【2次】漫画SS総合スレへようこそpart51【創作】

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433作者の都合により名無しです:2007/10/06(土) 08:54:43 ID:V5YyIoxe0
P2は結構熱いよ
このSSにもその熱さが匂う
434作者の都合により名無しです:2007/10/07(日) 10:57:41 ID:pI3T+eSJ0
,そういやテニスのSSってまだないな
435項羽と劉邦:2007/10/08(月) 03:28:18 ID:UiXnj4w/0
第022話 「環境の変化(後編)」

自身の薄暗い感情をつまびらかに見据えてみると、源泉はつまる所ひとつであるらしい。
それが感情の起伏に沿って流れて樹状化し、日々の鬱陶しさと諦観へと続いている。
が、地下にいる時の陰鬱さの要因はたった一つで済んでいたから、ある意味では楽だった。
いったいこの、地上でのややこしさはどうか。
他者の事情が際限なく絡まってくる。
頭が痛い。
馬鹿馬鹿しい。
只でさえ奥に秘めた感情のもつれに長年窮々としているのに、その窮々に事情知らずの連
中が頼みもしないのに関わってきて、ますますややこしくしている。
社会の雑駁さへの怒りを禁じえないが、外からは相変わらず珍妙な指示が下ってきて動かざ
るを得ない。
声をかけているのはまひろで、実にやり辛いタイミングで支持を下してくる。
それを油の切れかけたゼンマイ仕掛けのようにぎこちなくこなすと、背後で巨大な気配が揺
れる。揺れはその原因物体を背負わせている革製のバンドを介して両脇をきゅうきゅうと締
め付けて不愉快だ。
子を背負う母のように後ろ手を伸ばして原因物体を支えればいくらか不快も和らぐだろうが、
あいにく両手にはさっきから自分の耳をぞりぞり撫でる声と同じくらい珍妙な形状の武器が
握られているからまったくもって不可能だ。

ヴィクトリアはまったくさっさとこの場を立ち去りたい気分のまま、寄宿舎食堂のド真中で演技
を続けている。
夕食にはまだ一時間ほどあるから、人影はまばらだ。机を端に寄せて練習スペースを確保し
ているが、寮母の千歳の承諾を得ており、利用者からの苦情も特にない。
話は遡る。
先ほどまひろが自室に飛び込んできて、「ね、びっきー、演劇部に入ろうよ!」と勧誘してき
た。
断った。
断ろうとした。
しかし見ればまひろの背後には千里がいた。
ついでに沙織や浮かない顔の秋水もいたが別にどうでもいい。
436項羽と劉邦:2007/10/08(月) 03:29:42 ID:UiXnj4w/0
ヴィクトリアは両名とも好かない。秋水はともかく、どうしてか沙織にも嫌悪感がある。
当初は猫を被っているときの自分と性格が近いゆえの同族嫌悪だと分析したのだが、どうも
それだけでは片付かない、もっと根源的で自分の最も嫌いなモノに対するようなザラついた
感覚がある。といってもそれとなく秋水から聞き出した沙織の出自は戦士とも信奉者とも、
ましてやホムンクルスともまったく無縁らしいから不思議な話である。
が、それは本題ではない。
重要なのは。
千里も演劇部だと聞いたコト。
この大人しげな眼鏡のおかっぱ少女は、今は亡き母・アレキサンドリアに似ている。
だからこう、「部活をしたら一緒にいられる時間が多くなるのかな」と柄にもない少女思考が
魔を差してしまったのも仕方ないといえる。
その葛藤をまひろは目ざとく見つけて「もしかして興味ある?」とせわしくなく聞いてきた。
彼女の問いだけなら追従笑いで振り払うコトもできた。
だが千里まで異口同音に質問を投げかけてきて、ちょっと本気で返答に困った。
で、なし崩し的に「ちょっとだけ見学してから」と例の猫かぶりで返答してしまった。

(そのせいでこのザマよ)

まったく忸怩たる思いで背後を見る。
コレらを背負えと言われる前の初見段階からしてすでに嫌悪がわいていた。
というのも大嫌いな武装錬金を想像させる幾何学的なフォルムだったからだ。
パーツは大別して三つ。
二つは銃だ。といっても非常に長大で大仰で重厚で、両手に握っている今も大砲でないかと
思えるほど白い銃身が野太い威圧感を放っている。
残る一つ、背中に背負っているのは要するにウェボンコンテナだ。
真中に支柱があって、その左右にコンテナが一つずつ。
両方、形状も大きさもまったく同じ。
プラ板を直線的に張り合わせただけのシンプルな形で、棺桶にしたら五人家族全員詰め込
んでもまだペットを詰め込めそうなぐらいのサイズだ。
それらの上には円筒型のパーツが乗っているが別に用途を知りたいとも思わない。
437永遠の扉:2007/10/08(月) 03:30:51 ID:UiXnj4w/0
聞けばこの人間社会の不合理と雑然を濃縮した忌まわしき権化の諸機能を、いかにも面白い
物であると指揮官(コマンダー)気どりのヘラヘラ笑顔がその珍妙さの全身全霊を以て吹聴
してくれるだろう。
(鬱陶しい)
ヴィクトリアはまったく内心で鼻白むしか術はない。
もっとも筋からいえば、その要因は百十三年前に産声を上げた時に決定づけられていたし
恨むのならば自分に名前をつけた両親か、父に名前をつけた祖父母だろう。
両親は父の女性名という理由でつけただろうし、その原因は父の名前を「ヴィクター」にした祖
父母にもある。
ともかくもヴィクトリアはヴィクトリアと命名されたがゆえに珍妙な武器を背負わされているのだ。

