【2次】漫画SS総合スレへようこそpart27【創作】
乙です。
バキスレ住人たるもの テンプレを見れば
その人が何時どのように立てたか おおよその察しはつく
出来ておる喃
>>1は…
さて。1スレまるまる書いてなかったから、そろそろSS書くかな。
「美夜子さん!」
雄々しく最前に立つ美夜子にのび太とドラは様々な思いを込めて名を呼んだ。
再会の喜びと、巨大な敵を前に一度は絶望しかかった心を再び奮い立たせる
頼もしさと。美夜子は、少し困ったような顔で、しかし以前となんら変わる
ことのない優しさで微笑んだ。
「全く・・あなたたち、結局忠告は聞いてくれなかったのね。」
「う・・・ご、ごめんなさい・・・」
まるで優しい姉に逆らえない弟のような面持ちで二人はついつい謝っている。
「フフ・・いいわ。ううん。むしろ、あなたたちが友達を見捨てるような
人たちだったなら、きっと・・・」
天から降り注ぐ邪悪な声が、再会の柔らかな余韻を一瞬にして吹き飛ばした。
『ククク、貴様生きておったのか。我の中で消滅したとばかり思っていたぞ。
脆弱なる人間の分際で、なんと粘り強いことよ・・・。賞賛に値するぞ。』
魔王デマオンは既に驚愕してはいない。冷たい冷徹なまなざしを美夜子に向け、
わずかな後におこりうる魔力の衝突に備え、膨大な魔力を高めつつある。
「・・・どうもありがとう。」
魔王に皮肉に礼を述べながら美夜子の表情が厳しくなる。これから始まる
戦いにおける、自身の担うべき役割の比重の大きさを自覚する。
「のび太くん。わかってるわね。」
のび太の腰のホルスターに収まった白銀の銃がキラリと光る。
のび太は、コクリとつばを飲み込み、頷く。しかし―――――
「無理だよ。あの高さじゃどうしょうもない。弾が届かないよ。」
事実、魔王の巨体は、魔界で出会ったときの姿を知るのび太たちの予想を
遥かに凌駕している。いや、これが科学と魔力の融合ということなのか。
以前見た時にはまだ人間に近かったその姿とは、ほとんど別物である。
「今の私はあくまでも思念体。だけどデマオンの中で過ごした長い時の中で
魔法の力は格段にレベルアップしてるはず。そう。なんとかデマオンの猛攻を
受け流せるくらいには・・・だから!」
美夜子は言葉に力を込めた。
「私がなんとか魔王の攻撃を最小限に食い止めて見せる!だから、その間に
あなたたちの力でなんとかして!」
「な、なんとかしてったって・・・・!そんないい加減な・・・!」
「ごめんね。私の力不足・・・あの圧倒的な魔王の力の前に、私は具体的な
作戦なんて何も言えない。だけど!これだけはわかるの!あなたたちには
私たちには計り知れない“力”があるわ!それを信じて!最後まで戦い抜いて!」
『話はすんだか?たかが人間の魔道師が私の雷を受け流す、か。確かに貴様は
以前私の操る星々をことごとく逸らしてみせてくれたな。だからこそ私は今、時を
割いて、力を溜めた。だが、まさか我には雷しか能がないと思ってはおるまいな?』
魔王の指先に小さな火の玉が生まれた。しかし、その小ささとは裏腹に、そこから
放たれる魔力は美夜子の冷静さを奪うほどに凄まじい。魔王が火の玉を放つ。
解き放たれた火の玉は急激に質量を増し、美しい火炎鳥の姿を形作った。
その姿はまさに神なる鳥、不死鳥フェニックス!魔王は叫ぶ。
『カイザー・フェニックス』
襲い来る巨大な火炎鳥。
火炎そのものにはテキオー灯の力で耐えられても、その圧倒的な“攻撃力”までも
無効化できるとは到底思えない。ドラが慌ててポケットを探る。が――――
「うわあああ!ヒラリマン・・・間に合わない!」
「みんな!共に戦い抜いてくれ!!」
最前に立つ美夜子が右腕の2本の指を天にかざし、あらん限りの魔力を凝縮した。
受けとめる。逸らす。かろうじて。想像以上の魔力の消費に美夜子は片膝をついた。
しかし、魔王はニヤリと邪悪に笑う。その指先にはすでに第2撃、いや第3撃までも
用意されていたのだ。小さな火炎球が魔王の手を離れる。膨張し神鳥が具現化する。
幼い勇者たちに死を告げる2匹の巨大な神鳥が、獰猛に、凶悪に猛り羽ばたいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
要塞を飛び出し、付近に潜んで様子を見る者たち。八方斎とその部下たちである。
「な、ななな、なんなんだ。あの化物は・・・!?あれがもしや、きすぎい殿の
言っておられた世界を牛耳れるほどの“力”・・・・」
「・・・八方斎様。様子を見るべきです。キスギーは信用なりません。」
ドクタケ城の誇る天才忍者、竜魔鬼の言葉に素直に頷く八方斎。
離れの森――――山田伝蔵。土井半助。潜む場所こそ違えど、忍術学園の面々も
また、いまだ沈黙を破らず、ただじっと森の闇の中、機をうかがっていた。
荒れ狂う稲妻は一時沈静化している。そのひとときの静けさの中、忍たちもまた
しばしの沈黙を選ぶ――――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あれが・・・魔王・・・・・!」
呆然と黒き巨人を見上げる反乱軍の兵士たち。
帝国の悪魔たちは雷に巻き込まれることを恐れてか、それとも全て魔王に任せたと
いうことなのか、一定以上の距離をおき、明らかに交戦を避けはじめていた。
バンホーは混乱する戦場で、今なお冷静に指揮をとり続けていた。
「敵兵が引いている今のうちに態勢を整えろ!近く、敵のふところに潜り込む
必要が出てくる!そのときまでに戦闘態勢を整えられなければ生き残れないぞ!」
「アキーム!フォブスター!各自、生き残った小隊の指揮を頼む!急げ!
まだ、雷がテキオー灯の効果を凌駕しないうちに!」
「ハッ!」
「まかせてください!」
副隊長アキームと、フォブスターと呼ばれた精鋭がバンホーの元を離れ駆け出して
いく。バンホーはドラが危惧したテキオー灯の効力切れを見越して事前の精一杯の
対策を施そうとしている。魔王は的確に敵である反乱軍だけを狙ってくる。つまり
魔王は雷を自在に操れる。急遽避雷針等を設置したとしても、それは効果が薄いで
あろうことを意味する。と同時に、雷は今のところ帝国兵には落とされてはいない。
雷に耐えられなくなった者は、敵陣に飛び込む以外に回避できる可能性はないのだ。
「果たして、あの巨大なる悪に、打ち勝つ術はあるのか・・・」
この劣勢を打破することに一縷の望みはあるのか。バンホーは想う。
「いや、あの巨大な彗星から我等を救ってくれた力―――――彼らには未来の
科学の力だけではない。人の心だけが生み出せる、計り知れない何かがある!
信じよう。そして、私たちは私たちにやれることをただ遂行するのみ!」
稲妻の光に照らされたバンホーの表情は突如現れた巨大なる絶望の闇を前にしても
迷いのない力強さを携えている。バンホーの手首に巻かれた黒いブレスレットは、
その強い決意に呼応するかのように、さらなる強い光を発し始めていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「チキショー。なんなんだよ、あれは?」
「大きい・・・」「ウキィ・・・」
「あんな邪悪な塊、はじめて見ました・・・」
パーマン1号が。2号が。パー子が。しょくぱんマンが。そして、その交戦中で
あったはずの魔土災炎までもが、一時呆然と“それ”を見上げていた。
やがて魔土は不気味に笑い出す。
「あれがロードの言っていた科学を超えた魔性の力・・・なのか。くはははははは。
面白い。は―――――――はっはっは!」
ひとしきり邪悪な哄笑を続けた後、ふと我にかえる。
「・・・・本当に大丈夫なのか・・・?あれを信用して・・・」
「油断大敵でっせー!!」
突如、パーやんが絶妙なタイミングで片足タックルを仕掛けた。さしもの強化型
パパンダーもふいをつかれ大きくバランスを崩している。魔土操るパパンダーが、
わずかに迷いを見せた一瞬の隙をパーやんは逃さなかったのだ。
呆然と魔王を見上げていた4人が、その頼れる男の名を叫ぶ。
「パーやん!」
「みんな、今やー!」
「おう!」「はい!」「まかせて!」「ウッキー!」
これまで数々の戦いを制してきた歴戦の英雄たちである。上半身は全ての攻撃を吸収し、
弱点であったはずの下半身の強度、バランスも強化された無敵のニュー・パパンダーが
はじめて見せた一瞬の隙を逃すはずもない。
『うああああああ!?』
魔土の絶叫とともに、強化型パパンダーは誕生してより初めて大地に背をつけた。
5人は素早く手足を押さえ込む。
『くっそおおお、パパンダーを舐めるなよ!』
魔土の絶叫と共にもがくパパンダーも5人の超怪力に抑えつけられていては
そう簡単に脱出することはできない。パーやんは力強い笑みを浮かべて叫んだ。
「よっしゃ、こっちは5人おるんや。このまま簡単に起き上がらせはしまへんで。」
ふと、上空を見上げるパーやん。先ほどまで荒れ狂っていた稲妻が嘘のように鎮まり
かえっている。魔土に雷を浴びせないよう気を使っているのか、それとも別の理由か。
「・・・燃料切れ・・・ってわけでもなさそうやな。さっきまでの雷の嵐・・・
やっかいやで・・・。こんな状況で空中戦は無謀や。とりあえずこのまま接近戦を挑むしか
しゃあないやろな。それか・・・地中を上手く活用するか・・・!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その頃、要塞内の通路には表情ひとつ変えず、わずかの息も乱さずに凄まじい
スピードで地上へと向かう黒き人影があった。漆黒の死神、ギラーミンである。
要塞内に人はほとんど残っていない。時折、負傷し倒れている兵士たちを見かけ
るが、恐らくはドラ一行にやられたのであろう。やがて目的の1階へと辿りつく。
死神は闇の王荒れ狂う地上へと続く扉に向かって迷わず突き進む。
――――が、そこには、その漆黒の死神の歩みを遮る先客が佇んでいた。
逆光の中、その筋骨隆々たる獣じみた大男のシルエットが浮かび上がる。
よろめく足取りで今まさに要塞外への一歩を踏み出さんとする獣。それは
あまりにも大きなダメージを受けていた。マトモに歩く事すらおぼついていない。
男がようやくギラーミンの存在を認識するまでには数刻の時を擁した。
いつもの彼の野生の勘をもってすれば、もっと早く気付いていただろう。
多大なる労力をかけて振り向く。必死に声を絞り出す。
「ギ、ギラーミン・・・か。・・・あ、あいつらを仕留めにいくのか?なら・・・・」
げんごろうはもはや原型をとどめないその顔を歪め、ニヤリと不敵に微笑み―――――
そして吼えた・・・!
「―――なら・・・ここは絶対に通さねぇ!」
ギラーミンの瞳孔が怒りの形にわずかに開いた。
それは外見上は微々たる変化であったが、発する黒いオーラは爆発的に膨れ上がる。
それは、ズタボロに傷ついたげんごろうをオーラだけで消し飛ばしてしまうかと思え
るほどに。しかし、げんごろうの眼は微塵も引く気配を見せない。ギラーミンは
ホルスターの中の黒光りする拳銃にそっと手を触れ、静かに怒気を込めて宣告した。
「どうあっても・・・か?」
全く無駄のない動作で拳銃を突きつける。
「ならば容赦はせんぞ!」
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今回分終了です。
エアコンはあんまり使わない派なので、今年は部屋のクーラーを撤去してみた
のですが、予想以上の暑さに死にそうです。(2階なので熱気がこもりまくり)
ですがSSの方はおかげさまでずいぶん終局に近づいてきたような気がします。
あとバレ様、「かば夫くん」の修正ありがとうございました。
うみにんさんお疲れ様です。いよいよラストスパートですね。
すべての登場人物が一点に集約する感じ。これぞ冒険活劇ですね。
げんごろうには悪いけど、ギラーミンシブい。
>うみにんさん
そう言えば美夜子さんがまだ思念体だという事を忘れてました。
デマオンは“魔界大冒険”よりでかくてさらに凄い技は出すは、
ギラーミンとげんごろうは対決するはこの先どーなることやら・・・
18 :
ふら〜り:2005/07/10(日) 22:22:37 ID:9kk24nbR0
>>1さん
おつ華麗様です! 今正にクライマックスの作品、開幕したばかりで先が楽しみな作品、
ほんといろいろですよね……読み手としてはありがたいことです。
現在連載中の方も、これから書こうとしておられる方も、頑張って下さいっっ。
>>パオさん
「白い柔肌」で開幕したかと思ったら、薄幸の少年と影ある男のやりとり。その辺までは、
少々腐な方面で見てしまってましたが……途中から姿勢正しました。ガイルの過去も、それ
を聞いたシコルも深くて渋くて。女子供の入る余地はなくて。少年の未来、幸はあるのか?
>>Tournamentさん
早速の解説、ありがたき幸せです。しかしいきなり九十九とは、また。パオさんのトーナ
メントでは遂に観られなかった、「九十九の敗北」を期待してしまいます。一八の時点で
確定していた人外の混在も、今回進展しましたし。まだ見ぬ参加者共々、先が楽しみです。
>>ゲロさん
押さえつけられた時のアニーの恐怖が、「膝が空いた」「この後どうなっても構わない」
の辺りで短いながら印象的だっただけに……その後の反動反撃、死ね死ね踏みの力強さが
際立ちました。ぅあ痛そう、と思わず眉寄せる思いで読みましたよ。次回幕引きや如何に?
>>うみにんさん
いいですねぇ……威厳と戦闘力充分のラスボスって。カイザー・フェニックスのオリジナル
使い手を思い出します。で、そのラスボスと直接対峙している主人公パーティ以外の面々も、
ちゃんと戦ってそれぞれ活躍してるのが嬉しい。大規模戦闘の醍醐味、読み応えあります!
19 :
茄子:2005/07/10(日) 22:35:51 ID:0bIOjq8G0
その1 秘密の超存在
『今日のお天気は――』
「飽きたな」
「何によ」
「朝飯だよ」
「御飯に納豆に目玉焼き……日本人の昔からのスタンダードじゃん」
「お前俺の好きなもの分かってないなぁ」
「だってあなた何も言わないし。なんで今まで言わなかったのに突然今言うのよ」
「いや、ちょっとリズムが……」
「はい?」
「体のリズムが、こうな」
「訳わかんないなあ」
『――茄子です』
「う」
『はれときどき茄子です』
「うおお!」
「ちょっと」
何かに触発されたように飛び出した夫と、それを追って出た妻。
夫は空を見上げた。妻も見上げた。雲一つない快晴であった。
「いい天気ねー」
「今日は午後家から出るなよ」
「なんでよ」
「あああと」
「なに」
「米茄子買っといて」
「べいなす?」
「焼き茄子はこれがウマイ」
「茄子が好きだったの」
「じゃ行ってきます」
「元気に仕事してきてねー」
20 :
茄子:2005/07/10(日) 22:36:35 ID:0bIOjq8G0
八百屋。
「うーん」
「あら園田の奥さん」
「あどーも」
「何を探してんの?」
「旦那が米茄子食いたいって」
「米茄子ならこれ」
「普通の茄子とは違うんだ」
「それより奥さん聞いた? 天気予報」
「茄子が降ってくんでしたっけ」
「はれときどき茄子だって。なんなのかしらねえ」
「ぶたなら知ってますけど」
「ねえ」
「おいくら」
「三百二十円也」
「安いのか高いのかよく分からないなあ」
21 :
茄子:2005/07/10(日) 22:37:03 ID:0bIOjq8G0
旦那の会社。
「うーん」
「おお園田君」
「あどーも」
「何を悩んでんの?」
「いや大事なことです。仕事が手に付かなくなるくらい」
「一応部長の僕にそういうこと言うかねキミ」
「すんません」
「まあいいけど。でも仕事はちゃんとやってね」
「はあい」
「センパイ」
「おお矢玉」
「ウチはユルイからいいですけど、他の会社であんなこと言ったら怒鳴られますよ」
「だって大事なことなんだよお。今何時?」
「十一時五十分ですね」
「うわ」
「どうしたんすか。なんか今日ヘンですよ」
「部長!」
「なに」
「調子悪いんで早退していいですか」
「いいよ」
「じゃ失礼しまーす」
「お大事に」
「矢玉気をつけろよ」
「なににですか」
「茄子が降ってくるぞ」
22 :
茄子:2005/07/10(日) 22:38:02 ID:0bIOjq8G0
空は相変わらず澄んだ青色であった。
妻は鼻歌を歌いながらスキップして家路をたどる。
「こんないい日に何を気をつける必要があんだろ」
ぼとっ。一つ何やら落ちてきた。紫色の物。
「ん」
続けて、ぼとっ、ぼとっと同じ物が落ちてくる。それは降り始めであった。
やがてそれは大雨のようになった。茄子が空から無数に降ってきた。
「いててててて」
茄子とはいえ痛い。妻は駆け足で家に戻る。
幸い、家の近くまで来ていたのだった。
「ひいひい」
やっとの思いで家に辿り着いた妻の携帯が鳴る。
「はい」
「大丈夫か?」
「四郎」
「家にいるか」
「怖かったよお」
「いないのか?」
「ううん。家に着くもうちょっとのところで、茄子が……」
「そうか」
「痛かったー」
「俺な、お前に隠していたことがあったんだ」
「うん」
「俺、実は人間じゃないんだよ」
「へえ」
23 :
茄子:2005/07/10(日) 22:38:31 ID:0bIOjq8G0
「数百年に一度起こるかもしれないし起こらないかもしれないしよく分からない
天変地異からこの星を守るために配属された戦士だったんだ」
「なるほど」
「今茄子が降っている。これが第一段階だ。そしてこれが数時間続いて出てくる
のが、最強最悪の宇宙生物だ」
「ふわあ」
「俺はそいつをなんとかしてこの星から追い出さなきゃならない。そのためにい
るんだ」
「ぐう」
「聞いてる?」
「はい」
「俺は生きて家に帰って茄子を食うつもりでいる」
「うん」
「だから、米茄子を焼いておいてほしいんだ。上に甘辛い肉みそ乗っけてな」
「肉みそ」
「これもお前には隠してたけど、俺ホントは米茄子以外受け付けない体なんだ」
「ふむ」
「だから、駅のトイレでお前の作った飯吐いてたんだ。ごめんな」
「いいよ」
「夜は家のトイレで吐いてた。お前が眠った後に」
「ふわあ」
「まあとにかく頼むな。米茄子。肉みそ」
「わかりました」
「茄子が止んだ」
「ほんとだ」
「空がぼやけ、大気圏を突破した宇宙生物がこの星に降りて来る……」
「あ」
「言ってくるぞ。俺はホントの仕事をしてくる」
「ちょっと待って」
「でやああーっ!!」
「肉みそってどうやって作るのー?」
「ツーツー」
スレ立て乙です。
元ネタは黒大王≠アと黒田硫黄の同名作品です。アフタヌーンKC全三巻。
去年くらいにジブリで劇場アニメ化された作品も入ってますので知ってる方はいるのではないかと。
僕は見てませんが。
宮崎駿が気に入ってて、この作品の切り取りを社員に見せて周っていたそうな。
「これの面白さがわかるか? 分からない? だからお前はダメなんだ!」とか言ってたそうです。
まあ実際面白い作品だと思います。茄子が出てくりゃなんでもOK、自由自在の短編集。
ちょっと『はれときどきぶた』へのリスペクトも込めて。
『魔女』がどうしても重い展開になりがちなので、こういう軽妙でさっと書けるのが書きたくなるのです。
また書くと思います。
感想下さった方々へのレスは『魔女』で。ではまた。
プロローグ6「闇の男」
稟達は帰り道、ほとんど口を開かなかった。あのムスカという男の話ははっきり言って訳が分からなかったが、
少なくとも、のび太の身に危険が迫っている―――それだけは確かだ。
今の彼らには益体のない考えを頭の中で巡らすしかなく、トボトボと歩くうちに、芙蓉家の前に辿り付いた。
「あちゃあ・・・。ボクまで付いてきちゃったよ、あはは。よっぽどボーッとしてたみたい、はは・・・」
亜沙の笑い声にもどこか元気がない。
「はは・・・しっかりして下さいよ、亜沙先輩」
「うん・・・それじゃあ、今夜・・・」
「―――おい」
会話を遮る声。その主を見やると、そこにいたのは神界を統べる王―――神王。
普段は豪放な笑顔を浮かべている彼だが、今は妙に難しい顔をしている。
「―――どうかしたんですか?怖い顔して」
「ああ、実はな―――三人とも、アザミの奴は覚えてるな?」
「―――ええ」
忘れているはずがない。夏に起きた大事件、神界と魔界、そして人間界をも巻き込んだあの戦い―――その
首謀者こそが彼女―――アザミだった。
「あの人がどうかしたんですか?」
亜沙が聞くと、神王はふうっと一度溜息をつき、言った。
「―――殺されたよ、あいつ」
―――その夜、12時少し前。
こっそりと家を抜け出してきた三人は、自分達の通う学園の校庭にいた。言葉はない。今日だけで、あまりに
色々ありすぎる。
アザミ―――彼女に対しては、はっきり言って悪感情以外はほとんどなかった。その境遇に対しては思うところも
なくはなかったが、だからといって彼女はあまりにも手段を選ばなすぎた。
だが、それでも―――。殺されたと聞いて、ああそうか、で済ませるには、三人は彼女のことを知りすぎていた。
―――そして、12時になったその時。稟達は、近づいてくる人影に気付いた。距離が縮まるにしたがって、その
人物の姿が明らかになる。
それは酷く現実離れした雰囲気を纏う男だった。芸術品のように整った美貌に、全身から漂う独特の威厳。
彼は稟達の一歩手前で立ち止まり、口を開く。
「お待たせしたようですね。私は<十三階段>最終の十三段目―――シュウ・シラカワです。あなた方が例の三人ですね?」
「あ、ああ・・・」
「ふふふ。では早速ですが行きましょうか。私とてあまり暇ではありませんから」
一方的に言うと、シュウは懐に手を突っ込み、何やら奇妙な布のような物を取り出す―――
「―――それは!」
稟は驚愕の声を上げる。シュウが取り出したのは、四次元ポケットだったのだ。
「ん?別に私にとっては珍しい物でもありませんよ。未来世界では極一般的な道具です。そして―――これもね」
そしてポケットから出てきたのはドア―――<どこでもドア>だった。そしてシュウはそのドアを開く。
「さあ、ついて来なさい。覚悟があるのなら―――」
「・・・言われなくても!」
稟はシュウが言い終わるのを待たず、ドアに入った。亜沙とプリムラもそれに続く。その先には―――
「―――いい覚悟だ。その覚悟こそ―――」
ドアの先には、どこかの遺跡の中のような場所。そしてそこには、白銀のボディを持つロボットが佇んでいた―――
「「「・・・サイバスター!」」」
それはまぎれもなくあの戦いを共に戦いし<機神王>サイバスター・・・。もう二度と見ることもあるまいと思っていた、
古代世界が生み出せし究極の兵器―――
「そう、サイバスターです。あなた方にとっては感慨深いものがあるでしょう?例の戦いの後、神王達の手によってここに
封ぜられたようですがね」
「・・・あんたは・・・何者なんだ?なんでこんなことまで知ってる?」
「ふむ。まあ話すと長いですが―――ああ、そうそう。一つ言わなくてはならないことが」
「?」
首をかしげる稟達に、シュウは告げる―――まるで、何でもないことのように。
「あのアザミとかいう女は、私が殺しました」
「―――――――――!?なん・・・だと!?」
「おや?怒りましたか?」
「なんで・・・なんでそんなこと!?」
亜沙がたまらずシュウに詰め寄る。シュウは事も無げに言う。
「理由は簡単です―――彼女は私の作り出した<グランゾン>を勝手に乗り回し、しかもあなた方に敗れ、大破させた―――
あまりにも許し難い」
その事も無げに放たれた言葉―――それは稟達にとって世界を揺さぶられるような驚愕だった。
「え・・・?お前、今、なんて言った?グランゾンを・・・作った、だって!?」
「はい、そうですとも。私こそが数千年の昔、魔界にてグランゾンを作りし者にして―――グランゾンの、正統なる
パイロットです」
「そんな!そんな訳があるか!ならなんで数千年経っても生きてるんだよ!おかしいじゃないか!」
「ふん・・・そこまで答える義理はありませんね。まあ、いいじゃないですか。それよりも、さっさとサイバスターに
乗りなさい。生身で次元移動は無理がありますからね」
「くっ・・・」
「りん・・・」
憤る稟の手をそっとプリムラが引く。
「あのひとの言葉は聞いちゃだめ・・・あのひとには、こっちの言葉は通じない」
「・・・・・・」
稟は歯軋りしながらも、彼女の言う通りだと思った。こいつには―――人間の常識や理屈なんて、異国の言語ほどにも
通じやしないだろう。この男は何かが―――何かが、決定的に違う。
彼は闇から生まれた闇の男だ。そんな存在に、どんな言葉も意味はない。
稟はもはや一言も発せず、サイバスターに乗り込んだ。亜沙とプリムラも続いたのを見計らって、座席の下に手を伸ばす。
「・・・あった」
それはひみつ道具<サイコントローラー>。稟はそれを座席の下に置いたままだったのだ。
「<機神王>サイバスターか・・・しかし」
シュウはいきなり語りだす。
「残念なことだ―――数千年の間に、風の守護精霊も消え、本来の力が失われている。おまけにパイロットはサイバスター
自らが選んだ主ではない紛い物―――それでよく、私が乗っていなかったとはいえ、グランゾンに勝てたものですね」
「・・・・・・」
稟はもはや何も答えない。風の守護精霊って何だよ。自ら選んだ主って何だよ。どっかのファンタジー小説かよ。
疑問は山ほどあるが、聞いたところでロクな答えは返ってこまい。
「果たしてあなた方がマサキのようにサイバスターを操れるのか、それとも力足りずに朽ち果てるのか、しばらく
見させてもらいましょう」
「・・・マサキ?」
「ああ、気にしないで下さい。昔の知り合いの名ですよ。熱血漢で単細胞で、しかも私を激しく憎んでいたという、本当に
厄介な男でした―――まあ、今となってはどうでもいいことですがね」
シュウはそれで会話は終わったとばかりに口を閉じ―――
「りん・・・何か来る!」
「え?」
プリムラの声にはっと顔を上げ、辺りに注意を払う。何も変わったところはない―――いや。
シュウの周りの空間が、歪んでいる。そしてそこに、一つの巨大な物体が顕現していた。
それは漆黒に近い深い青のボディを持った機械の魔王―――
「・・・グランゾン!」
「そう―――私の愛機、グランゾンです―――正確に言えば、これは新型―――グランゾンを超えしグランゾン、
<ネオグランゾン>です」
「ネオ・・・グランゾン!?」
言われてみれば、グランゾンとは少し形が違う。更に禍々しく、凶悪な印象を与えるフォルムになっていた。
そしてシュウの姿が光の粒子となり、ネオグランゾンの中に吸い込まれていく。
「さあ―――それでは少しばかり、次元を超えるとしましょうか。サイバスターを起動させなさい」
シュウに言われ、亜沙とプリムラがサイバスターに魔力を充填し始める―――
すぐさまサイバスターは起動した。
「・・・?」
稟はそれに訝る。以前乗った時は、起動まで20分はかかっていたはずなのに―――
「ああ、暇だったので、少々手入れしておいてあげましたよ。何せ数千年の間にかなりガタがきていたのでね。大したことは
しませんでしたが、起動までの時間はかなり短縮されたはずです。まあ、感謝しろとまでは言いませんが」
「あんたは―――あんたは、本当に何者なんだ?」
「私?私は私―――シュウ・シラカワですよ」
そして、次の瞬間―――空間が、ひしゃげる。
「「「え!?」」」
三人は驚きの声を上げる。シュウは余裕の態度で語る。
「さあ―――いよいよ次元を超え、彼らの世界へと飛びますよ。きっちりついて来なさい」
そしてネオグランゾンとサイバスターの姿が―――この世界から消えた。
投下完了。
ゲロさんの直後に失礼しました。お詫び申し上げます。
スパロボ用語がバリバリ出てますが気にせずに。
知らなくても問題ないようになんとか頑張って話を展開させますので。
さて、次回でやっとこさドラえもん登場予定です。
主役登場までにここまで話数を食うとは予想外でした。
トリの付け忘れ、失礼しました。
一応本人と分かるように・・・。
「逆境ナインIN地獄甲子園−全力学園VS外道高校−」
甲子園選抜の季節。予選突破を目指し球児達がグラウンドを駆け巡る頃。
全力学園校長は、予選第1回戦相手の情報を求めて、旧友の星道高校校長を訪ねた。
相手の名前を聞いた瞬間、星道高校校長は沈痛な表情で言った。
「終わった…。全力学園野球部の今年の夏は終わった…。そう思うべきです。」
「!…外道高校とは、あの日の出商より強豪という事ですか!!」
星道高校校長は頭を振って、試合放棄で負けた忌まわしい記憶を語った…。
「…ルール無用の殺人集団…!ビーンボール・殺人スライディングなどは当たり前、
審判のすきをついて殴る蹴るの暴力行為、甲子園は合法的に殺人が出来る
遊び場にすぎず、試合中の出来事は事故とみなされ警察も手も足もでないそうです…」
暗い表情をした月田明子の報告を聞き、不屈闘志と逆境ナインの面々は青褪めた。
「月田君…そ…それって野球じゃなくて殺人じゃないか!!」
全力学園校長が言った。
「実際、その通りだ…不屈よ、今度ばかりはワシも許す!…試合放棄だ!!」
「先人曰く“死んで花実が咲くものか!!”ですな」榊原監督がいい加減な相槌を打つ。
部員達も同調し「死にたくない」「棄権」「試合放棄」と騒ぐ中、不屈は思った。
…来た。来やがった。いつものこれだ。不屈は不敵な笑いを浮かべた。
「これが逆境だッ!!」
「…皆が恐れるのは解る。しかし、そんな外道共を俺達が乗り越える事が出来れば、
他の学校など恐れるに足らず!!予選どころか優勝も確実だ!!…etcetc」
不屈は妙な自信と説得で、皆を無理矢理納得させて、試合当日を迎えた。
遅刻している外道高校が到着した。不屈と月田が迎えに行くと…
「いやー遅れてすんません。おっと、キャプテンと別嬪さんの直々のお迎え、恐縮ですわ」
化物共を引き連れた麦わら帽子の外道高校監督は、鬼のような形相で笑って見せた。
二人は引きつった笑いで応えた。
でも、「手前、何見てやがる!!」と月田に外道の一人ホウイチが因縁を付けた時、
「別嬪さんはカタギや。で、カタギには手ェを出すなといつも言ってるだろ!!小僧!」
そう言うなりホウイチの耳を噛み千切る監督を見た瞬間、二人はゾッとした。
そんな不屈と月田を見ながらホウイチは、流血しながら「…覚えてろよ…」と呟いた。
不安と殺意が渦巻くグラウンド。並んだ両校の代表、不屈とホウイチは互いに礼をした。
「…その傷でも出るなんて、根性があるな。」「出なけりゃ、お前らを殺せねえだろ?」
様々な修羅場を潜り抜けて来た筈の“逆境ナイン”の面々は凍りついた。
「プレイボール!!」外道高校の攻撃。1番バッターはホウイチ。
不屈はマウンドに立った。“これは最大の逆境かもしれん。しかし俺には男球がある!”
闘志を球に込め不屈は振りかぶった。
不屈の様子をベンチで見ながら、外道監督は薄笑いを浮かべた。
「ぐへへへへ。外道の恐ろしさを思い知らせてやるw」
不屈キャプテンは、最初から男球で決める積りだ。と知ったナインは安心した。
それでも、ベンチの月田は嫌な予感が拭えなかった。そして不屈が投げた瞬間、
それは最悪の形で的中した…!!
「ウギャアアアアアアアアアアッ!!!」
全力学園校長と監督が止むにやまれぬ事情で、遅れて球場に到着した時、
聞こえたのは悲鳴とも絶叫とも付かぬ叫び声だった。
慌てて駆けつけると、そこのマウンドには…
闘志に燃えた不屈の…生首が串刺しにされており、周りにはナインの屍が転がっていた…。
そして校長の足元には、釘だらけの男球が無残な姿を見せていた。
「…これは夢だ。…悪夢だ。うおおおおッ不屈ッ!!皆!!」校長は泣き叫んだ。
ベンチで呆然自失の月田を起し、試合の無茶苦茶なあらましをなんとか聞いた榊原は、
審判に怒りの抗議をした。でも死者は出たが、試合はキチンとやった。外道に問題は無い。
「それはそれ、これはこれ。」みたいな言い方をする審判に榊原は声を失った。
そんな彼らを外道高校監督は嘲笑った…。
「消滅するのは、全力か?外道か?か…正解は全力の方って事で。フヘへへへへw
えー××県の○○君、△▲県の□■君−お前らには何もやらネーッッッ!!w」
−まさに外道。
数日後、全力学園野球部の合同葬儀がしめやかかつおごそかに行われた…。
悲しむ校長や月田の前に、星道高校校長と野球十兵衛&メガネ達が弔問に訪れたのは、
夜も遅い頃だった…。
これで終了です。
初めてやってみたのですが、これでいいのでしょうか。
36 :
輪廻転生 最終章 ラストエピソード:2005/07/11(月) 00:01:45 ID:6m5EHj3S0
表彰式典が始まろうとしている武舞台近辺に比べて控え室は静まり返っていた。
誰一人として言葉を発しようとはしない。クリリン達はヤムチャを止める方法
を考え始めていた。不可思議な事態だった。戦士としては最弱のヤムチャが
トランクスや孫悟飯に打ち勝った。しかも二人は今植物人間の状態になっている。
一命を取り留めたのが不思議な位だった。皆ヤムチャの性格は知っていた。
昔の彼なら力があったとしてもここまではしない。だが今の彼は仲間を
ズタボロにした。
「悟天・・・行くぞ。べジータに頼みに行こう。」クリリンが悟天を促した。
その時、式典会場もとい武舞台では歓声が巻き起こっていた。新たなる
若き格闘チャンピオンを客全員が賞賛していた。
「ヤムチャ選手!天下一武道会優勝おめでとうございます!主催者のサタン財団から
5億ゼニーが贈られます!」
巨大な小切手を受け取るとヤムチャは武舞台を後にした。
賞金を自分の口座へと振り込んだ後ヤムチャはブルマの家へと向かった。
べジータは実力は悟飯よりも上だ。装置がないとフルパワーが出せないらしいが
そんな事はどうでもいい。今は現在の実力ナンバー1の男と闘う事だけを優先すべきだ。
そうこう考えている内にヤムチャはべジータの家へと辿り着いた。
ドアをノックする。返事はない。家の中に入るのは危険だった。べジータの気を
探っても反応はない。つまり奴は。
「遅かったじゃないか。」
ヤムチャは後ろを振り向いた。べジータが腕を組んでこちらを睨み付けていた。
「トランクスに勝った事が気に障るのか?」ヤムチャが皮肉った。
「場所を移すぞ。お前の化けの皮を剥がしてやる。」
口調はいつもどおりの無愛想だがべジータの気が大きくなっていく。
変身しないでも通常の力で勝てるぞと言わんばかりの出でたちである。
「いいだろう。」
数分後、ヤムチャとべジータは荒野で対峙していた。
「むん!」
37 :
輪廻転生 最終章 ラストエピソード:2005/07/11(月) 00:02:32 ID:6m5EHj3S0
ヤムチャの目には気弾が見えていた。遅すぎるのだ。徹底的に嬲るつもりなのだろうか。
右に避けるヤムチャを追ってべジータがさらに気弾を放つ。ヤムチャは自分の
スタンド能力を考え始めた。時を止めようが攻撃力は圧倒的にべジータの方が上だ。
恐らく封印能力を使った所で効果は薄いだろう。べジータのパワーは抑制できる
モノではないからだ。ならば。策は一つしかない。
「は!」
べジータが濃縮された気弾を放つ。が、速度が速い。べジータの目にヤムチャがガードするのが見えた。
そこだ。高速で動く為気を開放し地面を蹴る。ガードして一瞬動きが止まったヤムチャの背後を取った。
まずは一発。
「何!?」
ヤムチャは自分の背後にべジータの気配と衝撃を覚えた。チリチリと服が焦げ、肌が痛む。
吹き飛ばされさらに連続攻撃を受けるヤムチャ。背中、鳩尾、腹がほぼ同時に殴られた。
「げはっ。」
38 :
輪廻転生 最終章 ラストエピソード:2005/07/11(月) 00:03:09 ID:6m5EHj3S0
死んではいない。だが圧倒的な力の差だ。それに相手は余裕そうな顔で腕を組んでこちらを
睨んでくる。挑発してみるか。相手の力が大きければ大きい程こっちにとっては有利だ。
合気とはそういうモノだ。
「さすがだなぁべジータ。さすがサイヤ人の王子は違うなぁ。」ヤムチャが謙る。
「お世辞はいらんぞ。」
「俺が悟飯とトランクスを倒した時、俺はある術を使った。相手の攻撃が俺に触れれば
俺は相手の特殊能力を封じる事ができる。」
べジータの顔色が変わったのがヤムチャにはわかった。自分が何も知らずに肉弾戦を仕掛けた
事に腹を立てているのだろう。
39 :
輪廻転生 最終章 ラストエピソード:2005/07/11(月) 00:03:48 ID:6m5EHj3S0
「それがどうした?お前が何を使おうが俺のパワーを封じれると思うなよ?」べジータが罵る。
「今度は此方から行くぜ。」ヤムチャが不敵に笑う。
べジータはヤムチャの姿が突っ込んでくるのを見た。そして上段蹴りと突きがべジータの顔面に迫る。
べジータの髪の毛が舞った。ヤムチャが振り向く前にべジータは相手の背後に立っていた。
そして気弾。直後おかしい事が起こった。気弾がヤムチャの体の表面で消滅したのだ。
「行っただろ。封印できるって。気弾も例外じゃないぜ?」ヤムチャが挑発する。
「ちっ!」
べジータは距離を取った。今のはただの気弾だ。濃縮度も薄い。ただ自分の必殺技だったら
どうなる。威力が削られ当たってもエネルギー波程度の威力しかないのではないか。
「雑魚相手に変身するとはな。いいだろう。盾を破壊してやる!」べジータが叫んだ。
べジータの体が光り、髪が金色に変わり目の色は青色に変わる。超化である。
「封印できるって言わなかったっけ?」ヤムチャがほくそ笑みながら挑発する。
「凌ぎきれるかな!?」べジータが怒鳴った。
ヤムチャは焦っていた。悟飯は肉弾戦を仕掛けてきた。だから力を封印する事が出来た。
だが今度は違う。べジータは気弾で攻撃してくる。恐らく五割程度の力で来るだろう。
問題はそれを凌ぎきれるのかどうかである。
「いけーっ!」
べジータが両腕を会わせて両手をヤムチャに向ける。べジータの腕に膨大な気が濃縮されていく。
遂に青白いエネルギーが放たれた。ヤムチャに向かう死神の様に。
「ディストーションフィールド!」
ヤムチャの周囲をバリアが包む。ヤムチャの封印能力が最高潮に達している証である。
青いエネルギーの奔流がヤムチャを襲う。
40 :
輪廻転生 最終章 ラストエピソード:2005/07/11(月) 00:04:09 ID:6m5EHj3S0
「うおぉぉ・・・。」
ヤムチャは踏ん張っていた。両腕を突っ張り足もどっしりと構える。と、異変が起こった。
誰かの手がヤムチャの足を掴んだのだ。その手は地中から生えていた。
「・・・・け・・・ん・・・」謎の声が響いた。
「何だ・・・・この気は・・・まさか!?」ヤムチャが戸惑った。
「龍ーーーー拳ーーー!!!」
地中から飛び出してきた人間ーー孫悟天だった。悟天の拳がヤムチャの顎を捉えた。
結果DFは消失し、ヤムチャはファイナルフラッシュをまともに食らうことになった。
「ごぇあぁぁぁぁ!!」
きりもみをしながらヤムチャの体は吹き飛ばされ岩肌に激突した。
右腕は折れており、足は立ち上がる事すら困難に見えた。
「封印能力は一つの攻撃に対して一回だけ。時間差があるなら二撃目に対しては能力は発動しない。
つまりストレートに食らうと言う事。占いババ様はそう言っていた。」悟天は説明した。
無事な方の腕で岩に頼りながら何とか立ち上がるとヤムチャは片腕を鳩尾辺りに置いた。
「脳震盪を起こしたらしいな。傷が再生しない。」ヤムチャが呟いた。
べジータの気が高まっていく。今度こそ本当に止めをさすつもりだろう。しかもフルパワーで。
悟天はべジータの隣に動いた。既に超化している為気が高まっている。
「か・・め・・は・・め・・」
「ビッグバン・・・!」
ヤムチャは息を吸った。まだだ。あと2発は耐えられる。片腕だろうが何だろうが。
「波!」
「アターーーーック!」
悟天とべジータが同時に技を放つ。二人の気弾は一つになりヤムチャを押し潰そうと真正面から向かってくる。
「渋川センセイ・・・行きます!」ヤムチャは呟いた。
気弾がヤムチャの手に触れる。腕の欠陥が切れ、肉が焼け始める。
「むん!」
ボロボロの片腕を振り払うヤムチャ。エネルギーは逆流し悟天とべジータの元へと帰っていく。
「何ィィ!?うごぇあぁぁああ!」
二人の叫びと体が遠くへと吹き飛ばされていく。
終わった。自分は頂点に立った。夢にまでみた地位へと上り詰めたのだ。さあ祝杯を上げに行こう。
ヤムチャは天界へと向かった。
41 :
Iron Fist Tournament 登場人物紹介:2005/07/11(月) 06:23:32 ID:oNlLZQXu0
連続投稿に引っかかりました。
今回の投稿はこれで終了です。
42 :
日本一への挑戦:2005/07/11(月) 11:34:40 ID:+wtiH3lN0
我々「汚物団」は、汚物の地位向上のために暗躍し続ける秘密結社である。
現代において、残念ながら汚物はまだまだ人々に忌み嫌われている。三度の汚物より飯
が好き、という格言が生まれるほどだ。いや、生まれてはいない。
構成人数は全国で、およそ八百人。組織としては物足りない規模ではあるが、構成員た
ちの意欲と根性は著名な圧力団体にだって決して劣りはしない。
指令は東京都にある本部より、各支部へと送られる。私も支部長として、恥じぬ働きを
見せねばならない。
ちなみに、我々のリーダーは「長谷川」である。むろん、コードネームであり、全国で
生活する長谷川さんとは一切無関係だ。リーダー曰く「単なる洒落だよ」とのことだが、
未だに私には由来が理解出来ていない。
さて、ずいぶん脱線してしまった。さっそく本題に入ろう。今回我が支部に下されし指
令──ずばり「汚物で富士山を越えよ」であった。
人、動物、昆虫、魚介類──古今東西の糞尿を集め、積み上げ、富士を見下ろせるほど
の高山を誕生させよというのだ。
「こ、これは……何たる光栄! こんな大偉業を我々の手に任せてもらえるとは!」
私はすぐさま支部団員を召集し、彼らを激励した。
「諸君、我々に与えられた使命は、日本一の象徴たる霊峰富士を凌駕することだ! 存分
に働いてくれたまえッ!」
大喝采が沸いた。
43 :
日本一への挑戦:2005/07/11(月) 11:35:18 ID:+wtiH3lN0
さっそく、私は部下を総動員させ、汚物回収に奔走した。
下水道や処理場を巡り歩き、山林にて動物や昆虫のフンを掻き集める。犬を散歩させて
いる飼い主があれば、金を払ってフンを譲ってもらう。もちろん、自分たちの汚物は材料
として丁重に取り扱う。
もちろん、問題点も数多く発生した。例えば、汚物は乾くと脆くなり、崩れやすくなっ
てしまう。そのため、定期的に水を与え、乾燥させないよう工夫する必要があった。また、
激しい雨や風にも弱いので、天気予報次第では山に布を被せて作業を一時中断せざるを得
なかった。
また、悪臭対策も早急に解決せねばならない。汚物団団員は「匂い人糞、味シメジ」と
主張する猛者揃いなので平気だが、一般人はそうはいかない。臭いを拡散させぬため、防
臭壁も平行して建築されることとなった。
次々にぶち当たる難問奇問に四苦八苦し、遅々として進まない造山。本部からも催促が
飛ぶが、どうしようもなかった。
ついに、私は支部長の座を降ろされることとなる。
44 :
日本一への挑戦:2005/07/11(月) 11:36:06 ID:+wtiH3lN0
本部より配属された、新たな支部長はやり手だった。
即座に妙案を練り出し、問題点を鮮やかに解消していった。初めは私に味方する者も多
かったが、やがてはそれもいなくなった。
だが、私は嫉妬など抱かなかった。私にとって汚物が富士を越えることは悲願であり、
また義務でもあった。彼が達成を早めてくれるのならば、大人しく従おうと決めていた。
高度は十メートルに達し、五十メートルを越え、百メートルまでになった。
作業に関わる人員も増やされ、海外からも汚物を輸入し始め、山は驚異的なスピードで
伸びていく。
そして、私が支部長として指令を受けた日から、およそ十年。
ようやく、標高一千メートルへ。
「みんな、よくやってくれた。まだ富士山の半分にも満たないのは事実だが、とにかく今
日はここまで来たという成果を労おう──乾杯ッ!」
我々は狂喜した。一千メートルからなる頂上で飲むビールはまた格別であった。まだ名
もないが、この山が富士を凌駕する日は決して遠くはない。
もちろん、私も喜び勇んで、現支部長へとビールを注ぐ。
「いや、支部長。もし、私が支部長のままだったら、多分まだ五百メーターにも達してい
なかったでしょう。本当にありがとうございます」
「いえいえ、とんでもない。あなたが基盤を形成していてくれたからこそです。僕がやっ
たことなど、たかが知れていますよ」
私も支部長も笑い合った。きっと彼もまた、私をさしおいて支部長になったことに罪悪
感に近いものを感じていたのかもしれない。が、今や我々が座る大地となった汚物は、そ
んな下らぬしがらみ全てを流していく。まさに楽園であった。
──そう、楽園こそが非現実の来襲に相応しい。
45 :
日本一への挑戦:2005/07/11(月) 11:36:57 ID:+wtiH3lN0
「ガハハハハーッ! 人間(クソ)どもが大量にいやがるぜ!」
低く、暗く、大きい声だった。上空を仰ぐと、見知らぬ怪人が宙に浮いている。
しかも、怪人は降下してくるではないか。私はパニックになる同僚たちを、支部長とと
もに鎮めつつ、怪人を見据えた。
「何者だ、おまえは!」
鋼鉄の鎧を連想させるボディに、禍々しく邪に満ちた笑みを浮かべる怪人。
「俺は敬虔なるアバル信徒にして七剣邪が一人、グルトニー様だァ!」
「グ、グルトニー……? いきなり、何故こんなところへ……」
当然の疑問を私はぶつける。すると、怪人は元々荒かった語気をさらに荒げ、恨みを吐
き出した。
「俺はよぉ、勇者の野郎にやられちまったんだよォ! ほとんど死に絶えてた俺だったが、
欠片だけ残ってた悪魔核(デビルコア)に意識を吸い込まれた。そして、現実と精神との
狭間を彷徨い……やっと今、転生することが出来たんだァ!」
全てにおいて意味不明だったが、彼の凶悪さは初見で十分に把握出来た。そのため、私
はこれ以上、余計な質問をしない方がいいと考えた。
「お、おめでとうございます。で、これからどうするつもりですか」
「本当はてめぇらをぶっ殺して、スカル・ドラゴーラでここら一帯を廃墟にしてやりてぇ
が……。どうやら、転生に力を使いすぎちまったようだぜ! これじゃろくな炎が出やし
ねぇ!」
物騒なことを平気で喚く怪人。だが、どうやら我々は命拾いしたらしい。とりあえず、
機嫌取りも兼ねてさらなる会話を試みる。
「いやはや、お強そうな姿ですねぇ。我々人類など比較にすらならない……」
「ところで、てめぇらこそ何してやがるんだ?」
「え、いや、私たちは汚物で山を造ってるんですよ。ハハハ……」
「ほう、面白ぇ! 人間(クソ)どものクソで、山を造ってやがるのか! 俺も以前は殺
した人間の頭蓋骨で、塔に飾りつけをしたもんだぜ! よし、俺様も入れろ!」
「……え?」
予想外の反応だった。
しかし、頭蓋骨を弄んでいたような輩に我々が逆らえるはずもなく──怪人グルトニー
は汚物団へと正式に仲間入りしてしまった。
46 :
日本一への挑戦:2005/07/11(月) 11:39:37 ID:+wtiH3lN0
さて、後日談を紹介しよう。
造山活動は未だに続行中であり、現在は標高一千二百メートルほどになっている。私も
積極的に作業に加わり、しばらくは筋肉痛と同棲生活を送ることになりそうだ。
また、怪人グルトニーであるが、彼もまた少しずつではあるが団に馴染みつつある。い
つも勇者を殺すと息巻いているが、なかなか力が全盛期に戻らないらしい。特に迷惑も掛
けないので、おそらく当分はこのままだろう。
次に、少しだけ宣伝をさせてもらおう。
普段、便をすぐに流してしまうあなた。明日からでも遅くはない。ぜひ、我々に便を譲
っていただきたい。もちろん、無料でなどとはいわない。状態にもよるが、なるべく高額
にて買い取らせていただく所存である……。
お わ り
47 :
作者の都合により名無しです:2005/07/11(月) 11:46:52 ID:PIpREwuF0
>うみにんさん
ゲンゴロウの男気とギラーミンの不気味さがよい対比ですね。対決という感じ。
カイザーフェニックスは王者の証。最終決戦の予感がヒシヒシとしますね。
しかし、もうすぐこのバキスレの名物SSも終わってしまうのか。寂しい。
>ゲロさん
魔女とは打って変わった雰囲気ですね。正直、最初は誤爆かと思いましたw
お料理コントみたいな中にあるほのぼのとした笑いと明るさ。
こういうのもまたゲロさんの作品の特徴のひとつですね。これどう続くのかw
>サマサさん
前作の最終兵器グランゾンがパワーアップですか。激しい戦いになりそうですね。
プリムラたち前作の主役も動き出して、真の主役ののび太もそろそろですね。
しかしプロローグで6か。前作以上のスケールのなりそうですね。
>名無しさん
いらっしゃい。勿論その調子で、どんどんいっちゃって下さい。応援してます。
画太郎と島本和彦の作品のコラボかな?まあ、凄くハジケタ作品になりそうですな。
画太郎の異常世界をどう描くのか、期待してます!
>草薙氏
輪廻の最終章、完結の意思ありということで嬉しいです。ヤムチャの合気道ですか。
べジータに勝ってどういうエンディングになるのか楽しみです。
でも草薙さん、応援はしてますがもう少し気を使っていただけると・・。メール欄とか。
夏季うんこSS、第二弾。
前回よりは少々ヘビーかもしれません。
どう評価されるかは不安ですが、書いてるときは何故かやたらと楽しかったです。
もうムチャクチャですわ。
余談ですが、このSSに出てくる組織をさっき検索したところ、
「あぁ、世の中には同じことを考える人は一杯いるんだな」
とほっとしたような、ガッカリしたような、そんな心境です。
49 :
47:2005/07/11(月) 12:52:08 ID:PIpREwuF0
サナダムシさん作品中に感想挿入しちゃってすみません。
夏季うんこSSですか。という事は、四季それぞれにこのシリーズがあるのか。先鋭的だw
グリトニーなんて2ch漫画板住民以外、誰も覚えていないようなキャラが主役だし。
物語的には今までのうんこものの中でも出色だと思いますが、
それ故に少しスマートになりすぎてきている気もします。
「のび太の思いつき」とか「選ばれたもの」とかは、読んだ後に吐き気がしたからw
次はダイナミックに下品にお願いします。勿論面白かったですよ!
>茄子
いい意味で力の抜けた作品ですね。でも相変わらず元ネタわからんw
魔女が暗くてえぐい分、この作品でゲロ氏がうまくバランスとっているのがわかる。
>超機神大戦
役者は揃った、のかな?これでドラ達が動き出せば大冒険の始まりか。
今回はオープニングから激動なので、本編もきっとクライマックスの連続だろうね。
>逆境ナインIN地獄甲子園
新人さんが着てくれるとひとしお嬉しいな。完結まで頑張って下さい。
画太郎先生は天才のなのでSSも難しいけど、出だしから特徴つかんで面白いですよ。
>輪廻転生
仏の顔も三度までって諺ご存知ですか?ちょっと気を使わなさ杉。
作品はずっと読んでるし最終回近まで頑張って完結して欲しいけど、マナー少し守って。
>日本一への挑戦
うんこ物書かせたら日本一だろうなwそんなジャンルあるかどうか知らんがw
汚物団のネーミングといい内容といい、うんこ物に賭ける姿勢といい、厨臭いて素晴らしい!
個人的にうんこ物大好きだが、やはり受け付けない人もいるんだろうか。
とりあえずふらーりさんの感想が楽しみだw
「さて、童虎よ」
「む、なんだ、シオン」
西日差すシオンの工房のなか、膝を交わすような距離で野郎二人が真面目顔だ。
童虎が何時ものようにシオンとの組み手を終え、天秤宮へと戻ろうとした時のこと、
当のシオンから話があると呼び止められたのである。
まあ座れ、と言われ、胡坐をかいてシオンと向き合うや否や。
「沐浴という単語をしっているか?」
「バカにしているのか?シオン」
シオンは言うなり、ぬっと懐から折りたたまれた一枚のメモを取り出した。
「なんだ、それは」
怪訝な顔の童虎に対し、シオンはフッフッフと、何時もの不敵な笑いを浮かべると
「浴場の見取り図だ」
「…何を考えている」
判っているのだろう、というシオンの表情。
不穏な気配を感じ取り、声音が低くなる童虎
「女体の神秘を暴く、つまり、覗くのだ」
天地のひっくり返ったような驚愕を顔に浮かべる童虎
下心満載なのを隠し切れない自称不敵な笑みのシオン。
「正気か貴様!」
「当然だ」
殺気の篭った凄まじい表情で童虎は一喝するが、
シオンは柳に風とばかりにするりとかわし、蜂の一刺しのような痛烈な一撃を放つ。
「知っているぞ、童虎
貴様が鍛錬の最中、女性聖闘士の尻や胸や脚やらにちらちらと目がいっているのを」
童虎は虎を背負って驚愕する
「そッソそんな事は無いぞシオン!俺が見ているのはおっぱいだけだ!」
「そぉか、貴様はおっぱいが大好きなんだな、スケベだなぁ童虎くん!」
「違うといっておろうがぁあぁあぁあぁあぁ!」
シオンは人の悪い笑みを浮かべ、童虎は裏返った声で絶叫する。
必死に否定する事により墓穴を掘り下げていることに気が付かない童虎よ、哀れ。
「何、貴様も男子
女体を探求したいと思うのは自然だぞ」
女体を探求、という微妙にエロっぽい単語に童虎は顔を真っ赤にして硬直する。
フ、掛かった!目をきらりと輝かせ、シオンは一気に畳み込む。
「何、男はみんなスケベなのだぞ童虎!恥ずかしがることは無い!
私もスケベ、貴様もスケベ、それで良いじゃないか!おっぱい童虎!」
おっぱい童虎、のあたりで何か言いたそうな顔つきとなった童虎に対して
シオンはおもむろに真面目な顔となり、それに、と耳打ちする。
それは正しく、止めの一撃。
「セダイラの素顔を見てみたくは無いのか、童虎よ」
「ぬぅ…」
と
殺った、とシオンはほそく笑む。
童虎はどちらかと言うと、技巧よりも力で押し切る方の戦闘を好む聖闘士だ。
彼の最大奥義・濾山百龍覇がその証明と言えるだろう。
それ故に技巧派のシオンと相性が良いのだが、こういった場合では些か分が悪い。
「そ、そりゃあ俺も女の子に興味が無いわけじゃないが…」
ここまで言わせてしまえば勝ったも同然。
「と、まぁ貴様も充分女体の神秘に興味があるとわかったわけだ!」
言質をとってしまえば童虎のこと、どうあってもこの馬鹿馬鹿しい謀に加担するしかないのだ。
「貴様…ッ」
声は震え、常なら浅黒い顔は真っ赤、陥落一歩手前な要塞のような童虎。
頃合か、と見てシオンは穏やかな声音で親友に語りかける。
「さて、童虎。もちろんイヤとは言わんよな」
悪魔のような笑顔のシオン、処刑される罪人のように苦悶する童虎。
断ろうものならこのシオンの事、明日から聖域でどんな噂が流れるか分かったものではない。
勝敗は決した。
喜色満面ひとつと渋面ひとつ。
それでいて気配も衣擦れもなく、馬鹿どもは行く。
「しかし、シオン。どうやって見取り図な手に入れた?」
童虎の問いにシオンはフッ、と何時もの笑みで返す
「何、私たちは庶務の連中と仲が良いだろう?」
シオンが何時ものように聖域庶務の連中の所に上がりこんだ事に端を発する。
それ自体は珍しいことではない。
童虎もそうだが、庶務責任者の男・ハインシュタインとは聖闘士になる前からの付き合いだ。
シオンも童虎も、そして彼らと同年代の聖闘士たちは、
聖域に来て右も左も分からないハナタレ小僧だった頃、彼にはずいぶんと世話になったものである。
特にシオンと童虎は彼をはじめとした庶務の面々との付き合いは今でも続いている。
だが、その場での雑談の内容が問題だった。
浴場の設備のことに話題が転んだのだ。
意外に思われるかもしれないが、聖域には温泉浴場が存在する。
英雄ヘラクレスが12の難行を終えた際、アテナは旅の疲れを癒させる為に温泉を作ったのだという。
聖域にはその温泉が今も尚存在している。
ヘラクレスの泉、ヘラクレスの風呂、命の泉などと呼ばれ、聖域に居を構える者たちに親しまれている。
神の温泉らしく、万病に効き、瀕死の聖闘士ですら蘇らせるという素晴しい効能をもち、
女性聖闘士および女性職員用の分け湯が存在する。
アテナに仕える女性聖闘士といえども、アテナの機嫌を損ねてはメデューサの二の舞だ、
身だしなみに気を使うのは当然の事といえよう。
それに神話の昔ならまだしも、
性別で問題が発生する事になる18世紀中頃の今は、この分け湯の存在は当然ともいえる。
だがこの分け湯、実はかなりの頻度で故障が発生する。
故障のたびに呼び出されてはたまった物じゃない、愚痴交じりに談笑していたところ、
シオンは善良そうに、なら私が修理を担当しましょうか、と申し出たのだ。
聖衣修復技能者のシオンである、湯の点検補修など容易いものだ。
黄金聖闘士にそんな事をさせられません、という職員を宥めすかし、
事実上12宮すべての湯の点検補修を担当している彼の手前、
見事修理担当と相成り、浴場の見取り図を手に入れたというわけである。
シオンは思春期の少年である。
日々成長していく体、変わっていく心、
そんな中精通を向かえ、自慰も覚え、にきびも出来るようになった。
心の中のもやもやとした物は体を動かすことで晴らせるが、根本的な解決にはならない
異性の体に興味をもつようになるのに、そう長くは掛からなかった。
聖闘士として磨いた技術を私欲の為に使うことは間違っている、と思ってはいる。が、
わかっちゃ居るけど辞められないのが人情。
シオンの覗き行為は、実はけっこう前から続いているのである。
「…おい、シオン
職員の信頼を裏切る事になるぞ」
「安心しろ童虎、万が一見つかったらテレポーテーションで逃げればよい
それ以前に、黄金聖闘士の気配遮断に気が付く白銀聖闘士や青銅聖闘士など居る訳が無い
フッ…言わば修行だ」
この野郎、聞きやしねえよ…。喉まででかかったが、ギリギリで押さえ込む。
聖闘士の技巧を覗きに使うなよ、と思わないでもない童虎だが、
こうなったシオンがどう言っても聞かないと分かっている。
大人しくついていくしかないのだ。
今ここで引き返そうものなら、それこそ覗きの濡れ衣を着ることになりかねない。
シオンが一方的に猥談を繰り広げながら歩くうち、とうとう浴場が見えてきた。
無言で顔を見合わせ、頷く。アイコンタクトはばっちりだ。
シオンは
『私について来い』
と懐から取り出した黒板にチョークで書く。
小宇宙の思念波や、声を出してしまっては浴場の聖闘士に気付かれるからだろう。
妙に手馴れて抜かりが無いのが実に妖しい…、だが童虎は思っても口には出さない。いや出せない。
シオンに聞いて、予測どおりの空恐ろしい回答が来るのを恐れたからだ。
こういうところはまだまだ未熟なのが童虎である。
『脱衣場の天井が二層になっている、そこに潜む』
童虎はシオンから黒板とチョークをひったくると
『解った』
呆れたようにチョークを黒板に踊らせた。
シオンはブロックサインで童虎を誘導すると、童虎は足音も立てずに近くまで寄ってくる。
何だかんだ言いつつ、童虎もその気なのだ。嗚呼性少年。
シオンがニヤニヤ笑っているのにも気が付かず、
童虎はヘタをしたらそのまま浴場に突貫しそうな勢いだった。
『落ち着け、深呼吸しろ』
事前にシオンがこっそりと改造していた箇所から脱衣場の屋根の下に潜り込むお馬鹿たち。
闘牛もかくやといわんばかりの鼻息の童虎を何とか宥めすかし、
いざ神秘の探訪へ!と意気込んだところで
「待て!」
シオンが小さく、だが力強い静止の声を出す。
『先客だ』と。
こういうところで妙に息が合っているのが不思議でならない、とは某カシオペヤ座の聖闘士だが。
錯綜する視線、ぼくらは何時も以心伝心、自分たちのことを棚に上げて光速で結論がでる。
「覗き魔だ、とっちめろ」と
童虎がゆっくりと回り込む、シオンは這うようして直進する。
二人の存在を気付いているのかいないのか、
先客は脱衣場のシオンが見つけた絶好ののぞきポイントに伏したまま動かない。
黄金聖闘士の気配断ちは完璧といえるだろうが、
いくらなんでも聖闘士が出入りする湯殿でまったく警戒しないというのもおかしい。
そう、二人が思ったとき、先客ががばっと顔をあげた。
「ラミアー!!」
神話の昔、主神ゼウスの愛人の1人であったが、
女神ヘラにより、半身を蛇に変えられてしまった人物である。
だがアテナの御所である聖域にそんな神話の昔の怪物が沸いて出る道理は無い。
何かの前兆だろう。
だが、それが解るのはまだ暫く先の事だ。
一瞬目配せすると、童虎がけん制打を放ち、
怯んだラミアーをシオンが抱えてテレポーテーション、童虎もそれに追随する。
聖闘士随一のサイコキネシスの使い手であるシオンの精緻なテレポーテーションにより、
硬い岩場に叩きつけられたラミアーは、もんどりうって転がった。
「気をつけろ童虎!神話の時代の怪物だ!」
「解っている!シオン!」
警戒を怠らず、険しい顔つきでラミアーを見やる二人に向かい、女怪は眼窩から赤い涙を流しながら絶叫した。
天を、神を呪うような凄まじい絶叫だった。
「…呪い、か」
ラミアーの伝承を思い出し、そう呟くシオンの声が理解できたのか、
女怪は狂気に染まった恐ろしい形相で二人を睨みつけながら叫んだ。
絶叫ではあった、だが、それは確かに言葉であり、切実な願いだった。
今の童虎にはそれを理解できなかったが、理解出来たシオンは拳を振るうのを躊躇った。
それの隙を逃がす女怪ではなく、シオンに向かって踊りかかる。
理性を失った狂気の怪物の行動は、先ほど叫んだ願いとはまったく逆だ。
牙をむき出しにし、怪物に相応しい凄まじい形相で襲い来るラミアー。
だが、哀しいことにそれは黄金の聖闘士からしてみれば遅すぎる動作だった。
明らかにラミアーよりも遅く攻撃をしたにも関わらず、
シオンの爆発的に高めた小宇宙が産む奇跡、光速の鉄拳によって、
ラミアーは中空高く跳ね飛ばされ、絶命した。
ここまで圧倒的な実力差では戦いですらない。
羽虫を叩き潰すが如く、瞬殺だった。
その後、さすがに女湯をのぞいている途中で接触しました、などとは言えず。
二人で組み手をやっている最中に異様な小宇宙を感じ、探ってみたところ、ラミアーと接触しこれを討ち取った。
そう口裏を合わせ、報告した二人は淡々と後始末を行った。
騒動が方をついたときにはもうとっぷりと日も暮れ、満天の空を星が踊る時となっていた。
「なんとも、後味の悪い…」
「まったくだ、お前の悪巧みに乗るとロクな事にならん!」
自宮にもどるでもなく、夜空を眺めているシオンがそう独り言を呟くのを聞きとがめ、
童虎はからかいを滲ませて言った。
「そうじゃない、そうじゃないさ。
ラミアーが最期になんて言ったか解るか?童虎」
知らん、とばかりに首を振る童虎を察してシオンは続ける。
「殺してくれ、そういったのだ…」
「ラミアーとは、確か…」
童虎は記憶を探るが、中々希望の記憶を引き出せない。
「女神ヘラに子供を殺され、自分も化け物に変えられたのさ、ラミアーは」
一瞬目を見張る童虎だが、口からでたのは先ほどの童虎と同じ言葉、
後味の悪いものだな、それだけしか出てくることはなかった。
「聖闘士は、アテナの名の下に地上の愛と正義の為に戦う
その正義の内には、理不尽に抗う術のない無辜の人々の為に戦うことも含まれていると、私は思う」
だが、と苦渋を濃くしてシオンは語る。
「理不尽に蹂躪された者を、魔道に堕ち、魔獣に変えられた者が
更に被害者を増やすことを避ける為、その者を殺す事は正義といえるのか?
