【2次】漫画SS総合スレへようこそpart25【創作】
ちょっと早かったかもしれないけど、乙です。
6 :
虹のかなた:2005/04/04(月) 01:47:28 ID:KkcUzPJ10
ごきげんよう、皆様。
前スレ552からの続きです。
そのころ。
斗貴子は足早に事務室を目指していた。
朝のHRで担任から『入学の書類について聞きたいことがあるそうだから今日中に事務室まで行きなさい』と
言われていたのを思い出したのだ。
放課後はやることが沢山ある。面倒な用事はさっさと済ませてしまうに限る。
しかし戦団が用意した書類に不備があったとは思えないのだが…一体なんなのだろう。
「斗貴子さん」
階段を降りる途中で突然呼びとめられ、斗貴子は振り返った。
「…白薔薇の…」
階段を降りてくるのは、薔薇の館の住人の一人。
白薔薇の…、なんと言ったっけ。
リリアンの呼び名はややこしくて困る。
「つぼみ。長くて覚え辛いよね、この呼び名」
僅かに苦笑しながら、目の前の人物は「別に名前で呼んでもいいんだよ」と教えてくれた。
「…何かご用ですか?」
急がないと休み時間が終ってしまう。
斗貴子の口調からそれを感じたのか、二条乃梨子は
「たいしたことじゃないんだけど、今日の放課後、暇かな?」
と予想外の質問をしてきた。
「すみませんが今日はちょっと…」
今日の放課後は紅薔薇さまに少し事情を説明した後、城戸沙織が手に入れたというホムンクルスの情報を元に今後
の対策と行動を考えなければならない。
場合によっては、そのままホムンクルスを始末しに行きたいところだ。
「そっか」
別段気を悪くした様子もなく彼女は
「ちょっと手伝って欲しいことがあったんだけど、たいしたことじゃないから」
と、少し微笑んだ。
7 :
虹のかなた:2005/04/04(月) 01:49:27 ID:KkcUzPJ10
巻き込んでしまった紅薔薇さまは別にして、斗貴子にとって二条乃梨子は山百合会の中で一番話しやすい人間だ。
黄薔薇さまは何かと斗貴子を質問攻めにするし、白薔薇さまはふわふわしていて世界が違いすぎる。
松平瞳子のあのノリにはついていけない。というかあまり関わりたくない。
その点、二条乃梨子は愛想がいいわけではないが余計な詮索はしてこないし、話す内容も筋道が通っていてわかりやすい。
山百合会の手伝いをしているときも、斗貴子が困っているとさりげなく助けてくれるし。
空気を読むのが上手い人なのかもしれない。
まともに会話をするようになったのはここ三日ほどだが、斗貴子は二条乃梨子に好印象を持っている。
だから、彼女のご指名を断るのは斗貴子にも多少罪悪感があった。
「すみません」
再度謝ると、乃梨子は「月曜日でも構わないから」と淡々と答えた。
「月曜日も、学校に来るでしょう?」
「……はい」
そう答えるのに、少し間をおいてしまった。
城戸沙織の持ってくる情報の中身にもよるが、できればこの土日に始末を付けたいと思っている。
でなければ、あのホムンクルスに何故か執着されている紅薔薇さまに、また危険が及んでしまうかもしれない。
そうすると当然この学校に来るのも今日が最後だと考えていたのに。
(…どういう意味で言ったのだろう…?まさか何か知っているのか?)
訝しげな斗貴子の表情に、乃梨子は小さな苦笑を返した。
「変なこと聞いちゃったかな?でも、斗貴子さん、すぐにでもここからいなくなっちゃいそうだったから」
「……」
図星をつかれ、斗貴子は思わず絶句してしまった。
「どうして…そう思うんですか?」
「う〜ん…。上手く言えないけど…去年の私と少し似ているから、かな」
去年の二条乃梨子と…?
当然の事ながら、斗貴子は去年の彼女のことを知らない。
だからその言葉をどう考えて良いのかわからない。
……彼女は、何を言いたいのだろう。
「なんとなく『私は異端者だ』って思っているように感じたから」
そう言って、乃梨子は少し困ったように笑った。
8 :
虹のかなた:2005/04/04(月) 01:50:32 ID:KkcUzPJ10
「ごめん。余計なお世話だね。…ただ…」
窓から流れ込んできた温い風が、二人の黒髪を揺らす。
リリアンの制服を着た、仏像愛好者の上級生と練金の戦士の下級生。
どこか似た風貌の二人は、一瞬だけ見つめ合った。
「去年そう思っていた私は、今、ここに来てよかったと思っているから。それを言いたくて」
乃梨子の言葉に斗貴子は目を見張った。
なんとなく、彼女が何を言いたいのかがわかったから―――。
突然何言ってるんだろうね私、と苦笑し、乃梨子は視線を斗貴子の背後へ向けた。
「急いでいるんでしょ?」
「……はい」
「ごきげんよう」
斗貴子が去るのを待たず、乃梨子は降りてきた階段を昇り始めた。
わずかに揺れる黒髪と伸ばされた背筋を、数秒だけ見つめる。
「…乃梨子様!」
何故自分が彼女を呼び止めたのかはわからなかった。
でも彼女が、学園から浮いている斗貴子を心配してくれているのだということはわかったから。
だから、何か言わなければ、と思った。
斗貴子は任務が終わったらすぐにこの学園を去る。
自分はここに通う彼女達とはあまりにも違う世界に住んでいる。
だから乃梨子のようにゆっくりとここに馴染んで、ここに来てよかったと思えるようには、きっとなれない。
でも、斗貴子の過去を詮索もせずに、今ここにいる自分だけを見て受け入れようとしてくれているのは嬉しかった。
だから。
「…ありがとう、ございます」
あまり大きくなかった斗貴子の言葉に、乃梨子は少しだけ驚いた表情になる。
そして、斗貴子を見下ろし、ゆっくりと微笑む。
白薔薇さまの前以外では滅多に見ることのないその笑顔につられ、斗貴子からも少しだけ笑顔がこぼれた。
二人の少女は、それぞれの方向へと歩き始めていった。
9 :
虹のかなた:2005/04/04(月) 01:53:01 ID:KkcUzPJ10
事務室の受付窓を覗き込むと、中には一人の女性がいた。
以前見かけたことのある事務員よりだいぶ若い。
一般的に見て、多分、美人の部類にはいるのだろう。
地毛なのか染めているのかはわからないが、赤味の強い茶バツが印象的だ。
「一年藤組、津村斗貴子です」
窓口で名乗ると、その女性は机の引き出しから何かの書類を引っ張り出し斗貴子へ差し出した。
「これ、入学の時に出してもらった書類なんだけど記入漏れがあったみたいだから」
「ああ…」
見覚えのあるその書類は、確かに書かなかった項目がいくつかある。…現住所とか、家族構成とか。
「月曜日には出して欲しいってさ」
「はい」
受け取りはしたが、この書類を出すことはないだろう。
女性に会釈をし歩き始める。
急がなければ、次の授業が始まってしまう。
「――――っ!!」
事務室から2メートル程離れたとき、斗貴子は勢いよく振り返った。
背後から強烈な意識を突きつけられ、足が止まる。
だがそこには誰もいない。
(なんだ…今のは…)
背中から心臓を突き刺されるような強烈な意識。
一瞬だけ感じたそれは、間違いなく殺気と呼べるものだった。
まさか、と思って見渡してみてもホムンクルスらしきモノは影も見えない。
あるのはいつもの通りの穏やかな空気だけだ。
(気のせい……か…?)
懸念を残しつつも、鳴り出したチャイムの音に、斗貴子は走り出した。
10 :
虹のかなた:2005/04/04(月) 01:55:02 ID:KkcUzPJ10
「…へぇ。ちゃんと感じれるんだ」
わざと放った殺気に津村斗貴子がきちんと反応した事を確認し、彼女は唇の端を上げた。
「練金の戦士、ね。なるほどね」
自分とは異なる方法で平和のために戦う戦士。
小柄で華奢な外見からは想像もつかないが、津村斗貴子はなかなか優秀な戦士らしい。
なんとなく、ジュネが気にするのもわかる気がする。
まだまだ青臭いとは思うけど面白そうだ。
そういえば弟子と同じ年なんだっけ。
あのバカよりは随分としっかりしているように見えるけどね。
今回自分が命じられた任務は、福沢祐巳という少女を誰にも悟られないように護ること。
津村斗貴子の手伝い、と言うか手助けはジュネの仕事だ。
自分は弟子や後輩達と違って、人の仕事に手を出す趣味は持っていない。
(せいぜいがんばるんだね。私は高みの見物をさせてもらうからね)
そんなことを心中で呟き、事務室の女性――――白銀聖闘士・鷲座の魔鈴――――は、また少しだけ口角を上げた。
今回はここまでです。
>1様、お疲れ様です。
前スレかこちらかどちらに落とそうか迷いましたが結局こちらにしました。
ブラボーはもう少しお待ちください。
それでは、ごきげんよう。
>>1さんスレたて乙。
ミドリさま、新スレ早々乙です。
ブラボーはまだですが、マリーンさんが活躍しそうですね。
確かセイヤの姉さんでしたっけ?違ったっけ?
それにしても乃梨子は鋭いですね。キーキャラかな?
これからも頑張って下さい。
晋スレ早々ミドリ様、乙。
魔鈴さんか・・・・イイッス。聖域は合衆国大統領にも影響力があるだけに
いち女学校に手先を送り込むとはオチャノコサイサイでしょうね。
>>12 魔鈴は星矢と思われていたが年齢があわないし、後に本物の姉、星華が出てます。
ジュネとのやり取りといい、斗貴子がだんだんとくだけてきてるな。
いい感じだ。
あと、魔鈴キター!
個人的にはシャイナさんが良かったけど……でもシャイナさんだと打ち解けてきた斗貴子ジュネがまたややこしくなりそうだからなあw
○月×日
今日白林寺に一通の手紙が私宛に届いていた。
なんでも内容は、
「日本で地上最強の男を決めるトーナメントをするから是非参加してほしい」
との事。
どうやら中国全土でこの手紙が差し出されたのは私だけらしい。
やはり今世紀最後の海王ともなると扱いが違うな。
それに優勝すると10億円のベルトが進呈されるらしい。
横から師匠である劉海王がなんだか恨めしそうに見てたが気にしないでおこう。
☆月△日
手紙が届いてから一ヵ月後。
私は自作したイカダで海を渡りようやく日本の土を踏む事が出来た。
途中お約束の如くサメに襲われたり漁師の網に引っ掛かったり水が尽きて死に掛けたりしたが、
なんとかトーナメントの開催には間に合ったようだな。
いや、本当は今回のトーナメントの主催者側(徳川財閥だったか?)がファーストクラスの飛行機のチケットを
あらかじめ用意してくれたので、そんな原始的な航海をする必要は全くもって無かったのだが、師匠の劉海王が、
「自らの力で海を渡るのも修行じゃよ、このチケットは私が責任もって処分しておこうフォッフォッフォ」
とのたまいチケットを取り上げられてしまったのだ、しかもご丁寧に私が利用するであろう交通機関を海王という
地位を利用し前もってピンポイントに閉ざしてくれた老師の裏工作には涙も出ない。
っていうか絶対自分がトーナメント出られない腹いせだろ!あのジジイ!!
畜生、私が優勝して帰ってきたら自分の流派を立ち上げて必ず復讐してやる。今に見てろよ!!
☆月×日 午前八時頃
今日からいよいよ最大トーナメントの開催だ。
しかしまぁなんだな、見れば見るほど見掛け倒しなヤツらが多い。
世界各国からあらゆる猛者を集めたらしいが、どいつもこいつもかませ犬にしか見えない。
特にムエタイを使うジャガなんとかって選手、さっきから必死にワイクーを踊っているがあいつは試合に出る事すらなく
終わる気がする・・・・・そう・・・背骨を再起不能にまで折りたたまれて祖国に強制送還されそうな・・・思わず私の
脳内で「ジャガった」という単語が閃いた。私は一体何を考えているのだ?しかし何故だろう、あいつを見てるとなんだか
涙が出てくる。周りから妙に注目されたが彼を見てる間溢れる涙が止まる事はなかった・・・・・・
しかしまぁ控え室では様々な国の選手がひしめきあってるがその中でリーゼントを決め特攻服を着ている暴走族の兄ちゃんが
いるのはいかがなものか?見れば明らかにカタギじゃないジャパニーズマフィアっぽい人間もいるし・・・・・・
どういう基準で参加選手を選んでるのか非常に気になる所だ。クジか何かで適当にチョイスしてるんじゃねえだろうな?
そんな事を考えてるとなんかジャパニーズマフィアと目が合ってしまった、デフォルトであの目つきなんだろうが、思い切り
睨まれてる様にしか見えない、まぁ私も人の事は言えんのだがヤツのあの目は視線だけで人が殺せそうだ。
思わずチビりそうになってしまったが、私の様に武を専門としている人間でもなし、何も恐れることはない。
ここはあくまで肉体で競う場所なのだからな、しかしヤツとはなるべく当たりたくない、いざとなったらドスでも抜きかねん
勢いだからなぁ。
そんなこんなで一回戦が始まり次々と試合が消化されていったがはっきりいって楽勝だった。
私の相手はセルゲイ・タクタロフとかいうロシアのサンビストだったが、試合前控え室で私に対して
「なんならここで相手しようか」
などと舐めた口を叩きやがったので格の違いを見せつけつつ転蓮華で華麗に瞬殺してやった、なんてかっこいいんだ!!
この調子で行けば優勝はまず間違いないな。唯一気になるのは例のジャパニーズマフィアだがヤツと当たるのは準々決勝だし、
それまでに負けてくれると嬉しいんだけどなぁ・・・
☆月×日 午前十時頃
一回戦をこれ以上ないくらいかっこいい勝ち方で突破し、いざ二回戦と意気込んでいた私だったがちょっと困った事が起きた。
・・・・・二回戦の相手がいなくなってしまったのだ。
原因は猿。
いや自分で言っておいてどうかと思うのだが猿が乱入して二回戦を賭けて戦う予定の選手二人を殺してしまったのだ。
どうやらその猿は大会が用意したリザーバーの一人、いや一匹なのだという、猿がリザーバーってあんた!
ホントにどういう基準で選手を選んでやがんだこの大会は!?かつての長島監督だってこんなイカれた選手起用はしねえぞ!!
このままでは私があの猿と戦う事になってしまう、いや別に戦って負ける気はしないが中国拳法VS巨大殺人猿なんてまるでどこぞの
バラエティ番組の企画ではないか、そんなコミックショーを演じるために私はわざわざイカダを組んで命懸けで海を渡って来たのでは無い。
っていうかこの大会優勝したら本当に10億円のベルト貰えるんだろうな?こんな茶番を平気で仕組む大会に不安感を覚えた私は荷物を
まとめて帰ろうかと思ったが気がつけば、なんか猿が空手家にボコボコにされてリタイアしたのでやっぱり思いとどまる事にした。
いや、別に猿が怖かったワケではない、途中で逃げ帰ったと思われては海王の名折れだからだ!
それにしても私の二回戦の相手は一体どうなるのだろう?できれば不戦勝にして貰えれば非常に楽でありがたいのだが・・・・・
どうやらマウント斗場とかいう別のリザーバーが私の相手を務めるらしい畜生、まぁそのためのリザーバーだしな。
それに一応人間みたいだし、いくらなんでもさっきの猿よりはマシだろうからとりあえず良しとするか。
ちなみに例のジャガなんとかって選手だが、突如出現した鬼に背骨をヘシ折られ試合が始まる前にその命を失った
彼は一体なんの為にこのトーナメントに呼ばれたのだろうか?とりあえず迷う事なく成仏できるよう祈っておこう。
☆月×日 午後一時頃
一回戦も全て終了し二回戦、私の出番が回ってきた。
相手は東洋の巨人、ジャイアント・デビルことマウント斗場!・・・・・猿でなかった事に心底ホっとする。
意気揚々と闘技場に現れる私。だが相手はマウント斗場とかいう選手の筈なのに何故か一つのワゴン車が置かれていた。
これは一体どういう事なのだろうか?対戦相手が私に恐れを成す気持ちは分かるが・・・・まさか変わりにファイナルファイトの
ボーナスステージの如くあのワゴン車を破壊しろという事だろうか?明らかにバカにしてるとしか思えない。
まぁパフォーマンスは嫌いではないので別に構わないが、それならそれで鉄パイプのひとつくらいは用意して置いて欲しいものだ。
そんな事を考えてるといきなりワゴン車目掛けて人間が降ってきた。
派手な音を立て潰れるワゴン車、フロントもガラスも何もかもが滅茶苦茶だが降ってきた人間はそれ以上に滅茶苦茶だろう。
こんな所で投身自殺が見られるとは!滅多に見られないモノを見る事が出来てちょっと満足気な気持ちになってしまったが、
しかしこれは流石に洒落にならんのではないだろうか?
トーナメント開催中にこんな悲惨な事件が起こってしまっては主催者側の信用問題だ、中止も止むを得ないだろう。
となると私の優勝は?10億円は??それを元手に自分の流派を立ち上げる私の復讐計画は???
だがワゴン車と共に確実に死んだと思われた人間がゾンビの如くふらりと立ち上がってきた。
どうやらそいつがこれから私と戦うマウント斗場らしい・・・・・
おいおい冗談じぇねえぞ、ジャイアント・デビルとか呼ばれてるらしいが本当にデビルじゃねえか!
あの高度で落ちたら普通人間は生きていられんぞ、なんで平然としてんだよ?飛行石でも身に着けていたのか??
正直こんな人外な魔物とは戦いたくない。
どっちが勝つにせよ負けるにせよ、とにかく一刻も早く試合を終わらせたい私は、
「一分で終了(おわ)らせる」
と思わず口に出してしまった。
「ほう・・・君もそのつもりか」
おいおいやる気になってんじゃねえよデカブツ!
挑発されたと受け取られてしまったらしいが、まぁ試合が早く終わるに越したことは無いな。
とにかくあの巨体だ、動き回って撹乱するのがセオリーだろう、上手く行けば相手はスタミナ切れで楽に勝ちを拾えるかもしれん。
そう思って試合が始まった途端ヤツは信じられない事をしてきた。
なんと私の顔にタオルを投げつけ視界を塞ぎやがったのだ。
オイちょっと待て!この試合あらゆる武器道具は使用禁止じゃなかったのか!?
これ以上無いぐらい明確なルール違反じゃねえか!こんな事が許されていいのか??どうなってんだ審判ッ!!
しかし抗議する間も無く相手は殴りかかってくる。
審判も審判で反則負けどころか試合を止める素振りも見せない、阿部四郎もビックリのクソジャッジだ。
これが俗に言うホームタウンデジションってやつか、チクショウ日本人め!
だがこの程度で怯む私では無い。
目が見えないので相手の攻撃を防ごうと適当に手を振り回していたらなんと相手のパンチを全部はたき落としてしまったのだ。
なんてラッキー!・・・じゃなかった、計算通り!
勢いに乗った私は相手の弱点の膝を狙い撃ちし予告通り一分以内で終わらせてやった。
審判のえこひいきにも負けず予告通りに試合を終わらせるとは・・・・・相変わらずかっこよすぎる勝ち方だ。
しかしながら今回の試合で分かった事が一つだけある。
それはこの大会、審判の存在があってないようなモノだという事だ。
少なくとも私にとってこの先公平なジャッジなぞ望むべくもないだろう。
ましてや順当に行けば次の相手はあのジャパニーズマフィアだ、例え目の前でハジキを出されても見て見ぬフリをされる可能性が高い。
むぅ・・・・考えてみたがこの先生き残るにはやはり防弾チョッキくらいは当然の装備といえよう。
そう思った私はその旨を大会側に申請したがモノの見事に却下された、なんでだよ?
23 :
作者の都合により名無しです:2005/04/05(火) 00:02:38 ID:TEu4ZgK8O
ミドリとミドリ信者キモス
24 :
作者の都合により名無しです:2005/04/05(火) 00:03:47 ID:loNnr6/E0
☆月×日 午後三時頃
奇跡だ!空手BOYがなんとあのジャパニーズマフィアを倒してしまった。
これで準々決勝を戦うのは私とあの空手BOYという事になる。
てっきりジャパニーズマフィアが勝ち上がってくるものと考えていた私は既に新たなイカダを組み中国へ逃げ帰る
準備は万全だったのだがこれで一安心だ。
しかし良く考えてみるとあの空手BOYは猿にも勝ってるんだよな・・・・・・・
出来の良いお坊っちゃん風だったので正直舐めていたのだが、ひょっとしたらメッチャ強いのではなかろうか?
こんな事なら控え室で挑発なんぞしなきゃよかった、散々舐めきった態度を取ってしまったからな、
功が成ったと勘違いしている、とか、無知で愚かな拳法家、とか・・・・・やっぱ怒ってるだろうなぁ・・・
25 :
烈海王自伝【ドラゴンロード】 :2005/04/05(火) 00:05:24 ID:GPmjEnVf0
☆月×日 午後五時頃
自分で自分が怖くなる、あの空手BOYにもあっさり勝ってしまった
試合直前、核兵器VS竹ヤリなんて息巻いてたクセに私の寸頸一発でダウンしてやんの、だっさ!
ひょっとして竹ヤリとは自分の事を言っていたのか?あのザマでは竹ヤリの方がまだマシだと思うのだが・・・・
どうやら日本のクンフーは私が思っている以上に不完全な代物らしいな。
私が優勝し自分の流派を掲げた暁には、いっちょ本物の拳法というものを指導してやるとするか。
おっと、そろそろ準決勝が始まる時間だな。
どうやら次の相手はこの闘技場のチャンプらしいが見るからに頭の悪そうなクソガキだし私の相手ではないだろう。
いつもの如く軽く瞬殺してやるとするか、そしてその次は決勝戦だ、最早優勝したも同然だな!
しかし優勝したら10億円か・・・・自分の流派を立ち上げて道場を建設してもまだ余るな、何に使おう?
翌☆月■日
今私は祖国に帰るべく荷物をまとめている。
準決勝の結果は・・・・・・・なんだかあんまりよく覚えていない。。
私が圧倒的に攻めていた筈だったのに気が付けばベッドの上だった。
首にはなにやらコルセットらしき物が巻かれているし闘技場に戻ってみれば既に決勝戦が始まっていたので、
本当によく覚えていないのだが、どうやら私は負けてしまったらしい。
ちなみにその後優勝したのは私の首にコルセットを巻きつけたあのクソガキだった。
まさかあんなクソガキに私が遅れを取るとは・・・・だがまぁ仕方あるまい、敗者は潔く去るとしよう。
そう思い荷物をまとめると何故か目の前に劉海王がいた、なんでこんなトコにいるんだ!?困惑する私を尻目に老師は
「残念だったのう烈、しかし負けを知るのもひとつの修行じゃよ、修行ついでに帰る時は泳いで海を渡るがいいフォッフォッフォ」
などとほざき、私の自作したイカダを取り上げてしまった。挙句どうやってここまで来たのかと問い詰めたら、出発する際
私から取り上げた飛行機のチケットを利用してここまで来たとぬかしやがる、このジジイ本当にぶっ殺すぞ!
この場でブチのめしてやろうと本気で思ったが、同門の師である以上老師に逆らうワケにはいかない、下手すりゃ海王の称号を剥奪されてしまう。
今の私にはもう海王という地位しか残されていないのだ・・・・・・・・・・
私は自分が流す涙と掻き分ける波のしょっぱさを噛みしめながら再び海を渡った、こうして野望を携え私が参加した最大トーナメントは幕を閉じたのだ。
得たものといえば劉海王に対する復讐心と首に巻きつくコルセットだけだった、畜生もうトーナメントなんかには頼まれたって参加してやらん!
以上、烈海王自伝【ドラゴンロード】より抜粋
投下終了です。
途中連続投稿規制でおかしくなってしまいましたが、
>>17から
>>22、
>>24から
>>26まで通してお読み下さい。
バレる前に言っておきますが、このSSの自伝というコンセプトは某所のSSのモロパクリです。
載せようかどうか非常に迷ったのですが、自分流に真似して書いてみたら思いの外上手く出来上がってしまったので載せてみました。
「入門」の方は中々筆が進まないのに、思いつきだけで書いたこのSSは今日一日で完成してしまうのは自分的にいかがなものか。
この手の文体の方が自分の性に合ってるという事でしょうかね。
28 :
犬と猫:2005/04/05(火) 01:44:59 ID:9cRmLK3e0
終曲
天国と地獄。犬と猫に定められた行き先は、対極を成すものであった。
猫は天国へ。立ち並ぶ花畑に、秩序と平和を祈る聖なる歌声。永久にわたり、安らぎ
と自由とが約束される楽園。
犬は地獄へ。立ち昇る溶岩に、悪を尽くした亡者どもの呻き声。無為と苦痛だけが絶
えず与えられる、哀れな末路。
鬼に案内され、岐路に立つ二匹。いずれ彼らは生まれ変わるため、もはや会うことは
叶わない。
「どうやら、ここでお別れじゃな……」
「うむ。だが、本当に付き添いに来るとはな。君も変わった奴だ」
「おぬしとの決着以外にも、まだやり残したことがあったからな。じゃが、もう心配な
い」
「とことん君らしいな。だが、彼らならば平気だろう。まんまと、この私をやり込めた
のだからな……」
互いに含み笑いをする。鬼に出発を告げられ、別れる犬と猫。
「きっと……また会おう! 我が友よ!」
猫が泣き叫んだ。死者が地獄から天国へ移されるケースもごく稀に存在する。もちろ
ん、猫がそれを知るはずもないが、心から出した声であった。犬は手のみでそっけなく
応じる。
「バカめ……甘過ぎる。だから、私のような下衆に利用されるのだ……」
犬は悔いた。己にではなく、友に対して。彼が過去を、ましてや他人を省みることな
ど、初めてのことだったかもしれない。
29 :
犬と猫:2005/04/05(火) 01:46:18 ID:9cRmLK3e0
やがて半年が過ぎた。
とある岩山で、ピラフ一味が祝杯を挙げていた。ついに世界征服が達成されるという。
「よくやったぞ、二人とも! これで我々が世界を征服出来るのだ!」
神々しい光沢を放つ球が七つ。ドラゴンボール。
酔っ払うピラフに、酒を注ぐシュウとマイ。この半年間、彼らは死に物狂いで努力し
た。シュウは忍者犬として修行し、マイはピラフを献身的に世話した。ピラフが復帰す
ると、レーダーを頼りに三ヶ月足らずでボールを手に入れた。
「本当に苦労しましたわ。でも、これからは我々が世界を支配するのです」
「今こそ、ピラフ大王を世に知らしめましょう!」
「フハハハ、私は感動しているぞ! 世界征服にではない。いい部下に恵まれたことに
だ!」
抱き合う三人。完全に我らが世界へと浸っている。
「おっと、そろそろ神龍を呼び出すぞ。……こほん」
ムードを強めるために咳払いをし、ピラフが合言葉を発する。
「出でよ神龍! そして、願いを叶えたまえ!」
空が暗黒に塗り潰され、ドラゴンボールが激しい光に包まれる。天へ突き刺さる稲妻
とともに、神龍が降臨する。時は満ちた。
「どんな願いでも一つだけ叶えてやろう……」
再び奇跡に出会えるとは。半ば呆然としながら、ピラフは神龍を眺めた。鼓動が増す。
「どうした、早くしろ」
「いえ、分かりました。こ、この私を……」
一語ずつ確認するように、願いが吐き出される。
「世界の……」
「キングキャッスルで半年前に起こった騒動で、死んだ奴らを生き返らせろ!」
恐るべき早口。ピラフが振り返ると、堂々と仁王立ちする剣士が一人。ヤジロベーだ。
横取り成功。
30 :
犬と猫:2005/04/05(火) 01:48:47 ID:9cRmLK3e0
「よし、叶えたぞ……」
全ては終わった。石ころとなったドラゴンボールは空中へ浮かぶと、四方八方へと飛
び散った。空は明るさを取り戻し、静寂だけが辺りに残る。
「ありがとよ。じゃあな!」
逃げるヤジロベー。もちろん、追いかけるに決まっている。大型二足歩行マシンに乗
り込み、下手人を追跡するピラフ一味。
「よくも、やってくれたな! 許さんぞォ!」
一斉射撃。砲弾がマシンガンのように発射される。が、なかなか命中しない。
「あいつ、素早いですよ。どうしましょうか」
「えぇい! シュウ、マイ! あそこに砲撃しろ、土砂で道を塞いでしまえ!」
ヤジロベーよりも前方にある岩山へと、砲弾が打ち込まれる。岩山は土砂崩れを起こ
し、逃走経路を封じ込めた。
「ハッハッハ、追い詰めたぞ」
「ちっ、面倒くせぇな」
舌打ちすると、今度はヤジロベーがピラフマシンへと接近する。と、マシンの両足を
居合いで切り裂いた。
「ピラフ様……」
「どうした、シュウ」
「倒れます……」
「えぇっ!」
バランスを失ったマシンは転倒し、大爆発を起こした。残骸に埋もれ、走っていくヤ
ジロベーを見守る三人。
「げほっ……あと少しだったのに。ま、またしても……」
「仕方ありませんわ。また、やり直しましょう」
「えぇ、またチャンスはやって来ます。……多分」
部下の励ましに感涙するピラフ。仲間さえいれば、絆さえあれば、心さえあれば、夢
はきっと叶う。涙を拭い、ピラフが立ち上がる。
「フハハハハ、当然だ! 私はしつこいんだ、絶対に諦めんぞ!」
ピラフは泣きながら笑った。彼らはいつかまた、世界を支配すべく戻ってくるだろう。
31 :
犬と猫:2005/04/05(火) 01:50:55 ID:9cRmLK3e0
──とある丘で、人知れず土がうごめく。
やがて、地中から現れたのは元国王である犬だった。土中で分解される寸前であった
が、神龍の力によって魂が呼び寄せられ、肉体は完全復活している。
「何故だ……。生き返ったのか、私は」
つい先ほどまで、地獄で責め苦を味わわされてきた犬。鞭で打たれ、灼熱の炎に焼か
れ、溶岩に叩き落され、針山で座禅をさせられた。延々と治療と執行だけが繰り返され
る日々。
蘇生という形で地獄から抜け出せた犬だったが、表情に明るさはない。
「これから……どうすれば」
深呼吸する犬。彼は今の世について何一つ知らない。カリンに殺されるまでに築いた
ものは、リセットされている。
ゆっくりと犬は歩き出す。彼はどこへ行くのだろうか……。
──カリン塔。
スカイカーにて、神龍を横取りしたヤジロベーが訪問していた。キングキャッスルに
は一度ピッコロ大魔王に殺された者もいたため、あの願いで生き返った人数は決して多
くはない。が、カリンは蘇っているはず。
しかし、どこにもカリンは居ない。遺体は下界に埋めたため、蘇生したならばすでに
ここに登っていると踏んだのだが──不安が忍び寄る。
「ま、まさか失敗したのか……?」
大挙して押し寄せる落胆。カリンの死を見届けてからしばらく、何もする気力が沸か
なかったが、ドラゴンボールの存在を思い出す。レーダーをクリリンたちを仲介にして
借り、あわやピラフ一味が七つ揃えたところへ間一髪で乱入した。だが、結果は失敗で
あった。
ため息をつき、腰を下ろすヤジロベー。すると、それを見計らったかのように、背中
から声が。
「にゃっはっは。わしはここじゃぞ、ヤジロベー」
お わ り
前スレ
>>481より。
『犬と猫』これにてエンドです。
最初は原作(マジュニア編以降〜)に繋がるように終わらすつもりだったのですが、
途中で「無理!」という結論に至り、こうなりました。
マイナーキャラ大合戦、完全に別キャラと化した国王、ノリで登場したピラフ。
私個人の遊びもかなり入りましたが、どうにか完結出来てよかったです。
長々と投下させてもらい、今まで本当にありがとうございました。
33 :
作者の都合により名無しです:2005/04/05(火) 04:34:58 ID:NNtzlrYB0
>Z戦士氏
最初パッと見で新作かと思ったw
あの強気な顔の裏にヘタレが隠れていたか、烈。
しかしやっぱり烈も準決勝の不条理なバキのパワーアップは不可解か。
読者が一番不可解だけどな。あれでバキが壊れていった…w
>サナダムシ氏
まず最初にお疲れ様でした。次に楽しませて頂いてありがとうございました。
カリンやヤジロベーはともかく、脚光の当たる事のない国王をメインに据えた所が斬新で
物語的にも狂気と笑いと、少しの哀しさのバランスが大好きでした。
最後はやはり希望が差すラストですね。カリンを見たヤジロベーの泣き笑いの顔が浮かびます。
なかなかSSを書くのも大変だと思いますが、また次作を書いていただけると幸いです。
私はあなたの作品が好きなので…。これからも頑張って下さい。
ヤジロベーかっこいいな
>Z戦士
小説内日記とは構成が凝ってますね。正直、あのまま続けば中だるみが出てしまうと思ったけど
こkで変化球をつけて列の小人振りを浮き出すのはうまいと思った。
バカ&タコよりこのまま列主役の方がノリがいいですね。
>犬と猫
お疲れでした。サナダムシさんはしけい荘の頃からファンでした。最近ではジャブに感心しました。
カリンの得意げな笑いでのラストは、後半少し暗かった作品がなんか救われた気がします。
待ってますのでまた、新作ひっさげて登場してくれればと思います。短編でももちろんOKですが、
やっぱり連載がいいな…
36 :
ふら〜り:2005/04/05(火) 20:09:25 ID:rfv5Co0f0
>>1さん
おつ華麗様です。いやはや、25まで来ましたか。このまま50、100と続いて
ほしいです。にしても、初めてパオさんの死刑囚編に出会った時は、まさかここまでに
なるとは思ってませんでしたね。いろいろな人の縁があってのバキスレの歴史。しみじみ。
>>五さん
チャモアン登場にも意表を突かれましたが……一方的な試合、ではなく「リンチ」ですね、
とことん。私としてはこの後、「格闘家としてはかなりアレだが猪狩らしいやり方」で
リベンジして欲しいところ。そこが彼の属性・持ち味そして魅力だと思っておりますので。
>>Z戦士さん
ボケツッコミで笑い、無邪気さに微笑み。Z戦士さんの作品は、ほんと笑顔にさせてくれ
ます。自伝も外伝として面白かったですが、やはり本編の梢江ちゃん。可愛くも威勢良く
コケたり突っ込んだり、の姿が目に浮かびます。これで刃牙がブルマに萌えたりしたら?
>>霍乱さん
前回の携帯電話に引き続き、「庶民的な生活を送るオリバ」というのもなかなか楽しい
光景ですな。違和感があるようなないような。そして遂に勇次郎豹変の原因が語られ
始めた様子。と思ったら引きですか。持ってきたブツが何なのか……次回が待ち遠しいっ。
37 :
ふら〜り:2005/04/05(火) 20:10:18 ID:rfv5Co0f0
>>草薙さん
自分はヘタレだと完全に認めてる辺り、大物かもしれないこのヤムチャ。とはいえ相手の
若さをナメたり、その相手や観客にとって不可思議な楽勝を収めたり、と思いっきり悪役
してたり。今のとこ完全に敵キャラっぽく感じられますが、このまま勝ち続けられるのか?
>>ミドリさん
今度は魔鈴さんですか。何だか沙織嬢、まだまだいろいろ手を打っていそうな感じです。
で今回はやはり、斗貴子の心変わりというか、心情の変化。ありがとうございます、と
思わず出たその言葉、そして笑顔。これまでの彼女に無かったものが、芽生えてきた様子。
>>サナダムシさん
この物語の国王は、簡単には許せないし、とはいえ単に殺してしまうのもちょっと……と
考えてましたが、うまく罰と救いが纏まった感じです。ピラフ一味も、このノリでずっと
ボール集めを続けるのが一番幸せそうですし。後味良い幕引き、お見事&お疲れ様でした!
サナダムシさん連載終了お疲れ様。
また、何か書いてくれるとうれしいです。まってます。
とりあえずは、犬と猫が完遂された事おめでとうございます。
39 :
作者の都合により名無しです:2005/04/05(火) 20:54:53 ID:nQqIk+OO0
オーレー オーレー♪マツキンサンバ♪オーレー オーレー♪マツキンサンバ♪」
∧_∧ ∧_∧
( ・∀・) ( ´∀`)
⊂ つ⊂ つ
.人 Y 人 Y
し'(_) し'(_)
「あぁ 恋せよ アミーゴ♪踊ろう セニョリータ♪」
∧_∧ ∧_∧
(・∀・ ) (´∀` )
⊂、 つ⊂、 つ
Y 人 Y 人
(_)'J (_)'J
「眠りさえ忘れて 踊り明かそう♪サーンバ ビバ サーンバ♪」
∧_∧ ∧_∧
( ・∀・ ) ( ´∀` )
( つ⊂ ) ( つ⊂ )
ヽ ( ノ ヽ ( ノ
(_)し' (_)し'
「マ・ツ・キ・ン サーンバー♪オレ♪」
∧_∧ ∧_∧ 【ゴールデンレス】
∩ ・∀・)∩∩ ´∀`)∩ このレスを見た人はコピペでもいいので
〉 _ノ 〉 _ノ10分以内に3つのスレへ貼り付けてください。
ノ ノ ノ ノ ノ ノそうすれば14日後好きな人から告白されるわ宝くじは当たるわ
し´(_) し´(_) 出世しまくるわ体の悪い所全部治るわでえらい事です
40 :
作者の都合により名無しです:2005/04/05(火) 21:00:23 ID:wBy3kLD90
f
>Z戦士氏
烈がヤムチャ化していますね。
元ネタ、そう言われればどこかで読んだような展開ですが、面白いから良し!です。
>サナダムシ氏
乙。完結おめでとうございます。
エピローグはピラフ一味が無事復活していたのが嬉しかったですね。
ピラフ一味は最初から最後までヤジロベー以上にいきいきと書かれていた印象がありました。
国王はこのドン底から原作通りの国王に復権できるのでしょうか。そんな話も書いて頂ければ
尚嬉しいです。
42 :
真・うんこ ◆boczq1J3PY :2005/04/05(火) 22:58:05 ID:Im2VoYrbO
下痢
バキ「日シャ嗚呼ア、中の日と
43 :
作者の都合により名無しです:2005/04/06(水) 11:21:37 ID:pvjJLPTv0
遅くなったけどサナダムシ氏、連載終了おめでとう。本当にお疲れ様でした。
Z戦士氏、俺は応援してるけどあっちにいくのはもうやめといた方がいいよ。
あげとこ。
行方不明の職人さんたち早く戻ってきて
職人さんたちがんばれ
「散様」
散の横に立つ、袈裟を纏った小柄な戦術鬼・影成が語りかける。
ドルアーガの塔最上階。葉隠散は、ラオウのそれよりもやや小柄ではあるが座り心地の良い豪華な
椅子に足を組んで腰掛け、赤ワインの注がれたグラスを片手に壁面の巨大モニターを眺めていた。
モニターに映し出されているのは、強化外骨格『零』を装備しザクTと闘う葉隠覚悟の姿。
視線を移すことなく、散が訊く。「何だ、影成」
「あのフリーザとか申す異星人。これは実に申し上げにくい事ですが、彼奴の実力は――」
「この散を超えているだろうな。確実に」
散は動揺することなく、汗を垂らしながら言葉を飲み込んだ影成の後を次ぐ。
「で、では……やはりドラゴンボールを揃えて散様が不老不死になられるほか勝つ術は無いと……」
「理論上はな。だが」
散は笑みを浮かべ、すっと立ち上がった。
「散の心は風。どんな苦難が待ち構えていようとも自由気ままに吹き、雲を散らし、雨を運ぶ」
影成には、散の心が読めなかった。
「それはいったい……」
「ふん、私もまだまだ若いということだ。理屈では勝てぬと分かっていながらも、心の中では己自身の知と
技と力だけで闘いたいという想いがあるらしい」
散は一口だけワインを含み、舌の中で転がしながら味わい、飲み込む。
「ドラゴンボールが揃うならばそれで良し。だが、揃わぬならばそれもまた良し。いずれにせよ散は必勝
してみせる!」
散様。この影成には散様のお姿はあまりに眩しすぎます……
影成の目に涙が滲んだ。が、ふと他の用件を思い出すと、浮かんだ涙の雫を拭い、ふー、と息を吐く。
「ですが、そればかりではありません。藤堂めは、我らを利用し良からぬことを企んでいる様子」
「知っておる。鳳慧罵亜(ホウエバア)計画か。あの馬鹿は誰にも悟られていないと勘違いしているようだ
が、全て筒抜けだ。ソドムの中であれに気付いてない者はおらんだろう」
「では、いかがなさりますか?」
「放っておけ。どうせ大した障害にはならん」
「むぅ。わしだけが何故、この塔を離れねばならんのだ!」
ドルアーガの塔屋上にて、藤堂兵衛は待機させておいたヘリコプターに乗り込んだ。
騒々しいローター音は藤堂の言葉をかき消し、プロペラから送られる突風は埃、塵を巻き上げる。
屋上まで見送りに来る者は、誰一人として存在しなかった。
「1階は後藤、2階はベース、3階はグリフィス、4階はラオウ、5階は散がそれぞれ管理するというに」
藤堂はドアを閉めると操縦者に飛び立つよう命令し、口惜しそうに膝を叩く。
「わしだけがフロアを任されんとは何たること!ソドムの小僧らめ、やってくれおるわ!」
ヘリコプターは垂直に上昇していく。その浮遊感は心地よいものだが、藤堂の怒りを静めるには至ら
なかった。
10メートル……15メートル……20メートル……
それだけ上昇を続けてもまだ、窓の外には屋上を囲う外壁しか映らない。
30メートルを超えたところでようやく、眼下にドルアーガの塔周辺の景色が見えだした。
それと同時に、藤堂兵衛は感嘆の溜め息をついた。
「ホォオ!」
塔の周囲、半径5km以内には漆黒の闇のような蠢く絨毯が広がっていた。
否、それは絨毯などではない。漆黒の闇でもない。
それは、それらこそは『千億の絶望』。蠢く影の一つ一つが寄生生物、魔族、使徒、戦術鬼、悪党。
数え切れない無数の怪物らがひしめきあうその群れこそが、塔を守るソドムの軍隊であった。
「流石はソドム軍『千億の絶望』。いつ見ても壮観だな」
窓から外を見下ろしながら、一声唸る。そして一拍置き、口元に笑みが浮かぶ。
「これだけいれば、ちょいとばかし無断で動かそうとも文句はあるまい。江田島平八といえども、ソドム軍
をもってすれば勝てないこともない!これで悩みの種の一つは解消される」
顎をさすり、満足そうにつぶやく。既に機嫌は直ったようだ。
「ふむ、とすれば残る問題は鳳慧罵亜(ホウエバア)か。現代の科学力ではあれによって若さを取り戻す
ことは出来てもそれを永続させることは出来ん……。やはり永遠の若さと命を得るにはドラゴンボールの
力が必要か。だがそれも、もはや夢では無い!」
高笑いする藤堂を乗せ、ヘリコプターは空の彼方へと飛び立っていった。
「お疲れ様でした、フリーザ様」
ザーボンとドドリアは、超長距離通信を終えたフリーザに向かい、深く頭を下げた。
「いやいや、ああいった下等生物どもを相手取るのには慣れてますからね。顔をお上げなさい」
二人の側近は顔を上げた。
「フリーザ様のお傍で、ソドム同盟どもに対象を絞って戦闘力を測りましたが」
ザーボンが言う。
「どいつもフリーザ様の戦闘力には遠く及びません。測定するまでもないとは思いましたが、私は――」
「あなたが心配性で用心深いということは良く分かっていますよ、ザーボンさん。そんなあなただからこそ
私はあなたを傍に置いているのです」
ザーボンは胸に手を当て、頭を垂れた。
「は。ありがたきお言葉」
「フリーザ様のお手を煩わせるまでもない」と、ドドリア。
「地球に着いたら俺達だけでゴミ掃除をしちまいますよ。それまでにあいつらがドラゴンボールを全て
集めていたらもっと楽なんですがね」
「先に送り込んだベジータ達が最後のドラゴンボールを手に入れる可能性も低くありませんしね。ただ」
フリーザが腕を組む。
「ベジータとナッパが私を裏切り、自分達だけでドラゴンボールを集めようとする可能性も低くありません。
それだけの時間を与えないよう、地球への到着時刻もある程度先読みしてセットさせてあるのですが」
「一応、ソドム軍はベジータ達だけでは壊滅できない程度の戦闘力を有しているようです」
「そうですか。地球の兵士もなかなかやるものですね。ドラゴンボールで夢を叶えた暁には彼らを私の軍
に加えてさしあげましょうか」
ザーボンの報告に、フリーザは満足そうに答えた。
「では、全てを考慮してもドラゴンボールが私の物になるのは明らかなのですね?」
ザーボン、ドドリアの肯定の返答に、フリーザは生涯最高の笑みを浮かべた。
「ついに、ついに私の長年の夢、永遠の命が手に入るのですか!ほっほっほ!こんなに胸躍る事は今
までに一度もありませんよ!最高の気分ですよ!ほーっほっほっほ!」
フリーザは天井を仰ぎ、手を握り締め、高笑いを続けながら至高の喜びを全身で受け止めた。
今回分投稿完了。
最近1レス中の行数が27くらいに固定してきた。
無職(ニート)だ
堂々とだべって生活を送ることを常としてきた俺のわがままが
定職に就かぬ者(フリーター)を
超えさせた・・・・
ハロワで条件のいいバイト見つけ、自宅に帰ってから電話をかけたが「女性しか募っていない」とのこと。
募集の広告にはそんなこと書いてなかったのに。男女雇用機会均等殺法か!
