【2次】漫画SS総合スレへようこそpart35【創作】
>1様
お疲れ様です。俺、余計な事しちゃいましたねw
>スターダスト様
まさかバキスレでモスチーズの薀蓄を見る事のなるとはなあ。
しかし、工夫の多いSSですね。いつも感心します。
確かに根来と千歳が真面目キャラな分、照星がギャグ担当になってしまうかも。
ものすごく強いんですけどね、原作では。
視点の変化がいつも楽しいですけど、読解力低い俺は最後の一人称誰かわからなかったw
千歳の同僚の誰だろう?
8 :
作者の都合により名無しです:2006/02/21(火) 23:35:53 ID:rRiGNIYi0
1さんお疲れ。最近ペース速いですね。一番乗りは誰かな?
>ネゴロ
確かに今回だけでもモスからISO、AAネタにいたるまで幅広いですねw
ネタの出し惜しみをしてないというか、多分3作分位の情報量を詰めているというか。
今回はシリアスの狭間の幕間劇みたいな感じなのにこれでもかと詰め込んでますね。
将星、ジョーカー的な存在として前線に出張るのかな?
>1
乙です
>スターダスト氏
連金ぜんぜん知らないけど、途中途中の小ネタや豆知識が好きで
ずっと読んでます。勿論、千歳やネゴロの掛け合い?も好きです。
今回は物語の大まかな流れには関係なさそうですが楽しい回でした
また楽しみにしてます。
scene28 夕凪理沙【三】
「ふぅ……疲れた」
私は独り言を呟きながら、ベッドの上で寝返りをうった。
あれから……何時間が経過したのだろうか。
犯人、笠間潤の確保と告発を以って、殺人ゲームは終わりを告げた。
いや――厳密には『まだ終わってはいない』のだけれど。
生存者にはまだ建前上『賞金を獲得する権利』が存在する。
開封してしまえば即時失格となるので、笠間のロール・カードを開ける訳にもいかない。
結局、告発した探偵は、賞金を得る為にも、生き残る為にも
推理が真実であるかどうか、ゲーム終了時刻まで座して待たなければいけなかった。
無論、まだ告発を行っていない探偵は
一人が告発を終えた後でも、他の可能性を模索することはできる。
しかし、私の告発の後、捜査を継続しようという探偵は一人もいなかった。
何しろ、あの場にいた全員は、笠間が豹変して私に襲いかかる所を目撃しているし……
それに何よりも、この殺人ゲームがこれ以上続くだなんて、万が一にも考えたくないのだと思う。
旗元さんは口惜しそうに、笠間が犯人でない可能性はゼロではない……とか、色々言っていたけど。
私だって、命がかかっている。そう簡単に告発を口にはしない。
そう。間違いない。何度頭の中で現場をシミュレートしても……笠間以外には、犯行は不可能。
三号室は、ドア、窓が両方とも施錠され、ドアの掛け金も降ろされ……
さらには、糸などを使った細工も不可能だった。
その状況下で人を殺す、となればもうこれは、遠隔殺人以外にありえない。
そして、香坂さんの死因はそれを裏付けるように毒殺だった。
トドメとばかりに、手に握り締められた、笠間とお揃いのぬいぐるみ……
ここまで材料が揃っていれば、真相にたどりつくのはそう難しくはない。
私が告発しなくとも、遅かれ早かれ、カイジさんや黒川さんあたりが真相を看破したに違いなかった。
とにもかくにも、私は勝った。犠牲を最小限に食い止め……
犯人が次の一手を打つ前に告発。殺人ゲームの勝者になったのだ。
コン、コン。ドアがノックされた。見張りの交替時刻だろうか。
「はーい。今出ます」
私はベッドから起き上がり、開錠し、ドアを開ける。
「あれ……誰もいない?」
後ろに気配を感じた時には、既に手遅れだった。
身体が宙に浮く。首が、万力のような力で締め上げられる。
「んっ……うっ……!」
咄嗟に叫ぼうとはしたものの、喉が圧迫されて声が出せない。
ああ……ドアを開けたその一瞬で、後ろに回りこまれたんだ。
酸素を失い喘ぐ頭が、ぼんやりと呑気なことを考える。
首に巻きつく腕を取り払おうと手を伸ばす。
引き剥がせはしなくても……引っ掻き傷くらい……!
それを読んでいたかのように、腹部に手が回され、両腕が封じられる。
両腕は封じられ、両足は宙に浮き、首をきつく締め上げられ……
さながら私は、絞首台に吊るされた囚人。
後ろから抱き締められるような形で、完全に身動きがとれなくなってしまった。
せめてもの抵抗とばかりに、足をバタバタと動かしてはみるが
無様極まりないだけで、何の抵抗にもならない。
今まで生きてきて、小柄であることをこれほど悔やんだことはない。
「くくく……」
耳元で、くぐもった笑い声がした。
「告発に、失敗しましたね」
誰の声……? 聞き覚えは確かにあるのだけれど、咄嗟には思い出せない。
それに……私の告発が誤りで……笠間潤が犯人でないのなら……
誰がどうやってあの三号室を密室に……!?
誰が……!! 誰が、誰が、誰が、誰が、誰が、誰が、誰が、誰が……!?
朦朧とする思考の中。狂った自己問答を、何度繰り返しただろうか。
私の中でようやく『声』と『顔』が一致する。
ああ。そうだ。『この人』は――
「キミは、残念ながらゲーム脱落です」
グギッ。何かが軋み砕けるような音がして、世界が回転した。
目から、鼻から、耳から、口から……熱いものが零れて落ちる。
血だ。舌が、鉄を舐めたような感覚を脳に伝える。けれど、それも一瞬のこと。
ブツリ。見飽きてしまったテレビのスイッチを切るように。
あまりにも呆けなく、私の意識は断ち切られた。
毎度ありがとうございます。そしてスレ立てお疲れ様です。
前回投稿は前スレ411です。
・IFの世界
最初にカイジが死亡してたら……どうなったでしょう。
探偵全滅エンディングまっしぐらの予感が。
かまいたちの夜のように、選択肢による分岐を設けたら面白そうですね。
一本道でも亀の歩みですから、完成はいつになるんだって話ですが。
・クマのぬいぐるみ
ナチュラルに忘れていてもおかしくないくらい間が空いていただけに
そう言えば持ってたなーと、記憶の片隅に置いておいてくれた方に感謝。
・犯人っぽくない人から〜
夕凪は、一章の時点で犯人候補からは除外されてましたからね。
ここでの退場もある意味必然と言えるかもしれません。
笠間夕凪と立て続けに死んだか…。
しかも手際だけでなく、パワーもかなりあるな犯人。
15 :
作者の都合により名無しです:2006/02/22(水) 13:08:39 ID:+lHr8aPX0
え?理沙死んだの?
彼女が犯人でないのは彼女の独白描写から分かってたけど、
カイジと共に真犯人を追い詰める役割だと思っていた。
ここまでの主役はカイジでなく確実に彼女だったのに・・。
酷いよ・・。仇を討ってくれカイジ。
俺も主役級の扱いの夕凪が死んだのにはびっくりした
でも、告発のミスには罰が与えられるのはルールだったな
というか直前に死亡フラグ立てまくっていたからこそ、それを超えて
生き延びて欲しかった・・・・゜・(ノД`)・゜・
スターダストさん、見てた人さんと来てるのに
同時期に連載始めたハイデッカさんが来ないね。
鬼の霍乱さんもさーっぱり来ない
第五十九話「イレギュラー」
「・・・さて、色々話したいことはあるが、まずは町の連中を元に戻してやるとするか」
狐面の男はいきなりそう言って、懐から何かのボタンを取り出して押した。
「―――これが<独裁スイッチ>の解除ボタンだ。今、消えた連中は戻ってきたはずだぜ」
「・・・・・・!?」
のび太たちは唐突な展開についていけずに呆然とする。そんなのび太たちを尻目に、狐面の男は言った。
「もう、こんな人質みたいな真似は必要ない―――もう人質などあってもなくても同じことだ。物語は、もはや後戻りの
しようのないほど加速している。もう止まれない。俺の想定からは大きく外れちまってるんがな・・・」
「想定から、外れた・・・?」
「ああ、そうだ―――俺の読みでは、ネオラピュタで、お前らは最期のはずだった」
狐面の男は、どこか疲れたような有様だった。
「<十三階段>全てを投入しての総力戦―――お前らに勝ち目なんて、ないはずだった」
「ん?<十三階段>全て・・・?ちょっと待ってよ。一段目は?そいつはまだ、出てきてないじゃないか」
「<そいつはまだ、出てきてないじゃないか>ふん。そういえば話してなかったな。<十三階段>一段目―――その男の
名は架城明楽(かじょうあきら)という。ムウ・ラ・フラガ。お前なら知ってるんじゃないか?」
全員の視線がムウに集中する。ムウは難しい顔で答えた。
「―――知ってるよ。架城明楽。お前のかつての仲間だな。だが・・・そいつが一段目だと?バカな!」
「ムウさん・・・どういうこと?」
「どういうことも何も―――そいつがいるわけないんだ。そいつは、とっくに死んでるんだからな」
「死んでる・・・!?」
今度は狐面の男に視線が集まる。
「ああ、そうだ。確かにあいつは死んだ。だがな―――俺の中では、あいつは生きている」
それは狐面の男にしては、随分と詩的な表現だった。
「俺の周りでは多くの人間や人外が死んでいって、俺は死んだ奴のことなんざさっさと忘れちまうんだが―――あいつは、
明楽だけは、覚えている。あいつだけは、死んだ後も、俺の中で生き続けている」
そして狐面の男は、キラに顔を向けた。仮面のせいで表情は読めなかったが。
「キラ・ヤマト。あいつと最も縁深いお前がここにいることも、運命なのかもな―――」
「僕が―――?その架城明楽って人と?一体・・・」
キラは反論しようとして、また自分の中にあのイメージが湧き上がるのを感じた。
カプセルの中の胎児。人工の命。無機質な部屋。無表情の研究者・・・・・・
頭を振って、その幻影を追い払った。狐面の男はそれを一瞥だけして話を戻す。
「まあ、それはいいだろう。とりあえず、今のところは関係ないからな。どこまで話したかな―――そうそう、お前らに
勝ち目なんてなかったはずなのに、お前らは勝っちまった。俺の計画から、大きく外れちまったってとこまでだな。
これについては色々仮説はあるが・・・バカ王子、恐らくはお前だ。お前がこの件に関わったことが最大のイレギュラー
だと俺は思っている」
「ん?僕かい?」
名指しされて自分の顔を指差すバカ王子に、狐面の男は深く頷いた。
「そう。単に技術提供をしたというだけの理由じゃないぜ。確かにお前の頭脳やら演算能力は大したものだ。俺なんざ
比べ物にもならねえ小数点以下だって程にな。かの<策師>より上かもしれん。俺が直接知ってる奴の中じゃ、シュウで
ようやく肩を並べられるかどうかってところだな。だが、そんな事は関係なく―――
お前という存在、それそのものがこの物語においてイレギュラーなんだ。そんな奴が加わって、これから先この物語が
果たしてどんな風に加速していくのか―――俺にはもう分からん」
狐面の男は、ふうっと深くため息をついた。
「正直、お前らを敵と定めたのは間違いかもしれん・・・お前らは、面白すぎる。それに目を付けたのだが―――肝心の俺が、
お前らの敵と言うには力不足だった。お前らは<物語の主人公>として申し分なかったが―――俺が、<敵役>としては
余りに弱すぎた。物語にもならないほどにな。はっきり言って今回の目論みも、失敗に終わりそうだ」
「お前は―――っ!」
のび太が声を荒げる。
「こんな・・・こんな無茶苦茶なことばかりしてきて、今さらそんなふざけた事を言うのか!?今さら、失敗だったなんて、
そんな一言で済ませるのか!?」
「仕方ねえだろ。本気でそう思ってるんだから」
狐面の男は悪びれもせずに言い放った。そして続ける。
「ただ、それでもここで<失敗だった>と断ずるのは早計というもの。メカトピアへ来い。そこで全ての判断をつけよう。
そこでもまた失敗したなら、今回の<ディングエピローグ>へのアプローチも失敗ということになるな。もう何度目の失敗
になるのかすらも分からねえが」
すうっと立ち上がり、立ち去っていこうとする狐面の男。
「待て。このまま行かせてもらえると思うのか?」
ムウが呼び止める。
「<このまま行かせてもらえると思うのか?>ふん―――そりゃあお前の立場からすれば、時間犯罪者の俺を逃がすわけにも
いかないだろうが、それでも分かってるはずだぜ?まだその時ではない―――まだ物語は続いている。
それなのに俺が逮捕されて終わり、なんて、読者を馬鹿にしてるとしか思えないぜ?」
「・・・・・・」
無茶苦茶な理屈だ、とムウは思った。こんな戯言に耳を貸す必要はない。今すぐ拘束しなければ―――
理性ではそう思った。だが、動けない。動いてはいけない、気が、する―――
「くっくっく。メカトピアでは恐らくクルーゼが相手をするだろうが―――気を付けろよ。あいつだけは、他の<十三階段>
とは少々違う。能力だけで言えばシュウの方が上だろうが―――クルーゼは<十三階段>の中でもたった一人だけ、心の底
から世界の破滅を望んでいる」
「何だって?」
「シュウの奴は俺の言う<世界の終わり>なんぞどうでもいいと思ってるだろうが、クルーゼは違う。あいつは俺と同じく、
本気で世界を終わらせたいと思ってるのさ。俺はこの世界が楽しくてしょうがないから終わりが見たい。あいつはこの世界が
憎くてしょうがないから終わらせたい。その違いはあるが、そんなことはどっちでも同じことだ」
それだけ言って、狐面の男は、もはや振り返らなかった。幽鬼の如く曖昧な気配だけ残して去っていった。
しばしの間、誰も一言も発しない。
「―――さて、どうする?このままメカトピアへと向かうかい?」
バカ王子がその沈黙を破った。
「地球でやり残したことがないのなら、すぐにでも出発した方がいいと思うけどね。キラやアスラン、リルルも、
メカトピアが今どうなってるのか早く知りたいだろうし」
「あ―――あの」
「ん?どうしたんだ、のび太」
「その・・・急いだ方がいいのは分かってるんだけど・・・」
口ごもるのび太。何を言いたいのか察して、稟が言った。
「町の人が元に戻ったんなら、家族だって帰ってきてるはずだからな。しばらく地球を離れるのなら、挨拶するくらい
の時間は作ってもいいんじゃないか?」
「稟さん・・・」
ありがとう、と言おうとしたのを、稟が笑って手を小さく振った。気にするな、と言ってくれているのだろう。
「よっ、気配り上手」と亜沙が茶化して、稟は苦笑した。
「それがいいわ。わたしたちなら構わないから。ね、キラ、アスラン」
リルルの言葉に、キラとアスランも頷く。
「それがいいよ。みんな、ご両親に挨拶くらいしていきなよ」
「うん、ありがとう―――」
のび太たちは深く感謝して、頭を下げる。
そして明日再び集合、と決めてどこでもドアを使って町へと戻っていく。
スネ夫、しずか、スネ夫と去っていって、のび太とドラえもんもドアをくぐろうとして―――
「あ、そうだ!」
何を思いついたのか、のび太は大声をあげた。
「よかったら、みんなもぼくんちに来ない?」
「え?」
「みんなをぼくの友達だって、パパやママに紹介したいんだ。もしよかったらだけど・・・」
「いいのか?俺たちが邪魔しても」
稟の言葉にブンブンと首を振った。
「邪魔だなんてとんでもないよ。ぼくがみんなに来てほしいんだ」
「ふふ、そうだね。折角こんなにたくさんの人がぼくらの世界へ来たんだもの」
「・・・そっか。じゃあ、お言葉に甘えるか」
「ああ。人の御厚意は素直に受け取るしかないじゃないか!」
アスランは既にノリノリだった。
「うーん・・・僕はいいよ。あんまり気が乗らん」
「あ、安心して。バカ王子さんは数に入れてないから」
「君も言うようになったな、野比のび太・・・ま、いいさ。僕も僕で会いたい奴の一人や二人はいるからね。雪隆の顔でも
見に行くとするよ」
雪隆って誰さ、とは思ったが、気にしないことにした。
「あ、俺もいいよ。タイムパトロールへの報告書もまとめなきゃいかんしな」
「そっか・・・ムウさんも大変だね」
「なに、これも俺の仕事だからな。じゃあみんなはゆっくり骨休めしてきな」
「うん。じゃあ行こうか、みんな!」
ぞろぞろと連れ立って、どこでもドアをくぐっていく。
「のび太さんの家か・・・ご両親とは、久々ですね」
ペコが感慨深そうに言った。彼は一時期ただの犬のように振舞って、野比家の世話になっていたのだから当然だろう。
<俺はあんまり喋らない方がいいな。残留思念がどうのこうのなんて、普通の人間にゃ理解しがたいだろうし>
「ま、そうぼやくなって。けどのび太のご両親か。どんな人なのか、楽しみだな」
「楽しみ・・・」
稟とプリムラに、のび太は少し得意げに語った。
「どんな人って言われても、普通の両親だよ。ママはちょっと―――結構、かなり、相当、口うるさいけど。けど・・・
ぼくにとっては世界一のパパとママなんだ」
「そっか・・・」
稟とプリムラは少し顔を俯かせる。のび太は、稟の両親が他界していることを思い出した。プリムラに至っては、そもそも
両親がいない。
「ごめん、はしゃいじゃって・・・」
「バカ、そんなこと気にするなよ」
稟は笑顔を見せて、のび太の首にぐいっと手を回した。
「ほら、行こうぜ!」
「うん!」
一同はのび太の家に向かって、駆け出すのだった。その中で、キラは小さく呟いた。
「家族・・・か・・・」
その声は小さすぎて、誰にも聞こえなかったが。
投下完了、前回は前スレ448より。
1さん、スレ立てお疲れさまです
キラの設定がどんどん捏造されていく(汗)
ちなみに狐の会話の中の<策師>っていうのは気にしなくていいです。戯言シリーズ知ってる人のための
お遊びみたいなものですから。
架城明楽というのも戯言のキャラです。作中時間では既に死んでて、名前しか出てませんが。
現在ギャグ番外編第二弾を構想中。バカ共が再び銀河を駆け抜けます。
番号は全て前スレのものです。
450 キラの出生の伏線はあまりにもあからさまだったかも・・・(汗)狐面の男はマジで久々に書きました。
バレさん いつもお疲れ様です。USDマンは復活キャラといっても、カマセにはしないので大丈夫です。
ムウとクルーゼ・・・ちゃんとした決着が書けるのかどうかw
453 最終決戦まではまだまだですねwあと最低でも30〜40話くらいは続くと思います。
454 すげえwこりゃ勝てねえ!
455 登場人物が多くて、中々一人一人を目立たせたいと思っても枠が取れないんですよね・・・
作者の力量不足と言われればそれまでですが。
456 いつ見ても終焉の銀河。
お疲れ様です。まだまだ30話は続くんですかw
では13階段に変わる新たな敵が現れるのかな?クルーゼの親衛隊とか。
最後はほのぼのとした家族自慢で良かったですね。
サマサさん精力的な更新おつです。
まだまだ続くという事で期待感でいっぱいです。
プリムラはやはり可愛いですね。
家族はいなくても仲間がいますよ!
>>
ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1138501515/437 「……期待してると思ったかい? そりゃ最初はそうだったけど、ね」
眠っているD=アーネにタオルケットをふわりとかけて、くるりと振り向くヒューイット。
今正に牙をむいて襲い掛からんとしていた犬一号と目が合った。
「さっきも言ったけど、僕は当分ここに滞在することになってるから、好きなだけいると
いい。とりあえずこの子は、明日の朝ぐらいまでは目覚めない。で、僕はこれから仕事に
出かけなきゃならなくて、夜中まで帰れない。だから悪いけど、この子のことを頼むよ」
とヒューイットに言われて。襲いかかりポーズの犬一号は、どう対応すべきか困る。
「解ったら返事してくれないかな。喋れるんだろ、『お付きのマスコットキャラ』君?」
え? と思わず犬一号が声を出すと、ヒューイットは我が意を得たりとにっこり笑った。
「あの子はプリンセスじゃないけど、やっぱり魔法の国から来たんだね、君たちは」
「って、あんた一体何を言って……というかその、D=アーネ様も言ってましたが、
どうしてこんなに親切に? 我々は本当に無一文だし、D=アーネ様は陛下のことが」
「……もし機会があったら、インターネットで18禁な掲示板を覗いてみるといい」
ヒューイットが、いきなり妙なことを言い出した。
「そこでは、世界中の男たち(女たちも)が、各々の欲望妄想を垂れ流しててね。僕の
同好の士も、たくさんいるんだ。だから僕みたいなタイプは、全然珍しくもない。僕が
一番見たいのは、あの子が幸せに包まれてる時の笑顔。そりゃ下着姿も裸も魔法コス姿
も可愛いだろうけど、どれもこれも笑顔がついてなきゃ魅力大幅減さ。だから、」
ヒューイットは、出口のドアへと歩いていく。
「僕は僕の趣味の為、見たいものの為なら、努力も散財も惜しまない。OK?」
「え、あの……えと、お、おけー、です」
何だか解らない空気を受けて、犬一号はお辞儀した。
「そうだ、もしD=アーネちゃんがどうしてもお礼をしたいって言うなら、こう伝えて
おいて欲しい。『遊園地で一日デート、で僕のことをお兄ちゃんって呼んで欲しい』と。
その時、今言った幸せ笑顔が見られれば、もうそれ以上は何も望まないってね」
ヒューイットはそれだけ言って、部屋を出てドアをぱたん、と閉じた。
後には犬一号と、すやすや寝息のD=アーネだけが残されている。
『……D=アーネ様の笑顔を見たいから、か。地球人の男って……男って……』
ドアの向こうでは、ヒューイットが壁をガリガリ引っ掻いていた。その脳内でぐるぐる
回ってるのは、食事中のD=アーネのバスローブの襟の合わせ目とか、抱き上げた時の
軽さと小ささと柔らかさと甘い匂いとか、ベッドに寝かせた時に少し見えた胸の……
『ぁぐぅぐぉぐぇぐ。だ、だけど、だけどっっ』
顔を上げて、自分で自分に対して確認するように、口に出して言葉を綴る。
「僕は、間違ってはいないよな……世界中の(特に日本の)同志たちよ……僕は
ロリ者として魔法少女ヲタとして、今、正しい道を歩んだよな……うん、絶対そうだ!」
最後にドン! と壁にパンチを一発くれて、ヒューイットはホテルの廊下を歩き出した。
白馬の王子様とか、ハーレムを作る天才魔法使いや伝説の剣士にはなれなかったけど、
「せめて……『優しいお兄ちゃん』はクールに去るぜ。ってとこかな。ふっ」
その横顔には確かに、多少アレではあるものの、でも一面の「男らしさ」があった。
ヒューイットが改めて鉱山に到着し、仕事を終えて今度は宮殿に向かって出発した頃。
ホテルの部屋で、さすがというかヒューイットの見立てよりずっと早く、
「ぅ……ん……陛下、そんな……でも、陛下が望むなら…………ぁぅ……」
ゆっくりと、D=アーネの目が開いていく。
「ん……む……ん? あ、あれ? ここはどこ私は誰今はいつ」
「ここはホテル、ヒューイットさんの部屋。あなたはヴァジュラム法国地球進攻部隊の
隊長D=アーネ様。今はD=アーネ様が寝付いて七時間ほど経った夜です」
「あぁ犬一号、おはよ。朝ご飯まだ? そのヒューイットってのはお客さんとか……あ」
思い出した。そいつに薬で眠らされたんだ。で今ベッドに寝てるってことは。まさか、
今の夢は現実の感触が夢の中に反映したということで、だとしたらつまりそれは、
「っっっっ!」
D=アーネは悲鳴にならない悲鳴を上げ、タオルケットを蹴飛ばしてパニックになる。が、
「落ち着いて下さい。D=アーネ様がご想像なさってるようなことは、何も起こって
ませんよ。あの人に薬で眠らされたのは事実ですが……」
犬一号は、ヒューイットの言動を淡々と語って聞かせた。するとD=アーネは、
「そう、か。そんなことを……う〜ん」
タオルケットをいじいじ弄りながら、ぽつりと言った。
「……私がこの国を制圧した暁には、きっと」
「一緒に遊園地に行って『お兄ちゃん』?」
「をしてくれる可愛い女の子を探そう。私自身の誇りにかけて、とびっきりの美少女を」
「なんでそーなるんです」
「いやだってほら、私には陛下がおられるんだし、やっぱりその、」
とD=アーネがくねくねしていると、犬一号の眼帯に描かれている髑髏マークが点滅した。
「あ、通信ですね。……はい犬一号…………え!? は、はい。はい。……了解」
髑髏の光が消えて、通信が終わった。犬一号の顔色が変わっている。
ただならぬその様子に、D=アーネも心配になって、
「今の、下っぱたちからだろ? 本国から基地に何か、よくない連絡が入ったのか?」
「……陛下が」
犬一号は、辛そうにD=アーネに向き直って言った。
「今日、政務の最中に大量の血を吐いて倒れられ、今もまだ集中治療室に……と」
一瞬、D=アーネの頭の中が空白になった。意識の喪失、それ以上の虚無感が心を埋める。
だが次の瞬間には、もう決断し動いていた。虚空からどくろステッキを取り出し振り上げ、
「轟魔力将来!」
一騎当千 七転八倒 一刀両断 四苦八苦 黒珠黒衣も麗々と 破軍天破の黒天使……
D=アーネの体に、闇色の光が蛇のように絡みついて実体化、薄く透ける黒衣となった。
昼間と同じ戦闘用魔法装束だが、違う。あの時のはどこか煤けたようにくすんでいたが、
今のこれは正に、新月の夜空。漆黒の闇夜をそのまま巻き取り編んだかのようである。
黒光りが艶やかささえ感じさせるその装束を、D=アーネはひと撫でして言った。
「カレーライス八皿と、精神安定剤とやらのおかげだな。私の魔力、回復しきっている」
「……D=アーネ様」
「お前が今朝言った通り、体勢は整えたぞ。だが他の国を狙うという提案は却下だ」
陛下が倒れたとなると、もう猶予はない。ヒューイットはああ言ってくれたが、仮にも
陛下は一国の王なのである。お忍びで街に遊びに行く、とか古い恋愛小説みたいなことが
現実にできるわけがない。身柄を動かすとなると軍隊も文官もぞろぞろついてくるのだ。
だから地球丸ごととはいわずとも、最低でもやはり一国は手に入れないと陛下は地球に
来られない。もう、この国を制圧するしか道はないのだ。
目的地、このマリネラという国の首都の場所は、昼にヒューイットから聞いてある。
「心配するな。昼間私を叩きのめしたあいつが来ても、今の私なら絶対負けない。いや、
あいつより強いのが来ても、だ。さすがにパステリオン以上の奴はいないだろうしな」
「それはそうでしょうが……」
「おいおい。ご武運お祈りします、ぐらい言って欲しいところなんだけどな」
とD=アーネは軽く言って……多分、怖さを紛らわしているのだろう……部屋を横切った。
バルコニーに出ると、長い銀色の髪と闇色の衣が、夜風に煽られてふわりとなびく。
十二階からの夜景は美しい。そう、この美しい国を手に入れるのだ。どんな手を使っても。
「じゃ、征って来る」
「……ご武運お祈りします」
任せとけっ、と手を振って。D=アーネは、広い夜空にその身を躍らせた。
屋根から屋根へと風のように駆け、疾り、跳び、舞い、まっすぐにマリネラの首都、
そして国王パタリロのいる宮殿へと向かっていく。犬一号の祈りを背にして。
……だが、その頃。彼女の目指すマリネラ宮殿では、ちょっとした事件が起こっていた。
「ん? 今のは……」
マリネラ宮殿。当然だがここは二十四時間営業なので、夜でも大勢の人間が働いている。
中でも武官・文官両方で中核を為すのが精鋭タマネギ舞台。パタリロとよく似た黄色い
軍服と、素人には見分けのつかない揃いのメーキャップがトレードマークだ。
その彼らが、たった今響いた爆音に、ふと顔を上げた。が、すぐに仕事にもどる。
「やれやれ。また殿下が、妙なもんを作ってるな」
「でも、どうやら失敗して爆発したみたいだな。良かった良かった」
この程度のことでいちいち騒いでいたら、とてもこの宮殿で働いていられないのである。
とはいえ、例外もいる。タマネギ最古参の6人、中でも最年長最高位のタマネギ1号が、
爆音からものの一分とかからずパタリロの工作室に駆け込んだ。
「殿下! お怪我はありませんかっ!?」
ドアは吹き飛び、壁には大穴、夜風が吹き込む工作室。その真ん中でパタリロが、
呆然と突っ立っていた。何だか、いつもとちょっと様子が違う。
タマネギ1号が部屋に入ると、いつになく真剣な顔のパタリロが振り向いて、
「ちょっと……困ったことになった」
「ど、どうしたんです」
滅多に見られない、パタリロの青ざめ不安顔を向けられて、タマネギ1号も不安になる。
「前に、ぼくが桃太郎とか白雪姫の魔女とかに襲われたことがあっただろう」
「はい。あれは確か殿下のご子孫、パタリロ10世殿下の発明品でしたよね。絵本の
登場人物を三次元に出すことができるっていう機械」
「そうだ。ぼくはあれを何とか金儲けに利用できないかと考えて、前々から研究して
たんだ。で見事成功したんだが、そいつがたった今、機械をぶっ壊して逃亡した」
パタリロが壁の穴を指差す。タマネギ1号は、また厄介なことを……と溜息をついた。
「で? どんなやつを本から出したんです。ドラキュラですか狼男ですか?」
「うむ、こいつだ。見てくれ」
荒木飛呂彦 著 『ジョジョの奇妙な冒険』第十二巻 超生物の誕生!! の巻
カーズが赤石によって変身した完全生物とはッ!
ひとつ 無敵なり!
ふたつ けっして老いたりせず!
みっつ 決して死ぬことは……
タマネギ1号のウルトラ巨大ハンマーが、パタリロの頭を石造りの床にブチ叩き込んだ。
「百万回ぐらい死んでこいっ、このくされ外道っっっっ!」
連投規制?
9歳の女の子に本気で恋した結果、CIAも母国アメリカも裏切って共産圏へ亡命し
漬物屋を開く! とか本気でやってしまう彼ですが(パタリロの妨害で未遂)。でも、
惚れた女の為ならいつでも何でも捨てる覚悟OKな、一途健気献身純粋な男とも言える
のではないかと。
>>天麩羅屋さん、
>>1さん、
>>5さん
バキスレの歴史を繋げて下さる皆様、おつ華麗様です。このところスレ消費速度は
上がるわ、テンプレは厚くなるわで大変でしょう。バレさんを筆頭に、運営スタッフ様
たちの多忙さこそスレ好調の証し。感謝と敬意をここに捧げまする。
>>スターダストさん
無性にハンバーガー食べたくなったり、昔やらされた「監査対策・過去の予定表書き」を
思い出したりしてたら、来ましたね黒幕。妙に冷静で屈折してる、その不気味さと千歳の
千歳らしい直訴とが、最後にちびっと結びついて。またしてもヒロイン襲われイベント?
>>サマサさん
ここまでドラ側を素直に褒めるか……つくづく独特な価値観を持ってますな。底知れぬ、
いや側壁も天井も知れぬ。を挟んでひんやり過去話からほんわか家庭話に繋がりましたが、
できればここは訪問するメンツを散らして、源家や骨川家の風景を見てみたかったです。
>>見てた人さん
彼女には気の毒ながら、結構期待して待ってた今回ですが。殺される瞬間までの実況中継、
予想以上に痛々しかったです。にしても犯人、武器や毒を使わず音も立てず見事な手際で
簡単に殺ってますよね。さすがは帝愛と黒の組織が作ったゲームの殺人鬼役ということか。
ふらーりさんお疲れ様です。
パタリロが出てくると、ふらーりさんイキイキしてくる気がしますw
アーネの呪文ってこんなんですか。バスタードっぽいな。
パタリロもアーネも生意気な子供キャラですね。
そういえば戯言の作者と荒木が対談したな
荒木も戯言読んで面白いと発言している
まあ戯言の作者の方はそれですっかり舞い上がったのか「ジョジョは全人類に読んで欲しい作品」とのたまったとかw
36 :
作者の都合により名無しです:2006/02/23(木) 08:35:37 ID:xe+XW/6Q0
封神演義のダッキとDBのギニューが対戦するSS読みたいな。
37 :
作者の都合により名無しです:2006/02/23(木) 08:38:50 ID:xe+XW/6Q0
38 :
聖少女風流記:2006/02/23(木) 16:30:15 ID:jNdXDSuJ0
第拾話 聖少女、出陣
ベルトランとジヤンは眩しそうにその姿に見惚れていた。
シャルル皇太子から拝頂した白銀の鎧を身に着けたジャンヌにである。
体は確かに小柄である。当時の女性としても平均以下の身長しかないから当然であろう。
が、纏った空気が彼女の肢体を何倍も大きく見せるのだ。
髪はさっぱりと短く切り落としている。
元々男装風だったが、今朝から更にそれを強調していた。迷いを吹っ切ったかのように。
が、だからといってその美しさまでを隠し通せる訳ではない。
むしろ逆に、白銀の鎧と男装の身施しが、元々のジャンヌの女性としての美しさに
中性的な美を加えている。遠くから貴族たちが羨望と好色の眼差しで彼女を見ている。
「見事なものですな。早く、馬に乗って戦場を駆ける姿が見たいものです」
シャルルの近衛であるマルスが世辞でなく言った。
ジャンヌは微笑みで返す。が、どこか翳りがあるのをベルトランは見逃さない。
そっと、隣の慶次に耳打ちをした。
「慶次殿。 ……お主、ジャンヌ殿を、抱いたか」
慶次は涼やかに微笑み、何も言わない。その表情をじっとベルトランは観察している。
「無粋だな。最後の女としての夜。 ……抱いてやれば、良かったのだ」
慶次は斬られたような錯覚に陥った。正面からばっさりと、一刀に。
自分はこの男を少し甘く見ていたのかもしれない。彼もまた、真のもののふであった。
「まだ、な。まだ抱く事は出来ん。今の俺に出来るのは、ただ守り抜くだけだ」
39 :
聖少女風流記:2006/02/23(木) 16:31:55 ID:jNdXDSuJ0
微笑みを絶やさずに慶次は応える。が、ベルトランの目は笑わない。
「俺は、もう心から信じている。彼女が、フランスを救う聖女だということを。
そしてあんたが、彼女を守り抜けるこの世でただ一人の男だということを。
……ただ」
「ただ?」
「ジャンヌ殿もあんたも、たまに朧気に見える。儚い蜃気楼のようにな。
役割を果たした後、そのまま消えてしまうような」
またも慶次は斬られた。武蔵の剣よりも遥かに厳しい斬撃が、ベルトランの口より続く。
目の前ではジャンヌがシャルル王太子に宣誓をしていた。
3000人の兵を貰い受けた事への感謝と、フランスへの忠誠をである。
シャルルの横では、彼女の母イザボウが冷たい目でジャンヌを射抜いている。
単に下賎な成り上がり者を見下している目ではない。
もっと冷えた、狡猾な罠に嵌ろうとする者を嘲笑するかのような凍った目である。
「案外、敵はイギリスではなく身内にいるのかも知れん」
ジヤンが呟いた。慶次とベルトランも厳しい目でそれに同調する。ベルトランが言った。
「慶次殿。あんたは強い。俺の数倍もな。だがそれでも、俺は不安でたまらん。
その強さは、自分の身すら斬りかねん強さに感ずる。ジャンヌ殿もだ。
あの方は、あんたと違った意味で、強い。だが、消える前の蝋燭の炎に感じる」
慶次は応えなかった。
ベルトランが感じている事が、そのまま自分がジャンヌに感じている事だからだ。
昨夜、ジャンヌと別れた後。慶次は床に入り、夢を見た。
40 :
聖少女風流記:2006/02/23(木) 16:36:33 ID:jNdXDSuJ0
紅い夢だった。哀しく、儚く、どこか美しい。そんな紅い夢だった。
ジャンヌが杭に張り付けられ、紅蓮の炎に巻かれていた。
慶次は松風を全速で駆り、必死に手を伸ばして彼女へ近付き救おうとする。
が、届かない。慶次の手は虚空を掻き、決して彼女に届きはしない。
彼女は寂しげな、そしてどこか幸せな微笑を浮かべながら天へ帰っていく。
炎に焼かれ、天へ上りながらジャンヌの姿は薄くなっていく。
その口許が微かに動いている。何かを慶次に伝えようとしている。
が、口唇すら読めない僅かな動きである。最後の言葉は慶次に届かない。
そしてやがて自分自身の姿も、風に吹かれて掻き消されて行った。
不吉な、哀しい夢である。だが夢というには余りにも現実感に満ちていた。
慶次は睨むベルトランに、ようやく一言だけ答えた。
「もののふは、駆けて駆けて、駆け疲れたら倒れて眠るように死ぬだけさ。
だから俺の事は一切心配はいらん。だが、ジャンヌ殿だけは必ず守る」
ベルトランは慶次から視線を外した。慶次という男は、不思議と信じられるからだ。
儀式が終わり、ジャンヌが自分たちの下へ戻ってきた。少女の笑顔を浮かべている。
「王太子様より100ルーブルも頂きました。これで、皆さんの装備を整えましょう」
そして、スウ、と深呼吸をひとつすると、意を決したように言った。
「その後はいよいよオルレアンに向かいます。トゥールの町とブロアを経由し、
オルレアンをイギリス軍を奪い返し、解放します」
場面は聖少女ともののふから、魔王に移る。数日後の事である。
41 :
聖少女風流記:2006/02/23(木) 16:40:18 ID:jNdXDSuJ0
「軽いものよ、つまらん。このワインとやらは美味だがな」
累々たる屍が転がっている。魔王はその様子を愛でながらグラスを傾けている。
場所はロンドンの主城。イギリスはランカスター朝の中枢である。
「俺が怖いか、糞ガキ」
傍らの年端も行かぬ子供に魔王は薄く笑った。そしてそれはやがて哄笑となる。
「俺に任せておけ。イギリスとフランスだけでなく、この世の全ての王にしてやる。
俺はその上の神として君臨するがな、感謝しやあせ、坊ちゃんよぉ」
急に砕けた口調に変わった。その魔王の名は織田 信長である。
イギリス王の為に造られた玉座に、当然のように腰を下ろしている。傲岸不遜。
更に、その横の殺気と邪気に満ちた大男。人とは思えぬほど、異常に腕が立った。
この男が少年を守護する場内の兵を全て斬り殺した。剣鬼、宮本 武蔵である。
たった2人の魔人により、イギリス軍の中枢が落とされた。少年は恐怖に震えている。
「フフ。天下人が情けない。貴様に、世界をくれてやるわ。俺の傀儡としてだがな」
信長は笑う。だが少年はますます震えている。
この少年こそ、イギリス国王・ヘンリー6世である。一時はフランス国王も兼ねていた男。
父・ヘンリー5世の急死により生後9ヶ月で王位についた悲運の男である。
信長の頭の中に計画があった。天下布武の計である。
転生前の日本だけの統一ではない。世界の版図を全て自分の色に塗り替える大統一である。
「イギリス、フランス、オスマン、ポルトガル、東ローマ帝国、スペイン、ポーランド、明、そして最後は元々から俺の国の、日の本。今は室町の世か」
信長は大きく笑った。この時代の情勢は全てもう脳に収まっている。
楽しくて堪らない。世界を我が物に。海も空も、この世の全てはこの信長のものだ。
この世の全てを食らい尽くすまで、信長の欲望は続く。
42 :
聖少女風流記:2006/02/23(木) 17:08:59 ID:jNdXDSuJ0
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/09.htmの続きです。
書けねえ。頭の中のものが上手く表現出来ねえ。これからどんどん暗くなるし。
そんな中、スターダスト氏がエールを送ってくれるのは励みになります。
ほぼ同時期に連載始めましたし、お互い完結に向けて頑張りましょうね。
千歳可愛い。照星もキモ面白い。根来、主役なのに強力な脇役が多くて大変ですねw
慶次とジャンヌは結ばれて欲しいけど、難しいでしょうね。
結ばれるんなら、スレ住民の多くを占めるであろう童貞の皆様方の
参考になるようなものを書きたいんですけどね。
エロパロ板みたいな、処女や童貞が想像で書いているようなもんじゃなく、
実践的な奴を。セックスってのはあんな綺麗なもんじゃねえよ。
でも慶次って馬並みのでズンズン突きまくるイメージしかないな。
昔、付き合ってたキャバ嬢(恋人でなくセフレですが)が言ってましたけど
「モノは早漏でなければ13センチあれば十分。でも前戯に手を抜く奴は許せない」と。
毎回毎回、目ん玉から足の指まで一時間以上、丁寧に愛撫させられたなあ。
お陰で他の女とした時、「40過ぎのおっさんとしたみたい」と褒められましたがw
そのキャバ嬢の名言を今でもしみじみ思い出す。曰く、「人生はワンツークンニ」。
いったい20歳前後でどんな人生送ってきたんだコラ。
冗談はさておき、ふら〜りさんのお母様のご回復を心よりお祈りします。
43 :
ハイデッカ ◆duiA4jMXzU :2006/02/23(木) 17:17:48 ID:jNdXDSuJ0
あ、しまった。ひとつ改行ミスですね。
バレ様、大変申し訳ありませんが、
>「イギリス、フランス、オスマン、ポルトガル、東ローマ帝国、スペイン、ポーランド、明、そして最後は元々から俺の国の、日の本。今は室町の世か」
を、保管の際に
>「イギリス、フランス、オスマン、ポルトガル、東ローマ帝国、スペイン、ポーランド、明、
> そして最後は元々から俺の国の、日の本。今は室町の世か」
の二行にして頂けるとありがたいのですが。
ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。これからは気をつけます。
いつも、拙作を保管して頂き大変ありがたく思っております。
ハイデッカさんお疲れ様です。
うーん悲劇は確定してますか、やはり。
でも、あのジャンヌダルクの最後はどんな漫画にも勝る
実在した歴史上の名シーンだと思うので、
悲しく美しく書いてくれるとうれしいです。
そして、その運命に逆らおうと足掻く計次も。
あと、後書きワラタw
最後、無理矢理ふら〜りさんのお母さん使って
きれいにまとめんなよw
11センチで童貞の俺は生きる資格なしか・・
スレ違いだがな、チソコなんてもんはシコってりゃ成長するもんよ。
まあ実戦は我武者羅にガンガレ。
46 :
作者の都合により名無しです:2006/02/23(木) 23:09:15 ID:WYX/9cfK0
やはり死ぬのか、ジャンヌは。
でもこの段階でのネタばらしはどうかと。
信長カッコいいけど、呂布は別行動かな?
あと、後書きはウザいに一票w
慶次もどんどん暗くなっていくのかな?それは慶次じゃない気がするけど。
でも、慶次って底抜けに明るいように見えて、どこか寂しさの漂う所が魅力のキャラでもある。
どのみち、悲劇は避けられないようね
48 :
作者の都合により名無しです:2006/02/24(金) 18:51:55 ID:PwE7ZMYQ0
ていうか、最後の悲劇がキモでしょこの作品
昨日は何も来なかったか
そろそろNBさん、ミドリさん、ゲロさん希望
scene29 伊藤開司【十】
「カイジさぁ〜ん、交替の時間っすよ〜」
ノックの音と同時に、緊張感のない声が聞こえてくる。玉崎だ。
二号室……笠間の見張りのローテーションは『ペア作戦』の時と同様に、籤引きで決定された。
黒川、旗元、只野、小此木、玉崎、カイジ、夕凪&双葉という順番である。
「わかった……今行く」
正直、カイジは見張りのことなど半分記憶から抹消されかけていた。
何しろ、一人の持ち時間が二時間である。
カイジはあれから十時間もの間、四号室で待機していたのだから。
時刻はもう、二十二時を過ぎていた。カイジはのたのたとベッドから身を起こすと、二号室へ向かった。
二号室に入ると、カイジは真っ先にトイレのドアに目をやった。
ノブの部分に何重にも巻かれたロープに異常のないことを確認し、ほっと一息つく。
それからの二時間は長かった。何しろ、緊張感を持続させながら
延々と、物音一つしないトイレのドアを見つめ続けなければならないのだ。
テレビでも見ていれば、二時間などあっという間に経ってしまうものなのだが……
カイジは吹雪の音だけをBGMに、ひたすら時間の経つのを待った。
時計を確認する。二号室に缶詰になってから何度となく繰り返した仕草。
ようやく、時刻は二十四時を回ろうとしていた。見張りから開放される時間だ。
「やっと午前零時、か……」
椅子から立ち上がり、自ら発した言葉に背筋を震わせる。
香坂まどかの死体発見時の記憶が、まざまざと蘇ってきたせいだ。
(何を怯える必要がある……あれはもう、種の明かされた手品に過ぎない……!)
しかし……拭いきれぬこの不安は、何だろうか。
カイジの第六感が、警鐘を鳴らしていた。まだ安心するな、と。
二号室から近いのは、廊下北側、一号室だ。夕凪に見張り交替を伝える為に、一号室へと向かう。
コンコン。……ドアをノックするが、無反応。
(見張りの事なんか忘れて、寝ちまったんじゃないだろうな……?)
彼女たちの順番は、一番最後だ。それにもう夜も遅い。あり得ない話ではなかった。
「おーいっ! 早く出てくれっ、交替の時間だ」
大声で呼びかけ、ドアを激しく叩く。……それでも、帰って来るのは静寂だけだった。
ドアノブを回してはみるが、当然のように施錠されていた。
「どうかしたんっすか?」
カイジの声に気付いたのか、廊下の向こうから玉崎が顔を出す。
「交替の時刻なんだが……何度呼んでも、応答が無い」
騒ぎを聞きつけたのか、黒川、只野、小此木も姿を現す。
一応の決着を見たとは言え、とてもゆっくり眠っていられる心境ではないのだろう。
「何度、呼んでも……っすか。心配っすね……」
玉崎が怪訝な顔をする。
「ああ。こうやって皆が集まってくる位には、声を張り上げたつもりだ。
仮に寝ていたとしても、いくらなんでも起きるはずなんだが……」
「な、何かあったんでしょうか!?」
と只野。その目には、ありありと不安の色が浮かんでいる。
「仕方ありません。ドアを破りましょう」
三号室の時同様、またも黒川が言う。おとなしそうな顔をして、つくづく破壊魔である。
とは言うものの、鍵がない以上、ドアを壊す以外に方法はない。結局、誰からも異論は出なかった。
『いーち、にーい、さんっ!』
かけ声をあげながら、その場にいた全員でスクラムを組み、体当たりを繰り返す。
五回に及ぶ体当たりの末、ドアは勢いよく開いた。
今度は、部屋の掛け金は下ろされていなかったらしく、閂が弾け飛ぶような事はなかった。
部屋の中に、夕凪の姿を探す。
「うわ……」
小此木が素っ頓狂な声をあげる。
その視線の先に――夕凪はいた。窓に面した内線用の電話台に身体を預け、ぴくりとも動かない。
電話からは、受話器が垂れ下がったままになっていた。まるで死ぬ直前まで、誰かと電話していたかのように。
それはまさに、香坂まどか殺害現場――三号室の忠実なる再現。
唯一つ違う所があるとするならば……夕凪理沙の首は一回転し、背中の方を向いていた。
薄く開いた目から、濁りかけた瞳が覗く。口許からは血液が流れ落ち、幾つもの痕を作る。
「理沙ちゃ……っ。何すか、これ! 何で……何で、こういうことになるっすか!」
玉崎の叫びに、答える者はいなかった。誰もが、予想外の凄惨な光景を前に、一時的な思考停止を余儀なくされた。
「あ、あ、あれっ……」
只野が、震える手で夕凪の背中を指差す。全員の視線がそちらに集まった。
夕凪の背中に、無造作に置かれていたのは、きらりと光る金色の金属……部屋の鍵だ。
言うが早いか、只野はどたどたと夕凪に駆け寄る。
そしてすぐに青ざめた顔で振り向き、掌に乗せた『それ』を皆に見せた。
「やっぱり、か、鍵いっ……!」
只野は搾り出すような、悲痛な声を漏らす。
「貸せっ……!」
カイジはひったくるようにして鍵を奪い取ると、すぐさま鍵穴に合わせる。
先ほどの強行突破で壊れかけたデッドボルトが、カチャリと音を立ててせりあがる。
それは間違いなく、この部屋の鍵だった……!
「やはり窓にも、鍵がかかっていますね。それに、着信記録……」
そう言って、黒川はディスプレイを指し示す。
努めて冷静に振舞おうとしているのだろうが、その声にはビブラートがかかっていた。
ディスプレイは……見なくとも、大方の予想はついた。
それでも。言われるがままに、カイジは覗き込む。
―― チャクシン AM0:00 ――
(馬鹿な……! またも見立て殺人……またも、密室……!
それに今回は明らかに、首の骨を折られ……殺されている……
受話器に毒を塗るとか、そんな小細工ではどうしようもない……!)
「これはつまり、まだゲームは終わっていないということですか!
笠間さんは犯人ではないとっ……そういうことなんですか! ええっ!?」
只野が、疑心暗鬼に彩られた表情で、それぞれの顔を探るように見回す。
「まだわからないっすよ! ともかく、みんなで笠間の様子を見に行くっす!
見張り交替の隙を突いて、トイレから逃げ出したのかもしれないっすから……!」
玉崎の、その言葉が切欠だった。全員が、二号室へと向かおうと動き出す。
「待ってくれ……!」
「何すかっ!?」
玉崎が驚いて振り向く。他の者もみな一様に、呆けた顔をして立ち止まった。
呼び止めたのは、カイジだ。
「その前に……この部屋に誰かが隠れていないか、探した方がいい……!」
カイジ、突然の思いつきだった。
そう『室内に犯人が隠れていた』可能性の検討。
(密室状態だった三号室に入った、あの時。部屋の中を詳しく確認はしなかった……!
犯人は、部屋から出ておらず、トイレに籠るなり、ベッドの下に身を隠すなりして……
発見者たちが立ち去るのを確認した後、悠々と部屋を出たのではないか……?
そして、混乱に紛れて、何食わぬ顔で他の参加者と合流する……
それならば、第一発見者が誰であったとしても……
三号室も、この一号室も。密室と見せかけるのは容易い……!
笠間以外の人間でも、犯行は理論上可能になる……!)
それは、あまりにも単純な回答。しかしそれ故に、死角となり得る解法……!
だが――カイジのそんな期待は、あっけなく裏切られる事となる。
「誰も、いません……」
覇気を失った、黒川の声が部屋に響く。人が隠れられそうな場所はすべて探した。
それでも……誰かが隠れているどころか、猫の子一匹出てくる気配は無い。
「もう、いいっすよね? 早く二号室の様子を見に行くっすよ」
玉崎を先頭に、三人は廊下に出る。仕方なく、カイジもそれに続く。
結局、カイジの推理は振り出しに戻り……思考の袋小路に迷い込む……!
(どうなっている……!? どうなっているんだ……!?
あるはずがないっ……怨念だの、祟りだの、そんな馬鹿げた事……!)
毎度ありがとうございます。前回投稿は
>>12です。
告発ミスにより一気に二人退場し、探偵も残す所、八人となりました。
意外(?)と、減っていませんね……。
わー、訂正です。正しくは残す所『七人』ですね。
本編中の記述でなくてよかった……。
57 :
作者の都合により名無しです:2006/02/25(土) 20:12:37 ID:cevJRhnf0
ついに、主役が主役たる所以を見せ付ける時がやって来ましたか。
覚醒カイジに期待。理沙の無念と疑念を晴らして欲しい。
他の方の無念はどうでもいいけどw
しかし、カイジも殺されたらそれはそれで面白いかもw
58 :
作者の都合により名無しです:2006/02/25(土) 22:54:09 ID:3rHDxn9I0
死を呼ぶ着信音と共に増えていく犠牲者。
それに呼応するように徐々にカイジのリミッターが外れてきたな。
確変カイジまでもう少しといったところですか。たまんないな。
59 :
作者の都合により名無しです:2006/02/26(日) 00:08:45 ID:fgbLW6AM0
面白いけど絶対にハッピーエンドにはならんね
それがカイジっぽいけど>カマイタチ
>>59 ツマンネ
っていうか、昔からZ武ネタを面白がっている人の気が知れん
善人ぶっている訳でなく、笑いのセンスにおいて。
第六十話「束の間の安らぎ」
家に着いたときには、もう夕方だった。だがのび太は家のドアの前でしばらく突っ立っていた。
「なーなーのび太。早く家に入ろう」
フー子がせっつくが、のび太は曖昧に頷くばかりだった。
「うん・・そうなんだけど、久しぶりだし・・・それに、本当にパパやママが戻ってきてるのか・・・」
そう言った時だった。ドアの方が開き、そこから30代の女性が顔を出した。
「のび太!こんな時間までどこで遊んでたの!」
「あ・・・!」
いつもなら思わず怯んでしまう、怖い顔。だけど今は、その顔が懐かしくさえあった。
「ママ・・・!ママーーーっ!」
「ちょっと・・・どうしたの、急に」
思わず胸に飛びついたのび太に驚きながらも、ママはそっと抱き寄せてくれた。そして、その光景を微笑ましげに見つめる
キラたちに気づく。
「あら・・・こちらの方々は?」
「あ・・・うん。みんなぼくの友達でね。すごくお世話になったんだ」
「まあ、そうなんですか。うちの子がご迷惑を・・・」
「いえ、こちらこそ。俺は土見稟です。のび太くんには助けられてばっかりで」
優等生モードで挨拶する稟。しかし空気を全く読めない男が一人いた。
「はっはっは!マダム。俺はアスラン"ホットハートマン"ザラです!次の選挙では俺に清き一票を・・・」
だがさらにわけの分からない発言をすることなく、アスランの口は閉ざされた。一瞬にして全身氷付けになっていたのだ。
その横ではプリムラが手を翳している。魔法で一瞬にして凍らせたのだ。
ポカーンとしている一同を尻目にプリムラはママに歩み寄り、ぺこりとお辞儀した。
「プリムラです。よろしく」
「はあ・・・よろしくね。ええっと、そちらの皆さんは・・・」
ママもそう言う他なかったが、すぐに気を取り直して他の面々に向き直った。
「僕はキラ・ヤマトです。初めまして」
「ボク・・・私は、時雨亜沙です」
「フー子!おれはフー子っていうの」
「リルルです」
<俺はマサキさ>
「まあまあ、皆さんご丁寧に・・・あら?一人多かったような・・・」
「き、気のせいだよ!」
慌てて誤魔化した。マサキの声は聞こえても、姿は見えないのだからややこしい。
「あら?この子は・・・」
「ワン!」
普通の犬モードのペコが元気よく吠えた。「久しぶりですね」とママに挨拶しているのだろう。
「ペコちゃんね。どうしたの?貰われていったって聞いたけど・・・」
「あ、うーんとね・・・」
どう説明しようか迷っていると、プリムラがペコを抱き上げた。
「飼い主です」
一瞬ペコは全くの無表情になった。多分プリムラは狙ってやっている。
「とてもよく懐いてくれてます」
「あらまあ、そうなの。可愛らしいお嬢さんに貰われて、よかったわね」
「クゥーン・・・」
情けない声で鳴くペコだった。未だかつてここまで情けない声で鳴いた犬もいるまい。
「それにしても・・・これだけ人数が多いと、晩御飯の材料が足りないわね。ちょっと買い物に行ってこないと」
「あ、いえ。そこまで気を使ってもらわなくても・・・」
稟はそう言うが、ママは笑って手をひらひらと振る。
「いえいえ、遠慮しないでくださいな。それじゃあちょっと買い物に行ってくるから・・・」
「あ、じゃあ俺たちが行ってきますよ。ただで食べさせてもらおうってんじゃ図々しいですし」
「あら、そうですか?それじゃあお願いしちゃおうかしら。それじゃあ私はこの人をお風呂で解凍しておきますから」
「・・・頼みます」
―――そして、買い物を終えて。
「それにしてもお袋さん、人が一瞬で氷付けにされたってのに、あんまり動じてなかったな」
「うーん・・・ママはドラえもんの道具を見慣れてるからね。その類だと思ったのかも」
「はは、そう言えばドラえもんの道具も大概だものな」
「人を色物扱いしちゃって・・・」
ドラえもんはむくれるが、地面からのペコの視線に気付く。
<非常食扱いやらペット扱いやらされるよりはマシでしょう>と確かにその目は言っていた。
「ふふ、でもいいお母さんじゃない。ボクもちょっと思い出しちゃった」
「亜麻さんか・・・相変わらずあんな感じ?」
「うん。のびちゃんやドラちゃんのことも懐かしがってた」
「へえ、そりゃあ嬉しいな」
はははと笑うのび太たち。それを見て、キラは少し寂しそうに笑う。
「・・・家族か。羨ましいな。僕には家族がいないから」
「え・・・」
「僕は物心つく前から孤児院で育ったんだ。両親の顔さえ知らない。だからちょっと羨ましいな・・・ごめん。変な話して」
「いや・・・」
黙りこくってしまうのび太。しかし、言った。
「じゃあさ・・・この戦いが終わったら、一緒に探そうよ!」
「え?」
「キラのパパやママも、きっとどこかにいるよ。だから、一緒に探そう。ね?」
「そうだな。よかったら俺も手伝うぜ」
「そうね。わたしも手伝うわ。アスランもきっとそう言うわよ」
「ボクも!」「私も・・・」<俺もだな>「フー子も!」「ワン!」
稟たちも後に続いた。
「みんな・・・」
キラは一瞬驚いたような顔になったが、すぐに笑った。
「ありがとう。僕は―――僕は、いい友達を持ったよ」
―――そして、家に帰ってみんなでママの作った晩御飯を食べて(アスランは家に帰った時には復活していた)、夜中まで
のび太の部屋で寿司詰めになりながら雑談に耽り―――
そして、夜が明ける頃に机の上に手紙だけ残してこっそりと出ていった。
<パパ、ママ、しばらくるすにするけど心ぱいしないで。すぐにかえります>
下手くそな上に平仮名だらけだったが、まあ伝わるだろう。
「のび太。よかったのか?ちゃんと挨拶してった方が・・・」
「うん。けど、寂しくなるから・・・」
それだけ言って、のび太は黙り込んだ。ドラえもんは何も言わず、タケコプターを取り出す。
「じゃ、行こうか」
「うん」
のび太たちはタケコプターを付けて、飛び立っていった。その先に待ち受けるのは、更なる激しい戦い―――
そして、ついに出発の時が来た。ジャイアンたちも久しぶりに家族との団欒の時を過ごしたおかげか、気力が充実している
ようだった。クルーゼとの決戦に向けて、心の準備もきっちり整ったようである。
<風雲ドラえもん城>をポケットにしまって、アークエンジェルへと乗り込む。発進のため、安全ベルトを付けて座席に着いた
ところで、キラが感慨深げに呟いた。
「・・・なんだか、信じられないよ」
「え、何が?」
のび太が聞き返す。
「いや・・・僕がメカトピアを出発したときは、僕とリルル、それにフリーダムとザンダクロスだけだったのに・・・
いつの間にか、たくさんの仲間ができたんだなあって・・・」
「そうだね」
「僕は、一人じゃ何もできないけど・・・みんなと一緒なら、何でもできそうな気がするよ。どんな強敵が相手でも怖く
ないし、星だって掴めそうな気がするんだ」
「そっか・・・」
のび太は微笑む。
「ぼくだって同じだよ、キラ」
「ふふ・・・さあ、出発だ!」
ドラえもんの声に、みんなが一斉におーう、と答えた。
投下完了、前回は
>>23から。
プリムラの魔法による氷付けはアニメ版のネタです。そこでの被害者は神王さまでした。
最近やたらキラが目立ち始めましたが、ウザがられないように注意せねば。
次回から最終章となる第三部<機神激闘編>。しかしやることは同じです。
シリアスが続いたので、しばらくギャグ話になりそうです。
>>25 うーん、これ以上敵を増やす予定はないですね。クルーゼ親衛隊・・・レイ・ザ・バレルとか?
>>26 仲間がいるってのは大事ですよね。時には家族よりも尊いものですから。
>>ふら〜りさん
指摘ごもっとも・・・orzそうすりゃよかったですね。
>>35 西尾氏はジョジョが好きですからね。
<ギニュー編・その6-(1)>
〜クレープ基地・ミルコの研究室〜
常闇のよりも暗い部屋では、蝋燭が必須である。
なぜなら人間などの夜行性で無い動物達は、暗闇の中では明かりがなくては
自分の進んでいる方向さえ判らなくなってしまうからだ。
しかし今、ギニュー達がいる常闇に支配されている部屋は、何故か薄暗い光が転々としているお陰で、
何とか方向だけは見失わずに進めている。
そう、この部屋を埋め尽くしている巨大な試験管の中から発せられる奇妙な液体のお陰で・・。
ある時は右に、ある時は左へ方向転換しながら、彼ら黙々と歩を進める。
試験管の中から感じる視線を、”気のせいだ”と誤魔化しながら。
――――彼らが左に曲がってしばらくすると、試験管で出来た分かれ道に差し掛かった。
一般的な講堂程度の広さしかないのに、この部屋に来てからもう三度目の分かれ道だ。
ギニュー達は1分ほど相談してから、左を選んで歩を進める。
この部屋の難解さは、恐らくミルコの自堕落さが生んだモノだろう。
実験したのは良いが、試験管の廃棄が追いつかない。もしくはメンドクサイ。
それが祟ってこの迷宮を生み出しているようだ。
三度目の分かれ道で左を選んでから、ギニュー達の感覚では右上に歩を進めていた。
「また分かれ道か・・・。」
右上に歩を進めていた三人は、開けた場所に出たかと思うと、この部屋に入って四度目の分かれ道に遭遇する。
「隊長・・。次は・・、右・・ですね?」
「いや・・バータ。連続で左の方が良いって母さんが言ってたから俺は左を押す・・。」
「二手に分かれるのは・・・。危険ですよね・・。」
そして、数分間の相談をした三人は、試験管から感じる視線を極力気にしないようにしてから、今度は右に行くことに。
彼らが右に行くと決めた瞬間、試験管の中にいる何かが笑った気がするのは気のせいだろうか?
それは誰にもわからない・・・。
67 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/02/26(日) 05:55:36 ID:hdcFAjDe0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<ギニュー編・その6-(2)>
〜クレープ基地・ミルコの研究室〜
「ふえ〜〜・・・。なんだか、俺達迷ってません?もう、やだあ〜〜〜。」
大量にある試験管一つ一つから感じる視線と、やたら複雑になった研究室の難解さに、
バータは思わず音を上げてしまう。
彼らがこの部屋に入ってすでに20分、試験管が壁となるため右へ左へ蛇のように移動はしているが、
その分だけ直進していることも事実。
確かに一般的な講堂程度の広さだったら、とっくにミルコの元へ着いてもお釣りが来るぐらいの距離は歩いているのだが・・。
「うむ・・・。前に来た時よりも、試験管の数が増えているな・・。そのせいで複雑になっていることは確かだが・・。」
バータのぼやきには、特に叱咤の姿勢を見せず、ギニューは”迷った”の部分だけを汲み取って肯定の意見をする。
「でも・・。別にこの研究室って、そこまで広くは無いですよね?確かに俺等の部屋よりは遥かに広いですが・・。」
バータのぼやきを聞いてか、グルドは急に心細そうな声を出す。
広くないのに広い。
遠くないのに遠い。
近づきたいのに近づけない。
グルグルグル・・・、彼らの思考と視線が回って行く。
そして彼らは段々支配され始めていた。
最初は試験管が多量にあるから迷うのだと、一握りだったはずの不安と――――――この迷宮に・・・。
68 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/02/26(日) 05:59:47 ID:hdcFAjDe0
「・・・。仕方が無い!ここは1つ大声を上げてミルコ殿を呼んでみるか!!」
さらに数十分後、10度目の分かれ道に遭遇したギニュー達は、ここから出たい一心での相談結果の元、
自分たちが行くのではなくこちらへ来させるという逆転の発想を使い、この部屋のどこにいるか分からないミルコを、
大声を出してここへ呼ぶ事にした。
肺活量2万のギニューの大声で。
「そうですね・・・。任せます・・。はあ・・、腹減ったなあ〜〜〜。」
「特に異論は無いで〜〜す・・。疲れた・・・。」
ギニューの発言に、疲れた顔と声で同意するバータとグルド。
(屈強な部下達が・・・。ここは1つ、俺の美声で!!それゆけ俺!!名誉挽回だ俺!!むしろ目的は後者!!)
二人の様子を見た後、『我が人気回復プラン』を目を瞑りながら何度も頭の中でそれを復唱したギニューは、
大きく目を見開くと同時に、一気にやる気を上昇させる。
「二人とも!ミルコ殿!!俺の声を聴けえええええええええええ〜〜♪」
そんな事を言って、ギニューは懐からエレキギターを取り出すと、大きく・・・・大きく・・・・!!息を吸い始めた!!
――――――それはもう、上半身が風船のように膨らむほど。
「こおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお〜〜!!」
「た、隊長の上半身が風船のように大きく!!!おお〜〜!!きょ、巨乳か??」
「ぐ、グルド!!モテナイ俺も気持ちはわかるが、中二病は卒業しよう!!それに耳を塞げ!!鼓膜がやられるぞ!!!」
グルドとバータは隊長の胸のふくらみにちょっとムラムラしながら、急いで耳の中に指を突っ込む!!
数秒後――――まるで大地と天空が裂けると言わんばかりな声が、この部屋全体に響き渡るはず・・・だった。
69 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/02/26(日) 06:00:54 ID:hdcFAjDe0
「おぶふぃふぁああ〜〜〜!!!」
突如、ギニューの胸が、三人の希望と共に急激に萎んでいく。
「げほ・・。へほげほ!!」
どうやら息を吸いすぎた反動で、大量の埃が器官に混入してしまったようだ。
「げほげほっ!!!ぐえ〜〜・・。死ぬう〜〜〜!!!」
全く予想外のアクシデントに、ギニューは思わずその場に寝転んでもだえ苦しみ始める。
流石に宇宙2位の強さを誇るフリーザ軍特戦隊の隊長も、中からの攻撃には弱いようだ。
「ぐう〜〜〜・・。み、水を・・・。バータ・・。グルド・・・。」
あまりの苦しさに、恥を忘れて部下に助けを乞う特戦隊隊長。
全く、これほどみっともない隊長は宇宙でこいつだけだろう。
しかし!!隊長が隊長ならば、部下も部下。
隊長が一番なら、部下はそれ以下なのがフリーザ軍のセオリー。
つまりこれが、このSSの鉄則である!!―――という事は・・・。
「痛い!!いてえ〜〜〜!しまった〜〜!!こ、鼓膜・・。耳がああ〜〜!!」
「し、死ぬ〜〜・・・。ああ!!隊長の胸が・・・・。胸が〜〜!」
ギニューのような奇行をとっていないのに、何故かギニューの同様その場でのた打ち回るバータとグルド。
どうやらギニューの大声に備えるために、耳の中に突っ込んだ指の勢いが強すぎて、
鼓膜を貫通したか傷をつけてしまったようだ・・。
「げほげほっ!!ほ、埃が・・。」
「いてぇ〜〜!!耳が〜〜!!耳が〜〜!!」
「耳ぃぃぃぃぃ〜〜!!!胸〜〜!!!胸〜〜〜!!!」
この世のモノとは思えないような場所に、この世の終わりのような声を上げながら、
その場でのた打ち回る特戦隊の面々。
まさに、狂気とアホと中二病が合わさったアルマゲドンが、この場にで起こっていた。
――――試験管の中から感じていたはずの冷たい視線が、一斉にそっぽを向いた気がした・・。
―――――――――――――――――――――――――――
70 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/02/26(日) 06:02:16 ID:hdcFAjDe0
<ギニュー編・その6-(3)>
〜クレープ基地・病棟〜
ミルコの研究室でのアクシデントの後、気を失っていた彼らが次に見た景色は、
真っ白な天井とミルコの顔であった。
「のう?おぬし等は、一体ワシのところに何をしに来てたんじゃ?」
半分呆れ顔のミルコは、事の大まかな予想がついているものの、
一応ギニュー達バカ三人に事の次第を聞いてみる事に。
「いや・・、研究室の広さに迷ってしまったので・・、つい・・・。」
「つい・・?まあ・・、おぬし等のことだから、絶叫して器官にゴミが入ったとか、
耳を塞ごうとして鼓膜を傷つけたとか、そんなところじゃろう。」
シャーロック・ホームズでも適わないような推理力で、ミルコは彼らの珍行をずばり的中させる。
この見事な推理に思わず布団の中に隠れるギニュー達だったが、ミルコはそんな彼らを無視して、
勝手に話を進め始める。
「まったく・・。体は大人・・。頭脳はムシ以下・・。ふう・・。コナンがうらやましいぞい・・。
ともかく、おぬし等の用件はなんだったんじゃ?
