【2次】漫画SS総合スレへようこそpart28【創作】
>>1さん乙です。超機神大戦ヒロインズからの祝福の踊りです
ヘ
, "⌒` 、 ,,/ ´⌒ヾ、 /^))⌒`く^Y +
. + ; 从V∧)i (ノリノ'))爻〉 i /ミ ノリノ)))i +
W ゚ー゚ ∩ ハ从゚ヮ゚ ∩キ ルi !Z|゚ -゚ノ)!|
+ (( ((つ ノ (つ 丿 (つ つ )) +
リヽ ( ノ ( ヽノ ) ) ) ∧ ∧ ∧ ∧
(_)し' し(_) (_)_) ミ,,゚Д゚彡( ゚Д゚)
↑ ↑ ↑ ↑
リルル 亜沙 プリムラ 白玉・黒玉 (プリムラのヌイグルミ)
リルルが似てないとかしずかちゃんがいないとか言うなコノヤロー
1さん乙。
ちょっと早いですがパート30までもう少しですね
>>4 かわいい♪
6 :
作者の都合により名無しです:2005/08/14(日) 13:04:05 ID:DkgWhbLmO
1さんスレ立てお疲れ様です。
久しぶりの方々が一番手で来ないかな
ブラキンさん、ザクさん、ミドリさんetc
パオ氏やVS氏が前スレで一度も来なかったのが
少し気にかかりますね
あげとこ
古いバキスレが急に上がってくるのはなぜだ?
10 :
作者の都合により名無しです:2005/08/15(月) 21:08:25 ID:98xuX2Ku0
職人たちも盆休みか。
=)3
lol
第十六話「天国から地獄」
わずか数分足らずで、サイバイマンは壊滅状態に陥った。
もっとも最年長(といっても生後三ヶ月程度)のサイバイマンが、生き残った仲間を引
き連れて土下座する。ぎこちないが、長老なだけあって人語を操れるようだ。
「モ、申シ訳アリマセン。マサカ、人間ガコンナニ強クナッテイルトハ……」
きっと今後、彼らより弱い敵は現れまい。こう考えたセル。ここぞとばかり、悪党を退
治した水戸黄門のようにふるまう。
「うむ。これからは人々のために働き、人々のために汗を流し、これまで殺した人々に償
わなければならんぞ」
「ハハーッ!」
一斉に地面にひれ伏すサイバイマンたち。セルは少し照れながら、調子に乗って説教を
エスカレートさせていく。
「いいか、今回は我々が相手だったから良かったようなものだ。ちなみに、我々は私を盟
主とする正義のために戦う軍団──」
いい加減に我慢出来なくなった17号、後ろからローキックをセルにぶつける。まるで
割り箸のように、儚く砕け散るセルの右足。
「ところでおまえら、この辺でクリスタルを見たことないか?」
17号の問いに、少し首を傾げながら長老サイバイマンが答える。
「私自身ハ見テイナイノデスガ、若イ者ガアッチノ方角デ“美シイ巨大ナ宝石”ヲ見タト
イッテタコトガアリマス……」
「本当か?!」
「ハイ。チナミニソノ若者ハ、一ヶ月前ニ老衰デ死ニマシタガ……。我々ハ寿命ガトテモ
短イモノデネ」
「そうか、分かった。じゃあ案内してもらえるか?」
「モチロンデス。アナタ方ハ強イ、逆ラウハズガアリマセン」
予期せぬ収穫であった。
一行は長老サイバイマンに導かれ、宝石があったという地点に向かう。
長老に案内された地域は、より凄惨な戦場跡であった。
そこらかしこに人為的なクレーターがあり、おそらくはかつて岩山だったろう土砂が散
乱している。
「データによると、ここは孫悟空とベジータが一騎打ちを行ったところだな」
しみじみと16号が語る。
かつて、この地にて二人のサイヤ人は激突した。新技・界王拳でベジータをあと一歩ま
で追い込む悟空だったが、ベジータが大猿と化したことにより形勢逆転。しかし、孫悟飯
とクリリンが微力ながら加勢したことにより、ついにベジータを撃退することに成功した
のである。
さて手分けして、若いサイバイマンが目撃したという“美しい巨大な宝石”を探す一行。
程なくして、歓声が上がる。セルジュニアだ。
「こっちにあったよ!」
大騒ぎするセルジュニアの前には、黄色に輝くクリスタルが立っていた。感激するセル。
「久々だなぁ……このシーン。では、さっそく吸収させてもらうか。セルジュニア、あれ
に触りなさい」
「おまえが触れや!」
セルジュニアによって殴り飛ばされるセル。
実はとっくの昔に、セルジュニアは18号からクリスタルの秘密を知らされていた。
「よ、よくも……! 親不孝者めがァ……!」
起き上がろうと、セルは近くにあったものを支えにしようとする。が、この支えこそが
クリスタルだった。うっかり触れてしまった。
「……やばっ」
もはや手遅れ。
クリスタルの近くに、猛然と何者かが落下してくる。それも、人造人間の動体視力です
ら捉えられないスピードで。
「──は、速いぞッ!」
降臨した守護者──姓は孫、名は悟飯。まだ少年だが、全身から立ち昇る気はとてつも
なく雄大だ。
ちょうど折り返し地点となるクリスタル争奪戦──開始。
妖しい紫で彩られた、魔族特有の道着を身につけた悟飯。構えは取っていないが、やる
気は満々なのか早くも超サイヤ人状態となっている。
「い、いきなり来るか!」
さっと両手を上げ、ガードを固めるセル。──が、悟飯はまるで殺気のこもっていない、
戦士らしからぬ優しい瞳を湛えている。
「……セル」
「む……?」
「僕は戦いたくないんだ。たとえ、おまえのような奴でも……殺したくない」
意外にも無血解決を望む悟飯。むろん、セルにとっても願ってもない話だ。勝てない戦
いはすべきではない。
「気が合うな、孫悟飯。私も戦いは嫌いだ、ほとんど勝てないし」
「でも」
「えっ?」
「僕は気づいてしまった。正しいことのために戦うことは罪ではないことを……話し合い
なんて通用しない相手がいることを……僕はもう我慢しないッ!」
「いや、ちょっと……」
「精神を怒りのまま、自由に解放してやるぞ。セルッ!」
刹那、孫悟飯に絶大な殺気が宿る。
──巻き起こる大爆発。
神々しい閃光に包まれながら、孫悟飯は進化を遂げた。
肉体は力と速度を兼ね備えた理想形を維持し、溢れる気は電圧でも帯びたかのようにス
パークする。これぞ「超サイヤ人2」、である。
「ぜ、絶対おかしいって! どうして私が強くなってないのに、敵ばかり強くなっていく
んだ!?」
文句なく、今の孫悟飯は宇宙一だ。生きているという感覚が麻痺し、怯えることすら忘
れるセル。せめてもと、16号は心がこもっていない励ましをセルに送る。
「心配するな、セル。私の計算では、おまえと孫悟飯はほぼ五分と五分の力だ」
「嘘つけやァァッ!」
もう逃げられない。巨大ゼミVS超サイヤ人2、待ったなしの大一番が幕を開けた。
新スレ乙です。
散々雑魚扱いされてますが、一応セル(第一形態)は原作準拠の強さです。
ジンジャータウンでピッコロと戦ったくらいの強さはあります。
ただ、色々な要素が化学反応を起こしスパークしてしまい、こんなザマですが。
17 :
作者の都合により名無しです:2005/08/16(火) 08:04:08 ID:XFjGvGc+0
一番乗りお疲れ様です。
セル意外と強いんだ。初代ピッコロクラスと思ってた。
しかし、また勝ち目の無い戦いが始まるのか・・
ある意味「不死身」ってところはすごいね
インフレについていけないところがまんまヤムチャだ。
しかし、悟飯も大人気ないな。かるくビンタで殺せるのに。
あ、子供かw これほど力の差のある対決は久しぶりだ。
16号の清々しいほどのウソのつきっぷりがいいなぁw
20 :
作者の都合により名無しです:2005/08/16(火) 20:09:37 ID:+i/L9M+s0
セルにしろシコルにしろサナダムシ氏は
ヘタレに愛情あるみたいだから確変して御飯倒すかも
21 :
ふら〜り:2005/08/16(火) 21:11:34 ID:m/SYdi0W0
>>1さん
おつ華麗さまです。荒らされたり、職人さんたちが実生活で忙しくなったりと、
いろいろあってもこうして新スレが立ちSSも来て、歩を進めていくバキスレ。
この場所のこの楽しさが、末永く続きますように。
>>サマサさん
ヤムチャより少しはマシだったかなアミバ……本当に、戦闘力度外視で集められてますね
十三階段。いーのかそれで。あと今回は、いろいろ超次元発言をしてるアスランが楽しい。
やの字ではない純然たる「男女逆転エロゲ」まである今、女性サービスは大変でしょうな。
>>サナダムシさん
今の今まで、リーダー面しつつもなんだかんだで存在感の薄かった17号。ようやく少し
カメラが振られたか、と思いきや。基本的にセルと16号、ジュニアと18号がコンビに
なってる中、彼は活躍できるのか。相変わらずセル・16号組はいい味出してますしねぇ。
>「心配するな、セル。私の計算では、おまえと孫悟飯はほぼ五分と五分の力だ」
>「嘘つけやァァッ!」
ここが一番笑った。
前の「産気づいてしまった」といい、笑わせどころが上手いね。
>一応セル(第一形態)は原作準拠の強さです
マジかよ
第十七話「絶体絶命」
セルは右手左手ともに腰近くへと据え、気を高めるために深呼吸をする。むろん、最大
限に気を上昇させても到底敵わないことは百も承知だ。
「ふっふっふ、超サイヤ人をさらに上回ったか……。さすがは、あの孫悟空が手塩に掛け
た息子だけのことはある」
ひとたび油断すると、気抜けして崩れ落ちそうな膝を必死にこらえながら、強気をふる
まうセル。
「──だがッ! おまえの強さは、私の本気を呼び覚ましてしまったようだ。太陽系をも
一発で滅ぼす力、思い知るがいいッ!」
二枚舌を総動員させ、セルは悟飯を恫喝する。が、悟飯は動じない。少年は強靭な肉体
とともに、鋼鉄にも匹敵する強靭な心をも手に入れていた。
「……どうせ無駄に終わる。さっさと本気を出せ」
悟飯はただ呟く。セルが本気だろうがなんだろうが、即殺す。極めて高純度の殺気が、
セル一点に集中して放たれる。まだ成長期の途上にある少年が、これ程の殺気を手中にし
ているなどと誰が信じようか。
この時点で、セルは完全敗北を喫していた。
今までなら、まだここで奸計をめぐらす余裕があった。脳細胞が往生際悪く働いてくれ
た。だが、今度ばかりはどうしようもない。たとえ、ここを口八丁で凌いでも、きっと孫
悟飯は地の果てまで自分を殺しに来る。どうせ助からない、と悟った。
──セルの脳は、沈黙を選択した。生き延びる道を放棄した。
「こ、これまでか……ッ!」
勝てない。逃げられない。助からない。どうにもならない。
戦いが始まれば、同時にセルは死ぬ。一撃で、あっさりと、セルは悟飯によって葬り去
られるだろう。パンチだろうが、キックだろうが、タックルだろうが、頭突きだろうが、
問答無用で死ねるだろう。
自分自身でさえ味方でない絶望的な状況下──セルが最期に案じた“こと”とは。
「そ、孫悟飯……頼みがある」
「頼み……?」
怪訝そうに、悟飯が応じる。もっとも、頼みを聞き入れてやる気などない。今、彼の心
を支配するは、セルという悪に対する絶対的な攻撃欲求のみ。
「そうだ、頼みがある……」
セルはただ理性に従って、舌を動かす。舌を噛むことも、伝えるべき事項を誤ることも、
許されない。悔いなく旅立つために、必ずやっておかねばならない任務。
「ようやく、分かってきた……。おまえらはこのクリスタルを吸収すれば、私が完全体に
なることを知っているんだろう?」
悟飯は一切答えない。答える必要などないと考えているのか、あるいは口止めされてい
るのか。
「……クリスタルに触れると、戦士が現れるというのも妙な話だ。常時見張るわけにもい
かんから、おおかたクリスタルにセンサーでも取り付けていたんだろう。コンピュータは
“守護者”と呼んでいたな」
悟飯は一切答えない。が、若干ではあるが眉間にしわが寄る。
「ふん、どうでもいい話だったか。私はまもなく死ぬ、おまえの手によって。……さて、
本題に入ろうか」
「さっさと頼みとやらをいえ!」
前奏に苛立ったのか、らしくなく声を荒げる悟飯。
しかし、セルは怯むことなく、ゆるりと息を吸う。末期の水、のつもりだろうか。地球
上を包む空気──酸素、窒素、水蒸気、諸々──を存分に堪能する。
そして軽く息を吐き、セルは視線を定めた。むろん、今向き合っている少年戦士へと。
「私を殺しても、他の奴らには手を出すな。これだけだ」
これこそが、セルの頼み。
セルは脳細胞が生き残りを諦めたと知った時、ふと仲間を思い返していた。せめて、彼
らだけでも逃がしてやりたい。純粋に、助けたかった。
しかし何故、彼らを救いたくなったのだろう。あれだけ、自己中心的に生きてきたはず
なのに。他人を思いやる器量など、持ち合わせていなかったはずなのに。
これにて、この世に未練なし。セルが吼える。
「かかって来いッ! 孫悟飯ッ!」
──16号、17号、18号。
「セルッ!」
──セルジュニア。
「パパッ!」
これまで漫然と観戦していた彼らも、心からセルを想って叫んだ。
声は届いただろうか。
孫悟飯は全世界から一時的に姿を消し、再び姿が現れた。すると、すでにセルの下半身
は粉々に打ち砕かれていた。光の如き一撃であった。
同時に、逆上したセルジュニアが飛び出す。父を破壊した少年を倒すべく。
尊敬になど値せぬ父だった──が、それでも父は父だった。子が父の仇を討たんとする、
ごく自然な発作的行為だった。
「バカ、よせッ!」
18号が制止しようと叫ぶ。が、時すでに遅し。
セルジュニアは抉るようなボディブローを喰らい、地上に沈んでいた。
父子、散る。が、二人を軽々と打倒したにもかかわらず、悟飯はどこか不満が残る顔つ
きで立っていた。
「ま、まさか、あんな頼みをしてくるなんて……。こ、殺せない……殺せなかったっ!」
よもやと思い、16号は即座にパワーレーダーを作動させる。と、奇跡が起こっていた。
セルも、セルジュニアも、まだ生命エネルギーが残っている。すなわち、生きている。
「そうか……孫悟飯。二人を殺さなかった、いや殺せなかったのか……」
悟飯は悪人を殺害することに、もはや迷いはなかった。しかし、仲間を心から案じたセ
ルを、殺す寸前で憎みきることが出来なかった。結果、生かしてしまった。
「お父さん……ごめんなさい。やっぱり、僕はダメだったよ」
気も、殺気も、闘争心も、少年からは消え失せていた。
「土のクリスタルはあげるよ……。もう、これ以上は戦えない」
「ありがとう、悟飯」
16号は礼を述べた。悟飯はそれに反応すらせず、空しく飛び立った。哀愁ある背中は
ゆっくりと、ただゆっくりと地平線の彼方へと消えていった。
感想、ありがとうございます。
本当に励みになります。
あと全く関係ないですが、エアコンや扇風機のつけすぎに気をつけましょう。
次回へ続く!
投稿中に邪魔してしまってすいませんでした。
悟飯は何とか口八丁で凌げたようで。(セル本人はそう思ってないだろうけど)
次はいよいよ悟空か。
第十二話「アスラン自転車を漕ぐ」
「おお、これは・・・!」
バカ王子にホイホイついてっちゃったアスランは、目の前に聳える偉容に思わず声を洩らす。
アスランの前に悠然と鎮座していたのは、巨大な白亜の戦艦―――
「これは僕が造った宇宙戦艦<アークエンジェル>だ。この中に僕の仲間もいる。紹介するから入っといで」
「よし。上がらせてもらうぞ。おっ邪魔しま〜す!」
バカ王子に先導され、場違いなほど明るい声でアークエンジェルへと入っていくアスラン。穢れ無き少年の瞳で物珍しげに
艦内を見回り、ブリッジに辿り着くと、三人の男が二人を待ち受けていた。
「お疲れ様です、王子」
一番格上らしい精悍な顔の男がバカ王子に声をかける。言葉は丁寧だが、どこか口調に刺があった。
「クラフト、サド、コリン。留守中ご苦労だったね。何か変わったことは?」
「特には。・・・おや、そちらの方は?」
「あ、どうも。アスラン・ザラです。バカ王子さんとそこでちょっと会いまして。聞くところによると、あなた達もまたクルーゼと戦っているとか・・・」
「うむ・・・一応、な」
クラフトは実に微妙な顔で答えた。何かあるのだろうか・・・
(きっと持病の痔が痛んでるんだな、可哀想に)
アスランはそう思い、心の中でエールとプリザエース一年分を送った。だからどうしたと言われりゃそれまでだが。
「そうそう、その事なんだが、まだロクに説明もしてなかったな。まず僕らの立場についてだ。実は地球は僕らドグラ星の
保護地域でね、ドグラ星は異星人やその他の脅威に対しての地球の防衛などを行っている。僕はその対策委員会会長を務めて
いるんだが、最近になって不穏な動きがあってね・・・」
そしてバカ王子は語った。クルーゼは<十三階段>と呼ばれる集団の一人であること、それを束ねる<狐>の存在・・・。
さらにキラとリルルが逃げ込んだ地球に、その魔手を伸ばしているらしいこと・・・。
「成る程、そんな悪い奴らが悪いことを企んでいるのか。その上キラとリルル、そして二人を助けてくれている地球人達
にまで―――なら倒すしかないじゃないか!」
アスランは怒りに燃える瞳で熱く言い放った―――そう、おバカキャラと化してはいても、彼の中に流れる正義の血は、
未だ失われてはいない。例え性格がどう変わろうとも、やはり彼は勇敢なる戦士であり、義に厚き男なのだ。
そんな彼をバカ王子は満足げに見やり、歩きながら手招きする。
「僕についてこい、アスラン。君に見せたいものがあるんだ・・・クラフト、君達はここで地球への出航の準備を
しといてくれ」
ハッ、という敬礼を背に、バカ王子は歩き去っていく。アスランもパタリロ走りで後を追った。
ブリッジを出て、歩くこと少し―――辿り着いたのは格納庫だった。
「さあ、扉を開けてみろ」
促され、アスランは扉を開く―――アスランの目に、何かとてつもなく巨大な物体が飛び込んできた。
「これは・・・<ジャスティス>!?」
そう、それは確かに彼の愛機、真紅の機械騎士<ジャスティス>―――いや、よく見ると細部のデザインが違っている。
「アスラン、僕は君のことも調べさせてもらった。アスラン・ザラ。年齢16歳。クルーゼに対抗すべく生まれた
レジスタンスの中心的存在として、超高性能ロボット<ジャスティス>を駆る戦鬼―――
だが本気でクルーゼを含む<十三階段>と戦うには、ジャスティスでは力不足だ。だから勝手ながらジャスティスは
僕が回収し、改造を施した。いわばこれは新たなるジャスティス―――
<∞(インフィニット)ジャスティス>だ」
「∞・・・ジャスティス!?」
「そう。はっきり言って性能はジャスティスとは天と地ほども違うぞ。君が扱えば、十分にクルーゼ達にも対抗しうるだろう。
そして―――こっちも見てみろ」
バカ王子は目線をゆっくり移動させる。つられてそっちを見たアスランを、さらなる驚愕が襲った。そこにあったのは、
白と青を基調にした鋼鉄の天使―――<フリーダム>。だが<ジャスティス>同様、そこかしこに相違が見られる。
声も出ないアスランに、バカ王子はゆっくりと語る。
「これは君の親友、キラ・ヤマトが駆る<フリーダム>をモデルとし、一から作り上げた機体―――
<S(ストライク)フリーダム>。その性能は∞ジャスティスに勝るとも劣らないだろう。これにキラ・ヤマトが乗り、
君とタッグを組めば―――もはや敵はなかろう」
「俺とキラがこの二体に乗って―――タッグを―――ううむ。まさに友情!なら俺はこの∞ジャスティスに乗るしかない
じゃないか!」
アスランはすっかりその気になっている。とにかく、やる気は出たようだった。ハイテンションのままふと見回すと、
更に三機のロボットがあった。黒を基調とした単眼の機体で、三機とも全く同型のものだ。
「これは<ドムトルーパー>。性能的には先の二機に劣るが、三位一体による連携行動を目的とした機体だ。これに
ついてはパイロットは未定だ。一応、目星はつけてあるがな」
「ううん、素晴らしい!機体の乗り換えによるパワーアップ、まさにスパロボの醍醐味じゃないか!」
「喜んで貰えて何よりだ。しかし君、〜〜〜じゃないか!という喋り方はどうにかならんのか?」
「口癖なんだ。しょうがないじゃないか!」
「・・・そうか。では次に、このアークエンジェルの動力源について説明しよう」
アークエンジェル動力室―――と、バカ王子が説明した部屋には、ポツンと自転車が置かれていた。
「・・・この自転車はなんだ?」
「実はアークエンジェルはね・・・人力発電で動かしてるんだ」
バカ王子の爆弾発言。アスランもさすがにビックリ仰天だ。格納庫の時よりも驚いた。
「じ・・・人力だと!?何故だ?二人はプリキュアなのに三人いるくらい疑問なんだが・・・」
「バッカだなあ!環境問題が深刻な昨今、自然に優しいエネルギーを模索した結果、人力が一番いいと宇宙最高の頭脳を
持つ僕が判断したんだよ。なにか間違ってるかい?」
どう考えても間違ってる理屈。こんなもんに騙されるバカはいるはず・・・
「成る程!エコロジーというわけだな」
いた。
「うむ。もうすぐ本艦は地球に向けて出発する。というわけでちょっとこの自転車を漕いでいてくれないか?」
「いいだろう。この惑星(ほし)と、宇宙(そら)の環境のためなら、漕ぐしかないじゃないか!」
アスランは全力でペダルを漕ぎ始める。その様をバカ王子はしばし生暖かい目で見守り、ゆっくりと部屋を出た。
その頃ブリッジでは、残されていた三人が雑談していた。
「しかし、クラフト隊長。王子は何を考えてるんでしょうか?これほどの事態ならば、ドグラ星の軍隊を派遣してでも
静めるべきなのに、精々十人ほどの子供―――大人も混じってるようですが―――に任せようだなんて」
「そうですよ。はっきり言って、銀河系―――いや、全宇宙規模の危機だというのに・・・」
「知らん。むしろ知りたくない。もうどうにでもなっちまえ」
クラフトはタバコを吹かしながらぶっきらぼうに言い放つ。あのバカの考えなど、自分には予測もつかない。
大方、狐達と戦っている少年達を使って、何か暇つぶしでもやらかそうとでもしているのだろう。
クラフトは盛大な溜息をつき、バカ王子に目をつけられた少年達に大いに同情したのだった。
それはともかくとして―――
「とにかく行くぞ。アークエンジェル・・・出航だ!」
王子の日記・地球語版
〇月×日◇曜日
地球、銀河、宇宙に危機が迫っている。そしてその危機に立ち向かうのは幼い少年少女達―――
なんて、絶好の暇つぶしになりそうなことなどないと思っていたが、それが現実になった。
<狐>と呼ばれる悪党とその手下達が世界の破滅を狙い、それに五人の少年少女と、その仲間達が抗っていると聞き、
僕の中で「これだ!」と反応するものがあった。さっそく調べてみるに、五人の少年(正確には三人の少年と一人の少女と
一匹の良く分からない生命体)は、これまでにも様々なトラブルに巻き込まれている札付きであると判明した。
それはともかく野比のび太という少年、まるで〇〇〇(解読不能・いい意味ではない)のような顔をしている。いきなり
奇声を発して襲い掛かってこないか、少し心配だ。この剛田タケシという少年にしろ、骨川スネ夫にしろ、お世辞にも
頭が良さそうとは言えない。不思議生物に至っては人語を解するかどうかも疑問だ。
他にも耳長娘やら金髪のホスト風の兄ちゃんやら犬やら、実にろくでもなさそうなメンツが揃っていて、
僕は結構ワクワクしている。
まあ、とにかく会ってみないと始まらない。面白い事が始まりそうだ。地球が待ち遠しい。
それまではアスランやクラフト達をいじって存分に楽しむとしよう。
これからは日記に書くネタに困りそうもない。なんて素晴らしいことだろう。
投下完了。前スレ460から。
アスランのキャラは実はサナダムシ氏のセルを微量混ぜていたりして。
次回からはまたドラサイド。アスラン一行の再登場はかなり後半になる予定です。
前スレ462
自軍のエースで攻撃を仕掛けたのに、素の状態では悲惨な命中率に泣かされました。
前スレ463
バカ王子はレベルEです。
前スレ464
ぶっちゃけこの作品では十三階段は半分くらいはネタキャラによる構成になっています。
34 :
作者の都合により名無しです:2005/08/17(水) 08:33:53 ID:RmdsU12F0
サナダムシ氏、サマサさんお疲れ様です
>サナダムシ氏
セル、いい奴だな。悟飯とどっちが悪者かわからない。
とりあえず口八丁と器の大きさでクリスタルげとしましたかw
>サマサ氏
13階段半分ネタキャラかー。ヤムチャ出た時に予感してたがw
急に出てきたバカ王子日記にワラタwノリノリで書いてますな。
35 :
作者の都合により名無しです:2005/08/17(水) 15:06:36 ID:hfpdGydkO
noooooooo!
fuckinjap!
lol
36 :
作者の都合により名無しです:2005/08/17(水) 19:19:02 ID:5CCtmZfD0
>不完全セルゲーム
クリスタルにセンサーがあるという事は、黒幕がいるんですかね?
ラスボスは悟空だと思いますが。
少しずつ後半へ向けて、展開がシリアス基調になっていくのはしけい壮風味?
>超機神大戦
バカ王子はメインキャラになっていくのだろか。(こいつって本名あったっけ?)
頭脳はともかく、戦闘面では当てには出来ないし、足を引っ張るかと思うが。
好きなキャラなので活躍を見たいですが。
サマサさんお疲れさんです
どんどんキャラが増えてきますね。捨てキャラも多いけど。
収集つくのかな?とりあえずクライブの活躍…というか大暴れに期待。
>36
バカ王子は確かクライブって名前だった気がする
>>37 クライブは王子の飼ってる擬態能力を持ったペット(第一巻P63〜64参照)
王子の名前はバカ=キ=エル・ドグラ(第三巻P157参照)
つまり正しくバカ王子。
サマサさんの書いていた通りです。
職人さん方、いつも楽しくROMらせていただいています。
頑張ってください!!
携帯から失礼しました。
広い食堂の大きなテーブルに、二人の人間が向かい合って座っていた。初老
の男は全身が小刻みに震えていて、フォークを何度もテーブルに突き立ててい
る。まったく肉には刺さらない。もう一人の若い男は初老の男に目もくれず、
こちらは普通に食事をしている。
「ミスター! ボクシングをやりなさい!」
初老の男はロレツの回らない口調で言って、ようやく肉の刺さったフォーク
を若い男の目の前に伸ばした。若い男が飲んでいたスープの皿に肉汁がしたた
り落ちて、白いスープに茶色の染みが広がった。
「いやだ」
ミスターと呼ばれた若い男はフォークを払いのけて給仕を呼んだ。給仕はう
やうやしく礼をして、スープの皿を持って厨房に下がった。初老の男は口の端
に泡をためてなおも言った。
「お前はモハメド・アライの息子なんだから、ボクシングをやりなさい! バ
キもユージローもコテンパンにしちゃいなさい!」
「ボクは父さんの後を継ぐ気はない。バキにもユージローにも興味はない」
給仕が新しいスープの皿を持って戻ってきた。皿の中にはボクシングのグロ
ーブが入っていた。給仕はミスターの両手にグローブをはめて上着を脱がせた。
ミスターは黙々とステーキを食べている。
「そうか。それなら私にも考えがある!」
アライは震えながら立ち上がった。いつの間にかボクシングのグローブをは
めてガウンを脱いでいる。食堂を警備していた黒服の男たちがテーブルと椅子
をどこかへ運び去って、アライとミスターの周りに四本の柱を立ててロープを
張った。ミスターは立ったまま皿を持ってデザートを食べている。
「キサマの嫌いなボクシングで、父の私を倒してみろ!」
ゴングが鳴った。アライはミスターとの間合いをダッシュで詰めて、世界を
制した黄金の拳を打ち込んだ。
「でやー!」
ナマコが眠ったようなパンチだった。元ヘビー級チャンプのアライは寄る年
波と病のために、すっかり弱くなっていた。ミスターはデザートを食べながら
アライのラッシュをすべてかわして、食べ終わった皿を床に落とした。
「ふん」
ミスターは神がかりに強かった。アライはミスターの軽いジャブで壁を突き
破って飛んでいって、反対側の壁から戻ってきてリングの中央でダウンした。
いつもの親子ゲンカであれば、アライがこのまま朝までぐっすり眠って終了
なのだが、この日は違った。アライはカウントナインで立ち上がって、ヨロヨ
ロとミスターの背中に抱きついた。
「ミスター! ボクシングやってー!」
「くどい!」
ミスターは何度もアライを振り払ったが、しつこく亡霊みたいにすがりつい
てくる。ミスターはアライにとり憑かれた状態で外に出て、家の近くの裏山に
登って山頂の杉の木にアライをくくりつけた。
「ミスター! ボクシングー! 腹減ったー!」
アライの体の震えが激しくなって、山全体が大きく揺れた。アライの魂の叫
びは山を下りたミスターの耳にも届いたが、ミスターは聞こえないふりをして
自宅に戻った。
ミスターはボクシングが大嫌いだった。父親の偉大さは認めるし、自分にボ
クシングの才能があることも分かっている。だが人が人と殴りあうという野蛮
な行為が、どうしても許せなかった。
母の影響か、と思う。ミスターの母親はミスターが幼い頃に死んだという。
アライも母親の話をしないので、ミスターは母親のことをまったく知らない。
しかし、争いを好まない優しい母親だったと思う。母親のことを考えると、覚
えていないはずの母親の笑顔がいつも脳裏に浮かんだ。しかしこの日は父のア
ライの寂しそうな顔が見えた。
「すまない、父さん」
ミスターは小さな声でつぶやいて、自分の部屋のドアを開けた。
「さあミスターくん! かかってきたまえ!」
ドアを開けたら股間があった。黒いビキニパンツに上半身裸の男が、部屋の
中であお向けになって手足を伸ばして待っていた。アゴが異常に長い。
「どーしたミスターくん! 勇気を出して猪狩の股ぐらに飛び込んでこい!」
アゴがこちらを見て喋った。プロレスラーの猪狩完至だった。
全150話。
42 :
作者の都合により名無しです:2005/08/18(木) 09:12:54 ID:hnDIGx4j0
VSさん、朝からお疲れ様です。
このVS節は余人が真似しようと思っても出来ません。(違ったらどうしよw)
相変わらずタイトルと内容のナメた落差が素敵過ぎですw
全150話、頑張って下さい。言っておきますが冗談はもう通りませんのでw
VSさんのミスターは本当に狂ってるなあw
>腹減ったー
乙です。このあたりの言い回しががヤクバレ風味ですな
油断して読むとVSさんのはキクね。画太郎に通じるものがある
全150話ということは、麻雀や週間少年漫画板のヤクバレを
投げ出して集中するということか
44 :
作者の都合により名無しです:2005/08/18(木) 15:16:18 ID:CoFOUjPLO
lol
45 :
作者の都合により名無しです:2005/08/18(木) 15:35:31 ID:oWhK972U0
インターネットで漫画無料で見放題のサイトがあった
少年漫画の漫画ランキングの 27番目にURLがらるよっと。。。
>範馬刃牙 〜波が運びし友情の歌
VS氏と勝手に決め付けているな。
でもま、VS氏だろうな。内容的に、NO.33で中断している嘘バレの続きかなという気もする。
面白かった。またお願いします。嘘バレとマージャンもね。
「これが無敵のアライ猪狩状態だ! 破れるもんなら破ってみたまえ!」
ミスターは猪狩の顔をじっと見て、ドア近くの天井から垂れたヒモを引いた。
天井の板が開いてボーリングの玉が落ちてきた。玉は猪狩の股間を直撃した。
「ダッシャー!」
猪狩は透き通るような悲鳴をあげて、アゴをのけぞらせて悶絶した。アライ
はドアを閉めて外に出て、太陽の光をいっぱいに浴びて深呼吸をした。すべて
をなかったことにして、部屋に戻ってもう一度ドアを開けた。
「ミスターくん! まだまだ私は元気いっぱいだぞ! さあこい!」
「ミスター! 私を本当の母親だと思ってカモン!」
股間は二つに増えていた。しかしミスターはドアを閉めなかった。次にドア
を開けたら、股間が三つになっていると思ったからだ。ミスターはアライ猪狩
状態のアライと猪狩を交互に見て、ドアの脇の壁を叩いた。棚に飾ってあった
人形が下の水槽に落ちて、ピラニアが水槽から飛び出して、アライと猪狩の股
間にピンポイントで食いついた。
「ダッシャー!」
アライと猪狩が悶絶して床を転げ回るのを、ミスターはベッドに腰かけて見
ていた。金魚鉢から拾った人形を布でていねいに拭いている。母の唯一の形見
の大切な人形だった。
「さてミスターよ」
ダメージの回復したアライが落ち着き払って言った。まだ声も体も震えてい
るが、これは病気なので仕方がない。
「私の友人を紹介しよう。ニッポンのプロレスラーのアントニオ・イガリだ」
「よろしくー!」
猪狩は挨拶と一緒に、ミスターの向うずねを思い切り蹴り飛ばした。あまり
に予想外の不意打ちだったのでよけることができなかった。
「痛いかミスターくん! 蹴った私は全然ちっとも痛くないぞー!」
猪狩はすねを押さえてうずくまるミスターを見て豪快に笑った。ミスターは
猪狩を血走った眼で睨みつけたが、なんとかこらえてアライに尋ねた。
「で、ニポンのくされアゴレスラーがどうしてここにいるんだ?」
「私たちにあるものを見てもらいたいんだそうだ。これだ」
アライは震える手で一枚の写真を差し出した。写真には日本人の若い男女が
写っていた。
「男はひとまずおいておけ。問題なのは女性の方だ」
アライに言われるまでもなく、ミスターの目は写真の女性に釘づけになって
いた。ミスターの体の中にいくつもの気泡が立ち上り、気泡が寄り集まって一
人の女性の面影をつくって、写真の女性とピタリと一致した。
「私はこの女性にとてもよく似た女を知っている。誰だか分かるか?」
「母さんだ」
「そのとーり!」
答えたのは猪狩だった。ミスターとアライの会話中ずっとスクワットをやっ
ていて、床が汗でびちゃびちゃになっていた。
「イガリさん! アンタは母を知っているのか!」
「おー知ってるとも! 尻の穴のヒダの数まで知っているぞ!」
「そんなことまで知らなくていい! それで写真の女性は一体誰だ!」
「左の男が範馬勇次郎の息子の刃牙くんで、その彼女の松本梢江くんだ!」
「コズエ」
ミスターは梢江の名前を反芻した。その瞬間、ミスターの母への愛情は梢江
への恋心に変化した。
「父さん! コズエとボクに血の繋がりはあるのか!」
「それはお前がニッポンに行って、自分の目で確かめてこい!」
アライもスクワットをやっていた。アライと猪狩はスクワットを続けながら
ミスターににじり寄った。
「ミスターくん、梢江くんが欲しいか! ならば刃牙くんから奪ってしまえ!」
「ボクシングでバキを倒すか、私たちと一緒にスクワットをするか! さあど
うする!」
ミスターは目をつぶって、人形を両手で握って額に当てた。長い時間考えて、
そしてゆっくりと目を開けた。
「父さん、ボクはボクシングをやるよ。そしてバキに勝ってみせる」
「いえーい!」
アライは全身を痙攣させてバンザイをして、ヨダレを飛ばして猪狩に言った。
「イガリ! 一刻も早くミスターをニッポンに連れて行ってくれ!」
「猪狩号ー!」
猪狩が叫ぶと、窓の外に大きな猪狩の顔が現れた。ミスターと猪狩を乗せた
猪狩号は、アゴから青白い炎を噴いて空の彼方に消え去った。
つづく。
50 :
作者の都合により名無しです:2005/08/19(金) 08:07:04 ID:SZTENa310
マジで150話続けるおつもりか、VSさん。毎朝うぷしてる。
うやむやにされると嫌なので俺が感想つける時はカウントしておこう。
2話目。
これってミスターが主人公ですか?
コズエがヒロインなのは仕方ないけどw
あと、意味不明のサブタイが次はどう出るか楽しみです。
残り148話、頑張って下さい。今更撤回は出来ません。
闘病伝説第一章〜けれどこれ一発で終わり
ここにとある病院がある。なんとか記念病院。
別名ヴァルハラ。その意味は<戦死者の館>。
まるで「闘病生活の果てに氏ねよオメーラ」と言われているようで、いきなり陰鬱な気分に
させてくれるナイスな病院だ。
医者もベリー素敵な人材だらけだ。
まずは院長。ハゲだ。あまりの眩しさに視力が落ちる人が急増中。
常に太陽拳を放つ男の異名で呼ばれる天才だ。
関係者からは一刻も早くカツラを購入すべきという意見が大多数を占める。
実は時魔法の使い手であり、「俺はハードゲイだ。フォー!」のカミングアウトで一瞬時を止める。すげー!
つぎにナンバー2の医者。スカシ野郎だ。
一万円札をスカすはスカシっ屁はこくはレモンスカッシュは飲むはで見ていると気分がスカっとする。
実は氷魔法の使い手であり寒いギャグで一瞬にして場を南極にする。これまたすげー!
最後に研修医のテル。こいつはもっとすごい。どんぐらいすごいかというと普通聞こえないはずの
風鈴の音色を聞けちゃうくらいすごい。
きっとコウモリの超音波も聞こえるだろう。こいつはモノスゲー!
さて、急患がやってきた。急性虫垂炎だ。これは一大事。
「てーへんだてーへんだ」
研修医のスカシ野郎2号が騒ぐ。所詮スカしたところで研修医の上脇役なのでどうでもいい。
「テル先生ガンバレー」
入院してる子供が声援を送る。テルの気力はMAXだ。
「精神コマンド<閃き>!」
ピキーン!
「この患者さんの虫垂炎は・・・肺ガンが原因だ!」
何がどうなってそうなるのかは分からないがテル先生が言ってるんだから間違いない。
肺ガンが原因ったら肺ガンだ。
だって主人公の言うことだもの。正しいに決まっている。
肺ガンを取り除くのは難しくて誰にもできないので通りすがりの黒い服着て顔や身体に無数の傷がある
謎の闇医者にやってもらった。
患者さんは助かった。バンザイ!
「ありがとう謎の闇医者!サンクス!」
患者さんも大喜びだ。
「礼には及ばん。これが手術代の請求書だ」
100億円。
「命に比べりゃ安い安い!」
患者さんはノリノリでサインした。ついでにテル先生もノリノリでサインした。
ハタチかそこらで100億円の借金背負っちゃったけど明日があるさ。
若さは僕らの味方だ!
患者さんは笑顔で退院していった。肝心の虫垂炎の治療はまだだけど肺ガンを取り除いたからダイジョーブ!
「サラダバー!」
ベタなギャグと共に謎の闇医者は去っていった。
ヴァルハラは今日も平和である。
VSさんの真似をしようとして大失敗。
お目汚しすみません。
自覚した上での質の悪いパロディを垂れ流されるんじゃたまったもんじゃないな
55 :
作者の都合により名無しです:2005/08/19(金) 12:39:19 ID:SZTENa310
>>53 いや、面白かったですよ。ただ何の漫画家サパーリ分からんですがw
ただ、VSさんは特殊なセンスの方だから自分の文体で書いた方が
受け入れられやすいってのはあるかもね。
57 :
虹のかなた:2005/08/19(金) 16:18:06 ID:vbJroSOT0
薄い雲の隙間から差し込む陽の光は、この古い温室には届きにくいらしい。
頼りない明かりに照らされた室内がいつもより暗いように思え、自分の心の中の「お姉様がいらっしゃらない
心細さ」を表されたようで少し気分が滅入ってくる。
温室に近づいてくる影を視界の端で捉えながら、祐巳はもう一度そっと、ロサ・キネンシスに触れた。
わずかに軋んだ音を立て、静かにドアが開く。
「ごきげんよう。紅薔薇さま」
キャプテン・ブラボーとほとんど入れ替わりのように温室を訪れたのは沙織ちゃんだった。
いつものように華やかな笑みを浮かべる沙織ちゃんは今日もしっかり美少女だ。
「ごきげんよう」
微笑み返し、祐巳は名残惜しげにロサ・キネンシスから視線をはずした。
(しっかりしなくちゃ)
感傷的な気分に浸っている場合じゃない。
「ジュネと斗貴子さんはまだなのですね」
温室を見渡し、沙織ちゃんがそう確認する。
祐巳が頷くと沙織ちゃんは持っていた鞄を開き、中から白いハンカチを取りだした。
祐巳の目から見ても高価だとわかるレースに縁取られたハンカチ。
……そういえば、お姉様も似た様なハンカチをお持ちになっていたっけ。
そんな些細な偶然に、また感傷的な気分になりかけ祐巳は慌てて頭を振った。
(今は目の前の現実だけ見よう)
うん、と一人で頷き前を向くと、沙織ちゃんが掌の上でゆっくりとハンカチを広げているところだった。
「……綺麗……」
白い布地の上に乗せられていたのは金色の綺麗な羽根だった。
光の加減で青っぽくも赤っぽくも見える不思議な色の羽根。
こんな羽根を持つ鳥が存在することが信じられないくらいの美しさに、祐巳は思わず見入ってしまう。
「紅薔薇さまにこれを。……お守りの様な物です」
「……えっ?」
「お持ちになっていて下さい。できれば、肌身離さず」
そう言う沙織ちゃんはいつもの様に微笑んではいない。
数日前の――――祐巳に『秘密を共有するか』と尋ねたときと同じような真剣な表情。
58 :
虹のかなた:2005/08/19(金) 16:19:09 ID:vbJroSOT0
「……でも」
「私達は必ずあなたをお守りします。ですが万が一の事態が起こらないとも限りません。これをあなたにお渡し
するのは私なりの“保険”なのです」
――――保険。
それは一体どういう意味なのだろう。
恐らく困惑した表情をしているだろう祐巳を真っ直ぐに見つめたまま、沙織ちゃんは視線をそらさない。
「これ……何か特別な力がある物なの?」
恐る恐る聞いてみる。
「今はまだお答えできません。できれば……それはあまり使いたくないのですけれど……」
最優先は紅薔薇さまの安全ですものね、と返答され、思わず祐巳は心の中で唸ってしまう。
あまり使いたくないお守り。保険。
穏やかとは言い難い言葉ばかりのような気がする。
そのことが、祐巳がこれから知らされる事情が危険を伴うモノだと暗に訴えているようで少し怖い。
でも。
(……信じるって決めたじゃない)
沙織ちゃんやジュネさんや斗貴子さんを。
彼女達は信じられると判断したのは祐巳自身だ。だから――――信じる。
数秒間の沈黙の後、祐巳は小さく頷いた。
「わかった。しばらく預かっておくね」
ポケットにあった自分のハンカチを広げ、羽根をその上に移す。
丁寧に包んだところで沙織ちゃんを見ると、にっこりと笑ってくれたのでこれでよかったのだと少し安心した。
「できれば、このことを誰にも言わないでくださいね。ジュネや斗貴子さんにも」
「わかった」
理由はわからないけど、きっと意味のあることなのだろう。
壊さないように柔らかくハンカチで羽根をくるむ。
祐巳がハンカチをポケットにしまったところで、勢いよく温室のドアが開いた。
ジュネさんと斗貴子さんだ。
「お待たせして申し訳ありません」
同じタイミング・同じ角度で律儀に頭を下げた二人が交互に祐巳と沙織ちゃんを見る。
金色の長い三つ編みが揺れ、祐巳はジュネさんの髪型がいつもと違うことに気が付いた。
胸下まであるその細い三つ編みは、祐巳に髪を切る前の由乃のことを思い出させて口元が緩んでしまう。
59 :
虹のかなた:2005/08/19(金) 16:21:56 ID:vbJroSOT0
「似合うね。かわいい」
そう誉めると、驚きながらもジュネさんは小さな声で「ありがとうございます」と答えてくれた。
照れているのか、頬が少し赤いうえに妙に早口だ。
「瞳子が勝手に編んだんですけど意外と動きやすいって言うか……」
(あ……!)
そうだ、瞳子!約束してたんだ!
あの休み時間の瞳子の笑顔が脳裏を過ぎり、祐巳の心が一気に焦る。
(どうしよう……!)
瞳子はどうしているだろう。もしかして、自分を探しているんじゃないだろうか。
ああ。どうしてここに来る前に気が付かなかったのだろう。
「どうかしましたか、紅薔薇さま?」
突然百面相を始めた祐巳を、ジュネさんが不思議そうに覗き込む。
どうしよう。何か一言だけでも伝えに行くべきだろうか。
――――ふと、ロサ・キネンシスが視界に入った。
(……お姉様ならこういう時)
「……ううん。なんでもない」
どうにか作った笑顔で、ジュネさんに首を振ってみせる。
お姉様ならこういう時、きっと身内を後回しにするだろう。
明日のデートも重要だけど、彼女達と今話す事の方が“今いなければならないこと”だよね。
話を聞き終えたら、瞳子を探しに行こう。
帰ってしまったようだったら電話すればいい。
(ごめんね、瞳子)
心の中で謝り視線を上げると、不思議な下級生達は本気なんだか漫才なんだかよくわからない会話を繰り広げていた。
「ジュネってばいつのまに二人で連れ立ってくるほど斗貴子さんと親しくなったの?ずるいわ」
「…………はい?」
「ちょっと待て!ずるいの意味がわからん!」
「斗貴子さんてば私にはつれないのにジュネとは親しくするなんて……」
「あの……沙織お嬢様?」
「誰が、いつ、つれなくしたり親しくしたりした?!」
「私も斗貴子さんと仲良くなりたいのに……」
「願い下げだ!」
「あのですね、沙織お嬢様。私と彼女はさっき偶然に会っただけでして……」
60 :
虹のかなた:2005/08/19(金) 16:23:39 ID:vbJroSOT0
え……と。
明らかにわざとらしく泣きマネをしてみせる沙織ちゃんにオロオロするジュネさん。怒る斗貴子さん。
これは……斗貴子さんを巡る沙織ちゃんとジュネさんで三角関係……なのだろうか。
一人蚊帳の外に放り出された祐巳を無視して話はどんどん進められている。
そして。
「楽しみにしていますわ」
沙織ちゃんの言葉と満足そうな笑顔で締めくくられたよくわからない話は結局、斗貴子さんが近いうちに
沙織ちゃんとお茶をするということで収まったようだった。
脱力したようなジュネさんと斗貴子さんの表情は、こう言っては失礼だけどちょっと面白い。
月曜日にも思ったことだけど……、この二人、やっぱりどこか似ている。
「お待たせして申し訳ありません。紅薔薇さま」
沙織ちゃんの言葉に三人の視線が一気に集まり、祐巳は無意識に背筋を伸ばし臨戦態勢を取る。
小さく喉が鳴り……祐巳は自分を落ち着かせるために大きく深呼吸をした。
そんな祐巳の様子を見て、沙織ちゃんが口を開く。
「では…………始めましょうか」
そう言った沙織ちゃんの笑顔は、優雅と言うよりは楽しそうで――――とても好戦的な感じのモノで。
なぜだか祐巳は、日曜日に読んだギリシャ神話に出てきた戦いの女神・アテナを思い出した。
ごきげんよう。皆様。お久しぶりです。
待っていてくださった方、ありがとうございます。
次回でメイン4人が情報を共有して、それからバトル展開
になっていきたいと思っています。
後、今、戯言シリーズの1巻を読んでいる途中です。
予想よりも面白くて多分全巻買いそろえます。
それでは、ごきげんよう。
62 :
作者の都合により名無しです:2005/08/19(金) 18:12:56 ID:FrD5/6Q/0
とりあえず祝!ミドリさま復帰。
>VS様
毎朝連載してくれるのですか?そうすると来年1月に完結ですね。
ミスターとイガリの漫才に禿げワラです。こんな発想はあんたしか出来ない。
>名無しさま
いや、俺はけっこう笑えましたよ。マシンガンのような小ネタの連発ですね。
でもVSさんは怪人だから真似せずに、今度はあなたのオリジナルが読みたいな。
>ミドリさま
本当にお久しぶりですー。ちょっと心配してました。ご執筆して頂き何より。
祐巳視点だと健気というか、少し憧れ多き少女って感じでほんわかしてますね。
63 :
51:2005/08/19(金) 18:17:04 ID:P2o/Um2d0
ミドリ様キターーー!
お久しぶりです。祐巳も否応なしにバトることになっちゃうんでしょうか・・・。
原作だと精々一般学生レベルの運動能力なのに大丈夫か?
>>62 実はこのスレで連載してます。名無しで一つアホな話を書きたいなーと思ったので・・・
誰なのかはご想像にお任せします。
64 :
作者の都合により名無しです:2005/08/19(金) 18:29:39 ID:OV9LM0P40
インターネットで漫画が無料で見えるサイト見つけた
少年漫画の漫画ランキングの27にある
ちなみに アドレスは 4 6 4 . jp
ミドリさん、お久しぶりのごきげんよう。
祐巳が主役の回はどんなに不穏な空気が流れてても
どこか牧歌的になりますね。
>斗貴子さんを巡る沙織ちゃんとジュネさんで三角関係……なのだろうか
ワラタw
しかし、いよいよ次回からバトルモード突入ですか。期待してます!
>>63 おお、どなたかは詮索しませんが、本連載頑張って下さい。
VSギャグは真似て滑るとサムいから止めた方がいいかも。
VSさん自身も時々滑ってるしw
66 :
ふら〜り:2005/08/19(金) 23:47:19 ID:xSKxcbd/0
>>サナダムシさん
い、いきなり予告もなくこんな展開を持ってこられてもどう感動したらいいのかそれとも
次回何か裏・落としどころがあるのかなどと考えてみるべきかそれは人としてどうかとか。
物語の最根幹である「セルの扱い」が次回からどうなるのか? かなり独特な手に汗です。
>>サマサさん
このアスラン、好意的に解釈すれば「素直」ですよね。現状は多分一応大丈夫でしょうが、
場合と相手によってはころころ騙されそうな。早い話、おバカ。でも確かにサナダムシさん
のセル同様、そういうとこが可愛い。と思った途端に次の出番が後半。再会が待ち遠しひ。
>>VSさん(ですよ……ね?)
読みようによっては、ミスターは彼なりにシリアスしてるのかも。類稀なる才能に恵まれ、
でもその才能に素直に乗る気にはなれず、原因は母の憧憬、そこに重なる異国の少女、と。
このシリアスな芯、通したままいくのか脱線しきってしまうのか。先が長いだけに楽しみ。
>>闘病さん(う〜。アナタはドナタ)
タイトルからコケさせて頂きました〜。面々の中では、私はスカシ野郎が一番でしたね。
テンポよくいろいろ並べた中、意味が重なってる「すかし」がないのはお見事。これだけ
濃いのを連ねといて、オチは部外者に丸投げなのがまた脱力。ぜひまた読ませて下さいっ。
>>ミドリさん
久しぶりに彼女たちに会ってみれば、また随分と丸く、可愛らしくて。特に三つ編みを
揺らして照れるジュネというのは結構萌え方面。斗貴子と二人一組になってお嬢に転が
されたりして、ほんと丸い。この丸さが、嵐の前の静けさか……嵐の方も期待してます!
67 :
作者の都合により名無しです:2005/08/20(土) 08:23:10 ID:kRtnF+Bc0
ミドリさん復帰は嬉しいな。
相変わらず祐巳は可愛らしく、沙織は美しく、トキコは凛々しい
お仕事に差し障らない程度の更新お願いします。
あれ?今朝はVSさん来てないな?w
>>67 ごめんちゃい、ネタ書くどころじゃねーです。頭いてえ。気持ちわりー。
第十八話「グッドモーニング」
戦いは終わった。
結果だけを述べると、大惨敗であった。
孫悟飯に一撃も与えられぬまま、セルとセルジュニアは大地に沈められてしまった。
しかし、土のクリスタル入手には成功した。そもそもの戦力差を考えたならば、これは
奇跡にも等しい快挙である。セルの心が、冷酷に閉ざされていた孫悟飯の心を突き動かし
たのだ。
「我々ノ集落ナラバ、休マセラレマス。早ク、二人ヲ運ビマショウ!」
長老サイバイマンに従い、一行はサイバイマン集落に戻っていった。
セル父子は、どうやら命に別状はないらしい。が、意識は未だに戻らない。
サイバイマンらには地中に出払ってもらい、16号たちは父子の快復を待つことにした。
ただ黙って、眠るセルたちを見守る三者。
「まさか、こいつがな……」
17号が含み笑いする。
「うん……そうだね」
18号が続く。やはり、彼女にとってもセルが取った行動は信じ難いものであった。
以後、会話は途絶えた。
もう、一切を話す必要はない。戦いを終えた勇敢な父子を待とう。ただ待とう。もし起
きたならば、今まで通りクリスタル探しを続行しよう。いや、少しくらいはまともな扱い
にしてやるか。
これまで、ほとんど味噌っかすだったセルに対し、三人は色々と考えを巡らせていた。
が、誰一人として語らない。
──永遠にも感じられる静寂が過ぎてゆく。
戦いから丸一日、まず起き上がったのはセルジュニアだった。
まだ幼いが、気(パワー)は父や人造人間たちなど比べ物にならぬほど高い。回復力も
並ではない。
「あれ、18号さん……みんな助かったんだね。でも、パパは……」
「安心しな、そばで寝てるよ。あんたの親父が柄にもないことしたおかげで、私たちは殺
されずに済んだんだよ」
万事解決したと、18号はセルジュニアに優しく伝える。16号と17号も、この光景
を微笑ましく眺める。
「ふっ……さすがだ。あのパンチを喰らって一日で復活するとはな」
「……うむ。こうなると、問題はセルだな」
視線を移す16号。そこには、下半身がもげた状態で眠るセルの姿があった。
先までの人造人間のように、セルジュニアもまた、父が起きるのを黙って待つことにし
た。このクリスタル探しの主役は──紛れもなく彼だからだ。
セルジュニア蘇生から、さらに五日が経過した。
相変わらず、人造人間たちは飲まず食わずでセルを見守る。
そんな彼らに少し不安を覚えたのか、長老サイバイマンが壺を持って参上する。
「アノ……皆サン」
「どうした」
訝しげに受け答えする16号に、長老が得意げに壺の中に入っている液体を見せる。
「差シ入レデス。コノトコロ、何モ口ニシテイナイデショウ」
「飲料か」
「エェ、我々ノ体液デス」
「帰れッ!」
即、拒絶された。
残念そうに、長老は壺を片手に地中へ潜ろうとする。が、途中でうっかり石につまづい
てしまう。
ひっくり返った壺は、よりによって眠っているセルに直撃した。
72 :
作者の都合により名無しです:2005/08/20(土) 14:30:10 ID:0WFXvLQFO
【テレポメア】【くれませんか?】【いたわる】500gil
驚くことに、液によってセルの上皮が溶解されていく。実はサイバイマンの体液は、土
をも溶かす強い酸性。元々サイバイマン以外に飲める代物ではなかったのだ。
大絶叫が轟く。
「ぐわああぁぁぁぁぁッ! あっちィッ! 熱ッ、痛ッ、熱ッ、痛ッ、熱ッ!」
音速にも匹敵するスピードで、セルが立ち上がった。
あまりに突然だったので、皆が呆気に取られる。が、素早く冷静に立ち戻った17号が、
セルを問いただす。
「おまえ、まさか……とっくに回復してたのか?!」
「まぁな。すでに昨晩、意識を取り戻していたんだが、また眠ってしまった。やはり、二
度寝は最高だな!」
「おはようヘルズフラッシュ!」
迅速かつ、正確無比。16号が撃った光の束は、まだ眠気が抜けないセルを撃砕した。
16号によって、ただでさえ上半身だけだったセルがさらに解体されたので、クリスタ
ル吸収と出発は一日延びることとなった。
長老を初めとするサイバイマンたちによる見送り。
「ギギギギギーッ!」
「キエェーッ!」
「初メハ敵デシタガ、ドウヤラ我々モ正義ノタメニ生キルコトガ出来ソウデス。アリガト
ウ。我々サイバイマンハ、イツデモアナタ方ヲ応援シテイマス」
手を振りつつ、セルたちも飛び立つ。レッドリボン本部基地──果たして、クリスタル
はあるのか。
「ところでセル、さっき土のクリスタルを吸収したが、どんな能力だったんだ?」
と、好奇心からセルに尋ねる17号。この問いに、セルは寂しそうに答えた。
「試しに地面に向かって念を込めたら、近くにあった小石が動いたよ……」
セミの死骸は未だに苦手です。
現在のセルの能力。
火:火を自在に操れる。火力はライター並み。
風:風を自在に操れる。うちわくらいにはなる。
土:大地を自在に操れる。小石までなら。
75 :
作者の都合により名無しです:2005/08/20(土) 19:26:25 ID:jH2Ykb+Q0
サナダムシさん、好調な連載頻度ですね。乙です。
むう、悟飯に簡単にやられたとはいえ親の愛で強くなったかと思ったが・・
やはりセルはセルかw
>>試しに地面に向かって念を込めたら、近くにあった小石が動いたよ……
全米が泣いた(笑)
あとは水と炎か・・・こんなモンあと二つ集めるより地道に修行した方が早い気もするがw
77 :
作者の都合により名無しです:2005/08/20(土) 20:49:41 ID:fcTUc/ZB0
セルは前回から成長してるね
近い将来、シコルスキーのように「漢」になるな
今回はちょっとあれだが…
ミドリさんも帰ってきてるなおかえりなさい
パオ氏、ザク氏、ブラキン氏、そろそろどうですか?
79 :
魔女 童と童:2005/08/21(日) 03:37:08 ID:je5bfnLq0
前スレ249から続き
80 :
魔女 童と童:2005/08/21(日) 03:37:53 ID:je5bfnLq0
僕が目覚めた時には、もう空は薄明るくなっていた。
赤い座布団は僕の目の前にあった。その上には小さな子供のような――。
「――君はだれなの」
「ポッコ」
「それは知ってるよ。それだけじゃ分からない」
「ポッコ、ずっとうえのとこいる」
「上のとこ……この小屋の、屋根裏のこと?」
「ポッコ、ずっとまってた」
「誰を」
「ながかった」
「ぼくを?」
「あそぼ、あそぼ」
「遊びたいの?」
「はやく、あそぼ」
「僕なんかと遊んでもつまら――」
僕の話なんか聞いていないのだろうか。この小さい人形みたいな子は存外力が強い。寝そべったま
まだった僕はあの小さい体にいい様に引っ張られ、遊び道具にされた。
「ちょ……力つよ……」
「ながかった。ひさしぶり」
抵抗したいが抵抗しようがない。この子は僕の膝くらいの高さの身長なのに、何故これ程にパワーが
あるのだろうか。
「まだ起きたばかりなんだよ……勘弁してよぉ」
「たのしい。たのしい」
「やめて……」
「たのしい。たのしい」
「ご飯よー起きなさーい」
母さんだ! 母さんの声が戸の外から聞こえてきたのだ。僕は部屋を出ないので毎日母さんが戸の
外に食事を置いていく。いつもはそれが情けなく感じるのだけど、今日ばかりは有難い。
81 :
魔女 童と童:2005/08/21(日) 03:38:38 ID:je5bfnLq0
「母さーん!! 助けてぇ!!」
久しぶりに大声を上げると、母さんは慌てた様子で戸を押し開けて入ってきた。
「どうしたの!?」
「ヘンな子に体引っ張られてて、どうしようもないんだ」
「…誰もいないじゃない」
え?
「だから、たまには外に出て太陽浴びないとおかしくなるって」
いや、僕の手何か引っ張ってるじゃん。
「はいご飯。ちゃんと食べなさいね」
おかしいのは、あんたじゃないのか?
「じゃあ母さん行くけど……あんた、ホントにもっと外出てきなさいよね。お婆ちゃんも寂しがってたし」
そりゃ婆ちゃんも寂しいだろうけど、本当に寂しいのはあんただろ。
「…あんたの姿、一月振り位ね」
そう言い残して、母さんは部屋を出た。ああそうだね、僕が悪いんだ。僕がね。この旧い社会に対応
出来ない僕が悪いんだろ。糞!