51 :
作者の都合により名無しです:2005/04/08(金) 02:30:01 ID:v3on0nT4O
SS来ないな
ザク氏乙。そしてご愁傷様(つд`)
あと書き込みかたといい誤爆先といい最近ボンガロのネタにハマッてるみたいですね。
(ニート=無職)ではない厳密には。
ニートは本当にどうしようもないやつ
>>51とか。
ザクさん乙です。
やっぱりフリーザがこの中じゃ最強ですね。
しかし散は勝つ気100%ですね。その自信はどこから来ているのか・・・
(ただの過信?)
べジータ&ナッパだけじゃソドム軍壊滅は無理なんですかねえ。
大猿になれば簡単な気がするんですが。
ザク氏は自虐的キャラかw
でも、SSの腕と面白さは復活してから明らかにあがったと思う。
(えらそうですまん)
何かを得れば何かを失うって事だな。
フリーザラスボス確定か。『千億の絶望』って聞いたことあるな。
サマサです。
実は今現在家のパソコンが非常にやばい状態で、ワードで文章を打つことも
出来ません。場合によっては再セットアップも必要かも・・・
そういうわけでしばらく更新停滞します(最悪でも二週間〜一ヶ月以内にはまた再開したいと思っていますが)
拙作を読んでくださっている皆さま、大変申し訳ありません。
>>56 『千億の絶望』はハーメルンのバイオリン弾きに出てくるフレーズで、
うみにんさんのSSにも出てる。それで見覚えがあるんだと思う。
>>57 修理に出すなら半月〜1ヶ月くらい平気でかかるよね。
俺もノートパソコン修理に出したときそのくらいかかった。
しかも金もけっこうかかるし。
>サマサ氏
あせらずな。待ってるからがんがれ。
>>58 情報ありがとう。
「気付いた事……? それは一体……」
長の問いにギンコは答える。
「まあ、見ててくれ」
そう言うと、ギンコは背負った木箱の中からある物を取り出した。それは、金属で
できた、二又に分かれた小さな矛のようなものであった。
ギンコはそれを天にかざす。すると途端に、今まで無造作に降り注がれていたの
みであった雨粒が、まるでその矛に吸い寄せられるかのようになったのである。
「これは、蟲を寄せる材質で作られた物。つまり、これはただの雨ではない。雨自体
が蟲。勿論、雨を作り出している雲もそう。むしろそちらが本体といえる」
「雲が、雨を作り出す……? 蟲を混ぜているのか!?」
「そう。あの雲は一見普通の雨雲に見える。そして、雲としての機能も備えている。
ただ一点、他の雲と違うこと、それが……あんたの想像してる通りのことだろうさ」
一家は、ある蟲に憑かれた。それは、雨を真似る蟲であった。それらはそこらに
嫌というほど溢れている類のもの。しかし、ヒトに干渉することは稀であり、それらは
蟲師間でも有象無象のモノどもとして片付けられていた。『不可思議であるが、害も
有益もないつまらぬもの』として――
それらは、ヒトのまだよくわかっていない所に目を向けていたのだ。ヒトでさえ、知り
及ばぬところを、見ていた。それは、解明されることのないかも知れないブラックボッ
クスのようなものかもしれない。一家に秘められていた、雨を寄せる性質――蟲は、
それを巧みに嗅ぎ付けたのだ。
それは微細なものだったが、蟲によって増幅された。増幅された性質は、蟲にとって
格好の的となった。そして、一家は雨に憑かれた――
「……なんてことだ。それじゃあ、この地域一帯は、蟲の混ざった雨を浴びていたという
のか……!?」
普通なら、蟲の雨を浴び続けている自分達の身を案じるだろう。しかし、長はそれより
まず先に、地域に住むヒトも含めた生物の無事を案じたのである。
「それは問題ないだろう。特別悪い性質を持った蟲というわけでもないんでな。だが、
あんたらはそういうわけにもいくまい……あんたらは憑かれてからの大半の時間を雨に
打たれ過ごして来た。初めは苦だったろうが、今はどうだ。見てて、まるで嫌そうじゃあな
い。それは、あんたらの体内を蟲が大分占拠してきている何よりの証拠だ。自分達の仲間
を嫌がることなど、あるはずがないんだからな」
つまり……長が、重苦しく口を開き、
「つまり、俺達は、蟲そのものに近付いて来ている……ということか」
「ご名答」
いつの間にか煙草を銜えていたギンコが、重い声でそう言った。
「常に蟲の雨を浴びているあんたらは、蟲そのものとなりつつある。今はまだいいが、そう
遠くないうちにあんたらは普通の人間に見えないようになってしまうだろう。そしてそれがさら
に進行すると……」
生きているのか、死んでいるのか。
そこにあるのか、ないのか。
こちら側なのか、あちら側なのか。
――全てがあやふやで、不確定なモノ――
今までギンコが何度か見てきた。生物としての境界線を越える存在に――彼らもまた、そう
なってしまうのだろう。
このままでは。
「雨を浴びなきゃ、これ以上は進行しないし、むしろ段々と数を減らしていくだろう。しかしあんた
らは我慢し切れない。あんたらの中にいる蟲の要求に、今のあんた達では耐え切れない。一時
的に耐えられたとして、必ずいつか、再び雨を浴びてしまう。それでは元の木阿弥だ」
「……」
一家はただ黙ってギンコの言葉に耳を傾けていた。雨に打たれながら――
「俺に、七日くれ。七日のうちに、必ず手を見つけ出し、あの雲を、雨を、なんとかしてみせる」
ギンコはそう言った。
ガラスの仮面読んだんですが……いやあ、人生観揺り動かされるというか、凄いですねえ。
そりゃ五千万部も売れるわ。なんか気持ちが熱くなりましたよ。
今回、ネタはあがってるんだけどなんだか苦戦してます。もっけはこれが終わってからかな。
ちなみに、これが終わった次の話は『80日間世界一周』みたいなイメージで。あくまでもイメージですが。
>>546 蟲はなんでもありな、話の作りやすい有難い存在です。小さく縮こまるより、デカい規模の話にしたほうが
面白そうじゃないですか。纏まれば、の話ですがw
>>547 そう読んでほしかった。無論、どんな読み方をしようがそれは読者の思うがままです。しかし、僕個人の
ささやかな希望としては、そう読んでほしかった。
そう、この話の裏テーマは『縁』です。
>>556 ヒマでしたしね。頭すうとするし。
>>559 ただのハッタリでしたwまあ、そこまでは前回書いてるときは考えてなかった、ということで。
ちなみに今回もぶっちゃけハッタリです。オチは決めてるけど、それ以外は……
まあ、今から考えますw
では次回。
お疲れ様です。
なんかギンコがドラえもんみたいだw
でも蟲の混ざった雨ですか。酸性雨より嫌だな。
一週間でギンコは打開策見つけるんだ。大変だ。
しかしガラスの仮面って5000万部もいってるのか。
少女漫画ではナンバー1?
65 :
作者の都合により名無しです:2005/04/08(金) 17:34:42 ID:U3HnP6wB0
>ゲロ氏
蟲の雨により蟲そのものに転じてしまうのですか。怖いな。
今まで出た蟲の中で一番恐ろしいかも。
何か、ラスボス的な雰囲気を感じますね今回の蟲は。
>蟲師
原作もそうだけど、ゲロ氏の作品も「縁」とか「出会いと別れ」とかをテーマにしているね。
雨男の着地点が不幸な結末にならないのを期待してます。
天下一武道会 決勝戦ーーー
人々のざわめきは最高潮に達していた。ミスターサタンが引退したのでこの試合に勝利した者が
最強という事になる。今回は若手同士が闘っている。片方は三十代、相手は18歳前後である。
「決勝戦!ヤムチャ選手VS孫悟飯選手!始めー!」審判が叫んだ。
「気をつけろ!悟飯!あいつの手に触れたら力を封じられるぞ!」クリリンが叫んだ。
悟飯の髪が金色になり逆立つ。瞳の色が青くなり筋肉が膨張する。
「手に触れるのはダメ。つまり触れずに倒す事。」悟飯が呟いた。
右手を鳩尾の前に、左手を肩の辺りに置くヤムチャ。そして手から青い炎の様なモノを出す。
「勉強したようだな?わかりやすく見せてやるよ。」ヤムチャが呟いた。
刹那、悟飯の手から黄色い光が出た。昼間なのに明るいそれはヤムチャの顔面目掛けて飛んだ。
「おわっと。」
気弾を手でガードするヤムチャ。気弾はヤムチャの掌で消滅した。
「遅いなぁ。眠っちまうよ。」挑発する口調でヤムチャが言った。
掌をヤムチャに向ける悟飯。そして空を切る掌底を何発も繰り出し始めた。
否。違った。悟飯は気弾を放っていたのだ。人間のジャブを遥かに超えるスピードで。
「孫選手!遠当てらしき技を繰り出し始めましたぁーッ!」
数十発もの気弾がヤムチャを襲う。掌底で迎撃するヤムチャ。気弾の数が百に届くか
と思われる頃、異変が起こった。ヤムチャの体がよろめいたのだ。
「今だ!」
叫ぶと同時に高速で移動しヤムチャの後ろに回りこむ悟飯。
常人は勿論、ヤムチャの目には到底追えない速度で蹴りを放つ。
「おわっと。」ヤムチャが呟いた。
バランスを崩し、転がっていくヤムチャ。そして悟飯の蹴りは空を切った。
「何!?」
薄ら笑いを浮かべながら体勢を立て直すヤムチャ。
「どうだい?俺の演技も中々だっただろう?お前がああ来るのは予想していたからな。」
「へぇ。じゃあこれをどう避けるのかな?」悟飯が呟いた。
前に踏ん張る様な姿勢を取り両手を右脇に置く悟飯。そしてその手に気が集まっていく。
「おいマジかよ!?」ヤムチャが叫んだ。
「その手が力を封じる事が出来るなら!その度合いを推し量り、それを超えるパワーをぶつければいい!」悟飯が叫んだ。
悟飯の気が増幅していく。そして変化が起こり始めた。悟飯の髪の毛が長くなり、眉毛が消え始めた。
「あ、あれはスーパーサイヤ人3!」ウーロンが叫んだ。
「おい・・・ここで使ったら観客を巻き込むぞ!」ヤムチャが叫んだ。
「巻き込みませんよ。打撃ですからね。」悟飯が応えた。
遂に悟飯の手からかめはめ波が発射された。それはヤムチャを飲み込むかの様にどんどん接近していく。
「むん!」
左手でかめはめ波を抑えるヤムチャ。そして気弾はあさっての方向へと弾かれた。
「ふふ・・。どうだ・・・何!?」
ヤムチャの前方にはもう既に悟飯はいなかった。辺りを見回すヤムチャ。そして上を向こうとした瞬間、奇妙な音がした。
ヤムチャは始めの内は何が起こったのかわからなかった。次第に痛みがヤムチャを襲い始めた。痛みはヤムチャの両腕から来ていた。
右腕は折られており、左腕の関節は外されていた。
「ぐあぁ。」ヤムチャは呻いた。
「どうです?痛いでしょう?トランクスやウーブの痛みはそんなモノではありませんでしたよ?」悟飯が言った。
「まだまだだな。」ヤムチャが薄ら笑いを浮かべながら言った。
刹那、ヤムチャは自分の脇腹に強烈な打撃を覚えた。吐血し、膝をつくヤムチャ。あばらが折れたらしい。
自分は神龍に再生能力のある不老不死の体にしてもらった。だが再生が追いつかない程の
攻撃を受けたらどうなるのか。間違いなく自分は死ぬ。
「リンチさせてもらいます。」
「どうかな!?」
関節を外された左腕を前に振るヤムチャ。結果外された関節は元通りになった。
「面白いですねぇ。そんな芸当をするなんて。」悟飯は呟いた。
「続行だ。来いよ。」ヤムチャが呟いた。
一瞬で間合いを詰め、攻撃を繰り出す悟飯。打撃が雨の様にヤムチャの体を襲う。そしてその攻撃をヤムチャは
必死に耐えていた。痣や打撲や擦過傷が無数に増えていく。そして悟飯はヤムチャの左腕を叩き折った。
「ごぁぁ!」痛みに耐えかねた様にヤムチャは叫んだ。
間合いをとって離れる悟飯。そして気を増幅させる。
「次で終わりにしましょう。」悟飯が呟いた。
悟飯の筋肉が膨張し服が破れ始める。それは彼がフルパワーの状態になった事を示していた。
亜音速の様なスピードで間合いを詰め正拳突きを繰り出す悟飯。その拳はヤムチャの体を貫く
事は容易と思える程の破壊力を秘めていたはずだった。だが違った。
悟飯の拳がヤムチャの鳩尾に触れた直後、彼の髪は黒に戻り、瞳の色も元通りになった。
「な・・!!」
驚きを隠せずに正拳突きを放ったままの姿勢で立ち尽くす悟飯。ヤムチャが反撃をするには十分すぎる時間だった。
「終わりだ。悟飯。」ヤムチャが呟いた。
ヤムチャの踵落としが首筋に振り下ろされ、悟飯は膝から崩れ落ちた。さらにヤムチャは悟飯を場外へと蹴り飛ばした。
「優勝者!ヤムチャ選手ー!」
今回の投稿はこれで終わりです。
72 :
作者の都合により名無しです:2005/04/10(日) 12:46:43 ID:wtedUqW90
雑音は気にするなよ、草薙氏。
本当に最終回が近そうだな。次回、ヤムチャがどんな喜びの顔をみせるか楽しみです。
ヤムチャが呟いた。
75 :
作者の都合により名無しです:2005/04/10(日) 15:47:59 ID:9hpCYWEK0
俺は読んでるからがんばれ>草薙氏
でも、もう少し表現をひねってくれた方がいいな。
76 :
黄金時代:2005/04/10(日) 18:57:30 ID:m7AfjaP50
閃光が交差し、大気が破裂し、大地が爆裂する。
肉眼では捉えきれない速度、
世界すら捻じ曲げる強固な意志は彼らを光速の住人とした
黄金聖闘士
生命エネルギーの爆発による超常の内気、小宇宙をもって万難を排す闘士
彼らの光速の鉄拳が打ち据えて互い違いの方向に弾き飛ばし、ようやく両者は姿を現す。
ようやく青年と呼べるようになった年の男二人だ。
「フ…、今のはこの私の拳が早く入ったぞ、童虎!」
腫れた頬に顔をしかめながら口の端から流れる血を拭うのはアリエスのシオン
聖闘士の証と言うべき聖衣の修復技能を持つ
「何をいうかシオン!この俺の蹴りが貴様を打ち据えていたぞ!」
鼻血をたらし、それでも得意気に言うライブラの童虎
共に意気軒昂、溌剌とした若者である。
身を起こした二人の間に横たわる大気は揺らぎ、再び一触即発となる
しかし…
「ハイハイハイ!そこまでですよ二人とも!」
横からかけられた声に、シオンと童虎はぎょっとして振り向く。
そこには隈取のついた白銀色のマスクをつけた女性が悪戯っ子をとっちめる姉のような雰囲気で立っていた。
「ゲ…」
「むぅ…」
77 :
黄金時代:2005/04/10(日) 18:58:02 ID:m7AfjaP50
「天下の黄金聖闘士ともあろう者が揃って何をやっているんですか!私闘厳禁ですよ!
童虎!シオン!聖闘士としての自覚が足りないんじゃないですか!」
腰に手を立てて仁王立ちするその少女の迫力に、先ほどまで光速の鉄拳を応酬していた彼らは萎縮する。
「し、しかしだな…」
「言い訳無用です!シオン!」
「そうだぞシオン!言い訳とは貴様らしくも…」
「貴方もです!童虎!」
ぴしゃりと言ってのける彼女に両者ともに適わない。
歳にして僅か二つしか離れていない彼女・白銀聖闘士カシオペヤ座のセダイラは
彼らにとって姉であり戦友であり憧れであった。
黄金聖闘士となった今でもシオンと童虎は彼女に対して頭が上がらない。
白銀聖闘士随一の使い手とも言われるこの姐御肌の女性は、彼らをこうして臆面もなく打ち据える。
黄金聖闘士最年少にして最高の使い手であるこの二人をそんな風に扱える人間は、
聖域に聖闘士多しと言えど彼女だけだろう。
「全く、それで、今度はどんな理由でこんな自体になったんですか?」
マスクの下で眦をつりあげるセダイラを前にして二人とも押し黙る。
「黙ってるところを見ると、またどうでもいい事が原因ですか!」
こっぴどく叱られる破目になった二人だが、とうとう最後まで真相を話すことは無かった。
真相など話せるわけが無い。
どっちが先に告白するかをかけていた、などとは男子の矜持に賭けて言えるわけも無い。
聖戦の兆しが見え出した頃、朗らかな春の日向。
夢幻の如き彼らの日常であった。
初めまして
ずっとROMってましたが、春の陽気に誘われて拙作投稿させていただきました
243年前の聖戦の始まる前のシオンと童虎のバカ話です
喧嘩するほど仲がいい
そんな感じだったんじゃないかと思って書いてみました。
おお、乙です。
伝説のセイント童虎とシオンの物語ですか。
聖戦の激しい戦いのお話につながるのかな?
それとも「バカ話」とあるからまた〜りした青春話かな?
期待してますので、ゆっくりと頑張って下さいな
80 :
ふら〜り:2005/04/10(日) 19:42:05 ID:iWURbj4V0
>>ザクさん
面々一巡。順当にフリーザがトップですな。誰かがひっくり返してくれると楽しいんですが
……難しいか。そういやこの物語、主人公が元々地上最弱の生物。フリーザの壁は厚い。で、
>寄生生物、魔族、使徒、戦術鬼、悪党。
悪党、って「北斗」のモヒカンたち? 彼らが前の四つと同列とは……凄いんだか何だか。
>>ゲロさん
蟲が人間の性質を増幅しそれが蟲の的になるという循環は、普通の雨の如く。それを浴びず
にはいられず浴びると憑きが強化されて状態が悪化していく、という症状は麻薬の如く。
今回の蟲は、タチの悪さとスケールの大きさを見事に備えてますな。どう対処するギンコ?
>>草薙さん
な、なんか敬語喋りで淡々と戦ってる悟飯が怖い。折るわ外すわリンチとか言ってるわで。
ヤムチャに続いて悟飯まで悪キャラモードに入ってますね。……草薙さん、こういうのが
好きだと見ましたぞ。ともあれヤムチャ勝利。いろいろカマしまくった彼、どこまでゆく?
>>黄金さん ←例によって勝手に命名失礼。願わくば名乗りをば。
最近いろいろ盛り上がってる星矢、ウチの妹も狂喜してます。童虎とシオンは人気のカプ
ですが、本作も学園ラブコメ風ほのぼので良い感じ……とか言いつつ、セダイラに死相が
見える私。でもバカ話。どっちに転んでも面白くなりそなこの物語、続き待ってますぞっ。
聖戦の兆しが見えている割には、ほのぼのとしてますな。>新作
何か甘々の話になりそうですね。アテナも出てくるんでしょうか?
なんというか、聖戦前の話はあれで完結してるんじゃないのかしら?
確かにそうかも。微妙だな。
でもオリキャラが出てるからな。
なんにせよ新人さんがんばれ。
でも長期連載になるとセダイラ死ぬ予感w
あと童虎とシオンをカプ扱いすんな>ふの字
>82
二次創作でそういうこと言ってたらキリがないぞ。
しかし復活したと思ったらまた停滞しちゃうねえ
間が空き過ぎの人が多すぎ。忙しいんでしょうが
87 :
作者の都合により名無しです:2005/04/11(月) 22:26:00 ID:pK6Ao6dwO
今日こそ誰か来いよあげ!
全知全能。絶対神。我の何者をも統べる生まれながらの強大な魔力の前に、
あらゆる神界の者どもが平伏した。恐れ、敬った。
呼ばれ名は大神デウス。
全ての神々を圧倒的な力で支配する我を暴君と謗る者もいた。
数多の女神を思うがままに渡り歩く我を好色と謗る者もいた。
が、時はうつろいゆくもの―――――――
永遠に等しいほどに、永き永き時を経て、我にも変化の時は訪れた――――――――
我は、我と同じく、いや、それ以上に奔放に振舞う一人のニンフに心を奪われた。
その名はメジューサ。この世の誰よりも美しき少女神。妖精メジューサ――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
天才。神童。相変わらず、大人たちは勝手気ままに騒いでいた―――――――
いや、大人たちだけではない。彼と年の変わらぬ同級生たちでさえも。
僕の名は出木杉英才。ごく普通のどこにでもいる小学生――――――
――――でありたかった。が、周囲の者は皆、そうさせてはくれなかった。
「あなたは、完璧すぎることが欠点」
小学生の身でありながら、時にはそう言われたこともある。
それが、少年の日の僕の日常だった。
そんな僕にも少年らしい日々は訪れた。
あまりにも自然で、そしてあまりにも身近な―――――――――
僕は身近にいる一人の少女と出会い、好きになった。名前は源しずか。
誰よりも優しくて強い、だけどごく普通のどこにでもいる女の子―――――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
奔放な妖精の心を我はついにつかめなかった。我が物にせんと奔走し、偉大なる
全能神に似つかわしくない策を弄してなお、メジューサは我の手をスルリと零れ落ちた。
メジューサは我でも雄々しき数多の戦神たちでもなく、海の底に座して動かぬ海神
クラーケンを選んだのだ。そして、その果てに――――――愚かなアテナの先走りに
よって、愛しいメジューサは醜い姿へと変化を遂げた。
怒りに狂った我は、我の怒りは、数多の神々を瞬く間に滅ぼすことになる。生き残った
戦神たちは、群れをなして我に反撃の剣をふるい、斧を薙いだ。さしもの我も――――
絶対神と呼ばれた我も肩ごと腕をもがれ、頭蓋を割られ、死に瀕した。が、我は死ななか
った。ドス黒く染まった怒りは傷口より噴出し、戦神たちを死に至らしめた。黒い怒りは
メジューサを除く全ての神々を滅ぼしてなお、おさまらなかった。ドス黒い闇はやがて、
より濃厚なる闇を生み出し増殖する――――――――――
―――――そしてそれは、ついに偉大なる我をも飲み込んだ。
我は惨めに石像を抱き締めるメジューサを抱き、道連れにしながら堕ちていった。
どれほどの永い時を堕ちづづけたのだろう。メジューサの抱える石像―――――――
すなわち憎き海神クラーケン――――――は、やがて砂となり闇の中に消えていった。
愛しき可憐だったはずのメジューサはその記憶を失い、ただの醜い怪物と成り果てた。
そして我も――――――我もまた――――――――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
時が経ち、幾度も友情と恋愛を重ねながら、僕らはみな大人になった。
しずかは、ささやかで、平凡な幸せを望んでいる。そのことを僕は知っていた。
だからこそ、僕は―――――――社会的な地位も栄光も欲せず、ただ平凡な
人生を歩もうと思った。愛しいしずかと共に。しかし、結局は―――――――
愛するしずかは―――――――――やはり僕ではなく、のび太くんを選んだ。
その選択は正しかったのだと思う。彼ならきっと、しすかを幸せにしてくれる。
僕よりも、他の誰よりも―――――――――
二人の結婚式の日。晴れやかな二人の笑顔を見た僕は、心から二人を祝福した
―――――つもりだった。―――――――しずかの幸せを何より願っていたから。
―――そして、のび太くんという男の素晴らしさを僕は誰よりも知っていたから。
そう。誰よりも。ひょっとしたら彼の両親よりも、しずかよりも誰よりも――――
だけど、心に開いた大きな穴は埋まらない。
しずかといる時間だけが、僕にとって唯一、本当に完全になれた時間だった。
そう。しずかのいない僕は――――――――――――――完全なる欠陥人間。
完全であること。ただそれ以外にとりえのない、何もない人間。
いつしか僕は自分をそう理解するようになっていた。
しかし、平凡な人生を心がけても、僕は自分が“優秀で完璧な男であること”だけは
捨てられなかった。何故ならそれだけが“全てにおいてのび太くんに劣っている”僕が、
“唯一”―――そう。たった一つだけ―――のび太くんに勝っている部分だったから。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――我はついに闇の奥底に辿り着いた。もはや記憶の彼方におぼろげに
残っているだけの神界とは対極の、闇と絶望に沈んだ暗黒の世界――――――――
我はこの日の光届かぬ暗黒の世界の王、すなわち魔王となった。脳裏に、淡く、
かろうじて残った神界の記憶と同じように、燦燦と輝く地上がうらやましかった。
しかし、もはや神界に戻ることは叶わぬ。――――――――ならば―――――――
―――――――――ならば滅ぼすのみ。我の苦しみの元を消し去らん。
しかし、その野望は叶わなかった。
異世界より現れし、小さく、脆弱なる者たちによって我は破れた。
この偉大なる闇の王が―――――――――――――
無様に破れ去った我を救ったのは、記憶を失った哀れな化物―――――――――――
時を遅くしてようやく、我の虜、我の忠実なるしもべとなったメジューサだった。
―――――皮肉にもメジューサの力によって、我は時を、そして世界を超えたのだ。
そして―――――――我は出会った。我と同じく万能にして、恋破れた人間に。
我はこのちっぽけで脆弱な人間に心惹かれた。我にふさわしい“器”である、――――
―――そう直感した。ふさわしき肉体と頭脳、そして弱りきった我にさえ、つけいる
隙を存分に与える深く大きな深層の傷跡。まさに数奇なる運命の邂逅――――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
僕は出会った。
雷雨の中、絶望に打ちひしがれ、もがき苦しむ僕の目の前に“それ”は、現れた。
心に生まれた小さな闇、その小さな歪につけこむかのように、より大きな闇が
僕の中に入り込んでくる。どす黒い意思が僕の体を駆け巡る。不快感はなかった。
むしろ、心地良ささえ感じていた。僕は――――――――
僕は、何か別の邪悪で、巨大な存在として生まれ変わる―――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人の身を借りてからの数十年・・・かつての神の身であったならば、瞬くほどの
短い時間であっただろう。しかし、数十年という月日は人の身には驚くほど永い
ものに感じられた。
絶大な魔力に代わる“力”を研究する傍ら、“人材”を得るため、我は奔走した。
しかし、絶大な魔力の大半を失い、人の身となった我に、常法則の異なる異世界で
我の求める人材を得ることは困難を極めた。ゆえに我は新たな世界の常法則を掌握
することに多大な時間を費やすことになった。
そして――――それは偶然であった。
その過程において、地底に潜む竜の血に連なる一族。やつらの存在を知った。
我の研究に革命的な進化をもたらした。
魔族を我が手で――――――再び強大な魔界を復活させる事ができる―――――!
我の執念と、そしてこの人間の頭脳によって研究は加速した。
ついには人の身のままに時を超える術さえも――――――――――
時を超えた我はわずかに回復した魔力をもって優れた人材を幾人も手に入れる
べく、“魔”に近き者のみに感じとることのできる微細な信号を発し続けた。
最初にそれを感知した男は魔土災炎であった。我の確立した“科学”の力は
同じく科学の権化である魔土という男の才能を爆発的に生かすことになった。
さらに魔土は、後にパーやんと高畑及びワンダー・ガールという強力な人材を、
連れてくることになる。
魔土だけではない。こちらの世界にも面白い人材は多く存在した。
驚くべきは、そのほとんどが我を滅ぼした者共と浅からぬ因縁を持つ者たちばかりで
あったということ。かつて神であったこの我でさえ、運命というものの不可思議を。
その抗い難い力を実感させられるほどに。
この世界において人を動かすために最も重要かつ効率の良い魔力は“金”と呼ばれて
いる。だが、我との契約において、この者たちが望んだ報酬は“金”ではない。
ちっぽけで脆弱な人間ども。魔土災炎は己の科学力を最大限に生かせる環境を欲して
いた。げんこつげんごろうは力を欲していた。ドクタケ城城主、木野小次郎竹高は、
さらなる権力と勢力を欲していた。
この弱々しく微細な信号を遠く、遙かなる銀河の果てにおいて感知した者もいる。
ギラーミン。我と同じく異世界に等しい遙けき彼方より、宿敵を探していたのだと
いう。それもかつて我を滅ぼした、あの忌まわしきやつらと同一の―――――
報酬は宇宙空間において無茶なワープを繰り返し、ボロボロになった肉体の修復。
我は内心ほくそ笑んだ。まさかこの人の世で、これほどの素材に巡り合おうとは・・・
弱りきった我自身が、万が一にもこのまま力を取り戻せずとも―――――
この男が転生に成功した暁には、かつての我をも超える魔の眷族となれるだろう。
漆黒の後継者ギラーミンを手に入れたことで、我の思想は確信に変わった。
着々と“計画”は進みつつある。確実に地上は我の手に落ちる。
そう。“僕”の愛するしずかの心さえも、もう一度我が手に―――――――
そのために“僕”は、魔を受け入れ、時の扉を開いたのだ―――――――――――!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
かつて受け入れた大いなる“魔”と僕の意識とが混在しあっている。
一つの肉体の中で、二つの意識は確かに共有しているようで――――――
――――しかしそれでいて明らかに僕の意識は薄く、儚かった。
常に、尊大で強烈な魔の自我によって意識の深いところに押し込められている。
意識の奥底に閉じ込められた僕に不思議な声が語りかけてくる。
美しい、そして凛とした勇敢なる女性の声――――――――――
繰り返し、彼女は告げてくる。
――――負け・・・ないで・・・――――――――
――――運命とは・・・・螺旋・・・・――――――――
僕は暗い意識の牢獄の中にあって美しく響き渡るその声を“天使”と呼ぶことにした。
混在する意識の中で、“魔”の“計画”は着々と進行している。
“僕”は魔の希望のままに“研究”を進めた。悪魔の秘薬、そして時の秘宝。
時を超え、人材が集まる。人材と呼ぶにはあまりにも陳腐な関係かもしれない。
僕を、僕たちを利用するものたちが集い、僕たちはそれを利用するだけの関係。
僕を支配する魔に気付き始めている者もいる。ギラーミン。凄まじい腕の殺し屋だ。
闇の中、次第に僕は理解していった。この悪魔の目的が僕の切なる願いとは大きく
かけ離れた、世界を―――同時に愛するしずかをも不幸に突き落としてしまうもので
あることに。しかし既に僕の意識は魔に閉じ込められ、身動きがとれないでいる。
そんな中、脳裏をよぎり始めたありえない幻想。この圧倒的巨魔の断末魔のイメージ。
ギラーミンならば、あるいはこの強大な“魔”をも滅ぼせるのではないだろうか。
彼を見た瞬間に、僕はそんな想いを抱いた。この人外の巨悪をたった一人の生身の
人間が倒すなどということがあるわけがないと知りながら――――あるいは――――
信じがたい話ではあるが――――かつてそのギラーミンをも倒したという人物が存在
するという―――――それは、しずかの心をも射止めた僕の最大のライバル―――――
僕は、いつしか自分の中に巣食った巨大な魔に抗う術を模索し始めていた。
僕は想いを練り続けた。想いを練り続けた。それは、いつしか燦燦と淡い輝きを放つ
聖なる白金となった。僕はその白金をさらに練り、鍛え続けた。模索し続ける中で、
唯一“魔”を打ち倒せるものを。意識の狭間に垣間見たギラーミンの美しい漆黒の銃と
その圧倒的な技量に見出していたせいなのか、それともその美しさに心を奪われてしま
っていたのか―――――それは、美しい銃の形を成して具現化された。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ』
邪悪で、巨大で、歪み切った哄笑が響き渡る。聞き慣れた声である。
しかし衰弱しきった肉体で僕はそれを初めて生身の肉体で聞いた。
幼い日の僕の肉体を代償に、僕の精神、そして肉体は解放され、同時に投獄された。
僕を救ったのは偶然にも――――――――やはりまだ幼い少女時代の源しずか。
今、僕は自力で歩くことさえ困難な老人の身となり、きり丸という名の少年の背に
おぶわれて―――――今まさに対峙している。倒すべき魔の王と―――――――――!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お久しぶりです。今回分終了です。連続投稿規制がまた異様に短くなってますねえ。
みなさん忙しそうですが、地震など気を付けながら頑張ってくださいませ。
近くもう一回くらい更新できると思います。
このスレに来るのは初めてですが「地底出木杉帝国」はホームページの「ドラドラの実」で
見ました。次回が楽しみです。頑張って下さい。
100 :
作者の都合により名無しです:2005/04/12(火) 23:13:50 ID:Mq7JaLVp0
すっごいお久しぶりです>うみにん氏
いよいよ大詰めって感じですね。
出木杉の秘められしのびたへのコンプレックスも明らかになって、
物語は本当に最終章へですね。でも、まだまだ続いて欲しいなあ。
次回は、出来れば早めにお願いしますw
あと、うみにんさんと周りの方々、前回の地震は大丈夫だったみたいですね。
ほっとしました。地震は避けようがないですからねえ。
うみにんさんキター
あの神話がこう繋がってきましたか。
次はいよいよ最終決戦か。嬉しいような寂しくなるような。
うみにんさんが戻ってこられたのは嬉しいけど、
もうすぐ終わりは避けようがないみたいで寂しいですねえ。
名物SSのひとつが終わるってのは。今回の神話編は感心しました。
久々の出木杉帝国おつです。
第一話の場面が再び出てきましたね。ナルホド、魔王と出木杉は似た者同士でしたか。
神話を見る限り、魔王も未だトラウマを抱えてる予感。
帝国も最終回が近づくにつれ、更新ペースが遅くなってるけど、こんな所までパオ
氏を見習わなくてもいいのに。
乙。最終決戦前にオープニングに戻って秘密が明かされてってのはいいね。
大長編ならではの醍醐味だ。終わると寂しいんだろうけど未完はもっと寂しいんで
なんとか完結お願いしまっす。
今夜も誰か復活するといいな
出木杉の心理描写が凄まじい。感動した!!!!!!!!!!
パオとVSとローマはどうしたんだ。
前2人に関してはいつもの事だけど、ローマは流石に無理か
108 :
作者の都合により名無しです:2005/04/14(木) 20:19:21 ID:aTbp9m4oO
もう好きにやらせてくれよ。何故気をつかわなくちゃならんのだ。
誰だか知らないけど悪かった。頑張ってくれ。
誰か来ることいのってあげ
いくらageても来ないものは来ない。
――ドラゴンボール?
「うむ。奴らの狙いこそは、七つ集めればどんな願いでも一つだけ叶えるというドラゴンボールである。
お前が東方不敗より譲り受けしボールは星三つのドラゴンボール。つまり」
王大人がザクの手に転がっている小さな球を指差す。
「三星球である」
――どんな願いでも一つだけ叶う、か。
ザクは王大人から三星球へと視線を移し、心の内で溜め息をつく。
こんな球を集めただけでどんな願いでも叶える、か。……どんな願いでも?
ザクの頭を、ある考えが閃光のごとく駆け抜ける。
「んな便利なモンがあるんなら、そりゃあ奴らも必死に――」
――王大人!
刃牙の言葉を遮り、ザクが信号を発した。
「む。なんだ」
――どんな願いでもって、死んだ人間を生き返らせることも出来るのか!
「ぬぅ、そうか……お前は」
――どうなんだ!
ザクの必死の剣幕に、刃牙が、コロ助が、王大人までもが圧倒される。
ザクよ、お前は殺された仲間達の復活を願うか。だが、しかし……
「ドラゴンボールについては、わしよりもヤムチャらの方が詳しい。願いを叶えるにあたっての――」
――ヤムチャか!ヤムチャを探せばいいんだな!
ザクは急ぎその場を発たんと膝を曲げ、飛び上がろうとするが、王大人がそれを止める。
「待て、ザクよ!」
――何故止める、王大人!
姿勢を崩さぬまま、ザクは王大人へと視線を戻した。
マシーンであるザクのその目には、しかし明らかに焦りの色が見て取れた。
「冷静さを欠いたお前をそう何度も野放しにするわけにはいかぬ。敵が計画的に動いている以上、こちら
も計画を立てて行動する必要があるのだ。まず、わしの話を聞けい」
「そう躍起になってドラゴンボール集めをする必要は無い。ソドムの奴らが求めている最後のドラゴンボー
ルは、我々男塾が『決して手の届かぬ場所』に保管しておいてある。そしてドラゴンボールについて詳しい
ヤムチャらも、今はまだ無事である。急ぐ必要は無いのだ」
――だけど、俺は今すぐにでもサムス達を生き返らせることが出来るのかどうか知りたいんだ!
「サムス?」
刃牙が首を傾げるが、その問いに答えるものはいなかった。
「落ち着け、ザク。お前は地球の命運を握るシャッフルの戦士の一人。お前たちファミコンウォーズのよう
な悲劇を繰り返させないためにも、私情に流されてはいかんのだ」
ザクの単眼がしばらく明滅し、拳がきつく握り締められる。煮えた鉛を飲み込む想いなのだろう。
知りたい!死んだ仲間達を生き返らせることが出来るのかということを!だが、今の俺はッ!
――くっ、うぅ……
しばらくすると、明滅が止み単眼の光は安定し、拳が緩く開かれた。
――よし……わかった。お前の言う計画とやらに従おう。
「うむ、それでこそキング・オブ・ハート。ではこれから先の行動について話そう」
王大人は腕を組んだ。
「まずサイヤ人の襲来だが、これは一週間後にまで迫っておる。だがその一週間、ソドムの奴らが大人し
くしているわけもない。おそらくは新生シャッフル同盟の面子を特定し、各々に刺客を放とうと考えておる
はず」
「げっ」と、刃牙が漏らす。
「じゃあ、俺もソドムに狙われる可能性があるのか!」
「うむ。もしかしたら既にシャッフル同盟の面子を特定するに至ってるやもしれん」
「か〜〜ッ、今は親父しか眼中にねぇってのによ。だけど、降りかかる火の粉は払わにゃならんしな!」
右拳を左掌に叩きつけ刃牙が気合いを入れる。刃牙をみつめていた王大人は、再びザクの方を向く。
「一週間。この一週の間にシャッフルの仲間達を探し出し、集めるのだ。既に刺客が放たれているやも
しれん。その刺客達を、新たなシャッフル同盟と力合わせて打ち倒すのだ!」
――了解!
ザクはキング・オブ・ハートの紋章が浮かぶ右拳を掲げて答えた。
「シャッフルの同志を探し出したら、とりあえずは男塾まで送れ。あそこならば、もしソドムの襲撃を受け
ようとも塾生達と力をあわせて迎え撃つことが出来る。出来うる限り、シャッフル同盟が男塾に集結する
という事実をソドムに知られぬよう情報操作もする。男塾を一時の隠れ家とするのだ」
――シャッフルの仲間が揃ったら、一気にソドムの本拠地を攻めてもいいんじゃないか?
その言葉に、王大人の表情が曇る。
「残念ながら、ソドムの本拠地はまだ掴めておらんのだ。男塾の密偵達が掴んだ情報はソドムの構成と
その目的のみ。よって、ソドムの根城が明らかになるまでは守りに徹するほか無さそうなのだ」
――わかった。今はとりあえず、シャッフルの仲間達を探し出し、男塾まで連れて行けばいいんだな?
「じゃあ俺は」
刃牙が口を挟む。
「一足先に男塾とやらに行きゃあいいんだな?」
「うぬぅ、お前という奴は」王大人が、こめかみをピクピクさせて唸った。
「これから旅立たんとするザクを助けようという気概は無いのか!」
――かまわんよ、王大人。
刃牙を怒鳴りつける王大人を、ザクが制止する。
「いや、しかしだな……」
――人一人を安全に運ぼうとすれば、飛行中に両手を使うことになるだろう。つまり、迎えに行くシャッフ
ルの仲間一人を乗せるのが精一杯で、刃牙までも運ぶ余裕は無いということだ。
「うむ、そうか……。となると、わざわざシャッフルの同志を一人ずつ男塾へ運び、次の戦地へ赴くと言う
形をとらざるをえぬわけか。男塾のヘリコプターが使えればよいのだが、今はあいにく整備中だからな」
――俺達は新しいシャッフルの仲間が誰なのか、どこにいるのかさえ知らないんだ。世界中を飛び回る
ことになるだろう。ヘリを使うとしても、燃料の補給が面倒なだけだ。
「うむ。新生シャッフル同盟の捜索は、お前の右手に浮かぶキング・オブ・ハートの紋章だけが手がかりと
なる。すまないが、しばらくはお前一人に全てを任せることになってしまいそうだな」
――いいさ。その間、王大人は俺達が潜めるだけの受け皿を準備してくれさえすればそれで十分だ。
「了解した。この度の新シャッフル同盟の隠れ家を男塾とする案は、今この場でわしが思いついたもの。
ただちに刃牙と共に男塾へ帰り、江田島と相談して準備を始めさせてもらうぞ」
「ところでザクさ、そのお前が持ってるドラゴンボールとかいうのはどうやって保管しとくつもりなんだ?」
刃牙の唐突な質問に、ザクは心中で微笑みながら答える。
――この程度の小物なら、体のいたるところに隠せる場所があるさ。問題無い。
「そっか。いや、ちょいと気になったもんだからさ。じゃあ後はそれぞれ分かれて行動するだけ……って」
刃牙は辺りをキョロキョロと見回した。「そういや」
「コロ助はどこに行ったんだ?さっきまでいたのに」
「ここナリよ〜!みんな〜!」
返事は上空から返ってきた。
コロ助は空き樽とベニヤ板で作られた木造の飛行機、『超鈍速ジェット機』に乗ってその場を去らんと
しているところだった。その名の通り超鈍速ではあるが非常に燃費の良い、奇天烈大百科に記された
発明の一つだ。
――ノヴァ教授の研究所へ帰るのか、コロ助!
「そうナリよ〜!今回はワガハイのドク……え〜と、自分の考えで勝手に来ただけナリからね。早いとこ
帰らないと教授にもキテレツにも怒られてしまうナリよ!では、さらばナリ!」
超鈍速ジェット機は危うげに左右に揺れながら、のろのろとその場を去っていった。
――さて、俺達も早速行動に移るとするか。
飛び去っていったコロ助を見送ったザクは、王大人と刃牙を見下ろす。
――俺はシャッフルの仲間を探しに行く。
「わしは刃牙を連れて男塾へ帰る」
「俺は、えーと、王大人、だっけ?あんたについていく、と」
――じゃあ、ここで一旦お別れだな。
ザクは胸の前まで右手を持ち上げ、親指を立てる。王大人と刃牙が共に、親指を立ててそれに答える。
――よぉぉし!ならば、俺はぁぁぁぁ、ゆくッッ!!
気合いをいれ、ザクはバーニアを噴かして飛び立っていった。
ザクUの、新たなる旅立ちであった。
今回投稿分終了。次回より「結集編」。
とりあえず月曜からバイトを始めた。
あとは今年の30倍以上勉強して再び国家試験に臨むのみ。
「おれはバイトをしながら来年の就職先を探す」・・・・・・・・・
「ザクはSSを書きながら国試の勉強をする」
つまり
ハサミ討ちの形になるな・・・
118 :
作者の都合により名無しです:2005/04/15(金) 22:37:19 ID:LDJ/oelz0
ザク氏乙。
なんかコロ助が場違いな感じで愛らしい。バキもいよいよ男塾入りかw
いくつものキャラの動きが同時進行してますね。
しかしサイヤ人て、幾らなんでも強すぎないか?塾長以外は歯がたたなそうだ…
>つまりハサミ討ちの形になるな・・・
そのセリフの後、確か夏京院死んだよねw
ザク氏おつ。
バキに小者臭が漂っている気がする。
もともと小物だから仕方あるまい
それでも原作よりは百倍マシ
ところでザクさんて昔、ヤムスレで黄泉の門を書いてた人か?
