの滅茶苦茶な武装のウルトラザウルスは…」
寝るぽです…補足入れてから。
・ラガート・ノーティス&アルティシア・フィールドもPSゾイド2のキャラです。
・ロイにKGの意思が見えたのは生まれ持ったシンクロ性の為。
・対KG戦を想定して部隊のゾイドにはEシールドジェネレーターが装備されてます。
・「インビンシブル=アルマダ」は「無敵艦隊」の意味…概出?
【第二章】
石ころが無造作に散らばる荒野。ひび割れる程乾いてはいないが草木が生い茂る程
湿ってもいない。そこに強風が容赦なく叩き付けられ、舞い上がる砂塵が視界を阻む。
それでも前方をよく目を凝らして見つめてみれば、その先にはちょっとした山程の高
さの斜面が左右に延々と広がっている。ところどころ巨大な岩が突き出しており、さ
ながら天然の要塞のようだ。そして頂上から空へ見上げていくと、分厚い雲が幾重に
も重なり、ちぎれ、流されていくのがわかる。…それにしても、今日は一際風が強い。
まるで映像を早送りしているかのようで、見る者を飽きさせない。もっともこの悪天
候でゆっくり楽しむ余裕があればの話しだが。
ここはファバロ・スタジアム。悪天候と劣悪な足場で有名な試合場だ。斜面の方か
ら強風が吹き下ろすのは言うまでもないが、実は斜面を背にして見た十数キロ先には
内海が広がっており、潮風が斜面目掛けて吹き上げている。山風と潮風がぶつかり合
うここは年中強風が吹き荒れ、しかもその流れが秒単位で変化するという実に厄介な
(観戦する側からすれば実に魅力的な)試合場なのだ。
しかしこうもひどい状況下、ゾイドそしてウォリアー達はどこで待機しているのだ
ろうか。
地面が、揺れ始めた。同時に開かれたる巨大な口!よくよく見れば、それが山並み
に平行して二つ開かれていることがわかる。やがて口の下から競り上がってきたのは
巨大な鋼の床。その上には、このスタジアムで試合するチームのゾイドと援護機がそ
れぞれ載っている。ここファバロ・スタジアムでは地下に施設を構え、その中でゾイ
ドもウォリアーも、果てはギャラリーも待機させているのだ。
一方の口から競り上がってきたのは言わずと知れたチーム・ギルガメス。床の上に
は民家二軒分はある巨大なゾイドが長い首と尻尾を伸ばし、うつ伏せに寝そべってい
る。大きな二枚の翼と細長い六本のとさかを背負い、果実のような赤い皮膚が鈍い光
沢を放つ。古人はその異形をして「魔装竜」と徒名し恐れた…筈だが、その割には大
きなあくびを掻いたりしており、何とも緊張感がない。一応、この赤いゾイドこそが
ジェノブレイカーではある。
「ブレイカー、もう出番なんだよ!」
呆れたギルが、コクピット内から怒鳴る。それは胸元にあるため、ブレイカーと呼
ばれた赤いゾイドは一瞬首をかしげるように見つめるのだが、やがて何事もなかった
かのように床に座り直した。…ギルもエステルも、赤いゾイドの名前に「ジェノ」の
名を冠することはない。殺戮を象徴する言葉で以て友人を呼び付けるわけがないのだ。
赤いゾイドの傍らにはビークルが一台、寄り添うように並んでいる。搭乗者は二人。
一人はエステル。いつもの背広の上にコートを羽織り、目はゴーグルで被っている。
もう一人は…。
「どぅも〜っ、こんにちは〜っ!アルテ・ヤンバーでぇ〜っす!今日も例によってチ
ーム・ギルガメスのビークルに同席させて頂いておりまぁ〜す!…へっくし!」
眼鏡を掛けた男がくしゃみをしながら必死の形相で実況中だ。中肉中背、ごく一般
的な体格ながら何気ない背広をまるで役者のごとく華麗に着こなし、髪の手入れも行
き届いた中々の優男…の筈だが、折からの強風・砂埃は折角の素材を台無しにしてし
まった感がある。すっかりチーム・ギルガメスの担当リポーターと化したアルテ・ヤ
ンバーだ。
WZB謹製の撮影用昆虫型小ゾイドが、ビークルを尾行する形で飛んでいる。小ゾ
イドの撮影カメラには試合直前にも拘らず埃まみれで涙目のアルテと、涼しい顔でビ
ークルのハンドルを握るエステルが好対照で映し出された。撮影のためにコートやゴ
ーグルは着用せずにいたアルテだったが完全に仇となった。
「格好つけるからよ、ほら」
撮影が一旦終了し、這這の体でビークルの座席の下に潜り込むアルテに、見兼ねた
エステルが濡れタオルを差し出す。
「ううっ、すいません…」
言いながら顔を拭き、遅ればせながらあるべき装備を整えるアルテ。
さてもう一方の口から競り上がってきたのはライゼン率いるチーム・ヴィントだ。
床の上に載っていたゾイドはバトルローバーよりは大きいという程度の体格で、四本
の足と頭、尻尾を地面にべたりと張り付けてじっとしている。特徴と言えば菫色の表
皮と、尻尾に生えた申し訳程度の角。そして背中に生えた扇形の巨大な帆。あと、頭
の上にこれも申し訳程度のガトリング砲がついていること位だ。ちょっとゾイドバト
ルで立ち回るには迫力不足の嫌いがあるこのゾイド、翻旗石竜・ゲーターという。
ゲーターのコクピットは動物で言うところの頭部に当てはまる部分にある(ゾイド
的には「頭部」という概念はない。コアを中心に発達した手足の一種とされる)。…
内部は暗く、狭い。中にはパイロットスーツを着込んだライゼンが、いつも通りの柔
和な表情でモニターを見つめている。
「ゼーゲル、調子はどうかのぉ…?」
名前を呼ばれたゲーターは「チチチチ…」と、夏の虫を思わせるか細い鳴き声を上
げてみせる。普通、バトルを目前に控えたゾイドはひどく興奮して唸り声を上げたり、
その反対にふてぶてしく押し黙っていたりするものだがブレイカーにしてもこのゼー
ゲルにしても、そういった緊張感がさっぱり伺えない。
ゼーゲルの脇にはファバロ・スタジアムの名前がプリントされたビークル(エステ
ルのそれよりは二回り以上大きい)が並んでいる。こちらは屋根・ガラス窓付きで、
中にはスタジアムの職員数名とアーリー・ウォルドほかライゼンの弟子達が十数名、
搭乗しており鮨詰めに近い状態だ。チーム・ギルガメスのそれとは違い純粋な試合観
戦用と看做して良いだろう。
ところでウォルドはさっきから気になることがあった。アーリーのことだ。見た目
行儀よく座ってはいるが、何やら納得いかない風な表情で外を覗いている。
「どうした、アーリー?さっきから様子が変だぞ?」
「ん?ああ、ウォルド兄い…」
一旦はウォルドの方を向くがすぐに外へ視線を戻しつつ答える。
「兄い、わかんねえんだけどさ…」
「?」
「よりにもよって何でゼーゲルなわけ?」
弟分は師匠の相棒が気に入らない様子だ。
「チーム・ギルガメスっつったらジェノブレイカーじゃん。幾らおっちゃんがよく飼
い慣らしたゼーゲルでも所詮はゲーターなんだぜ?どう考えても勝てる雰囲気がしね
えんだよな…」
「そうだね…」
ウォルドにはそれ以上に適切な回答が見出せなかった。自分だって、納得して見て
いるわけではない。だが、自分の師匠ならきっと何か考えがあるに違いない…そう、
漠然と思い描いているのに過ぎない。
強風が発する轟音と重なって、霧笛のごとき趣さえ感じさせる試合開始のサイレン
が、どこからともなく鳴り響く。
ギルの額の「刻印」が、一際強く輝いた。
「ブレイカー、行くよ!マグネッサー!」
友人の合図に応え曇天をひと睨みして吠えると、すぐさま低く身構え背中の翼を展
開する。高速回転する全身のリミッター。激しい金属音と共に蓋の隙間から白い光が
漏れ、火花が零れ出す。瞬間、同時に青白い炎を吹き出す背のとさか。しなやかな後
肢で大地を蹴る。ブレイカーはこの砂塵の中を帚星となって駆け始めた。
ブレイカーは先を急ぐ。今日の試合はチーム・ヴィント側との契約の関係上、現在
いる平野ではなく前方に広がる斜面の上で戦うことになっているからだ。これには特
別ルールが付加されている。斜面とルール上認められる部分からゾイドの全身がはみ
出してしまったら(つまり転落したら)失格となるのである。…そして今、斜面と認
定される部分を定める境界線を超えた。後は斜面を登ってチーム・ヴィントを待つだ
けだ。
時速七百キロを超える速度で斜面の中腹まで滑るように掛け登ってきたブレイカー。
ぐるりと周囲を見渡してみれば、突き出す無数の岩の何と険しいことか。大小様々の
形が入り乱れる様は、沢山のゾイドの群れを舞台に戦うのに等しい。まず間違いなく、
彼らはこの地形を活用してくるに違いない。ギルは早速レーダーを見て、相手の位置
の把握に努めた。
「ゲーターは小型ゾイドとしてはかなり速い方だけど、まあ二百キロを超える程度だ
ったよね…?」
ブレイカーに語りかけながら、ほぼ全周囲をカバーするこの機体独特のスクリーン
を見つめる。…反応して開かれるウインドウ。レーダーが光点を映し出す。丁度ブレ
イカーの外周一キロ以内に入り込んできたところだ。…しかし、この速度はどうした
ことか!?
「これは…ライガー並みじゃないか!」
光点の指し示すスペックは、ギルの知識上のゲーターのそれを遥かに上回っている。
…1.5倍?それとも1.7倍か?それが、ブレイカーの外周を弧を描くように近付
いてきた!一キロ…七百五十メートル…五百メートル…!
「ええい、回り込まれる前に!」
たまらず、ブレイカーを向かわせようとするギル。求めに応じ魔装竜が大地を蹴ろ
うと右足を振り上げたその刹那。砂塵のうねりに混じって、斜面の中腹に鳴り響いた
のは乾いた金属のドラムが連打される音。…瞬間、ギルの左足に走る激痛!同時に、
前のめりになって倒れるブレイカー。
「うわあああっ、なっ何だ!?」
ギルの体はコクピット内でロックされた状態ながらも上下にしこたま揺れた。慌て
つつも、すぐさまうつ伏せ状態のブレイカーに両手で体を持ち上げさせるよう指示す
ると、自身はドラム音の鳴り響いた方角を睨む。…敵の姿は見当たらない。ギルは先
程レーダーで見た弧の動きを思い出し、右から左へゆっくりと見渡す。岩と岩の隙間
に、敵が影でも見せる筈だ。
「いない…?そんなことは…」
ないだろうと、レーダーウインドウを開く。
…いた。
いや、待てよこの位置は…?
「右の…脇腹の方かよ!」
咄嗟に右を向き直す。岩の隙間を実に巧妙にくぐり抜けつつ、砂塵を巻き上げ電光
石火の勢いで近付く影が一つ!
「くうぅっ!ブレイカー跳ねてっっ!」
たまらずギルがレバーを振り降ろす。
ブレイカーの跳躍。ギルは相棒と共に宙に舞った瞬間、全方位スクリーンの下方を
キッと睨み、敵の姿をこの目に焼きつけた。敵…ゼーゲルという名のゲーターは、尻
尾の短剣を振り回して斬り付けようとしてきたのだ。堅い装甲を持つブレイカーも脇
腹のそれは決して強固ではない。実に危機一髪であった。
「それにしても…?」
着地するブレイカー。ギルは首を捻る。紛れもない、どこから見てもゲーターだ。
珍しいことといえば、ブレイカー同様マグネッサーシステムを使い、地面を滑るよう
に進んでいること位だ。しかしそれもゲーターが本来から持つ能力の一つに過ぎない。
ではこの機敏な動きは一体何なのだろう。
「我が相棒の動きに興味を持たれたかな?」
割り込んできた通信。
「ラ、ライゼン…さん!?」
「ホ、ホ、ホ、御存じの通りゲーターは、古くは電子戦用として使われてきたゾイド
じゃ。しかし電子戦の技術は、何も索敵や撹乱に限るものではない。…我が相棒ゼー
ゲルはな、風の流れを読みこなすのじゃよ」
「か…風の…流れ…!」
「この通り、風の流れを読みこなし、身を任せる。さすれば我が相棒は、風を得たヨ
ットのごとき機動力を発揮するわけじゃ!」
ゼーゲルは、背中の帆を電子戦のみならず強力な移動手段としても活用していたの
である。絶句するギル。そしてこのやり取りを聞いていたアルテも。
「だ、だからと言って三百キロを超えるスピードを簡単に出せるものなんですか、エ
ステルさん!?」
応対するエステルは努めて冷静だ。
「ええ、そうよ。そこまでやってのけるコンビだと知っていたから試合を申し込んだ
のよ」
言いつつ、この試合で初めてギルに指示を送る。
「ギル、驚かない!相手は大先輩なのよ?それ位出来て当然でしょう?」
「は、はい!」
「いい?ブレードライガーだと思ってぶつかりなさい。決して侮ることのないように
ね?」
一方、チーム・ヴィント側のビークルは早くもお祭りムード全開だ。中でもアーリ
ーは凄まじいエキサイトぶりである。
「すげぇっ!おっちゃんすげえよ!」
「うん、ライゼンさんがここまですごいなんて!」
「よっしゃ、このままやっちゃってよおっちゃん!ジェノブレイカーなんかぶっ殺せ!」
ギルはエステルの助言を腑に落とそうとしていた。ブレードライガー…千年前、こ
の相棒が宿敵とし、又よきライバルでもあったという稀小ゾイドは、確かに常速で三
百キロを軽く叩き出すが…。
「さぁて、動かぬのならこちらから行くぞ!」
ライゼンはギルの都合などお構い無しだ。ゼーゲルが岩影に隠れ、出ては又隠れる。
そうしてブレイカーの周囲をぐるぐると回り始めた。…再び見せる幻惑の動きに、ギ
ルも迂闊には動けない。岩を背にし、何とか目で追おうとする。
岩影から鳴り響くドラム音!慌てて翼を前方に向ける。…何らの衝撃も感じない。
しかしこの時、空から何か降ってきたもの。
「石ころ…?ら、落石!」
空を見上げる暇もなく、地を蹴ってその場を離れる。ガラッ。ガラガラッ。後を追
うように、小型ゾイド程の大きさの岩が降ってきた。…落石の追撃は緩むことがない。
後方を勢いも激しく追いかけてくるかと思えば、今度は前方をまさしく壁のごとく阻
もうとする。
「ええい、これじゃあ埒が開かない!ブレイカー、跳ぶよ!」
渾身の力で跳躍。一度目で岩の中腹に足を引っ掛けると、二度、三度と跳ねて頂上
に近付く。
「ようし、これで僕らを狙ってきたらその方向目掛けて飛び降りるだけだ!」
その時、又しても鳴り響く例のドラム音。しかし、二人目掛けて銃弾は跳んでこな
い。訝しむギル。しかし直後、受けた「宙を浮くような感覚」に全てを悟った。
「…あ、足場を崩す気かよ!」
たまらず飛び降りるブレイカー。後を追うように崩れる岩。…咄嗟の動作故、ブレ
イカーは着地に失敗、横転した。
仰向けに転がってしまった。ブレイカーは翼を支えに体を持ち上げようとするがそ
の時。
「ホッホッ、気を抜くなよギルガメス君!」
突っ込んできたゼーゲル。竜巻きのように全身を回転、うねりを上げて斬り付けて
くる!
「ええいっ、翼をバネに!」
地面に翼を叩き付け、てこの原理で体を持ち上げる。間一髪、ゼーゲルの斬撃を躱
すブレイカー。
両者の間合いが離れる。一瞬の静寂。ギルは肩で息を落とすのも束の間、先程の
「思索」の続きを始めた。…始めざるを得なかった。今のゼーゲルは彼に一個師団並
みの威圧感を与えている!一刻も早く冷静な判断をしなければいけない。
「相手に素早く近付いて斬り付ける『一撃離脱』の戦法もよく似ているよね…。じゃ
あ違うことと言ったら…?」
独り言のようなギルの呟きに、ブレイカーがスクリーン上に小さくゲーターの全身
図を表示する。
「…わかった!ブレイカー、この辺で一番広いところは?」
ギルの求めに応じ、スクリーンに映し出されたブレイカーの答え。早速両者は宙を
舞った。
「ホ、ホ、ホ、策ありと見て良いのかのぅ…」
言いつつライゼンとゼーゲルは後を負う。
ブレイカーが辿り着いたのは、中腹でも比較的岩の少ない箇所だ。
「成る程、少しは考えたな。落石や足場崩しはこれで効かぬ。…しかし!」
ライゼンはガトリング砲の照準を定める。先程から鳴り響くドラム音の正体だ。ブ
レイカーは今度こそ、翼を前方に展開して防御する。
ゼーゲルのコクピット内。モニターが、ライゼンに風の流れを刻々と伝える。それ
に従いブレイカーの外周を回りチャンスを伺う二人。
「最も勢いの強い風は…これじゃ!」
叫ぶが速いか、鎌鼬に姿を変えるゼーゲル。ブレイカーの背後から、渾身の力で斬
り付けてきた。…しかし!
「せりゃあああっ!」
ハンドルを握り締めるギル。瞬間、独楽となって全身を回転させるブレイカー。…
小型ゾイド並みの太さを持つ尻尾が、しなやかに唸る!
ドーン。ゼーゲルとブレイカーの尻尾がぶつかり合う。…だが、圧力の違いは明ら
かだ。弾き飛ばされるゼーゲル。
「おぉーっとっとっとぉ!」
口調とは裏腹に、ライゼンの素早いレバー捌き。辛うじて転倒を防いだゼーゲル。
しかし、ものの見事に岩に叩き付けられる。
「そ、そうか…幾らゼーゲルがブレードライガー並みの脚力で迫っても、格闘戦の手
段は尻尾の斬撃のみというわけですか!?」
アルテの問いかけに頷くエステル。
「そういうこと。だから予測さえできれば、カウンターで返せば良いわ」
しかし肝心の彼女は、何故か表情が想像以上に険しい。
「エステル…さん?」
「…ああ、ごめんなさいね。でも、勝負は全てこれからよ。相手が正真正銘の…だっ
たら…」
言いかけたが中断し、そそくさとマイクをとる。
「ギル、追撃の手を緩めない!」
「は、はいっ、エステル先生!」
タイミングの良いエステルの叱咤にギルは余韻という大敵から逃れ、速やかに追撃
を開始した。大地を蹴るブレイカー。翼を左右に広げ、胴体目掛けて斬り付ける。
「よっ、はっ、それぃっ!」
それを軽妙に躱し、瞬く間に間合いを広げるゼーゲル。連続攻撃から逃れ、何とか
又岩の間に隠れる。
「ど、どどどどーなってんだよ!おっちゃんは大丈夫なのかよ!」
チーム・ヴィント側のビークルは一転、悲鳴と怒号が渦巻いている。落ち着かない
他の少年少女達に頭を抱えるウォルド。
「狼狽えるなよアーリー!ライゼンさんを信じてないのかよっ!」
「そ、そりゃあ…」
「なら黙って見てる!ほら、みんなも座って!」
ビークル内の騒ぎを聞きながら、ライゼンが呟く。
「大したものじゃ、ギルガメス君。これだけ出来て、あの子らと同世代だというのじ
ゃからなぁ」
その声はブレイカーのコクピット内にも届いた。一瞬、聞き入るギル。
「これだけ出来るのなら、わしも何らためらうことはない。精一杯のおもてなしを受
けて頂こう!」
「…!」
ライゼンの決意の叫び。身構えるギル。
…。
…。
ヒュンッ。
風を斬る音がした。
…。
「くっ…っっっ、はあぁっ!?」
一拍遅れて、ギルの右肘を支配する激痛。たまらずレバーを離し、腕を上げてみる。
「な、何だよこれぇっ!?」
肘の辺りから血が滴り落ちている。ブレイカーを支配するオーガノイド・システム
はパイロットとの同調(シンクロ)によって成り立つ。ブレイカーの被害が甚大だと
パイロットであるギルがそれを肩代わりする事態に陥るのだが、だとしたらこれは…!?
慌ててブレイカーの右肘をスクリーンで見る。…油だ!油がドクドクと滴り落ちて
いる。
今初めて、戦士らしい不敵な笑みを見せるライゼン。
「フ、フ、フ、奥義、ブーメラン・スナイプ」
****
一人コミケ、二日目終了。明日のコミケは色気(エロ気とも)抜群ですが、
自分のSSはひたすら地味に、突っ走ります〜。
【第三章】
チーム・ギルガメス対チーム・ヴィント。若さと熟練の技とが激しくぶつかり合う
この戦いは、たった今から人智を超えた領域へ突入することとなる。
「ぶ、ブーメラン・スナイプ…!」
初めて聞く言葉に狼狽え、戸惑うギル。今、ライゼンとゼーゲルのコンビは一体何
をしたというのか。
「ギル!ギル!聞こえて!?」
たまらず怒鳴るエステル。
「ブーメラン・スナイプというのはね、強風を利用して弾丸の軌道を変化させる技術
よ。成功すれば弾丸は、弧を描くような軌道で襲い掛かってくるわ!」
「そ、そんな無茶苦茶なっっ!」
エステルの解説にギルも、そしてアルテも声を上げる。
「立派な技術じゃよ。それも風を読みこなすゲーターだからできる、とっておきの奥
義じゃ。これでお主の相棒が持つ堅い装甲も完全に無意味となる。…それ!」
ライゼンの掛け声と共に、又ヒュンッと風を斬る音がする。
「…ぐっ、がぁぁぁっ!?」
又しても一拍置いて、今度は背中に走る激痛。ヌルッとした感触。間違いない。T
シャツが鮮血で染まっていくのが肌でわかる。
「今のは左の翼の付け根じゃ。さて、今度は…」
「そんなこと、聞いていられるかぁっ!」
ブレイカーを走らせるギル。常に移動していれば狙い撃ちはされない筈だ。…だが。
「右足の、膝じゃ」
再び風を斬る音。
「…んぐっ?…はあぁっ!?」
右膝から血飛沫が上がり、スクリーンを汚す。転倒するブレイカー。
「畜生、どこに隠れてる!?」
必死の形相でスクリーン全体をぐるりと見渡すギル。岩と岩との間…間…あい…だ
…!