その後も、なんだか気分が悪かった。いつの間にかポッコの姿が消えていたが、それもなんだかど
うでもいい気分だった。
「なんだか死にてえなあ!」
ぽっかりとした空間に、僕のぽっかりとした言葉が空しく響く。
82 :
魔女 童と童:2005/08/21(日) 03:39:09 ID:je5bfnLq0
「…なんでこんなことになったんだろう」
「かなしい」
「うわっ!」
また急に目の前に赤い座布団。ポッコがまた出てきた。消えたと思ったのに。
「いま、かなしい。おこってる。さびしい」
「なんだよそれ」
「おれ、わかる。おまえいまたいへん」
「生きてる人はみんな大変だよ。僕だけじゃない」
「おまえかわいそう」
「うるせえよ」
「かわいそう」
「うるせえって」
「かわいそう」
「黙れよ!」
ポッコは僕の叫びを聞き届けてくれたのか、また消えた。それと同時に、階段からぎし、ぎしと、
軋む音が聞こえてきた。その音が止み、戸をとんとんと叩く。
「誰」
「おれだァ」
――婆ちゃん。
「入ってよかっぺか」
「…いいよ」
僕は不思議と、婆ちゃんには当たる気がしない。
婆ちゃんが入ってきた。久しぶりに見たが、全然変わっていなくて安心した。
「おめ、蔵ポッコ見だべ」
「蔵……ポッコ?」
「おめのおかから聞いたんだァ」
「『蔵ポッコ』って、なんだろう」と、僕はぼんやりと思った。
『茄子』を転載してくださったお二方、有難う御座いました。
約一ヶ月ぶりに『魔女』です。俺は飽きっぽいのか、早くも次回の話が書きたくて仕方ありません。
今回はなんかつらいです。書き難い。『蟲師』の時も何度かうまく話を作れなくてつらかったことがありました。
最初に全部考えとけば楽なんでしょうけど、そのやり方は自分に合ってないっぽいので。
次回はきっと楽に書けると思うので、早く今回の終わらせて楽になりたいです。
あと、『魔女』の終わらせ方を思いつきました。まだまだ先の話とは思いますが。
前スレ412
二話目を転載して下さって有難う御座います。
421
三話目を転載して下さって有難う御座います。
まとめサイト掲示板だと行数制限がないので書きやすくてついつい書きすぎてしまいまして……申し訳なかったです。
三話目は「二話目だけだと量が少ないな」と思って一時間で書きました。
427
俺も三話目の方が好きですね。短時間で書いたせいもあるんでしょうが、なんとなくキャラが動いてる感じがします。
方向性が真逆なのは狙ってやりました。はい。すいません。
436
『茄子』は書いてて楽だし自由にやれるし楽しいです。次回は何をしよう。
437
宇宙生物、あんなベタなのだったんです。というか詳しくは考えてませんでした。
シャンデリアは……泥棒が侵入してきたとき落っこちて阻止するとか。今考えましたが。
もし続きを書くとしたら、伊藤育枝メインで行きたいですね。
サマサさんのアスラン面白いですね。ガンダム見てないんですが、噂は聴いてるので少し分かります。
あと雷怖すぎですよ。次回『童と童』完結です。
深夜にお疲れ様ですゲロさん。(ちなみに二話目の方を転載した者ですw)
このパートの「魔女」は蟲師みたいでもあり、日本昔話みたいな感じですね。
和風の世界で洋の魔女がどう絡んでラストを迎えるか楽しみです。
>今回はなんかつらいです。書き難い
気楽に、「茄子」とかとチェンジしながら楽しんで書いて下さい。応援してます
>>48 ミスターがやる気になったところで、すぐに刃牙と試合ができる訳ではない。
刃牙は日本の裏格闘界のチャンピオンなので、プロモーターの徳川光成に試合
の許可を得なければいけない。徳川に無断で決闘を行うと、刃牙とミスターの
頭に埋め込まれた爆弾が爆発して二人とも死んでしまうらしい。
「え?」
ミスターは頭に手をやって変な声を出した。猪狩は猪狩号の操縦席に座って
重そうなバーベルを持ち上げている。
「ボクの頭にも爆弾が埋まっているのか」
「そーだ! 死にたくなかったらご老公の機嫌を損ねるような真似はするな!」
「いつ埋めたんだ」
「行くぞー!」
猪狩はミスターの質問には答えず、バーベルをものすごい勢いで上げ下げし
た。猪狩号は格段に速度を上げて、あっという間に徳川の邸宅に到着した。
「このたわけがー!」
ミスターは頭からつま先まで真っ赤に染まった。大広間に一歩入っただけな
のに、そこにいた徳川にいきなりトマトジュースをぶっかけられた。
「ボクが何かたわけたことをしましたか」
ミスターは片手で顔をぬぐいながらミスターに訊いた。もう片方の手で尻を
つねって必死に怒りをこらえている。
「キサマは刃牙と闘うために日本にやってきたそうじゃな」
徳川は言いながら、新しいトマトジュースをバケツになみなみと注いでいる。
「はい。明日にでもボクとバキくんとの試合を組んでいただきたい」
「それがたわけと言っとるんじゃ!」
徳川はまたトマトジュースをぶっかけたが、これはミスターの予測内の攻撃
だった。ミスターは今度は完全にかわした。
「元気ですかー!」
しかし横からの猪狩のビンタはかわせなかった。ミスターはトマトジュース
よりも真っ赤な血を吐いて豪快に倒れた。
「甘いぞミスターくん! キミは実戦経験ゼロのド素人で、刃牙くんは史上最
強のチャンピオンだ! 今のままでは格が違いすぎて客が全員寝るぞ!」
「そこでじゃ!」
徳川は床に這いつくばったミスターに三枚の写真を放り投げた。ハゲ、ジジ
イ、ゴリラの三人の男が写っていた。
「愚地独歩、渋川剛気、ジャック・ハンマー。その中の誰か一人にでも勝つこ
とができれば、刃牙との対戦を認めてやろうじゃないか」
「誰か一人?」
ミスターは写真をつかんで立ち上がった。口元に微かに笑みが浮かんでいる。
「それでは少し面白くない。明日までに全員倒してみせますよ」
「作戦会議だー!」
猪狩はタンクローリーのホースをミスターに向けてトマトジュースを放射し
た。ミスターは壁ごと外に押し流されて、猪狩はトマトジュースの川をクロー
ルで泳いでミスターの後を追った。
「ウラー!」
ファミレスのテーブルが真っ二つになった。猪狩はブリッジの姿勢から起き
上がって、体についたテーブルの破片を払い落とした。コーヒーを運んできた
若い女の店員が、凍りついたようになって猪狩を見ている。
「今のがバックドロップだ! ミスターくんも覚えろ!」
ミスターはトマトジュースのグラスを持ったまま、首を横に振った。
「それはボクシングの技じゃない」
「関係ない! バックドロップもできないようではあの三人には勝てんぞ!」
「ボクには父からもらったボクシングの才能がある。それで充分だ」
ミスターは猪狩に背を向けてファミレスを出た。独歩に告げた決闘の時刻が
近づいていた。
つづく。
独歩と闘った。負けた。ミスターはキズだらけになってファミレスに戻った。
「負けたかー!」
猪狩はバックドロップでテーブルを破壊した。ミスターは憮然とした顔で席
を立った。渋川が指定の場所で待っているはずだった。
渋川と闘った。ボコボコに負けてケツの毛を抜かれた。ミスターは卵の剥き
身みたいなケツになって戻ってきた。
「また負けたかー!」
猪狩はカウンターのレジをバックドロップでぶっ壊した。ミスターは宙を舞
うお札の吹雪には目もくれず、ジャックと闘うために外に出た。
ジャックと闘った。クソミソに負けてケツ以外の全身に剛毛を植えつけられ
た。ミスターはケツだけツルツルのマリモみたいになってファミレスに戻って
きた。笑顔で待っていた猪狩に、消え入りそうな声で言った。
「ボクは、弱いのか」
「キミは弱いぞ! 強くなるためにはコレだ!」
猪狩は隣の客を抱きかかえて、上体を反って床に叩きつけた。泣きそうな顔
で突っ立っていた女の店員は、客の噴き出したコーヒーでずぶ濡れになった。
ミスターはうつむいて、拳を強く握り締めた。そして決然と顔をあげた。
「イガリさん。ボクにバックドロップを教えてくれ」
「よくぞ言った!」
天井から徳川が落ちてきた。SPの用意したトランポリンで一回跳ねて、クル
リと一回転して着地した。
「己の未熟さを知ってこそ一人前のファイターじゃ! 刃牙との試合、組んで
やるぞ!」
「おめでとうー!」
猪狩はテーブルを三つまとめてバックドロップで破壊して、無傷のテーブル
をミスターに投げてよこした。
「さっそくバックドロップの特訓だ! ミスターくんもやりたまえ!」
「はい!」
ミスターはえび反りになってテーブルを叩き割った。初心者とは思えない、
実に鮮やかなバックドロップだった。
「いいぞー! まだやれー!」
「はい!」
「こんなファミレスぶっ壊しちまえー!」
猪狩とミスターはすべてのテーブルを破壊してファミレスを飛び出した。そ
して猪狩のジムで夜までバックドロップの練習をした。ファミレスはその日限
りで潰れた。
目が冴えて眠れなかった。ミスターはベッドから起き出して、机の上の人形
を持って窓を開けた。月のキレイな夜だった。遠くから猪狩の笑い声と女性の
悲鳴が聞こえてくる。
「母さん」
ミスターは人形を月にかざした。おどけた顔の木彫りの人形が月の白い光に
照らされて、母の笑顔が浮かんで見えた。そして別の女性の笑顔に変わった。
「コズエ」
刃牙との試合には、きっと梢江もやってくる。もちろん刃牙の応援をするの
だろうが、ミスターはそれでもよかった。刃牙に勝つことができたら、その場
で梢江に想いを打ち明けるつもりだった。梢江はどんな顔をするだろうか。
「キミは、ボクの妹なのか?」
アライに梢江と自分の関係を訊いた時、アライは何も言わなかった。母に瓜
二つの梢江は、もしかしたら母とアライの娘なのかもしれない。だとしたら、
どうする? 血を分けた兄として、梢江の前に立つのか? それとも?
「知るものか」
アライは窓を閉めてベッドに潜り込んで、人形を頬に当てて目をつぶった。
自分の鼓動の音が、人形からも聞こえてくるようだった。
眠れないまま朝になった。試合当日の朝だった。
つづく。
91 :
作者の都合により名無しです:2005/08/21(日) 19:56:44 ID:mdYnCzxm0
>ゲロさん
昔話風魔女、好調ですね。淡々とした中にゲロ氏の味が出てて楽しいです
蔵ポッコって本当になんだろう?座敷童みたいなもんかな?
>VS様
2作連投お疲れ様です。これ、本当にミスター主役、蛸ヒロインの連載なんですね
ヤクバレ風味の読みきりかと思ってた。週間少年漫画板へ転載していいですか?
転載なんかしたってウザがられるだけでしょ。
VSさんの作品が本当に好きな人ならとっくにこっち来てるだろうし。
93 :
作者の都合により名無しです:2005/08/21(日) 20:26:35 ID:mdYnCzxm0
だね。やめとくか。
「ちょっと、それどう言う事よ?」
目元に静かな怒りを湛え、リンスはトレインを睨み付けた。
だがトレインの横顔を見て、その目を改める。
達観だろうか、それとも悲痛だろうか。伏せそうなほど瞼の落ちた目は、怒りの炎を消してしまうほど寒々しい。
「アンタ……」
言葉もはばかられる様な雰囲気に飲み込まれそうになったが、これは訊かなくてはならない気がする。
やっとの思いで紡いだ言葉は僅かにこれだけだが、二人の間の意思疎通としては充分だった。
「……だって、考えても見ろよ。オレ達は堅気じゃねえんだぜ? 荒事で食ってる人種なんだ。
お前もオレも、当然スヴェンも、広い意味で言えば人の迷惑を飯の種にしてる最低の部類だ。判るな?」
缶を握る手がかすかに震えていた。
「幾らあの子の保護者がオレ達だけだと言ったって、あの子の人生までオレ達のモンじゃないだろ?」
それはそうだ、生きる指針そのものは彼女の判断に委ねられる。そればかりは例え肉親が居て、それが言おうと変えられる物ではない。
リンスもそんな事は判っている、しかし今まで目を逸らして来た。そして今も―――。
「……何が言いたいのか全然判らないわね」
「そう言う逃げは止めろよ。お前もオレも、お互い正直モンになろうぜ」
……まさかこんな話に展開するとは思わなかった。
トレインがイヴに関して下らない生意気を言うのかと思いきや、そうではない。
もしかしたら、三人の中で最もイヴを気に掛けていたのはこの男かもしれないのだ。
「あの子がこのままオレ達と一緒に居たら、オレ達と同じモノになると思わないか?」
―――――…一番聞きたくない台詞だった。思わず立ち上がる。
「じゃあ何? アンタイヴちゃんを何処かの孤児院にでも放り込もうってつもりなの!!!??」
今度こそ確かな怒りを秘め置く事無くトレインを睨んだ。
「………それも、アリだな」
打撃音が、公園に響いた。
しかし、驚いたのは脊髄反射で拳を振り下ろしたリンス本人だった。いつもなら顔面に決まる拳が、トレインの掌に
そう有るかのごとく簡単に収まっていたからだ。
それ以外は全く動いていないのが、今更ながらに彼の手練を思い知らせる。
「……こ、の…!」
「逃げは止めろ、って言ったぜ。
……これはオレの勘だけど、お前根っからのこの世界の人間じゃないだろ? それを言ったらスヴェンもだけどな。
だから、知らないだろうがな、こう言う裏路地に小さい頃からどっぷり浸かった奴は、二度と抜けられなくなるんだ」
常日頃ののほほんとした雰囲気は何処にも無い。入れ替わりに静かで重厚な凄みが彼の双眸から発せられる。
「そうなるとな、人生ってモノがクソになる。こんなドブ川みたいな世界がそいつの根っこになるからな。
後は何百、何千、何万って後悔の連続だ。その多くが「何でこんな生き方選んじまったのか」……ってな」
今度こそ、完璧な悲痛だった。
「あの子はまだ、戻れる所に居る。わざわざ引きずり込む事も無い……そうだろ?
イヴが日の当たる場所に居て欲しいなら、オレ達が今だけの情を捨てるべきだ。優しさって…怖いんだぜ」
深く澄んだ迷いの無い目が、リンスを射抜いた。いつもの愛称を呼ばない事が、一層決意の重さを訴える。
「…………時々会うとかでいいじゃねえか。そうでないと、いつかきっと酷い目に会う。オレ達もイヴも」
「でも……!!」
「デモもストも無えよ。
お前も判ってるんだろ? あの子に覚悟なんて殆ど無いんだぜ」
勿論痛いほど判る。ギャンザの件で不覚を取ったのは己を押し通す覚悟が無かったからだ。
痛み、罪悪感、損得、恐怖、困難……そう言う物を乗り越え、押し切り、打ち破り、貫き通す覚悟――――勇気が、信念が。
人を傷つける事が生業である以上、それに負けた人間がどうなるかなど語るまでも無い。
リンスの手が、諦観じみた脱力で落ちる。
「一番最悪なのはな………イヴの弱さが一番酷い選択をしちまうかもしれないって事だ。
選べなくて、自棄になって、そしてどうでも良くなって……もしかすると、オレ達と殺し合うかもな」
静かな言葉が痛烈にリンスの胸を抉る。だが、それ以上にトレインの眼が痛々しく歪んでいる。
まるで、己の刃に我が身を刻ませる様な痛ましさだ。
「だけど……!」
その時、トレインの手の中に有ったまだ開けていないスチール缶が紙コップの様に握り潰された。
――――それは、彼女の逃げに対する言葉無き反論だった。
「もう…止めろよ。イヴの幸せ願ってんだろ? あの子に酷い人生送らせたくないんだろ?
オレだって―――――そんなの嫌なんだよ! あんなのは、もう………オレだけで沢山なんだよ!!!!」
嗚咽に耐える様に声を張り上げた。いや、何かから逃げる様でもある。
ようやくリンスを真っ向から見据えた顔は…………泣き出しそうな子供の様に純朴で、切ない。
…トレインにこんな貌が有るとは思わなかった。こんな思慮が有るとは思わなかった。
其処に有るのは自分やスヴェンの様な形では無いにしても、嘘偽り無い愛情だった。
「で……でも、ほら、スヴェンだって……」
説得は苦手だが、せざるを得ない。彼女には、イヴがとても孤独に耐えられるとは思えないからだ。
「………あいつが…気付かないとでも思ってるのか?」
リンスの口を封じるには充分過ぎた。あの理屈の達人が彼女に気付いている事に気付かない筈が無い、
多分彼もまた、今だけの優しさに酔っているのだろう――――いずれ訪れる別離から目を背けるために。
トレインの方も正直言いたくは無かった。だが言わずにはいられない、本当の優しさを貫くために。
普段飲み込んでいた分、遂に洗いざらい吐き出してしまった事に、内心表面以上に苦悩が渦巻いた。
「…もうママゴトは終わりだ。別れる覚悟は早めに………ん?」
その時、トレインの視線がリンスの遥か後方へと動く。
それに倣って目をやれば、彼らが宿泊しているホテルのボーイが数名、息を切らせて走って来る。
何人かは追われているかの様に何度も後方を確認するのが、妙にトレインの直感を刺激した。
「お、おい、ちょっと!!」
一人のボーイをすれ違い様に捕まえると、彼は火が付いた様に暴れ出した。
「な、何だよ!!? 放せよ! 放してくれ!!!!」
「いいから、ちょっと待てよ。何でボーイがこんな所に居るんだ?」
勤めて平静に尋ねても、彼は慌てるのみ。仕方なく落ち着かせるために頬を張る。
「……落ち着けよ。何が有った?」
ようやく自身を取り戻し、眼から焦りが失せた。
「あ……あ、ああ。ホテルに……殺人鬼が………乗り込んで来たんだ」
しどろもどろに紡がれた言葉に、トレインとリンスの顔から血の気が引く。
「何人も銃で殺しまくって………俺の……友達も…殺されて……」
その惨状を思い出したらしく、頭を抱えて震え出す。
「そいつの外見は? それと警察は何時来るって?」
「何度も連絡したけど……繋がってるのに、誰も……取らないんだ」
……恐らく、真っ先に狙われたのだろう。然るに受話器を取る人間は唯の一人も居はすまい。
「外見は?」
「西部劇みたいな…カッコしてて………変な牙みたいなマスクしてて……」
其処まで聞いて、二人は弾かれた様にホテルに向かって駆け出した。
「お、おい! 行くな!! まだあいつがホテルの中に居るんだぞ!!!」
それを聞いて二人の足はますます加速する。
勿論そいつが普通のヤク中だの精神異常者なら問題は無い。しかし彼らには、もう一つ最悪の予想が有るのだ。
―――もし星の使徒の道士だったら……イヴが危ない―――
人災――――という言葉が有る様に、人の悪意は唐突に荒れ狂う。
今それは、倒れるイヴに対して猛烈に荒れ狂っていた。
「うぅ……く、う…うぅ………」
手足におびただしく銃弾が撃ち込まれ、何発かは腹にも食い込み、苦悶のうめきと共に血が口腔から零れる。
常人ならとうに死んでいる出血量、激痛にも拘らず、彼女は生きていた――――いや、ナノマシンに生かされていた。
即死を避けるため、生成器官が急ピッチで擬似赤血球やら修復型ナノマシンやらを生成しているのだが、それは彼女にとって
拷問の永続だった。さしものナノマシンといえど、痛みまでには及ばないのだ。
――――いたい、こわい、だれかたすけて――――
願いは尽きる事無く生まれても、それは事態を変える力にはならない。
動けない訳ではない。ただ苦痛が、恐怖が、驚愕が、男の暴虐が、彼女の行動を封じる枷となっていた。
「あ――――…何かよ、思ったよりつまんねぇな」
其処までやっておいて、デュラムは面白くも無いといった風の溜息を漏らす。
そして、言葉を区切る様に銃声が鳴る。
「あうぅッ!!」
「コレだ。悲鳴がよう、一辺倒なんだよなあ。
なんか無えかよオイ、『助けて』とか『御免なさい』とか」
好き勝手言いながら彼女の銃創を踏み躙る。
「あッ! あぐ……!」
涙を零そうが苦痛に身を捩ろうが彼の眼に遠慮と言う物は映らない。
「ホンットつまんねぇ餓鬼だなお前。
生きてる価値が見出せねえっつうの? 少しは大人を喜ばせてみろよ」
そう言って彼女の襟首を掴むと、首吊りよろしく自分の肩の辺りまで持ち上げた。
「………もういいかぁ、死んどけ。
無駄な時間過ごさせやがって……頭どころか上半身丸々消してやるぜ。ほれ、この世の見納めだぞ」
イヴの鼻先に突き付けられた暗い銃口が、彼女の命そのものを吹き飛ばさんと見据える。
何故撃たれるのか理解出来ず、何故殺されなければならないのか理解出来ず、死と目を合わせるのが彼女の限界だった。
少しずつ引金が絞られていく。彼女の恐怖を弄ぶ様に、絶望を刻み込む様に。
――――そして、銃声が響いた。
しかしそれは、男が撃った物ではない。その証拠に、彼女はこれ以上傷を負う事無く床へと落ちる。
と同時に、窓側に置かれていた高価そうな花瓶が砕け散った。
男が、イヴを掴んだ腕を狙う銃弾から身をかわしたからだ。
「……やっとお出ましかよ」
男が禍々しく笑んで蹴破ったドアの方に目をやれば…………
憤怒の形相のトレイン=ハートネットが、銃を構えて立っていた。
暑いのは諦める、だから雷は止めてくれ神様(挨拶)
皆さんの文章の早さと上手さにやや凹み塩梅のNBです。
何だか最近自分の文章に満足できません。
俺の書きたかったのはこんな程度だったかなあ、と読み返す度に思ってしまいます。
だけどプロが言うには「完全な満足など有り得ない、絶対何処かしら納得行かない物だ」だそうなので、
これもそうなのかなあ…とグルグル思考を廻らせています。
でもまあ、次回からいよいよバトルなので思う存分好き勝手やらかせばこんな気分も
無くなる事でしょう。
と言う訳で、今回はここまで、ではまた。
第十三話「激突」
地球。そしてその中のとある島。外からは誰にも知られることのないその場所に、機械仕掛けの巨人達が大地に膝を
ついていた。墜落した戦闘機がブスブスと煙を上げている。巨人を操っていたパイロット達―――多くはまだ少年―――
は、誰もが地にへたり込んでいた。
この惨状を成し遂げたのは、たった一人―――そして、たった一機のロボットだった。
誰かが、ひっそりと呟く。それは、その場の全員の総意であった。
「あんなのに―――どうやって勝てっていうんだ・・・?」
果たして彼らに何があったのか。話を少し前に戻そう―――
「あれ?ムウさん。ジャイアン達も。パイロットスーツなんか着て、何かあったの?」
ドラえもん城の中で雑談にふけっていたのび太達は、その場にいなかったムウ、ジャイアン、スネ夫がパイロットスーツを
着て歩いているのを見て声をかけた。
「なに、大したことじゃないさ。まだまだこいつら戦闘機の扱いに慣れてないみたいだから、ちょっくら訓練でもと思ってな」
「訓練?」
「おう!きっちりやっとかないと、いざという時に困るからな」
ジャイアンは鼻の穴を膨らませて力説する。スネ夫はと見ると、浮かない顔だ。大方ジャイアンに無理矢理誘われたのだろう。
「訓練、か・・・ぼくらもやった方がいいかも知れませんね。ムウさんやキラさんはともかく、のび太さんや稟さん、それに
ぼくはまだ機体―――巨神像をそう呼んでいいものか疑問ですが―――に乗って日が浅いですから。いざ実戦、で上手く
扱えなかったら目も当てられませんよ」
「俺もそう思う。今のままじゃちょっと不安だ」
「うん。僕もやっておいたほうがいいと思うよ」
ペコ、稟、キラもそれに同意した。ドラえもんはんー、とちょっと考えたが、すぐに結論は出た。
「よし!じゃあみんなで訓練といくか?」
誰もそれに異論はなかった。
「そうそう。みんなにもパイロットスーツを渡しとくよ。普通の服じゃ危険だからね」
「パイロットスーツ・・・って、あれ?」
「そうだよ。どうかしたの、プリムラ」
「かわいくない。主にデザインが」
「・・・・・・我侭言っちゃダメだよ」
「さて、というわけでザンダクロスに乗ったわけだけど」
「ドラえもん、誰に説明してるの?」
「いや、なんとなくね」
そんなどーでもいい会話はともかく、三人はいつも通りコクピットに座る。
基本的な操縦はのび太が行い、のび太やドラえもんにはわけの分からないレーダーやら何やらの計器類の操作は勝手知ったる
リルルが、そしてザンダクロスに備え付けた四次元ポケットからは、秘密道具をもっとも上手く使えるドラえもんの音声入力で
瞬時に秘密道具を取り出せるようプログラムされている。
「ふふ。こうしてみると三人乗りってことには結構意味があるわね」
「そうだね。なんとなくノリで決めちゃったかんじもあるけど・・・」
いざ自分達の役割を確認してみると、意外とバランスがいいかもしれないとのび太は思った。
周りを見ると、サイバスターと巨神像も動き出している。
ジャイアン達はというと、すでに訓練に入っている。ムウが用意したらしい訓練用の敵機を追い回し、ビームを浴びせて
破壊している。
「お、やってるやってる」
「よし、ぼくらもやるか!」
ドラえもんもポケットから敵機を取り出し、空に放つ。それを迎撃するため身構える―――だが。
それらは空を飛び回り始めた途端に、爆発した。
「え―――!?」
何が起こったのか分からず、ドラえもん達はうろたえる。そんな中―――
「のび太くん!レーダーに・・・何かおかしな反応があるわ。あそこよ!」
「え・・・何もないよ?」
リルルが示した方向には何もない―――いや。よく目を凝らしてみると、分かった。
空間が、揺らいでいる。まるで陽炎のように―――。
驚くのび太達を嘲笑うかのように、揺らぎから声が響く。
「ククク・・・訓練とは、中々勤勉でよろしい。しかしそんな玩具みたいなのが相手では、身も入らないでしょう?
よろしければ、私がお相手差し上げましょう」
そして空間の揺らぎが消え―――その中から、一つの巨大な物体が現われる。
黒に近い深青色をした、禍々しさと絶大な威圧感を感じさせる人型のボディー。
それはのび太にかつての強敵を想起させた。
機械仕掛けの魔王の名を持つ、神すら超える力を持った、機械の究極―――
「グランゾン・・・!?まさか・・・」
「のび太!みんな!」
稟から通信が入る。切羽詰った声だった。
「気をつけろ!あれは・・・あれは、ネオグランゾンだ!」
「ネオグランゾン!?あれが!?」
驚愕するのび太。それを尻目に、声がさらに響く。
「覚えていてくれたとは光栄ですよ、稟。さて・・・初めましての方も多いですから、まずは自己紹介と参りましょう。
私は<十三階段>最終の十三段目、名は―――」
「シュウ・シラカワ!」
声を遮り、ムウが叫んだ。それに気を悪くしたのか、シュウはやや刺のある声で続ける。
「ふん、あなたは確かTP隊員のムウ・ラ・フラガ。それなら私のことを知っていても不思議はない―――しかし、
人の名乗りを邪魔するとは下品な方ですね・・・まあいいでしょう。彼の言う通り、私の名はシュウ・シラカワ。
以後、お見知りおきを」
慇懃無礼を絵に描いたような態度で言葉を連ねる。のび太はそれに凄まじい嫌悪感を抱いた。
その声も、目の前のネオグランゾンの姿も―――
何もかもがおぞましい。
こいつだけは―――こいつだけは、絶対に自分とは相容れない。そんな確信があった。
彼は、シュウ・シラカワは、既にどこかへ行き着いてしまっている。
それはまるで―――あの、狐面の男のように。
人の姿をした、人ならぬ男の声はまだ響く。
「さて―――それでは敵同士、戦いを始めましょうか」
投下完了。前回は
>>32より。
次回、完全敗北。
>>36 バカ王子の役割としては、ロボット物には必須の博士キャラをイメージしています。
戦闘タイプではないですね。でもコミック読み直すと、少なくとも車に撥ねられても大丈夫な上、
一晩でその怪我が治るみたいだから、意外と強いのかも・・・。
>>ゲロさん
言っときますが原作のアスランはあんなアホキャラじゃないですよ(笑)
あくまでデフォルメです。
>>102にちょっと誤りがありました。訂正します。
「さて、というわけでザンダクロスに乗ったわけだけど」
「ドラえもん、誰に説明してるの?」
「いや、なんとなくね」
そんなどーでもいい会話はともかく、三人はいつも通りコクピットに座る。
基本的な操縦はのび太が行い、のび太やドラえもんにはわけの分からないレーダーやら何やらの計器類の操作は勝手知ったる
リルルが、そしてザンダクロスに備え付けた四次元ポケットからは、秘密道具をもっとも上手く使えるドラえもんの音声入力で
瞬時に秘密道具を取り出せるようプログラムされている。
「ふふ。こうしてみると三人乗りってことには結構意味があるわね」
「そうだね。なんとなくノリで決めちゃったかんじもあるけど・・・」
いざ自分達の役割を確認してみると、意外とバランスがいいかもしれないとのび太は思った。
周りを見ると、サイバスターと巨神像、フリーダムも動き出している。
ジャイアン達はというと、すでに訓練に入っている。ムウが用意したらしい訓練用の敵機を追い回し、ビームを浴びせて
破壊している。
「お、やってるやってる」
「よし、ぼくらもやるか!」
ドラえもんもポケットから敵機を取り出し、空に放つ。それを迎撃するため身構える―――だが。
それらは空を飛び回り始めた途端に、爆発した。
「え―――!?」
何が起こったのか分からず、ドラえもん達はうろたえる。そんな中―――
「のび太くん!レーダーに・・・何かおかしな反応があるわ。あそこよ!」
「え・・・何もないよ?」
リルルが示した方向には何もない―――いや。よく目を凝らしてみると、分かった。
空間が、揺らいでいる。まるで陽炎のように―――。
驚くのび太達を嘲笑うかのように、揺らぎから声が響く。
「ククク・・・訓練とは、中々勤勉でよろしい。しかしそんな玩具みたいなのが相手では、身も入らないでしょう?
よろしければ、私がお相手差し上げましょう」
>魔女
ゲロさんは本当に芸風の広い方ですが、特にこういうどこか寂寥感のある話が上手ですね。
ポッコと主人公、仲良くなりそうですがラストは哀しい別れになる予感がします。
>範馬刃牙
う〜ん、VSさんならではの作品ですね、このテンポとギャグの乱反射振りは間違いなく。
凡人では及びつかない境地、ミスターがどこまで表現するか楽しみ。刃牙は?w
>AnotherAttraction BC
「流れ者に女はいらねえ」の境地ですね、トレインは。イブを思えばこそでしょうが。
しかし、ピンチには颯爽と登場。さすがにヒーローだなあ。
あと、文章で凹むなんてとんでもないですよ。うま過ぎです。
>超機神大戦
主人公チームが本格的に動き出しましたね。切り札の巨大戦隊も同時に。無敵の感ですが、
次回は「敗北」ですか。13階段の最終も動き出して、どうやら戦争間近かな・・?
107 :
作者の都合により名無しです:2005/08/22(月) 12:35:08 ID:20DJsW960
>NBさん
ここ数回コメディタッチのホームドラマみたいな展開でしたが、
シリアスっぽい流れになって来ましたねー。いよいよバトル全快ですか。
NBさんのアクション描写、大好きなので期待してます
>サマサさん
最近ドラえもんたちが少々影が薄かった感がありますが、
そろそろ大活躍みたいですね。相変わらずプリムラ可愛い
引きと次回予告から、シュウは相当な強敵みたいですね。
108 :
作者の都合により名無しです:2005/08/22(月) 18:13:35 ID:SY6r38rt0
このスレの三大ガッカリの一つ
原作のギラーミンのショボさ。
109 :
作者の都合により名無しです:2005/08/22(月) 18:21:18 ID:SY6r38rt0
原作じゃなくて映画版だわ。動くのび太とギラーミンの決闘が見れると思ったら、ロップル
が撃った銃のまぐれ当たりで昇天…。
「ユラリ…」
剣豪・戸部新左衛門が刀を一閃するたびに、ゴーレムが、いや、兵団の躯に
貼りついた鉱石が、微塵に切り裂かれ、パラパラと落ちていく。山田伝蔵の、
利吉の火縄銃が火を吹く。ゴーレムや兵団の生き残りたちの間接が無残に
撃ち抜かれ、大地に転がった。忍術学園の猛者たち、そしてドクタケの天才、
竜魔鬼らは乱戦の最中、普段戦い慣れないカラクリ人形を相手にしてもなお、
存分にその強さを発揮していた。
バンホーの剣がゴーレムの喉笛を薙ぐ。あまりにも苦しかったこの戦い。
しかし、形勢はついに逆転しはじめた。バンホーは決然と機魔王を見た。
血にまみれてなお美しい銀の光沢を放つロングスピアを強く握り締めて。
各所で奮戦する反乱軍の面々の中央で、美しくまばゆい白光が膨れ上がった。
まるで宇宙開闢の大爆発を思わせるその膨張は、しかし、周囲に微塵の
ダメージを与えることもしなかった。むしろ、戦い、疲れきった者たちの
心を癒そうとさえしているように思えた。戦いの終息を感じさせる白光――――
ついに戦いが終わる。が、しかし、その刹那――――誰しもが声をあげた。
その切なる待望を裏切られて―――――――――――
「あああっ!?」
白光が――――白光の膨張が急速に弱まり――――――――星が散った。
白金の聖なる弾丸が止まった――――いや、“止められてしまった”のだ!
恐るべき神の生命力。もはやそれは、人の身で解せるものではない。
『ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ』
機魔王が笑う。凝縮された闇が弾丸を包んでいる。魔王は残された全魔力を
集中させ、天敵たるその弾丸を食いとめてみせたのだ。美夜子が愕然と叫ぶ。
「バカな!そんな・・・いったいどこにそんな魔力が・・・!?」
全てを託され、渾身で放った一撃を止められた。硬直し、蒼白になるのび太。
他の面々も同様である。―――その想いが、今まさに絶望に変わる寸前だった。
のび太の頭上に落ちる黒い影。
「ふははは。どけどけい小童どもめが!ドクタケ忍者棟梁・稗田八方斎参る!
きすぎい殿ならぬ“魔王”とやらよ!その命、このわしが貰い受ける!」
プロペラを回転させて、ふよふよと不自然に宙を舞う巨大な頭。いや、人。
巨大な頭の頭上に燦燦と回転するそれを見て、ドラが叫ぶ。
「タケコプター!まだ残っていたのか!」
さらに八方斎のその巨大な頭部に隠れるように白髪の男が一人しがみついていた。
パーマン1号が我が目を疑いながら叫んだ。が、間違いない。その男の名は――――
「魔土災炎!?」
『魔土。稗田。何のつもりかは知らぬがこざかしい!撃ち落してくれるわ!』
機魔王デマオンは吼える。その指を天にかざし雷を呼ぶ。が――――
『おおおおっ!?』
足元にわずかな衝撃を受ける。
「あひゃひゃひゃ♪えひゃひゃひゃ♪」
きり丸の奇怪な笑い声と共に、丸裸にされかけた金色の――もはや金色とは呼べ
ない有様だが――ゴーレムが泣きながら突如、機魔王の足元に突っ込んできたのだ。
虚をつかれた機魔王の体勢をわずかにぐらつかせる。母体であるパパンダーの、
強化されたとはいえ、無敵の上半身に比べればわずかに脆い下半身。エネルギーが
尽き、デマオンの魔力も大きく損なわれた今、それは明確に弱点と化している。
「あれ?」
衝撃に吹き飛ばされたきり丸が、何が起こったのかよくわからないまま―――
しかし、金を詰めた巨大な袋だけは手放さず―――宙を舞っていく。舞い落ちる
きり丸を抱きとめる神速の黒い影。兄のように優しい笑顔で力強くきり丸を讃える。
「きり丸!助けにきたぞ。よくがんばったな!」
「土井先生!」
きり丸を救ったのはきり丸の所属する忍術学園1年は組担任、土井半助だった。
――――――ガォオン!
「“バースト・ブレッド”!」
ギラーミンはそのわずかな隙を見逃さない。黒銃“ハデス”が再び火を噴く。
死を呼ぶ獣の唸りと共に。機魔王がうめき、たたらを踏む。憤怒と焦燥の悲鳴。
『がああああああああああああああ!おのれ!ギラーミンめえええええ!!』
さらに間髪を入れず、遠方からの追撃。山田伝蔵、利吉親子の火縄銃、
土井半助の白塗りの棒手裏剣が、的確に機魔王の間接を襲った。魔王の咆哮。
『こざかしい!こざかしいぞ虫ケラどもめがああああああああああああああああ!』
パーマン1号が、2号が、3号が、3人手をつなぎ超高速の光の矢となった。
アンパンマン、しょくぱんマン、カレーパンマンは力を合わせ再び彗星となる。
二つの光の奔流が迷いのない純粋な想いのまま機魔王にぶつかっていく。
『ぐがあああああああああああああああああああああああああああああああああ!』
魔王の絶叫。その影で緊迫感まるでなしで大はしゃぎなのはドキンちゃん。
冷めた視線を送るバイキンマンの横で一人チアリーダーと化している。
「きゃー!しょくぱんマン様かっこいい〜♪アンパンとかカレーパンとかその他
おまけの人たちもしょくぱんマン様の足手まといにならないように頑張ってね〜♪」
「“魔王”よ!この地底世界の平和!貴様ごときに破壊できるものではない!」
凛とした声明が轟く。激闘の余韻、すすだらけの、しかし堂々たる王者の貫禄で
騎竜にまたがり高速で駆け寄ってくる者。反乱軍、竜騎士隊長バンホーは同胞たちの
血と脂にまみれた銀色の、哀しみのスピアを渾身の力を込めて投げ放った。右腕の
黒いブレスレットが強く輝く。人智を超えた膂力が生み出される。凄まじい回転と
共にロングスピアは音速を超え、機魔王の強靭な装甲を貫いた。巨体が跪く。
『がっ!?りゅ、竜人!?バカな!たかが一竜人ごときが―――――――――!?
ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
無敵のはずの装甲を貫かれ、デマオンのうめきでも憤怒でもない痛苦の絶叫が轟く。
リルルの指先から体内のエネルギーを振り絞った超熱線が照射された。ジャイアンが
一人走る。無謀でもかまわない。素手のまま果敢に殴りかかる。スネオはなけなしの
勇気を振り絞って傍らの少女紳を守るべく身を盾にし、しずかは強い意志と博愛をも
って戦士たちに祈りを捧げる。ショックガン。この貧弱な武器では蚊ほどのダメージ
も与えられないだろう。しかしのび太は再びそれを強く握りしめた。
その場に集結した戦士たち全員が勇気を振り絞ってそれぞれの全力を傾けている。
みなの想いに応えるように、ドラえもんの究極の秘密兵器が火を噴いた。
「“ビッグ・ガン”!」
『おのれ!おのれ虫ケラども虫ケ、ケラ、虫ケラ、ケラ、ケラ―――――――――』
戦いは終局を迎えている。地底世界に魔王の悲鳴が幾たびもこだまする。
“きたるべきそのとき”に向けて、美夜子は瞑想し魔力を増幅させる。
そしてようやく。ふよふよと上空を舞っていた八方斎が魔王の上空へと辿りついた。
「魔土どの!今です!さあ!“らいと”を照らされよ!」
「おお!“ビッグライト”!」
魔土が右手に抱えるもの。それはパパンダーを巨大化させた秘密道具ビッグライト。
魔土はバイキンマンに吹き飛ばされたボロボロの体をおしてここまで戻ってきたのだ。
「パ、パパンダーは私の・・・ものだ・・・!私の生み出した芸術・・・・・!
私以外の何者にも渡すものか・・・・・・!」
ビッグライトが照射される。既にビッグライトの光を浴びている機魔王の体に
変化は起こらない。放たれた“白金の弾丸”は、魔王を滅するまでは止まらない。
“白金の弾丸”ただそれだけが、速度を落とすことさえなく、質量を増していく。
白光が再び輝きを取り戻す。機魔王デマオンは光に包まれ―――
白光の中もがき、あがき続ける――――――――!
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』
115 :
作者の都合により名無しです:2005/08/22(月) 18:43:50 ID:IQXMxzQe0
うみにんさん投稿規制かな?
ここまで読んだけど、最後のデマオンの絶叫で本当にラスト近いんだな・・と思いました。
寂しいが、ラスト早く読みたい。
サマサさんは逆に、いよいよ本格的に戦争が始まるって感じですね。キャラ多いですねw
どうぞ一話でも長く続けて下さい。
うみにんさん、途中で失礼しました。出ないと行けないんで・・。
帰ったら、残り楽しみに読みます。
>>108 えらいタイミングいいなw残り2つなんだよw
『―――我こそは全能の魔王!破壊の神!世界を滅ぼ・・・す・・・も・・の!』
もはや大勢は決している。強大な―――いや、“かつて強大であった”――――
機魔王に残された力はないに等しい。が、それでもなお、あがく。なにか――――
なにか、かすかに残された確かなるものにすがるように――――!
ギラーミンがうめく。魔王にはまだ切り札が残されていた――――――――――!
「む!あれは――――――“コア破壊装置”!?」
『―――――――目覚めよ!究極のコア破壊装置“黒の核”―――――――――!』
溢れる白光の中、弱りきった機魔王の掲げる手の中に輝く対照的にドス黒い光が
じわじわと広がり始める。自らの滅びを悟った機魔王の最後のあがき。真なる断末魔。
キスギーの頭脳と自らの魔力とで造り上げた究極の破壊兵器。“黒の核”―――――
「―――――――は、いただきましたでえ!」
『なにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?』
白光の中、魔王の背後に浮かび上がるマント姿のシルエット。その影が、黒い光を
あっさりと奪い取る。空中で見守るパーマン1号たちが歓声をあげ、その名を叫んだ。
「パーやん!」
そう。シルエットの正体はパーマン4号。最も頼れる男、パーやんである。
「すまんなあ。あんさんの切り札は調査して知ってましてん。追い詰められたその時、
絶対に持ち出すと睨んでたんや。これはボクらが責任もって始末させてもらいま!」
『パ、パーやん・・・!おのれ、おのれぇええええええええええええええ!!』
機魔王の存在は既に薄れつつあった。じょじょに吼え、怒り、猛ることすらなくなった
かのように、デマオンの口から発せられる言葉は静かなものになっていく。静かに笑う。
『くはははは!さすがだなパーやん。だが、わざわざ“コア”を奪わずとも―――――
我にはもう―――“コア”を点火させる力すら残されてはいない――――――しかし!
――“コア”はもはや止められん!我がこのまま――――滅びたとしても――――――
この星を消滅させる――――――――』
「そうはいかない!ボクらパーマンの力で!宇宙の果てまでも運んで防いでみせる!」
パーやんが叫ぶ!パーマン軍団が力強く頷く。駆け寄る。コアを持つパーやんのもとへ。
『猶予は―――わずか――――数時間――――――――間に合う――もの――か……』
忍びとは迅きこと風のごとく。魔王の言葉を聞くや聞かないかのうちに忍術学園学園長、
大川平次渦正が老体に鞭打ち、全速力でパーマン軍団のもとへと駆けつけた。
「地上への最短距離はワシらが知っておるぞい。連れてけ!案内してやるぞ。
空を飛べるあんたたちならあっという間じゃろう。」
「ホンマでっか?助かりますわ!
1号はん!パー子はん!ブービーはん!みんな、いきまっせー!」
「おう!」「まかせて!」「ウッキー!」
「おおきに!おかげでなんとかなりそうや!」
パーやんは学園長を背に乗せて飛び去るまぎわ、遠くに佇んで見守る仮面の老人―――
―――“アーサー・キスギー”に笑顔でウインクしてみせた。もうその名前に“D”の
一文字はいらない。キスギーは黙したまま、ただ一度だけ大きくコクリと頷いてみせた。
そして――――――四人のパーマンは手をつなぎ、最高の速度を手に入れて飛び立った。
世界を、守るべき地球を救うために、命をかけて――――――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
パーマンたちが飛び去り、白光の中残されたのは――――魔影の中核である脈動する
真紅の心臓を失い、微弱な影となった憐れなる魔王デマオンの姿のみ――――――――
切り札を失った魔王はその強大で倣岸なる精神力さえも大きく削り取られ、
もはや抗う事も、逃げ出すことも、断末魔の叫びをあげることさえもない。
最後の“とき”をドラえもんが、のび太が、バンホーが、ギラーミンが、集いし全ての
戦士たちが見つめる。唯一魔王デマオンの神としての全盛を知る者、メジューサは思わず
目を伏せた。憐憫の哀しみに耐えかねて。
戦士たちの視線が一点に移る。全身を魔力の光に輝かせた美夜子が天を指差す。
美夜子は増幅された魔力を解き放った。緑色の幻想的な光が魔王の影を包む。
「魔王よ!滅びよ!今度こそ!完全に!」
静寂――――役目を終え、薄れゆく聖なる白光の中にあるものは、ただそれだけだった。
戦士たちに、宿敵たちに見守られながら、消えていく――――――――――
聖なる白光と美しき緑の魔力に照らされて、消えていく――――――――――
万物を従えし偉大なる魔王デマオン。
万物に背かれし憐れなる大神デウス。
生まれながらにしての覇王。偉大なる敗者は今、音もなく静かに――――――――――
消えていった―――――――――――
魔王の消滅と共に、既に残り少なくなっていたゴーレムも、ついにその動きを止めた。
迷走する鉄人兵団も動かない鉄の塊と化す。戦いは終わったのだ――――――――――
呆然と見つめる。感慨よりも、ただただ生じる安堵の想いと、それに対する猜疑の念と。
「やった・・・のか・・・・!?」
ジャイアンが、さんざん見せつけられてきたデマオンの生命力にまだ若干の不安を
抱きながら呟いた。それはその場にいるほとんど全ての者の気持ちの代弁でもあった。
美夜子がそれらの不安を打ち払うように断言する。
「ええ、間違いなく、今度こそ・・・魔王デマオンは滅んだ・・・・永遠に・・・!
心配なのは・・・残された魔王の“破壊の意志”・・・ただそれだけ・・・・・」
「――――“破壊の意志”・・・・・・!」
「・・・コアとかいう爆弾のことか。」
「なあに。大丈夫さ。だってあいつら、伝説の“パーマン”なんだぜ?」
「そうだね。コアのことはパーマンたちを信じることしかできない。今はただ、ボクらに
できることだけをしよう!やるべきことは多い―――――――」
ドラえもんたち以上にボロボロの竜人の兵士たち。痛んだ地底世界。彼らの救助と復興。
やるべきことは数え上げればキリがない。だが、何度も味わった絶望。心を削る激しい
激闘の連続。極限の疲労に彼ら幼い勇者たちはみな、いつしかその場にくずおれるように
深い眠りに誘われていった――――――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
120 :
うみにん:2005/08/22(月) 19:04:32 ID:ssHxRhPT0
さて、長い戦いがようやく決着しました。いやあ、本当に疲れました(笑)
あとはエピローグの投下を終えた時点で終了、完結の運びとなります。
これがまたサラッといくつもりだったのですが、思ったより長くなりそう
な雰囲気です。といっても20レス前後にはまとまるとは思いますけど。
なんせたくさん出した登場人物がほぼ全員生き残ってて、しかもわりかし
みんな元気ですので(笑)そのへんは、ご容赦くださいませ。
>>108 確かにそうですねえ。個人的には「のび太の宇宙開拓史2008」に
期待してはいるのですが、はたしてリメイク路線で続くのか、それとも?
新ドラは「原作に忠実に」がコンセプトらしいので、そういう意味では
リメイクしてくれれば今度こそかっこいいギラーミンが見れそうですね。
>>115 全然問題ないですよ。忙しい中、ご感想ありがとうございます。なんとか
夏休み中に終われればと思ってます。もう少しだけお付き合いくださいませ。
満開ですねえ。でも、出来れば少し散らして欲しいかも。
大勢いらっしゃると沢山感想書けません。ふらーりさんはすごいな。
・魔女
ゲロさんの得意そうな世界観ですね。苦しんで書いていると仰るだけあって、
和のテイストがいい感じです。婆ちゃんが物語の鍵っぽいな
・範馬バキ
この人の脳はどうなってるだろう。何かに魂を売っているに違いない。
ミスターは完全に主役ですな。バキはタイトルだけは原作通りw
・ブラックキャット
シリアスへの転換がうまいですね。文章下手なんてどの口がいう。
次回、鬼神のトレインがイブに背中で何を語るか楽しみです。
・のび太の超機神大戦
種知りませんが、ラスボスかライバルキャラか憎まれ役ですかね、
シュウは。こいつは別格ぽいですね。ヤムチャとかと違ってw
・のび太の地底出木杉帝国
やっと長い戦いが終わりましたか。最終章、手に汗握る激闘でしたね!
ラスト間近。寂しいですが、素晴らしいエンディングを待ってます。
122 :
ふら〜り:2005/08/22(月) 21:20:58 ID:Urp/V0if0
これでもまだ、長期休載作品の再開はまだなのか〜とか思えてしまうのが凄い。
長い歴史を経て、この地に名将が多数集った結果ですな。しみじみ喜ばしい。
>>サナダムシさん
>驚くことに、液によってセルの上皮が
この、「が」まで読んだその瞬間まで、これで再生されるんだと全力で信じてたんですが
……まだ甘かった。目覚めのヘルズフラッシュといい、とことん変わることのないセルと
仲間たち。何事もなかったように飛び去り、能力一覧がまたアレで。何だか安心しました。
>>ゲロさん
>生きてる人はみんな大変だよ。僕だけじゃない
ふむ。このテの人にしては、なかなかなことを言ってます。自分が世界一つらい思いを
している、とか断固主張しそうなとこですが。で語感から「コロポックル」を連想する
蔵ポッコ、次回正体判明ですね。自分の中のもう一人の自分、とかありそうですが。さて?
>>VSさん
流れるようにスムーズに、地の文に反応して頭を気にするミスターが何とも。延々バック
ドロップの猪狩にマジメに従うのが少し可愛い。で最終的に目的は達して。良かったねと。
で
>>89。やはり芯にはシリアスが。長年待ち望んだVSさんシリアスが。嬉し楽しみです!
>>NBさん
前回を読んだ時点では、デュランの残酷スプラッタ激痛ショーにばかり目がいってました
が、トレインの意外な思い&愛情にびっくり。あと、私は完璧超人だと見ていたスヴェン
が……後々今回みたいにトレインと口論になるとか? 見たいような見たくないようなっ。
123 :
ふら〜り:2005/08/22(月) 21:21:37 ID:Urp/V0if0
>>サマサさん
女の子用パイロットスーツといえば、可愛く色っぽく、レオタードどころか全身タイツ
状態なのが王道だぞとか思ったり。王道といえば、名乗りを邪魔するのは確かに非常識。
イッている、どころか「行き着いてる」シュウの、圧倒的強さと残酷さと変っぷりに期待。
>>うみにんさん
大長編の、強大なラスボスにふさわしい最期でした。ほんの小さなきっかけから逆転され、
集った軍勢の一斉攻撃をその身に受け、無敵だった力を徐々に削られていき……と。さて、
後日談を見たいキャラも山のようにいるこの作品、エピローグの最後一行まで楽しみです。
>>121 私の場合、感想を書くことで「作品読んで楽しい気分」を自分の中で更に盛り上げてる
ようなものでして。あと最近は、自分がSSを書く上での勉強になるとも思ってますし。
まぁそれはそれとして、お褒めの言葉は光栄の行ったり来たり。ありがたやです。
バキスレ名物の出木杉終わっちゃうのかぁ。
ラストバトル燃え萌えで良かったけど、もう少し読みたかったなぁ。
少し早いけどエピローグと出来れば次回作、期待しております
うみにん氏おつかれ様でした。最後はちょっと意外な人物も含めての華々しい総攻撃でしたね。
ちょうど花火大会の季節ですが、まさに惜しげもなく大玉を連発し続けたようなSSでした。
ものすごい盛りあがりを見せてくれたのに、終わったあとどうしょうもなく切なくなるような
不思議な気持ちでいっぱいです。この寂しさを埋めてくれるようなエピローグを期待しています。
第十九話「レッドリボン」
深い森林に囲まれた、かつて隆盛を誇った巨大要塞。
高くそびえ立つ城壁、強力かつ多大なる兵力、あらゆる攻撃に対応して設計された内部
構造、敗北などありえない完全なる方程式。いかなる治安維持組織も、手が出せぬ独立領
域がここに在った。
──だが、打ち破られた。
たった一人の少年によって、たった一時間足らずで、レッドリボン軍は壊滅させられた
のだ。
「ここか……」
上空から、現在の基地を見渡すセルたち。
あらゆる所に蔓や雑草が無造作に生えている。近くの森から種子が舞い込んだためだろ
う。むろん、人の気配はない。
「とても、クリスタルなどありそうもないがな」
セルは否定する。無理もない話だ。レッドリボン本部が漂わせる空気は、宝物が眠る洞
窟というより、単なる廃墟が放つものなのだから。
「まぁ、とりあえず入ってみようよ」
18号が促す。一行は再び手分けして、クリスタル探しに入ることにした。
ちなみにこの間、17号はずっと沈黙を守っていた。ただならぬ悲壮感を発しながら。
まずセルは建物を適当に選び、探索していく。ただし、いまいち気分が盛り上がらない。
「どうせないだろ……。水にも炎にも、まるで関係ないじゃないか」
あるはずがない。この先入観が、彼のやる気をとことんまで削いでいた。苛立ち紛れに、
近くに積み上げられた箱を蹴り上げる。激しい音を立て、沢山の箱が崩れていく。
「ふん、ざまあみろ」
少しすっとしたのか、セルが笑う。が、この笑みはすぐさま悲鳴に変わる。
箱の中身は火薬だったのだ。
セルのいた建物は、軍の火薬庫。爆発はセルを巻き込み、火薬庫を跡形もなく吹き飛ば
したのであった。
18号とセルジュニアは、建物には入らず主に外部を探していた。
至る箇所に、銃痕や放逐された武器が残っている。起きた戦いのレベル自体は、サイバ
イマンらがいた地域が遥かに上だろう。が、戦場ならではの生々しさという点では、こち
らの方が上回っていた。
「すごいなぁ……」
「これが、私たちを造らせた軍隊の本拠地……か」
好奇心をあらわにするセルジュニアと、重々しく呟く18号。
「ねぇ、18号さん」
「どうした?」
「ここに行こうって決めた途端、17号さんの様子がおかしいけど……何があったの?」
すると、18号の顔つきが突如険しくなる。
「何も知らなくていい。いや、あんたは知らない方がいい」
厳しい口調であった。
これを受け、セルジュニアは反省する。自分は侵入してはならぬ一線を、今まさに越え
かけたということを。
一方、16号は空中で静止し、本部全体を見渡していた。
世界征服などという下卑た野望を抱き、全世界に悲劇をもたらしたレッドリボン。彼も
憎かったのだ。
17号も、18号も、レッドリボンの被害者だ。セルやセルジュニアとて、そういえる
かもしれない。むろん、16号も──。
今すぐにでも基地を破壊したい。こんな廃墟など一切を消し去りたい。残しておく価値
など全くない。が、彼は踏みとどまる。
あちらこちらで生殖する植物、高い塔で巣作りをする鳥たち。少しずつ、基地の中に自
然が浸透している証拠だ。
「ここには自然がある。いずれ、大自然は忌まわしき地を完全に埋め尽くすだろう」
レッドリボン本部にひっそりと存在する陰気な地下室──しかし、埃一つ落ちていない。
つまり、管理する者が居る証拠。
真新しい、化学薬品や機械油の刺激臭。レッドリボン本部は壊滅し、無人であるはずだ
ったが──いや、それは正しい。ここに住むのは、怨念に狂った鬼。復讐鬼。
「計算違いだったようだ……。他の四つを集めてから、ここへ来る──そういったシナリ
オだったんだがな」
「ふん、ずっと予感はしていたさ。てめぇは生きている。どこかに身を潜め、再び世に出
るチャンスを狙ってるってな」
「さすがだな……17号」
「おまえはここで殺す……クソジジィ」
対峙する両者──ドクター・ゲロと人造人間17号。
「ふっふっふ……。私も自らを人造人間とし、不死を手に入れ、大幅なパワーアップを果
たした……。だが、おまえには100%敗れるだろうな」
「当然だ。パワー値も上、スピード値も上、そして俺には永久エネルギー炉がある。おま
えに勝てる要素はない」
自他ともに認めるほどに、結果は明白。が、ゲロは余裕を崩さない。
「なかなかの洞察力だ。しかし、一人で来たのは少々軽率だったようだな。私はあらゆる
可能性を考えて、常に行動している。前もって、ここへ避難所も兼ねた研究施設を造って
おいたのもそのためだ。むろん、ここを襲撃された時の対処法もな……」
刹那、ゲロが命令する。
「19号、こいつを始末しろ!」
床が軽い爆発を起こし、穴から何者かが飛び出した。
丸っこいシルエットに、厚化粧をしたような蒼白い顔。およそ人間離れした冷酷な口調。
「ほほほ……20号に手出しはさせない」
「20号? クソジジィのことか。いいだろう、まずおまえから片付けてやる」
ついに姿を現したドクター・ゲロ。立ちはだかる人造人間19号。
レッドリボン──セル──クリスタル──全ての因果を巡る戦いが、今始まる。
ついに……魔王が……。
131 :
茄子:2005/08/23(火) 02:53:33 ID:Mr+p2U3e0
その四 四人の春
季節は春。
「センパイ」
「どーした、斉藤」
斉藤少年(十五歳高一)は悩みに悩んでいた。
二学年上の先輩に一目惚れしてしまったからである。
それで、そのテの経験が豊富と噂されているこちらも二学年上の千葉センパイに相談に
来ていたのだ。
「かくかくじかじか」
「…なるほど把握した。つか、その娘俺の彼女のダチだし」
「マジすか」
「うん。鴨川成美だろ」
「そうっす!」
「まあ、そこそこ可愛いんじゃね。マナほどじゃないが」
「あの人の顔を見たとき……体に、なんつーかこう、電撃みたいのが走ったんですよ!」
「それで、鴨川とどうしたいん?」
「どうって?」
「言わせんなよ」
「どうって……二人きりで話がしたいすね」
「うん。で?」
「で? って……」
「その先は?」
「なんかあんすか?」
「あるだろ」
「言ってくれなきゃわからないすよ」
「言われなくても分かれよ」
「あ……ああ! お付き合いすることですか! そうです、それについて訊きたかったの
でした」
132 :
茄子:2005/08/23(火) 02:54:45 ID:Mr+p2U3e0
「まあ、訊いてみてくれ」
「告白って、どうやってするんですか?」
「は?」
「いや、俺分かんないんですよ。告白ってしたことなくて」
「ないの」
「ええ」
「高一にもなってか」
「ええ」
「童貞か」
「え……え」
「そうかそうか。それじゃあ教えてやろう――」
某ファミレス。
窓側の席に向かい合って座っている女子高生二人。
「…なっちゃったねぇ」
「なっちゃった」
二人は目を見て、同時に「高三に!」と叫んだ。
「もう一年で卒業だよ。そしたらあんたにも会えなくなっちゃうねえ、マナ」
「えー? あたしはなんだかんだ理由付けて成美に会いたいよ?」
「いやあ、でも社会人になるとそうはいかないでしょ」
「え? 成美は大学行かないの?」
「うん。そのつもり」
「あたしも行かないよ」
「へえ。あんたそこそこ頭いいのになんで。家もお金ないわけじゃなさそうだし……」
「いや〜、妊娠しちゃってさあ。今年中には産まれるっつう話で」
「ふーん」
「最初は戸惑ってたけど、まあなるようになるかなと」
「…………」
「どうせいつかはできちゃうもんだし、まあいいかと」
「…よくねーよ!」
133 :
茄子:2005/08/23(火) 02:55:29 ID:Mr+p2U3e0
「そお?」
「ああ〜!! だからあたしは『あの』千葉と付き合うのはやめといた方がいいと口を酸
っぱくして言ったのに!」
「えー。千葉君はいい人だよ」
「あいつはそういう次元の人間じゃないって! 存在自体がヤバイんだって!」
「――で、だ。ここまでの話は理解できたか?」
「ふぁい」
斉藤は、千葉センパイの余りに濃密なトークに酔っ払ってしまっていた。
「…まあいい。長々喋ってきたが、これから言うことさえ理解できりゃいいんだ。聴け」
「ふぁい」
「なんで神は人間にだけセックスの際の快感を与えたんだろうな」
「かんがえたことおありあふぇん」
「簡単だ。人間に繁栄して欲しいからさ。神は人間を信用して無かったから、快感という
エサを釣り下げたんだ。そうじゃなきゃ、誰も子供なんて面倒臭がって作ろうとしないか
らな。人間ってのは大概怠惰だろ?」
「ほうでふね」
「セックスは本質的に子供を作るためにするもんなんだよ。快感を得たいのならリスクを
背負え。逃げるな。避妊なんて最悪だ。神への冒涜だぜ」
「ふぁい。わかりふぁすた」
「まあ、俺は無宗教だけどな」
成美宅前。
「鴨川さん!」
友人の懐妊を知り、とぼとぼと歩いていた鴨川が背中の方から聞こえてきた声に振り向
く。そこにいたのは斉藤だった。
134 :
茄子:2005/08/23(火) 02:56:12 ID:Mr+p2U3e0
「君、誰」
「あ、あなたの二年後輩の斉藤といいます!」
「あたしの二年後輩の斉藤君が何の用ですか? 悪いけど、今日は疲れてるのよ……早く
この家の中に入って――って、なんで君があたしんちを知ってるの?」
「か、鴨川センパイの友達の彼氏の千葉センパイからお聞きしました!」
「…千葉?」
その名を聞いた瞬間、鴨川の眉間に大量の皺が寄った。
「はい! 千葉センパイにお聞きしました! 色々と……」
鴨川は、嫌な予感がした。
「か、鴨川センパイ……僕と……いや、僕の……こっ……こっ……」
そしてそれは的中した。
「僕の子供を産んでくださいっ!!」
静寂。
暫くして、鴨川が斉藤に向かって歩き出す。そしてすぐ前でぴたりと止まって、満面の笑顔で斉藤の顔を見る。
(こ……これはもしかして、オッケ――)
「エロザルは死ねぇ!!」
鴨川は満面の笑顔のまま、鮮烈な右フックで斉藤の顔面を破壊した。
「千葉に伝えろ! お前はいずれ社会の害悪と化すから今すぐ死ねと!!」
失禁している斉藤に笑顔を崩さないままそう言い残して、鴨川は家へ入った。
「あら、お帰り」
「母さん例のヤツ!」
「野菜ミックスジュース?」
「茄子も入れといて!」
「茄子はきっと合わないよ?」
「いいから! 気分の問題なの!」
茄子とトマトとキュウリとタマネギとパセリのミックスジュースを飲み干して、鴨川は叫んだ。笑顔で。
「母さん、世の中狂ってる!」
「そうねえ」
サナダムシさん、続けて申し訳ないです。
下ネタ全開で少年漫画板にそぐわなくて恐縮です。
しかし書いてて楽しかったです。でも『茄子』じゃないような気がします、これ。
とはいえ、思いついた物を形にしないと収まりが悪いわけで。
しかしこの書きやすさは異様。もしかしたら一日一本でもいけるかも。やりませんが。
>>84 その節はお世話になりました。
洋の魔女は絡みませんね。いうなれば和の魔女でしょうか。和の魔女というと、やはり……。
>>91 座敷童ですね。ただちょっとだけ分かり難くしようとしただけで特に深い意図は無かったり。
>>104 原作もああだったら毎週欠かさず見ますけどねw
>>106 色々書ける人になりたいので、芸風が広いというのは私的に最高の褒め言葉です。有難う御座います。
器用貧乏という言葉もありますが。
そうですね、ラストは悲しいというか、寂しいけど仕方がない、といった感じかと。今やってる『妖怪大戦争』
を見た方は、あんな感じのラストだと思って下さい。年月は非情、と言う風です。
>>121 苦しんでるけど、内容は大した事ないんですよ……。正直、『魔女』で今の所はワーストになりそうな気配
さえ感じています。次のラストで盛り返せたらいいな。あ、婆ちゃんは当然鍵です。
>>122 小学生だし、もう少し見える範囲を狭くした方がよかったかもしれませんね。割と年のいったヤツのセリフですもんね。
では次回。しかし、原作同様茄子があってもなくてもいいような扱いになってしまっているなあ。
136 :
作者の都合により名無しです:2005/08/23(火) 08:36:52 ID:/4kB0e8u0
サナダムシさん、ゲロさん、深夜にお疲れ様でした。
>不完全セルゲーム
パーティが仲良くなっていますが、それにつれてシリアスになってますね。
ドクターゲロ現れて、なんかラスボスっぽい雰囲気ですけど。
でもゲロには「強さ」が足りないからまだ隠しだまがあるのかな?
>茄子
思春期の青年(ぶっちゃけ童貞)の切なさと、正義感溢れているけど
どこか残酷な少女の実態が現れてますねえ。最後に茄子ですか。
元ネタ知らないけど、確かに茄子は添え物になってますねw
>サナダムシ氏
作品の色合いが変わってきたな。いよいよ、しけい荘でいえば激闘編に突入ですか。
しかし、原作準拠だとゲロと19号2人掛かりでも17号に勝てない気がするが?
