【2次】漫画SS総合スレへようこそpart39【創作】
1 :
作者の都合により名無しです:
2 :
作者の都合により名無しです:2006/05/31(水) 18:50:23 ID:2bR76ts00
3 :
作者の都合により名無しです:2006/05/31(水) 18:52:04 ID:2bR76ts00
4 :
無題:2006/05/31(水) 19:15:26 ID:2bR76ts00
第二十三話 最終決戦
私は、この世で最も暖かく、そして安全な場所で護られている。
ここは戦場の真っ只中、しかも最前線。
血飛沫が霧となり、槍や剣が絶え間無く軋み合い、矢や石が雨のように降り注ぐ場所。
当たり前のように人が倒れていく。大勢の人が天に召されていく。
でも私は怖くない。何も恐れない。この腕の中にいる限り。
おそらくは地上一の戦闘能力を持つ、涼やかで限りなく優しい異世界の大柄の騎士。
その腕の中に私は護られている。
戦場になりながらこの世で最も安全な場所。母の胎内のような安らげる場所。
でも、人は必ずその場所から巣立たなければいけない。そこがどんな楽園でも。
「ジャンヌ殿。寝起きの顔もまた宜しいですな」
慶次は涼やかにそう微笑んだ。心から素直にジャンヌの覚醒を喜んでいるのだ。
彼の背中には数本の矢が突き刺さり、止め処無く流血したままである。
が、慶次に背中の痛みは感じない。腕の中の、確かな温もりこそが今の彼の全てなのだ。
ジャンヌは母親に優しく起こされたように、爽やかな笑みを浮かべる。
(成る程な。フランスを救えるのはこのラ・ピュセルただ一人だが、
ジャンヌ殿を 救う事が出来るのは、地上にこの男ただ一人か)
ラ・イールが羨望と、ほんの少しの慶次への嫉妬を感じながらふと思った。
が、彼は歴戦の傭兵であり、優秀な将軍である。そんな感傷はすぐに胸の奥に仕舞い込む。
「数名でジャンヌ殿を本陣へとお連れしろッ! そして直ぐに治療を」
的確な指示が部下に飛ぶ。だがその指示は途中で阻まれた。他ならぬジャンヌに、である。
「駄目です。私にはまだ使命があります。もう少し、もう少しでオルレアンは解放を」
「無茶だ! あなたはここで死んではならぬ方。今は私の指示通り、治療を受けて下さい」
ジャンヌとラ・イールがお互い譲らない。正論はラ・イールの方である。
だが、ジャンヌの目には尋常ならざる決意と覚悟があった。
「私が、やらなければならないのです。私が、このオルレアンの戦いに幕を引かないと」
5 :
聖:2006/05/31(水) 19:16:52 ID:2bR76ts00
ラ・イールは知っている。
この可憐で華奢な少女は、この戦場の中の誰よりも腹が据わり、命を賭けている事を。
だが自分は将軍である。的確且つ、有効な指示をする責任がある。
主のドン・レミより、全てに優先して聖女を護れ、との命令もされている。
軍人として、規律は守らなくてはいけない。相手がたとえラ・ピュセルでも、だ。
だが、この少女のまっすぐな目は、そんな自分をちっぽけなものに感じさせる。
思えばこの少女に会ったその時から、俺は負けていたのかも知れない。
この少女に出逢ってから、その奇跡を目の当たりにしてから感じるのだ。
軍人ではない。ただフランスを愛する一人の人間として、胸の奥にある燃え滾るものを。
そしてそれはこう命じるのだ。 ……『突撃せよ、命を捨て前へ進め』と。
「諦めろ、ラ・イール。この人の決意は変わらん。ジャンヌ殿は俺の命で護る」
そしてこの男、前田 慶次。
この男からもまた感じる。男を熱くさせる何かを。男が男であろうとさせる何かを。
……そうだな。
俺は軍人である前にフランス人だ。そして、将軍である前に男として生まれてきた。
ならば胸に滾る何かに身を任せればいい。ただ前に進めばいい。未来へと進めばいい。
そしてそれが死ぬべき時ならば、死ねばいいだけの事だ。
俺は心のままに叫んだ。生まれて始めて上げるような、戦場に響き渡るような声で。
「見たか! 勇猛なる同胞たち。我らフランス軍には天の意志ラ・ピュセルありっ!
矢で打たれてもラ・ピュセルは死なん。イギリス軍どもにラ・ピュセルは殺せんっ!!
ラ・ピュセルある限り、我らの勝利は不動なり! 全軍、突撃!!」
私は暖かい楽園から巣立つ。そして、もう一度、自分の足で戦場へ。
「慶次さん、このままでは戦えません。油を矢に塗って、一気に引き抜いて下さい。
矢が抜けたら、私は戦場へ戻ります。そして…。私が、リシャールを討ちます」
6 :
聖少:2006/05/31(水) 19:18:27 ID:2bR76ts00
ゆっくり立ち上がった後に、ジャンヌは流石の慶次ですら仰天する事を言った。
矢を引き抜けだと? 血止めになっている矢を引き抜けば、そこから血が噴出し……。
「大丈夫です。私には神と、慶次さんがついていますから」
ジャンヌは悪戯っぽく笑った。惚れ惚れするような、匂うような美しさである。
「慶次さんに抜いて欲しいんです。痛くしないで下さいね」
よろよろとしながらも、可愛らしく舌を出して笑う。慶次が戦場を一瞬忘れるほど美しい。
静かに矢の先端をつまむ。にっこりとジャンヌに笑いかけた。ジャンヌも応じて笑う。
微笑ましい光景だが、ジャンヌは矢を抜く事で、死をも覚悟している。
そして慶次もまた、ジャンヌが死ねば、この場で自らの命を断つつもりである。
ゆっくりと引き抜く。ジャンヌが苦痛に顔を歪めた。が、出血は不思議に少なかった。
血止めを塗り込み、素早く白馬に跨り、白銀の剣を天にかざした。
その姿は息を呑むほど神々しく、戦場に清浄な風が吹かせるような神聖さで輝いていた。
「見よ、あの姿。神託我らにあり。フランス軍は、天に味方されているっ!」
ジャンヌの姿に感極まったラ・イールが叫び、両軍の兵はその叫びに呼応した。
フランス兵がジャンヌの姿を見て狂喜する。涙さえ流しているものもいる。
ジャンヌが矢に穿たれ倒れた瞬間、彼らの中のシンボルは砕けた。
聖女が容易く一本の矢に貫かれた時、神の加護が自分たちから去ったと誰もが思った。
が、聖女はその身から矢を消し去り、前より更に雄々しく剣を天に掲げている。
天啓我らにあり、と軍人も傭兵も農民兵も、皆が奮い立った。
逆にイギリス兵は恐れおののく。
魔女だの淫売だと罵っていた女が、神々しく復活し、自分たちの前にまた立ち塞がるのだ。
彼らイギリス兵の胸には、必然的に圧し殺していた疑念が湧き上がる。
もしや、あれは本物の聖女か? 俺たちはキリスト教徒として、天に唾しているのか?
もしこの戦争に勝ったとしても、俺たちは地獄へ堕ちるのではないのか?
7 :
ガンパレードマーチ:2006/05/31(水) 19:21:11 ID:2bR76ts00
フランス軍とイギリス軍の士気は再逆転した。
神を味方につけていると意気上がるフランス軍と、神に唾すると畏れるイギリス軍。
当初の戦力はトゥーレル砦が強固な分、ややイギリス軍が有利ではあったが、
こんな士気の差では勝負になる訳は無い。フランス軍の聖女を称えるマーチが響き渡る。
それは子供の夢物語 いつか聞いたおとぎ話
国を救う聖者の話 誰もが笑う作り話
だが今は信じられる あなたの姿がそこにあるから
おおラ・ピュセル 我が誇り フランスを未来へ導いて下さい
兵士たちは朗々と謳い上げながら、まっすぐにトゥーレルの砦を駆け上がっていく。
先頭に立つのはジャンヌである。白馬に拍車を掛けながら、ただ一陣で突き進んでいく。
目の前にいるイギリス兵は、身を引き、その姿を見送るだけである。
慶次や呂布相手のように、死の壁から逃げ惑う姿でない。自然に自分から道を譲ったのだ。
まるで神聖なものを汚さぬように、自ら後退っている。敵兵が、である。
(見事な一騎駆けだな。あんな美しい一騎駆けは今まで見た事が無い)
慶次はジャンヌの殿を守りながら、心から唸った。
トゥーレルの跳ね橋を超え、城内兵を振り切り、一気に中枢へと駆け込んでいく。
提督室に突入する。が、捜している男はいない。
謁見室や会議室を順繰りに探していく。だがジャンヌの標的はどこにも存在しなかった。
ジャンヌは慶次やジヤンを従えたまま、トゥーレル内を駆け回った。
もう彼女に手出ししようとする者は存在しない。イギリス兵は呆然と見送るだけである。
やや焦りを感じたのか、いきり立ってジャンヌは近くの敵兵に金切り声を上げる。
「あなたたちの将軍はどちらに隠れているのですか。答えなさいっ」
ジャンヌの問い掛けに、イギリス兵は震えながらも素直に答える。
「厩舎です。リシャール提督は、砦を捨てて逃げようと」
ジャンヌはぺこん、と礼儀正しく頭を下げた。敵兵にも礼を尽くすのは彼女らしい。
問われたイギリス兵はジャンヌたちが去った後、その場にへたり込んだ。
ジャンヌの聖性に当てられ、感激してしまったのである。
8 :
聖少女:2006/05/31(水) 19:23:02 ID:2bR76ts00
厩舎や傭兵の控え室のある、砦内後方地域へ踏み込んでいく。
この場所ではまだ闘志のあるイギリス兵が残っていた。
城内守護のための控えの兵であり、直接まだジャンヌのカリスマを見てはいないからだ。
戦闘が再開される。ジャンヌは剣を交わしながら、まっすぐにひた進んでいく。
次々と襲い掛かる兵を、慶次は朱槍で薙ぎ払っていく。勿論、極力殺さぬようにだ。
ジャンヌとの約束である。慶次はそれをひたむきに守ろうとしている。
厩舎への門が見えてきた。ジャンヌ達はイギリス兵の群集を抜き去り、門へ到達した。
が、後方からは追撃のイギリス兵が殺到してくる。
慶次とジャンヌの視線が絡まる。もう目の動きひとつで、意志の疎通が適う仲にある。
厩舎の中に飛び込んだのはジャンヌとジヤンである。慶次はその場に残った。
慶次はくるりと踵を返すと、殺到してくるイギリス兵数十名に向かい、こう宣言した。
「ここからはジャンヌ殿とお主らの大将の一対一の喧嘩だ。邪魔だのと無粋はするな。
それでもここを通るというなら、この前田 慶次が存分に相手をしてやる」
口上を終えると、朱槍を一閃振り抜いた。一陣の風が巻き起こる。
その余りの刃風に、イギリス兵の数十名は硬直した。目の前の怪物の恐ろしさに。
この男は、違う。俺たちとは、全く別の次元の力を…。
その時である。慶次の身に異変が起こった。
視界がぐるん、と変転する。周りが暗闇に包まれる。喧騒から強制的に隔離された。
「前田 慶次、だな」
今まで聴いたことの無い声の響きを聞いた。いや、声というより地獄のうねりのような。
同時、強烈な剣激が慶次を襲う。慶次は獣の反応で間一髪、朱槍で受け止めた。
9 :
聖少女風:2006/05/31(水) 19:44:43 ID:2bR76ts00
慶次の反応は流石に速い。
相手の剣先を朱槍で器用に滑らせていなし、同時に右手で大刀を抜き、瞬時に斬り付ける。
豪快な抜刀だが、洗練された技術に裏付けされている動きである。
慶次に剣の師はいない。
生粋のいくさ人が、数十年と戦場を生き抜く事で自然に得た、必殺の間合いと技である。
人間の反応と機能に限界がある以上、この斬撃からは逃げる事は出来ない。
が、相手は慶次の想像を超えていた。
慶次の鷹の目はその瞬間を捉えていた。慶次の大刀が、敵の胴を薙ぎ払おうとした刹那。
その相手が、まるで氷の上を滑るように後方へ退いたのを。
瞬時に飛んだとか、身を引いたという次元ではない。第一、足が動いていない。
空間を滑るように、大地がその男の周りだけ動いたかのように後方へ移動したのである。
(忍び、か?)
慶次は冷静に相手を観察した。周りは漆黒の闇である。これもこの男の幻術か?
いや、男か女かもわからない。ぶかぶかの黒衣に身を包み、一切の気配を感じ取れない。
フードの奥から、眼光だけがようやく確認できる。どうやら碧眼らしい。
「その程度でよく呂布を凌げたものだ。信長公は勿論、俺にすら及ばん」
「信長、だと?」
男の言葉に慶次は驚愕した。織田 信長。まさか、その名を、この時代で聞くとは……。
慶次は背筋に氷の冷たさを感じた。目の前の男と、織田 信長。
最悪に近い予感がある。ジャンヌの、ジャンヌへの、ジャンヌの運命への……。
「らしくないな、傾奇者の前田 慶次」
碧眼の男がフードの奥から暗く響く声を絞り出す。慶次はその声で我に返った。
「気付いていない訳ではあるまい。それとも、気付かないようにしているのか?」
「何を……、だ」
「俺には見える。そしてお前も感じているはずだ。 …聖女の、決して変えられぬ未来が」
10 :
聖少女風流:2006/05/31(水) 20:02:23 ID:2bR76ts00
慶次の鼓動がドクン、と高まる。碧眼の男に正確に突かれた。
慶次の、慶次らしからぬ思考を。確かに彼は目を逸らしていた。怖かったからだ。
ジャンヌの危うさと、未来への不吉への予感。いつか見たおぞましい白昼夢。
自分ならば良い。自分はいくさ人にである。何時何処で野垂れ死んでも構わない。
だが、ジャンヌだけは……。だが碧眼の男は抑揚の無い声で慶次に止めを刺す。
「俺にははっきりと見える。薄汚い火刑台に括られ、容赦無く炙られる聖女の姿」
その言葉に慶次の目が据わった。松風が察知し、一瞬で間合いを詰める。風が巻いた。
大刀が平行に空間を裂く。神業とも呼べる速度で碧眼の男へ再度斬りつけていた。
が、男はその場にいない。また先程の奇妙な移動法で、間合いより遠ざかっている。
「怒りに任せてこの程度か。やはり信長公を止められる者はおらん。 ……ム?」
胸元辺りが掻き切られている。フードの下から白い肌が見える。鮮血が滴り落ちた。
「フム。まあまあ歯応えはありそうだ」
楽しそうに笑う碧眼の男。慶次は目を見張った。鮮血が一瞬に引き、傷口が塞がっていく。
「また逢おう、前田 慶次。その武力で聖女殿を、何処まで守り通せるか楽しみだ」
その声を合図に視界が開けていく。光が満ちていき、また砦内の喧騒に立ち返った。
が、慶次は眩しい光を浴びながらもなお、暗澹たる予感に苛まれていた。
(なんなのだ、あの女は)
イギリスオルレアン軍提督・リシャールは厩舎で忌々しげに吐き捨てた。
戦局絶望と見るや、自分はすぐさまトゥーレル、いやオルレアンを見捨てている。
馬を選び、逃走の準備に余念が無い。ここを一刻も早く脱出することしか頭に無い。
(これでイギリスでの俺の地位は地に落ちる。魔女め)
護衛3名と選んだ馬に跨りながら、呪いの言葉を吐いて門戸を空けようとする。
が、美しい声がこの卑怯漢を呼び止めた。ジャンヌである。傍らにジヤンを従えている。
「まだ必死に戦っている部下もいるのに、自分は逃げるのですか、リシャール提督」
「フランスの淫売にたぶらかされる部下など、私にはいらんよ」
忌々しげに吐き捨てた。それに構わずジャンヌは凛とした目で、リシャールに宣言する。
「イギリスオルレアン提督リシャール! フランス軍のジャンヌ・ダルクが、
あなたに一騎打ちを申し込みます!」
11 :
聖少女風流記:2006/05/31(水) 20:13:18 ID:2bR76ts00
>>1さんお疲れ様です。あなたみたいな方がバキスレを支えているのでしょう。
たぶん、人間的にも素晴らしい方だと思います。今回の1を褒め称えるのだ皆の衆。
ま、自画自賛はおいて置いてだ。
最近サボってたのはパソコンクラッシュして2話分トンだからだ。あーあ。
次で第一部終了。15話以内で終わる予定だったのに、どんどん延びるなあ。
ていうか終わるのかこれ?
ここからジャンヌはヌッ殺されるまで戴冠式以外大した事してないんで、その間が大変。
ま、だから2部はジャンヌから慶次に主役が移ります。2部は10話以内で終わらせる気ですがね
あと、慶次は歴史に照らし合わせるとこの時点ではどうしても40代である。
下手すると50代。そもそも、慶次が利家にキレて出奔したのが40代前半である。
中年デビューってやつですか?
ま、花の慶次読むと絵柄からして、どう見ても20代後半から30代前半なんですけどね。
50でジャンヌと相思相愛って、今の時代ならエンコーでつかまりそうだな…
12 :
ハイデッカ ◆duiA4jMXzU :2006/05/31(水) 20:17:00 ID:2bR76ts00
あと、一応トリップとコテを。
1時間半もうぷに時間がかかってゴメン。
13 :
作者の都合により名無しです:2006/05/31(水) 20:22:30 ID:2jAmcfhg0
エラそうな香具師キターーーーーーーーーーーーーー
スレ立て&力作乙。
ジャンヌとリサールとの一騎打ちですか。一部のラストにふさわしいかな?
魔術師みたいな敵も現れて、第二部に嫌でも期待してしまいます。
でも、慶次がそんなに年いってたなんてちょっとショックだ。マジ?
いきなりガンパレでいいシーンなのにちょっと噴いたw
>>14 マジ
諸説あるけど、前田慶次郎利益は1533年生まれ
織田信長よりもイッコ上だったりするのだ
関が原の段階で還暦過ぎてるどころかおじいちゃんだ
>>14 前田利家と前田慶次は、「花の慶次」では親子ほどの年齢差に描かれているが、
実は4歳しか違わない。
ハイデッケさんお疲れですー
最近来てないんでちょっと心配してました。
SSも好調ですし、語ろうぜスレ見てあなたがあなたで安心しましたw
慶次と戦った敵、魔界転性っぽいですね。いよいよ信長との決戦ですか。
ジャンヌにずーっと食われてたけど、いよいよ主役の汚名挽回ですね!
>>16-17 ちょっと慶次のイメージが崩れたwどうしても花慶のイメージが強いからな
しかし、昔は爺さんとはいえ元気だったんだろうな
19 :
ふら〜り:2006/05/31(水) 23:37:09 ID:hkDEnS5a0
>>一真さん
相方は第一部と変われども、相変わらず良い感じで「愛すべき男の子らしさ」を発揮して
くれてますねぇ銀時。ジャンプVSマガジンの時も思ってましたが、ケンカするほど仲が
いいってなもんで。でもこの鬼ごっこ、案外ちゃんとした体力知力奸智力の総合試験かも。
>>邪神? さん
>だがスペックとの再戦を考えると熱い鼓動が肉体を駆け巡る
もぉ何つーか……ぜひいつか。あ、どっちかがどっちかの腕の中で「再戦したかったぜ」
を最期に事切れる、てのも捨て難い。まあそれは先の楽しみとして、モノローグでも現実
でもボコボコにされてるシコルがいつもながら面白い。けど案外、後の活躍の前フリとか?
>>サマサさん(ボスキャラがザコ復活といえば……ギーパディンは勘弁して欲しかったっ)
片方がインフレすればもう片方も負けじとインフレ、もはや双方、初期戦力とは比較になり
ませんな。そしてメンバー増加の一途を辿るドラ側に比べ、十三階段側は敗北脱落裏切りと、
悪役らしい展開。でもドラ側圧倒的優勢、にならないのはさすがというか。未だ底見えず。
>>ハイデッカさん(スレ立て、おつ華麗様ですっ!)
死を恐れず戦場に向かう豪胆さ。畏怖恐怖ではない聖性による一騎駆け。そして敵陣深く
で敵兵に向かってぺこん、と一礼。今回のジャンヌは、いろんな方面で大爆発でしたね。
と思った矢先の主人公移行。慶次メインとなると、また新歴史キャラとのバトル、とか?
20 :
戦闘神話:2006/06/01(木) 13:09:50 ID:zzPPMlF20
第一回 海皇策謀
part.1
地中海沿岸、避暑地として有名である。
その海岸沿いにある潮風の香る館群は、持ち主たちだけでなく、
訪れる観光客たちにも人気がある。
世界的に旅好きで有名な日本人専門のガイドまで出没するあたり、
その人気の程がわかるだろう。
そういった館群の中でも、とくに年代を感じさせる館がある。
汐の館と呼ばれる館がそうだ。
欧州にその名を響かせる海商王一族、ソロ家の館であると同時に、
錬金術師協会の欧州本部としての顔をもっている。
隻腕片脚のエドワード・エルリックは、錬金術師協会本部の威圧的な会議室にいた。
会議室にいるのは、エドワード・エルリックを含めてわずかに三人だけであり、
エドワード以外の二人は、十三人がけの円卓の盟主の位置に座す、
まだ青年というべき年頃の男と、
その男の脇に控える涼やかな雰囲気をもった青年だった。
エドワード・エルリックが円卓に座る青年から受ける威圧感は、
かつて対峙したダンテや、ホムンクルスなどとは比べ物にならないほどの強烈さだった。
言うなれば、神のそれである。
藍色のスーツを貴公子然と着こなし、海原を思わせる青黒い髪、彫りの深い顔立ち、
伸ばしだしたばかりなのか、薄く口髭が生えているが、それは端正な彼の顔立ちに野性味を加えていた。
座っているから分かりづらいが、恐ろしく長身だ。190pはあるだろう。
身長に強いコンプレックスを持つエドワード・エルリックには、あまり嬉しくない事実なのだが。
21 :
戦闘神話:2006/06/01(木) 13:11:21 ID:zzPPMlF20
「エドワード・エルリック君。
君を、錬金術師として認めよう」
エドワード・エルリックの挑むような目線を、そよ風ほどにも感じていないのだろう、
天上から見下ろす神の如き重厚な響きで、男はそう、言い放った。
これでようやく、エドワード・エルリックはスタートラインに立つことが出来た。
あの時、この体を引き替えに弟を呼び戻したとき、エドワードは再びこの世界に来た。
錬金術師たちが真理の扉と呼んでいた世界は、錬成エネルギーを汲み出していた世界は、
詰まるところ並行世界の一つだったのである。
その世界へと来てしまったエドワードに、諦めるなどという言葉はなかった。
再び弟に会わなければならない、帰りを待つ人間があちらには居る。それだけで不撓不屈の魂を燃やすには十分だ。
機械仕掛けの義手義足のリハビリに比べれば、この程度屁でもない。
そう、火のついた力強い目をもっているのが、エドワード・エルリックという少年だ。
「我がソロ家は、私ジュリアン・ソロは。
全力をあげて君をバックアップしよう」
22 :
戦闘神話:2006/06/01(木) 13:13:35 ID:zzPPMlF20
大航海時代。列強諸国の海運全てに関わり、莫大な財を築いたソロ家は、
その命脈を潰えようとしていた錬金術師協会のパトロンとなった。
ソロ家は、海皇の絶対の守りと子孫繁栄とを引き替えに、
末代に至るまで、その血肉の魂の一片たりとも余さず海皇に捧げている。
無論、現在のソロ家の総帥たるジュリアンも例外ではなく、
事実、現在の彼は海皇そのものと言っていい状態にある。
かつてのソロ家の総帥が錬金術師たちを保護したのは、もちろん目論見あってのことだ。
錬金術の祖は、ふたつの流派による。
アトランティスと、ムーの流派である。
アテナの聖闘士七人によって消滅した、海皇ポセイドンの大陸城塞宮殿アトランティス。
ギガントマキアによって消滅したムー大陸。
両者とも、ごく一部の知識層のみが生き残り、ムー大陸の錬金術師団は世界の秘境・チベット奥地に潜み。
アトランティスの錬金術師団はエジプトへと渡り、今日知られる原始の科学となった。
次なるアテナとの戦いに備えとして、錬金術師達を保護したのである。
だが、その試みもうまくいったとは言い難い。
この度の復活は、ジェミニのカノンによって偶発的に引き起こされたため、
ポセイドンの構想していた戦略戦術の一切合財は無に帰した。
その上、本拠地たる海界と居城たる海底神殿、さらには海将軍と彼らの鱗衣すらも失い、
手足をもがれたに等しい状態である。
だが、それでも海神の皇(わだつみのすめらぎ)に諦めはない。
三叉矛はいまだ折れず、鱗衣は砕けず、己はまだ、存在しているのだから。
ジュリアン・ソロの肉体を十七年かけて改造してきたのだ。
現在の彼の戦力は、最後の海将軍・海魔女セイレーンのソレントのみである。
だからこそ、形振りかまわないことにしたのだ。
かつて、海皇を打ち倒したあの少年たちのように。
23 :
戦闘神話:2006/06/01(木) 13:15:14 ID:zzPPMlF20
Part.2
ジュリアン・ソロは、ポセイドンの意識を迎え入れた日の事を忘れることはないだろう。
ポセイドンとして覚醒し、同時に敗北の屈辱にまみれたあの日を。
そして、自らの意思で海神の皇と対峙することを選択した日を。
アテナに敗北し、弱体化した彼の神は、ジュリアンの精神と真っ向から戦った。
体の支配権を欲する海神の皇と、誇り高きソロ家の党首としてのプライドの鬩(せめ)ぎあいは続き、
海神の皇はジュリアンとなり、ジュリアンは海神の皇(わだつみのすめらぎ)となった。
彼らは、融合したのだ。
敗北から学ぶのが人間、弱さを補う為に修練を積み上げるのが人間。
己の体を鍛え上げた今、ジュリアンの肉体はすでに黄金聖闘士のそれを凌駕する。
人にして人にあらず、神にして神にあらず、半神半人とでもいうべきモノへとなったのが、
今の「海皇ポセイドン」であり、「ジュリアン・ソロ」である。
「ジュリアンさま、お時間です」
ソレントの声に、彼は腰掛けていた椅子から立ち上がった。
かつて錬金術という学問があった。
中世から近代へと変遷するさなか、科学や化学、哲学や神学などへと分散していってしまった学問である。
今はもう、低級なオカルティストやオカルト雑誌でしか真剣に取り扱われることのない学問である。
しかし、ここ数年。正確には四年前から急速に欧米の富豪層、いわゆるセレブレティーたちの間で着目されだしていた。
24 :
戦闘神話:2006/06/01(木) 13:18:46 ID:zzPPMlF20
世界規模で連続した大変動が起こったことが原因のひとつだろう。
全世界を席捲した大津波と大雨、不吉な皆既日食、世界中の休火山や活火山の噴火、
大地震の連続などなど。
天変地異は人間の心に畏怖を呼び起こすことに成功していた。
あの聖戦の中でアテナは否定したが、神への畏怖があるからこそ、
人間は未だに滅んではいないというハーデスの持論は、
一部ながら確かなものだったのだ、ともいえるだろう。
とはいえ、その中で錬金術が注目されだしたのは、もうひとつの理由がある。
「超人か…
哀れなものだ。人間とは」
久しく人間が忘れていた森羅万象への、死への憧憬と畏れが再び呼び起こされてしまった現代において、
人を超えた存在になりたいという思想が、同時多発的に持ち上がっていた。
それを超人思想という。
超人思想において、錬金術という学問は再び日の目を浴びることになった。
あらゆる科学の母にして、原初の学術、ゆえに、すべての学術を収めた末に、
超人のみが到達することを許された、超越者の術理。
それこそが錬金術であるとされたのだ。
消え去った大陸城砦アトランティス、滅び去ったムー大陸に端を発する錬金術とは、
けして超人の術理などではない。
学問とはしてはあまりにも不完全な、飽和寸前な「術」だったのだ。
25 :
戦闘神話:2006/06/01(木) 13:21:26 ID:zzPPMlF20
その保障はジュリアン・ソロがした。
神話の昔から、海神の皇として人間の所業を見つめ続けていた記憶のなかに、
この術理によって発動する異形の業はなかったのだから。
だが、彼ホーエンハイムは再び放浪の旅へと出ていた。
ソロ家の追跡を振り切ったその手腕は、見事としか言いようがなかった。
その手腕に敬意を表し、ジュリアン・ソロは彼の追跡を断念していた。
なるほど、と頷いたジュリアン・ソロは、意識を手元の資料へと移す。
鼻っ柱の強そうな、燃えるような瞳の少年の移った写真と、その少年の資料である。
この一月の間、エドワード・エルリックはよく言えば逗留、悪く言えば半軟禁状態にあった。
身の回りを調べるためである。
同時に…。
「DNA鑑定の結果を聞きたいな
ソレント?」
殊更楽しげに、ジュリアン・ソロはいう。
「報告が遅れてすみません。
DNA鑑定の結果、彼らは親子だと確認されました」
涼やかな声でソレントは答える。
彼の専門はフルートだが、コーラスでも通用するのではないか、
とジュリアン・ソロは常々思っているほどの美声である。
そうか、と頷く。
26 :
戦闘神話:2006/06/01(木) 13:24:33 ID:zzPPMlF20
「平行世界・パラレルワールドというものを知っているか?ソレント」
訝しげなソレントに、ジュリアン・ソロは楽しげに答える。
「サイエンスフィクションノベル、SFだよ。
この世界ととてもよく似た、それでいてどこか違う世界…」
ジュリアン・ソロの声色は、緩やかに大きくなっていく。
「その世界では、私が海神の皇でなく、君もまた海の楽団の魔女でないのかもしれない。
アテナが敗北していたのかもしれないし、聖闘士たちが八十八人勢ぞろいしているのかもしれない。
そして、あのおぞましい男が勝利していたのかもしれないし、天馬の聖闘士が死んでいたのかもしれない」
薄い顎鬚に触れながら、ジュリアン・ソロはさらに語る。
「可能性の数だけ、世界は存在するのだという事さ」
そして、錬金術師協会の会議場として使われている広間の扉を開く。
円卓に盟主は存在しない、だが、その理の外に立つのがジュリアン・ソロだ。
彼が座った席が、すなわち盟主の席になるのだから。
椅子に座り、威圧的な「海皇」となる。
そして、ジュリアン・ソロたちの目の前の扉がひらき、エドワード・エルリックが入室した。
part.1完全版とあわせてpart.2をお送りしました、銀杏丸です
前スレ
>>159さん
無論、鋼の錬金術師以外の作品も登場しますのでお楽しみに
前スレ
>>166さん
ぎんなんまるです、こんにちは
とりあえずポセイドンのローマ神話での名前に関わるキャラクターが登場する予定です
前スレ
>>167さん
ドラえもんはまたの機会に…
そうそう何本も連載もてないんですよ、すみません
前スレ
>>173さん
長編を予定しております
ギリシア神話最悪の魔神が登場予定
全力全開さん
マース・ヒューズはいい奴です
惜しい人を亡くしたものです
ふら〜りさん
貴鬼はじめとして青銅連中や、ややマイナーなあのキャラが登場予定です
ちなみに、TFはガンダム以上に数多いっすよw
では、またお会いしましょう
28 :
作者の都合により名無しです:2006/06/01(木) 14:28:08 ID:6DYufLiH0
こんな読みにくいSSよく書けるな
29 :
作者の都合により名無しです:2006/06/01(木) 15:17:53 ID:ESA0DHTq0
>>28 (´・ω・`)ぼくだって.....戦えるんだ.....!
30 :
作者の都合により名無しです:2006/06/01(木) 15:28:37 ID:kN4Lu7Cg0
それゆけフリーザ野球軍
ドラえもん のび太と魔法少女リリカルなのは
,=::;;;,
l,ェ`l l
←、,r'ヽ、 ,r―-、、 r''"`''''ー--、
/,rニニ=-、 /;゙゚゙゙゙`> `''i lr'゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙l `'l
r=,レ゙゙゙゙゙l l > ェ‐ 〉 l ム l
ζ=`>`エヽ,r-,l < 、 l_r‐-, l 〈ェ `ェ‐ 〉
i-、 〉-、 _ノ 、 ├、 、ノ K´ し'´`,
,r'-、,r'l、_,r'" /´ \ <、 ,r、 l<_ _,/
//l´ >、_/ \__,>、,r'''" ヽ、 〉 /l、
'llll' l l / /〈 ー' ヽ ``ヽー ,)\
l ノ l .l / / l,r‐';"´〉 ,r'",r''"
l,--、l / l ,l / / 〈 /'-'フ" <
_,r==' ノ`〉 l / / / l ヽl/"''''''''"
_,r‐'" / 〈 l''''''フ´ l / ノ l/ /
‐‐''''フ" ,r''l_,.ノ/ .( ./ / / /
‐<ニ--‐‐''" / / /`''ヽ、,_ ノ / /
_r=ニ>-==‐'フ / ,..ノ >' ,-ム、'
/;'/`>=`ヽ' ,r'" >-'" _,..r―-'´`ヽ / /
l、/lc'`‐'`l__,.r'",r'" ,rーl", 、 ヽ'ー''
31 :
作者の都合により名無しです:2006/06/01(木) 15:29:11 ID:kN4Lu7Cg0
聖少女風流記
殺人黙示録カマイタチ
,r=ヽ、 r';;;:;:;;:::;;;;;;;;;;;;ヽ、
j。 。゙L゙i rニ二`ヽ. Y",,..、ーt;;;;;;;;;;;)
r-=、 l≦ ノ6)_ l_,.、ヾ;r、゙t lヲ '・= )rテ-┴- 、
`゙ゝヽ、`ー! ノ::::::`ヽ、 L、゚゙ tノ`ゾ`ー ゙iー' ,r"彡彡三ミミ`ヽ
にー `ヾヽ'":::::::::::: ィ"^゙iフ _,,ノ , ゙tフ ゙ゞ''"´ ゙ifrミソヘ,
,.、 `~iヽ、. `~`''"´ ゙t (,, ̄, frノ ゝ-‐,i ,,.,...、 ヾミく::::::l
ゝヽ、__l::::ヽ`iー- '''"´゙i, ヽ ヽ,/ / lヲ ェ。、 〉:,r-、::リ
W..,,」:::::::::,->ヽi''"´::::ノ-ゝ ヽ、_ノー‐テ-/ i / ,, 、 '"fっ)ノ::l
 ̄r==ミ__ィ'{-‐ニ二...,-ゝ、'″ /,/`ヽl : :`i- 、ヽ ,.:゙''" )'^`''ー- :、
lミ、 / f´ r''/'´ミ)ゝ^),ノ>''" ,:イ`i /i、ヺi .:" ,,. /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`゙
! ヾ .il l l;;;ト、つノ,ノ / /:ト-"ノ゙i ,,.:ィ'" /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
. l ハ. l l;;;;i _,,.:イ / / ,レ''";;;;`゙゙" ヽ_,,ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
人 ヾニ゙i ヽ.l yt,;ヽ ゙v'′ ,:ィ" /;;;;;;;;;;;;;;r-'"´`i,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
r'"::::ゝ、_ノ ゙i_,/ l ヽ ゙':く´ _,,.〃_;;;;;;;;;;;;f´' ll;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
` ̄´ / l ヽ ヾ"/ `゙''ーハ. l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
/ l ゙t `' /^t;\ ,,.ゝ;;;;;;;;;;;;;;;i;;;;;;;;;;;;
32 :
作者の都合により名無しです:2006/06/01(木) 21:47:00 ID:fN9MVwWk0
銀杏丸さんおかしなレスは気にするな
俺は黄金の時からあんたのが大好きだ
銀杏丸さん乙。
得意の星矢ワールドにハガレンも加わって賑やかなSSになりそうだ。
長編を目指しているという事で、更に期待が持てて嬉しいよ
お仕事忙しそうだけど、頑張って下さい
>>聖少女風流記
面白いですね。イヤマジで。
電車の中で携帯使って過去から読んでましたけど、
最強に面白いSSかもしれない。 とりあえず、リョフが逃げるところまで読みました。
>>戦闘神話
まだ、第一話ですね。これからが楽しみといったところでしょうか。
次回のアップロード待ってます。
工藤新一はフリーザに対し、紙一重の秀才という印象を持った。
会話の組み立てが非常に丁寧であったため、そう感じたのである。
だが、一方のフリーザは新一に対し、逆の印象を持った。
そもそもフリーザは屋上に下りる前から新一を観察していた。
8時30分。生徒たちのほとんどが電車の中でうたた寝をしている時間帯。
そんな時に新一は屋上に上がり、宇宙船を見上げた。
フリーザから見た新一の第一印象は『一日遅れの野次馬』。
本来、野次馬は群れを成すものだが、新一は一頭だけで遅れて来た。
だから、新一は『一日遅れの野次馬』だ。
そして、この事は新一が群れに適応できない可能性を示す。
工藤新一は社会適応性が低い。高機能性自閉症の可能性がある。
フリーザは新一をそう分析した。
高機能性自閉症とは知能水準が健常人並かそれ以上で、かつ、社会に適応するためのコミュニケーション能力が病的に欠如した障害の事。
かの有名コナ▲・ド◎ルもこの障害を持っていたと言われる。
フリーザは屋上での新一の行動を眺め続け、この考えの確信をさらに深める。
新一は屋上をぐるぐると回る。特別、屋上で何かを探すそぶりはない。屋上を縁に沿って進み、時々停止して宇宙船を見上げる。
それだけの行動だ。
このような『繰り返し』は高機能性自閉症患者の特徴の1つである。
高機能性自閉症患者は『繰り返す』という行為そのものに意識が集中し、他の事に考えが回らない。
他の事、例えば『グルグル回る事に意味があるのか』といった事を考えられない。
そのために、健常人であれば数回でやめる行為を新一は何度も行っている。
が、不意に止まった。
今度は何を思ったのか? 新一は指を一本顔の前に立て、ジッとそれを見つめている。
新一には指の先に宇宙船が見えているかもしれない。だが、この自閉症患者の行動に深い意味など無いだろう。
フリーザはそう判断して、宇宙船から降り立った。
その後の経過は前述したとおりである。フリーザは新一にナメック星での出来事を順を追って説明したのだ。
ちなみに、会話の最中、系統立てて話すフリーザの口調に新一は知性を感じたが、
フリーザは、新一に高機能性自閉症患者の傾向を感じていた。
高機能性自閉症患者は会話の最中に、意識が他の事に飛ぶ事がある。
新一は会話の最中、ナメック星での話を聞きながらも、明らかに他の事に意識をまわしている。
それは、『空を飛ぶフリーザ』。
空を飛べない地球人たちにとって、飛べる自分が珍しいことはフリーザも十分把握している。
だが、健常人であれば相手の会話を耳で聞きながら、頭で『空を飛ぶ』事を考えたりはしない。
新一が健常人ならば、ナメック星の会話を中断させ、『空を飛ぶ』会話をしたであろう。
だが、結局新一はナメック星の話を止めずに聞き続けた。
その結果、新一とフリーザとの間で交わされた『空を飛ぶ』会話は結局、一言二言だけであった。
つまるところただの障害者だ。
フリーザは新一の分析結果をこうまとめた。
フリーザは新一と別れた後、職員室の前で再びナメック星での出来事を思い出していた。
あの数日間はフリーザの人生にとって最悪の日々であり、反省すべきミスを多く含んだ日々でもある。
例えばベジータに関して。キュイとの戦闘時にベジータの戦闘力が18000から24000に変化した事は知っていた。
危機管理能力の優れた人間であれば、この時点でベジータという危険因子を排除していたはずである。
だが、フリーザはこの事態を放置し、結果として、ドドリア、ザーボンという二人の側近を失い、ギニュー特戦隊を全滅させるきっかけも作ってしまった。
もう一つはソンゴクウ。彼との戦闘時、なぜ最初から全力を出さなかったのか。
早期に決着をつければ、自分は勝っていたはずだ。明らかに油断。そして、フリーザのミスだ。
さらに、ミスはまだある。ドラゴンボール捜索時の軍構成。
集めるべきボールの個数が早い段階で分かっていたにもかかわらず、一個大隊のまま軍を構成したこともミスだ。
軍を7つの小隊に分け、各小隊ごとにボールを捜索させれば、もう少し効率的に事を運べたはずだった。
このように、当時を思い起こせば数え切れないミスがある。
そして、フリーザは自分が何故このようなミスを犯したのか、その理由を考える。
それは単純だ。
知 性 が 足 り な い 。
フリーザ軍は運悪く、早くから宇宙最強の軍団になってしまった。それも、純粋な武力のみで。
純粋な武力のみでも、相手が弱い場合は問題なく作戦を遂行できる。ミスや問題点が明るみに出るには武力の拮抗した敵と戦う必要があったのだ。
結局、軍自身が、いやフリーザ自身が強すぎたため武力の拮抗した相手と戦わないまま、フリーザ軍は大きくなり続けた。
そのため、知性を持たない軍隊となり、ナメック星で痛い目を見た。
人は痛い目にあって初めて物事を知るという、軍や組織も同じだ。痛みを知って初めて変革ができる。
ならば、痛みを知った今こそが変革の時期だ。
フリーザは考える。自分の軍にふさわしい知性は何かと。
今はまだ、具体的な答えを出せない。
そんな事を考えながら、フリーザは職員室に入る。
職員室では、2年7組の副担任から昨日の入学試験の結果を聞く事になっていた。
一方、ここは2年7組の教室。工藤新一のノートには以下の事が書き込まれている。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
『
フリーザ 身長 162.4cm 男
宇宙船 直径 203.42m 縦幅 不明 高度 校舎屋上より 156.22m
物体が宙に浮く原理
1. 物体が空気よりも軽い → 風船、気球、etc
2. ベルヌーイの法則が働いている → 飛行機、ヘリコプター、etc
3. 鉛直下方向に気体を噴射する。 → ロケット、垂直離陸戦闘機、etc
4. その他。 → ?
5. トリック → 手品 』
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
授業中は現場検証が不可能なので、新一は机の上でノートとシャーペンを用いて考える。
文字通りの机上論。だが、新一が考えると、空論ではなく机上の実論になる。
まずは宇宙船が宙に浮く原理を考える。
宇宙船は直径203.42mの丸みを帯びた円柱形。校舎の真上156.22mの高さに静止している。
このような物体が、仮にノート2,3の手法を用いて宙に浮いていたとすれば、
宇宙船の質量をM、重力加速度をgとしてMgの力が屋上に掛かるはずだ。
だが、新一が屋上にいた時にはそのような力は感じなかった。
従って、2,3の可能性は低い。
また、5の可能性も低い。なぜならば、主な物体浮遊トリックは大別して、
・上から吊るす
・横から吊るす
・下から支える
の三つになる訳だが、帝丹高校校舎の周りには上と横から宇宙船を吊るせるような建造物は無い。
また、下から支える場合、あれだけの大きな物体を支える柱は非常に目立つはずである。
従って5の可能性も低いのだ。
残る可能性は1。順当に考えれば、宇宙船は気球のような材質でできていると思われる。
そうすれば、全てに矛盾無く説明をつけることができる。
けれど、新一は不満そうな顔をする。
(なんか違うんだよなぁ……)
物体が宙に浮くには……
4. その他
可能性の否定できない『その他』
何かあったはずだ。新一の探偵としての直感が告げている。
思い出せない『その他』
仮面ヤイバーからイギリスのパンダカーまで、幅広い知識を持つ新一が思い出せない。
(けどま、いくら考えても……)
机の上では名探偵にも限界がある。あとは、屋上での現場検証にかけるべきだ。
さて、宇宙船の飛行原理を考えた後はフリーザの浮遊原理だ。
フリーザは人型。そして、出来損ないの■ルト△マンみたいな格好をしている。
だが、間違いなく、その中には人間が入っている。
そのため、ノート1,2,3の原理は全て可能性が低くなる。残る飛行原理は4,5。
新一はシャーペンを回しながら考える。
(サッカーボールじゃなきゃ、頭回んねーよ……
けどま、フリーザが廊下の中でトリックを使っていたとしたら、その痕跡は必ずどこかに残るはずだ)
必ず見つけてみせる。そう決意した瞬間、一限目終了のチャイムが鳴った。
鳴り始めた瞬間、机の上にノートや筆記用具を放置したまま、新一は教室の外へ駆け出す。
「おい、工藤。まだ終わってない」
教師が呼び止めるのも聞かず、「現場検証やりに行きます」とだけ言い残し、去っていった。
「全く……工藤は成績はいいんだが。いつも事件、事件、事件、事件、事件、事件。
生徒としての自覚がない」
教師は誰にでもなく呟く。が、すぐに新一のことから頭を切り替え、廊下で待っているフリーザを見る。
そんなフリーザも走り去る新一を見つめながら思う。
(やはり、社会適応性がない)
フリーザは担当教師に連れられ、2年7組の教室に入る。
教師は新一以外の全員が着席していることを確認し、生徒たちに告げた。
「え〜〜。本日の二時限目から皆と一緒に授業を受けることになるフリーザ君だ」
紹介を受けたフリーザは軽くお辞儀をして、ニッコリ微笑む。視線の先にはバキがいた。
ちなみに、勇子は眞鍋診療所にいるため学校には来ていない。サボリだ。
フリーザはバキから視線をはずし、クラス生徒全員を一瞥して自己紹介する。
「フリーザです。今までは宇宙の支配者をやっていました。
これからはバキ君のカノジョになるために高校生をやります。オカマですが、よろしくお願い致します」
クラス全体がざわめき出す。
「最近、バキの彼女多いよな。梢に振られたばっかなのに……」
「でも、変なのだけよ。地上最強の生物と宇宙の支配者って」
生徒たちから見れば、勇子やフリーザは奇怪な生き物に他ならない。
だが、フリーザは気にしない。器は宇宙の帝王。庶民の愚痴など耳に届かないのだ。
「ゴホンッ」
教師の咳払い一つで、生徒たちはシンとなる。
「え〜〜。フリーザ君の席は……毛利蘭の隣が空いてたよな?」
蘭の隣、新一の後ろ。そこには確かに誰も座っていない。
「はい、空いてます」
元気よく蘭が答える。それと同時に、フリーザは黙ったまま、その席へと進む。
途中、新一の席を通り過ぎる瞬間。そこの上に置き去りにされたノート。
そこに書かれた数値を見て、フリーザは驚愕する。
『
フリーザ 身長 162.4cm 男
宇宙船 直径 203.42m 縦幅 不明 高度 校舎屋上より 156.22m 』
ズレのない数値。これを新一がどうやって測ったのか。それは宇宙の帝王にも分からなかった。
フリーザが1秒ほど静止する。いや、彼にとっては"一秒もの"永い時間固まってしまった。
それを見た蘭は言う。
「ごめんね、フリーザ君。新一が勝手にあの宇宙船の大きさ調べちゃったんだよ。
怒ったかもしれないけど、悪気はないから許してあげて。
あ、新一っていうのはその席の子ね。さっき出てった男の子」
フリーザは蘭の方を見向きもせず、ノートの数値を確認する。
何度見ても、間違いない。宇宙船のサイズを正確に、それもcm単位で測っている。
それに加えて高さまで……。クルっと蘭の方を振り返り、フリーザは質問する。
「これはどうやって測ったんですか?」
「うーん、私もよく分からないんだけど、新一が言うには
『朝、屋上に行って歩きながら測った』んだって。
実を言うと昔ね、新一に説明してもらったことがあるんだけど、難しい数学使うみたいで……
私、わかんなかったんだよ。ゴメン」
蘭の言葉にフリーザが震える。
「馬鹿な、有り得ない」
蘭の言葉と、新一の今朝の行動。二つが示す測定法は1つ。
だが、有り得ない。あの方法で、これだけの精度を出せる人間がいる訳ない。
宇宙の帝王フリーザが震える。これは恐怖か。
超サイヤ人に会ったときにも恐怖は感じなかった。
だが、工藤新一。彼の能力が人知を超えることは間違いなさそうだ。
またまた、ギャグパートがありません。
そして、バキが出てきてません。主人公のパパも出てきてませんね。
新一はギャグ要員として、連れてきてるんでいつかは真面目に働いてもらいます。
メモ
1. 高機能性自閉症
現実にある症状です。生まれつきになるものであり、後天的にはなりません。
んで、有名なコナン・ドイルが……って言ってますけど、もちろん、フィクションです。
有名な話はニュートンとかが、そうだったとか……あとは、ビル・ゲイツもそうらしいですね。
2. ベルヌーイの法則
飛行機が空飛ぶ原理です。はい、実在する法則名です。
近いうちに、ギャグSSにしたいと思っているんですが、
一応、考えているストーリを進める事も必要になってくるんで、ハァ……
44 :
作者の都合により名無しです:2006/06/02(金) 08:26:07 ID:B75vgu1T0
お疲れ様です
微妙に当初と違う方向へのSSになってますなw
工藤の考察力がすごい。ある意味、フリーザ以上の力を持つ男かもw
>>32 ちょっと批判したら「おかしな」扱いかよ
書き手に対しての異常な神格化はロワスレ以上だなw
■招かれざる客たち
「兵藤様、失礼いたします。急ぎ、お知らせしたい事が」
コン、コン、と、規則的なノックの後、間を置かずにドアは開いた。よく通るテノールが、無駄に広い部屋に響く。
姿を見せたのは、一人の黒服。その表情には、若干焦りの色が含まれているように見えた。
黒服は兵藤とジンの方へと視線を向け、機械的な動作で一礼して、姿勢を正す。
黒服の口から伝えられたのは、調理場、十七番カメラが捉えた異変。玉崎真吾が別人の変装であった、と言う情報だった。
それを聞くなり、兵藤は、にまぁと嫌らしい笑みを浮かべる。
「カカカ……味な真似をしてくれおる……! 奴を此処に招いたそもそもの理由は、公安との接触。よもや、替え玉を送ってこようとは。
公安の手先が、一匹紛れ込んだとなれば、用意しておいた『アレ』の出番か。『転ばぬ先の杖』とは、よく言ったものよな」
言いながら、兵藤は首を傾け、隣に立っているジンに目配せする。
ジンはロングコートの内側から無線機を取り出すと、口許にあてがった。
■出動要請
シュプールから、凡そ百メートルほどしか離れていない地点。
荒れ狂う吹雪に姿を隠すようにして、中型のテントが設営されていた。
その中では、四人の男達――帝愛グループと黒の組織との混成部隊――がビバークしていた。
彼等は、ゲーム終了時刻まで、シュプール周辺でキャンプを張り、待機するよう命じられていた。
ペンション内などで、迅速に対応する必要があるトラブルが起こった時に備えての保険である。
帝愛グループからは、武闘派揃いの兵藤直属私兵部隊が二人。黒の組織からは、ジンの部下である実行部隊が二人。
名目上は『相互理解を深める為の共同戦線』なのだが、そんな奇麗事は建前でしかなかった。
前述した通り、彼等が動くのは『迅速に対応する必要があるトラブルが起きた場合』である。
その事後処理に当たって、どちらかが一方的な不利益を被らないように……お互いの行動を監視する目的での部隊編成だった。
当然ながら彼等も、上から明言されるまでもなく、己に課せられた役割を暗黙の了解として認識していた。
吹雪の音に耳を傾けながら、来るか来ないか分からない連絡を、ただひたすらに待ち続ける。
そんな地味な任務に拍車をかけるように、四人全員、揃ったように無表情のまま、押し黙っていた。
テントを張る際に自己紹介――と言っても名前だけだが――を交わしただけで、その後は会話らしい会話は皆無だった。
沈黙を打ち破ったのは、無機質な電子音だった。
男の一人、榊(さかき)が、服の中から無線機を取り出してボタンをプッシュし、耳元に押し当てた。
「……はい。……はい。了解」
榊は二、三、言葉を交わすと、無線機を置いてゆらりと立ち上がった。
「無線連絡。『六番、玉崎真吾』が公安が送った替え玉であると判明。
生きたまま確保した上で、奴が収集したゲームの証拠を完全に破棄しろ。
尚、ゲームは既に決着済。銃器使用は不許可。生き残っている探偵はクロロフォルム等で無力化せよ。以上」
早口でそうまくしたてて、横で胡坐をかいている男、京(きょう)を見下ろす。
「京。早く立つ。仕事」
「はいはい。相変わらず、愛想のないことだね」
京と呼ばれた男はそう呟き、手にしていた分厚い聖書を、ぱたりと閉じる。
「返事は一回。十分」
と、榊。
「榊……だったか。犯人『マキナ』は? 何か聞いていないか?」
服に付いた雪を手で払いながら、兵藤直属私兵部隊の一人、デウスが、榊に尋ねた。
この『マキナ』や『デウス』と云った奇妙な呼称は、勿論、本名ではない。
帝愛グループ、兵藤直属私兵部隊の三人は、お互いにコードネームで呼び合っていた。
デウス・エクス・マキナ。現れるなり、万能の力で立ち塞がる困難を打ち砕き、強制的に物語を終わらせる……
古代ギリシアの演劇で生まれた、御都合主義の象徴とも言える機械仕掛けの神。それが、三人のコードネームの由来だった。
『狂犬』ことデウス。経歴不詳。肉体こそ最高の凶器であると標榜しており、格闘技、特に関節技を得意とする。
『智謀』ことエクス。経歴不詳。基本的に無口。死体処理を専門とする。
『擬態』ことマキナ。元劇団員。自らの性格を自由自在に演出する事ができる、と言う特技の持ち主。
デウスの問いに、榊は無表情のまま首を横に振ってみせた。
「探偵。確保。その後『八番』に殺された」
「八番? あーらら。よりにもよって、あんな女の子にかい?」
二人の会話に割り込んで、京は唇を歪める。その微笑には、いささかの皮肉が含まれていた。
帝愛の首領が信頼を置く私兵部隊は、この程度なのかい……? 言葉に出さなくとも、そう顔に書いてある。
デウスは一瞬、京を殺気の籠った目で睨んだが、クッ、と喉を鳴らし、黙って唇を噛んだ。
認めたくはないが、犯人と言う大役を仰せつかっておきながら確保されたのも、小娘にあっけなく殺されたのも、こちらに落ち度があるのは明白である。
デウスの肩に、ぽん、と手が乗せられた。エクスだった。
「……行くぞ」
エクスはそれだけ言って、テントの入り口を開いた。風が、刃物のような鋭さで肌に突き刺さる。
エクスは手早く雪靴を履くと、微かに見えるシュプールの明かりを目指し、率先して歩き始めた。
榊と京も、それに続いて歩き出す。デウスは暫くの間、三人の背中を眺めていたが、小さく舌打ちすると小走りで後を追った。
毎度ありがとうございます。前回投稿は前スレ487です。
混ざり合った三つの世界観の上に、オリジナル要素も追加され、闇鍋のように混沌。
・構成
最初に脇役の設定や全体の流れを決めて、書きながら細かい部分を詰めました。
なので、予定半分、アドリブ半分と思います。
・ありがとう
こちらこそ、長い話に最後まで付き合ってくれてありがとうございます。
・双子
推理小説などではよく、双子と覆面が出たら入れ替わりを疑え、と言いますよね。
今回もある意味セオリー通りかと。
>>24-25の間に以下の文が抜けておりました、失礼しました
現在の錬金術協会とは、要するに、富豪たちのオカルト遊びでしかない。
こういった遊びは珍しいものではなく、欧州のサロンではたびたびこうした話題で盛り上がることがあったし、
社交界という魔界では、オカルティストなど一吹きにしてしまうような怪人たちが跋扈していた。
だが、現在ではそれが些か度を過ぎている。
ジュリアン・ソロは、ポセイドンは、それが可笑しく、かつ、憐れで堪らなかった。
人は、あがく。だからこそ人間なのだ。
今こうして、人でも神でもない何かになったからこそ、俯瞰した視点でものが見える。
故に、哀しいのだ。
「ホーエンハイムの推薦状、というのは確かなのか?」
ジュリアン・ソロの問いに、いまや名実ともに彼の懐刀となったソレントは応える。
「確かです。
推薦書の筆致、指紋等がホーエンハイム自身のものと一致しました」
ホーエンハイムの息子を名乗る少年が、ホーエンハイム自筆の推薦書と共に、
錬金術協会にコンタクトを取ってきたのは、一月ほど前になる。
ホーエンハイム、パラケルススという名で通る男を知らぬ錬金術協会員はいない。
歴史上唯一の、本物の錬金術師。
完全なる錬金術によって不老不死を成し遂げ、今もなお世界を放浪し続けるというその男は、
一時期、この錬金術師協会に身を寄せていた。
自身を多く語ろうとしなかったが、それでも滞在の代価に明らかにした秘術は、
この世界のものではなかった。
異なる世界のものであったのだ。
>>ハイデッカさん
回を追うごとに増していくジャンヌのカリスマがすげぇ。
死亡フラグっつーか暗雲もまた増えちゃったのがアレですが。
次回のVSリシャールはそれをも吹き飛ばすようなジャンヌの活躍に期待。
>>慶次おっさん説
だがそれがいい。……やっぱよくないな
>>銀杏丸さん
文章がそのまま世界観を表すというか、漂う空気が渋くて好きです。
伯爵とか錬金術とかそんな言葉が立ち並ぶたびにもう。
>>41さん
進一が凄過ぎる故にフリーザの空回りっぷりが光るというそのギャップに萌え。
確かに知性足りねぇー。
>>見てた人さん
ここまで皮肉混じりのコードネームを付ける潔さに逆に惚れました。
ともあれカイジを眠らせた相手の謎も解けて、ここから先は裏話的な展開が続くのでしょうか。
52 :
作者の都合により名無しです:2006/06/02(金) 17:52:11 ID:niKMtIq00
カマイタチさんお疲れ様です。
最後の最後で組織的な暴力の色合いが出てきましたね。
もう少しだけ楽しめるのかな?
最後まで展開読めないなあ、カマイタチ。
ここで会長の私設部隊登場か。皆殺しエンドか?
どんなエンディングでも覚悟は出来ています、はいw
数本分の世界観が折り重なっててすげえ。
54 :
作者の都合により名無しです:2006/06/02(金) 22:54:26 ID:Actmotz60
>パパカノ
物語のキーキャラが4人になったかw
工藤探偵VSフリーザの知能戦?とフリーザ対勇次郎の肉弾戦確定か。
>カマイタチ
今まで密やかな殺人ゲームだったのが舞台による意虐殺に移行しているな。
もっとこの世界を楽しみたいというのはわがままか。
カマイタチ、既にエンディングが描かれている為、
先の展開は分かっている筈なのに信じられない位面白い。
個人的には次回作は殺人黙示録カマイタチIFで
バッドエンド回避ルートが見たいです。あくまで個人的にですが。
56 :
作者の都合により名無しです:2006/06/03(土) 07:57:09 ID:VPBMqYDl0
パオさん、うみにんさんやvsさんは随分とご無沙汰だねえ。
サナダムシさんも1ヶ月以上現れないか。
かつての名職人の方々の復帰を切に希望する。
カマイタチ終わったら一気にヤバくなるなぁ。
読む物が減ってきた。
だから次回作も期待してますよ。
>>56 うみにんさんはもうすぐご自分のサイト
10万ヒットなのに全然姿を見せないな
「気をつけろ、奴等はかなりの戦いを経験しているぞ・・・。」
毒の痛みを堪えながらも三頭の野獣への警告を施すドイル。
シコルスキーが2つの毒を一気に掻き消す為、精神を集中させる。
「うおおぉぉ!元気の水!」
体の痺れ、染み込んだ毒液が抜けて行くのをハッキリと実感するドイル。
だが毒の治った喜びよりも仲間の戦況とシコルスキーの頭を心配する。
この歳になって「元気の水」と大声で叫ぶのは恥かしすぎる、感謝はしているが
毒の治った自分を見ながら爽やかな笑顔を浮かべているので余計に気持ち悪い。
水竜の力にも意外な弱点があった様だ、シコルスキーは気にしてはいないが。
「す、すまないな。俺も急いで戦わなければ・・・。」
立ち上がろうとするが、毒でかなりの体力を奪われてしまった様だ。
脚を伸ばそうとした直後に膝が崩れてしまった。
「一旦退いて回復するぞ、後は頼む!」
シコルスキーがドイルを担いでその場を離れる、黄色い野獣がそれを
追おうとするが、柳が行く手を阻むと大きく後ろへ下がった。
「ほっ、これはドイルさんの言う通り・・・まずい相手の様だ。」
攻勢に出るだけでは無く、相手の戦力を見る能力まで持ち合わせている。
身体もこの世界のモンスターではランポス種は小柄な方なのだが、
3頭全てが10m以上はある、鋭く伸びた爪にはドイルの物と思われる
血液が付着していた。鳴き声での威嚇を始める、怯まない事は理解しているであろう。
これは挑発だ、優れた長は自分への絶対的な自信から隙を見せ、
攻めて来いと相手を誘い込むのだ。魔物の世界に過信などは無い、
漠然と広がる世界、数多の野獣の中で生き延び続けることが自信を生むのだから。
「柳!そいつだけに捕らわれるな、こいつ等、複雑な戦法を仕掛けてくるぞ!」
ユダが警告を施す、腕には鋭い爪を防いだ痕が血となって残っている。
先程までドスランポスを相手にしていたのだが、ドリアンが引き止めていた
ドスイーオスが驚異的な跳躍力でドリアンを飛び越えユダへと奇襲を仕掛けたのだ。
爪や牙にドイルの血は見当たらなかったので腕で防御したのだ、やはり毒は無い。
「赤い奴は口から毒を、黄色い奴が爪と牙に毒がある、気をつけろ!」
入り口の方へと身を退いたドイルの声が洞窟内に木霊する。
大声をだせるくらいには回復した様だ、青い奴の情報が無い。
何かの能力を持っていれば見抜いていた筈、多分青は力押しなのだろう。
「伝衝裂波!」
南斗紅鶴拳の真髄は拳のスピード、速さだけならば六聖の中でも間違いなくトップである。
だが相手に距離を取られてはそれも発揮できない、しかも見かけとは裏腹に相手は策士。
自分から無闇に近づく訳にはいかない、ならば遠距離から牽制し誘い出す。
地を這う衝撃波をドスイーオスへと無数に放つ、それをかわしながら
こちらに近づいてくる赤い野獣、毒々しい程に赤い身体をこちらに向けて
細く、しなやかに伸びた脚で駆け抜ける、琥珀色の目が鋭く、美しく輝く。
「ふおおお!」
気を全身に張り巡らせる事で四肢を刃と化す、わざわざ重い武器を持つ事無く
強敵と戦う手段を得る、これこそが武の極意、武器が卑怯な訳ではない。
拳こそが最強の武器であるという誇りの元に磨きぬかれた技で赤い野獣を迎撃する。
南斗聖拳の大半の拳法で主要となる突き、ユダの南斗聖拳のスピードは
常人に見切る事は不可能、刀という重い武器であっても達人が振れば目に見えない様に、
鍛え抜かれた四肢のスピードは同レベルに鍛えられた者で無ければ見えない。
拳法は素手で戦う為、リーチは短いが両手が空いているので、
かわされた時の隙が少なく重い武器を持つ者と素手の者では
踏み込みの速さに差が生ずる。故にお互いに一撃必殺の技を習得して
いれば大きな差は開かない。達人同士の戦いでは、隠された状態からの
不意の一撃でしか、武器は意味を成さないのだ。
だが、身体の構造自体が異なる者に対してはどうであろうか。
「か、硬い!?」
鉄をも切り裂く真空を纏った拳が、クリーンヒットした。
だが、斬れない、そして怯みもせずにこちらに噛み付いてくる。
一応ダメージを負っている様だが外傷は皮膚がほんの少し剥がれた程度。
バックステップで距離を離し、必殺の一撃を放つ機会を狙う。
突如、赤い野獣の喉が不規則に動く、これは呼吸では無い。
「ぬうっ!」
咄嗟に身を翻しマントを盾にする事で、吐き出された毒液を防ぐ。
雨に濡れていた赤いマントに、紫色の毒液が染み込んで行く。
「こいつを止めろ、ドリアン!スペックは青い奴を、柳は黄色を!」
一定の距離を保つと後方からの指揮に移るユダ。
シコル達の回復まで粘りたかったが相手の統率力が侮れない。
自ら指示を下し2人が来たら総攻撃を仕掛ける作戦へと移行する。
全体の動きを把握し、攻撃力、耐久力の見直しを行う。
それに加えて何としても野獣達のチームプレイを防がねば。
ユダの目論見では攻撃力、防御力が高いのは赤い奴の筈。
攻撃力の点では毒を吐き出す事もあってかなり高い水準にある。
防御は外部破壊の南斗聖拳が利かないのでドリアンへと希望を託す。
最も厄介なのは黄色、痺れる毒を使われると身動きが取れなくなる。
この2匹に割って入り、チームプレイをより磐石の物とするのが青。
攻撃、防御は他の2匹に劣るがそこに生じる油断を的確に突いてくる。
ここは青を攻撃で押し切り戦力の削減に務めるべきであろう。
「スペックは遠慮せずに攻撃へ移れ!柳、ドリアンは毒を受けずにジャンプを阻止しろ!」
ジャンプによる奇襲を防げば2対1の状況を防ぐ事が出来る。
強力な赤を攻、防のバランスが取れたドリアンに止めさせ、黄色は麻痺の恐れを考慮して
テクニック重視の柳を、青は即急に倒す為にパワー型のスペックをぶつける。
スペックが鋭い爪の攻撃を喰らいながらも力で押し切っている。
やはり赤が最強の様だ、ドリアンが劣勢ながらも脚への攻撃を中心に体勢を崩しながら戦う。
黄色は微妙なカードだ、一撃喰らって麻痺毒になれば柳に勝機は無い。
ドイルの体力と毒、両方の回復にはまだ時間が必要らしい。
青い獣を壁に叩き付けるスペック、野生を凌駕する力が無数の拳を通して放たれる。
屈強な筋肉を内側に持つ頑丈な皮膚がべコベコと空き缶が潰れる様な音をたてる。
琥珀色の瞳がギラギラと凶暴な輝きを見せるが、スペックの渾身の一撃の前に崩れ去った。
残るは2匹、指示を出すのを止め援護に移るユダだったが、
仲間を倒された怒りか、危機に追い込まれたのを悟ったのか、
2匹の猛獣の琥珀色の瞳が静かに光る。
ドスランポスの討伐に成功した今、次に削るのは赤か黄色か。
スペックは攻撃を気にしないタイプだ、麻痺毒を直に喰らう可能性がある。
「スペックは赤い奴を頼む!」
ユダの言葉を聞くと同時に駆け出すスペック、赤い野獣の牙を顎を殴り防ぎ込む。
急に走り出す黄色の皮に身を包んだ猛獣を、柳が飛び蹴りで動きを止めようと試みる。
野獣は飛び上がった柳に対抗する為、柳目掛けて飛び掛った、脚の角度を変え
ドスゲネポスへと当る様に仕掛けるが、野獣の前足が柳の脚へと喰い込んだ。
鋭い爪に肉を裂かれ、激しい痛みに襲われると同時に、身体が痺れていく。
「しくじった・・・ッッ!」
痛覚以外の感覚が麻痺し、地面へとひれ伏す形で這い蹲る。
仕留めた獲物に止めを刺す為、爪を突き立てようと近づく野獣。
伝衝裂波はこの角度では地面にいる柳も切り裂いてしまう。
「万事休す・・・か。」
勝利を確信した黄色い野獣が柳の喉元へと爪を掛け、息の根を止めに掛かる。
だが、喉を突き破る前に大きな衝撃が黄色い野獣を襲った。
「俺を襲ったお前等の失敗は只一つ、俺の配線を切らなかった事だ。」
至近距離で腕に仕込まれたスプリングパンチが、野獣の顎に直撃する。
ドイルの復活に気を取られた隙を、赤い野獣は逃さなかった。
スペックへ向かって毒液を吐き出す、それに気付くと既にスペックの顔面へ
かわせない位に毒液が迫っていた。目を瞑り毒液を浴びるスペック。
だが、痛みは感じない、恐る恐る目を開けると毒液と思わしき液体が目に入る。
しかし全く影響は無い、体内で温められた液体が掛かった感じのみが残る。
「時間凍結、毒が身体を蝕む時間を凍結させた。」
神々しいオーラが、グラスに揺れる水の様にシコルスキーを取り巻いている。
その輝きを恐れたのか赤い野獣が大きく後ろに飛び退き、鳴き声を上げて喚いている。
「悪イナ、マサカオ前ニ助ケラレルトハ思ワナカッタゼ。」
「精々感謝しときな、でも後で解毒しないと意味無いから無茶するなよ。」
余裕に満ちたシコルスキーの言葉が、今は頼もしく感じる。
だが態度がムカついたので優しくローキックで足をへし折っておいた。
んん〜ロマサガ以外の講座をやってもユダチームから
移動しないので結局ネタに詰まりますねぇ、邪神です。
そんな訳で今回の講座は時間凍結のみでございます。
〜シコルスキーの術講座〜
時間凍結 ロシアの生み出した天才、シコルスキーが今回見せた水術。
時間によって変化の出る常態異常を凍結させる地味な技。ミンソンでは
使う機会は全くなかった、だがこれを買うのは金の無駄では無い。
それを話しては只の攻略になってしまうので我慢して言わないでおこう。
〜感謝の場(サマサ氏&番号の方は前スレ)〜
サマサ氏 へタレとは愛されるべき存在なのでしょう。SFCの
ドラゴンボールでヤムチャの戦闘力がチャオズと同レベルだったのが泣けました。
クイックタイム以外ならリヴァイヴァとギャラクシィあれば何も(ry
ふら〜り氏 スペックVSユダ、どっちも技が少ないんだよなぁ・・・。
しかし愛と勇気で何とかするのが男、なんとかなるかなぁ・・・。
519氏 煉獄、上るのは簡単ですがボスに当ると少し厄介。
ロマサガの凶悪なボス、ボスと思えないボス等に+αな予定。
まぁずーっと先のお話ですがね・・・。
526氏 <<お互い力をあわせればデスや猿にも勝てそうだ。シコルがいなければ・・
ちょwwwシコルスキー戦力外通知ですかwww?そんな事(ry
乙です邪神さん。
無駄にチームワークいいな、ユダと愉快な仲間たちはw
しかし最強の赤を担当するところを見ると、このSS中で
死刑囚最強はスペック確定か。シコルも意外と健闘してるな。
1レス中、一回くらいは改行して頂けないでしょうか?