私はそんな疑問を抱かずに入られなかったのだ…」
そんなシオンに対し、童虎は眉間に皺を寄せ、一喝した。
「お前一人で背負い込む事は無い!
アテナとて正真、潔白な神とは言い難かろう!ゴルゴーンしかり、アラクネしかり、
だからこそ、我々聖闘士全員でその罪を背負うのだ!
我々聖闘士はどう言葉を選んだところでアテナの兵隊だ!拳を振るう事が生業だ!
であるならば、命を奪った、殺した咎は我々全員で背負うべきだ!」
一気呵成にそう言い切った童虎に驚き、同時にシオンは理解した。
「…慰めか?」
ぶすっとした、叱られた悪ガキのような表情で童虎は「何が悪い」と言ったきりだ。
その顔に、シオンは笑った。
腹のそこから快活に笑った。
見れば童虎も笑っていた。
シオンと同じ顔で笑っていた。
シオンは共犯者になってやると言い切った、この自分と同じくらいの大バカヤロウがたまらなく思えた。
「くくっ、仕切りなおしだ
明日も行こうぜ、相棒!」
だからこそ伝法な口調でそう言って見た。
「フ…、そうだな、お前がそうまで言うなら付き合ってやるのも良いだろう!」
「何をいっている!貴様もけっこう乗り気だったくせに!」
シオンと童虎は笑いながら肩を組む、
いずれ起こる聖戦で命を落すことになるだろう、
だが、この愛すべき大バカヤロウと一緒に死ぬなら良いものだろう。
二人、思うことは同じだった。
「で、お二人とも明日もどこへいらっしゃられるのですか?」
振り返れば鬼がそこにいた。
白銀色の仮面の下には、きっと鬼がいるのだろう。
逆巻く闘気は鬼神の如し
「バレてるな、コレは」
「ああ…」
二人は一瞬目配せすると、肩を組んだまま器用にくるりと一回転、
猛然と走り出した。
「待ちなさい!このエロガキども!!」
星の満ちる空の下、いつまでもこうして馬鹿をやっていれたらいい。
セダイラは、シオンは、童虎は、そう思った。
65 :
銀杏丸:2005/07/11(月) 20:59:05 ID:OW2iEVgz0
黄金時代第六回―隠密索敵―、投下させていただきました。
あの彼らにもこんな時代があったのでしょう、という童虎とシオンの青春の馬鹿話です
皆様お久しぶりです、銀杏丸です
1スレ丸まる筆を休めてしまって申し訳御座いませんでした
就職活動をしておりまして、筆を執る暇がなかったというか、気力がなかったというか…
実はまだ内定貰っていなかったりするんですが、暇を作ってこれからも投下していこうかと思います
それでは、またお会いいたしましょう
――――――早朝早く。
朝食を終えてくつろいでいたトレインの部屋の扉を、何者かが激しく蹴破った。
「な、な、何だぁスヴェン!??? オレは何もしてないぞ!!」
昨夜の煩悶を完全に押し隠し、慌てて椅子から立ち上がる。
開口一番釈明するのも無理は無い。その相方と来たら、顔を烈火の如き怒りに染めてトレインを睨み付けて来た。
「……別にお前じゃない。それより此処にあの因業女は来なかったか?」
言うまでも無くリンスの事だろう。しかし何故こんな炎の刃の様な恐ろしい目をするのか、その訳が判らない。
「ま…まあ落ち着けよ。そんなに怒って、何が有った? あいつに取り分ちょろまかされたとか?」
言われて憤怒の溜息を零すと、手に持っていた本をベッドの上に投げ出した。
見ればタイトルは『第三世代物理学・実践及び応用』と書いてある。
一見彼等に関係なさそうな本だが、この手の学術書はイヴが絵本と共に好んで読む書籍だ。実際トレインも
世界中に感動の嵐を巻き起こした不朽の名作『フラダンスの犬』と共に、『カール=スナイック式流体力学』とか何とかを
読んでいたのを見た事が有る。
さながら彼女はスポンジが水を吸う様にあらゆる知識を吸収していき、その全てを完全に己の物としていった。
その事を信じなかったトレインの前で、電話帳を暗記してのけたのだからその記憶力たるや計り知れない。
「……で、結局何を怒ってるんだよ?」
スヴェンは答えず顎をしゃくって本を指し示す。口を開けたらうっかり火でも吐いてしまいそうな風だ。
「……あのなスヴェン、知ってたか? オレはこの手の本を読むと頭痛が………いや―――、判った、その…読む」
一瞬ラの付く王様の様な殺気を受け、トレインは渋々本を手に取った。
1P目を開くと―――――
「あん? 何だこりゃ………?」
………カバーと中身が違っていた。
「………イヴがな、持ってた」
憤懣この上なく溶岩を思わせる怒声を零した。
トレインが人知れず苦悶に浸されていた夜、スヴェンがイヴの為に学術書を買って来たのが始まりだった。
最近の彼女は非常に沢山の本を読み漁る。既にその知識と言ったら、玄人裸足の域に達しているやも知れない。
時々スヴェンも質問を受けるが、答えられない方が多いくらいだ。
そんな彼女の成長を、彼はまるで父親の様な気持ちで見守っていた。彼女の将来を考えただけで、どうにも微笑ましい
気持ちが胸の奥に湧き上がり、つられて頬が緩むのを押さえられない。
ゆくゆくは何処かの大学の教授か、研究チームを引っ張る天才科学者か……などと楽しい邪推をしてしまう。
結婚なぞした事も無いが、自慢の娘が出来た気分で我知らず心が弾んでいた。
「イヴ、居るか?」
上機嫌で豪勢なスイートのドアをノックする(彼女はリンスと相部屋)。
すると、何故か中から慌ただしい音が突然発せられる。タイミングからして声とノックに反応したらしい。
………荒事を生業とする上で、こういう予兆に笑って済む様な事態は無い。
然るに彼は―――――――掃除屋としての判断と行動を選択した。
鍵を一瞬にして撃ち飛ばし、激しい前蹴りでドアを蹴飛ばしながら銃を構える。
「大丈夫か二人とも!!!」
言い様部屋の中に駆け込んだ。
………果たして其処に居たのは――――――――
ダブルベッドの上に書籍を散乱させ、膝立ちでスヴェンと眼を合わせるイヴだった。
「ど……どうしたの? 何か有ったの?!!」
当然の質問だ、いきなりドアを破ってくれば誰でもこう言う。
「あ………や、いや―――その、何か騒がしかったから、何か有ったかと…」
「あ……えと、その…着替えてたから…」
成る程、確かに理由としては順当だ。しかし、海千山千のスヴェンの隻眼は彼女の嘘をあっという間に見抜く。
知識云々ではとても敵わないが、他者の機微を見抜く狡猾さと慧眼は今だ彼の方が上だ。
何かは知らないが、彼女は嘘をついている。
その証拠に、
慌てて着替えたにしては服装に乱れが無いし、脱いだ筈の衣服なり何なりが無い。この時点で嘘は割れる。
そして、散乱した本類は一つもベッドの下の落ちていない。誤魔化そうとすると本能的にイレギュラーを作らないからだ。
極め付けは、微妙に彼から目を逸らすのが決定打だった。やましい事が有る人間は、本心を覗かせない様にこうする。
―――だが、だからと言って追求するまでも無い。寧ろそういう秘密が有るのは嬉しい限りだ。
こうやって反抗期や何やを経て大人になっていくんだろうなぁ、としみじみ微笑ましさに耽る。
「ま、そう言う事ならいいか。ほら、前欲しがってた分子工学の本」
受け取るとまるで玩具を貰った子供の様に眼を輝かせる。その無邪気に反して、内容は極めて高度なのが何とも不思議だが。
すると、大喜びで本を開くイヴの横に、スヴェンが座った。
「え…?」
「そんな顔するなよ、俺も勉強したいんだ。質問に答えられる様にしとかないとな」
にっこりと微笑む彼に釣られて、花咲く様にイヴもまた微笑む。
一緒に居てくれる事も嬉しいが、それ以上に自分に付いて来てくれる事が尚嬉しかった。
既にトレインやリンスでは話にならないだけに、話題を共有できる誰かが居るのは望外の喜びだ。
それに――――――…
「じゃあまず……こんなとこかな?」
スヴェンが拾い上げた本を見た途端、イヴの顔から笑みが消え失せた。
狼狽、驚愕、恥辱、その他諸々を一緒くたにした上で、顔を耳まで赤くして彼の腕にむしゃぶりついた。
「だっ――――…駄目!! それは駄目!!!」
驚いたのはスヴェンも同じだ。何故いきなりこんな事をするのか訳が判らない。
「お、おい、何だよ。何でそんなに………あれ? これ、カバーが無いぞ」
―――――――大自爆、だった。イヴの顔が赤から青へと移行する。
こうなればもうスヴェンより早く肝心の物を探すしかない、急いでベッド上の書籍群に眼を配る。
「……おっと、有った有った」
背後から声が響いた………神様はとことん今日の彼女が嫌いらしい。かくしてそれはスヴェンの手に渡る。
「イヴ、別の本のカバー掛けるなんて良くないぞ。こういった事をキッチリしとかないと
………あれ?」
開いたスヴェンの手が止まる。開いたページにはこう書かれていた。
『……以上の手も失敗に終わってしまった場合は、いっそ造って≠オまいましょう。
そうなれば彼も「もう遅い!! 脱出不可能よ無駄無駄無駄ァッ!!!」と言う訳です。
ところで、コミックの「ロードローラーだッ!」とOVAの「タンクローリーだッ!」ではどっちが好き?』
…………流石に引いた。ドン引きに引いた。まさか色気皆無の本達に紛れてこんな物が有るとは(因みに彼は後者が好きだ)。
カバーを外すと、其処に有ったのは…………!
『モンキーでも判る! 正しい男の操縦法』
油の切れたロボットの様にゆっくりとイヴの方に顔を向ければ……首から上が真っ赤に染まって俯いていた。
間違い無い、隠したかったのはこれだ。嘘も、散らした本も、やましい眼も、全てこれを隠すためだった。
当然スヴェンが買った物ではない、イヴだって買う訳が無い、ならば誰だ?
……思い当たるのなんぞ当然一人しか居なかった。
この部屋にイヴと一緒に居て、考えを多少共有出来て、そしてこんな物を平然と寄越す奴…
「………リイイィィ――――――――ンス!!!!!!!」
本を握り締めると、怒号と共に部屋を飛び出した。
「べ……別にいいんじゃないか、その位」
「良い訳有るかッッ!!」
それを経た後トレインの部屋にて、相棒の発言に気迫の反論を返した。
「いや、でも、その――――、お前も言ってたじゃないか、秘密を持つ年のどうのって…」
「順序って物が有るだろうが!! 幾らなんでも早すぎるだろこれは!!!!
最終局面まで書いてあるんだぞ、この本!!」
言われればその通りだが、リンスにはそんな考えまるで無かった様だ。
どうやらリンスとスヴェンがイヴに求める理想像は、百六十度ぐらいは違うらしい。
「と…ともかく此処には居ないから、余所行けよ、余所。それと、ドア蹴破るのはどうかと思うぞ」
居ないとあらば、これ以上の長居は無用だ。足音荒く蹴破ったドアに向かう。
「………もし奴が来たら、何としても拘束しといてくれよ。あの女の少々緩い脳ミソを引き締めないとならんからな」
乱暴に閉じられたドアを見て、トレインは溜息をつく。
「………お前、そんな事してたのか」
上を仰げば、天井の隅に件の女が手足を突っ張らせて張り付いていた。
「…いいじゃない、イヴちゃんにはこういう事こそ必要なのよ」
軽やかに降り立ち、悪びれる事無く胸を張る。
「しかし驚いたわ、匿うって言ったと同時に蹴破ってくるんだから」
窓から必死の形相でリンスが入って来た時は、「とんでもない奴に追われてる」と言って来たので、
仕方なく部屋に置いておく事にしたが、来たのは怒気満面のスヴェンで、おまけにリンスが一方的に悪かった。
もしこの現場を押さえられたら、スヴェンに痛い技をまた喰らう事だろう。
「匿うとは言ったが、これ以上は無しだ。早く出てけ」
「嫌よ、バックブリーカーもギロチン・チョークも御免だわ。だから匿いなさいよ、男でしょ?」
「…オレだって御免なんだよ! チョークの時は半分死んだんだからな!!」
あの時は本当に酷かった。何せ羽の生えた赤ん坊が数人掛りで、トレインを引っ張り上げようとしたのだ。
全身全霊で体にしがみ付かなかったら、間違い無く逝っていた。
「大体悪いのはお前じゃねえか!! オレにとばっちり喰わすなよ!!」
「…とばっちりって何よ!! あの本買って来たのはアンタじゃない!!」
その言葉に、一瞬言葉を詰まらせるが、
「お前が……必要だから買って来いって言ったからだろうが!!! こんな事に使うなんて判るかよ!!」
「知ってたじゃない、イヴちゃんに読ませるって!! カバーの手を考えたのもアンタの癖に!!」
トレインにすればその時は、特に深い考えも無かったからだ。別にイヴが何を読もうが(理解出来ないので)知った事では無いし、
その手にしてもイヴ本人がスヴェンにばれない様に、と言ってきたから只反応したに過ぎない。
だがそれがこんな大事になるとは思わなかった。ばれた日には、問答無用で四八の殺人技とかをフルコースで喰らいかねない。
「だからって実践するかよ!!」
「いいでしょ、そんなの!!! アタシはねえ、あの馬鹿親もどきがイヴちゃんに教えてくれない事を教えてあげたに過ぎない
のよ!!? 男は皆ホオジロザメだとか、賢い手綱の握り方とか、女にとって本当に必要な事をね」
……それに関しては間違っていないが、時期や何やを考えると明らかに間違っている。
「いい? イヴちゃんはね、アタシの様に強くて、格好良くて、タフで、美人で、男なんて手玉で、頭脳明晰のイイ女
になるべきなのよ。……それを勉強漬けの眼の悪いインテリなんかにしたら、お先真っ暗もいいトコだわ」
「………お前の理想もなかなかどうして先無さそうだけどな。そう言えば……」
唐突にトレインの弁が止まる。いや、蒼褪めた顔を見るに凍り付く、と言った方が相応しいか。
「? 何よアンタ、いきなり……」
震える指がリンスの背後を指し示すと、彼女もようやくそれが何かを察した。
恐る恐る振り向くと、半分開いたドアの向こうに寧ろ慈しむ様な笑みのスヴェンが音も無く立っていた。
「まっ………待てスヴェン!! オレは全く関係無い!!! 全部この女が…!!!!」
「違うわスヴェン!! トレインがアタシに無理矢理脅迫してきたのよ!! だからアタシは……」
「な……!! 何言ってんだよお前、姫ッチに本寄越した実行犯の癖に!!!」
「うっさいわね!!! 其処にアタシの意思は一ミリたりとも入っちゃいないのよ!! ハイ、決まり!!!」
「………もういい」
不毛で醜いなすり合いを、柔らかい声が優しく断った。そして笑顔のまま二人に歩み寄る。
「……もういい、お前達を信じるよ。お前達は悪くない、そうなんだろ?」
まさかここで許しが出るとは思わなかった二人は、互いに目配せする。
上手くこの雰囲気を持続させれば、お咎め無しで終わる事も夢ではない。こうなればもう調子を合わせるのが吉だ。
「そ、そうそう、その通り! よく察してくれたなスヴェン」
「ええ、そう! これは全て偶然が重なった不運な事故なのよ。ああ、悲しいわね本当」
白々しいのは百も承知で、二人は身振り手振りやら嘘泣きやらで何とか事態を脚色する。
双方をして会心の演技と、胸中でお互い自分に喝采した。
「そうだ、お前達は悪くない」
笑顔のスヴェンに合わせて、二人も満面の作り笑いを無理矢理顔に貼り付ける。
歓待の様な微笑に、二人は完全なる勝利を確信した。ここから乱打殴打や関節技に入ることは有り得ない、
揃いも揃って半ばスヴェンを舐める感さえあった。
しかし、
「…………となると、だ。
悪いのは―――――――――――お前等の頭だ!!!!!」
言い様二人の頭を、スヴェンの両手が鷲掴む。そしてそのまま武器満載のアタッシュケースを平然と持ち歩ける
握力が、二人の頭を締め付けた。
―――――アイアンクロー。使う人間が使えばヘッドロック並みに危険な技だ。
「お前等馬鹿か!!?? 許す訳無いだろうが!!! 終いにゃ頭カチ割って代わりに適当なモン詰め込むぞ!!!」
「待て――――――ッッッ!!!! オレは本当に関係無いんだ―――――ッッ!!!!!」
「ちょ…ちょっと!! イヴちゃんだって満更じゃなかったんだから、いいじゃない!!!!」
今更釈明が通じる訳が無い、先刻の笑顔も逃がさないための配慮だと言う事を、激痛と共に確信する。
「判った―――!! 悪かった、悪かったから………めり込む! めり込むって!!!」
「アンタが悪いんじゃない!!! あの子に現実って物を教えないから……!!! 痛ッ! 痛痛痛たたァッ!!!!」
謝ったり開き直ったりしても責め苦は全く止まない。……と言うかそれに倍して暴れるのにまるで離れる様子は無い。
「…本当に俺にヒマって物を授けてくれない連中だな、ええ? 変わりに一日も休まず俺に余計事を提供してくれて、
有り難くって涙が出るぜ」
アタッシュ・ウエポンケースの総重量は実に十八キロ。それを日常的に持ち歩く腕力たるや、下手なアームレスラーが裸足で逃げ出す。
当然それは、アイアンクローを危険な技足らしめる域に達していた。
ところでその時、イヴがこっそり忍び込んで本を回収した事には誰も気付かなかった。
NBです。
まず前回のコメントについて真面目に謝ります、御免なさい。
ですが、あんな奇文になってしまった理由については俺のリアルな話なので
省かせてください。申し訳有りません。
さて心機一転、次回のAnotherAttraction BCは―――
―――誰かは言った。「平和は戦乱の序章だ」と。
―――誰かは言った。「弱肉強食は世の常」と。
―――そんな彼らに誰かは言った。「平和も弱者も、駆逐されるために有るのか」と。
どれだけ望んでも彼らに安息は訪れない。過去と運命は彼らに望まぬ牙を剥く。
AnotherAttraction BC 第七話「無残」を乞う、ご期待!!
ガンダム種風にしたつもりなんだけど………ステキポエムになっちゃった。
兎も角今回はここまで、ではまた。
>逆境ナイン作者氏
新作乙です。画太郎画伯の狂った世界を、これからどう書いていくのか楽しみです。
好きなように書いて下さい。外道高校が個人的に好きです。まさに外道!
活躍を楽しみにしておりますんで、ぜひ簡潔まで頑張って下さい。
>サナダムシ氏
ああ、読んでしまった。読みたくないのに。こんなに嫌いなネタなのに。
でも胸にこみ上げてくるモノはなんだろう。感動でないのは確かだ。
本当に嫌なテーマですが、次回も期待して待ってます。
>銀杏丸氏
就職活動の忙しい中、投下乙です。これからも合間でいいのでお願いします。
なんとなく会話が、童虎がいいそうなセリフをシオンが言ってますね。
(おっぱいとかw)あの沈着なシオンにもエロガキ時代があったんでしょうな。男だもん。
>NB氏
ホームコメディですな。リンスが性教育に熱心なお母さん(お姉さんか?)
それを見守るスヴェンと横槍入れるトレイン。こういうの書かせても上手いなあNB氏。
でも、そろそろガンアクションが読みたいです。あと主役のセフィリア様。
NB氏の後書きは面白い。この位ハジけた方が倍楽しめるな。後書きも職人の個性だし。
一発ネタ。
「まんがにっぽん昔ばなしのOPをジョジョっぽく書いてみたSS」
坊や! 君はとてもいい子だッ! そうだ! ねんねする事を、ねんねする事を!
君のその限りなく善良な精神に敬意を表し……
『午後八時から午前六時まで』睡眠を取る事をッ! 許可しようッ!
バン!
∧∧∧∧∧∧∧∧∧
< 睡眠とは何かッ!? >
∨∨∨∨∨∨∨∨∨
それは今も昔も、正確にいえば紀元前3世紀より今日に至るまで変わりなく受け継がれる暗黒の儀式!!
『ハハーノ・メグゥミ・ノ』(子守唄) ──遠い昔の物語── その1
駄目だッ!!
夢をたぐっているのにホロホロと花までほころびやがるッ! かぐや姫みてーになァ!!
おいおい待てよ、たまげたぜオイコラァーッ!
かさ地蔵の野郎ォ〜! オレが人の情けを込めた手ぬぐいを逆利用してッ!
気づかねェうちにそっと幸せを運びやがったァァ!!
クソ、幸福感が全身にみなぎってたまらねェ!
幸せだぜッ! 幸せだぜェー! まったくもって信じられねえぐらいハッピーだァァァアア!
ヤツはッ! かさ地蔵のヤツはどこいきやがった! 見つけたらブッ殺してや…」
『一寸法師はどこにいる?』
!?
ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
「へ、へへっ、オレもてめーも鬼退治かッ! 地蔵は地蔵らしく薄汚ぇ手ぬぐいでも被ってりゃいんだよォ〜!
オイなんだなんだなんだァ〜? その手にしている白いものは? やるってのか?
恩返しの時は歩けるのに吹雪の中じゃあじっとしてる地蔵ごときが、やるってのか?」
歩けるんなら最初っから吹雪の当たらない洞窟にでも行きやがれ!」
「…………」
「やれるもんならやってみやがれ! この……
ノータリンな石頭にコケを生やしたクソ間抜けがァァァアア───ッ!!」
ユゥゥウゥキ! リィィィィンッ! リィィンッ!
「手を繋いだな? 正義の為の桃太郎よ……」
「な、なんだこれはッ!? ウゲッ! マズイ! 鶴だ! 白いものは鶴だった!
こいつ鶴を…、よりにもよって鶴を俺の右腕にくっつけやがるゥゥウウウウ!」
日本に生息する鶴はまことの恩返しをするというが信じてはいけない。
彼らの部屋の扉をトイレと間違い開けたりすると「よくも約束を破りましたね」
とばかりにこちらを睨み、頼んだ反物を織ってくれなくなる。
そういう時には畑でとってきたミミズを食べさせてあげるといい。
すると鶴は途端にニコニコ顔になり、また反物を織ってくれる。現金なヤツらだ。
「茶だッ! 茶を沸かせたぬき分福ッ!
桃太郎がたぬきに命令するってのも変な話だが早くしろッ!!
オイ何をしてやがる、早くしろってんだ! 早くッ 煮えたぎる玉露をオレの腕にブチ掛けろオオオオオオオ!!!」
「無駄だ。その鶴にはうさぎと小亀を喰わしている。
かけっくらをし、アドレナリンが極限まで分泌されたうさぎと小亀をな……
おかげですっかりラリっている。そうまるで、観客はちっともいないのに空中で突然舞を舞い始める天女のようにな……
だから熱湯ごときじゃあ驚きもせず、まして離れる事などありえない」
「かさ地蔵よォー てめー耳までコケに塞がれちまってんのかァ〜〜?
それとも石でできてるから耳は元々お飾りなのか? ま、どっちにしろオレにゃあ関係ねーけどなァー
なぁ、おい。誰がこの、白目剥いてヨダレまみれの汚い鶴のいる右腕に玉露をかけるつった?」
「!?」
『Please Wake Up BO-YA! Please Wake Up BO-YA! 良イ子ダ! 玉露ノ沸騰ヲ確認シマシタ!!
舌切リ雀ガ飛ンデクルヨリモ早ク! 玉露ヲッ! ”左腕”ニブチ掛ケマス!!』
バッシャア─z___ン!! ジュヴァシャアア!!
(こいつ、なんという無茶を…! あれは花咲かおじいさんでも浦島の玉手箱でもやらないような荒療治!
だがこの精神こそが、我々地蔵一族に笠をかぶせた原動力なのだろう……完敗だ……)
「うぐぅッ! 分かっていたとはいえやっぱり熱ィ…
玉露を掛けたからといって別に鶴は剥がれ落ちちゃいねーが、この火傷の痛みでちっとも気にならなくなったぜ。
ところでよォ〜 かさ地蔵。前々から思ってるんだが、てめーと似たような頭してるドラえもんはどこに耳があんだろうなァ〜?」
ロングロングアゴー! 物語よ永遠に!
以上。
2日あけたら凄い大量に作品が来てる。アリガトオォッ!
79 :
作者の都合により名無しです:2005/07/12(火) 08:06:41 ID:+dt0v0Gc0
・銀杏丸さん
シオンとドウコの青春グラフィティか。年上の美人のお姉さんに憧れる2人がかわいい。
この2人が後のセイントの柱になるんだなw あと、就職活動がんばれ。
・NBさん
ドタバタ劇の中でもイブの可愛さが光るなw 女の子の可愛さがこの作品のウリだけど
NBさんの描写うまいからそのシーンが目に浮かぶよ。後書きも最高w
・スターダストさん
新人さん?それとも、前にも書いた人かな?昔話ののんびりしたノリとジョジョの
妙なハイテンションが相反してて面白い。昔話のヘビメタみたいな感じw
>>サマサさん
超インフレの予感がするなWしかしネオグランゾンはやばすぎるぞ。
原作通りならスーパーサイヤ人レベルじゃないと勝てないだろ。
しかし次回のドラ始動を楽しみにしてるよ。
>>サナダムシさん
俺はウンコネタ大好きだよWこの話もおもろかった。
しかしこの技量をウンコにかけられる情熱に感動するようなしないような。
セルゲームも頑張ってくれい。
>>NBさん
NBさんはこういう描写も上手くていいね。後書きについては、この位のテンションなら
俺は問題なし。ガンアクションも楽しみだ。
>80
悟空が救援に来るとか、それかゲッタードラゴンとか。
>81
ゲッタードラゴンじゃ無理だろw真ドラゴンとかゲッターエンペラーくらいは連れてこないと。
そして今回のサナダムシ氏の作品にはコメントを付けられないのでただ一言。
い鬼オ |
た畜マ | /~|~\
!をエ | /‖‖ ‖||\
さの ノ | | | | |人| |/|`
.がよ | | ‖ 人…λ| |
しう ノ| / ≡ \/ ≡
.てな.ノ∨ ≡@ |@=
 ̄ ̄\| | == M血N
チ | ‖'竺‖
キチ | ) | ‖\/‖
キ ノ ノノ /|‖∨‖
―― : ノ / .| ‖V‖
__ `〜∬〜S\ | Y /
~〜(@)〜 チ\ Y /
∧ $∬∧ .チ ∧ YY
ノ∪ ノ∪ チ ∪ ‖/
\| |___.| | : | | .VV|
‖ |―-ノ |―ノ ノ\||/
| | \ノ ノノ ノ` ノノ
\ ノ\|/
83 :
作者の都合により名無しです:2005/07/12(火) 20:48:23 ID:NzbFzAUs0
週末、ラッシュだったみたいですね。出来れば平日にも散らして欲しいけど嬉しいです。
前からのベテラン?さんの作品は相変わらず安定して面白いけど、
とくに新人さんお2人に頑張って欲しいな。
逆境ナイン作者さんとスターダストさん、これからのご活躍を期待してます。
スターダストさんのは読み切りですね。昔話とジョジョの無理矢理なw合体、見事です。
地獄甲子園作者さん、がたろうネタは初めてですね。好きな漫画家なんで期待してます。
あと銀杏丸さん、俺も来年受験で頑張ってます。
セイントの活躍も楽しみですが、メインの方を特にお互いに頑張りましょう!
84 :
ふら〜り:2005/07/12(火) 21:38:52 ID:vrZm4pWD0
新スレ早々、大挙大漁ですな。縁起がよろしい。
>>ゲロさん
私の知ってる大昔の「はれぶた」は、ウイングマンのドリムノートみたいな話で、鉛筆の
天ぷらが妙においしそうでした。降ってくるものとして、シュールさでブタに劣らぬ茄子
ですが、宇宙生物が無念。茄子がらみの、どんなのが降臨するのかと期待したんですがっ。
>>サマサさん
前回に引き続き、何か何まで敵さんに頼らなくてはならない境遇がもどかしい。その敵さん
が親切というか段取りいいものだから、ますます。加えてアザミを、って……怒っていいの
か怒るべきか、でもとりあえず今はまだ、暴れられない。開放のカタルシスが待ち遠しく。
>>逆境さん
初投稿、おつ華麗さまです。原作は未読ですけど、何というか得体の知れないオソロシサ
を感じました。試合内容も見てみたかったですが、描写がないからこそのオソロシサなの
かも。そんな中、耳が切るでも斬るでもなく噛み千切るとこだけ、具体的で痛そうでした。
>>草薙さん
正直、真剣に、ヤムチャ負けると思ったんですが(何だかんだいってもヤムチャですし)
……やりましたね。しかもセンセイの名を呼びつつ。その寸前の攻防が、いかにも「ラス
ボスが主人公たちに技を破られ追い詰められる」っぽかったので、驚きもひとしおでした。
85 :
ふら〜り:2005/07/12(火) 21:39:31 ID:vrZm4pWD0
>>サナダムシさん
人はなぜ、自分の体から出るものを嫌うのだろう。涙と赤ちゃん以外は……と言いますが。
猛者ぞろいな上に、結構な人格者集団でもありそな汚物団。謙遜謙譲、周辺住民への配慮。
非常識だけどいい人たち。こういう雰囲気は好きですので、彼らの活動はまた見たいです。
>>銀杏丸さん
学園ものの、修学旅行とかではお約束ですなぁこういうシチュは。どんなに頑張っても、
完全成功とはいかないのもお約束……とか思って読んでいたら。思いもかけぬ急転直下で。
でも最後は戻ってきてくれて後味すっきり。締めは「三人一緒」なのが楽しく嬉しくです。
>>NBさん
ここ最近、元気で賑やか&萌えな感じが続いてますが、今回はスヴェンが実に微笑ましい。
イヴのことを優しく見ている姿が、そのイヴの教育に関することで激怒する様が、見ていて
微笑ましい。その昔、プリメ2に大ハマりしてた身としては、気持ちが解るってもんです。
>>スターダストさん
替え歌のようでありながら、さにあらずな新食感。ジョジョっぽい絵柄で各昔話のキャラや
場面をムリヤリ想像して、大笑いしながら読ませて頂きました。アニメにしたら、さぞ面白
映像になりそう。あるいは何とか節をつけて曲にして、声に出して歌ってみたいものです。
もはやふら〜りさんの感想もSSとして保管すべきかもな・・・
乙
第一話「出会い」
「あーあ、なんか面白いこと、ないかなあ・・・」
「面白いこと?」
「おう!こう、なんていうか、ハラハラドキドキするような冒険だよ!」
―――いつもの空き地。いつもの五人。そして、いつものジャイアンの我侭。
「そうは言ってもさあ・・・そうそうある訳ないじゃない、そんなこと。そう連続で変なことに巻き込まれちゃったら
身が持たないよ・・・」
「バッキャロウ!そんなんでどうするんだよ!おれらは日本・・・いや、世界一修羅場を潜ってる小学生だぜ!?巨大ロボ、
怪獣、宇宙人、あらゆる敵を倒してきたおれの血が、冒険しろと叫ぶんだ!」
相変わらず無茶な理屈をつけるジャイアンに、四人は溜息をつく。と―――しずかが唐突に声をあげた。
「ねえ―――あれ、何かしら!?ほら、上を見て!」
そう言われて空を見上げると―――まっ昼間だというのに、二筋の流れ星―――のようなものが、凄まじい速度で
地上に向けて飛んでいくのが見えた―――
「ほ、ほんとだ・・・。何だろう、あれ?」
のび太の言葉に、ジャイアンが轟然と言い放った。
「こいつは・・・大長編の匂いがするぜ!」
「だ、大長編の匂い!?なに、それ!?」
「決まってるだろ。おれたちが何かに巻き込まれる時は、必ず前触れってのがある。今のはまさにそれだぜ!
行こうぜ、ドラえもん。タケコプターだ!」
「う、うん・・・」
渋々ながらドラえもんはタケコプターを取り出し、みんなに配る。そして五人はその流れ星を追っていった・・・。
そして―――人里離れた山奥まで追っていって―――ようやく地上に降りたその流れ星の姿が―――
「え・・・あれって!?」
「まさか・・・」
五人は口々に信じられない、と呟く。それは二機の巨大ロボットだった。翼を持った見知らぬロボットと、もう一つは
自分達にとってはよく見知ったロボット―――
「・・・ザンダクロス!?」
そしてのび太達は驚きつつも地上に降りて、その二機に近づいていく。そして、コクピットが開き、中から二人の
人間が出てきた。
翼を持った機体から降りてきたのは柔和な顔立ちをした少年だった。年の頃は十六、七といったところか。
そしてもう一方、ザンダクロスから降りてきたのは。美しい少女だった。風に靡く長い髪、天使のように可憐な
顔立ちに、吸い込まれそうな深い色を湛えた瞳―――彼女は―――
「―――リルル!?」
思わず大声を上げるのび太達。そんな彼らに、リルルは微笑む。
「久しぶりね、のび太くん。それに―――しずかさんも、みんなも」
「やっぱり―――リルルなんだ!」
思わずリルルに駆け寄る五人。互いに手を取り合い、再会を喜び合った。しずかなどは、涙さえ流している。
リルルもまた、涙を浮かべて微笑む。
「本当に嬉しいわ・・・わたし、みんなと会いたかった。本当に会いたかったわ」
「ぼくだって会いたかったよ!」
「あたしだって!」
「おれもおれも!」
口々に盛り上がる六人―――そして。
「な、なんか・・・僕、忘れられてる・・・?」
その声にやっとのび太達はもう一人いたことに気付いた。
「あ、すいません!ええっと、あなたは・・・」
「あ、初めまして。僕はキラ・ヤマト。・・・キラでいいよ。僕もリルルと一緒に、メカトピアから来たんだ」
「え・・・じゃあ、キラもロボットなの!?」
そう言うのび太に、リルルは笑いながら言う。
「違うわ。キラは人間よ。生まれ変わったメカトピアには、少しだけど人間もいて、ロボットと共存しているのよ。
お互いに奴隷とか、支配者とかじゃなく、協力しあってね」
「素晴らしいわ・・・それじゃあメカトピアは、天国のような場所になったのね?」
しずかの言葉に、リルルとキラは複雑な顔になる。
「そうだね・・・確かに天国だった。みんな平和に暮らしてたんだ・・・なのに・・・あいつが!あの男が来たせいで!」
「ちょ、ちょっと、キラ!?どうしたの!?」
心配そうに声をかけたのび太達に、リルルは悲しみを堪えた表情で説明を始める。
平和だったメカトピアに現れた仮面の男、クルーゼ―――彼は人類絶滅を唱え、そして彼の所有する超兵器によって
メカトピアを侵略し、さらには地球まで攻め込もうという、恐るべき計画。
そしてキラとリルルを逃がすために、犠牲になったアスラン・ザラ―――
のび太達はその話を聞き終わり、ごくりと唾を飲み込む。そんな中、ジャイアンが言った。
「お前ら―――これをほっとけるか?」
「え?」
「俺らの友達とその友達を酷い目に合わせた上に、地球まで侵略しようって、そんなクソヤローを許しておけるかって
言ってんだ!どうなんだ!?」
その言葉に、のび太達ははっとして顔を見合わせる。その表情は、既にただの子供ではない―――勇敢な戦士達の顔だった。
「―――許せないよ!」
「そうよ!」
力強く言い放たれる言葉達。そんな様子を見て、キラは驚いていたようだったが―――やがて、ふっと笑って言った。
「―――みんなのことは、リルルから聞いてたんだ」
「え?」
「とても頼りになる友達なんだって―――とてもうれしそうに話してくれたんだ。正直、半信半疑だったけど―――
実際に見て分かったよ。君達はとても―――とても強いって」
「おう、強いとも!」
ジャイアンは胸を叩き、力強く言う。
「おれ達でそのクル・・・なんたらをギッタギタにして、そんでアデランス・ヅラも助けだしてやらあ!」
「あ、アデランス・ヅラじゃなくてアスラン・ザラだよ・・・。確かに、生え際はやばいけど・・・」
苦笑しながら、何気に酷い事をのたまうキラに、他の六人も屈託なく笑った。
―――と。キラは急に表情を引き締め、上空を見上げた。
「―――奴ら―――もうここを嗅ぎつけたのか!」
「え!?」
慌ててキラに続いて空を見上げると―――空間が歪んで―――そこから何かが飛び出してきた。
それはザンダクロスやキラの乗っていた機体とそう大きさは変わらないロボット達だった。一目見ただけで、
今この時代の地球の科学では作りえない物だと分かった。
「・・・あれは!?」
驚愕するのび太達に、キラは戦慄を押し殺して語る。
「あれがクルーゼの兵器―――<モビルスーツ>だ!」
投下完了。
ようやく本編第一部「機神集結編」開始。
神界と同じ三部構成になると思います(量はかなり多くなりそうですが)。
リルルとの出会いはなんとかうみにんさんと被らないように頑張ったんですが・・・成功してるかどうか・・・
とにかくこれからいっそう気合入れていきます。
92 :
作者の都合により名無しです:2005/07/13(水) 07:41:32 ID:T0jnJjCI0
早朝からお疲れさんです。
いよいよドラえもんチームも動き出しましたね。
リルルって人気あるなあ。長編ドラの中でも一番ヒロインらしいからか。
先は長そうですがw気合入れてがんばって下さい。
>アデランス・ヅラじゃなくてアスラン・ザラだよ・・・。確かに、生え際はやばいけど・・・
禿ワロタww
あんた新シャア板住人だな?ww
>>92 確かにリルルは人気がある。「地底出木杉帝国」と「超機神大戦」の他に
3つ以上の鉄人兵団ネタの小説を見つけた。
95 :
作者の都合により名無しです:2005/07/13(水) 19:25:11 ID:T0jnJjCI0
>3つ以上の鉄人兵団ネタの小説を見つけた。
読んでみたいなあ
出木杉や神界みたいに楽しませてくれる作品なら長くても読みたい
97 :
95:2005/07/14(木) 08:12:41 ID:RIFYzGf40
サンキューです。結構面白かった。
けどやっぱりバキスレのドラ作品の方が個人的に好きだな。
ドラえもん対マジンガーZはとりあえず2話まで詠んだだけだが。
しかしマジンガーZって作者何歳だよw
98 :
輪廻転生 ファイナルエピローグ:2005/07/14(木) 17:34:42 ID:VpkPRrqs0
雲の上というのは青空が広がっており常に太陽が照っている。今、ヤムチャがいる場所はそこに近かった。
ここは天界。神の宮殿が建てられており住人は現在の神・デンデとその従者Mr.ポポしかいない。
昔からヤムチャの仲間達が良くここには訪れていた。そして彼もまた神・デンデと話す為に
今神の宮殿へと降り立った。いつも外にいるはずのMr.ポポがいない。無理もなかった。
上から見ていたとしたらヤムチャの行動は単なる破壊行動でしかない。しかも元仲間をズタボロ
にしかしていない。
「デンデー!」
ヤムチャの声が木霊した。答えはない。気を探ろうにも相手は気配を消している。探すか。
ヤムチャは宮殿内を探索し始めた。部屋という部屋を探し、全ての戸を開けた。耳をこらし
目をくまなく動かした。だが見つからない。その内に日は暮れ始めた。
ヤムチャは溜め息をついた。強くなる為に自分は人外の生物になった。
再生能力、封印能力、そしてコピー能力。仲間達も捨てた。
今自分が地球最強であるという事が立証された。ならば彼らを見つける事など容易い。
「魔封波ー!!」
声と同時にヤムチャの周囲に風が巻き起こった。腕が捻られ足も捻られ、体全体が
捻られていく。
「え!」
混乱しながら辺りを見回すヤムチャ。場所は丁度精神と時の部屋の前だった。
「武天老師様!なぜ!」
武天老師は答えない。ただ魔封波を放ちながらじっとヤムチャを見据える。
「うわぁぁ!」
叫びも虚しく電子ジャーへと引きずり込まれていくヤムチャ。そして
電子ジャーの蓋は閉じられた。札をはりジャーを神殿の奥深くへと封印する武天老師。
「気がはやりすぎたのう。仲間を捨ててまで得る強さなど何もないのに。」
宮殿の外を見る武天老師。溜め息をついて杖の下を見る姿は元弟子に対する悲しみを思わせた。
輪廻転生 完
99 :
輪廻転生 後書き:2005/07/14(木) 17:41:01 ID:VpkPRrqs0
終に書き終える事が出来ました。これは私の処女作で感想がもらえるかどうかすら
疑問に思える作品でしたがこの度大団円を迎える事が出来ました。
雑魚なので自分のパワーではなく相手のパワーを利用するという
主人公らしからぬ方法で戦闘に勝利したヤムチャでしたが最後は封印される。
僕の中ではヤムチャが神になっとしてもいいんじゃないかなーと思ったのですが
そうするとべジータ達にボコられて終わるのが想像できるオチなのでその案は没に
しました。個人的にはいくら特殊能力があろうがヤムチャは初期の
ピッコロ大魔王にすら劣るんじゃないかなーって感じです。
最後に感想やアドバイスを下さった方々ありがとうございました。
淡々とした流れが逆に読者の想像力をかきたてて悲壮感を醸し出している……かもしれない。
どことなくアニメ版「ハーメルンのバイオリン弾き」を髣髴とさせる終わり方ですね。うろ覚えだけど。
とにもかくにも、完投おつかれさまでした。間は空けても決して投げ出さないというその姿勢はぜひとも見習いたいです。
いまのボクは…
ああっ…? 遊び人だ…。
PS2と高橋葉介作品探しで時間を潰してる…。
病気かもしれない。
第二話「みんなが多分ある意味では大好きなあの男」
鋼鉄の巨体を持つロボット―――モビルスーツ。二十機前後はいるだろうか。その偉容にのび太達は息をのんだ。
「モビルスーツは超高性能のコンピュータで動くロボットだよ。メカトピアの軍じゃ太刀打ち出来なかった・・・」
「あれは―――<ゲイツ>ね!モビルスーツの中では弱い方だけど・・・それでも油断出来ないわ」
リルルは焦った声で語る。
「みんな!ザンダクロスのコクピットへ入るんだ!生身で奴らの攻撃を受けたら一たまりもないぞ!」
キラは翼を持った機体―――フリーダムへと乗り込みながら叫ぶ。それを聞いて一同は慌ててザンダクロスに乗り込む。
そしてリルルは懐から小さな道具を取り出す。
「あっ・・・それは!」
「そう―――サイコントローラーよ。あの時から預かりっぱなしになってたわね・・・」
「でも・・・ザンダクロスは自律行動が出来るはずじゃ・・・」
「残念ながらコンピュータ制御の鈍い動きじゃ奴らの機動性にはついていけないの。
普通に操縦しても似たり寄ったりだし・・・。今までもこのサイコントローラーがあったから何とか戦えたのよ」
「え・・・でも、それじゃあキラは大丈夫なの!?あの人は普通に操縦しないといけないんじゃ・・・」
のび太は心配そうに言うが、リルルは微笑んでモニターに映るフリーダムを指差す。
「うわっ・・・」
それは凄まじい光景だった。フリーダムがビームサーベルを手に華麗な動きでゲイツの間を駆け抜けると、一瞬にして
三機のゲイツが爆散する。その間にもフリーダムに向けてゲイツのビームライフルが浴びせ掛けられるが、それを
フリーダムはあっさりとかわし、逆にそのゲイツに向けてビームライフルを放つ。
その狙いはまさに針の穴を通すほど正確で、ビームはゲイツを貫いた。
「す、すげえ・・・。全然相手になってないじゃねえか・・・」
「あのフリーダムってロボットの性能も凄いけど、キラの操縦もとんでもないよ。いくら機体性能が良くても、
手動の操縦であんな動きは普通できないよ・・・」
ドラえもんも呆けたようにその戦闘に見入る。
「ね?キラなら大丈夫よ。それより私達もボーっとしてられないわよ」
「あ、そうだね!でも大丈夫?ザンダクロスって確か土木作業用で、武器はお腹のレーザーと肩のミサイルくらいしか・・・」
「ええ、昔はね。けど今はクルーゼに対抗するためにザンダクロスもある程度武装は強化されてるわ。例えば・・・」
リルルはそういうとザンダクロスを動かし、腰から何かを抜き出す。それはフリーダムと同じタイプのビームライフルだ。
最初見た時は気付かなかったが、よくよく見ると、腰にはまだビームサーベルらしきものも下がっている。
「フリーダムと同じライフルとサーベルを装備してるの。これなら以前よりも戦闘向きになってるわ」
「へえ・・・あれ、そう言えばリルルはザンダクロスのことジュドって呼んでたんじゃ・・・」
「ええ・・・。けど、あなた達がザンダクロスって呼んでたのを覚えててね。わたしもそう呼ぶことにしたわ」
「うん、そっちの方がかっこいいよ!さて、ライフルがあるのか・・・。よーしリルル、ぼくにコントローラーを貸して!」
「え!?だ、大丈夫なの!?のび太くん・・・」
「大丈夫よリルル。のび太さんは射撃の天才だもの」
不安がるリルルをしずかがそう言って嗜めた。そしてのび太はサイコントローラーを受け取ると、ビームライフルを連射する。
それは寸分違わずゲイツを狙って撃ち出され、一気に四機のゲイツが大破した。
「やったあ!すごいよのび太くん!」
「のび太くん・・・こんな才能があったのね」
ドラえもんの歓声とリルルの少し見直したような視線に、のび太はへへっと鼻をかいた。
その瞬間、敵のビームライフルがザンダクロスの足元を抉り、中にいるドラえもん達は悲鳴をあげる。
「バッキャロウのび太!デレデレすんな!」
「ご、ごめん・・・」
ジャイアンが怒鳴り、のび太は首をすくめる。そして気を取り直して今度はビームサーベルを構えた。
「よーーーーし、いっくぞおーーーっ!」
思いっきり叫びながらビームサーベルを振りかざし、ゲイツに突進していく。射撃に比べると稚拙だが、
ザンダクロスの元々の性能のおかげで力強い剣戟に、ゲイツが次々と斬りふされていく。
気が付くと、あれだけいた敵はもはや全滅していた。皆は地上に降り立ち、ワイワイと歓声をあげた。
そこにキラも駆けより、輪の中に入る。
「みんな、大丈夫そうだね、よかった・・・。ところで、さっきザンダクロスを動かしてたのは?リルルとは違うみたい
だったけど・・・」
「あ、ぼくぼく!」
のび太は自分の顔を指差す。
「君が?サイコントローラーを使ってたとはいえ―――凄かったよ。君にはロボット乗りの素質があるかもね」
「へへへ、そう?でもキラの方が凄かったよ!あんな操縦できるなんて、憧れちゃうよ!アニメのヒーローみたい!」
のび太が賞賛すると、キラはかすかに顔を曇らせる。
「・・・喜んでいいのかな」
「え?なんで?」
「こんなのが上手くたって、結局物を壊すだけしか出来ないのに・・・」
「・・・キラ?」
「あ、ごめん。変な話しちゃったね・・・」
そう言ってキラは笑ったが、その曇りは消えない。のび太は何となくキラの気持ちが分かった。多分この人は、本当は
戦いたくなんてないんだ。でも戦わなきゃ故郷を救えないから戦ってる。きっと、ずっと前から―――
そう思うとさっき無邪気に喜んでいた自分が少し恥ずかしい。初陣の興奮で浮かれていたが、こんな戦いがずっと続くと
思うと自分だって正直げんなりする。
「・・・ごめん、キラ。はしゃいじゃって」
「ん?いや、僕こそ空気重くしちゃって・・・」
頭を掻きながら苦笑して二人は顔を見合わせる。キラのその様子は年頃の少年と変わりない。なんとなく、キラとの距離が
近くなった気がしてのび太は嬉しかった。
「おいのび太、キラ!何こそこそ話してんだよ!」
ジャイアンが大声を上げて二人を呼ぶ。そのおかげでまだ少し残っていた重い空気も消え去った。
しばし歓談する七人―――だが、そこに。
「―――やるなあ、お前ら」
突如響く声に、のび太達は振り向く。そこにいたのは鋭い目つきをした、瑕面の男だった。その全身から発する空気は、
まるで野生の狼を思わせる。
そして男は名乗った―――
「俺の名はヤムチャ―――<十三階段>十段目、ヤムチャ様だ!」
「「・・・十三階段!?」」
それに反応したのはキラとリルルだった。
「何!?あの人を知ってるの、リルル?」
しずかは驚きを隠せない様子で尋ねた。
「・・・あの人のことは分からないわ、けど・・・十三階段って・・・キラ・・・」
「ああ・・・あいつも・・・クルーゼもそう名乗ってた・・・」
「ええっ!?じゃ、じゃああの人・・・クルーゼの仲間!?」
驚愕する一同に、ヤムチャは答える。
「そう!俺達<十三階段>はとある目的のために集められた精鋭達さ!」
「とある目的・・・?人類絶滅のことか!?」
「ん?ああ、クルーゼの奴はそんなことをのたまってたな。だが違う。それは奴個人の思想さ。
<十三階段>としての目的は別にあるんだよ・・・野比のび太、ドラえもん、剛田タケシ、骨川スネ夫、源しずか
―――俺達の目的は、お前らを殺すことさ!」
「え、ええーーーっ!?」
突然の宣言に、驚きを隠せないのび太達だった。ドラえもんは慌てた調子で尋ねる。
「な、なんで!?なんでぼくらを殺すのが目的なのさ!?」
「ん?さあてな・・・知ってようが知ってまいが同じさ!ここでお前らは―――俺に殺されるんだからな!」
「ふ、ふふふふ・・・やるな、俺を倒すとは・・・」
「え?いや、なんか、空白が一行あるだけで凄い場面が飛んでるんだけど・・・」
のび太の突っ込みに構わずヤムチャは話を進める。
「だがいい気になるなよ!俺は<十三階段>の中では一番の下っ端!カマセ犬!雑魚!パシリ!俺を倒したところで何の
自慢にもならん!」
「いや、そんなことを凄い自慢気に言われても・・・ねえ、ドラえもん?」
「うん・・・」
「ふっ・・・それじゃあな、俺の敵・・・あの世で待ってるぜ・・・」
「・・・あっ、駄目だこりゃ。完全に再起不能だ」
<十三階段>十段目―――ヤムチャ、リタイア―――
投下完了。
ヤムチャ虐めネタは嫌いなはずなのに、自分も書いてしまうとは・・・
しかし書いてて思いましたがマジでヤムチャってやられ役が似合いますね・・
>>93 新シャア板は見てます。最初はキラとアスランはタゲと大佐の関係にする気だったんですが、
誰も喜ばないだろうと思ったのでボツにしました。
106 :
作者の都合により名無しです:2005/07/15(金) 14:19:32 ID:DeZhexKB0
>輪廻氏
最後までハラハラし通しで、終わった今は何か心に空白が出来たようです。
もう輪廻さんの作品を読む事が出来ないと思うと、さみしくてたまりません。
でも、私は輪廻さんのバキスレ卒業・引退を、拍手で送りたいと思います。
輪廻さん、お疲れ様でした。そしてさようなら。今までありがとう。
>サマサ氏
果たして強化ザンダクロスでモビルスーツやグリムゾンに適うのか??
ザンダクロスって10mも無かった気がする。最強ロボ・ドラえもん次第か。
でものび太はヒロインキラーですね。母性本能くすぐるというか。
リルル&プリムラ&しずかの女のバトルもあるか?
ヤムチャに関してはまあ出た瞬間から予想通りでしたw
>>106 ザンダクロスは公式設定では20メートルだそうです(大体ガンダムと同じですね)
肩にミサイルも、劇中では使わなかった(と思う)けど、ちゃんとついてます
サマサさんお疲れ様。解説までどうもありがとう。
ザンダ20メートリあるのか。驚いた。
いずれミサイルを使用するほど、バトル色強い作品になるのかな?
ヤムチャはやはり一発ネタか。もう出る事もないだろうなw
>だがいい気になるなよ!俺は<十三階段>の中では一番の下っ端!
こそっと男塾の要素も入ってるなw
>>106 のび太は高校くらいになったら絶対に出木杉よりもてると思う。
いい男だろ、普通に。ただし映画版限定。ジャイアンもスネ夫もだが。
映画版はほとんど中身がしずか以外は別人格だけどな。
輪廻氏に対してはまったく同意。
バキスレはまた人材を失ったな。
非常に残念だが笑って送り出してやろう。
109 :
作者の都合により名無しです:2005/07/15(金) 22:10:24 ID:VEzgX+N+0
サマサ氏乙。大丈夫?と思うほどすごいペースだな。
本編に入ってからいきなり激闘編に入った感じだね。
ヤムチャはともかく、これからの強敵との戦いを楽しみにしてるよ。
でも、<十三階段>十段目ってことはもっと弱いのが3人いるのか?
あと、勝手に引退とかいくらなんでも失礼すぎ。
平気で投げ出す奴より100倍マシと思う。
草薙氏、完結お疲れ様。正直これは読んでないけど、
(ごめん。でもドラえもんは読んでたよ)
次の作品は必ず読むからこれからも頑張ってな。
とりあえず現時点での用語・人物説明入れときます。そうでないと十三階段とか訳わかんない、という人も
多分いるので。
話が進むにつれて適時追加説明入れていきます。
狐面の男・十三階段
出典はどちらも戯言シリーズより。狐面の男は自分の目的のために自分の手足として動ける集団
<十三階段>を集めた。
ちなみに戯言シリーズにおける十三階段には(能力的な上下や明らかに作中の扱いが悪い奴はいるが)
特に明確な序列はなく、単純に入った順番で何段目か決まっている。
この作品でも基本的に序列はなく、全員対等の立場と設定している(ヤムチャはともかくとして)ので、
番号が若いとかは強さには関係ない。
狐面の男のこの作品での立場は大長編ドラえもんの敵キャラとしてはオーソドックスな
未来の時間犯罪者といったところ。
モビルスーツ
ガンダムにおける人型ロボットの総称。超機神大戦ではクルーゼ直属のロボットをこの名前で呼んでいる。
キラ・ヤマト
ガンダムSEEDの主人公。この作品ではメカトピアでアスラン、リルルと共に平和に暮らしていた少年。
フリーダムに乗ってリルルと共に地球へ。
クルーゼ
ガンダムSEEDのラスボス。この作品ではメカトピアを征服した<仮面の男>。
その正体はプロローグ4で言及されていたように未来の犯罪者。
ムウとは因縁がある(原作知ってる人には丸分かりだけど)
彼が使役するモビルスーツも未来の技術を使って作られた、というのは本編では多分説明されないので
裏設定としてここに書いておく。
ムウ・ラ・フラガ
ガンダムSEEDのキャラクター。この作品ではタイムパトロール隊員ということになっている。
マリュー、ナタル(共にSEEDキャラ)も彼の関係でチョイ役で出ている。
シュウ・シラカワ
スパロボのキャラ。この作品でもグランゾンを作ったのは彼であり、「グランゾンを勝手に乗り回した」という
理由で前作のラスボスのアザミを殺した。
彼についての説明は作中でかなり掘り下げる予定なので、ネタバレを避ける意味でもここではあまり
書かないことにする。
このくらいかな?
バレさん、お手数ですがこれも一応保管お願いします。
113 :
作者の都合により名無しです:2005/07/16(土) 07:37:53 ID:/Wqf+XDb0
サマサさん頑張るなあ。俺も頑張らないと。
解説まで乙です。
のびたかっこよかった。ヤムチャはレギュラーにしてほしいな。
ヤムチャレギュラーは無理だろ
もう死んだんだから
今回の話読んでてヤムチャの名前が出ただけで爆笑してしまった
115 :
作者の都合により名無しです:2005/07/16(土) 19:19:21 ID:lsP+vRF90
ドラゴンボールキャラと男塾キャラとキン肉マンキャラの死亡ほど
信用できないものはないからわからんよ
しかしこれから先出てきても
ペコ「やめて下さいよ。あなたがぼくに敵うわけないでしょう」
ムウ「やめろよな。お前が(略
稟「やめろって。あんたが(略
その他もろもろ「やめ(略
になるだけだろうな。
最終的にヤム飯になって復讐とか…
キラが「やめてよね。本気で喧嘩してヤムチャが(r」とか言い出すんじゃないかと思ってビビったw
119 :
守られた男:2005/07/17(日) 10:03:44 ID:GUGGeon+0
月光と日光。
陰陽による恩恵を千年以上浴びると、動物や無生物は魔性を帯びる。
そして彼らが修行をし、常に人型を維持出来るようになると、妖怪仙人と呼ばれるよう
になる。
今作の主人公も、そんな妖怪仙人の一人である。
地平線が広がる荒野を、ただひたすら歩く男。
男はかつて無生物であった。人々から忌み嫌われ、無視されるような存在であった。も
っとも、そのおかげで妖怪に進化することが出来たのだが。
「さて……今日も略奪させてもらうかな」
小さな村を発見した男は、さっそく驚異的な脚力で近づいていく。
本来ならば、ここで妖怪と村人がぶつかり合い流血沙汰が巻き起こるはずである。が、
この男だけは特別だった。
──村人は、男が村へ向かうと何故か逃げてしまうのだ。
決して村の方針が無抵抗主義なわけでも、男が有名な妖怪なわけでもない。ただ、男の
体臭が非常に不快なのである──そう、男はかつて馬糞であった。
「またこれだ。どいつこいつも逃げちまう。よっぽど俺が怖いようだな」
こうして無人と化した村から、いつも男は悠々と食料や財宝を奪っていくのであった。
だが、人里にこれだけ迷惑を掛ける妖怪が目立たないわけがない。やがて、男は妖怪仙
人の総本山である「金鰲島」にスカウトされることになった。
120 :
守られた男:2005/07/17(日) 10:04:22 ID:GUGGeon+0
しぶしぶ仙人界へ入った男。半ば強引に師匠を紹介され、やりたくもない修行に専念さ
せられるはめとなってしまった。
だが、男は優秀であった。めきめきと才能を開花させ、体術や仙術を磨いていった。そ
して、たった半年足らずで師匠を打ち倒してしまったのだ。
嬉しそうに、師匠が笑った。
「ふっふっふ、やるではないか。まさか、もう私を倒してのけるとはな……。きつい体臭
は有効な武器だし、体術に至っては一流といってもよかろう」
「ありがとうございます」
「……もう宝貝(パオペエ)をやってもいいかもしれんな」
「えっ、本当ですか?!」
宝貝とは、仙人でしか扱えぬ特殊な武器や道具のことである。体力は激しく消耗するが、
効果は刀剣や弓矢など比較にならぬほど強力だ。
「特別に、おまえには好きな宝貝を作ってやろう。どんな効力を望む?」
夢のような話である。師匠に心から感謝しつつ、男はしばし考える。
男が得手とするのは体術である。いくら強くても、スタイルを崩すような武器であって
は意味がない。男にとっての宝貝とは、戦闘を補助する役割でいいのだ。あくまでも、主
役は素手でなければならない。
──やがて、結論が出る。
「私の体臭──いえ、この何十倍もの不快感を与える宝貝。ようするに、恐ろしく強烈な
汚物臭を発する宝貝を所望します」
もちろん、師匠は驚いた。が、すぐに納得したように微笑む。
「なるほど。おまえには免疫がついてる汚臭で敵を怯ませ、体術で叩きのめすという按配
か。案外悪くないかもしれぬな」
非凡な策を打ち出した弟子を、師匠は誇りながら称えるのであった。
121 :
守られた男:2005/07/17(日) 10:05:03 ID:GUGGeon+0
あれから数年が経った。
男は師匠から独立し、心身を鍛え続けていた。彼の研磨され尽くした肉体美は、今や体
臭に代わる名物となっていた。
そして、ついに大出世のチャンスが到来する。
金鰲島を統治する最高権力者──通天教主からメッセージが届いたのだ。
内容は、男を最高幹部へと任命するというもの。しかし、同時に条件も提示された。そ
れは、三日後に行われる試合にて、もう一人の幹部候補に勝利すること。
男は燃える心を抑えきれず、叫んだ。
「よし、やってやるぞ! 絶対に勝ってみせるぜ!」
すぐさま、男はかつての師匠へと報告に行く。すると、彼をさらなる幸運が待ち受けて
いた。以前に頼んだ宝貝が、ついさっき完成したばかりだというのである。
手渡されたのは、笛の形状をした宝貝。
「これだ。これを吹けば、百万単位の汚物に相当する悪臭を発することが出来るであろう」
「ありがとうございます、師匠!」
「ただし、あまり乱用はするなよ。武器としての殺傷能力こそないが、引き換えに臭いは
凄まじいからな」
「分かっております。私とてこれに頼らず、出来れば徒手のみで勝ちたいものです」
「うむ、期待してるぞ」
師匠に励まされ、男はさらに気合いを高めた。絶対に幹部になってみせる、と。
122 :
守られた男:2005/07/17(日) 10:05:26 ID:GUGGeon+0
当日──男は指定された会場に赴いた。
他にここへ来る者は通天教主、幹部九名──そして、同じく幹部候補である妖怪仙人。
全身が布で包まれており、顔面も不気味な覆面で隠されている。おそらく、実力は五分
と五分。
開始時刻が迫り、二人は向かい合って並ぶ。だが、男は気に食わないことが一つあった。
試合を観戦する幹部らの視線──とても、これから勝者が仲間になることを前提にした
ものではない。自分たちのいる座を巡って争う二人をあざけるような、下卑た優越感に溢
れた眼をしていた。
男は許せなかった。我らにとっての出世の試練が、彼らにとっては単なるショーに過ぎ
ないという現実を。そこで、男は小声で相手にある提案をした。
「おい、奴らを見てみろ。あんなクズどものために本気で戦っても面白くない。どうだ、
いっそ引き分けで終わらせないか」
「……私もそう考えていた。彼らは我々を候補ではなく、あくまで格下と扱っている。い
いだろう、わざと引き分けにしてみるも一興かもしれん」
男は断られると覚悟していたが、どうやら相手も自尊心は並々ならぬものを持っていた
ようだ。ここに八百長が成立した。
いよいよ試合時刻となり、通天教主自らがルールを説明する。
「どちらか一方、勝者のみを最高幹部“金鰲十天君”の一人として認めることにする」
男も覆面もゆっくりと頷いた。
「では、試合開始だ」
男と覆面は同時に動いた。男は三割ほどの力で拳を放ち、覆面は武器である呪符を投げ
付けてきた。拳は相手にめり込み、男も呪符に封じられていた炎を浴びた。お互い手加減
していたので、ダメージは少ない。
──が、この攻防が二人にある感情を芽生えさせる。
(こいつとは全力でやり合いたい! こんな試合でも組まれなきゃ、こいつと戦う機会な
んてあり得ない! 幹部どものお遊びに付き合うのは悔しいが、全力で戦えないのはもっ
と悔しい!)