名を「ハルコンネンII」。設定上は

・30mmセミオート「砲(カノン)」
・最大射程4000m
・総重量315kg

だそうだ。
スペックを見ても分かる通り「馬鹿と冗談が総動員」した兵器であり、人間が扱うコト不可能、
元婦警の吸血鬼ぐらいしか扱えないのである。
だからホムンクルスのヴィクトリアなら扱えるというコトになるが、別段そこを鑑みて背負わさ
れる羽目になったというワケではない。
正体が露見しているとすれば、このような日常生活が送れようはずもない。
大体にして今背負いしハルコンネンIIは上記のような重量兵器でもなく、プラ製のレプリカだ。
社会生活の悲しさというか戯事の延長戦、演劇に使う小道具(というには少々サイズがかさば
るが)でしかなく、彼女は名前の偶然的一致によりこの「厄介事」を背負い込む事になったのだ。
なお、彼女の衣装自体は通常のセーラー服であるから、それにハルコンネンIIなるどこぞの
ガンダム試作三号機じみた物体を接合するのは浮きに浮きまくってる。

触れれば折れそうな華奢な外人少女 + セーラー服 + オーキ……もといハルコンネンII

よほどの数寄物でなければこの取り合わせは受け入れられないであろう。
438永遠の扉:2007/10/08(月) 03:32:53 ID:UiXnj4w/0
食堂備え付けの自販機へジュースを買いにきた剣道部の連中が時おりヴィクトリアをチラチ
ラ盗み見てくるのも実に不快極まる。
「わー、みんな注目してるねー。良かったねびっきー」
「う、うん」
目を白黒させながら、内心ではもはやまひろを罵倒せずにはいられない
(うるさいわね。いい年超えてこんな変な格好させられて……誰が喜ぶっていうのよ)

厨房の中からおたま片手にハルコンネンIIを物欲しそうな目で見る女性が一人。千歳だ。

とあるサイトによればEカップであるらしい彼女の話はさておき。
まひろと来たらヴィクトリアの機微など知らず、台本をキラキラした目で読みながら、あーだこ
ーだとヴィクトリアに次のセリフやら所作やらを教えてくる。
(……鬱陶しいったらないわねこのコ)
あくまでまひろとしては演劇部の先輩として親切に指導鞭撻しているつもりなのだろうが、彼
女を嫌うヴィクトリアとしてはいちいち指図されているような認識になり、自然、苛立ちが募っ
ていく。
こういう錯覚は社会生活でもよくあり、極端に明るい性格の人間のフレンドリーな態度という
のは閉鎖的でやや鬱ッ気のある人間にとっては目障りな物なのである。
例えば「リア充」という蔑称がある。これはおもに大学生の間で「リアルで充実している奴」を
指す言葉である。この場合の「充実」というのは、成績が優秀だったりスポーツで輝かしい成
績を出していたり気立てのいい彼女と楽しい恋愛生活を送っていたりする事を指す。
要するに人生を楽しんでいる者というのは、そうでない、何らかの重大な欠落を抱えている者
から見れば嫉妬の対象であり、話はやや逸れたが前述の「明るい性格」の人間も同様に、
どうも全体的な雰囲気から「リア充」と感じ取り、反射的に嫌悪してしまうものらしい。
ゆらい物語が大きな欠落を抱えれば抱えるほど求心力を帯び、その欠落に対して正当なる
解決手段を経ずして満ち足りた状態に至れば途端に見放されるように、またはその終末が
いかんともしがたい欠落によって結ばれればただのハッピーエンドよりも深く強く印象づくよ
うに、人というのは満たされていない物を好む癖がある。

だからか。
よく分からないがどうも先ほどからヴィクトリアの目を引いているものがある。
439永遠の扉:2007/10/08(月) 03:34:23 ID:UiXnj4w/0

「はははははははは」
声は大きいがどこか抑揚のない無感情な声がした。
声の主は秋水だ。沙織(髪をおろして眼鏡を掛けて葉巻を咥え中)の前に突っ立っている。
「聞いたかハインケル。聞いたか由美江。鼻血を出しながら雲霞のような化物の軍兵を前に
して」
ヴィクトリアの頬にちょっとだけ笑みが貼りつくのは、その男の逼迫した思いが空気を介して
露骨に分かるからだろう。
果たして笑みが同情なのか侮蔑なのか、親近感によるものかは分からないが。
「かかってこい?」
秋水はそれはそれは豊かで湿り気のある短髪をオールバックにまとめ上げて、眼鏡を掛け
ている。顎には不精ヒゲのメイク。これを施すときにまひろが「この前の猫ヒゲみたいだね!」
とかいってたのは良く分からないが、まったく端正な顔がひどい有様だ。
「戦ってやる?」
胸に掛けた十字架が声とともに揺れた。
「ゲァハハハハハハッ」
また何ともやりづらそうな笑い声。声自体はしっかり出てるから、棒読みっぷりが余計に際立
っている。
「ねェ、秋水センパイ? もっと感情を込めた方がいいと思うよ?」
猫をかぶったまま言外にネチネチとした感情をたっぷり込めてヴィクトリアは指摘してやった。
果たして効いた。彼は「けくっ」と声にならない声をのみ込んで、迷いの末もう一度笑った。
「ゲァハハハハハハッッッ!!」
まったく大変な笑顔だ。頬がガチガチに硬直してどこか泣きそうな気配もある。
例えば頭と内臓だけ残された状態で幸福な笑顔を強要された捜査官の……やめとこう。
「その役って外人でしょ? もっと英語っぽく発音した方がいいよ」
外国人というアドバンテージをフル活用したヴィクトリアの嫌味である。
続けてたっぷりと英語の奇麗なイントネーションを披露して、彼の発音の甘さを貶した。
それは楽しい。様々な鬱屈がいい感じに発散できて実に楽しい。
とりあえずその笑いだけで8テイクぐらい費やした後、
「間違いない。こいつはこの女はこいつらこそが、我々の怨敵よ。我々の宿敵よ」
剣道部の連中も「うわぁ」という微妙な表情で声だけ大きい大根芝居を見ている。
もしかすると彼らはヴィクトリアではなく、秋水を見ていたのかも知れない。
440永遠の扉:2007/10/08(月) 03:36:50 ID:f/q14vLY0
「打ち倒すのは我々だ。打ち倒してよいのは我々だけだ」
微妙な空気を察したのか、彼は必死に語調に熱を込め始めた。
それ以外に秋水はこの場を取り繕う術を知らないらしい。
透き通った瞳の奥に生じた逡巡をヴィクトリアは認め、ついでそれは自分しか理解しえない
感情だと奇妙な優越感に浸ったりもした。
「誰にもォ邪魔はさせん。誰にも! 誰にも、だぁ!」
気息奄々。そんな状態に陥ったエースを、剣道部の連中は初めてみた。
「貴様は十三課(イスカリオテ)! 邪魔立てするか貴様!」
ここにきてようやくセリフを与えられた他の演劇部員たちであったが。
彼女らは実に心胆を寒からしめた。
「五月蝿(やかまし)い!! 死人が喋るな!!」
さすがにそこは数々の修羅場をくぐってきた秋水である。
右に九十度捻じ曲げた首から背後へ発する眼光は、とてつもなく鋭かったという。