馬鹿馬鹿しいが、これじゃあ気になって帰るに帰れんわい。」
「はい・・・。実は・・・。」
ギニューは包茎の雑誌広告の如く、布団から頭の先端を少しだけ出して修行の件について話し始める。
―――――数分後・・・。
71 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/02/26(日) 06:03:10 ID:brOooQaD0
「ほう・・。それで口上を取得すべく、”ある人”の所へ行きたいと・・?」
「はい・・。そこで休暇が貰いたく・・・。ダメでしょうか?」
ギニューは事の次第をミルコに伝えると、今度は外出許可を貰うための交渉をし始める。
「う〜〜む・・。そんなことを言って、結局サボる気とかじゃないんのか?」
「そ、そんなことは!!決して!!!私ら、ギニュー特戦隊は、あくまでフリーザ様の為に・・。」
「ほんと?」
「本当です。」
「少しもサボらない?」
「決して。」
「本当は少し位はサボりたいじゃろ?」
「いえ、全く。」
「本当に本当?」
「本当ですよ。」
「やっぱり少しは・・・?ほら、怒らないから。」
「いや、その・・。実は・・・・。」
「この嘘つきがあああ〜〜〜!!!!」
「し、しまったあ〜〜〜!!はっ、これがサブリミナル効果?」
「「「この逆コナンがあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」」」
修行するための交渉――――もといミニコントは、こうしてミルコ側の勝利にて終戦したのだった・・・。
――――――――――――――――――――――――――
72 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/02/26(日) 06:03:56 ID:brOooQaD0
<ギニュー編・その6-(4)>
〜クレープ基地・宇宙船ドック〜
どんなSF小説でも、二十一世紀程度に生きている人間ならば、今ある光景を文字として起こすのはきっと無理であろう。
せいぜい、『真っ白で巨大なドーム状の空間にオモチャのロケットが一機だけ、無造作に着艦してあった。』
程度の文章が精一杯と思える。作家等の文章が、どんなに上手かろうと。
そう、ギニュー達が今から乗ろうとしている宇宙船は、正にそんな場所に着艦されていた。
「あ〜〜〜、ミルコ殿?宇宙船って・・・、これだけ?」
一度は交渉に失敗したギニューだったが、グルドの超能力を使った説得――――もとい拷問により、
半ば強制的に外出許可を貰う事に成功した特戦隊一行。
彼らは修行をつけてもらう人物(仮名)の居る惑星へ行く為の宇宙船を、半ばキレ気味のミルコにチャーターしてもらっていた。
そして、ミルコがチャーターしてくれたのが、先述した『おもちゃのロケット』である。
「当たり前じゃ!!これこそ我が軍の逆最新鋭のロケット!!名づけて・・・、ボンコツロケットじゃ!!」
ミルコが誇らしげにそう言うと、周りに居た一般戦闘兵がロケットのエンジンの扉を開けた。
プラスチック同士がこすれた時のような音と共に、エンジンの扉がゆっくりと開く。
――――すると、そこには・・!!
73 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/02/26(日) 06:09:15 ID:brOooQaD0
「「さ、栽培マン!?」」
バータとグルドの声が綺麗にハモる。
それもそのはず、何故か二匹の栽培マンが、ロケットのエンジン部の中で自転車に乗っかって、
すまし顔でこちらを見つめているからだ!!
「あの・・・。栽培マンに乗っているのは・・・。」
「無論、自転車じゃ!!そう!!正に逆最新鋭にふさわしいロケット!!人力じゃぞ!!今時珍しく。」
「・・・。」
ギニューは口をあんぐり開けたまま全く動こうとしない。
恐らく、宇宙初である人力ロケットに不安と恐怖でいっぱいなのだろう。
ミルコもその様子に気付いたらしく、さっきと打って変って嬉しそうな顔で、
不安を更に煽るような説明をさらに付け加え始める。
「ん?着陸に関して不安なんじゃな?安心せい!!
着陸の際は、栽培マンがロケットの下腹部で自爆して衝撃をやわらげてくれるぞい!!
ロケットもエンジンも大気圏で綺麗さっぱり無くなる設計じゃ!!正に環境を第一に考えた逆最新鋭ロケット!!
ああ〜〜〜、ワシって天才!!!」
そして、最後にこう一言・・・。
「宇宙の彼方へ、さあ!!行こう!!!片道切符の人力宇宙船で!!」
その時のミルコの顔は、ギニュー達が今までに見たことの無いくらい、邪悪な笑顔だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
74 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/02/26(日) 06:10:42 ID:brOooQaD0
<ギニュー編・その6-(5)>
〜?????〜
「とまあ、こう言う事だったな。以上回想終わり!!」
「へ・・・。隊長?それから、ここにどうやってきたんですか?
それに前回、星になった俺がどうやってここまで来れた経緯とかは?」
ギニュー特戦隊の顔の色が紅一点であるジースは、一見歯切れの良い回想の説明不足を指摘する。
そして、それを聞いたギニューは・・・。
「ん〜。説明したいんだが、覚えてないんだよ。バータやグルドは、それについて聞くと震えて何も言ってくれないし。」
「はあ・・・。じゃあ、どうやってきたんですかね?」
「さあ〜〜〜?唯、最後に記憶があるのが、ミルコ殿の『逆コナンには、これがふさわしい!!眠れ!!』
とか言って、腕時計を向けられたのが最後なんだけどなあ〜。
ん〜、全く分からん!!気付いたらこの星に着いていたし・・。」
(ね、眠らされていたのか・・。恐るべし・・。ミルコ殿・・・。)
ギニューの言葉を聞いて、ジースはミルコの容赦の無さに戦慄する。
それはもう、周りから見ても震えていると分かるほど。
「ん?どうしたジース?いくら震えても、お前がここに来れた経緯は説明せんぞ!」
「あ・・。いや・・。いいです・・。修行の続きでもしましょうか・・。」
「ん?そ、そうか・・?それじゃあ、お前達!!師匠の元に戻るぞ!!」
ここから少し離れた場所にある師匠の家へ戻ろうと、四人は一斉に東の方向へ飛んでいく。
ギニューの回想が長かったせいか、真上にあった太陽も、すっかり西の方へ沈み始めていた。
「隊長・・・。」
「ん?どうしたグルド?」
後、数分もすれば師匠の家に着くという所で、緑顔であるグルドが歯切れ悪い声でギニューに話しかける。
どうやら、何か心配事があるようだ。
それを示すかのように、彼の声には若干の心配した色がうかがえる。
75 :
74訂正です:2006/02/26(日) 06:20:17 ID:brOooQaD0
<ギニュー編・その6-(5)>
〜?????〜
「とまあ、こういう事だったな。以上!!回想終わり!!」
「へ・・・。隊長?それからどうやって、ここに来たんですか?
それに前回、星になった俺がどうやってここまで来れたとかの経緯は?」
ギニュー特戦隊の顔色が紅一点であるジースは、回想の説明不足を指摘する。
そして、それを聞いたギニューは・・・。
「ん〜。説明したいんだが、覚えてないんだよ。バータやグルドは、それについて聞くと震えて何も言ってくれないし。」
「はあ・・・。じゃあ、どうやってきたんですかね?」
「さあ〜〜〜?唯、最後に記憶がある光景が、ミルコ殿の『逆コナンには、これがふさわしい!!眠れ!!』
とか言って腕時計を向けられた所までだったな〜。
ん〜、全く分からん!!気付いたらこの星に着いていたし・・。」
(ね、眠らされていたのか・・。恐るべし・・。ミルコ殿・・・。)
ギニューの言葉を聞いて、ジースはミルコの容赦の無さに戦慄する。
それはもう、周りから見ても震えていると分かる程。
「ん?どうしたジース?いくら震えても、お前がここに来れた経緯は説明せんぞ!」
「あ・・。いや・・。いいです・・。そろそろ修行の続きでもしましょうか・・。」
「ん?そ、そうか・・?それじゃあ、お前達!!師匠の元に戻るぞ!!」
そう言ってギニューは、バータとグルドを自分の元へ呼ぶと、
ここから少し離れた場所にある師匠の家へ戻ろうと東の方向へ飛び始める。
ギニューの回想が長かったせいか、真上にあった太陽も、すっかり西の方へ沈み始めていた。
「隊長・・・。」
「ん?どうしたグルド?」
後、数分もすれば師匠の家に着くという所で、緑顔であるグルドが歯切れ悪い声でギニューに話しかける。
どうやら、何か心配事があるようだ。
それを示すかのように、彼の声には若干の心配した色がうかがえる。
76 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/02/26(日) 06:22:27 ID:PwyCdiGD0
「リクームって・・・、どうしました?」
「ああ・・。それはな・・・。」
”ああ〜、いたなあ〜〜。”という顔をしているギニューの代わりに、彼といつも一緒に居るバータが間に入ってグルドに説明する。
たった一言で・・・。
「星になったよ・・・。」
注;その頃のリクームは、バータ&リクーム編の最後を参照です。
77 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/02/26(日) 06:22:52 ID:08gvuS+w0
「リクームって・・・、どうしました?」
「ああ・・。それはな・・・。」
”ああ〜、いたなあ〜〜。”という顔をしているギニューの代わりに、彼といつも一緒に居るバータが間に入ってグルドに説明する。
たった一言で・・・。
「星になったよ・・・。」
注;その頃のリクームは、バータ&リクーム編の最後を参照です。
78 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/02/26(日) 06:38:12 ID:08gvuS+w0
あ・・、最後が二度投稿されてる。どうもしぇきです。
>すいません、75のそして、それを聞いたギニューは・・・。
の『そして』は『しかし』です。
これで、回想終了!!やっと、前編の本編に入れます。
>ハイデッカさん
自業自得と言ってしまえば、それで終わりのジャンヌの行為を
是非、慶次には止めて欲しいですね。
史実は悲劇(個人的には完璧な自業自得と思いますが)ですが、
この話では、せめて信長の攻撃を受けそうになった慶次を庇う形で
死ぬくらいのランクダウン的な最後が良いですね。
歴史は変わるか・・?
>ふら〜りさん
こんだけ愛らしいロリコンなら、きっと憲法の許してくれるはず!!
でもアーネは・・・。
ふら〜りさんも倒れないように気をつけてください。
家の母と違って麻痺は痛いですが。
79 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/02/26(日) 06:39:49 ID:08gvuS+w0
>サマサさん
やっぱり、つかの間というのが良いですね。
ペコに関してはノーコメントwもしかして、ここまでペコが虚仮にされるのは、
怒りと共に内なる野生が解き放たれる前触れか?
>見てた人さん
ヒロイン死亡!もう、ここまでくるとバットエンドを期待してしまうのは、
悲しい人間のサガなんですかね。
それにしても、犯人はいともたやすく人を殺していくなあ〜。
犯人を特定したら、全員でかからないと全滅する危険性も。
>スターダストさん
ISOを建前にする企業はブラック!!
じゃないですけど、あからさまなISOについての告白に笑いました。
それにしても、照正の性格はあの日記のままですか?やっぱり。
では失礼・・。
80 :
十六話「ワイバーン」:2006/02/26(日) 06:41:53 ID:mbTumzVw0
「うん?しまった・・・合図が遅いから寝ちまったよ・・・。」
寝ぼけながら船倉で見つけた小型船の中で目を覚ます。
その時、近くで轟音が響き渡る。
「ん?合図にしちゃ可笑しいな・・・。」
その轟音は爆破の音というより、叫び声に聞こえたからだ。
様子を探るため外へ出たホークを待ち受けるのは無残な姿となった魔物達の死体であった。
中には武器による攻撃を通さない程の硬さを持った鎧獣も居た。
周りを見回して初めて気付く、ここは「檻」だ。
なにか手に負えない巨大な魔物を収容するための・・・
良く見たら奥の天井には穴が開いている。
天井の周りの鉄格子が動いており、そこだけポッカリと開いていた。
まるで意図的に出されたかの様に。
船で見つけた小型盾と探し回って見つけた斧、そしてスタンの使っていた剣を持ち、穴の真下へ向かう。
見るべきでは無かった。
大きな町の自警団でも手を焼く程の大型の飛行する二足の竜。
「ワイバーン・・・!」
ワイバーン、通称、飛竜種。
ドラゴン程巨大ではないが恐るべきはその種類、繁殖力、そして戦闘力。
様々な器官を体内に隠し持ち、それを利用した吐息は炎を放ち、雷撃をも生み出す。
発達した二本の足で大地を蹴り、巨体を使って押し潰されたら重症を負うのは間違いない。
一部の飛竜は環境に適応する能力が高く、本来合わない土地でも十分な戦闘能力を発揮できる。
大量に繁殖すると戦争よりも悲惨な事態になっても可笑しくは無い。
その飛竜の中でも、代表的で、力強く、空中戦を大の得意とする空の王者、リオレウス。
一人で倒せるようになる事が冒険者として一流である事を示すが、そこまで有能なハンターは多くは存在しない。
硬い鱗を身に纏い、鋭い爪には毒を持ち、口から吐く炎のブレスは、
少しばかり術を使える者では太刀打ちできない程の高温を宿している。
リオレウスと目が合う、透き通った瞳に写る獲物の姿に興奮したのか船上へと降り立った様だ。
81 :
十六話「ワイバーン」:2006/02/26(日) 06:42:33 ID:mbTumzVw0
逃げる事は出来ない、何故ならワイバーンの飛行速度を上回る船など存在しないからだ。
こんなちっぽけな小型船では一瞬で粉々にされてしまい、リオレウスの餌になるか魚の餌になるかの二択しか無い。
生き延びるには・・・戦うしかない。
こちらと目が合ったのにリオレウスは甲板で威嚇行為を繰り返している。
恐らくケンシロウを最初の獲物に決めたのであろうか、尻尾を振り回しながらうなり声を上げる。
今のうちに甲板へ上がるべきだろう、マスト等もへし折られて甲板の方が広くなっているはず。
急ぐホーク、そしてケンシロウは・・・
「亡者の次は化け物か、来い!」
無想転生により極限まで高められた闘気は着実に鈍った体を以前の戦士の物へと変えていく。
浅い傷が特殊な呼吸法によって起されるアドレナリンの分泌によって見る見るうちに塞がって行く。
完全な戦闘態勢へと移ったケンシロウを狩るべく今、空の王者が陸を駆けた。
巨大な図体で視界を阻み、両翼を広げ翼爪で左右へ絶対のリーチを維持する。
雄火竜リオレウスの代表的な攻撃方法の一つ。
受け止めるために守りの型に入るケンシロウ、だが。
「グゥォォォ!」
直前で急ストップし、バックステップの様に飛び上がる。
そして口からは炎が溢れ出す。
「ゴォォォ!」
咆哮と共に放たれた火球はケンシロウを直撃し、爆破の衝撃で甲板が吹き飛ぶ。
空の支配者が放つ必殺の一撃が直撃した・・・ように見えた。
其処に残ったのは人間の燃えカスではなく、怒り、愛、悲しみを呼び戻した最強の漢。
今のケンシロウが纏うオーラは燃え盛る火炎すら寄せ付けなかった。
自信を持って放った必殺の一撃が通用しない事が支配者の逆鱗に触れたのか、常に口から炎を噴き出す支配者。
どんなワイバーンも怒るとその口からは常にブレスを放てるように息を溜め込む習性がある。
そして逆鱗へ触れた者への死を告げる。
怒った竜の突進は全てを砕き、怒った竜のブレスは絶望を呼ぶ。
どんなに優秀なハンターでも怒りが収まるのを待ちながらでないと竜の討伐など不可能である。
突如上空へと飛び立つ王者、人間という格下の生物を完全に葬るため、低いうなり声と共に、
その咆哮が放たれた。
82 :
十六話「ワイバーン」:2006/02/26(日) 06:43:20 ID:mbTumzVw0
どんなに硬い防具をも粉々に砕き、どんなに巨大な街でも炎の海へと豹変させる烈火の如き炎。
その業火は甲板を貫通し、船底をも打ち抜いた。
船が沈み始める、勝利を確信した王者はゆっくりと地へ降り立った。
「もう終わった様だな。」
爆炎により巻き起こった煙の中から声がする。
死を呼ぶ男は地獄の業火にも屈する事無く立っていた。
驚愕する王者、目を見開きケンシロウを見つめる。
余裕を見せ付ける様な仕草で焼け焦げた上着を破り捨てる、
「花火でこの俺が倒せると思ったか?」
元々飛竜は知性が高い生き物だがこの火竜は人間の言葉を理解出来るのか、
またはケンシロウの態度を挑発と受け取ったのか脳をも破壊しかねない咆哮を放つ空の支配者。
だがケンシロウは耳を塞ぐ事もせずにリオレウスへと歩み寄る。
体を回し、尻尾を振り回すリオレウス、だが手応えは無い。
基本的に連続でやる事が多い尻尾攻撃を違和感から来る警戒心で中断する王者、その判断は正しかった。
尻尾の中心まで鱗を砕きながらも亀裂が走る。
岩の如く屈強な自慢の尻尾を切られた事に思わずよろける。
恐らくは百戦錬磨を誇っているであろう、鱗には戦いの痕が刻まれている。
その王者の鍛え抜かれた尻尾を斬る程の斬撃とは?
新しい武器かと思ったのかケンシロウへと振り向く。
先程までは尻尾の先ギリギリの間合いだったのが近づいている。
巨大な尻尾はしゃがんだだけではかわせないはず、何故?
そして手には大量の血が付いていた。
それが自分の血である事に気付いた火竜は激怒し、咆哮を上げようとケンシロウへと顔を向け力強く叫・・・
「うるさいトカゲだ、迷惑にならない様にしてやろう。」
強烈なアッパーで無理矢理火竜を黙らせ、顎を砕く。
いままでどんな強力な防具をも貫き、どんな強力な武器もはじき返してきた王者。
それが圧倒されている、一人の人間に。
83 :
十六話「ワイバーン」:2006/02/26(日) 06:44:02 ID:mbTumzVw0
上空に舞い上がり距離を取ったリオレウス。
見詰め合う死の星の使者と大空の支配者。
暫く見詰め合った後、こちらに背を向け尻尾を引き千切るリオレウス。
尻尾をケンシロウの前へと置き、飛び去っていった。
「・・・フッ、こっちの世界でも強敵が出来たな。」
尻尾を持ち、ホークの元へと向かおうと海を見るケンシロウ。
当然だが出てはいない、だがホークの眼を信じる事にしてその場に立ち尽くすケンシロウ。
「ん?リオレウスはどこいった?」
後ろから不意に声が聞こえ、振り返るケンシロウの眼に映ったのは他でもなく、キャプテン・ホークだった。
「おお!生きてたのか、つーかそりゃリオレウスの尻尾じゃねぇか!たまに中に珠があるって話だ・・・」
そこまで言ってホークは気付く、海面が高くなってる事に。
そしてリオレウスが開けた穴を覗き込む。
アミバの実験用に幾つか用意した完全密封された部屋で浮力はついている様だが水はどんどん船の中へ、
というよりは船が水へ沈んでいく感じだ。
当然なのだろう、沈んでいるのだから。
「おい、船はどうしたんだ?」
嫌な予感を感じながらホークに聞くケンシロウ、すると。
「見つけたんだがリオレウスが見えたから援護しに船で階段を探し回って、ようやく辿り着いたぞ。」
予感が的中するケンシロウ、どうやらこのまま魚の餌になるしかないようだ。
「ラオウ・・・トキ・・・みんなすまない、出来る事なら戦いに溢れた荒野で死にたかった。」
まぁここなら俺の墓標もいらないな、等と考えながら瞑想に入るケンシロウ。
そこへ見えるのは一隻の船。
段々と近づいてきて船が沈む手前で横につく。
「キャプテン!無事でしたか?今尻尾の切れたリオレウスが飛んでいましたがまさか・・・」
紛れも無くゲラ=ハの声だ、ホークが助けを呼ぶ。
「いい所に来た!速く引き上げてくれぇ!」
こうしてケンシロウの心配は全くの無駄に終わった。
84 :
邪神?:2006/02/26(日) 06:44:44 ID:mbTumzVw0
タイトルに捻りがなくてすいません、またまたお久しぶりの邪神です。(0w0)
いやー、モンハン2面白いですねー。
自分リアル工房なのに廃人してます。
ここ数日寝てない日が多いですねー。
ただPS2ルータに繋いでないんでパソコンできません。
よって抜いて差して繰り返すのがめんどいという理由でサボリングです、すいません・・・。
ちなみに名前は鷹爪三角脚でお馴染みのあの人から使ってます。
廃人してる癖にHR24とか低いです・・・。
村がまったく発展しませぬ。クシャルダオラでストップしてます。
砂漠とか拾いとこだと強いねアノ子。密林だと雑魚かったのに。
しかも聞いてくれよ1よ、モンハンやってたんですモンハン、オンラインで。
そしたらクレクレ厨房が「ドラグどこ?」「紅蓮石どこ?」とか聞きまくり。
まぁ我慢してやってたんですがイライラして自分で調べろっていってやったら「すいません」とか言うんです。
これでいいかなとか思った次の瞬間「キリンって強い?」「装備の方も?」ですよ。
もうね、アホかと、馬鹿かと。
まぁこんな話どうでもいいですねw
〜今週の質問箱〜
アミバ様 信者率がハート様並に高いであろう北斗の拳のカリスマ的存在。
登場は一時期だけだがケンシロウを地面にひれ伏させる等とっても強かった。
でも気付いたらビルから落ちてる所、たわばって何だよ・・・・ P.S某フラッシュから無断拝借、すまぬネタが無い。
リオレウス モンハンの顔役的存在、だが防具はださいし強さもいまいち、武器は中々。
だが、俺を上回る廃人様から聞いた話しだと2になって大幅強化されたとか。
体内の火炎袋から炎を精製して、爪には毒を持つ。
ちょくちょく空を飛ぶけど着地時が隙だらけなんで意味なし。
ここら辺も改善されているのだろうか?ちょっぴり楽しみ。
315氏 スーファミでも神様は居ましたよー、ってーかアミバ如きってwwww
崇めてあげてくださいw
85 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/02/26(日) 07:12:54 ID:7WVyOFIb0
>>71 この逆コナンがあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
の、『この』は『お前は』に改善。
>>73 それもそのはず、何故か二匹の栽培マンが、ロケットのエンジン部の中で自転車に乗っかって、
すまし顔でこちらを見つめているからだ!!
を、
それもそのはず、ロケットの心臓ともいえるエンジンの部分に、
何故か二匹の栽培マンが自転車に乗っているのだから。
に改善。
同じく
>>73 ロケットもエンジンも大気圏で綺麗さっぱり無くなる設計じゃ!!
には、『そして、』を付加
>>75 「さあ〜〜〜?唯、最後に記憶がある光景が、ミルコ殿の『逆コナンには、これがふさわしい!!眠れ!!』
とか言って腕時計を向けられた所までだったな〜。」
を
「さあ〜〜〜?唯、最後に記憶がある光景が、ミルコ殿の『逆コナンには、これがふさわしい!!眠れ!!』
とか言って、腕時計をこちらに向けてきた所までだからな〜。」
に少し改善です。
すいません。
86 :
邪神?:2006/02/26(日) 07:34:18 ID:mbTumzVw0
あ、まだ書き込み残ってたんですか。
すいません乱入して・・・
87 :
作者の都合により名無しです:2006/02/26(日) 15:08:00 ID:VTciU2cD0
連続してキタ!
>超機神
戦い済んで日が暮れて…みたいな感じですね
案外、全員ママに対して常識人みたいな感じですね。
その中でもプリムラの可愛さは飛びぬけてるなあ
>フリーザ野球軍
迷宮ってのは、ミルコみたいに「作ったはいいが使わない」
みたいな感じで作られたのもおおいようでw
なんか本当に童貞の集まりみたい、特戦隊w
>その名はキャプテン!
ああ、ホークってそういえば主人公だったなw
最近ケンシロウに食われてるし。でも今回は目立った。
怪物に秘孔ってあるのかな?原作でも後半関係なかったがw
88 :
新連載:2006/02/26(日) 15:52:37 ID:VTciU2cD0
事実を事実のまま 完全に再現することは いかに おもしろおかしい
架空の物語を生みだすよりも はるかに困難である―――
(アーネスト・ヘミングウェイ)
これは事実談であり……この男は実在する!?
この男の一代記を 読者につたえたい一念やみがたいので
アメリカのノーベル賞作家ヘミングウェイのいう「困難」に
あえて挑戦するしかない……
わたしたちは真剣かつ冷静にこの男をみつめ……
そして その価値を 読者に問いたい……!!
国際ヘルス道連盟 極チン会館ヘルス道十段
ハイデッカ
男の…ふといカリ首には左右からピタリ…と鋭い舌先がつきつけられていた
さらに……
2人の女の膣口が空間ひとつをへだてて…男の巨チンに照準をさだめていた……
男は…… うすく目をとじベッドに横たわり… 両腕を垂らし…
両足を脱力し自然体でベッドに肉体を載せていた……!!
200X年6月のある夜ふけ ここは…東京池袋東口付近の風俗街
雑居風俗ビルの一角 ある古びたヘルス店であった……
89 :
新連載:2006/02/26(日) 15:54:01 ID:VTciU2cD0
カリ首に舌先を付けていた女が、見下したように笑った。
「マス・ハイデッカ!! あんたはゴールドフィンガーの持ち主と聞くがね……!!
しかしこうなっちゃ絶体絶命! 手も足も出まいよ フフフ」
もう一人の女が追従し、嘲るように大声を出す。
「東京の風俗街にタテついちゃあ うぬぼれがすぎようってもんだ!」
歴戦のヘルス嬢の挑発にも…… 男の表情は…肩眉ひとつ動かない…
苛立つヘルス嬢の片方が カリ首への舌先を激しく動かす……
「ホレホレ あなたの指先にはこの絶体絶命をなんとかできる力がある……
とでもいうのかね?」
それまで冷静だった女が急に激した 女の嬌声があたりに木霊する…
「3流AVじゃねえんだっ!! 奇跡は絶対におこらねえ!
アタシたちの素股で1発! テコキで2発! イカされたあとのアンタは…
アタシたちのいい日と悪い日を聞いて 常連になるだけさ!」
いまだ冷静さを保っている方の女が、舌先を這わせている女に指示を出した
「フフフ イカせてやんな ゆっくりと…な!
ミスター・スーパーマンに 客らしくイキ悶えていただくんだ!」
男の肉体を刺激している女の 舌先指先が激しく動き出す
だが、男は始めて声を発した 冷静に、なんの揺れも無い声で……
「では…… どうしてもあの女の情報はわたしてくれん…… というんだな!」
ヘルス嬢二人の顔色が一変する。震える声で強がりを言う女
「まだ あんな強がりをいってやがる!」
突然!
男の動きが野生のネコ科の獣のように素早く、柔軟にしかも力強く動き出した!
「チェストーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
気合一閃 それまで静かだった男の激変に ヘルス嬢は完全に動転した!
90 :
作者の都合により名無しです:2006/02/26(日) 15:54:08 ID:ogvVlwXc0
91 :
新連載:2006/02/26(日) 15:55:23 ID:VTciU2cD0
だが激しすぎる気合とは裏腹に 男の動きは 精妙を極めた!
男は… まず近くの女の膣口に 信じられない速さで右中指を差し入れ
膣口近くの急所のGスポットを あっという間に見つけ出すと
すぐさま瞬間一撃で 女をイかせ 意識を遠くに飛ばしてのける!!
世に言う指バイブ――― 一見 ありふれた技である
だがこの男の指には 一般人とは違い 異常なタコが隆起し
その振動は ピンクローターの振動すら遥かに凌駕し 更には自在に自動した!!
垂らした手は指バイブのための周到な準備であり…… 油断を誘うための脱力であった
人間は突き上がる快感を喰らえば そのままうずくまるもの……!
凄絶!!
突然 ベッドから男は跳ね上がり 少し離れた場所にいた ボス格の女への間合いを
一気に詰めると 股間の急所の肉芽に 瞬時に指を這わせ 抵抗する力を奪う!
いっしゅん!! 女は宙に舞った!
男は急に ヘルス嬢を空中に持ち上げ そのまま力技で一回転させ
空中に女を浮かせたままで 膣口にしゃぶりつき クンニを遂行する!
空中に浮かんだまま 超絶の舌技の前に 失神するヘルス嬢!
92 :
新連載:2006/02/26(日) 15:57:05 ID:VTciU2cD0
_
/;;;;;;;;ヽ __ ヘルス嬢を持ち上げて一回転させ
ヽ;;;;;;;;;;;∨;;;;;;;;;;;ヽ 空中に浮かせたままクンニ!
\丿|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ この実にSFチックな離れ技を使用する
|;ヽ_________ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\ ある基地外なサオ師を作者は知る。
\;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;∧;;ヽ
|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ ヽ;;ヽ,, 本人なので実名は伏せるが
ヽ───;;;;;;;;;;;;;_;;;;;;;;;;;;;;;/ ''⌒丶 アコムの限度額まで風俗に注ぎ込む
 ̄ ̄/;;;;;;;;;;;;/ 荒業を条件にこの技は
|;;;;;;;;/ ̄
ヽ;;;;ヽヘ 実 在 す る !!(ハイデッカ・談)
時間にしてわずか数秒……
2人のヘルス嬢は しばらく立つことが できなかったのである……
店を出る際、男は寂しげにこう呟いた。
「また手がかり無しか… 我が風俗道 超人追求において 避けられぬ敵……。
地上最強の性物と呼ばれる風俗嬢、王花(源氏名:オウカ)よ……」
ヘルスバカ一代 プロローグ 「超人追求編」
93 :
ハイデッカ ◆duiA4jMXzU :2006/02/26(日) 15:59:16 ID:VTciU2cD0
いつも朝目覚めるたびに、新聞やテレビやネットを賑わす
世界中の悲しいニュースに心を痛めています。
そんな時、いつもボクをお空に向かってこうお祈りを捧げるのです。
「神様、ボクの命なんてどうなってもかまいません。
その代わり、世界中の戦争や貧困や飢餓を少しでも減らしてあげて!」
でも、ボクの祈りはいつも届きません。
わかっています。ボク一人がこんな事を思っているだけでなく、
世界中の人々が、ボクみたいな気持ちを持たないとダメだって事を……。
ボクの望みはたったひとつです。
ボク個人は、お金も名誉も地位も入りません。それよりもずっと大切な願いがあります。
それは……
世界から戦争が無くなり、人々が幸せでありますように。
>>新連載
ヘルスSS!!??
SS界にまた新しい風が吹いた・・・(?)
ハイデッカさんが地上最強の性物をイカせる日を楽しみに待ってます。
>サマサ様
サマサさんは、こういう緩やかな流れのほのぼのした
ムードの方が得意っぽい気がする。プリムラや稟たちが生きるし。
帰るところがあるってのはいいですね。
>しぇき様
あ、この作品群はやはり他のパートと同時進行してるのかな?
「フリーザ野球軍」ですし。ミルコは相変わらず最強の一角ですね。
はた迷惑な隊員がいとおしい。
>邪心様(混線は注意しましょうw)
ケンシロウがようやく、乱世最強者の力を示し始めましたね。
ちょっと前まで引き立て役立ったので安心しました。
でも、こんな段階で究極奥義を使って大丈夫?
>ハイデッカ
市ね(聖少女終わらせてから)
悪魔を宿す男
「ぐ・・・ぐううううっ・・・!」
私は自らの内から湧き上がる悪寒に身を震わせる。
―――奴が暴れている・・・!半年ぶりの感覚だ・・・!
奴は私の都合などお構いなしに、気まぐれに外に出たがる。
それを気兼ねなく解き放ってしまえば、どれだけ楽か・・・だが、それはいけない。
私がそれを宿していることを知れば、普段は私に気さくに話しかけてくる人たちも私を嫌悪し、
遠ざけるだろう。
早くこの怪物を落ち着かせなければ・・・
それでまた数ヶ月は、この浦安は平和となる。それが束の間であっても―――
嫌な音がして、奴が少しだけ顔を覗かせた。
「くっ・・・待て!ここではダメだ・・・!あと少し・・・あと少しだけ持ってくれ・・・っ!」
私は意識を総動員し、力の限り奴を抑え込む。だが、それももう限界だ。
この悪魔を鎮める聖なる場所まで、あともう少し―――!
それまで、絶対にショックを与えてはならない。奴はもう、すぐそこに―――!
「よーっす!なにやってんだよー!?」
―――子供の声。私と知り合いの、坊主頭のやんちゃな少年だ。
その元気な声に、一瞬気を取られた。そして私は、悪魔を抑えきれなくなった―――
全てを飲み込む悪鬼が、今、私の中から歓喜の声を上げて産み出される―――
緊急号外・見出し
悪夢!浦安に大量の排泄物が!
本日午後3時ころ、浦安に恐るべき事件が起きた。
なんと、市内を埋め尽くすほどの排泄物が突如として出現したのだ。
排泄物の専門家・須加吐露(すかとろ)大学の真田無私(さなだ・むし)教授はこう語る。
「非常に興味深いですね。果たしてこれだけの量の排泄物をいかにして用意したのか、そして
どうやって一瞬にして出現させたのか。調べれば調べるほど謎は尽きません。是非ともこの件に
関しての論文を発表したいですね」
「いやーはっはっは、やってしまったよ」
私は照れ隠しに笑う。奴を大放出したおかげで、今は実に晴れやかな気分だ。
体中自分の排泄物に塗れていることも気にならない。
「何せ半年振りでして。ふう、私としたことが、とんだ失敗ですよ、ははは・・・」
「はははじゃねえぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーっっっ!!!!」
同じく排泄物塗れの少年のプロボクサーもかくや、というパンチが、私のしゃくれた顎を粉砕した。
―――そうそう、まだ私が誰なのか言ってなかったね。
私は国会議員。顔は某プロレスラーに似ている。
いつか私に会うときがあれば、声をかけるときは慎重に。
もしかしたら、その時も私は自らの内の悪魔と戦っているのかもしれないのだから―――
投下完了。初めてのうんこSS。サナダムシさん、勝手に名前使ってすいませんでした。
ちなみにこのキャラは「浦安鉄筋家族」の国会議員です。
レスに対しての答えは次の超機神の更新の時に。
>サマサさん
・超機神大戦
優しくみんなを受け入れるママ。そして黙って去っていくのび太。いよいよ最終決戦の雰囲気ですね。
願わくば、今回は神界の最後でプリムラが泣いたようなエンディングでなく、みんな笑っているものを。
・悪魔を宿す男
サマサさんまで書き始めましたかw
浦安はこういうネタの宝庫ですが。全職人でうんこSSコンペとか、面白そうですねw
>しぇきさん
こういう隊長を持ってしまった隊員というのは、幸運なのか不幸なのか・・w楽しそうではあるが。
星になったり、奇行に付き合わされたり、大変ですね、ギニュー特戦隊のメンバーw
>邪神?さん
どうやら、ケンシロウはメインメンバーの一角に収まりそうですね。どう見ても味方で一番強いし。
ラオウとかトキとかは流石に出てこないのかな?アミバだけじゃ寂しいです。
>ハイデッカさん
多分、バキスレの歴史の中でも本人が主役を張るSSというのは始めての気がする。
その上風俗SSかよw 後書きとあわせて、個人的に神認定w 愛情を込めて氏ねw
100 :
作者の都合により名無しです:2006/02/26(日) 20:22:19 ID:YxJt5h4v0
>>31 「ぼくだってワザとやったんじゃない! 本当は制御できる予定で、平和的な見世物に」
タマネギ1号のウルトラ巨大ハンマー、再度炸裂。
「ワザと人類を滅亡の危機に陥られてたまるかっ、この異次元ゾウリムシっっ!」
タマネギ1号から遅れること約2分、2〜6号も駆けつけてきた。タマネギ1号は
手早く状況を説明し、3号には軍への伝達とカーズの捜索、4、5、6号には
市民の避難を指示する。残った2号と1号は、とりあえずカーズについて考えてみた。
「一応、溶岩で死にかけた相手だ。マリネラ全軍が本気で集中砲火を浴びせれば、
何とか殺せるとは思うが……それをやったら首都が廃墟と化す」
「もし逃げられて『暗殺』を意識して動かれたら止めようがないしな。変装(というか
変身)・侵入・破壊工作なんかやらせたら完全無欠の相手だし」
「こっちは戦車や爆撃機を動かさなきゃならんから、奴に察知されないはずがない。
兵器の質も規模も当時のナチスなんか比較にならないが、それも全然活かせない、か」
しかし何とかしないと、冗談ではなく人類の滅亡だ。範馬勇次郎とはワケが違う。
「1号、どうする?」
「……フリーザやセルでなかったことを、不幸中の幸いと思うしかあるまい」
タマネギ1号は、とりあえずパタリロを叩き起こして、カーズを元の世界に戻す機械を
作るように言った。どう頑張っても一週間以上かかるとかヌカしたが、何とかしろと
怒鳴りつけて第二工作室に放り込む。それからタマネギ2号に命令した。
「プラズマXを鉱山から呼び戻してくれ。それと、どうせ非番だろうがあいつもな」
「了解!」
タマネギ2号が駆けていった。既に全タマネギに4、5、6号から事態が伝わっており、
宮殿内は騒然としている。
タマネギ1号は一つ大きく深呼吸して、むりやり気持ちを静めた。
「究極生物……勝てるのか、我々は?」
間もなく軍から、カーズを補足したとの連絡が入った。いよいよ戦闘開始である。
パタリロのせいで異常な事件には慣れており、そうでなくても元々のんきなマリネラ国民。
だが今回ばかりは、タマネギたちの気迫が伝わったのか皆真剣で、彼らの指示に従って
大急ぎで街から避難していく。
静かになった街を、小さな腰布だけを身につけた、ギリシャ彫刻のように輝く美しさを
もつ長髪の男が歩いていた。その顔には気品と自信、狡猾さと冷酷さが溢れている。
パタリロがこの世に招いてしまった究極生物、カーズである。
「ムゥ……JOJOはどこだ? いや、それ以前にここはどこだ?」
場所の移動のみならず、戦前から一気に現代へとタイムスリップしたのだから、さすがの
カーズも少し困惑しているようである。だが何であれ、とりあえず自分に危害を加え得る
ような存在など皆無。そう思っていると、空から何かが舞い降りてきた。
「? 何だ、人間型の飛行機?」
そいつは、カーズの前方五メートルほどのところに着地して言った。
「ビビ! 殿下が、お前を帰す機械を作るまで、大人しくしていれば危害は加えない!」
「殿下? ああ、もしかしてさっきの潰れ大福か?」
「ビビ、その通りだ。だが、もしお前がこの国の人々に危害を加えるならば、
力ずくで叩き伏せる!」
と身構えるプラズマXを、カーズが見つめて分析する。
「体温……脈拍……フン。シュトロハイムとかいう奴の親戚か。だがあいつと違って、
人間の部品は皆無だな。この国の科学力は、ナチスとやらより上らしい。……ならば」
カーズは両腕をだらりと下げて、プラズマXに向かって歩き出した。
「このカーズは、この国の人間を喰らい尽くす為にやってきた。さあ機械人形よ、
叩き伏せてみせろ。できるものならな」
「ビ、ビビッ?」
「思い知らせてやろうというのだ。お前たち人間の知恵も勇気も能力も兵器も、この
カーズの前では無力だということを。ほらどうした。来ないのならこっちからいくぞ?」
間合いに入り、カーズが右腕を上げた。すかさずプラズマXが、その右腕めがけて
ハイキックを繰り出す。
と、カーズの前腕に諸刃の鎌のような刃物が生え、プラズマXの脚を弾き飛ばした。
鋭い金属音と多量の火花が飛び散り、重い衝撃を受けたプラズマXがよろめきながら
脚を下ろす。見るとパタリロ特製の超合金製である脚に、深い傷が刻み込まれていた。
生物相手にこんなダメージを受けたのは初めてなので、プラズマXは驚愕し
戦慄する。が、カーズはむしろ楽しそうに、
「リンゴのようにメロンのように斬ってやるやるつもりだったのだがな。どうやら
お前の体を斬るのは、少々面倒なようだ。だがそれなら、こういう手もある!」
カーズが、今度は一直線に駆けてきた。反応が遅れたプラズマXは、今度は慎重にガード
を固めつつ迎撃に出る。カーズ自身も言っているが、いくら何でも一撃で一刀両断!
なんていうのは不可能なはずだ。
両腕で上体をカバーしつつ、今度はミドルキックを放つ。カーズは手刀で打ち落としに
きた。さっきの刃は使わないらしい。よし、単純な力比べなら負けない! と思ったら、
「ビビビビッッ!?」
一刀両断された。すれ違いざまのたった一撃で、プラズマXの右脚の膝から下をそっくり
持っていかれたのだ。まるで人込みの中でスリ取られた財布のように、静かに滑らかに。
カーズは右手で、プラズマXの下腿をくるくると弄んでいる。それを見て、そのカーズの
手を見て、今何が起こったのかをプラズマXは理解した。
カーズの右手の指が、いつの間にか十本近くに増えている。そしてその一本一本が、
硬質化し変形しているのだ。ドライバーもどき、スパナもどき、ペンチもどきなどなど。
『ビビ……ま、まさか、そんな、バカなっっ!?』
バケモノとしか言いようのない指の異常な変化。プラズマXの構造をあっという間に
見切って把握した頭脳。そして達人の居合い斬りよろしく瞬く間に、だが切断や破壊
ではなく丁寧に「分解」してしまった信じ難い技術。
プラズマXも今まで、自分と同じロボットを中心に様々な敵と戦ってきた。が、
この相手は違う。強いのはもちろんだが、強さ以外も全てが超越している。
「ビビ……こ、これが、究極の、生物……」
「フフ。いかにもこのカーズは究極の生物。そしてこれが、ガラクタの部品だ!」
カーズが、自らもぎ取ったプラズマXの右下腿をプラズマXに投げつけた。それは
片足立ちのプラズマXの胸に激突、砲弾さながらの威力でプラズマXを弾き飛ばした。
自分の脚で自分の胸を全力で蹴りつけたも同然のプラズマXは、あえなく意識を失って
倒れ、動かなくなる。
「矮小な。やはり、人間どものやることなどこの程度のげぶぉっ!」
いきなり、カーズは踏んづけられて突っ伏した。空から降ってきた少女によって。
作中でも言ってますが、正面から激突して殺すことだけ考えるのなら、現代兵器を
駆使すればそう難しくはないのではと。けど現実には「軍隊はまだ来ないのか!」
「来年の今頃には来るだろうよ!」とか「国会で審議中。多分間に合わない」とか。
そういうこともあるでしょうからねえ。引用はメタルジャックとガクセイバーでした。
>>ハイデッカさん
聖少女風流記
実際に慶次と一緒に旅してたら絶対見られないであろう、慶次の不安や哀しさといった
内面。彼にそんなものを抱かせてしまう辺り、下世話ですけど女として流石だジャンヌ。
新連載
元ネタに沿った豪快文体の割に良く言えば繊細、悪くいえばみみっちいことを……と思っ
てたら空中一回転。ここだけ漫画的ですが、真実は? ってとこまで元ネタ通りですな。
>>見てた人さん
この状況で部屋の中を調べようという判断ができる辺り、カイジの覚醒が始まってますね。
無事に終わった、と一旦安堵してたとこへの急転直下なのに見事。しかしこれで告発ミス
ペナルティの恐ろしさを一堂が実感、でも疑心暗鬼は深まり……動きの取れぬ泥沼状態か。
>>サマサさん
超機神大戦
非日常バトル寸前の、思いっきり日常。でもママは非バトルなら非日常に慣れていた、と。
そしてやはりペコとプリムラが可愛くて好きです。この二人の別れってのも楽しみだなぁ。
うんこSS
誰しも、私も幾度となく経験したあの悪魔との戦いを明確に思い出しました。あの焦燥、
不安感は独特ですよねぇ。でも半年分……実際にはどれぐらいの量になるのか、興味あり。
>>しぇきさん
初期は突っ込み溜息常識人ポジションだったミルコが、いつの間にやら逆最新鋭ロケット
ですかっ。ギニューが暴走すればそれを彼が上回り、唯一常識人に近いジースは大人しい。
もう誰も止められませんな本作ボケ陣は。でも試験管から出てたシリアスの匂いはドコに?
>>邪神? さん(アミバの人気といえばファンロードに歴史あり)
いやぁ良かった。もう登場して結構経ちますが、ようやくケンシロウの、文句なし圧倒的
強いぞバトルが見られて。と喜ぶ間もなくいきなり瞑想に入ってくれて、オイオイと思っ
てたら助かって安堵。世界有数の強者と認定されたケンシロウ、今後の活躍が楽しみです。
106 :
作者の都合により名無しです:2006/02/26(日) 23:44:23 ID:UcaOmOgR0
なんか一気に来てるw多いんで一行感想でごめんなさい
・超機神大戦
プリムラはどこでもヒロインオーラですね。戦士のつかの間の休息って感じですな
・フリーザ野球軍
シリアスになるか・・と思ったらやはりドタバタですねw特船体はこうでなきゃ。
・キャプテン
ケンシロウやっと大活躍か。ロマサガ知らないんで、いっそケンを主役にしてほしい。
・ヘルスバカ一代(すげえタイトルだw)
本当にバカだなw いや、すごいわ。これを極真やってる友達に読ませてやりたいわw
・マジカルインベーダー
確かに侵略者がどんどん豪華になって増すな。カーズではプラズマでも倒せまい。
いや、ハイデッカ氏凄いわ。なんかクスリでもやってるとしか思えないw
107 :
作者の都合により名無しです:2006/02/27(月) 18:05:25 ID:lxGNMUSr0
>ふら〜りさま
いつもお疲れ様です。
出ている中で分からない作品も多いのですけど、
ふら〜りさんらしさが溢れてて良い感じです。
これからも頑張って下さい。
うんこ大流行ですね。サマサさんもやっちゃったかw
第六十一話「温泉騒動」
アークエンジェルが地球を発ってから、しばらくして。
「それにしても、お風呂に入りたいわね・・・」
みんなで集まって雑談している最中に、しずかがため息と共に言った。
「そう言えば、この艦って部屋にシャワーしかないもんね。湯船にゆっくり浸かりたいってのはあるかも」
亜沙もそれに同意した。
「ん?待てよ・・・風呂か」
アスランは顎に手をやって考え込む。
「おいバカ王子。この艦には確か、温泉があるんじゃなかったか?」
「温泉!?ほんとに!?」
しずかが目を輝かせる。バカ王子はそれに頷いた。
「ああ。ギャグで温泉を取り付けてはみたんだが、誰も利用者がいなくてね。うむ、折角リクエストがあったのだから、
使ってみるとするか」
―――こうして、一同は温泉へ入ることになった。
「こんな所で温泉に入れるとは思わなかったね」
「ほんとにね」
脱衣所でのび太たちは口々に言い合う。しずかのように特別風呂が好きというわけではないが、温泉でゆっくり疲れを
癒したいという欲求はあった。
「さて、みんな服は脱いだな?では温泉に入るしかないじゃないか!」
「よし、出陣だ!」
フルチン状態のアスランとバカ王子は既にハイテンションだ。
「二人とも、せめて股間は隠そうよ・・・」
「なに、男同士で恥ずかしがることはないじゃないか!キラ、お前もそんなタオルなんて巻いてるんじゃない!」
「うわっ、ちょ、ちょっとやめてよ!」
キラの腰に巻かれたタオルを奪うアスランとバカ王子。だがそこから転げ出たブツを見て、二人は愕然とした。そして
脱衣所の床にひざまづく。
「調子こいてすいませんでした・・・」
「いや・・・別にいいよ・・・」
キラはタオルを巻きなおす。二人はうな垂れていたが、次に矛先をムウに向ける。
「ムウさん!ならばあなたと勝負するしかないじゃないか!」
「お?いい度胸だな。俺のはちょっと凄いぜ?」
ムウは堂々とタオルを外し、ブツを曝け出す。二人は顔面蒼白になり、床に頭を擦り付ける。
「すいません・・・マジ調子こいてました・・・もう勘弁して下さい・・・」
「ふっ、大人を舐めるなよ」
年長者としての余裕を見せ付けたムウ。だが威厳は全くなかった。
「くそっ・・・このままではアスラン株がライブドア並に大暴落だ!稟!こうなったらお前も見せろ!」
「ちょっと待て・・・何で俺までそんなアホな戦いをしなけりゃならない!?」
槍を向けられた稟は焦るが、そんなことでバカ二人は止まらない。あっさりとタオルを奪われ―――
「な・・・・・・なんじゃこりゃあ!?」
アスランとバカ王子は驚愕のあまり力なくへたり込む。ムウも冷や汗を流していた。
「き・・・貴様・・・!そんな人畜無害な顔で、そんな恐ろしいブツを・・・!」
「流石はエロゲ出身なだけはある・・・見事だ・・・!」
「やるな・・・流石の俺もそれには勝てん」
「・・・勝手に言ってろ」
稟はぶすりとタオルを巻きなおす。
「何をやってるんだ、あの人たちは・・・」
「知らんでいい、知らんで。バカが移るぞ」
呆れ顔のペコと、もはや処置なしといった様子のクラフト。風呂に入る前からこんな有様であった。
―――それはともかく、温泉は素晴らしいものだった。
優に二十人は入れそうな広い浴場に、天井はガラス張りになっていて、満点の星空が天然のプラネタリウムとなって、
最高の景色を演出している。
「それにしても、宇宙空間なのに温泉なんて入れるものなのかなあ?」
ばしゃばしゃと顔を洗いながら、のび太は疑問を口にする。
「どうやらこの艦には重力制御システムも完備されてるみたいだからな。感覚的には地上と全然変わらないよ。だから
悠々と温泉にもつかれるってわけだ」
のび太の疑問にタオルを頭に乗っけたムウが答える。
「全く。原作ではそこまで便利な装置は付いてなかったのに。サマサの設定改変も相変わらずだな」
「・・・アスラン」
相変わらずの超次元発言をかますアスランを、キラは悲しげに見つめた。この戦争が終わったら、僕は介護ヘルパーの
資格を取ろう。そしてアスランがいよいよボケたら、オムツを取り替えてやろう。
キラは静かに決意した。
「ま、何でもいいじゃねえか。おかげで気持ちよく温泉に浸かれるんだから」
「ジャイアンはいいよね、呑気で」
「なんだと!」
いつも通り、余計な一言でジャイアンに怒鳴られるスネ夫だった。ははは・・・と笑いあったところで、女性陣の声が聞こえて
くる。壁は結構薄いようだ。
「えへへー。温泉ってすごい気持ちいいぞー」
「うふふ。フー子ちゃんは暖かいところが好きだものね。リルルはどう?」
「そうね・・・わたしはロボットだけど、それでもこういうのはいいわね」
「そうそう。女の子はお風呂が大好きなものよ。そうよね。リムちゃん」
「私は、そうでもない・・・けど、こうやってみんなと一緒は、楽しい・・・」
「あはは・・・」
―――実に華やかな感じであった。
「キラ・・・はっきり言っていいか?」
「なに、アスラン?」
「女湯が覗きたい」
「はっきり言いすぎだよ!てゆうか、ダメだよそんなの!」
「いやいや、キラ。こういうのは定番のイベントだからな」
ムウまでそんなことを言い出す。
「別に女の子の裸を見たいとかそういうんじゃないんだよ。覗くってこと自体にドキドキワクワクしたりするもんなんだ」
「ムウさんまで・・・稟、君も何とか言ってやってよ!」
「キラの言う通りですよ。覗きなんてダメ―――」
<おいおい稟、そんなつれないことを言うもんじゃないぜ?読者だってそれを期待してるはずだ>
「お前な、マサキ・・・」
「いやいや、やはりここは覗くべきだと僕は思うわけだよ」
今度はバカ王子だ。
「みんなでちょっと悪いことをすれば、共犯意識から団結も強まる。それが戦いにおいて力になるのではないかな?なあ、
君たちもそう思わないか?」
「い、いやあ〜〜〜・・・ぼくたちはそんな・・・」
のび太たちもデレデレするばかり。気持ちが傾いているのは明らかだ。
「そう!愛だ恋だ騒いだって所詮人間はアニマルなんだ。自然の欲求に従ってなにが悪い!」
「う、うーん・・・なにが悪いって言われても・・・」
アスランは乗り気でないキラには構わずにまくし立てる。
「だったら覗くしかないじゃないか!女湯があれば覗きたい―――それが人の夢!人の望み!人の業!湯・即・覗!
それこそが俺の掲げる唯一の正義!HとEROではただのスケベ野郎だが・・・二つ合わさればヒーローとなる!さあ、
今こそ俺たちはヒーローになるんだ!」
「いや、だけど覗きはよくないよ・・・」
言い募るキラに、アスランは苦渋の表情を浮かべた。
「キラ・・・お前の言うことも分かる・・・分かるけど・・・俺は女湯を覗きたいんだ!」
「えっ・・・!?」
あまりにも堂々としたアスランに、キラの方がうろたえる。
「女湯が覗きたくて、たまらないんだぞ!何故お前はそれを分からない!女湯を覗くのも、ばれて叱られるのも、全て俺の、
男としてのサガのせいだって、そう言ってお前は俺をなじるのか!?俺は風呂を覗きたいだけなのに!」
「なっ・・・ア・・・アスラン・・・っ!?」
「なら俺は―――女湯を覗く!」
「えっ・・・!?」
―――女湯の脱衣所の床の下。
アスランたちは昔ながらの泥棒さんのように唐草模様の手拭いを鼻に引っ掛けて、床に穴を開けている。
「さあ、風呂に入っている間に早く穴を開けるんだ!早くしないとみんな上がってしまう!」
「・・・だから、やっぱりよくないって・・・」
「そう言いながら、何故お前は来ている?」
「う・・・」
勢いに押されて来ただけなのだが、来たことには変わりないキラは何も言い返せない。
(やっぱペコたちと一緒に残っとけばよかった・・・)
そう思って、キラはため息をついた。ペコとクラフト、サド、コリンは来なかった。
「ぼくは人間の女の子には欲情しませんし・・・」
「俺たちはもうそんなガキっぽいことをする年でもないな」
それが彼らの言い分だった。
「よし―――穴が開いた!存分に覗くしかないじゃないか!」
アスランは開けた穴にぐいっと目をくっつけて、女性たちを待ち受けるアスラン。
「さあ!女性たちよ、早く来い!」
―――そして、女性陣が風呂から上がってくる気配があった。アスランの鼻息が否応にも荒くなる。
「よし・・・来い来い!もうちょいこっちに・・・」
「―――何が、もうちょいって?」
「へ・・・?」
背後から聞こえた女性の声に、アスランは恐る恐る振り向く。
亜沙がにこやかな顔で、そこにいた。男性陣も思わぬ闖入者に、すっかり固まっている。
「ボクだけ早めにお風呂から上がって、先回りしておいたんだよね。来るならこっちかなー、って思って」
「ば・・・馬鹿な!何故ばれた!?」
「何故ばれたも何も―――いくら男湯にいても、あんな大声で騒いでたら分かるに決まってるでしょうが!」
「くっ・・・し・・・しまったぁ!」
アスランは失態に気付き、歯噛みする。そして、全身全霊で言い訳を始めた。
「ま・・・待ってくれ!俺たちは女体が見たかったわけじゃない、俺たち聖人君子キャラにも性欲があると証明したかった
だけなんだ!性欲がなくなれば、人の世に未来はない。君はそれを否定して、未来まで殺す気か!?」
「・・・言いたいことはそれだけかな・・・?」
亜沙の身体が光に包まれていく。絶大な魔力が物理的なエネルギーに変わっていく―――!
「バ・・・バカな!この力・・・この力こそがアポカリュプシスだというのか!?イデよ、 これがあなたの意志なのか!?
俺たちに未来などないというのか!?」
「心配しないで。命だけは助けたげるから。ただし、人の形を保っているかどうかまでは保障しないけどね・・・」
「ひっ・・・!い・・・嫌だ!変テコな球体にされるのは嫌だぁぁぁぁっ!」
「―――く・た・ば・れ(はぁと)」
―――魔力が大爆発を起こし、全てを飲み込んだ―――
ヽ`
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´゙゙´`゙``´゙`゙´``´゙`゙゙´´
―――宇宙空間。そこには愚かな人類が、パンツ一丁で晒されていた。
一応テキオー灯をかけておいたので命の心配はないが、凄まじいダメージを受けた身体には実に堪える。
「ふふふ・・・綺麗だなあ・・・大きな星が点いたり消えたりしている・・・息苦しいなあ・・・中に入れないのかなあ・・・
おーい、中に入れてくださいよー、おーい・・・」
ブツブツと呟くアスランとバカ王子。どうやら精神が別のところに逝っちゃったらしい。
「も・・・もう女湯は覗かないから・・・許してよお・・・」
のび太たちも涙声で哀願するが、聞いてくれる者はいない。
<女って・・・怖いよな・・・>
「ああ・・・亜沙先輩は、特にな・・・」
稟はもはや悟りきった顔でひとりごちた。そして、キラ。
「どうして、こんなところに来てしまったんだろう・・・僕たちの世界は・・・」
呟いた彼の瞳から、一筋の涙が零れ落ちた・・・。
投下完了、前回は
>>64より。
今回は完全なギャグ話。番外編にした方がよかったかも・・・。
「人の形を〜」「ヘンテコな球体に〜」はスパロボネタ。分からない人はごめんなさい。
次回からギャグ番外編に入ります。
>>しぇきさん
地味に外道なミルコが好印象。こいつも結局バカか・・・(いい意味で)
アバウトすぎる回想の説明がなんか受けましたw
ペコはまあ・・・こういう芸風のキャラです。本人は真面目なのに、見た目で損をしているという。
内なる野生・・・最終ダメージが1.2倍くらい上がりそうですねw
>>87 プリムラを可愛いといってくれるのは嬉しいですね。作者贔屓のキャラですからw
>>95 ほのぼのとシリアスが混ざり合ったくらいのバランスがちょうどいいと思っています。
>>99 今回のエンディングは目を疑うようなハッピーエンドにする予定です。それはもう、みんな
満面の笑顔で。うんこSSは、一度書きたい題材でしたw
>>ふら〜りさん
ペコとプリムラは、書いてみると思った以上にいいコンビに・・・不思議系少女と喋る犬って、いい組み合わせ
ですよね。今回のみんなとの別れは、もう会えない、みたいなかんじじゃなくて
「今日はもうお別れだけど、また明日ね!」みたいな明るいかんじでいきたいと思っています。
>>106 僕の書き方に問題があるのでしょうか・・・他の女性キャラがいまいち目立っていない。
117 :
正義や常識。そして真理:2006/02/28(火) 03:04:41 ID:Ur9Bslms0
(日が真上に照っているということは正午・・。)
俺は愛馬に乗って、一人草木も無い荒野を走っていた。
いつもより暑い太陽の照り方に、たまたまそんなことを考える。
(暑いな・・。ふふ・・。常識だな。こんな木もない場所を走っているのだからな・・。)
常識・・。
日が真上に照っているということは正午。
太陽に照らされると暑い。
誰もが知っているこの常識を、一体誰が異論を唱えるのだろうか?
つまり、誰もが疑いようがない・・。
そう、人間が感じることの出来る真理・・・。
疑いようがない・・、真理。
俺がいた町では、荒くれ者が多かった。
当然、そんな町で苦労して育った子供の頃の俺は、いつの間にか『将来は保安官になる!』
という考えが自然と芽生えていた。
―――そして十年後・・・。
俺は保安官になった・・。
118 :
正義や常識。そして真理:2006/02/28(火) 03:05:18 ID:Ur9Bslms0
胸に光る保安官バッチを誇らしげに見せながら、俺は初めての見回りをしていた。
いつも通りの町並みに、俺は『つまらない』と感じていた。
非常に不謹慎な考えだったが、幼い頃から治安が悪いこの町にとって傷害や強盗など日常茶飯事。
俺が現場に行く頃には事件はすでに収束化しており、被害者が泣きすする光景しか見る事しか出来なかった。
だから俺は考えた・・。
どうすれば、この『つまらない』犯行現場に遭遇できるのか?
三日考えた・・。
あらゆる方法を考えた・・。
最初は、荒くれ者にお金を渡して強盗でも決行してもらう気でいた。
しかし、そんなものは後で足がつくし、劇をやっているのじゃないから臨場感もない。
はっきり言って駄作だった。
次に考えた方法は、比較的犯行が行われやすい酒場や換金場だ。
これなら『たまたまそこにいた』とでも言えば、全く問題はないだろう。
後は、実行するだけだ・・。
俺は・・・、保安官だ!!
119 :
正義や常識。そして真理:2006/02/28(火) 03:06:03 ID:Ur9Bslms0
一見だけを見れば、計画は完璧だった。
確かに一番犯罪発症率が高い換金場に、半ば職場放棄気味に張り込んだおかげで、
”荒くれ者達”が強盗する現場には巡りあえた。
しかし、俺の計画には1つだけ欠点があった。
それは・・・、俺は銃に関しては唯の素人同然だったことだ。
結局、俺は換金場の店員よりも早く病院送りになってしまった。
入院して二日目。見舞いに来るものなど誰もいない。
当然だ。半ば職場放棄気味に張り込んだ末の結果がこれじゃあ・・。
むしろ俺は、誰も見舞いに来なくて心底安心していた。
一ヶ月ほどして俺は退院した。
あの教訓で得たのは、結局は強さが物を言うということだった。
だから、俺は・・・・。
この数ヶ月、俺は東洋の仙人見たく砂漠篭りをしていた。
決して山篭りではない。
山に篭りたくても山がなかったし、動物や山賊は銃を持っていない。
俺が求めたのは、『決闘で絶対に勝てる強さだった。』
俺はひたすら刈り続けた・・・。いや、狩っていた。
俺の住む町の周りには、名のある札付きガンマンが多数居た。
だから修行には困らなかった。
数年後・・。
120 :
正義や常識。そして真理:2006/02/28(火) 03:06:41 ID:Ur9Bslms0
俺は保安官をしていた町に戻っていた。
最初は『逃げ出した』と、住民や仲間の保安官に陰口を叩かれたが、
数年も修行していた俺の強さを見るや否や評価は一転。
俺は町の守護神―――いや、英雄と言われるまでに時間はかからなかった。
浮かれていた。本当に浮かれていた・・。
生と死の狭間で暮らした分の強さを手に入れた俺は・・・。
女すら禁じていた修行の反動か、いつしか俺は犯罪者を殺す事で快楽が満たされていた。
無論、決闘でも負けることはなかった。
最高だ!最高だった!!
勝つたびに味わえる、町人達の歓喜や羨望の視線。
当然その後のお楽しみもあった・・・が、やはり自分のイメージ通りに貫けた犯罪者の頭を見る方が俺は好きだった。
しかし異変が起こった。そう、あの時からだ・・・。
121 :
正義や常識。そして真理:2006/02/28(火) 03:07:21 ID:Ur9Bslms0
俺はいつものように、町の保安&自身の快楽を満たすために決闘をしていた。
今回の相手は、町の周辺では一番の組織であるマッド・スネークの首領。
図体がでかい割りに反応は早かったが、所詮は俺の相手ではなかった。
1
2
3!!!
生きることは難しいはずなのに、死ぬのは簡単だ。
俺の二倍は生きてそうなマッド・スネークの首領の心臓は、俺が撃ち込んだ弾丸であっという間に爆ぜた。
「くくく・・・・。」
「何がおかしい・・?」
俺はこのとき初めて『不気味』という単語の意味を知った気がする。
それくらい奴の笑いは不気味だった。
「つええ・・。が・・、不幸だな・・・。世の中・・、ほどほどが・・・。」
マッド・スネークの首領はそう言って、俺の目を見つめながら息を引き取った。
俺は奴の言っていることが分からなかった。
――――意味も分からなかった。
当たり前である。
『強くないと守れない』
『強くないと、自分の人生がつまらないし気持ちよくない』
これを知ったからこそ、俺は強くなったのに・・・。
122 :
正義や常識。そして真理:2006/02/28(火) 03:08:26 ID:vtqUC//E0
このときを境に町は変わった。
いや、俺の周りが変わった。
いつも通りの期待や羨望のまなざしは全く衰えることはなかったが、
その分、俺を殺しに来るガンマンが増えた。
―――しかも札付きの・・。
そんな輩が増えれば、当然町の治安は下がる。
俺は忙しかった。
―――――快楽を味わえる暇がないほど・・。
撃って撃って・・・・、殺しまくった。
アイツを殺す前はせいぜい2〜3人だったのが、今では20人ほどだ。
そのせいか、俺は徐々に人を殺すことが精神的に堪えるようになった。
別に罪悪感を感じているわけではない。
ただ・・、『俺のせいで治安が悪くなっている・・。』
そのことが負い目だった・・。
いつしか快楽は女だけになった。
これは普通だが、昔の俺にしてみれば異常だった。
しかしこれに関しては『人並み』に戻っただけだと、特には気にしていなかった。
そして、決定的なことが起きた・・。
123 :
正義や常識。そして真理:2006/02/28(火) 03:09:00 ID:vtqUC//E0
俺に憧れていたジョンが殺されたのである。
理由は・・・、俺だ・・・。
俺に憧れたせいで、札付きのガンマンどもの反感を買ったらしい。
無論・・・、そいつらは全員あの世へ行った。
俺は一人飲んだくれていた。
こんなことは、俺が強くなる前に一度会ったきりだから久しぶりと言ったら久しぶりだが、
あの時とは状況が違う。
あんなに人を殺してきたのに・・、俺は自分のせいで死んだ人間が出ただけで、
常に両足と馬を括りつけられている気分になっていた。
次の日・・・。同僚が殺された。
一応は親友だった。
次の日は、俺の彼女が殺された・・。
次の日は・・・。
次の日は・・・。
だから俺は・・・。『自分から賞金首になって』町を出た・・・。
124 :
正義や常識。そして真理:2006/02/28(火) 03:10:40 ID:vtqUC//E0
町を出た俺は、決して『全てを失った』とは考えなかった。
『何がある?』と聞かれて、『思い出がある』と答えたら、笑われるか侮蔑されるかもしれないが、
事実その通りだから仕方がない。
つまり、それくらいの思い出があの町にはあったし、『全て失った』とは考えなかった・・。
町を出て二日経つ・・・。
来る日も来る日も、俺に決闘を仕掛けて来る輩がいる。
俺が『今日は太陽が暑いから今度な。』と言ったら、『太陽が暑いのは常識だ!!』
と言われて逆上された。
俺に休息の場所は夜以外に殆どなかった。
だから休められる時に休んだし、その分考えた・・・。
――――俺の行った事が正しかったか?