すると、男は少し赤面して呟いた。
「さっきの約束……破棄しちゃってもいいか?」
「……私もそう考えていた」
両者、本気となった。
123 :
守られた男:2005/07/17(日) 10:05:54 ID:GUGGeon+0
覆面が呪符を大量放出する。落葉が如くひらひらと舞う呪符だが、中身は強力だ。
呪符は爆破を起こし、男を熱風で焼き尽くさんとする。だが、男とて伊達に鍛えてはい
ない。爆破を紙一重で避け、一呼吸で間合いを縮める。
「チェリアァァッ!」
正中線に打撃を叩き込む。相当効いたらしい。覆面はすかさず浮遊して、男から逃れる。
「くそっ、飛べるのか!」
「やるな……。だが、我が破壊の呪符はこれからが本領だ!」
さらに一斉射出される呪符。もちろん、男もすかさず距離を外す。が、おかしい。今度
は爆発を起こさない。
「残念だったな。今ばら撒いたのは、ただの紙切れだよ」
フェイク──男の背後に、目立たぬよう地味に落下する一枚の呪符。これこそが狙い。
「し、しまった!」
背中へ突き刺さる爆風。男は前方へと吹っ飛んだ。しかも、今度は“本物”が群れを成
して舞い落ちる。
大空襲。紙と爆弾の特性を持った呪符が、数十枚単位で降り注ぐ。ガードを固め、男も
必死に堪えるが、ダメージは蓄積していく。
このままでは敗北してしまう。男は恥を承知で、師匠から受け取った宝貝を取り出した。
「出来れば一度たりとも使いたくはなかったが……こいつには絶対勝ちたい!」
呪符の切れ目を見定め、男は笛を吹く。
すると、地獄を彷彿とさせる汚物臭が一気に放り出された。想定外の攻撃に面食らった
覆面は、集中力を失い地上へと落下してしまう。
「く、臭すぎるっ! うぐっ、こんな宝貝が存在したとは……ッ!」
あまりの臭さに、さすがの通天教主や幹部連中も顔を歪める。
そして、悪臭を生んだ張本人はというと──死んでいた。
124 :
守られた男:2005/07/17(日) 10:28:54 ID:GUGGeon+0
結局、男が死んでしまったため、勝者は覆面となった。
「よくやった。今日より、おぬしは姚天君と名乗るが良い」
「ははっ……!」
全力で戦い、勝利し、おまけに幹部にまで成れた。しかし、決して望ましい結末ではな
い。不運なる好敵手に涙しながら、姚天君となった覆面は通天教主に尋ねる。
「何故、死んでしまったのでしょうか……?」
「彼は常に体臭として汚物臭をまとっていたから、きっと自分には耐性があると思い込ん
でいたのだろう。だが、自己と他人の汚物とでは、臭いの感じ方が決定的に違うのだ。彼
は体臭に守られて、きっと他者のものなど嗅いだこともなかったに違いない。だからこそ、
あの宝貝から発せられた猛烈な悪臭でショック死してしまったのだ……」
無念そうに横たわる亡骸が、この敗因を知ることは永久にない。
お わ り
夏季うんこSS第三弾。
前回は悪魔核まで頂き、本当にありがとうございます。
登場する漫画キャラがさらにマイナーになってますが、すいません。
一度「うんこが進化した妖怪」ってのをやりたかったので。
次も頑張ります。
>125
サナダムシ氏乙。
よくそんなにウンコネタが思い付きますね。
次の短編もウンコ系を期待しています。
127 :
作者の都合により名無しです:2005/07/17(日) 13:39:30 ID:XhjE2/js0
サナダムシさんうんこなのにクオリティたけーw
今回は封神できましたか。うんこというより臭いSSですね。
いや、バトルシーンから心理描写、オチまで一貫してて
うんこじゃない普通の短編としてもレベル高いです。次も楽しみ。
しかし、サナダムシさんはどこを目指してるんだw
128 :
ふら〜り:2005/07/17(日) 16:15:13 ID:hiipcfBI0
>>サマサさん
ジャイアン、自分たちのことをよく理解してます。確かにあんたら百戦錬磨、誰も異存は
ござんせん。そしてプリムラの先を越して再会を果たしたヒロイン、リルル。キラや稟と
いった男性陣も絡めて多角関係が展開かっ? ヤムチャは……さすがはヤムチャ、でした。
>>草薙さん
おつ華麗様でした! ずっと敵キャラっぽい雰囲気を纏ってた草薙さんのヤムチャ、どこ
へ行き着くのかと思ってたら、大魔王な最期を遂げて。ある意味相応しいのかも。次回作、
個人的にはまたKOF(できれば98以前)などが嬉しいですが。お待ちしております!
>>サナダムシさん
引き分けの約束→やっぱり破棄、の流れは誇り高く男らしく。戦闘内容も短いながら骨の
ある攻防で。オーソドックスにカッコいいと思ってたら、オチはやっぱりそうきましたか。
そういえば自分のと他人のとでは臭いの感じ方が違う、って実際時々感じる現実ですね。
129 :
Iron Fist Tournament 第3話 俊脚:2005/07/18(月) 00:12:42 ID:UtjcMdti0
東京都内 嶺南大学 午後2時半
「海流(みのる)−。行くぞー。」
タラコ唇に空手着を来た男が金髪の少年に声を掛ける。
「葉山君。先に行っていいよ。後で追いつくから。」
海流がまだ私服のままだったので着替える事にした。空手着を身につけ帯を締める。
そして靴を履くとジョギングの速度で走り始めた。
十数分後、海流は川原へと辿り着いた。橋の下で空手の稽古を行っているのだ。
自分の流派の総帥が逮捕された為、道場は差し押さえられ仕方なく自分達で場所を探す事にしたのだ。
柔軟運動を終えいつもの稽古を始めようとした矢先、海流は違和感を覚えた。部外者がいる。
すぐ近くでこっちを見ている。殺気を察知する前に冷や汗が流れた。誰だ?
「あーら、あなた達。質問があるんだけど?」
金髪の女性が道端に立って海流に話しかけた。海流は驚いた。
先刻まで誰もいなかった場所に女性が立っている。葉山も腰を抜かしていた。手品か何かを見せられたかの様に
目がキョトンとしている。
「あの・・・いつからそこに?」海流が話しかけた。
「ついさっきからよ。」女性が答えた。
葉山と海流は身構えた。道場破りではないらしい。だが殺気が言葉に篭っている。
獲物を見る捕食者の様にこちらを冷たい目で見てくる。
「何ですか?ご用件は?」
空気が擦れる音がした。葉山の体が中に舞うのが海流の目に入った。
女性が海流の方を向くのがスローモーションの様に見えた。爪を伸ばし
こちらへと突っ込んでくる。海流は地面を蹴り右へと避けた。
「へぇ。やるじゃない。」女性は微笑む。
「何するんですか!」海流が怒鳴る。
「話は理解る方みたいね。私人を探してるの。遠野志貴って言うんだけどね。」
「僕達は何も知りませんよ!」
「へぇ、んじゃあ黒い髪に紅いグローブにスポーツパンツを着た男を知らないかしら?
ソイツが彼をさらった犯人なのよねぇ。」
海流は情報を整理した。誰かが誘拐されて犯人は空手家の様な出で立ちをしていたらしい。
この人は犯人を探している。
130 :
Iron Fist Tournament 第3話 俊脚:2005/07/18(月) 00:13:18 ID:UtjcMdti0
「ソイツの似顔絵なら見た事はあるがな。駅前とかでよく宣伝されてるぜ。」葉山が口を挟んだ。
女性の顔が微笑んだ。
「年齢は?」女性が声を低くして葉山に質問した。
「30代ぐらいだと書いてあったが。」葉山がおずおずと答えた。
目の前に現れた不審で素早い女性。空手家の自分を知らぬ間に投げ飛ばした存在。
恐怖で足が震えた。スピードもパワーもない自分にとって強大な相手。
「私の名はアルクェイド・ブリュンスタッド。もし・・・」
アルクェイドの言葉が終わらない内に何かが葉山の脇を掠めた。地面に
鉄の槍が突き刺さったのだ。一同が一斉に同じ方向を向いた。
電柱の上に立っていた女性。その女性が槍を投げたという事は明白だった。
「アルクェイド・・・先を越されたみたいね。」
青いコートを着た女性は言うと同時に海流に飛び蹴りを仕掛けてきた。
「だっ!」海流が驚いて叫ぶ。
「はっ!」女性が気合を放つ。
打撃と受けの応酬が続く。空手家としては日が浅い海流だが柔軟性には自信がある。
だが青いコートの女性のスピードは海流とほぼ互角だった。女性の突きが
小日向を襲う。小日向はガードを固めつつも疲労が蓄積されていくのを
懸念していた。
「かっ!」
131 :
Iron Fist Tournament 第3話 俊脚:2005/07/18(月) 00:15:00 ID:UtjcMdti0
小日向は初めて蹴りを放った。そして寒気を覚えた。まるで食い殺されるような
迫力の恐怖が彼を襲った。蹴り自体は女性の後頭部に当たっていた。崩れ落ちる女性を
目の前にしても海流は動かなかった。何かが来る。それは振り向く間もなく
海流の喉にツメを突きつけていた。
「もう一度聞くわよ・・・アンタ本当に何も知らないの?」
「知りませんってば。」
「へぇ、シエルを気絶させる事が出来るのにィ?」
海流は困っていた。いや正確には怯えていた。何なんだこの人は。
加勢するのかと思えばこっちを殺そうとしてくる。
当惑する海流を尻目に葉山はシエルと呼ばれた女性に近づいていく。
そして軽く蹴り起こした。うつぶせに倒れていた姿勢から仰向けになった時、
シエルは目を覚ました。
「何も知らないっていうのは本当の様ね。まぁいいわ。協力してもらうから。
同じ空手家なら探しやすいだろうし。」
「はぁ!?」
こうしてアルクェイド+海流連合軍が結成される事になった。
第3話 終わりました。ギャグっぽい感じがするシーンがあってもいいのではないかな
と思います。中篇できれば長編にまで書ければいいと思いますが。ではでは。
作品のこと云々以前に、とりあえずメール欄に半角英数でsageと入力してください。
次回も同じことをしましたら、殆ど荒らしも同然です。
武装錬金を題材としたちょっとした長編を投下します。
題名は「フィソステギア」とでも。
武藤カズキは津村斗貴子と結婚した。
結婚というのは婚姻届という緑の線と文字がぎっしりの目に優しい紙切れに名前を書きあい
判子を押してガラリと窓を開けて屋外に躍り出て、「ムッヒョラウゲバァ〜!」と
絶叫しつつ野良猫の腹に蹴りをぶち込む儀式だったような気がするが、ネット上で
調べて出てくる婚姻届は悉く白黒印刷だし、野良猫に蹴りをぶち込もうにも奴らは
すぐ逃げすさるし、何より猫らが可哀想なので違うと思われる。
特筆すべきは「ぶちこむ」で「打ち込む」と変換されるコトで、ならば、「ぶつ」は「打つ」なのか?
イエス。打つであった!
ともかく結婚した。結婚して、武藤カズキは専業主夫になるコトを決意した。
主夫は楽だ。無能どもが織り成すやるせない社会の歯車に巻き込まれず済むというのは正にヘブン!
だから主夫になるコトを決意したのだが、戦士を辞めるとなると色々人間関係がアレなので
関係各位に頭を下げて回った。
まずはパピヨンだ。
彼はカズキのライバルで決着に固執するあまりマラが肥大化し、それが腹に刺さってぐんぐんと伸び盛り
ついには三半規管すらも貫いて平衡感覚がグダグダになってしまったありきたりなホムンクルスだ。
「ゴメン」「謝るなよ偽善者」
パピヨンはフラフープによる勝負を挑んできた。そして腰を一回転するあたりで無様に転び、決着がついた。
カズキは歩を進めつつも寂しそうに何度も何度も振り返り、やがて見えなくなった。
むなしく大地に横たわるパピヨンの腕をとり、そっと彼を起こす者がいた。早坂桜花である。
このナイスバディな生徒会長は口汚く罵るパピヨンにやんわりと毒を返しながらも、しばらく献身的に看病し
やがて愛が芽生えた。
「どうして、私を選んだの?」
「蝶は花が好きだからさ。だから吸わせろキミの蜜を!」
「あ〜れ〜!」
お次はキャプテンブラボー。
ブラボーはカズキの師匠筋に当たるから詫びを入れるは仁義の定め。
彼は同僚のチンピラと些細な口論の末に重傷を負わされ、心身ともにすっかりダメになったので入院中だ。
カズキが訪ねた時は、ちょうどベッドの上で星のカービィ夢の泉DXに熱中していた。
「よしゃUFO出た! ほーれ見ろっ見ろ、千歳ぇぁっ! ゆゆゆゆUFOッ UFOだぞぉん!
なんだよこれ一面こっきりかよナイトメアにも撃たせろよビーム! そうか戦士やめるかカズキ
じゃあお別れだ! さーそんなこんなでさよならを言って別れたブラボーお兄さん、次の面に到着し…あっと、あっと
…おっしゃあ! ミックスなったぞUFO出ろUFO…チッ! スターロッドなんぞ出んなクズがああああああっ!」
「どっひぇ〜! ちょっと防人君、それはバグよ!」
「バグかぁ!!」
火傷まみれの右腕を一閃! ブラボーはゲームボーイアドバンスを壁に叩きつけて粉々に破壊した。
それを慣れた手つきで千歳──年甲斐もなくセーラー服を着て喜ぶ恥知らずなおばはん──が掃除する。
だが、千歳の手がツと止まった。そしてやや考え込んだ末に、突如目を見開いて大声を発した。
「任天堂を訴えて花札貰いましょう花札!」
なんという突飛な発想か。任天堂が花札で名を馳せたのは既に過去のコトである。
にもかかわらず花札を欲する姿勢たるやひどく前世紀的で、これから斗貴子とさまざまな未来を創ろうと
するカズキにはどうも耐え難い。それでなくともブラボーの変心振りに胸焼けしてる。
だからカズキは小声で帰る旨を告げるとそそくさと病室を後にした。
千歳の調子は全く変わらない。カズキなどアリのように些細な存在なのだろう。
「花札にイカサマを仕込むのよ。そしてあの、同僚だったけど決して友達じゃなかった火、火わ、火わた、そうよ思い出したわ
ポンペーヌギャとかいう火炎オタクからボるのよ! ボって油田に叩き落しましょう! 石油資源を浪費する死刑よ!」
「うむ。今や千億の欠片に砕けたカービィの弔い合戦だな千歳」
「ノンノンノンちぃっとも違うわよ! 弔うなら砕いたあなたが自害して! けど花札にイカサマを仕込まないと何も始まらないでしょっ!?」
千歳はベソをかきつつ冷蔵庫に保存してあったウサギリンゴを床へばら撒き、ぐしゃぐしゃと踏み砕いた。
どうも一年以上に渡る看護生活の疲れが出たらしい。ブラボーは困った。
そこに一つの影が現れた。
「花札ならここにあるよブラボー! リンゴと交換しようよ」
「床に落ちたリンゴは食べるとお腹痛くなるよな! そしてお前は──!! 」
さて、最後は戦部だ。かつてカズキはこの偽覇王丸と共闘すると宣言したが、しかしその宣言は
夜明け近くの墓場という若者なれば誰でもハイになる場所だったから若気の至り。
カズキは斗貴子によく「なんであんな約束をしたのか」とよく愚痴を漏らすほどやんなっちゃってた。
戦部はいつも養鶏場みたいなアンモニア臭を漂わせている。それが良くない。
んで、主夫になるから共闘はやめるといったら戦部は納得してくれた。
理由としては、一般人を戦闘に巻き込むのは主義ではない、というのが主なものだが実はもう一つある。
戦部は気質的に言わないが、根来という忍者じみた戦士なら、やや時代がかった口調でこう代弁しただろう。
「戦部はある者と、戦部だけにしばらく旅に出る予定であり、旅行中、貴殿との共闘の約束は一時保留するつもりであった。
しかるに貴殿はその連絡前に現れ、戦士を辞するという。遺憾ではあるがそれは本来の姿だろう。
(と、ここで物憂げに目を細める)
極めて貧相かつ凶悪なあの女をなぜ選んだかは甚だ疑問であり、もっとバイン! キュキュ! バイ〜ンッ!
な女性が好みというのが戦部と私に共通する意見であるが、祝福はしておく」
以上のような細々とした事情がある。しかしそれを言わぬが戦部だ。厚ぼったい唇を笑みに歪めながらの祝福に留めた。
ちなみにバスクリンと重曹をいれた風呂に入ったので、体臭はもはやない。
重曹は風呂に入れると垢を落とす効能があるのだ。ウソではない。
これで全てが丸く収まると思いきや、思わぬ伏兵が登場した。ジャーンジャーン。
武藤まひろである。どうも兄の後を尾行していたらしい。病院にも居てリンゴは貰えなかったらしい。
「代わりに私が戦うわ! お兄ちゃんの遺志を継いで!」
ずんぐりした薄眉を吊り上げ、熱気もあらわに拳を握る少女を戦部は手でしっしした。
だがまひろは譲らない。戦部は少しばかり辟易した。
んで苦肉の策。戦部がお昼ご飯にしようとしてたカルカンブレッキーズをあげると、カズキが開け、
まひろはおいしいおいしいありがとーと平らげ、大きく万歳三唱しつつ兄ともども帰って行った。
帰るべき世界へ。
帰るべき世界へ──…
好きな物は勝ち戦と負け戦。嫌いな物は安穏とした生活と、不意打ち騙まし討ち。
特技はホムンクルスを喰うコトで、趣味は戦史研究である。
筋骨隆々たる大男で、長髪を無造作に括り、十文字槍の武装錬金『激戦』を振りかざし戦う様は、さながら戦国絵巻
の一幕を見ているような磊落(らいらく)さに満ちている。
そんな男がである。
横浜郊外にあるニュートンアップル女学院でうろついているのを見たとき、ヴィクトリアは唖然とした。
ヴィクトリア。ロングヘアーを何本もの筒状のアクセサリーに通している所が多少目を引く以外は
ごく普通の女子高生をしているが、その実は人食いの化け物、ホムンクルスをしていたりする。
みんな絶対ウソだと言うが、本当のことなのでこれはしかたのないことなのです。
ともかく、そのヴィクトリアが唖然としたのは、明治時代の教会に端を発する、資産家や旧華族の令嬢御用達のハイスクールを
徘徊する大男の粗野極まりなさにもだが(現に何人かの生徒は悲鳴を上げつつ逃げ惑い、警察を呼ぼうとしている者さえいる)
その大男の着衣にだ。
着込んだ陣羽織の胸元に見える、不等号が潰れて下を指しているような赤線を二つあしらった紺地の服はまちがいなく、
錬金戦団・再殺部隊の制服。
おりしも、ヴィクトリアの父たるヴィクターが非業の死を遂げ一年が経とうという頃である。
ヴィクトリアの唖然は、やがて心中のざわめきに姿を変えた。
ざわめきの大半は、ヴィクトリアが錬金術に向け続けている憎悪である。
錬金術は結果から言えば、彼女の父を異形に変えて葬り去り、彼女の母を脳髄だけの存在に貶め、
更にヴィクトリアすらもホムンクルスという不老長寿の化け物に変えさせ、彼女と母を100年もの間
地下深くでの「ヴィクターを元に戻しうる白い核鉄の研究開発」という戦団や世間からの隠遁に押し込めた。
ヴィクトリアの運命一つ一つを決定する重大な要素は、常に錬金術に染まりきり、そして不幸をもたらしている。
いま女学院をうろついている戦部に殺意が芽生えたとしても無理な話ではないだろう。
と同時にヴィクトリアは、ひやりとしたざわめきに支配されつつもある。
かつてのヴィクター討伐の意義。それは「賢者の石の研究失敗による不祥事隠蔽」である。
されば、その研究面の第一人者だったアレキサンドリアにも抹殺の手が伸びてもおかしくない。
彼女は最大の被害者ではあるが、同時に全ての顛末を知る最大の証言者でもある。
ヴィクトリアは核鉄を握り締めた。
彼女の「アンダーグラウンドサーチライト」という避難壕の武装錬金は、地下に空間を作るだけの
まるで戦闘能力を有しない特性だが、しかしそれでも母を連れてひとまず退避するコトはできる。
と、そこまで冷や汗まじりに頭をめぐらせた時、戦部はヴィクトリアの眼前にいた。
そして次に彼が発した言葉は理解の範疇を超えていて、ヴィクトリアはその冷然とした性質に見合わぬ
非常にマンガ的な、白目を剥いた真っ白な状態になった。
「しばらく食の旅に付き合え。なぁに心配するな。旅費も代金もすべて俺が賄う。母の許可が必要なら取ってやろう」
(本当にどうかしている)
頬杖を付いて窓と向かいあうヴィクトリアの眼前を、青々とした田園とまばらな家屋が流れていく。
電車の中に彼女はいる。
どうも田舎を走っているらしい。戦部は四人掛けの座席の通路側に座っている。
彼は先ほどからヴィクトリアに目的地も告げず、何やらごそごそと食べている。
ヴィクトリアが横目でチラリと見ると、戦部の手中に尾びれのような形が見えた。どうもホムンクルスの一部らしい。
もう一つ、こちらは女学院にいる頃にはなかったが、大きなスーツケースが戦部の横(通路)においてある。
欠片はそこに入っていたのだろう。
あの後、ヴィクトリアが向けた不審のキツい眼差しを戦部は意に介さず、まずはアレキサンドリアの元へ
(クローン増殖した脳が保管されている地下の部屋。ヴィクトリアは制止したが戦部は勘のみで突き止め
地上から穴開けて突入した)行き、一応の許可を得た。
「なんでなのママ。私は外の世界になんか興味ないのよ。だったらここに居た方がいいに決まってるでしょ」
「そういわず行ってきなさい。もう、ここに留まる理由はないのよヴィクトリア」
釣り上がった目を困惑に歪める娘に、母はガラス振動の無機音(脳だけのアレキサンドリアの会話の手段その1)が
ピシャリと刺したきり沈黙した。
そして更に抗弁しようとしたヴィクトリアの目の前が、真っ暗になった。
母の武装錬金「ルリヲヘッド」が覆いかぶさったのだ。
それは装着した者の意識を消し去り、創造者の意のままに操る特性を持っている。
アレキサンドリアの会話の手段その2だ。
気づけばもう電車の中だった。母が操り乗せたのだろう。つまり街中をあの仮面をつけて歩いたと知り、やや赤面した。
そういうコトがあった以上、女学院に戻ったところで母が同じ真似をして戦部に同行させるのは目に見えている。
ゆえに戦部と向かい合い、ただじっとこの旅行が終わるのを待っている。
(本当にどうかしている。私の気も知らないで。私が傍に居なきゃ誰がママを守るっていうの?)
流れる景色を見ていても、そればかりが頭を過ぎり、母が心配でならない。
もっとも、アンダーグラウンドサーチライトは武装錬金の例に漏れず、解除しない限りはそれまで通りに
母を地下深くで守っているし、彼女に仇なすものの侵入を許したとして、ルリヲヘッドがある。
アレキサンドリアがそれを使えば活殺自在、敵対者すら護衛者になりうる。
よって、ヴィクトリアの不安は杞憂といえる。
「喰うか?」
戦部はホムンクルスの欠片を差し出した。
「いらないそんなもの。共食いなんて気持ち悪い」
冷え切った横目でにらむと、戦部はふむぅとアゴに手を当てた。
「ところで、だ。以前から気になっていたんだが、お前は人間を喰った事はあるか?」
これ以上不躾な質問もないだろう。ヴィクトリアが生命維持に人喰いを要するホムンクルスになったのは
戦団のせいであり、戦部はその戦団所属である。
「なかったら100年も地面の下にいられないでしょ?」
正面に向き直って冷笑を浮かべた。それで終わらぬ悪意が胸中にある。
戦部はそれに気づいたのか気づかなかったのか。
「質問を変えよう。これは防人戦士長の請け売りだが、ホムンクルスは大体の場合学校や学生寮を襲う。
そしてお前は全寮制の女学院の地下深くに100年も居た。しかし、完全に行方知れずの関係者はこの100年
一切出ていない。となれば、お前はあの女学院の関係者に一切手をつけていない事になる。何故だ?」
電車が不意に止まった。しわがれたアナウンスが告げるには、信号待ちらしい。
ヴィクトリアの冷笑は、嘲笑に移行した。
「何故だも何も。もし手をつけてたら噂になって、あなたたちが来て」
戦部は手にした欠片を口に放り込み、無遠慮に咀嚼を始めた。
視線こそ向けられてはいるが、まるで自分の話が無視されているような不快感がある。
ヴィクトリアは少し声を荒げた。
「…またあなたたちが、ただ普通に暮らしたいだけの私達を邪魔するでしょ? 100年前と同じように。
だから女学院の関係者に手をつけたりしてないわよ。
時々は、ママのルリヲヘッドで研究の手伝いをさせる為にさらってたけど、用がすんだらちゃんと返してたし」
ごきゅり、と大きな音を立てて戦部は欠片を飲み下した。
「そこだ」
「何よ」
太い首を欠片が通っていくのが見えた。非常に生々しい光景にヴィクトリアはやや気圧された。
「格好のエサ場に手をつけず、お前はどういう風に生き延びたんだ?
俺はお前たち一家に関する資料を読み漁り、この100年どうしていたか見当は大体ついているが
お前が何を喰って生き延びていたかは、どうしても分からん。だが、もしもだ」
「………」
きゅっと息を潜めるヴィクトリアに構わず、戦部は喋る。
「もし、父と同じような生態を持っていて、それによって生き延びているなら──俺と戦え」
「それは──…」
もし、正確に答えれば戦部はどうするだろう。やはり戦士としてヴィクトリアを討伐するのだろうか。
そう。
父と同じように。
「私があなたにいう必要なんてない。大体、さっきいったコトだって嘘かもしれないでしょ」
プイと顔を背けると、ちょうど電車も動き出し、また流れる景色に目を落とした。
どこまでも続きそうな同じ景色は、世界の広さをヴィクトリアに感じさせる。
父ヴィクターは、伝え聞く所では世界を100年前も1年前も、世界各国を放浪していたらしい。
きっとこの電車を流れる景色よりも、ずっと多くのものを見続けて、死んだのだろう。
見やる景色からの飛躍した考えに、ヴィクトリアはなんだかやるせない寂しさに覆われた。
一方戦部は表裏が半透明の青と銀色に彩られた円盤を取り出し、せんべいのように食べた。
傍らには「ディスクアニマル02 ルリオオカミ」と印字された箱が転がっていたりした。
しばらくすると電車が止まり、戦部とヴィクトリアは降りた。そして街へと歩を進めた。
どことなく古きよき昭和の時代を連想させる町並みである。
「この町で何か旨いモノはあるか?」
通りかかった眉毛の太い婦警に戦部が聞くと、ラーメン屋に案内された。
そこはとてもアグレッシブであった。
従業員とおぼしき女性が、長身の男性を打ちのめし、かと思えば、奥より飛び出た女店主が一喝と
一撃の元に従業員を撃沈せしめる。
食物連鎖をかくも手短にまとめた光景に、客どもは歓声をあげ、高いボルテージが店を満たしていく。
ヴィクトリアは、一度は席に座ったものの眉をひそめた。
彼女にとっての食事は、脳だけの母の前で、淡々とパンなどをかじる静かなものだ。
女学院の食事風景も見たコトがあるが、元より令嬢がするものだから、多少のお喋りこそ混じわれど
やはり基本的には粛々とした静かなものだ。
しかし店はひたすらやかましく、やかましい。
「ネギラーメン2丁」
戦部は平然と注文した。
「私はいい」
ヒートアップする店内を尻目にガタリと席を立つヴィクトリア。だが、袖がずいと引かれた。
見ればそうしたのは隣に座る、端正だがやけに辛気臭い顔の女性である。
年は先ほどの従業員よりやや上だろう。しかし着込んだジャージは見すぼらしく
決して明るいとはいえない雰囲気をますます暗く、老いた物にしている。
いいよ先生、選ぶのはお客さんの自由だよ、と女店主が声をかけた所をみると、なんらかの教職についているらしい。
ちょうどその時、店の引き戸が開けられた。
入ってきたのは、ここの従業員と同年齢の、金髪を後ろで大きく括ったメイド姿の女性である。
怨霊!
彼女は『先生』を見るや否や、蒼白で金切り声をあげ、一目散に逃げた。
先生はショックを受けたらしく、いずこから取り出したる縄で首吊りを実行せんとした。
客はみな、引いた。
野菜を搬入しにきた八百屋の青年だけが、叫んだ。
──縄をほどけ!
ほどけなかった。
もう女性は死ぬのか。皆の心は深く沈んだ。
その時である。店の片隅から声が上がった。
──高枝切りバサミならありますよ。
さすらいのマジシャンだった。
──切れ!
皆の声が重なった。
マジシャンはカバンから高枝切りバサミを取り出し、縄に当てた。
果たして縄は切れるのだろうか。
皆、息を呑んだ。
縄は……切れた。
地上へと落下する女性を、八百屋はキャッチした。その衝撃は今も、彼の腰を苛みつづけている……
ヘッドライト・テールライト 旅はまだ終わらない。
ヘッドライト・テールライト 旅はまだ終わらない。
九死に一生を得た先生は、まずヴィクトリアに声をかけた。
曰く、ここのラーメンは生きる活力を与えるらしい。曰く、だから食べなきゃダメなのよ。
ならばなぜ、ここでラーメンを待っていたハズのあんたは自殺を図ったのか。少しぐらい待てよ活力。
八百屋は涙目で腰をさすりつつ、小声で意義を唱えた。救助に際し腰を痛めた彼にはその権利がある。
先生は意に介さず話を続け、いつしか身上話に移行しつつある。
それによれば、職業は高校教師であり、給料は少なく、新聞を買う代金すらないほど生活に困窮し、街
の自殺名所と三途のデッドラインをうろつきまわる生活を送っているが、しかし、ここでラーメンを食べる
事だけは欠かした事がないらしい。
なぜならばここのラーメンは生きる活力を与えるものであり、また、自信をつけさせる効能もあるからだと
隠隠滅滅としたやりきれない声で力説する。
美貌に属する顔つきであるが、光なき眼には霊的なおぞましさが宿っていて、凝視されるヴィクトリアの背
筋にぞわぞわと鳥肌が立った。戦部はやりとりを面白そうに見ている
やがてヴィクトリアは根負けし、ネギラーメンを頼んだ。ややあってそれが来た。
しかしヴィクトリアはそれに付属する割り箸の使い方が、その割り方からして分からない。生粋の外国人なのだ。
ラーメンを前にじっとしていれば、香ばしい臭いが鼻に付いていかんともし難い。
ヒントはないかと周りをきょろきょろ見渡してみるものの、どうも食べ方が分からない。
備え付けの木は一本なのに、皆は二本で黄色い麺を口に運んでいるのが不思議で、何度も首を傾げた。
戦部はというと不親切なもので、ラーメンをすするばかりでヴィクトリアを省みない。
と。
声があがった。おかみさん、外国から来たお姉さんにフォーク貸してください、と。
主は髪を左右に束ねた小学生の女児。ちなみに彼女の飼い犬は店の前で従業員と戦闘中だ。
「あ、えーと… ありがとう」
とりあえず礼をいうと、女児はヴィクトリアの日本語の巧さにしきりと感心した。
だから箸も使えると思ってたんだよ、気づかなくてすまないねぇ、と女店主は謝りながらフォークを出した。
そんなこんなでヴィクトリアがようやく食べれたラーメンは、確かにおいしかった。
塩と脂と炭水化物を混ぜただけのものなのに、どうしてこんなに旨いのか。
先ほどの先生すら驚くべきコトに、ラーメンをすすりながらも普通の美少女然とした笑顔を振りまいている。
そういえば、騒ぐ客達も非常に楽しそうな顔つきだった。
(そういう所なのか)
ネギをフォークの先でちょいちょいとつつきながら、ヴィクトリアはため息をついた。
一応ここまで。コラボに選んだ作品は、分かる人には分かる。
あと
>>136の一番上に
錬金戦団、最殺部隊三号戦士、戦部厳至(イクサベゲンジ)。
を入れ忘れ。
144 :
作者の都合により名無しです:2005/07/18(月) 18:57:21 ID:RDs7T5zs0
スターダストさん乙です。
トキコとカズキの2人ではロマンチックな新婚生活にはならんわなーと思って
読み始めたら案の定ギャグでしたねw
みきちゃんもろに出して欲しかったなあ。鬼丸一族ならヴィクターも勝てまいし。
ところで原作の武装レンキンって、もう終わったのかな?
146 :
作者の都合により名無しです:2005/07/18(月) 19:34:47 ID:RDs7T5zs0
別にバキスレはどんなネタ書いてもいいよ。大歓迎。
もともとなんでもありだし。
一度にあげるのは何レスでもいいと思うけど、
登校規制に引っ掛かると他の職人さんに
迷惑掛かるかも知れないから後書き入れて
一回5レスが理想じゃない?
10レスなら2回に分けた方がいいかもね。午前と午後とか。
勿論多くてもいいけど。
スターダスト氏、面白かったですよ。
原作ではなかった人物の組み合わせ、新鮮でやり取りが楽しかったです。
ところで…
>夜明け近くの墓場という若者なれば誰でもハイになる場所
普通の若者ならば、ならない気がしますがw
>ヴィクトリアは制止したが戦部は勘のみで突き止め地上から穴開けて突入した
戦部らしすぎてしばらく笑いが止まらなかった。
コラボ分からんかったが面白かったよ。
おもしろかったよ。
俺もコラボは分からんかったけど楽しめた。
俺の好きな千歳さんとまっぴーがだいぶ壊れてたけど笑えた。
いいね!
第三話「現われし狐」
「さて、これからどうするかだけど」
―――いつもの空き地。いつもの五人。それにいつもとは違う二人―――キラとリルルを加えて七人。
そこでドラえもんは他の六人に言う。
「やっぱり、ぼくらだけでやるしかないと思うんだ。あのヤムチャってのが本当の事を言ってるのなら、敵は
ぼくらを狙ってきてる。それでなくとも、多分誰も信じちゃくれないだろうしね。遠くの星から攻めてくる、なんて」
「そうだね。・・・けど、大丈夫かな。ザンダクロスとフリーダムだけじゃ・・・」
「ええ。さっきはなんとか撃退できたけど、これからもそう上手くいくとは限らないわ。それに、<十三階段>―――
あのヤムチャって人はともかく、クルーゼの力は本物よ。そんなのがあと十人以上もいるのなら、戦力的に不安ね」
「それについては気休め程度だけど考えがある。これを見て!」
不安げに言ったのび太達に、ドラえもんはある物を取り出してみせる。
「それは―――四次元ポケット!?しかも、何、その大きさ!?」
そう、確かにそれは四次元ポケット―――だが、尋常でなくでかい。まるで巨人のために作られたかのような―――
「未来デパートから取り寄せたんだ。大型ロボット用の四次元ポケットさ。当然、中の道具も大型で強力になってる。これを
ザンダクロスに取り付けようと思うんだ」
「へえ・・・」
「さらに・・・<スカイグラスパー>!」
次にドラえもんが取り出したのは、三機の戦闘機だった。
「ひゃ〜、カッコいいじゃねえか!」
ジャイアンが歓声を上げる。
「これはもともとは未来のおもちゃだったんだけどね、戦闘に耐えられるように改造してみた。キラ以外の全員が
ザンダクロスに乗ったら人員のムダが出てくるからね。誰か三人はこれに乗って戦って欲しい」
「あ、じゃあおれが乗るぜ!」
「じゃ、ぼくも乗ろうかな・・・」
ジャイアンが言うと、スネ夫も続いた。
「ええっと、じゃああと一つは・・・」
「それじゃ、あたしが乗るわ。このSSはのび太さんとドラちゃんが主役だから、二人がザンダクロスに乗らないと
収まり悪いし、リルルはザンダクロスの相方だもの」
「うん、何気なく楽屋ネタが混じってるのがアレだけど、そうしよう。さて、次はこれを皆に渡しておく」
ドラえもんは腕時計の形をした道具をみんなに渡しながら説明する。
「この中にはパイロットスーツが収納されてて、ボタン一つで着脱できる。頑丈な素材で出来てる上に、<絶対安全お守り>が
縫いこんであるから、いざというときにも安心さ」
「縁起でもないこと言わないでよ・・・でもありがとう。じゃ、ちょっと試していい?」
「うん、この中じゃキラが一番似合うと思うよ。他の男性陣がアレだからね」
さりげなく失礼なことを言うドラえもんにキラは苦笑しながらそれを腕に取り付け、ボタンを押す。
瞬間、キラの身体はスタイリッシュなパイロットスーツとヘルメットに包まれた。
「うわあー、かっこいいよ、キラ!」
「そ、そうかな・・・?」
キラはヘルメットの上から頭を掻きながら照れたように笑う。そして再びキラがボタンを押し、元の姿に戻ったところで
ドラえもんは言う。
「さて、とりあえずこれだけ用意すれば多少はマシになったと思う。あとはどうするかだけど・・・」
「何か策はあるの?」
「ない」
あらら、と全員ずっこけた。―――と。しずかは空き地の入り口に誰かいるのに気付いた。
「あら―――あの人、誰かしら」
しずかの声に、皆がその人物に注目する。その男は―――狐の面を被っていた。
そして狐面の男はのび太達の方に歩いてくる。誰も、その場を動けない。それだけの存在感が、彼にはあった。
「よお―――初めまして」
「え、あ、はい、初めまして」
「<初めまして>―――ふん」
狐面の男は、鼻を鳴らした。仮面のせいで分からないが、どうやら笑っているようだ。そして唐突に告げる。
「ヤムチャの奴はやられたか―――まあ、予想はしてたが」
「な―――なんであの人の事を!?まさか・・・あんたも<十三階段>なのか!?」
ドラえもんの追求の言葉に、狐面の男は何事もないように言う。
「いや、俺は違う。俺は―――そうだな。人類最悪の遊び人、とでも言っておくか、俺の敵共」
「人類最悪の―――遊び人、だって?」
「そう。それが今のところの俺の識別名さ。だが、まあいいじゃねえか。名前なんざあってもなくても同じ事だ」
くっくっく、と狐は笑う。
「十三階段じゃないってんなら、お前はなんだってんだ、お面ヤロー!」
ジャイアンが怒鳴る。それにつられたわけではないだろうが、狐は語る。
「<お前はなんだってんだ>ふん。俺は十三階段の、一応は統率者ってとこだな。まあ、あんまり連中は俺の
言うことなんざ聞いちゃくれないんだが」
「統率者!?」
「まあ、統率者といって語弊があるなら―――十三階段は俺の手足さ。俺は色々やりすぎて、大っぴらに動けない身なんでね。
俺の目的のために、どうしてもそういうのが必要なのさ。―――こうしてお前らの前に姿を現してるのだって、
俺にとっちゃあ最大限の礼儀。敵に対する―――ね」
狐はまた笑う。犯しそうに、笑う。
「つまり俺はそこまでしてでもお前らと因縁を持ちたかった―――そういうことさ、俺の敵共」
「―――なんで、ぼくらを狙うんだ!?ぼくらには狙われる理由なんかないぞ!」
ドラえもんの言葉に、狐は答える。
「お前らが―――主人公だからさ」
「――――――は?」
思わず間抜けな声を出すドラえもん達。意味が分からないにも程がある。
「くっくっく―――まあ分からなくても問題はない。分かろうが分かるまいが、結局同じ事なんだからな
―――ただ、お前らにももうちょっと真剣になってほしい。自分の命が狙われてるってだけじゃ、まだまだ
真剣みが足りない―――変な奴に狙われてるからしょうがない、程度のモチベーションでかかってこられても
困るんだ。もっともっと、俺に対する憎しみで立ち向かってもらいたいのさ―――そこで、こんな物を用意した」
そう言って狐が取り出したのは―――何かのスイッチ。それを見てドラえもんは声を上げる。
「そ、それは―――<独裁スイッチ>!」
「な、なんだよドラえもん、独裁スイッチって!?」
「ひみつ道具の一つさ。これを使うと人間をこの世から<いなかったこと>にできる。―――けど、効果はすぐに
切れるはず―――」
「そう―――だが、こいつは特別製さ。通常ならある程度時間が経てば消えた人間は戻ってくるが―――これは
解除スイッチを押さない限り、消えた奴らは戻ってこない。で―――俺が誰を消すかというと―――」
狐の指がスイッチにかかり―――
「この町にいる連中、お前ら以外全員、消えろ」
瞬時に―――町から人の気配が消えた。誰一人―――そう、のび太達以外、誰一人残らず。
「こうでもしないとてめえらは積極的に俺と敵対しようとは思わねえだろ?変な奴に狙われてるから仕方なく、なんて
態度じゃ駄目なんだ。真剣にやり合ってもらいたいんだ。そのための人質ってことさ」
「て、てめえっ!」
ジャイアンが狐に殴りかかる―――しかし、その拳は届かない。なにかに弾かれるようにジャイアンが吹き飛ばされた。
まるで見えない壁があるかのように―――
「―――バリヤーポイントか!」
「くっくっく―――どうする?俺の挑戦を受けるかい、答えてくれよ、俺の敵―――」
「・・・やってやるさ!」
のび太が狐の言葉を遮り宣言する。
「あんたが誰なのか知らないけど―――やれっていうならやってやるよ!そして、みんなを助け出す!」
「僕だって―――」
キラものび太に続く。
「あなたがクルーゼの仲間で―――メカトピアを滅ぼしたのもあなたの差し金だっていうのなら、僕やリルルに
だってあなたと戦う理由がある。―――絶対にあなたは許さない!」
二人のその言葉を聞いて、そして狐は―――
「くっくっく―――あーーーーーはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!やっぱりそうか!そうだったんだ!
その反応―――やはりお前らで正解だったようだ!素晴らしい!素晴らしいぞ!自分で自分を誉めてやりたい!」
「―――な!?」
いきなり笑い出した狐に、一同は怯む。
「あっはっは、そうだそうだ、そうだよなあ。やはりお前らこそが俺の敵だった。くっくっく―――
初めまして、俺の敵。やっと巡りあえたね、これからよろしく、末永くお付き合いを―――ってか!
はあっはっはっはっはああっはあああはははっはは!
―――さあ、これからが本番だ。
俺とお前らの因果が今繋がった。お前らに残されるのはもはや俺との因果―――俺との戦いだけさ、俺の敵共!さあ、それじゃあ
これから大忙しだ。大変だ。大騒ぎだ!愉悦と愉悦と愉悦と愉悦が手を取り合ってのラインダンスだ!はあーーーーはっはっはっ
はっはっはっは!
―――くっくっく。それじゃあお前ら、とりあえず今日はこの場でお開きだ。最後にこれを渡しとく」
そう言って狐が取り出したのは、羽のついたバット―――<伝書バット>だ。
「こいつを使うと自動的にとある場所まで飛んでいくようにセットしてある。そこは普通じゃ絶対に人の目に付かない
場所になってるから、余計な邪魔は入らない。俺との戦いだけに専念できるぜ」
「・・・勝手なことばかり!」
「くっくっく・・・そう怒るなよ。それじゃあ―――」
「縁が<合った>以上―――また会おうぜ」
そして―――狐面の男は去っていった。
後に残された七人は、全員やるせなさそうな、不思議そうな、なんとも言えない―――そう、
狐につままれたような表情で、それを見送るしかなかった。
投下完了。
パイロットスーツのデザインはSEED本編で出てくるザフトのものだと思ってくれると個人的にいいかんじ。
狐のセリフは(あれでも)かなり簡略化してます。
>>106 >>ふら〜りさん
>>女のバトルもあるか? >>多角関係が展開かっ?
のび太女難の展開も考えてます。どんなふうになるかは分かりませんが。
ヤムチャレギュラーは・・・無理でしょうね(笑)
156 :
作者の都合により名無しです:2005/07/19(火) 00:44:58 ID:j5+UpcEt0
サマサさん、ほぼ2日ごとの投稿乙です。
いつもの5人にキラとリルルを加えて7人パーティが基本になるのかな?
狂言回し的なキャラも現れて、いよいよ役者は揃った感じですね。
日常から戦場へと赴くドラたちの活躍期待してます。
あと、草薙さんも頑張って下さいね。
俺は空手小公子好きだし、修羅の門も好きだから期待してますよ。
いろいろいわれるのは注目度が高い証拠なので、気になさらず。
>いろいろいわれるのは注目度が高い証拠なので、気になさらず。
どうせ嵐だろうが。こっちと向こうをごっちゃにするな。
158 :
作者の都合により名無しです:2005/07/19(火) 16:20:27 ID:NAujDQco0
サマサさん深夜に乙。
狐面の男がこれからの鍵を握るんでしょうね。敵か味方か?
伝書バットにちょっと笑った。こんな道具あったっけ?
サマサさんペースいいですね。
出来ればこのままのペースで最後まで
160 :
ふら〜り:2005/07/19(火) 23:04:29 ID:tpO+g2R/0
>>Tournamentさん(と、しておきます)
サマサさんとこのムスカなどとはまた違った形で、歯痒いというか微妙というか。こちら
は、敵だか味方だかはっきりしないもどかしさがあります。今のところは事態のスケール
も小さく、差し迫った危機ではないようですが、今後は……トーナメントもまだですしね。
>>スターダストさん
普通なら少しずつ出して貰った方が楽しみが伸びて嬉しい、のですが。スターダストさん
の作風の場合は、ある程度纏まって読んだ方が楽しめそうな。一応
>>146さんには同意です
けど。あとヴィクトリア、私なら割ってない割り箸を二つ持って喰うぞ。応用が足りぬ!
>>サマサさん
イッてますねぇこいつぁ。問答無用で最凶兵器独裁スイッチ。しかも強力版。でも強力版
ならドラ側にも。巨大四次元ポケットから出る巨大道具、それを使いこなす巨大人型兵器!
のび太たちはともかく読者としては、今は絶望感より高揚感。ゆくぞ、歴戦の勇士たちっ。
161 :
新天地開拓:2005/07/20(水) 00:16:28 ID:bqb/MUlC0
とある汚物団支部にて──支部長は悩んでいた。
彼は熱心なことで有名な団員だったが、つい最近まで本部より活動停止処分を受けてい
たのだ。
かつて、彼は周辺住民に汚物団を宣伝するため、袋に入った汚物を街中に放り投げると
いう「大うんこ祭り」なる企画を実行に移した。まさに、野球の楽しさを知ってもらうた
めに、プロ野球選手が少年たちをバットで殴打するような無謀な企画であった。もちろん、
祭りは一般人から大批判を浴びせられ、支部長は責任を取ることとなった。
ようやく処分を解除された支部長。彼としては、どうにかして汚名を挽回したかった。
どうすれば、一般大衆に汚物を理解してもらえるか。どうすれば、汚物団の名を高める
ことが出来るのか。画期的なアイディアを渇望していた。
テレビの電源を入れると、汚物団が成功させた企画「汚物での富士山越え」が大きく報
道されている。今やマスコットキャラクターへと出世し、インタビューを受けながら豪快
に笑うグルトニー。近々、このプロジェクトがNHKの人気ドキュメンタリー番組で取り
上げられるという話まで出ている。
同じ組織に属しながら、視聴者に過ぎぬ彼とテレビに映る人々との差は歴然であった。
どうにも発散しようがない嫉妬と焦燥が、彼の精神を蝕んでいく。
162 :
新天地開拓:2005/07/20(水) 00:17:04 ID:bqb/MUlC0
「くそっ、企画だ! おまえら、悔しかったら奴らを上回る企画を出してみろ!」
週に三回行われる企画会議では、いつも支部長は感情のまま部下を怒鳴り散らすだけ。
こんな環境では、目新しい企画など生まれるわけがない。
──だが、今日は違った。
挙手する一人の部下。
「支部長! 我々で、うんこ味のカレーを作るというのはいかがでしょうか!」
「うんこ味のカレー? どういうことだ」
少し咳払いしてから、指名された部下は説明を始める。
「支部長はご存知ないかもしれませんが、よくあるギャグで“うんこ味のカレーか、カレ
ー味のうんこか”の二択を迫るというのがあるんですよ。多分、二つとも茶色くて、似て
るからなんでしょうね」
「バカか、そんな二択など出されるまでもない。カレー味のうんこに決まってるだろうが。
味がどうであろうと、カレーなどに俺は心を動かされん」
「ま、まぁ……支部長はそうでしょう。でも、カレー味のうんこを作るのは人体構造から
どうにかしなければならないため、まず不可能です」
「ほう。だから、うんこ味のカレーというわけか。……面白い、やってみよう!」
こうして、新たなプロジェクトが立ち上げられた。うんこ味のカレー、果たして作り出
すことは出来るのか。
163 :
新天地開拓:2005/07/20(水) 00:17:46 ID:bqb/MUlC0
まず、彼らは「うんこ味」を知る必要があった。
汚物団は汚物のエキスパートが揃っているが、実は食べたことがある者はほとんどいな
いのが現状なのだ。もちろん、支部長とて未体験である。
さっそく支部長は部下たちに命じ、あらゆるタイプの汚物を皿に盛り付けさせる。
「下痢便から理想的なバナナ型まで……どれもこれも個性的で、甲乙付けがたいな」
まずは箸で形が整った汚物から試食する。部下たちは羨ましそうに、それを見つめる。
「な、なるほど……これは珍妙な味だな」
やはり美味とはいえないらしい。そのまま支部長は歯と舌とでゆっくりと味わうと、一
気に飲み込んだ。
次に支部長は、スプーンで下痢便をすくい上げる。礼儀作法に忠実に、音を立てずに口
に含む。うがいをするように、茶色い半液体を味わう支部長。
「ほう……やはり固形物とは少し違うな。消化されきってないグリーンピースも残ってい
て、これまた奇怪な味わいだよ」
支部長は次から次へと試食を行った。全ての味を平均化し、一般に通ずる「うんこ味」
を発見しなければならない。
やがて、彼はついに舌で覚えた──数百を上回る汚物の平均値。そして、誇らしげに次
なる指令を送る。
「よしっ、いよいよカレー作りだ!」
設定したルールは「食材に汚物を使ってはならない」のみ。本場インドより本格的スパ
イスを輸入し、いざ調理開始。
スパイスを惜しみなく使用し、古今東西の食材を鍋に叩き込む。だが、カレー作成は困
難を極めた。支部長は何度も試食し、何度も首を振った。
「全然ダメだ。これじゃ、ただのカレーじゃないか!」
だが、彼らは諦めなかった。汚物は富士山でさえ越えられると、他支部では証明してみ
せた。ならば、カレーに汚物を融合させることだって可能なはずだ。
部下の作品に応えようと、支部長もカレーを食べ続けた。満腹ならば、胃袋から吐き出
してでも口に入れる。グルメというジャンルを超越し、彼らはまさに幻を追い求める求道
者と化していた。
「味は近くなったが、辛さが強すぎてせっかくの風味が消えている。次、持って来い!」
支部長が水を飲みながら、熱く叫ぶ。執念だけが成せる所業であった。
164 :
新天地開拓:2005/07/20(水) 00:19:02 ID:bqb/MUlC0
どれくらい経っただろうか。近づけど、遠ざかる聖域への旅路。
だが、常軌を逸した執念は奇跡を呼び、奇跡は幻を現実と化す。何万と試食を重ねた支
部長が、カレーを吹き出しながら絶叫した。
「これだッ! 舌に未だに住みつく味と、カレーとが完全に一致したッ!」
どよめく部下たち。
支部長は皿一杯に盛り込まれたカレーを数分で完食してしまう。
「どれほど待ち望んだことか……。入る食物と出る排泄物、永遠に交わるはずがない両者
を、俺たちが繋ぎ合わせた。これは歴史的大事件といえる快挙だッ!」
鍋一杯にあったカレーは、団員たちによって瞬く間に空となった。
支部を挙げてカレーハウス「OBUTSU」はめでたく開店した。
しかし、客足は全くない。これは店先に堂々と飾ってある排泄物の写真が原因なのだが、
もちろん誰も気づかない。写真さえなければ、入店してくる変わり者があったかもしれな
いのに。
こうして一人も客が来ないまま、空しく一週間が過ぎた。
支部長は悩んだ。
「赤字なのは別に構わない。だが、こうも客が来ないというのはどういうことだ? 現代
人は新しいもの好きだから、一人くらい来てもいいはずなのに……」
「難しいもんですねぇ。客商売ってのは……」
つい弱気になり、愚痴を吐く面々。だが、そこへ突如として来客が訪れる。
威風堂々とした着物姿。頭には白髪が混じり、並々ならぬ貫禄を漂わせる初老男性。
「いらっしゃいませ!」
只者ではない、と支部長たちも本能的に感じ取った。ぎこちない営業スマイルにて、男
を出迎える一同。そんな彼らに対する男からの注文は、たった一言。
「店主、カレーを出せ」
いよいよ腕の見せ所である。さっそく支部長は部下たちに命じ、極秘レシピに乗っ取っ
て「うんこ味のカレー」を作らせ始めた。
165 :
新天地開拓:2005/07/20(水) 00:19:54 ID:bqb/MUlC0
支部長を中心に築き上げられた、執念と吟味とが練り込まれた結晶。汚物が持つ味を完
全に再現した特製カレーが、しみじみと男に出される。
「お待たせいたしました」
男は皿からカレーをすくい上げ、ためらいなく口の中へ放り込んだ。そして、緊張する
支部長たちを待っていたのは──冷徹なる酷評であった。
「不味い。これ以上、食べる価値はないな」
あっけなく席を立とうとする男に、我を忘れた支部長は食い下がった。
「ま、待ってくれ! ど、どこが……どこが悪かったんだ!」
「そんなことも分からんで、店を開いたのか。ふん、まぁいいだろう……特別に教えてや
る」
すると、男は店内にある便所へと入ってしまった。
しばらくして水を流す音がし、男は包みにしたトイレットペーパーを持ってきた。中に
入っていたのは──熱を帯び、湯気が立ち、かすかに汚臭を放出する物体。いうまでもな
く、排泄物に他ならない。
「店主、これを食してみよ」
差し出された新鮮な汚物を、むろん支部長は口に含んだ。
──するとどうだ。今までとは次元の違う味覚世界が、彼を包み込んだ。
甘味、酸味、苦味、塩味。これらが極上のバランスで立ち並び、しかも思わず噛むのが
楽しくなってしまうような歯応えだった。楽園と表現すべきか、理想郷と表現すべきか。
「こ、こ、これは……!」
至高──たった二文字が頭に浮かんだ。
「美味を味わえば、当然排泄物も美味となる。同じ食材にも貴賎があるように、汚物とて
貴賎があるのだ。それを追求することを怠った貴様らに、汚物を語る資格はないわッ!」
鋭く一喝し、男は店から出て行った。あまりの迫力に、ただ立ち尽くす支部長。
「ち、ちきしょう……完敗だ。だが、いつか必ず……いつか必ずッ!」
床に倒れ込み、見苦しく号泣する支部長。だが、もはや彼が嫉妬に苦しみ、名声に飢え
るようなことはない。かつては彼を疎ましがっていた部下も、今では彼を信頼している。
そう、これは単なる悔し涙ではなく──脱皮による涙でもあったのだ。
お わ り
夏季うんこSS、第四弾。
今回はヘビーに攻めてみました。
終盤に出る漫画キャラは数人候補がありましたが、やはり大御所でありメジャー級であるこの人に。
>そういえば昔、究極の選択ってのがありましたね。カレー味の……
これはずっと前、『のび太の思いつき』に某氏より頂いた感想の一部です。
私としてもずっと書きたかったテーマだったので、今ここに捧げます。
ちなみに、私は納豆カレーが好きです。
もう勘弁して>サナダムシ
あなたはどこへ行くんだよw
スカはほんとやめて・・・
169 :
作者の都合により名無しです:2005/07/20(水) 12:10:52 ID:zA+JaE7R0
今、ネットカフェでサナダムシさんの作品を読んでいる。
ランチはカツカレーだ。上に数粒グリーンピースまで入ってやがる。
カツとサラダだけ食べて帰る事になりそうだ。
今回のはマジで嫌がらせのレベルだなw
次からは飯時にサナダムシさんの作品を読むのは避けよう。
でもこのネタ好きなので、次作を期待しております。
しかし雄山はなぜこんなセリフでもかっこいいのか。
雄山…。美食を極めてついに行き着くとこまで行ってしまったかw
燃えさかる神鳥がドラ一行を容赦なく襲う。美夜子の回避魔法は間に合わない。
が、その体型に似合わぬ素早い動きで窮地を救う者。
「今度こそヒラリマント!!」
ドラが小さなマントを手に片膝をつく美夜子の前に踊り出た。
フェニックスの凄まじい光と熱量がそのまま跳ね返り、後追いのもう一匹と衝突する。
2匹の神鳥は断末魔にも似た鋭い“音”を発し、爆発した。ドラが、美夜子が、
その場にいた全員が、爆裂の余波で盛大に吹き飛ばされた。なんとか身を起こした
ドラは、手につかんだひみつ道具のなれの果てを見て弱々しく呟く。
「ああっ・・・ヒラリマントが・・・もう・・・」
ヒラリマントは無残にも焼け焦げ、元の面積の半分近くが吹き飛ばされている。
たった一撃で・・・。
さらに上空を荒れ狂う雷がしばしの沈黙からの復活を遂げる。
「雷よ!退け!」
今度はようやく立ちあがった美夜子がその雷を拡散させ、直撃を防ぐ。デマオンの
激しい連続攻撃の前に綱渡りの回避が続く中、美夜子は必死に仲間を鼓舞してみせる。
「みんな。デマオンの力、この命に代えても、なんとか逸らしてみせる!
だから・・・のび太くん、なんとか魔王の心臓に一撃を・・・!」
「待って!いくらなんでも届かないよ。」
のび太がうめく。一発しかない弾。射程がどれほどのものか確かめることさえできない。
常識的な射程距離であれば、到底・・・いや、どちらにしてもさすがに地底の天井に
届こうかという巨大な魔王の胸部までは届くはずもない。
「どうやって近づけば・・・」
「こんなときに出木杉くんが元気でいてくれたら・・・」
出木杉を必死に介抱していたしずかが珍しく弱音を吐く。その間にも再び雷が舞い降り、
美夜子の力によって回避された。雷鳴の中、ジャイアンが叫ぶ。それは怒りにも似た、
いまだ力強い声音で。
「グジグジ言ってんじゃねーぞ、のび太!オレたちも精一杯手伝ってやる!
しっかりしやがれ!!」
こんな状況下でも変わらず、みなを鼓舞するジャイアンの男気に、美夜子は疲労が
限界点に近づきつつある中、ニコリと微笑んだ。そして、チラリと背後を見やる。
(そしてもう一人、大きな鍵になる存在がいる・・・)
その視線の先には―――――――――――
――――――二人の少女に守られながら昏々と眠る一人の少年の姿が――――――!
二人の少女の間に割ってはいる者がいる。それは沈黙を続けていた仮面の老人であった。
じっと静かに見守っていた仮面の老人がついにその重い口を開いた。いまだ目覚めない
出木杉に向かって厳粛に、暖かさと老体に似合わぬ不思議な力強さをもって言葉を紡ぐ。
「少年よ。目覚めなさい。みな頑張っている。―――――が、残念ながらこのままでは
長くは持たないだろう。この勝ち目のない戦いに勝機を見出すことができるのは―――――
“魔王に選ばれし者”キミだけなのだ。」
しずかとリルルは一瞬ポカンと老人を見上げ―――――しかし、すぐに我に帰り、再び
出木杉へと目を向けた。あるいは正体不明の老人の世迷言と受け取ったのかもしれない。
しかし、老人は確信していた。そして死力を尽くして戦う美夜子もまた。世迷言ではない。
出木杉英才――――その類稀なる精神力を信じて―――――――――!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
美夜子らの綱渡りの回避。思い通りに止めをさせない歯痒さに、魔王は徐々に怒りの色を
見せ始めた。本来は下賎なるその本性が少しずつあらわになっていく。
『こうるさい虫けらどもめ!ならば美夜子より先に滅ぼしてくれるわ!』
突如、魔王の腹部に―――――数十人はいようか――――――美くも巨大な女性の顔が
不気味にみっしりと浮かび上がった。その全員が両目を太い紐で縫い取られ、無理矢理に
視界を閉ざされている。その顔は苦悶の表情にも、悲しく泣いているようにも見えた。
闇に捕らえられ、救われぬ呪われた魂たちが一斉に慟哭の悲鳴を奏でる。
『『 う お お お お お お お…… ん……! 』』
「キャアッ!?」
無数の美しくも不気味な怨霊にも似た救われぬ者たちの集合体。あまりにもおぞましい姿に、
しずかは思わず小さな悲鳴をあげた。さしものジャイアンも顔が引きつり、怯えている。
『『 あ゛―― あ゛――――あ゛あ゛――― ・・・・・ 』』
―――――“歌”――――――
6人はゾクリと、魔王の方を振り向いた。腹部の女性の群れと共に、魔王自身の口が開く。
『『“ヴォイド・ハウリング”』』
「な・・・!?」
「な、なんだ?この・・・不快な・・・お・・・と・・・・・!?」
――――“歌声”が聞こえる。
魔王の腹部に張りついた美しくも悲しい天使たちが一斉に大音声の“歌”を共鳴させ始めた。
しかし、その“歌声”の“共鳴”は――――――あえて、人間界に類似する音を探すならば、
ガラスを鋭い爪で掻き鳴らしたときに生じる不快な音波。それをさらに煮詰めて、より凝縮
させ、ノイズが飛び交う粗悪な拡声器で致死量にまで拡声したかのような――――――――
およそ人間の耐えられる代物ではない。
「みんな!しっかりして!」
かろうじて、魔力に対する耐性のある美夜子だけが持ち堪えてはいるものの――――
ドラたちだけではない。魔土、八方斎を含む魔の眷族と化した帝国兵たちには影響は与えて
いないようだが、反乱軍の面々、闇に潜む忍の者たちもまた次々に膝をつき、倒れていく。
『ふ、人間など、たあいもないものよ。なぜかつての我は敗れたのか。』
しかし、魔王は怪訝な顔をした。“おかしい。様子が違う・・・”
そして次の瞬間、脆弱なる人間に二度目の恐怖と驚愕を味わうことになる。
「・・・・る・・・か・・・」
それは最初はたった一人の小さな呟きだった。しかし、その小さな呟きは徐々に
反乱軍の兵士たちに広がり大きなうねりとなっていく。呟きとともに一人、また
一人と立ち上がる兵士たち。魔王の目が驚愕とともに見開かれる。
「なんだこんなもの・・・・・・・に・・・れ・・ば・・・!」
しかし、その声は徐々に力強さを増し、それが肉体的な行動にも
反映され始める。立ち上がるものが現れたのだ。一人、また一人と・・・。
「負け・・・る・・・か・・・・・!」
「こんなもの・・・!こんなもの・・・!」
そう。全員の心は今、一つになっている。心を合わせて皆が叫ぶ。
――――“こんな音・・・ジャイアンの歌に比べれば!!”――――――
そう。戦いに挑む幼き勇者たち。同じく勇敢なる反乱軍。彼らは決戦に挑む直前、既に
経験してしまっていたのだ。闇の奏でる死の歌声、躯の慟哭にも負けない破滅の歌を!
「み、みんな・・・そんなにもオレの歌を愛してくれていたのか・・・!」
なにやら勘違いしているジャイアンが一人感激にむせび泣く。涙と笑顔で叫ぶ!
「やい!魔王!これからオレ様が本物の歌ってやつを聞かせてやるぜ!!」
「いや、それはいいって!!?」
「いくぜ!新曲、愛のバクダ・・・ムギュ・・・・・」
慌てて全員でジャイアンを取り押さえる。
確かに、まかり間違えば魔王をも倒してしまいかねない強烈な兵器ではあるが、
万一それで魔王が倒せても、ジャイアン以外全員が滅んでしまっては意味がない。
驚愕し、恐怖する魔王デマオン。ついに完全に立ちあがり意気上がる勇者たち。
―――――――ザッ・・・!