ザクさんお疲れさんです。バキはまだ毒が裏返っていない割には威勢いいですね。
まぁ、その調子に乗りっぷりも奴の特徴ですがw
>>121 それはあまりにも失礼だ。
>>121 ヤムスレではグラップラー飲茶書いてました。
無印はダイジェストを交えながらも完結させたんですが、続編は投げ出しました。
>>122 「ザクUVSデビル勇次郎(一)」より
>刃牙は大擂台祭終了後、勇次郎と決着をつけようと、姿をくらました彼の後を追った。
自分でも忘れてしまいそうなほどはるか昔に書いたものですが、一応毒裏返り後です。
戦力分析は覚悟以外ザク修行時代のものですが。
飼い犬の狂犬病予防注射いってきます ノシ
>>90-97 『ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ』
耳をつんざく不快な哄笑を行う出木杉の体を持った魔王。その目前に映し出されたビジョ
ンに映る、石像と化したドラミの姿に、ドラ一行に絶望がよぎる。しかし、それらを吹き
飛ばし、みなを鼓舞するがごとく、ジャイアンが叫んだ。わずかな希望を見出すべく。
「まだ、スネオがいる!」
のび太が、ドラえもんが、しずかが、ハッとして顔をあげ、見合わせる。
しかし、ジャイアンの叫びは魔王にとってはさらなる笑いを誘うだけものであった。
『フハハハハハハハハハハハ、苦し紛れに藁をもすがるか。その者も我は知っているぞ?
我を倒さんと集まった面々。お前たちは確かに尊敬に値する勇敢さだったかもしれん。
だが、覚えているぞ。その中で、ただ一人、心の底から怯え、みじめに狼狽することしか
できなかった小虫のこともな!』
続けて魔王はきっぱりと告げてきた。
『お前たちが我に勝てぬ理由はまだある。』
が、魔王がその続きを述べることを遮るように、ドラえもんの声が割って入った。
「この科学の支配する世界において、お前の心臓は星の海などない。つまり―――――」
それだけで、魔王はドラえもんの言わんとすることを理解した。
『ふ・・・隠しはしない。
そう。この科学の支配する世界において、我の心臓はここにある!』
魔王は既に露呈している唯一にして最大の致命的な弱点を微塵も否定することなく、
自らの胸の中心を指差しながら続ける。
『我を貫いたその時には、この少年も死ぬことになる。』
ドラえもんたちの表情に大きな動揺が浮かんだ。確かにその通りである。
救出にきたはずの大切な友人の命そのものが盾にされているのだ。うかつに身動きは
とれない。かといって、外ではバンホーさんたちが決死の覚悟で戦っている。
このまま手をこまねいて見ているわけにもいかない。――――どうする?――――
ドラたちが必死に思案を巡らす中―――――――――
魔王は自ら率先して、とるべき道を指し示し、ある条件を突きつけてきた。
いや、最初からそれが最大の目的であったのだろう。
『この少年を救う術はただひとつ。我の、我の真の名を呼べ―――――“のび太”よ!』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「くしゅん!」
「大丈夫ですか?」
「うん。風邪ひいたかな?」
地底の空をかなりの速度で1基の戦闘機が横切っていく。帝国の方向へ向かって一直線に。
操縦しているのは一人の少年。隣に美しい少女を乗せて、ある種不思議な光景である。
少年はもちろんスネオである。まさか今頃目指す魔王に小馬鹿にされているとは思っても
いない。スネオはついつい愚痴をもらす。
「メジューサの野郎、タイムマシンを壊してたなんて・・・
・・・考えてみりゃあいつらの目的からすりゃあ、当たり前のことなんだけどさ。」
「そ、そうね。許せないわ。(つまり、私が壊しちゃったんだけど・・・)」
メジューサはこの臆病な少年にはしばし、自分の正体を明かすのはやめておいた。
スネオも好みの少女の前では猜疑心が薄れるようで、メジューサの話をホイホイ信じて
しまっている。きり丸に騙されたばかりなのだが、あまりこりてはいないようだ。
「とりつけておいた“なんでも操縦機”が壊れてなかったのは、不幸中の幸いだね。
ドラミちゃんたちも元に戻さなきゃいけないし、このままドラえもんと合流できれば、
なんとかなるかも・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そのころ、要塞下部には再び動き出す者たちがいた―――――――――
要塞地下―――――――
満身創痍の体を引きずって階段を這いあがる者―――――――――
「ちくしょう・・・!許さねえ・・・許さねえぞ・・・あいつらぁ・・・・・!」
その瀕死の体を動かすのは、強烈なプライドのなせるわざなのか、少しずつ、
ほんの少しずつ、げんごろうは“上”へと向かっていた――――――――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
目覚める者――――――――
「八方斎様!お気づきになられましたか。」
「おのれぇええ・・・!小童どもめ!・・・お前たち!」
『ハッ!』
「達魔鬼を・・・“達魔鬼”を呼べい・・・!」
「既にここに・・・」
声は背後から静かに響いた。いつのまにかそこには、大柄な忍びが存在している。
他のドクタケ忍者とは一線を隔す存在感、威圧感。悪のドクタケ城はじまって以来、
最高の忍者と称される男、キャプテン・達魔鬼は鋭い眼光で要塞上部を見据えていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
立ちあがり、見つめる者―――――――――――
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
ギラーミンは目覚め、その場に孤高に立ち尽くしていた。のび太との凄絶な決闘から、
まだそれほど時は経っていない。その見つめる手の先は―――――――
「あいかわらず甘いやつらだ。」
ポソリと呟く。目覚めてより数刻の間、ギラーミンは戦いに生きる者の本能で、
無意識のレベルで肉体の状態を確認していた。奇襲。遠方からの狙撃。爆撃。
一瞬の後に起こりうる可能性のある突発的な戦闘の際に、どれだけの肉体機能を
発揮できる状態であるか。それらを常に正確に把握し、冷静に分析する作業。
それは、命を狙い、狙われることを日常とする彼にとっては、もはや呼吸する
ことと同次元の習慣として身についていた。
若干の痺れこそ残ってはいるものの、肉体的損傷は全くといっていいほどに皆無である。
撃たれた影響はほとんど感じない。“命を懸けた決闘”そう声高に叫んだにも関わらず、
リルルの放ったショックガンの威力は、やはり若干抑え目に設定されていたらしい。
しかし、その見つめる指先は今、黒く変色し、不自然に鋭くとがりつつあった。
―――――――肉体が、不気味な魔の眷族のものへと変貌し始めている。
ギラーミンは、鋭い眼光を上部へと向けた。キスギーの、そしてのび太たちのいる
最上階へ―――――。その眼は、のび太との決着を望んだ熱い男のそれから、
再び、本来の冷酷な殺し屋のものへと戻っていた――――――――――
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回分終了です。ようやく次回くらいから魔王が盛大に暴れ出す予定です。
結局、完全にフェイドアウトしてしまったキャラがほとんどいないため、
あとは一本道!とはいきそうにないですが、エンディングは近い・・・かな?
続きは5月中旬以降になる可能性が大ですが、なんとかその後一気に更新
できるよう頑張ってみます。のび太はもちろんですが、恐らく出木杉くんと
ギラーミンも重要な役割を担うことになるでしょう。しょくパーマンたちも。
お疲れさんですうみにんさん。次回は1ヵ月後ですか。気長に待ってます。
完結は夏くらいですか、このままいくと。
おつです。うみにんさん。ラストに近づくごとに盛り上がってますね。
次回が楽しみです。
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/ra-men/07.htmの続き <超人アーリーデイズ ラーメンマン編 後編4>
拳の高みとは如何なるものか。
超人拳法の道を歩み始めた時より、ずっと自問自答を繰り返してきた命題。
中国という広大な大地が育みし、悠久なる歴史を背負いし中国拳法。
豊穣なる才気が無限の技を織り成し、無比なる威力の拳を現出させる。
が、それがいかほどのものか。
どれだけ磨き抜かれた拳ですら、敵を倒すだけのものである。
どれほど鍛え抜かれた体ですら、何時かは老い果て、露と消え行く。
それに高みに辿り着こうが挫折しようが、所詮自分だけの問題ではないか。
磨きし技と肉体と心が辿り着きし高みが、どう世に影響するというのだ?
所詮は自己満足、世の民の迷走に背を向ける為の方便、欺瞞ではないか?
小さい。拳の道など、小さ過ぎる。
その証拠に自分は今の今までこの荒涼とした村を救えなかったではないか。
どころか、己の迷いすらその拳にて打ち払えなかったではないか。
そう思うのは俺が未熟だからだろうか。
陳老子や朴念などの達人ならば、この虚しさを抜け、高みに達しているのだろうか。
分からない。だが、今は迷う時ではない事は分かっている。
迷えば、死ぬからだ。始めての真剣勝負。否、殺し合いの場に自分は立っている。
目の前に狂獣が立っている。その獣から感ずる『格上』の気配。
恐らく、数多くの生き死にの場に立っていたのだろう。この、郭 春成という男は。
郭 春成との対峙より数分前の事である。
屋敷の外から気配を読む。敵の数は多い。が、所詮は素人である。
少年を外に待たせ、ラーメンマンはその屋敷にまっすぐと乗り込んだ。
踏み込んだ面識のない居丈夫の姿に面食らい、そのまま一瞬硬直する野盗ども。
甘い。見張りすら付けず、顔はよく見えないが村の女すら侍らせているようだ。
ラーメンマンの姿が消える。神速で踏み込んだのだ。同時、野盗が2人吹き飛ぶ。
一人には裏拳、一人には前蹴りを喰らわせたのだ。脆い。
まるで豆腐でも打ち砕くかのように、野盗の骨が砕ける感触を感じる。
一瞬、悦びにも似た快感がラーメンマンの背を駆ける。更に踏み込む。
残りは5人。やっと異常を察したのか、残りの野盗どもは青竜刀や槍を手にした。
が、それを全員が手にする前に更に2人打ち据えて倒す。残り3人。
一人が青竜刀で背後から襲い掛かる。焦るな。呼吸を整えよ。俺は、強い。
肩口に青竜刀の重みを感ずると同時、ラーメンマンの後ろ蹴りが突き刺さった。
嘔吐しながら倒れる野盗。傷口からは血が滴り落ちている。大丈夫だ、傷は浅い。
残りは2人。かつて超人拳法を学びし者が、一撃で倒される訳はない。
どっちだ?どっちが郭 春成だ?
一瞬、迷いが走るラーメンマン。またか。つくづく、迷霧を彷徨うのが好きらしい。
しかし妙だ。前の2人からプレッシャーは何も感じない。
が、いるはずだ。この部屋に。『狂獣』と呼ばれし魔物が。存在を感じるのだ。
残りの2人に襲い掛かろうとするラーメンマン。
が、何故か2人からは焦りを感じない。何故だ? …いや、まさか、もしかすると…。
瞬間、残りの野盗への拳を止め、そのまま転がり何かから回避するラーメンマン。
自分でもその『何か』がわからない。が、感じたのだ。背後から禍々しい何かを。
気配は無い。しかし、ラーメンマンの命そのものが異常を感じ、警告を最大限に発した。
逃げろ、と。
前転しながら踵を返し、その魔の正体を確認するラーメンマン。驚愕した。その姿に。
「その技は超人拳法か。懐かしいな」
艶然と微笑むその姿。細面にうっすらと化粧をした整った顔立ち、華奢な姿。
侍らしていた、と油断した女である。が、良く見ると女ではない。
華奢と思われた肉体には、薄いが張り詰めた筋肉がへびりついている。
涼しげな眼差しだが、その奥には蛇にも似た狡猾さを潜ませている。
何より、拳。そうだ、俺は恐らく、この拳に恐怖を感じたのだ。
骨と皮だけのような拳だが、研ぎ澄まされた凄絶さを感じる。凍気すら纏うような。
「俺の殺気を感じたとなると、そこそこ腕はあるらしい。陳のジジイは元気か」
間違いない。この優男が、狂獣・郭 春成。
迂闊。見目に惑わされ、本質を見抜けぬとは。俺は本当に、どうしようもなく未熟だ。
春成に残った2人の野盗が恨めしげに聞いた。何故、即座に倒さなかったのか、と。
「フン。お前らをエサにこいつの技量を測ったのよ。お陰で分かった。
こいつは強いが、オレよりは下という事がな」
春成は嘯くと、ヒラヒラした着物を脱ぎ捨て、出口を顎で示す。
「ここだと物が壊れる。外で立ち合おうや。超人拳法はいずれブッ潰すつもりだった。
クク、久しぶりに、本気で楽しめそうだ」
ラーメンマンは頷き、黙って外へ出た。少年が駆け寄って来る。
彼は少年に少し離れるように諭し、瞑想しながら春成をしばし待つ。
これはもう、野盗との戦いではない。拳法家同士の、己の誇りを賭けた戦いである。
初めての野試合。体が震える。心がざわめく。喉が干上がる
だがまさか、初めての立ち合いが超人拳法を破門になった同士とは。苦笑が思わず浮かぶ。
程なく狂獣が現れる。死神のような残酷な『格下』に対する嘲笑を浮かべながら。
「何時でもいいぜヒヨッコ。オレは破門にはなったが、いうならばお前の兄弟子。
胸を貸してやるから掛かって来な。 …ま、生かして返すつもりはないけどな」
ラーメンマンはしばし立ち尽くみ、汗が額に浮かぶ。 …勝てるのか、俺はこいつに。
そして絶叫しながら大地を蹴った。彼もまた、一匹の狂いし獣の如く。
134 :
パオ:2005/04/16(土) 21:23:59 ID:IOz6FKi80
次回はちょっと長めに書いて、それでこの小編も終わりです。
ラーメンマン編はさっさと終わらせてウォーズマン編に行きたかったのですが、
時間かかってしまいました。ま、さぼっていた訳ではないのですが。
うみにん氏は地震、ザク氏は試験が不幸な結果に、ふら〜りさんは慢性睡眠不足ですか。
皆さん、色々ありましたねえ。私は人身事故を起こしてしまいました。
この前ゲロさんと話したばかりなのに何やってるんだ俺。大事に至らず良かった…。
前スレ470より パオさんの間を置かずにですが、失礼します。
「やっほーいーいー。おひさー」
留守をみいこさんに任せて、病院に着いたぼくを待ち受けていたのは、看護婦(と言うと看護士だと怒られた)の
形梨(かたなし)らぶみさんだった。
どう考えても一登場人物では終わりそうにない名前と、恐ろしいまでのハイテンションが持ち味のいかした変態だ。
ちなみにぼくは入院するたびにこの変態に生殺与奪を握られていたりする。
しかし今は暢気に登場人物の説明をやっている時ではない。
「あの・・・崩子ちゃんたちは、どうなんです?」
「うん、まあ崩子ちゃんと、あと萌太くんって子の方は心配ないよ。怪我は多少酷いし、意識もないけど、二、三日もすれば
歩き回れるようにもなるかな」
「そう・・・ですか」
少し安心した。だけど・・・もう一人。
出夢くんは、どうなったんだ?
「もう一人の方はね・・・おや、丁度先生がきたよ。ほら、あのちょいとかっこいい人。東京の方じゃあ有名な医者らしくって、
たまたまここに来てた時に三人が運び込まれてね。わざわざ診てくれたんだよ。
んじゃあ、らぶみさんはお仕事があるのでこれで。バイビー」
相変わらずのノリで去っていきやがった。しょうがないので<先生>とやらの方に向き直る。かなり若い。
まだ二十台の年齢だろう。
「鎬紅葉です。よろしく」
彼はそう名乗った。よく見ると、かなり身体つきがいい。格闘家と言われても、ぼくは信じただろう。
「はあ・・・どうも。ところで、出夢くんの容態は・・・?」
「うん、そのことなんだが・・・ショックを受けるかもしれないよ」
「・・・・・・そんなに、酷いんですか?」
「酷い」
鎬先生は、そう言い切った。
「はっきり言おう・・・生きていることが奇跡なんだ」
「・・・・・・」
そこまで。そこまで――――――
「具体的に―――どんなかんじなんです?」
「・・・頭蓋骨骨折及び脳挫傷、鼻骨骨折、頚椎損傷、両鎖骨複雑骨折・・・」
「・・・・・・」
それは、聞いているだけで身の毛もよだつような報告だった。二分ほどその報告は続き――――――
「これで―――ようやく半分といったところだな。残りも聞くかい?」
「・・・いえ、もういいです」
ぼくは気分が悪くなり、壁にもたれかかった。畜生。畜生。
なんでぼくはあの時、もっとあの三人を強く止めなかったんだ。
彼を相手にして、あの三人でもどうにも出来ないことなんて、予想がついただろうが。
自分自身に腹が立つ。それと同じくらい―――三人に対しても腹が立つ。
勝手に人の事情に首を突っ込んで、こんな風にやられるなんて。
なんだってぼくなんかのためにここまでしやがったんだ。
「範馬勇次郎に―――勝てるはずないだろうが―――!」
「―――範馬、勇次郎、だと?」
どうやら声に出していたらしい。鎬先生が驚いた顔をしていた。と、急に肩を掴まれる。
「今、君は範馬勇次郎といったな?これをやったのは、奴なのか!?」
「え―――」
この人は―――範馬勇次郎を知っている?
「なるほど。そう考えれば合点がいくな。あの出夢という少女の身体、常識では考えられない鍛え方だった。
それをあそこまで破壊できるとなれば―――奴くらいしかいない」
「・・・あなたは、知ってるんですね。範馬のことを」
鎬先生ははたして、首だけで頷いた。そしてぼくから手を離し、溜息をついた。
「奴と闘ったというのなら、まだ命があっただけマシかもな・・・」
そう言ったきり、彼は何か考え込んでいるように腕を組む。もうぼくは視界に入っていないようだった。
この人の過去に範馬がどういった形で存在しているのかは分からないが、恐らくはいい思い出などではないだろう。
ぼくはそっと立ち去ることにした。ぼくはぼくで―――やらなければならないことができた。
「待て」
しかしながら鎬先生は、ぼくを呼び止める。一応ぼくのことは目には入っていたようだ。
「なんです?ぼくは色々準備しないといけないことがあるんで―――」
「まさかとは思うが、範馬勇次郎と闘るつもりか?」
137 :
戯言遣いとオーガの賭け事:2005/04/16(土) 21:30:45 ID:rSx7ew8P0
「・・・・・・そうだと言ったら、どうしますか?」
「止める。君にそこそこ格闘の心得があるというのは身体を見れば理解るが、君が無限大数人いたところで奴には絶対に
通じない。医者として、そんなことは認めん。はっきり言う。君がやろうとしていることは、人類史最大の自殺行為だ!」
「・・・そうですか。だから何か?」
「何か、だって?」
「自殺行為っていうなら―――ぼくの人生そのものが自殺行為で積み重なってできてるんですよ。今更もう一つくらい
重なったところで―――それがどうしたっていうんだ」
「・・・・・・」
鎬先生は、息を呑んでぼくを見る。まるで、信じ難い物を見た、とでもいうように。
「ぼくがここに運び込まれた時は、お願いします」
それだけ社交辞令のように言って、ぼくは病院を後にした。
「・・・さて、と」
これから色々やることがある。まずは、哀川さんに連絡を―――
そう思った瞬間、携帯が鳴った。耳をつんざくヘビメタの着信音。番号を見ると、間違いなくあの人だった。
「・・・・・・」
全く―――あの人は、エスパーか。ぼくは電話に出た。
『おい、コラ!』
いきなり怒鳴られた。相変わらず、気性の激しい人だ。
「どうも・・・哀川、さん・・・」
『あたしを名字で呼ぶんじゃねえ!名字で呼ぶのは敵だけだって、何度言わせやがるんだ馬鹿!それとてめえ、なんで
さっさとあたしに連絡よこさねえんだ!範馬勇次郎なんて野郎と関わって、おまけに崩子ちゃんやらが揃って病院送りに
されちまってんじゃねえか!』
もうそこまで知ってるとは。相変わらず、とんでもない人だ。
「・・・潤さん」
『なんだ!?さっさと言え、あたしは今キレてんだ!』
「ぼくは、範馬勇次郎と闘います」
『・・・・・・!』
電話口でも、哀川さんが絶句したのがはっきりと判った。ぼくはそのまま畳み掛けるように言う。
「もちろん、ぼくじゃどうにもならないでしょう。けど―――それでも闘ります。そこで、頼みたいことが一つだけ。
―――後はよろしく」
『・・・・・・本気なんだな、お前』
「はい」
『そうかい。じゃあ仕方ねえな―――後は、任されてやんよ』
「・・・止めないんですね」
『生半可な覚悟だったら止めたさ。けどいーたん、結構ホンキっぽいからな。それだったら、
あたしが止めるべきじゃないよ。精々死なないように祈ってやるくらいだな。ま、頑張りなよ。
最悪骨は拾ってやるし、墓に線香くらいは供えてやるさ』
「お願いします、哀川さん」
『てめ、また名字で呼びやがって・・・』
そのまま切った。後が怖いが、まあいいだろう。
ぼくが今考えるべきは、範馬勇次郎との闘い―――否。
殺し合いだ。
「さーて・・・殺して解(ばら)して並べて揃えて晒してやるか」
ぼくは零崎人識を真似て、そう言った。
投下完了。
パソコンは結局初期化しました。
パオさんも言ってますが、皆さん色々あるようですね。
僕も色々やばいですが、とにかく頑張っていきたいと思います。
140 :
作者の都合により名無しです:2005/04/16(土) 23:08:33 ID:PyFw3uah0
パオ氏とサマサ氏のダブル復活キターーー
しかしなんか職人さんたち受難続きみたいだな。がんばれ。
>ラーメンマン
あのへタレの春成が不気味な強豪として書かれてますね。ラーメンマンはどう勝つのか結果が楽しみです。
あと、それ以上に気になるのがラーメンマン編の後にくるウォーズマン編。
肉の本スレ(初代、2世両方)ではウギャアマンと呼ばれ、レオパルドンと双璧をなすネタキャラとして
駄目な感じに親しまれていますが、この展開だとウォーズマンも格好良くなりそうですね。
>戯言
戯言は読んだことないのですが、このいーちゃんは肉体を活かすというよりも特殊能力で戦うタイプだと思ったのですが
どうなるのでしょうか。それにしても鎬紅葉は久しぶりに見た気がします。
原作の方では弟に負けたせい&作者が多数のキャラを捌ききれなくなったために、出番も実力も
無くなってしまいましたから。
パオさんとサマサさん復活おめです。
しかしパオさんは新連載よりDIOを復活させてホスイ
143 :
作者の都合により名無しです:2005/04/17(日) 01:31:02 ID:GddqZQ/t0
>ラーメンマン
春成が強そうで嬉しい。原作とは別人ぽいな。しかし次回最終回か。
バキスレから作品がどんどん減っていく悪寒
>戯言遣い
テンション高い看護婦からの始まり方と、それに反するハードな展開。
しかし紅葉のセリフは克己とのミックスだなw
一家には、とりあえずあまり洞窟から出ないように言い聞かせた。ギンコは、七日程度
ならそこそこ我慢もきくだろうと読んだのである。
しかし――あんなことを言ってしまったが、ギンコには何の考えもなかったのだ。一家に
は薬を与えた。しかしそれはあくまでも応急処置のような代物であり、根本的な解決に繋
がる効力を持っているものではない。体内部の蟲の動きをある程度抑えることは出来るだ
ろうが、それで雨雲を遠ざけられるようになる訳でもない。
何か、一家の持つ性質に近い、蟲の注意を引ける避雷針のようなものを用意するか、
もう一つは、あの蟲そのものを消してしまうか――ギンコの頭に浮かんだのは、とりあえず
この二種の選択である。無論、後者の方が望ましい。あの蟲をのさばらせておくのは余りに
危険である。少々雨を浴びた位では何ともないだろうというのは、あの一家を見ていれば分
かる。しかし、単にそれだけではなく、村人は、蟲の雨で育った作物を食べ、蟲の雨が混じっ
た水を飲む。同じように、蟲を体内に入れた動物も食べる。そうして、奴らは着実にヒトを侵食
してゆく――
そんなことをひたすら考えているうちに、ギンコはいつの間にやら雨雲の外に出ていた。そこ
で、気付く。あの蟲が、雨雲の外には見えないのだ。全く、本当に一匹たりとも存在していない。
地中に潜ったのか、とギンコは思ったが、それにしても全く表にいないということはないだろう。
木や草、その他諸々のものに付着し、確実にその勢力を広げているはずだ。すぐそこの雨雲の
中には、雨粒と共にあの蟲が蠢いて――
「――そうか、こいつらは……」
ギンコは空を見上げた。空には、あのぶ厚い雨雲の中ではどこにあるのかも見当が付かなか
った太陽が、何時もと変わらぬ眩さをもって、確かに存在している。
太陽の大まかな角度を確かめた後、ギンコは、光を反射する小さな金属板をポケットから取り
出す。そして、天にかざし、うまく雨に光が当たるよう調節した。
雨が。蟲の混じった雨が、光に当たった瞬間消えてゆく。まるで、雪の如く――
この蟲は、光に弱い。直接、強い光を浴びせられるのが何より苦手なのだ。ギンコは確信した。
ギンコは、急ごしらえで用意した松明で、どんどんと蟲を消しながら、一家の待つ洞窟へと歩を
進めていた。
光で消えてしまう蟲ならば、一家以外の他の生物に悪影響が出ることはまず有り得ないだろうと、
ギンコは考えた。奴らは、本来弱い蟲だったのだ、と。その弱い蟲が、生きる為に雨雲を遮光物とし
た。それで、安心し切っていたのか。
ギンコには感じられた。奴らは混乱している。ざわついている。光という、忘れ去っていた脅威に再
び曝され、平静さを欠いている。しかし逃げ場はない。雲の外へ僅かにでも出れば、即座に太陽が奴
らを葬り去ることだろう。とはいえ、中にいたら俺の松明で消えるだけだ。結局、お前らは今日消え去る。
そう思いながら歩いていると、あっという間に洞窟に辿り着いた。
「おおい、俺だ」
返事はない。ギンコは、洞窟の中を照らし見た。一家は、いない。
「これ以上蟲を浴びたら……人でなくなるかもしれんのだぞ」
ギンコはそうこぼし、地面を見た。まだ新しい足跡が、数人分あった。大きい足跡、中くらいの、小さいの。
「くそ……まだ追いつけないのか。早くしないと……」
少し前から、雨の量が異常に減ってきている。それも、ギンコには凶兆に思えてならなかった。蟲は、一箇
所に集まりだしている。奴らが必死に縋るもの。それはなにか。
ギンコには、想像が付いていた。目の前全てを覆うほどの雨が、集まっていた。いや。もはや、それは雨と
呼ぶには余りにも姿を変えすぎていた。小さな山一つ分ほどの塊――液体ではない。これは蟲なのだ。そし
て、この塊の真ん中に、彼らがいる。ギンコは、松明の先端を塊に近づけた。やはり、消える。そうして、少し
ずつ、中央に向かってゆく。
暫くそうしていると、手が見えた。今度は、その上の辺りに近づけた。そうすると、人の顔が出てきた。それは、
今にも人としてのかたちを喪いそうな長の顔であった。
「俺に付いて来い」
ギンコは、長にそう言った。返事はない。
「そいつらはお前達に縋っているだけだ。今なら、自らの意思で動くことができる。身動きは取れるはずだ。そい
つらに重さはないし、何より、歩みを強引に止めるだけの思考能力すら今はもうもたないからだ」
そう言ってギンコは長の元を離れた。松明の火を消して。
(これを、動かすだって……? 自分が動くのだってせいぜいなのに、こんなでかい塊と共に動けるはずなどない)
長は、いや、一家は、どこか宙ぶらりんとした気持ちで居た。こちら側とあちら側の境界線上は、人の思考能力を
著しく貶める。
(もう、いい。何もかもが、もう――)
――生きたくはないのか?
声がした。
――生きることを諦めるのか?
それは、空気の振動で作られる類の音ではなかった。長の眼を、真っ直ぐに見つめるギンコの眼から発せられた、
声にならぬ声。
(生きられる、というのか。ヒトとして)
塊は、ほんの少し地面を揺らす。振動は、序々に大きさを増してゆく。
(生きられると、ヒトとして生きられるというのだな!?)
一家全体の心の昂りが、塊を動かした。少し、勢い余って飛び跳ねてしまっているが――それでも、ギンコの後に
付いて行こうとした。
ギンコが一足先に、雲の下を抜ける。
「さあ、早く来いよ」
蟲達は、やっと状況を飲み込んだ。白髪の男は、私達を完全消滅の道へ歩ませようとしていたのだ、と。さすがに、
最後の抵抗を見せる。後少し進んだら、とてつもない光が自分達を消し飛ばすと分かっている故に。
しかし――止まらない。止まりはしない。
一家の思いは一つ。『もう一度、家族で生きたい』――そして。
一気に、塊は雲から出て、この世界を満たす日の光に飛び込んだ。瞬間。
溶ける。消える。巨大な塊が見る見るその姿を縮小して行き、そして遂には、一家のみを残して、完全に見えなくなって
しまった。
それと同時に、雨雲が動き始めた。ようやく、一家とは別の方向へと、少しずつ、少しずつ。もう、極端な水不足に周辺の
生物達が悩まされることはなくなるだろう。全ては、元の流れに収まりつつあった。
「悪いな、こんなの貰っちゃって」
一家の元の家。あれからほどなくして、一家の口から、咳とともに小さな鉛のようなものが出て来たのである。それは、ギ
ンコの見たところによると、どうやらあの蟲の残骸であるという。
「この蟲はやたら暗い所にはたくさんいるが、こんなの聞いた事ないからな。貴重だ」
「そんなので本当にいいのか? あれだけ助けて貰ったのだから、もっとそれ相応の礼がしたい」
長はそう言って残念がった。しかしギンコは、
「ああいーって。別に。(バカに高く売れるし)」
とまあ、腹黒いこと考えてたりした。
「じゃあ、これで……」
「ギンコ」
長が、行こうとするギンコを制した。
「あの蟲は、居る所にはやたら居る、至極ありふれたモノだと行ったな」
「ああ」
「ありふれたモノが、あれだけのことをしでかすのか?」
長の眼は、真っ直ぐにギンコを見据えていた。
「……詰る所、この世に決まったかたちなんてない。誰がどう変わるかなんて分からない……そういうことじゃないか」
ギンコは、そう言って今度こそ去って行った。
ゲロさん、投稿直後にすいません。
寝る前に4つUPさせて下さい。orz
以下、前スレ
>>564から。
「なぁ、『かくれんぼ』ってやった事あるか?」
「は!?」
克己は呆気に取られた。銃を突きつけておいて、この男は何を言っているのか。
「やった事あるか?と聞いてんだよ。あるか?あるよなぁ!?あるんだろっ!!?」
プルシコフが唾を飛ばしながら、喚き散らす。
「あ、ああ…。だいぶ昔に…」
「そうかぁ、なら話は早い。お前は今から『かくれんぼ』をするんだ。俺とな」
「テメェ、何馬鹿な事言ってやが…」
プシュ!ピシィッ!
思わず声を荒げた克己の背後で、網ガラスに小さな穴を中心とした蜘蛛の巣が張った。
「うるせぇっ!!!お前に選択の余地は無い!拒めばお前の頭をブチ抜いて今度は母親を殺してやる!!」
ひとしきり怒鳴り散らし、プルシコフが唾を拭った。
病的、狂人、異常者。 未だかつて遭遇した事の無い人種。克己の背を冷や汗が伝う。
「…ルールは簡単だ。お前は10分間此処で待て。俺は最上階に隠れる」
「もし…逃走したり仲間を呼ぶような事があれば……さっき言った通りだ。勿論、通報は論外だ」
(糞っ。なんで俺がこんな茶番を…!)
蛮行への怒りと、銃器への警戒を怠りむざむざ単独で乗り込んだ己の迂闊さに、克己の腸は煮えくり返っていた。
「さ、わかったらそこに突っ立ってろ。『10分間』だぞ。」
克己の胸中など意に介せず、プルシコフは封筒を雀卓に乗せると、バックを抱えて背後のドアから消えた。
(…後5分、か)腕時計を見やり、あの狂人の設定した時間を確認する。ふと、克己の頭に疑問が浮かんだ。
奴が大量の銃器・弾薬を所持しているとしても、ここから遠く離れた自宅の母をどうやって殺すのか?
通報にしろ逃亡にしろどうやってそれを最上階から奴は確認するのか?
奴の拳銃にしても、詳しくは知らないが素人でも銃が入手できる御時世だ。
ドラムバックの中身は全てモデルガンなのでは?
…全ては『ハッタリ』なのでは無いか。
そう考えると、全てが馬鹿馬鹿しく思えてきた。
そうだ、奴のルールに従う必要など無い。
警察関係者にも門下生はいる。ここは警察に任せ、多少強引な手段でもって神心会の総力を挙げて後々制裁を下せば良い。
ピリリリリリリ!ピリリリリリリ!
突然の電子音に、思索中の克己は飛び上がった。
携帯電話の着信音らしい。音を辿ると、先ほど奴がいた辺りの椅子に携帯が落ちていた。
ディスプレイには『非通知着信』としか表示されていない。とりあえず、出てみる事にした。
「…よぉ、ちゃんと出たな。偉い偉い…ヒヒ。そこの封筒、開けてみな」
プルシコフの神経質そうで、耳障りな声が克己の耳に突き刺さる。
この男の指示に従うのは癪だが、逃げるのを悟られてはマズい。
雀卓の上に残された封筒を開ける。
………履歴書のような紙と、何やら文字がびっしり印刷された紙が数枚。
「開けたか?よぉ〜く見てみな」
懐から自分の携帯を取り出し、液晶の照明で照らしてみる。
『紙』を見た途端、克己の顔が紅潮し、肩が震え出した。
「見たか?まぁ、そういう事だ。住所・氏名・その他あらゆるデータを調べてある」
克己の手に握られた『紙』。そこには母・愚地 夏江のほぼ全ての情報が記載されていた。
「雇ったチンピラ達にお前のお袋を尾行させてる。それに…このビルの周りにも2人配備してある。ビル内の全部屋に盗撮カメラ・盗聴器付きだ」
プルシコフの言葉が耳に入る度、精神を酸のようなモノに蝕まれていくような気がした。
「お前が『ルール』を破れば、お袋さんはどうなるか………わかるよなぁ?」とても、とても楽しそうな声だった。
「てめぇ……殺してやる…!!!」
歯を食いしばり、ギリギリと克己の歯が軋んだ。
「…おお、怖い怖い。ヒヒ、もうそろそろだな。精々頑張って上まで来てくれよ?」
プツッ。ツー。ツー。ツー。
このビルは7階建て、現在克己が居るのは2階の元雀荘だ。
このビルは元ホテルを改装したもので、非常に複雑な構造をしていた。
理由は、最初の持ち主のホテル経営者が客寄せの為に無駄な増築を繰り返した為。
その結果、経営は破綻し、何度か変わった持ち主もまともに商売が出来ず、次々と去っていった。
そして現在、複雑怪奇な構造の幽霊ビルだけが残ってしまったわけだが………当然、克己は知る由も無い。
「なんだよこりゃあ……」
携帯電話の画面照明を頼りに階段を探す。そこら中に落書きやら瓦礫が散乱しているようだ。
ろくに先が見通せない上に、フェイクのドアやら曲がりくねった廊下のせいでワケがわからない。
しばらく迷ったが、やっと階段を見つけ3階への階段を登って行く。
階段の踊り場へ着くと、足首に何かが引っかかった。蹴って振り払おうとするも、固定されているらしい。
(…ロープ、か?)
しゃがみ込んだ克己がそれを視認した瞬間、克己の左耳たぶを何かが引きちぎった。
「あっ…がぁぁっ!!」
克己が耳を抑えて仰向けに倒れ、その顔面すれすれを何か棒のようなモノが飛び交い続ける。
眼だけを動かし、暗闇に目をこらすと『棒』は天井や壁から次々と飛んできていた。
床や壁へ『棒』が突き刺さるたび、破片や粉塵がぱらぱらと克己に降ってくる。
ようやく『棒』の襲来が収まり、克己が耳を抑えたまま壁から『棒』を引き抜く。
…矢だ…。金属製の……矢。壁や天井を照らすとボウガンが数挺ぶら下がっている。
恐ろしい事に、矢の一本は倒れていた克己の首の位置から、数mm離れた床に突き刺さっていた。
(まともじゃねえとは思ったが…つくづく狂ってやがる…)
五月雨の如き矢の罠から、克己が逃れたのは殆ど奇跡と言って良かった。
もしパニックを起こして下手に動いていれば、今ごろ針鼠のような悲惨な骸と成り果てていただろう。
(かなり、慎重に行く必要がありそうだな…)
克己の目つきが変わった。憤怒でも恐慌でも無い、冷静なエリートの眼だった。
(おや、なかなかどうして頑張っているじゃないか…)
最上階で葉巻をくゆらせながら、モニターを見つめるプルシコフ。
そのモニターには、現在5階まで辿り着き、尚も進行を続ける克己が映し出されていた。
幾分か傷を負っているようだが、見たところ重傷は負っていないようだ。
(罠にも大分慣れてきたらしいな……だが…アレはどうかな?)
貿易会社の元事務所(今となっては廃墟だが)がある5階。やはり、例に漏れず迷路の様相を呈している。
非常階段を使えば容易に最上階まで行ける…と克己は考えたのだが、全て扉が溶接されてしまっていた。
一旦外に出る事が出来れば使用可能だが、それは奴の『ルール』に抵触するかもしれない。
それ故に、罠があるとわかっていながら屋内の階段を探すしか無いのだ。
歪曲し、幾重にも分かれた廊下を慎重に渡り、右手側のドアを開く。荒れ果てていて良くわからないが応接室のようだ。
天井、壁、足元に異常が無いか確認しながら進んでいく。
本来、階段を目指すのに室内を経由する必要は無いのだが、廊下には特に罠が多かったので室内を迂回して行く方法を克己は選択していた。
奥のオフィスに廊下に面した窓を見つけた。窓を開け、廊下に周囲の小物を投げる。
無論、小物にも油断は出来ない。4階では硫酸の塗られた灰皿で手を火傷した。
が……何も起こらないようだ。
窓から這い出し、壁際を爪先立ちで歩きながら階段へ。
6階へ上がった直後、何か妙な音が聞こえた。かさかさと擦れるような音だ。
「ぅ…!むぅー…!」
廊下の柱に若者が二人、縛られていた。片方はバンダナを巻いた貧相な体格の男。もう片方は金の長髪の男だった。
二人共、目と口にテープを巻かれ、痩せた男が身を捩りながら必死に呻いている。
金髪はぴくりともせず、腹部には血染めの包帯が巻かれていた。
罠が無いのを確認し、克己が痩せた男を解放してやる。
と、克己に礼も言わずに痩せた男が金髪の肩を揺さぶって絶叫した。
「ヒデさぁん!!返事して下さいよ!ねぇ、ヒデさぁん!」
ヒデさん、と呼ばれた男はやはり動きもしない。揺さぶる度に血の気が失せた顔と首がガクガク揺れ、腹部から血が滴り落ちる。
(死んでる……)
医学の知識はさほど無い克己でさえ、はっきりとわかった。ただ、友人らしき痩せた男の狼狽振りに声が掛けられなかった。
154 :
作者の都合により名無しです:2005/04/17(日) 13:24:20 ID:4tuA2mc+0
おお、ゲロさんと五さんもいらっっしゃいましたか。お疲れ様です。
>蟲師
これで雨男は終了でしょうか?家族への思いがキーワードになりましたね。
どこにでもいる蟲とどこにでもある絆。今回の話は「縁」がやはり鍵でしたね。
>デスゲーム
克己はやはりこういう役回りか・・。そして夏江もwしかし凶悪ですな敵は。
しかしそんな克己も冷静に戻り反撃モードか?デスゲームらしく仁にますねえw
>デスゲーム
まさかこんな展開になるとは!さすがです。
次回の更新が待ち遠しいです。
携帯から投下させていただきます。
第五話前スレ
>>573より
有り得ない。アレは地上最強と呼ばれる生物だ。アレを――すのは如何程の…。
何があった?何かあるとしたなら、私が警察に呼ばれ、仕事に向かった後だろう。
いや、もしかしたらその前から何かしらの前兆でも…いや、私が見落とすとは思えん。
違和感。テーブルの上には料理。彩りに気を配り、細かい装飾をし、皿ものせられた
料理が引き立つように厳選されている。普段の彼からは想像できない程几帳面に作られ、
そして他人を魅せる事を前提として並べられた料理。
違和感。その料理を食べ終わり、端に皿を寄せテーブルに突っ伏して――ている勇次郎。
ハンバーグを主菜として、同じ皿には彩りであろうキャベツを刻んだもの。小鉢に
入れられているのはベーコンとポテトを主としたサラダ。ふっくらと炊けた白いご飯に、
大根とワカメの味噌汁。たった1時間でここまで見事な朝食?をどうやって…いや、
そんな事より勇次郎はどうして――ているのか?
「…俺ァッ!俺ァッッ!!」
カタカタと。およそ、小さな地震でも起きているのではないか、という程の揺れ。
震源は、勇次郎。
「俺ァッ!なんて…なんて勝手でッッ!!」
なんて、彼に似つかわしくない発言。バシンッ、と。テーブルが割れる。
料理が飛び散る。
「なんて、矮小なッッ!!」
パキリ、と周りの戸のガラスにヒビが入る。ヤメロ。その台詞はおおよそ君に
似つかわしくない。
「人としてッ!親としてッ!一人の男としてッッ!!俺ァ何をしてきたッッ!!」
何を言う。君は過剰なまでに我壗で、傲慢で、ただひたすらに唯我独尊。
そうでなければならない。
「何がオーガだッ!何が地上最強だッッ!!愛する女ァ殺してッ!息子に
恨まれてッッ!!俺ァッ!俺ァッッ!!」
だから――などという事があってはならない。君は、オマエはッ!
「うぉぉぉ…んッッ!!」
「泣くなッ!オーガッッ!!オマエの存在を否定するなッッ!!」
ようやく、声が出た。既に部屋の中は混沌。畳はオーガの涙を浮かべ、テーブルは
地面に叩き付けたクッキーのように粉々。先程まで美味しそうに並べられていた料理は
引っくり返って地を汚している。
「何だというのだッッ!!コレはッッ!!」
解らない。解る筈などない。地上最強の生物、オーガ、範馬勇次郎が泣いている理由など。
「答えろ、オーガッッ!!オマエは一体「うぉぉ、オリバァ、俺ァ、俺ァッッ!!」
ハ?ナンダ?ユウジロウガ、ダキツイ「どうしたらいいんだよォ…?道が分からねェッッ!!」
「と、とりあえず離れ「そうだッッ!!」
「ゲフッ!?」
な?飛んでいる?この私が!?ただ、突き飛ばされただけで!!?
「何を悲しんでるんだ、俺ァッ!まだ、これからだってやり直せるんだッッ!!」
発奮している、勇次郎。バキリ、と。柱が片っ端から折れていく。床が砕ける。
ただ、勇次郎が地団駄を踏んでいるだけだというのに。
「バキ!そうだ、バキだッ!俺の可愛い息子ッッ!!」
嗚呼、崩れていく。買ったばかりの別荘が。
「待ってろよ、バキ!!今まで独りにしてすまなかったァッッ!!」
ダンッと景気の良い音と共に。玄関まで一直線に彼は走る。…その頬に、涙を浮かべながら。
後に残されたのは、私と、私の別荘、だったもの。
「ま、待て、待つんだ、勇次郎!!」
追い掛ける。どうすれば良いのか分からず、追い掛ける。
「うぉぉ、バキィ!バァーキィーッ!!」
朝の陽射しは暖かで。今日の空は真っ青で。なのに後ろに雪雲が。
「何なのだ、一体ッッ!!?」
ただ、放っておくわけにもいかず、私は奴を追い掛ける事にした…。
投下完了です。
かなり間が開いてしまいました。
あーでもない、こーでもないと悩んでいたらいつの間にか…。
大したものも書けないのにすみません。
しかも分量も無い…。
精進します。
おお、週末にかけて沢山きましたね。皆さんお疲れ様です。
でも、出来れば平日に少し分けてほしいなあw
ところでゲロさんはいつもの後書きがないけどどうしたんだろう。
>うみにんさま
最終決戦前に役者は揃いましたね、やはりギラーミンは高い壁でないと。
全ての者が立ち上がり、スネオも大活躍してくれる事を願ってます。
>パオさま
迷い多きラーメンマンの前に立つ自分より強い存在。彼との死闘が
ラーメンマンの迷いを断ち切るのか。原作と違い凛々しいですね春成w
>サマサさま
雰囲気は相変わらずほんわかしてますが、バキキャラが出ると急に
緊張しますね。勇次郎の存在感ですね。しかしその勇次郎とやる気満々だな。
>ゲロさま
ギンコは水戸黄門か寅さんみたいだなあ。風のように現れ、事件を解決し去る。
しかしこの話もハッピーエンドなのに、どこか侘しい。それがいい感じですね。
>五さま
プルシコフはギャングスターの雰囲気ですね。ブチきれてるのに、どこか小物臭が
漂っている感じwカツミンがかっこ良く正中線四連突きかなんかでぶっ飛ばすの希望。
>鬼の霍乱作者さま
今回はまさに鬼の霍乱ですねえ。こんな勇次郎ならば、本部あたりにバッサリと
斬られちゃう気がします。しかし鬼も人の子、バキに対する愛情がありましたかw
>>160 連投規制食らいまして……書いたんだけど保存しませんでした。眠かったし。
それに、眠気からかテンションがおかしくなっていたしw
感想下さった方々へのレスは、次回更新時に纏めて……1レスに詰め込めるかな?