迎える夜のたびに答えは違った。
なぜなら、自分のせいで死んだジョン達や悪くなった治安のことを考えると、
俺の中の勇者と魔王が出す答えを変えてくるからだ。
125 :
正義や常識。そして真理:2006/02/28(火) 03:11:22 ID:vtqUC//E0
ある時、夢を見た。幼い頃の夢だ。
幼い頃は、荒くれ者をやっつけるのが『正義』だった。
悪い人間は殺すのが『常識』だった。
そのために保安官を夢見たし、実際になった。
俺は考える・・・。
昔から思っていた、『常識』や『正義』は一体なんなのかと?
俺の『常識』は、悪人は殺すこと。
俺の『正義』は、悪人を殺して町を守ること。
でも、実際は・・・。
俺の『常識や正義』は真理であったが、世界―――他人がそれを許してはくれなかった。
結局は人間は人間であるしかない。
いくら『良かれと思って』、人を悪人を殺しても、それが平和―――町の治安に繋がるとは限らないのだ。
マッド・スネークの首領の言葉が頭によぎる・・。
「ほどほど・・か・・。」
俺は、夜空を見ながらどうしようもない気持ちにしかなれなかった。
126 :
正義や常識。そして真理:2006/02/28(火) 03:11:59 ID:vtqUC//E0
(日が真上に照っているということは正午・・。)
そんなことを考えてから、2時間経った時、いつも俺に決闘を仕掛ける奴が現れた。
俺はこの数年で考え方が変わった。
色々変わったが、一番変わったのが悪人を殺すだけが『正義や常識』ではないことだ。
そう、俺の中の『正義や常識』は殺して誰かを守ることから、ただ『守ること』に変わったのだ。
別に悪人を殺さないわけではない。ただ、むやみやたらに殺さないこと。
つまり、それが俺の『新しい正義や常識』だ。
その考え方になったせいか、決闘でも止めを刺したり、頭を打ちぬいたりすることはあまり無くなった。
だから死ぬまで俺に突っかかってくる奴もいる。
今、俺に仕掛けてきた奴もそうだ。
いつも仕掛けてくる奴との決闘に、今日もあっさり俺は勝った。
当然、止めは刺さない。別に哀れみの心があった訳ではない。
ただ・・・、いや・・、なんでもない・・・。
いつもの奴と戦って気付いたが、この辺りは治安が非常に悪い。
おそらく保安官が働いていないか、この辺りにいる荒くれ者が異常なのだろう。
一瞬、自分が居た町を思い出すが・・・。
―――――考えるのは止めた。
127 :
正義や常識。そして真理:2006/02/28(火) 03:13:01 ID:L6ljctlD0
町を出て以来、日中は考えることを止めている。
理由は簡単。暇と、太陽が暑いからだ。
(だから・・・、俺はこの辺りの治安を・・・。)
俺が考え事をしていると、いつの間にか日が落ちていた。
日中に考え事するのは数年ぶりだったから仕方が無い。
数時間も気を飛ばしていた俺を見た愛馬が心配そうな瞳で俺を見つめるが、
そんな優しい愛馬に俺は、『すまない』としか言えなかった。
さらに走ること数十分・・・。
町が見え始める・・。
〜サクセズ・タウン〜とボロイ看板にそう書いてあったその町は、遠目から見ても異様な雰囲気を感じた。
(この町の人々は笑顔なのだろうか?)
考えたことも無いことを考えながら俺は町に入る。
そして・・・、俺はバーに入った・・。
(もしかしたら・・・、もしかしたら・・、俺の・・。)
――――『新しい正義や常識』が世界の『真理』になっているかもしれない・・。
そんな事を考えながら・・。
128 :
正義や常識。そして真理:2006/02/28(火) 03:19:15 ID:L6ljctlD0
どうも、しぇきです。
二時間ほどの作品なので、変なところがあるかもしれませんが・・。
元ネタはライブアライブのサウスタン・キットです。
彼のお話の前のお話から、彼の考え方を作中の最後の台詞から
勝手につなぎ合わせた作品です。
>邪神さん
大ジョブです。ちょっと、時間が空きすぎた自分が悪いのですから。
ワイバーンは、ゲームによって全く強さが違いますね。
今回のワイバーンは、なりきりダンジョン2ぐらいの強さでしょうか?
ゲラ・ハ達も来て、さらばワイバーン&アミバ。永久に。
>ふら〜りさん
宇宙SSをかいたら、もはやカーズは必須なのかもしれません。
月並みですが、次回予想はカーズが魔法耐性を持っちゃって、
負けそうになるD・アーネ。そして、その姿に大興奮のロリコンの三本だと
勝手に予想を・・・。
129 :
正義や常識。そして真理:2006/02/28(火) 03:31:32 ID:L6ljctlD0
>ハイデッカさん
嬢達がいうのは全て妄言だと思っているしぇきですから、
このような展開は夢の中ですね。
元ネタがあるみたいですが、個人的には香港の〜カンフーの方が、
元ネタっぽい気がします。〜は興味がある方は調べてみてください。
ビキニ空手と違って死ぬほど笑えます。
>サマサさん
〜うんこSS〜
浦鉄はペコちゃんが気持ち悪くて・・・。
国会議員は、戦争で使えば日本の最終兵器になりそうですね。
後、カレーはダメでしたけど、チョコレートは食いたくなりました。
〜ドラえもんSS〜
イデが発動すれば、狐も楽勝?・・・な訳ないですが、
個人的にはキラの最後の台詞がツボに。こういう時に使った方が自然な台詞だと
思ったのは自分だけでないはず?
>イデよ、 これがあなたの意志なのか!?
ギジェ〜〜〜!!!
毎回感想をくれる方々、ありがとうございます。
>>95さん
そうです。時間軸は、平行しています。
ギニュー編の回想の始まりは、ドドリア編の前の日になっています。
だから、ドドリア編ではギニュー達は修行に行っているので出て来ないのです。
>>ふら〜りさん
美女は後編で出てきます。前編はギャグ&バトルです。
(あれがギャグと言えるのかは分からないけど)
130 :
正義や常識。そして真理:2006/02/28(火) 03:49:16 ID:n4Nc0Y1i0
>>127 理由は簡単。暇と、太陽が暑いからだ。 を
理由は簡単。暇が無く、太陽が暑いからだ。 でした。
すいません。
しぇきさ〜ん、サンダウン、サンダウン!
>サマサさん
本当に定番イベントですねwそういやプリムラたちはエロゲ出身なんですよね。
忘れてた。元ゲー知らないし。それより亜沙強すぎ。ロボットたちいらないじゃんw
>しぇきさん
芸風を広げてますね、しぇきさん。昔のライブアライブってゲームだったっけ?
保安官の心情とかが良く独白されてますね。元を知らんからイマイチわからんけど。
>サマサ氏
天使湯についてはバカ王子と同レベルのことをガンダムという名のつく原作でやってる時点で狂ってますな
それ以外にも種台詞パロがふんだんに使ってあって大爆笑ですわw
つくづく種は一流のギャグアニメだよなあ
>しぇきさん
ライブアライブ懐かしい〜
一度、しぇきさんが本格的にライブアライブ使ったクロスオーバー見たいですね
しぇきさんがオディオとかストレイボウとかどう描くのかが楽しみ
134 :
作者の都合により名無しです:2006/03/01(水) 06:09:05 ID:5E35IVET0
>超機神
幕間劇にしては激しすぎる展開ですね。しばらく平穏な日常が続くのかな?
最終決戦前の憩いのひと時、こういう展開も面白いですね。番外編楽しみにしてます。
>正義や常識。そして真理
ライブアライブって良くネタになる「あの世で俺にわび続けろ」しか知らないけどw
楽しめました。主人公の苦悩と魔王への不安、みたいな。このゲーム漫画化してるんですかw
135 :
作者の都合により名無しです:2006/03/01(水) 12:33:52 ID:ZYF/GYUc0
なかなかうみにんさんやVSさんは復活せんね
ご無沙汰の人と頻繁に書き込んでくれる人と二極化だ
ミドリさんとかNBさんとかはいつものペースの範囲内だろうけど
136 :
作者の都合により名無しです:2006/03/01(水) 19:36:29 ID:Q5FAn8dv0
ミドリさんの「ごきげんよう」でご飯三杯いけるね
第5話 仕事
びんちょうタン(以下びん)と鞍馬は夜道を歩いていた。これからびんの家へと向かい泊めて貰うのだ。
既に山の中へと入りつつある。提灯を持って歩いているびんは前を見ているがいつ転ぶかわからない。
小石だって多いし子供にとっては非常に歩きにくいのだ。
「びんちゃん、俺が背負ってあげよう。背中に乗りな。」
「ありがとうございます。」
静かに丁寧な口調で言うとびんは鞍馬の背中に乗った。つまり鞍馬がびんをおんぶしているのだ。
妹がいたらこんな感じなのかな。鞍馬は思った。女の子には優しくというのが彼のモットーなのだ。
「唯で泊めて貰うんだ。恩返ししなきゃな。お米を買うよ。」
「お礼なんて・・・。」
「親御さんに挨拶しなきゃな。俺みたいな旅をしてる奴だからこそしなきゃいけないんだ。」
やがて鞍馬達は林の中へと入った。薄暗い木々の中を鞍馬の提灯が照らす。周囲はひっそりとして
物音一つしない。獣道では無くちゃんとした道なのだ。途中びんが道を言葉で案内する。
林の中に入って10分程歩くと家が見えて来た。明かりはついていない。古い家で
廃墟と間違えてしまいそうである。
「ひょっとして親御さんは寝てるのか?」
「この家は・・・私一人。」
鞍馬は驚いた。山奥に7歳ぐらいの女の子が一人で住んでいるのか。
家に入りびんを背中から下ろす。びんは裸足で上がりこみ布巾で足を拭いた。
「靴は・・・」
鞍馬は今気付いた。この子は町で見た時からずっと裸足だった。足の裏には傷跡が無数にあるのだろう。
家の中はというと外観と同じく貧しい。居間兼台所には釜戸、壷、床、柱があるだけだ。
「鞍馬さん。居間布団を敷きますね。」
そう言うとびんは押入れから布団を引き出し始めた。続いて枕と掛け布団と毛布。
「びんちゃんの寝床は?」
鞍馬が聞いた。まさか床の上に布団も敷かず大の字になって寝るというのか。
「そこにあります。」
びんが入り口の近くを指差した。指し示された場所には白い敷き布団と枕、そしてかけ布団があった。
春と夏はこれだけなのだろう。秋になったら毛布もかける。敷き布団といっても薄いシーツのような物であったが。
「お食事にしましょう。」
びんが言った。慣れた手付きで米を袋から出しガラス瓶の中に入れて上から木の棒で突き玄米から白米にしていく。
釜の中に白米と水を入れ米をとぐ。薪に人を付け米を炊き始める。今なら炊飯器があるのに昔ながらの手法で
米を炊いている。ここには電気も水道もガスも無い。ある意味人間社会から隔絶され自然と共に生きている生活。
びんがあらかじめ用意してあった山菜を水で洗う。あくは抜いてあるらしく塩を振っただけで皿に盛り付ける。
そして魚の燻製を手に取り別の釜で焼き始める。魚を燻製にするというのは保存が利くのだ。
「いい臭いがしてきたな。びんちゃんの作る料理なら美味しいだろうな。」
「もう少しだけ待ってて下さいね。」
十数分後、食器の上には料理が盛り付けられていた。出来立ての料理は全て湯気を上げている。
「戴きまーす。」
「戴きます。」
前に手を合わせると鞍馬達は食事を始めた。
「いや美味い。魚の燻製を焼いたのは意外と美味しいんだな。」
「おばあちゃんが・・・私に教えてくれました。」
「いい人だったんだろうな。君を育ててくれたんだから。」
言って鞍馬は思った。この子はもう社会人だ。現在日本の教育は中学校までは義務教育なのだがこの子の場合学校には行っていない。
最低限の読み書きが出来なければ生きていくのは非常に難しい。
「おばあちゃんは私に読み書きとお料理とお花とお茶を教えてくれました。数年程前に無くなりましたが。」
鞍馬は驚いていた。恐らくこの子の知る唯一の肉親である彼女の祖母は亡くなっている。それからこの子は一人で生きてきたのだ。
「つまりお婆さんの弟子なんだな、びんちゃんは。」
「弟子・・・?」
「何かを教える人を師匠、教わる人を弟子。弟子の腕が良ければ「いい師匠を持ったな」といわれる事もある。びんちゃんのお婆さんはすごい人だったと思うよ。」
自分もグレート巽の弟子だ。FAWには社員がいるがグレート巽の愛弟子はそうはいない。巽真はまだ30代半ばだから早いと思えるかも知れない。だが巽は計算高い。
ピークの今だからこそ弟子を作っておきたいのだろう。
「近くに畑は無いけど・・びんちゃんはどこかでお米を貰ってるの?」
国に保護を受けているなら必要なモノの補充は受けれる可能性もある。孤児院に引き取られる場合もあるのだ。
「町でお仕事して・・お礼にお金やお米を貰って・・過ごしています。」
鞍馬は目の前が真っ暗になった。こんな子供でさえも一日を過ごす為に健気に働き過ごしている。普通の子が遊んだり好きな事をしたりお昼寝をしている間に
この子は仕事をしている。そんな子が自分を泊めてくれただけでなく食事を恵んでくれた。嫌な顔一つせずにである。それに比べて自分は何だ。
負けてヤケになって放浪の旅に出た。野宿もしたし格安の銭湯にも入った。そしてこの子と出会った。この子にとって勝負とか趣味とかそういうのは
問題じゃない。趣味よりも生活、お人形よりもお米。「夢だけじゃ食ってはいけない」という言葉があるがその通りだ。
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさま。」
食器を片付け、洗うのを手伝った鞍馬は布団に入った。びんも蝋燭の炎を消し寝床に入ろうとしている。春といえども夜は冷える。鞍馬は毛布が
あるから大丈夫だがびんは寒い中瀬一杯布団に包まって暖を取ろうとしている。
「びんちゃん。」
「はい。何でしょう。」
「俺が君と同じ布団で寝るよ。三枚重ねなら暖かいし布団が温まるのも早いよ。」
「はぁ・・。」
鞍馬は決してやましい気持ちがあってした事ではない。宿の恩もあるが何より健気な年端も行かぬ少女に同情したのだ。奔放に好きな様に生きてきた
自分が恥ずかしく思えるような健気に生きている少女の姿。妹を持つ兄の気持ちとはこういう物なのかと想像しながら鞍馬は眠りへとついた。
おいマジかよ!・・・と思える人もいるかもしれませんが(何の事だ
鞍馬に変な動機などありません。彼なりのやさしさだと思ってください。
大きな荷物抱えて倒れそうな人がいたら支える人がいるのと同じように。
「びんちょうタン」の原作の雰囲気はこんな感じなんです。貧しくわびしい
生活をする幼女がひたすら働いて生きていく。
第5話終了しました。次回はあの人とか漫画版で影が薄いアノ人とかも
出てきますので楽しみにしていてください。
ほのぼのした…
しかし一方で鞍馬に殺意が涌いたw
びんちょうタンと同衾なんて羨ましすぎるぞチクショー
>>103 「何だどうした。妙に人気がないぞ。どういうこと……あ! 昼間のブリキ人形!
よぉしここであったが百年目、ってあれ? 見るも無残にやられてる。一体誰が」
「このカーズだっっ!」
降って来た少女ことD=アーネを吹っ飛ばして、カーズが立ち上がった。だが
今のD=アーネはコンディション完璧状態、クルリと回転し華麗に着地する。
そして考えた。あのブリキ人形は間違いなく、正義の味方だ。そいつをやっつけたと
なると、カーズとかいうこの露出狂は悪者か。しかもかなりのバケモノ。てことは、
「おい。もしかして、この街の人たちを全員食い殺したとか言う気じゃないだろうな」
「だとしたらどうする気だ。まだやってないが、将来的にそうする気は満々だが?」
「そうか。お前がそういう奴なら、」
D=アーネはどくろステッキを構えた。
「私が今ここで倒す。この星は陛下のもの、この星の民はヴァジュラムの奴隷。
そう定められているのでな」
「ほう? 面白い。このカーズと戦う気か。まぁやってみるが良かろうなの……」
とカーズが言い終わるのを待たず、
「デル・デル・サンダーっっ!」
D=アーネが、魔法の稲妻を撃ち放った。眩しい電撃が獲物を見つけた大蛇のように、
うねりながらカーズへと向かっていく。
カーズは咄嗟に、自分の両腕を硬質化させて受け止めた。
「ぬうぅっ!?」
激しい衝撃と閃光の中、カーズは両足で長い溝を掘りつつ後退し、よろめく。
必殺の魔法を正面から受け止められダメージも無いらしいことに、D=アーネは
驚いた。が、カーズの方も表面上はともかく内心は動揺している。
『なんだ、今のは!? あの杖に機械的な仕掛けがあるようには見えないのに、
いきなり発電し放電しただと!? 地球上の生物にそんな真似ができるはずないし、
できるのならこのカーズにもできるはずだし……何者なのだこの娘は!?』
「ふ、ふんっ。多少は頑丈なようだが、一発耐えたぐらいで勝った気になるなよ!」
「ちょっと待て娘、今のが何なのか説明を」
「邪悪なる魂よ、この世から退けっっ!」
カーズがD=アーネに気を取られていた隙に、横合いから太い光の帯が飛来した。
今度は反応が遅れて、カーズはまともに喰らう。だが先ほどと同じく、カーズは
若干よろめきはしたものの大したダメージはない。
光を撃った男は、駆けて来てD=アーネと並んだ。黄色い軍服姿の、長髪の若者だ。
「話は後だ。今は協力して、あいつを倒すことだけ考えよう。君があいつの敵、
僕らの味方だって解ってれば、それでいい」
「いやあの、私は確かにあいつの敵だが、お前たち地球人にとっては私も」
「自己紹介は後で聞くってば。僕はこの国の軍人、タマネギ44号。いくよっ!」
名乗りながらタマネギ44号は再び霊力を、光の波動を放った。勢いに押されて、
D=アーネも並んで電撃を放つ。
カーズはそんなを二人を見つめて、納得したような顔で左右の拳を突き出した。
「こうやればいいのか? ……愚かなる魂よ、我が前から失せよッ!」
カーズの両拳から、タマネギ44号のそれを遥かに越えるド太い光の奔流が
放たれた。タマネギ44号の放った光も、D=アーネの電撃もあっさりと飲み込み、
怒涛のようなその勢いを全く緩めずに直進、直撃! 二人の体を包み込み蝕み貫いた。
タマネギ44号は呻き声を上げる間もなく、魂を焼かれて倒れ伏してしまう。微かに
息はあるようだが、白目を剥いて泡のような涎を垂れ流している。
D=アーネも負けず劣らずの形相だが、こちらは何とか踏ん張った。体内の魔力が、
カーズの攻撃を若干防いでくれたようだ。
そしてカーズは、自分の拳を握ったり開いたりしながら言う。
「ふん、簡単だ。古代インドの『プラーナ』、古代ギリシアの『プネウマ』、
ローマ文明では『生気』、そして中国文化圏では『気』と呼ばれてきた、
循環する生命エネルギー……に近いものだなこれは。だが、」
カーズが、辛うじて立っているD=アーネに向き直った。
「お前の術は解らん。このカーズに理解できぬ力を使う娘、お前は何者だ?」
「……私は、」
目眩と吐き気を堪え、どくろステッキを強く握り締めて、D=アーネは答える。
「神聖魔法国ヴァジュラムの使者、D=アーネ。この星を制圧する為にやって来た!」
「この星、だと? そういえばさっきも『この星の民は〜』などと言っていたな。
D=アーネとやら、お前は地球の外から来たというのか?」
「だったら何だっ!」
「……やはりそうなのか。では、」
カーズの両前腕に、尺骨と平行な刃が生えた。刃の表面を無数の細かい刃が走って
輝きを放ち切断力を高める、『輝彩滑刀』である。
「この星の、全ての生物の頂点に立つ者としては捨て置けんな。お前がどの程度の
存在か、測らせて貰う。まあ先ほどの術をみる限り、大したことはなさそうだが」
「! だったら喰らってみろっ、デル・デル・ファイアーっっ!」
どくろステッキから、今度は炎が龍のような形をとって放たれた。それは周りの大気を
陽炎で歪ませながら突き進み、アスファルトの地面に刺さって爆破、溶解させた。
「……え? 地面」
「襲いッ!」
カーズが、背後から襲い掛かり斬りつけてきた。咄嗟に前方に跳んだD=アーネの
背中で、血の花火が炸裂する。
苦痛を堪えつつ振り向き、構えるD=アーネ。カーズは動かず、
「わざわざ声をかけてやったのに、振り向かずに跳ぶとはな。ワムウ程ではないに
しろ、少しは心得があるようだ。が、やはりこのカーズの敵ではないと理解したぞ」
「……くっ」
反論できなかった。こちらの魔法が通じないことは、もう何度も証明されている。加えて、
今の一撃がかなりのダメージだ。このままでは、いずれ出血多量で倒れてしまいそう。
背中から腰へ、そして臀部から太もも、ふくらはぎへと生温かい血が垂れていく……
「波紋戦士どもの方が、もう少し手応えがあったな。どれ、そろそろ楽にしてやる」
春は名のみの風の寒さ……でしたっけ。皆様、お体にはくれぐれも気をつけて。
自身の健康管理あってこそ、趣味もできるし他人の心配もできるというものですぞ。
>>サマサさん
覗きのみならず「くらべっこ」までやって。結局女湯には全くカメラが振られず。そして、
>覗くってこと自体にドキドキワクワクしたりするもんなんだ
これが最っっ高です。今回は隅々までそうですが、↑は、凄くいい意味で男の子らしくて。
覗きに来てたことは判明したが覗かれず、ある意味女の子にとっちゃ最高の終わり方かも。
>>しぇきさん
……諭された気分です。基本的に私は悪即斬、最初期の黒天使完全肯定派だったのですが。
保安官が快楽殺人鬼化か、首領は何か呪いでもかけたのか、とか考えたのが恥ずかしい。
じんわり勉強になった本作、今後のバキスレや他所の作品でもぜひ参考にさせて頂きます。
>>ウルフズさん
まんがにっぽん昔話的なほのぼの。であると同時に、とてつもなくシビアなものも描かれ
てますね。びんの周りの空気は一種非現実的なんですが、本人は非常に現実的で。外見の
可愛らしさとのアンバランスさというか不憫さというか可憐さというか……表現し難いです。
147 :
作者の都合により名無しです:2006/03/02(木) 05:54:56 ID:BJmyc8Zb0
>フルメタルウルブス
びんちょうタンってどんなキャラかと思いHPを見に行ったら萌えたw
ほのぼのとした展開で読んでいくと、急に「グレート巽」という単語が
出てきて何故か笑えて北。そういえば、コンビの相手鞍馬なんですなw
びんちょうタン壊されそうだw
>マジカルインベーダー
とりあえずD=アーネも知らなかったので調べてみた。メチャクチャ強いじゃん
カーズ様でも勝てるとは思えませんな。SSではアーネ焦りまくりだけど負けるんだろうなあ
カーズ様のみっともない姿はみたくないけど
scene30 被疑者死亡
異常は、すぐに発見された。
二号室へと足を踏み入れたカイジたちが見た物は、完全に解れてしまって
最早、トイレのドアノブから垂れ下がっているだけでしかないロープだった。
「何っすか、これは……!?」
玉崎は驚きの声をあげ、カイジに視線を投げる。
その瞳は言外に『どういうことだ』と問いかけている。
「いや……俺がついさっき見た時には、何の異常もなかった……!」
どうやら、カイジが夕凪を呼びに行っている時間……
十分にも満たないその空白の時間に、何者かが二号室へ侵入。
笠間が監禁されているトイレの縛め……ロープを緩めたらしい。
「やっぱり、隙を突いて逃げたんっすかね……?
カイジさんの証言が本当なら、少なくとも、笠間には理沙ちゃんを殺す時間は無い事になるっすが。
ともかく、中を確かめない事には始まらないっす。
開けてみるっすが、何かあったら援護をお願いするっすよ」
玉崎はそう言って、後方に控えるカイジ達を振り返る。カイジはそれを受け、小さく頷いた。
そして。玉崎は引っかかっているロープを取り払い、トイレのドアを思い切り開け放った。
その瞬間。大きな影が、玉崎に寄りかかるようにして倒れてきた。
「うわわわわっ……!」
玉崎は成人男性とは思えないような情けない声で喚き、よろめきながら後方へ飛び退く。
玉崎という支えを失い、どしゃり、と音を立てて、何かが床に崩れ落ちた。
潰れ、腐った豆腐のようなモノが、床にぶちまけられる。
それは……頭を叩き割られ無残な姿を晒す、笠間潤の死体だった。
いや、割られている、と言うよりも、潰されている、と言った方が正しいかもしれない。
何度も、何度も……執拗に、頭部を打ち据えられたのだろう。
端整だったその顔は真紅に染め上げられ、既に原型を留めてはいない。
口には『探偵』のロールカードが咥えさせられていた。
「ひぃぃ……ひっ……」
悲鳴をあげ、只野がその場で腰を抜かす。
「うぐっ」
吐き気に襲われたのか、黒川は、口を押さえて後ろを向いた。
「なんてこった……!」
一つ、大きな溜め息を吐き出し、カイジが言う。
「間違っていたんだ……! これ以上ない解答に思えた、夕凪の告発は冤罪……!」
カイジの言葉は、静かな湖に投げつけられた小石のように、波紋を広げてゆく。
笠間が監禁されている状況下で、夕凪が殺されていた……
その時点で、誰もが薄々感付いていた。ただ、それを認めたくなかっただけだった。
笠間が監視の隙を突いて逃げ出し……告発した夕凪を腹いせに殺害した……
もし本当にそうだったなら、どれほど気が楽だっただろうか。
戦うべき敵が誰なのかわかっていれば、対策も立てられる。
誰を信用すればいいのかはっきりする。誰を警戒すればいいのかはっきりする。
しかし。笠間の撲殺死体という現実は、否応なく、彼等に真実を突きつける。
こうなってしまえば、誰もが認めざるを得なかった……
『笠間潤は犯人ではない』という事実を……!
参加者の中に、まだ殺人鬼が潜んでいるという事実を……!
「だ、だったら何故、笠間さんはあんなに動揺していたんでしょう……?
ましてや、夕凪さんに襲いかかったりなんか……!」
へたり込んだままの姿勢で、訳がわからないと言った風に只野が首を振る。
「それは……」
カイジは言葉に詰まる。理解できようはずもなかった。
会って間もない男の個人的な感傷など、誰に理解が出来ただろうか。
暫くの間、部屋には不気味な静寂が満ちた。
毎度ありがとうございます。前回投稿は
>>54です。
・ハッピーエンド
には、多分ならないでしょうね。少なくとも、大団円は無理かと。
どうしても強引と言うか、よくわからない展開になってしまいます。
・ハッピーエンド案その一。夢オチ。
カイジは、眠い目を擦ってベットから上半身を起こした。
「全部、夢、だったのか……」
隣には、一糸纏わぬ姿で寝息を立てる美心の姿があった。
・ハッピーエンド案その二。ドラマオチ。
「はい、チェックオッケイでーす!」
第六スタジオに、徹夜明けでハイテンションな監督の声が響く。
「last scene終了。これにてクランクアップです、みなさんお疲れ様でしたぁ!」
その一言と同時に、パン、パン、とクラッカーの弾ける音。
一列に並んだキャストの前に、スタッフが色とりどりの花束を持ってやってきた。
監督が、メガホン片手にキャストの名前を順番に読み上げてゆく。
「伊藤開司役の、○○さん」
爽やかな笑顔で、○○は花束を受け取った。
長期間に及ぶ撮影を労うように、惜しみない拍手が送られる。
・ハッピーエンド案その三。何の前振りも無く、ドラゴンボールと世界観融合。
サタンシティ外れの、崖の上。
カイジは、魔人ブウと犯人の手によって壊滅した街を見下ろしていた。
「探偵連中どころか、街の人まで……みんな、死んでしまったのか……」
悟空は、肩を落とすカイジの背中を、元気付けるようにポンと叩いた。
「でぇじょうぶだって!」
そして、にかっと笑うと親指を立てて
「ドラゴンボールで生き返れる」
三つ考えてみましたが、全部却下の方向で。
152 :
作者の都合により名無しです:2006/03/02(木) 12:59:15 ID:t838icXS0
見てた人様お疲れ様です。
うむ。カイジはまだ発動しませんか。絶対窮地に追い込まれないと
覚醒しないのが玉に瑕ですね・・。
しかし、何人も死んでこれから先も何が起こるか分からないんで
ハッピーエンドは絶対に無理でしょうなあ
超機神大戦番外編 「大惨事スーパーフール大戦〜遊園の銀河へ」1
アークエンジェルは星の海の中を悠然と突き進んでいた。地球を発って大分経つが、メカトピアまではまだまだ遠い。
必然、ブリッジの艦長席にふんぞり返るバカ王子は暇であった。
「ふう・・・実に退屈だ。おいドラえもん」
「なに?」
「何か芸をやって僕を楽しませてくれ」
「やだよ。てゆーか、人にものを頼むのに、何でそんなにえらそうなのさ?」
「だって僕は王子様だからね。実際偉いのだ。まあそれはそれとして、退屈なんだよ。何か面白そうなことはないだろうか
―――ん?レーダーに反応?一体何事だ?」
バカ王子は手元のボタンを操作してモニターに映し出す。そこには奇妙な小惑星があった。明らかに人為的に造られたもの
で、色とりどりのネオンがチカチカ光って人目を引く。そしてバカでかい字で、こう書かれていた。
皆様ようこそ、この先は宇宙の遊園地<ゼストランド>です。格安のお値段で楽しい乗り物・アトラクションの数々。
是非ともおいで下さいませませ。
「へえ、遊園地だって。ドリーマーズランドみたいなものかな?」
のび太が興味を示すが、ドラえもんにたしなめられた
「のび太くん、ぼくらはメカトピアに急がなきゃならないんだよ?遊園地に行ってる暇なんてないよ」
「そうでした・・・」
「僕も別に遊園地に興味はないな。では、素通りして―――」
その時だった。
<待つのだ―――肉の器を持つ者たちよ・・・>
「な・・・なに!?この渋い水木一郎声は・・・!?」
「―――!レーダーに反応!とんでもなくデカイぞ!」
一同の眼前に突如現れた影。それは異様としか言いようのない形状をしていた。何処までも深い暗闇を思わせる黒い体色に
六本もの腕、三つの赤い瞳、巨大な二本角―――
その声が再び響く。
<我が名は遊園地帝―――ケイサル・エフェスなり>
「な・・・!遊園地帝だと!?」
驚愕するバカ王子。
「し、知っているのか、王子!?」
クラフトが尋ねる。狙ったわけではないだろうが、その様は某漫画の名解説コンビに似ていた。
「ああ。聞いたことはある。遊園地帝ケイサル・エフェス―――全宇宙のチビッ子たちの遊園地に行きたいという怨念の
集合体だ。彼の放つ波動を浴びると、遊園地に行きたくて仕方なくなるという・・・」
「ぜ、全宇宙規模なのに、何でそんなにやることがセコイんだ・・・?」
艦内でそんな会話が為されていることを知ってか知らずか、ケイサル・エフェスは六本腕を掲げ、奇妙なポーズを取った。
<命ある者よ、遊園地へ還る時が来た・・・>
宇宙に描かれる魔法陣。それが一つに集まり、扉の形を成す。そこから湧き上がる怨念・・・!
<数々の楽しきアトラクション・・・今、ここに―――遊園の銀河!>
ケイサル・エフェスの身体から黒いオーラが迸る。それを受けたのび太たちの脳裏に、その思念が叩き込まれた。
―――行きたーい・・・パパー、連れてってよー・・・ママもパパに頼んでよー・・・お姉ちゃんだって行きたいよねえ・・・
お兄ちゃんも何とか言ってよー・・・やだやだ、遊園地に行きたいよー・・・もう本屋さん立ち読み巡りはやだよー・・・
―――それはまさに遊園地に行きたいという切なる叫び。それを直接食らったのび太たちに芽生えた、耐え難い欲望。
「遊園地・・・行きたい・・・」
「行きたい・・・」
「行きたい・・・」
死んだ魚のような目でそればかりを連呼する一同。バカ王子がふらつく足取りで舵を取り、アークエンジェルはよろよろと
遊園地へと向かうのだった。
<全ては遊園地へと向かう・・・>
それを見届けた遊園地帝ケイサル・エフェスは、満足げに立ち去っていった―――
―――遊園地の入り口。<ゼストランド>とデカイ文字で書かれた門の前。まだ開園前だというのに、並ぶ人の姿はかなり
多い。結構繁盛しているようだ。
そして一同は、割と楽しそうだった。
「・・・・・・まあ、来ちゃったものは仕方ない。存分に遊園地を楽しむしかないじゃないか!」
アスランは本気で楽しそうだった。どうやら彼は元々遊園地に行きたかったらしい。
「はは・・・そう言えば、遊園地が初めてってのも多いんじゃないか?プリムラは来たことないよな」
「初めて・・・楽しみ」
「あ、おれも初めて!」
プリムラとフー子が仲良く声を上げる。
「犬の王国にはこういうのはないですからね。確かに楽しみです」
ペコもそれに同意した。
わいわいと盛り上がる一同。だが、クラフトは渋い顔をしている。
「どうしたんですか、クラフトさん。そんな怖い顔して?」
「いや・・・何となく嫌な予感がするんだ。とてつもなくろくでもないことになりそうな予感が・・・」
その時だった。どこかで聞いたような声が響いたのだ。
「皆様ようこそ、当遊園地<ゼストランド>へ!歓迎するのも私だ!」
―――クラフト、バカ王子、そしてアスランは知っていた。その声が誰のものであるかを。アホな記憶を呼び起こされた
三人は、苦々しい表情でそちらを振り向く。
そこにいたのは奇妙な仮面を被った怪しい男。どうやら、開園の挨拶をしているらしい。
「この遊園地の支配人・・・それも私だ!」
「おっ。やっぱり出たぞ!」
「よっ、名物オーナー!」
この遊園地の常連らしいグループは、怪しい仮面男の登場に騒ぎ立てる。いつもやってることらしい。
「今日も皆様が楽しんでくださることを切に望むのが私だ!では開門!」
入場門が開き、一斉に人が流れていく。それを見た仮面男は、満足げに呟く。
「ふふふ・・・今日もお客さんがたくさん入りそうだ、と喜ぶのが私だ。このまま遊園地を繁盛させて、金を貯めて、
今度こそ我が悲願、ユーゼス幕府を―――」
そんなことを言ってる仮面男―――ユーゼスの頭をクラフトは思いっきりぶっ叩いた。
「な、何をする・・・はっ!?き、貴様らは―――!」
クラフトたちの姿を見て驚愕するユーゼス。どうやら彼も覚えていたようだ。
「ユーゼス、まさか生きていたとはな・・・」
「ク、クラフトさん。この人と知り合いなの!?」
「ああ、まあ赫々云々で・・・詳しくは番外編・アスランの世直し珍道中を見てくれ」
クラフトは世にもアホなものを見た、という顔でげっそりと言い放った。
「あの大爆発の中で生きていたとは・・・流石ギャグキャラ」
アスランは感心したように呟く。
「しかし、こんなところで何をやってる?宗教がダメになったから、遊園地経営に鞍替えか?」
その質問に、ユーゼスは首を横に振った。
「どちらかと言えばこっちの方が本業だ。子供から老人まで楽しく遊べる遊園地をモットーに、いつかはハテノハテ星雲の
ドリーマーズランドと肩を並べるレジャーランドにすることを目指しているのも私だ」
ユーゼス幕府がどうこう言ってるくせに真面目に経営しているらしいユーゼス。実に度し難い男だった。
「まあ、昔のことは水に流そうではないか。折角来てくれたのだ、今日は我がゼストランドで大いに楽しんでいってくれ、
と勧めるのも私だ」
「・・・まあ、今度は別に悪いことをしているわけじゃないみたいだしな。じゃあ入るか、みんな」
「うん・・・」
気乗りしない様子で門をくぐる一同。初っ端からこんなバカに遭遇したおかげで、大いに盛り下がってしまった。
何人かにとっては、初めての遊園地体験。だが楽しいはずのそれが、悪夢に変わろうとは―――
ほぼ全員、薄々感づいていた。
―――のび太たちの後姿を見送り、ユーゼスは仮面の下で高笑いした。
「ふっふっふ・・・バカ共め。いずれは復讐をと考えていたが―――まさか、こんなに早く機会が来るとは・・・思わぬチャンスに
舌なめずりするのが私だ」
ユーゼスの高笑いが大きくなっていく。
「アスランと愉快な仲間たちとやら―――このゼストランドを貴様らの墓にしてくれる!今こそあの時の恨みを晴らしてやるぞ!
復讐心に燃えているのが私だ!はーーーはっはっはっはっはははっはっはっはは・・・はごっ!ゲホゲホッ!ゴホッゴホッ・・・
い、いかん、笑いすぎでむせたのも私だ・・・ゲフンゲフン!」
一人で絶体絶命のピンチに陥るユーゼス。そんな彼を親子連れが微笑ましく眺めていた。
「ママー、あの人なにしてるの?」
「しっ!見ちゃいけません!」
宇宙の遊園地・ゼストランドを舞台に繰り広げられるバカ共の闘い!のび太たちは生き延びることができるか!?
投下完了、前回は
>>115より。
番外編です。スパロボネタ満載の、本編ではとても書けない趣味に走った話になります。
スパロボキャラが前回の番外編以上に出ますが、全員基本的にバカです。
>>しぇきさん
いつもつっかかるあいつって、やはり相方の彼?ライブアライブは昔やったきりだけど、
かなりの良作だった記憶があります。
しぇきさんはシリアスもかなり上手いですね、羨ましい・・・。
イデ発動で世界の終焉・・・ある意味では狐の勝ちですよ、それは。彼の目的は<世界の終わりを見ること>ですし。
でも原作の狐なら、イデで全部消滅、みたいな終わりは嫌がるかも・・・。
うんこSSは浦安ネタでしたが、ペコちゃんってリボン回すと自在にリバースできるやつですよね?
あれは確かにやばかったw
>>132 まあ亜沙のあれは、惑星破壊レベルの強さの悟空がブルマにボコられるみたいなかんじです。
>>133 無印種は普通にそれなりに楽しめたんですが、種運命は・・・ねえ・・・
>>134 番外編・・・楽しむには、スパロボをそこそこ知ってないと厳しいかも・・・
そんな話を書く僕に問題があるわけですが(汗)
>>ふら〜りさん
いっそフルメタの如く女湯をこれでもかと描写してみようかとも思いましたが、あまりにも分量が多くなるので
やめました。ついでに女湯を覗くためにアスランとキラが種割れする予定でしたが、これもボツにしました。
文章の取捨選択って難しい・・・。
159 :
作者の都合により名無しです:2006/03/02(木) 20:03:51 ID:8I7Hm7Pd0
>カマイタチ
なんとなく折り返し地点…という気がしますね。前半の主役である夕凪が消えて、
真の主役であるカイジが前線に出てきて。でも、まだ霞掛かった様子ですね、カイジ。
最後、この地を旅立つ時、一体何人が自分の両足で立っていられるんだろう?
>超機神
番外編は、完全に本編のキャラを使った二次創作の二次創作ですねw
バカ王子は遊園地の主催者っぽい感じですけど、今回は解説兼ナビ役みたいだ。
プリムラとかは遊園地似合いそうだけど、やはり波乱があるみたいですね。
・フルメタルウルブス氏
条例どころか犯罪に引っかかりそうな気もするけど、鞍馬は意外といい奴なのかな
とりあえずロリではなさそうなので安心。びんちょうタン原作らしく可愛いですね。
・ふらーりさん
カーズとアーネの激闘ですか。いまんところカーズが教えているようだけど、
相手は超絶の魔法使いですからねー。それにパタリロ軍もいるし。2作連続で萌えキャラだw
・見てた人さん
陰惨な描写ですねえ。ここからカイジの奇跡的な逆転の推理と秘策・・でしょうが、
さすがに死んだ人は生き返らないから、ハッピーエンドは絶対にないでしょうね・・
・サマサさん
こういう感じの番外編ですと、必然的に主役的キャラは馬鹿王子になるんでしょうな。
ヒロインは不動でプリムラでしょうが。しかし、バカ対バカの決戦開始ですかw
前スレ244から
―――やたらヌイグルミの多い部屋だった。
現実の獣は勿論の事、幻獣や擬人化された植物や乗り物、多分漫画か何かのキャラクターであろう不可解な生物が一様に笑みを浮かべ、
部屋のそこかしこで住人を温かく見守っていた。
そして今、彼らが見守るのは毛足の短いカーペットに向き合って座る二人の少女。一人はこの部屋の主、そしてもう一人は招かれし客人。
「……ええ…と、これを…あれ?」
「違うよお姉ちゃん、ここはこうして……はい、出来上がり」
そう言ってシンディが突き出した掌の上には、折り鶴が乗っていた。
二人が没頭していたのは、ジパング生まれのペーパークラフトオリガミ≠セった。
ジパング人には子供の遊戯だが、世界が見ればそれは「次元変換芸術」とでも言うべき代物だ。
一枚の紙を「切る」も「貼る」も用いる事無く、「折る」のみで立体を形作る技術は確かに素晴らしいと言えるだろう。
それのみに特化するゆえ無数の折り方が編み出され、その技術は、宇宙開発事業に応用されるほど奥が深い。
―――しかし、今此処ではあくまで子供の遊戯でしかなかった。
二人の間には先刻折った鶴を初め、蛙、犬、鷲、蟹、変わった所ではフラミンゴ等が鎮座する。
「…凄いんだねシンディ。こんなのが有るなんて全然知らなかった」
それをまじまじと見ながらイヴは素直に感嘆する。学問には多分に明るいが、それのみには及びも付かない発想が
思わず驚きを呟かせる。
「えへへ〜、そうでしょ。学校の先生もすごいねってほめてくれるんだ」
腰に手をやって胸を逸らす様は、通常なら傲慢とも取れるのだがシンディ位の少女がやれば寧ろ微笑ましい。
だが突然、彼女はイヴに顔を寄せると声を潜めた。
「話変わるけどさ、お姉ちゃん……」
口に手を添え、吐息さえも他所に漏らさぬばかりの念の入れようだ。しかし、その貌は妙に高揚していた。
「…お姉ちゃん………好きなひと、いる?」
―――顔が、熱を帯びていくのが判った。その言葉を聞いて連想したのは、言うまでも無くあの男だ。
それだけでは無い。今余程間抜けな顔をしているのだろう、シンディが探り当てた様に微笑む。
「…いるんだ。それも、メロメロの人が」
言い返せなかった。
「でもね、お姉ちゃん」
しかし何故か意を決する様に、彼女はイヴへと向き直る。しかも耳まで赤くして。
「あたしもね、好きなひと…いるんだ。誰だと思う?」
口調からして、イヴと彼女が知っている人物だろう。それがイヴには容易に伝わった。
「……だ…誰?」
つい訊いてしまった。その後で後悔する。相手が誰かなど、今更言うまでも無いだろう。
そして、案の定の答えが返って来た。
「……おじちゃん」
顔こそ赤いが、決意は確かに其処に有る。そしてそれは、寸分たりとも揺るがない。
「だって、ずっと前から好きだったんだ。パパが生きてたときからのつきあいだったし、あたしのおたんじょう日だけじゃなくて
ほとんど毎日来てくれたし………それにいつも、優しかったし」
胸の前で指を絡めながらおずおずと並べる思い出に、イヴは僅かに寂しさを感じた。
彼女には、スヴェンと共有する思い出が少ないからだ。それ故に、同時に羨ましいと思った。
「……でも、ママもおじちゃんのこと好きなんだよね。多分、パパと同じくらい好きなんだと思う。
だからさ……ママの後でいいから、あたしのお嫁さんにもなってほしいな、なんて…」
やはりそうか。
実際イヴにもそれは薄々感付いていた。マリアがスヴェンを追う目に限って、何か特別な物が有るのは。
彼女と今の自分では、何をどうひっくり返した所で勝負に―――…いや、そもそも同じ盤上の試合ですらない。
如何に気持ちが大きかろうが、二人の間のバックボーンと世代の差は絶対に覆る事は無い。その事を思うだけで内心憂鬱が募る。
しかし―――
「………あれ? お嫁さん=H」
彼女の聞き違いでなければ、間違い無くそう聞こえた。
勿論それが指すのはマリアではない、かと言ってシンディでもない。それは、紛れも無く…
「うん。だってあたし、あのひらひらした服嫌いだもん」
当の彼女は、さも当然と返した。
「でもあたし調べたんだけど、あれってどうしても結婚式に無くちゃいけないんだって。……大人のじじょーだかで。
だけどあたしお婿さんの方の服が好きだから、あれはおじちゃんに着てもらうことになるかなー…って。
…やだお姉ちゃん、そこは冗談だってば」
けらけらと笑いながら話すシンディを見て、少しばかり安堵する。
(…良かった。想像しないで)
とは思うが、一瞬浮かんでしまった。
「だから三日後におっきなお祭りがあるんだけどさ、そのときおじちゃんに告っちゃおうかなー…なんてね」
そのまま彼女は楽しそうに嬌声を上げて体を捩る。
少女の天真爛漫に、イヴは癒される思いだった。トレイン達と出会うまで、彼女の人生には望まぬ屍山血河しかなく、
人は皆、老いも若きも恐怖か嫌悪――トルネオだけが金銭欲――の眼差ししか彼女にくれなかった。
それなのに同じ世界にはこんなにも眩しい物が有って、美しくて暖かい物も有る。
―――世界が全部こうだったら良いのに。
そうでは無いと身に染みて判っていても、彼女はそう思わずに居られなかった。
ふ、と気付くと、シンディが嬌声を止めていた。そしてイヴに、酷く感傷に満ちた目を据えた。
「……お姉ちゃん」
そのまま彼女の手を握る。其処にもまた、奇妙な労わりが有った。
「おじちゃんはお姉ちゃんの事が好きだから……嫌わないでね」
なだめすかす様な彼女の言葉を、イヴはまるで理解出来なかった――――――…その時は。
―――居間。
スヴェンはソファに座るや、大きな溜息を吐いた。
「…不機嫌そうね、スヴェン」
「そりゃそうだろ。お前こそ、いきなりこんな大所帯になって迷惑じゃないのか?」
「別に」
マリアはさながら早送りの正確さと速さで林檎を剥きながら、テーブル向かいのスヴェンにすげ無く返す。
「寧ろ私は大歓迎よ。
トレインさんもリンスさんも楽しい人達じゃない。シンディもすっかりイヴちゃんに懐いちゃったし、
私が文句をつける理由はまるっきり無いわ」
言うに淀まず剥いた林檎を一切れ、ナイフの先に引っ掛けてスヴェンへと投げる。
対するスヴェンも、飛んで来た林檎を普通にフォークで受け取って口に運ぶ。
「だがなぁ、色々問題だって有るだろう?
金の問題とか、近所付き合いとか。取り分けあの二人は、ロクデナシ二重奏って具合の奴等だからな。
きっと何か問題を……」
言い掛けた途中で、スヴェンの言葉が止まる。
「……何だ、お前?」
既にマリアは彼の話を聞いてなどいなかった。皮むきも止めて林檎を持った方の手で口を押さえている。
彼女は、笑いを堪えていた。
「御免なさい。だけど、貴方が言葉を選びあぐねる所なんて始めて見たんだもの。
眼福、眼福、かしらね」
にっこりと優しい微笑みに、彼はどうしようもない居心地の悪さを感じる。
――――其処まで余裕が無いのか、俺は。
両肩にずしりと、自身の情けなさがのしかかった様な気分だった。
内心忸怩たる思いを抱え、彼は心底苦悩する。嘆息と共にうな垂れ、顔を上げると……マリアが正面に居なかった。
だが捜すまでも無い、彼女はスヴェンのすぐ横に座っていた。
「…スヴェン、私が文句を言いたい人が居るとしたら……それは貴方よ」
真っ直ぐな眼差しが至近距離からスヴェンを射抜く。だがその眼は、言葉通りの非難では無い。
いっそ非難の方がマシだった。それなら罵倒なり痛打なりで瞬く間に解決する。しかしこの眼は絶対にそんな事では終わらせない、
言葉にそれ以上の代価を求める目だ。
それにした所で、金や腕なら自ら進んで払うが、マリアが求めている物はそれよりも遥かに高価く、根深い。
「此処が私達家族の家なら、貴方の家も同然よ。それを何故そんなに、居心地悪くしているの?
もしそれがあの人への負い目だとしたら、貴方は間違ってるわ。何も判ってない。
ISPOの皆も、私は勿論シンディも、誰も貴方を責めたりしないし恨んだりもしない。何故か判る?」
言葉を止める代わりに、眼に更なる力を込める。視線を逸らしたら一息に畳み掛けられる事を知っているスヴェンにとって、
これにはほとほと困り果てた。かつて仲間内の酒の席で教えた交渉術を、そのまま流用されているからだ。
………難儀な事に、彼女の言葉は――――否、論撃は、最初の最初から説得のそれだった。
そして彼が知る必勝パターンそのままに、限界まで引き絞られた後矢が放たれる。
「貴方が、あの事の一番の被害者だからよ。貴方にとって、ロイドは単なる相棒じゃなかった。幼馴染で、無二の親友で…
……代わりなんて居なかった。
それをあんな形で失った貴方の傷は、きっと誰よりも深いわ。だから……!」
「お前が車を壊したのは判ってる」
従って、何処が会話の隙なのかを存分に心得ていた。そして予想通り、マリアの唇が固まった。
「……『何故判った』って貌だな。
簡単さ、トレインからブレーキオイルの匂いがまるでしなかった。服には勿論の事、手にもオイルが付いてなかったんだからな。
コブラツイストの序でに調べたから、間違い無い。
それにな、あいつ機械類の操作は兎も角、修理なんて細かい作業は全然駄目なんだよ。それがいきなり車の整備なんて、変だよな?」
マリアは答えなかった。
それを好機と、場の空気を望むべき方向へと持って行く。
「あいつが庇った理由は何となく判るさ。背中預ける付き合いだからな。
だがお前は、何で其処までして俺を引き止めたい? そんな理由、何処にも無いだろう。
悪いが、ちょっとどうかしてるぜお前。そんなのは…」
「……貴方が一番良く知ってるじゃない」
言葉そのものではなく、込められた情感が彼の言を押し退けた。その上で、
―――余計な事を言うな。
彼女の双眸が言っていた。
「私は今、フリーランスの経営アドバイザーで食べているのだけど……何故かしら、私の口座にはその稼ぎだけでは到底貯まらない
大金が有るの。貴方、何か知らない?」
問うもスヴェンは答えず、眉一つ動かさない。マリアにしても、お構い無しでそのまま続く。
「……何処かの誰かさんが、少なくても月二回は勝手に百万単位のお金を振り込むのよ。
もうその額と来たら、シンディがあと五人居て、全員大学まで入れたとしてもまだ余るくらい」
虚ろな笑みを向けるも、やはりまるで仮面の様に表情は変わらない。
それを見てか、マリアはややうな垂れる。
「昔のコネを使って調べて見たんだけど……スヴェン、貴方掃除屋になったそうね」
少なからず、スヴェンの表情が崩れる。其処には、塗り潰し損ねた様なかすかな狼狽。
「それが……どうした」
震えているのが判った。言葉など無意味だと判っているのは、己自身の筈なのに。
ほんの少しとは言え、唇に気を配ってしまい――――目を逸らしている事に気付かなかった。
突然彼の頭を手が捕まえた――かと思うと、無理矢理その手はスヴェンを引き寄せ、固定する。
動かせない視線の先には、責める様な、だが泣きそうなマリアの美貌。
「いい加減にして。
貴方は私が最初の一回どんな気持ちだったか判っているの? 貴方、これだけの大金稼ぐのにどれだけ危ない橋を渡ったの?
貴方、此処までして貰った私が、はいそうですかで済ます情の無い女とでも思っているの!?」
かつて、全てを捧げても良いと思えるほど焦がれた男に陰徳を重ねられ、全く無関心で居られる訳が無い。
半年も過ぎれば、彼女の胸から消えた筈の炎は前にも増して燃え上がっていた。故にスヴェンは、
許せる物なら彼女を押し退けて、世界の果てか何処かにでも消えてしまいたい気分だった。
こうなる事は十二分に判っていたから、絶対に此処に来たくなかった。
「お、お前は…ロイドの……」
嘘八百やら屁理屈やらは口を衝いて飛び出すのに、自分の内情の話となると途端に舌がざらつく。スヴェンは我が身の臆病を
したくも無い形で理解した。
「私はあの人の事なら何でも判る。
あの人ならきっと、この選択を責めたりしない。きっと許してくれる」
彼もそう思った。
仮に今ロイドと話せたら、双方一人身であれば絶対に笑顔で許してくれるだろう。二人が知る彼はそう言う男だ。
「だがな…!」
「私にはもう耐えられない。
ロイドも死んで、貴方も死んだらもう、私は絶対にどうにもならなくなる。
だからお願い、此処に居て。お願いだからもう……これ以上私をひとりぼっちにしないで…」
遂に抑えに抑えた涙が溢れ、スヴェンの胸にすがり付く。
「し…死ぬ、とは……限らな、い…だろうが…」
鏡で見たらさぞや情けない貌をしているのだろう、まるで女を知らない小僧の様に声が上擦っていた。
「…クロノスなんかと、関わっているのに?」
―――そんな事まで。
全く以って、今更ながらに彼女の有能を再認した。
「事情は知らないけど、クロノスが貴方を優遇する筈なんか無いわ。
奴等は目的の為なら何でもする連中だもの。奴等にとっての貴方は、単なる公僕崩れの掃除屋よ。
どんな扱いしたって、世界の為≠ネら天下御免よ、あいつらは」
言われるまでも無い。そもそもセフィリアの誘いを蹴ったのはそれだ。
契約だの友好関係だの言った所で、それがイザと言う時まで保障される事は無い。寧ろそう言う時は手も無く切り捨てられるだろう。
使い捨て前提の駒にされるよりは、初めから突っぱねた方が怒りは買っても随分マシだ。
マリアの肩に、スヴェンの手が優しく添えられる。
抱き締められるのか、と期待したが、その手は彼女を優しく胸の中から押しのけた。
「……悪いがな、マリア。それは、俺が此処に居る理由にならない」
辛くて重い、決意の眼だった。
「一人じゃない、お前にはシンディが居る。そして俺には仲間が居て、俺の戦いがある。
俺は―――仲間も戦いも捨てる訳には行かない。やっと見つけた、俺が俺である為の生き方なんだ」
「でも…!」
彼女の涙を、スヴェンは眼で制した。
「判ってくれ。
でもな、お前にこれ以上寂しい思いをさせたくも無い。だから、聞いてくれ」
彼はそのまま、訥々と語り出した。
それから三日後。
町は、創立五百周年記念の祝賀祭に浮かれていた。
国際的重要指定文化財にも認定されるフィブリオ市は、普段の有り様以上に華々しく騒々しく、記念すべきこの善き日を一週間
不休で祝う、と、有線放送で市長が興奮気味に言っていた。
かくして町はその通り、紙吹雪が散らない通りは無く、露店はいつも以上に隙間無く並び、少なくない大道芸人が所狭しと
芸を披露し、花火の音は朝から響き、文字通りの祝賀ムードに包まれた。当然それに観光客が目を付けない訳は無く、
その量も普段の比では無い。正に人の波だ。
さて―――その中に、
「あ、おっさん、これも。あ、いやこっちも。あー、これもいいな。いや…そうだ、こいつも」
「お前、トレイン! さっきから一体全体幾つ買ってるんだお前は!! 三つまでしか許さんって言っただろうが!!」
「はあ? これが六百イェン? ふっざけてんじゃないわよ、二十が妥当よ。…客に何よその眼は。店ブッ潰すわよ!!!」
「リンス、お前ヤクザか!! ……済まん、こっちで払う」
…トラブルメーカー二人が、いつも以上にスヴェンに迷惑を掛けていた。
祝賀祭を楽しむのは勿論彼ら一行のみでは無い。今回は二人多かった。
「あらあら、まるでお父さんねスヴェン」
「すごぉい、おじちゃん。テレビで見た忍者みたい」
人垣を縫って二人の間を高速で往復する様は、確かにそう見えなくも無い。
「ったく、この穀潰しのロクデナシ共は…人様に迷惑掛ける事しか脳ミソに入ってないのか?」
頭に三段重ねのタンコブを作って気絶した二人を引き摺りながら、スヴェンは忌々しく毒づいた。
しかしその苛立ちも、イヴの笑顔の前には雲散霧消する。
彼女にとってはお伽の国を直に見る様な感激だった。
目に映る全て、耳に入る全て、肌に感じる全て、全てが鮮烈に彼女に殺到し、いやが上にも幼い胸が感動に沸く。
スヴェンやマリアも、先刻から彼女の質問責めに遭っていた。
「ねえ、スヴェン。あれ何!?」
「あれはジャグリングだ。
ああやって複数の物を投げて自分で受け止め、それを繰り返す。簡単そうに見えるけど、結構難しいんだぜ」
「マリアさん、あれは!?」
「あら、珍しいわね。
あれは東洋の蒸し饅頭よ。一つ食べてみる?」
祭りであるが故か、和洋の別なく屋台も並び、居ながらにして世界中の芸や味覚を楽しめる。既に伝統など欠片も無いが、
それでも楽しい事に変わりは無く、本やその他の二次元情報媒体では到底味わえない経験と言う情報が、あらゆる物を寸分
違わず記憶する彼女の脳に怒涛の如く積み重なる。
「…何かお姉ちゃん、あたしよりずっと子供みたい」
揚げ立てのフィッシュ&チップスの熱さに苦労しながら、シンディが楽しそうに呟く。
「…もう大丈夫かもな。姫ッチ」
いち早く復帰したトレインが、妙に冷静にスヴェンに言った。
「そうだな」
スヴェンが見ても、その眩しい笑顔に翳りは一切見られない。もう傷の痛みも暴力の恐怖も完全に過去の話だろう。
と、感慨に浸っていたスヴェンの背中を、誰かが力強く叩く。
「ゴ…ホッ!! 何しやがる!!」
「祭りだってのに、湿気たツラ並べてんじゃないわよ。
ほらほら、アンタらも呑んでハイになっときなさい」
既に出来上がったリンスが二人に大型の紙コップを突き出す。
「何時の間にそんな酒臭くなって……いや―――待てよ。その前に……お前、何時買ったんだ酒なんて」
「あ…ああ、それね」
二人がなみなみと注がれた紙コップを受け取ったその時、スヴェンの耳が人いきれの中の或る会話を捉えた。
「あれ? おっかしーなぁ。もちっと買った筈なのに」
「お前酔っ払ってどっか落としたんじゃねーの?」
見れば男二人組の一人が、しきりに酒瓶が幾つか入った袋をまさぐっていた。
「…掏ったな」
リンスの弁解より早く真相を告げる。
…………無論その後、スヴェンが雷を落としたのは言うまでも無い。
喧騒は、昼になってもまだ止む事を知らない。
無理からぬ事だろう。人口密度は普段の三〜四倍、その中には今まで滞在していた者も居れば此処に初めから住んでいる者も居る。
それに加えて後から来た者は、最早到底数え切れる物では無い。
一人が息を切らしても、その何倍もの数の人間が祭りに華を咲かす。そしてそれをあちこちで延々と繰り返す訳だから、
祭りを終わらせる方法は時間しかない。
スヴェン達はオープンカフェの同じテーブルで、それらを一歩離れて見守っていた。
「はー…すげぇな。ずっと最初のテンションのままだぜ」
「派手な山車(だし)でも出て来るんじゃないの。この調子じゃ」
半ば感心の風情で見やる二人を尻目に、スヴェンとマリアは肩を並べて不快な静寂を保っていた。
勿論それにトレイン達も気付いている。実際吐いた言葉も確かに感心半分だが、それよりも居辛さへの反発の意味合いが
強いかもしれない。
「…どうしたんだ二人共。いきなりそんなんなっちまって」
しかし問われても答えない。年少組も流石に不安になってきた。
「…ねえ、ママ、おじちゃん。何かあったの? 変だよ」
「ん? ああ、大丈夫、問題無いさ」
とても言葉通りには見えなかった。
「―――イヴ、ちょっといいか?」
普段なら耳に快い筈の彼の声が、何故か今は彼女の耳朶に柔らかくとは言え確かな鋭さで突き刺さった。
「マリアが…好きか?」
だがその予想に反し、言葉は普通に答えられる程度の物だった。故に、心の緊張がほぐれる。
「え…あ、うん」
「そうか。じゃあ、シンディが好きか?」
「うん」
訊かれるまでも無い事だ。即座に応じる。しかしその時、マリアが辛そうに目を伏せた事に気付いた者は居なかった。
「…じゃあ、イヴ。この町が好きか?」
「うん」
何故か出し抜けにシンディが席を立つ。何をしたら良いか判らない、そんな貌で。それにトレインとリンスは訝しんだが、
スヴェンの行動を止める力にはならなかった。
「お、じ…ちゃ…」
震える声を絞るも、彼は意に介さず席を立ち、イヴの横に跪いた。
そして彼女の頬を、両手で捧げ持つ様に抱く。彼女にしてみれば、そこまでスヴェンに近付いた事が無いので見る間に紅潮する。
しかし次の言葉に、彼女は――――否、マリアとスヴェン以外の全員が、衝撃に蒼ざめた。
「なら―――、お前は此処に残れ。俺達の旅には、連れて行けない」
えー…前回よりは早い投稿とは思いますが、それでも随分空けてしまいました、NBです。
ところで先日、街中で漢≠ネトラックを発見しました。
いや、恐れ入った、恐れ入った。何せ………
荷台コンテナ部の少なくとも三面が――――…女神三姉妹の次女(セル画調)。
俺も、阿修羅とか菩薩とかはよく見かけますが…これを運転できる奴ァ、マジ凄ぇ。
でもそう言えば高校生の頃、高校の前に停まっていた軽自動車が、緑地にパープルのフレアパターンを施し
てあり、始めはどっかのゾクかと思いつつ前に回ると――――――
サク○大戦のチャイナ眼鏡(名前失念)が、ボンネットにデカデカと。
……オタクって奴ぁ、今や立場を選ばないんでしょうか。
しかし、とっくの昔に汚れきった筈なのに、どうも色事書くのがこれらを乗り回すくらい恥ずかしいです。
何か俺の性癖があけすけになっている気がする―――…のでしょうかね。
ま、人の行動理念は八割が性癖だって言うし、これに照らせば当に剥き出してる訳だから、いいか。
さて、御託はさておき、今回のBCもいつもの通り楽しんで頂けたでしょうか?
兎に角書き手の俺としては、それのみが最大の焦点な訳で。もしもそうなら全く以って嬉しい限りです。
ではそろそろこの辺で――――今回はここまで、ではまた。
174 :
作者の都合により名無しです:2006/03/03(金) 20:10:28 ID:PkF4cP2s0
スヴェンは幼女キラーだなあ。羨ましいw
しかし、どうにもきな臭さを感じる少女2人ですね。
妙に大人びたところもあるシンディと心の傷を持つイブと。
イブ、最後衝撃でしょうねえ。
NBさんお久しぶり!
今回は激しいシーンは無しですが、所々に技の確かさが光ってますね。
最初のイブとシンディのシーン、インモラルな雰囲気が漂ってゾクゾクしました。
スヴェンの過去話はどうしてもイブに関わって来るでしょうね。
スヴェンの気持ちもわかる。定住出来ない旅カラスの2人には、イブみたいな少女の
情操教育にはどうしても…という感じでしょうか。
どんな解決方法が示され、どんなトラブルが巻き起こるか楽しみです。
原作、ロクに知らないから逆に楽しめるな。
シンディとマリアってどんな感じの絵ですか?
原作に出ましたっけ?美人と美少女でしょうけど。
この作品ももう軽く1年以上続いてますねー。
応援してますので何年かかっても完結させて下さいね。
でもたまにはNBさんの短編とかも読みたいなー。
scene31 伊藤開司【十一】
カイジたちは、旗元と双葉を呼び、ホールへと集合する事にした。
二人、減ってはいるものの――昼間に続いて、参加者全員がホールに勢揃いする運びとなった。
「悪い知らせがある……落ち着いて聞いてほしい。
二十四時過ぎ……一号室に見張りの交替を知らせに行ったら、何度呼んでも、夕凪が出ない。
その内に、人が集まってきて……ドアを破る事になった。
夕凪は、殺されていた……室内は三号室と殆ど同じ、密室状況だった……」
ひっ、と息を呑む音がした。双葉だ。
「それから俺たちは、笠間が殺したのではないかと疑い、二号室のトイレに向かった。
何時の間にか、ドアを縛っていたロープは解けていて……笠間もまた、殺されていた……」
カイジは長テーブルの上座に立ち、重苦しい声で、二人に事情を説明した。
「そんな……また、二人も……っ」
双葉の瞳に、絶望の色が浮かぶ。今にも、顔を覆って泣き出してしまいそうだ。
「明らかな、他殺だと言うんだな?」
確認するように、旗元が問う。双葉とは対照的に、明るい声色だった。
心なしか、表情も生き生きとしているようだ。
「ああ。残念ながら、自殺や事故ではありえない。
夕凪は首の骨を折られ……笠間は頭を何度も殴打された形跡があった……」
「そうかそうか、なるほどな」
旗元は、満足な結果だとでも言うように
さして動揺もせず、二度も大きく頷いてみせた。
「『首の骨』ですか……」
小さな声でそう言って、双葉は、ふうっ、と溜め息をついた。
カイジは何気なく、その横顔に目をやり……
理由もなく。ぞくり、と、背筋に悪寒が走った。
「あのですね……突拍子もない意見かもしれないんですが……」
只野は、言い難そうに、皆の顔色をうかがう。
「犯人は……この中にいないんじゃないかと……」
「どういうことっすか……? じゃあ誰が二人を殺したっていうんすか?
もし、幽霊とか言ったら、本気で殴るっすよ……!」
「ゆ、幽霊だなんて言いません……! ハネダ、ユカリさんですよ」
只野の口から出たのは、思いがけぬ名前だった。
「な、なんですって……!? 確かに、彼女は姿を消してはいますが……」
予想外だったのだろう。黒川が、驚愕の表情を浮かべる。
「主催者側は、彼女が『参加者ではない』とは明言していません。
彼女が犯人なら……密室を含めたすべての謎に説明がつくと思うんです」
こほん、と咳払いをして、只野は続ける。
「この吹雪の中、忽然と何処かへ消えてしまった、というのもそうですが……
何よりも、最初に違和感を覚えたのは、鍵に関しての説明でした。
都心ならともかくとして……丁度、私たちが今置かれている状況のように
大雪で簡単に外界から孤立してしまうようなペンションなのに
客室の『マスター、スペアキーがない』これは、おかしいと思いませんか……?
しかしですね……彼女が『故意に嘘をついていた』としたら……!」
「あり得ない話ではない、な」
小此木が相槌を打つ。
「ハネダさんが犯人なのか、まだこの中に犯人がいるのか……
それはわかりませんが……どちらにせよ、もう、四人も犠牲者が出てしまいました。
悔しいですが、捜査より生き残りを優先しましょう。
出来る限りホールから動かず、お互いを監視。単独行動は決してしない。それで構いませんよね?」
黒川が今後の方針を語る。旗元以外は黙ってそれに頷き、肯定の意を表明した。
長い沈黙が、ホールを支配する。
カイジは改めて、参加者たちの表情をつぶさに観察する。
そして……何度考えても結論の出ない問題に頭を悩ませるのだった。
香坂まどか。一条。夕凪理沙。笠間潤。この四人を殺したのは誰なのか。
単純に、密室の解答……という意味では
只野の言う通り、ハネダユカリ犯人説が一番理に適っている。
適っているのだが、安易な解答であることもまた事実だった。
小此木秀平。玉崎真吾。旗元太。双葉夕実。只野文男。黒川時子。
この六人の中に『犯人』が潜んでいて……
何らかの悪魔的なトリックを用い、三号室及び一号室を密室にした。
その可能性だって、ハネダユカリ犯人説と同じ、もしくは……それ以上に高い。
そう、決して荒唐無稽ではないが、どちらかと言えば、只野の説は現実逃避気味……
心の防衛機制が働いた結果の合理化……いささか都合の良過ぎる解釈……!