刹那、魔王の生み出した闇と風、そして雷光の中、爆風に白い粉塵が吹き荒れる中を、
一人の黒い人影がドラ一行の背後に現れた。
凍りつくような冷たいまなざし。細身の長身。全身黒ずくめ。黒いテンガロンハット。
黒い皮の戦闘用スーツに身を包み、腰にはやはり漆黒のホルスター。全身を覆う闇とは
あまりにも対称的な幽鬼のような長い白髪がやはり爆風になびき、その不気味さと迫力を
さらに強調している。その場にいる全員が蒼白になる。この地底を黒く染め上げる絶望に
導かれたのか、それとも自ら確実な絶望――――すなわち“死”――――を与えんと、
再び地獄より舞い戻ってきたのか・・・その男の名は・・・“死神”―――――――――
『・・・ギラーミン!』
のび太が。ドラが。魔王すらも。現れ出でしその男に注視を余儀なくされる。
それらの視線など微塵も気にすることなく、ギラーミンは静かに語りかけた。
眼前に巨大にそびえる闇の王へと。
「心地良い歌声だな・・・キスギー・・・いや、“魔王”よ・・・!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回分終了です。なんかいかにも無理に展開を急いでるような慌しい感じの文章に
なってしまってますね。申し訳ないところです。
で、さらに申し訳ないのですが再び夏休み出張のため続きを投下できなくなります。
8月初旬に一度帰ってきますので、それまでに続き書けていればその時投下します。
書けてなければ9月以降になってしまいますが・・・
これでまだ決戦の場に辿りついていない主要キャラは「ヤツ」一人ですね。
間が開きますが次回くらいには登場する予定です。あと、げんごろうは忘れている
わけではないですよ〜。これもたぶん次回くらいですね。よろしくです。
ギラーミンは最初から最後まで美味しい役回りか。
しかし、いきなりバスタードネタが出てきてびびった
>こんな音・・・ジャイアンの歌に比べれば
確かにw
うみにんさん、独立してから忙しそうだなあ。
>うみにんさん
今回もおもしろかったですよ。
今回のジャイアンを見てると
魔界大冒険の「美しい歌を歌う人魚」と「一角クジラ」の時のジャイアンを思い出した。
うみにんさんは本当に最後まで決めて最初から書いてたみたいだな。
これだけの長編なのに感心する。それだけに、もうすぐ終わるのが残念だなあ。
このペースなら年内かかるかも知れんがw
サナダムシさんはとうとう前人未到の領域に足を踏み込んだようだ。
ま、誰もその領域を目指さないだろうが。
読んでて胸に込み上げるものがありました。でも感動ではありません。
183 :
作者の都合により名無しです:2005/07/21(木) 00:35:21 ID:4NxUl9kp0
うみにんさん乙。面白かったです。
俺は物語ラストでの歌というとゲームのマザーを思い出す。
『『“ヴォイド・ハウリング”』』
って何でしたっけ?
夢を見た。あたしが磔にされている夢。
周りには人だかり。下を見ると薪の山。火種を持つ執行人たち。
火種が投げ入れられる。燃える。燃える。燃える。燃え上がる。
下半身が熱を帯び始める。
恐怖があった。同時に快感もあった。
最高だと思った。最低だとも思った。
そのうち、ただ見ていた群衆にも火が渡された。皆、「魔女め!」
と叫びながら、私に向かってそれを投げつけた。彼らは、その言葉
とは裏腹に笑顔だった。愉しそうだ。捌け口なのだ。そう思った。
全身が熱くなった。太股も腰も尻も腹も腕も胸も顔も――満遍なく
熱が広がって、私は悶えた。しかしやがてそんな余裕はなくなっていく。
足に火が点く。意識は既に虚ろになりつつあり、この辺からもう何も
考えられなくなった。ただただ、ぼんやりとしていた。
――これは夢?
目覚めたあたしの隣には、幸せそうに寝息を立てているクライドが居た。
体が火照っている。寝汗も沢山掻いている。シーツがびしょ濡れだ。それ
でも、彼を見ると安心する。肉体的にも精神的にも、彼はあたしを救ってく
れた。
彼と初めて交わった日――破瓜した日――から、ミスティの姿を見る事が
出来なくなった。
「ん……」
クライドが呻く。あたしは彼を起こさないようにベッドを出た。
朝は冷える。火照った体はあっという間に冷やされ、あたしは震えて、上
着を羽織った。体が熱いからといって、朝に何も着ていないというのはまず
かった。
外に出た。もやっている。鳥の鳴き声が聴こえる。彼らのお陰でクライド
も直目覚めることだろう。暫く、ゆっくり散歩することにした。
――どうして、あたしに追っ手が来ないのだろう。あれからもう数年経った。
これまでに、あの男の死体が見つかったという話さえ聞かないのだ。隠蔽した
訳でもない。生きてもいないはずだ。あの男の胸を弄った時、命の鼓動が感じ
取れなかったから、これは確信している。ふと、ミスティの事が思い浮かぶ。
あの日彼女は、『クライドの所に行け』と言っていた。あたしはどうしていいか
分からず、ただ彼女の言うことに従った。彼は、乱れた身形をしていたあたしを
何も言わず匿ってくれた。そしてそのまま一緒になった。
ミスティが、手を打ってくれたのだろうか。
でも、どうやって? 男の死体を消す? 存在自体をなかったことにする?
一体、どうやって……。と考えるだけ無駄な事なのかもしれない。彼女は、人と
は違った。何か、異なる力を持っていたのだ。それは肌で感じていた。
あたしは毎日自分が魔女裁判を受けている夢を見る。その度に精神がざらつい
て、体は火照り寝汗でぐっしょりになる。
つまり、こういうことだろうか。ミスティは現実の魔女裁判からあたしを救っ
てくれた。その代わり、悪夢を植え付けた――。
だとしたら、彼女は何が目的だったのだろう。突然姿を眩ませたのは、一体……。
貴女は綺麗な存在。
私は貴女を守ってあげたかった。
私は貴女にもっと綺麗な存在になって貰いたかった。
だから夢を見せる。これからも。
どこかが欠けている方が、人は美しいものだから。
そして、それを埋める存在も私が与えた。
貴女は私が動かなければ、一生クライドと繋がる事はなかった。
貴女はもうじき子を孕み、より美しくなる。
そしてその子が生まれ、育ち――私を見つける。
今はまだ子供の心を覚えている貴女だけれど、母親になればそれを忘れてしまうでしょう。
貴女は子供の話を聞かないわ。クライドもまた同じ。
それは悪ではないの。忘れる事は、必要な事だから。
私を感じ取れるその子供は、私に心酔するようになる。
貴女とクライドとの間に生まれる子供なら、そうなるわ。きっとね。
男の子か女の子かは、分からないけれど。
どちらにせよ、貴方達の子供ならば、美しい。
その子は私を慕う。私は近くで美しいものを感じることが出来る。
命を。
神秘を。
危うさを。全てを――感じ取れる。
それが私の生きていく為の糧。
アニー。
貴女が現れるまで、私は世界に一人ぼっちだった。
感謝しているのよ。とてもね。
だから、貴女を肉体の死から救った。
その代わり、精神の死を与えようとした。
絶え間ない悪夢で日々磨耗してゆく貴女の精神。
それを和らげてくれる、クライドという存在。
私は貴女に生きて欲しい。だから、クライドなのよ。
貴女は彼と二人、永遠に危うい橋を渡ってお行きなさい。
崩壊と幸福の境界を行き来している貴女は、掛け値なしに美しい。
末永く――死が、二人を分かつまで。
決して、誰にも姿を悟られる事のない存在が、アニーのすぐ後ろに居た。
「あ」
アニーは家の方に目を遣った。ようやくクライドが起きて、玄関のすぐ外で伸びをしている。
「クライドー」
アニーは駆け出した。すっかり朝靄も晴れた空には、ただ青だけがあった。
最後はみ出ました。
出来るだけ幸せにはしたかったけど、でもただそれだけでは……という事でこんな感じに。
もはや完全オリジナル作品書いている気分です。原作に縛りがなさすぎるので……。
蟲師は原作の話数が多かったので、作品の方向性や思想なんかも固まっていたのですが、
魔女は二巻しか出ていないし、毎回違いますからね。
今回はなかなか書けなかったのですが、構成を変えたらそこそこうまく纏まりました。
前スレ590
現代は現代でタチ悪い気はしますけどね……。
591
俺もただ暗いだけの話なんて書きたくはないし(前回のもそこまで暗くはしていなかったつもりです)、
今回もそうはしたくありませんでした。少なくともアニーが魔女裁判で殺されるとかいうオチにはしないようには、と。
>>18 あんだけの事をしでかした娘がそのまま救われるなんて話は書けないです。はい。
>>47 茄子もネタが浮かんだら書こうかな、と。次は歴史中編になるかも……。
>>50 俺は嬉々として惨殺シーンとか書けるタイプじゃないのでw元ネタ分かんないのは御免なさい。
力は抜きまくってました。小説とシナリオが中途半端に混ざった感じの形式で。
>>84 そうですね、宇宙生物は、また別の話で掘り下げるかもしれません。一応構想はあります。あれの続きで。
次回は和風で行きます。では眠いので寝ます。
ミスティは善なる存在か悪の存在か分かりませんね。
ただ、魔女弾圧に怯える弱い者の味方か。
タイトルの副題の意味は
>>188で分かりました。
原作、逆に読まない方がオリジナル作品として楽しめるかも。
全然単行本見つからないしw
>>184 「ヴォイド・ハウリング」は、「バスタード」で魔神コンロンが
胸に天使の女を埋め込んで、無理やり歌を歌わせて
天使の攻撃を無効化させる技。(だったはず)
これはこれでハッピーエンドというべきか。
とりあえず未来に続く終わり方で良かった。
ミスティは作中で超越者としての存在か、それとも狂言回しか。
ゆくゆく明らかになるんだろうな。
あとゲロ氏、出来れば前回へアンカーつけてくれるとありがたいんですが。
ゲロ氏に限らないけど。
俺、いつも前回を軽く読み直してから新しいの読むから。
192 :
作者の都合により名無しです:2005/07/21(木) 16:42:27 ID:EQqwCDdF0
ゲロ氏乙。
ミスティのミステリアスさとアニーとクライドの幸せな感じがよかった
また頑張って下さい。
ブラキンさんやザクさんはどうしたんだ?
さすがに漫画以外のSSはまずいよな?
>>193 さすがに漫画以外オンリーのSSってのはまずいとオモ。
例えばサマサさんはエロゲや種のキャラ出してるけど、ベースはドラえもんだしね・・・。
やるなら何かの漫画とのクロスという形式が無難。
>>194 サンクス。クロスは難しそうだから何か他ので考えてみる
>>194 いや、サマサ氏の場合は戯言以外は、一応漫画も出てる
ザク氏にしたって、Gを含むガンダムはたいてい漫画化されてるしな
やはりあくまでメインは漫画だな
前スレ
>>394より。
【前回までのあらすじ】
完全体になるため、クリスタルを集めるはめになったセル。
セルは16号、17号、18号を引き連れ、ユンザビット高地に到着する。
そこでセルは、マッチョ化トランクスと戦うこととなる……。
第十一話「自爆」
故郷で待つ母親のためにと、セルはトランクスに休戦を勧める。
この申し出に、トランクスもしばし考える。だが、彼の堅固な闘志を崩すことは出来な
かった。
「母さんは、たしかに未来で俺を待っている。でも、俺は退くわけにはいかないんだ!」
迷いが吹っ切れたためか、トランクスの気がさらに上昇していく。
「ま、まだ上がるのかよ……」
「セル、俺は逃げない! たとえ母さんを悲しませるような結果になったとしても、俺は
最後まで戦い抜くぞ!」
虚勢が通用しない──ばかりか、セルが死ぬ確率が大幅に上がってしまった。
「お、終わった……」
もはや万策尽きた。
これまでの思い出が走馬灯のように流れていく。ろくなことがない一生だった。せめて、
完全体になれさえすれば、もっと違う人生を歩めたかもしれないのに。
だいたいクリスタルを集めなきゃ、完全体になれないというのがおかしい。安全を考え
れば、初めから完全体で誕生させる方が良策に決まっている。しかし、いくらゲロやコン
ピュータを責めても自己満足にしかならない。
「さようなら、みんな」
セルは覚悟を決め、うっすらと目を閉じた。
──諦めるのか、セル。
声がした。
空耳か、それとも幻聴か。いや、どちらでもない。この声は暇さえあればセルにヘルズ
フラッシュを浴びせ続けた大男──人造人間16号だった。
振り返ると、セルの真後ろには16号が立っていた。それも危機的状況にもかかわらず、
うっすらと微笑んでいる。
「おまえ、どうしてここに……」
「トランクスを倒すぞ、セル。奴をどうにかせねば、我々に未来はない」
「バカめ、あいつはベジータとは比べ物にならん強さだ。おまえでもどうにもならん」
荒んだ口調と共に、嘆息するセル。だが、16号は笑みを崩さない。強い決意を秘めた、
それでいて哀しそうな表情をしている。
「俺の体内には、決して使ってはならない兵器が内臓されていた。今こそ、これを使うと
きが来たようだ……」
16号の切り札──しかも、ヘルズフラッシュ以上という超破壊兵器。
「……まさか、爆弾か?」
「あぁ、殺害は無理だとしても、大ダメージを与えることが出来るはずだ」
「おい止せ、トランクスの狙いは私だけだ。わざわざおまえが自爆することもあるまい」
「大丈夫だ、俺は死なない。それより──奴が来るぞ!」
剣を抜き、セルを両断せんと飛び掛かるトランクス。もう一刻の猶予も許されない。
「さらばだ、セル……だああぁぁぁぁッ!」
大、爆、発。
セルは体内から破裂を起こし、粉々に砕け散った。
ユンザビット高地全体に伝わるほどの衝撃。近くにいた16号はもちろん、特に接近し
ていたトランクスは全身に重傷を負った。
飛散したセルの無残な破片を一瞥し、合掌する16号。
「俺の体内には、決して使ってはならない兵器が内臓されていた。もっとも、自力で摘出
して、以前セルが気絶した隙に埋め込んでしまったんだがな」
やはり、16号は計算高かった。
撤退するトランクスをあえて追跡せず、16号は仲間の元へと戻っていく。
「危ないところだった。倒せはしなかったが、敵を退かせることが出来た」
「あんたも鬼だね……。まさか、あんな手があったなんてさ」
服に付いた埃を払い、苦笑いする18号。
強風に吹かれ、ユンザビット中にセルの肉片が散っていく。16号も、17号も、18
号も、この光景を黙して見守るだけであった。
「……終わったな」
リーダーらしく、17号が締めた。
だが、まだ物語は終わらない。
「ちょっと待ったァ!」
天にも届きそうな濁った大声。
爆弾で崩壊した土砂から現れたのは、クリスタルを両手で担いでいるセル。体力こそ著
しく低下しているが、肉体は完全に再生している。
「くっくっく……危ないところだった。核がある限り、ピッコロの細胞で私は再生出来る
のだ」
ユンザビット全体を巻き込む爆発にもかかわらず、セルの核は無傷だったらしい。実力
とルックスは三流だが、幸運だけは超一流。
だが、人造人間たちも決して甘くなかった。
「なんだ生きてたのか。じゃあ、さっさとクリスタルを吸収しろ」
「今度逆らったら、次は容赦しないよ」
「せっかく爆弾まで使ったのに、生きてたのか……残念だ」
九死に一生を得たセルに対し、あまりにも冷たい歓迎。セルは小声で彼らを非難しつつ、
涙を流しながら風のクリスタルを吸収するのであった。
久々にセルゲーム。
あと、前スレ
>>494の間違いです。
次回へ続く。
ユ
ル
だ
な
まで読んだ。
久々にセルゲームお疲れさんです。
このセルの無意味なしぶとさは、もはや不幸の域に達してますなw
サナダムシさんはセルになにか恨みがあるのだろうか。
確かにセルだのシコルだのユルだの、そんな感じの名前の奴はヘタレが多そうだがw
でも、そんなセルがシコルのように雄々しく立ち上がる姿を期待してます
第四話「プロヴィデンス」
伝書バットによって辿り着いた場所は、どこかの島だった。かなり大きな島だというのに、不思議な事にすぐ近くに
来るまで、まるでその存在を視認できなかった。まるで、島全体がすっぽりと何かで隠されているかのように。
「かのように、じゃなくて、本当にすっぽり包まれて、隠されてるんだよ」
「どういうこと?」
ドラえもんはさらに説明を続けた。
「未来じゃ割と珍しくもないんだけどね、まあ簡単に言うと、マジックミラーみたいなものでこの島は包まれてるんだ。
内側からは外を見渡すこともできるけど、外からは内側は絶対見えない・・・そんな類の科学的な迷彩が施されてる。
まともな方法じゃ絶対この島は見つからないだろうね。少なくとも、この時代の科学じゃあ」
「うーーーん、分かるような分からないような・・・それにしても、あの狐男、何者なんだろう・・・」
「さあね。未来の道具を使うぐらいだ。この時代の人間じゃないことだけは確かだ」
首を傾げるのび太を尻目に、ドラえもんはポケットから道具を取り出す―――否、それはもはや道具と言っていい大きさ
ではない。それは、城だった。
「<風雲ドラえもん城>!とりあえず、当面の居住区と守りはこれで確保しよう」
「やっぱ目立つなあ、これ・・・」
「いいんだよ、どうせ向こうが用意した舞台なんだから、こそこそしても意味ないよ」
「そうだ!早く来やがれってんだ!ギッタギタにしてやらあ!」
「あ〜あ、やだねー野蛮な人は・・・」
ジャイアンがいつも通りの暑苦しさを発揮し、スネ夫が呆れた声を(ジャイアンには絶対聞こえないよう)出す。
そんな騒がしくも賑やかな様子をキラは少し羨ましそうに見ていた。
「どうしたの、キラ?」
「あ、リルル。いや、みんな結構楽しそうだな、と思って・・・」
「ふふ、そうね。けど、それがあの人達のいいところよ」
「うん、そうだね」
言いながら、キラはメカトピアでのレジスタンス活動を思い出す。あの時はみんな必死で、こうして騒がしくするなんて
なかったと思う。みんな、険しい顔で日々を送っていた。こんな風にワイワイ騒ぐ雰囲気ではなかった。
しかし、それは別にのび太達が不真面目というわけではないのだろう。ただ彼らは―――今置かれた状況がどんなに厳しくても、
それを不謹慎な意味でなく、楽しむことができる。そういうことだろう。
それは多分―――本当の強さだ。
そんな彼らの姿にキラとリルルが微笑みを誘われた時―――上空から何かが飛来するのが見えた。
「―――ドラえもん!」
「分かってる!ザンダクロス、フリーダム、スカイグラスパー、出番だ!」
スモールライトで小さくしてポケットに入れておいたそれらを取り出し、元の大きさに。パイロットスーツを着て、
それぞれ乗り込んだ所で、飛来する者達の姿が明らかになる。
それはあの<モビルスーツ>というロボット達―――だがその中に、一際目立つ機体があった。全体的に黒く、仰々しい
フォルムが、如何にも悪役という雰囲気だ。
「な、なんか強そうな奴が来たね、リルル・・・リルル?」
返事をしないリルルをのび太が心配して見やると、彼女は顔面を蒼白にし、冷や汗まで流していた。
「そんな・・・あれは・・・」
通信装置から、キラの呟きも漏れる。そして次の瞬間、二人の驚きの理由は明らかになった。
突然全員の機体の通信装置がONになり、通信モニターに男の顔が映ったのだ。その男は―――銀色の無機質な仮面を
被っていた。そのせいで顔の上半分が全く見えない。そして彼は告げる―――
「キラ・ヤマト。そしてリルル、君達は久しぶりだな。そして野比のび太とその仲間達―――君達は初めまして、私は
ラウ・ル・クルーゼ・・・<十三階段>二段目さ」
「―――クルーゼ・・・こいつが!?」
「そうよ―――気をつけて、あいつの乗っているのは<プロヴィデンス>!前に相手をしたモビルスーツとはまるで別だと
思って!でないと、一瞬でやられるわよ!」
「う、うん・・・!」
のび太はゴクリと唾を飲み込み、攻撃を開始する。正確な射撃が、次々に敵機を撃ち抜いていった。
そこから逃れた何体かのモビルスーツも・・・。
「―――逃がすもんか!」
キラが一瞬のうちに全機ロックオンし、フリーダムの全武装を開放しての一斉砲撃の前に、成す術もなくチリに
変わっていった。
「おーし、のび太たちばっかにいいかっこさせられねえ!おれ達も行くぜ!」
「分かったわ。行くわよ!」
「う、うん・・・」
ジャイアン達も負けじと空中を飛び回り、スカイグラスパーに備えられた砲門からビームを乱射し、敵機を撃ちまくる。
「ふむ・・・中々やるな。では、これはどうかな!?」
その様子を静観していたクルーゼは、<プロヴィデンス>に備えられた特殊兵装を放つ。その瞬間―――。
「うわあっ!?」
「な、なんだって!?」
まるで雨のように降り注いだビームが、ザンダクロス、そしてフリーダムを貫く。幸いなことにコクピットをやられることは
なかったが、突然のことにショックは大きい。
目を丸くして、ビームの出所を見ると、無数の小さな機械が飛び回っているのがかろうじて見えた。
「ドラグーンだわ・・・!」
「ど、ドラグーン・・・?リルル、なにそれ!?」
「プロヴィデンスに備わった特殊な兵器よ。ビーム砲を装備した多数の小型ポッドを自在に操って、あらゆる方向からの
攻撃を可能にするの」
「そ、そんな・・・反則だよ、あんなの!」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ!また来るよ、のび太くん!」
慌てた声で叫ぶドラえもん。正面のモニターを確認すると、プロヴィデンスが再びドラグーンを発動させようと・・・。
「く、くっそおーーーっ!」
のび太は叫び、ビームライフルを撃った。それはいくつかのドラグーンを撃ち落したが、そんなものではまるで焼け石に水だ。
「ふっ、無駄だよ、野比のび太。さあ、とどめ・・・」
だが、プロヴィデンスは突然動きを止める。
「!?この感覚は・・・!」
その時だった。突然どこかからビームが発射され、プロヴィデンスを襲ったのだ。
「・・・チイっ!」
クルーゼは咄嗟にプロヴィデンスを操作し、身をかわす。
「くく・・・お前か、ムウ・ラ・フラガ!」
クルーゼの声に、のび太達はビームが放たれた方向を見やった。そこには、どこから現われたのか大型の戦闘機らしき物があった。
「あ・・・あれは<エグザス>だ!」
「何!?知ってるの、ドラえもん!?」
「うん、タイムパトロールに配備されてる戦闘機さ。あまりにも扱いづらくて、乗りこなせる人がほとんどいないって
噂なんだけど・・・」
「じゃあ・・・あれに乗ってるのは、タイムパトロールの隊員なの?」
「多分・・・少なくとも、敵じゃあないみたいだ。しかし・・・どうやってこの島を見つけたんだ?」
そんな会話をしているのび太達を尻目に、エグザスを操る男―――ムウは、クルーゼと対峙する。
「やっと見つけたぞ―――クルーゼ!」
「ふん、まさか巧妙に隠されたこの島にまで来るとはな・・・やはり、お前も私と同じモノを感じるかね?」
「ああ―――お前のことなら、ここまで近くにくれば分かるんだよ。どんなに隠れててもな!」
「そうか―――そうだよなあ、ムウ!なにせ、私はお前の―――!」
「うるさい!」
ムウはクルーゼの言葉を遮り、エグザスに備わる兵器―――<ガンバレル>を解き放つ。ワイヤーで繋がれた兵装ポッドが
エグザスから分離し、自在に動いてプロヴィデンスにビームを放つ。
ガンバレル―――それはいわば、有線式のドラグーンだった。
「はっ・・・これしき!」
クルーゼは降り注ぐビームをかわし、ドラグーンをエグザスに向けて放つ。無数のビームが放たれて―――
「ちっ!無駄だっ!」
それを華麗な操縦で回避するムウ。のび太達も思わず歓声を上げて、その攻防を見守る。
「す、凄い!凄いよあれ!ねえドラえもん!」
「う、うん・・・よし!ぼくらも援護するんだ!」
「OK!」
そしてザンダクロス達も攻撃を再開する。合計六体もの兵器を相手に、それでもなお全ての攻撃を捌いていたクルーゼ
だったが―――突如、ドラグーンを戻して上空へと飛び上がる。
「な・・・逃げる気か、貴様!」
「そういきりたつな、ムウ。今日はステージが悪かった。今回はここまでさ。―――では、野比のび太達よ。
君達ともまた会おう」
そしてプロヴィデンスは凄まじい速度で飛び去っていった。
そして―――
それぞれ機体から降りた七人は、エグザスから降りてきた人物を出迎える。
それは若い男だった。やや癖のある金髪に、さぞ女性受けがいいであろう映画の男優のような整った顔立ち。
袖を捲ったタイムパトロールの制服が、細身ながら引き締まった身体を包んでいる。
「さて、自己紹介しとくか。俺はムウ・ラ・フラガ。タイムパトロール隊員さ。君らは一体?」
「は、はい。実は―――」
ドラえもん達が自己紹介しながら、これまでの経緯を説明する。それをたまに質問を返しながら聞いていたムウは、
話が終わると納得したように頷いた。
「なるほどね―――やはり<狐>の一派はこの時代に来ていたのか」
「・・・タイムパトロールが動いてるってことは、やっぱりあいつらは時間犯罪者なんですか?」
「ああ、人類最悪の遊び人、<狐>―――超Aクラスの指名手配犯さ。とにかく色々やりまくった男でね。奴の所業の
粗筋を説明するだけで、丸一日はかかっちまうな」
「そ、そんなに・・・?あ、ところでムウさんはどうやってこの島を見つけたんです?この島は隠されてるはずなのに・・・」
「・・・俺はクルーゼとはちょっと因縁があってね。奴のいる場所なら、勘で分かるのさ。それに従って、ここにきた」
「勘って、そんな非科学的な・・・」
「まあそれはともかくだ、どうする?こっからは俺達タイムパトロールの領分だ。もう無理に戦わなくてもいい。君らの身柄は
タイムパトロールが責任を持って保護するから―――」
「―――いえ!」
唐突に口を開いたのはのび太だった。
「あいつらに喧嘩を売られたのはぼくらなんです―――それに、リルルやキラは故郷のメカトピアを侵略されちゃったんだ。
だから―――ぼくらの手で、あいつらと戦いたいんです!ねえ、みんな!」
「おう!さすが大長編になるといいこと言うじゃねえかのび太!その通り!今更安全なとこに引っ込んでろって言われても
聞かないからな、ムウさん!」
「・・・しかしな、女の子だっているじゃないか」
「あら、女だって関係ないわ。戦わなくちゃいけないのなら、あたしだって戦うわよ。ねえ、リルル?」
「そうね。わたしだって―――クルーゼをこの手で倒したいと思ってるわ」
しずかとリルルも胸を張って答える。その姿にムウは面食らって―――しかし、すぐに笑顔になった。
そして蓮っ葉な口調でぶち上げる。
「よおし、分かった!吐いた唾は飲めねえぞ、ガキ共!二言はないな!?」
「ないでーす!」
「よし―――じゃあ、君らの立場は、そうだな。現地協力員だ!」
「現地協力員・・・ですか?」
「ああ、タイムパトロールは必要があれば現地人に協力を求めることができる。もっとも、本人達の同意は必要だけどな。
君らはやる気マンマンだから問題ないだろう」
「おっしゃあ!話が分かるじゃんか、ムウさん!」
「当然当然。俺はこれでもタイムパトロールで最も臨機応変な男と言われてるんだぜ」
悪い意味でなんだけどな、とムウは冗談交じりに嘯いた。
「それにしても―――本当にいいんですか?ぼくらを現地協力員だなんて―――」
ドラえもんが聞くと、ムウは笑って言った。
「いいのさ。実を言うと君らの評判は聞いてたんだ」
「え?評判?」
いきなりのことに面食らうのび太達に、ムウは続ける。
「ああ、二十世紀にいる青いネコ型ロボットと仲間達の話。ギガゾンビやキャッシュ、ストームといった、名だたる時間犯罪者を
逮捕できたのは、彼らのおかげだってな」
「い、いやあそんな・・・大したことはしてないですよ・・・」
照れるドラえもん達を見ながら、心の中だけで
(それだけじゃないけどな)と、ムウは呟いた。彼は別に、その評判だけで彼らを信じたわけではない。
決め手となったのは、彼らの目だ。ムウは苦笑しながら思った。
(美人の支部長に怒られちまうかな・・・。<いい目をしてた>なんて理由で年端もいかないガキ達に協力を頼んだ、なんて)
投下完了。
>>154から。
原作ではガンバレルとドラグーンは大気圏中では使えないという設定があるはずですが、普通に使ってます。
この辺りは「未来の超テクノロジーで解決した」と思ってください。
>セルゲーム
今日は直球ですねwうんこはしばらく封印ですか。
セルの情けなさはもう名物だな。いつ狼が目覚めるか楽しみです。
>超機神大戦
鬼更新お疲れ様です。風雲ドラえもん城出ましたか。攻防完璧ですね。
ライバルキャラも道化師キャラも出揃って、いよいよ本格展開ですね。
現スレはサマサ氏とサナダムシ氏が飛ばしてるなあ。あとゲロ氏か。
213 :
ふら〜り:2005/07/22(金) 19:17:09 ID:SKABr0At0
>>サナダムシさん
・新天地開拓
ぅぐ。かの伝馬町では、本っっ当に命に関わるリンチとして存在してたそうです。さておき、
雄山で締めたのはナカナカ説得力。奴なら何の味を知っていても不思議ではない……かも。
・不完全セルゲーム
兵器、多分セルが犠牲になるのだろうと予想はしましたが。悲鳴もアクションも皆無でただ
「破裂した」って相変わらずの問答無用っぷり。それでも生き延びたセルの明日はどっち?
>>うみにんさん
そこでジャイアンソングかぁぁ! で私も
>>181さんと同じことを彷彿。本編でも害虫駆除
に使われたりしてましたが、ほんと凄いぞ彼の歌声。あとヒラリマントがダメージ食らうの、
私の記憶では皆無。凄いぞデマオンの神鳥。次回も更にいろいろ濃そうで、楽しみですっ。
>>ゲロさん
考えようによっては見事に救われた気もしますし、一面ではきっちり延々拷問だったりも。
毎晩寝るたび火あぶりになるというのは、軽めのディアボロ(ジョジョ)なわけで。仰る
通り、やはりまともに救われてはいませんね。このシリーズは「末路」が肝と見ました。
>>サマサさん
ドラの言う通り、まるっきり敵の導きで敵の舞台ですからねえ。どんな罠やら仕掛けやらが
あっても不思議ではないし……と思ってたら外からの斬り込みが来ましたね。ドラたちが
TPで有名だというのは、言われて見れば当然。後は稟たちとの合流が待ち遠しいとこです。
ここは都内某マンション。小日向達の住居である。住人は小日向と葉山、そしてブラジルから来た
ペドロである。男だけの為部屋は乱雑である。食べカス等は害虫発生の危険がある為、小日向が
掃除をしていたがそれでもまだ物は散らかっている。卑猥なビデオやマンガがないだけまだ
マシなのかも知れないが。とまあそんな中に二人の女性と一緒に入る事になったのだから
小日向達は大慌てで片付けた。
「とまあ・・話はさっき話した通り私は遠野志貴を探している。」アルクェイドが深刻そうに話した。
「あの・・・その人の特徴は?」小日向が聞いた。
「髪は紺色、制服にスニーカー、そして眼鏡。」
似顔絵を描き始める小日向。そしてそれを見て頷くアルクェイド。行方不明者
を捜査するには張り紙などで宣伝した方が良いのだ。
「警察にも連絡しましょう。」シエルが提案した。
「で・・・シエル。あなた何故彼を探してるの?今回は吸血鬼や真祖絡みじゃないわよ?」
「彼は私の友人ですから。彼は吸血鬼や真祖なんかに遅れをとる様な人ではないわ。」
二人の間に不穏な空気が流れる。まるで昔から長い間仇を取ろうとして来たかの間柄の様に。
小日向と葉山が目を合わせる。マズイ。何とかしなければ。
「あの・・・あなたが言ってたその遠野さんをさらった人ってこの男じゃ?」
小日向が何かのパンフレットを見せた。そこには鉄拳トーナメントと書いてあった。
ページをみるアルクェイド。そして見る見る内に彼女の顔色は変わって行った。
顔。瞳。服装。髪全てが一致している。この男が志貴を連れ去ったターゲットである。
抹殺、あるいは存在の抹消は避けられない。フルパワーで叩き潰す。
「どうかしましたか?」小日向が怪訝そうに聞いた。
下を向いていたアルクェイドがパッと顔を上げ小日向の方を向いた。
「ヒイィィィ!」小日向が素っ頓狂な声を上げた。
アルクェイドの顔が恐怖を催すような顔に変わっていたのだ。戦乙女を思わせる様な表情
と表現すれば良いのだろうか。
「ならば始めますね。」
シエルが水晶球を取り出し、何かの呪文を唱え始める。
「シエルさん?何を?」小日向が質問した。
小日向を無視して呪文を唱え続けるシエル。小日向はシエルが気が狂ったのかと思った。
異様すぎる。いきなり槍を投げつけてきたりとか高い所からジャンプしても平気だったりとか。
この人達は新手の宗教か何かなんじゃないだろうか?そうじゃなかったらこんな事普通はしないし。
「出ました!東京湾近くのコンビナート内です!」シエルが叫んだ。
水晶球にはそれらしき地図が浮き出ている。それも光でだが。
「仕掛けるのは夜ね。」アルクェイドが不適な笑みを浮かべて呟いた。
準備をするのに必要なモノは何か。相手を捕縛する縄や視界を奪う煙幕弾。
相手も空手家であると言うのならこちらも空手で行きたい所だが。
数時間後、小日向達は東京湾に面した港に集まっていた。全員目立たない服装でなおかつサングラス
をかけている。シエル以外素手で戦闘をするつもりである。
小日向はシエルを見た。両手で銛の発射装置を持っている。工事現場で働いていたとしても違和感はない。
人間相手になぜそんなモノをと聞いたら「今回はヤバそうなんですよ。人外の力が働いているかもしれません。」
と答えてきた。
人外はあんた達だろう。とんでもない事に巻き込まれてしまったらしい。
「時間よ!いくわ!」
アルクェイドの合図と共に二手に分かれる小日向達。一組は小日向とアルクェイド。片方は葉山とシエルである。
小日向達はまっすぐ、シエル達は裏から回り込む。発見されたしても挟み撃ちに出来るからである。
「あまり派手にはしたくないわね。」
あんたの派手はこっちにとっちゃヤバすぎるだろ。あんたが囮になった方がいいんじゃないのか。
小日向はそう心の中で愚痴り始めた。
「しっ。誰か来る。」アルクェイドが囁いた。
物陰に隠れて様子を見る小日向達。誰かが倉庫から出てきたのだ。マスクを被り黒い戦闘スーツを着ている女性だった。
見回りらしく周囲を警戒しながら歩いている。小日向達のすぐ傍まで歩いてきた。
女はマスクを脱ぎ、タバコに火をつけ吸い始めた。突然タバコが払い落とされ、女は首に圧迫感を覚えた。
誰かが女を後ろから羽交い絞めにしたのだ。
「が・・・・ぐ・・・」
気絶したらしくぐったりとなる女を脱がし、戦闘スーツとマスクを得るアルクェイド。
「戦闘は私に任せてあなたは志貴を運んでね。いざとなったら私は囮になるから。」
女性を守るのは男の仕事ではないのか。小日向はぼやきながらもしぶしぶ指示に従った。
しかし戦闘スーツとなるとマフィアか何かか。
葉山達は息を潜めて倉庫の中の様子を伺っていた。シエルが持っていた双眼鏡で中の様子を探る。
コンテナが多数並んでいて人が3人通れるスペースはある。
「警備の人間は少ないわね。親玉は留守かしら?」シエルが呟いた。
警備が薄い。つまり人質をつれて移動したのか。それとも地下室でもあるのか。
シエルに話しかけようとした瞬間、葉山は息が苦しくなった。
もがいても首はがっちりと固定されており、動かない。シエルの方に手を伸ばすも
遠ざかっていく。誰かが自分を連れ去ろうとしている。
「・・・!!」
抵抗もむなしく葉山はどこかへと連れ去られてしまった。
「葉山君?」シエルは小さくしゃべった。
返答はない。物陰に隠れているのだろうか。ポケットライトで探す。いない。
周囲を見回してもいない。と、いう事は。中だ。
シエルは先に鉤爪がついたロープを取り出すと倉庫へと放り投げた。
「時間よ!いくわ!」
アルクェイドの合図と共に二手に分かれる小日向達。一組は小日向とアルクェイド。片方は葉山とシエルである。
小日向達はまっすぐ、シエル達は裏から回り込む。発見されたしても挟み撃ちに出来るからである。
「あまり派手にはしたくないわね。」
あんたの派手はこっちにとっちゃヤバすぎるだろ。あんたが囮になった方がいいんじゃないのか。
小日向はそう心の中で愚痴り始めた。
「しっ。誰か来る。」アルクェイドが囁いた。
物陰に隠れて様子を見る小日向達。誰かが倉庫から出てきたのだ。マスクを被り黒い戦闘スーツを着ている女性だった。
見回りらしく周囲を警戒しながら歩いている。小日向達のすぐ傍まで歩いてきた。
女はマスクを脱ぎ、タバコに火をつけ吸い始めた。突然タバコが払い落とされ、女は首に圧迫感を覚えた。
誰かが女を後ろから羽交い絞めにしたのだ。
「が・・・・ぐ・・・」
気絶したらしくぐったりとなる女を脱がし、戦闘スーツとマスクを得るアルクェイド。
「戦闘は私に任せてあなたは志貴を運んでね。いざとなったら私は囮になるから。」
女性を守るのは男の仕事ではないのか。小日向はぼやきながらもしぶしぶ指示に従った。
しかし戦闘スーツとなるとマフィアか何かか。
葉山達は息を潜めて倉庫の中の様子を伺っていた。シエルが持っていた双眼鏡で中の様子を探る。
コンテナが多数並んでいて人が3人通れるスペースはある。
「警備の人間は少ないわね。親玉は留守かしら?」シエルが呟いた。
警備が薄い。つまり人質をつれて移動したのか。それとも地下室でもあるのか。
シエルに話しかけようとした瞬間、葉山は息が苦しくなった。
もがいても首はがっちりと固定されており、動かない。シエルの方に手を伸ばすも
遠ざかっていく。誰かが自分を連れ去ろうとしている。
「・・・!!」
抵抗もむなしく葉山はどこかへと連れ去られてしまった。
「葉山君?」シエルは小さくしゃべった。
返答はない。物陰に隠れているのだろうか。ポケットライトで探す。いない。
周囲を見回してもいない。と、いう事は。中だ。
シエルは先に鉤爪がついたロープを取り出すと倉庫へと放り投げた。
連投すみません。次回は第4話と第5話をまとめて送信させていただきます。
小日向達は壁に背を貼り付けていた。目立たず、迅速に移動すべきなのだ。
倉庫の入り口が見えてきた。ゆっくりとノブに手をかけ、引く。
ガラガラという音をさせずに開く為時間はかかる。発見されやしないか
と小日向は冷や冷やしていた。結局二人は入る事ができた。
入り口付近を素早く通過しコンテナの陰に隠れる。顔だけ出し辺りを見回すと
床上に人影が見えた。目をこらしてよーくみてみるとそれは葉山だった。
ズタボロにされ地面に転がっていたのだ。相手の仕業だろう。
おそらく囮だ。仲間に駆け寄った所を奇襲という作戦かもしれない。
こちらは二人だ。一人がデコイになればいい。
「僕が囮になります。」小日向がアルクェイドに囁いた。
アルクェイドの爪は鋭い。志貴を自由にするにも使える。
力仕事は男がすべきだが女性を囮に使うのは気が引ける。
しかし迷っている暇などない。倒れている葉山を見て
アルクェイドは志貴を探し始めた。角の奥を探す。
不意に後ろから肩をガシッと掴まれた。
「私です。アルクェイド。」
肩を掴んでいたのはシエルだった。
「相手の姿は?」アルクェイドが呟いた。
戦闘において相手に見つからずに移動するというのは重要なファクターでもある。
気配を消すとかどこかに身を隠すとかいう方法もあるだろう。
今小日向は冷や汗が流れていた。側面から奇襲を食らったのだ。
まるで何も無い所から降って湧いた様に。
「いつからそこに?」小日向が奇襲の主に質問した。
「あの金髪の女と一緒にいた時からだ。二人がかりで来るかと思ったんだがな。俺も甘く見られたものだ。」
「遠野志貴という人を返せ。」
連続投稿の規制の関係で区切らざるを得なくなってしまいました。
今回はこれで終わりです。
>サマサさん
飛ばしてますね!できればこのペースで完遂してほしいものです。
十三階段の2番目、流石に強そうですね。順当にいけば一番目がラスボスですが、
ライバルキャラっぽいからこいつがもしかして?
>草薙さん
お疲れ様です。投稿規制はウザイですね。でもそれに負けず創作意欲の高い草薙氏に
感動を覚えます。小日向が主役でいいのかな?でも、九十九と実力差ありすぎの気が・・。
ブラキンさんはどうしたんだろう…あれから連絡が入ってこない。
サマサ氏、ゲロ氏、サナダムシ氏のように好調な人、
パオ氏、うみにん氏のように更新減ったがちょくちょくあげる人、
VS氏、ブラキン氏、ザク氏、ミドリさんみたいに最近姿見せない人、
いろいろだな。
VS氏やザク氏、ミドリさんは大丈夫だろうが、
(VS氏はHP更新中、ザク氏はレス見掛ける、ミドリさん連絡あり)
ブラキン氏は心配。元気でいて欲しいな。
作品期待age
>>222 素晴らしい!ありがとうございます。
これからも頑張って書いていきますね。
ちなみにアニメのシャッフルは正直絵が微妙です・・・。悲しい。
ブラックキング氏は連絡を一本入れて欲しいよな
しばらく書けないのは仕方ないとして。
>サマサ氏
確かに、シャッフルの絵柄はゲームの方がきれいですな
226 :
作者の都合により名無しです:2005/07/24(日) 15:22:49 ID:e5mhKIt80
>>222 なるほど、これがシードか。
確かに、俺の知ってるガンダムとはイメージが違うなあ
今週、週末はこなかったか。
あれ、
>>1のアドからサイトへいけない。
でもヤフーで「バキSSまとめサイト」で検索すると
いけるんだよね。どうしてだろう?俺だけ?
第五話「巨神と機神」
「クルーゼよ・・・。首尾はどうだったかな?」
―――ここは<狐>達の数ある根城の一つ。そこで仮面を付けた男―――クルーゼと、ローブを纏った人物が話していた。
だがはたして、それは人間なのかどうか・・・。人間というには、どこかがおかしい。
クルーゼは仮面に手をやって答える。
「まだまだ―――といったところだな。私としてはあそこで決着を付けてもよかったが、せっかく見つけた敵が
それでは狐もがっかりするだろうからな。小手調べだけで終わったよ」
「そうか・・・まあよい。なら次はワシが行こう。<十三階段>四段目として。それでなくとも―――あの小僧共には大きな
貸しがあるのでな」
「ふむ。別に構わんが、様子見だけにしておけよ?今の段階で殺してしまっては、我らの目的に支障が出る」
「解っておる。狐には一応命を救われたからな。なるべく狐の意思に従おう―――なるべく、な」
そして、その人物は去っていった―――。
「でええい!うっとうしいぜこの野郎!」
ムウが悪態をつきながらガンバレルを操り、敵機を撃ち落していく。
―――現在敵との交戦中。例によって送り込まれてきたモビルスーツ軍団。はっきりいってザンダクロス達の敵ではないが、
やはり数が多くて鬱陶しいには変わりない。
それでも十分もすればほぼ全ての敵を撃墜し、残った敵も敗走していった。
「ふう、やっと終わったね」
「そうだね。今回は<十三階段>は出てこなかったみたいだし・・・」
そうドラえもんが言った時だった。いきなり熱線が迸って爆発が起こり、ザンダクロスが吹っ飛ばされたのだ。
「きゃあっ!?」
「うわあっ!」
幸いダメージはほとんどなかったが、ザンダクロスに乗っていた三人の悲鳴が上がる。それに伴い、他のメンバーも再び
戦闘態勢を取る。
「くそっ!新手か!?」
キラがぐっと唇を噛み締めて、周囲を見回す―――信じられない光景が展開した。
大破したモビルスーツが一箇所に集まっていき、圧縮され、一つの巨大な物体に変わっていく―――そして出来上がった
それは、いわばスクラップの肉を持った、ザンダクロスの二倍はあろうかという巨大なロボットのゾンビ。
そしてそこから声が響く・・・。
「くくくくく・・・久しぶりだな、ガキ共!」
「え・・・?こ、この声は・・・まさか!?」
事情を知らないキラ達はその声に混乱するばかりだったが、ドラえもん達にはその声に聞き覚えがあった。
そう―――それは人が生み出した、悪しき心の集合体。予言に記されし恐怖の大王―――
ブラックホールに消えたはずの悪魔―――
「てめえ―――アンコロモチ!生きてやがったのか!」
「ジャイアン、アンゴルモアだよ!」
ジャイアンのボケにいつものように突っ込むスネ夫。それには構わず声は告げる。
「そう、わたしは死の瞬間、あの狐によって助けられたのだ。そしてワシに貴様らへの復讐の機会を与えてくれてな。
今のワシは―――<十三階段>四段目、アンゴルモアだ!」
「な、何だって――――――!?」
驚愕するのび太達。それも無理はない。てっきり存在そのものが消えたと思っていた相手が生きていただけでも驚き
なのに、その相手が<十三階段>の一人―――
「坊主ども―――事情は飲み込めねえが、あいつもどうやら<狐>の仲間らしいな」
「はい。あいつは不思議な超能力を使ってきます!気をつけて下さい!」
「へっ、超能力か―――ならそんなもん使う暇もやらねえぞ!みんな、一斉に攻撃するんだ!」
「はい!」
ムウの号令に合わせて全ての機体が攻撃を開始する。ビームやミサイルが雨あられと撃ちこまれる。
だが―――
「馬鹿めが!数十機ものモビルスーツを圧縮して作ったこの身体にそんな攻撃など通じんわ!」
「そ、そんな・・・ばかな!以前はあそこまで強力な力はなかったはずなのに・・・」
「ふはははは―――どうやら死の淵を垣間見たことがわたしの力に影響を与えたようでな。かつてのわたしと
一緒にするでない!さあ、今度はこちらからいくぞ!」
その瞬間、スクラップの身体が蠢き、幾つかの部分がアンゴルモアから離れ、それらはまるで意思を持つかのように
飛び回り、ザンダクロス達を襲った―――!
「うわあああっ!?」
「きゃあっ!」
それをかわし切れずにジャイアン達のスカイグラスパーが煙を吹き上げて不時着する。残ったザンダクロス達も
無事とは言えない。ザンダクロスは頭部と左腕を損壊、フリーダムも背中の翼をごっそりと持っていかれている。
ムウのエグザスも所々煙を吹いていて、戦闘可能かどうかは怪しい。
「ククク・・・どうした!?その程度か!ならば―――むうっ!?」
アンゴルモアが突如驚愕の声を上げる。その様子を見たドラえもんは言った。
「い、今のは・・・高圧電流!?」
そう、突然どこかから、電撃による攻撃を加えたものがいるのだ―――。だが一体、何者が―――!?
その答えは目の前にあった。アンゴルモアとの戦いに集中していたため、気付くのが遅れたが、そこに確かに
それは存在していた。
「な・・・なんだ、あれは!?」
キラが驚きのあまり悲鳴に近い声で叫ぶ。キラだけではない―――驚いたのはのび太達も一緒だ。
だがその驚きは、キラとは質が違う。それは―――のび太達は、それが何か、知っていたから。
ゆっくりと自分達の方に近づいてくる巨大な石像―――どういう仕組みなのだろう、まるで生きているかのように
それは動いていた。そして、スピーカーのような装置でもついているのか、それを操っているらしき者の声―――
懐かしき友の声が響く―――
「のび太さん!ドラえもんさん!そのロボットに乗ってるんでしょう。大丈夫ですか!?」
「・・・ペコ!ペコ!?本当に君なの!?一体、なんで・・・」
「色々とゆっくり話したいのですが―――今は、こいつをなんとかしなければ」
「う、うん、そうだね・・・」
それはあまりにも突然の来訪―――のび太達は驚き、懐かしさ、嬉しさが一気に込み上げて、上手く声が出ない。
ペコを知らない面々も、のび太の様子から、それが敵ではないと分かったようで、ほっと一息つく。
そして巨神像は傷ついたザンダクロス達を庇うかのようにアンゴルモアと対峙する。
「ふん、さっきは不意打ちでやられたが―――助っ人が一人現われたくらいで、このわたしをどうにかできると思っているのか?」
「一人?―――確かにぼく一人では荷が重いかもしれない。だけど―――」
「ん?なんだ?」
「助っ人がぼくだけじゃないなら―――どうかな?」
その瞬間―――凄まじい速度で何かが飛来し、アンゴルモアの片手をぶった切った。
「ぐわあっ!?」
再び上がる驚愕の声。そして、それを為した者の姿を見た途端―――のび太はペコとの再会にも匹敵する衝撃を受けた。
いや、下手をするとそれ以上かもしれない。なにせペコとは違い、もはや二度と会えないだろうと思っていたのだから。
「・・・あれは・・・」
それは、輝く白銀のボディーを持った巨大なロボットだった。手には先程アンゴルモアの片手を奪った剣を握っている。
まるで高潔なる騎士を具現化したかのような気高さすら感じられる、機械仕掛けの神―――
その名は―――
「サイバスター・・・!?」
のび太はあまりにも突然の出来事に呆然と呟くしかなかった。本当にサイバスターならば、あれに乗っているのは―――
のび太はサイコントローラーに、サイバスターへの通信を開くように命令する。あれに<彼ら>が乗っているというの
なら―――どうしても、声が聞きたかった。必死で呼びかける。
「稟さん―――亜沙さん―――」
彼の名を、彼女の名を。そして―――
「―――プリムラ!」
あの少女の名を。
実際には数秒程度であろう通信が繋がるまでの時間が、永遠にも感じられる―――モニターがさっきのダメージで
駄目になっていたので、顔までは見れなかったが、声だけは聞くことができた。
「その声は―――のび太・・・のび太なのか!?」
聞こえてきたのは男の声―――そしてそれに割り込むように―――
「のびちゃん、ひっさしぶり!元気してた!?なんかまた大変そうだけど、もう安心して!ペコちゃんやボクらが
きたからには―――」
「先輩!俺が喋ってるんですよ!順番守ってくださいよ!」
「もおー、ボクだってのびちゃん達にまた会えて嬉しいんだからね!ちょっとぐらいいいじゃない!」
―――戦闘中だというのに、堂々と口喧嘩を始めてしまった。だがその様子に、のび太は確信する。
間違いない。あれに乗ってるのは―――
そして、口喧嘩に混じって、か細い少女の声が聞こえる。
「・・・のび太?」
「・・・!!」
その声だけは、聞き間違えようがなかった。自分があの世界にいたころよく聞いた、幼さを残した、綺麗な声だった。
「プリムラ・・・!」
のび太は呼びかける。もっと彼らの声を―――彼女の声を聞きたい。しかし―――通信が、突然途絶えた。
「あ・・・!」
「さっき受けたダメージのせいだね。通信装置がイカレちゃったんだ・・・」
ドラえもんも残念そうに語る。
「のび太くん―――あのロボット達に乗ってる人のこと、知ってるの?」
リルルが不思議そうに尋ねて―――のび太の様子に驚く。
のび太は、顔をクシャクシャにして泣いていたのだ。そして、涙を拭いもせずにリルルに答える。
「うん―――知ってる。よく、知ってるよ・・・」
ペコ、稟さん、亜沙さん、それに―――プリムラ。
「みんなぼくの、大事な友達なんだ・・・!」
「のび太くん・・・」
ドラえもんは、そんなのび太を優しい目で見守り―――ふと、疑問を口にする。
「そう言えばペコと稟さん達、もう知り合ってるみたいだったけど―――なんでだろ?」
そして、サイバスターの中では―――
「あれ・・・通信が切れちまったみたいだ」
「えー!?そんなあ。稟ちゃんがボクに譲らないせいだよ!こりゃもう、この世の悪事はぜーんぶ稟ちゃんが元凶だね!」
「俺は疫病神ですか!?」
再び加速する口喧嘩―――言っておくが、戦闘中である。度胸があるのか、忘れているのか。しかし、その口喧嘩もプリムラの
一言によって止まる。
「りん・・・聞こえた」
「え?」
「聞こえたの・・・のび太の声・・・」
「・・・ああ、聞こえたな」
稟と亜沙はふっと微笑んだ。そして、巨神像と並んでアンゴルモアを睨みつける。
と―――アンゴルモアの身体が崩れ、そこからローブを纏った何者かが飛び出す。
「ふん・・・とんだ邪魔が入った。今日はここで退くとしよう」
「なんだと!?逃げる気か、貴様!」
ペコが怒鳴る。だがアンゴルモアは不気味な含み笑いを漏らすだけだ。
「クックック・・・そう怒るでない。いずれまた貴様らと会う時も来る、その時こそ、引導を渡してやるわ!」
そしてその姿は、一瞬にして消え去る。後にはただ、モビルスーツの残骸だけが残った。
「逃がしてしまいましたね・・・」
ペコは悔しそうに歯噛みする。そんなペコに稟は答えた。
「ああ・・・けど・・・」
「え?」
「のび太達を助けられた―――今は、それだけで十分だよ」
「はい・・・そうですね」
ペコもそれに頷き、眼下のザンダクロス達を見る。
そう―――彼らを助けられた。今はそれだけでいい。
そして今。待ち望んでいた再会の時が来た―――
投下完了。
>>210から。
主役キャラの大半がこれで出揃いました。次回から感動(そうでもないかも)の再会と、
ペコと稟達がどうやって出会ったのかの話。
そしてこれからどんどんパワーインフレしていく予定です。
ちなみにプロットの段階では、今回出てくるのはアンゴルモアじゃなくてメカ沢でした。
しかし「なんでここでメカ沢が出てくるんだ!?悪いこと言わないから考え直せ!」という内なる声が聞こえたので、
アンゴルモアに変更しました。正直、変更してよかったと思ってます。
>>229でアンゴルモアの一人称を「ワシ」と書いてますが、コミックで確認すると「わたし」でした。
お詫びいたします。
>>142続き。
ああ、分けて投下しようと思ってた矢先のアク禁が悔やまれる。
感想、ありがとうございます。
どういう物を書けばいいか非常に参考になりますし、また月並みですが
活力にもなります。
>>144 彼女らの生命力なればエネルギードレインも何のそのでしょう。
武装錬金の原作は終わっちゃいましたが、完結編が赤丸ジャンプに載るとか載らないとか。
>>146 ですよね。5レスほどならば目に優しく鯖にも優しいのですが、なにぶんアク禁直後なので…
ちなみにこのスレを見つけたときにまず、天才柳沢教授の生活をコラボさせようと思ってた自分はいかがなものでしょう。
>>147 原作にない組み合わせは、会話を考えるのが非常に楽しく、頭をよく使うのでそう言って頂けると嬉しいです。
実は夜明け近くの墓場については実体験に基づいていまして、電動ハブラシを……
……あたた。ジュース飲もうとプルタブ引いたら爪が曲がった。最近よく曲がる。小魚食べないと…
>>148 彼がのーみそ部屋に着くには、ヴィクトリアの制止を振り切らなきゃならないんですよ本当は。
でもその辺り書くと長くなっちゃうので、彼らしい理由で省略してみました。…痛いと思ったら爪が内出血してる。
>>149 コラボのネタは週刊少年チャンピオンを読んでみて下さい。金髪の人は、攻撃方法からして桜花と御前ぽいですよ。
千歳さんはどうも崩してしまい、まひろはアレでまともなつもりです。ええ。しかしこの二人は真面目に書いてみたくもあります。
>ふら〜りさん
そこが難しいんですよね。あれもこれもと書きたがるので、決まったレス数にどうも収まり辛くて。
可読に足るかどうか自信はありませんが、良ろしければお付き合いの程を。
中村剛太という男がいる。
彼は桜のつぼみが花開き、柔らかな日差しが降り注ぐ4月に生を受けたが、人生は華のない闇一直線だった。
「おんぎゃあーおんぎゃあー」
「まぁっ! 剛太が子宮口を経由して羊水で床をびっしょびしょにしながら生まれやがったわヒッヒッフー!」
「げひゃひゃ!! 猿だよオイ、俺の子どもは猿だよ! な、な、な? こりゃあ失敗だあ〜〜〜〜〜!」
と子どもの誕生に剛太の両親が喜んでいると、ホムンクルスがきて二人を食べた。
これはあまり知られていない話だが、人間は食べられると死ぬ。
だから剛太の両親は死んだ。剛太はというと、ゴミと間違われた。
「ヒャッホウ! 唐草模様の風呂敷があったぜ!」
ホムンクルスはそれに剛太を包んでゴミ捨て場に捨てた。
んでそこに偶然現れ剛太を拾ったのが、まだ若くておつむも正常だった頃の千歳とブラボーだ。
「可哀想よこのコ… せめて戦団で育ててあげられないかしら」
おさげがよく似合う少女は、悲しげに瞳を潤ませた。
「俺が照星さんに掛け合ってみる。大丈夫だ。絶対に説き伏せてみせる」
涙が嫌いな少年の、力強い手が肩にかかった。
千歳はその手が大好きなので、こくりと頷き、涙の乾かぬ顔で嬉しそうに笑って見せた。
さて照星さんというのは二人の親分で、話を聞くと微笑をたたえつつ壁にハイキックを叩き込んだ。快諾の合図だ。
んで剛太は戦団に入るコトになった。が、修行は辛い。
10歳ぐらいの頃、一度戦団から逃げて故郷たるゴミ捨て場に身を潜めた。
すると野良犬が3億匹ぐらい集まってきて、剛太はヘタレゆえにガクガクと震えた。
んでそこに現れたのが、カズキを知る前の荒みきってた津村斗貴子だ。
彼女はちょうど、人の眼球をつぶせそうな先の尖った物を求めて、町中のゴミ捨て場をハシゴしていた。
おりよくガンプラのランナー(パーツをもぎ取った後の枠部分。基本的に角の丸い長方形をしている)が
いっぱい捨ててあり、収穫は上々、斗貴子が鼻歌交じりにランナーをぼりぼりかじって尖らせつつ歩いていると
ややや! 縄張りに野良犬軍団がいるではないか!
斗貴子、唇が裂けんばかりの狂笑を浮かべた!
我が求道を覆いし無知蒙昧なる藪どもめ。慣例どおりにブチ撒けてくれるわっ
まだよだれが生臭いプラスチック棒を投げた次の瞬間。
野良犬どもはことごとく光を失い、1匹はのたうち、1匹はドブ川へ身を投げ、後はみんな爆発した。
で、斗貴子が先の尖った物かと期待して覗き込んだのが、他ならぬ剛太だった。
剛太はこの時、初めて斗貴子を見た。
瞬間、すりこみによって剛太の斗貴子に対する哀れなまでの絶対服従姿勢がインストールされた。
この数年後、訓練の時に励まされるのがホの字になったきっかけだが、しかし基本的な原点はここだ。
斗貴子はというと剛太の髪が尖っていたので、持って帰って建物の屋上からブラボーに投げつけた。
しかしブラボーは避けた。
剛太は全身を強く打って、ニュースなら枕詞に「病院に運ばれましたがまもなく死亡」がつくほどズタズタになった。
衝撃で目が垂れて、あばらが折れて肺に刺さってブラッドイズメニーゲーゲー!
ブラボーはびっくり仰天だ。おま、斗貴子、この子がブラッドイズメニーゲーゲーやないかと激怒した。
が、斗貴子はニタニタ笑うばかりで、まるで話にならない。ブラボーは地団太を踏んだ。
千歳はその地団太が大好きなので、頬を赤らめ恥ずかしそうに俯いた。
んで、時が流れカズキと斗貴子が結婚したのは周知の事実。
カズキの髪は玄人にしか分からぬ良い尖り方だ。だから選んだのだろう。
剛太はショックを受けた。
斗貴子の為にえんやこらエンヤコラ、なんでお前は両手が右手だと頑張るコトを決意して、戦団を裏切り上司の首を
ちょん切り握手を弾いて清流に放尿し、食糧を調達して貰えば難癖をつけたりと、色々やった。
現代において絶滅が危ぶまれるニンジャという生物を目撃すれば、藤岡探検隊顔負けの執念で刃物を投げつけ気絶
させ、その隙にオカマと並べて異種交配を目論みさえした。
以上のように、剛太は剛太なりに精一杯尽くしてきたのだ。
にもかかわらず斗貴子はカズキと結婚した。
ゆえに遅くても再来年の正月には、赤ん坊の写真付きの年賀状が知り合い全てに来るのではないか?
しかし赤ん坊。風貌がどうであれ、見せられたら褒めねばならんという風潮はやりきれぬ。
可愛いねん、げっぷ吐かすの俺の役目やねんなどと携帯電話に入った画像を見せびらかされても、返答に窮する。
けして風貌を貶すワケではないが、褒め辛いものは褒め辛いし、げっぷを吐かすという行動もよく分からない。
それをせねば死ぬというなら、乳を飲ませて山野を駆けるしか能の無い原始人はことごとく死に絶え、今日、げっぷを
吐かせて貰っている赤ん坊もそれを映し出す携帯電話も、まず存在していないだろう。
そも、子に対する親の愛というのはえてして、継承された自らの遺伝子に対するナルシズムに回帰するのみの
よーするにまぁ、うちの子供は可愛いから仕事に熱中してる○○ちゃんに見せれば、きっと一服の清涼剤だよね、
などと思わす勘違いが多々あるように見受けられる。
もっともその勘違いは微笑ましいもので、別に周りに害を振りまくものじゃあない。
せいぜいが、エクセルへのデータ入力のみが人生の清涼剤と自負する者の手を止め、壁紙を許可もなくぐずり顔ベビ
ーの画像に変更したりするぐらいだ。いっそ勇気を出してパピヨンの画像に変えちゃうか? 変えちゃえ。
ともかく結婚の報を聞いた剛太は、まず年賀状の写真を想像して、悲惨なまでに気が沈んだ。
紛らわそうとうろついているうちに横浜に着いた。すると見覚えのある男女が二人連れ立って電車に乗る所だった。
思い出そうとしている内に、女の頭からマスクがふわりと浮かんで、しばらく中空で迷った後、剛太に被さった。
「中村剛太君…でしたっけ? ルリヲヘッドで女学院に戻るのは結構難しいので、しばらく体を貸して下さらない?」
聞き覚えのある柔らかな女性の声が、意識に響いた。
夜。
女学院の地下深くに、剛太はいた。ルリヲヘッドは…被ったまま。
ここでは夜という概念がひどく薄い。
これはアレキサンドリアが脳だけの存在で、視覚に始まる五感すべてを喪失してるせいではなく
地下の暗さと閉塞感がただ物理的に、夜の概念を薄めているだけなのだ。
たとえルリヲヘッドで操った人間を介し五感を享受していても、夜に対する概念は薄いままである。
不思議なのは、夜になり、ルリヲヘッドが女学院に戻ってきてしばらく経つハズなのに、いまだ剛太が操られたままと
いうコトだ。
それはなぜか?