詰め込めればやります。では。
>ゲロ氏
どうやらまた連投規制厳しくなっているみたいですね。
応援してるので頑張って下さい。
163 :
ふら〜り:2005/04/17(日) 19:36:04 ID:SOhk+uQq0
>>うみにんさん
いやはや回想シーンのようでそうでない、永い時間の再生。出木杉、そこまでしずかちゃん
のことを……神、いや魔王に通じてしまうほどに。戦いが終わった後、どうなってしまうの
か心配。ともあれ結集していくフルキャスト、最終決戦の盛り上がり、拳握ってますっ!
>>ザクさん
今回は主人公サイドの方針が定まり、ようやく敵味方双方がスタートラインに立った、と。
人物関係が豊富で、今後の見所いろいろです。まずはザクさんズ刃牙(性格おとなしめ)
が、男塾の面々とどう触れ合っていくのか。誰かとやりあったりするかも、とか考えます。
>>パオさん
おぉ、期待に違わず春成が強そうで何より。その直前にラーメンマンの強さが思いっきり、
いっそ冷酷な悪役ぽいと言ってもいいくらい強調されてるだけに、その彼が恐れてる……
ということで、春成が際立ってます。最終的には負けるにせよ、期待&応援してるぞ春成!
>>サマサさん
サラリと来ました紅葉。直接戦ってこそいないものの、勇次郎の強さは嫌になるほど知って
いる。だから止めたけれど……やるか、いーちゃん。勇次郎が聞いたら多分、「殺され解
され並べられ揃えられ晒されるぜ、お前」とか言って大笑いするだろうけど。頑張れっ!
164 :
ふら〜り:2005/04/17(日) 19:37:00 ID:SOhk+uQq0
>>ゲロさん
なるほど。循環というか永久機関というか、と思ってましたが、自ら盾を作っていたわけ
ですな。思いっきり弱い本体を守る為に。で今回のギンコ、なかなかカッコ良かったです。
眼からの声って。本人には失礼ながら、珍しく普通の主人公・ヒーローっぽかった感じで。
>>五さん
「バキ」前提という、ある程度思考が狭まってたせいもありますが、こういう「凶悪さ」も
あるんだなぁと新鮮に感じてます。でもこういう状況なら、案外刃牙やジャック、花山とか
より克己の方が得意かもと思ったり。でもやっぱり、やられそうな気がするのが彼ですが。
>>霍乱さん
とりあえず、勇次郎作(らしい)朝ご飯が無闇やたらと美味しそうで。食べたい。にしても
何度見ても、まともな思考で妻子への愛情を述べている勇次郎というのは……味があります。
オリバの別荘を悩み苦しみながら倒壊させるその暴走っぷり、一体どこまでゆくのやら?
ふら〜りさん乙!
今月も半分が過ぎましたが、おそらく3回程更新できると思います。
毎度遅めですが、よろしくお願いします。
167 :
作者の都合により名無しです:2005/04/17(日) 22:53:14 ID:GddqZQ/t0
お、ブラキンさんもご復活か。
また盛り始めたみたいでいい感じになってきましたな。
168 :
パズル:2005/04/18(月) 00:58:04 ID:GrrB+iiz0
――例えばさ、こんなものがあるといいと思わないか?
「自分が一番になりたい」と思ったときに、まあ、色んなことがあるさ。自分より上の奴なんて、それこそ
吐いて捨てるほどいるんだ。普通は、そこで見切りをつけるか、さらに努力するかだよな。
だけど・・・・・・それよりももっと、物事が簡単に進む方法だってあるはずなんだ。
まるで、そう・・・・・・パズルのピースを外すように、簡単に――
「ヤムチャ様〜」
プーアルは、ヤムチャに長く付き寄り添ってきた、唯一無二の相棒である。
「今度の天下一武道会もグリグリの一番人気! ヤムチャ様に敵う人間なんて、地球上……いえ、
世界中探したっているわけないですよ!」
プーアルの言葉を黙って聴いていたヤムチャは、ただ口元に薄い笑みを浮かべるのみであった。
彼を見た者は皆、威風堂々とした風貌に感嘆させられる。まだ三十路を少し過ぎた位であるのに、
既に何か、人生の根本にある深いモノを掴んでいる――そう、思わされるのだ。
彼は、ふと口を開き、
「何を言っている、プーアル。『勝負に絶対はない』――これは、闘いに限らない、この世の鉄則だ。
たとえ、俺の力が頭抜けていたとしても、何が起こるかは分からないのさ」
彼の闘いぶりを見たことのある者は、その言葉に厭味さえ感じてしまうかもしれない。
『完璧』『鬼の如き』『付け入る隙がない』『彼は闘いの神だ』――彼の闘いを伝えるマスメディアは、
飽きるほどこの手の表現を多用する。しかし、それは、一度も苦戦どころか、敵に触られたことさえない
彼の闘いぶりを何とか表そうとするため。しかも、実際に彼を見た観客の多くは、それでも彼の凄まじさ
を評し切れていない、と嘆く――
そう、彼は、世界で一番強い男。天下一武道会四連覇中の『格闘覇王』である。
169 :
パズル:2005/04/18(月) 00:59:15 ID:GrrB+iiz0
カプセル・コーポレーション――この世界的大企業の本社に、彼の住いはある。
彼は、社長の一人娘の婿に入り、既に次期社長の椅子を確実なものとしていた。
彼は鍛錬を続けながらも、将来の為の勉学も欠かさない。彼のネームバリューならば、名前だけでも
仕事が円滑に進むはずだ。しかし、彼はそれに胡坐を掻くような男ではなかった。カプセル・コーポレー
ションの名声を落とさず、さらに繁栄させるために――彼は努力を惜しまない。
そして彼は、誠実でもある。妻と交わる際は、必ずホテルを用いる「御両親に、娘さんの豹変した姿を見
せることは、僕はしたくない」そう、彼は言う。先日、妻は初めての子を身ごもった。
ただ一つ、通常オープンな彼が、誰にも入ることを許さない部屋がある。
それは、彼の部屋。何重もの鍵を掛け、窓も作らず、外壁は超金属――そのつくりは、凡そ彼の本来の
性格とはかけ離れているよう、皆には思えた。
ある日、疑問に思ったプーアルが、ヤムチャに悟られぬ様、小物に変身して彼のバッグの中に入り込み、
部屋に入り込んだ。ヤムチャが、部屋の奥のドアの中に消えると、変身を解き、部屋の中を見回した。
そこには、何もない。基本的な生活用品以外、特筆すべきものは何もなかった。
いきなりこの部屋を見せられて、ここに住んでいる者が天下一武道会四連覇中で尚且つ世界的大企業の
次期社長だと当てられる者は一人もいないであろう。
プーアルには、解せなかった。こんな部屋に、誰も入らせたがらないというのはおかしい。自然と、視線は
奥のドアに向く。ドアは、半開きになっていた。
プーアルは、静かに、悟られぬ様、覗き見た。薄暗い部屋に、ヤムチャの背中が見えた。彼は中腰の姿勢
で、何やら動かしている。手には、薄いダンボールの切れ端のような物が握られていた。
「そこにいるのは、プーアルか」
それは、乾いた声。何の感情もない、平坦で、ある種の恐怖を想起させる声。
「そんなところにいないで、入ってこいよ」
170 :
パズル:2005/04/18(月) 01:00:11 ID:GrrB+iiz0
「これを見てみろ」
ヤムチャは、手に持つ紙片を、プーアルの前にかざした。それは、パズルのピースだった。
「俺は、本来『格闘覇王』には成り得ない才能の持ち主だし、天下一武道会の四連覇どころか決勝に進む
ことさえ出来ない。甲斐性もないし、世界的大企業の婿養子に入るなんて、本来は出来ない」
ヤムチャは、パズルをがりがり爪で掻きながら、そう言った。
「俺はある日、唐突に気付いた・・・・・・『所詮、この世は凡そ比較で成り立っている。ならば、自分がその世界
において最高の存在になれさえすれば・・・・・・』そして、俺は俺の人生を変える策に巡り合った」
ヤムチャは、手に持っていたピースを真っ二つに破いた。山吹色の胴着を着たボサボサ頭の男が印刷され
ていたピースは、虚しい音を立て、塵と消えた。
「この世界には幸い、有り得ないことを可能にさせる超存在のモノがある・・・・・・ドラゴン・ボール。龍に頼んで、
俺は、この道具を手に入れた――」
彼は、床に置かれていたパズルのボードを手に取った。ピースは、もう半分以上抜けていた。
「このパズルには、最初色々な格闘家の絵が存在していた。しかし、こうしてピースを抜くと……分からない
だろうが、今この瞬間、こいつはこの世界から完全に抹消されたのさ! そう! 存在した、という証拠すら
残さない『なかったこと』になってしまう! 現にプーアル! お前は、孫悟空という男を知っているか?
孫悟飯は? 悟天は? ピッコロは? 天津飯は!? ・・・・・・お前は知らないだろう!! そうさ、消してやっ
た。この猛者達が存在していたことを知っているのは、俺だけなのさ・・・・・・!」
プーアルには、それがなんなのか、一体ヤムチャがなにを言っているのか――まるで、理解出来なかった。
ただ、一つだけ分かった。ここにいるヤムチャ様は、ぼくの知っているヤムチャ様じゃない――!!
プーアルは、脱兎の如く部屋の外に飛び出した。しかし、そこはまだ、何もない部屋の中。次のドアを突破せぬ
限り、平常の世界に戻ることは出来ない。
プーアルは、後ろを振り向いた。ヤムチャが追いかけてくる様子はない。プーアルは鍵に変身し、部屋のロック
を次々と解いていった。
171 :
パズル:2005/04/18(月) 01:00:52 ID:GrrB+iiz0
「バカだな・・・・・・プーアル」
ヤムチャは、プーアルの絵が印刷されているピースに、指をかけた。
やっとの思いで鍵を全て開け、プーアルは近くに居た一人娘――ブルマ――に事の次第を説明しようとした。
「ブ・・・・・・ブルマさん、聞いて下さい! あ、あの男は・・・・・・ヤムチャ様は・・・・・・さ」
「さよなら、プーアル」
ヤムチャは、引っ掛けていた指をピン、と上に弾いた。プーアルのピースが、宙を舞う。
ブルマは、誰もいない場所にぽつんと佇んでいた。すると、部屋からヤムチャが出てくる。
「やあ、どうしたんだいブルマ、そんな誰もいない所にただ突っ立ってさ」
「え・・・・・・ヤムチャ? あれ? おかしいな、誰かいたような気がしたんだけど・・・・・・」
「誰も居ないじゃないか。俺はずっと部屋に居たしね」
「そうね・・・・・・そうよね、うん。それより、ねえヤムチャ、あたし、病院行こうと思うんだけど」
「ああ、産婦人科だね。いいよ、外に車出しておくから。気をつけてきなよ。お腹の赤ちゃんを大事に、ね」
ヤムチャは、車の中、一人で笑顔で居た。
彼は、今後全く敵なしで過ごすだろう。仮に自分を脅かす者が現れたとして、今回のように消してしまえばいい。
彼は、『格闘覇王』で居続けるし、天下一武道会の連続優勝記録も次々と塗り替えていくだろう。カプセル・コー
ポレーションも、さらに発展させていく筈だ。
そう、パズルのピースを外すが如く、簡単に――
「ヤムチャ〜」
ブルマの声がした。彼はドアを開け、彼女の手をとり、車に優しく乗せた。
そして、この街一番の産婦人科医の元へ、彼女を送り届けた。
なんとなく、こんなの書いちゃいました。読み切りです。
ゲロ氏乙。
今回は前回のゲロの憂鬱と似たホラー調のオチでしたね。
174 :
作者の都合により名無しです:2005/04/18(月) 19:20:23 ID:WM3yEHiK0
いや、一読して思い出したのはドラえもんの「独裁スイッチ」。
ヤムチャの劣等感と卑しさがよく出ていますな。
ゲロ氏おつ。またこういう短編もよろしくお願いします。
>ピースは、もう半分以上抜けていた。
自分より強い格闘家のピースを外したということは、ヤムチャの本来の強さは
この世界の平均以下・・・
176 :
作者の都合により名無しです:2005/04/18(月) 21:11:56 ID:dPYce77X0
>パズル
まさかこんな展開になるとは!さすがです。
自分のペースでがんばってください。
ヤムチャほど格闘覇王とかいうあだ名が空しく響くヤツはいないなw
ところで蟲師の雨男は前回で終わりだよね?ギンコ去ってったし。
前回はゲロさんの後書き無かったんでイマイチ確信持てなかった。
178 :
銀杏丸:2005/04/18(月) 23:40:36 ID:zBo23n1E0
黄金時代作者の名無し改め、銀杏丸です
前回、初投稿ということでうかれてしまい
名前を書き忘れていたことをお詫びいたします
第一回のシオンと童虎とセダイラの物語でしたが
あれで終わりというわけではありませんので
続きを期待された方はご安心ください
拙作、「黄金時代」は「聖闘士星矢」の登場人物の中でも
黄金聖闘士を中心に短編連作という形で続けて行こうと思っております
どこまで続けることが出来るかはわかりませんが、
出来る限り続けて生きたいと思っていますので
よろしくご愛顧願います
では黄金時代・第二回-教皇二人-投下させていただきます
かつーん、かつーん、かつーん、硬い音は教皇の間の前で止まった。
サガの目の前で扉が開かれ、入って来たのは他ならぬこの部屋本来の主。
「久しいな、サガ」
教皇は法衣を羽織い、己の聖衣の兜を小脇に抱え、教皇の間を睥睨する。
聖戦を戦いぬいた在りし日の、アリエスの聖闘士がそこに居た。
サガの手にかかった時の老いた教皇シオンではなく、全盛期のアリエスのシオンは、
旧交を温めるかのような口調とは裏腹に、
並の人間ならば死んでしまう程の威圧感を纏ってそこに立っていた。
「お久しゅう御座います、教皇シオン
こうして現世に迷いでてくるのであれば、
あの時迷わず次元の彼方へ送って差し上げるべきでしたよ」
暗く、昏く、そして哀しい黒髪の、赤い目のサガが慇懃無礼に応える。
重なる嘲笑、爆裂する大気。
最早、教皇の間は戦場だ。
大技を出すにはいかない。出せば決まる、その時まで出すわけにはいかない。
互い、頂点たる黄金。見切りなぞ児戯に等しく、ましてや彼の大教皇シオン。
サガの適正を知り、ギャラクシアンエクスプロージョンに繋げたのは他ならぬ彼。
シオンとてサガを見くびるわけではない。
次元攻撃は他の追随を許さず、シオンの時代の聖闘士以上の破壊力を持ち
才能も破壊力もシオンを超過する恐るべき男。
秘技・幻朧魔皇拳をも体得せしめたその才気は、アイオロスと並んで次代教皇の想定にあったほどだ。
シオンの羽織っていた法衣が彼自身の闘気に巻き上げられ、天井すれすれを舞い、教皇の玉座に落ちた時。
二人の拳が打ち交わされ、閃光がぶつかり合って弾け、大気を焼いて衝撃波が荒れ狂い、
サガの蹴りをシオンがかわし、シオンの拳をサガがいなす、
双方同時に拳を打ち出し、受け止める、千日戦争のかたちとなっていた。
「千日戦争か…
教皇の貴重な時間を削ってはいかんな…」
昔日の不敵な笑みをうかべてうそぶき、シオンは自ら千日戦争の形を解く。
訝しげなサガの前で、シオンの小宇宙が燃える。背負った黄金の牡羊を燃えあがらせる。
「サガよ、見せてみよ!」
サガは応える。
若さゆえの傲慢か、実力故の過信か。
知ったことか、私が、この私こそがこの地上を治めるに相応しい。
アテナのような小娘が何だというのだ!
神すら凌駕するこの私を、亡霊如きが倒そうなどとは片腹痛い!
「教皇!亡霊よ!我が小宇宙を最大に高めて放つ!この一撃で冥府へ舞い戻れ!」
「スターダストレボリューション!」
「ギャラクシアンエクスプロージョン!」
星屑と称する光速の拳の群れが、星すら砕く小宇宙の爆裂と噛合う。
閃光、烈光、閃光、閃光。
サガが瞑想から覚醒すると、そこはいつもと変わらない教皇の間。
夢か、と口の中でつぶやき、額にるぬるりとした、汗とは異なる感触に気付く。
知らず、サガは笑みを浮かべていた。
「…フ、亡霊め」
>黄金時代
今までに無いタイプのSSで、すごく先が気になります。
ヤムチャかっこいいですね!自分のペースで頑張ってください!
お疲れ様でした銀杏丸さん。
連作ですか。前回のセダイラとシオン童虎の続きが気になっていたのですが。
今回はサガが悪の本性を現すお話ですね。
年老いたシオンではなく、全盛期のシオンならサガ勝てたかどうか。
原作の前後を浮き立たせてくれるのは、SSの王道だと思います。
これからも頑張って下さい。
>>181 面白いと思ってやってるなら言っておくけど、本当につまらないから。
何を言ってもムダだよ、こいつらは死んでも直らない病気
ほっといても飽きない辺りが普通の嵐と違ってやりづらいじゃん
とりあえず、2chの外までは来ないからあまりにヒドくなってきたら
まっとうな読者はバレさんのとこに感想書くようにするのヨロシ
独立短編形式なのか>黄金時代
出来れば原作で不遇に終わった黄金キャラを書いてくれると嬉しいな。
(牛とか蟹とか)
>銀杏丸
短編連作か。ゲロ氏の蟲師と同じ形式になるっぽいね。
1話目は短編としても読めたけど、やっぱ読んだときはストーリーの「起」だと思ってたんで
続くと聞いてなんか安心した。
そういや俺、聖闘士星矢、まだ読んでないんだよなぁ。
星矢ネタのSSも結構増えてきたから(超格闘士大戦・虹のかなた・黄金時代など)、SSをより一層
楽しむためにも読む必要があるとは思うんだが中々購入まで踏み切れない。
うーん、やっぱ買うか。
銀杏丸さんいらっさい&お疲れです。
教皇とサガの一騎打ちシーンですね。短いながらも迫力は感じました。
古くは世界放浪記氏のバキのショートなど、短編連作は好きなので期待してます。
セダイラたちの話はもう少し後ですか。
>>185 今の漫画にはないいい意味の熱さ、汗臭さみたいなものがあるよ。
単純だけど面白い。人によって合う合わんは結構激しいけど。
ただし13巻くらいまで(ゴールドセイント編)読めば十分。
セイヤは好きだけど、男同士のカップルを妄想するアホを大量に生み出したからな。
そこがちょっと嫌。まさかこのスレにはそんな事を妄想したクズはいないと思うが
ノ
>187
妄想するだけなら勝手じゃないか?
まあそれを堂々と垂れ流しにするのは問題あると思うが。
190 :
作者の都合により名無しです:2005/04/19(火) 19:25:36 ID:XjOdMuPH0
>黄金時代・第二回-教皇二人
うわぁ・・・w
すばらしいSSですね。こんなすばらしいものをよく世界に公開しようと思いましたね。
みんな楽しみにしているんでこれからもオナニー垂れ流してくださいね!
好きでオナニーしてるやつらの前で何いってんだ?
範馬勇次郎、宇宙へ。
NASA(アメリカ航空宇宙局)で開発された最新鋭スペースシャトルに搭乗し、地上
最強の生物は旅立った。あとは自動制御で目的地へ向かうのみ。
華々しく打ち上げられたシャトルを、祈るような心持ちで眺めるギャラリーたち。
数万を超えるギャラリーには、シークレットサービスに護衛された大統領の姿もあった
という。
「頼むぞ……」
数ヶ月前、世界各国の新聞に次のような見出しが上った。
「米月面調査船、爆発事故」
月面調査に送り出されたロケットが、調査地である月面にて大破。乗員は帰らぬ人とな
ったというニュースだ。
宇宙開発がさほど珍しくもなくなっていた頃だったので、この事故が人々に与えたイン
パクトは知れたものであった。結局、原因は燃料トラブルであったと公式発表が成された。
これで全ては終わるはずであった──が。
それから数日後、範馬勇次郎がホワイトハウスへ招待された。大統領を筆頭に、NAS
Aでもトップクラスの技術者らが彼を出迎える。
「ようこそ。お会いできて光栄だよ、ミスター・ハンマ」
大統領が外交でも表さぬような笑顔で、勇次郎を歓迎する。が、勇次郎はまるで応じな
い。彼にとって、大統領は牙を持たぬ格下でしかないのだ。
「……君に依頼をするつもりはない。君はヘラクレス、私でさえ従わせることが出来ぬ存
在だ。これから私が話すことは、全て独り言と思ってくれたまえ」
勇次郎はソファに座ったまま、退屈そうにあくびする。大統領はかまわず“独り言”を
開始した。
「先日、我が国の調査船が月面にて事故にあったのはご存知だろうか。燃料がアクシデン
トのため爆発を起こしたと発表されたが、現実にはそうではない」
大統領が冷や汗を流す。声にも真剣みが付加されていく。
「地球外生命体……エイリアンだ。私もにわかに耳を疑ったが、これは真実なのだ。彼ら
はエイリアンに殺されたのだ」
「ほう……」
ようやく勇次郎が返事をする。だが、“エイリアン”よりも、“殺された”というキー
ワードに反応したという印象も受けた。
「ミスター・ハンマ、どうかエイリアンを倒してくれまいか。宇宙開発は今もなお、有効
な外交カードだ。失いたくはない。君しか頼れる者はいないのだ」
エイリアンを許すわけにはいかない。地球は宇宙でもっとも美しく、もっとも偉大な惑
星なのだ。しかし、まさか軍隊を派遣するわけにもいかない。アメリカにも、大国として
の意地がある。
歯茎をむき出して笑う勇次郎。
「いいぜ、引き受けてやる。だが、皮肉なもんだなぁ……大統領(プレジデント)。地球
上で最大・最新・最強を誇るはずの米国が、戦わずして敗れ去るとはな」
この皮肉には、大統領も苦笑するしかない。しかし、契約は成立した。エイリアン退治
は勇次郎の手に任されることとなった。
シャトルは空へと消え去り、側近が大統領に話しかける。
「どうやら成功ですな……。彼が地球へ戻ってくることはありません」
「うむ……奴は只者ではない。いつ気づくかと、内心冷や冷やだったよ」
一部の者しか知りえぬ極秘プロジェクト──範馬勇次郎、永久追放。
アメリカにとって、範馬勇次郎は脅威であった。彼個人の実力はもちろんだが、さらに
危険なのは彼の存在が全世界に知れ渡ってしまうことだ。米国が個人に迎合しているなど、
絶対に知られてはならない。今でこそ知名度は強さに比例せず低いものだが、一般層にま
で名が広がるのも時間の問題だ。
「もはや、彼を打ち倒すのは核でも不可能。宇宙へ放逐するしかありませんからな」
全ては計画だった。架空の月面調査計画を立ち上げ、ロケットを打ち上げ、事故を造り
上げた。ちなみに、乗組員らは今も月面に滞在している。後に密かに救出され、名から顔
まで全くの別人として生まれ変わる予定だ。もちろん、秘密厳守という条件と、破格の待
遇が彼らを待っている。
次に行われたのは、エイリアンのでっち上げ。範馬勇次郎が求めるのは戦いのみ。餌と
して相応しいのは、もはや地球上に存在しない生命体しかなかった。
さらに、大統領を含む関係者は完璧な演技力を身につけねばならない。もし発覚すれば、
命はない。語気から呼吸まで、神がかり的な洞察力を持つ勇次郎を欺かねばならなかった。
結果は──すでに大気圏外へ出た勇次郎が示している。成功である。
「では大統領……これを」
「ふむ」
大統領が手渡されたのは、ボタンが一つだけ取り付けられた小さな装置。これを押せば、
勇次郎が乗るロケットは宇宙にて藻屑となって消える。
そして、大統領はボタンに指を触れ──力を込めた。
鬼(オーガ)は宇宙に散った。彼が通信機器を機内に持ち込むことを許さなかったため、
確かめる手段はない。が、答えはボタンが押されたことだけで充分だろう。
地上の全生物が強さにおけるランクを一つずつ上げてから、二週間が経った。
ホワイトハウスにて、コーヒーを嗜む大統領。すると、外がにわかに騒がしくなる。立
ち上がろうとする大統領だが、ドアがゆっくりと開く。
「な……ッ! き、君は……ッ!」
──範馬勇次郎、生還。
ずかずかと部屋に入り込み、ソファに寝転がる勇次郎。
「よう、大統領。……まるで生き返った死人に出会ったような面じゃねぇか」
「くっ……バカな! な、なぜ……ッ!」
「演技力は大したもんだったぜ。だが、ロケットに仕込まれた爆薬は嘘をつかねぇ。俺が
気づかぬはずもあるまい」
かつて戦場を駆け抜けたオーガにとって、狭い機内に潜む爆薬を察知するなど朝飯前で
あった。胆力を振り絞り失禁を抑えつつ、大統領が後ずさりする。
「わ、わ、すまなかった……。頼む……。い、命だけは……!」
「いいぜ」
「え……?」
「こっちも感謝してるんだ。あんな獲物に出会えたことをな……」
窓を指す勇次郎。大統領は警戒しつつ、窓に視線を移す。
──説明するまでもない化物。
小腸と大腸を融合させ、毒々しく染色すれば近いものが出来上がるだろうか。グロテス
クな巨大生物が庭を占拠していた。動かないので、死体だろうか。
「月に住むエイリアンだ。もっとも強い奴をぶち殺したら、ご丁寧に地球へ帰る手段をよ
こしてくれたぜ。あれは手土産だ」
得意げに語る勇次郎だが、声が大統領に届くことはない。ショックに次ぐショックによ
り発狂してしまった彼に、もはや外部からの情報を受け入れる余裕はないのだから。
お わ り
某究極生命体と某一流スナイパーの1エピソードを参考にして書きました。
「おわり」が少し真ん中過ぎたっぽいです。
よっしゃー、サナダムシさん復活!
正直犬と猫の最後のあとがきで「もしかしたら最後かも」と思ってたので嬉しいです。
意外と勇次郎って知能高いですな、戦闘面に関してだけは。
塾長みたいに泳いで宇宙から帰還するかと思いきや、オチこうきましたかw
あと銀杏丸さん、感想は
>>186で書いたので割愛しますが
(ID違いますが186は会社のパソからなのでw)
181や190みたいなのはこのスレだけでなくどのスレにもいますんで気にしないで。
これからも頑張って更新して下さいね。
>>銀杏丸
あんたを叩いてる香具師は2chでストレス発散しないと犯罪を犯してしまう
そんな社会的弱者なので生温い目で見守ってやってください
私はそれができなんだ
サナダムシさん乙。
大統領からの依頼はタフ、月からの帰還は男塾を連想しました。
地球へ来る方法をエイリアンが知っているというのは、冷静に考えると怖いかも。
200 :
紙を求めて:2005/04/20(水) 01:34:45 ID:s1jdsej/0
狭い個室。四方を壁に囲まれ、中から鍵が掛けられた密室。私が一人居る。
生きる上で不可欠で、かつ定期的に溢れ出す欲求。私は排便行為を実行していた。体内
に詰まった汚物を追い出すべく、私は力みを続けていた。
──肛門が拡大し、収縮する。出た。
初発にしては好調であった。感触からして、おそらく七センチ以上はあるだろう。
──肛門が拡大し、収縮する。出た。
弾丸のような汚物が、五発ほど射出される。所詮は小物なので、爽快感は大したもので
はなかった。
さて、ここからが本番だ。未だ体内に巣食っている大物、いわば首領。生半可な力みで
は通用しない。全細胞を結集させねば、体外へ追放することは叶わない。
「よし……やるか」
大きく呼吸をし、息を止める。あとは、肉親の仇とでも相対したかの如く力む。ひたす
ら力む。ただ力む。
ここは寂れた公衆便所。私以外には誰もいない。気兼ねせず、声を出すことが出来る。
「ぐっ……くおっ! うおおおおおっ!」
余りにも異常なケース。出る気配すらない。ストレス性の便秘とは恐ろしいものだ。
「出ろ、出ろ、出ろォッ!」
私は力を振り絞った。すると、首領が少しずつではあるが押し出される。あと少しだ。
──肛門が拡大し、収縮する。出た。
力みすぎて、少々涙が浮かぶ。だが、達成感と脱力感は絶大である。
あとは尻を拭けば全てが終わる。トイレットペーパーに手を伸ばす──と、信じられな
い光景が現れる。
「嘘だろ……紙がないだとォ……」
筒状のボール紙、つまり芯があるだけであった。よく考えれば分かることだ。こんな廃
れた公衆便所に、いつまでもトイレットペーパーの補充などあるわけがない。余裕がなか
ったとはいえ、これは私のチェックが足りなかった。弁解しようがない。
いつもなら芯で拭いてしまうケースだが、今の弱り切った肛門ではとても耐え切れまい。
慈愛に満ちた、柔らかい紙がどうしても欲しい。しばし私は考えた。
201 :
紙を求めて:2005/04/20(水) 01:35:33 ID:s1jdsej/0
私は過去を思い返す。かつてハイスクールに通っていた頃、古い文献を調べてレポート
を提出するという課題があった。退屈な授業だったが、一つだけ気になる資料があったこ
とを記憶している。
ドラゴンボール。地球上に七つ存在するという伝説上の宝玉。もし全てを入手すること
が出来たなら、どんな願いでも叶えてくれるという伝承がある。これさえあれば、紙を入
手することも可能だ。
本当に存在するかも分からない。だが、他にいい方法も思い浮かばない。
「これに賭けてみるか……」
こうして、私はボール探しの旅を決意した。
全財産を売り払い、肉親や友とも袂を分かち──私は出発する。
旅は過酷を極めた。雲をも越える高山から、光も届かぬ海底へ。地球上あらゆる場所を
行き来した。少しでも手掛かりを掴めば、西へ東へ突き進む。もちろん、成果が上がらぬ
ケースがほとんどだった。
いつ終わるとも知れぬ旅路。金が尽きれば現地でバイトをし、疫病に苦しんだ時期もあ
った。ただし、犯罪にだけは手を染めることだけはなかった。
後悔した日々もあった。故郷が恋しくなる時期もあった。しかし、それでも私は諦めな
かった。紙を求め、世界中を歩き回る毎日。
そして、努力と手間を惜しまなかったためか、ボールは一つずつ発見されていく。古城
に眠っていたもの、草木に隠されていたもの。中には骨董屋にて格安で売っていることも
あった。
202 :
紙を求めて:2005/04/20(水) 01:36:40 ID:s1jdsej/0
このように、私は旅を続け──今現在に至る。
私は目的を達成した。すなわち、地面には星が描かれた七つのボールが在るのだ。
「ついに、ついに……私はやり遂げたんだ」
いまや、人生も折り返し地点ともいえる年齢である私。若さは失われ、肉体も衰えたが、
情熱だけは変わっていない。尻を拭くのに丁度いい、柔らかい紙を手に入れる。
「出でよ、神龍……」
合言葉は知っている。これも永年にわたる研究の成果である。
「そして、願いを叶えたまえ!」
突如、異変が起こる。空は急激に暗くなり、対照的に宝珠が輝きを帯び始める。天に突
き刺さる光とともに、ドラゴンボールという名の由来となったであろう生命体が現れる。
私は“龍”を目撃した。
「どんな願いでも、一つだけ叶えてやろう……」
低く、威厳を醸し出す声。が、どこか造られた存在という印象も受ける。
「尻を拭くに相応しい、紙を出してくれッ!」
私は心の底から叫んだ。頼む、叶ってくれ。でなければ、私の半生が──水泡に帰す。
「承知した……」
快諾された。途端に空は太陽の恩恵を受け、七つの球は青空へと吸い込まれていく。報
われたのだ。
「やったぞ! これで、やっと尻を拭ける!」
ふと空を見上げると、小さな点が確認出来る。紙が降ってきているのだろう。みるみる
点は輪郭を表し、肉眼で捕捉可能なまでに近付く。
「いや、どこかおかしいぞ……」
期待に反し、降下してくるのは紙ではなかった。植物に似た色をした肌、額から生える
触覚。紙どころか、正体さえ知れぬ生物がやって来る。
やがて地上に到着した謎の生物は、私に語りかける。
「おぬしかな。わしを呼び出したのは」
「は、はぁ……。というか、あなたは何者ですか」
「わしは神じゃ」
お わ り
ついでにもう一つ投下。
感想ありがとうございます。
>>32は確かに別れの挨拶にも読めますね。失礼しました。
では、またお会いしましょう。
うにゅ〜
何と言うか、乙です。
スペース・オーガ、おもろかった。
ショートショートの基本・醍醐味をしっかりおさえる。流石。
俺はオチのあたりからクトゥルフを連想したなぁ。
でも排泄系はかんべんなw
ぱっと見でも描写力が凄まじいことが分かるんで、逆にパスさせてもらったw
サナダムシさんが残ってくれるのはかなり嬉しい。
>>203のレス見て安心したよ。
206 :
作者の都合により名無しです:2005/04/20(水) 19:22:20 ID:Ow3ZMQVR0
サナダムシさん乙です。
スペースオーガは大統領との謁見からラストのオチまで
勇次郎らしくてよかった。
しかしなぜその確かな実力を普通のSSにだけ発揮しない!w
最後のオチで志村けんの神様を思い出したよw
>>153の続きで、2レスだけ投稿します。
連投規制がキツいので、今日の深夜に克己戦のラスト3レスを投稿させていただきます。
前スレ
>>566さん
応援ありがとうございます。もちろん猪狩の逆襲はありますよ。原作とは少し違う形ですが…
前スレ
>>582さん
実はムエタイについての知識はあんまり無かったんです(^_^;)。
そこで古本屋の立ち読み+Googleで情報収集、解説文と写真・画像で脳内動画にしてSSに投影しました。
田舎住まいなのでK―1やらボクシングやらもTVのみ……歯痒いです。
前スレ
>>586さん
……うわ…すいません…。このSSは『バキ+餓狼伝+オリキャラ』で成り立ってます。
……痛くてすいません…orz
>>ふら〜りさん
いくらバキでも、銃はコピー出来ないですしね。雑学?の引き出しも少なそうですし。
その点克己は……(今回分を見て頂ければ)。
勇次郎なら何でも「消え失せいっ!」の一喝とワンパンで解決しちゃいそうですが。
ブチャアッ
寒気のする、鳥肌が全身に一斉に伝播するような音がした。
音と同時に、金髪の男の腹部を突き破って出てきた黒い円盤が、痩せた男の脇をかすめ水平に飛んだ。
円盤が一瞬だけ月明かりに照らされる。
「逃げろおぉぉっ!!」
それを見た克己が怒声を張り上げ、痩せた男を引っ掴んで物陰へ飛び込む。
一瞬遅れて、破裂音と共に、円盤が弾け飛び無数の散弾と破片が四散した。
(……痛ぅっ!)
肩から腕にかけて極小の粒のような散弾がめり込んでいた。腹部や足にも少数だったが喰らっている。
「うぬ……っ!!つあぁっ!!」
全身の筋肉を硬直させ、散弾を体内から排出……とまではいかないが、浅い所まで押し出し、指で大ざっぱに摘出する。
(この怪我で相手がチャカ持ちかよ……。親父も真っ青の修羅場じゃねぇか?)
服を破って包帯代わりにし、克己はまた迷路へ歩きだした。痩せた男には声も掛けず、心配する素振りもしなかった。
男は運悪く(克己の運が良かっただけかも知れないが)散弾の直撃を受け、即死していたからだ。
数分後、最上階のフロアに通じる分厚い扉が、錆び付いた体を軋ませながらゆっくりと開いた。
(広い)
最上階へ到達した克己が思ったのは、ただ一つ、それだけだった。
今まで入り組んだ所を延々歩いたせいで、尚更そう思えたのもあるだろう。
しかし、そのギャップによる錯覚を差し引いても、この部屋は広かった。
今までの階とは打って変わって、ここは階全体が一つの部屋になっていた。
このフロアは何代か前の持ち主が披露宴会場として改装した(やはり事業は失敗した)モノだ。
数本の柱と僅かなテーブル・椅子を残し、あとは薄気味悪い位に何も無い。
300uはあるだろう広い室内の中央、小さな丸い天窓から差し込む月明かりが、暗闇を綺麗に切り抜いている。
「素人にしては良い身のこなしだなぁ?…この悪条件でその程度の負傷とは、プロでもそう上手くはいくまい…」暗闇から響く、耳障りなあの声。
「ごちゃごちゃ言わないで出てきやがれ、外道が!」
「出てくるわけ無いだろう?ヒヒヒ。さぁ、始めるぜ……俺に…敗北を…与えてみせろっ!!」
急速に殺気が迸り広い空間を満たす。
(来る!)
タララララッ タララッ タララララララッ
柱の陰へ、ヘッドスライディングのように克己が飛び込んだ瞬間、タイプライターのような小さな音が連続した。
先の克己の立ち位置から柱まで、壁を銃弾が横一文字に線を描くように穿つ。
「ははっ、静かなモンだろう。騒がしいのは嫌いでなぁ〜っ」
声のする方向が変わった。それを感じとり、柱から倒れたテーブルの影へ克己が飛び込む。
タラララララララララララッ
再び銃声、そして柱が削られる音。
「PPsh41。我が祖国が第二次大戦で量産したモノだ…これは俺の自作だが…完全にフォルムを再現してあるんだ」
タララララララッ。再び銃声。7.62mm弾がテーブルに無数の穴を作る。
「だが、内部機構は完全に別物だ。放熱性の低さも克服し、サイレンサーも付けられるんだぜ?」
今度は隣の柱へ銃弾が飛ぶ。
(足音はさせてねぇ……野郎、何か使ってやがる)柱の真後ろに張り付く克己が舌打ちした。
「さっきのアレ、ジャンプ式地雷もそうだ。改良に改良を重ね、隠密用に最小限の火薬で破裂するようにした」
銃撃、そして別の柱へ克己の避難。
「素敵なフォルムだろう?この独特の銃身にドラム式マガジン…と言っても見えないだろうがなぁ?」
(やべぇ、段々追いつかれてる…糞っ、どうすりゃいい! ?)
「ヒヒ、まだまだ弾はあるぜぇ〜?ヒヒヒャハハハハ!!」
笑い声と同時に銃撃、今度は先よりだいぶ長い。柱・椅子・壁・床・テーブルへ弾痕が増えていく。
(どうすれば、一体どうすりゃ良い!?)克己の頭脳が生命の危機を回避する為、フル回転で動き出す。
(奴は…そうだ、何かスコープのような物でこっちを見てる筈だ。…一か八か、コレに賭けるしかねぇっ)
克己がポケットから何やら小さなモノを取り出す。直後、後頭部へ妙な暖かさを感じた。
「『詰み』って奴だなぁ?克己クン?ヒヒ」
いつの間にか背後に立ったプルシコフが、克己の頭部へ銃口を突きつけていた。
投稿終了です。では、また深夜に。
211 :
ブチャア:2005/04/20(水) 22:44:00 ID:HzJ7prFTO
ブチャア
212 :
作者の都合により名無しです:2005/04/20(水) 23:27:49 ID:HzJ7prFTO
ランランララランランラン ランランラララン
ランランララランランラン ララララランランラン
ランランランランラランララン ランランランランラランララン
ランランランランラランララン
残り3レス、投稿します。
「どうしたぁ?もっと恐がれよ?あぁ?」
この状況にも関わらず、克己は微動だにしない。
「ムカつくなテメエ。これで人生終わりなんだぜ?泣き叫んで命請いなりしてみろよ」
だが、克己は動かない。確実に死を送り出す機関銃の銃口を突きつけられているにも関わらず、だ。
「舐めてんのか!?無駄な抵抗でもして足掻いてみせろよ!!この蛆虫がっ!!」
顔面に血管を浮かせながらプルシコフが怒鳴り散らす。
「抵抗なら…もうしてるぜ、オッサン」
「あぁ?格闘技しか能のねぇ脳味噌筋肉が、何ふざけたハッタリ…」
プルシコフの言葉が途切れた。克己の右腕が、ゆっくりと持ち上がっていく。
拳をつくったまま、自身の左耳の辺り、プルシコフから見て眼前へ手首を持っていく。見えない相手にチョークスリーパーを掛けるように。
「おい、てめぇ何してやがる!?この後に及んで素手でどうにかなると思ってんのかっ!!?」
怒声と共にプルシコフが熱い銃身を克己の首へ押しつけた。肉の焦げる匂いが漂ったが、やはり克己は腕以外動かさない。
「冥土の土産に教えてくれ。風景は何色だ?」唐突に克己が質問を投げかけた。
「……あぁ?死に損ないの豚が何言ってやがる…黒と黄緑色って所だな……もう飽きた。殺すぜ」
この時、もしプルシコフが克己の顔を見ていたら、総毛立っただろう。その顔には、凶暴な笑みが貼り付いていたのだから。
「いいや、死ぬのはアンタだよ」
克己の呟きと共に拳が開かれた。
「…ッ!!ギャアアアアアッ!め、俺の目がぁっ!!!」
銃を放り出し、うずくまるプルシコフ。克己の手にはジッポーライターが握られていた。
至近距離で灯された火が、暗視スコープを通して増幅され凄まじい光となって目を射たのだ。
うずくまったプルシコフの顔面を克己が蹴り上げる。
一発で下の歯を殆ど叩き折られ、口中がズタズタになった。
今度はレバーへ手刀が食い込む。想定外の激痛に声も出せず膝を着……けなかった。
下を向きかけた顔面に上段突きが直撃したからだ。
暗視スコープがバラバラに砕け、拳と顔面に挟まれた破片が顔へ埋まった。
「ヒギャアァッ!!」
絶叫しながら倒れたプルシコフを引きずり起こし、克己が怒涛のラッシュを叩き込む。
「この鬼畜がぁぁっ!!!」
その顔には、範馬一族の『鬼』に匹敵する『仁王』の如き形相が顕れていた。
引きずり起こしてから、壁に押し付け無理矢理立たせ、手刀・貫手・下段蹴りを計七発。
倒れた所へ、マウントポジションで下段突きを連続で打ち込む。
(この野郎、門下生から一般人まで大勢殺しやがって!!この野郎この野郎この野郎っ!!!)
何発も何発も、憤怒の拳を叩きこむ。
10発近く殴っただろうか。
既にプルシコフは顔面のあらゆるパーツが埋没しかかっており、とっくに抵抗をやめていた。
流石に我に帰った克己が罪悪感に手を止める。
………笑った。グズグズに顔面の肉が裂け、目と耳から血を流し、歯も全て失った顔でにたりとプルシコフが笑ってみせた。
直後、克己は背中を鈍器に殴られた様な衝撃に、耳を破裂音に襲われた。
プルシコフのブーツの先端に仕込まれた銃弾が二発、克己の背中を縦に浅く抉っていた。
突然の痛みに不意を突かれた克己、そのマウントポジションから、ヤモリのようにプルシコフが這い出る。
克己が追撃を仕掛けようと飛び掛かった。が、その鼻先を鋭利な刃物が掠め、とっさに立ちどまる。
いつ出したのか、いや、それよりまだ武器を持っていたのか、プルシコフの両手にはナイフが握られていた。
「チッ、まだ持ってんのかよ」思わず克己が舌打ちする。だが、銃器でなかった事に少し安心した。
両手にナイフを構えたプルシコフと克己が、円を描きながら少しずつ間合いを詰めていく。
仕掛けるにはまだ遠い。両者の距離はまだ3m弱。迂闊に仕掛ければ何をしてくるかわからない。
「シュッ!!」
ズタズタの唇から呼気を漏らし、プルシコフが襲いかかった。
が、明らかに間合いが遠すぎる。それにフォームが槍でも扱うような大振りな左の突き、隙だらけだ。
余りの素人振りに一瞬閉口し、克己が冷めた目で対処の動作を瞬時に四肢へ伝える。
それより早く、克己の腹へナイフの刃だけが埋まっていた。刃だけが飛んで来たのだ。
(ガキが、スペツナズ・ナイフも知らねえのか!?勝ったっ!終わりだ!!)
プルシコフが心中で歓喜の叫びを上げながら、克己の首を袈裟斬りで襲った。
逆転勝利への一撃だった。先の奇襲で視力は大分奪われたが、それでもほぼ確実に当たる筈の。
なのに、なんで?何で俺は飛んでるんだ。これは?回転してるのか?
それにこの痛み、まるで巨大な鉄杭で頭をブチ抜かれたような痛みは何だ?