仕方のないことかもしれないと、カイジは思う。
誰だって、殺人鬼と行動を共にしているなんて考えたくはないから……
しかし、だ。探偵達の置かれている状況は、想像以上に芳しくない。
(思考停止しては駄目だ……油断は即、死に繋がる……
それぐらいの気構えでいなければ、犯人に足元を掬われる……!)
少しでも早く、犯人の正体を暴かなければならなかった。
暴けないまでも、絞り込まなければならない。
落ち着いて、今までに起こった事件を整理してみよう。
先ず、第一の事件。三号室で、香坂まどかが殺されていた。外傷はなく、死因は不明。
夕凪は毒物によるものだと説明していたが……
告発それ自体が誤りだったと判明した今となっては、本当にそうなのかは疑わしい。
部屋のドアには鍵がかかっており、掛け金も下ろされていたようだ。
窓にも鍵がかかっている事を確認している。完全な密室状況だった。
窓際の電話機、午前零時に着信履歴有。誰かが三号室に内線をかけたものと思われる。
次に、第二の事件。オーナー控え室で、一条が殺されていた。
室内に、夥しい量の血痕が残されていた。死因は、鋭利な刃物で身体を切り裂かれての失血死だろうか。
それから、第三の事件。一号室で、夕凪理沙が殺されていた。
首が無理矢理逆向きに捻じ曲げられており、死因は、首の骨を折られた事と思われる。
いかに少女の細い首とは言え、かなりの力が必要だったに違いない。
部屋のドアには鍵がかかっていたが、掛け金は下りていなかった。
窓にも鍵がかかっている事を確認している。三号室と同様、密室状況だった。
窓際の電話機、午前零時に着信履歴有。誰かが一号室に内線をかけたものと思われる。
最後に、第四の事件。監禁場所の二号室トイレで、犯人と思われていた笠間潤が殺されていた。
死因は、鈍器で頭部を殴打されての撲殺。
(あれ……これって、何か、おかしくないか……!?)
順を追って、客観的に事件を回想していくに従い……
得体の知れない違和感が、カイジの中で膨らんで行き、遂には弾ける。
天啓だった。その『違和感』の正体に思い至った瞬間、砕けていた欠片が集合……
一つの真実を形作る。そうだ。あの時の『アレ』はきっと――
――ガタン、ドシャッ。
カイジの思考は、不意に耳に飛び込んできた無粋な物音に断ち切られた。
毎度ありがとうございます。前回投稿は
>>150です。
・何が起こるかわからない
これは、できる限り最後まで持続できたらいいな……と思っております。
・折り返し地点
書かなければいけないことはまだ沢山残っていますが
当初の予定としてはもう終盤なんですよね。
あまり考えないで書き始めたツケが今になって回ってきた感が。
なんとか無理なく纏まるよう頑張ります。
・陰惨
ですね……ちょっと、明るめの展開も恋しくなってきました。
しかし、本SSは今後も明るくなりそーにはないですね。
182 :
作者の都合により名無しです:2006/03/04(土) 19:59:42 ID:mYSTzZ+F0
そういや忘れてた!ハネダがいたわ。メンバーに気を取られてた。
しかし、いよいよカイジの(待てよ、待て待て)が発動・・と思ったら
また何か起きましたね。
「予定としてはもう終盤なんですよね」って事はまだ真ん中位かな?
返ってその方が嬉しいです。
※とっても面白いんですけど、適当な段落で
改行をしてくれるとありがたいんですが。
カイジお得意の「気付き」が推理を導き出しそうですね。
いつもギリギリにならないと覚醒しませんが、
ようやく主人公らしいところを発揮ですね。
ただ、またなんかアクシデントが発生しそうですねえ。
超機神大戦番外編 「大惨事スーパーフール大戦〜遊園の銀河へ」2
遊園地ゼストランド。経営者がアレな割には、見た目は意外にも普通っぽかった。
「もっとアホっぽいものなのかと警戒してたけど、案外いい感じじゃないか」
とりあえず見た目からやばいものではなかったので、稟はひとまず胸を撫で下ろした。
「へへー、人がいっぱいで賑やかで、楽しいぞ」
「これが、遊園地・・・」
フー子とプリムラは物珍しそうにキョロキョロしている。
「あーコラ、フー子!ちゃんと前を見て歩かないと・・・うわっ!」
のび太が注意する暇もなく、はしゃぎまわっていたフー子が何かとぶつかる。
「ご、ごめんなさい・・・」
「ははは、いいんだよ。子供は元気なのが一番!」
ぶつかったのは変テコな着ぐるみだった。動物とロボットを掛け合わせたような奇怪な姿をしている。それはフー子の頭を
優しく撫でて、手にした風船を手渡す。
「これ、もらってもいいの?」
「勿論だとも。さあ、他のチビっ子たちもどうぞ」
「わあ、ありがとう!」
のび太たちも風船を手に取る。着ぐるみは風船を渡し終わって、胸をそびやかす。
「僕はこの遊園地のマスコット、ライオウくん!今日はたくさん楽しんでね!」
「はーい!」
元気よく返事するお子様たち―――と、背後から声をかけられる。
「皆さん、楽しんで下さってますか?」
女性の声。そこにいたのは若い女性だった。ちょっとインテリ風で、中々の美人だ。
「あ―――ミ、ミナキさん!お仕事、ご苦労様です!」
ライオウくんが急に背筋を正す。口調までどことなく丁寧になっていた。
「ふふ、トウマも頑張ってるみたいね。だけどお客様の前で地声を出すのはまずいわよ?」
「あ、す、すいません!」
頭をかきかきするライオウくん。どうやらライオウくんの中身は男性で、トウマという名前で、さらにミナキに気があるらしい
ということは分かった。
「あら、自己紹介もせずに失礼しました。私はミナキ・トオミネ。この遊園地のアトラクションの企画・製造を任されています。
今日はオーナーのユーゼスさんから、皆さんにこの遊園地を案内して差し上げるように言付かっておりますので、よろしければ
ご一緒させていただけませんか?」
「ふーむ・・・ユーゼス直々の命令ってことか・・・どうも胡散臭いな」
クラフトが仲間内にだけ聞こえるように、小声で呟く。
「罠ってこと?」
「そうかもしれん。どうする?」
「まあ別にいいんじゃないか?だってあのバカのやることだぞ。ほっといても害はないだろ」
アスランは自分の事を盛大に棚に上げて人をバカ呼ばわりする。しかしユーゼスがバカだということに誰も異論はなかったので、
<お前が言うな!>とは思われなかった。
「じゃあ、案内してもらおうか」
「はい。ではこれが乗り物・アトラクションのリストになります。どれがよろしいでしょうか?」
ミナキは遊園地のパンフレットを取り出す。一同はそれを覗き見た。
〜特別図解・これがゼストランドだ!
ユーゼスコースター=先頭車両がユーゼスの仮面の形だよ。宇宙一の怪しさが自慢なんだ!
メリーゴーユーゼス=お馬さんの代わりにユーゼス人形が回るよ。
ユーゼス屋敷=ユーゼスしかいないよ。
ユーゼスカップ=カップ一つにつき、ユーゼス人形が一体いるよ。一人で来てるあなたも寂しくないね!
観覧ユーゼス=ユーゼスしか見えないよ。
ユーゼスお土産屋さん=ユーゼスグッズしか置いてないけど、たくさん買ってね!
ユーゼス映画館=製作・監督・脚本・主演・全て私だ。
etc・・・
「・・・何だ、こりゃ」
「はい。当遊園地は<オルウェイズ・ウィズ・ユーゼェス!!(いつもユーゼスと一緒だよ)>をテーマに、数々の
アトラクションを・・・」
「発音はいいが、嫌なテーマだな・・・一体どういう客層を狙ってるんだ?」
「主に宇宙中のダメ人間共から大絶賛を頂いております。何せオーナーからしてダメ人間ですから」
ミナキは堂々と答えた。彼女も結構いい性格をしている。
「全く、こんなアトラクションをやりたがる奴がいるわけ・・・」
クラフトはそこまで言って思い当たった。この中にも、ダメ人間は約二名混じっている。
「どうだバカ王子。まずは定番のユーゼスコースターから回ってみるか?」
「いや、ここはユーゼス屋敷もいいかと・・・」
アスランとバカ王子である。二人とも既にゼストランドの虜だ。
「あの二人はほっといて・・・どうする?こんなアトラクションしかない遊園地なんてやだぜ」
ジャイアンが不平を漏らすが、全員同意見であった。ミナキがしょうがない、とばかりにため息を漏らす。
「では、こちらは如何です?見世物小屋なんですが、宇宙中から集めた面白人間たちによる素敵なショーが楽しめますよ」
「見世物小屋か・・・」
「うーん、不安だけど一応行ってみる?」
「そうだな。行かなきゃ話も進まないし」
どうせろくでもないんだろーなー・・・と思いつつも、のび太たちは見世物小屋へと進むのだった・・・。
投下完了、前回は
>>157より。
次回もバカが大暴れ。
>>159 バカ王子が遊園地を作ったら・・・原作のカラーレンジャー編みたいなことに?
>>160 バカ王子は本編でも既に主役級・・・
第6話 竹宮流
夜が明けた。朝特有の涼しさが体に纏わり付いてくる。雀が鳴き太陽は空から下界を照らしている。
昨夜びんと添い寝をした鞍馬はびんよりも早く起きた。腕時計を見ると午前8時頃だった。
今日は自分の為の試合が組まれていない。FAWは昨日シリーズが始まったばかりだ。一日目はイントロで二日目がつなぎの回
つまり中堅か新人の試合が行われる。さらに社員ならいつブッキングしてもOKだ。都合が悪かったりダメージがあったりすると
キャンセルも可能。鞍馬は今試合を行う気分にはなれなかった。もっと強くなる為にはどうしたらいいのか。技術を磨くか
体力を増やすか筋力を上げるか。そのどれもがパワーアップに繋がる事は確かだ。びんの家の前で体をほぐし準備運動を始める。
腕立て、腹筋、スクワット。十分に体が温まった頃シャドーを始める。イメトレと同じで相手を仮想して体を動かす。
パンチ、蹴り、投げ技。ふっと一息つくと鞍馬は考えた。船村弓彦には組み付いたり投げを狙ったりしても通じなかった。
組み付いても打撃ではじかれたり、うまく逃げられたりしたのだ。ならば。あいつ以上の技術を手に入れるかあるいは筋力を手に入れるしかない。
後者はこの短期間では無理だ。いつかはわからないが近い内に再戦するつもりのだから。
「鞍馬さん・・・ご飯が出来ました。」
「おう・・・悪いな。」
どうやらついさっき起きたらしくびんの毛に少し寝癖の後がある。
「昨日は暖かくて・・よく眠れました。」
「まぁいいって事よ。」
食事を前に二人とも穏やかな口調を始める。
「世話になったな。びんちゃん。」
鞍馬が礼を言った。鞍馬はびんを社会人として見ていた。立派に働き他人の役に立っている。小さな体で出来る事など限られているが
それでもフルに自分の持てるパワーを仕事に注ぎ込んでいる。つまりプロだ。業種は違えど同じくプロの世界にいる鞍馬としては
共感できる所があるのだ。プロレスラーは客を魅せるのが仕事だ。
「まだ俺は君にお礼をしていないな。」
「お礼なんて・・おばあちゃんが困っている人を見たら助けろと・・・」
「まぁ何だ。俺は君の仕事を手伝う。あれだ。二人でやれば効率がいい。もちろん俺の分のお駄賃は君の物だ。」
数分後、びんと鞍馬は山のふもとの町へと出かけた。途中山の中にしかいない動物もいた。野兎やタヌキ等だ。
愛らしい姿にびんは足を止めて見とれていた。びんの子供らしい表情に鞍馬はなぜか安心していた。
子供にしか見えない事、子供の時にしか出来ない経験もあるのだ。
やがて二人は町へと付いた。びんの話によると掲示板に求人の張り紙が貼ってある。びんはいつもそこで
仕事を得ているらしい。張り紙を剥がし依頼主の所へ持っていく。そして取引が成立し仕事を得られるというわけだ。
気に入らなければ剥がして捨てる事も可能らしい。
「びんちゃん、俺が持ってくるよ。最初は君の分だ。二人人手が必要としている人がいるなら一緒にやろう。いいね?」
「はい。」
掲示板の前にいる人だかりはまばらだった。若者が多い。NEETかフリーターだろう。
鞍馬は掲示板から一枚の張り紙を剥がすとびんの方に歩いた。二人で覗き込む。
「竹宮流・・・どんな所?」
「んー武術の道場というか・・。まぁお稽古事をする所なんだよ。」
仕事の内容は主に道場の掃除と雑用。つまり庭掃除や廊下を拭いたりする。
地図が書いてあり以外と近くの場所にある。住宅街の中らしい。
鞍馬達がそこに着いたのは午前9時半頃だった。
インターホンを鳴らし暫く待つ。応対したのは白髪の老人だった。
「掲示板の張り紙を見て来た者です。お手伝いに参りました。」
そう言って張り紙を渡す。
「うむ。入ってくれ。」
早速仕事に鞍馬達は仕事に取り掛かった。びんは庭の花々に水をやったり廊下を拭いたりしている。
鞍馬はと言えば撒き割りを始めた。お茶を沸かすのに茶釜で沸かすらしい。
一区切り付くと鞍馬はびんを呼び老人から貰った水を飲み始めた。縁側で庭を見ながら
水を飲む。びんもちびちびと水を飲んでいる。
「よう鞍馬じゃねぇか。」
聞き覚えのある声に鞍馬は振向いた。鞍馬の目に映った男の肌は日焼けしていて髪が黒かった。
服も黒かった。靴も黒かった。身につけているもの全てが黒いと噂されている男だった。
「久我さん・・・奇妙だな。こんな所で会うなんて。」
「そこのガキはお前のお供か?」
「俺の・・・恩人さ。」
「久我さん、スパーリングお願いするよ。」
鞍馬の横から声がした。
「そうだな、丹波。大会に出ないらしいがいいのか。」
「まだ体が回復してないからな。でも組み手は出来るんだ。」
鞍馬の中で実力者と呼べる人間が二人目の前にいた。鞍馬はわくわくしてくるのを感じていた。
炎の勢いが増す如く心の中が明るくなった。俺が求めていたのはこれかもしれない。
この先に何かある。明るい兆しが見えてくる。
「久我さん・・・丹波さん・・そのスパー、俺も混ぜてくれないかな。」
「鞍馬さん嬉しそう。」
スパーリングという言葉を知らないびんが首をかしげている。それはそうだろう。
「いいのかい。泉さん。」
「ワシは構わない。竹宮流と久我さんの技術と丹波君の技術とそこの若いのが混ざるのをワシも見たいのう。」
こうして鞍馬と久我重明、丹波文七とのスパーが決定した。
穏やかな日常から躍動感のあるシーンへと変貌を遂げるような展開の序章みたいにしてみました。
唐突過ぎるかもしれませんが第6話終了しました。竹宮流って実際丹波がパワーアップする為に
必要不可欠だったモノですよね。丹波のオリジナルなんて大した事ありませんし。
奥義は虎王以外に出てきてないので自分で想像してます。アクロバティックな技だったり
地味だけど強力な技もあると思うので・・・。でも竹宮流って実際に出来そうな技あると思うんだけどな。
>見てた人さま
陰惨な雰囲気が加速していきますが、それに希望を灯すようなカイジの目覚め。
ようやく、物語は収束へ?と思いきや、また事件が起こりそうですね。
まだまだ波乱は起きそうですけど、最後の謎解きを気長に楽しみに待ってます。
>サマサさま
ゼストランド、意外に楽しそうですねwどこ見てもユーゼスばかりだけどw
フー子とプリムラは流石に遊園地初体験で楽しそうですね。微笑ましい。
しかし、さすがにバカとバカの対決がメインになっちゃうと緊張感ないなw
>フルメタルウルブスさま
とりあえず、野獣の鞍馬が健気なびんちょうタンを傷物にせずによかったw
しかしいいコンビかもしれませんね。びんちゃんも鞍馬に心を開いている感じで。
びんちゃんの目の前で、鞍馬が久我さんにボコボコにされてしまうのかな?
194 :
作者の都合により名無しです:2006/03/05(日) 02:25:16 ID:Ms/uAzFa0
>超機神番外編
原作知らないからこの作品でしか判断できないけど、
ユーゼスもバカ王子に負けず劣らず美味しいですな
プリムラたちはピクニック気分だけど、
いい意味でしょーもない戦いになるんでしょうねw
>フルメタルウルブス!
びんちょうたんと鞍馬がなんか夫婦みたいだw
びんちゃんはいい嫁さんになるだろうなーと妄想しつつ
少しずつハードに展開し始めた物語が楽しみ。
久我さんもいいけど、神山さん出して欲しいな。
他の技というと漫画でも出た雛落としとか、後は原作だと千鳥とか仰月とかいう名前も出てたような
196 :
作者の都合により名無しです:2006/03/05(日) 19:53:37 ID:FpqTJ5/h0
>サマサさん
楽しそうな遊園地ですなー。俺も遊びたい。
番外編でも一応バトルはあるみたいですね。
>名無しさん
神山さんは俺も好き。鞍馬は大嫌いだけど。
びんちょうたんってこのSSで重要キャラなのか?
>>145 カーズがトドメを刺さんと歩き出したその時。D=アーネの耳に、聞きなれた声が届いた。
その声は車の音と共に近づいてくる。D=アーネとカーズがそちらを見ると、
「D=アーネ様ああぁぁ〜!」
犬1号の声がした、と思ったら猛スピードで突進してきたその車は、戦いの余波で歪んだ
ガードレールを踏んでジャンプ! カーズに覆い被さっていった。そしてカーズが動く
よりも早く、既に車外に転がり出ていた人影が、犬1号を抱いていない方の手で銃を
抜き発砲。無人になって跳んでいた車の腹にその銃弾が命中し、カーズの鼻先で爆発した。
D=アーネが犬一号の声に振り向いてからここまで、せいぜい二秒。文字通り
あっという間の出来事で、カーズは車体と爆炎と爆煙に丸ごと飲み込まれてしまった。
その熱風に煽られながら、右手に銃、左手に犬1号を抱いて立ち上がったのは、
長い髪と白いスーツ姿が凛々しい、精悍な青年。D=アーネはよく知っている。
「え、ヒュ、ヒューイットさん? どうして……犬1号、もしかして喋ったのか!?」
「違うよ。この子は僕についてきただけさ」
ヒューイットが犬1号を地面に下ろした。犬1号がD=アーネに駆け寄っていくのを
目で追いながら、事情を説明する。
「ホテルに戻るなり、宮殿から連絡を受けてね。何やら物騒な怪物が出たから、手を
貸して欲しいと。で車を走らせてたら、追加報告が入った。君らしい女の子が現れて、
その怪物と戦ってるっていうじゃないか。そんな話を聞いたら、僕のやることは
決まってる。宮殿で作戦会議に参加、なんてやってられないよ」
「それじゃ、私を助けに?」
「もちろん。この地球を怪物の手から護る為にやってきた、魔法の国の美少女戦士。
それを助ける『一般人だけど、事情を知ってる近所のお兄ちゃん』ポジション。うん、
これは充分萌え……っと、そんなことより傷の手当てを急がなきゃ。さあ早く」
ヒューイットはD=アーネに背を向けて屈み込んだ。おぶってくれるらしい。
しかし。この地球を支配する為にやってきた、異次元の軍の美少女侵略者としては、
こうまで言われて素直に甘えていいものかどーか。
とはいえ、いい加減意識も危うくなってきた。この借りはいずれ遊園地のアレで返す
として、今は……とD=アーネが一歩、踏み出したその脇をすり抜けて、
何かが一直線に、矢のような速さで蛇のように伸びていった。
それが、もうもうと黒煙を上げているさっきの車の残骸の中から生えていると気づく
より早く、既に標的は射抜かれていた。長く長く伸びたカーズの腕、その手刀が、
ヒューイットの背中から胸の真ん中へと、見事に突き抜けている。
「ふむ。この男は完全に、無力なただの人間のようだな」
興味なさげな声と共に、炎の中からカーズが歩み出てきた。傷跡どころか、髪一本焦げて
いない。伸ばした腕を元通り縮め、その手についた血を汚らわしそうに振り払っている。
だがその時、そんなカーズのことなど、D=アーネの頭からは消え去っていた。目の前
で声も無く倒れ伏した、『無力なただの人間』に必死で駆け寄る。
「ヒューイットさんっっ!」
慌ててヒューイットを抱き起こすD=アーネ。仰向けにして顔を見る、が胸から吹き出す
噴水のような血飛沫に阻まれてよく見えない。手で傷口を押さえてみると、その出血量に
充分見合うほど、ヒューイットの頬から血の気が消えていた。もう死人の顔だ。
胸の奥底から込み上げてくる悲鳴を、「今はそんな場合じゃないっ!」とムリヤリ
飲み込んで、D=アーネは血でびしょ濡れの自分の手に魔力を集中させた。
「確か、治癒の魔法ってのが、えっと、あれっ、ど、どうだっけ……あ〜もぉ〜っっ!」
焦っても悶えても、指の間から溢れ出る血は止まらない。だが助けを呼ぼうにも、近くに
いるのは倒れているプラズマXとタマネギ44号、何をするかと興味深げにD=アーネを
見ているカーズ、おろおろしてD=アーネの周りを走り回っている犬一号ぐらいで、
「そうだ! お前だああああぁぁっっ!」
犬1号の首輪を引っ掴んで引っ張り上げて、D=アーネが叫んだ。
「犬1号、アレだほら、凶暴化光線!」
「え、でもあれは前に失敗して」
「言ってる場合かっ! 私も手を貸すから、さっさとやれっ!」
D=アーネは犬1号の眼帯を捲り上げて、その顔をヒューイットに向けた。同時に犬1号
の体内へ、自分の魔力を注ぎ込む。
すると眼帯がずらされて晒された犬一号の左目から、不気味な混濁色の光線が発射され、
ヒューイットの体に命中した。その光はヒューイットの体を、まるで飴細工のように
捻じりこねくり歪めて曲げて、みるみる内に人ならざるものへと変えていく。
ものの五秒と経たぬ間に、人間・ヒューイットは姿を消した。代わりに、白銀の鎧兜に
身を包んだ、肥大筋肉巨漢がD=アーネの足下に跪いている。業霊無(ゴーレム)だ。
その全身からは漲る力と熱い闘争心が溢れ出て、まるで湯気が立っているかのよう。
「我こそは地上に死と破壊をもたらす者也。御主人様、ご命令を」
「…………ぁぅ」
成功だ、助かった……全身から力が消えて、D=アーネはその場にへたり込む。
「御主人様?」
「あ、ああ。命令だったな。うん、今言うから。いいか、よく聞けよ」
溢れかけてた安堵の涙を拭って、D=アーネは立ち上がった。
「すぐに日本へ行き、適当に暴れろ。そしたら魔女っ子戦隊と名乗る奴らが現れるから、
その中の黄色い奴に襲いかかれ。少々痛い目はみるだろうが、必ず元に戻してもらえる。
その後は黄色いのか、あるいは青いのが何とかしてくれるだろう。解ったな?」
「いえ。そのご命令には従いかねます。今私が居るべきはここ、そして」
あっさりと御主人様の命令を蹴って、業霊無化したヒューイットは立ち上がった。腰の
剣を抜いて力強く振り向くと、その真正面にカーズがいる。
「戦うべきはこやつです。……御主人様に仇なす者に、死を!」
変わり果てた姿のヒューイットにそう言われ、カーズの感嘆の溜息をついた。
「瀕死の肉体を瞬時に治療、いや再構成して、別生物に変えてしまうとは。波紋や気功
なんぞとは比較にならんなこれは。しかと調べた方が良さそうだ」
カーズが、両腕の刃を煌かせる。その目にあるのは闘争心でも加虐欲でもなく、興味だ。
楽な戦いでも弱い者虐めでもない。カーズにとっては理科の時間、生物実験の開始である。
前にも申し上げましたが、現時点のD=アーネは、まだへっぽこ時代ですので。終盤の
最強状態の彼女なら、カーズの百や二百ぐらい一撃で消滅させるでしょうが。今はこの
程度です。あとパタリロの完全無制限時間停止能力は無しということでよろしくです。
>>サマサさん
まぁ、このメンバーを一時的とはいえ催眠術(?)にかけて、見事自分の罠に誘い込んだ、
といえなくもない訳で。大したもんだぞ遊園地経営者。まず最初に着ぐるみボン太くんが
お出迎えかという予想は外れましたが、見世物小屋とは……どの作品の誰が出るのやら?
>>NBさん
ちょっと意外だったのが、イヴがそこまで自覚してたのかと。まだまだ父親を見てるよう
なものだろうと思ってましたが、シンディとのやりとりから察するに……さすがスヴェン、
主人公を差し置いて愛されまくってますな。実際今の彼は、渋さ優しさ全開ですからねぇ。
>>見てた人さん
カイジの状況整理を読んでて気づきましたが、コナンなんかは自分で検死ができるんです
よね。でもカイジを含めてここにいるメンツはできない。だから密室だけでなく、死因や
殺害方法からして誤解の可能性あり。そんな中で、やっと覚醒が始まったようですが……?
>>ウルフズさん
びんの寝ぐせ頭&少し寝ぼけ顔&舌ったらず眠そう声で「朝ご飯……」ってのを想像する
と、なかなか萌えます。保護欲をそそられるといいましょうか。で、しばらくそんな空気が
続いてましたが、ちょっと引き締まってきそうな感じ。「それ」を見たびんの反応や如何に。
201 :
作者の都合により名無しです:2006/03/05(日) 22:56:33 ID:fs74TywL0
アーネの修行時代の話ですか。
最強論議スレで噂に聞くアーネがこんなキャラとは思わなかった・・
>パタリロの完全無制限時間停止能力
こんな能力あるの?w
202 :
邪神?:2006/03/05(日) 23:40:43 ID:CWFBeg7h0
ここは何処だ・・・前にも同じ感覚を味わったな・・・。
そうか死んだのか?
なんてこった・・・折角神と契約を交わし無敵となったのに・・・。
ああ、まただ、またあの日々が思い出される。
「どいつもこいつもトキ!トキ!トキ!誰も俺を認めようとしねぇ!」
なんて惨めな姿だ・・・こんな目に会うのも全部奴のせいだ・・・。
北斗の使者め・・・いつか見てろよ・・・
「目は覚めたか?」
不意に聞こえたその声に呼び起こされる。
聞き覚えのある声、サルーインの側近のミニオンだ。
起きて目に入るのはあの忌わしい脈動する壁、何時見ても気色が悪く反吐が出そうになる。
どうやらまた転生の秘術で俺を蘇らせた様だ。
だが腑に落ちない、何故ケンシロウの捕獲という任務に失敗した俺を蘇らせる?
失敗した者には死、それが暗黙の掟のはず・・・。
「何故、お前を蘇らせたか分からん様だな・・・当然だ、貴様は貴重な魂を逃したのだからな。」
沸々と怒りが湧き上がる、トキへの、ケンシロウへの怒りが。
闘気が溢れ出す、怒りに満ち溢れた憎悪のオーラ。
「貴様には引き続き実験をしてもらおうか、エロールが人間以外の戦力を集めた時に備えて・・・な。」
そう言うと魔方陣らしき布陣に立ち、何やら怪しい呪文を唱え始める。
すると、脈動していた壁の一部が更に激しく動き、ポッカリと穴が開く。
その奥に佇む一匹の竜、そのボロボロの体からはアミバに勝るとも劣らない闘気が発せられていた。
「尻尾が切れてバランスが取り辛いのだろうな、お前の乗っていた船の近くの岩陰に潜んでいたこいつを
サルーイン様が気に入ったので捕らえてきたのだが、こんなどこにでもいそうな竜を何故気になさるのか・・・。」
ミニオンの言葉はその耳には届いてはいなかった。
透き通った目は闘志に満ち溢れ、傷口から予想できる再生速度は肉体の活性化を尋常ではない速度で速め、
強く、遥かなる高みへと這い上がらせている。
何よりも、その目に映る獲物は共通の敵、北斗神拳正統伝承者、ケンシロウの姿そのものであった。
203 :
邪神?:2006/03/05(日) 23:42:20 ID:CWFBeg7h0
初見でここまで魔物と心が通う物か、魔物の飼育には特殊な餌や環境が要ると言うのに。
だがそれを不思議とは思わなかった。
出会うべくして出会った一人と一匹。
そう確信し、臆する事も無くその飛竜へと近づく。
「おい、人間如きが手に負えるような魔物では無い。
麻酔で眠らせて実験を・・・。」
アミバは一瞬で判明していない筈の魔物への秘孔を発見し、医療用の秘孔を突く。
先程まで絶え間無く流れていた灼熱のような熱い血は止まり、新たな鱗の再生が始まる。
「申し訳ありませんが、実験は取り止めだと御報告を願います。」
傷が癒えた事に対する喜びを表しているのか、大声で咆哮を挙げる。
「馬鹿な・・・プライドの塊の様な飛竜種が初見の・・・人間になついただと!?」
自分が魔物を操るには破壊神の力を行使し、モンスターを強制的に催眠に掛けるか力でねじ伏せる必要がある。
それを、何の準備も無くいきなり手懐け、しかも開発されていない魔物への秘孔を一瞬で見抜いてしまった。
この男の魔物使いの才は天武の物があるのでは?
「・・・一応伝えておくが命令があればそれに従うのだぞ。」
サルーインの元へ報告に向かうため、男は赤衣を翻し消えてしまった。
残された北斗抹殺のための使者が二名、男は空の王者に語りかける。
「倒したいか・・・奴を。」
王者の瞳の奥から覇気が満ち溢れていく。
その目は見ていて男を複雑な気持ちにさせた。
その目は、北斗の男の目に良く似ていたからだ。
あの憎い宿敵の目と同様に、強敵との戦いを求め、戦いの中に生きる漢の目。
だが、それを見ていても不快に感じる事は無かった。
それが男の感情を困惑させている最大の理由であろう。
しかし、今はそんな些細な問題を気にしている時ではない、男は迷いを振り払い敵を倒すためのパートナーを手にした。
「活のいい奴だ・・・大空の王者リオレウス、後ろの文字を取って、レウス、と名づけよう。」
地上最強のタッグ結成?、南斗と北斗の技を持つ男、アミバ&天空の覇者、リオレウス。
204 :
邪神?:2006/03/05(日) 23:43:34 ID:CWFBeg7h0
〜首都メルビル〜
図書館で食い入る様に本を読む男がいた。
その男は名前の通り髪も瞳も灰色に透き通った色をしている。
男の名はグレイ、世の財宝と強さを求める冒険者。
血を吸い上げる妖刀を腰に彼は有名な武道家の残した文書を読み耽っていた。
「そうか・・・やはり剣だけでは強くなれないな。」
その武道家は様々な武術へと手を伸ばし、体術、剣術等、様々な武術をベースとした拳法を用いた。
体術で鍛えた反応速度は相手の攻撃を許さず、棍で鍛えぬいた腕力は素手で岩をも砕いた。
もちろん、根と素手では使い勝手が違うため、鍛えぬいた能力を生かすための武術を開発しなくてはならない。
そのため、この武道家は自分で開発した武術の完成を見ることなく生涯を閉じたとある。
グレイは本を元あった場所へ押し込み、外で待たせていた旅の相方に用事が済んだ事を告げる。
「用は済んだ、次は財宝を探しに行くぞ。」
グレイは外へ出る門へと歩を進める、だが男の一言でその足は止まった。
「全ての武術を取り入れた武術・・・ですか。」
男には本の内容は伝えていないはず、読心術だろうか?
普通の人間なら心を読まれた事になんらかの感情を持つ筈である。
信頼を失って生まれる恐怖、自分の考えを読まれる事への怒り、常識を覆す事への畏怖。
だがグレイの足を止めたのはそんな物ではない。
自分の欲する物を手に入れるために、だ。
この男が多分だが人間でない事は見抜いている、何か得体の知れない存在。
だからこそ答えが分かるかもしれない。
寿命なんて物は人間ではどうしようもないのだ、ならば化け物に方法を聞くのが一番。
無論、自分が化け物になるのは御免だが。
「知っているなら教えろ、俺にはもっと力が必要だ。」
男は紳士的な、だがどこか不気味な雰囲気を纏う笑みを浮かべながら言った。
「教える前に・・・私と闘ってみませんか?」
205 :
邪神?:2006/03/05(日) 23:44:09 ID:CWFBeg7h0
いきなりの決闘の申し出にグレイは一言、
「抜け。」
そう言うと腰の妖刀へと手を伸ばす。
街中、しかも世界の拠点と名高いメルビルの中で斬り合う。
間違いなくブタ箱行きの切符を手にする事になるであろう行為。
グレイは無駄な戦いをする男ではない、勝てない敵からは逃げるのもまた必要である事を心得ているし、
利益の無い戦いをする程、「戦い」には餓えていないのだ。
餓えているのは強さ、そしてスリル。
監獄へ行っても構わない程、死を遂げても後悔を残さない程に強さが欲しい。
だからこそ戦いを挑んだのだ。
挑発的に笑う相方の男、ノエル。
グレイの反応を見ると辺りを見渡し、言い放つ。
「イスマス城で、会いましょう。」
そう言い残すと霧の様に姿を消してしまった。
何かの術であろう、魔力が微かに残っていた。
今のままでは勝ち目は薄い、武器の手入れを行い術も仕入れなければ。
そうして準備が済んだ時、すっかり夜になってしまった。
休みも取らずイスマスへと進むグレイ、その瞳は闇の中でも色褪せることなく灰色に輝いていた。
ついた瞬間に感じる違和感、モンスターが居ないのだ。
イスマスは陥没してからは魔物の巣窟となっていたはず。
城の目の前に居るにも関わらず何も動きを見せないのは可笑しい。
奇妙な感覚が周囲を包む。
自分の意思で足が進んでいるとは思えない、まるで何かに引き寄せられている様な感覚。
だが不気味とは思わない、「力」に引き寄せられているのだ。
奴が秘密を握っている筈、勝てば手に入るというのなら勝つ。
そんな思いを胸に秘めながら、ついに階段を踏破したグレイ。
目指す「力」の秘密を求め、目の前の開いている扉の中へと突き進む。
206 :
邪神?:2006/03/05(日) 23:45:26 ID:CWFBeg7h0
最近は夢の中でもモンハンしている、邪神です。
黒ディアをペットにしたいけど普通のディアがペットになっちゃった、邪神です。
廃人してる割にはハンターランクが32の、邪神です。
取り合えず適当にモンハンの近状を知らせてみました。(0w0)
え?別にどうでもいい?毎度すいませんねどーも。
まぁ話を変えて本編はですねー、取り合えずノエルの戦闘シーンないなーとか思っちゃって、
唐突にグレイサイドに話を持ってきました。
カイルサイドは魔の手、前編があるのに後編がないのでクジャラート編に入る辺りを魔の手、後編にしよっかな。
とか考えております。
それでは講座の方に参ります。
〜今日の質問箱〜
しぇき氏 なりダンのあれも結構痛い攻撃仕掛けてきましたねー。
ロマサガではワイバーンは雑魚扱いなんですがモンハンの飛竜種はみんなボスです。
よってこのSSの飛竜種はみんなボスです。
ケンシロウがうっかり瞬殺しちゃったけどボスです。
そしてアミバは心の中だけではなく、僕達の身近に、「永遠」なんです。
87氏 血管の流れがあーだこーだとサウザーの時に言ってたし多分ある?
ただしアンデットは血が流れてないし幽霊みたいなのは効果薄いですねぇ。
99氏 ファンタジー世界なんで死人なんていくらでも蘇(ry
207 :
邪神? 十七話「蘇」:2006/03/05(日) 23:49:57 ID:CWFBeg7h0
そして題名付け忘れ。
入れたと思っていたのに・・・・orz
アミバ確変キタ?
209 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/03/06(月) 03:21:09 ID:fzNVS3CL0
「ぼみゃあああああああああ〜〜〜!!じゃ、ジャンプが無い生活なんてええええ〜〜〜!!!」」
「た、隊長が壊れた!!隊長!!ご乱心!!ご乱心〜〜〜!!!」
「ジャア〜〜〜〜〜ンプ!!!ヒップホップジャアア〜〜〜〜〜ん!!!!プぅゥ〜〜〜!!!!」
「だれかあ〜〜!!隊長にジャンプを〜〜!!このままじゃ、この星が消えてしまう〜〜!!!!!」
修行=ジャンプが読めない現実に、修行開始七日目にてやっと気付いたギニューの精神は、
すでに限界に来ていた。
別にジャンプなんて帰ってから読めば済むものだが、毎週ジャンプBUY検定S級のギニューにとって、
毎週火曜日に読めないジャンプなどジャンプではないようだ。
『男の人は狼なのよ〜〜♪気をつけなさい〜〜♪』なんて歌もあるが、これでは腹をすかした狼の方が6億倍はマシである。
兎にも角にもギニューの精神が限界に来ていることだけは確かであった。
ちなみにギニュー特戦隊の顔の色が紅一点であるジースは、今日のギニューの様子を日記にてこう記している。
210 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/03/06(月) 03:22:57 ID:fzNVS3CL0
///////////////////////////////////////////////////////////////////
〜ジースの日記〜
○月×日(火)
修行を始めて約一週間。
この修行の提案者であるはずの隊長は、早くも精神に異常がきたしているみたいです。
来る日も来る日も厳しい修行の毎日。(ギニュー隊長談)
確かに僕も、早くお家に帰って吸血麻雀の続きは読みたいですが、
きっと今週は休みでしょうから別に問題はありません。
話は変わりますが、これで僕達の知名度は上がるのでしょうか?
確かに師匠は凄い人ですが、僕達にアレが取得できるとはとても・・。
あ・・。どうやらグルドの良い子睡眠拳(verグルド)が隊長を静めたようなので、
修行の続きをするようです。
ふう・・・。今日は実地訓練とか師匠が言っていたけど、一体どういった訓練なのだろう?
とりあえず今日こそ良い事がありますように。
///////////////////////////////////////////////////////////////////
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
211 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/03/06(月) 03:24:36 ID:fzNVS3CL0
荒れ果てた荒野・・。
僅か数ヶ月前までは、マシン生命体の星・クロノス星にあるという永遠の命をもたらすハイリビードを
狙うガデス率いるギャンドラー一味のせいで、この星は戦乱の炎に包まれていた。
次々と各地で巻き起こる戦いの炎。
クロノス星やその周辺に住む人々は、彼らに恐れ慄いた。
しかし!!そんな凶悪なガデス率いるギャンドラー一味を打ち倒したある人物がいる!!
――――――――それは一体誰かというと・・・・。
212 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/03/06(月) 03:25:35 ID:fzNVS3CL0
<ギニュー編・前編:第一話 『貴様らに名乗る名はない!』の巻き―(1)>
〜クロノス星・荒野〜
正午らしく頭上を漂い、全ての生きるのも達の存在をあざ笑うかのように辺りを照らし続ける太陽。
そして荒野という人が住むべき所ではない場所に、憐れにも強盗集団に狙われた小市民が居た。
「へ・・、へいへい〜〜〜!!オネ〜〜チャン!!良いもん持ってるじゃねえ〜かよ!!」
「そ、そうさあ〜〜!そのバックに色々入っているんじゃないのか〜〜〜??」
「よ、よく見ると可愛いじゃね〜〜かよ!!ちょっと面を貸してもらおうか?」
「あ〜〜〜、スイマセンが出すもの出してくれませんかね〜〜。」
紫、赤、緑、青と4色ものコントラストで現金を脅し取ろうとする特戦隊の某4人。
如何にも『やりなれていない』といった感じの脅し文句だが、脅されている方はそれどころではない。
なぜなら『四人とも顔色が違う宇宙人の集団』という変態集団に囲まれた上に、『金を出せ』と脅されているのだから。
「ひ、ひいい〜〜〜!!た、助けてください!!お金は!!お金は出しますから!!」
『顔色変態四人組』に脅された憐れな女性は、自身の命を守ろうと彼らの要求どおりに、
持っていた手さげバックから急いで財布を取り出して差し出すポーズをとる。
「こ、これで命だけは!!」
荒野という太陽を遮るものが一切無いこの場所では、果たして彼女の瞳から流れているのが
汗なのか、はたまた涙なのかそれは分からない。
――――が、唯一つだけ確かなことがある。
それは彼女が生き残ろうと必死に・・・、唯必死にもがいていることだけは確かだった・・。
(助けて・・・。助けて・・。誰でも良いから・・・。)
顔色変態四人組に襲われた女性は助かりたい天に祈る。
これまで神など信じたことの無い自分だったが、今ばかりはキリストもダビンチコートも
全て本当のことでしたと言わんばかりに祈った!!
それはもう、某母2のギーグならば一回目の祈りで倒せちゃうくらいに!!
彼女は―――祈った!!!
213 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/03/06(月) 03:30:15 ID:fzNVS3CL0
「た、助けて〜〜!!誰か〜〜!!!」
そして彼女は『祈るのは止めて』、遂に生への渇望を声を出して辺りに響かせる!
しかし声に出して助けを求めてしまっては、もう後戻りが出来ない。
それでも彼女は『恐らくこの声が誰にも届かなかったら自分は死ぬだろう。』という
決死の覚悟を決めて、生か死かどちらか分からない―――空中に浮かぶ天秤のように不安定な運命を、
自分から安定した天秤に変えようと必死に叫んだ!!
「あ〜〜〜ん!!声に出しちゃった?声だしちゃったの!?」
紫色の顔をした男が運命を変えようと必死な女性の叫びに、いち早く反応して首を強引につかむ。
当然、万が一誰かが来る場合を想定してのことだ。
果たして彼女の祈りは・・・、運命を変えようとした叫びは、全て無駄になってしまうのだろうか?
「一応、ここまでは台本どおりと・・・。」
そんな彼女の首を掴んだ紫色の顔をした男は、突然彼女から視線を外して思い出すように小さな声でそう呟く。
すると今度は緑色の顔をした男が、自然な口調で紫色の男の顔を見ながら口を開いた。
「へっへ〜〜!!誰か呼ばれたらやばいもんな!隊長!!!」
「えっ・・・。隊長・・・?」
運命を変えようと必死な女性は、思わず彼の一言のに間抜けな声を出す。
「あっ・・・!!このバカ!!!今は隊長じゃない!!モンキー・G・ギニュー船長だ!!」
「それって、ワンピーチのパクリじゃ・・・。」
青色の顔をした男が思わずそう口を溢すが、紫色の顔をした男はその発言を完璧に無視してこう話を続ける。
「と、ともかく・・・。え〜〜と・・・。なんだっけ?」
「『これ以上痛い目に遭いたくなければ、声を出さないことだな。』ですよ。隊長・・。」
何時の間にか紫色の顔をした男の背後に回っていた赤色の顔をした男は、半ば呆れ顔になりながら
左手に持っている『強盗マニュアル・初心者編』をゆっくりと読み上げる。
214 :
213・大訂正:2006/03/06(月) 03:38:48 ID:fzNVS3CL0
「た、助けて〜〜!!誰か〜〜!!!」
そして彼女は『祈るのは止めて』、遂に生への渇望を声を出して辺りに響かせる!
しかし声に出して助けを求めてしまっては、もう後戻りが出来ない。
それでも彼女は『恐らくこの声が誰にも届かなかったら自分は死ぬだろう。』という
決死の覚悟を決めて、生か死かどちらか分からない―――空中に浮かぶ天秤のように不安定な運命を、
自分から安定した天秤に変えようと必死に叫んだ!!
「あ〜〜〜ん!!声に出しちゃった?声だしちゃったの!?」
紫色の顔をした男が運命を変えようと必死な女性の叫びに、いち早く反応して首を強引につかむ。
当然、万が一誰かが来る場合を想定してのことだ。
果たして彼女の祈りは・・・、運命を変えようとした叫びは、全て無駄になってしまうのだろうか?
「一応、ここまでは台本どおりと・・・。」
そんな彼女の首を掴んだ紫色の顔をした男は、突然彼女から視線を外して思い出すように小さな声でそう呟く。
すると今度は緑色の顔をした男が、自然な口調で紫色の男の顔を見ながら口を開いた。
「へっへ〜〜!!誰か呼ばれたらやばいもんな!隊長!!!」
「えっ・・・。隊長・・・?」
運命を変えようと必死な女性は、思わず彼の一言のに間抜けな声を出す。
当たり前である。
普通の感覚ならば、『強盗なのに隊長とはこれ如何に?』と心底思うだろう。
当然、その失言に気付いた紫色も緑の発言に憤慨して早速その発言を訂正しようとする。
「あっ・・・!!このバカ!!!今は隊長じゃない!!モンキー・G・ギニュー船長だ!!」
「それって、ワンピーチのパクリじゃ・・・。」
青色の顔をした男が思わずそう口を溢すが、紫色の顔をした男は『これ以上泥沼に入っていけない』と思ったのか、
青の発言を完璧に無視して話を無理やり続けようとする。
「もういい!!と、ともかく・・・。え〜〜と・・・。なんだっけ?」
うっかりだか、本当に強盗なのか分からないが、ともかく次に言いたかったことを失念してしまう紫。
すると、先程から紫の後ろに隠れていた赤色の顔をした男が、ひょっこり出てきて半ば呆れ顔になりながら
左手に持っている『強盗マニュアル・初心者編』をゆっくりと読み上げる。
「『これ以上痛い目に遭いたくなければ、声を出さないことだな。』ですよ。隊長・・。」
215 :
すいませんがもう一回訂正:2006/03/06(月) 03:58:17 ID:fzNVS3CL0
「た、助けて〜〜!!誰か〜〜!!!」
そして彼女は『祈るのは止めて』、遂に生への渇望を声を出して辺りに響かせる!
しかし声に出して助けを求めてしまっては、もう後戻りが出来ない。
それでも彼女は『恐らくこの声が誰にも届かなかったら自分は死ぬだろう。』という
決死の覚悟を決めて、生か死かどちらか分からない―――空中に浮かぶ天秤のように不安定な運命を、
自分から安定した天秤に変えようと必死に叫んだ!!
「あ〜〜〜ん!!声に出しちゃった?声だしちゃったの!?」
紫色の顔をした男が運命を変えようと必死な女性の叫びに、いち早く反応して首を強引につかむ。
当然、万が一誰かが来る場合を想定してのことだ。
果たして彼女の祈りは・・・、運命を変えようとした叫びは、全て無駄になってしまうのだろうか?
「一応、ここまでは台本どおりと・・・。」
そんな彼女の首を掴んだ紫色の顔をした男は、突然彼女から視線を外して思い出すように小さな声でそう呟く。
すると今度は緑色の顔をした男が、自然な口調で紫色の男の顔を見ながら口を開いた。
「へっへ〜〜!!誰か呼ばれたらやばいもんな!隊長!!!」
「えっ・・・。隊長・・・?」
運命を変えようと必死な女性は、思わず彼の一言のに間抜けな声を出す。
当たり前である。
普通の感覚ならば『強盗なのに隊長とはこれ如何に?』と心底思うだろう。
当然その台詞を間近で聞いていた紫も、この緑の発言は流石にヤバイと思ったのか、
その発言を訂正しようと必死に誤魔化そうとする。
「あっ・・・!!このバカ!!!今は隊長じゃない!!モンキー・G・ギニュー船長だ!!」
「それって、ワンピーチのパクリじゃ・・・。」
青色の顔をした男は紫の発言に思わずそう口を溢す。
いつもならばこの発言に更なる訂正を入るところだが、これ以上の泥沼化を防ぎたい紫は、
今の発言を完璧に無視する事によって話を無理やり続けようとする。
「もういい!!と、ともかく・・・。え〜〜と・・・。なんだっけ?」
元から対して頭が強くなさそうな紫は、今のゴタゴタで思わず次に言いたかったことを失念してしまう。
すると先程から紫の後ろに隠れていた赤色の顔をした男が、ひょっこり顔を覗かせるや否や、
半ば呆れ顔で左手に持っている『強盗マニュアル・初心者編』をゆっくりと読み上げる。
「『これ以上痛い目に遭いたくなければ、声を出さないことだな。』ですよ。隊長・・。」
216 :
すいませんがもう一回訂正:2006/03/06(月) 04:01:37 ID:cOa86JWN0
普通ならばこの行動はナイスフォローの類であろう。
しかし、彼が今助言した相手はこの話に限ってブッチギリのバカ。
当然、この一回で今の長文を覚えられるはずも無く・・・。
「へっ?もう一回言ってくれ!!『これ以上ジャンプが読みたければ、このままバッくれることだ!』で良いのか?」
「はあ・・・。違いますよ!!『これ以上痛い目に遭いたくなければ、声を出さないことだな。』ですよ!!」
紫色の顔をした男のバカさ加減にほとほと呆れながらも、赤色の顔をした男はさっきと同じ台詞をもう一度言う。
ゆっくりと・・・、紫バカにもちゃんと理解できるように・・・。
――――3分後・・・・・。
理解了解阿藤海の要領で、今度こそ赤色の顔をした男の言葉をしっかりと覚えた紫色の顔をした男は、
話を進めるために自分が首根っこを掴んでいるはずの女の方に振り向き直る・・・が、
「ほうほう・・。分かった!!よう〜〜し!!そこの女!!・・・・・・あれ・・?」
目の前に待っていた光景に、紫色をした顔の男は思わずコントのような声を上げてしまう。
それもそのはず、先程まで紫色の顔をした男に首根っこを掴まれていた彼女は、
紫と赤が台詞確認という強盗ではありえない会話をしている間に・・・。
「隊長・・。逃げましたよ。隊長とジースがコントをしている間に。」
「・・・・・。あっ・・。本当だ・・。」
現状報告したバータの呆れた視線の先を追うと、ロードランナーを遥かに超えるスピードで逃げだしている女性の姿が!!
そう!!彼女は運命を自力で開いたのである!!
めでたしめでたし。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
217 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/03/06(月) 04:03:22 ID:cOa86JWN0
216は題名を間違えているだけです。重ね重ねどうもスイマセン。
<ギニュー編・前編:第一話 『貴様らに名乗る名はない!』の巻き―(2)>
〜クロノス星・荒野〜
「ま、また失敗か〜〜〜。」
本日十回目の失敗に、思わずギニューはその場に倒れこむように座る。
半分は今回の失敗に落ち込み、もう半分はこの太陽の日差しの暑さにやられて・・。
「まあ・・・、今回はあの女の首を掴む強さが弱かったのが原因でしょうね。」
落ち込みへたり込むギニューに、ジースは部下冥利に尽きるほどのフォローをする。
「隊長と・・、お前がコントをしていたのもひとつの原因だがな。」
そんな言葉を横で聞いていたグルドは、うんざり顔で二人に苦言呈す。
これ以上は付き合っていられないとばかりに・・・。
「なっ!!お前だって、獲物が逃げたら逃げたで何にもしない癖に!!この緑が!!」
グルドの一言に、ジースはまともに顔色変えて怒り出す。
やはり暑さのせいか、いつもは穏やかなジースも思わず怒りに身を任せて言ってはいけない事を言い始める。
当然、ジース程の人物が怒りだす暑さとやるせなさだ。
この言葉を受けた本人であるグルドも・・・・。
「うるせえな!!お前こそ顔が赤すぎて脳が腐っているんじゃないか!!」
もはや売り言葉に買い言葉。珍しい組み合わせで喧嘩する赤&緑の二人。
一方、その光景を知らぬ存ぜぬで通す青と、ジャンプが無いので再度発狂し始める紫。
太陽の暑さが縁の切れ目―――ではないが、既に彼らのチームワークは壊滅状態だった・・・。
しかし!!!
218 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/03/06(月) 04:04:38 ID:cOa86JWN0
「待てえい!!!!!」
どこからともなく聞こえる男の一言で、宇宙1五月蝿いこの場所から『騒音いう言葉』が一気に消え去る。
そしてその場に残ったのは、一陣の風が吹く時の音のみ・・・。
さらに、一陣の風によって巻き起こる粉塵がギニュー達の緊張感を一気に引き出していた。
「ど、どこだ!!どこにいる!!!」
突如として湧き出てきた重度の緊張に耐えられ無くなったグルドは、辺りを子悪党のように見回し始める。
「ど、どこなんだ!!隠れてないで・・・。あっ・・・。」
―――そして彼は気付く・・。
思わず口走った言葉のはずなのに、実は『言わされていた』事に・・・。
グルドが『自分の行動は全てやらされていた』事に気落ちしていると、
今度はギニュー達から見て前方にある岩山の頂から、ゆっくりと180cm程度の大きさをした男が姿を現す!!
姿を現した男の様相を一言で言えば、『圧倒的なカリスマを所持した正義の一文字』が最も正しい形容の仕方だろう。
それを肯定するかのように男の頭上から降り注ぐ太陽光線は、彼のカリスマ性を更に引き出しているように見えた。
「ぐ・・・・。」
男の唯その場に佇む姿を見ただけで、一同は目の前の男に引き込まれる。
何かを言いたいが何も言えない。
”なぜならギニュー達の本能が拒否しているからだ。”
”勝手な言葉を紡ぐのに・・・。”
果たして、ギニュー達の目の前にいる男はあらかじめ”そのこと”を分かっていたのだろうか?
それは本人にしか分からないが、ギニュー達の本能が勝手な言葉を口から出すのを拒否した時間は、
男が次の台詞を言うのには十分な時間だった。
そう・・、十分な・・・。
219 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/03/06(月) 04:05:14 ID:cOa86JWN0
「力無き淑女を襲った上に、心を許した者達と争いを起こす・・・。
人・・・・、それを『愚行』と言う・・・。」
ゆっくりだが、確かに心の底に染みる言葉に次の言葉を強制的に紡がされるギニュー。
「き、貴様は何者だ!!!」
ギニューは言わされる・・・。
彼のカリスマから来るたった一言に・・・。
だが・・、男は自分の名を語る事は無かった。
そう!!なぜなら!!
「貴様等に名乗る名はない!!!」
悪党に持ち合わす言葉は無いのだから・・。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
220 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/03/06(月) 04:06:57 ID:cOa86JWN0
<ギニュー編・前編:第一話 『貴様らに名乗る名はない!』の巻き―(3)>
〜クロノス星・荒野〜
謎の男の登場から約五分後・・・。
ギニュー達は何時の間にやら強盗のまがいごとを止めて、この星に来た本来の目的である
『口上の取得の為の修行』に励んでいた。”先程の男の下で。”
さて、読者の諸君はもうお気づきだろう。
本来する必要な無い強盗という悪行を、何故ギニュー特戦隊がしていたのか。
そしてジャンプが大好きなはずのギニューが、何故そんな少年漫画道を踏み外す行為をしていたのか。
そう・・、答えは簡単。
『ギニュー達の修行を付けてくれている師匠』=『突如現れた圧倒的なカリスマを持つ男』。
つまり、『強盗計画を仕掛けた張本人』なのだ!!
221 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/03/06(月) 04:08:47 ID:pBymMpUw0
「貴様等に名乗る名はない!!ふう・・。ねえ・・・、師匠・・?
なんで俺達が強盗のまがいごとをしなくては行けないんです?
そもそも師匠は『この星を救った英雄』なんでしょ?お金なんて沸いてでてくるんじゃ・・・。」
師匠から出された修行メニュー ――――『貴様等に名乗る名はない』コールをこなしながら、
ギニューは今日やった強盗のまがいごとに関する疑問を思い切ってぶつけてみる。
「ん?ああ・・。それはな・・・。」
するとギニュー達に修行をつけている師匠―――通称”ロム兄さん”はギニューの問いに何の躊躇も無く、
驚くべき事実を口にする!!
「常に英雄でいるためには、常に手柄を立て続けないといけないんだよ。
だから俺の命令でお前等が強盗をしているのを、俺が取り押さえれば・・・・。へっへっへ・・。」
「さ、詐欺じゃないですか!!それが英雄のすること・・。
はっ!!まさかこの星で暴れていたガデス率いるギャンドラー一味ってのは!!」
ギニューとロム兄さんの会話を律儀に突っ込んだジースは、ツッコミゆえの優秀な頭脳の
おかげで”ある重大な事実”に気付く。
このまま少年漫画のパターン通りに行けば、敵の隠された事実に気付いた脇役(ジース)は、
敵の背後からの攻撃でこの世から消されるのというのが普通の流れだ。
『例:JOJO5部、ハガレンetc・・・。』
しかしこのロム兄さんという人間は、秘密の一つや二つを知られたところで無駄に命を奪う非道な人間ではない!!
だからロム兄さんは正直に・・・、本当に正直に・・・、包み隠さず真実をジース達に打ち明けた!!
「大体最初から敵側の全戦力を投入すれば、どの漫画やアニメも第一話で終わりだろ?
だから作者の都合で・・・。するとつまり・・・、俺のも・・・。ね?ぶっちゃけ時給1000円だよ。」
「「「「確信犯か〜〜〜!!!!!」」」」
一斉にロム兄さんに突っ込むギニュー特戦隊一同。
こうして、知ってはいけない漫画orアニメの裏事情が遂に明らかになったのだった。
222 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/03/06(月) 04:09:26 ID:pBymMpUw0
『ピンポンパンポ〜〜〜ン↑!!!
只今のロム兄さんの宇宙のちびっ子と大きなお友達の夢と希望を壊すような発言について、
心から謝罪すると共に、このような事実が更に続くこのSSは良い子&大きなお友達の閲覧は固く禁じる事に致します。
もしも、良い子&大きなお友達がこのSSを閲覧した時は、超強制的にH2Oの思い出がいっぱいのサビ部分だけが
エンドレスで貴方の脳内に直接流れ続けるので、特に小学生時代のトラウマや自虐体験をお持ちになる大きなお友達
の方々はご理解ください。
また、それでも見続ける方には、左目に自分の母親のヌード、右目に野村幸代のヌードが
貴方の網膜にネバーに焼き付けられる刑に処されるでお気をつけください。
ピンポンパンポ〜〜〜ン↓!!!』
223 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/03/06(月) 04:18:13 ID:pBymMpUw0
ちょっと文章が酷すぎますね。無駄レス申し訳ありません。
どうもしぇきです。
今回からタイトルつきになりました。
これから登場キャラが溢れんばかりに増えるので、
人物図鑑を作る予定です。
ロム兄さんは20歳以上のかたにはおなじみの、マシンロボ〜クロノスの逆襲〜
というアニメから来たキャラです。このアニメを知らなくても、『貴様等に名乗る名はない!』
は知っているかが多いかも。
>>132さん
ライブアライブはゲームです。某会社の全盛期に発売されたので、今やっても面白いですよ。
>>133さん
書きたいけど、想像通りのパターンになりやすいかも。
本来は、ワンピーチ・・じゃなくてワンピースの作者が出したWANTEDという短編集の
ガンマンキャラと組ませるつもりだったんですが、少し長くなるのでその場で変更しましたw
>>134 自分が知っている限り漫画化はされていないです。ゲームオンリーはこれっきりにします。
224 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/03/06(月) 04:44:45 ID:pBymMpUw0
>サマサさん
スパロボ系と聞いて、ロム兄さんが出されるのじゃないかと内心ハラハラでしたw
見世物小屋には・・・・、小屋=犬小屋=犬=負け犬=アイビス
これくらいの連想しか出来ませんでした。
>フルメタルウルフズさん
びんちょうタンにとって、武術がどう写るかが気になりますね。
びん・・、イキロ・・・。
>ふら〜りさん
このままのペースで行けば、長編?は気が早いかもしれませんが、
カーズ戦以降もやって欲しいですね。この異星の技術も取得して最強になってしまうのか?
また宇宙をさまよう事になるのか?どちらにしても気になります。
後、宇宙規模の戦いを繰り返すというと・・・、カーズ→超人ロック→スサノオ・・・。
無理ですねw
225 :
それゆけフリーザ野球軍:2006/03/06(月) 04:45:17 ID:pBymMpUw0
>NBさん
マリアとズウェンの会話は、本当に引き込まれました。
ありがちといったら失礼ですが、それでもお釣りが来るぐらいの雰囲気。
ある意味すれ違いを起しているんだけれども、そうではない。やっぱり分かっている
特に女性は。そういうシーンから一瞬のコントと、そしてまた・・。
原作でもイヴを置いていくいかないのやり取りがありましたが、原作者の方には悪いですが
つくられていて読み応えがありますね。
>見てた人さん
まさかカイジも・・・。
これでもまだ中盤との事なので、どうなるかは分かりませんが見逃せないこと山の如しですね。
>邪神さん
アミバが更なる力を!!ということは、末路は強大な魔物化
愛の力には及ばないないというゴールデンコースに!!