「そこだぁぁぁぁっ!」
まだ無傷の左足で大地を蹴り、宙に舞う。体を左半身にねじり、渾身の翼の一撃を
狙うが。
ゼーゲルの両耳の辺りから弾ける火花。見えるのはブーメラン・スナイプ用の銃口。
ヒュンッ、ヒュンッ。
左肩を、そしてさっき傷付いた左の翼の付け根を、貫く銃弾。一撃を放つこともか
なわず失速し、墜落していくブレイカー。
「フ、フ、そのように傷付いた状態ではブーメラン・スナイプなど使わずとも余裕で
狙撃できるわい」
しかし、ギルもそう簡単には諦めない。激痛に息を荒げながらもブレイカーの姿勢
を戻す。
「ま…まだまだ!」
だが、再び肉体を走る衝撃。
「…がはぁっ!ぐあぁぁぁ!?」
「左の、腿」
告げるとそのまま岩と岩との間をすり抜けていく。
「し、しまった!又…」
「左の、膝。そして右の、腿」
ドスン。ドスン。
弧を描く弾丸がブレイカーの体に食らい付く度、激しく出血するギルの身体。
ブレイカーは両足の関節部分を負傷し、堪え切れず前のめりに倒れた。
「右の、肩。左の、肘。…そして、最後は右の翼の付け根、じゃな?」
ドスン。ドスン。…ドスン。
遂に激痛は、ギルの全身を支配した。
「あ…ぐうぅっ、はあぁっ!?くそっ、や、止め…」
激痛が一瞬、ギルに見せた幻覚。全身至る所に負った傷を死に神が撫で回し、そこ
に一本一本釘を打ち付けていくような。
ずるり。力を失ったギルの両手。両足も、踏ん張りを失い力なく投げ出された。よ
く伸びた背筋も張りを失い、肩から項垂れる。…一瞬、失神したかのように見えたが
辛うじて首だけはすぐに持ち上げ、スクリーンを睨み付けるギル。だがその瞳からは
生気が抜けかけている。先程まで額に輝いていた刻印の光も弱い。息も荒く、素人目
には早々に手当てが必要な疲労困憊ぶりだ。
「ギルガメス君が…ブレイカーが…こうも相手にならないなんて!」
絶句するアルテだったが隣にエステルがいることを思い出すと慌てて咳払いし、話
題を変えることに努める。
「それにしても、こんな妙ちきりんな技術があるとは…」
エステルはアルテに一瞥を暮れる余裕もないまま呟き始める。
「理屈だけは簡単よ。…実体弾というのは思ったよりも風の影響を受けるわ。私達が
普段使う拳銃だって、強風の中100m先の標的を正確に撃つのは至難の技なんです
もの。
ブーメラン・スナイプはそれを逆手にとった技術だわ。風の流れ・強さを読みこな
すことで、わざと弾丸の軌道を変化させ、常識では考えられない角度からダメージを
加えるのよ。もっともこれ程自由自在に変化させる例は私も初めて見たけれどね」
「な…成る程…。しかしそれにしても、こんな恐ろしい技術を持つライゼン氏は一体、
何者なんでしょうか?」
アルテの質問に一瞬言葉が詰まるエステル。…やがて聞こえる呟き。
「考えられるとすれば、只一つ」
「…?」
エステルの額から刻印が眩く光り輝き始める。
「…シュバルツセイバー」
「シュ…シュバルツ…セイバー…ですって!?あのガイロス公国伝説の特殊部隊!」
一方のチーム・ヴィント側のビークルは、この圧倒的な戦況に酔いしれ…などはし
なかった。寧ろ、潮が引いたかのような沈黙ぶりだ。中でも一番お祭り好きのアーリ
ーは、握り締めた手をガタガタと震わせている。無理もない、今、モニターに映るラ
イゼンの姿からは普段見せる好々爺ぶりが微塵も感じられない。冷たすぎる程に冷酷
な戦士の姿だ。
「…そ…だろ…」
張り詰めた雰囲気の中、必死の思いで腹から声を絞り出すアーリー。
「嘘…だろ、おっちゃん!なんでこんな、えぐい戦い方をするんだよ!もっと…もっ
と、格好良く戦って格好良くブレイカーなんかブチのめすんだと思ってたのに…。わ
けわかんねぇ、わけわかんねぇよっっ!」
「ゾイド乗りの、掟じゃよ」
重々しく口を開くライゼン。
「わしはウォリアーである前に、ゾイド乗りじゃ。ゾイド乗りはゾイドを愛する。愛
するものを守りたいのなら人からどう誹られようとも全力を尽くす!…只、それだけ
じゃよ。ましてや相手が伝説のジェノブレイカーでは尚更じゃ」
言うなり、ゼーゲルはブレイカーの前に姿を表した。どす黒く光る尻尾の剣。
「ギルガメス君、君はウォリアーとしても、ゾイド乗りとしてもよく頑張っている。
しかし!『破滅の魔獣』の血統は根絶やしにするのが、わしをゾイド乗りに育て上げ
てくれた『組織』の教えじゃ。…覚悟しなさい」
その言葉と共に、ゆっくりと地面を滑り始めるゼーゲル。…最も勢いのつく強風が
来るのを待っているのだ!
それを、只ひたすら黙って見ているしかないギル。虚ろな瞳は敗北の覚悟さえおぼ
つかない。このまま何もできずに死を待つのみなのか…?
「ギル!ギルガメス!大丈夫?」
急にスクリーン一杯にエステルの美貌が映し出される。突然のことに思わず伸びる
背筋。…だが彼女の表情からは「らしくない」焦りが伺える。
「せ…先…せ…い…?先生…先生…!」
しかし、今のギルにはそんなことはどうでも良かった。やがてギルの頬を伝い始め
る、止め処ない涙。自分自身の急激な変化に驚いたのか、顔を臥せる。
「どうしたの、ギル?泣かないで、ちゃんと話して御覧なさい」
「力が…入らないんです…。両手も、両足も、関節の辺りが焼け付く程痛くて…」
やはりそうか!エステルはギルの身体にどんな異変が襲い掛かっているのかある程
度予想はついていた。
「いい、ギル?チーム・ヴィントのライゼン氏は、弾丸が貫通しないように微調整し
ながらブーメラン・スナイプを決めたの。ブレイカーとのシンクロ率が高い、今のあ
なたが受ける苦しみは大変なものがあるからね」
「そ…そうだったのか…」
やがて一拍置いて下される彼女の答え。
「…『サクリファイス』を行ないましょう」
「サクリファイス、ですか!?」
「そう。サクリファイスを駆使してブレイカーに埋め込まれた弾丸を取り出すのよ!」
「でも、エステル先生。目前に敵がいる状態でサクリファイスは…ちょっと…」
「何もゼーゲルの前でする必要はないわ。ここを移動しましょう」
「い、移動!?」
「…あなた、まさかいくら関節が痛いからって、ブレイカーが全く動けないとでも思
ってる?」
一方ゼーゲルは、ブレイカーの脇腹をぶち抜く程の走力が期待できる強風を待ち、
ぐるぐるとその周囲を回っていた。…やがて。
「来たあっ!」
最高の、風だ。
「テイルカッターの、餌食となれぃっ!」
ゼーゲルの、この日一番の加速。帆の頂点を中心とし、ノコギリのように回転して
向かっていく。
この時、まさしく生ける屍と化したゾイドが見せた猛烈な足掻き。
尻尾を、首を、可能な限り高く振り上げ、地面に叩き付けるブレイカー。一発…二
発…。三発目、そして。
四発目。…魔装龍の深紅の巨体が、僅かながら宙に浮いた。
「マグネッサーっ!」
腹の底から声を絞り上げるギル。全身のリミッターから吹き零れる火花。それと共
に背のとさかから弾ける蒼炎!
「行っけぇぇぇぇっっ!」
天井を仰いで叫ぶギル。
突っ込むゼーゲル!
今、まさに尻尾の剣が打ち付けられる寸前に、ブレイカーは間一髪躱す。しかしそ
の意味するところは!
「ば、馬鹿もの!そっちは下り坂じゃぞ!」
ライゼンの言葉などお構い無しに、姿勢制御もままならない状態で斜面を滑り下っ
ていくブレイカー。…いや、滑るなどという生易しいものではない。ところどころ見
受けられる岩の出っ張りに何度も身体をぶつけ、さながらピンボールの玉のごときデ
タラメな軌道で転がり下っていく。
「あああああぁぁっっ!」
手足を力むことは愚か口を閉じることもできず、ことの成り行きに覚悟を決め叫ぶ
ギル。
…ドォーン。
地の底で、落雷がこだました。
想像を越える事態に我を忘れていたライゼン。だがハッとなって本来の仕事に戻る。
「審判団!審判団!?…試合は、終了してはいないのじゃな?」
程なくして、ゼーゲルと、二台のビークルに届く無線。
「ブレイカーはファバロ・スタジアムの最下段まで落下しましたが、境界線を越えて
はいません。パイロットの生命反応もゾイドコア反応も確認されましたので、試合の
続行をここに宣言します」
「な、何ということじゃ…」
呆れ返るライゼン。こうでもしなければ彼らの敗北は確定的であったが、それにし
ても何と運のいい奴!
一方、エステルは冷汗をかいた末の結果に胸を撫で降ろす。隣ではアルテが予定外
の心的疲労から、ビークルの座席にどさりと身体ごと預けたところだ。
「い、生きていましたね…ハハ、ハ…」
精一杯のコメントを呟くアルテとは対照的に、さっきまでとは表情が一変するエス
テル。
「ここからが問題よ!ギル、ギル、聞こえて?」
ゼーゲルが、険しい道を慎重に坂を下っていく。コクピット内でライゼンは、再三
に渡って溜め息をついていた。
「こんな道なき道を、何と無茶なことをする…」
やがて近付いてくる、坂の終点。レーダーを睨み、ブレイカーの反応を確認するラ
イゼン。そうだ、どう足掻こうが相手は満身創痍。反応を見失いでもしない限り勝て
るに決まっているではないか。そう、彼も相棒も確信していた…先程までは。
ゼーゲルの足が、ふと止まった。
「ゼーゲル、何を狼狽えておる!…は、反応が、消え…!?」
その時、二人の目前に。
…舞い立ちはだかった、深紅の竜!
「ちいぃぃっ!避けるんじゃゼーゲルっ!」
ライゼンが叫ぶとほぼ同時に翼の刃を振りかざすブレイカー。地を蹴るゼーゲル。
…その一瞬に割り込み、翼が振り落とされる!
「ゼーゲルっ!?大丈夫か!?」
慌てて被害状況を確認するライゼン。…右の前足を、えぐられた。致命傷ではない
がこれでは方向制御が極めて困難だ!
「…ギルガメス君、お主、『サクリファイス』を発動させたのじゃな?」
ブレイカーのコクピット内。ハァ、ハァ、と喘ぐギル。疲労の程は先程とは比べ物
にならない。だがその息遣いとは裏腹に、手はしっかりとレバーを握り締め、足を大
きく踏ん張っている。両眼には生気が再び宿り、額の刻印の輝きも又眩い。
「か…完璧ではありませんけど、ね」
オーガノイドシステム搭載ゾイドはコアの活動を促進することにより、急速に自己
修復することができる。しかし実行のためにはコアの演算速度を向上させる補助装置
が必要だ。通常はその役割を「オーガノイドユニット」と呼ばれる小型ゾイドが代行
するのだが、それを持たない場合パイロットがまさに「生体ユニット」として「身代
わり」に立つ。「サクリファイス」の所以である。
坂の終点に転がり落ちた結果辛うじて意識を保っていたギル。スクリーンを通じて
エステルに、不完全な刻印の能力の解放措置を施されていた。
「さあ、私の眼を見て…」
その美貌とは裏腹に氷の剣のごとく鋭いエステルの両眼。文字通り釘付けになるギ
ル。
「如何なる困難も歓喜も、愛する友と共有します。…はい!」
「如何なる…困難も、歓喜も…愛する友と…共有…します」
一呼吸置き、二人が叫ぶ。
「サクリファイス!」
「サクリ、ファイスっ!」
様々な色に変化する刻印。激しく明滅するコクピット内の計器類。
ギルは彼の関節から異物感が消えていくのがわかった。だが、同時に魂を抜き取ら
れるかのようなひどい疲労感にも襲われ始める。サクリファイスとはゾイドのダメー
ジをパイロットが肩代わりする技でもあるのだ!
ポロリ。…ポロリ。
ブーメラン・スナイプによってえぐられた傷口から、一つ、又一つとこぼれ落ちて
いく弾丸。
そこに近付いてきたゼーゲル。激励するエステル。
「さあ!完全回復ではないけれど、弾丸は全て抜き去ったわ!彼奴を倒していらっし
ゃい!」
仕切り直しの咆哮を天に投げかけるブレイカー。
「おおおおおっ!」
負けじと吠えるギル。こうなってはダメージもクソもない。ブレイカーを只々縦横
無尽に走らせていく。
「翼のぉっ、刃よぉっっ!」
一撃。息つく間もなくもう一撃。デタラメと言っても良い位の勢いで翼を薙ぎ、又
振りかぶる。
「食らい付いていきなさい、ギル!」
「おぉぉおのれぃっ、ブーメラン・スナイプ可能な間合いまで引き離さないつもりか!」
必死の思いで避け、又後退するゼーゲル。しかし先程の一撃によるダメージは想像
以上だ。何とか躱すことはできても、ブレイカーの巨体をかいくぐって間合いを広げ
るには至らない。
「も…最早…わしらも、ここまでか…?」
自然と漏れた弱音。
「そんなこと言うなよおっちゃん!」
激しい応酬に刮目していたアーリーは、遂に連絡用のマイクを運転席から奪い取り、
絶叫する。
「まだ、戦えるだろ!ここで諦めちゃったら後悔しか残らないじゃん!」
ハッとなるライゼン。
「フ、フ、お主もギルガメス君も、本当に知った風な口を聞くのぅ。…じゃが!」
眼を見開くと、ゼーゲルの身体を再び独楽のように回す。そこに降り降ろされるブ
レイカーの翼!…二本の剣がぶつかり合うが、一方は弾き飛ばされ、又一方は激しい
痺れを憶えた。背骨を伝う衝撃にのたうち回りたいところを必死に堪えるギル。
ゼーゲルの捨て身の反撃は僅かだが両者に間合いを与えた。
「肉を斬らせて骨を断つ、じゃ!勝負!」
絶叫するライゼン。その言葉を耳にした瞬間、この試合の命運が掛かったことをギ
ルは悟った。
「ゼーゲル、ブーメラン・スナイプ!」
「ブレイカーっ、魔装剣っっ!」
トリガーを握るライゼン。相棒の姿勢を制御するギル。ゼーゲルは身構え、ブレイ
カーは額のとさかを前方に展開する。
深紅の竜、飛翔。
迎え撃つ、菫色の石竜。
「せりゃぁぁぁぁっっ!」
「これで、どうじゃあぁぁぁぁっっ!」
ヒュンヒュンッ、ヒュンヒュンヒュンッッ。
風切る音が、立て続けに襲い掛かる。
ブレイカーの背のとさかからは、この日もっとも大きな蒼炎が輪となり広がった。
「ぁぁぁぁぁっっ!」
その質量に、常軌を逸した加速が注ぎ込まれた結果は。
「馬鹿なっ!?この土壇場で最高速度を僅かながら越えおるとは!
これがオーガノイドシステムというものかぁっ!?」
ゼーゲルが放った弾丸は全て、ピンポイントを外れ、ブレイカーの堅い装甲に当た
り、弾かれた。そして、そのまま…。
覆い被さったブレイカー。しかし、必殺の魔装剣はゼーゲルに突き立てられること
なく、寸前で止められている。
「お主…」
それに気がついたライゼンの問い掛けに対し、ギルは只々肩で息をするばかりだ。
「剣を刺さないと、勝ったことにはならんぞ?」
「小型ゾイドに…こいつを刺したら…死んじゃいます…」
荒い息のまま何とか答えるギル。
「馬鹿者!それがゾイド乗りの掟じゃろうが!?」
「バトルやってんだ、僕らは!あなた達の命なんか全然望んでないよッ!」
間を置くことなく返した反論。だが、自らの怒気強さに気付いたギルは、慌ててト
ーンを下げつつ言葉を続ける。
「ブレイカーも、同じ気持ちです…」
「ふんっ、見ればわかるわい」
「え…」
「幸か不幸か、わしらは『又』戦える。甘過ぎる誰かさんのお陰でな」
「そ、それでは…」
「ギブアップじゃよ。但しこの試合に対してのみ、じゃ」
言いつつ、帽子を取ってから自然に出た呟き。
「のぅゼーゲル?ゾイド乗りの、シュバルツセイバーの理屈なんぞ、古臭いだけかの
ぅ?まあ、この少年に魔装竜を預けるのは一安心という程ではないが、どこぞの愚か
者の手に渡るよりは余程良い…」
チチチチ…と、試合前に良く聞けた鳴き声で返すゼーゲル。
一方のブレイカーは、ゼーゲルから離れると、疲れ切った様子で膝から崩れながら
も天を見上げて一声吠えた。
ギルはそれを半ば呆れながら聞くと、脱力して座席に身体ごと預ける。ホッと胸を
撫で下ろすアルテ、そしてエステル。対照的に、アーリー達は一様に号泣した。
試合終了を告げるサイレンが、鳴った。 (了)
一人コミケ、終了〜。これから一人で打ち上げ。ゾイドを眺めながら飯でも喰います。
【後書き】
実は本稿完成時、余りの不出来に嘆きました。何が不出来かって、
三章構成ってのがひどくバランス悪いと感じてならなかったもので。
本当はライゼン翁と、彼がバトルに臨む理由となったシュバルツセイバー側の仕掛人との
やり取りを書きたかったのですが、上手く組み込めないまま脱稿するに至りました。
今でもその辺りは悔いが残りますが、自戒の意味も込めて手を加えてはおりません。
まあ全体的には不出来だと思っていますが、一つ一つの見せ場に関しては、
これはもう自分ならではのシーンのオンパレードだと思っています。
ようやく、発表が終わりました。
一年間の厄がこれでようやく落ちたかな?と思い、ホッとしています。
問題の三章構成も、気がつけば冬コミが三日開催。なのでその裏を狙って発表という
趣向ができましたから、本稿は元々こういう形で発表される運命だったのかも知れません。
生まれて初めて縁というものを感じている次第です。
それでは、来年も面白い作品を投稿できるよう頑張りたいと思いますのでよろしくお願い致します。
「つーかよー、共和国の奴らもいい加減しぶといよな〜…。」
ネオゼネバス帝国軍本部にて、将官の1人がそう呟いた。
「だって考えても見ろよ。戦力も何もかもこちらが遥か上。とっくに士気を失って投降しても
おかしくない。なのに今だにあちらは反抗してくる。しかも士気を下げずにだ。」
「確かにな、それは共和国軍に本当に強いゾイド乗りというのがまだ生きているという事だろう。
そう言う連中の存在が他の連中も勇気付ける事につながって今に至るのだろうな…。」
将官の愚痴に対してとなりにいた別の将官がそう応えた。
「いや待てよ、ということはだ、その本当に強いゾイド乗りを潰せば、心の支えが無くなるのだから、
共和国軍の士気は一気に下がってこちらの大勝利って事にならないか?」
「そ…それは確かに!!あんた天才だよ!!」
周りの将官達はその提案を出した将官に拍手を送った。
ということで、早速会議が開かれれる事になった。会議室に軍のお偉方や科学者と言った人間が
大勢集まり、殺伐とした不陰気の中で会議が開かれたのだった。
「とりあえず、我が軍の諜報部が調査した結果によれば、共和国軍において士気向上の要因と
なっている「本当に強いゾイド乗り」はやはりまず第一にグリーンデビルことマオ=スタンティレルだと思われます。」
「またグリーンデビルか…。」
解説者の言葉に対して気を落とした感じで将官の1人がそうツッコミを入れた。そして、会議室の
ビッグスクリーンには若干子供っぽさが残っている1人の美しい女性の姿が映されていた。
金髪のショートヘアーに和服と洋服の中間のような感じの服装。体格は小柄かつ細身であり、
スタイルも結構いい方。雑誌のグラビアとかテレビの歌謡番組で歌でも歌ってそうな感じの
女性だった。そして、その緑色の瞳や、緑色の服装。それがグリーンデビルと呼ばれる要因と
なっていた。彼女の名はマオ=スタンティレル(18)ゴジュラスギガのパイロットをしている
共和国軍少尉であり、帝国軍にグリーンデビルと呼ばれて恐れられているエースパイロットだった。
「しっかし、こんな可愛い娘に我が軍のデスザウラーやらセイスモサウルスがおきなみ破壊されてる
ってのが今だに信じられないんだよな〜…。」
「しかし、人は見かけによらないと言う言葉もありますし、現にデスザウラーやセイスモサウルスは
このグリーンデビルの手によって破壊されています。」
将官の一言に対して解説者はそう応えた。そして、解説者が手に持っていたリモコンのボタンを
押すと、映像が切り替わり、一体のゴジュラスギガの姿を映しだしていた。
「これがご存じの通り、グリーンデビルの愛機のゴジュラスギガです。普通のギガと違い、
青い部分がメタリックグリーンになっている所がポイントです。なお、グリーンデビル本人は
三国志武将から名前を取って「カンウ」と呼んでいるそうです。」