>ゲロ氏
ここまで極端ではなくても、俺もこんな感じの事があったなあ。勿論斎藤クンサイドで。
「茄子」は1回分のうぷで読み切れる作品が多いから良い意味で手軽に楽しめますな。
サナダムシさん、ゲロさんいつもハイペースの更新お疲れ様です。
>セルゲーム
黒幕登場って感じですが、まだ何かいるんでしょうね、もっと強いのが。
悟空はやっぱりラスボスかな?でも、セルなんかで勝てるんだろうか。
父親の愛がキーワードになりそうな感じ。
>茄子
学園コメディですね。話の引き出し多いですね、ゲロさんは。
爆笑って感じではないけど、思わずニヤけるような、そんな作品です。
最後のお母さんの事情わかってなさそうな返事で少し吹いたw
最近の職人さんたちの飛ばしぶりは凄いなあ
特にゲロ氏、サナダムシ氏、サマサ氏は鬼神の如く、だ
NBさんやミドリさんも帰ってきてくれたし。
うみにんさんやVSさんも好調だし。
どうやらふらーりさんも何か書いてくれそうだし。
パオ氏、ブラキン氏、ザク氏、五氏、銀杏丸氏、鬼の霍乱作者氏・・。
帰ってきてくれたら嬉しいね。反動が怖いけど。
観客の歓声が控え室にまで聞こえてくる。ミスターはスチール製の椅子に腰
掛けて目をつぶっている。ノックの音がして、入り口のドアが開いた。
「ミスター選手、時間です」
ミスターは目を開けて立ち上がった。蛍光灯の無機質な光が照らす通路を歩
いて、入場口までやってきた。血と汗と熱狂の臭いに混じって、かすかに花の
香りが漂ってきた。
「コズエ」
正面スタンドの最上階に梢江の姿を認めた瞬間、ミスターの五感から他のす
べてが消え失せた。手を伸ばせば梢江に届きそうな気がして、グラブをはめた
右手を前に差し出したその時、大音量のアナウンスが場内に轟いた。
「白虎の方向! マホメド・アライJr.選手! 本名ミスター!」
ミスターは右手を下ろして、試合場に向かって静かに歩を進めた。
「青龍の方向! アントニオ猪狩!」
「ダッシャー!」
猪狩は試合場の真ん中で、猪狩アライ状態で待っていた。ミスターはズンズ
ン歩いていって、ボウリングの玉を猪狩の股間に投げつけた。
「ダラッシャー!」
元気いっぱい悶絶する猪狩の髪の毛をつかまえて、アゴが触れあうほどに顔
を近づけて言った。
「バキは」
「私は猪狩だー!」
「そんなことは分かっている。ボクの対戦相手のバキはどうしたんだ」
猪狩はこの世のすべてが平和になる必殺の笑顔を満面に浮かべて答えた。
「刃牙くんはなー。どっか行った!」
「どこへ!」
「知らん! 梢江くんとラブホのハシゴでもしてんじゃないのか!」
「そんなことがあるか! コズエならあそこにいるじゃないか!」
ミスターは梢江の座っているスタンドを指さした。その指が何か変なものに
触れた。丸くてちっちゃくて尖っている、人間の乳首のような感触だった。
「このドスケベがー!」
それはアライの乳首だった。アライのパンチをまともに喰らって、ミスター
は顔面から倒れて地の砂をなめた。アライは震えてはいなかった。体つきもや
せ細った病人のそれではなくて、現役時代と全く同じ筋肉の塊だった。
「父さん! 病気が治ったのか!」
アライはミスターの前に大きなガラクタを放り投げた。丸太を人の形に組み
合わせて、顔の部分にアライの顔写真を貼っただけの人形だった。
「キサマが父だと思っていたのはこれだ! 私の身代わりロボットだ!」
絶対にそんなことはない。こんなお粗末なゴミクズと生身の人間を、どうや
ったって見間違える訳はない。
「だったら!」
アライはミスターを担ぎ上げて試合場を出た。
「これは!」
通路を走って階段を登って、スタンドの最上階でミスターを下ろした。
「何に見える!」
梢江が座っていたはずの椅子には、丸太に梢江の写真を貼ったボロ人形が転
がっていた。
「なぜだー!」
ミスターは頭を抱えて絶叫した。追い打ちをかけるように、アライは一枚の
写真をミスターに見せた。
「あとな、これがお前の本当の母親」
どの向きから見る写真なのか、初めは分からなかった。縦にしたり横にした
りしている内に、写っているのが人間の女だということが分かってきた。東京
湾に落ちて十年たった自動車みたいな顔をしていた。
「すげーブスだー!」
いつの間にか猪狩がやってきて、ミスターの後ろから写真をのぞき込んで大
笑いした。ミスターは天地晦冥に陥って、うわごとのように言った。
「何が一体どうなっているんだ」
「よし、説明してやろう」
アライは猪狩と肩を組んで、ファンに写真を撮らせてやりながら話し始めた。
「お前にボクシングをやってもらいたくて、最初は病気のフリをした。そうす
れば私を可哀想だと思ってくれるかと思ったが、全然そんなことはなかった」
ミスターは黙って話を聞いている。肩のあたりから微かに湯気が立ってきた。
「だから今度は女で釣った。お前の脳みそをちょっとだけいじくって、刃牙の
彼女とお前の母親がそっくりだってことにした」
アライは銀のヘルメットをミスターにかぶせた。ヘルメットは太いケーブル
でコンピューターに繋がっていて、猪狩がキーボードで「お前の母ちゃん、犬
のウンコにそっくり」と打ち込んでいた。ミスターはヘルメットを投げ捨てた。
「そしたら案の定食いついた! お前はやっとボクシングに目覚めてくれた!」
「そして私がバックドロップを教えた!」
猪狩のバックドロップはボクシングとは関係なかったが、ミスターにはそん
なことはどうでもよかった。ミスターは氷のような表情でアライに言った。
「つまり、ボクはアンタたちのオモチャにされた、という事か」
「それは違うぞミスター! 私はお前の人生を掌の上でもてあそんだだけだ!」
「ミスターくん、梢江くんが見ているぞ! さあ笑いたまえ!」
猪狩が突きつけた梢江の人形と目が合った。写真の梢江の笑顔が網膜に焼き
付いて、頭の中で炎が渦巻いた。ミスターの心の氷は炎に焼かれて蒸発した。
「キサマらー!」
ミスターの怒りが爆発した。憎しみを込めて放った拳は、しかしアライには
当たらなかった。アライは鼻くそをほじりながらパンチをかわして、ほんの軽
く手首を返した。
「ブヒー!」
ミスターはアライのアッパーで吹っ飛んで、試合場の隅でテレビを見ていた
範馬勇次郎に衝突した。
「何すんじゃー!」
勇次郎は頭突きでミスターを打ち返した。スタンドに戻ってきたミスターは、
今度は猪狩に襲いかかった。
「喰らえ!」
渾身のバックドロップを猪狩にお見舞いした。しかし猪狩は受け身をとって、
素早くミスターの背中に回り込んだ。
「ダッシャー!」
猪狩もバックドロップを放った。ミスターもまた受け身をとってバックドロ
ップを返した。
「負けるかー!」
「ダッシャー!」
バックドロップの無限ループになった。猪狩とミスターはこんがらがって通
路を進んで闘技場の外に出て、駐車場に止めてあった猪狩号の前まできた。操
縦席の扉が開いている。
「ダダッシャー!」
猪狩はひときわ力を込めて、ミスターを操縦席の中にぶん投げた。衝撃で扉
が閉まって、ミスターは弾みで発射ボタンを押した。猪狩号は鼻とアゴから炎
を吹いて急上昇した。
「さよーならー!」
アライと猪狩、それに観客全員が、ミスターの旅立ちを見送った。
「乳はどこだー!」
徳川は闘技場に残って、目隠しをして裸の女性たちを追い回していた。笑い
ながら逃げる女性の一人に猛然と飛びついて、胸のあたりの突起を押した。
「これが乳首かー!」
乳首ではなく、爆弾の起爆スイッチだった。
澄んだ青空の彼方でドーンという音がした。豆粒みたいに小さな煙の花が咲
いて、風に吹かれてすぐに消えた。その後のミスターの行方は誰も知らない。
刃牙の行方も誰も知らない。
おしまい。
>話数カウントの人&ふら〜りさん
怒ってる? 怒ってる?
結局、タイトルの主人公はどうなったんだ・・
>乳首ではなく、爆弾の起爆スイッチだった
ハゲワラ こんな強引な終わらせ方あるかよw
それにしてもVS様、全150話にも渡る大作、本当にお疲れ様です!
ふざけんな金返せ!!
147 :
作者の都合により名無しです:2005/08/24(水) 12:38:01 ID:4RhEge6z0
5話から148話までミスター走りっぱなしでワラタ
唐突に149話で出てくるドラえもんにもワラタ
だが、最も笑ったのはこの作品のために
週間少年漫画板のヤクバレと麻雀を投げ出したことだ
まあ、途中で打ち切るかなと思ってたので、全話書ききっただけでも感謝……
できねーよ!
VSさんお疲れ様でした。
麻雀の方もよろしく
149 :
作者の都合により名無しです:2005/08/24(水) 18:39:07 ID:wP933ipw0
VS氏、150話完結お疲れ様です。
予想もつかない展開と完結にドギモを抜かれました。
でも、5話から150話(最終話)まで145話分を
一挙に掲載するというのはどうでしょうか?
ふら〜りさんが感想つけるのが大変です。
あの方は一話にひとつずつ感想つけてくれますから。
まさかふら〜りさんに限って、145話分をひとつに
まとめて感想つけるなんてありえない。
そんなの、俺の好きなふら〜りさんじゃない。
>>149 無茶言うなよw
それはともかくお疲れ様です、VSさん。バキスレ史上でも屈指の大作となった
この作品ですが、終わってしまうのですね。
うみにん氏といい、VS氏といい、大作が次々に終わると悲しいですね。
次の作品をお待ちしてます!
いつもと明らかに感じが違う感想の数々に笑ったw
VS氏にお疲れ様といっていいのか、ふざけんなといっていいのか。
ふらーりさん、VS氏への145話分の感想ですが、ざっと計算して
1話分3行、1レス5話分として、全29レスで全435行ですね。
大変ですが頑張って下さい。
ここでふらーりさんのバキスレへの愛が試されていると思ってます。
152 :
執事数え歌:2005/08/24(水) 21:15:33 ID:23mRzDdL0
強きもの。それはエゴと本能の塊。エゴなくして、強くあることは不可能
である。徳川光成は、これまで当然のごとくそう信じていた。
事実、彼の主催する地下闘技場で勝ち残れる闘士たちには共通して強烈な
それがあった。地上最強の生物と呼ばれる男がいる。その男の生まれ持った
そのエゴもまたやはり、地上最強にふさわしいものであった。
しかし、その信念は揺らいだ。一人の誇り高き武術家が無残にも敗れ去る様を
その目で見てしまったそのとき。男の素性は脱走した5人の死刑囚が一人。
地下闘技場チャンピオンである範馬刃牙と達人・渋川の二人を相手に回してなお
一歩もひかず、範馬刃牙を打ち破った猛者、猛毒・柳龍光。
その男が今、ここに、目の前で、完膚なきまでに痛めつけられたのだ。
わずか10歳程度のたった一人の少女の前に―――――
少女は言った。
――――私など、まだまだ未熟な一見習いにすぎない―――――と。
衝撃が走った。この少女は格闘家ではない。それに類するスポーツの
トップアスリートでもない。そう。彼女は山奥に棲む、さる家族に使える
一介の「執事」。それもまだ見習い程度にすぎない未熟な者だったのだ。
執事――――――
それは自身のエゴや欲望をただひたすらに押し殺し、ただ主のためにのみ仕える、
ある種奴隷にも似た存在。しかし、その精神は崇高にして孤高。
「主を守る」ただそれだけのために備えた比類なき戦闘力。
徳川は声明を発した。どうしても確かめたかったのだ。
果たして「使命」が「エゴ」を凌駕する、などということがありえるか否か。
「これより、世界各地より最強の執事を集める!我らが地下闘技場代表との
5対5マッチ。対抗戦じゃ!!」
「というわけで集まってもらったわけじゃ♪」
徳川は、悪びれもせず笑顔で集まった面々にそう告げた。
集められた闘士は、バキ・渋川・独歩・克己・ガイア。以上5名。
地下闘技場が誇る、いずれ劣らぬ精鋭そろいである。
「おいおい、じっちゃん。勘弁してくれよ。よりにもよって執事って・・・」
バキが思わず、引きつった、困ったような笑いで不平の声を漏らす。
「秘書もおるぞ♪」
「・・・・・・・・・・」
「ホッホッ、徳川どのにはかなわんのう。」
渋川は屈託のない笑顔で笑った。
ここに5対5マッチが強引に決定した。場所はいつもの地下闘技場。
当然、政・経済界の重鎮たちも多数見守る中で行われることになる。
もちろん、たかが一介の執事に遅れをとるわけにはいかない。
闘士たちにはよりいっそうのプレッシャーがのしかかってくる。
だが、選ばれし執事たちにとっても、それぞれの主の名誉をかけた
負けられない戦いなのだ。選ばれし5人のメンバーは以下の通りである。
ゾルディック家執事・ゴトー(詳細不明)
エバーラスティン家執事・キース(執事養成学校「岬の楼閣」出身)
アイスバーグ専属秘書・カリファ(ウォーターセブン)
花輪家執事・ひでじい(旧日本軍所属)
カヤさんちの執事・クラハドール(自称記憶喪失のため、詳細不明)
いずれ劣らぬ猛者揃い。バキたちはそれを悟り、息を呑んだ。
対峙する10人の緊迫感が高まる。まさに一触即発の状況である。
そのころ地上最強の生物・範馬勇次郎は、奇しくもゾルディック家当主・
シルバを狙うためにゾルディック家敷地内に潜入し、第一の関門である番犬の
ミケと対峙していた。
「ただいまより第一試合を行います。先鋒!前へ!」
地下闘技場チーム一番手は、愚知克己である。
対するは、漆黒の魔猫クラハドール。待ったなし!
開始早々、クラハドールの体が陽炎のようにユラリとゆらめく。
「縮地!」
超高速の無差別移動。そして斬撃。人の目で追えるものではない。無差別が
ゆえに予測不可能。本人ですら何を斬っているかわからないがゆえに理不尽。
被害はときに観客席にも及んだ。切り刻まれた観客たちの悲鳴が飛び交う中、
ひとりで解説に没頭していた元部の首が飛んだ。
(は、はえぇ・・・!見えねぇ・・・!)
サクリサクリと切り刻まれゆく克巳。克己は焦った。徐々に体が切り刻まれて
いく。このままでは出血多量で死んでしまう。そしてそのころ勇次郎はミケに
食われかけていた。見えない斬撃の恐怖は肉体と同時に克巳の精神をも削って
いく。もがき苦しむ克巳の耳にある女性の悲鳴が届く。
「キャアッ!」
観客席で声援を送っていたクラハドールの主であるカヤ。なんという悲劇。
クラハドールは自らの主までも、その凶刃の餌食にしてしまったのだ。
阿鼻叫喚の地獄絵図となった観客席から、ついに元部以外の首が飛んでしまった。
最悪の結末である。しかし、その首は観客たちのものではなかった。
ゴロリと落ちてきたそれはクラハドールの首だった。首を狩った者の名はゴトー。
最強の暗殺一家・ゾルディック家の筆頭執事である。逆光のため、その表情の
機微まではわからないが、明らかにクラハドールの行為に対して激怒している。
ゴトーは落とした首を見下ろし、冷徹に言い放った。
「我を忘れ主にまでも牙を向けるとは、執事にあるまじき失態。」
「どうやら彼の本当の顔は、単なる従順な執事ってわけではないようね。
潜入員かしら?だけど、フリをするにしたって真剣味が足りないわ。」
クイとインテリメガネのズレを直しながら、カリファも同意する。
一回戦、愚知克己、勝利!
命からがらミケから逃げ延びた勇次郎は溶けかけた体を超回復で癒そうとしていた。
と、そこへ遠くから慌しい喧騒が聞こえてくる。
「キルア様が逃げ出したぞ―――――!!」
「なに!?またゴトー様の留守を狙ったのか!!」
「クックック・・・混乱してやがるようだな。」
ついさっきまで、ミケに食われかけていたくせに強気に笑う勇次郎。
さすがは地上最強の生物である。混乱に乗じて再びシルバを狙う。
その目の前にドレッド・ヘアーの肌の黒い、まだ幼い少女が立ちはだかった。
少女は言う。
「侵入者は通さない」
勇次郎はニタリと笑うと、いかにも上手そうに舌なめずりをした。
「ほう・・・こいつぁ、美味そ・・・へぶぅっ」
棒でぶっ叩かれた。ぶっ叩いた少女は言う。
「侵入者は通さない」
第ニ試合。執事精鋭軍代表は、元旧日本軍所属の老兵ひでじいである。
対するは――――同じく軍隊に所属するものの誇りをかけて、ガイア見参!
しかしここで待ったをかける者が現れた。達人・渋川である。自身と同じ年季の
入った老兵を見て、対抗意識が高まったのであろうか。ズズイと前に歩み出る。
「ガイアどの。わしは副将の予定じゃったが、代わってはもらえんかのう?」
護身完成。渋川は勘付いていた。執事側の残りの3人は人外の化物である、と。
マトモに戦える相手はこの男しかいない。他のやつを敵に回せば命はない、と。
達人はそう判断し、この時点で中堅戦に出る予定だった独歩の惨敗は確定した。
激闘が始まる。大切な花輪家と旧日本軍。その両方の威信をかけたひでじいの
気迫と覚悟たるや尋常なものではない。匍匐前進で夜のハイウェイをかっとばす。
渋川も負けじと愛車ハーレーでひでじいを追った。伝説の首都高バトルである。
抜きつ抜かれつの一進一退の攻防が続く。
上杉達也は朝倉南を愛しています。
第3試合。美人秘書カリファvs愚地独歩。
超ミニのスーツに網タイツといういでたちの知的セクシー美女カリファ。
時間にうるさい彼女はテキパキテキパキと開始線に向かう。
「おーおー、こんなべっぴんさんが相手たぁ、嬉しいねえ。」
カリファの姿にニタニタとしまらないエロオヤジの笑みを浮かべて独歩登場。
昂ぶるのはしょうがない。空手着の下にはいつも通りの網タイツを着込んである。
激闘が始まる。伝説の網タイツバトルである。現王者であるタンノくんも客席で
見守る中、それは開始された。
「紙絵」独歩の怒涛の空手ラッシュを打撃回避の奥義でかわす。かわす。かわす。
ムキーッと開き直った独歩の渾身の菩薩拳を今度はかわさず真正面から受けとめる。
「鉄塊」肉体の全てを鉄の硬度と化す奥義の前に独歩の拳は無残に砕け散った。
「月歩」爆発的な脚力をもって空を蹴り歩き、その脚力をもって神出鬼没を体現する。
「嵐脚」その蹴りは鎌風を呼び起こし、日本刀による斬撃をも超える切れ味を生む。
独歩の網タイツは無残にも切り裂かれ、独歩のセクシーは失われてしまった。
「二度とお前さんとは・・・やりたくねえ・・・」
第三試合。美人秘書カリファ、勝利!
そのころ勇次郎は101回目の棒を受けて、誠実な人柄の秘書見習カナリヤとの
結婚を真剣に考え始めていた。
第四試合。エバーラスティン家秘書・キースVS渋川と入れ替わった軍人ガイア。
「環境利用闘法、お教えしよう・・・」
「面白い。私も執事のたしなみとして、環境利用闘法とも言うべき奥義を身に
つけているのですよ。 ハアアッ! 環・境・利・用・闘・法!!」
闘技場が割れてガイアは挟まった。
「救命阿ッ!!」
隕石が落下してきた。
「 I T E ッ!! 」
ガイア死亡。
独歩「かわいそうに。」
カナリヤと勇次郎。2人の結婚式はしめやかに執り行われた。大将であるバキは身内の、
ゴトーは仲間の結婚をそれぞれ祝福するため、ゾルディック家へとヘリを飛ばした。
対抗戦は年の差カップル成立という大団円で幕を閉じ、徳川は大いに満足したという。
END
何が書きたかったのかよくわかりませんが、眠れない夜に無理して読むといつのまにか
心地よく眠れている。ひょっとすると、そんな安眠効果くらいはあるのかもしれません。
バキスレ最大の敵、投稿規制に引っ掛かってる?
久しぶりにバキ物キター!
しかし敵の執事側で知ってるのがカリファしかいねえw
どなたかわからんが(多分、既存の職人さんと思う)頑張れー。
唐突に現れたタッチの名台詞に笑った。
タイトルの「執事数え歌」で「しつじが一匹、しつじが二匹」を連想した。
161 :
茄子:2005/08/25(木) 00:16:59 ID:vlfKI+la0
その五 冬の山奥騒動記
東北の真冬は、雪が全てを覆う。都市部でさえそうなのだから、山奥は言うまでも無い
だろう。
二人の男が山小屋で火に当たっていた。この日は、今年一番の大寒波が襲来していた。
大した造りの小屋ではないので、隙間風が容赦なく吹き込んできて相当に寒い。
二人が何故、こんな日にこんな所にいるのか。何故、家に篭もってぬくぬくとしていな
いのか。それは熊が出たからだ。
昨夜のことだった。大人の倍もあろうかという体躯を持つという大熊が、麓の村の民家
を破壊したのだ。幸いにして怪我人は無かったが、民家の半分が破壊された。その家に住
んでいた家族は、寒い中寝間着姿でこの村一番の猟師の家まで助けを求めに行ったのであ
る。
猟師は兄弟で活動していた。豪胆な性格と熊を気絶させたこともある(本人談)怪力を
持つ兄。そして、常に冷静で正確にターゲットの急所を仕留める弟。このコンビは百戦百
勝であった。破壊された家の家族は、この兄弟なら必ずや憎き熊を撃ち殺してくれるであ
ろうと確信していた。
しかし、この日は運悪く弟が38℃の高熱で寝込んでおり、二人での仕事は無理だとな
った。家族は仕方なく警察に電話をしたが(こと熊への対応には猟師に一日の長があっ
た)、この大雪でいつ来れるか分からないという。
落胆する家族を見て、兄の猟師が言った。「ちっと俺に考えがあんだがよ――」
――山小屋には、二人の男がいた。一人は兄弟の兄のほう。そしてもう一人は、破壊さ
れた家の主であった。
「おお、さみいなあ」
「…伝さん」
主は、気弱な顔で猟師の名を呟いた。兄は伝七といった。
「俺、猟銃なんざ撃ったことねえんだけども……」
「なあにしんぺえすんな。あんたあただそれ持ってりゃええ」
伝七は、常に弟と二人で仕事をしてきた。それゆえ、横に誰かがいないと調子が悪くな
るのだ。前に今回と同じような事情で一人で仕事をしに行ったが、ロクに弾が当たらず命
からがら逃げ帰ってきたのだという。
「それよかあんた、本当にこっちのほうに熊の野郎がいるんだろな」
162 :
茄子:2005/08/25(木) 00:17:54 ID:vlfKI+la0
「それは多分間違いねえよ。おれあ見たんだ」
「ならええが……この寒さだ、無駄には動けねえ。火から離れるだけで確実に生気が奪わ
れるぜ、こりゃあ」
「そりゃたまらん。おれにゃ守るべき家族があるんだ」
「なあに、殺させはしねえよ。死ぬとしたらプロの俺だ。もし俺が殺られたら……あんた
あ、兎みたくして逃げな。一目散に逃げて逃げて、村に辿り着くんだ」
「そ、そんな……」
「がっははは! 安心しな、たとえばの話だ。俺あ十五の時分から山に来ているが、四十
になった今でもぴんぴんしてらあ」
伝七の高笑いを聞いて主は安堵したが、次に聞こえてきた音でまた不安が心の中を掻き
回った。
小屋の中には伝七と主の声と火の燃える音と外から聞こえる豪風の音しか聞こえなかっ
たが、突如全く異なる音が聞こえ出したのである。それは雄々しい動物の叫びであった。
「出やがった」
「く、熊の声……!?」
「静かにしろ!」
伝七はこれからは小声で会話するよう主に促した。そして、迅速に火を消した。急激に
室内温度が下がってゆく。
「寒い……」
「声聞けば分かる。こいつは、相当にでけえな……」
「は、はやく撃ってくれ」
「まだだ、まだ遠い。こっちには確実に来ている。もう暫く待つ」
主は驚きを隠せなかった。さっきまであんなに隙だらけだった伝七が、熊を確認した途
端にまるで別の人間のように変貌した事に。これがプロか、と主は思った。
また声がした。
「段々近付いて来ているな……」
「ま、まだなのか……」
「まだだ」
吐く息も白さを増す。これが、『確実に生気を奪われる』山の気温――
主は、家に帰りたくて仕方がなくなっていた。しかしすぐ思い直す。今、家はない。こ
れから殺す熊に破壊されたからだ。奪われた。熊に奪われた。殺す。殺さねば済まない。
そして喰ってやる。おっかあに、ガキどもに、喰わせてやる。
163 :
茄子:2005/08/25(木) 00:18:43 ID:vlfKI+la0
「伝さん、殺したら……」
「ん」
「肉、ちいとくれや」
「俺が無理言ったんだあ、言われるまでもねえさ」
そう言った直後。
「!?」
伝七は急に後ろを振り向いた。熊の気配を感じたのだ。しかし、それは伝七の培ってき
た経験上有り得ないことだった。二度目の声の時点で、熊がここに辿りつくには三十分は
かかるだろうと予測していた。まだ十分も経っていないのに、背後まで来ている筈がない
のである。
「俺の勘違い……だべな」
「伝さん、これ食ってくれ」
主が差し出したのは、握り飯と茄子の漬物であった。
「ウチで作ってた味噌で握ったのと、糠漬けだ。腹が減っては戦ができねえってな」
「あ、ああ……」
しかし伝七は、さっきから続いている違和感が気に掛かって茄子どころではない、とい
うのが本音であった。
これはもしかしたら、まずい事になるかも知れない。
今回の熊は、何か違う。
「さっきの話な――」
「なんだ?」
「――ちゃんと、逃げるんだぜ」
伝七は、神妙な顔つきでそう言った。
違和感は決して消える事無く持続していた。
熊がいる。
それも、この小屋のすぐ傍に。
間違いなく、いる。
――しかし。おかしいじゃねえか。――
いるのは間違いない。しかし、いるわけがないのだ。
クマガココニタドリツクニハアトサンジュップンハ――
伝七は、迷っていた。経験則に縋るべきか否か。
164 :
茄子:2005/08/25(木) 00:19:48 ID:vlfKI+la0
有り得ないと一蹴するか、しないか。
『彼ら』は伝七の悩みなどお構いなしに襲来した。
ばきばきと音がした。熊が小屋を破壊する音だ。しかし伝七、これは予期していた。予
め構えていた銃の口を熊に向けた。引金を引く。炸裂音が鳴る。熊の肩口から鮮血が迸る。
伝七は、ほうと一息をついた。少々虚を突かれたが、熊の侵入した所がちょうど前方だ
ったので助かった。すぐに狙いを定める事が出来たのだ。
「やったぁ! やった、伝――!」
「ああ、やったぁ……」
仕事を終えたと安心していた伝七の、一瞬の隙――
「――!」
「なんだぁ、ど」
伝七は経験に縛られすぎて、視野を狭くしてしまっていた。
「で、伝さんッ!!」
伝七の考えは当たっていた。熊がここまで辿り着く時間は、伝七の予測通りだったのだ。
しかし――熊は二頭いた。最初に襲い掛かってきたのは、伝七達が小屋に入る前から近
くにいた熊だった。こちらの熊は、少し前まで眠っていたので気配が薄かったのだろう。
だから初めのうちは伝七をもってしても存在に気付けなかった。そして。――今、伝七を
吹き飛ばした熊が、民家を破壊した大熊である。
伝七の予測した時間。それが、今だった。
まっさらに思考を張り巡らすことが出来ていれば――
「に……げ、ろ……」
「でっ、伝さん! 伝さーんッ!!」
――熊が二頭いたことにも、気付けたかもしれない。
「に……げ……」
主は寒さと怯えと怒りとでぶるぶる震えていた。手に持つ銃からかたかたと音がする。
「ち、ちくしょう!」
主は大熊に銃口を向けて引金を引いたが、素人にまともに撃てるわけがない。反動で銃
が手から離れた。主は、まさしく兎の如く逃げ出したのだ。
弟は、朦朧とした意識の中で「兄が死んだ」と戻ってきた主から聞かされた。精一杯の
詫びの声と共に。
弟は、表情を変えずに、「それがマタギだから」と呟き、再び眠りについた。
投稿規制嫌なので、4レスギリギリに詰めました。ホントにギリギリです。128行。
『茄子』は二日に一回。『魔女』は週に一回書ければ理想ですがそうはいかないでしょうね。きっと。
ネタは浮かぶのですが、書くのを怠けちゃうでしょうから……。
『六番目の小夜子』読んでますが、もっと早く読んでおけばよかった……すげえ面白い。そして読みやすい。
前々から自覚はしていたのですが、女が主役の作品の方が肌に合うようです。道理でジャンプ作品を全く読
まないわけだ。
>>136 添え物です、今回も。
>>137 千葉センパイサイドだったら怖すぎですよw
彼の思想は危険すぎたな、と書いた後思いました。
>>138 笑って頂けたのなら、有難いことです。
ふら〜りさんの感想が来る前に次を書いたのって久々な気がします。では次回。
166 :
作者の都合により名無しです:2005/08/25(木) 07:04:57 ID:lcYrin1oO
すげー状況だな
167 :
作者の都合により名無しです:2005/08/25(木) 09:46:42 ID:sIGjoSpE0
>執事数え歌
最初の1レスは真面目なバトル物と思っていたんですが・・w
執事軍団強いな。カツミンも。しかし、ラストの方はグダグタな終わり方にw
>茄子
マタギ兄弟の凄惨な生涯と歪んだ兄弟愛ですな。
プロ意識を持って死んでいった兄とそれを甘受する弟。あと茄子がどんどんw
>ゲロさん
恩田陸は面白いですね。私もファンです。
あとふらーりさん、感想は普通でいいですよ。
>名無しさん(後書きからしてサナダムシ氏か?)
第五試合まで期待してたのにwしかし、楽しめました。
そういえば執事軍団強いの多いですね。これで寝れるかは別として。
>ゲオさん
茄子シリーズは、魔女とかとは違った色合いですね。
魔女よりも身近なネタっぽく、人間くさい。兄弟の心理がよくかけてます。
170 :
作者の都合により名無しです:2005/08/25(木) 19:35:44 ID:sIGjoSpE0
ゲロ氏の作品はしみじみとした作品が多いな。
俺はやはり蟲師が一番好きだが、
茄子も毎回話の基調が変化してて楽しめる。
高校生の悩み→マタギだもんなw
171 :
うみにん:2005/08/25(木) 19:42:20 ID:ynEbJjeg0
ああ、すみません。執事数え歌は作:うみにんです。申し訳ないっす。
なんか以前にもサナダムシ様と間違えられてしまったことがあったような
なかったような・・・昨日はむしょうに眠くて爆睡でした。
本当はゴトーとキースのマジバトルが書きたくて書いてみたSSなんですが、
運の悪いことにうまいことゴトーとキースのバトルだけ書けませんでしたねえ。
人生思うようにはいかないもんです。
>>160 ひでじいはちびまる子ちゃんの花輪くんちのじいやです。よく知らないんですが、
あれってたぶん執事ですよね?で、クラハドールはカリファと同じワンピースの
キャプテン・クロ。ゴトーとカナリヤとシルバはハンター×ハンター。キースは
魔術士オーフェン無謀編のキャラです。
ちなみにキースネタは魔王デマオンの技や呪文としても使わせてもらいました。
さて、そのドラえもんのエピローグですが、ほぼ99%書き終えています。
誤字脱字チェックしてるうちになにかいいアイディアでも思いついたら追加で
遅くなるかもしれませんが、早ければ明日くらいには投下できると思います。
で、タイトル横の番号で16レス。行数制限の関係で20レス近くになってしまい
そうなんですが、またまた一度に投下させてもらってもよろしいでしょうか。
172 :
うみにん:2005/08/25(木) 19:50:17 ID:ynEbJjeg0
ああ、肝心のことを忘れてました。元部の「元」を「本」に修正お願いします。
まあ、別に名前が似てて解説好きなだけの別人ってことでも問題ないのですが・・・
・・・バレ様すみません。訂正箇所は
>>154の中の2ヶ所のみです。
他の職人さんの事もあるからなあ。
20レスだと投稿と投稿規制で下手すれば2時間ストップかかるし。
今のうちに「この時間内に投稿します」と宣言しておけば
その前後一時間は他の職人さんも気を使って
バッティングする事はないんじゃない?
174 :
うみにん:2005/08/25(木) 20:12:39 ID:ynEbJjeg0
そうですね。それでは前もって宣言しておいた時間に確実に
投下できる状況になるかわかりませんので夜中にこっそり投下、
もしくは分けるかするようにします。スレ汚し失礼しました。
いよいよ出木杉ラストか。寂しくなるなー。
またちょくちょく書いてね。
ミルコ確実に負けるだろうけど、気を落とさないでね。
176 :
ふら〜り:2005/08/25(木) 21:48:30 ID:S1tMKOpO0
>>サナダムシさん
じわじわと何か出てきそうな雰囲気、と思ってたら出ましたドクターゲロ。この自信から
察するに、原作の19号・20号とは違う隠し玉がありそうな。そんな中、バナナの皮で
滑って転んで、ソバ屋の出前の自転車にぶつかってるみたいなセルが和ませてくれてます。
>>ゲロさん
その四
年頃の男の子らしい。これで後々、憧れの人の正体を知り愕然として人間不信。こういう
ケースは異性への幻想量の差で男性の方がダメージ甚大だそうで。青春の一ページですな。
その五
最後の弟の態度がカッコ良い。「そういうこともあるさ、マタギやってるんだから」って
とこですか。でも主が去った後、一人で布団の中で泣いてたり。したらもっとカッコ良い。
>>VSさん(私に対する挑戦だなっ! と某センパイ風に中指立ててしまいました)
ふ。ちぁんと全部全話読みましたぜぃ。頭撫でて下さい。ともあれ、ミスターが一応最後
まで(比較的)まともツッコミ役=被害者だったのが好み。無限ループバックドロップで
そのままさよーなら、かと思ったらもう一段階突き落とされてるのも楽しい。彼に幸あれ。
>>うみにんさん
結局勝てたのは何もしなかった克己だけとは。原作では全員未見ですが見事也執事軍団。
ちょこちょこ入ってるヘタレな勇次郎、懐かしさに目頭が熱くなったタンノ君など、脇道も
楽しかったです。しかし外見描写皆無のカナリヤちぁんが、妙に可愛く思えるのは何故か?
ゲロ氏、もうちょっとがんばっておくれ。
速度が速くても中身が薄くては意味無いよ。
おたくの力は本物なのだからさ。
178 :
銀杏丸:2005/08/25(木) 23:23:48 ID:62JhZ6LG0
皆様、お久しぶりです。銀杏丸です
台風と一緒に不採用通知も飛び込んでまいりました…
まだまだ就職戦線から帰れそうにありません
期待しておられる方がいらっしゃいましたら、誠に申し訳ございません
期待を裏切ってしまうこと、不徳の限りです
必ず戻ってまいりますので、
そのときまでどうか不肖・銀杏丸を覚えていただきたく思います
申し訳ございませんでした
第二十話「終止符」
いきなり17号は、右手から中型エネルギー弾を発射する。しかし、対する19号は回
避も防御もしない。ただ、両手を向かってくるエネルギー弾にかざすのみ。
エネルギー弾と両手が激突──否。なんとエネルギー弾は、左右の手によってみるみる
吸い込まれてしまった。
「エネルギーは頂いたぞ!」
攻撃を吸収された17号が狼狽する姿を想像し、甲高い声で笑い出す19号。だが、す
でに視界から17号は消えていた。
「くれてやるよ、サービスだ」
「へっ?!」
すでに17号は、19号の懐に侵入していた。ボディに鋭い右拳がめり込む。いや、拳
は体内にまで入り込んでいた。破損箇所から赤黒いオイルが垂れ流れる。
「ひ……ひいいィィィィッ!」
恐怖で取り乱す19号。むろん、17号は容赦などしない。一気に腹部から拳を振り上
げ、19号を切り裂いた。彼を構成していたオイルや部品が、あちこちに飛散する。
右拳に付いたオイルを舐めながら、ゲロを睨みつける17号。
「ナメられたもんだな。古いエネルギー吸収式で、俺を倒すつもりだったのか」
「いやはや、19号ですら十秒で葬るとはな。我ながら恐ろしい兵器を生み出してしまっ
たと、今さらながら私の才能が怖くなってしまったよ」
「ふざけるな、次はおまえだ。十秒といわず、五秒で消してやるよ。それで、全てが終わ
る」
「まぁ、待て……。クリスタルについて、少しだけ知りたくはないか?」
17号は考えた。ここでゲロを始末するのは簡単だ。だが、殺してしまえば、永遠に謎
のままで終わる疑問がいくつも生じてしまう。もちろん、クリスタルの件もそのうちの一
つだ。
「いいだろう……話してみろ。ただし、少しでも妙な真似をすれば、これをぶっ放す」
右手にエネルギーを滞留させ、17号がゲロに促す。
今、狂った復讐鬼より明かされる──クリスタルの真実。
ゲロはポケットからホイポイカプセルを取り出し、地面へ投げ付けた。煙より出でた物
体は、なんとクリスタル。
「おまえが持ってやがったのか……」
泥の如く濁り、邪に満ちた真紅。これぞ、炎のクリスタル。
「これを含む五つのクリスタルは、全て私が開発したものだ。一つ一つが莫大なエネルギ
ーを含んでおり、しかも全てが揃えば相乗効果が発揮され、より強大になる」
実現不可能ともいわれた永久エネルギーを発明したゲロをして、“莫大なエネルギー”
と評されるクリスタル。17号の額に、汗が滴る。
「だが、欠点があった。大きすぎるエネルギーは、創造主でも扱いきることが難しい。こ
れは、おまえと18号も証明してくれたことだな」
「……ふん」
「私には、このエネルギーの塊を活かす術がなかった。いかに強力な銃と弾丸を作っても、
引き金(トリガー)が固すぎては一発たりとも発射することは出来まい。しかも、エネル
ギー自体は内在するため破壊することも出来ん」
膨大なエネルギーを含む、眠れる獅子。これこそが、クリスタルの正体であった。
「だから、私は生み出そうとした。このクリスタルを活かすことが出来る器をな」
「それがセルってわけか……」
「そうだ。だが、開発には永き時間を要する。だから、私は研究所とセル開発を全てマザ
ーコンピュータに任せ、この地にて私は私で細々と研究を続けることにした」
「……ちょっと待て。クリスタルは何故、世界中に散っていたんだ?」
「あれはセルでなければ制御出来ぬ、危険すぎる力を秘めたエネルギー体だ。それゆえ、
ちょっとした洒落っ気で、名と関わりのある地形に安置しただけのことよ」
火はフライパン山、風はユンザビット高地、土は悟空とベジータが一騎打ちをした大地。
やはり偶然ではなかった。
「ちなみに水は、とある砂漠の村にある。かつて干ばつで滅びかけたが、今やオアシスと
も称される村だ。私を殺したら、そこへ行くがいい」
残る水のクリスタルの在り処も、惜しげもなく話すゲロ。いよいよ、死ぬ覚悟が整った
ためだろうか。
しわと髭とを醜く歪ませ、ゲロがにたりと笑う。
「じゃが、厄介なことになった。カプセル・コーポレーションの娘にクリスタルのことを
知られてな。セルの完全体を阻止すべく、クリスタルにセンサーなんぞを取り付けおった
のだ」
ブルマたちはセンサーを付けたクリスタルに、それぞれ一名ずつ実力者を配していた。
ベジータ、トランクス、孫悟飯──そして、あと一人。
「……で、俺たちが奴のボディガードにされたわけだ」
「うむ。しかし、わしもやられっ放しでは面白くない。報復代わりにスパイロボをカプセ
ル・コーポレーションを忍ばせたら、とんでもないものが手に入った」
「とんでもないもの?」
「──タイムトラベルの理論じゃよ」
ゲロが心底嬉しそうに歯をむき出す。と、同時にエネルギー弾が二発、17号に飛んだ。
「なっ!?」
──爆発が巻き起こる。桁外れに高密度な、二撃。
「ちっ……!」
即座に体勢を整える17号。両手にエネルギーを生み出し、反撃しようとする──が。
何故か、17号が動きを止める。
「バッ……バカなッ!」
ゲロの後ろに立つ二人は、紛れもなく人造人間17号と18号だった。
「複製(コピー)などではないぞ。これは私が造ったタイムマシンによって、別次元から
呼び寄せたおまえたちだ。まだ不完全ゆえ転送は出来んが、召喚はこの通りでなぁ。ただ
し少々時間を使うのだが、おまえが私の長話に付き合ってくれたおかげで助かったぞ……」
まんまと時間を稼がれた17号。ゲロを殺したいという執念と、目的が達成間近に至っ
たことによる高揚感が、彼の判断力を鈍らせた。この老人が、むざむざ死を受け入れるよ
うな男ではないことは知っていたはずなのに。
「さぁて、17号に18号。私に従えば、好きなだけ人間を殺させてやるぞ……。あとは
セルを引き入れ、残るクリスタルを吸収させれば全てが終わる!」
五つのクリスタルを吸収した完全体セル、これこそがゲロの夢であり目標であった。
達成し得る時は──近い。
どうも、サナダムシです。
すいません、主役が出ていません。
184 :
作者の都合により名無しです:2005/08/26(金) 08:28:33 ID:+5Rm3IUp0
>銀杏丸氏
むー、今は雇用状況厳しいですからね。就職活動に集中して、
クリアしたらまた楽しませて下さい。
>サナダムシ氏
おお、いよいよ激闘編ですね。最初ギャグだった話にここまでの設定が
あったとは。過去の17号と18号は想像出来なかった。
でも、過去編の17号18号って現在のより弱かった気がするけど?
サナダムシさん乙。
いよいよ秘密も明かされて、黒幕も表舞台に出てきて
シリアス路線に突入ですなー
主役のセルはどこまで頑張れるか。
一皮剥けたくらいじゃ追いつかんと思いますがw
第十四話「完敗」
「ではいきますよ―――<グラビトロンカノン>!」
ネオグランゾンがその巨大な腕をかかげる―――その瞬間、のび太達は身体が重くなっていくような感覚を覚えた。
「な―――なに、これ!?」
「じゅ、重力が増してる・・・まさか・・・あいつは重力場を作り出せるのか!」
「何だって!?―――うわあっ!」
「ひいっ!」
「きゃあっ!」
スカイグラスパーに乗ったジャイアン達が悲鳴を上げる。強くなっていく重力に耐え切れず、操作が利かなくなり、ついには
三機とも不時着してしまったのだ。
ムウのエグザスも地面に引っ張られるかのように落ちていく。
「ジャ、ジャイアン、スネ夫、しずかちゃん!」
「―――チイッ!」
経験が為せる技か、ムウだけはそれでもエグザスを何とか制御し、ダメージを受けることなく着陸した。しかし再び飛び立つには、
もはや余りにも重力が強すぎる。
そうこうしているうちに、ザンダクロス、サイバスター、フリーダム、そして巨神像も立っていることができなくなり、地面に
膝をつく。
「ド、ドラえもん、何とかしてよ〜!」
「よし―――<重力調節機>!」
ドラえもんの声と同時に、ザンダクロスが動く。重力に逆らいつつ、胸部に取り付けたポケットから道具を取り出す。
その名の通り重力を調節するその道具を弄くり、何とかネオグランゾンが生み出す重力場を打ち消した。
「ふう・・・ほんの挨拶代わりだったのに、ここまで大騒ぎするとは。まだまだですね」
「う―――うるさい!」
シュウの挑発の言葉に言い返し、ザンダクロスを突進させる。それに続いてフリーダム達もネオグランゾンに向けて突撃する。
鋼鉄の巨人達による一斉の行軍はまさに壮観の一言―――だが。
「遅い―――<ワームスマッシャー>!」
シュウが叫ぶ。同時にネオグランゾンの目前に、黒い穴が現われた。そこに向かってネオグランゾンは無数のエネルギー弾を
撃ち込んだ。次の瞬間―――
ザンダクロス達の周囲に突然無数の黒い穴が開き、そこからネオグランゾンの放ったエネルギー弾が飛び出す。
「うわああああああああーーーーーーーっ!」
完全に想定外の攻撃に、まずサイバスターが撃ち落される。巨神像もゆっくりと地面に膝をついた。
「ペコ!稟さん!くそっ・・・」
なんとか動けるのは、キラの驚異的な反応で咄嗟に致命傷だけは避けたフリーダムと、運良く当たり所がよかったザンダクロス
のみ。無傷なのは重力場から開放され、ようやく動き出したムウのエグザスだけだった。一瞬にして、戦力の殆どを持って
いかれた形になる。
「ドラえもん。今の攻撃は一体・・・?ワームスマッシャーって、ただエネルギー弾を撃つだけじゃなかったの!?」
「グランゾンとは兵器の構造自体違うのか、あるいは単純なパイロットの力量なのかは分からないけど、普通に弾を
撃ってるわけじゃないみたいだ。推測だけど・・・こういうことじゃないかな。
あいつはまず自分の目前に、攻撃目標の至近に直結するワームホールを作りだしたんだ。そこにエネルギー弾を撃ちまくった。
同時にワームホールの出口をぼく達の周囲に無数に展開する。対象は四方八方のワームホールから撃ちだされるエネルギー弾の
集中砲火に見舞われるってわけだ・・・」
「そんな・・・それじゃあ逃げようがないってことじゃない!」
愕然とするのび太に、ドラえもんは真面目な表情で語る。
「・・・ネオグランゾンを確実に倒すには、アレを使うしかないな」
「あ、アレって?一体何するつもり?」
「説明してる暇はないよ。・・・キラ!これを使って!<ショックスティック電撃ヤリ>!」
ザンダクロスは槍状の道具を取り出し、フリーダムに向けて投げてよこす。
「それは電撃を放って攻撃する道具だ!電圧を最大にセットすれば、機体そのものにダメージはいかなくとも、中にいる
シュウを一瞬くらいは怯ませることができるはずだ。なんとか一撃だけでも与えて欲しい!」
「う、うん・・・頑張るよ」
「頼むよ。ムウさんは、キラを上手く援護して下さい!」
「OK。何をする気か分からんが・・・ここはお前さんにかけてみるぜ!」
「よし・・・行くぞ!」
ドラえもんの号令と同時に、エグザスがネオグランゾンに向けてガンバレルを発射する。そこから放たれたビーム砲が
ネオグランゾンの動きを牽制する。
フリーダムも全砲門を開放し、ネオグランゾンを激しく攻撃しつつ隙を窺う。
「よし!あれならなんとかいけるかも・・・のび太くん、作戦を説明するよ。フリーダムが上手く電撃ヤリで攻撃できたら、
ネオグランゾンを抱えて飛び立つんだ」
「あいつを抱えて飛び立つ?それでどうするのさ、ドラえもん。そもそもどこへ・・・」
「・・・宇宙まで、さ」
「宇宙ですって!?一体何をする気なの、ドラえもん」
突拍子もない話の展開に、リルルも思わず叫ぶ。ドラえもんは彼女に対して、自信ありげに微笑むだけだ。
と―――
「ぐうっ―――!」
シュウが低くうめく。フリーダムが隙を突いて、ショックスティック電撃ヤリをネオグランゾンに突き立てたのだ。装甲には
まるで歯が立たなかったが、ドラえもんの目論見通り、シュウを怯ませることは成功した。
「―――!今だ、のび太くん!」
「よし!いっけえ、ザンダクロス!」
号令と共にザンダクロスがネオグランゾンの懐に飛び込み、その身体を抱え上げる。そしてそのままブースターを最大出力で
起動させ、遥か宇宙に向けてネオグランゾンごと飛び出していく。
「む!?何をするつもりですか!」
シュウが珍しく驚いたような声を上げるが、それを無視してザンダクロスは上昇していく。
最高速マッハ4に達するザンダクロスの飛行能力は、巨大なロボット一機を持った状態でも殆ど損なわれることなく、ついに
大気圏を突破し、宇宙空間に辿り着いた。
「よし―――のび太くん、すぐに離れて!」
ザンダクロスがネオグランゾンを離す―――そして。
ポケットから取り出されたのはドラえもんの道具の中でも究極にして最強の破壊力を誇る禁断の兵器―――
「・・・<地球破壊爆弾>!」
「えええーーーーっ!?そ、それを!?」
「やあ〜〜〜〜〜っ!」
狼狽するのび太に構わず、地球破壊爆弾は放たれた―――そのままではザンダクロスも巻き込まれることは必至。だが。
「<どこでもドア>!」
次に取り出されたのはお馴染みどこでもドア。それを通り、ザンダクロスは一瞬にして地球へと帰還する。
「ちいっ!やってくれますね―――」
後にはネオグランゾンと地球破壊爆弾だけが残され―――次の瞬間。
世界は光に包まれた――――――――――――――――!
「よし―――これで大丈夫」
地上に戻り、地球破壊爆弾が爆発したのを確認して、復元光線によって傷ついたロボット達を修復しながら、
一同は一息つく。
「ドラえもん―――お前、あんな爆弾なんて、どこで手に入れたんだよ?」
通信用のモニター越しの稟はもはや呆れを通り越した様子だった。
「未来デパートだよ。なんでも揃ってるよ」
「・・・未来世界、恐るべし・・・」
「ははは。まあいいじゃない。おかげであのネオグランゾンも倒せ・・・」
「はて―――誰を倒した、と?」
突然響く声。その場の誰もが一瞬凍りついた。
空間が歪む―――そこから現われたのは、破壊の化身、機械の魔神―――ネオグランゾン!
「そ、そんな―――なんで!?」
「ククク・・・ネオグランゾンの力を持ってすれば、地球を破壊する程度の爆発に耐えることなど造作もないことです。
本気でネオグランゾンを消し去りたいのなら、せめて銀河系を消滅させるレベルの攻撃を仕掛けるべきですよ。
色々考えたようですが、残念でしたね、ドラえもん」
「くっ・・・」
「それでは私の反撃といきましょうか―――そして、これで終わりです」
グランゾンが両手を胸の前に持ってくる。合わさった両の掌に、強力なエネルギーが集中していく。
それに反応するかのように、大気が歪み、木々で羽を休めていた鳥達が戦慄いて一斉に島から飛び出していく。
破滅を凝縮したかのようにドス黒いエネルギーの奔流が、容赦なくザンダクロス達を打ちのめしていく―――!
「―――<ブラックホールクラスター>!」
シュウの声と共に、全てを打ち砕く黒き力が放たれた。それは意志を、希望を、全てを容赦なく打ち砕く―――!
「ククク・・・狐には、現時点での力の差を思い知らせるだけにしておけ、と言われているのでね。まあここは、
彼の顔を立てておくとしましょう」
シュウはそれだけ言って、後は何も語らなかった。そのまま空間が歪み、ネオグランゾンはその中へ―――
「あなたはなんで・・・あんな、最悪な奴と一緒にいるんだ?」
無視されるだろうと思ったが、キラは消え行く姿にそう問い掛けた。だが意外にも、シュウは少しだけ逡巡し、こう答えた。
「居心地がいいんですよ、彼の側は」
「居心地が・・・いい、だって?」
「そう。私は自由が好きでしてね―――彼は、狐は、実に自由だ」
シュウはククク、と不気味に笑う。
「だから彼の元にいるのは―――気分がいい」
「そんな・・・そんな理由で、世界を終わらせようだなんて!」
割って入ったドラえもんの声にも、シュウは平然と答える。
「どんな理由でなら世界を滅ぼしてもいいというのですか?・・・ククク、分かっていますとも。世界を滅ぼす
などと、とんでもないことだ。しかしですね―――私は自由でありたいんです。自由であるためなら―――
死んだって構わない」
それは、余りにも強い意志の表れ―――それを砕くことなど、神にとて不可能に違いない。
「では、私はこれで。それではまたお会いしましょう―――」
それを最後に、シュウの姿も、声も消えた。
―――これが、のび太達を襲った事象の全てである。
「あんなのに―――どうやって勝てっていうんだ・・・?」
絶望を滲ませた呟き。それを誰も咎める事はできない。シュウの力は、余りにも圧倒的だった。
「くそおっ・・・・・・!」
ジャイアンは悔しさに任せて地面を思い切り殴りつける。行き場のない思いが、彼を傷つける。
他のメンバーも似たり寄ったりだ。ある者は頭を抱え、ある者は膝を抱え―――
誰もが傷つき、立ち上がれなかった。
―――そこに。
「よお―――随分手酷くやられたな、俺の敵達」
「――――――!お前は!」
現われたのは―――狐。
運命のしもべにして、運命を弄ぶ、<人類最悪の遊び人>だった。
投下完了。前回は
>>103より。
僕の書く戦闘シーンは恐ろしくつまらないことが今更分かりました。
でもそれも僕の実力です。残念ながら。
シュウの性格はスパロボ本編よりはDQN度と悪人度と人様の迷惑を考えない度が上がってるかんじです。
ちなみにワームスマッシャーは本気を出せば65535体の標的に攻撃を仕掛けることができるそうです。
調べれば調べるほど、ネオグランゾンは凄すぎてアホな機体です。
>>121 ヤムチャとは比べる方が間違ってます。
最近になって亜沙先輩の中の人が人造人間18号の中の人と一緒だということを知って驚きました。
しかも小笠原祥子(マリみての福沢祐巳のお姉さま)の声もやってたそうです。
あとアニメでの彼女の扱いはあんまりだと思います。
暑くて何を書いてるんだかよく分かりません。ごめんなさい。
次回で第一部は終了。
第二部はドラ〇ンボールやBLE〇CHもビックリのインフレ展開になる予定です。
あとVSさん、連載終了お疲れ様です。
全150話に及ぶ壮大なミスターサーガに度肝を抜かれました。
・・・ごめんなさい、ちょっとだけあなたが憎いです。
うみにんさん、最終回期待してます。出木杉帝国は一読者としては大いに楽しませていただき、
SS書きの端くれとしては、大いに参考にさせていただきました。その割には全く作品に活かせていませんが(笑)
193 :
うみにん:2005/08/26(金) 18:30:15 ID:Zj+QL7PU0
サマサ様、続けて失礼します。んで・・・いえいえ、こちらこそ。
同じ題材なのでネタがかぶらないようにやりにくい面も多々あったことでしょう。
出木杉帝国はおかげさまで次回完結しますが、超機神大戦はこれから先が本番の様子。
前作を超える勢いで頑張ってくださいませ。
前話
>>110-119
暗い洞窟を超光速の光が駆け抜ける。老体の学園長を守るように4人取り囲み、
手をつないで飛ぶパーマン軍団。岩盤に自らの体を傷つけることをも全くいとわずに。
やがて、前方に光が見えてきた。
「見えた!地上だ!」
「ほな、ここでおろしまっせー!」
「おじいちゃんありがとう!」
「ウッキー!」
ゆっくり話し込む時間はない。4人は地上に飛び出したその瞬間、学園長を置き去りに
あっという間に空へと昇っていく。遮るものがなくなって、さらにスピードが増す。
一人ポツンと残された学園長は見送りながら、思わずうめく。
「あたたたた・・・全く!誰がおじいちゃんじゃ!じゃが、ふう・・・まったく・・・
なんちゅうスピードじゃい。・・・パーマンセットか。忍術学園にも欲しいのう・・・」
地上が遠くなっていく。大気圏はもうすぐそこである。そこまで辿りついておもむろに
パーやんが口を開いた。神妙に、他の3人に諭すように言う。
「ここまで来たら、もう一人でも大丈夫や!1号はん。パー子はん。ブービーはん。
はよう戻りなはれ。まだ魔王と戦っとるあの人らに加勢しなきゃ・・・!」
しかし、1号もパー子もブービーも首をたてには振らない。笑顔で返す。
「そんなこといって・・・大気圏に突入すれば爆発するかもしれないもんね。
どうせ、私たちを巻き込みたくない・・・なんてかっこいいこと思ってるんでしょ?」
「水臭いぞ、パーやん!ボクらはやっぱり4人全員いてこそパーマンなんだよ!」
「ウッキー♪」
1号は言った。
「魔王はきっと今戦ってるみんなが倒してくれる。あの人たちは・・・ひょっとしたら
僕らパーマンよりも強いかもね。それにパーやん一人じゃ間に合うかどうかわかんないよ?
間に合わなかったらどっちにしたって僕らは全滅だ!」
思わず目にうっすらと浮かんできた涙をパーやんはあわてて、ゴシゴシとぬぐった。
「みんな・・・その通りやな。おおきに。
ほな、バッジをちゃんと加えときなはれや。飛び出しまっせー!」
「OK!」
パーチャックを口に加え、四人が今まさに飛び立たんとしたそのときである。
パチパチパチ・・・
上空から拍手が聞こえる。それとほぼ同時に懐かしくも頼もしい声。
「素晴らしい!素晴らしいぞ!みんな!やはり、キミたちを選んだ私の目に
狂いはなかったようだ。」
『バードマン!』
パーマンたちの生みの親、“超人”バードマンである。
バードマンは力強い父性をともなった声で、語った。
「しょくん、よく頑張った!あとは、私にまかせたまえ。」
「バードマン!ありがとう!」
「だけど、“コア”が爆発するまで、もう時間が迫ってまっせ!」
「心配ない。私を誰だと思っている。バードマンだぞ?」
バードマンはニヤリと笑いながら、ドンと胸を張ってみせた。
続けて、少々考える素振りを見せてから、4人に言い渡す。
「―――そうだな。キミたちは再び、彼らを助けてあげてくれ!」
『はい!』
笑顔で元気に返事を返した頼もしい4人が再び舞い戻っていくのを見届けながら、
バードマンは思わず独りごちた。
「しかし、本当によく頑張った!実は最初は相手は人間だと決め込んで舐めてかかって
いたんだが・・・・・うーむ!異界からやってきた大魔王か・・・。我々超人のみで
チームを組んで挑んでも、正直、倒す自信が持てないほどの強敵だったやもしれん!」
ちらりと手元に預かったものに視線をズラす。ドス黒く輝く邪悪な点滅。
もう、爆発までさほどの時間が残されてるようには見えない。
「さてと、このぶっそうな爆弾、どこで処分するべきか。
なるべく宇宙にあんまり影響しないところ、影響しないところ―――っと。そうだ!
西の界王のとこに置いてこよう!ま、あいつなら一回死んでるし、もう一回くらい
死んでも別に大丈夫だろ。そーれ、西の界王の星に向かってぇ―――ワープ!っと。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
地底世界の夜。月も星もないこの世界では夜はその名の通り完全なる闇である。
戦闘用にわずかに用意されていた照明器具を散りばめただけの頼りない明かり。
激闘の要塞跡地。地面に布をしいただけの急ごしらえの粗悪な救護施設。
そこには負傷した兵士たちが昏々と眠っている。
ドラえもんたちは疲れはてた体を無理に眠りから引き離し、重い体をひきずりながら
状況の回復に努め――――――そして今、地底世界の何も見えない夜空を眺めていた。
ドラえもんが目覚めたことで明かりも増え、救護施設も格段にマシなものとなった。
それまでの救助、介護作業に主に活躍していたのはもちろん、アンパンマンたち
である。ジャムおじさんたちの作る暖かくおいしい栄養溢れる食べ物に兵士たちの
心も多少は癒されつつある。朝になれば、より作業ははかどることだろう。
「終わった・・・」
誰からともなく発せられた呟きに、やはり誰ともなく応える。
「うん。終わったね・・・」
「もう、あれから―――半日が過ぎた。たぶんもう爆発の心配はないとみて
いいだろう。世界は救われたんだ――――――!」
ドラえもんの声に喜びの色はない。歓喜よりも安堵。激しい戦いの連続に
完全に忘れかけていた疲れが一気に襲ってくる。
「―――パーマンたちは無事なんだろうか。」
半日たってもパーマンたちは戻ってこない。しかし、ジャイアンは断言する。
「きっと、無事さ。ヒーローは平和を取り戻せばそのまま姿をみせないのが
相場ってもんだ。だから――きっと大丈夫。」
魔族へと変貌させられていた竜人たちは元の姿に戻った。と同時に激闘の最中、
確実に死んだと思われていた兵士たちまでも不思議と生き残っている。彼らの変貌、
そして死は魔王の魔力による干渉の結果であったがゆえに、未来世界のデマオンが
滅びたことで歴史が変わったのだろう。壮絶だった戦いの結末としては、地底世界
への打撃は奇跡的に皆無に等しい――――とまでは言えないが、それでもなんとか
最小限に留まってはいた。しかし――――――――
「・・・元気を出しなよ・・・」
のび太は心配そうに声をかけた。リルルは大地に腰をおとし、拳を胸に握り締めて、
小さく奮えている。これまでは苛烈な戦いに気を張っていたのだろう。魔王の最後を
見届け、こらえていた悲しみが、一度にその小さな胸を襲う。
地底世界を襲った鉄人兵団。彼らは扇動こそされていたものの、あくまでも
自分たちの意志と思惑をもって地球を襲ったのだ。直接魔王の魔力で動かされて
いたわけではない彼らの滅びは、無情にも修正されることはなかった。
「リルル・・・ここで僕たちといっしょに暮らさないか?」
思い切ってのび太が問う。リルルはハッとして振り向いた。
傍にいたバンホーやしょくぱんマンも笑顔で頷いた。
「地上でなくとも、我々、地底世界でも歓迎するよ」
「もちろん、ボクらの世界でもね。」
「みんな、ありがとう。だけど、私はメカトピアを見捨てることはできない。」
「―――――リルル・・・。」
「だって、のび太さん。私は“メカトピアの天使”なんでしょ?だから私の心は
いつだってメカトピアと共にある―――――――」
リルルは遠くを見る。暗がりにはっきりとは見えないが、そこにはパパンダーとの
戦いで動かなくなったザンダクロスの姿があった。
「ジュドーも・・・壊れちゃった・・・・」
ドラえもんがドンと胸を叩く。ジャムおじさんも優しい笑顔でリルルに声をかけた。
「大丈夫。なんとかボクが直してみせるよ」
「リルルさんや。私も手伝うよ。」
「ありがとう。ドラえもん。ジャムおじさん。そして――――みんな・・・!」
リルルはせいいっぱいの笑顔で応えてみせた。その目には少しだけ、ほんの少しだけ
うっすらと―――機械の体には流れるはずのない涙の痕のような―――光の筋が見えた。
のび太にはそう思えた。
「美夜子さんはどうするの?」
リルルは自分なんかより、よっぽど強い女の子だ。今はそっとしておこう。そう判断
したのび太はリルルの側を離れた。ふと闇の中、美しく輝く精神体の女性と目が合う。
その女性―――美夜子にのび太は問いかけた。魔力を使い切って、のび太たち以上に
疲弊していた美夜子であったが、それでも笑顔で答える。
「私の世界には時空間を使ってしか戻れないわ。
――――あなたたちのタイムマシンで送ってくれたら嬉しいんだけど。」
チラとある人物のいる方向を見やる。
「・・・そのときいっしょに・・・」
「キスギーさん・・・ね。」
しずかが美夜子の後ろからその名を出した。アーサー“D”キスギー。
「話は聞いたわ。あの人、あの時の出木杉さんみたいに・・・いや、もっとずっと、
ずっと長い年月を魔王に・・・操られ続けて・・・可哀想すぎるわ・・・!」
しずかの言葉に美夜子ものび太も思わず目を伏せる。しずかは続ける。
「あの人、哀しい目をしてたわ・・・。ずっと魔王に操られて、それでも少しでも
犠牲者が少なくなるように、魔王を倒せるように戦ってきたのよ。きっと・・・」
顔を伏せていたのび太の目が輝く。勢いよく顔をあげて叫んだ。
「そうだ!こうすればいいよ!タイム風呂敷で若返らせて・・・
元の時代に返してあげたら・・・そうすればまたやり直せる!」
「それだ!のび太のくせにさえてるー!!」
ジャイアンが割り込んで歓声をあげた。
「けど、いったいいつの時代に・・・?」
「本人に聞けばいいじゃん。」
気楽に言い放つのび太に向かって美夜子は悲しい顔で、かぶりを振る。
「いいえ、彼はきっとその問いには答えない。きっと、この運命を受け入れて、
この時代に生きようとするでしょうね。」
「でも、それじゃ・・・」
「私を連れていって。魔王の残存思念を探ればきっと辿りつけるはず。彼の本来
いるべき時代に・・・!」
「美夜子さんとキスギーさんのことは、わたしにまかせてもらえないかしら?」
その声に真っ先に反応したのはドラえもんだった。涙ながらに歓喜の声をあげる。
「ドラミ!?無事だったか!よかったよかった!」
反乱軍の拠点で石化されていたはずのドラミとワンダー・ガールがそこに佇んでいる。
ワンダー・ガールの横には少々太めの純朴そうな男の子の姿が・・・。
「お兄ちゃんたちが魔王を倒してくれたおかげよ。」
「今、隙を見て高畑さんを助け出してきたの。他の研究員たちも全員無事よ!」
そして―――ドラミが、疲れ果てたみんなの待ち望んでいたであろう吉報を告げる。
「“タイムパトロール”を呼んだわ。もうすぐ救助が来るはず。これでもう安心よ!」
タイムパトロール。未来世界の治安を守る、彼らの知る限り、もしも助けが得られる
のならば、少なくともこの21世紀においては誰よりも頼れる存在だろう。ドラミの
もたらした吉報に、ドラえもんをはじめとするタイムパトロールの存在を知る面々が、
暗く沈み込んでいた彼ら全員の表情がにわかにパッと明るくなる。地底世界の闇夜に、
一際大きな少年たちの歓声が沸き起こった。
その隙を縫って、ドラミはみなと離れ、美夜子にそっと話しかけた。
「キスギーさんのこと。おおよその見当はついているわ。」
みなの笑顔に思わずつられて微笑んでいた美夜子の顔が再び真剣なものへと変わる。
ドラミは声をひそめ、兄たちに聞かれないよう話を続けた。
「確かに、出木杉くんのことを考えたら、お兄ちゃんたちには絶対に話せないけれど。
だけど未来世界には“魔王に打ち勝った出木杉さん”が確かに存在しているから・・・
のび太さんの言う方法ではタイムパラドックスが起こってしまうの。」
「それじゃ、つまり・・・?」
「つまり、キスギーさんは歴史上のバグ的存在になってしまうわけ。もしも
のび太さんの方法で元の時代に戻してあげたら、彼は未来世界の出木杉くんの
ドッペルゲンガーになってしまう。」
「・・・じゃあ、彼はもうやっぱりこのまま、この時代に生きるしか・・・」
「大丈夫。心配はいらないわ。タイムパトロールの人たちとも話してみるから、
きっと悪いようにはならないと思う!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
歓喜の輪の中ではしゃぐスネオの前に音もなくスッと現れる人影。
「少年――――。あなたはスネオという名前だそうですね。スネオ。お別れです。
私は神の世界の住人。あなたたちとは相いれない存在――――――――」
人影は美しい少女、メジューサだった。メジューサは一陣の風に吹かれ、美しい
黒髪をなびかせると、音もなくやんわりとその場から薄れ、消えていく。
「あ――――――――き、消え・・・た――――?」
呆然と虚空を見つめる。
この地底世界での激闘の最中、突然出会った美しい少女へのスネオの抱いた
ほのかな恋心は、淡く、はかなく、その名も知らぬままに消え去っていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ずいぶん、落ちついたな。」
「これでもう安心じゃろう。長居はするべきではない。忍びとは
闇に生き、闇に死す定め・・・きり丸!彼らに別れを言ってこい!」
「はーい!あ、その黄金見張っててね!ぜったい!ずぇ〜ったい!