ホウシンの魔か四将みたくなるのか?楽しみです。
では失礼・・・。
226 :
作者の都合により名無しです:2006/03/06(月) 14:13:04 ID:6ebNmYyB0
・ふらーりさん
確かに、アーネはこの位のレベルの方がバトルに緊張感ありますね。
カーズも引き立つし。全盛時は反則的なキャラですからね。
でも、超魔術師の片鱗は発揮してますね。カーズもそれは認めてるし。
・邪神?さま
すっかりアミバは強キャラの仲間入りですねー。ヘタレと思ってたw
ケンシロウか誰かの引き立て役として現れたかと思ってたんですが
中ボス扱いっぽいですね。魔物も秘孔あるのかー。
・しぇきさま
ジースの日記から特戦隊のいつもの苦労が伝わってきますなー
ジャンプ一冊で下手すれば宇宙を揺るがす大騒動になるしw
確かに人物多いから、図鑑は助かるかも。あと、慌てないで。
227 :
聖少女風流記:2006/03/06(月) 16:59:21 ID:XP9C2A5n0
第十一話 慶次とベルトラン
物語が佳境に至る前に、読者諸兄に簡単に当時の状況を説明せねばならない。
現在のフランス地図の感覚で照らし合わすと、当時のフランスは2つに分かれている。
北の領土を制定するブルゴーニュ公国と、南のシャルル王太子のフランス王国とである。
複雑な歴史的な対立や、煩雑な婚姻関係などはこのSSの本質に関係ない事なので省く。
2つの事だけ覚えておいて頂きたい。
当時フランスは2つに別れ、ブルゴーニュ公国も、ジャンヌ・ダルクの属するフランス王国も、
自分たちの王こそが正当なフランス王、という意見を譲らなかった。
そしてブルゴーニュ公国はシャルル王太子のフランス王位を認めず、イギリスと結託した。
ブルゴーニュ公国とイギリスの連合軍は戦線においてフランスを次々と打ち破り、
遂には最重要地点のロレーヌ河のほとり、オルレアンまで制圧してしまう。
ジャンヌの目的はオルレアンをイギリス軍から解放し、その後にシャルル王太子を
ランスの大聖堂にて、正当なフランス王として戴冠させる事である。
ジャンヌは奇跡の聖女として歴史に呼ばれる通り、それまで連戦連敗だったフランス軍を
次々に勝利に導いていく。
そして彼女の望み通り、オルレアンは解放され、彼女の活躍によりシャルル王太子は
フランスの正当な王として戴冠する事に成る。正に聖女にしか成しえない偉業である。
だがその偉業こそが、彼女の悲劇の引き金となるのだが。
228 :
聖少女風流記:2006/03/06(月) 17:00:23 ID:XP9C2A5n0
トゥールの街。オルレアンへの中継地点のこの街に、ジャンヌたちは到着した。
数週間の旅路に疲れ果て、宿を求めてしばらく街を探索した。
が、夕飯時だというのに、どこからも調理の湯気が上がっていない。理由はすぐわかった。
食料が無いのである。
街の人々は度重なる戦争で畑を焼かれ、財産を失い、生きるすべを失っていた。
通りには、痩せて骨の浮いた子供がうずくまり、空腹でよろめく大人たちが溢れていた。
ジャンヌは旅の間の兵への食料を、街の人たちの為に放出する事に即座に決めた。
勿論、側近のベルトランとジヤンは反対した。が、ジャンヌはこう言って押し通した。
「私も元は農民です。だけど、こうしてフランスの為に立ち上がりました。
今はそういう方が何千人と私の軍にいます。フランスの未来の為に。
でも、子供たちが餓えて死んでいくような国に、未来があるでしょうか?」
ベルトランとジヤンはもう何も言えない。
その様子を見て慶次は大きく笑い出し、嬉々として料理の準備をやり始めてしまう。
やがて炊き出しの柔らかな香りが辺りに漂い、平和な安らぎが溢れていく。
芋や野菜をたっぷりと刻み入れた寸胴鍋の前に、街の人々の行列が出来始める。
何人もの給仕が、我先にと押し寄せる人並みを必死に捌いている。
その中に、細い体に不釣合いの白銀の鎧を纏った、美しい顔立ちの騎士が混ざっている。
ジャンヌである。笑顔を浮かべながら、一人一人丁寧にお椀に汁を注いでいた。
「ジャンヌ殿が一番疲れているだろうに。どうしてもやると言ってきかん」
ジヤンが憮然とした顔でその様子を眺めて言った。慶次とベルトランは微笑んでいる。
その時、突然ジャンヌの声が響いた。
「後ろに並びなさい! 恥ずかしくないのですか!」
見ると、ジャンヌが大柄の傭兵を叱りつけている。傭兵の足元で子供が泣いていた。
どうやら、子供の順番に男が割り込んで来たらしい。
「いかんな、ジャンヌ殿。傭兵などという人種、怒ればすぐ暴れ、人を殺す輩よ」
ベルトランが身構え、ジャンヌの元に駆けよろうとする。が、慶次が笑ってそれを制した。
「心配要らないよ。ジャンヌ殿に太刀打ち出来るような男じゃない」
229 :
聖少女風流記:2006/03/06(月) 17:01:12 ID:XP9C2A5n0
男とジャンヌがしばし睨み合った。緊張の度合いが増していく。
が、男は急にバツが悪そうに頭を掻くと、そのまま黙って行列の最後尾へと歩いていった。
ジャンヌは泣いている子供の頭を撫で、指で涙を優しく拭く。
男と睨み合った激しい視線ではなく、暖かい眼差しを子供に向けながら。ジヤンが呟いた。
「聖母だな、まるで」
その言葉にベルトランが頷いた。そして、長い行列を見ながらしみじみと言った。
「王太子から預かった兵は約3000。だが今やその倍以上の人間が、ここにいる。
ジャンヌ殿の評判を聞き、彼女の姿を見、彼女と共に戦地へ赴く為に」
慶次はニコニコしながら2人の会話を聞いている。ジヤンが唸った。
「シャルル王太子の為に命を賭ける者はまず一人もいまい。
だがジャンヌ殿には、これだけの人間が命を惜しまず集まってくる。まさに聖少女よ」
(聖少女、か。 ……俺はその騎士に、相応しいのだろうか)
ベルトランの脳裏に、以前から振り払いきれない自分への不審が沸いた。
騎士、とは剣に信念を表した存在である。故に幼少から剣を磨き、剣を鍛え上げてきた。
田舎騎士かも知れないが、剣の腕だけには自信が有った、つもりだった。
怪物たちと出会う前までは。 ……前田 慶次を、呂布 奉先を、宮本 武蔵を知る前までは。
自分は、聖少女・ジャンヌの剣と為り得る存在だろうか。
ベルトランの胸に、黒々としたものが湧き上がる。
己の力量への不安。慶次たち超絶の強者たちへの嫉妬。迫る決戦の時への焦り。
ベルトランは意を決した。真剣な眼差しで、隣の慶次を見据え、言った。
「慶次殿。頼む。 ……俺と一戦、手合わせをしてくれんか」
230 :
聖少女風流記:2006/03/06(月) 17:02:09 ID:XP9C2A5n0
ジヤンは耳を疑った。ベルトランとジヤンは長く苦楽を共にした刎頚の友である。
ベルトランの剣の技量の高さは誰よりも知っている。
そしてそれでも、慶次には遠く及ばない事も。怒気を帯びた声でベルトランに叫んだ。
「何を言ってるんだベルトラン。お前、もうすぐ俺たちは決戦の時を…」
「だからだ」
ベルトランが短い一言でジヤンの言葉を遮る。静かだが決して譲らぬ決意を秘めた声で。
「俺が、聖少女の剣足りえるか否か。俺が、ジャンヌ殿を守るべき騎士であるかどうか。
俺はいくさしか知らん男だ。剣しか、頼るもののない男だ」
ベルトランのまっすぐな視線を、慶次はしっかりと受け止めている。静かに言った。
「ああ、いいよ」
静かに頷いた。だが、続く言葉は横で聞くジヤンが耳を疑うほど苛烈なものであった。
「だが、ベルトラン殿。俺もあなたもいくさしか知らぬもののふ。手加減は出来ぬ。
いくさ人同士が剣を交える以上、死が決着かも知れぬという事も心得よ」
ベルトランは目で頷いた。踵を返し、立ち去り際にこう言った。
「邪魔が入るといかん。人が寝静まった深夜、裏の集会場の広場で待つ」
その場に残された慶次とジヤン。慶次はどこか寂しそうな顔でジャンヌの給仕を見詰める。
ジヤンが慶次に食い寄った。
「慶次殿。まさか本気でベルトランと立ち会う気か? 聖少女の守護者たる我々同士が」
慶次は空を見上げた。もう、すっかり暗い。太陽の残光が弱々しい。
「断れば、それこそベルトラン殿を殺す事になる。俺には断れんよ。
ジヤン殿、この果し合いの見届け人を頼んだ。ジャンヌ殿には内緒でね」
深夜。人影が完全に消えた集会場。ベルトランが仁王立ちをして目を閉じている。
体中から殺気を放ちながら。十数メートル離れた場所に見届け人のジヤンがいる。
その陰鬱な雰囲気を切り放つように、大柄の武士が涼やかな風を纏って現れた。
「待たせたかな、ベルトラン殿」
「いい顔だ、慶次殿。騎士としてお主のような男と剣を交えられるのは、
死に勝る喜びかも知れんな」
231 :
聖少女風流記:2006/03/06(月) 17:04:02 ID:XP9C2A5n0
「なんだろう、嫌な予感…」
疲れ果てている体が眠りを求めている。が、何故か湧き上がる不安がそれを許さない。
ジャンヌは深夜、汗をびっしょりかいて目覚めた。何かが、眠るなと彼女に言っている。
ジャンヌに学は無い。読み書きすら、どうにか自分の名前が書ける程度である。
だが彼女には天啓ともいえる素晴らしい感性があった。勘が並外れて優れていた。
その勘が、眠るなと言っている。起きろと叫んでいる。
手早く白銀の鎧を着込み、ふらふらと外に出た。玄関口で何か大きな黒いものがいる。
きゃっ、と小さく悲鳴を上げそうになるジャンヌの袖口を、黒いものが優しく噛んだ。
慶次の愛馬、松風である。
ジャンヌは胸を撫で下ろすと、松風にペコリと頭を下げた。驚いた事への謝罪である。
松風はぶひひん、と小さく嘶くと、膝を折り姿勢を低くした。ジャンヌが聞いた。
「乗れ、というの?」
松風はまた小さく嘶いた。ジャンヌの顔に今晩初めての笑みが零れる。
「お利口ね。人間よりずっと。でも、私は実は乗馬は苦手なの」
おそるおそるジャンヌは松風に跨る。松風には手綱が無い。ジャンヌは鬣をしっかり握る。
松風が駆け出した。信じられない速度である。ジャンヌの馬の、優に3倍は速い。
だが、不思議とジャンヌの体に揺れは無い。松風がジャンヌを慮っているのだろう。
「本当に、お利口ね松風さんは。 ……ご主人様よりも」
悪戯っぽいジャンヌの微笑に松風が嬉しそうに嘶く間に、あっという間に目的地に着いた。
ジャンヌが現場を見て驚く。不穏な空気が慶次とベルトランの間を重く挟んでいる。
「何をやってるんですか、慶次さん、ベルトランさんっ」
ジヤンが突然のジャンヌと松風の登場に驚き、駆け寄ってきた。が、2人に声は届かない。
「どうしたんですか、一体……」
慶次たちの元に割り込もうとするジャンヌを、ジヤンが押さえた。
「放して下さい、なんで、何が、どうして」
狼狽するジャンヌにジヤン言った。決闘です、と。ジャンヌが顔を真っ赤にして叫ぶ。
232 :
聖少女風流記:2006/03/06(月) 17:13:35 ID:XP9C2A5n0
「そんな、何を、この大事な時期に…。お2人とも、あんなに仲が良さそうだったのに」
「あなたは既に一軍の将。だからこそ、落ち着いて目の前の事を見極めるのです」
ジヤンの言葉に、僅かながら冷静さの戻るジャンヌ。慶次の声も飛んできた。
「ジャンヌ殿。譲れない時が人にはある。そこでしっかりと成行きを見極めるのです」
ジヤンが用意した木剣を、2人は受け取らなかった。あくまで真剣勝負である。
慶次は大差しをスラリと抜き、ベルトランは騎士特有の幅広の剣を身構えた。
「ベルトラン殿。本気で行く。覚悟はいいかい」
「慶次殿。もし加減をするような事があれば、俺は一生貴殿を軽蔑する」
ジャンヌがまた前に出て2人を止めようとした。ジヤンが再度それを抑え付ける。
一瞬、慶次の意識がジャンヌにほんの僅か移った。その隙をベルトランは見逃さない。
間合いに切り込むと同時、慶次の胴元へ横薙ぎの剣を滑り込ませる。
ベルトランの20年に及ぶ剣の修行の中でも、最高の速度と最大の必殺性を帯びた、
生涯最強の会心の一振り、であった。
(勝った) ベルトランはそう確信した。これ以上は無い、自分の全てを込めた一撃。
慶次なら死にはしまい。だが、どんな強健な肉体でもこの場で立ち上がる事は出来まい。
が。
キィイイン、という耳障りな金属音と共に、その確信に亀裂が入った。
慶次の刀が易々とベルトラン生涯最高の一撃を受け止めている。否、それだけではない。
ベルトランの左目から一筋、涙が流れた。無念とも感激とも取れる微笑を浮かべて。
「強いな慶次殿。 ……どうしたら、ここまで強くなれる?」
「虎が、日々鍛錬などするかね」
233 :
聖少女風流記:2006/03/06(月) 17:15:33 ID:XP9C2A5n0
ジヤンが首を振った。ジャンヌが理解出来ないと言った顔で独り言を呟いた。
「ど、どうなったの? な、何が起きたの…?」
そのジャンヌの声と同時、ベルトランの手からコトリ、と剣が大地に落ちた。
「フフ。ここまで、力の差があろうとはな。 …手が痺れて、もう剣が握れん。
会心の一振りを放った俺の方が、その剣を受け止められただけで」
そのまま後ろへ、ゴロンとベルトランは転がった。仰向けで天を仰ぎながら大の字になる。
顔を太い右腕で隠した。小さな嗚咽が漏れる。慶次は何も言わない。
「アーサー王の円卓の騎士に憧れていたんだ。ランスロット卿やガウェイン卿みたいな
強い騎士になって、己の信ずる主君と掟の為に命を賭ける騎士に憧れていた。
だが、現実は老公の身の回りの世話をするだけの準騎士にしかなれなかった。
そんな時、ジャンヌ殿が俺の前に現れた。この人の騎士に、剣になろうと思った」
ベルトランの独白が闇夜に響いた。深々とした声が哀しく響く。
「だが、ジャンヌ殿の横にはもうお前がいる。俺よりも遥かに強い男が」
慶次もジャンヌもジヤンも黙って聞いている。ベルトランの涙声が続く。
「剣の神は、俺を無視して通り過ぎて行った。俺では、ジャンヌ殿の剣にはなれん」
涙を拭いてのっそりと起き上がった。その顔には笑顔が広がっていた。
「俺は、剣にはなれん。だから、聖少女の剣の役目は貴殿に任せよう、慶次殿。
俺はその代わり、盾になろう。命の盾として彼女を守ろう。それが、俺の役割だ」
慶次は何も言わずに、懐の瓢箪をベルトランに差し出した。
ベルトランは瓢箪を一気に煽った。中身の酒が体中に染み渡る。ベルトランは言った。
「だから誰にも負けるなよ、慶次。あの呂布や武蔵とか言う化け物にも、負けるな。
剣がなまくらだと、盾はたまらんからな」
慶次は破顔一笑した。呼び捨てが心地よい。慶次も瓢箪の酒を煽り、ベルトランに言った。
「ああ。何があっても俺はジャンヌ殿を守る。安心しろ、ベルトラン」
2人のその様子に、ジヤンも松風も、瓢箪の酒を嬉しそうに煽った。
ジャンヌだけは酒は呑まなかったが、幸せそうな顔で深夜の粗末な宴に加わっている。
そして、オレリアンの決戦の時が近づく。
234 :
ハイデッカ ◆duiA4jMXzU :2006/03/06(月) 17:30:18 ID:XP9C2A5n0
敢えて憎まれ役になるのを覚悟で、このスレの為に一言言いたいと思います。
最近、感心しない書き込みが増えていますね。
大部分の方は勿論、わきまえていらっしゃいますが、一部の方には
見る人によっては不快に感じる事を平気で書く方がいらっしゃいます。
大変残念なことです。私は悲しくなります。
バキスレは基本的に好きなネタを書けるスレですし、どんな後書きでも自由です。
ですが、自由と無法は違います。
自由を標榜するならば、まずマナーと他の方への配慮を考えるのが
大切と思いますが、いかがでしょうか?
こんな事を真剣に案ずる私が善人過ぎるだけかも知れませんが…。
235 :
作者の都合により名無しです:2006/03/06(月) 19:06:52 ID:mFEjAAA50
まず、お約束で「お前が言うな」w
>その名はキャプテン
アミバがとうとう重要キャラまで上り詰めたな。絶対にやられキャラだと思ったけど。
首都の方でもドラマは動き出してますね。役者は揃ったという感じかな?
>フリーザ野球軍
宇宙一の精鋭部隊も、隊長がコレではただのお笑い集団ですな。隊員たち可愛そうに。
しかししぇきさんのこういうキャラに愛着があるのも事実。筆がノッてますね。
>聖少女風流気
原作の拳語りみたいな雰囲気がいい!ベルトランと慶次の間にしっかりとした友情が
生まれた感じでした。ジャンヌダルクは名前しか知らないけど、調べてみようかな。
>インベーダー
ちょっと弱すぎかな?と思ってたら修行時代か。
>噴水のような血飛沫
緊迫した場面のはずなのに、パタキャラだと γみたいな
ギャグ噴水しか連想できないw
>>201 タイムワープの応用で時間を止めた話があった気がする。
ふら〜りさんの言うように時間無制限で疲労ゼロ。
>その名はキャプテン
竜にも秘孔が通用するのか。
秘孔でパワーUPするだろう飛竜とアミバのコンビはいいな。何か最後に
アミバ裏切られそうだけどw
>フリーザ野球軍
本当にジャンプ好きなんだな。自分も小学生の頃は似たような感じだったっけ。
あと裏事情ワラタ。ホント全員でコントやってるなコイツら。楽しそうだ。
ところで、彼らはいつ野球するんでしょう?
チューブなんかは非戦闘員も含めて「統治」してたような。
238 :
237:2006/03/06(月) 21:41:50 ID:mP8BDeOX0
誤爆です……すみません
遠くから、声がする。
懐かしい、声がする。
俺を呼ぶ、声がする。
あの懐かしい闇の彼方から、俺を呼ぶ声がする。
「どうした?黄金聖闘士最強の貴様でもその程度か」
「…黙れよ、半端者が」
うめくように呟いて、カノンは引きちぎれそうな我が身を、無理矢理たたき起こした。
「何だと?」
思えば、何一つとしてやり通したことのない生涯だった。
聖闘士にもなれず、海将軍にもなりきれず、悪党すら貫けず、我が身かわいさに嘗て決別した主君におもねり、
戦友の情に甘え、こうして兄のお下がりを着て、一端の聖闘士面して聖戦の矢面に立っている。
「なんと無様か…」
ワイバーンのラダマンティス。冥界の三大巨頭の一角を占める彼は、カノンの言葉によって、
見る見るうちに顔色を曇らせていく。
「死に損ないが!」
ラダマンティスの鉄拳の一撃一撃が、今のカノンには何故か酷く軽く思えた。
冥府の泥に塗れながらも、カノンの瞳の光は消えない。
思い返す。
神を否定し、人としてこの世に君臨する事を夢見た日を。
兄の苦悩をせせら笑った浅薄な己を。
否定するはずの神に、アテナに命を救われた時を。
海皇の三つ叉の槍を引き抜き、三千世界を制す事を誓った日を。
そして、青銅聖闘士五人に敗れた日を。
「死に損ないだと?冥府の住人が言うことかよ」
阿修羅の如き形相で、カノンは立ち上がった。
立ち上がるやいなや、カノンはなんと聖衣を脱ぎ捨てたのだ。
オブジェ形態を取った聖衣は、そのまま光となって嘆きの壁へと向かって飛んでいくのだった。
「貴様如きに、聖衣はいらん!」
「気でも違ったか?自ら聖衣を脱ぎ捨てるとは…ッ!」
「いいや、正気だね!
貴様ら死に損ない(スペクター)共(ごとき)に、聖衣なんてもったいないンだよ!」
最期の刻だ。
ただのカノンとしての意地の見せ時だ。
嘆きの壁破壊なんていう花道は、兄貴(サガ)にくれてやる。
俺は、カノンは、ただのカノンとして意地を張り通してやる。
意地を通すにゃ命の代価が必須だ。俺が今までやってきた事はイカサマに過ぎん。
カノンとして、漢として、命捨ててもやり通さねばならない事がある、刻がある。
その刻が今だ
小宇宙の爆光でラダマンティスが怯んだ瞬間、カノンは彼の背後に回り込んでいた。
「死に損ない同士、仲良く砕け散ろうじゃねぇか!」
「貴様!よせ!やめろ!死ぬ気か?」
ラダマンティスのその言葉に、カノンは腹の底から大笑いした。
「死に怯えているのか?
冥闘士が?冥闘士三大巨頭のお前が?こいつはお笑い草だ!
死出の旅の言い土産話ができたぞ!」
カノンは、ラダマンティスを後ろから抱え込んでぐんぐん上昇していく。
華火の様に散るために、ぐんぐん上昇していく。
「冠たる姓もなければ位もない、無為徒食の、一戸の漢
アテナの勝利を祝う為、炎と咲いて華と散って御覧入れよう!」
銀河を砕く極光とともに、昏い冥府の空に、漢の華が咲いた。
カノンは、もう、彼方からの声に屈しない。
あれ?何でカノンが熱血漢になってるんだろう…
なんかもう、いっぱいいっぱいです
乙です。
兄のおさがり、か。上手いこと言いますね。
確かにカノンの性格がちょっと違う気もしますが、最後の花道補正と脳内補完。
まあ原作でもコロコロ性格変わってたような気がしますしね。
>ハイデッカさん
いい話だけど、ベルトランに死亡フラグが立ったような展開ですね。
慶次の男ぶりとベルトランの熱さ、そしてジャンヌの女としての美しさが
際立っていますね。最後の酒盛り、楽しそうだなー
>銀杏丸さん
カノンの最後の戦いの心理描写ですか。確かにカノンが妙に熱いなあ。
コンプレックスを持ちながらも、どこか兄に対する愛情を捨てきれない
優しさを感じますね。
超機神大戦番外編 「大惨事スーパーフール大戦〜遊園の銀河へ」3
目の前にたくさんの建物が立ち並んでいる。どうやらここが見世物小屋らしい。
「で、どれがお勧めなんだ?」
アスランの問いかけに、ミナキはにっこり笑って答えた。
「どれを選んでも大丈夫です。どうせ変態しか出てきませんから」
「ぜんっぜんダメじゃん・・・」
亜沙はげっそりした顔で呟く。
「とにかく、まずは受付に行きましょう。入場登録しないと入れませんので」
そういうとミナキは一同を窓口へと案内していく。
「一つ注意しておきます。受付嬢からしてちょっとイッちゃってますが、気にしないで下さいね」
「気にするわ!」
律儀に突っ込むクラフト。やはり見世物小屋もろくなもんではなさそうだった―――と。
「ああん?なに?お客?」
おっそろしく柄の悪い女性の声が聞こえてきた。窓口に目をやると、一人の女性が顔を出していた。
顔立ちは中々悪くないが、身に纏う雰囲気は凄まじくやさぐれている。スタイルの方も悲惨だった。細身と言えば聞こえは
いいが、胸はもはや洗濯板といった方が正しい。小学生のしずかだって、もうちょっと膨らんでいるだろう。
ネームプレートには<アイビス・ダグラス>とある。
彼女はいきなりクラフトに向かってキレた。
「なにさ!どうせあんただってアタシをバカにしてるんだろう!?いいトシした女がこんなふざけた遊園地で受付嬢を
やってんのを見て笑ってんだろう!?アタシだって・・・アタシだってほんとはキャバクラとかで働きたかったんだ!
夜の女王になって男共を手玉に取りたかったんだ!だけど、どの店も<うーん、顔は合格なんだけど。貧乳じゃなければねえ・・・>
<せめて乳揺れができればねえ・・・>ちくしょう!そんなに乳が揺れれば偉いのかよ!?どうせアタシは揺れない負け犬だよ!」
そしてアイビスは一升瓶を取り出し、グビグビと大股開きで飲みだした。
「・・・おい・・・なんなんだ、この女・・・なんでこんなのを受付嬢にしてるんだ」
流石のクラフトも突っ込み能力の限界を超えていた。ここまでストレートにヤバい女には初めてお目にかかった。
「まあ、ちょっと彼女は頭が可哀想な子でして・・・でも貧乳属性を持ってて、ツラもそこそこいいですからね。これでも大きな
お友達には大人気なんですよ」
「そんな理由かよ・・・」
クラフトはげんなりした。さっきから変態にしか会ってない気がする―――と、視界に小さな人影が目に入った。
ちょこちょことこちらに駆け寄ってくるのは、金髪の幼女だった。その筋の趣味の方にはたまらないであろう愛くるしい
顔立ち。まるで天使のような笑顔を浮かべている。
そしてそれを見たアイビスの表情が一変した。ついさっきまでが真冬のエベレストとするなら、今は春うららかな高原と
いった有様だ。そして幼女はそんなアイビスの元に飛びついた。
「もう〜イルイったら〜。アタシはまだお仕事なんだから邪魔しちゃダメでしょ〜?」
声まで気色悪いほどの猫撫で声だ。はっきり言って不気味だ。
「ごめん、アイビス・・・迷惑だった?」
「迷惑だなんてとんでもな〜い!イルイがお望みならさっさと早退してとことん一緒に遊んじゃうから〜!ほらほら、
チョコレートがあるよ〜。甘くって美味しいよお〜」
「わーい!アイビス大好き!」
幼女―――イルイは満面の笑みでチョコレートを食べ始める。それをアイビスは聖母の笑みで見守る。
「ハアハア・・・チョコを食べるイルイたん・・・ハアハア・・・」
―――訂正。どう見ても聖母の笑みではなかった。
「ヒスでドランカーでレズでロリ・・・無茶苦茶病気じゃねーか・・・」
クラフトは呟いた。だがアイビスはイルイの天使的可愛さにメロメロになりつつも、自分への悪口だけは聞き逃さなかった。
「何だって!?人聞きの悪いことを言うな!アタシとイルイは性別も年齢も超えた穢れなき愛で結ばれてるんだ!なんなら
ナルホド君を呼んで法廷で勝負するか!?」
「今までの数十行を見せれば異議なしで俺が勝つわい!」
言い争いを始めるクラフトとアイビス―――だが、アイビスの服のすそをイルイが泣きそうな顔で引っ張った。
「アイビス・・・けんかしちゃ、ダメ」
「あ・・・ごめんね〜、イルイ。ああ、ほら、泣かない泣かない。ほ〜ら、飴ちゃんあげちゃおう、飴ちゃん」
「わーい」
天使のような笑顔で飴玉をほお張るイルイと、それを恍惚の表情で見つめるアイビス。
「ハアハア・・・可愛いなあ・・・イルイたんはやっぱり可愛いなあ・・・ハアハア・・・ああ、養いたい・・・こんな子を
養って一緒に暮らしたい・・・ハアハア・・・」
涎を垂らしつつ危ないことを口走るアイビス。彼女がもしも大きなお友達だったら、即刻逮捕されているところだ。
「・・・もうほっとくか」
「うん・・・」
のび太たちは見てはいけないものを見てしまったという顔で、そっと立ち去った。
「しかし、あの子はなんなんだ?」
「彼女はイルイ。この遊園地のある重大な仕事を任されて・・・いえ、今は関係ありませんね。とにかく、もうアイビスは
アテにならないので、私から説明させていただきますね」
ミナキは見世物小屋の説明を始めた。
「ライトなものがお好みなら、そうですね・・・これなんて如何です?デビルゴステロ・オンステージ<脳が痛てェ>」
「却下。色々ヤバそうだから」
「では東方不敗とシャッフル同盟によるミュージカル<実はワシは宇宙人!>はどうでしょう?」
「それもやめとけ」
「ふう・・・ならこれですね。ゼゼーナン氏を招いての講演・題目は<地球のサル共に告ぐ!>」
「誰がサルですか!」
「・・・ならとっておきです。これで駄目ならもう後はありませんよ。
イデ・ビムラー・ゲッターによるコント<何でもかんでもアポカリュプシスとかオレらのせいにしてんじゃねーよ>」
「発動したらどう責任取ってくれるんだよ!てゆーかまともなのが一つもないじゃないか!」
凄い剣幕で詰め寄る一同。さすがにミナキも冷や汗を流した。
「わ、分かりました。まともなのもちゃんとありますから・・・ほら、これです。謎のチャイニーズ・孫光龍(そんがんろん)
によるダンスショー。一番人気ですよ」
「ダンスショーか・・・まあこの中ではまだマシな部類か」
「じゃあ行ってみる?嫌な予感は拭いきれないけど・・・」
渋々ながら、のび太たちはダンスショーを行っている小屋へと足を運ぶのだった。
―――そこはまさに別世界。色とりどりのライトが会場を照らし、大勢の人々がショーの始まりを今か今かと待ちわびている。
「へえ、中々雰囲気はいいじゃない」
ドラえもんもそっと胸を撫で下ろしていた。あからさまに怪しかったら道具をフル活用してでも迅速に逃げ出すつもりだったが、
その必要もなさそうだった。
「うん。この分なら何とかまともかも・・・」
のび太がそう言いかけた時だった。天井に取り付けられたスピーカーから声が響いてきたのだ。
<皆様、ただいまより孫光龍によるダンスショーが始まります>
アナウンスと共に店内の明かりが消え、唯一残ったスポットライトがステージ上を照らす。鳴り響くラテン風音楽。
そして舞台袖から一人の男がスポットライトの中に飛び出す。
その男は異様な風体であった。真っ白いシルクハットに、後はブリーフ一丁のみ。しかも普通の履き方ではない。紐を
限界まで伸ばして肩に吊るした、いわゆる変態仮面スタイル。
猥褻物陳列罪ぎりぎりだった。
「さあ諸君、パーティーの始まりだ!」
陽気な声と共にレイザーラモンばりの腰振りを披露しつつ、ステージの上を練り歩く孫光龍。悪夢のような光景だったが、
観客は盛大に歓声を上げる。
「盛り上がってきたね、だけどお楽しみはこれからだよ。それではウォーキング・ターイム!僕が前を通る際にパンツに
100ドル札をねじ込んでくれたまえ!その時には、ふふふ・・・ちょっと中身を覗いたってかまわないよ?」
孫光龍はステージから降りて観客の間を練り歩く。きゃあきゃあ言いつつも観客たちはどんどん100ドル札をパンツに
ねじ込み、中のお宝を覗き見る。
そして孫光龍は満足げにステージから去っていった。後には熱狂する観客だけが残されるのであった。
その中を、のび太たちは複雑な表情で出口へと歩いていった。彼らの心は一つだった。
(やっぱり騙された・・・)
小屋から出ると、ユーゼスが待ち受けていた。
「ふふふ、どうだったゼストランドは。感想を聞きたいのが私だ」
のび太たちは口々に忌憚のない意見を述べた。
「つまらん」
「時間の無駄だった」
「金返せ」
「正直、こんなもん書かずに本編をちゃんと書いてりゃよかった」
「おい、今作者が混じってなかったか・・・?」
―――要するに散々な評価であった。いや、二人だけ例外はいた。
「ダンスショーは中々楽しかったぞ」
「できれば乗り物も楽しみたかったな」
アスランとバカ王子。流石はダメ人間を対象としたゼストランド、きっちりバカ二人を篭絡していた。
「そうか・・・だが、貴様らがどう思ったかなど関係ないのが私だ。どうせお前たちは・・・ここで死ぬのだからな!」
「あ、やっぱりそういう展開なわけね・・・何て意外性のない・・・」
「ほんとほんと。見え見えだよ、先が。作者の力量が知れるね」
まるで緊迫感がないのび太たち。相手がユーゼスでは仕方ないことではあった。
「―――ミナキ!お前もこっちに来い!芝居はもう終わりだ、と指図するのが私だ」
すっ・・・とミナキが立ち上がり、ユーゼスの傍に駆け寄った。そして酷薄な笑みを浮かべる。
「うふふ・・・そう、実は私はユーゼス様のスパイだったの。ごめんなさいね、騙していて」
「うん、別にいいよ。丸分かりだったし」
まったく表情を変えないのび太たち。それにミナキの方がショックを受けていた。
「そんな―――何故そんなに平然としてるの!?仲良くなった美人で知的で可憐でナイスバディで綺麗なお姉さんが
実は敵のスパイ―――ということで、あなたたちの戦意を失わせるのが目的だったのに!」
「だって、ねえ・・・あからさまに怪しかったもの」
「うん。てゆうかむしろ自分で自分のことをそこまで褒められるのにビックリだよ」
「くっ・・・作戦その一は失敗です、ユーゼス様!」
ミナキは悔しそうに報告する。だがユーゼスは不敵な笑みを浮かべた。
「ふっふっふ・・・よいよい。それでこそ我がライバル。こうでなければ、と余裕なのが私だ」
「別にお前をライバルにした覚えはないが・・・」
だが、ユーゼスは勿論聞いちゃいない。自分勝手に話を進めていく。
「では作戦その二だ。我が刺客―――すなわち、今回のお前たちの相手を紹介しよう・・・!」
「そうか。じゃあさっさと出してよ」
のび太は耳をほじくりながら生返事をした。ここまでモチベーションの上がらない戦いも初めてであった。
「よし。ではちょっと待っててほしいのが私だ。Trrr・・・(携帯の音)。あ、もしもし?実は今、すっごくヤバいって
感じ〜。来てくんなきゃダメかも〜。え〜ほんと〜?来てくれるぅ〜?ちょークール〜!
―――よし、五分ほど待っていろ」
「・・・・・・・・・」
突っ込まんぞ、今の電話には突っ込まんぞ・・・!クラフトは拳を震わせて自制するのだった。
―――五分後。
「すいませーん、オーナー。俺に用って何ですか?」
ユーゼスの刺客が、ついにその姿を現した―――!
「な・・・何ィィィッッッ!?お・・・お前は!?」
びびるクラフト!やたら過剰な引きで次回へ続く!
投下完了、前回は
>>187より。
今回のネタが全部分かった人、あなたとはお友達になれそうです。
>>193 もしもあったら行きたいですね、ゼストランドw
>>194 しょうもなくも壮絶な戦いになります
>>196 おいでませダメ人間(失礼)
>>ふら〜りさん
ボン太くん・・・その手があったか!そうすりゃよかった・・・でも、しぇきさんが先にやってるしなあ・・・
見世物小屋については、スパロボファン以外は完全に置いてけぼりです。すいません。
>>しぇきさん
あ・・・ロム兄さんか!口上と言えば親分さえも抑えて確かにこの人だ。
しかしあんたそんな人だったのか!(汗)時給千円って・・・
さらに明らかになるアニメ業界の裏が楽しみです。
しかしアイビス出演を当てるとは・・・エスパー?まあ受付嬢としてですが。
孫光龍は、何故か初めて見た時から今回の話のようなイメージが出来てましたw
253 :
作者の都合により名無しです:2006/03/07(火) 20:18:31 ID:GBZwuWto0
>ハイデッカさん(後書き抑えた方が宜しいのでは?個人的には好きですが)
ジャンヌの美少女振りと、慶次とベルトランの漢っぷりの対比がいいですね。
決戦前の結団式みたいな感じで、気持ちが盛り上がって来ますね。
>銀杏丸さん(お久しぶりです)
カノンの苦悩と反逆は全てサガへの憧れから来ているような気がしますね。
「兄のお下がり」という言葉にも、何か誇らしげなものを感じます。
>サマサさん(朝早くからお疲れ様です)
シャッフルパーティもすっかりドラ一派になくてはならない感じになりましたね。
やっぱり、このSSでも一番ワリを喰う役回りはクラフトですかw
254 :
作者の都合により名無しです:2006/03/07(火) 21:46:25 ID:Sm+3aXVb0
ゼストランドは馬鹿ばっかりで楽しそうだなw
アトラクションは金払って楽しめそうなものは無いけど。
受付嬢からユーゼスまで馬鹿が多くて大変だ。
迎え撃つドラチームのメンツも負けていないけど。
255 :
十八話「月と影」:2006/03/07(火) 22:09:50 ID:3y/62w0Q0
今まで幾つ窮地を抜けて来たか等、覚えてすらいないグレイだが間違いなく今、
自分から崖っぷちへと進んでいるのが判る。
自ら望んで立った窮地、それはまるで何時まで進んでも落ちない断崖絶壁、だが何時落ちるかわからない。
例えるならそんな所であろう。
臆する事無く進み続ける、鼓動が高鳴り、気が高揚してくる。
遂に扉の中への一歩を踏み出した。
まず感じる寒気、物理的な寒気も感じるが得体の知れない空気への凄まじい悪寒。
思わず呼吸を止めてしまう様な息苦しさ。
その部屋の窓から外を眺める男、ノエル。
こちらに気付いていたのだろう、ゆっくりとグレイへと視線を移す。
「折角時間を与えたのに、余り変化がみられませんね?
まさか普段見せてくれている、あの粗末な剣術で私の相手をするんですか?」
男の言葉は挑発ではない、本音だ。
顔からは普段の男からは感じられない気迫と気が感じられた。
並の人間では束になってもグレイに傷一つ負わせることは出来ないだろう。
だがこの男は別だ、どんな強大な魔物でも戦い自体を恐れて逃げ出す。
大袈裟では無い、この男の気は部屋に留まらず大陸をも支配しかねない物であった。
気付かなかったのは単に気配を消していただけの事。
邪気に満ち溢れた
勝てない。100%勝てない。
だが、退かない。
元より覚悟していた死は確実な物へと変わった。
どんな達人でも死は恐れる物だ、万人に平等な恐怖である死。
それを恐れる事無く、グレイは構える。
退こうと思えば今すぐでも退ける。
だがそれは意味を成さない。
ノエルの目がそれを語っていた。
256 :
十八話「月と影」:2006/03/07(火) 22:10:26 ID:3y/62w0Q0
「この世界でようやく戦士の目をした人に出会えましたよ。」
男はそう言うと構えを取る。
大きく足を広げ、手を中段と上段へ分ける。
だが・・・剣が握られていない。
ハンデを与えている。
自分に向かって余裕を示している白髪の男。
いつもの笑みは消え、感じさせるのは鬼神が如き殺意。
「だが私を甘く見すぎでしたね、これ以上失望させられたら殺してしまいますよ?」
そう言うと途轍もないスピードでこちらに体を捻りながらジャンプし、空中で回し蹴りを放つ。
居合いの構えを取っていたが、速すぎて反応出来ずに吹っ飛ぶグレイ。
受身は取ったがもう少し深く懐へ入り込まれていたら、蹴りで上半身を真っ二つにされていた。
「何のために居合いの構えを取ったのですか?
こけおどしに乗って手が緩んでしまいましたよ。」
殺意は少しも衰える事は無かったが男の顔に笑みが浮かんだ。
こんな顔が人間に出来るのだろうか?
恍惚として、醜さも美しさも兼ね備え、憎悪と愛しみに満ちていた。
すぐに剣を中段に構え、カウンターを狙う。
自分から手を出したら間違いなく手刀、足刀で反撃を受け絶命する。
相手の事前に取る動作から狙う場所を絞る。
だがそれも無駄だった。
「少し本気をだしましょうか・・・ヒートハンド。」
男の手が炎に包まれる。
その状態のまま攻撃を仕掛けるノエル。
炎が揺らめき攻撃を予想させる、上段への手刀。
素早く剣で手を斬りつける、だが斬れない。
炎が剣を絡め取る。
そして炎は剣を弾き飛ばし、拳が到達する。
「はっ!」
炎を纏った拳がグレイを貫いた。
257 :
十八話「月と影」:2006/03/07(火) 22:11:03 ID:3y/62w0Q0
またも吹き飛ばされるグレイ、地面に伏せたままピクリとも動かない。
焦げた肉の臭いが漂う、死んだのだろうか。
「つまらん・・・さっさと元の世界へ帰って皇帝閣下とまた手合わせしたい物だ。」
拳から噴き出す炎を消し、服で返り血を拭う。
そこへ、
「ゴフッ・・・。」
倒れていた人塊が起き上がる。
どうやら息の根を止めるまでは行かなかったらしい。
血を撒き散らしながら立ち上がるグレイ。
その目は色も、形も違うというのにノエルの知る戦士を思い出させた。
「皇帝っ・・・?」
一瞬、別人と見違える様な雰囲気がグレイに見えたがすぐ冷静になるノエル。
剣を失い満身創痍のこの男に何が出来るというのだ。
壁にしがみつきながらも立ち上がる、目はこちらを見据えたままだ。
「・・・いいでしょう、次の一撃に耐える事が出来たら教えてさしあげます。
秘術、伝承法を。」
剣を抜き、構えを取る。
余り構えに変化が無いのは彼の構えが体術・剣術両方に特化した型だからであろう。
体術という別の武術を剣術へと組み込んだその型はいつでも、どちらの攻撃も可能としている。
それはグレイが目指す物に近かった。
その型を崩さずに集中を始めるノエル。
すると辺りに雪の様に何かが舞い散り始めた。
それはノエルの発する気であった。
「行きますよ。」
雪が氷塊へと変わる、そして周囲に溢れた魔物の瘴気・・・恐らくノエルが事前に斬った奴等であろう。
氷塊が恨みを募らせた顔へと豹変し、冷気を増大させる。
「月影。」
その言葉と共に無数の顔がグレイに降り注いだ。
258 :
十八話「月と影」:2006/03/07(火) 22:12:58 ID:3y/62w0Q0
まるでブリザードの様に視界を埋め尽くす氷塊、それは吹雪を遥かに上回る凶悪な物だった。
部屋の半分以上が氷に閉ざされ、恨みの顔は砕けて尚も周囲に瘴気を放ち続けていた。
終りを確信したノエルは静かに部屋を出ようとした。
「待て・・・。」
氷塊の残骸から声が響く、その声の主は・・・グレイ。
氷塊で全てを覆う究極の剣技、月影。
巨大な瘴気を放ちながら広範囲へ破滅の声と絶対零度を浴びせるこの技は剣技でありながら術に近かった。
但し、威力は普通の術の比にならない。
今までこれを喰らって生き延びられるのは極一部の限られた者達だけであった。
冷気に耐性がある者、特殊な盾を用いて回避する者、防御を固めて偶然生き延びた者。
そして、歴代皇帝達の意思と力を受け継いだ、最強の王。
月影を受けて生き延び、息も絶え絶えの中で究極の剣技を編み出しノエルを破った者。
最終皇帝。
氷塊の中から出てきたグレイは何時の間にか剣を握り締めていた。
武器は刀だけでは無かったのだ。
青龍刀、曲刀に分類されるクジャラート地方でよく使われる剣であった。
少し切れ味が落ちる分、重量を増して破壊力を上昇させた業物である。
使い方は刀と同じ様に扱え、斧の技まで思うがままの万能武器。
ノエルは感じた、自分の周りに散り行く雪の如き冷気を持った気を。
「退屈させた詫びだ、受け取れ。」
瞬間的な移動、無足。
全く歪みの無い純粋な弧を連続で描き斬りつける、加撃。
「月影の太刀、奥義、乱れ雪月花。」
刀術最高峰の技であり、歪みの無い弧は達人でも連続して放つ事は出来ない。
そして弧に意識を集中する余り、最初の一撃が出遅れがちになり無足をすれば崩れて当然。
歴代の剣士が夢を見て、完成する事無く終わった幻の剣技。
ノエルの月影と違い冷気は刀身へと収束し、敵の体温で切れ味を鈍らせないために使われるので、
冷気に耐性を持つ物でも容易く切裂く。
「・・・お見事ですね。」
だがノエルにその太刀は届く事は無かった・・・。
259 :
十八話「月と影」:2006/03/07(火) 22:14:17 ID:3y/62w0Q0
珍しく、「比較的」速めの更新、邪神です。
まぁサガファンなら感づいていたでしょうノエル。
あの人第一形態の方がカウンター連発されてうざいんですが・・・。
第二形態にしか勝った事無いからヒートハンドからの赤竜波も見れなかった。
でもどっちの形態もかっこいいよねぇ、剣に体術のエキスパートですし。
ん?今日はモンハンの話は無いかって?
残念ながら無いんですが聞きたいなら・・・え?いい?そうですか、あーそうですか。
〜サガ講座〜
月影 ノエルの体力を一定以上減らすと使用してくる。
とても痛いしたまに連発してくるので死ねる。
最終皇帝を女皇帝にすれば使えるが・・・あえて何も言うまい。
月影の太刀 刀の技ではかなり強いっつーか最強だろう。但し奥義が発動すれば。
一回も発動した事無いんだがそのままでも結構強いから覚えて損は無い技。
俺の運が悪いだけであろうか?奥義名が「乱れ雪月花」とロマサガ2の主要剣技で、
結構思い入れがあるため見たかったが・・・。
260 :
作者の都合により名無しです:2006/03/07(火) 22:23:48 ID:Sm+3aXVb0
お、最近早いですな邪神さん。このペースだとありがたいですなー
ノエルってロマサガ2の登場キャラでしたっけ?紳士的な奴ですなw
俺、ロマサガ2はやった事無いんですよね。
1と3はあるんだけど何故か2は無い。もしかして2じゃない?
いや、もう1も3も記憶の果てだwミンサガはやってないし。
でも、イトケン節が炸裂しそうなバトルですなー
ロマサガ、もう一度やってみようかな。
>サマサさん
強烈なキャラたちに常に振り回されるクラフトが可愛いですけど、
それよりもプリムラたちが可愛くアトラクションを楽しむシーンを
見たいなあ。しかし、一般人が知らないキャラが続々と現れるなw
>邪心さん
乱れ雪月花とか懐かしいな。ロマサガの技を閃かせる為に何時間も
プレイしてたのを思い出しますよ。ノエルも想像通り強キャラですね。
グレイも主要キャラの一角としてパワーアップしないといけませんな。
邪神さん、モンハンやりながら頑張りますな。
主人公のホークの影がケンシロウの登場以来どんどん薄くなるけど
個人的にはグレイの方が好きなので全然OKです。まだまだ猿印まで遠いな。
263 :
作者の都合により名無しです:2006/03/08(水) 16:06:51 ID:nTh7Avuy0
今年になってうみにんさんやVSさんって来たっけ?
ゲロさんやスターダストさんも最近来ないね。心配だよ
サナダムシさんは大丈夫だろうけど、
鬼の霍乱作者さんやチロルさんも来ないな。
一部の人たちが頑張ってくれてて嬉しいけど、読み手としては
満遍なくきて頂きたいという生意気なリクエスト。
>>199 「どけ。あの娘は解剖する。可能な限り生命活動を維持させたまま、じっくりとな」
「そうはさせぬ! ゆくぞっ!」
ヒューイットが斬りかかった。だが業霊無として強化された肥大筋肉と魔力で作られた
剣によるその一撃を、カーズの輝彩滑刀は難なく受け止めてしまった。
それでもヒューイットは怯まず続けざまに斬り込んでいく。が、簡単にあしらわれ、
カーズには傷一つつけられない。逆に反撃を受け、少しずつ少しずつ殴られ蹴られ、
そして斬り刻まれていく。
D=アーネがいくら命令しても無視し、ヒューイットは戦いをやめようとしない。
「おいっ! どうなってるんだ犬1号っ!」
「ですから、前にパステリオンの黄色いのの家に忍び込んだ時と同じですってば。
人間由来の業霊無は、その人間の精神力が強固だと制御しきれないんです」
と言っている間に、業霊無ヒューイットの剣が弾き飛ばされ、宙に舞った。ならばと
殴りかかるヒューイットに向かって、カーズが拳を振り被る。
「地球の外から来た不可思議な力よ、地球人の不可思議な力と勝負してみるか?
確か、こうだったな……邪悪なる魂よ、この世から退けッ!」
カーズの拳から、眩しい輝きが洪水のように流れ出てヒューイットを襲った。タマネギ
44号が見せた、破邪の力である。が、威力のほどは彼自身のそれを遥かに越えている。
すなわち、彼自身では祓えない悪霊も、憑いた異物も、祓えてしまう。例えば、
異星人の手による魔法の力であっても。
「……ぐ、ぅあ…………っ!」
カーズの放った輝きを全身に浴びるヒューイット。その体から、D=アーネと犬一号が
打ち込んだ魔法の力、業霊無の素が叩き出された。
瞬く間にヒューイットの肉体は元に戻り、胸の傷もまた開き、多量の血を溢れさせ
ながら後ろ向きに倒れていく。
それを抱き支えようと駆け寄ったD=アーネの顔面に、
「ハアアァァッ!」
鋭く跳躍したカーズの足が叩きつけられた。暴走自動車に正面衝突したかのような
衝撃がD=アーネの頭蓋を揺らし、意識を砕かれながら犬1号を巻き込んで
吹き飛ばされ、瓦礫の地面に激突する。
「まあ、こんなものだな」
殲滅完了。プラズマXとタマネギ44号はとっくに戦線離脱しており、ヒューイットは
放っておいても間もなく死ぬ。いよいよ解剖実験タイムだ。
と、倒れているD=アーネに向かって歩き出したカーズの足首を、瀕死の男が握り締めた。
カーズが足下を見る。ヒューイットだ。
「……逃げ、ろ……早く……ここは、僕が…………僕に任せて……」
「ほほう。無力なただの人間かと思いきや、これは意外だ。あ、いや違うな」
カーズはニヤリと笑ってヒューイットの手を振り解くと、その襟首を掴んで目の前に
引っ張り上げた。虫の息のヒューイットが、吊られた状態で睨みつけてくる。
「ぼ……僕が、食い止める……から、こいつを……今の、内に…………逃げ……て……」
「そうそう。波紋使いに限らず、その他の人間どもの中にもたまにいたな。
正義が生み出す勇気とやらで、常ならざる力を発揮する者。だがお前の場合は、」
前方でD=アーネが、どくろステッキを杖にして必死に立ち上がろうとしている。
「勇気というより根性、だな。それを生み出しているのは正義ではなくあの娘への……
か。ならば、お前の愛しきお姫様の前で、悲劇の英雄らしい死を演出してやろう!」
左手で吊り上げたヒューイットめがけて、右手の刃を構えるカーズ。その時、
「デル・デル・サンダーっっ!」
「ふんっ!」
D=アーネとカーズが、ほぼ同時に声を上げた。D=アーネが地面に刺して杖にしている
どくろステッキの先端が輝き、カーズはヒューイットを吊っているその手を後ろに回す。
結果、カーズの背後の地面を割って飛びだした電撃を、ヒューイットの体が受け止めた。
「下らんなあ。JOJOならば、もう少しマシな策を張るぞ?」
言いながらカーズは、ヒューイットの体を前に戻してD=アーネに見せつけた。
カーズの手によって貫かれた胸の穴と、D=アーネの電撃によって焼かれた腹の焦げ跡と。
「…………」
悲鳴を上げる気力も失って、D=アーネが立ち尽くす。カーズはヒューイットの体を
放り投げると、そんなD=アーネにゆっくりと近づいていった。
「頭蓋を割って、髄液の色を見る。胃を引き出して、未消化物の粘度を確かめる。
肉を斬って、神経組織の太さを調べる。下腹部を裂いて……」
まだ市民の避難が完了していないので、大規模な兵器攻撃はできない。といって
携帯武器で下手に攻撃して、シュトロハイム隊の二の舞になるわけにもいかない。
なので仕方なく、マリネラ王国軍はプラズマXとタマネギ44号に時間稼ぎを任せ、
遠くからカーズの捕捉・観察だけをしていたのだが、
「殿下ああああぁぁっ!」
カーズを元の世界に戻す機械を作っている、パタリロの第二工作室にタマネギ1号が
駆け込んできた。パタリロは聞こえているのかいないのか、黙々と作業の手を止めない。
「もう限界です! プラズマも44号も、突如現れた謎の女の子とヒューイットさんも
完敗! 戦うどころか好奇心の対象としか見られてません! もうすぐあの女の子が、
その後もしかしたらヒューイットさんや44号も、殺される前に解剖されます!」
「……楽勝の敵、どころか解剖実験材料と思われてるわけか」
「はっきり言って、そうです。あの様子では、おそらくマリネラの国土ごと粉砕する
つもりでないと、奴は止められないでしょう。通常兵器で半端に攻撃して、
逃げられ見失い国外に出られでもしたら、人類六十億の終末です」
パタリロが手を止めた。タマネギ1号が、搾り出すような声を出す。
「仕方ありません。殿下、核を使いましょう。今奴を確実に仕留めないと、全世界が」
「バファリンを持っているか?」
唐突にパタリロが言った。タマネギ1号の脳はその言葉をすぐには飲み込めず、
「は? バ、バファ、その、頭痛薬のバファリン、ですか? えと、正露丸なら持って
ますけど、バファリンはあいにく、ってあの、何が?」
「やむを得ん。それで代用しよう。……急ぐぞ、ついて来い!」
パタリロは立ち上がり、元祖ゴキブリ走法で走り出した。タマネギ1号が慌てて後を追う。
「待って下さい殿下! こんな時に正露丸で何をやろうってんです?」
走りながら訊ねるタマネギ1号に、パタリロも走りながら覚悟を決めた表情で答えた。
「決まってるだろ、カーズを始末する!」
完全無制限時間停止能力については、
>>236さんのご説明の通りです。原作で
パタリロはその能力を利用されて一度ヒドい目にあったので、懲りて自ら封印
している……のでしょう。多分。
>>邪神? さん
また随分とアミバが優遇されてますな。買い被りで終わるか、見事期待に応えて見せるか。
ひたすらに強さを求めながら、「戦い」そのものには飢えていないと断じられてるグレイ、
いそうでいないタイプかも。そんな彼の琴線に触れたノエル、期待以上過ぎた様子……?
>>しぇきさん
相っっ変わらず、ハタから見ればどーでもいいことに血涙流して励んでますなこの一行は。
金どころか星をいくつも奪ってきている彼らのこと、そりゃ強盗なんかアホらしく思える
でしょう。既に充分過ぎるほど目立ててると見受けますが、これ以上何を会得するのやら。
>>ハイデッカさん
今回は見事にジャンヌが一歩引いてますね。女の入る余地などない、男と男の熱い火花。
手加減の一撃さえ必要ない、圧倒的な力量差があった二人。ベルトランの反応が不安でし
たが、いじけずくじけず、盾になると言い放って……大丈夫、貴方は慶次に負けてないっ。
>>銀杏丸さん
見せ場は乏しいとはいえ充分に強いはずだし、やってることのスケールもちゃんと大きい、
けれどどーにも小物臭がつきまとってるってイメージの彼ですが。それを自覚し、だから
こそ最期に漢を見せたと。それにしても兄弟揃ってよくもまあですよね。親の顔が見たい。
>>サマサさん
いろんな作品でいろんなレズやロリやショタを見てきましたが、レズかつロリは自然すぎ
て希少かも。でもそれだったら巨乳の方が対比がキマって絵になるなーと思ってみたり。
ある意味、もう何が出ても驚かんぞな気分になった今回ですが、さぁ刺客殿はどんな人?
すみません。
今ちょっと武装錬金の総集編的な代物を追い込んでまして
SSの方はしばらく無理かもです。感想と感想に対するレスも……
とりあえず東海大地震が来ない限りは多分生きてますし
生きてたら完結は必ずさせますので、心配はご無用です。
……だから来ないでおくれよ地震。
269 :
作者の都合により名無しです:2006/03/09(木) 05:34:22 ID:1IWlXolG0
>ふらーりさん
カーズなんでもありになってますね。一度見た能力を自分の物にできるのか。
なんだかんだで天才のパタリロがどうにかしそうですけど。(主役だし)
そういえばパタリロっていざとなるとバンコラン以上なんだよなあ。
>スターダストさん
ああ、色々忙しそうですね。ゆっくり頑張って下さい。
>武装錬金の総集編的な代物を追い込んでまして
これ、なんかえらい気にかかるんですが。
・マジカルインベーダー
宇宙から帰ってきてパワーアップしてますねカーズ。
アーネ&パタリロの最強コンビで迎え撃てるかどうか。
スターダスト氏、錬金の総集編的な代物って俺も凄く興味あります。
もしかして和月さんの関係者?w
なにはともあれ、完成したらなんか情報下さいよ。
たとえばファンサイトとかなら、アド教えて欲しいな…
確かに気にかかるな。マジで総集編的なモノって何?
第7話 ゲシュペンスト
泉宗一郎の家の敷地内には道場がある。通いで竹宮流を習う人間も多い。今その道場の中で鞍馬と丹波は組み手を行っていた。
鞍馬はグラップラー、丹波はストライカーである。
「しゅっ。」
「ひゅっ。」
互いに牽制し合いジャブとローで様子を見る。どちらの攻撃も当たる間合い。足を止めてのジャブの小突き合い。
鞍馬が踏み込む。丹波がジャブとフックで迎撃する。鞍馬は打たれるのを構わず丹波の肩を掴み足を払う。
「どわっ。」
丹波は尻餅を付いた。そして鞍馬が丹波の腕を固める。
「タップだ。」
鞍馬の足をポンポンと叩く。プロレスにおけるタップ、つまりギブアップである。
そして二回目の組み手が開始された。今度はミドルとジャブを混ぜながら丹波が攻撃を始めた。
勿論先程も今回も両者共本気では無い。単純なウォームアップという感じだ。
だが内心鞍馬は焦っていた。竹宮流という武術の流派がある知った今彼には一つの考えがあった。
竹宮流の技術をこの身に吸収し身に付ける。船村は同じ関節技系の格闘家、つまりグラップラー。
ならば違う技術を身につける。当身、つまり打撃技。目の前にいる丹波文七はかなりの実力者だ。
まぁ格闘技をやっている年季なら丹波の方が上だろう。パワーならわからない。技術もどちらが上かは
わからない。まぁ今比べる事では無いが。
鞍馬が丹波とスパーをしている横でびんは泉宗一郎に護身術を習っていた。一人暮らしのびんに
泉宗一郎が身を守る術を教えてあげようと言い出したのだ。子供とは言えびんは働いている。
万が一絡まれたりした場合は逃げればいいがやむを得ず向かい合う場合は自分の持てるモノを全て
使うしかない。びんは子供なので力が弱い。だからカウンター、或いはテコの原理、つまり
相手の力を利用する技を重点的にびんは泉宗一郎に教わっていた。
「よし、少し休憩しようか。」
既にスパーが始まってから一時間は経っている。昼飯にはまだ早いが水を飲むのには丁度いい時間だ。
「あの・・・私・・お水を綺麗にしますね。」
「汲んできてくれるのか。ありがたいな。」
直後、泉宗一郎の前で信じがたい事がおこった。びんの体がどんどん縮んで行くのだ。
泉の腹まであるかないかだったびんの身長がどんどん縮んでいく。
「む?」
「びんちゃん?」
丹波と鞍馬もその光景を見た。非常に奇奇怪怪な事が起こっている。白昼夢か幻覚を見ているような感覚に襲われる。
「痛ッ。」
鞍馬が自分の頬をつねる。痛みはある。どうやら夢では無いらしい。つまり目の前で起きている事は現実。
「私は・・・生まれた時からこういう事が出来て・・・この能力を使って町の人達のお役に立つ事で
お米やお金を貰ってきました・・・」
鞍馬は冷静に判断し始めた。今周囲にいる人間よりはびんとの付き合いは長い。と言っても昨日からだが。
肉体労働者が自分の体を使って働く事と同じでびんは自分の特殊能力を使って働いて来た。見世物にも
ならず一般人としてだ。
「そして・・私は・・炭を使って・・お水を綺麗にする事が出来ます。」
びんはそういうと傍にあったヤカンの中に入り込んだ。水中でも息をする事が可能らしく
水の中に入っても全く苦しい素振りは見せていない。びんが頭の上に乗せていた炭の力
だけではなく彼女自身の体から水を綺麗にする力が発せられているらしい。
「奇跡って実際に起こるもんなんだな。」
鞍馬は頭をかいていた。信憑性云々以前に目の前で起こってしまった事は現実として見るしかない。
何の仕掛けもなしに目の前の女の子は自分の体を小型化してみせたのである。
10数分後ヤカンの中の水は綺麗になったらしくびんはヤカンから這い出てきた。
「準備OKです。」
「びんちゃんと言ったね。美味しそうな水をありがとう。稽古の後の水は格別じゃからのう。」
朗らかな顔をして泉宗一郎がびんに語りかけた。
「どういたしまして。」
274 :
作者の都合により名無しです:2006/03/09(木) 20:49:17 ID:hDdqiBeH0
「いただきま〜す。」
「いただこうか。」
丹波と鞍馬が湯飲み茶碗に水を入れ飲み始める。
「プハーッ・・美味い!日本一の水だな!」
鞍馬がびんが綺麗にした水を飲んだ感想を述べる。
「うむ。合格点じゃな。満点じゃ。」
「美味いな。」
丹波と泉宗一郎も褒めた。びんはにっこり微笑んでいる。自分の仕事が褒められたので嬉しく思っているらしい。
「そうそう、びんちゃんの作った飯の材料は全部取れたてなんだぜ。」
鞍馬が言い終わる前に道場の戸がガラリと開いた。入り口には軍服を来た男が立っていた。
「失礼します。ここに“びんちょうタン”と呼ばれる女の子はいるでしょうか?」
鞍馬達は顔を見合わせた。あの男はびんを探している。恐らく軍人か何かのマニアだ。不審な臭いがする。
「ここに顔写真があるのですが・・・」
道場主であり家主でもある泉宗一郎が応対する。顔写真の少女とびんの背格好と顔は一致した。
「見かけた事はあるな・・・たしか男と旅をしていたと思うが・・・」
「そうですか・・・どこに向かっていきましたか?」
「確か・・ここから北の方に向かっていったと思うが。」
「あのさ・・・アンタラそのコをどうするわけ?見世物にしようとしてんの?」
鞍馬が唐突に口を挟んだ。帰ろうとしていた軍服の男が振り返った。丹波がジロリと
鞍馬を睨む。何も言わなければ男は帰る可能性が高いのだ。
「見世物ではない。保護を・・・」
「軍隊だか何だか知らないけどさ・・・そのコを保護するという口実で何かしようとしてるんだろ?」
鞍馬が数歩前に歩く。びんは泉宗一郎の後ろで丸まっている。顔を出さずに隠れている。
「まるで知っているみたいですね。」
「ちぃと恩があるんでね。俺の友達には指一本触れさせないぜ。」
「やむを得ないようですね・・・」
「チェィッ!」
鞍馬の飛び蹴りが軍服の男を襲った。
「グゥォッ!?」
腕でガードをして後ろに飛ぶ。衝撃を逃がしてダメージを減らす為だ。
「へぇ・・・やるじゃないか・・・」
「コール・ゲシュペンスト!!」
言葉が終わると同時に男の背中から黒い布の様なモノが放出され軍服を覆い始める。完全に体を覆う頃には
男の体は全身が黒い服で覆われており頭部の目の部分には横に赤いガラスの板が埋め込まれている。
「へっ、何を見ても驚かねぇよ。」
鞍馬は戦闘体勢に入り、組み技の構えを取った。人間対近代兵器の闘いの火蓋は今切って落とされようとしていた。
原作だとびんは小さくなれるんです。まぁ元ネタが備長炭なのであくまで「イメージ」と解釈しても
いいんですがね。「現実的に考えてそれは無いだろ?」とか「リアルじゃない。どこのファンタジー?」
とか思える人もいると思いますが・・・。炭を使ってするなら誰にだって出来るし雑用だけで
暮らしていける子供なんていないと思います。びんにだって彼女にしか出来ない事があるんです。
原作だと今の所「くぬぎタン」というキャラも小さくなれるらしいんですがね。
後フルメタの「ウィスパード」の謎も明かして欲しいですね。頭に知識が入っている理由とか
ニュータイプみたいに声が聞こえる理由とかも。
第7話終了しました。ゲシュペンストというスーツを着ている男の名は次出します。
ヒントは・・・・「ヒーロー戦記」か「スーパーロボット大戦オリジナルジェネレーション2」をやってみて
下さい。
乙乙。リアルタイムで読んでた。
なんか、最初は意外とほのぼのとした回だなーと思ってました。
前回のヒキで丹波とか鞍馬とか大暴れしそうだったんで。
でも、最後に不穏な雰囲気ですな。決戦の始まりですか。
鞍馬、本当にびんの保護者だなw
せっかくヒント出してくれたけど両方とも知らない…orz
278 :
作者の都合により名無しです:2006/03/09(木) 23:04:22 ID:1IWlXolG0
鞍馬原作と違って凄くナイスガイですねー
びんちゃんを守るナイトみたいだ。
原作でもこれくらいのキャラなら人気出るんですけどね。
ヒーロー戦記ってスーファミでしたっけ?
懐かしいなー。でも、あんまり記憶にないw
確か主人公がアムロとかだったような
フルメタ乙
竹宮流を習うびんの姿が想像できないw
まあ彼女はああ見えて鳥のタクシーから地面に落とされても無傷なくらい頑丈だけどw
意外と頭の備長炭を凄い武器に出来るのかもよ
281 :
作者の都合により名無しです:2006/03/10(金) 21:13:51 ID:z4g3Fvtt0
語ろうぜスレにVSさん来てたからそろそろ復活してくれそうだね
第8話 誤解
丁度昼下がりであった。鞍馬と黒い服に包まれた男が向かい合っている。
場所は竹宮流道場の前だ。さっき鞍馬が相手を玄関から叩き出したのだ。
「名を聞いておこうか。」
「私の名はギリアム=イェーガー。」
「俺も名乗っておくぜ。鞍馬彦一。」
二人の間に空間がある。しかし普通とは違う。何か歪んでいる。ムードとか雰囲気とか
そういったモノでは無くどこか歪んでいる。
「ハイテクに身を包んで天狗になってるんだな。」
「これは兵器です。一般人に使用すべき物ではありませんが・・・やむを得ませんね。」
鞍馬がじりじりと踏み出す。びんは入り口から出て見物している。泉宗一郎にしがみついて
離れない。びんには無縁の世界が繰り広げられていた。
(さぁて・・どうするか。)
相手は武装している。それも白兵戦における武装を。スリルはあるが危険も伴う。組み付くか。
倒したとしても下から攻撃されるかも知れない。相手だって事を荒立てるつもりはないだろう。
「やむを得ない」とは「最低限の攻撃を仕掛ける」という意味だとも取れる。
両者の間合いは一メートル半。踏み込めばギリギリで蹴りが当たる距離。
鞍馬は回りこむ為にギリアムの横へと移動した。ギリアムが腕を鞍馬へと向ける。
バシュッという音がして網が鞍馬目掛けて発射された。
283 :
作者の都合により名無しです:2006/03/10(金) 21:55:38 ID:r92s3e3A0
「ッ!?」
鞍馬は咄嗟に身をかわして網を避けた。そこにギリアムからのゴム弾連射が襲い掛かる。
「グッ!」
鞍馬は両腕でガードをする。ビシビシッと音がして腕に痛みが走る。だが相手は急所を狙ってはいない。
出力を下げているらしくBB弾を当てられた程度、いやエアーガン程度の痛みしか無い。
(要するに喧嘩だろ。コレ。)
格闘技と喧嘩は違う。格闘技の試合ならルールはあるし時間制限だってある。
喧嘩にはそれらが無い。ルールは自分達で決める場合もあるし無い場合もある。
相手が気絶するか戦闘不能になればその時終わる。
「ケッ!」
鞍馬が前転をする。虚を突かれたギリアムがゴム弾を撃つのをやめる。組み付かれた場合に対処する為である。
「タックルは読めている!」
ギリアムが膝蹴りを放つ。だが膝の先に鞍馬の顔はなかった。膝蹴りは鞍馬の肩を掠めただけで
鞍馬の右足の甲がギリアムの腕に直撃していた。
「ちっ!」
衝撃を吸収する素材で作られているらしくギリアム自体にはダメージが無いらしい。だが
先程網を発射したりゴム弾を放った装置は壊れて煙が出ている。鞍馬は前転からタックル
に行くと見せかけて蹴りを放ったのだ。相手の姿が一瞬視界から消えるので焦った敵の虚を付く
戦法だったのだ。
「ご自慢の装備は減っちまったねぇ。さっきのはジャブでしか無かったけどね。」
ハイテク兵器を前にして減らず口を叩く鞍馬に対してギリアムは顔をしかめた。
「保護を目的とするのに防衛という手段を使うのは好ましくないと思っていたのですが・・・。」
「まぁさっきのでアンタは軍人じゃなくて単なる銃器マニアって事になったね。」
鞍馬は得意そうに笑いながら構える。その目には自信があった。この相手に勝てる。今自分が
恐れている事態は船村弓彦に再度敗北する事。
「マーシャルアーツの達人であっても軍隊に勝てるとは思えません。」
「そりゃミサイルやら何やら使われたらヤバイだろうよ。でも俺はアンタに勝てる気がする。」
ギリアムが右腕を鞍馬に向ける。黒い服の腕の部分から何かが出て来た。プラスティックの棒だ。
ペイントボールという欧米にある遊びに使われるボールの代わりにプラスティックの棒を使う
と思えばいい。それなりに痛みはある。
「ふぅん・・・そう来るんだぁ。」
鞍馬が足元にあった石を手に取る。狙っているのか。目晦ましに使うのか。
「そんな瑣末な物など連射で破壊して見せます。」
「どうかな?俺はこう見えてもダーツは得意なんだぜ。」
まるで当たる事がわかっているかの様に鞍馬は言った。
ギリアムが腕からプラスティックの棒を発射する。発射装置は左腕にあった
ゴム弾発射装置と同じ位置、つまり右手首にある。だが当たらない。
掠めてすらいない。ギリアムは焦りを覚えていた。ロックオン機能は無いが
普通の人間には無理の筈だ。しかし現に相手は回避している。ある時は
前転し、ある時はジグザグに動く。まるで鼠の様に逃げ回っている。
連撃を行おうにも左腕の発射装置は破壊されている。追い込んでいるつもりなのに
こちらの方が不利な方向に追い込まれている気にすらなる。
不意にゴッという音がした。次の瞬間、ギリアムの着ている黒い服の右腕から
煙が上がった。左腕の武装発射装置に続いて右腕の装置も破壊されたのだ。
「バカなっ!?」
「言っただろう。“ダーツは得意だ”って。」
つまり。目の前にいる金髪の男はこちらが網を放った瞬間から作戦を実行に移していたのだ。
先手を打てば勝ちという戦闘の基本を根底から覆すような作戦を。だが最低限の装備しか
持ち合わせていない以上遠距離or中距離戦闘は行えない。つまり相手の土俵、近距離戦闘
を仕掛ける事になる。
「ゴム弾は銃弾、プラスティックの棒はミサイル。俺は銃弾防いでミサイル避けて
両方の砲台破壊したって事だよね。」
相手の言いたい事は察した。つまりかかって来い。白黒つけようぜという事だ。
「この服を着れば・・こういう事が出来るんですよ。」
ギリアムが足元の近くにあった石を拾って手に握る。数秒後、石は粉々に砕け散った。
ギリアムは単純に握っただけである。
「その服には筋力補助機能が付いているんだな。子供でも大人顔負けの力を得られるんだな。」
しかもギリアムが着ている黒い戦闘服には衝撃吸収機能が付いている。生半可な力では
ダメージ自体与えられない。掴まれても打たれても即座に勝負は付く。
鞍馬がゆっくりと歩く。緩急をつけて素早い攻撃を仕掛けるつもりだろう。
「はっ!」
先に動いたのがギリアムであった。パンチとキックを連続で繰り出していく。囮と本命を混ぜて
カウンターに対するカウンターを狙っているのだ。鞍馬はそれを全て避けている。回避だけに集中し
反撃やカウンターはしない。まるで相手の強さを見定めているかの様に。
(成る程・・・自分の欠点はこれにあったのか)
唯相手に当てる、或いは掴みに行く。ただそれだけだ。緩急も何も無い。だから避けられたり防がれたりする。
力の強弱はあれどワンパターンだ。あからさまな囮と本命。自分はその関節版を船村に対して
仕掛けていたのだ。あの時自分の動きは全て読まれていたのだ。
「しゅっ!」
鞍馬のセリフの直後ビシッという音がした。カウンターがギリアムの足の関節に当たったのだ。
そして鞍馬は連続コンボを放った。体中の関節に重く嵐の様な打撃が叩き込まれる。
「グッ!」
不利と取ったのかギリアムが距離を取った。左腕の関節部分と右膝の関節部分から煙が出ている。
「筋力補助機能の半分はイかれてりまったみたいだな。」
鞍馬が勝ち誇った様に言う。
「なぜ・・・・装置が関節部分にあるとわかった?」
「簡単さ。俺はプロレスラーだ。自分の体が相手に触れれば相手がどういう体の構造をしているかわかる。
闘ってる奴の方が周りの誰よりもワカっているんだ。」
ギリアムは歯軋りをした。ある程度の技術がある自分が最低限の装備しか持ってこなかったとは言え
一般人に負ける。そんな事があってはならない。
「そろそろ終わらせようぜ。びんちゃんに怖い思いさせたくないんでね。」
「いいだろう。受けろ!」
ギリアムは内部にある装置でスーツの出力を上げた。体当たりにいくつもりなのだ。片足の筋肉補助装置はまだ生きている。
ならば。
「うおぉぉぉ!!」
ギリアムが鞍馬に特攻する。フルパワーで片足で地面を蹴り、飛び掛るようにしてぶつかっていく。
それを鞍馬は笑みを浮かべながら右に避ける。何をしようというのか。鞍馬は避けると同時に
ギリアムの腕を取った。膝蹴りをギリアムの顎に当てる。衝撃吸収繊維で作られたスーツも顎の部分だけは
弱いらしくギリアムの頭が揺れた。意識はあるかどうかはわからない。だがこれで終わりでは無かった。
鞍馬が右足をギリアムの首に絡め、左足を相手の首の下に置いたのだ。これだけで関節は極められている。
「プロレスラー 鞍馬彦一 参 る 。」
両腕でギリアムの左腕を引っ張る鞍馬。膝蹴りから二秒もかかっていない。遂にギリアムの左腕は破壊された。
竹宮流 奥技 虎 王 完 成
厳密に言えば鞍馬は自分の技が「虎王」という技であるという事は知らないのだが丹波と堤の試合をビデオで見て
真似たのだ。ギリアムは気絶しているらしくピクリとも動かない。
「見事だ、鞍馬君。」
「いえ・・・丹波さんがやった事を真似ただけです。本家はもっと凄いんでしょうね。」
目の前に丹波に技を教えた張本人がいるとも知らずに返事を返す鞍馬に内心泉宗一郎はニコリとした。
この若者にも竹宮流の技を継ぐ素質がある。若い世代にバトンタッチをする時だ。
「あれ・・・?」
突然びんが声を上げた。鞍馬が声の方向を見ると一人の男がこちらを見ている。まだ少年の雰囲気が残っている。
年齢は高校生ぐらいだろうか。口をへの字に曲げたザンバラ髪の青年。それがつい先程からこちらを見ている。
「俺の名は相良宗介。“びんちょうタン”は狙われている。」
ギリアムの着ている物は「ゲシュペンスト」と呼ばれるパワードスーツなんです。
フルメタの「ボン太君」と似た物だと考えてもらえればOKです。スパロボに出てきたのは
ゲシュペンストと呼ばれるロボットで全く別物です。ASを人間サイズに出来たんだから
その逆をしたと思ってくれても結構です。
第8話終了しました。陰謀からアクションへってアクション映画の王道ですよね。
自分もそういう作品描けたらいいなぁ。
>>俺の名は相良宗介。“びんちょうタン”は狙われている
なにこのグラドス人ハーフw
ギリアムへたれちまったか・・・。本家でも好きなキャラだったんだが、残念。
289 :
作者の都合により名無しです:2006/03/11(土) 10:09:20 ID:q+UOP8bN0
鞍馬がちょっとキャラ違う気もするけど、
もう一方の主役として輝いてますね
ギリアムってキャラ、原作は知らないけどやたら余裕を見せて
最後に潰されるのはカマセのお約束ですなw
びんちゃんはただのほのぼのキャラではなかったのかw
>>289 原作(ヒーロー戦記)のギリアムは自分の身を省みずに子供を助けたり、最後は(ネタバレにつき伏せる)
だったりと美味しいキャラなんだけどな。
さらに言えばゲームキャラでありながら、自分の世界がゲーム世界であることに薄々気付いているという凄い人。
でもギリアムって、ぶっちゃけ実力の方はあんま大した事なくね?と、思ってしまうスパ厨の俺
つか、びんちょうタンってただのマスコットじゃなかったのかw
>>291 まあ確かに・・・戦闘能力そのものは高くないなw
293 :
作者の都合により名無しです:2006/03/11(土) 13:30:34 ID:nMfU2qBl0
フルメタルパニックとかスパロボとかは詳しくないので、
出来れば鞍馬主人公でこのままいって欲しいな。
あと、最近連投で好調ですね。
そろそろコテとか名乗ったらどうです?