解説者がそう言うと映像の中のカンウは回転しあらゆる角度の映像が映し出された。
「そして、これが前線の映像です。」
さらに映像が切り替わり、カンウの戦いが映像に映し出された。それは非現実的なものだった。
ゼネバス砲をたやすく回避し、自らの倍の重量のデスザウラーを投げ飛ばす。とても普通では
考えられない出来事が映像の中で繰り広げられていた。
「何度見てもビビルよな〜奴の戦いは…。しかし、奴の本当の恐ろしさは奴本人の強さなんだよな〜。」
映像を見た1人の将官がそう言葉をもらした。
「確かに貴方の言う通りです。カンウの戦闘力も確かに恐ろしいですが、その恐ろしい戦闘力の
要因は操縦者であるグリーンデビル本人にあります。さらに、このグリーンデビルについてですが…。」
解説者がそう言うと同時にさらに映像が切り替わり、今度はマオ本人が映し出された。それは、
これまた非現実的なものだった。自分よりも一回りも二周りも三周りも大きく、筋肉モリモリの
大男をいともたやすくねじ伏せ、素手で歩兵用超小型ゾイド・アタックコングを殴り倒すという
まさしく冗談のような光景が映像内で繰り広げられていた。
「なあ…アイツって、本当に人間なのか?遺伝子操作を受けているとか、実はサイボーグとかよ…。」
「実は赤ん坊の時にこの星に送り込まれたサ○ヤ人だったりしてな。」
「じゃあそのうち姉か兄か何かが迎えにでも来るのかな?」
などと、将官達がにぎわい出す。
「残念ですが、彼女は我々と同じ普通の人間だそうです。」
「え………。」
解説者の一言で、将官達は一斉に黙り込んだ。そして、解説者は数枚の紙を取りだした。
「これは我々が諜報員に取ってこさせたグリーンデビルの健康診断における検査結果なのですが、
約4分の1地球人の血が混じっているというだけの中央大陸風族系の人間に過ぎませんでした。
遺伝子操作やサイボーグ手術を受けた形跡なども見あたりません。」
「約4分の1が地球人ってのが引っかかるな〜。」
「その地球人の血についても何らおかしいところはありません。内訳としては中国系とイギリス系、
あと微妙に日本系の血がそれぞれ混ざり合ったものであり、別にこれといって変な所は無いです。」
「そういえばサ○ヤ人と地球人の血が混ざり合うと強い子供が産まれるって話があったな。
それと同じような感じで強い子供として生まれたなんて事は?」
「いえ、地球人との混血は数多いですが、特にそのような報告はありません。」
「じゃあ何であんなに強いんだろう…。」
将官の1人がそう呟くと、再び将官達は黙り込んだ。
「でもホントグリーンデビルは怖いな〜。だって考えても見ろよ。この間の作戦だって、
こっち優勢だったのに、奴1人が参戦しただけで流れが180度変わって逆転されちまったじゃないか。」
「確かにな。それこそ奴の存在が味方の士気を高め、敵を浮き足立たせるという事の証明だろう。
しかも奴はとびきりの美人でもある。そこがまた士気を高める要因の一つになっているのではないか?」
「あ〜あ〜、ああいうのウチにもほしいよな〜。アイツが敵じゃなかったら・・・というか俺が
あと40年若かったら彼女にしてやりたいくらいだよ・・・。」
「可愛いし、スタイルもいいもんな〜、俺の娘とはえらい違いだよ。」
沈黙した空気を元に戻そうと、1人の将官がそう話を振ると、それに呼応したかのように他の将官も
口を開きだしたのだった。
>魔装竜 対 翻旗石竜作者さんお疲れさま。
ですが自分は時間がない為にまだ読んでいません・・・
アルティシアが駆る「インビンシブル=アルマダ」はゆっくりと戦闘区域に入って来た。
KGとDBもその巨体に気付いた。だが振り向いてIAに攻撃を加えようとした瞬間、KGは後ろからプラズマキャノンを受けて
前のめりにぶっ飛んだ。「あれれ、これは思わぬチャ〜ンス」アルティシアが主砲らしき物をKGに向ける。その砲身の巨大さに
ロイは目を見張った。「ザイファー中佐、あの兵器は何だ?」ディバイソンのコックピットでザイファーは苦笑いした。
「旧大戦時に存在した『重力砲』と呼ばれるものだ。内部重力を持つ物質に急激な圧力をかけることで重力崩壊を引き起こし、
通常の300倍の重力で敵を押し潰す。ただし」ザイファーはここで表情を引き締めた。
「弾丸に使われている物質『プラネタルサイト』は非常に珍しい事と、砲身とゾイドの負担の問題で弾は2発だけだ。
無駄弾は許されない。その為全員で連中の動きを止める事に専念するのだ!!」
そう言うが早いかザイファーは回線を全員に繋ぎ指示を出した。「総員、最適の距離を取り、射撃攻撃を開始せよ!!」
いつの間にか湖にカノントータスが陣を敷いている。背部の砲塔が堰を切ったように火を噴いた。
反対側にはライガーゼロ・パンツァーが数機布陣されている。こちらからも一斉射撃の雨だ。
両側からビーム、ミサイルの嵐を受け2機の巨大ゾイドは爆炎に包まれた。
だがやはり効いている様子は無い。たちまち上空に躍り出たデスバーンが湖に向けてプラズマキャノンを放った。
「まずい、総員回h…」無論、避ける暇など無かった。たった一発のプラズマキャノンで十数機のカノントータスが
蒸発してしまった。その周りも着弾時の爆風、衝撃波、熱などで甚大な被害が出ている。
「化物め…これ程とは!!」
「重力砲、エネルギー充填中です!!」「もう少し連中を引き留めろ!!」
カノントータスの一個中隊を壊滅状態にし、デスバーンはなおも空中からプラズマキャノンを地上に向ける。
「あの兵器、連射もできるのか!?」砲口が光った。だがその時、一発の弾丸がデスバーンの側頭部を直撃した。
バランスを崩し、高度を下げるデスバーンの視線の先には一体のゴジュラスが居た。ロイも気が付いた。
「な…ゴジュラス・ジ・オーガ!?アーバインはニクスに行って…」GTOのバスターキャノンが再び火を噴いた。
デスバーンも今度は回避した。翼からビームスマッシャーが放たれる。「危ない、避けろ!!」
飛んでくるビームスマッシャーにアーバインは砲塔を向けた。「こういう兵器はな…」
ギリギリの距離に来た時バスターキャノンが火を噴き、ビームスマッシャーを相殺した。「…弾幕で防げ」
「フフ…大した男よ。では、我々も行こうぞ!!」ザイファーのディバイソンが真っ先にKGに突撃をかけた。
「この超硬角はデスザウラーの装甲すら貫く…こいつなら!!」走りながらKGの足に超硬角を叩き込んだ。
しかしKGの装甲はデスザウラーの比ではない。2本の角はあっさりと弾き返された。「ディバイソンを以ってしても…
奴の装甲は破れないというのかッ!?」逆に、弾かれて隙ができたザイファーはクラッシャーテイルで吹っ飛ばされた。
「重力砲のチャージ、完了よ!そいつの動きを止めて!!」ザイファーは額から血を流しながらも応答した。
「了解だ…大佐、しっかり当ててくださいよ」そう言うと、KGのすぐ前に飛び出した。「な!?何やってる、ザイファー!!」
KGはその巨体ゆえ、真下に居る敵には格闘も射撃もできない。ザイファーはそれを利用したのだ。
「っぬおおおぉぉぉ!!!」零距離で17連突撃砲、バスターキャノンが同時に炸裂した。装甲は破れないが、下から突き上げる
衝撃でKGはよろめいた。「今だ、大佐!!撃てぇー!!!」だがザイファーはKGの真下に居て身動きができない。
「何を言っているの、中佐!!早くそこを退いて!!あなたが居るのに重力砲なんて撃てない!!!」
ザイファーは弱々しく微笑んだ。「甘い所は新兵の頃から変わってないな、アルティシア…私の事などどうでもいい。
早く…撃て…」
※×よろめいた→バランスを崩し、倒れた(ザイファーは下敷きに)
―――――――――――――――――――
アルティシアはそれでも首を横に振る。「何とかして、脱出して!!それまでは何とかして時間を稼ぐから!!」
ザイファーも首を横に振った。「無理なんだ。この状態では逃れる術は無い。私一人の犠牲でこいつを無に還せるならば
本望だ…KGが起きる、早く撃つんだ!!」KGが動き出した。だが起き上がるには時間が掛かる。ロイは画像の乱れるモニターに
叫んだ。「チャンスなんか、また作ればいい!!そいつが起きたら俺達が注意を逸らすからあんたは逃げるんだ!!!」
「KGにそうそう隙などできん…今が絶好の機会だ!!」そう言って、起き上がりかけたKGの脇腹にバスターキャノンを叩き込む。
再びバランスを崩し、KGが倒れた。「…まあ、こんな事態も予測してはいたがな。」ザイファーはコックピットの右端にある
取って付けた様なボタンを見た。「お前がやらないのなら、自分でやるまでだ」ザイファーはボタンを押した。
すると突然、重力砲のコントロールが効かなくなった。「これは重力砲の遠隔コントロールプログラムだ…まさにこんな時の為に
用意しておいた物だが。今重力砲の制御は私にある。」アルティシアは色々やってみたが、コントロールは戻らない。
重力砲の砲口がKGとザイファーに向けられた。「それでは皆、デスバーンの方はよろしく頼む。何としても、この星を
救うのだ。……さよならだ、諸君…」重力砲が発射された。KGを直撃し、崩壊した重力が爆発する……
「ザイファァァァァァァーーーーッ!!!!」
周囲の地面に亀裂が入る。重力の発生エリアの地面がクレーターのように窪んでいく。
轟音が止んだ後、ロイたちが見た物は―――――
――大穴の底から立ち上がるキングゴジュラスの姿だった。
「…そんな…ザイファーは…ザイファーは何の為に死んだと言うんだ…!?」重力で凹んだ地面からキングゴジュラスが出てくる。
「貴様…一体…何人の運命を狂わせれば気が済むというんだ……!!」ザイファーは部下達からの信頼も厚く、軍人の鑑と呼べる
男だった。(少々真面目すぎた感もあるが)共和国の軍勢は皆抑えようの無い悲しみと怒りに震えていた。
正規軍の兵達が、怒りに駆られKGに突っ込んだ。「まっ、待て!!格闘戦ではKGには勝てない!!!」
KGの爪が、尾が、一閃する度に次々と共和国のゾイド達が紙切れのように吹っ飛んでいく。
ライガーゼロ・イエーガーがレーザークローを叩きつける。だが、傷一つ付けられない。
スナイプマスターのライフルも、バスターキャノンも、KGにはダメージを与えられていない。
KGの胸部の巨大なガトリングユニットが回転し始めた。多種多様なビームが想像を絶するスピードで連射され、共和国の
布陣が崩壊していく。「しかし、何故奴は重力砲を受けて無傷で居られるんだ…?」ラガートは重力砲のデータを
見たことがあった。理論上、惑星Ziの重力の300倍の加重に耐えられる物質など存在しないはずである。
「…となると、何か別のシステムで体を守っているのか…?」ラガートは1度マーキュリーを降下させ、デスバーンが
切り飛ばしたKGの背びれを調べた。「スキャニングすれば、KGの秘密が解るかも知れない…」
スキャンの結果を見たラガートは自らの馬鹿さ加減に額を叩いた。「こんな事に気付かなかったなんて!!ブレードライガーで
実用化されてるのに!!」スキャン結果は装甲の材質を表していた。
「装甲:強化融合アーマー」
強化融合アーマー。装甲の材質の中で半永久的に分子融合を繰り返し、微小な振動を起こすことで実体弾、光学兵器問わず
如何なる攻撃も防ぐ究極の装甲。現在はその技術の大半が失われているが、残っていた僅かなデータを応用して作られた
物が、ブレードライガーなどに搭載されているレーザーブレードなのだ。ブレードの表面で振動を起こす事で
物質を切り裂く力を増大させている。鋭いブレードが何度もぶち当たる衝撃でほとんどのゾイドの装甲は破れる。
(レーザーブレードと呼ばれるのは発生したエネルギーが発光する為)
だが、レーザーブレードは未完成のシステムで作られた兵器。完全な強化融合アーマーは防御において真の力を
発揮する。装甲を形作る全ての分子が同じ振動率で共振している為通常の兵器で貫く事はおろか傷さえも付けられない。
同じ原理のビームスマッシャーなどはこの装甲でも貫ける。しかしその前に全身の強力兵器で敵ゾイドは
粉砕されているだろう。(デスバーンは別として)
そして、キングゴジュラスにはもう一つ、この装甲でなければならない理由があった。
KGの最強武装、スーパーサウンドブラスターである。その破壊力で自身が崩壊する事を防ぐ為この装甲の「振動」が必要
だったのだ。SSBは「音」、つまり「振動」で敵を破壊する兵器なので射程内全域に効果を及ぼす。
その為、自分自身は破壊されない為にSSBの周波数と同じ振動率で常に振動する装甲は非常に都合が良かった。
ラガートは改めて恐怖した。KGの異常なまでの力に…
リエット=ラブルマンはドラグベルセルクを滑走路の端まで移動させ中身の者に狙いを定める。
「そこよ…。」2つの竜の口から弾丸が発射される。それは目標の長い胴体の中間部の甲羅の隙間に突き刺さる。
「Syaaaaa!!!」甲高い声を上げそれはその場でのた打ち廻り始める。
「危ないっ!」「逃げよう。」「あんた何やってんだ!?こっちの事も考えろ!」ルート兄弟は必死にその場を離れて難を逃れるが体液が吹き出した程度しかダメージを与えてい無い様だ。
離れてその姿を3人は確認する。デススティンガーを元にして歪で巨大な鋏が2対長く太い胴体にはムカデを思わせる多数の足。
甲殻類独特の甲羅にはフジツボの様な突起と穴が有り薄く漏れる光からレーザーを発射する器官と思われる…と断定した途端にそれに答える様にレーザーを体中の器官から乱射をし始める。
「洒落にならないよ…。」リック=ルートのギガの居る場所に大量のレーザーの雨が降り注ぐ形になる。
「何時まで持つかな?」他人事の様に呟きながらHエネルギーシールドを展開しレーザーの雨を凌いでいるがじきにバッテリーが上がるかオーバーヒートで回路が焼き切れるだろう。
それ程に絶え間なくレーザーが境界面に接触しているのだ。
「リック!Rフォーメーションだ!クロスも続けっ!」マックス=ルートの指示が飛びクロス=ルートのギガと共にHエネルギーシールドを展開してリックのギガに近寄る。
3機のギガがシールド同士を接触させ一つの流れを作る…半球の内側を前に向けた状態でレーザーを相手方向に受け流す。エネルギー攻撃専用の反射陣形にレーザーの雨はそれの元へと帰って行く。
自らのレーザーの雨を真面に喰らい体中から体液を漏らし始めるそれは鋏を振り上げ襲い掛かるがお世辞にも素早いとは言え無い攻撃は虚しく空を切る。
「おっと…当たら無えよって!?うわっ!?」クロスのギガは先のレーザーの雨で出来た瓦礫に躓いてバランスを崩す。鋏をロングレンジバスターキャノンで破壊するが1つ逃した鋏が回避不能の状態で迫る…。
「ちぃっ!捕まっちまった!」鋏をギガクラッシャーファングと体の右側全体で押さえるがそのパワーの差からギガの関節と直接接触している装甲から悲鳴が聞こえている。
流石の古代チタニウム装甲と言えど大質量とパワーによる押し潰しにはそうそう耐えられるものではない。
どんな硬度を誇ろうと攻撃を弾くのと耐えるのとでは必要な性質が全く違う。特に圧力に対しての抵抗力は装甲と言うよりボディ全体のフレームの耐圧構造に依存しているのが現状である。
唯一絶対の弱点を付かれ窮地に立たされたクロス=ルートにリエット=ラブルマンから通信が入る。
「頭をキャノピーに打つけても文句は言わないのよっ!」これまで姿を表さなかった約1分の間彼女の機体は強烈な加速をしながら近付いて来ていたのである。
「おいっ!幾ら何でもそれは無いだろ!?如何やったら音速で来れるってんだよ!?」
音速を越えた物体に付くソニックブームを胴体後ろに纏ったドラグベルセルクを見たクロスは血の気が失せ確定した後の状況に耐えるべく構える。
ドラグベルセルクの接近を知ったそれはクロスのギガを挟んだ鋏を振り上げ構え様とするがギガの踏ん張りによってその場から離れられない。
「ソニックブレードを受けてみなさいっ!」ドラグベルセルクが跳躍し寸分違わず長い胴体と頭胸部を繋ぐ部分に吸い込まれる…。
次の瞬間それは狙われた場所から二分され吹き飛ばされる。クロスのギガを掴んでいた鋏はその衝撃に耐えられずギガを挟んだまま千切れた。
「だぁぁぁ…あぶねえな…。」鋏の重みで吹き飛ばされる事だけは何とか回避したがそのままとおりぬけて行ったドラグベルセルクを見て唖然とする。
「凄い…あれが必殺のソニックブレードかっ!?」マックス=ルートはその威力に感動して拳を握り締める。「無茶しますね家の教官。」率直な意見をリック=ルートは言う。
「いけぇ!」マックスのギガはバスターキャノンを連射して分断された胴体を破壊する。「行くぞ!リック!バイトフォーン−ションの指揮をとれ!」
「了解兄さん。」マックスの指示でリックを中心に3機が横並びで追撃モードでそれの頭胸部に接近する。
それは背中から隠していた昆虫特有の羽根を羽ばたかせ逃げようとする。
「逃がすかよ!」クロス=ルートは先読みをしていたかギガのロングレンジバスターキャノンで根元から落す。
マックス=ルートのギガがそれの右側に回り込み「グラップルライト!」の掛け声で掴み押さえ込む。
「グラップルレフト!」クロスのギガが左側を押さえ込む。「行くよ。兄さん、クロス。」リック=ルートのギガが中央から突っ込む。
「バイトフォーメーションオルタナティブT!」リックの掛け声と共に隣接した3機のギガは押え付けたそれを掴み空中に放り投げる。
100m程上昇した後落下してくるそれに合わせて「バイトフォーメーションオルタナティブU!」の掛け声で今度は3機のギガクラッシャーテイルで打ち上げる。
今度は錐揉み状態で落下してくるそれに合わせ「バイトフォーメーション!」の掛け声が掛かると彼等のギガは本能的、反射的に頭部、コア、胸部をギガクラッシャーファングで噛み砕いた。
それでもまだそれは動きを止めず残りの鋏で3機のギガの背部武装をはぎ取り握りつぶす。
しかしその行為自体自殺行為に過ぎず弾薬の爆発によりギガを吹っ飛ばし自滅する。
「無茶をするね…。」ショックでフリーズしてしまったギガより降りてリックは呟く。
同じようにマックス、クロスもギガから降りて爆発の後を見つめていた…。
リエット=ラブルマンと言えばソニックブレード後の減速に失敗して資材倉庫に突っ込んで何とか止まっていた。
当然機体のシステムはフリーズしている。「お疲れさま。止めは刺せなかった見たいね…でも一応合格よ。3人揃って1人分だけどね。」
通信を入れると考え込む。「あれは…間違い無いわ。あそこの研究で出来た化け物ね。全く何で家の陣営は面倒を丸投げする奴が多いのかしら…?」
「帝国も面倒に巻き込まれて大変みたいね。後で司令部に連絡しなきゃ。」彼女は気持ちを切り替え機体に戻る事にした…。
緑の悪魔激殺指令の作者さんお疲れさまです。
だいぶ固まってきたみたいですね今度の話の大枠?が。楽しみにしています。
魔装竜 対 翻旗石竜作者さんお疲れさまです。
コミケとタイミングを合わせる…中々面白いと思います。こちらは思い付きもしませんでしたし。
ゾイドバトルを底辺に置いた作品は意外な発見が有ったりして面白いです。
英雄の帰還書いてる物体さんお疲れさまです(三立てかYo-_| ̄|○)
相克の章になって遂にデスバーンとキングゴジュラスの激突が始まってその先が如何為るかが非常に興味が有ります。
実際にまみえる事の無かった両者の決着は?必死になって両者を破壊しようとする人々…。
いいなぁ…。
蒔いてしまった種を刈り取り完了しました。後は5〜7日目を残すのみ。
5日目は会話が大半を占めそうなのですが会話をすっ飛ばした方が良いのでしょうか?