空白が少なないとちょっと目がチカチカします。
邪神さん乙
何気に結構目立っているシコルスキーが可愛い
なんかもうバキスレで、シコルの役回りは確定しているな。
この作品でもサナダさんの作品でもマスコットキャラだw
しかし時間凍結ってDIO様並だーと思ったら単なる回復魔法かw
第十二話「ここで退いては男が廃る」
鬼ごっこのルールとは?
簡単に説明すると、『鬼にタッチされたら負け』。
こんなことは子供だって知っている。服だろうと皮膚だろうと、身体が触れたらゲームオーバー。
そんな至極単純な子供の遊びに、己の先の人生をかける男達がいた。
「――えー、こちら山崎退(さがる)。提示報告します。現在時刻午後一時零分、脱落者は早くも三十一人。残り六十九人でーす」
やる気なさそうに通信する山崎。
真選組監察(密偵)の彼は、この鬼ごっこの唯一といってもいいルール、場外のジャッジを判定すべく、フィールドの際で一人ポツンとしていた。
『ご苦労山崎。開始僅か一時間でもう三十一人か……やるじゃねぇかあいつら。トシと総悟は今どこにいる?』
通信相手は局長、近藤勲。
真選組のドンである彼は、姿を見せずに山崎から送られる情報の整理に勤めていた。
たかが鬼ごっこ、偉大なる真選組局長が顔を出す必要もあるまい。出番があるにしても、主役は遅れて登場するものだ。
「副長は……あー、何故か万事屋の旦那の相手をしてますね。沖田隊長は……あー、これまた何故か万事屋の他二名を相手してますね」
土方と沖田。都合のいいことに、二人とも山崎がいる位置から双眼鏡で確認できる範囲にいた。
『はぁ!? なに、あいつらも参加してんのォォ!? なんで、どうしてェェ!!?』
「知りませんよ、それより局長もそろそろ動いてくださいよ。局長の座、誰かに奪われてもしりませんよ?」
この鬼ごっこでは、鬼側が参加者全員を捕まえれば真選組のリストラは回避される。
だがそれと同時に、「より多くの参加者を捕まえた人間が新局長になる」というルールも揃えられている。
そうなれば今の局長は局長ではなくなり、ただのゴリラへと成り下がってしまうわけだが、
『ふっふっふ、その辺は心配いらないさ』
近藤は、なに一つ先の心配などしていなかった。
近藤勲。現真選組局長は、なんだかんだで部下からの信頼の熱い男である。
人望、実力、熱意、男が惚れる男とでも言おうか。現真選組において、近藤の局長就任に不満のある人間など、誰一人としていなかった。
万が一他の隊士が新局長就任の権利を得ても、奴らなら必ず辞退するに違いない。「真選組の局長は近藤さんしかいねぇ」とかなんとか言って。
だからこそ安心できる。今はこうして、出番を窺いながら高みの見物ができるのも頼もしい仲間のおかげ――
(ん? ちょっと待てよ)
一瞬、近藤の脳裏に嫌な顔が過ぎった。
真選組隊士数十名、皆近藤を信頼してくれていることは間違いない。間違いないが、そいつら全員が近藤を局長に押すかといったら、そうでもない。
そう、若干一名。本気で局長の座を狙っていてもおかしくない輩がいる。
甘いマスクで数多の暴挙をやってのけ、虎視眈々と副長の命(タマ)を狙っている真選組の核弾頭――
『……あのぅ、山崎君? ちなみにさっ、総悟の奴は今何人捕まえたか分かる?』
「沖田隊長ですか? えーと……もうざっと二十人近くは捕まえてるんじゃないですかね?」
『二十人ちかく……』
嫌な予感は的中した。
(狙ってやがるゥゥゥ!! あの子間違いなく局長狙ってやがるゥゥゥ!!?)
沖田なら、洒落じゃなくマジで局長を狙っていてもおかしくない。
なにせ、隙あらば副長である土方にバズーカを向ける男だ。
もし沖田が真選組のトップに躍り出るようなことがあれば……その持ち前のサドっ気で、他の隊士がどんなしごきを受けるか分からない。
噂になってる沖田総悟はというと、早くも二十一人目の獲物を目の前にしていた。
チャイナ服に付けられたそのバッジのナンバーは『92』。
「鬼ごっこのルールを知ってるかィ? 鬼に身体をタッチされたらそいつはもう負け。敗北者なのさ」
沖田は不適に笑う。『鬼』という絶対的な強者の特権を生かして。
「鬼に魅入られた奴は、ただ逃げるだけしか手はねぇのさ。惨めに地べたを這い蹲りながらな」
チャイナに向かって、にじり寄る。因縁の相手に向かって、敵意を向ける。
「さ、最悪だ……いきなり沖田さんに出くわすなんて」
「…………」
鬼に魅入られたチャイナ、神楽(ついでに&新八)は無言だった。
「さあ、おまえはどんな悲鳴を聞かせてくれるんでィ? チャイナ娘」
笑顔を向けながら歩み寄る沖田の表情は、仮にも正義を掲げる警察とは思えぬほどの外道っぷりだった。
目の前には、逃げることを義務付けられた力なき獲物。しかもいけ好かないチャイナの娘。
それを追い回すことが出来るのだ。神楽がひーこら言いながら逃げる背中を思い浮かべるだけで、身の毛が弥立つ。
そんなサディストにしか分かりえない快感を感じながら、沖田は狙いを神楽に絞り込んだ。どうやら新八は眼中にないようである。
「うわっ、あのヒト眼がやばい……逃げよう神楽ちゃん!」
新八は神楽の腕を掴み逃げ出そうとするが、
「新八、ワタシ、逃げないアルヨ」
「はぁ!?」
いくら引っ張っても、神楽はそこから微動だにしなかった。
その視線をゆっくりと近づいてくる鬼に向けて、真っ直ぐ待ち構えていた。
宇宙随一の戦闘民族である神楽に力で逆らうことなどできるはずもなく、新八は仕方なくその腕を離す。が、説得は続ける。
「神楽ちゃん、ホントにルール分かってんのォォ!? 鬼に触れたらもうそこで負けなんだよ!?」
「心配ないネ新八。ワタシのマッハパンチなら一撃でKOアルヨ」
「だぁぁからKOしたら負けなんだってばァァ!! ノックアウトイコールユールーズなんだよォォォ!!!」
新八がいくら言っても、神楽は構えたファイティングポーズを解かない。完全に鬼ごっことボクシングを履き違えている。
沖田総悟と神楽。この二人もまた、銀時&土方のように相容れぬ存在なのである。
対立は必然。顔を合わせれば敵意が湧き、勝負事ならば勝利をもぎ取る。
この場合神楽の勝利は逃走によって齎されるのだが、宿敵を目の前にして逃げ出すなど、彼女のプライドが許さないのだろう。
逃げることなど考えてはいけない。常に戦うことだけを考えろ。
ルールなど関係ない、なんとも男らしい闘争者の概念だった。
「へっ、あろうことか鬼に自ら向かってくるとは。おもしれェ……俺のデンプシーロールで返り討ちにしてやるぜィ」
「ハッ、そんなノロイ技じゃワタシのマッハパンチには敵わないネ。なにしろあれは音速をも超える……」
「ちょっとォォ!! なに普通にボクシングの必殺ブロー談義やっちゃってんのォォォ!!? 分かってる? これ鬼ごっこだよ鬼ごっこォォ!!?」
新八は言うが、神楽と沖田は共に拳を突き出し既に臨戦態勢を取っていた。
それどころか新八に視線を投げている。どうやら「早くゴングを鳴らせ」と言いたいらしい。
「……えーっと」
もちろんこの場にゴングなどあるはずがない。が、この視線を無視することもできない。
「……か〜ん」
仕方なく、口走ってしまった。自分でも思う。間抜けだ。
しかし、ゴングはゴング。新八が恥ずかしさで顔を俯かせたその一瞬。
両者の拳は、交差した。
第十二話=第二部第四話。
どうも、一真です。
第二部、早くも折り返し地点に差し掛かってまいりました。
計画通りに進めば今回も八話完結予定です。
ふと振り返ってみると、十話越えてたんですよね、これ。
そろそろこの作品も長編らしくなってきたかね?
ギャグなんでそんなに大長編にしても仕方ない気もしますが、いけるところまではいきたいなぁ。
一真さん乙
銀時と土方、神楽と沖田は決してお互いを避けられない間柄なのか
なんだかんだで仲はいいみたいなんだけど。でも沖田負け越してるんだよな神楽に。
もう長編カテゴリに入ったのかな?いける所までがんばって下さい
【食】 しょく
掌をUの字にすぼめ、両方の親指の先端同士をくっつけて、親指以外も同じようにすると、輪
ができる。
成人男性がそれをやったぐらいの大きさ──とでもすべきか。
ちょうど今、根来の眼前に置かれし楕円形の容器の大きさは。
中にはいくつかの仕切りと、様々な食材が入っている。
まず目につくのは、ぶつ切りにされたタケノコ。
酒を嗜む者ならば、ひょいと爪楊枝を刺して肴にしたくなる手ごろな大きさだ。
砂糖やしょう油などがしっとりと染み渡り、落ち着きあるクリーム色を誇るそれらは、口に運
べば程よい歯ごたえと、喉に絡みつくような独特の辛酸を醸し出すだろう。
タケノコがあるのは、根来より見て、輪の左端から最初の仕切りまでだ。
その横からまん中やや右までを占めているのは、プチトマトとレタスである。
通常、野菜を弁当箱にいれると、その他の食材の持つ熱にやられてしなびる物だが、いかな
工夫を施されたのか、レタスは取れたてといっても通ずるほどの青々とした新鮮さを振りま
いて、そこにいる。
2個あるプチトマトにおいては、ヘタがすべて取られている。
地味な配慮であるが、『食』などという人生における恒常的かつ不可避の行為において、こ
れは大きい。
ヘタがあればその始末に気を取られ、取られた分、『食』を楽しめなくなるのだ。
それら野菜の隣から輪の右端まで鎮座するは玉子焼きだ。
ベースは鮮やかな黄色。
されどけして単調で無機質な印象ではなく、うっすらとしたキツネ色の焦げ目が、鮮やかなア
クセントを添えていかにも手作りという暖かさを帯びている。
以上の品々が入っている輪が何か、すでにお分かりだろう。
そう、弁当箱なのである。正確には上段のもので、下段においてはご飯が詰められている。
更に、弁当箱の横には干し柿がある。
これは流石に既製品だが、デザートのつもりなのだろう。
用意したのは、楯山千歳その人だ。
テーブル越しに根来と相対する彼女は、いつものような沈静なる面持ちだ。
弁当については昨日根来に突っぱねられたというのに、なぜ再び作ってきたのか。
そして昨日、フタすら明けなかった根来がこうして中身を眺めているのは……?
「昨日、大戦士長より貴殿の弁当を食べるよう、命が下った」
根来は無表情のまま呟いた。
呆れも諦めも怒りも歓喜もない、淡々としたいつもの顔だ。
長ったらしい前髪が顔半分を覆っているから、表情が読み辛いコトこの上ない。
スーツの上からマフラーというのもいつもの格好だが、食事時ぐらい外すべきではないだろうか。
話は、昨日に巻き戻る。
ちょうど千歳が警察署から舞い戻った後のコトだ。
彼女は照星への報告がてら、弁当の件を依頼した。
千歳が見つけた攻略法(べんとうのたべさせかた)。
それは。
大戦士長の権勢を借りるコト!
千歳の見るところ、根来という男はとかく偏屈で無愛想だが、戦団の命にはかなり従うタイプ
のようなのだ。
考えても見て欲しい。
今回の潜入捜査においても、暗殺に適した能力を持って、更に対象をほとんど四六時中つけ
回していながら、一切危害を加える素振りがない。
命じられた潜入捜査から派生する、尾行という行動をただ丹念に務めあげている。
戦団の命に忠実な可能性は十分だろう。
ならばと千歳、今回のような行動に至ったのだが、はたしてコレが吉と出るか凶と出るか。
「一つ、断っておく」
平素、寡黙な根来であるが、話し声は明瞭だ。
声は小さい方だから、発音や滑舌がいいのだろう。
もしくは、忍者独自の発声法でも心得ているのかも知れない。
「尾行中の私は亜空間において、貴殿が想像するよりは食べている」
千歳は首をひねった。
というのも、根来は「根来自身、もしくは彼のDNAを含んだ物以外は侵入不可の亜空間」で
尾行をしているからだ。
すると必然的に、彼は亜空間の中で食事ができないというコトになる。
持ち込みはできる。
彼が愛用しているマフラーのような髪を縫った布で、食べ物を包めばいい。
しかし、ひとたび包みを解けばどうなるか。
「当然、弾き出される。握り飯ならば中空を舞い飛び、爆裂四散する」
返答から見ると、彼自身、実際に食料を粗末にしてしまったのだろう。
その際、付近にいたものは度肝を抜かれただろう。
突如、地面からおにぎりが飛び出てきて大爆発。とても嫌だ。
千歳も光景を想像したが、にこりともしない。
「あなたはあなたの細胞を食べている訳でもないでしょう?」
「まさか。私は戦部のように悪食ではない」
戦部、というのは根来や千歳と同じ部隊にいた、長髪巨躯の戦士だ。
彼は、ホムンクルスを食べるという奇癖を以て知られている。
「それはともかく、あなたは一体何を食べているの?」
根来は細い目をますます細めて、遠くを見るような眼差しをした。
「この時期、バッタをよく見かける……」
要は、そういうコトなのだろう。
「……あなたも悪食じゃ」
といわないのが千歳だ。
亜空間から手を出し、バッタを握りしめるやいなや口に放り込む根来を想像するのに忙しい。
(口に放り込めば、バッタは彼の唾液と交じり合うから、亜空間から追放されない筈)
などと推測し、更に、
「確かに、栄養価は高いわね。今でも東北地方ではイナゴを食べるところもあるわ」
冷静に解説すらする。
しかし、そこは突っ込むべきところではないだろうか。
ああ。常識人というのはあまりに徹しすぎると、ついにはボケ殺しになるらしい。
余談だが、忍者は食糧不足の際に困らぬよう、普段からバッタやタンポポなどを食べてそれ
らに体を慣らしていたらしい。
だから奇異に見える根来の食糧補給も、ある種の原則を踏まえた真っ当な行動なのだ。
もし、このSSをお読みのあなたが、町で雑草やゾナハ虫を食べている根来を見かけても、石
など投げずそっとしておいてあげて欲しい。
彼はただ、一生懸命生きているだけなのだ。
根来は千歳を見て、かすかに嘆息した。
「が、粗衣粗食の域は出ていない。そういいたげだな」
「ええ」
千歳が頷くと、後ろの跳ね髪がピョロリと揺れた。
薬師寺某のような現象が巻き起こるほど、頷きに力が篭っていたのだろう。
とかく、千歳は粗衣粗食について頑固だ。
通常の20代の男女が同じ会話をしたのなら、バッタを喰うコトに大笑い(……するか? 引く
かも)して、弁当を素直に受け取り喜ぶだろう。
が、千歳と根来にそういう空気は一切ない。
仲が険悪な訳ではないのだが、双方とも感情を表に出さず、筋道だった思考のみで会話を
するから、弁当一つでココまで話がこじれ(?)てしまう。
そして千歳はまた、筋道だった思考を口にのぼらせる。
「この前のケガだって、まだ完治はしてないでしょう。だから毒よ」
この前、というのは根来を含む再殺部隊がヴィクターIIIなる標的を追跡した時のコト。
根来は行きがかり上、中村剛太という少年と刃を交え、結果破れた。
その時、戦闘不能になるほどのケガを負ったのだから、食事ぐらいはまっとうに取るべき。
という思考だ。
思考というがこれとて実際、千歳の艶やかな唇から柔らかい声で排出されるのなら、感情以
上に感情を誘うモノだろう。
男子ならば美しさに心打たれて、心とろとろ、「ああ聞いてみよう」と有無もなくなる。
が、根来は表情一つ変えない。
「勝敗は兵家の常だ」
よって、破れ手傷を負った状態で戦うのも、また常ならん。
長い観点から見れば治療も必要ではあるが、いまは任務が目の前にある。
「ならば、手近なものから一つ一つ潰す方がやり易い」
ケガを思い、滋養のあるものをゆるりと食べるのは任務遂行後でも良い。
根来はそういいたいらしい。
千歳もほぼ同意である。
しかし彼女から近い遠いをいうとすれば、根来のケガが一番手近で、真っ先に解決すべき問
題でもある。
もっともこれは、千歳の観念に基づくもので、根来が聞けば「違う」というだろう。
千歳は7年前の惨劇のせいで、『人命』に重きを置いて任務にあたる。
対して根来は、『遂行そのもの』に主軸をおき、任務をこなす男だ。
だから『人命』などには容赦がない。
『遂行』のために最短最速最低限の手段を用い、他の戦士を平気で犠牲にする。
そして根来が成したいモノの前では、彼自身の命もあまり意味をなさぬものだろう。
ケガの治療経過程度なら尚のコト。
千歳はまぁ、その辺りはよく分かっている。
以上のような職業観の違いが、そのまま自分と根来の違いであり、ひいては土壇場における
躊躇の有無につながるとすら。
彼女は自身の、とっさの判断力を信じていない。人命第一の姿勢が束縛になると思っている。
だからこそ、わざわざ照星経由で自身を犠牲にするよう伝えもした。
いざという時、足手まといになるのは好まない。
と同時に、「弁当を食え」という一種の馬鹿げた命令を出してもらったのも、根来の性格上、
照星の命令ならば聞くと思ったからである。
で、更に千歳にはもう一つ思うところがある。
こっちは今の彼女らしい、冷静な意見だ。
彼女は闘争本能から、「ヘルメスドライブ」なる広範囲を見渡せるレーダーを発現できる。
闘争本能といえば野性味あふるるギラギラだ。
(さりげないのはギンギラギンだ)
闘争本能からレーダーを形作れる千歳の意思、物事に対しては芯から広角的とうかがえる。
広角的、というのは物事を広い視野で捉えられるというコトだ。
だからいまの根来に対しても、すごく根本的でいかな状況にも当てはまる論理を抱いた。
で、千歳は物をいう時は率直だ。
「あなた風にいうなら、『兵家とて飯を喰わねば立ちゆかん』だと思うけど、違う?」
根来は少し黙った。
もし彼を、オリンピック陸上競技の判定に用いるような超高性能カメラで映してじっくりと
判定すれば、まばたきの数が普段よりちょっと多めになったのが分かったかもしれない。
ただし根来はこの後笑ったので、検証グループがいたとすれば
《まばたきが多かったのは笑いの前兆として顔の筋肉が動いたせいではないか》
とする結論を出しただろう。
さて、この場で大事なのは根来が笑ったというコトだ。しかも
「一理あるな。もっとも、戦部がいいそうなコトだが」
などと人間らしい相槌を打ちつつ。
相変わらず、口の端を歪めるだけの猛禽的怖い笑顔だ。
見慣れてしまえば、苦味ばしりつつも青年らしさを内包した味のある表情ともいえるが。
さて、彼が笑った理由だが、恐らく、戦部という筋骨隆々の野卑な大男と、千歳のような華奢
な肢体の美人が、同じように『食』へ拘っているところではないだろうか?
『兵家〜』などと小難しい言葉を千歳は吐いたが、要は、「腹が減っては戦はできん」だ。
そんな言葉を、戦部も昔いっていた。
自分を高めるための意味でだから、千歳とはちょっと違うが。
戦部といえば、この場にいれば、趣味の戦史研究を活かして弁舌を振るうだろう。
古代中国における項羽と劉邦の争いを引き合いに出し、蕭何(しょうか)という劉邦の部下の
補給技術やら項羽の敗因などなどをつまびらかに解説し、最後に、
『兵家とて飯を喰わねば立ちゆかん』
全裸筋肉戦部ゲンジ
と締めくくるに違いない。
根来はちらりと千歳に一瞥をくれた。
「まぁいい。どの道、大戦士長からも命令が下っている。背景はおおよそ察しがつくが──…」
さっさと手を合わせて、
「もとより私は関知しない。頂いておく」
弁当を食べ始めた。
ようやく折れたようだが、千歳には、さしたる感慨も見受けられない。
実は内心ちょっぴり安心しているが、表情にのぼらすまでには至らないのだ。
照星に命令を下させて、ああいえば弁当を食うというのは想定の範囲内だ。
うほほ、そんなにどうたらこうたらとか喜んだりは別にしない。
ドライなようだが、要は根来に栄養を補給できればいいのだ。
弁当への感想などなくても満足なのだ。
聞けばたぶん根来のコト、つらつらと味を評論するだろうが、千歳自身すでにどういう味かは
しっかり把握しているし、ベストも尽くしたと自負しているので、聞こうとは思わない。
尾行を生業とする根来に配慮して、なるべく体臭の元とならない食材を選んだし、タケノコも
後で喉で乾かないよう塩分と糖分の加減も考えたつもりだし、玉子焼きだって、食中毒を警
戒してちゃんと新しい卵を使った。
干し柿はまぁ、感性の問題だ。
まさか根来にプリンをくれてやる訳にもいかないし、かといって生の果物は傷みそうだから避
けた。
で、買い物していて干し柿を見つけたとき、直感的に根来に合うと思った。
千歳は知らないが、忍者の主食の一つは柿だったりするから(ついでに豆腐もそうだ)、彼女
の直感はかなり正確である。
以上のように、千歳は考え抜いて弁当を作った。
ザボエラが超魔ゾンビを作るぐらい考え抜いた。
ゆえに失敗はない。星皇十字剣が来なければ大丈夫だ。
砂糖と塩を間違えていたりすれば、それはそれでなかなか良い失敗なのだが、あいにくそういう
のもない。玉子焼きにタマゴの殻が混じってたりもしない。
しかし恐ろしいコトに、世の女性は時々そういう失敗をやらかす。
……やらかすのだよ。そして自分が把握できてないモンを人に出すんだよ。なんで出せるんだちくしょう。
根来の食事が終わると、千歳は弁当箱を慣れた様子で片付けて、こういった。
「要件があるので一旦、ここを離れるわ。たぶん、昼休みが終わるまでには戻ってくるけど」
「ああ」
根来は無愛想に頷いた。
どこへ行くかなどとは別に聞かない。
根来ぐらいの年齢なら、美人さんが弁当作ってきたら「ははぁ俺に気があるな。そういや目線
が妙だった。この前荷物持ったのがきっかけか」などと勘ぐって、接触にも多少の馴れ馴れしさ
が出てきそうなものだが……
しかし由来、男性の勘ぐりなどは当たる試しがない。
まったく。
当たらんものを必死こいて当たりの状態に引き上げにゃならんのが、男の辛いところよ。
【戦】 たたかうせなかにゆうばえあつめながらぁ〜
筆者、弁当と亜空間の段においてふと疑問に思った。
それは、根来が亜空間内でうんこしたら、うんこはどうなるかというコトだ。
現空間と同じく、うんこに含有される微生物が、食べかすやら何やらを駆逐するのだろうか。
駆逐しきった時、うんこに住まっていた微生物たちは追放の憂き目を見るのか。
いや、そもそもうんこが出た瞬間に微生物たちだけ追放されるのか。
されるとすれば、例の稲妻が巻き起こり、うんこをパージしたての根来はひどい目に合わないか。
ひどい目をいうなら、シークレットトレイルの特性上、亜空間には紙を持ち込めないから、う
んこしちゃったら拭くものがなく、地獄を見るだろう。
愛する人を救えたら地獄を見てもいいだろうが、たかだか一生理現象において地獄を見る
のは頂けない。
もっとも、紙へ事前にDNAを付けとけば大丈夫だろう。
何をというと(以下汚い話により削除)
関係ないが、風摩にはうんこから剣を作る忍法がある。
その名も忍法「糞剣」だ。フランス語ならばうんこソードとなり、実にエレガント。
これは実在するのだ。山田風太郎の風来忍法帖で読んだから間違いない。
なお、海鳴り忍法帖なる作品は三万人の根来が近代火器で殲滅される作品だと思っていた
が、むしろ戦国期における堺という街の存在に比重が傾いていて物足りぬ。
そして根来好きならば、忍びの卍は必読なのだ。虫篭右陣は良い。筏や百々もイカしてる。
なんとはなしにうんこに手を出す6月初頭。
やはりサナダムシさんには及ばず。
しかしいやはや、武装錬金が今秋よりアニメ化だそうで。
戦部とムーンは若本御大だといいなぁ。
そして、ボツになった「理科室人形状態で笑いながら走り回る戦部」をアニメでやってくれないものか。
ドラマCDの方は、バタフライの声がゴツい!
原作のバタフライというよりは、朝目にあった武装錬金の格ゲーのネタ絵の、バタフライって感じだ!
ああ、コレ分かってくれるのしぇきさんぐらいかも。
お戻りになられた時は、その辺りとスマッシュブラザーズについて伺いたく。お待ちしてます。
part38スレ
>>327さん
怪しげな少女については、次回に少し。いずれ、鬼平犯科帳的な「おおあの時か!」というサプライズ
を用意しとります。しかしいやはや。根来がマジメなので、タイトルの「出歯亀」部分が消化し辛く。
着替えを覗かれる美人さんは、例え万人が望まずとも自分は望む代物! でも、そこに至る経由が難しい。
part38スレ
>>328さん
すみません。冒頭のアレは、シャンゼリオンという特撮ネタでして…… コレはちゆ12歳に詳しいですよ。
その分、次々回ぐらいに色々と! 奴の捕獲による急展開もそれ以降に必ず。
ここに至って主役であるところの根来によーやくスポットが当たったかもですね。
part38スレ
>>337さん
ありがとうございます。FLASHではカットしてしまった場面もたくさんあるので、是非。
千歳の行動も、描いている全ても、たった一つの場面に収束してきますよ。
で、彼女には最大の活躍所とベタな描写も設けてあります。想像すると「いいなぁ」と思えるモノです。
ふら〜りさん
長らくお待たせいたしました。お弁当食べさせるのは、当初案にはあったのですが、諸事情
により間が開いてしまい、ここで登場する運びと相成りました。他の案では、食券の代金と
して200円貰って「私は子供か」と嘆く根来とかもありましたが、こっちは何となくボツに。
81 :
作者の都合により名無しです:2006/06/04(日) 08:16:48 ID:kS+WPE3s0
スターダストさんお疲れ様です。
なんか千歳の弁当に内容見たら腹減ってきたなあ。
栄養バランス最高で旨そうだ。しかも美人の手作り。
根来は栄養摂取出来ればOKですか。作り甲斐のないない男だw
82 :
ふら〜り:2006/06/04(日) 18:56:03 ID:HEhz/FQ70
>>銀杏丸さん
>ポセイドンの構想していた戦略戦術の一切合財は無に帰した。
もしかして。誰も知らない形で(本人含む)、地上世界を救った英雄だったのかカノン?
そう考えるとポセイドン=ジュリアンの、星矢たちも含めて聖闘士への恨みつらみは相当
なものでしょな。星矢もベラボーにキャラ多いから、マイナーと言っても誰が……楽しみ。
>>41さん
フリーザも新一も、それぞれマジメ知性とギャグ思考とが矛盾せず動いてますね。且つ、
(変な表現ですが)互いのすれ違い方も歯車が噛み合ってて、凄く安定してる。ヒロイン
で主人公じゃなかったのか勇子カムバ〜ックと言いたいとこですが、この二人も面白い!
>>見てた人さん
一時はカイジたちの混乱(&いつ出るかと期待してるSの存在)のせいで、オカルト路線
一直線かとも思ったんですが。前回かなりそっち方面でしたし。なのにまた一気に雰囲気
転換、でも存在して当然のものだから唐突感はなし。支離滅裂でなく奇想天外……見事っ。
>>邪神? さん
ユダの戦う軍師ぶりはもう板についてますな。あとピンチに駆けつけたドイルがヒーロー、
仲間の援護&ちょいズレセンスが可愛いシコルはヒロインと、個々のポジションが印象的。
そう考えると彩り鮮やかなものです彼らは。美少女キャラとかとは対極的な面々ですケド。
>>一真さん
>ノックアウトイコールユールーズなんだよォォォ!!!
いやいや、待て。ルール上それは違うぞ。文字通り、その間隙を突いて勝利をもぎ取るか?
とはいってももちろんハンデは巨大。ムダに漢気溢れるチャイナ神楽の健闘に期待ですな。
でも沖田優勝後のドタバタも面白そうだし、でも物語的にはそうはならなさそうだし……
>>スターダストさん(読んでる側も救われてますよ。作品から、いろんなものを貰って)
こ、この二人は全く、毎度毎度色気のないっっ。でもそこが可愛いんだから奇妙なもので。
議論してるように見えて互いの意見がぶつかってるわけでなし、特に千歳は思いっきり気
を遣った手作り弁当という乙女っぷり。これ以上気の合う相棒はきっといないぞ、双方っ。
83 :
作者の都合により名無しです:2006/06/04(日) 20:47:48 ID:hOTXWysa0
スターダストさん相変わらず豆知識すげえw
千歳も弁当作り我意の無い奴とコンビ組ませられたなw
>一真さん
ドタバタ劇に磨きがかかって来ましたね。読んでて楽しいです。
銀魂って漫画はあまり知らないけど一度読んでみようかな。
>スターダストさん
スターダストさんは滅多に来ないけど、たまに来ると読み応えあるなw
効率性オンリーの根来と、細やかな気遣いの千歳はいいコンビだ
【移】 ワープでループなこのおもい
千歳が瞬間移動したのは──…
先日の礼拝堂だ。
そこへ無言のまま歩み寄るのも、昨日の少女。
手には灰色かかった長細い物質の束が握られている。
千歳がそれを躊躇なく受け取り、あまつさえ礼を述べた所をみると、彼女が依頼した品はコ
レのようだ。
「私の知っている場所はココしかないけど、大丈夫?」
千歳が六角形の画面に映し出したのは──…
夏の日差しに焼けつくロータリーと、5階建ての建物。
「病室も映せる?」
少女の冷えた目は変わらぬまま。要件を伝える口調もどこか厭世的だ。
「部屋は限られるけど」
「じゃあ私のいう通りにして」
千歳は少女の望みを聞くと意外そうな顔をしたが、追求はしない。
華奢な肩をそっと抱いて、六角形の画面にペンを走らせた。
やがて二人を構成する色素が一気に薄まり、透明となり、ついには影も形も消え失せて、礼
拝堂には誰もいなくなった。
その正に同刻。
銀成市にある、聖サンジェルマン病院の一室にて。
防人衛ことキャプテンブラボーは目を丸くしていた。
ブラボーという男を説明する。
年の頃は27。
捜せば街中に一人はいそうなシンプルなボサボサ頭で、がっちりした体格の男性だ。
かつては戦士であり、戦士長なる役職にすらついていたが、諸事情によりいまは入院中。
そんな、いかにも胆力ありげな前歴の彼が、目を丸くしたのはなぜか。
病室に突如として、千歳と、見慣れない少女が転移してきたからだ。
もっとも彼は千歳とは長年の付き合いで、武装錬金の特性も熟知しているから、こういう
登場の仕方は慣れている。
意外だったのは、同伴の少女の存在だ。
幾束にも分けたロングヘアーを全て筒に通し、セーラー服を着ているという点で、正体に思
い当たりはした。
が、どうして千歳と共に来たのかという疑問が沸いて、目を丸くさせてしまった。
少女はそんな顔を見るなり、心情を察したようだ。
しかし答えはしなかった。
ただ、一瞥をくれて、鼻を軽く鳴らすと
「管理人ね。断っておくけど、私は寄宿舎には入らないわよ。どこか適当な場所で過ごすから」
キツい口調でそれだけ告げて、病室を足早に出て行った。
ブラボーは怒るわけでもなく、千歳に苦笑して見せた。
短いやり取りだったが、少女の難物具合への理解は充分できたのだ。
「事情は知らんが、大変だったろう」とねぎらいを込めた苦笑に、千歳は相槌を打つ訳でもな
く、冷蔵庫からリンゴを取り出すと手近なナイフでさっさと皮を剥きはじめた。
聖サンジェルマン病院についても説明しよう。
ここは錬金戦団御用達。
ケガをした戦士やホムンクルスの被害者など、一般の病院では治療がし辛い者たちを収容
している。以上。
【檎】 ロードアゲイン
病院のお昼というのは静かなようでいて、どこかささやかな活気を帯びている。
昼食を乗せて走る台車の音。
もしくは、食事済みのトレーが所定の場所に置かれる音。
中待合室へテレビを見に行く足どりもある。
階段付近で時々聞こえる買い物袋のカサカサは、入院患者の付き添いの人が昼食を調達
してきた音だろう。
イスに腰掛けた千歳は、それらの「活気」を聞きながら、リンゴの皮を剥いている。
彼女自身、特技と自負するだけあってかなりの手際だ。
おお、剥かれた皮の規則正しさよ。
以前、ブラボーがその眼力を持って検証してみたが、どこからどう比べても、細さも厚みとも
に全体で誤差±0.1mmの範囲に留まっていたという。
そもそもが、誤差±0.1mmを見分けられるブラボーの眼力からしてすでに超人的……っ!
な感じもするが、それは本題ではない。
細くらせん状に連なる皮が、下に向かってぐんぐんと伸び盛り、やがて白い皿にハラリと落ちた。
それを待っていたように、ベッドの上でブラボーは口を開いた。
「しかし話には聞いていたが、姿を見たのは初めてだな。彼女が──…」
リンゴの皮を捨てがてら、
「ええ。けどどうしてここに?」
千歳は答え、切り分けたリンゴをガラスの皿に盛り付けた。(皮用とは別の皿)
「お前にはまだ話していなかったな。彼女はしばらく銀成学園に通う手はずになっている」
ウサギ型のリンゴに刺さりつつあった爪楊枝が、ピタリと止まった。
果汁がじんわりと爪楊枝を濡らし、甘い芳香が病室に漂う。
「……大丈夫なの?」
「大戦士長からは許可を得ている」
その言葉に安心したのか、千歳は皿を無表情で差し出した。
「ただ戦士・斗貴子はいい顔をしなかったな。前歴を知ってる以上、強く反対できないようだが」
ブラボーはリンゴを受け取ると、しゃくしゃくと小気味良く噛みつぶす。
「昼食は食べているが、いかんせん薄味で量も少なかったからな。お前のくれるリンゴはあり
がたい」
うっすら無精ひげの顎が動くたび、頬がボコボコと形を変える。
果汁も漏れて、唇周りをうっすら濡らす。
「食べながら喋らないで」
千歳は呆れたように呟きつつ、ティッシュで丹念に拭いていく。
「すまんな」
実に慣れた調子でブラボーは謝る。慣れているなら黙って喰えばいいようなものだが。
しかしである。愚にもつかん行儀と、千歳による拭き取りサービスじゃどちらがブラボーか。
彼はもちろん分かっている。だから喋るのだ。
なお、リンゴを放置しておくと色が茶色になって風味が落ちる。
いわゆる酸化現象だ。
それを回避するには、塩水もしくはレモン汁につけておけばよい。
千歳もリンゴが残りそうな時、以上の”処置”を施している。
「そういえば防人君。知ってる? 私は偶然見かけたけど」
千歳が先日見た風景を話すと、ブラボーは「ああ」という顔で頷いた。
「太平洋での決戦以来、ずいぶん気にかけていたからな」
シーツ越しに膝へ皿を置き、どこか懐かしむような表情をブラボーはした。
「確かにそうね。彼と彼のお姉さんはヴィクターに縁があるから」
「性分的に放っておけなかったらしい」
千歳は心中で、話題に上っている二人を重ね合わせてみた。
伝え聞いた彼らの前歴や望みは、共通する部分が多々ある。
「ところで」
ブラボーは千歳を生真面目に見据えて、質問した。
「俺としてはお前が彼女と連れ立ってきた方が意外なんだが。一体どうした?」
「ちょっと頼みごとがあって。そのついでに」
「そうか」
ブラボーはあまり深く追求しない。ちょっと黙ると、
「お前も忙しいな」
などと当たり障りのないコトだけを呟いた。
実際のところ、先ほどの少女が自分を一目見て「管理人ね」といったのも気にはなっている。
確かにブラボーは一時期、銀成学園高校の寄宿舎で管理人をやっていた。
それは生来の面白いコト好き半分だが、任務の行きがかり上も半分だ。
今ではとっくにその任務は終わっているので、正確には元・管理人。
といっても、学校のほうからは復帰しないかという打診もあり、ブラボー自身そっちへ再就職
しようかとも考えているが。
ともかく、さっき初対面だったはずの少女が、どうしてブラボーが管理人だと気づいたのか。
不思議な話ではある。
ブラボーはやがて、この疑問と千歳の『頼みごと』に確固たる結論を出した。
(レディーの隠し事は見てみぬ振りすべきだ)
何故なら、そっちの方が格好良いからッ!
いいぜこのフレーズ。ドラマCD聞いてからあの声でビンビン再生されやがる。
「ところで千歳、大戦士長がずいぶんお前のコトを心配していたぞ。あまり、無茶はするなよ」
そういうブラボー自身、無茶のせいで入院してるから分からない。
火傷はずいぶん引いてはいるが、右頬には絆創膏が貼られ、半そでから覗く逞しい両腕にも
ところどころ包帯が巻かれていて、痛々しい。
実際、ブラボーは最近ようやく歩けるようになったが、それには杖と介添えがまだ必要なほど。
ダメージは深刻だ。
ブラボーをじっと見る千歳の目は、彼の現状とそこに至った原因をありありと描いているのが
見て取れる。
「俺のは仕方ないさ。最近じゃブラボーな勲章と思ってる」
ブラボーはからからと笑って見せるが、千歳の胸が痛んでいない保証はない。
彼の傷は、口論の末、カッとなったチンピラにやられたものだ。
と書くと一人の男の苦悩に満ちた生き様がフイになってしまうので、彼の名誉を重んじるならば
『譲れぬ信念を互いに押し通した結果、こうなった』
とするのが妥当だろう。
そのチンピラ、というかブラボーに傷を負わしたのが、かつての僚友というからフクザツだ。
火渡というその男は千歳とブラボーと同じ部隊にいた。
よって7年前、千歳が引き金となった惨劇を体験し、その傷を今でも引きずっている。
いまや彼は不条理に固執し、火より狂おしい情念を全身から撒き散らかしている。
そういう背景を十分に理解しているから、千歳は火渡を責められない。
「とにかく、あまり思いつめるな。俺は火渡もお前も恨んじゃいないさ」
千歳の醸し出す微妙な空気を察したのか、ブラボーは真剣だ。
「だから思いつめて、無茶な真似をするなよ」
どうも言外で、照星に申し出たコトをたしなめている気配がある。
「ええ。分かっているわよ」
千歳はしっかりと答えるが、胸中はいかなる物か。
ブラボーは時々、千歳の深いところが見えない。
世の男女の関係などえてしてそういう物だろうが、千歳の底にあるものは重く陰惨でありすぎる。
第一に、7年ずっと笑顔を奪い続けている。
ブラボーの好きなものは、笑顔と正義だ。
だから千歳の笑顔はとても見たい。
成熟した静かな美貌が、フッと暖かく微笑んだとすれば?
想像するだにブラボーだ。
(ま、諦めねば何かの拍子で出るだろう)
【檎】 → 林檎 → リンゴォ → ようこそ『男の世界』へ → ロードアゲイン です。
さて、シグルイという作品の話になりますが、とある回では顔にひっかけられた水の有無がバラバラ
でしたが、それは実際読むのとはまた違った順番で絵を描いたせい。前後の状況が食い違ったのです。
自分もちょくちょくそんな感じでネゴロを描いている訳です。
前々回 → 終盤近く → 今回の次 → 今回 → 前回 と。
もっといいますと、次回作の終盤やら、オリジナル作品やら、戦国の三日月やらのあらすじ
も描いた訳で、どうにも節操が無く。
やけに投稿スピードが上がったときは、ああ、描き溜めてたなんだなとお思いください。
>>81さん
自分はあのお弁当の中で、プチトマトが一番食べたいですね。舌にしみいる果汁と
中のブヨブヨはいくらでもいけそう。生でおいしい物ってのはスゴい。
個人的な趣味では、ししゃものから揚げがあっても良いですが、千歳が根来にやる分にはアウトそう。
ふら〜りさん
>読んでる側も救われてますよ。作品から、いろんなものを貰って
自分にもかなり当てはまりますね…… 感想というモノは本当に、ありがたいモノです。
まんべんなく付けて下さるふら〜りさんはやはり凄い。あと、色気まったくなしの思考一点張
りの会話は大好きです。武装錬金やネウロらしい対比も感じられますし。
>>83さん
いえいえ。分からない部分を調べて見て、「おおそうなのか!」というものを結構使っていたりしますよ。
ただ、蕭何(しょうか)については彼の事務的手腕に惚れ込んでいるので、引き合いに出しました。
しかし根来、題名的にはネウロのポジションにいるくせに「食事」で喜ばんとはいかなるものぞ。ねぇ?
>>84さん
ありがとうございます。読み応えについては、1年以上前から追求したい点です。
千歳は根来の内面描写のなさを補ってくれるので助かります。でも彼女、題名的には弥子のポジションなのに
驚かないとはいかなるものぞ。その癖、イナゴの栄養価や食べてる地域は、弥子もいいそうだから複雑。
91 :
作者の都合により名無しです:2006/06/05(月) 08:19:47 ID:GhnE57e/0
スターダストさん乙です。氏が連日投稿なんて珍しいw
相変わらずどう見ても千歳が主役っぽい感じですけど、礼拝堂は千歳だから絵になるな
しかし急激に物語が動き始めた感じ。これから展開がバトル中心に激しくなるのかな?
そうすると千歳より根来にスポットが当たりそうだ。
お疲れですスターダストさん。
錬金オールスターが揃いつつある感じでお話もそろそろクライマックスかな?
でも、出来るだけ長く続いてほしいのでその辺は複雑だ。
スターダスト氏はしぇき氏と同格くらいにまでのし上がったな。
スターダストさんのSSのように、アニメの錬金でも脇役にスポットが当てられるといいな
連日投稿お疲れ様です
■玉崎真吾(江本厚)【二】
あれから――錯乱した黒川にマスクを破られてから――どの位の時間が経っただろうか。
随分長い時間、茫然自失状態だったような気もするし、ほんの数分だったような気もする。
どちらにせよ、萎え切った気力は多少ではあるが、回復の兆しを見せていた。
役立たずになってしまった『玉崎真吾』を力任せに剥ぎ取り、床に投げ捨てて立ち上がる。
「さてと。どうにか、生き残る方法……考えなくちゃ、な」
そう言って見た所で、この窮地を脱する作戦など、そうそう思いつく筈もなかった。
天井に目を向ければ、忌々しい監視カメラが、こちらを睨んでいる。
今俺がいる調理場だけでも、入り口の引き戸の上に一台。中央の電灯付近に一台。
部屋の一番奥、キッチンシンクの右隅と左隅に各一台、で、計四台。
どう楽観視しても、帝愛にこちらの正体が筒抜けである事実は覆せそうにない。
今頃奴等は、ゲーム終了後、俺をどうやって始末しようかと、相談の真っ最中なのだろう。
ギィッ、と扉の開く音がした。玄関の方からだ。間を置かず、布を手で叩くような音。
誰だ……? などと、一瞬でも考えてしまった自分の鈍臭さに怒りを覚えた。考えるまでもないではないか。
今、この吹雪で閉ざされた陸の孤島に踏み込んでくるのは、帝愛の人間をおいて他にいない。
相談の真っ最中、どころの話ではなかった。帝愛の動きは、こちらの予想以上に迅速だった。
話し声こそしなかったが、耳を澄ませば、足音からおおよその人数は予測できる。
二人か……それとも、三人か。少なくとも、一人ではないのは間違いなさそうだった。
幸いな事に、調理場入り口の引き戸は黒川が飛び出して行った時のまま、開けっ放しになっていた。
ホールへ踏み込まれない内に、中央廊下へと退却する。
と言っても、中央廊下から繋がる、中庭と各個室も安全とは程遠い。
何せ、只野を殺害したと思われる『第二の犯人』が何処かに潜んでいるのだから。
それでも迷いなく中央廊下に走ったのは、単純な計算から導き出された答えである。つまりは、一対一か、一対多数か。
前門の虎、後門の狼。言葉だけは知識として記憶していても、まさか自分がそのような状況に置かれる時が来るとは思いもしなかった。
中庭へと出る扉の前に到着した。が、そこから先、どうすればいいのか解らずに立ち尽くす。
次に取るべき行動など、何も決まってはいなかった。
基本的に、敵と遭遇した時のコマンドは二つしかない。『たたかう』か『にげる』か。そのどちらか。
たたかう……? 無理だ。
数が違い過ぎる。奇跡的に、今ペンション内に踏み込んだ敵を退ける事ができたとしても、すぐに増援がやってくるだろう。
にげる……? それも無理だ。
監視カメラのせいで、逃げても隠れても、すぐに居場所は割れてしまう。ペンションの外へ逃げようものなら、一時間と待たずに氷塊になる。
黒川にマスクを破られた時点で、薄々感付いてはいた。もう助かる手段などありはしないのだ、と。
しかし、こうして実際に追い詰められ、必死に考えを巡らせた上でその事実を再確認してしまうと、流石に、絶望が五臓六腑に沁みてくる。
条件反射で逃げてはみたものの、もう詰みなのだ。次の一手で、確実に王手がかかるとわかっている。
それなら……どうする? 絶対に助からないとわかっているのなら、どちらのコマンドを選択する?
俺の中で、既に答えは固まっていた。最期の足掻きだ。一ダメージだって構わない。敵に打撃を与えてやろうじゃないか。
■索敵撃破
榊、京、デウス、エクスの四人は、凍りついた玄関を開き、ペンション内へと足を踏み入れた。
玄関先で、服にべったりと張り付いた雪を払い落とす。
「予想以上にひどいねえ、どうも」
ホールの惨状を一目見て、京は眉を顰めた。
頭を打ち抜かれ、血の海に沈む旗元の死体。
アイスピックで喉を貫かれ、息絶えている只野の死体。
大地震の後のように各所に散乱している調度品の数々。
おまけに、床には誰かが吐き出したとおぼしき汚物まであった。
「随分と派手に汚してくれたな。片付けるのは、骨が折れそうだ」
と、エクス。ゲーム終了後の『後始末』も、彼等の仕事の一つだった。
デウスは他のものには目もくれず、只野――マキナの死体に歩み寄った。
調理場の前に転がる旗元の射殺死体と、マキナの刺殺死体を見比べる。
「やっぱり、武器に頼ったのか。生き残る術は唯一つ。肉体言語(サブミッション)だって、散々言っただろうに」
三人の中で一番新参のマキナは、当初『擬態』以外にこれと言ったとりえのない男だった。
そんなマキナに、得意とする殺人サブミッションを直接指導したのがデウスである。
探偵たちを騙し通せる演技力と、申し分ない格闘能力。
その両方を兼ね備えていると言うのが、マキナが今回犯人役に抜擢された理由だ。
榊と京は、それぞれ調理場と、オーナー控え室を覗く。
「いない。隠れる場所もない」
調理場を早歩きで一周して、榊が言う。
「こっちも、生きている人間はいないよ」
とは、京。オーナー控え室の扉の向こうに、鮮血がこびり付いた壁が見えた。
「そうなると、中庭の方しかないな」
デウスが言い、四人は中央廊下へと向かった。
「待て」
中央廊下の真ん中で、先頭を歩いていたエクスが急に立ち止まった。
「何だよ」
背中に頭をぶつけ、仏頂面をして見上げるデウスを、手で制する。
「このペンションの構造を考えるに、ここで三手に分かれた方がいい。人数配分は、右に一人、左に一人、中庭前の扉に二人、あたりが妥当だろう」
誰も、エクスの提案に意見しなかった。言う通り、全員で固まって動いていては、不毛な鬼ごっこに発展する可能性が高い。
その点、この布陣ならば、玉崎がどの方向へ逃げたとしても挟み撃ちにしてしまえる。
簡単な協議の結果、デウスが廊下右側、榊が廊下左側にそれぞれ向かい、エクスと京が、中庭前の扉で待機する事となった。
榊は、曲がり角の向こうに、何者かの気配を感じた。
姿勢を低くして、角から顔を覗かせ、向こう側の様子を窺う。
男が一人、廊下を歩いていた。ネームプレートに視線を移す。『四番』伊藤開司だ。
こちらに向かって来るのかと思い、榊は身構えたが、予想に反して九号室の前で立ち止まり、ドアの方へと向き直った。
チャンスだった。後方に控えるエクスと京に目で合図をして、息を殺して後ろに回りこむ。
口に、クロロフォルムを滲み込ませた布を捻じ込む。と、右側廊下から、耳を劈く絶叫が聞こえた。
デウスの声ではない。とすると、ターゲット……玉崎のものなのだろうか。
一分もしない内に『四番』は完全に力を失い、廊下に転がって寝息を立て始めた。
十号室前を通過し、角を曲がる。と、突然、男が躍り出て、デウスに向かって正拳突きを繰り出してきた。
ネームプレートを見なくともわかった。『六番』玉崎真吾だ。
咄嗟に、それを回避する。突き出された拳を脇に挟み、条件反射的に反撃に転じる。
掴んだ腕を捻り、背中に回す。「ぐうっ」と、呻き声が漏れ聞こえた。
通常ならここで力を入れるのを止める所なのだが……デウスは何の躊躇もなく、より一層の力を込めた。
ボキリ。鈍い音がして、腕がありえない方向に曲がる。シュプールに絶叫が響き渡った。
折れた右腕を押さえて喚く玉崎に構わず、がら空きの首にネックロックを決める。
そして、ネックロックをかけたまま、重心を後ろに傾け、左足で右足を払う。
折れた右腕を庇っていた玉崎は、受身も取れずに後頭部から床に叩き付けられ、あっけなく昏倒した。
毎度ありがとうございます。前回投稿は
>>48です。
次回で最終回となります。
・皮肉混じりのコードネーム
前々から考えてはいたのですけど、前振りが殆どなかった事への自己突っ込みでした。
何かこう、急に出てくるのはやっぱりちょっとどうかなーと。
・IF
いかにもサウンドノベルな演出で、面白そうですね。
序盤で事件を解決してしまって、一条含めた全員生存状態で主催者と戦うとか……
根本から違う話になりそうです。外伝とか後日談みたいな形で、少し触れるかもしれません。
・S
すみません、最終回まで引っ張ります。一応、最後の謎なものですから……
100 :
作者の都合により名無しです:2006/06/06(火) 09:43:32 ID:EKc7K17n0
次回でこの傑作も最終回か・・
心から寂しいです。しかし!
>根本から違う話になりそうです。
もしかして次回作の構想とかあるのかな?
それなら寂しさ以上にめちゃくちゃ嬉しい。
1ヶ月ほど充電して頂いて、また書いてくれるとありがたいな!
ああ、終わってしまう…
しかし、最初から最後までこのクオリティはスゲエ
幾重にもドラマが折り重なっていて緻密に計算されているな
次回作、すぐでなくともいいから待っとります。
まだ早いかw
見てた人さん乙です。
最後まで活目して見ます。どんなラストかな?ドキドキ
文句なくバキスレ史上最高傑作だと思う。
104 :
作者の都合により名無しです:2006/06/06(火) 21:35:00 ID:wTLfqcK+0
最近、来るペースが落ちてきてしまったな。
しぇきさんマジでカムバック。
粘着なんて気にしないで。オーガの続きが読みたいっす。
「予想通り・・・まさに予想通りだ。」
倒れこみながら折れた自分の足を見つめながら一人呟くシコルスキー。
傍から見れば精神に異常を持った危ない外人にしか見えないであろう。
だが薬を使っているという線も考えられる、何にせよ危険人物に変わりは無いが。
「シコルスキー!速く柳の解毒に移るんだ!お前の足なんかどうでもいい!」
ドイルの冷たい言葉がシコルスキーに浴びせられる、助けるんじゃなかった。
そんな思いが心中に広がるが自分の身体は放って置いても一応治る、
ここは柳に「元気の水」を使い毒を抜き、「生命の水」でドスイーオス
との戦いで傷を負っているドリアンを治癒するのが先決である。
「ぬおおおお!元気の水ッッ!」
倒れこみながら柳へと術の詠唱を行うシコルスキー、上空に水術に
よって作られた水瓶が現れ、ゆっくりと傾く。瓶から流れ込む透き通った水が、
柳の体に降り注がれると、痺れが抜けると同時に体中に失った力が戻っていく。
「助かったよ、シコル君。」
感謝の言葉を漏らすが顔は背けている柳、時間凍結を掛けて貰った方が嬉しかった。
人に見られていないのが唯一の幸いであろう、街での戦闘があったら
どうすればいいだろう、水瓶が使用者に現れるので他人の振りも出来ない。
だがこの世界の人ならば術は見慣れている事を、柳は考える間も無かった。
「次はドリアンか!」
「いや・・・私は後でいい。」
シコルスキーから目を背けてドスイーオスとの戦いに専念する。
スペックの援護が入ったことでより戦いやすくなったし、何より
アレを叫ばれるのは恥かしい、だが街に入る前に掛けて貰わないと
大衆の前で大恥を掻くことになってしまう、普通に包帯を巻くべきか。
「ボンヤリシテンジャネェ!来ルゾ!」
飛び上がる真紅の皮膚を身に纏った野獣、全体重をのせた鈎爪がドリアンを襲う。
細い前足を両腕で受け止めるが、10mの巨体の割にだが、
華奢に見える腕から、信じ難い力が発揮されている。
「なっ・・What!?」
激しい激痛が腕を襲う、骨が折れると同時に、
筋繊維が千切れる様な感覚を両腕に感じる。
痛みで痺れた両腕を庇うように蹴りで野獣を突き飛ばす。
だが、それが野獣の逆鱗に触れてしまったのか、ドリアンの
蹴りで少し下がった野獣が完全にドリアンを標的と見なした。
ドリアンに向かって毒液を吐き出す真紅の野獣。
だが毒を凍結しているスペックによって阻まれてしまった。
「おいおい・・・無茶するなって言っただろ。」
シコルスキーも折れた足が治りかけてきた様だ、
これで6対2、1匹に三人がつけば2匹とも動きを封じる事が出来る。
ドリアンとスペックの波状攻撃がドスイーオスを追い詰める。
的確な掌打に意識を向けさせ、粗暴な連撃を的確な打撃と化す。
追い詰められた野獣の目が、鋭い眼光を放った。
後少しの所で、不意に後ろに気配を感じたドリアンが振り返る。
それと同時に襲い掛かる鋭い爪が、ドリアンを切り裂いた。
動きを封じなければならないのは2匹では無く3匹だった。
死んだと思われていたドスランポスが奇襲を仕掛けたのだ。
突然の襲撃を受けたドリアンへと目を向けるスペック。
赤い野獣はこれを見逃そうとはしなかった、毒が効かないのを
考慮し、鋭い牙でスペックに襲い掛かる。
肩に食い込む獣の牙が、肉をズタズタに引き裂いていく。
「ユダニ抉ラレタ腹ニ比ベレバ・・・ッッ!」
下顎と上顎の両方を掴み、無理矢理口をこじ開ける。
広大な湿地、燃え盛る火山で多くの戦いを勝ち抜いてきた、
人間との戦いはどれも楽な物ばかりであった。
全ての者がこの毒の前にひれ伏した、それなのに。
苦し紛れに毒液を吐き出す、スペックに効かない事も忘れて。
「サァ、ボウヤハ寝ンネノ時間ダゼッッ!」
シコルスキーに視線で合図を送るスペック、腕をボキボキと鳴らし、
必殺のベアナックルで仕留めに掛かる、スッと音も無く飛び上がり、
スペックがこじ開けた口に向かって渾身のドロップキックを放つ。
長く伸びた鋭い強固な歯も、強力な蹴りで叩き折っていく。
吹き飛んだドスイーオスはピクピクと痙攣を起す事しか出来なかった。
ドロップキックの反動を感じさせない位に美しく着地するシコルスキー。
だが、着地の隙はカバー出来てはいない、ドスランポスが牙を剥いた。
ユダがマントを投げつける、頭からそれを被る青い野獣。
前足を器用に布に引っ掛け、顔から取り外すと野獣の目に新世界が広がる。
無限の闇、自分が目を開けているのかも判らず瞬きを繰り返す。
「同じ魔物とはいっても、毒に耐性がある訳では無い様だな。」
その場で周囲をキョロキョロと見回す事しか出来ない野獣を見て、
ユダが呟く。ドスイーオスの毒を防いだマントを被せ、
マントに染み込んでいた毒でドスランポスの視界を封じたのだ。
光のある世界に戻れなくなった野獣は闇の恐怖に震える事しか出来ない。
残るはドスゲネポスだけとなった、ドイルが的確なコンビネーションで
翻弄すると反撃しかねた黄色い野獣は後ろへと大きく下がる。
だが、それが致命傷だった、姿を消した柳が静かに手を伸ばし、
そっと皮膚に触れる。野獣が柳の手の感覚を感じた時には、
何もかもが遅かった、手を振り解こうと足掻いてみるが、
まるで吸い付いたかのように離れなかった。
「これが私に残された毒、酸素だよ。」
極限の真空状態を掌に収めた柳、複雑に突起する皮膚であっても、
マジシャンの手にあるピンポン玉の様に彼の手から逃れられない。
「さて、終りにしようか。」
ドイルが指を不自然な音をたてながら曲げると、ボロボロの刃が手から飛び出す。
腕を下げ、再び指を曲げ身体に仕掛けられた強化スプリングを発動させる。
「グッバイ、イエローアニマル。」
大抵の生き物は首に頚動脈を持っている物だ、的確に狙いを定め、
野獣の硬い皮膚をスプリングを利用した超高速の刃物で切り裂く。
ドイルと柳が黄色い野獣の返り血で染まる、刃が衝撃に耐えられず吹き飛ぶ。
「困ったな・・・これ直ると思うか?」
手首から離れてしまった刃の断片を見つめながら、柳へと話しかけるドイル。
その場に座り込みながらドイルを見つめる柳、ふと微笑むと言葉を交わす。
「無理だろうね、麻酔が無ければその身体の刃物は取り出せない。」
柳と目が合う、否定の言葉を笑顔で言い放つと静かに立ち上がる。
そしてドスゲネポスの死体に近寄ると牙と爪をへし折った。
「まぁ、それは麻酔が無ければ、の話だがね。」
ドイルに折った爪と牙を手渡す、柳の発想に疑問を隠せないドイル。
「こんなもので大丈夫なのか?余り科学的とは言えないが。」
柳が倒れこんだドスゲネポスから更に牙を抜き取っていく。
そしてドリアンを治療している真っ最中のシコルスキーへと
向かって、鋭い牙を力一杯投げつけた。
「ウオオオ〜〜〜〜〜〜生命の水ッッ!?」
ドリアンの周りを済んだ水が取り巻き、傷を癒していく。
そしてシコルスキーのうなじに直撃するドスゲネポスの牙。
刺さった場所から血を噴出しながら倒れるシコルスキー。
「ああ、大丈夫みたいだな。」
戦いは終わり戦士達に平穏が訪れた。
策を持って皆を勝利に導いた者。人の持つ力で野生を圧倒した者。
己の刃を犠牲に牙を?ぎ取った者。善戦するも野獣の猛攻で傷つき倒れた者。
嵐が過ぎ去った後の様に静かな洞窟で、戦士達は休息を取る。そして、
「雨・・・まだ止むなよ・・・・・・。」
休息を取る暇も無く、雨によって増幅された力で身体の回復を計る男も居た。
どうやら兄MAXでのデジモンは朝の6:00と夕方5:30の模様。
朝に弱い自分には無理ぽ、5:30も部活の真っ最中でございます。
そんな鬱な事態になりつつも頑張って日々を生きてます、邪神です。
最近モンハンを再びやったりして秘境セットやら祖龍の書やらを
取ろうと頑張ったりしています。でもラージャン無理、氷武器ないもん。
ラオシャンロン無理、カプコンがサボってるもん。
まぁつまらない愚痴はさて置き講座いきましょ。
〜またもシコルス君の水術講座〜
生命の水 ロシアの生み出した最高傑作、シコルスキーがちょっと前にも使ってた術。
体力の回復を行う癒しの術、ミンソンでも便利で水術の才能が無くても覚えさせて損は無い。
元気の水 ロシアの生み出した排泄物、シコルスキーに使わせた術。
ありとあらゆる状態異常もこれ一発で治ってしまうのだが正直、
余り使い道が無い、でも万が一という事もあるので意外な所で役に立つ術。
〜レスに対する感謝の場〜
ふら〜り氏 >>美少女キャラとかとは対極的な面々ですケド。
美少女、ロマサガには余り合わない感じがするものです。
弓使いなのに筋肉モリモリだったり、頭にドリルついてたり。
しかし探せばシェリルと薬草取りなんて糞以下な
技術が取り得の女からロリっ子魔術師位ならいました。
絡むか絡まないか、絡んでもシコルに春なんか来るものか。
64氏 改行してみた、薄々思ってたけど台詞の度に
改行は台詞だらけなので厳しいのでどうしよっかなーと。
まぁ中途半端な所で改行に決定、アドバイスアリコ。
65氏 シコルは確かに確立してますな。
柳もへタレに見られがち、でもスライムには負けぬ!