剛太はそのチャラチャラした外見と醜い垂れ目にそぐわず、一応、頭がいい。
武装錬金の特性を覚えたり見抜く才能に関しては、戦団でも屈指の男なのだ。
だからルリヲヘッドが被さった瞬間、一年以上前に聞いたその特性を──
装着者を操る。その際、記憶をスキャンするコトも可能。
とっさに思い出した。
ゆえに操られるのを了承すると積極的に記憶を提供して、こういうコトだからしばらく操っていて下さいと
呼びかけて剛太はただの傀儡と化した。
ちょうどよい現実逃避の手段なのだろう。
さてルリヲヘッド、まずは脳への介在ありきの武装錬金だ。
他者を操るのも記憶をスキャンするのも、脳を押さえねば出来ない芸当だ。
脳、というフレーズは、現在のアレキサンドリアの姿そのものにも当てはまる。
脳のみで夫を救おうとし、脳だけゆえに手足を必要とするアレキサンドリア。
彼女はその姿、つまり脳のみで、夫を救う研究を完遂せんとした。
ヴィクトリアは違うはずだ。錬金術を好まない彼女が、その研究を直接手伝うコトはありえない。
母に冷ややかな目を送りつつ守っていただけだ。
よって脳だけのアレキサンドリアは必然的に助手を要した。だが脳だけでは募る術がまるでない。
そこでルリヲヘッドだ。
他者を手足にするこの武装錬金は、脳という枠に縛られたアレキサンドリアの意思の昇華と欠落補完を見事に兼ねている。
精密かつ合理的。生涯を通して研究者たるアレキサンドリアの気質が織り交ざった実に彼女らしい武装錬金といえよう。
そして一つの可能性も秘めている。
アレキサンドリアが記憶のスキャンから「恐らくできる」と推測しつつ、一度も試したコトのない可能性。それは──…
記憶の消去、である。
スキャンからそれを想起するのはやや突飛かもしれない。
確かにスキャナーが紙に書かれた情報を消せばありえからぬ大故障だが、しかしルリヲヘッドの主機能は
他者の脳に潜り込み、神経全てを支配化に置いて操るコトである。記憶を消せた所で、荒唐無稽な話ではない。
スキャナーよりむしろ、CDとCDドライブの関係を想像すれば分かりやすい。
話を戻そう。
話を戻そう。
アレキサンドリアが覗き見た彼の記憶は、一つ一つがあまりに哀れすぎた。
いっそ記憶の消去を試みた方が剛太にとってよっぽど幸せじゃないかとも思いもしたが
頼まれてないコトをするのはどうかと思ったのでやめた。
頼まれてないコトといえば、ヴィクトリアを旅行に連れ出したのもそれである。
あの100歳を越えても少女特有の気難しがりがちっとも抜けない娘は、アレキサンドリアの想像の中で
旅行に連れ出されたコト自体よりも、連れ出す為にルリヲヘッドを付けられたコトにかつてないほど怒っている。
娘はルリヲヘッドの特性を熟知している。
が為に、記憶をスキャンされたと思い込み怒っているのだ。
ベクトルとしては、親に日記帳を見られたような、平々凡々とした思春期みたいな感覚でだ。
カズキたちが女学院に突入した頃、ヴィクトリアにルリヲヘッドをかぶせて一芝居打ったが、しかしその時は
「ギリギリの所で取り付かないから。ね。ね。お願いヴィクトリア」
と娘に一生懸命説明して操るマネだけに留めていたが、それでもかなり嫌な顔をされた。
そして今回。アレキサンドリアは娘を操りつつも、記憶を見ないように見ないように頑張った。
でもヴィクトリアは見られたと思い、猜疑に凝り固まっているだろう。
帰ってきたら、一触即発の状態になっているかもしれない。
(ああけれど、そんなコトはずっと無かったわね)
ヴィクトリアは口は悪いが、母への基本姿勢は従順で、ケンカなどは一度もしたコトがない。
脳だけという特異な環境に置かれた母へ、無意識的に遠慮をしているらしい。
例えば、ヴィクトリアがホムンクルスになった理由も、彼女はいわない。
いって怨嗟になるのを恐れているのだろう。
だからアレキサンドリアは聞かないし、記憶を覗き見て知りたいとも思わない。
強引に知ろうとするのは、100年以上も懸命に耐え続けた娘の意思を踏みにじるコトになる。
しかしいつかは話してくれるとも信じている。
ヴィクター亡き後、アレキサンドリアがなおも生きているのは、それを待っているからだ。
(もうちょっとわがままをいってくれてもいいのに……)
という思惑は昼間の、抗弁し、一種の「わがまま」に固執するヴィクトリアを強引に旅に出したコトとちょっと矛盾している。
だが戦部が来て、ヴィクトリアを旅行に連れてくといった時、直感的に従うべきと思ってしまった。
研究者は閃きを大事にする。
浮かんだコトにああだこうだと論理を塗りたくって肉付けして、実用たらしめるのが基本的な役割だ。
だからヴィクトリアを同行させた。
その時、戦部が「気が向いたら連絡する」と携帯電話を渡してきたのはとても意外だった。
例えば猿が光線銃を撃ってくるように意外だった。文明に縁があるような外見じゃないから戦部は。
粗雑で品性とは無縁の野性味あふるる風貌の──…
(あっ!)
戦部の風貌を反芻していたアレキサンドリアは、あるコトに気づき色を成した。
地下はとても静かだ。培養液の中であぶくが立ち、ちゃぷんちゃぷんと無限に響く。
もしアレキサンドリアに肉体が健在なら、思惑をどんな顔で表しただろう。
代弁するかのごとく、ルリヲヘッドを被った剛太が苦悩の変なポーズをしきりに取る。
アレキサンドリアの胸中──脳だけだが心象的には胸中──ひどい後悔と焦りに占領されつつある。
(娘を男の人と二人きりで旅に出しちゃった……)
なんという初歩的なミスだろう。閃きにこだわりすぎてとてつもないコトをやらかしている。
ああやばい。もはや青き肢体は大男に蹂躙され苦悶に喘ぐ他ないのか。開拓されるのか。
(大丈夫、よね。大丈夫のハズよ。きっと)
アレキサンドリアは心の底から信じ始めた。
かつて彼女は、自らの手落ちでカズキの運命を狂わせてしまった。
そういう失敗の前歴があるくせに、大丈夫だ大丈夫だと思える精神はいかがなものか。
どうやら、インスピレーションに縛られ基本的な事柄を忘れるのも研究者の気質らしい。
そして人事を尽くした研究の可否を、天命に任せてただ待つのも。
と、その時都合よく、剛太に一時預けていた携帯電話が鳴った。
相手はむろんヴィクトリアである。以下、会話のみの抜粋となる。
「もしもし。ヴィクトリア? 今どこ?」
「……うん。今はホテル」
「そ、そう。そうよね。お泊りするならそこしかないわよね………………………」
「……………」
「……………」
「………………………ね、ママ」
「服、着てる?」
「は?」
「だからその、服は着てるわよね。(ここでアレキサンドリア、新婚生活を思い出す)
あ! 服は、ちゃんと、そうっ靴下とか色々含めて、 全 部 ちゃんと着てるわよね? 首輪とかしてないわよね?
泣いたりとか辛くなったりするような異変は無いわよね? ママは、ママはねっ! ヴィクトリアの味方よ。何でも話して」
「……何もないわよ。何も。一体何いってるのよママ。私が冷え性って知ってるでしょ。全部着てるわよ。脱ぐわけないじゃない」
「! ええ。もちろん、もちろんよ。もちろん知ってるわよ。ヴィクトリアは冷え性よね。冷え性だもの。
そうだ、戦部さんとは同じ部屋? もし同じ部屋だったらすぐに変わってくれない? とても、本当にとっても大事な話があるの」
「朝には戻ってくるって、どっか行ったわよ。ところで今度は誰を操って電話してるの?」
「剛太君。ほら、ずっと前に学院に来た紺色の服着た戦士の男のコ」
「ふーん。お昼に続いて大変ね。少しぐらい休んだらどう?」
「許可はちゃんと貰ってるから。…あ。お昼はごめんなさい」
「別にいいわよ。………………………………変わった所で変わったモノも食べれたし」
「え?」
「何でもない」
「やっぱり、怒ってる?」
「ママ」
「何?」
「ルリヲヘッドって、味覚も分かる?」
「試したコトがないから分からないけど、多分。でもどうしてそんなコトを聞くの?」
「ただ気になっただけよ。あと、あの戦士がうるさいから色々食べ物を持って帰るけど、別にいいでしょ」
「……あ! なるほどね。ありがとう。剛太君も疲れているみたいだから、帰ってきたら三人でおいしく頂きましょう」
「あんなヤツを三人目なんかにしないで! …それと、ルリヲヘッドもいい加減に解除してよね。じゃあ切るわよ」
「うん。また明日ね」
電話を切るとヴィクトリアは、ベッドの上に仰向けに寝転んだ。
傍らには、やや分厚い小冊子が転がっている。
それは戦史研究を趣味とする戦部が編纂し、誰か語学が堪能な者に英訳を頼んだとおぼしき書物。
描かれているのは大戦士ヴィクターのきらびやかな戦歴と、彼を討伐せざるを得なかった戦団の苦悩。
彼女はあまり父を知らない。知らなかった。
ヴィクターは戦場を転々とし、家庭にいるコトはほとんどなかったからだ。
その居なかった父親は、いまヴィクトリアが目を通す書物の中で、英雄として称えられ、化物として扱われている。
ショックだったのは、人でなくなった父にもまだ、かなりの支持者がいたコトだ。
彼らはすべて、ヴィクター討伐に意義を唱え、ヴィクターを元に戻そうとしていた。
記述によると、その原動力は大戦士への敬意であったり生命を救われた恩義だったりと、各自まちまちだが
支持者であったコトに変わりはない。
そこまで読んだヴィクトリアは、なんだか力が抜けた。
力が抜けたまま、衝動的に母へ電話をかけた。でも、本当に話したいコトは話せなかった。
電話を切ってからは脱力の赴くままにぼぅっと天井を眺め続け、やがて夜が明けた。
戦部の渡した資料には、もう一つの別の戦史が綴られているが、ヴィクトリアはまだ目を通していない。
ここまで。しまった、
>>236は投下後に持ってくるべきだった。
246 :
作者の都合により名無しです:2005/07/26(火) 16:53:15 ID:uAB/TwWv0
>超機神大戦
狐たち。13階段。そしてのび太たち主役勢。3つの勢力の戦いになるのだろうか。
それはともかく、いきなり切り札の超ロボが出てきてまたそれより強いの出るのかな?
「な、何だって――――――!?」といえばどうしてもあのAAを思い出すw
>スターダスト
中村剛太ってレンキンキャラだっけ?いまいち思い出せないな。最終回ってどうだったけ?
大げさな文体と少し知能が足りなさそうな登場キャラのコンストラストがいいですな。
ヴィクトリアに哀愁が漂っていてかわいいなw
247 :
魔女 童と童:2005/07/26(火) 17:59:01 ID:MpGMbHuR0
もう一ヶ月くらい外に出ていない。
ここには何も無い。築数百年というこの旧家の周りには、森と田畑と川しかない。遊び
場は自然。自然に順応出来なければ、ここはつまらないところだ。僕は、つらい。
他のみんなは楽しそうに遊んでいる。僕は、みんなについていけない。体力が違い過ぎ
るからだ。みんなと同じ速さで走れないし、逆上がりも出来ない。五十メートルも泳ぐ事
が出来ない。走り高跳びも駄目。ハードルを倒さずには走れない。棒登りも出来ない。ジ
ャングルジムではいつも頭をぶつける。ブランコで骨折した。鬼ごっこはいつも最初に狙
われる。そんな事ばかりで、もう学校に行きたくなくなった。部屋からも出ない。出たら
学校に行かされるから。
部屋には、ひいひいひい爺ちゃんの代から(これも定かじゃないらしい)の本が無造作
に本棚に詰め込まれている。僕はこの物置みたいな部屋をもらったのだ。僕の部屋である
小屋の二階は、家からほんの少しだけ離れている。他にもっとさっぱりとした部屋が家の中
にあったのだけど、どうしてもここがよかった。ここにいればすぐに本を探せるから。
色々な本がある。特に古そうな物は、僕が知っている本の形ですらない。表紙と裏表紙
が厚紙になっていて、中の薄い紙と紐で繋がれている。すぐ壊れてしまいそうなので、気
をつけて読まなくてはならない。
ほとんどの本が、僕にはとても読めないような言葉で書かれていて、よく分からない。
それでも本を読む事を止めようとは思わなかった。僕は絵を見ていた。筆で描かれた不可
思議な生物達に惹かれたのだ。少ししてそれらが『妖怪』と呼ばれるものだと知った。妖
怪が生物かどうかは知らないが、この世に本当にいるならばこれほど素晴らしい事は無い
なと思った。
248 :
魔女 童と童:2005/07/26(火) 17:59:30 ID:MpGMbHuR0
「まあ、まだいいじゃないか」
夜の事だ。家の方から、おとうさんとおかあさんの話し声が聞こえてきた。近いから、よく
聞こえる。いつも通り冷静なおとうさんと怒り散らしてるおかあさん。虫の鳴き声ばかりの外
に、ずかずか入り込むおかあさんの声は、とても場違いだ。
「よくないわよ! 一ヶ月も小学校に行かないなんてありえないわ! あの子、どうせ部
屋で勉強なんてしてない。今が人生でどれだけ大事な時期なのか、あなたにだって分かる
でしょう?」
「それはそうだけど、強制しても仕方が無いよ。お前、一度強引に行かせようとしたけど、
あの時のあいつの嫌がり様、覚えてるだろう。あれじゃ逆効果になるのは目に見えてる」
「じゃあどうすればいいのよ! こんな田舎じゃ精神科の先生だっていないし、無理やり
行かせるしかないじゃないの! 人生これよりつらいことだって一杯あるし、今甘やかし
たら、あの子、ずっと、あのままになるんじゃないかって……」
言いたいこと言い終えて、おかあさんが泣き出した。いつものことだ。
「だから……待とう? お前の子だろ? 俺の子だよ。絶対に、大丈夫だ」
「でも……あたし、不安で……どうしようって、パート先でも不安で胸が張り裂けそう。
車運転してても、いつの間にか涙が溢れて止まらない……このままじゃ、あたしが壊れち
ゃうよ……」
「耐える事が親の仕事だよ。つらいけどな」
学校に行かないことが、そんなにいけないことなの? 分からない。おかあさんがあそこ
まで落胆する意味が分からない。なんだろう。なんだろうこの気持ち。何かが胸の奥から
せり上がってくる感じ。なんだこれすごく嫌だ。嫌で嫌で堪らない。嫌だ。逃げたい。情けない。
自分が、他人が、おとうさんが、おかあさんが――。
――僕の周辺世界が、嫌悪に塗れてる。
僕は一階に降り、梯子を探した。そしてそれを抱え再び二階に上り、屋根裏の入り口に入った。
249 :
魔女 童と童:2005/07/26(火) 18:00:27 ID:MpGMbHuR0
逃げるといったって、小屋の屋根裏にしか逃げる事が出来ないなんて、僕はなんて弱いのだろう。
そう自らを責めながら、懐中電灯で辺りを照らし出す。空気中の埃って、普段はよく見えないけど、
光に照らされるとはっきりと存在が分かる。ここには埃しかないんじゃないか。そう思うほど、光が埃
に遮断されていた。咽せながらも、進む。何しろ古い建物なので、進むたびにぎしと揺れ、その度に
僕は恐怖を覚える。今すぐに抜け落ちるんじゃないか。そう、考えてしまうから。
それでも進む。やがて恐怖も和らいでくる。確かに軋むが、落ちはしないと確信できたからだ。それに、
慣れればここは心地良い。ここは、僕の知る環境の中では一番一人になるのにいい場所だろうから。
そして、そのうち目の前に赤い座布団が見えた。小さい。子供用だろうか。幼稚園……いやもっと小さい
子、赤ん坊の為のもの? それを手に取り、近くに寄せて凝視する。座布団の中央に、小さな小さな粒
みたいな――。
――気が付いた時、僕は部屋で倒れこんでいた。目の前には、あの赤い小さな座布団と、その上に
ちょこんと座る、人形のように丸いこれまた小さな子。
「…君、何……?」
「ポッコ」
その子は、それだけ言った。そして、僕は睡魔に襲われた。
魔女三話目。和ですね。これはどうなんだろう。まあいいや。
福島弁を作品に使ってみたい、という思いからこのお話が出来たのですが(次回以降)、やはり東北に馴染み
がある妖怪で一番ネタにしやすいのはこの妖怪かなあ、という感じで。座布団云々は俺の創作です。
しかし、小学生っぽくないガキですね。
>>190 そんなに見つからないのですか。俺は案外簡単に手に入ったんですが。地域によって違うのかな。
二巻は今年発売だからまだ品薄にはなっていないと思いますし……。
ただ、原作見なくても正直大丈夫だとは思います。話の繋がりもキャラの繋がりもほとんどないので。
>>191 どうですかね……ミスティがまた出るかどうかすら分かんないです。お話の繋がりはあまり考えていなくて、
とにかく一エピソードの積み重ねになると思うので。ようするに「一話完結読みきり型」という。
>>192 クライドは能天気に幸せかもしれませんね。アニーが悪夢にうなされてる間もぐうすか眠ってるかもしれないw
>>213 ジョジョあまり読んだ事ないので分かんないのですが、これで軽めっていうことはジョジョのそれは相当に重い
んですかね。
末路ですか……そうかもしれないです。今回のオチもまだ考えていませんが。
では次回。福島も雨降って来ました……。
いつも皆さんお疲れ様です。
・サマサさん
プリムラとのび太、運命的な再開ですね(面と向かってはあってないけど)
やはりヒロインは彼女じゃないと。次回の再会の書き込みを期待しております。
・スターダストさん
ヴィクトリアが少しおばさんっぽいですね。ヴィクターとの絡みは出てくるのかな?
あれ、でも前回出てきた鬼丸飯店の方々はどうなったのだろう?また出ますよね。
・ゲロさん
なんとなく蟲師っぽい書き方ですね。ゲロさんの手馴れた感じの世界描写というか。
ひきこもり蟲か?魔女と蟲師のコラボとかは……さすがにないですかw
252 :
ふら〜り:2005/07/26(火) 23:05:26 ID:6FR/rQnW0
>>Tournamentさん
その人数で一同グラサン、そして銛発射装置。「目立たない服装」がムダになってるぞと
突っ込んでみたり。この期に及んでというか、これだけのものを見せ付けられてまだ男性
だから……なんて拘る辺り、カッコいいのか呑気なのか小日向。男らしい活躍、できるか?
>>サマサさん
っしゃああぁぁ! 待ってましたぜ到着、集結! いやもうなんだか私の中では、可哀想
なぐらいペコが霞んでしまって。い〜ところで通信が切れてしまうのが何とももどかしく。
のび太の声へのプリムラの反応がまた可憐で。彼女の幸せそうな笑顔、目に浮かびます……
>>スターダストさん
合間合間に来る異様にシュ〜ルなトコが気に入っております。ので今回は
>>239前半ですね。
読んでて、いろいろ頷かされたりコケたりしてました。あと、微笑ましすぎる母の愛。この
状況で思い出された新婚生活って一体……首輪、使ってたんすかアレキサンドリアお母様?
>>ゲロさん
暗そう怖そうな雰囲気は相変わらずのまま、一気に飛びましたねえ。和風の恐怖といえば
ゲーム「零」なんかが思い出されます。にしても冒頭の落ち込み部分は結構共感できたり。
跳び箱とか縄跳びとかマラソン大会とか……幼少時、そういうのが壊滅的で辛かったです。
「断る。こいつは使える。奴を殺す為にな。」
誘拐犯を説得するのって簡単じゃないっていうのは理解るけど。
ドラマよりも難しいんだな。現実って。
「ならば腕ずくでも奪い返す!」
小日向はゆっくりと相手に対して歩いていった。ヒュッという音が鳴り
小日向の体が宙を舞う。アクロバットとも呼べる胴回し蹴りである。
「おおっ。」
避けた男の頬がさくりと切れた。着地した直後に追い討ちとして飛び蹴りを放つ小日向。
が、吹き飛ばされたのは小日向の方だった。カウンターを食らったらしい。蹴りかどうかは
わからないがパワーはすごい。こちらがスピードで勝負だがあちらはパワーだろう。
「蝿の様に飛びまわろうが力には勝てん。ムン!」
男の連撃をガードしながら移動する小日向は腕が痺れるのを感じていた。
急所だけはガードしているがそれでもダメージは蓄積されて行く。
腕が青くなって来ている。骨が折れていないだけまだマシだろう。
シュッと音がした。小日向のジャブの音だ。パワーではなくスピードだけを考え始めた攻撃。
連撃には連撃。蹴りには蹴り。苦し紛れの戦術だった。ジャブから流れる様なミドルキック。
そして小日向は違和感を覚えた。動けない。スタミナ切れか。それとも手ごたえがあったからか。
いや違った。足が掴まれていたのだ。小日向は世界が反転するのを見た。どうやら体が逆さまになったらしい。
腹に衝撃を覚え小日向の意識は闇へと落ちた。
「遅かったみたいね。」アルクェイドは呟いた。
「くくく。教えてやろう。なぜお前達が俺に勝てないかを。」
男の体が変貌していく。黒い翼が生え、皮膚は紫色になり角が生え、目は赤くなる。
「風間仁に起こった現象と同じ・・。」シエルが警戒した。
「これこそデビル化・・・闘神の力。思い知るがいい!」
アルクェイドが構えを取る。そしてシエルが持っていた物を抱えあげる。
「真祖では無い様ですがパワーはありそうですね。」
「こんなのが真祖だったら多分私達で殺してるわよ。」悪態をつくアルクェイド。
畳まれた羽を広げ怪物は一歩前へ踏み出した。そして怪物が空を飛んだ。
空中から急降下する様にキックをシエル達に向けて放つ。
シエルは頬に空気の摩擦を覚えながらも思った。こいつは素早く強い。
刺し違えるかあるいは引き分けになるのか。アルクェイドと同程度だろうか。
「名乗っておこう。俺の名は三島一八。」
やはり。自分は間違ってはいなかった。シエルがコートを脱ぎ捨てるのと
怪物の額から熱線が放射されるのは同時だった。
「ちっ!」シエルが呻いた。
スレスレで避けたのは良かったものの一歩間違っていれば気絶していただろう。
狙われたのは心臓の辺り。自分は再生能力を持っているが少し時間がかかる。
「力を得たぐらいでいい気になるんじゃないわよ!」アルクェイドが叫んだ。
一八とアルクェイドがぶつかり合う。互いに牽制し合い、蹴りと突きが交差する。
一八はスピード攻撃に切り替えた。連撃である。スピードタイプ相手には受けるかカウンターを狙うしかない。
それを受けきり攻撃の隙を待つ。いわば打たせる作戦である。
「はっ!」
ジャブ、左ロー、かけ蹴りがアルクェイドを襲う。踏み込んで打撃を放つアルクェイド。腕が伸びきっていた。
今だ。一八が拳を放とうした時、異変が起こった。生暖かい物が一八の腹を伝わっていた。
「ぐ・・・・。」一八は呻いた。
アルクェイドの爪が突き刺さっていたのだ。ゆっくりと爪を引き抜き後ろに下がるアルクェイド。
「しぶといわね。」アルクェイドがしゃべった。
「皮一枚だったな。内臓までは届いてはいない。つまり・・・」
「つまり?」
「第七聖典!」シエルが叫ぶ。
銛を持ち突撃するシエルを横目でみただけで拳を振るう一八。
カウンターを顔面に食らい吹き飛ぶシエル。その場に立つ人間はいなくなった。
アルクェイド以外全員が気絶したからだ。
「愚かな・・・素手で相手を屠る事を考えていた私に対して一撃の為に突っ込むとは。
連撃の重要性を知らんようだな。」
アルクェイドは焦っていた。自分以上のパワーを持つ者となら対峙した事はある。
だが柔軟性とパワーが同居する相手に出会ったのは初めてだった。
アルクェイドの額に冷や汗が流れ始める。ツゥと嫌な汗が流れる。
「さて次はお前だ。くだらん戦いだが終わらせるぞ。」
ゆっくりと歩いてくる相手を前にしてアルクェイドはリラックスしていた。
相手は油断している。こちらを唯パワーで押しつぶすつもりだろう。
カウンターか。いやパワーの連撃を食らうかも知れない。
「かぁっ!」
一八が腕を振り下ろし、前蹴りを放つ。自分の腕にハンマーで殴られた様な衝撃を覚えながらも
距離をとるアルクェイド。蹴りだろう。身長差はあるが戦術でなんとかした方がいいだろう。
「アザができているぞ。その腕はもうイカれたな。」
「私は手加減していたんだけどね。どうやらその必要性はなさそうね。」
先刻以上のスピードで突っ込み爪攻撃を仕掛けるアルクェイド。
一八は腕でガードを固めるだけだった。一八の周りを飛び仕掛けるアルクェイド。
スピードには自信があるのだ。これでも自分は真祖なのだから。
一八が腕を振り払う。それを後ろに避けるアルクェイド。
「次で終わりにしようか。」
「それはこちらのセリフよ。」
一八が正拳突きの構えを取る。アルクェイドの爪が伸び、鋭くなる。
二人の気配が衝突し、空気には戦慄が走る。
「うぉぉぉ!」
「えい!」
二つの力が衝突し、そして力は解放され辺りは光に包まれたーー。
今回の投稿はこれで終わりです。
ゲロさん、お疲れ様です。
童という事は、座敷わらし?和テイストの中に現代の問題のヒッキーですか。
毎度毎度、テーマが豊富ですねえ。西洋の魔女とどう関連するのか。
まさに和洋折衷の作品ですねえ。
輪廻さんも乙です。三島平八出ましたね。ゲームのファンなので活躍楽しみです。
ゲロさん、輪廻さんお疲れ様ですー
・魔女
ひきこもりと魔女って接点が無いような?
でもゲロさんの事だからミスティが意外な形で絡むんでしょうね。
ポッコはゲロさんのオリジナルですか?
・Iron Fist Tournament
アルクェイドというキャラは少し分かりませんが、小日向が好きなので
期待してます。三島平八ですか。輪廻さんはゲームキャラ好きですね。
少し強すぎのような???
72から
「…ランクB殺人犯、ディーゴ=ラミレス。ランクA盗賊団、グレイ=シュミット一味。ランクC連続強盗致傷犯、コージ=ハナダ。
………以上を合計して、750万イェンになります」
「それを全部口座振込みで」
スイーパーギルドの受付嬢の事務的音程に、スヴェンもまた事務的に返した。
…一見してこの受付嬢は冷静に見えるが、実は内心かなり驚いていた。
それもその筈、目の前の四人(しかも子供まで居る)はたった一日でこれだけの人数を数珠繋ぎに引っ張って来たのだ。
しかもグレイ=シュミット一味は何人ものスイーパーを返り討ちにした実績があるというのに、それをも何かのおまけの様に
手下ごと叩きのめして連れてきたのだから、思わず瞳に畏敬が浮かぶ。
「あ…あれ? オレの取り分は?」
「ちょっと! アタシの分はどうしたのよ!!? 今回誰が一番働いたと……!」
背後の二人がスヴェンの采配にケチを付けたが、彼は敢えて振り向かない。
「…もうお前等に金は預けない。何故かは判るな?」
そのまま冷たく言い放った。
スヴェンがそう言う理由はリンス・トレイン双方揃って百も承知だが、だからと言って退く訳にはいかない。
二人が食っちゃ寝したり無駄遣いしたり自堕落に日々を過ごすためには、どうしても金と言う万国共通の免罪符が必要なのだ。
「…どうしても欲しい時は俺に必要額と用途を言え。それが納得行く内容だったらくれてやる」
――――冗談じゃない。そんな事で好き勝手ライフを阻害されるのは二人にとって拷問だ。
なればこそ人目も気にせず目一杯に反論する。
「何だよそれ! 何でお前にオレの財布を管理されなきゃいけねえんだよ!!? 不公平だそんなの!!!」
「アンタアタシの父親にでもなったつもり!!!?? ふざけんじゃないわよ!!!!!」
なおも続く二人のさえずりを聞いて、彼は一息吐き出した。
そしてゆっくり振り向くと、何故か二人の顔と言葉は勿論の事、たまたま通りすがった屈強な同業者まで凍り付く。
今スヴェンの背中を見ている受付嬢にはそうとしか見えなかった。
………その詳細については、大魔神を想像してもらえれば判るだろうか。
「…いいかイヴ、ああはなるなよ。アレは落伍者なんだ、最悪伝染るぞ。いいな?」
頭に大きなタンコブを拵えて蹲る二人を指差してイヴに言い聞かせた。
「先に宿に戻ってろ。俺も用事が済んだらすぐに行くから」
彼女の頭を優しく叩き、スヴェンは一人換金所を出ようとしたが、「そうだ」、と足を止める。
ふと思い出すのは今日の彼女の働きだった。
例の盗賊団を千切っては投げとばかりに副腕で捕まえて投げ飛ばし、或いは手酷く殴り付け、グレイ=シュミットが泣いて降参する頃
には、手下の大半がマグロの様に横たわっていた。
実にスヴェン達の出番が食われる八面六臂の大活躍を、彼女一人でしてのけたのだ。
彼女は、少しずつだが強くなっていく――――それも人として。誰一人殺さなかったのがその証拠だ。
それを思うと、普段の気持ちと混ざり合って筆舌で表現しきれないほど嬉しくて、万感の思いで口を開く。
「今日は……お手柄だったな、イヴ」
……それは彼女にとって、万雷の拍手より価値有る言葉だった。どころか正しく神の福音と言っても良い。
彼女は、誰より何よりスヴェンに認めて欲しかった。理由は簡単、彼に憧れているからだ。
イヴが記憶する彼は―――機転が利いて、優しくて、恫喝に一歩も退かない勇気を備えて、害悪に屈さぬ闘志を持つ
彼女の世界の唯一無二のヒーローだった(因みに、リンスはお姉ちゃんで、トレインは家具)。
その憧れの人直々の褒め言葉は、伽藍の中で鳴る鐘の如く彼女の胸に響き、且つ木霊する。
そして迎える歓喜と言う名の甘く熱い余韻に、我知らず小さな体を震わせた。
「……あのぺド野郎…イヴちゃんを洗脳しやがったわね」
スヴェンに付いて行く形で換金所を出るイヴの背中を見て、リンスが毒づいた。
「何でお前、いちいちそんなスレた発想するんだよ。
……スヴェンが言ってたお前の影響受けたらどうのって話、実感伴ってきたぞ」
それが常識だろう。本当にこの女の影響を受けた日には、どんな無茶苦茶な悪女になるやら。
「アンタ馬鹿じゃないの!!? あん畜生はね、イヴちゃんがそう言う事に無知なのを良い事に上手く
たらし込もうとしてるのよ!! そんな犯罪者の魔の手から守ってやらなきゃ女が廃るってもんだわ!!」
「……単にスヴェンの方が好かれてるのが気に入らないだけだろ、それって。
姫ッチのそれにしたってはしか≠ンたいなもんさ。じきに冷めちまうよ」
白熱するリンスに対し、トレインは終始冷静だった。言葉通り、まるで冷めている。
―――――当然それにリンスが気付かない筈が無かった。
「何かアンタ、あの子に対して冷めてない?」
「? そうか?」
口ではそう言ったが、彼女の言は正鵠そのもの。そしてそれは彼自身弁えている事実だった。
取り敢えずしれっと言葉を繕ったが、完全に疑いの眼差しを向ける彼女にこれ以上隠しきれる物では無い。
「……ま、別にいいじゃんよ。オレそろそろ帰るわ、弾結構使ったし」
取り分の時をまるで感じさせない気だるさで、トレインは入り口へと急いだ。
このまま此処に居ては洗いざらい喋らされかねない、それは具合が悪かった。
「―――ちょっと、待ちなさいよ」
引き止める言葉は軽いが、行動はかなり痛い。――――――――――髪の毛を後ろから鷲掴んで引っ張っていた。
「ちょっ…ちょっ、ちょっ! お前こそちょっと待て!!
痛いぞ! かなり痛いぞ!! 泣くぞ!!!」
「…いいじゃない、こんな美人が引き止めてるんだから嬉し泣きすればいいわ。
それよりさ、このまま帰るのも芸が無いからお茶付き合いなさいよ。どうせアンタも帰って寝るしか無いんだし」
………どうやら、徹底的に逃がさない腹らしかった。
――――同刻、街の反対側の警察署。
ロビーで一人の警官が、荒い息と震える肩を押さえながら銃を構えていた。
「う……うう動くな!!! ぶ、武器を捨てろ!!」
彼の方が手からすっぽ抜けそうなほど震えていた。
―――その理由は彼の足元に有った。…それは同僚達の死体、どれもこれもが尋常な有様ではない。
首から上が無い者、体中背中側までびっしりと穴が開いた者、胴体が綺麗に存在しない者、エトセトラ、etc……
凄惨の枚挙にいとまの無い光景が、老若男女で構成されていた。
何を使えばこんな惨状を成せるのか、常識の範疇に生きる彼の脳が倫理的な回答を導き出せないまま
照準の向こうの製作者は殺意に塗れて笑う。
「いいぜえ……撃てよ。その後にオレが撃つ」
信じられないが、こいつは既に構えている彼の弾が当たらないと思っているばかりか、その後返せるのを微塵も疑っていない。
ただ言うだけなら一笑に伏す事も出来た。しかしこのむせる様な血臭の中では正常な思考は働かない。
………尤も、働いた所で状況は好転しないが。
「ホラ見ろよ犬ッコロのダンナ、オレはこの通り手ぶらだ。撃ち殺せるよなあ、ええ?」
両手を晒しながら、靴音を血でぬめらせて近付く。一見降伏のポーズだが、溢れる殺気はそんな物を断じて感じさせない。
一歩、また一歩、また一歩。
既に子供でも外しそうに無い距離まで近付いてもなお、歩みが止む事は無い。
警官は恐慌寸前に陥っていた。
――――こいつは狂っている、人間じゃない、他人は勿論自分の命さえ弄ぶ異常者だ、何でこんな奴が俺の前にいる―――
結局無意味なシンキングタイムは瞬く間に終わりを告げ、そいつは銃口の前で足を止めた。
「……あんたの最後のチャンスだ、よく狙って、見極めて……撃てよ」
まるで睦事の様な優しさで語り掛ける。だが当の警官から見れば悪魔の誘惑だ、誘いに乗れば地獄が彼を待っている。
膝は抜けそうなほど震え、歯の根は合わず、顔の穴と言う穴から色々な液体を流す。
と、その時、
「BAAAAaa―――NG!!!!」
突然飛び出した擬音が、本物かどうかの区別など付かなかった。
三歳児以下に低下した思考は、今の今まで留め置いていた行動を遂に選択する。
「ひ、ひゃあああああああああああ!!!」
無様に叫び、撃つ。更に撃つ。もっと撃つ。なおも撃つ―――……既に弾は尽きていた。
「え…え、あ………え……?」
意思に反して引き金を引き続ける指を埒外に、周囲に首を廻らす。
――奴が居ない、何処だ、何処に居る? 何故こんな目に? 今日の夕飯何処で食おう? 明日休みだっけ?――
最早順立てる事も理解する事も叶わなくなった頭は、側頭部に存在する銃口を認識出来ていなかった。
銃声一発、たったそれだけ。それで彼は思い煩う事無く恐怖から開放された。
当然だろう、それを考える部分全てが消失すれば。
「遅ェ……ゼンッゼン遅ェ。肩慣らしにもなりゃしねえ」
ぼそっと呟くと、己が成した殺戮を見回した。
「まあ、これでもう邪魔は入らねえ………愉しませて貰うぜ、黒猫(ブラックキャット)」
テンガロンハット、ショール、拍車付きの革靴、金属製のマスクとその下に隠れた凶相、その全てを返り血に染めて
デュラム=グラスターは昏く、だが愉快そうに笑った。
「…おいおい、そんなモン入れたらエンジンがぶっ飛ぶぜ」
「エンジンには内緒にしといてくれ」
寺沢武一 「ゴクウ」より抜粋。
…………未だにこういう格好よろしいやり取りが思い付かない浅学なNBです。
さて、第七話「無残」開幕です。
今回も「思惑」の時と同様、新しい試みに挑戦しておりまする。
それが何かは今後をご期待。
手短に、今回はここまで、ではまた。
さて、それから数日、戦部とヴィクトリアはあちこちを転々とした。
成功を呼ぶと名高いレストランにも行きはしたが、なんかゴタゴタしてた。
やけに筋肉質なシェフがいたようないなかったような気もしたが、ヴィクトリアにはどうでも良い。
彼女の心情は、父の経歴を詳しく知ってからますます曇りがちになっている。
戦部はこの旅の初めに、ヴィクトリアの生き延びた術を、いやホムンクルスたる彼女の不可避の人喰いの詳細を質した。
もし、正確に答えていれば戦部はどうしただろう。やはり戦士としてヴィクトリアを討伐しただろうか。
そう。
父と同じように。
「恐怖と戦い、厄災をはね除け、より一人でも多くの人が幸せになれるよう」
という理念の元、ホムンクルスを斃し続けていた父と、同じように。
上はヴィクトリアにとり、かつては難しくて分からなかった言葉だが、今は嫌というほどよく分かる。
現在のヴィクトリアは人喰いを要するホムンクルスだ。
『より一人でも多くの人が幸せになれるよう』に、父が命を賭して相対した恐怖と厄災そのものの。
父の経歴を詳しく知り、ますます簡単に分かるようになった事が、ひどく辛い。
ヴィクトリアは味の分からぬ食事の手を止めるコトが多くなった。
それを戦部がじっと観察するのが、いつの間にか彼女たちの間の慣習になりつつある。
そんなこんなで彼らが食の旅に出発して一週間が経とうという頃、彼らは都会じみた雑踏にてある人物と再会を果たした。
最初に訪ねたラーメン屋で腰を痛めていた青年だ。
店からは県を二つほど跨いだ遠いところだったから、戦部は驚いた。ヴィクトリアも多少顔色を変えた。
1たす1は2、と口ずさんでいた青年も、戦部たちをみるなり仰天し、違う違う俺は浮気はしてないただ気分を
変えたいだけなのにどうしてせっかく来た遠くで知り合いに出逢うんだと、聞いてもないのに取り乱した。
聞けば何やら彼は、ドなんとかいうヒーロー物の映画を見に来たらしい。
そして1たす1は2であるらしい。ならば2たす2は4なのだろう。
しかし二人は別に映画に興味はない。食の旅が目的だ。
青年と別れた後、戦部たちは一つの店に入った。ハンバーガーショップである。
おりしも、夏休みである。
しかし客の入りは少なく、チェスを嗜む二人連れやらカップルが店の中にいるだけでひどく静かだった。
店員は高校生ぐらいのが二匹。片方はバイトの鑑のごとき透き通った笑みで戦部たちを迎えたが
もう一人はひどく無愛想で、いらっしゃいませの一言もいわない。
注文を終えると、無愛想なのが透き通った笑みをしきりに呼び始めた。
呼び方は特徴的で、ひどくせわしない。そして発音は遠い昔、ヴィクトリアがよく聞いたのと少し似ている。
というコトは無愛想な店員、外国からの来訪者である事は間違いない。
付け加えると、チェスを嗜んでいる若人二名もそうらしく、ときおり無愛想な店員と親しげに話しているのは、互いに
異郷にいるという連帯感によるものか。
ヴィクトリアにそういう人間は母以外に全くいない。だから、三人の会話は辛いものでしかない。
さて、戦部の席の後ろに座っているカップル、カップルらしからぬよそよそしさがある。
例えば少年の方がしきりに「匠バーガー」なるものを進めているのだが、少女は遠慮するばかりで埒が開かない。
遠慮の仕方も、懸命に言葉を選んでいるらしく、ひどく途切れ途切れだ。
しかし結局少年は、普段手伝ってもらっているからと、カウンターに向かい強引に注文してしまった。
少女がものいいたげに席を立つと、弾みで戦部の肩に椅子が当たった。
動揺の気配に「別に構わん」と振り返ったとき、戦部は初めて少女の姿を見た。
かなりの容姿端麗である。戦部は内心で「ほう」と感嘆し賛辞を浮かべ、彼女を恋人にしている少年に喝采を送った。
するとどうであろう。少女は戸惑いを浮かべ、戦部の思惑を読んだがごとく首を横に振った。
ま、偶然だ。偶然に決まっている。
「なぁ… どうしてお前は私を旅に連れ出したんだ」
手付かずのポテト(Lサイズ。バスケットともども180℃の油に入れると2分半で揚る。専門用語ではLポ。バスケットが
ほつれていると洗うときにケガをするので要注意)を目の前に、ヴィクトリアはぽつりと切り出した。
戦部は肉厚のスパイシーワズチーズバーガー(青唐辛子が入っていてプロが略するとスパワッチだ。本当だ。常務だっ
てそう言ってた。ミートソースとトマトとオニオンのコントラストには、よだれズビっ!)を二口で飲み込むと、やや自嘲の混
ざった笑みを浮かべた。
「慰みさ」
そしてしばらく考えた後、こう付け加えた。
「考えてみれば俺はずっとそうかも知れん」
俺は戦団の現役戦士の中では、もっとも多くホムンクルスを倒しているらしい、
とヴィクトリアに切り出し、奥歯に挟がった青唐辛子を舌で喉に送り込み、続ける。
「だがな、それはつまらんものさ。せいぜいが杯や書状の類を上から押し付けられる程度だ。
古の戦士は強者を喰らい、強くなる事を望んだという。そう聞いた俺は、戦士になりたての頃に試してみた。
なるほど、確かに風聞通りに力は沸いた。沸きたつままに戦い、勝ち、喰らい続けた。
するといつしかホムンクルスは、「敵」ではなく、「食料」になり、戦いは狩りの様相を呈してきた。
狩りはただ倒して喰らうだけさ。それを繰り返すのがいかにつまらんか、お前なら分かるだろう?」
「………」
ヴィクトリアは不快そうに黙った。
戦部のセリフは戦士のいうべきものではない。人喰いを暗に認めているからだ。
それもヴィクトリアへの同情とか謝罪に基づいた物でもなく、ただ自分自身の思惑へ同意を求めるべく
人喰いの話題を引き合いに出している。ひどく独善的だ。
戦部だけがこうなのか、彼の属する錬金戦団全てがこうなのか。不祥事を隠蔽すべくヴィクターを殺した戦団全てが。
ヴィクトリアは不快の色を現したが、しかし人喰いを糾弾されればより過敏な反応を示しただろう。
「お前達のせいでこうなったんだ」、と。
しかしあくまで不快の色で留っている。戦部の言は多少なりとも的を射ているからだ。
生命を保つために繰り返す人喰いは、ただ鬱々と血に塗れる猟奇的な作業だ。
それを楽しむには、ヴィクトリアの人生最初期は幸福でありすぎた。
父が不在がちなのを除けば、ごく普通のありふれた家庭でごく普通に愛情を受けて育ったのだ。
それでどうして猟奇的な人喰いを楽しむ気質が芽生えよう。
だがそれをせねば死ぬ。死ねばアレキサンドリアを守る者がいなくなる。だからせざるを得なかった。
ずっとずっと苛まれ続けた「狩り」の内容は、誰にも話す気にならない。
不快感はどうしようもなく寂しさに近く、ヴィクトリアは目を伏せた。
(パパならなんていうだろう)
戦部にかヴィクトリアにか、それとも他の何者にか。まるで分からない。
「俺は喰っていても完全には満たされず、ホムンクルス以上の存在(モノ)を欲し始めた。するとお前の父が目覚め──」
カズキに埋め込まれた核鉄が、人外に誘う黒い正体を現した。
正体は、アレキサンドリアがヴィクターを元に戻すために試作し、偽装を施した黒い核鉄。
かつてカズキを救うべく埋め込んだのは津村斗貴子であるが、渡したのはヴィクトリアである。
それがヴィクターに宿る黒い核鉄と共振し、結果カズキはヴィクターと同じ肉体へと変貌を遂げ始め、そして。
「ヴィクターIII再殺の指令が下った。だが奴には先約があってな。俺はそいつと戦い、負けた。
無粋な仲間の横槍で流れた勝負だが、まぁ俺の負けさ。だからヴィクターIIIとの戦いは譲ってやった。
そうこうしているうちに」
「…パパが」
「ああ。知っての通りだ」
わずかだが、低い声が湿り気を帯びた。
「ヴィクターIIIも人間に戻り、結局俺は、ホムンクルス以上の存在(モノ)と戦い損ねた。
その頃からだ、ホムンクルスとの『戦い』が手慰みにすらならなくなったのは」
なまじヴィクターの戦いを見たばかりに、普通のホムンクルスに魅力を感じなくなったのだろう。
戦部厳至。誕生日は7月27日。その日の誕生花の一つに「フィソステギア」というものがある。
珠を連ねたような太い緑の茎から薄紫の花がニュっと突き出す形状は、西洋では竜の頭になぞらえられ
日本では虎の尾に例えられる、なんとも勇ましい花である。
そして花言葉は「充分に望みを達した」。
しかし戦部がそういられたのは、駆け出しの頃、ホムンクルスがまだ敵としてありえた頃ぐらいではなかろうか。
「だから慰みさ。俺が戦いたかった存在たちが、どういう者だったか調べ始めた。彼らは戦士だ。
戦士はすべからく戦いの中に居る。その辿った戦史を調べていくうちに、慰み程度だが気が晴れた。
そしてお前たち一家のコトを知り、お前がヴィクターでないかと期待したのさ」
「それは電車の中で聞いたわよ。でも、一週間も私を連れまわす必要なんてないでしょ」
帰ろうにもアレキサンドリアの一件がある。逃げ帰ればまたルリヲヘッドで旅に出されかねない。
よってこの旅を完遂しなくてはならないのだが、ヴィクトリアはひどく疲れ始めている。
「それに、それに──」
戦部が「戦史」とやらを押し付けてきたのも分からない。ただ気分が沈むだけの代物だ。
どうして戦部の慰みや気まぐれに付き合い、ヴィクトリアが磨耗する必要があるのか。
「必要ならあるさ」
戦部はにべもなくいった。
そのころ後ろの席では、先ほどの少女がバーガーラップ(字のごとくハンバーガーの包み紙。単価は60銭だったと思う)
に顔の下半分を埋めて、匠バーガーを無表情のままだが一生懸命食べていた。
>>244続き。
今回から一応タイトル表記をば。次で終わるけど…
コラボは分かりにくいかも。サブキャラが圧倒的に多いし。
>>246 ええ。剛太も錬金のキャラです。みんなちょっとアレですが一生懸命生きていますよね。
オウム真理教の信者と同じですよね。ジャンプでの最終回は、カズキと斗貴子がキスし
て終わりです。赤丸ではガイアー!で地球爆発ですよきっと。
>>251 直接的な絡みはないですが、ヴィクターがヴィクトリアに与える影響を
「本編ではこうだったかも」という推測で描いてます。でもおばさんなのだろうか…
あと、彼をちょっと再登場させたり。映画も確か好きだったハズ。
>>ふら〜りさん
今回は本筋だったのと、自宅に持り帰りパピヨンマスクをコラした赤ちゃん画像がやけに可愛かった
せいでシュール部分がなくてすみません。首輪は、新婚生活に白いワンちゃんが不足してたので、
浮浪者を捕まえて装着して鎖に繋ぎ狂犬病のワクチンなどを打ってあげてたと思います。で、用が済んだらテームズ川に。
>>268 スターダストさん、乙です。
色々と濃くてwテンションの高めな導入部分を経て、主要人物のシリアス風味の
交流劇に繋げていく組み立て方が俺的にツボです。
原作漫画は俺も好きです。接点が無かったり少なかったりしたキャラがこうして
交差すると新鮮な魅力が出ますね。SSの醍醐味だな、と感じました。
ところで、
>3億匹の野良犬が集まって
この場合、どんな豪傑も普通にガタガタ震えると思うのですが…w
270 :
作者の都合により名無しです:2005/07/28(木) 08:31:16 ID:T2XbQcaM0
>NBさん
イブ視点というか、イブの内面が表されてましたね。やはりイブはスヴェンとくっつくのかな?
そしていよいよ激闘への予感。ファンシーな雰囲気もいいけど、やはりNB氏のアクションが好き。
>スターダスト氏
今回は淡々とした、というかシリアスな展開ですね。この路線になるのかな?ギャグも好きだけど。
いい意味で実験的な試みが豊富な作品ですね。ラストは意外と悲劇的になるのかも?
しかし、黒猫って2部開始されませんね。アニメも。あの情報、ガセだったのかな?
>NBさん
トレインとリンスに対する比喩が的確な感じがしました。スヴェンはむしろ、親馬鹿のパパですね。
(まあ女の子は最初は父に憧れるとも言いますが)
コミカルは今回で終わって、次から少しシリアスになりそうな気配ですね。
個人的にはシリアス展開の方が好みなので楽しみです。
>スターダストさん
テンションの高い出だしでしたね、今回も。(バーガー屋でバイトの経験でもあるのですか?)
原作未読なので分からないネタばかりですが、変なテンションとシリアスさを楽しみながら読んでます。
そーか、世間では夏休みなんだよなー。来年こそは就職しないとw
NB氏、スターダスト氏GJ。楽しませて頂きました。
NB氏はファミリーコントのような出だしから急にバトル編への展開へと
戻りそうですね。NB氏のガンアクション、好きっす。
スターダスト氏はギャグから急にヴィクトリアの内面へと書き込みが
映りましたね。シリアス路線への転換かな?それはそれで楽しみ。
>NB氏
ゴクウは寺沢作品の中でも傑作と思います。寺沢作品は絵とセリフがかっこいい!
「危ないわ、死ににいくようなものよ」
「都会の交差点より安全さ」
273 :
作者の都合により名無しです:2005/07/28(木) 22:24:34 ID:jmPuGUL60
NBさんのやり取りも好きだが、寺沢節は名台詞の宝庫だからな。
ふらーりさんがまたオタのメンツに掛けて豆知識を振るいそうだがw
第六話「再会、そして・・・」
アンゴルモアが去り、ひとまずの休息が訪れた。
ザンダクロスに備え付けた四次元ポケットから<復元光線>を取り出し、傷ついたザンダクロス達を直したところで、
のび太達は巨神像とサイバスターの元に駆け寄った。
「どんな人が出てくるのかな・・・?」
「案外、人じゃあなかったりしてな?」
不安げなキラをからかうようにムウが笑う。しかし実際に彼らの素性を知っているのび太達は、それを笑えない。
なにせ、一人を除いては、本当に人間じゃない人達が乗ってるのだから―――
と、巨神像の中から、小さな人影が現われた。その姿があらわになるにつれて、キラ達はざわめく。
彼は、人間ではなかった。というか、犬だった。しかも二足歩行。
「お久しぶりです、皆さん。・・・それと、初めまして」
さらに、喋った。
―――大騒動。
「い、い、い、犬が喋ってるう〜〜〜〜っ!?な、なんで?」
「お、おいおい・・・。こりゃあさすがのムウさんも驚いたぜ・・・」
「の、のび太くん。この人?(疑問系)どういう知り合いなの!?」
ほとんど珍獣のような扱いである。しかしペコはそういう反応も予測していたのか、落ち着いた様子で語る。
「驚かれるのも無理はないでしょう。ぼくの名は・・・そうですね、ペコと呼んで下さい。犬の王国からやってきました」
「そう、しかもそこの王様なんだよね?」
「ええ、まあ」
「犬の王国?おい、坊主共。そんなんあるのかよ?俺も初耳だぜ」
「とにかく見つかりにくい場所にありますからね。未来人でも知らなくて無理はないですよ」
ムウの疑問にドラえもんが答える。そしてのび太達はペコに駆け寄る。
「突然で驚いたけど・・・本当に懐かしいし、嬉しいよ、ペコ。きみが来てくれて、本当に・・・」
「ほんとに。ビックリしちゃったけど・・・あたしだって嬉しいわ」
「ええ・・・ぼくも、のび太さん達にまた会えて、本当に嬉しい」
「へへっ、おいペコ、いい王様やってるか?」
「ま、上手くやってるでしょ。ジャイアンと違って頭がいいもの」
「なんだと!?」
「まあまあ、落ち着いてジャイアンさん、スネ夫さん。・・・まだまだ至らないばかりですが、国は平和そのものです
―――あの事件を除いては」
「あの事件?」
「・・・あとでお話します。それよりも、ほら・・・稟さん達も、あなた方に会いたがっていましたよ」
ペコに言われて目を向けると、三人の男女がサイバスターから降りたった所だった。
一人は端整な顔に、涼しげだがどこか優しい目をした少年。
一人はリボンを巻いたショートカットが健康的な雰囲気を醸し出す、いかにも元気そうな少女。
そしてもう一人―――どこか浮世離れした雰囲気を持った、妖精のような印象の少女。
その姿を見た途端、のび太は動けなくなる。今すぐにでも駆け寄りたいのに―――動けない。
三人が近づいてくる。そして、少年が口を開いた。
「えっと・・・久しぶりだな、みんな。見たことない人もいるけど・・・」
「・・・稟・・・さん・・・」
それでもまだ、のび太は金縛りにあったまま―――と。ポンっと、誰かに肩を叩かれた。
「行ってあげなさい、のび太さん。みんなも。あの人達は、友達なんでしょう?」
「ペコ・・・」
「あれこれ考えなくてもいいんです―――そういうものでしょう、友達って」
「―――うん!」
その言葉に背中を押されて、のび太達は稟達の元に駆け寄る。
「稟さん―――本当に、稟さんなの!?」
「ああ、ちょっと信じられないだろうけど、色々あってな・・・本当に、また会えるとは、正直思わなかった」
「へっへー、ボクもいるよ、のびちゃん」
「亜沙さんも・・・こんなところまで、よく・・・」
「ま、ボクらのことよりも・・・もっと気にしてあげなくちゃいけない子がいるんじゃないの〜?」
そう言われてのび太は、彼女のいる方へ向き直った。
ツインテールにした銀の髪。人形のように整った顔立ちに、紫の瞳。長い、尖った耳。手にしたネコのヌイグルミ。
その唇が、言葉を紡ぐ。
「のび太・・・」
「プリムラ・・・」
そのまま、動けない。と―――彼女の大きな目に、涙が浮かぶ。
「嬉しい―――また、のび太に、青玉に、みんなに会えて―――嬉しい」
「・・・ぼくも―――ぼくも、プリムラ達に会えて、嬉しいよ。本当だよ。本当に―――」
上手く言えない。目の前がなんだかぼやけている。それで自分も泣いていることに気付いた。
それはもうそのまま、青春映画の1ページにでも出来そうな場面であった―――だが。
「のび太さん。この人達もお友達なの?わたしにも紹介してほしいわ」
リルルである。のび太にそっと寄り添いながら、にこやかに語る。
その場の空気がちょっと変わった。
「のび太・・・その子、だれ?」
「初めまして。わたしはリルルよ。のび太さんとはお友達なの。ね?」
天使のような笑顔のリルル。対照的に、プリムラの額に漫画的なデカイ青筋が浮かんだ。
ヒュー・・・と、どことなく冷たい風が吹いてるような気がした。
そして亜沙が核爆弾級の言葉を放つ。
「ライバル出現?」
―――ドカーン!
「おいおい、やるなあ坊主。その歳でこんな可愛い女の子を二人もキープするなんて、このこの。おっと、
しずかちゃんも入れれば三人か?よっ、この女泣かせ!」
「ちょ、ちょっとムウさん!何言ってるんですか!べ、別にそんなんじゃ・・・ドラえもん!」
頼りのドラえもんはというと・・・
「全くのび太くんたら、勉強もせずに女の子と遊んでばっかり・・・嘆かわしい」
「けしからんですね」
ペコまで一緒になって悪乗りしていた。
「り、稟さ〜ん・・・」
「俺に何とか言えというのか・・・?悪いが、俺は他人の女性関係をあれこれ言える立場じゃないぞ」
それはそうだろう。彼は学園三大美少女全員から求愛され、それ以外にも多くの美少女に好かれているおかげで嫉妬に狂う
男子達から日々命を狙われている(公式設定)というトンデモ男だ。そんな彼が何を言っても説得力はなかろう。
ジャイアンとスネ夫は、ニヤニヤしてこの場を見守っている。
「キ、キラ・・・」
「え、え〜と・・・ここは誠心誠意話し合って解決すべきだと・・・」
キラも頼りにならなかった。
「しずかちゃん・・・」
「のび太さんったら、羨ましいわね、モテモテで!」
極寒の目で見られた。一番ショックだった。そうこうしている間に・・・。
「・・・バカ」
一言だけ残して、プリムラはドラえもん城の方へ歩き去っていく。かなり機嫌を損なった様子だ。
「のび太くん。わたし、悪いことしたのかしら?」
リルルは首をかしげている。どうやら全然狙ってはいなかったらしいので、余計タチが悪かった。
追いかけようかどうしようか、のび太が優柔不断ぶりを発揮していると、いきなり尻を蹴っ飛ばされた。
誰かと驚いて振り向くと、ムウであった。
「お前ねえ・・・こういう時は、ちゃんと追っかけてやるもんだぜ。女心は傷つきやすいんだから」
「・・・真っ先に悪乗りしたムウさんがそれを言うの?」
「ま、冗談が過ぎたのは謝るからさ。とにかく行ってやれよ」
「俺からも頼むよ」
稟も会話に加わった。
「あいつ、お前に一番会いたがってたんだからさ。な?」
「はあ・・・」
のび太は頭を掻きつつ、プリムラの後を追ってドラえもん城の中に入っていった。
プリムラは実に不機嫌だった。せっかくまた、のび太と会えたというのに。
床に膝をついて、のび太の側にいた、あの少女の事を思い出してみる。
顔は・・・まあ、自分だって負けてはいないと思う。問題は、背は向こうの方が高く、スタイルに関しては・・・
言いたくもない。自分の洗濯板にかなり近い胸を見下ろして、溜息をついてしまった。
「バカ、バカ、バカ、アンポンタン・・・」
全く自分勝手だと思う。自分にだって、仲のいい男性くらい(稟一人であるが)いるのに。別にのび太は自分のものではない。
誰と仲良くしてたって関係ないのに、何故にこんなに腹が立つのか。
脳裏に渦巻く不満、不平を呟き、さらには罵詈雑言、それも通り越して世迷言にまで発展した時だった。
「あの〜・・・プリムラ?」
振り向くと、のび太がいた。以前と全く変わらない、どこかとぼけた顔が今はちょっと憎たらしい。
「・・・なに?」
のび太はちょっと引いていた。多分自分は相当不機嫌な顔だったのだろう。
「あ、あのさ・・・ええっと、その・・・」
「だから、なに?」
「その・・・リルルとさ、その・・・仲良くしてくれたら、嬉しいんだけど」
「・・・なんで?」
何故、自分の苛立ちの原因である彼女と仲良くしろなんて言うのか。さらに苛々する。
「・・・リルルは、ぼくの友達なんだ。それに・・・プリムラだって、ぼくの友達なんだ」
「だから?」
「だから・・・ぼくの友達同士が仲良くしてくれたら、嬉しいから・・・あ、リルルだけじゃないよ。ペコとか、
キラとか、ムウさんとか、みんなと仲良くしてくれたら、凄く嬉しいから」
「・・・・・・」
「あの・・・プリムラ?」
「・・・あはは」
笑った。さっきまでの苛々は、もう感じない。変にあれこれ考えていたのが馬鹿馬鹿しい。
そうだ。のび太は別に女の子だからとか、男の子だからとか、そんな事はあんまり考えてない。
みんな友達だから、仲良くしたいと、仲良くしてほしいと、ただそう思っているだけなのだ。
だからもう―――怒らないであげることにした。
「のび太」
「な、なに?」
「私とも、また仲良くしてくれる?」
「え?―――う、うん。もちろん」
「また、あやとりを一緒にしてくれる?」
「うん―――いくらでもするよ」
のび太とプリムラは、顔を見合わせて笑った。悲しげでも寂しげでもない、ただの笑顔で向き合った。
「だから、またみんなで一緒に、たくさん遊ぼう」
二人で外に出た。みんなはもうすっかり打ち解けた様子で談笑している。
プリムラはそこに駆け寄っていく。そして、リルルの肩を叩いた。どことなく空気が緊迫する。
「・・・握手」
「え?」
いきなりの発言に、リルルも目を丸くした。
「私とリルル、友達・・・」
「あ・・・」
リルルも満面の笑みを浮かべて、差し出された手を取った。周りのみんなもほっと一息ついた。
と―――プリムラはキラとムウにも手を伸ばす。
「ん?俺らもかい、お嬢ちゃん?」
「・・・のび太の友達だから。私とも、友達」
「・・・そっか。僕はキラ。よろしくね」
ムウ、そしてキラと握手を交わしていくプリムラを横目にして、ドラえもんが口を開く。
「ねえ・・・ペコ、稟さん」
「はい?なんでしょうか、ドラえもんさん?」
「一体どうして突然こんなところに?そもそも稟さん達は別の世界の人間なのに・・・。それに、ペコと稟さん達は、
ここに来る前に知り合ってるみたいだけど・・・」
「ああ、そうだな。その辺りも説明しといた方がいいよな。・・・実はな、かくかくしかじかって訳なんだ・・・」
「成る程、そうだったのか!」
――――――なんて、これで通じたら世話はない。
ペコ達は事の成り行きを話した。十三階段と名乗る者に接触したこと、そいつから「野比のび太達を殺す」と聞かされたこと。
そして話は、ペコと稟達が出会う所まで進んだ・・・。
前回
>>234より。
ようやく投下完了。
連投規制がいつにもましてウザかった・・・。
読み直すと、ふら〜りさんの感想の通り、ペコの影が可哀想なくらい薄かった・・・。
これから目立たせてあげたい。
投稿規制に捕まってしまいましたか、サマサさん。
今から学校行かないといけないし今日は帰らないので、
途中で申し訳ないですが感想を書きます。
いよいよ前作のヒロインとヒーローののび太の再会ですねえ。
ロマンチックな雰囲気に浸るまもなく、リルルとしずかちゃんに睨まれてますが。
原作ののび太からは考えられない映画版ののび太のモテっぷりですな。
ペコが何気にいい味出してますね。
鬼更新お疲れ様です。応援してますので(出来れば)このペースでがんばって下さい。
>「キ、キラ・・・」
>「え、え〜と・・・ここは誠心誠意話し合って解決すべきだと・・・」
原作を知っていれば笑わずにはいられないw
キラ、おまえが一番説得力ねえよ!w
283 :
作者の都合により名無しです:2005/07/29(金) 20:16:32 ID:PjJcW16B0
サマサ氏おつですー
所謂「役者が揃った」状況ですね。
プリムラの言葉少ないところが逆にのび太との再開の喜びを表してますね
リルルと自分を比べているところが成長したのか、女として。
284 :
ふら〜り:2005/07/29(金) 22:12:20 ID:eJObxSOv0
>>Tournamentさん
前作とは打って変わって、正統派というか超能力なしのバトルしてますね。地味に地道に、
パワーとスピード。筋肉と拳と脚。だからこその迫力。……外見はデビルですが。で、まぁ
期待より心配してましたが、やっぱり活躍できなかった小日向。起きた時の反応が楽しみ。
>>NBさん
前回から引き続き、スヴェンの親ばかパパっぷりがよろしいですなぁ。今回はイヴ側から
の、パパを慕う気持ちも良。家具扱いの彼はほっといて、相思相愛。目指せラブED。
そんなギャルゲ思考もここまでか、な今回のヒキ。次回から一同一転、シリアスモード?
>>スターダストさん
ギャグとシリアスの切り替わりが唐突かつ極端で、油断ならないのがいつもながらさすが。
ディープなバーガーショップに目を奪われてたら急転直下、彼らの「喰らう」は勇次郎の
「喰らう」とは違って……と、ぞっとしてたら最後にまた。ジェットコースター気分です。
>>サマサさん
「恋敵同士の女の子が仲良しに」って、私の大っっ好きパターンの一つです! 嬉しい、
というか読んでて心地いい。それと、稟の同級生たちと違ってのび太に嫉妬しないスネ夫
&ジャイアン。ふふ、君らはまだそういうお年頃か。いやぁ今回は、男女共に華やかです。
>>273 「あなた、スキーはできる?」
「俺がオリンピックに出れば、金メダルでオセロができるぜ」
アニメ版のOP・EDが非常ぉぉに、カッコ良くて色っぽい「コブラ」より。
♪『オトコ』という名のっ…………物語いいぃぃ……♪
285 :
273:2005/07/29(金) 23:10:03 ID:SV2o7DVn0
サマサ氏の最近の仕事振りには感心するな。
プリムラやりん達がいよいよ活躍しそうですね。
前作好きだったので嬉しいです。この調子で頑張れ!