話が変な方向にそれていたが、確かにどんな強いパイロットや強いゾイドでも、それだけで戦況を
覆せるほど戦争は甘くない。しかし、味方だけではなく敵に対しても影響力を持つ存在は、
味方を勇気付け、同時に敵を浮き足立たせる。そう言った意味で戦況をくつがえしてきたというのが古来から前例がいくつもあった。
俗に旧大戦と呼ばれるヘリック共和国と旧ゼネバス帝国によって行われた中央大陸戦争時代。
戦況が不利になったヘリック共和国軍は各部隊に当時の大統領ヘリックの替え玉をいくつも配置し、
それによって味方の士気を高め、同時に敵を浮き足立たせたという話が今にも残っているだけでなく、
あのデスザウラーの投入によってゼネバス帝国軍が一気に優勢になった時も、デスザウラーの
戦闘力もさることながら、その圧倒的存在感と威圧感が味方の士気を高揚し、敵を恐れさせた事が
その要因と言える。このことから士気というものも勝利を導く要因の一つになりえることが伺える。
「とにかく奴を潰さないことにはどうにもならんな。前線では緑色を見ただけで発狂するという
兵士すらいるという話ではないか。これは本当に我が軍にとってグリーンデビルの恐怖が深刻化
している事を意味するのではないか?」
「だからこそそのグリーンデビルを潰すための会議を今やっているのではないか。」
将官の言葉に対し、別の将官がそう言った。
「しかしな〜、口で言う程ヤツは甘く無いぜ。もうゴキブリどころかゴ○ラ並の生命力だぜこいつは。」
さらに別の将官が口を挟んだ。そして彼はさらにこう続ける。
「この間、ウチの指揮下のとある部隊がグリーンデビルと戦闘したんだよ。」
「で?どうなったの?」
他の将官は興味しんしんにそう質問した。
「で、その部隊はある作戦に出たんだ。その作戦はグリーンデビルの周辺にチャフ弾を撃ち込み、
ありったけのダークスパイナーとディメトロドンを配置して電磁波を発射したんだ。そうなると、
その電磁波がチャフの金属片に乱反射して、そのエリア内はまさしく電子レンジ状態となる。
名付けて「アッチッチ、電子レンジ大作戦!!」これならゾイドは助かっても中のパイロットは
黒こげ確実。そう思ったんだけど…しかし…。」
「え…?ダメだったの?」
他の将官は一斉に青ざめた。
「ああ…ダメだったそうだ。ああ…口では上手く説明できねえ…。そうだ、その時の映像をビデオに撮っていたんだった。」
「ご都合主義だな…。」
ビデオテープを取り出す将官に対して別の将官はそうツッコミを入れた。そして、セットされた
ビデオの映像がビックスクリーンに映し出される。それは帝国軍部隊がカンウに向けてチャフ弾を
発射している所だった。そしてカンウの姿が見えなくなるほど濃くばら撒かれた後に、
ダークスパイナーやディメトロドンといった電子戦ゾイドが前に出て、そして全機が強力な電磁波を
発射したのだった。電磁波はチャフによって乱反射され、カンウの周辺はまさしく電子レンジ状態に
なっていた。こうなってしまえば、例えゾイドが助かろうとも中のパイロットは真っ黒焦げになって
死亡は確実である。そして、思わず「やったあ!!」と叫ぶ帝国兵士の声が聞こえた。そして、
その声に誘発されるように、次々にあがる帝国兵士達の歓喜の声。しかし、その直後、
その歓喜の声は絶叫に変わった。なんとカンウが何事もなかったかのように帝国軍部隊に向かって
襲い掛かってきたのだ。
「あっついじゃないのよ!!何するのよ!!日焼けサロンなんて行きたくないわよ!!」
戦場に響き渡るかん高い声。それはまさしくマオの物だった。つまり、彼女は死んでいなかったのだ。
そして、その後カンウが帝国軍部隊を蹴散らすという帝国軍にとっては虐殺にも似た映像が
繰り広げられるわけだが、その後、別に映像が切り替わったのだった。
「いや〜すごかったですね〜、あれほどの攻撃でよく無事だったですね〜。」
「へ?」
切り替わった映像を見た将官達は唖然とした。映像は、変なレポーターみたいな男がマオに
ヒーローインタビューならぬヒロインインタビューをしている所であった。
というよりも、それは民間放送局によって撮られたものであった。レポーターがマイクをマオに
近づけると同時にマオの姿が映し出された。
「いや〜、あつかった〜・・・。ハア・・・ハア・・・。」
確かに彼女が電子レンジ攻撃の中で死ななかったと言っても、それでも相当に熱かったようで、
全身から汗がだらだらと流れ、さらに全身が熱い風呂に入った直後のように真っ赤になっており、
本人は水分補給に夢中になっていた。さらにその隣や後ろでは下士官クラスと思われる屈強な
男数人がマオに対してウチワを使って必死にあおいでいた。そしてマオは再び口を開いた。
「いやね、もう本当に熱かったのよ。」
「ですが、よくあんな物に耐えられましたね。」
マオの言葉に驚いた表情でレポーターは応える。
「まあ確かにね。私は鍛えてるからなんとか我慢できたけど、多分貴方なら真っ黒焦げになってると思うよ。」
「確かに、私があんな物に耐えられるとは思えません。それに耐えたあなたはやはり何かウラ技と言うものがあるのではないですかな?」
「確かにね。まあなんと言うかさ・・・、ちょっと非理論的な話になるけど、まあ信じてもらえる
なんてはじめから思っちゃいないけどさ、まあ簡単に言うと、私の全身に「気」のシールドを張ったと思ってくれれば・・・。」
「う〜ん、専門的過ぎて私にはさっぱりですね。とりあえずこれにて現場からの中継を終わります。」
と、映像はここまでだった。
「・・・・・・・・・。」
その映像を見ていた誰もが唖然とし、しばらくのうち沈黙していた。
「それに近い体験ならオレにもあるよ…。」
沈黙を破るように、1人の将官がそう呟いた。
「オレの指揮下の高速部隊がライガーゼロイクス等、光学迷彩仕様のゾイドを主力として投入し、
グリーンデビルに挑んだんだ。」
「なるほど、光学迷彩によって肉眼での視認もできず、かつレーダーやセンサーにも反応しない
ようにすれば流石のグリーンデビルも手の出しようが無いという事だな。」
「だが…それもダメだった…。とにかく口で説明するより実際これを見てもらった方が分かりやすいと思う…。」
「で…、またビデオか…。」
案の定、将官の取りだしたのはやはりビデオであり、そして別の将官がそう呟いた。
早速そのビデオをセットし、ビッグスクリーンに映像が映された。姿の見えない何かがカンウを
攻撃していた。姿の見えない何かとは当然光学迷彩で姿を消したライガーゼロイクス等なのだが、
姿を消したイクスの攻撃の前には、光学迷彩を見破る能力を持つケーニッヒウルフでない限り
為す術がない…はずだった。突然カンウがその巨大な口を開き、何もない空間に思い切り
ギガクラッシャーファングで噛みついてきたのだった。突然響き渡る鈍い金属音。
それと同時に何もない空間から現れたのは腹部を大きくえぐら、倒れ込んだライガーゼロイクスの
姿だった。そして、カンウはあたかも普通に敵の姿が見えているかのように、光学迷彩で姿を消した
帝国ゾイドを次々に破壊していった。
「一体どうなっているんだ…。」
思わず将官の1人が呟いた。さらに、その直後に映像が切り替わったのだった。
「また出た!!さっきのレポーター!!」
将官の1人がさらにそう叫んだ。確かにそこに映るのは先ほどのビデオ映像に登場したレポーター
であった。恐らく先ほどと同じ放送局によって撮られたものなのだろう。そして、例によって
そのレポーターはマオに対してインタビューしていた。
「いや〜凄かったですね〜。光学迷彩って肉眼で見えないだけじゃなく、レーダーとかにも反応
しないんでしょ?やっぱりそれに対応した処置をゾイドにしていたのですよね〜。」
レポーターのインタビューに対し、マオは左手を頭を横に振った。
「いやいや、特になんか特別な処理を施したとかそんな事は全くと言っていいほどしてないよ。」
「ええ!?じゃあ一体どうやって…。」
皆さんあけましておめでとうごさいます。
といってもこれ以上言うことが無いのですが・・・すみませんね・・・。
とりあえず2004年もよろしくお願いします・・・。
硝煙の果てに
爆炎と巻き上げられる砂塵は次第にライアーたちに近づきつつあった。
接近する速度は先ほどの通信から急に早くなっていた。おそらく拘束にあたるはずの部隊が突破されたのだろう。
拘束にあたる部隊は重機関砲やロケット砲によってかなりの火力を誇っていたが、重火器のせいで機動性はかなり制限されていた。
本来ならその部隊が敵部隊を重火器によって拘束して後方から機動部隊が突入するはずだから、機動性はそもそも考慮されていないのだ。
そして今はその低い機動性が防御陣を破綻させようとしていた。敵部隊を追跡するのは一度突破された拘束部隊では難しいだろう。
本来なら敵部隊を後方から叩くはずの機動部隊は、敵部隊のあまりにも早い進撃速度に追いつけなかった。
ライアーたちと敵部隊を遮る障害は何も無かった。全員が緊張した面持ちで接近してくる砂塵を見つめていた。
あれは・・・ヘルキャットなのか
意外な思いでライアーは接近してくるゾイドをみた。ヘルキャットは現在ではそれほどの脅威となるゾイドではない。
高速性を重視した機体構成は搭載兵装を貧弱なものにしていたし、そもそも高速ゾイドは歩兵を相手にする用にはできていない。
唯一危険な要素である隠密性もヘルキャットが本来予想している戦場である森林や山岳地帯ならともかく砂漠で有効に使用できるものではなかった。
いまもヘルキャットは光学迷彩を使用せずにくすんだ赤茶色のカラーリングをみせていた。
もちろん小型とはいえ軍用ゾイドなのだから歩兵分隊が相手にするには面倒な相手には違いない。
しかし接近して遺跡周辺で速度を落とした状態にならば十分に命中させることはできる。
ライアーはほくそえむと機関銃手の隣で銃を構えた。軽機関銃と突撃銃で足を止めて、そこへ無反動砲を叩きこむつもりだった。
機関銃手はライアーの方を強張った笑みを見せながらいった。どうやらなんとかなりそうだな。
ライアーは無言で頷いた。だが次の瞬間ライアーと機関銃手の顔から感情が抜け落ちた。
無反動砲の射撃に伴う爆音が周囲に鳴り響いたからだ。あわてて二人が振りかえると青白い顔の無反動砲手が初弾を発射したところだった。
そしてライアーが静止するまもなく分隊員たちの全力射撃が始まった。
だが相手が高速移動するゾイドの場合、歩兵の持つ火器が命中するのはずも無かった。
初速が遅い無反動砲弾は勿論、小銃弾も命中している様子は無かった。
ライアーは脇でつられて射撃を始めようとした機関銃手の足を蹴り飛ばしていった。
「こんな距離で撃ってもあたるものじゃない。俺は無反動砲を奪ってくる。あんたは遺跡の方へ行ってくれ。合図をしたら機関銃でおびき寄せてくれ、俺は無反動砲であれをやる」
機関銃手は一瞬迷ったが、すぐに頷いてたち上がると目立たないように腰を落として遺跡の方へ走り去っていった。
ライアーも無言で無反動砲手の後ろに近づいて、隠し持っていた拳銃を無造作に発砲した。
倒れこんだ砲手から無反動砲をもぎ取ると、そのときこちらを目を丸くして見ている装填手と目が合った。
「貴様も来るか?ここで砲弾を置いて逃げるか、それとも無駄に死ぬか、三択だ。さっさと選べ」
正直いってどうでも良いことだった。無反動砲は古臭い設計のものだったが、そのぶん信頼性は高かった。だから装填手がいなくとも何とかするつもりだった。
装填手は接近するヘルキャットと分隊の様子を一瞥すると、一瞬迷った後で付いてきた。
それを確認するとライアーは遺跡に向かって駆け出していた。
年くうと新年って言葉に反応し無くなるのは何でだろう?
「それで、プロフェッサー・イオ…『マントラ・オーバードライブ』とは一体?」リッツはさっきから気になっていた事を
訊いた。イオは目を閉じたまま話し出した。「MODは…破壊した敵や乗り捨てられた味方のゾイドの、ゾイドコアを分解、
吸収し、自らのエネルギーに変えるシステム。得られるエネルギーの量は吸収したゾイドコアのエネルギー量に比例する。
つまり、奴がKGのコアを吸収したら確実に世界の終わりだ。だから連中の戦いを傍観している訳にはいかんのだ」
ラガートが上空から降下してきた。「大丈夫ですよ、イオ博士。KGには絶対に勝てません。強化融合アーマーまで装備
したKGに致命傷を与え得る武器なんて惑星Ziには存在しません…」
イオは首を横に振った。「それがあるのだよ、参謀君。私が開発した究極の兵器がな。」
「何ですって…!?…いや、そんな兵器が在ったにしろ、その前にデスバーンはSSBを受けて砕け散りますよ」
「違う…その兵器はな、対SSB用兵器として作った物だ。」ロイもリッツも、汗がたれてきた。
「対SSB兵器…?まさか、そんな事ができるはずが…」その時だった。後ろでまた激しい格闘戦が始まっていた。
KGの巨大な爪がDBの装甲をえぐる。だがDBは至近距離でビームスマッシャーを回転させ始めた。KGの装甲すら切り裂かれる。
イオは遠くを見ている様だった。「KGは絶対にDBには勝てん…」KGが痛みと怒りで絶叫を上げる。
KGが尾でDBを弾き飛ばした。DBは空中でバランスを取る。「何故ならあの兵器は…」
KGが前傾姿勢になり、巨大な口を開いた。KGの口から今までとは違う低い唸り声が漏れる。
ラガートはそれが何なのか知っていた。何も知らないロイでさえ全身が総毛立った。
「来るぞ!!スーパーサウンドブラスターだ!!!」
「何!?SSBだと!!?」低い唸り声が次第に大きくなって行く。空気が震えているのが解る。
更にボリュームが上がってきた。すると、KGの周囲の地面に亀裂が生じた。空気の振動で小石やゾイドの残骸が跳ねる。重力すら
意味を為さず、小石などが浮き上がる。「まずい!!!ここで撃たれたら全員が木端微塵にされてしまう!!」ラガートが叫び、
KGにバスターキャノンを撃ち込む。だがやはり効果は無い。
KGの口の中が光り始めた。振動する空気の摩擦で電子が発光を起こすのだ。
全員が死を覚悟した。SSBの音はもはや耳に聞こえない音域に達している。KGが足を踏ん張った。
「来る!!!」その瞬間遂にKGの口から目に見えない破壊の波動が放たれた。だが――――
空から一直線に白い光がKGを直撃した。ロイが上を見ると雲の上にデスバーンが下を向き、口からあの白い光を発している。
KGは悶え苦しんでいる。ラガートは目を開けた。「何故だ!?SSBは確かに発動した…我々はもう死んでいるはず…」
イオが口を開いた。「これこそが、私が開発したデスバーンの最終兵器、『真空荷電粒子砲』だ」
再び上を見る。DBの口の中でもう一つ、青い光が集束していく。「あれは目標までの空間を真空化し、荷電粒子砲の威力を
最大限に引き出すシステム。更に私なりの研究結果、強化融合アーマーの振動は真空状態では止まってしまうんだよ…つまり」
白い光の中でさらに青い光=荷電粒子砲が炸裂した。光の柱に包まれKGが見えなくなる。「馬鹿な!!あんな出力の荷電粒子砲
ゾイドに撃てるはずが無い!!」イオはそれも否定した。「デスバーンはただのゾイドではない。これまでに破壊し、吸収してきた
全てのゾイドのエネルギーを秘めているのだ。」光が消え、やがて爆風と煙が消える。
月明りが照らし出した物。それは原形を留めないKGの残骸だった。
え〜と、遅れましたが…
あ け ま し て お め で と う ご ざ い ま す
今年もやりますか…
「何というか…。非理論的な話になるんだけど、光学迷彩とかで姿を消していても実体は
消せ無いワケじゃないですか。それによって現れる気配とか、ゾイドとパイロットの発する
殺気とかもあるワケで、それを読んでいるって感じかな〜。漫画であるじゃない。心の目ってヤツ。
まあ信じる信じないは皆様の勝ってということで聞き流してもらって結構だけどね。」
「う〜ん専門的すぎて私にはさっぱりですね〜。ということで現場からの中継を終わります。」
と、やはり映像はここまでだった。
「さっきの映像と似た話だな…。というかシメのレポーターの言葉ってさっきと同じだし…。」
「………。」
再び将官達は沈黙した。もう科学も物理もへったくれも無かったのだからしょうがない。
しかし、マオの言った「気のシールド」とか「心の目」と言う物を否定しても、
電子レンジ攻撃に耐えられたり、光学迷彩を使った敵の姿を察知するという事に対して、
じゃあ他にどんな手を使ったのか?と言うわれても、いったいどんな方法を使ったのか、
その方法が将官達や科学者達には一切思い浮かばなかった。
「と…とにかくヤツを倒さなければ我が軍はさらに大きな被害を受け、前線の兵士達にとっても
グリーンデビルの存在が精神的な威圧となってのし掛かって、軍そのものが前線兵士達から
崩壊していく可能性も捨て切れません。」
久々にセリフの機会がやってきた解説者がそう言うのだった。と、その時だった、何処からともなく
現れた黒服の男が解説者の前に現れ、彼に対して何かを告げていた。そして解説者もうんうんと
何かうなずいていた。そして、話を一通り終えると黒服の男は直ぐさまに何処へと立ち去った。
「ただ今諜報部から入った情報によりますと、今日から数日後にグリーンデビルは小学校の同窓会に行く模様です。」
ずげげげげ!!
将官達は一斉にその場にすっ転んだ。
「ど…同窓会ってオイ…。戦争中というのに偉いのんきだな〜…。」
「しかし…、作者の性格から考えればあながちおかしな話では無いのかと…。」
「た…確かにそう考えるとそうだ…。」
焦りながら言う将官に対しての解説者の説明を聞いたその将官は納得した。
「しかし、これはチャンスとは思えないだろうか?同窓会ともなれば、浮かれて気がゆるむのは
目に見えている。このスキを付いて一気に殺害って事も可能じゃないのか?」
「た…確かに…。」
1人の将官の提案に他の物も同意し始めた。その時、歩兵師団を指揮する将官がこう言った。
「ならば、その同窓会に行って浮かれているグリーンデビルに対し、スケルトン部隊を差し向けましょう。」
「何!!?あの超人兵団スケルトンを差し向けるというのか!!?」
スケルトン部隊。並はずれた運動能力を持つ物達で構成されており、超人兵団とあだ名される程の特殊部隊である。
「同窓会で浮かれたグリーンデビルに対し、スケルトン部隊で一気に奇襲を掛ければ何とか…。」
「それで何とかかよ!!」
スケルトン部隊派遣を提案した将官の弱気の発言に、他の将官達は一斉にツッコミを入れた。
「とにかく、スケルトン部隊派遣は決定ということ前提で話をするのですが、私はグリーンデビル
本人だけでなく、もう1人押さえておくべき人物がいると思うのです。」
「もう1人?」
話を変えてきた1人の将官の言葉に、別の将官達は耳を傾けた。そして、話を振ってきた将官は
一枚のディスクを撮りだし、機械にセットした。ビッグスクリーンには1人の男の姿が映し出された。
それはマオと隣り合うように立っている1人の男の姿だった。右目に縦の傷が目に付き、マオよりも
頭一つ分以上大きな男だった。
「誰なのだ?この男は…。」
将官の1人がそう呟く。それに対してディスクをセットした将官は解説者からマイクを借りて言った。
「彼の名はライン=バイス(20)と言います。階級は軍曹。グリーンデビル直属の部下であり、
早い話が副官として高速ゾイドに乗っている男です。」
「で、その男が何なんだ?」
説明に対し、他の将官は疑問深そうな顔でそう言った。すると映像が切り替わり、一体のゾイドの
姿を映し出した。それは俗にライガーゼロフェニックスと呼ばれるゾイドだった。
>>304 あけましておめでとうございます。
>>306の8行目の部分。「者」が「物」になってました。すみませんね。
後、今書いている作品のさらにその次の作品はサイクロプス主役で行こうと考えていたりします。
英雄の帰還作者さんがディアブロタイガーを主役に話を作っていたので、
じゃあ自分はという事で考えました。そのためにサイクロプスも買いましたw
「あり得ない…あのKGを倒してしまうなんて!!」ラガートは驚愕していた。未だかつてKGを倒したゾイドなど知らない。
デスバーンがKGと互角の性能を有する事は知っていた。しかし、それでもKGが勝つだろうと思っていた。SSBと言う無敵の最終兵器が
あったからだ。だが、デスバーンはそれさえも打ち破った。
アーバインが呟いた。「デスザウラーを倒す為に造られたマッドサンダーはデスザウラーを破った…キングゴジュラスを倒す為に
造られたデスバーンがキングゴジュラスを破ってもおかしくは無いのかもな」
ロイがKGの残骸をよく見ると、まだゾイドコアが生きているではないか。巨大なコアが鈍く輝いている。
「吸収する為にわざと出力を調整したってのか…!?」調整してあれほどの威力。フルパワーなど想像もできない。
デスバーンが雲の間から降下して来た。KGのコアを吸収するのだ。「させん!!」イオが飛び出した。バスタークローを展開する。
「バスタークローを改造してVessels放射用のジャミングブレードにした!!ここからなら届く!!」バスタークローが光った。
強力な電磁波を浴び、デスバーンの動きが空中で止まった。「よし…コントロールを奪えば…!!」
だが、干渉を振り切るようにデスバーンの目が輝いたかと思うと、静止したままプラズマキャノンが飛んできた。イオのBFに
直撃し、一発でイオの意識が飛んだ。邪魔者が居なくなったのを確認すると、デスバーンは地上に降りた。
KGの残骸の上に覆い被さり、口を開く。だが、吸収しようとしたその瞬間KGのコアがデスバーンの目の前で砕け散った。
うなり声を上げるデスバーンの前に、光学迷彩を解いてディアブロタイガーが現れた。「この星を…大切な物を!守る為に
俺達はここに来た!!…さぁ、答えを見せろ!!ここで終わりにするんだ!!」
デスバーンが吼えた。圧倒的な怒りが見える様だった。
ガチャ
綺麗に掃除されたドアを開く。
部屋の中央には白髪の目立ち始めた初老の男が整頓された机に座っていた。
その向こうにある窓は薄暗く雨が強く当たっていて外は見えない。
「マイク・ラスカル大尉、ただ今到着しました。」
マイクと名乗る男が敬礼した。
「これを見て何だと思うかね?」
そう言って初老の男は書類をマイクに渡した。
書類には意味の分からない文字が羅列されていた。
「暗号・・・でしょうか?」
「そうだ。二日前に情報部が傍受した共和国の通信内容だ。
その暗号には『4日後の攻撃の為に我々ピースメーカーが首長に奇襲をかける』と書いてる。
もう私が言いたいことはわかっただろう。
君達の任務はこのピースメーカーを撃退することだ。」
バサっと机の上に基地付近の地図が開かれる。
初老の男は山の比較的高度の低い所を指差した。
「暗号によるとやつらはこの辺りを通過するはずだ。
ここは移動できる範囲も少ない。奇襲をかけるには丁度良いだろう。」
「わかりました。5時間後に出発します。」
そう言うとマイクは振り返り部屋を出ようとした。
「2時間だ。それ以上は待てんよ。」
後ろで初老の男が言うのが聞こえた。
マイクは休憩室の扉を開けると二人の男がカードを広げていた。
「隊長、今回はどれぐらい休暇を貰えたんですか?」
金髪の男が煙をはきながらマイクに問いかけた。
「アスガル。煙草は喫煙室で吸えと言ってるだろ。」
「へいへい。」
アスガルと呼ばれた金髪の男は煙草を目の前に置いてあったコップに投げ入れた。
「それで休暇はどれだけなんですか?」
「2時間だ。」
とマイクが言うとアルガルはカードを放り投げて叫びだした。
「なんですかそれ!たった二時間じゃ慰安所にも行けないじゃないですか?!」