畜生、何が何だかわからねぇ。
あ……ゆ、床が…迫って……
鈍い音がした。
吹っ飛ばされ、数回低くバウンドし、顔面からプルシコフが床に叩きつけられた。
「音速拳、コークスクリュー版だ。加速に捻りを加えた一撃、弾丸さながらの威力だろ?……って、聞こえてねえか…」
突きを放った体勢のまま、一撃で顔面全体が陥没したプルシコフに、克己が皮肉を返す。
(勝ったぜ…親父…)よろめきながら、力無い足取りで克己はビルを後にした。
(……ううっ…、畜生ぉ痛え!!糞っ!痛えよぉぉ!!)
克己がビルを去った数時間後の深夜、プルシコフは目を覚ました。
(…ヒ、ヒヒヒ…戦場じゃよお、死ぬまで負けたぁ言わねえんだぜ…この痛み…倍にして返してやるよ…)
プルシコフがズルズルとPPsh41まで這っていく。
(まずは、まずは銃を)
あと少し、あと少しで銃に手が届く。全身を苛む激痛を堪えながら少しずつ近づく。
(取っ)
自身の守護神にして相棒の銃、やっと右手がそのグリップを掴んだ瞬間、プルシコフの思考は途切れた。
巨大な靴が、その頭を文字通り踏み潰していた。あっけない『敗北』であった。
「先を越されてしまったな」靴の主・ドリアンがやれやれといった大げさなジェスチャーをしてみせる。
「愚地 克己…素晴らしい才能だ……意外に化けるかもな…」
ぶつぶつ呟いて、先の克己の膝蹴りで青黒く変色した顎をさすりながら、ドリアンが出ていく。
ドリアンが去った直後、もう一人、この最上階に侵入した者がいた。
巨人のような体躯で、時折鼻を嗅ぐような動作をしながら暗闇を歩いていく。
「イイ匂イガシタノニ、モウ終ワッチマッテタカ」
プルシコフの遺骸を一瞥し、心底残念そうに禿頭の侵入者が一人ごちた。ふと、暗闇に慣れた彼の視界にあるモノが入った。
例の武器が大量に入ったドラムバッグだ。侵入者が中身を調べ………凄まじい笑みを浮かべた。
「来タカイガアッタナ。イイネェ、コレ」
クスクスと忍び笑いを漏らし、バッグと侵入者は再び闇へ消えていった。
終了です。
1人減るまでに随分と長い話になってしまいました。
申し訳無い、精進します。
>>ふら〜りさん
ほんとはふら〜りさんの予想通り、克己&ドリアンで
『卑怯とは言うまいね』
と、やろうとか思ってたんですが、ド楽勝するイメージしか思い浮かばなかったので、こういう話に……
アテナの御所たる聖域は非常事態宣言が布かれると、
火時計が灯され、通常連絡通路が封鎖され、
双魚宮から教皇の間へと続く回廊が毒性のある薔薇で覆われる。
その薔薇の名を魔宮薔薇という。
魔宮薔薇の育成は代々12宮最後の番人である魚座の聖闘士の任務であり、
そのための費用も年間予算に上乗せされている。
一年通して使用できるようにと温室で栽培されているせいか、
神話も神秘も有ったモンではない。
当代のピスケスは任務の無い時は、日がな薔薇の相手をして過ごすそうである。
彼が任務等で宮を開ける時、聖域の職員がそれに当たるが、
その彼らをして決して適わないとまで言わしめ、
聖域一の園芸家という、誇って良いのか良くわからない称号をもつ
汗臭い聖域の中でも女性人気が妙に高い事からか
愛の女神の名の如く、恋愛経験豊富である。
そんな彼にはもう一つの日課が存在する。
「この愛の伝道師、アフロディーテの恋愛相談室へようこそ
さぁ、赤裸々に語ってくれたまえ
機密厳守、このアフロディーテの名に賭けて!」
教皇を僭称するサガに従っているとは言え、
アフロディーテは女を泣かせる類いの悪党では無い。
彼は恋愛沙汰に弱い聖闘士や、聖域住人のよき恋愛相談相手として名を馳せている
彼の趣味と実益を兼ねたこの恋愛相談室、実は意外と盛況である。
「…本当に、秘密は守ってくれるんだろうね?」
面と向かって話すのは憚れる話題だ、
そのため双魚宮の一画には教会の懺悔室のような設備が存在する。
アフロディーテが慣れない大工仕事で作った割には確りとしたつくりで、
相談者側のブースには気持ちを落ち着かせる作用のあるハーブの香が焚かれるなど、
凝ったつくりになっている。
「フッ…君も用心深いな、アテナの名にかけて誓おう」
苦笑するような響きでアフロディーテが答える。
相談者の女性は恋愛に不慣れなのだろう、
今までに無い感情に揺れ、戸惑う初々しい少年少女の生の感情。
彼がこの恋愛相談室を開設し、
他人の恋路を手助けをするようになって覚えた中で最大の喜び、
それは鬼神の如き聖闘士が年齢どおりの初々しい反応を見せる、この瞬間なのである。
悪趣味なのかもしれない、と思う事もあるが、この楽しみの前には霧散してしまう。
「………わかった。
…とっ年下のさ、その、な、えぇっと、…ぶろ、じゃなくて、その年下の男をさ…
すっ…っす…」
真剣な雰囲気で聞きに徹する。
仕切り板一枚向こうで、少女がありったけの勇気を振り絞っているのだ、
笑ってしまうほど初々しい。
だが、実際に笑ってしまってはいけない、
恥ずかし紛れに本気の鉄拳が飛んでくる。
今から4年ほど前、記念すべき最初の恋愛相談の折、
相手の態度があまりに可愛らしく、ついうっかり笑ってしまったため、
作ったばかりのこのブースを破壊されてしまったことがあるという実体験からだ。
「年下の男を好きになったんだよ!」
破砕音と叫ぶような声を相談者の女性があげる。
いわゆる、逆切れ。
こうしないと自分の感情を上手く吐き出せなかったのだろう。
硬いオークの木で作られた清潔感溢れる相談者側のブースはまた修理が必要だろう
そんな事を考えるくらいの余裕はある。
ある黄金聖闘士が相談に来た時のように爆砕された事に比べれば、
この程度は驚くには値しない。
仕切り板の向こう側の女性聖闘士は、マスクの下で顔を真っ赤にしているのだろう。
「恋は君の人生を豊かにする、君を潤わせる…」
歯が浮くような台詞だが、アフロディーテが言うのならば効果てき面。
板の向こう側でたじろぐのが手に取るようにわかる。
初だねえ…、とは口には出さず。彼は艶っぽい笑みを浮かべる。
「聞くが、その相手には素顔を見られたのかな?」
戸惑うような気配と、それに混じって殺気が板の向こうから漏れる。
「誤解してもらっては困る。私は君を咎める気はない」
板の向こうでは大分混乱しているのだろう、
相談者の女性が椅子を軋ませる音が聞こえてくる。
「………ああ、素顔は、見られた」
苦悶の声。
聖域の掟のひとつに、女性聖闘士は顔を隠さねばならないと言うものが在る。
アテナを守護するのは、神話の昔から男と決まっているし、
理不尽で嫉妬深いアテナのこと、
自分を護る聖闘士ですら美女だったならば呪いを与えるとも限らない。
そのための防衛策として「女を捨てる」という大義名分のもと、
女性聖闘士は皆マスクを装着している。
神話の時代には、マスクの下の素顔を見られた者は、
『相手を愛するか殺すしかない』
などという物騒な掟が存在していたが、
現在では女性の権利云々からか、そういった理不尽な掟はナリを潜め、
潜入任務等で素顔を晒さなければならない状況も存在するだろうから、
禁止事項程度でしかない。
今となっては女性聖闘士が愛の告白に使う手段の一環となっている。
余談ながら、女を捨てると言っていながらけっこう扇情的なデザインの聖衣が存在するのは、
聖衣を修復した者の嗜好なのだろうとされている。
先代教皇シオンが女好きだったという話は
教皇庁職員の中で知られざる逸話として存在しているから、
後者で正解かもしれない。
カメレオン座の聖衣こそ、シオンの聖衣修復者としての最高傑作。
そんな噂がまことしやかに囁かれているのは、
シオンの実情を知るものからしてみればあながち間違っていないのが恐ろしい。
「その様子ではまだ相手に告白もしていないのだろう?
マスクの下を見られてしまったらその相手を殺すか愛するしかない。
という掟を使って告白してみたらどうかな?」
アフロディーテの提案に、仕切り板の向こうの女性はぽんと膝を叩いた。
「あとは劇的な状況下での告白だ、
吊橋効果というものは以外に馬鹿にならないものだよ
頑張りたまえ!」
ありがとう!と叫んで息せき切って相談室から飛び出していく女性、
豊かな黒髪の女性聖闘士の後姿が視界から消えるのを待ってから、
アフロディーテは相談室のブースから出る。
相談相手側の惨状を見てため息一つ吐くが、
以外に心は穏やかだった。
秋口の空を見上げ、先ほどの女性の恋の成就を願いつつ、修理に取り掛かる。
愛の伝道師アフロディーテ。
力こそ正義を信奉し、サガの正義に従うものの、恋する者の味方である。
223 :
銀杏丸:2005/04/21(木) 01:32:34 ID:LjHGqKGf0
黄金時代・第三回-導く魚-
投下させていただきました
シャイナさんは可愛らしい女性だとおもうのです
恋愛相談なんてしたら真っ赤になってどもってしまうような
アフロディーテ、本編での描写が嘲笑か斜めから見るとか
瞬を小馬鹿にするとか、ムウにぶっ飛ばされるとかしかないので雰囲気が掴み辛かったです
彼も不遇の黄金聖闘士だと思います
魚座の聖衣のデザインは鋭角的かつ重厚でけっこうカッコいいんですけどね
オブジェ形態も甲冑魚っぽいデザインで聖闘士らしい戦闘的なフォルムですし
出来れば彼の恋愛相談室はもうちょっと書いてみたい気分です
恋は秘めるものを地で行くカシオスとか、相談室を爆砕した某黄金聖闘士氏とか
ついうっかり笑ってしまって相談室叩き壊された某白銀聖闘士氏とか
では、またお会いしましょう
銀杏丸氏乙
言われる通り魚座の人は本編では不幸な扱われ方をされてましたから、今回登場したのが結構嬉しかったり。
なので次はもっと不幸なあの2人を・・・。
魚座格好いいなw
それにしても面白い。こういうの好き。
>五さん
克己がかっこいいな。いつも引き立て役にされることが多い彼にしてはすごい出世だ。
実はバキの中で一番好きなんですよ。VSドリアンと克己も克己に勝って欲しいな。
>銀杏丸さん(ぎんあんまる?)
魚座って、自己陶酔の人ですよね?違ったっけ?原作リアルタイムで読んでないから
中々顔が思い浮かばない。でも恋愛相談のプロですね。次は蟹さんと牛さんをw
最近の子供は銀杏も読めないのか。「ぎんなん」だよ。
>>224 のりぴー語話す人とか、外見的にはラオウとバッファローマンを足して2で割ったような感じだけど
実力的には風のヒューイやレオパルドンと同じくらいの人のことか。
229 :
ふら〜り:2005/04/21(木) 19:43:23 ID:ABtRR1qT0
>>ゲロさん
私も
>>174さんと同じく、独裁スイッチを思い出しました。で、これは「いくらでも願いが
叶うようにしてくれ」と同じ考え方ですね。誰かを消してくれ、ではなく何人でも消せる
道具をくれ、と。頭いいというか、こずるいというか。とりあえず怖いぞヤムチャ。
>>サナダムシさん
いくらなんでもこれは、と思っていたところから、悠々と生還。打ち上げ前に気づいて
いたなら、これ幸いとばかりに宇宙旅行を楽しもうとして。打ち上げられてから気づいた
のなら、ボタンを押されるまでに爆弾を解除した訳で。どちらにしても、さすが過ぎです。
(排泄の方は……
>>205さんと同じく、サナダムシさんは描写が巧みなだけに、何とも)
>>五さん
克己がカッコいい! 言動が立派にヒーロー、正義の味方してます! プルシコフも卑劣
悪役臭出し切ってくれたし、最後には期待持たせる形でスペックまで! あと、細かい
とこでは「見えないだろうが」「聞こえてねえか」の対比が洒落てて、良かったですよっ。
>>銀杏丸さん
教皇二人
新旧の教皇二人が大激突。やはり風格ありますなぁ。こうしてみると、「アテナのような
小娘」って言葉に説得力が感じられます。実際白銀の矢で死にかけたんですしね。彼女は。
導く魚
この二人は可愛い! 特に、ああいうアドバイスを受けて膝を打つシャイナさんって想像
すると、そりゃもう。また別の恋愛相談も見てみたいです。……でもカシオスは可哀想かも。
五さんはカツミンを珍しくかっこよく書いてくれるから好きだ。
しかし感想の鬼・ふら〜りさんも排泄からは逃げたかw
>>227 「いちょう」の方が一般的じゃないか?「ぎんなん」でも正解だけど。
231 :
作者の都合により名無しです:2005/04/21(木) 22:26:56 ID:YOEDDsnxO
古くは真・うんこ氏から、排泄物は迫害される運命にあるのか。選民主義って怖いな。
232 :
銀杏丸:2005/04/21(木) 22:57:06 ID:LjHGqKGf0
皆々様、感想どうもありがとう御座います
面白い、好き、また見てみたいです、といった感想で私は頑張れます
>>226氏
あなたが仰っているのは蜥蜴座リザドのミスティだと思います
血がかかっただけで全裸になって海水で沐浴するナルシストさんです
アフロディーテは彼に似ていますが彼ほどキャラが濃くないのです
私のHNですが、ぎんなんまると読みます
判り辛いHNでしたね、最初によみがなを名乗っておくべきでした
では黄金時代・第四回-聖剣の系譜-
投下させていただきます
カプリコーンの聖闘士であるシュラにとって、
すべて戦いとは自分自身のために行われる私闘でしかない。
戦うのは自分、命の危険に晒されるのも自分、敵の命を奪うのも自分、
殺されそうになるのも自分、殺すのも自分。
どう取り繕ったところで、闘いなど自分自身のために、
私利私欲のために行うのだ。
彼はそう思っている。
または、そう思い込もうとしているだけなのかもしれないが。
彼の朝は早い。聖域に居るときは特に早い。
聖域で最初に目を覚ますのは、
教皇庁の刻限番か彼か、と言われているほど早い。
何しろ日が昇る前に起きているのだから。
起床すると寝床を片付け、
星屑砂を多量に含んだ特殊な砂桶に
小宇宙を纏わせた手刀を突き入れる。
彼の最大の武器は、その研ぎ澄まされた四肢に
極限まで高めた小宇宙を纏わせて放つ手刀足刀
人呼んで「聖剣エクスカリバー」である。
小宇宙をあまりに高めると肉体が耐え切れない、
そのため現在では小宇宙を放出する系統の技が主流だ。
だがシュラは、天才的なセンスでもって極限まで高めた小宇宙を
肉体に宿らせ続けることに成功し、己の五体のみを武器に戦うという、
原初の聖闘士の戦闘スタイルを今に残す稀有な聖闘士である。
日々の厳しい鍛錬がその絶妙なバランスを保っている。
日課の手刀突きはその為のものだ。
手刀突きが終ると、次はサンドバックを蹴り上げる。
サンドバックと言っても、常人が蹴るなり殴るなりすれば
容易に骨を砕いてしまうほどの硬度をもった特別仕立てだ
聖衣の抗生物質と同じガマニオン、星屑砂、
オリハルコンの混合物を詰められたそのサンドバックを蹴るには
手刀の時と同じく、自分の肉体に小宇宙を纏わせなくてはならない。
硬度だけなら聖衣並のサンドバックを、シュラは易々と縦横に揺らす。
この身全ては聖衣なり、この身全ては聖剣なり、
そう念じ、黙々とサンドバックを蹴り上げる。
朝靄が晴れ、日が昇る頃になってようやく
シュラはサンドバックを蹴り上げるのを辞め、
聖域内のジョギングを始める。
広大な聖域敷地内をただ黙々と自己鍛錬のために走りこむ彼の存在は、
若い聖闘士や聖闘士候補にとって何よりの励みなのだろう。
最近はジョギング中の彼に挨拶の声や親しみの笑みを向けてくる者も少なくない。
シュラは気が向いたら返礼くらいはする。
彼は別に人間が嫌いというわけではない
鍛錬の汗を流し、朝食をとり、そして、彼の一日がようやく始まる。
彼とてはじめから己しか眼中になかったわけではない。
彼には目標があった。
神話の住人であるかのような気高さと清廉さをもった聖闘士、
黄金聖闘士・射手座サジタリアスのアイオロス。
神の如くと慕われ、敬われ、同時に強大な小宇宙をもった聖闘士、
黄金聖闘士・双子座ジェミニのサガ。
シュラは彼らのようになりたいと思っていた。
だが、その想いは踏みにじられた。
13年前、その報は彼の全ての価値観を破壊しかねないものだった。
あのアイオロスがあろう事かアテナを殺害しようとし、
射手座の聖衣をもって聖域の外に逃亡したのだという。
信じたくなかった。
彼がそんな事をするはずが無いと、シュラは叫んだ。
だが、無常にもアイオロス追撃の命が下り、シュラはアイオロスに追いすがった。
同じ黄金聖闘士と言えど、聖衣を纏わないのならばその差は生じる。
「アイオロス!何故だ!何故だ!何故だ!」
アイオロスを追い詰め、シュラは血を吐く様に叫んだ。
嘘だといってくれ、何かの間違いなんだろう、悪い冗談なんでしょう、
訓練とかそういったものなんでしょう。
嘘だといってくれよ!アイオロス!
「シュラか…」
だが、アイオロスの貌には一切の嘘も偽りも無い。
戸惑ったような、悲しむような、喜ぶような、
そんな不思議な感情の滲んだアイオロスの顔。
だからシュラは悟ってしまった。
偽りは無いと
「エクスッ!カリバァー!」
天と地を再び切り裂くような閃光がアイオロスを襲う。
大地が冗談のように方眼に切り裂かれていく中、
それでもアイオロスはシュラを真っ直ぐな、濁りの無い眼で見ていた。
混乱するシュラには、その視線の意味を問うことなど出来なかった。
エクスカリバーの斬撃の嵐が過ぎても、
体中を切り裂かれたアイオロスは膝を屈することなく立っていた。
打ちひしがれたシュラと威風堂々とたつアイオロス、
どちらが危害を加えているのか判らない不思議な情景だった。
言葉もなく、満身創痍のアイオロスは走り去っていく。
シュラは大切だったものが壊れる音を聞いた気がした。
戒厳令が布かれた聖域の中、教皇の間に呼ばれ、
教皇の法衣を纏っていたサガの言う真相を聞いて、
シュラの中で壊れたものは歪に組み立てられた。
「全ての人間は、自分自身しか見ていないのか…」
ぞっとするほど擦り切れた声でシュラはつぶやいた。
気高き射手座は地に堕ち、清廉だったはずの男は私欲に眩んで教皇を僭称している。
何がアテナか、何が聖闘士か、私利私欲に走って穢れた連中だけか、
この俺が信じた、憧れた彼らはそんな俗物だったのか。
だからシュラは、ただ一振りの剣となる道を選んだ。
自分自身のためにふるわれる聖剣となる道を選んだ。
それからの彼は、サガの剣であり、穢れた聖域の剣であり、偽りの聖剣となった。
だから、その日聖域に乗り込んできた青銅聖闘士の急報を聞いても、
なんら心を動かされることは無いと思っていた。
死地に臨んで排水の陣を布いたこの少年の覇気に押される時までは。
「なぜだ紫龍!なぜ貴様は何のために戦っている!」
当然の事のように、紫龍はいってのけた。
「アテナの聖闘士がなんのために戦うかなどと決まっている!
アテナの為だ!」
歪に組み立てられていた彼の中のそれは、その言葉によって正された。
「お、俺は、全ての人間は自分自身のために戦うものだと思っていた…」
何のことは無い、俗物はこの俺だったのだ。
何がエクスカリバーか、何のための聖剣か。
自爆覚悟の紫龍の小宇宙の炎の中でシュラは願った、
地から天へと駆け上がる星の中でシュラは願った、
この素晴しい男を死なせてしまうわけには行かないと願った。
シュラは最期の足掻きとばかりに、
紫龍の小宇宙にエクスカリバーの真髄を刻み、
己の聖衣を纏わせる。
一か八かだった。
ああ、これで聖剣は正しき主に受け継がれた。
アテナの為とあらば、信じた者のためならば、
友のためならば自ら喜んで死地に挑む、
ヘラクレスの難行を喜んで選ぶようなこの男にこそ聖剣は相応しい。
ああ、俺はようやく聖闘士らしいことを成せたのか。
神よ、女神よ、頼む、この紫龍の命を救ってやってくれないか。
ただ己しか見てこなかったこの俺が、最期に祈る、
最期の瞬間だからこそ祈る。
紫龍を助けてやってくれ、これからの聖域にはこの男が必要なのだ。
頼む!女神アテナよ!
シュラの小宇宙が全天に女神に神々に響き渡る。
そして、星は消えた。
「せめて、星となってアテナを護るか
なぁ…紫龍」
239 :
銀杏丸:2005/04/21(木) 23:13:07 ID:LjHGqKGf0
ハーデス編や紫龍の背後霊化で待遇は良い彼ですが
力こそ正義、全ての戦いは自分自身のためという最初期の
彼の背景を埋めてみたく思い、書いてみました。
手刀のポーズをとるだけなので
私の周りでごっこ遊びするときは人気者でした
では、またお会いしましょう
240 :
作者の都合により名無しです:2005/04/21(木) 23:20:03 ID:ltRAgReo0
小粒が大粒に化けるか芥子粒になって消えちまうか判らんけんどな
私も何かもんくつけるだけじゃなしにSS書いてみようかしら?
でも叩かれるの怖いから辞めておきましょうか
お疲れ様です。
今回はシュラですか。こいつはいい奴ですよね。
自分の信念と聖域の掟に翻弄されていたというか。
裏切られた感から、紫龍に巡り合うまでの葛藤が描かれていてよかったです。
またがんばってください。
宵闇が迫る頃、白髪の蟲師は灯りも持たず森を歩いていた。彼は、とある理由により
人より夜目が利く。とりあえず、この体質は便利だな。彼はそう思いながら暗闇から宿を
目指していたのだ。
「……ん?」
少し先に、人が倒れている。子供だ。
「おい、どうした?」
蟲師は子供の傍により、耳元に声をかけた。
「……あ……ん。俺、どうして……」
少年は、状況がよく掴めていないようだ。すると、間の抜けた音が、少年の腹から発せ
られた。
「なんだ、腹空かせて倒れたのかよ」
蟲師はそう言って溜息をついた。
「そうみたいだ……ところで、おじさん誰?」
「俺は通り掛かりの蟲師だよ。ギンコという」
「ギンコさんは、どこに行くの?」
少年に、そう訊かれた。ギンコは、少年を明るいところまで送り届けようとしていたところだ。
「もう日も暮れたし、宿を探す」
「そうなんだ……俺も、一緒に宿に泊まっていい?」
何を言うんだこいつは、という顔をしてギンコは、
「近くなんだろ、家は。帰れよ」
しかし、少年は食い下がる。
「勝手な頼みなのは分かってる……でも、どうしても……」
「家に帰りたくないのか?」
少年の顔色が変わる。どうやらギンコの言葉は的確に少年の心の綻びを突いたようだ。
「……絶対に、このままじゃ帰れない……父さん母さんに認めさせるまでは……!」
「……まあ、いいさ」
ギンコは、少年も泊めてやることにした。無論金はギンコ持ちだ。
食事や風呂を済ませ、二人は行灯の仄暗い灯りの中、床についた。
「……泊めてやるんだから、理由くらい詳しく教えろよな」
ふいにギンコは言った。
「……つまんなくなったんだ」
ギンコの言葉から暫くして、少年はぽつりとそうこぼした。
「あそこに居ても、何も面白いことがない。外に出て、色々なものを自分の目で見てみたく
なったんだ。それを親に話したら……」
「ぼろくそ言われたんだろ」
ギンコには両親の気持ちがそれなりに理解できた。こんな小さな子供に旅など、少しでも
子を思う親ならば許せるわけがない。それが普通だろうと思った。しかし、この年頃の少年
に、そんなことは理解できまい。ただでさえ、腕白な時期なのだ。
「あの二人は、ずっとあんなつまんないところに閉じこもってるから俺の気持ちなんて分か
るわけないんだ。だから、喧嘩して出てきちゃった」
「お前の考えは分からなくもないが……明日帰ったほうがいいぞ」
「ギンコさんも分かってくれないの?」
少年は、あからさまに沈んだ声で言った。
「……お前、要するに珍しいモンが見たいんだろ? なら、明日いいモン見せてやるから」
「本当!?」
少年は、嬉しさの余り大声を出した。この宿の壁は薄い。他の客の迷惑になると思い、ギンコ
は少年の口を手で覆った。
「声がでかいよ……見せてやるから、そしたら帰れよ」
「うん、考えとく」
ころころ態度が変わる辺りはガキだな……ギンコはそう思いながら目を閉じた。
もっけどうしよ。蟲師後の新連載ネタもどうしよ。なんか>>が多い言われたんで途中から削ります。
>>64 ガラスの仮面のアニメを見ましたが、声の演技以外はあまり期待できそうもなく少々アレでした。
>>66 それが案外脆かったのです。こういうパターン多いですね。
>>67 それに加えるとしたら「あらゆるものは変わり行く」とかですかね。
>>80 スケールは確かに大きかったけど、着地点は意外にショボいです。
>>154 前回の話はかなり矛盾が出てきてた気もしますが、原作も矛盾はかなり多いので、主な部分はそこではない、
ということでお許し願えればとw
>>160 原作とは程遠い感じで、それでいて完成度が低く正直納得できない出来ではありました。気に入ってる部分も
ありますが。
>>162 厳しいにも程がありますね。つらい。俺は一回であまり多く書かないからまだマシなのですが。
>>164 らしくないですよねw
>>173 ホラーというか、サスペンスげな話は肌に合うようです。
174
前もA先生の話に似ているといわれましたが、結構嬉しいですね。あのお二方の短編は凄く好きなので。
まあ、その割にはあまり読んでませんが。だから、たまたま俺の話作りの方向がお二方と同じラインに
向いてる(レベルが余りにも違いすぎますが……)のかなと思います。
175
その辺はあまり深く考えずに書きました。必要以上に弱いような……
177
その辺はちょっと笑っていただきたかった。つーか、書いてるとすぐギャグに向きそうになるのなんとかしろ俺。
203
『紙を求めて』すげえ面白いw俺はこういう話書いてるとどうしても自分でツッコミを入れてしまって文章が
崩れちゃうんですが、サナダムシさんは冷静にそれを流してオチまで話を導けるのが凄いと思います。
245 :
作者の都合により名無しです:2005/04/22(金) 13:24:06 ID:TgfdH2UgO
たった2レスかよ
>銀杏丸さん
お世辞ではなく、一話ごとに上手くなってますねえ。長編もいける気がします。
シュラはクールさの中に思いやりを持つ、一番ゴールドらしいセイントと思います。
アイオロスとの戦いと紫龍との戦いで、くっきり心情の変化が現れてますね。
>ゲロさん
新章お疲れ様です。今回は、どんな蟲が絡むのかまだぜんぜんわかりませんね。
しかし「通り掛かりの蟲師だ」ってメチャクチャ怪しいですね。俺なら近づかないw
俺も245と同じように、好きな作品の分「たった2レスか」と思ってしまいましたw
次回の急展開楽しみにしています。
247 :
作者の都合により名無しです:2005/04/22(金) 19:42:12 ID:3sROKc2V0
大好きな蟲師が好調で嬉しいなあ
量は少ないけどw
248 :
作者の都合により名無しです:2005/04/22(金) 23:01:09 ID:rO+TyuucO
下呂さんは相変わらず好調でいいな。
でもザクさん、5さん、殺助が来ないな。いったいどうしたんだろう。
ぽんさんも消えたなあ。
銀杏丸さん、シュラかっこよかったです。
でも元々かっこいいシュラより、牛さんやカニさんをw
ゲロさん、今回は無気力な少年との話ですか。
まだどんな展開になるか分かりませんが期待してます。
250 :
作者の都合により名無しです:2005/04/23(土) 14:15:37 ID:FvqK4qWPO
>>五氏
ブチャアッ
>銀杏丸さん
シュラいいなあ。私も真似してた記憶がw
アイオロスや紫龍を旨く絡めてますね。
次は蠍座かな?
>ゲロさん
今回は導入だから、次に期待。でも既にこの少年が蟲に既にとりつかれてそうな予感。
(普通なら空腹で倒れる前に諦めて家に帰りそうな気が)
今日までに1話うpるつもりでしたが、
今週は次回の話ではなく、結集編の「バキVS寄生獣」と決戦編の話ばかり作ってました。
バキVS寄生獣はプロットを書き出してみた感じ、10話くらいの長さになりそうです。
最終回は第一稿時点で12レス(1話で)という長さになってしまいました。
長い。
ということで、区切りよく今年中に終わらせるよう、なんとかペースアップしていきたいと思います。
ザクさん肩透かしレス乙。
バキ対後藤か。普通に考えればバキが輪切りにされて終わりだろうな。そうなったら
話終わるけど。
そういえば昔にオーガ対後藤のSSをどっかで見た記憶があるけど、どこだっけ?
254 :
超格闘士大戦:2005/04/23(土) 22:06:02 ID:KfViz6UF0
255 :
超格闘士大戦:2005/04/23(土) 22:08:01 ID:KfViz6UF0
第26話 『竜虎相打つ』
ゆっくりと、しかしながら、好戦的な気を発しながら歩いてくる黄泉に対して、
ミストバーンは、両腕をだらんと垂らした無行の構えで、それを待ち構えた。
普段となんら変わらない、ミストバーンの様子に、若干な心配を感ずるフレイザードだったが、
すぐにその心配は消えた。ミストバーンの両手指が、長く、鋭い刃へと変化していくのを見たからである。
ミストバーンの指は、それそのものが、鋼鉄以上の強度を持つ、彼の必殺技の1つなのだ。
その名も「ビュートデストリンガー」。伸縮自在のその鋼鉄の指は、一本一本を一気に伸ばして、
敵を串刺しにするもよし、5指全てをまとめて、剣のように敵を切り裂くもよし、さらには
敵に破壊されても、またすぐに伸びてくるという、まさに万能武器であった。
ミストバーンは、黄泉とのたたかいが近接距離での格闘戦になると予測していた。
黄泉は、自身の格闘技に絶対的な自信を持っているとの情報を得ていたからだ。
それ故に、ビュートデストリンガーの使い道は、剣型を選んだ。初撃に耐えるための、盾が必要だった。
戦闘開始と同時に、黄泉は一瞬に間合いを制して、格闘技を叩き込んでくるはず。
それを防ぎ、僅かな間合いをとった状態から技を打ち込み、撃破する。
自分から攻め込んでいき、勝てる見込みはなかった。だからこそ直感で思いついたこの作戦だった。
が、そもそも、黄泉の初撃に耐えられるかどうかも微妙だった。及び腰の戦法を使わざるを得ない状況に、
ミストバーンは苛立ち、そして僅かに焦っていた。その感情を、誰にも悟られることなく…。
「互いに、会うのも話すのもはじめて…だったかな?」
両者の間の距離が、10メートル程まで近づいた頃、黄泉が落ち着いた声でそう問いかけた。
256 :
超格闘士大戦:2005/04/23(土) 22:09:03 ID:KfViz6UF0
「………」
ミストバーンは黙っている。何を考えているのか、怒っているのかさえも、その顔からは
他人が感じることが出来ない。こと戦闘に際しては、うってつけの顔だと言える。
「噂通りの無口な男のようだ。いや、互いにうちとける事のないであろう間柄…
話かけるという行為自体が、武人としての誤りというものか…」
黄泉の言葉に対して、その通りだと言わんばかりに、ミストバーンがその両手指に作り出した
剣を胸の前あたりで交差させ、構えをとった。鋼で出来ている指が動くたび、ジャキンという
甲高い金属音が響く。それは、黄泉にとって、まるで自分を挑発している、ミストバーンの
声にはならない言葉にも聞こえた。黄泉は唇を僅かに弓なりにしならせ、呟いた。
「…よかろう……」
「う…」の音があたりの空間中から消え去った頃…黄泉の身体は、すでにミストバーンとの間合いを
侵食しつくし、その拳はミストバーンの身体を捉えていた。
257 :
超格闘士大戦:2005/04/23(土) 22:10:04 ID:KfViz6UF0
大岩のような、強大で、堅固な肉体。しかしながら、鞭のようにしなやかでやわらかく、
その拳は、まるでタコの吸盤が吸い付いてくるかのように、的確に敵の身体に取り付き、
破壊する。さすがは妖魔族の長の肉体…バーン様を倒しただけの男…
ミストバーンが、自分の腕ごしに感じた黄泉の身体の感触は、思わずそう賞賛したくなるほどの
素晴らしい、まさに一級品と言える代物だった。
打ち込まれた拳底は、命中と同時に、ミストバーンの両手指の剣を砕いた。一瞬にしてである。
だが、ガードを固めた構えが、功を奏した。ビュートデストリンガーで作られた剣は砕かれたものの、
黄泉の拳は、ミストバーン本体までは届かず、宙に浮いている。うまく…しのいだ…。
その黄泉の拳を踏み台にして、ミストバーンは黄泉に向って後方へと飛び上がった。
ミストバーンの近接武器は、すでにそれ本来の利用価値を発揮する間もなく、砕かれている。
前述したように、ビュートデストリンガーとは、何度でも再生可能な万能武器であるが、
ミストバーンが次にとった行動は、それの再生ではなかった。
(………我が体内に宿る暗黒の闘気よ………右腕に集まるのだ………)
暗黒闘気とは、魔王軍の幹部級のみが持つ、気のことである。
体外に放出されると、どす黒く変化するからか、あるいは闇の住民が持つ闘気だからか…
名前の由来は定かではない。この闘気を宿した技で傷を受けると、その傷は暗黒闘気に侵され
2度と治ることがないという。魔界に住む者が宿すに相応しい、恐ろしい闘気だ。
ミストバーンは、体内を巡る暗黒闘気をコントロールし、全てを右腕に集中させた。
集中しすぎて、一箇所に留まることの出来なくなった暗黒闘気は、ミストバーンの体内から外へ
溢れだし、黒い輝きを放ち始めた。闘気弾の完成である。
黒い、湯気のような暗黒闘気にまみれた右腕は、先程全ての指を黄泉に破壊されたことと相まって、
ひどく、痛いげに見える。ぶんっと右腕を振り下ろすと、右往左往していた暗黒闘気が1つにまとまり
ブラックホールのような弾になって、黄泉に向って飛び出していった。
手合わせからこれまでの時間、実に2秒!
勝負は双方の名に恥じぬ、凄まじい、高速の技のぶつかり合いであった。
ミストバーンの闘気弾に対する、黄泉の対応もまた、凄まじいものだった。
それも、ミストバーンのそれを遥かに凌駕し、そして全く無力にしてしまう程の、いわば奥義だった。
誰の目にも、闘気弾は命中したように見えた。それ程、絶好のタイミングだった。
258 :
超格闘士大戦:2005/04/23(土) 22:20:58 ID:KfViz6UF0
「やった……!」
両者のすぐのそばで戦いを見守っていたフレイザードは、思わず声を上げた。
眼前の黄泉の身体が、黒い、球状のオーラのような物に包まれていたからだ。
フレイザードは、2人の戦いのスピードについていけず、
状況をイマイチ把握していなかったが、ミストバーンの闘気弾の発射の瞬間だけは
しっかりと確認していた。黄泉の身体が暗黒に包まれたということは、それは
ミストバーンの勝利だ…と思わず確信したのである。だが、それは1レベル下の者達の
安易な判断でしかなかった。球状の黒いオーラのが薄れてきて、無傷の黄泉の姿が
見え始めた時、フレイザードの氷の右半身が、僅かに溶け出した。
「魔古忌流煉破反衝壁…全ての闘気技は、この壁を突破することはできない」
黄泉がそう言った直後、身体を覆う球状のオーラがふうっと消えた。
フレイザードが、暗黒闘気弾の爆炎だと思っていた物は、黄泉の防御壁の一部だったのだ。
「………」
ミストバーンは表情を変えない。渾身の一撃があっさり阻まれたにも関わらず、変わらない。
「今、僅かに右拳を握り締めたな…?ここまで完璧に封じられて、少し悔しかったか…?」
黄泉が、ギュッと握られているミストバーンの右拳のほうに顔を向けて、そう問いかけた。
破壊された指は、すでに再生されていた。黄泉の顔の動きを見たミストバーンが、少し慌てて、
瞬時に握りこぶしを解いた。その様子を見て、黄泉がフッと鼻で笑った。
「…およそ2秒程…だったか。今の手合わせの時間は…うむ…おおよそ読みどおりの展開だった。
心臓の音が聞こえない分、少し大変だったが…気づいていたよ、お前の怒りの感情…
そして攻撃パターンから、守り方まで、何もかも… 俺は見えなくなって強くなれたんだ…
目が見えない分、異常に発達したこの聴覚のおかげで、光から得られる情報以上のものを
俺は掴むことが出来る。拳を握った音からは、怒りや焦りの感情を…足を動かした音からは
攻撃の合図を…そして不規則な呼吸からは、これから闘うであろうの敵への恐怖心を………」
そう言った後、黄泉は少し首を横に動かし、狐に摘まれたような表情を浮かべている
フレイザードへと顔を向けた。フレイザードは、黄泉に対して飛び掛る寸前だった。
不自然に曲がった足と、彼の下の地面に垂れている大量の汗、もとい水がそれを物語っていた。
黄泉は僅かな呼吸音から、そのことを察知していた。フレイザードが突撃をやめたことは言うまでもない。
259 :
超格闘士大戦:2005/04/23(土) 22:21:51 ID:KfViz6UF0
「お前達が俺に勝つには、俺以上の心眼を会得せねばならないだろう。だがそれは、
お前達が俺に勝つこと以上に難しいことだ。たまたま俺の読みが外れ、お前達の技が
運良く絶妙のタイミングで、俺をとらえたとしても…この防御壁を破る技を、俺は知らない。
お前達に残された道は…敗北しかない。一矢報いることがあったとしても、最後には俺が勝つ…」
その後の両者の戦いは、黄泉が最後に言った言葉の通り、ミストバーンの劣勢のまま
進んでいった。フレイザードはじめ、魔王軍のモンスター達の気力はすでになく、
長の死…自軍の敗北の瞬間を、ただ待っているだけであった。皆が皆、茫然自失の薄っぺらい表情を浮かべて。
エアーズロックにいるアバン達、そして一輝も両者の戦いに気づいていた。
アバンは、闘気を。一輝は小宇宙を…と、もとを辿れば、恐らく同じ物なのだろうが、互いに
呼びなれた呼称で、強者が持つ力のことを表現していた。
「どっちが勝つと思いますか…?」
アバンが一輝に問いかけた。一輝は、遠く離れた強者の小宇宙を目を瞑りながら感じ取っていた。
「今のままでは、恐らく妖怪側に現れた奴のほうが勝つだろう…だが、俺にはわかる…
俺達…いや、恐らくアテナに匹敵する程のとてつもないコスモが、爆発するのを待っている…」
一輝が感じ取っていた、爆発寸前のとてつもないコスモ…とは、ミストバーンをさしていた。
もちろん、一輝はミストバーンを見たこともないし、名前も知らない。ほとんど勘のようなものだが、
一輝はミストバーンに隠されている力があることを、遠く離れた場所から見抜いていた。
しかし、当のミストバーンは、黄泉の攻撃に対して防戦一方の状態であった。
最初の闘気弾以来、ミストバーンは黄泉に対して攻撃を行っていない。黄泉の心眼と打つ手の速さが
ミストバーンの行動を、完全に封じていた。纏っている法衣はすでにボロボロで、
身体の内部の様子は伺えないが、すでに動きも鈍く、相当に弱っているのは明白であった。
圧倒的な優勢の中、黄泉は一時、攻撃を止めた。そしてしばらくただ呆然と立ち尽くした後、
ミストバーンに対して口を開いた。
「やけにしぶといと思っていたが…そういうことか… 見せてみろ!お前の真の力を…
必死に動揺を隠していたようだが、俺の拳が顔を掠めた時、お前から聞こえた握り拳の音と、
手に触った顔面の感触…俺には隠せない」
260 :
超格闘士大戦:2005/04/23(土) 22:22:28 ID:KfViz6UF0
ミストバーンの身体が、ふらふらと僅かに揺れ始めた。黄泉の言葉に、動揺を隠せない様子だった。
追い討ちをかけるように、黄泉がミストバーンに対して詰め寄っていった。
「フフフフフフフ…ハッハッハッハッハ!!」
迫り寄る黄泉を見ながら、ミストバーンが突如高笑いを始めた。キョトンとするフレイザード達。
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる黄泉。あたりには、この戦いが始まって以来の、緊張感の解けた
空気が広がった。
「…やむをえんが、ここは使わざるをえまい…我が身滅んでしまっては、この御身体も共に
滅んでしまうこと…うかつにも忘れていた…」
ミストバーンの目がギラッと光った。これまでのダメージなど、まるでなかったかのように
その身体からは、黒々とした暗黒闘気が溢れだし始めた。
「やっと口を開いたかと思えば、よくわからんことを。だが、これからが本番…のようだ。
本来、組織の長として、よからぬ行動ではあるが…やはり俺も昔のままだ…」
足を肩幅より少し長く広め、腰を十分に落とした前傾姿勢…黄泉が、本来の構えをとる。
ミストバーンを格下と判断していた黄泉は、本気の半分の力も出していなかったのだ。
それに気づいたミストバーンだったが、もはやそんなことはどうでも良かった。
今の彼の心にある感情、それは亡き大魔王バーンに対する、お詫びの気持ちと
黄泉に対する憎しみの気持ち…それだけであった。
「貴様は先程、『私の真の力』を見せろと言った。だが、今から見せるのはそれではない。
大魔王バーン様の、真の力だ!あの時、もう少しはやくバーン様にこの身体を返していれば、
勝っていたのは貴様ではなかった!それを身をもって思い知るがいい…
大魔王バーンの名のもとに、貴様に死をプレゼントしよう…先程の助言の礼だ…
バーン様…初めてあなたの命令無しに、この力を使う私をお許しください…」
直後、ミストバーンから、太陽の光にも匹敵する程のまばゆい光が発せられ、あたりを包み込んだ。
261 :
超格闘士大戦:2005/04/23(土) 22:23:01 ID:KfViz6UF0
数分後…オーストラリア大陸の、とある砂漠地帯。宿命の対面が行われていた。
魔界から出てきた戸愚呂達と、同じく魔界から凱旋し、戸愚呂達を追っていた浦飯チームの面々。
横1列の形で両者は約1年ぶりに顔を合わせた。最も、互いに望んだ再会ではなかった。
かつて敵同士闘った間柄ということもあるし、今はお互いにやるべき目的があるのだ。
戦いは避けられないが、決して望みはしない。それが、1年前の両者の関係との決定的な違いであった。
特に、戸愚呂チームの面々にとっては。
「久しぶりだな、戸愚呂。またてめぇに会うとは思わなかったぜ」
浦飯が戸愚呂に声をかけた。だが、戸愚呂は反応を示そうとしなかった。
「何黙ってやがる。それに、何故てめぇが現世にいるんだ…?」
シカトされた浦飯が、思わず声を荒げた。浦飯の問いに対して、戸愚呂は口を開く…
が、放たれた言葉は、浦飯に対してではなく、傍にいる戸愚呂チームの面々に向けられたものだった。
「黄泉が…死んだ…」
262 :
ブ:2005/04/23(土) 22:25:24 ID:KfViz6UF0
続く。今月はもう2回ぐらい更新出来るでしょうか。
これ書くのに3日も費やしてしまいました。まぁもちろん、他のことをやりながらですが。
私もはやく作中で、黄金聖闘士達を自由気ままに暴れさせてやりたいものです。
では。
↑名前が変ですね。一応訂正。
うひゃー
スレを一番下までスクロールしてから読もうとしたら、「黄泉が…死んだ…」の一文が。
素直に上から読んできゃよかった・・・
今月でもう2回ってのはうれしい。早く中国編も読みたいしなぁ。
コテ消し忘れ。
ブラックキングさん、復活おめ。
ミストバーン、というかバーン様の正体さすがに強いですね。
格下のフレイザードが観客になっててワラタ
戸愚呂とユウスケのツーショットは感慨深いですな。
関係ないけど、ザク氏にとって
「黄泉が…死んだ…」の一文は感慨深いだろだろうな。
ヤムスレからの出身者としてw
ゴミの門のことかー!!!!!wwwwww
戸愚呂たちと幽助は完全な敵というわけではないのか
ここに因縁あるオーガがどうかかわってくるかが興味深いな
269 :
ふら〜り:2005/04/24(日) 20:16:08 ID:IkL7Fng80
>>銀杏丸さん
黄金の中ではシュラが一番好きなんですが、銀杏丸さんのシュラ、非常ぉぉに私の抱いてる
イメージ通り、でそれを上回るカッコ良さです! 寡黙でストイックで真摯で、でも冷淡
ではなく、むしろ熱く、見ようによっては素直。ほんっとに、残りの黄金ズも楽しみです。
>>ゲロさん
今回はまた随分と、普通な人との普通の出会いしてますね。まぁそれぐらい、この少年が
ギンコの「普通」と隔たりがあるということで。次回ギンコが何をやって少年がどう腰を
抜かすのか楽しみ。あ、いや、そう思わせといて実はこの子が、ギンコよりも……とか?