>ふらーりさん
OP 街を包む ミッドナイトフォグ〜
ED 背中走るバイブレーション〜
両方とも歌える自分がすごく嫌。
今週はザク氏やブラキン氏復活するかな
ブラキンさんはせめて連絡クレ
287 :
作者の都合により名無しです:2005/07/31(日) 13:41:59 ID:M9iB9vUN0
このスレは週末より平日の方が登校多いね
週末に書いて平日にうぷするためかな
288 :
作者の都合により名無しです:2005/08/01(月) 07:59:41 ID:lY5iZ2Zz0
age
>>週末より平日の方が登校多いね
当たり前じゃん
職人さんもだけど、バレさんも忙しそうですね。
皆さん、お体に気をつけて頑張って下さい。
>>171-178 一同がギラーミンに目を奪われた直後、再び闇が雷光に切り裂かれる。
機を逃さず激しい稲妻を呼び起こし、魔王は再び神炎の巨鳥を解き放つ。
しかし、やはり神鳥は美夜子によって撃墜され、その吹きすさぶ爆風に
ドラたち幼い勇者は全員耐え抜いた。魔王は怒りに打ち震え、猛り狂う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おお、伝説の通りじゃ」
「―――――その者、丸きメガネをまといて、大地の底に降り立つ。
白銀の銃をもって魔を打ち倒すものなり―――――――!」
群れをなす謎の老婆たちが感涙にむせび泣き、しわがれた声を発しながら、
めしいた目で戦いを見守っている。銀の銃を構える自分に寄せられる期待。
傷ついたしずかやリルル、ローたちのすがるような視線を強く感じていた。
魔土の操る鉄の巨兵パパンダーはしょくぱんマンら英雄たちが倒してくれた。
宿敵ギラーミンも病に倒れ、もはや残す敵は大魔王デマオンただ一人。
「ジュワッ!」
のび太がかけていたメガネを天にかざすと、のび太の身体は
みるみる巨大化し―――――荒れ狂う魔王と同じサイズにまで達した。
心臓をめがけて、同じく巨大化した銀の弾丸を撃ちこみ――――――
「やったー!魔王を倒したぞ!」
(大長編ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 完)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「のび太、のび太!目をさませー!」
ジャイアンのダミ声と体を乱暴に揺さぶられる震動でのび太は目覚めた。
朦朧とした意識の中、ぼんやりと呟く。そしてはっきりと目覚める。
「あれ?魔王は?・・・いるー!?」
魔王を倒す前となんら変わらぬ光景―――いや、そもそも実際には倒してすら
いなかったのだが―――どうやら、爆風に吹き飛ばされた際、一瞬気を失って
いたらしい。
「それどころじゃねえ。後ろを見ろ!ギラーミンが・・・!」
「ハッ!?そうだ。ギラーミン・・・・・!」
冷や汗を浮かべながら背後を見やる。そこには倒したはずの死神が静かに佇んでいた。
死神の再登場と共に炎の神鳥を放ち、一行を吹き飛ばした魔王が嬉々として叫ぶ。
『ギラーミンよ。我に続け!やつらを撃ち殺せい!』
「勘違いするな。」
魔族化した指先を見せ、冷徹な殺し屋としての言葉を紡ぐ。
「言ったはずだ。オレに小細工を弄せば命はない・・・と。」
魔王ほどの頭脳の持ち主が。言葉の内容を理解するまでに一瞬の間があった。
徐々に涌きあがる屈辱と怒りに、両の眼が鋭く吊り上がる。
『なんだと・・・!?おのれえええ!貴様、逆らうか・・・!?』
「逆らう?相互不可侵のビジネスの契約を先に破棄したのは貴様のはずだが?」
静かに怒りを込めてギラーミンはその変貌した指先を見せた。
しかし、ギラーミンの静かな怒りなどおかまいなしに、魔王の攻撃の対象は憤怒に
流されるまま、宿敵である幼き勇者たちから漆黒の死神ギラーミンへと移った!
ギラーミンとげんごろうとの邂逅―――それは数刻前のことである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――――数刻前――――――
「ここから先は通さねぇ!」
げんごろうの威嚇にギラーミンは一瞬怒りの表情を見せ、そして疑念を抱いた。
「・・・なぜ、貴様がやつらに肩入れする?」
「へん。オレを倒した野郎がムザムザやられんのを黙ってられるかよ!
それに・・・キスギーだ!やつをオレは信用なんかしてねえ!」
げんごろうの叫びにギラーミンは薄い笑みを浮かべ、突きつけた銃を下ろした。
嘲笑ではない。理解とすみやかなる決着の笑みである。
「ふん。ならば話は早い。オレの敵はお前の肩入れしている“やつら”ではない。
これを見ろ。」
「・・・!その手は・・・!?」
ギラーミンの差し出した手のひら。その指先は不気味な魔の眷属のものと化している。
「オレの標的はビジネスの契約を破ったアーサー“D”キスギー。」
「ククク・・・へッ・・・!どうりで・・・オレの体も随分様がわりしてきて・・・
やがる・・・と思ってたぜ。・・・ガハッ・・・!ちょっと前までは単純に・・・・
強くなるための代償と割り切ってはいたけどな。」
血を吐き、息も絶え絶えになりながら言葉を続けるげんごろうにギラーミンは
言い放った。
「やつを信用している者など、元よりいるものか。利用されているだけの者。
お互いに利用しあっている者。それだけだ。」
「チッ・・・!いけすかねえ・・・ゲフッ・・・野郎だが・・・ハァ・・・ハァ・・・
・・・腕前だけは信頼してやる。・・・ま、まかせた・・・ぜ・・・・・!」
ギラーミンは無言で扉の向こうへと走り去り―――――
げんごろうはゆっくりと―――ゆっくりとその場に力尽き、崩れ落ちた―――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ギラーミンを正確に狙い、巨大な怒りの雷が舞い落ちる。―――が、ギラーミンは
冷静さを失わない。放たれた雷に向け、弾丸を放つ。弾丸は避雷針の役割を果たし、
全ての雷を引きつけ、纏いながら突き抜け、その落下地点を大きく逸らしてみせた。
間髪をいれずギラーミンに向け、巨大な火炎鳥が放たれる。美夜子の立ち位置から
ギラーミンまではまだ距離が離れている。回避魔法は届かない。が。
「“バースト・ブレッド”!」
神鳥のちょうど口蓋の部分。鋭いくちばしの中心に弾丸が撃ち込まれる。神鳥自身の
膨大な熱量をもってそれは破裂し、炎を象った巨鳥はギラーミンに届く前に霧散した。
圧倒的存在であるはずの魔王から苦渋の呻きが洩れる。下劣な本性が露呈されていく。
『ぐぬうう・・・!おのれえええ!たかが人間ごときがああああああああああああ!!』
「つ、強ええ・・・!?」
「人間じゃない・・・!」
「な、なんだかわかんないけど、ギラーミンは一緒に戦ってくれるのか?」
ギラーミンは目を丸くしたのび太たちの喝采にも似た呟きに気難しい仏頂面のまま、
こう答えてみせた。
「貴様らの仲間になどなる気はない。――――が、利害は一致している。一時的には
そういうことになるな。」
「そ、それって・・・?」
「まわりくどい表現だけど・・・・!」
ドラ一行にわずかながら戸惑いと共に微笑みの表情が広がる。一時的といえど、心強い
共闘の仲間が現れたのだ。それも一歩間違えば死を覚悟すべき強敵であったはずの・・・!
ギラーミンの恐ろしかった漆黒のシルエットが今、とてつもなく頼れる存在に変わる。
ここに来てドラえもんたちは、また一つ強くなったのだ。
「だが、どうする!?」
「いくらギラーミンだって普通の銃じゃ魔王に致命傷与えるなんて無理なんじゃ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
無言で睨むギラーミンにあわてて弁解するドラ。
「いやいや、あのですね。もちろん強さに関しては何も疑ってないですけど・・・」
「オレの愛銃の銘を教えてやろう。」
ホルスターに納まった鈍い光沢を放つ漆黒の銃にそっと手を触れながら呟く。
「――――――黒銃“ハデス”。冥界の王の名だ。」
ニヤリ・・・死神に皮肉めいた薄い笑みが浮かぶ。
「“冥王”ならばたとえ“魔王”が相手だろうと不足はないだろう?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「まずいですね、山田先生。先程の音波攻撃。今はなぜか止まってますが、もう一度
やられたら持ち堪えられません。」
「全くじゃ。とはいえ、あんな人外の魔物が相手では忍者のセオリーもへったくれも
ないもんじゃわい。なんとか先手を取りたいもんじゃが・・・学園長たちはまだか?」
いくらなんでも想定外だった魔王の存在にため息交じりに山田伝蔵がボヤく。
―――音もなく人影が背後にスッと現れる。
山田伝蔵の息子である若き実力派忍者、山田利吉である。
「父上。学園長どのが精鋭を引き連れて地底に潜入成功しました。戸部先生が引率して
ますので、もうまもなく到着するでしょう。」
そして―――――現れた人影は利吉だけではなく同時に“もう一人”――――――――
「そうか、利吉。ご苦労。そして――――ドクタケの者じゃな。一体何の用じゃ?」
接近を見事に看破されたことに対する動揺は全くない。
「さすがですな。山田伝蔵殿。私はドクタケ忍者・龍魔鬼。忍術学園のみなさま方。
このたびの戦い――――――我らドクタケも共に闘わせていただきたい・・・!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回分終了です。
サマサさんもやっておられたのでどうかとは思ったのですが、
出木杉帝国でも偽エンディングネタをやってしまいました。
ギラーミンの強さには違和感感じる人も多いかもしれませんね。
でも大長編は小学生のジャイアンが原始時代の豪傑と互角に
やりあったりする世界ですから、重力を克服したギラーミンなら
このくらいはやってくれるかな?と。雷等の回避方法に関しては
実際に物理的に可能なことなのかどうかは全くわかんないです!
(きっぱり!)・・・というか普通に無理なんでしょうね。
>サナダムシ様
なんとなく「犬と猫」の挿絵のようなものを描いてみました。
カリン様とヤジロベーは完全にうろ覚えで書いてますが・・・
しょぼいですが、よかったらもらってやってくださいませ。
ttp://www5f.biglobe.ne.jp/~tsuttsu/inutoneko.htm
>>292に余計なものをはさまなければ、レス番とタイトル横の番号が
全部一致していたことに今ごろ気付いてしまいました。ま、いっかw
第七話「それは無邪気であるが故に邪悪」
「・・・どういうわけだ?この有様は・・・」
犬の王国を旅立って数日。ペコはのび太のいるはずのあの町に辿り着いた。だが、そこには誰もいない。
そう―――人が生活している気配そのものが全くないのだ。これではまるで―――
「まるで・・・最初から誰もいなかったみたいじゃないか」
ペコは呟き、それを自分で打ち消すように首を振った。そんなはずはない。自分は確かにこの町でのび太達に出会ったのだ。
きっとどこかにいるはず―――
その時だった。
「え!?なんだ・・・あれは!」
ペコが驚くのも無理はなかろう。突如目の前の空間が、まるで陽炎のように歪んだのだから。そして歪んだ空間に穴が開き、
そこから何かが飛び出してきた。
―――それは巨神像の前では小さく見えるが、実際には十分に巨大といえる機械だった。まるで白銀の鎧を纏う騎士のような
姿をしている。明らかに通常の技術で造られたものではない。
ペコは警戒し、いつでも戦闘に移れるように巨神像を身構えさせる。虚空から現われた白の騎士はなにやら戸惑っている
ようだったが、眼前にそびえる巨神像の偉容に気付き、慌てた様子で剣を構える。
「誰だ、お前は!」
「あんたは、何だ!?」
ペコと同時に、白騎士に乗っているらしい人間が喋る。
「まさか、<十三階段>とやらか!?」
「ひょっとして、あんたも<十三階段>なのか!?」
またしてもハモった。まるでデュエットだ。それはともかく、ペコは驚く。目の前の相手は<十三階段>ではないよう
だが、少なくともその存在は知っているのだ。しかもあの様子からして、<十三階段>とは敵対していると見える。
と、なると―――自分にとって敵ではなく、味方―――か?
「もしかして、お前―――いや、あなたものび太さん達を助けに?」
「え?それじゃ、あんたも?じゃあ、俺達の味方・・・ってことか?」
互いに顔を見合わせる―――とは言っても、ロボットに乗っている者同士なので顔は分からなかったが。
ペコは未だに警戒は怠らなかったが―――ふっと巨神像の戦闘態勢を解除した。
「分かりました―――どうやら敵ではないようですね。お互い、顔を見て話をしましょう」
「・・・分かった。俺達も話を聞きたいしな」
稟達はサイバスターから降り立ち、目の前の巨大な石像を見上げる。中に乗っているらしき人物は、話し方からは
理知的な印象を受けたが、実際に会うまでは気を許せるかどうか分からない。
意地の悪い言い方をすれば、手の込んだ罠かもしれない―――まあ、あれこれ考えても仕方ない。
実際に顔を合わせるまでは何とも言いようがないのだ。
稟はふうっと息をつき、亜沙とプリムラに話し掛ける。
「それにしても、あのシュウって奴。俺達だけ置いていきなり消えちまって。案内役ならちゃんと最後まで
案内してくれってんだ。全く・・・」
「ま、この世界まできちんと来れただけマシって言えばマシなんだけどね。でも・・・なんだかこの町おかしくない?
全然人の気配がしないよ?」
「うん・・・ひとが、まるでどこかに消えたみたい」
プリムラも不安げに辺りを見回す。やはり、全く人がいる様子はない。そもそも少しでも人がいれば、巨大なロボットと
それよりも更に巨大な動く石像が現われた時点で大騒ぎになっておかしくないのに。
と―――石像の足元に、小さな人影が見えた。どうやら彼が、この石像を操る人物らしい。そしてその人物の姿が明らかに
なった時、稟達はまず自分の目を疑い、次に実はこれは夢オチだったのではと疑い、最後に自分達の頭も疑ってみたが、
どう考えても正常なはずだと結論して、やっとこさ目の前の光景が現実だと受け入れる。
犬であった。どこか貴族的な威厳を感じさせる白い犬が二足歩行を行い、自分達の方へと歩いてくるのだ。
そして―――
「さて、ではお互い、腹を割って話をしましょう」
喋った。犬が喋ったのである。常識を足蹴にした目の前の現実に、稟の精神が一瞬崩壊した。
「い、い、犬が喋ったあ〜!ワ〇ルドハーフ!?銀〇聖犬伝説!?WE〇D!?それとも実はこの世界はつの〇漫画の
世界なのかあ〜!?」
「稟ちゃん、落ち着いてよ。今更犬が喋ったくらいで驚いてちゃやってけないよ。あとネタが微妙だよ」
稟からしてみれば、犬が喋ってるような場面はトラウマものだと思ったが、亜沙は割と素直に受け入れたようだ。
「いえ、驚かれるのも無理はありません。別にあなたが悪いわけではありませんよ」
パニックに陥る稟に対して、ペコは澄ましたものだ。その落ち着いた様子に、稟の気分も少し静まった。
「ん、いや・・・俺もちょっと驚きすぎたよ。えっと、俺は土見稟、で、こっちの人が時雨亜沙、それでこっちの
チビっこい子がプリムラだ。で、そっちは・・・」
「ぼくはバウワンコ百九世クンタック・・・のび太さん達にはペコと呼ばれてましたから、呼びにくければそっちでどうぞ」
「んー、バウなんたらよりペコちゃん、ってほうが可愛いかな。よし、ペコちゃんと呼ぼうっと。それでいい?」
「はは・・・別に構いませんよ」
妙にフレンドリーな空気が流れる。と―――プリムラはじっとペコを見ていた。
「あの、何か?」
「・・・イヌさん」
「えっ?」
「・・・お手」
「は?」
いきなりの発言に、ペコは目を丸くする。
「だから、お手」
「いや・・・その、そういうのはちょっと」
「じゃあおすわり」
「だから・・・」
「チンチン」
「・・・あなた、ぼくを何だと思ってるんです」
「ボーナスまで待てずに思わず買っちゃった愛玩動物?」
「違う!」
「じゃあ・・・非常食?」
「もっと違う!」
あまりと言えばあまりの発言にペコもさすがに怒鳴った。フレンドリーな空気はどこかへかっ飛んでしまった。
「違うの?・・・つまんない」
「・・・稟さん、この子はどういう仕付けを受けてるんですか」
ペコはかつてない屈辱に震えながら稟に詰め寄る。
「すまん、悪気は多分ないんだ。許してやってくれ」
「リムちゃん、結構人が傷つくようなことを言うよね・・・」
亜沙はプリムラがドラえもんを青玉と呼んでいたことを思い出しながら言った。
―――やや前途多難ではあるが、のちに盟友となる四人はこうして出会ったのだった。
投下完了。前回は
>>279から。
うみにんさんのあと間を空けずの投下、失礼しました。
出木杉帝国>ナウシカネタとウルトラマンネタに笑いました。偽最終回ネタについては、僕のほうも
リルルとか登場キャラが被ってるのでお互い様、ということで(笑)
ところでギラーミンの銃の名前は黒猫のあれから取ったのでしょうか?
303 :
作者の都合により名無しです:2005/08/02(火) 12:33:47 ID:MQGrEMHO0
>うみにん様
最終回ネタって、ドラえもん長編ではお約束なの?w
しかしギラーミンはおいしいな。魔王に対する冥王ですか。究極と至高みたいですね。
ギラーミンは強そうに見える、という点ではラスボスクラスでしょうな。
>サマサ様
稟って前作の神界でこんなキャラだったっけ・・?w
シャッフル部隊はどこかのほほんとしてますね。プリムラも心安いでしょうな。
決戦を前に、続々と見方が集まっている状況ですね。敵方も・・?
今回の地底出木杉帝国の
(大長編ドラえもん のび太の地底出木杉帝国 完)
は「魔界大冒険」の“アレ”から来てるのかな?
>出木杉帝国
ギラーミンは主役を完全に食ってるな。クールな語り方もらしくていい。
個人的には、ジャイアンのそろそろ見せ場を作って欲しいですね。
また大暴れが見たい。
>超機神大戦
今回はギャグモードという感じですね。楽屋オチっぽい感じだw
サマサさんはギャグとシリアスを交互にしているみたいだから、
次はシリアスだな、きっと。
306 :
作者の都合により名無しです:2005/08/02(火) 20:49:24 ID:3NKRvSQ30
うみにんさん、サマサさんお疲れ様です。うみにんさんはお久しぶり。
・出木杉
「ライバルキャラが味方に」は王道ですね。
ギラーミンも渋いがげんごろうも男気がある。
いよいよ正真正銘ラストバトルなんですねえ…
・超機神大戦
バウワンコに対するプリムラの反応はお約束だけど、
前ののび太との再開シーンを考えると落差が違うな。
やはりプリムラが一番ヒロインぽいね。
うみにんさんは良い人だなぁ
SSともどもイラストお疲れ様でした
サマサさん、このペースで頑張ってくださいね
308 :
作者の都合により名無しです:2005/08/03(水) 18:29:13 ID:nOPTcTv40
サマサさんは相変わらずの絶好調モードですが、
うみにんさんはお久しぶりの登場ですな。嬉しいです。
しかし、バレさんどうなさったのかな?
お体壊してないといいけど。
309 :
作者の都合により名無しです:2005/08/03(水) 23:15:24 ID:O7OGlabbO
大擂台祭の試合の中、見事毒を克服した範馬バキは、今、烈海王の用意した大量の砂糖水を飲み続けていた。
壺の中から、全ての砂糖水がバキの中に流し込まれた時、バキの体にかつて無いほどの超回復が起こった。
復活を遂げたバキを見て、烈はにっこりと微笑んだ。
「バキ、今度は私の願いを聞いてくれるかな?」
烈がおもむろにそう切り出した。
「なんだい?」
バキがそう返すと、烈は無言のまま、拳法着の下を脱ぎ出した。
「しゃぶってくれ」
「え?」
「私の私をしゃぶってくれッッ」
「いや、それは…」
310 :
作者の都合により名無しです:2005/08/03(水) 23:27:50 ID:O7OGlabbO
目の前の物を見て、バキの顔が曇った。烈は悲しそうな表情を浮かべながら、バキの目をじっと見つめた…!
「わかったよ烈さん、こうかい?」
バキは烈の棒を手で掴み、先っぽを口にくわえた。瞬間、烈の体が一瞬ビクッと痙攣した。
「気持いいぞバキ…」
「嬉しいなあ…」
「嗚呼ッッ我、射精寸前ッッ」
「いいぜ」
バキの口の中に、烈の種達が放出された。バキはそれをごくりと飲み込んだ。
「バキ、どうして?」 「中国4000年の遺伝子を入れればさらに強くなると思って」
「謝謝」
その後のバキの活躍は皆さんも知っての通りである
311 :
作者の都合により名無しです:2005/08/04(木) 08:16:32 ID:AgeV5W7R0
コピペ荒らしか。
真面目に書いたんだyo
【こんにちは】【たたかえ】【いたわる】【いりませんか?】10k
【テレポデム】【くれませんか?】【ください】【いたわる】
313 :
作者の都合により名無しです:2005/08/04(木) 20:23:06 ID:YyHja3B10
そうか。
とりあえずバレさん、これは保管はしなくていいですから
ところでバレさん最近更新が滞ってますがお忙しいのでしょうか?
それならば良いのですが、お体を壊していないか心配です。
今HP見たら昨日更新されてた。無駄レスとsage忘れすみません
パオ氏、ザク氏、VS氏、ブラキン氏、ミドリさんたち
最近ご無沙汰の方々のご復帰を心からお待ちしてます。
テンプレに入ってないSSが連載中になってるの、直した方が良いんじゃないですか?>まとめサイト
>>267続き
さて視点は横浜の女学院地下に移る。
「ゴメンなさいね。大したおもてなしもできなくて」
「その」
「今日はね、いつものハンバーガーとあと、…ジャーン! なんとサラダを買ってきたりしたけど、お口に合うかしら」
「…はい」
「そう。良かったわ。あ、でも若いのに野菜が好きって、偉いわね剛太君」
「…はい」
壁一面に脳みそがびっしりな部屋で、剛太は困惑しきっていた。
目の前には、頭をフードつきの兜(ヘルム)に覆われたセーラー服の少女が一人。むろん、女学院の生徒である。
ルリヲヘッドという兜に操られ、ちょうど最寄のハンバーガーショップから帰ってきた所だ。
ヴィクトリアからの電話があった翌日より、剛太はルリヲヘッドを解除され、食事時にはこんな光景が繰り返されている。
剛太としては色々突っ込みたい。
食料調達の為に生徒を操っていいのかとか、街中じゃ目立って色々マズくないかとか代金はどこからとか、中華街が近く
にあるのになぜハンバーガーを買ってくるのかとか、ジャンクフードは嫌いだとか、多少ときめいたがジャーンはどうかとか
───穴倉の中、斗貴子の結婚にひたすら欝になって抜け出せない自分が情けない、とか。
だがそれらを口にしようとするたびに、アレキンサンドリアは嬉しそうに色々と話しかけてくる。
彼女は彼女で、100年も他人との交流がなかったから人寂しいのだろう。
ちなみに、アレキサンドリアにとっちゃ生徒操るのは茶飯事で、街中で浴びる視線はなんだか100年間引きこもっていたスト
レスをぎゅんぎゅん昇華してくから脳内麻薬出まくりで気持ちいいし、代金は実家から持ち出してた金品を古道具屋に売って
調達したし中華は持ち帰れる店が少ないからハンバーガーの類を買ってるし、剛太の好き嫌いは記憶ともどもスキャンしたけ
どちぐはぐに覚えてて、ジャーンは素で言ってのけたし、懊悩する剛太に対しては、しばらくゆっくりした方がいいと思っている。
不気味な仮面つきのセーラー服が、剛太が食べやすいようにとハンバーガーの包みを開けたりしてくれる。一体何のプレイなのか。
ちょうどこの時も、サラダのレタスにフォークを刺して「はい、あーんして」などとアレキサンドリアがのたまった所だ。
「自分でやりますから!」
剛太はフォークをひったくり、レタスを口に突っ込むと、どんより顔で咀嚼した。
どうも調子が狂う。だが買ってもらったものを無下に断れない。
何かを買ってもらう、というのは幼い頃に両親を失くした剛太には貴重な体験だ。
戦団の養護施設育ちだから、彼だけに何か特別に買ってもらうというコトはなかったのだ。
だから内心文句をつけつつも、買ってもらった物を食べている。
そう、今はレタスを。10ccほどの野菜用洗剤をシンク一杯の水に溶かして → そこに30分ほど浮かべて殺菌完了!
なレタスを、そしゃりそしゃりと食べている。
材料的には各種ハンバーガーの余り物で、コーンとピーマンとドレッシングぐらいがこれ専用のサラダだが、意外に旨い。
その様子を仮面セーラー服はじっと見ている。視線に気づいた剛太が見返すと目が(仮面に隠れて見えないが感覚的に)合った。
「い、いえね」
アレキサンドリアは口ごもり、言い訳をするように呟いた。
「ヴィクトリアに弟がいたらこんな感じかなーって」
「………」
二人の前歴を知る剛太にとってはやや重苦しい話題だ。沈んだ気分がまた沈んだ。そういう自分がどうも嫌だ。
(ほんと何やってんだろ俺。ちっとも進歩してねぇ。けど──… 旨いなぁ……)
しかし不思議とこの脳みそが見える部屋で摂る食事は、剛太にとっておいしい。
様たるやまさにヒモ。恋に破れて未亡人にたかるろくでもないヒモ。クズめ。
話の流れとは関係ないが、ここでハンバーガーの作り方について説明しようッ!
1.パンに焼きたてのパティ(ハンバーグの字【あざな】だ。本名は捨てた)を乗せる。
2.そこにマスタードを5g塗って、10gほどのオニオンをぱらつかせる。
3.ディスペンサーという筒でケチャップを、下痢便のよーな音を立てつつ右回りのらせん状に塗る。
だいたい6〜7gほど。最後にパンを乗せて完成。
ちなみにパンは専門用語でバンズといい、上下の略称は上バンと下バンだ。
一袋8個入り。朝、ででんと配達される赤いケースたちには3袋ずつ入ってる。
が、それじゃ何かとスペースを喰うので9袋詰めに変えてから厨房に置く。
あと、バンズを焼くトースターを置くステンレス製の3段ラックが厨房にあるが、その下2段には袋のままバンズを入れる。
満タンだと上下あわせて大体56袋ぐらい。忙しい時はそこから銃弾のように袋がなくなる。
繰り返すが当節は夏休みだ。「休」とつく日でサービス業が忙しくないのは定休日と、一休さんの命日ぐらいなものだ。
つまり11/21。
平賀源内がブタ箱にブチ込まれた日で、日清戦争の旅順攻略の日で、ジミー大西がダーマ神殿にて画家へ転職した日だよ。
戦部とヴィクトリアのやりとりが佳境に入った頃、さてやさてや、バイトの鑑と無愛想。ねいりゃさよはたて、しせいぎうがっていみいのぎ。
訪れた暇を来るべき忙しさへの備えに充てていた。
具体的にはバンズの補充や冷凍品の解凍とか油の交換とかだが、つまびらかに書いていると際限がないので省く。
ただ、無愛想をからかいに来店した軽そうな男が「邪魔スルナ!」とばかりにカウンターの奥に引き込まれ、鉄拳を雨あられ降らされ
チェスをしていた若人二人を呆れさせていたという「アニメじゃ確かやってない部分だから分かる人にしか分からない」コトだけを付記しておく。
閑話休題。
「…どういう必要があるっていうのよ」
質すヴィクトリア。
そこへ戦々恐々の体でバイトの鑑がラッシー(Mサイズ)を運んできた。先ほどの男はカウンター近くで痣だらけだ。
戦部は豪儀なコトに、ラッシーのフタを外して氷ごと一気に流し込んだ。
「言っただろう。俺は、戦いたかった連中のコトを調べたと」
強固なホムンクルスを咀嚼できる顎の強靭さは推して知るべし、話す戦部、氷をばりばりと噛み砕きつつ。
「調べたのさ。ヴィクターIIIだった武藤カズキのコトもな。そして──…」
差し出されたのはあの本だ。ヴィクターについて書かれた戦史。目を留めたヴィクトリアはハっとした。
父のコトを読んで力が抜けて、彼女は全部を読んでいない。
「これに記しておいた。読んだかどうかはともかくだ。今一度」
「読む訳がない。アイツのコトなんか別に知りたくなんか」
きゅっと唇を噛み締めるヴィクトリアはまったくもって影が濃い。
「そうか。なら単刀直入に説明してやろう。アイツは、お前が渡した核鉄で死を免れた。
そして身内や友人のために戦い続け、一つの学校を守った」
「で、パパと戦ったんでしょう」
そこは知っている。千歳や剛太の記憶をスキャンしたアレキサンドリアから聞いている。
「パパが悪者でアイツはヒーロー。──同じだったのに」
同じように他者を守るためだけに戦い続け、同じように異形になったのに、ヴィクターだけが、父だけが死んだ。
まったく無縁の男を生き返らせた所で何の得になるだろう。カズキが大人しく死んでいれば、あるいは。
「もう、帰る。そんな話なんか聞きたくない。聞く必要なんか──…」
「ヴィクトリア。ホムンクルスはな」
席を立ちかけた瞬間に名前を呼ばれ、ヴィクトリアは少し動きを止めた。
「以前(まえ)にもいったが、エサ場として学校をよく狙う。だから戦団は学校に網を張る。だが」
「……」
「俺はそれに参加したコトがない。どうも興味が薄いからな。根来も円山も犬飼も毒島も、再殺部隊はみなそうだ。
戦団のしたがる守りの戦いがまるでできない連中さ」
ことり、と岩肌のような手が紙カップを置いた。
ヴィクトリアは見下ろしていてもまだ胸ほどまである大男が、ある種の化物に見えてきた。
そうであろう。先ほどの狩り云々の質問もそうだが、戦部はどうも戦士からぬ言動が目立つ。
同種同族の人間が喰われて命を落とすと知りながら、「興味が薄い」の一言で片付けている。
災厄を撒くホムンクルスに対する感想は「強いかどうか」であって、そこに義憤や使命感はまるでない。
しかしだからこそ、ヴィクトリアと一つ机でまっとうな食事ができるのだろう。
それは突き詰めれば矛盾がでるが、ホムンクルスを糧にする戦部の性質のせいか。
ホムンクルスの血肉は喰った人間のそれであり、またホムンクルス自体も元を正せば人間である。
ならば戦部は極めて間接的にだが、人喰いをしているという見方もできる。
そして直接的、ありのままに戦部を評すならば、彼は異質極まりない「食」を日常にしている。
ひょっとすると、魚や肉を食べる人間が他者のそれを見るように、戦部は人喰いを見ているのではないか?
あるいは、現役最多のホムンクルス撃破数を誇りながらも戦士長になれず、奇兵扱いの再殺部隊に配属されたのは
そういう倫理的な問題を戦団が考慮しているからではないか?
そんな色々な考えがヴィクトリアを過ぎっていく。
「まぁ、守った守れなかったは俺にとってはどうでもいい。しかし、武藤があの場におらねば──…」
戦部はアゴに手を当て、「事実だけをいうぞ」と生真面目に前置きし、続けた。
「お前の父は学校の生徒を食い尽くしていただろうさ。繰り返すが、武藤はお前の渡した核鉄で蘇った男だぞ」
戦部のいわんとするコトが、ヴィクトリアは初めて理解できた。
彼が伝えたかった「必要なコト」の意味も。
と同時に、ひどく力が抜けた。筒に通した金髪が緩やかに滑り落ち、椅子に体を預ける形になった。
恐怖と戦い、厄災をはね除け、より多くの人が幸せになれるよう──
そう呟いたヴィクターが、100年眠り続けて起きた瞬間、無辜の人間たちを殺す羽目になったらどうしただろう。
ヴィクトリアが人喰いをしたと知るよりも激しい憎悪を、自身に向けたに決まっている。
だがそれは、アレキサンドリアとヴィクトリアの手中にあった核鉄でからくも避けられた。
避けられたといっても、それは大きな悲劇の中の小さな偶然にすぎない。
不幸中の幸いなどという言葉で慰められるほど、一家は軽々しい道を辿ってはいない。
それでも、ヴィクターの憎悪は一つだけ減った。
…100年かけてたった一つ。
ヴィクトリアは。
静かに額へ手を当て、そのまましばらく俯いていた。
戦部はじっと、外を見ていた。
翌日。彼らは横浜駅にいた。
旅は、始まりと同じように突如と幕を降ろした。
戦部の旅の目的は、結局、ヴィクターの件をヴィクトリアに話したいだけだったのだろう。
話そうと思った動機は、戦団のせいで父を失った少女への贖罪のつもりだったのか。よく分からない。
ただ戦部、
──あれはどうも俺らしくなかった。
と後々、再殺部隊の面々に頭を掻きつつ話したところを見ると、贖罪だという自覚はあったらしい。
戦史(とその中心人物)を調べる戦部の「慰み」が、ヴィクトリアにとってもそうだと思い込んでの贖罪だと。
そしてもう一つ、真顔でこうも付け足した。
「まぁ、食事は勝手に付き合わせたワビ代わりさ。しかしたまには普通の食事も悪くない。
どうだ犬飼、今度一献付き合え」
ヴィクトリアはどうか。
別れ際、戦部は「いずれ戦団に復讐するつもりなら、俺と戦え」とまたもや定型句じみたセリフを吐いた。
ヴィクトリアは少し黙った。何かを考えていたらしい。
「あなたとなんか戦う気はないわよ。断ってもどうせ勝手に来るでしょうけど」
やがていつもと同じような冷然たる笑みを浮かべると、彼女は帰途についた。
帰るとそこでは、仮面セーラーが剛太といっしょにおはぎを作っていた。
ヴィクトリアはコケた。手にしていたみやげ物を全てブチ撒けつつ、盛大にコケた。
「何をしてるのよママ」「おはり作ってるのよ」「いやおはぎですって」「そう、おはりを」
そんなこんなで、まずおはぎを食べた。食べ終わると剛太は帰る旨を告げた。
アレキサンドリアはあれこれと引きとめたが、剛太の意思が固いのを知ると
「じゃあいつでも遊びに来てね。そだ、ヴィクトリア、疲れてる所悪いけど、送ってあげてくれる?」
と名残惜しそうにいった。ヴィクトリアは不承不承頷いた。
女学院の正門近くで、剛太は間を持て余していた。
同行しているのはホムンクルスだ。それも極めて目つきの悪い、性悪の。
剛太を正門前まで送った後、帰ろうともせずじっとしている。相変わらずの仏頂面だ。
なぜか少し険がとれたように見えるが、その理由は察しようがない。
ただなんとなく、見送ろうとしているのかと思った。しかし何もいわずに去るのもやや抵抗がある。
「──そだ。アレキサンドリアさんに伝言を頼めるか?」
探し出された話題に、意外そうなツリ目の視線が刺さる。
「またさ、来れるときには来るって。ジャンクフードは嫌いだけどサラダは好きだって」
頼みつつ、内心は恐々だ。ヴィクトリアの戦士嫌いは知っているから、何をいわれるか分かったものじゃない。
「…別にいいわよ」
「へ?」
目が点になる剛太に、ヴィクトリアの冷たい声が浴びせられる。
「別にいいっていったのよ。ママがいいっていうならいいの。悪い?」
悪くはない。思わぬ反応に、軽い気質の剛太の舌は一気に滑らかになった。
「そのさ」
「何よ」
「お母さんってさ、いいよな。頼みもしない物を買ってきたりするけど、でも一生懸命で、いいよな」
「………うん」
でれでれと笑う剛太につられたように、ヴィクトリアの唇も綻んだ。
「だから、俺がいうのもアレだけど、大事にしてやらないと駄目だと思う」
そして剛太は去った。
見送るヴィクトリアは嬉しかった。
脳だけのアレキサンドリアが「お母さん」と呼ばれ「いいよな」ともいわれたのだ。
嫌悪していた戦士の言葉を素直に受け止めれたのは、旅のおかげかもしれない。
何年ぶりだろう。
ヴィクトリアは本当に久しぶりに満たされた気持ちになれた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
部屋に戻ると、ヴィクトリアはみやげ物と、戦部から貰った戦史をアレキサンドリア(の操るセーラー服)に渡した。
旅の話はしばらく、尽きないだろう。
とりあえず終わり。レスを下さった方々には重ねて謝意を。
>>269 武装錬金は好きなキャラぞろいなので、ありえない組み合わせを書いてみるのが
楽しいですねやっぱり。あと、濃い話は書いてて生きる活力がグングン沸きます。
3億というとマンボウが生む卵の数がそれで、イタリア地方の古い諺では「マンボウと
ヒステリック女の出産には近づくな」といわれるくらい恐ろしいものなんですよ。ちなみに諺は嘘です。
>>270 シリアスな展開としては、こう、戦部の人喰いの辺りのような感じが理想ですね。
あと実験といえば、「食」と「充分に望みを達した」という二つのテーマを描くというのがあったりします。
>>271 ええ。嘉門達夫のハンバーガーショップを聞いて「コレだ!」と思い。
トレーをゴミ箱に捨てたりしたら駄目ですよ。あと、楽しんで頂ければ幸いです。
>>272 元々は戦部とヴィクトリアの語らいありきだったんですが、どうもおかしな
話を書いてるうちに本題がズレて。いってしまえば導入部、本筋とまるで関係ないですねこりゃ。
>>284 お褒めに預かり光栄です。しかし思いつくまま気の向くまま、なんというか書き散らかしの連続で
話の振幅がちょっと大きすぎちゃったかなーとも。乱高下が激しくてアラミド繊維を持ってないと
末堂のようになりかねませんから。そして、「喰らう」はあまり書き込みすぎるとご飯を食べるのが
怖くなるので、割とぼかした形に。戦部を相手にするホムンクルスはご飯に食べられるワケで、それも怖い。ホラーだ。
では。しばらくの間借り、失礼しました。
>スターダスト氏
一連のSS、通して読んだよ。面白かったです。
戦部はなかなか武骨な気風の人物のようで、好みでした。
突然ハンバーガーのレシピに話が移ったのはワラタ
新作も期待したいですね。
このスレに投下されるみなさんの作品を読んでると触発されて
自分も何か書きたくなる衝動に駆られますね。
…己の文章力の乏しさのためなかなか実行に移せないけど(笑
325 :
作者の都合により名無しです:2005/08/05(金) 08:42:42 ID:DXfWy4y00
お疲れ様ですスターダスト氏
ハンバーガーの作り方に急に移行したのは笑った
実践的なSSですな。シリアスとギャグの落差がすごいなあ
ヴィクトリアも希望あるラストでよかったです。また新作待ってますよ。
>>524 がんばれ
午前9時。倉庫の周りには車両や人々が集まっていた。
倉庫の一戸だけが燃え続けていたのだ。幸い風は強くなかったので
別の倉庫に燃え移る事はなかったらしい。まあそうであるにせよ
倉庫が突然大破したのだ。傍から見たら異常だろう。
「回って右!5人!」
号令が飛ぶ。火は大分収まりつつあるようだ。警察官が消防士に質問している。
要するに放火か、それとも事故か。原因の判定を急いでいるらしい。
誰かの体が運び出されていた。一人は金髪、そしてもう一人は青い髪の女性だった。
二人とも息はしているらしい。応急処置ながらも酸素マスクが添えられている。
「急いで!○△病院へ!」
救急車がサイレンを鳴らしながら走り去っていく。数十分後、警官とパトカーは去り
野次馬もいなくなった。
人気がなくなり船の汽笛の音しか聞こえなくなった港に三人の人間の姿が現れた。
一人は金髪の女性、二人目は眼鏡を掛けた高校生、三人目は長い茶髪のタラコ唇だった。
「髪の毛やら何やらは警察が皆持ってったんでしょ?他の所当たりましょうよ。」タラコが口を尖らせた。
金髪の女性はタラコを無視して匂いを嗅いでいる。真祖であるが故に能力は並みの人間の数百倍なのだ。
「北西に移動してるわね。それから東へ。その後暫く留まって今度は・・・。」
タラコは面食らっている。いきなり匂いを嗅ぎ始めたと思ったら今度は独り言をブツブツ唱え始める。
「葉山さん。事がコトなんです。今は彼女を頼りにした方がいいです。」眼鏡が囁いた。
葉山と呼ばれたタラコは小さく溜息をついた。もしキレたらこいつは誰にも止められないんじゃないか。
恐らく親友か仲間であろうこの高校生にさえも。
「アルクェイド、何故僕達だけを助けたの?シエル先輩達も一緒に助けられたはずなのに!」眼鏡が叫んだ。
アルクェイドの目つきが変わった。真剣な表情ではなく怒りの表情が滲み出ている。拳を握り震えている。
「ギリギリだったの。奴と私の力がぶつかり相殺しその衝撃で吹き飛んだ。一番近くにいたのが志貴と
葉山君だったから。」
まあ五人とも命に別状は無い事だけが唯一の救いだろうか。あの二人は恐らく警察に事情聴取をされるだろう。
あまり3人は動かない方がいいかもしれない。志貴という人物が解放されたのだからこの一件はこれでお開きだろう。
「こんにちは。」
不意に声が聞こえた。聞き覚えの無い声だ。しかもこんな場所で。親しげに挨拶をしている。自分達は漁業者の出で立ちでは
ない。刺客か。
「あなたは・・・誰?」アルクェイドが警戒する様に質問した。
「俺は陸奥九十九。シエルという女性に来いと言われた。」
葉山は一人面食らっていた。格闘技界では彗星の様に現れた存在として有名な
あの陸奥九十九が目の前にいる。本物だろうか。
「私達に何の用?」
「あんた達の追ってる存在の大ボスがシエルのターゲットらしい。俺はそれを手伝いたいんだ。」
葉山は話が大きくなっているのを感じた。奇妙なモノを見た上に今度は有名人に遭遇している。
サインの一つでも貰っておいた方がいいかも知れない。一生にそう何度もこういうチャンスは無いだろう。
「私はシエルから何も聞いてはいないけどね。協力するなら何か情報を持っているんじゃないの?」
「やはりそう来たか。なら見せよう。来てくれよ、風間さん。」
九十九が腕を動かすと、コンテナの陰から一人の青年が現れた。二十歳前後で黒髪の理髪そうな青年だ。
「俺の名は風間仁。よろしく。」
「こいつは暴走して変身した。目が赤くて翼のある存在にな。」
葉山は震えそうになった。暗闇でみたあの赤き目。目の前にいる青年があれと同じになる。
恐怖で身が凍りそうだ。冗談じゃない。逃げ出そう。
不意に手首を掴まれた。
「どこ行くの?あなた狙われるわよ。そうなったら手遅れになるかもよ。」
アルクェイドの真実味のある言葉とオーラに葉山は気圧された。体が震え始めた。
やっぱりあのバケモンと互角だ。
「俺が変身した事情を説明させてくれ。あんた達が追ってるターゲットの手がかりになるかも知れん。」仁が提言した。
自分には人間と闘神と呼ばれる存在の血が混じっているという事。遺伝子の関係で度々変身して暴走する事。
恐らく近い内に黒幕が現れる可能性が高いという事。仁は淡々とそれを語り終えた後、全員の目を見回した。
信じ難い事だろうがこれは現実なのだ。
「んじゃそいつを見つけ出してみんなで叩けばOKじゃねぇか?」葉山が口を出した。
アルクェイドがため息をついた。無知な存在を見て呆れるかの様に。
「わかってないわね。昨日のあいつはあなたと同じ空手家よ。決戦の時は一対一で勝負するに決まってるでしょ。」
葉山は嫌な予感がした。あの怪物が空手家。冗談だろう。夢であってくれ。
「俺は鉄拳トーナメントが開催されるという情報を掴んだ。それまで後数ヶ月程ある。それまで戦力を整える事が
出来ればOKなんだが。」仁が話し始めた。
「ちょっと待ってくれよ。アルクェイドやアンタや九十九さんならまだしも俺は強くは無いぜ?俺は情報を探る事が出来ても
ラスボスとの肉弾戦は不向きだぜ。」葉山が口を尖らせた。
「出場するのは俺と金髪と仁さんだ。残りはゲリラ作戦で黒幕に攻撃してくれればいい。」九十九が葉山をなだめた。
それを聞いて安心したのが胸をなでおろす動作をする葉山。だが恐怖は収まってはいないらしく足が震えている。
「小日向君とあなた達はいつもどおりの生活を続けてくれれば良いわ。シエルが病院から出てきたら行動を開始するから。」
アルクェイドの言葉により恐怖が薄らいだのか葉山に笑顔が戻った。
今回の投稿はこれで終わりです。
>スターダストさん
連載、お疲れ様でした。シリアスになったりお笑いになったり、
びっくり箱みたいになにが飛び出すのかわからない所が気に入ってました。
最後は料理教室まで入ってましたねw
ラストは静かな終わり方で、らしいというか意外というか。
また何か書いてくれる事を期待してます。がんばって下さい。
>輪廻氏
ちょっと九十九の登場の挨拶がらしくないようなw
鉄建トーナメントまで数ヶ月ですか。まだ人波乱も二波乱もありそうですね。
「そして大会当日」みたいな感じになるかもしれませんがw
九十九以外はあまりわかりませんが、激闘を期待してます。
330 :
ふら〜り:2005/08/05(金) 21:02:06 ID:viod2CWW0
>>うみにんさん
ギラーミン、渋い! 職人気質というか己の哲学・美学に従っての寝返りといい、静かに
淡々と見せつける強さといい、「幼き勇者たち」とは違いますねぇ色々。偽EDが思いきり
ファンタジーだっただけに、渋さが際立っております。忍者たちも含めて、逆転の気配!
>>サマサさん
私だったら、ガルキーバとかバンパイヤとかチャチャとか。……さておいて、ペコ哀れ。と
いうよりプリムラ容赦なし。彼女はどうやら、「稟たちはまず自分の目を疑い〜」の葛藤を
経ることなくストレートに「あ、イヌさん。じゃあ、お手」と思考した模様。ツワモノ也。
>>スターダストさん
「刃牙」や「播磨灘」など食事シーンがやたらと美味しそうな作品はいろいろありますが、
レタスをそしゃりそしゃり、もなかなか良いですな。サラダを食べたくなりましたよ。但し
普通の食べ方で。そういえばこの作品、肉食がある意味中核ですよね。でハンバーガー?
>>Tournamentさん
関係者が集まってきましたな。しかしここでの九十九は、サインを欲しがられる程の有名人
ですか……って原作でもそうか。かと思えば「ゲリラ作戦で攻撃〜」と、「剣心」の斉藤の
ような実戦的思考。トーナメント、果たしてKOF94風になるのかそれとも96風か?
>>291-296 『パパンダー・ジェット・ストリーム・アタ―――ック!』
「うわああああああああああああああああああああああああああ!」
ヴォイド・ハウリングによって生じたパーマンたちの隙を魔土は見逃さなかった。
背面に装備されたジェット噴射を利用して5人全員を一気に弾き飛ばし、
宙へと舞い上がる。
「あたたた、とんでもない音波やったな。やはり底の知れん敵やで、魔王!」
「ちっくしょう!なんだよ!?パパンダーを脱出させちゃったじゃないか!」
「もう!まだ耳がジンジンするわ・・・」「ウキィイ・・・」
空中で身を立て直しながら思わずぼやくパーマン軍団。パー子がふと辺りを見回す。
「ねえパーやん。しょくぱんマンさんがいないわ。さっきまでいっしょだったのに。」
「ホンマや。どこへ・・・ハッ!?そうか!やりはったな、しょくぱんマンはん!」
『ふははははははは!パパンダーをなめるなよと言っただろ?パーマンども!』
魔土の勝ち誇った笑いと轟音と共に大地に降り立つパパンダー。しかし――――
見る間にパパンダーの動きが鈍くなっていく。
『ん?なんだなんだ?バカな・・・! パ、パパンダーのエネルギー残量が・・・
みるみる減っていく・・・!?う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』
パパンダーの背部が大きく膨らみ、破裂する。中から飛び出したのは―――――
両腕にそれぞれアンパンマンとカレーパンマンを抱えたしょくぱんマンであった。
ジェット噴射の際に生じたわずかな隙を逃さず、二人の救出に飛び込んだのである。
無謀な突入の影響で、ほどよくこんがりきつね色に焼けている。救出された二人は
エネルギーを吸われ続けていたせいで顔がしわしわにしぼみ、疲労のあまりピクリ
とも動けない、見るも無残な表情である。しょくぱんマンは凛と叫ぶ。
「みなさん!2人は救い出しました!」
「よっしゃあ!やりはったな!しょくぱんマンはん!これで一気にいけるでえ!」
「みなさん。もうしばらく持ちこたえてください!私は2人を連れてジャム
おじさんの元へ!そうすれば2人はすぐにでも戦線復帰できるはずです!
7人でパパンダーを一気に倒しましょう!」
「オッケー!」「ウッキー!」「まかせなはれ!」
「だけど、動力源を失ったパパンダーが相手なら僕らだけでも楽勝かもね!」
ブンブン腕を振りまわして意気込むパーマン1号。
しかし彼らが攻撃態勢に入る寸前、破損した噴射口を強力な防護シェルターが覆う。
魔土の素早い対応に、再びパパンダーの装甲そのものには隙はなくなった。
『クッソー!しかたない。危険だが・・・・予備燃料炉点火!緊急脱出!』
パシュゥッ。コクピットがパカリと開き、UFO型の小型の救命ポッドが飛び出す。
『クヒヒヒヒヒヒ、まだ切り札は残っておる!おののけ!パーマンども!』
魔土はニヤリとほくそえむと、上空からパパンダーに向って何かを照射した。
『“ビッグライト”!』
「なんやとおおおおおお!?」
パーやんが絶叫する。ビッグライトは既に軍事兵器として完成していたのだ。
元々小山ほどの大きさのあるパパンダーがさらに膨張し、巨大化していく。
『エネルギー残量は少ない。短期決戦でケリをつけてやるぞ!パーマンども!』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「な、なんだ?あれ・・・?」
「ビッグライト・・・?」
魔王デマオンと対峙するドラ一行にもはっきりと認識できるほどに、突如として
膨れ上がった超兵器パパンダー。デマオンはその姿に満足の笑みを浮かべた。
『ククク・・・あれが魔土のパパンダーの最終形態か。我も負けてはおれんな。
我もまた巨兵どもを目覚めさせん!』
魔王が狂気の視線を送るその先には鉄人兵団の残党の姿があった。指揮系統を失った
彼らは混乱し、反乱軍との戦いに敗れたその大半が動かない鉄の塊と化していた。
魔王は物言わぬ、もはや微塵も動くことのできぬ彼らに向け両の手を大きくかざして
みせた。
『出でよ!“ゴーレム”!』
青白い魂が魔王の手のひらより生まれて、兵団の残骸たちの胸に吸い込まれていく。
魂を核に兵団の残骸に、地中より様々な鉱物がまとわりついていく。地底世界に眠る
鉱物が人の形を成して新たな擬似生命体として現出されたのだ。
そう。自ら味方に招き入れた鉄人兵団を利用して―――――――――
「クッソー!次から次に・・・!」
「いくら魔王だからって、あいつの魔力は底なしかよ!?」
身構えるドラ一行。しかし、ゴーレムたちの標的はドラえもんたちではなかった。
満身創痍。ボロボロの反乱軍に無数の巨石兵と指揮系統を失った迷える鉄人兵団の
残党が襲いかかる。
そんな中、生まれ出でし大量のゴーレムの一体に目ざとく目をつけた者がいた。
確かに一際目立った存在ではある。様々な鉱物によって構成された個性豊かな巨兵たち。
その中にあっても特別な輝きを放つ一体。きり丸の目は極限の戦いの最中にも関わらず
ゼニの亡者モードとなって我を忘れかけていた。いや、完全に忘れきっていた。
「・・・・あいつ・・・金の塊!?うひ・・・あひゃらうへへへ・・・・・・・・♪」
そう。よだれをダラダラ流しながら、数ある鉱物の中でも黄金によって形成された
一体のゴーレム“ゴールドマン”にきり丸の目は釘付けになっていたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
デマオンの攻撃の手が止まっているその間に、ギラーミンは美夜子に接近し、
問いかけていた。
「美夜子とやら。オレはまだやつの正体を掴みかねている。キスギー、そして魔王と
呼ばれるヤツは何者なのだ?異界から訪れた人外の悪魔だということはわかるが・・・」
「キスギーは私たちと同じただの人間。魔王がこの世界に存在するためのかりそめの器に
しかすぎなかった。」
ギラーミンはたったそれだけの簡素な説明でおおよそを理解し、頷いた。
「ふ、なるほどな。・・・ふん。まだ器のときの方が幾分賢そうに見えたがな。
あの青ダヌキが言っていたことを逆に問おう。貴様らにヤツを倒す術はあるのか?」
「・・・・・魔王の器であった“キスギー”が生み出し、のび太くんに託した“銀の銃”。
そして“白金の弾丸”を唯一の弱点である心臓に撃ち込むこと・・・・・!」
「クク・・・・決め手はやつか。ノビ太・・・やはり只者ではなかったわけか・・・!」
ギラーミンはニヤリと笑いながら、のび太を見た。そして静かに共闘を。援護を決意する。
美夜子はのび太たちの生み出す奇跡のような力に感動にも似た感情すら覚えていた。
あの恐ろしいギラーミンまでもが今、みんなと共に戦おうとしている。これまでの戦いは
決して無駄ではなかったのだ。永く苦しかったこの戦いが彼らにさらなる力と、
より多くの人間を巻き込んだ結束を与えている。美夜子は確信し、魔王を見上げる。
「魔王、あなたは強い。だけどきっと・・・あの子たちには勝てないわ・・・・!」
『これしきで終わりではないぞ。忌まわしき人間の勇者どもよ!そしてギラーミンよ!
ククククク・・・古の魔獣を復活させる。目覚めよ!“魔巨獣ザムザヴォエイラ”よ!』
魔王の巨大な両の手が、その忌まわしき5本の指先が、踊り狂うがごとく激しく宙を舞う。
空中に巨大な魔方陣が描き出された。無から現出された闇のゲートが開き――――――――
魔王にも見劣りしないほどの巨大な獣が召還される。その姿は魔竜たちとはまた違う高貴さ
をも兼ね備えた気高き竜の御姿。まさに神話に登場する西洋の神竜ドラゴンそのものである。
耳元まで避けた巨大な口蓋にギラリと生え揃う鋭い牙。王者の証たる巨大な角。その全身は
隙間なく鋼の鱗に覆われ、生半可な物理攻撃では手も足も出そうにない。今新たに加わった
強力な助っ人、死神ギラーミンとて人間である。この巨大な化け物を前にどれほどのことが
できるものだろうか。だが、集いし幼き勇士たちはそれでもなお、決してあきらめることは
なかった。闘志を奮い起こして再び戦いに挑む。
―――――その頃・・・
地底世界の上空を飛来する高速の物体。既に“魔界”は視界に入っている。
不気味な魔界の空がさらに濃い闇色に染まり、謎の雷が荒れ狂っているのも知っていた。
だが、それとは別に―――――――――
「うわあ〜!ダメだ!どうにもなんない!」
スネオはパニックに陥っていた。搭乗中の戦闘機が暴走している。原因は明確である。
「なんだ今の強烈な音波は・・・!?」
「・・・・!(さっきのあれはデウス――いや、デウスに囚われている女神たちの―――
“歌”―――――――!?)」
“歌”である。ヴォイド・ハウリングは反乱軍こそ仕留め切れなかったものの、
やはり様々な者たちに深刻なダメージを与えていたのだ。
「ダメだ!さっきの凄い音で操縦機が壊れちゃって・・・コントロールできない!」
「大丈夫。私が守ってあげる。」
「へ?守・・・? う、うわあああああああああああああああああああああああああ!」
スネオと少女の体は円形の光に包まれた。しかし、戦闘機はコントロールが定まらぬまま、
きりもみ状に回転しながらさらに速度が加速されていく――――――――!
再び無謀な戦いに挑もうとするドラたちが動き出すその前に―――――――
ガガァア―――――……ン…!!
盛大な打撃音を発しながら、一基の戦闘機が―――――――
魔王の生み出しし切り札、“古の巨魔獣”に―――――――激突した―――――――!
激突といっても正面衝突というわけではない。巨獣の顎先をかすめるように、
なめるように突き抜け、そのまま飛び去っていく。突然現れて、そのまま彼方へと
消え去っていく謎の戦闘機を、呆然と、あんぐりと口を開けて眺めるドラえもんたち。
「な、なんだったんだ?」
と思ったら、
「あ、戻ってきた。」
彼方へ消え去った戦闘機はあっさりと機体を翻して、あっというまに舞い戻ってきた。
そうこうしている間に―――――“古の巨魔獣”は向かい来る戦闘機に怒りの眼差しを
向け、威嚇するべく巨大な口蓋を開く。そのままグルリと白目を剥いて――――――――
ズズゥウウ……ン…!!重い地響きをたてて、“古の巨魔獣”は崩れ落ちた――――!
『なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』
ありえない光景にデマオンが取り乱し、絶叫する。気を失い、地に倒れ臥した巨魔獣が
光に包まれる。ほのかな残光を散らしながら“巨魔獣ザムザヴォエイラ”は砕け散った。
『バ、バカな。あのザムザヴォエイラが・・・たかが戦闘機程度にやられるはずが・・・』
たかが戦闘機。しかし、コークスクリュー気味の高速回転とオーバーヒート寸前の加速。
タイミング。全ての条件が完璧に揃った上でピンポイントに巨魔獣の顎を打ち抜いたのだ。
いかに魔獣といえど脳が存在する生物である以上、それを揺らされて平気でいられるはず
もなかったのだ。
巨魔獣を打ち抜いて舞い戻る謎の戦闘機がゆるやかに速度を落とし、ドラ一行の近くへと
不時着する。中から―――――
「た、助かった・・・!ギリギリで操縦機能が元に戻ったみたいだ・・・!」
中から、今にも死にそうな表情で降りてくる者。
『ス、スネオ!?』
あれだけの衝撃の中、なぜか無傷である。スネオは目を回しながら一人の少女に支えられて
戦闘機から脱出した。
「みんな・・・た、ただいまぁ・・・
カ、カウンターの秘訣はタイミングと・・・ハートだぜ!?」
自分の胸を指差しながら、よくわからない決めセリフを呟くスネオにのび太が、
ドラが、ジャイアンが喜び勇んで駆け寄っていく。
「スネオ!やっぱり来てくれたんだね!」
「さすがは我が心の友よ!信じていたぞ!」
「だけど、いったいどうやって戻ってきたんだ!?」
「・・・てわけさ!」
スネオは自信満々でメジューサのとの戦い(?)の経緯を説明している。もちろん、
自分が怯えて引き篭もっていた時などのみっともない部分は都合よくカットしてある。
「そうか・・・ドラミやローさんが・・・・」
妹たちが石化させられたと知って、表情を曇らせる。だが、殺されたわけではない。
前向きに受け止め顔をあげる。のび太やジャイアンはスネオの復帰を心から喜んだ。
「だけど、凄いや。スネオ!」
「信じてたぜ!心の友よ!」
ふと、のび太は(ようやく)気付いた。スネオの背後にもう一人見慣れない顔がある。
「その女の子は・・・?」
胸を抑えて悲しみに耐える美しい少女。いや、その正体はいっしょにいるスネオも
詳しくは知らない、石化の魔物。かの魔王デマオンと縁深き少女神メジューサである。
彼女は今、魔王の胸部に張り付いた無数の女性たちに心を痛めているのだ。
「あれは・・・私たちの同胞・・・天界の女神たち・・・酷い・・・・・」
少女の素性は気にかかる。しかし、それ以上にスネオの戦列復帰が一同の心情に
大きな変化をもたらしていた。ドラえもん。のび太。ジャイアン。しずか。
共に幾度もの冒険や戦いを乗り越えてきた四人は、ここにきて不思議な安心感と
涌きあがる勇気。燃えさかる烈火のような感情の昂ぶりを感じていた。
不思議だ。負ける気がしない。たとえどんなに強大な敵が相手であろうとも。
強力な援軍などでは決してない。非力で臆病なちっぽけな存在。ちょっと金持ちで
気障なだけで、探せばどこにでもいるごく普通の少年、スネオが戻ってきた。
ただそれだけのことなのに。・・・その上で。今は出木杉がいる。リルルがいる。
きり丸が。美夜子さんが。バンホーさんが。みんないっしょに戦っているんだ。
奇跡は起こる。そう。――――――― ようやくいつもの5人が揃ったのだ!
そしてついに目覚める――“奇跡を起こす者”――その名は出木杉英才――――――!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回分終了です。
すみません。どうしてもタイトル横の番号300ジャストでメイン5人を
全員集合させたかったので、ちょっとばかり詰め込み気味になってます。
いつも感想をくださってる方々ありがとうございます。感謝感謝です!
いつごろからか(まだ魔界に変化する前からだったような気も 汗)
投下のたびに「いよいよクライマックス」と呼ばれるようになってましたが、
ようやく次章こそ、本当に本当のクライマックスを迎える(予定)です。
エンディングもできれば次次章くらいには到達したいところですね。
サマサ様。はい。ハデスはあのトレインのハーディスから来てます。
元々はのび太に扱わせる予定の武器で、初期の武器選びシーンで登場させて、
・超強力なレールガンを5発まで撃てる
・未来の武器のくせに重すぎてのび太の力では使えない。
・なので、のび太が使う場合はパワー手袋などの補助アイテムが必要。
・ギラーミン戦後、魔王へと続く最後の扉をハーディスでぶち破る。
・しかし、その一発であまりの威力にのび太の体が持たないことが判明。
・ギラーミン再登場後、引き渡し。ギラーミンの手で活躍。
といった計画だったのですが、この展開のためにまた別にいろいろ伏線はったり
すると面倒&さらに冗長になること必至だったのでやめました。
それより何より、大筋はここまでせっかく児童キャラで統一してきたのに
魔王への最後の扉を開くといった終盤の重要な場面でなぜにブラックキャット?
などと思ってしまいまして・・・。数あるボツネタのうちのひとつでした。
うみにんさん、投稿規制か・・。
途中ですが出ますのでここまでを読んで感想をば。
・スターダストさん
連載終了お疲れ&おめでとうです。また次作を待っとります。
シュールな脱線気味なギャグと、ヴィクトリアの思慮深さが好きでした。
SS書くの初めてですか?文章うまーい。最後はまたーり終わりましたね。
・Tournamentさん
大会まで近いのか遠いのかわからないけど、まだトーナメント前の
ドラマは続きそうですね。でも、前作のような尻切れトンボは勘弁してw
大会で激闘をぜひ書き切ってください。
・うみにんさん
デマオンの秘密兵器、ギラーミンの援護の近い、美矢子の言葉、歌、
ドラえもんファミリーの集合、そして出木杉の目覚め・・。
全ての単語がラストステージへと向ってますね。嬉しいけど、寂しい。
あとふらーりさん、>ガルキーバとかバンパイヤとかチャチャ
なにひとつわかりません。でも全く口惜しくない。
むしろわからなくてよかったと思っている。
第八話「最悪との邂逅」
「・・・ここが、のび太の家なのか、ペコ」
「ええ、そうです。しかし・・・やはり誰もいないようですね」
四人はペコの先導によってのび太の家の前に来ていた。だが―――やはり、人の気配はない。
「お邪魔します」
返事は返ってこない。ただ静寂。耳が痛くなるほどの静寂。
「のび太さん!ドラえもんさん!」
「のび太!いないのか!?」
呼びかけても、家の中を調べても、人っ子一人いなかった。四人はのび太の部屋に腰を下ろして途方に暮れる。
「人の気配がないどころか、人がいた形跡すら感じられない。一体どういうことなのか・・・」
ペコは腕組みをして考え込む。いくらなんでもおかしすぎる。ここまで完璧に人の気配そのものが消えるなど―――。
そんなペコを尻目に、稟は何とはなしに部屋の中を見回す。ここにいないのび太達の面影を求めるように。
「のび太、ドラえもん、みんな―――どこに行っちまったんだ」
呟きながら、何気なく机の引き出しを開けてみた。―――ドババババッ!