「良かったなぁ、アスガル。この前よりも20分も多いぞ。」
嫌味な言い方でもう一人の男がバラバラになったカードを拾う。
「うるせぇんだよ、ジェフ。」
カードを拾っている男、ジェフに向かってアスガルは当り散らした。
「あぁ、もう二週間もご無沙汰なのに。」
「わかったわかった。これが終わったら二日休暇貰えるように言ってやるよ。
ついでに慰安所の金も俺が奢ってやる。」
「冗談じゃないですよね?」
「生きて帰ったらの話だがな。わかったらさっさと飯を食って格納庫に来い。」
「了解。アスガル少尉、すぐに食事をとってきます!」
新年明けましておめでとうございます。
久々の投稿ですが今回は自分としては長い物になりそうですので
間延びしたりして見苦しい部分も多いかもしれませんが読んで頂ければ嬉しいです。
硝煙の果てに
ライアーが手にしている無反動砲は大口径で汎用性の高い砲だった。
本来はトーチカなどの破壊が目的だから照準器は簡易なものしかついていないが、それだけに配備コストはべらぼうに低かった。
初速が遅いから対ゾイド兵器としてはそれほど適しているわけではないが、低速の目標に対しては安価な対装甲兵器になりえた。
軍隊ばかりではなく中小系の傭兵団にまで出回っているような方だから砲弾の種類も数が多かった。
基本的なHEAT弾の他に対物目標に特化したHESHや複列弾頭式HEAT弾もあった。それに煙幕弾や照明弾などの支援用砲弾も数多い。
基本設計は地球人がたどり着いた直後になされたほどの旧式火器だが、製造の簡易化などを除けばいまだに当時の設計のまま生産されていた。つまりはそれだけ砲の設計が優れていたということでもある。
砲身命数の延長を狙って分厚く造ってある砲身と頑丈な砲尾はかなりの重量になったが、人間工学的に優れている肩当とグリップは命中率を高めると共に重量感を感じさせなかった。
とはいえ長期間の携行は体力を低下させるはずだった。ライアーは遺跡近くで遮蔽物になりそうな地物を探しながらそう思った。
遺跡周辺は砂丘が連続して存在していた。というよりも砂丘の中に唐突に巨大な遺跡が鎮座しているといったほうがいい。
巨大といっても地上に見えているのは遺跡のほんの一部だった。むしろ地上にあるのは遺跡への入り口だともいえる。
地上部分は大型ゾイドがかろうじて通れるほどの扉があるだけだが、そこからすぐに急な傾斜になっていた。
傾斜路を降りるとそこには小さな村ほどもある巨大な空間が広がっているらしい。
どうやってそんな巨大な空間を掘ることが出来たのかは知らないが、傾斜路の先は暗くて入り口に立ったライアーの目には黒い空間だけが見えた。
左右を見渡すと入り口の右側に機関銃手がすでに陣取っていた。機関銃装填手の姿は見えないから戦死したかそれとも移動に気が付かなかったのかもしれない。
軽機関銃は無反動砲と比べると装填もしやすいから故障にさえ気をつければ一人でも扱うことは不可能ではなかった。
機関銃手はライアーに一通頷くと入り口の左側を指差した。
丁度そこには隠れ場所にあるような小さな窪地があった。ライアーも頷き返すと装填手をつれてすばやく陣地にはいった。
打ち合わせをする時間も無かったが、取りうる作戦は一つしかなかった。
遺跡の入り口は随分と狭くなっていたから、ゾイドの様に大きさがあるものはここで立ち止まるしかない。
そうでなくとも傾斜の先にをしばらくは探索するはずだった。
ライアーたちはその停止した瞬間を狙うつもりだった。
軽機関銃が最初に銃撃を開始して敵の注意をひきつける。そしてライアーの無反動砲で重要部を狙うつもりだった。
人が増えてきたなぁ・・・
「これはライン=バイスの愛機のライガーゼロフェニックスです。彼はジェネラルと読んでいる
様子です。グリーンデビルの陰に隠れてあまり目立ちませんが、この私個人の見解としては
レオマスターにも匹敵できる実力を持っていると見ています。それを証拠に…。」
そう言うと同時にさらに映像が切り替わり、ジェネラルの戦闘シーンが映し出される。
その戦闘力はすざましく、量産型ジェノザウラーやバーサークフューラーなどが次々に倒されていく。
「おおお!!確かに強ええ!!」
その映像を見た他の将官達は思わず叫んだ。
「しかし、これだけならまだいいのです。この程度なら単なる一エースパイロットですから。
しかし、問題はこれからなのですよ。」
「え?これから?」
さらに映像が切り替わると、その映像を見た将官達は愕然とした。戦闘で傷を負ったと思われる
ラインがマオから介抱を受けていたのだ。しかもやたらとぼのぼのした感じであった。
「う…うらやましい…。」
将官の1人は思わずそう呟いた。さらに映像は続き、町で買い物してる二人とか食事をしている二人
等、様々な映像が映し出されていたのだった。
「ハッキリ言う。あの男がうらやましい!!」
「だって考えても見ろよ、あの疲れて寝てしまったグリーンデビルをあの男がおぶってるシーン。
それってあの男の背中にグリーンデビルのム…ム…。」
「あの男をぶっ殺してぇ…。」
将官達はラインに対し殺意を覚えていた。
「分かったでしょう?この映像を見る限り、あの二人は上官と部下以上の関係にあるものと
思われます。というか実は出来てるんじゃないか?って思えるほどですよ。しかし、
これを利用しない手はないと思われます。グリーンデビルを倒すことが出来なくとも、
あのラインという男を殺害しておけば、グリーンデビル自身もかなりの精神的なダメージを
負うでしょう。そこを付けばさらにグリーンデビル殺害も不可能ではありませんよ。」
「よっしゃ賛成!!あのラインとか言う男をぶっ殺せぇ!!」
将官達は一斉に立ち上がり、そう叫び出したのだった。
そんなわけで、同窓会に行ったマオに対し、スケルトン部隊で奇襲を掛け、それに並行してラインに
対しても攻撃を仕掛けるという作戦が可決された。
「作戦の大まかな形が出来たのはいいけど、さらに保険とかを掛けておくべきじゃなかろうか…。」
1人の将官がそう言葉をもらした。そして、その将官はさらにこう続ける。
「例えばスケルトン部隊でもグリーンデビルを倒せなかった後はどうするのか?とか、あとあのラインとか言う男もかなり手強そうだぜ。」
「確かにな。その後はどうするかだな〜。」
他の将官達も腕を組んで考え込んだ。と、その時1人の将官が口を開いた。
「いっそのこともう一度ハガネをぶつけてみるというのはどうだろう…。」
ハガネとは、帝国軍がキメラなどに使用される人工知能を小型化、発展させて作り出した人造人間、
つまりはロボットである。相手を油断させる為と言えばカッコイイが本音は開発者の趣味によって
美少女型として作られており、さりげなくマオといい勝負をしたことがあった。ちなみに愛機は
セイスモサウルス「ゼノン」である。さらに、ロボットのクセに幽霊等と言った超常現象に対して
相当な興味を持っていたりする。最初の頃は人間を見下していたが、そんな人間でありながら、
自分を苦戦させたマオをライバル視している。
「でも多分無理だと思う…ハガネは今頃アス湖のアッシーの調査に行ったって話だから…。」
「…………。」
再び沈黙。類は友を呼ぶ。マオが変なら、ライバルのハガネも変だったという事だった。
と、例によってそんな沈黙を破るかのように、1人の将官が口を開いた。
「最新型のエナジーライガーを投入しましょう。対グリーンデビル用とあのラインとか言う男用にそれぞれ1体ずつ。」
「おお!!あのエナジーライガーか!!あれならグリーンデビルにも対抗できるかもしれん!!」
「豪雨の中で」作者さんいらっしゃいませ。まあ細かいことは言いっこなしということで、
お互い頑張っていきましょう。
薄暗い格納庫で三機の灰色のバーサークフューラーが整備されている。
西方大陸戦争が終結し、ネオ・ゼネバスが建国してから数年経つが
依然としてバーサークフューラーは高性能、高価格の機体として配備数は多くない。
この3機はシュトゥルムユニットの装甲にバスタークローを装備した強化型であり
素体にもコクピットハッチがとりつけられ生存率が上がっている。
「以上が作戦の内容だ。何か質問は?」
コクピット内でマイクが上官に言われたことをそのまま二人の部下に伝える。
「ありません。」
「ありません。」
二人からすぐに返答が来た。
「わかった。すぐに出撃する。」
一際目立つスイッチを押すと今まで一部しか光が灯っていなかったコクピットが途端に明るくなった。
レバーを軽く傾けるとバーサークフューラーの脚が動き格納庫の外へと歩んでいく。
「隊長、約束忘れてませんよね?」
アスガルがしつこく問いかけてくる。
「作戦中の私語は禁止だ。行くぞ。」
そう言うとマイクはレバーを強く倒した。
出発してから何時間か経った。
雨は益々強くなっている。
急に地面が途切れた。
そこはまるで鍋のようになっていた。
急停止すると30メートルほどの落差がある。
その中央にいくつかの白い機体が見えた。
「ジェノザウラーが5機。ピースメーカーです。」
ジャックが報告する。
「虐殺竜が平和を作るってか。笑わせてくれるぜ。」
ゲラゲラ笑いながらアスガルが言う。
「よし、ここから荷電粒子砲で攻撃し接近戦に持ち込む。
ジャックは援護してくれ。」
その言葉と同時に3機は荷電粒子砲発射体制をとり3本の光の渦が白い機影に向かった。
小さな爆発が起き2つの機影が消えた。
すぐさまマイクとアスガルは崖を下る。
3機の白いジェノザウラーもこっちに向かってくる。
バスタークローから放たれるビームがジェノの脚を貫く。
ジェノは崩れ落ち3,4回転して動かなくなった。
背中の砲塔から連続でパルスレーザーが来る。
マイクは当たる寸前に高く飛び上がる。
そのまま動かなくなったジェノの上に圧し掛かる。
機械が砕ける音と共に眼前にいたジェノが倒れた。
コクピットには焼け焦げた穴が開いている。
アスガルを見るとバスタークローでコアを貫かれたジェノが串刺しになっていた。
「全機破壊。敵影無し。」
ジャックが状況を報告する。
「任務完了、これより帰還する。」
マイクが方向を変えようとしたその時、
「待ってください。この反応は」
ジャックからの通信が途切れた。
崖の上に僅かに崩れ落ちたバーサークフューラーの影が見える。
「隊長。な、なんですかあれは?!」
アスガルが見ている方向には青い機影が見えた。
「くそ、よくもジャックを!」
そう叫ぶと同時にアスガルは荷電粒子砲を撃とうとした。
(まさかあれが・・・)
マイクは思い出した。
ガイロスがヘリックと共同で開発したという機体のことを。
「馬鹿、やめろ!」
だがそう叫んだ時には既に荷電粒子砲が放たれた後だった。
荷電粒子砲はその機体に直撃し細い光が大きく広がった。
青い機影は光を吸収し一筋の光線がアスガル機のコアを打ち抜いた。
「おい、アスガル聞こえるか!聞こえたら返事をしろ!」
アスガルからの返事は無い。
ズンと何かが落ちたような音が聞こえた。
振り向くとそこにはバーサークフューラーと似た、だが明らかに異なったシルエットの機体が立っている。
「凱龍輝・・・・」
その姿は数日前に見た新型機の資料と酷似していた。
新年あけましておめでとうございます_| ̄|○
4日だよもう…。
豪雨の中での作者さんへ
再臨お疲れさまです。
>久々の投稿ですが今回は自分としては長い物になりそうですので
>間延びしたりして見苦しい部分も多いかもしれませんが読んで頂ければ嬉しいです。
切り難い所で無理矢理切ってしまって直に後を書く事が多いこの男が居るので気にせずやっていきましょう…。
読み返すと如何しようも無い所一杯一杯…_| ̄|○
皆様方へ
実質6スレ目から見て突然書き始めた男ですが、今年も宜しくお願いします。
…そろそろ溜まり過ぎた設定保管を。
【人名】
アービン=クラフト:帝国新軍兵器実験部隊「フリッケライ・ドラグーン」の最高責任者で大佐、
本人の操縦技術の高さよりも機体整備に破格の才能があり緊急時以外は機体整備を行っている
リエット=ラブルマン:共和国軍強行偵察部隊所属で仕事が無かった為ルート兄弟の戦闘訓練を行っていた、
本当は別の話の主演予定でしたがデススティンガーのネタ処分の為急遽出演する羽目に…スマソ
でっち上げゾイド「ケルベロスブレイド」も同様です
ルート兄弟:この人達も急遽出場した人で長男マックス=ルート、次男リック=ルート、三男クロス=ルートで全員一等兵
マックス:熱血漢、リック:マイペース、クロス:面倒くさがりと為っています
まだ残っています…_| ̄|○
【技術】
シュピーゲルクライト:ファイン=アセンブレイスの趣味で作られた可変鏡面装甲でガイロス帝国の実家にあった鎧が元に成っている
素材はアイス・ブレーザーのアイスメタル装甲を更に改良し光学兵器の電気エネルギーを吸収、内部及び接続武装の電源に利用する機構になっている
なお下半身は変形しない、「禍返鏡:まがつがえしのかがみ」は本編で相手を脅すためのネタで実質その様な機能は無い
フレキシブルウェポンドライバー試作型:上記の物と同時に使う為に設計した試作品で、
プラズマコートレールガンの形態をとれる他腕に装着しカタパルトナックル、マルチボックスランチャー等に可変可能
自走帰還装置は本来怪我人の輸送等に対応した物でこの機能は出品用にも搭載されている
スナップブレイカー:シュピーゲルクライトの中央接続部に接続されている見た目尻尾を剣にした様な兵器
それぞれのブロック毎にモーター駆動の小型ワイヤーウィンチを内蔵し伸ばして巻き付けた対象を巻き取りで切り付ける事が出来る
がサイズの関係上24部隊用の強化服とシュピーゲルクライトの補助装置無しでは持ち上げる事もままならない
ビットローラー:シュピーゲルクライトの足の裏に搭載されている小型ローラーで片足に12個づつ装備されている
推進力は高く下半身部分のみの装備なら片足で壁等を簡単に登る事が出来る
甲殻皮膚(追記):甲殻病誘導技術により幾つかの形態が確認されている以下に特徴を
強盾・超盾:装甲の様な形態で神経節で取り回しの利く物や裏側が自由に動く物が有る、超盾は位置固定の代わりに最高の防御力を持つ
ザクサル=ベイナードのみ超盾を持ちその他は基本的に強盾に成る基本的に強盾・超盾が基礎に為って他の形態を接続される
布刃:反物の様な形態に左右の端が刃物状に為っている物でミズホ=浅葱が略全身を覆って余る程の物を使用している
更にミズホの布刃は特殊で先端に小型の強盾と爪牙を持つ他意思により完全に統一されたコントロールを実現している
爪牙:強盾等の先端に有る爪状の刃で超盾以外の甲殻皮膚に必ず存在している
甲翼:展開して皮膜を開き空気抵抗を発生させる物でファイン=アセンブレイスのみに存在する最新型種
輝眼:レンズ型の透過甲殻皮膚で超盾に迫る硬度を持つ他帯電すると言う特徴を持つ
甲殻皮膚は人体の分類上金属成分を大量に含んだ「爪」であり成長する事が出来る
【ネタ】
ヒーロー性重視?甲殻皮膚:ルディア=カミルたっての願い(嫌がらせ)でファインに処置された形態
正式には多種多機能タイプに分類されるもので基部の強盾より布刃2枚、甲翼4枚、強盾2枚が付いている
最大展開するとハングライダーの代わりに使用出来る可能性が有るらしい…
エレクトロンバンカー:気合いを入れる為にファインが叫んだだけの必殺技名
実質はただ高速移動から大量に蓄電した輝眼のエネルギーをシュトゥルムシュナイダーで相手に叩き込むもの
【生物兵器】
バルツゥース:グラハム=レンバートンの制作した複合生体型大型生物兵器
基本的には本体以外の使役体で相手に攻撃を仕掛け使役体が単一で戦闘続行が不可能になった場合本体が使役体と合体し戦闘を行う
使役体は擬態や生物工学を逆手に取った位置にコアがある為一度で倒す事は人間、小型ゾイドには不可能
このタイプは機械的な物を中心部にして生物を統率する為の実験の試作体にあたる物で完成度は非常に低い
ダメポ…レスを3つも使ってしまった上に400KB到達は確実…_| ̄|○
エナジーライガー。帝国軍が作り出した最新型のライガータイプゾイド。まったく新しい概念による
設計思想と動力を使用し、その性能はスピード、パワー、格闘能力、砲撃能力全ての点において、
従来機を遥かに凌ぐとすら言われている。さらに設計段階からブロックスとの融合も考慮されており、
汎用性と言う点についても最高レベルのゾイドである。共和国軍の凱龍輝がゴジュラス系技術で
パワーアップされたフューラーなら、エナジーライガーはゼロ系はもとより、フューラー系技術
などを使用してパワーアップされたライガーと考えていいだろう。
「しかし、ただ性能の高いゾイドを使えば勝てると言うほどあの二人は甘くないと思うぞ。」
テンションの高まる将官達に対し、一人の将官が口を挟んだ。そして、その将官はさらにこう続ける。
「と言うことで、そのエナジーライガーを動かすパイロットに関してもその二人と戦えるような
優秀なパイロットを選出する必要がある。そこで自分はパイロットに推薦したい人物がいる。」
「そ・・・その人物とは・・・?」
「まず対グリーンデビルに対してはあの「雷神のサンダース」ことサンダース=ヴォルト中佐を
ぶつけ、ライガーゼロフェニックスに対しては期待の新人であるクライト=クロウズ大尉を
ぶつけることを推薦したい。」
その直後、他の将官達はいっせいに騒ぎ出した。
「あの雷神のサンダースと天才と呼ばれるクライトだと!!」
「う〜む・・・確かにあの二人なら対抗できるかもしれない。」
「とにかく、目には目、歯には歯、エースにはエースで対抗しろという事ですな?」
サンダース=ヴォルト中佐。ネオゼネバス帝国が誇るエースパイロットの一人であり、ガイロスから
独立する以前から活躍していた人物であり、圧倒的スピードによる電光石火のごとき攻撃で敵を倒す
所から雷神のサンダースの異名を持ち、現在においてもシュトゥルムフューラーを使った電撃作戦で、
数々の項をあげたベテランエースパイロットである。またその外見は相当にごつく、かつ凄みがあり、
戦闘に関しては厳しい人物であるが、それ以外に関してはとても温和な好人物であり、部下や若い
兵士達から「親父さん」と呼ばれて親しまれている。
そして次にクライト=クロウズ。頭脳、体力、などなど、様々な分野で天才の名をほしいままにし、若干14歳の若さで大尉となった天才少年であり、次代の指導者候補とすら呼ばれている。
当然ゾイドの操縦に関しても天才的であり、イグアンでロードゲイルを正面から倒したことすらも
あり、さらには、ルックスも抜群で婦女子からもキャーキャー言われていたりする。
天才や優秀といった「良い所」のデパートのような男である。
「強力なゾイドに強力なパイロット。これなら勝てるかも知れん。」
「よし決定!!早速スケルトン部隊とその二人に出撃の準備をさせよう!!」
「フッフッフ・・・あの二人の恐怖におののく顔が目に浮かぶ。」
「フッフッフッフッフ・・・ハーッハッハッハッハ!!!」
会議室全体に将官達の笑い声が響き渡った。その声は会議室の外にまで響き渡り、外の者達の耳にまで入ってきていた。
「また将軍殿達が変な笑い声を上げてる・・・。」
「お偉いさんの考えることはよくわからんな・・・。」
ゾイド格納庫でゾイドの整備をしていた整備士二人がそんな会話をしていた。
一方、帝国軍が酔狂な・・・いや、世にも恐ろしい作戦を計画し、実行しようとしていた事など共和国軍は知るよしも無かった。
ついに400KB超えましたね・・・500KBまでという新ルールを尊重すれば、
450KB当たりで次スレの準備という感じでしょうか・・・
硝煙の果てに
待機時間は呆気なく終了した。おそらく窪地に入ってから一分もたっていないだろう。
あらわれたのはヘルキャットが一機だけだった。予想していたよりも少ない戦力にライアーは首を傾げたが結論はすぐに出た。
もちろんだがこれが敵部隊の全戦力であるはずは無い。目の前のヘルキャットは先遣戦力に過ぎない。
おそらく部隊の主力は拘束部隊との戦闘にもたついているのだろう。それにライアーたちの分隊以外の最終防衛ラインで警戒配置についていた部隊も無視は出来ない。
とりあえずは目の前の一機だけ片付ければ良かった。後のことは後で考えるしかない。
そう思いきると無反動砲の砲身だけを窪地から突き出して装填手にHEAT弾の装填をいった。
装填手は青白い顔のままだったが、何とかHEAT弾を砲尾に込めた。無反動砲だから砲尾を閉める必要は無い。
安全装置が解除されているのを確認すると、ライアーは無反動砲の砲身だけを窪地から突き出した。
装填手はバックブラストを浴びない様に脇に控えていた。
顔色は悪いままだが、度胸が付いてきたのか簡易な双眼鏡で周囲の観察をやっていた。
その様子にライアーが安心する間もなく軽機関銃の発砲音が鳴り響いた。
ライアーたちに支給された軽機関銃は突撃銃と同じ弾丸を使用するタイプだった。
銃身や薬室の強度は突撃銃よりもかなり高いから長時間の連続射撃も可能だった。それに突撃銃と同じ弾倉も使えるなど汎用性は高い。
やはり無反動砲と同じくあちらこちらに出回っている火器だった。その分足がつくことも無い。
軽機関銃弾は頼もしい連射音をさせてヘルキャットに着弾した。至近距離からの発砲だったから、ほとんどの弾丸が命中していた。
命中弾の多くは頭部に集中していた。もちろん小銃弾でゾイドの強力な頭部装甲を貫通することは出来ない。
しかしパイロットの心理としては自身から数十cmしか離れていない場所への着弾は嫌うはずだった。
それに頭部はセンサの集中する場所でもある。パイロットの感覚としては頭部を保護するはずだった。
そしてライアーが見る前でヘルキャットは頭を下げて背部のビーム砲を銃声のする方向に向けた。
ビーム砲の砲塔にも独立したセンサは据え付けられているからそれで発見し掃射するつもりだったのだろう。
だが軽機関銃から身を隠そうとするばかりでヘルキャットのパイロットは反対側に注意を向けることは無かった。
そしてそれが命取りになった。すかさずライアーは暴露されているコクピットに向けて無反動砲を発射した。
命中まで時間がかかったような気がしたが、それでも一秒に満たない時間だった。
ヘルキャットの頭部はHEAT弾の弾着と同じに噴出した高圧高温のジェット噴流によって穴があいていた。
狙いすました砲弾はちょうど装甲の薄いバイザー部に命中していた。帝國軍標準のコクピットは上部装甲と下部装甲の隙間が半透明のバイザーになっていたからこれは運が良いと思うべきだった。
ヘルキャットは無反動砲弾が命中してから寸とも動かなかった。HEAT弾の威力とバイザー部の厚みを考えると火炎流が装甲を突き破っているのは間違いなかった。
おそらく内部には焼け死んだ、というよりもは吹き飛ばされたパイロットの死骸があるだろう。
すぐに機関銃手の男が陣地から出てきて、用心深く軽機関銃を構えながらヘルキャットに近づいていった。
ライアーも装填手に次弾を装填させるとくぼ地から飛び出そうとした。
白色のシールドライガーが出現したのはそんな時だった。
ラガートは開いた口が塞がらなかった。「な、な、何やってるんですかロイさん!!死ぬ気ですか!!?」
ロイはデスバーンから目を離さない。「違うな。こいつを倒す。…だがその前に」ロイはホバーカーゴに向かってきた。
「武器でも変える気ですか!?デスバーンにダメージを与え得る武器なんて我々には…」
ホバーカーゴに入るとロイはカバーに覆われたボタンを押した。ロイのすぐ後ろですごい音がした。
コックピットが開き、後部座席が飛んだのだ。アイリスが座ったまま。「え!?なっ、何するの!?」