もはやお分かりであろう。
まひろの頼みは彼にこの役をやらすコトであった。
着替えからしてすっちゃかめっちゃか。
沙織にきゃーきゃーいわれたりとか、思わぬミスキャストに微妙に興奮した千里に延々と演技
指導されたりとか、まひろに不精ヒゲ描かれたりとか。

彼は思った。心底思った。
(今日の特訓が終わったとはいえ何をしているんだ俺は)
よって練習が終わった後に素直に申告した。
「すまないがとてもこの役は俺にできそうにない」
「ダメ! 諦めずに最後までやろ、ね。秋水先輩!」
「そうですよ! この人の銃剣(バイヨネット)を使った殺陣がまだですよ! 秋水先輩じゃな
いとあの迫力は出せないので、ぜひお願いします!」
沙織はともかくマジメそうな千里までもがノリノリなのがやるせない。
そもそも日本刀と銃剣では全く形状が違う。形状が違えば斬り方も違う。
更に前者は一刀、後者は二刀。
二刀といえば、剣道七段という達人の境地にいる老剣士ですら、八段の試験で遭遇すれば
委縮硬直し半世紀近くの剣暦をまるで生かせなくなるほど異質のものなのだ。
441永遠の扉:2007/10/08(月) 03:38:17 ID:f/q14vLY0
ましてそれが和と洋という違いがあれば、なお。
しかし説明しても「秋水先輩ならやれる」という一点張りで、そこにヴィクトリアまでもが乗っかっ
てきた時、秋水は本当にどうしようもない絶望的な気分になった。いつしか取り巻くギャラリーも
増え、その中に笑顔の桜花すら認めた瞬間の気分といったら、もう。

解放されたのは夕食の直前だ。
とりあえず桜花と
「名演技だったわね秋水クン」
「……いつから見てたんだ姉さん」
「うーん。『ゲァハハハハハハッ』の辺り? あんなに笑ってる秋水クン、初めて見たかも」
「忘れてくれ頼むから」
「ええ。秋水クンがそういうなら忘れてあげるわよ。(ビデオ撮ってダビング済みだけど)」
という会話プラス食事をして食堂を出たところで声がかかった。
「いろいろ大変だったわね」
壁にもたれて挑発的な目つきを送っているのはヴィクトリアだ。
「君も加担していただろう」
とは秋水はいわない。感想として否定のしようもないので「ああ」と短く答えたきり、廊下の端を
指差した。場所柄、あまり大声では話せない。ふとした会話からヴィクトリアがホムンクルスだ
と露見してはいろいろマズい。
「ボロなんか出さないわよ。何年誤魔化してきたと思ってるの?」
冷たく吊りあがった目に嘲けりをありありと浮かべながらも、とりあえず歩き出す。
秋水もその後をのっそりついていく。
小柄な少女の髪の束がカタカタ揺れて、姿勢のよい男がなめらかに廊下を進んでいく。
ヴィクトリアとしては遠い昔のヴィクターとの散歩を思い出したりして、わずかばかりに懐かし
い。と同時に、はてな、ヴィクターの後ろにももう一人男性がいたような気もしてきて、それが
数日前に夢の中に出てきたような、例の総角に似ていたような気もして、色々と記憶の整理
に忙しい。
(気にはなるけど別にいいわよ。別に聞いても何の得にもならないでしょうし)
秋水はひどく生真面目な男だから、こういう時に気の利いた話題など展開できよう筈もない。
ただ人目が少ない場所で、ホムンクルス特有の人喰い衝動の有無について尋ねるぐらいで
本日の演劇に対する話題交換はほぼ皆無。
むしろヴィクトリアの方が積極果敢にしたような節もある。
442永遠の扉:2007/10/08(月) 03:39:23 ID:f/q14vLY0
「君は馴染んできたようだ」
「は?」
「ひどく楽しそうだ。特に、若宮の話題になると」
ちょっと嬉しそうな眼光がさっと注いできて、
「べ、別に関係ないでしょ」
ヴィクトリアはちょっと頬に血が昇る思いがした。
千里に対する好意は言葉にするにはいろいろ生々しすぎて、指摘されると平常ではいられ
ない。
「いや、それでいい。君にだって開いた世界を歩く権利がある」
心底ホっとしたような表情に、ヴィクトリアは柄にもなくポカンと口を開けた。
「その為に俺にできる事があれば協力する」
「何よソレ」
戦士のクセにホムンクルスの闊歩を許すようなセリフをよくもおめおめ吐けるものだと、唾棄
したい気分になる。反面、そういえば元は信奉者というホムンクルス側だった秋水の立場に
抑えようのない興味も湧いてくるから困惑せざるを得ない。
どうにも地上に上ってからは、鬱屈とは違ったいろいろな感情が巻き起こり続けている。
一概にはいえないが、少しはいい方向に向かっているのかも知れない。
「ま、どうでもいいコトだけど。ところでアナタ、どうせ戦団の調べで私とママの経歴を知ってい
るんでしょ?」
「確かにそうだが」
「だったらアナタの」
そのまま冷然と言葉を放つのがヴィクトリアのスタイルなのだが、どうも秋水相手ではやり
辛い部分もある。鼻にかかった甘い声をいったん飲み下して、そろそろと意を決したように
もう一度発するまで少し時間が開いた。
「アナタの前歴ぐらい教えなさいよ。いっとくけど勘違いしないで。嫌いな戦士にこっちの情報
ばかり知られてるのなんて気持ち悪いから。それだけよ。分かる」
「ああ。実は──…」
まったくヴィクトリアの特定人物への嫌悪感というものは、ひたすら高じていく定めらしい。
「あ、いたいた。まっぴー、秋水先輩とびっきーいたよー」
廊下の遙か向こうから聞こえてくるのは沙織の声だ。所用でもあったのだろう。
二人を探していたとなるとこれ以上会話を続けるコトは無理なので、そこで途切れた。
443永遠の扉:2007/10/08(月) 03:41:31 ID:f/q14vLY0
後はまひろがやってきて次の演劇の予定を(秋水の特訓の邪魔になるようなら後回しにすると
いう前提で)話出して、適当な雑談にスライドした後散会。
ヴィクトリアは千里の部屋でいつものように髪を梳かしてもらって寝床についた。
(……本当に鬱陶しい)
うつぶせで枕に顔を埋めながら、ふくらはぎをパタパタさせる。
そんな仕草を取るというコトは、秋水の前歴に興味が出てきた証だろう。