そして時間凍結は本当にDIO様に化ける罠。
111 :
作者の都合により名無しです:2006/06/06(火) 21:59:05 ID:wTLfqcK+0
お疲れ様です邪神さん。
いや、随分読み易くなりましたよ。ありがとうございます。64さんじゃないけど。
バトルを見るとシコルは微妙に美味しいんだけど、やっぱり軽んじられてるなw
意外とコンビネーションいいな死刑囚。柳→ドイルの流れとか。
しかし、死刑囚パーティはどう見てもテイルズチームやホークたちより華があるなw
セーリングボール。
新一の現場検証中、2時間続きの体育では野球が行われていた。
グネグネ曲がる魔球を投げる投手。新一はその様を見て、考える。
(そうか! 人が宙に浮く原理は魔球の原理……
って、んなわけねーよな)
廊下の窓から、外を見つめながら物思いふける新一。現場検証をしてからわずか数分だが、
彼の天才的頭脳には"諦め"の文字が浮かんできた。
(まさか、本当に宇宙人)
できない物を除いていって、最後に残ったものが……例えどれだけ信じられなくても、
それこそがたった一つの"真実"。
廊下にはフリーザの残したトリックの痕跡は無し。屋上に行こう。
体育の授業では、セーリングボールに続きスノーミラージュボールが投げられていた。
スノーミラージュボール。
今、もっともナウでホットな野球漫画に出てくるセーリングボールとは違ってちょっとマイナーな魔球。
作者の年がばれそうだから、書くのが嫌だったけど、考えてみれば見てた人さんも俺と同年代っぽいんで書いておく。
見てた人さん、長期連載乙です。最終回に期待してます。っていうか、次も書いてください。
んで、スノーミラージュボールの説明だ。
簡単に言うと"消える魔球"
もう少し詳しく言うと"空飛ぶ消える魔球"
魔球は何でも空飛んでんだろ?
そう思う読者がいたら、奇面組を全巻読みなさい。
とにかく、スノーミラージュボールは空を飛ぶ。そして消える。
投手がスノーミラージュボールを投げる。
ボールが捕手に向かってまっすぐ進む。 だが、
突然消えてしまう。
投手と捕手の中間で、ボールが消える。原理は簡単、ボールが下からの突風に煽られて上空に舞い上がっているだけ。
それが一瞬の出来事なので、周りから見れば消えたように見える魔球だ。
スノーミラージュボールが空を飛ぶ。
屋上にいる新一のすぐ近くに硬球が舞う。
刹那、新一の頭にひらめきが上った。
(そうか、分かったぜ!
フリーザが空を飛んだ、そのトリックがな)
今日はこれだけです。
書き溜めが無いんで。
バキスレ史上最短記録だな パパカノさんw
次回には期待しているぜw
>邪神さん(じゃしんと打つと写真になるのは何故だろう)
死刑囚、己の適性と能力を上手い具合に使い分けて戦ってるな。
サルーインは無理でもシェラハ位は倒せそうな感じだ。
そういや、ドイルとか柳とかはほとんど魔法使いだな。
>41さん
天才的な頭脳の割には諦めが早いな、新一w
でも一応トリックは見破ったか。ま、本当に宇宙人だが。
勇次郎たんはどこ行った?
連投でアレだけど今一番ホットな野球漫画ってDREAMS?MAJOR?
>>115 期待にこたえられるよう、次回は、1レスにチャレンジしてみます。
>>116 ま、新一の頭脳に期待してください。
>>117 DREAMS
邪神(僕は変換できましたよ)さん。
元気の水ってミンソンにありましたっけ?
>キャプテン
もう死刑囚が主役でもいいねw
この物語も100話位いきそうな大長編になりそう。
>パパカノ
1レス連載って確か何かあったような
新一の推理には期待してますが、もう少し書いてね。
「雨・・・本当に止まないな。」
シコルスキーが降り止まぬ雨を眺めながら誰にでもなく話しかける。
身体の疲れは癒えたが、このままでは気が滅入ってしまう。
「雨具を持って来るべきだったか。」
ユダが苦虫を噛み潰したような顔で呟く。
余り長くここにいれば士気にも問題が出るであろう、
せめて退屈を凌ぐ手段の一つでもあればいいのだが。
「なぁ、暇だし百物語でもしないか?」
ドイルが行き成り妙な提案を持ち出した、だが
反対する人間は居らず、寧ろ興味を抱いた様だ。
「ヒャクモノガタリ?ナンダソリャ。」
首を傾げるスペック、シコルも同じ様な反応を示す。
「百物語とは、その場の人間が一人一話づつ怪談を話していき、
一話終わる毎に百本の蝋燭の内の一本を消し、合計百話の
怪談を話すと本当に怪奇現象が起こるという逸話ですな。」
柳が何も知らない様子の二人に説明を施す、ドイルがニヤリと笑う。
「ああ、敗北を知ったあの日から、日本の文化に興味が沸いてね。
帰国までの間に調べ物をしてたら偶然にも目に止まったんだ。」
ドイルがジロリと睨むと、柳はあらぬ方向へと目を向けてしまった。
「意外と親切な誰かの猛毒で寝込んでしまって、
結局、元の世界では何一つ役立たなかったけどね。」
ゴホン、と咳込み話の流れを元に戻す柳。
事情を知らない者はポカンと呆けた様子でそれを見つめる。
「まぁ、その話は追々・・・ともかく、誰から話そうか。
蝋燭が無いから雰囲気が出ないが仕方ないだろう。」
「じゃあ、最初は俺がいくかな。」
意気揚々と名乗りを挙げたシコルスキー。
意外とこういう余計な知識は豊富かもしれない。
「トイレ好きな男って知ってるか?」
出だしから駄目そうな雰囲気が蔓延する。
だが柳だけは微かな希望を見出していた。
日本には「トイレの花子さん」等のトイレに
纏わる怪談も十分にあるからだ。
「その男はトイレの不思議な話に詳しかったんで、
学校の七不思議の一つを担当する事になったんだ。
それで七不思議が始まったんだが一人話す度に、
話し手が忽然と姿を消しちまうんだよ。」
少し怪談っぽい話になって来た様だ。
そのまま語り続けるシコルスキー。
「最後の話が自分に回ってきた時、残ったのは自分と、
聞いた怪談を纏める新聞委員の2人になっちまった。
ここで話すのを止めれば、そんな考えは浮ばなかった。
止めればそれこそ他の消えた奴等よりひどい最後を、
辿りそうな気がしたんだろうな。何を話すか考えてると、
不意にトイレに行きたくなっちまったんだ。
いつもは恥かしがる事も無く、堂々と入るトイレが、
異様に怖かったんだ。だから新聞委員について行って貰ったんだ。」
ここまでくればトイレ話でも結末が気になる。
「そこで意識を失って、2度とこの世に戻らなくなった。」
「・・・で?」
「これで終わりだけど?」
最初に感じていた嫌な予感がここに来て的中してしまった。
取り合えず、蝋燭の代わりにシコルスキーの
命の灯火を消す事で満場一致した。
「さて、俺が言い出したんだし、次は俺に任せてくれ。」
血の滴る洞窟内でドイルが2番手に名乗りを挙げる。
タイミング良く消えたはずのシコルスキーの生命の灯火も付いた様だ。
「そんなに古い話でも無いんだが、ある学校の旧校舎に、やたらでかい
鏡があったんだ、少なくとも人間を映す物には見えない程にね。」
巧みな話術で話へと引き込んでいくドイル、それもその筈。
身体に仕込まれた武器を有効に利用する方法は「騙す」事にあるからだ。
各部に仕掛けられたギミックだけで生き延びたのではない、卓越した
身体能力と、相手を陥れる為の話術が彼の強さの秘密。
「そんな規格外のサイズから、その鏡はこう呼ばれたんだ、
午前0時、恐怖を呼び寄せる[悪魔の鏡]ってね。」
有りがちなネーミングだが午前0時に何が起こるか、そんな恐怖が込み上げる。
半死人のシコルスキーが水の力で回復していく、シコルの身体を流れる
癒しの力が音をたてて流れている、普段は気にならない水の音が、
静かすぎる洞窟を満たしていく事で、何かの気配を作り出す。
いや、もしかしたら本当に何かいるのかもしれない。
そんな恐怖を他所にドイルが話を続けていく。
「ある日、興味本位でその鏡の秘密を暴こうと、
二人の青年が夜の学校に忍び込んで鏡の元へと向かったんだ。
警備員の姿も見当たらず、旧校舎だったからかも知れないが
鍵は空けられていた、まるで二人を鏡に導く様にしてね。
恐怖も感じていた、だがそれ以上に好奇心が強く働いたんだろう、
遂に鏡の前へと辿り着いてしまったんだ。」
「ようやく辿り着いた二人は懐中電灯を恐る恐る鏡に当てた、
するとどうだろう、何が起こる訳でも無く移ってたのは2人の人間だった。
安心した二人は恐怖も吹き飛んでしまったらしく、鏡をもう少し調べる事にしたんだ。
そう、彼等は忘れていたんだ、午前0時に恐怖を運ぶ鏡である事を。
二人が他の生徒を引っ掛ける悪戯を鏡に仕掛けようとしたその時、
鏡から声が聞こえたんだよ、頭に響くような重い声がね。」
「鏡はこう言ったんだ、[汝、我に何を求める]と。
片方の男は震える事しか出来なかったが、もう片方の男は違った。
その男は同じクラスの奴からひどいイジメを受けていたんだ。
そして、その復讐のために鏡を見に来たんだ、震える男をを誘ったのは
一人じゃ怖かったからなんだろうな、だがイジメに怯える事もこれで無くなる。
男は鏡にむかって力一杯、こう叫んだんだ。」
「俺を悪魔にしてくれ!」
「鏡は急に黙り込んだ、それと同時に叫んだ男も黙ってしまった。
男が恐怖に身を引きつらせながら、黙り込んだ男の肩を掴んだ。
男は2度と動く事は無かった、身も心も冷たくなった彼は、
正しく本物の悪魔となってしまったんだよ。」
「これで俺の話は終わりだ。まぁまぁ怖い話だったろ?」
ドイルの語る復讐の為に悪魔となった男の話が終了した。
人の復讐心を描いた恐怖の物語に、誰もが心を奪われた。
「言い出すだけの事はあったな、興味を惹かれたな。」
ユダが賞賛の言葉をドイルへと送る、冷や汗を拭う柳。
「まぁ、俺の話には及ばなかったかな。」
シコルの空気を読まない発言によって、また灯火が消えた。
残る怪談は4つ、シコルの命の灯火は怪談の度に尽きてしまうのだろうか。
はいはい、かなり無理矢理な進め方ですがドス3頭倒して
行き成りホークっていうのも可笑しいだろうから何と無く怪談話。
ちなみに元ネタはSFCの某ゲームでございます。
しかしどれか一つにゲームでは無く小説を元にした奴を一つ入れます。
ちなみに次回もタイトルは「六物語」のままでござる。
それでは講座でございマッスル。
〜シコルスキーの間違い訂正水術講座〜
癒しの水 荒野のハイエナ・・・じゃねーや、ロシアの廃棄物シコルスキーが使ってた
「生命の水」のミンソンバージョン、実は生命の水はロマサガ2の術でした。
しかしミンソン4週目なのにこんなミスに気付かないなんて・・・俺は池沼か。
浄化の水 ターちゃんの一番弟子とポジションが被るシコルスキーの使ってた
「元気の水」ミンソンバージョン、これまた元気の水はロマサガ2です。
最後に水ってついて効果まで一緒なら間違えてもしょうがないよね!てへ☆
125 :
作者の都合により名無しです:2006/06/07(水) 21:57:24 ID:y8P76EYI0
なんで急に日本の百物語なんだよw
強引過ぎてワラタw
でもこういう脱線は好きなんでどんどんやって下さい
〜ア・・・アリ・・アリガ・・・・・ト・・・ウウッ・・!な場〜
111氏 >>死刑囚パーティはどう見てもテイルズチームやホークたちより華があるなw
ですよねー・・・天上天下並に優遇されない主人公達ですよねぇ。
でもスタンの方はもっとひどいかも、まぁなんとかなるさw
116氏 >>サルーインは無理でもシェラハ位は倒せそうな感じだ。
魅力耐性がないと辛いですあの子・・・サルーインはディスティニーストーンないとw
118氏 コテ無しでの投稿なので一応番号で・・・。
>>元気の水ってミンソンにありましたっけ?
orz
ストレートに物を見るのなら、千歳は子どもに絡んだ出来事によって、笑うのではないだろうか。
無表情な人形だって井戸の底で赤ちゃんをあやして笑ったのだ。べろべろばぁと。
ありがちではある。しかし、「あり」とついているから、ないとはいいきれない。
ブラボーは推測するが、しかし千歳の抱えた重く陰惨な感情は、この先も笑顔の可能性を
奪っていきそうだ。
更に、考えもつかぬ無茶の起爆剤になりかねない。
以下、ブラボーの洞察。
もし、千歳が極限の状況下でミスをしでかしたら、きっと挽回するために無茶をするだろう。
ただし洞察のみで、対処はできない。
千歳の考えを強引に変えられるかといえば、否である。
なぜならブラボー自身すでに、大事な存在(モノ)を死守せんと、無茶をしでかしている。
そんな彼がいくら強弁を振るったとしても説得力はない。
「とにかくだ。今の戦団は人手不足。お前のような優秀で美人な戦士が欠けると困る」
冗談めかしていいつつ、婉曲的に無茶を引き止めてみるのが精々だ。
少年なりし頃なら、千歳の細い肩をがっちり掴んで
「俺はお前に傷付いて欲しくないんだ!」
と正面切っていっただろう。
武藤カズキなら津村斗貴子に対し、絶対にそうする。
「オレは斗貴子さんに傷ついて欲しくないんだ!!」
錬金既読者なれば絵つきで浮かぶだろう。口を波線にして赤面する誰やらと共に。
そんな青臭さを発現するには、ブラボーは大人でありすぎる。
かつては戦士長という、戦士を統括する役目でもあった。
自分の領分はわきまえているし、熱意一つで全てが好転するとも思っていない。
婉曲的な言葉もやむなしと考えて、実情に即した行動を取ろうと務めている。
もっとも、優秀というのは芯からの本音だし、美人というのはもっと本音だ。
千歳の笑顔をいつか引き出したいというのは、もっともっとな本音である。
以上の不器用な男心など、えてして女性は知らぬもの。
素晴らしい観察力を持つ千歳とて、やはり女性の範疇は超えられないらしい。
「そうかしら」
と、無表情のままだ。
優秀、と評されても信じられない。美人という点にはなお鈍い。
何せブラボーは優しい。
優しいからこそ、言葉裏にある幾分かの配慮(悪くいえばごまかし)が千歳には分かる。
そもそもブラボーの機微に関しては、電話越しでも分かるのだ。
それだけ聡明だと、率直で正確な、無機質な断定の方がかえって信じられるだろう。
加えて、優秀という言葉を受け入れられるほど、千歳は成功をつかんでいない。
戦団における成功の定義は、すなわち任務遂行だ。
が、千歳はその下地において、実に不遇である。
前歴に傷がある上、武装も補助的。
と、くれば、回される任務の寡少ぶりは想像に難くない。
仮に回されたとしても、偵察や索敵などの細々とした役目のみだろう。
抱えた挫折をバネに、戦域のド真ん中に巻き起こった逆境を自らの力で覆せば、あるいは
千歳の内にこもった感情も少しばかりは晴れようが……
現状まではカタルシスなき人生だ。
7年来、心身と頬が凝り固まっているのも無理からぬ。
ただ、救いがあるとすれば、ブラボーという優しい男性との会話がその一つだろう。
成功とどちらが、と問われれば迷うコトなく「同列」と答えるほどに。
そんな背景があるから、千歳はブラボーに相談したくなった。
「防人君。一つだけ聞いていい?」
「俺に分かる範囲ならばな」
「この前、海豚海岸へ行ったとき、子どもたちを送ったでしょ?」
首肯するブラボーに、千歳は間髪いれず質疑する。
「もし、あそこを通る電車について知っているコトがあれば、教えて欲しいの」
というのは、久世家という容疑者の施したアリバイを崩すために、電車について調べているの
だが、いっこう何もつかめない。
そしてその電車というのが、銀成市と海豚海岸を経由して、皆神市に向かう物だ。
そう。
今回の任務開始時点において、根来が下準備をし、次の駅にたむろする幼稚園児の存在
をいいあて、千歳が印象を改めた電車と同じ路線だ。
千歳には少し感慨があるが、反面、ブラボーは難しげな表情だ。
「というが千歳。俺は途中で合流して、帰りは車で子どもたちを銀成まで送ったから、電車は
見てもいないぞ」。
「それでもいいの。例えば、線路脇で変わったものを見たとか、子どもたちが何かいっていた
とか些細なコトでも」
「些細な、か」
ブラボーは考え込んだ。
千歳は回答を待った。彼女に与えられた昼休みの時間はもはや残り少ないが、この際構わない。
戻る時間が多少遅れるのと、事件解決の糸口を探すのでは断然後者なのだ。
ハタ。とブラボーの顔つきが変わった。
「ちょっと待て。お前の言葉で思い出してきたぞ」
片手を額に当て、もう片手で千歳を制するような動きをする。
別にこれは拒んでいるのではなく、思い出し事をする人間の、無意識的な動きだ。
ブラボーは言葉を紡ぐ。
「あの時、子どもたちが──…」
記憶をゆっくりゆっくり手繰り寄せるように、言葉を切りながら、彼は喋る。
ややあって、全てを聞き終えた千歳は瞠目した。
「それは本当なの?」
声はこの沈静なる女性にしては、やや弾んでいる。
「ああ。踏み切りを通った時に、確かに後ろの座席で騒いでいた。でも参考になるか?」
ブラボーは千歳の様子に、やや困惑気味だ。
彼自身、自分の伝え聞いた話が本当かどうか確証は持っていないから、千歳に過度の期待
を抱かせるのは悪いような気がしている。
「充分よ。ありがとう。防人君」
千歳は頷くと、武装錬金を再発動。文字通り、瞬く間に姿を消した。
ここは病院の一室。
不意に一人分の息遣いが減ってしまうと、場所柄、不吉な感触が走る。
ブラボーはそれを払拭するように頭をかいて、わざとらしく独り言をもらした。
「まったく。どこもかしこも忙しいな。桜花も秋水もここのところ毎日残党狩りだというし」
リンゴを口に運ぶ仕草も、せわしない。
「とにかく、無茶はするなよ。戦士・千歳」
窓から外を見ると、空に黒っぽい雲がポツポツと浮かんでいた。
それが何だか千歳の行く末を現しているようで、ブラボーはため息をついた。
彼女一人だけならまだしも、同行しているのが根来だから心配だ。
戦団での評判は芳しくないし、任務遂行のためならば味方を犠牲にする男だから、千歳が
後ろからバッサリやられる可能性を描いてしまう。
(いざとなればうまく避けるだろうが……)
千歳の武装錬金を知りつつも、心配は払拭できない。
と。
ブラボーは突然、悪戯っぽい笑いを浮かべた。
「ところで管理人の件だが、ひょっとしてお前が伝えたのか?」
彼が首を回して視線を向けるは、病室の入口。
「はい。後であなたが戦士と知ったら、彼女が不信を抱くと思いましたので」
答えたのは、学生服を着た長身の美青年だ。
眼差しに燦(さん)と光を蓄えて、生真面目に佇んでいる。
竹刀袋を右肩に吊るしている所を見ると、部活帰りにブラボーを見舞いに来たのだろう。
とすると、廊下で先ほどの少女と出くわした可能性もあるが──…
それはまた、別のお話。
「ブラボーな判断だが、俺は元・戦士だ。間違えないようにな」
姿勢良く立つ青年に向くのは、もはや戦線を離れて、後続に一切を委ねた戦士の笑い。
寂しげでいて安心したような……それでも未練をどこかに残しているような。
(いつかとは逆だな。見舞った俺が、まさかこうしているとはな……)
二次創作におけるキャラの心理描写って、どこまで許されるんでしょーか。
やりすぎちゃ原作逸脱ですが、しなければ話が展開せず。
錬金は完結してるので、新設定の出現による食い違いは発生しませんが、ちょいと悩む所でもあるのです。
ただですね、世にあふれる歴史小説もしくは歴史モノ。
あれも極めて広い意味なら、史実を元にした二次創作では。
呂布が吃音だったり、土方歳三がお雪さんとちょっとだけ暮らしてみたり、韓信がレキ生の
ために日陰を作ってやったりするのは、結局どれも史実ではなく(多分)、描いた人の感性に拠るもの。
自分はそういうのが好きで、じゃあ好きなようにやれば……と思う反面、歴史モノと二次創作
をそのままイコールで考えるのは憚られ。はてさて。
悩んだおかげですっかり、語尾に「〜だろう」とかが多くなった。
>>91さん
どうもキャラというのは、「欠如」やら「挫折」というマイナス要素がある方が強いようです……
それはさておき、あと数回でようやくバトルです。本作では「静と動の使い分け」を意識して描
いてるので、終盤は徹底した「動」にこだわる予定。お膳立ては充分整えてありますよ。
>>92さん
長く続けたくもあるんですが、すごく描きたいモノが終盤にたくさんあるので
やはりココはペースを上げていきたい所。なにせ、エロを除けば初の長編。
良くも悪くも色々つかめました。だからこそ完結させ、また何か新しいモノを。
>>93さん
いやいや。しぇきさんほどの貢献度はいまだ自分にはないかなぁと。
同時に二つの連載というのも難しいコトですし。本音をブッちゃけますと、錬金読者としての
しぇきさんの感想がそろそろ欲しくもあるのです!!
>>94さん
ありがとうございます。アニメ、外伝とまではいかなくても、描写の補強ぐらいはあって欲しいです。
特に、バタフライとヴィクターの関係性は練りこんでいただきたい。
脇役大好きなので、自分でもいずれやっちゃいますが。
コテ忘れ。
133 :
作者の都合により名無しです:2006/06/08(木) 00:42:02 ID:Fi0WYpSO0
スターダストさん、最近えらいハイペースですね。
勿論嬉しいですけど、以前は月1ペースなんでちょっとビックリ。
暑苦しいブラボーとクールビューティの千歳は
千歳とどことなく同タイプの根来とよりも、コンビとして上手くいきそうかも。
心理描写はどんどんやってくださいな。楽しみにしてます。
後書きが無駄に長いっすね
SSは空気なのに
スターダスト氏のキャラの内面描写はよくできていると思います。
原作ファンから見てもそうだろう、そういうこともあるかもしれないと思えます。
照星以外は。
照星は氏のSSにある、錬金風に言うなら不条理、を担っていて、原作にそういう部分がないから
強く違和感を覚えてしまうのかもしれません。
今更ですが氏のヴィッキーと金城のSSは萌えスレのSSの中で1,2を争うくらい好きでした。
あれはまさに歴史小説的なIFでしたね。
ネゴロも最近かなり錬金の空気が濃くなって先の展開が楽しみです。
お疲れ様です
書き溜めているんですね
心理描写というのは物凄く難しそうですが期待しています!!
第七十八話「全てを消し去るもの」
襲い来る圧倒的な物量の敵、敵、敵。
それを斬り伏せ、撃ち落し、掻い潜りながら、ついにジェネシスが視認できる宙域にまで辿り着いた。
「だけど・・・なんかやばそうだよ・・・」
間近で見るジェネシスは、想像以上の巨体を誇っていた。破壊するにしても、並大抵ではいかないだろう。
そしてその周囲には、まるで空間全てを埋め尽くすかと思えるほどの敵機。
「さらに言えば、ここに来るまでに既に五十分は経過している。発射まであと一時間もないというクルーゼの言葉が本当
なら、もう一刻の猶予もないな」
バカ王子に言われるまでもない。ジェネシスの砲門は、妖しく光っている。こうして喋っている今にも発射されるかも
しれない。
「バ・・・バカ王子さん!そんな淡々としてないでもうちょっと危機感を持ってよ!何か作戦はないの!?」
「あるよ」
あっさりと答えるバカ王子。のび太たちの目に期待の光が宿った。彼らもバカ王子の人格は信用していないが、頭脳の
優秀さという一点において何よりも認めている。
「のび太、コクピットの下の方にボタンがあるだろう?そう、その如何にも怪しいボタンだ」
見ると、確かにボタンがあった。円形の中にいくつもの直線が走っているような奇怪な意匠が施されており、バカ王子に
言われるまでもなく怪しい。
「他のみんなも聞いていてくれ。それを押すと同時にエネルギーチャージが始まる。およそ二分ほどだな。それが終わると、
ダイザンダーに搭載された武装の中でも最大威力の兵器が撃てるようになる―――それならばジェネシスも敵さんの軍勢も、
一気に殲滅できるはずだ。だがいいな?二分もの間無防備になるんだ。その間は総員でダイザンダーを守り抜くんだ―――
みんな、分かったかい?」
「二分間・・・」
誰ともなく呟いた。二分―――その間に、全てが決まってしまうのだ。
迷っている暇もない。全機でダイザンダーを囲むように陣形を取る。
そして、壮絶な戦いが始まった。
ダイザンダーに向かってくる量産型グランゾンに再生型のゼオライマー、フェニキア、ネオラピュタ。
斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る。
斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る。
斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る、斬る。
撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ。
撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ。
撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ。
斬って撃って切って討って斬って撃って切って討って斬って撃って切って討って斬って撃って切って討って―――
ただただ、それは純粋なまでの戦いそのものだった。
たった二分間の戦いでありながら、それは永劫に続くかと思われるほどの死闘だった。
だがそれも、終わりの時が近い。
「―――あと十秒だ!これなら・・・」
つい気を緩めた、その瞬間だった。
仲間たちの合間を掻い潜った敵機が、ダイザンダーに向けて殺到したのだ。
「しまった・・・!」
あとほんの十秒―――それが、まるで永遠のように遠く感じられた。
完全に無防備な状態で攻撃を受ければ、強固な装甲を持つダイザンダーといえど無事ではすまないだろう。
そうなればもはや、ジェネシスを止めることなどできない。
全てが―――終わる。
絶望に心を飲まれかけたその時だった。
目と鼻の先にまで近づいていた敵機が突如破壊された。まるで見えない何者かが守ってくれたようだ―――
そう思った時、それが姿を現した。
「あれは・・・<ブリッツ改>!」
そう―――透明化装置を作動させた<ブリッツ改>が、敵に気付かれぬまま移動して切り裂いたのだ。
そして次の瞬間、長距離から放たれたビームが的確に敵機を狙い、爆破した。
遠くで戦っていたディアッカの<改バスター>が、遠距離をものともせずに精密な射撃で撃ち落したのだ。
だが、それでも生き残った数機がダイザンダーを狙い、押し寄せる。
「ダメかっ・・・!」
思わず目を閉じたが、予測していた衝撃はいつまで経ってもやってこない。目を開けると、そこにビームサーベルを
手にした機体があった。それは凄まじい速度でビームサーベルを振るい、敵機を焼き切っていく。
それはイザークの機体―――<デュエル改>だ。
「言っただろう・・・借りを返すまでくたばるなと!」
イザークはビームサーベルを振り下ろしたまま言い放つ。
「俺たちにできるのはこれまでだ―――後は任せた!」
この戦いにおいてイザークたちの為したことは、確かにそれだけだった。ただ十秒、時間を稼いだだけ。
たった十秒。だがそれは―――全てを決める十秒だ。
そしてついに、エネルギーチャージが完了した―――!
同時に、もはや押さえきれない力の奔流がダイザンダーを駆け巡る。そして計器に文字が表示された。
Infinity(無限にして)
Eternity(永遠の)
Overkill(超殺人的な)
Nonpareil(比類なき)
GUN(銃)
―――イエオンガン・発射準備完了―――
「よし、総員ダイザンダーの後方に移動しろ!巻き込まれるぞ!」
バカ王子からの警告に、前方で戦っていた面々が一斉に飛び退いた。
「さあ、最後の見せ場は譲ってやる!あのデカブツを吹っ飛ばしてやれ!」
「行っちまえ!絶対にしくじんなよ!」
「のび太!」
「ドラえもん!」
「リルル!」
イザークの声。仲間たちの声。
それを受けて、荒れ狂う破壊エネルギーをのび太たちはついにジェネシスに向けて全力で撃ち出した。
「イ・エ・オ・ン・ガァァァァァァァァァンッッッ!!!」
それと同時に、ジェネシスからも最大出力の光線が発射される。二つの超兵器は真っ向からぶつかり合い―――
ジェネシスの光は、イエオンガンの光の中に飲み込まれ、消滅した。
その一瞬後には、ジェネシス本体が破壊された。そして周囲にいた数千数万の敵機が余波だけで分子レベルにまで消滅し、
さらにイエオンガンの射線上に存在する星々さえも消し飛ばされていく。
全てが終わり―――後には何も残らなかった。
「・・・す・・・すごすぎる・・・」
誰もがそうとしか言えなかった。呆れ果てんばかりの破壊力だった。
「ふむ・・・チャージが必要な武器とはいえ、ちょっと強く造りすぎたな。あそこまで大げさなことになるとは・・・」
バカ王子が感慨深げに言った。
「計算では約二億五千六百一万九千五十三個の星が消し飛んだな。その中には生命体の住む星もあったかもしれない。
ああ、彼らは一瞬にして、訳も分からず消えてしまったのだ。何を恨めというのだろう。いや、彼らはもはや怨恨の
情念すら抱くことはできないのだ。全てはもう手遅れ―――消えてしまったものはもう戻らない・・・。
あ、気にしないでくれのび太。これはあくまでも仮定の話だから。
例え本当に君が幾億もの命を無下に奪ってしまったかもしれないとはいえ、仕方のないことだよ、うん。
そうしないとメカトピアは救われなかったのだから。誰だって見知らぬ大勢よりも自分の身内の方が大切だよね、
そうだよね」
「・・・・・・」
無茶苦茶に後味の悪いセリフをかましてくれやがった。実に陰鬱な気分になりつつ、のび太はふと疑問に思った。
「バカ王子さん・・・これだけの射程距離と威力があるんだったら、わざわざ近づかなくても、遠くの安全な場所から
撃った方がよかったんじゃないかな?」
「はっ・・・そうか、その手があったか!偉いじゃないか、のび太!」
まるで気付いていなかったらしい。その場の誰もが嘆息したのだった・・・。
「ともかく、ジェネシスの脅威は去った。キラたちの元へと急ごう」
萎えかけた心をなんとか奮い立たせ、一同はキラの元へ駆けつけるべく、宇宙を飛んでいった―――。
>サマサさん
>「イ・エ・オ・ン・ガァァァァァァァァァンッッッ!!!」←イ・デ・オ・ン・ガ・ンじゃないの?
「皆、吹き飛べー!!」じゃないのかw
まあ面白いからいいけど。コスモ達が出ないのが残念。
本家スパロボ(サルファやF)でもそれくらいの星を滅ぼしてるのかと気になってしまったw
ジェネシスごとプラントも吹き飛ばされそうな予感がしたけどそうじゃなかったのか。
投下完了。前回は前スレ525より。
ようやく新スレに投下できました。
ところで最近になってかまいたちの夜2をプレイしました。1の話が全部ゲームの話だってのは
えーっと思いましたが、1と切り離したゲームと考えると、割と面白かったです。
グロ系は結構好きですしね・・・。
レス番は前スレのもの
526 本当に何しに出てきたんだって感じでした、再生ボスキャラたち。
528 このペースならなんとか年内には終わりそうです。
529 たくさんキャラがいるので、のび太だけ書くわけにはいかないので・・・
>>ふら〜りさん
初期は雑魚モビルスーツ数機を倒す程度だったのに、今回で星を億単位で破壊してしまいました。
考え無しにインフレしすぎると危険です。
>>邪神?さん
時間凍結・・・名前の大層さと効果の地味さに笑えました。名前だけならクイックタイム級の効果を期待させるのに・・・。
いきなり挿入された学校であった怖い話ネタもいいですねー。
あれの新堂シナリオ第7話、何の攻略情報もなしでクリアできた人っているんですかね・・・。
>>142 何故イエオンガンなのか?ドラえもんのコミックを読めば分かりますw
146 :
作者の都合により名無しです:2006/06/08(木) 17:26:48 ID:nx2/MMCt0
>邪神さん
こういう物語内物語は大好きです。シコルは戦闘では主役になれないのでw
せめてこういう時は主役を張ってほしいな。しかしこいつらが怖い話ってw
>スターダストさん
心理描写はどんどんやって下さいよお!原作ではあまりスポットの当たらなかった
根来や千歳の心の動きは非常に興味ありますから。
>サマサさん
馬鹿王子の台詞、原作でも大好きだったなあ。一瞬で敵を全部破壊した爽快さを
見事に後味の悪い物に変える、悪い意味での天才的な才能ですなw
イエオンガンやラッキーマンネタなど色んな物をパロッてますな〜w
とりあえず無駄に死んだ約二億五千六百一万九千五十三個の星の人たちに乾杯!!
148 :
ふら〜り:2006/06/08(木) 22:40:43 ID:Pbu8diaK0
スターダストさんと邪神? さんのハイペースぶりが嬉しくて、
41さんとサマサさんのコアでマニアックな小ネタが楽しくて、
見てた人さんの「裏に裏ありもうすぐED」感に手に汗握って……今日も好調です!
>>41さん
魔球「打てるものなら打ってみろ」でしたっけ。確かに飛んでませんねアレは。それは
そうと新一の推理、素直に読むと「風で舞い上がってる」ということになりますが……
宇宙人であることも積極的に否定してるワケではないし、どういう結論に行き着くか?
>>スターダストさん
丁寧手作り弁当の次は、精密リンゴ皮むきですか。相変わらず口調と裏腹、実に女らしい。
>千歳による拭き取りサービスじゃどちらがブラボーか
一見単なるスケベ根性ぽいですが、それだけ彼女の思考・行動パターンを正確に把握して
いる→千歳が愛されてると解釈しました。上司も同僚も、いい人(男)に囲まれてるなぁ。
>>見てた人さん
こうして舞台裏(?)を見ると、オカルトしかないと思ってた怪奇現象にもきっちり筋が
通っていたと。ゲームの枠外からの殺人者、って反則ぽいですが、でも謎解きはちゃんと
終わってますし。つーかもう謎どころではなくて。この重層殺人劇の幕引きや如何に……
>>邪神? さん
あぁシコル。キャラのみならず地の文からも軽んじられ、冷たい言葉を浴びせかけられ、
それでも自分の体を省みず仲間の指示に従い、攻防両面で文句なしの大活躍。前回も言い
ましたが、ユダ&スペックと違ってヒロイン的に可愛く、魅力的になってきましたよ彼は。
>>サマサさん(殺人クラブ、面白いけど絶対に邪道。情報皆無の総当りしかないって……)
建設巨人、ドラ世界でもああいう作品だったのであろうか。さておき、作中でも言われて
ますがバカ王子って……天才とバカor狂人は紙一重。つーか同居してますこの男は。さて、
爽快大爆発の今回から一転、次回は重くなりそう。でもそれも、きっと次へのチャージ。
>>147さん
ラッキーマンなら、ビーム一発で全部の星の全員を救えるんですけどねぇ。
俺は邪神さんの作品が一番好きだな
ロマサガが大好きってのもあるけど
夏に向けて怖い話とはタイムリーか?
150 :
作者の都合により名無しです:2006/06/08(木) 23:25:36 ID:qEiD8LPh0
138とかめっさ厨臭いなw
地上最強はオーガ。 (ねいてぃぶ・じゃぱにぃず・すぴぃかぁ)
地上最自由はオリバ。 (日本語検定三級)
宇宙最ツルツルはフリーザ。 (異国の民)
ツルツルお肌は舞空術の秘密。
新一は放課後、阿笠博士の実験室に入り、推理の確認を行う。
フリーザが空を飛ぶ原理、それは。
気球が空を飛ぶ原理……………………ではない。
飛行機が空を飛ぶ原理…………………でもない。
スペースシャトルが空を飛ぶ原理………これでもない。
それは、日常生活する上では、全く利用しない原理。
世界の99%の人間が知らないであろう原理。だが、高校生探偵工藤新一は知っている。
彼の推理力・知識力は世界屈指だ。当然、あの原理も知っていた。(※)
新一は阿笠博士の実験室で、装置を作り上げる。
阿笠博士の助手と2人で作り上げる。
そして、作り上げた装置を庭で確認する。
その装置は新一を舞空術の使い手へと変貌させた。
庭では一人の探偵が宙を舞っている。
その空には、拳大の彗星が輝いていた。
眞鍋医師の策を実行するため、勇子とコルドが手を組んだ。
眞鍋の策は『フリーザを男にする』と言うもの。
天才的外科技術を用いて、勇次郎のチ×コをフリーザに接続する。
簡単な策だった。
無論、相手が宇宙の帝王と言うこともあり、暴れないように気絶させてから
手術室に連れ込む必要がある。
だが、勇子&コルドの2人にかかれば、フリーザの一匹や二匹簡単に捕縛できる。
ま、つまり、作戦が成功すれば晴れてフリーザはオカマから男に逆戻り。
という事になるのだが……
しかし、眞鍋という人物を知っている読者は誰一人として、
『フリーザを男にする』作戦を信じようとはしないだろう。
『フリーザを "女" にする』ならば信じられる。
だが、"男" …… アリエナイ。
変態医師眞鍋が女ではなく、男。絶対にアリエナイ。
しかし、読者はともかく、コルドと勇子。
この2人は残念ながら、眞鍋の本性を知らない。
2人が真面目に作戦を遂行して、フリーザを手術室に入れたが最後、
萌えロリ美少女『フリー子』が誕生するはずである。
何も知らないコルドと勇子は確実にフリーザを捕縛するため、慎重に作戦を立てる。
「わたしとフリーザが互角ですから……やっぱり、あらかじめ弱らせたほうがいいですよね」
勇子が言う。コルドは俯きながら考える。
「しかし、息子を弱らせる力なんぞ、この星にはないぞ」
うーん……結局、ロクなアイデアが思い浮かばない。
で、出した結論は『何とかなるか』と言うもの。
ま、フリーザ捕まえて、気絶させるだけだもん。きっとできるよ、ネ?
勇子はそんな風に考えて、コルドに提案する。
「やっぱ、行動あるのみですよ。あんなオカマ私が確実に捕まえてみせます」
「オカマって……息子なんですけど」
「あ、ごめんなさい」
一瞬、顔面蒼白になるコルド。いったい、子孫はどうやって残せばいいんだろう。
だが、今はそんな事より気になることがある。
「実はな、勇子殿」
コルドが突然、話を変える。
「先日の戦いでは、フリーザはまだ使っていない”アイテム”があったんだ」
突然、コルドから告げられた事実に驚く勇子。
「使っていない”アイテム”?」
「あぁ、その”アイテム”とは……」
コルドが勇子に耳打ちする。
「まさか、嘘でしょ。そんな”アイテム”あるわけない!!」
「それが、あるんだよ。この広い宇宙にはな」
「そんなのがあったら、絶対に勝てない……」
「あぁ、そうだな」
絶望的なまでの効力を持ったアイテム。
勇子は自らの勝利のためには、奇跡を期待するしかなかった。
その日の夜、舞空術のトリックを作成する新一。
フリーザの謎の”アイテム”に震える勇子。
2人は明日の登校に備えて、それぞれの家で眠れぬ夜を過ごしていた。
翌日。昼休み、1人の男が放送室にいる。
彼はマイクを持ち、校舎全体に響く声でこう呟いた。
「レディース・アーンド・ジェントルメン !!
本日校庭で、素敵なショーをご覧に入れましょう。
その名も、舞空術。2年7組工藤新一君のショーです」
全校に放送が響き渡った直後、グラウンドの上空に1人の男が現れる。
空飛ぶ男、工藤新一だ。
彼は見事に舞空術を再現し、グラウンド上空を自在に舞っていた。
>>ふら〜りさん
うーむ、さすがに奇面組はおさえてましたか。天才です。
そんなわけで、連日の投稿です。
新一が空飛ぶ話を作ってみました。さてさて、彼はどうやって飛んだんでしょう。
正解者には、肩叩き券100枚プレゼントします。
もれなく、僕の肩を叩く権利がもらえますよ。
バキが完全に本舞台から降りてるなw
真一が空を飛ぶところとか、一応推理要素もあるのかw
新一がどんなネタで飛ぶのかはわからないが、どうせ下らない仕掛けで
しかも失敗するんだろうな、とはわかるw
■小林二郎【三】
玄関先に車を駐め、シュプールのホールに足を踏み入れた小林は、あまりの衝撃に言葉を失った。
そこには、通常の神経を持っている人間ならば、とても正視に堪えない光景があった。
滅茶苦茶に荒らされた室内。所構わず転がっている死体。
何なんだ、これは……!? がくがくと身体を震わせ、小林はその場にへたり込む。
これではまるで、一年前の、あの悪夢の一夜の再現のようではないか。
「あーあ。困るねぇ、契約違反は」
中央廊下の方向から声がして、四人の男たちが姿を見せた。
何処かで聞いた声だと思えば、知った顔がいた。以前小林に取引を持ちかけた男の一人である。
「こ、これは、この状況は、どういう……」
「質問する権利。回答する義務。どちらもない」
小林の問いは、一言で切り捨てられた。問答無用とばかりに、男たちが小林を取り囲む。
小林は、蛇に睨まれた蛙のように縮こまった。
すぐにでもこの場を逃げ出したかったのだが、腰が抜けてしまって立てそうにない。
「まったく。素直にこちらの要求を呑んで、おとなしくしていれば、人生一からやり直せたのに……
何だってこんな馬鹿な真似をするんだか、理解に苦しむよ。好奇心は猫を殺す、って諺、聞いた事ないかい?」
口ぶりから察するに、この男は、小林が単純な好奇心からここを訪れたと思っているようである。
「誠に遺憾だけれども、シュプールと一緒に灰になってもらう他なさそうだ」
「やはり、シュプールを……!?」
どうやら、小林の悪い予想は的中していたようだ。シュプールを燃やすのは、決定事項だったらしい。
「そりゃあ、そうでしょう。金額が金額だ。それだけに――」
「京。喋り過ぎ。口チャック」
隣に立つ男が、言葉を遮った。京と呼ばれた男が、ばつが悪そうに頭を掻く。
後ろから、誰かが小林を羽交い絞めにして、無理矢理立たせた。
猿轡のようにして、口に布が押し込められる。目の前の景色が、霞む。小林の意識は、ゆっくりと遠ざかっていった。
■?????
無残な姿で横たわる死体。至る所に飛び散った血痕。散乱していた家具。
それら全てが、驚くほどのスピードで片付けられていく。終わりの時が、刻一刻と近付いている。
計画が滞りなく終了した後、私が『どうなる』のかは、黒服たちの会話を聞いて知っていた。
私は焼かれ、灰になる。そして、ここで起きたすべてが、闇に葬られる。
私の願いを嘲笑うかのように、物語は最悪のエンディングに向かって突き進んでいた。
こうなってしまうと、今までに私が起こした『奇跡』が、全部偶然の産物であったような気さえしてしまう。
世界の法則を打ち破った……と、私自身思っている、三つの奇跡。
一つめ。犯人が、ハネダユカリさんが犯人だと世論を誘導していたのを止める為に、冷蔵庫の扉を開いた。
二つめ。伊藤さんを殺そうと置時計を振り上げている、旗元さんを思い止まらせた。
三つめ。引き戸を閉め、犯人を告発した伊藤さんを銃弾から守った。
実際、それらは奇跡的な偶然だったのかもしれない。
何せ、私が『生まれて』から今に至るまで、物理的な干渉を行えた事など一度も無いのだから。
意識を失って、ぐったりしているオーナーが、ホールの中央に放り出された。
真っ赤なポリタンクから、ごぽごぽと濁った音を立てて、可燃性の液体が注がれる。
間を置かず、種火が投げ込まれ、瞬く間に床一面は火の海になった。
目を瞑りたい。耳を塞ぎたい。今すぐ消えてしまいたい。
しかし、そのどれもが無理な相談だった。
それならば……と、私は祈る事にした。最後の奇跡が起こる事を信じて。
時間を戻してほしい、とか、火を消してほしい、とか、そんな高望みはしない。
ただ一言だけ、伝えたい。
「楽しい思い出を、ありがとう」
小林は朦朧とした意識の中で、誰かの声を聞いた。
とても優しくて暖かい、慈愛に満ちた声音だった。
それと同時に、走馬灯のように、数々の思い出が驚くべき鮮明さを以って、頭の中に映像として浮かび上がってくる。
どれも、殺人事件が起こる前――平穏だった、あの頃の記憶ばかりだ。
しかし、生と死の境を彷徨っている小林は気付かなかった。
その中に、小林が目にしていない光景が含まれている事実に。
楽しい思い出を、ありがとう。
素敵な名前を、ありがとう。
大切に想ってくれて、ありがとう。
火の手は益々激しさを増し、ホール全域を覆い尽くそうとしていた。
オーナーの手が、虚空を掴むように、天に向かって伸びる。
唇が、微かに動く。ああ、と、そう返事をしてくれているような気がした。
* * * * * *
強風に煽られ、触手のように蠢く炎が、シュプールを包む。
夜空へと舞い上がり、散って行く火の粉は、幾多の魂が天へと還って行く様を思わせた。
硝子が割れ……壁が崩れ……柱が倒れ……
数時間も経たない内に、美しかったシュプールの外観は、瓦礫の山に成り果てる。
まだちりちりと燻る黒煙の向こう側。流れ星が一つ、金色の軌跡を描いて闇に消えた。
殺人黙示録カマイタチ 了
162 :
おまけ:2006/06/09(金) 15:25:55 ID:YV3RmN1f0
ゲーム結果発表
■世話役
テラー(一条)……死亡
一日目夜。オーナー控え室で、犯人に全身を切り刻まれ死亡。
ハネダユカリ……死亡
一日目夜。犯人に絞殺された後、全身の関節を砕かれ、冷蔵庫に押し込められる。
■ゲーム参加者
ナンバー一・夕凪理沙<探偵>……死亡
二日目夜。一号室で、犯人に首の骨を折られ死亡。
ナンバー二・笠間潤<探偵>……死亡
二日目昼。二号室トイレで、犯人に鈍器で頭部を滅多打ちにされ死亡。
ナンバー三・香坂まどか<探偵>……死亡
一日目夜。三号室で、犯人に青酸ソーダを無理矢理飲まされ死亡。
ナンバー四・伊藤開司<探偵>……生存
犯人を告発し、身柄を確保する。賞金一億円を獲得。
ナンバー五・小此木秀平<探偵>……死亡
二日目夜。八号室で、双葉夕実にサイドボードの角に額を打ちつけられ死亡。
163 :
おまけ:2006/06/09(金) 15:26:28 ID:YV3RmN1f0
ナンバー六・玉崎真吾(本名・江本厚)<探偵>……行方不明
二日目夜。黒の組織に身柄を確保される。
ナンバー七・旗元太<探偵>……死亡
二日目夜。ホールで、犯人に拳銃で頭を打ち抜かれ死亡。
ナンバー八・双葉夕実<探偵>……死亡
二日目夜。八号室バスルームで、果物ナイフで手首を切り自殺。
ナンバー九・只野文男<犯人>……死亡
二日目夜。双葉夕実にアイスピックで喉を一突きにされ死亡。
ナンバー十・黒川時子<探偵>……死亡
二日目夜。疑心暗鬼の末にパニック状態に陥り、四号室で心臓麻痺を起こし死亡。
■その他
夕凪芳江……死亡
二ヶ月後、自宅一階の和室で首を吊っている所を新聞配達員に発見される。
娘が行方不明になって以来、精神に変調をきたしていたとの近隣住民の証言あり。
捜査の結果、遺書は発見されなかった。警察は衝動的な自殺であると断定した。
旗元梓……死亡
四ヶ月後、某大学病院にて心不全で息を引き取る。享年十三歳。
終わった、終わりましたー。
『殺人黙示録カマイタチ』無事完結です。前回投稿は
>>98になります。
今まで長いこと、ありがとうございました!
・次回
今はまだ、方向性含め何にも考えておりませんが……
でもまた何か書きます。きっと。その時はよろしくお願いします。
・雑感
今回初めてここでSSを書いてみて、長編連載している方の苦労が身に沁みました。
筋書きが固まっていた為、後半は多少楽でしたけど、中盤は……
・最後に
正直、割と行き当たりばったりな部分もありましたが
どうにか「プリンセス・ヒョウドウ」とかそういうことにもならず纏まって、安心しました。
今まで作品を享受する側であった私が、最初から最後まで書き上げられたのも
保管してくださったバレさん、感想をくださったふら〜りさんやみなさん。
過去に作品を書き上げた職人さん、また、現在連載中の職人さんのおかげであります。
本当にありがとうございました。
完結を契機に、暫しの間(一ヶ月くらい?)ROMに戻ります。
また、何かSSにしたい題材が見つかり次第、戻って来れたらと思っております。
それでは一先ず、お疲れ様でした。
終わってしまったか・・
超名作お疲れです。
本当に本当に、復帰をお待ちしております!
166 :
作者の都合により名無しです:2006/06/09(金) 21:24:20 ID:7EUs+dPQ0
最後の最後まで、スリリングかつ緻密な展開に何度唸らされてきた事か。
バキスレだけでなく、あらゆるSSの中でも最高峰の作品だと思います。
本当にお疲れ様でした。
しばしおやすみになって、また凄い作品を引っさげて帰ってきて下さい!
最初から最後までトップを走り続けた作品だったな。珍しい。
お疲れ様でした。
最後の???の独白は綺麗でしたけど、
やはりゲーム結果発表を見ると壮絶なほど
むごい結果だなぁ。
それでも、この作品が終わるのは心から寂しい。
見てた人さん、早い復活を心より願ってます。
見事に完結まで突っ走ったな
ひとつも無駄がない話し運びが美しいとさえ思った
しかしカイジは無事に一億円ゲットできたのか
てっきり最後にオチがついてほとんど失うとばかり思ってたので意外
見てた人さん、まずは完結お疲れ様でした。
最後まで非常に楽しませていただきました。
しかし結果を見るとカイジ以外見事に全滅・・・
いつかバッドエンド回避ルートが見てみたいです。
それでは、次回作をお待ちしております。
凄惨な事件にある意味相応しい、静かなラストっすね。
カマイタチさん乙でした!
犯罪的に…!
面白すぎ………!!
見てた人乙。最高の娯楽をありがとう
(むしろプリンセスヒョウドウ見てえwwww)
175 :
作者の都合により名無しです:2006/06/10(土) 07:27:59 ID:Qt3fkUM20
カマイタチさんお疲れ様でした。本当に素晴らしい作品でした。
また、我々を楽しませてくれる作品をお待ちしております。
しばらく寂しくなっちゃうな。
サナダムシさんやパオさん、うみにんさん、しぇきさんの復活を強く望む。
連載中の職人さん方も、当然応援していますよ!
176 :
172:2006/06/10(土) 13:27:41 ID:2NaxzxQy0
>>174 ゴメン、一目見て気に入ってしまったから、つい・・・
>172>176
全力全開乙
178 :
作者の都合により名無しです:2006/06/10(土) 21:19:54 ID:kQj+u/8q0
見てた人さんお疲れ様でした。
最初から最後まで綿密に作り込まれた物語に驚愕しました。
次も是非、お願いします!
しかし、他の方は中々作品投下しづらいでしょうなw
でも、欲を言えば毎日読みたいので是非どなたかお願いします!
では、お言葉に甘えて投稿してもよろしいでしょうか?
180 :
作者の都合により名無しです:2006/06/10(土) 21:39:17 ID:kQj+u/8q0
どうぞ、がんばって下さい!
結局こないのかw
まあ、ゆっくり待つとしようか。
フリーザ君が女の子になると可愛いだろうな。
あのツルツルお肌は捨てがたい。
勇子とコルドには『フリーザを男にする』と言った。
あれはウソだ。
ま、当然、嘘だとバレたら命が危ない。
コルドさんも、勇子ちゃんも喧嘩は強そうだしね。
僕なんか、すぐに殺されちゃうだろうな。
けれど、考えても見たまえ。
自分の手で、3次元の萌え美少女が誕生するんだぞ。
男なら、一生を、命を賭けるに値するとは思わないか?
たとえ、誰を騙そうとも
たとえ、末代まで汚名を着せられようとも。
成し遂げる価値がある。
それが、3次元美少女製造。
ま、僕の趣味を理解できない人間もいるだろうけどね。
かわいそうだなぁ……。この素晴らしさを理解できないなんて。
楽しみに待ってるよ。絶対フリーザ君を連れてきてね。
新一って昔から凄いと思ってたけど、ついに空を飛んじゃった。
まさに飛行少年ね。
ま、どうせ阿笠博士に変な装置作ってもらったんでしょ。
私には分かってんだからね。
あ〜あ、隣のフリーザ君なんか震えちゃってるよ。可愛そうに……。
新一はね、あぁ言う奴なの。あんまり真面目に相手にしてたら変になっちゃうよ。
「ほ、欲しい。 彼、凄く欲しいよ」
え? フリーザ君、何言ってるの? 『欲しい』って何?
後ろの穴に欲しいの? やばいよ、いくらオカマって言っても、まだ高校生じゃない。
まぁ、新一は素敵だからオカマのフリーザ君が惚れるのも仕方ないけどね。
でもね、新一は私のあn(ry。
って、私ったら何を妄想してるの。フリーザ君が変な事言うからよ。
でもね、新一。自分ひとりで飛んでないで、私にも飛ぶようなカイカンを味あわせてね。
−−フリーザが浮かび上がり、2年7組の窓からグラウンドに降りる。
え? 何、フリーザ君も飛べるの?
私の彼は飛行少年。飛行少年が二人。私の彼は2人。
キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
校庭には4人の人間が集まっていた。
空を飛ぶ新一。それを見つめるフリーザ。物陰に隠れてチャンスをうかがう勇子とコルド。
新一がどうやって飛んでいるのか全く分からないが、フリーザにとってはどうでもいい事だった。
フリーザにとっては新一の頭脳が人並み外れている事だけが重要である。
(どうせ、下らないトリックに決まっている)
フリーザはそう考えている。だが、トリックが問題なのではない。
事実として、空を飛んでいる。 その事が重要なのだ。
(並の人間にはできませんからね)
フリーザはそう考える。新一の頭脳が素晴らしいことは、もう疑うべきではない。
新一に見とれるフリーザのすぐ近くに、校舎の陰に隠れたコルドと勇子がいる。
(勇子殿、どうする?)
(コルドさんがエネルギー弾で目くらましで、私が攻撃)
(OK)
コルドはフリーザの足元めがけてエネルギー弾を乱射する。瞬時にフリーザの視界が狭くなる。
(チャンス!)
勇子が攻撃を仕掛けた。
一撃。勇子の攻撃がフリーザにヒットする。目暗ましの中、身を隠した完璧な攻撃。
だが、かわされた。
「来ると分かっていれば、それなりの対応ができますよ」
フリーザは、突然砂埃に視界が消されたため、攻撃があると予測していたのだ。
「っち」
初手を防がれた勇子。だが、その体は休まる事無く動く。
フリーザを気絶させ、眞鍋診療所に連れて行く。そうすればフリーザは男になる。
そうすれば、自分は勝てる。バキを巡る恋の勝負に。
勇子は焦る。フリーザが”秘密のアイテム”を使えば、勝負は決する。
自分は負ける、バキはフリーザを選ぶ。その種の”アイテム”が存在する。
だから焦る。ここで勝負を決めると。
フリーザは、勇子の焦りを感じていた。
「詰まらないね、今の君ならフルパワーの約50%も出せば宇宙のチリにできるよ」
「冗談でしょ、ハッタリ利かせすぎだよ」
だが、勇子の焦りは攻撃を単調にする。
単調であれば、フリーザと自分の力の差は開く。
差が開けば、余計に焦る。 悪循環だ。
このままでは勝てない。勇子も、コルドも、いやその場にいる全員が思い始めてきた。
新一は目の前で突然始まった闘いに、一瞬当惑した。
だが、すぐに持ち直す。
「おい、お前ら、止めろ。相手を傷つけて何が楽しい」
だが、彼の声は届かない。
数秒もしないうち(フリーザや勇子にとっては長い時間だが)に、勇子は瀕死の状態にまで追い込まれた。
(もう駄目、打つ手がない)
奇跡が起こらない限り、自分に勝ち目がない。駄目だ。奇跡なんて都合よく起こるわけがない。
そう思った刹那。奇跡が起きようとしていた。
上空に光り輝く、巨大な天体。彗星だ。数日前から地球に接近していた彗星。
その彗星が、空飛ぶ新一のすぐ近くまで降りてきている。
「マズイ」
フリーザが反応する。
新一を守らねば。彼はフリーザ軍に必要な男だ。隕石の落下如きで失うわけには行かない。
大丈夫、自分なら止められる。隕石の一つや二つ。自分は宇宙の帝王だ。
そんなわけで、隕石落下です。
まぁ、新一の舞空術の正体は次回説明することにします。
あと、思うんですけど。蘭って絶対、新一が高校生のままだったら処女なくしてますよね?
あ、ゴメンナサイ。変な事いってしまいました。
気になさらないように。
>>見てた人さん。
復活をお待ちしております。っていうか、絶対に戻ってきてくださいね。
そのときは、カマイタチと違ってリアルタイムで読めるわけですから。
僕はカマイタチをリアルタイムで読んでないんです……
なんで、絶対新作を読ませてください。お願いします。
188 :
作者の都合により名無しです:2006/06/11(日) 08:35:39 ID:kzY8SVzv0
お疲れ様ですパパカノさん。
3次元の萌え美少女かあ。ポリゴンみたいになるんだろうか?手触りはどうだろう?
さすがの勇子も宇宙の帝王にはやや劣勢なのか。
この戦いと、恋の戦いにも期待してます!
俺はこのセンスが好きだ。がんばれ
ちゃんと人気職人に媚びを売ることも忘れてないな。
エラいぞ!
彗星=スプー彗星に違いない!!
ともかくお疲れ様です!!
192 :
第3話続き:2006/06/11(日) 18:39:59 ID:kXCp6B98O
ttp://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/fullpower/03.htm より
7月16日(日) 7:00 茨城県隆宮市
洋風・東欧系建築のお屋敷、月村家。
そろそろ朝食の時間、廊下を歩く人影が二つ。
「……」
「……」
訓練が終了して、帰ってきたティアナとのび太。『赤熟もぎり王様トマト』ばりに真っ赤な顔で二人並んで歩いていた。(さっき間違って『ふたなりらんで』と打ってしまった。危うく内容が160度程転換してしまうところだった)
否、並んでいることを考慮に入れると、パリーグの某野球選手の打席テーマと似ていると一部で囁かれている大塚愛のデビューシングルのタイトルの方が妥当か。
「……」(こ、こういう時はどうすればいいんだろう…)
「……」(勢いでやっちゃったけど、これじゃ顔も見られないよ…)
このようなことを考えつつ、黙々とダイニングルームへと向かうのだった。
つーかティアナ、字面だけ見るとやばい方向に誤解されるだろ。
さてさて、今日も書くぞ
その頃、既にダイニングにいたのは、
「のび太の奴、自分だけ女の子と仲良くなりやがって!」
「そうだそうだ!のび太のくせに生意気だ!」
…いつも通りな感じのこいつらだった。
朝食を待ちつつのび太が来たらどうしてくれよう、などと不穏な会話をしていると、
―キィ―
タイミングが良いやら悪いやら、気まずいままの二人が入ってきた。
「のび太ぁ、許さん!!」
これを期とみたわけでもなく、衝動的に殴りにかかるジャイアン。
「うゎぁぁぁぁっ!!」
しかしいつもはいない人が今はいた。
「いじめちゃ、ダメッ!!」
ガッ、と長身から角度のあるチョップが極(き)まる。
こうかはばつぐんだ!
ジャイアンはたおれた!
ティアナ制裁チョップは破壊力。(片桐姫子手記風)
「―大丈夫?まさか倒れるとは思わなかったからびっくりしちゃった」
「だ、大丈夫デス」
妙に素直なジャイアン。どうやら『恐いものランキング』で『かあちゃん』に次いで2位にランクインしたらしい。
ジャイアンはスネ夫を連れて、逃げるようにティアナから遠くの席へ移った。
「これじゃ、のび太は使えないか」
「どういうこと?ジャイアン」
「実はな、オレ…」
どうも既視感のあるようなションボリ具合である。
「水臭いなあ、早く言ってよ」
「オレょぅ、惚れちまったんだょ」
語尾はしぼんでいる。
「工工エエェェェェエエ工工 誰に?」
「ここの家の、すずかさんて人だ…なぁスネ夫、うまく取り持ってくれないか?」
ジャイアンはおしとやかな娘が好みのようだ。
スネ夫の脳内を打算が駆け巡る。ここで巧く立ち回れば…
「じゃあ、オーソドックスな案があるんだけど、どう?」
「そのホットドックな奴で頼む」
「オーソドックスだよ、ジャイアン。じゃ、機械が来たらすぐにでも」
「おお、心の友よ!」
作戦は至ってシンプル。スネ夫がすずかをいじめ、ジャイアンがそれを助けに入るというものである。
即興で出てきたにしては、ジャイアンの長所を見せるという点においてベターである。
室内にいると、またティアナに止められるので、廊下に出ることにした。
待つこと十数分。すずかがやってきた。しかも一人で。チャンス!