古来、鬼となる人々はいた。
山に篭り、厳しい修行を経たものだけが手に入れることができた異形の存在。
古来、鬼と呼ばれる存在がいた。
人に害を与える神、強い敵、何か人を超えたもの、それらを称して鬼と呼んだ。
自分のぼろ小屋に戻った少年は腕の傷を舐めて、朝食の準備に取り掛かった。
右手でフライパンの上に卵を三つ割る、左手で持ったフライパンをすばやくふって混ぜる。
二往復すると卵は均等に混ざる。
コンロの火加減を調整し、左手に鉄の塊がぶら下がっているところをイメージする。
同時に右手でコーラをすばやく一振りし、大き目の瓶の上で逆さにして開ける。
炭酸を抜くためだ。
ーーー 一振りで抜けるようになるには少しコツがいるんだよな
そうして炭酸の抜けたコーラと焼きあがった卵焼きの横に付け合せの野菜と味噌汁。
普通の人には少し多目で高蛋白だが、少年にとっては少なすぎる量だ。
いつもならこれに肉が付く。
本来なら昨日買ってくるはずだったのだが、ちょっとした用事(いじめられっこの尻を引っぱたいたのだ)のために買うのを忘れてしまったのだ。
ーーー 買いに行かないといけないな、四日もすれば特売だから、今日は10キロくらい買えばそれまで持つか
先ほどまで少年が行っていたのは一種のイメージトレーニングだ。
類まれなる集中力と想像力よってシャドーボクシングの延長線上に完成した少年のそれは、痛みはおろかダメージすら肉体の上に再現する。
知っていることの確認ではなく新たな発見すら許すこのトレーニングは学者が新たな発見をするのと同様の作業を、高密度で行うことを可能にする。
知識は新たな知識を生み出すのだ。
ーーー ライオンにあんな体の翻し方ができるとは思わなかったな
最後の一口を食べ、気の抜けたコーラを飲み干す。
ーーー あいつは、親父はどうしているかな
同刻、東アフリカ、タンザニア共和国
「さあ、まだ始まったばかりだ。もっと分かり合おう。」
赤髪を逆立てた男が話しかけた、その目線の先にいるのは体長三メートルほどのブチハイエナだ。本来一メートルにも満たないはずのハイエナがこれほどの巨体を保つのは尋常なことではない。内臓も、骨格も、筋肉も、知能も他のハイエナとはまったく別物である。
だが、もはや新種というべきこのハイエナはおびえていた。
彼がいまだかつて彼に敵対しうる生き物に出会ったことは無かった。
ライオンなど彼にとってはえさに過ぎなかった。ただとって喰らう。それだけのことだった。
彼は圧倒的な捕食者だったのだ。
だが目の前の小さな生き物は自分から全ての生きる力を奪っていた。
腹が重い、骨がすかすかする。口の中にあふれる、自分の血の匂いは自分がもはや捕食者ではないこと、そして、もはや自分の体に生きる力など残されてはいないことを知る。
ハイエナは人の言葉など解さないが、それでも目の前の男の望むものは理解できた。
たたかえ。
男はそう言っている。
最後に男に向かって牙を突き立てること。それだけを目的とするように彼は生かされているのだ。
彼は男に向かって牙をむいた。
日本との時差、およそ六時間
うわぁ、書き込んでしまった。
お目汚しすみません。
もしよければ生暖かく見守ってください。
ーーーもう一度長老の所に報告に行くかな。あの時は何かとあわただしかったしな
長老というのは少年が嘗て修行していたとき、その根元で瞑想した大樹のことである。
樹齢数百年を超えるであろう巨木は少年の原点なのだ。
思い立ったらすぐ行動である。少年はシャツを脱ぎ着替え始めた。
彼の全身を覆うまるで鉄片を叩き込んだような筋肉が姿をあらわす。
少年の名は範馬刃牙。17歳の高校生、そして地下格闘技場現チャンピオンである。
長老があるのは富士の樹海・青木ヶ原である。
途中までは交通手段が無いことも無いが、刃牙は走る。トレーニングという目的よりは、その方が彼にとって自然であるからだ。
彼にとって自分の肉体こそが信仰の対象なのだ。
交通量の多い道を避けるような真似はせず、赤信号でも止まらない。車が高速で行きかう交差点でも躊躇無く渡る。
しかし彼が車の通行を妨げるようなことはほとんどない。
彼はただ真っ直ぐに車の流れの中に入る。不思議なことにたいていの車の運転手は刃牙の姿に気づきさえしない。
稀に気が付いても既に彼は道の反対側に抜けている。
「あぶねえじゃねぇか」
と怒鳴り声を上げたタクシー運転手は、振り上げた拳のおろしどころがわからずに思わず顔を赤らめた。
走りながら刃牙は昨日、尻を叩いたいじめられっこの前で見せたシャドウのことを思い出していた。
カマキリとの戦い。
人間以上のサイズを持つカマキリをイメージして戦った。カマキリの持つ能力をそのまま人間サイズにまで拡大した化け物とである。
結果は辛勝。刃牙はカマキリの外骨格の隙間を狙うことで勝利を収めた。
得たものはあった、だが同時にある疑問が彼の頭に浮かんではなれない。
ーーー 親父なら、範馬勇次郎ならどうだったろう
地上最強の生物と呼ばれる彼の父勇次郎があのカマキリと戦っていたらどうなっていただろうか。
彼の脳裏に浮かんだ光景は、正面からカマキリの鎧を蹴り砕き、拳で貫く勇次郎の姿であった。
ーーー っっっ!
走るリズムがわずかに乱れる。
駄目だ。勝てない。一矢報いることさえできない。
いつしか、勇次郎に破壊されるカマキリの姿は刃牙自身と重なっていた。無残に蹂躙された餌の姿。
ーーー いや、勝てる勝てないじゃなくて。そういうことじゃなしに挑むんだったな
死すら覚悟して。
気が付くともう樹海の縁まで来ていた。長老があるのはかなり奥のほうである。
ーーー さて、挨拶してくるか
樹海に足を踏み入れた刃牙はある種の違和感を覚えた。何かが違う、雰囲気がおかしい。
それだけではなく。木陰に、岩陰に、頭上に、何かがいるような気がする。
ーーー 見られている?
気を沈めて、気配を探るが誰もいない。何よりこの見られているような感じは人に見られているようなものではない。
ーーー 何か回りの森全体に見られているような
馬鹿馬鹿しい、と彼は思った。何が出てくるわけでもなく、また何が出てきても刃牙に勝てはしない。
人類で彼に敵いうるものなど、もはや片手の指が余るほどしかいないのだ。
野生動物にしても、4年も前に飛騨の魔猿、夜叉猿を倒した彼にしてみれば恐れる相手などではないのだ。
あの巨大カマキリが現実にいれば話は別であろうが、いない故にイメージしたのだから。
飲村一茶 は東京住まいの会社員である。
ハッタリ屋な上に少々気が弱く、会社になじめずにいた。
周りの人間が皆成長していく中で、取り残された自分に限界を感じていた。
もう周りのインフレについていけなくなったのだ。
三日前も「足元がお留守」としかられおちこんでいたところである。
「名前が悪いのかなぁ」
あらぬところに文句を付け始めるほどに彼は落ち込んでいた。
そんな折に彼は不思議な、まるで彼を呼んでいるような声を聞いた。暖かい声だった。
そして彼は今樹海にいる。
ーーー この崖の下に行かないと
一茶はそう思った。
刃牙が一茶を見つけたのは崖から80mほど離れたところからであった。
ーーー あの人がさっきの違和感の正体? いや、まさかな。
刃牙から見た一茶の様子は明らかにおかしかった、フラフラと精細が無い。
まるで何かに操られているような歩き方だ。自殺志願者が樹海に来る話は刃牙も聞いたことがある。
疲れ果てている人間なら動きに精細が無いかもしれない。
ーーー どうしたもんだろう、放っておいてもいいもんかな
自分の人生は自分で決めればいいと思うが、それを理由に人を見捨てるほど刃牙の心は凍り付いてはいない。
何より自分が死を覚悟しているときに、覚悟も無く死のうとするような考え方が許せなかった。
刃牙は一茶が急に崖を降り始めたのを見た。飛び降りようとしているようには見えない。
常人が落ちても死ぬような高さではない。普通の人が落ちると、適度に骨を折って動けなくなり、助けがこなければ飢えて死ぬ程度の高さだ。
ーーー 何をしているのか知らないけど
とりあえず自殺は止めるように謂うことにした。自殺ではないならよし、本当に自殺しようとしているなら一言謂わずにはおれない。
話すことなどない、けれどいじめられっこの少年の時のように尻を引っぱたくのだ。
ーーー それでも死ぬんだっていうのなら、それは彼が自分で決めることだ。 それにしても・・・
一茶の歩き方はフラフラしていて、それでもなおどこかに向かっているような歩き方である。
その向かう先が崖下にある洞穴であるのに刃牙が気づいたのはもう一茶が崖を降りきろうというときだ。
刃牙は一茶の20mほどの所に迫っていた。
ーーー 何かいる
一茶が洞穴に一歩足を踏み入れたとき、刃牙と一茶は同時に感じた。
「そこから離れろ! 早くッッ!」
刃牙の叫び声に我に返った一茶は驚いて右に飛んだ。そして一茶がいた場所を巨大な何かが凄まじい速度で通り過ぎた。
腰を抜かして四つんばいで逃げ出す一茶。そしてそれを追うように洞穴から姿をあらわしたのは
カマキリだった。
今日はこんだけです、他の職人さんと比べて見苦しい文スマソ
いえいえいお疲れ様です。
久しぶりのバキ物の新連載なので楽しみにしてますよ。
もはや原作は完全に笑えないギャグになってしまいましたが
この作品はシリアスを貫いてほしいですね。
一茶ってキャラはオリキャラですが何か懐かしい匂いがするw
一行の長さを大体揃えてくれるとより読み易いかも。
305 :
作者の都合により名無しです:2006/03/11(土) 23:19:53 ID:nMfU2qBl0
新作お疲れ様です。連載して頂けるんですよね?
妄想蟷螂との死闘の後に出会った、謎の会社員と
それを追うカマキリ。不思議な出だしですね。
対勇次郎戦の前の刃牙の昂ぶりを書いてくれると嬉しいです。
頑張って、最後まで続けて下さいね。応援してます。
鬼と人とのワルツ作者さん、いらっしゃいです。
勇次郎との決戦前に何を思うバキ。そして、一茶とともに何と戦う?
リアルシャドーではなく、実在の大きなカマキリ相手のバトルでしょうか。
。の付け忘れとかーの多用とか、改行とか読みにくい点はありますけど、
とても楽しく読めたのでがんばってください。
全然関係ないけど
>飛騨の魔猿
魔猿ってからくりサーカスのクソ主人公を思い出すな。
誰かからくりSS書いてくれないかな。
307 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:01:57 ID:6ud0fhsz0
――――雲ひとつ無い晴天に、春が近い事を感じさせるような微風(そよかぜ)。
アトラスシティから遥か南にある『ロマス村』の周辺の丘で日向ぼっこしていた私は、
この気持ち良い陽気を存分に満喫していた。
「ふう・・・。気持ちよかったし、後はやる事だけやって村に戻ろうかな。」
一人そんな事を呟きながら、寝そべっていたせいで背中のマントについてしまった草を手で掃う。
そしてゆっくりとその場に立ち上がると、私は無意味な意気込みと共に今日のメインイベント
――――盗賊退治に身を乗り出していた!!
「火炎球(ファイアーボール)!!」
ずかああああああああっっん!!!
私の両手から放たれた人一人分ほどの大きさの火炎弾が、盗賊の住処を容赦なく吹き飛ばす!!
もちろん心根から善人の私だから、この呪文の威力も当然加減して放っている。
あ〜、なんて優しいんだ私は。
「な、なんだあ?誰だ!!こんなことあする奴は!!」
火炎球が炸裂する範囲に元から居なかったのか、盗賊の親分らしき人物が物凄い形相で私の方へ怒鳴りこんでくる。
盗賊の顔なんてみんな同じ顔をしているから一見では分からないが、私ぐらいの人間になると
その微妙な顔立ちに違いで、誰がこの盗賊の親分かぐらいは分かってしまう。
まあ、これも非常に濃い人生経験の賜物であろう。
「て、てめえかあ!!ここがこの辺りの盗賊団で最も勢いのある〜シルバーウルフ〜の
住処だと知っての行為かこらあ!!!」
「あ〜、別にそんなんじゃないの。唯単に春の陽気が私を呼んでたから。」
この盗賊たちの親分の言葉に、私は善人らしく真っ正直に答えてやる。
「な、なわに〜〜!!!てめえ!!魔道士かなんだか知らないがぶっ殺してやる!!
ほら!てめえらも何時までも伸びてないでさっさとでて来い!!」
私の正直な発言に何故か切れ始めるシルバーウルフの親分。
―――――まったく心が狭い奴である。
308 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:03:44 ID:6ud0fhsz0
まあ、心が狭くなければ盗賊なんかやってないか。
そして私がそんな心の狭い彼らの動向を優しく眺めていると、親分の一言で気を取り戻した部下達が、
何時の間にか私の周りを一斉に囲み始める。
「はっはっは〜〜!!これぞシルバーウルフ最大の秘技!!死のロンド!!
魔道士風情がこの俺様に楯突いたことを後悔させてやるぜ!!」
何故か誇らしげに技名を叫んでいるが、結局のところは唯の集団リンチである。
確かに普通の魔道士や戦士一人ならば、この一体多数の状況を打破するのは難しいだろう。
しかし今回は相手が悪い!!
そう、このシルバー・・・・、え〜と・・・。なんだっけ?
・・・。まあ、いいわ。ともかく雑魚盗賊団程度が私を囲んだくらいでどうにもならないのだ!
なぜなら・・・。
「魔風(ディム・ウィン)!!!」
盗賊の親分が一人威張っている間に唱えておいた呪文を、私は部下たちの視線が
親分の方へ向いている事を確認してから解き放つ!!
術者の周りに強風を生み出す事の出来るこの呪文は、多人数に囲まれた時や相手
との距離を取りたい時に使うには正にうってつけである。
だから、この囲まれた状況で一発この呪文を唱えれば・・・。
「な、なんだあ〜!!!」
威張り腐っていた親分に注意が向いていた盗賊部下Aは、私が唱えた呪文から生まれた強風によって、
容赦なく背後にあった巨木に体を叩きつけられる。
当然、私を囲んでいた盗賊たちも同じ末路を送っている様だ。
309 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:04:30 ID:6ud0fhsz0
「な、なんだ?そんな呪文、見た事も聞いたことも無いぞ!!」
先程の態度とは一転して、一人残った盗賊の親分は未知なる物を始めてみた時のような形相で怯え始める。
まあ、必勝すると踏んでいた秘技が一瞬にして破られてしまったのだから、怯えたりするのも無理は無いだろう。
それにしても、駆け出しの魔道士さえ発動させる事の出来る魔風を知らないとは・・。
私が聞いていた以上に、ここは田舎のようである。
ともかくこれ以上怯えさせても夢見悪いと判断した私は、ゆっくりといつもの台詞を言いながら、
この善意活動という盗賊退治を終わらす事にした。
――――そう!!この一撃で!!
「悪人に人権は無い!!だから労働の報酬として、あんたらが溜め込んだお宝を貰うわ!
炸弾陣(ディル・ブラント)!!!」
「じ、地面がああ〜〜!!!!!!!」
私が放った呪文により、地面ごと吹っ飛んだ親分は部下よりも豪快な悲鳴を上げながら
遥か北の方へ飛んで行く。
「ふっ、楽勝!!」
そして私は勝利のVサインを一人ですると、これからご対面するだろうお宝達に思いを馳せながら、
もう誰も居なくなった盗賊の住処にスキップして入って行くのだった。
310 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:05:18 ID:6ud0fhsz0
「それにしても・・・。しけてるわね・・・。田舎だから仕方が無いのかもしれないけど・・・。」
宿泊する村に帰ってきた早々、思わず私は不景気な声を上げてしまう。
日が落ち始めた夕方だから不景気な声を上げてしまうのも仕方が無いかもしれないが、
それにしてもショボイ稼ぎだ。
「あ〜あ。こりゃあ、善意の労働の報酬にはちょっと足りないわ。」
まあ、私がこんなにもやっきになって愚痴をこぼすのも仕方が無い。
なにしろ、私がせっかくの善意で(勝手に)退治してあげたというのに、
あの盗賊たちはなんと『金貨100枚にも満たない財産』しか持っていなかったのだから!!
一応、金貨100枚に満たないとは言っても普通の人ならば10回は遊んで暮らせる程度の収入なのだが・・。
――――やっぱり、そう思ってしまう。
なぜそう思うか?
それは旅や魔術を研究するという行為自体が、尋常じゃないほどお金を消費することだからだ。
研究に使う小瓶1つで金貨1000枚することはザラだし、旅をしている身分という以上、
戦闘のせいで磨り減ったショートソードなんかも一回買い換えるだけで意外とお金がかかってしまう。
―――――用は金がなければ出来ない事なのである。
しかし!!その程度で音をあげてしまっては、美少女にして天才魔道士であるリナ・インバースの名がすたる!!
あっ・・・。今、初めて自己紹介した気がした・・。まあ、いいか。
ともかく一般人から見れば旅や魔道の研究など、ただの道楽にしか見えないかもしれないが、
一応この社会が魔道で成り立っている以上、それを真っ向から否定する人は誰もいない。
かくゆう私もちゃんと理由があって旅をしているし、本格的に魔道の研究しているのもちゃんとした理由がある。
それはどういう理由かというと・・・・。
311 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:05:55 ID:6ud0fhsz0
「すいません〜〜〜。リナ・インバースさんのお部屋でしょうか?夕食の用意が出来ましたが。」
宿のオバちゃんのこの声で、私の思考が一瞬で切り替わる。
食事を作ってくれる人をないがしろにしたら人間失格であることはこの世の真理。
いまや『私が旅に出た理由』や『魔道を本格的に志した理由』なんぞどうでも良い。
そんな思考の元、盗賊退治でお腹もすいていた私はこのオバちゃんの声に釣られて颯爽と部屋を出るのだった。
312 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:07:21 ID:0qGKx19S0
食堂に下りると、いかにも美味しそうな匂いが私の嗅覚を刺激する。
きっと今日のメインディッシュはシチューだろう。
私はお腹がすいていた事も手伝って、子供のように小走りしながら食事の席に着いた。
「はい。これが今日のメインディッシュのコナキエビのシチューでございます。」
宿のおばちゃんはそう言うと、私が居るテーブルにシチューの入った大きなお皿を丁寧に置く。
「ではどうぞ。オカワリはいくらでもありますから。」
「あ、はい。ど〜も。では・・、いただきま〜〜す!!!」
―――――大きく開けた私の口の中にコナキエビとシチューの風味がやんわりと広がった。
それからというもの私はこのシチューを食べる食べる。
『美味い!!』という単語があるが、今回ばかりはその単語は使えない。
なぜなら『そんな三文字ごときの単語』では、この美味しさを表すのにふさわしくないからだ!!!
「おばちゃ〜〜〜ん!!おかわり〜〜〜!!」
「あらあら。お客さんは良く食べますね。嬉しいですわ。田舎の料理ですが、これほど喜んでいただいて。」
今日十杯目のおかわりに快く承諾してくださったおばちゃんは、私の差し出したお皿に並々とシチューを注ぐ。
「はい。どうぞ。まだありますからね。今日はお客さん以外には人はいませんから。どんどん食べてくださいね。」
そう言ったオバちゃんのご好意に甘えて、私は両頬が膨れるぐらいに口の中へシチューを注ぎ込む。
(にしても、おいしいわ・・・。ただの田舎料理だと思っていたけれども・・・。)
エビとシチューのハーモニーに幸せを感じながら、更にピッチを上げておかわりする私。
――――そして・・・、この十分後・・。
幸せを噛み締めながらシチューを食べていた私の頭の中に、ある疑問が急に浮かび始める。
(そういえばコナキエビって聞いた事ないな。エビって言うけどエビの食感じゃないし・・。)
そんな事を考えていた私の食道をコナキエビが大量に通る。
やっぱりいつも食べているエビとは違う感覚だ。
313 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:08:08 ID:0qGKx19S0
(う〜ん・・。気になる・・・。)
せっかく美味しく頂いているのに『コナキエビは何のエビか?』という『つまらない』疑問を持っただけで、
突如私の中に出現した言い様のない違和感が増大されていく。
これでは、せっかく美味なものを食べているのにまるで意味がない。
――――そこで私は宿のオバちゃんに、『コナキエビ』の正体について思い切って聞いてみる事にした。
「ねえ?オバちゃん?」
「ハイ?なんでしょうか?おかわりですか?」
私が食事中に声を掛ければ、『おかわり』の図式が出来上がってしまったのか、
宿のオバちゃんは何の疑いもなく私の元へシチューの鍋ごと持ってやってくる。
「すいませんね。これで最後なんですよ。・・・あれ?おかわりではないのですか?」
私の食べかけのお皿を見て、恥ずかしそうに台所に戻ろうとする宿のオバちゃん。
「あっ・・。違うんだけど、1つ聞きたいことがあって。」
「はい・・。なんでしょうか?」
突然の質問に、宿のオバちゃんは不思議そうな顔をしてこちらを見る。
「このコナキエビって、本物のエビなの?いや!まずいとかじゃなくて、エビの食感と違うように感じたものだから。」
「コナキエビのことですか?それは、エビではなくて山に生えているきのこですよ。この辺りの特産なんです。」
「えっ!!エビではなくキノコ?」
私はその事実に思わず大声を出す。
確かにエビではないと分かってはいたが、明らかにこの食感は普通のキノコではなかった。
「はい。一見、エビにも見えることからその名がついたのですが・・。あのう?お客様?どうかしましたか?」
宿のオバちゃんは、私の顔を見て心配そうな顔になる。
それもそのはず、私は今・・、震えているのだ。
―――――『エビに見えるキノコ・・。』このフレーズを聞いた時から・・・。
「あのう・・。具合でも・・?」
「えっ・・。いや、大丈夫です・・と言いたいところですが、ちょっと部屋に戻ってもいいですか?」
「あ、はい。何かあったら直ぐに呼んで下さいね。一応、薬も用意してありますので。」
心配してくれた宿のオバちゃんの顔は、まるで母親のように優しかった。
314 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:08:48 ID:0qGKx19S0
右へ左へふらつきながら自分の部屋に戻った私は、身を投げ出すようにベットに寝転がる。
ひとつ間違えて欲しくないのが、決して私は具合が悪いわけではない。
当然、病気もしていないしお腹がいっぱいになった訳ではない。
では何故あんなに言葉にしがたいほど美味しいシチューを残してまで部屋まで戻ってきたのか?
答えは―――――トラウマである。
別にシチューに問題があった訳ではない。
そう、エビ・・・。コナキエビ・・。つまり『エビに見えるキノコ・・。』
このフレーズと形状が私のトラウマ・・・、そして『私が旅に出た理由』や『魔道を本格的に志した理由』
の1つが急激に脳内で再生されたからだ。
「宿のオバちゃんの笑顔・・。似てたなあ〜。私の母さんに。」
しばらくして、少し落ち着いた私は見上げていた天井から視線を横にある今日の戦利品―――もとい善行の報酬へ視線を移す。
(今日の盗賊はずいぶん田舎者だったな・・・。別にどうでもいいけど。)
こんな気分になると、何故かいつもは覚えていない盗賊の親分の顔が頭の中でリフレインされる。
(それにしても、魔風(ディム・ウィン)を知らない悪人がいるなんて・・。本当に田舎に来たんだな。私。)
そんなことを考えながら、私は本当の田舎に来た実感をゆっくりと噛み締める。
よく考えたら宿のオバちゃんの服も都市部の方へ行ったらまずお目にかかれないもだったし、
今日出会った盗賊達の格好も余り見た事のない服装だった。
前にも言ったが、この『ロマス村』はアトラスシティという都市部から遥か南に位置する村。
私の故郷であるゼフィーリアから見ると、なんと実に国を5つも跨(また)いだ所にこの村はあるのだ。
考えれば考えるほど、私は自分が遠くに来た事を実感する。
そして・・・。
「思えば遠くに来たもんだわ・・。」
思わずそう呟いた私の目蓋の裏にゆっくりと郷里の情景が浮かんできた。
――――コナキエビがトラウマとなった原因である、『5年前に起こった故郷でのある出来事』と共に。
315 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:10:00 ID:0qGKx19S0
○月×日 ルナ姉ちゃんが風邪を引いた。
「おねえちゃん。風邪引いたの?」
風邪を引いた姉の部屋に、私は心配そうな顔つきで入る。
「リナ・・!!風邪がうつるから入ってきちゃダメでしょ!!」
せっかく心配してお見舞いに来てあげたのに、私が入るや否やルナ姉ちゃんはゆっくりと体を起すと、
渋い顔で私を追い出そうとする。
「やだ・・・・。だって、ルナ姉ちゃんに用があるんだもの。」
「・・・。なによ・・?」
いつもならそんな姉ちゃんの言葉に従うのだが、今日ばかりはちょっと引けない理由がある。
なぜなら今日のようなルナ姉ちゃんの状態を利用して、私をライバルとして認めてもらいたかったからだ。
―――――そう、ある魔法を使ってルナ姉ちゃんの病気を治すという行為で・・。
私にとって姉という存在は絶対的なもので、また人生をかけても超えたい壁であった。
なにしろルナ姉ちゃんは戦士と魔法使いが50人単位でもなかなか仕留められない
海に住む電撃竜(プラズマドラゴン)を、包丁一本で仕留めるくらいの強さの持ち主なのだから。
当然、そんなトンデモ姉ちゃんには多少の畏怖は感じていたのだが、それ以上には色々な事を特訓―――
もとい勉強をさせてもらったし、仲も良かった。
だから尚の事ライバルとして認めてもらいたかったし、感謝もされたかった。
私が魔法を勉強する『最初の』きっかけとなったのも、ルナ姉ちゃんに認めてもらいたい一心から派生したものだった。
「ねえちゃん・・・。風邪・・・、辛い?」
「だから早く部屋から出て・・・・・、えっ?」
いきなりの不躾な私の質問に、姉は面を食らったのか少し訝しげな表情を浮かべる。
「辛いって・・。そりゃあ・・、風邪ですもの。辛くないといったら嘘になるわ。」
「そう・・・。それじゃあね、私が治してあげようか?」
ルナ姉ちゃんの素直な言葉に、私は天使のような提案をする。
316 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:11:02 ID:0qGKx19S0
―――魔法で風邪を治す。―――――
一見、さも当然のような気もするだろうが、実は魔法では風邪を治すことは出来ない。
今の魔術の進み具合では、外傷は治せてもウイルスから引き起こされる細胞単位の治療は出来ないのだ。
いや、正確には少し言い方に語弊があるが、ともかく今の治療魔法では風邪や病気は直す事は出来ない。
では、風邪の人間に治療呪文を使うとどうなるのか?
それは・・。
「へえ〜。風邪って魔法で治るのね。それじゃあ・・。」
そんな魔法の事に関しては全くの素人のルナ姉ちゃんは、特に疑問に思うことなく、
私の提案をすんなり受け入れる。
あ〜。あの頃は若かった・・・。
いや・・、これから起こる事とそれ以後の私の事を考えると、何故かしんみりしてしまって・・。
ともかくルナ姉ちゃんの承諾も得た今、私を止めるものは誰も居なく、私は実の姉に向かって治療呪文をかける。
「治癒(リカバティ)!」
そう言った私の手のひらが優しく光、姉の胸囲を優しく包む。
「どう?お姉ちゃん?」
「・・・・。なんだか・・、更に具合が悪くなってきた気が・・。」
「へっ?」
先程も言ったが、本来治療魔法というのは『あくまで外傷を治す』もの。
決して風邪の人間にかけるものではない。
つまり、細胞を活発化させて治す治療魔法は風邪などの病気の類には最悪の相性なのだ。
まあ、私もその当時は『治癒を風邪を引いた人間に掛けるとどうなるか』は知らなかったし・・。
ドンマイという奴である。
でも・・、実際はそんな安易な言葉で片付けられる問題では済むはずがなく・・。
317 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:11:46 ID:+TI/xL6J0
「げほげほげほっ!!!!」
「お、お姉ちゃん?ど、どうして?治癒をかけたのに?」
突如、ルナ姉ちゃんは『肺炎』のように咳き込み始める。
普通ならばここで体でも支えて親を呼ぶのが妹というものであるが、姉に認めてもらいたい
一心で行なった行動が、こんな最悪の結果になってしまった事に私は呆然とその場に立ち尽くしてしまっていた。
――――数分後・・。
けっきょく異変に気付いた両親が、姉を病院に連れて行って事無きを得た。
それが事の顛末・・。
そして・・、これが私のトラウマの始まりだった。
318 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:12:21 ID:+TI/xL6J0
一週間後、驚異的な回復力で全開したルナ姉ちゃんが我が家に帰ってきた。
――だけど私はその事を知らなかった。
いつもだったら、”無知ゆえの事故を許すはずのない”ルナ姉ちゃんの元からさっさと逃げ出して
ほとぼりが冷めるのを待つのだが、ある事情により私はルナ姉ちゃんが帰って来ていることを知らなかった。
それはどんな事情かというと、私の家は商売をやっているので普通の家よりも大分大きい。
まあ、殆どが商品を収容するスペースで埋まっているんだけどね。
ともかく、その無駄に広い我が家のせいで『反応』が遅れた。
つまり『ルナ姉ちゃんが帰ってきた音』が聞こえなかったのだ。
『この場から逃げる為の反応』―――『ルナ姉ちゃんが帰ってくるのに気付く為の音』が・・・。
ゆっくりと『私の部屋』に足音が近づいてくる。
「あれ・・・?母ちゃんかな・・?」
私はルナ姉ちゃんが帰っていることに気付いていない為、迂闊に部屋のドアを開ける。
すると――――その刹那!!
「うわっ!!!」
なんと台所にあるはずの出刃包丁が、私の頬を浅くかすめる!!
私はビックリすると同時に包丁で襲い掛かってきた人物の方へ目を向けると、そこには・・・。
「あっ・・、お姉ちゃん・・。帰ってきてたんだ。はは・・。はははは・・・・。」
乾いた笑い・・。自分の顔が引きつっているのが分かる。
しかしルナ姉ちゃんは、そんな私のリアクションを無視して、今までに見たことの無いくらいの
笑顔でこちらに微笑んでくる。
まあ、偽りのない本物の笑顔なのだが・・、それが逆に怖い。
しかも無言だし・・。
そして私はそんなルナ姉ちゃんの笑顔を見て、本能的に『このままじゃ殺される!!』と思ったのか、
さっきまで居た部屋のドアを目にも止まらぬ速さで閉めて部屋の中に閉じこもる。
319 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:13:19 ID:+TI/xL6J0
当然、こんなドアなど気合と共に吹き飛ばされるのは目に見えているので、
部屋の窓から脱出しようと急いである呪文を唱え始める。
「浮遊術(レビテーション)!!」
私の口から力強く紡いだそれは、私の体を重力という鎖から外し宙へ浮かぶ事を許可する。
ルナ姉ちゃんから逃げる用に、この前覚えておいた術だ。
「さあ!!逃げるわ・・・。」
背中に冷たい感覚・・。
そのせいで私の思考が一瞬止まる。
「ねえ・・?何で逃げるの?久しぶりに愛しい妹の顔を見たのに・・・。」
―――(まさか・・。ドアを破った音すらしなかったのに!!)
そんな『死を匂わせる声を掛けられてやっと動き出した私の思考』が最初に選んだ行動は、
―――まるで油の切れたブリキのおもちゃのようにゆっくりと後ろに振り向く事だった。
邪気も殺気もない顔で、ルナ姉ちゃんは私に微笑みかけてくる。
「ねえ、リナ?」
「は、はい!!!なんでしょうか!!お姉さ・・。あっ!!」
窓から浮遊術で飛び立とうとしている時に声を掛けられたのが良かった。
反射的にルナ姉ちゃんの方へ向き直ったおかげで、私はバランスを崩して庭の方へ落ちていく!!
「わああああ〜〜!!って、浮遊術(レビテーション)を使ってるんだっけ。」
私は落下中に浮遊術を発動させていた事に気がつくと、急いで術を制御して空中を静止する。
そして、まだ私の部屋に居るはずのルナ姉ちゃんの方へ振り向くことなく、そのまま急いでその場から
離れようととりあえず北の方へ飛び立った!!
このまま地面に降りても空中を飛んでもあまり速度の面では変わらないのだが、
空中に居る方が流石のルナ姉ちゃんも追って来れないと思い、そのまま飛んでいく事にしたのだ。
「に、逃げ切れるかな?」
私は言い知れない不安と共に、ともかく町の北の方へ術を制御して飛んでいく。
たまに地上の方や前後を確認するが、ルナ姉ちゃんが追ってくる気配はない。
「ま、撒けたのかな?流石に空中までは追ってこないか・・。」
このときは思わず軽率な言葉を口にした。
しかしこの当時の私はまだ『駆け出しの魔道士』だったし、『人生経験』も浅かった。
だから、”地上と前後確認”だけで安心してしまったのだ。
320 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:15:05 ID:+TI/xL6J0
―――これから起こることから、ひとつ学んだ事がある。
追っ手から逃げるときは、自分の足元や前後を確認しただけでは甘い。
そう、もう一箇所ほど確認せねばはダメなのだ。
それが例え、自分の居る場所が空中だろうと・・。
「リ〜〜〜ナ〜〜〜!何で逃げるの〜。お姉ちゃんが帰ってきたのよ〜〜!!!」
私はこの上から・・・、空中に居るはずの私の上から聞こえる言葉にとっさに上を向き・・、心底肝が冷える。
なんと我が家の長女が!!(私の方が妹だけど)
町のレストランでウェイトレスしていて、周りからは『おしとやか』だと言われている我が姉が!!
空中から降って来たのだ!!―――明らかに100m程の空中から・・。
「ひ、ひえ!!お、お姉ちゃん!?」
私はその人外な光景に、思わず浮遊術を解除し火炎球(ファイヤーボール)の詠唱に入る。
当然、空中で浮遊術(レビテーション)を解除したのだから、私の体は地上に向かってまっさかさまに落ちていく。
しかしその点は心配ない。
ちゃんと下が『川』だという事は、先程の前後確認の時に了承済みだ。
――――そして呪文を唱え終わる頃、私はちょうど川の中に落ちていた。
ばっちゃああ〜〜ん!!
巻き起こる水しぶきに少し視界が悪くなるが、人間一人を補足するには十分な視界。
上を見上げれば先程から全く変わらぬ笑顔のルナ姉ちゃんが、物凄い速さでこちらへ落下してくる。
(風邪を悪化までさせて、火炎球を直撃させようとしているのは悪いという事は分かる!!でも!!)
私は決意を秘めた目で空中からを落ちてくる姉に向かって・・・、解き放った!!
「私はまだ死にたくない!!ゴメンね!火炎球(ファイヤーボール)!!」
私が力強く叫ぶと共に、風車ぐらいの大きさはあるであろう火炎弾が私の前からルナ姉ちゃんに向かって直進する!!
このまま行けば、私が放った火炎球はルナ姉ちゃんに直撃するはずだった――――が!!
321 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:15:47 ID:+TI/xL6J0
「フン!!甘いわよ!!リナ!!」
――――気合一閃!!
私の放った渾身の火炎球(ファイヤーボール)は、なんとルナ姉ちゃんの右腕の一振りで一気に塵と消える。
はあああ〜〜?化け物ですか貴方は?
しかし、そんなことに何時までも囚われている訳には行かない。
私は逃げる為の次の手を、町のほうへ戻る形に走りながら考える。
(どうする・・?そうだ!!)
次の手が閃いた私は、急いで高速で移動できる呪文を唱え始める。
その呪文の名は翔封界(レイ・ウイング)。
術自体の制御が非常に難しい為、殆ど使っている人のいない滅び行く運命に近いこの術。
しかしその分、移動スピードはすさまじく、そこら辺の馬よりも早く飛行する事が出来る。
元々は制御にワザと失敗してルナ姉ちゃんのウケを取る為に覚えた術だったが・・・、こんな所で役に立つとは・・。
人生って、本当にわからないものである。
「リナ〜!!なんでお姉ちゃんから逃げるの?ほら!!この包丁さんも、貴方とお話したいって言っているわよ。」
川の中から脱兎の勢いで逃げた私を追いながら、包丁の刃をちらつかせて話しかけてくるルナ姉ちゃん。
(包丁なんかと、仲良く話せるかああ〜〜!!)
彼女の言葉に内心そんな事を思っていたが、今は術を完成させるのが先。
私は『ルナ姉ちゃんの言葉を無視する形』で呪文を唱え続ける。
――――― それにしても、今となってはこの行動が命取りに思える。
いや、『普通の相手』ならば正解の行動なのだろうが、いま私が逃げようとしている相手が相手。
きちんと受け答えぐらいしていれば良かった・・。
本当に・・。
なぜなら、『呪文を唱えている』せいで『返事のすることの出来ない私の姿』が、ルナ姉ちゃんにとって、
『自分の言葉を無視している』と受け取られてしまったからだ!!
322 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:16:35 ID:fEFl+8Gn0
「あら・・・。無視ですの・・。は〜い・・・。リナ・・・。即刻死刑!!!」
「うぎゃああ〜〜!!姉ちゃんがキレタぁぁぁぁ〜〜〜!!!!!」
先程の穏やかそうな声とは打って変って、獣のような声に豹変したルナ姉ちゃんの声。
これは確実にマジ切れしたときの声だ。
私はこの声のあまりの恐ろしさに呪文の詠唱をやめてしまう。
「リナ〜〜!!死にサラさえぇぇぇぇ〜!!!」
ルナ姉ちゃんはそう言ったと同時に、地面を思いっきり蹴ってこちらへダッシュしてくる。
無論、右手に持った包丁を物凄い勢いで振り回しながら・・。
「げっ!!お、追いつかれる!?」
そして一時は20mはあった私とルナ姉ちゃんとの距離も、本気になった彼女は一瞬で『0』にしてくる。
その速さは正に人外。
今のルナ姉ちゃんならば、ケンタウルスとかけっこしても鼻歌交じりで勝てそうだ。
どうでもいいが、ケンタウルスとは馬の人獣版のような獣だ。
「さあ〜!追いついたわよ〜〜!!」
ルナ姉ちゃん声が直ぐ後ろから聞こえる。
おそらく3mも離れていないのだろう、どちらにしても数秒後には私の背中に包丁が刺さっているかもしれない。
つまり・・、考えている時間も無いのだ!!!
(ヤバイ!!マジで殺される!!)
私は『冷たい死の臭い』から逃れる為に、決死の覚悟で『詠唱途中』の翔封界(レイ・ウイング)を発動させる!
「え〜い!!女は度胸だ!!翔封界(レイ・ウイング)!!!」
ある意味、私の全てを賭けた翔封界。
この当時の私自身も完璧に制御できないこの術を、未完成の状態で発動させるとは・・。
全く私も若かったものである。
ともかく私がその言葉を強く唱えると、私の周りに薄い風の膜が張られ始める。
どうやら少々のスペルが欠けても、重要部分を唱えていたおかげで発動したようである。
しかし、そんな喜びも本当につかの間。
翔封界が発動するのを見るや否や、ルナ姉ちゃんはまるで獣の首を取るか如く私に向かって飛び掛ってくる。
「グッバイ!マイシスター!!永久に〜〜!!!!」
323 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:17:09 ID:fEFl+8Gn0
―――万事休すか?
私の嗅覚に先程よりもはっきりと『死の臭い』が香ってくる。
発動できたのは良かったが、発動しきる時間までは一秒以上かかるとは・・。
やはり未完成版のせいであろう。
私はこのとき、本当に自分の生を諦めた・・・・。
――――だが!!
私の周りを完璧に覆った風の膜は、なんと飛び掛ってきたルナ姉ちゃんを優しく弾く!!
「なんと!!」
思わず歓喜と驚きの混じった声が出てしまう私。
確かに『完成版の翔封界(レイ・ウイング)』も人を弾く事が出来るが、それはあくまでも棒立ちしている人間程度だ。
飛び掛ってくる人間を弾くほどの強度はない。
考えられる要因は、やはり詠唱を中途半端に止めた事から来るだろうが・・・。
ええい!!今はともかく逃げるのが先決である!!
私は突如起きた幸運や『詠唱途中の為に起きた思わぬ現象』を考えている暇もなく、急いで北にある町の方へ逃げるのだった。
324 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:17:51 ID:fEFl+8Gn0
――― 十分後・・。
それにしても翔封界(レイ・ウイング)は早い早い。
翔封界から発生した風の膜により命を救われた私は、すでに自分が住む町の門が見えるまでにさしかかっていた。
「いやあ〜〜、助かったわ・・。とりあえず母ちゃんや父ちゃんを盾に取れば、なんとか助かるだろうし・・。」
そう言って私は翔封界(レイ・ウイング)を解除しようとする。
「あれ・・?」
思わず声上げてしまう私。
「解除・・・、出来ない?」
いくら解除しようとしても、翔封界(レイ・ウイング)は何故か解除できない。
おそらくこの原因も、詠唱途中で発動させてしまった事から来るのだろうが・・・。
「わあ〜〜!!リナちゃん!止まれ!!止まってくれえ〜〜!!!」
「あっ・・・。」
私がその声に気づいた時には既に遅し、私を包んでいる風の膜は盛大に町の人を吹っ飛ばしていた!!
(ゴメン!!隣のおじちゃん!!)
翔封界で出来た風の膜の中で、私は思わず拝むポーズする。
まあ、別に死んではいないだろうが・・。
「にしても・・。どうするか・・・。」
私は翔封界で出来た風の膜の中で、腕を組んで一応考え始める。
そして数秒、最初に出た私の考えは・・・。
「そうだ!!解除は出来なくても、コントロールは出来るかも!」
先程までは死と隣りあわせだった事もあり、あまり開店していなかった私の頭はここにきてやっと回転し始めたようだ。
「ようし早速・・・。あ・・・・。はは・・。はは・・・。あははははは・・・。」
もう、結果は言わなくても分かるだろう・・。
―――私は最早笑うことしか出来なかった。
『いや〜、それにしても!!皆さんも呪文は最後まで唱えてから発動させましょうね!!』
そして、当時大人気だった魔法のマホ子ちゃんが私の頭の中で駆け巡った次の瞬間・・・。
私は『八百屋さん』の倉庫へ盛大に突撃していた。
325 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:18:50 ID:fEFl+8Gn0
―――― 一体どれほど気を失っていたのだろうか?
私が次に目を覚ました時は真っ暗な視界の中だった。
(うっ・・・。野菜臭い・・・。)
恐らく私は沢山の野菜達に埋もれているのだろう。
最後に記憶のある光景が、八百屋さんの倉庫だったし。
(それにしても、八百屋のオッちゃんには悪いことしたな・・・。)
いくら魔法の制御が効かなかったとはいえ、自分の発動させた魔法で迷惑をかけてしまったことは事実。
私は沢山の野菜に埋められているのが自らに課せられた罰だと思って、助けが来るのを静かに待つことにした。
―――数分後・・。
見慣れた声が聞こえる。
低く汚いだみ声・・。おそらく八百屋のオッちゃんだろう。
どうやら私を助けに来てくれたようだ。
ありがとうオッちゃん!!アンタは良い人だ!!
そしてその次に聞こえてくる声・・。
これは聞き慣れない声だ。
いや、違う。聞き慣れているかもしれないが、その声の持ち主を思い出すのを、私の脳細胞が拒否をしているようだ。
う〜ん・・。それにしても、『おしとやかな』口調だ・・。
(やっぱり聞き覚えがないかな?)
私の脳内でそう決定ずけようとした時!!
八百屋のおっちゃんと、その次に入ってきたおしとやかな声の持ち主の会話がはっきりと聞こえてきた。
「いや〜!すまないね!!助かるぜ!!」
「いえいえ。妹の不始末は私の不始末ですわ。それに・・・、ちょっと妹には重大な用事がありますし。」
おしとやかな声の持ち主にはどうやら妹がいるらしい・・。
う〜む、一体誰なのか・・?
ん?いや、まてよ・・。今ここにいる二人は、私を助けに来てくれている。
しかも、おしとやかな声の人は「妹の不始末は姉の不始末」と言っている。
すると・・・、そこから導き出せる答えは・・・。
326 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:20:23 ID:fEFl+8Gn0
「あはははははは・・・・。」
思わず乾いた笑いを口にしてしまう私。
どうやらこの声に私を助けに来てくれた二人も気付いたようだ。
「おっ!!リナちゃん気付いたのか!!今助けてやるぜ!!よっしゃ!!ルナちゃん!!いっちょ手伝ってくれ!!」
「はい。じゃあ、リナ。あんまり動いたら寿命が縮まるわよ。」
―――あああああああああああああああああ〜〜!!やっぱりルナ姉ちゃんかぁ〜〜〜!!
私は信じたくなかったその存在を認識すると、早く逃げようと体を高速にねじり始める。
本当は火炎球(ファイヤーボール)でも唱えて逃げたかったが、さすがに八百屋のオッちゃん
を巻き込むわけにはいかない。
そのせいで体をねじって逃げることになっているのだが・・・。
やっぱり無駄の足掻きだったようである。
数分後・・。私は見事にルナ姉ちゃんに救助されていた・・。
野菜の山から・・。
はあ・・、こんな事なら北ではなくて南に逃げるんだった・・・。
あ、そうそう、八百屋のオッちゃんは、私が見つかるや否や売り場に戻っていってしまった事をここに記しておこう。
まったく薄情な奴である。
327 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:21:25 ID:Yd64sYFr0
「さあて・・。リナ?一体どうしてやろうかしら?」
「ひええええ〜〜〜。」
流石にさっきまでの『マジ切れモード』は解除されているようだが、ルナ姉ちゃんは私を追いかけ始めたときと
同じような笑顔でこちらを見つめてくる。
「う〜〜ん。でもさすがそこまで鬼じゃないわよ。私は。」
嘘をつけ。嘘を。
修行と称して毒見の特訓をさせる姉など、一体この世のどこにいるというのだ。
「そうねえ〜〜。そうだ!!せっかくここは八百屋なわけだし・・。」
そう言ってルナ姉ちゃんは怯える私の首根っこを掴みながら、倉庫の中をゆっくり歩きはじめる。
そして、私のせいで散らばった野菜達をみつめて何かを探している素振りを見せる。
「あ、あの・・。お姉ちゃん・・。」
私は勇気を出してルナ姉ちゃんに話しかける。
これから起こるであろう悲惨な私の末路の前に、ひとこと言っておきたかったことがあるからだ。
「なあに?リナ?」
見つめ返すその顔は、やはり無表情の笑顔・・。
再度間近に見たその顔に、私の決心が一気に揺らぐ!!
しかし、ここで言わなければ一生後悔する!!
だから・・。勇気を出して・・、私は言った・・・。
「る、ルナお姉ちゃん・・。ご、ごめんなさい・・。
その・・、てっきり治癒(リカバディ)で風邪が治ると思ってて・・。その・・・。
ごめんなさい・・・・。」
そんな私の謝罪の言葉を聞いたルナ姉ちゃんが次の台詞を言うまで、確か数秒ぐらいだっただろうか?
それでも私には、何時間・・・。いや、何年にも感じた。
そしてゆっくりと感じる時の中、私は確かに見た。
ルナ姉ちゃんの目が、ゆっくりと本当の姉らしい優しい目になっていくのを。
「リナ・・。ごめんなさいね・・。お姉ちゃんがしっかり貴方の意見を聞かないで怒ってしまって・・。
そんな風に思っていたなんて知らなかったわ・・。こちらの方こそごめんなさいね・・。リナ・・・。」
私はこの姉の言葉を聞いて決心する。
生涯をかけてこの人を超えようと。その為には姉には出来ない『魔道の勉強をもっとしよう』と。
328 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:22:04 ID:Yd64sYFr0
――――だから・・・。
「ルナお姉ちゃん・・。私!!」
「そうね・・。お姉ちゃんも悪かったから、今日は軽めのお仕置きで済ませましょうね。」
「はいぃぃぃぃぃぃぃ〜〜?」
「あら〜〜。そんなに喜ばなくても〜♪まあ、好きな人は好きな属性だろうし。」
「いや違うって、姉上様。
普通はそこで仲良く手をつないでってもんが世の定めじゃ・・。」
私は必死にルナ姉ちゃんの考え方に否定を出すが、時既に遅し・・。
必死に弁論する私を余所に、ルナ姉ちゃんは地面に散らばっている『見たことも無い何か』を満面の笑顔で取り上げる。
「じゃあ、これでおあいこね。はい、リナ。お食べ。」
そう言ってルナ姉ちゃんは、私の口の中に無理やり『見たことも無い何か』を突っ込む!!
(え、『エビ』・・・・?)
口に入れられた『見たことも無いそれ』は、確かに『エビ』に見えた。
(くそう!!絶対、『大きくなったら旅に出て見返してやる〜〜!!!』)
『エビ』らしき物体を無理やり食わされた私は、噛む度に出てくる余りにも臭い汁のおかげで拷問に近い形で
意識を失っていったのだった。
――――それにしても・・・、この『エビ』・・、腐ってないか?
329 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:23:32 ID:Yd64sYFr0
「ああ・・・。やっぱりあの時のエビだったのね・・・。今日のキノコ・・。
それに、このキノコ・・。『私が旅に出る理由』や『魔道を本格的に志す理由』の『1つのきっかけ』になってたのか・・。
いま分かったわ・・。おそろしや・・・・。」
昔のことを”思い出し終えた”私は、すっかり闇に包まれた天井を見つめながら一人そう呟いた。
心の奥底に閉じ込めていたトラウマ。―――――――エビの形をしたキノコ。
あの当時は『腐ったエビ』を『口に入れられた』記憶しかなかったが、宿のオバちゃんの言葉で全てを思い出した。
そして『私が旅に出ることになったのか?』や『魔道を何故本格的に志したのか?』という記憶さえ・・・。
まさか『田舎に来たこと』を実感しただけで、『トラウマ』と『今の自分の原点』を思い出せるとは
思わなかったが、たまにはこういうのも良いもんだ。
『コナキエビ』を食べて理解した事で、なんだかトラウマを乗り越えられた気がするし。
「ふう・・。寝るか・・・・。」
無駄に色々遭った今日の出来事に感謝しながら、私は『故郷ではお目にかかれないような綺麗な星空』
を眺めながらゆっくりと眠りについた。
―――――本当に遠くに来たものである。
330 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:32:52 ID:Yd64sYFr0
長くなってしまったのは申し訳ないです。どうもしぇきです。
スレイヤーズを知っていない人でも、読めるように魔法の解説を入れてみましたが、
どのような魔法かを分かっていただければ幸いです。
次はオーガを更新します。
>ハイデッカさん
おお!!この国でもやはり慶次の心が伝わるですね。
やはり漢は万国共通か!!
>銀案丸さん
凄い心理描写ですね。汚い花火と言われたキュイと比べれば、
素晴らしいネタにされたカノンは幸せものですね。
>サマサさん
あ、アイビスが当たった!!覚醒アイビスも茶々を入れてくれると面白いが、
個人的な次の予想は、遊園地が割れて○イジンオーみたなロボットが出現。
そして、ドラたちのロボットが合体して・・。それは無いか・・。
331 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/12(日) 05:46:12 ID:Yd64sYFr0
>邪神さん
そこで必殺のクロスカウンターでしょうか?
ノエルほどのカウンター使い(ゲーム内)ならば、究極奥義も
全てカウンターで?
>ふら〜りさん
え〜!!正露丸でカーズを?
まあ、パタリロですから。どうにかしてくれるでしょう。
そういえば、カーズに核は効くんですかね?
>フルメタルウルフズさん
さすがにプラスチック弾やゴム弾ですよね。
一瞬、ニュートロンビームを跳ね返すびんを創造したのは間違いでした。
そしてやっと宗介の登場。ミスリルの仕事でしょうか?
それにしても、びんを狙っているとは・・。備長炭がAS以上の脅威に?
>鬼と人のワルツ
始めまして。
食事などの小ネタも面白いですね。
よく考えたら防御が弱い蟷螂を倒しても、全てがMAXの位置にある
勇次郎には遠く及びませんよね。本当にどうやって倒すのだろう。
漫画と違った熱い展開を期待しております!!
しぇきさん乙です。
スレイヤーズの世界としぇきさんの文体は合いますね。
172から
周囲の雑踏を置き去りにして、その席だけが無音の悲痛に包まれる。
信じられない物を見る様な眼で、イヴはスヴェンに見入った。だが当の本人は、瞳の力を寸分たりとも揺るがせない。
「な…なんで?」
「これから先は取り分け過酷になる。星の使徒共とやり合うのに、足手纏いは要らない」
何処までも冷たく、そして辛辣だった。
「……どう、して…?」
「お前は絶対に死ぬ。そうと判り切った奴を、どうして連れて行ける?」
岩壁の如く、堅く重厚なる拒絶。イヴの言い分を一切無視するつもりでスヴェンは言い切った。
その視線に耐え切れなくなったのか、イヴは視線を地面へと落とす。
「……ない…」
「?」
彼女の力無い呟きに首を傾げる。と、
「……そんな事、無い!!」
上げた彼女の眼には滂沱の涙、そして怒り。一旦主張を定めた以上、こうなると梃子でも動かないのがいつものイヴだ。
「足手纏いにならない、絶対に死なない……だから、だから…置いてかないで!」
スヴェンに縋り付いて訴える様は、誰が見ても至上の悲哀に囚われる。スヴェンが言わなければ言っていた筈のトレインですら、
自身への言葉でなくとも直視に耐えなかった。
―――しかし、スヴェンは違う。
「それは言葉だ。現実の前には何の意味も無い。お前じゃ絶対に、無理だ」
「ちょっと……ねえ、もういいでしょ!? 止めなさいよ、スヴェン!!」
聞くのも辛いリンスが、遂に割り込んだ。
先刻まで――…否、今も楽しい祭りの渦中だと言うのに、この言葉は興醒めどころでは無い。痛烈だ。
「やだ……嫌だ…どうして……? 嫌いなの、スヴェン……」
飽くまで冷酷な断言に、イヴの頑固も崩されつつあった。
初めて見る、怒っている訳でもなければ悲しんでいる訳でもない、冷たいスヴェン。それがどんな物より恐ろしかった。
「嫌いとかじゃない、連れて行けないだけだ。戦力にならん、お前は」
あの憎しみ重なるセフィリアの時ですら、もう少し言葉に温度があった。
最早冷たいを通り越して鋭い舌鋒が、彼女の胸を深々と抉る。心の防壁を突き崩して行く様に。
「止めて…お願い……もう止めて、連れてって………お願い、だから…」
もう瞳に涙以外の力は無い。唇も空しい懇願を紡ぐので精一杯の有り様だ。
だが次のスヴェンの行動は、それすらも封じた。
自前の銃を取り出して、イヴに示した。
瞬時に彼女は凍り付く。彼女にとって、苦痛と恐怖を与える象徴でしかないそれに対して。
「これがお前の限界だ。イヴ」
カサ付くほどに渇き切った声で、銃を収める。
――――――――もう、反論など出来る訳が無かった。
押し退ける様に席を立ち、無言で彼女は雑踏に走り去る。その後を、光る雫が尾を引いた。
「イヴちゃん!」
リンスが叫んでも聞かず、少女はそのまま雑踏へと消えた。
「お姉ちゃん!!」
呆気に取られた数秒遅れでシンディが飛び出す――――…が、その手をマリアが捕まえた。
「駄目よシンディ、行っては」
「……ママ、知ってたんでしょ。おじちゃんがこう言うこと言うの」
顔を見ようともせず、彼女はマリアに怒りを浴びせた。
「…ええ。でも、あなたも大人になればきっと判る時が……」
「子供だもん! お姉ちゃんもあたしも、まだ子供だもん!! だから大人のつごうなんてわかんないもん!!!」
子供らしい我侭に見えて、その実的を射た台詞だった。
「……嫌い…」
そう呟いて振り向いたシンディの貌は、イヴの代わりに怒っていた。そして、泣いていた。
「…嫌い、嫌い、大っ嫌い!! おじちゃんもママもだいっ嫌い!! もうあたしに話しかけないで!!!」
そのまま一気にマリアの手を振り切って、イヴを追って人の波に飲み込まれた。
「シンディ!!」
マリアの制止など、彼女は当然聞いていなかった。
「……マリア、二人を頼む」
ほとほと疲れた、とでも言いたげにスヴェンはマリアに告げる。彼女もまた、うんざり加減に二人が走り去った方へと歩いていった。
席に付こうとしたスヴェンの胸倉を、いきなり手が捕まえる。
それに引き寄せられた先は――――――…憤怒一色のリンスの貌。
「…アンタね……幾ら何でもやり方ってモンが有るでしょ!! 何よアレ、イヴちゃんの事何だと思ってんのよこのアホ野郎!!!
あの娘はね、アンタの事本気で……!!!」
「…それに気付かない様なら、紳士失格だ」
寧ろ自分に言い聞かせる様な、悲痛な音調。それは、覚悟の表れだった。
「俺を恨んでくれた方が、俺としては助かる。あの子がこんな奴に関わる事は、無いんだ」
傍で聞いていたトレインは、彼を読み違えていた事を確信する。優しさに酔うどころか、悲壮な決意を常に携えていたのだ。
―――…だが、流石にこれは言葉が過ぎる。
「だからと言って、これは…」
「…お前等、こんな噂を知ってるか?」
トレインの諫言を無視する形で突然神妙に切り出した。リンスもつい、と手を離す。
「換金の時小耳に挟んだんだがな………最近、腕のいい掃除屋が次々消えてるんだそうだ。
猟犬<Aレハンドロ、ダガー=ジョウ、黒い疾風<Eェイフォン、火薬庫(アーセナル)<hミニク……
どれも一流どころの掃除屋だ」
「…それが何だよ?」
「殺されたって言うなら、何処かで誰かの死体ぐらいは出る筈なのに、勿論無い。
中には仲間が賞金掛けて捜してるって言うのに、見え見えのガセばかりで有力な情報は一つとして入らない。
或る奴は酒場でやけに羽振りがいい所を偶然見つけたらしいんだが、一言二言話したらすぐに撒かれたそうだ」
徐々に空気に不穏な色が着いていくのを、二人は肌で感じた。
「…それって、自分で消えてるって事?」
スヴェンはかぶりを振って答えた。
「近いが違う。
聞いた分だけでの情報で言うなら…自分の意思と誰かの意思の半々ってところかな」
「誰かの意思」の下りで、トレインが忌々しげに舌打ちする。不快な形で察しが付いた証拠だ。間髪入れずに割って入る。
「クロノスか」
「恐らくは、な。例の道士狩りに掃除屋を使ってるんだろう。金さえ出せば下手な傭兵とかよりはきはき働いてくれる上に、
替えなんて世界中に居るからな」
元々がハイリスクハイリターンなら、仕事よりもアガリで請け負う人間は大勢居る。しかも多くの場合、遺族等が居ないか
少ないかなので、扱いはそれこそ自由自在。例え逆襲されて死のうが、星の使徒側へは充分牽制になる上、消耗した道士を
狩るなどクロノナンバーズでなくとも赤子の手だ。死体回収並びに始末の手際も、ギャンザの折に重々察している。
「―――でもな、スヴェン」
まるで短刀の如く、トレインの言葉が滑り込む。
「今それと、イヴの事に何の関係が有る?」
「大有りだ。
多分――――、直にナンバーズが接触及び交渉に来たのは、俺達以外に居ないと思う。しかもそれがNo1・2同時なんて、
まず有り得ない話だろうが。いちいち出て来るなんて、面倒な上に無意味だからな。
どう言う訳だか知らないし、興味も無いが、あの姐さんは俺達によっぽどゾッコンらしい」
とうに冷たくなったカプチーノを啜り、舌を湿す。
「なら、俺はあんなであの姐さんが俺達を諦めるとはこれっぽっちも思えない。
恐らく――、いや、絶対第二第三の余計事を持ちかけてくる筈だ。今度は、交渉どころか強制でな。
その時は、俺達の弱みを何かしら利用するに決まってる。今のイヴなんて、その格好の餌食だと思わないか?」
言い終えた後は、誰もが無言だった。聞けば聞くほどスヴェンの言葉には裏打ちが多すぎる。
「今は大丈夫だ。攫われない様にマリアを行かせたんだから。
元とは言えあれもISPOの捜査官だ、不意を突くのは結構難儀な話だぜ」
「……奥さんやシンディが捕まるとも限らねえんじゃねえか?」
憮然とトレインは言ったが、スヴェンは動じない。
「…もしそれをやったら、それはそれで俺にも考えが有る。お前等が心配する事じゃあない」
「アンタね、他人を何だと…!!」
「そう喚くな二人共。俺も置いて行こうとしたのがバレるぞ」
トレインは勿論、リンスの舌も一気に封じられる。
お前等、少しはしゃぎ過ぎだ。まるで、最後の別れを惜しんでるみたいじゃないか。
この際だから言って置くが――――、俺に隠し事なんて、悪いがお前等じゃ十年早い」
スヴェンの冷たく効かせた睨みに、リンスは視線を逸らす。しかし、トレインは別だ。
「…スヴェン、オレもこの際だから言っとくぜ。
お前こそ、帰る場所が在る癖に、ヒトの戦いに首突っ込むんじゃねえよ。迷惑なんだよ、死なれると」
巌(いわお)の如く突き放すトレインの言葉に、スヴェンもまた動じない。竜虎相討つの例えさながらに、
二人はテーブルを挟んで睨み合う。
「……余計な気を回したのはそういう事か。何も判ってないな、お前は。
ふざけるな、俺はお前の相棒だぞ。それを、手前勝手な理由で犬猫みたいに追っ払うつもりか?」
「何も判ってないのはどっちだ………お前の戦いじゃねえって言ってんだよ!!」
トレインの拳が激しくテーブルに叩き付けられた。合板とスチール製の天板が、其処を中心に歪む。
「いい加減にしろよ、スヴェン……組んだ時から訊きたかったが、何でオレに手を貸す?
………お前まさか、『お前の力になりたい』なんて寝言抜かすんじゃねえだろうな」
噴火手前の活火山の様な、危うい沈黙が訪れる。
トレイン自身、他人にこれほど怒りを露わにするのは、鉄火場とサヤ以外では初めての事だった。しかもそれが、相手を慮っての
怒りだと言うのが自分の事にも拘らず信じられなかった。
兎も角、何はともあれスヴェンとイヴを急いで自分の戦場から追い出したくて、彼は無言のスヴェンの返句を待つ。
「お前の力になりたい、それだけだ」
―――――真っ先に食って掛かったのは、意外にもリンスだった。
「この………馬鹿ッッ!!!」
歪んだテーブルに身を乗り出し、殺しそうな眼でスヴェンを見据える。
「そう言うのはお呼びじゃないって、今言ったばっかりじゃないのよ!
アタシだって御免よそんなマヌケ野郎は。生きるも死ぬも自分勝手の、一番性質悪い部類の奴じゃない!」
「お前等、俺の何が判る。
これは全部俺の話だ。手を貸すのも、一緒に戦うのも、命懸けで仲間を助けるのも、イヴに嫌われるのも、全部俺の話だ。
お前等の都合なんぞ知った事じゃない、俺に捕まった事をせいぜい運が悪かったと諦めろ」
スヴェンにしては酷く傲慢な物言いだったが、却って二人には重く響いた。
先刻の寝言に、彼は命を賭けていたのだ。侵し難いほど張り詰めた信念が、眼に、言葉に、限界ギリギリまで溢れていた。
仕方なく、二人揃って怒りを飲み込むと、やや乱暴に腰を落ち着ける。
「何でだ、スヴェン」
すぐさまトレインは訊き返す。
「お前には本当に関係無い話じゃねえかよ。
今もそうだ、オレに関わった所為で奥さんとシンディに眼ぇ付けられたってのに、何でそう命賭けられる?
其処までする意味が有るのか?」
今更ながら、彼は自分の相棒の事を大して知らなかった事に気付く。
だが、これまでの判断材料から推察するに、
「……ひょっとして、前の相棒の事と関係有るのか?