あとがき。
なんだか最近悪ノリしていないかと心配。んー、どうでしょう。
いうまでもなく、ヴィクトリア → セラス・ヴィクトリア(婦警) 秋水 → アンデルセン神父 
沙織 → ヘルシング。コレが星矢ネタならさーちゃんはすんなりアテナになれるんですが、
0083好きとしてはデンドロもどきに心惹かれてやまぬ故にヘルシングを。

>>411さん
ココまできたら突っ走るのみですね! いちおうなんとか最後までの筋道ができてきましたw
そこからは横山好きな人なら喜べるネタだと思います。ええ。なんとですね、「アレ」を使います。
「アレ」はみんながきっと大好き。あばれ天童にも名前が出ていますし。

>>412さん
永遠の扉に比べるとシリアス分が極端に少ないので、肩の力を抜いてのびのびと描けており
ます。次から次へとネタを使えるのも魅力の一つ。本当に作品が膨大なおかげで、外道忍法
帖の忍者みたいにネタがサクサク消費できます。ビバ横山作品。若い人こそ読んで欲しい。

>>413さん
うむ。好みが分かれてしまう作品ではありますな。というコトで今回は永遠の扉の方をご賞味
下されい。でも良ければバビル2世ぐらいは読んで損はありませんよ。後は闇の土鬼とか。

>>414さん
ありがとうございます。楽しみだすと読んでくれてる人を置き去りにしがちな性格なので……

>>415さん
え!? あれってスクランじゃなかったんですか!
444スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/10/08(月) 03:43:33 ID:f/q14vLY0
ふら〜りさん
実は小札だけは能力が明かされてなく、明かされていないが故に共演時の取り扱いが難しい…… 
やはり永遠の扉の方で早く明かすしかないですね。なお、横山キャラが出演しているOVAや
REDのGRではロボットより能力者が常に強かったり。その辺りを項羽と劉邦では踏襲しております。
445作者の都合により名無しです:2007/10/08(月) 10:42:06 ID:ZYIcvw/g0
お疲れ様です。
孤独少女のヴィクトリアが少しずーつ平和な?日常に溶け込んでいる様子が
浮かんできますな。それ以上にまひろの影響で変わりつつある秋水がいいです。

でも最初タイトル間違っとるw
446ふら〜り:2007/10/08(月) 22:11:45 ID:I2ubgxzx0
>>ぽんさん(お久しゅうございますっっ!)
今時そうは見かけない、歩きながら焼いも頬張ってる女の子……いいなぁほのぼの。これ
で電信柱にぶつかったり土管に落ちたりしてたら更にらぶりぃでしたが。叶絵と比べ徹底的
に色気より食い気なとこがなんとも可愛い。このノリが、次回以降変わっていくのか否か?

>>サマサさん(ラスボスは同情の余地なくブチのめされるのが、やはり理想です)
野球にサッカーにテニスにと、殺傷力充分なトンデモ球技漫画は多々あれど……卓球は球
の小ささ軽さ柔らかさフィールドの狭さなど、バトルには思いきり不向き。なのにこの迫力と
きたら、少々興味が湧きましたぞ。問題はどの辺までが原作準拠なのか解らぬところですが。

>>スターダストさん
劇中劇ですか。>>445さんも仰ってる通り、秋水はだいぶほぐれてきてるみたいですね。
まひろからの「心の扉叩かれ役」でしたが、本人は気付かぬ間に扉叩き役もできるように
なってるのかも……なんて日常と、ハイレベルな高速トラップバトルの同居が本作の魅力。
447作者の都合により名無しです:2007/10/08(月) 22:18:58 ID:kkyfmktS0
スターダストさんお疲れさんです
まひろといいヴィクトリアといい小札といい、この作品には
味のあるヒロインが沢山いるなー。
448作者の都合により名無しです:2007/10/09(火) 08:29:56 ID:gsiQeBEd0
原作でまひろと秋水のフラグってなんかあったっけ?
コミックス持ってないからわかんない・・
449作者の都合により名無しです:2007/10/09(火) 11:35:41 ID:OXXLiUgf0
ないと思ったけど、そこがSSのいいところだな
450作者の都合により名無しです:2007/10/09(火) 23:47:36 ID:+agBlDZc0
テンプレ来ないな
451作者の都合により名無しです:2007/10/10(水) 02:59:50 ID:EuycUDfr0
>>449
そうでもなきゃ秋水主人公なんて在り得な(自主規制)
452作者の都合により名無しです:2007/10/10(水) 12:09:34 ID:x87wst5t0
ま、秋水好きだからいいけどね
秋水より桜花の方が好きだけど