「ウェェェェィ!」
奇声を挙げつつ突攻するスネ夫。が、大きな穴があった。
「キャッ!」
投げ飛ばしてしまった。
スネ夫が、でなくスネ夫を、である。哀れスネ夫、気絶してしまった。
とらハ系ヒロインは、ほとんどが普通の男より強いのである。
かくして、スネ夫の取り持ち作戦その1は失敗に終わった。
どうも、この前のきよしとこの夜をみて、西川貴教のANNがまた聞きたくなった者です。
描写って難しい…時間かかりすぎた…
それに冗長病(某ラノベ作家命名)もどうにかしないと…
時間がないのでコメントは次に回しますが、ひとつだけ。
見てた人さんお疲れさまでした。私も仕掛けが思いつき次第こういうのを書いてみたいです。
193さん、邪魔してすみませんでした。気が付かなかったもので…
いえいえ、こちらこそ御免なさい。
それはそうと、お疲れ様です。
全力全開さん、あなたに言いたい事がある。お願いだからカキコする前に推鼓してくれ。
内容が良くても肝心の文法が間違ってるとSS自体の価値が下がる。
やっべ、他人事じゃねぇ
後「すずか」って誰だ?しずかちゃんか?
>197
大丈夫。皆お前の存在に気付いてないから
てか死ね。氏ねじゃなくて死ね
204 :
ふら〜り:2006/06/11(日) 21:06:03 ID:6m+ZE0jW0
>>見てた人さん
お疲れ様でしたああああぁぁっ! 他の皆さんも言っておられる通り、バキスレの歴史上
非常に珍しい物語形式、類を見ない重厚さ、そして屈指の面白さでした。アリガトオォッ!
で完結の祝辞に続いて感想……ぅあヒドい。最後の最後に奇跡的な救いの手を差し伸べる
のがSかと思ってましたが、三つの奇跡さえ偶然かも、って……永く忘れられそうにない
です、この読後感。でもそれは創作の目標の一つ。忘れられない作品、いつかは私もっ。
>>41さん
フィギュアとかを見る限り、二次元ならではって要素もあると思うけどなぁ。とか言える
だけ、眞鍋医師は本作世界ではマトモな人に思える。新一もフリーザも勇子もコルドも蘭も、
突っ込みどころの塊でもう。次回、彗星に乗って誰が来たって、もう驚かない……と思う。
>>全力全開さん(スネ夫のかけ声、もしやオンドゥル王子?)
ジャイアンとスネ夫、原作のパターンをきっちり踏襲しててニヤリとさせられました。が、
その後の展開は本作ならではでしたね。のび太と強い女の子が組むってのは見ますけど、
ジャイアンがそういう子を好きになると……強さ以外の魅力で勝負? 難しそうだなぁ。
>>今回は
重いのを読んで溜息つきつつ向上心に燃え、
その次に頭の中を縦横無尽に掻き回されて、
最後はほんわりと子供らしい可愛さで締め。
それらが、まとめサイトでいつでも読める。
職人さん&バレさん、いつもありがとうございます。
205 :
作者の都合により名無しです:2006/06/11(日) 21:38:43 ID:1bZ7TMR40
俺は全力全快氏の作品好きだけどね。
スネ夫のアホな姿とかほほえましい。
誰だって最初の一歩はある。
その一歩をこけさせようとしたら新人さんは育たんよ。
頑張れ全力さん。
孫悟空は瞬間移動のお礼に元気玉を教えてあげた。
彼は親切な人である。あぁ〜〜とっても、いい人。
その玉は流れ流れて、ただ今帝丹高校上空。
罪もない17歳の高校生が、元気玉の犠牲になろうとしている。
そう、彗星の正体は元気玉。
風が吹けば桶屋が儲かると言うが、多分風が吹くと損をする商売もある。
桶屋さんのために、風を吹いてくれる風神さん。
きっと『いい人』なんだろう。
ま、そんな話はともかく。新一の真上に彗星がキタ━━━━(゚∀ ゚)━━━━ !!!!!
フリーザは工藤新一を軍にスカウトするため、その身を張って彗星を阻止する。
「こんなもの、オカマ舐めんな。生半可な覚悟でやってんじゃねーんだ!!」
フリーザが吼える。
隣で新一が考える。
馬鹿な。フリーザは種も仕掛けもある人間。そのハズだ。
けれど、フリーザはその身をもって隕石を受け止めている。
不可能な事を除いていって、たった1つ残ったものが『真実』
どれだけ信じられなくても、それこそが『真実』
ホームズが教えてくれた真実の見つけ方。哲学用語で『オッカムの剃刀』とも言う。
(アイツ、マジに宇宙人かよ……)
信じられない。だが、確かに起こる現実。
心なしか、空飛ぶ新一の体が小さくなる。 先ほどより、少し小さい。
どこからか、空気の抜ける音がする。
(まずい)
フリーザの事が気にかかるが、校庭で空を飛ぶ『新一君舞空術記念1号』の空気が抜けかかっている。
気づかれないうちに回収しなくては。
そう、新一が再現した舞空術は全くの偽者。
自分そっくりの人形に空気を入れて飛ばす。
人形の移動はイオンクラフトで行う。
新一はフリーザのツルツル肌を見た時、最初は着ぐるみだと思った。
だが、推理を進めるにつれて、フリーザの体をただの人形と思うようになったのだ。
新一の考えはこうだ。
質量の軽い人形を作成し、それにイオンクラフトで推進力をつける。
そして、それを遠くからリモコンで操作する。
イオンクラフトは力が弱く、人間1人を自在に動かす事はできないが、空気の入った人形なら別だ。
これこそ、舞空術の正体
正体を掴んだら、後は簡単。
阿笠博士の助手ジェバンニが舞空術の装置を一晩で作ってくれた。
新一はそれを放送室から操ればいい。 簡単なトリックだ。
だが今、人形の空気が抜けかかっている。恐らく隕石とフリーザの衝突時に衝撃を受けたのだろう。
マズい。回収しなくては。 新一は校庭へと走り出した。
因みに、この事は中高生にとって肝に置くべき事であろう。
どんなに優れた人材であっても、一夜漬けなどすべきではない。
デス■ートのジェバンニの話はあくまでフィクションである。
中高生諸君。テスト前に一夜漬けをするのではなく、日頃からコツコツ勉強しよう。
工藤新一は校庭に出て、人形を回収する。
隕石と格闘するフリーザの視界に入らぬ様、そーっと、そーっと人形に近づいていく。
一方のフリーザは隕石と格闘している。
隕石を宇宙に蹴り返す事が、自分には可能だと信じている。
だが、彼には3つの誤算があった。
1つ目は、敵が隕石ではなく『元気玉』だという事。
2つ目は、『元気玉』がただのサイヤ人でなく、超サイヤ人の放ったものだという事。
そして
3つ目は、グラウンドに勇子がいる事。
フリーザは、必死に隕石を宇宙に押し戻そうとする。
まさに地球の救世主だ。
だが、その背後から勇子の蹴り。
フリーザの体が隕石、元気玉の中に押し込められる。一瞬のうちに、元気玉のエネルギーがフリーザに注がれる。
それは、地球襲来時のベジータの様に。あの出来損ないの打ち上げ花火と同じように。
フリーザは元気玉の力によって、遠く上空に弾き飛ばされてしまった。
そして、元気玉はその力を全てフリーザに注ぎこみ消えた……
けれど元気玉の残した脅威は、まだ終わった訳では無かったのである。
フリーザが弾かれた時、その体が宇宙船に激突してしまった。
運が悪い事に、宇宙船の中には究極の”アイテム”が積まれていた。
それは、一見するとただの水。けれど、その正体は世界中の男達の欲望を叶える究極の水。
その水が零れてしまった。
宇宙船から船内外の双方に放送が流れる。
『緊急警報、緊急警報。ただ今、宇宙船から”水”がこぼれました。宇宙船の傍にいる人々は直ぐに非難してください』
(水?)
勇子、新一、コルドの三人が放送を聞く。
勇子 :「何、ヤバい水なの。 毒水か何か?」 勇子は100万を超える戦闘力をフルに発揮して逃げ出す。
コルド:「ふん。息子なら『水』を被ったかも知れないが、ワシには不要だ」 コルドは勇子の後を追う。
新一……
彼はジェバンニの作った人形を回収してから逃げようと決意していた。
「大丈夫、逃げる時間はある」
根拠のない自信。強がり。それは、人形を見られたら恥ずかしいという気持ちの表れに他ならない。
だが、彼が人形を掴んだその瞬間。
宇宙船から零れ出た水が、新一に降りかかった。
呪泉郷にある1つの泉。幼女溺泉。
『四千年前、1人の幼女が溺れてしまった悲劇的泉』
以来、そこで溺れた者は皆、幼女の姿になってしまう。
フリーザの『水』はここで汲み上げた水だ。
これは、恋愛における究極の”アイテム”と言っていいだろう。
否、アイテムではなく既に兵器かもしれない。
どの男も結婚してから、日ごとに老いる妻を見て、この水を欲するのではないだろうか。
まさに世界中の男の憧れ。 これこそが、フリーザのリーサルウェポンだったのだ。
その『水』が今、工藤新一の身に降りかかった。
17歳の工藤新一が7歳の幼女に変わった瞬間である。
見た目は幼女、頭脳は××。迷探偵の誕生だ。
その日の午後、幼女の姿になり、幼馴染の蘭からも気付かれなかった新一は1人寂しく帰路につく。
(バーロ……)
誰にでもなく、自分に対して呟いた言葉。
フリーザが宇宙人だと最初から信じていれば、舞空術を再現しようとしなかっただろう。
『水』の脅威を知っていれば、グラウンドから直ぐに逃げ出しただろう。
そう、結局はフリーザの言葉を信じなかった自分が悪い。
結局は逃げ出さなかった自分が悪い。
こんな姿になっちまって、蘭に会わせる顔がねぇ……
そう思いながら、家の前まで来た。不幸中の幸いだろう、新一の両親、優作と有希子は海外で暮らしている。
親にはバレないな。そう思いながら苦笑する。
新一が家に入ろうとしたとき、玄関の隣に1人のオカマがいることに気付いた。
フリーザだった。
「工藤君。私のせいで、そのような姿にさせてしまって申し訳ありません」
「構わねぇよ……」
アンタのせいじゃなく、自分のせいだ。
「私に責任をとらせてください。あの『水』を持ってきたのは私なのですから……」
「バーロ。どうやって責任取るって言うんだ」
悪いのは俺なんだ。責任なんていいよ。
けれど、フリーザの眼差しは真剣そのものだ。
「貴方に宇宙一の名誉と栄光を……」
「宇宙一の名誉と栄光?」
「わが軍の参謀になってください、名探偵:工藤新一」
そんなわけで、またまた真面目な展開を少し書いてしまいました。
反省してます。ギャグSSを目指してるのですが難しいですね。
イオンクラフトについてはこちらをご覧ください。
ttp://www.hamusuta.net/openbbs/pc/ion/ そんなわけです。
あと全力さん、あんま周りは気にせずに頑張って下さいね。
あ……でも、気にしたほうが良い意見もあるみたいですけど。
今回はちゃんと、推敲しましたw
映像を叩き台にしたSSとはアイデアだな
意外と、真面目な用語も出てきたりしてギャグだけでないという姿勢は楽しい。
しかし、萌え少女だらけだなwかなり危ない連中が多いがw
節操無さすぎw
「次は・・・私が話しましょうか。」
3回目の怪談は柳となった、風前の灯火となった
シコルスキーも、恐怖と期待に膨れ上がる胸の高鳴りを抑える。
「妖怪話もいいかと思いましたが、日本の歴史を知らなければ
楽しめそうに無い物ばかりなので今回は普通の怪談を・・・。」
日本特有の座り方である正座をしながら、柳が語りを始める。
顔を俯けながらも背筋は伸ばされ、美しい姿勢を維持している。
「宝石、知らない訳は無いでしょう、私達は犯罪者なのですから。
あの美しい輝き、或いは石に伝わる伝承に心奪われた者達を見た事がある筈です。
その宝石に心奪われた者の悲惨な末路を話すとしますか。」
虚ろな瞳を瞬かせ、微笑を顔に浮ばせる、
まるで本当に何かに取り付かれているかの様に。
巧みな話術を用いる訳では無く、身体を用いて恐怖を体現する。
表情、仕草、四肢の先端に至るまで操作する事で、「演技」する、
これもまた、相手を騙すのに必要な技術である。
「これは占い好きな少女の話でしてね、その少女は占いを信じ続けた。
そしてある日、どんな願いも叶える宝石[ラピスラズリ]の話を耳にしてしまいました。
その噂を聞いた少女は、恋焦がれる様にしてラピスラズリを求めたのです。
だがラピスラズリは当時は高級な宝石として知られ、働いている
訳でも無い平凡な少女には、とても手の届かない代物。少女は
何とかして手に入れる事が出来ないかと悩み続ける日々を送る事になりました。」
「悩み続ける少女はとんでもない話を聞いてしまったのです。
少女の友人の知り合いの女性が、そのラピスラズリを手にしてしまった事を。
しかも、噂通りそのラピスラズリを手にした女性は、石を手に入れてからというもの、
本当に運をその手に掴んでしまった。ラピスラズリを手にして間も無く、
富豪でありながら優しい旦那を手に入れたりね。」
「少女はラピスラズリに対する憧れと彼女への嫉妬に燃えていた。
どうしてラピスラズリの所持者が自分じゃないのか、何故、
その女がラピスラズリを持ち合わせているのか・・・。
光り輝くラピスラズリは私の手にあるべきなのだ!」
柳の眼が濃く、強く、深い憎しみの念を映し出す。
その場の誰もが、恐怖に包み込まれるのに時間は掛からなかった。
「少女は友人を使って、彼女のラピスラズリについて調べました。
すると彼女が幸せになる筈、ラピスラズリの中でも
最高の晩品、[ルーベライズ]という代物だったのです、
その事実は彼女を更なる絶望へと追い込みました。
普通のラピスラズリも買えない少女が、どうして
そんな高価な宝石を手に入れられるでしょう。」
「フッ、悩む事は無い、欲しいのなら奪えばいい話だ。」
ユダが少女の悩みを嘲笑う様に口を挿む。
これには全員が納得してしまった、ここにいる誰もが
犯罪者なのだから当然と言えば当然だ、だが柳が
納得したのはそれだけが理由ではなかった。
「流石ですなユダさん、その通りです。
彼女はルーベライズを奪う事にしたのです。」
なんと、ユダの予想は当たってしまったのだ。
予想もしなかった答えに凍りつく
一同を尻目に、柳が話を続ける。
「彼女にとってはですが、幸運にもルーベライズを
持っていた女性が交通事故で死んでしまったのです。
幸運を呼ぶ石、ルーベライズを持ちながら何故、死んだのか。
普通ならば、石の力など迷信だといって放って置くでしょう。
ですが彼女は違いました、ルーベライズが自分を選んだのだ。
そう思う様になってしまったのです。」
「友人の話によると死んだ方もルーベライズに
執着していた様でしてね、遺書にはこう書かれていたのです。
ルーベライズも一緒に埋めてくれ、と。それを聞いた
彼女はその晩、早速ルーベライズを掘り出しに、
墓地へと向かいました。」
「彼女は墓を暴きました、墓石をどかし、骨壷を叩き割ると、
中の骨を撒き散らして宝石がないか、懐中電灯を片手に探しました。
遺灰を照らすと、美しく光り輝く石を見つけたのです。
骨と共に埋もれていたルーベライズは、こびり付いた
土の隙間から美しく輝き、首から掛けるためのシルバーの
チェーンは飾り気が無く、清楚な雰囲気を保っていました。
それを掴み取った少女は墓石を元に戻し、割れた骨壷を
埋めると人が来ない内に自宅へと戻る事にしました。
やっと手に入った、これで私は薔薇色の人生を送れる。
意気揚々とこれからの人生に思考を巡らせる少女に、
裁きの時が訪れたのです。」
「嫌な予感を感じ取った彼女は窓へと眼を向けました。
すると、そこには死んだ筈のルーベライズの持主の姿が映っていたのです。
少女は逃げようとドアの取っ手を回しましたがどういう訳か、
ドアはビクともしませんでした。後ろを振り返り窓の方を向くと、
彼女は笑顔でルーベライズを差し出していたのです。
少女は幽霊が盗まなくてもいいと諭している様に見えてしまったのです。
そして少女は差し出した手にあるルーベライズを掴み取りました。
ですが渡されたのは宝石だけでした、シルバーのチェーンがありません。
少女は宝石を失わなかった事を喜ぶ余りその事に気がつきませんでした。
次の日、彼女は起こしに来た両親に死体となって発見されました。
首には何かが巻きついた跡が残っており、口には灰が詰められていました。
そしてその手には、どこにでもある普通の石ころが力強く握られていました。」
「少し長くなってしまいましたが、私の話はこれで終わりです。」
柳が保っていた正座の姿勢を崩す、それと同時にシコルが襲い掛かる。
「南無大慈大悲救苦救難広大霊感!退魔神剣!」
どこからともなく取り出した刀を持ち、呪文を唱えながら斬りかかる。
座った状態から咄嗟に横へと転がって危機を回避する。
「シ、シコルス!何をしている!」
ドイルが急いでシコルスキーを羽交い絞めにする。
身動きを取れないシコルスキーの腕をチョップでへし折るドリアン。
刀が地面に落ちると正気を取り戻したのか大人しくなるシコル。
「くっ、柳、大丈ぶっ!」
正気を取り戻した事に気がつかなかったスペックの一撃で、顎の骨が砕けた。
急いで水術で回復させ事の成り行きを説明するシコルスキー。
「いや・・・怪談が進むに連れて、柳の様子がアブナイ人っぽくなってくからさ、
どうにかしようとした時に、岩陰にあったこの刀から不思議な力を感じて・・・。」
そこから先は薄っすらとしか覚えていない様だ、妖刀の一種だろうか。
柳がそれを手に取り、刃の部分を見つめると周囲を見回した。
「鞘はないだろうか?この手の物は作った人間が危険を感じて、
鞘に封呪の力を取り込むとこの世界の文献には載っていた筈。」
皆で周囲の岩陰を探すとすぐにそれは見つかった。
長さも、装飾から感じ取れる年代も恐らくは同じ物。
刀を鞘に収めると柳はその刀を気に入ったのか、
薄気味悪い笑みを浮かべながらシコルスキーを見つめた。
「これは中々の業物、血を吸えばもっと・・・。」
こうして再び洞窟はロシア人の鮮血で赤黒く染まった。
全ての怪談が終わった時、誰もがこの中の誰か一人が、
消えてしまいそうな予感がしていた。
222 :
邪神?:2006/06/12(月) 16:16:22 ID:lukjCLMJ0
北斗の格ゲー動画を見るたび、ケンシロウが「ヒヤッフゥ!」
と叫んでいるのに、ほくそえんでいる邪神です。
前回のユダの台詞の違和感に気付いたりする今日この頃。
>>「言い出すだけの事はあったな、興味を惹かれたな。」
2連続で「な」で終わる文って可笑しいよね?
「言い出すだけの事はあったな、興味を惹かれた。」
なら自然なのでしょうか、バレ様見てたら頼みますorz
そして大分前に話した漫画キャラの追加ですが、
本が揃ったので出るかも知れません。
それでは今日の講座でございます。
〜今日の講座〜
ルーベライズ 世間一般にパワーストーンと呼ばれる石、
ラピスラズリの最高級品らしい。
だが幸運も不幸も呼びよせる石でもある。
実在しているかは不明。
退魔神剣 ロマサガ2、最も弱い大剣に備わる対アンデット技。
攻撃が弱くても退魔神剣でアンデッドを全滅させられるので終盤まで使える。
閃いたら迷わず携帯しよう。しかし剣って血吸うと切れ味鈍るんじゃ?
223 :
邪神?:2006/06/12(月) 16:29:07 ID:lukjCLMJ0
〜感謝〜
ふら〜り氏 >>ユダ&スペックと違ってヒロイン的に可愛く、魅力的になってきましたよ彼は。
ヒロイン・・・もしや新たな「うほっ」を生み出せと言うのか!
死刑囚仲間か花山か、悩む所ですな・・・・・何やってるんだろう、俺。
サマサ氏 学怖の中でも最高の理不尽なラストですからねぇw
攻略無しの隠しは仮面少女ぐらいしか・・・。
125氏 確かに強引ですな、だがそれがいい・・・訳ないかorz
146氏 ええ、シコル君大活躍させますよ、蝋燭の代わりですから。
149氏 >>俺は邪神さんの作品が一番好きだな
そっ、そんな事言われても全然うれしくなんかないんだからねっ!
そして夏に向けて、というよりこの気温は最早夏。
224 :
作者の都合により名無しです:2006/06/12(月) 17:53:06 ID:pDCvFRLR0
投稿の時間帯って重要だな
遅ればせながらカマイタチさん乙
226 :
作者の都合により名無しです:2006/06/12(月) 22:01:08 ID:G2uekZsQ0
ルーベライズ話は普通に出来のいい小話だな。
これも邪神さんが作ったの?それともどっかから引っ張ってきた?
【擦】 スレちがい
ややあって、工場の食堂に千歳の姿があり
久世家のアリバイを崩す手立てが見つかった。
しかし、会社が終わる時間までは表立って彼を呼び出すコトはできない。
さらに、1時間だけ戦いに備える時間が欲しい。
という旨を根来に伝えていた。
「ならば決行は本日午後7時。奴を近くの森へと呼び出し、尋問する。支障はないな?」
彼もブラボーと同じく追及しない。
一般的な男性なら、
「どうやってアリバイを崩すのか?」と質問し、
「会社の都合など無視すればいい」と反問し、
「1時間も掛け、何を備えるのか?」と詰問しよう。
が、根来はしない。
良く解釈してやれば千歳への信用ありきとなるが、やはり無表情はあまりにあまり。
聞いた言葉を機械的に処理している印象は拭えない。
そこへ千歳は信をおいてて、話も進める。というのはもはや暗黙の了解だ。
「もう一つ。大戦士長から言伝を受けていると思うけど」
「ああ」
「私はあなたに比べて、戦闘能力が低いわ。だから戦闘じゃ」
「狙われる公算が高いな」
「ええ。だから、私が足手まといになるようなら、切り捨てても構わない」
根来は黙った。
食い違った物を反芻しているような風がある。
そういえば千歳、彼に照星が伝言した場面を見ていない。
部下はみんな大のお気に入りと広言してはばからぬ照星、私心を織り込み、別な命令を下
している可能性だってある。例えば、「戦士・千歳に危害を加えないで下さい」とか。
果たして──?
「貴殿は、核鉄の数を知っているか?」
根来はなぜか、全く関係ないコトを切り出した。
「地球にあるのが97個、月に3個ね。それが何か──」
「対してホムンクルスは、製法技術さえ踏まえれば無尽蔵に生み出せる」
千歳は頷きながらも、奇妙な引っ掛かりを感じていた。
「もし地球上にあるすべての核鉄を戦団が接収したとしても、我々は無尽蔵のホムンクルス
に対し、最大97人分の戦力しか持ち得ないのだ」
「そうね。中には火渡戦士長のように、広範囲向けの武装錬金を持つ戦士もいるでしょうけど」
昼休みが終わりに近いとあって、食堂に人は少ない。
だから千歳も堂々と話を合わせられるのだが、違和感は大きくなっていく。
今の会話、どこかがおかしいと彼女は思う。
内容自体は至極もっともなのに、かすかな『無理』が感じられる。
「戦力差は覆らぬ。故にこの図式の中にいる以上、報われるコトは有り得ない。つまるところ
麻薬や銃器の取り締まりとさほど変わらぬのだ。やれば際限がない」
この根来の言だって、彼の持つべき合理的思想からは外れたモノだろう。
際限がないのならば辞めれば済む話なのに、戦士を”やって”いるのだから分からない。
「が、やらねば際限なく悪くなる」
ああ。と千歳の目に光が灯った。
確かに戦士が戦わねば、ホムンクルスの跋扈を許し、際限なく悪くなっていく。
千歳が引き金になった惨劇と同じような光景が、世界の至るところで繰り広げられる。
「よって手段を選ぶ暇(いとま)はない。任務において戦士などは、所詮歩にすぎん。一定の
訓練を施しさえすれば補充は効く。ならば遂行を優先した結果、多少減ろうと問題ない。そして」
乾いた目が千歳を見据えた。
「それは貴殿のみならず、私とて例外ではない」
言葉に重なるようにチャイムが鳴った。根来は立ち上がり、さっさと事務室へ歩いていく。
(まさか、彼も私と同じコトを?)
『足手まといになるようなら、切り捨てても構わない』と、言いたかったのだろうか?
だとしても、どうもはぐらかされた気分だ。
ともかく。
決戦開始まで、残り6時間である。
そんな事情を抱えていようと、仕事というのは平気で舞い込んでくる。
なにせ潜入の都合上、派遣社員に身をやつしているのだから。
事務所に戻った千歳に任されたのは、伝票のチェック。
8月度の伝票とEXCELの数字が合わないらしく、この日までのを全て確認して欲しいとのコト。
なお、この日は8月26日。
だから伝票の束は26日分積もりに積もって、辞書一冊分ぐらいの厚さになっている。
他の人間がゲンナリして、新入りたる千歳に押し付けたと思えなくもない。
(根来も新入りだが、彼は近寄りがたいから敬遠されたのだろう)
そしてEXCEL上の表というのがまた厄介だ。
千歳に詳しいコトは分からないが、何かの項目が10数種類並んでいる。
伝票の数字はそれらに入力され、最終的に一番下の行で合算されているようだ。
つまり、合計欄のズレを突き止めようと思ったら、10数種類の項目を26日分に渡って1つ
ずつ確認していなかければならない。
作業量は膨大だ。
が、千歳自身は涼しい顔で、伝票をまくり、1日からチェックしようとした。
と。その時。
「わざわざ全てを見る必要はない」
無愛想な声が横から掛かった。根来である。
「え?」
千歳はきょとんとした。
「1日ごとに伝票を確認していてはキリがない。よって、大まかな範囲から絞込む」
根来は根来で、無愛想な瞳を千歳に向けて何やら説明を始めている。
「まず最初に13日の合計と、伝票を照会しろ。合っているか?」
どうやら千歳を手伝うつもりらしいが、調子がおかしいのは否めない。
『自分の仕事のみを優先して、他者を慮るコト少なし。ただし能力は高い』
それが千歳の率直な根来観だから、彼女は大いに戸惑った。
「ええ」
戸惑いつつも、根来の話を聞いているのは、彼の非人間的なまでの合理主義に対する信頼
があるからだろう。
あるからこそ、「ひょっとしてお弁当のお返しに手伝いを?」などと思いつきもしない。
そして筆者にも、根来が何を考えて喋っているかはよく分っていない
内面描写を避けているうちに、彼がいよいよ何者か分からなくなってきた。
セリフ自体は浮かぶ。が、心情は察せられない。不思議だけれど本当の話。
根来の話、続く。
「ならば、そこから本日までの中間日、つまり19日か20日の合計を探れ」
「つまり」
千歳はようやく合点がいったという調子で、メモ用紙に図を書いた。
13日が合っている場合。 ズレが生じたのはこの日以降と分かり、
捜索の範囲を半分に絞り込める。
┌──────────→
│
├─────┼─────┼─────┼─────┤
1 6〜7 13 19〜20 26
a │ b
←─────┼─────→
そしてこの日が合っていなければ、ズレはaの期間に発生。
〃 いれば、ズレはbの期間に発生したとわかる。
あとは、a、b両方の期間の中間にある合計を元に、以上の作業を繰り返す。
「そうすると、ズレが生まれた日を速く突き止められる訳ね」
「情報処理における考えだ」
根来は頷いた。
「もう一つ。EXCELの機能上、数字が入力されていても、表示されない場合もある」
手にしたボールペンで、ディスプレイを指差す。
正確には、そこに表示されているEXCELの、左端と上端を交互に。
「行の数字や、列のアルファベットが途切れているのがそうだ。例えば、列部分が「A」「C」な
どとなっているのならばその二行をドラッグし、右クリックで『再表示』を選択すれば、隠され
ている列が表示される。行も同じく」
千歳は何だか、いいようのない、”気配”を感じてきた。
坂道の上で大きな岩を軽く押して、下に向かって動き出す瞬間を目撃するような。
「また、行に『+』が表示されている場合は、グループ化がなされている。
これは行をひとまとめにする機能で、『+』がある部分は、非表示の行があるというコトだ。
解除するには『+』をクリックする。もし、グループ化された行をすべて表示したいのならば、
画面右上、セル番号を表示しているウィンドウの下にある、[2]をクリックすれば良かろう」
根来はとくとくとEXCEL講義を続ける。
「グループ化の設定だが、ショートカットキーは、Alt + Shift + → だ。多くの行をグループ
化する際には、これを用いれば良い。解除はAlt + Shift + ← だ」
そんな機能、多分知っている人間は限られているだろう。
そもそも千歳にしてみれば、グループ化という概念自体はっきり掴めていないし。
「付け加えると、オートフィルタによる抽出が行われている場合でも非表示の行がある。
【▼】というアイコンの逆三角部分が青くなっていれば、抽出されている証拠だ。クリックし、
『すべて』を選択する」
こっちは割りとポピュラーっぽい。……ポピュラーなのか?
「行や列がすべて表示された状態ならば、ズレの原因も見つけ易い筈だ」
根来が黙ると、千歳も敢えて一拍を置く。
彼が再び説明を始めた時、言葉がかち合わないよう。
幸い、実用性があるんだかないんだか分からんEXCEL講義は終了のようだ。
「色々ありがとう」
座ったまま、軽く礼をする千歳だが
「礼は不要。所詮これらの知識は、目的達成の一手段にすぎない」
本当に根来は愛想がない。
せめて彼が謙虚の一つでもできれば、少しぐらいは戦団への受けも良くなるだろうに。
「目的を描くコトができねば、いかに知識を得ようと無意味。だが、果たすべき目的の性格を
踏まえれば、行使すべき術と知識は自ずと見える」
ひょっとしたら千歳ならそれができると思い、一連の知識を伝授したのかも知れない。
「骨子は諸事、それだけだ。EXCELであれ何であれ」
相変わらずの無愛想を、彼の言で説明するならば
「他者と仲良くやるという目的を描けないから、知識や行動によって自身を良く見せられない」
という所ではないか?
「ところで1つ尋ねる」
「私に分かる範囲でなら」
「昨日、伝票処理の最中に、PCが狂った」
根来がいうには、選択したエクセルのファイルが自動的に立ち上がり続け、最終的にはフリー
ズしたという。
で、スパイウェアの検出をしたとも付け加える。
LANケーブルも抜いてウィルスの確認すらしたとも。無論、定義ファイルを最新版に改めた上で。
話を聞いてるうちに千歳は、この目の前の男が分からなくなってきた。
古風に見えて、なぜこうもパソコンに詳しいのか。
いや、始計術なる忍びの法に沿って、色々学んでいるとは確かに聞いた。
しかしである。
あまりに徹底しすぎている。
ひょっとしたら本職たる戦士や忍者の技能をも凌駕してるのではないだろうか?
千歳がぼんやりそんなコトを考えている間にも、誰かが糞スレを立てている間にも
「だが何も引っかからなかった」
根来はあくまで淡々と報告するし、文明はどんどん発展していく……
システムの復元も考えたそうだが、仕事の時間がかなりロスされるので避けているという。
「察しはつくか?」
促されて、千歳は根来の机を観察した。
綺麗に片付いていて、あるのはPCとテンキーと伝票の束だけだ。
伝票の束は5ミリぐらいの厚さで、左上をホチキスで留められている。
場所はテンキーの間近だ。
それを認めた千歳は、何か気づいたらしい。
「いつもこの位置に?」
伝票を指差すと、根来は首を横に振った。
「ここに置くのは確認済みの伝票のみだ」
入力や確認の際には根来の正面、つまり、PCの前に置くという。
「ちなみに、PCが狂ってしまった時は」
「今と同じような位置に、幾つかだ」
話を総合すると、千歳の頭で何かがつながった。メモに何かを書き始めた。
「推測だけど」
前置きすると、メモを根来に見せる。
ナンバーロックキー
↓
┌─┬─┬─┬─┐
│ │/│*│ │←バックスペースキー
├─┼─┼─┼─┤
│7 │8 │9 │−│
├─┼─┼─┼─┤
│4 │5 │6 │+│
├─┼─┼─┼─┤
│1 │2 │3 │ │
├─┼─┼─┤ │ ←ここのエンターキーに
│0 │00│. │ │ 伝票の束が乗っていた……?
└─┴─┴─┴─┘
根来は憮然とした顔でメモを眺める。
その頃にも、周りの状況は刻々と動いている。
工場長と部長は部品の支給が遅れているとかどうとか協議してるし、女性事務員は電話対
応に忙しそう。
麻生部長殺害の容疑者たる久世家だって、自分宛ての郵便物や小包の確認に余念がない。
ごく当たり前の光景だ。
電話のコールやら話し声やら、書類がこすれる音やらがまじりあい、昼下がりのゆったりとし
た空気がかもし出されている。
気を抜いたり、自販機で売ってるブラック無糖のUCCコーヒーを食後に一服しなかったり、
ロッカールームに置かれた段ボールの影で、駿河城御前試合を読みつつこっそり仮眠を取ら
ねば、睡魔に呑まれてグースカグースカ眠ってしまいそうなほど、のどかな時間が流れている。
やがて。
根来は無表情で千歳に言い放った。
「図はもういい」
千歳も無表情で根来に言い返した。
「でも、エンターキーが押しっぱなしなら、エクセルのファイルが立ち上がり続け」
「言うとおりではある。だが、貴殿は時々判じ難い」
きりりとした目が、心底から不思議そうに根来を眺めた。
判じ難いというのは、無表情ぶりについてなのだろうか。
しかし千歳自身はそれを理解しているから、なるべく本音を伝えて円滑に任務がなせるよう
務めている。
にも関わらず、「判じ難い」なのである。
(一体なぜ……? 口で説明するより図を描いた方が分かりやすい筈なのに)
いつかの山中と同じように、千歳は一生懸命考え込む。
顔は無表情ながらにややあどけない。
思考への純粋な没頭が、めぐりめぐって童女のようなひたむきさを浮かべている。
「本当に判じ難い」
根来はため息をついた。
彼がもし、PC不調の原因を尋ねるのと引き換えに、EXCELの知識を伝授したとしたとすれば、
これほど不公平で、すれ違いまみれの取引はないだろう。
片や教本にありそうな知識の数々、片や伝票の束だ。
千歳、洞察が伴っていようと、その現し方があまりにマズすぎた。
(あなたみたいな綺麗な人が、変な図を一生懸命書いちゃダメでしょ)
遠巻きに様子を見ていた久世家も嘆息──…
し終える前に、顔色がさっと変わった。
他の会社から来たと思しき小包。
中にあった物を、彼はひたすら凝視する。
やがて動揺とも歓喜とも取れるひきつりが、みるみると彼の頬から顔全体に広がった。
さもあらん。目にしていた『それ』は彼自身の日常にあり得からぬ代物だ。
久世家は意を決した用に、小包の中へ手を伸ばす。
『それ』をポケットに入れるまでの手つきは、まるでひったくるような所作だった。
幸い、というのは彼目線での話である。
根来も千歳も、この一瞬の動きに気づいていない。
いかに優秀といえど、人間である以上は綻びがどこかに出る。
彼らにとり、それは不幸。
不可避の綻びをして、苦戦をもたらすコトになるのだから──…
そして様々な思惑が交じり合い、ようやくながらに決戦へ!!
いかがでしたでしょうか。明日使えるものばかりでしたか?
で、こちらはちょっとしたオマケ。ネウロには及びませんが、たまにはこういうのも。
ttp://up.spawn.jp/3.html?1150117776 の24275。パスはsage。
いつか技術が身についたとき、こんなコトばっかを散りばめた青春活劇を描きたいと思って
いるのです。主軸はエクセルじゃなく、自分の一番得意なコト。自分にとってはSS並みに面白いコトを。
そして心理描写について、色々とありがとうございました。
一概に省かず見せ方を変えれば、或いは原作に沿えるかも……?
>>133さん
酸いも甘いも一緒に舐めつくしたって感じの二人ですからね。いわゆる恋人的な描写も期待
できます。自分の見る根来は、どうしても恋愛しそうにないんですよ。文中にもありましたが、
彼の内面は分からない……というか、勝手にいじっちゃいけないような。
>>135さん
ありがとうございます。照星に関しては、諸事情でどっちつかずな感じですので、いずれは
格好よく描きたいです。金城とヴィクトリアのアレは、正に電撃的閃きの結果ですね。
お礼代わりにちょっとだけ内緒話を。萌えスレといえば、名無しで描いたのも結構ありますよ。
秋水が主人公なのがそれです。浦島太郎や夢を見る島。郵便局のバイト。まひろの見舞い(落語付き)などなど。
彼がいると、ギャグでもシリアスでも楽しく描けます。だから次回作も彼を。お相手はもちろん、まひろです。
>>136さん
いえいえ。心理描写については結構するりと出てきます。が、それだけに終始してしまう傾向が。
更に、背景や表情、仕草やそれに伴う微妙な感情のうつろい(心理とはまた別の。無意識に出てくる反応のような)
はどーも苦労してしまいますね。更に、キャラより「話」に重点をおいて考えていきたくも。
ふら〜りさん
おお! そこに目をつけて頂けましたか! 言葉にするなら、「甘え」という要素もありますね。きっと。
反面、根来は辛味と苦味と渋味しかなさそうで、そこが良いけど悩ましい。変化を催す自分に
戸惑いつつも恋を頑張るっていうのは萌え…もとい、描き応えありそうですが根来では難しく……
水をかぶれば新たな人生。
今日からあなたも呪泉郷。
参謀に着任した新一の指示により、フリーザ軍は全軍をあげて呪泉郷の水を取得してきた。
その『水』は、あるものは豚になる水、あるものは猫になる水、あるものは阿修羅になる水等々、様々なものがあった。
フリーザ軍はあろうことか、それらの水を地球成層圏でぶちまけてしまった。
結果……どうなったかというと。
地球には今も降り注ぐ呪泉郷の雨。昨日はアヒル、今日は豚。明日は何の日?
全人類が水をかぶると変身するようになった地球では、もう新一の事など気にかける人もいなくなった。
そして、今日も帝丹高校のメンバーは元気に登校してくる。
明日の予報は『イケメンホストの水』だ。
----[完]
ネタ切れのため打ち切りです。
これでオオクワ専門=サンダル=全力全開=パパカノ決定だな
もう死んでいいよ
>>239 48時間以内に、法律的に納得のいく説明が無ければ、こちらはそれなりの行動をとります。
法的に「死ね」という発言が許される根拠を示してください。できないのであれば、誠意ある謝罪(掲示板では難しいですが)
をしてください。
ただし、後者に関しましては掲示板と言う性質上難しいものであることは理解してください。
何も説明が無い場合、脅迫罪として検討させていただきます。
以上です。
>>241を訂正します。
>>239 48時間以内に、法律的に納得のいく説明が無ければ、こちらはそれなりの行動をとります。
法的に「死ね」という発言が許される根拠を示してください。できないのであれば、誠意ある謝罪(掲示板では難しいですが)
をしてください。
ただし、後者に関しましては掲示板と言う性質上難しいものであることは理解してください。
説明または謝罪が無い場合、脅迫罪として検討させていただきます。
また、謝罪を行う場合は、掲示板と言う性質上書き込む前に考える時間があるにもかかわらず、
上記のような行動をとった点について、理解できる説明も行ってください。
以上です。
>邪神さま
こういうところでしか主役になれないからシコルには頑張って欲しいんだけどw
それにしても柳はストーリーテラーだな。風貌からしてこういうの語らせたら上手そうだ。
>スターダストさま
EXCEL初心者の俺にとっては、根来(というかスターダスト氏)は神のような使い手だな。
少しずつ根来の変化、というか真実が見えてきたような感じで千歳も戸惑ってますな。
>41さん お疲れ様。
第七十九話「決意と怨念と」
<ジェネシス>より遠く離れた宙域。
キラが操る蒼白の鋼鉄天使―――<Sフリーダム>。
クルーゼが駆る黒の悪鬼―――<レジェンド>。
神にも等しい力を持った二機が激突を繰り返す。
「スーパードラグーンを喰らえ!」
レジェンドが強化型のドラグーン・スーパードラグーンを放つ。眩いばかりのビーム光が、キラの視界を一瞬遮る。
「うわっまぶしっ・・・!」
それでもギリギリの所で直撃を避けたのは、ひとえにキラの超人的な反射神経と操縦技術が為せる業だ。クルーゼはそれに
対し、賞賛と驚愕の混じった声で答える。
「すごいな。全く無駄のない動きだ」
対してキラにも、焦りの色が見える。
「くっ・・・強い!こんな相手と戦っていたのか・・・」
機体性能はあちらに分がある。自分自身の能力で、それにどこまで迫れるか―――。
「キラ!」
クルーゼの声に、キラは思考を中断する。
「何故我らが争う?私の気持ちは君なら分かると思ったんだがね!」
「分かるよ・・・だけど、僕はあなたと違う!人を信じず、自分の世界だけに閉じこもるだけのあなたとは!」
言い募るキラを嘲るように、クルーゼは笑う。
「そうかな!?私は知っているのさ、人の醜さと闇を!失敗作とはいえ、君のその力は人間の基準を超えている。いずれは
疎まれ、排除される。自分より優れた存在、自分とは違う存在を人は認めはしないのさ!そして君もその時思い知る!
この世界に自分の居場所などないことをな!」
「・・・・・・」
「キラ・ヤマト!君を理解できるのは私だけだよ。同じ失敗作である私だけだ!」
何も言わないキラに、クルーゼはさらに追い討ちをかける。そして勝ち誇るかのように笑った。しかしキラは―――
その時、まるで絶望などしていなかった。クルーゼの言葉に、確かに一片の真実があると理解しながら、それでも、
キラは自分が彼に屈する理由など、まるで見出せなかったのだ。そしてただ一言、語った―――
「あなたは・・・虚しい人だ」
「なん・・・だと?」
その言葉にクルーゼの哄笑が止まる。そしてキラは続ける。
「あなたのいうことが本当なら―――本当に人間が、自分と違うものを絶対に認めないというのならば、このメカトピアは
生まれなかったはずだ。人と機械が共に生きるこの星は、生まれるはずがなかった。そうなれば僕は、リルルやアスランとも
出会えなかっただろう」
「ふん―――それだけで―――!」
「それだけじゃない―――僕は知っている。僕らと同じく、母の温もりを知らずに生まれた、神と魔によって生み出された
あの少女を!」
「・・・プリムラ、だったかな、あの子は?」
「そうだ。彼女もまた自分の存在に苦しんでいた。僕やあなたのように。だがそれでも―――
彼女は世界に絶望してはいなかった」
「・・・・・・」
「自分の存在がどうであれ―――彼女は自分の大切な人たちを信じたんだ。否定することじゃない。
信じること、それこそが戦いなんだ。そして―――あなただって、そんな風に戦うべきだったんだ。
人の醜さだけでなく、優しさも信じるべきだったんだ。
その戦いを放棄したような弱虫に―――世界から逃げ出した臆病者なんかに、僕は負けない!
僕は信じ抜いてみせる!人の醜さではなく、優しさを!僕の大切な人たちを!」
力の限りキラは叫んだ。それは、彼の存在そのものをかけた言葉―――彼の掴んだ真実だった。
クルーゼはギリッと歯軋りする。そのような言葉など、彼にとっては青臭い理屈に過ぎない。
そんなものを―――認めたくない。
認めたならば―――それこそ己の人生を否定することになる。
「奇麗事を!君こそ思い知れ!この世界に君や私の居場所はないと!」
クルーゼは<レジェンド>を駆り、キラに襲い掛かる。
「そして絶望しろ!居場所がない自分自身に!」
叫びながら襲い来るクルーゼに対し、キラも<Sフリーダム>を最大出力で稼動させ、<レジェンド>に立ち向かう。
「居場所がないのなら―――なくすことを恐れることもない!後は作ればいいだけだ!」
キラが彼に出来る事は一つだけ―――せめて、人を呪うだけの生から解き放ってやるだけだ。
もはや言葉はない。お互いに死力を尽くして戦うのみ―――その果てに、何が待っていようとも。
投下完了。前回は
>>141より。
いやー、面白すぎます。今話題のMUSASHI〜GUN道。
よっぽど今回のサブタイは<YAMATO〜GUN駄無>にしようかと思いましたが、却下しました。
次回はアスランが<インジャの舞>を踊ります(嘘)
>>146 いい意味で天才を発揮してくれれば頼れる男なんですがね・・・
>>147 あれはまあ、バカ王子が言ってるだけなので・・・でももしかしたら・・・
やっぱ後味悪いですねw
>>ふら〜りさん
殺人クラブ編は確かに邪道と言えば邪道・・・隠しシナリオ2への条件に至っては、邪道どころの
騒ぎではありませんでしたが。
>>見てた人さん
最後まで最高のクオリティ。どうやったらこんなSSを書けるのか・・・とにかくお疲れ様でした。
執筆の大変さを考えると、すぐ戻ってきてとは軽々しく言えませんが、次回作待っています。
>>邪神?さん
岩下さん6話ですね。七話目ではシコルが肉人形に・・・
次は何が来るのか・・・学食のまずいメシか?(絶対違う)
>超機神大戦
本来ならものスゴく苛烈な戦いが繰り広げられている筈なのに……
何故でしょう、今回は全く動きの無い絵しか想像出来ないwww
ある種究極の2つの力が一つになったwwwww
スターダストさんすげえな
プルグラマーか何かだろうか?
千歳と根来の微妙な関係の中にウンチクが盛り沢山だ。
頭いいなー!
サマサさんも絶好調だ。
激しい戦いの中にもほのぼのとした感じを忘れない作調が大好きです。
感想ヘたでごめんなさい
41はシカトか。
さすがサマサ、弱小職人には手厳しいな。
いつも飽きないねえ・・
252 :
作者の都合により名無しです:2006/06/13(火) 20:26:50 ID:PHdv7ZdE0
スターダストさん、せっかくアド張って頂いたんだけど見えないんだけど
俺だけかな?
しかし、氏は本当に博識だなあ。心理描写だけでなく、こういうのもどんどんやって欲しい。
サマサさんお疲れ様です。
お互い、レベルが上がりまくってヒートアップしてる中でプリムラの存在は光りますね。
彼女は前作でも今作でもキーキャラとしてある意味シリーズを通した主役ですねえ。
253 :
第3話続き:2006/06/13(火) 21:43:48 ID:LeYVRU2MO
>>192からです
7月16日(日)10:00 アースラ艦内
再び集まることとなった一同。
クロノが口を開く。
「この災害の原因となる次元世界を特定できた。詳しくはこのフェレットもどきから聞いてくれ」
このセリフに黙っていられるユーノではない。
「その呼び方はやめろって何度も言ってるだろ!」
しかし、のび太たちはさっぱり意味がわからない。
「あの、どういう意味なんですか?」
「あぁ、そういえばあっちの形態は見せてなかったね」
と言うが早いかユーノの体から魔力光が発生、フェレットによく似た小動物に姿を変えていた。
「うわっ!?」
そりゃあ、そんなのを見たら驚くわけで。
「もともと僕の一族は遺跡調査・発掘を仕事にしているから、隙間に入る時とか、こういう変身の魔法はよく使うんだ」
「なるほど…」
「そんな話はどうでもいいから、さっさと本題に入れ」
クロノが横槍を入れる。
「なんだよ、お前が昨日いきなり、今日までに調べろって言ったから必死でやったのに!」
ユーノ君が一晩でやってくれました。
「えーと、魔力の発生元はESPEAT(エスペート)っていう次元世界。人口は4億3千万人。現在の情勢について話すには、まず歴史に触れる必要があるけど、いい?」
全員が無言で頷くと、ユーノは話し始めた。
「1300年ほど前、いくつかの国に分かれていたエスペートの人民は、異教徒に攻め込まれて北部に追いやられた。
追い詰められた各国は1100年前から600年かけて、団結して異教徒に占領された土地を再征服した。これを現地ではライコンクィストと言うんだ」
某有名RPGみたいな名前である。
「その後、各国の王による合議王政からその王達を象徴とする立憲君主制へと緩やかにシフトしていったんだ。今の日本に近いね」
「そのことは我々も覚えている。ベルカの王がエスペートの王を兼ねる時期があったからな。
当時は魔法技術の発展に立ち後れていた国を植民地にしていて、略奪も茶飯事だったと聞いた」
口を挟むシグナム。
「ってことは、運が悪ければ地球も占領されていたかも知れないんだ…」
ぞっとする話だった。
「ただ、植民地が独立した100年ほど前から問題が起こり始めた。自治州と直轄市によって成り立っていた国が、自治州の権限拡大で揺れ始めたんだ。
ちょうど戦争が起こって、一時期はまた平和になっていたんだけど、30年前からまた自治権拡大運動が起こって、とうとう四つの国に分裂してしまった」
「…」
「近年その内の一国、キャッスリャ王国の軍部が暴走して、ここ数年の内に国土のほとんどを手中におさめた。
数日前まではナヴァーレ王国のヴァスコー人と一部のゲリラだけが抵抗していた。
つまり、ここ数日のうちに巨大な魔力をもつ人物が出現したらしい。ただ、エスペートからの通信が途絶えていて、最新情報はわからない」
「…どうして」
しずかがつぶやく。
ゴルァ!!
>>237-238 フリーザのエネルギー弾が作者に激突する。
やっばいって、いくらネタ切れでも、忙しくてもこの終わり方は無いだろ。
登場人物全員がそう言っている。
「いや、でもネタ無いし……」
「聞く耳持たん!」
主人公に首を絞められる作者。口から泡を噴いている。
ジヌカラ……ヤメテェ
かすれた呼吸音の中に、微かに悲鳴が聞こえる。
不意に、主人公の手が離れた。
「悪いと思ったなら、謝りなさい」
「は、はい。謝ります」
そんなわけで、
>>237-238は無かったことにしてください。
ごめんなさい。しばらくしたら、また連載開始します。
ただ、プライベートのほうがアリエナイくらい忙しいので、
たまにしか書き込みません。
それと、私に『死ね』とか言うぐらいだったら、NGにdgps1iMh9kを入れてください。
その方がお互いのためだと思います。
以上です。
「どうして助けてあげなかったんですか!?」
しずかは、困っている人を助ける魔法使いに憧れていた。だからこそ、力があるはずの管理局が侵略に全く干渉していないことが許せないのだろう。
「好きで放っていたわけじゃない。分裂後も諸外国は一つの国とみなしていた。管理局は内戦や内政問題には立ち入れないんだ」
渋面のクロノ。空気が一層重くなった。が、
「しずか」
フェイトがそれを打ち破った。
「確かに管理局にはできないことがある。でもね、できることだってある。それなら、できることを精一杯頑張る。少しでもいい方向へ世界を動かせるから。私はそう考えているよ」
「フェイトちゃん…」
「まぁ、こちらの世界に被害があったからには介入することもできる。手続きなどはあるが、八月のはじめ頃にはあちらへ行けるだろう」
クロノのこの発言で、
「やろう、しずか」
「ええ、もちろん!」
二人を含め、みんなの表情が明るくなった。
「今日伝えることはこれで終わりだ。それじゃ、解散」
いい雰囲気で締まったところに、なのはが提案する。
「あの、もしよかったら3時ごろ、うちの喫茶店にこない?翠屋っていうんだけど」
「翠屋ってなのはちゃんの家だったの?」
「知ってるの?スネ夫」
のび太が聞くと、
「アリサちゃんの家族がお土産に何回か持ってきたことがあるんだけど、とっても美味しい洋菓子だったんだよ」
舌の肥えているスネ夫が誉めるのだから相当のものである。
かくして「じゃあ、行ってみよう」と、満場一致で翠屋行きが決定した。
ゴルァ!!
>>237-238 フリーザのエネルギー弾が作者に激突する。
やっばいって、いくらネタ切れでも、忙しくてもこの終わり方は無いだろ。
登場人物全員がそう言っている。
「いや、でもネタ無いし……」
「聞く耳持たん!」
主人公に首を絞められる作者。口から泡を噴いている。
ジヌカラ……ヤメテェ
かすれた呼吸音の中に、微かに悲鳴が聞こえる。
不意に、主人公の手が離れた。
「悪いと思ったなら、謝りなさい」
「は、はい。謝ります」
どうも、ゴール前で延々とパス回しをしても点は入らないのに、と思っている者です。今回は一転、シリアスな展開をと思って書きましたが、いかがだったでしょうか
見てた人さん
お疲れさまでした。もし時間があったら、その後カイジがどうなったかとか、外伝的なものを書いて頂けると幸いです
41さん
ぜひまた再開させてください。と言うかバキはどこに?
一真さん
鬼ごっこ、生活かかってます、ですね。どう転んでもおもしろくなりそうです
邪神?さん
第二部以降はある程度味方側を分散させるつもりなんですが…
京極夏彦ファンとしては、こういう展開は大好物です
サマサさん
TMRのANNって聞いていました?あれで新曲とかガンダム出演とかの情報を手に入れていたものです
うおっまぶしっ!はもう…アニメ大量生産時代の弊害でしょうね
ハイデッカさん
慶次ってそんな年だったんですか!とすると自然と今までの分の見方も変わってくるわけで…葉桜の季節に君を想うということ、てすか(歌野晶午著)
銀杏丸さん
乾物屋の息子として、鰹節は自分で削るのに限ります。生削りに慣れると市販品の香りが物足りなく感じます
某親馬鹿氏、早く登場させたいところです
スターダストさん
昔BASICで作った数当てプログラムを思い出しました。グループ化もオートフィルタもよく使います
こちらも書きたいことが山ほどあるのですが、なかなか進みません
推敲について
何回も読み返した結果があれなんです…
今まで読んだいろんな作家の文体が交じってこんなになっちゃいました
もうこんな文体と思って頂くしかないかも知れません
オリキャラについて
重要な役になるのはティアナくらいで、他はさほど目立たせない予定です
キャラ人数について
他シリーズから更に出す予定なので、第三部では何人になっているやら…
最後に質問です。(源)静香と(月村)すずかの名前が見分けづらいならば、静香は漢字で表記しますがどうでしょうか
第三部まで書くのなら書き溜めしてくれればいい。
成長するにつれて文体が改善されるのってはいい事だし。
「月村すずか」を「スズカ」と表記してくれ。
あとひとつ。41さん、何だか混ざっちゃってすみませんでした
リリカルなのはとドラえもんのクロスですずかとしずかの区別ができないほうが悪い気もしますが
ややこしいことには違いないので静香表記のほうがいいと思います
すずかの時はしずかの誤字でないとはっきりさせるために261さんの仰るようにカタカナ表記にするなど手を打ったほうがいいでしょう
264 :
ふら〜り:2006/06/13(火) 23:03:10 ID:pV0GgmZe0
>>41さん
ファンの要望に応えて……とはご立派也。くれぐれも無理のなきよう、書くことが楽しく
思える時に少しずつ、書いていって下さい。で
>>237-238を削るとなると、新一の幼女化と
フリーザのプロポーズ(?)は有効ですな? 予測不能な多角関係、楽しみにしてますっ。
>>邪神? さん
あ〜覚えてますこの話。柳みたいな人が正座してブツブツと語ったら、さぞ怖さも増すで
しょうな。シコルはもうみんなのオモチャ(つーかサンドバック?)として定着してて、
「ラッキーマン」のスーパースターマンを思い出します。彼よりは遥かに戦力ですけどね。
>>スターダストさん(蝙也か……私は後藤さんの「後手ばかりだがムダじゃない」を彷彿)
今回は千歳が可愛い! あの図解推察、当たってたら根来も一緒に可愛かったんですけど、
ハズレてみると千歳が二倍可愛い。本人は心の底から心外でしょうが、でも十二分に天然
ボケです彼女。ふわふわしてない、凛々しい女性だからこそ出るこの味。ほんと、可愛い。
>>サマサさん
私としては「アーシアン」が原点なんですが、人間のプラス面を信じる側とマイナス面を
許さぬ側との対比・激突。決着は改心から意見合致で仲間化か、そこに至るも時遅く死か。
>後は作ればいいだけだ!
ここがいいですね。受け入れてくれる仲間たち、に甘えるだけでない強さが光ってました。
>>全力全開さん
そういえばしずかちゃん、魔女っ子に憧れてましたね。ホウキに乗って飛んで、痛がって
ました。そんな彼女のイメージする魔法少女像って、なのはたちとはだいぶ違うでしょう
けど、今後は見る目も変わっていくでしょうな。肩を並べて戦火を潜っていくわけですし。
>>252 私も……ダウンして解凍したんですが観られない……何ゆえ?
>>全力全開さん
色々言われているみたいだが頑張れ
確かになのはという作品がわからない分イメージがつきにくいが、
個人的には地の文が足りないからそう見えるだけのような気がする
>242
ごめんなさいもうしません
267 :
作者の都合により名無しです:2006/06/14(水) 09:18:08 ID:w66sqJoe0
>パパカノさん
お仕事忙しいでしょうけど、個人的に好きな作品なのでのんびりと待ってます。
>全力全快さん
少しずつ壮大かつシリアスな展開になってきましたねえ。
短いですけど意味のある回と思います。応援してますので頑張って下さい!
全力さんは会話のテンポは楽しいよ
後は、その周りの通常の語りを上手くすればグッとよくなる。
頑張れ
>ふらーりさん
スターダストさんのアド、俺は見えたけどなあ?
なんか役に立ちそうなエクセルシートとかのセットだった。
しかしながら、俺はワープロしか出来ない・・orz
>41さん&全力全快さん
全力全快さんも41さんも自分のペースで頑張ってね。
完結のご意思がある限り、見届けますから。
感想を書くのは苦手なんであんまり書けないけど・・
270 :
もう少し頑張れよ日本代表:2006/06/14(水) 19:56:27 ID:ipHN8kxK0
ジャンヌ編最終話 未来(あした)へ…
誰の心の中にも、大切にしまってある原風景がある。
私はフランス北東部の小さな農村、ドンレミ村に生を享けた。
貧しく、小さな何もない田舎の村だったが、そこには幸せが満ちていた。
暖かい家族や、親切な村人。牛を追いながら緩やかに流れる時間。
朝早くから野良仕事を手伝い、昼には近所の友達と思い切り遊んで、
夕時には、各家から香ばしく焼かれるパンの匂いにお腹を鳴らしていた。
この村にはまるで時間の概念が無いように思えた。
ただゆっくりと、優しい時間が永遠に流れる。幼心にぼんやりとそう思っていた。
でも、現実はそうは甘くは無かった。
この片田舎にも、百年戦争の影は静かに、でも確実に私たちの生活を蝕んでいった。
不作が続き、村に飢えが蔓延し始めた。
この小さな村にもイギリス兵が現れるようになり、食料を強奪していく事も増え始めた。
私たちに出来る事は、じゃがいもや小麦粉を、こそこそと秘密の場所に隠すくらいだった。
私は子供の頃からよく泣く子供だった。そしてよく祈りを捧げる子供だった。
村の粗末な聖堂で、小さな手を合わせながら神様にいつもお祈りをしていた。
(何故、真面目に生きている人たちばかりが奪われるのですか?)
(何故、地道に働く人ばかりが飢えていくのですか?)
(何故、子供たちがお腹を空かせて倒れなくてはいけないのですか?)
(何故、イギリスの人たちは私たちを苛めるのですか?)
(何故、王太子のシャルル様はフランスの為に戦わないのですか?)
(何故……。神様は、あなたを慕う私たちを救ってくれないのですか……?)
何故、何故、何故。いくつもの何故が私を締め付ける。
何時しか決まって私は泣き始める。怖くて、辛くて、悲しくて、お腹が空いて。
私は、そんなただの子供。このフランスに何万人といる、お腹を空かせたただの子供。
271 :
それゆけジャンヌダルク:2006/06/14(水) 19:58:22 ID:ipHN8kxK0
10歳になる前。夜寝る前に、お父さんから聞かされた、不思議な二人の王様のお話。
「いいかいジャンヌ。フランスには、王様が今、二人いるんだよ」
「お父様、それはおかしいわ。王様って、一人だけだから王様なのでしょう?」
訝(いぶか)しがる私に、父は優しく説明してくれた。
「ひとつのフランス国に2人の王様がいる。シャルル王太子とヘンリー6世だ。
本当の王様はね、シャルル様なんだよ。でも、シャルル様はまだ20歳そこそこ。
とてもイギリスに立ち向かえる人ではないんだ。
そこでフランスの貴族だったブルゴーニュ公は、フランス王家に反抗して
イギリスと手を組んでしまった。ジャンヌ。彼はフランスを売ってしまったんだよ。
生後6ヶ月のヘンリーを、イギリスとフランス、両方の王にしてしまった…」
お父さんは嘆いていた。もう、フランスはお終いだ、と。
私はひもじくてお腹が鳴った。多分、フランス中の子供がお腹を空かせているのだろう。
私は悲しくなり、涙が溢れてくる。お父さんに神妙に聞いてみた。
「お父様、ヘンリー6世はうその王様でしょ? シャルル様はどうして黙っているの?」
お父さんは首を振った。もう、諦めている顔だ。ため息混じりに答えてくれた。
「本当の王様になるには、ランスの大聖堂で戴冠式を済ませないといけないんだよ。
でも、今の時代にランスまで行くのは命懸けなんだ。まして、シャルル様じゃ…」
そこで言葉が途切れた。お父さんは静かに私に微笑むと、おやすみ、とだけ言った。
お腹を空かせたまま眠りについた。
その夜、顔も知らないシャルル王太子が聖衣を纏い、聖油の儀式を済ませて
フランス王となる夢を見た。そして、子供たちがお腹一杯に食べられる国の夢を見た。
私の中の原風景。寒風に吹かれながら、お腹を空かせて泣いている子供。
それが私。今、聖女と呼ばれている私、ジャンヌ・ダルク。
でも本当は聖女でもなんでもない。何処にでもいる、お腹を空かせて泣いている子供。
それが私。
272 :
聖少女風流記:2006/06/14(水) 19:59:50 ID:ipHN8kxK0
「リシャール! 大人しく捕まるか、一騎打ちで果てるか、2つに1つです!」
ジャンヌの凛とした声が響き渡る。その声に震えは無い。
自分は今まで、旗頭を務めながらも、結局は護られてきた。それは悪いことでは無い。
聖少女を『護る』という使命に、どれだけの騎士や傭兵が奮い立っただろう。
それもまた、彼女の魅力でありカリスマであり、聖性なのである。
だけど、この最終局面、最後の敵だけは。自分が、自分の力で、決着を付ける。
そうしないといけない気がする。そうでなければ、辿り着けない気がするのだ。
平穏なフランスへ。夢見たあの風景へ。
子供たちがお腹一杯で餓える事無く、笑っている未来へ。あしたへ。
瞬時動きを止めていたリシャールの衛兵が、ジャンヌとジヤンに斬りかかろうとする。
が、ジヤンの反応は彼らを上回っていた。
ジャンヌがリシャールに叫び掛けると同時、踏み込んでいたのである。既に一人を斬った。
残りは衛兵2人、そしてリシャールである。当のリシャールは悔やんでいた。
最も戦闘力の高い精鋭兵たちを、対慶次用に継ぎ込んでしまっていたからである。
今、自分の周りにいる側近の技量は低い。敵の男(ジヤン)より剣腕はずっと下だろう。
が、自分とジャンヌを比べれば話は別だ。
狡猾な男はそれなりの眼力を持つ。彼はもう一度、ジャンヌを冷静に観察した。
なんと小柄な体だろうか。女の中でも小さな部類だ。
調度合わせした白銀の剣と鎧は見事に似合っているものの、歴戦の騎士の趣ではない。
ただ見目麗しいというだけだ。しかし美醜など、戦場において無用の長物である。
戦場において必要なのは、1に勝ち残る為の能力、2に生き残る為の策である。
この女に、そんなものは存在しない。見よ、剣の重みに耐えかね腕すら震えている。
対して自分は2流なれど、剣は貴族の嗜みとして幼少より鍛えられている。
……それを一騎打ちだと? のぼせ上がるな、売女が。
リシャールは心で毒づきながらも、顔には邪悪な笑みが広がっていく。
273 :
聖少女風流記:2006/06/14(水) 20:00:55 ID:ipHN8kxK0
この女はフランス軍の精神的な支柱である。
この女の首の価値は、トゥーレル砦以上の価値があるだろう。そしてこの好機。
こいつを殺せば、たとえトゥーレルを捨て敗走しても、イギリスでの俺の面目は立つ。
いや精神的支柱を失えば、一気にフランス軍の士気は霧散し、ここからの逆転も……。
馬鹿な女だ。所詮は田舎の牛追い女か。わざわざ指揮官が、最前線に出張るなど…。
リシャールは下衆な計算を隠しながら、努めて紳士的にジャンヌに言った。
「宜しい。私もイギリス貴族の端くれ。決闘の申し出、受けて立たせて頂く」
そしてリシャールは残り2人の部下を、ジヤンに立ち向かわせた。
先ほどのジヤンの剣閃に慄き、怯む部下に、そっと耳打ちをした。
「とにかく防御に徹しろ。奴をしばらく引き付けておけ。私はあの女をすぐに殺す。
その後、私が加わり3対1なら、あの男でもどうしようもなかろう?」
リシャールが立ち塞がる。ジャンヌの視線はまっすぐ、射抜くように、彼を見据える。
その瞬間、リシャールは抜刀した。追い抜きである。
決して速いとはいえない、2流以下の斬激である。ジヤンなら軽く交わしただろう。
が、ジャンヌの動きは鈍い。完全に避けきれず、内腿を浅く切り裂かれて出血した。
「おやおや聖女様。もしかして破瓜ですかな? 相手が私とは光栄だ」
下卑た軽口を叩く余裕がリシャールに生まれる。ジャンヌはそれほどまでに素人であった。
異変を感じる。出血ではない。自分の内側からの異変である。
ざわり、ざわり。肌に、蛭が這うような感覚が蘇える。
快感とも、狂気ともいえるような、体中の性感帯を甘く刺激されるような、黒い恍惚。
まただ。あの、呂布を殺めた後のあの禁忌への悦び。
白いものは染まり易い。美しいものは汚れ易い。そして聖なるものは、堕ち易い……。
274 :
聖少女風流記:2006/06/14(水) 20:01:37 ID:ipHN8kxK0
無表情に、ジャンヌは剣を下げた。
リシャールは、最初、腕が剣の重みに耐え切れなくなっただけと思った。
が、次の瞬間、痛覚の異常な蜂起によって考えを改める事になる。
右足が血に染まっている。鎧と下足の繋ぎ目の部分に、ジャンヌの剣が刺さっている。
「ひ、卑怯な、正面から斬らず足元を狙うとは」
リシャールの言葉はジャンヌに届かない。掌から伝わる異常な感触に酔っていた。
乳房が張り、肉体が蠕動する。吐息が甘く乱れた。性器が湿り、背筋に快感が奔る。
まただ。また、あの感覚。溺れそうな、蕩けそうな、あの感覚。
光と影。聖性が大きいほど、その裏にあるドロドロとしたものもまた大きい。
神に近い聖女という入れ物の中の、間違う事なき清濁併せ持つ人間の部分。
振り子が振れる。大きく振れる。聖から邪へ。邪から聖へ。
私は、聖女? それとも、魔女?