「はっきり言って俺はこの戦いから生きて戻れるとは思えない。だからアイリス、君はここから先に来てはいけない」
「どうして!?お父さんもロイも、私を独りぼっちにして逝こうとするの!?」アイリスはシートベルトで動けない。アイリスの目に
涙が薄っすら見える。「俺はアーサーと約束したんだ。君を守るって―何があっても。でも、俺にできるのはここまでだから…
アイリス、君は生きろ。デルポイにはお母さんも居る…俺みたいに本当の独りぼっちじゃない。」
アイリスは俯いた。涙が溢れてくる。「ロイ…私は…私は……!!」言葉が出ない。今目の前で父親と同じ事をやろうとしている
ロイを前に何も言えない。アイリスはそんな自分が情けなかった。「生きては戻れないんだ、アイリス。奴の装甲はディアブロの
サイバーファングなら破れるけど、膨大なゾイドコアを吸収してきた奴の崩壊時に発せられるエネルギーは半端じゃない。
格闘攻撃をする以上俺は、逃れる事はできないんだ…」アイリスは無力感が募るばかりだった。自分の力では変えようの無い事実。
「ごめん…こんな形でしか君を守ってあげられない。…俺は、アイリスに逢えて本当に良かったと思うよ」
アイリスにはどうしようもない。涙が止まらない。「ありがとう…………さよなら」一瞬だけロイが哀しげな微笑みを見せた。
そして、ディアブロタイガーは再び夜の闇に飛び出していった。
ディアブロタイガーが視界に入ってきたのを確認すると、デスバーンの全身の重火器が火を噴いた。創造を絶する弾数にロイは
近付く事も出来ない。「くッ…これほどの武器を収納していられるとは!!(イオ博士はある意味天才だ…)」
一瞬の隙に、プラズマキャノンが飛んでくる。「!!」やられたか――そう思ったが、空中でプラズマが爆発した。
右を見ると、ハイブリッドキャノンを構えたパンツァーが居る。後ろには、全砲塔をデスバーンに向けたIAが居る。
「そうだ!!俺達の星は俺達が守る!!」 「全てを懸けて…大切な物を守る!!」
横に、リッツも居た。「ジェノブレイカーの武器でも奴の装甲は破れない。今奴を倒せるのはディアブロタイガー、そしてお前だけだ」
デスバーンのビーム、ミサイルの雨がパンツァー、後続の共和国兵たちに降り注ぐ。次々とゾイドが倒れていく。
だが、誰一人として引き下がる者は居なかった。「絶対に……諦めない!!例えどんなに敵が強大であっても!!!」
アルティシアが、ラガートが、アーバインが、そして全ての共和国兵とリッツが、デスバーンに攻撃を続ける。効果は無い。だがそれによって
ロイに一瞬の隙を作ってやる事は出来る。「残弾を残すな!!撃ち続けろ!!奴に隙が出来るまで!!!」
ビームスマッシャーが更に共和国ゾイドを切り刻んでいく。メルクリウス湖の周囲は流れ弾で火の海と化している。
月も見えない。本来ならば暗闇に包まれているエウロペの空が炎で朱く染まる。
どれくらい撃ち続けただろうか。アルティシアが放ったリニアキャノンでデスバーンが仰け反った。砲火が止む。
「今だ―――――」
周りの時間が、やけに遅く感じる。まるでスローモーションを掛けた様だ。ロイはデスバーンの元へ一直線に走って行く。
味方の砲火も止む。デスバーンが仰け反っているのが静止画に見え、一瞬が永遠となる。
デスバーンが動き始めた。口が光り始める。真空荷電粒子砲が来る。だが、ロイは立ち止まりも、逃げもしなかった。
避けている暇など無い。避ける気も無い。
人々の運命を。
この星の未来を。
この一撃に、全てを賭ける。
「行けぇぇぇぇーーーッ!!!!!」ロイの絶叫と同時に、ディアブロタイガーがデスバーンに突っ込む。
禍々しい光を放つデスバーンのコアが砕け散っていく瞬間が、周りに居た全員に見えた。
崩壊が始まる。デスバーンの残骸が巨大な光と共に消えていく。周りの全てを巻き込んで。
ロイのディアブロタイガーも、光の中に消えた。
大河の中央では深紅の竜が泳いでいた。…いや、よく見れば時折身体を深く沈め、
不意に仰向けになり又体勢を元に戻していたりする。その度、跳ね上がる飛沫。気持
ち良さそうに四肢を、首や尻尾を伸ばし浮かぶ。竜の大きさを無視すれば何とも無邪
気な様子。巨大な六本の鶏冠と二枚の翼を背負った二足竜、魔装竜ジェノブレイカー
と呼ばれるこのゾイドは目下水浴びの真っ最中だ。
岸辺には薪が焚かれている。その近くには錆び付いた巨大な鉄の筒が数本。貯水用、
或いは風呂桶用に使われているのだろう、大人一人程の大きさもある。
その脇で何往復も走り込みを続ける小さな体躯の少年。ボサボサの黒髪に大きめの
Tシャツ・半ズボン、素足に運動靴の実に地味な容姿ながら、大きめで円らな瞳の輝
きと真一文字に結んだ口だけは妙に鮮烈な彼・ギルガメスは今年最後の練習の真っ最
中だ。…ギルの肉体は未だ成長の過程にあることから、彼の師は短距離走を繰り返し
行なうよう指導している。この練習法、筋肉の自然な発達のみならず肉体のバランス
感覚も養うため、四肢をフル稼動する格闘戦主体のゾイドに乗る上で欠かせない。
規定の往復数を走り終え、膝に手をつき息を整えるギル。今年最後の練習という割
には息の乱れも大きいが、幸いゾイドに搭乗しての訓練は今日のメニューにはない。
ギルの様子を確認した深紅の竜。ゆっくりと、大河を泳ぎ横切り始める。その様子
を確認した竜の主人は大きく背伸びし、薪の近くに置かれた袋から着替えを取り出す。
まずはTシャツを脱ぎ身体を拭いて着替えると、一旦周囲をキョロキョロと見回し人
がいないことを確認してからズボンを脱ぎ始める。
深紅の竜が岸辺に上がってきた。一方のギルは既に着替えを終えた上に、大きめの
レインコートと長靴という出で立ちに変わっている。デッキブラシを片手に持ち、地
面に立ててみせて言う。
「さ〜てブレイカー、準備はいい?」
主人の声に対し、ブレイカーと呼ばれた相棒はピィと一声甲高く鳴き、民家二軒分
程もある巨体を行儀よく伏せてみせた。
デッキブラシを両手に持ち替えたギル。まずは尻尾にブラシを当て、ゆっくりそし
て思いの他軽く磨き始める。…ゾイドは金属の身体を持つが生命体でもある。硬い表
皮は意外と新陳代謝が激しい。ゾイド自身も先程の水浴びのような形で手入れを怠ら
ないので主人も割と大雑把に磨けば良いのだが、問題は関節部や、ゾイド独特の噴射
口などといった各器官である。どうしても老廃物が溜まってくるため、丹念に磨いて
やらねばなるまい。
尻尾の関節部分に達するとギルの両腕にも力がこもり始める。水と共に煤のような
ものが流れる度、気持ち良さそうに鳴くブレイカー。端なさすら感じる鳴き声にギル
は少々呆れながらも、徐々にデッキブラシを尾の先端から胴、背中や四肢そして首へ
と近付けていく。…首の辺りにもなると鳴き声はその威厳を雲散霧消させる程甲高く
繰り返され、ギルも流石に「ブレイカー?もうちょっと静かにしてよー?」とたしな
める始末。
口の中まで磨き終えると仕上げは腹部。その巨体をゴロリと仰向けにしたブレイカ
ー。飛沫をフードで防いだギルは相棒の腹の上までよじ登って「動かないでよ!?」
と注意しデッキブラシに力を込め始めた。
奮戦すること二時間近く。全ての部位を磨き終えたギル。額に浮いた汗を拭って大
きく深呼吸する。
「おしまーい!さあ、もう一度流してきな〜?」
ブレイカーは姿勢を元に戻し、四肢を手について伸びをすると再び大河の方へゆっ
くり歩を進めたのである。
ギルとブレイカーのコンビが「チーム・ギルガメス」のキャンプ地である小高い丘
の上に戻った時、エステルは掃除をほぼ終えたところだった。愛用のビークルも奇麗
に磨き上げ、丘の周辺も掃き終えている。ゴミは専用の袋に残らず詰め込み、これか
ら買い出しに行く際、集積所に持っていくのだ(ゴミ袋は有料で、代金が税金となる。
因みに不法投棄が発覚すると共和国の通称「美化部隊」に追われる羽目になる)。
丘の中央付近。簀子を敷き、中央に折り畳み式のテーブルを並べると、秋に買った
ばかりの小奇麗で大きめのテントを張り直す。ギルとエステルそれぞれの就寝用に加
え、三つ目のテント。冬場でも二人対面で食事や勉強ができるようにするためのもの
だ。
中々重い生地を持ち上げるのにやや手こずるエステルだったが、不意に軽くなった
気がした。
「あら、おかえり。ありがとう」
ブレイカーは空に浮かびながら生地の先を口に銜えて助けていた。両腕には水を一
杯溜め込んだ巨大な鉄の筒を何本も抱えているが、元来器用なこのゾイドにとって大
した問題ではない。ブレイカーとエステルは息の合った様子で瞬く間にテントを張り
直した。
ふわりと足から着陸すると、腹這いになったブレイカー。その巨体にしては地面も
揺れないのが不思議で、これもマグネッサーシステムの所以か。やがて胸のハッチが
開き、中から出てきたギル。
「ただいま。今日のメニューは終わりました」
降り立ったギルを出迎えたエステル。ベージュ色で襟のないブラウスは袖を捲り上
げている。その上紺のロングスカートにサンダル履きという何とも地味な格好ながら、
ギルよりも頭一つは背が高く、足も長い彼女が着ると自然と華やいで見えるから不思
議だ。
腕組みしながら微笑むエステル。
「お疲れさま。…散髪しましょう。お風呂を湧かすわね?」
前髪を、横を、そこそこの長さに少しずつ切っていく。一通り終えるとここからが
肝心で、後ろ髪を、襟足を丁寧に刈り上げる。「英雄刈り」と通称されるこの髪型は、
太古の昔からゾイド乗りに人気が高く、ギルのボサボサ頭も基本はこれである。
鏡に映るギル。首の辺りに布切れを掛け、神妙な面持ち。その後ろではエステルが、
手慣れたハサミ捌きでギルの髪を刈っていく。彼以上に真剣な眼差しで、鏡の向こう
を角度を変えながらひとしきり見つめると、やがてようやく戻った微笑み。
「はい、おしまい。お風呂、入ってきなさい」
ギルの首に掛けた布切れを外しはたくと、地面にこぼれた髪をそそくさと掃き集め
る。
「あ…ありがとうございます」
言いながらちり取りを用意する。エステルが帚で集めた黒髪をギルはちり取りで受
け止め、ゴミ袋に捨てた。
「それじゃあ私は買い出しに行ってくるから。…お風呂、種火は消さないでね」
「あ、あの…ブレイカーは一緒に?」
その声に微睡んでいたブレイカーが軽く首をもたげたが。
「大丈夫よ、ゴミはそれほど出なかったし、食べ物も大方揃ってる。あとは供え酒位
だから。
ブレイカー、留守番頼んだわ」
赤いゾイドは甲高い鳴き声で返事するとおもむろにあくびし、再び首を下げた。
「平和を脅かすゼネバスゲリラは人類の敵です!ゼネバスゲリラを撲滅しましょう!
蛇のマークの入れ墨をした人を見掛けたら、今すぐ最寄りの警察・駐屯地まで御連
絡下さい」
石畳が美しい商店街。買い物客で賑わう中、紙袋を両手に下げて歩くエステルの耳
に届いたのは、電器屋で陳列された携帯テレビ群が映し出すコマーシャルの音声だっ
た。この星にすむ殆どの民が耳障りな位毎日聞き、今では誰も気にも止めない共和国
広報も彼女にとっては未だ珍しく、しばし歩を止めて見入ってしまう。
「ガイロス公国のゾイド査察問題で、同国政府広報部は…」
コマーシャルはニュース番組に切り替わっていた。
「政府発表によりますと、今年の餓死者は東方各国に限りましても…」
「ゾイドバトル管理省によりますと、今年のゾイドバトル死亡者数はウォリアーが…」
様々なニュースが流れていく。きな臭いものが多い。…エステルは現在も、そして
彼女がかつて生きた千年前も、報道される事件が大して変わらないことに気付き、思
わず溜め息をつく。
我に返った彼女は再び歩き始めた。
「ふぁ、ぁ〜あ」
ギルのあくびだ。既に年越しの長大なバゲットサンドは食べ終わり、年末のテレビ
番組をぼんやり見て過ごしている。…惑星Ziで放送される年末年始の番組も御多分
に漏れず、面白いものは多くない。あるとすれば精々ゾイドバトル位だが、既にウォ
リアーであるギルにしてみれば、見るよりは出場してみたい口だ。
テントの外では薪が焚かれている。…湯が、湧いたようだ。その音を聞いて尋ねる
エステル。
「コーヒー飲む?」
「…え、いいんですか?」
「今日位はね。大酒飲むよりか余程いいわ。…砂糖、二杯でいいかしら?」
やがて差し出されたマグカップを手にし、匂いを嗅ぐ。…つんと苦い、大人びた香
り。
何度も息を吹き掛けてからすする。一方のエステルは砂糖を入れずひとしきり香り
を楽しんでからカップを口元に近付けた。
「…年越しの『お供え』、三年振りなんです」
おもむろに、ギルが口を開く。
「ジュニア(※)受けるって決めてからは夜更かしなんて全く考えられなかった。
今年、まさかウォリアーになれて、その上『お供え』までできるなんて…」
しんみりとした口調は、やがて掠れ始めた。自身でそのことに気付いたギルはすぐ
に口元を押さえるが、変化は留まることを知らない。たちまち熱くなる目頭だったが。
ぽん、と、両頬を軽くはたかれた。いや、触れたに等しいか。その相手は、ギルの
両頬に手を当てたまま穏やかな眼差しを投げかける。
「幸せになるために、ウォリアーになったんでしょ?」
無言で一度、二度と頷き返す。
「ほら、ブレイカーも心配してるわよ?」
テントの外では、巨大なる相棒がそぅっと覗き込んでいた。それに気付いたギル。
「あ、あの、先生?ちょっと外に出てますから…」
「ええ、いいわ。上着はちゃんと着なさいねー?」
コーヒーを一気に飲み干してから小走りに出ていくギルを尻目に、エステルは呟く。
「本当、来年はもっと大人になってね。でないと…私も…」
続く言葉を飲み込んだまま、再度カップを口元に寄せた。
「ブレイカー、いくよ!マグネッサー!」
全身のリミッターを高速回転させ、ギルの相棒がふわりと浮かび上がる。エステル
の駆るビークルも相当静かながらマグネッサーシステムのエンジンを起動させてこれ
に続いた。…機上の彼女はブラウスにスカートという格好の上に、厚手のコートを着
込んでいる。今年の冬は思いのほか暖かいが、本番はこれからだろう。一方のギルは
いつも通りの格好のまま搭乗中だ。コクピット内の暖気は十分である。
二人と一匹の赴いた先は草木も生えない荒野。但し、前方を見渡せば幾つもの街の
灯が、遥か後方には自分達のキャンプ地が見える。
着地するビークルとゾイド。胸部コクピットから出てきたギルは、思いのほか寒い
外に身を縮ませると早速セーターとコートを着込む。
ビークル備え付けのモニターをまじまじと見つめていたエステルが言う。
「…『海』は、あっちの方角ね。『山』はキャンプ地でいいわ」
言いながら、それぞれの方角を指差す。
「0時になったら、お祈り。その後、お供えを振る舞うわ。いいわね?」
身を縮ませながら頷くギル。
ひとしきり、白い吐息を漏らす二人。後ろではブレイカーがややそわそわし始めた
が。
ピーン。0時を、年が開けたことを知らせる時報を、ビークルが知らせた。
その音にブレイカーは慌てて立ち上がって胸を張る。ギルとエステルは背筋を正し、
両手を握り胸元に寄せて祈り始めた。…まずは「海」の方角。人とゾイドの故郷でも
ある豊穣の源の方角へ。次いで「山」の方角。神話の時代、人とゾイドが相容れなか
った時、まず高所に身を寄せた上でゾイドと対話するよう諭したのが「イブ」だ。
ギルの祈りが長い。「海」への祈りの際、かなり熱心に何事か呟き頭を持ち上げる
と、エステルが見つめていることに気がついた。慌てて祈りの方角を返る。ブレイカ
ーも、二人に倣った。
若干長い祈りが、終わった。
「…何をお祈りしたの?」
尋ねるエステルだったが、ギルはにっこり微笑んでこう返すのみだ。
「へへっ、内緒でーす。さあ、お供え、お供え」
その言葉に安堵したエステル。ビークルから二本の瓶を持ち出してきた。…中身は、
ワイン。これを海と山の方角に向けてそれぞれ引っ掛けることで、年越しの儀式は完
了する。
エステルは、海を。ギルは、山を。…ブレイカーは一歩下がって二人を見つめる。
「用意は、いい?せーの!」
コルクの栓を一斉に抜き、勢い良く地面に引っ掛けていった。
「…ふぅっ、お疲れさま。それじゃあ、帰って一杯やるわよ?」
「えっ…まさか、水が飲めるわけじゃ…」
この場合の「水」はまさに飲料用、惑星Ziではワインよりも貴重な存在を指すが、
これより後に続くエステルの言葉のニュアンスは寧ろ地球人のそれに近い。
「実はね、供え酒以外にウィスキーを一本、買っておいたの。今日だけだから、付き
合いなさい?」
「え、えー!?コーヒー飲むのも相当まずいかなって思ったんだけど…」
「あぁら、不服ぅ〜?」
口元に笑みをこぼしながらも、屈強なゾイドをも震え上がらせるあの鋭い眼光が一
瞬、キラリ。
「つ、付き合います!付き合いますって!…はあ。ブレイカー、行こうか」
ちょっとだけ肩を落としながら、相棒の胸元に歩み寄るギル。それを横目に見なが
ら呟くエステルの言葉は彼には聞こえなかった。
「…本当、少しずつでもいいから、大人になってよね?」 (了)
※ゾイドウォリアーになるには、十五才の夏に受験費無料で行なわれる「ジュニアト
ライアウト」に合格して大手ゾイドバトルファームに拾われるか、年齢制限無し・但
し高い受験費とゾイド持参が必須で年数回行なわれる「トライアウト」に合格するか、
いずれかしかない。ギルガメスは前者不合格直後に出奔、エステルそしてブレイカー
と出会い後者を受験し成功するが又別の話しである。
遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
>>285 是 非 読 ん で 下 さ い !
つーか、即レスできなくてすみません。あの投稿直後、疲れがどっと湧いて出たって
感じでくたばってました。そちらの原稿、これからゆっくり読ませて頂きます〜。
>>294 コミケ云々はまあ、色々ありましたもので…。
あと、ゾイドバトル。自分としては/0全26話で終わらせるには惜しい題材だと思ってます。
各人各様の切り口ができるテーマだと思っているんですよ。
****
今回は申し訳ありませんということで。バトルシーンが全くないものを投稿しちゃいましたから。
でもこういうネタは時期が大事なので、書きかけの原稿を小休止しつつ突貫工事ででっち上げました。
それに、こういう話しって作っている側からすれば定期的にやっておかないと結構辛いです。
自分の中で、キャラクターが薄っぺらく見えてきちゃうというか。
年がら年中ゾイドに乗って戦ってるってわけじゃない筈ですからね。
だからその点は御勘弁を。その代わり、色々ヒントになるようなネタを突っ込んでみました。
そこに気が付いていただけると嬉しいです。
凱龍輝。
バーサークフューラーと同じ素体を使いながらも技術革新により格段に高い格闘能力を持つと聞く。
全身のいたるところがオレンジ色に輝いている。
急接近しバスタークローが轟音を上げる。
アームを展開しようとすると凱龍輝が引きちぎった。
右足の強力な蹴りがバーサークフューラーの腹に当たった。
よろけると凱龍輝が口を大きく開き口内が輝く。
それと同時にアスガルは後ろに跳んだ。
光は大きくなり荷電粒子砲が発射される。
さっきアスガルが放った荷電粒子砲のエネルギーがそのまま使われたらしい。
光の渦が頭部を掠める。
熱でハッチが溶け落ちた。
液状になった装甲が左腕に当たりジュウと音を立て激痛が走る。
ハッチの一部が無くなり雨がコクピットに降り注ぐ。
火傷を負った左手に当たる冷たい雨が心地良い。
一定の距離を挟んで二機は睨み合う。
マイクは大きく息を吸い込んだ。
破けてしまいそうなほど心臓が激しく脈打つ。
左のバスタークローは無い。
胴体部の損傷を示すマーカーが赤く灯っている。
先ほどの一撃がかなりのダメージになっているようだ。
(もう長くは戦えない。次の一撃で決める。)
一度レバーを離しもう一度強く握りなおす。
口元から笑みがこぼれる。
(笑っているのか? この状況で。)
マイクは自分が笑っていることに気付いた。
自分の中の戦士としての本能が強敵との出会いを喜んでいるのだろうか。
倒したい。
今目の前にいる最強の敵を。
チャンスは一度だけ。
長距離ではやつを仕留める火力は残っていない。
ましてや荷電粒子砲など同系統の機体との戦いで使うのは自殺行為だ。
接近戦だ。不利な条件だがこれしか手は無い
同時にバスタークローを展開しビームを放つ。
ブースターが火を噴く。
敵が向かってくる。
早い。加速度もバーサークフューラーより遥かに高い。
上からバスタークローで貫こうとする。
左足を僅かにかすめアームを握りつぶされた。
凱龍輝が大きく口を開く。
口内が僅かに光る。
残っているエネルギーはほとんどないだろうがこの至近距離で撃たれてはひとたまりも無い。
左手を突き出し口に突っ込む。
フューラーの左手が吹き飛んだ。
一瞬、凱龍輝が僅かにバランスを崩した。
その瞬間フューラーの牙が凱龍輝の首に食い込む。
メキメキと音を立てて首の装甲がへしゃげていく。
もがく凱龍輝の左足が腹部の大きな傷口に当たった。
脚の力が抜けていく。
マイクは荷電粒子砲のチャージレバーを引いた。
1秒ほどでエネルギーはたまった。
だがそれは最大出力の1割にすら満たない。
発射ボタンを押す。
まばゆい光と共に凱龍輝の首が大地に落ちた。
それから数日後、共和国軍移動要塞ジャイアントトータスにはいつものように晴れ渡る朝日が差し込んでいた。
「少尉!!何すかその格好!!」
「ちょっと今日は小学校の同窓会に行く事になってね。そのためのお出かけ用の服よ。」
少し驚いた顔で言うライン=バイス軍曹(20)に対し、マオ=スタンティレル少尉(18)は
にっこりと微笑んでウィンクしながらそう答えた。
確かにマオの着ていた服はいつもとは違った服であり、いかにもお出かけ用という感じの服装だった。
現に普段付けている肩、肘、膝のプロテクター、手袋なども外されていたし、スカートの丈も微妙に
長いものになっている。とはいえ、やはり緑色を多用しているのは普段と変わらなかった。
「・・・・・・・・・。」
「どったのライン、顔が赤くなってるけど・・・。風邪?」
「な!!何でもありません!!」
黙り込んだラインに対するマオの突っ込みに対し、ラインは慌て顔で思わず叫んだ。
「それはそうと、良いんですか?いくら同窓会っても・・・。」
「大丈夫大丈夫!許可とってるから。」
「・・・・・・・・・。」
マオが取り出した許可証と思われる物を見たラインは黙り込むしかなかった。というより、ここで
許可が無かったらストーリー的に辛い物となってしまっていただろう。
「ハア・・・。でも、気を付けて下さいね。いつ敵が襲ってくるかも分かりませんからね。」
「ウン!分かってる!」
そう言ってマオは格納庫に行き、愛機であるゴジュラスギガ「カンウ」に乗り込むと、そのまま
発進して行った。
「あ・・・。少尉・・・、私用でゾイド使っていいのかなー・・・。」
「ハッハッハ!いいんじゃねーの?作者の性格からすればさ!!」
格納庫内でカンウを見送ったラインの言葉に対し、そこでゾイドの整備をしていた整備士が笑ってそう答えた。
そんな戦争中を言うことを忘れさせる程の平和な日常の中にあったジャイアントトータス隊。
しかし、そんな彼らが一体のディメトロドンに監視されていようとは予想もしていなかった。
「こちらディメドロ8!!グリーンデビルはこちらの予想通り同窓会へと行く模様。随伴機体は
無し!グリーンデビル一人とそのゾイド一体のみで行く模様です。」
「ようしわかった。貴様はそのままグリーンデビルの追跡を行え。見つからないように慎重にな!!