なくしちゃダメだかんね!」
「・・・・ああ、わかってるよ。」
きり丸は嬉々としてみんなのもとへと駆けていく。
それを笑顔で見送りながら、困ったように土井半助は呟いた。
「さて、どうしますかね。教えてあげた方がいいんですかねえ。」
「ふむ。ま、戻ってからの方がいいじゃろうな。こんなところで固まられて
わしらで運ぶのも難儀じゃし・・・」
二人の先生の会話を聞いていたしんべえがのんびり尋ねた。
「ん?先生、何かあるんですか?」
「いや、なに、その・・・ハハ・・・あいつが黄金と思ってる塊な・・・
あれ実は全然黄金なんかじゃなくって、ただの黄鉄鉱の塊なんだ・・・。」
乱太郎は同情のまなざしで駆けていくきり丸を見た。
「あらら・・・きりちゃん、可哀想に・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
忍術学園の面々は闇の中、静かに、迅速に、学園へと帰っていった。しゃくを
取り戻したおじゃる丸はジャムおじさん一行に連れられて帰ることになるだろう。
そして、夜が白みはじめたころ、ようやく待望のタイムパトロールがやってきた。
げんごろうやズル木らもタイムシップに保護されて、元いた場所へと帰されていく。
そんな中、見当たらない男がいる。ジャイアンがのび太に尋ねる。
「あれ?ギラーミン。いつのまにか、もういない・・・。」
「ギラーミンなら、とっくに夜中に一人で帰っちゃったよ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
のび太は昨晩のことを思い出した。疲労の極致。深い眠りについていたのび太の
足元に漆黒のブーツが大地を踏みしめる音が響いた。のび太は眠い目をこすりながら
目覚め、そのはれぼったいのんきな目はすぐに驚愕の眼へと変化した。
「ギ、ギラーミン・・・!?」
漆黒の死神が再び、目の前に立ちふさがっている。戦慄に奮えるのび太に向けて、
死神が静かに言葉を紡いだ。
「これで1勝1敗。貴様との勝負はまだついていない。」
「そ、そんな。僕なんか最初から勝てるわけなかったんだよ。前の戦いだって
僕は10倍の重力で育ってたから・・・」
「だが、貴様はまだ子供だ。」
「・・・・・・!」
「フ・・・つまりはこの2戦。どちらも対等の条件での勝負ではなかったわけだ。
いつか、また出会うことがあるとすれば今度こそ対等の条件で・・・決着をつける!」
話すうちに気が付いた。ギラーミンはもう本気で決着にこだわっているわけではない。
ただ、そういう生き方しかできない不器用な男の、これが彼なりの惜別の言葉のつもり
なのだろう。のび太は笑顔で答える。
「うん。いつの日か。また出会えたら・・・それまでに僕もきっと強くなってみせる!」
「・・・フフ、貴様にはまだ無限の可能性がある。それまでにせいぜい精進しておけ。」
カラン・・・。足元に何かが転がる。
「これは・・・?」
「オレがまだ駆けだしだったころの愛銃だ。ハデスほどではないが、それなりの逸品だ。
貴様に預ける。」
「・・・・ギラーミン・・・」
闇の中に一人消えゆくその男の背中をのび太は強くその目に焼き付けた。孤高の死神、
ギラーミン。彼の人生はこれからもずっと死を呼ぶ黒銃“ハデス”と共にあるのだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
黒銃を握り締めて物思うのび太の元へ、遠くからしずかが慌てた様子で駆けてくる。
「キスギーさん!キスギーさんは!?」
その声にあたりを見渡すが、確かにいない。
「本当だ!いったい一人でどこへ・・・!?」
みんなであわてて探す。夜中のうちに一人でこの場所を離れたのだろうか。
しかし、老体である。そう無理のきく体ではない。しずかの心に不安が募る。
―――――そしてキスギーは見つからないまま、やがて朝が訪れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お〜い!キスギー!キィ〜スギィ〜!」
さわがしい声で遠い空の上から、その名を呼ぶ者がいる。
遠く離れた山道を仮面の老人、キスギーは一人歩いていた。切り立った崖。マグマ。
老いた身でたった一人で歩くには、危険極まりない場所である。
声の主は黒い円盤に乗って現れた。
「キスギー!どうすんだ?なんかあっちの方でお前のこと探してるぞ?」
「バイキンマン。お前か。そうだな。思えば、お前が私の元に転がり込んできた
ことで、運命の螺旋がまわりはじめた。感謝している。」
キスギーは仮面の奥でそっと微笑んだ。
「だが、もういいのだよ。私はもう彼らとは敵対していない。」
「ふーん。そうか。おまえあいつらと仲直りすんのか。じゃあしょうがないな。
またなにかあったらオレさまバイキン城にいるからな。バイバイキーン♪」
慌しく飛び去っていくUFOを見送りながら、キスギーは自嘲気味に笑った。
「ふふ・・・。仲直り・・・か。この期に及んで随分と幼稚な言葉だな。だが、
その幼稚さを失った大人は・・・もう・・・・」
キスギーはまばゆい朝の光が降りそそぐ中、仮面を外して独りごちる。
「ああ・・・眩いな・・・・・」
仮面を外したキスギーの素顔。老いている。しかし、それは決して醜いものではなかった。
その瞳には少年の頃のような、煌くように熱をおびた熱い輝きが戻っている。
「そう。ボクは気付いたんだ・・・。ボクの願いはたったひとつ・・・しずかの幸せ。
ただそれだけだったんだ・・・。そう。のび太くんと結婚することで彼女は幸せを掴んだ。
それならば、その幸せの中に・・・ほんのわずかでもボクの存在があればいい。
しずかはのび太くんを選んだ。きっと、それは正しかったんだろう・・・。
しかし、それでも子どもの頃のボクは、しずかの中で永遠に生き続ける。」
キスギーは眩い朝の光に目を細め、満足そうに呟くと一人、崖下へと身を投げた―――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
地上世界。タイムパトロールに救助された次の日の夜―――――――――
「結局、キスギーさんは見つからなかったね。」
部屋の窓から見える星空を眺めながら、のび太は傍らにいるドラえもんに、なんとはなしに
話を切り出した。ドラえもんは神妙な面持ちで答える。
「うん。タイムパトロールが捜索してるから、すぐに見つかるとは思うんだけど。無事で
いてくれればいいんだけどな。永く苦しんだ分、これからは幸せに生きて欲しいと思うよ。」
「しずかちゃんが、なんだか悲しそうだった。」
「優しい子だからねえ。」
会話が途切れる。
のび太は机の上に視線を移した。出会いと冒険のたびに大切な宝物が増えていく。
そしてまた、のび太の机のひき出しには新しい宝物が加わった。
バンホーさんにもらった地底世界の花。忍術学園の人たちにもらったマフラー。
リルルと交換した想い出のショックガン。美夜子さんにもらった魔法のペンダント。
そして、ギラーミンにもらった弾丸入りの黒い拳銃・・・・・
絶対に捨てることなんてできない、大切な宝物――――――
そう。捨てることなんて絶対に―――――――
「のび太くん・・・。」
「なんだい?」
なにげないやり取りの中で、のび太とドラえもんのこめかみに不自然なほどに
大粒の冷や汗が一滴。
「最後のやつ・・・」
「うん・・・」
「・・・見つかったら捕まっちゃうぞ。」
のび太は笑顔で夜空を見上げたまま。ただ、だくだくと大量の汗が滴り落ちた。
大声でいつものセリフを叫ぶ。
「ドラえもぉ〜ん。たすけてぇ〜!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
☆ 主なキャスト ☆
ドラえもん 野比のび太 剛田たけし(ジャイアン) 骨皮スネオ 源しずか 出木杉英才
リルル バンホー ロー ドラミ 満月美夜子 ズル木 げんこつげんごろう ギラーミン
鉄人兵団前首領 メジューサ 魔王デマオン
しょくぱんマン アンパンマン カレーパンマン ジャムおじさん バタ子 チーズ
ドキンちゃん バイキンマン ダダンダン
パーやん パーマン1号 パー子 ブービー 魔土災炎 パパンダー バードマン
摂津のきり丸 土井半助 山田伝蔵 山田利吉 戸部新左衛門 猪名寺乱太郎 福富しんべえ
大川平次渦正(学園長) 風鬼 竜魔鬼 稗田八方斎
ワンダー・ガール 高畑和夫 坂之上おじゃる丸 鉄人兵団新首領フレイザード アキーム
ノヴァ フォブスター 海神クラーケン 巨魔獣ザムザヴォエイラ アーサー“D”キスギー
■■■■■■■■■■
うみせんにん
「これで終わりじゃないぞよ。もうちっとだけ続くんじゃ。」
というわけで次回エピローグその2です。
結局少し容量増えまして残りがまだ10レス以上あるので2回に分けます。
今回のはエピローグというより、ようやく本編終了といった感じですけど。
前回、前々回に引き続き、一気にまとめての連続投下失礼致しました。
>セルゲーム
1対2か。原作では同じ17号でも世界によって力の差があったけど、ここではどうだろう。
何にせよ初の本格バトルに期待してます。
主役は…まあどっちでもいいです。
>ドラ大戦
強いなー。同じ13階段でも偽トキやヘタレとは大違いだ。
(昔最強スレでネオグラを推してる厨がいたが、確かに無茶な設定だ)
この調子でインフレすると、最終回頃には宇宙破壊クラスにでもなってそうだな。
追記:
銀杏丸さんも就職頑張って。私も40社面接受けました。
リロード忘れてたw
うみにんさん乙です。
バードマン鬼だwまた勝手な都合で殺される界王哀れ。
キスギーはあれで終わり? ちょっと哀しい結末ですね。
210 :
作者の都合により名無しです:2005/08/26(金) 20:02:23 ID:wcqvY8Oy0
>超機神大戦
ネオグランゾンはサイヤ人レベルですね。ドラたち最強チームがまったく歯が立たないとは。
前作とは違ったインフレ気味のバトルになっていくのは楽しいですが、プリムラだけは
ほのぼのとしていてほしいですね。
>出木杉帝国
ついにこの日が来たか・・って感じですね。最後のスタッフロールで、もうラストなんだと
シミジミ思いました。キスギーは少し寂しげですが、他のキャラは「らしい」ですね。
最終回その1とその2が楽しみです。次回作もw
うみにんさん力作お疲れ様です。
全てがいい方向に向かう中でキスギーだけは悲しい結末になってしまいましたね。
でもキスギーにとっては悲しい結末じゃなかったのかもしれませんね。
ギラーミンは最後までかっこよかった。のび太との間に友情が芽生えたのでしょうか。
のび太もギラーミンを尊敬しているように見えます。いい関係ですね。
とても一言では語り尽くせない壮大な物語でしたが最後まで見届けさせてもらいます。
頑張ってください。
>銀杏丸氏
がんばれー。SSと、「就職決まりました」って連絡を楽しみにしてるよ。
>サマサ氏
一部、ライバルの圧倒的な実力を見せ付けられて完、って感じですなー
しかし一部でこのボリュームなら、二部はもっと厚みがありそうですな。
>うみにん氏
上でも散々言われてるけど、終わるのは寂しいな。あと2回あるけど。
最後まで楽しませてくれてありがとう。爽やかなフィニッシュ期待です。
2・3日は、出木杉終了でレスが集中しちゃうかもね。
でも、勿論ほかの職人の方々の力作も楽しみに待ってますよ!
うみにんさん。
ドラゴンボールじゃないかも知れないが、西の界王じゃなくて北の界王だよ、一回死んだのは。
サマサさんとうみにんさん、お二人ともお疲れ様です。
方や佳境に入りつつあるサマサさんと、
エンディングをむかえようとするうみにんさん。
お二人とも楽しめました。本当にいつも乙!です。
でも、うみにんさん出木杉が終わった後もなんか書いて下さいね。
あと銀杏丸さん、良い会社に就く事を祈ってます。
215 :
作者の都合により名無しです:2005/08/27(土) 00:28:53 ID:zC81AXKe0
ゲロ氏、サナダムシ氏、サマサ氏が特にいつも頑張ってくれてて嬉しいけど、
出来杉帝国終わって悲しい。うみにんさん消えないで
第二十一話「正面衝突」
レッドリボン本部中央付近。突如、高熱を宿した煙と炎が地下から湧いて出る。
先ほど、セルが被った火薬庫での爆発などとは次元が違う。核兵器をも超越したエネル
ギー体によってのみ可能な、破壊。
各々クリスタルを探していた16号、18号、セルジュニアはすぐさま異常を察知する。
「むっ、これは……!」
「さっきのとは、全然違うね」
「行こう!」
一方、セルは全く気づいていなかった。
「今のは花火か? すぐに行かねば!」
丁度、ゲロの地下研究施設があった上空では──空中戦が展開されていた。
別次元より出でし17号と18号が、徹底的に現代の17号を追い詰めていく。遠ざか
れば、嵐のようなエネルギー弾。近づけば、絶妙なコンビネーション体術。能力的にはほ
ぼ同等なので、これでは凌げる道理などない。
「おいおい、俺たちとそっくりなわりにあっけないな」
「ハハハッ! 17号、じわじわ追い詰めてってやろうよ」
戦闘というよりむしろ、殺戮を楽しむ二人組。
地上から戦いを眺めるゲロが、愉快そうに微笑む。
「人類が数万人しかいない時代──あの二人はそんな時代より呼び寄せた者たちじゃ。も
っとも……人類をそこまで殺し尽くしたのは、そいつらなのだがな」
姿形は瓜二つでも、中身は似ても似つかない。ゲロはさらに続ける。
「奴らにあるのは破壊衝動のみ。私のミスで、人としての性質が大分残ってしまった17
号に勝ち目などないわ……」
すぐさま、現場に急行する16号たち。そこにいたのは、砂塗れでうつ伏せに横たわる
17号であった。
「どうしたの、17号!」
「17号さん!」
駆け寄る18号とセルジュニアに、17号はありのままを話した。
「ぐはっ……! 俺は地下でゲロと再会し、クリスタルもそこにあった……。すると、奴
は俺とおまえを出現させ、俺を攻撃させやがったんだ……!」
「ごめん、全然分からない」
あまりに支離滅裂な内容に、18号も首を傾げる。が、16号は全てを察していた。
「いや、どうやら17号は正しいようだ。あそこを見ろ」
彼の両眼には、別次元の17号と18号が空中に待機していた。しかも、新たな援軍が
追加されている。
──人造人間16号。
むろん、彼を呼んだのはゲロである。
「16号を呼び寄せるのは大変だったぞ……。なにせ、16号が目覚めた歴史パターンが
非常に少なかったのでな」
歴史は少々のきっかけで、いくらでも変化してしまう。こうして造り上げられた無数の
平行世界(パラレル・ワールド)から、彼は戦士を召喚しているのだ。たとえ、同一人物
でも、世界が違うならば与えられた役割は全く異なってしまう。
さて、この呼ばれた16号はどうであろうか──。
「この世に自然など不要、生命など不要ッ! 全てを破壊し、廃墟と化してくれるッ!」
「か、完全に正反対だな……。ならば、手加減はせん」
命を排除せんとする16号、命を守らんとする16号。やはり、行動ベクトルは対極だ。
この二人もまた、激突は必至である。
さて、飛び抜けた実力を持つセルジュニア。
彼が戦えば、別次元より現れた16号、17号、18号を全滅させることもたやすい。
だが、現代の彼らはそれを拒否した。
──同一人物だからこそ、自分たちで倒さねばならない。
これが彼らの共通認識。そして、セルジュニアは三対三マッチを承諾した。むろん、仲
間が全勝することを信じて。
「……奴は何者じゃ? セルに似ているが、いかんせん小さすぎる」
邪魔にならぬよう地上に降りてきたセルジュニアを、ゲロはパワーレーダーで調査する。
すると、ゲロの脳内に凄まじいパワーが流れ込んできた。
ゲロでさえ制御不能な17号、もっとも危険とされた16号──この二人を完全に上回
る超絶的数値。ゲロは感激し、つい涙腺が緩んだ。この生命体こそがセルだと確信した。
「おォッ! セ、セル!」
怯むセルジュニアに構わず、ずんずんゲロは近寄ってくる。
「まだクリスタル三つでこれほどとは……私の仮説はやはり正しかった!」
「えッ……?」
「私は人造人間20号、いやドクター・ゲロだ。おまえの生みの親じゃよ」
「いや、僕のパパは──」
「うおおォォォォッ! 花火はどこだッ!」
そこへ、タイミング良くセルが現れた。が、ゲロのレーダーは大した数値を示していな
い。早くもセルは興味から外れたのか、冷めた口調でゲロが尋ねる。
「ん……おまえは?」
「ふっふっふ、いきなりか。私は究極の人造人間セルだッ!」
「あぁ、セルシニアね」
「シニアじゃねーよ! セルだよセル! 私こそが、ドクター・ゲロの怨念が生み出した
人造人間セルだッ!」
「ま、まさか……」
「まさかじゃない。吸収したクリスタルの能力、今ここで披露してやろうか?」
全力で、ライター程度の火を出したり、風鈴に似合いそうな微風を出したり、落ちてい
た小石を念力で動かすセル。張り切っている彼とは対照的に、ただただ呆然とするゲロ。
ここで、セルジュニアが口を挟む。
「パパ、その人がドクター・ゲロだよ」
「何ィッ?!」
──いきなり態度を反転させ、ゲロに土下座するセル。
──セルの弱さに失望し、失神寸前に陥るゲロ。
──どうしていいか分からず、おろおろするセルジュニア。
空中では大激戦が、地上ではシュールな光景が、それぞれ繰り広げられていた。炎のク
リスタル入手、どうやら一筋縄ではいかないようだ。
出木杉帝国は、確か私がこのスレに初めてSSを投下したと同じくらいに、始まっていた作品でした。
それだけにまた……。
ドラ好きの端くれとして、マニアック&王道の場面にはニヤリとさせられました。
また、大長編でお留守だった「竜の騎士」を読むきっかけももらいました。
大長編といえば、絆がテーマですが、
これほど大勢による、これほど深い“絆”が生まれた物語はそうないでしょう。敵味方含め。
もうちっとだけ、のラストも期待しています。
221 :
茄子:2005/08/27(土) 03:21:38 ID:gl80OnEL0
その六 宇宙農家
【前回のあらすじ】
不慮の事故で両親を亡くしたマイとその弟ネモ。惑星アンジュラで『宇宙茄子』の生産
を始めようとするが……。
「着いたわね――惑星アンジュラ! 私たちの新しい人生が今から始まるのよネモ!」
「うんお姉ちゃん! 目の前には都合良く使われてない畑もあるし、早速作業始めよう
よ!」
「えー。ねむーいやるきでなーい」
「馬鹿!」
「姉に向かって馬鹿とはあによ」
「忘れたの? 『宇宙茄子コンテスト』で優勝しなくちゃ、お姉ちゃんは――」
「…覚えてるわよ。あの、いけ好かない坊ちゃん野郎の所に――」
「嫁がなくちゃいけなくなるんだよね」
「まー、もし負けてもあいつぶん殴って逃げ出すけどね」
「どっちにしろ、コンテストで結果は出さなくちゃ。コンテストの上位者の野菜はよく売
れるようになるんだし」
「そうね。私たち決めたもんね。誰にも頼らず、二人で生活していくんだって。その為に
は宇宙一の農家を目指す位の気持ちで頑張らなくちゃ!」
「うん、お姉ちゃん」
「よーし気合入ってきた! まずはこの荒れ放題の畑を整えなくちゃね!」
「さあ、やろうよ!」
「とりあえずネモは草抜いて石取り除いて土いじりをして、それからあれもしてこれも―
―――そしてあたしは肥料と『宇宙茄子の種』を買ってくるわ」
「あ、糞、逃げんな」
222 :
茄子:2005/08/27(土) 03:22:28 ID:gl80OnEL0
それから色々あった。
お姉ちゃんは馬鹿でやる気なしだけど野菜作りの天才だったみたいだ。お姉ちゃんの植
えた『宇宙茄子』は不自然と思える速さで急成長して、あの『宇宙害虫』を逆に食ってし
まう程の異常な生命力を持った。なぜなのか訊こうとしたが、ヘソ出して居眠りしていた
ので訊けなかった。地味な仕事は全部僕だ。
そして、コンテストの当日になった。
「コンテスト会場、凄いね。色んな種族の人達がたくさん」
「この宇宙って、人型じゃない人間のほうが多かったのね。知らなかったわ」
「この人達が、皆『宇宙茄子』作ってるんだね」
「ふふん。誰でもかかって――」
お姉ちゃんが急に震えた。こういう時はお姉ちゃんの背後五十メートル以内にあの人が
いるんだ。
「おお、我が愛しのマイさんではありませんか」
「…セクハラ変態坊ちゃん――」
この人は、由緒正しき宇宙農家の跡取り息子で、お姉ちゃんの事が好きみたいだ。お姉
ちゃんは無茶苦茶この人の事を嫌っているけれど。ちなみに名前は知らない。
「あんたんちも、このコンテストに参加するんだ?」
「こんなちっぽけなコンテスト、普通なら出品しませんが――マイさん、あなたが出品す
ると風の噂で聞いたのでね」
「私達を潰す気? 返り討ちにしたるわよ」
「潰すなんて滅相も無い。私はあなたに求婚しにきたのです。マイさん、私と結婚して下
さい。そして、一家で野球が出来る位子供を作りましょう!」
「警備員さーん。ここにセクハラ男が」
お姉ちゃんの呼びかけに応じて警備員さんが来た。あの人は二人の警備員さんに両脇を
抱えられ退場させられた。
223 :
茄子:2005/08/27(土) 03:23:06 ID:gl80OnEL0
『ただいまより、八月下半期のコンテストを開催致します! 今回の野菜は『宇宙茄
子』! 宇宙一ポピュラー。しかしだからこそ改良し甲斐のあるこの野菜! 優勝者には
多額の賞金と『宇宙茄子マスター』の名誉が与えられます』
壇上には、大量の『宇宙茄子』が並べられていた。お姉ちゃんのは一際大きい。という
かなんか蠢いている。
「全部食べちゃえば勝ちよ」
お姉ちゃんが悪魔のような顔でそう呟いた。
そしたらやっぱり動き出したお姉ちゃんの『宇宙茄子』。周りの『宇宙茄子』に襲い掛
かる。食べる食べるどんどんと食べる。止まらないお姉ちゃんの『宇宙茄子』の食欲の渦
は止まる所を知らない。数分の内に他の全てを食べ尽くしてしまったお姉ちゃんの『宇宙
茄子』。
「あれぇ? なんだか残ったのはうちだけみたいよ? 審査員の皆さん、審査が楽でよか
ったですねえ」
白々しい。馬鹿でやる気がなくてその上狡猾なお姉ちゃんだからこそこういう時は頼り
になる。
ただ――動く野菜なんて売れるのだろうか。
224 :
茄子:2005/08/27(土) 03:24:43 ID:gl80OnEL0
「お待ちください!」
その声に皆反応した。あの人だ。
「セクハラ変態坊ちゃん! あんたどうしてここに?」
「警備員なんてちょっとカネ握らせればコロリですよ。皆さん提案があります! 審査の
余地の無いコンクールなどコンクールではない。それは皆さん思うところでしょう」
大多数の人達が頷いた。お姉ちゃんの舌打ちの音が露骨に大きかった。
「そこで! 我が――家(聴き取れなかった)の総力を結集した『宇宙茄子』と、マイさ
んの『宇宙茄子』とで勝負をするのです。勝った方が優勝です」
「勝手なことほざくんじゃねえ!」
女を捨てたお姉ちゃんがいちゃもん付けていたが、お姉ちゃん以外の人々は皆頷いてい
た。
「そしてもう一つ――これは個人的な事なのですが――私は今! この瞬間! 高らかに
宣言したい! 私が優勝したら、マイさんを私の妻とすることを!」
「ハァ!?」
「幸せにしますよ、マイさん。あなた達の欲しがっているお金を私なら与えてあげられる。
私と結婚して一家でサッカー出来る位の子供を作りましょう!」
「ポリスメーン」
今度は警官が来た。さすがに警官にはお金の力も無力だった。あの人は二人の警官に両
脇を抱えられ退場させられた。
コンクールで優勝して、お姉ちゃんの『宇宙茄子』は馬鹿みたく売れた。調子に乗って
『宇宙じゃがいも』を作ったが、こいつは遂に人を食い始めた。シャレにならなかった。
馬鹿みたく売れなくなった。金がなくなったのでお姉ちゃんは仕方なくあの人の所に嫁い
で金だけ奪って一日経たずに帰って来た。その金を元手にまた野菜を作り始めた。今度は
軍事用の野菜だ。これは売れている。
お姉ちゃんも僕も元気に生きてます。天国のお父さんお母さん、心配いりません。
サナダムシさん、また申し訳ないです。
分かる人には分かるはず『アストロノーカ』がモチーフです。スターオーシャン2についてた体験版
しかやってないのですけども。
あとそのうちまた『蟲師』書きます。少なくとも一つは。多くて二つです。一ヵ月後にはアニメも始まることですし。
どうせこっちじゃやらないけど。
>>167 今回は主役級ですよ、茄子。次回も主役ですよ。次回もくだらないですよ。今回ほどではないと思いますが。
面白いっつーか読みやすいですね、恩田陸。他の作品もいいんでしょうね。今度読みます。
>>169 そしたらこんな感じになりました。
>>170 空から茄子が→他の星からなんか→肝っ玉魔女→高校生の悩み→マタギ→宇宙茄子→音に反応して躍る茄子(次回)
こんな感じですね、いまのとこ。次回は大体出来てますけど、先々どうなるのかは分かりません。
>>176 マタギの最後「ちょっと女性向けっぽい感じになったかな?」と思ってたんですがやっぱりですか。
狙ったわけではなく自然とああなったのですが、たまに自分のセンスは女っぽいなと思う事があります。
>>177 面白いことを書く(描く)人は、仕事のスピードに関係なく楽しい物を作りますね。
僕にはまだそれが出来ないのかもしれませんが、もっと努力します。もっと。
とか言ってまた今回薄いですけど、次回はもっと濃い中身だと思いますので見限らないで下さい。
しかし、長編書ける方は凄いですね。俺が長編書いたら五話目くらいで確実にグダグダになるので余計にそう思うのです。
では次回。
>サナダムシさん
あれ、別次元の17号たち結構強いですね?現代圧勝かと思ってたのに。
でも、セルジュニアが最強なのですか。セルの立場が本当にないな。
しかし、一応の主人公だから最後は美味しいところ持ってくのでしょうね
>ゲロさん
アストロノーカってシュミレーションのですか。名前だけは聞いた事あります。
俺は作品読んでてなんとなく21エモンの農作ロボットを思い出しましたw
しかし、しばらくぶりに「茄子」が主題に戻ってきましたねえw
227 :
作者の都合により名無しです:2005/08/27(土) 15:37:42 ID:JjOLHX9m0
>不完全セルゲーム
シリアスになってきたのに、やはりセルはこの役回りかw
次回は3大人造人間のバトル大会かな?18号をかっこよくお願いします
>茄子
短編なのに濃い登場人物が沢山ですね。茄子のタイトルらしく茄子大暴れ。
でも主役の茄子より最後の宇宙ジャガイモ怖えーw
サナダムシさん、ゲロさん共に絶好調ですね。
>セルゲーム
せっかくシリアスな流れなのに、主役が出てくると流れが変わりますね。
ある意味、一番いらないのがセルかも。活躍はするんですかね?
>茄子
毎回、趣向を凝らしてますね。ゲロさんのショート大好きですが、長編も読みたいです。
オチだけはほのぼのしてますが、お騒がせの姉妹ですねえ。
>>193-207 メジューサは長く美しい黒髪を風になびかせ、蒼く澄んだ広大な海の上に立っていた。
「ジパング―――――八百万の神々が宿る国――――――――――
私にはもう、帰る神の国はない。クラーケンを感じていたい。だから・・・海に帰ろう。」
メジューサは燦燦と輝く陽光に照らされながら、静かに愛しき海へと一体化していく。
「神の国の少年スネオ―――――あなたのおかげで私は自分を取り戻せました。
私の心は、愛するクラーケンと、そしてあなたの心の中に―――――――」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あるほのぼの一家。今日はママもパパも留守の日。テーブルの上の書き置き通り、
冷蔵庫の中にはおやつが眠っている。大好きなカズマのママ特製のプリンである。
「おおお〜。ういやつよ。もう二度とまろの側を離れるでないぞ、しゃくよ。」
「おじゃる丸様ぁ。しゃくのこともそりゃあ心配でしょうけど、おじゃる丸様こそ、
また一人でフラッと長旅に出るようなことがあってはなりませぬぞ。」
「わかっておる。そちもしつこいのう。」
そう言って、おじゃる丸はスプーンで目の前のお皿の上にのっている黄色いプルンと
したものをすくいあげた。そのまま小さな口いっぱいにほおばって、ホッと嘆息する。
「うむ。ジャムおじさんのつくったプリンもおいしかったでおじゃるが、やっぱり
ママのつくるプリンが一番おいしいのう。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
通っている中学校の昼休み。制服姿で木陰でお弁当を食べている二人の男女。
佐倉魔美と高畑和夫である。
「だけど、高畑さん・・・無事に帰れて本当に良かったね。」
「キミの方こそ魔物に石にされちゃってたんだろ?体はもうなんともないのかい?」
「うん。今のところ、なんともないわ。だけど私、驚いちゃった。エスパーじゃない
人たちでもあんな凄い力を持ってるんだもの。人間って凄いや。」
「いやあ、あれはあれでエスパーの一種なんじゃないかな?特別な力を持ってるって
意味では彼らは十分に超能力者だよ。それに実際に人間じゃない人たちもいたようだし。
妖精――――だったっけ?」
「また会いたいね。いつか、二人で・・・」
ボン!髪の毛が一瞬、爆発する。高畑は顔を赤くしながら、頷いた。。
「・・・う、うん・・・。そうだね。いつか・・・・」
二人に涼しい影を提供している大木も二人を笑顔で見つめている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「スットラ〜イク!バッター三振!」
「みつ夫!てめえ!」
空き地での草野球。チャンスにあっさり三振に倒れたみつ夫をカバオがどやす。
「へったくそねえ。」「ウッキー♪」
上空でのんびり眺めているのはパー子にパーやんにブービーである。
「まあ、人間得手不得手いうもんは誰にでもありまっからなあ。こればっかりは。」
「全くだ。」
パーやんのフォローにさらに上空から同意の声が降ってきた。円盤に乗った超人、
バードマンである。パー子が少しだけ驚いた顔で問う。
「バードマン!いつからそこに?」
「うむ。ついさっきからだ。しかし、いくらなんでもあれは男の子として情けない。
よーし!今日は私の非番の日だ。特別にバードマン自ら猛特訓してやろう。」
「あらら・・・1号はん、かわいそうに・・・」
カバオにどやされていたみつ夫はむしょうに鼻がムズムズしてくしゃみをもよおす。
「へ〜っくしょい!・・・・?」
キョトンとあたりを眺め回すみつ夫を上空からちょっと困ったような笑顔で眺める
パーマン一座であった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
薄暗い研究室に閉じこもって、気味の悪い笑みをこぼし続ける白髪の狂気の男。
「クヒヒヒ!今度こそ一切の弱点のない、最強のパパンダーを誕生させてやる!
それまで首を洗って待っていろよパーマンどもめ!ハ――――――ッハッハッハ!
――――が!・・・・・研究費が全然足り〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!くそぅっ!
誰かこの天才を理解し、資金を提供する、モノのわかる人間はいないのかあ!?」
孤高のマッドサイエンティスト・魔土災炎。彼が新型パパンダーを完成させて
打倒パーマンを果たせる日は、ひょっとしたら永遠に来ないのかもしれない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
地上。戦国時代を思わせる古風な町並みの中を、平民姿のきり丸と土井半助は
ジタバタジタバタと大きな声で騒いでいた。
「きり丸!できもしないバイトを請け負うなと言っただろう!」
「だって、これ以上バイト減らしたら、学費払えないんだもん!」
「だからといって私にまで仕事を押しつけるな!」
子守りとペット用猪の散歩と洗濯のバイトを同時にこなしながら土井半助が涙を流す。
「たはは・・・せっかく黄金で大金持ちになれると思ったのにぃ・・・」
情けない顔で空を見上げるきり丸。瞬間、そのきり丸の瞳が輝いた。宙から舞い
落ちる一枚の紙切れにガバと跳ねあがり、飛びつく。それはチラシであった。
「短期間に超高収入を稼いでみませんか?安心安全らっくちんな楽しいバイト!?」
すぐにでも面接会場に走り去ってしまいそうな勢いのきり丸を土井半助があわてて
呼び止める。
「ん?ちょっとまて!そのチラシ・・・!?」
チラシの最後に小さくさりげなく、なにげに見逃せない文字が書いてある。
“来たれ!ドクタケ城へ! 担当:稗田八方斎”
別の場所で同じくそのチラシを発見した山田伝蔵も思わずため息をこぼしていた。
「やれやれ。八方斎もこりんやつじゃのう・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
時空間を隔てた異世界―――――魔法世界。
人間の持ちうる魔力とは、本来長い年月をかけて徐々に高められていくものである。
才能による個人差こそあれど、高い魔力を得るには、相応の年齢が必要となってくる。
デマオンとの戦いにおいて美夜子が自ら冠した“大魔道士”の名は伊達ではない。
本来、精神を失った肉体は急速に衰弱し、長時間戻ってこれない事態に陥ったならば、
死は確実にまぬがれられないものである。しかし、美夜子が時空間を用いて再び舞い
戻ったのは、魔王を追い、その精神を解き放った直後の、まだわずかに老いることも、
衰弱することさえもない元のままの肉体。美夜子の体には強い魔力が満ち溢れていた。
精神体として魔王の内に封じられ、人としては極限と言っていいほどに高まった魔力。
その力は若い肉体とは不釣合いに強く、既に父である魔学博士をも大きく超えている。
仮に魔界星の大炎上からひっそりと生き延びた魔族が存在し、再び地球侵略を企てる
ようなことがあったとしても、彼女がいる限り、人々は十分に対抗できることだろう。
美夜子は魔法世界において歴史上、唯一無比の大魔法使いとして、魔法文明の発展、
そして魔法世界の平和に大きく貢献したという。
後世まで永遠に語り継がれゆく“伝説の大魔道士”として―――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
のび太の地底出木杉帝国 最終話
―――――――“楽園”―――――――――――――――
キスギーが魔王に操られながらも、その強固な意志をもって目指したもの―――――――
それは魔王と出会う以前よりの彼の夢。平和を願う人々の理想郷“楽園”の建設であった。
人の世である以上、争そいのない世界など夢物語にすぎなかった。そんなときに知った
妖精の世界。この世に完璧なる平和な世界があるとすれば、それは妖精界をおいて他にない。
彼は研究に没頭した。
永い永い苦しみの時を超え――――――
今、彼の願いと魔王デマオンの魔力。そしてその暴走を食い止めた若き勇者たちの活躍。
真なる平和を望む竜人たちの力が運命的に奇跡的に絡み合い、噛み合って――――――――
地底竜人世界。まだ誰も気付いている者はいない。ドラえもんも、のび太も、美夜子も、
そしてバンホーたちでさえも―――――――。しかし、いずれ彼らも気付く日が来るだろう。
この地は―――――キスギーの夢。永遠の平和が約束される妖精の国となったのだ。
これから先、この地が邪悪なるものに脅かされることは決してないのだろう。
キスギーは永い永い苦闘の末についに夢をかなえ、夢の大地と共に生きることを選んだのだ。
八百万の神々が日本の地に宿っているように、キスギーもまた、この大地に宿り、未来永劫、
この世界の平和を見守り続けていく――――――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――さて、その地底世界。
アキーム、ノヴァ、フォブスター、そしてローの4人はバンホーによって、
地底世界のさらに地下。ある秘密の施設に召集された。
「ドラミどのにいただいたこのブレスレットは、確かに私に素晴らしい力を与えてくれた。
このブレスレットは恐竜の遺伝子を持つものを大きくパワーアップさせてくれるものらしい。
竜の遺伝子が限りなく薄い地上の人間種族にとっては、子供のおもちゃ程度の代物だとか。
しかし、我等竜人が正義の心で戦うその時に限り、ブレスレットは力を与えてくれる!」
バンホーははりきって叫ぶ。まるでヒーローごっこに興じる幼な子のように。
「私の持つ黒。赤、青、黄、白。この残り4種のブレスレットでこの地底世界の平和を守る!
選ばれしメンバーはキミたちだ!みんな、私の考えた振り付けと口上は覚えてきたな?」
5人それぞれ、ブレスレットを身につけ、ポーズを決める。
「元気莫大! アキーム・レッド!
「勇気で驀進! ロー・イエロー!」
「本気爆発! フォブスター・ブルー!」
「トキメキの白眉! ノヴァ・ホワイト!」
「無敵の竜人魂! バンホー・ブラック!」
『荒らぶるダイノガッツ!竜人戦隊!ドラレンジャー!』
バーン!それぞれ奇妙な決めポーズで固まった5人の背後で無意味な爆発が起こる。
地底世界の平和は竜人戦隊がいる限り破られることはないだろう。行け!ドラレンジャー!
戦え!竜人戦隊ドラレンジャー!これからも地底の平和のために――――――――――!
・・・・・地底世界は今確かに、間違いなく平和であった――――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ジャムおじさんやバタ子さんの暖かい笑顔に見送られながら、パン工場から勢いよく
飛び立つアンパンマンとカレーパンマン。今日も元気にパトロール開始である。見れば、
純白の車を運転しながらしょくぱんマンがやってくる。お互いに笑顔で手を振りながら
すれ違う。しょくぱんマンを付け狙う赤いストーカーには気付かないフリをして。
そのまま二人でパトロールを続けていると、低空をせかせかと飛びまわっている
バイキンUFOが遠くに見えてきた。と、同時に子供たちの悲鳴と泣き声が聞こえる!
「バイキンマンのやつ、まーた何かいたずらしてやがる。」
急いで駆けよる。
「子供たちを泣かすなんて、バイキンマン!許さないぞ!」
もはや日課である。アンパンマンとカレーパンマンはいつものように子供たちのために
マジックハンドで迎え撃つバイキンUFOに戦いを挑んでいった。
そのころ、しょくぱんマンは一人、車をとめて佇んでいた。
雲ひとつない美しい青空を見上げて、はるかな遠い星の少女のことを想う。
「リルルさん・・・。今ごろどうしているのでしょうか。・・・そうですね。
きっとメカトピアという星でめいっぱい頑張っていることでしょう。」
しょくぱんマンは笑顔で両の拳を空へと突き上げた。力いっぱい、のびをするように。
「さあ!私も頑張りますよ!おなかをへらした子供たちがたくさん、私のしょくパンを
待っているのですから!」
青空の向こうに小さな光が輝いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ついさっきまでしょくぱんマンが見つめていた青空のはるか彼方、気の遠くなるほどの
距離を隔てて、宇宙に浮かぶ美しい星、メカトピア―――――――――
悲しい結末を迎えた鉄人兵団。
しかし、ロボット至上主義の過激派最右翼であったフレイザード将軍とその配下、
軍事力の大半を失ったことで、結果的にメカトピアは着実に創造者の、そしてリルルの
目指した理想国家へと少しずつ、着実に変化しつつある。リルルの言っていた通り、
生まれ変わったメカトピアのロボットたちには、確かな“心”が芽生えているのだ。
その中心には、指令系統を失ったメカトピアの新しいリーダーとして、かいがいしく働く
リルルの姿があった。傍らには元気に復活したザンダクロス、いや、ジュドーの勇姿。
爽やかな風が吹き付け、リルルの淡い桃色の髪を美しい青空へとなびかせた。
なびく髪の隙間から、リルルは遠く、銀河の彼方にあるはずの地球の方向を見やった。
「また、遊びに行きたいな。今度は、今度こそ胸をはって平和で素敵なメカトピアを
自慢してやるの。のび太くんとしょくぱんマンさんに。―――メカトピア初のロボット
以外の種族との結婚―――なんて、ちょっと夢見すぎかしらね。」
いたづらっぽく舌を出して笑う。その屈託のない笑顔は、メカトピアの幸せな未来を予感、
いや確信させるのに充分なものだった――――――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――地球。蒼く澄んだ空。白い雲。太陽の光を燦燦と浴びる大いなる地上の大地。
いつもの空き地でのび太がなにやら必死に主張している。
いつものようにジャイアンやスネオにバカにされながら。
「だから僕が昨日の夜に、窓の外で見たあれは絶対“神帝”だったんだって!」
「やれやれ、またのび太がバカなこといってら。“天聖界”なんて実在しないんだって。
しかもホントに神帝とかがいたとしたって、わざわざこの地球になんか来るわけないだろ。」
「夢でも見たんじゃないの?」
「いや、のび太くんの言う事にも一理あると思うな。昔、個人的に興味があってさ。
調べてみたことがあったんだけど、天聖界は架空のものとも言い切れないと思うよ。
それに、意外と地球とも関わりが深いんだ。」
「へ?そうなの?出木杉くん。」
「そもそも〜というものは古代天聖界におけるナディアとメディアとの対立が〜〜〜
どちらにしろ、地球が誕生したのは天使たちが全員滅んだ後のはずだから、神帝たちが
まだ生きているとは思えないけどね。」
「じゃあ、やっぱり神帝なんていないんじゃん。」
「え〜・・・がっかりだなあ・・・」
のび太は心底ガッカリした様子である。
「出木杉さんって何にでも詳しいのねえ。」
「まあいいや。せっかく人数集まったんだからもっと体動かして遊ぼうぜ!」
『おう!』
のび太。ジャイアン。スネオ。しずか。そして、出木杉。
いつもの空き地の土管の上で楽しそうに遊ぶ5人の姿をそっと覗いて――――――
ドラえもんはいつも通りのその平和な景色に思わず一人微笑んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
宇宙を漂う小型のスペースシップ。全身を黒いレザーで覆う、長身痩躯の幽鬼のような
男が一人眠りについている。――――が、目覚める。鋭い眼光とともに。
「―――侵入者!エイリアンか!?」
完全に気配を絶っての背後からの斬撃。ギラーミンは黒く光る銃身でその刃を受けとめた。
「違う!この洗練された動き――――――何者だ!?」
ギラーミンの記憶の中には、過去十数年を遡っても、これほど近くまで気配を感じ
させずに近づいてこれた男はいなかった。まだ駆けだしの若造だったころ以来だろうか。
侵入者が鋭い動きでギラーミンの喉元に剣をつきつける。
が、そのとき既にギラーミンの銃はピタリと相手の心臓の位置にあった。一瞬の膠着。
そして――――――先に矛をおさめたのは侵入者の方だった。
「さすがです。あの歪魔肥大化した魔王デマオンを倒しただけのことはあります。」
侵入者の姿は、端正な顔立ちの凛々しい青年だった。かなり派手なコスチュームに
身を包んでいる。灼熱の炎を思わせる重武装に身を固め、鎧の背部からは孔雀の羽の
ような尾ひれが艶やかに広がる。さしずめ鳳凰の化身といったところか。さらに頭上には、
不可思議な光の輪が浮かんでいる。一見したところ、暗殺者や宇宙盗賊の類には見えない。
青年は話を切り出した。
「あなたのお力をお借りしたい。」
ギラーミンはわずかに間をあけて、静かに答える。
「ビジネスの話ならば聞こう。――――が、やつを倒したのは私ではない。」
「知っています。だが、あなたも紛れもなくデマオンを倒しし勇者たちのうちの一人です。
そして、あなたがおっしゃる魔王デマオンを倒しし者とは、まだ幼き勇者たちのことでしょう。
彼らの元へもそれぞれ使者が向っているはず――――――失礼。申し遅れました。」
「私の名は―――――――」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドラえもん、のび太、異形の魔都と化した地底世界に集結した勇者たち―――――――
『 To be continued ! ――――――― 』
彼らの戦いはまだ終わらない―――――――!
大長編ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 完
241 :
うみにん:2005/08/27(土) 19:14:48 ID:UUvVYZkS0
ありがとうございました。これにて完結です。
各キャラ、特にしずかやキスギーのもっと深い心理的な部分など、うまく書けなか
った部分も多いですが、書き残したところはほとんどないかな、とも思ってます。
ただ、しずかの影が薄かったことや、“みんな”との最後の別れがあいまいになって
しまったことなどは、少しだけ心残りかもしれませんね。
追加キャラと追加イベントは数多く。書きながら中盤は当初の構想から大きく
ズレていってるような感覚だったのですが、最終的には当初の構想とほぼ同じ形で
クライマックスとエンディングを迎えることができました。不思議なものです。
でも結末までの構想があったおかげで、なんとか最後まで書ききれたのでしょうね。
それと最大の原動力はもちろん、こまめにいただいた感想です。全員に感謝です!
で、思わせぶりなラストですけど、続編を書く予定は全くありません。
これで完全に完結です。
が、もしもドラえもんで再び書くとしたら、出木杉帝国のラストをプロローグに
「天聖界編」ということになりますかねえ。「ドラえもん のび太の天聖界(仮)」
・・・やりませんけどw
242 :
うみにん:2005/08/27(土) 19:15:35 ID:UUvVYZkS0
無事完結できたのは嬉しい気持ちの方が強かったのですが、ウソでも寂しいと
連呼されると、いざ終わってみたときにはやっぱり寂しく感じるものですねえ。
サナダムシ様のコメントを見て時の流れを実感しました。
竜人戦隊は作中で暴れさせる構想もあったのですが、いくらなんでも世界観に
合わないかな、と思ってやめました。出す出さないは終盤まで悩んでいましたので、
黒いブレスレットの伏線だけは一応、張ってましたけど。
パーマン一行とドラえもん一行は当初からの予定で、最後まで直接の接触はさせない、
と決めておりました。意味があるのかないのか、それすらもよくわからないのですが、
なんでそう決めたんだろう・・・?
>>213 確かに北の界王でしたね。申し訳ない。今までずっと西の界王だと思ってました。
最後の最後に申し訳ないですが、バレ様!修正お願いします。322の最後の行です。
(ああ、なんだか、ドラえもんに泣きつくのび太の気分ですねw)
他「サラリーマン北野龍一郎(仮)」「ポップinバスタワールド(仮)」など、
構想もないのになんとなく書いてみたいものはいくつかありますので、いつの日か
またここで書くこともあるかもしれません。
最後まで出木杉帝国につきあってくださった方々、本当にありがとうございました。
>>うみにんさん
これで本当に終わったんですね。ラストがかなり気になりますが・・・
とにかく次回作が楽しみです。
244 :
作者の都合により名無しです:2005/08/27(土) 22:58:01 ID:LMQPwhx60
ああ、大作が終わった後は少し気が抜けるなあ。
うみにんさん、GJでした。
エピローグ、それぞれの日常のその後が良かったです。
いつの日にかまた、ここで連載してくれるのを願ってます。
勿論、読みきりもね。待ってますよ!
うみにん氏、本当に長い間の力作連載お疲れ様でした。
最初から最後まで「うみにんワールド」を堪能させて頂きました。
エピローグもうみにんさんらしい、温かいもので良かったです。
明日はうみにんさんが楽しみにしてたミルコ対ヒョードルの世紀の一戦。
それ見て、またうみにんさんが闘志を燃やしてくれて
新しい作品を作ってくれるのを待ってますよ!
うみにん氏完結乙&おめ!
いきなり登場した竜人戦隊にハゲワロスw
バンホーさん楽しそうだなw
竜人戦隊と最後のかっこいいギラーミンで寂しい気持ちが吹っ飛びました。
キスギーもあれで終わりじゃなくて良かった。
ドラえもんはやっぱりハッピーエンドですよね。
続き大変だろうけど気が向いたらまた書いてね。
>うみにんさん
完結おめでとうございます。この瞬間に立ち会えてよかったです。
「竜人戦隊」は最後の最後にうみにん節炸裂ってとこですかw
最後の方は早く物語の大団円を見たいようなまだ終わらないで欲しい
ような複雑な思いで読んでました。
長期間の連載、そして完結本当におつかれさまでした。
こちらこそありがとうございます。気が早いけど次回作も期待してます。
というか天聖界編見てえw書いてよw
248 :
ふら〜り:2005/08/28(日) 12:05:21 ID:IvoCSk7c0
>>サナダムシさん
遂に来た17号主役パート、その途端に明らかに彼のミスで、事態の悪化を招いてる。
これを知ったセルが鬼の首とったように騒いで、ボコボコにされて……という彼らの日常
に帰る為、頑張れ17号たち。セルも、今なら意外な活躍をしそうな気はするんですが。
>>サマサさん
重力増加と空間操作といえば、どちらもイメージ的に「強敵キャラ」の技。さぁどう対抗
するのか、と思ったら反則的なコンボで対抗したドラ。が通じない。さすが強敵キャラだ、
と安心しました。これでこそ今後が楽しみというものです。インフレっぷり、どんなのか?
>>ゲロさん
>まー、もし負けてもあいつぶん殴って逃げ出すけどね
いや、こういう設定でそれは反則でしょ。と思ったんですけどそんなレベルは遥かに超越
してたお姉ちゃん。本来ツッコミ役のネモ君にツッコむ隙を与えず、でも本人は暴れたり
せずあくまで茄子。振り返ればマッドサイエンティストでバイオハザードな物語でした。
>>銀杏丸さん
♪痛みは 解る けれど 代われないから……♪ との言葉通り、ご自身で頑張るしか
ない状況、お察しします。お辛いでしょうが、今の苦境を越えられた暁には、ぜひまた
SSを。楽しみに待っておりまする!
>>うみにんさん
お疲れ様でした〜っっ! いやはや、こうやってみんなが帰って行くのを観てると、
本当に多作品多キャラによる夢の競演大長編だった、ということが実感できますなぁ。
うみにんさんの仰られてた通り、みんな元気に元通り。だからハッピーエンド。全員、
出典が出典だけに、そりゃあ死ぬわけにはいきませんよね。という縛りがある中で、
これだけの緊迫感があって盛り上がりがあって、エンディングに深い満足感があって。
(私が一方的に)剣心の背を見る弥彦のような気分になりつつもう一度…………
連載完結、お疲れ様でしたっっ!
お疲れ様でした、うみにんさん。
終わりなき戦いに続くエピローグは、壮大でいいですね。
ギラーミンの前に現われた青年って、描写を見るとフェニックスの一輝を思い出しました。
竜人戦隊・・・作中で見たかったかもw
次回作の天聖界編は、予定は未定とのことですが、ぜひとも書いてほしいです。
しかしながら本当に長く、しかも一場面一場面が「濃ゆい」作品でした。
第二部はまさに<全編クライマックス>といってもいいくらい。
熱血、友情、とにかくギッシリ詰まったSSでした。
拙作「超機神大戦」が同じくらいの評価を受ける日は・・・来ないだろうな(笑)
とにかく、本当にお疲れ様でした!
>サマサさん
いや、俺は期待してますよ。毎回楽しみに読んでますし。
神界大好きでしたしね。プリムラ愛らしいです。
あなたとゲロさんとサナダムシさんが好調なんで、
バキスレ開くのが毎回楽しみなんですよ。頑張って下さい。
>うみにんさん
お疲れ様、ありがとう。この言葉しかしか浮かびません。
二部は名場面の連続で、それが最後まで緩まず続いた名作でした。
終わったのは残念ですが、SSは完結してこそ意味があると思うので、
やはり嬉しいです。また作品を上げて頂けるのを待ってます。
俺もサマサさんの作品大好きですよ。だからこれからも頑張ってね
うみにんさん、最終回おつかれさまでした。
本編にも爽やかなエピローグにも大満足なのに
なぜか切なさや寂しさばかりが先に立ちます。
人魚姫やしけい荘も含めて今バキスレに一つの
時代が終わりをつげた。そんな趣ですなあ。
陳腐な言葉しか書けませんが、
良い作品をありがとうございました。
>サマサさん
終わる時代があれば始まる時代もある。
新しい時代の主役はあなたです。
願わくばその新しい時代にうみにんさんの姿もありますように。
大作の終わった後は皆さん書き辛いのかなあw
職人方、いつも楽しみにしてますよ。
感想も出来るだけ書きますので頑張って下さい。
投下しにくいってのも少しはあるだろうけど、
日曜日は元々いつも少ないから心配しなくても大丈夫だと思うよ。
第二十二話「トリプルマッチ」
空中にて入り乱れる17号と17号、18号と18号。どちらかが偽者というわけでは
ない。両陣営とも偽りなきオリジナル。加えて、いつのまにか双方とも姉弟で協力し合う
ようになっていた。タッグマッチ、開戦だ。
早々、猛攻を仕掛ける別次元タッグ。勢いも手数も尋常ではない。
インプットされた破壊本能に従って放たれる、相似17号と18号による猛連打。心底
楽しそうに笑いながら、彼らは拳を振るっている。しかも一つ一つが、常人ならば触れる
以前に圧殺されるであろう威力。
しかし、これらはあくまで表面上でのこと。凶悪な念が込められた拳はほとんどが空を
切り、逆に巧妙なカウンターやコンビネーションが次々に決まる。
「くそっ、どうなってやがる! 俺たちが押されるなんて……!」
「ちょっと、しっかりしてよ17号! あんな奴らに手こずってる場合じゃないよ!」
まさかの苦戦に、心を乱す二体の殺人マシン。対して人間らしさを残す二人、流れを着
実に支配している。
「18号、あいつらは破壊衝動が先に立って、攻撃が全て力任せになっている。お互いエ
ネルギーが永久である以上──俺たちは戦術で奴らを越えるぞ」
「オーケー。少しとまどったけど、こうなったらぶっ壊すまでやってやるよ」
再び、二対二が激突する。一進一退の攻防が続くが、やはり戦術で上をゆく現代タッグ
が少しずつリードしていく。
一方、16号同士の対決。
こちらは純粋なヘルズフラッシュの撃ち合いになっていた。両者、一歩も退かない。
「ヘルズフラッシュ!」
「ヘルズフラッシュ!」
全くの互角。相殺される。
「ヘルズフラーッシュ!」
「ヘルズフラーッシュ!」
これまた互角。打ち消し合う地獄の光。
「ヘルズ、フラーッシュッ!」
「ヘルズ、フラーッシュッ!」
やはり互角。一時的に真空地帯が生じる衝撃力。
互いに決め手に欠ける。が、あえて甲乙を付けるとすれば、現代製16号がわずかでは
あるが総合的に上回っていた。もちろん、相似16号とて気づき始めている。
「おのれ……。自然を守るなどとほざく者に、私が劣るわけがないッ!」
「しいて挙げるなら、努力の差だろうな。私はある男に、いかにスピーディに、いかにパ
ワフルに、いかなるタイミングでヘルズフラッシュをぶつけるか──常に考えてきた。こ
れが、性能にわずかな優劣を生んだのだ」
「ふざけるなァッ! こうなれば、是が非でも貴様を破壊してやるッ!」
轟音とともに、発射されるヘルズフラッシュ。戦いはまだまだ終わらない。
そして地上では、まだセルが土下座を続けていた。またゲロも、何回かレーダーを作動
し直すが、出る数値に変化はなかった。セルジュニアは文句なく強いが、本命のセルが弱
いのでは仕方ない。落胆するゲロ。
「計算ではクリスタルを一つでも吸収すれば、17号程度には強くなっているはずだった。
しかし、これはどういうことだ。三つを吸収している段階で、17号どころか18号にも
劣っているとは……」
「いやぁ、ハハハ。つまり、私はゲロ様の予想を上回る進化を遂げたということですね?」
「逆じゃ! 下回ってんだよ!」
「ヒィッ!」
怒鳴るゲロに、よりハイレベルな土下座を敢行するセル。額が地面にめり込んでいる。
「いい加減にしてよ、パパ! 上で18号さんたちは戦ってるのに、土下座なんかしてる
場合じゃないよ!」
「……ん、すまんすまん。まぁ、あいつらなら心配あるまい。私より強いしな」
「パパより強いことは、なんのステータスにもならないよ」
「うるさい」
空中では、いずれもクリスタル捜索隊が優勢であった。これを知り、余計に苛立つゲロ。
「くそっ、奴らめ。せっかく呼び寄せたのに、何をやっておるのだ……!」
「あの、ゲロ様……」
「どうした!」
「ずっと疑問だったんですが。何故、火とは別に炎のクリスタルがあるんですか?」
すると、ゲロは少し機嫌を取り戻したのか、セルに向かって微笑する。
「ふっ、炎のクリスタルは私の中で煮えたぎる“復讐の炎”を表したものだ。ほれ、そこ
に現物があるじゃろう」
ついに明かされた、炎のクリスタルに含まれた意図。が、セルはついつい吹き出してし
まう。
「プッ……オヤジギャグだったんですか」
──ぷつん。ゲロの体内で、紐でも切れるような音。
「きええええぇぇぇぇぇぇッ!」
突如、豹変するゲロ。恐れおののき、父子して抱き合うセルとセルジュニア。
「もういらんッ! とんだ失敗作を造ってしまった……今すぐ始末してやるッ!」
つづく。
現代軍かなり優勢ですが、見た目も実力も同じという戦いに
ストリートファイター2ダッシュの漫画を思い出してしまった。
しかしセルは落とすなー。どうせなら「土下寝」まですればいいのにw
ヘルズフラッシュの撃ち合いに何か笑ったw
262 :
作者の都合により名無しです:2005/08/29(月) 18:57:36 ID:HkrU2c4c0
セルは地雷を踏むのが趣味みたいな性格で好きだな
シコルのヘタレとは少し違うね。
シコルは回りに巻き込まれていくタイプ。セルは自ら自爆するタイプ。
バトルモードに突入したのに、主人公だけ取り残されてるw
263 :
超格闘士大戦:2005/08/29(月) 19:25:52 ID:cjcrwfHS0
第28話「バランの帰還」
赤茶けた大地の上で、がっちりと手を合わせあう男が2人。
浦飯幽助と範馬勇次郎である。そして、その2人を中心にして、囲むように
蔵馬、桑原が少し間を開けて立っていた。
その時の浦飯と勇次郎は、まるで磁石のようであった。
浦飯がSとしたら、勇次郎は当然N。異なる極同士が吸い付き合う、磁石の性質をそのまま
トレースしたかのように、2人はすうっと距離を縮めていき、握手を交わした。
言うまでもないが、2人は初対面であった。何故初対面の2人がこうまで突然わかりあえるのか…
これは傍から見ている蔵馬達はおろか、当事者である浦飯と勇次郎にさえわからないことであった。
「世界には…『自分と似ている』人間が1人はいるってぇ話だが…今、正にそれを見つけた気分だ…
顔は全然似てやがらねぇのにな」
2人は目を合わせあった。浦飯は軽く唇を緩ませ、勇次郎は顔が引き裂けんばかりの笑顔を見せた。
「どんなうまい料理、うまい女、うまい闘士を喰ったとしても…今のこの気分を超えることは
出来ないだろう……快感だ…なぁ、なんでこんなに気持ちいいんだろうなぁ…」
勇次郎の問答に、浦飯は即答した。
「俺にもわからねぇ」
…あんな奴に負けてもらっては困るな…力の出し方を教えてやるよ…
その時、浦飯の脳裏には1年前に聞いた謎の声のことを思い出していた。仙水忍との最終決戦時、
魔族に覚醒した浦飯の心の中に、直接響いてきた謎の声。その声が聞こえた直後、浦飯は一時仙水を
はるかに上まる力を発揮し、仙水を一瞬にして倒した。その力の源は、明らかに謎の声…さらに言えば
謎の声の主の能力によるものであった。その時と違い、今の浦飯の体に特別な変化はない。
だが、感じは似ていた。あの時、声の主に感じたぞくぞくした感じ…それは目の前の勇次郎という男からも
ひしひしと感じられていた。
「幽助、俺達はどうしようか?この大陸も落ち着いたみたいだし、一度日本へ帰らないか?」
蔵馬が、幽助にそうたずねた。あえて勇次郎のことに触れなかった蔵馬だが、勇次郎もそれについて特に気にはしなかった。
264 :
超格闘士大戦:2005/08/29(月) 19:26:56 ID:cjcrwfHS0
そうだなー、帰っかぁ。バランのおっさんのことも気になるしな。勇次郎さんよ、あんたはどうすんだ?