大量の紙が押し込められていたようで、物凄い勢いでそれが溢れ出す。
「うわっ!なんだよ、これ・・・」
稟はそれを拾い上げ―――非常にバツの悪い顔をした。
「おっきなマル・・・」
プリムラも拾い上げたそれを眺めて、率直な感想を述べる。そう―――それはまさに、のび太のテスト答案であった。
しかも、全部〇点。
「・・・プリムラ、亜沙先輩。これはのび太の名誉のためにも見なかったことにしておこう」
「うん・・・そうだね」
亜沙もバツの悪そうな顔で頷く。プリムラはキョトンとした顔で、答案を引き出しに戻した。―――と。
そこに、一冊のノートを見つけた。それだけなら別段興味を惹かれる物ではなかったが、そのノートに書かれた
タイトルが、彼女の目に入ったのだ。そこにはこう書かれていた―――<神界大活劇>と。
そう―――彼女が書き上げた、あの物語と、全く同じタイトルだった。手に取り、パラパラとページをめくる。
「・・・りん、亜沙。これ、見て」
「ん?ノート?・・・!おい、これって!」
「へえ・・・おんなじタイトルだなんて、すっごい偶然じゃない!」
―――そこに書かれていたのは、まさしく自分達との思い出の物語だ。稟達は胸が熱くなるのを感じた。
のび太もきっと、自分達と同じ思いで、この<神界大活劇>を書いたのだろう。遠く離れた世界に離れ離れになっても、
共にいた日々を忘れないために。最後に交わした<絶対に忘れない>というあの約束を、守ってくれていたのだ。
三人はそっと笑い合い、ノートを引き出しに戻す。
そんな彼らの様子を、事情が分からないなりに好ましげに見守っていたペコは、ゆっくりと口を開いた。
「皆さん、良かったらお互いの事を話し合いませんか?―――あなた方が知るのび太さん達を、ぼくも知りたい。
きっとそれは、ぼくの知らない彼らですから」
「・・・ああ、そうだな。俺達もペコの話を聞きたいよ。ペコだって、俺達の知らないあいつらをたくさん
知ってるんだろうからな」
そして、それから数時間、四人は飽きることなく語り合った。のび太やドラえもんとの出会い、共にいた日々、
手に汗握るような戦い、そして別れ―――。
さらに、今回の事件。現われた<十三階段>。その目的は、のび太達の抹殺―――。
「しかしながら―――何故連中はぼくらにそんなちょっかいをかけてきたのか。わざわざ敵方の戦力を増やすような
真似をするなんて―――」
「そうだよね。全然分かんないよ、あいつら」
亜沙は憤然と言う。
「全くです。―――しかし、それはともかくとして、不思議ですね」
「え、何が?」
「・・・ぼくらは本当なら、何の接点もない。出会うことなんてなかったはずなのに、こうして巡り合った。
のび太さん達がいたおかげで、のび太さん達と出会えたおかげで、彼らに救われたぼくらが出会った―――」
「そうだな。そう考えると―――本当になんか、不思議だよな」
顔を見合わせ、笑う。―――そう。まるで奇跡のような出来事だ。
お互い出会うはずなどなかったのに、共通の仲間を助けるためにこうして出会い、そして語り合う。
ついさっき出会ったばかりだというのに、まるで昔からの仲間のような気安さを、四人は既に共有していた。
「なんていうか・・・あの子達ってさ、引力あるよね。上手く言えないけどさ」
「引力、か。言いたいことは分かります。本当に、どこにでもいそうな子供達なのに、なんだか不思議な人達ですよね・・・」
亜沙の言葉に、ペコも笑いながら答える。
グウウーーーー・・・
間の抜けた音が、四人のお腹から仲良く響いた。
「はは・・・随分話し込んじゃってたもんね」
亜沙が照れ隠しに苦笑する。
と、プリムラはペコをじっと見つめ、なにやら呟いている。
「あの・・・なんでしょう?」
「すき焼き・・・焼肉・・・しゃぶしゃぶ・・・丸焼き・・・ハンバーグ・・・」
「なに不吉なことを真顔で呟いてるんですか!」
「あ、でも犬のお肉って割と美味しいらしいよ?ペコちゃん、尻尾とか提供するつもりはない?」
「あ、あなた達は・・・!ぼくを馬鹿にしてるんですか!?謝罪と賠償を要求しますよ!」
ペコは何故か某人民のようなセリフを吐いた。
「まあまあ、ペコ。気持ちは分かるけどほんの冗談だよ。なあ、プリムラ」
「生姜焼き・・・鉄板焼き・・・モツ鍋・・・唐揚げ・・・」
「・・・・・・」
さすがに稟もフォローしようがなかった。
「まったく・・・ちょっと待っててください。巨神像の中に用意してきた食べ物がありますから、持ってきます。
本当に尻尾でも齧られたらたまりませんからね」
「ドッグフード?」
「・・・これはもう・・・喧嘩を売られていると解釈してよろしいですね?」
ペコは剣を抜き放つ。
「お、おいおい、ペコ!落ち着けって!」
「離して下さい、稟さん!ぼくは不殺の誓いを破ります!今こそ王国に伝わる飛天犬剣(いぬるぎ)流奥義、
<天翔犬閃(あまかけるいぬのひらめき)>で巨悪を―――!」
「あはは、若い子達は皆楽しそうでいいねー」
顔面に狂経脈が浮き出るほど猛るペコ、慌てて止める稟、面白がって静観する亜沙、そ知らぬ顔のプリムラ。
なんだかんだで騒がしく時間は過ぎていった―――。
そして―――真夜中。ゴロリと寝転んでいたペコは気配を感じて飛び起きた。それにつられて稟達三人も何事かと
身体を起こした。ペコは鼻をクンクンと利かせながら言う。
「・・・気をつけて下さい。何者かが近づいています。どうにも嫌な匂いだ。恐らく・・・敵です」
そういうペコの顔は、さっきまでとは別人のように引き締まっている。ただならぬ様子に自然、稟達も身を固くした。
ギシ・・・ギシ・・・
階段を、誰かが上がっている。ペコは剣に手を添え、いつでも飛びかかれるように身構える。
そして―――部屋の襖が開き―――
「よお―――お邪魔だったかな?・・・くっくっく。初めまして諸君、ってえところかな」
そこにいたのは、精巧な狐の面を被った長身痩躯の幽鬼を思わせる男―――
「狐の面・・・狐・・・まさか、お前がムスカって奴の言ってた!?」
「<お前がムスカって奴の言ってた>ふん。まあその通りだ。お前の想像で恐らく合っている」
稟の追求にも、狐面の男は泰然とした態度を崩さない。そして、告げる―――
「俺は野比のび太ら五人、そしてそれに連なる者達の敵―――人類最悪の遊び人さ」
投下完了。
ペコがなんだか変なキャラになっている・・・。彼はもっと真面目なキャラのはずなんですが・・・。
>>303さん
むしろ神界での稟は原作よりは真面目キャラにしすぎた感があります。
稟は原作では意外と天然ボケキャラです。
例>「どんより」という言葉を使って文を作れ。
稟「はっはっは、簡単簡単。「うどんより蕎麦が好き」・・・よし、完璧だ!」
こんなことを素で言える彼が僕は大好きです。
>>ふら〜りさん
チャチャしか分からんですw
347 :
作者の都合により名無しです:2005/08/06(土) 03:50:36 ID:IGDCfqoR0
>うみにん氏
300突破おめ。もうすぐ最終章かー。残念。
出木杉が復活して、最強メンバーで最終決戦に挑む燃えるシチュですな。
>サマサ氏
今回はラスト以外ほんわかムードですね。
プリムラたちとのび太との絆がノートに詰まっている感じで、いいなあ。
>地底出木杉帝国
いよいよ!最終決戦の最終局面、最終場面を飾るのはヒーローののび太っぽいですね。
ギラーミンすら(一時的にだけど)味方に引き込んだのび太は器大きいような気がします。
もう一人の主役の出木杉も復活して、超燃えの展開でお願いします。
>超機神大戦
プリムラはひとつひとつツボだな。PCゲームやってみたくなってました、前作から。
でも18禁ゲーなんですよね・・w狐面の男は最後の方で出る事多いですね。
ダイ大のヒュンケルみたいに出を考えて狙っているのかな?
350 :
作者の都合により名無しです:2005/08/06(土) 22:58:39 ID:klJBBgkI0
うみにんさん、サマサさんお疲れ様です!
出木杉は最終ステージで沸騰寸前ですねえ。全員集合でデマオン倒した後、
のび太とギラーミンの最終決闘してくれると燃えるかも。
機神大戦、今回は神界のレギュラーとペコのまたーりギャグの回でしたね。
プリムラの無邪気な残酷さが好きだ。天翔犬閃笑った。
第十二話「セルジュニア誕生」
ユンザビット高地を出た一行は、ひとまず近くの街に降り立った。そして、これまでの
成果を改めて振り返る。
水、火、土、風、炎。これら五つのクリスタルのうち、すでにセルは二つを吸収した。
また、クリスタル争奪戦においてもベジータとトランクスという強敵を撃退している。
とりあえずは、順調と評することが出来る経過であろう。
「俺たちの旅も、半分近くまでってところか。せっかくだし、たまには宿にでも泊まろう。
これまで、寝泊りは車でやっていたからな」
17号の提案に、もっとも賛同したのはセルであった。
「くっくっく……。宿といったら、枕投げだな」
ここで、以前のように自由時間が設けられる。
セルはというと、街にある大きな本屋に目を付けた。ちなみに、相変わらず街の人々は
セルをほとんど気にしていない。「でかいセミがいるもんだな」程度の認識である。
「人造人間たる者、知識はいくらあっても困らん。いずれ完全体になったとき、いくら強
くてもバカでは笑われてしまうからな」
溢れ出す知識欲に駆り立てられ、店内を無差別に物色するセル。雑誌から辞典まで、あ
らゆる本を立ち読みする。すると、やがて彼は一冊の小説と出会う。
タイトルは「若気の至り」。表紙には若く初々しい男女が描かれており、「武天老師も
大絶賛!」なるキャッチコピーまで紹介されている。
少し緊張しながら、セルは何故か朗読を開始した。
「うふん、くすぐったい。だめよ、もうすぐままがかえってくるんだから。と、まーがれ
っとはいったのだが、ぼぶはごういんに……」
内容は低年齢向けの官能小説。だが、こうした性描写には疎かったセルに、とんでもな
いアクシデントが訪れてしまう。
「し、しまったァ……! 私としたことが、産気づいてしまった……ッ!」
実は、セルは出産することが可能である。もちろん、子孫を残すためではなく、戦いに
おいて未熟な分身を作るための機能に過ぎない。
だが、完全体に至っていないセルは、これを制御するのに失敗してしまったのだ。
「ちっ、仕方ない。ひとまず、奴らに相談するしかないか……」
セルは17号たちを探すため、陣痛を我慢しながら街中を超スピードで駆け回った。
妊娠を知った17号たちは、ただ絶句するばかりであった。
「おい、大丈夫なのか? 子どもを育てるのは、かなり金が掛かるらしいぞ。特に私立に
通わせるとなると、一千万ゼニーくらい簡単に消えるぜ」
「そうだよ。だいたい、あんたに子どもを育てる能力があるとは思えないし」
鋭く現実味のある忠告をぶつける17号と18号。だが、セルは痛みを堪えながら必死
に訴えた。
「分かっている。だが、産みたいんだッ! せっかく私の体内に、新しい命が灯ったのだ。
堕胎や流産など、絶対に許されないッ!」
親としての誇りが込められた、凄まじい剣幕だった。17号も18号も、これ以上セル
に反論することは出来なかった。
「決まったようだな」
中立に徹していた16号が、両腕を外しながらセルに語りかける。
「では、さっそくヘルズフラッシュで乳児を取り出そう」
「そんな無茶な!」
「ヘルズフラッシュ!」
「ぐおえええぇぇぇぇッ!」
腹に眠っていた赤子は、エネルギー砲によって押し出され、下腹部から尻尾へと移動す
る。そして、一気に先端にあるスポイトから飛び出した。
──出産完了。
新しい生命は、小柄ながらもセルに形状はそっくりであった。ただし、体色は毒々しい
ブルー、しかも顔は親であるセルよりも人間に近い。
「ギ、ギ、ギーッ!」
動物にも似た奇声を発する赤子。かなり不気味だが、どこか可愛げもある。
「我が息子よ、セルジュニアよ。父が温かい両手で抱きしめてやろう」
無理に作った気色悪い笑顔にて、息子に近寄るセル。だが、そんな彼なりの愛情はセル
ジュニアには届かなかった。
「ウキャーッ!」
「おごォッ!」
セルジュニアの張り手がセルの頬を捉え、あっけなく首が折れた。
もちろん、セルもこれしきでは死なない。が、全身からは抑え切れぬ憤怒が発散されて
しまっている。
「よくも、親である私に攻撃しやがったな! ええい、もう殺してやるッ!」
いきなりの子殺し宣言。やはり、この男には子どもを生む資格はなかったのかもしれな
い。セルは手加減なしのストレートを、セルジュニアへとまっすぐに突き出す。
もはや、これまでか──と、思われたのだが。
「キャキャキャ……」
息子は笑っていた。片手だけで、セルの拳を受け止めながら。
親が赤ん坊相手に後れを取るという、あり得ない光景。恐怖で冷や汗を流すセルに、横
から16号が忠告を入れる。
「セル! 私の計算では、セルジュニアの強さはあのトランクスをも上回っている!」
まさに、追い討ちを掛けるような情報であった。たしかに冷静に気を探ってみると、セ
ルジュニアからは計り知れない潜在能力を感じ取ることが出来る。あまりにも強い、強す
ぎる。
だが、いつもならここで平謝りしているであろうセルが、今回ばかりは退かなかった。
「ふん、笑わせるな。私の血を受け継いでいる者が……そんなに強いわけがないッ!」
哀しげな叫びとともに、セルが突撃を仕掛ける。ところが、セルジュニアは全く相手に
せず、父を軽々と突き倒す。しかも、早くも人語を解したのか、冷ややかに父親に向かっ
て呟く始末。
「加齢臭がするから、あまり近寄らないでよ」
これが、初めて息子が父親へ送った言葉となった。
深夜に失礼します。新キャラ登場です。
そして、うみにんさん、イラストありがとうございます!
さっそく保存させて頂きました。
クールに見つめるヤジロベー、ハジけたカリン様。
特に、国王の充血までしたキレっぷりは、まさにイメージ通りで最高です!
本当にありがとうございました。
セルジュニアはやはり親父を上回っているのか・・w
クリスタル吸収するたびにセルはへたれていくような気がする。
底なし沼だねw
サナダムシさん乙です。今回もセルは無様ですね。
子供に馬鹿にされるシコセルが、弟に馬鹿にされている自分とかぶって見えます
>不完全セルゲーム
新キャラは完全にレギュラー定着なのか。現在のパーティ内で最強かな?
この話がどんな着地するのかわからないな。
このままギャグで行くのか、激闘編になるのか。
>>357 カワイソス
親に生むんじゃなかったと言われた俺とどっちが惨めだろうかw
262から
「……缶、かよ」
「うっさいわね、飲みたくないなら食わせる≠よ」
笑いさざめく子供達、談笑する大人達、木々の梢を合唱で彩る小鳥達。
それら全てをBGMに、二人は昼下がりの青空の下、公園のベンチに端と端に座っていた。
渡された缶コーヒー(気温が二十七℃なのにホット)に目を落としながら、トレインは少々長めの溜息をついた。
「あのさ、オレ帰っても…」
「――――アンタ、イヴちゃんの事どう思ってるの?」
敢えて一切の前置きを排し、要諦のみを直に切り出した。
リンスは話術に長けた女ではないが、スヴェンと違って余分な学が無い以上すぐに物事の核心を捉える。
そう言う気性は交渉には向かない物の、尋問には多大な効果を発揮するのだ。それを十二分に判っている
トレインは、なんと答えればいいものか正直困っていた。
「……まさか、今どうやって乗り切ろうか考えてるんじゃないでしょうね?」
正にそう思っていただけに酷く狼狽する。
「な………な訳ねえよ。オレは……」
「じゃあホントの事だけ話すって誓いなさい。でなきゃその缶の借り、手酷く払わせるわよ」
――こんな物一つでさえ脅迫材料にする気か――
ヤクザ並みの因縁の付け具合に、トレインは誤魔化す胸算用を嘆息に乗せて吐き出した。
「判ったよ、何話せば良い?」
「今訊いた事よ。イヴちゃんの事どう思ってるか、包み隠さず話しなさい」
「その前に……一ついいか?」
何故かトレインの言葉は、此処に来てやけに神妙だった。
「お前こそ、姫ッチをどうしたいんだ?」
―――よもや逆に質問されるとは思わなかった。
「アンタね、訊いてるのはこっち……」
そんな彼女の言葉とはお構い無しに、トレインは自分の質問も返答をも無視して話を続ける。
「オレは正直…………居て欲しくない」
「いらっしゃいませ、お客様」
今回トレイン一行はかなりの奮発をして、そこそこセキュリティが配備されたそれなりのホテルをねぐらとしていた。
なれば、仏頂面で新聞から顔を上げる安宿の親父ではなく、身なりも作法も整ったボーイが慇懃に来訪者に挨拶する。
…まるで、マカロニ映画からそのまま出て来た様な出で立ちの男だった。
奇妙な金属製のマスクと鋭い眼、そして嗅ぎ慣れない獣臭めいた不快な匂いが何とも気に入らないが、商う側としては客は客。
営業スマイルにはそれを全く感じさせない。
「ただいま当店のスイートに置きましては、最高の見晴らしの603号室が……あ、お客様!」
男はカウンター越しに売り文句を披露する彼を無視し、勝手に奥へと歩を進める。
「……困りますお客様。まず部屋を取って戴かないと」
カウンターから出て引き止めるが、男は我関せずとエレベーターの前に立った。
「……お客様、保安上の問題が有りましてこれ以上はお通し出来ません。せめてお部屋を…」
彼の必死の頼みにも耳を貸す事は無い。やがてその揉め具合に、すれ違う人々やホールに居る人々の視線が集まる。
ボーイは居心地が悪くて仕様が無かった。こんな無礼で横暴な客につき合わされるのは正直御免だが、何とか穏便に
済ませなくては客商売は勤まらない。意を決してやや強めに口を開く。
「あの! お客様…!!」
――――――言葉を、銃声が遮った。
ボーイの首から上が花火の様に四散するのを、集中していた視線の全てが見ていた。
しかし、マカロニ男の右手と煙たなびく銃が何時現れたのかは誰の目にも映らなかった。
「……お呼びじゃねえんだ、黙ってろ」
男が持っていたのは旧式のリボルバー拳銃、通称「ピースメーカー」。
初期連発銃の完成形、と言うだけで終わる筈の銃だったが、その騎兵槍か剣を思わせるフォルムと機構の頑強さ、
そして威力が今だ根強いファンを世界に輩出する名銃だ。
伊達や酔狂で持つ人間は多いが、使いこなせれば最新型にも引けを取らない性能を発揮する事から、
男の腕は万が一にも凡庸ではなかろう。
勿論そんな事が、周囲の群衆に判るべくも無い。
判っているのは―――この男は持っていた銃で人を殺した―――それのみに尽きる。
一瞬、場を静寂が包んだ。そして、
『……うわあああああぁぁぁぁああ!!!!!』
何十人もの絶叫が絡み合い、一気に炸裂した。更に、突き動かされる様に総出で出口に殺到する。
その誰にも目をくれず、男はエレベーターが来るのを待っていた。
「………347号室。スヴェン=ボルフィート、302号室。リンスレット=ウォーカー、601号室。
………だったなあ、確か。
さぁて、何処に居るのかな」
ビンゴの数字を選ぶ心境で、男――デュラム――は蛇の様に笑った。
その頃、一足先に宿に戻ったイヴは或る書籍を延々と読み耽っていた。
それはあの本―――『モンキーでも判る! 正しい男の操縦法』。
確かに元々はリンスが要らぬ世話を焼いて用意した物だが、訳有って彼女の愛読書の一つとなっていた。
彼女には今、目標が有る。
それは単なる憧れなのかもしれない。それはトレインの言った様にはしか≠ネのかもしれない。
今彼女の視線の先には本が有る。しかしその先には寝ても覚めても離れない人が居る。
その人に、彼女はどんな形でも良いから近付きたかった―――…否、これが最も望む形かもしれないが。
故に、一瞥で自家薬中にする記憶力を持っていても、この本だけは手放す事無く幾度も幾度も徹頭徹尾読み返す。
大抵の言葉が俗な表現で書いてあるため、そのたび解読してくれるリンスの存在が不可欠なのが一役買っていた。
………ただ、「何を造る≠フ?」と訊いた時はリンスも困っていたが(どうやらその程度の良識は有ったらしい)。
その熱中が仇となり――――…銃声、悲鳴、怒号が全て彼女の意識の外だった。
「……302号室にも居ねえ、となると……チッ! 上か…」
道すがら警備員やら客やら会う人全てに銃弾を撃ち込みながら、デュラムは仕方なく階段を上っていた。
どうやらホテル側の最後っ屁らしく、三階に登った時点でエレベーターの使用が不能になっていた。
その苛立ちにに目当ての人間が居ない事に対する憤慨が嵩増しされ、満腔の怒りを手当たり次第にブチ撒ける。
……彼は殺戮を従え、徐々に上へと登っていく。
「お…おい、あんた何を…」
偶々出くわした――――撃つ。
「ちょっと、五月蝿いわ……」
背後の扉から出てきた――――撃つ。
「ひ、ひい……!」
惨状に腰を抜かした―――撃つ。
「あ、ああ…母さ…!」
今殺した死体に子供が駆け寄った――――撃つ。
「た…助け…!!」
逃げようとした―――撃つ。
「何処だ? 何処に居やがる、トレイン=ハートネット」
怒りを唾の様に吐き捨てる――――――そこいら中に撃つ。
どれだけ撃っても怒りはまるで解消されない。それもこれも、全てトレイン=ハートネットの所為だ。
折角来てやったのに、留守とはどう言う事だ。
折角この世界最強のガンマン、デュラム=グラスター様が殺しに来てやったのに、留守とは一体どう言う事だ。
もし、これから行く部屋に誰も居なかったら、このホテル内の人間全てを皆殺しにする位で無いと収まらない。
その気持ちを胸に、スイートルームの扉を思い切り蹴破った。
……前科が有っただけに、初めはスヴェンかと思った。
しかし現れたのは似ても似つかぬマカロニ男で、彼女にとっては馴染み深い血臭を殺気よりも強く発散している。
「ん? …ああ、そう言えばガキが一匹居たっけな」
イヴを見るや鬱陶しそうに眉を顰めた。
当然彼女の知り合いでは無い。と言うより、こんな知り合いは初めから御免だ。
「だ……誰?」
警戒心も露わに、彼女はベッドから降りた。取り敢えず穏便な話し合いになるとは思えない以上、
足場はしっかりしていた方が良い。
足が床に着いた瞬間―――――――膝に激痛が走った。
「……あ、あああぁぁぁぁ!!!!!」
痛みに耐え切れず彼女は床にその身を転がした。
涙目でその膝に目をやれば……穴が開いて、血が流れ出しているではないか。
「……誰が動けって言ったんだ、ガキ」
男はまるで親の仇の様に憎々しげにイヴを見下ろす。
「ああん? 何だその目は」
会うや否や膝を撃ち抜かれて、それでも好意的な眼差しを向ける人間など居る訳が無い。
その理屈で行けば当然、イヴであろうと例外には成り得ない。這いながら男を敵意で睨み付ける。
―――――彼女の腹を、男の爪先が蹴り込んだ。
「あぐっ! う……ぐう………!!」
彼女の矮躯がサッカーボールの様に転がるのに、男の目に罪悪感は露程も無い。
「それが大人に対する態度かテメエ。
親の躾がなってねえ…………と、悪い悪い。試験管じゃあ躾けようもねえか」
無遠慮にイヴの過去をこじ開けた事に気を良くしたらしく、声に怒りがやや失せた。
今度は彼女の頭を踏み付ける。
「……ま、それよりだ。生きていたきゃきっちり答えな。
トレイン=ハートネットは何処に居る? 三秒以内に答えねェなら今度は耳、だぜ?」
…他愛も無い遊びの様に凶行の予告をするこの男が何者で、何故自分の生い立ちを知っているかは判らない。
だが、この男は間違い無く敵だ―――それも、命のやり取りが必要な領域の強敵。
トレインが何処に居るのか知らないが、こんな危険人物に遭わせる訳にはいかない。
彼女の長いブロンドが更に伸びていく―――……もう一方の膝を撃ち抜かれた。
「ああっ!!!」
「妙な事してんじゃねえぞ。あーあ、予定が狂っちまったじゃねえか、なあ?
ど・う・し・て・く・れ・ん・だ…よッ!!! と」
加虐の悦びとイヴにとってどうでもいい怒りを混ぜ合わせ、うつ伏せの背中を激しく踏み躙る。勿論其処に遠慮は無い。
いくら身体強度が常人より上と言っても、肋骨がみしりと軋む。
「か………は……!」
「おぉ―――っとぉ、痛ェか? でもオレが悪いんじゃねえぜ。
まあ、全部オメェの所為ってのは流石に胸が痛むな。オレだって根っからの鬼って訳じゃ無えし」
そこでデュラムは唐突に考え込む。足元のイヴをなおも苦痛に晒したままで。
「………ああ、そうそう。こんなのはどうだ?」
名案、と言わんばかりの口調で、背中から胸を圧迫されて満足に息の吐けないイヴに問い掛ける。
「オレの仲間によう、オメェ位のガキがいてな。そいつがまたクソ生意気でなぁ……」
彼の言い分を要約するに……
―――自分の半分生きてるかどうかも怪しい子供が、嘴だけは一人前に囀るばかりか、
自分と同様部下まで有しているのが気に入らない。だからいずれ殺してやる――――
と、言う事らしい。尤も、イヴには何の関係も無い上に苦しさのため殆ど届いていないが。
「……大体、ガキってのはこの世に要らねえよなあ。騒がしいし、鬱陶しいし、生意気だし、ノロくて簡単に当たるし。
テレビで「大人顔負け」なんてフレーズが出た日にゃ、マジに殺したくなってくるぜ」
かつて自分も子供だった事を棚上げして、自身の言葉で怒りを募らせる。
「で、まあ…そいつの所為と居やしねえトレイン=ハートネットの所為も含めてこんな目に遭ってるって訳だ。
だからオレを怨むなよ? 筋違いなんだから」
此処まで自分の意思で凶行に及んだ事を知らぬ存ぜぬとばかりに、デュラムは苦笑する。
「て事で、だ。痛いの嫌だろ? 早く奴が何処に居るのか教えねえと…………あ?」
…その疑問符は、興味を引いた何かのために起こるものだ。だが、この手の男の興味を引く物など大概碌な物が無い。
―――イヴの最初に撃たれた銃創が、血糊を張り付かせただけで消えていた。
「ほおぉ…これがナノマシン兵器って奴か。ホントに治るんだな」
言うが早いか、銃声が響く。
「うあぅッ!!」
「あ―――――…、やっぱり喋らなくてもいいか。
ちっと此処で待たせて貰うから………相手してくれよ。どんだけブチ込んだら死ぬのか、見せてくれ」
イヴから足を退けると、無造作に銃を構える。
「なあ〜に、安心しな。オレは優しいからガキ相手にサカったりなんかしねえよ」
……宣言を肯定する様に、撃鉄を起こした。
…頼む神様。俺の部屋だけでいいから秋にしてくれ(挨拶)。
パソより先に熱暴走起こしそうなNBです。
夏の定番かもしれませんが………何だ今年の夏は!! 暑い、じゃなくて熱い≠セYO!!
…窓全開にしてるのに蒸し風呂状態が改善されない拷問ライクな部屋で今回書かせて頂きました。
その所為かイマイチ文章がすこぶらないかも、です。
内容が内容だけに痛い文章を心掛けましたが………どうかなあ……
まあ兎に角、今回はここまで、ではまた。
367 :
ふら〜り:2005/08/07(日) 21:55:30 ID:TYWYL81+0
>>うみにんさん
ビッグライトとはまた、灯台もと暗しというか。次から次に新しいカードが捲られていく
魔王側、戦力層厚し。と思ったらエラい迫力で出てきた新戦力が、宮田君なスネオの一撃
でKO。逆転逆転また逆転の手に汗ストーリー故に、「毎回クライマックス」な訳ですよ。
>>サマサさん
何だか、ペコのキャラというか立ち位置が確定してきたような。「ペコを目立たせたい」っ
て、こういう意味だったんですかっ? 今後、例えばプリムラの危機をペコが救って……と
なっても、肉扱いは変わらなさそう。青玉も不変ですし。メインヒロイン(ですよね)強し。
>>サナダムシさん
知識欲だか名誉欲だか、考えようによっては真摯な向上心。強さのみを求めず、広く知識
を得ようとするとはなかなか好青年。薄っぺらかったとはいえ母性本能まで備えてて。で、
>私の血を受け継いでいる者が……そんなに強いわけがないッ!
説得力あるなぁ。いや、潜在能力があるという点なら負けてない。……あるか、ほんとに?
>>NBさん
首から上が四散、で開幕した血みどろ行進。BGMは乾いた銃声と悲鳴。超絶パワーの素手
とか剣技とかとは少し違う、ある意味現実的で生々しい惨劇っぷり。でも、デュラム氏の
言動はもっと生々しくて。ギャンザもこんな感じでしたが、よくもまぁここまで……凄い。
こんばんは。夜中に失礼します。今回長いので申し訳ないのですが、
ちょうどクライマックス部分なので一気に1章まるまる投下させてもらいます。
計算で恐らく17レス(このレスと後書きを含めたら19レス!)ほどに
なってしまいますがお許しください。【前話:
>>331-339】
「フ、フゴー!フゴー!」
地底世界を一体の金色のゴーレムが泣きながら駆けずり回っている。ゴーレムという
ものは通常、動きの鈍いことと勇猛さ(というより恐れを知らない愚鈍さ)が大きな
特性のはずなのだが、そのゴーレムに関してだけは妙に逃げ足が速く臆病である。
黄金によって生まれたゴーレム特有のものなのだろうか。その臆病な黄金のゴーレム、
“ゴールドマン”が泣きながら駆けずりまわっているそのわけは――――――
背中に張り付いた一人の忍者服の少年がうへらうへらと不気味な笑いを浮かべながら、
手裏剣でその体―――つまり黄金―――を削りとっているのだ。
「あれは・・・?きり丸くん!?見ろ!あんな小さな少年が諦めずに必死に
戦っているんだ!我らも最後まであきらめるな!」
とっくに極限を超えている状態にも関わらず、後から後から沸いてくる
強力な敵の軍勢に最後のひとかけらの闘志すらも燃え尽きようとしていた
バンホーら反乱軍はきり丸によってかろうじて勇気づけられたという。
――――刹那、
『きり丸〜!助けに来たぞお〜!』
崖の上から大きな歓声があがる。いまだ稲光の残光轟く中、不敵な笑みを浮かべて
戦場を見下ろす者たち。人目みただけでそれが、只者ではない手だれ揃いだという
ことがわかるが、それも当然である。全員が忍者養成機関の最高峰、忍術学園の
講師ら超一流の忍者の精鋭たちなのだ。かつて天才忍者と呼ばれた学園長・大川平次
渦正を中心に、剣術指南戸部新左衛門、くのいち教室の山本シナ、達人・野村雄三
などなど、実に壮観な面々である。
『みなの者、突撃じゃ!』
『はい!』
『ゆくぞ!忍者は〜!“ガッツ”じゃあ〜!!』
学園長の雄たけびに山田伝蔵と土井先生は思わず苦笑いしている。
乱太郎としんべえがあきれた声で呟いた。
「全く・・・学園長にかかっては、綿密な調査もへったくれもないですねえ・・・」
「そうでもないぞ。忍術学園の精鋭を率いてこのタイミング。学園長たちもまた
我々の報告に加えて、独自の調査・観察によって勝機をここに見出した・・・・・
といったところじゃろう。」
血気盛んに、さらに雄たけびをあげながら猪突猛進する学園長。
『ケンカは先手必勝じゃああ〜!!』
「・・・・・・・・・・・・・・・えーっと・・・」
『ガッツでガッツンガッツンじゃあ〜!!』
乱太郎は改めて苦笑いを浮かべながら土井先生を見た。
「・・・・う〜ん。とてもそうは思えませんが・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「なんにせよ、山田先生。我々も行きましょう。きり丸は大切な私達の生徒です。
救出の役目は他の先生方には譲れません!」
「ふふふ、そうですな。それでは我々も戦いにいきますか。土井先生。」
「わたしたちも!」「ボクもー!」
きり丸救出へ意気あがる面々。しかし、その当のきり丸は―――――
「うひ、うへ、おひゃひゃひゃひゃ♪ガッツ♪ガッツ♪
黄金ゲッツでガッツリボロ儲け、えひゃひゃひゃひゃ♪えへ、えへ♪」
隠れ潜んでいた山田先生たちはおろか、崖の上から猛進してくる忍術学園の
精鋭たちにさえ気付かず、黄金を削っては袋に詰め続けていた―――――――!
「な、なんか助けたくなくなってきちゃいましたね・・・」
「・・・ふむ。奇遇だな。わしもじゃわい・・・」
はたしていつの日か、露骨な落胆を見せる二人の先生たちの気持ちをきり丸が
理解できる日は来るのであろうか。
後ろを振り向けばドクタケ忍者・竜魔鬼がなにやらブツブツ呟いている。
「ふむふむ。“忍者はガッツ”か・・・。」
「こら、そこ。勝手にメモるな!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ふはははは!遠隔操作の方がムチャできるってものよ!死ねえ!パーマン!』
コントロールパネルをガシャコシャといじりながら、魔土は嬉しそうに叫んだ。
『パパンダー・ジェノサイド・アタ―――――ッ・・・・何ぃいいいいい!?』
さらに調子にのって叫ぶ、絶好調の魔土の視界を突如、黒い円盤が遮った。
「はぁ〜ひふぅ〜へほぉ〜・・・・・」
漆黒の円盤が現れるとほぼ同時に。妙に力ない声と共に“赤い何か”が魔土を襲う。
『なんだとおおお!? うっぎゃあああああああああああああああああああああ!』
魔土の絶叫が地底にこだまする。ダダンダンの爆発によって彼方に吹き飛ばされて
いたはずのバイキンマンが、黒いバイキンUFOに乗って再び舞い戻ってきたのだ。
“赤い何か”その正体は円盤より飛び出したマジックハンドの先に取り付けられた
真っ赤なボクサーグローブ!真紅のグローブがチャンピオン・ソウルをもって炎を
纏い、魔土の救命ポッドをものの見事にぶっ飛ばしたのだ!超兵器・パパンダーを
生み出した狂った天才、マッドサイエンティスト・魔土災炎が、悔恨の悲鳴だけを
置き去りに、地底の彼方へと吹き飛ばされていく。
その後ろからひょっこり現れた赤いかわいらしいUFO。女の子の明るい声。
『しょくぱんマンさまぁ〜♪お助けにきました〜♪・・・って、あれ?いない?』
UFO内で、目をパチクリさせてキョトンとしているのはドキンちゃん。
「ねえ、ドキンちゃん。あいつ倒したから、オレ様もう帰ってもいい?」
「ダメ〜!しょくぱんマン様のご無事を確認するまで、ぜぇえ〜ったい帰っちゃダメ!
いっしょに探すの手伝いなさい!」
「トホホホホ・・・オレ様、もういいなりナリ・・・・」
ウィイイ……ン… プシュウゥウウウ……!
魔土という頭脳を失ったパパンダーはゆっくりとその動きを止め、大地に跪いた。
1号が半信半疑の面持ちで呟く。
「や、やったのか・・・?」
「ああ、もう動けんやろ。なんやあっけなかったが、魔土はんをパパンダーの外に
追い出したしょくぱんマンはんとボクらの勝利や!」
パーやんの言葉でパーマン軍団にようやく笑顔が浮かぶ。
しかし、そのパーやんの笑顔はすぐにひきしまった緊迫したものへと変わる。
「おっと、魔土はんにはまだ聞いとかなあかん大事な用があるんや!」
「パーやん!何やってるんだ。そんなことよりあの魔王とかいうやつ弱ってるよ。
チャンスだ!一気にやっつけなきゃ!」
「いや、魔王が弱っている。“だからこそ”大事なことなんや!」
パーやんが飛ばされた魔土を追うべく飛び立とうとした――――――そのときである。
「“コア”のことだな。」
唐突に背後からの声。パーやんは慌てて振りかえる。
「だ、誰や!? なぜその名を!?」
いつのまにか近くに現れたその男は不思議な仮面をかぶっていた。ピエロのような
みじめさや滑稽さを誘う奇妙な面。まるで泣いているようにも見える泣き笑いの面。
しかし、かぶっている人物のその物腰は知的で優雅ですらある。
「追う必要はない。パーやん。魔土に代わって私が答えよう。」
「あ、あんさんは・・・!?」
パーやんはその男を知っている。珍妙な仮面、そしてその魔性の雰囲気こそ違えど
その知的な物腰は以前となんら変わらない。
「そ、そうか!あんさん魔王の・・・
なるほど。あの人らに助けられて行動を共にしてたってわけやな!?」
「ふ・・・さすがに察しがいいな。
そう。私の名は・・・・“アーサー・D・キスギー”・・・・!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「きり丸のやつ、いつのまにかいないと思ったら・・・
あんなとこで大暴れしてやがる!」
触発され、ニヤリと笑みを浮かべて指をならしているのはジャイアンである。
「あの新手の軍勢。あれがきり丸くんの言ってた忍者軍団だね!」
ドラえもんも頼もしそうに、うんうん頷いている。
ドラえもん。のび太。ジャイアン。スネオ。しずか。
かつて魔王デマオンを倒しし、5人の勇士がついに再び戦いの場に揃ったのだ。
それぞれの胸に大いなる勇気を携えて。
勇気とともにそれぞれの胸に湧き上がる希望。活力。
それらが再び戦いの鋭気を呼び覚ます。
「・・・ハッ!?」
のび太は一瞬気を失ったときに見た夢を思い出した。
あの時は、メガネを天にかざすと自分の体が巨大化して―――――
「そうだ!ドラえもん。僕にビッグライトを!そうすれば銀の弾が撃ち込める!」
「そうか!のび太のくせに冴えてるー!」
「無理!ビッグライトは前に捕まったときに帝国に奪われてたんだ。さっき遠くで
吹き飛ばされてたあいつから奪いとってこなきゃ。」
「それじゃあ、急いで取りにいかなくちゃ!」
「そ、そんな悠長にしてる時間あるのか!?」
「それにもし運良くすんなりと奪い返せたとしてもビッグライトで大きくなった
くらいじゃあそこまでの巨体には届かない!かえって狙い打ちされちゃうぞ!?」
早口でまくしたてるドラ。そうとうに焦っている。
「じゃあ、スモールライトであいつをちっちゃくしちゃえば・・・」
「・・・それこそどうやって光を届かせる・・・?」
「じゃあ・・・じゃあ・・・・えーっと・・・・・」
「ああ、クソッ・・・!ここまで来て何も思いうかばねえ!!」
「やっぱり無理だー!」
魔王が迫る。ゴーレムに、魔巨獣に、盛大に放出した魔力を再び蓄えて――――――
「出木杉くん・・・」
美夜子がポソリと呟く。
「え?」
「やっぱり出木杉くんの力が必要―――――だけど――――――――」
「そうだ!クッソー!出木杉はまだ目覚めないのかよ!?」
美夜子はいまだ目覚めない出木杉に最後の望みを託し、みなに願う。
「出木杉くん―――魔王に操られし者の呪いはそう簡単には解けない。
だけど――――彼を必要と思うのなら――――――――呼んで―――――――!
みんなの力で―――――――――――――――!」
「そうだ!出木杉くんなら・・・!きっと・・・・・!」
「出木杉ー!」「出木杉!」「出木杉くん!」「出木杉さーん!」「出木杉ぃー!」
『 ―――――――出木杉くん―――――――――!! 』
――――――聞こえる。
――――――自分を心から必要とする声が。
―――――少年―――――出木杉英才は目覚めた。
魔王の器であることからようやく解放されてよりこれまで――――――――、
しずかやリルル、仮面の老人がどれだけ呼びかけても目覚める気配さえ見せなかった
少年が今―――――――――――
しずかが、のび太が、ジャイアンが、スネオが、ドラが――――――
わずかに涙ぐみながら笑顔で駆けつけてくる―――――――
出木杉は駆け寄ってくるみんなの笑顔に応えて思わず微笑む。
しかしその背後に見えるものが出木杉を現実へと引き戻した―――――――
おぞましい光景―――――――――――
少年の澄んだ瞳は大きく見開かれている。少年は見た――――――
人型を象った巨大なる闇が荒れ狂う非現実的な異様な光景を――――――――
その只中で、大切な友人たちが傷つき倒れ伏す様を―――――――
共に戦う仲間たちが滅び行く様を―――――――
その大きく見開かれた瞳に。心に。深く焼き付けた――――――――!
瞬間――――映像は―――――――――
網膜に焼き付けられた闇の映像は10年を超す永い時を一瞬にして飛んだ――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大きく見開かれた瞳。愕然となにかを悟る表情。
あの日――――のび太と、何よりも愛しきしずかの結婚式の夜――――――
雷雨に打ちひしがれ、倒れ伏す青年の日の出木杉。
その絶望と、深く入り込む暗い闇に我を忘れ、もがき苦しむ彼の脳裏に
遠い昔、幼いころの冒険の記憶が呼び起こされる。
いや、呼び起こされたのではない。今、まさに生まれたのだ。
それは彼がまだ小学生だったころ―――――――
しずかを襲った謎の竜人を追い、地底世界へと旅立った彼が、苛烈な戦いの
果てについには敵に捕らえられ、心身ともに限界を超えて見た絶望の光景。
荒れ狂う巨大な闇。当時は理解できなかったこと。理解するにはあまりにも
情報が少なすぎた。しかし今――――彼の脳細胞は瞬時にして理解した。
肉体、いや精神の中を蠢く闇。闇は今まさに心を支配しようとしている。
「そうか・・・!こいつが・・・今、僕の体の中を駆け巡る
こいつが――――――そして、僕のこの脆弱な心が―――――――――――
全ての元凶だったのか―――――――――――――――!」
予期せぬ抗いに闇がざわめく。
『バカな!我の支配を拒むなど―――――――たかが人間が――――――――――』
「“闇”よ!“魔”よ!僕は――――――――――――僕は負けない!
絶望の先に人は未来をつかむことができる。勝利のイメージは既につかんでいる。
しずかの幸せを阻む者は、何人たりとも許さない!!
滅びろ―――ー!消えろ―――――――――!“魔”よ!!」
『があああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ』
闇の断末魔が出木杉の強靭な意志が生み出した光にかき消されていく。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『な・・・!? があああああああああああああああああああああああああああ!?』
「な、なんだ!何が起こったんだ!?」
地底世界に大きな異変が起こりはじめていた。
魔王が、魔族が、魔竜が、いびつに歪んだ魔界の岩盤が―――――――
大きく歪み、ブレはじめた。
天を突くかと思われたほどの魔王の巨体が難の前触れもなく急速にしぼんでいく。
同時に魔王の生み出していた黒雲が。雷が。禍々しい魔界の瘴気が。
“歪み”と“ブレ”がおさまったそのとき、その全てが幻のように消えうせていく。
望まぬままに変貌させられていた悪魔たちは苦しみと共に――――――
再びその姿を変え―――――――元の竜人へと姿を戻した―――――――――
魔は人に、魔竜は太古からの自然のままの姿に―――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・?あれ?オレ、いったい・・・・・?」
やはり望まない魔族の姿と化していた“竜人”ノヴァは思わずきょとんと自分の体を
眺めていた。要塞の中には気絶したままのげんごろうが倒れている。が、やはりその姿は
元のありし日の人間の姿へと戻っている。魔王と向かい合い、戦っていたギラーミンは
静かに指先を見つめる。その魔族への変化もまた治まっていた。
「こ、これはいったい・・・?」
困惑するドラ一行。しかし美夜子にはわかっていた。心に負った深い傷跡を狙われし
未来世界の出木杉。すなわちキスギーが自らの心の闇を振り払い、魔王を滅ぼしたのだ。
だが、今はまだ本当のことをみんなに伝えるわけにはいかない。まだ少年である出木杉は、
これから先も彼らと共に生きていくことになるのだ。将来、出木杉が魔王に魅入られたと
知れば、いかに心優しき彼らとて健全な友人関係は保てないだろう。
しかし、たったひとつだけ、美夜子にはどうしても伝えておきたい事実があった―――!
この魔王との戦いにおいて出木杉英才がみんなと共に戦い、多大なる貢献をしたということ。
美夜子は語る。出木杉とキスギーが同一の人物であることだけを隠して―――――
「弱り切った魔王が辿りついたのは今より10数年後の未来の世界――――
その場には魔王と意識を共有したことのある者――――アーサー・D・キスギーがいる。
そしてもう一人、この現代において魔王の器とされた者がいる。」
「出木杉!?」
「そう。今、この光景を垣間見た事で、10数年後の出木杉くんは魔王の存在を
知ることになる。つまり―――――未来世界において弱り切った魔王を探し当てて
滅ぼしてくれたのよ。出木杉くんが!」
「なんだかわかんないけど、すげーぜ出木杉!!」
ジャイアンのガッツポーズを皮切りに、事態を完全には把握できぬまま、
みなが歓喜に包まれる。―――――が!
「ああっ、出木杉くん!?」
「出木杉!?」
のび太やジャイアンが叫ぶ。出木杉は再び気を失い、その場に崩れ落ちた。
優しい眼差しで、美夜子が語りかける。
「今はゆっくり休んで。これからあなたは強大な"魔"と戦うことになるのだから。
でも、忘れないで。この光景を。この光景が、あなたの勝利のイメージとなる。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
元のあるべき姿に戻りゆく魔界。しかし、それを頑なに拒む強大なる、そして
いびつに歪んだ邪悪なる意思―――――――――
「クッ・・・本来ならこれで魔王も消滅しているはずなのに・・・!」
「なんてしぶとい・・・!」
地底世界の上空を膨大な雷を巻き込みながら、闇がいびつな螺旋にうずまく。
魔王デマオン、いや闇の塊となったそれは行き場を失い、もがき苦しみながら
地底の上空に留まっていた。
『うごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
苦しい!苦しいぞ!いったい、我が身に何が起こったというのだ・・・・!?』
闇はさらに歪み、不気味に収縮を繰り返しはじめた。もはや個としての形を維持する
ことすらも困難になったそれは―――――がむしゃらに“求め”はじめる。
『肉体を、肉体をよこせえええええええええええええええええええええええええ!』
「肉体・・・ハッ!?出木杉か!?」
「させない!出木杉さんは私たちが守ってみせるわ!」
出木杉をかばいながら、しずかは決然と叫んだ。
「ギラーミン!!狙いはひょっとして―――――ギラーミンなのか!?」
根拠はない。が、戦士の直感。ドラたちは危険を察知し、ギラーミンの方を注視する。
「いえ、今の魔王にギラーミンを御するほどの力は残されてはいないはず!
狙いは他の誰か―――――――――」
「ああっ!?早く止めを刺さないと!」
「クッ、まだ力が残されている。残された私の魔力では、消し去ることは出来ない。」
「魔王が!魔王が新しい体を手に入れちゃう!」
「ギラーミンの体も出木杉くんの体も使えない今、魔王が選ぶ肉体は――――――
恐らく―――――――――」
美夜子が目を向けたその方向は――――パーマン軍団と魔土操るパパンダーが激闘を
繰り広げていたその場所に残された、巨大なる残骸―――――――――
「のび太くん。覚悟を決めて!
――――魔王が肉体を持ったその時こそ、あなたの銀の銃の出番!」
ドッと大量の汗をしたたらせ、コクリと頷くのび太。この土壇場にやはりその表情には
余裕のヒトカケラも感じられない。極度の緊張に震える手で、そっと銀の銃を握り締める。
闇が収束する。肉体を得た魔王はようやく一定の安定を得た。魔王は美夜子の予想通り、
ビッグライトによって肥大化した超兵器パパンダーに宿ったのだ!再び生まれ変わりし
魔王デマオンが新たに名乗りをあげる。その目的はもはや――――――――“破壊”!
『ワハハハハハハハハハハハハ!我の名は“機魔王・デマオン”!
――――――――世界を――――――――世界を滅ぼす者なり!!』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『魔力を大きく失われてしまった。増幅する時間を稼がせてもらうぞ!』
機魔王は両手を天にかざし、新たな呪文を唱えはじめた。
『“モグモゲラムラ モグモゲラムラ 鋼の要塞 岬の楼閣よ 我を守れ”』
「あれは・・・“シールド”の魔法!?」
美夜子が叫ぶ。対打撃用簡易魔法。強靭な魔王の肉体に必要な魔法とは思えない。
しかし、それは既に美夜子の知るシールドの魔法ではなかった。科学と魔法の融合。
あらゆる物理攻撃を跳ね返すあまりにも強固な防護の壁が出現する。魔王が吼える。
『“ヘル・バリアー”!』
美夜子の頬を一筋の汗が伝う。
「恐ろしいほどの用意周到さ。竜人を魔族に、竜を魔竜に、鉄人兵団をゴーレムに、
そして出木杉くん、ギラーミン、パパンダー・・・その全員が自らの肉体のスペアー・・・・
だけど、それは一人よがりのエゴにすぎない!“結束”の力には決してかなわない!」
メジューサの眼には、いつの間にか涙が溢れていた。
「―――デウス・・・あの人はいつもそうだった。全能神として神界を制していた
あのときも、私を愛したことも全て―――――――御しきれない絶大な自己愛を
満たすため――――――ただそれだけのために――――――――――」
―――――――――――――――――――――ガォオン!
刹那―――――獣の雄叫びにも似た銃声が響いた。
機魔王の姿に誰もが戸惑いを見せる中、真っ先に動き出した者がいた。
漆黒の銃“ハデス”―――――操るのはむろん、死神ギラーミンである。
「ギ、ギラーミン!!」
のび太たち全員がその放たれた弾丸の行方、いや、結末を追う!
しかし―――――しかし弾丸は、あまりにも強力な分厚い装甲と魔王の生み出した
ヘル・バリアーの前にもろくも食いとめられてしまっていた!
「ああっ・・・ダメか・・・!」
絶望のため息。が、ギラーミンは顔色一つ変えない。続けざまに次の弾を発射させる。
ガォオン!再びハデスの咆哮が轟く。そしてその咆哮はデマオンを大いに驚愕させ、
狼狽させるに足る結果をもたらした!
『おおおお!?我が無敵の魔法障壁が――――科学の結晶たる装甲が―――――!』
神業である。その弾丸は寸分たりとも違わず、食い止められた弾丸に重ねて放たれたのだ。
それは仮にミクロン単位のズレであっても弾丸そのものを弾き飛ばしてしまっていただろう。
ガォオン!ガォオン!――――――――――――
弾かれては撃ち、そしてその度にわずかずつ、わずかづつ、弾丸は機魔王の装甲に
食い込んでいく。神業。それはまさしく神技と呼ぶに相応しい。果たしてギラーミンとて
もう一度同じことを試みても、それが可能だっただろうか。――――――ピシリ・・・!
ついに――――――――――――
機魔王デマオンの分厚い装甲にギラーミンの放った弾丸が亀裂を入れた―――――――!
「やった!」
手を取り合って歓声をあげるドラたち。勢いに乗ってそのまま叫ぶ。
「のび太!いまだ!チャンスだ!撃てえっ!」
しかし―――――のび太は動けない―――――――――!
皮肉にも、ギラーミンの神業を目の当たりにしてしまったことが―――――
漲り、たぎり、燃えさかっていたはずののび太の自信と全ての勇気を―――――
奪い去ってしまったのだ――――――――!この最悪のタイミングで!
「そ、そんな・・・?」
「何やってんだのび太!早く撃ちやがれ!」
「ボ、ボクには無理だよ。弾丸は・・・たった一発しかないんだ・・・!
そ、そうだ!ギラーミンが代わりに撃てばいいじゃないか!?
僕なんかよりよっぽど・・・・」
完全に腰が砕け、へたりこむのび太。
「な!?今更何言ってんだ!間に合うわけないだろ!?お前が!お前が今、
撃つしかないんだよ!!」
「ああっ!?亀裂が!?」
「ふさがっていく!?」
「もうダメだ――――――――――――――――っ!!」
一行は再び、恐慌に陥りつつあった。ふさがりゆく亀裂。防戦一方だった
あまりにも苦しい戦いの中、初めて訪れた勝機である。これがもしも塞がりきって
しまったら―――魔王を倒すチャンスはもう二度と来ないのかもしれない。
そのことを幼き歴戦の勇者たちは肌で感じ取っているのだ。絶望の時が迫る。
ジャイアンが、スネオが、しずかが、必死にその辺に転がる石ころや岩を魔王に
向かって投げつける。ダメージを与えるどころか届くことさえない無駄なあがき。
『クククク・・・クハハハハハハハ』
機魔王デマオンはその虫けらたちのあがきに下卑た恍惚の笑みを浮かべた。
勝利を確信して―――――――――最後の哄笑が轟いた。
『ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ』
リン―――――――――…
どこかで―――――小さな鈴の音が聞こえた―――――――――――
―――絶望の時。希望がふさがりきる寸前。何かが。何か大きな力が―――――
彗星のような何かがドラたちの前を横切った!だがそれはもちろん彗星ではない。
“3人”がまるで一つの生き物であるかのように絡み合いうねる光の奔流となって
デマオンへと向っていく。3人の英雄の力が今こそ隠された真の力を見せる!
「アーン・・・」「しょく・・・」「カレー・・・」
『トリプルパーンチ!!』
アンパンマン。しょくぱんマン。カレーパンマン。3人の超人たちの最強の、夢の
合体技がついに炸裂した。塞がりかけていた亀裂はより大きく力強い広がりを見せ、
英雄たちの鳴らした“勇気の鈴”の音は、のび太の心に小さな勇気を注ぎ込んだ!
決意する。立ち上がることを―――――――!
ゆっくりと、しかし力強く。のび太は立ち上がった!守るべき大切な大地を踏みしめ、
きらめく白銀の銃をその手に強く握りしめて―――――!
ゆっくりと銃を構えるのび太の体がゆらめく。淡く神々しい真っ白な光に包まれる。
白銀の銃の持つ魔力なのか。“銀の戦車シルバー・チャリオッツ”は何も語らない。
聖なる光の中をのび太の動きがピタリと静止した。
リルルは思い出していた。
この地底世界での再会後、のび太と日が暮れるまで楽しんだ射撃の特訓の時を。
のび太が自ら独学で開発したという最も狙いを安定させる理想的な射撃フォーム。
溢れる笑顔と自信に満ち溢れた瞳で、のび太がリルルに見せてくれたその美しい
フォルムと、まばゆい白光の中にゆらめくのび太の姿が今、寸分違わず一致する。
「撃てえっ!ノビ太!!」
ギラーミンが吼える!
「のび太!」「のび太!」「のび太!」「のび太さん!!」「のび太くん!!」
『 の び 太 !! 』
ドラえもんが。ジャイアンが。スネオが。しずかが。リルルが。美夜子が。
その場にいる全ての者たちが、最後に運命を託す者の名を叫ぶ。
のび太の心に最後の勇気を注ぎ込む。
脅え、震えている暇などない。勇気がみなぎる。必ず当たる。そう確信する。
星の見えぬこの地底世界に、地上の夜空に燦燦と輝く美しき星々の幻影が舞った。
“星の白金スター・プラチナ”と銘打たれた破魔の弾丸が!星々の中を突き進む。
魔王の胸にぽっかりと開いた亀裂。亀裂より覗く、闇よりもなお暗きその闇を。
その混沌の中心、赤く脈打つ惑星を目指し、吸い込まれるように消えていく――――――――!
断末魔――――――魔王の絶叫が轟く。
永い永い最後の戦いの結末を固唾を飲んで見守る者たち。
白銀の銃と見守るみんなの想いが生み出した大いなる白光が全てを照らし――――――――
――――その全ての時が止まった――――――――――!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『“バイツァ・ダスト!”』
自分で書いた最後の一文を見て、なんとなくよぎったこのフレーズ。
しかしそんなものは発動するはずもなく、次回ようやくの決着です。
たぶんもう一山くらいはありますけど。で、まだ続きは全く書いて
ないのですが、なんとかお盆明けにはエピローグまで投下できれば
・・・と思っております。長々と一気の投下失礼致しました。
>サナダムシ様
喜んでいただけたのなら幸いです。「いらない!邪魔!」と思った
ら遠慮なくポイしていただいてかまいませんので。
388 :
作者の都合により名無しです:2005/08/08(月) 08:42:31 ID:CcUCr1lG0
うわ、うみにんさん力作ですねえ。
30分ほど読みいってしまいました。
最終決戦にふさわしい熱湯ですが、一番気に入ったのは
アンパンマンズのトリプルパンチかな。
魔王の絶叫でいよいよ次で、決着、その次でエピローグくらいですか。
寂しいなあ…
うおおーーーーうみにん氏乙!
燃える展開でいよいよきたって感じですねえ。
無事最後まで書ききってくれそうなのはいいことだけど、
嬉しいような寂しいような複雑な気分です。
出木杉が大活躍してギラーミン・アンパンマン・のび太という
一風かわったスペシャルコンボに何の違和感もないw
十数レスも一気に読んだのは久しぶりですな
うみにんさんお疲れ様です。
キャラの大終結で大団円まであと一息ですな。
もう少しで終わり。完結間違いなしは嬉しいけど、
バキスレの金看板がひとつなくなっちゃうんだなあ。寂しい。
寂しい寂しい言うな。長く続いた作品が完結する。
これほどめでたいことはない。
うみにん氏を信用してなかったわけじゃないが、
出木杉は風呂敷が広がりすぎてて読み手としては
常に投げ出しの不安がつきまとってたからな。
よくまとめた。あともう少しだ頑張れ。
でも確かに寂しいなw
もし、神界大活劇とか地底出木杉帝国とかが映像化されたら
絶対2時間30分以上は経つな
394 :
ゲロ:2005/08/08(月) 20:36:03 ID:/nZxBxOrO
まとめサイトの掲示板にも書いたのですが、プロバイダー規制喰らったためにこちらに書き込む事ができません。
どうもかなり長引く可能性が高いようで。そういう訳でして、これから規制が解除されるまでまとめサイト
掲示板にて『魔女』と『茄子』を書かせて頂こうと思っております。まだバレさんに許可を得ておりませんが、お忙しいようなので・・・・・・。
>うみにんさん
今回の大量投稿と盛り上がりに、うみにんさんのこの作品への愛情を感じました。
自分の中でも大好きな作品なので、終わるのは辛いですが感動的なフィナーレを期待してます。
>ゲロさん
ありゃ、最近投稿されてないなと思ってたらそんな事情があったんですか。
出来ればここで連載して欲しいのですが、ほとぼり冷めるまでは仕方ないですね。
しかし関係ない人間までアク禁喰らうのは本当になんとかして欲しいですね。
第九話「運命」
「さて・・・何から話したもんかな」
狐面の男は畳の上に胡座をかき、四人を眺め回す。何とも捕らえ所のない男だ、と警戒しつつもペコは思った。
はっきり言って、倒そうと思えば、この場であっさりと切伏せる自信はあった。だが―――動けない。
この男に手を出してはいけないような―――そんな気がする。
「・・・あんたは、何でのび太達を殺そうとしてるんだ?あいつは―――あいつらには、殺されるような理由なんてない」
稟はようやくのことで重い空気を打ち破るかのように言葉を発した。それを受け、狐面の男も口を開く。
「<殺されるような理由なんてない>ふん。確かにな、俺だってあいつらには全然恨みなんざない。はっきり言って全く
の他人だ。だがな―――それでも俺には、奴らを殺す理由がある。それを説明するために―――まずは、俺の持論から
語ってみようか」
「あなたの持論?一体それは?」
ペコの言葉に答えるように狐面の男が答える。
「俺が考える世界の法則と、運命の在り方さ。これは三つの現象で説明できる。まず一つ。
何があろうとも、絶対に発生しなければならない出来事というものがある。それは<いつ><どこで>起こるかまでは
分からない―――だが確実に<いつか><どこかで>それは起こる。
例えば、お前達は<今ここで>俺に出会った。しかしながら、もしも今ここで出会わなかったとしても、<いつかどこかで>
必ず出会っていた。遅かれ早かれ、場所がどうであれ、結局は同じ事だ。俺達は出会うべくして出会った。
この現象を俺はバックノズルと呼ぶ」
「・・・・・・」
誰も何も答えない。それに構わず狐面の男は続ける。
「そして二つ目―――もしも俺がお前達と出会わなかったとしたら、どうなるか。その場合はお前達は、俺ではない誰かと、
同じような会話を繰り広げたことだろう。そいつはもしかしたらUSDマンかもしれんし、あるいはムスカの奴かもしれんし、
ひょっとしたらシュウだったかもしれん。誰がそれを行うのかは問題ではない。やらなければならないことを、それでも
やらずにいたならば、他の誰かが代わりにそれをやってしまうだけだ。これも結局は同じ事。
この現象を俺はジェイルオルタナティブと呼んでいる」
「バックノズルに・・・ジェイルオルタナティブだって?」
「そうだ。それが世界の法則そのものだ」
狐面の男は平然と言い放つ。
「そして最後の法則―――世界がどのような道筋を辿り、どのような人物が登場したところで、最終的に全ては一つに
収束していく。分岐点や選択肢は無数に用意されているが、最後にたどり着くのはただ一点―――
その最終到達地点を、俺は世界の終わり―――ディングエピローグと呼んでいるがね」
「ディングエピローグ・・・」
「そう―――俺は、それが見たい。俺は、世界の終わりが見たいんだ」
狐面の男は平然と言い放った。世界の終わりを望むと―――平気で言い切った。
「俺は世界が好きだ。この楽しい世界が面白くて面白くてたまらない。だから俺は―――この世界の終わりがどうなって
いるのか、知りたくてたまらないのさ」
「だから、それがなんで―――のび太達を殺すことになるんだよ?」
稟の言葉に、狐面の男は続ける。
「俺はこの世界が、誰かの手によって書かれている物語ではないかと仮定している。今の俺の言葉でさえ、誰かがキーボード
で打ち出しているのではないか?そんな事を俺は考え始めた。そしてそれが正しいなら、世界の終わりを見るための方法は
一つ。物語を、終わらせることだ。物語の終わり。それを手っ取り早く実現するためにはどうすればいいのか?