453作者の都合により名無しです:2007/10/10(水) 23:37:11 ID:wJJNzuKG0
一応あった
秋水とカズキの剣道やってるシーンでマヒロの目がハートマーク
454作者の都合により名無しです:2007/10/11(木) 00:55:19 ID:ZwY3EvZM0
あれはフラグではないと思うよ
あの頃の秋水はヤンデレ街道一直線(それもやや一方通行)だったし
むしろ原作秋水は剣の道に生きて生涯独身オーラ出まくり
そんな秋水がギャルゲー状態の「永遠の扉」は正にちょっとした(どころではない)
幻想(ファンタジー)。
慣れれば意外と恍惚で病みつきかもしれない、かもしれない
455作者の都合により名無しです:2007/10/11(木) 15:39:45 ID:rpHfci+d0
まひろたんは俺の嫁なんだけどな
456作者の都合により名無しです:2007/10/11(木) 16:08:44 ID:PVZjp0jU0
そうよのお
457さい ◆Tt.7EwEi.. :2007/10/11(木) 21:09:13 ID:0BY0q4eH0
>>455
俺の嫁だっつの
458作者の都合により名無しです:2007/10/11(木) 21:30:42 ID:LPKUrV1c0
さいですか
459作者の都合により名無しです:2007/10/12(金) 23:23:14 ID:Brqf9fBL0
一週間くらいこないのが普通になっちゃったな
460作者の都合により名無しです:2007/10/12(金) 23:27:52 ID:lHvKkFhC0
;
461作者の都合により名無しです:2007/10/13(土) 00:44:52 ID:WjjjGE1T0
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        '''-;;;_`−''゙::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\       ,,/
           `'''―;;;;;;_::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::_;;.".'=―''"^
              |   ̄^"""'''''''''''"""^ ̄|
              .|      ,,_   _,  .|   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
              |   *  "゚'` {"゚`   | <  1UPしてみないか?
              .|         ,__''_    |   \_______
             |         ー     l
               l,              /
               \          _,,/
                 `'''''――――'''`

↓↓日本一簡単なシナリオコンテスト↓↓
 
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/iga/1192036731/l50



462作者の都合により名無しです:2007/10/14(日) 18:01:22 ID:jsFTbmSb0
もう少ししたら書けるんだけどな・・
463テンプレ1:2007/10/14(日) 22:22:18 ID:GZOALkpx0
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart52【創作】


元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1186235428/
まとめサイト  (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm
WIKIまとめ (ゴート氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss
464テンプレ2:2007/10/14(日) 22:23:47 ID:GZOALkpx0
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
上・鬼と人とのワルツ 下・仮面奈良ダー カブト (鬼平氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/258.html
戦闘神話  (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/sento/1/01.htm  
フルメタル・ウルフズ! (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
上・永遠の扉  下・項羽と劉邦 (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/eien/001/1.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/233.html
WHEN THE MAN COMES AROUND (さい氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/105.html
上・ヴィクテム・レッド 下・シュガーハート&ヴァニラソウル (ハロイ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/34.html
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/196.html
上・ドラえもん のび太の新説桃太郎伝 下・P2!〜after 10 years〜(サマサ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/97.html
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1186235428/422-428
465テンプレ3:2007/10/14(日) 22:24:47 ID:GZOALkpx0
ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志 (エニア氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/195.html
その名はキャプテン・・・ (邪神?氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/captain/01.htm
DBIF (クリキントン氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/293.html
ドラえもん のび太と天聖導士 (うみにん氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tennsei/01.htm
脳噛ネウロは間違えない (名無し氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/320.html
『絶対、大丈夫』 (白書氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/85.html
DIOの奇妙な放浪記  (名無し氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/371.html
るろうに剣心 ー死狂い編ー (こがん☆氏)
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/383.html
“涼宮ハルヒ”の憂鬱  アル晴レタ七夕ノ日ノコト (hii氏)
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1186235428/394-397
モノノ怪 〜ヤコとカマイタチ〜 (ぽん氏)
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1186235428/417-420
466ハイデッカ:2007/10/14(日) 22:27:38 ID:GZOALkpx0
結局現スレも書けなかった。すまん。
ケジメという意味で自分の作品をテンプレから消した。
とにかく最近忙しくてさー・・。
それでも1話分は書いたんだけど、あまり気に入らなくて消した。
うーん、ジャンヌが牢獄で捕まっている間の
空白部分が決まらないんだよね。ラストは決めてるんだけど。
来週の土日には、なんとか必ず。

俺の作品と、今スレで終了したハシさん・銀杏丸さん・ふらーりさんの
作品はテンプレから消してるけどそれ以外は今回は消してません。
寂しくなっちゃうからね、テンプレ。

あとゴート様、お手すきなときにサマサ氏のP2、hii氏のハルヒ、
ぽん氏のモノノ怪をまた保管お願いいたします。
467作者の都合により名無しです:2007/10/15(月) 08:22:01 ID:H+v5rWpD0
ハイデッカ乙
テンプレには20本以上あるけど
実稼動は6、7本くらいなんだよなw
468作者の都合により名無しです:2007/10/15(月) 12:06:19 ID:jBZ6+gT50
とりあえずSSも書けよ>ハイデッカ
469作者の都合により名無しです:2007/10/15(月) 14:23:31 ID:2hW+Csk30
俺はガラのやつが読みたい
470作者の都合により名無しです:2007/10/15(月) 23:20:02 ID:0kHQzB/S0
ハイデッカサボらず書け
471永遠の扉:2007/10/16(火) 23:25:27 ID:o6ajW9ae0
第023話 「人(?)それぞれ」

この三日間(斗貴子・剛太敗北から秋水が演劇やるまで)について。

Case.01 中村剛太

敗北後、桜花とともに下山。彼女の呼んだタクシーでサンジェルマン病院へ運ばれた。
その際に目を丸くしたのはかつて打ち破った根来が待合室にいて、しかも生々しい傷を浮か
べていたコトだ。
根来は根来で敵と戦ったとは後で聞いた話だが、あまりに意外な場所での再会に血液不足
の頭が不可解さでさらに眩む思いをした。
しかもそばには千歳がいて、以心伝心というか。会話はなけれど妙に息があっていた。
(アイツ、戦友いたのか?)
入院生活でヒマな剛太は、ベッドの上で時々そういう疑問を考えてみるが特に答えは出ない。

斗貴子には会っていない。
まさか彼女が負けて、剛太に一拍遅れて入院する羽目になろうとは。
斗貴子の強さを知る剛太にとってはまったく予想外だった。
(……やっぱ響いてんだろうなァ)
カズキの件での傷心が敗因なのだろう。そうとでも理屈をつけねば納得できない。
「連戦に連戦で疲労困憊している所に不意打ちを受けた」という顛末を聞き及んでいたとし
ても、なお。
(情けねェ。俺、結局先輩の力になれなかった)
もし自分が負けなければ斗貴子も……と考えずにはいられない。
だから次は絶対に……と気合を入れるのだが、横槍が入ってくる。
騒がしい見舞客のせいで、どうも剛太は葛藤に浸れない日々を送っている。

(いったいなんでこいつら毎日毎日来るんだ!)