俺達は恐らく日本に帰るけど、ついてくるかい?」
勇次郎はニヤリと笑みを浮かべると、浦飯の顔を見ながら首を横に振った。
「あんな退屈な国にいたら体が錆びついちまうぜ。俺はここで竜退治でもしてるさ…」
「そうかい…じゃあ…また、会おうな」
「ああ、きっとまた会えるさ…」
勇次郎と浦飯は、握り合っていた拳をほどき、今度はがっしりと抱き合った。その後間もなくして、勇次郎は
ふらぁっとその場を後にして、浦飯達の前から姿を消した。
「浦飯…今のオヤジはいったい…?」
桑原が、浦飯にそうたずねた。
「さぁ、わからねぇな。ただ、俺にとって運命的な出会いってことは間違いねぇな」
265 :
超格闘士大戦:2005/08/29(月) 19:27:45 ID:cjcrwfHS0
オーストラリア大陸に、一時の静寂が戻った。ミストバーンの命によって、群れをなしていた
10万もの魔物達は、ギアガの大穴へ向かい、フレイザードなどの幹部達と共に魔界へと帰っていった。
今のこの大陸は、1年前、冥竜王ヴェルザーが出現する前の、状態に戻ったと言ってもよい。
もっとも、戻ったのは雰囲気だけで、破壊された町や殺された人の亡骸は、当然放置されたままである。
そんなオーストラリア大陸上空に、再び帰ってきた男が1人…
アテナに会うと言い、日本へと旅立った竜の騎士バラン。彼が再びこの大陸へと戻ってきたのだ。
バランは浦飯達の闘気を探知し、彼らのもとへと向かった。強い気の無くなった今のこの大陸で、
浦飯達の存在を発見するのには、大して時間はかからなかった。
「よう、おっさん。また会えて嬉しいぜ」
浦飯はニカっと笑顔を見せて、バランにそう声をかけた。
「私がいない間、ずいぶんと派手にやっていたようだな」
バランは浦飯達の服の様子を見ると、少し唇を緩ませながらそう言った。
「まぁな。元々ぼろぼろだったから別にいいけど」
「新品に着替えるいい機会だ。お前たち、すぐに私と共に日本へ来てくれ。アテナが呼んでいる」
「日本へ?」
浦飯達3人は、それぞれ目を合わせあった。
「バランさん…その、アテナ…とはいったい何者なんだ…?ギリシャ神話で聞いたことはあるが…」
「…まさにその通りの存在だよ…蔵馬」
蔵馬の問いに、バランがそう答えた。
「アテナは…これからの戦いになくてはならない…我々の戦いの神だ。私たちは、アテナを全力で
守らなくてはならない…」
「まぁいいじゃねえか。詳しいことは後で聞こうぜ。久々に、日本のタバコで一服してぇし…」
「ありがとう、浦飯」
浦飯、桑原、蔵馬の3名は、先導するバランの後についていった。飛影は、いまだに意識が戻らず、
蔵馬の背におぶられたままだった。
バランが日本へ連れて行く者…それは浦飯達だけではなかった。
266 :
超格闘士大戦:2005/08/29(月) 19:28:47 ID:cjcrwfHS0
エアーズロックには、アバン一行、そしてフェニックスの聖闘士、一輝がいた。
バランが日本へ連れて行くもう1人の人間、それがアバンだった。
エアーズロックに到着後、バランはアバンに事の一端を話し、自分についてくるように誘った。
アバンはすぐに首を縦に振り、承諾した。同時に差し出した右手をバランがしっかりと握った。
「アテナが蘇る時、悪もまた蘇る。そしてアテナは戦いの神、全世界の希望…断る理由は何もない」
アバンはそう言った後、隣に立つポップの顔を見つめた。
「ついてきますね…?」
「はい!」
そう即答するポップに合わせるように、本部もこくりと頷いた。
「フェニックスの一輝…アテナから伝言だ。『しっかり頼みます。無駄死にはしてはなりません』とのことだ…」
「フッ…こちとら命を捨てる覚悟でやってるんだが…神とはいえ、やはり甘いなあのお嬢さんは…
まぁそこがいい所とでも言っておくか…」
「では、ここの守りは頼んだぞ」
「ああ…はやく行け」
「では行くぞ。みんな、私の体に触れてくれ」
言われた通りに、バランの体へと手を触れる一行。全員の手がバランの体に触れた瞬間、
バランの体からまばゆい光が発せられて、アバンや浦飯達を包みこんだ。
直後、光に包まれた者達は、一瞬にして消え去り、エアーズロックには一輝のみが残された。
バランがルーラという古代呪文を唱え、アバンや浦飯達を日本へとワープさせたのだ。
フェニックスの一輝がじっと見つめる中、一行は大陸から瞬間移動し、日本へと旅立った。
バラン達が消え去った後、気配を消してエアーズロック間近へと迫っていたミストバーンが、
1人残った一輝の姿を遠目に見つめていた。狙いは言うまでもなくエアーズロックである。
バランや浦飯達が去った今この時、ミストバーンにとってこのうえない好機であった。
一輝に、そして世界全体の危機が迫っていた。
<第2部完>
出来や更新ペースが落ちても、とりあえず自分のペースで頑張っていきますんで。
第3部へ続く。
第十五話「加速する世界」
壊すことは簡単だが直すのは難しい―――そんなことをよく聞くが、そうだろうか。
破壊衝動をある一定のレベルを超えて持つことは、破壊衝動をまったく持たないことと同じくらいに難易度は高い。
核ミサイルを撃てば地球を滅ぼすことは簡単だといっても、本気でそんなことができる人間は恐らくいまい。
例えば自殺志願者がいたとする。彼、あるいは彼女は、自分が死ぬときは世界も道ずれにしてしまおうと常々思っていた。
だが実際に目の前に核ミサイルの発射スイッチがあったとして、果たしてそれを押せるだろうか。
物理的には可能であっても、心理的にはまず不可能だ。それが正常な人間というものだ。
だが、もしも―――もしもそのボタンを、至極あっさりと押せる人間がいたならば。
本気で世界を壊してやろう―――そこまでの破壊衝動を持った存在を、果たして人間と呼んでいいものか。
それはもはやヒトではない―――何か、もっと別のもの―――<悪>と表現するのも憚られる、<最悪>そのもの―――
「くっくっく・・・何を呆けている、俺の敵」
狐面の男が笑う。のび太は込み上げる悪寒を堪えて彼を睨みつける。
「そう怖い顔をするなよ、俺の敵。俺がここまで他人に干渉するなんざ、とんでもなく珍しいんだぜ?俺の流儀からは
かなり外れているんだ、こういうのは。そこまでしてでも俺はお前らに関わりを持ちたいんだよ。ちょっとは理解して
くれないもんかね?」
「狐・・・よくそっちから現われてくれたもんだな。国際的指名手配犯が随分呑気なもんだ」
険しい顔で言い放つムウを、狐は平然と見返す。
「ふん、TP隊員ムウ・ラ・フラガか。クルーゼと因縁あるお前が俺の敵と共にいる。実に宿縁じみていて面白い。
こういう因縁を俺は大事にしたいと思っているんだ。因果ってのは、つまりは運命そのものだからな」
「ふざけたことを・・・っ!」
「くっくっく・・・しかし、実に面白い。実に楽しい面々が揃ったじゃないか、俺の敵達。俺がお前らに宣戦布告してから
まだ一週間とたっていない。十三階段による介入があったとはいえ、こんな短期間でこれだけの仲間が集まったんだ。
物語は、確かに加速している」
「物語が―――加速、だって?どういうことなんだよ、それ」
聞き慣れない言い回しに、稟は首を傾げる。何が言いたいのか、さっぱり分からない、いや、そもそも彼は本当に人間の
言葉を喋っているのだろうか?それすらもよく分からない―――
「<どういうことなんだよ、それ>ふん。まあちょっと言葉にすると分かりづらいが、説明してみようか。ディングエピローグ
―――物語の終わりまでは本来長い長い時間をかけて辿り着くものだ。だからこその加速だ。
加速することによって、その時間は短縮されると俺は考える。加速すれば加速するほど―――それだけ早く終わりに近づく」
「・・・加速」
ドラえもんは呆然と呟いた。あまりにも無茶苦茶な理論だ。そんなもの―――妄想ですらない。
だが、しかし―――その言葉には、一種異様な説得力があった。否定することが―――できない。
キーワードは、加速。そして、世界の終わり。
何より、物語の終わり。
「加速していく物語の中で、もっともっと強くなれ、俺の敵。自己研鑽こそがお前らに与えられた義務だと思い知れ。
どこまでも加速し、どこまでも強くなり―――そして最後の最後で殺されて、物語を破綻させ、世界を破滅させろ」
「・・・・・・」
のび太は拳を握り締めた。シュウの絶対的な強さを目の当たりにして萎えかけていた闘志が、恐怖を屈して蘇る。
この男は―――紛れもなく、自分の敵だ。
人を、世界を、物語を、そして運命さえも平然と冒涜する、最悪そのものだ。
こいつだけは―――許してはいけない。ぼく達が止めなければ―――きっとこいつは、世界をどこまでも蹂躪してしまう。
それだけは、許しちゃいけない。
「やってやるさ・・・けど、最後に勝つのはアンタなんかじゃない。ぼくらだ」
「ふん。元気が出たようで何よりだが、どうだかな。他の階段ならともかく、シュウの奴だけは別だぜ?戦闘能力だけで
言えば、奴に敵う存在など皆無だろう。それはお前らが一番よく分かってるだろう?」
「それでも・・・」
ペコが立ち上がり、狐を強く見据える。
「それでも、勝たなければいけない戦いだってある。ぼくはそんなに立派な男じゃない・・・だけど、許してはいけない
ものだけは、分かってるつもりだ。お前達は・・・この世界にいてはいけないんだ!」
「そうだそうだ!お前らなんておれ様のジャイアンパンチで一人ずつぶっ飛ばしてやらあ!」
のび太とペコに勇気付けられ、ジャイアンもいつもの威勢のよさを取り戻す。いや、ジャイアンだけではない。
心身ともに傷つき、膝を抱えていた戦士達は皆立ち上がり、狐に真っ向から向き合う。
目の前の敵から、、どこまでも真っ直ぐに。
狐はそんな彼らを一瞥し、いきなり狐面を外した。意外に若々しく、精悍な顔があらわになる。目つきの悪さがかなり
気になるが、和服と相まって歌舞伎役者のような格好よさがあった。
そして、狐は笑った。無邪気ともいえるほどの、清々しい笑顔で。
のび太達でさえ一瞬嫌悪感を忘れてしまうほどの魅力的な笑顔だった。
それを最後に狐は再び面を被る。また顔は見えなくなった。
そして狐は踵を返して歩き出し―――唐突に足を止めて振り向く。仮面のせいで分からないが、その目はキラを見ている
ようだった。
「くっくっく・・・それにしても、いい仲間が揃ったな。たかだか10歳やそこらでそこまでの仲間を揃えるとは、やはり
お前らは大物だよ。その中でも―――キラ・ヤマト。お前が野比のび太と出会ったことには、俺は因縁を感じずには
いられない」
「・・・なんだって?どういうことなんだ、それは!」
突如名指しにされたキラは、わけが分からないといった調子で怒鳴る。
「ああ、大したことじゃない。ただな―――俺とお前との間にも、とある因果があるんだよ、キラ・ヤマト。
お前がここにいることも、あるいは運命なのかな・・・まあいいさ、俺はこれで帰るぜ」
言うだけ言って、狐は今度こそ歩き去っていく。最後にただ一言だけ残して―――
「それじゃあな、俺の敵―――縁が<合った>以上、嫌が応でもまた会おう」
のび太達の戦いの物語は、まだ始まったばかりだ。
その道は果てしなく険しい。だが―――彼らはそれを乗り越えていくだろう。
共に歩いてくれる仲間がいる限り、のび太達は諦めることはないだろう。
願わくば、戦いの果てにある未来が安らかなものであることを―――。
投下完了。前回は
>>191から。
ブラキンさん、間を空けずの投下、申し訳ありませんでした。
>>269の最終段が間違ってますので、訂正。
目の前の敵から逃げることなく、どこまでも真っ直ぐに。
お手数ですが、これでお願いします、バレさん。ごめんなさい。
次回は番外編を一つ書いて、それから第二部へと移行します。
それでは。
ブラックキングさんお久しぶりです!
正直、もうダメかもと思ってたので復活嬉しいです!
サマサさんは絶好調ですね。いつもお疲れ様です。
でも、お久しぶりのブラキンさんの投稿から少し空けて欲しかったかな?
(気を悪くしないで下さいね。あなたの作品大好きなので)
>超格闘士大戦
勇次郎がなんか妙に紳士っぽいw
個人的に一番好きなキャラのバランが第二部ラストに出たのは嬉しかった。
暗躍するミストバーンは何を企んでいるのか。3部が楽しみです。
>超機神大戦
ムウと読むとセイントを連想してしまうw
いきなりアカデミックな書き出しですな。一部の締めに相応しい。
加速、世界の終わり、少年たちの奮起。いよいよ激動ですな!
ところでお2人の作品タイトル、超格闘士大戦と超機神大戦。似すぎw
>ブラックキング氏
お久しぶりです。遅くてもいいですから、ご自分のペースで完遂して下さい。
実力的にバランがチームリーダーっぽいですね。でも、なんか戦死しそうな気もする。
勇次郎と幽助の奇妙な友情が、第三部にどう影響するか楽しみです。
>サマサ氏
相変わらず絶好調ですね。いつも楽しませてもらってます。
序章が終わり、第一部は確かに物語が加速しましたね。あっという間にやられた
某ヤムチャみたいなのもいたし。このスピード感のまま第二部へ。番外編はギャグかな?
274 :
作者の都合により名無しです:2005/08/30(火) 08:33:11 ID:3WmlSolh0
ブラキンさん復帰おめ。復帰して第3部突入ということで、節目にもなりますね。
これからの盛り上がり期待してます。
勇次郎ちょっとイメージと違う気がするけど、バランが渋いからいいか。
サマサさん、ラストの4行がなんか打ち切り漫画みたいですw
それは冗談として番外編ですか。いつかの神界アフターストーリーみたいな
ほのぼのとしたのがいいな。
ブラキンさん復活してるじゃん。
月1、2回程度でもいいんで、ちょくちょく顔出してくださいな。
応援してます。
それにしてもサマサさん、サナダムシさん、ゲロさんの充実振りはすごいなー
幕間「シュウ」
土見稟が住む世界の時間にして、今から数千年前―――魔界と呼ばれる地で、二つの巨大な姿があった。
異教の神を模したかのようなその威容―――例えるならば白銀の騎士と、黒の戦鬼。
片や神界が作り出した神の申し子―――<機神王>サイバスター。
片や魔界が生み出した魔の落し子―――<機魔王>グランゾン。
だがサイバスターはもはやピクリとも動かない。装甲は剥げ落ち、腕も脚もほとんど千切れかけている無惨な姿だ。
全てをかけた最終決戦―――勝ったのはグランゾンだった。
しかしグランゾンとて無傷ではない。ボディーは焼け爛れ、動力系にも異常が発生している。はっきり言って、勝負
を分けたのはほんの少しの差―――まさしく薄氷一枚の勝利だった。
グランゾンのコクピットから人影が降りてくる。紫の髪を靡かせた、眉目秀麗な男性―――彼こそがグランゾンの
製作者にしてパイロット、シュウ・シラカワだった。
彼はサイバスターに近づき、コクピットを開く。その中にいたのは緑の髪と瞳を持った少年だった。
その身体は血に塗れている。まだ息はしているようだが、もう長くないだろう。シュウは彼に向けて言い放つ。
「ククク・・・残念でしたね、マサキ。あなたの操るサイバスターでさえ、私を止めることなどできなかった。
もはや私を止められる者など存在しない」
その言葉を聞いて、<マサキ>と呼ばれた少年の目が開く。死の寸前の苦痛に顔を歪めながらも、激しい感情を込めて
シュウを睨みつける。
「シュウ・・・いい気に、なるんじゃ、ねえぞ・・・」
マサキは途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「俺は、ダメだった、けど・・・俺の遺志を、継ぐ、誰かが・・・いつか、必ず・・・お前を・・・」
そしてマサキは最後の力を振り絞り、何かの呪文を詠唱する。動かぬ指先を無理に動かし、魔術式を描く。
パアっ・・・とサイバスターが輝き、すぐにその光は消えた。
シュウは訝しげに顔を歪める。何らかの魔法を使ったようだが、特定できない。少なくとも自分に呪いをかける類の
厄介な魔法ではないと判断し、思考から打ち消した。
シュウはもう一度マサキの顔を覗き見る―――もはや息をしていない。生命活動が、完全に停止している。
シュウの胸に何ともいえない感情が去来した。全てをやり終えた達成感と、どうしようもない喪失感―――
彼はマサキをコクピットから降ろす。命が抜け落ちた身体は、あまりにも冷たく、重い。
地面に横たえたマサキの目をそっと閉じさせ、手を組ませる。シュウが大地を操る魔法を詠唱すると、マサキの周囲の
土が盛り上がり、彼の身体を覆い隠していく。その上からシュウは手頃な石を置き、簡単な墓標とした。
それは幾度となく死闘を繰り広げた好敵手に対する、せめてもの餞だった。
そしてシュウは思案する。全てはこれで終わるだろう。そして自分は自由となった時、どうするべきかと。
「ククク・・・自由、か」
生まれながらに強大すぎる魔力と天才的な頭脳を持っていた彼は、常に誰かにその力を利用され続けた。
シュウがその才覚を発揮し始めたとき、神界と魔界はすでに戦争状態だった。そんな折、魔界の首脳陣はシュウに目を
付けた。彼の頭脳と魔力は、劣勢だった魔界にとって、喉から手が出るほどに欲しいものだったのだ。
<戦争の道具>として、彼ほどの逸材はいなかったからだ。
シュウにしてみれば、たまったものではなかった。彼にとっては神界が勝とうが魔界が勝とうが、そんなものはどう
でもいいことだった。
だが当時の彼に、魔界の権力に逆らう術はなかった。否応なしに様々な魔法や兵器の開発に携わった。彼にしてみれば、
それは実に不本意なことだった。
そんな彼が望んでいた、たった一つの物―――それが自由だ。
いつか全てを圧倒する<力>を、自分は手に入れてみせる。自分を利用する者達全てを、焼き尽くす―――
彼はその思いだけを糧に、魔界史上最強の兵器<グランゾン>を造り、自らがそれに乗り込んで戦った。
そして、神界だけでなく―――魔界すらも、彼は完膚なきまでに破壊した。彼の生み出した<機魔王>グランゾンに
よって。グランゾンには、それだけの力があった。
戦争の末期においては、もはや神界と魔界は互いに協力して暴走するグランゾンを止めようとする始末だった。皮肉にも、
破壊の化身グランゾンによって、神界と魔界の歩み寄りが始まったのである。
しかし、グランゾンに対抗しうるたった一つの兵器、<機神王>と称されしサイバスターも、今マサキの死と共に事実上
ただのガラクタと化した。
もはや彼の自由を邪魔する者などこの世にはいない。
―――だが、まだまだ不完全だ。シュウの心に、自分自身が語りかける。
もっと、もっと自由を―――誰にも邪魔されない、完全なる、自由を―――
その時だった。突如として大地が震え、大気が乱れる。そして空中に現われた、全てを飲み込まんとする黒い穴―――
シュウはそれを知識としては知っていた。
次元断層。異世界へと繋がる、次元の落とし穴―――
「・・・ククク」
彼はそれに抗うことなく、飲み込まれていった。もはや魔界にも神界にも興味はない。行き着く先がどこであろうと―――
ここよりは面白いだろう。
後に残されたのは、物言わぬサイバスターとグランゾンのみだった。
シュウは窓から差し込む光に目を細く開けた。そして自分が簡素だが清潔なベッドに寝かされていることに気付く。
「よお―――目が覚めたかい」
声をかけられて誰かがいることに気付き振り向いた。そこにいたのは奇妙な風体の男だった。見たことのない民族衣装
(和服というものだと後に知った)に身を包み、さらに顔は精巧な狐面で隠されている。
「ふむ。あなたが私を助けてくださったようですね。礼を言いますよ、狐さん。ところで、ここはどこですかね?」
「<ところで、ここはどこですかね>ふん。そんなことはどうでもいいことだが説明しとこう。ここは24世紀メガロポリス
さ。・・・ん?お前、<ほんやくコンニャク>も食ってないのに、言葉が分かるのか。次元断層で異世界から来たんだろ?
ならなんで言葉が喋れる」
詰問というよりは単なる好奇心だけでの問いかけのようだった。
「翻訳魔法ですよ。魔法の中では基礎です」
「魔法?お前のいた世界にゃ、魔法なんてモンがあったのか。くっくっく・・・面白いな。お前、面白いな」
面白いと言いながら、狐は実につまらなさそうだ。
「まさか異世界人をこの目で見るとは思わなかった。俺はついてるかもな、お前みたいな<変な奴>と出会えるとは。
まあしばらく俺の元にいろ。お前もこの世界のことを色々知りたいようだしな」
狐は天才科学者にして、希代の大犯罪者だった。とにかく色々やっていたらしいが、別にシュウはそれを咎める気に
ならなかった。自分に迷惑さえかからなければ、勝手にやってればいいというのが彼の感想だ。
そもそも、この規格外の男を法律などで縛ろうというのが間違いのようにすら思えた。
自由な男だ―――シュウは狐を見るたびそう思った。そして彼に強く惹かれている自分に気付くのだ。
自分が求めてやまない自由を所有するこの男に、シュウは憧憬に近い感情を持っていた。
シュウは狐の元でこの世界の知識を得ていった。まるで乾いた砂が水を吸い込むようにあらゆる分野の学問・技術を、
およそ半年足らずで全て極め終わり―――彼はとあるモノの開発に着手した。
自分の前に立ちはだかるあらゆる存在を蹴散らせる超暴力―――彼が欲したのはそれだった。全ては己が自由であるため。
そしてシュウはついに作り出してしまった―――あらゆる存在を凌駕する、究極の機械を。
シュウが持つ魔法技術と、未来科学の結晶―――ネオグランゾン。
「くっくっく・・・こりゃあとんでもないモンを造りやがったな、シュウ。素晴らしい、実に素晴らしい。この俺ですら、
最悪と称されたこの俺ですら、震えがくるぜ」
ネオグランゾンを見た狐はまるで少年のような率直な感想を洩らした。
「ククク・・・あなたのような男からそんな言葉を聞けただけで、これを造ったかいがあるというものです」
シュウは余裕の態度で応じる。と―――狐はいつになく真面目な調子できり出した。
「シュウ、お前―――俺の元で働けよ」
「・・・なんですって?」
ピクリ、とシュウの眉が吊り上る。狐はそれに気付きながらも、堂々と続ける。
「俺がここ最近、<変な連中>を集めてるのは知ってるな?」
「ええ、知ってますとも。というより、それを集めるための次元間移動装置を発明したのは私ですよ。そういえば、
何故そんな連中を集めているのかさえ説明してもらいませんでしたね」
「ふん、俺は色々やらかしすぎてね―――ロクに身動きも取れない不自由な身の上なのさ。だからこそ俺には必要なんだ。
俺の目的のため、手足となって働いてくれる存在が、な。それも、とびっきりの<変な奴>であることが望ましい」
「目的?それも聞いていませんよ」
「<それも聞いていませんよ>ふん。結構長い付き合いだってのに、今まで聞いてこなかったお前が悪い」
恐ろしく自己中心的な思考に、シュウは怒るよりも逆に思わず笑ってしまいそうになった。そうだ―――
狐はこういう男だ。
「まあ話しとくか。シュウ、実は俺はな、世界を終わらそうと思ってるんだ」
「世界を?何故?」
「俺はこの世界が大好きだ。この面白い世界の終わりがどうなっているのか―――どうしても知りたいのさ。
そのために<変な奴ら>を集めている、ただ、もう十二人もいるんでな。あと一人もいれば十分だと思っている。
名前は・・・そうだな。<十三階段>とでもするか」
「・・・十三階段」
全ての終わりへと通じる忌まわしき階段―――<十三階段>。
「そしてお前には―――その最後を彩る階段になってもらいたい」
「私に―――あなたの手足になれ、と?」
「お前が誰かに忠誠を誓うようなタマじゃないのは分かってる。誰かの手足になるなど真っ平だと思っていること
だろう。それならそれでもいい。その上で俺はこう言っているのさ―――俺とともに来い、とな」
「ふん・・・私が求めるのはただ一つ―――完全なる自由だけですよ。私を利用するものは、誰であろうとも許さない。
それはあなたも分かっているはず。その上で、あなたに従えと?ククク・・・面白い冗談ですね」
「冗談?冗談なんかでお前を誘うものか。お前ほどの<変な奴>―――見逃すには、余りにも惜しい。お前は俺の元に
いるべきだ。俺の元でこそ、お前の性質は活かされるべきだ」
おぞましいほどの傲慢さ―――それは、シュウの鉄の如き心すらも揺さぶる。そう―――シュウは揺さぶられている。
こんな男は本来、シュウが最も嫌悪する対象であるというのに―――
この男についていくのも悪くないと、本気でそう思った。
「さあ。来るか来ないか、お前で選べよ、シュウ・シラカワ」
狐は誘う―――笑いながら、誘う。
「俺と一緒に来れば―――気持ちいいぜ」
シュウは結局その誘いに乗り―――十三階段に入った。人に利用されることを何より嫌う彼にとって、それは明らかに
自分の主義とは正反対の決断だった。
それを曲げてでも十三階段に入ったのは、単純な興味であった。
世界の終わりになどではない。興味があったのはただ、狐の行く末のみ。このまま狐と縁を切ってしまうには、
狐は余りにも面白すぎたのだ。
何よりも―――狐は、自由だった。狐自身は自分は不自由だ、などとのたまっているが、シュウから見れば彼ほど
自由な存在もない。
何がどうなろうとも、誰がどうしようとも、結局は一緒―――そう平然と言い切れるこの男の姿に、シュウは自分が
追い求めてやまない、完全なる自由を見たのだ。
シュウは、狐とともに行くことを決めた。それは彼にとって初めての、自分の自由に基づき為した決定だった。
「ですが、覚悟しておきなさい、狐」
シュウは挑発的な態度で言い放つ。
「気に入らないことがあれば―――私はあなたを殺しますよ」
「くっくっく―――それもまたいいだろう。お前に殺されるようなら、運命は俺を選ばなかったというだけだ。
好きにすればいいさ、シュウ」
最悪の狐はただ笑うだけ―――その姿は、やはりどこまでも自由に見えた。
投下完了。前回は
>>270から。
番外編というよりは過去編、みたいな話になりました。
次回より第二部<機神覚醒編>スタート。
かねてからの通知どおり、インフレバトルになります。
スパロボとか種を知ってる人には設定の違いに違和感バリバリかもしれませんが、所詮アホが書いた文章ですので、
できたら気にしないで下さい。
282 :
作者の都合により名無しです:2005/08/30(火) 18:23:44 ID:nQXuS4/s0
サマサさんお疲れ様です。頑張りますね!
サイバスターとグランゾンは対の存在ゆえに決して離れることなく
対立していくのか。
しかし、サマサさんの番外編にしては雰囲気が重い。
ほのぼのとしたものを予想していた。
しかし24世紀って、ドラえもん世界より未来か。
「おお、過去ならちゃんとしまってあるとも。だが、どうやら鍵は無くしてしまったようだ」
――『騎士が剣を抜いたのは。』より
原題 L'epee du Dernier Chevalier
歩いていた。
犬だ。
『私』だ。
照りつける太陽の下、一匹の犬が歩いていた。
インドネシア、ジャワ島。
数度北には赤道が通っているにもかかわらず、さほどの暑さは感じなかった。
雲ひとつ無い真昼のくせに陽光は薄暗く、色合いも寒色に近い。
歪んだ空はすでに20年近く続いてる。
太陽が昔話のものになるのも、そう遠い話ではないだろう。
世界は狂いつづけ、しかし、人間は抗おうとはしなかった。
抜け落ちる歯車にしては、光は大きすぎた。
文字通り光明は無い。どうしようもなかった。
太陽を変えてしまった相手に、誰が挑めるというのか。
やむを得ずの妥協。
人類の選択だった。歴史と未来の放棄にしては安っぽい言い訳だ。
現在、人間は、必要最低限の供給によって生かされている。
半ば人質。全人類が、である。まったく途方も無い。
大部分の人間は現状を受け入れ、流れてゆくばかりである。
太陽とともに世界が狂った。世界とともに、人間が狂い始めている。
青黒い光線は血肉を侵蝕し、病みが塗りこめられ、遺伝子プールは腐れてゆく。
確実に歪んだ進化は始まっている。
人類を救済しようなどと宗教家めいた感情はないが、私には義務があった。
義務を果たす約束の日も近づいていた。
急がなくてはいけなかった。
時折耳に引っかかる、あの声はなんだろうか。
猛禽の類が金切る鳴き声にも似ている。
そんな微かなことが気に障るほど、私は退屈していた。
ジョグジャカルタに入って丸一日が経過していた。
中型犬の足ではいささか時間がかかる。
すでに強制移民が行われたのか、辺りに人の気配も無かったのだ。人の形をしたものも無い。
紫色になった肉片があちらこちらに散らばっているだけだった。
周りの風景も決して面白いものではなかった。
独自の文化を残した古都と聞いたが、なんのことはない、中途半端な発展をした都市でしかなかった。
生活に支障の無い程度に揃った店ぞろい。手ごろな材質で平素に固められた歩道。
適度な荒廃が加わっていたものの、たいした変化にはなるまい。
観光客向けのものだったとはいえ、著者によって好き勝手綴られた文献では役に立たなかった。
上辺のイメージのみが書き綴られ、本質には触れていなかった。
所詮。
犬がフンと鼻を鳴らした。
侮蔑の意だけではなかった。
気付いたのだった。
そういえば、金切り声はもう聞こえなくなっていた。
「犬だ、犬っころだぜええ」
「犬かああ。犬かよおお」
「うっとおしいいい、喋り方するんじゃあねええ、おまえらああ」
3匹のゾンビが角から現れた。
『私』という餌を見つけ、奴らは歩み寄ってきていた。
獲物の対処は心得ているようで、決して急がず、舐るようにじっくりと距離を詰めている。
程度は低いが会話出来るあたり、2世もののゾンビである。
自分を視覚されるという、動物にしては、かなりの近距離にまで接近を許してしまった。
考え事をしていて気付かなかったのか、強烈過ぎる悪臭のため、かえって鼻が利かなくなっていたのか、
あるいはこの犬自体が鈍いだけかもしれない。
「犬だったらよおお、食っちまおうぜええ!」
「わかってんよおおおお」
「静かにしろおおおこのカボチャの糞どもおおお」
『私』は眼前の畜生どもに低く唸った。
まだ奴らには私が見えていない。
粘着質の唾液を口から垂らしながら、嫌な細さに眼を歪めながら、ゆっくりと『私』に近寄ってきた。
奴らのうち一体は、先ほどから口を動かし続けていた。何かを喰らっているのだ。
見れば、そいつの右手には、煤けた小さな足が握られていた。
人の脛の部分である。骨と皮しかないような細い小さな足だった。
死後数日が経っているといわれても素直にうなずける。
そのくせ切断面から覗く肉ははっとするほど赤かった。懐かしい赤さだ。
おそらくは先ほどの金切り声の主である。
人間の子供だろう。
それならばいい。そう思う私がいた。
3匹のゾンビは、ここを餌場としているらしい。彼も此処で待ち伏せをされたのだろう。
ゾンビは、骨ばった足を一気に口へ放り込んだ。思ったよりも軽い音を立てながら、足は噛み砕かれ飲み込まれた。
奴らは犬の瞳を流れる黒い液体に気付きはしなかった。
『私』はゾンビが近づくがまま、動こうとしなかったので、もう、奴らが手を伸ばせば『私』に触れれる距離だ。
そこまで近づかせて『私』は思い出した。
『私』は、ポリスと呼ばれていた。
雑種犬である。
日本のペットショップで生まれて間も無く、小さな一家に売られていった。
標準以上の世話はしてもらっていた。その点幸せだったといっていい。
ほんの一年前までの話だ。
一年前に日本で行われた強制移民で、一家とともにジャワ島へ連れてこられた。
ジャワ島で降ろされたのは一次不適格者だけである。彼らは知りえなかっただろうが、私は移民の仕組みを熟知している。
降ろされた人間は、そのまま港に放置された。
先住民のゾンビに襲われ、皆散り散りになった。
そのとき『私』のそばにいた飼主は3人だった。
初老の夫婦に娘が一人。
母親は常にすがるように夫にくっ付いていたが、不安なのは夫も同じことだった。
『私』は娘にいつも抱きかかえられていた。
行く当てももちろん無く、たださ迷っていた『私』たちは、いつのまにかゾンビの餌場に紛れ込んでいたのだ。
崩れた人間のようなものが3つ。融けるような悪臭。べたついた足音。
不意にそれらが現れた。
そして、不意に父親の首が飛んだ。妻が血と陽光とで青黒く染まった
『私』を抱く腕に力がかかる。
誰か声を上げるまもなく、初老の女も殺された。
次が『私』たちだった。
女が震えているのがよくわかった。女も逃げようとしなかった。
恐怖で動けないのか、覚悟を決めたのか。
彼女の心境はなんにしろ、『私』は思った。
この腕を放せ。
もがくだけの『私』をゾンビの腕が薙いだ。
女の腕ごと『私』は吹っ飛ばされていた。その際、腹をえぐられた。
それでも『私』はまだ生きていた。
臓物をこぼしながら、主人たちを尻目に『私』は逃げだした。
三匹分の餌が手に入ったので満足したのだろう、ゾンビどもは『私』を追おうとはしなかった。
逃げおおせることは出来たが、それでも、腹の傷は致命傷だった。
瓦礫の陰に入ったところで力尽きて倒れこんだ。コンクリートに触れた部分から、急速に熱が逃げてゆく。
地面に吸い取られるような気分だった。その感覚もじきにもぎ取られた。
そうして『私』は死んだ。
悲しかった。
生きたかった。
脳髄に残ったわずかな範囲の記憶が蘇る。
死の直前に見、嗅ぎ、聴いたことだ。
そして今、同じ場景、同じ臭い、同じ音が目の前に有る。
『私』の死に関わったのがこいつらだと、私に教えている。
思い出しながらも、『私』の心には怒りというものが浮かばなかった。
幸せな生活と飼主を壊したゾンビどもに、何の憎しみも抱かなかった。
ただ悲しかった。
『私』の心はそれだけだった。
だが、私は違った。
手を伸ばしたゾンビがポリスに触れる前に、彼の口から私は飛び出した。
黒い矢となった私は、1匹のゾンビの眉間を貫いた。
頭骨の中を駆け廻り、抉り、後頭部へ貫通する。
残ったゾンビの反応は実に鈍いものだった。
唖然とする2匹目の耳へ飛び込む。
同様に脳を破壊し、逆の耳から最後の1匹の頭部へ飛び移る。
その3匹目の脳髄で、私は見た。
『私』――このゾンビが、ポリスに手をかける映像だった。
女に抱かれたポリスを薙ぐ。
手についた血を舐め、わずかに奪った肉片に狂おしそうにしゃぶりついた。
永遠とも続く咀嚼音。
あああっ。
私が、『私』の中で炸裂した。
『私』の中で両腕を造りだす。
思い切りに腕を伸ばし、力任せに体を引きちぎった。
ゾンビの頭部から腹にかけてまでが四散し、そうして私が現れた。
かたちとしては、今の私は人間に近い。このかたちなら何かと都合がいいのだ。
人の骨格に必要最低限の量の筋肉、それも青黒い肉をつければ私に近いプロポーションになるだろう。
頭部だけはまるで似通っていない。流線型で、その中腹に2つの目が、下部には小さな口が付いている。
流線型は素晴らしい。
人と大差ない造形にも出来るのだが、私はあえてそうしなかった。
私は人間ではないのだ。
人というにはグロテスクで、動物と呼ぶには未知なものだった。
この姿が私であり、私の名であり、私の戒めでもある。
自己を失うことは恐ろしいことだ。
だから私は身体に刻み込んだ。
元々は、単なる沼地の微生物である。微生物たちが才能を分け与えられ、私に進化した。
新生物である。造られた存在である。
そして、私の創造主、エンリコ・プッチ神父はこう名付けた。
フー・ファイターズ。複数形である。
一生物、フー・ファイターズだ。
1(の多分前半)
ね。付け忘れた。
連投規制ってないの?
ユル久しぶり。
今度はフー・ファイターズか、これも今まで同様繋がってるんだよな
第二十三話「ずれ」
ブルマより盗みし理論より、地下研究室に築き上げられたタイムマシン。
セルの無礼に怒ったゲロは、一心不乱にタイムマシンを操作する。いうまでもなく、セ
ルを打ち倒す刺客を呼び出すためだ。
「もうエネルギーが残り少ない。呼ぶことが出来るのは、せいぜいあと一人だろう。じゃ
が、一人だけで充分じゃ。とっておきの戦士を紹介しよう……」
マシン全体に特殊なエネルギーが充満する。各計器がめまぐるしく回転し、戦士召喚へ
のカウントダウンが始まる。
「セルに相応しい相手は、やはりセルしかあるまい。出でよ、セルッ!」
ゲロの声に呼応するように、タイムマシンが不気味に鳴動を起こす。
しかし、セルは平静を保ったまま。というより、同一人物が対戦者であることに喜びす
ら感じているようだ。
「上空での戦いは、どれも私の部下たちが一歩上回っている。何故だか分かるか、ドクタ
ー・ゲロ。我々にはクリスタル探しで身につけた絆がある。能力が互角ならば、心こそが
勝敗を決するという何よりの証拠だ」
ここぞと16号たちを部下扱いし、しかもゲロを呼び捨てにするセル。今までのセルと
は、まるで漂わせる気配が違う。
「うわぁ、皆が戦ってるのををいいことに……。でも、珍しくパパが格好良い。これなら
勝てるかも……」
呆れつつも、初めて父を認めるセルジュニア。が、ゲロはそんなセルを嘲笑し出した。
「ハッハッハッハッハ……バカめが! 能力が互角などと、勝手なことをほざかれては困
るな……。これより呼び寄せるセルは──完全体だッ!」
一瞬、全身が凍りつくセル。
「……え、今なんとおっしゃられました?」
「これから現れるセルは、完全体だといったのだ。おまえのような、出来損ないとは違っ
てな……」
やはり、空耳ではなかった。セルはどこか欠如した笑みを浮かべながら、体温が加速的
に低下していくような感触を覚えていた。
立ち竦むセルをよそに、セルジュニアが動く。
即座にエネルギー弾を練り上げ、タイムマシンを狙って放り込む。光は寸分違わず命中
し、マシンを粉々に破壊した。煙と熱風が四方に飛び散る。
「ふん、これで防いだはずだよ」
「脅かしやがって、失禁ならぬ失エキスをしてしまったわ。しかし、よくやった」
ところが、ゲロはなおも笑っていた。すなわち、これは彼の企みまでは破壊出来なかっ
たことを意味する。
「ふっふっふ、惜しかったな。もう一歩早ければ、阻止出来ていたかもしれん。じゃが、
どうやらタイムマシンもぎりぎりで役目を終えていたようだ……」
立ち込める煙に包まれた──強大にして邪悪な気。
永久に交わるはずがない歴史から、完成された怪物が降臨する。歯車が狂ったゆえに進
歩した科学力と、先人たちの細胞によって組み立てられた、全生物を超越した存在。
完全体セル。
背格好はせいぜい二メートル前後、全体的なフォルムはセルジュニアをそのまま成長さ
せたという印象。体色は第一形態から不変で、やはりグリーン。また尾であるが、もう進
化する必要はないと主張するように、すっかり退化してしまっている。
むろん、強さは計り知れない。彼が立つ方向からは、絶えず突風が吹き込む。
「このセルは、クリスタルを燃料とするおまえと異なり、17号と18号を吸収して完全
体になったそうじゃ。どうやら私ですら、平行世界ではアイディアが変わるらしいな」
完全体といえど、同じ手段で完全体になったわけではない。つまり、招かれた完全体セ
ルは、決して現代版セルの延長線上に立つ存在ではない。もっとも、それを差し引いても、
手強い相手には変わりないが。
「すでにレンジに入っていた完成品と、洗ってもいない食材が対決するようなものか……。
って、バランス悪すぎだろッ! ちゃんと第一形態を出せやァ!」
これから始まる戦いを料理対決に例え、勝手に絶望して泣き喚くセル。しかし、もはや
引き返せない。生き残るのは、セル父子か、それとも完全体セルか。
完全体セルが現れたとほぼ同時刻──上空でも動きが起こった。
逆上した相似18号が、18号の髪をわし掴みにする。
「よくもやってくれたね! こうなりゃ、あんたの髪を根こそぎむしり取ってやるよ!」
歴然とした戦術の差。じわじわとであるが、別次元タッグが敗北する時は刻々と近づい
ていた。そこで彼女は、女性の命ともいわれる髪の毛を傷つけることにより、せめてもの
自己満足に浸ろうとしていたのだ。
「くっそ、ヤケを起こしやがったな! まともに戦え!」
「ヒャハハハハハッ! いいぞ、やっちまえ! 俺たちに逆らった報いだ!」
17号も必死に阻止せんとするが、相似17号に妨害されて近づけない。
だが、髪を掴まれた18号に迷いはなかった。うっすらと、ただ不敵に告げる。
「やってごらんよ。別に死ぬわけじゃないしね。ただし、引き抜かれると同時に、私の右
手はあんたの首を貫いてるよ」
「ぐぅっ……!」
とまどう相似18号。もし、髪を強奪したならば、当然そこで生じる隙を突かれる。つ
まり殺される。自己満足に浸れるのは、ほんの束の間。
透いた美しき碧眼による、睨み合いが始まる。一秒、二秒、三秒、四秒──五秒経過。
「うっ……!」
迫力に呑まれた相似18号が、ふと視線を逸らした。無防備──絶好のチャンス。
──反撃は、一撃でこと足りた。
髪を掴まれた状態から、貫き手。指先は頚動脈を断裂し、頚骨まで達している。
「ガハッ……あり、えない……よ……!」
首から噴流する血液に対処する間もなく、相似18号は力なく墜落した。絶命。
反射的に血を昇らせた相似17号が、18号に猛突する。
「よ、よくもッ! 俺とともに人間を絶滅させるはずだった18号を、よくもォッ!」
しかし、彼は忘れていた。自分もまた、同姓同名に狙われていることを。
背後から迫る特大のエネルギー波。これをまともに背中に受けた相似17号は、下半身
だけを残して現世から消滅した。決着を導いた左手を下ろし、17号が空しく呟く。
「とんでもなかったが、哀れな二人だったな……。いや、俺や18号がああなっていた可
能性もあったのか……」
ほんの少し歴史がずれるだけで、これほどまでに明暗が分かれるものなのか。どうにも
やり切れぬ感情が、勝利者であるはずの姉弟をぬめりと包み込んだ。
判定決着とはいえ、いい試合でした>PRIDE
夏も終わり近いですが、頑張ります。
298 :
ふら〜り:2005/08/30(火) 22:31:56 ID:1A0wWSgz0
>>サナダムシさん
>>262さん、うまいっ。いつか番外編で、その二人が語り合ったら楽しそうですね。で今回
は、仲間たちの優勢をよそにまたまた墓穴掘りでピンチなセル。まぁ彼のことだから灰に
なっても塵になっても……でも今度は、その点でも上回っているであろう相手。どうする?
>>ブラックキングさん
おひさしぶりですっ! バキスレでは(私のも含めて)時々見られる「おとなしい勇次郎」
ですが、随分幽助と通じ合ってますね。一方、再会時には気軽に楽しそうに殺し合いそう
な雰囲気も感じましたが。で、次は一輝対ミストの様子。こちらも楽しみなカードです。
>>サマサさん
いや、その、自由っつーかなんつーか……と頭抱えてしまいました。掴み所なき独特哲学。
何だかよく解らない、けど何だか魅力的。自他の命を軽く考え、滅びの道を楽しむ辺りは、
「ときめくぜ」のアバレキラーを彷彿と。この思想が、戦いの中で変化していく……か?
>>ユルさん
今回、お二人目のおひさしぶりですっ! 相変わらず詩的な文章で、おどろおどろしい
描写がいい味です。脳髄から映像を見る、なんて流血とか激痛とかの次元を超えてますよ。
相対してるの、犬とゾンビですし。故に読んで想像するのが難しくも楽しいわけですが。
サマサさん、番外編お疲れ様です。
狐の不気味さがにじみ出ております。番外編というより、「幕間」ですね正に。
この調子で頑張ってもらえると嬉しいなー。
ユル氏、すっごいお久しぶりです。
復活嬉しいですよ。しかも独特の「ユル節」みたいなのが充実してますね。
しかし、不気味な(ほめ言葉です)独白の物語でしたね。
サナダムシさん、ここの所の連投お疲れ様ですー
現代2人組から見ると、鏡の向こう側の自分をみているようなもんですかね。
完全体セルとヘタレセルでは、ミルコと永田さんくらいの差があるw
300 :
作者の都合により名無しです:2005/08/30(火) 23:38:10 ID:nQXuS4/s0
ユルさんまで復活した!めでたい。
しかし、SSは一人称が効果的に響くダークな世界ですね。
まるで地中に引きずり込まれるような怖い感覚の作品です。
サナダムシさん、ついに主役も(絶望的な)決戦に突入ですね。
17号たちが勝ったから、セルが吸収して完全体と対決もあるのかな?
ユル氏も復活したのか。頼もしい。
ユル氏独特の泥沼を漂うような筆致を楽しませてもらったよ
でも、もう少し顔を出してくれな。
302 :
作者の都合により名無しです:2005/08/31(水) 19:38:31 ID:wr/7c7sF0
サナダムシさんとサマサさんは相変わらず絶好調そうでなによりだ。
ユル氏が帰ってきたのはうれしいな。
ところでユル氏いつも話しの前にかっこいい言葉を引用するが
どこから引っ張ってくるんだろう。
第二十四話「ウォームアップ」
ヘルズフラッシュ。エネルギー炉で生成された、局地的破壊活動に特化した高密度エネ
ルギー砲。もし拡散していれば、地球をも滅ぼしかねぬ超威力。
今、これほどの猛威が幾度も幾度もぶつかり合っているのだ。少しずつ少しずつ、お互
いに装甲を削られていく。
「む、森に被害が出始めたな……」
「くそぉ、破壊してやるッ! 破壊してやるッ! 破壊してやるッ!」
自然を心配する16号、対して敵を破壊出来ずに憤慨する相似16号。──考えること
は逆。だが、次に移すべき行動は一致していた。
「これ以上長引けば、取り返しのつかぬ被害を及ぼす。次で終わらせてもらうぞ!」
「迅速な破壊こそが我が使命ッ! 次で決めてやるッ!」
守りたい16号。
壊したい16号。
あと一撃。あと一撃で相手を打ち倒さねば、自らの誇りが崩れ去る。守護者としてのプ
ライド、破壊者としてのプライド。堅持すべき自己領域。
ところが突如、相似16号は腕を地上へと向けた。
「美しい森林が広がっているな……。いっそ全てを焼き尽くしたら、さぞかし楽しかろう
なぁ……」
挑発か、はたまた本気か。分かっているのは、彼には実現可能だということ。
「よせッ! 相手は俺のはずだろう!」
弱みを突かれ、16号に生ずる精神的な空白。トラップ。
「フハハハハ、喰らえッ!」
相似16号から、高速で両拳が発射される。拳はそれぞれ顔と腹に命中。ダメージは少
ないが、むろんこれはあくまでも布石。よろめく16号に、ありったけの破壊本能が詰め
込まれたヘルズフラッシュが放たれようとしている。万事休す。
「ここまでだッ! 制約なき破壊行為はこの世で最強なのだッ! つまり、私こそが宇宙
最強なのだッ!」
ヘルズフラッシュ発射──寸前、周辺に広がる森から、一斉に何者かが飛び出してきた。
「なっ……! 鳥だとォ……ッ?!」
種類問わず、沢山の鳥たちが飛び掛かる。ターゲットは、今まさにヘルズフラッシュを
撃つところだった相似16号。まるで、16号の自然を愛する心が伝わったかのように。
「くうっ! うっとうしいッ!」
羽ばたく鳥に気を散らされ、発射タイミングを逃す相似16号。
今しかない──16号が眼光に鋭敏さを取り戻す。
「だああぁぁぁッ!」
一気に間合いを詰める16号。鳥たちに囲まれている相似16号を孤立させるため、豪
快なアッパーで殴り飛ばす。
「うごォッ!」
「これで終わりだ……ヘルズフラッシュ!」
──大気をも切り裂く高熱。
もはや、抗う術はなし。地獄を冠せられた閃光は呪われた破壊者を包み込み、欠片一つ
すら残さぬほどに消滅させた。
複雑な気分を噛み締めながら、上空に別れを告げる16号。
「さらばだ」
すると、戦いが終わったことを知ってか、鳥たちが16号に集ってくる。
「ありがとう、おまえたち。……助かったよ」
彼らの加勢がなければ、敗北していたのは自分だったかもしれない。16号は心から鳥
たちに、また大いなる自然に感謝した。
こうして、現代勢は全て勝利を収めた。あとはセルとセルジュニアのみ。
しかし、まだ戦いは始まっていなかった。完全体セルは出現するなり、何故か入念にス
トレッチを行っているのだ。むろん、本気で体を温めようとしているのでなく、余裕を表
すパフォーマンスに過ぎない。
「よく分からないが……。どうやら、私は別次元に来てしまったようだな」
ようやく、完全体セルが口を開く。いかにも紳士的な、落ちついた口調。
「明後日にはセルゲームだったのだが、どうせ孫悟空以外には私を楽しませることすら出
来まい。ここで、遊んでいくのも悪くはないか」
完全体セルが視線を移す、セルへと。
「ふっふっふ、かつての私にそっくりだな。さァ……かかって来い」
ついに、決戦開始。が、完全体セルはノーガード。腕を組むだけで、構えすら取ってい
ない。まずは格下から打ち込んでこい、とセルたちを誘っているのだ。
「ふん、とことんナメやがって……」
挑発に乗り、完全体でないセルも歩き出す。一歩ずつ、距離が縮まっていく。
「まずは、軽くやってやるよ」
と、同時にセルがハイキック。しかも、本気で。首筋に足の甲がまるでお手本のように
叩き込まれた。先手必勝狙い、奇襲戦法。
「悪く思うなよ、これが実戦ってやつだ」
以前から温存していた、とっておきの決め台詞を吐くセル。が、セルにはまるで効いた
様子がない。腕を組んだ状態から、一ミリたりとも動いていないのだ。
「バカな……。私のハイキックをまともに喰らって……!」
すると、後ろから声援が飛んできた。セルジュニアだ。
「大丈夫だよ、パパ! 充分、予想の範囲内だよ!」
「そ、そう……?」
さて、今度は完全体セルの攻撃ターン。彼もまた、力加減を予告する。
「では、私も軽くやってやろう。安心しろ、私は嘘などつかんからな……」
完全体から放たれる、単純なチョップ。一割も力を出していない──が、セルにとって
は重すぎる一撃であった。息子が立つ十数メートル後方まで、まるで紙切れのように吹き
飛ばされてしまう。
「バカな……。何故、この私がたった一発のチョップでこれほどのダメージを……!」
「大丈夫だよ、パパ! これも充分、予想の範囲内だよ!」
「そ、そう……?」
深夜に失礼しました。
308 :
作者の都合により名無しです:2005/09/01(木) 10:21:34 ID:xdZ0+L1BO
何故毎日のように書けるのですか?
309 :
作者の都合により名無しです:2005/09/01(木) 12:06:01 ID:mAt23mJ30
16号は彼らしい立派な勝ち方だけど、あまりにもレベル差の違うヘタレセルに笑った。
あの悟空と戦った完全体セルなら全員総がかりでも勝てませんね・・
310 :
魔女 童と童:2005/09/01(木) 14:44:45 ID:ow4L8Hvx0
>>82より続き。
『蔵ポッコ』がこの蔵に出るようになった時期はよく分からないそうだが、少なくとも何代も前
から居着いていたことは確からしい。
彼(彼女?)を見る事の出来るのは子供の頃だけだそうで、お婆ちゃんも微かに気配は感
じられるものの、見えてはいないという。
僕の家は古くからこの地方の有力家だったらしい。そして不思議な事に、家を継ぐ長男に
しか見る事が出来なかったという。お婆ちゃんが見えたと言った時、周りの大人は皆不可解
だという顔をしていたそうだ。案の定、お婆ちゃんの代で男は生まれなかった――というオチ
(お爺ちゃんは婿だった)。
「――なんで、家を継ぐ人にしか見えないの?」
僕は、久し振りに口を開いた――と言っても、ほんの数分振りだけれど――
「蔵ポッコは知らせてくれんのよ、家がいい塩梅に行くかどうかをよ」
「いい塩梅って……家がこのままいい状態を保っていられるのかということ?」
「そうだァ」
つまりそれって――僕が、この家を継ぐということ?
「嫌だ!」
311 :
魔女 童と童:2005/09/01(木) 14:45:33 ID:ow4L8Hvx0
僕は思わず口に出して言ってしまっていた。でも、嫌なのだ。どうしても嫌だ!
もう僕は現時点でこんなにもここの暮らしにウンザリしてるっていうのにどうして大人になっ
てもここに留まっていなくちゃならないんだ! 僕は出て行く。遠くの大学に行って一人暮らし
をするんだ。そしてもう二度とここには戻ってこない。そうさ、僕には街が合っているんだ。こ
んなトコで閉じた一生送るのは絶対にゴメンだ! とにかく――僕はこの家を絶対に絶対に
絶対に継がない!
僕がそう強く心に誓った次の瞬間、外から僕の中に侵入して来ようとする『何か』を感じた。
――それは、ゆるなさい。
なんだよ、お前!?
――おまえ、ここにのこる。
いや、違う――
――おまえはここで大きくなり。
たくさんいる――お前達は!?
――よめをもらい、こをなす。
お前達は――お婆ちゃん?
パン、と鋭い音がした。『何か』達はどこかに消えた。
お婆ちゃんだった。お婆ちゃんが手を叩いたのだ。追い払ってくれたのか。
僕はへたりと腰を落とした。
「なんだろう、一杯いた……あれは、たくさんの子供の声――」
「おめえが聞いたのは、ご先祖様らの声だべ」
「お婆ちゃんもいた気がする、小さい女の子だった」
「おれもいたべな」
あれらは、ご先祖様達の思念? あれか。あれが、跡継ぎがこの家に縛り付けられる原因なのか。
お婆ちゃんも、見たのだろうか。
そして――あれを僕に見せたのは、ポッコ?
ポッコは、心に入って来られる。
ポッコ、出てこいよ。
いるんだろ?
312 :
魔女 童と童:2005/09/01(木) 14:46:05 ID:ow4L8Hvx0
怒らないからさ。
ほら。
――おこらない?
おこらない。
――ポッコ、さみしい。
寂しい?
――いつも、ちょっとしかあそべなくてさみしい。
そうか、そうだよな。
――でも、ぜんぜんあそべなくなるのはもっとさみしい。
家が途絶えるのが怖いんだな。
――でていくって、ゆうし。
僕は、ここが嫌なんだ。
――さみしい。
でもね。
――なに。
これから、僕が君を見られなくなるまでに、ここが好きになれたら――
――
――僕は、ここに残ってもいいよ――
――ほんと。
ほんと。
――すきに、させる。
出来るかな?
――させる!
313 :
魔女 童と童:2005/09/01(木) 14:46:34 ID:ow4L8Hvx0
「――お婆ちゃん」
「なんだァ」
「ポッコってさ、かわいいよね」
「めんこい子だ」
今思ったが、ポッコの事は僕とお婆ちゃんの数少ない共通認識といえるかもしれない。
「おめ、知ってっか。蔵ポッコは『座敷童』とも言うんだぞ」
「――そうなんだ」
座敷童、か――そうなのか。
でも僕は『蔵ポッコ』のほうが好きだな。
さて――ポッコは、これから僕に何を見せてくれるだろう。
314 :
魔女 境:2005/09/01(木) 14:49:43 ID:ow4L8Hvx0
隣の布団で寝ている筈の姉ちゃんがヘンだ――
弟が異変に気付いたのは、夜中の十二時を少し過ぎた辺りだった。
尿意で目が覚め、トイレから帰ってきてさてまた眠りにつこう、という時だった。
ふと、隣で眠る姉を見た弟は、その時初めて異変に気付いたのだ。
そしてギクリとした。呼吸をしていなかったのだから、当然だ。
弟は姉の布団を捲り、胸に耳を当てた。心臓の鼓動も感じられなかった。
というか、体も冷たい。
十一歳の少年でも、これが一体何を意味しているのかは分かる。
姉ちゃんが死んでる――!!
「うわあああああああああああん!!」
『姉の死』を認識した弟に取れる行動は一つだけだった。
「うわあああああああああああんお父さんーお母さーん!」
弟は部屋の襖をぶち破り、父と母が眠る寝室へと猛スピードで駆けていった。
315 :
魔女 境:2005/09/01(木) 15:02:13 ID:ow4L8Hvx0
――あのう。
――君は誰?
――もう少し……あなた生きられるみたいなんですけど?
――何を言っているの? ここは死んだ人の来るところ。つまり僕は死んでいるし、お嬢さん、君も同じ
なんだよ。
――あたし、死んでません。最近、眠ってるとたまにですけど、ここに来ちゃうようになっちゃったんです。
――嘘だね。
――嘘じゃないです。
――なら――俺を、元の世界に、此岸に、帰してくれ。
――そんなこと……。
――君が五体満足な状態でここにいるイレギュラーな者だとしたら、そうした能力を持ってるのが筋っ
てもんじゃないのか?
――漫画の読みすぎです、そんなの。あたし、ただの十三歳の中学一年生です。あたしは分かるだけ
です。あなたはまだ生きられます。
――だから僕は――
――見えないんですか?
――?
――自分の胸が。
――!
――あなたの胸が、心臓が――自分で感じないんですか?――そんなに熱く眩く、光と熱を発してる
じゃないですか。あたしもなんだか熱いです。汗掻いちゃう位に。
――なんで、今まで分からなかったんだろう。
――多分、思い込んでたからじゃないですか。『自分は死んだ。もう終わり』って自分で思い込んじゃ
ってて何も見えなく感じなくなっちゃってたんです。多分ですけど。
――僕は、生きられる……
――なんだか、外がうるさいな。
――?
――なんでもないです。じゃああたし、行きますね。
――あ、君――名前は?
――樹です。佐藤樹。
316 :
魔女 境:2005/09/01(木) 15:03:22 ID:ow4L8Hvx0
すう。
「ほらお母さんお父さん! お姉ちゃんが死んじゃったー! 速く速く救急車だか警察だか消防車だか
なんだか分かんないけど速く速くなんか呼ばなくちゃ!!」
「この時が来たのね。月日が経つのは早いわあ。老けるわけだ」
「遺伝しちゃったか……」
訳も分からず騒ぐ幼い弟。それを無視して、悟ったような表情で話し合う両親。
「もうなにちんたら喋ってんのー! もういい! 僕が電話して呼んで――」
「ふわぁぁぁ――」
弟は、体を硬直させ、出来の悪い人形のようにぎこちない動きで、姉の方を向いた。
「――うっさい、馬鹿」
「うぎゃああああああああああああああああああぁぁぁ――!!!」
可哀想に狂ってしまった弟は、家を出て町内を三時間ほど爆走することになる。
「なんなのよ」
「樹」
樹は、両親が(樹には、特に母親の顔がどこか厳しく感じられた)神妙な顔をしているのに気付いた。
317 :
魔女 境:2005/09/01(木) 15:04:11 ID:ow4L8Hvx0
「先ず、あんたに謝っておくわ。御免ね、樹」
三人は居間に移動した。並んで座っている両親と、テーブル越しに母親と向かい合っている樹。
「なんで、謝るの?」
樹は訳も分からず居た。なんでいつもは明るい両親がこんなカタい顔になっているのかも、なんで母親
が自分に謝っているのかも全く見当がつかなかったからだ。
「あんた、トリップしてたでしょう」
「トリップ――て何?」
「死を迎える寸前の魂と語り合える場に行く事を、私はそう呼んでるわ」
「ああ。あれは夢でしょ? よく出来た夢なんだわ」
「違う。夢じゃないの。余りに非現実過ぎてそう思うのは分かるけれど、違うのね。私は、たまたま自分の
叔母さんとトリップで会った事がある。そして次の日起きて、叔母さんが死んだと聞かされた――」
そう語る母親の顔を見ながら、樹は自分の考えを取り急ぎまとめていた。
えーと、これはこういうことよね。つまり私の見ていた夢は実は夢じゃなくって、もうじき死にそうな人との
会話――で、それはお母さんもそうで、それを私も受け継いで――
「――それで謝ったの?」
「まさか、遺伝する事はないと思っていたのだけど、心のどこかで『そうなるんじゃないか』とは思っていた
――」
「いや、いいの。謝らなくてもいいよ、お母さん。それより訊きたいんだけど」
「何を?」
318 :
魔女 境:2005/09/01(木) 15:05:28 ID:ow4L8Hvx0
「あそこで会う人が、皆絶対に死ぬ――なんてことは、ないよね?」
「分からない。だって、その人と現実に此岸(ここ)で会うことはほとんどないでしょう?」
「そうか」
「確かに『この人は大丈夫だろう』と思う人もいたわ。胸の奥が熱く光っている人――」
「そう! 今日会った人もそうだったの。あの人は絶対死なないと思うんだけどな」
樹には確信があった。あの熱さと眩さから来る生命の強さは嘘じゃないと思えたからだ。
「そう思うだろうけど、確認のしようが無いわ。私が唯一確認できたのは、叔母さんだけ。そして叔母さん
は死んだ」
「うーん……」
「とにかく、余りあそこに思いを向かわせないで欲しいの。余りに思い詰めると、自分を持っていかれちゃ
うわ」
「あたしは生きてるもん。向こうには行かないわ」
「余りに強い思いは、時に生死を越える事がある――これは覚えておいて」
「…うん」
これで私からは終わり、と言わんばかりに母親は立ち上がった。
「んじゃあたし寝るわ。明日も朝早いからね、あんたらのお弁当で」
母親はそう言い残して居間を出た。最後にチクリ言うトコはらしいなあ、と樹は思った。
父は頭を掻いてどうにも参ったなという顔をして照れたような感じだった。
「ははは。確かにもう一時半だ。俺からはそんなない。ただ、自分が一番大事なんだということだけだ」
「うん」
「母さんと結婚する前くらいに聞かされて、正直半信半疑だったけど、今日やっと母さんを心底信じられ
るようになったよ」
「夫婦関係がより磐石なものになったね」
「こいつ」
魔女の三話終わりと四話始めを同時に載せてみました。
『六番目の小夜子』読了。続いて『球形の季節』『不安な童話』『劫尽童女』と恩田陸を三冊買いましたが
さてどれから読もう……とりあえず『不安な童話』読んでますけど。三〇〇頁をあっという間に読ませる
というのは凄いと思うですよ。俺、小説読むの苦手なのに。
>>226 ホントは茄子を主役にするべきだと思いますが、原作もよく茄子がないがしろになるのでいいかなあ、と。
というかなんで茄子なんですかね。どうせテキトーに決めたんでしょうけども。
>>227 テンション高いキャラを沢山揃えてスベりました、という感じです。
読み返して少し恥かしくなりました。
>>228 長編は……今は勘弁してください。長編のネタが浮かべばいいのですが。
今思うと、最初のヤツは無謀でしたね。ほとんどネタも無かったのに続き物書いてましたから……
>>248 テキトーでしたごめんなさい。
でも、姉ちゃんのキャラだけは少し好きかな……
では次回。
320 :
作者の都合により名無しです:2005/09/01(木) 17:58:53 ID:dAnjlJoc0
サナダムシさん、ゲロさんお疲れ様です。
>不完全セルゲーム
タイトル通りになってきましたね。悟空とかが参加したらますますそうだ。
しかし、絶望的なレベル差を現代軍はどう覆すのか。いよいよ終盤ですね!
この絶好調のペースを守って頂きたいのですが、早く終わると寂しいな。
>魔女
昔話っぽい「童」ですが、本来の昔話は黒いんですよね。救いがないというか。
その暗い部分とゲロさんの筆致の明るさがあいまって良かったです。
現代劇になりましたが、4話も楽しみにしています。
でも、「童」と「境」が一瞬繋がってるかと思いましたよw
99から
「……俺だ。…ん? 何だリンス、早速催促か? ちょうど今銀行に居るんだ。欲しけりゃ………何?
……判った、すぐに行く」
真剣な顔でロビーのソファから身を起こし、真っ直ぐに入り口に向かっていくスヴェンを見て、
銀行員が慌てて彼に駆け寄った。
「あ…あの、もし! ボルフィート様!! 先刻の……」
「先刻の口座に、さっきの二百万イェン振り込んでおいてくれ。済まないが用事が出来た」
それだけ言い残し、彼はさっさと銀行を出て行った。
(無事で居てくれ………イヴ!!)
出口を出た途端、彼は弾かれた様な勢いで走り出す。最悪の結果にならない事をただただ祈って。
「いい殺気出すじゃねえか……気に入ったぜ。
クリードがベタ褒めするのも頷けるな、こりゃ」
賞賛は口だけに、どちらかと言うと小馬鹿にした様な目でトレインの怒気を受け止める。
「さて…と、初対面なのに名刺も無いのは失礼だからな。
ま、コイツの脳ミソで我慢してくれや」
すう、と足元のイヴに銃口を向けたと同時か、それより早くか、反射的に伏せたデュラムの頭が有った位置を
二連射が音速を超えて通過する。
「ハハッ、いいねえ!! ますます気に入ったぜ!!」
笑いながら彼はイヴから離れる形で横っ飛びに飛んだ。
別にフェアプレー精神などからではない。トレインの眼が人質が通じる眼では無いからだ。
仮に取った所で、それ越しに撃たれるであろう事は射撃精度からして手に取る様に判る。
然らば荷物を持つのは賢明では無いと、デュラムの獣じみた判断力が選択した。
そして避け様、返礼の二連射をトレインへと放った。
開閉型の携帯を閉じたリンスは、惨状に顔をしかめながら疾風の如く階段を駆け上がったトレインを追い掛けていた。
(……嘘でしょ? アイツ、アタシより速いなんて………)
怪盗などと自負する以上、身体能力には自信が有った。実際、彼女の足に追い付けた奴など今まで一人も居なかったと言うのに、
それを真っ向から否定するようにトレインはあっという間に目の前から消え失せた。
先刻の受け止めた手と言い、今見せる常識外れの足腰と言い、普段の彼は実力のほんの一部しか見せていない事を
まざまざと彼女に思い知らせる。
銃声が、すぐ上階で鳴り響いた。
「!」
走りながら耳を澄ませば、今度は走る足音、そして聞き慣れない男の罵声が耳に飛び込んで来た。
「……どうしたぁ黒猫(ブラックキャット)!!! 荷物抱えてるだけで防戦一方か? ああ!!?」
―――辿り着いてみれば、小脇にイヴを抱えたトレインが曲がり角越しに銃を撃っていた。
「トレイン!!」
呼び掛けに振り向くと、彼は無言でイヴを彼女に押しやった。
………受け取って見れば、悲惨な有様だった。
服にはあちこちに穴が開き、生渇きの血が染み込んでごわごわになり、気を失った顔は血の気が失せ、
ただでさえ白い肌は紙の様に白く、固まった血で凄惨なまだらに染まっていた。
傷は癒えている様だが、受けた苦痛は血糊と彼女の状態を見れば想像に難くない。
「……御免、イヴちゃん…」
思わず彼女の矮躯を抱き締める。
怖かっただろう。痛かっただろう。苦しかっただろう。もし真っ直ぐ帰っていたらこの事態は避けられた筈なのに、
何故あんな所で話し込んでしまったのか。彼女を思っての選択で彼女が傷付いた事が、自分で無ければ殺してしまいたく
なるほど憎たらしい。
だが、今は感傷に浸る時ではない。即座に気持ちを切り替えると、イヴを床に横たえて銃と懐中時計を抜いた。
「野郎!!! ………あれ?」
目の前に、今さっき銃を撃っていた筈のトレインが居なかった。
逃げた、かと思いきや、
「おおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!」
曲がり角の向こうからトレインの怒号とハーディスの銃声―――彼は、敵の射界に身を晒しながら銃撃を敢行していた。
「いい! いいぜお前、クレイジーだ! 愛してるぜ黒猫!!!」
嬉しそうな声と共に機関銃の様な銃撃が重なる。
デュラムは手放しで悦んでいた。今の今まで張りの無い連中ばかりだったのに、遂に現れたこの男は申し分無い殺し甲斐がある。
下世話な敬意を評す為、彼もトレインの照星に我が身を晒す。
頬を掠める弾丸と、耳に突き刺さる衝撃波が堪らなく彼を高揚させた。
―――お互い棒立ちで連射し合う尋常を超えた決闘。
一見そこそこの腕が有れば当たるように見えて、実は当てるのに大変な困難を要する。
まず距離。二人の距離はざっと見ても七〜八メートル、これだけ離れれば的中率が常識的に四割を下回る。
確実に拳銃で当てたいならすぐ目の前か三メートル以内が望ましい。銃は存外当たらない物だ。
そして再装填。それを行う事で、折角合わせた射線を断ち切らなくてはならない。
幾ら双方感覚で狙える腕前と言っても、次に挙げる要素がそれを容易に許さない。
それは、心理状態。どれだけ恐怖が麻痺した人間でも、飛び交う銃弾に筋肉が硬直する。
死≠ェ文字通り迫ってくる状況で完璧な平静で居られる人間は、其処に立つ前に死んでいるのが世の定石なのだ。
頬を裂く。髪を散らす。服に穴を開ける。股下まで潜り抜ける銃弾に、デュラムは前が膨らむほど興奮していた。
「愉しいなぁオイ!! そうだろう!? 女抱くよかよっぽど堪んねェだろ!? これを知ったら病み付きに
なっちまうだろ!? オレもそうさ!!」
雷鳴の様なファニング(引金を引いたまま撃鉄を弾く連射法)と共に、憤怒の仮面を貼り付けたトレインに哄笑を投げる。
対するトレインは沈黙し、デュラム以上に頬を裂きながら視線と銃で殺意を穿つ。
双方リボルバーであるが故、弾切れはすぐにやって来る。特にデュラムの銃はフレームにシリンダーが固定されているため
回転させながら一発ずつ込めなくてはならない………それすらも彼は愉しんでいたが。
「どうした! 撃って来い!!! もっと、もっとだ!!! オレを殺したいんだろ!?