どうでもいい。私には大義名分がある。フランスを救うという、大義名分が。
私がこの人を殺せば、少なくともオルレアンは救われる。多くの人が救われる。
私がこの快感に溺れても、結果この街が救われれば、それでいい。
殺したっていい。快感に溺れたまま、殺したって、いい。
ざくりと、無造作に剣を振ってみた。元々相手は策だけの2流の男である。
痛みに囚われ、剣を握る事すら覚束なくなっている。簡単に左腕を斬れた。
痛みに声を上げるリシャール。
その声にジャンヌの下腹部が更に熱くなる。快感に唇が妖しく歪む。
堕ちよう。フランスの為なら、私一人くらい堕ちても、構わない……。
が、ジャンヌは知らなかった。戦場の狂気を。死の間際の人間の恐ろしさを。
275 :
聖少女風流記:2006/06/14(水) 20:07:36 ID:ipHN8kxK0
(なんという男だ、この前田 慶次という騎士は)
ラ・イールが、目の前の傾奇者の武に戦慄していた。ラ・イールもまた歴戦の強者である。
彼は『傭兵の中の傭兵』とまで呼ばれ、フランス中の兵の憧れの存在であった。
幾多の戦場を潜り抜け、多くの騎士や傭兵たちを眼にしてきたつもりだ。
が、それでもこれほどの男は見た事が無い。実質、慶次は敵兵を一人で相手をしている。
背中にジャンヌが潜ったドアを護りながら、その場所を一歩も動こうとはしない。
動物的な動きで急所を外しながらも、体には数本の矢が突き刺さっている。
全身血だらけで、威風で華美な鎧は真っ赤に染め付けられている。
が、それでもなおこの男は笑っている。戦場でよく見る、狂気染みた笑いではない。
少年のように純粋で、心地良い春風のような涼やかな笑みである。
鬼神の如き強さを秘めながら、何故そのように笑えるのだ?
不思議でたまらない。だが楽しくて仕方がない。この男と、隣り合わせながら戦える事が。
リシャールが剣を振り続ける。ジャンヌはふらふらと白銀の剣をさ迷わせながら、
それを必死に捌いている。いや、捌いているのではない。リシャールが嬲っているのだ。
いつでも止めをさせるチャンスがありながら、血に染まる聖女を見て悦んでいる。
ジヤンは歯軋りをしながらその光景を睨み付けるが、目の前の衛兵2人を振り払えない。
しかしジャンヌ。少しずつ冷静になり始める。氷のような眼で、隙を観察している。
聖性は少しずつ心の奥に追いやられ、能面のような顔になっていく。
遅い。慶次さんの槍に比べたら、カタツムリのようなものだ。
これなら自分でも突ける隙は必ずある。それに、相手は私を見くびっている。
切り刻んで、楽しもうとしている。私が、苦悶する姿を。
でも違う。斬られながらも、私は隙を突ける場所を耽々と狙っている。
そうたとえばあの場所。 ……隙だらけの足元……
276 :
ハイデッカ ◆duiA4jMXzU :2006/06/14(水) 20:18:36 ID:ipHN8kxK0
しまったあ!
>>274と
>>275が順番逆だあ!
正式な順番は
>>270-273、
>>275、
>>274ね。
ワールドカップのショックでこうなったな。
俺が悪い訳じゃない。
ちょっと長くなりそうなんで、最終話は2つに分けます。
明日か明後日投稿しますわ。気も削がれたし。
実は最後の1レスがまだ迷って決まってないし。
しかし中途半端な所で叩っ斬っちまったなー。
もうすぐ妹の結婚式だよ…ちょっと寂しいな……
ミドリさんもですよね… もう終わったのかな?
もし寂しかったらいつでも僕が○△×#しますよぉ!
とりあえず伏字にしときました。
エロい言葉を当てはめた奴はおめーがエロいんだよ。
あとしぇきさん、そろそろ戻ってきちゃいよYOU!
付きまとうアホは俺が何とかするからさ。
そう言いつつ何ともならんけどなw
聖少女面白いな。ちょっとエロいし。
エストファンの俺は「未来へ」を聞くと泣きます。
この物語が悲劇で終わると、本当にぴったりの曲になっちゃうな。
もしかしてジャンヌはミドリさんをイメージしてる?
>清祥所
エ〜ッチ!!!
>>276 いい加減セクハラやめろ。冗談じゃ済まされないぞ
次はミドリでも潰すか
おお!!ジャンヌの運命はいかに!!
次の投稿が終わったら、慶次編は魔界転生になるんですよね?
楽しみにしています!
遅まきながら、見てた人さま完結お疲れ様でした。
話のラストが全滅ENDだと分かっているのに、否、分かっている
からこそ、探偵が謎を解いていくように話を楽しめました。
次回作にも意欲を示されているようで、何よりです。しばしの充電
の後の復帰を心待ちにしています。
41さまも擬似完結お疲れ様です。毎回の既知の外にあるようなバタバタ
展開は、まるで新喜劇を見ているようでした。
(褒め言葉に見えないかもしれませんが、凄く面白かったのは事実です)
身辺がお忙しいという事で、急遽あのようなラストになりましたが、
いつか続きを書かれる日を楽しみにしています。
>邪神?さま
柳は本当に怪談向きだと思うのです。解説好きなだけあって、語りも
上手だろうし、何より闇に照らされた顔が、死刑囚中で一番怖い。
今回の話はどっかWEB上で見たような記憶があるのですが、どうも
思い出せません。
最後の笑みを浮かべた柳は、まるで妖刀に魅入られたみたいですね。
そしてまた犠牲となるロシア人。多分今後も怪談の数だけ人柱にされるの
でしょう…乙です。
あれ? 主人公達は今どうしてるんだろう…
>スターダストさま
エクセルと言えば、入社当初に先輩に「エクセルは文書作成ソフトだ」
とトンデモ知識を吹き込まれ、当時素直だった私は、そのまま2年間ほど
報告書や案内文書など全てエクセルで作ってました。
それはともかく、こうして見ると千歳は根来よりある意味鈍感なのですね。
ここ数話を読むと、千歳の其れに根来が少し振り回されている感じがします。
そこがこのSSの面白いところですね。(内面描写や豆知識、独特の文体も
含めて)原作を知らなくても楽しめるし、知ってたら尚面白い。
私が錬金購入したのは貴方のSSの所為です。
>サマサさま
「居場所がないのなら―――なくすことを恐れることもない!後は作ればいいだけだ!」
ふら〜りさんも言われてましたが、このキラの吹っ切れた台詞がいいですね。
クルーゼよりも人間として高みに達した漢の言葉です。
GUN道は…何だかヤシガニを彷彿させますね。
>全力全開さま
連日投稿お疲れ様です。
リリカルなのはの世界観がまだ良く分かっていないので、今回の
ような話はありがたいです。
あと前回の感想になりますが、スネ夫がわざわざジャイアンの為に
(打算があるとは言え)すずかとの仲を取り持とうとするとは珍しい。
これも長編補正でしょうか。
表記については、確かに私も最初「しずか」と「すずか」で迷いましたので、
区別した方が分かりやすいと思います。
どうするか決めて貰えれば、過去の分も含めて表記修正しておきます。
>ハイデッカさま
次回でジャンヌ編も終わりですね。(アレ? 前回コメントと食い違うような…)
振り子のように揺れ動くジャンヌの聖邪が、次回でどう決着が付くのか、たぶん
純粋な聖女にはもう戻れないんでしょうね。
次々回からは慶次主体の話、ということは新キャラとかの絡みも出るのでしょうか?
そっちも楽しみです。
妹が結婚式ですか。私の妹も一昨年に結婚しており、既に長女が1歳です。
姪も可愛いものですよ。
>ハイデッカさん
ジャンヌが最初から最後まで光ってて、慶次はタジタジでしたけど
いよいよ次から計次編ですね。ジャンヌ編ともども楽しみにしています。
ミドリさんファンなのは分かるけど、あんまりそういう事書くと嫌われちゃうよw
>バレさん
いつもお疲れ様です。お仕事すごく忙しそうですけど、健康に気をつけて下さい。
ハイデッカ氏乙!
・・・・細かいようですけどまだじゃがいもは欧州にはないはず。バイキングが持ち込んだのか?
286 :
戦闘神話:2006/06/15(木) 15:37:47 ID:h3wYIVo00
part.3
その重厚な扉は、エドワード・エルリックに何故かあの「門」を想起させた。
あれは真理の扉などではなく、平行世界への門だったのだという事に気がついたとき、
エドワード・エルリックは機械の義手義足を喪なっていた。
等価交換。
何かをなすためには、何かを差し出さなくてはならない。
錬金術世界の錬金術の基本則であり、錬金術師の基本概念である。
弟、アルフォンス・エルリックを呼び戻す際、彼の右腕と左足は再び喪われてしまったのである。
幸か不幸か、父ホーエンハイム・エルリックと再会出来たことで、
この世界がもといた場所とは異なる法則の元に成り立っていると言うことを知ることが出来た。
その発動しない錬金術、元の世界とは異なる物理法則、それらを理解してもなお、
エドワード・エルリックに諦観はなかった。
異なる理が存在するのであれば、その理を使えばよいのだから。
彼に義足を与えた後、父ホーエンハイムは姿を消した。
この世界の錬金術師協会への推薦状と、数ダースの義足の予備と詳細な整備マニュアルを残し、
ホーエンハイムは再び漂泊の旅に出た。
彼が一体何を考えていたのかは、エドワードにはわからないし、分かりたいとも思わない。
父親の手を借りるのは正直いまだに複雑な感情に捕らわれるが、それでもほかに手段はないのだ。
ゆえに、義足のリハビリを終えたエドワードは、錬金術協会へとコンタクトを取った。
「君が、かのホーエンハイム氏のご子息であるということは、この一月で確認がとれた…」
287 :
戦闘神話:2006/06/15(木) 15:40:01 ID:h3wYIVo00
長身の、蒼い、海のような男、ジュリアン・ソロというこの男の第一印象は、
ただひとつ、不気味であるという一点のみだった。
父ホーエンハイムのかつての妻であり、
錬金術の禁忌を侵して何人もの人間の肉体を交換しながら生きながらえていた、
あのダンテの様な不気味さを感じたのである。
だが、あのダンテからですら、これほどのものは受けなかった。
エドワード・エルリックの知る限り、大総統キング・ブラッドレイこと、
傲慢の名を持つホムンクルス・プライドのもつプレッシャーが、彼の放つ一番近しい。
一つの国家を背負う者特有の、威風。それを既にこの若きソロ家の総帥は身につけていた。
考えを改めなきゃならないな、とエドワード・エルリックは胸中で呟いた。
何一つ苦労を知らず、蝶よ花よと育てられたお坊ちゃんかと、
エドワード・エルリックはタカをくくっていた。
だが、初めてジュリアン・ソロに会った瞬間、その考えは甘かった、と改めざるを得なかった。
ケタが、違う。
だが呑まれるわけにはいかない。胸を張って皆の所へ戻るためにも。
「そんなに構えなくともいい。
私としては君を我が錬金術師協会に招き入れたい」
だが、と、ジュリアン・ソロは言葉を繋ぐ。
288 :
戦闘神話:2006/06/15(木) 15:46:33 ID:h3wYIVo00
「君がどういう人間なのか、私は知らないのだ。
少し、話をしてみたくてね」
エドワード・エルリックは、面食らったような顔だ。
いつの間にか、先ほどまでジュリアン・ソロの傍らに佇んでいた秘書の青年によって椅子が引かれていた、座れという事なのだろう。
いいだろう、やってやろうじゃないか。と勢い込んでみたものの、交わされる会話は取り留めもないモノばかりだ。
紅茶の葉っぱの種類なんぞ知りたくもない。
「ところで、並行世界というものを知っているかね?」
ジュリアン・ソロの言葉に、エドワード・エルリックはぴくりと反応した。
「この世界とはよく似ているが、異なる世界。
何かが一つずつ、異なる世界」
爽やかに笑いながら、ジュリアン・ソロは続ける。
289 :
戦闘神話:2006/06/15(木) 15:48:33 ID:h3wYIVo00
「…」
エドワード・エルリックは答えることが出来ない。
「錬金術が栄えている世界、なんてあるかもしれないな」
どこまで知っているというのだろうか?この男は…。
張りつめるエドワード・エルリックに対して、ジュリアン・ソロは…。
「エドワード・エルリック君。
君を、錬金術師として認めよう」
そう、言ってのけた。
「…はぁ?」
ずいぶんと間の抜けた声だったが、ジュリアン・ソロもソレントも笑うことなど無かった。
「我がソロ家は、私ジュリアン・ソロは。
全力をあげて君をバックアップしよう」
エドワード・エルリックは、こうしてスタートラインにたった。
やはり、この部屋の扉は地獄門だったのではないかと、思いながら。
290 :
戦闘神話:2006/06/15(木) 15:51:00 ID:h3wYIVo00
part.4
ギリシア神話に曰く、彼の神はかつて女神と一つの地の支配権を巡り争ったのだという。
彼の神が、自慢の三叉戟で大地を突いてその地の民に与えたのは、塩水の泉であったが、
彼の女神が地の民に与えたのは、オリーブの木であった。
その地の民は、オリーブを与えた女神に心酔し、女神を奉戴することを選択したのだという。
その女神こそが戦と智慧と織布の女神アテナである。
神話の昔から存在するというそのオリーブの老大樹は、その生涯のほぼ全てを、聖域の中、
聖闘士たちが修練を積む鍛錬場を見守り続けている。
鍛錬場はちょうどサッカースタジアムほどの大きさであり、
緩やかにすり鉢状になっている。
そこで今、二人の聖闘士が相対していた。
「チェーンよ!」
轟音を上げ、まるで蛇のようにうねりながら、アンドロメダ瞬のネビュラチェーンが、ピスケスの聖闘士に襲いかかる。
291 :
戦闘神話:2006/06/15(木) 15:53:46 ID:h3wYIVo00
ただの鎖と侮る無かれ、数々の戦いを経て研ぎ澄まされた彼の手に掛かれば、
銀河の鎖は鋭利な刃にも、巨大な破壊槌にも、必殺必中の矢にも、万敵打ち払う槍にも変化するのである。
槍のように薙ぎ払いの形を見せた鎖を、ピスケスの少年は這うようにして交わすと、そのまま鎖の内側、瞬の間合いの内へと進撃すべく突撃した。
小宇宙の生み出す奇跡、黄金の魂の力は、物理法則など容易く打ち崩し、ピスケスの少年を光速の住人と化す。
光より速いものは存在しない。
人間の反射神経など、いくら研ぎ澄まされたところで、光に域にはほど遠い。
だが、しかし、その光に反応し、対抗する事が出来るからこそ、アテナと共に聖戦を戦い抜いた五人の聖闘士なのである。
ピスケスの少年の突撃は、もう一つの銀河の鎖によって阻まれていのだった。
アンドロメダの聖衣には、装身具として二本の鎖が存在する。
攻撃を司る角錐の鎖、スクエア・チェーン。
防御を司る円環の鎖、サークル・チェーン。
この二つの鎖が、海神の皇の怒りを鎮めるために捧げられた乙女アンドロメダを模す聖衣の象徴である。
アンドロメダの聖闘士である瞬は、正しく体の一部ともいうほど自在に操る事が出来るこの鎖を、高速回転させることによって強力な防御領域を生み出すことができる。
ローリング・ディフェンスである。
速さとはつまり、力である。
一円玉ほどのアルミニウム片でも、徹底的に加速してやれば、厚さ一メートルの鋼鉄板すら容易く貫く槍となる。
アンドロメダの鎖が、絶対の防御と呼ばれるのは、そこに起因する。
鎖と、鎖に従った大気の壁が、アンドロメダの聖闘士に絶対の守りを約束するのだ。
292 :
戦闘神話:2006/06/15(木) 15:55:37 ID:h3wYIVo00
「流石は師匠!」
自身の渾身の突撃を難なく防がれても、ピスケスの少年は何ら気に病むところはなかった。
鎖の内側に入ることだけが、目的だったのだから。
「私の技!受けていただくッ!」
黄金の小宇宙によって生み出されるのは、奇跡の破壊である。
聖闘士の技とは、己の眠れる第七の感覚を呼び覚ますことにより、物質の最小構成単位である原子を砕くことを礎としている。
そして、破壊は単純に小宇宙に比例する。
黄金の領域にまで高められた小宇宙は、天空を彩る星々すら打ち砕くという。
ピスケスの少年は、まだその領域に至ってはいないが、それでも黄金の聖衣を纏うだけの域には達しているのだ。
「リヴァイアサンスクリーム!!!」
怪魚の王者の咆吼が、怪魚の顎が、師匠超えを目指す少年の意志そのものとなってうちだされた。
しかし、ピスケスの聖闘士の最大奥義である超エネルギー衝撃波は、瞬を捉えることはなかった。
「…ッ!
スクエア・チェーンッッッ!」
293 :
戦闘神話:2006/06/15(木) 15:57:39 ID:h3wYIVo00
ピスケスの少年の右足には、瞬のスクエア・チェーンが絡み付いていた。
先ほどかわしたスクエア・チェーンを、少年は失念していたのである。
獲物を狙う毒蛇の如き慎重さで、そろりそろりとピスケスの少年の右足を狙っていたのだ。
そして、リヴァイアサンスクリームを打ち出す瞬間、彼は天高く放り投げられていたのである。
「アドニス、技を過信しすぎだよ?」
優男然とした少年、いや、青年の域に差し掛かろうとしている瞬の声を中空で聞いた次の瞬間、
ピスケスの少年は満足に受け身をとれず、大地に抱かれて意識を手放した。
アドニスが瞬に師事して四年になる。
サガの乱、海皇聖戦、冥王聖戦を経て、聖域は一応の平穏を取り戻したものの、
聖戦によって喪われてしまったものは多かった。
何よりも、サガの乱によって聖域内部に空席が増えていたことが問題であった。
人員増強。それがハーデスとの聖戦が集結した時点で求められた急務だったのである。
白銀聖闘士でありながら、教皇代行としてこの四年、
一日を三日に切り盛りする勢いで職務に忙殺されていた、祭壇座・アルターのニコルのたっての願いである。
瞬は優しい男だ。苦労を重ねるニコルの助けとなるべく、自ら聖闘士育成を名乗り出たのである。
そして、四年。元々教導の才が有ったのか、瞬が育てた聖闘士は、
この魚座・ピスケスの黄金聖闘士アドニスを筆頭に、既に三人になる。
来月、四人目の聖闘士が誕生する事になっているので、事実上四人だ。
他の兄弟達は、紫龍が一人の弟子をとっている以外は、独り身だ。
瞬の実兄、一輝はまた旅の空であるし、氷河は母の眠るシベリアの大地にいる。
そして、星矢は姉と共に日本へと戻っている。
星華は星矢たちが育った児童養護施設・星の子学園に勤めているそうだ。
意外と面倒見の良い星矢のことだ、なんだかんだ言って、星の子学園の手伝いをしているのだろう。
294 :
戦闘神話:2006/06/15(木) 15:59:39 ID:h3wYIVo00
アテナ・城戸沙織は、星矢の命が危険に曝されることがないように思っているのだろうが、星矢の事だ。
アテナに、聖域に変事があれば必ず戻ってくることだろう。
ばしゃん、と、貴鬼に水を浴びせかけられて、アドニスは意識を取り戻していた。
神出鬼没、それが貴鬼という聖闘士だ。
アドニスの親友であり、好敵手であり、強敵(とも)であり、喧嘩仲間である。
「通算何度目?」
悪戯っぽく笑いながら、貴鬼は瞬に訪ねた。
黄金聖闘士になっても、貴鬼の態度は基本的に変わらない。
青銅聖闘士の五人に対しても、昔と変わらない態度で接してくれているのが、瞬には嬉しかった。
聖戦を戦い抜いた彼らは、聖域においては英雄である。
故に、聖域にいる以上は気を張る日々が続くのである。
「2952回目だよ、貴鬼」
だからこそ、星矢は聖域には居たがらないのかもしれない。
「全敗ランカーなんていうなよ!貴鬼!」
アドニスは勢いよくたちあがると、貴鬼に詰める。
余程馬があうのだろう、この二人は。
喧嘩するほど仲が良いのだろう、そう思っていないのは、当の本人達だけだ。
「じゃあ、勝ち知らず」
「言、う、じゃ、な、い、か、この野郎!」
295 :
戦闘神話:2006/06/15(木) 16:01:49 ID:h3wYIVo00
アドニスが、師匠と敬慕してくれるのは有り難い。
だが、こういった年相応の面を見せてくれても良いと、まるで親のような気持ちで瞬は思う。
「あ、そうそう、アドニスをからかっている場合じゃなかった」
まだ何か言いたそうなアドニスだが、貴鬼の用件が公用であるらしいことを察して、口を噤む。
「ニコルさんから教皇の間にくるようにって、アドニスも一緒に」
どうやら、任務のようだ。と付け加えて貴鬼は去っていった。
「まったく、貴鬼の奴め!」
アドニスの憤りも、どこか笑い混じりだ。
師弟ふたり、並んで十二宮の裏道、直接教皇の間へと行くことの出来る道を歩いていた。
あれだけ血を流しながら突破した身としては、こうして易々と教皇の間へと行くことが出来る道を歩くとき、
少し複雑な気分になる。
教皇の間への道は、人通りが多く、瞬とアドニスが並んで歩いていると、挨拶をしてくる者も多い。
中でも、女性職員は特に。
瞬には、カメレオン座のジュネという恋人がいるが、それでも、
という気持ちになる女性は多いのだろう。瞬は、優男然としていながらも、芯の通った男だし、
何より、聖戦を戦い抜いた戦士だ。聖域に住む人間は、基本的に強い者が好きだ。
彼の弟子である十三歳になるアドニスに、熱っぽい視線を送る女性も少なくない。
アドニス自身は気にしてはいないが、彼は美しい少年である。
そんな、見目麗しい師弟が揃って歩いているともなれば、自然目を惹く。
296 :
戦闘神話:2006/06/15(木) 16:03:16 ID:h3wYIVo00
「貴鬼らしいじゃないか」
笑いながら、瞬も答える。
かつての星矢のような快活な姿と、己の弱さに歯噛みしながら死ぬ思いで鍛錬を積む姿。
どちらも同じアドニスだが、それでも少年時代というものを過ごして欲しいと、瞬は思っている。
黄金聖闘士ともなれば、対等の立場という人間は同じ黄金聖闘士以外にはいないし、
通常そうそう顔を合わせることはない。
だからこそ、友人を大切にして欲しい。瞬はそう思っている。
ピスケスのアドニス、彼の懊悩を取り除くことが出来るのは、師ではなく、
友でしかないのだと、瞬はそう思っている。
腹を割って話せる友がいるのなら、闇に落ちることはないだろうから。
銀杏丸です、戦闘神話part.3〜4をお送りしました。
アドニスは僕の前作、黄金時代の番外編にて名前だけ登場したオリジナルキャラクターです。
アイオリアみたいな髪型した女顔の車田美形キャラを想像していただければ有り難いです
>>28 すみません、勉強中です
>>32 ありがとうございます
そういってもらえると、意欲が湧きます、本当に。
>>33 仕事のほうはだいぶ慣れてきました。
まだまだ新人ですがw
>>34 第一回はあともう一度投稿したら終了です
第二回は一部で有名なあのキャラクターが登場予定
>>51 そういってもらえると、気恥ずかしいです
まだまだ未熟なんで、頑張ります
>>全力全開さん
鰹節、いいですねぇ…
一部食品にとっちゃ風味が一番大事なモノもありますから
>>ふら〜りさん
ジャンプノベル版聖闘士星矢より、白銀聖闘士・祭壇座アルターのニコルが登場でした。
これからも微妙にマニアックな連中が出る予定なので、お楽しみに
あと、カノンの件に関しては追々劇中で語ってもらう予定です。
あ、前回ローマ神話版でポセイドンの名前に縁があるキャラクターと言いましたが
ヘルメスのローマ神話での名前のほうが正しかったです、申し訳ないです。
ネプチューンだもんなぁ、ポセイドンはw
ビッグファイアのみっつの僕だっつーの
俺は前回の黄金が大好きだったので、今回もセイント大活躍で嬉しい。錬金知らんけど期待してます。
ミドリ氏は淫乱だな
SSの節々から薄汚いマン臭がしやがる
ぜってーぶっ潰す!!!!!
302 :
作者の都合により名無しです:2006/06/15(木) 22:21:08 ID:CPwlDL/6O
>301
そんなおまえを俺様がレイプしてSATSUGAIしてやるぜゲーハハハハハ
SATSUGAIせよ! SATSUGAIせよ!
304 :
聖少女一部最終話後編:2006/06/15(木) 23:13:33 ID:CBfU6T3m0
>>275 「慶次、もうやめろ! この戦争は我々の勝ちだ、無理をするな!!」
ラ・イールが大きく叫んだ。どんな怪物でも、致死点は必ず訪れる。
今、慶次の肉体は限界を迎えようとしていた。
慶次の眼は充血し、槍を振る速度は明らかに衰えている。が、笑顔は涼やかなまま。
「ふふ。ラ・イール。傾くってのはね、無理を通すことさ」
そう言って慶次はその場所からビクとも動かない。
背中には扉がある。そしてその先にはジャンヌがいる。だから、慶次は動かない。
「この、魔女がぁああああああ!!」
リシャールの紳士然とした仮面が痛みによって奪われ、獣性が剥き出しになった
否、人間というものの本質だろうか。厩舎の中に瘴気が満ち溢れていく。
狂ったように剣を振り回すリシャール。もう、剣の型も術も存在しない。
ただ、ジャンヌに対する怒りと憎しみに任せ、無茶苦茶に剣を振り回している。
殺す。殺す。魔女め。魔女め。死ね、死ね、死ね。
リシャールの眼は爛々と血走り、涎を垂らしながらジャンヌに迫っている。
憎しみが肉体の痛みを消し去り、怒りが彼の思考を止め精神を支配している。
憎悪と怒り。人間の感情で最も強いもの2つ。
凡愚の人間の激高は、聖女と呼ばれし少女すら侵食し始めている。
ただの人間の恐ろしさと醜さが、呂布以上のプレッシャーを彼女に与えている。
先ほどまでの性の余韻は消し飛んでいる。根源の恐怖。死。向けられた憎悪と殺意。
怖い。怖い。怖い。 ……何故、私は前線などに来てしまったのだろう?
聖旗を掲げ、兵を鼓舞していれば充分に役割を果たしているのに。
何故、私はこんな戦場に来て、殺し合っているのだろう?
ほんの少し前まではただの女だったのに。何処にでもいる貧しい村の少女だったのに。
私の血が呪われているから? 血と快楽を求める魔女だから?
体が動かない。金縛りにあったように。誰か、助けて……!!
305 :
聖少女一部最終話後編:2006/06/15(木) 23:15:09 ID:CBfU6T3m0
慶次の肉体から力が失せていく。出血は常人なら致死量を超えている。
だが、彼はその場所を動かない。まるで、死に場所と決めたかのように。
松風の俊足ならば、右へ左へ攻撃を交わしながら最小限に傷を抑えているはずなのだ。
が、この馬も背中の主人の意志に殉じているように、その場を動かない。
「け、慶次、いい加減に…」
ラ・イールが震える声で慶次に声を掛けようとした。その時、慶次は吼えた。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
天地を劈くような雄叫びである。敵も味方もその見事さに固まるような。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
慶次の雄叫びが厩舎にも鳴り響く。まるで火山のような雄々しさである。
「な、なんだ、ま、魔物か…?」
リシャールの狂気が刹那途切れる。そして、ジャンヌの恐怖も。
あの言葉を思い出した。『ジャンヌ殿が月なら、俺は月を護る雲になるな』…。
感じる。大きくて強い、安心できるもの。背中に。背中を護ってくれる、愛する人。
前田 慶次朗 利益。 …いつも優しく包んでくれる。背中を護ってくれる人。
そして、暖かい手で、背中を押してくれる人。
もうひとつ。胸にあるプリフィアの花。この花は願いだ。
ベルトランや、ジヤンや、ラ・イールたちが託してくれた、未来への希望を象徴するもの。
そして心の中にある想い。
小さな頃から祈り続けた、幸せな未来。フランスの明日。
お腹一杯の子供たちが、絶え間ない笑顔で遊んでいる世界。
未来へ。あしたへ。
306 :
聖少女一部最終話後編:2006/06/15(木) 23:16:03 ID:CBfU6T3m0
そうだ。私は聖女でも魔女でもない。あの時のただの少女。道端の少女。
どこにでもいる、お腹を空かせた子供が成長した姿。それが私。
そんなどこにでもいる、ただの少女だからこそ、きっと大天使様は私を選んだんだ。
王族でもない、貴族でもない、貧しい村の少女だからこそ、啓示を与えられた。
人間の綺麗さも醜さも、愛も憎しみも、欲望も希望ももったただの人間だからこそ。
きっと、私に役割をお任せになったのだろう。
私がフランスを救いたい本当の理由。国がどうとか、王権がどうとかじゃない。
フランス中に何処にでもいる、何でもない人たちの力になりたいから。
この国に沢山いる、沢山のお腹を空かせた『私』を救いたいから。
聖女じゃない。ただの、ジャンヌのまま、私は進む。未来へ。あしたへ。
だから、私はもう震えない。しっかりと剣を握ろう。そして…。
「うん。それでいい。まっすぐに迷わず振り抜きゃいい。それだけさ」
慶次は豪快に笑う。ラ・イールは理解出来ない。慶次はイギリス兵へ最後の口上を発した。
「残念だなお前たち。このいくさはもう終わりだ。聖女殿の、見事な幕引きでな」
その言葉に、イギリス兵たちは動かなくなった。彼らも感じていた。この戦争の終焉を。
リシャールは変わらず剣を振り回している。奇声を発しながら、狂気に塗れて。
だがジャンヌはもう揺るがない。彼女の剣は重く、リシャールの剣は軽い。
ジャンヌの剣には多くの人間の願いと想いが篭っているからだ。
まっすぐに踏み込んだ。未来へ。
そしてまっすぐに、剣を突く。あしたへ。
正確に、鎧の狭間に剣が滑り込んだ。リシャールの鎧が真っ赤に染まる。
呂布の時とは違う。自分の意志で、自ずから進んで、彼女はリシャールを刺した。
未来へと、あしたへと、進むために。
307 :
聖少女一部最終話後編:2006/06/15(木) 23:17:50 ID:CBfU6T3m0
「おおお、俺が、小娘ごときにいいい!!」
リシャールが絶叫した。が、絶叫と裏腹に四肢から力が抜けていく。倒れるリシャール。
ガリガリと体を掻き毟りながら、天を恐ろしい形相で仰いでいる。
ジャンヌにもう、あの感覚は蘇えらない。彼女はリシャールの為に十字を切った。
リシャールは血塗れで笑う。ジャンヌの方を見て、呪詛の言葉を吐いた。
「地獄に堕ちろ、魔女め」
それだけを言うと絶命した。ジャンヌは糸が切れたようにその場にへたり込む。
ジヤンが相手にしていた2人は、主の死亡を確認すると脱兎の如く逃走した。
(地獄…か)
その言葉が、ジャンヌの心に重く圧し掛かる。もう、自分は天国へは行けないのだろう。
でも、でも。
私が血に染まる事で、何処かにいる小さな私の未来が救われるのならば…!
「ジャンヌ殿。敵城を落とした大将がそんな顔をされるな。さあ、勝ち鬨の準備を」
限りなく明るく温かい声で、愛する人が私を迎えに来た。私の顔に笑顔が戻る。
そう。たとえこの世が修羅だとしても、たとえいつかの行き先が地獄でも。
あなたがいれば。あなたが隣にいれば。あなたの笑顔がそこにあれば、私は……。
兵士たちの勝ち鬨の声が何時までも鳴り響く。
聖女を称える声の中で、そっとジャンヌは慶次に寄り添い、静かに大きな手を握った。
兵士たちの大合唱はいつの間にか言葉を変える。
「ランスへ! ランスへ! 王太子を戴冠させ、俺たちの国を取り戻すんだ!!」
まだ、やらなければいけない事は残っている。でもほんの少しだけ、手を握ったまま…。
1429年5月8日。 ジャンヌ・ダルク、オルレアンを解放す。
308 :
第二部 予告編:2006/06/15(木) 23:22:12 ID:CBfU6T3m0
慶次編 第0話 胎動
「見てきたままを言やぁ。遠慮しやあすな」
砕けた口調で、玉座に深く座る男は言った。隣には野性味溢れる男が立っている。
方言口調にも係わらず、下品さは感じられない。むしろ高貴さと威圧感すら漂っている。
「は。では感じたままに。ジャンヌ・ダルクのカリスマ、そして前田 慶次の武力。
両者とも人の領域に非ず、人外の域。確かに恐るべきものでございました。
……ですがそれでも、信長公に逆らいうる力ではありません」
黒いフードに碧眼の男が畏まりながら進言した。
信長、と呼ばれた男はその報告を聞き、つまらなそうにワインを飲み干した。
「フン。やはりこの時代には、俺の天下布武を止められるものはおらんか」
「…いえ」
碧眼の男が一呼吸置いた後、信長の言葉を否定した。男は言葉を続ける。
「ジャンヌ・ダルクも、前田 慶次も、とても信長公に対抗は出来ません。ですが」
「ですが、なんだ」
信長は興味を惹かれたように言葉遊びを楽しむ。碧眼の男は厳かに言った。
「確かに、一人一人では信長公どころか私にも及ばないでしょう。しかし」
信長の隣の大男が、痺れを切らせたように怒鳴る。
「勿体付けるな。信長公の御前で」
「黙れ、武蔵。暑苦しいわ」
信長は右手で持った扇子で、ぺしりと武蔵の額を叩いた。その直後、碧眼の男の声が響く。
「隣に前田 慶次がいるジャンヌ・ダルク、ならば。
そして…。ジャンヌ・ダルクの為に剣を振る前田 慶次、ならば。…或いは」
「フフ。面白いのう。そうでなくてはいかんわ。退屈凌ぎにちょうどいい」
309 :
第二部 予告編:2006/06/15(木) 23:23:26 ID:CBfU6T3m0
信長はその言葉に満足げに笑い出す。そして、おもむろに碧眼の男に命を下した。
「黒母衣(くろほろ)よ。まずはブルゴーニュ一派とやらを落とせ。
あの程度の輩、俺が出て行くほどではなかろう」
「信長公。黒母衣、というのは」
「俺が今、貴様に付けてやった。貴様の本名は言い難くてならんわ」
「……御意」
短く応えると、黒母衣と呼ばれた碧眼の男は姿を消した。
信長はグラスに再度ワインを汲むと、愉快そうに笑い出した。
「ジャンヌ・ダルク、そして前田 慶次か。フフフフ、ハハハハハハハ……」
同刻。空を観上げる女が一人。女は絶世の美女である。
サラサラとした青み掛かった髪が、風に吹かれて優雅に舞っている。
折れそうなほど花車ではあるが、猫のようなしなやかさも感じさせる肉体を
ゆったりとした民族衣装に身を包ませている。
だがその美貌とは裏腹に、瞳は暗く沈んでいる。
幾つかの星を眺めながら、真珠のような涙を静かに流して佇んでいる。
美女は自らに言い聞かせるように、誰もいない場所で静かに語り始めた。
「必ず訪れる悲劇。遠すぎる未来。別れのあした。
私の名は、アイリス。運命を、見護るもの……。」
聖少女風流記 第二部・前田 慶次編に続く。
310 :
ハイデッカ ◆duiA4jMXzU :2006/06/15(木) 23:34:56 ID:CBfU6T3m0
俺の無作法な後書きでいつものチンカスを呼び込んでしまったか…。
ミドリさんすみません。
ミドリさんファンクラブ会長として恥かしい。腹を斬りたい気持ちで一杯です。
でも、まあ、副会長の銀杏丸氏ともどもこれからも宜しくお願いします。
銀杏丸氏、俺が勝手に副会長に任命した。光栄に思えい!
うそ。これからも一緒に頑張りましょうね。
まー、それはともかく第一部完結である。
全三部構成なんだけど、当初は15話位で終わると思ってた。
長げーなあ。やっと半分といったところだ。
さて、慶次編の予告を思わせ振りにしたが、実はまったく考えていない。
最終部はかなり煮詰まっているんだが、
漠然と「魔界転生っぽくしたいなー」位にしか構想は無い。構想とは言わんかw
カマイタチとはえらい違いだな。かなり遅れたが、見てた人さん完結おめでとうです。
カマイタチ、8割方ファンでした。残りの2割は、「この作品さえ無なければ・・!」
うそうそ。マジでファンの一人として、見てた人さんの早期復活お待ちしておりますよん。
>ハイデッカさん
文体などがパオさんに近いように感じたのですが、何か縁のあるご関係なのでしょうか?
お疲れ様です。
第一部は静かなエンディングですね。ただ、どうしても絶望的な未来は避けられないのか。。
第二部心から期待してます。頑張って下さい
未来へ、か。歴史の結末を知っているだけにその言葉が痛々しい。フラグ立ちまくりだし。頑張れ慶次!
>残りの2割は、「この作品さえ無なければ・・!」
今はまちがいなくあんたの独壇場。
第二部期待してます。
「洞窟が血で染まってしまった、次の犠牲者は一体・・・。」
妖刀によって巻き起こった惨劇を悔やみ、拳を握り締めるドイル。
斬られた本人は皮膚一枚の所で体が繋がっていたので修復に勤しんでいる。
そして斬った本人は刀に付いた血を拭い去り、手入れに没頭している。
「さて、次は誰が話してくれるんだ?」
引き裂かれた腹を再生させたシコルスキーが、怪談を進めるべく声を上げる。
全員が意外といった表情でシコルスキーへと目を向ける。
「大丈夫か?無理しなくてもいいんだぞ。」
ドイルもこれ以上の被害を恐れて警告を促す。
「さっきから嫌な気配を感じる、俺の話したトイレの男。
ここで止めたら、きっと奴と同じ運命を・・・・。」
意識を失って2度とこの世に戻る事の無くなった男。
こうして惨劇が続いた後に話されると背筋に寒気を覚えると
同時に、本当に怪談と同じ結末を辿る様な気がしてくる。
「よし、続けよう。だが伝承通りならば話が
終わった時、真の恐怖が始まるのを忘れるなよ。」
本来ならば怪奇現象とは無関係な世界に生きて来たユダも、
この世界では常識が通用しない事に勘付いていた。
仲間のシコルスキーも得体の知れない力を身に付けているのだ。
神が実在する様な世界では何が起こっても不思議ではない。
「では次は私が話そうか。」
ドリアンが次の話を務めようと4番手に名乗りを上げる。
「偶然にもシコルス君の話と似た様な話を知っているんだ。
日本の学校で行われた奇怪な話を・・・その話をするとしようか。」
「その場にいる全員で交替しながら怪談を語る、
そういうルールでスタートしたんだよ。
どうだい?今の私達と似た様な状況だろう?」
降り止まぬ雨の音が響く、単なる気温の低下か、それとも
恐怖がそう感じさせるのか、寒気の走るような空気に満ちた洞窟を焚火で暖めていく。
焚火で照らされた人間の顔とは、何とも形容しがたい雰囲気を持つ物だ。
そして、それが死刑囚というのだから尚の事である。
「暗い、何処までも暗黒の広がる暗い空だったその日の惨劇。
まぁ彼等は都会暮らしだったから空なんて気に留めなかったんだろう。
月の明かりの無い、教員に許可を取った学校の個室にある電灯だけが、
唯一の明かり、人工的に作られた光の中でその話が行われることになった。
誰から話すかを決めていたら、一人の女生徒が名乗りを上げたんだ。
彼女の話は、その学校に取り憑いている悪霊の事だった。」
「彼女が言うにはその悪霊はとても狡猾で残虐な奴らしい。
クラスの人間の心を操り、一人の生徒を破滅に追い込んだんだ。
その生徒は必死にみんなに悪霊の事を話したんだ。
勿論、そんな話は誰も信じはしなかったがね。
日が経つに連れて、悪霊の姿が鮮明に見え始めるようになった生徒は、
操られたみんなを説得するのは無理だと判断して、家に閉じ篭ってしまったんだ。」
どうやらこの話はイジメが原因で悪霊の幻覚を見た生徒の話の様だ。
在りがちな話だが焚火に薪をくべるドリアンの表情が、奇妙な空気を濃くさせる。
「でも、イジメを悪霊のせいにするってのは無茶がある気がするよな。」
シコルスキーが口を挿む、誰もがそれには共感していたが、
ニッコリとドリアンが微笑むと共に、再び奇妙な空気が濃くなっていく。
「確かにそうかも知れないな、この生徒が幻覚を見ていた
だけかも知れない。だが話は終わってはいないよ。
自宅に篭りっきりの生徒を、悪霊は逃さなかった。
毎日の様に彼に付き纏い、遂に彼は悪霊に負けた。
生徒の身体を乗っ取った悪霊はカッターを持ち出し、
喉を引き裂いて生徒を殺す事に成功したんだ。」
「ハハハハ!ヤッパシ幻覚ダゼソリャ。」
スペックが大声で笑い声を上げる、やはりよくある話だ。
そう言う事で終わり、次の話に移るかの様に見えた。だが、
「焦る事は無い、まだまだ終りじゃないんでね。」
ドリアンは話を止めなかった、まだ続きがあるのか。
これ以上、何を続けるのかと想像すると、隠れていた恐怖が姿を見せだす。
悪霊へとイジメの責任を押し付ける生徒の自殺、それで終わったのでは無いのか。
「悪霊に取り憑かれた生徒の話を聞いたその場の人間も、
君達と同じ様な反応だった。全員で在りがちな作り話だと言い張った、
だが只一人、居心地が悪そうに俯いている少年が一人居たんだ。
その少年を見据えて彼女はこう言ったんだよ。」
「君は知ってるよね、この話。」
冷や汗が止めなく溢れ、握られた拳まで汗で濡れていた。
少年が何を知っているのか、それがどの様な結末を齎すのか。
「その話の生徒は実在したんだ、話をした全員が、
同じクラスでは無く、学年もバラバラだったから判らなかった。
だが少年は知っていたんだ、その話の真相を、真実を。
今、この少女が話した悪霊のせいにする生徒の話も自殺の話も。
何故なら、彼がイジメを最初に始めたんだからね。」
「彼女は少年に優しく近づいて慰めた。
そして表情に合わない冷たい声で言い放った。」
「気にする事は無い、これから償えばいいのだから。」
「次の瞬間、彼女は刃物を取り出して少年に斬りかかった。
その表情は少年に近づいた時の優しい顔では無かった。
まるで悪霊に取り憑かれているのではないかと、錯覚させる様な顔だった。」
悪霊、その単語の意味をようやく理解する聞き手達。
それは、人の心の内側から取り憑く狡猾で残忍な悪魔。
「話をしていたメンバーに運動部の人間が居てね。
持ち前の運動力で、咄嗟に彼女の手を払い除けて刃物を吹き飛ばした。
彼女は無念だったであろう、自殺した家族の仇を討てなくて。
悪霊に殺された生徒は、彼女の兄弟だったんだよ。
少年はイジメがバレた事と、襲われた事への恐怖で意識を失ってしまった。
彼女はその場の全員に取り押さえられてしまい、落ち着かせる為に警察へと送られた。」
「その後、一度解散して次の機会にでも話を進めるって事で、みんな家へと
向かって歩いていった、当然、イジメの主犯である少年も。
帰り道、行き成り後ろから声が掛かった。」
「償いは済んでないわ、あなたに罪を償わせる為に、
私も悪霊に取り憑かれたの、さぁ、一緒に逝きましょう。」
「後ろから声を掛けたのは先程、刃物を持って襲い掛かった少女だった。
警察へと赴いた筈の少女は、全身が返り血で濡れていた。
そして、その喉は真っ二つに裂けて呼吸が出来る状態ではなかった。
それを見た少年は再び気を失ってしまった。」
「この話の終わりは、Mr.柳の話と同様に、少年が死体となって発見される事で
結末を迎えた。その首に、自殺した少年と同じ傷を付けて。
彼女も悪霊から解放されたのでしょう、安らかな死顔だったそうです。
結局、全ての怪談を話し終わる所か一人目で終了してしまいました。」
ドリアンの話が終わった、在りがちだった話は、少女の狂気を描く物だった。
「本当の悪とは、サルーイン等では無く人の心にこそ潜むのかも知れませんなぁ。」
話を聞き終えた柳が、虚ろな瞳を焚火に向けながら一人呟く。
怪談を語ったのはこれで4人、残るは2人、恐怖はまだ終わらない。
「しかし柳の話と言い、今の話といいかなり長かったな。」
シコルスキーが話を聞く姿勢を崩して
「だが、本当に全ての話が終わるまで雨は止んでくれないらしい。」
外を見ていたドイルが異変に気付く、山の天候は変わりやすい。
アサシンギルドは山へ続く山道の間にあるので良く影響を受ける。
豪雨は別に珍しい事では無い、だが明らかに雨に異常が見られる。
木の枝を外へと放り投げると、雨がぐしゃぐしゃに砕いてしまった。
「こんな雨では5分と持たずにスタミナ切れだな。」
その様子を見ていたユダが、冷静に雨による体力の消耗を分析する。
こんな雨では外に出れるのは只一人、シコルスキーだけである。
「ヨシ、雨ガ止ムヨウニオ祈リシテ来イ。」
スペックが外に向かってシコルスキーを蹴り飛ばす。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ!」
なんと雨が勢いを増し、弾丸のようになってシコルスキーを貫いた。
地面を這いずりながら洞窟へと戻って体の再生を始めるシコル。
「まさかここまでとは・・・後には退けなくなってしまったな。」
またもシコルスキーが犠牲になった、一体この惨劇はいつまで続くのだろうか。
320 :
邪神?:2006/06/16(金) 17:45:33 ID:mCP68Pwo0
今回は特にネタもなかったので講座は無しでございます。
そして前回の感謝の書き方が見辛い気がしたので元に戻します。
〜感謝〜
バレ氏 忙しい中、降臨お疲れ様です。あんな濃い顔したオッサンが
闇の中ザクザク砂に手を突っ込んでるシーンなんて狂気を感じますよね、
それ以上に狂気を感じるのは公園に住み着くポン刀持ったホームレスですが。
>>あれ? 主人公達は今どうしてるんだろう…
今頃、北斗神拳伝承者に海の男としてマグロの一本釣りを習得させているんでしょう。
ふら〜り氏 >>「ラッキーマン」のスーパースターマンを思い出します。
不死身の再生力、そして打たれ弱さ、細胞レベルでの再生なので再生力は上かも。
シコルは再生力を攻撃に廻したり出来るので戦略の幅が広がります。
でもへタレなのに変わりが無いのが悲しいですなぁ。
サマサ氏 GUN道を取り入れるとは・・・クオリティ高いですなw
余談ですがモンハンで閃光玉を投げる時「おんみょうだんをくらえ〜」
と叫びながら投げる人を見つけました、それに笑ってたら
コントローラーのスティックのゴムが外れてレウスの火炎→死亡。
GUN道、恐るべし。
全力全開氏 京極夏彦、調べてみたら妖怪に囲まれた作者の画像が出て笑ったw
怪談は昔ポンキッキーズでやってたトイレの花子さんと学怖位しか知らないですねぇ。
余程有名でないと分からんです、皿屋敷とか。
226氏 SFC「学校であった怖い話」っていうゲームの話です。
今やっても普通に面白いので怪談好きにはオススメ。一部怖くないけどw
243氏 >>それにしても柳はストーリーテラーだな。風貌からしてこういうの語らせたら上手そうだ。
髭つけて髪型変えれば稲川順二に・・・見えないかorz
第十三話「俺の屍を越えていけって誰かが言ってた」
新八は、ダブルノックダウンというものを初めて見た。
交差する両者の拳は、互いの頬に深くめり込み顔面を歪めさせている。
不細工だった。唇を尖らせながら折れ曲がった眼で敵を見つめる姿は、限りなく不細工だ。
でも……なんだか格好いいじゃん。
不覚にもそんなことを思ってしまう新八だった。
沖田と神楽。両者が放ったパンチはさながらクロスカウンターのように交差し、あの『あしたのジョー』の名シーンを再現したかのような結果を生み出していた。
ここで重要なのは、沖田の手が神楽の頬に触れているという一点。
鬼ごっこのルールに従うなら、鬼である沖田に身体を触れられた時点で、神楽の失格は決まった。
しかし、真に重要なのはそこではない。
「か、神楽ちゃ〜ん!」
ゆっくりと地に膝をつき、倒れ付す神楽。そして沖田。
互いの魂を込めた一撃はの結果は、相打ち。
残念といえば残念だ。ゲームのルールから言えば、神楽は敗北者となってしまったのだから。
だが、そこ心は満ち足りていた。なにせ、あの憎らしい宿敵の頬っ面を歪ませてやったのだ。
あいつったらスゲー不細工顔でやんの。……こんなに、こんなに嬉しいことはない。
「……か、神楽ちゃん?」
「し、新八ぃ……」
新八は心配そうに声をかけると、神楽は歪んだままの顔で笑って見せた。
とんでもなく不恰好だ。神楽ちゃんも沖田さんも。
新八はツッコミたい気持ちを堪えて、なにやらブツブツと呟く神楽に耳を傾ける。
「わ、ワタシの分まで……戦う、アル……」
震えてはいたが、力強い、たくましい声だった。
激闘の最後、神楽は残された力を振り絞り、新八に全てを託したのだ。
自分が成せなかった思い、この鬼ごっこに懸ける情熱。
無念を戦友への力に。ありったけのパワーをメッセージに込めて。
「神楽ちゃん……」
新八の涙腺は、迂闊にも緩みかけていた。
「僕、やるよ。必ずこの鬼ごっこに勝ってみせる」
「そう……それでこそ、ワタシの弟子ね……」
ツッコミどころ満載なのは分かる。だがここは堪えていただきたい。
ともあれ新八は、再び歩き出す。
友の屍を越え、勝利を目指して。
もう後ろは振り向かない。神楽のためにも、前だけを向いて進むと誓ったから.
真選組がなんだ。武装警察がなんだ。
神楽が託してくれた思いがあれば、新八は戦える。いつまでだって、逃げとおせる。
――やってやろうじゃないか。
新八は、走る。
――92神楽、脱落。
「…………いや、どう考えたっておかしいだろ、その流れ……」
今回ツッコミを代弁していただいたのは、現真選組一番隊隊長沖田総悟さんです。
お疲れのところありがとうございました――
新八が作品展開盛り上げのために、変な決意をした一方。
銀時と土方の一戦も、凄烈を極めていた。
とはいっても、これは鬼ごっこ。
銀時ができるのは逃げることだけで、土方はただ追うだけである。
最初はそうだった。
だが、この鬼ごっこのルールはあってないものと同じ。
フィールドから出さえしなければ、仲間内での妨害、武器の使用もアリ。
もちろん、抜刀も可。
「――おらぁ!」
「危なっ!? テメ、なに白昼堂々銃刀法違反働いてんだこらァァ!!?」
土方十四郎という男は、元来戦いに飢えた男である。
剣に溺れ剣に従い、剣に挑んで剣を従え、数々の強敵と剣戟を繰り広げてきた。
それは、この坂田銀時も例外ではない。
その死んだ魚の目からは想像も出来ないような剣術の腕は、土方が認める強者の証。
鬼ごっこ? そんなもんクソ喰らえじゃん。
「てめぇも剣を抜け。逃げてばっかじゃおもしろくねぇだろ」
「馬鹿かテメーは。鬼ごっことチャンバラを履き違えてんじゃねーよ。誰がそんなもん使っていいって言った? 母ちゃんか?」
「悪いが、これはルール違反でもなんでもないんだよ。俺らがやってるのは鬼ごっこであって鬼ごっこじゃねぇ。単なるケンカだ」
刀を構える土方の目は、激しく血走っていた。銀時の死んだ魚の目とは対極を成している。
しかし、このままでは本当に大怪我をしかねない。
そもそも大の大人、それも警察が、街中で真剣チャンバラごっこというのもどうなのだろう。
あーもう、この作品にはまともな大人がいないのか。
「……分かった。なら俺も最終手段を取らせてもらうぜ」
「ああ?」
ついに好戦的な土方を受け入れたのか、銀時は逃走を止めた。
そして真正面から向かい合い、真剣な瞳でその熱意に答える。
彼が下した決断は、
「降参だ。まーけた」
「は?」
銀時は自身に付けられたナンバーバッジをポイッと投げ捨て、降参を宣言した。
もちろん土方は訳がわからず、ぽか〜んと口を開けて呆然としていた。
「そもそもよぉ、真選組メインで鬼ごっこをするっていう第二部の趣旨が気に入らなかったんだよ。四話分くらいは黙って参加してやってたけどよぉ、俺全然主役的扱いされてねーし」
数秒前の土方は、この男とのケンカを望んでいた。しかし今となっては戦意を薄れ、むしろ怒りが込み上げてきている。
「真選組になんか入りたくもねーし? おまえらのリストラも知ったこっちゃねーし?」
坂田銀時、『シルバーソウルって英訳するとちょっと格好いい』主人公。
「無理やり俺出されてもなぁ。活躍しないなら初めから出さなくていいよ。俺は家でジャンプ読んでるから、第三部になったらまた呼んでくれ」
あろうことか、この作品に対して愚痴を吐きやがった。
そして、仕事放棄。
「や、何言ってんだおまえ?」
役目を放棄して、去っていこうとする銀時。このままでは、銀時と熾烈な戦いを繰り広げるという予定だった、土方のおいしい見せ場まで失われてしまう。
「うるせーなぁ、読者はこんなギャグ書き手のチープな戦闘描写なんて望んでねぇんだよ。俺らは適当に無茶苦茶な行動とっときゃいいの」
「本末転倒だろそれ!? おまえこれからの作品展開どうする気だコラァァ!?」
「成るようになるさ。世の中にはネームも作らず原稿描いたりする漫画家とか、プロット作らず執筆する小説家もいるんだぞ?」
「知らねぇよ!? そんなことしてこれ本当にあと三回で収拾つくんだろうなァァ!!?」
「俺だって知らん。っていうか俺もう第二部には登場しないから。あとおまえらで適当に締めてくれ。んじゃ」
「ちょ、ま……」
土方の呼びかけも虚しく、銀時はその場を去っていった。
降参、いや、仕事放棄の証を残して。
――90坂田銀時、脱落(仕事放棄)。
久しぶりですみません。一真です。
まずはかなり遅いですが、見てた人さん、カマイタチ完結ご苦労様です。
あんな真面目な作品とこんなふざけた作品が同じスレに存在していたと考えると、こちらは頭が痛くなるばかりです。
……あー、俺もギャグやめてシリアス書こうかなぁ……そして自爆しようかなぁ。
第二部はあと三回で終わる予定です。
第三部は既に考えてますが、ひょっとしたら気分で超シリアスものになるかもしれません。
むしろ銀魂でなくなる可能性もあります。
そこら辺、今現在も自分の中でせめぎあってます。
あーもう、ホントどうしようか今後の方向性。
>一真さん
ずっと待ってました。今回もしっかり笑わせてもらったよ。
漢気あふれる神楽の最期、その遺志を引き継いで決意を新たにする新八。
そんでもってライバル対決を最悪の反則技でぶち壊すこの上なく最低な主人公w
果たして新八は無事勝ち残って真撰組に入隊できるのか(しちゃ困るけど)、
近藤は無事に局長の座を守り通すことが出来るのか。続きもめっちゃ気になります。
今後のことで悩んでるみたいですけど、どんな風に流れても応援してますよ。
個人的には一部で人情コメディ、二部でギャグときて、三部でシリアスもかなり見てみたいところです。
邪神さん
元ネタありましたか。でも楽しいです。こういう変化球もいいな
一真さん
俺はギャグ主体でシリアスってのがいいなあ。この雰囲気が好き。
328 :
作者の都合により名無しです:2006/06/16(金) 22:27:39 ID:tyBKSD850
>聖少女
第一部完結乙です。ジャンヌが揺れに揺れたのを包み込む慶次はやはり男ですな
第二部、お待ちしてます。しかし、進むたびにラストの悲劇が濃厚になるな・・
>キャプテン
意外と、話す怪談の内容と死刑囚そのものがリンクしてますな。息抜きとして楽しい。
シコルはいつまでも苛められっ子ですが、そろそろ巻き返しを期待します。
>シルバーソウル
主人公とヒロインが失格してしまいましたか。ま、それもこの物語らしいですなw
この路線も好きですが、銀さんの男気溢れるシリアスも是非読んでみたいです。
329 :
作者の都合により名無しです:2006/06/17(土) 08:34:48 ID:oyK1qzJh0
邪神さんのって元ネタあったのか。
流石に、ここまでは考えられんわなW
でも面白いからいいです。
【縁】 ふち
時は移ろい午後7時。工場の近くにある山。
濃緑の波がなだらかな勾配を経て、平地でしばしうねっている。
おりしも当夜は無風。一帯は淀んだ熱気の中にある。
灰色のイワシ雲も、中天に立ち込めたままほとんど動かない。
雲間の縁から金の月光が降り注ぐのも、本当にわずかな時間。
山の頂上よりやや上空。
うっすらと光芒を帯びて、蝶の羽が浮いていた。
アゲハ模様の羽が二枚、並んで浮いていた。一枚につき人間とほぼ同じの羽が。
標本から胴体をむしりとって、そのまま宙に浮かべたような格好で浮いていた。
点描を打ったように取り止めがなく、ザラっとした質感のその羽は、月が雲に覆われた途端、
闇に没した。
そして羽のあった辺り。正確には、羽と羽の間。蝶の胴体がある部分で。
「月、か」
金髪の男が一人ごちた。
「バタフライ殿ならば追うだろうか。それとも、高みゆえ相応しいと捨て置くか」
彼は空を熱心に見ていたが、一転。視線を下に移した。
「山中もしくは河原、廃屋。騒ぎを嫌う戦団の連中がよく選ぶ決戦場所だ。だから張り込ん
でいたが……予想よりも早い上に」
認識票を握り締め、しばし瞑目。
「あの女子社員の話より多いな。1つは広い場所に佇んでいる。そこへ向かってもう1つ。同
族だな。贈り物を無事に受領したようで一安心だ」
ブツブツと呟く。
「残る1つ。これは発動中で、同族の後ろをつかず離れず動いている」
傍から聞けば意味不明な呟きだ。
「戦士は2人、か。どうやら数の上では対等だな」
我が意を得たりと笑う男から枝葉一層を挟んだ下の部分。山の頂上で、何かの気配が動く。
闇の中で、グルグル光る2つの眼差しが空を見た。出番を伺うように。
円の縁から滲む光は、ゆらりゆらゆら、闇に尾を引く。
俺はホムンクルスだ。
いうなれば昨日からガケっ縁というところの。
まず、昨日仕事が終わりかけた頃、ディスクアニマルの組み立てを命じられた。
月末だからね。生産計画の帳尻を合わすのに誰も必死なんだ。
根来さんも駆り出され、結果、徹夜だ。
確かにディスクアニマルは組み立てるのは楽しい。
電動ドライバーの磁石部分にネジを引っ付けて、グィーンと回して止まる時の感覚はいい。
そーいや、あの電動ドライバーは備品なのか? 十万円以上しそうには見えないけど。
とにかく、作るより遊ぶほうのが楽しいわけで。
徹夜して作って、また仕事。ああ眠い。
でも、魂は込めて作ったさ。愛されないで生を受けたら、ディスクアニマルが可哀想だ。
そんな俺に突然の知らせ。
いやはや。
まさか根来さんと千歳さんが、ええとなんだったか。そうそう。
錬金の戦士だったとは。
気づいた後に呼び出しの手紙を受けて、また驚いた。
よりにもよって、あの広場とはねぇ。
数日前、俺は迷うことなくアイツにナイフをやった。
鼻の大きな浮浪者に。少し前から、森を徘徊してるのは知ってたし。
広場の真ん中にナイフを埋めてくれた時は、本当に嬉しかった。
もし見つけられても、アイツに罪をなすりつけられそうだったから。
で、一昨日だったかな。様子を見にきたら、すごい物音がしてた。
ひょっとしたら警察がアイツを連行しに来たのかと思って、俺は上空40mまで逃げた。
もし警察と遭遇したら言い訳が大変だから。
思い返せばあの時に、千歳さんか根来さんの手にナイフが渡ったかも知れないね。
フフ。
あの時といえば、今と同じように尾行されていたのかな。
いわれて初めて気づいたけど、集中すると気配がすごく読める。
どんな原理でやってるんだろ。俺にも似たようなコト、できるかな。
…………ん? ちょっと進行方向を変えたような? 気のせいか?