今日もドアが開いた。
怒鳴りたい思いで剛太はその美しい相手と醜い相手を唖然と見た。
472永遠の扉:2007/10/16(火) 23:27:26 ID:o6ajW9ae0
Case.02 早坂桜花

剛太を病院に届けた後、傷だらけで気絶した斗貴子が寄宿舎の裏口に打ち捨てられていた
という連絡を受けた。それも核鉄を奪われた状態だったというから驚きだ。
ちなみに気絶した斗貴子を見つけたのは河合沙織という、桜花にとってはあまり馴染みの
少ない後輩だそうだ。
(? 変ね。夜は確か寄宿舎からの外出は許されないはずよね。でもなんで裏口に……?)
軽い疑問は浮かんだが、その後の剛太・斗貴子の入院手続きや入院準備に忙殺されて沙
織の口から聞くことはできずにいる。
ともかく。
自分の作った行きがかりのせいで秋水はどんどんとまひろと親密になっていき、戦闘のあった
晩も一緒に麻婆豆腐を食べていたという。
いかにも平和でのほほんとした微笑ましい情景だ。
その裏で桜花は少しずつ自分から離れていく秋水に胸を痛めているというのに。
(覚悟していたつもりだけど……やっぱり寂しいものね)
が、秋水が鎖された世界にいた一因は桜花にあるとも思う。だから自立を妨げられない。
けれど寂しさは払拭できず、誤魔化すように桜花は毎日剛太の見舞いに行っている。
しかし見舞いに行くといっても、桜花にはそれがひどく難しい行為に思えて初日は密かに四
苦八苦していたりもする。
社交辞令的なお見舞いならいい。適当に物を買って適当に笑っておけばいい。
恥ずかしい話、そういうのはできるのに「心を込めて」やろうとすると、途端に分からなくなった。
いろいろ調べた。本を読んでネットを調べて…… で、分からない
考えて苦悩した挙句、花とメロンを買った。そこで気づいた。「なぜ心を込めているのか」
桜花の心はらしくもなく硬直した。頬がかぁっと小娘のように赤くなるのが分かって、見舞い
自体やめようと思った。
剛太などは秋水に比べたらまったく顔が良くない。一見すると軽薄で、目だって垂れている。
そのクセ、到底かないそうにない恋愛に必死に熱を上げている。
でも剛太は斗貴子に対して懸命で真摯なのだ。世界で一番大事に思っているのが透けて見え
る。そんな部分は見ていて好ましくて、でも、いつかそれが決して報われぬと彼が知る日も予
見できる。
放っておけないと思えるのは、境涯の近さか……それとも?
473永遠の扉:2007/10/16(火) 23:28:42 ID:o6ajW9ae0
Case.03 エンゼル御前

一度意を決したら、後はその行為が日常に馴染んでいく。

またか、という顔をした剛太に艶然とした笑みを返すと、桜花は着席した。
花とメロン。任務がひと段落した時間にそれを持ってお見舞いするのが桜花の日課だ。
「帰って下さい。俺は怪我してるんです
「あら、メロンはお嫌い?」
「そういう問題じゃないです」
絆創膏のついた顔をプイと背けて、不機嫌なノド声を漏らした。
剛太にとっては迷惑だ。元・信奉者という得体の知らない種族が毎日毎日枕頭に花とメロン
を持ってきて、ニコニコと観察してくる。騒がしい自動人形付きで。
「ようゴーチン、核鉄どうするか決まったか? 盗られたのは仕方ねーし、ココはさっさと戦団
から新しいの貰っちまえよ!」
「うるせェぞ似非キューピー! 前にもいっただろ、戦団は今、ヴィクター討伐の余波でボロ
ボロな上に、大戦士長の誘拐でてんやわんやなんだ。新しく支給されるワケないだろ!」
まったく疲れる。ヘンな声のヘンな顔のヘンな自動人形相手にどうして病床で怒鳴らなければ
ならないのか。
しかもそのヘンな自動人形の人格は、容姿端麗なる桜花の人格をフィードバックしている。
要するに桜花の本音を聞かされているようなものだから、いくら桜花が楚々とした上品な態度
をとってきても信用できない。
「それもそうね」
剛太からその旨を告げられた桜花は、何がおかしいのかまたニコリと笑って見せた。
実に邪気がない。ないからこそ疑わしい。
「まったく何なんですか毎日毎日。つーかそろそろ敬語やめていいですか? ブッちゃけ俺、
あんたらみたいな元・信奉者、ちっとも好きじゃないんですけどね」
「ええ。好きなように」
「うんうん。ゴーチンにゃ敬語なんて似合いやしないって」
毒を吐いたのだが、二人(?)にニコリと微笑で答えられてはやり辛い。
「で、なんで毎日来るんスか?」
「いったでしょ。弟のコトで寂しいからに決まってるじゃない」
冗談めかしてるのにどこか寂しい雰囲気がにじみ出ていて、剛太はどうもやり辛い。
474永遠の扉:2007/10/16(火) 23:30:43 ID:o6ajW9ae0
Case.05 光が無い

八月二十九日 (斗貴子敗北から数時間も立たない頃)