>>ブラックキングさん
小説技法の一つ。実際には一瞬のことが、文章だと長くなる。けどその差を感じさせない
よう書く、と。今回の攻防も、言われてみれば僅か二秒。で文章量は多いけどダラダラ感
はなし。お見事でしたっ。あと驚き役&仲間を気遣うフレイザード、なかなか楽しいです。
dブラックキング氏久しぶりに乙
流石にミストは強いなあ。しかし負けたバーンとの合体は出来るのだろうか
転地魔闘の構え見たいんだけど
271 :
作者の都合により名無しです:2005/04/24(日) 23:07:00 ID:FmBP2m5b0
結局、腐った駄洒落まじりの、他人を小ばかにした質問と、ワンパターンな妄想と、
「逝ってよし」のような無意味なあがきしかできないわけだ。
カスみたいな脳みそでも、自分が救いようのないバカであることは
かろうじて自覚しているから、他人のレスなど初めから期待してはいないんだろう。
実は、“マジレス”されるのがお前にとっては一番困ることなのかもしれないね。
そこにはいっさいの返答をしていないことからも想像できるよ。
今まで他人からはバカにされる以外のあしらいを受けたためしがないんだろう。
自分の能力では、何が真実で何が嘘か、判別できるはずもないから、
状況に応じて相手を信じたり信じなかったり、なんて器用なことはできそうにないね。
ここまでバカにされても平気なのは、事実とほぼ一致しているからなんだね。
おまえは救いようのないバカで、生きている意味がまったくないことだけは
自覚しているから、死ねと言われても反論できない。他にできることがないんだろ。
またどのスレと間違えたか分からん豪快な誤爆だな。荒らしか?
まあいいや。結局ザク氏は今日書かないのか?
バキVS寄生獣、面白そうな感じで結構期待してるんだけど。
ザクは順番に書くというより、プロットだけ決めてから、筆が乗る部分から優先的に書いてるから更新にバラつきが出るんじゃなかろうか
かも知れないな。じっくり待ってよう。
正直に言うと、ザク(コテじゃなく作品の方)よりも
新作の方が楽しみ。
ザクも楽しみに読んでいるけど、ガンダムにあまり詳しくないので。
その点バキも寄生獣も単行本持ってるからより楽しめる。
ザク氏には時間がた〜〜〜っぷりあると思うので期待度満点ですw
>>ザク氏
やはり「黄泉が…死んだ…」にはいやな思い出がありそうですな。
ゴミVSニートはニートの大勝利でしたね。
明け方早く、二人は宿を出た。
「眠いよー」
「だらしねえな」
まだ薄暗い時間帯。ほとんどの人はまだ睡眠の快楽を貪っているのだろう。つい先日まで、
少年も「ほとんどの人」に含まれていたのだから、眠くて当然の話だ。
ギンコは、どんどん森の奥に踏み込んでゆく。その足取りに迷いは一切ない。奥に入るのを
少々恐れていた少年だが、力強く進むギンコを見ていると次第に心から余計な感情が消えて
いった。足が、すいすいと進むようになった。山の歩き方を、段々と知ってゆく。
「……ここらか」
ギンコは、急に立ち止まると、空を見上げた。
「お、聞いた通りだな」
「なに、あれ……?」
ギンコと同じところを見ようとしていた少年は、何か異質なモノを見た、という表情でいた。
「お前、あれが見えてるのか?」
「う、うん……なんか、木のツタみたいな細いのが一杯……」
ギンコは、少し笑みを浮かべて、
「あれは“ムグラ”という蟲だ。奴らは山の神経のようなモノで、本来あまり外にも出てこず常に
山に潜っているが……どうも、あれが件の亜種のようだ」
と、言った。
「お前は、世界をもう少し広く見ることの出来る眼を持ってるじゃないか」
ギンコの言葉に、少年は嬉しさを感じていた。
「いいか。これからすることは、恐らくまだ誰も試したことはないし、安全かどうかも分からんこ
とだ。怖いのなら、しなくてもいい」
ギンコは一転、神妙な顔をして言った。
「これから行うのは“ムグラノリ”という行為だ。本来これは、山の神経たるムグラの意識に乗り、
山全体を自ら動かずとも把握する為のもの。しかし今回は、空に在るムグラだ。まるで勝手が
違ってくるだろうことは容易に想像が付く」
少年もまた神妙な顔で聞いていた。
「ムグラの行動範囲は広い。何せ、この広い山全体を易しく把握できるほどだ。その能力は、計
り知れない。ここからは憶測だが、奴らがもし、空でも同様の機能を発揮できているとしたら……
ムグラは、この周辺を……いや、或いはこの世界の果てまでも、見据えることが出来ているのか
もしれない」
「……」
「だが、これはあくまでも憶測だ。通常のムグラノリに危険はないが、今回もそうだとは言えない。
いや、そもそもムグラに乗ることさえ出来るかどうか……」
「やろうよ!」
ギンコの懸念を振り払おうとするかのように、少年は鋭い声を上げた。
「これは世界を見る機会なんだ! こんなことは……多分、もう一生ない」
「いいんだな」
「もう、腹は決めてるよ」
ギンコは深く息を吐き、
「……俺一人だったら、ここまで考えなかったんだがな」
と、言った。
「ムグラノリの際には、ムグラを呼び寄せる為の色々と準備が必要なんだが、今回はもう外に出てる
からな。要らないだろう」
ギンコは、そう言って手を空に掲げた。少年も追随する。
「!」
ムグラが、一斉に二人に絡みつく。二人は、ムグラに乗った。
今、テレビが「日常の中の非日常」といった言葉がぴたりと嵌る事件を流しています。
書きながら見ていましたが、恐ろしいことです。電車を利用する人間として。
最近の電車は、近年の日本人の運転ともリンクしてか、荒いです。
車両の進化と共に、運転手の技術は急落しています。皆様もお気をつけて……と言っても、気を
付けようがないですが。
では、出かけてきます。安全運転で。
>>245 有難うございます。すいません。今回も2レスです。でも内容は前の比ではありません、ということで
容赦を……今回は一回が短い割に中身が心持濃いので、4回になるかもしれません。
>>246 有難うございます。すいません。前がユルすぎただけあって、そのギャップもあって今回は急展開に
感じられるのではないでしょうか。感じられなかったら俺の力不足です。ごめんなさい。
しかし、好きだと言われるのは純粋に嬉しいです。
>>247 有難うございます。すいません。量は前から少なかったですけど、今回は特にそう感じますね、自分でも。
でも、内容は濃くしていきたいな、と思っています。
>>249 一回目はホントスローでしたね。ギャップを狙ってのことですが、感じられなかったら以下略。
>>251 ああ、普通ならそうですね……その人物の行動原理とかその辺の思慮が浅いのは俺の多くの弱点の一つ
です。
>>269 腰は、あまり抜かしてないですね。少年(そういや名前ねえな)、俺の考えよりもっと積極的になってます。
まあ、子供らしくて良いことです。しかし、これ、原作元にした話と結構カブってます。蟲は原作のモノだし、
少年が出てくるとこも同じだし……少女のほうが良かったか。
ちなみに、今回の「ムグラ」は、原作二巻の「やまねむる」で出てきたモノをちょっと変えてます。オリジナル
ではないです。
では。次回完結……はしないかも。あー、電車凄いな。ちょい気が沈んでいます。
280 :
作者の都合により名無しです:2005/04/25(月) 11:41:46 ID:+MjnFLiC0
>ゲロ氏
あれ?表題からして舞台は海かと思いきや、山なのか。意表を付かれた。
確かに今回も分量は少ないですが、情報量は多いですな。
なんとなく「千里眼」という言葉が思い浮かびました。
次回完結とは急展開ですね。前回のゆったりペースとはえらい違い。
「起承転結」でいうと起から一気に転、結ですな。
電車事故にはびっくりした。あれ、最初は日本じゃないと思ったくらいだ。
あとザク氏は別にニートじゃないだろwちょっと失礼だな。
>>274-275
281 :
作者の都合により名無しです:2005/04/25(月) 13:55:57 ID:oT8vflxhO
>>279 鉄道業界の事情も知らないのに、勝手なことばかり言わないでください。
確かに事故を起こしたことは事実ですが、運転技術の低下はありません。
スレ違い申し訳ありません。
ゲロ氏おつ。
今回は展開速いな。
ムグラと同化して世界を見るという計画は
前回からはぜんぜん想像出来ないな。
早めの更新を待ってるよ。
283 :
作者の都合により名無しです:2005/04/25(月) 19:46:09 ID:oT8vflxhO
ニートが書こうとしてるのは、ザクSSの中のバキ対寄生獣であり、新作ではない。
ちゃんとレスを読め。カス。
ニートはもうコテでは書き込まないんじゃなかったけか。
285 :
作者の都合により名無しです:2005/04/25(月) 22:03:57 ID:1xey5ihx0
ゲロ氏乙。
毎回毎回、ショートの連続ってネタ探しに大変だろうに頭が下がります。
少年とギンコの触れ合いと物語のオチがどうなるか楽しみです。がんばって下さい。
タウラスのアルデバランとはどんな人物かと聞けば、
だいたい「大らかな人物」「何事にも動じない人物」
「気が優しくて力持ち」「12宮不動の番人」
そんな評が聞こえてくるだろう。
しかし、彼も人の子。動じることもある
「…は?」
自分でもずいぶんと間の抜けた顔と声だったと思う。
だが仕方が無いではないか、生まれてこの方19年。
女性から愛を告白されたことなど一度たりともなかったのだから。
「ですから…」
アルデバランの貴重な表情を見ることの出来た幸運な人間、
それは冥闘士でも狂闘士でも海闘士でも聖闘士でもなく、
ましてや聖闘士候補生でもない。
ある教皇庁職員の娘でアルデバランの腰ほどしかない背丈の、可憐な少女だった。
「好きです!アルデバランさま!」
彼女からしてみたらずいぶんと高い位置にあるアルデバランの顔に向かって
エウロペという少女は咲く様な笑顔でそういってのけた。
12宮最初にして最強の番人とされる無双の豪傑
アルデバランを打ち倒したのは純情可憐な少女だった。
そこかしこで囁かれる事になるアルデバラン転倒事件はそうして起こった。
無論、いきなり仰向けにひっくりかえったアルデバランに驚いたエウロペが、
二つ隣の巨蟹宮まで応援を呼びに行ったことが原因である。
金牛宮の惨状をみるや、デスマスクは呵呵大笑し、
得意満面で言いふらした為でもあるのだが…
かくして金牛宮にアルデバランの同居人が誕生した。
小柄な彼女だが、バイタリティは人一倍どころの話ではなく、
放っておいたらあれよあれよと言う間にエウロペが金牛宮付きの職員、
古めの言い方をするならば従者となっていた。
オマケにどこをどう取り繕ったのか、金牛宮二階にちゃっかり住み着いてしまったのだ。
この件、教皇ことサガは面白がって許可する始末、
挙句の果てに態々冷やかしにくるような聖闘士も居た。
困ったのはアルデバランである。
今まで一人暮らしをしてきたところへいきなり押しかけ女房なのだ。
彼女の父親の所へと行って見れば、娘をよろしくお願いしますなどと言われる始末。
更に言えば白羊宮の番人・アリエスのムウは基本的に不在である関係上、
12宮に進入する賊からすれば事実上最初の宮のため、けっこう物騒でもある。
賊でなくとも亡霊悪霊魑魅魍魎の類いがアテナの御所目指して進入することは頻繁にある。
そのため、アルデバランは危険だとエウロペに注意するのだが…。
「大丈夫ですっ!私はアルデバランさまを信じておりますからっ!」
そういって聞かないのである。
信頼されるのは嬉しい限り、しかし、齢19と12歳。
年齢だけ見れば兄妹だが、外見は親娘だ。
風聞醜聞など気にするような男ではないアルデバランだが、
以外に恋愛感情については繊細だったのか、
エウロペの将来を案じたのか懊悩を抱えていた。
「なるほど、…君らしくもないな」
年下の女性、というか子供のあしらいが出来ず、妙に気疲れする毎日。
アルデバランは藁にも縋る思いで近頃評判の「アフロディーテの恋愛相談室」の扉を叩いたのである。
相談事は年長者に聞くべし、
最年長というべきか、仙人の領域に足を踏み入れている天秤座・ライブラの童虎は五老峰だ、
おいそれと訪ねていくわけにも行かないし、なにより現在久々に弟子をとっているそうで忙しそうだ。
黄金聖闘士では次にとしかさなサガは消息不明であり、下って22歳なのがデスマスクとシュラ
シュラは他人事に気を割くような男ではないし、デスマスクにいたっては言わずもがな。
したがって、アルデバランは相談相手に常日頃から
「恋愛相談室」「愛の伝道師」「迷える愛の子羊たちの牧童」
などを掲げているアフロディーテに、相談相手の白羽の矢を立てたのである。
「年下の恋人。か…、紫の上だねぇ」
艶然と笑うアフロディーテ。
釈然としないアルデバラン。
当のアルデバランからしてみれば、
男らしくない色白のなよなよとしている(ように思う)アフロディーテは、
あまり好ましい相手ではない。
しかし、好ましくない相手といっても
現時点でこの件を相談できるのは彼以外にはありえなかった。
アルデバランが日ごろから親交のある黄金聖闘士は実のところあまり多くは無い。
せいぜい獅子座・レオのアイオリアとは鍛錬の相手として組み合うこともある程度だ。
その彼とて、こちらから訪ねていけば歓談などするものの、
自分から進んで同年代の聖闘士の輪の中に入っていこうとするような事は無い。
昔から比べればずいぶんと丸くなったとは思うが、
それでもまだ彼の中には漫然としたしこりのようなものがあるのだろう。
宮が近いせいか、ムウが聖域に居る時は話し相手くらいにはなってくれるが、
その彼とて竹を割ったような性格のアルデバランからしてみれば、
何やら煮え切らないようなものを抱えているようにも思える。
この時点ではまだ教皇が偽者とは気付かぬアルデバランには、
ムウの抱えた苦悩がわからなかったのだから仕方が無いのだが。
ミロは熱血漢かつ朴念仁すぎてこの手の機敏には疎い、
その親友であるカミュは常に冷静だから相談くらいは出来るかもしれないが、
そもそもここ数年は弟子育成の為に修行地だ。
シャカに相談でもしようものなら問答無用で悟りを開かされてしまいかねない。
同僚である黄金聖闘士の面々を振り返ってみて、
まともな奴が殆んどいない事実にかるく驚嘆したアルデバランだった。
「…大丈夫か?」
気を落ち着かせるための軽い冗談にも反応せず、
黙りこくって思案顔になったアルデバランを心配し
声をかけるアフロディーテ。
現在、常なら仕切り板で相談者と回答者が分けられているのだが、
巨躯のアルデバランの為に外されていた。
これを後にアフロディーテは後悔することになるが…
「む、あぁ、すまん…」
アフロディーテ手ずから淹れたハーブティー、なんでもこのハーブも自家製だそうだが、
を一口すすり喉を潤わせてからアルデバランは相談を切り出す。
「俺の宮、金牛宮に新しく配属された職員の噂は知っているだろう?」
重々しく切り出すアルデバラン。
勿論、と合いの手をいれながら促すアフロディーテ。
「彼女のことなのだが、な…
なんと言ったらいいのか…、迷惑しているわけではないのだか、
妙に気疲れするというか…
それでも居ると妙に楽しいというか…嬉しいというか…」
だんだんと声音が小さくなっていくのにアルデバラン自身は気が付いているだろうか。
重症だな、これは。とアフロディーテは胸中でつぶやく。
恋愛初期症状、恋愛という感情に気付かないという奴か…。
鍛錬と武道に過ごすアルデバランだ、恋愛感情に疎いとは思っていた。
しかしここまで無自覚というのも困り者だ。
噂、というか事件の発端をデスマスクから誇張交じりに聞いた時、
こう言う事になるだろうとは思っていた。
この手の相手はけっこう厄介だ。
無自覚な感情なり本音なりを他人からそのものずばりと指摘されると、十中八九相手は怒る。
そうなった時、厄介だ。
一般人ならいい。怒り出してもせいぜい物を投げつけたり大声で喚いたりするくらいで済む。
それが聖闘士となると、怪我どころではすまなくなる。
白銀、青銅レベルなら聖衣を付けていない今でも充分に対処可能だ。
だが黄金同士ともなれば命に関わる。
知らず、アフロディーテは地雷原に踏み入れていたのだ。
火薬庫で火遊びをしている気分というのはこういう気分なのだろう。
頭のどこかで冷静にそんな事を考える自分がいて
アフロディーテは胸中で自分を笑った。
「ふむ…」
顎に手を当てて考え込むそぶりをする。
ただの時間稼ぎだ。
アルデバランのことだ、明確な指標を求めてここに来たのだろう。
竹を割ったような性格の彼の事、煮え切らない回答をもらっても嬉しくないだろうし、
なにより聖域の恋愛相談室を開く、愛の伝道師アフロディーテの名が廃る。
ええい、ままよ、こうなったら話術でどうにか黄金の野牛を納めねばなるまい。
「まず、いっておこう、アルデバラン
君はその女性を憎からず思っているのだろう」
アフロディーテの言葉を理解したアルデバランは、
面白いくらい狼狽した。
「なななななんあッなんだとアフロディーテ!」
おいいきなり暴走かよ!
アフロディーテの胸中を察することもなく、アルデバランは混乱する。
「まて!アフロディーテ!相手はまだ子供だぞ!」
ニヤリ、と笑ってハーブティーで唇を潤わせ
「恋愛に年齢は関係ないさ」
言ってしまって後悔。
からかうのと面白い相手を徹底的、イヤ、テッテ的?にからかうと後が怖い。
茫然自失の呈を成すアルデバランだが、再起動と同時におそらく何かが来る。
ならばその前に畳み掛けるべし
「好きあっているのなら、年齢も、なにも関係ない
大切なのは心、ハートだよ
大切に想うのならば応えてあげるべきだよ。それが誠実さというものさ
恋愛に限らず、誠実さをもって事に当たるというのはいい事だろう?」
だが、アフロディーテは失念していた。
アルデバランがシュラと並び立つカウンターの使い手であることを
相手の攻撃の威力を倍返しする高等戦術、カウンター。
止めとばかりに放たれた舌剣は、その威力を倍化させて跳ね返ってきたのだ。
物理的攻撃として。
「ぬぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
単純な小宇宙の放出だ。龍神丸もかくやという唸り声と共に放たれたそれは、
彼の最大奥義・グレートホーンには遙かに及ばない威力だが、
相談室用のブースを爆砕し、アフロディーテを中に舞わせ、
彼ごと双魚宮の壁面を完膚なきまでに砕き、
大理石のベッドにアフロディーテを寝かしつけることくらい容易い威力だった。
アルデバランは思考がパンクしてピンク色のお花畑に飛びんだ。
大理石のベッドに寝かしつけられるという貴重な体験をしたアフロディーテは、
呆然とそんな事を思った。
「フ…ッ、初心だな。アルデバラン」
それでも一応の格好を崩さず、
あのティーセット高かったのになぁ、
と現実からちょっとだけ目をそらしたアフロディーテ。
自分の中にあった感情に気付き、身もだえするアルデバラン。
アルデバラン転倒事件の衝撃を吹き飛ばす事になった
いわゆるアルデバラン双魚宮破砕事件の顛末である。
大理石ベッドからガレキのシーツを剥ぎ取ってアフロディーテを起こし、
彼に平謝りし、金牛宮が修理費用を持つことを確約し、
相談室の片付けと再建を手伝ってアルデバランが金牛宮に帰った時、
既にとっぷりと日が暮れていた。
「おかえりなさいませ!アルデバランさま!」
夕食時、美味しそうな香りと共に元気な少女の声を聞き、
これでもいいかと想ってしまうあたり、彼らしいといえばらしかった。
で結局、エウロペはまだ金牛宮二階にいるのです。
295 :
銀杏丸:2005/04/25(月) 22:32:44 ID:Hmuw8gLz0
第五回-美少女と野牛-投下させていただきました
第四回の感想を下さった方々、本当にありがとう御座います
本来ならば一軒一軒レスを返すのが礼儀なのでしょうが、
新作投下をもちましてその返礼とさせていただくご無礼お許しください
今回登場しましたエウロペ嬢、OVA冥王ハーデス12宮編にて
アルデバランの回想に登場した少女がモデルです
アルデバランはこういった変則的な押しによわいのでしょう、たぶん
後れを取るケースが絡め手の攻撃ばかりでしたし
この二人のお話はもうすこし続きますのでお楽しみください
蟹氏のお話が難航しております…
彼は難しいです
では、またお会いしましょう
お、新作だ。金牛宮は中篇くらいなのかな?
エウロペかわいいぞ。アルデバランがうらやましいw
ぐぐってみたんだけど、彼女の名前はおうし座の由来に関連するんですね。
続き楽しみにしてます。
297 :
作者の都合により名無しです:2005/04/26(火) 10:12:11 ID:xfHRhbVa0
ヘタレな牛さんにも春がキター
しかしアフロディーテはこれから先も銀杏丸氏のSSで
美味しい役を取り続けていく予感がするw
298 :
作者の都合により名無しです:2005/04/26(火) 11:51:06 ID:hNpc4Q5WO
アルデバランはへたれじゃねえよ。
星矢にだって、勝とうと思えば余裕で勝てたんだよ。
他の戦いだって、命がけで戦って、冥闘士を倒したりしてんだよ。
馬鹿にすんなよ。好きで五月に産まれたわけじゃねえんだよ俺は。
299 :
作者の都合により名無しです:2005/04/26(火) 12:27:52 ID:w72GLaWW0
じゃあ蟹座の俺はどうなるんだw
次は蟹をお願いします。アフロは面白いな
海皇篇では亀さんディフェンスというヘタレな逃げをしたわけだが>牛
VS氏やミドリさんが来ないなあ
新東京13番区ガラン城、城門前。
葉隠覚悟とガラン城衛兵隊長ボルトとの闘いは、既に佳境を迎えていた。
ボルトはその身に超展性チタン合金製の強化外骨格、四百の英霊を宿す『震』をまとっているが、対す
る葉隠覚悟は強化外骨格『零』を失い、武器を持たぬ半裸の身でこれに立ち向かっていた。
葉隠覚悟の圧倒的劣勢は誰の目にも見えていたことだった。だが……
覚悟は幼少の頃に己が身に埋め込まれた八つの『零式鉄球』を用い、この逆境を乗り越えようとして
いた。あらゆる打撃を跳ね返す強化外骨格『震』に対し、これを投球。体内にて炸裂させることによりボル
トに致命傷を与えたのだった。覚悟の対強化外骨格用戦略、『対超鋼』であった。
ボルトは零式鉄球を胸腹部に喰らったことにより、臓物を口から吐き出し、地響きを立てて倒れた。
試合ならば、いや、殺し合いであったとしても、この時点で勝負は決していたであろう。
覚悟自身も、ボルトの肉体の死を確信していた。
対超鋼を合わせて六発。震の内部のボルトの肉体は充分に死したる筈……
それでもなお、葉隠覚悟は叫んだ。
「だが、一流(われら)にはその先がある!」
貴様はまだ闘えるのだ!肉体は死ねども、その精神は死んではおらぬ!
敵であるボルトの闘志を、気力を奮い立たせようと覚悟は叱咤した。
「立てい!ボルト!!」
その言葉に呼応するように、その目をビガッと光らせ、ボルトはゆっくりと立ち上がった。
そして一声唸ると、口からはみ出した大量の臓物を噛み千切り、それを震わせながら投げ捨てた。
「うぬの対超鋼が入った分、拙者の臓物を出した!これで帳消し!!」
ボルトの胸腹部には今、臓器の代わりに零式鉄球が埋まっているばかりであった。
もはやこの先の長き生は望めない。この闘いに、己の生命力の全てをかける所存であった。
この返礼に、覚悟はクラブ・エースの紋章浮かぶ拳を握り締めて答える。
「見事なりボルト!キサマのような超一流と廻り会えたこと、弓矢の家に生まれたる者として本懐なり!」
「なめるなよ!小僧!言葉で飾ってもらうほど拙者まだくたびれておらぬ!!宿敵に世辞をぬかすほど
うぬに余裕はないのだ!」
「世辞ではない!」
覚悟の言葉を軽んじたボルトに、覚悟がとびかかる。それを迎撃せんとボルトは右腕を赤熱化させる。
が、その拳よりも先に、覚悟の右の張り手がボルトの顔面を捉えた。
「その証拠に!俺は――」
左掌を叩き込む。
「全力!」
さらに左の膝をぶち込む。反撃の間さえ与えぬ、見事な連撃だった。しかし。
「甘い!」
ダメージをほとんど受けていなかったボルトが、覚悟を蹴り上げる。
「左様な全力では、散様に挑む資格なし!」
身動きの取れぬ空に飛ばされた覚悟に対し、ボルトは超高温の火球『昇華弾』を放った。
「昇華!」
かわすことはできぬ。だが、ここで覚悟は咄嗟の機転を利かせた。
残弾二つの万能兵器『零式鉄球』の一つを取り出し、大きな膜状に展開、盾としたのだ。
「零式鉄球!対昇華防熱膜形態!」
膜となった超球が昇華弾を覆う。しかし。
「薄い!」
ボルトのその言葉と共に、防熱膜が溶解する。
覚悟、昇華弾に被弾。超高温の火球を喰らった覚悟の皮は筋層まで燃え剥がれ、目玉は煮え爆ぜ眼
球内を満たす硝子体は蒸発し、全身のあらゆる体毛が燃え焦げた。
昇華弾は覚悟を背後の高層ビルにまで吹き飛ばし、叩きつけた。
最早覚悟に戦闘能力は無い。その命も、じきに吹き消されてしまうだろう。
衛兵隊長ボルトの勝利であった。
「無駄死にだったな、葉隠覚悟」
ボルトは瓦礫の山と化したビルと共に埋まった覚悟を眺め、口にした。
「散様は、既にここガラン城を発たれていらっしゃる。ここにはもう、拙者しかおら――」
言いかけた瞬間、瓦礫を押しのけて葉隠覚悟が立ち上がった。
怨霊の如きうめき声をあげながら。
「ボ!」「ル!」「トォォォォォォォ!!」
体毛は燃え尽き、体表面は筋層が剥き出しになり、眼球は潰れ、視力は失われている。
それでもなお覚悟は立ち上がり、ボルトへと立ち向かっていった。
ボルトは足を大きく広げ、これを迎え撃たんとする。
「応!かかってこい!!」
覚悟の潰れた瞳が、ギン、と光った。
覚悟にはもう勝機は無い。闘えば、ただいたずらに命を縮めることになるだろう。
それでも葉隠覚悟は闘わんと、立ち上がったのだ。
「ゆくぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
左手を前に、右手を引き、覚悟は構えた。この状況からなお、勝つつもりなのだ。
だが、その時。
覚悟の前に巨大な壁が現れた。今の覚悟には、物の形状も色も見分けがつかない。
突如として二人の間に現れたザクが、壁としか認識できなかったのだ。
――葉隠覚悟。お前が二人目のシャッフルの仲間だったのか。
ザクは覚悟の方を向き、排気音と共に信号を発した。キング・オブ・ハートの紋章が浮かぶ拳を掲げ。
視力を失った覚悟には信号が見えない。だがその排気音が、壁の正体がザクであると気付かせた。
「ザク、なのか。では……東方先生はお亡くなりになられたのか……」
――お前をシャッフルの仲間として、男塾まで送り届ける。後は俺に任せろ。
だが、その言葉は覚悟には届かない。
「この闘いは俺とボルトのもの!邪魔するなら――」
会話が通じぬと察したザクは、人差し指で覚悟の腹を突き、気絶させた。
――寝ていろ、葉隠覚悟。
ザクが振り向くと共に、ボルトは大声で名乗り上げた。
「ガラン城衛兵隊長、不退転戦鬼ボルト!」
――男塾塾長江田島平八が一番弟子、スペランカー・ザク!
ザクの突然の出現にも動揺することのないボルトに対し、ザクは同様に名乗りを上げた。
「我らが不倶戴天の怨敵、ザクか!我らが聖戦に水を差しに来たのか!」
――葉隠覚悟は今や俺達の大切な仲間。今失うわけにはいかんのだ!
「ほざくのは拙者を倒してからにしろ!」
ザクはバズーカ砲を放った。
――そうさせてもらう!
強化外骨格は瞬間的な衝撃に対しては驚異的なまでの耐久力を持っている。ザク・バズーカの攻撃力
も、やはりボルトには通じない。
ボルトは両腕を挙げてガードを固め、弾を受けた。
爆発、炎上。黒煙が一時周囲を取り囲むが、強風が吹き、すぐさま煙ははれる。
煙の中からは、無傷のボルトが現れた。
「どうした!その程度ではあるま――」
ボルトは言葉を失った。
ザクの姿が、無い。
しかしボルトは長年の戦闘経験より培った勘から、すぐさまザクが後ろにまわったことを悟った。
「ザクめ、速い!」
振り返った瞬間、既にザクはプラズマクローの構えをとっていた。
――俺の勝ちだ!
ザクは右手のプラズマクローを放った。が。
強力なプラズマの噴出により、ザクは後方へと吹き飛ばされてしまった。
――な、なんだ!
「ザクめ、ふざけておるのか!」ボルトがその無様な姿を見、怒鳴る。
動揺しながらも、ザクはノヴァが今の闘いを眺めているのを思い出し、教授に問うた。
――ノヴァ教授!今のはいったいどういうことだ!
尋ねてからしばらく、けたたましい笑い声が無線通信から響いてきた。
――笑ってんじゃねぇよ、教授!
『キャハハハハ!いやぁ、私自身も予測していませんでしたよ。このような事態は』
ザクはボルトと距離をとり、膝をついた。
――で、どういうことなんだ?
『プラズマクローが強化されたのです。シャッフルの紋章の力により、気がより密接にプラズマ技と結びつ
いたのでしょう。推し戻されぬよう、バーニアを噴出させながら押し込むように放ってみなさい』
――そうか。分かった!
ザクがそう返事し地を蹴らんとするのと同時に、ノヴァが『そうそう』と付け加えた。
『気と結びついたと言うことは、つまり気合いを入れれば入れるほどより強力になるということです。気合を
入れる為にも、攻撃前の前口上なんかを叫んでみてはどうですか?』
――前口上、か。……よし!
ザクは地表ギリギリを飛び、ボルトへと突っ込んでいった。それをボルトは、昇華弾の構えで迎える。
――俺のこの手が真っ赤に燃える!勝利を掴めと轟き叫ぶ!
右拳のキング・オブ・ハートの紋章が真っ赤に光り、浮かび上がる。
燃える拳から突き出すのは、青い炎の爪。今までのプラズマクローよりも、ふたまわりは大きい。
爪の一本一本が、大樹の如き太さであった。
ボルトが昇華弾を放つ。同時にザクは上方へかわすが、右足の膝から下が吹き飛ばされる。
即座に再生。
「む!ザクの再生能力、これほどのものか!」
上空より、ザクはバーニアを噴かせながら右手を突き出し、ボルトへつっこんでいった。
――爆熱!!プラズマクロォォォォォォォォ!!
ザクの新必殺技か!
突撃してくるザクを避けるだけの余裕は無かった。いや、あったとしても、ボルトは避けなかっただろう。
散様の御為にも、拙者が身をもって奴の戦力を分析しきらねば!
ボルトは爆熱プラズマクローを受けんと、両手を広げた。
次の瞬間、ザクの炎の五指はボルトの体を貫いていた。
強化外骨格を形作る超展性チタン合金が溶け出し、地面へ滴り落ちる。
既に死したる肉体であるボルト自身の出血は、ほとんど見られなかった。
――ボルト、お前……あえて俺の攻撃を喰らったな?
「ぐふふふ。貴様の攻撃力、速力、再生能力は拙者がこの目にしっかと焼き付けた!これでもう、貴様は
散様には勝てん!」
――自分の身を、散の勝利の為の礎としたのか……。お前ほどの戦士が、なぜ散などの下につく?
「『真苦露西手意』後の新世界の王足り得るのは散様のみ……我が身は散様必勝の為にある……」
――ボルト……。ならば遠慮はせん!
ザクは地に足をつけ、貫いたボルトを掲げ挙げた。
――ヒィィィィィィィィィィィトォォウ!
プラズマクローがさらに加熱する。だが、ボルトは一切の悲鳴をあげない。
ただ心の中で、散に対して最期の言葉を発するのみであった。
散様!こやつの再生能力には御気をつけ下さいませぇぇぇぇぇぇぇ!!
ドルアーガの塔最上階にて、葉隠散の手の中で赤ワインの注がれたグラスが砕け散った。
赤いワインが飛び散るその様は、肉が爆ぜ血が散る様にも見て取れた。
散の瞳が、かすかに揺れる。直感的に、今起こっていることを悟ったのだ。
「……ボルトが散るのか。だが貴様の死は、絶対に無駄にはせぬぞ」
――エンドッッ!!
ザクの右手の上で、爆発が起こる。ボルトは、強化外骨格は塵となり、爆炎と共に消えていった。
プラズマクローを収め、ザクは拳を握る。今回はあっさりとケリがついた。だが……
――散に忠誠を誓う者の闘志、ただならぬものだ。油断できんぞ。
ザクは葉隠覚悟の元へと急ぐとその身を両手で包み、飛び立った。
葉隠覚悟は余命いくばくも無い。だが、王大人のいる男塾にさえ連れていけば。そして、俺は。
ザクは男塾目指して飛んで行った。覚悟を男塾へ置いてゆき、次なる戦場へと向かうのだ。
今回投稿分終了。
>>273 その通りです。決戦編は筆が乗りまくってスラスラ書けてるんだけど・・・
>>283 1行目後半、その通りです。でもニート状態は脱したんで、ニート扱いは勘弁な。
当然だが、「黄泉が…死んだ…」に他意は無いです。僕は彼(彼女かもしれんが)に対して
悪意は抱いてないし。グラヤム批評の中でも参考になる点は多かった。
それだけに深読みしすぎているレスがあると気分が悪くなる。気持ち悪い。
310 :
作者の都合により名無しです:2005/04/26(火) 17:24:24 ID:Erlv++ObO
まあ、最近は何故か携帯だけじゃなくパソコン荒しも増えてるからな。
無視出来んのもわからんでもない。
だが、いちいちそんなクズ相手にしてても精神衛生上良くないだけだ。
ザク氏乙
しかし今回は熱い展開だったね。覚悟のススメは読んだことはないけど、この独特の暑苦しさは流石ヤンチャンと
いったところかな。あと、まさかザクがドモン化するとは。このザクは普通にゴッドガンダム並に強そうだ。
312 :
ふら〜り:2005/04/26(火) 20:35:25 ID:Qzt17gNt0
>>ゲロさん
まだよく解りませんが、ムグラって何だか「山の神様」なイメージが。でも今回のは山を
越えて外まで見える、と。ならば街の人込みの中の、何か嫌なものでも見てトラウマに
なり、旅立つ意志を挫かれてしまう……というのが思い浮かびましたが。さてどうなる?
>>銀杏丸さん
豪快さが微笑ましいなぁアルデバラン。そーか外見は親娘か。そーか相談相手がいないか。
などと頷きながら読んでしまいました。アフロもいい感じにボケてるというか、被害者っ
ぷりが楽しい。続き……二人の進展か、はたまた馴れ初めか。どっちも読みたいですぞっ。
>>ザクさん
交わす怒号はカッコいい、が映像的にグロい……いや、グロいからこその汗臭さ、血生臭さ
もある意味カッコいいのですが。何にせよ濃かったです、今回は。ともあれ男塾にさえ
行けば全快できるから、しかと休め覚悟。それとザク、随分強さ&風格ついてきましたな。
ザク氏乙。今回も力作だな。
ニートとか言ってる奴らは気にするな。
その内飽きるって。本人が気にしなければ。
ザクさん乙。
ボルト、もう少し粘るかと思ったけど、あっさりでしたね。
しかし肉虫の立場がないな。
316 :
Dr,Yam:2005/04/27(水) 21:53:49 ID:ymFsmvlA0
「せんせーい!」
何度目かの呼びかけで、ようやくヤムチャは振り返った。声の主は見知らぬ
少女だった。立ち止まった少女とヤムチャの左右を、往来の人々が通り過ぎて
いく。
「あんた誰?」
ヤムチャが尋ねると、少女はちょっと拗ねたように頬を膨らませた。
「ひどーい。わたしのこと忘れちゃったんですかあ?」
ホルターネックの白いワンピースの裾をつまんでクルリと一回転してみせた。
ストレートの長い髪の毛がワンピースと一緒に柔らかく風に舞った。
「ほら、わたしですよわたし。思い出してくれましたかあ?」
そんな猪口才な真似をされても知らないものは知らない。ヤムチャは少女の
素性について思いを巡らせた。そして一つの結論を導き出した。
「貴様、悟空の放った刺客だな! 死ね!」
怒りのヤムチャが繰り出した狼牙風風拳が少女の五体を引き裂くかと思われ
た、その刹那。
「ヤムチャ様、ストップ!」
ヤムチャの頭上から大量のウナギが降ってきた。首までウナギのヌルヌルに
埋まって拳法どころではなくなったヤムチャに、空のタライを持ったプーアル
が諭すように言った。
「悟空さんが刺客を放つ訳ないでしょ。さっきの本屋の方ですよね」
言葉の後半は少女に向けたものだった。少女はハイと言って笑顔で頷いて、
それでヤムチャも思い出した。
数日前に立ち寄った本屋で、店長らしき中年の男が少女の手首をつかんで何
やらまくし立てていた。立ち読みに夢中のヤムチャは他人同士のいざこざなど
全く興味がないが、男の怒鳴り声はイヤでも耳に入ってくる。
「手前の店で万引きなんざ百年早いでやんす! まったく武士の風上にもおけ
ない女でやんす!」
「万引きなんかしてません! それにわたし武士じゃありません!」
「言い逃れもほどほどにするでやんす! これが動かぬ証拠でやんす!」
少女の背負っていた風呂敷包みを解くと、中身は大きなダンボール箱だった。
取次ぎから届いたばかりのダンボール箱には、今日発売の新刊本がぎっしりと
詰まっていた。
317 :
Dr,Yam:2005/04/27(水) 21:55:08 ID:ymFsmvlA0
「万引きじゃありません! だってわたしお金なんかもらってません!」
「お金をもらうのは手前の方でやんす! 潔くこの場で切腹するでやんす!」
あまりにうるさくて立ち読みに集中できない。ヤムチャは本棚から百科辞典
を抜き取って、男めがけて思い切り投げつけた。百科辞典は男の後頭部に命中
して、男はひっくり返って失神した。自由の身になった少女はダンボール箱を
背負って、ヤムチャにお辞儀をして店を出て行った。その時の少女だった。
「おー、あんたか」
「はい! あの時はどうもありがとうございました!」
ヤムチャはウナギの山から抜け出して、山の上に胡坐をかいている。体のぬ
めりをタオルで拭き取りながら、ヤムチャは少女に言った。
「で、その万引き女がオレに何の用?」
「万引きなんかしてません! わたし、ヤムチャ先生にお願いがあるんです」
少女は先ほどから、ヤムチャのことを先生と呼んでいる。通りがかりの女子
高生にウナギを投げつけて遊んでいるヤムチャに、少女は深々と頭を下げた。
「ヤムチャ先生、わたしに喧嘩のやり方を教えて下さい!」
ヤムチャはウナギを投げる手を止めて少女を見た。起き直った少女の真剣な
表情は、冗談を言っているとは思えない。
「なんでよ」
「はい! 息の根を止めたい男がいるんです!」
物騒なことをサラリと言ってのけた。本屋で店長を倒した腕前を見込んでの
お願いだろう。ヤムチャはしばし考えて、そして重々しく口を開いた。
「えーよ」
「わーい!」
少女は心底嬉しそうにウナギの山に飛び込んで、抱え込んだウナギを大空高
く放り投げた。車道に落ちたウナギを踏んだ自動車が次々とスリップを起こし
て衝突炎上した。
「で、いつまでに強くなれればいい?」
「はい! 決闘は一ヵ月後です!」
「オレの特訓は万引きよりもつらいぞ。途中で音を上げるなよ」
「はい! わたし万引きなんかしてません!」
318 :
Dr,Yam:2005/04/27(水) 21:55:55 ID:ymFsmvlA0
ヤムチャの描いた青写真はこうだ。まず最初の一日目で、すでに七個集めて
あるドラゴンボールで神龍を呼んで、少女を強くしてもらう。残った二十九日
は特にすることもないので適当に遊んだり昼寝したりひたすらボケーとして暮
「そんなのいけませーん!」
少女は巨大なハンマーでドラゴンボールを叩き割った。粉々になったドラゴ
ンボールをさらに踵で踏みつけて、ヤムチャに必死に訴えた。
「わたし、ヤムチャ先生に色々と教えてほしいんです! 楽して強くなったっ
て、ちっとも嬉しくありません!」
少女の心意気を褒め称える前に、ヤムチャはまず基本的な質問をした。
「そのドラゴンボール、オレの家にあったやつ?」
「はい! 先生の住所を調べて合鍵を作って忍び込みました!」
非常に手癖の悪い少女である。しかしヤムチャは怒らなかった。ドラゴンボ
ールがなくても困ることはないし、家には他に盗られるようなものはない。
「分かった。今からオレの家で特訓だ! 行くぞ万引き女!」
「はい! わたし万引きなんかしてません!」
少女はヤムチャについていった。商品タグがついたままのローファーを履い
ていた。プーアルも二人の後を追って、街にはウナギと大破した車と生臭い女
子高生だけが残った。
ドラゴンボールはこの世から消えた。ドラゴンボールの永き歴史に終止符が
打たれた。
319 :
Dr,Yam:2005/04/27(水) 21:56:26 ID:ymFsmvlA0
勝手知ったるヤムチャの自宅だった。少女は全く淀みのない足取りで玄関か
らヤムチャの部屋に直行して、スチールベッドの下に潜り込んだ。収納箱を押
しのけて、一番奥から洗濯バサミを拾ってきた。
「はい! 夕べ先生がないない言って騒いでた洗濯バサミ!」
「うわー、気持ち悪ーい」
おそらく盗聴器も仕掛けている。初めて少女に対して漠然とした不安を感じ
たヤムチャであったが、洗濯バサミ捜索中のパンツ丸見えに免じて全てを不問
に付してやることにした。
「それで先生、まずは何から教えてくれるんですかあ?」
少女はいつの間にか特訓用のジャージに着替えていた。もちろんタグがつけ
っぱなしである。
「えーと。とりあえず狼牙風風拳の型から始めよう」
「はい! 今時の若者は見てくれ優先ですもんね!」
身も蓋もないことを言う少女の前で、ヤムチャは演舞をしてやった。
「こうで、こうで、こうだ! さあ、オレの真似をしてやってみろ!」
「はい! こうで、こうで、こうですか!」
どうなんだかよく分からなかった。狼牙風風拳はヤムチャが独自に編み出し
た拳法なので教則本の類は存在しないし、ヤムチャも鏡で型をチェックする程
マメな性格でもないので、自分がどんな動きをしているのか知らなかった。た
だ何となくサマになっているような気がしたので、両手で大きな輪を作った。
「はい満てーん」
「やったー!」
少女とヤムチャの共同生活が始まった。洋服や食料は少女がどこからか調達
してきてくれるので、余分な費用は一切かからなかった。時には励まし時には
鬼となり、少女にとってそれは辛く苦しい、それでいて夢のような一ヶ月間で
あった。
320 :
Dr,Yam:2005/04/27(水) 21:58:16 ID:ymFsmvlA0
「今日は基礎体力の向上だ!」
「はい! 頑張ります!」
「それが終わったらセックスの特訓だ!」
「それは出来ません!」
「今日は武器を使った攻撃を教えるぞ!」
「はい! 卑怯なやり口なら誰にも負けません!」
「よく頑張った! ご褒美に今日はセックスデーにしてあげよう!」
「はい! 死んでもイヤです!」
前夜からの雨はあがったが、辺りには濃い霧が立ち込めていた。決闘当日、
約束の場所の河原に立って、少女は大きく胴震いをした。明け方の冷気のせい
か、はたまた来るべき大一番に興奮を隠し切れないのか。後見人として同伴し
たヤムチャは、そんな少女の様子を一瞥して声をかけた。
「決闘なんてどうだっていいじゃん。帰ってメシ食って寝よーや」
「わたし万引きなんてしてません!」
そんなことは聞いていない。少女はヤムチャの言葉など耳に入らず、一心に
敵の到着を待っている。ヤムチャはやや時間を置いて、別のことを訊いた。
「キミと闘う男って、どんなヤツなの?」
「あんなヤツです!」
前方の霧がわずかに揺らめいて、人の影が浮かび上がった。影は次第に輪郭
を整えて、ツンと立てた髪の毛が分かるぐらいの距離になったところで声を出
した。
「なんだ、ヤムチャじゃねえか」
「覚悟ー!」
ヤムチャは駆け出した少女をマジックハンドでとっ捕まえて引き戻した。男
はヤムチャの良く知るあの男だった。
「なにするんですか先生! わたしの決闘を邪魔するなんて、先生はそれでも
武士ですか!」
「武士じゃねっから。それより、キミの相手って本当にアイツ?」
必死にマジックハンドから逃れようとする少女に、ヤムチャは確認した。
321 :
Dr,Yam:2005/04/27(水) 21:58:55 ID:ymFsmvlA0
「間違いないです! アイツが万引きだ万引きだ騒いだせいで、わたし何度も
警察に補導されたんです! ヤムチャ先生、アイツの知り合いなんですか!」
初めて決闘の理由を聞いた。ヤムチャはマジックハンドを伸ばして、少女を
男の鼻先に突きつけた。
「悟空ー。この万引き女が、お前の息の根を止めるらしいぞー」
「おー、おめえいつかの万引き女じゃねえか」
「わたし万引きなんかしてません!」
少女の反論には一切取り合わず、ヤムチャと悟空は会話を続けた。
「で、どうすんの? 本当にこいつと決闘すんの?」
「ああモチロンだ。オラ強えヤツと闘いてえんだ」
「この万引き女が強そうに見えるのか。悟空、お前目が腐ってんだろ」
「んー。でもオラ、強えヤツと闘いてえしなあ」
ここに至って、ヤムチャは悟空がタイフーン級のバカであることを思い出し
た。ダメでもともとの一計を案じて、少女を脇にやって悟空に耳打ちした。
「あのな。本当は万引き女、フリーザの百万倍のパワーの持ち主なんだ」
「百万倍ってなんだ。納豆と豆腐を混ぜたヤツか」
「その通りだ。お前が全力で闘っても勝てないかもしれない。だから、勝負が
長引く前に元気玉で一瞬で決めてやれ」
「おお、オラ始めっからそのつもりだ。泣く子も黙る元気玉だぞ」
「よし。ちょっと待ってろ」
ヤムチャは少女を引き寄せて、悟空から離れた所で今度は少女に耳打ちした。
「キミがどうしても闘いたいと言うのなら、オレはもう止めない。ただ、キミ
が悟空に勝つ方法は一つしかない」
「わたし万引きなんかしてません!」
「それはもういいから。いいか、悟空って男は強いんだが、闘いの最中に時々
バンザイをしてボケーと棒立ちになることがある」
「へー。バカなんですか?」
「バカなの。で、その時両手の上に大きな玉ができるから、それを……」
少女はマジックハンドから解放された。悟空と少女の間に一枚の枯れ葉が舞
い落ちて、それが決闘開始の合図となった。
322 :
Dr,Yam:2005/04/27(水) 22:00:51 ID:ymFsmvlA0
「でや!」
悟空が両手を挙げると、あっという間に特大の元気玉が出来上がった。悟空
が改良を加えた、地球の寿命を縮める急速チャージの元気玉である。少女も動
いた。悟空との間合いを詰めて、無防備になった悟空の腹に渾身の狼牙風風拳
を打ち込んだ。
「てい!」
当然、全く効かない。悟空は元気玉から少女に視線を移して、非常にガッカ
リした声を出した。
「なんだ、オメー弱えなあ。もういいからさっさとおっ死んじまえ」
悟空は天空にかざした両手を少女に向けて振り下ろした。ピチャンと水の跳
ねる音がして、少女の足元に大きなタライが落ちた。悟空が放ったのは元気玉
ではなく、ウナギの泳ぐ檜のタライだった。
「ん?」
素っ頓狂な顔でタライを見つめる悟空に、少女の影が落ちた。バンザイをし
た少女の両手の上には、悟空が作った元気玉が浮いていた。
「せんせーい。これでいーんですかー?」
闘いを見守っていたヤムチャは、両手で大きな輪っかを作った。
「はい満点でーす。向こうがタライを返してくれたんだから、キミも玉を返し
てあげなさーい」
「これ返したら、万引きにはなりませんよね!」
「ならないよー」
「はい! 悟空さんの玉!」
少女は悟空から掠め取った元気玉を、悟空の頭上に落としてやった。
「ん?」
悟空は顔を上げて空を見た。悟空の視界は白い光で満たされた。
「ん?」
それが悟空の最後の言葉になった。悟空を飲み込んだ元気玉は一度小さく縮
んでから、空いっぱいに拡散した。元気玉は消え、悟空の姿もどこにもなかっ
た。悟空は死んだ。ドラゴンボールも無くなった。もう何のマンガなんだか誰
にも分からなくなった。
323 :
Dr,Yam:2005/04/27(水) 22:02:19 ID:ymFsmvlA0
少女はヤムチャに抱きついた。ヤムチャは少女の頭を撫でてやりたい衝動に
かられたが、所詮は万引き女なのですぐに思い直した。
「先生! わたし勝ったんですね! 悪い孫悟空の魔の手から、わたしが地球
を救ったんですね!」
「そんなご大層な名目の喧嘩じゃなかっただろオメー」
今の少女には何の効き目もないヤムチャの指摘だった。少女は妖精みたいにそこらを飛び跳ねて喜びを爆発させて、ふいにヤムチャに向き直った。
「ヤムチャ先生のおかげです」
先生と呼ばれるのにもすっかり慣れたヤムチャだが、この「先生」はいつもとちょっと違う余韻をヤムチャの耳朶に残した。ヤムチャはなぜか少女の顔を
まともに見られなくなって、プイとそっぽを向いてしまった。
「結局セックスは一回もさせてくれなかったけどな」
「それでもいいんです! わたし先生のことずっと忘れません!」
全然よくない。よくないが、ヤムチャは鼻の横をかきながら不器用な笑顔を作って少女に言った。
「最後にもう一度、先生って呼んでくれないかな」
「はい! ヤムチャ先生、だーいすき!」
少女の唇がヤムチャの頬に触れた。軽くて柔らかくて温かい、花びらのようなキスだった。少女の胴着の襟元についた防犯タグが風に揺れた。
「次に万引きしたらオレがぶっ殺すからな。肝に銘じとけよ」
「わたし万引きなんかしてません! ヤムチャ先生こそ何よこれ!」
少女はヤムチャの腰の青龍刀を蹴飛ばした。防犯タグがついていた。
「ははは。先生を叱るつもりかこいつ」
ヤムチャは少女の頭を軽く小突いた。少女の耳の穴から値札のついた指輪が
地面に落ちた。
「もう! 先生ったら!」
少女はヤムチャの胴着を捲り上げた。裁断前の一万円札のシートがさらしのように腰に巻いてあった。
「やったな! お前も裸にひん剥いてやる!」
「べーだ! ヤムチャ先生、ここまでおいでー!」
「セックスさせろー!」
「笑っちゃうぐらいイヤでーす!」
霧はすっかり晴れていた。元気玉よりも明るい光に照らされた朝の河原で、 犯罪者に成り下がった二人はいつまでも鬼ごっこを続けていた。
ヤムチャは少女の名を知らない。
完
324 :
作者の都合により名無しです:2005/04/27(水) 23:49:34 ID:/lleq2QYO
急に廃れたな
325 :
作者の都合により名無しです:2005/04/28(木) 07:53:27 ID:vRTGtcaS0
VSさん?