亜空間と現空間の縁は、水面下のように景色が曲がりくねっている。
根来はそのすぐ下を静かに進んでいたが、突然立ち止まり、少しだけ思案にくれた。
やがて、──現空間における物体配置を元にした話になるが──木の根へと向かった。
潜り込んで、幹の中をスルスルと登っていった。
千歳がいるのは、山道から少し離れた森の広場。
かつて鷲尾と邂逅し、不意の戦闘が巻き起こった所といえば分かりやすいだろう。
場所が場所だけに掃除する者はいるワケもなく、以前同様、動物の死体やゴミなどが所構
わず散乱している。
それらのすえた臭いが夏の暑気にあぶられ、吐胸をつかんばかりなのだが……
千歳は核鉄の縁をつるりと撫でると、深く息を吸い込んだ。
戦闘に備え精神を落ち着かせる動作だ。
はてさて。
臭気に満ちた場所でそれをやる胆力を褒めるべきか。それとも有効性を疑うべきか。
小さな背が木肌に預けられる。
沈鬱ともいえるほど静かな顔だ。
いつもと変わらないように思えるが、千歳には一つだけ変化が生じている。
着衣だ。
スーツでも再殺部隊の制服でもなく、白いツナギを着ている。
一見野暮ったく見えるが、千歳のシャープなラインを忠実に表現しているので、製作者に謝
意を示すべきだろう。
はだけた胸元から覗く黒いTシャツ。
わずかに幅員を広げるポケット周り。
白樺のような両足をカーテンのように覆い隠すズボン。
厚手の布地に覆われているというのに、なおも細く伸びやかなウェスト。
これらを描写しているのは、10巻12ページ2コマ目の
「口をヘの字気味にしている千歳」
に和んだからではなく、単に風体の有りようを描く必要性に迫られたからである。
さてこれら、以前の戦闘時に来ていたモノに見えるが、若干違う。
汗にしどけた後ろ髪の付近から、フードが垂れているのだ。
なぜこのような変化を施す必要があったのか。
千歳は昼頃、戦闘に備えてという名目で1時間の猶予を求めたが、それと関係しているのか。
(彼は少し前に一度負けている)
さりげなく胸元のボタンを留めて、千歳は視線を遠くに移した。
(でもこの方法なら、以前と同じ負け方はしない筈──…)
やがて広場に一つの影が来訪した。
彼はスーツを着ている。ごく一般的なベージュ色のスーツを。
「さて。火曜サスペンス劇場なら丁々発止、俺が犯人か否かやりあう所でしょうが」
丁寧な調子で喋るは久世屋 秀。やや童顔の青年だ。
「けれども俺はホムンクルスだ。犯人であろうとなかろうと、殺されるのには違いありません。
ならお互い、つまらない腹の探り合いはやめませんか? 俺はホムンクルスだ。そして、部長
を殺した犯人でもある。それを立証できるようになったから、呼び出したんでしょ?」
「ええ」
低声で呟くと、千歳はヘルメスドライブを発動した。
右手首に着装されるは、巨大な六角形。レーダーと瞬間移動能力を搭載した硬質の楯だ。
それを無邪気に眺めながら、久世屋は話を切り出した。
「で、いつ頃ですか。あなた方が俺を犯人だと疑い始めたのは?」
千歳は一拍置いた。何かに気づきつつも、それを隠した風情がある。
「赴任初日よ」
「ほう。さすが鋭い。理由は?」
「あなたは、私に仕事を教えた後、こう言った」
『あ、いや、死んだ麻生部長の受け売りですよ』
「よく分かりませんね。本当のコトじゃないですか?」
「朝礼を聞いていなかったようね」
「え」
「工場長からは、麻生部長が行方不明だと伝えられていた筈よ」
「あ……なるほど。だから死んでると決めてかかった俺が、犯人だと」
「正確には、ホムンクルスか信奉者。そこで警察に調査を依頼したわ。すると」
捜査用に提出された社員の髪の毛のうち、久世屋のモノだけが消失しており、彼がホムンク
ルスであるコトが確定した。
「ほほうなるほど。でも俺の正体までは流石に分からないでしょう?」
「いいえ。ついさっきだけど、回収したナイフの鑑定結果を聞いたから」
「お。また鑑定ですか。探偵なのに警察に頼りっぱなしってのは斬新ですね」
皮肉とも感心ともつかん言葉を、千歳は流した。
「チスイコウモリ。それがあなたの正体ね?」
コウモリといえば吸血というイメージがあるが、実際に吸血を嗜むのは約1000種類中、わ
ずか3種類。
チスイコウモリというのはそれらの総称だが、中でも人間や家畜の血を吸うのはナミチスイコ
ウモリ1種類だけだ。
「あなたは部長を刺した後、ナイフから血液を舐めとった」
「ハイ。まったくその通り。元の習性だから、部長を殺した後の楽しみでもありました」
チスイコウモリの吸血方法は、『舐める』コトにウェイトが置かれている。
ドラキュラのように牙を突き立てたりはしないのだ。
まず、寝ている家畜に忍び寄り、牙で皮膚に傷をつける。
次に傷口から流れる血をピチャピチャ舐める。
「何かで読んだんですけどねぇ、チスイコウモリの唾液には、血液の凝固を妨げる酵素が含ま
れているようなんですよ。血をずっと舐めていられるのはそのおかげ。ま、家畜の寝返りで
圧死するコトもしばしばですが」
久世屋の調子、実に軽い。
「で、酵素がナイフについてて正体がバレたんですね。しかし、どーして残っているのか。俺
は念入りに洗ったんですよ。2週間ぐらい練習重ねた上で」
久世屋はやれやれといった風に肩をすくめて見せた。
「髪の毛は消滅するのに、どうして洗い落としたはずの酵素がナイフに残っているんでしょう」
謎だ。まったくの謎だ。
「ホムンクルスにはまだまだ解明されていない神秘がたくさんなので、仕方ないですけど」
千歳も頷いた。
ホムンクルスにはまだまだ解明されていない神秘がたくさんなので、仕方ない。
「いやはや。俺はどうも、周りの状況に合わせるのが苦手でして。というか他人の惰性まみ
れの行動に呼吸を合わせるのが嫌でしてね。ちゃあんと作り込まれたモノを使うのは得意と
自負してますが。普段から周りに無関心で、かつ、自分の欲求しか追ってないと、ナイフやら
迂闊な一言やらで、ボロを出してしまうんですね。その点、改めるべきでしょうか」
素直に自白するその態度、尋問側の千歳より落ち着き払っている。
「ところでアリバイですが、どの様に崩されましたか?」
事件当夜は銀成市にいて、距離的には犯行時刻に工場にはいられないというアリバイのコトだ。
「それは──…」
千歳はつまびらかに説明した。 影抜忍者出歯亀ネゴロ
久世屋はしばし真剣に聞き入り、 ↓ 現在地
「名推理。でも」 枝の中。千歳の頭上の。
話が終わるとニタリと笑った。
「電車が事故で止まったりしたらどうしますか。計画は一気にダダ狂いじゃないですか」
余裕綽綽だ。
「だいたい、殺人なんて人生の一大事ですよ。ばれたらその後、何十年も拘束される。なら
ば!! 就職試験並みの気迫と練習をもって挑むべき!! 運否天賦に任せちゃあダメ!」
気迫も充分だ。
「俺は思うんですよ。完全犯罪を企む人の心情を。完全なんていいながら、どうしてろくに練
習もしてないコトとか、偶然頼りのコトをやるのかってね。だから失敗するんです。人生が掛
かっている正念場で、下手に自分の優秀さを誇示しようとして、結果、間抜けばかりを晒して
る!! けれども俺は違う!! 俺は違うんですよ!!」
自分が彼らより優秀と言いたいのか?
「全然違いますね。むしろ逆ッ! 自分の領分はよーく分かってる! 事務処理に長けてても
小難しいコトを考えるのは苦手だって分かってる!」
胸の前で拳をガっと握り締め、熱弁をスタートさせた。
「だから俺は練習した! そして見事やり遂げた! コウモリに変身した状態で、この街から
銀成市ってところまで
電 車 並 み の 速 度 で 飛 ん で ア リ バ イ を 作 っ た ! ! 」
「え?」
千歳は耳を疑った。
よもやそれがアリバイ工作か。
だとすれば何を言い出すのかこのホムンクルスは。
更にアリバイの内容を、久世屋はつまびらかに説明した。終わった。
「時刻表を眺めたりとかで、トリック練っている間にも、時間は刻一刻と流れていくんです。そ
の間に、自分の命運が尽きちゃ元も子もありません。だったらちまちま考えるより、すぐでき
るコトを確実にこなしていくべきじゃないですか! 第一、俺はホムンクルスですよ? 持って
生まれた身体能力をちゃんと使わない手はないでしょう!」
がっと詰め寄られて、千歳は少し困惑した。
ギャンブルが嫌いだから同意できる部分も多々あるが、にしても荒唐無稽というか、駈けずり
回った時間が無駄に思えて、やるせない。
あぁだこうだ考えず、さっと呼び出してサクっと倒せば良かったのではないか。
久世屋も同意らしい。
「どうしてホムンクルスたる俺の近くにいながら、手をこまねいていたんですか?
さっさと戦えば良かったのに。もし俺が他の人に危害を加えたら、面目丸つぶれですよ」
千歳はマジメに説明した。戦団の性格上、証拠を集めないと駄目だったと。
「なるほど。どこもかしこも惰性まみれですね。厄介なコトは早めに片付ければ傷も小さくて
済むというのに、手続きだの体裁だの心情への配慮だの、下らないコトに拘って、物事をか
み合わなくする。挙句、誰かに後始末を押し付ける。苦労のほど、お察ししますよ」
盗人ふてぶてしいとはこういう状態をいうのだろう。
千歳と根来の潜入捜査は、久世屋が原因だというのに。
「千歳さんたちも仕事だから、俺はさっさと自白していきますよ。つまらない意地に付き合わ
されて、仕事の時間が増えていくってのは、本当ムダで腹立たしいコトですから。なので、
次は動機について。俺は耳がいいから分かってます」
にこやかに指摘する。
「千歳さんがお尻のポケットに入れているテープレコーダーに、俺の動機も録音しましょう。
自白と揃えば充分な証拠になって、あなたたちも戦えるんでしょう?」
千歳は務めて無表情だ。
「大丈夫。壊したりはしません。正体がバレている以上、部長殺しの証拠を消したりしても意
味はありません。それよりさっさと戦った方がお互いにとっていいでしょう?」
アリバイのくだりは、路線変更とかではなく、実は最初からの構想の一つ。
デスノートのような本格推理サスペンスとか高度な知略戦は不向きですねやっぱり。
読書や調べ物は好きですが、頭の良さとはイコールじゃないのです。
ええ。実は文系と理系の違いも分からないし、ちょうちょ追いかけてドブにはまったりするのです。
>>243さん
いえいえ。昔から妙にエクセルが好きなので、色々覚えているだけですよ。あれは慣れると
面白くなってきますし。数値が自動で反映される所とか。そして根来の変化は少々難しい要素で
すね。明言は避けたくあり、明言せねば描けず。うーむジレンマ。けどそこも面白い。
>>249さん
流石にそこまではw なんというか、単にひけらかすのが好きなお調子者ですよ。
このSSで描きたかった要素っていうのが、エクセルと原価計算と根来の白い細くびなので
して、自分はとてもろくでもない人間なのです。そのうちスプーに喰われちゃうかも。
>>252さん
あ…… 後ろの方に流されたかもですね。すみません。
そして応援して頂けるとありがたいです! 面白ヘンテコ知識は、小ネタともどもやっていきますよ。心理描写も。
だから論語やら兵法やらを読みたいですね。しっかりとした下地を作るには、そーいうのが欲しい!
全力全開さん
おお。グループ化はやった奴が多いと、非表示へするのに時間がかかって時々じれますよね。
オートフィルタについては、「オプション」で抽出の対象を変えられますよ。例えば、
「はるか空響いてる祈りは奇跡に」って文字列は、「はるか ▼ を 含む ▼」と指定しても抽出できます。
ふら〜りさん
ありがとうございます。生真面目な人に生じた「ズレ」は男女問わず好きな要素です。
そしてご推察は当たっている筈。いや、いますよ! だってそっちのが根来も可愛いので。
後藤さんといいますと寄生獣を彷彿としますが……パトレイバーでしょうか? それとも甲殻?
>>269さん
ありがとうございます。ヒマがあればぜひお使い下さい。トンファーパーマンは贈答品にお使い下さい。
エクセルのシートが見れない原因も分からず…… ちなみに2002。対応しないバージョンが
あるのでしょうか。ああ、こういう方面にはからきし弱いので変わりたい。心から強く思うほど。
バレさん
公私共にお疲れ様です。
>報告書や案内文書など全てエクセルで作ってました。
これは大変でしたでしょう。例えば、タイトルを上の方に書いて、見栄えを良くするために
列幅を広げてしまうと下のセルも同じ幅になってしまうという……
例えば、4つほどの項目の幅をそろえたい時に、
A B C D E
この辺りの幅をいじると、下の項目の幅もおかしくなったり。
┌────┬────┬────┬───────┬──────────────┐
│ 品 名 │ 単 価 │ 数 量 │ 値 段 │ 備 考 │
└────┴────┴────┴───────┴──────────────┘
ワープロならこういう影響はないのですが、罫線は引くのは手間なので、一長一短かも。
話が逸れてしまいましたが、なんだかんだで千歳は優位に立ってますね。
能力的にというか人間的に。やはり年上の強みでしょうか?
>原作を知らなくても楽しめるし、知ってたら尚面白い。
ありがとうございます。二次創作をする者にとっては至上のお言葉です。
錬金は谷もいろいろありますが、それでも楽しんでいただければ嬉しいです。
やっぱり好きな作品なので。
339 :
作者の都合により名無しです:2006/06/17(土) 21:54:38 ID:xcE6YF+e0
スターダストさんお疲れ様です!
俺はスターダストさんやミドリさんの影響でレンキンを読みました。
前回くらいから、チェイス物から少し趣を変えて思考の加わった
トリックっぽい作品になってますねー。凝ってらっしゃる。
どんな方法でも、ジリジリと千歳と根来は追い詰めていきますなー
スターダストさん快調な更新ペースですね。
氏は物知りでそれが凄くSSに反映されてますね。
チスイコウモリとか。頭の悪い自分にはうらやましい。
341 :
四十七話「六物語〜四〜」:2006/06/18(日) 00:03:17 ID:BbP5ebn50
「どう考えてもこの雨は異常だな、恐らくサルーインの仕業だろう。」
ユダが弾丸の様に降り注ぐ雨を見て、今起こっている異常の原因を探る。
だが腑に落ちない、こんな事をして何の意味があるのだろうか。
「人の恐怖、絶望こそが暗黒の神の求める動力源。しかし、
たかが6人程度にそんな事をさせずともいい筈。それに
所詮これは遊びだ、奴等の求めている真の恐怖では無い。」
洞窟内を、冷たい風が通り抜けて行く、外の雨は全く止む気配を見せない。
「何にせよ、術の力を持つのはシコルスキーだけ。その
シコルスキーでも突破出来ないのなら、今の我々が出来る事は一つ。」
怪談を続けるしかない、この状況を打開する方法が無い以上、
百物語の伝承に従えば、全ての話を語り終えた時に何かが起こる。
その何かが恐怖を、死を呼び寄せようとそれを打ち破る。
今の自分達に出来る事はそれしか無いのだから。
「ヨーシ、次ハ俺ガヤルゼ。」
沈黙の中、名乗りを挙げたのはスペックであった。
しかしスペックに怪談話が出来るのだろうか。
「モナリザ、ッテ知ッテルダロウ?」
テーマに持ち出した話は、意外にもモナリザであった。
スペックの語りは聞き取りづらいので、誰もが期待しなかったが
この始まりによって、その場の誰もが、ユダさえも呑まれていた。
「アレニハヨ、色々ナ謎ガ隠サレテルッテ言ウンダ。
例エバ輪郭ガ黄金比ダッタリ、背景ノ左右ヲ逆ニスルト繋ガッタリ。」
意外に続く意外、博学なスペックの語るモナリザの秘密に惹き込まれる一同。
まだ怪談の部分が始まってもいないのに、背筋に寒気を感じる。
ただの怖い話では無く、美術的な面を初めに語る事で恐怖を惹き立てる。
「今カラ俺ガ話スノハ、ソノ、モナリザノ秘密ニ触レタ、男ノ悲劇ダ。」
342 :
四十七話「六物語〜四〜」:2006/06/18(日) 00:04:46 ID:BbP5ebn50
「新婚ノ夫婦ガ居タンダ、男ハ女ヲ裏表ノ無イ素直ナ女ダト信ジテタ。
結婚シタバカリノ2人ハ、モナリザノ置イテアル、
パリニアルルーヴル博物館ノ近クデホテルニ泊マッタンダ。」
語りが進むに連れて、みんなの心に芽生えていた恐怖心が開花していく。
妖怪、幽霊という存在が不確定な物では慣れてしまえば恐怖は芽生えない。
実際に存在する物にこそ、人は恐怖を抱き、絶望を覚える。
「ソノホテルデ、チョットシタ痴話喧嘩ヲシチマッテナ。
何時モノ事ダッタンダガ、ソノ日ハ違ッタンダ。
罵詈雑言ノ言イ争イハ終ワル様子モ無ク、最後ニ
女ガ見セタ顔ハ見タ事モ無イ位、醜悪ナ顔ニ見エタンダ。
ソノ顔ヲ見セチマウト女ハホテルヲ飛ビ出シチマッタ。
罪悪感ニ苦シム男ダッタガ、態々日本カラ
親友ガ電話シテクレタンデヨ、失意ニ捕ラワレナガラモ
電話ニ出タラ、モナリザノ表情ノ見方ッテ奴ヲ教エテクレタンダ。」
「モナリザッテヨ、笑ッテルノカ悲シンデルノカ判ラネェ顔ダヨナ。
当然ナンダ、両方ノ顔ヲ同時ニシテルンダカラナ。顔ヲ半分ニシテ
見テ見ルト、片方ハ笑ッテ、片方ハ失意ノ表情ヲ浮カベテルンダ。」
得体の知れない恐怖感ではない、リアルな恐怖が心臓を握り締める。
スペックがジャージのポケットから、クシャクシャになった
モナリザの写真を取り出し、半分に折ってみんなに見せる。
「ほ、本当だ・・・片方は笑っているが、もう片方は笑みの片鱗すら見せていない。」
恐怖に握られた心臓が更に圧迫されていく、波打つ鼓動も息苦しい。
だがスペックの語りは終わらない、更に追い討ちを掛ける様に話を続ける。
343 :
四十七話「六物語〜四〜」:2006/06/18(日) 00:05:28 ID:BbP5ebn50
「ソレデヨォ、ソノ表情ノ見方ヲ人ノ写真デヤルンダ。
スルト、ソノ写真ノ人間ノ本性ガ現レルッテ言ウンダ。
男ハ咄嗟ニ先刻、女ノ見セタ憎悪ニ満チタ顔ヲ思イダシチマッタ。
アレガ本性ナノカ、幸カ不幸カ、手元ニハ新婚旅行ノ思イ出ヲ収メタ写真ガ。」
スペックが穏やかに話を続けていく、緊張に耐えられなくなった
ドイルは、思わず急かす様にしてスペックに続きを尋ねる。
「それで・・・どうなったんだ?」
「男ハ見ナイ事ニシタ、女ヲ信ジテナ。
ソノ先ノ話ハアルカドウカモ知ラナインダ。」
全員がホッと胸を撫で下ろす、続きは気になるが
恐怖からの介抱が今は喜ばしかった。
「な、なんだよ、中途半端な所で終わりやがって。」
恐怖から逃れたシコルスキーが笑い飛ばすと、
スペックが付け加える様に言い放った。
「タダ、パリノ新聞ニコンナノガアッタゼ。
日本人女性、○○○ホテルデ夫ヲ殺害。
動機ハ・・・・・」
「憎シミヲ感ジタ、ダソウダ。」
凍った様に動かなくなる5人、シコルスの
笑った顔も引きつって動かなくなっていた。
344 :
四十七話「六物語〜四〜」:2006/06/18(日) 00:06:09 ID:f/jTdgO20
今回は少し短めな邪神でした。
なんかカタカナばかりで読み辛いですね。
ゲッコの時みたいに翻訳しとくべきだったか。
そして最近になってやっと気付いたんですが
前書いた自分のコテの由来SS。
あれが隠しページっぽくなってて笑ったw
バレ氏の粋な計らいに感謝。
〜例によって物語の進行が無いので感謝〜
327氏 >>こういう変化球もいいな
結構、というよりかなり無茶苦茶な変化球でしたけどね。
どの位の変化球かと言われたらエビ投げハイジャンプ魔球くらい変化してます。
分かる人しか分からないネタだ・・・・
328氏 今までのはゲームからパクった物ですからリンクしてましたが、
今回のは学怖では無く中学の頃に見つけた小説のネタですから繋がってません。
とは言ってもうろ覚えだったので分からない部分は自分で手を加えました。
329氏 元のゲームはPS版やら小説やらも出てますよ。
怖い話が好きならオススメでござる。
「ケロロ軍曹」で御馴染みの日向冬樹は、天才オカルト少年という一面を持っていた。
特に怪奇現象の分析・考察・論争においては、まさに“世間も一目置く”程の有名人なのだ。
…ま、時には自分の研究結果を発表したために、それが元で抗議を受けたりもするけどね。
ある日のこと、日向家の中で武器を磨いていたギロロは、何度も何度も電話が鳴り響き、
その度に部屋から飛び出して、応対に四苦八苦する冬樹の様子をずっと眺めていた。
何十回目かの電話に出た後、ゲッソリする冬樹を見かねて、“自分は甘いな”と思いつつギロロは、
「何があった?」と尋ねた。
電話線を引っこ抜き、やっと静かになったところで冬樹から事情を聞くと、
最近、WEBに乗っけた仮説について、異常な位の問合せや詰問が来ているという。メールは
既にパンク状態、普段なら、特に証拠も無いただの仮説ですと謝れば何とかなるのに、
今回だけは違っていたのだ。何度説明しても相手は納得せず「情報の出所を言え」と来た。
「…成る程、WEBで発表した仮説が誰かさんの機嫌を損ねたという訳か。
情報の断片、伝聞、推量で出来た代物に過ぎんのに、しつこくネタ元を聞いてくるとは、フフフ…
きっと大当たりだったんだろうな。…どれ、何をWEBに乗っけたんだ?見せてみろ。」
そう言ってギロロが冬樹のパソコンを覗き込むと…
・「ある吸血鬼の系譜−真祖と死徒という流れ−」
・ 「謎の組織に関する考察−第7回目。埋葬機関について」
・ 「聖杯とは何か?−魔術協会と聖杯戦争の噂」
・ 「バチカンと英国の暗闘−イスカリオテ13課とヘルシング機関の関係」
パソコンの画面には空恐ろしい名前が、これでもかこれでもかと言わんばかりに並んでいた。
これらの文章に、何故か背筋が凍るような感触を感じつつギロロは「これ全部乗っけたのか?」
と恐る恐る尋ね。冬樹はエヘッとした顔で「うん。乗っけちゃったんだ♪」と気楽に言った。
更に「でも、何がいけなかったのかな?全部、あくま仮説でフィクションですと書いたのになあ。」と明るく付け加えた。
“いや、そういう問題じゃないんじゃないか?”ギロロはトラブルの予感がした。
…とにかく、これからは俺が電話に出る。所詮子供の戯言だと、奴らにキッチリ言っておくから
心配するな。お前は一休みしてメールの処理でもしてろ。」
そう言って冬樹を自室に押し込むと、ギロロは電話機の前に立つと「さて、任務開始だ。」呟き
心地よい緊張感を感じながら電話線を元通りにした。その途端、電話が鳴り始めた。
−電話をかけながら、遠野志貴は思った。“これで最後だ。というか最後にしなくちゃいけない”
たかが、WEB上の少年の仮説(ちゃんとフィクションと書いてあった)が余りにも事実を、
ズバリ言い当てているからって、「怪しいから、キチンと情報源の確認を(納得するまで)やる」と、
教会の代行者であるシエル先輩から、秋葉までが連日メールや電話を相手側にかけ続けているのだ。
翡翠がポツンと「向うの方は大変迷惑しているでしょうね」と呟いた時、
志貴は自分が何とかしなくては駄目だと覚悟した。
志貴は、半ば悪質な嫌がらせと化している、「確認作業」に勤しむシエル達を集めて言った
最後に自分が相手の少年と電話して確認をとる。もしそれが嘘であれ、何であれ、責任は自分が
取ると宣言した。「一族の事も書かれているのに…分かっているんでしょうね?兄さん」
秋葉はじっと兄を見据えた。そして渋々納得した表情のシエルが電話を志貴に渡した。
「言っておきますけど、遠野くん。何かあったら責任取ってくださいね!」
−電話をかけながら、衛宮士郎は思った。“これで終わりだ。絶対終わりにしなくちゃいけない”
WEB上の少年の仮説(ちゃんとフィクションと書いてあった)に過剰反応した凛が、
「聖杯戦争や私達のことがバレてるのよ!大事になる前に真相を突き止めなくちゃ!」と息巻き、
桜やライダー達を動員して「真相究明!きっと裏があるに違いない!」と少年の家に連日メールや電話を相手側にかけ続けているのだ。
「士郎…此処まで執拗にやると、最早犯罪ではないでしょうか?」
ライダーの言葉に、士郎はハッと我に返った。
士郎は、半ばたちの悪いストーカー行為と化した「真相究明」に勤しむ凛達を集めて言った。
最後に自分が相手の少年と電話して確認をとる。もしそれが真相でなく、裏に陰謀があれば、
自分が必ず陰謀の魔の手から皆を守ると宣言した。凛はしばらく考えると溜息をついた。
「…分かったわ。この件、魔術師の先輩として士郎に任すわ。その代わり…」
「…何かあったら、姉さんはともかく…一生私の面倒を見て下さいね。先輩w」桜が微笑んだ。
士郎は、桜の表情にヤバイものを感じながら、電話機を取った。
−電話をかけながら、セラスは思った。
“これでお仕舞い。というかお仕舞いにしなくちゃいけない、でなけりゃ…”
「電話代がかかってしょうがないからな。婦警」と吸血鬼アーカードは、セラスの心の内を、
見透かしたように言った。更に紙パックの血液を吸った後、ゴミをエイッとセラスに投げつけた。
「ガキの下らん仮説の真偽を確かめるのにどれだけかかってるんだ?お前も吸血鬼なら、
聞聴必殺!言葉!口調!それだけで相手の真偽を見破れ。では電話を日本の坊やにかけろ。
−さあ電話はこれからだ!お楽しみはこれからだ!早く!早く早く!早く早く早く!」
「…無理ですよぉ」と涙ぐむセラスにヘルシングのボスことインテグラまでもが、
トリャーッと煙草を投げつける「文句言うな。早くしろ、報告書もだ。」
ギロロが電話を取った。遠野志貴と相手は名乗った。
若く、物腰も柔らかな声だが、ギロロは油断せず、低く冷静な大人の口調で遠野志貴と話をした。
「所詮は子供の戯言。貴様達に関係の無いことだ。まあ、この混沌した状況では…どうしたのかね?」
「……混沌…その声…聞き覚えがある。…お前、ネロ・カオスだな!…生きていたのか?!」
「?…知らんな。そ、そんな奴。もし、その、仮にだなー、そうだとしても、何の関係がある?」
急に変わった相手の剣幕に、ギロロがドギマギしている内に何時の間にか電話は切れていた…
−遠野志貴は電話を切ると真剣な声で言った。
「皆…驚かないで聞いてくれ。電話の相手は…あのネロ・カオスだった…」
秋葉「何ですってッ…!!!!」シエル「!何てこと…上に連絡しなくては!」
ギロロが電話を取った。衛宮士郎と相手は名乗った。
若く、真直ぐな声だが、ギロロは落ち着いて、教え諭すような神父の口調で衛宮士郎と話をした。
「子供の戯言に惑わされて、このような行動を取るとはな。正義の味方のすることかね?」
「…その声…間違いない!言峰神父だな!…やっぱり罠だったんだな!」
「?…いや、あの、知らないよ。衛宮士郎?勝手な決め付けはよくないぞ?…聞いてます?」
急に変わった相手の剣幕に、ギロロがアタフタしている内に何時の間にか電話は切れていた…
−衛宮士郎は電話を切ると真剣な声で言った。
「…遠坂…信じられないかもしれないけど、電話の相手は…言峰神父だった…」
凛「…そんな…何が起きてるの?!…まさか罠?」ライダー「先手を打ちましょう!」
ギロロが電話を取った。セラスと相手は名乗った。
若い娘の声だからか、ギロロはさっきよりは砕けた、チョイ悪風な感じでセラスと話をした。
「子供の戯言に過ぎないんだ。分かるか?…そう、たまたま当たっただけの話しだ。
…そう…そう…日向冬樹は、無害だ。元婦警にしては物分りが良くて助かる。」
相手の口調も変わらず、ギロロはマッタリと、元婦警だというセラスと話しをした。
−セラスは電話を切ると真剣な声で言った。
「…マスター…日向冬樹は、無害です。」セラスの確信を持った声にアーカードは眉をひそめた。
「何故だ?婦警?」
「だって、電話の向うからの声はマスターの声でした!やっとわかりました。これ、
試験か何かでしょう!…ええ、私はマルっと分かっていまスヨ?(壊れてしまいましたw)」
アーカード「…おい、婦警…貴様、頭大丈夫か?」
インテグラ「報告書、早めにな。」
数日後。
ケロロ「ねえ。ギロロ。最近、変なお姉さんやお兄さんが家の周りを徘徊してるけど、
何か身に覚えないでありますか?」
ギロロ「………いや、無いな。…多分…」
ギロロはそれだけ言うと熱心に武器を磨き始めた。多分近いうちに使うだろうからだ。
−あの電話の向こう側の連中と…
これで完結です。
元ネタは、声優ネタで中田譲治さんが、ギロロ伍長(ケロロ軍曹)、
ネロ・カオス(メルティ・ブラッド)、言峰神父(Fate)、アーカード(ヘルシング)
の声をやっていたので、それで混線・誤解ネタをやってみようと思ったのがはじまりでした。
拙いSSですが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
−もし機会とお許しがあれば、また何かやってみようと思います。
(例えばFateVSケロロとかw)
>キャプテン
スペックがモナリザとかルーブルとか語り出すと知的に見えて違和感感じるw
カタカナで会談は少し読み辛かったwしかし、シコルのビビリが怪談話にマッチしてて可愛いな。
>ギロロ
元ネタ一切知らないけど、なんか壮大な物語が始まりそうな予感があるな。
と、思ったら読みきりか・・。またこんな感じのショートでも連載でも頑張って書いて下さい!
ギロロお疲れ様です。
こういうタイプのSSは好きなんで是非次もお願いします!
FateVSケロロとかも見てみたい!
>ギロロ伍長(ケロロ軍曹)、 ネロ・カオス(メルティ・ブラッド)、言峰神父(Fate)、アーカード(ヘルシング)
一人も分からん。
>スターダストさん
最初から全てのストーリー立てを作っているんですね。今回はある意味変換点かな?
もう折り返し地点を過ぎたのだろうか。できるだけ長く続いてほしいです。
>邪神さん
スペックの語りは少し読み辛いですがw彼から語られる怪談は本格的なものですね
怪談というより世にも奇妙な物語っぽい感じですけど。
>ギロロ作者さん
初掲載乙です。俺も登場人物は一人も知りませんが、結構面白く拝見させて頂きました。
次回は出来れば数回に渡る作品を読ませて頂きたいです。
355 :
ふら〜り:2006/06/18(日) 15:59:43 ID:uYuYzG8j0
>>ハイデッカさん
聖女に魔女にとさんざん両極端に走って、最後は一体どうなるのかと思ってたら。慶次が
どうにかして聖女状態で固めるんだろな、と思ってましたが……その慶次の雄叫び一発で、
聖魔を飲み込んでの飛躍。このジャンヌなら、史実通りの最期も真っ直ぐ受け止めそう。
>>邪神? さん
イジメの話もモナリザの話も、完全にオカルトだけじゃないところが生々しく怖いですね。
単なる心霊不思議現象じゃないよ、という種明かし的なことをして納得したところにグサリ
と。あとスペックの語り、実は心配でしたが私はこれでOK。ちゃんと彼の声で聞けました。
>>銀杏丸さん(覚悟はしてたものの、本当に全然知らない聖闘士をっっ。無念)
そ〜か瞬が師匠……メビウスにおけるタロウのような気分。ジュリアン=ポセイドンって、
ヒルダまで含めた各ラスボスの中で一番威厳がないと思ってるんですけど、本作では威厳
どころか威圧感です。これでしっかり強くて、次世代黄金たちと豪快に戦ってくれたら……
>>一真さん
倒れたか神楽。何かカマしてくれそうな気はしてたんですが、残念。で銀時はやっぱり、
新八が相手でないと本当の本気にはなれないんだと勝手に解釈。だから次は一部のように
新八と……って思ってたら次は出ないかも? でシリアスに? 一体どういう展開がっ?
>>スターダストさん
>つまらない腹の探り合いはやめませんか?
とか言いながら、しっかりサスペンス劇場してるのがお茶目。森もアリですがやはり荒波
打ち寄せる断崖絶壁の方が、とか思いつつ読んでたら、何とも体力勝負なアリバイ工作。
でも言ってることは確かに正論、反論できませんな。頭上でもそんな風に思ってるのかも。
>>ギロロさん
声優さんネタでしたか。そう言われて読み返してみて納得しました。キャストはもとより、
原作も全然知らなかったのでちと解り辛かったのが残念。とはいえ、こういう作品では
作品世界の解説を長々とやるわけにもいきませんし……できれば、次回は少し解説を希望。
356 :
作者の都合により名無しです:2006/06/18(日) 21:39:26 ID:6/1hZv9W0
ふら〜りさんもそろそろ何か書いてよ
連載ちょっと減っちゃってるし
357 :
作者の都合により名無しです:2006/06/18(日) 22:28:00 ID:ONag4fVn0
>>356 遠慮しないで書いて良いよ。
356の名作に期待!!
358 :
356:2006/06/19(月) 08:18:37 ID:/peqwN6P0
いや、もうすでに書いてるんだよ
359 :
作者の都合により名無しです:2006/06/19(月) 10:00:23 ID:UiTqEbBn0
359
うみにんさんとVSさんのサイトが死んでるのが気にかかる
サナダムシさんも来ないし、かつての名職人が心配なんだよなー
361 :
作者の都合により名無しです:2006/06/19(月) 17:58:43 ID:LnKIu/Wa0
カマイタチさん復帰祈念age
しかし、バキスレで衛宮士郎の名を見る日がくるとはなぁ
連載希望だ
第八十話「最期の時」
キラとクルーゼの決戦。
ほぼ互角に見えた戦いだった。そう―――<ほぼ>互角。
厳密に言うならば、上回っているのは―――クルーゼだ。搭乗機<レジェンド>の性能、クルーゼ自身の能力、そして―――
彼の全身から湧き上がるかのうような、ドス黒い威圧感。
光さえ飲み込む極限の闇。全てを塗りつぶすかのような黒。そんなオーラを、今のクルーゼは纏っている。それは対峙する
キラの精神をも圧迫する。
「ぐっ・・・!」
Sフリーダムの左腕が撃ち抜かれ、その衝撃に動きが止まった。クルーゼの顔に狂気の笑みが宿る。
「止めだ!」
超スピードで接近し、ビームサーベルを振り翳し―――その刃は、受け止められた。
Sフリーダムにではない。目の前に忽然と現れたのは、真紅の機体―――
「<∞ジャスティス>・・・!アスラン・ザラか!」
「アスラン!」
キラとクルーゼが同時に叫ぶ。アスランがキラの隣に陣取った。
「待たせたな、キラ!」
「アスラン、来てくれたのか・・・」
「勿論だ。俺とお前は相棒にして親友。友情のため、駆けつけるしかないじゃないか!」
こんな時でもいつも通りのアスランに、キラは苦笑した。
「そして、俺だけじゃあないぞ―――ほら!」
見ると、高速でこちらへ向かってくる機体―――
「あれは・・・」
その姿を認めたクルーゼの顔に、凶笑が浮かぶ。そして現れた機体は、Sフリーダムと∞ジャスティスと並んだ。
<Gフリーダム>―――ムウの機体だ。
「ムウ・・・お前も来たか!」
「来たともさ―――お前と決着を付けるためにな!」
クルーゼは哄笑した。可笑しくてたまらない―――そんな風に。
「そうか、そうだな―――思えばお前とも深い宿縁だ。その縁もろとも、キラ・ヤマトと共に消し去ってやろう
―――<息子>よ!」
「どうかな?俺とお前は歪んじゃいるが、切っても切れない強く繋がれた仲だ。簡単にやれるなんて思うなよ
―――<親父>!」
そして、三人と一人は向かい合う。数で言えば不利になったクルーゼだが、その顔に焦燥はない。いや、まだ余裕を
残していると言ってもいい。
「数の優位など、レジェンドには無意味だ・・・」
スーパードラグーンを一斉に展開する。自由自在に超高速で動き回る無数のポッドが、凄まじい連射速度でビームを
放った。その動きに、キラたちは逃げ惑うだけで精一杯だ。とても攻撃には移れない。
「何故なら・・・一対多数との戦闘こそ、レジェンドの本領だからな!」
「くそっ・・・確かに、これだけ攻撃が激しいとなると・・・!」
間断なく撃ち出される嵐の如き攻撃。避けることしかできないのでは、確かに数の優位など無意味だった。その中で
自在に動き回るレジェンドを攻撃するなど不可能に近い。
「畜生!なんとか一瞬でも奴の動きを止められないか!?」
アスランが悲鳴に近い声で叫び、それにムウが答えた。
「・・・俺に考えがある」
「何?」
「俺がクルーゼの動きを止める―――その瞬間に、奴を倒してくれ。いいな?」
返事を待たずに、ムウがGフリーダムを駆り、レジェンドに向けて進む。回避をほとんど考えない動き。ビームが機体の
そこかしこを撃ち抜いていく。
苦し紛れのようにガンバレルを射出し、ビームを放つが、それもあっさりと避けられた。
「やけになったか!?そんな攻撃で、私を倒せるとでも思ったか!」
クルーゼはムウの愚かに見える行動を嘲笑う。だがムウは―――
「ああ・・・思ってるね。これで、倒せる」
言い放たれたその言葉―――クルーゼはその意味を考え、同時に気付いた。
レジェンドのボディに、何かが巻きついている。頑丈な、ワイヤーのような<線>だった。
「まさか・・・ガンバレルの・・・!」
ドラグーンとガンバレルは似ているが、一つだけ違う。ドラグーンは無線式で、ガンバレルは有線式―――
<線>。
レジェンドはガンバレルの<線>によって、雁字搦めにされていた。
これがムウの狙いだった。攻撃のためにガンバレルを使ったわけではなかった。
クルーゼの動きを止めるため―――そのためだった。
「やっぱ俺って・・・不可能を可能にする男・・・ってか?そしてクルーゼ・・・」
ムウは皮肉な笑みを浮かべる。
「言っただろう?俺とお前は―――切っても切れないくらい、強く繋がれてる、と―――!」
「ムウ・・・!貴様―――」
何かを言おうとしたクルーゼだが、凄まじい衝撃に、その言葉は続かなかった。
眼前に、Sフリーダムと∞ジャスティスがいた。殆ど瞬間移動の如き速さだ。その速さを持ってして、レジェンドの
動きが止まったその一瞬―――まさに一瞬で、斬り伏せたのだ。
絶妙のタイミング、そして文字通り阿吽の呼吸の一撃―――
それはまさしく―――コンビネーション・アサルトというに相応しい。
レジェンドがバチバチと火花を散らす。
終わりか―――クルーゼは悟った。自分はこれで終わるのだ。
敗れた悔しさはあったが、恐怖も悲しみもなかった。それどころか、不思議な開放感すらあった。
―――自分はこれで、糞ったれたこの世界から消えるのだ。次に行く場所は地獄だろうが―――
それでもきっと、この糞袋のような世界よりはずっとマシだ。
そして最後に、彼は叫んだ。
「キラ・ヤマト!」
クルーゼは叫ぶ。死の間際においても、呪いの言葉を。
「君は本当にこれでいいと思っているのか?自分の選んだ道が正しいと―――心の底から言えるのか!?この世界に自分の
居場所があると―――本当にそう信じられるのか!?」
キラは―――その呪いを真っ向から受け止めた。そして、語る。
「そんなことはまだ分からない。ひょっとしたらいつか、あなたの方が正しかったと思うかもしれない。だけど、今は、
今の僕はただ―――僕の大事なものを、守りたい。それだけだ」
「・・・ハッ・・・」
クルーゼは嗤った。最期の最期まで、嘲るように。
「それならそれでいいだろう―――そのとことん甘い考えで、生き抜くがいいさ。私はそれを、地獄とやらで笑いながら、
嘲りながら、忌みながら、呪いながら見続けてやろう―――」
その瞬間<レジェンド>から一際大きな火花が散り―――爆散した。
クルーゼもろとも飲み込んで。
「・・・ちっ。何て後味が悪い野郎だ」
ムウが毒づく。その顔は、笑っているとも泣いているともつかない。
アスランは言葉もない。ただ、辺りに散らばる残骸を見つめるだけだ。
キラは、何かに想いを馳せるかのように目を瞑り―――
「おーい・・・」
通信装置に、微妙に間の抜けた子供の顔と声。
「おーい、キラ!」
のび太だった。振り向くと、遠くの方からレジスタンスの艦隊がやってくるのが見えた。その中に、仲間たちの姿が
見える。どうやら向こうも首尾よくいったらしい。
キラは通信装置の向こうののび太に語りかけた。
「上手くいったんだね、のび太」
「う・・・うん、まあ・・・一応・・・ジェネシスは壊したし、みんなも無事なんだけど・・・もしかしたら、ぼくは
とんでもないことをしちゃったかもしれないような・・・」
妙に歯切れが悪いのが気になったが、とにかくメカトピアは救われたようだ。それは、素直に嬉しかった。
そして、キラは言った。
「のび太・・・」
「ん?なあに?」
それは、単純な質問。だがキラは、その答えを欲した。
「君たちにとって・・・僕は、なんなの?」
のび太は多少面食らったようだが、すぐに笑顔で答えた。
「そんなの決まってるよ―――」
それは、キラが何より望んだ答え―――
「キラはぼくやドラえもんの―――みんなの、大事な友達だよ!」
キラに笑顔が浮かんだ。それは、何の曇りもない笑顔だった。
(・・・居場所なら、あるさ)
キラは虚空へと消えたクルーゼに語りかける。
(ここが、僕の居場所なんだ。僕を受け入れてくれるみんながいる場所が、僕の帰るべき場所だ)
もはやこの世に存在しない男との対話に、何の意味があるのか。だがそれでも、キラは語らずにいられない。
ある意味で自分の兄弟であった男に、せめて何かを残したかったのだ。
―――こうして仮面の男は倒れ、メカトピアにひとまずの平和が訪れた。
そして、最後の戦いの時も近い―――
投下完了。前回は
>>246より。
ガンバレルで動きを止めるのは、ボンボン漫画版種のネタです。クルーゼとの決着、上手く書けたでしょうか?
>>248 まあ、やってみたいネタだったので・・・
>>249 やりすぎると緊迫感がなくなるので、程々にとは思っていますが・・・書いちゃうんです(汗)
>>252 僕はどうやら人外ロリに弱いらしい・・・だから好きなキャラなんですよね、彼女。
>>全力さん
ラジオは聞かないので・・・けどTMRはレベル4の頃からファンです。
GUN道は傑作です。ベクトルがマイナスに突き抜けてるだけで、絶対値は凄いのです。
>>ふら〜りさん
まあ、ありがちといえばありがちなんですけどね、こういう戦いは・・・
>>バレさん
いつもSSの保管ありがとうございます&お疲れ様です。
ちなみに原作ではキラはクルーゼとの口喧嘩に完敗してたのは内緒。
GUN道・・・結構見てる人多いんですねw
>>邪神?さん
>モンハンで閃光玉を投げる時「おんみょうだんをくらえ〜」
そういう時はこちらも「うおっまぶしっ!」と返せれば、一流MUSASHIスト。そこまで達したくはないですが・・・
しかしシコルは何度血まみれになるんだw
サマサ氏乙!
ボンボン版種は、本当にテレビ版が原作なのかと思うぐらい良い出来だよな
特に種死の改変は神だったよ
ちょっと気が早いが、次回作で今度はシンやファントムペイン描いてくれんかなーと望んでいる
370 :
作者の都合により名無しです:2006/06/19(月) 22:20:38 ID:9WPEX8jC0
サマサさん乙。王道の質問&答えですが、このシーンにふさわしいですね。
最終決戦までまだまだ楽しませてくれそうですけど、終わって欲しくないなあ
サマサさんは就職されても質・量ともに落ちないな
その姿勢が嬉しい・・
しぇきさんも復活されるといいが・・
その男は巨人だった。体は俺の倍以上ある。
男は泣きじゃくる俺の頭を撫でながら
「お嬢ちゃん、痛くしてゴメンネ」
と呟いた。
お嬢ちゃん? 何を言ってるんだこの男は。
気がつくと、俺と男はベッドの中で裸のまま横たわっている。
体を見れば汗だくの小さな体が目に入る。
胸に目をやると、まだ膨らんでいないそれは男のものとは異質の清らかさを持っている。
そしてベッドには赤黒い血が少量。その血は俺の股間から出たものらしい。
まだ経験のない俺にも、それが意味する事は明らかだった。
慌てた様に自分の体を確認する。『小さい女の子』だ。自分は間違いなく『小さい女の子』だ。
つい先ほどまで男だった俺。けれど今は紛れもなく女の体をしている。
それもただの女ではない、未熟な幼女の体だ。
「パパには内緒にしてね」
不意に男が話しかける。
変質者が、と俺は心の中で呟いた。未熟な体の女を犯すなど人のすることではない。
否、できることではない。相手がまともな人間でない事は事実だ。
逃げねば。
ベッドから起き出して走る。ドアはすぐ側だ。
ドアを開ける、向こう側は廊下。
そんな当たり前の事が裏切られる。ドアの向こうには、先ほどまでと同じ部屋。
ドアを開けて同じ部屋に出てくる。捩じれた空間、理解を超えた摩訶不思議な現象。
「この部屋からは逃げられないよ」
男がゆっくりと歩いてくる。1人はドアの内側から、1人はドアの外側から。どちらも同じ人間だ。
あぁ、そうだ。この部屋に出口は無い。
そんな非現実的な、けれど、すんなり受け入れられる事実にたった今俺は気付いた。
場面が唐突に変わり、男が俺をレイプするシーンになる。
俺は知っている。こんな非現実的で荒唐無稽な世界が存在する事を。
そう、これは夢だ。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
夢だと気付いた瞬間、工藤新一は目を覚ました。
悪夢だったけれど、現実に即した夢。笑えねぇ、と溜息を漏らす。
新一が女の子になっちゃった……。しかも、何気に私より可愛くない?
そりゃ空手女に色気が無いのは分かるし、女子高生っていうと昔ならとうに"熟れた人妻"なのも分かるけど。
だからって、幼馴染のくせに私より可愛くなる必要ないじゃない?
裏切りよ! 大好きな彼氏、って思ってたのも、もう終わりね。
「工藤君、意外と可愛いよね」
親友の園子が言う。 うん分かる。あれは可愛いよ。だからムカつくんだけどね。
「どう、未来の旦那が自分より可愛くなった感想は?」
「未来の旦那ってねぇ、そんなわけ無いじゃない」(そうよ、私より可愛い男なんて絶対許さない!)
「そんな事言って、『さすが私の新一、やっぱり女の子になっても素敵よね』って思ってるんじゃないの?」
「違うってば、んもう園子ったら」
園子は私を茶化しながら笑っている。冗談じゃない、もうあんな男は彼氏でも未来の旦那でもない。
「でも、どうして工藤君だけ変身できるのかなぁ。やっぱ創作物の世界だと『女が男になる』っていうのは珍しいのかな」
園子が突然話題を切り替えてきた。
「私も男になってみたいんだけどね。ちょっと工藤君が羨ましいよ」
「まぁ、それは作者の考えかただし、作者は男だから『女が男になる』と色気を感じないって言ってたよ」
「っち、残念」
「あれ……でも、ちょっとまって。これって二次創作だよね? だったら、『男が女になる』水にも元ネタがあるんじゃない?」
「あ、そっか。という事は、元ネタのほうに『女が男になる水』が存在するかも!」
そうよ、その水さえあれば新一を私の彼女にできるわ。
まさにコロンブスの卵ね、私が男になってしまえば万事解決。
空手好きの男っていうのはありきたりの設定になっちゃうけど、それはそれでOKだよね。
見てらっしゃい新一、アンタがあっと驚くような美男子になって見せるわ。
私立雷電図書館。蘭と園子は呪泉郷の伝説を見つけた。
呪泉郷
3000年前、秦の始皇帝の命により開発された新兵器。人の身を男、女、猫、豚、パンダなどに変化させる魔道兵器である。
始皇帝は天竺より授けられた巻物をもってそれを開発したと伝えられる。以来、1000年近くの間この兵器は中国全土に様々な
被害をもたらした。
しかし、三国志時代の名将曹操の働きにより、呪泉郷は埋め立てられ、今では言い伝えのみが残っている。
なお、天竺とは超古代文明の1つである。この天竺が宇宙からの超科学を受け継いでいるのは周知のとおりである。
民明書房刊 『中国の古代兵器』
「ふむ。これが正しいとすると、フリーザがどこかの星から持ってきた呪泉郷の水で工藤君は変身したって事だよね」
「うん、それに男にも女にも変身するって書いてあるね」
「ははーん、男に変身する水を工藤君にかけて元に戻そうと思ってるな?」
「あはは、んまぁ、そんなところかな?」 (違うわよ、私が男になるのよ)
そんな事を考えながら本をしまう。
これだけ分かれば、やるべき事は1つ。フリーザにお願いして呪泉郷の水を手に入れる。
そうすれば、新一の彼氏は私だ。
工藤新一は皿洗いをしている。手足が短くなり、台所に届かない。
仕方なく、近くにある椅子を使って足りない背を補う。
たかが皿洗い一つもできないのかよ。ったく情けねぇ。
東の高校生探偵と言われ、この世に解けない謎なんて塵ひとつ無いと豪語する彼だが、この不便さには耐えられないようだ。
両親がアメリカに住んでいるため、一人暮らしをしている彼は家事全般を自分で行う必要がある。
7歳の小さな体では冗談抜きで重労働。 ふぅ、疲れた。などと思っても、やる事はいっぱいある。
洗濯物が嵩張らなくなるのがせめてもの救いか。
この生活、慣れるまではキツイ。そう思った新一は毛利探偵事務所に移動した。
蘭に助けてもらおう、こういうときの新一は結構甘えん坊である。
探偵事務所に入る。入りなれた事務所なのでノックなどはしない。
いつものように、眠りの小五郎は寝ている。
「どうしようもねぇ、おっちゃんだな」
起きていれば明らかに聞こえてしまう音量で声を出す。
「蘭、いるか?」
蘭の部屋のドアをノックして声をかけるが、返事が無い。
いないのか、と思って事務所を出ようとしたとき、毛利蘭がやってきた。
「よぉ、蘭。わりぃんだけどさ、ちょっと手伝ってほしい事があるんだ」
「ごめん新一。私今忙しいの」
そう言って、部屋の中に入る蘭。
そのまま、部屋の入り口に居る新一に声をかける。
「実はね、フリーザ君に頼んで宇宙に連れて行ってもらおうと思うの。
そうすれば、『男になれる水』が手に入るでしょ」
(私が貴方の彼氏になるためにね)
「『男になれる水』……」(そうか、蘭はわざわざ俺のために水を!)
新一と蘭はどちらもその水を欲している。
「だったらよ蘭。俺、フリーザから軍にスカウトされてるんだ。俺がいれば、簡単に水を手に入れられると思うぜ。
大切なお前のためにも、『男になれる水』は絶対にほしいしな」
(大切な私のためって、新一も私の彼女になりたいの?
キャーー。もう、可愛いよ新一)
(大切なお前のために、絶対に男に戻って見せるぜ。探偵の誇りにかけてな)
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
その後2人は、フリーザ軍に入隊した。
私事の忙しい時期がひと段落着いたような、着かないような……
今の私はらんま1/2の天道早雲になってしまった気分です。
それはともかく、皆様お久しぶりです。
今までほどは頻繁に書き込めませんがよろしくお願いします。
>>282 お褒めにいただきありがとうございます。
これからも、空気を吸ったら水が飲みたくなるような作品を目指してがんばります。
>>269 ありがとうございます。
>>267 仕事+αが忙しくなりそうです。+αのせいで……仕事まで忙しくなりそうで。
>>262 混ざってしまったのは僕の責任ですね。
遅くなってすいませんが、今まで気付きませんでした。
ごめんなさい。
41さん復活おめ
このくらいのボリュームだと読み応えあるな
欄とか新一とか意外と黒くていい
これからもがんばって下さい
380 :
作者の都合により名無しです:2006/06/20(火) 14:47:48 ID:rrLwgXLY0
今度はマイペースでいいから最後まで頑張って下さい。
応援しています。
フリーザ軍が着々と戦力がアップしてる気がする
ただでさえ宇宙最高の軍団なのに恐ろしい
>超機神
キラの最後の台詞に初代ガンダムのアムロを思い出した(僕にはまだ帰るところが・・)
種は知らんけど、それでも楽しめるのがすごいですな
>パパカノ
ギャグ主体なのに、なんか雰囲気が妙なSSだw まあ、この面子じゃ通常の恋愛にはならんわな
前スレ377から
「……失礼致します、副長官」
水も漏らさぬ礼節で、スヴェンは副長官の部屋へとやって来た。
その彼を、偉そうな髭をたくわえた小太りの中年男がデスク越しに睨み付けた。
……睨まれるまでも無く、スヴェンは不穏な空気を察していた。部屋の中は換気装置が追い付かないほど煙草の煙に霞み、
大きなガラスの灰皿には長い吸殻が山どころか零れ落ちている。およそ忠実なる部下を呼ぶ雰囲気でないのは、スヴェンでなくとも
良く判る。味方に対するこの不機嫌はおかしいが、彼には何となくその理由が判っていた。
「…スヴェン君、何故今君を呼んだか判るかね?」
声調に到っては、憎悪すら孕んでいた。
「いえ、全く」
その怒りを煽る様に―――否、完全にそのつもりでスヴェンはしれっとした貌で返す。
「…ブライアン氏は、とても君を気に入っておられるそうだ。先月も君は、彼に個人的に招かれたそうだな」
「ええ、『新顔との親睦を深めたい』との事で」
勿論嘘だ、スヴェンは既にブライアン一家の運営にまで関わっている。今更深める親睦など有る訳が無い。
紹介されて僅か半年で、彼は組織の重要なポストを担うまでになったのだ。
「そうか……
だがヴァシリが言うには、少し前の無血吸収合併は君の指示だったそうだが?」
それを聞いて、スヴェンは内心呆れ顔の溜息をついた。
―――嫉妬豚とチクリ爺が。無能の業突く張りもいい所だぜ。
しかし口はそれを紡ぐ事無く当り障り無い言葉を述べる。
「自分が? まさか」
さも滑稽とばかりに笑顔さえ見せる。
――――その彼に向かって、何かが飛来した。
その何かは彼に当たる事無く、背後のドアに命中して重い激突音と灰、吸殻を撒き散らす。
…副長官が彼に向かって投げた灰皿だった。
「……いい加減にしろ若造、私の情報収集力を舐めるなよ。
ブライアンの懐刀でも気取っているつもりか? 貴様は今、触れてはいけない物に触れているんだぞ」
完全に剥いた牙を前に、スヴェンはやはり心中鼻で笑う。
―――アンタの情報収集力じゃなくて、ヴァシリの告げ口だろうが。
貌は流石に笑みを捨てたが、それでも余裕は滲んでいた。
「危ないですね、当たったらどうするんですか」
言われるや副長官は椅子を倒して勢い良く立ち上がる。当てるつもりが最小限の挙動で回避されたからだ。
然るにスヴェンの発言は、この状況において最大限度の揶揄だった。
「そもそもですが、ブライアン一家の運営が上手く行っている事で何故俺に当たるんですか?
貴方にも少なくない金が入っているなら、尚更では?」
「分を弁えろ、と言っているんだ!!」
シガーケースまで投げ付けた。しかしそれも手も無く回避される。
「…この親無しの若造が、上司を裏切ってゴマ擂りか。
貴様如きがブライアンに顔を憶えられたのは、この私がいたからだ!! 其処をもう一度理解しろ、この親無しが!!!」
スヴェンが孤児だと言う事を散々に強調して彼を罵倒した。
彼の言い分の裏を読めば(読むまでも無いが)、ぽっと出の若造が自分より主人に気に入られているのが気に入らない、と言う事だ。
だが常識的に見て、単なるパイプ役でしかない無能の中年と、経営術や根回しに長け、おまけに何も言わずに身も守ってくれる
若い衆を比べれば、どちらに好感を覚えるかは十人中十人が同じ答えを出すだろう。
それを部屋に入る前から十二分に理解していたスヴェンは、こちらこそ立場を思い知らせる為に無表情のまま切り返す。
「では副長官、そんな貴方に質問が有ります。
貴方はブライアン氏に、情報のやり取り以外の何をしてやれました?」
言われて言葉に詰まった。
「俺が見たところ、貴方はそれ以上何もしていない。
世話になっている人間にそれでは、余りに情の無い話では無いですか?」
「そ、それなら貴様、私に……!!」
「俺の方からも個人的に金を払っている訳ですが、貴方はそれでも俺に情が無いと?
足りないとか頼むとか言われるたび、その都度都合した俺に―――――、貴方はそれでも情が無いと?」
グウの音も出なかった。
彼がそう計らった為仕方ないのだが、スヴェンには副長官自身頼り切りだった。
金だけではない、八百長捕り物の筋書きやブライアンへの機嫌取りにもスヴェンに頼む有り様で、彼は何もしなかった。
何をするにもとりあえずスヴェン、自分でやると手間が掛かるのでスヴェン、面倒なのでスヴェン、自腹が嫌だからスヴェン…
彼がやって来た事がこの状況になるのは必然であり、誰を責める理由にもならなかった。
しかしプライドと言う物はそうは行かない。立場が立場だけに、自分が無能である事実を受け止める事など出来る訳が無く
その原因となった若手に不当な怒りを叩き付けたのだ。
「…実際副長官には、まるで価値が無くてな。順調に進めば汚れ事を全てを引っ被って貰う予定だった。
長官派は言うに及ばず、マーク=ブライアンも最終的には切り捨てるつもりだったし、奴の資産毟り取った所で
殆どブラックマネーだったから、下手すりゃ俺の後ろに手が回る」
二本目の煙草の紫煙を吐くと、それを持つ手で過去の忌々しさに固まる額を揉み解す。
「だがな、もしその時俺が増長しなかったら………今の俺は無かったのかもしれないな」
スヴェンの方は、飴さえくれてやれば何も思わぬだろうと思っていただけに、内心憤慨していた。
―――ちょっと躾け直して置くか。
どちらの立場が上か、地位ではなく、権力ではなく、能力と器量を判らせる為に眼を酷薄に凍らせて副長官を見やる。
副長官は、僅かだが思わず後ろに引いた。その時点で既に器量の敗北は決していた。
「貴方の言いたい事が判らんでもない―――が、貴方の言っている事は果たしてISPOとブライアン一家、そして何より
貴方自身に利する事ですか?
『分を弁えろ』とは過分なお言葉ですが、今この状況はそれゆえの結果では有りませんか?
俺はブライアン一家の、副長官派の、つまるところ貴方の為に身を粉にしたと言うのに、それがご不満と仰るのでしたら
俺には貴方自身への徳を慎めと、そう言う事ですか!?」
最後の僅かに荒げた声に、副長官は電撃を受けた様に萎縮した。所詮は安全な場所からしか物を言えない人間だ、いざ他人と同じ
土俵に立てば――――否、其処に立たない様にするまでが彼の勝負だ。となれば今趨勢は彼の物には絶対成り得ない。
一切の反論を封じられ、副長官は顔を真っ赤にしたまま怒りを燻らせるより無かった。磨き抜いたマホガニーの天板に
両手を着いて震える様は、さながら不恰好な土下座にも見える。
「…話はお終いですね。では、これから飛行機に乗らなくてはならないので、失礼します」
慇懃無礼に目礼し、スヴェンは睨むしか出来ない無能の権力者に背を向ける。
そして、睨むからこそ見てしまった。彼の口の端に、ほんの少しだけ浮かぶ失笑を。
「―――ッ、貴様!!」
叫ぶや机の引き出しを開く。取り出したのは有ろう事か銃だった。
そして出口に向かう無防備の背中へと銃口を合わせる―――――――筈が、彼の手はその途中で凍り付いた。
後ろ向きから一瞬で半身になったスヴェンが、既に銃を副長官の額に合わせていた。
「…困りますね、俺に撃たせないで下さいよ。
貴方は俺の神輿なんですよ? 黙って担がれていてくれないと、うっかり落としてしまいますからね。ご用心」
遂に向けた悪意の微笑に、副長官は蒼白になって椅子に腰を落とした。
ブッシュ(藪)に於いて、兎より狡猾な生き物は狐と言われている。
だが、その狐より狡猾な生き物は確かに居る。それは……狩人だ。
獲物を仕留めるのに武装して罠を仕掛けるのは狩人しか居ない………例えば今のスヴェンの様な。
あの失笑が、副長官の怒りを誘う呼び水だった事に副長官は気付いていない。彼が銃を取る前に、スヴェンは自前の銃を
既に懐から抜いていたのだ。後は激昂がそのまま銃を向ける合図になる。
読みは時に、身体能力や武装、状況の差ですら凌駕するのだ。
それを全て完全に操る彼には、武術の達人の如く八方の死角が存在しない。
「それと、もし俺に何か有ったらブライアン氏が黙っていませんよ。よく憶えて置いて下さい」
更に微笑に悪意を強め、スヴェンは銃を仕舞い込んだ。
そのまま意気揚々と部屋を出るスヴェンの背中を、入室の時と打って変わってぞんざいに出て行くまで、副長官は
見ているしかなかった。
「くそ……あの若造……よくも…!!!」
瞋恚に泣こうが、スヴェンに逆らうのは物理的に法的に立場的に不可能だった。
――――――と、スヴェン自身も思っていた。
「…あ、はい。ええ、ええ……………そうなんですか!? …良かった。
あ、いえ、こっちの話ですよ。それでは、ええ…その方向でお願いします。はい、では」
オフィスに戻ったスヴェンが第一に見咎めたのは、やたらと携帯電話に頭を下げるロイドだった。
「…誰と電話だ?」
背後からのスヴェンの問い掛けに、ロイドの背中は大仰に跳ねた。
余程慌てたらしく、その勢いで机上に山積みの書類が一気に床へと散乱する。
「え……あ…や、その……スヴェン、その、あの…その……何でも無いよ」
勿論それを容易に信用するスヴェンでは無い。恐る恐る振り向きながらの弁明は彼の目で無くとも誤魔化しと判る。
先刻の不愉快が尾を引いたか、彼にしては珍しく苛立ちのささくれが立った。
(何だコイツ、俺に隠し事か? 腰巾着の分際で)
だが貌だけは優しく、詰問を突き込んだ。
「『何でも無い』でそれは無いだろう、一体何だ? 俺で良ければ手を貸すぞ」
まずは柔らかく、しかし鋭く。撓やかなレイピアの様に。親身に話し掛ければ問題に困る相手は大概内容を打ち明ける。
しかし、この時のスヴェンが珍しく苛立った様に、ロイドも珍しく食い下がった。
「だ、大丈夫だったら。本当に心配無いよ」
言いつつ目を背けながら携帯をスヴェンから隠す様に机に置く。どうやら徹底的に明かしたくないらしいが、確たる証拠のそれを
見れば文字通り一目瞭然だろう。……今すぐふんだくってやりたい気持ちになったが、飽くまで親友の立場を崩さぬ為に
取り敢えず自制する。
「まさかオイ、あの眠れてないのに関係有るんじゃないだろうな?