「死体を運んできました」
チワワであるところの鳩尾無銘は円らな瞳を「ああ?」と不機嫌に歪ませて相手を見た。
「ですから、死体を……」
ボソボソを喋る少女の姿は闇にけぶって良く分からない。名前は鐶光(たまきひかり)。
チワワから見れば巨大な。人間なら小柄な。小札よりは若干大きい背丈。
「ほめてください無銘くん」
「黙れ。褒めどころが皆目見当つかぬ! そも汝が我が半径二尺以内に接近するコト許さず]
「そう……ですか」
後ろ髪をリボンでくくって下に垂らしている少女は、ぽつねんと呟くと、無銘を抱き上げた。
「ご褒美として、耳、噛みますね」
「離せ! というか脈絡が見当たらん! 師父、師父! 我に介添えを!」
「でだな小札、お前には銀成学園の制服が意外に似合うと思うんだ」
「師父━━━━━━━━ッ!」
「なんだ痴話喧嘩か? 感心しないな無銘。色欲に呆けていては」
「死体、運んできました」
「無銘くんに倒されて戦闘不能のおねーさんを寄宿舎裏に置いてきたというワケですね!」
小札の翻訳に無銘は鼻白んだ。死体ではないではないか。
(相も変わらず理解しがたき女! 鐶光! なぜにこやつが副長などを……!)
「予定通り、核鉄を奪取し、死ぬ前に……寄宿舎の人間へ気づかせてあります」
「フ、こういう時にお前の『特異体質』は便利だな。実に怪しまれるコトなく遂行できる」
「特異体質といえば、無銘くんはどうして……人間形態になれないのですか?」
「人間の胎児に犬型ホムンクルスの幼体を埋め込んだが故」
「そうだな。人間としての形態が確立する前に、動物型ホムンクルスになったせいで、無銘
は人間の姿になれない」
ちなみに人間だったらおおよそ10歳前後の容姿になるだろうと推測する総角をよそに。
無銘の頭に顎を乗せ、鐶は一生懸命に犬耳をねぶりだした。
「はぐはぐ」
「やめろ!! やめんかああああ!!!」
475永遠の扉:2007/10/16(火) 23:32:43 ID:o6ajW9ae0
Case.05 貴ぶ香り

八月三十一日

「べーっくしっ、べーっくしっ、ずあっ!!」
香美は大きなくしゃみをすると、「うあああ」とガタガタと震えて掛け布団にくるまった。
「うぅ、さむいけど頭あつい…… つめたいやつ、角ばっててつめたいのを頭にぃ〜」
『はーっはっは! あの戦士にやられた傷は回復しつつあるが、体力が低下しているので
今度は風邪をひいた! ひいたなああああああ! 熱でテンションが上がる!』
総角は口の中で「落ち着け」と呟いてからふぅーっとため息をついた。
パジャマ姿の香美が布団からずるりと抜けだし、ゾンビのようにノロノロ這いつくばってきた
からだ。髪に入ったシャギーはぱさぱさで、うぐいす色のメッシュもくすんでいる。
「ぅぅぅなにさコレ〜、つめたいのー、つめたいのもうないじゃん〜 つくって、よぉ〜〜」
枕頭を見れば、温そうな水をギラギラ湛える氷のうが、死にかけクラゲみたくヘタっている。
ほんの三十分前に変えたばかりなのに、と総角はまたため息をついた。
実を云うと香美は病弱なのだ。貴信曰く
『普通のネコだったころからそうだった! そしてそれは今でも同じだ! 僕は健康だが!』
らしい。
ちなみに香美のパジャマはピンクで、サツマイモがあますところなくプリントされているが、実
はかつおぶしの絵柄と間違えて買ったというのはまったくの余話である。どうもネコは視力が
よろしくないらしく、例えばちぎったティッシュを干しかまと見間違えてわーわー鳴いたりする。
「古人曰く、馬鹿は風邪をひかないというが」
「…………迷信は当たらないから、迷信……です」
熱にうかされたままゆらりと立ち上がり氷を必死に要求する香美は、酔っ払いか何かのようだ。
小札がやってきて氷を手品で出した。感激した香美は抱きつこうとした。途中、くしゃみが出た。
「べーっくしっ、べーっくしっ、ずあっ!!」
「のわああああ! ……ぜぇぜぇ。なんとか間一髪でよけた不肖! 回避には定評が……」
「びぇ」
「びぇ?」
「びぇぇぇぇえっけしいいいいいいいいいいいいい!!」
暴風のようなしぶきと粘液をしこたま浴びて、小札はうなだれた。
「きゅう……」
476永遠の扉:2007/10/16(火) 23:33:55 ID:z04kGKVb0
Case.06 チカラはゼロでも……

九月二日

「さて、小札。こうしてココに来ることができるのはお前のおかげだ。感謝している」
「お、お礼はいいのであります。不肖としてはもりもりさんのお役に立てればそれで……」
「謙虚なのが好ましいな。で、ココは『もう一つの調整体』の眠る場所」
「はい」
「フ。この前の戦士との戦いなど、お前にココを探し当てさせるための囮に過ぎなかった」
「普通に探せばそれはもう、戦士の皆様方に見つかり咎められたコトでしょう。が! 香美ど
の貴信どの無銘くん鐶副長のおかげでなんとか無事に、ココに到達できました!」
『もう一つの調整体』の眠るこの場所に」
「おおお、五つの割符もすでに鍵となる部分へ挿入済み! 手際の良さはさすがのもりもりさん!」
「いいぞもっと褒めてくれ。が、予定ではあとは戦士らの手にある割符を奪還するだけで良かった」
「予定? 良かった? ふむ、過去形にされてるとゆーコトは何か問題の予感」
「その通り。コレを見ろ」
「ぬぬぬぬ!! なんという障害でありましょう! これぞ最大最後の難関! いかに破るか!」
「な、厄介だろ? 俺には解けない。鐶の『特異体質』ならできるかと思ったが、どうも無理ら
しい。爆爵殿やムーンフェイス殿なら楽勝だが」
「が、爆爵どのはすでに故人…… ムーンフェイスどのも相手取るには難儀……打つ手ナシ?」
「なぁに大丈夫だ。もっと御しやすい相手を使えば済む」
「その方の名は」
「早坂秋水。ま、要するに秋水だ」
「なるほど。確かにこの装置の特性を踏まえればそれは容易くなせるでしょう!!」
「で、お前には秋水の捕縛を秘密裏に依頼したい。本当は俺が出張れば早いんだが、大将
の俺がいちいち動いていては、この前のようにL・X・Eの連中につけこまれる」
「むむ。かといって香美どのや貴信どのはケガと熱でまだ動けず」
「武装錬金の特性が割れている無銘も返り討ちに合いかねない。いったん本体を狙われてし
まえば、人間形態になれないアイツは不利だからな。で、鐶は最後の切り札だ」
「なるほど! そういうワケでしたら不肖、非力ではありますが粉骨砕身頑張るしだい!」
「ああ。任せたぞ。ちなみに影からこっそりやれ。こっそり、とな」
477永遠の扉:2007/10/16(火) 23:35:17 ID:z04kGKVb0
Case.07 津村斗貴子