だとしたら絶対に間違ってる。お前に落ち度は何にも無いだろうが」
「有る」
スヴェンは、テーブルに目を落としていた。其処に追憶を見る様に。
今の言葉が一言にして幾つかの意味を持っていた事に、トレインは果たして気付いただろうか。
「ロイドを殺したのは確実に俺だ。だから命賭ける意味がある」
「…じゃあ何? マリアさんは嘘ついてるとでも?」
「マリアは何にも知らないだけだ、だから俺に優しいのさ。
本当の事ってのは、多くの場合毒より苦いんだ」
少なからず、二人は衝撃に打たれた。
つまりスヴェンが持つ秘密は、命のやり取りが生じてもおかしくない大事と言う事だ。
嘘をついている可能性も考えられたが、嘘に命を賭けるほどこの男は無謀でも酔狂でも無い。
「――――そうだな、ここらで誰かに聞いて貰うのも良いかも知れない」
煙草を取り出し火を点けると、そのまま紫煙をくゆらせる。
「本当なら、地獄の底まで持って行く予定だったんだがな………ま、俺の腹の中で腐らせる事も無いか」
吐き出した煙の量が、どれだけの思いで隠して来たかを物語っていた。
故に二人も真剣に耳を傾ける。
「…………さて、何処から話したモンか」
―――――祭りに沸く周囲と違って、イヴの胸中は晴れぬ暗雲が立ち込めていた。
あれほど彼女を魅了した珍品珍芸の全てが、今の彼女にはこの上なく遠い。周囲の彼等が何故笑顔なのか、それすら彼女には
最早理解出来ない。
『嫌いとかじゃない、連れて行けないだけだ。戦力にならん、お前は』
冷厳たるスヴェンの眼と言葉は、彼女を地獄に叩き落す鉄槌だった。哀しくて、悔しくて、足は何を求めるのかも判らぬまま、
とぼとぼと進む。
彼等と共に在るのが、イヴの世界の全てだった。彼等と共に有る全てが至福で、彼等が居ない全てが絶望だ。
普段なら邪魔なトレイン、頼れるリンス、そして大事なスヴェン。誰一人欠けて欲しくない。
なのに彼女は、孤独な世界に一人投げ出され、涙に暮れるのみ。
何故こんな目に遭う。
弱いからか? 戦わなかったからか? 殺されそうになったからか?
どれでもない。戦えないからだ。
『これがお前の限界だ。イヴ』
――――現実は冷たい。
判り切った筈なのに、改めて知る事はこの上なく辛い。周囲の暖かさなど、今の彼女に何の慰めになると言うのか。
そしてもう一つ。
自分は今の今までやはり一人だった。トレイン達と一緒に居ても、その事実が変わらなかった。
極論して彼女には―――、戦う意味が希薄過ぎた。
実は今日まで、彼女は本心から戦いに参じた事が無い。単に状況に対して自分なりの反応をしただけだ。
例え進んで望もうと、三人の様に其処に殉ずる意思など無く、日常の一環程度に捉えたに過ぎない。
彼女は、その事をようやっと理解し―――しかし何より、何が足りないのかを理解出来ず、また涙を零した。
故に今のイヴに、行き交う人に紛れて彼女を追う存在に気付く筈など無かった。
――――少年達が、人垣を作っていた。
その中心には、地面に転がる一人の少年。だが彼は手足を縮めて我が身を襲う暴力に耐えていた。
囲む少年達は罵倒、蹴足、棒打を以って彼を散々に責め苛む。
「おい! お前ら止めろ、止めろ!!」
それを見た別の少年が、慌てて彼等の中に飛び込んだ。少年達も彼を見るや先刻の有り様を潜める。
「何だ、何でこんなことするんだ! 言ってみろ!!」
彼の叱咤に全員が身を竦めた。その内、彼等の一人がおずおずと口を開く。
「だ……だって、そいつが…悪いんだ」
言えば其処から沈黙が綻び、次々と残る少年達が反論を馳せる。
「……そ、そうだ! そいつズルしてるんだ!!」
「そいつ、全然ジャンケン負けないんだ。だからなんかきっとズルしてる!」
「そうだ! そいつが悪い!!」
「……ッの、バカ!!!」
彼等の総意を一瞬にして帳消しにするほど、その一喝は峻烈で若々しい。
「だからって、寄って集ってフクロにするか!!? ジャンケン強いから何だ! これじゃ、もしズルしてたって
お前らのほうがどっからどう見ても悪いじゃないかよ!! お前らそれでも男か! 恥ずかしいって無いのか!!」
今度こそ完全に萎縮する。少年の痛罵は、青臭いが凛然たる正論だ。
「……もういい、行け。
お前ら…今度こんな真似してたら、絶対許さないからな!!!」
蜘蛛の子散らす勢いでその場を去る少年達を尻目に、彼は倒れる少年に手を差し伸べた。
「…御免な。でも、あいつ等も普段はいい奴なんだ、許してやってくれな」
初めこそはおっかなびっくりだったが、危害では無い手と知るや、ゆっくりとその手を握った。
「…有り難う、助けてくれて」
「いいって」
そう言って優しく笑う少年に対し、彼も痣と泥だらけの顔を綻ばせた。
「お前さ、先月孤児院(ここ)に来た奴だろ? 名前、なんて言うんだっけ?」
「ロイド……ロイド=ボールドウィン。…君は?」
「ああ俺? 俺は……」
「…それが、俺とロイドの出会いだった」
酷く遠い眼で、二十数年後の少年は己が懺悔の口火を切った。
途中からタイトルのスペルミスに気付いてしまいました。
「アトラクソン」…って、何だよ。NBです。
とうとう第九話「別離」終了です。
さて、次回のAnotherAttraction BCは―――
全ては遠き日の彼方。
過ぎ去りし日々は永遠に戻らない――――、傷も、痛みも。
追憶は呪い、後悔は枷、そして無垢の優しさは彼への罰。
次回、AnotherAttraction BC第十話、「罪科」を乞う、ご期待!!
その罪は―――――――、誰も…知らない。
記念すべき十話目なので、予告に格好付けてみました。
あれ……カッコ良い……か? これ…?
ま、まあ…ほら! とにかく今回はここまで! ではまた!
344 :
作者の都合により名無しです:2006/03/12(日) 15:59:49 ID:Ct5huNUL0
>思えば遠くに来たもんだ
スレイヤーズという作品は名前だけしか知らないけど、楽しく読めました。
ドラゴンボールの世界よりも、この魔法少女の世界の方がしぇきさんの作風に合うのかも。
主役のリナがイキイキと動いているし、最後の締めまですっと読めましたしね。
オーガとフリーザシリーズ終わったらこういう作品を連載して欲しいなあ。
>AnotherAttraction BC
スヴェンの男の美学というか、やせ我慢というか、紳士道が悲しく輝いていますね。
彼だってイヴを足手纏いとは本気で思ってないのでしょうが(戦闘能力ならスヴェンより上でしょ)
殺す殺されるが当たり前の世界に無垢な少女を深入りさせたくないという優しさでしょうね。
ダンディズムの権化だなあ、スヴェン。
イブ、可愛そうだなあ。スヴェンに親みたいな感情と初恋みたいな感情を持っているだろうに。
スヴェンとロイドの過去編が楽しみです。予告編もあおってますなw
早くセイフィリアとかも見たいんですけど。
超機神大戦番外編 「大惨事スーパーフール大戦〜遊園の銀河へ」4
〜前回までのあらすじ〜
おっす、オラ悟空!
のび太たちはメカトピアへの旅の途中で遊園地<ゼストランド>に立ち寄ったんだけど、そこはアスランが倒したはずの
ユーゼスが経営する遊園地だったんだ。オラびっくりした〜!
そして遂にのび太たちに牙を剥くユーゼス。一体どうなっちまうんだ!?
オラわくわくしてきたぞ!
―――と、いうわけでユーゼスの用意した刺客である。
それは見かけは何の変哲もない青年だった。男臭い精悍な顔つきに短く刈り上げた髪。ちょっと体育会系の雰囲気を纏った
だけの、どこにでもいそうな兄ちゃんであった。
「じゃあ何でクラフトさんはびっくりしてたの?」
「いや、今まで突っ込みっぱなしだったものでな。つい・・・」
照れくさそうに頭をかくクラフト。それを尻目に青年は怪訝な顔をした。
「オーナー。俺に用って、一体何なんですか?」
「ふふふ・・・そう、そうだった。お前にやってもらわなくてはならない仕事があるのだよ、トウマ・・・と、怪しい笑いを
浮かべるのも私だ」
トウマ、という名前を聞いて、稟はぽんと手を叩いた。
「あっ、ひょっとしてあの着ぐるみの中の人か!」
そう、確かあの時、ミナキがそう呼んでいた。トウマはへへっと笑って頷く。
「ええ、この遊園地でバイトしてる、トウマ・カノウです。今後ともゼストランドを是非よろしく」
「トウマ、そんな挨拶はいい・・・これからお前は、奴らを倒さねばならないのだからな!と、非情な宣告をするのも私だ」
「えっ・・・?ちょ、ちょっと!オーナー、いきなり何言ってるんですか!?奴らを倒せって・・・」
「くっくっく・・・お前は何も知らずともよい。ただ奴らを殺せばよいのだ。ちなみに奴らを殺せば時給100ペリカ上げて
やろう、と取引を持ちかけるのが私だ」
「100ペリカって・・・10円じゃないですか!人を殺して10円ってアンタ、そりゃないでしょう!」
ユーゼスに噛み付くトウマ。その様を見て、クラフトは少しだけ感動した。
(よかった・・・この遊園地にも、常識人はいた・・・!)
と、同時に、そんな当たり前のことに感動する自分がちょっと悲しくなった。
「とにかく!金がどうこうじゃなくて、俺は人殺しなんかやりませんからね!そんなに彼らをどうこうしたけりゃ、スイス銀行
にでも金を振り込んで下さいよ」
「むむう・・・頑固な。辟易するのが私だ」
悩むユーゼス。そこにミナキが声をかけた。
「オーナー。ではここは私にお任せを・・・トウマを見事説得してみせましょう」
「ミナキか。よし、やってみろ」
「はい」
ミナキはトウマの傍に駆け寄り、ぴったりと寄り添った。
「え!?ちょ、ちょっと、ミナキさん・・・」
焦るトウマを無視して、そっと耳元で囁く。
「トウマ・・・私は・・・あなたのことが、好きよ・・・」
「えっ・・・」
「けれど・・・あいつらがそれを邪魔するの。あいつらのせいで、私たちは幸せになれないわ・・・だからお願い、あいつらみんな、
やっつけて・・・」
「――――――!分かりました!俺にお任せを!外道たちめ、俺が貴様らを蹴り殺してやる!」
あっさりとトウマは篭絡された。それはもう、とんでもなくあっさりと。
「・・・・・・・・・結局、貴様もアホだったか・・・」
クラフトは心底、心底残念そうに言った。
<俺やシュウも下手したらこいつらと同じネタキャラになってたのか・・・よかった、まともなキャラとして出演できて>
「マサキ、何ブツブツ言ってんだ?」
<いや、別に>
「ふふふ・・・決心がついたようだな、トウマよ。ではお前に最強の兵器を与えてやろう!」
ユーゼスがぱちん、と指を鳴らした。その瞬間、ゴゴゴ・・・と轟音が鳴り響き、地面が割れていく。そしてそこから、
何か巨大な物体が頭を出す。
「あれは―――ロボット!?」
「その通り。これこそはお前たちを葬るための兵器ビッグ・ザ・ライオウくん!これを造ったのも私だ!そしてこれに乗るのは
お前だ―――トウマ!」
「俺?でも俺、こんなの乗ったことないですよ・・・」
渋るトウマ。だがそんな彼に、ミナキは囁いた。
「大丈夫よ、トウマ・・・私の想いが、あなたを守るから・・・」
「そうか!ミナキさんの想いが守ってくれるなら大丈夫だ!」
「なんなんだよ、その自信は・・・」
稟は頭を抱えた。こんなところにいたら、自分までおかしくなってしまいそうだ。
「なんていうか、他人とは思えないような・・・」
キラは別の世界(種本編)における自分を見た思いだった。
「さあ、トウマ。私の想いを受け取って・・・」
ミナキは謎の注射器を取り出し、トウマの首筋にぷすっと刺した。その瞬間、トウマの目が真っ赤に充血し、筋肉が凄まじい
勢いで膨れ上がる。
「う・・・うおおっ!ふ、ふふふふ・・・すげえ、これが愛の力か・・・!全身にかつてないパワーが駆け巡っていやがる・・・
今なら1000分の1秒の世界すら容易く見切れそうな気がするぜ・・・」
「いや、明らかに薬の力じゃないか」
クラフトの突っ込みを無視して、ミナキは叫ぶ。
「さあ、トウマ!今こそビッグ・ザ・ライオウくんに乗るのよ!」
ミナキに後押しされ、トウマはビッグ・ザ・ライオウくんに乗り込んだ。
「さあ、外道!俺といざ尋常に勝負!」
「分かったよ。じゃあちょっと待ってろ。こっちもロボット持ってきていいだろ?」
アスランの問いかけに、ユーゼスは余裕で答える。
「くくく、よかろう。例えあの∞ジャスティスと言えど、ビッグ・ザ・ライオウくんの相手ではない!」
「そうか、じゃあ待ってろ。すぐ戻ってくる」
―――10分後。のび太たちは戻ってきた。
ダイザンダー、サイバスター、アヌビス、Sフリーダム、∞ジャスティス、フリーダム、ドムトルーパー×3・・・
ロボット軍団勢ぞろいであった。
ユーゼスの仮面から、漫画チックな汗がたらー・・・と流れた。
「き・・・聞いてないよー!と、ダチョウ倶楽部の如く驚く私だ・・・!まさかこんな多人数で来るとは・・・!」
「あの・・・ひょっとして、俺は集団リンチってのをやられるのでは・・・」
「大当たり〜!」
アスランの声と共に、ロボット軍団が一斉に攻撃を開始する。
サイバスターがポゼッションからのコスモノヴァを放ち、Sフリーダム、∞ジャスティス、フリーダムの三機が一斉砲撃を
ぶちかまし、ドムトルーパー三機がジェットストリームアタックで襲い掛かり、アヌビスがラムダ・ドライバの力を100%
開放してヘル・アンド・ヘヴンで全てを打ち払い、止めにダイザンダーが白黒劇画調のカットインが入りそうな勢いで、
デモンベインを振り下ろした。
そりゃもう、OG2のハードモードの裏ラスボスでさえ1ターンキルできそうな勢いであった。
ビッグ・ザ・ライオウくんは哀れ、塵一つ残さず消滅した。しかしトウマだけは漫画っぽく、黒焦げになっただけで何とか
地面に転がっていた。
「ちっ・・・使えないわね」
ミナキは口汚く吐き捨てた。凄まじい掌の返しっぷりだった。
「くっ・・・まさか、ここまでとは・・・!」
「さて、どうするみんな。ここはもう二度とバカが湧かないように、この遊園地を全て破壊していくべきかと思うのだが」
バカ王子の提案に、一同は顔を見合わせる。乱暴な案ではあるが、否定はしきれなかった。
「ま、待て!この遊園地は私の夢なのだ!ここを壊されたら、私はもう立ち直れん・・・それだけは勘弁と、許しを請うのが
私だ!どうか頼む!」
「うーん・・・じゃあ、もうほっとこうか・・・」
その時だった。ユーゼスの背後に、小さな人影が現れたのだ。
「あれ、あの子は―――確か、イルイって子じゃない?」
「ほんとだ。おーい、こんなところに来ちゃ危ないよ!」
だがイルイは、意外な反応を示した。怒りを顕わにして、のび太たちを睨み付けたのだ。
「遊園地で・・・暴れた・・・」
「え?」
「ここはわたしのおうちなのに・・・暴れた・・・許せない・・・!」
「あの・・・ええぇっ!?」
のび太は驚愕の余り叫んだ。イルイの身体が透けていき、空気に溶け込むように消えたのだ。
「い、今のはなんなの・・・!?ユーゼス!あの子は一体!?」
答えを求めてユーゼスに詰め寄る。だがユーゼスは地面にへたり込み、ブツブツと何やら言っていた。
「ああ・・・もうアカン・・・イルイを本気で怒らせてもた・・・もう終わりや・・・」
ユーゼスは頭を抱えて嘆く。語尾に私だと付けるのも忘れていた。
「―――私から説明しましょう。イルイ・・・彼女は人間ではありません。本来彼女は、この遊園地に危機が迫った時にのみ
発動する防衛システムそのものなのです」
「防衛・・・システム?」
「そう。それが彼女に与えられた大切な仕事―――ですが余りにも強大な力を持たせすぎたのです。防衛するどころか、全てを
無にしてしまうほどの力を・・・。
廃棄処分にしようにも、危険が迫れば防衛システムは自動的に作動します。だからイルイは、そのままにしておかなければ
ならなかったのに・・・あなたたちが暴れたおかげで、ついに作動させてしまった・・・!」
「うーん。でも、こっちにもこれだけの戦力が揃ってるんだよ?何とかなるんじゃ・・・」
「甘い。甘いですね。そんなものではどうにもならないのです―――ほら、来た」
空がふっ、と暗くなった。そして、虚無より現れる、白き影。
うっすらと神々しく輝くそれは、まるで女神だった。
穢れ一つない白亜の石像に刻まれた、全てを包み込む優しさに満ちた女性の尊顔。
純白の羽を広げたその姿に、のび太たちは圧倒される。
「あれこそは遊園地防衛システム―――人造神<ガンエデン>―――!」
「ううっ・・・!な、何て威圧感なんだ・・・!」
<ああ。ネオグランゾンと同等―――いや、それ以上の力を感じるぜ・・・!>
マサキも戦慄を滲ませた声で呟く。そして人造神<ガンエデン>は冷徹に告げた。
「愚か者たちよ、消え去りなさい―――<マヴェット・ゴスペル>」
ガンエデンの白き翼から光が放たれ、辺りを薙ぎ払う。ゼストランドが容赦なく破壊されていく。
「お、おいおい!どこが遊園地防衛システムなんだ!?自分で破壊してるじゃないか!」
「だから言ったでしょう。強大な力を持ちすぎたと」
「ど、どうしよう、ドラえもん!?」
のび太のお得意、困った時のドラえもん頼み。ドラえもんは腕組みしながら、呟いた。
「・・・・・・・・・はっきり言って、一機ずつ向かっていったんじゃ象と蟻だ。ここは、みんなの力を一つにするしか
ないよ。これを使ってね!<ウルトラミキサー・改良型>!」
ダイザンダーの巨大四次元ポケットから取り出されたそれは、かつてのび太とドラえもんが合体して<のびえもん>となり、
遊びに行くか家でゴロゴロするかで自分一人で喧嘩したという伝説を持つ、曰くつきの道具であった―――!
「これは呼んで字の如く、改良型さ。以前は二つのものを合体させるだけだったけど、これは幾つでも合体させることが
出来るんだ。あとは―――分かるね、みんな」
「―――!ああ、分かった!確かにそれしかないかもね」
元気よく答えるのび太。そしてウルトラミキサーのチューブが機体へと伸びていく―――!
そして産み出された、新たなる力。全にして一、一にして全。合体という究極のインフレ手段によって顕現した、
最終最後の存在―――
「―――これこそぼくたちの合体形態―――!」
合体ロボのコクピットの中、全員が混ざり合い、もはやよく分からない姿になったのび太たちが言い放った。
「その名も、融合機神―――<バキスレイオス>だ!」
―――ぶっちゃけ、バンプレイオスのパクリであった。
投下完了、前回は
>>251より。
とうとうきました、合体インフレ。
しかし、もはやスパロボやってない人は全く分からないだろうな・・・(汗)
まあ番外編ということで(言い訳)
バキスレイオスについては、スパロボにバンプレイオスというロボットがあって、それをバキスレ風に
もじったものです。本家からして<バンプレストだからバンプレイオス>という駄洒落みたいな命名なので、
問題ないと思います(かなり多分)。
次回でさくっと終わらせて、本編に戻ります。
しかし前回の話を読み直すと、古賀亮一氏の作風にモロ影響受けてるなー。つーかセリフを氏の作品から流用させすぎでした。
>>253 そう言えば、クラフトしかしゃべってない・・・
>>254 まあダメ人間のための遊園地なのでw
>>261 プリムラの影が薄いのは、確かに・・・まあ本編で目立ちまくりですし、その分番外編で割を
食ってるということに。しかし彼女とフー子、遊園地初体験がこんなんじゃトラウマになりそうな・・・
>>ふら〜りさん
はっきり言ってわけ分からん話を読ませています。刺客についてはまともな人と思わせといて、やっぱりアホとw
>>フルメタルさん
ギ・・・ギリアムーーーーーーーっ!(涙)
得意の予知能力で何とか切り抜けるんだ!あるいはゼウスの仲間たちに助けてもらうんだ!
・・・でもギリアムの方がびんちょうタンを狙う敵か。
>>しぇきさん
なんで合体まで完璧に当ててるんですかwあなたの特殊能力欄に予知能力か念動力者(LV7くらい)が付いてませんか?
スレイヤーズは実は知らないけど、史上最大規模の姉妹喧嘩は楽しめました。結構こういうのは好きかも・・・。
>しぇきさん
スレイヤーズですか!確かにこの世界はSSにし易いし、しぇきさんの作風に会うかも。
原作の賑やかさがしぇきさん風に料理されてて良い感じです。最後に郷愁が出てますね。
>NBさん
愛するが故の別れでしょうか。スヴェンの優しさを、まだ幼いイヴではわからないでしょうね。
ただ、このパーティは3人いてこそ。NBさんがどのように決着をつけるか楽しみです。
>サマサさん
あらすじから本当に楽しんで書いてるのがわかります。カイジネタってサマサさん使うんだ。
本編では逞しいのびたも、やはりドラ頼みで。そして最後は合体物できましたかw
>>サマサさん
おお、サルファの二次創作がこんなに面白いなんて。これならイデエンドでもギャグに出来そうですね。
>>266 陛下の為に戦って死ぬことは、怖くない。もし悪魔にこの命を生贄として捧げることで、
陛下の病が癒えるのならば、喜んで自殺でも何でもしよう。……だけど……
「血が赤いことと、基本骨格は確認済みだがな。内臓や神経の構造はどうかな?」
興味津々といった様子で、カーズが近づいてくる。その背後で、ゴミのように投げ捨て
られたヒューイットが、血まみれ傷だらけの生ゴミみたいな姿で転がっている。
そしてD=アーネは今、どくろステッキを杖に阿呆みたいに突っ立ってる。
『……ごめんなさい、陛下……ごめんなさい、ヒューイットさん……私が、
このD=アーネが無力なばかりに、こんな……こんなことに…………っ』
「泣くがいい。悲しむがいい。それがお前の、最後の感情だ」
D=アーネの目の前に立ったカーズが、手を振り上げる。D=アーネの涙の雫が、
頬を伝って落ちていく。その雫が地に当たって弾けた瞬間、
「待てええええええええぇぇぇぇっ!」
少年の叫び声が響き、カーズの動きが止まった。何者かと声がした方を見ると、
「それ以上そいつらに手を出すなっ! この国の王として、許さんっ!」
黄色い軍服姿の、丸っこい男の子がいた。その後ろからもう一人、同じ衣装の
スラリとした青年もついて来ている。
「お前は確か、このカーズをこの地に招いた潰れ大福ではないか」
「マリネラ国王、パタリロ=ド=マリネール八世だっ!」
「ふん。国王だか国玉だか知らんが、このカーズに命令などできると思っているのか?」
「そう言うと思った。なら命令ではなく懇願にしよう」
何? とカーズが首を傾げると、パタリロはパチンと指を鳴らした。すると
後ろから来ていた青年、タマネギ1号が一瞬ためらったが懐から拳銃を抜き、発砲。
パタリロの後頭部から眉間へと、銃弾が貫通して穴が空いた。
続けてタマネギ1号は正露丸のビンを投げる。パタリロは頭の痛みを堪えながら
それを受け取って、1.5粒だけ(10歳児だから)ゴクリと飲んだ。すると、
「よーし、頭痛が治ったぞ!」
「って治るのかっっ!?」
思わずツッコミを入れてしまうカーズ。だが確かに、パタリロの眉間の穴は血こそ
滲んでいるがもう塞がっている。正露丸で頭痛を治した、らしい。
『今あいつが飲んだ錠剤は、匂いからして頭痛薬ではなく胃腸薬のはずだ。
それでどうして頭の銃創が、あ、いや、そういう問題ではなくて、』
「懇願というのは、つまりこういうことだ」
パタリロが正露丸のビンを捨て、両腕を広げて歩き出した。カーズに向かって。
「ぼくのこの体に興味はないか? あるのなら、裂くなり割るなり好きにしろ。
ぼくは指一本も抵抗しない。その代わり、そこの女の子たちには手を出すな」
などと言いながら丸腰無防備無警戒な姿で歩み寄ってくるパタリロ。それを見つめて、
カーズは考えた。
体温と歩き方から考えて、銃器や刀剣は所持していない。多少武術の心得はあるよう
だが、そんなものはどうせ効かない。そして異様な生命力があるのは確かだが、
間違いなく地球上の生物だ。あの、奇妙な術を使う娘とは気配が違う。
で、あるならば。どのような術を用いようとも、このカーズにダメージを与えること
など不可能だ。そのはずだ。
「良かろう。ではお前の言う通り、解剖させてもらうとしよう。だがお前の狙い通り、
油断したりはしないぞ。何を狙っているかは知らんが、知る必要もない」
「何とでも言え」
「ああ言わせて貰おう。では、まず指を一本ずつだ。ゆっくり丁寧に切り落としてやる」
カーズの腕が伸びて、言葉通りゆっくりとパタリロに近づいていった。何か罠を
仕掛けてきたら、即座に対応できるように。D=アーネのような魔法や、ヒューイット
のような根性で何かやらかそうとも、こちらが回避なり防御なりすれば大丈夫。まあ
そんな必要はないだろうが。
そんなことを考えながら伸びてきたカーズの腕、その刃、輝彩滑刀が、パタリロの指に
触れ、少し肉に食い込む……その時、パタリロは微動だにせずただ、叫んだ!
「タイムワアアアアァァプ!」
「っ!?」
パタリロと、そして触れていたカーズの姿が、瞬く間に跡形なく消え失せて次の瞬間、
再び現れた。ただしパタリロ一人だけ。
息を切らせ、全身をうっすらと霜に覆われて、苦しそうに胸を押さえて、でもニヤリと
笑みを浮かべて、パタリロはタマネギ1号に振り返って言った。
「……やった」
「殿下っっ!」
タマネギ1号が駆け寄り、パタリロを抱き支える。
もしカーズが、単純にパタリロを殺す気だったなら、おそらく何もできなかった。
頭蓋を粉砕し首を切断し心臓を抉るつもりで襲いかかって来られたら、さすがの
パタリロも、タイムワープのタの時も言えずに殺されていただろう。それはカーズが
どんなに余裕ぶって油断しても、パタリロを敵として殺そうとする限りは変わらない。
だがD=アーネとヒューイットが、カーズに対して絡み合う興味と警戒心とを
植えつけてくれたから、機会を得られたのだ。
「成功だ……奴を……放り出してきてやった……46億年前の……この場所に」
その頃、カーズはというと。
「RRRRRRRYYYEEEEEEE! う、宇宙空間だと!? フンッ! 体内から
空気を噴出させて! その圧力抵抗で軌道を変え! 地球へ戻っ……地球……ちきぅ……
……え? な、ない? そんなバカなどうして……ぎぃゃぁぁああ! こ、凍る!
空気が凍ってしまう! 軌道を変えられな、いや変えてもちきぅが見当たらな……っ!」
「……ってな。原作と同じ最期だ、本望だろあいつも。さ、さあそれよりも、」
さすがのパタリロも、一瞬とはいえ真空絶対零度の宇宙空間に行って来たのだから、
平気ではないらしい。息が絶え絶えで、顔色も青い。
「1号、ぼくのことはどうでもいい。早く、手配を」
「あ、は、はい!」
タマネギ1号が慌てて連絡を取り、救護班が駆けつけてきた。プラズマXと
タマネギ44号、ヒューイットが救急車に担ぎ込まれる。
どくろステッキを突いて立っているD=アーネは、まるで夢の世界のことのように
それを見ていた。そんなD=アーネに、パタリロが近づいていく。
「さあ、君も」
「……た、助かる、の……? ヒューイットさん……陛下は……?」
「話はあとで聞こう。少なくとも君たちはこの国を、いや世界を救った英雄だ。
だから国王として約束する。ヒューイットも、陛下とやらのことも、任せておけ」
「そもそも原因を作ったのは殿下ですしね」
「う、うるさいっ。……あ、君っ!?」
気が抜けたのかダメージの限界か。遂にD=アーネも意識を失い、その場に倒れ伏した。
ラノベにも挑戦してみたい作品、あります。でも私のことですからスレイヤーズや
フルメタのようなメジャーどころは、当然のように外れますが。困ったもんです。
>>ウルフズさん
びんに接する優しさから、びんを護る強さへと。ここしばらく、見事にヒーローしてます
ねぇ鞍馬。今回も武器、いや兵器に対して人間の肉体の技と力で勝利を収めるという燃え
シチュが光ってました。そして久々の宗介……びんがウィスパードな立場になる、のか?
>>ワルツさん
私自身も含めバキスレで時々見かける大人しい刃牙。トーナメント時代を思い出します。
>それを理由に人を見捨てるほど刃牙の心は凍り付いてはいない。 何より自分が
>死を覚悟しているときに、覚悟も無く死のうとするような考え方が許せなかった。
ここが特に好きですね。強く優しく、でもただ甘いだけではない。男らしい。現実現在の
刃牙とは別人です。で一茶氏、その名は呪われてます。改名しないと恋人を異星人に……
>>しぇきさん(ちと、もったいない。折角の大作、日数をかけて楽しみたいとこです)
ルナ姉ちゃんはコロンボのカミさんみたいなものだと思ってました。で想像してた通り、
問答無用絶対最強勇次郎キャラでしたね。盗賊退治や宿での食事、躍動感ある戦闘など、
原作のいいところがきちんと出てて、でも馴染んだしぇきさんの文体。楽しかったです。
>>NBさん
私の今までの全部の、バキスレ鑑賞歴の中で、屈指の突き刺さりっぷりでした。敵キャラ
は全然いない、誰もイヴに危害を加えようとしてるわけではない、なのに……事情はどう
あれ「酷さ」が凄い。スヴェン自身も辛いのでしょうが、イヴの胸中を思うと、もうっっ。
>>サマサさん
や、トウマくんみたいな子は好きですよ。ミナキは色仕掛けしてるわけではなく、つまり
トウマくんは下心で動いてるわけではない。ちゃんと愛の力。それで勝てるかどうかは別
ですが。で、ロボのみならず本人たちも融合? ……見たい。これはぜひ絵で見たいっ!
>>スターダストさん
ふっ。完結されないかもなんて心配は、しちゃあいませんぜスターダストさん。
信じて待っております故、お時間ができましたら御力作、頼みましたぞっ。
>>269 いきなり肉体を気化させるほどの波紋を使えたカーズですから、地球人が修行してできる
ぐらいのことなら何でもできるのでは。でもタイムワープは流石に無理かと。
足早に教室をでる。放課後直後の廊下は生徒でいっぱいだった。
部活へ行く生徒。帰宅する生徒。私は後者に入る。
流れる人の波をかきわけて急ぐ。階段を二段飛びでおりて、笑いな
がら話している誰かと誰かを通り過ぎた。何段目かを踏んで、最後
は三段一気に飛んで着地。じーん、とわずかに足の裏が衝撃で痺れる。
構わず下校口へ突貫。中靴と外靴を入れ替えて、後は校門をくぐるだけ。
校門までの距離を疾走。そこからは下り道だ。
私は一気に駆け下りていく。
秋空には真っ赤な夕日。
最近、ちょっとだけ肌寒くなった。ちょっとだけだけど。
今日は商店街で買い物をしてくれと頼まれた。馴染みのお店で私は
値定めをしている。できるだけ食べやすくて栄養のある食材をかご
に入れていく。それからあいつの好物を選ぶのも忘れない。
あらかた買うものを確保した私は、すぐにレジへむかった。
財布が少々お寒い状況になった。
買い物袋にすべて詰め込んで、外に出た。道路を挟んだむかい側に、同じ
学校の生徒が歩いていた。二、三人ほどの男子がゲーセンの前で笑っている。
気にせずに歩きだす。
私に寄り道はできない。
早く帰ってなんか作ってやらないと。
あいつは寂しがり屋さんだから。
商店街を抜けて、住宅街へ辿り着いた。家まで後ちょっと。
自然、足取りは軽くなる。
ちゃんと寝てるだろうか。
学校に出かける前に作ったお粥を食べただろうか。
そうだ、今日のみんなの様子について話をすれば、あいつも喜ぶに違いない。
高城くんが寂しがってたとか、エレジーが早く治せって怒ってた
とか、ナガヒサくんが代わりに日直を務めてたとか、いろいろ。
そんなことを考えてたら、いつのまにか着いていた。
マンションの前。
駐車場を覗いてみたけど、どうやらおじさまはまだ帰ってきて
いないらしい。
階段を登って、廊下を横断。そうしてあるドアの前に立つ。
表札には甲斐という文字。
インターホンを鳴らす。そうして鞄のなかから、合鍵を取り出して
ドアを開ける。
「お邪魔しまーす。刹那ー? 風邪もう治ったー?」
答えはなかった。
おかしいな、あいつならもうぴんぴんしてると思ったのに。
玄関に靴を揃えておき、あがる。玄関とリビングが一直線の通路で
つながれている。だから、迷わず歩を進める。
「……いない」
開け放った扉のむこうに人の姿はない。
ベットから抜け出して、テレビでも見てると思ったのに。
予想以上に今回の風邪は厄介らしい。
まさかあいつが風邪にかかるなんて思いもしなかったけど。
とりあえず買い物袋をキッチンに置き、今あいつがいるだろう寝室に向かう。
朝方熱をはかった時は、そんなにひどくなかった。一日なにもせずに
寝てれば治ると思ったけど、見通しが甘かった。今晩もお粥かな。
せっかく腕ふるって、ご馳走つくろうとしたんだけどなぁ。
寝室はあいつの部屋を兼任している。浴室をちょっと通り過ぎた所がそこだ。
耳をすましてなかの様子をうかがう。静かだ。今も寝ているらしい。
そっと静かに、起こさないようにドアを開ける。部屋は真っ暗だった。
通路のライトの光が、私の後ろから闇を切り裂いて入り込んだ。
照らされた所はベットには届いていなかった。私は、あいつの寝顔を
見ようとして、一歩、部屋に入った。
……でも、なんていうこと。めまいを感じた。頭を抱えて、暗がりを見た。
ああ―――信じられないことに、ベットはものけのからだったのです、神サマ。
規則正しい音をたてて時計の針が動いている。どれぐらい時がたったんだろう。
もぞりと体を動かす。
机に突っ伏して寝ていたから、体が重い。時計を確認し、私がここに
きてから一時間ほどたったことがわかった。目が覚めたとき、視界のすべてが
闇だったから、まだ刹那は帰ってないのだろう。
「……遅い」
風邪も治ってないままどこいったんだあのバカ。
ちゃんと安静にしてないと大変なんだぞ。
はぁっ、とため息をついてみた。
いらいらはおさまりそうにない。心配もまた然り。
手持ち無沙汰な自分をどうにかしようと、テレビをつけるために
リモコンに手を伸ばした。
勝手知ったるなにやらという言葉が頭を掠めたが、もう気に
しないことにした。
親指で赤色の電源ボタンをかちっ。かちっ。かちっ?
「……つかない」
主電源がついてなかった。
もう見る気も失せた。リモコンを置いて、もう一度体を机にうずめた。
玄関のほうから物音が聞こえた。
刹那が帰ってきたと思った。
かばっと体を起こし、並べ立てる文句を用意しながら玄関へ。
距離はすぐ縮まった。
ちょうどドアが開いたところだった。聞き覚えのある声が一つ。
それで確信をもった。
「こらぁー!! いったいどこいってたのよバカ刹那ぁ!!」
「どわぁ!! み、未来!?」
腰を抜かしそうになるほど驚いた顔が、目の前にあった。
弁解はきかない。まくしたてる。
「あんたよく病人のくせに出かけていられるわね! もしかしたら口からでまかせだったのかしら!」
「で、でまかせじゃねーよ! ちょっと寝たらもう治ってたんだよ!」
「嘘! またそんな嘘ついて! 風邪がひどくなったらどうすんのよ! 心配したんだからね!」
そう、心配だった。
こっちの気もしらないで。どこかにふらふら出かけていっちゃうなんて。
ちゃんと、自分のことを考えてほしい。
ああ、もう、なんだかバカらしくなってきた。
「……未来」
「……なによ」
「悪かった。ごめんな」
「……本当にそう思ってる?」
「ああ」
いいたいことは山ほどあった。でも、すべて喉の奥に引っ込んでしまった。
……まぁいいか。お腹も減ったし。今回は許してやるか。
でも、これだけはいわないと。
「刹那」
「いやだからほんと反省してるって――」
「おかえり」
「……ああ、うん。ただいま、未来」
「でも、なんで出かけたりしたの?」
「あーいや。ちょうど俺が起きたとき、こいつらからメールがきてさ」
こいつら? 刹那の後ろから聞こえる。
ば、馬鹿っ、セッちゃん余計なことを……!
ちょ、やべぇよ高城、これは逃げるしか……!
そ、そうだねナガヒサ、ほとぼりが冷めるまで様子を……
「一緒に遊ぼうぜって。な、高城、ナガヒサ」
にんまり顔で、刹那は振り向く。……後ろをよくよく見てみると。
「や、やあ未来」
高城くん。
「ひ、久方ぶりだね未来」
こっちはナガヒサくん。
つーか今日いっしょにいたでしょ。
あー。
うん。
そっか。
「み、未来! これにはかのコキュートスに匹敵するほど深い理由が……!」
もう、いかなる術策も私には通用しない。音が遠い。
高城くんとナガヒサくんが、なんかいってる。
でも、私の耳に届かない時点で、何をいっても無駄だよね。
……ご近所迷惑を鑑みた程度の大きな雷が、バカ三人組の上に落ちた。
今、私達はテレビの前だ。
ありきたりなバラエティの映像が流れている。
傍らのエレジーと一緒に笑いながらお菓子をつまむ。
エレジーは電話で、今暇? と聞いてみたら、二つ返事で飛んできた。
三人組には罰として今晩の夕食の準備をさせている。
高城くんとナガヒサくんは結構料理が得意だ。
その点では心配いらなかったけど、問題は刹那。
ぶきっちょなのは、相変わらず。
まあ、あの二人が一緒なんだし。大丈夫だろう、たぶん。
いい匂いがしてきた。どうやら杞憂だったようだ。そろそろ完成かな?
「うおーい、できたぞー」
ガンガーン、とフライパンを鳴らして刹那がキッチンの方から姿を現した。
「ちょっと、行儀悪いよ刹那」
「行儀もへったくれもねぇよ、エレジー。ったく、病み上がりにこんな仕事押しつけやがって……」
その病み上がりさんは今日どこで何をしてましたか。
そう追求するのはやめておいた。さっきさんざん注意したからね。
だから、私はエレジーと苦笑をするだけ。
納得いかない顔をした自称病み上がりさん(間違いじゃない
けど、認めちゃうと全国の病み上がりさんに失礼だ)は、さっさと
来いよ、といってまた引っ込んだ。
それにつられるように、私とエレジーは、誰かさんの完治祝いの席に
心踊らせながら、立ち上がってキッチンに向かった。
(了)
トリップをつけてみました。ふらふら書いてたら、いつのまにか時間がたって……約一ヵ月―――
もうちょっと書くスピードをあげたいです。
今回の題材は、真・女神転生 デビルチルドレン(漫画版)です。
コミックボンボンに連載されていた、テレビ版とはまったく異なるハード路線で突き進んだ漫画……人(デビル?)が
バンバン死ぬわ、フェンリルがオカマではないわ、テレビ版ではちょい役でしかなかった
アゼルが、変態パパンになったり(娘が自分の家に友達を連れてきたとき「愛を感じたよ」なんて
いったり、その友達の父親を監禁してる人は間違いなく変態です)
と……いろいろやりたい放題でした。
その最終回後、新生された世界での日常の一コマが、今回のSSです。
この次は短篇ではなく、続きものを書こうと思ってます。あまり日をあけないように頑張ります。
最後に……ふらーりさん、いつもSS、感想ご苦労さまです。
かなり遅くなりましたが、しかも言葉足らずですが、お母さまのこと、頑張ってください。
それでは。
>サマサさん
やはりきましたか、合体パワーアップ。いつか来るとは予想してましたが・・
番外編はギャグだけで終わるかと思いましたが、しっかりと戦闘もやりますね。
サマサさんがノリノリで書いているのがSSに反映されてて楽しいです。
>ふら〜りさん
そうか。パタリロ、時間移動が自在に出来るんでしたね。ある意味無敵じゃん。
丈太郎のスタープラチナとか比較にならんほど時を操れる。圧勝ですな。
絶対に帰ってこれないところへと強制移動ですから…。次回終了っぽい?
>487さん(ひょっとして、チロルさん?)
原作はまったく知りませんが、何でもない少年の日常の暖かさと、
仲間たちの優しさが伝わってくるような描写ですね。ほのぼのとしました。
なんでもない毎日が一番大切なんだな、って感じの作品ですね。
scene32 兵藤和尊【三】
「気付いたか……?」
兵藤はモニタを見ながら、唐突に、隣で待機する黒服に話を振る。
「し……失礼ながら、何のことやら、わかりかねます……」
浮き出た冷や汗をポケットから取り出したハンカチで拭いながら、黒服が答える。
「なぁに。極めてシンプル……簡単な質問よ……
このゲームには、犠牲者を最小限に抑える『抜け道』がある。
その事実にお前は気付いたか……? そうワシは聞いておる……!」
「『抜け道』ですか……!? いえ、わ、私にはまったく……」
黒服は、呆けた表情でふるふると首を振ってみせた。
「ワシはゲーム考案の途中でその盲点に気付いたが……あえて、放置しておいた……!
何故だかわかるか……? 理屈では可能ではあるが、実行は絶対に不可能だからだ……
それがこの『抜け道』の面白い所でな……ク、クククク」
そう言って、兵藤は不気味な哄笑を漏らす。
「は、はぁ……」
相槌を打ちつつも、話の真意が読めず、黒服は困惑する。
一体、会長は何を言いたいのだろうか……? と。
「第一の犠牲者となる、一条に握らせておいたカードの記述通り……
投了者……犯人を推理する義務と賞金を獲得する権利を放棄し
自らの手で封筒を開封した意気地なしには、ゲーム終了後、死の制裁が待っておる……!
それが抑止力となり……命惜しさに探偵の過半数がギブアップする、という
ゲームの興が削がれる事甚だしい、最悪の事態は未然に防がれておる訳だが……
このシステム、理詰めで考察すれば大穴が開いている事は明白……
本来ならば、てんで役に立たぬような代物なのだ……!
そう、一人が代表して投了し……残る全員の封筒を開封してしまえばいい……!
だが、そんな自殺行為をする者はおらん。検証せずともわかりきったこと……
いの一番に『ゲームから逃げたい』などと考える臆病者なら尚更だ……!」
そこまで聞いてようやく、黒服は兵藤の言わんとしている事が理解できた。
兵藤は嘲笑っているのだ。単純な計算式では解く事かなわぬ、人間の業(カルマ)を……!
その状況は、大海原の真っ只中、定員オーバーで沈みかけたボートにも似ていた。
誰か一人が命を捨て、ボートから海に飛び込めば……残る全員は助かるはずなのに。
誰もそれをしようとはしない。お互いに睨みあい、隙あらば突き落とそうと牽制しあい……
そしてついにはタイムオーバー。結局ボートは沈没……全員が溺れ死ぬ……!
「ククク……そうでなくとも、いるはずがなかろう……!
見ず知らずの人間……それも賞金を巡って争う敵の為に
生存欲求と金銭欲求を跳ね除け、進んで命を投げ打てる者など……!
奴等は底辺……地獄の住人……!
垂らされた蜘蛛の糸を死に物狂いで登り
互いを蹴落としあう、そんな亡者たちの群れなのだから……!」
言って、兵藤は破顔する。それは正に、悪魔の笑みと呼ぶに相応しいものだった。
scene33 ポルターガイスト
それは、突然の物音だった。ホールを電流にも似た緊張が駆け抜ける。
その場に居る全員が、捕食者に怯える小動物のようにびくりと身体を震わせた。
「何の音、でしょうか……?」
整った顔をひくひくと引き攣らせながら、黒川が問う。
「何かが、倒れたような音だったな」
と旗元。
「調理場の方から、聞こえたみたいです……」
双葉は大きな瞳を細めて、調理場の方向に視線を向けた。
「様子を見に行くしか、ないか……」
代表するように、カイジが椅子から立ち上がり、調理場へと歩き出す。
他のメンバーも各々席を立ち、それに続いた。
「気をつけるっすよ」
カイジのすぐ後ろに控える玉崎が、小声で言う。
「ああ……」
答えて、カイジはホールから調理場へと続く引き戸に手をかけた。
そっとスライドさせ、慎重に開いてゆく。
カイジ達は十分に周囲を警戒しながら、調理場に足を踏み入れた。
謎の物音の正体を探し、各所に視線を巡らせる。
異変は、遠目にも明らかだった。
調理場の奥、大型冷蔵庫のドアが大きく開き……
冷蔵庫の中に詰められていたのだろう『何か』が床に転がっていた。
それが何であるかを確認しようと、一歩、一歩と歩みを進める。
その足取りは揃って、牛歩戦術を連想させるほどに重い。
はっきりと視認できる距離ではなかったのだが……
皆、薄々感付いていたのかもしれない。床に転がる『何か』の正体に……!
その顔は、生前の面影など微塵も感じさせぬほどに苦痛に歪み。
エプロンドレスから、血の気を失った白い足が覗いている。
それは――ハネダユカリの死体だった。
首が、腕が、足が、腰が……全身の関節が、不自然な方向に折れ曲がっていた。
彼女は全身の関節を砕かれ、この冷蔵庫に押し込められていたのだ。
それはまるで、壊れ、打ち捨てられたマリオネットのようだった。
「おい。やっぱり……この中に犯人がいるみたいだぞ?」
小此木が冷笑を浮かべながら、只野に目配せする。
只野は答えない。動揺も露に、金魚のように口をぱくぱくと動かし……
「ああ」だの「うう」だの、言葉にならない声を発するだけだった。
毎度ありがとうございます。前回投稿は
>>180です。
・改行
まだ一行が若干長いかな?気をつけてみます。
・謎解き
割と簡潔なものになりそうです。
後二、三回更新したあたりで開始の予定。
もしかしたら、もう少し長くなるかもですが。
・検死ができない
ミステリの定石だと、参加者に一人医者がいて被害者を検死。
割り出された死亡推定時刻を元にしてアリバイ崩し……とかなるんですけどね。
本SSはミステリのようでミステリではないですから、まあいいか。
>マジカル・インベーダー
ひとつ気になったんだけど、46億年前の地球のあった座標に飛ばされたカーズは
今現在何処にいるのでしょうか?あいつ死なないんだよね・・・
Navigation01「ヒーロー」
西暦2301年。かつて火星と呼ばれた星は今や水の溢れる惑星―――<AQUA>と呼ばれていた。
そしてその中の都市の一つ<ネオ・ヴェネツィア>。
地球(マンホーム)のヴェネツィアを模したその都市に生きる人々は、星間旅行が気軽にできる2301年とは思えない
旧時代的な生活を営んでいる。生活のほぼ全てが手作業。はっきり言って、数世紀は遅れている。だがそこに生きる人々
は、誰もがその暮らしを楽しんでいた。
不便なことこの上ない生き方が、この街においては愛おしさに変わる。そんな穏やかな空気の流れる街。
そして、この街の花形とも言える職業がある。水先案内人<ウンディーネ>。
これは女性しかなれない案内業である。
水路の多いネオ・ヴェネツィアにおいて舟(ゴンドラ)を自在に操り、来訪者を優しく丁寧にナビゲートする、誇り高き
職業。それが水先案内人。
そしてここに、一人の少女がいる。名前は水無灯里(みずなし・あかり)。彼女もまた、水先案内人―――の、卵である。
「はひ〜・・・いいお天気ですね〜・・・」
何とも間の抜けた声で、どこかほんわかした雰囲気の少女が空を見上げる。そう、彼女こそが水無灯里であった。
灯里は大空の下、太陽を浴びながらうーん・・・と伸びをした。その片手に嵌められた手袋は、彼女がまだまだ半人前で
あるという証である。
水先案内人はその実力に応じて、両手袋(ペア・見習い)、片手袋(シングル・半人前)、手袋なし(プリマ・一人前)と
分けられている。何故階級が上がるにつれて手袋を外していくのか、それは―――
「実力が上がるにつれて、オールを漕ぐ際に余計な力が入らなくなって、マメができなくなるの。つまり手袋が必要なくなる
というわけなのよ」
「はひ?アリシアさん、誰に話してたんですか?」
「さあ、誰なのかしらね」
にっこり微笑む、アリシアと呼ばれた女性―――彼女は灯里が働く水先案内人会社<ARIAカンパニー>の先輩にして、
ネオ・ヴェネツィアに300人からいる水先案内人の中のトップ3、<三大妖精>の一人と称される凄腕の水先案内人である。
今日は彼女は非番だったので、可愛い後輩である灯里の指導に当たっているのだ。
そんな立派な先輩がわざわざ半人前のために・・・と思うかもしれないが、ARIAカンパニーは少人数主義。
水先案内人はアリシアと灯里の二人しかいないのだ。
社長は、といえば―――
「ぷいにゅー」
怪しい鳴き声を発して、<社長>がその存在をアピールした。<社長>は今、何とも呑気な顔で、アリシアの腕の中、白い
身体を丸めて抱かれている。
そう、ARIAカンパニー社長、アリアは猫なのだ。
ただの猫ではない、人間並みの知性を持つ種・火星猫である―――とはいえ、何故に猫が社長なのか。実を言うと水先案内人
業界の伝統である。いわく―――
<青い瞳の猫を社の象徴とすべし>。
これに従って、あらゆる水先案内人会社の社長は全て<青い瞳の猫>なのである。
そんな不可思議な慣習も、なんとなく当たり前に思えてくる街―――それがネオ・ヴェネツィアである。
灯里はもう一度、大きく伸びをした―――と。
「乗せてってくれるかい、水先案内人さん?」
「はひっ!?」
唐突に声をかけられたので、灯里は思いっきり仰け反ってしまった―――全く、何でこうも自分はドジなのか。
自分を罵倒しつつ慌てて振り向くと、そこにいたのは若い男だった。顔にはやたら派手な傷が走っている。どちらかというと
ハンサムな類ではあったが、どこかうらびれた雰囲気の持ち主だった。
「は、は、はい。えっと、アリシアさん・・・」
灯里はアリシアの顔をちらりと見る。まだまだ半人前の彼女は、先輩指導員と一緒でなければお客様を乗せてはいけないのだ。
アリシアはもちろん、にっこりと微笑んだ。それを見て灯里も、目一杯の笑顔でお客様を迎える。
「はいっ!どうぞお乗りください!」
―――首尾よくお客様をお乗せしたはいいものの、半人前の悲しさ、一人前の水先案内人の操る白いゴンドラのようには上手く
進まない。半人前のゴンドラは、黒いゴンドラ。その分値段も安いが、安全性に欠けるので、イマイチ人気がないのである。
しかもお客様を乗せている今日に限って、灯里は絶不調であった。
「すいません、お客様〜・・・」
「ははは、いいよ・・・まだまだ君はこれからなんだろ?」
お客様は、失敗続きの灯里を笑って許してくれた。
「そう・・・君はまだ、これからなんだ・・・俺なんかと違って、ね」
そう言ったお客様の顔は、どこか寂しそうだった。まるでもう、自分は終わってしまった―――そう言いたげな。
「そんな。お客様だって、まだまだ若いじゃないですか」
「そうだね。まだ俺だって、そこそこ若い―――でも、ダメさ。俺は―――諦めちまった」
「諦めた・・・」
その言葉は、とても重かった。
「水先案内人さん。君は将来の夢はあるかい?」
「夢?うーんと、そうですねー。やっぱり、アリシアさんみたいな立派な水先案内人になれたらなあ、なんて・・・えへへ、
まだまだ頑張って修行中の身ですけれど」
照れくさそうに笑う灯里を見て、アリシアも笑う。アリア社長もぷにゅう、と鳴いた。お客様はそんな灯里を、眩しそうに
見つめる。
「そうか・・・頑張ってる、か。俺も昔は頑張ってた。俺にもなりたいものがあったからね」
「なんですか?お客様のなりたかったものって」
「笑うなよ・・・ヒーローなんだ」
「ヒーロー・・・ですか?」
灯里はキョトンと聞き返した。
「そう、ヒーロー。俺の故郷は、やたら強くて悪い奴が多くってね。俺もそんな奴らをやっつけるヒーローになりたくて、
毎日必死に修行してた。でもな・・・なれなかったんだな、これが」
お客様は、自嘲気味に笑った。
「俺なんかよりよっぽど強くて才能のある奴が、うじゃうじゃいたんだ。努力なら負けてないつもりだったのに―――
どうやっても追いつけなかった。ヒーローの座は、結局そいつらのものだった。俺は、気付いちまったんだ―――
俺なんて、ヒーローの器じゃなかったんだって・・・輝かしくて、強くて、かっこいいヒーローなんかには、なれないん
だって・・・!どれだけ頑張っても、無駄な努力なんて、かっこ悪いだけだって・・・!」
お客様は顔を伏せる。眩しいものから、目を背けるように。
「―――私なんかが、軽々しく言っちゃいけないかもしれませんけど―――」
灯里はお客様に向けて言った。
「お客様は、立派にヒーローだったと思います」
「―――俺が?どこがだい?」
聞き返すお客様に、灯里は答えた。不器用で言葉足らずで、けれど、まっすぐに。
「ヒーローって、悪い人をやっつけたからとか、そういうのがヒーローなんじゃなくて・・・ヒーローになりたいって、
そう本気で思って、それに向かって努力したなら―――それがヒーローってことなんじゃないでしょうか」
「・・・?」
「お客様は、ヒーローになろうと努力してた頃、きっとすっごく輝いてたと思います。それにその時の想いはきっと、すっごく
強かったと思います。その時のお客様の姿はきっと、すっごくかっこよかったと思います。それこそ、どうしても敵わなかった
<ヒーロー>さんたちにも負けないくらいに・・・」
灯里は、ふっと笑った。
「ヒーローになりたいって思って、それに向かって一生懸命に生きる人って―――きっと、それだけでヒーローなんですよ。
頑張るのが無駄な努力だなんて、そんなこと全然ありません」
「―――それだけで・・・ヒーロー、か・・・」
お客様は、ふるふると肩を震わせて―――最後には、大笑いした。
「ははは・・・はっはっはっはっは!そうか!そうだったのか!君の言うとおりだ!」
「お、お客様?」
「はっはっは・・・いや、悪かった、驚かせたね―――そうだよな。確かにそうだ。昔の俺は―――かっこ悪いなりに、
かっこよかったよな・・・」
お客様は顔を上げた。その顔は、見違えるように晴れやかだった。
「ありがとう、水先案内人さん―――おかげで、何だかすっきりしたよ」
「はあ・・・どういたしまして・・・」
自分の何がそこまで感銘を与えたのか理解できない灯里に爽やかな笑みを返して、お客様は陸に上がった。
「ここまででいいよ、今日はありがとう。これ、運賃ね」
「あ、はい。またご利用くださ・・・」
「ああ、いつかまたここに来ることがあったら―――また、君に案内を頼んでもいいかな?」
「え!?は、はいっ!私でよければ!」
思いっきり気負ったせいで、自分の持つオールに頭をぶつけてしまった。それを見て、お客様はふふっと笑った。
「お互い、夢への道は遠そうだな」
「はひ・・・そうですね・・・」
「でも、頑張るってのはそれだけでかっこいい―――そうだよな」
「はいっ!」
「それじゃあな。可愛らしい水先案内人さん―――」
お客様は、手を振って去っていく。灯里も手を振り返した。その背中が見えなくなるまで、ずっと。
―――後日。
「ほほー・・・いいセリフですなー・・・<一生懸命に生きる人ってきっと、それだけでヒーロー>ですか・・・」
「いやー、はっはっは・・・」
「はっはっは、じゃない!恥ずかしいセリフ禁止って、何度言わせるんじゃあ!」
灯里の脳天にスバっ!とチョップをかましたのは、同じ水先案内人・半人前の藍華(あいか)。
彼女は老舗の水先案内人会社<姫屋>の社員であるが、アリシアに憧れてやまないためにARIAカンパニーに入り浸り、
その過程で灯里とも仲良くなったのだ。
性格はまるで違うが、これで中々いいコンビである―――いや、もう一人。
「灯里先輩、でっかい恥ずかしいです・・・」
そう呟いたのは、二人よりも少しだけ年下の少女だった。彼女はアリス。見習いながらその実力は一人前の先輩方をも凌ぐ、
大手水先案内人会社<オレンジぷらねっと>所属の水先案内人である。
ちなみに彼女のいう<でっかい>とは<すっごく>やら<大きな>という意味である。
(用例:でっかいお世話です等)
「もうー、アリスちゃんまで。すっごくいいセリフだと自分でも思うのになあ〜・・・」
ブー垂れる灯里。そんな彼女の背中をぽんぽんと叩いて、藍華が張り切った声を上げた。
「さあさあ、休憩終わり!立派な水先案内人目指して、今日も練習あるのみよ!」
「はひ!それでは頑張っていきましょうか!」
元気よく立ち上がる灯里に、アリスと藍華も続く。新米水先案内人たちの目の前には大空と太陽、そして青く澄んだ水。
今日もネオ・ヴェネツィアの日々が始まった。
その中で一人前目指して日々頑張る彼女たちもまた、立派なヒーローなのである。
―――これは余談であるが、灯里が案内したお客様の名はヤムチャ。
彼はその後もヘタレには違いなかったが、もういじけた瞳はしていなかった。
彼は彼なりに己と向き合い、力強く生きていくのだった。
そう、頑張ることはかっこ悪くなんてないと、彼は教えられたのだから―――
というわけで(どんなわけだ?)書き始めた新シリーズ。
とはいえ、基本的に超機神の方に重点を置くので、下手したらこれっきりかも(待て)。
題材はアニメにもなった「ARIA」。
一羽完結のちょっといい話が続く癒し系漫画。
その雰囲気が出せたかどうか・・・
ちなみにキャラの容姿はこんなかんじです。
ttp://www.ariacompany.net/ しかし、<お客様>が誰なのか一発で分かった人は全体の7割超えるんじゃなかろうかw
最後まで名前を伏せた意味なかったりして・・・
>>353 カイジは好きですよ(パチンコ編までは)今はもう・・・黒沢は面白いと思いますが。
>>354 彼らならイデも避けて通りそうな・・・
>>ふら〜りさん
まあ現実は非情である、と(鬼)
のび太たちの合体形態は・・・どんななんだろ?男も女も犬もロボットも一緒くただからなあ・・・
>>370 今回は異様にグダグダだと自分では思ったのですが、思いのほか好評な様子・・・
人の評価と自分の評価って結構違うんでしょうか。
384 :
作者の都合により名無しです:2006/03/13(月) 19:38:41 ID:ctP2D4fN0
>風をひいた日
ほのぼの〜。女神転生にそぐわない内容かな、と思ったけどちゃんと漫画あるんですね。
少年の頃感じた不思議や戸惑いや仲間たちとの触れ合いがいい感じに書けてます。
>カマイタチ
しばらく更新が無かったんで待ってました!って感じです。黒幕の兵藤が悪くて凄い。
そしてまだまだ続く恐怖現象とこの世の悪夢。犠牲者はまだ出そうですねえ。カイジに悪いけど楽しみw
>ネオ・ヴェネツィアの日々
おお、新連載乙です。機神は壮大なスケールなので、こちらは手頃なサイズで
サマサさんらしい作品になるのを期待してます。しかしサマサさん、ヤムチャ絡めるの好きだなあw
>見てた人さん
なんかカイジ、覚醒前に兵頭の罠に潰されそう。
ただ、道はありそうですね。か細い道ですが。
また犯人の尻尾を捕まえたようですけど
今度もスルリと抜けそうですね…!
>サマサさん
機神大戦の高速更新だけでもありがたいのに、
新連載なんて本当にお疲れ様です。
原作知りませんが、様々な人物のヒーローの捕らえ方。
それがドラマにどう絡んでいくか楽しみです。
386 :
作者の都合により名無しです:2006/03/13(月) 22:19:52 ID:O3z2HUET0
昨日、今日と凄まじく来てたんだな。特に昨日。
詳しく書きたいけど、あまりにも多いんで一行感想ですみません
・思えば遠くに来たもんだ
スレイヤーズ好きです!このシリーズ続き読みたいなあ。キャラも動いてる。
・AnotherAttracthon BC
イヴ、初めての温もりをこんな形で…。NB氏の神の筆致で良い結び方を期待。
・超機神大戦番外編
みんな楽しそうですね。戦ってるとは思えん。遊園地のアトラクションだw
・マジカル・インベーダー
カーズ、古代の宇宙へ…。でも不死だからいまだに空をさ迷ってるんだなw
・風邪をひいた日
夏休みの楽しく少し寂しい日の絵日記みたい。少年たちらしい爽やかさだ。
・殺人黙示録カマイタチ
読むたびに謎が深まる感じで引き込まれます。兵藤ラスボスらしい風格だなあ。
・ネオ・ヴェネツィアの日々
確かに一発でわかりましたw新連載ですか。制作意欲衰えませんね。尊敬します。
沢山来て嬉しいけど、しぇき氏からサマサ氏の作品まで7作読むのに
2時間以上かかったよw 楽しかったけど目が疲れた…
見てた人さん乙です。カマイタチもいよいよ佳境か。
謎解きは比較的簡素なものという事は、半分以上は判断材料は出てるんでしょうね。
ぜんぜんトリックわかんないけど。
サマサさん、新連載お疲れ様です。
元ネタ知らんですけど、内容からしてほのぼのとしながらも
熱血っぽいものになるのかな?機神大戦のクライマックスともども楽しみです。
388 :
テンプレ1:2006/03/14(火) 16:13:26 ID:OqMQwek50
389 :
テンプレ2:2006/03/14(火) 16:14:46 ID:OqMQwek50
390 :
テンプレ3:2006/03/14(火) 16:15:52 ID:OqMQwek50
391 :
テンプラ屋:2006/03/14(火) 16:17:00 ID:OqMQwek50
少し早いですが、週末は忙しいので早めにテンプレ作っておきます。
鬼の霍乱が残念ながら2ヶ月以上連絡ない為、テンプレから外れます。
作者様、もしご覧になっておられたらご連絡を。
チロルさんが1月18日以来連絡取れず。今回はギリギリ入れたいと思います。
(風邪を引いた日作者氏かな?)
まだ余裕ありますがうみにんさんが2月10日以来、
ミドリさんが2月7日以来いらっしゃいません。
個人的にお2人のファンなので作品読みたいな。
新連載でヘルスバカ一代もありましたが、ハイデッカ氏がテンプレに残さなくていいと
おっしゃってたので今回は載せません。お気が変わられたらご連絡を。
サマサさんの新作(ネオ・ヴェネツィアの日々)、サイトに載りましたら
そちらの方のアドに変更して頂きますよう、新スレ立てられる方にお願いします。
>風邪を引いた日作者
前にぷよぷよSS書いてた人でしょ。
文体からしてチロルさんじゃないと思う……多分。
テンプレ屋さん乙です。
いつも感謝してます。
>>392 そうだ、「おちるもの」だな確か
サイトで確かめたらコテハンも同じだった。
だけど、もう少しわかり易い名前にしなよ作者さんw
487って番号じゃんw
そういえばサマサさんは確か303とかのレス番からだよね
しかし短編の方は数が多すぎて訳がわからんなw
短編はもう100作超えているんじゃないか?
394 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/14(火) 23:21:06 ID:5V7L/U9k0
久しぶりだね。
まあ、長く間を置いてしまったのは書き手のサボり具合だといっても仕方が無い。
しかし大丈夫。先の内容を忘れてしまった人も、これから読む人もきっとこの話が
忘れられなくなるような展開になるだろう。
では、語り始めようか・・。
<一日目・その6-(1):地獄絵図verいろんな意味で>
現在時刻:午後12:30 場所:村内の学校・圭一のクラス(2-A)
ゆっくりと近づいてくる足音。
その音はとにかく大きく、そして何物にも変えがたい威圧感に満ちていた。
圭一のクラスの生徒達はその足音を聞くや否や、先程までの好奇心に満ちた
話し声を自らの体の中に閉じ込めると、一斉に自分の机へ戻り始める。
なぜなら彼らが聞いている足音とは、自分たちのクラスの担任―――範馬勇次郎の足音だからだ。
「ねえ・・・?レナや千沙は帰ってきてないの?」
クラスの女子の一人が自分の机に戻ると、ヒソヒソ声で隣の女子に話しかける。
「わからない・・。帰る途中に勇次郎先生に見つかって、食べられちゃったんじゃ・・。」
「ははは・・・。なんだかリアルだ・・。」
自分たちが勇次郎の言いつけを守っている事から来る安堵感からか、
レナたちを心配しているという内容の会話が若干の冗談を交えた話に返還される。
「それにしてもさあ・・・。」
そしてこの会話が無駄に盛り上がり始めたのか、思わず大きな声で一人の女子生徒がこう言った。
「先生が人肉を食べたとか言っているけど、アレって本当かなあ〜!
もし食べてたら・・・、マジでキモイよね!!」
――――勇次郎が教室に入ってくるというジャストでホットなタイミングで。
395 :
思えば遠くに来たもんだ:2006/03/14(火) 23:23:48 ID:5V7L/U9k0
「人肉はなあ〜。男より女の方が上手いって知ってるか?」
「は・・・、はひ?」
狐以上に恍惚で熊やライオン以上に獰猛な勇次郎の視線が、迂闊な口を開いた女子生徒の脳天を貫く!!
(ああ〜〜〜。お気の毒に・・。)
誰もが諦めていた。
あの迂闊の発言を吐いてしまった女子生徒の安否を。
誰もがこれから起こるであろう惨劇に身を震わせていた・・・。
分かり易い位の地獄絵図が展開さるであろう事に。
――――だが・・、事態は生徒達が思ったのとは全く逆の方向に進んで行くのだった!!
地獄絵図は展開されるけど・・。
「まあ・・・、女の方が皮下脂肪が多いからなんだけどな・・。くっくっく・・・。」
なんと、勇次郎はそう言うだけで暴言を吐いた女子生徒には全くのお咎めも無しに、
ゆっくりと目の前の壇上に上がる。
(あの傍若無人で電光石火の勇次郎先生が!!どうして・・。)
同じクラスの女子の冥福を祈っていた生徒達は、この勇次郎の余りにも意外な行動に
思わず自分の目を高速でこすり始める。
きっと目が取り外せたりしたら、思わずスペアに取り替えていただろう。
前置きが長くなったが、それくらい生徒達は今の勇次郎の行動に驚いていた。
勇次郎の行動に驚くしかない圭一のクラスの生徒達だったが、読者の方々はもう知っているだろう。
彼が無駄に機嫌の良い理由を・・・。
今浮かべた光景・・。そう・・、正解だ・・。
焼死体が焼却炉の中から出て来るという―――――彼にとっての至上の出来事が彼の機嫌を最大限まで・・。
396 :
オーガの鳴く頃に:2006/03/14(火) 23:25:03 ID:5V7L/U9k0
そして勇次郎は驚いて目を丸くしている生徒達を無視して壇上の真ん中―――いつも授業をする位置に立つと、
開口一番に嬉しそうな・・、本当に嬉しそうな表情でこう言った。
「あ〜〜、裏門にある焼却炉から焼死体が発見された。おそらく他殺だ!!