こちらはスケルトン部隊その他、実働部隊の準備を行う。」
「了解!!」
レーダーの性能は元より、光学迷彩などを装備し、隠蔽能力と機動力を高め、さらに消音機能なども
そなえた隠密仕様の改造ディメトロドン「ディメドロ8」のパイロットの通信報告に対し、
帝国司令官がそう命令した。そして、すぐさまディメドロ8はカンウの後を見つからぬよう慎重に
追跡した。ちなみに、ディメドロ8の「8」は何で8かと言うと、特に意味はない。
また低い朝日を背にし、マオを乗せ、カンウは目的地へと走る。その数キロ後方をディメドロ8が
見つからないように物陰にちょこちょこと隠れながらカンウの後を付けていた。
「よしよし。いい調子だ。」
気付かれていない事を確認したディメドロ8のパイロットはそう思った。ハッキリ言って彼にとって
今回の任務は恐怖でしかなかった。何しろ相手はグリーンデビル。一度見つかってしまえば即死は
確実。そう思うと彼の体から冷や汗が絶えず流れ出、鳥肌も出っ放しであった。しかし、ある程度
時間がたった今でも気付かれていないようなので、彼はそっと胸をなで下ろし、少し安心していた。
そして再び岩山の陰に一時隠れる事にした。
「やはり念には念を押して、もう少し距離を取ることにしよう。多少距離を取った所でヤツが
こちらの索敵範囲から逃げることは出来ん。」
「へ〜、貴方のゾイドのレーダーの性能ってそんなに凄いの?」
「そりゃーそうさ。10キロ以上は楽に索敵出来る。その上に完璧なるステルス性を備えた
このディメドロ8はまさに完璧な電子戦ゾイドさ…ってえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
ディメドロ8のパイロットは愕然とした。何と、カンウがいつの間にかに岩山の陰に隠れた
ディメドロ8のさらにその背後に回り込んでいたのだ。
「ボク〜?お姉さんをストーカーするなんていい度胸の持ち主ね〜。」
カンウの頭部を思い切りディメトロ8の頭部に近づけ、マオはにっこりと微笑んでそう言う。
ちなみにディメドロ8のパイロットの年齢は40を平気で過ぎたオッサン。
「あの〜…お嬢さん…いつから分かっていらっしゃったので…?」
「ジャイアントトータスを出た直後から。」
「…………。」
マオの解答に対してディメドロ8のパイロットは愕然とした。彼にはとても信じられなかった。
最高のステルス性能によって完璧に隠蔽されたディメドロ8の隠蔽能力は完璧であり、何も落ち度は
無かった。しかし、それですら簡単に発見されてしまったグリーンデビルに対する恐怖により彼の
顔は引きつっていた。マオは彼に言う。
「確かに貴方のゾイドは完璧に隠蔽されていた。けど、私から隠れたければ自らの気配やその
みなぎる殺気も消さなきゃね〜。じゃあ、次の機会に頑張ってね。」
ゴシャァァァン!!!
カンウの右足がディメドロ8の大型レーダーを蹴り砕き、マオはそのままカンウを再び目的地へと
走らせた。ディメドロ8のパイロットは走り去るカンウの姿を唖然とした面もちで見つめることしか
出来なかった。レーダーを失ったディメドロドンは人畜無害かつ無力であるからである。
しかし、情けを掛けてくれたのか、はたまためんどくさかったのか、マオが見逃してくれた彼と
ディメドロ8の命は間違いなくそこに残されていた。
それから一時後、丁度正午が近い時間にカンウは同窓会の開かれる、タラトタウンの近くの森に
到着していた。巨大なカンウすらも隠れられるほどの巨大な巨木の近くに機体を停めると、
マオはキャノピーを開き、コックピットから出た後に体を伸ばして深呼吸をした。
「ふ〜…。じゃあ私は行ってくるよ。カンウは私が呼ぶまで好きにしてていいよ。」
マオはそう言ってカンウの頭部から地面に一跳びで飛び降りた。飛び降りた事を確認した後、
カンウはマオに対して頷き、そのまま座り込んだ。ゴジュラスギガは基本的に凶暴なゾイドで
あるが、いつも凶暴なワケがない。そういつもキリキリしていてた精神的に疲れるだろう。
こう見ると結構大人しい時もある。カンウとてマオと出会うまでは暴走事故の常習ゾイドで
あったが、マオと出会った後は一転して大人しくなった。戦闘時の凶暴性は変わらないが。
とにかくカンウはその場に座り込んでのんびりと空を眺めていたりした。
そして、マオは町へと繰り出したのだった。
その町は大きくもなく小さくも無い。何処にでもあるようなごく普通の町だった。
「さーて、待ち合わせ場所はーっと。」
マオは持参した地図を見、そして顔をキョロキョロと左右に向けながら同窓会会場へと向かっていた。
「それにしてもみんなと会うのは小学校卒業以来だな〜。みんな元気にしてたかな?というか生きてるのかなー。」
空を眺めながらマオはそう呟いた。マオは小学校を卒業して以来、小学校時の知り合いと会った事は
一度もなかった。なぜならマオは小学校を卒業した後、中央大陸の「竜王流」西方大陸の「神聖寺」
東方大陸の「カランの塔」と、三大陸の拳法総本山で修行していたという漫画のような人生を
歩んでいたからであった。そして、修行を終えた後も共和国軍士官学校に入学し、さらに現在
共和国少尉をやっているという事である。その間も小学校時代の知り合いと会うことは一度も無かったのであった。
「ようねーちゃん!俺達とお茶しなーい?」
突然数人の男達がマオにそう話しかけてきた。早い話がナンパである。その男達はイレズミや
モヒカンなど当たり前。いかにもワルと言うか不良というかチーマーというか、とにかくいかにも
悪そうな感じの男達であった。何処の町にもそう言う連中はいるものである。
「ゴメンね〜。私今用事あるから〜。」
余り変なゴタゴタを起こしたくない。というかただ同窓会会場を探さなくてはならない。というか
この男達の様なあからさまに狙ったようなワルにはあまり関わりたくないマオは笑顔で適当に
あしらって、そのまま立ち去ろうとした。しかし…
「ちょっとまてよ〜。」
ワルのウチの1人がそう言ってマオの肩を掴んだ。簡単には逃がしてはくれないという事である。
しかし、マオに取ってはそんなことはどうでもよかった。そのまま肩を掴んだ男を何事もなかった
かのように引きずりながらマオは歩き続けた。男はびびる他無かった。
「な!!何なんだこの女は!!」
男は思わずマオの肩から手を離す。
「おい!!何やってんだよ!!」
他の仲間が男に走り寄ってそう叫んだ。
「それはオレが聞きてーよ!!あの女信じられねーバカ力だぜ!!」
と、騒ぐワル達を完全に無視し、マオは立ち去ろうとしていた。しかし、ワルはナンパを諦め、
強硬手段に出た。男達は全員でマオを囲みこんだのだ。
「もうね、いい加減にしてよね。私は忙しいの。」
「うるさいうるさい!!」
困った顔をしてそう言うマオに対してワルのウチの1人は慌て顔でそう叫んだ。と、その時だった。
「ちょっとお前ら何やってるんだ?」
「!!?」
突然マオとワル達の背後から現れたのは髭が濃く、身長も2メートルは平気である大男だった。
だがただデカイだけではない。その体全体から威厳という名の強烈な不陰気が発せられていた。
「その娘が困ってるだろうが。放してやれよ。」
「うるせえ!!オッサンは引っ込んでろ!!」
大男の言葉に対しワルは叫んで一斉に飛びかかった。しかしその大男は相当に戦い慣れている様で
あり、町の不良達が敵うはずもなかった。大男はその巨体からは想像も付かない身軽な動きで
不良の攻撃をかわし、一撃で気絶させた。そして数秒後、そこに立つのは大男とポカンと口を開けて
その場に立つマオだけだった。
「実戦の経験も無い若造がオレに勝てるわけが無いだろう…。それはそうと、お嬢ちゃん大丈夫か?」
不良を相手にしていた時の厳しい顔とは一転して優しい顔で大男はマオに話しかけた。
「あ…は…ハイ…。」
マオは慌ててそう答えた。マオは大男のその顔から悪意はもとより、下心なども全くと言っていい程
感じられなかった。純粋な善意しか感じることは出来なかった。
「この辺はコイツらの様なワルが多いからな。お嬢ちゃんも気を付けろよ。」
大男はそう一言言い残すと直ぐさまに歩き去った。
「………。」
マオは唖然としたままその場に立ち止まっていた。
「そうだった!!同窓会に行かなきゃ!!」
本来の目的を思い出したマオも急いでその場を立ち去った。その場にはただただ気絶して倒れ込んだ
不良達の姿だけだった。
「しかし、あんな小娘が本当にグリーンデビルと恐れられているというのか…。人は見かけに
よらないとはよく言ったものだ。まあ、スケルトン部隊が何とかするみたいだからオレの出番は
無いかもしれないな〜。」
大男は遠くから歩き去るマオの姿を見ながらそう呟いた。大男の正体こそ、エナジーライガーを
与えられ、グリーンデビル撃破の為に派遣されたサンダース=ヴォルト中佐であった。
しかし、マオ本人は大男の正体はもとより、自らが壮大な野望によって狙われている事など知るよしもなかった。
全てを巻き込んで、今デスバーンが光の中に消えて行く。ロイも一緒に…
「全軍、全速力でここを離れなさい!!」アルティシアの指示を待つまでも無く、我に返ったように共和国兵達は逃げ出した。
アイリスはホバーカーゴの窓から、見えなくなるまでロイが消えていった光の中を見つめていた。
気付くと、脇にラガートが居る。マーキュリーもホバーカーゴに収容されているのだ。
「アイリスさん…ロイさんは、最後までお父さんとの約束を守ろうとしました。あなたを守る為に、迷う事無く命を投げ出したんです」
アイリスは何も言わなかった。「ですから…あなたはお母さんの所に帰ってあげて下さい。ロイさんの遺言でもあります」
湖を包み込む焔を尻目に、ホバーカーゴはロブ基地へと帰っていった。
結局その後、アイリスは本国へと帰った。だが折も折、その時共和国の首都がネオゼネバス軍によって落とされ、へリック共和国は
軍などの大多数が中央大陸を終われる羽目となった。
ZAC2101年末、戦いは未だ終わらなかったのである…
だが、本来の戦争の裏、西方大陸で起きたもう一つの戦争を、我々は忘れてはならない。
大き過ぎる力がもたらす物は、破滅だけだと……
「…しかしな、お前が生きているとは正直驚きだ。『彼』と違って、悪運が強かったのか…」
「フッ…全くだ。本当に、奇跡と言う言葉は俺の為にあるような物だな」
「…あの子に…言わなくていいのか?」
「アイリスの事か?…俺が生きていると知ったら彼女はまたこっちに来るだろう。ここは今も戦場なんだ。わざわざ彼女を戦場に
呼び戻すなんて事は出来ない…もう、彼女を危険な目に遭わせたくは無い。」
「…お前、死んだ様に見せかけていたのはまさか彼女を本国に帰す為か?」
「さあ?どうだかな…そろそろ出よう。戦場は今も、俺達を待っている…」
終わり?
一通り終わりました(゜ー゜)ツ
続編作ろうかとか思ってますが友人からは「つまんねー。逝ってよし」
とか言われたんで迷ってます。(弱)
最後の補足入れます。
・SSBが発射されたのに共和国兵達が無傷だったのは発射と同時にKGの周囲が真空化したため衝撃波が伝わらなかった
・デスバーンの装甲は並の兵器では破れないほどの代物でしたが、未来の技術を以ってして作られたDTの格闘武器ならば破れるという設定
→ロイがやるしかなかった と言う状況でした。説明不足でしたね。
・名前を略していたのが解らなかった人に…KG=キングゴジュラス、DB=デスバーン、MOD=マントラ・オーバードライブ
DT=ディアブロタイガー、IA=インビンシブル・アルマダ、WK=ホエールキング
・347のタイトルがおかしいですがあまり気にしないで下さい(苦笑)
…皆さん、ありがとうございました。
>>349 >続編作ろうかとか思ってますが(略)迷ってます
久しぶりに来たら完結してるのね。
友人ひどいな・・・w
最期まで読んでみたら率直に感想書きます。
そして一時後、マオは同窓会会場として使われるバイキング料理店へとたどり着いた。
そこには懐かしい顔が色々そろっていた。デブな奴もいればヤセな奴もいる。老け顔の奴もいれば
童顔の奴もいた。とにかくみんなマオにとっては懐かしかった。
「やーやー、みんなお久しぶり!!」
マオは勢いよくみなに対してそう言った。すると皆は顔を見合わせて疑問そうな顔をしている。
「そこのお美しいお嬢さんは何処のどなた様で?」
何かヤサ男風の長身でスマートな男が前に出てマオにそう話し掛ける。マオは儀礼的に美しいと
呼んでいるだけだと思っているのだが、この男は本気で美しいと思っているようである。
しかし、そんなことはどうでもいい。とにかくマオは皆に自分のことを思い出させる事にした。
「嫌だな〜、忘れちゃったの?私だよ私。マオだよ。マオ=スタンティレル!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!久しぶりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
皆が一斉に叫んだ。皆マオの事を忘れていたようである。まあ前に書いた通り、会うのは
小学校卒業以来なのだからしょうがないと言えばそうなる。
「いや〜、しばらく見ないうちに見違えたね〜。というか別人かと思ったよ。」
「いや〜俺なんかもうとっくの昔に死んだのかと思っちゃったよ〜。」
などなど、皆はマオに対し色々と言う。何だかんだ言って再開が嬉しかったようだ。
「久しぶりだな〜スタンティレル。小学校卒業した直後、突然行方不明になったものだから心配したぞ。」
「先生!!」
一人の老けた老人がそう言って前に出てきた。そう、彼は小学校時代の先生であった。
「いや〜、本当に久しぶりだな〜。お前が小学校卒業後、何をしていたのかは知らんけど、
いじめられたりしなかったか〜?とにかく元気でなによりだ〜。」
「先生こそお元気で何よりですよ。」
先生の言葉に対してマオは先生の手を握ってそう言った。
「あ、マオと言えば・・・ミオの奴は来てないようだが・・・。」
「あ、お姉ちゃんは仕事で忙しくて来れないって。」
「そうか・・・残念だろうに・・・。まあとにかく、全員集まった所だし。立ち話もなんだから、店内に入ろうや。」
先生がそう言い、全員が店内へと入っていった。皆が店員にあらかじめ貸しきっておいた部屋へと
案内されている際、その廊下を歩いている時に一人の口が開いた。
「マオを見て思い出したのだが、共和国軍にもマオと同姓同名の奴がいたよな〜。」
「ああ、それなら俺も聞いたことがあるぞ。帝国軍からはグリーンデビルって異名で呼ばれてて、
何か新型のゴジュラスに乗ってるエースパイロットだったよな〜。すっげー強いって噂だぜ。」
「同じ名前なのにお前とは正反対だな〜ハッハッハ!」
「あ・・・アハハハハ・・・。」
何人かがマオの方を向いて笑いながらそう言い、マオも微妙な面持ちで苦笑いするだけだった。
そのマオは自分だと言ってもどうせ信じてもらえないだろうと思ったからである。
今でこそマオは共和国のエースであるが、今とは正反対に弱虫泣き虫であり、周りから
いじめられていたという時代が彼女にはあったのだった。この同窓会に参加している者達の中にも
かつてマオをいじめていた者も何人かいる。で、その後に様々な努力によって今の彼女があるので
あるが、昔の弱虫泣き虫なマオしか知らない彼らにそのようなことを言っても無駄だと思うし、
イチイチ話そうともマオは思っていなかった。マオも大人になったと言えばかっこいいが、
本音は面倒くさかったというだけの事だった。と言っても、泣き虫は今だに克服されていなかったりする。泣き虫のまま強くなったのだ。
「グリーンデビルは予測通り店内に入った模様です!!」
「よしわかった!!貴様はそのまま帰還していいぞ!!」
町のはずれの地下に設置された秘密基地内部に通信された偵察員からの報告を聞いた
スケルトン部隊隊長は待機させていた皆を自分の前に整列させた。
「これより我々はグリーンデビルに奇襲をかける!!いいか!!?相手が小娘だからと言って
あなどるで無いぞ!!我々の仲間達はそういって奴に倒されたのだからな!!初めから全力で
行くのだ!!それと、我々の任務はあくまでグリーンデビルの殺害である!!よって他の者に
一切危害を加えてはいかんぞ!!!間違って危害を加えるようなことがあれば、ネオゼネバスという
国家そのものの支持率が低くなる可能性もある!!それは何としても阻止せねばならん。
とにかくグリーンデビル以外には手は出すな!!以上!!」
「は!!!」
スケルトン部隊隊員達は一斉に敬礼を送った。
「ハア・・・。」
そのころ、他の高速ゾイド乗り達、そしてセイスモ対策に数機の凱龍輝らと共にパトロール任務に
ついていたラインはそのようなため息をついた。
「どうしたんですか?マオ少尉の事が心配?」
「な!!何でもねえよ!!」
笑ってラインにそう言う、同じくマオの部下であり、凱龍輝「ガイガイガー」のパイロットである
サリーナ=カラオス軍曹(19)の突っ込みに対してラインは思わず赤くなってそう叫んだ。
「別に恥ずかしがらなくてもいいですよ。確かにマオ少尉は素敵な人ですもの。強いし、優しいし、
お料理も美味しいし、スタイルもいいし、胸も大きいし・・・。」
「・・・・・・・・・。」
ラインの顔はレッドホーン以上に赤くなっていた。
「うぅぅぅぅぅぅぅぅらやましいぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「わああああ!!」
突然他のライガーゼロフェニックスやケーニッヒウルフ、ブレードライガーと言った他の高速機に
乗るパイロット達がそう叫びながら一斉にラインの乗るライガーゼロフェニックス「ジェネラル」と
ガイガイガーの所へ走りよってきた。
>英雄の帰還作者さんお疲れ様。
英雄の帰還の作者さんへ
お疲れ様です。色々と書く時に問題が有ったりしますが気にし無いのが一番です…_| ̄|○
気にし始めたら切りがないと思いますので。
因みにこのスレでは影響が出そうなので次の本編は次のスレからにしようと思っています。
450KBが近いですし500KBまでに切りの良い所で切ることが多分自分の力では【無理!!!】ですので…。
「ったくうらやましいぞライン!!俺もマオちゃん直属の部下になりたかった!!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!ぶっころしてぇぇぇぇぇ!!」
彼らは何やら勝手にエキサイトしていた。サリーナも思わず困った顔をする。
「しかし、かと言ってラインに手を出すとマオちゃんからどんな報復があるかわからんぞ。」
「そっそうだった!!ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
再びエキサイトする野郎達。マオは普段からラインをあごでこき使ったり、ポコポコ殴ったりする
のだが、自分以外の人間がラインを傷つけるのを激しく嫌うのであった。そのために、高速野郎達は
手を出したくても手を出すことが出来なかった。
「はあ〜。お前らは気楽でいいな〜。」
「なんだと!!!」
ため息をついて言うラインに対し、高速野郎達は一斉に叫んだ。
「この間・・・少尉が昔の話をしてくれたんだよ。」
「ええ!!?そ・・・それで・・・どうなったの?」
さっきまで物凄くエキサイトしていた高速野郎達はそう言って一斉に静かになった。
「少尉はな・・・一人ぼっちだったんだよ・・・。昔から・・・。」
「え・・・・・・・・・・・・・・・。」
皆が思わずそう口をもらした。ラインはジェネラルごと空を見上げ、さらに続けた。
「まあ皆も知ってるとは思うが、昔の少尉は今とは全然違って周りからいじめられていたそうだ・・・。」
「ああ、それなら知ってる。」
「しっかし、俺は今だにそれは信じられん。それがどうやったらあそこまで強くなるんだろうか・・・。」
ラインの言葉に対し、他の高速野郎達もそう答える。そして、さらにラインは続けた。
「何でも孤児院育ちなんだとよ。でもまあ、このご時世に孤児院育ちの孤児と言ってもそう珍しくは
無いが、その当時少尉が暮らしていた所はそういう偏見とかキツイ所で、それがいじめられたり、
のけ者にされる原因になっていたそうだ。まあ、姉のミオ大佐の方は元からすっげー強い上に
肝っ玉も太くて、少尉と同じような事をされても全然ケロっとしてたそうだし、少尉の事も
かばったりしてたらしい・・・。でもそういつまでも姉に頼るわけにもいかないと少尉は強くなろうと思い出したそうだ。そして色々努力し始めたという事。で、さらにその後に中央大陸拳法・・・、
その総本山の竜王流とか言うところで修行するという、まるで漫画のような事に
なるんだが、そこでもやはり少尉は孤独だったそうだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
ラインの語りに誰もが口を少しも開かずにだまって聞いていた。例によってラインは続ける。
「何でか俺もわからんのだが、その当時から少尉は冗談のように強くなっていったらしくてな。
竜王流での修行に関しても、他の者ですら何年もの修行を要する技とかをたった数日でマスター
しちゃったりしまくってたそうだから、兄弟子達に嫌われていたそうだ。西方大陸の神聖寺とか
言うところも同様だそうだ。ただ、東方大陸のカラン塔って所は実力社会だったから、そこは
かなりよくて結構有意義な時間を過ごせたと言っていた。でも、何だかんだ言って少尉は
ずっと一人ぼっちだったそうだ。」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!泣けるぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
ずげげげげ!!
突然感動して泣き出す高速野郎達に驚いて思わずラインはジェネラルごとすっ転んだ。
「いきなり耳元で叫ぶな!!!あーびびったー・・・。」
ラインは倒れた機体の体勢を元に戻しながらそう言った。
「だが・・・、マオちゃんは強気に明るく振舞ってたけど、本当はすっげー波乱万丈な生き方をしていたんだなー・・・。」
「ああ・・・。確かに少尉は戦闘中とかしょっちゅう泣いてるけど、顔は半分笑ってるからまだ余裕が
ある事がわかる。だが、その話を俺にしていた時の少尉は本当に悲しそうな顔をしていた・・・。
逆に俺を訓練でしごいてる時とか、みんなに料理ふるまってるときの少尉はすっげー嬉しそうな
顔してた・・・。だからよ・・・なんつーか。少尉も一人は寂しいんじゃねーのかな?」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!いい話だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
ずげげげげげ!!