病室には彼女の姿がなかった。
慌てふためいた看護婦が同僚に檄を飛ばして探させたが。
病院のどこにも津村斗貴子の姿はなかった。

ちょうど、秋水がヴィクトリアと演劇部のコトについて語り合っている頃。


以下、あとがき
自分の中で「嫁」といったらやはりTABキー。エクセルでのデータ入力時、コレを押すと
横にスイスイいけるわ、メールログイン時にIDからパスへ移動できるわ、メール作成時に
手入力した表を整えるのに便利だわで、もう最高。Shiftと併用した時にまるで移動方向が
逆になるのもヤンデレっぽくて素敵。テキスト文書から辞書作るのにも使える萌えキャラです。
え。二次元じゃない? じゃあラノベキャラ。新撰組血風録の鴨川銭取橋に出てくる藻谷君。
土方か山崎に尋問されてキョドる姿がラブリー。んでその尋問内容を五番隊に流してしまっ
て武田観柳斎の風評をガタガタに下げるところが最高。

>>445さん
孤独な少女の日常への回帰。それもまた王道! 秋水・ヴィクトリアに限らず、周りの人間
からちょっとずつ影響を受けて、かつ、それが相互のものであるとしたら、群像劇としての面
白みがでるんじゃないかなーっと。タイトルはいっちゃダメです。みんなに気づかれたら……あわわわ。

ふら〜りさん
彼はちょっとずついい方向に持っていきたく。心の扉の叩き役だけじゃあなく、日常でのさま
ざまな所感を強さの原動力にしてみたいのです。そも、武装錬金という作品での「日常」の果
たす役割は常に大きく、主人公のカズキも何度も力を貰ってますので! だから自分も準ずりますよ〜

>>447さん
おにゃのこの描写にはなんだか力が入ってしまいますw 反面、親父とかジジイみたいなの
も描いてみたく、しかしその技量があるのかとちょっと不安になる日もあるのです。そこは自助
努力により頑張りますよ。で、おにゃのこも可愛く描いてあげたい。
478スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/10/16(火) 23:36:24 ID:z04kGKVb0
>>448さん
>>453さんの挙げられてる箇所がそうといえなくもないかと。自分としては「原作ではフラグ扱い
じゃないけど、SSじゃフラグ扱いできそうな」場面としてカウントしております。

>>449さん
うむ。まったくもってそうですね。自分もいろいろ楽しまさせていただいてるので、やっぱり
SSは好き、なのかも。

>>451さん
まー、彼を主人公にして爆爵を番外編の主役に据えようと考えるのは自分ぐらいなものでしょうw
(良くも悪くも) だって三国志でいうなら秋水なんて甘寧ぐらいのポジですよ。爆爵は張角とか。
でもなんだかSS執筆を通して大好きなのです。

>>452さん
腹黒くて笑顔が素敵な和風美人。いいですよね。逆胴で人が真っ二つにできるって嬉しそうに
語っている姿がなんとも可愛らしい。

>>453さん
当時は「妹キャラなのに兄以外になびくのか」と意外でした。ああいうコって美形に反応しそう
にないので。そういう点では美的感覚が普通なのかも。「オシャレ間違ってる」ってセリフありますし。

>>454さん
個人的な恣意としてはむしろ剛太の方こそギャルゲ展開のド真中にいて欲しいのですが、
主役補正のせいか秋水が恵まれており、こういう点ですらヒケを取っている剛太が不憫。
原作秋水、もし打ち切りにあってなかったらどうなってたんでしょうね。コメディパートの彼も見たかったorz
479ゴート:2007/10/17(水) 11:26:36 ID:9qqYgwl20
>ハイデッカさま
間違って完結作品のところに入っていたhii氏の作品を連載中の部分に移動しておきました。
とりあえずテンプレ用に。

モノノ怪 〜ヤコとカマイタチ〜 (ぽん氏)
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/400.html
P2!〜after 10 years〜(サマサ氏)
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/401.html
“涼宮ハルヒ”の憂鬱  アル晴レタ七夕ノ日ノコト(hii氏)
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/398.html

ここからは私事絡みでもあるのですが、来週から向こう4〜5ヶ月の間更新があまりできなくなる可能性が高いです。
仕事でネット環境が怪しい地域に行くためです。
まったくネットにつなげないということはないと思うのですが、更新出来るほどの余裕はない様です。

というわけで、その間の更新を一時的に代行していただける方を大募集させてください。

管理は出来ないけど手伝ってもいいという方用に、とりあえず金曜日までには更新の仕方を書いたページを書いておきます。

更新頻度が低い上に、ご不便をおかけします。
ごめんなさい。
480作者の都合により名無しです:2007/10/17(水) 12:23:13 ID:LuqcHu2u0
スターダストさんお疲れ様です。
こういう、幕間劇風の各人の動向は大好きです。
この前のネウロに影響されたのかな?
各キャラの中でも桜花の話がよかったな。


ゴート様、お仕事大変ですねえ。
海外だと思いますが、気をつけて頑張って下さい。
毎会は出来ませんが、たまには手伝いたいと思います。
ただパソコン初心者なので、難しい保管方法なら無理ですが・・
481作者の都合により名無しです:2007/10/17(水) 15:05:49 ID:HMsTZ6lC0
>スターダスト氏
インターミッションのこういう短編?は楽しいですな。
つくづく個性的なキャラが揃ってるなw
次回はトキコさんからスタートか。楽しみだ。

>ゴート氏
気をつけて行って来てくだされ。
しかし優秀なビジネスマンっぽいな、ゴートさんは。
俺なんか26なのにパスポートも持ってないw
482作者の都合により名無しです
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1192630797/l50

新スレ立てておきました。
スターダストさんの感想は新スレに書きます。