―――答えはこれだ。主人公を殺せばいい」
「主人公を・・・殺す?」
「そう。バックノズルとジェイルオルタナティブ・・・それが世界の法則。運命そのもの。物語の姿。しかしこの枠に
当てはまらない者もいるのではないか?<その時><その場所で><そいつがいなければならない>そんな存在が
いるのでは?すなわち―――
この世界という名の物語の、主人公というべき存在が。あの五人の存在を知った時―――俺はそう思うようになった。
そして主人公が死ねば―――物語は終わる。しかし、ただ死ぬだけでは物語は成立しない。そうだろう?ただ主人公が
殺されてそれで終わり、なんて物語があるものか。だから俺は<十三階段>を集めた。野比のび太達との戦いのため、とは
いうものの、優先すべきだった点はただ一つ―――物語の登場人物となりえるような<変な奴>であるかどうかだ。能力が
高いか低いか、そんなことなんて、それに比べりゃまるでどうでもいいことだ。
ジェイルオルタナティブとは言っても、やはり替えが利き難い奴というのは存在している。物語にとってそれなりに重要な人物で
ある可能性が高い、そうそう代理品など見つからないレア物―――
そんな<変な奴>を俺は集めた。お前らにちょっかいをかけたのも同じような理由だ。敵方にももう少し多くの<変な奴>がいる
べきと思ってな。それにパワーバランスの問題もあった。あっさりと連中に負けられても困る。それでは物語にならない。だから
ちょいとばかし助っ人を用意してやろうと思ったのさ。そして―――
俺は<十三階段>を使い、俺と野比のび太達との戦いの物語を演出し、そして最後に奴らを殺す。
それこそが物語の終わり。まさにディングエピローグさ」
「・・・狂ってる」
亜沙は得体の知れない物でも見たかのように顔を歪めた。
「そんなの滅茶苦茶じゃない。この世界が物語で、のびちゃん達が主役だから、それが死ねば物語が終わる、なんて―――
何の根拠もないじゃない!」
「<何の根拠もない>ふん。それはお前らが奴らの為してきた事を知らんからだ。奴らの周りでは常に騒動が巻き起こり、奴らは
それを日常茶飯事のように解決していく。調べれば調べるほどそんなデータばかりが出てきた。―――なあ、こんな奴がただの
一介の登場人物だなんて思うかい?これほどの<変な奴ら>なんて、俺は他に知らん。まさに主人公の器だ」
「・・・だから、何なんだ?」
「ん?何、とは?」
狐面の男は不思議そうにペコを見た。
「あなたがどう思ってても、のび太さんはのび太さんでしかない。ぼくが知ってるのび太さんは、ドジで間が抜けてて全然
頼りなくて―――けれど、誰よりも優しい少年だった。あなたに傷つけられるようなことなんて―――何もしてない」
ペコはぐっと、狐面の男を力強く指差した。
「それでもあなた達が彼らを殺そうというなら―――ぼくは全力で、あなた達を止める。ぼくはのび太さん達に助けられっ
ぱなしで、まだ恩返しもしてないですから」
「ペコ、お前だけじゃないぞ」
稟もペコに続いた。
「俺達だって、あいつらにどれだけ助けられたか―――あいつらを助けられるのなら、何だってやるさ。相手が誰だろうと、
何とだって戦ってやるさ」
「私も。のび太達を傷つけようとすることだけは―――許せない」
「ボクだって。絶対、のびちゃん達を守ってみせるから」
プリムラも、亜沙も―――確かな思いを紡ぐ。目の前の最悪から、目を逸らすことなく。
「・・・くっくっく」
最悪は、笑う。ただただ、笑う。
「そうかそうか―――お前らもやはり<変な奴ら>だ。お前らをここまで連れて来た運命に感謝する。さて―――
では野比のび太達が今どうなっているのか知っておこうか。・・・これは<タイムテレビ>という道具だが、これで
ちょっと見ておこう」
狐面の男がどこからか取り出したテレビに、四人の目は釘付けになった。そこに映っていたのは―――
「ロ・・・ロボット?」
「そう。野比のび太とドラえもんが乗っているのが、この<ザンダクロス>という名のロボットだな。まあ、他にも
お前らの知らない仲間がいるようだから、会ったらきっちり紹介してもらいな」
狐面の男は笑いながら<タイムテレビ>をしまう。
「次にこれを渡しておこう。<伝書バット>。これの導く方向に、野比のび太達はいる。感動の再会だな。
―――諸手を挙げて、喜べよ」
「・・・くっ!」
ペコはぐっと唇を噛み締めて、それを引っ手繰るように受け取る。
「まあ、そう怒るなよ。さて―――もう夜も明ける。俺は退散させてもらうぜ」
そして―――狐は去っていく。その様を、ペコ達はただ見送るしか出来なかった。
「・・・用意はいいですか、稟さん」
「ああ、大丈夫だ。行くか、みんな」
四人はそれぞれ巨神像とサイバスターに乗り込み、前に進む。
巨神像が力強く大地を踏みしめ、サイバスターが鳥のように空に舞う。
目指すは懐かしき友の元―――のび太達のいる場所。
そして―――彼らは、再び出会った。
投下完了。前回は
>>345より。
狐理論は原作通りに書くと、それだけで数十レスになる危険があったので、かなり簡略化してます。
興味がある人は原作をどうぞ。
うみにん氏がそろそろ終わりそうで寂しいです・・・。しかしながらホントに長い作品でした。
拙作「超機神大戦」も相当長くなりそうですが、これほどの大作になるかどうか・・・。多分ならない(笑)
>>393さん
神界大活劇は、漫画でいくと大体1レスで2P強のイメージで書いたので、それでいくと約400P・・・
大長編2作分!長さだけは一丁前だ(笑)
>>ふら〜りさん
誰がメインヒロインとかは特に意識してませんが、やはり作者の好みが出番の多さに比例しているようです。
ぶっちゃけしずかちゃんには萌えないし(爆)、原作にないカップリングは書いてて楽しいし・・・。
401 :
作者の都合により名無しです:2005/08/09(火) 08:32:30 ID:8ezBwwOA0
>ゲロ氏
アク禁止はどうにもならんですからな、個人の力じゃ
魔女は連作系なので、解除されたら本スレに戻るのは容易だから
しばらくHPで書くのもいたし方ないですな
>サマサ氏
バックノズル、ジェイルオルタナティブというのは種かなんかの
用語かな?因果律が絡んでくるとは思いませんでした。
狐は狂言回しというよりシナリオライターっぽい役回りですな
>>401 狐の言ってた用語は全部戯言ネタ。原作で、ほとんど同じ台詞をいーちゃんに言ってる。
ネーミングが異常なまでに厨臭いのは、狐の狂いっぷりを表現するための、作者なりの計算だと思われる
>>393 どこもカットしないなら出木杉は2時間や3時間じゃ無理ぽ。
神界はちょうど2時間半くらいにおさまるんじゃなかろうか。
404 :
ゲロ:2005/08/09(火) 11:14:16 ID:dcf0tDZ6O
まとめサイト掲示板に試しに書いてみました。
>>399を微妙に修正。お手数ですが、保管の際はこちらでお願いします。
狐面の男がどこからか取り出したテレビに、四人の目は釘付けになった。そこに映っていたのは―――
「ロ・・・ロボット?」
「そう。野比のび太とドラえもんが乗っているのが、この<ザンダクロス>という名のロボットだな。まあ、他にも
お前らの知らない仲間がいるようだから、会ったらきっちり紹介してもらいな」
狐面の男は笑いながら<タイムテレビ>をしまう。
「次にこれを渡しておこう。<伝書バット>。これの導く方向に、野比のび太達はいる。感動の再会だな。
―――諸手をあげて、喜べよ」
「・・・くっ!」
ペコはぐっと唇を噛み締めて、それを引っ手繰るように受け取る。
「まあ、そう怒るなよ。さて―――もう夜も明ける。俺は退散させてもらうぜ。
それじゃあ―――縁が<合った>ら、また会おう」
そして―――狐は去っていく。その様を、ペコ達はただ見送るしか出来なかった。
「・・・用意はいいですか、稟さん」
「ああ、大丈夫だ。行くか、みんな」
四人はそれぞれ巨神像とサイバスターに乗り込み、前に進む。
巨神像が力強く大地を踏みしめ、サイバスターが鳥のように空に舞う。
目指すは懐かしき友の元―――のび太達のいる場所。
そして―――彼らは、再び出会った。
406 :
作者の都合により名無しです:2005/08/09(火) 18:37:14 ID:eVAegCv00
サマサさん乙。
今回は13階段との決戦の為の基礎用語講座でしたね、狐先生の。
亜沙が一番常識人ぽい感じがするな、登場人物で。
407 :
茄子:2005/08/09(火) 18:54:37 ID:eVAegCv00
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/gero/03.htmの続き その2 異星人
茄子が降って来た日より数ヵ月後。園田宅。
「なあ」
「なに」
「最近メシがあからさまにうまくないぞ」
「そお」
「前はもっと手間がかかった味してたよ」
「だって茄子以外食べても吐いちゃうんでしょ」
「味は楽しんでたさ」
「作り甲斐がなくって」
「そうか。それは……確かにそうかもなあ」
旦那はそう言って暫く考え事をした後、
「子供作ろうか」
「あなた人間じゃないって言ったのに子供作れるの」
「なんとかなるだろ。お、時間が」
これ以上遅刻したらさすがにヤバイクビになると、旦那が立ち
上がる。
「いってらっさい」
「行ってきます」
408 :
茄子:2005/08/09(火) 18:57:29 ID:eVAegCv00
地球より遥か離れたある惑星。
「イノチノホシハドウナッタ? ケイカクドオリワレワレノモノト
ナッタノカ?」
「マダホウコクガキテオリマセヌガナントカナルデショウ」
「ソンナテキトーデハコマルゾフクショウグン」
「シカシカッカジョウホウガアリマセンノデゲンジテンデハワカリ
カネマスデス」
彼らは足がたくさんあって、色は紫色であった。なんかぶにゃぶ
にゃしている。
409 :
茄子:2005/08/09(火) 19:00:15 ID:eVAegCv00
「トニカク! アノホシヲテニイレネバワレラノメイウンハナイノ
ダ! コレハシュノソンゾクガカカッタイチダイジナノダヨ」
一番偉いと思われるぶにゃぶにゃが激昂して、プポ! と叫んだ。
「ハイカッカ」
『プポ』とはどうやら名前であったらしい。
「ワレラガホシニュボピョロロセイハイマミゾウノショクリョウキキ
ニアエイデオリマス。アトヒトツキゴニハハンスウノドウホウノイノ
チガツキルケイサンデス。ジタイハキュウヲヨウシテオリシッパイハ
ユルサレナイノデス」
そんなこと言われずとも分かっている、とウンザリしたように副将軍
らしきぶにゃぶにゃがぶにゃぶにゃしている。それを見た閣下らしきぶ
にゃぶにゃがぶにゃぶにゃして、
「フクショウグン! プポノハナシヲキク!」
「キイテオリマスカッカ」
「ナラワカッタデアロウ。ジタイハキュウヲヨウスルノダ! キミハイ
マスグココヲタチイノチノホシヘムカエ! ワレラノシハイカトナッテ
イルノナライマゴロアノホシハ茄子<fアフレテイルハズダ」
「茄子トハ?」
「ワタシニモヨクワカラヌガナンデモアノホシノシュショクラシイ。ワ
タシトオナジイロヲシテイタノデキニイッタ」
「ソンナリユウカヨ」
「ナニカイッタカフクショウグン」
「イエナニモ。デハイッテマイリマス」
410 :
茄子:2005/08/09(火) 19:01:02 ID:eVAegCv00
再び地球。園田宅の庭。
「いい天気だなあ」
そう言いながら洗濯物を干している園田の嫁。
「#$@ΛΣкЮРз℃ж」
「?」
突如足元に現れた何やらぶにゃぶにゃした物体が発する音耳を傾ける嫁。
ぶにょぶにょした物体は触手をうねうね動かし、頭部と思われる部位に備
え付けられているつまみをきりきりと動かした。
「ナリョボリョイスンヨ」
「あたし外国の言葉わからない」
ぶにょぶにょした物体はまたつまみを弄った。
「この星はいのちのほしですか?」
「え」
「聞いています私はこの星はいのちのほしですかと」
あまり出来のいい翻訳機ではなさそうだ。
「多分」
「この星は茄子ですか?」
「この前降って来たよ」
「それは紫色をしたなにかですか?」
「あなたと同じ色」
「素晴らしいことです」
「とりあえずウチに入りなよ」
411 :
茄子:2005/08/09(火) 19:01:47 ID:eVAegCv00
ぶにゃぶにゃした物体が座布団に礼儀正しく座っている。
「何か食べる?」
「エビョロブティージャが食べたいです」
「分かった。茄子ね」
園田の嫁は、あの日大量に拾った茄子を未だに処理し切れずにいた。
「茄子と高貴なる生物が共に降って来ませんでしたか?」
「高貴なる?」
「それはとても雄大で内には広大なる豊かな精神性を備えているのです。
私達が星『ニュボピョロロ星』の英知が結集された生物なのです」
「それって、これ?」
茄子の炒め物を中断した嫁がぶにゃぶにゃの前に持ってきた籠の中には、
これまた紫色のぶにゃぶにゃした何かが入っていた。しかし、籠の中の紫色
には触手がない。つまみもない。尾が生えている。ぶっちゃけゴジラである。
紫色のぶにゃぶにゃした小さなゴジラであった。
「これではありません。高貴なる生物がもっともっと巨大です。破壊するの
です全てを。それの破壊性能に見受けられません。心外でありました」
「え違うの? ウチの旦那が『宇宙生物生捕って来たぞー』って騒いでたんだけど」
あの日、園田四郎は宇宙生物を殲滅する事は実は出来なかった。何度殺しても蘇っ
て来るので非常に困っていた。仕方がないので小さくした。ペットにすることに決め
たのだ。
ニュボピョロロ星。
「プポ! フクショウグンカラノホウコクハマダカネ?」
「マモナクイチジキカンヲハタストオモイマス。マチマショウ」
「タダイマカエリマシタ」
「オオフクショウグン! シュビハドウカネ?」
「茄子ガヒジョウニビミデアリマシタ」
「茄子?」
「アトミメウルワシイジョセイニデアッタノデスカッカ」
副将軍は、触手に抱えたゴジラもどきを撫でながら言った。
彼は二度と地球の土を踏む事は無かった。
二話目のテーマは「適当」。嫁は宇宙人と会話が成立する兵ですが、多分顔は可愛いと思います。
黒田硫黄の絵をイメージしながら書いてるからそう思うだけですが多分。
三話目は語り口を優しくして童話風に仕立てようとしましたが玉砕しました。でも、最初ギャグ
で後半シリアスという展開は嫌いじゃないです。
次は魔女で。今回もある意味魔女でしたが。
>>251 それはさすがにないですねw
>>252 子供時代はそういうのが意外につらいんですよね。疎外感を覚えるのでしょう。
特に田舎だと余計にね。
>>256 そうです。座敷童子は別称「蔵ポッコ」と言うそうで、そこから名を取りました。
ちなみに今回は西洋とは絡まないです。僕の中での魔女の定義は単純で「人と異なる力を持つ女」
です。それさえ満たしていれば舞台は関係ありません。原作にも日本を舞台にしたものがあります。
>>257 今回の魔女はミスティは出ません。
ポッコに関しては上に書いた通りです。
↑↑↑↑↑↑
以上、作品とゲロ氏の後書きはまとめサイトからの転載です。
ゲロさんがアクセス規制に巻き込まれ本スレに書きこめないとの事なので
私が代理で転載しました。
また、後書きに3話とありますが、連投規制の関係で今日は2話だけで、
明日の朝に3話を転載します。
413 :
茄子:2005/08/09(火) 20:20:42 ID:gr5+EbSY0
>>411 第三回 七人の魔女
とある世界のとあるお城に七人の魔女がおりました。
シヴァは七人のまとめ役。齢四百を超える老練な魔女。
アティはシヴァに仕える十一歳の見習い魔女。小さなお友達と大き
なお友達の人気を同じ程度に得る為に日頃から努力を惜しみません。
伊藤育枝は二十九歳にして五人の子を持つ肝っ玉魔女。長男は十二
歳になりました。アティとその支持層を嫌っているようです。
ポチは今年で二十になる雌犬魔女。長く生きているうちに不思議な
力を得ました。今は育枝に飼われています。
モッツァレラは身長百二十cm体重百二十kgという体型が皆に親し
まれています。
佐久間則之は新聞配達でなんとか食っている少年。女ばかりのお城
では色々と苦労が多いようです。
シャンデリアはお城を明るく照らしてくれる照明です。実は人間とか、
そういうことは多分ないでしょう。
この七人が、今日も勝手気侭にお城での一日を過ごしているのです。
414 :
茄子:2005/08/09(火) 20:21:43 ID:gr5+EbSY0
「薔薇の花と茄子の花には棘がある――あたしは薔薇だね。可憐で気
品高く経験豊かな薔薇だ。あんたはせいぜい茄子の花さ」
「なんであたしがナスなのー☆」
「(うぜえ)棘があるだけだからさ」
「ひどい☆」
育枝とアティはこうして毎日のように諍いを起こしています。育枝は
どうやらアティのその特徴的な語尾が気に食わないようです。
「そりゃさーあたしはまだ見習い魔女っ子だしー経験もないし魔法もあ
まり使えないしーでも人気だったら育枝さんより全然だよー☆」
「あんたを支持してんのなんてガキか脳が下半身になってるアッチ系ば
っかだろうが。大体まだガキも産めねえガキに五人も人間産み出してる
あたしが負けるわけねえだろが」
「でもでもあたしのほうが人気あるもーん★」
「魔女は人気商売じゃねーっつーの。このニッチ市場狙いが」
「お止め!」
育枝とアティは双方譲るということを知らないので、いつもシヴァが
止めに入ることでとりあえずは解決します。シヴァのよく通る声は二人
を無理矢理止めるだけの力に満ちているのです。
「そうですよ育枝さん、アティさん。争いは何も生みません。ただお腹
が減るだけです」
ポチがそう言いました。
「うるさい犬☆」
アティはそう言って骨を遠くに投げました。ポチは魔女の力を持ちま
すが所詮は犬ですので、本能には逆らう事が出来ません。骨を追って向
こうに消えていきました。
「二人とも落ち着く。これ食べて……いい。あげる」
モッツァレラが城の耐久度を確実に下げるような轟音を立てて育枝と
アティに寄って来ました。モッツァレラの中では善と悪の心が闘ってい
ました。手に持つお菓子を二人にあげて仲良く食べてもらうかどうか――。
415 :
茄子:2005/08/09(火) 20:23:25 ID:gr5+EbSY0
『モッツァレラ。これをあげれば二人は一生の友になるのよ』
『何言ってやがる天使。てめえは希望的観測しかしやがらねえ。なんか
確証があって言ってんのかよ? おめえの言うこた胡散臭え。現実味が
ねえ。モッツァレラ、やるこたねえ。食っちまえ。そのデカい口に放り
込んでその肉のさらなる肥やしにしろい』
『私は人間の善なる心を信じています!』
『お前がどれほど人間見てきたっつうのよ? ただ綺麗ごとだけ並べや
がって。おめえらの言うことにゃあリアルが見えねえんだよ。おめえら
は戦争に反対するだろうが結局人間はやるだろうが。人間は悪い事をし
たくて仕方のない生物なのさ!』
『モッツァレラ! 悪魔の物言いに耳を傾ける必要は微塵もありません!
さあ、お菓子を二人に!』
『モッツァレラ! 天使の言い付けどおりしたって物事は何にも変わらね
えぜ! さあ、食っちまえ!』
416 :
茄子:2005/08/09(火) 20:24:03 ID:gr5+EbSY0
――上のような葛藤が『……』の中にありました。時間にして一秒。心
優しいモッツァレラは、善なる方を選択しました。
「ピザでも食ってろモッツァレラ☆」
アティはお菓子を渡された瞬間振りかぶってそれを遠くに放り投げました。
モッツァレラは肉弾魔人と化してお菓子を取りに走りました。城の耐久度が
さらに落ちました。
「アティ……!」
度重なるアティの蛮行に、シヴァの堪忍袋の緒が切れました。
『シルヴァ・モスキート』
呪文を唱え、ステッキを振るシヴァ。すると、アティが宙に浮いてしまい
ました。
「きゃー、何するのせんせい!?★」
「暫く空で頭を冷やしなさい!」
「おーパンチラ。お前のファンとやらが嬉々としてズボン脱いでる姿が目に
浮かぶぜ」
「うるせえババア!★」
「ああ!? んだと毛も生えてねえガキに言われたくねえぞおい!」
「生えてるっつーの糞ボケ!!★」
「目上の人間に向かってその口の聞き方はなんですアティ!?」
シヴァはもう怒り心頭です。アティの方はといえば、こちらも怒りが臨界
点を越え暴走状態です。
「うるせえうるせえうるせえ! 皆死ね! 死んじまえ! 死ね! 死ね!
このファックどもが! イメージダウンするファンなぞいらねえ! お前ら
全員脂肪で燃え尽きやがれッ!!」
語尾に星を入れるのも忘れ、小さなお友達を怯えさせ、大きなお友達に暴
言を吐きまくったアティの人気はその日を限りに地に堕ちました。
417 :
茄子:2005/08/09(火) 20:25:11 ID:gr5+EbSY0
アティがどれだけ叫んでももう声は地上に届きません。
「そういやノリユキ君は?」
「今日も彼は忙しく働いているようですよ」
「ふーん。あの年で一人で生きるのって大変だよねえ」
シヴァと育枝は、二人でまったりと茶を飲みながらお話をしていました。
「おおいシャンデリアー。今は日もあるし灯りはいらないよ」
『さいですかー』
育枝が天井のシャンデリアに向かって叫ぶと、シャンデリアが関西弁で
そう答えました。
「そうね。今の世の中省エネ一辺倒だものね。育枝さんはその辺さすが主婦
だけあって気が回るわね。あたしは全然ダメ」
「子供が五人もいると電気代大変なんですよー。あいつら無駄な電力ばっか使
うからさあ。まあ、そういうトコも可愛いんですけど。でも、自分の子供以外
は大嫌いなのよねえ。特に今お仕置き喰らってる馬鹿とか」
「あの子をあまり嫌わないであげてね」
「あいつは可愛いけど、それを意図して使いすぎっつーか……そういうトコが
鼻についてしょうがない」
「あの子は愛に餓えてるのよ。だから、皆に愛されたいの。でも、そんなこと
は無理な話。不可能な事なのよ。不可能な事をしようとするから、どこかに異
常を来してしまったのね」
「そりゃ不可能だろうね。あらゆる人に好かれようとコロコロ態度を変える子
がたまにいるけど、そもそもそういう子自体が大嫌いなあたしみたいな人も多
くいるだろうし」
「あの子は知らないうちに袋小路に嵌っていたんだわ……ね、育枝さん?」
「ん?」
「あの子を助けてあげて頂戴」
418 :
茄子:2005/08/09(火) 20:43:28 ID:gr5+EbSY0
数時間後。アティのお仕置きは終わりました。
「ぅぐっ……ひっく……んぅっ」
アティは滝のような涙を流していました。洩れ出る小さな声は掠れていまし
た。叫び過ぎて喉が一時的に潰れているのでしょう。
「アティ」
「せんせぃ……ごめんなさいごめんなさい……ちょぅしにのりすぎました……」
「反省した?」
「はぃ……」
シヴァはアティの瞳の奥を見ました。奥には未だドス黒いものがあり、更生
されていないことは明らかでした。
「…育枝さん」
シヴァの声に応じて、育枝が椅子から立ち上がります。
「さあ、立つんだガキ」
「…なにょ……なに、すんのょ……」
アティの手を引き立たせた育枝。城にはカメラが備え付けられてあります。勿
論、アティがその姿を全国のファンに届けるためです。育枝はそのカメラの前に
アティを引き摺って行こうとしていました。
419 :
茄子:2005/08/09(火) 20:44:18 ID:gr5+EbSY0
「ちょ……! い、ぃやだ」
「なんで? あんたは好きだったろ」
「もぅぃゃなの……ぁたし、ぁんなことぃっちゃったし……もう、だめなんだよ」
「人生なあ……手遅れなんてこたねえんだよ!」
そう叫び、育枝はアティをカメラの前に放り投げました。アティは糸の切れた
人形のように倒れました。
「さあ、ファンに謝れ」
「ゆるしてくれなぃよ……」
「信じろ。大丈夫だ。女の涙は何より強い」
「……」
「あんたは可愛いよ」
「…ごめんなさぃ、ごめんなさぃ、ごめんなさぃ……ぁたし、ばかです。うらぎり
ました。でも、ぁれもわたしです……ごめんなさぃ……もぅ、なんてぃぇばぃぃの
かわからなぃ……」
アティは、初めてカメラの前で素の姿を曝け出しました。作られた自分を見せる
事以外、彼女は表現を知らなかったのです。全てが壊れて、新たな表現を知ったの
です。それは、『ありのままの自分を見せる』というものでした。
420 :
茄子:2005/08/09(火) 20:44:56 ID:gr5+EbSY0
それから、アティは少しずつ丸くなりました。相変わらず育枝との言い争いは続
いていましたが、それも段々減ってきています。
育枝は長男が中学生になったこともあり、城に来る頻度が増しています。アティ
とはよく争いますが、彼女に人として大事な事をよく教えています。『女の涙は核
兵器より強い』『よっぽどでない限り、謝れば許される』『手切れ金はきっちり取
れ』――これらの教えが、アティを立派な大人に導いてくれるでしょう。
シヴァは、アティを善く指導しています。しかし最近序々にその役割を育枝に押
し付けつつあります。育枝のほうがアティを指導するのに向いていると判断したの
でしょう。面倒臭いからではありません。
ポチは犬です。
モッツァレラは百二十五cm百四十kgとすくすくと育っています。
佐久間則之は相変わらず勤労少年です。
シャンデリアは照明です。
七人の魔女は皆それぞれを生きています。
421 :
茄子:2005/08/09(火) 20:48:49 ID:gr5+EbSY0
ゲロ氏の代理の人、勝手にうぷしてすみません
2話目と3話目は対比しているようなので早くうぷしました。
ちゃんとあっているかな?改行規制がうざかったです。
ゲロ氏、蟲師からあなったのSS大好きなのでこれからも頑張って下さい。
第十三話「行き止まり」
夜になり、人造人間一行は予約していた宿の中に入る。
取ってある部屋は二つ。片方にセルとセルジュニアが泊まり、もう片方には17号たち
三人が泊まる。長引くクリスタル探しに加え、出産により体力を消耗していたセルは、ほ
とんど会話も交わさぬまま部屋に入った。
小さな室内にあったのは、手入れがなされている清潔なベッドと、最低限の電化製品の
み。普段ならばここで不平をあらわにするセルだが、そんな気力はなかった。吸い込まれ
るようにベッドに横たわり、眠りにつこうとする。
「やれやれ、とんでもない一日だった。今日はゆっくり休もう……」
セルは目を閉じた。
しかし、同伴者であるセルジュニアはそうはいかない。生まれたばかりであり、また少
しずつであるが知能も目覚めつつある。こんな安宿の狭い一室では、退屈で仕方ないのだ。
「ねぇ、起きてよ」
息子は眠っている父を揺り動かす。微笑ましい光景だ。むろん、セルは黙殺する。
「起きてってば」
息子は眠っている父を平手で打ち始める。少々乱暴だが、これもまた微笑ましい光景と
呼べる。セルは痛みを我慢しながら、狸寝入りを続行する。
「遊ぼうよ」
セルジュニアは馬乗りになり、セルの鼻っ面に拳を打ちつける。が、セルは起きない。
ならばと、今度は尾を引きちぎる。が、セルは微動だにしない。さらに、両手両足をへし
折ってみるが、セルはまるで起きる気配を見せない。
「ちぇっ……寝てるふりかと思ったけど、本当に眠ってるのか」
父が起きないことを悟ったセルジュニアは、結局すごすごとベッドに入る。敗北を認め
た証である。
ちなみに、セルはとっくに気絶していた。
翌朝──目を覚ましたセルは、早くも自分が危険な状態にあることを察知する。
両手足が折れており、ちぎれた尻尾は床に落ちており、全身を激痛が包み込む。眠って
いる間に一体何があったのか。あまりに突拍子がなく、推察しようがない。
だが、セルとて人造人間である。自らが持つ知識を参照にしながら、全ての因果を結び
つけることには長けている。そして、導き出た結論とは──。
「睡眠時無呼吸症候群、恐るべし!」
もっとも恐れるべきはセルの少ない脳みそなのだが、彼がそこに到達するはずもない。
「原因も分かったことだし、飯にするか。起きるぞ、セルジュニア!」
こうして、事件は無念にも迷宮入りとなった。
さて腹ごなしを終え、宿を出た一行。次なるクリスタル探しに向け、話し合いを行う。
「残っているのは、水と土と炎か……。さて、どこか心当たりはあるか?」
17号の問い掛けに、一同は沈黙する。これまでの二つには分かりやすい名所があった
が、残る三つはいかんせん範囲を絞るのが難しい。特に炎などは、フライパン山という候
補が消えたため、全く見通しが立たない。
すると、突然セルが挙手をした。何か意見があるようだ。しかし、反応は冷たい。
「ヘルズフラッシュを喰らいたいのか」
「そもそも、おまえに発言権はないはずだろう」
「どうせまた、つまんないこと考えてるんだろ?」
「本当にパパってダメなやつだな。今までも、そうやって迷惑掛けてきたのか」
16号、17号、18号、セルジュニア──流れるように罵声が浴びせられる。
実の息子にまで裏切られ、傷心したセルは切り札を持ち出す。
「くそっ、おまえら鬼か! こうなれば、我が火と風を組み合わせた新技を拝ませてやる
ぞ!」
セルは右手から火を生み出し、さらに左手から風を発生させた。ただ残念なことに風向
きを誤ったため、火は全てセル自身に襲い掛かる。悲鳴を上げるセル。
「ま、参った!」
結局、セルは白旗を振った。この常識を超えた凄まじい敗北に、誰もが言葉を失ったの
であった。
時として、弱いことは強いことよりも利益を得る例がある。焼け焦げた肌を涙ながらに
さするセルは、あまりにも悲惨であった。そして、17号が提案する。
「いいだろう、おまえのアイディアを聞いてやるよ」
旅始まって以来かもしれぬ温かい台詞に、セルは過剰に反応した。
「ほ、本当か! 嘘じゃあるまいな!」
「あぁ、本当だ。その代わり、しくじった場合は分かってるよな?」
「分かってる、分かってる。ヘルズフラッシュでもアクマイト光線でも、何でも受けてや
る!」
他人から必要とされる喜び。セルはいつになく陽気になり、自分が考えたクリスタルの
在り処について話し出した。
「水のクリスタルなんだが、私には心当たりがある。それは……続きはCMのあと!」
「勿体つけてないで、早くしなよ」
「げぼッ!」
18号に蹴り飛ばされたセル。準備していた小ネタを引っ込め、ただちに本題に入る。
「……私は水のクリスタルは、カメハウスにあると睨んでいる」
「カメハウス?」
「かつて孫悟空らの師匠だったという武天老師の住む、海に囲まれた小さい島だ。今ま
でクリスタルの守護者を務めていたのは、いずれも孫悟空の仲間だった。だから、絶対
にクリスタルはそこにある!」
セルは真剣だった。唱えた説も、あながち間違いだとも思えない。
「いいだろう……住所は俺が知っている。すぐに飛び立とう」
こうして、16号を案内役とし、五人はカメハウスへと飛んだ。
「ないぞよ」
用件は武天老師こと、亀仙人の放った四文字で終わった。それと同時に、セルの人生も
終わった。
「待ってくれ……違う! あの爺さんが嘘をついてるに決まってるんだ! 止めろ、そん
な目で見るな! わ、私は人造人間セルだぞ! いや、だからどうってわけでもないんだ
が……。と、とにかく話せば分か──!」
まもなく水平線上に、セミの鳴き声が響き渡った。だが、心配はいらない。生命力だけ
は無駄に高いので、きっと生きていることだろう。
直後投下失礼します。
世間は暑いけど、ここは盛況で何よりです。
427 :
作者の都合により名無しです:2005/08/10(水) 08:39:00 ID:YlydlZc10
>ゲロ氏
2話目よりも、3話目のほうが気に入りました。
魔女がらみなのであっちの話と関連あるかと思いきや、方向性逆でしたねw
でも、ラストはゲロ氏の本道に近い感じかな?
>サナダムシ氏
セルは4つのクリスタル集め終わってもこの状態のあのか?流石にそれは寂しいな。
セルジュニアすら仲間にならず、新技も風程度で流される始末。
ひょっとして、ミスターサタンより弱いかもw
いや、ミスターサタンは意外と強いぞ。周りの連中が宇宙レベルなだけで。
一般人にも負けてるこのセルでは勝てないだろ。
確かに。このセルは俺でも勝てそうだw
第十話「古の魔界より」
話を聞き終えた面々は、シーンと静まり返っていたが、やがて口々に語り出す。
「・・・まさか、そこまで狂ってる奴だったなんて」
「ホント、とんでもないね」
「いや、それにしてもUSDマンに、シュウって奴のネオグランゾンだっけ?全く、次から次に・・・」
様々な意見が飛び交う中―――
「アザミは、本当に殺されたんですか?その、シュウって人に・・・」
しずかだった。その表情は、暗い。それも無理はない、と稟は思った。あの最後の時―――真っ先にアザミを助けようと
駆け寄ったのは、彼女だったのだから。
「うん・・・俺が確認したわけじゃないから、絶対とは言えないけど―――神王のおじさんが嘘を言っても仕方ないし、
残念だけど―――生き残ってる可能性は、多分ないよ」
「・・・そうですか」
しずかはそのまま黙り込む。
「おっちゃんか・・・元気してるのか?まっ、あのおっちゃんの事だから、心配ないだろうけどよ」
何となく重い雰囲気を嫌ったのか、ジャイアンはあえて明るい声で言った。
「ああ、あの人が元気じゃなかったら世界が滅びる前兆だよ。魔王のおじさんと、相変わらず馬鹿やってるよ。
みんなのことも結構気にしてたぞ?」
「へへっ、そっか。そりゃあありがてえ。なっ、みんな!」
「うん、そうだね!」
のび太達もできるだけ暗くならないよう、元気良く答える。
「はは・・・僕はその人のこと知らないけど、随分楽しそうな人なんだね。いつか会ってみたいな」
「そうね。わたしも見てみたいわ」
「ええ、そういう人と話をするのも面白そうだ」
<神王>なる人物(というか神様)に興味津々なキラ、リルル、ペコに稟は苦笑する。
「ん〜・・・あんまお勧めはしないけどな。ショックが強すぎると思うぞ・・・ん?」
不意に言葉が途切れる。背後からムウに肩を叩かれたからだ。
「ちょっと聞きたいんだが・・・君らをこの世界に連れて来たシュウって男のことだ」
「はい?」
「こんな顔の奴じゃなかったか?」
ムウは懐から一枚の写真を取り出す。それに映っていたのは、妖しいほどに端整な容姿を持った男―――
「―――!こいつです!」
「うん、確かにこの人だよね、稟ちゃん」
「間違いない・・・と思う」
「そうか・・・やっぱり、な」
ムウは天を仰ぎ、数奇な運命を呪うかのように顔を歪める。
「けど、なんでムウさんがこいつの写真を!?」
「大したことじゃないが、俺の知ってる限りのことを話そう―――こいつの名はシュウ・シラカワ。未来世界の、犯罪者だ」
「え―――!?で、でもこいつ、数千年前の魔界で、グランゾンを造ったって言ってました・・・いや、どこまで本当なのか
よく分かんないけど、全部本当だとしたら―――なんでこっちの世界の未来にもいるんですか!?」
「それについては一つ、俺なりの仮説がある。それはまあ後で話すとしよう。さて、シュウ・シラカワ。こいつに関しては、
経歴や素性は一切不明だ。何時の間にか現われ、何時の間にか狐と行動を共にするようになっていた。何やら不思議な事が色々
できるらしくてな、眉唾モンだが、魔法使いなんじゃないのかって噂も立つほどだ。そして、狐が集めた変態集団―――
<十三階段>の中でも、狐に相当近い位置にいる男だ」
「ちょっと待って下さい、ムウさん!」
ドラえもんが疑問を口にする。
「経歴も素性も一切分からないって・・・未来世界、少なくともぼくがいた22世紀では、情報管理も発達してて、そんな
人間なんて絶対いるはずないですよ!」
「ああ、そのはずなんだ。なのに―――誰がどう調べても、奴のことはまるで分からなかった。まるである日突然、別の世界
からやってきたかのように、ね―――」
「別の世界―――まさか!?」
「坊主、多分お前の思ってることで正解だ。お前の言葉と俺の知る限りのシュウ・シラカワに関する知識―――それを合わせれば、
答えは一つだ。シュウは―――<次元断層>によって、数千年前の、その、魔界と呼ばれる世界から、狐のいる未来世界へと
やってきたんだろう」
<次元断層>―――のび太がかつて飲み込まれた、異世界へと通じる時空の歪み―――
「じゃあ・・・まさか、ネオグランゾンって・・・」
「そう、お前らが見た、そのネオグランゾンって奴は恐らく、シュウの持つ魔法知識と、未来世界の科学力によって
産み出された兵器だろうな―――厄介だぜ」
のび太達はみんな、黙り込んでしまった。無理もない。グランゾンでさえ、あれほどの恐るべき力を持っていたのだ。
それを更に超える、魔法と未来科学が融合せし機械の魔神―――<ネオグランゾン>。
しかもそれを操るのは、アザミとは違って正式なパイロット―――古の魔人、シュウ・シラカワ。
果たしてどれほどの力を秘めているのか、想像もできない。
誰もが、戦慄を押し殺し、息を詰める。
「・・・みんな、ごめんね」
「え?何だよ、のび太。いきなりかしこまって」
突然ののび太の言葉に、一同は面食らう。
「ぼくらのせいで、とんでもないことに巻き込まれちゃって・・・ほんとなら、もう戦いなんてしなくてもよかったのに。
平和に暮らせたはずなのに・・・」
「それは違います!」
異議を唱えたのはペコだった。
「ペコ・・・だけど」
「ぼくらはそもそも、のび太さん達に助けられたんですよ?むしろ、やっと恩を返せる時が来たというべきですよ」
「そうだよ、のび太。ここに来たのはあくまでも俺達の自由意志さ。みんな―――お前達を助けたいからやってきたんだ。
そんな水臭いことは言いっこなしだぜ」
稟も微かに微笑みながら、のび太の肩を叩く。
「そうそう。お姉さん達に任せなさい!」
亜沙はここぞとばかりに姉貴風をビュウビュウと吹かせてみたりする。
「・・・頑張る」
プリムラも胸の前で小さく拳を握る。彼女なりのファイティングポーズなのだろうが、まるで迫力がなかったのが残念だ。
「みんな・・・」
「のび太さん。ぼくらはあなた方に、重い荷物を一緒に抱えてもらいました。―――今度はぼくらに、あなた方が抱える荷物を、
一緒に抱えさせて下さい」
確かな決意を込めたペコのその言葉に、のび太達は涙ぐんだ。
「・・・ありがとう。本当に・・・ありがとう」
「へへっ、決まりだな。よーし、頼れる仲間もこれだけ揃ってんだ。ネオグランゾンだかヘボグランゾンだか知らねえが、
何でもこいってんだ!なあ、みんな!」
「おーう!」
ジャイアンの力強い言葉に、一同は歓声を上げた。
そんな彼らの様子を、キラはリルルと共に微笑みながら見守っていたが―――不意に口を開く。
「ねえ・・・プリムラ、だっけ?」
「?なに?」
「あのさ・・・君、僕と会ったことなんか、ないよね?」
「ん?なにそれ。キラ君たら、ナンパ?しかもリムちゃんみたく小さな子を?やだー、ロリコーン」
いきなりのキラの発言に、亜沙が冷やかす。
「そ、そんなんじゃないよ!ただ・・・なんとなく、他人とは思えなくて・・・」
「坊主」
ムウも口を挟む。
「そういうのは感心しないぞ。口説くつもりなら、もっと時間をかけて、だな・・・」
「だから、そうじゃないですってば!」
キラも思わずムキになって言い返す。ドタバタな雰囲気になってきたところで―――
「のび太」
プリムラはのび太を突っついて振り向かせる。
「似てる・・・かも」
「え?」
「私とキラ・・・ちょっと、似てる気がする・・・」
「そう?別に、似てないと思うけど・・・」
のび太はそう言いながら、あることに気付いた。
プリムラの瞳は紫色―――そして―――
キラの瞳も、紫色だった。
「・・・偶然、だよね?」
のび太はそのときは、そう結論付けたのだった。
投下完了。前回は
>>399より。
キラの容姿はデス種準拠の茶髪に紫の瞳です。これを微妙に伏線にしたりして。
ハイペース、サマサ氏乙
こっちのキラは影がウスィーな・・・
アスラン再登場まで空気の悪寒
>ゲロ氏
その2はほんわかした感じのギャグですね。癒し系とでもいいますか。
3話目は御伽噺っぽく始まり、少々ブラックな展開から見事な着地でしたね。
でも、あっちの魔女には関係なさそうですなあ。関連期待してたのに
>サナダムシ氏
亀仙人、ゲストキャラで終わって欲しくないなあ。セル以外は歯が立ちそうに
無いけど、この爺さんのエロガッパ振りはまたギャグに深みを与えそうだw
セル、話が進むごとに弱くなっていくな。シコルよりひどいかも。
>サマサ氏
プリムラの最後の言葉は伏線かな?でも作品が違うから、血縁関係が
あったりはしないでしょうね。>キラ 種知らないけどw
USDマンは最強であって欲しいな。あれはサイヤ人より強い気がする。
437 :
ふら〜り:2005/08/10(水) 22:55:57 ID:6OjDjbfH0
>>うみにんさん
今ここに至るまでには、膨大な数の登場人物がいました。物語の舞台も思いっきり広大で、
あちらの戦場にこちらの友情にと忙しくカメラが振られてきました。が、ほんとに最後の
最後、ラスボスへのトドメはヒーローがきめてくれる模様。決着の瞬間、待ち遠しいです。
>>サマサさん
狐理論。このテの奴が「俺様ナンバーワン」でないというのは珍しい。のび太たちこそ
主役だ、って自分が格下だと認めているようなもの……と思ってたら
>>401。なるほど、
自分は脚本・監督で。この世界という物語を、主役死亡というオチで終わらせようと。納得。
>>ゲロさん
・異星人
読んで思い描けば描くほど、表現し難い世界。を、文章で表現してるのだからお見事です。
あと前回リクエストした宇宙生物を忘れず書いて下さったのに感謝。そーゆーのでしたかっ。
・魔女
魔女でお城、地の文が敬語。名作物語風だなぁと思った第一印象はあっという間に砕かれ
ましたが、オチはそれなりそれ風で意外。シャンデリアの出番がもう少し欲しかったかも。
>>サナダムシさん
改行する間すらなく、本当に瞬く間に破れた新技が、今回一番笑えました。人造人間たちや
セルジュニア相手に毎度墓穴を掘ってる彼ですが、今回のは失敗して自爆して勝手に降参
して……どこまで行くのやらっ? でも、不思議とヘタレとかには見えない彼が好きです。
一ヶ月ごとに新スレ立つペースか。
あと3つくらい着たら立てるよ
439 :
作者の都合により名無しです:2005/08/11(木) 17:53:40 ID:nONUPv5J0
ちょっと質問いいですか。クリーミーマミのまんが本が家にあったんだけど
これってプレミアとかついてるんすかね・・・昭和59年の再版なんすが
オリジナル版もあり3巻完結なんすが。価値がいまいちわからん・・・
440 :
作者の都合により名無しです:2005/08/11(木) 18:55:19 ID:p6hacCWK0
次のテンプレは急に作品少なくなりそうだな。
第十四話「小休止」
「セル、私も新技を考えたぞ」
「ほう……珍しいな」
「ヘルズフラッシュに勝るとも劣らない威力の必殺兵器“ヘブンズフラッシュ”だ。ヘル
ズフラッシュは敵を地獄に送る技だが、これは敵を天国に送ることが出来る。もっとも、
どちらに行くかは死んだ本人次第だがな」
「で、俺にどうしろと?」
「セル、おまえに喰らって欲しい」
「ふん、いいだろう。私は頼まれると断れない性質(たち)なのでな」
16号は左右の前腕を取り外し、砲口をむき出しにする。セルも身構える。
「ヘブンズフラッシュ!」
「ぐぎゃああぁぁぁッ!」
名称が変わっただけの技に、悶え苦しむセル。
もちろん、こんな狂ったやり取りがなされるのには原因がある。ここ最近、クリスタル
探しが全く進展していないのである。ようするに、二人とも暇だったのだ。
水、土、炎──残るクリスタルの捜索は困難を極めていた。
カメハウスでセルに制裁が加えられてから五日間、五人は世界中を飛び回った。しかし、
クリスタルは一向に姿を現さない。まるで、今までのクリスタルは前座だったといわんば
かりに。
「おいおいパソコンが壊れるから、あまりはしゃぐなよ二人とも」
街でくすねたノートパソコンにて、古今東西の名所を調べる17号。手馴れた操作で、
地名検索は進んでいく。
今日まで17号は、水のクリスタルは川や池、土のクリスタルは山や谷、炎のクリスタ
ルは火山などにあると踏んで調査を行ってきた。が、それらはいずれも外れ、空しく五日
も浪費する結果となってしまった。
「固定観念をぶち壊さなければ、道はないか……」
思い切って、17号は検索範囲を一気に広げる決意をする。水にも土にも炎にも関係な
いにもかかわらず、これらを連想させる場所を求めて。
クリスタルを見つけ出すことは、いつしか17号にとって誇りを賭した使命となってい
た。むろん彼は、セルが完全体になろうがなるまいがどうでもいい。彼が望むのは、ある
人物に勝つことのみ。その相手こそ、おそらくはクリスタルを地上に仕込んだで張本人で
あり、17号と18号を改造したマッドサイエンティスト──ドクター・ゲロ。
セルのボディガードのため、17号が起動させられたとき、すでにゲロはコンピュータ
に全てを任せて研究所から消えていた。ゲロを自らの手で殺すことは、もう出来ない。だ
からこそ、17号はクリスタルを探し出すことで一矢を報いたかったのだ。
冷静にキーボードを弾きながらも、彼の心中はゲロに対する憎しみで今も煮えたぎって
いる。
「俺は必ず……勝つ!」
一方の18号は、セルジュニアの遊び相手になっていた。
「キャキャキャ……。じゃあ、次はかくれんぼだよ」
「分かったから、あまり引っぱるな。あんたの方が強いんだから」
元々子供好きだったのか、18号は妙にセルジュニアと相性が良かった。セルジュニア
もまた、実父以外には尊敬を抱いて接していた。父が頼れないため、どうしても他者に甘
えたくなってしまうのだろう。
父に似た体と、父に似ぬ整った顔を持つセルジュニア。気味悪くないといえば、嘘にな
る。が、彼独特の愛嬌や無邪気さは、どうしても殺伐としがちになるメンバーの空気を緩
和するのに、一役買っていた。
「あんたってさ、本当に父親に似てないよね。強さは上だし、性格も違うし」
「これでいいんだよ、18号さん。パパに似なかったことは、僕の人生で一番の幸運だと
思うよ」
後ろの方で16号にヘルズフラッシュを放たれ奇声を発するセルを見て、18号は心の
底からこう呟いた。
「確かに……そうかもしれないね」
次スレに向け、カウントダウン。
今回は短めです。
>>サマサさん
敵方の事情説明の回ってかんじだな。ペコ、いいこと言ったりして以外に存在感がある。
メンバーも大分揃ったところで、いよいよ本格バトルスタートの予感。
ところでネオグランゾンって名前だけしか知らんけど、原作ではどんくらい強いの?
>>サナダムシさん
セルのへたれっぷりは相変わらず凄まじいな。ヤムチャ、シコルを超えたかもしれん。
息子の非道ぶりもいいかんじだ。
ウンコネタもまた書いて欲しいです(ライトな奴でw)
447 :
作者の都合により名無しです:2005/08/11(木) 21:43:08 ID:yPONNaiO0
お疲れですサナダムシさん。
18号の母性と見もふたのなさが可愛かったです
そのうちセルは子供に敬語使うかも知れんなw
明日当たりテンプレ作るかな
ミドリさんやブラキンさんはじめとする最近ご無沙汰の職人さんたち、
次スレこそは帰ってくるといいな
地底出木杉帝国が終了すればドラえもん小説は超機神大戦だけが残るんだっけ?
449 :
作者の都合により名無しです:2005/08/11(木) 21:56:08 ID:yPONNaiO0
いや、麻雀はまだ前回掲載から2ヶ月以内だよ。
それにしてもVSさんのとこの掲示板が
エロ広告に占拠されててワラタw消せよ。
投げ出しはしません。
とりあえず連絡だけ。近々絶対書きます。何度も言ってるけどw
451 :
作者の都合により名無しです:2005/08/12(金) 08:10:08 ID:oCo86ixk0
サナダムシさん最近、好調な投稿ですね。乙です。
レス数は少ないけどほのぼのしてますね。18号とジュニアの辛みとか。
セル、完全に端役扱いだな・・。
ブラックキングさん、元気そうで安心しました。
ご自分のペースでかまわないので、のんびり頑張って下さい。
ブラキンさんお帰りなさいです。
マジで何かよからぬ事があったかと心配してました。
次スレからのご活躍を楽しみに待ってます
次スレテンプレ作ってみるわ。10時までには。
453 :
テンプレ1:2005/08/12(金) 22:13:42 ID:Nm6KX/6v0
454 :
テンプレ2:2005/08/12(金) 22:14:17 ID:Nm6KX/6v0
455 :
テンプレ3:2005/08/12(金) 22:14:57 ID:Nm6KX/6v0
456 :
テンプレ3:2005/08/12(金) 22:17:39 ID:Nm6KX/6v0
2ヶ月ギリギリで連絡がない方
鬼の霍乱作者氏(6月16日の投稿が最後)
2ヶ月過ぎて所在掴めなくテンプレから外した方(すみません)
Z戦士氏(5月6日の投稿が最後)
五氏(5月7日の投稿が最後)
ザク氏(5月12日の投稿が最後)
人鬼と野生作者氏(6月7日の投稿が最後)
勿論、復活をお待ちしてます。
継続のご連絡頂ければまたテンプレに入れたいと思います
VS氏も前の投稿から2ヶ月以上経ってますが、
サイトでつい最近更新されてたので今回はそのままにしました。
ザク氏に関してはザク氏らしいレスはいくつかあったのですが、
本人と確定出来ない為外しました。
現スレ大活躍のスターダスト氏をリストに載せられないのが残念。
第十一話「アスランとあの液体」
のび太達が地球でペコ達と再会を果たしていた時、メカトピアでも異変が起こっていた―――
メカトピアの一角、いかにも怪しげな建物がそこにあった。マッドサイエンティストが根城にしている研究所。
一言で表せばそのイメージ通りであった。御丁寧に暗雲と雷、そして何故か飛び回る蝙蝠が背景である。
その中を一人の男が上機嫌で歩いていた。卑しい笑みを浮かべたその男の名は、アミバ―――彼もまた狐の一派、
<十三階段>の一人であった。
そして―――戦いの果てに倒れたアスランを連れ去った張本人である。
「くっくっく・・・アスランの様子はどうかなあ〜?そろそろ怪我も治っている頃だろうし、いよいよ俺の木人形(デク)
として働いてもらうかあ〜・・・」
アミバは治療室のドアを開けて―――その瞬間、凍りついた。
「バカな!?アスランがいない!」
そう―――そこには乱れたベッドしか置いていなかった。そこに寝ていたはずの人物、アスランは影も形もない。
「くっそ〜、縛り付けておかなかったのは失敗だった!まさかこんなに早く動けるようになるとは・・・」
地団太を踏むアミバ。だが上空に気配を感じて天井を見る―――その瞬間、彼は天から降ってきた足の裏に
顔面を踏みつけられた。
「あべしっ!」
無様に床に倒れこむアミバ。蹴り飛ばした張本人は、それを一瞥したあと、ドアから出て行く。
それからしばらくして起き上がったアミバは、憤怒を隠そうともせずに拳を震わす。
「アスランめ・・・俺の顔を蹴りやがったなあ〜〜〜っ!この天才の俺の顔を〜〜〜っ!」
激昂するアミバ。彼は突如自分の身体に指を突き立てる。途端―――
「はあ〜〜〜はっはっは!これこそアミバ流北斗神拳の秘孔!」
アミバの身体は、ボディビルダーも真っ青な筋肉の鎧で覆われた―――!それはまさに狂気の研究によって生まれた
悪魔の産物―――筋肉の化身となったアミバは、激しく高笑いする。
「くあ〜はっはっはっは!逃げても無駄だぞ、アスラン!俺にはさらに、あの秘薬がある・・・究極の薬、
<ドーピングコンソメスープ>がな!さて、では厨房に行くとするか・・・そろそろできているころだ。
殺してやる、殺してやるぞ・・・<十三階段>十二段目、天才・アミバがなあ〜〜〜っ!」
その頃・・・アスランは・・・
「あ、い〜い湯だ、な、あははん♪い、い湯、だ、な、あははん♪」
どっかで聞いたような鼻歌を歌いながら、悠々とシャワーを浴びていた。
少女と見紛うような白さでありながら、男性的な力強さをも感じさせる美しい裸身を惜しげもなく晒し、その清らかな
肌の上をシャワーの雫が艶かしく伝っていく・・・我ながら書いてて嫌になってきた。
「ふう。こうして尺を無駄にしてまで意味もなくシャワーシーンを入れて腐女子人気を取り入れなくてはならないん
だから、美形キャラも辛いな」
訳の分からないセリフをのたまうアスラン―――彼はキラとリルルを逃がすため、己の限界を超えて戦った。そして、
彼の脳細胞には深刻なダメージが残されてしまったのだ。その結果―――
彼は、シリアスキャラから、立派なギャグキャラに生まれ変わってしまったのである。おかしい言動はそのせいだ。
「さて、女性読者へのサービスシーンはこれくらいにしておいて、脱出だ。こんなことをしていては、アミバの奴が
すぐに追いかけてくるだろう」
アスランは優雅にバスローブを羽織りながら、お料理行進曲を口ずさみつつ研究所の中を練り歩く。いつ捕まっても
おかしくないのに、恐るべき無神経さだ。
「むう・・・しかし複雑な構造だ。どこが出口なのやら・・・おや?」
どこからかプ〜ン・・・と、いい香りがした。それにつられてアスランは、とある場所に辿り着く。
「どうやらここは、厨房のようだな・・・」
迷った先で、アスランは厨房に辿り着いていた。先程感じた何やらいい香りが鼻を心地よく刺激する。
「そういや、ロクに食ってないな・・・腹ごしらえでもしとくか」
何かないかと物色していると、火にかけられた大鍋が目に付いた。さっきからの香ばしい匂いは、どうやらここから
発生しているらしい。
中を覗き込むと、琥珀色の美しいスープがグツグツと美味しそうに煮えていた。なんとも食欲をそそる光景である。
「こんなに美味しそうなスープがあるのなら―――食べるしかないじゃないか!」
アスランは大鍋を恐るべきパワーで持ち上げ、舌を火傷しそうなほど熱いスープを水のようにグビグビ飲んだ。
そして・・・
「むむっ!これは・・・あっさりしていながらそれでいてこってり、さらにまったりしていてすっきりしている!
おまけにむっちりしてるし、ゆったりとして、ついでにさっぱりしている!
しかも舌の上でシャッキリポンと踊るこの味わい!雄山もきっとこれなら満足!思わず口から怪光線を発射したり、
大阪城と合体してしまいそうだ!んまぁ〜〜い!・・・むうっ!?こ、これは・・・」
無茶苦茶な解説をしながら大鍋一杯のスープをゴクゴクと飲み干したアスランの身体に異変が起こった。
筋肉が隆々と盛り上がり、バスローブをビリビリと盛大に破った。
「う、うおおっ!?俺の身体がっ!?」
と―――その時―――
「あ、あ、あ、アスラン、貴様―――食いやがったのか、<ドーピングコンソメスープ>を!」
厨房に入ってきたアミバが驚愕する。大鍋はすでに空っぽだ。怒りに満ちた瞳でアスランを睨みつける―――
しかし、すぐにその瞳の色は恐怖で塗り潰される。
「むっふうーーー・・・月火水木筋肉マ〜ン・・・」
もはやアスランの身体は筋肉の化身―――などという生易しいものではなかった。それはまさに筋肉そのもの。
どこからがアスランで、どこからが筋肉なのかさえも分からない。
そして、アスランは大地を踏みしめる足のその指先から、足首、ふくらはぎ、ふともも・・・
強靭な鋼の下半身を、まるで強弓を引き絞るかのようにねじりあげていく。そのねじりは圧倒的にパワーを増幅し、
次へと伝えながら、徐々に上へ上へと昇っていく。腰を伝わったパワーは、元より肥大していた大胸筋を、後背筋を、
肩を、さらに極限まで膨張させ、彼の利き腕へと伝わっていった。
ちなみに上の文はうみにん氏の出木杉帝国第212話のコピペであるが、気にしないでいただきたい。
ともかく、そのままアスランは力任せにアミバをブン殴る!その力は、もはや破壊の神そのもの―――
「う、うわらばあ!」
断末魔だけを残して、アミバは地平線の彼方まで吹っ飛ばされた。そしてそのままメカトピアの重力すら振り切り、
宇宙へと飛び出す。
彼はそのまま未来永劫宇宙を漂い、美しい星々の中で安らかに眠りつづけるだろう―――
<十三階段>十二段目―――アミバ、リタイア―――
「ふう・・・アミバは無事に倒せた。あとはどうやってキラ達を探すか・・・」
研究所から脱出し、アスランは自問する。その身体は既に元通りになっている。どうやらドーピングコンソメスープの
効果は、そう長続きしなかったようだ。
「漫画だと都合良く、ここらで突然手助けしてくれる謎の男とかが現われるところなんだが―――」
「うん。実に都合がいいね」
独り言だったのに、返事が返ってきた。振り向くと、そこに立っていたのは長い髪の美しい男だった。だが、そこはかとなく
軽薄な雰囲気を醸し出してもいる。
そして彼は名乗った―――
「僕はドグラ星の王子、バカ=キ=エル・ドグラ。バカ王子とでも呼んでくれたまえ。ああ、安心していい。クルーゼ達と
戦うというのなら、僕は君の味方だ、アスラン・ザラ」
あからさまに怪しい。普通、こんな怪しい奴にホイホイついていっちゃうようなバカはいない―――
「成る程、よく分からないけど味方か。だったら安心じゃないか!よろしく頼む」
ここにいた。
「うむ、よろしく。話が早くて助かるよ。さて、それじゃああっちで話そうか」
かくして、おバカキャラと化したアスランは、バカ王子の誘いにホイホイついてっちゃったのだ。
しかし、アスランにとって幸運だったのは、少なくともバカ王子は、確かに嘘は言っていなかったということである。
ただ、彼は敵はおろか、味方にも絶対に回したくない危険人物であるという問題はあったのだが―――
さあ、アスランの運命や如何に!?
投下完了。前回は
>>433から。
原作のアスランファンの皆さん、ごめんなさい。
>>446 ネオグランゾンは・・・とにかく強いです(答えになってない)
多分メタルクウラ100体相手にしても余裕で勝てるんじゃないかと思います。
サマサ氏乙。今回はアミバ・種(の2ちゃん的解釈)・ネウロ・他職人さんのパクリ・雄山・味皇・冨樫とネタ満載で笑えましたw
それにしても、ネオグランゾンは最近のラスボスのHP50万越すような作品には出ていないのにも関わらず(第3次αは知りませんが、
最強のイメージが強いのは、最初の裏ボスというのと難易度の高い時代に登場したってのが大きい思いました。
463 :
作者の都合により名無しです:2005/08/13(土) 12:01:37 ID:Dt9YyiSi0
アミバまで出てきた・・と思ったらすぐ消えたw
何が出てくるかわからないな。
ドグラ星の王子ってレベルEかな?
ギャグ主体でしばらく進行するのかな。
サマサ氏、今回はギャグが冴え渡ってましたね。
しかし13階段このペースだと簡単に全滅するようなw
13階段の逆襲を期待してます。
>>456 ザク氏は入れてもいいんじゃないの?
語ろうぜスレとかこのスレの名無しの数レスは
明らかにザク氏だし。
あとひとつか2つで次スレか?
いつもバキスレは次スレ立て早すぎるから
490〜500あたりで立てればいいな
第十五話「土に巣食う悪魔」
クリスタル捜索隊が誇る司令塔、17号。彼がパソコンによって候補として選び出した
土地は、なんとレッドリボン軍基地。孫悟空により滅ぼされ、今は廃墟と化したはずの地
である。
皆からは、当然の如く疑問の声が上がる。が、17号は決して折れなかった。
「いや、あるはずなんだ。水か、土か、炎か、どれかは分からない。だが、奴なら──ゲ
ロなら、ここに一つは配置するはずだ……!」
いつもクールな17号らしくない、どこか殺気立った口調であった。
姉として心配する18号、同輩として黙して語らぬ16号、大人の迫力にたじろぐセル
ジュニア、勢い余って尻尾から生体エキスを洩らすセル。逆らおうとする者もなく──次
なる目的地は決定した。
忌まわしき悪党どもの墓場、レッドリボン軍基地へ。
やはり16号に先導させ、一行は飛行を開始する。
今のメンバーに基地に入ったことはおろか、どういった場所かすら知っている者はいな
い。あらゆるデータをインプットされている16号でさえ、詳細についてはほとんど記録
されていないのだ。まさに未知なる領域。
常識で考えれば、おそらくは無人の廃墟が待ち受けているだけであろう。だが、嫌な予
感がする。まるで背骨を指でなぞられたような、淡々とした恐怖感をセルジュニア以外は
抱いていた。
「おいおい、みんな怖がりすぎだぞ。クリスタルがなければそれまで、たとえあったとし
ても、どうせまたベジータみたいのが出てくるだけだろう」
心細さをごまかすためか、皆を励ますためか、またはこれら両方を狙ってか、いつにな
く多弁になるセル。しかし、空気は和むどころか、ますます沈むばかりであった。
セルジュニアを除く面々は、元々はレッドリボン(またはゲロ個人)のために造られた
存在。行くと決めた17号でさえ、不安は拭い切れないのである。
「俺たちを造らせた軍隊……か。それも総本山……」
そんな彼らの精神状態を表すように、飛行速度もいつもより数段鈍くなっていた。
16号、17号、セルジュニア、18号、セル。この順序にて、並んで飛んでいく一行。
やがて、とある荒野に差し掛かる。
低速飛行が幸いしたのか、または災いしたのか、セルが地上に異変があることに気づく。
「一体どうなってるんだ、あれは……。おい、あそこを見てみろ!」
セルが指差した方向に、皆が振り向く。するとそこには、腐敗したようにどす黒く染ま
った荒れ地が広がっていた。とはいえまだ範囲は狭く、いつも通りの速度で飛んでいたら
視界にすら入れなかったであろう。
「いやに黒ずんでるな……。よし、行ってみよう!」
予定を変更し、ひとまずセルたちは怪しい地帯の調査に向かうことにした。
降り立つと、色以外にも様々な不自然な点が発見された。あちらこちらに爆発跡が見受
けられ、底が肉眼では確認出来ないような大穴まである。
「ここで戦いでもあったのかな」
この18号の呟きに、16号が解答を出す。
「うむ、ここはかつて地球人とサイヤ人が戦った場所だ。だからといって、地面が変色す
る理由は分からんが……。大地から根こそぎ栄養が奪われたような感じだな」
奇怪な現象だが、糸口は掴めない。無駄足だったか──と、思い始めたが。
「ギャアッ! 手が、手が、手が出てきたッ!」
慌てふためくセル。彼の片足は、鋭い爪が付いた三本指によって捕らえられていた。
しかも、それだけではない。黒々と染まった土から、次々に化物が生まれてくるではな
いか。いや、元々地中に潜んでいたというのが正しい。
「ギャッギャッギャッ!」
「ギシシシシシシシ……」
「シャーッ!」
生後まもなかった頃のセルジュニアのように、本能のまま笑う化物。土から飛び出した
化物群は、いつのまにか数百匹以上にもなっていた。セルが叫ぶ。
「どっ、どうする!?」
「倒すに決まってる!」
臨戦態勢に入る16号。こうなればやるしかない。クリスタル捜索隊VS土を腐らせた
化物軍団──バトル・スタート。
化物の正体は、サイバイマンであった。
ナッパによって生み出された六匹は全滅したはずであったが、ベジータの衝撃波で殺さ
れたサイバイマン──唯一熱を受けずに死んだ一匹は、動物としては生命こそ絶たれたが、
植物としての特性はしっかりと残存していた。すなわち、種子としての役割はまっとう出
来たのだ。
地球の栄養価溢れる土の恵みにより、サイバイマンは増え続けた。ただし寿命は極度に
短いので、少し増えては少し死に、を繰り返した。いつしか、サイバイマンに栄養を奪わ
れた大地は黒ずんでゆき、この怪物を恐れて動物たちもいなくなった。
元々は、創造主の命令に従うくらいの知能は持ち合わせるサイバイマン。そのうち、彼
らは普段は地中に忍び、近づいた生命を一斉にむさぼり食うという戦法を習性にするよう
になった。
実はここを調査に訪れ、哀れにも食糧(かて)となった人々は少なくない。
こうして大地を蝕み、時に地上に出て人間を襲いながら、サイバイマンは栄えてきた。
──が、いかんせん今回は相手が悪すぎた。
「全然弱いじゃないか。典型的な雑魚か」
17号がエネルギー波を放つ。サイバイマンがダース単位で消し飛んでいく。
「どう考えても、ここら一帯をおかしくした奴らだよね。容赦はしないよ」
18号もエネルギー弾を連発する。あっさりと焼き払われていくサイバイマン。
「自然を汚しおって……外来種め。許さん!」
黒き大地にヘルズフラッシュが撃ち込まれる。たった一撃で、地中で様子をうかがうサ
イバイマンたちは全滅した。
「ウキャキャキャ……。こいつら、パパより弱いんじゃないの」
セルジュニアに至っては、戦いすらしていない。ほんの少し気を放出するだけで、敵は
蒸発してしまうのだから。
そして、これまでまともな戦功がないセルも、今回ばかりは奮戦していた。
「太陽拳! ……てりゃあッ!」
太陽拳で目を眩ましてから、サイバイマンを攻撃する。地味だが、なかなか有効な戦術
だ。たまに討ち取りきれず自爆をされるが、あいにくセルにはほとんど効かなかった。
「ハッハッハッハッハー! 私は究極人造人間セル様だーッ!」
弱者にはとことん強いセルは、大声で叫んだ。もちろん、本気にする者など誰もいない。
次スレまで待とうかと思いましたが、投下します。
今回出てくるサイバイマンは、多少進化してるので戦闘力は2000〜3000くらいあります。
まぁ、どうでもいいですが……w
太陽拳は自分と同等か格上の相手に使う技なのに・・・セル、もうちっと自信持てよw
ここにクリスタルがあるとしたら、やっぱ土かな?
ザクSS、続ける意思はあるのでトリップを出しときます。
471 :
作者の都合により名無しです:2005/08/13(土) 22:28:42 ID:F55PM5RhO
wow! 250exp lol
お疲れ様ですサナダムシさん。
サイバイマンといえばヤムチャがセットですが、なぜかこのセルとヤムチャかぶって見えたw
このセルの戦闘能力はどうやらラディッツくらいかな?弱え・・
サナダムシ氏お疲れ様です。
相変わらずサイバイマンにやっとギリ勝ちなヘタレセルですが、
次スレでは強い姿を見せてくれるのを期待してます。
ザク氏、お元気そうで何よりです。
次スレこそ投稿をお待ちしてますよ。
>>473 >ザク氏(ニート)から
ワラタw
失礼だとは思わんのかね>ザク氏(ニート)
本人が言ってるからって赤の他人がそう人を見下すような言葉を軽々しく使うのはどうかと思う
スレ立てたくらいだから荒らしのつもりじゃなく故意犯なんだろうが
ニート が人を見下す言葉だなんて誰が決めた