多分、まだこの近くに犯人がいるだろうから警察がお前等を保護する形で帰宅する事になるだろうな。
よかったな!お前等の好きな学校閉鎖だ!!」
そう言った勇次郎の口が閉まると同時に、言われた方の生徒達の口は一斉に大きく開く。
人が口を開くという行動を取る場合には様々な状況があるが、今回の件に関してはある意味火にあぶられたホタテのような状況だった。
いま言われた内容が辛すぎて、口を開けずにいられないという・・・・。
当然の如く、勇次郎の台詞が終わると同時に一気にざわつき始める教室内。
もちろん他愛も無い雑談や、歓喜に満ちた声が辺りを支配しているのではない。
なんというか・・・、『自分の命がいつも感じている自分の命のある場所』と
『その命がある場所が、いつもとは全く違うかけ離れた場所に移動してしまった時』を
否応無しに認識してしまった事に対する否定の声が、この教室を支配していた。
正に・・、別の意味での地獄絵図であろう・・。
397 :
オーガの鳴く頃に:2006/03/14(火) 23:27:03 ID:5V7L/U9k0
<一日目・その6-(2):副主人公の存在感>
現在時刻:午後12:35 場所:村内の学校・圭一のクラス(2-A)
教室が地獄絵図化して数分・・。
普通ならば小一時間は続いても良いくらいの状況だったのだが、
今度は遠くにある水道の水滴音が聞こえるぐらい静かになっている。
全く両極端なクラスだ・・・。
まあ、全ては教師に問題があるのだがな・・・。
そう・・、地獄絵図化してからの数分。
『言葉にならない感情に騒いでいた生徒達が、何故いきなり静かになれたか?』
―――それは皆さんが一番ご存知であろう・・。
「あ・・、あの・・・。勇次郎先生・・。」
圭一のクラスの一生徒がゆっくりと手を上げる。
「あ・・・?なんだ、東野。」
粉々になった黒板の破片の上に座っている勇次郎は、そんな生徒の挙手に対して不機嫌そうな声で答える。
「そういえば・・・、竜宮さんと斉藤さんは・・・?」
「ああ・・・。あいつ等か・・・。」
勇次郎は自分の受け持ちの一生徒の質問に、本当にめんどくさそうな顔しながらゆっくりと口を開く。
ちなみに、竜宮はレナの苗字。斉藤は千沙の苗字だ。
「保健室にいる。なんでもレナの方がトイレで具合が悪くなったらしいからな。」
「そ、そうですか・・・。よかった・・。」
恐らくこの生徒はレナか千沙のどちらかに恋でもしているのだろう。
『よかった』といった時の表情が、恋をしている人間の表情まさしくだったからだ。
そういえば、この話には副主人公がいる事は覚えているだろうか?
『場所:』でも書いてある通り、圭一とは副主人公の名前。
当然、この場所にいるはずなのだが何故か存在感がない。
それもそのはず、この副主人公である前原圭一君は・・・・。
その・・・。
398 :
オーガの鳴く頃に:2006/03/14(火) 23:27:46 ID:5V7L/U9k0
「圭一・・。まだ気絶しているのか?おい!!おい!!」
隣の席の男子が、彼の肩を擦りながら意識を失った圭一に呼びかける。
「おい!!勇次郎先生が来たの視線と思わず目が合ったからって、気絶する事はないわな!!おい!!」
とまあ、これくらいの一般人である。
――――ピンポンパンポ〜〜〜ン〜♪
突如鳴り響く楽観的な機械音。
これが世に言う学校放送というやつだ。
勇次郎の不機嫌からくる痛い視線に迷惑していた生徒達にとっては祝福の音。
唯の学校放送なのに、何故かみんな気持ちよさそうな顔をしている。
―――なんだかMの養成所みたいだ。
・・え〜。ゴホン!!今間違った『地の文』をお送りした事は謹んで謝罪申し上げます。
と、ともかくこの学校放送で生徒達の気もまぎれたのは事実だ。
さて、そろそろ放送の内容が気になるだろう?
如何に気が滅入ってたとはいえ、生徒達の気持ちを一気に癒したその放送の中身とは・・・・。
「え〜、勇ちゃん?勇次郎ちゃん?僕だよ。そうそう私。校長で〜〜す!!
あのさあ・・・、警察が来るまで見回りに行ってくれない?
えっ?ダメ?いや〜、そんな事を言っちゃうと、勇ちゃんの秘密をばらしちゃうよ!!
あ〜〜、そんなに怒らないで怒らないで。冗談だって!!そう、アメリカンジョーク。
イッツア・ジョーク!!はははは!!まあ、頼んださ!!あんたしか頼れないんだから!!ねっ!!
え〜・・。まだダメなの?そうか!!わかったぞ!!あれか!!ご褒美か!!
いや〜、抜け目ないね!!勇ちゃんは。よし!!わかったよ!!おじさん頑張っちゃう!!
おこずかいを一日50円から、100円にしちゃおう!!そうだよ!君の想像している通り、なんとガリガリ君が買えちゃうぞ!!
それともお腹いっぱい食べたい勇ちゃんはスーパーカップかな?いや〜〜あ、私も太っ腹だね。うん、腹は出てないけど。
んじゃあ、勇ちゃんヨロピク!!な〜んちって!!バイバイ!!」
―――――ピンポンパンポ〜ン〜♪
399 :
オーガの鳴く頃に:2006/03/14(火) 23:28:58 ID:EeDsb7Tp0
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
思わず互いを見合ってしまう勇次郎と生徒達。
確かにこの放送は常軌を逸している。なにしろ放送の主がこの学校の校長なのだから。
全くこの学校は・・・。
当然、いつも通りの勇次郎ならばこの放送など完全に無視するだろう。
あたりまえである。これが私でも行かないぞ。うん。
だが、勇次郎はそんな『森羅万象が肯定するかのような事象』とは全く逆の事象を言い出した!!
「あ〜、見回りに行ってくるから大人しく待ってろ。・・・・。以上・・・。」
「ぇ〜〜〜〜〜!!!!!!!」×36人
彼のトンデモ発言で、生徒達の心が1つになる。圭一は気絶中だが・・・。
それにしても、まさか本当に校長の指示通りに動くとは・・・。そんなにもお小遣いアップが魅力的なのだろうか?
しかし騒ぎを起した張本人であるはずの勇次郎は、それ以上言うこともなく恥ずかしそうな顔で教室を出ようとする。
―――が、まさにその時!!一人の無謀な男子生徒が、勇次郎にこんな質問をぶつけた!!
「勇次郎先生!!僕はソースカツとガリガリ君の組み合わせの方が良いと思います!!」
果たしてこの男子生徒が何を言っているのか分かるだろうか?
そう!先程の放送で流れたお小遣い100円の使い道である!!
思わず漏れてしまう失笑・・・。そして、彼に手を合わせる生徒達。
どうやらこの発言をした男子生徒は、どこにでもいるいわゆる普通のお調子者のようである。
しかし・・・、君は相手が悪かった・・。
いや、きっと彼にも分かっていただろう。『口は災いの元』―――この言葉の意味を・・・。
それでも彼のお調子魂が許さなかったのだろう。
例え相手が鬼でも『おちょくらなくちゃ』いけない自分の運命(さだめ)―――いや、性に!!
まあ言うまでも無いが、この後このお調子者に下った判決は・・・。
「今宵、これが使えると思わなかった!!感謝!!!」
「ひえええええええ〜〜!!!!」
鬼のぶん殴り―――もちろん寸止めである。
あっ・・・。あのお調子者、失禁しやがった・・・。
400 :
オーガの鳴く頃に:2006/03/14(火) 23:31:32 ID:EeDsb7Tp0
<一日目・その6-(3):遭遇>
現在時刻:午後13:00 場所:村内の学校周辺
「ちっ・・・。校長め・・・。何で俺が見回りなんぞ・・・。」
勇次郎は何故か背広にネクタイを締めて『学校の裏門』から自転車で見回りしていた。
当然、彼がこんな事をしているのは慈善活動ではない。
先程の学校放送で、校長直々に見回りを指示されたからだ。
まあ、なんで天下の地上最強の生物がそんな指示に応じたかの理由はわからないが・・・。
「だいたい殺した奴ならさっさと逃げって考えるのが普通だろうが。・・・、多分な・・。」
とても一般的な言葉を口にする勇次郎だったが、後半は自信なさそうなトーンに落ちる。
語り部である私は彼の思考までは読めないが、おそらく猟奇的な殺し方をした犯人に対して『ある種の希望』を抱いているのだろう。
――そう・・、『自分が満腹できる人物であって欲しい』という希望が・・・・。
それにしても・・、なぜ校長がこんな事を勇次郎に指示したのか?
君たちも気になる事だろう。
言っちゃ悪いが、それも『話の後をなぞる事しか出来ない語り部』の私には理解しかねる。
だが、私なりの『推論』は立てる事が出来る。
これからは私の推論なので『完璧には鵜呑みにはしない』で欲しいが、おそらく校長が勇次郎に
『犯人が学校内部にいる危険性』を瞑ってまで見回りをさせる一番の理由は、学校が存在している地形であろう。
なぜなら実に緑豊かな自然に囲まれた場所に存在しているこの学校は、『遠方1kmほど完全に見回せる』からだ。
さすがに犯人としても『正門からは行く事は難しい』だろうし、勇次郎は『裏門から見回り』しているのだから、
その場から急いで身を隠すしかなかろう。
それに勇次郎ほどの脚力があれば、『学校の周りを回って校舎内に帰ってくる』事など5分とかからない。
もしも犯人が学校内に進入してたとしても、教師全員で取り押さえに行けば勇次郎が外から撲殺に帰ってくるまでの
時間は十分に稼げるだろうし・・。
とまあ、それらの条件を考えて校長は勇次郎をわざわざ見回りに行かせたのではないのだろうか?
―――これはあくまで私の勝手な推論で、犯人が『普通の人間』の場合ならば対処できる話だが・・・・。
401 :
オーガの鳴く頃に:2006/03/14(火) 23:33:58 ID:EeDsb7Tp0
まあ、ともかく勇次郎は早く見回りを終えたい一心で、学校の周りを自転車で移動している。
ここは普通に語っては詰まらないので、ちょっと実験的に実況風に言ってみようか・・・。
―――――おおっと!!勇次郎選手の乗った自転車が第一コーナーを早くも越えた〜〜!!
後続をどんどん引き離し早くも正門の前に差し掛かる勇次郎選手!!
その足は正に黄金の両足か?それともディープ・インパクトの再来か?
そして校門の前を高速で通過すると、早くも第三コーナーを回ったぁぁぁぁぁ〜〜!!!
これはコースレコードか?それとも神が与えたアカシックレコードになるのか?
ともかく後続を100馬身離しての独走だあ〜〜!!!!
―――けど落馬・・・。
なんと勇次郎は第三コーナー ――もとい正門の角を曲がったところで自転車から体が離れてしまう。
つまりコケたのだ。
「うをぉぉ〜〜〜!!!」
予想だにしない突然の転倒だったが、そこは範馬勇次郎。
勇次郎は空中で当たり前のようにバランスを取ると、なんとムーンサルトも加えて華麗に着地してみせる。
物音1つとしない着地音・・・。
「ったく・・・・。今日は厄日だぜ・・。」
今にもキレそうな顔つきで、勇次郎は着地の態勢を解除してゆっくりと顔を表に上げる。
いつもの勇次郎ならばこんな何も無い道で転ぶはずが無い。
つまり何かあったから転んだのだ。
勇次郎が思わずびっくりしてしまうものが、曲がり角に『座っていた』から・・。
「この自転車・・。まだ壊れてねえか・・。」
そして勇次郎は自分よりも遠くに飛んだ自転車を不機嫌そうに直すと、自分が転倒した原因である
『何故か正門横の曲がり角で座っていた少年』に、トラウマが残ってしまうくらいの威圧感を漂わせながら
――――怒鳴りつける!!
402 :
オーガの鳴く頃に:2006/03/14(火) 23:35:48 ID:EeDsb7Tp0
「おい!!ガキ!!てめえは何でそんなところにいるんだ!学校はどうした!!」
怒鳴りつけているが、何故か口調が学校の先生になっている勇次郎。
どうやら微妙に染まってきたようである。
それにしても、あの勇次郎に怒鳴られているのに悲鳴1つ上げないとは・・・。
中々肝が据わった少年のようだ。
さすがの勇次郎もそんな冷静すぎる少年に多少の違和感を感じたのか、今度は少し質問の内容を変えて話しかける。
次の言葉を紡ごうと大きく口を開く勇次郎。
心なしか彼の顔が笑顔に変化しているのは気のせいだろうか?
ともかく冷静すぎる少年に、勇次郎は先程と少し違った形式の質問をする。
「おい!てめえはそんな所で何をしていたんだ?」
最初の質問は特に答えが返ってこなかった。
――――今回の質問は勇次郎の口が開き終わると同時に返ってきた。
そう、まるで最初からその質問を待っていたみたいに・・。
「うん・・・・。人が死ぬのを見守ったから・・・。じゃ、ダメかな?」
無邪気な笑顔でそう答える少年。
しかしそんな笑顔とは裏腹に、少年の顔はまるで『今出来たかのような火ぶくれ』で埋め尽くされていた・・・。
403 :
オーガの鳴く頃に:2006/03/14(火) 23:52:29 ID:EeDsb7Tp0
どうもしぇきです。
最初の数レスは題名が違ったのは間違えです。
変更するのを忘れていました。
>332さん
似てますね。多分影響がかなりあるからでしょう。山本ヨーコ然り・・。
>344さん
どうもです。そう言っていただいて幸いです。
>353さん
そうですね。色んな漫画とのコラボは出来そうです。その際は絶対に長くなってしまいますが・・。
>386さん
動いているといわれるのは嬉しいです。ありがとうございます。でも原作の性質の為か、自分の実力では毎回中篇ぐらいになりそうですね。
>NBさん
原作ではそれ程伸ばさなかった所が、NBさん風味に味付けされて展開されるのが面白い!
ズウェンの目を譲り受けた話も、原作だと意外とすんなり終わりましたが、これは気になります。
>サマサさん
ドラえもん:こうなると気になるのはバキプレイオスの必殺技ですね。
天上天下系の技が、どんなネーミングになるのか?
少なくとも、語呂が良い名前にならないのは目に見えてますが・・w
ネオ・ヴェネツィアの日々:新連載お疲れ様です。
一話完結ということは、ヤムチャはこれっきりですかな?
例えば、様々な心の傷を持った漫画キャラが出てきて色々胸のうちを開けていく
独白系になるのでしょうか?
404 :
オーガの鳴く頃に:2006/03/15(水) 00:00:54 ID:EeDsb7Tp0
>ふら〜りさん
なるへそ。タイムワープですか。原作と全く同じ展開以上に悲劇的なのが笑えます。
物体は真空中で加速していくから、46億年前に連れて行かれたカーズは今どこにいるんでしょうな。
エイリアン2とか、ジェイソンXみたいな展開になったら面白いのですが。
>487さん
日常風景を描くのが一番難しそうですね。でも487さんのSSはそれがとても面白くて。
メガテンはファミコンとかスーパーファミコンのしかやった事がないので、デビルチルドレンの事は分かりませんが、
そういったキャラで日常風景を描くという衝動にかかる事が、その漫画のキャラたちは原作では如何に厳しい戦いを
強いられているのが想像できますね。
>見てた人さん
この勢いだと、カイジと犯人の一騎打ちまで減らされそうな感じですね。
兵頭の抜け道が物凄く気になりますが。推理モノは何も考えないでその展開を楽しむ類の人間のなので
さっぱりですが、聞いたときには思わず自分が関心している姿が思い浮かびます。
では失礼・・・。
405 :
作者の都合により名無しです:2006/03/15(水) 05:56:13 ID:8+Ir21zu0
お疲れ様ですしぇきさん。
校長、あの勇次郎に見回りなんぞ指示するとはwいい具合に勇次郎がこなれている。
勇次郎の少年を見る目線が、口調とは裏腹に優しくなっている気がしていいですね。
しぇき市、いつも気合の入った作品お疲れ様です。
裕次郎が勇次郎っぽくない、というところがこの作品の魅力ですね。
どっか優しげな勇次郎はきっとバキと梢を暖かく布団の横で見守ってた
勇次郎を彷彿させます。どんな終わり方になるかわかりませんが頑張って下さい。
勇次郎がキレて皆殺しエンドってのもいいな
しぇき氏とサマサ氏の最近の創作意欲には頭が下がる。
しぇき氏、オーガにフリーザ野球に読みきりにと八面六臂の活躍ですね。
これからも期待してますよ。
確かに、オーガがオーガらしくないけど、そこがいい。
408 :
十九話「七英雄」:2006/03/15(水) 21:42:23 ID:XAWlChJA0
渾身の一太刀は紙一重のスウェイバックでかわされ、剣圧は鎧に深い傷を残した。
全ての力を使い果たし倒れこむグレイ。
ノエルは見た、宿敵と同じ眼差しがこの男に宿っていたのを。
だが目は同じでも本質は違う、この男は自分の目的のためなら神も悪魔も切り捨てる。
真の仲間を持つ事は無い、仲間を必要としているのは一人では力不足なだけ。
ならば力を与え、目的が同じとなれば必ず大きな戦力となる。
我等、「七英雄」に再び繁栄を築き上げる重要な鍵。
だが素質はあっても所詮は人間、まだ利用するには値しない。
どうするか・・・それはグレイが真に目覚めてから考える事にしよう。
今はまだ旅に付き添ってやればいい。
傷薬をグレイの傷に塗り、治るのを待つことにしたノエル。
治るまでの間に少しでも強くなるため外で魔物を斬りに出かける。
そこへ声が掛かる。
「おい、ノエル・・・。」
その声はノエルも良く知っている男の声、醜悪な姿とその性格の悪さから身内からも嫌われている男だ。
「なにか用ですか?クジンシー。」
クジンシーと呼ばれた声の主は、ノエルの目の前に音も立てずに現れた。
まるで悪霊か何かの様に、だがその姿を見たら悪霊と思っても可笑しくは無い。
体を纏っていたマントと思われた布切れは直接彼を包み込んで・・・と言うより、
「一体化」しているのだ、さらに破けた所から見える肌は異質と証するに相応しい質感を持っていた。
マントだけではなく彼の持つ剣も実に不気味な物であった。
刀身に変化は無い、だが剣の中心にはなんと顔の様な物が張り付いていた。
悪趣味な装飾かと思いきや大口を開け、唾液を含んだ口からは糸が引いている。
布の一部を顔に巻きつけマスクの様にしてはいるが、その上からでも醜い素顔が見て取れる。
「貴様、何故その姿のままなのだ。その気になれば[鎧]の復元も出来るだろうが・・・。
何故剣だけに留めている。」
409 :
十九話「七英雄」:2006/03/15(水) 21:42:55 ID:XAWlChJA0
「私は人間の姿を保ちたいのですよ、クジンシー。こちらの姿の方が警戒されませんからね。
その為にも無理な同化の術は避けたいのです。」
もちろん、クジンシーの様に醜くなるのが嫌だ、とは言わないノエル。
「人間の姿だと?そんな物は無用だ。俺達が一つになる時までに力を取り戻す方が優先だからな。」
そう言うと彼の手に禍々しい妖気が表れる。
引き裂かれた無表情な少女の顔に無数の怨霊が轟いていた。
「俺の力はここまで回復したぞ、向こうの世界の伝承法も限界が近いはずだ。
以前より強力な力を手にして次こそ皇帝を滅ぼす!」
彼の手に宿った少女の顔が苦痛に喘ぐと共に、周囲に隠れていたモンスターが突然倒れていく。
倒れた魔物の体から何かが浮き出て行く。
空中へと舞い上がるそれを苦痛の表情を歪めぬまま吸い取っていく少女。
すい終わってようやく安息が訪れたのか、苦痛から開放され表情が元に戻ると彼の中へとその姿を隠した。
「フ・・・人間の姿で情報を集めていればいい事もあります。
あなたのベースの悪霊タイプのモンスターはクジャラートのエスタミルにある墓場に大量にいますよ。」
それを聞いたクジンシーは目の色を変えて話しに食いついた。
余程魂を欲していたのであろう、マスクに包まれた顔は狂気に満ちていた。
「本当か?それは楽しみだな。俺は今すぐそのエスタミルとやらに向かう。
ワグナスがまだ再生も間々ならない今、地上で混乱を起こす訳にもいかんからな。」
そう言うとクジンシーは姿を消した、どうやら真面目に力を付けろと言う事らしい。
問題は無い、グレイが戦力にならない時は吸収してしまえば十分な力がつく。
秘剣、月影の太刀も自分の物に出来るのだ。
だが焦ってはならない、本体と同化すればどちらにせよ我々の技となるのだから・・・。
「八英雄・・・語呂が悪い様な気がしますが良いでしょう。
彼に私達に相応しい力が有ったらの話ですがね。」
こうしてイスマス城での夜は過ぎていった・・・。
410 :
十九話「七英雄」:2006/03/15(水) 21:43:34 ID:XAWlChJA0
「どこの海も魔物だらけじゃねぇか・・・食えるのかこいつ等?」
硬い甲殻に身を包んだ魚類系の魔物を手にし、ホークは訝しげにそれを見つめた。
ゲラ=ハが借りた船は漁師の物だったのだ。
最初は海賊を助けるために貸すのに躊躇った漁師も、
ゲラ=ハの熱意と町に住むゲッコ族達の説得に条件付きならば、という事で折れたのだ。
ゲッコの民の中にはケンシロウに通じている者が居たので、ゲラ=ハに危機を知らせ、
事前に船を取るように頼んでいたのだ。
ゲッコ族の村長も助けてくれた礼にと一緒に頼んでくれた。
ただ、助けるための条件が漁の手伝いだったのでこうして釣りをしていたのだった。
「いいねぇアンタぁ!海賊やめて漁師になっちまいな!」
周囲の漁師とは釣りを通じてすっかり息が合っていた。
ゲラ=ハの方もどうやら大量の様だがケンシロウだけは何故か釣れない。
「むっ!」
遂にケンシロウに掛かったかと誰もが思った、だが・・・
大物ではあった、ただ魚では無く、海底の岩盤を釣り上げたのだ。
何故糸が切れないのか不思議に思っていたら本人曰く。
「糸を闘気で包み、強度を数倍まで引き上げた、もちろん釣り針と餌もだ。」
そんなんに包まれた釣り餌に魚が掛かる訳無いので、網に大物が引っ掛かったら引き上げる役に回される。
ホークはアミバの船で聞いた話でケンシロウが暗殺者だと分かっていたので心の中では、
「気配消せよ。」
とか思っていたが言わないでおいた。
釣り餌まで気配を消しそうだったから。
そうこうしている内に日も暮れてきたので港へと戻っていく。
船室で一人、ケンシロウは悩んでいた。
自分の体の限界に。
酷使し続けてきた肉体は既に悲鳴を上げている。
怒りで肉体を鋼へと変化させ、愛と悲しみは明鏡止水の心を産んだ。
だが基の肉体は、一般人を凌駕しても達人の世界では普通以下であった。
そんな肉体を無理に強靭な打撃に晒し続けれたのだから当然と言えよう。
411 :
十九話「七英雄」:2006/03/15(水) 21:44:55 ID:XAWlChJA0
「ラオウの様に逞しければ・・・トキの様に相手の技を流せれば・・・。」
肉体への負担を省みる事無く戦い続けた代償は、破滅。
その時は少しづつ近づいていった。
これ以上、無想転生の様な限界を超える技を使えば確実に死ぬ。
肉体の回復を早くする秘孔を突きながら体を持たせるしか無い。
そして、旅の志を共にする仲間が必要だ。
だが北斗神拳に2対1の戦いは無い、幾ら死の淵に居ようともそれは曲げられない。
「また、一人旅だな。」
船を下りた後の支度を整えるケンシロウ。
今までも一人で何とかやってこれた、これからも・・・
そう思った矢先に、ドアが開いた。
「おう!邪魔するぜ。」
ノックもせずにいきなり入ってきたのはキャプテン・ホークであった。
何の用かと思い、尋ねようとするがそれより速くホークが用件を持ち出した。
「アンタ、俺達と来る気は無いか?」
ホークは感づいていたのだ、ゲラ=ハと二人でディスティニィストーンを集めるのは不可能だと。
当然である、例えこの先の戦いで手に入ってもまたアミバの様な強敵が現れた時、殺られる。
そのためにも強力な戦力が欲しい、理想とするならば、リオレウスを一人で倒せる様な・・・。
見事に当てはまっている、しかも上等な剣を持たないと不可能と呼ばれる「尻尾の切断」を素手で行っている。
この男ならば間違いなく戦力に・・・
「断る。」
早々に断られてしまった、だが食い下がらねばこの先は乗り越えられない。
「海賊っても人殺して物奪うだけが仕事じゃねぇよ。それに今は海賊じゃねぇ、
ちょっとした探し物をしてんだが見つからねぇんだ。多分アンタみたいな強い奴がいないと行けない場所にあ・・・。」
言葉が終わる前にケンシロウは立ち上がり窓から外を見つめる。
もう少し粘ってみようとするホークに意外な返答があった。
「俺と戦って勝てたら、その話に乗ろう。」
412 :
十九話「七英雄」:2006/03/15(水) 21:45:43 ID:XAWlChJA0
なんか漁船なのに個室に窓と豪華な感じになっちゃったけどまぁいいや、とか思ってる邪神です。
さて、ケンシロウVSホーク、結末はどうしよっかな。
カイル達どうしよっかな。
グレイどうするかな。
閃きだけで進むのはSSもロマサガもきついですな。
術覚えないと回復って集気法だけやん・・・・。
でもミンサガでは集気法の替わりに練気って技がありますがこれも状態異常治らない・・・。
しかし!回復量は多めで加撃が発生すると攻撃技になりつつも回復できる便利技!
ただ技P消費激しいし奥義が回復量が少なくなって与えるダメージは100以下っていう発動すると返って困る技。
普通に出てくれ。
〜今週のSAGA(バキじゃない)講座のような質問箱〜
260氏 ノエルは2に出てる敵で人気ナンバーワンだとか。
消防の頃は良くノエルの真似して「月影!」とか言いながら氷を口から噴出してました。
だってあれ口から吐いてる様にしか見えないもん。
しぇき氏 そうそう、リング際まで引き付けてロープの反動を利用した(ry
413 :
作者の都合により名無しです:2006/03/15(水) 21:54:31 ID:8+Ir21zu0
お疲れ様です邪神さん。
ありゃ、七英雄本格的に動き出しましたかw
こりゃロマサガ1と2のラスボスが合体して・・って展開ですか?w
破壊するものも現れたりして。七英雄やサル達にケンシロウの技は利くのか?
414 :
オーガの鳴く頃に:2006/03/16(木) 00:49:02 ID:WEypgQhJ0
<一日目・その7-(1) 産声・1>
現在時刻:午後13:05 場所:村内の学校周辺
「死ぬのを見守ってたからぁ?てめえ・・。何者だ?」
勇次郎は顔中が火ぶくれで埋め尽くされている少年の言葉を聞くや否や、本当に食って掛かりそうになる。
まあ、それも当たり前であろう。
何しろ今の少年の発言は、『自分があの焼死体の関係者だ』という意味に取られても仕方が無い発言だからだ。
しかし当の少年はそれ以上語ることなく、その場にしゃがみながら地面にある何かをいじっている。
「てめえ・・。聞いているのか!!」
無視しているとも取れるこの少年の無機質なリアクションに、勇次郎の顔つきが急変する。
『自分が常に世界の中心にいると思っている勇次郎』にとって無視という行為は最大の挑発。
もちろん、こらえ性のない彼の怒りのバロメーターは全開にした蛇口の如く一気に吹き出て・・・、
「貴様ぁ!!」
――― 一秒もしない内に爆発した!!
怒りに任せる勇次郎の背後から、常人ならば直ぐにでも発狂してしまいそうな威圧感が吹き出ていく・・。
だが少年はそんな勇次郎の反応を見てもピクリとも動かない。
「ん〜・・、ぬぬぬ・・・。」
そして遂に怒り以上の憤怒まで至った勇次郎は、未だに無視を決め込む少年の胸倉を掴むと、
「最後の警告だ!」といわんばかりに耳元で先程と同じ事をもう一度怒鳴った!!
415 :
オーガの鳴く頃に:2006/03/16(木) 00:50:03 ID:WEypgQhJ0
「てめえ!何者だ!!!」
静かな田舎に鬼の怒声。
あまりの声の大きさに生徒達が一斉に校舎の窓を開ける。
一気に窓辺に群がる生徒達。
どうやら勇次郎が犯人を見つけたと勘違いしているようだ。
「勇次郎先生〜〜!犯人がいたの〜〜?」
勇次郎が先程まで居たクラスの女生徒が大声で勇次郎を呼ぶ。
しかし今の勇次郎は怒り以上のものに支配されているせいで、女生徒の言葉を軽く無視してしまう。
「答えろ!!ガキがぁ!!」
もう一度辺りに鬼の怒声が響く。
ここまで行くと、もう彼は止まらない。
怒りに身を任せて少年の胸倉を更に締め付け始める。
―――――――――――が・・・。
ここまで激昂した勇次郎をあっさりと止める一言が、先程の女生徒の口から言い放たれる!!
「先生〜〜!!誰に向かって怒鳴ってるの〜〜?誰もいないのに〜〜!!」
416 :
オーガの鳴く頃に:2006/03/16(木) 00:50:53 ID:WEypgQhJ0
その瞬間、思わず女生徒の方に振り返る勇次郎。
無論、少年を殺すつもりで締めていた胸倉への力を緩めることなく。
「てめえ!!こいつが見えないのか?」
「へ・・・。辺りには先生しかいないけど・・・。ねえ、みんな?」
女生徒の言葉に事の成り行きを窓際から見守っていた生徒達も一斉に首を縦に振る。
信じがたい事実に、思わず自分の目を疑う勇次郎。
(じゃあ・・。今、俺が掴んでいる胸倉の感触は一体なんなんだ?)
確かに感じる胸倉を掴んでいる触感と、この目に入る水ぶくれで埋め尽くされた少年の顔。
否定しようが無い自分の五感に、勇次郎は思わず視線を横に外す。
(なんだ?この違和感は・・。くそ!!)
そして・・・、自分が生きているという意識を確認した勇次郎は、もう一度少年の方に振り返る・・・。
――――すると・・。
目の前には誰もいなかった・・・。
しかし今の今まで勇次郎の近くに誰かがいたという形跡はある。
なぜなら、勇次郎の手の中には確かに少年が来ていた服が残っているから・・。
417 :
オーガの鳴く頃に:2006/03/16(木) 00:57:53 ID:WEypgQhJ0
<一日目・その7-(1) 産声・2>
現在時刻:午後13:10 場所:村内の学校周辺
「よくわからないけど〜〜!!先生が学校中にいないと心配だから早く返ってきてよ〜〜!!」
『勇次郎の行動が理解できない』と思った先程の女生徒は、それ以上追求することなく教室の奥へと戻っていく。
―――それに釣られて次々と教室の奥へ戻っていく他の生徒達。
それは都会の喧騒が、また田舎の静寂に変わっていく様を表すような瞬間だった・・・。
「ちっ・・。なんなんだ・・・。一体・・。」
目の前にいたはずの少年が突然消えてしまった事に些か面を食らってしまった勇次郎は、思わずその場に立ち尽くしてしまう。
勿論、彼の頭の中ではこの一連の流れは一切理解出来ていない。
でも確かに自分の手の中には、少年が着ていた服が握り締められている。
―――服を握り締める手の中から赤い血が流れ落ちてくる・・・。
おそらく自身の握力のせいで、手のひらの皮膚を傷つけてしまったのだろう。
しかし勇次郎は何かを考え込むように下を向きながら、その手を決して緩めようとはしない。
悔しいのだろうか?―――――自分の理解できない現象を目の当たりにして・・。
それとも嬉しいのだろうか?――――――自分の理解できない現象を目の当たりにして・・。
それは私には理解しかねるが、1つだけ確かな事がある。
そう、この物語がこれで『始まりの産声を上げた』という事だけは・・・確かに・・。
418 :
オーガの鳴く頃に:2006/03/16(木) 01:00:10 ID:WEypgQhJ0
――――気持ち良い風が勇次郎の周辺を吹き抜ける。
風の吹く先は学校より東・・・。――――この村を囲んでいる山々の方角だ。
6月なのに真夏のように熱い今日の日を勇次郎はしっかりとかみ締めながら、
手の中にある血で染まった少年の服を吹き乱れる風の中に放り投げた。
――――もう一度、勇次郎の周辺を優しい風が吹きぬける・・・。
そしてその風は、血に染まった少年の服を空高く『舞い上げる』と、
学校の裏門にある焼却炉の中に吸い込まれるように運んでいった・・。
水ぶくれに埋め尽くされた顔の少年の服が・・、ゆっくりと燃えていく・・・。
419 :
オーガの鳴く頃に:2006/03/16(木) 01:09:51 ID:WEypgQhJ0
どうもしぇきです。
今回は短いですが、これで勇次郎が少しだけお話の中に関わった事になります。
>405さん
校長があんな態度を取れる理由は、そのうちわかります。
まあ、くだらない理由です。本当に・・。
>406さん
このSSの勇次郎は原作よりもキレテいるかも・・。
でもその分、教卓とかが犠牲になっているお陰で、生徒は犠牲になっていないんでしょうね。
>407さん
オーガらしいが個人的には難しいですね。天上天下唯我独尊で傍若無人。そして口よりも早く手が出る。
これが個人的な印象なのですが、やっぱり人によって感じ方が違うかな。
後、個人的にはそちらを印象ずけつつ、学校という教育の立場に微妙に空回りしている勇次郎を書きたいんですが
力量不足か上手く行きませんね。
>邪神さん
クジンシーがゲーム以上にかませになっているのは気のせいでしょうか?
そして所変わって、ホークvsケンシロウ。
さすがにヒデブーになるような業は使わないでしょうが、己の拳だけで世紀末の覇者となった
ケンシロウにホークは勝てるのか?ゲームと漫画の垣根を越えた見所ですね。
では失礼・・。
>邪神さん
ケンシロウ、七英雄の一人くらい倒してくれるのか?ホークに負ける事は無いと思うが。
ロマサガ編のラスボスクラスだけでなくテイルズのラスボスクラスも出るのかな。
そうなったらごちゃごちゃになるだろうけどw
>しぇきさん
確かにこの世の人間で勇次郎の殺気をシカトし続けれる人間はいないでしょうね。
なんか女生徒に注意されている勇次郎が間抜けでかわいい。本当に先生なんだな
でも、ここまでやっと「話が産声を上げた」ですかw
しぇきさん乙華麗です。
勇次郎の人間味あふれる接し方と意外な展開が楽しいです
最後のホラーっぽいひきも楽しいです。
>>358 あれから、どれくらいの時間が経ったのだろうか。数時間か、それとも数日か。
マリネラ宮殿内の病棟。その一室のベッドで、D=アーネは目を開いた。
体が重くて痛い、動かない。そういえばこの国に来てから二度目の目覚めだが、
二度とも手ひどくやられてぼろぼろになって、死んだような眠りからの目覚めだった。
いつも宇宙レベルの強敵とハデにやり合ってるから、負傷することには慣れている。が、
これほどの立て続け重傷はさすがに珍しい。
身に染みて解った。この地球という星には、日本以外にもとんでもないのがゴロゴロして
いるらしい。この星の制圧は、やはり並大抵のことではないようだ。これでは陛下が……
「! へ、陛下……痛っ!」
D=アーネは勢いよく身を起こし、その痛みで顔をしかめ体を縮めた。
自分で自分の体を、そっとさすってみる。いつの間にか病衣に着替えさせ
られており、丁寧に手当てがされ、幾重にも包帯が巻かれていた。そういえばここ、
随分豪華な病室のようだが一体どこだ?
「あ……そうか。あの時、この国の王様が。えと、確かパタリロ=ド=マリネールって」
「そう、ぼくだ」
D=アーネの声が聞こえたのか、ノックもせずにパタリロが入ってきた。
「気がついたようだね。医師たちが言うには体組織の基本構造が地球人に非常に近い
から、おそらく地球人と同じ処置で大丈夫だろうということだったが」
「……大丈夫みたい」
「それは良かった」
パタリロはベッドの脇の椅子に腰掛ける。
「さてと。実は、各国には秘密だが、我がマリネラには多数の異星人が住んでいる」
「え?」
「一般の地球人に紛れているわけではなく、居住区を区切ってのことではあるがね。
気候も治安も良く、国王もこの通り人格者なものだから、出稼ぎとかがよく来るんだ。
たまに来る遭難者も保護してるから、今はもう何百人もそこで暮らしてる」
当たり前のようにパタリロは語る。実際、ここマリネラにおいては当たり前なのだ。
「君たちみたいな、外見上は地球人と見分けがつかないなんてのはむしろ小数。普通の
地球人から見たら、グロテスクなバケモノでしかない人たちが、我がマリネラでは
仲良く暮らしてるんだ。だから、君たちが移住してきたって何の問題もない」
「い、移住? ちょっと待って、なんでそれ、そのこと、」
「君が連れてきた犬君に聞いたんだ。治療の為にも君たちのことを知る必要はあったし、
今後の為にもね。そう、その今後の話だ」
パタリロはD=アーネの目を見つめて、真面目に話した。
「さすがに、一国丸ごとは無理だけど。でも、君の国王陛下とその武官文官、百人ぐらい
なら受け入れられるよ。丁度、区画の拡張は検討してたところだし」
「! そ、そ、それじゃ……陛下が……この、地球に……来られるの?」
「国際親善、ならぬ星際親善だ。互いの発展の為にも、この国の王として歓迎するよ」
パタリロが手を差し出した。その手と、パタリロの顔とを交互に、何度も何度も
見て、それからD=アーネはパタリロの手を強く握った。
「あ、あ、ありがとう! いや、ありがとうございます、王様!」
「はははは。いや、実際君とヒューイットには助けられたわけだし」
その言葉を聞いて、D=アーネは顔色を変えた。
「そ、そうだヒューイットさん! ヒューイットさんはっ!?」
D=アーネが目覚めた病室から少し離れた別の部屋。そこに、ヒューイットが眠っていた。
そっとドアを開けて入ってきたD=アーネは、寝息を立てているヒューイットを
起こさないよう、静かに近づいていく。
パタリロが言うには、「普通の人間なら間違いなく死んでるところだったそうだ。ま、
あいつも救いようのない重度変態的少女愛好家ではあるが、あれでもCIAの
超一流エージェントだからな」ということらしい。
D=アーネも、ホテルで眠っていた時のことは、犬1号からも話は聞いている。確かに、
まだ十三歳の自分に対して真剣に恋するというのは、大人の男性としては異常なのかも
しれない。
でもこの人は、軍隊が攻撃を躊躇するような相手に対して、何のためらいもなく向かって
いったのだ。一度殺されかけ、辛うじて助かった直後にも、魔法の支配力から脱してまで
その相手に向かっていった。到底敵わないってことは、充分承知していたはずなのに。
「……私はずっと陛下のことが大好きだから、見返りは期待できないって言ったのに……」
ヒューイットのそばに立ち、見下ろすD=アーネ。生気の無い、青白いその顔色が、
今のヒューイットの衰弱ぶりを示している。
こんなになりながらも、結局カーズには掠り傷一つ負わせられなかったのだ、彼は。
「私なんかの為に……地球の男性って、みんなそうなの……?」
D=アーネは身を屈めながら目を閉じて、心の中で陛下に詫びた。これほどの恩を
受けた以上、口先だけのお礼などでは済ませられない。ヴァジュラムの、いや
自分自身の誇りにかけて。だから、感謝のしるし……
…………ちゅ……
『ごめんなさい、陛下。でも……許して下さいますよね』
数秒後、D=アーネは吐息の糸を引きながらヒューイットの顔からそっと離れると、
そのまま部屋の出口に向かった。
ドアを開けて、振り向く。ヒューイットはまだ、変わらず寝息を立てている。
「落ち着いたら、一緒に遊園地に行こう。……ね、『お兄ちゃん』」
D=アーネは部屋を出て、静かにドアを閉めた。
パタリロたちはまだ当分入院していた方がいいと言ったのだが、D=アーネは
聞き入れなかった。
「一刻も早く、このことを直に陛下にお伝えしたいので!」
と言い残し、来た時と同じように犬1号を体に縛りつけ、太平洋に飛び込み泳ぎ出した。
ジェット機を出すからと言いかけたタマネギたちの目の前で、マッハ二桁に乗るんじゃ
ないかって速さで、D=アーネは水平線の彼方へと消えてしまう。
来た時と同じように、いや、来た時以上のスピードで、D=アーネは太平洋を
突っ切っていく。ひとたまりもなく犬一号は気絶するが、D=アーネは元気元気。
『これで陛下は助かる、助かる、助かる、助かるんだっっ!』
魚雷のように泳ぐD=アーネの歓喜の涙が、波飛沫の中にどんどん溶けていった。
その頃、日本のD=アーネ隊基地では。
「もしもし、もしもし犬1号! 犬1号! 応答しろってんだバカ犬っ!」
「どうだ?」
「全然ダメだ。あンの犬畜生、何を呑気に寝こけてるんだ。ったく!」
「でもさ。通信が繋がったら、このことをD=アーネ様に言わなきゃならないんだよな」
「そ、そりゃそうだろ」
「……D=アーネ様、陛下をお救いする為にあんなに傷だらけになってきたのに……」
「言うなっ!」
D=アーネ隊の秘密基地で、下っぱたちが重苦しい空気に包まれていた。ヴァジュラム
本国から届いた情報を、D=アーネに伝えようとして伝えられなくて。
そして伝えた後の、D=アーネのことを考えて。
「解ってるだろ。悔しいけど、俺たちには……何もできやしないんだ」
いやぁ好きなんです、この「お礼のしるし」。男の子側が気絶してるのとしてないのとで
また違った味わいがあり、額・頬・唇の使い分けで互いの立場や新密度が表現され、その
使い分けが面白かったのは「GO! WEST」って漫画の……(以下膨大な量につき略)
>>487さん
え、女神転生? 中島と弓子は? 今後ともよろしく? しか解らず歳がバレる私ですが。
未来ちぁんはすご〜く王道な、基本通りの、故にツボを押さえた世話焼き幼馴染み系っ子
ですな。こういう、バトルも何もない日常を描くのって難しいですよね。私も精進せねば。
>>見てた人さん
またしても「殺され方」が普通ではない。密室とかアリバイとか以前に殺害方法そのもの
が異常。でもそんなの犯人特定の手がかりには……なる、のかな? 解らないっ。それと、
兵藤が兵藤らしいです。複雑な精神的サディスト。その読みを越え打ち破れ、カイジっ!
>>サマサさん
いろいろ考えさせられ、というか思い出されました。あの頃の私と今の私……まだ、諦め
きってはいないけど……なんて。なのでヒーロー云々より、もっと私の印象に残ったのは、
>かっこ悪いなりに、かっこよかったよな・・・
これです。かっこ悪い「からこそ」や「けど」でないところがいい。じんわりと好きです。
>>しぇきさん
背広ネクタイ……に、似合わない。先生っぽい言動は板についてきたけど、その出で立ち
は凄い。そんな彼には及ばずともなかなかに常人離れした連中が出てきてましたが、対面
しましたね遂に「オカルト」と。今まで遭遇したことの無いであろう相手に、どう出る?
>>邪神さん
冷たいチームと熱いチームの同時進行ですな。あっちもこっちも重い空気が漂ってる中で、
戦力的には見劣りしてないのにただ一人軽い空気を放ってるホークが救いというか清涼剤。
さすが主人公といったところか。次回の戦いではそんな彼の、強さと漢気が見られそう。
>>テンプレ屋さん
おつ華麗さまですっ。他の名作の数々と並べて自作タイトルを載せて頂けるというのは、
嬉しく誇らしく、それだけでシアワセな気分になれまする。感謝!
428 :
作者の都合により名無しです:2006/03/17(金) 05:43:25 ID:0kSLi4ja0
ふらーりさんお疲れ様です。
最強のうわさもあったD=アーネが、こんなほのぼのとしたキャラだというのを
このSSではじめて知りました。もう、後1、2回くらいかな?また頑張って下さい。
しゃしゃしゃ
と異様な音が響く
ーーー 鳴き声か?いや
それは巨大カマキリが口を作るパーツを器用に動かす音だった。
要するに舌なめずりである。
目の前の一茶と刃牙を交互に捉えるように、三角形の頭が不気味に揺れる。
ーーー おいおい、喰う気かよ
刃牙がイメージで作り出したカマキリの確実に倍はあるカマキリだ。
いや、カマキリというには少し異常な形状をしている、カマキリというには少し胴が短く、羽も未発達だ。
「ひッッッ・・・・」
一茶は驚いて声も出ない。刃牙はといえば、駆け出していた。もちろんカマキリに向かってである。
驚愕してはいた。正直声も出ない。しかし不思議な感情が体を支配していた。
ーーー 何だ、いるじゃないかよ巨大昆虫
昨日尻を引っぱたいた、いじめれれっこのルミナ少年は巨大な昆虫は存在できないと言っていた。
しかし、いた。
勇次郎以外と闘う気など無いし、この野生動物を痛めつける気も無い。
本来それをしないためのリアルシャドウなのだが、今はそうもいってはいられないだろう。
常識外れの化け物がいて、人間を喰らおうとしている。
そして自分には力がある。闘う理由には充分だ。
人を守るのだ。
一茶を追っていた巨大カマキリも弾丸のような勢いで近づいてくる何かに気が付いた。
鎌を構えなおし、飛び込んでくる獲物を捕らえようとする。
だがその獲物はカマキリの予想よりも速く、攻撃的だった。
ーーー カマキリは守勢に回るともろい、受けが下手だ
地上で恐らく彼のみが知る知識。
刃牙はカマキリの懐に飛びこみ、頭の付け根にアッパーカット状にハイキックを叩き込み。
まだ腰が抜けたのかまだもたもたしている一茶見て
「さっさと逃げろ!!」
一喝して攻撃を続行する。狙いは外骨格の間接部。顎の下にある巨大な隙間。
其処へ貫き手を突き立て、肉をちぎり飛ばす。
ーーー 浅い、だが
鎌ではない右前脚の関節への足刀。
ぐらりとカマキリの巨体が傾ぐ。効いているようだ。
ーーー 次は ひだり…
巨大な鎌の横薙ぎが刃牙の思考を中断する。吹き飛ばされ、岸壁に激突する。
口内が切れてなじんだ鉄の味がする。
カマキリは巨体からは想像も付かぬ速度で刃牙に飛び掛り、追撃の鎌を振り下ろす。
ーーー あたるかよ
刃牙は跳び上がってよけ、先ほど穴を開けたカマキリののど笛へもう一撃。
さらにそのまま複眼に鉄肘を振り下ろす。
複眼は無残にひび割れ、カマキリが悶える。
刃牙優勢である。
余裕のある刃牙とは対照的に、一茶は何も考えられなかった。
会社に疲れてうたた寝していたら、不思議な声が聞こえてきた。
夢だと思って聞こえていた暖かい声に身をゆだねて、気がつくと森の中だった。
森の中には洞穴があって、中からエイリアンのようなカマキリが襲い掛かってきた。
気がつくとそのカマキリはいい体のお兄ちゃんと戦い始めたのだ。
わけがわからない。怖いことだけはわかった。
目の前にいる怪物たちは自分を簡単に取って喰らうことができるのだ。
逃げたいが逃げ方がわからない。
体の動かし方を忘れてしまった。
右足はどうやったら動くのだったか。
手は地面につくのだったか、それとも鼻を突くのだったか。
混線した思考は考えないのと同じである。
一茶の頭は停止した。
刃牙とカマキリの闘争も停止に向かっていた。
優位に立つ刃牙の攻撃の手が少し緩む。
「家の前で騒いで悪かった。」
カマキリは鎌で答える。
「退けよ…殺しはしないさ、ただ見逃してくれればいいんだ。」
人の言葉がカマキリに届くはずも無い、両の腕を振り上げ、襲い掛かってくる。
ため息をつき、刃牙は仕上げにかかる。
右前足を崩し、襲い来る左鎌の付け根を踏んで跳びあがり、のど笛から首の後ろまで指を差し込んで切り裂く。
カマキリはたたらを踏み、刃牙はとどめの手刀をカマキリの首に送り込んだ。
皮一枚のつながりを残して、カマキリの頸は切断され、首の上でぶらりとゆれた。
勝利を確信した刃牙はゆっくりと一茶に話しかける。
「こーんなところで何をやっているんだ、あんたは?」
可能な限りフレンドリーに、怯えさせないように。
だが、一茶の反応は
「ひっ、ひぃぃぃ」
無理も無い、エイリアンもかすむほどグロテスクな巨大カマキリに襲われた。
さらにそれを素手で倒す人間を目撃した。
その上、その人間に殺気の余韻たっぷりの姿で話しかけられれば怖がらない方がどうかしている。
「自殺しようとしていた人がそんなに怖がらなくてもいいでしょう?」
刃牙は苦笑する(事実はそうではないのだが)自殺しようという人間の生への執着におかしさを覚えたからだ。
「死ぬ覚悟もなしで死のうととしたのかよ?」
「いや、ひッ、うわぁぇ」
「そんなに怖がらなくても、とって喰ったりしませんよ」
「うわぁ、う、うし、うひろぉ」
「何をいってるんだかわかりませんよ、だいたい・・・」
刃牙が続けようとした言葉は後ろから響いてきた音によって遮られた。
しゃしゃしゃしゃしゃ
頭を落とされたはずのカマキリは、何事も無かったかのように立ち上がり、くるりと三角形の頭を揺らしていた。
−ーー これはリハーサルどうりにはいきそうもないな
首を切断されても生きている、さらにこれほどの短時間で再生できる生物など想像もつかなかった。
倒す術があるのかどうか。いや、息の根を止める術はあるのか。
とりあえず足手まといには消えてもらわねばならない。
「あんたはさっさと逃げろ。」
飲村一茶はその声に尻をはたかれた様に駆け出した。
カマキリがそれを追おうと身を乗り出す。
「お前の相手は俺だよ、 第二ラウンドだ。」
想どうもです。
前より改行その他に気を使ってみましたが、読み難いところなど教えてくださいませ。
戦闘場面って書くのが難しいですね。
下手な文ですが少しずつ改善していきますので容赦のほどをよろしくお願いします。
それと一応刃牙世界以外からのキャラが入ってくる予定です。
>思えば遠くに来たもんだ
怒りっぽい強者から逃げる弱者の姿はいつの世も面白いのだなと危ない感想を持ってしまいましたw
>NBさん
スヴェンの抱える、なんか苦さみたいなものが伝わってきます。
親になりきれない寂しさとかもあるのでしょうか。
>サマサさん
スパロボ知りませんが自分で遊園地をぶっ壊す防衛システム受けましたw
ウルトラミキサーがで合体するとは思わなかったです。
トイレと一緒のシーンを思い出してしまったw
>ふら〜りさん
カーズは宇宙をさまよう運命なのですね、もしかしてカーズの体のかけらが生物の祖先だったりしてw
>サマサさん
お客様www
>しぇきさん
勇次郎先生なんだか楽しそうですね。教師に向いているのかも(違t
>邪神さん
グレイが八番目とは!
七英雄とサルーインは手を組むのか、それとも敵対していくのか気になります。
>テンプレ様
ご苦労様です。
自分の未熟な文が職人さんたちの作品の間にあるのはなんだかうれし恥ずかしで変な気分です。
あとがきの一行目は感想どうもです。感の字が抜けてますた。
コテハン名乗るような感じになってしまったので念のため
超機神大戦番外編 「大惨事スーパーフール大戦〜遊園の銀河へ」最終話・今バカが遠い彼方・・・
―――ガンエデンとバキスレオイオスとの戦いは、熾烈を極めた。
その凄まじさはとてもではないがサマサの筆力では表現のしようがない。まさにバキスレ史上最高最大の戦いであった。
もしもこれを克明に書けたなら、ただそれだけで1スレ全部埋まり、次の1スレは全てサマサへの感想で埋め尽くされたで
あろう。そしてサマサは伝説となり、超機神大戦がスパロボ次回作に電撃参戦して初のミリオンセールス、さらにサマサの
ブロマイドは全国の女子中高生の間で爆発的な人気に・・・
「その辺でやめなよ、作者」
「ドラえもん、誰に話してるのさ?」
「まあいいじゃない。だけど・・・派手にやっちゃったねえ・・・」
ドラえもんは感慨深げに跡形もなく崩壊したゼストランドを見やる。
ガンエデンとバキスレイオス―――超越的な力を持った二つの存在がぶつかり合った末のこの結果だ。
イルイはガンエデンを操った反動か、すやすやと寝息を立てている。
そしてユーゼスはぼんやり座り込んでいた。
「わ・・・私のゼストランドが・・・絶望するのが私だ・・・」
その横では、やっと目を覚ましたトウマが同じく呆然としていた。
「バ・・・バイト先が消えた・・・バイト代が・・・あれ?そう言えばミナキさんは・・・」
「あ、そう言えばあの人、いつの間にかいないね。ん?あの紙切れは・・・」
落ちていた紙切れを拾う。そこにはこう書かれていた。
<トウマへ。愛しすぎたから別れましょう。楽しかったわ。いい女の子を見つけなさいね。
オーナーへ。金庫に隠していた売上金は私が回収して、退職金として頂きました。悪しからず
byミナキ・トオミネ>
「げ・・・外道め・・・なんてことをしてくれるのだ!明日から私はどうやって生活すればいいのだ・・・!」
「ダンボールハウスで暮らしたら?これからの季節なら凍死の心配もないだろうし」
非情なドラえもんの宣告に、ユーゼスはがっくりと肩を落とした。
「ふふふ・・・とうとうホームレスか。だが覚えておくがいい!いつか必ずユーゼス幕府を打ち立て、貴様らを倒す!
その日まで首を洗って待っているがいい、と捨てゼリフを吐くのも私だ!」
そのセリフに、唐突に拍手が巻き起こった。見ると、遊園地の客たちである。
「その意気だぜ、オーナー!」
「また遊園地立て直してくれよ!」
―――客もまたダメ人間であった。
「ありがとう、お客様方!ゼストランドは永遠に不滅です、と有名なコピペ(違う)を使うのも私だ!」
それに対して手を大きく振って応えるユーゼス。この分なら、彼は強く生きていけるだろう。
「・・・で、トウマさん。あんたはどうすんの?何だかあしたのジョー最終回みたいになってるけど・・・」
「はは・・・ほっといてくれ。バイト先も愛もなくした俺なんて、生きてる価値もないのさ・・・へへへ・・・」
「うっわあ・・・なんつうヘタレ振り・・・さすがにちょっと可哀想かも」
「ふう・・・仕方ないな。おい、トウマとやら」
アスランが本当に仕方なさそうに声をかける。
「バイト先を見つけたいなら、バルマー星のアルマナ姫を訪ねてみろ。多分だがお前とは気が合うはずだ。仕事先の世話
くらいならしてくれるだろう」
「バルマー星、か・・・。そうだな、新天地で生まれ変わったつもりで生きていくか」
トウマは立ち上がり、去っていった・・・。
余談であるが、アルマナ姫はトウマを一目見た瞬間大いに気に入り、騎士団の一員として召抱えた。そしてトウマはアルマナ姫
直属の騎士として着実に地位を築き上げていき、最後にはアルマナ姫と結ばれ、バルマー星の王として立派に故郷に錦を
飾るのだが、のだが、それはまた別の話である。
―――そして、イルイは。
「う・・・うん・・・!」
目を擦りながら身を起こし、遊園地の惨状を見て顔を青ざめさせた。
「そんな・・・遊園地が!誰がこんな酷いことをしたの!?」
お前だよ、と全員が一斉に心の中で突っ込みを入れた。
「おうち、なくなっちゃった・・・どうしよう・・・」
しょぼーんと肩を落とすイルイ。トウマやユーゼスには微妙に冷たい態度を取っていた一同も、流石に心が痛んだ。
見た目10歳以下でホームレス・・・あまりにも不憫だ。
―――と。
「イルイ・・・」
どこからともなく現れた女が、そっとイルイに寄り添った―――そう、見世物小屋受付嬢・ヒスアルレズロリ女、
アイビスである。
「行くとこないのなら、アタシんちに来ない?」
「え・・・いいの?迷惑じゃ、ない?」
「とーーーーーぜんよお!迷惑なんてとんでもなーーーい!まあ、眼鏡女とイヤミ女も一緒に住んでるからちょっと狭い
けど、それさえ我慢すれば快適そのもの!アタシも丁度職をなくしちゃったし、新しい仕事が見つかるまではずーーーっと
一緒に遊んだげる!」
「・・・うん!わたし、アイビスの家に行く!」
「うふふふふふふ・・・そうこないと。ハアハア・・・イルイたんと同棲・・・ハアハア・・・」
アイビスはイルイを抱っこして帰っていった。
「・・・ぼくらも帰ろうか、のび太くん・・・」
「うん、そうだね・・・プリムラ、フー子、一応聞いてみるけど、初めての遊園地はどうだった?」
そう聞かれて、二人は顔を見合わせる。そしてどんよりした顔で、異口同音に言い放った。
「もう遊園地は行かない・・・」
―――探していた幸せ(ユーゼス幕府、ミナキさんの愛、キャバ嬢としての道)はあんなに遠くにあったけど、
ぼくたちは幸せになった。
多くの物(ゼストランド、愛、職)を失ったけど、かけがえのない物(心通わせるダメ人間、新たなる人生、幼女)を得た。
「・・・西尾維新の名文を持ってしてもこの脱力感は拭えないね・・・」
そしてのび太たちは、メカトピアへの道のりを行くのであった・・・。
投下完了、前回は
>>351より。
番外編はこれで終わり。次回から本編に。
バキスレイオスは最後の最後、本編でも出てくる予定。
>>439の最後の行、のだが、が二つも並んでいるので、お手数ですがバレ様、訂正をお願いします。
>>新連載に関してレスをくださった皆様
ネオ・ヴェネツィア〜は一話完結の、それぞれ独立した話になります。スタイルとしてはゲロ氏の
「魔女」「茄子」に近いかもしれません。
概ね好評だったようで、ほっとしています。
>>しぇきさん
勇次郎なら相手がオカルトでも・・・!うーん、でも塾長でさえ呪いには殺されかけたしなあ・・・
勇次郎タイプにはオカルトは結構鬼門?
バキスレイオスの武装については、本編での再登場時に。
ネオ・ヴェネツィアの日々については、
>>様々な心の傷を持った漫画キャラが出てきて色々胸のうちを開けていく
こういうのが一番やりやすいですね、確かに。基本的には日常を舞台にした小さなお話、みたいなかんじで。
>>ふら〜りさん
D=アーネとパタリロがついに出会いましたか・・・頭脳と魔法で敵を倒せるか?
長編にも入って絶好調ですね。
一生懸命考えたセリフを好きだといってくださるのは、SS作者としての本望です(感謝)
>>鬼と人さん
やはり○ムチャはへたれ・・・あ、いや、一茶はヤム○ャじゃないですよね、失礼w
超生命体カマキリをどう倒すのか?楽しみです。
ウルトラミキサーで合体は、結構暖めていたネタです。
443 :
作者の都合により名無しです:2006/03/17(金) 20:16:20 ID:WpUUSfeg0
>鬼と人のワルツ
原作では賛否両論から賛成を抜いたような評価の対カマキリ戦。
しかし、文章にすると結構臨場感ありますな。巨大カマキリだし。
サラリーマン、何かのキーキャラになるんでしょうか?
>超機神番外編
本編なら少し困るけど番外編ならではの暴走をしておりますなw
プリムラたちにはガッカリの初遊園地になりましたが、
そのうちいい思い出になるでしょうな。
サマサ氏は本当に西尾維新好きだなあ。読んだ事無いけど、今度読んでみよう。
取り敢えず一言。
バキスレイオスって無茶苦茶語呂いいなあ。
普通にスパロボに混じっていても違和感を全く感じないくらい(w
ここを見ていたら私も書きたくなってきました。
仮題『ドラえもん のびたとリリカルマジカル全力全開』(+魔法少女リリカルなのは)
どちらもSF的要素があるから絡めやすそうです
グレイト!書き出しの妄言ぶりにほれたぜサマサの兄貴!
バキスレイオスの本編での活躍を期待してます
448 :
十九話「天の極星」:2006/03/19(日) 21:10:02 ID:ZNvLEzd80
普段より星の輝きが一層冴える夜のヴェイブ、
二人の男は人目につかぬジャングルを決闘場に選んだ。
明るすぎる夜、幾ら満月とはいってもこれはおかしい。
すぐに夜を照らす者の正体が判明する、一際輝く七つの星、北斗七星。
今から戦う者を従える星。
「言って置くが、本気で行くぞ。」
その言葉が口から漏れる前に、既に闘気が溢れている。
対するホークは、まるで覇気が無い。
既に勝負を投げ出しているのだろうか。
脱力した棒立ち状態、その体の手に頼りなく斧がぶら下がっている。
「ああ、俺もだ。」
言葉にも力みは無く、これから戦いに挑む姿とは思えなかった。
ましてこれが本気とまで宣言をしている。
何か策があるのか、それとも甘く見られているのか。
「安い挑発になど乗らん。本気を出さんなら貴様に待つのは死だ。」
ケンシロウは、気がつかなかった。
それが自分の兄の拳の極意に近いものであったのに。
「行くぞ、北斗剛掌波!」
先制攻撃を仕掛けたのはケンシロウ、竜をも屠る男の放つ闘気がホークに襲い掛かる。
ゆるやかに動き、最小限の動きでかわすホーク。
いや、動いたのではなく動かされたのだ。
「北斗壊骨拳!」
最小限とはいえホークは素人、そこから動きを派生させるのは難しい。
驚異的な移動で間合いを詰め、必殺の一撃が放たれた。
449 :
邪神?:2006/03/19(日) 21:11:30 ID:ZNvLEzd80
必殺の拳はホークの頭骨を粉々に砕く・・・筈だった。
拳はホークをすり抜け空を切った。
だが見失うほど速くは無い、残像を残している。
無意識に拳を打ち込む、当たらない。
何故だ?右か!左?
単調で完全に読めている筈だったホークの動きが、次第に素早く鋭敏に、
それでいてしなやかな物へ変わる。
気がつけば残像の数は無数に増え続けていた。
「これは・・・トキの動き?」
上半身はまるで無防備だがその足並みはトキの舞踊に酷似していた。
ここに来てようやく攻勢に出るのか、斧を振りかざす。
すると、闘気が体中から溢れ出す。
周囲を破壊しかねない暴力的なオーラ。
「こ、これはラオウの!?」
闘気の量は違えど、その質はまさしくラオウの闘気だった。
体中のオーラを斧に込め、渾身の一撃が放たれる。
「次元断!」
相手を斬りつけると同時に空間が歪む、歪みは更なる歪みを生み、
人一人包み込むほどの巨大な「穴」を作り出す。
紙一重で「穴」から避けるが斬撃は避け切れなかった。
「船の中で、北斗の男達の声を聞いた。」
斬り終わるとまた脱力し、斧を握る手から力を抜いた。
だがトキの様な脱力では無い、体全体を完全な無防備にしている。
戦う体勢ではなく話す体勢へとなった。
だが構えは解かずに話しに耳を傾けるケンシロウ。
「今のお前では一人で戦うのは死へと繋がる、お前は生き延びなければならん。
そう言うと、少し技を教えてくれた。」
450 :
十九話「天の極星」:2006/03/19(日) 21:12:06 ID:ZNvLEzd80
「そして、お前を昔のお前に戻すための強敵になってくれ。
それが北斗の男達からの伝言だ。」
言い終わるとホークは再び構える。
今度はトキの様に優雅に、それでいてラオウの様に豪胆に。
「そうか・・・行くぞ、ホーク。」
そう言うと闘気を集中させる。
目が澄んだそれへと変わる。
「そうかい、そんじゃ俺も行くぜ。」
斧を地面に突き立て、ファイティングポーズを取る。
そして、激突する。
技術を全く用いずに殴りあう。
血飛沫を撒き散らしながら全く退かずに殴りあう。
「ぐっ!」
ホークに勢いが無くなり始める。
体術は素人な上、相手は一流の暗殺者。
スタミナも筋肉の造りも違う。
遂に殴り倒されるホークに、ケンシロウは言い放つ。
「少しかじっただけでのお前では、俺の相手では無い。」
そう言うとホークの後ろにあった草陰から、ゲラ=ハが出てきた。
「選手交代ですね。」
両腕を天破の構えの様に上下へ広げ、足は前後にスタンスを取る。
精錬された雰囲気を持ちながら、どこか野性的なゲラ=ハ。
「フ・・・いいだろう、一対一とは言って無いからな。」
こうしてホークとゲラ=ハが交代しながらの殴り合いが続いた。
熾烈を極めた戦いも、長引くにつれて戦いと呼べる物では無くなってきた。
秘孔への一撃必殺の攻撃を駆使するケンシロウも、ゲッコ式武術の構えからの技も、
終りが近づいてくるにつれて只の殴り合いへとなっていった。
451 :
十九話「天の極星」:2006/03/19(日) 21:12:43 ID:ZNvLEzd80
ゲラ=ハは疲労で動けなくなり、最終的にはホークとケンシロウの殴り合いとなった。
ホークの右が腹部へと突き刺されば、ケンシロウの蹴りがガードの上からでもダメージを与える。
そして疲労困憊の両者の戦いに終りの時が来た。
「うおおおおおおおお!」
「でりゃああああああ!」
両者の拳が互いの顔面を打ち抜き、倒れる。
やはり一日の長があるのだろう。
動けないホークに立ち上がるケンシロウの姿が見えた。
「負けちまったな。」
素直に敗北を認めるホーク、ケンシロウがその手を取り、立ち上がらせる。
そして無言のまま、ジャングルの奥へと立ち去ってしまった。
「キャプテン、いいんですか?」
闘いを見ていたゲラ=ハが立ち上がり、聞いてきた。
村の方を見ながら、ホークは答える。
「最初からそういう決まりだからな、仕方ねぇよ。」
そう言って歩き出すホーク、ゲラ=ハもそれに続く。
普段は険しく鬱葱とした、ほの暗いジャングルの帰り道は、
強い日差しの下で碧が光を反射させ美しく輝いていた。
ヴェイブへと戻ったホークは食料等の購入を済ませ、船に乗る事にした。
どうやらヴェイブからの船はメルビルしか無い様だ。
すると何やら怪しげな商人がミイラを担いで船へ乗り込んでいた。
嫌な予感を漢字ながらもメルビル行きの船へ乗り込む。
船室で暫らく過ごしていたら、予感が的中したのを悟った。
「ぎゃああああああ!」
船内に叫び声が響き渡る、叫び声の元へ駆けつけるとそこには先程の商人がいた。
爪で引き裂かれた痕がある。
その傷の大きさは、さっきのミイラの手の平ぐらいの物だった。
452 :
十九話「天の極星」:2006/03/19(日) 21:15:09 ID:ZNvLEzd80
新スレ立ってたけど書き込んじゃった、邪神です。
こういう場合新スレの方に乗せた方がよかったですかね?
まぁ本編のお話。
ケンシロウ・・・壊骨拳なんてくらったら頭骨が吹き飛びますよ。
まぁ彼は猟奇殺人者ですから触れないであげてください。
モヒカンなだけで何の罪も無い男を殺したり、小男をボウガンの矢から身を守るため盾にしたり。
その挙句、純粋無垢な子供達の前で相手の体が粉々になる様な技を使ったりもします。
そんな基地外のせいでアミバ様も殉職されました。
某ボクシング漫画の死者みたいに本当の葬式を行うべきである。
後、書く事が無くなって来たのでそういう時は技の説明で埋めます。
ご了承ください。
でもモンハンネタで埋める手も・・・却下?そうですか、あーそうですか。
〜サガ講座&質問箱〜
しぇき氏 そう、彼は永遠のかませ犬、それは雑魚のくせにライフスティールで地味にLPを削るのが仕事だから。
生命力回復を集めてから彼を最終決戦前に残しておけば彼の努力は水泡に・・・。
413氏 霊タイプのクジンシーに殴りが効きますから七英雄全員に古代人の名残があるんでしょう。
サルーインも投げ技とか使えばひっくり返ったりして大ダメージ狙えますから効かない事は無い筈・・・多分。
北斗壊骨拳 相手の額の秘孔に強烈な突きをお見舞いする技。
余りの威力に頭に放ったのに一緒に腕まで吹き飛ばすのだが、骨が原型を止めながら吹っ飛ぶ。
北斗剛掌波 かめはめ(ry
バレさんがわからなくなるから、新スレ立ったらあっちに載せた方がいいよ
今から俺が移植してやる