ヤムスレ同じネタを見た気がするけど。
違う方ならごめん。そしてお疲れ様です。
326 :
超格闘士大戦:2005/04/28(木) 12:25:22 ID:SEHk7zYv0
327 :
超格闘士大戦:2005/04/28(木) 12:26:05 ID:SEHk7zYv0
第27話 「遥かなる邂逅」
「黄泉が、死んだ…?」
この戸愚呂の言葉は、それを投げかけられた彼の仲間達にとっても、
そして対峙する浦飯達にとっても、衝撃的なものだった。
魔界での魔王軍と黄泉達の攻防戦において、浦飯達は黄泉の実力の高さを
間近で感じ取っていた。大魔王バーンを倒すという、彼らの目的は、黄泉の手によって
いとの簡単に達成されていた。これは、浦飯達にとって、嬉しい誤算でもあったが
同時に新たな強敵としての、黄泉の実力の高さを思い知らされる結果でもあった。
この先地上を守るという戦いを続けるにあたって、黄泉という存在は、必ず超えなくては
ならない、最も堅い壁の1つであった。それが…突然崩れた。
「確かにこの大陸の中で、強大な妖気を持つ者同士がぶつかりあい、そして片方の気が消えた…」
「それは俺も感じた…。はっきりとはわからないが、前に感じた黄泉の妖気に似ていた…
そして相手の妖気も、以前感じたことのあるものだ…誰かはわからねえけど…」
戸愚呂の言葉を受けて、蔵馬、幽助が交互に言葉を交わした。少し前に、水瓶座、アクエリアスの
黄金聖闘士、カミュの攻撃を受けてダメージを負った飛影は、今だ意識を回復しないままだった。
今は、桑原の背中の上ですやすやと眠っている。蔵馬によれば、大ダメージを受けた際の防御策として、
身体自身があえて意識を断ち切ったままにして、心身を回復させている途中とのことらしい。
かつて、飛影が炎殺黒龍波という技を使った際、直後に数時間の深い眠りに入ったことが数度あったが、
それと同じような状態だ…との蔵馬の言葉に、浦飯、桑原の両名はなるほどと納得した。
戸愚呂弟の、サングラスの下の目が笑っているのに浦飯達は気づいていた。間もなく、戦闘が始まる。
羽織っているジャケットを脱ぎ、タンクトップ一枚になった戸愚呂が、浦飯達に語り始めた。
「俺達は黄泉の命によって蘇り、地上侵攻作戦の手助けをしてほしいと頼まれた。
望んだ復活ではなかったが、恩に報いるべく、俺達は黄泉を助けるべく働いていた。
だが、それももう終わりだ。俺達は好きにやらせてもらう…」
直後、戸愚呂弟のタンクトップがビリっと破れて消え去り、筋肉の塊が姿を現した。
同時に明らかに攻撃的な妖気が、眼前の浦飯達に対して放たれた。
「やるのかよ…あんた達と戦うつもりはねぇが…俺達を、暗黒武術会の時と同じだと見ると
痛い目に会うぜ」
328 :
超格闘士大戦:2005/04/28(木) 12:30:16 ID:SEHk7zYv0
1年ぶり…暗黒武術会での闘い以来の、浦飯チームと戸愚呂チームの激突が始まった。
両者共に、恐らくまったく予想していなかった再戦の実現だろう。
一方、数分前まで、大陸中のほとんどの目が一斉に向けられていた戦場では、すでに
雌雄が決していた。ミストバーンと黄泉の戦いは、戸愚呂の言葉通り、黄泉の死によって
終結していたのだ。それは、その場にいた誰もが目を疑う程の、大逆転劇だった。
「ミスト…バーン……?」
目の前にいる主に対して、フレイザードが声をかけた。その声は、驚きと興奮の混じった
ような、妙に震えた声だった。彼の声がそんな雨にうたれる子犬のようになってしまった要因として、
ミストバーンの腕に腹を貫かれ、首をだらりと垂らして死んでいる黄泉の姿が目に入ってきたことが
あげられる。が、それ以上に、フレイザードに衝撃を与えたことは、ミストバーンの外見の変貌であった。
それは突然…変わった。まばゆい光を発したミストバーンの姿を一旦見失ったフレイザードが、
次に見た物は、串刺しにされもがいている黄泉と、まがまがしい気を発しているミストバーンだった。
そしてその時ミストバーンの顔は、幽霊のような不気味な顔とは打って変わって、
20歳程の人間の青年のような、高貴感溢れる顔に変貌していた。腰のあたりまで届く程の長髪が、
風に煽られてゆらゆらと靡いていた。その揺らめきがふっと止まった直後、黄泉の首がガクリと垂れて
その妖気が完全に消えた。ミストバーン、大逆転勝利の瞬間だった。
だが、ミストバーンの顔に、喜びの表情は浮かばなかった。それどころか、とても申し訳ないことをしてしまった…
そんな悲痛感溢れる険しい表情をしていた。フレイザードが声をかけるまで、その表情は変わらないままだった。
「フレイザードよ、見てのとおりだ。黄泉は死んだ。すぐに周りにいる妖怪共も、同じように始末せよ」
ミストバーンは、フレイザードに対してそう命じた後、右腕を勢いよく外側へと振り払い、
突き刺さっていた黄泉の死体を投げ飛ばした。死体はドスン…と鈍い音を発して地面に落ち、
当然の事ながら、その後動くことはなかった。これを合図にしたかのように、フレイザード達は
一気に残る妖怪達の掃討を開始した。もとよりフレイザード1人でも全滅出来る程の雑兵の群れ。
全てを掃除し終わるのに、大した時間はかからなかった。妖怪軍の、最後の一匹を焼き殺した
フレイザードが、何万にも及ぶ妖怪達の死体の上を歩いて、ミストバーンのもとへ帰った時、
ミストバーンの顔は、もとの幽霊のような顔へと戻っていた。さっきの顔は見間違いだったか…。
ふと自分の目に不安を覚えたフレイザードだったが、本人に顔について問う事も出来なかった。
ミストバーンも、何も語ることなく、その後の指示をするだけであった。
329 :
超格闘士大戦:2005/04/28(木) 12:32:12 ID:SEHk7zYv0
「これで我らの前の障害はほとんど消え去った。後はエアーズロックを占拠するだけよ…
お前達はもうよい。魔界へ帰れ。予定通り、あれの準備をするのだ…」
「あれ…ですな…ミストバーン様」
「そう、バーンパレス始動だ」
フレイザード、ザボエラの両名は、ミストバーンの指示通りに魔界へと戻っていった。
ミストバーンはと言うと、数十万のモンスターも群れを引き連れながら、
魔軍司令ハドラーの、亡骸のある地へと向っていた。ハドラーの死の知らせから、まだ
大して時間が経っていない。死後数日しか経っていない魔族の身体ならば、暗黒闘気での
復活が可能であった。竜の騎士バランに敗れ去ったハドラーだったが、ミストバーンにとって
ハドラーはこれからの戦いにとって必要な存在であった。
330 :
超格闘士大戦:2005/04/28(木) 12:32:48 ID:SEHk7zYv0
浦飯チームと戸愚呂チームの戦いは、開始後たった数分しか経ってないにも関わらず、
決着が付こうとしていた。暗黒武術会後、仙水忍との戦いを経て、魔界へ突入し、
さらにそこでの激闘にもまれて、強くなっていった浦飯達にとって、戸愚呂チームの面々は
もはや昔は強敵だった…というレベルでしかなかった。戸愚呂チームのほとんどは、
暗黒武術会において命を落としており、復活したと言っても所詮は当時の力のまま。
かつては浦飯達を窮地に陥れた、鴉の追跡爆弾、武威の武装闘気、戸愚呂兄の触手攻撃、
そして戸愚呂弟の鋼の筋肉でさえも、今の浦飯達の前に空しく弾かれるだけであった。
「俺達の今の実力…少し甘く見ていたようだね…」
蔵馬はそう呟いた後、相手である鴉の身体に対して、薔薇の鞭…ローズウイップで
鞭撃を与えた。鴉の身体は、手の平で切られる豆腐のように、スパっと鮮やかに切刻まれた。
戸愚呂兄、武威も同じように敗れ、死の国へと再び帰っていた。残るは戸愚呂弟のみであったが、
筋肉操作100%の全力パンチも、浦飯に軽々と受け止められ、傍から見ても、戸愚呂の勝機はゼロであった。
戸愚呂の身体は、浦飯の打撃技を受けてすでにボロボロだった。力なく、浦飯に覆いかぶさるように
倒れこんだ戸愚呂は、浦飯に対して、
「フッ…お前達がこれ程まで強くなっているとはね…2度目か…お前に負けるのは…」
優しい声でそう言った。
「望まざる復活だったが…お前達のこの強さを見ることが出来て、少しは得した気分になった…
俺達を蘇らせたのは、冥王ゴルゴナという男だ…恐らくは、お前達を倒す為…
気をつけろ…奴は…底が見えん…さぁひと思いにやってくれ…」
「わかったぜ戸愚呂…」
覆いかぶさっている戸愚呂の身体を、ゆっくりと持ち上げて、立たせると、浦飯は右手人差し指に
力を込め始めた。彼の得意技、身体中の霊力を集中させて、弾として放つ技、霊丸を作り出すためだ。
そう、暗黒武術会決勝…あの時と同じ光景が繰り返されようとしていた。ただ違うのは、
両者の間の力の差だけであった。十分に霊力を溜め込み、光輝く右手指を、浦飯は戸愚呂に向けた。
「あばよ、戸愚呂」
……その時であった。
「チイッ 無様だぜ…てめぇ…」
威圧感のある重低音が突然、あたりに響いた。
331 :
超格闘士大戦:2005/04/28(木) 13:01:57 ID:SEHk7zYv0
蔵馬、桑原、そして戸愚呂…皆が揃って同じ行動をとった。
突然響いたその声の主のほうへ、顔を向ける。
「……誰……?」
「…あれは…見覚えがある…確か範馬…」
「あんたか…こないだは悪かったねぇ邪魔が入ってしまって」
範馬勇次郎…。声の主は地上最強の生物の異名を持つ、勇次郎その人であった。
浦飯は、唯一その声に反応せず、霊丸を放ち、戸愚呂弟の身体を粉砕した。
戸愚呂が勇次郎の言葉に反応し、侘びを入れた直後のことだった。
勇次郎を見た各々の反応は、多種多様だった。戸愚呂を倒した後、浦飯もまた、勇次郎の姿を
確認するのだが、浦飯幽助のそれは、蔵馬や桑原が思わず問いかけてしまうほどの、特殊なものだった。
勇次郎を見た浦飯は、まるでその登場に驚いているかのように、唖然とした表情をしていた。
「て…めぇ…は…」
浦飯と目を合わせた勇次郎もまた、不思議な感覚にとらわれていた。
何故か、心臓の鼓動が、速く、力強くなっている。運動もしていないのに、身体中から
汗がだらだらとあふれ出てくる。目の前の男を見ていると、妙に血が逆流するような…
そんな、まるで、強者と出会った時のような、興奮…期待…全てを超越したような、何ともいえない感覚…
「き…貴様…は…」
勇次郎が、浦飯に返す。
「俺は…浦飯幽助…」
「俺は…範馬勇次郎…」
「範馬…さんかい…変なこと言っていいかい?」
「なんだい」
「あんたとは、ずっと以前に一度会っている…そんな気がする…」
「ああ…俺もだ」
浦飯と勇次郎はその後、お互いに吸い付くように接近していき、そして固い握手を交わした。
332 :
超格闘士大戦:2005/04/28(木) 13:04:04 ID:SEHk7zYv0
急な出張が入ってしまい、今から大阪行かなければならないので
今月はこれで更新はおしまいです。出来ればもう一回更新したかたですが。
急いで書いたうえ、投稿規制のせいで、電車の時間がやばいです。ではまた来月頭ぐらいにお会いしましょう。
お仕事が忙しいのにご苦労様です。職人の鑑ですね。電車間に合いましたか?
しかし戸愚呂チームがカマセっぽくなったのはショック。
確かに今のゆうすけ達には遠く及ばないだろうけど、今でもゆうゆう白書の真のボスは
戸愚呂弟だと思ってる。しかし、勇次郎の握手はちょっと違和感。
あ、原作でアライとしていたか。
ブラックキング氏、最近悲しい事故が多いので、気をつけて帰ってきてください。
勇次郎は魔族なのか。
トグロはもう一波乱起こして欲しいなあ
335 :
作者の都合により名無しです:2005/04/29(金) 01:54:00 ID:gufXw7fI0
おつかれさまですブラックキングさん。
幽助と勇次郎のタッグが、最強を誇るミストバーンにどこまで肉薄するか
楽しみです。次の更新はゴールデンウィーク明けですか。楽しみにしています。
ブラキン氏乙。
バーンは死んだのに、若いバーンの肉体はそのままとは気になる展開ですね。
ブラキン乙
戸愚呂と勇次郎との再戦はないのか、残念。
ところで勇次郎は何で復活できたんだろ
ドラえもん、変わったのは声だけかと思ったら、絵のタッチとかのび太達の性格も変わっちゃったんだね。
最近のCGで作られたアニメに嫌々してたとこに、新たな衝撃だった。
これが、若さか。
340 :
作者の都合により名無しです:2005/04/29(金) 23:20:51 ID:gufXw7fI0
ミドリさんマダー?
340
新刊で出てきた由乃の妹候補をどう辻褄あわせるかで悩んでいるとみた。
このままいくとおでこ姉妹。
みどりの日だけに来てほしかったなぁと思わなくも無い丑三つ時
今日ミドリが来なければ、俺は腹をかっ捌いて死ぬ。
344 :
作者の都合により名無しです:2005/04/30(土) 18:30:03 ID:xDW250FcO
バキスレから死人が出よるか
「確かめに来たんだ。この新しい肉体(からだ)でおまえの前に立って、心を揺さぶる何かがあるのか」
鷹の団団員の墓に見立てた剣が無数に刺さる、雪に覆われた丘の上にて。
再びその『剣の丘』を訪れたガッツは、宿命の敵、かつての無二の親友と再会した。
光の鷹グリフィスが、己が野望の為に贄に捧げた仲間達の墓に足を運んだのである。
ガッツと会う為に。
グリフィスは大切な仲間達を生贄に捧げることにより、『ゴッドハンド』と呼ばれる深淵の神の眷族が
一人、『闇の翼』フェムトへと生まれ変わった。さらにその後、名も無き使途の業により、フェムトは再び
人の肉体を持つグリフィスとして転生した。混迷の世に、新たなる国を作らんとするために。
そして新たな肉体を伴い、グリフィスはここへ来たのだった。かつて自身の半身とまでに感じた唯一の友
ガッツが、今、どれだけ自分の心を捕らえて離さないのかを確認する為に。
だが、グリフィスはこう言い放った。
「どうやら俺は自由だ」
贄に捧げた仲間の死に心を縛られることも、ガッツに心を奪われることも無いと言うのだ。
ガッツは考えるより先に大剣を抜き、グリフィスに突進しながら感情を爆発させた。
「何も……お前がやったことに……お前が裏切ったあいつらに……何一つ感じちゃいねェってことかッ!」
グリフィスは表情筋を一切収縮させず、声量、声質も変えずに冷たく答える。
「俺は、俺の夢を裏切らない。それだけだ」
斬!壊!殺!
どす黒い感情がガッツの心を満たす。復讐が、心という器を闇色に染める。
最早そこには思考さえ存在しなかった。
ガッツはグリフィスを叩き斬らんと、ドラゴン殺しを振り下ろした。
その一撃は、突如として現れた巨人の楯によって受け止められた。
長身であるガッツの二倍の背丈はあろうかという巨躯であった。
全身甲冑に身を包み、左手のラージシールドを前に、右手の戦槌を後ろに引いて構えている。
ガッツが「はっ」、と気付いた時、既に巨人は戦槌を振り下ろしていた。
巨剣を楯として構え、巨人の一撃を受け止める。
強烈な衝撃が剣に加わり、防御にまわったガッツを吹き飛ばした。雪原を転がりながら、ガッツはなんと
か膝を立て、手をつき、踏みとどまる。あらためて前方に目を向けると、先ほどの位置から十数mは飛ば
されたようであった。
何だ、こいつは。
剣を杖代わりにして、ガッツはなんとか立ち上がった。骨が、関節がきしむ。
「今のお前では」グリフィスが口を開く。
「俺どころか、そのグルンベルドただ一人にさえ勝てない。その男と闘い、なお生き残ったならば……」
そこまで言った所で、グリフィスの後ろに翼を持つ巨大な猛獣、使途ゾッドが降り立った。
グリフィスはゾッドが差し出した左手の上に立ち、ガッツに背を向けるとゾッドに飛び立つよう命令した。
「待て!!」
ドシン、ドシンと重厚な足取りで近づいてくる巨人を無視し、ガッツはグリフィスに呼びかけた。
「何処へ!!」
「言ったはずだ。俺は、俺の国を手に入れると」
グリフィスが答えると同時に、ゾッドは羽ばたき始めた。
「なにも変わりはしない」
ゾッドはグリフィスを乗せ、その場を発った。
「変わりはしないだとッ!」ガッツは飛び立ったゾッドに、義手に備え付けられたボウガンを向けた。
「あれだけのことをやって――」
言いかけた時、巨大な影がガッツを覆った。
「決闘の最中だぞ、黒い剣士」
ガッツの前に、グルンベルドが立ちはだかっていた。
「てめぇ……使途かッ!どきやがれ!」
左の義手を横に振り、ガッツは叫んだ。
「俺が用事があるのは――」
「我が名はグルンベルド。鷹の団の一武人として、黒い剣士に一騎撃ちを所望する」
ガッツの先を遮り、グルンベルドは名乗る。グルンベルドのその言葉にガッツは硬直した。
何だと……?鷹の……団……?
「参る」
グルンベルドは戦槌を振りかざした。と同時に、ふつふつと沸く怒りがガッツの身の硬直を解いた。
「貴様ら使途風情が!」
巨剣を構え、引き、
「その名を騙るんじゃねぇッッ!!」
一気に突き出した。その一撃は、またもや堅固な楯に防がれる。グルンベルドは戦槌を振りかざした
まま、楯ごとガッツに体当たりをぶちかます。ガッツはまたもや吹き飛ばされ、雪の上を転がった。
手をつき立ち上がろうとするガッツの口の中に、酸味のある鉄の味が広がる。内臓にダメージを負った
のだろう。ガッツは唾液と胃液の混じった血を吐き捨てた。
なんて野郎だ……。人の姿のままだってのに、一撃一撃が大砲みてぇな破壊力を持っていやがる。
力は並みの使途より上か!
膝をついて立ち上がろうとするガッツを、グルンベルドが蹴り上げる。空を舞い、地に叩きつけられる。
ガッツは再び吐血した。
そのガッツに、グルンベルドは楯の底をつきつける。楯の底から覗く物は、丸く大きな穴――
……砲門?
「全力にて敵を屠るが武人。我が砲弾を受け、木端となりて散華せよ!」
楯に大砲を仕込むなどという発想は、およそ普通では考えられないものであった。だが、ガッツは自身
もその左の義手に大砲を仕込んでいる。その為、グルンベルドの砲撃に対するガッツの反応は思いの
ほか早いものであった。
好機(チャンス)!
グルンベルドよりも早く、その砲門に向けてガッツは義手の大砲を撃ちこんだ。
グルンベルドの巨大な楯は、内部で爆発を起こし微塵と化した。ガッツの放った砲弾がラージシールド
内の火薬を誘爆させたのだ。
「こやつ……義手に大砲を仕込んでッッ!!」
楯を装備していたグルンベルドの左腕もまた、爆発によるダメージを受けている。これでグルンベルドの
防御力は激減した。この機を逃さず、ガッツは巨剣を大上段に構え、飛び上がり、振り下ろした。
グルンベルドは戦槌の柄を頭上に掲げてこれを防ごうとする。この戦槌は本来両手で持っても手に余る
程の大きさであり、柄はガッツのドラゴン殺しのそれよりも一回りも太い代物であった。だが、それでも
ガッツの巨剣を防ぐには細すぎ、また、脆すぎた。
ドラゴン殺しの一撃は巨大な戦槌の柄をひしゃげさせ、チーズに刃を入れる様に軽々と切断した。
その際わずかばかりの抵抗を受けたために剣の軌道は頭頂をそれ、グルンベルドの右肩に深々と叩
きこまれた。この一閃は筋肉を、鎖骨を切断し、鎖骨下の動脈を寸断した。
切断面から、血が噴水の如く噴き出す。グルンベルドはうめき声を上げ、片膝をついた。
「……見事!この一騎撃ち、貴様の勝ちだ!」
グルンベルドは左手でガッツの剣を掴み、肩口から引き抜いた。出血がさらに激しくなる。
だがその血液も、ふつふつと沸騰し、ついには炎を上げて燃え上がる。傷口からあふれ出した炎は
全身を取り囲み、さらに業火となって燃え盛る。
変身の予兆か。
ガッツは剣を振り、血を払いながら炎の塊と化したグルンベルドを眺める。剣を握り締め、唾を飲む。
ここからだ!
「不死の(ノスフェラトゥ)ゾッドを相手に五分に渡り合っただけのことはある!噂にたがわぬ超戦士よ!
だが――」
炎の勢いが一気に増す。十数mにも及ぶその業火の中から、ぎっしりと並んだ牙が、巨大な口が、金剛
石の如き鱗に覆われた頭が現れる。周囲の雪が蒸発し、蒸気が辺りを漂う。
「ここより先は我が使命、我が主のために……光の鷹の使途として御相手つかまつる!」
猛火がその口の中に収束してゆき、ついにはグルンベルドの真の姿が現れる。
無数の炎の結晶に包まれた、尻尾を持つ四足獣。長い首の先についているのは、爬虫類の頭部。
グルンベルドの正体は、炎を御する巨獣、竜(ドラゴン)であった。
「ドラ……ゴン……」
高さ十数mの巨体を、ガッツは呆然と見上げた。
デカいだけの使途なら、いくらでも見てきた。だが、こいつは――
「黒い剣士よ、一気に勝負をつけさせてもらうぞ!」
ドラゴン・グルンベルドの声が、低く腹に響く。その口の中に、火炎球が生み出されていた。
「我が灼熱、受けよ!」
グルンベルドの口から、灼熱のファイアブレスが放たれた。
迅い。避ける間はない。ならば!
ガッツは火炎球を避けようともせず、むしろ逆に、剣を構えて突進していった。
火炎球がガッツに直撃し、爆炎が燃え広がった。
「馬鹿な。勝負を、その身を捨てたのか!黒い剣士!」
グルンベルドが叫んだ刹那、火炎球の中から黒い塊が飛び出してきた。
ガッツである。巨剣を楯として身の前に掲げて炎を防ぎ、火傷を負う範囲を最小限に抑えたのだった。
一瞬の間勝利を確信したグルンベルドには隙があった。渾身の一撃を叩き込めるだけの隙が。
ガッツは剣を振り上げ、グルンベルドの右の前足に全力の一撃を叩き込んだ。だが。
斬りつけられたグルンベルドの足には、髪の毛一本ほどの細い痕が残っただけであった。
堅ぇ!
ガッツの右手に痺れが奔った。グルンベルドはその様を見下ろし、鼻で笑う。
「我が肉体は鋼鉄以上の堅牢を誇る!並の剣撃では傷一つつかぬわ!」
――ならば俺がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ、叩くッッ!!
ガッツとグルンベルドの双方は、遥か上空から何かが落下してくるのを確認した。二人の声が重なる。
「「あれは、ザクか!!」」
――俺のこの手が真っ赤に燃える!勝利を掴めと轟き叫ぶ!
落下速度にプラスし、バーニアの推進力がザクを加速度的にグルンベルドの方へと推し進める。
――爆熱!!プラズマクロォォォォォォォォ!!
一瞬前には空の一点の輝きだったザクが、爆発的な勢いでグルンベルトへと突っ込んでいき――
炎の五指が、グルンベルドの脳天へと叩き込まれた。
――悪いが一撃で決めさせてもらうぞ!鷹の使途ッッ!!
ザクの爆熱プラズマクローが入ると同時に、爆炎がグルンベルドの体を包み込んだ。
グルンベルドの爆発を確認すると共にザクはガッツの隣へと飛び寄り、着陸する。
――三人目のシャッフルの戦士はお前だったのか、ガッツ。
ザクはキング・オブ・ハートの紋章が浮かぶ右拳を掲げる。それに呼応して赤く燃え上がる、ガッツの
ブラック・ジョーカーの紋章。
ガッツは己の拳の紋章とザクを見比べ、眉をひそめて言葉を返す。
「……つーと、てめぇがキング・オブ・ハートを受け継いだ戦士なのか」
――そうだ。お前をシャッフル同盟の仲間として迎えに来た。詳しい話は後でするから、ついて来――
「断る」
ザクが言い終えるよりも先に、ガッツが口を挟んだ。
「俺は復讐の為に旅を続けているだけだ。シャッフルの戦士としての使命なんざ知ったことか」
――そのことだが、実はソドムの中に――
「第一」
またもやガッツが口を挟む。今度はガッツ自身にとっても有益な情報であったということも知らずに。
「……眼前の敵も倒してねぇのに先の話なんか出来るか」
ガッツのその言葉と共に、グルンベルドを包み込んでいた爆炎が吹き飛んだ。
炎の中から現れたのは、全くの無傷であるグルンベルドの姿。熱傷を負ったような様子は、皆無。
――馬鹿な!俺のプラズマクローが効かないというのか!
「愚か者めが。火竜であるこの俺を炎で倒そうなど、笑止の一言!」
グルンベルドが一歩、ザクとガッツへと足を出す。ザクは一歩下がるが、ガッツは逆に一歩前進した。
「そうだ。ひっこんでいろ、ザク。あいつは、あいつらは俺が倒す」
――ばかぬかせ!お前の剣はあいつには通用しないんじゃないのか!
そのザクの言葉に、ガッツは舌打ちをした。「だったら、どうしろっつうんだ」
――奴には俺のプラズマクローは効かない。お前の剣も通用しなさそうだ。
ザクは拳を握り締め、話しかける。
――ならば、俺とお前がタッグを組んで挑むしか無いだろう。
今回分投稿終了。
書きながら、第1話にして敵に必殺技が通用しないというゲッターロボを想起した。
353 :
作者の都合により名無しです:2005/04/30(土) 20:02:08 ID:R5MrAsJtO
ザク新章乙。
ザク乙。
最初読んでた時は、「おいおいザク以外はかませ扱いかよ」と思ってたので、
必殺技が通じない展開の方が嬉しい。
自分の技が通じないと弱気になるザクのキャラがいいな。スペランカーぽくて。
355 :
作者の都合により名無しです:2005/04/30(土) 20:59:24 ID:cVtFwcEP0
ザク氏乙。
俺はガッツよりザクよりグリフィスが好きだし
何より俺に似てるのでグリフィスを今から主役にしてくれ。
356 :
作者の都合により名無しです:2005/04/30(土) 21:30:54 ID:FO7FXVcF0
ここ最近は特にだが、ここの小説は基本的にメチャクチャ面白いのってないと思う。
やっぱプロが書いた小説、漫画には遠く及ばないし、そっち読んだほうが面白いもん。
俺からしてみたら、
>>332の言うように、仕事やってて片手間に書いているほどいれ込んでる人も
そうでない人も同じレベル。設定とか伏線とかちゃんとしてる作品でもしょせんは素人の書いたものなんだよね。
みんなが面白い、完成度が高いって言ってる作品でも俺はそうは思わない。
長く続いてた作品とか、古株の人の作品とかには、つまんないって思ってても言えないんじゃない?
そんな暗黙の領海があるように思える。
誰の、どんな作品とは言わないけど。いっぱいあるしね。
俺も逝くべきなんだろうね。たぶん。
まあ、みんな分かってるだろうけど↑はコピペな。
,,-" ̄ ̄`i
| -―┴-、
_,,.|,_ |
<ニ| _,,..--━━━━━━<<
,れl-'/`ー-、 , ,_,,-' i"
i/ノ|!|;;| `ー- |-‐' i
/:!|;;;;| ,_」 | 趙陳歩沙撫沙撫ーーー!!!!
/ !|;;;;;;;|_,,/ノヾヽ、,|
/ :!|;;;;;;;;;;;;;;;';;;';;`;;;;;;t、
/ !|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ\
_/ !|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、ヽ
!|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ \
!|ヾ、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
!|][]ヾ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/|!
, /[][:[ヾ;;;;;;;;;;;;;/[]ヾ、
"/ ][][:][][ヽ;;;;;/][][:]`i、
"/ 'ソ
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/denpa/1103810341/
ザク氏乙。
後藤好きな俺としては、寄生獣編が楽しみ。
360 :
343:2005/05/01(日) 00:30:58 ID:hHoOmXJ3O
さよなら、皆さん。
さよなら、ミドリさん。
俺は逝きます。逝く前に、ミドリさんのSSを読みたかったけど、仕方ないですね。残念です。
腹は捌かないですが、逝きます。ありがとうバキスレ。
第一話「旅立ち」
北の都。平均気温はマイナスを示し、四季を問わず付近の山々は雪で包まれている。こ
の寒さゆえ、人口は他地域に比べるとかなり少ない。都というには、少々物足りない土地
ともいえる。しかし、こんな不便な僻地をむしろ格好の根城とする者がいた。
ドクター・ゲロ。かつてはレッドリボン軍で兵器開発を担当していた天才科学者。だが、
レッドリボンは孫悟空によって滅ぼされ、彼もまたテロリストに助力したとして学会から
追放されてしまった。
こうして全てを失ったゲロは、狂った矛先を──孫悟空へと向けることになる。
人生を崩壊させた怨敵、孫悟空。ゲロは彼を倒すためだけに、今まで築き上げた研究成
果を全てつぎ込むことを決心した。名声や栄光などいらぬ。ゲロは新たな人生を歩むこと
になる。
ゲロは延々と研究と実験を繰り返した。一方ではスパイロボを使って、精力的に悟空た
ちの情報を入手する。もう一方で、彼は罪なき人々を拉致し、非人道的な人体実験を強行
していた。
そして、ついに彼は研究の終点を見出す。あらゆる強者の細胞で組み立てられ、しかも
成長していく究極兵器。「人造人間セル」が誕生したのである。
培養液で満たされたカプセルから、セルが野に放たれた。彼を完成させるべく、働き続
けたマザーコンピュータから音声が流れ出す。
「おはよう、セル。君に与えられた使命は分かっているだろうね」
「あぁ……分かっているつもりだ。完全体になるのだろう」
脳にインプットされた強烈な使命感。彼は生まれながらに、自分が未完成であることを
知っていた。ただし、完成させる方法までには及ばない。今度は逆に、セルがコンピュー
タに尋ねた。
「私が完全体になるためには、どうすればいいのだ」
コンピュータはしばらく思考してから、音声を流し始める。
「君はドラゴンボールというものを知っているか」
セルは少し嫌な予感がした。
「ドラゴンボールを七つ集めて、神龍に“完全体にしてくれ”と頼めば──」
「ちょっと待て! そりゃあんまりだろ!」
予感が的中してしまい、声を荒げるセル。さすがにコンピュータも反省したようで、す
かさず謝る。
「……すまん。忘れてくれ」
もちろん、今のは冗談である。さっそく本題へと入る。
「どうすれば完全体になれるのだ。本当のことを教えてくれ」
「……君が完全体となるには、まずはクリスタルを発見しなければならない」
「クリスタル?」
「世界中に散らばる宝石だ。水のクリスタル、火のクリスタル、土のクリスタル、風のク
リスタル、炎のクリスタル。これら五つを、尻尾にあるスポイトから吸収するのだ。さす
れば、君は完全体になれるはずだ。ただし、各クリスタルには強力な守護者がいるから気
をつけろ」
コンピュータによると、どうやら「クリスタル」が完全体への材料らしい。
「……なるほど。でも、ちょっと待てよ。火と炎って……」
「いいから早く行けよ。殺すぞ」
「は、はい……」
セルはコンピュータが発する迫力に、ただ押し黙るしかなかった。
そのまま地下研究室から出て行こうとするセルだったが、再びコンピュータが音声を出
して呼び止める。
「ちょっと待った。伝えておかねばならんことがあった」
セルが足を止め、コンピュータへ振り返る。
「セルよ、まだ君は弱い。だから、表にボディガードを用意しておいた。きちんと挨拶し
ておけよ」
「ほう、気が利くな。では、念のためこちらも質問しておこう」
「どうした」
「完全体になれば、俺はどれほどのパワーを得られるのだ?」
「パワーやスピードなど肉体的な能力のみならず、精神面までもパーフェクトな超人とな
るはずだ。サイヤ人やフリーザ一族など、問題にならぬほどのな……」
セルは軽く頷いただけで、さほど驚きはしなかった。が、もちろん心の中では有頂天と
なっている。
軽やかに悠々と、スキップで研究室を出て行くセル。それを見届けると、役目を終えた
コンピュータは静かに活動を停止した。
第一形態セルによる、狂った完全パラレル世界での物語です。
色々キャラクターが出てきますが、都合上セルだけは別物となります。
次回へ続く。
>>ザク氏
前回の覚悟のときもそうでしたけど、ザクが来る前の原作キャラ同士の戦いも熱いですね。
今回のガッツ対グルンベルド戦は原作のガッツの負傷がなくて爽快感がありましたね。
あと、グルンベルド使徒形態の水晶の竜ってデザインが個人的に好きだったりするので
今回の戦いでどれくらいザク達を苦しめるのか楽しみ。
>>サナダムシ氏
なんだか、マザーコンピューターの性格といいクリスタルといい、ちょっと電波な展開ですねw
セルだけは別物とのことですが、他のキャラクターは原作通りということに?
しかし、この展開からしけい荘物語のようにガチンコバトルになったりして・・・。
>不完全セルゲーム
1,3レス目と2レス目のギャップにワロスw 3レス目でもスキップしてるが。
火のクリスタルと炎のクリスタルは言われなきゃ気付かなかったよ、俺・・・
この時点ではコンピューター>セルなんだな。セル、マジ弱いな。だからこそ期待できるんだが。
完投能力のあるサナダムシ氏が書くから安心して読めるし。
367 :
作者の都合により名無しです:2005/05/01(日) 08:49:06 ID:yhFHBTpU0
わーいサナダムシさんの新連載が始まった。
>>366さんの言うとおり、完投能力と確かな実力の氏だから安心して読めます。
サナダムシ版セルゲーム、期待しております。
あとたまに数レス終了のショートでいいからしけい荘の面々にも会いたいな…
368 :
作者の都合により名無しです:2005/05/01(日) 15:55:46 ID:hHoOmXJ3O
真田氏はよくやってるが、相当暇なのかと思う。
ご苦労。もしかして今流行りのニート?
お前らニートって言いたいだけちゃうんかと言ってみたりみなかったり
なんでそんなに弱気なんだ?
断定すりゃいいのに
サナダムシさん乙
しばらく連載は無いと思ってたので嬉しい。
また復活してきたかな?でも最近はザクさん、ぽんさん、五さんが来ないなあ。
いったいどうしたんだろう。
Z戦士さんは投げ出しかな。残念。
お前、ただそれ言いたいだけやろ?
やめえや。ぽんっ!
374 :
作者の都合により名無しです:2005/05/01(日) 18:15:51 ID:bMBR4w5E0
サナダムシ氏はオールラウンダーだな。
短編・中篇・長編とすべて満遍なく安定して質の高い作品が書ける。
新連載、期待しております。
パオ氏、VS氏最近なんの音沙汰もないな。
初期からいた住人としては、第一世代には特に頑張って欲しいのだけど。
書く人、書かなくなった人が最近顕著になってきたな。
頑張れ、皆さん。
しかしゴールデンウィークを感じさせる書き込みが多いなw
昔から何かとザクに粘着してるカスがいるな。
マジでキモイ
ほっといてやれ、ここでストレス発散しないと人殺しかねないガチイキだ。
377 :
ふら〜り:2005/05/01(日) 21:22:26 ID:3DJaFRb20
>>VSさん(サイトで見ました)
隅々まで、豪快に異次元的大暴走なのに。何度も吹き出しながら読んでたのに。なのに悟空
を倒すところだけは、マジメに溜息でました。作中の人物=悟空と読者とを、それぞれ別々
の方向で引っ掛けてる。ぜひパクりたい技法ですが、難しそう……高度に面白かったです!
>>ブラックキングさん
むぅ。私も、戸愚呂たちにはもう少し頑張って欲しかったところですな。まあそれはそれ
として、前回と同じく大人しいフレイザードが良い感じ。いつか、「ミストバーン個人の
為に」何かしてくれるかも。勇次郎も大人しめですが、こちらはいずれ爆発するでしょね。
>>ザクさん
前回と同じく、戦いながら「吼えて」ますね〜。戦いの内容も文字通り熱いんですけど、
台詞の方も負けずに熱い。あと、ドラゴンとザク(モビルスーツ)が戦う、というのは想像
するとなかなか絵になりますな。そこに(一応)人間も加わっての熱戦。あぁ挿絵が欲しい。
>>サナダムシさん
クリスタルといえば初代FFが真っ先に思い浮かぶんですが、この物語ではどういう存在に
なりますやら。サナダムシさんのことですから、シリアスに行くかギャグに行くか、予測
不可かつ期待大。いっそ、しけい荘そのものが出てきたりしたら狂喜しますが。どうなる?