殺して見せなタフ・ガイ!!!」
装填しつつ一層いきり立つデュラムの足に、小さな衝撃が走った。
「―――あ?」
見れば太股に小さな穴が開き、其処から少しずつ血が広がった。
何でも無い様にそのまま顔を上げると、銃を構えたまま振り向くトレインの向こうに、曲がり角から半身を
出して煙を吐く銃を構える女の姿が有るではないか。彼女もまた、トレインと同じ憎悪でデュラムを睨め付ける。
―――彼の眉間を中心に、深い皺が幾重にも寄った。
「……テメェ!!! 何してんだこのズベ公がァ!!!!」
先刻までの興奮を投げ捨て、腹立ち紛れに銃弾を放つが、女は既に其処に居ない。
壁と天井を多角的に使い、全てを足場に三角飛びの要領でデュラムに肉薄する。
当然照準を合わせようとするが、ランダムな高速三次元移動に合わせられる奴はそうは居ない、瞬く間に女は
彼の頭上を通り越して着地した。
そのタイミングを狙って背後に銃を向けるデュラムが、つまらぬ勝利を確信したコンマ一秒の瞬間―――…
女の狡猾な微笑と手の中の懐中時計が、己の危機を判断させる。
リュウズを押すのに先んじてマスクに張り付いたコイン大の何かを剥がすのは、彼が今日まで生きてきた周到さの賜物だった。
投げ捨てた途端、それはサイズから想像も付かない爆発を起こす。爆圧が指向性で無ければ彼の手も吹き飛んでいただろう。
「ぐおおッッ!!!」
「ッ! ……馬鹿の癖に!!!」
デュラムも驚いたが、見破られたリンスも驚いた。
ギャンザと同様女と言うだけで油断し尽くすタイプだと思っていたのに、狙いを読むとは只者ではない。
デュラムにしても、この女が予想以上に遣う事に慢心を改める。真横に開いた廊下に、舌打ち一つで一目散に走り出した。
「逃がさないわよ、クソ野郎!!!」
一歩踏み出した瞬間、デュラムの後ろ手に放った銃撃がリンスの足先一メートル弱に着弾した。
―――其処を中心に、激しい爆発が巻き起こった。
爆圧に弾かれたが、そのまま律儀に背後の壁に激突してやる彼女ではない。壁に足から着地するとT字路の死角へと自身を送った。
「……ッの野郎!!」
「止めろリンス! 行くな!!」
駆け出そうとしたのをトレインに止められ、彼女の頭に上った血が一気に降りた。
確かに一直線の長い廊下では狙い撃ちもいい所、先刻の手も二度使える物ではない。
「先刻言った場所で待ってるぜェ!! トレイン=ハートネットォ!!!」
廊下の向こうから声が響くと同時に、またしても爆発音。二人共思わず身を伏せる。
…………少しして恐る恐る覗いて見れば、廊下の真ん中に階下が見える大穴が開いていた。どうやら此処から逃げたらしい。
「……な、何これ? 爆弾でも持ってたの?」
そう勘繰るしかないほど見事な爆破跡だった。
だがその感嘆とは対照的に、トレインは無心に弾を込め直していた。
銃を振ってシリンダーを戻し、ホルスターにねじ込み、階段に向かって歩き出す。
「アタシも……!」「駄目だ」
即答で第二声を封じる。
「お前はイヴと一緒に居てやれ。そもそもアイツが指名したのはオレだ」
「嫌よ! あの馬鹿にイヴちゃんがどれだけ痛かったか必要以上に教えてやるわ!!!」
激昂するリンスの鼻先に、トレインは拳を突き出した。
「オレがやる。お前やスヴェン、勿論イヴの分まで」
猛っていると言うには熱過ぎて、凍っていると言うには冷え過ぎた眼が揺るぎ無い決意を訴える。
「イヴだって、気が付いたら一人ぼっちは嫌だろう? だから、側に居てやってくれ」
……一瞬納得行かない、という顔になったが、やむなく胸の内の憤懣を吐き出してトレインの拳に自分の拳を合わせた。
「返り討ちに会ったらブッ殺すわよ」
「会わないさ。……その前に奴を殺る」
その言葉を残し、トレインは階段を駆け下りていった。
――――町外れの森に入った頃には、既に月どころか星が出ていた。
指定したと言う事は罠の可能性も充分に有り得るだろう。しかしそれでもトレインは奥へと進む。
木々が織り成す闇の中、ふと彼の人の言葉がよぎった。
『……その方が死ななくていい人を死ななくて済む様に出来るし、助けたい人を助けられるって事スから』
言葉とは違う形でも何となく判ったつもりだ。でも、まだ見えない。
今だそれを見出す事無く、冥界の神の名を冠する銃を駆る自分は何者なのだろう。
先刻までの殺意も怒りも、彼女の言葉に掻き回されて一本筋が通らなくなって来ていた。
(何で………こんな時に…)
これから一髪千鈞の殺し合いをすると言うのに、何故こんな雑念が湧くのか判らぬまま道無き道をひた進む。
「………感心感心、一人で来るとは男前だぜ」
――――その所為で、こんなにも奴が接近している事に気付くのが遅れた。
木の陰から、あの不快極まる尋ね人がゆっくりと姿を現した。
「おっとっと、最初みたいにいきなり撃ってくれるなよ。お前を殺す男の自己紹介くらいさせてくれねえか?」
…嘲笑も露わに制止するデュラムを見て、消え掛けた炎の火種が僅かに熾った。
「まずオレの名は、デュラム=グラスター。掃除屋やってりゃ結構聞いた名だと思うぜ?」
聞いた事は有る、確かランクAの賞金首だ。尤も、その程度にしか記憶していないが。
「……で、今は賞金首から道士に転向って訳か」
それに付いては初めにクリードの名を語った時点で割れる。しかも口振りから察するに奴の口から直にトレインの事を聞いたらしい
ので、まず木っ端の雑魚では有るまい。となればこの男が道士なのは充分考えられる事なのだ。
―――…そして、それは当たっていた。
「……判ってるじゃねえか。だがな、此処に居るのは星の使徒としてじゃあねえ……強いて言うならオレの為だ」
自信満々の言にトレインは眉を顰めた。そして疲れ切った様に口を開く。
「………お前も、そのクチか」
「あ?」
「だから……どうせお前もオレを殺したいクチなんだろ? 名を上げるとか、最強のガンマンはオレだとか、
オレにとって全く以ってどうでもいい理由で殺しに来る、しょうもない連中の一人なんだろって聞いてんだよ」
デュラムは冷笑で返答した。
「ちょっと違うな。オレは最強のガンマン£度じゃ終わらねえ。
オレはな……………世界最強の男≠ノなるんだよ。まずはオメェをブチ殺してな」
抜き出した銃の青光るロングバレルが、月光を凶々しく照り返す。
「クリードがよ、オメェとは絶対戦うなとか言ってんのが気に入らねえんだよなあ、オレとしては。
だからわざわざこうして殺しに来てやった、って訳さ。有り難く思えよ?」
気安い言葉に、思わず手が銃に伸びそうになったが、敢えてギリギリで踏み止まる。
「……関係無いだろうが」
その言葉を聞いても首を傾げるだけのデュラムに、頭が氷の様に冷えていった。
「…ホテルの連中も、多分警察も、イヴも、それとは全然関係無いだろうが。
何で撃った………何で撃ちやがった!!?」
冷えた頭とまるで別に、迸った声は酷く熱い。そしてその理由が、漸う形に成りつつある。
対する彼は、滑稽極まるとばかりにトレインを睨む。
「……関係有るからじゃねえか。考えてもみな。
警察は、お前がこの街に来たから。ホテルの奴等は、お前があそこに泊まったから。そしてあの餓鬼は、お前の関係者。
どうだ、判ったか? お前の所為なんだよ! お前が悪いんだよ!! お前が居なきゃこんな事にはならなかったんだよ!!
責任転嫁してんじゃねえぞ、このバ――カ!!!」
最後の方に至っては、まるで不当に扱われた様な怒りだった。
「つまり、オメェが死ねば皆がハッピーの大団円ってこった。
その後あのクソ女と餓鬼と、あと相棒と皆であの世で幸せに暮らしました、めでたしめでたし……ってな。
優しいなあ、オレは……」
――――――話を、無理矢理銃声が断った。
もう少し話に熱を込めていたら、間違い無く頭を撃ち抜かれていた。
「な……何だテメエ!!! 話の途中で………!!!」
「もういい」
冷め切った頭と震えるほど熱い体―――銃を構えながら久し振りだなこの感じ、と頭の何処かで思う。
遂に気付いた。先刻からの不快感の正体と、何故彼女の言葉を思い出したのか。
実はホテルでデュラムに初弾を放った時、彼には場所を正確に認識出来ていなかった。
余りにも酷似した光景が強烈なフラッシュバックを起こさせ、彼をあの運命の夜へと投げ込んでいた。
―――人の通らぬ裏通り。血の海に倒れ伏す女。そして、それを愉快そうに見下ろす血塗れの男―――
心的外傷(トラウマ)と言うのは文字通り心の傷だ。人によっては一生癒えない者も居る。
それをこの男は、知らぬとはいえ凶行と傲慢で未だ血を流す傷を抉りに抉った――――何を以って許せようか。
思い出したくも無い人生最悪の瞬間が空気の温度さえ甦り、強靭な精神力で押さえ込んでいた筈の哀憎怨怒が
一気に噴き出していた。
壊したい、潰したい、消したい、殺したい。彼の中で育んだ最悪の魔獣が、負の感情を喰らって盛大に
理性の鎖を引き千切る。
「……面白くも無い事思い出させやがって…」
最下層氷結地獄(ジュデッカ)の獄卒でも逃げ出しそうな声調に、デュラムの背筋に異様な怖気が走る。
「へ…へへへ、こりゃ凄ェや。予想以上かもな」
最早言葉は意味を成さない。互いに殺意と銃を剥き出しにする今となっては、銃火で答えるのが世の常。
深き闇海(やみわだ)に、二種の銃声が絡み合って響いた。
地震、雷、火事………親父が無くて良かった(挨拶)。
やっぱり最後が一番怖ェNBです。
長ェ! 今回文章メチャ長ェ!! しかも内容薄ッ!!!
詰め込み過ぎですよね、全く以って。
しかしこんなに沢山のレス一度にやったのはなんとこれが初めてです。
サマサさんとかうみにんさんとかサナダムシさんとか見習おうぜ、俺。
…………ぶっちゃけ遅筆を何とかしろって事ですが。
以上を己の教訓をして、今回はここまで、ではまた。
NBさんお疲れ様です。途中で割り込みすみません。リアルタイムで読んだよ。
内容薄いなんてとんでもない。アクションをここまで書ける人は少ないよ。
ヂュラムとの駆け引きも浮き出てたし。最後の引きもうまいし。
筆力あるからグルーヴ感が凄い。
ちょっと表現が大袈裟すぎる気もするが、(ジュデッカとか)
それもNBさんの味だよなー。
ただ、遅筆だけはさすがに直してほしいですけどねw
第十六話「フー子」
外界から閉ざされた世界。そこには不思議な一族が住んでいた。
風と共に生きる人々―――風の民。
その中の一人、テムジンは風を操って空を飛ぶ道具―――カゼスビーに乗って森を散策していた。
キノコ、野草、木の実―――自然の恵みを分けてもらい、自然と共に暮らす。
テムジンはそんな生活を愛していた。かつてそれを脅かさんとしたあの怪異―――マフーガ。
そして、共に戦った大切な仲間達を思い出す。
のび太、ドラえもん、ジャイアン、しずかちゃん、スネ夫、そして―――
マフーガを倒すため、そしてのび太達を守るために、己の全てを捨てたフー子。その思い出がテムジンの胸を少し締め付ける。
―――どうしてるかな、のび太達は。
また会いたい。彼はいつもそう思っていた。
少しばかりの感傷とともに村へと帰った彼は、村の様子がおかしいことに気付く。何やらみんなして、やたらと慌てているのだ。
「ねえ、母さん。みんなどうしたの?そんな大騒ぎして・・・」
「あ、テムジン。大変なんだよ!」
どちらかというと呑気な母親ですらこの慌てよう。テムジンは思わず身構えるが、次の言葉に彼も度肝を抜かれる。
「ヤークさまが―――山神さまが来てらっしゃるんだよ、今!ああ、なんて恐れ多いことかしら!」
山神さま―――ヤーク。その姿は巨大な野牛。神通力により数千年に渡り世界を見守ってきた大賢者。
風の民は彼を神聖なものとして尊敬し、崇めてきた。そんな、言わば<生き神様>とでもいうべき存在が、こんな
人里に出てくるとは―――
野次馬に混じって息せき切って駆けつけたテムジンは、ヤークの巨体と神々しいまでの威厳、そして獣の姿には似合わぬ
深い知性と深い海のような穏やかさを宿す瞳に圧倒される。
さすがに<山神さま>なんて呼ばれる人(?)は違う、と妙なところに感心した。
「や、山神さま・・・あなたほどのお方が、何故ここまで・・・」
長老が代表して話し掛ける。ヤークはその気張った様子に少し苦笑しているように見えた。
<そうかしこまらなくてもよい。ワシは君達に頼みたいことがあってきたのだ>
その声は鼓膜に響くものではなく、直接頭に流れ込むような、不思議な声だった。
「た、頼み・・・でありますか?」
<うむ・・・君達はマフーガと戦ったあの少年達を覚えているな?>
「――――――!」
それを聞いたテムジンははっと身体を固くした。それに気付いたのか否か、ヤークは続ける。
<彼らは今、世界を脅かす巨大な敵と戦っている―――それも、あのマフーガをも凌駕するほどの敵と>
「な・・・何ですと!マフーガをも超える!?一体それは・・・」
<ワシにもその正体は分からぬ―――だが、この危機を救えるのは、あの少年達しかおらぬだろう。―――頼みと
いうのは他でもない。彼らに少しだけ、手助けをしてやってほしいのだ>
「―――はいっ!なんでもやります!」
話を聞いていたテムジンは思わず叫ぶ。
「おれ達はのび太達に助けてもらったんです!だから、今度はおれ達がみんなを―――!」
そこまで言ってテムジンはようやく自分がとんでもなく先走ったことを悟った。別に自分が村を代表してるわけ
じゃないのに。顔を赤くして、控えめに続けた。
「あ、あの・・・助けられたらなあ、なんて・・・はは・・・」
苦笑いしながら語るテムジンを、ヤークは好ましげに見つめた。
<君は少々そそっかしいな>
「はい・・・」
<だが、友を助けたいという純粋な思い―――それが何よりも大切なものだ>
「―――はい!」
その声を聞いて俯いていた顔をあげる。
「コホン。それで―――どうすればよろしいので?」
長老が咳払いをしつつ尋ねる。
<うむ。まずはこれを見て欲しい―――>
ヤークは自分の身体に隠していた<ある物>を取り出す。それは神秘的な青色に輝く不思議な珠だった。
そしてそしてそこから溢れる、どこか見知った風の気配―――
テムジンはそれに思い当たる。
「まさか―――それは、フー子ですか!?」
<そう―――マフーガと共に消えたかに見えたが、そうではない。フー子はこうして、目覚めの時を待っている>
「・・・フー子が、それに。けど、なんだか・・・それ、気配は確かにフー子だけど、感じる風の力が並じゃない。
まるで・・・マフーガのようです」
<うむ―――どうやらフー子は最後の瞬間、マフーガをも取り込み、眠りについたようだ。強大な力はそのせい
だろう。なに、心配することはない。力はマフーガでも、心は間違いなくフー子のものだ>
「そうですか・・・」
<さて、では本題に入ろう。さっきもいったように、世界に危機が迫っている。それを救うためには、フー子の力が
恐らく必要となるだろう―――そのために、あの少年を連れてきてほしい>
「のび太を、ここに・・・?」
<そうだ。フー子が復活するための儀式は、風の力に満ちたこの地でなければ出来ぬ。そしてその儀式には、強い
心が必要なのだ。フー子を愛し、慈しむ心が―――な。それはあの少年でなければならぬのだ・・・>
「はい・・・」
<そして、もう一つ―――風の機械神を連れてくるのだ>
「風の機械神・・・それは?」
テムジンの疑問に、ヤークは答えた。言葉でではない。彼らの脳裏に、直接イメージとして送ったのだ。
テムジン達の脳裏に映った光景―――巨大な剣を操る、白銀の騎士―――
「これが・・・風の機械神?」
<そう。それは彼らの元にあるが―――今は真の力を失っている。だがフー子が復活すれば、その力を甦らせることが
できるだろう―――>
「はあ・・・よく分かりませんが、とにかくのび太と、このロボットを連れてくればいいんですね?」
<うむ。問題は誰が行くかだが―――>
「・・・おれにやらせてください!」
テムジンが勢い込んで答えた。
「お願いです!フー子のために―――少しでも役に立ちたいんです!」
真摯な言葉に、その場の誰も反対できない。ヤークはホッホ、と笑う。
<よかろう―――君に任せよう>
「あ―――ありがとうございます、山神さま!」
<さて―――ではこれを渡しておこう>
ヤークが取り出したのは、矢印のついた小さな風車だった。
<それが指し示す方にいけば、あの少年達の元に辿り着けよう>
「はい・・・」
<そしてこれを―――きんと雲!>
ヤークの声と共に、空から小さな雲が降りてきた。なにやら不気味な感じに蠢いていてちょっと気持ち悪い。
<これに乗れば半日とかからず目的地に辿り着けるだろう>
「は、はあ・・・」
これに半日も乗るのかよ、嫌がらせかよ、とちょっと尻込みしつつ、テムジンはきんと雲に乗った。乗ってみると、
意外に座りごこちがよかったのが逆に嫌だった。
「それでは・・・行って参ります!」
そんな気分を振り払って、テムジンは元気よく言った。
「おう、いってこい!気をつけてな!」
「あいつらによろしくな!」
テムジンは気のいい声で送り出してくれる村人達をありがたく思い、出発する。
一刻も早く、このことをのび太達に伝えたい―――
「のび太、喜んでくれよ。フー子が―――フー子が生き返るんだ!」
投下完了。前回は
>>280から。
第二部<機神覚醒編>開幕。
まずはフー子復活編。
番外編はほのぼのを期待してた人が多いようだったので、殺伐した話にしちゃって申し訳なく思ったり。
本編はわりとギャグ・・・というか、ほのぼのできる描写を多めにしますので、勘弁してくださいな。
興奮で少し息が乱れていた。
もうすこし感情をコントロールしなくては。
身体にへばりついたゾンビの肉片を払い落とすと、哀れなポリスに眼をやった。
彼はすで5日は前に死んでいる。死の後にはなにもない。
墓を作り、死後の幸福を願うのは人間だけだ。
それでも、私はポリスを簡単ながら埋葬してやった。
彼をゾンビどもの夜食にするのは私の気が許さなかった。
その後、比較的損傷の少ないゾンビに、私は潜り込んだ。
体の乾燥を防ぐためには肉のスーツが必要なのだ。
ゾンビに食い散らかされていたため、まともな形状をした死体が見つからず、
今まではポリスを使っていたが、ようやく二足歩行できるようになった。
運動性はすこぶる悪いが、贅沢は言ってはいれない。それに利点もある。
腐りかけた足を引きずり引きずり、『私』は歩き出した。
太陽は、相変わらず狂った眼を『私』に向けていた。
9時間は歩いた。
それでも結局、目的に辿り着くことなく日は落ちた。
青黒い嫌な光に代わって、唐突な暗さであたりは満ちた。
私は相変わらず、何の刺激もない街中に囚われていた。
私にも睡眠は必要だった。
一人旅で寝ることは多々危険が伴うが、そこでゾンビのボディが役に立つ。
いかに愚かなソンビも、共食いばかりはしない。自分たちは不味いことを知っているのだ。
朝日よけの出来る瓦礫を見つけると、私は寝転んだ。
月光が射さない、無のような夜が私を覆っていた。
月のない夜は、異変前と何ら変わりないと聞く。
視線を、闇夜に吸い込ませるがままに、私は昼間のことを思い返していた。
ポリスのことだ。
最後にポリスが考えたこと。
それは、生きたい、ということだった。
生きたい。
それだけだ。
なんの捻りも無い。
有るべきだった未来も、確かに有った過去も、頭には浮かばなかった。
あの一瞬のことだけだ。
あと一分、一秒だろうと長く生きたい。
恨み怒りではない。悲しみだけだった。
悲壮感も何も無い。純粋な悲しみだ。
悲しみ、というものを"a"と表せるなら、ポリスが感じたのは"a'"でも"A"でもなく、"a"だった。
思うのは自分のことだけだった。
340 :
作者の都合により名無しです:2005/09/01(木) 23:32:26 ID:dAnjlJoc0
>AnotherAttraction BC
デュラムのサイコっぷりが素敵ですね。しかし、リンスのいい女ぶりもかっこいい。
なんとなくNBさんの好みはイブやセフィリアよりリンスの気がしますw
世界最強を目指す男が剥く牙、すごく迫力ありますよ!
>超機神大戦
今までのメカニカルな世界観とは違う、どこかもののけ姫っぽい感じの描写ですね。
きんと雲という反則気味なアイテムも出てきて、いよいよ反撃体制万全ですね。
ほのぼのもアクションも期待しております。
死んだ飼主への哀れみや別れの悲しみは無かった。
なんと自己中心。なんと自分勝手だろう。
ポリスが悪なのではない。
アブラムシとアリを例とする共存などというのは、所詮利用の仕合にすぎない。
ある種の寄生虫にも似ている。
ポリスと飼主との関係も同じだ。
狼は、群れの狩りと力の誇示によって、糧を得る。
それしか方法を知らないのだ。
飼主の命令を聞き、愛嬌を振る舞うこと。それがポリスが唯一知る、またベストな方法だった。
自分に与えられた方法で生きた。そして死んだ。責められことは何もない。
死の瞬間には、自分の命が此処で終わる、この無念だけで心が詰まった。
生きたい。
ごく当たり前な望みに思えた。
言うまでも無く、生物は皆、そう純粋に、生きるために生きているのだ。
死に幸福を求める愚者こそいるが、人間もその例に漏れなかったはずだ。
生きていさえすれば、どんな欲望も満たせる。
少なくとも可能性は持てる。
だが、死ねば全ては終わりだ。
だから生物は生きる。
私はそう思っていた。
人間以外の生物に入ったのは今日が初めてだった。
彼らの死の瞬間を知ったのも初めてだ。
考えることは人間と表面上は似ていた。
人が死にゆくとき、生きたい、と思う。
ポリスも、それは同じだ。
だが、根本的にはまるで違っていた。
ポリスが生きたかったのは、生きたかったからだ。
快楽や富のような、生きることによって得る副産物目的ではない。
生きることが目的なのだ。
だから、生きたい。
彼はそう言った。
私の思考が行き詰まった。
生きること、は、楽しいのか。
息をし、心臓を拍動させ、生きる。
筋肉が老いと疲労に屈し、拍動が止まるその時まで、この単純な行為を繰り返す。
この行為は、楽しいのだろうか。
欲を満たすことは、楽しい。
食欲、性欲、睡眠欲、これらの欲は生物が生きるに際し、必要不可欠なものだ。
だから欲を満たせるのは、楽しい。
いかなる状況においても、これは絶対である。
食べることは楽しい。寝ることも楽しい。
これらの欲は、何故存在するのか。
生きるという幸福の目標が、欲望なのか。
欲望を満たすことに、何の意味があるのか。
あるいは、生きるという苦痛の褒美として、欲望が与えられるのか。
これらの欲を満たすのが心地よくなければ、生物は生きないのか。
楽しくないなら、何故生きる。
極端な例を言う。
ある人間が居た。
親は、子を産み落として間も無く死んだ。
子は、一度の食事も取れず、子を残すことも無く、眠気がたまる以前に死んでいった。
5分、生きた。
彼に与えられた、4分59秒は楽しいかったのだろうか。
死ぬのは楽しくないのはわかる。
でも生きるから死ぬ。
ならば、死ぬために生きる、ともいえるのではないか。
死とは、目的なのか結果なのか障害なのだろうか。
ポリスは、何故生きたいがために生きた。
疑問ばかりが肥大して、肝心の答えは影すらない。
答えの無い問いなのかもしれない。鶏と玉子の競争なのかもしれない。
それならそれでもいい。思考は楽しい。
抜けられないループを考えるのもまた楽しい。決して言葉遊びで終わりはしない。
生きるだの死ぬだのと、漠然としているのに、簡易にその深遠が感じられる。
生まれてまだ2年ほどの私でも、深みに足を突っ込むことは出来る。
敷居の低さと裏腹に、敷地の広大さは一生物では計り知れなかった。
限界を感じさせない宇宙のような言葉だ。
軽軽しく口にするのはためらわれた。
知ったようなことを考えるのはどうにも私という器の範囲を超えている気もする。
とめどなくあふれ出る「生きる」や「死ぬ」が、私の器を瞬く間に満たし、零れてゆく。
器の側面を滑り落ちる思考が、私の脳を怪しく撫でるようだった。
自分の限界点を刺激しているようだった。
性的な悦楽すら感じる。
そうだ。はやく掘れ。
宇宙のような言葉だ。そもそも宇宙とは生きているのか?
自分勝手なポリス。
私に恐ろしいほど怖いものを置いていった。
ポリスは死んだ。
しょうがないな。
そんなことを考えながら、私は眠りに落ちていた。
濃い闇の中に俺はいた。
闇じゃないかもしれない。黒なのだというのは分かるが、それは果たして闇なのだろうか。
闇について講義を始める前に、ふと、俺の前に、球体が浮いていた。
唐突に出現したわけではなさそうだった。
この俺がいる、ずっと前から球はいたようだ。俺が今やっと気付いただけなのだ。
ひとつやふたつだけじゃない。十以上はいる球が、それぞれ光っていた。
いや、光じゃない。光なら、球の周りも淡く明るくなるはずだ。
あくまでも球だけが明るかった。光線じゃないのだ。
光を球状に切り出すことができたなら、こうなるだろう。
それも完全なボールでもない。
それの表面には、刺がびっしりと生えていた。どれもきっかり同じ長さをした棘だ。
一見は球に見えるのだが、視線を変えてみれば、幾千もの棘の頂点が球面を造っているのが分かる。
光のウニだ。ウニが俺の周りを囲んでいた。
俺は微動だにできなかった。不可能というより、不要だった。
球がフワフワと不安定に動き、棘が俺に刺さる。
棘、が、刺さった、というのに痛みは無く、逆に心地よさが体を伝った。
格段美味いものを食うだの、浴びるほどの札束を得るだの快感じゃなかった。
朝起きて、人に会って、会話して、別れの挨拶をして、飯を済ませて、風呂につかる。
そんな単なる日常生活を、無事に終え、あとは馴染みのベッドに身を放り出すだけ。
そんな快感だった。
そんな快感を、今俺は、棘に刺されて感じていた。
時々刺の合間から球の本体が見えた。周囲の闇より濃く、吐き気のする黒だった。
光の刺のせいで、潜む黒には触れることも無かった。
どうも、俺は楽しいらしい。少なくとも、楽しがっていた。
だが俺は疑問を抱いた。
なんなんだ、あの黒は。
ウニの中心部は、周囲の黒とは別格に黒だった。あれこそが闇なのだろうか。
それでも俺は、楽しがっていた。無理やりだったかもしれない。
ふと、現れたときと同じように、いつのまにかウニたちは消えていた。
おそらくは、居るのだろう。俺が気付けなくなってしまっただけなんだ。
ウニが消え、また闇が俺を圧した。
やっぱり、ふと俺は気付いた。
眼前にあるのは、確かに球だった。
光の球ではない。どす黒い球があった。
周りの闇より濃い黒が、自分はここに居ると教えていた。
純白の紙に、墨を一滴垂らしたみたいに、それははっきりとしていた。
これこそが黒なのだろう。ゼロというにふさわしい色だった。
それは、先ほどのウニから棘を全て取っ払って、中を剥き出しにしたもののようだ。
あの光の棘は一本も無い。それでいて、棘を含んだ光のウニと同じくらいの直径をしていた。
どうやら、光のウニたちは、こいつが来たから逃げ出したようだった。
この黒こそ、彼らウニの中身だというのに。
黒が俺に寄って来た。
俺は動かなかった。それとも、動けなかったのか、よくわからない。
黒が俺に触れた。
吐き気と虚脱感と嫌悪感が俺を襲った。
最悪の気分だ。俺の知る、負の感情を示すあらゆる言葉を口にすれば、これを表現できるだろうか。
どうにも足りなさそうだ。
棘もないくせに、痛い。
それでも、俺は逃げなかった。これだけははっきりしている。
逃げられなかったのではなく、俺は逃げなかった。
俺は、剥き出しの黒を、思い切りに抱きしめていた。
俺はそこで私は目覚めた。
青い朝日がゆるい角度で頬を叩いていた。
日の角度からいって、午前7時ほどである。
よく見る夢を見た。よく見ると言っても、起床してしまうと内容はほとんど覚えていない。
ただ、夢をみた、という印象だけがのこる。
記憶とは、掘る、あるいは彫るように蓄積していくと聞いたことがある。
夢とは、妄想の実体験だとか、特異なデジャヴだと考える。
要するに記憶の掘り返しだ。
その掘り方、あるいは掘り返し方が、いつもの夢と似ていたのだ。
どうにも頭が重い。
夢をみたあとは目覚めがすこぶる悪い。
私を思い出せ。
ウェス。
そうだ。念入りに掘り込んだ名だ。
ウェス・プッチ。
完全に私は目覚めた。
義理 : 創造主、プッチ神父の恩に報いる
目的地 : ボロブドゥール遺跡
任務 : エンリコ・プッチ神父の実弟、ウェス・プッチの殺害
依頼者 : エンリコ・プッチ神父
重そうに足を上げると、私は青の陽光に睨み返してやった。
そうして、また私は歩き出した。
1終わり。またね。
348 :
作者の都合により名無しです:2005/09/01(木) 23:50:19 ID:dAnjlJoc0
>Who Fighters
詩的な独白、ですな。諦観と欲望が入り混じったような、一種異様な。
生物の成り立ちから、自分自身への投影へ。一人称と3人称にを効果的に使いながら
死生論を述べてますね。これはユルさん自身の観念なのかも。
面白いですけど、もう少し前の人の作品との間を空けてくれると嬉しいのですが。
>NB氏
トレイン一家と最強を目指す男の戦いと裏のかき合い。ぞくぞくしますね。
トラウマを持った男は反動で暴力的になるみたいですが、それをリンスやイブに
向けるとは変態の域ですねw でも、こんなに上手いのにNBさんは謙遜しすぎ
>サマサ氏
2部開始。まずは場面転換からスタートですか。フー子というのがどんな漫画の
キャラからは知らないけど、山神さまはいい味出してますね。重要なキャラかな?
フー子と違って一発キャラっぽいけど。しかし、キャラ一杯でますねえ。
>ユル氏
濃い、ですねえ。淡々としたリズムの中に詰まってるものが濃い。窒息しそうな程。
その濃さは生や死への思いだったり、最後に示された創造主への思いだったり。
プッチの殺害に向けて動き始めた足がどこへ向かうのか、2が楽しみ。
しかし、すごい作品量ですね。嬉しいけど読むの大変ですw
>349
フー子はドラえもんに出てくる台風の子供ってキャラですな
映画にも出ましたよ
大盛況だけど、バレさん大変だな・・
>ゲロ氏
蔵ぽっこはやはり座敷わらしだったか。僕は、自分の生き方をとりあえず決めたのかな?
新作の「境」どう流れるのか見当もつかないけど、ゲロさんなら安心して読めるからいいな。
>NB氏
いよいよ来ましたな、お得意のアクションシーンが。NBさんは動きの描写が抜群に旨いので
読み応えがある。銃火の交わりを次回はどう決着つけるのか楽しみだ。激燃えでお願いします
>サマサ氏
第二部開始。激戦続いて敗北に終わった一部とは違って、少しスローテンポな幕開きですね。
ただ、風の機械神といい、フー子といい、これからの展開のキーポイントになりそうですね。
>ユル氏
前回に引き続き、平坦で冷静な語りの中にも、炎の情熱と泥臭い感情が混じっているような
筆致ですね。こういうの書かせたら本当に旨い。次は、ウェスとの激しい戦いを望んだり。
352 :
ふら〜り:2005/09/02(金) 23:31:40 ID:W1jwU9I40
いつでしたか、SSの質・量のあまりの充実っぷりに興奮した私が、「神モード、いや
超神モード」などと口走ったことがありましたけど。現状はどう表現すればいいのやら?
>>サナダムシさん
16号、一点の曇りもなく渋くカッコいい。こういうのはキャラの質的に18号や17号
には無理だなと感じましたね。なだけに、いつにも増してセルのヘタレっぷりが際立って
ますな。ジュニアよ、予想も何もこの作品の読者なら、全員が確信してる流れだぞ現状は。
>>ゲロさん
童と童
気になりますよこの終わり方はっ。ここからこれから、蔵ポッコたちとの心温まる交流が、
少しはケンカしたりも、とかいろいろ妄想がっ。……と妄想するのも楽しいですけどね。
境
「幻境図書館」を思い出す私。それはとにかく、最初は弟視点のギャグかと思ったんです
が、姉視点のちょっと怖い話になりそうな。前の野菜姉弟とは違いそうですね、かなり。
>>NBさん
デュラムのキャラが絶妙。弱者虐めで楽しむチンピラサディスト、に凄く近いんですけど、
でも手応えのある相手を喜ぶ気概(?)はあるし、意識してのことではないにしろ屁理屈
構成力が秀逸。あと本作の女性陣で一番好きな「彼の人」の声、久々に聴けて嬉しいです。
>>サマサさん
フー子は短編でしか見ていませんが、雪の精・タンポポ母さんと並ぶ三大人間外ヒロイン
と認識しております。ので、本作での活躍が楽しみ。無邪気で健気で一途で強力な彼女の
こと、この作品に出るとあってはさぞ、のび太を巡って他の子たちと……夢膨らみます。
>>ユルさん
グロいスプラッターワールドが、突き詰めていく内に突き抜けて禅問答になってしまった。
そんな感じです。私は高校が仏教関係だったんですが、授業でよく似た話を聞きましたよ
これ。ほんとに。感動はしませんが考えさせられ、胸に刻まれる。そういう作品ですね。
ふらーりさんもそろそろなんか書いてよ
パタリロのSS希望
354 :
ふら〜り:2005/09/02(金) 23:43:26 ID:W1jwU9I40
はぅ。いきなり出して驚かせたかったのですが、言われた以上は無視するのも無礼。
てなわけで、
>>353さん(もしかしてレベル0さん?)、あと確かバレさんにも。
マリネラ舞台のSS『オーガスーツ』、只今準備中。しばし待たれよ必ずや。
レベル0さんではないけど乙です。
オーガスーツって勇次郎出るんですか。
ふらーりさんは勇次郎好きだなー
意外にみんな不思議風使い見てないのかなー
それって、どんな漫画ですか?
>>357 大長編ドラえもん「のび太と不思議風使い」
フー子、テムジン、ヤークはこれに出てるキャラ
フー子って、あの小型台風か。あの話は泣けるよね。
フー子かわいいんだよなあ…あんな見かけなのに。
長編にも出てきてたのしらんかったよ。
しかしそことサイバスターがくっつくとはすごい発想だ。
たしかに風の魔装機神だし、上手いよなあ。
不思議風使いか…
俺はあまり好きじゃなかったな
短編の方がスッキリしてて良かった
361 :
作者の都合により名無しです:2005/09/03(土) 17:22:15 ID:hcv6PtNo0
平日に作品連鎖するのは正直避けてほしい。
一本ずつじっくり読みたいからさ
362 :
作者の都合により名無しです:2005/09/03(土) 22:33:42 ID:6EuFtfnn0
やはりみんな、週末に書いて月曜火曜にうぷしてるんだろうか?
第二十五話「完全体攻略法」
初弾合戦は、完全体セルの圧勝に終わった。
折られた骨を再生し、セルジュニアと一緒に話し合うセル。一方の完全体セルは、二人
が策を練るのを余裕たっぷりに待っている。何故なら敵が手強ければ手強いほど、彼の楽
しみも倍加するからだ。
「ふっふっふ、せいぜい楽しませてくれよ……」
だが、こんな状況に苛立つ者が一人居た。ドクター・ゲロである。
「えぇい、遊んどらんで、さっさと奴らを殺さんか! もうおまえしか、私には残されて
いないのだぞ!」
平行世界から呼ばれたので厳密には違うとはいえ、完全体セルにとってゲロは創造主だ。
ところが、完全体セルは憤るゲロを軽くあしらう。
「ふん、ドクター・ゲロか。おまえに命令される筋合いはない」
「な、なんだとォ……?」
「私は、私のためだけにこうしている。私は楽しみたい……完全体となった肉体を思う存
分使ってみたいのだよ。おまえ如きに、私を従わせる権利などない」
完全体セルは穏やかながらも、冷酷な両眼にてゲロを射抜いた。とても太刀打ち出来る
生物ではない。ゲロは胸に悔しさを残しながらも、反論を止めた。
「う、ぐぐ……!」
もはや、ゲロが自在に操れる兵隊は一人もいなくなった。
作戦を立てるセルとセルジュニア。完全体セルは彼らを敵とすら思っていない。
だが、これはチャンスでもある。もし完全体セルが二人を敵と認めたならば、寸刻で地
獄絵図が広がるだろう。相手が油断している今しか、勝てない。だからこそ、勝たねばな
らない。
そこで、セルは秘策を息子に伝授する。
「土下座しよう」
「いや、戦えよ」
秘策は却下された。もっとも今さら降伏しても、完全体セルが見逃すはずもない。父子
は完全体セルにとって敵ではないが、肉体を試す生きた実験台ではあるのだから。
「じゃあ、どうする?」
「パパじゃ、あいつは絶対に倒せない。でも僕なら、まともに攻撃が入ればダメージを与
えられるかもしれない」
「うむ、なるほど」
「だから、パパがサイバイマンに使ってた、閃光で目を眩ませる技を使って──」
「──奴が目を眩ませた瞬間、親子で土下座か!」
セルジュニアは条件反射で右ローを繰り出し、セルの左膝を破壊した。
「ずいぶん過激なスキンシップだなぁ、息子よ」
「僕だって好きでやってるんじゃない! パパがアホすぎるから、僕やみんなが苦労する
んじゃないか!」
「すまんな……。今度ゲームポーイ買ってやるからな」
「安心して。期待してないから」
肉親同士らしからぬ殺伐とした会話も終わり、作戦は決まった。いよいよ完全体セルと、
本格的に立ち合わねばならない。
「ようやく終わったか、待ちくたびれたぞ」
相変わらず、セルは腕組みをしている。次もやはり、あえて後手に回るつもりらしい。
「行くよ、パパ!」
「おぉ!」
弾かれたように、セルとセルジュニアが同時に突っ掛ける。完全体セルは好奇心に溢れ
た顔つきで、両雄を迎える。といっても、動く気配すらないが。
完全体セルとセル父子との距離──およそ十五メートル。ここでセルジュニアが突如、
両目を閉じる。父の出番。
「太陽拳!」
光が、眼球から、網膜から、視神経から、脳へ。すなわち、目が眩んだ。
「くぅっ……おのれ!」
うかつだった。強烈な刺激に、本能で体を丸める完全体セル。子の出番。
「だあァッ!」
すかさずセルジュニア、大量の気を込めた拳でボディへ連撃を喰らわせる。
触れるだけで、「完全」だと実感可能な恐るべき肉体。が、セルジュニアは決して怯ま
ない。
「まだまだッ!」
ここで、少しでも生命を削り取る。いや、決める。アッパーで顎を打ち抜き、左右フッ
クで顔面を連打、さらに両足で鼻先に蹴り込む。完全体セルが宙に浮く。勝機。
「わああぁぁぁぁぁッ!」
ダメ押し、エネルギー波。完全体セルを丸ごと呑み込んだ光の束は、近くにある山へ到
達し、山はまもなく平らな地面と化した。
「ハハ、少しやりすぎじゃないか……?」
息子の猛攻に喜びつつ、若干の罪悪感に浸るセル。しかし、息を荒げるセルジュニアに
は、結果が分かっていた。
「ごめん、パパ。ダメだったよ……」
「え」
まさか、とセルが気を探る。そして、すぐさま判明する事実。
完全体、健在。
今回の敵「完全体セル」は、「リング作ってセルゲーム開催日を待っている」状態でゲロに召喚されたセルです。
少し分かりにくかったようで、すいません。
あと前回
>>306 > 以前から温存していた、とっておきの決め台詞を吐くセル。が、セルにはまるで効いた
>様子がない。腕を組んだ状態から、一ミリたりとも動いていないのだ。
は、
> 以前から温存していた、とっておきの決め台詞を吐くセル。が、完全体セルにはまるで
>効いた様子がない。腕を組んだ状態から、一ミリたりとも動いていないのだ。
に訂正です。
これからはヘタレの「セル」と敵の「完全体セル」は完全に分けて表記します。
失礼しました。
>リング作ってセルゲーム開催日を待っている
一度悟飯に倒されて復活した、最強状態セルではないんですね。
ならば少しはヘタレセルにも勝ち目は・・あるのか?
出来のいい息子は苦労してますな。攻撃通じなかったけど。
しかし一番のヘタレはゲロですな。
何度生んだ人造人間に逆らわれれば気が済むのか。
あとゲームポーイってわざと?パチモンで子供の気を引こうとしたとかw
サナダムシ氏乙。
間全体を前にしてもいつものペースを変えないセルは
ある意味大物なのかも知れない。子供は苦労するが。
しかし絶望的な戦力差だな。17号たちとの総力戦になるのかな。
370 :
茄子:2005/09/05(月) 02:54:27 ID:ipUDblG40
第六回 途中道
「――なるちゃん、野菜はね、途中まで育った状態で収穫するのが一番いいんだよ」
どうして? なんで出来上がる前に採っちゃうの?
「簡単さ。その方が美味しいからね。育ちきってるとどうしても身が固くなってしまう。
量は少なくなるけど、最近は量より質なんだよ、日本人は。ほら、この茄子も小振りだろ?」
ホントだー。
「小さいものが好きな人は、きっとこだわっているということだろうね――」
――私は、まだ幼い頃に実家の近くの農家のお兄さんから聞いた言葉を思い出していた。
数日前。
「いけないことだとは思ってるんだ」
私は、近所の土手に男といた。通学途中だったが、妙に気になったのだ。
痩せっぽちで伸ばし放題の髪と髭。身なりなんてきっと全く気にしていないのだろう。
何をしているのかと聞いたら「欲求の解消」と言われた。
「いけないことだとは思ってるんだ」
さっきから同じ事を繰り返し言っている。声は微かに震えていて、心なし怯えているように
感じられた。
「いけないいけないってさっきから言ってますけど、何かやましい事でもあるんですか?」
私が出来るだけ優しい口調でそう訊ねると、彼は頭を抱えて、ぶるぶる震える指で下で野
球をしている子供達を指差した。小学校の野球大会だろうか。
この子達がなんだと言うの? その時の私にはそれが分からなかった。
彼の震えは増すばかりだ。やがて口を開く。
371 :
茄子:2005/09/05(月) 02:55:18 ID:ipUDblG40
「僕は駄目なんだ。狂ってるんだ。自分でもなんだか分からない。母性じゃなく父性の暴
走なのかもしれないと思ったがきっとそれは違う。それで片付く感情じゃない。僕は彼ら
にどうしようもないほどに惹かれるんだ。街を歩いてると彼らに目が行ってしまう。彼ら
の親にマークされるようになった。警察に通報されそうになった。だから離れたここから
彼らを愛でてるんだ。僕は駄目なんだ。狂ってるんだ。自分でもなんだか分からない。母
性じゃなく父性の暴走なのかもしれないと思ったがきっとそれは違う。それで片付く感情
じゃない。僕は彼らにどうしようもないほどに惹かれるんだ。街を歩いてると彼らに目が
行ってしまう。彼らの親にマークされるようになった。警察に通報されそうになった。だ
から離れたここから彼らを愛でているんだ。僕は駄目なんだ。狂ってるんだ。自分でも」
彼はリピートのかかったCDプレイヤーのように同じ言葉を繰り返した。
この人は変人だ。
このひとはへんじんだ。
コノヒトハヘンジンダ。
――いや。
違うんじゃないか?
とっさの事だった。
私はふと思いだした。あの時のお兄さんの言葉を――
「――あなたは、成長過程を愛しているんですね」
「街を歩いてると彼らに目が」
「完成しているものより未完成の魅力的だけど危ういものを愛しているんだわ」
「彼らを愛でてるんだ。僕は駄目」
「あなたは――!」
私は言葉に力を込め、彼から流れ出て来る言葉を止めた。
「――野菜を作るといいと思います」
「やさい……?」
「はい。野菜です。野菜はね、成長過程が一番美味しいんです。完成する直前が美味しい
んです。だから、未完成を愛するあなたにはぴったりだと思いますよ」
「へえ」
「そう、聞きました」
372 :
茄子:2005/09/05(月) 02:56:10 ID:ipUDblG40
「野菜かあ……」
すっかり震えが収まり、笑顔さえ窺える。気分がころころ変わる人なのか。
「野菜は育ちかけが一番美味しい。野菜は育ちかけが一番美味しい。野菜は育ちかけが一
番美味しい」
彼は今度はそう呟きながら立ち上がり、私の学校とは逆方向の道へ歩いて行った。腕時
計を見ると、もう遅刻確定だ。急いでも仕方がない――
「で、結局その人はどうなったん?」
だから、男って嫌よ。年下でも一度付き合っちゃえばたちまちタメ語になるんだもの。
「さあね。多分野菜を作り始めるんじゃないかな。それより斉藤」
なんだよ、と彼女とはいえ年上に向かって言う。生意気だ。こんなヤツだったっけか?
男ってヤツは、一度やってしまうとこんなになるのか。
「――あんたも、口の聞き方気を付けなさいよ。あたしはセンパイなんだからさ」
「はいはい、鴨川成美センパイ!」
憎らしい声。
「俺さー、部室行かなきゃいけないから走るわ」
「さっさと行け」
「あとさー」
「あとなにー?」
「その人、きっと野菜なんて作ってないと思うよ」
そんなの、分かってる。
373 :
茄子:2005/09/05(月) 02:56:55 ID:ipUDblG40
『茄子』六回目でございます。タイトルは「みち」でなく「どう」と読んで頂けると。
今回は四回目の斉藤少年と鴨川成美に再登場してもらいました。なんで彼らがくっついて
るのかは謎ですが、それ以上に斉藤の性格変わりすぎな所が疑問です。多分包み込まれると安心
して素が出るタイプなのだろうなと思いながら書きましたが。
>>320 そうですね、ちょっと紛らわしかったかもしれない。すいません。
次回辺りは舞台を、まあ、明確ではないんですけど、未開拓の地域にしたいなあと。
『魔女』で日本の話ばっかりというのも勿体無いので。
>>325 座敷童で一番有名なのは岩手の温泉でしょうね。でも東北地方に幅広く居たと言われてますね。
あと、妖怪ってのは基本的に大人には見えないもんじゃないかなあ……とそれを見て思いました。
大人が妖怪見るには酒の力に頼らなくちゃいけないんですよ(妖怪大戦争見た人だけ分かってください)。
妖怪とかの超存在は居ると思っておいたほうが人生が楽しくなる気がします。
>>351 少年の生き方を変えるのもポッコの頑張り次第ですね。他者に依存する生き方も悪くはないのではないで
しょうか。
「境」は、割とストレートな話になると思います。多分。
>>352 俺も妄想は好きな方です。
前の野菜姉妹とは……違いますね。パッと見同じような感じですが。
>>362 出来上がったのは大体二十分前。鮮度だけはいいです。
人によって異なるのでしょうが、俺は書きたくなった時に書く派です。
時間がなくても寝なくちゃいけなくても書きたくなったら書く。だから明日は(今日は)大変です。
では次回。
374 :
作者の都合により名無しです:2005/09/05(月) 14:22:12 ID:+4q3zX+C0
鴨川成美は結構キャラクターがいいですね。おねえさんぽいけど幼さもあり。
精神的な治療に、ガーディニングはいいですね。基地外振りも治ると思います。
哲学的な人は、最後に自然に帰るというし。
成美は茄子のレギュラーになりそうですね。
ゲロさん乙です。
いつも思うのですが、「魔女」は完全に異世界の話で、「蟲師」はどこかが
少しだけズレている漢字の世界、そして「茄子」は日常世界の中の笑いって感じですね。
(宇宙が舞台の話もありましたが)
特にこの成美とかが出ると、肩の力が抜けたほのぼの感がありますね。
376 :
作者の都合により名無しです:2005/09/05(月) 23:46:09 ID:2xYOtYVa0
>不完全セルゲーム
ヘタレセルはシコルと違って中々凛々しくならないね。確変はまだかな?
子供目の前で殺されて、シリアスモードに突入するとかw
>茄子
この成美が主人公っぽいシリーズは続くのだろか?淡々とした作品だね。
でも滋味深い。意外と、テーマも見え隠れするし。
377 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/06(火) 04:02:27 ID:ykw6vkhf0
これはとある世界の話。
「逆境だ!この状況こそ逆境だ!」
「不屈!しかし、100対0だぞ!いくらお前でもこの状況は・・。」
ここでCM
「ほっほっほ、やはり逆境ナインは面白いですね。・・・・。野球か・・・。」
ここは惑星フリーザ。
元は沢山の人達が住む星だったが今はフリーザ軍の侵攻ほとんど知的生命体はいない星となっている・・。
フリーザはこの銀河の中では最強と呼ばれる生物で、星ひとつぐらい消滅させるのはたやすい。
今回はその強さゆえにフリーザが苦労する話だ。
378 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/06(火) 04:03:49 ID:ykw6vkhf0
逆境ナイン放送から3時間後・・。
「ザーボンさん、ドドリアさん。少しお話があります。」
突然のフリーザの呼び出しに何かミスをしたのではないかとあわててフリーザの元へ向かう二人だったが
話の内容はそんなことではなかった。
「ヤキュウ・・・?ですか?」
声をそろえて言う二人。
当然、宇宙人の二人は野球など知る由も無い。
フリーザでさえ、間違って宇宙船に入ってきた電波で逆境ナインがやっていなければ野球の存在など知る由も無かったらだろう。
「そうです。野球です。貴方達のような無知な方は知らないでしょうが、コレが戦いのように面白そうなスポーツで・・」
そう一度口を開くと、逆境ナインの魅力とともに野球について小一時間話すフリーザ。
一方部下の二人は、こんなに部下に対して熱く語るフリーザにびっくりするとともに少しずつその野球の魅力に惹かれつつあった。
「それでフリーザ様、一体お話というのは?」
ザーボンがそうたずねると、フリーザは満面の笑みで
「簡単な話ですよザーボンさん。私達も野球チーム作ってやるということです。無論、私のチームのほかにも何チームか作って対戦しますがね。」
「し、しかし、これから次の星を進行しなくてはならないので大変申し訳ありませんが今すぐというわけには・・・。」
「なに、すぐにでもというわけではないですよ。当然練習などもありますから・・。そうですね、とりあえずは惑星ベジータにいるサイヤ人どもや他の
私の惑星の人達に電報でも入れて先にチーム数作っておいてくれるようしといてくださいね?勿論・・。私のチームが一番戦闘力が高くなるようにする
こともお忘れなく・・・。」
「で、電報ですか?分かりました!早速手配します!では・・・。」
そういって、フリーザはザーボンとドドリアに他の星にも野球チームを作っておくように命令し、一人野球で大活躍する自分にほくそえんでいた・・。
「ふふふ。ついでにサイヤ人どもの公開処刑もできますね。益々楽しみですよ・・・。」
かくしてフリーザは野球でも宇宙1になれるのであろうか?
続く。
379 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/06(火) 04:04:54 ID:ykw6vkhf0
どうも、しぇきと申すものです。
つたない文章ですが短編で少し書きたいと思います。
宜しくお願いします。
結構面白そうなんじゃない?
戦闘民族は野球が好き。レベルEではそうだったですね。
ん?レベルEと絡めろと?
雪隆とフリーザの同棲生活?
383 :
作者の都合により名無しです:2005/09/06(火) 15:55:33 ID:kAzvZXBA0
お、展開がまったく読めない作品だ。フリーザ様の野球話か。
球速マッハ5とか簡単に出そうだ・・。頑張れ。
>>382 レベルEの最初の話で、地球で暴れない戦闘民族の理由が
「暴れたら好きな野球が見れなくなる」だったような。
384 :
作者の都合により名無しです:2005/09/06(火) 19:32:04 ID:TG4VWg+S0
しぇきさん新作乙。
いい意味で肩の力が抜けた感じで、素直に楽しめそうな作品だ
2ちゃん人気ナンバー1のフリーザ様がどんな野球するのか楽しみだ。
ヤムスレ終わっちゃうみたいだから、ぜひヤムチャを出してくれw
過去にも使われた題材だけど、書き出しだけ読んだ感じでは何か期待できるね>野球
まぁ、新人さんの連載で一番怖いのは内容の是非よりも投げd・・・
がんばってください
386 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/06(火) 20:38:22 ID:zoNb41sO0
フリーザの命によってザーボンとドドリアは他星侵攻の準備の合間に短いながら他の自星へ電報を入れる。
忙しい状態だったが、そこはフリーザの認めた部下。
きちんと[フリーザ様の命令により、地球人が行う人気スポーツ”ヤキュウ”を始めることにする。
チーム数は各星1チーム(種族ごとに固まるも可である。)作り、フリーザ様が戻るまで他星の侵攻をやめ各自練習しておくこと。]
と言う内容の電報を送った。
勿論、ギニュー特戦隊はグルド以外ちゃんとフリーザチームに入れる手はずも整えていた・・・。
3ヵ月後・・・・。
何事もなく新たな星を侵攻し終わったフリーザは、この日を最終形態に変身してしまうくらい待ちわびていた。
部下のアプール♀がその壮絶な気で消し飛んでしまったが、フリーザ当人はそんなことは気にもせずひたすら宇宙船内で妄想を膨らませていた。
「フリーザ様、惑星フリーザに到着します。」
そうザーボンが言うと、フリーザは待ちきれなくなったのか
「キェェェェェェェ〜!」
という奇声を上げながらいち早く惑星フリーザへ突入していった。まるで流星のごとく・・・。
あっけに取られる一同だったが、やがて気を取り直したドドリアが
「あれほど興奮されているフリーザ様は初めてだ・・・。きっとよほど楽しみだったのだろう。」
と部下冥利に尽きる発言をしていた。
一方恋人のアプール♀がフリーザの気で消されていたキュイは、ひそかに野球で目に物言わせてやる作戦をアプール一族へ電報を送っていた。
387 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/06(火) 20:54:53 ID:zoNb41sO0
<<惑星フリーザトレーニングセンター>>
一足早く戻ったフリーザは、フリーザの頭脳と呼ばれる参謀:ミルコポッチに野球リーグの進行状況を聞いた。
「フリーザ様。3ヶ月前の電報の通り野球チームを6球団を作りまして、各自練習をさせております。」
そう聞くとフリーザは満足そうに、
「さすがはミルコさん。で、もう試合はできそうなのですか?」
「はい、5チームは・・。」
そう聞くと、あからさまに不満顔になったフリーザは
「後、1チームはどうしたのです?」
と、返答次第では”お前を殺すぞ”といわんばかり雰囲気で尋ねてくる。
しかし、ここはフリーザの頭脳。
フリーザの性格などとっくにお見通しである。
ここは逆なでしないように、フリーザの知能がついてこないように早口で理論的にたてしまくる。
「フリーザ様。その1チームは貴方様のチームです。今、貴方様のチームにはギニュー特戦隊(グルド抜き)以外いない状況だったので今から練習することになりますから。
無論貴方様なら練習などしなくても宇宙1でしょうが、地球に向かわせたサイヤ人の情報によると野球はチームプレイ。一人だけずば抜けても全くダメだそうです。
無論、貴方様が帰るまでギニュー特戦隊(グルド抜き)には内野手をやってもらって連係プレーの練習はみっちりとさせておきましたが、どうにも急に似ないことにはしっくり行かないのが現状で・・。」
とあ〜だこ〜だと、1時間に渡り漫画「キャプテン」を例えにしながら野球を語る参謀。
逆境ナインしか知らないフリーザに取って全くついていけない話であったが、逆境ナインでも不屈一人だけで最後まで戦ったわけではないことは知っていたので、上手く参謀の言葉に丸め込まれとりあえず一回練習することになった。
388 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/06(火) 20:57:26 ID:zoNb41sO0
掲示板に書き込むとき改行のタイミングが良く分からないしぇきです。
レスくれた皆さんありがとうございました。
次はフリーザ初めての野球の話です。
389 :
ふら〜り:2005/09/06(火) 23:19:54 ID:VsDD6squ0
>>サナダムシさん
人造人間トリオに比べれば、ジュニアは随分とセルに優しいというか人間(?)が丸い。
さすがは一応親子。とはいえ威厳ゼロな親父は、得意の虚勢さえ張れなくなってますが。
で、完全体セルの攻略の鍵はドクターゲロにありそう。もう離反されてますし。どうか?
>>ゲロさん
そこで成美センパイでしたかっ。今回の話だけでみれば、考えようによっては凄く純粋
な子ですね。人の内面を我流解釈していい方に納得、それを意識せず天然でできる、と。
充分可愛い。萌え範疇。かと思いきやタメ語の理由……深いぞ成美センパイ。再会希望。
>>しぇきさん
フリーザがちゃんとフリーザらしいキャラのまま、野球にハマったり丸め込まれたりして
るのが可愛いです。でも戦闘力で自チームのメンバーを選んでる辺り、本当に理解してる
のかどうか。超人野球なら私は「ラッキーマン」を思い出しますが、本作ではどうなる?
390 :
作者の都合により名無しです:2005/09/07(水) 00:49:36 ID:SlqgJZ7U0
>しぇき氏
「キャプテン」を知っているということは意外としぇきさんは年齢上の方だろうかw
逆境ナインという漫画は聞いた事しかないけど。
6チームという事はトーナメントになるのかな?
フリーザ様、軽くバット振っただけで球場を消しそうだ。
第二十六話「父と子」
消し飛んだ山から、邪悪な気配が近づいてくる。
何故、あそこで倒せなかった。地面に拳を打ちつけ、悔いるセルジュニア。どう励まし
ていいか分からず、立ち尽くすセル。
どちらも声を出さない。いや、出せない。
そして十秒と経たぬうちに、完全体セルが戻ってきてしまう。あれほどクリーンヒット
を許したというのに、まるで平然としている。
「やってくれたな。少し効いたよ……いい攻撃だった」
口元の血を拭い、安らかな微笑を浮かべる完全体セル。ついに本気を出すか──と、思
いきや。彼は突然、セルジュニアに手を差し伸べた。
「父親はともかくとして、君はなかなか強いようだ。どうだ、私の息子にならないかね?
容姿の方も、むしろ完全体である私に瓜二つじゃないか」
完全体セルの取った行動は、よりによってスカウト。唖然とするセル。どうやら、完全
体セルは、猛ラッシュを仕掛けたセルジュニアを気に入ったようだ。
「さァ……どうする? 私と彼は同一人物だ、気にすることはない。それに、もし彼につ
くならば、君も殺さねばならなくなる」
セルジュニアは答えない。
セルは実子が下す決断を、内心おどおどしながら待っていた。
「完全なる私と、まだ進化すらしていない彼──迷うことはあるまい」
さらに焚き付ける完全体セル。悩んでいるのか、とうに結論は出ているのか。セルジュ
ニアは無反応。
ひゅう、と風が吹く。と、セルジュニアが口を開く。
「決まったよ」
「ふむ、ならば態度で示してもらおうか」
「うん、分かった」
刹那、セルジュニアは消え──父であるセルにとてつもない衝撃がめり込んだ。破格の
右ストレート。
「ぐごォッ!」
「パパ、ごめんね」
冷たい呟き──セルジュニアは父を捨てた。
派手にバウンドしながら、地面を転がっていくセル。
痛かった。体にも心にも、突き刺さるような鈍痛であった。彼が転げ回ったライン上に
は、血液が所々に飛び散っている。
「あう……ぐぐッ!」
セルも受け身を取り、ようやく体を止める。非常に痛い。が、彼はどこかほっとしてい
た。これで息子の命は保障された、と。
「ふ、ふふふ……俺も変わったなぁ。たかがエロ小説がきっかけで生まれたガキに、少し
でも長生きして欲しいと願ってしまうとは……」
力を振り絞り、ふらふらと立ち上がるセル。と、ここで彼は重要な物体を目撃する。
「ク、クリスタル……!」
──炎のクリスタル。ゲロが恨みを込めて造り上げた、不吉な紅に染まった宝石。
「ま、まさかッ!」
セルは気を探るより先に、完全体セルがいる方角を向く。すると、戦いは新たな局面を
迎えていた。
セルジュニアが、たった一人で完全体に挑んでいるのだ。
勝敗は分かり切っていた。
全力で仕掛けるセルジュニア、せいぜい五割程度で迎撃する完全体セル。それでもなお、
完全体が全てにおいて勝っていた。
手加減という添加物を含んだパンチに、キックに、セルジュニアが何度も倒される。が、
何度も立ち向かう。
「嫌われたものだな。私と一緒に栄光の道を歩むよりも、死を選ぶとは」
「悪くないと思ったからさ。パパと歩む、破滅の道ってのも!」
セルジュニア、体重を乗せた右ストレート──を、軽く受け止め、両手を組んで造り上
げた鉄槌(ハンマー)にて、地面へと叩きつける。さらに、踏みつけによる追い討ち。
打ち伏せられる我が子。まともな神経を持つ親ならば、耐えられる代物ではない。
だが、セルは動かなかった。何故なら、息子が父に伝えたいメッセージを感じ取ってい
たためだ。
「私を見捨てる演技をし、クリスタル近くへ殴り飛ばし、一人で完全体に挑む──全ては
私にクリスタルを吸収させるためか!」
ならば、迷うことはない。セルは電光石火の早業で、尻尾から炎のクリスタルを吸収す
る。吉と出るか、はたまた凶と出るか。
火、風、土に次いで──炎が体内に染み込んでいく。
体内が沸騰する。体液を泡を立て、蒸気を発するかの如き錯覚を受ける。
と、同時に生ずる暗黒。ゲロが積み上げた灼熱の怨念が、セルの心を強烈に蝕む。
「ぐおおぉぉぉぉッ!」
内臓全てを吐き出しかねぬ、壮絶な不快感。かつてない苦痛に、のた打ち回るセル。だ
が、セルも決して屈しない。16号たちを見返すため、完全体になるため──ここまでセ
ルはやって来た。そして今は、息子を救うため。
セル対クリスタル、究極の陣取り合戦。精神を丸ごと焼き尽くさんと拡大する炎を、セ
ルも決死で消火する。せめぎ合いを制するは──。
「私は、究極の、人造人間セルだァッ!」
矜持が、怨念を打ち破る。
ついにセルが、炎のクリスタルを克服した。
全身を包み込む熱き充足感。これが今回手に入れた能力なのか。否、考えている暇など
ない。もうやるしかない。己とクリスタルを信ずるしかない。
「息子よ、今すぐ行くぞ!」
気を体内から爆発させ、猛スピードで飛び込むセル。
指を順々に握り締め、拳を造る。
狙いは後頭部、視線を定める。
間合いを目測し、拳を構える。
力を込め、打つ。
命中。
折れた。セルの手首がぐにゃりと折れ曲がった。残念ながら、強さに変化はなかった。
「すまんすまん、いささか私の肌が丈夫すぎたようだな」
振り返り、さわやかな笑みを浮かべる完全体セル。そして彼の足下には、血まみれで倒
れるセルジュニアの姿があった。自身の不甲斐なさに、セルが悔し涙が出す。
「くっそぉぉぉ! クリスタルッ! たまには役に立ってみせやがれぇッ!」
絶望し、崩れ落ちるセル。しかし、今まさに、奇跡への条件が揃った。
夕方に失礼します。
>>368 「ゲームポーイ」はサタンがブウを倒すために、爆弾を仕込んだ携帯ゲーム機のことです。
多分、DB世界の携帯ゲーム機でしょう。
396 :
作者の都合により名無しです:2005/09/07(水) 18:06:09 ID:CvZXFq+n0
>それゆけフリーザ野球軍
ミルコという名が急に出てきて少し笑った。しかしタイトルとは逆に血生臭くなりそうな
展開ですね。ところで何故グルドは抜きなんだろう?超能力が野球に卑怯だから?