そう言う気遣い≠ヘ無用だって、何度言わせるんだ」
…策謀で物を言うのは正にその忍耐だ、それが出来ない人間は(副長官の様な)初めから策を弄さぬ方が良い。
と、心の片隅で思い浮かべながら内心ロイドを罵る。
――――お前は俺の指示通り動けばいいんだよ。それを俺の預かり知らぬ所で引っ掻き回すな、馬鹿が。
その痛罵を一切知る事無く、しかしロイドは口から飛び出した寝言に表情を曇らせた。
「……本当に………何でも無いんだ。
頼むから、終わりにしよう? ね、スヴェン?」
「出来るかよ。トモダチだろ?
お前がそんなになって、無視出来ると思ってるのか?」
白々しくさも親身になった風に、スヴェンは沈み込んだ操り人形に詰め寄った。
「まさか誰かに弱みでも握られてるのか?
もしそうなら俺とマリアに任せてくれれば良い、すぐに解決してやるさ」
―――お前の所為で俺のプランが狂ったらどうする。お前が死んだ位じゃ取り返しが効かないんだぞ。
流石に周囲が二人に注目し出したが、二人には関係無い。それよりもお互いの理由で譲らぬ方が大事だった。
スヴェンの胸の奥は、彼自身想像もつかない程に苛立っていた。哀れな傀儡の思わぬ反逆は、彼からごく少しずつでは有るが
正常な判断を曇らせていく。
「…そう言うのじゃないから………本当に何も無いから……こ、これからすぐ他所に行かなくちゃいけないんだろ?
急いだ方が良いんじゃ………」
「余計な心配するなって言ったろうが。いいから、早く何だか言えよ」
本当に珍しかった。ロイドは生来強情な性質ではない、それなのに怒りを誘うのが判っている筈にも拘らずこうまで食い下がるのは
考ずるまでも無く異常な事態だ。しかも何より、この男が争いを望まないのは誰もが知る事実だ。
人は、完璧では無い。それは緻密な権謀術数を使いこなすスヴェンとてけして例外には成り得ない。
「――――判った、もう訊かないで置くさ」
それを聞いて、僅かにロイドの緊張が緩んだ――――――…が、
「見る」
言葉を終えるが早いか、スヴェンの手が携帯へと伸びた。遂に彼は、我慢の限界に達した。
「だっ………駄目だったらッッツッ!!!」
ロイドの叫びも、行動も、スヴェンにとっては全くの予想外だった。
二人が気付いた時は――――――――スヴェンは床に激しく転がされた。
「痛ぅ……」
「あ……」
倒れたスヴェンを、ロイドは蒼白になって見下ろした。彼にもそれは予想外の行動だからだ。
ロイドが、渾身の力で突き飛ばしたのだ。
「……ご…御免、その……」
今にも泣き出しそうな貌で詫びながら、両手を頼り無く泳がせる。
それを余所に、スヴェンは無言で起き上がる。その彼を前にしたロイドの心中は如何ばかりの物だろうか。
もう恐怖を隠そうともせず震えるロイドの肩を、いつものスヴェンの手が叩いた。
「悪かったな、そんなに見られたくないなんて思わなかった」
「そ…その………あの……」
「気にするなよ、俺が悪かった。と、もう時間だな、悪いけど話は此処までだ。もう空港に行かないとな」
すれ違い様にもう一度ロイドの肩を叩き、彼は入り口に向かって歩いていった。
「……スヴェン!!」
その背中に、突然ロイドが些か強く言葉を浴びせる。しかしスヴェンは振り向かない、が、足は止めた。
「………気を付けて」
送り出しの言葉にスヴェンは言葉を返さなかった。ただ、挙げた右手がひらひらと背中越しに揺れる。
その背中を、ロイドはオフィスを出るまで見守っていた。
廊下に出た時、数人の同僚がスヴェンへと近寄った。皆等しく笑みを浮かべ、一人がスヴェンの肩を抱く。
口さがないが、悪い連中ではない事はスヴェンも承知の上だ。
「ようスヴェン、出張前に愛人と喧嘩か? 悪い奴だ、本妻も悲しんでるってのによ」
「本妻」とは、言うまでも無く長官の娘だ。いつもこの程度のジョークなら、スヴェンは苦笑を零すだけだが…
「…黙ってろ」
殺しかねない殺気に、彼は思わず肩から手を除けた。
全員が凍り付くのも気に止めず、スヴェンは早足で廊下を歩いて行く。
………行き交う局員達が、避けて通るほどの憎悪に双眸を凍らせて。
(もう……要らないな、あいつは)
此処まで反抗を許しては心情的な力関係に関わる。歴史上の支配者が粗相をした部下を断罪したのはそれだ。
随分と役に立っては来たが、許す訳には行かない。計略とは、緻密であればあるほど蟻の一穴にて瓦解する。
(帰ったら、何か押し付けるか)
無謀な捜査でも良い、または副長官の失態の責任でも良い、兎に角彼には人を貶めるカードが無数に有る。
彼の能力を失うのは痛いが、今はマリアが居れば充分な段階でもある。勝利の女神を調子付かせる為には
少しチップを多めにくれてやるのも勝ち方だ。
それに、マリアは未だスヴェンを好いている部分が有る。愛情とやらを上手く突付き回せば案外ロイドよりも
張り切ってくれそうだ。
「…俺がマリアを袖にしたのは正に其処だ。結婚したらその気持ちが充たされるからな。
だから俺はロイドに押し付けて、飽くまで旦那の友人を演じる事であいつを焦らし続けたのさ。
…………ロイドで満足しないようにな」
トレインも、リンスも、言葉を失っていた。
愛憎は表裏一体と人は言う。しかし、愛情は時に憎悪すら超える衝動となる。
それは、掛けられた事すら判り得ない絶対の枷だった。そしてその鎖の端は、常にスヴェンが握っていたのだ。
「だが当時の俺は、その事の重大さをまるで理解してなかったし、何とも思ってなかった。
笑えるだろ? 心情って物を存分に理解してたくせにな」
眼をまるで動かす事無く、スヴェンは微笑んだ。
祭りの喧騒は、陽が徐々に朱を差して行くにも拘らず変わる事無く賑やかだ。だが、彼等三人が陣取るこの席は違う。
其処だけが、一足早く夜が来た様に空気を落ち込ませる。
「……それでお前は、帰って来てどうした?」
「帰りたいのは山々だったが、帰れなかった。……その出張捜査が、俺の捜査官としての最後の仕事だったからな。
――――――いや、その俺≠フ、かな?」
わざわざ他州まで出向いたのは、スヴェンにすれば単なる箔の上乗せだった。全く以ってその程度の事だったのだが、
来るや彼は其処の前時代的著しい有様に辟易した。
携帯電話もろくろく通じない上、宿泊施設は最悪、しかも地元警官の士気はすこぶる悪い。それが朴訥ゆえならまだ判る話だが、
もっと単純に彼等の職業意識がおざなり過ぎた。更にもしやと思って調べて見れば、何人かは地元のマフィアに袖の下を
握らされていた。
そして、スヴェンの獲物であるマフィア共にも呆れ返った。運営方法も組織力も活動方針も実に全てがストリートギャングの
域を卒業出来ていない。言うに言うなれば、マフィアを名乗るのもおこがましい髭の生えた餓鬼共だ。
これでは、如何に解決しようが箔どころか一つまみの金粉ほどでさえ無い。
――――さっさと終わらせて帰るのが吉だな。
そう高を括っていたのが彼の運命を分ける事になろうとは露知らず、彼は荒野の真ん中に座する廃工場で警官隊と共に
麻薬取引が行われる夜を待った。
「…其処を動くな! お前達は今、完全に包囲されている!!」
黒いアタッシュケースを持った数人の男達を中心に、警告と共にスヴェンと警官隊は銃を突き付けた。
この形になれば、囲まれた彼等に反撃の手段など無い。事実全員両手を挙げる以外の行動を封じられている。
…………思わず溜息を付いてしまいそうになるほど、マニュアル通りで予測通りの終結。幾多の難事件や巨大犯罪組織を相手にしてきた
スヴェンには、まるで子供の使いだ。それなのに警官達と来たら、何か大きな事でも成し遂げた様な歓喜に目を輝かせている。
その幼稚な連中に長嘆息したその時、
「…アンタが、スヴェン=ボルフィードさんかい?」
八方塞がりのマフィアの一人が、どう見てもその場に有るまじき不敵で知らない筈のスヴェンの名を呼んだ。
「何だと? 何で俺の名前を知ってる?」
「やっぱりそうかい、来た甲斐が有ったってモンだ」
更に、絶対絶命に有りながら勝者の笑みに顔を歪めた。
「アンタの上司から伝言が有る。
『生意気な小僧は早死にする』…だとさ」
一瞬何の事か判らず訝しんだが―――――次の瞬間、事態は急転する。
場の四方から、それぞれ一台の軍用トラックが廃工場の壁を破壊し、かつ警官隊もマフィアも差別無く跳ね飛ばしながら
スヴェンへと迫った。
「……ようこそ、男の世界へ」(byリンゴォ=ロードアゲイン)
この台詞で、「男を星に喩うなら、美学こそがその輝き」とかいう言葉をふと思い出しましたが、
俺自身がぜんぜん光ってねえ事を再認し、ちょっぴり鬱なNBです。ど畜生、俺。
しかしこのスヴェン、もう俺の手を離れて暴走しておりますが……いいの、これ?
ドーベルマン刑事に撃たれかねないド外道になってしまって……収拾付けられるのか?
「一人歩きすれば一人前」とは言われた事が有るが、かなり不安ですね。
でもまあ、前回の反応が思いの他下衆呼ばわりされたので、そう書いた俺としては嬉しい限りです。
さて次回、いよいよこの野郎が改心する段になる訳ですが、いったい俺自身どうするんでしょうか?
手を抜かない事だけは保証致しますので、どうか一つよろしくお願いします。
さて、そろそろ……今回はここまで、ではまた。
おお、NBさんキター
副長官とスヴぇンとのやりとりが大人な感じだな
血みどろ、みたいな汚さでなく欲にまみれたような感じの
なんかチャンドラーとかのハードボイルドな世界みたいだ
395 :
作者の都合により名無しです:2006/06/20(火) 23:25:57 ID:QiTrDK1l0
確かにハードボイルドだ。イブとかが出ていないと急にシブくなりますな。
陰謀と嘘の世界で風を切ってるニューフェイスのスベンがかっこいい。
元ネタの黒猫には絶対に現れないようなシブさですね。
意外と副長官がタヌキで好きだ
396 :
ふら〜り:2006/06/21(水) 00:10:40 ID:Pt8gTPaY0
>>サマサさん
もしかしてムウが「俺が押さえ込んでるから、俺もろとも……」なのかと心配しましたが、
知恵と技と洒落た皮肉とで、鮮やかにキメてくれましたな。ちょっと洋画のヒーロー風。
精神的にも戦力的にも危ない部分はあったものの、今回でキラには一つの決着、ですね。
>>41さん(復帰早々、質量共に充分過ぎる出来栄え。今後も楽しみにしてますぞっ)
およそ考えうる限りの最悪夢にすら動じず、冷静に現状を受け入れる新一も凄いですけど、
>『さすが私の新一、やっぱり女の子になっても素敵よね』
>(私が貴方の彼氏になるためにね)
こ、この娘っ子どもはっっ。まぁ非常識事態に対して前向きにポジティブに考えてるとも
言えますが。ってここから幼女新一宇宙編inフリーザ軍の開幕? 勇子は刃牙はどこに?
>>NBさん
その通り だから余計に 腹が立ち ……副長官哀れ。太刀打ちできる相手じゃなさ過ぎ。
あとロイド相手に苛立つスヴェンは、少し石仮面前のディオを思い出しました。NBさん
の狙い通り、彼はもう堕ちるトコまで堕ちてるって感じてますが、これで改心って如何に?
>>356 ありがたき御言葉、骨身に染み入りまする。なれど現在、ある資格試験の勉強中にて。
しかしだからこそ、気分転換(逃避ともいう)にちまちま書きたいとは思っております。
おおNBさんの新作キテター
情を微塵も持ち合わせてないスヴェン。しいて言えば「野心」だけがやたらと先行してますね。
それでいて現在のスヴェンはその過去を内包してる存在ってもんだから恐ろしいもんですよ。
原作のトレインがそれに近い(但し薄い)けど、スヴェンのはもっと狡い世界。どう改心するものか。
398 :
作者の都合により名無しです:2006/06/21(水) 15:13:16 ID:rZY+lFjD0
NBさん乙。元ねたが少年誌とは思えないような展開ですな。
でも、そろそろイブやセフィリアとかが見たい気もする
しかし、ふら〜りさんっていつも資格試験を受けてる気がするなw
福祉系って資格云々によって違うからねー
ママンからの受け売りですが
結構面白いなw
ワ ナ ビ 三 大 嫉 妬 対 象
■奈須きのこ(月姫・FATE)
「昔から設定を考えて〜」という、ワナビ中最も多いであろう、設定厨ワナビにとって最大の憧れwww
アンチも沢山wwwだけどその8割がチンカスワナビwwwww
いつか自分の作品も……と、設定厨ワナビの目標にして希望の星でありながら、
あらゆる点で自分を超えているその姿はワナビに最強の嫉妬を抱かせるwwww
あーん、ボクの設定も見てよーwwwwww
■竜騎士07(ひぐらしのなく頃に)
発想の勝利wwwww
凡人ワナビの貧相な想像力では一生追いつけないwwwwww
三人の中では一番のモンスターかもwwww
「ミステリーじゃない」「推理なんて出来ない」「キャラがキモイ」「破綻してる」
でも売れてるのは事実wwwww
■谷川流(ハルヒ etc...)
なんだか分からないまま旋風を巻き起こす、ある意味ワナビにとって畏怖の対象www
上記二名と比較して作家としての実力は抜きん出てるwwww
すなわち、正攻法でワナビを足蹴にするラスボスwwww
叩いても叩いてもハルヒブームは右上がりwwww
そしてワナビは小説も書かず、ハルヒの批判に終始するwwwww谷川以下の語彙でwwwww
☆まとめ☆
どれだけ一生懸命世界観を作り上げても奈須きのこには及ばないwwww
どれだけ頭を使ってもひぐらしのような話題性を生み出せないwwwww
どれだけ書いても書いても書いても書いても作家としての技量は谷川に届かないwwwww
漫画化? なに言っちゃってんのwwwwww
アニメ化? 夢見るだけなら別にいいよwwwww
いつか作家になれる夢を見ながらウダウダと妄想を垂れ流しwwww
一生心にシコリを残しつつ中途半端な人生を閉じていくwwwwwww
それがお前らwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
第八十一話「宴の跡で・1」
ついに平和を取り戻したメカトピア。生き残った国民たちは人間・ロボットを問わず、この素晴らしい日を祝うべく一斉に
集まった。その数は決して多くはない。戦争で犠牲になった者たちが如何に多いか、それだけで分かるというものだ。
彼らが見守る中、メカトピア国民を代表して英雄・アスランが簡素な壇上に上がり、挨拶を始めた。
「集まってくれたみんな・・・俺たちは辛い日々を送った。だが、それも今日でやっと終わった。メカトピアにようやく
平和が戻ってきた!」
うおーっ!と大歓声が上がった。
「だがこの戦いで人間もロボットも、たくさん失われてしまった・・・生き残った俺たちは、その分まで背負っていかねば
ならない。本当ならこうやってお祭り騒ぎなんて不謹慎かもしれない・・・」
そこでみんな、少し沈痛な面持ちになった。失われた命に想いを馳せているのだろうか・・・。
「だが・・・それでも今日は特別な日だ!大いに食べて、大いに飲んで、大いに踊って、明日からの新しい日々の幕開けと
しよう!さあみんな、グラスを持ってくれ!」
高々とグラスを掲げる。これだけの人数が集まっているので、実に壮観だった。
「それでは――――――乾杯!!! ・・・・・・・・・と、言ったら乾杯を・・・・・・・・・」
ベタベタなギャグを放ったアスランに対し、一斉に石やら汚物が投げつけられたのであった。さらにイザークが壇上に駆け
上がって首根っこを掴んだ。
「アスラン、貴様!こんな場で何を考えている!」
「だって、これだけのギャラリーがいるんだから一発ウケをねらうしかないじゃないか!」
「うるさい!大体貴様は・・・!」
―――しばらくお待ちください(背景にひまわり・打撃音・頭蓋骨が陥没する音・肉が裂ける音etc・・・)
「とにかく・・・乾杯!」
ボロクズになったアスランに代わり、イザークが仕切り直してやっとこ乾杯の音頭となった。
大宴会が始まった。誰もが思い思いに騒がしい時を過ごしている。
それは実に混沌としているわけで―――
ムウとジャイアン、スネ夫、そしてキラが輪になって酒を飲んでいる。ムウ以外は未成年だったが、今日ばかりは無礼講。
気にせずがんがん酒を飲んだ。その結果がどうなったかというと―――
「うう・・・アタシ、辛い・・・」
服の裾で目頭を拭い、女言葉でメソメソと泣き出すジャイアン。はっきり言って不気味であった。
「何よアンタ!女が腐ったみたいにうじうじしてんじゃないわよ!」
スネ夫は逆にやたら強気であった(女言葉だが)。ジャイアンに凄んで怒鳴りつけたりと、普段からは考えられない行動
である。それを見ながら、ムウはたら〜〜〜・・・と、冷や汗をかいた。
「・・・やっぱ、酒を飲ませるのはまずかったかな」
「そうですね・・・」
キラは生返事で答える。心、ここにあらず。そんな感じだ。
「キラ・・・クルーゼのことを考えてるのか?」
「―――はい」
「そっか・・・ま、考えるなって方が無理だけどよ」
ぽりぽりと頭を掻きながら、ムウは言った。
「あいつとお前はやっぱ違うんだから。いくら考えたってしょうがないぜ」
「分かっています」
キラはすっと立ち上がり、笑顔を見せた。
「僕には仲間が―――友達がいる。ちゃんと、分かっています」
「それならいいさ・・・」
満足気に笑って、ムウは酒を飲み干した。それに酒を注ぎ足し、キラに渡す。
「いただきます」
キラは一息にそれを飲み干した。強めの酒が、自分の中に残ったわだかまりを溶かしていくようだった。
―――稟とマサキは酒が入りすぎて、アッパーテンションになった亜沙に絡まれていた。
「あはは、楽しーよね、こーいうの。ほらほら稟ちゃんにマサキくん、全然お酒が進んでなーい!」
<いや、俺は身体がないから飲めないってば>
「飲みすぎですよ、亜沙先輩。ほら、ちょっと休んで・・・」
「えー?飲みすぎ?そういや暑いなあ・・・」
「う、うわっ!?ちょ、ちょっと、何脱いでるんですか!」
<こ、こら!公衆の面前で女の子がなんてモノを出すんだ!仕舞え、早く仕舞えってば!>
―――その横ではバカ王子が側近三人と並んで飲んでいた。
「いい案を思い付いたぞクラフト。時代は何と言っても萌えの時代だ。今度は5歳以下の美幼女に警察に摘発されそうな
ユニフォームを着せて宇宙人との交流を描いたメロドラマを製作して・・・」
「アホか!んなもんで宇宙人の存在をさりげなく世の中に広められるはずがなかろう!ああ、俺は何故こんなバカの相手
をしなければならんのだ・・・そうだ、死んだらいいんじゃね!?死んだら楽になれるんじゃね!?よし決めた!
このバカを殺して俺も死ぬ!」
「た、隊長!お気を確かに」
酒に酔った勢いで光線銃を振り回すクラフトを、サドとコリンが必死に止めていた。
「みんな、飲んじゃってるね・・・」
「全くだね。ふふ・・・けど、平和になったんだし、今日くらいはいいんじゃない?」
「そうだね。じゃ、ぼくらもちょっとくらい飲んじゃおうか?」
「ちょっとだけだよ、未成年以前の年齢なんだから・・・」
その時だった。背後からフー子の声がした。
「のび太〜・・・」
「ん?フー子、どうしたの・・・フー子!?」
何気なく振り向いたのび太は血相を変えた。フー子は虚ろな目で、足元もおぼつかないままこちらに歩いてくる。どう
見ても普通の状態ではない。
「フー子!しっかりして、フー子!」
泣きそうになりながらフー子に駆け寄ると―――異常な酒臭さがのび太を襲った。
「えへへ〜♪お星様がたくさん見えるぞ〜」
「・・・・・・」
何のことはない。単に酔っ払っているのだった。安心すると同時に腹立たしくなった。
「フー子!もう、フー子までこんなにお酒を飲んで!」
フラフラのフー子を支えながら叱り付けるのび太。だがフー子はそんなものはどこ吹く風でドラえもんのヒゲを掴んだ。
「オヒゲ〜♪」
「う、うわっ!ヒゲを引っ張らないで!と、取れる、取れちゃう〜〜〜っ!」
天使のような無邪気な笑顔でドラえもんのヒゲを引っ張るフー子。微笑ましいが、ドラえもんにはたまったものではない。
「全くもう・・・みんな何時の間にそんなに飲んだのさ・・・?」
がっくり肩を落とし、呆れ果てるのび太であった。
「おい、のび太くんよお・・・」
背後からポンポンと肩を叩かれ、振り向くとそこにいたのはUSDマンだ。何故かやたらゲッソリした顔をしている。
「王様を何とかしてくれよ。お前、あいつと仲いいだろ?」
「王様・・・?ああ、ペコのことか。どうかしたの?」
「どうしたもこうしたも、一緒に飲んでたんだがよ・・・ま、見たら分かるよ。何とかしといてくれ」
言うだけ言って、うんざりしたように人混みに消えていった。首を傾げながらペコを探すと・・・
「―――大体ですねえ!ぼくの扱いは何なんですかって話ですよ、ねえ!」
―――そこには一升瓶片手に顔も目も真っ赤にして酒臭い息を吐きながら熱弁をかますペコがいた。その周りでは
ディアッカとニコル、イザークの三人も一緒に飲兵衛になっていた。
「非常食だのペットだの、アホですかってことですよ。こんなマイナスな個性ばっか付けてキャラ立てされたって、
嬉しくも何ともないですよ、ええ!」
「分かる!分かるぜ、ペコ!」
ディアッカがこれまた顔を真っ赤にしてうんうんと頷く。
「俺にしたって後半になってやっと出てきたと思ったらいきなり炒飯ネタだぜ!?それしかねーのかよって、作者の
力量疑っちまうぜ!」
「やきゃましい!きしゃまら、なんべんおにゃじこひょをいっへるんは!」
イザークが怒鳴るが、もはや何を言ってるのか分からない。ちなみに正確に訳すと
「やかましい!貴様ら、何べん同じ事を言ってるんだ!」となる。
「あはははは、あーあっはっはははは!もっと飲みましょう、飲みましょう!」
ニコルは何が面白いのかケタケタ笑いながら、胃袋が破裂するのではないかと思わんばかりに酒を喉に流し込んでいる。
「う、うわあ・・・」
「あ、のび太さん!飲んでますか?メカトピアの酒は美味いですよ!」
「いや・・・何ていうか、ペコ、酔っ払いすぎじゃない?」
「はあ?何をおっしゃるのび太さん!酔ってないですよ!ぼくを酔わせたら大したもんですよ!」
ちなみに自分で酔ってないという奴は、大抵酔っているのである。もはや処置無しと、のび太は絡まれる前にそそくさと
退散するのであった。
飲まないぞ。ぼくは酒なんて飲まないぞ!のび太はそう決心するのであった。
409 :
406訂正:2006/06/22(木) 21:03:41 ID:65r61/+O0
―――稟とマサキは酒が入りすぎて、アッパーテンションになった亜沙に絡まれていた。
「あはは、楽しーよね、こーいうの。ほらほら稟ちゃんにマサキくん、全然お酒が進んでなーい!」
<いや、俺は身体がないから飲めないってば>
「飲みすぎですよ、亜沙先輩。ほら、ちょっと休んで・・・」
「えー?飲みすぎ?そういや暑いなあ・・・」
「う、うわっ!?ちょ、ちょっと、何脱いでるんですか!」
<こ、こら!公衆の面前で女の子がなんてモノを出すんだ!仕舞え、早く仕舞えってば!>
―――その横ではバカ王子が側近三人と並んで飲んでいた。
「いい案を思い付いたぞクラフト。時代は何と言っても萌えの時代だ。今度は5歳以下の美幼女に警察に摘発されそうな
ユニフォームを着せて宇宙人との交流を描いたメロドラマを製作して・・・」
「アホか!んなもんで宇宙人の存在をさりげなく世の中に広められるはずがなかろう!ああ、俺は何故こんなバカの相手
をしなければならんのだ・・・そうだ、死んだらいいんじゃね!?死んだら楽になれるんじゃね!?よし決めた!
このバカを殺して俺も死ぬ!」
「た、隊長!お気を確かに」
酒に酔った勢いで光線銃を振り回すクラフトを、サドとコリンが必死に止めていた。
―――そんな悲喜交々な光景を、のび太とドラえもんは苦笑を浮かべて見守っていた。
「みんな、飲んじゃってるね・・・」
「全くだね。ふふ・・・けど、平和になったんだし、今日くらいはいいんじゃない?」
「そうだね。じゃ、ぼくらもちょっとくらい飲んじゃおうか?」
「ちょっとだけだよ、未成年以前の年齢なんだから・・・」
その時だった。背後からフー子の声がした。
「のび太〜・・・」
「ん?フー子、どうしたの・・・フー子!?」
何気なく振り向いたのび太は血相を変えた。フー子は虚ろな目で、足元もおぼつかないままこちらに歩いてくる。どう
見ても普通の状態ではない。
「フー子!しっかりして、フー子!」
泣きそうになりながらフー子に駆け寄ると―――異常な酒臭さがのび太を襲った。
投下完了。前回は
>>367より。
宴会話は一回で終わらす気だったんですが、長くなりそうなので二回に分けます。
酔っ払ったジャイアンが女言葉なのは、一応原作準拠だったり・・・ホンワカキャップの話だったと思います。
>>369 次回作は予定はないですが、もし書くなら多分デス種も出すかも・・・ボンボン版のシンはいいキャラでした。
例え間違った考え(作中ではそういう扱い)に凝り固まっていても、自分なりの信念を持って最後まで戦った
彼は男前でした。
>>370 あとは大体20話ですね(予定)3〜4ヶ月くらいか・・・
>>371 これでも量は落ちてますよ(以前は2〜3日に一回だった)
質は・・・保ててるといいんですがw
>>381 種はファーストのオマージュだそうですから。原作種でもラストシーンはアスラン+一人が迎えに来て、
僕には帰れるところが〜〜〜な感じなので。
>>ふら〜りさん
それだとまんまボンボン版です(笑)資格試験、頑張ってください。
>>400 なのはがクルーゼですか・・・w
411 :
作者の都合により名無しです:2006/06/22(木) 22:16:16 ID:WSeDQGiN0
ジャイナンって酔っ払うと女言葉になるのか!
それはともかくサマサ氏乙。
シリアスが終わったあとはギャグになるのが
この作品らしくて楽しいですな。
あと20から30話ですか。
寂しいですが、100話越えは確実で景気がいいですねえw
第十四話「お笑いコンビのほとんどはボケの方が人気」
戦士達の夢の跡。
それは、職を懸けた男達による壮絶な死闘の結末。
所々土で汚れた隊服は、何にも変えがたい勲章だった。
総勢何名かの、屈強な日本男子たち。
その全員が、満ち足りた顔で雄叫びを上げていた。
「――うおぉぉぉぉぉ、俺達は勝ったんだァァァ!!!」
黒服軍団の、努力と根性と年甲斐もなくはしゃいだ結果を物語る、歓喜の咆哮である。
そう、俺達は勝ったんだ。
鬼ごっこという、聖戦<ジハード>に。
場所は、彼らのホームである真選組屯所。
真選組隊士達が勝利を祝う中、何人かその輪に入り込めない者達もいた。
「……マジか」
「……マジみたいですねィ」
真選組副長土方十四郎と、一番隊隊長沖田総悟である。
「土方さん、俺ぁ前回あのチャイナ娘に殴られてダウンしたところで記憶が途絶えてるんですが、いつの間に決着がついたんですかィ?」
「いや、俺にもさっぱりだ。だが確かなことは、この鬼ごっこがなんの盛り上がりも見せずにいきなり起承転結の結を迎えたってことだ」
「こりゃぁ終わり方としてはいいんですかねィ。中には俺達の壮絶なアクションとか、残り少なくなった参加者内での駆け引きとか期待していた人もいるんじゃねぇですかねィ?」
「知るか。終わったんなら終わったでいいじゃねぇか、もう。初めから馬鹿馬鹿しい企画だったんだしよォ」
土方の愚痴ももっともなところ、鬼ごっこは(いきなり)真選組の勝利で幕を閉じた。
本当にいきなりだった。クライマックスの盛り上がりとかそんなん全部無視しての強制終了だった。
例えるならあれだ。いいところに差し掛かってきたんだけど、人気不審からの打ち切りを宣告されて最後に『数年後』とかやっちゃう漫画と一緒だ。
「はっはっは。まあいいじゃないかトシ」
いまいち腑に落ちないでいる二人の前に、髭面の近藤局長がやって来た。よほど勝利が嬉しいのか、大笑いしている。
「結果はこうやって真選組の大勝利に終わったんだからな。ほら、時間も見てみろ。まだ終了まで一時間も余ってるぞ」
「うわっ、ホントだよ。俺らの圧勝だったんじゃねぇか。本当にクライマックスもなにもあったもんじゃねぇな」
「そのせいか、近藤さんの出番もなかったんじゃねぇですかィ?」
「うん、まあ……そうだな……」
沖田の言葉にショックを受けたのか、近藤の周りの雰囲気は露骨に影を落とし始めた。
無理もない。第一部に未登場、第二部でもろくな活躍なしとくれば、あまりにも不憫だ。仮にもレギュラーキャラなのに。
「それはそうと、結局新局長の座は誰のものになるんですかィ?」
「あ」
沖田に言われて思い出した。
そうだったのだ。忘れていたが、この鬼ごっこは真選組が勝利を収めた場合、より多くの参加者を捕まえた隊士に新局長の座が約束されるというルールだった。
そして、近藤の記憶が正しければ第十二話の時点では、もっとも優性だったのは沖田であったはず。
沖田はヤバイ。他の隊士ならまだ話が通じるかもしれないが、沖田が新局長にでもなった日には、この真選組が治安を守る警察から単なるいたずらっ子グループに変貌しかねない。
せめて他の隊士にその座が渡ってくれればきっと信頼しているであろう近藤に――
「おい山崎ぃー、結局新局長は誰になるんだー?」
「あ、沖田隊長ですね」
「え、マジですかィ? やりィ」
「えええええェェェ、ちょ、もうちょっと焦らすとかしようよ君たちィィィ!!?」
近藤の叫びも虚しく、新局長は沖田総悟に決定した。
…………五。
時が迫っている。
…………四。
努力と汗と根性の集大成が、ついに実る。
…………三。
あと数秒、あと数秒で報われる。
…………二。
友に誓ったあの約束。
…………一。
今、果たそう。
…………零。
「…………やった」
時は満ちた。
夕から夜へと転換する時刻、少年はその瞬間に立ち会った。
「やったんだ……」
小さな呟きは、歓喜の証。
「僕は……僕は勝ったんだァァァ!!!」
時刻は午後六時――志村新八は、鬼から逃げ通したのだ。
「やった。やったよ神楽ちゃん! 僕は勝ったんだ! 神楽ちゃんの犠牲、無駄にはしなかったんだよ! やっほォゥ!」
大喜びで江戸中を駆け回る新八。
名誉の戦死を遂げた神楽の分まで戦い抜く。そして、勝つ。
約束は、果たされたのだ。
やっと報われた。
この作品において、『ツッコミ』という絶対安定ながら報われない地位にいた彼に、初めて褒美が遣わされたのだ。
その褒美の名は、勝利。第二部の肝ともいえるこの鬼ごっこでの優勝。彼が頂点に上り詰めたことなど、かつてあっただろうか。いや、ない。
辺りには可哀想な目で新八を見る通行人が絶えなかったが、本人にとってそんなことは関係ない。とにかくはしゃぎまくった。
「これで、僕も真選組の一員だァァァ!!」
新八は、沈みゆく夕日に吼える。ノリ良すぎだろう、とこっちがツッコミたくなるほどの勢いである。
ちなみに。
当然というかやっぱりというかお約束というか、新八は真選組には入隊できなかった。
何故か。新八の存在など、まるっきり忘れ去られていたからである。
易々と優勝できたのも、結局は忘れられていただとい悲しい理由で、後日真選組に駆け寄ってみても、「え? だれ君?」と返された。
今回のお話における彼の役割は、所詮こんなものだったのだ。
「ええ、分かってましたよ最初から。ツッコミなんて結局報われない役割なんですよコンチクショー」
第二部はギャグに徹しているというより、物語として壊れすぎているだけの作品になってきた悪寒……。
それでも完結まで駆け抜けて行きたい一真です。
前回はこの作品の今後について、色々レスしてくださってありがとうございます。
せっかく銀魂というシリアスギャグ両用の万能作品を題材にしているんだから、頑張って盛り上げていきたい。
とりあえず三部は……今までとは違った方向でいくつもりです。皆さんの期待を裏切らない程度に。
と、終わりムードですけど第二部はまだ続きますよ。
>サマサさん
USDマンって、のびたの事をのびたさんって呼ぶんだw
>一真さん
乙
>サマサさん
最終決戦?前の暫しの安らぎですね。なんかワンピースの宴に近いものが有る
それにしても種ってファーストのオマージュだったのか。いや、種見た事ないがw
>一真さん
新八は原作のシリアス編だと結構美味しい役回りですけど、ギャグ編だと扱いがw
でも、それが彼のキャラですね。二部の続きと毛色を変えた3部を期待しております。
419 :
作者の都合により名無しです:2006/06/23(金) 10:02:41 ID:gHdXPsUt0
一真さん乙です。最後までドタバタで終了しましたね。
あ、まだ続くのかw でも、シリアスになるかも知れない3部が楽しみだなあw
オマージュというと聞こえはいいが、実際はただのパク(r
五つの怪談が終わりを迎え、残るは一つとなった。
機関銃から放たれた銃弾の如く、外を埋め尽くしていた雨も、
今は姿を潜め、滴り落ちる雫の様に静かに降り注いでいる。
「これも、一度外へ出れば弾丸の様になって我々を撃ち抜くのだろうな。」
ドイルが忌々しそうに外の雨を睨みつける、
ユダが小石を投げつけるが今の所は砕ける様子は無かった。
「さて、残ったのはユダだけだな。」
焚火の火始末をしながらシコルが最後の怪談の催促を施す。
残る恐怖は一体、どんな結末を自分達に齎すのだろうか。
「残念だが、俺は修行と野望にしか興味が無かったのでな。
お前達の様に俗世間的な話は何一つ知らん。」
突然の告白、まさかここまで来てネタ切れとは。
空が怒り狂うかの様に姿を変えて行く。
「これは・・・雷雨がまた現れだすなんて。」
変色した空から、異様な気配を感じたシコルスキーが慌てだす。
「作り話でもいいからなんとかしろ!このままじゃ・・・。」
このままでは、その先がどうなっているかは判らない。
だが何かが起こる事を人としての本能が告げている。
人の心の底に根強く残る「恐怖」という本能が。
「落ち着け、一番初めに聞くべきだった事が残っていた。」
慌てふためくシコルスを押え付けながら、ユダが語りに入る為
にその場に座り込む。暗雲が空を覆いつくして行く中、ユダが淡々と話を進める。
「それはお前達の話に共通した謎が残っているという事だ。」
「共通した謎?」
興味深そうにユダに相槌を打つ柳、しかし、それが怪談と呼べる物では
無かった場合、ここにいる全員が闇に呑まれてしまうかもしれない。
「その1、柳はまだ判るが何故、貴様等は日本の怪談に詳しい?
スペックの話は外の国であった出来事の様だが、内容は日本人の身に起きた事だ。」
言われてみればそうである、何故、ここに居る全員が
日本に関係する怪奇現象の話をしたのだろうか。
「その2、スペックの話以外は全て学び舎で起こった出来事だ。」
シコルの話したトイレの男、ドイルの話した悪魔の鏡、
柳の話したラピスラズリ、ドリアンの話した人に住み着く悪霊。
例外はスペックの話したモナリザに纏わる日本人の死。
「その3、これはお前等の話した怪談とは別の疑問だが、
この現象はサルーインの仕業なのか?確かに、奴が神なら
天候を操る事など造作も無いだろう。だが奴は『暗黒』
の神では無い、『破壊』の神だ。思い出せ、闇の神はシェラハ、
サルーインが求めるのは破壊、人の恐怖は求めていない。」
そう、三柱神という事で同じに考えていたが、それぞれ目的は違うのだ。
長男デスは死を、次男サルーインは破壊を、三女シェラハは闇を司る神。
ならばこの状況はシェラハが作り出した物だというのだろうか。
「だがデス、シェラハは光の神の力に屈した。デスは冥府の王として
今は大人しくしている、シェラハは確かに今の状況を作り出すのに適任だが、
何故、我々にこんな話をさせる?水竜の元へ行かせたく無い理由でもあるのか?
それに、仮にシェラハだとしたら今更になって動く理由も不明だ。
アサシンギルドに在籍してから今まで様々な文献を調べたが、
シェラハに関わる物は見当たらなかった。」
「ふむ、サルーインが我々の裏切りに気付いているのは解ります。ジャギの
死体が跡形も無く消えていましたからね、きっとどこかで復活しているでしょうな。」
柳の眼に闘志が宿る、ジャギの放った南斗聖拳の傷が癒えた今でも、
喰らった場所が熱く疼く、ドイルも、ドリアンも北斗千手殺によって受けた傷を
思い出してか、体中に熱い血潮を煮え滾らせていた。
「まぁ、神の話は怪談にはならんだろう。
情報も少ない現状では謎が解ける事は無い、
今はお前等の話した怪談の謎を検証するとしよう。
まずはお前達が何故、日本の怪談に詳しいのか聞こう。」
ユダはそう言うとシコルスキーへと目を向けた。
「俺のは・・・作り話なんだ、自作の。」
作り話、シコルの作り話ならばレベルが低いのも頷ける。
納得した様子で2番手のドイルへと視線を移す。
「実は、俺のも咄嗟に考え付いた作り話だ。」
ドイルまでもが作り話だったとは、日本について調べた
と言っていたので、その最中に見つけたのだと思っていた。
次は3番手の話し手、柳に視線を向ける。
「皆さんもでしたか、私もなんですよ。」
明らかな違和感を感じ取るユダ、まさか全員が咄嗟に
考えた作り話なのでは無いだろうか、そんな考えが頭を過ぎる。
そして、それは見事に的中していた。
「そうか、実は私もそうだったんだ。」
「オレモサッキ見セタ、モナリザノ写真ヲ見テ思イツイタンダ。」
どう考えても不自然な事に本人達は気付いていない。
シコルスキーが作り話でいいから何か言え、と言ったのはこの為か。
「お前達、本当に偶然思いついたのか?」
ユダの問い掛けの意図が分からず呆けた顔をする死刑囚組。
行き成り訳の分からない事を言い出すユダに呆れ気味の
ドイルが、疑いすぎである事を主張しようとした。
「何を言っているんだ、現にみんな・・・。」
そこまで言って気付く、『みんな』、この場に居る全員が、
偶然にもその場で咄嗟に怪談を思いついた。
「スペック、モナリザの謎の事、貴様は本当に知っていたのか?」
モナリザ、顔の半分に笑顔を、もう半分に悲しみを宿す絵。
その謎までもが、偶然にもその場で思いついた偶然だとしたら。
「・・・アレモ、絵ヲ見テ、思イツイタンダ。サッキノ
日本刀ノ近ク二落チテタ、モナリザノ写真ヲ見テ咄嗟ニ。」
ここまで来たら偶然では無い、何者かが意図を持って記憶を操作している。
「だが、偶然の思いつきでは無いなら何故、ユダは怪談を思いつかなかったんだ?」
少し思考を巡らせると、確信を持てた訳では無い様だがユダが結論を出す。
「多分、もうすぐ思いつく筈だ、俺は俗世間の事は知らん。
その御蔭で頭の中に情報を刷り込むのに手間取っているんだろう。
偶然を装うには、俺の知っている情報を使わなければならないからな。
空を見ろ、既に雷が落ちても可笑しくない程に雷雲は広まっている。」
ユダが瞑想に入る、頭の中を整理させる事で怪談の構成をよりスムーズに行う。
最も、その怪談はユダが構成する物では無いのだが。
「来たぞ、何処の馬の骨とも判らん奴からの、『恐怖』のプレゼントが。」
神の仕業か、悪魔の仕業か、終わりの時は来た。
果たして終わるのは恐怖の時間か、それとも命か。
425 :
邪神?:2006/06/23(金) 17:28:24 ID:2SCSIuGY0
ようやく死刑囚編に終りが見えて来た邪神です。
さて、最後の怪談は何からインスパイヤするかな。
それでは今回も講座はないのでコメへの返答でございます。
〜感謝〜
ふら〜り氏 >>ちゃんと彼の声で聞けました。
流石、古参の風格ですな、しかしカタカナ使いまくるならもう少し文をわけるべきだったと反省。
サマサ氏 >>そういう時はこちらも「うおっまぶしっ!」
やったやったw 巨大な蜂に崖から落とされて「落ちながら戦って(ry」
ガン道は笑えるんだが拒絶反応が抑えきれず最後まで見れないw
351氏 やはりカタカナは読み辛かったですかw
翻訳で話そうかと思ったんですがスペックらしくないかなーと思い
こうなりました、まぁ話の内容だけ知りたければ「学校であった怖い話」
で調べれば多分あると思いますよ。
354氏 前やってた世にも奇妙を見逃して鬱になってた時期が・・・。
乙です。死刑周辺はキャラがこゆいので好きです。
このままレギュラーになるといいな
このスレレベル高いなぁ
邪心さんお疲れさまです!
最後の引きがとても印象深く残りました!
それにしても、死刑囚って益々憎めない奴になってますねw
>>427 え、どこが?
俺みたいな書き手もいるんだよ。ふら〜りさんをはじめとする読み手はレベル高いと思うけどね。
430 :
作者の都合により名無しです:2006/06/23(金) 23:14:47 ID:bFkHcnn40
一真さん乙です。
なし崩し的に決着がつきましたが、いつものノリで新八がワリ食って終了ですねw
でも、シリアス編になるとこのヘタレさが美味しくなるんで楽しみw
邪神さんも乙です。
今までの怪談話は(ちょっと強引だけど)サルーインにつながってるのかw
死刑囚はキャラが強烈だから、テイルズとかロマサガチームとかは大変だなあw
>>429 高い人は下手すればラノベのプロクラスの人もいるね。
逆に趣味だから気軽に書いてるって感じの人もいるし。
でも、そういうのはここではなく語ろうぜスレで。
「はーん。人工的にグールを作り出そうって腹か」
高価な絵画が壁にしつらえられ、多くの調度品が並ぶ小さな美術館というべき部屋は、名も知れぬ輩の侵入を許していた。
シグバール。
先程、保安部隊を全滅させた彼は、自分に科せられた任務を全うすべく、ここに辿り着いていた。
シグバールは任務が終わった後、さっさと此処からオサラバし、すっかり久しくなった休息を存分に堪能したいと思っていた。
そのためには、あることを果たさねばならない。彼の手には一枚の書類がある。
シグバールは人間の肉体の断面図、数々の薬品の名称、統計的にとった実験体のパラメーターの羅列など、綿密に調査された内容に、
その書類の製作者の妄執にも似た感情を感じ取りながら、それに目を通していた。
不死の研究。
吸血鬼の人工生成。
その狂った考えは、このアメリカの地にも賛同者を生んでいた。
現世で得た栄光を永続させたいと願う者達は、どんな場所にもいる。
金を湯水のように使えるもの達は、不死の命を約束するミレニアムに協力を惜しまなかった。
そして、莫大な援助を受け、ビルに偽装されたこの研究所が建った。
もっとも此処では研究の根幹ともいうべき吸血鬼の生産は行われてはいない。
研究の過程で生まれた副産物の量産が、このビルの役目だ。
それは食屍鬼(グール)。
吸血鬼は一人創りだすだけでも莫大なコストがかかる。
現にミレニアムが所有する吸血鬼の数はたったの千人程度だ。
半世紀にわたって延々と活動を続けてきたのにもかかわらず。
そこで能力は落ちるがコストパフォーマンスがよい兵器をミレニアムは用意した。
それが食屍鬼(グール)。
グールとは、吸血鬼に血を吸われた非童貞非処女のなれの果てである。
グールになった人間は肉を食いたくなる。
元同族のそれを、だ。性質の悪いことにグール達は美食家ではない。雑食だ。悪食といったほうが適切か。
若い女性の瑞々しい肉や老人のしわがれた固い肉など好き嫌いなく食らう。だから被害が多くなる。
ひとたびグールが生まれれば、まるで黒死病の如く周囲に伝染し数が増えていく。
一晩で一つの村が地図の上から消えたこともある。
住人は残らずグールに成り果て、村の噴水広場では紅い紅い液体を滝のように浴びた吸血鬼が、
ケタタマシク凶笑していた。
その吸血鬼は、伝承通りに銀を心臓に撃ち込まれ、土くれへと戻った。
灰は灰に。
塵は塵に。
残ったグール達もすべて処分された。
墓を追われ夜道をさまよいハンターに狩られる哀れな動く死体。
それが食屍鬼(グール)である。
グールは扱いに困る。匂いは臭いし、知能も皆無だ。
ただ、そのリスクを払ってでも運用したい兵器が……グールである。
グールは吸血鬼に劣る。
当然だ、グールは吸血鬼の奴隷でしかないのだから。
それでも、夜族、怪物、人外の一つゆえに……死ににくさでは人間を遥かに越えている。
グールは吸血鬼と比較して耐久性以外では大きく劣るとはいえ、武装化を施せば既存の軍隊を
超える力を得る。
きたるべきミレニアムの悲願……英国上陸作戦暗号名第二次ゼーレヴェ作戦の遂行のための
補助戦力として用意された。
すでに相当数のグールが完成している。
「それも、今日限りだな」
ずん、と。大きな音がした。部屋が大きく揺れた。ぱらぱらと埃が落ちてくる。
続いて炸裂音。すべて下のフロアから聞こえてくる。
その音はすべて破滅の調べ。ミレニアムの研究の一切合財を吹き飛ばす、爆弾が起動した証拠だった。
すでに装備を整えたもの。いまだ調整途中のもの。研究所で生まれたばかりのもの。
このビルにいたありとあらゆるグール達は――すべて灰と化した。
「任務完了、っと。なかなかしんどかったな、今回の仕事は」
シグバールは首を回し、体中を弛緩した。
机の上に散らかっていた書類を脇に寄せて、どっかと机に腰を降ろす。
誘爆が続いていた。炎が研究所を飲み込み、その勢力を拡大していた。
荒々しく窓を突き破り、外の人間に威勢を示している。
もうここは使えないな、とシグバールは思った。
完璧に破壊した。記録もすべて抹消した。そしてこの大爆発。
衆人の目についた以上、この施設は調査されマスコミに報道されるだろう。
もっとも、ここで吸血鬼の研究が行われいたことは一般人には伏せられるに違いない。
夜と昼の世界は交わってはならない。政府が吸血鬼を初めとする『魔』を隠し続けるのは、
無用の混乱を避けるためだ。
この慣習は変わることはないだろう。ヴァチカンを筆頭とする世界中のアンチ・フリークス達
を根絶しないかぎりは。
もっとも、シグバールはそんな慣習など感知しない。
彼は吸血鬼ハンターではないし、なりより、この世界の住人ではないのだ。
『世界』は無数にある。
『世界』は夜空の星を形づくり、『世界』と『世界』の間は星の大海という空間が広がっている。
『世界』同士は本来見えない壁に阻まれ、互いを行き来することはできない。
だが、ごく稀に、内焼エンジンにより重力を振り切り真空の海に旅立つ者や、
グミと呼ばれる物質を用いて船を造り、壁を突破する者もいる。
―――しかし、世の中には例外が存在する。
闇の回廊というものがある。『世界』と『世界』を繋ぐ、たった一つの通り道。
その名の通り、闇からできており、本来の理を歪め、人を別の『世界』へと飛ばすことができる。
ただ、それ相応のリスクを負わなければならない。
闇の回廊を通るたびに、人は心を蝕まれてゆく。
心。
人は肉体と魂と心で出来ている。心を蝕まれ続けた人は、闇に囚われる。
そして、心が闇に飲み込まれ、そこからハートレスという怪物が生まれてくる。
ハートレスは闇の世界の住人だ。そして心を狙っている。『心を求めて動く』
『より強い者に従う』という本能で活動し、闇の回廊から数多の『世界』に現れあらゆる心を
貪り食っている。
人は光の世界で生きている。
ハートレスは闇の世界で生きている。
―――そのどちらでもない存在が、『世界』の裏で蠢いている。
人は肉体、魂、心で成り立っている。その三要素の一つ、心が離れたときに、残された肉体
と魂はどうなるのだろう。
普通ならば、残された肉体と魂は闇に消える。すべてが無かったこと、『存在しないもの』
に置き換えられる。
だが、ごく稀に、強い心を持った者が心を失った時、ある化物が誕生する。必滅の運命を
しりぞけ、消滅するはずの肉体と魂はあらたなカタチをとり、この『世界』に新生する。
ノーバディ。肉体と魂のなれの果て、『世界』から存在を否定された化物である。
シグバールは、ノーバディだ。特別な、ノーバディである。
ノーバディは生前の記憶をもっているが、姿形は化物のソレだ。だが、人のカタチを保った
モノもいる。
上位種のさらに上―――現在までに十三体確認されている、特に強い心をもった者が成る
ノーバディが、シグバールだった。
その十三体のノーバディ達は結集し、ある組織を結成した。
それが]V機関。有象無象のノーバディ達を率いて、世界の裏で暗躍する組織である。
シグバールは部屋の中で弛緩していた。
任務は終わった。ミレニアムの欧州侵攻はこれで計画の練り直しをせざるをえない。
戦略的に重要なアメリカは、ミレニアムにとっても無視できるものでなく、計画を遅延させ
てでも手に入れておきたい要所であった。
新しく研究所が立てられるまで時間がかかる。
その隙に、ヴァチカンが、もしくは王立国教騎士団が、はたまたどの組織にも属さない
吸血鬼ハンターが、アメリカに入り込んでくるだろう。
それこそが、]V機関の狙いだった。
世界に混沌を生み出し、争いを生み、不安定になった人間から心を奪い取る。
――また一歩、キングダムハーツの完成に近づいた。
クッ、と嗤い、シグバールは自分達の目的の達成を夢想した。
だからだろう。
油断した。
油断した。
油断、した。
シグバールは窓の外から超高速で飛来する弾丸に、気付きはしなかったのだ。
――ここで、二人の猟師の時間は一つになった。
山で滑落しかけました。みなさんも雪渓にはご注意ください。荷物の重さによっては、
止まらずに落ちちゃうそうです。
先輩からソレ告げられた時には、冗談抜きに、死ぬんじゃないかって思いました。
ちなみに背負ってたザックは十キロちかくありました。死ぬって。途中、本気で帰りたくなりました。
>>全力全開さん
激しく亀ですが、
>>196のきよしとこの夜、私も見ました。
ANN再開してほしいですよね。またダメ人間日記聞きたいです。
シルエイティさんの濃いネタが懐かしいです。
>>350さん
読みすすめて、腹抱えて笑いました。声優ネタ大好きです。
この次はティトゥス、岩窟王、大教授ビアスなんかを混ぜたのも。
FateVSケロロ、是非読みたいです。
それでは、また次の投稿の時に。
440 :
作者の都合により名無しです:2006/06/24(土) 08:31:21 ID:osEVAPqr0
大丈夫か、冬山は危険ですな。
それにしてもお久しぶりです487さん。
元ネタは正直知りませんが、王道のハンター物?で楽しいです。
叙情的な書き方で、ホラーっぽい部分もあって楽しいですね。
また自戒をお待ちしてます。
お久しぶり。俺も原作知らないけど、このハードファンタジーみたいな雰囲気が好きだ
これからも自分のペースでがんばってくれ!
バンパイアハンターD?
ヘルシングと…まんまKH?
未プレイなんで分らないけど、487氏の都合付く限り早く続きが読みたいです。
プロクラスw
444 :
作者の都合により名無しです:2006/06/24(土) 22:38:22 ID:/tLXxIHP0
487さんは大学のワンダーフォーゲル部か何かか。
ともかく乙&お久しぶりです。
まだ世界観の発露みたいな段階だけど、ダークな雰囲気と
凝った描写が面白いです。ハードな戦いものになりそうですね。
忙しそうですけど、これからもよろしく。
445 :
作者の都合により名無しです:2006/06/25(日) 03:49:50 ID:P4b0u5JZ0
特に書くことが無いので一言
ちんこ!!
446 :
ふら〜り:2006/06/25(日) 13:58:07 ID:aOHMKQOP0
>>サマサさん
女湯覗きと同じく、こういう大人数ものでは外せないネタです「酔っ払い」。怒り上戸に
笑い上戸に泣き上戸、野望にグチに脱衣と大体一通り揃ったような……ん、サマサさんの
本命がまだの様子。飲まずに次章への繋ぎを務めるか、意外な凄い酔いっぷりを見せるか?
>>一真さん
むう。もうちょっと見ていたかったですが鬼ごっこはこれにて幕、ですか。主催から他の
参加者から、みんな失速していく中で一人頑張ってた新八が可愛く哀れ。やはりツッコミ
は相手がいないと立場が弱いのか。二部の間に活躍、というか目立てる機会はあるのかな。
>>邪神? さん
なぜ外国人の彼らが……という、お約束以前の問題に説明をつけてしまうとはまた斬新な。
しかもそれが、劇中劇ならぬ怪談外怪談というか、別の怖さに繋がってるとはまた見事な。
で。今回ラストシーンで思ったのは、ユダも結構、暗い所でみたら怖い顔してるよなぁと。
>>487さん(これはまた、お久しぶりですっっ)
オカルトなバケモノを、軍隊が兵器として利用しようとする……漫画や映画でも時々見る
シチュですな。以前までの投稿分で書かれていた、時間が濃くなってるようなスピード感
あるバトルと、グロいスプラッタしなくても迫力のあるモンスター描写、待ってますよっ。
447 :
作者の都合により名無しです:2006/06/25(日) 16:32:04 ID:0fxbazDJ0
サナダさんマジで引退(というか投げ出し)か?
きっと帰ってくるさ。俺は信じてる
そろそろ、新スレの季節ですね
おぉーい、職人の皆ぁー!
早く帰ってこぉーい!
バキスレ(ここ)はいいところだぞぉー!
450 :
作者の都合により名無しです:2006/06/26(月) 08:07:49 ID:Agogv6by0
なんだかんだで1月で新スレだから大丈夫だよ
現連載陣が退陣したらヤバいが
サナダムシさんの加藤の活躍を期待してます。
第八十二話「宴の跡で・2」
宴の盛り上がりが最高潮に達したところで、落ち着いたリズムの音楽が流れ始める。それと同時に誰もが自然と誰かの
手を取り、思い思いに踊りだす。
「ダンスが始まったみたいだな」
いつの間にか復活していたアスランがキラに話しかける。
「アスラン!大丈夫だったの?明らかに致命傷っぽかったのに・・・」
「ふふふ、ダンスが始まるというのに眠っていられないじゃないか!触れ合う手と手、交わす目線と甘い言葉、そして
擬音はある意味恋の呪文・・・」
「最後はちょっと違うような・・・」
「とにかく!ここは是非とも誰か誘って踊るしかないじゃないか!」
「だけどアスラン、パートナーなんて見つかるの?」
不安げに尋ねるキラ。客観的に見てアスランの容姿はかなりのレベルではあるが、内面に問題がありまくる。しかし当の
本人は自信満々に胸を張った。
「心配はいらん。この俺は整形アイドルと美人姉妹の三人に同時に迫られたこともある気がするほどの男だぞ?」
「妄想で語っちゃダメだよ・・・」
「ええいやかましいわ!女の子は可愛いのが仕事!バキスレ職人はSSを書くのが仕事!そしてアスランはもてるのが
仕事じゃないか!さあ、今こそアスランもて王サーガ連載開始!超機神大戦?んなもん今回でTHE ENDォオ!!
よっしゃあああッッ!!ご愛読ありがとうございました!!」
問題発言をかましながらアスランはパートナーを探しに出た。
「―――って、本当にタイトル変わってる!?」
↑を見て、愕然とするキラ。
そんなことは何処吹く風のアスランが声をかけたのは、長い黒髪を夜風に靡かせながらグラスを傾ける妙齢の美女―――
「アザミ・・・って、なんか危険な予感が・・・」
不安げに見守るキラを尻目に、アスランはどこからか調達したバイクに跨り、これまたいつの間にか身に付けていた下品な
感じのサングラスをくいっと持ち上げながら、アザミに向かって言い放った。
「俺アスラン・ザラ略してアスザラ。へへ・・・付き合ってよお姉さん」
どこかのDQNのようなセリフをかますアスランを冷たく見つめ、アザミは両手に魔力を集中させた。
「―――召喚魔法・護送車」
宙に魔方陣が描かれ、そこから護送車が現れた。血走った目の中年男がハンドルを握るそれは、アスランの身体を空中高く
吹き飛ばす。錐揉み状に回転しながら、アスランは墜落したのであった・・・。
「アスラン!」
キラは倒れたアスランに駆け寄った。ちょっとしたグロ画像のような姿になったアスランは息も絶え絶えといった有様だ。
「ふふ・・・キラか。俺は・・・もうダメみたいだ・・・」
「そんな!しっかりしてよ!」
「馬鹿野郎・・・何を泣きそうな顔をしてるんだ・・・」
アスランは笑おうとして、ごふっと血を吐き出した。
鮮血の色。赤色。アスランの身体から流れていく紅色。それは―――終わりを意味する色。
「ざ・・・残念だ・・・この俺が、こんな某死刑囚みたいな虐待を受けて最期を迎えるとは・・・キラ・・・最後に、
一つだけ・・・言わせてくれ・・・」
アスランは残った力で、ようやく声を絞り出した。
「サーカスは・・・いつまでダ・カーポで暴利を貪るつもりなんだろう・・・」
そして―――アスランの身体から、力が消え失せた。キラの瞳から、大粒の涙が溢れる。
「ア・・・アスラァァァァーーーーーーーンッッ!!!」
もはや動かぬアスランに縋り付き、キラは泣いた。
―――さようなら、アスラン・ザラ。僕たちは君の勇姿を忘れない―――
ちなみにこの十分後、アスランは無事に息を吹き返したので読者の皆様はご安心を。
と、いうわけでアスランもて王サーガは幸いなことに大不評を得たので一回で終わりである。バキスレ史上、恐らく最も
短い連載期間であった。
「あ、あほらしすぎる・・・」
その顛末を見守っていたのび太は、そうとしか言えなかった。のび太でなくてもそうとしか言えないだろうが。
「ふふ、けれど楽しいじゃない」
「あ・・・リルル!」
のび太の隣で笑うリルル。彼女は音楽に合わせて踊る人々を穏やかに見つめていた。
「こうしてメカトピアに平和が戻ったのも、のび太くんやみんなのおかげだわ・・・本当に、ありがとう」
「え?そ、そんな。別に大したことは・・・」
頭をかきつつ顔を真っ赤にするのび太。リルルはそんなのび太に向かって手を伸ばした。
「わたしたちも、踊りましょう。ね?」
「リルル・・・」
うん、と頷きかけたところで、視線に気付いた。ジト〜〜〜ッ・・・とした、不穏な気配だ。妙な汗をかきながらそちらへ
向き直ると、一人の少女がのび太を見ていた。
「プリムラ・・・」
彼女は無言でのび太を見ている。その目は何かを訴えていた。絶対訴えていた。
「な・・・何?」
「リルルと踊るの?」
「え、えーっと・・・」
その時、背後からさらに声をかけられた。
「あら、のび太さん」
「し、しずかちゃん!」
のび太の本命の登場である。彼女は笑っていたが、目はまるで笑っていない。
「モテモテで羨ましいわね。両手に花なんて、いい気分じゃない?」
「・・・・・・」
よく分からないが、のび太は修羅場の空気を感じた。この選択次第で、これからの自分の身の振り方が決まってしまうかも
しれない。針の筵に座った気分だ。
美少女三人に取り合いされて羨ましい、なんて、誰か言ってみろ。代わってやる。この空気から解放されるなら、喜んで
代わってやるとも!
しかし、誰も代わってくれる者などいない。たらたらと汗が流れる―――
「やっほー、のびちゃん!飲んでるぅ!?」
―――能天気な声が、修羅場の空気をかき消した。
「亜沙さん!」
のび太はほっとした。年長者の彼女ならば、この場を上手く治めてくれるかもしれない。ここから助けてくれるなら、
ぼくは彼女を女神とする宗教を作って一生崇めたっていい!