「だから耳元で叫ぶなって!!というか大の男が泣くな!!」
静かにいい話というぼのぼのとした不陰気がなぜか再びエキサイトしてしまっていた。
「よーし!!みんなで夕日に向かって走るんだー!!」
「おー!!」
「おいこらまて!!まだ真昼間だぞ!!」
なぜか感動の涙を流しながら走り出す高速野郎達にラインは叫び、ジェネラルとガイガイガーは後を追いかけた。
と、一条の光がゼロフェニックスの一体を撃ちぬいたのはその時だった。
「な!!!!」
誰もがそれに驚き、顔を引き締め、体勢を身構えた。
「ハッハッハッハ、いい話を聞かせてもらいましたよ。グリーンデビルの意外なる過去。クー・・・
いい話じゃありませんか・・・。ほんの少しだけ涙をそそられましたよ。」
その声の後に彼らの前方数キロ先の木々の陰から、彼らの見たことの無いゾイドが飛び出してきた。
ライオン型のシルエットだがライガーゼロイクスではない。肩などに描かれたネオゼネバスマークは
帝国軍のゾイドという事を意味している。そう、そのゾイドは帝国軍最新型ゾイドのエナジーライガーであった。
「な!!!誰・・・」
一体のケーニッヒウルフのパイロットがそう叫んだ。いや、叫ぼうとした時、ケーニッヒウルフは
突然崩れ落ちた。そして、崩れ落ちたケーニッヒを足蹴にしたのはエナジーライガーだった。
「少しお聞きしたいことがあるのですが・・・。ライン=バイスさんはどなたですか?」
そのような言葉と共に各ゾイドのディスプレイに映し出されたのは一人の少年の姿だった。
エナジーライガーパイロット、天才少年クライト=クロウズ大尉(14)の抑揚も無い声。
だが、まだ子供とは思えぬほどの知的な声でもあった。
ついに450KBを超えてしまいました・・・
そろそろ次スレの準備にかかった方がいいでしょうか?
後、自分の書いてる話はおそらく、というよりかなりの高確率で次スレまで続くと思います。
すみません!!!
>>359の名前のところに「作者」をつける事を忘れていました。
レスの無駄使いしてしまってすみません・・・
まだ消化していないネタもあるので次スレで続編書こうかと思ってます。
次スレはいつごろ立てますかね…そろそろピンチでつよ…
「な!!こ・・・こんな子供が!!?」
コックピットのスクリーンに映し出される彼の姿を見た誰もが唖然とした。
「ガキは家に帰って漫画でも読んでろ!!!」
「ば・・・バカ!!不用意に飛び出すな!!」
皆の静止も聞かず、ブレードライガーのパイロットの一人がそう叫んでエナジーライガーに対して
レーザーブレードをきらめかせて飛び掛った。
「そんなおもちゃで・・・。」
ッソンッ
風がなびくような静かな音。その一瞬でそのブレードライガーのレーザーブレードはキレイに
切り落とされていた。エナジーライガーの背中にきらめく赤き翼。エナジーウィングによって。
「ハア・・・。人を見かけで判断すると痛い目に合いますよ。それに、貴方方は私を子供とバカに
しましたが、その子供に勝てない貴方方は一体なんなのでしょうね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
クライトの冷静かつ知的な言葉に誰もが凍りついた。彼にはそれだけの凄みがあったのだ。
「こ・・・、コイツ・・・、只者じゃねえ・・・。」
ラインは内心そう思った。クライトから発せられる気に押されていたのだ。
「先ほども言いましたが、ライン=バイスさんはどちらですかね?」
クライトは顔をエナジーライガーの頭部ごとジェネラルに向け、なおもそう言う。
彼の任務はマオの部下であるラインを倒す事。そして、口ではそう言っているが初めから
ターゲットであるラインは誰かと言う事は既に知っている。じゃあなぜそのような回りくどい事を
するのかというと。自信があるからである。自らの腕とエナジーライガーの性能。この両方が揃えば、
ラインだけでなく目の前の高速部隊全部を鼻歌気分で全滅させられるという自身が彼のはあったのだ。
だからこそゲーム感覚で少しお遊びが入った感じで、知っているにも関わらず、わざと聞いてきたのだった。
「ライン=バイスはこの俺だ。それがどうかしたのか?」
ラインは前の出て馬鹿正直にそう言うと同時にジェネラルの背中に装備された、丁度フェニックスの
脚部でもある衝撃砲の側面に取り付けたカノンダイバーのビームランチャーを発射した。
それぞれの砲門から放射された2条の光はそのまま真っ直ぐにエナジーライガーへと飛んでいく。
だが、それだけだった。まるで意にも介さなかったようにエナジーライガーは素早く横に跳んで
ビームを楽にかわしたのだった。
「いきなり攻撃ですか〜。危ないですね〜。」
クライトは笑ってそう言った。もちろんわざとである。本気で遊んでいるのだ。
「まあとにかく、貴方がライン=バイスさんなんですね〜?」
「だから何だっつんだ!!!」
笑いながら言う(もちろんわざとに)クライトに対し、誰もがそう叫んだ。それがクライトの作戦とも知らずに。
「実はですね〜?私はグリーンデビルの部下のライン=バイスさんを殺せって命令されて来たんです。
何でもコイツを殺せばグリーンデビル自身にもかなりの精神的ダメージになるからと・・・。」
「なんだと!!!まさか少尉も・・・。」
「ああ、彼女なら今ごろ別の皆様が手に掛けてる頃だと思うよ。多分骨も残らないだろうね・・・フフフ・・・。」
クライトはさらに笑った。その笑いには冷酷さも現れていた。
「という事で、貴方も仲良くあの世に逝っていだだきましょう。」
そして、エナジーライガーの背中に装備されたエナジーチャージャーが怪しく起動した。
とりあえずキリがいいところまで来たのでこのスレでの書き込みはここで一旦切り上げます。
まあもしかしたらまた書くこともあるかもしれませんが・・・
やはりいい加減次スレに言った方がいいかもしれませんね。
あと、次スレで続きを書く際は一応「それまでのあらすじ」を最初に書いておくことにします。
当方再び巻き添えアク禁
>>364 もつかれ様。面白いです。
>>365 ガンバr…
次スレからのアイデアが固まったので予告編でも。(激蛇足)
「西方大陸、もう一つの戦争から3年…ZAC2104年。ネオゼネバスの新たなる作戦。
本土を追われた共和国は滅ぼされてしまうのか?そして、巨大な闇は今再び惑星Ziを
脅かす…迫り来る新たなる危機に、彼が帰ってくる。
新作:『Ziの焔・凶戦士の鼓動』次スレよりスタート」
余計な事だと解っていながらやってしまうんです…
フューラーの足の力が抜けていく。
ズルっと言う音がして鼻先が雨でぬかるんだ地面を削る。
跳ねた土がコクピットに入ってきた。
一度戻って修理しないとフューラー動けそうも無い。
ハッチを開けようとしたが開く気配も無い。
先ほどの熱で本体にへばりついたようだ。
熱で変形した部分を何度も蹴ってやっとのことで外に出れた。
地面に飛び降りて左手をつくと強烈な痛みがきた。
マイクはその時自分が火傷していたことを思い出した。
どんな敵だったのか顔を見てやろうと思い凱龍輝だった頭部に近寄った。
オレンジ色に透き通っていたキャノピーには血がべっとりとへばりついている。
もう人間の形はとどめてないだろう。
アスガル機に近寄ると頭部に損傷は無いようだ。
コクピット付近の装甲を叩きながらマイクは叫ぶ。
「おい、生きてるなら返事をしろ。」
不意にバシュとハッチが開いた。
「はいはい、生きてますよ。」
アスガルが胸を押さえながら出てきた。
どうやらあばら骨が折れているようだ。
「やれやれ。ゆっくり休んでたのに。」
「軽口を叩けるようなら大丈夫だろ。ジャックは?」
「まだ通信はありません。もうダメか気絶しているか・・・」
「動けるか?」
「できれば動きたくないところですがね。」
「なら休んでろ。負傷兵に無理強いするわけにもいくまい。」
マイクはジャック機の前に歩み寄り、もたれて座り込んだ。
雨がやんでいることに機がすいた。
ジャックのフューラーは頭部が噛み砕かれている。
装甲の隙間から血が流れ出ていたがそれの中を見る気にはなれなかった。
「先に逝きやがって・・・・」
一言だけ、そう呟いた。
風が吹きサイカーチスが降りてくる影が見えた。
-------終--------
これで終わりです。容量一杯になるまでに終わってよかった。
>英雄の帰還作者氏
補足の掲載の仕方どうしましょうか?
あと先任伍長氏のバトストはそちらにお任せしてもよろしいでしょうか?
>>369 保管庫管理人さんおつかれさまです。
いち読者のワガママですが、それぞれの作者さんごとに
ある程度まとめてはもらえないでしょうか?
捕捉は…本編の後にまとめて載せるというのはどうでつか?
もしデータが重かったりしたら補足は削っても良いですし。(不可解)
このままではもう誰も書き込まなくなると思う・・・だからもう次スレ立てておく?
そうですね…余り長い物は書けませんし賛成の方向で。
と言っても何も書かないのもちょっと…と言う事でネタを一つ。
【雷鳴の土竜】
「まったく何処に行けばいいんだっ!?」レクス=アームズは完全に退路を失っていた…。
周囲約10km四方をセイスモサウルスの4部隊に囲まれた状態で彼のギガは身動きが制限される状態になっている。
キメラ共が群がり鬱陶しい。彼のギガは完全に格闘型で俗に言う遠距離対応の火器類は一切装備されていない。
代わりと言っては何だがH・Eシールドを二つ余分に装備しそれをブロックスで発生させる機構を持ったフレキシブルH・Eシールドを背中に装備している。
連続使用時間は180秒と短いが追撃モードで使用出来る点は評価できる装備である。
「なんだ…あのギガは?如何して耐えられるんだ!?」セイスモサウルスに乗り込んでいるパイロットは焦りを隠せなかった。
数の上で優勢の筈それなのに彼等の撃ったゼネバス砲はかすりこそすれ直撃が一回も無いのだ。
近くで戦闘していた者は原因を知っているが戦闘空域を遥かに離れた位置で作業的に狙撃している彼等には全くと言った程理由が解らなかったのである。
その都度ギガは近くのキメラを掴み放り投げゼネバス砲に当て爆発させる。その爆風で無理矢理自分の位置をずらしていたのだ。
始めは上手く行かなかったが3回目のチャレンジの頃にはゼネバス砲の到達時間を大まかに予測できる用になっていたらしい…。
ふとレクスは足元を見る…激しく動き回った事により地面は罅だらけでもう少しで崩れ落ちそうだ…。
この近辺は旧ゼネバス帝国領の一角でこの地域は特に地下に洞窟が多い事で知られている。
「これだ…。」レクスの顔がにやけ顔に成る…後にネオゼネバス帝国が記す作戦失敗例の最たる物として残された事例。
通称「4面3崩壊」と呼ばれる事件の発生の瞬間だった。
天候は雷雲が立ち込め雷鳴が所々で響いている…。
セイスモサウルスのセンサーは突然足元に対して警戒警報をけたたましく鳴らし始める。
「なにっ!?」突然足元が崩壊し機体が洞窟に落下する…その時に始めて彼等は知る。
自分達が群がらせたキメラが原因で地面はすでに限界近い状態だった事に。
その裂け目は真っ直ぐに伸び通信に移った周囲の状況報告を見ると裂け目の始点にはギガのギガクラッシャーテイルが刺さっていた。
「馬鹿な…あれが奴の力か?」ここまで来ても彼等はギガがその力で地面を割ったと錯覚しキメラに帰投命令を出す様に命じたのだった。
「よし…一角が崩れた。」キメラの一部が引き上げを始める…その後を追撃モードで追いかけると地割れに落ちて地下にいるセイスモサウルスを発見する。
「しまっ…。」救難信号を上げる暇も無くセイスモサウルスの頭部は噛み砕かれた居た。
残り3体。
帝国軍に震撼が走る…「味方が1機も居ないギガにセイスモサウルスは近寄られ敗北した」と言う事実が混乱を助長する。
「早く退け!奴が…うわっ!?下からだ…。」また一つセイスモサウルスの反応が消える…。
今度は洞窟の下から地面を破り胴体を噛み千切られたのだ。
コアに直結するダメージは一瞬にして大量の負荷をコアに与えそれはその生命を終えた。
化石かが始まり中央から二つに割れセイスモサウルスは地下へ消えていった…。
「あと2体…。」極度のストレスで鬱積していた不快感が快感に代わり始めレクス=アームズの精神には醜く歪んだ破壊衝動が蠢いていた。
あ…目茶苦茶だ_| ̄|○ ×化石か ○化石化と
× 前略〜ここまで来ても彼等はギガが〜以下略
○ 前略〜ここまで来てもセイスモサウルスのパイロットはギガが〜以下略
が適当でした…。毎度毎度すいません。
【雷鳴の土竜】続き
地面に立ち上がったレクス=アームズのギガに向かって二つの光の条が向かう。
対角戦場を少しずらした位置からのゼネバス砲の攻撃だった…。
「ちぃっ!シールド展開!」背中のフレキシブルH・Eシールドを展開してゼネバス砲を受ける。
二つのH・Eシールドの負荷を示すゲージは確実に限界へと近付くが一回目の照射に耐えた。
しかし二回目を防ぎ切れず機能が停止直撃を受け爆発するがその反動でギガはまた洞窟に落ちる事となり結果として事無きを得たと言う事になる。
更にH・Eシールドならゼネバス砲も防げると言う一応の成果のおまけ付きだ。
「また地下に消えたっ!?」周囲を警戒しながらその場を立ち去ろうとするセイスモサウルス。
長居は無用だった。地の利は自らに有った筈なのに実際にはギガの方が地の利を自分達より上回る使い方をされた。
完全に作戦立案ミスだったのだ。捕獲等は考えず破壊すべきだったと後悔しながら指揮を取っていた仕官は苦虫を噛み潰した様な表情で撤退を命じる。
急がなければならない…移動速度は格闘モードのギガにも劣るのだ。
険しい場所では更にギガに分が有る洞窟が途中で切れている事を願うしか無かった…。
残り2体のセイスモサウルスは部隊を率いて正反対の方向に進路を取る。
地面に罅割れは無い。ひとまずは突然地下からの奇襲が来る事は無いだろう…。
少し危機感が緩和されアルティメットセイスモに形態を変え再度移動を開始する。
「何だったんだ?あのギガは…キメラを1大隊分屠殺するは地下から奇襲を掛けるは常識外れも良い所だ。」
被害は経費上は少ないが実際の惨状は壮絶を極める物だった。
その頃…必死になって道を探しているレクス=アームズは自分のしている事を疑問に思っていた。
「何故俺は奴等を追おうとしているんだ?」もっともな疑問だった。しかしその手はギガに確実に相手を追わせている。
振動が伝わり彼等が自分の上に居る事が解ると彼は考えるのを止めた…。
「敵は倒すのみっ!」軍人としての教育はしっかりとされている彼は当然の様に目の前の巨大な柱状になった岩盤にギガクラッシャーテイルを叩き付けた。
ロケットブースターが点火し更に威力を増したニ激目はその”柱”を叩き折る。
「何だ?この地響は…まさか!?」地表の帝国軍はパニックに陥っていた。間違い無くあのギガが追い付いて来たのだ。
このままでは味方が全滅する…「総員セイスモサウルスを見捨てて撤退せよ!何が有ってもこちらを顧みるな!良いな?」
セイスモサウルスを駆る指揮官は腹を括り足止めを決意する。指揮官としての責任は重い上これ以上味方に被害を出す訳には行かない。
「来い!ギガ!」アルティメットセイスモはその向きを変えギガを迎え撃つ態勢を整える。
決戦の時は刻一刻と迫っていた…。
地表を揺らす振動は次第に大きく成っていく…この音はギガが地下で地表を支えている”柱”を一つづつ破壊しているためだ。
空洞、風穴、洞窟、鍾乳洞等地下には場所により色取り取りの物が有る。
旧ゼネバス帝国領は特にその様な地域が多く落盤事故には特に警戒しなければならない場所だった。
今頃になって彼等は帰還した大地が敵はおろか自分達にまで牙を剥いている事を再確認する事と成ったのだ。
味方は蜘蛛の子を散らす様に命令に従って逃げて行く…撤退とは全く言え無い状況だった。
アルティメットセイスモの頭部には元の顔は無く胴体のコクピットに乗り換えた上でデモンズヘッドの頭部が付いていた。
その他余剰部分にフライシザースの羽根を付け落下時の姿勢制御を考慮していたのである。
「早く来い…ゼネバス砲等要らん。この距離ではな…。」不利である格闘戦を敢えて挑もうとしているセイスモの足元が無くなった…。
「来たか…。」マグネッサーが起動し落下速度を緩和しながら洞窟に降り立つ。
その前には間違い無くギガが居た…お互いは咆哮を上げて威嚇しその距離を縮めていく…。
立ち止まった後に先に仕掛けたのはセイスモサウルスバーサーカーと言われる形態を取ったセイスモだった。
フライシザース羽根が宙を舞いギガに襲い掛かる。しかしギガが無造作に腕を振ると羽根達はその都度ガラス細工の様に
割れ散って行った…。
「何を考えているんだ!?こいつは!」余りにも常識外れの形態で現れ勝てる可能性は略無くなったセイスモを見てレクス=アームズは叫ぶ。
ゼネバス砲を取ればただの堅いゾイドでしかない。それでも古代チタニウム合金の装甲を纏ったギガの剛性から比べれば1ランクは脆い。
デスザウラーの超重装甲でさえギガクラッシャーテイルのロケットブースター加速の直撃では分厚い鉄板程度でしかないのだ。
それでもセイスモはデモンズヘッドの頭部からマグネイズスピアを使い必死になって攻撃を繰り返してくる。
時間が経つのが遅く感じる…セイスモのパイロットはただ避け続けられる攻撃を繰り返している。
避け易過ぎず避け難過ぎずと微妙なコントロールをしつつギガを後ろに追いやる。少しでも部下の撤退の時間が稼げれば良いのだ。
それに彼は常日頃よりゾイドのパイロットとしてギガに一騎討ちを仕掛けたかったと思っていた。
予想外だが願いはかない今正にそれをしているのだ。「血が騒ぐぞ…共和国最凶の敵で有る貴様と戦えるのだからな!」
本質的に格闘戦を苦手とするセイスモサウルスでここまでの格闘戦をする事は奇跡に近い事例だ。
本来はその長い尾で締め付ける以外にギガに通じる攻撃方法が無い上にそれは狭い洞窟内では叶わぬ攻撃だった。
やがてセイスモの攻撃が緩む…その隙をギガは逃す筈は無かった…。
なんとかデモンズヘッドの頭部を撥ね行動不能に追い込んだレクスは胴体を踏み貫こうとする。
しかしそれを取り止める事にした。ハッチを開け降伏を示唆するブロックサインを見せるパイロットを見たからだ。
戦場では良くこのパターンで捕虜を取るのが面倒で撃ち殺されると言う事例も有るがレクスにはそれをやる理由も無ければ降伏を受理する必要も無い。
彼は孤立しているのだ。さっきまで感じていた破壊衝動も一気に冷める。
一際大きな落雷が起こるとレクスはコクピットから出て帝国軍仕官に向かって叫ぶ。
「俺の名はレクス=アームズ!ネオゼネバス帝国の統治に異を唱え牙を立てる物だ!」
そう言い残すとギガに乗り込み洞窟に消えていった…。
雷鳴は響き渡り遂に雨が降り始める…その雨に打たれながら帝国軍仕官はただ立ち尽くし彼等の消えていった闇を見つめていた。
〜終了です〜
何かの足しにしてくれれば幸いです。
この戦闘記録が恐怖の亀裂の初期に書いたセイスモサウルスを3体容易に倒したと言う噂に発展した物の事実として書いてみました。
影が薄過ぎるので主役にしてみた次第です。最後に設定を…
【人物】
レクス=アームズ:共和国軍所属のゴジュラスギガのパイロット機体の操縦能力は高いが個人の白兵戦は苦手
ギガを駆り単身味方を探して帝国領内を放浪している
【機体】
セイスモサウルスバーサーカー:アルティメットセイスモの頭部をデモンズヘッドに交換した機体でゼネバス砲を撃て無い代わりに、
マグネイズスピア等にそのエネルギーを電気エネルギーとして負荷させることが出来る機体
狭い空間での限定使用機で本来この形態での運用はあり得ない
【技術】
フレキシブルH・Eシールド:ブロックスのコアブロックを連結してギガ背中に取り付ける装備
出力をなまじH・Eシールドにしたため180秒のリミットと1回程度しか使えない防御力で、
レクス=アームズの機体のみに支給された後は生産されていない
…スレ立て用のテンプレートは何番まででしたっけ?_| ̄|○
381 :
350:04/01/13 20:42 ID:???
>英雄の帰還書いてる物体氏
さきほど全部読みました。
ゲームはPSゾイドシリーズしかやった事がないので、「ベッセルズ」などはゾイド辞典(仮)のサイトで調べたのですが、なかなか各種設定の使い方が上手かったです。
やはりPSゾイド2の人達はどいつもキャラが立ってますね。
PSゾイド2のデスザウラーが放ってた思念でしたっけ?「コワセ・・・(略)ツブセ・・・」が出てきたのにもニヤリと。
エウロペの砂漠には一体何があるというのだろう・・・。
気になったとこですが、
ゾイドのSSとして表現もなかなかだし、進行も無駄がないしで面白いんですがやはり補足がテンポを崩してると思います。
気分がノって読んでるのに、途中でいったん現実に引き戻されてしまうのは問題が・・・。
そもそも補足にある内容って無理なく本編に組み込めたと思うのです。
スレを読んでみたけど、書き上げた後に気になった点って自分で発見できてるわけじゃないですか。
スレに書き込みする前に、一度推敲したらいいんじゃないかと思うのですが。
保管庫収録版は各種補足を全て本編に組み込んだものになってたりするといいなぁ、と勝手な感想を。
>>380 スレたて用テンプレは
>>1-3ですが、
>>3は変更になりましたね。
450〜460KBで次スレを用意する、というように書き換えればいいかと思います。
382 :
350:04/01/14 01:51 ID:???
忘れてた、
>>381の補足を(w
ラストシーンが「PSゾイド2リスペクト」といった感じで、
結構グッと来ました。知ってる人には面白かったですよ。
スレ立てに逝ってきます…。