>不完全セルゲーム
おお、いよいよセル確変寸前ですね。次回からいよいよ激闘開始ですか。
子供が身を挺したのだから親としては頑張らんといかんですなー。いよいよ最終決戦ですか?
サナダムシさんお疲れです。
親を思い、自分より強い敵に立ち向かうセルジュニアと、
子の思いを受けて、立ち上がるセル。決戦の舞台は整いましたね。
でも、主人公セルって最初の段階だったんですねそう言えば。
俺の頭の中では最終セルだった、ずっと。
第十七話「到着、出発」
シュウとの戦いから二日―――
その間は敵の襲撃もなく、のび太たちは結構マッタリと過ごしていた。
外ではジャイアン、スネ夫、しずか、亜沙、稟の五人がボール遊びに興じている。年長者二人は子供と遊んであげている、
というよりは自分が子供に戻って遊んでいる、といった風情である。元々がそう先輩風を吹かす性質ではないということも
あるのだろう。
「おっしゃあ!いくぜ、稟さん」
「さあ、こい・・・ゴフッ!」
ジャイアンの蹴ったボールは思いっきり稟の顔面に直撃した。
「ちょ、ちょっと!稟ちゃん大丈夫!?」
ピクピクと痙攣した後、稟はようやく立ち上がった。どこか不気味な笑顔でジャイアンに近づく。
「おい、ジャイアン・・・今のは狙ったな?狙ったよな?怒らないから正直に言ってみろ」
「わりい、取れると思ったんだ」
悪びれもせずシャアシャアとほざくジャイアン。稟は笑顔のまま、クイクイと手招きする。
「来い、ジャイアン。大人の恐ろしさを教えてやる!」
「お?やるか!稟さんが相手とはいえ、手加減しねえからな!」
そのまま取っ組み合いのケンカが始まる―――とはいえ、二人とも本気でやってるわけではない。これはまあ、
ちょっとしたじゃれ合いのようなものである。
「・・・ていうか、タケシちゃんはともかく、稟ちゃんもこういうところ結構子供だよね」
「ふふ、けど二人とも楽しそう」
しずかが微笑みながら二人を聖母のように見守る。―――勝負はそろそろ白熱してきて、止めなきゃちょっとまずいんで
ないの?という領域に踏み込んでいた。お互いやってるうちにマジになってきたのだろう。
スネ夫は、これを見て微笑むことができるしずかは将来とんでもない女の子になるんじゃないかと思った。
「は〜あ・・・ぼくものび太たちとあやとりでもやってた方がよかったかなあ・・・」
一方ドラえもん城内部では、のび太がプリムラ、リルル、そしてペコと一緒にあやとりをやっていた。
「これが最近開発した新技―――ギャラクシー・改だ!」
「おおっ・・・!」
ペコが感嘆の声をあげる。それはまさに糸が作り出す芸術。神秘の産物。その名の通り、輝く星空が見えるようだ。
「すごいわ、のび太くん。わたしにもやり方を教えてくれる?」
興味津々に聞いてくるリルルに、のび太はちょっといい気分になって基本的な技から教える。親密そうな二人の様子に、
プリムラはやや複雑な表情だった。ペコはそれに気付き、フォローしてやろうと親切心を出す。
「のび太さん。プリムラさんも教えて欲しいみたいですよ。見てあげたらどうですか?」
「ん?そうだね。プリムラもおいでよ」
「・・・うん」
返事しながら、プリムラはペコをちらりと見て「ありがとう」とペコにだけ聞こえるように言った。ペコは笑って、
片目をつぶって返事する。
「ところで、ペコはやらないの?」
「え?ぼくですか?ぼくはいいですよ、ちょっと難しそうですし」
「そうかしら?面白いと思うけど・・・」
リルルはさすがにロボットだけあって、手先が器用だし覚えが早い。すでにあやとりの基本と面白さを覚えたようだ。
「ペコは不器用そうだから、多分やってもできない」
プリムラは指先で糸を操りながら辛辣に言い放った。ペコはむっとして言い返す。
「ほう・・・挑発するにせよ言葉は選んでくださいよ。ぼくがその気になれば、楽勝ですよ」
「無理。無茶。むしろ無謀」
さっき助け舟を出してあげたというのに、何たる態度か。ペコはポキポキと指を鳴らした。
これはぼくの力を見せ付けてやる必要がある。ヒエラルキーをはっきりさせてやらねば、と意気込む。
「フッ・・・いいでしょう。プリムラさんにできて、ぼくにできないなんてことがあるはずないですよ」
言葉の端々にちょっぴり火種を抱えつつ、ペコはあやとりに挑戦する―――だが、そもそも彼は基本的に犬である。
あやとりのように手先の器用さが求められる遊びには決定的に向いていない。
「くっ・・・何たる屈辱か!」
指先を糸でがんじがらめにして、ペコは悔しそうにうめく。
「・・・勝ち」
プリムラは見せつけるように自分の指先を持ってくる。きれいに東京タワーができていた。ペコはそれを凝視しつつ、
のび太に尋ねる。
「のび太さん。まさか糸自体に何か良からぬ仕掛けをしてるのでは?」
「いや、してないし。しょうがないよ、人には向き不向きがあるもの」
「それにしても・・・むう・・・」
ペコは難しい顔でうなるばかり。ヒエラルキーを思い知らされた気分だった。
敗北感に打ちのめされるペコを尻目にふと、リルルが呟く。
「ところで、キラやドラえもんやムウさんはどこにいるのかしら?朝から姿が見えないけど・・・」
そのころ、件の三人は城の一室でなにやら作業をしていた。
「それにしても、いきなりどういう風の吹き回しなんだ、ドラえもん。<狐>のことを調べてみたい、なんて」
ムウがいぶかしげに尋ねる。
「ええ、やっぱりあいつはぼくらの<敵>ですし。どんな奴なのかしっかり知っておけば、何かの役に立つかと思ったん
ですが・・・」
「けれど、あんまり参考になりそうなデータはなさそうだよ」
キラはキーボードを叩きながら、ふうっと溜息をついた。
ドラえもんのひみつ道具であり、全宇宙のあらゆる情報を網羅する<宇宙完全大百科端末機>によって、<狐>の活動を洗って
みたものの、はっきり言って役に立ちそうなものではなかった。
「全くだぜ。<不死の研究>?<集団生命の終焉に向けての過程>?何考えてこんなバカなこと研究してたのやら。あげくの
果てに<終焉に向けての存在・コーディネイター製造計画>だあ?スーパーマンでも作るつもりだったのか、あの野郎」
「はは、まさか・・・」
キラはムウの言葉を笑い飛ばす。そして外の空気を吸おうと窓を開けて―――そのまま立ち尽くす。
「ねえ―――ドラえもん、ムウさん」
「ん?なんだ?」
「・・・人間が雲に乗って飛んでくるって言ったら、僕の頭がおかしいと思う?」
「はあ?なにそれ?そんなことあるはず・・・」
あった。確かに人間が雲に乗って、こちらに向かって飛んでくるのだ。呆気に取られたドラえもんだったが、それが
近づくにつれて、顔見知りであったことに気付いて慌てて手を振る。
「おーい、テムジンくん!テムジンくんじゃないの!?」
そう、それは風の民の少年―――テムジンだった。彼もドラえもんに気付き、こちらに向かってくる。そして互いに
数メートルの距離にまで近づいた。
「やあ、ドラえもん、久しぶり・・・」
「ど、どうしたの、何だか気分が悪そうだけど」
「ああ、こいつに乗ってたせいだな。すげー気持ち悪くて・・・」
そのまま窓から入り、床に座り込んで一息つく。彼を乗せてきた雲―――きんと雲は不気味なかんじにプルプルと
蠢いている。こんなもんに乗ってたのでは、そりゃあ気分も悪いよなあ・・・とドラえもんは納得した。
「よく分からないが、どうやらドラえもんの友人らしいな」
「はい、おれはテムジンっていいます。ええっと、ドラえもん。のび太もここにいるのかい?スネ夫やジャイアンは
外にいるのが見えたけど・・・」
「あ、うん、のび太くんなら・・・」
そう言ったとき、ドタバタと足音が響き、一同が口々にわめきながら部屋に入ってくる。
「ドラえもん!なんだか怪しい雲がここに・・・」
「ドラちゃん、大丈夫!?」
「青玉、かじられたり食べられたりしてない?」
「よく分からないけど、一体なにが・・・ああーーーっ!テムジン!?なんでここに!?」
いきなり騒々しくなった室内。なんでいつもいつもこう騒がしいのかと、ドラえもんは頭を抱えるのだった。
―――小一時間後。テムジンの自己紹介等を済ませ、ようやく部屋は落ち着きを取り戻していた。
「それにしても―――なんでテムジンがここに?」
のび太が尋ねる。テムジンは思い出したように手を叩く。
「そうだ、大事な用件があるんだった!のび太、フー子は覚えてるよな!?」
「あ―――うん・・・覚えてる、よ・・・」
<フー子>―――その名前を出した途端、のび太の顔が曇る。忘れるはずもない―――忘れられるはずがない。
世界を救うため、自分の命を捨ててしまった、大切な友達―――
「・・・それが、どうしたの?フー子は、もう・・・」
「違うよ。フー子は、生きてたんだよ!」
「え――――――!?」
テムジンの言葉を聞いて、のび太は思わずテムジンに詰め寄った。
「い、生きてるって・・・ほんとに!?どこに、今どこにいるの!?」
「わ、ちょっと、落ち着けって」
「ご、ごめん・・・」
「いや、いいよ。・・・じゃあ、事情を説明するな。実はな―――」
テムジンは風の民の村での出来事を全て語った。<山神さま>ヤークからのお告げ。世界に迫る危機。それと戦うのび太たち。
そしてフー子と、風の機械神―――
「・・・っていうわけ。詳しくは前回の話を読んでね」
「いや、そういう楽屋ネタはいいから」
律儀に突っ込む稟。のび太はテムジンの話をじっと聞いていたが、決心したように言い放つ。
「行こう、ドラえもん」
「のび太くん・・・」
「フー子が待ってる。だったら―――迎えにいかなくちゃ」
「うん―――そうだね。じゃああとは、稟さんたちも・・・」
「ああ。風の機械神ってのは、どうやらサイバスターのことらしいからな―――」
稟は頷きながら、シュウの言葉を思い出す。確か奴はサイバスターを見たとき、風の精霊がどうたら言っていた。
風の民の村。風の子<フー子>。風の精霊。風の機械神。
この符号は、一体なんなのか―――今から行く先に、その答えがある気がする。
「それじゃあ、そこへ行くメンバーは、のび太にドラえもん、念のためにザンダクロスも連れていった方がいいから
リルルもだな。それに稟、亜沙、プリムラだな。残りは敵の襲撃に備えてここに待機ってことでいいか?」
「え?ムウさん、ザンダクロスはここに残した方がいいんじゃないの?」
「いや、そうなんだがな・・・どうも単純に行って帰って、ってわけにはいかないような気がするんでね・・・ま、
ただの勘だよ。けど、俺の勘は当たるんだ」
ムウは<勘>だとのたまいながら、やたらと自信ありげに言う。それに押されたわけでもないが、結局ザンダクロスも
連れていくことに決めたのだった。
「じゃあ、あとはぼくらに任せてください」
「うん、頼んだよ、ペコ。みんなも・・・」
「おう、行ってこい!ちゃんとフー子を連れてくるんだぞ」
ジャイアンが乱暴ながらも激励の言葉をかける。
「気をつけてね」
「分かってるよ、しずかちゃん。心配しないで」
のび太はそう言いながらザンダクロスに乗り込む。それにドラえもん、リルル、そしてテムジンも続いた。
「テムジン、きんと雲はいいの?」
「いいよ、アレに帰りも乗ってけなんて言われたら、どうにかなっちゃうよ」
「はは・・・じゃあ、ポケットに入れておいて、あとでヤークさんに返そう」
「よし、ドラえもん。こっちは準備OKだ。そっちは?」
すでにサイバスターに乗り込んでいた稟から声がかかる。ドラえもんもOK,と返答する。
そして、ザンダクロスとサイバスターは発進する。すぐさまスピードが上がり、ペコたちからはその姿が見えなくなった。
「すっげえ!このスピードなら、風の民の村まで一時間ちょっとで着いちゃうよ!」
テムジンはすっかりはしゃいでいる。対してのび太は、操縦しつつも心はここにあらずといった風情だ。
と、サイバスターから通信が入った。
「のび太・・・」
「ん?プリムラ、どうしたの?」
「・・・その、フー子っていう子のこと、好きなの?」
画面の中のプリムラは、やけに真剣な顔で聞いてきた。のび太はパチクリと目を瞬かせ、頷く。
「うん―――好きだよ。大事な友達だもの」
「・・・そう」
それだけ言って、通信は切れた。のび太は首を傾げる。
「何だったんだ、今の・・・」
「のび太くん」
リルルが肩をツンツンと叩く。
「プリムラの前で、他の女の子―――なのかどうか分からないけど―――のことが好きだなんて言ったら、
あの子が傷つくわよ?」
「え?なんで?」
のび太はキョトンとするばかりだ。リルルはフウッと溜息をついた。そして誰にも聞こえないよう、こっそり呟く。
「鈍いんだから、この人は―――」
だけれども―――それも彼のいいところだ。そういうところに、彼女も、そして自分も惹かれるのかもしれない。
そして―――恐らく、そのフー子という<彼女>も。
「どんな子かしら、楽しみだわ」
リルルは、そっと微笑んだのだった。
投下完了。前回は
>>336から。
先日、コンビニでのバイト中の出来事。
客「宅配おねがいします」
僕「はい」
ふと届け先の名前を見ると<白河愁(シラカワシュウ)>・・・・・・
思わず爆笑するところでした。
次回、フー子復活・・・まで書ければいいなあ。それでは。
406 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/07(水) 23:30:01 ID:fNtxkgfN0
<<練習1日目>>
ミルコがフリーザを説得したと丁度その時、ザーボン達を乗せた宇宙船は無事惑星フリーザに到着していた。
「ふう、次はヤキュウか・・・。休んでからやりたいが、フリーザ様のあの様子じゃあ・・。」
そう、ザーボンがつぶやくとまるで待っていたかのようにあの宇宙の帝王が姿を現した!
「ふぉふぉふぉ、ザーボンさん、ドドリアさん。さあ、参りましょう。」
(やっぱりか・・・。)
そう二人は同時に思ったがコレもフリーザ様のため自分の命のため、できるだけ最高の笑顔で、
「ハイ!われわれも楽しみにしていました!」
と、とりあえず言ってみる二人。
すると、フリーザは満足そうに
「そうですか、貴方達も喜んでくれて私はうれしいですよ。」
と言いながらザーボン達の腕を引っ張り、野球場へ飛んでいった・・。
”ギャッキョウヤキュウジョウ”
野球場へ着くと、一足早く着いていたギニュー特選隊が練習していた。
どうやら足りない、ライト・レフト・センター・ピッチャー・キャッチャーは強化栽培マン達がその代わりとしていた。
ギニューがフリーザたちの到着に気付いたようで、特選隊(グルドを除く)を召集し急いでフリーザの元へ集まる。
「フリーザ様!今ご到着ですか!こちらはいつでも試合ができるようにスタンバイしております。」
そうギニューが言うと、フリーザは満面の笑みで
「そうですか。さすがですよ。グルドを除いたギニュー特選隊達は。」
「ハイ!ありがとうございます!では早速、サイヤ人どもとのデスマッチもとい練習試合を?」
すると、フリーザは自嘲気味に
「いえ。このフリーザ。間違ってもなにやらしても宇宙1ですが、そこのミルコさんがどうしても練習をしたほうがいいといいましてね。」
「そうですか・・。さすが部下のことを考えたら宇宙1のフリーザ様!では練習用のユニホームを用意します!」
「ほう・・。ユニフォームまであるのですか?まさか、貴方達が今来ているのではありませんよね?」
「いえ。今来ているのですが・・。それが問題でも?」
そう聞いたギニュー特選隊以外の者全員戦慄する。
果たしてそのユニーフォームとは・・。
407 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/08(木) 00:14:35 ID:XC2NZvko0
10分後・・・
着替えが終わったフリーザたちは、自分たち以外は誰もいないのにやたら辺りをきょろきょろしていた。
さすがに変だと思ったのか、ジースがたずねる。
「フリーザ様!お顔が優れないようですが、どこか具合でも・・?」
そう言うと、フリーザはやっぱり恥ずかしそうに
「ジースさん?貴方は恥ずかしくないのですか?」
そうフリーザが言うと、まるで臆面も無い顔で
「いえ!むしろ誇らしいですよ!これで益々練習に身が入るってモノです!」
「そ、そうですか・・・。」
宇宙の帝王であるものがやたら恥ずかしがるユニフォーム!
それは・・・・。
「ねえ?隊長?なんでフリーザ様たちはこのユニフォームを見たときから”あれ?コレ着るの?見たいな顔をしているのですかね?」
「ふむ・・。やはりグルドの顔面アップで”I LOVE フリーザ野球軍”の刺繍はまずかったのかな〜。」
「自分はグルドが野球できないと聞いたとき、”ならば自分はコレでフリーザ様を応援だ!”と言ってコレを作ってきた時は感動したものですが。」
「うむ、きっとフリーザ様もそのことに気付いて照れておるのだろう!ああ見えて、結構シャイな方だからな!」
「そうですね!たまにはグルドも役に立つな〜。」
「そうだな!はっはっはっは!!!!」
そう遠くで会話するジースとギニュー。
それを聞いたザーボンは
「このことはフリーザ様に黙っておこう。言ったら、宇宙の星が又一つ消えてしまうからな・・・。」
そう心に硬く誓ったのであった・・。
408 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/08(木) 00:16:19 ID:XC2NZvko0
そうザーボンの心が固まるころ、フリーザは早速投球練習に入っていた。
「ピッチャー第1球・・、振りかぶって投げました!!」
と自分で言いながら、球を投げるフリーザ。
キャッチャーであるドドリアの後ろで速度計でフリーザの球速を測るミルコ。
「フリーザ様!」
「どうです?何キロ出ましたか?」
そうフリーザが聞き返すと、ミルコが残念そうに
「0kmです。」
と言った。
コレを聞いたフリーザ様は
「な、なんだって〜!」
と叫びまるでムンクのような顔でただ呆然とこちらを見ていた・・・。
〜ドドリア談〜
「ええ、あの時のフリーザ様は今まで見たことも無い顔をしていましたよ・・。そう一瞬顔が地球人3人なったと思ったら”なんだって〜!”と叫ぶぐらいでしたから・・。」
○×△年9月30日 週間フリーザ”私と野球と逆境について”のコーナーにてあドドリア元幹部の談
409 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/08(木) 00:25:24 ID:XC2NZvko0
5秒以上の静寂が辺りを支配したが、フリーザは気を取り直して
「ほほほほ!冗談でしょう?ミルコさん?私目で見てもざっと亜光速位の速度は出ていましたよ?」
「・・・・。それが問題なんです。フリーザ様・・。」
「ほ?」
自分の予想だにしない回答に思わず口癖の”ほ”だけで止めてしまうフリーザ。
「早すぎて、燃え尽きてしまうのですよ・・。詳しい物理学はフリーザ様の頭じゃ無理ですけれども、簡単に言えばミットに着く前に空気摩擦で燃え尽きてしまったんですよ。」
「クウキマサツ?」
のび太並みのアホ顔で聞き返すフリーザ。
どうやら会話が難しくて話の意味が分からないようだ。
「用はフリーザ様の球が速すぎて球が燃え尽きてしまったというわけですよ。この球状はわれわれの強さに比例して作っていますので、センターまでで2km。
ピッチャーマウンドからキャッチャーまでの距離を200mにしていますが、それだと長すぎてフリーザ様の場合は球がキャッチャーマウンドに届かないようですね。」
「ほほほほほ。そういうことでか・・。私の力が強すぎて端が燃え尽きるって!おめえ〜はそんなことも考えずにこのドームを設計したのか〜〜〜!」
といきなり最終形態に変身して怒り出すフリーザ。(基地内ではサイヤ人KILL・KILLモードと呼ばれている)
そのころフリーザの気によって起きた地震により基地内のブレーカーが落ち、地球の激戦で体を癒していた一人のサイヤ人の命の火が消えつつあった・・。
410 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/08(木) 00:26:28 ID:XC2NZvko0
「ふ、フリーザ様・・。お怒りをお静めください。ほれ!お前らいけにえのサイヤ人をここに!」
そういって、何かと思ってでてきたハゲと長髪のサイヤ人が宇宙の塵となった・・。
「はあ、はあ・・・。スイマセンね。お見苦しいところをお見せしました・・。よく考えたら、みんなマウンドに届くのに自分は燃え尽きて、燃え尽きて!届かないということは、私の凄さを示しているのを忘れていましたよ!」
「そ、そうですございますよ。フリーザ様。ピッチャーはメインになりやすいですが、4番サードという漫画も地球にあるくらいですから別にサードでもフリーザ様の良さは少しも損なわれないのではないかと思いますが・・・。」
そう、ミルコが必死でフォローする。
すると、フリーザは満足したように
「これが、逆境ですか・・・。」
「は?逆境・・?」
そう、オウム返しにミルコが聞き返すとフリーザは
「ほほほほほほ!コレが逆境ですか!燃えますね〜!」
「ふ、フリーザ様?」
いつもと違うフリーザにさすがにあわてたのか、キャッチャー役であるドドリアがマウンドに飛んでくる。
「キャッチャーがピッチャーの下に来る!これもまた逆境!ドドリアさん!これから私がキャッチャーミットにボールが来るまでそこから動いてはいけませんよ!ほら!早くマウンドに戻って!」
急に機嫌が良くなったフリーザを見てミルコは
「・・・。馬鹿でよかった・・。」
とボソッとつぶやいたのであった・・。
411 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/08(木) 00:33:49 ID:XC2NZvko0
こんにちはしぇきです。
連続投稿というもの初めて経験してちょっとあせりました。
>ふら〜りさん
レスをいただきありがとうございます。
コレだけの投稿があるこのスレで、いつも素晴らしいレスをつけるのは
ある意味SSを書く並に大変じゃないかと思います。
>サナダムシさん・サマサさん
いつもクオリティーの高い作品を読ましてもらっている一人です。
長編を何回も書くというのは本当に凄いですね。
保管庫にあるSSを全部本にしたら、何ページぐらいあるのだろうか・・?
>レスをくれた皆さん
温かいレスをありがとうございます。
ちなみにキャプテンを読んだいたのは小3ですが、リアルタイムではないです(笑)
では失礼します・・。
412 :
作者の都合により名無しです:2005/09/08(木) 13:37:46 ID:b/0EG1YQ0
>超機神大戦
今回はほのぼのモードですね。本来、しずかやプリムラはこんなシーンがよく似合う。
ちょっとしたプリムラのやきもちとかの描写や、のび太子供らしい鈍感さの描写が好きです。
>フリーザ野球軍
こいつらに野球の練習の必要あるんかと思ったら、フリーザ様が苦戦してますねw
宇宙の帝王とは言え、苦手なものの一つくらいはあるのかwギニュー達のノリは予想通りでしたw
413 :
もにゅー ◆USIWdhRmqk :2005/09/08(木) 15:38:03 ID:AiKw1S5fO
こんにちは。語ろうスレを見て、こちらに来ました。
バキのお話を近々書きますのでよろしくおねがいちます。
サマサさん、しぇきさん、いつもお疲れ様です。
>サマサさん
嵐の前の静けさ、かな?
第一部が激闘で終わって、2部が始まってからは優しい風景が続きますね。
しかしそろそろインフレバトルが始まる予感。
フー子のいる場所でどんな騒動と戦いが待ち受けているのか楽しみです。
>しぇきさん
フリーザの威圧感の中にも、どこか「お茶目さ」みたいなものが出てますね。
そういえばフリーザは怖がられているだけでなく、特選隊から慕われてましたっけ。
フリーザのミスを笑ったら地獄行きだから命懸けの練習ですねw
>もにゅーさん
おお、待ってます。頑張って下さい。
サナダムシ氏、サマサ氏、しぇき氏いつも頑張ってくれて乙です。
毎度楽しみにしています。頑張って下さい。応援してます。
(感想、あまりうまくかけなくてすみません。文章下手なんで)
あと、もにゅう氏、 俺も期待してますよ!
>不完全セルゲーム
セル、とうとうスーパーセルに変化?完全セルにどう勝つか楽しみ。
>のび太の超機神大戦
まったりモードからふー子探索モードですね。次回から激闘ですか。
>それゆけフリーザ野球軍
宇宙の帝王フリーザ様ともあろう方がワロスw頭悪いなフリーザw
416 :
ふら〜り:2005/09/08(木) 21:46:25 ID:EoG+B5Uo0
>>サナダムシさん
今回は、セルもジュニアもカッコいいっっ! 親が、我が身のことを考えずに子の命の
保証で安堵すれば、子は親を護る為、敵わぬ相手に挑む……カッコ良過ぎますっ! でも
クリスタルは相変わらず。いやさすがに今回だけは、ジュニアの捨て身に応える、とか?
>>サマサさん
女の子たちの間で、いろいろ交錯してますな。今はまだ平和ですけど、今後どうなるか。
その頃には戦闘も激化してるでしょうし。で、ペコがヘコまされてますな。またしても
プリムラに。前にも言いましたがこの二人の関係変動、ペコの逆転とか見たいとこです。
>>しぇきさん(♪僕は ありがとうと そっと言うのさ……♪ OPもEDも好きです)
>と自分で言いながら、球を投げるフリーザ。
ツボりました、これ。アホ可愛くて最高です。このフリーザ、ずっとし無邪気に楽しそう
ですけど、でもフリーザだから、巻き添え被害は半端でなくて。ザーボン以下、常識人な
部下たちご苦労様です。命がけで最強無邪気帝王に仕える彼ら、試合まで生存できるか?
>>もにゅーさん
当スレの原点、バキですか。お待ちしておりますよっ。かくいう私も現在、
バキ&パタリロで執筆中にござれば。いずれ書き手として再会しましょうぞ。
417 :
茄子:2005/09/09(金) 02:55:45 ID:/dbKg7Fg0
その8 長い陰
今日は土曜。俺は友人ら三人を乗せた車を郊外の小料理屋に向けて走らせ
ている。
そこはとにかく美味いそうだ。特に「茄子とトマトのパスタ」が絶品との事。
しかし、大分疲れてきた。そりゃそうだ。もう二時間も運転しっぱなしだもの。
後ろの連中がうっさいので眠気が余り無いのはせめてもの救いか。
それにしても、今日はいい天気だ。空は真っ青で雲はほとんど見えず、太陽も
目に刺さるような眩しさではない。全てのバランスが完璧に整っている空だと思っ
た。
だから、目の前に並木道が見えてきた時、少しうろたえた。
並木道に入ってしまえば、そこには陰しかない。葉もたわわに生い茂っていて、
空も見えそうに無い。しかも大分長そうな道なのだ。ここからでは、出口が確認
出来ない程に。
嫌な、感じがした。あの陰には入りたくない。
しかし、入らないわけにもいかないだろう。
「おーい、この並木、どこまで続くんだ?」
俺はそう後ろの連中に話しかけた。後ろを振り向かずに。
答えは無い。
「? おい――」
俺は少しブレーキを踏み減速して、後ろを振り向いた。
三人は、凍っていた。動かない塊になっていた――
「おい――こりゃあ、どういうこった」
訳の分からない事態に直面すると、人は苦笑いを浮かべる以外に取るべき事が
無いらしい。俺も御多分に洩れる事は無かった。
訳は分からないが、前を見て運転しないと危ないのは間違いない。俺は顔を正
面に戻した。
「おい、お前ら動けるんだろ? 話せるんだろ? 本当はよ。俺は特別な人間じゃ
ねーぞ! お前らが動けねえ話せねえなら俺だって同じになる筈だろがよ」
俺は再び後ろを向こうとした。しかし、動かない。手も動かない。足も動かない。
俺も凍っちまったのか。
418 :
茄子:2005/09/09(金) 02:56:37 ID:/dbKg7Fg0
「や」
とうとう声帯も凍ったらしい。声も出せなくなった。動いてるのは、頭ん中だけか。
奴らもそうなんだろうか? 体は動かないけど、考える事は出来てるんだろか。
この陰のせいか?
だよなあ。嫌な感じがしたんだよ。
「違うわ。陰は仲介に過ぎない。貴方達を止めたのは私」
なんだ!? 急に頭に女の声が響き出したぞ?
「はじめまして――じゃないけど。私はミスティ。夢の世界の住人」
ミスティ? 夢の世界? なんじゃそら。
「私は今、貴方の頭の中に直接話しかけているの。私の声は後ろの貴方の友人
には聞こえていないわ。というか、頭が動いていないけどね」
――意識があるのは俺だけ?
「そう。だって、貴方と話す為だけに止めたのだもの。後ろの人達とは関わりの無
い事」
俺に用があるのかよ? 俺、夢の世界なんてメルヒェンなモン知らないよ。
「忘れているかもしれないけれど、貴方は来たわ。私の家まで。つい数日前の話な
のに」
え?
「あの夜は熱かった――貴方は久方振りに私を燃え上がらせてくれたの。貴方のテ
クと情熱的な振りは、何度も何度も私に絶頂を迎えさせた」
――ちょっと、思い出した。
「思い出してくれた!?」
ああ、ウン年振りに夢精したあの日だな。ご無沙汰だったから量が多くて大変だっ
た。そうか、あの美人はお前だったのか。
「あら有難う。あそこはねえ、退屈なの。ホント、つまんないのよ。刺激が無い! で
も――あの日は、そんなこと無かった。だから、もう一度貴方に会いたくなったのよ。
その為に陰に協力して貰ったの」
陰に?
「人間って、陰に入ると時間が止まって感じられる事があると思うの。それは暗闇が
眠気を誘発するから。私はそれを僅かばかり調整して変質させただけ」
簡単に言うけどどうやるんだよ、そんなの。
「私は眠りのプロフェッショナルですから。プロは企業秘密ってのを持ってるものよ」
419 :
茄子:2005/09/09(金) 02:57:52 ID:/dbKg7Fg0
まあいいや。で? 俺とこうして再会出来た訳だが、どうしたかったのさ?
「こうしたかったの」
なんか頭の中でごそごそ音がするぞ?
「探してるの。人には露出されている以外にもう一つ『心の自身』がある。それをね、
探してるの」
心の――て待て! お前、俺の頭の中にいるのかよ! 外から話しかけてるんじゃ
ないの?
「私はこの世界に実体を持たないから――あれば、こんな回りくどい事しなくても貴方
と交われるのにね――あ、あった。ふふ、いやだ。立派」
あっ。
「ちょっと触れただけなのに敏感ね」
うっ。や、止めろ。
「嫌よ嫌よも好きの内――ってね。いい言葉だわ。ん……」
余りの快感で背中がぞわっとした。凍ってなければ、震えが収まらなかっただろう。
「ふふ。いいでしょう? 私も余り経験がなかったから、あの日から猛練習したのよ。
ん……」
うわああっ――
一時間後。
「うまー」
「茄子うまー」
「トマトうまー」
「……」
こいつらは知らないんだろうな。何故俺が放心してメシどころではないのかを――。
気付きも、しないんだろうな。
「食わないならくれよ」
「ああ。三人で喧嘩せず分けるんだぞ。帰りの車ん中で険悪になられちゃ困るからよ」
「わーい」
「わあい」
「わはあい」
お前ら大好きだよ。
420 :
茄子:2005/09/09(金) 02:59:38 ID:/dbKg7Fg0
まずお詫びと訂正。前回の「茄子」は七回目の間違いでした、すんません。
あとどうでもいいですけど、全ての漫画キャラの中で『キャプテン』のイガラシが一番好きです。
彼の強さも危うさも、全て素晴らしい。アニメの棒読みっぷりで決定的に好きになりましたね。
>>374 成美はこれからも主役脇役問わずちょこちょこ出してこうかなと。卒業まで書きたいですね。
>>375 そうなんですかね。自分としては『魔女』はシリアス『茄子』は基本線はライトでコメディって程度にしか
考えていませんでした。
成美が出ると、俺もなんかまったりと書けるんですよね。不思議な事に。
>>376 淡々と、というのは原作(というか作者の味)がそうなので。そこは一応意識してやってますが、黒田硫黄
の域は遠いですね。そりゃもうエライ遠さです。早く次の連載始めてくれないかな。
>>389 まさか自分で作ったキャラが「萌え」と言われる日が来るとは。いや、そう言われるのは嬉しいですよ。
読んでくれた人に楽しんでもらえれば何でもいいんです。
しかし東京近辺に住んでる人は羨ましいなあ。蟲師のアニメを普通に見れるんですから。多分スカパーでもやる
でしょうけど、どうしても遅れますからね。かなり良さそうですよ。早く見たい。では次回。
魔女からゲスト出演ですか、ミスティ。そのうちギンコも見たいなあ。
でも、魔女のミスティとキャラが違いすぎる気が・・。
茄子は確かにコメディですから、ミスティも作品にあわせて変化する・・のかな?
422 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/09(金) 15:43:03 ID:JJoOgV8o0
<練習1日目の夜>
「ギニュー隊長、ちょっと良いですかな?」
「ミルコ殿何でしょうか?」
ギニューにとって常にフリーザや部下に的確な指示を入れるミルコも尊敬できる人物の一人。
いくら自分が特選隊の隊長といえどきちんと敬語を使ったりもする。
「フリーザ様のあの状況・・。どう思われますかな?」
そうミルコが聞くと、ギニューはうれしそうに
「はい!こちらもフリーザ様の野球に対する情熱で益々やる気が出るってものです!」
「・・・、いやそういうことを聞いてるのではないのじゃがな・・。」
「ご、ゴホン・・・。分かっております!あのままでは野球にならない。ということですね?」
「・・。うむ、その通りじゃ。あの後も、自分で実況しながら何百球も投げていたが・・。」
「・・・全部燃え尽きてますからね。」
そう困った顔をするギニューを見て、横にいたジースはふとアル一言を。
「フリーザ様が今より戦闘力が落ちれば何とかなるかもしれないんですけどね。ね?隊長?」
そうジースが言うと、ミルコが顔を輝かせ
「それだ〜〜!」
とキャラに似合わない絶叫とともに自室へ引きこもってしまった。
呆然とその状況を見送る二人だったが、”コレで何とかなるだろう!”という勝手な解釈とともに自分たちも自室へ帰っていった・・。
423 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/09(金) 16:08:33 ID:JJoOgV8o0
「くらえ!フリーザ!!」
そういって、サイヤ人が巨大な気の塊をこちらに投げる。
フリーザはこの気の塊をどうにかしようと、必死にバットを振るがどうにもならない。
何回も何回も振るが巨大な気の塊を打ち返すことができないのだ。
「くそ・・・、こんなもの・・。ぐ、グワ〜〜〜!!!!!!」
フリーザがそういった瞬間、意識がはぜる。
「ま、丸井のことか〜〜〜〜〜〜!」
フリーザの断末魔はこういった台詞になった・・。
AM6:30
”真っ赤に燃える王者の印〜♪巨人の星をつかむまで〜♪”
巨人の星のOPを内蔵した時計にやっとのこと現実に戻されるフリーザ。
「はあ、はあ・・。なんだったんだあの夢は・・・。」
そういって横に目を向けると、昨日ミルコから借りた「キャプテン6巻」が置いてあった・・。
「・・・。独裁は自らの地位を危ぶませることもあるか・・。」
そう一瞬だけ思うが、過去のことは振り向かない帝王なのですぐに忘れてしまった。
”コンコン。コンコン。”
「ん?誰ですか?この朝っぱらからこの宇宙の帝王に用がある愚か者様は?」
そう言ってドアを開けると、そこには誰もいなく一つのダンボール箱だけが置いてあるだけだった。
「ふふふふ、このフリーザ様にピンポンダッシュですか?いいだろう犯人を見つけてじわじわといたぶって・・・ってこ、コレは!!」
フリーザはまだコレは夢の続きなんじゃないかと錯覚するほどびっくりしてしまった。
それもそのはずそのダンボールに書いてある宛名とは・・?
424 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/09(金) 16:37:08 ID:JJoOgV8o0
<<練習2日目>>
「ほっほっほっほ・・。もう私に不可能はありませんよ!ドドリアさん。さあ、振りかぶって第1球!投げました〜!」
そう一人実況をしながら今日も元気に投球練習をするフリーザ。
一方、昨日のフリーザの投げ込みと自分の体重のせいで腰を痛めたドドリアは
(またか・・・。何度やっても無駄なのに・・)
と思っていたが、その時!
ズバーン!!
と、軽快な音を立ててドドリアのミットにフリーザが投げた球が入った!
「え?ふ、フリーザ様・・・。」
あまりの驚きにドドリアは声を失っていたが、逆に投げた当の本人はそこまで喜びの感情を表に出していない。
「ほほほほほ。まあ当然ですよ!私を誰だと思っているのですか?ドドリアさん?さあ、次行きますよ!」
「はっ!スイマセン!さあ、どんどんお願いします。フリーザ様!」
そう言って、どんどん投げ込むフリーザ。多少火が出るようだが、球の形を保ったままきちんとミットに収まり続けている。
「み、ミルコ殿。一体どうやってフリーザ様はミットまで球を投げているのですか?」
その様子を見ていたギニューはすぐにミルコの元を尋ねた。
425 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/09(金) 16:58:10 ID:JJoOgV8o0
「ふふふふ。そんなに知りたいかね?」
「そりゃ、勿論!やはり昨日のジースの言葉どおり・・・。」
そうギニューが言うと、”正解!”とばかりの表情でミルコは”コレ”を取り出す。
「こ、コレは?」
「コレはフリーザ弱体化養成ギブスじゃ!」
あまりの突然のネーミングに戸惑うギニュー。
「え?コレは巨人の星で登場したメジャーリーグ養成ギブスではなくて・・?」
「いや、その逆じゃ!コレをつけたものは戦闘力を1/10まで落とすことのできる魔法のギブスじゃよ!」
「い、いらね〜〜〜!」
「どこから出てきたんだ?ジース?」
「いえ、最初からそばにいましたよ。気付かなかったんですか?」
「・・・・・。まあいい。それよりも今のフリーザ様は・・。」
「ふむ、おぬしより弱いの〜。戦闘力で言うと53000かの。」
「お、俺より弱い・・。」
いままで自分があこがれていた存在が、たかが野球で自分より弱くなることに絶望していると
「今なら、フリーザの首がとれますぞ?」
とミルコが悪魔のささやきを始めた。
426 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/09(金) 16:58:43 ID:JJoOgV8o0
「な?」
突然のミルコの言葉にギニューは思わず
「や、やっちゃうかな?はははは・・。」
その言葉を聴いたジースは
(どうしよう!コレは立派な革命だ!俺はフリーザ様と隊長どちらにつけば・・・。いや、ここはまだ変身を残しているフリーザ様に付くか?)
等と考えていると、ミルコは笑いを我慢するのが限界のようで
「ふぉふぉふぉふぉふぉふぉ〜!無理じゃ!無理じゃよ!ただ一時的に戦闘力を抑えるだけのギブスじゃからな。超能力や変身など使われたらおぬしといえど勝ち目が無かろう。」
そう、腹を抱えながら説明するミルコ。
「・・・・・。そうで、そうですよね!はっはっは!自分もそう考えていましたよ!それにフリーザ様を裏切れるはずが無いじゃないですか!」
そう、汗を大量にかきながら笑顔で答えるギニュー。
「まあ、弱体化しても宇宙の帝王じゃからな。しばらくはフリーザを越えるものなど現れまい。」
そうミルコはいうと、
「わしゃ、また地球に漫画を買いに行かせるサイヤ人を選ばなくてはならんからまた後でな。練習は適当にやっといてくれい!」
「そうですか。分かりました。では失礼します。」
と、ギニューが言うとミルコが思い出したように
「そうそう、明日はアプールたちと練習試合じゃぞ。朝は5時30分に集合じゃ!遅れるなよ!星と星の間には時差があるからな。」
「ええええええええ〜!ちょっとお待ちをミルコ殿!フリーザ様たちは、まだバッティング練習なんてしておりませんよ!」
「大ジョブじゃ!相手はアプール一族。スイングした風で球が飛んでいくじゃろ?・・・多分。」
「多分って・・。って待ってくださいミルコ殿!!」
----バタン!
ミルコは最後まで話をせずに行ってしまった。
「・・・。明日は大丈夫だろうか・・・。」
そう懸念するギニューに対し、やっと結論ずいたのかジースが
「スイマセン!やっぱり俺はフリーザ派になります!」
と時間遅れのボケをかましてきたのでギニューが袋たたきにしたのは言うまでも無い。
果たして、フリーザたちはアプールに勝てるのだろうか?
続く
427 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/09(金) 17:02:20 ID:JJoOgV8o0
どうも、しぇきです。
アプールたちとの練習試合が終わったら、地球に漫画を買いに行くサイヤ人の話も少し書きたいと思います。
>ふら〜りさん
キャプテンの曲はいい曲ですね!よくわかります。
単行本の最後にそのころの有名人がコメントするところがあるのですが
そこら辺も含めてコノ漫画はお気に入りでした。
>レスくれた方
どうもありがとうございます。他の方に比べて読みにくい文章ですが、感想をいただけてうれしいです。
では失礼します。
428 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/09(金) 17:15:24 ID:JJoOgV8o0
>茄子さん
いつもながら文章が読みやすくて素晴らしいです。
長すぎず、短すぎずと一番難しいところをちゃんと毎回書いているのが凄いです。
>イガラシ
プレイボールになってから目立たなくなってしまったのが残念ですね。
せっかく予選〜全国大会とすべて勝っていったのに・・。
作者の病気さえなければ・・。(よく考えたらスレ違いですね。自重します。)
429 :
作者の都合により名無しです:2005/09/09(金) 21:57:54 ID:yuCp4lzg0
>茄子
ミスティの登場で、少し今までの茄子と毛色が違ってくるかと思いきや、
ミスティの方が茄子に影響されてるなw「夢魔」とか「淫魔」という感じですな。
しかし、相変わらずオチはふんわりとした感じですな。
>それゆけフリーザ野球軍
中間管理職の悲哀を感じますな>ミルコ
強力で、カリスマ性もあり、しかしわがままな上司に悩まされる姿が悲しい。
しかしアプールごときと野球ではどっこいですかw
茄子は、魔女や蟲と違ってゲロさんいい意味で肩の力抜いて
書くのを楽しんでいる気がするなあ。
しぇきさんも筆が乗っていいペースで書いてくれてるし、いい感じだね
ブラキン氏やミドリさんは復活したけど、ザク氏はまだ来ないな
前スレで書く意思あると言ってたのに。
ザク氏にも都合があるんだよ。もう少しだけ待て。
ゲロさん、しぇきさん執筆快調ですね。
茄子は日常のほのぼの感を大事にしてる作品ですから、ミスティもこの作品に
出ると軽くなりますなあ。エロかわいくて好きです。
フリーザ野球軍、練習の段階から悪戦苦闘ですね。アプール程度にやられるようでは
サイヤ人相手では苦しいかな?
パオを始め、ほんっとつまんねえSSしかねえなココってw
434 :
オーガスーツ:2005/09/11(日) 10:08:25 ID:jpbjTXRg0
今日もぽかぽか暖かい、常春の国マリネラ。
「殿下〜殿下〜どこですか〜」
広大なマリネラ王宮の中を、一人の若者が主君を求めて走り回っていた。黄色を
基調とした、のどかな色合いの軍服に身を包んだ武官だ。
彼は国王パタリロの側近、タマネギ部隊の一人。ゴゴゴ号である。
「全くもうっ。仕事は溜まる一方だっていうのに、一体どこで何してるんだか」
ゴゴゴ号は、何十回目か覚えていない溜息をつきながら、何十部屋めかのドアを開けた。
「?? な、何だあれは?」
部屋に足を踏み入れたゴゴゴ号は、その場で立ち止まり、絶句してしまった。
この部屋はバタリロの研究室なので、様々な工具や薬品が散乱している。そんな中に、
ドレスが一着。染み一つない漆黒のワンピースに、純白のフリルつきエプロン
が眩しく映える、質素で清楚で、かつ華やかに可愛らしいエプロンドレス。
いわゆるメイドさん衣装が、工作机の上にぽつんと置かれているのだ。
しばし固まっていたゴゴゴ号は、やがてそのエプロンドレスに近づいて手を伸ばした。
「そういえば……最近、レッツラ号が何だか冷たいんだよな……女装っていうのは
邪道だとは思うけど……僕がこういうの着て、ちょっと雰囲気を変えてみたら」
ちゅどおおおおぉぉぉぉんっ!
突如、爆発。ゴゴゴ号はドアをブチ破って部屋の外まで吹き飛ばされ、スリッパで
叩かれるゴキブリもかくやの勢いで壁に叩きつけられた。
ぷすぷすと体から煙を立たせて、ゴゴゴ号は倒れ伏す。そこに、
「ん、ゴゴゴ号か。メイドさんに反応するとは、タマネギとしては珍しいな」
何事もなかったかのような顔をして、十歳ぐらいの少年が歩いてきた。車に轢かれた
賞味期限五年オーバーのつぶれ大福こと、ここマリネラの国王パタリロである。
「仲間内でイジめられたりしてないか? 女の子に興味があるなんて、ほんと珍しい」
「違いますっ! 自分で着ようとしたんです! 最近倦怠期っぽいので打開策として!」
ゴゴゴ号は跳び起きて力説した。今パタリロが口にしたのは、よっぽど許せない
誤解らしい。
「まぁそれはともかくだ。お前がぼくの盗難防止装置に引っかかったのは事実だな」
435 :
オーガスーツ:2005/09/11(日) 10:08:56 ID:jpbjTXRg0
「あ、す、すみません。盗むつもりではなかったんですけど。……って、何で殿下が
あんなものを? こんな物騒な仕掛けまでして」
「ふっ。あれは、ただのエプロンドレスではないぞ。名付けて『オーガスーツ』」
得意げにパタリロが語ったところによると。
以前、着れば誰でもバンコランの能力と性格が身につく、『プレイボーイスーツ』
というのを作ったことがあった。そこで今回は、更に強力な能力と性格を付与できる
スーツを開発しよう、と考えて対象にしたのがオーガこと範馬勇次郎。
つまり、あのエプロンドレスを着さえすれば、誰でも勇次郎本人のように強く、
傍若無人な性格になるのである。
「それが何でエプロンドレスなんです?」
「別に深い意味はない。プレイボーイスーツがガクランだったから、次は女の子の
服がいいかな、と思って」
言いながらパタリロは部屋に入った。盗難防止装置の威力は期待通りだったらしく、
部屋の中は惨憺たる有様だ。机は潰れ、工具は変形し、薬品は蒸発し、スーツはない。
「あの、殿下。盗難防止装置のせいで当の品物が跡形なく吹っ飛ぶというのはどうかと」
「こらこら。このぼくが、そんなマヌケなことをするはずがないだろう。プレイボーイ
スーツの時の失敗も考慮して、オーガスーツの強度は極限まで高めてある。並の爆弾や
銃撃では傷一つつかないんだぞ。だから多分、ほら」
パタリロは部屋の側面にある、開きっぱなしの窓を指した。
「あそこから飛んでったんだろう」
「ああなるほど。……って殿下! あのエプロンドレスを着れば、誰でも
範馬勇次郎みたいになるんでしょうっ!?」
「みたい、じゃなくて能力も性格も範馬勇次郎そのものになる。人生経験とその知識
なんかは本人のがそのまま残るが」
「ですから! そんな物騒なブツが、良からぬ人物の手に渡ったらどうする気です!
すぐ回収しないと!」
ゴゴゴ号は大慌てで、パタリロを引きずって駆け出した。
436 :
オーガスーツ:2005/09/11(日) 10:10:47 ID:jpbjTXRg0
王宮の中庭。タマネギ春の特大号が、ふんふふんと鼻歌交じりに掃き掃除をしている。
いくらマリネラ王宮とて、そう毎日毎日騒動が絶えない訳ではない。今日は静かだ。
平和だ。のどかだ。春の特大号はそう信じて、大好きな掃き掃除に勤しんでいたのだが、
「パタリロはどこにいるのっっ!」
いきなりやってきた少年の怒鳴り声が、心地よい静寂を突き破ってくれた。亜麻色の
長い巻き毛を振り乱し、ずかずか大股で迫ってくるその様は、ギリシャ神話の中で
最も恐ろしいと評される、嫉妬に狂う女神(アテナ)のよう。
つまりそれぐらい、凄絶なほどに美しいのである。言われなければ誰しも、マライヒ
のことを絶世の美少女だと思うであろう。だが彼は美少女ではなく、美少年。
「あ、マライヒさん。今日はまた一段とお怒りのご様子で。また少佐のことですか?」
「そうだよっ! 今日はイギリスから逃げてマリネラ経由でアメリカに飛んだっていう、
麻薬密売組織の幹部を追いかけて……」
マライヒは、同棲相手であるバンコラン少佐が構ってくれないのでご機嫌斜めのようだ。
バンコランはMI6の腕利きエージェントであり、かつ天下無双のプレイボーイなので、
そう簡単に家で大人しくはしてくれない。なので、マライヒはよくこういう状態に陥る。
春の特大号のみならず、タマネギの全隊員もそしてパタリロも、もう慣れっこだ。
「つまり! マリネラの出入国管理局で食い止めてれば、バンはアメリカまで行かなく
ても良かった! マリネラのせい、パタリロのせいだ! ひとこと文句言ってやる!」
それを言うなら、最初にバンコラン=MI6のお膝元であるイギリスから逃げたん
でしょーが、と春の特大号は言いたかったがやめた。これぐらいの八つ当たりは、
この状態のマライヒにしてはマシな方だからである。
「殿下はいつも通り、仕事からの逃亡中でして。今も王宮で追いかけっこしてます」
「なら、ぼくもその追いかけっこに参加するまでだっ!」
頭から湯気を立ててるマライヒが、王宮へと向かっていった。春の特大号はそんな彼を
見送って、いつものことだと特に気にせず、掃除を再開する。
この時。春の特大号がマライヒを応接間にでも案内していれば、後の悲劇は避けられた
かもしれない。だが、ここはマリネラ王宮。毎日毎日騒動の絶えない場所なのである。
春の特大号が、掃除を再開してマライヒに背を向けた直後のこと。
一着のエプロンドレスが、マライヒの前に落ちてきた……
男同士でくっついてる姿をTVで観て、「マライヒはおカマ」と素直に理解した幼き日の私。
それが今や、や●い同人もボーイズラブノベルもOKなオトナに成り果てて。
歳を食うと、人間ってなぁ変わるもんです皆の衆。
>>ゲロさん
ミスティ。いきなりこの名が出てきた時は驚きましたが、その後の彼女の言動を見て腰を
抜かしましたぞっ。で
>>429さんと同様サキュバスっぽいと思いました。が、彼女の場合
どうやら男性側に害がない様子。これも「茄子」ワールド故か。他の作品なら多分……
>>しぇきさん
まだ一人実況してるフリーザも、時間差ボケのジースも良いですが、ミルコもいい感じ。
あのギニューにきちんと尊敬されて、フリーザさえ真面目に話を聞こうとする人。そこに
至るまでの苦労を思うと……きっと練習試合でも、いろいろ大忙しなんでしょうねこの人。
438 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/11(日) 17:25:46 ID:m71l2hMB0
<<練習二日目・午後>>
「さて、午後もピッチングの練習をしましょうかね。ドドリアさん?」
「はっ!午後は変化球の練習でしょうか?」
そうドドリアが言うと、フリーザは突然ブチぎれて・・。
「このピンクドリアンが〜〜〜!このフリーザ様に変化球の練習だと!?このフリーザ断じて直球以外は投げん!それが分からぬか!」
と戦闘力53万/10を全力開放するフリーザ。
「ひっ!す、スイマセン!そうです!フリーザ様は直球だけで十分ですよね!いらぬ口を利いて申し訳ありませんでした!」
戦闘力を気という概念で感じられる種族ならばフリーザの気の減少にきずくものだが、ドドリアはただのパワーデブ。フリーザの迫力と普段からフリーザに使えているものの習性として深々と頭を下げてしまう。
「ふん・・。まあ私のことを考えて言ったということで許してあげましょう。ただし次はありませんからね?ドドリアさん?」
「は、はい!ありがとうございます!フリーザ様!では、早速練習を開始しましょう。フリーザ様。」
ドドリアはほっと胸をなでおろしながらさっさと投球練習を始めるように急かせる。するとドドリアの後ろから、困り果てた顔のギニューが現れた。
「あら、ギニューさん。どうしたのですか?分かりましたよ。なぜ私がたった一日で球がミットに入るようになったか知りたいのですね?まあ、そこまで言うならば教えてあげましょう!」
と、(相変わらず大変な時に限って自分お話をしたがるお方だ。)とギニューは思いながらフリーザの話を聞くことになった。
一方、投球練習が中断された隙にドドリアはリクーム&バータとチョコレートパフェ10kg(コレがだべられたら5000フリーザ$)にチャレンジしに飛んでいった。
439 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/11(日) 18:08:42 ID:m71l2hMB0
<フリーザ今朝の回想>
「ん?こ、これは!」
そうフリーザがダンボールを見ると、宛名に”不屈闘志”と書いてあった。
信じられないといった顔をしながらフリーザは、震えながらそのダンボールを自室のテーブルの上に置く。
(あ、あの不屈から私へのプレゼント・・・?)
もはや今のフリーザの心中は普段の宇宙の帝王ではない。不屈闘志にあこがれるただ一人の少年に過ぎないのだ!
はやる気持ちを抑えて、きちんとカッターでガムテープを切り慎重に箱の中身を取り出す。するとその箱の中にはなんと・・・!
「こ、コレはまさか!」
フリーザが驚くもの無理は無い。その箱の中には”不屈闘志使用済み!”と書かれたメジャーリーグ養成ギブスが入っていからである。横に不屈闘志からの手紙も付属してあったが、難しい字が読めないフリーザはその手紙は無いことにした。
「コレさえあれば・・、野球なんて・・・。」
実は昨日の自分の投球があまりにもひどかったので内心かなりショックを受けていたフリーザはあっさりこのギブスを受け入れることにし
「ユニホームの上からならばばれませんよね・・・。」
初めて口紅をつける女の子のようなドキドキ感を覚えながらフリーザはギブスをつけるのであった。
「と、まあ。今朝がた実は不屈さんが自宅に来て投球のアドバイスをいただきましてね〜。私はアドバイスなんて宇宙の帝王ですからいらないと言ったのですが、どうしてもと言うものだからですね〜・・・。」
とまるで自分の力で投球できるようになったと言う嘘をひたすら語るフリーザ。
「・・・・・・・・。」
真実を知ってしまっているギニューにとって今のフリーザの話は聞くに耐えない物であったが、ギニューもフリーザに使えて○十年。フリーザは自分の趣味のことになったり、部下の労いなどにめっぽ弱いことは知っている。
この嘘話を聞くことによって、フリーザの魅力が強さから来るカリスマからだけではなく、こういった普通のところとのギャップもこの人の魅力なんだと再認識したのであった。
1時間後・・・。
いくらフリーザの魅力を再認識したといっても、1時間も自分の嘘話を話しているのを見ると少し悲しくなっている自分を感じるとギニューはさっさと用事を済ませることにした。
「さすがフリーザ様。たった一日でここまでこれるとはさすがでございます。ところで話は変わりますが、ミルコ殿から伝達があります。」
「いや〜、あのフォームを手に入れるのは苦労しましたが・・・。ご、ゴホン。ミルコさんから何か?」
そう、フリーザも嘘の世界から帰還するとギニューからミルコの報告聞いた。
「ほほほほ。アプール族との試合ですか。これはこれはたった戦闘力1200前後連中ごときがよくもこのフリーザ様と試合などする気になったものですね〜。」
「はい。とりあえず明日はAM5:30に集合だそうです。」
「わかりましたよギニューさん。早速練習を再開しましょう!ねえ、ドドリアさん?」
そうフリーザは振り向くと、チョコまみれになっているドドリアが
「はい!さあ、どんどん行きましょう!私も試合だと聞いて気合が入りました!」
等といっていた・・。
440 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/11(日) 18:34:39 ID:m71l2hMB0
「フリーザ様・・。練習中スイマセンがちょっとお聞きしたいことが。」
ひたすら実況投球をしているフリーザに話しかけるギニュー。
「ん?練習中ですよ?ギニューさん。貴方も練習した方がいいんじゃないんですか?」
そうフリーザはギニューの方も見ずに球を投げ続ける。
「それはどうも・・。しかし、一つ聞きたいことが・・。」
さすがに今度は練習をやめてこちらを向くフリーザ
「ふう、一体何なんです?つまらないことだったら殺しますよ?何しろ私の戦闘力は53万なのですから。」
そう言うフリーザの台詞にひたすら寒いものを感じながらギニューは
「フリーザ様。バッティング練習をしたことがありますか?」
と聞く。するとフリーザは
「そういえばやっていませんね・・。ふむ少しだけやってみましょうか?まあ、どうせホームランしか打てませんがね。」
「では早速全員集めてきます!少々お待ちを!」
「分かりました。ではこちらも準備しておきましょうかね?やると決めたら早いことやったほうがいいですからね。ドドリアさん、貴方も器具を出すのを手伝ってくださいね?」
そう言ってギニューは練習している特選隊達(グルド抜き)を集めに、フリーザはドドリアにバットなどの野球器具を倉庫から出すように命令したのだった。
441 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/11(日) 18:41:59 ID:m71l2hMB0
どうも、まだ練習試合まで行けませんでした。
しぇきです。
>ふら〜りさん
新作ですか!自分はバタリロは実は読んだことがありませんが登場人物の性格が良く分かるようにしてあって素晴らしいです。
まだ、自分が感じたイメージと違うかもしれませんが・・・。
にしてもオーガスーツさえあれば曙もきっとノゲイラやヒョードルに・・。
>レスをくれた方
ありがとうござます。話をまとめるのがヘタクソなので話が長くなりそうですが、パラ読みでも最後まで付き合ってくれたらうれしいです。
では失礼・・・・。
442 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/11(日) 18:47:07 ID:m71l2hMB0
訂正です。スイマセン。
初めて口紅をつける女の子のようなドキドキ感を覚えながらフリーザはギブスをつけるのであった。
「と、まあ。今朝がた実は不屈さんが自宅に来て投球のアドバイスをいただきましてね〜。私はアドバイスなんて宇宙の帝王ですからいらないと言ったのですが、どうしてもと言うものだからですね〜・・・。」
の間に
初めて口紅をつける女の子のようなドキドキ感を覚えながらフリーザはギブスをつけるのであった。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
「と、まあ。今朝がた実は不屈さんが自宅に来て投球のアドバイスをいただきましてね〜。私はアドバイスなんて宇宙の帝王ですからいらないと言ったのですが、どうしてもと言うものだからですね〜・・・。」
を忘れていました。
フリーザの本当に今朝あったことと、ギニューに語った嘘話を区切る線を忘れていました。
以降気をつけます。
では・・・。選挙にでも・・。
443 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 20:44:47 ID:FKwSPvTT0
>ふらーりさん
新作お疲れです。俺は子供のころ、マライヒは素直に美少女と思ってましたw
勇次郎の威光はマリネらにまで届いているのかwバンコラン好きなので活躍させて下さい。
>しぇきさん
ドドリアは凶悪な高木ブーみたいな印象があるなあ。フリーザのわがままは部下にとって
死につながるから、ギニューも必死ですな。サイヤ人との試合までの道のりは長そうだ・・。
>ふら〜りさん
新連載、乙です。今回は、ふら〜りさんの一番の得意分野の漫画でしょうねw
パタリトは少ししか知りませんが、噂は知ってますw
オーガスーツがどう力を発揮するのか、楽しみにしています。
>しぇき氏
最近の連投、お疲れ様です。なかなかフリーザ様の思惑通りに進みませんね。
練習からなかなか進まず試合まで行かないけど、しぇきさんの筆は進んで
短編のつもりが長編になる事を期待してますw
446 :
作者の都合により名無しです:2005/09/12(月) 08:11:28 ID:kxLoJoJ00
ふらーりさん、新作乙です。
パタリロはほとんど記憶ありませんが、
何故か「だーれが殺したククロビン」の
フレーズだけは頭にこびりついてるw
ふら〜りさんの、自分の趣味を追求する姿が好きだ
新連載は嬉しいけどパタリロなんて知らねーw
パタリロは面白いし深いよ。長期連載の例に漏れず晩年は薄いけど。
第十八話「風の少女」
ドラえもんたちが出発してから、一時間余りが過ぎたころ―――
彼らの目の前には、見渡す限りの大草原。この地方特有の、風を利用して生きる獣―――風獣もチラホラと見られる。
「懐かしいな・・・ぼくらとテムジンくんはここではじめて会ったんだよね」
ドラえもんは感慨深げに眼下の景色を眺める。
「うっわあ!何だか素敵なところだね。ボク、こういうところにちょっと憧れるかも」
亜沙も自然の大パノラマにすっかり魅了された様子だ。
「全くだ、都会のゴミゴミした空気とは大違いだよ。なあ、のび太?」
「あ、うん・・・そうだね」
稟が話し掛けても、のび太は生返事を返すばかり。心、ここにあらずといった様子だ。そして、ただ呟く。
「フー子・・・今から行くから、もう少しだけ待ってて」
「ほら、着いた―――ここが風の民の村さ!・・・とは言っても、のび太とドラえもんには説明するまでもないよね」
テムジンの案内により、一同は村に辿り着いた。
簡素な家や風車が立ち並び、そこかしこで風に乗って空を飛ぶ道具<カゼスビー>に乗る村人がいる。いかにものんびりと
した村だったが、村人たちはどういうわけか驚いた顔でこちらを指差していたりする。
「どうしたんだろ、ぼくらの顔に何かついてるのかな?」
「そりゃあ指も差すだろ。こんなロボットに乗ってるんだもの」
ドラえもんがのび太にツッコミを入れる。テムジンはそれを尻目に声をあげた。
「さあ―――それじゃあ早速山神さまの所に行こう!」
<―――どうやら無事に連れてこられたようじゃな>
一同の目前にそびえる巨体。その風貌だけで<山神さま>の異名は決して伊達ではないと知れるだろう。
「久しぶり、ヤークさん!」
このメンツの中では唯一顔見知りののび太が挨拶する。
「こ、これ!山神さまにそんな失礼な・・・」
<ははは、よいよい。元気そうじゃな、少年>
慌てる長老を尻目に、ヤークは悠然と答える。さすがに年季の違う落ち着きようだ。そして彼はちらりとサイバスター
に目を遣った。
<それが風の機械神―――サイバスターか・・・>
「あの・・・山神さま。あなた、サイバスターのこと、どこまで知ってるんですか?」
稟がおずおずと質問する。
<ワシも全てを知るわけではない。だが、神通力によって、ある程度までは色々と見ることができるのじゃ。彼は今、
力を失っておる。しかし―――フー子が蘇れば、その力を借りることで、サイバスターもまた蘇るじゃろう。そのために
ここまで来てもらったのだ>
「はあ・・・そうですか。よく分かんないけど、分かりました」
<ほほほ・・・まあその話は後にしよう。さあ、それではフー子の復活といこう>
そしてヤークは例の青く輝く珠を取り出す。のび太はそれを、じっと見た。
「それが・・・フー子なんですか?」
<そう。フー子はマフーガとの戦いののち、この姿になって眠っていた・・・。ワシは本当は、このままにしておこうか
とも思っておった。マフーガをも取り込んだこの子の力は余りにも強すぎる。それは世界に混乱を招くやも知れぬと・・・。
だが、世界に危機が迫っている今、フー子の力を借りねば君たちがこれからの戦いを勝ち抜くことはできまい。それに、
君たちならばフー子の力を悪用することもないと信頼できるからな・・・>
ヤークはのび太の目をじっと見据える。のび太は目を逸らさずに、それを受け止めた。ヤークの目がふっと優しい光を
宿し、それから長老に目を向ける。
<さて、長老よ。儀式の準備はよろしいかな?>
「はい、山神さまに言われた通りに・・・」
長老はそう言いながら指を差す。そこには複雑な紋様が描かれた大きな魔方陣が描かれ、周囲を数人の村人が囲んでいた。
その全員が、明らかに普通の服とは違う厳かな印象を与える儀礼用の服と、これまた通常よりも派手な意匠を施した風を起こす
道具<ブンブン>を手にしている。
<さあ、野比のび太よ。フー子の珠を持って、魔方陣の中心へ・・・>
言われた通りに、のび太は珠を大事に抱えて魔方陣の中心に立った。それを見計らって、周囲の風使いたちが奇妙な呪文と
ともに<ブンブン>をまるで魔法のステッキのように振り回す。
瞬間、凄まじい風が巻き起こった。魔方陣が激しく輝き、それに呼応したかのようにフー子の珠が激しく揺れ動く。
「う・・・うわあっ!」
叫びながらも、それでものび太の手は珠を離さない。それまで以上に力強く、珠を―――フー子をしっかりと抱きしめる。
<のび太よ―――強く願え!>
ヤークの声がのび太の脳裏に響く。
<フー子の目覚めを強く願うのだ。眠っているフー子の心に届くのは、フー子が誰よりも愛したお前の声だけだ。フー子を
解き放てるのは―――お前だけなのだぞ!>
「・・・・・・フー子!フー子!」
のび太は身体を引き裂かんばかりの烈風に翻弄されながらも、フー子に呼びかける。
―――フー子。いたずら好きで、泣き虫で、ワガママで、だけど優しくて勇敢だったフー子。
君がいなくなって、ぼくはとても悲しかった。君を助けたかったのに、ぼくは何もできなかったんだ。
君はぼくを助けてくれたのに、ぼくは何もしてあげられなかったんだ。
君にもっと、たくさんの笑顔を与えてあげたかったのに。
―――だから、目を覚まして、フー子。ぼくはもっともっと―――
君に、生きていてほしいんだ―――
その時、フー子の珠が今まで以上に激しく光り輝いた。そしてそこから溢れ出る風の力―――
その中で確かにのび太には聞こえた。
―――のび太!