だがのび太の願いむなしく、彼女はにやにや笑うばかりだった。よく見ると顔が紅い。酒がかなり入っているようだ。
「あら?あらあら、もう〜、のびちゃんってば、三人もはべらしちゃって!お姉さん、ちょっと妬けてきちゃうな〜」
この場を治めるどころか、火に油を注ぐような発言である。この世には神などいない。いたとしても、やたら暑苦しい
筋肉馬鹿で、しかも魔王とマブダチのおっちゃんしかいないのだ。
「亜沙さん・・・ぼくが困っているのを見て、助けてあげようとか思わないわけ?」
「ええ〜?困ることないじゃん。可愛い女の子に囲まれちゃって、嬉しいくせに、このこの」
「いや、だって・・・」
「ああ、もう。誰か一人選べないなら、全員選んじゃえばいいじゃない」
「は?」
目をキョトンとする一同。
「のびちゃん、将来は神界に移住しなよ。あそこって一夫多妻制だもの。これで万事解決!」
「そ、そうだったの・・・?」
今さら明かされた驚愕の事実であった。一夫多妻制・・・素晴らしい響きだった。
「うふふ。いいかもしれないわね。そうなったらみんな、ずっと一緒にいられるわね」
リルルまでそんなことを言い出した。
「それはそれで、あり・・・かも」
プリムラもそれで納得してしまったようだった。そしてしずかは―――
「あら、いいわね。そうしなさいよ、のび太さん。お二人と、いつまでも幸せにね!」
「し・・・しずかちゃ〜〜〜ん!」
結局本命からは邪険にされたのび太であった。何故に?ぼくは彼女と将来結婚するはずなのに・・・
そんなのび太の嘆きを無視するかのように、その場に更なる台風が近づきつつあった。
「のび太〜〜〜・・・」
フー子である。しこたま酔って、一番頭がフラフラしている状態のようだった。目付きがちょっとヤバイ。
「おや?第四夫人の登場かな?ああんもう、この女殺し!」
「い、痛いって!もう、やめてよ!そんなことより、フー子の様子が何だかおかしいって」
頭をグリグリしてくる亜沙に構わず、フー子に話しかける。
「フー子、大丈夫?だいぶ辛そうだけど・・・」
「うー・・・フラフラして、クラクラして、グチャグチャするぞ・・・」
頭を抱えるフー子。その周囲に、小さなつむじ風が幾つも舞っている。酔ったせいで、風の力を制御できなくなっている
のかもしれない。
「うう〜〜〜・・・何だか、全部フッ飛ばしちゃいたいぞ・・・」
「ちょ、ちょっと、フー子・・・じょ、冗談だよね・・・?」
冷や汗をダラダラ流すのび太たち。先程までとは別種の修羅場の空気が駆け抜ける。
そしてフー子の身体から風が迸る。それは次第に強さを増していった。
「ううううう・・・気分悪い・・・悪いものは出しちゃわないと・・・」
人間が酔っ払って気分が悪くなると、大抵は嘔吐する。しかし、風の精霊である彼女の場合は違った。
「いあ・いあ・ハスター!!!!!!」
よく分からない掛け声をかけると同時に、フー子を中心として軽く半径十kmを越える範囲で、凄まじい風が舞う。それは
まさに局地的でありながら超巨大な台風そのものであった。
全てを吹き飛ばす風の力。全てを容赦なく洗い流すかのような凶風―――
これが悪酔いした時の風の精霊なりの対処法であった。とにかく自分の中の悪いものを全部吐き出すという意味では人間の
嘔吐と変わらないが、傍迷惑さでは段違いであった。
―――こうして宴は幕を閉じた。人的被害がゼロだったのが、幸いであった・・・。
投下完了。前回は
>>408より。
ついにこのSSも自分の中でゴールラインが見えてきてしまいました・・・寂しい。
>>411 プロローグに番外編も入れると、実はもう二話書くと100話目に。よく書いたもんです。
>>417 いや、のび太くんと呼んでますよ。
>>418 ワンピースは特にイメージしてませんでしたが、言われればそんな感じかも。
>>420 そんなことは言わずにw
>>邪神?さん
果たしてどこまで突っ切るのか、GUN道・・・
僕の次回作は<ドラえもん のび太とGUN道伝説>で決まりです(嘘)
>>ふら〜りさん
とりあえず僕の知る限りの酔っ払いのパターンを入れてみました。で、本命の彼女ですが、
酔っ払ってはいませんでした。酔わせてもよかったかもしれませんでしたが・・・
>>456の後に入れ忘れました。失礼します。
「うう・・・酷い目にあったなあ・・・」
やっと目覚めたのび太は辺りを見渡した。他の連中は全員気絶してしまっている。当のフー子はとてもすっきりとした顔で、
すやすやと眠ってしまった。まるで妖精のように可愛らしい寝顔であった。
はあ、と溜息をつきながら立ち上がり、会場の外へと出る。凄絶なまでに美しい月の光が、廃墟を照らし出している。
「・・・・・・」
恐ろしさすら覚えるその幻想的な光景に、のび太はしばし見入っていた。
「あれ・・・?」
目をパチクリさせる。廃墟の中に、何者かの姿が見えた気がしたのだ。
思わずそちらに向かって歩き出した。だんだんとその姿がはっきりしてくる。二人組だった。
もっと近づいて、その顔が見えた。
予想通りと言えば、予想通りだったかもしれない。
一人は紫の髪を靡かせる、妖しい美しさを湛えた闇の男―――シュウ。
そしてもう一人は―――狐の面を被っていた。
「ん・・・?よお、久しぶりだな、俺の敵」
まるで道端で友人に会ったような軽い態度で、狐面の男はそう言った。
―――この荒唐無稽で支離滅裂な物語は、ついに最終局面へと。
お疲れ様です。そうですか、ゴールが見えてきましたか・・
この宴が最後の宴会になってしまうのかな?
でも、作中であった通りバキスレ職人はSS書くのが仕事w
この作品を最後まで見届けますが、終了しても
また違ったサマサワールドが観たいな。
ちょっと気が早いですね。まだまだ続きますでしょうし。
亜沙を初めとする女性陣がいいな。意外とヤキモチ焼きのしずかちゃんとかw
お疲れですサマサ氏。
激闘の後のお祭り騒ぎが好きなんですけど、
>>459さんもいっている通り
あと1回かな?最終回で。ちょっと寂しい。
最後まで応援してます。
462 :
作者の都合により名無しです:2006/06/27(火) 21:44:58 ID:FXh2bC3a0
まあ、終了まであと3ヶ月くらいあるみたいだからのんびりと楽しもうよ
帰ってこないかな、お休み中の人
週に20本近く来てた日に戻るのはいつの事か
あの時が異常だったんだけど
次スレのテンプレの目次欄は寂しい事になりそうだ
うみにんさん、サナダムシさん、ユルさん、しぇきさん、ゲロさん
またかつての主力クラスの方々ばかりというのが辛い。
皆さん、連絡だけでもして下さい。
465 :
作者の都合により名無しです:2006/06/28(水) 23:14:39 ID:gxprHXHa0
3年半の割と輝かしいバキスレの歴史の中でも
かなり危ない事態かも知れんな
サマサさんや邪神さんたちコンスタントに
うぷしてくれる人たちがいる内はまだ大丈夫だけど
その連載が終わったら。。。
確約は出来ないので名前は明かせないけど
1ヶ月位したら復活します
467 :
第3話終了:2006/06/29(木) 07:28:54 ID:2DzVlW6O0
7月16日(日)15:10 海鳴市海鳴商店街 翠屋
洋風建築に緑色の看板。喫茶店で菓子店、翠屋。
「いらっしゃいませ。あら、なのは」
こちらはなのはの姉、美由希(風芽丘学園三年 17)。
「大人数だけど、大丈夫?」
「なのはの友達なら、無理にでも空けるから大丈夫!」
「あはははは…お姉ちゃん、あんまりそういうのは…」
幸いにして食べ終わった団体さんが出たおかげで、そのような不穏な事態は起こらなかった。
シュークリーム、バナナパイ、カステラ、エクレア、バヴァロワ、タルト、チーズケーキに紅茶。
一言で言い表すなら「どれから手をつけていいかわからない」。
「やっぱり喜んでもらえるのが一番嬉しいわね」
なのはの母、桃子さん談。これがフランス・イタリアで修行し、東京の有名ホテルのチーフ・パティシエにまでなった実力である。
「最高級フランスケーキ!」
のび太、また間違ってるよ…。それは『フランスケーキ』じゃなくて『ラ・フランスケーキ』だ。
まあ、後光が射すくらい美味いようだから別にいいが。
みんな『心にジーンとしみる』味を体感したところで、高町家の家長・士郎氏から質問が挙がった。
「なのは、明日海に行くってのはどうなったんだ?」
「あっ!!忘れてたっ!」
「海って?」
そりゃあ気になるだろう。
「ちょうど海の日だし、遠見海水浴場まで行こうと思って計画してたの。海鳴海水浴場は結構混むから。そうだ!明日来れる?」
「もちろん!」
さてさて、どんな快粋欲情逝き…じゃなかった海水浴場行きになるやら。
同時刻 次元世界「エスペート」首都バトリット
「将軍!今度はボルドカが攻め込まれています!」
「何だと!この首都のすぐ近くじゃないか!!警備を強化しろ!地方人員は削ってもかまわん!」
「はっ!」カッカッカッ…(立ち去る)
「なんと言うことだ、黄昏の戦乙女…」
468 :
次回予告:2006/06/29(木) 07:29:28 ID:2DzVlW6O0
〜次回予告〜
みんなで遊びに言った海水浴場は、天気も良好、人もいなくて遊ぶにはもってこい!ところが海の中からなんだかとんでもなく大変なものが。そして異郷の地ではいったい何が?
次回「ドラえもん のび太と魔法少女リリカルなのは〜黄昏の戦乙女編〜」第4話「ビク!水着で海で大騒動なの?」
リリカルマジカル、がんばります!
どうも、『TOBで株を買い占め』たい谷間の先発系新感覚駄文書きな者です
え?私なんぞお呼びでない?こりゃまた失礼
近いうちに4話をあげますので、感想などはそちらで
フランスケーキについてはてんとうむしコミックス第4巻「ラッキーガン」を
とりあえずいろんな漫画(今季アニメが主)の舞台を調べてます
練馬区では「女子高生(中村橋)」「錬金3級 まじかる?ぽか〜ん(光ヶ丘)」あたりですね
もしかしたら登場するかもしれません
氏ねオオクワ
謝罪しろ謝罪
>470
嵐でも煽りでもなく、存在そのものがバキスレに迷惑なんだが
473 :
作者の都合により名無しです:2006/06/29(木) 12:24:25 ID:YSClkgkH0
うーん。前回からこれだけ間が空いて1レスかあ。
正直、本人じゃないと思った。トリップ調べるまでは。
でも、しばらくこられなかったから顔見せですよね?
期待してるんで次はもう少し多めに書いてね。
頑張って下さい。
>まあ、後光が射すくらい美味いようだから別にいいが。
変ドラのパクリか。
雑魚のくせに盗作とは、かつての知欠並みだな。
475 :
作者の都合により名無しです:2006/06/29(木) 18:06:19 ID:4Wek/bLx0
全力さん乙です
叩いてる連中は気にしないで
ただ、これが本当に読み手にウケると思って書いたのどうかが疑問
【叫】 さけび
「聞き込みで知っているとは思いますが、今、うちの工場に課長っていないんですよ。前まで
は逢坂って人がやってたんですが、会社のお金を使い込んでるのがバレましてね。クビに
なっちゃったんです」
そういえば、と千歳は捜査初日に聞き込んだ情報を反芻する。
殺された麻生部長は人材発掘に熱心な人物で、空いた課長の席を埋めるべく張り切ってい
たらしいが、さて、それが動機とどう結びつくのか。
千歳が口を開く前に、久世屋はあっさり吐いた。
「部長は俺を、課長に推薦したんです。だから殺した」
「…………」
「詳しい説明がご入り用ならばしますが、お時間は大丈夫ですか?」
「……ええ」
小さな拳──ヘルメスドライブの無い方──は堅く握り締められている。
「その為には、『人はどうして仕事をするのか?』という所からお話する必要があります。千歳
さんは、『誰かを助ける』ためでしょうね。無表情だけど、非情ではなさそうですし」
からかうような視線が、千歳の左手に刺さる。
「で、本題です。人が仕事をするのは、輝かしい抽出物を生み出すためではないでしょうか?」
芝居っ気たっぷりに居ずまいを正し、問う。
「愚痴や不満があっても会社に来るのは、お金という抽出物を生み出すためです。ま、何か
特技のある人なら、仕事そのものを目的にするかも知れませんが」
誰も気づかなかったが。
千歳たちの頭上の枝の中、根来は何度目かの頷きをした。
「特技を使って仕事をこなすっていうのも、つまりは、契約や修理済みの自動車や、整ったエ
クセル文書を抽出するコトにつながります。そして抽出を目当てにする行動は仕事だけじゃ
あありません」
熱情の篭った声が列挙を行う。
「受験勉強は合格という抽出物のため。異性にヘーコラするのは恋愛という抽出物のため。
野菜を育てるのも、子どもがお小遣いを溜めるのも、政治家が選挙活動に必至こくのも、
実とか自転車とか当選とかいった、何かの抽出物を求めてのコトです。料理から革命に至る
までみんなそう。輝かしい抽出物を求めて、人は苦労をする! そう。色々と頭を使って、ね」
一息ついて久世屋は右ポケットに手を突っ込んだ。
「スポーツ選手だろうが研究者だろうが、例外なんていませんよ。千歳さんだって、何かを抽
出したその時は、すごく喜ぶと思います」
千歳は無言のままだ。
「そして! 先ほど俺がいった特技だって、身につけてる人は一種の抽出物です! 『特技
を持つ自分』という姿を苦労によって抽出してますからね! 特技の元になる知識や技術に
しても、誰かが苦労して文字や図解に起こした抽出物といえます!」
複雑怪奇な物事を論理によって噛み砕き、他の人間が扱えるようにしたモノ。
それが知識と技術だ。
全体総て合理のカタマリ。惰性の混じり気一切なしの抽出物だ。
「更にそんな筋道だった抽出物によって更に抽出された物は! 単なる苦労によるものより
数段素晴らしい! 絵空事に血肉をつけているのならなお。で、その中で俺がもっとも良い
と思うのがおもちゃです。ありえない空想上の産物を、どうにかこうにか形にしてますので。
だからおもちゃで遊ぶと、夢……みたいなモノに触れているようで本当に楽しいですよ」
声音は少年のように落ち着いた。
「火炎鼓も欲しい。腰に巻いて音角とDAをぶら下げたい。それから俺は、俺は……ヒビキさ
んごっこがしたい。いつか社会のしがらみから解き放たれ、呆れるほど静かな一軒家でヒビ
キさんごっこがしたい。その為に、今は会社で働いてお金を貯めているんです」
恥ずかしそうに石ころを蹴る久世屋は。
「ヒビキさんって、誰……?」 幹から根へ! 根から地中へ!
千歳の疑問を流した。 影抜忍者出歯亀ネゴロ
あまつさえ、手をシュっとかやりやがった。
「俺はそういう静かな性格だよ。おもちゃは本当に素晴らしいと思うよ。夢がたっぷりつまった
抽出物だからね」
いつしか敬語で無くなっているのは、素の部分が現われたせいか。
「きっと俺と同じような静かな性格の人たちが、自分の夢と子供たちの夢を叶えるために、毎
日毎日、一生懸命頑張って抽出しているはず。とは思いませんか」
「ええと」
「頑張った先にあるのは、買ってくれた人のありがとうっていう言葉だ。だから頑張れる。
カタチのない抽出物だけれど、作ってる人の心には染み入ってく。お互いにありがとうと
言葉を交わせる関係だ、いいよね。きっと、小説とか映画を作ってる人らにもあるかもね。
羨ましいよ。俺に関わる人間はすべて薄ら寒くて、触れれば搾取しかされないから、すごくす
ごく羨ましいんだ。むかしから、ずっと、ずっとね」
千歳はテープレコーダーを取り出した。
「だからおもちゃを買う。輝かしい抽出物を、ちゃんとした手段で手に入れる」
案の定だった。自白を録音しているテープは片面30分だが、そろそろ無くなろうとしている。
「すると充足するんだ。家庭なんか持っちゃ味わえない無条件な幸福を味わえる」
言葉が切れると、千歳はすかさずテープをB面へ翻し、手早く入れ替えた。
「あ。すみません」
喋りすぎた自分に気づいたのか、久世屋は軽く頭を下げた。
「いえ」
探偵と犯人。いや、ホムンクルスと戦士らしからぬ微妙なやり取りだ。
「ですがこの世には、抽出物を搾取する奴らがいる! 俺が許せないのはそこで、部長を
殺した理由でもあるのです!」
また声が荒くなった。目はらんらんと青年的義憤に燃え盛り、ひどく情熱的だ。
彼は語る。世の中には、
r'゚'=、
/ ̄`''''"'x、
,-=''"`i, ,x'''''''v'" ̄`x,__,,,_ 素晴らしい抽出物が
__,,/ i! i, ̄\ ` 、
__x-='" | /ヽ /・l, l, \ ヽ
/( 1 i・ ノ く、ノ | i i,
| i, {, ニ , .| | i,
.l, i, } 人 ノヽ | { {
}, '、 T`'''i, `ー" \__,/ .} |
.} , .,'、 }, `ー--ー'''" / } i,
| ,i_,iJ `x, _,,.x=" .| ,}
`" `ー'" iiJi_,ノ
| | , -‐-、 ノ |
', ', /:.:.:.:.:.:.l ,ィY /
', /^V:.:.:.:.:.:.:.:ヽ.ノ::l::::',ノ
Y::::/{:.il.:.,i、.:.:.ィ:l:::::::l:::::l
ヽ:/:::',::ヾ:::Y:/:ノ:::::::l/ たくさんあると。
}:::::::丶::::ノ/:::::::::j
l:::::::::::::`'":::::::::::::/ けれどもその利便に目をつけて、
,}:::::::::::::::::::::::::::::i′
ゝ==ニニ==く、 搾取(サク)ろうとする連中が必ず出てくる。
/:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ`'i
l::::::::::::::::::::::::::::::::::::}ノ:l 某局は某所から某動画を全削除させて、
|:::::::::::::::::::::::::::::::::ノ:::,!
l::::::::::::::::::::,,:ィ:"´:::::::{ 放映権を独占しようと目論んでるし、
゙7'―‐ ''"::lーァミ7-‐'
/:::::::::::::::::::l {^l l いい銃は少し借りられる。
〈:::::::::::::::::::::l l l !
丶、::::::::::::ノ `-'′
亡',}~´
便利で魅力的なモノほど危ないのだ。
大衆はみな恩恵にあやかろうと殺到し、骨の髄まで使い尽くして打ち捨てる。
憤懣やるせないという体で、久世屋はため息をついた。
「それでも、対価を支払っているうちはまだいい方! 対価はイコール金すなわち抽出物!
苦労の末に生み出したものだからまだいい! けれどひどい惰性まみれのアホは! 苦労
もせずに抽出物を掴み取ろうとする! 時には腕力を振りかざし、時には倫理だの道義だの、
薄っぺらな奇麗事を口に上らせて、自分の都合のいいように搾取(サク)ろうとする!」
わなわなと頬を震わせ、久世屋は叫ぶ。
「最たる例が部長ですよ! 課長に推薦してきましたがね、俺は出世なんてしたくないんです!
優秀だと思われたくも、ないッ!」
いまだ人間の風貌を留めているが、それだけに秘めたる感情の黒さが見え隠れする。
「俺はホムンクルスだ。けれど抽出物をちゃんとした手段で得たくて人間社会で暮らしている。
その為に人喰いを極力我慢して、仕事に必要な技術だってキチンと磨いた! けれども
人間は惰性まみれがほとんど。どーして就職するコトを小学生の頃から知っておきながら、
適性を把握せず、技術も磨かないのか」
親も親だろう。英語やら習字やらの小手先の技術を無目的に習得させるより、繰り返し繰り
返し現実のキビシサを教え込み、飯獲得用の努力の下地を形成させるべきだ。
そもそも野生動物はみなそうではないか。人間の親とて仕事において苦労のし通し。
ならば。
子に苦労が待ち受けてるというのは、本能においても理性においても連綿と刻み込まれ
た周知の事実ではないのか?
にもかかわらずろくに対処も考えぬまま、子ども可愛い子ども可愛いという惰性でのみ育児
をやらかすから連中はアホだ! と久世屋は言う。
「だから職場に苦労が満ちている。ひとたび『優秀』だと思われれば、途端に厄介ごとが流れ
込むようになっている!」
「でも、他の人にあなたの知識や技術を教えれば、少しは苦労も和らいだ筈よ」
千歳の指摘には、かすかな信頼が含まれているのだが、久世屋は大きくかぶりを振った。
「溺れている人間が助けられる時、救助の技術体系をつぶさに観察できますか? 覚えられ
ますか? できないでしょう。それと同じです。苦労の中であっぷあっぷしている状態だから、
学ぶ体勢ができていない。まして一つの目的の元で知識や技術を行使するなど夢のまた夢。
そーいう状態では、苦労知らずの状態へ成長するなんて不可能です」
少し、かつての根来の言と通じるものがある。
その根来のだが、所在については。 つ サブリミナル参照。
「んな連中から見れば優秀な上司なんて、苦労を和らげる抽出物にすぎません。救援を求め
て時間も輝きも吸い尽くし、打ち捨てる。目に見えているコト」
出世したくない理由はそれだ、久世屋は声を振り絞って叫ぶ。
「吸い尽くされた俺は苦労のし損です。忙殺された挙句、おもちゃで遊べなくなる! 苦労を
重ねた末に、抽出物一つ得られないなんてのは、会社で働いてお金が貰えないよーな状態!
そういうのに陥りたくないから、能力を見せなかった」
ただし相当忙しい時は残業を避けるべく、全力で仕事をしたという。
「けどそれが部長の目についた。キミは底力があるから課長にならないかと! 正確には主
任を経てですが、どの道、だいたい200時間ぐらいの研修を受けなきゃならなくなる。俺がお
もちゃで遊ぶ時間が搾取(サク)られるのは明白。しかも終えた後はもっともっと搾取(サク)られる」
だから──…
「俺は断った」 影
抜
しっかりと自身の適性を述べ、辞退した。. 忍
者
「二度も三度も断った」 出
歯
仕事中に呼び出された時も。 亀
家で遊んでいる時にかかってきた電話口でも。 ネ
言葉を尽くして丁重に。 ゴ
ロ
「だが奴は会社や同僚のためとかいって受けなかった!」 、
地
若いうちの苦労は買ってでもしろと言った。 中
だが彼の言う苦労は惰性への耐久だ。. か
進歩や抽出を目指す建設的努力ではない。. ら
散らかされたゴミを片付けるような薄暗い行為の連続だ。 迷
それを強いて、大事な時間を搾取(サク)ろうとしていた。. う
. コ
「だから殺した!!」 ト
な
会社に乗り込んだのは、部長は残業が多いせい。. く
わざわざ家に帰る時間を待つのは、面倒だった。. 千
歳
「ホムンクルスの俺としちゃ、充分穏便な対応でしょう!」. へ
穏便、と口に上らせつつも表情は凶悪だ。 . イ
目を血走らせて、唇を果てしない怒りにわななかせ、頬は限りなく歪んでいる。 ン
「話し合いに応じてやって、意見もしっかり述べて、受け入れなかったから始末した! 食事
目当てで学校を襲うような連中に比べれば、はるかに穏便!!」
声を聞きながら、根来は暖かい粘膜の中でほっと一息ついた。
で、構えた。シークレットトレイルをいつでも外に出せるよう。
「俺がおもちゃに触れていなければ人喰いの衝動に支配され、他のホムンクルスと同じく多く
の人間を犠牲にするんです。それを防げるなら、部長の一人や二人、別にいいでしょう?
あなたたちだって、多くの人命を救えるなら一人や二人別にいいって時もあるでしょう?」
つい先日まで千歳が所属していた再殺部隊は、まさにそんな方針。
千歳が羨む根来とて、遂行のためなら犠牲を厭わぬ男だ。
久世屋を否定できるいわれはないだろう。
ただ、久世屋を見逃せば、いつかまた同じコトが繰り返される。だから阻止する。
千歳が戦う理由へ介在させて良い感情はそれだけだろう。
「大事なのは、抽出への希求です。何を排しても見たいと欲するコト。それが薄ければ何を
しようと持ちえようと、惰性まみれの世界に呑まれ、機を失う! だから俺はあなた方と戦い
ます。やらかしたコトに対するアフターケアをなさないと、俺はおもちゃで遊べませんからね。
恨みはありませんが、行きます」
千歳は無言で半歩退いた。
瞳に灯った涼やかな光を戦う意思と了承したのか、久世屋は右ポケットから手を抜いた。
「ぶっつけ本番ですが、要は、『変身!』とかやる調子でOKでしょう!」
千歳にありありとつきつけられたのは、六角形の金属片。すなわち。
核 鉄 !
闘争本能を武器へと具現化する結晶!
しかしどこから入手したのか。それに 核鉄を発動できるのは人間型ホムンクルスのみ。
チスイコウモリ型の久世屋に発動はできない筈。
疑問点が錯綜した分、千歳の動きは遅れた。
「武 装 ──」
すでに掛け声という名の予備動作は半ば!
だが。
「発動させると思うか?」
根来の声が突如割り入り、千歳は稲光に灼かれる視界の中で、確かに見た。
細腕につかまれた忍者刀が、久世屋の胸めがけて飛び出すのを!
その出現元がどこか千歳が把握する頃には、奇襲は既に結果を出していた。
(1)どこか説得力のある意見を持っていて (2)でももの凄く狂っていて (3)想像を超えた絵で表される。
ネウロの犯人像を以上のように踏まえてみたのですが、描く分には色々ありますねコレ。
それはさておき、武装錬金には黒崎薫というストーリー協力者がおられるのですが
彼女のHPによると
ttp://plaza.rakuten.co.jp/kurosakibunko/diary/200606220000/ 根来は忍者マニアらしくビックリ。てっきり忍者の末裔か何かとばかり。
というか、根来もアニメに出るのだろうか。声は誰だろう。キョンの人とかだったら笑う。
>>339さん
もし気に入られたら、大槻ケンヂの歌や小説もオススメですよ。あちこちに錬金の元ネタがあります。
例えばパピヨンの父さんの「要」「不要」の思考法。「新興宗教オモイデ教」のトー・コンエの影響がバリバリです。
そして、ここから段々と思考の要素が濃くなります! なにしろ1ヶ月ぐらいかけて「ある物」を作ったので!
>>340さん
実は最近仕入れた知識もあるので、堂々と胸は張れないかも……うーむ。昔から知ってるのは
「ボールペンの先っぽが詰まったら、タバコのフィルター部分に突っ込んで回せ!」ぐらいでしょうか。
なお今後、チスイコウモリならではの「出来事」が二つほど出てきます。お楽しみに。
>>354さん
どうも基本的に、最後の場面につながるよう構成してしまいます。あ、本当に最初の方で部長が残した
アレは、またいずれ。そして今回前回が折り返しですが、良くも悪くも先は長く……長いといえば、
構想中の作品はめっさ長くなりそうです。何せキャラが多い。オリキャラ5人以上は作劇上、どんなモンでしょう。
ふら〜りさん
やはり火サスの因果律からは抜け出せませんねw 恐るべし火サス。
話は変わりますが、今週の週刊少年チャンピオンの涅槃姫みどろは、ふら〜りさん的にツボ
だと思います。もしくは燃えよ剣下巻の「お雪と」って項も。たたみいわしって台詞は、良すぎです。
>484
乙!
スターダスト氏のSSに影響されて、初めてネウロをジャンプで読んでみた
教授恐いよ教授
486 :
作者の都合により名無しです:2006/06/30(金) 12:28:56 ID:dAWgIx3x0
スターダストさんお疲れ様です!
相変わらず文章上手いし心理描写や情景描写まで書き込んでいるのに、
今回はレスごとに工夫もされてますねw
縦書きよくズレなかったなあw
黒崎薫さんって、和月さんの恋人みたいっすね。」
487 :
戦闘神話:2006/06/30(金) 19:24:02 ID:RdX5SDhP0
part.5
「何かを手に入れるためには、何かを差し出さなければならない…。
等価交換、君たち錬金術師の基本だそうだね」
無言でうなずくエドワードの無作法をとがめることすらせずに、
ジュリアン・ソロは話を続けた。
「先ほど私は、君を全力でバックアップすると言った。
代価を求めるほど卑しいつもりはないが、それでは君も納得しまい?」
端的に言うならば、と、紅茶で唇を湿らせて、ジュリアン・ソロは続ける。
「少しばかり、動いてほしいのだよ」
やっぱりそういうことか、そんなエドワードを察したか、
ジュリアン・ソロは。
「君、社交界やサロンで富豪たちの相手をしたいのかい?」
488 :
戦闘神話:2006/06/30(金) 19:27:43 ID:RdX5SDhP0
そう、言った。
エドワード・エルリックは、ぐうの音も出なかった。
ジュリアン・ソロただ一人の相手ですらこれほど戸惑うのだ。
一人や二人ではない。
こういった連中数十人を相手に会話するともなれば、
東部の片田舎出身のエドワード・エルリックにしてみれば勘弁願いところだ。
「わかったよ…」
多少なりともうんざりとした調子であったことは、
触れないでおく優しさがジュリアン・ソロには存在した。
「さっそくだが、私が君に頼みたいことは二つあってね…」
489 :
戦闘神話:2006/06/30(金) 19:35:07 ID:RdX5SDhP0
教皇の間は、本来の主が存在しない。
聖戦終結後。教皇が座すべき玉座には、畳まれた教皇のローブの上に、
シオンが被っていたマスクが置かれているだけだ。
その光景を、さびしいと思う人間ももう、ずいぶんと減ってしまった。
サガ政権下にて、影ながら粛清された者の中には、
シオンの恩顧の人間がずいぶんといたのだ。
彼、ギガースもまたそんな恩顧の人間の一人だった。
だが、彼はサガをサガと知りつつ遣え、その命を永らえていたのである。
ゆえに、サガの乱終結後は当然のごとく処罰されるはずであった。
しかし、彼は禁固という非常に軽い処罰ですんでいる。
「あれ、じっちゃんここにいたんだ?
聖域中さがしまわっちゃったよ」
ギガースは先ほどまでニコルに喚問を受けていたのである。
「おお、貴鬼か?」
490 :
戦闘神話:2006/06/30(金) 19:36:15 ID:RdX5SDhP0
教皇シオンの、生存する数少ない直弟子の一人であり、
貴鬼にシオン最大必殺技・スターダストレボリューションを教示したのは、彼である。
さらには、シオン政権時、サガ政権時ともに大部分の公務に携わり、
聖域のほぼ全権を知っている人間は、いまや彼以外には存在しない。
ゆえに、彼を処罰しきることはできず、
何より、サガ自身の思いを尊重したアテナにより、
不問とされていたのである。
「シオンさまとムウさまの話を聞かせてよ!」
ギガースにとって、貴鬼は孫のような存在だ。
冷遇されるべき彼を、祖父のように慕ってくれる貴鬼の存在は、
ギガース個人にとって非常にうれしいものだ。
「おお、そうじゃの…。
では、シオンさまからお聞きした聖戦の話でもしようかの…」
今、ギガースに権力への欲望はない。
かつて、シオンへの恩義すら凌いだ聖域掌握という権力欲は、
アテナの前に霧散していた。
敗者にむけられる憐憫という、最も重い刑罰にすがりながら、
ギガースは生きている。
491 :
戦闘神話:2006/06/30(金) 19:40:44 ID:RdX5SDhP0
教皇の間・謁見室。そのすぐ隣に、教皇執務室がある。
シオン、サガと続いて、現在の主は祭壇座・アルターのニコルである。
彼は黄金聖闘士ではない。
聖域の統率者である教皇の代行権をもつ助祭長である彼は、
決して武辺者ではない。
サガが彼を青銅聖闘士抹殺のために派遣しなかったのは、
教皇の間の職員であり、
聖域のブレーンの一人だったから、というだけではないのだ。
オルフェ、魔鈴、シャイナ、ダイダロス、ミスティといった、
白銀聖闘士たちの実力者からくらべれば、彼の実力は確実に劣る。
しかし、武力だけが力ではない。
彼のちからは、武以外のところにあるのだ。
戦闘者集団である聖闘士の中では、こまごまとした実務に適した彼は、
非常に貴重な存在なのである。
492 :
戦闘神話:2006/06/30(金) 19:45:45 ID:RdX5SDhP0
「アンドロメダ、ピスケス両名、ご命令により参上しました」
瞬が教皇執務室の前で誰何の声をあげると、
間髪入れずにニコルの声が返ってきた。
「ああ、入ってくれ!」
ほとんど叫び声のような許可の言葉に、師弟二人は執務室へと入室した。
すると中には書類の山脈に埋もれるようにして、ニコルは居た。
「ニ、ニコルさん…?」
瞬は、絶句した。
アドニスも、絶句した。
「頼む、この書類を崩さないようにして机の前にきてくれないか」
できる限り慎重に二人が入室すると、
書類の山に埋もれている、
といったほうがいいようなニコルの顔色が明らかになった。
先月、ムリヤリ暇を作りだし、瞬と共に演劇を見に行ったときよりも、
よりいっそうゲッソリとやつれていた。
因みに、演目は蜷川幸雄演出のメディアだった。
女は怖い、という所で瞬とニコルの意見が一致したのは秘密だ。
493 :
戦闘神話:2006/06/30(金) 19:47:32 ID:RdX5SDhP0
「どうしたんですか?」
その姿は、思わずアドニスがたずねてしまったほどのもであった。
そんな驚愕の師弟の姿に、彼は力なく微苦笑するだけだった。
「実は、大変な事が発覚したのだ、二人とも」
「もの探しと尋ね人だ」
笑みは深いが、決して笑っているわけではないジュリアン・ソロの顔。
なれるものではないが、これから先、嫌になるほど見なければならないのだろう。
そう思うと、よりいっそうゲッソリするエドワードだったが、
これも等価交換だと、ムリヤリ自分を納得させていた。
「探し物は、ある人形師の連作。全部で七体だそうだが、多くは望まない。
せめてひとつだけでも確保してくれ。
尋ね人の名は、蝶野爆爵。東洋の錬金術師だ」
戦闘神話第一回はこれにて終わり
やっちまいました、って感がデケーです。よりにもよってスターダストさんの後に…w
今回登場したギガース、アニメ版聖闘士星矢の序盤に登場したキャラなんで
しってる人あんまりいないかも
彼が登場した理由は、ぶっちゃけ某所の星矢SSの影響です。
設定かぶってます、すみません
>>300さん
錬金つながりでついに武装錬金も…
蝶人登場も近いです
>ハイデッカさん
任せろ
嘘、一緒にがんばりましょう。
謎の美女に新たな敵!嫌がおうにも期待たかまります。
>>345さん
僕も声優ネタやってみたかったりします
ソレントに「オリハルコォーン」と叫ばせたり
「ゴールドバグとよんでくれよ」とかw
>ふら〜りさん
原作で不遇な扱いだった連中に日の目を当てたい。
それが僕のSSのモチベーションだったりします
ジュリアン・ポセイドンはまだまだこんなもんじゃないので、ご期待ください
アフロディーテはもうちょっとカッコよく書いてもよかったかなぁと思っていたり
では、またお会いしましょう
495 :
作者の都合により名無しです:2006/06/30(金) 21:33:07 ID:aN1UCPpr0
>スターダストさん
文章構成もうまいけど、文体?構成もうまいなー。アイデアマンですな
しかし最初は千歳と根来のチェイス物だったのに、どんどんジャンルレスになっていくw
こういういい意味での「取り留めのなさ」がこの作品の魅力ですね。
>銀杏丸さん
とりあえず、某所のセイントSSというのが知りたい。それも銀杏丸さん作なの?
物探しと尋ね人という、ある意味アドベンチャーの王道がどう展開していくか。
しかし、氏は本当に星矢を愛しているんだなあ。
そのとき激しい揺れが宇宙船内を襲った。
『バーディー、バーディー・シフォン。起きてください』
ちょうど調整槽に入っていたバーディーも宇宙船の言葉にすばやく反応する。
「私も感じたわ。起きるから浸透液を抜いてちょうだい」
バーディーが言うまでもなく、宇宙船は浸透液を抜き始めていた。
『なにが起こったんだ?』
頭の中に精神が同居している千川つとむが頼りなげに問いかけてくる。
バーディーは浸透液が抜けた調整槽から起き上がると、いつもの部屋着に身を包みながら
つとむに答える。
「分からないわ。でもおかしいわね。フィールドが効いてるはずだから物理的な衝突はない
はずだけど。宇宙船!」
『はい』
「さっきの衝撃はなに?」
『分析しましたが、現在のところ原因不明です』
「船体に外傷は?」
『ないと思います』
「そう、とりあえずメギウス警部に繋いで」
しかし宇宙船は答えない。
「どうしたの?」
バーディーが聞き返すと、宇宙船はやけに人間的な感じでこう答えた。
『それがその。実は先ほどから緊急の直通回線を開こうとしているのですが、まったく
向こうからの応答がないのです』
「へ?」
一瞬、宇宙船の述べたことが理解できなくて、固まるバーディー。
さらに宇宙船は申し訳なさそうに告げる。
『それと、地球圏内にいる僚船との回線も不通でして』
「私のトワラ・トランとも?」
先ほどから足元で大騒ぎしていたリクルス人の捜査官キデル・フォルテ巡査部長が、その
ときになって初めて発言した。
『僚船全てと、こちらに向かっている辺境観測船とも、とにかく全ての回線が不通です』
「どーなってんの?」
『こっちが聞きたいわ!』
頭の中でつとむがわめく。
「ともかく、状況を確認しましょう。巡査部長」
「キデルでいいよ」
「じゃあキデル、緊急回線を使って信号を送り続けてください」
「君は?」
「船外活動で宇宙船の外観に異常がないか見てみます。宇宙船は現状の維持と突発的な事
態が起こったときの連絡をお願いね」
『了解です』
バーディーは普段は着慣れない船外活動服の収納されているボックスを開けると、急いで
着込んだ。
戦闘が起こったのならともかく、普段ならありえないことだが、船体が損傷を受けていて
はどうしようもない。
最後にヘルメットを装着するとエアロックに入り、空気を抜いてから外に出る。
『おいおい、こんな薄い宇宙服で大丈夫かよ?』
つとむが初の船外活動にびくついている。
「安心なさい。この宇宙服はあたしの生体防御以上の強度があるんだから」
『でもさあ……』
「おかしいな、特に損傷はないようね」
なおも言い募る勉はとりあえず無視して、バーディーはゆっくりと宇宙船の周囲を移動し
ながらチェックしていく。
そのうち、宇宙船の向こうから地球が見えてきた。
「あれ?」
『あれ?』
バーディーとつとむの二人が気付いたのは、地球がなにか変だということだった。
「つとむ、あんな大陸あった?」
『い、いや、地図でも見たことないぞ』
「大きなクレーターに侵食されているようにも見えるし……」
『大地の面積が……、小さいような……』
どう見ても、地球の大陸とは思えなかった。
『「どうなってんの、これ?」』
最初の異変に気付いたのはこれだった。
「宇宙船!」
『はい』
バーディーの呼びかけにすぐさま宇宙船から返答が帰ってくる。
「ちょっと全天周観測と、月の位置、それから地球の観測をお願い。それからそのデータと今までの
地球のデータとつき合わせてみてくれる?」
『了解です』
「私はすぐに戻るわ」
『いったいなにがあったんだよ?』
つとむがいつものかんしゃく気味の声を出す。
「分からない。分からないことだらけだわ。つとむも私の目を通して見たでしょ? あの変な地球を」
『そりゃまあ見たけどさ』
「とにかく、船内に戻って分析よ」
バーディーはつとむに言い聞かせるようにして、船内に戻っていった。
「おいバーディー、こりゃ大変なことになったぞ」
キデル・フォルテが宇宙船の床面に映し出された映像を眺めながらそう言った。
「ど、どう大変なんです?」
「宇宙船、解説頼む」
『はい。バーディー・シフォン、ありていに言えば、あの星は地球ではないということです』
「は?」
『もう一度言います。あの星は地球ではありません。さらに言えば、連邦と同盟のどの星にも属して
いない星です。私の記憶データバンクにあの星は入ってないのです』
『「えーっ!!」』
大仰に驚くバーディーとつとむ。しかし宇宙船は意に介さずさらに解説を続ける。
『この星が地球でないという証拠がもう二つあります。この星の月ですが、地球のものと組成がまっ
たく異なりますし、直径もやや小さいです。そしてなにより天文観測によると、星の位置がまったく
異なります。これは三次元位置が地球でないことの証左といえましょう』
「だとさ、バーディー」
「気楽ですね、キデル」
「いや、俺も驚いてるよ。でも今はどうしようもないからね。俺たち、根は楽天家だから」
『さすがげっ歯類』
つとむが言わずもがなのことを言う。
「じゃああの星が地球でないとするとなんなの?」
『さあ、私には皆目見当がつきませんが、推定することはできます』
「その推定とは?」
『320週期前になんらかの原因でピンポイントでゲートが開き、ゲート出現時に爆発もせずにどこかに
飛ばされたという報告があります。当然、飛ばされた宇宙船は戻ってきてはいませんが、現状では
妥当な線ではないかと考えます』
「ゲートねえ……」
『それと蛇足ですが、スペクトル分析によると、あの星の大気組成は地球とほぼかわらなそうです』
「うーん……」
床面に映った星を眺めながらバーディーは唸る。
「いっちょ降りてみたらどうだ?」
キデルが無責任に言う。
『キデルさんのいうとおりかもしれないな。このままじゃどうにもならないよ』
「うわ珍しい。つとむが勇ましいなんて」
『茶化してんじゃないよ。僕だってこんな異常事態から早く解放されたいんだ!』
「分かってるわよ。……宇宙船、どこか適当なポイントを探してちょうだい。とりあえず干しに降りて
調べてみるわ」
「俺っちの助けが必要ならいつでも言いな」
「ありがとうキデル」
『では、地表をスキャンして、人気のない丘当たりを探してみます』
「よろしく」
こうしてバーディーとつとむは得体の知れない惑星へと降り立つこととなった。
501 :
作者の都合により名無しです:2006/07/01(土) 12:31:25 ID:kKnLrjlF0
これはどなたが書いた作品なのだろうか?
もしかしてちょっと消えてた職人さん?だと嬉しいな。
新人さんだと勿論嬉しいけど。
名前も後書きもない・・
バーディというキャラも元ねたの漫画も知らないけど、
オリジナルの宇宙オペラとして読ませて頂きます。頑張って下さい。
>銀杏丸さん
エドが一応主役ですよね?でも、セイントたちの超戦闘力に錬金術が通用するかな?
でも物語はまだまだ序盤なので期待して待ってます。お仕事もがんばってね。
>名無しさん(もしかして、しぇきさんとか、サナダさんとか、うみにんさんとか?)
ふらーりさんが好きそうなのを持ってきましたねw俺もバーディは詳しくないけどゆうきまさみ好き。
勿論、これは連載してくれるんですよね?旅立ってそのまま終わりってのは勘弁して。
『バーディー、小高い丘にポイントを設定しました。すぐに降りられますか?』
「ええ。テュート、転移モードへ」
バーディーが唱えると、その姿が連邦捜査官の生体皮膜による防護スーツに変容する。
『ゲート開きます』
宇宙船が答え、バーディーの目の前に円形の空間転移ゲートが出現する。
その向こうの丘の上から見える風景は、広大な平原のようだ。
バーディーはそれを確認して一歩外に踏みだした。
「あ!」
ゲートから顔を出していたキデルが声を上げる。
その声に反応するでもなくバーディーが左を向くと、巨大な鉄板がバーディーめがけて
飛んできたところだった。
「ぶっ!」
避ける暇もなく、直撃を受けて吹っ飛ぶバーディー。
ゲート付近では風圧を受けてキデル一人が外に転がり落ちる。
『危険です!ゲートを閉じます』
宇宙船は一方的に宣言すると、バーディーとキデルを残してゲートを閉じた。
「うあ、痛ぁ……」
顔面をしたたかに打ち付けられて、鉄板を跳ね除けて起き上がったバーディーは涙を流し
ながら鼻をさする。もちろんつとむは目を回している。
「バーディー、大丈夫か?」
体の小さなぶんの役得か、転がり落ちても傷一つないキデルがバーディーに駆け寄ってくる。
「だ、大丈夫ですけど、なんなの一体……」
「どうやらあれらしいよ」
キデルの指差す方向には、見知らぬ飛行機械が煙を噴き上げながら滑空している。
どうやら、あの機械の外板かなにかに衝突したらしい。
「なんなんです、あれ?」
「いや、俺に聞かれても困るけど……」
「わーっ!!」
突然、見知らぬ方向から叫び声が上がる。
バーディーとキデルはびっくりして文字どおり飛び上がった。
「人だ!」
という声のほうに目を向けると、ひとりの快活そうな少年が奇妙な衣服を身にまとって
倒れてる少女を見つけて驚いてるところだった。
「動かないけど、死んでるのかな?」
恐る恐る少女の様子をうかがう少年。見かけは地球人とまったく変わらないように見える。
バーディーは状況をまったく把握できてないが、思い切って少年に声をかけてみることにした。
「ねえ君」
「えっ?」
少年は話しかけられて初めてバーディーの存在に気付いたようだった。少女とバーディーを
交互に見ながら今起きた事柄を必死に整理しようとしているように見える。とりあえず言語に
よる意思疎通は可能な様子だ。
「お姉さん、誰?」
少年は少女の様子を気にかけながら聞いてきた。
「私はバーディー。バーディー・シフォンよ。君は?」
「よかった、息をしてる。あ、僕はザン。下の森に親方と住んでるんだけど……」
「だけど、なに?」
「お姉さん、この子の知り合いですか?ルアイソ−テの飛空挺から落ちてきたみたいだけど」
ザンと名乗った少年は、なぜか妙に身構えた格好を見せた。
バーディーはそんな少年を不思議に思ったが、なにか誤解してることだけは理解できたので、
それを否定する。
「いいえ、私はそのルアイソーテ、だっけ?それとは関係ないわ。私は別のところからここへ
来たのよ」
なるべくにこやかに対応したおかげか、ザンの態度が少しだけ軟化する。
「じゃあお姉さんはどこから来たの?僕がこの崖を登ったときにはいなかったけど」
と言われると困るバーディー。
「は、反対のほうから登ってきたのよ」
とっさに嘘をつく。
少年はじっとバーディーの瞳を見つめると、なにか思い当たったのかにっこりと笑った。
「まあいいや。お姉さんがルアイソーテの人間であの飛空挺の乗組員なら軍服を着てる
はずだしね。でも、この子をこのままにしてはおけないよ。怪我をしてるかもしれないし」
ザンはいまだピクリとも動かない少女を見やって困った顔をする。
「とりあえず親方のところに連れて行こうと思うんだけど、お姉さん手伝ってくれる?」
バーディーはキデルと顔をあわせ、相談する。
「どうします?」
「いいんじゃないの?手伝ってやれば?」
あくまで気楽なキデルだった。
バーディーは小さくため息をつく。
「分かったわザン君。私が彼女を背負うから君が案内してちょうだい」
バーディーとザンとの運命の出会いはこうして訪れたのだった.
最初に自己紹介が抜けてすみませんでした。
はじめまして。「バーディーと導きの神」の書き手で17〜といいます。
バキスレは以前からROMってましたが、今回一念発起して書き手に挑戦してみました。
知っている人が少ないネタで恐縮ですが、完結までお付き合い願えたら幸いです。
連日投稿GJ
新人さんは大歓迎だよ
元ネタはよく知らないので、次回書き込み時にでも
詳しく教えてもらえれば嬉しいな
「七不思議、そうなる予定で話を進行して来た7人、
その内の一人は聞き手として話をまとめていたので怪談を語ることは無く、
最後の語り手が来る予定だったのだが、話が終わっても最後の語り手は来なかった。」
唐突に語りだすユダ、今までの話し手の様に話術、演技を用いる事は無く、
ただ話を明確に伝えるために話している、だからこそ感じるのであろう。
何者からか送られた、深く濃密にからみあう『恐怖』の念が。
「いつまで経っても来ない最後の話し手に痺れを切らしたその場の一同が、
一度帰ることにしたその時、最後の話し手がやって来た、新聞部の部長がな。」
新聞部、そのキーワードに反応を示すシコルスキー、
それもその筈、彼の話の聞き手にも新聞委員が出ていたのだから。
「おい、もしかして聞き手にも新聞部が・・・。」
「ああ、居たよ。7人の中の聞き手がその部長の後輩だ。」
シコルスキーの反応を予測していたのか、全て言い終わる前に答えるユダ。
少しの沈黙の後、再び話を進める為に眼を閉じて精神を集中させる。
「先に言っておく、この話はシコルスキーの話したトイレの男で出た、新聞委員の身に起きた出来事だ。」
怪談を話すに措いて、物語の重要な謎を先に話すという事は普通
その場の雰囲気を濁してしまう。だがこの時は違った、今まで話して来た
物語の数々は、最早怪談ではなく事実である事を認識し始めていた。
「付け加えるならばこれは幾つかある内の結末の一つ、シコルの話したラストも、これから話す事も。
シコルス、ドリアンの話は両方とも怪談をするため学校に集まっている。
ドリアンの話が日本の話ではなかったのは、ドリアンに日本絵画の知識が全く無かったからだ。
恐らく頭にある知識を使って話を構成しているのだろう、その為にモナリザを使った。
スペックの優れた視覚は無意識にモナリザの謎を目撃し、脳へと伝達されて怪談が構成されたのだ。」
次々と謎を発覚させていくユダ、全て空論に過ぎないが間違いとも言い切れない。
「だが、柳とスペックの話は学校とは無関係だぞ。ドイルの話も学校が舞台だが、七不思議という訳では無い。」
話に共通点を見出せないシコルスキー、唐突にユダへと質問を投げかける。
「いや、関係はある。お前達が話して来た怪談全てを、俺の思い浮かんだ怪談で新聞部の奴が聞いていた。
スペックの話は聞かなかったが、中には絵画の話もあった、スペックの話は本来それにする予定だったのだろう。」
柳が何か質問したそうにしているのを見て、杭を打つ様にして話を進める。
「ちなみに絵画は描いた本人の肖像画らしい、今、怪談を構成している俺にも絵は見えんのだ。
多分スペックで無くともモナリザの話に移っただろうな。」
柳が感じた『知らない情報を使う事は出来ない』という疑問を一瞬で見抜き、
絵画の正体を明らかにするユダ、確かに本人の肖像画ならば誰も知らない。
元の怪談である肖像画に変わって、世界的に有名なモナリザを選んだという訳だった。
「さて、すっかり話が逸れてしまったが、怪談話に戻るとしよう。
遅れてきた部長は差し入れに飲み物をその場に居た全員に配り始めた。
重い空気に心身共に疲れ果てたのか、次々と語り手達はそれを手にとっていった。」
質問への応答を終え、再び怪談を語り始めるユダ。
「全員が喉の渇きを潤すと、新聞部の部長が最後の怪談を持ち出した。
部長の持ち出した怪談は、学校で密かに行われている奇妙な実験の事だ。
理科室に鍵のかけられた扉がある、その中で『白髪鬼』と呼ばれる
教師がとんでもない物を作っているという噂が学校に広まっていた。」
ユダの話が進むに連れて、上空を支配していた雷雲は静かに、
洞窟から見渡す限りの空を、暗黒で覆っていった。
「学校中に広がっている噂を、怪談の語り手に選ばれる程の
人間の耳に入らない訳がなかった。当然、その場の全員がその話に興味を示した。
だが部長が地下室の中については知らないと話すと一瞬にして興味を失ってしまった。」
話を振っておきながら知らないと言う部長の話に、拍子抜けする死刑囚達。
だが最後の怪談がそんな事で終わる訳は無く、続く話に恐怖を抱く事になる。
「この部長、タチの悪い性格をしている様でな。興味を失ってガッカリした
様子を心の底で笑い終えると、興味を惹く『餌』を見せびらかす事にした。」
興味を惹く『餌』、その言葉に氷が背中に張り付いたかの様な感覚を覚える。
果たしてそれは只の学生の悪戯なのか、ドリアンの話した少女の前例があるだけに不安に駆られる。
「その部長が見せびらかした餌、それは地下室への鍵だった。
語り手達の中には当然、上級生も居た、彼等が職員室に入る機会は多い。
だが部長の持っていた鍵は見た事の無い古びた鍵だった。そして彼の一言で、
再び興味を取り戻した語り手達は未知の領域に踏み込む事になった。」
「これから、その地下室を調べにいかないか?」
恐怖という道に続いていても、人は好奇心からそれを求めてしまう。
まるで甘美な果物の様に、だがそれは禁断の果実。
手にした者には神の裁きが降る事になるとも知らずに。
「夜の学校を徘徊する七人の語り手と一人の聞き手。
彼等は教員に見つからないように、足音を忍ばせながら理科室へと向かった。
教員も人が居る訳が無いと高をくくっていたのだろう。
理科室には難なく入ることが出来た。」
理科室、そのイメージは案外、万国共通の物である。
大量に並ぶ薬品、ホルマリンに浸けこまれたカエルや蛇。
薬ビンが硬く閉じられていても、室内では奇妙な臭いが鼻につく。
静寂が恐怖を呼び、夜の闇が探究心を生み出す。地下室への
扉を見つめる語り手達の心臓は、高く波打つ鼓動と期待に膨れ上がった。
「地下室への扉自体は呆気なく見つかった、問題はこの先だ。
大きめな南京錠を古びた鍵で開くと、地下室から、まるで
死体を燃やした様な臭いが充満していった。お前達なら
判るだろうが、彼等には臭いとしか感じなかっただろうな。」
犯罪という甘い誘惑に乗った御蔭で死刑宣告を受けた彼等だが、
犯罪者となった事を後悔した訳では無かった。
強くなる術も、戦う相手にも、何一つ不自由しなかったからだ。
そして何よりも、『人を殺してはいけない』という鎖から解放された事。
そんな彼等が焼死体の臭いを知らない訳が無かった。
「一体その中には何があったんだ?
白髪鬼の焼死体が転がってた訳じゃないだろう。」
その場の空気に耐えかねたシコルスキーが急かす様にして尋ねた。
臭いの正体、そして地下室の奥に潜む物の正体を。
「臭いに吐き気を覚えた彼等だが、好奇心が冷める事は無かった。
真っ暗な室内の先にある物を想像すると、体中がゾクゾクと震え上がり、
甘美でいて、今まで味わったとこの無い様な最上級の
メインディッシュを目の前にした錯覚を覚えるからだ。」
洞窟の外に広がる雷雲は、既に雲と呼べる物ではなくなっていた。
元から黒かった紙に墨汁を垂らしても、これ程の黒に染まる物だろうか。
そして、その世界を覆う漆黒の中心では、六人の罪人が恐怖への扉を開けていた。
513 :
邪神?:2006/07/02(日) 11:43:14 ID:ROoTEbj80
クラスマッチョとかあってバテちゃって遅めの執筆。邪神です。
まぁネタが中々思い浮かばなかった、って理由もありますが。
今回のインスパイヤは学怖を買って初めて出たラストをチョイス。
しかし今にして思えばドリアンにはキャンディ婆さんの話させるべきだった。
当初はそれが目的だったのに何処かでアルツハイマーが作動してしまったのか・・・。
そうそう、このスレの書き手の方々も事故にあってる様ですが家の姉者も遭遇しました。
家に帰ったら姉のスクーターのナンバープレートがへし曲がってたのでビビりましたよ。
まぁかすり傷ですんでましたけどね、轢いちゃった人がまずい菓子もって見舞いに来たそうです。
みなさんも気をつけてくださいね。ちなみに結構昔ですが、自分も事故に遭いましたよ、
まさかあんな所を怪我するとは・・・それでは講座は無いので感想に対しての感謝を。
〜感謝〜
ふら〜り氏 ユダに限らず北斗軍団はモヒカンであっても暗闇で見るとヤバそうです。
サウザーやらラオウならまだ普通に怖そうですがトキなんてスケルトンですよ。
あんなゲッソリした人が暗闇から出てきたら落ち武者か何かと間違えそうです。
サマサ氏 のび太って射撃も得意だし意外とGUN道に向いてたりするのか・・・。
そうなると浪人のポジションは・・・ドラえもん?ハゲだし。
426氏 >>このままレギュラーになるといいな
大丈夫です、主役のホークがサブレギュラーですから・・・。
428氏 自分も元ネタの小説を読んだ時は「良く思いついたな」とか思いました。
残念ながらタイトルは忘れてしまいましたが、角川書店のホラーにありました。
マイナーな作品だったので探すには根気が必要ですが、面白いのが揃ってましたよ。
430氏 サガチームにはケンタロウ、死刑囚はカイル達と別れて マッチョ5+ユダ=漢祭り状態。
更にテイルズチームにも濃いのが入る予定、キャラがどんどん濃いのばかりに・・・。
親方の家というのは、丘の近くの小さな村はずれにあった。
直方体の一枚岩をくりぬいて作ったようで、がっしりした建物だ。
しかしバーディーが驚いたのは、その入り口の扉の大きさで、高さは優に三メートルはあった。
ただしその扉には別に小さな扉もついており、ザンとバーディーはこちらの扉を使って建物の
中に入った。
「お邪魔しまーす」
少女を背負ったバーディーと、そのバーディーの肩に乗ったキデルは、ザンに案内されるまま、
三階の彼の部屋まで連れて行かれた。
そして少女をそっとベッドに寝かせる。
「お姉さんはここにいて。僕は親方を連れてくるから」
「うん。でもザン。私のことはバーディーって呼んでいいわよ。お姉さんじゃ呼びにくいでしょ」
「わかったよ。じゃあバーディーさん、ちょっと待っててね」
ザンは急いで階段を下りていく。
バーディーは手近な椅子に腰を落ち着けると、あらためて少女の様子を見た。
「この少女、只者じゃなさそうですね」
「緑色の髪をしたアルタ人や地球人は見たことがないしねえ」
「あの子の服の素材も連邦星系のものにはありませんね」
などと会話をしていると、ザンが誰かを急かしながら階段を駆け上ってきた。
「親方、早く!」
「そう急くな。人間用の天井は低くて歩きづらいんじゃからの」
そう言いながら階段から顔を出したのは、身の丈5メートルはあろうかという首の長い
爬虫類風の人間だった。
「キデル、見たことありますか?」
「いや、ないね。こりゃあ宇宙船の言ってたことはいよいよ本当のことかもしれないね」
バーディーとキデルは嫌な予感に身を硬くする。
しかし、ザンの部屋に入ってきた爬虫類風の人間は、バーディーを見るなりにっこりと
笑いかけてきた。
「あんたがザン言っとったバーディーさんかね。よろしく。わしは氷牙。みてのとおり
老いぼれ竜人じゃよ」
「こ、こんにちは」
「親方!挨拶はいいから、こっちの子を見てやってよ」
ザンは氷牙の服を引っ張って、寝かしつけてある少女の様子を見てくれとせがむ。
「大丈夫よザン君。この子は熱もないし怪我もしてないわ。ただ普通に寝てるだけみたいよ」
バーディーが氷牙に代わって説明する。
「でも飛行艇から落ちたんだよ!」
「んー、バーディーさんの言うとおりじゃな。この娘は大丈夫そうじゃ。飛行艇からはうまい
落ち方でもしたんじゃろ。そうでなけりゃ、この娘が普通じゃないのかもしれんな」
「普通じゃない?」
「見てみいザンよ。わしはこんな緑色をした髪の毛の人間などみたことないわい。それに
この服の素材。ルアイソーテの連中は、いったいどこからこの子を連れてきたのやら」
氷牙はそう言ってザンを落ち着かせると、今度はバーディーに目を向ける。
「バーディーさんとやら。どうやらあんたもわしの知らない人間のようじゃな。この娘とは
違うが、お前さんの服装も見たことのない代物じゃわい」
氷牙はあくまでも落ち着き払った態度を崩さないが、バーディーたちに警戒心は抱いて
いるようだった。
バーディーは無理もないと思いながらも、適当な嘘を考え始める。
しかし、バーディーが答えるより先に、キデルが口を出した。
「我々は連邦警察の特捜班の人間です。今までは地球という星で捜査活動をしていたの
だけど、宇宙船が奇妙なトラブルに巻き込まれて、気がついたときにはこの星の衛星軌道上
にいたんですよ。そのため我々は、この星に降りて状況を確認していたところなのです」
なんとキデルはこの現状の状況さえ理解できてない状態で包み隠さず真実を語った。
バーディーはキデルのその真意を測りかねて驚くのみだった。
だが、驚いたのはバーディーだけじゃない。氷牙とザンも同様に驚いた。
「ネ、ネズミが喋った!」
「こりゃ驚いたわい」
二人とも、一言言ったきり固まっている。
「私はネズミじゃないよ。リクルス人という人間だよ。言葉も喋れば頭も使える。君たちと
変わらない人間だよ」
キデルは人差し指を立てて得意げに説明する。
「はあ〜……」
「世の中まだまだ珍しいことがあるもんじゃわい」
ザンはいまだに事を理解してないが、氷牙は年の功か、それとも生来無頓着な性格なのか、
そう言った後豪快に笑ってみせた。
「いいんですか?本当こと話しちゃって」
「いいんじゃないの?ここは本当に我々が知る連邦や同盟とはまったく無関係な場所
みたいだし」
あくまで楽観的なキデルだった。
その会話を聞いていたのか、氷牙が興味深そうに聞いてくる。
「あんたら、宇宙船とか星とか言っとったの。わしも生まれて長い年月を過ごしてきたが、
星から来た人間というのは見たことはない。じゃが、若い頃古代文献で星をを旅した人間の
話を読んだことがある。どうじゃろ、あんたらの話、聞かせてはくれまいか?夕食もご馳走
するでな」
氷牙は好奇心の強そうな瞳でバーディーとキデルの顔を覗きこんでくる。
そう言われれば仕方ないというか他に道はない。この星のことを詳しく知るためにもこの
老人の知識は役に立とう。
バーディーとキデルは謹んで氷牙の歓待を受けることにした。
この場面で投下していいものか迷いましたが投下させてもらいました。
非常識だったらすいません。
>>508 元ネタはゆうきまさみ作「鉄腕バーディー」と円英智作「エルデガイン」のコラボです。
そろそろ次スレですね!
520 :
作者の都合により名無しです:2006/07/02(日) 15:43:24 ID:uT3BMTjjO
いや、別にかまわないと思うけど。
邪神さんの投下からは三時間たってるし。
521 :
作者の都合により名無しです:2006/07/02(日) 18:01:12 ID:YQYiteiJ0
>邪神様
もはや小学生の仲良し集団並だな、この連中・・w
えらい古き良き昭和の時代がするような怪談話に怖がるメンバーがかわいい
戦えばそれなりに強いのにね
>17さん
お疲れです!バーディはちょっとだけ知りませんがエルデガインは知りません。
でも、なんとなくファンタジーのような惑星冒険譚のような感じがいいです!
522 :
テンプレ1:2006/07/02(日) 18:20:41 ID:YQYiteiJ0
523 :
テンプレ2:2006/07/02(日) 18:21:21 ID:YQYiteiJ0
524 :
テンプレ3:2006/07/02(日) 18:23:38 ID:YQYiteiJ0
525 :
テンプレ屋:2006/07/02(日) 18:25:53 ID:YQYiteiJ0
いつか来ると思ってたけど、うみにんさんとゲロさん、ユルさんを
テンプレから外さないといけない。
今回、テンプレを遅れたのも、もしかしたら復活されるかな、と思ってね。
特にうみにんさんなんて、ホームページも止まってるよ。VSさんも。
何かあったのかと心配になるね・・
カマイタチも終わったし、名職人が次々と去るのは寂しいねえ・・
でも3ヶ月音沙汰が無いので流石に。出来ればご連絡を。
サナダムシさん前回4月29日、しぇきさん5月2日で、
2ヶ月だとギリギリアウトなんだけど、今回は入れておきます。
復活を願ってね。
526 :
ふら〜り:2006/07/02(日) 19:07:53 ID:beMWadlR0
>>サマサさん
久しぶりに、本作誇る美少女チームによるギャルゲ時空満開ですな。ここしばらく熱い男の
友情話が続いてただけに何とも華やか。その華たちに対するのび太とアスランの差が何とも
楽しい。これがギャルゲなら、もう攻略キャラを絞ってる時期……ED近し、なんですね。
>>全力全開さん
次回は、もう少し書き溜めてから出して下さると有り難いです。でフランスケーキ、確かに
覚えがあったので思い出そうとしてる間に解答が出てしまってちと悔しい。原作でもメロン
やケーキが定番ですが、高級品・ご馳走に対する発想の子供らしさってのも可愛いですなぁ。
>>スターダストさん(あのセンセの構想してた作品は、ぜひ読んでみたいですな)
うん。敵キャラには、というか敵キャラにこそ独特かつ奥深い哲学が欲しいところですよね。
主人公側は復讐とか贖罪とか純粋な正義で充分なので。しかし今回は何つーか……お疲れ様。
きちんとした文章力・構成力に加えて、こういう奇抜な発想もできるって素直に凄いです。
>>銀杏丸さん
前作でもちょこちょことそういう要素がありましたが、聖域における事務方の存在ってのが
リアルというか生々しくて良いですな。確かに、いて当たり前のものですし。不遇と言えば
白銀は丸ごと不遇。でも登場した面々は殆ど死んでる(多分)。救えるものならお救いあれ。
>>17〜さん(SSを読むのは楽しいですが、書くのもそれに劣らず。頑張って下されぃ!)
飾りっけのない比較的平易な文章ですが、内容は謎&広大な空気。そんな内容が平易な文章
のおかげで読み易くなってる感じです。残念ながら原作は未読ですので、できれば世界観や
キャラの外見などの解説を何卒。未知の惑星に発進した本作、今後の広がりに期待ですっ!
>>邪神? さん
締めはどれが来るかなと思ってましたが、コレですか。あの作品の中ではかなり非オカルト
な話ですよね。しかし改めて言われてみると、我らが死刑囚ズは明確に犯罪者で悪人でした
な。脱獄の経緯が全員アレですから、実は冤罪とか正当防衛とかって言い訳も不可。むぅ。
>>テンプレ屋さん
おつ華麗さまです。確かに、ごぶさたな人が多いですね……復活祈願。でも新人さんも
来られてますし、ここが賑やかに楽しい場所である限り、きっと帰ってきて下さいますよ。
ちょっくら立ててくる。
hosyu