それは聞いたことのない声だったのに、のび太は何故か確信していた。今のは、フー子の声だと。
「・・・フー子!」
そして極限まで強まった風に、のび太の身体は吹き飛ばされる。魔方陣の外に飛ばされた時、ようやく風は止んだ。
魔方陣の中心には、風によって舞い上がった砂埃が舞っていて、その様子は窺い知れない。
しかし、時間が経つにつれて砂埃は収まり、その中に佇む小さな人影が浮かんできた。
「・・・フー子?」
地面に倒れたまま、のび太は呆然と呟く。そして完全にその姿が明らかになった。
年齢は大体のび太と同じくらいだろう。簡素な白い服を着た美しい少女がそこにいた。
雪のような真っ白い肌に、水色に近い色のサラサラした髪が腰の辺りまでのびている。理想的に整った顔立ちに、ちょっと
寝ぼけたような印象を与える丸くて大きい瞳が愛らしい、どこかふんわりとした雰囲気の少女だ。
彼女はキョロキョロと不思議そうに周りを見回し、そしてのび太の姿を見つけると、満面の笑みを浮かべた。
「のび太!」
そして彼女は倒れたままののび太に飛びつかんばかりの勢いで抱きつく。
「えへへー。のび太、久しぶり!会いたかったぞ!」
「ちょ、ちょっと・・・君・・・本当にフー子!?」
ドギマギして尋ねるのび太に、フー子(らしき少女)はちょっと口を尖らせる。
「んー?なんだよのび太、おれのこと忘れちゃったの?それ酷くない?」
「いや、だってフー子・・・君、なんでそんな姿に!?」
「え?・・・あれ。なんかおれ、おかしい?」
フー子は自分の身体をペタペタと不思議そうに触った。丸い目をさらに丸くしている。
「なあ、のび太。なんでおれ人間になってんの?」
投下完了。前回は
>>404から。
フー子、擬人化して登場。テコ入れのため(?)、美少女に。
ちなみに自分のことをおれって呼ぶ子は、リアルでいたらイタイだけだと思いますが、
フィクションの世界では激しくツボだったりします。
フー子なら方言っぽくてOK。朴訥な感じがイイ!<おれ
フー子はプリムラに次ぐ萌えキャラになりそうですねw
しかし、たしかフー子って風の中に一つ目のルックスだったような気がするんですが
どんな少女になったのだろう。とりあえずまたプリムラは嫉妬しそうだ。
内容見る限りでは映画版フー子らしいから、漫画版とは別物。
映画版はもうちょっとマスコット的な可愛さがあった。
映画版のフー子はキモイ
459 :
茄子:2005/09/13(火) 13:37:49 ID:RYEz5nAx0
その9 ぼくをぽんこつだというのなら
――ちょうど、雨が降り始めていました。
「何故あなたは、そんな憐れな姿で野晒しになっているの」
ぼくは『ぽんこつだ』と言われました。
「え」
『お前はたまにおかしくなる。だからぽんこつだ』と言われました。何人にも。
「そんなことないわ。だってあなたはしっかりしているじゃない」
――女性はそう言いながら、僕の頭上を傘で覆ってくれました。
「あなたをそんな風に中傷して傷付けたのはだあれ?」
ご主人様のモルゲン様と、飼い犬のミスティです。
ご主人様はいつもぼくを鞭で叩きました。
ミスティはいつもぼくをあらん限りの罵声で追い詰めました。
犬の癖に!
つい、そう叫んでしまったんです。
『とうとう壊れたな!』
ご主人様はミスティの嘘泣きに騙されて、一番太い鞭でぼくを叩きました。そして、遂
に追い出されたのです。
『お前はどうしようもないぽんこつだ! もう戻ってくるんじゃないぞ!』――
ぼくは涙を流せませんが、普通の生きものだったのなら、きっと泣いていたでしょう。
「あなたはとてもしっかりしているじゃない」
そう、思いますか?
「ええ。何の偽りも無くそう思うわ」
ぼくが旧型のぽんこつでも?
「少しくらい型が古いからなんだと言うの?」
――この人は分かっていないんだ。「型遅れ」がどれ程ぼくらにとって深刻であるのか
を。
――ぼくは、この女性に何を期待していた?
――ここから、救って欲しかった?
まさか、ありえない。
460 :
茄子:2005/09/13(火) 13:38:54 ID:RYEz5nAx0
「何が、ありえないの」
あなたは、ぼくを維持するのに年間どの程度の費用が掛かるのかをご存知ですか?
「…御免なさい、知らないわ」
年間五千ドルです。
「大した額じゃないわね」
あなたは富裕層の範疇に入る方とお見受けしますし、確かにこの程度はわけないかも
知れませんね。ただ、
――ぼくの頭上には畑がありました。そこでは様々な野菜が栽培されています。
どこどこどこどこ。
――収穫機のエラーで稀に野菜が降ってくることがあるのです。茄子やらトマトやらキャ
ベツやらがぼくの体にどこどこぶつかりました。それは数分続き、ようやく治まった頃には、
体がぼこぼこ凹んでいました。
「ひどい――大丈夫?」
これで、二万ドルです。
「え……これで、二万?」
ええ。旧型の修理が出来る技師さんは絶滅寸前なんです。ですから、この程度は掛かっ
てしまいます。
「私の年収は、大体十二万ドルなの」
じゃあ無理ですね。
「別に無理では無いわ」
だってそうだろ? あんた、年収の六分の一をこんな型遅れの出せるのかい?
461 :
茄子:2005/09/13(火) 13:39:33 ID:RYEz5nAx0
「いきなりどうしたの!?」
結論を先に言ってやっただけさ。
「その位、出してあげるわよ」
嘘だね。
「違うわ」
いいや、嘘だ。今は出せるかもしれない。だが、そのうちふと気付くんだ。「私はなんでこん
なものの為に巨額を投じているんだろう」とね。そして捨てる。前のご主人だってそうだったん
だ。ぼくを適当な理由で追い出したけど、実際は金銭的な問題だった。あの人の会社、大分
苦しくなっていたみたいだしね。犬のミスティのメシだって随分安っぽくなっていたんだぜ。
「本当にどうしたの、あなた? さっきので壊れちゃったの? 私は前の人みたいに捨てたりし
ないわ!」
あんたはぼくが好きじゃないだろ。目を見れば分かるよ、そんなの。なにその冷たい目。あん
たは自分より程度の低い存在を見つけてそれを地べたから救う「フリ」をするのが好きそうだな。
だが長続きしないんだそんなの。あんたは必ずまた捨てる。そして懲りずに拾う。馬鹿だ。大馬
鹿だよ、あんた。
「――!」
怒ったかい? だったら、その怒りを単細胞な方法でぶつけてくれても構わないよ。
さあ、ぼくを殴りなよ。拳を壊す心配はないよ。ぼくの体は脆いから。それでも心配なら、その踵
が高い靴の尖っている部分で思い切り踏みつけたらどう? きっと気持ちがいいぜ。あんた、そん
な綺麗な顔してその中には膨大なストレスを溜めてるんだろう。ここなら誰も見ていないし、発散し
放題だよ。もし見られたとして、人間じゃないぼくを殺したって罪にはならないからな。
――ぼくはもう、意識を持っていたくはないんだよ――
――お願いだ。殴ってくれ。
――蹴ってくれ。
――壊してくれ。
殴ってくれ。蹴ってくれ。壊してくれ。
そうしたくてさ、たまらねえだろ?
――しかし女は、無言で消えてった。
――しかたがない。手近にあった茄子を、自分の頭部に打ちつけた。トマトを。キャベツを。次々と
体に打ちつけた。
ああどうしよう。この位じゃ意識が途切れそうもないよ。
462 :
茄子:2005/09/13(火) 13:40:17 ID:RYEz5nAx0
その10 映画館の光と闇
「今から荒唐無稽な話をしますけど、全て、真実です、神に誓って」
喫茶店『バーディ』を営む荒川誠司。そこに、息を切らして少年が入ってきた。
「お前は……誰だっけ」
「十河(そごう)則芳ですって! 高一!」
「ああ、ウチのマナの後輩君だったか。で、話って?」
「あ、はい。僕、二つ年下の彼女がいるんですけど……」
「二つ年下って、中二かよ? うわあ、ロリコン」
「じゅ、十六歳が十四歳と付き合って何が悪いんですか!? つうかまだそういうコトしてないし!」
「してないの?」
厨房からひょこっと顔を出すマナ。
「してないすよ! だってまだあの子中二だし……」
「お前はこのテの話に混ざんなマナ!――続き言え続き」
「ついさっきの話です。映画館でデートしてたんですけど――」
「瀬利ちゃん、寝てるの?」
確かに、恐ろしくつまんない映画でした。僕ら以外誰もいなかったほどに。だから瀬利ちゃんが眠っ
てしまうのも無理は無い話です。僕も眠かった。
やがてスタッフロールが流れて。スタッフロールが終わるまで見てやるレベルの映画じゃなかったか
らさっさと席を立ちたかったんだけど彼女が眠っているからそれも無理で。で、やっと終わって劇場が
パッと明るくなったんです。これで起きるだろうと思ったけど、やっぱ起きないんです。「余程眠かった
のかな」と思って彼女の寝顔を眺めていました。
そして、囚われたんです。
僕は知らなかった。女の子の唇って、魔力あるんですね。その時僕は、彼女の唇に吸い付きたくて堪
らない衝動に襲われました。我慢しようと思ってたんです。せめて彼女が十五になるまでは、何もしない
でおこうって、思ってたんだけど――
463 :
茄子:2005/09/13(火) 13:41:15 ID:RYEz5nAx0
「してしまったわけか」
「わけです」
「それってオクテすぎ。十四歳位だったらとっくに」
「だからお前はクチ出すなと! いやなかなか立派だよお前。最近の我慢の利かないガキにしちゃあ頑張
った方だよ」
「問題はそこからで……」
「実は彼女は起きてたとか?」
「破瓜の痛みで泣いちゃったとか?」
「だから混ざんなって! 展開はええよ!」
「いや、そういうんじゃなくって……」
「だったらなに!?(兄妹同時に)」
「…飛んで行っちゃったんです」
「は?(兄妹同時に)」
「キスしたら、突然鳥みたいになって飛んで行っちゃったんです!」
「冗談言うなよ(言わないでよ)」
「だから最初に荒唐無稽だけど信じてっつったじゃないすか! ホントなんです!」
「信じられねえ(られなーい)」
「どうでもいいけどお二人さっきから噛み合いすぎですよ!」
「仕方ないだろ、兄妹なんだし」
「まあアレでしょ。要するに十河君はお兄ちゃんに一緒にその飛んでったコを探して欲しいってんでしょ?」
「そうです」
「そうなの? 俺、今営業中なんだが……」
「行ってあげなよ」
「お前一人じゃあなあ……その、なんだ」
「心配しなくていいよ。まだ安定してるし」
「…多分大丈夫だと思うけど、もしお客さん一杯来たら携帯に着信入れろよ」
「…一応訊くけどな」
まだ日も高い休日。街中を走る二人の男。
「はい?」
「…一応な」
464 :
茄子:2005/09/13(火) 13:56:31 ID:RYEz5nAx0
「だからなんです?」
「…マナ孕ませたのお前じゃねえよな?」
「はあ?」
「違うよな?」
「違いますが……つうかあの人あんま知らないですし。子供がお腹にいるんですか」
「父親を見つけたいんだが……あいつ、何度訊いても言いやがらない」
「とりあえず、僕じゃないっすから――って、いた!」
「どこ?」
「あそこ! 電信柱の上!」
十河の指す場所を見た誠司は、あっと漏らす。
「七色――」
「あんな高い所にいちゃあ、捕らえられないよ」
「…捕らえる? 違うだろ」
「――あ」
「あれはお前の可愛い彼女なんだろ。正直信じ難いがそういう事にしとこう。彼女はお前を嫌いになった
のかな? 違うだろ。きっと、恥ずかしかったんだよ。鳥になってお前の手に届かない場所に逃げ出した
いくらいにな」
「…そうなのかな」
「まあ、落とし所はこんな所だろ(ボソッ)」
「え?」
「いやなんでもない。あれが彼女だとするなら、力づくじゃダメだ。訴えかけるんだよ。お前がどれだけ彼
女を思っているかを。そしてこの先どうしていきたいのかを。何故あんなことをしてしまったのかを。多分
通行人に見られたら気が狂ってると思われるだろうけど、それはほれ、愛とやらでカバーしろ」
そう言って、誠司は身を翻した。
「え――ちょ、一緒に居てくれないんですか?」
「お前さあ、俺が傍にいて愛の言葉を述べられるか? 今お前がすべき事はだな、言葉を紡ぐことだよ。
彼女、七色に輝いて待ってるんだぞ。あれは惑いの色なんだ、きっと」
「惑いの色……?」
「一色になれない、結論を出し切れない、惑いだ」
465 :
茄子:2005/09/13(火) 13:57:31 ID:RYEz5nAx0
それからどうなったのかは知れないが、十河が年下に見える女の子と歩っているのを見かけた人は何
人もいた。きっと、うまくいったんだろう。
ある日の食卓。
「お前、今日もウチ帰らないのかよ」
「やだ。お父さんもお母さんもうっさいもん」
誠司が独立してから、マナはよく誠司の家で過ごすようになっていた。マナは昔からお兄ちゃん子であ
ったので、当然の成り行きかもしれない。
「ほい。今日の夕食ですよお嬢さん」
「カレーとサラダと茄子と挽肉の炒め物かあ。簡単だね」
「茄子はいいぞ。食え」
「『秋茄子は嫁に食わすな』って言葉なかったっけ?」
「お前は嫁じゃねえだろ――あれはな、今は通用しない言葉なんだ。むしろ今はガンガン食ったほうがいい
と言われてる」
「――お腹に子供がいても?」
「――そうだ」
「ふーん」
マナは悪阻はあまり強くないらしかった。
『茄子』二話同時掲載です。
四話のキャラには結構出てきて貰います。ちなみに兄の誠司は八話に主人公だったりしますがそこも追い
追い。
あとミスティについてですが、名前が同じだけであって同一人物ではありません。今回なんて犬です。でも
これからも『魔女』『茄子』両作で思い出したように出てくる名前ですと書いておきます。理由というか、ちんけ
ですが思惑があるにはあったり。
>>421 ギンコはちゃんと『蟲師』で出しますのでご安心を。いつ位かな、十月中にはまたちょっとだけ書きます。ミス
ティに関しては上に書いた通りです。すいません。
>>428 身に余る御言葉……本人はまだまだ全然全然足りてないと思っているだけに恐れ多い言葉です。下手すぎて
がっくり来ますよ。
実は『プレイボール』はまだ読んでいなかったのですが、近く読みます。ちばあきおさんの自殺は本当に惜しい
ですね。
>>429 そこまで考えていませんでしたが、確かに夢魔ですねあれは。ここだから書きますが『心の自身』にするか『心
の性器』にするかちょっと悩みました。後者は余りに直接的過ぎると思って止めましたが。
>>430 確かに楽しいですね。今回の二作は合わせて三時間足らずで書けてしまいました。楽しいとキーを打つスピード
も速まります。
>>432 有難う御座います。俺もエロい女は好きですよ。
>>437 実は害があったんですが書けませんでした。そのうちそれで一本書きます。
では次回。次は『魔女』でいこうかと。
お疲れ様です。
その10の童貞の相談事から、ちょっとファンタジー掛かった話も良かったですが、
その9のぽんこつと女性の話が気に入りました。絵本のようで、でもシュールで。
最後までポンコツの正体が分からなかったけど、ロボットかな?洗濯機とかか?
>ぼくの頭上には畑がありました これがヒントかな?
468 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/13(火) 22:37:21 ID:tkNvP8KN0
<<練習2日目・バッティング編>>
「さて、それでは始めましょうか?皆さん?」
そう言って、フリーザの野球チームの面々を見る。ちなみにメンバーは我らがフリーザ、ザーボン、ドドリア、ギニュー、リクーム、バータ、ジース、MAX強化栽培マンである。ちなみにMAX強化栽培マンは戦闘力は実に3万!
さりげなくザーボンの心の友である。
「あの〜、フリーザ様?」
ジースがいぶかしげな顔でフリーザに質問した。
「あの〜、8人しかいないんですけど・・・。」
「・・・・・・・。え?」
そうフリーザは素っ頓狂な声を上げる。
「最後の一人は誰なんでしょうか?」
「・・・・。キュイさんがいるはずではないのですか?ザーボンさん?」
フリーザは戦闘力順に集めたのだからてっきりキュイはいるはずだと思っていたので軽くパニックに陥る。
「最初はその予定なのでしたが・・・。キュイの奴、突然俺はアプール族のエリートだ!といってアプールの野球チームの方へ言ってしまわれたようです。」
「何でそれを早く報告しないのですか!!!」
そうフリーザは声を荒げてザーボンに詰め寄る。
「い、いえ。ミルコ殿に報告したら、とっておきの助っ人を試合当日に用意するからと言っていたので・・・。知らなかったのですか?」
「・・・・。まあ、ミルコさんの選ぶ助っ人ならどうしようもないのは来ないでしょうが・・・。もしグルドだったら許しませんがね・・。」
目の座った顔でボソリとつぶやくフリーザ。すると今度はバータから
「フリーザ様!そういえばグルドはなんでこの野球チームに入れないのですか?奴の超能力は大変役に立つと思いますが?」
とギニュー特選隊皆が疑問に思っていたことをこの機会にぶつけてみる。
「・・・・・。超能力は卑怯だからですよ。このフリーザ。別に超能力が無くても野球ごとき宇宙1だということも証明できますしね・・。」
フリーザの台詞に納得したのか皆、首をコクコク動かす。
(まさか、4つ目が怖いからなんて言えませんからね・・・。われながらGOOD!な言い訳です。ほほほほ。言い訳も宇宙1ですね〜。私は・・)
などと、部下の前ではいえないことから変な妄想モードに入るフリーザ。
469 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/13(火) 22:38:20 ID:tkNvP8KN0
「ではフリーザ様!早速始めましょう!」
「・・・・・。(ビクン!)ほほ、そうですね。今度こそ始めましょうか?皆さん?」
そういうとドドリアは倉庫から持ってきた”万国ビックリ砲・改”(本来は要塞の城壁を攻撃する巨大大砲を改造したもの)をピッチャーマウンドに設置する。
「これでよし・・・と。フリーザ様〜!準備はできました!!」
470 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/13(火) 22:39:41 ID:tkNvP8KN0
<<バッティング練習・フリーザ&リクーム編>>
「では、まずリクームさんから始めましょうか?」
「分かりました!グリングリンのこのバットで打ってみましょう!フォ〜〜!!」
「・・・・。リクームさん?」
「何ですか?フォ〜〜〜!」
「いえ・・、がんばってください・・・。」
そう言って後ずさりしながらギニューの元へ行くフリーザ。
「ギニューさん。あれは何ですか?」
「・・・・。その・・・。HGだそうです。」
「は?何ですかHGとは?」
「リクームの奴は地球の野球にはまると同時に文化にも興味を持ったみたいで・・・。」
「・・・・。ではあれが地球の文化のひとつだと?」
「多分そうでしょう・・。なんであんなになったかは私は良く知りませんが、リクームの奴が”コレが私の生きる道だ〜!”といってたのは自室からでも聞こえましたし、多分・・。」
「・・・・。まあ、野球に支障が無ければ別にどうでもかまわないんですけどね。」
フリーザがそう言った矢先・・。
「フリーザ様、ギニュー隊長!大変です!」
「どうした、ジース?」
「あ、あの。隊長・・・。リクームが・・・・。」
フリーザとギニューは揃ってバッターボックスの方を見ると、股間を押さえてうずくまっているリクームがいた。
「ふ、フォ〜〜・・・。コレで本当のHGに・・・。」
471 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/13(火) 22:41:10 ID:tkNvP8KN0
・・・・・5分後。
「り、リクームさん?一体何をやっているのですか?」
ギニューが持っていたシュークリームを食べて復活したリクームは誇らしげにこう答える。
「先ほど言った通り、このバットで球を打ってました!フォ〜!!グリングリンとホームランでしたよ!フォ〜!」
「バット?どこにも無いじゃないですか?」
半分キレ気味のフリーザがそう言うと、さすがにヤバイと思ったのか近くで見ていたザーボンが事の次第を説明した。
「ふ、フリーザ様。ここは私が説明を・・。」
「・・・。いいでしょう。もし貴方もふざけたことを言ったら、リクームさんと一緒に消えてもらいますからね。」
「は、はい。・・・。先程リクームはフリーザ様との別れた後、股にバットを挟んでバッターボックスに入りまして・・。」
「・・・・・。そ、それで?」
たまらずズッコケそうになるのをこらえて続きを聞くフリーザ。
「はい、勿論ふざけるのはやめろといったのですが、俺はコレを取ったら何も残らないだの訳の分からないことを言いながら、あのびっくり砲の球を股バットで打ちまして・・・。」
「・・・・・・・。」
「文字どうりバットごと砕け散ったようです・・・。あ、もちろん打った打球はホームランでしたが・・・。」
ザーボンの話を聞いた後、バッターボックスの周辺を見ると確かに粉々に小さな欠片になっているバットがある。フリーザがその粉々になったバットの欠片を見ていると、ギニューが心配顔で
「フリーザ様。やはりリクームの奴は死刑に・・・・。」
そうギニューが聞くと
472 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/13(火) 22:41:52 ID:tkNvP8KN0
「ジャコビニ・・・。」
「は?」
「これはジャコビニ流星打法ですか〜〜〜?」
フリーザは突然叫びだし、リクームの元へ駆け寄る。
「貴方はこの打法の練習をしていたのですね?」
フリーザの突然の問いだったが、HGに近づいたリクームは臆することも無く
「勿論!HGに近づくための特訓の一つです!フォ〜〜!」
「そうですか!やはりそうだったのですね!見直しましたよ!リクームさん!」
かたや、ただHGに近づきたいために股に挟んだバットで球を打ったリクームと、それを見てジャコビニ流星打法の特訓と勘違いして一人で
盛り上がっているフリーザ。
「・・・・。何かここだけ知能レベルが極端に低いような・・・。」
思わずそう呟いてしまうジースだった。
473 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/13(火) 22:43:50 ID:tkNvP8KN0
<<バッティング練習・ミルコ&ギニュー編>>
「ほう、みんなやっとるようじゃな。ん?フリーザ様はどうした?」
ベンチ裏からゆっくりとフリーザ軍参謀のミルコポッチが姿を現す。
「フリーザ様はリクームに感化されて、ジャコビニ流星打法の練習をしております。」
「ふう、やはりアストロ球団は読ませんべきではなっかたかもしれないのう。ところでギニューよ!新しく作ったそのバットの調子はどうかの?変な使い方をしなければ粉々になることもあるまい。」
そう言いながら自分でバットを振ってみせるミルコ。頭脳担当でも戦闘力は2000程あり、そこら辺の戦闘員よりずっと強い。コレが地球製のバットだったらぽっきり折れる粉々になっているだろう。
「ところでミルコ殿。そのバットはどのような技術でできているのですか?先ほどからフリーザ様が全力で振っていますが全く折れたり粉々になったりする様子はなく、
”このバットはフリーザをアストロフォーに選ばんというのか〜!”とずっと言っておられるぐらいの強度なのですが?」
「ふむ、実はな。地球にある、スターボーズ”究極のはげ”という映画に出てきた”ライトセーバー”と逆の原理を利用しとる。」
「はあ。」
ライトセイバーが良く分からないギニューはとりあえずうなずいてみる。
「つまり、自分のエネルギーをこのバットに込めれば込めるほどそのバットからエネルギーが逃げていくというわけじゃ!どうだ?コレならバットの材質を硬くて柔らかいフリーザ合金を使えば、たとえ速球が来てもバットが折れることなくできるじゃろ?」
「まあ、そうですが・・。それだと、自分の腕力のみで飛ばさなくてはいけなくなりますね。ジースやMAX強化栽培マンにはキツイスポーツになりそうです。」
474 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/13(火) 22:45:23 ID:tkNvP8KN0
「何をいっとるんだ?別にバットにエネルギーを込めなくても、肉体にエネルギーを張り巡らせばよいじゃろ?」
「肉体にエネルギーを?」
「そうじゃ、現にこの前サイヤ人を向かわしたところ、地球育ちのサイヤ人とか言う奴らが戦闘力のコントロールをしていたようじゃ。戦闘力のコントロール=全身のエネルギーのコントロールなんじゃから、
戦闘力をコントロールすれば筋力をエネルギーで加工できるから非力なジース等でも十分やっていけるぞ!」
半分以上わけの分からない説明だったが、ともかく戦闘力のコントロールの部分については分かったギニュー。
「では、今から全員に戦闘力のコントロールを教えろと?」
「いや〜、それは無理じゃろ?だからアプールとの練習試合をやるんじゃろうが!」
「実戦で身に付けるということですか?」
「う〜む、器用なジースやザーボン辺りはできるかもしれんがの〜。まあ、それを抜かしてもはっきり言って今のお主らの野球レベルはアプールとどっこいどっこいじゃからの。だから練習相手に選んだんじゃよ。」
「明日は勝てますかね?」
「まあ、50%ってところかの。」
「そ、そんなに低いんですか?」
「あっちの方がチームプレイを完璧にしてきているらしいからの。そうそう、キュイの奴が入ったことでかなり士気も上がっているみたいじゃぞ。」
「・・・・・・・・。」
「まあ、助っ人も用意し取るから安心せい!」
「助っ人!?そういえば誰なんです?助っ人って?」
「ふふふふ、秘密じゃよ!ただ驚くことは間違いぞい!」
そう言ってミルコは意味深げな笑みを浮かべるのだった。
475 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/13(火) 22:46:05 ID:tkNvP8KN0
<<二日目夜>>
〜ギニューの部屋〜
「ふう、今日も散々だったな・・。にしても、バットだけでなくボールの方まで同じ技術を使っているとは・・・。あれでボールにわずか
にだが火が出るほどの速さで投げているのだからフリーザ様は大したお方だ!」
ビールを一杯い飲みながらギニューは独り言のように呟く。
「そうなると、アプールが投げる球も大したことの無い球になるのか??」
等とギニューが考えていると遠くのほうから
「ジース!フォー!バータもフォー!!」
「うるさいぞ!リクーム!いちいちテレビ見ながら俺の名前を壁越しに叫ぶな!!」
「・・・・。コレは明日は負けるかな・・・。」
ただただギニューは鬱になるだけであった。
〜ザーボンの部屋〜
「うむ、明日はよろしく頼む。うむ、うむ。それは非常時だ。・・・・。そうだ。すぐに出発できるようにしといてくれ!」
「相変わらずまじめだな。ザーボンは。」
「お前が何もやらな過ぎるんだドドリア。もし、明日負けてみろ!きっとアプール一族は試合をやる惑星アプールごと消え去るぞ!その時
のためにわざわざすぐ逃げれるように宇宙船を用意しているんじゃないか!」
「ん〜。さすがにアプールには負けないだろ?もし負けても野球には真摯にやっているっぽいから大丈夫なんじゃね?」
「うむ・・。だが念のためだ。」
「そうだな。まあ、一杯やろうや!」
「うむ。では明日の勝利と我らの命の保持に!」
「「乾杯!!」」
476 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/13(火) 22:47:58 ID:tkNvP8KN0
〜ミルコの部屋〜
ミルコは練習が終わってから休憩も取らずに明日のシュミレーションを重ねていた。
「むむむ・・。ふう、先ほどはギニューの奴に50%等といったが本当は10%なんじゃよな〜。まあ、あの方が九人目として出てきてくれる
が・・・。まあ、逃げる算段は整えてあるから一安心じゃ。後は、フリーザの奴にあの漫画でも読ましておけば大丈夫じゃな・・。」
そういって、またミルコはコンピューターの前でシュミレーションを始めた。
〜フリーザの部屋〜
「ほほほほ。明日は試合ですか〜。全く楽しみですよ!このフリーザが宇宙に野球でもその名を轟かすのですからね!」
フリーザはワインを一口飲みながらそう呟く。
「それにしても、このギブス。・・・・。ふふふふ、コレほどまでとは!さすが不屈闘志が付けていただけありますね〜。」
メジャーリーグ養成ギブス(フリーザ弱体化養成ギブス)をみながら満足な笑みを浮かべていた。
「後は寝るまでこの野球漫画を読んでいれば安心ですね。」
そういって先程ミルコからもらった漫画を読み始めたのだった・・。
果たして、明日の試合は勝てるのか?
アプール一族の運命は?部下の運命は?
続く。
477 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/13(火) 22:59:47 ID:tkNvP8KN0
どうも、次から練習試合編のしぇきです。
相変わらず長いです。
分かりにくい点が多いです。(特にミルコの台詞や気を戦闘力という単語で説明する場面)
分かりやすく分かりやすく書けるようにがんばっていきます。
この話のキャラ達が読んでいる野球漫画を紹介
フリーザ:逆境ナイン、キャプテン(9巻まで)、アストロ球団、(後、この話でミルコに読まされた漫画二つがあります)
ミルコ:野球漫画全般
ギニュー特選隊(グルド抜き):メジャー、プレイボール、ルーキーズ
ザーボン&ドドリア:逆境ナイン、ドリームズ、3P田中君(後半二つはミルコに読まされた)
MAX強化栽培マン:なし
アプール一族:メジャー、ドリームズ、炎の巨人、ドカベン10巻まで(柔道編のみ)etc
サイヤ人:漫画全般。(ミルコに買い物に行かされ続けたため)
他の球団はまだ出てきていないので書きません。
478 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/13(火) 23:00:59 ID:tkNvP8KN0
レスをくれた皆さんありがとうございます。
では失礼します・・・・・。
>サマサ氏
フー子人間バージョンですか。また恋の鞘当が激しくなりそうですね。
しかし、ちょっと展開が最近遅いのは、インフレバトル前の静けさですか?
しかし、登場キャラがどんどん増えて、神界より長くなりそうですねー。
>ゲロ氏
その9は確かにシュールだけど、なんとなく気に入りました。
結局、女性とぽんこつは分かり合えないまま。ある意味残尿感w
俺は茄子のフェイドアウトしていく感じの終わり方好きですが、
好みの分かれる作品でしょうな。
>フリーザ野球軍
フォーってレイザーラモンのネタですか?wしかし栽培マン強えw
物語一気に進みましたね。ダラダラの練習を経て試合ですか。
フリーザ様にとって、他者の運命なんてゴミでしょうな・・。
お疲れ様です、ゲロさん、しぇきさん。
茄子は色々と趣向を凝らして楽しませてくれますね。
壊れたがらくたの葛藤と、もはやレギュラー話っぽい高校生の悩みネタw
良くアイデアが尽きないなあといつも感心してます。
フリーザ野球軍、タイトル通りになかなか発信しませんねw
しかし、いよいよ次は試合ですか。
練習とはいえ、宇宙の帝王である以上部下に下手な姿は見せられませんなw
第二十七話「ファイナルラウンド」
火が燃える。
風がそよぐ。
土が隆起する。
炎が沸き上がる。
──祭りは始まった。
ヨウヤク、カ。
待チワビタゾ。
我ラヲ従ワセル強キ心。
ソレコソガ、我ラヲ使役スル第一歩。
どこからともなく声が飛来する。聴覚では捉えられぬメッセージ。ただ一人、主である
セルを除いて。
「心と体が一致せねば、大きな力は使えない。これは気の扱いにおける基本だ。おまえた
ちは……ずっと待っていたのか」
これまでのセルは、クリスタルに過剰な期待をし、あるいは懐疑の念を抱いていた。
しかし、そんな生半可な心根で使いこなせるほど、クリスタルは生温い代物ではなかっ
た。だからこそ、クリスタルはセルに下らぬ能力しか与えなかったのだ。
しかし、ついに固く閉ざされたドアは開放された。一つ一つに巨大なエネルギーを貯蔵
されたクリスタルが、一挙に力(パワー)を解き放つ。
「私は奴を倒す。いいな、クリスタル」
返答はない。ただ純粋に、クリスタルはセルを強化するのみ。いよいよ、雌雄を決する
刻(とき)が訪れた。
一方、各々が敵を片付け合流した16号、17号、18号。彼らも、もちろん戦場へ迅
速に駆けつける。
セルやセルジュニアに似ており、なおかつ恐るべきパワーを持つ生命体。
あれほどの強さにもかかわらず、地面に伏しているセルジュニア。
加えて──セル。明らかに強くなっている。
自分たちが戦っている間に、すっかり勢力図が変容してしまっている。いくら彼らが優
れた洞察力を持っているといえ、まるで訳が分からない。
「一体、どうなってるんだ……?」
「さァ……」
17号と18号。やはり、とぼけた問答しか出来ない。
「パワーレーダーが故障してしまった。凄まじいパワーが集結している」
感心する16号。完全体セル、クリスタルを従わせたセル。とても二人とも、人工レー
ダーなどで計れるレベルではない。
「もはや、我々では足手まといになるだけだな」
16号は少し寂しそうに、腕を組んだ。
セルが尻尾を雄々しく振り上げ、倒れているセルジュニアに指図する。
「セルジュニア、まだ動けるか?」
「う、うん……」
「よし、下がっていろ。こいつは私が倒すッ!」
渦巻く怒気、殺気、狂気。凝視し合うセル二体。これまでガードすら上げなかった完全
体セルも、初めて構えを取る。
「ふっふっふ、ようやく完全体に相応しい敵が現れてくれたか。せいぜい、期待に応えて
くれたまえよ」
「──かあァッ!」
まずセルが、地面に念力を送る。
うごめく大地。完全体セルの両側にある地表が盛り上がり、双方が完全体セルを挟み込
むように高速で激突した。
「うごォッ!」
並々ならぬ圧力に、たまらず吐血する完全体セル。岩盤を力だけで強引に押しのけよう
とするが、なかなか外れない。
「ぐっ……何故だ?!」
「ふん、私はただ地面を操ってるわけじゃない。地面に強大なエネルギーを分け与え、お
まえを攻撃させているのだ。たやすく脱出は出来んぞ」
セルは右手から火炎を生み出し、さらに左手から出した風を上乗せする。風によって勢
いを増した火炎は、炎の竜巻となり完全体セルを一気に呑み込む。
「ぐわああぁぁぁぁッ!」
数万度を誇る高熱。いかに完全体とはいえ、洗礼は免れない。一呼吸するだけで、肺が
炎熱で充満してしまう。
──が、「完全体」は偽りにあらず。
「ハァッ!」
気合いだけで、地面を吹き飛ばす。
気合いだけで、炎を掻き消す。
「やってくれるじゃないか。では、私も少し本気になってやるか」
火傷を負いながらも、素直に相手を称える完全体セル。この男が発する気が、ここに来
て真剣みを帯びる。とセルが感じ取った瞬間、完全体セルは姿を消していた。
「きっ……消え……ッ! ──ぶゥ!」
──鼻を真正面から突く肘。
後方にぐらつくセル、のボディへ強烈なブロー、激痛に動きを止めるセル、へ顎を狙っ
た掌底、歪む視界に惑うセル、に腰を使った右ストレート。セルが吹き飛ぶ。
クリスタルで肉体を強化されているとはいえ、大打撃。
「ぐっ……!」
急いで体勢を立て直すセル。やはり、肉弾戦では話にならないことを知る。どうやら、
この決闘に秘められたテーマを必然的に悟ったようだ。
「こいつは……自分の土俵に相手を引きずり込んだ方が──勝つ!」
ようやくまともな戦力になったセル。
次回へ続くッ!
いよいよ、最終決戦って感じですね。(あれ、まだかな?)
超パワーの完全鯛セルと、自然を操る元ヘタレセル。
実力は五分ですか。なんか、最終盤って感じですねえ。
続き期待してますが、セルゲーム終わったら
しけいそうの外伝をまた書いてくれると嬉しいな。
しかし、あと3つくらいで次スレですか。ほぼ一ヶ月で1スレか。早いなw
487 :
作者の都合により名無しです:2005/09/14(水) 18:43:59 ID:qXSHi4/S0
ついにセル確変しましたね!
今までの情けなさを全部帳消しにしてお釣りが来るような、
輝かしい大活躍を期待してます。
でも、まだ肝心の悟空と戦ってないからまだ続きますよね?
そういえばセルの姿はどんな姿になったのだろうか?
第一形態のままか、それとも完全体か第二形態か、それとも原作全く違う姿になったのか。
それにしてもセルは強いな。
489 :
テンプレその1:2005/09/14(水) 19:39:03 ID:8ZPvRbHb0
490 :
テンプレその2:2005/09/14(水) 19:40:02 ID:8ZPvRbHb0
491 :
テンプレその3:2005/09/14(水) 19:40:56 ID:8ZPvRbHb0
492 :
テンプレ担当:2005/09/14(水) 19:44:56 ID:8ZPvRbHb0
2ヶ月過ぎて所在掴めなくテンプレから外した方(すみません)
鬼の霍乱作者氏(6月16日の投稿が最後)
パオ氏は作品自体は7月12日が最後ですが、うみにん氏の掲示板に
8月29日に書き込みを確認したので今回は入れました。
ザク氏とも同様に、前スレの最後に続投の意思ありとのレスがあったので
入れました。作品の投稿をお待ちしております。
銀杏丸氏は現スレにて落ち着き次第投稿して頂けるとの事なので入れました。
それで、作品のリンク先に困ったのはユル氏のWho Fighters。
AoBの中の一編なのか(文体としてはそれっぽい)新作として扱うのか。
完結しているようにも見えますが、最後にユル氏が
「1終わり。またね」と書かれたので、まだ続くと思い新作として扱いました。
で、バレさんもこの作品のカテゴリに困ったのかまだ記録してないようなので、
現スレの作品最後のレスにリンクさせました。
もうすぐ次スレですね。多分大丈夫だと思いますが、間違っていたら修正お願いします。
493 :
オーガスーツ:2005/09/14(水) 22:17:31 ID:EYZNimAw0
「よし、おそらくこの辺りに落ちたはず。さあ殿下、探しましょう!」
ゴゴゴ号は王宮を見上げて窓の位置を確認しながら走り、オーガスーツが落ちた
であろう場所にやってきた。王宮の中庭の、森を背負う池のそばである。
だが焦るゴゴゴ号に比べて、パタリロはのんびり落ち着いている。
「あのなゴゴゴ号。オーガスーツは、着ない限りはただの服なんだぞ。天から
降ってきたドレスを着てみようだなんて、普通思わんだろ」
「そりゃそうですけど万一、」
「万一もない。お前みたいな特殊事情でもあれば別だが。それにだ、良からぬ
人物の手に渡ったらとか言ってたが、そんなのが王宮の中庭に易々と入れる訳が
ないだろ。それとも我がマリネラ王宮は、テロリストでも何でも出入り自由か?」
「それは……」
パタリロにさくさく言われて、何だかゴゴゴ号も、そんな慌てるような事態では
ないような気がしてきた。だが、なぜかなんだか、不吉な予感が拭えなくて。
「でもテロリストとまではいかなくても、殿下に個人的に恨みがある人とか……
例えばマライヒさんなんか、よく迷惑かけてるでしょう?」
ん〜、とパタリロが頭をかく。
「迷惑というか、ぼくの商売のとばっちりはよく受けてるな。実はついこないだも、
バンコランをアメリカに行かせる為に架空の逃亡犯在者を仕立て上げたばかりだ」
「? 何でまたそんなことを」
「だから商売だ。バンコランが、マライヒの監視の届かないところで一人旅なんか
すれば、現地調達で可愛い男の子と浮気する。絶対にな。何ならこっちで相手を
用意してもいい。その証拠写真をネタに、バンコランを脅迫するんだ。
高級レストランの豪華ディナー、五回はイケるぞっ♪」
そんな壮大な手間暇をかけて小銭を稼ぐより、真面目にダイヤモンド産業に励んだ方が
遥かに儲かるのに。守銭奴だが金額の多寡とは別なとこにコダワるパタリロである。
ゴゴゴ号は、深ぁ〜い溜息をついた。テロリストがオーガスーツを手に入れて
パタリロ暗殺を企てるかも、とかそういう危惧を抱いて慌ててた自分がバカみたいだ。
「いいかゴゴゴ号。お前みたいな特殊事情……恋人の気を引きたいとか……があって
降ってきたエプロンドレスを着るかもしれず、かつ僕に恨みがある人物。
んなレアな奴が、そこいらをふらふら歩いてるわけがない。だろ?」
494 :
オーガスーツ:2005/09/14(水) 22:18:17 ID:EYZNimAw0
「……やっぱりそれ、マライヒさんにズバリ当てはまりませんか?」
「む、確かにそうだな。だがな、たまたま今日この時、マライヒがこの辺を
歩いてて、オーガスーツに遭遇するなんてそんな偶然が」
がさっ、と二人のそばで葉擦れの音がした。見れば森から、見覚えのある人物が
見覚えのない格好で出てきたところ。
その人物は、マライヒ。そしてその出で立ちは、可愛らしいメイドさん。
「恥ずかしいから、誰も見てないところでこっそり試着、と思って森に入ったんだ
けどね。そしたら、随分と面白い話が聞こえてきて。恥ずかしいとか言ってる場合
じゃなくなったよ」
一歩、二歩と、二人に近づいてくるマライヒ。パタリロもゴゴゴ号も、その気迫に
押されて一歩、二歩と後ずさってしまう。
「……ぅ」
「で、殿下っっ。何だか、あの、その、」
マライヒは裏の世界では有名な暗殺者で、その戦闘能力は尋常ではない。ヤクザや
格闘家なんかは言うに及ばず、並の職業軍人(例えばタマネギ)ではまるで歯が
立たないレベルだ。そして実際、多くの人間をその手で殺している。
そんなマライヒと日常的に接しているパタリロたちだが、今のマライヒは何か違う。
その身に纏っている殺気の質も量も方向性も、全然違う。いつもの彼を言葉にするなら
『美しい薔薇には棘がある』だが今は……『殺す潰す壊す捻るそして喰らう』だ。
「イタズラするにも方法を選ぶんだったね。仮にもバンに浮気をそそのかすなどと……」
「ま、待てマライヒ。落ち着いてまず、その服を脱いでから、」
「(この世から)消え失せろッッ!」
叫ぶマライヒの姿が、大地を蹴る音と共に消え失せた。一瞬後、五メートルはあった
間合いは既に詰まっており、マライヒの拳は人間大の丸太をコナゴナに打ち砕いていた。
根来流忍術、変わり身の術。パタリロの十八番である。
マライヒは辺りを見回すが、もうパタリロの気配も匂いもない。マライヒのリクエスト
通り、消え失せてしまっている。
ガラスを引っ掻くような音を立てて歯軋りをしながら、マライヒが思いっきり
地団駄を踏むと、一人残されたゴゴゴ号が腰を抜かして尻餅をついた。
495 :
オーガスーツ:2005/09/14(水) 22:19:06 ID:EYZNimAw0
「……ねえ、そこのタマネギさん」
「は、はいぃ! マライヒ様っ!」
慌てて立ち上がり、直立不動になるゴゴゴ号。恐怖のあまり泣き笑い顔になっている。
「ぼくの性格を知っているなら、今パタリロが逃げたところで無駄なことぐらい解る
ハズだよ。そうでしょタマネギさん……そうでしょおぉ?」
むしろ優しげな声と表情で語りかけてきたマライヒを前に、ゴゴゴ号は
逃げる気力さえ削ぎ尽くされて、ただ震えている。
「ぼくは、地の果てまでもパタリロを追い詰めてブチのめすよ。という話を聞いては、
国王の直属部隊としては無視できないよね?」
「え、あ、その」
「全軍がけ……」
すうっ、とマライヒは一つ大きく息を吸い込んで、
「王宮に駐在しているタマネギ全軍! 直ちに臨戦態勢を整えろっ!
本物の闘争というものを見せてやるッッ!」
マライヒに内在していた魔王のような殺気闘気その他諸々が、一気に開放された。
勇次郎の強さ自己中心さと、マライヒの怒り八つ当たりが一つになった、この世で
最も強烈な、感情の核融合大爆発が起こったのである。
その爆風の直撃を受けたゴゴゴ号は、「ひゃいいぃぃ〜!」と悲鳴を上げて逃げ出した。
ゴゴゴ号はエリート軍人集団タマネギ部隊の一員、だからこそ今のマライヒの恐ろしさ
が正確に把握できたのである。そしてその恐ろしさが今、どちらを向いているのかも。
数分後、ゴゴゴ号からの連絡を受けたタマネギ一号の指揮の下、タマネギ全軍が
第一級警戒態勢を取ることとなった。
「いいか皆! 掛け値なしに、本物並の力をもった……いや! 本物の範馬勇次郎が、
このマリネラ王宮に襲撃をかけてきたと思え!」
すみません、今更ですが書き忘れを追加。前回は
>>436です。
巨大金庫破壊とか、通路斬りとかを見る限り、勇次郎なら多分プラズマにも勝てますね。
ラシャーヌのおじ様なんかは楽勝でしょう。さすがにアスタロトは無理か。
>>しぇきさん(「たろーくん」はまだかと期待中です)
毎年12月24日の夜には、フリーザの枕元にプレゼント置いてるんだろうなぁミルコ。
で翌朝何も疑わず喜ぶ宇宙の帝王、と。そんなミルコと同じく下働き常識人として苦労
してるザボドドコンビも面白い。みんな大変です。次回はいよいよ練習試合、楽しみっ。
>>サマサさん
先輩ヒロインたちとは随分違う属性で登場のフー子。登場プロセスや外見イメージと少し
ずらした、「ボクっ子」ならぬ「おれっ子」。何となく、のび太を外して女の子たちだけ
で賑やかに話の輪を作るタイプに見えます。彼女がこれから、どんな台風の目になるか?
>>ゲロさん
その9
拾われる仔猫物語かと思いきや、彼女は期待に応えてくれず重い結末。ま、私もここまで
言われたら同じ結論に辿り着きそうですが。にしてもぽんこつの正体は? 気になります。
その10
シュール、だけどちゃんとハッピーエンド。だからファンタジー、おとぎ話。そんな感じ
です。描かれていない「言葉を紡いだ」部分、ここは確かに想像する方が楽しいですね。
>>サナダムシさん
来ましたね、「ヘタレキャラ一気にヒーロー化」。単に強くなったのではなく、戦い方が
映像的にハデだから一層劇的で。下がってろ、と言える相手がいるからヒーローっぽさが
際立ってて。16号のお墨付きでチーム中最強の座に駆け上がったセル、ここが見せ場っ!
>>テンプレ担当さん
バレさんや貴方の作業が大変になることが、バキスレ好調の証しなんですよね。
おつ華麗さまです。
497 :
作者の都合により名無しです:2005/09/15(木) 08:20:17 ID:uoIEdHsp0
ふらーりさん乙です。
マライヒって確か「美しき死神」っていうキャッチコピーでしたな。
「ワンマンアーミー」バンコランとの一騎打ちがもしかしてあるのかな?
次スレ、あと2つくらい?
ふら〜りさんの感想が多い事こそバキスレ好調の証と思ってます。
連載ともども感想もがんばって下さい。
499 :
作者の都合により名無しです:2005/09/15(木) 22:58:58 ID:pLwRxUH90
パタリロは昔、プラズマXが好きだったなあ。
奥さんがアフロなんとかだったっけ?
出来ればメインキャラとして出して欲しいですね
500 :
作者の都合により名無しです:2005/09/15(木) 23:08:35 ID:0lGP1CMIO
昨日は休肝日だったか。そう毎日は来ないよな、流石に
第十九話「ハルマゲドン勃発!?」
永い眠りから覚めたフー子―――その姿は―――
「んー。なんかすごくよく眠ってたぞ、おれ。おまけに人間になっちゃってるし。ま、いいか。のび太とかテムジンとか
ドラえもんとかにもまた会えたし、細かいことは」
美しい少女の姿をしたフー子は、のび太からようやく離れてうーん、と伸びをしつつ辺りを見回す。
「のび太。なんかたくさん知らない人がいるけど、のび太の友達?」
「ええ、そうよ」
リルルが近づき、にこやかに笑う。
「わたしはリルル。よろしくね、フー子ちゃん」
「うん、おれはフー子だぞ。よろしく、リルルさん。で、こっちの人は・・・」
フー子はプリムラの方を振り向いた―――彼女は不機嫌な顔をしていた。
「フー子・・・?」
「うん、フー子だよ」
「あなた、なんでいきなりのび太に抱きつくの?」
「え?だっておれ、のび太好きだもん」
こともなげにのたまったフー子―――しかしながら、あまりにあっけらかんと言ったので、告白と言うような甘さや
緊張感はカケラもない。プリムラは毒気を抜かれたように目を丸くした。
「フー子ちゃん、彼女はプリムラよ。仲良くしてあげてね」
「うん、分かった。おれ、仲良くするぞ。えっと、プリムラお姉ちゃん?」
「え・・・お姉ちゃん?」
「うん、お姉ちゃん」
意表を突かれてきょとんとするプリムラに近づき、フー子はその腕を握る。
「プリムラお姉ちゃん・・・ちょっと言―にくいな。リムお姉ちゃん・・・うん、リムお姉ちゃんだ!えへへ、
リムお姉ちゃんリムお姉ちゃん!なんだかおれ、すごく仲良くなれそうな気がするぞ!」
「お姉ちゃん・・・私が?」
にこにこと屈託なく笑うフー子。そんな様子にプリムラは戸惑っていたが、すぐに笑顔になって、フー子の頭を撫でる。
「・・・仲良くしようね、フー子」
「うん、それはいいけど、なんかくすぐったいぞ」
困った様子のフー子に、プリムラは手をそっと離す。顔には優しい笑みを浮かべたままだ。
まるで、本当に妹を見守る姉のような笑顔だった。
そんな様子を暖かく見つめつつ、今度は稟が歩みよる。
「俺は土見稟。稟でいいよ。よろしくな、フー子」
「うん、よろしく、りんお兄ちゃん」
「お―――お兄ちゃん?」
プリムラに続き、稟も面食らった。フー子は不思議そうに稟の顔を見上げる。
「どしたの、りんお兄ちゃん?」
「いや、何でもないよ。・・・お兄ちゃん―――か」
稟はその言葉を口の中で反芻する。
「何かこう―――少しばかりくすぐられる物があるかもしれない・・・」
「稟ちゃん、ロリコンはダメよ〜?」
「うわっ!?」
突如かかった背後からの声に、稟は思いっきり仰け反った。悪戯っ子のような笑顔を浮かべた亜沙が、稟の
顔を覗き込んでいる。
「あ、亜沙先輩・・・。ロリコンって、別にそんなんじゃあ・・・」
「ふ〜〜〜〜〜〜〜〜ん、どうだかね。まっ、いいか。フー子ちゃん?」
「ん?」
フー子は亜沙を見やった。何故か、微妙に胡散臭いものを見る目つきだ。それに構わず、亜沙の自己紹介が始まる。
「ボクは時雨亜沙。フー子ちゃん、よろしくねっ」
元気のいい挨拶に警戒心も解かれたのか、フー子も満面の笑顔になって応えた。
「おう、よろしくな、亜沙おばちゃん!」
―――その時、イデが発動した。
それは嘘だが、確実に三秒くらいは時間が止まった。
「お―――お・ば・ちゃ・ん?」
「ちょ、ちょっとフー子!」
湧き上がる危険な空気を感じ取って、のび太がフー子に駆け寄った。
「ダメじゃないか、亜沙さんをおばちゃんだなんて!」
「えー・・・だって、おばちゃんに見えたんだもん・・・」
「だってもクソもない!いくらSHUFFLE!のメインヒロイン中最年長でも、いくらお母さんの亜麻さんの方
が若く見えるといっても、いくら声が年増臭くても、一応はまだギリギリ十代の亜沙さんに<おばちゃん>なんて
言っちゃダメ!お世辞でもいいからお姉ちゃんと呼びなさい。分かった、フー子?」
一見亜沙を擁護しているように見えて、<おばちゃん>にアクセントを置いていた辺りに、のび太の本心が垣間見えて
しまうのであった。
「んー・・・分かった。ごめんな、亜沙おばちゃ―――じゃなかった、亜沙お姉ちゃん」
「・・・・・・・・・」
「あ、あの―――亜沙、先輩?」
無言の亜沙に、稟が恐る恐る声をかける。と―――
「フー子ちゃん―――それにのびちゃん―――キミたち、ボクにケンカ売ってるね・・・?いいよ、買ってあげる」
ドドドドド・・・という効果音と共に、亜沙の両手に絶大な魔力が集中していく。母から受け継いだ強大な魔力を
惜しみなく発揮し、右手から炎、左手から冷気が放出される。
「ひいいっ!?」
未だかつてない恐怖に抱き合って震えるのび太とフー子。それを尻目に稟が解説を始めた。
「ば、馬鹿な・・・あれは禁断の大魔法<メドローア>!」
「な、なにぃ!?知ってるのか、稟さん!?」
ドラえもんが調子よく合いの手を入れる。
「炎と冷気―――相反する二つの魔法を混ぜ合わせることで極大の破壊力を生み出す攻撃魔法だ。まさかこんな
ところでお目にかかれるとは・・・!」
「げえーーーっ!そんなものを喰らったらのび太くんたちがただではすまない!・・・けどま、いいか。どうせ
ギャグシーンだもの。ちょっと髪の毛が高木ブーになるくらいでしょ」
「「そんなんですむかーーーーーーっ!!」」
のび太とフー子が力の限り突っ込んだ―――と、二人を守るかのように亜沙に立ち向かう者がいた。
リルルとプリムラだ。
「のび太くんたちは―――殺させないわ」
「―――守る!」
リルルは腕のパーツを外す。そこからは無骨な銃口が覗いていた。
「わたしの最終奥義―――ヘルズフラッシュ。かつてモヒカン頭の心優しい人造人間が使っていたと言われる、由緒正しき
伝説の逸品よ」
そしてプリムラは右手に魔力を集中させる。亜沙すらも凌駕する究極の魔力が凝縮され、その手がボンヤリと光っている。
「あ・・・あれは伝説の大魔法<アルテマ>!」
「な、なにぃ!?知ってるのか、稟さん!?」
―――以下略。とにかくすごい魔法らしかった。
「やばいぞ―――あんな超パワーがぶつかり合ったら、此処ら一帯が消し飛んじまう!」
観戦していたテムジンも、さすがに冷や汗をかきつつ様子を窺っている。
「だあああああっ!やめろって、みんな!何故にこんなギャグシーンで最終決戦でも通用しそうな技を披露しようと
してるんだ!?」
「ダメだよ稟ちゃん―――もはやボクは怒りの魔人。ボクの心の傷を不用意に突っついた―――のびちゃんたちが
悪いんだからね!」
「いや、そんな主人公の父親にして六大軍団長最強の男みたいなセリフ吐かれても―――
<―――やめんか!>
静かだが、有無を言わさぬ迫力ある声に、その場の全員が凍りついた。それはヤークの声だった。
<仲間同士で下らぬ諍いをしておる場合ではなかろう、全く・・・>
「は、はい・・・」
全員、矛を収めてしゅんと頭を下げるしかなかった。さすがに山神さまの威厳である。
<―――さて、フー子よ。目覚めたところすぐで悪いが、早速本題に入ろう>
荒げた声を整え、ヤークは静かに語り始めた。
<風の機械神―――サイバスターを復活させるぞ>
507 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/16(金) 17:32:58 ID:GwTnS8BQ0
<<惑星フリーザ>>
AM5:30
「「おはようございます。フリーザ様。」」
フリーザの下に集まったメンバーは口をそろえてフリーザに朝の挨拶をした。
「ほほほほ、おはようございます。皆さん。では、時間がないようなので早いとこ宇宙船に乗りましょうか。」
フリーザの挨拶も終わり、宇宙船に乗り込む一同。
「ねえ?隊長?何でこんな早くから召集したんですかね?」
「ジース、昨日のミルコ殿の話を聞いてなかったのか?アプールたちが住んでいる星はこっちと7時間も時差があるんだ。だから今から出発しても、あっちの方では2時ごろ到着することになるんだぞ。」
「でも、あの星に一泊してから試合をすればこんな早くから集まらなくてもいいのに・・。」
等とぶつくさ愚痴をたれ始めるジース。どうやら昨日はリクームが五月蝿かったらしくあまり寝れていないらしい・・。
「まあ、そうふてくされるな。フリーザ様は戦闘力が低い民族が嫌いだからな。あまりそういう奴等がいる星に長居したくないんだろう。」
「それは分かってますけど・・・。」
そう特選隊(グルド抜き)は特選隊で会話しているころ、フリーザはというと・・。
「ふう、昨日は緊張してしまってあまり眠れませんでしたからね・・。今から少し仮眠を取っておきますか・・。zzzz」
<<惑星フリーザU(元アプール星)
AM7:30(惑星フリーザから移動して二時間後でアプール星ではPM14:30)
「ん〜、やっと着きましたね。では皆さん。早速球場へ行きますよ。」
508 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/16(金) 17:33:33 ID:GwTnS8BQ0
<あっぷっぷ球場>
「・・・・。まさか、車で5時間もかかるとは・・。」
嫌な予感のしているギニュー。
「・・・。フリーザ様はどうしてますか?」
同じく右にのバータ。
「・・・。キレてますよ・・・。」
やっぱり顔のジース
「逃げますか?準備は万端です。」
昨日の準備は無駄でなかったと思わずガッツポーズをするザーボン。
「アプールどももかわいそうに・・。」
素直な感想のドドリア。
「GET BACK ふぉ〜む!」
また一つHGに近づくリクーム。
「そうなると、助っ人の方にも逃げてももらわんとな」
相変わらず冷静なミルコ。
「そういえば、助っ人は誰なんです?」
「ジース。そんなことを言っている場合か?」
そんな暇は無いとジースをたしなめるギニュー。
「あ?フリーザ様の指が光り始めてますよ!」
なんか不思議なものを見る顔でいうバータ。
「ふふふふ・・・。初めてですよ・・・。こんなに私をコケにしてくれたお馬鹿サンどもは!」
そして本当にキレているらしく額に血管が浮き出ているフリーザ。
「こんな星!消してやるぞ!!」
そう言って指先からデスボールを繰り出そうとした瞬間!
「何をやっている!フリーザ!お前の野球スピリッドはそんなものだったのか!」
なんとフリーザを呼び捨てにして説教をする声が!さすがのフリーザも不意を衝かれたらしく後ろを振り返る。
「なんだと?この私に説教とはいい度胸・・・って、パパ?」
そう、声の主は何とコルド大王だった!
509 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/16(金) 17:34:04 ID:GwTnS8BQ0
「え?あれはフリーザ様?いや、違う。ミルコ殿あの人は一体?」
特選隊が知らないのも無理は無い。コルドはフリーザや直属の部下ぐらいしか知らないタブーな存在だったからだ。
「ふむ、ワシも数回しかお会いしたことが無いが助っ人になってくれるといった時は驚いたよ。」
「いや、だからあの人は誰なんです?」
「ふむ、フリーザ様の父上であられるコルド大王様だ。」
「「こ、コルド大王・・。」」
思わず声をそろえて言ってしまう特選隊(グルド抜き)一同。
「フリーザよ!」
「ぱ、パパ・・。なんでここに?」
「ミルコに頼まれてな、9人目のメンバーとなって駆けつけたわけだ!・・・。」
「・・・・・。」
おもわずフリーザも呆然としてしまっていた。何しろフリーザ本人も気軽に毎日でも会える存在ではないのだから。
「それよりもフリーザ!何ださっきの態度は?」
「え?」
「わしも座りすぎてケツや尻尾が痛くなったが、この星を壊すほどのことでもないだろう?」
「で、でも・・。」
「でもヘチマも無〜い!お前はここに何をしに来たんだ?」
「や、野球を・・。」
「そうだ!お前は野球をしに来たんだ!ナノになんだあの態度は!あれで部下がお前たちについていってくれるのか?お前は幸せなのか?
そしてあの北の空に見える巨人の星に自分が立派だったと胸を張っていえるのか?」
「・・・。悪かったよパパ!僕もあの巨人の星に胸を晴れるような選手になるよ!」
「そうか!分かってくれたか!さすが我が息子だ!はっはっはっは!」
「ほほほほほほほほ!」
現在アプール星時間:PM19:45。雲で覆われた秋の空に力いっぱい誓いを立てる親子だった。
510 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/16(金) 17:35:28 ID:GwTnS8BQ0
<<試合編・フリーザ野球軍vsとってもアプール!?チーム>>
コルドの説得により本来の目的を思い出したフリーザ。しかし、散歩歩いたら1分前のことも忘れてしまう帝王なのでもはやコルドの言った事などとっくに忘れている様子だった。
<グラウンド中央>
「コレよりフリーザ野球軍ととってもアプール!?チームの練習試合を始めます。一同!礼!」
そういった審判(今は名前を伏せておきます)の声とともにフリーザとコルド以外頭を下げる。挨拶をしてさっさと自分たちのベンチに戻る両チーム。
「さて、皆さん。とうとう始まりましたね。とりあえず、我がフリーザ野球軍の初試合です。」
「フリーザ様!質問があります!」
多分この話の中では1.2を争うおしゃべりのジースから相変わらずの質問が放たれる。
「ふっ。愚問ですね。貴方は”アパッチ野球軍”を知らないのですか?」
「いえ・・。知らないです。」
「なんと!”おれたちゃ裸がユニホーム〜♪”が名曲のあれですよ!まあ、まだ私も見たことはありませんがね・・・。今度ミルコさんに見せてもらいましょう・・。」
いつもだったら知ったかで済ますフリーザだが、試合でテンションが上がっているためいつもどおりとは行かないみたいだ。
「まあ、それではオーダーが発表される頃でしょうかね?」
511 :
それゆけフリーザ野球軍:2005/09/16(金) 17:36:18 ID:GwTnS8BQ0
ピンポンパンポ〜ン〜♪
(コレより、両チームのオーダーを発表します。)
(まずはとってもアプール!?チームのオーダー)
(1番:ファースト アプール)
(2番:ショート アプール)
・・・・・・・・
(9番:セカンド アプール)
「・・・・。何なんですか?あのふざけたオーダーは?」
さすがに1番から9番まですべてアプールとしか呼称されない事にいささか不機嫌になるフリーザ。
「まあ、アプールたちには名前の概念がありませんから仕方が無いですよ。フリーザ様。」
「まさか知らなかったんじゃないだろうな?自分の部下のことを。」
そうキッ!と睨み付けながらいうゴルド。
「(ギクッ!)そ、そんなことは無いよパパ。そんなことは知っていたけど、実際聞くとなるとね・・・。」
まああからさまという感じのいいわけだったが、そんなことは部下にとっては日常茶飯事。それよりも、自分の親に全く頭が上がらないフ
リーザを見て微笑ましいくらいだった。
「次はうちのチームの発表ですね!俺まだどういうオーダーか知らないから楽しみだ〜。」
しかし、このオーダーの発表がチーム戦慄を与えることになるとは、まだ一同は知らないのだった。
しぇきさん、ひょっとして投稿規制かな?
頃合っぽいので新スレ立ててみます。
感想はそっちに書きます。
514 :
作者の都合により名無しです:2005/09/17(土) 22:45:07 ID:Rkq4aQSQO
打ち切り。
みんなごめん。でももう無理。
誰だ貴様、名を名乗れ!