ふらーりさんは誰にでも平等にレスをつけてるが、疲れないか?
感想レスを書くためだけに読んでる作品もあるんじゃないか?
俺はふらーりさんの感想も作品のひとつと思って読んでるけどな。
↑ふらーりさん以外からは感想レスが貰えない職人?
381 :
作者の都合により名無しです:2005/05/02(月) 21:23:53 ID:LxfIk4sc0
↑ふらーりさん以外からは感想レスが貰えない職人
緑の日にミドリさんの復活を期待してたのは俺だけであるまい。
でも、ブラキン氏やザク氏、サナダムシ氏は好調ですね。
去年もゴールデンウィーク明けから絶好調になって来たので
今年もそうなるといいな。みんな頑張れ。
あと、ふら〜りさんもまたなんか書いてよ。睡眠時間に余裕出来たら。
383 :
作者の都合により名無しです:2005/05/03(火) 09:27:08 ID:FvCycljHO
職人の皆サソお疲れ様です。
これからも、シャッキリポンッ!と頑張ってください!
あげとくか。
GW中は作品来ないかもしれないが
385 :
栗田:2005/05/03(火) 20:01:27 ID:FvCycljHO
シャッキリポン!
386 :
作者の都合により名無しです:2005/05/03(火) 20:37:38 ID:3pty0PIL0
範馬勇次郎が脱力を使っている!?
上げようがなんだろうが職人さんの都合がつかなきゃ作品は来ないわい。マターリ待つべし。
388 :
作者の都合により名無しです:2005/05/04(水) 09:30:25 ID:Cpo6cLodO
うみにんは投げ出しか。まあ残念と言えば少し残念だが、別にいいや。
まあ、わざとだと思うがうみにん氏は前回の後書きで
次は五月になると書いてた。多分大丈夫。
投げ出し危険度MAXはローマ氏、Z戦士氏。
結構危ないのはVS氏、ユル氏、ミドリ氏、草薙氏。
ちょっと危ないのはパオ氏、サマサ氏、鬼の霍乱氏、五氏。
上記以外の方々は多分大丈夫。まあ全て主観ダガナー
NBさんはマダー?
391 :
作者の都合により名無しです:2005/05/04(水) 11:36:05 ID:Cpo6cLodO
草薙って完結したんじゃないの?
わけわかんね。
| すみません
| となりでワッショイしてもよろしいですか?
\___ ____________
∨
__∧_∧__/■\____
| ( ;´∀`) (´∀` ) .|
| ( ) ⊂ ) |
/ ̄( ( (  ̄( ( (  ̄ ̄/|
|| ̄ (_(_) ̄(_(_) ̄ ̄||
∧
/ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄\
| (エッ!!) |
| ど、どうぞ・・・・ |
おにぎりワッショイ!!
\\ おにぎりワッショイ!! //
\\ おにぎりワッショイ!!/
+ +
+ /■\ +
__∧_∧__ (´∀`∩)__ +
| (´∀`; ) (つ 丿 )) |
| ( )(( ( ヽノ .|
/ ̄( ( (  ̄ ̄し(_) ̄ ̄/|
|| ̄ (_(_)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||
∧
/ ̄ ̄  ̄ ̄\
| ・・・・・・・・・ |
>>391 完結してないSSが二作ある。
と、携帯使いにマジレスしても仕方ないか。
「ふむ・・・・どこから話したものか・・・・」
梢江の疑問に烈は手で顎を支えながらウウンと唸った。
「とりあえず、なんで烈さんはここに居るんですか?確か武術指導か何かで神心会に寝泊りしてるって刃牙君から聞いてましたけど」
「ああ・・・それについてなのだがな、梢江さんも知っているとは思うがつい最近神心会のビルが爆破されただろう?」
「え?ええっと確か外国から脱走した死刑囚が新手のテロ行為とかなんとかでニュースやら新聞が大騒ぎしてましたけど・・・」
それが何の関係があるのか、と梢江はちょっと困惑しながら答えた。
「うむ、まぁそのテロリストを神心会に招き入れたのは私なのだが・・・・・・・・とにかく
復興作業やら何やらで慌しくなるから、しばらくの間道場には置いておけないと言われてな」
「・・・・・それって単に追い出されただけなんじゃ?」
図星を突かれたのか、梢江の突っ込みに烈は微妙な表情をしながら顔を背けた。
「まぁ・・・それはともかくとしてだ!行く宛のなかった私は仕方無しに自作したほったて小屋で宿を取っていたのだがな、
そんな折『それでは雨露も防げないだろうから』と刃牙君に梢江さんの家を紹介してもらったと、まぁそういうワケだ」
「いやいやいやいやいや!事情は分かりましたけど・・・だからってなんであたしの家なんですか!?素直に中国に帰ればいいでしょ!?」
「帰れんッ!!」
「へ?」
「帰る場所が無いのだ・・・ついさっき寺を破門されたばかりでな」
「はぁ!?」
烈海王のいきなりの爆弾発言に梢江はちょっと考えてから刃牙の方に顔を向けた。
「刃牙君ちょっと・・・・」
「?」
何かと思い刃牙は梢江に近づくといきなり自分の右耳をグイッと掴まれおもむろに引っ張り上げられた。
「イテテテテ!何すんだよ!梢江ちゃん!」
ワケも分からず耳を引っ張る梢江の理不尽な暴力に刃牙が必死に抗議するが梢江は全く聞く耳持たずそのまま居間の奥へと連行していった。
「ちょっと刃牙君・・・・あなたひょっとして烈さんに何かした?」
「オー痛って!何かしたってどういう意味だよ?俺はただ烈さんに真実を教えただけだぜ」
梢江から開放された、ちょっと赤くなった右耳をさすりながら刃牙は答えた
「真実を教えただけって・・・・絶対何か吹きこんだでしょっ!!烈さんに何言ったのよ!?」
「人聞きワリィなぁ、ただ烈さんの中国拳法は嘘ッパチだって言っただけさ」
刃牙のその言葉を聞いて思わず頭を抱え込む梢江。
「やっぱりそんな事を・・・どうせその後『僕と一緒にかめはめ波を撃ちましょ〜』とかなんとか言ったんでしょ!?バッカじゃない!」
「失礼なッ!俺は烈さんと一緒に亀仙流を目指してるだけさ!」
堂々と胸を張りながら言い放つ刃牙、何も間違った事はしてないぜ!と言わんばかりの姿勢である。
「それにあの人が寺を破門されたのは俺のせいじゃないぜ?亀川流を目指そうとは言ったけど俺そこまでしろなんて言ってねーもん!!」
「その通りだ!梢江さんッ!」
刃牙が言い終わるのと同時に色黒い烈の顔が飛び出してきた。
二人でヒソヒソ話していたつもりだったが、ヒートアップした会話は烈にもしっかり聞こえていた。
「寺を破門されたのはあくまで私の自己責任だ!」
暑苦しい形相で唾を飛ばしまくりながら喋りたてる烈。
「元々劉海王は死ぬ程嫌いだったしな!まぁ破門ついでに海王の称号も剥奪されてしまったが逆にスッキリしたわ!」、
「ちょ、ちょっと烈さん!あなた本当にそれでいいんですか?もっと良く考えた方が・・・・・・」
「私は構わんッッ!!」
一片の悔い無し!と言わんばかりに叫ぶ烈海王(もう海王じゃないけど)
唯一の取り柄だった『海王』の名を取り上げられ最早何も残されていないパンピー以下となった烈に梢江が怒声を上げる。
「構うに決まってるでしょッ!烈さんには悪いけどウチには、そんな経済的余裕なんて無いし、
何より女二人で住んでる家なんですからね!!どこか他を当たって下さいッッ!!」
今さら何の貞操の心配をしているのか、断固として宿泊の許可を認めない梢江。
「気持ちは分かるが梢江さん・・・・私はもうどこにも行く場所が無いのだ、居候云々はともかくとして数日の間くらいは置いてもらってもいいだろう?」
「そうなんだよ梢江ちゃん、今の烈さんはどこにも行く所がないホームレス同然の乞食なんだぜ!?」
烈に対して身も蓋も無い事を天然でホザく刃牙。
「おい!それはちょっと言いすぎだぞ!まぁとにかく私としては、せめて一拍許可するくらいの愛を梢江さんが見せてくれてもいいと思うのだが?」
頑なに拒む梢江の態度に烈は情に訴える作戦に切り替えた。
「そうだよ!梢江ちゃん優しくないよ!俺達に愛のバクダンもっとたくさん落っことしてくれよッ!!」
「何よそれ!?とにかくウチに泊めるなんて絶対にダメだからね!絶対に!絶対にッ!ぜ〜〜〜〜っったいに!!!」
「あら?私は構わないわよ」
「お、お母さん!!」「オバさん!!」
梢江と刃牙、二人同時に声を上げた先には着物姿の女性、梢江の母が立っていた。
「これは婦人・・・・その優しきお心使い、何から何まで痛み入ります」
態度を一変して丁寧に挨拶を交わす烈。
「あらあら♪婦人だなんて♪もっと気軽に絹代って呼んで下さいなオホホホホホ♪」
「イヤイヤ貴女の様な麗しいご婦人を呼び捨てにするなんて、恐れ多くて私にはとてもとてもハッハッハ!」
「あらヤダ♪こんなオバちゃんを『麗しい』だなんて♪んもう烈さんったらお上手なんだから!」
「イヤイヤ私は素直に真実を言ったまでですよ、貴女を見ればかの楊貴妃だって裸足で逃げ出しますぞ!」
「あらヤダもー♪烈さんったらホントに素敵な方ね♪」
烈の明らかなお世辞に浮かれまくる梢江ママ。
「ちょ、ちょっとお母さん!何ノせられてんのよ?泊めるって本気なの??」
「本気に決まってるでしょ、こんな素敵な烈さんに外で野宿しろだなんて、あんまりじゃない!ねぇ?」
そう言って烈に視線を合わせる梢江ママ、何がおかしいのかハッハッハ!と笑う烈。
「なんならず〜っと家に居て貰ってもいいわね♪というかそれがいいわ!そうしましょう!」
オホホホホホ♪と笑う梢江ママ、それを聞いた梢江がハァ!?と声を上げた。
「な、何言ってんのよ!お母さん!?ただでさえ刃牙君が家賃払ってくれなくてギリギリの生活してるのに、どこにそんなお金が―」
「あら?お金の問題なら心配しなくて大丈夫よ、主人の保険金がまだ残ってるしそれに昨日天皇賞でタップリ勝ってきたからね、あら梢江?何よその目は?」
保険金はともかくとして競馬で金を稼いできた我が母を白い目で見る梢江、普段何をやっているのかと思えばそんな事して金を稼いでるのか?
「そういう事だから烈さんも刃牙君も気兼ね無くウチに泊まって下さいな♪今日は天皇賞の勝利を祝してお寿司を取ってありますからね、しかも特上よ〜♪」
梢江そっちのけで松本家に泊まる事が決まった烈と刃牙、特上の寿司を頬ばりアニメ(ドラゴンボール)を見ながら松本家の夜はふけていく。
しかし彼らは知らなかった。
松本家より数十メートル離れた電柱の影、闇夜の中彼らを監視する一つの光る獣の瞳があったという事を―
「見〜〜〜っけ」
投下終了です、なんか書いてる内にドラゴンボール関係ねーな!って思えてきました。
周りから何言われても気にはしませんが、大学入ってからなんか予想以上に忙しくなった
っつーか余裕が無くなってきたので、これからは今まで以上に遅筆になるかもしれません。
まぁ自分が書くSSは九割方その時のテンション如何なので書く時はパパっと書いちゃうんですけどね。
それとSSとは全く関係無い上ちょっと暗い話で恐縮なのですが
例の電車の脱線事故で、ウチの大学の生徒が巻き込まれ。お二人が亡くなられたそうです。
その内の一人は僕と同じ学部に入学した新入生だそうで・・・・
名前を聞かされても誰だかピンとこなかったのでお互いにまだ会話した事もなかったのでしょうが・・・
他人事といえばそれまでなのかも知れませんが、なんとも言えない気分になります。
JRのみならず大勢の命を預かる鉄道会社には今一度その体制を見直して貰いたいモノです。
>「そうだよ!梢江ちゃん優しくないよ!俺達に愛のバクダンもっとたくさん落っことしてくれよッ!!」
ドラゴンボールZ的には「愛の種を撒き散らして」にしてほしかった。
梢江ママにロマンチックをあげてる烈元海王がグー。
いろいろあったようですが、投げ出されなくて安心しました。
応援してます。
もしかして外大の方ですか?>Z戦士さん
ともかく乙です。相変わらず新喜劇っぽいノリですね。
(梢江ママと烈のベタなやり取りとか特に)
最後の文章の、
>一つの光る獣の瞳
「二つ」じゃないってことは、独歩ですか?
402 :
作者の都合により名無しです:2005/05/04(水) 20:10:47 ID:uEkVohfU0
最近見つけたんですけど、作品数が多くて...
お勧めの作品ってありますか?
バキ好きなら「しけい荘物語」、DB好きなら「機械仕掛けの人魚姫」
ドラえもん好きなら「神界大活劇」がお薦め。(全部長編の完結作品カテゴリに収録)
あとは連載中の「蟲師」とか「虹のかなた」とかもいいかも。
404 :
作者の都合により名無しです:2005/05/04(水) 23:43:39 ID:Gcu4XRz20
ああ、Z戦士さん戻ってきてくれたんだ。
お帰りなさい。これからますますのご活躍を期待しております。
あなたの書くデンパ烈と蛸、俺は大好きですよ。
あとあっちにはもう行かない方がいいですよ。
あなただけでなく、あそこは誰が行っても叩かれますから…。
>>402 俺のお勧めは冒険物ならのびたと出木杉帝国、シリアスならDIOの世界、
ギャグならドラえもんの麻雀教室、中短編ならありふれたテーブルかなぁ。
でも俺の好きな作品って連載が今、全部止まってるんだよねw
第二話「ボディガード」
セルは研究所を出ると、いきなり奇妙な三人組と遭遇した。彼らもまた、ドクター・ゲ
ロによって造られた人造人間。マザーコンピュータによって、セルを守る使命を担わされ
たのだろう。
筋骨隆々とした、いかにも強そうな巨漢。人造人間16号。
冷徹な微笑を湛えた、端正な顔立ちをした少年。人造人間17号。
金髪をなびかせる、気丈そうで美しい女性。人造人間18号。
気こそ感じられぬが、三人いずれもが、あのフリーザをも超えるパワーを使役する怪物
である。
「ふん。どうやら、おまえらがボディガードということか」
しかし、セルは動じなかった。完全体を目的とするセルにとって、彼らは単なる駒に過
ぎない。いくら強かろうと関係ないのだ。
「よろしく頼むよ」
握手を求めようと、歩み寄るセル。すると、16号が両腕を外した。
「ヘルズフラッシュ!」
腕に仕込まれた砲口から、強烈なエネルギー波が放射される。至近距離にて直撃を喰ら
い、セルは大きく吹き飛んだ。
「ぐおおッ! やりよったなァ!」
体勢を整えたセルに、16号は諭すように語り掛けた。
「下を見ろ」
「し、下……?」
ちょうどセルが歩こうとしたルート上。アリが一匹だけで、必死に餌を運んでいる。
「あやうく踏むところだった」
「お、おい……。たかがアリのために、俺を攻撃したというのか!」
「ヘルズフラッシュ!」
「ぐほォッ!」
またもセルにエネルギー波が炸裂する。と、高熱を宿した余波が四方へと散り、16号
が守ろうとしたアリも消し飛んでしまった。お粗末な結果に、呆れるセル。
「ま、守ろうとして、殺してやがる……」
「ヘルズフラッシュ!」
「ぐぎゃあッ!」
ヘルズフラッシュ。元来は、小さな島を軽々と消し去るほどの強力兵器。当然、研究所
付近にある山岳地帯にも衝撃は及んでいく。大規模な土砂崩れが発生しようとしている。
「ここはもうダメだな、行くぞ」
17号に率いられ、16号と18号も都市方面へと飛んでいく。セルもすかさず、彼ら
を追うように出発する。
地鳴りを上げ、沈んでゆく山々。この光景を眺めつつ、16号は悲しそうに呟いた。
「セルが暴れたせいで、自然が破壊されてしまった……」
もはや、セルには反論する気力も体力も残されていなかった。
北の都近くにある峠。道路はコンクリートで整備されているが、交通量はさほどでもな
い。17号を筆頭に、人造人間たちはここへ降り立った。
「ここで自動車が来るのを待とう。急いで行くこともあるまい」
「ふふ、相変わらずだね。17号」
笑う17号と18号──が、セルが許すはずもない。発せられる怒号。
「ふ、ふざけるな! 貴様らは、俺が完全体となる手伝いをするはずだろうが! こんな
ところで油を売る暇などない!」
すると、17号はセルを睨みつけた。予想外の反乱に怯むセル。
「勘違いするな。確かに俺たちはコンピュータに命令されたが、従う気などさらさらない。
かといって他にやることもないから、クリスタル探しとやらに付き合ってやるだけだ」
「くっ……役立たずどもが。もういい、貴様らのような失敗作など必要ない。ここでまと
めて消し去ってくれるわッ!」
尻尾を振り上げ、気を開放すると、セルは三人へと突撃した。ゲロが造りし人造人間同
士が、早くも激突する。
三分後、峠道にてセルは高笑いをしていた。
「フハハハハッ! 究極のヒッチハイクというものを思い知れ!」
惨敗を喫したセルは、ボール紙に汚い字で「のせてくれ」と書き、自動車を待っていた。
本当は号泣したかったが、体内に眠るサイヤ人としての細胞がそれを許さなかったのだ。
やがて、セルが立つ道路に一台の乗用車が現れる。セルは必死に紙を掲げ、向かってく
る車の走行経路に立ち塞がった。
「乗せてくれ、頼む! もうヘルズフラッシュを喰らいたくないのだ!」
「うわっ! 化物だぁっ!」
異形との出会い。パニックに陥りながらも、ドライバーは冷静だった。反射的に停車さ
せると、車から降りて逃げ出してしまった。大人しく車を明け渡す方が、賢明だと判断し
たのだろう。
走っていく運転手を少し寂しそうに見送るセルに、18号が拍手しながら近づく。
「へぇ、やるじゃない。どう考えてもヒッチハイクじゃなかったけど」
「いやぁ、光栄です。えへへへへ……」
とことん卑屈になっているセル。口調まで軟化している。
「ところで、17号さん。これにどうやって乗るんです?」
「他に出来る者もいないだろうし、俺が運転しよう。18号は助手席で、16号はでかい
から一人で後ろに座ってくれ」
「えぇと、すると私はどこになるんでしょうか」
「ここだ」
16号と17号によって、力ずくでトランクに詰め込まれるセル。いよいよ旅が始まる。
果たして、彼は本当に完全体になれるのであろうか。
「敗北を知りたい」「完全体になりたい」
マンガでは(現代版)セルも死刑囚もちゃんと目的を叶えてますね、素晴らしい。
しけい荘もいつかまた書きたいです。オリバの戦いとか。
セルがしけい荘のシコルと被って見える…w
ヘタレ書かせたら天下一品ですね。このセルもかっこ良くなるのだろうか。
しけい荘の面々とまた会えそうで楽しみ。
そういえば、去年のこの時期からしけい荘物語とかが始まって黄金期に突入したんだなぁ。
せ、セルゥ〜〜ッ!!
最高ですよサナダムシ先生。
上でも言われてるけど、サナダムシ氏はヘタレ書くのがうまい。
そのヘタレキャラを取り囲む理不尽なキャラを書くのも。
格上の人造人間相手に三分もったのは奇跡だな。
いや、三分後には既に敗北しててヒッチハイクをはじめてたってとこか。
クラウンの「俺、書く」スレでバキスレ住人ががんばってるみたいだ。
こっちではROMってるらしい。バキスレにもSS書いて欲しいところだが。
都内にある高級ホテルのスウィートルームの一室。
歴戦の軍人ストライダムはそこで地上最強の生物、範馬勇次郎と共に
午後のティータイムの一時を楽しんでいた。
「時に勇次郎、君はこんな噂を聞いた事があるかね?」
「あぁ?」
退屈そうにドカっとソファーに腰を下ろしていた勇次郎にストライダムは
啜っていたティーカップをカチャっとテーブルに置いてから尋ねた。
「とある日本の・・・ごく一部の地域に限った噂ではあるが・・・・・」
ストライダムは勇次郎の反応を窺いつつ、そう前置きを付け加えてから話し始めた。
「君以外にも鬼と呼ばれ、そして君以上に恐れられ最強と呼ばれる存在がいるという事をッッ!!」
「・・・・ほう」
ストライダムの話に興味が沸いたのかピクっと眉を吊り上げる勇次郎。
「君も『オーガ』のニックネームを持ち世界中に名を馳せてはいるが・・・・・・そいつも地元
では『大戦鬼』と呼ばれ、並み居るチャレンジャーを完膚無き迄に叩きのめしているらしい」
それを聞いて勇次郎の貌(かお)がますます険しくなった。
『大戦鬼』―自分の『オーガ』の略称をも超える異名を持つ、最強と呼ばれる存在。
世界中の香り高いファイターはあらかた食い尽くしたと思ったが、まだそんな食べ残しがあったとは!
しかもそいつは日本に居るというではないか、勇次郎の貌から自然と笑みが漏れだした。
「どうかな勇次郎?まぁ尤も日本のマイナーな噂だから眉唾では有るのだが・・・君さえその気なら―」
「そそられたぞッ!ストライダムッッ!!」
ストライダムの話を最後まで聞かずに勇次郎は立ち上がり、その場を後にした。
まだ見ぬ敵、『大戦鬼』と戦う為に。
・
・
・
―日本、某区に位置する花見町商店街―
「全く・・・鬼丸さんったら日に日に凶暴になっていく気がしますわね」
休日のお昼下がり、パン屋「ユエット」の看板娘 神無月めぐみは
宿敵である鬼丸美輝に対して相も変らぬ愚痴を一人漏らしていた。
「この前はワタクシが手塩に育てた可愛いポエミィちゃんを食べてしまいましたし・・・・
怪力と食い意地しか能の無い野蛮人の癖してホンット忌々しい限りですわ!」
大衆が見てる前では清楚で可憐にブリッ子するが、誰も見てないプライベートでは呪いの言葉を吐き続ける。
神無月めぐみとはそういう人物である。
ちなみに『ポエミィちゃん』とは彼女が対鬼丸美輝に備え仕入れた毒サソリの事である。
「しかーし!今回仕入れたタイガースネークのパエリアちゃんは一味違いますわよ〜♪
なんせ僅か0.6mgで致死量に達する程の毒を持っているのですから!これで憎っくき鬼丸さんも
確実にこの世からオサラバですわ〜♪オホ!オホホホホホホホ!オ〜ホホホホホホホホホッ!!」
飼育ケースに入ってる毒蛇を見てバカ笑いするめぐみ、端から見ると完璧に危ない人である。
「オイッ!!」
「オホ?」
神無月めぐみが一人バカ笑いしてると不意に男から声をかけられた。
人前では清楚で可憐なイメージを意識している彼女にとって
確実に見られてはならない場面だったので慌てて体裁を取り繕う。
「あ、あらあら、ワタクシ今何か言ってましたかしら?ちょっとお芝居のお稽古中だったモノで・・・
もしパンをお買い求めになられたお客様でしたら、今は準備中ですので、またにして頂けませんか?」
「テメェみたいなバカ女が焼くパンなんぞどーでもいい!それよりこの辺りに大戦鬼ってヤツァいるのかい?」
バカ女と呼ぶ傍若無人な男の態度に、ブリっ子していた神無月めぐみも普段なら流石にムっときて例え相手が一般人だろうが警官だろうが
太ももに仕込んだ串でも投げつけお灸を据えてやるところだが、男のただならぬ雰囲気に押された彼女は素直に返答した。
「え?・・・ええっと、ひょっとして鬼丸さんの事かしら?鬼丸さんなら向かいの中華飯店で働いていますわよ」
恐る恐る指をさす神無月めぐみの先には『鬼丸飯店』と書かれた看板があった。
「そうかい・・・ありがとよ、ついでに教えといてやる、毒を扱う時はそれ単体でなく複数混ぜ合わせた毒を使うが吉
正確に計量した薬物、天然の毒草や毒虫といったトコロだな、そうすりゃ確実に殺せる」
「ご・・・ご親切にどうも」
男なりの返礼か、神無月めぐみに毒に関してのレクチャーをしてやると、男は『鬼丸飯店』へと向かっていった。
「ここか・・・・・」
禍々しい空気を放ち『鬼丸飯店』の前に立つ男。
邪魔するぜ、と言い引き戸をガラっと開けようとした瞬間―
ドギャッ!!
恐ろしく鈍い音が鳴り響き、凄まじい衝撃が男の頭を貫いた。
引き戸の向こうから突っ込んできた鉄の塊が彼の脳天を直撃したのだ。
「ぐ、ぐぉ・・・・」
突然の出来事に思わず頭を抱え身悶える男。
「ん?何してんだい、あんた?」
見ると三角頭巾を被り白エプロンを着た、そしてちょっぴりヘコんだオカモチを手に持った少女、
鬼丸飯店の看板娘―鬼丸美輝がそこに立っていた。
「く・・・そうか、テメェが大戦鬼か!この俺に不意打ちをかけるたぁな!噂以上だぜ!」
よっぽどダメージが有ったのかフラつきながら喋る男。
「私に何か用なのかい?この辺りじゃ見かけないナリしてるけど・・・何者だいオッサン?」
「ふん、いいだろう、さっきの不意打ちの礼代わりだ、名乗っといてやる!」
ありがたく思え!と言わんばかりに偉そうな男だが、まだダメージが抜けないのか足元が若干おぼついてない。
「俺の名は範馬勇次郎!『大戦鬼』と呼ばれる貴様を食いに来たッ!!」
頭を抑えながら名乗る勇次郎、『オーガ』と呼ばれ世界中の格闘家を震え上がらせる彼だが、何故だか小物っぷりが漂っている。
「く、食うだなんて卑猥ですわよ・・・・」
言葉の意味を勘違いしたのか端から見ていためぐみが赤面しながら突っ込んだ。
「ふーん・・・要するに私と喧嘩したいって事だろ?でも今から出前に行くトコでさ、悪いけどまた今度な」
そう言って立ち去ろうとする美輝の前にズサっと勇次郎が立ちはだかる。
「な〜に・・・出前なんざ気にする必要はねえさ、どの道テメェは今から―」
「ちょっと待つニャっ!」
不意に声がした方向を見ると『挑戦状』と書かれた封筒を持ったガタイの好い青年が立っていた。
「何者かは知らんが鬼丸美輝への挑戦に関しては俺に優先権が有るニャっ!!ヤツと戦いたかったらまず先に―」
「阿呆がッッ!!」
言葉と同時に勇次郎の右ストレートが青年の顔面に炸裂した。
勇次郎は自分が喋ってる時に他人に口を挟まれるのが大嫌いだ。
鬼の逆鱗に触れた青年―西山勘九郎は「まず先に俺を倒せ!」と言い終わる前に勇次郎の
豪腕一撃で白目を剥き血ヘドを吐きながら商店街の外までブッ飛んで行った。
「か、勘九郎が美輝ちゃん以外の相手に一発で・・・・」
それを見ていたギャラリーの一人が声を上げる、八百屋の店主、太田明彦である。
「へぇ・・・やるじゃないか!よーし面白そうだから、この挑戦受けてやるよ!」
入門のネタを考えている間に気晴らしで書いたSSが二つ溜まってますので、その内の一つを投下しました。
短編ですが少し文章が長めなので三つに分けて投下したいと思います、続きはまた明日。
>>399 確かにネタ的にはその方が良かったかもしれないっす。
SSを書いてる時はB'zの音楽を近所迷惑省みずにジャカジャカ流してるので既に歌詞が
脳に刷り込まれてるというか・・・まぁ流行りだし時事ネタっつー事で勘弁して下さい。
>>400 投げ出しはまぁ、今の所する気はないです、本編ではまだ書きたい所まで行ってないですから。
ネタに詰まるのは途中途中どうしよっかな?ってトコです、
伏線張るのがあんまり上手くないんですよ・・・・
>>401 梢江ママと烈ベタすぎですね自分で書いててムズ痒くなりました、こんな連中ありえねえ!
大学は、まぁさほど自慢できる様な大学ではない、とだけ言っておきます。そんな良い子ちゃんじゃないんですよ。
>一つの光る獣の瞳
これはちょっと紛らわしかったかも・・・ちょいと捻った表現がしたくて、
なんとなくそう書いたんですけど・・・まぁ独歩なんでしょうかね?でもそうじゃないのかも。
>>404 どもです、普段は見てるだけに留めてたんですけど、その時の気分でつい・・・
流石に懲りたんでもうあそこには書き込まねっす。
しかしまぁ自業自得とはいえ、あんなもの凄いスピードで叩かれたのにはビックリですよ。
Z戦士さん連投お疲れ様です。
誰かが書くと思っていた勇次郎対美輝ですか。楽しみです。
でもさすがに勇次郎は美輝の母ちゃんじゃないと厳しいかなw
Z戦死乙。
ヤムチャのへたれ具合いがいい感じだ。
勇次郎にはもっと頑張ってほしい。
それこそ星を壊すぐらいに。
・・・・・・その数日後、深夜零時すぎ。
ぼくはとある廃校の二階にいた。電灯は当然付かないが、月明りのおかげで真っ暗ということはなかった。
あの日、哀川さんとの電話の後、ぼくは恐ろしいほど積極的に行動した。
なにせ時は金なりと昔の偉そうなおっさんも言っていたではないか。一分一秒たりとも無駄にはできない。
まずは戦闘のイメージトレーニングを行ったが、六時間ほどで「まともにやったらどう考えても傷一つ付けられない」という
分かりきった結論が出たのでやめた。
自慢じゃないがぼくの戦闘能力は思いっきり自画自賛しても「一般人よりはちょっとだけ強い」程度なのだ。
次にやっぱり闘うのはやめて平和的に話し合うというのはどうかと思い、また六時間ほどそのイメージトレーニングを行ったが、
「どう考えても無理」というこれまた分かりきった結論が出たのでこれもやめた。
自慢じゃないがぼくのコミュニケーション能力の欠如具合は半端ではないのだ。
どうするんだとまた六時間考えて、イメージトレーニングに意味はないと気づいたのでやめた。
自慢じゃないがぼくの物分りの悪さは地上最悪級なのだ。
「・・・って、この時点で十八時間も無駄にしてんじゃねえか」
一人ツッコミ。誰も聞いてくれる人がいなかったのでちょっと虚しかった。ゴホンと咳払いする。
結局正攻法では無理、ならばせめて罠でも張って待ち受けるしかないと判断したぼくは玖渚に協力を頼み、この廃校に
二、三の仕掛けを施した。
しかしながらこれがどれだけ効果があるかは疑問だ。ぼくのやっていることは恐竜を豆鉄砲で退治しようとするくらい
無謀、無策、無茶、無理だ。
だったらなんでやるんだ―――そう聞かれたら、ぼくはこう答えるしかない。
「なんでだろう・・・・・・」
自分でも分からない。何故ぼくはあの地上最強と闘わなくちゃならないのか。ぼくの知り合いが三人も無惨にやられたから―――
というのではないと思う。確かにそれに関して憤りを多少は感じていたが、それだけで<地上最強の生物>と闘おうと思うほど
ぼくは英雄気質じゃない。どう考えてもこんなのはぼくのキャラじゃないとは思う。
だったらなんでやるのか。
強いて言うなら―――どうにも胸の奥がもやもやとしている。それをどうにかして消し去りたい―――そんな感じか。
ギシ・・・ギシ・・・。
――――――と。足音が聞こえてきた。ぼくはドアの方を見やる。足音が近づく。
足音が止まる。ドアが開く。
「よお―――戯言遣い」
<鬼>が―――範馬勇次郎が、そこにいた。
「今晩は―――オーガさん」
ぼくは平静を装い、会釈する。範馬は薄笑いを浮かべ、そこらに散らばっていた椅子を立て直して悠然と座る。
「で?俺をこんなとこに呼び出して、どうしようってんだ?まさか闘り合おうってわけじゃねえだろうなあ?」
「―――そうだと言ったらどうします?」
範馬は笑いを浮かべたまま、嘲るでもなく答える。
「やめとけ。俺は闘いを何よりも愛しているが、てめえは俺の相手をするにゃあ弱すぎる。せめて本部ぐらいに
なってから挑戦しな」
本部って誰だよと思いながらも、ぼくは言う。
「じゃああの三人は―――あなたの眼鏡にかなうほど強かったから―――あんな目に合わせたって言うんですか?」
範馬はヒュウっと息を鳴らした。
「ああ・・・あのガキ共か?ありゃあ大したもんだったぜ。特に出夢―――匂宮出夢だったか?あいつはとんでもなく
強かったぜ。今まででもあれほど強い奴にゃあ数えるほども会ったことねえなあ。まあ・・・強すぎたせいで、俺と
しても手加減できなかった。他の二人は適当なところで倒れてくれたが、匂宮出夢に関しては、アホほど痛めつけても
倒れなくてよ。結果として全身の骨を砕いちまった。
―――ああ、お前、ダチがやられたから怒ってんのか?」
「・・・別に、そういうわけじゃあありませんよ」
くくくっと、範馬は納得したように笑う。
「そうだろうな。てめえはそういう奴だよなあ。別に怒ってるわけじゃあねえ―――じゃあなんで俺と闘り合おうってんだ?」
「何となく―――じゃあ、ダメですか?」
「何となく―――ねえ―――」
範馬は、また笑う。少しだけ、羨ましいかもしれない。ぼくはこんな風には笑えないから。
―――いや、やっぱり羨ましくはない。
「で?俺がお前と闘うことで、俺になにか得る物はあるのか?」
「そうですねえ・・・」
この問いに関してはもう答えは決まっているが、ぼくはもったいぶってみせた。
「人類最強の請負人への挑戦権―――なんてのはどうです?」
「・・・・・・!」
さすがの範馬も、これには明らかに顔色を変えた。
「もともとあなたは哀川さんに会うために京都まで来たんでしょう?だったら―――」
「そうだな」
範馬は間髪入れずに答え―――次の瞬間には既に立ち上がっていた。
椅子から立ち上がる―――たったそれだけの動作。その動作が、ぼくには見えなかった。
ぼくは彼から目を離すことなどなかったのに、見えなかった。
今更ながらに、汗が吹き出る。圧倒的な暴力のオーラとでも言うべきものがぼくの身体を容赦なく蹂躪する。
「要するにてめえを叩きのめせば人類最強―――哀川潤が出てくる。そういうわけだな?」
「―――そうですね。ただ、まともにやったらぼくが不利すぎるから、条件を付けさせてもらいます。具体的に言えば、
ぼくの口から<ぼくの負けです>と言わせられれば、それであなたの勝ちです。ぼくを殺してしまったら、その時点であなたの
負け。それでどうです?」
「ふん―――なるほどな。てめえを殺さねえ程度には手加減してくれと、そういうことか?」
「簡単に言えば、そういうことですね」
「けっ・・・」
範馬は仕様がないというように吐き捨てる。
「一思いに死んだ方がマシ―――そうは考えないのか?」
「幸い・・・ってわけじゃありませんが、痛い思いをするのだけは慣れてますからね」
ぼくは余裕ぶって答える。内心は余裕どころじゃなかったが、表面だけでも取り繕えたのは、素直に自分を誉めて
やりたいものだ。
範馬勇次郎は、まさしく鬼のような禍々しい笑みを浮かべた。
「まあいい―――喰うとこなんざ無さそうだが―――喰うぜ」
投下完了。
>138からです。
長く休んだせいで忘れられてないか心配・・・。
おお、サマサさんも復活か。めでたい
復活していきなり勇次郎との対決か。今度はあまりあけないでね。
サマサさん乙。
「時は金なり」と言った次の行で、既に6時間ムダ遣いしているのにワラタ。
原作は知らないけれど、何だか負ける時も悲鳴もあげず淡々と負けそうな予感。
しかし匂宮出夢って、手加減ナシってことは勇次郎にオーガモード出させたってことか。
強いな。
428 :
おとめごころ:2005/05/05(木) 20:00:24 ID:C0QNz/QL0
とある居酒屋のカウンター席。夕刻で賑やかな店内にあって、一際賑やかな二人がいた。
「ぐすん……うぇぇん……どうしてなのよぉ……ねえちょっと、何とか言ってよっ」
「何とか、と言われても。当然のことだとしか」
「ぁんですってえっ!?」
かぱかぱ飲みまくりながらグチをこぼしている着物姿の可愛らしい娘と、それに
つき合わされているらしい黒ずくめの男。に見えるが実はこの二人、双方とも男。
現在、日本国征服を目論んで活動中の秘密組織の構成員で、間もなく構成される
予定である十人組精鋭部隊の候補。名は『鎌足』と『蝙也(へんや)』という。
ここは明治の日本、幕末の残り火がまだ燻っている、京都市中である。
「大体、志々雄様も志々雄様よ。とっかえひっかえ次から次へと、女の子ばっかり」
「それはまあ、古来より『英雄、色を好む』というし」
「それにしても、よ。あんな、ぽにゃぽにゃ柔らかいだけの女の子なんかより、
男の子の方が、こう、抱き心地がしっかりしてて」
「……それはどうか。抱き心地という観点から論ずるならば、抱く側の性別が
どちらであれ、抱く対象としては女の子の方がやっぱり、肌触りとか弾力とか」
「って蝙也! さっきからあんた、どっちの味方なのよっっ!」
「み、味方も何も、俺はごく普通の感性でだな、」
と二人が賑やかに飲んでいると、
「ホッホッホッ。お悩みのようですな、実は殿方なお嬢さん?」
鎌足の隣、蝙也の反対側にいた小柄な男が、低い声で笑った。
鎌足が振り向くと、男は心底楽しそうな笑みを浮かべて、
「いや失礼。聞くともなしに聞いてしまったのですが、お嬢さんはどうやら、辛い
恋をしておられるようですな。ゲイのあなたが、ノーマルの男性を相手に」
「げい? のぉまる? 何言ってるの、あんた」
「ホッホッ。西洋の言葉で、『男性の同性愛者』と『普通の男性』のことです。ところで、
いかがでしょう。ぜひ私に、あなたの恋を実らせる手助けをさせて頂きたいのですが」
その、帽子から靴まで一貫して黒い洋装の男は、鎌足の目をじっと見つめて言った。
鎌足が戸惑っていると、男は懐から小さな紙きれを取り出して、
「申し遅れましたが、私はこういうものでございます」
ぺこりと一礼した。その紙には男の名前と、何やら妙なことが書かれている。
「ココロのスキマお埋めします……?」
429 :
おとめごころ:2005/05/05(木) 20:01:21 ID:C0QNz/QL0
「私はセールスマン、行商人です。と言っても無料奉仕ですから、お金は一切頂きません。
お嬢さんが満足されたら、それが何よりの報酬でございます」
その男、喪黒福蔵は、怪訝な顔をしている鎌足に、あくまでも丁寧に語りかけていく。
「さて。お嬢さんの恋の相手、志々雄様と言われましたかな? その方がノーマルである
ならば、お嬢さんの恋を実らせる手段はただ一つです」
「え。もしかして志々雄様を、その……えっと、『げい』にするの? できるの?」
「いえいえ、そんなことをせずとも、もっと簡単な方法があります。お嬢さんが、
正真正銘の女の子になれば宜しいのです」
って、それのどこが簡単なのよっっ! と吼える鎌足をなだめつつ、喪黒は足下に
置いてあった自分のカバンから、透明な液体の入った小瓶を取り出した。
それを鎌足の目の前に置いて、説明する。
「これを浴びた者は特異体質となり、水を浴びると女の子の体に、お湯を浴びると
男の子の体になります。昔々、若い娘が溺れたと言う伝説のある泉の水でしてね。
以来そこで溺れたものは皆、呪いによりそういう体質になるのです」
「! ほ、ほんとなの、それ?」
「はい。ですが私が入手したこれは、噂に聞く呪泉郷のものとは性質が違って、」
ばしゃ、ばしゃ、と二度水音がした。
鎌足が小瓶の中身を自分にかけた音。それから、壁に飾られていた一輪挿しを
取ってその水を浴びた音だ。
「お、おい鎌足。そんな得体の知れないブツを気軽に……鎌足?」
蝙也の方に向き直った鎌足が、ぎゅ、と蝙也を抱き締めた。そして耳元で囁く。
「ねえ。ほら。解る? 解るでしょ?」
「解るって何が…………うっ」
ぎゅ、と鎌足に抱き締められている蝙也は、気づいた。その胸に押し付けられている、
柔らかくも弾力のある、二つの膨らみの存在に。
それだけではない。横目に見える鎌足の白いうなじが、いつにも増して白い。というか
肌質が違っている。きめ細やかで透き通るようで。あと、匂いが何だか甘くって。
これはつまり。どういうことかというと。
430 :
おとめごころ:2005/05/05(木) 20:01:51 ID:C0QNz/QL0
「か、鎌足っ!? お前、まさか本当に」
がばっ、と蝙也を放して鎌足が、正面から向き合う。その目には涙が溢れていて、
「そぉなのよっ! 私、本当に女の子の体になってる! ほらほら、見てみて!」
「って見せんでいいっ!」
蝙也は慌てて、鎌足の手を押さえた。鎌足は興奮収まらず、今度は喪黒に抱きついて
感謝の意を示そう、としたのだが喪黒はそれを押し留める。
「お待ち下さい。先ほど言いかけたことですが、今お嬢さんが使われた水には、有名で
安全な呪泉郷のものと違って、禁止事項があります。それを覚えておいて頂きたい」
喪黒は、浮かれている鎌足を諌めるように言った。
「いいですか? お嬢さんはこれから先、決して男性にキスをしてはなりません」
と言われても鎌足は浮かれたまま、胸を張って答える。
「ふふん。禁止事項ですって? 女の子の体でいられるなら、なんだって
我慢できるわよ。平気平気♪ で、きすって何なの。また西洋の言葉?」
「はい。和訳すると接吻、口づけのことです。お嬢さんは、男性相手にこれをしては
なりません。唇は無論、頬でも額でも首筋でも胸でも、そのずっと下でも、ダメです」
接吻、口づけ。それがダメ。部位に関わらず絶対ダメ。
「…………な、ななななんなのよそれはっっ!」
激昂した鎌足が、喪黒の襟首を掴んで思いっきり揺さぶった。
喪黒は窒息しながら、答える。
「こ、恋に憧れ恋に恋して、しかし本物の恋を知らずに死んだ乙女の呪い……と言えば、
お解りになるでしょう? あなたの肉体変化は、それによるものなのですよっ」
ぴた、と鎌足が揺さぶりを止めて手を放した。喪黒はひとつふたつ、咳き込んで、
「今はまだ、『八つ当たり』に過ぎませんからその程度なのです。が、お嬢さんがもし、
男性相手にキスなどしてしまうと、それは『直接的憎悪』に変わります。そうなると、」
「どうなるっていうの?」
「お嬢さんの望みが女の子の体を得ること、である以上、まずそれは失われます。
加えて、さぞ恐ろしい運命がお嬢さんを襲うことでしょう。お嬢さん自身が死ぬ、
という程度では済まないようなことが。泉で溺れ死んだ、乙女の呪いによって」
431 :
おとめごころ:2005/05/05(木) 20:02:26 ID:C0QNz/QL0
言われて鎌足は、少し「ぞっ」とした。だが理解はできる。
喪黒の言う、溺れ死んだ乙女の気持ち、嫉妬から来る憎悪、は理解できる。
「……だからって、納得できるもんじゃないけど……」
「何を仰いますやら。お嬢さん。あなたの志々雄様とやらに捧げる愛は、その程度の
ものなのですか? たかがキスを禁じられた程度で身動きできなくなるような?」
びし、と喪黒が鎌足を指差す。
「愛とはもっと崇高な、かつ純粋なものでしょう。肉体的接触なんぞなくとも、
恋を、愛を、恋愛を、成就させることは不可能ではないはず。違いますか?」
「ぅぐくっ。なんだか鋭い指摘のような。それでいて、とんでもない屁理屈のような」
「どうご理解されるかは、お嬢さん次第です。では、私はこれにて」
喪黒は立ち上がり、勘定を支払うと、ホーッホッホッと笑いながら去って行った。
後に残された鎌足は、というと。とりあえず知り合いに見つかったら面倒なので、
店のオヤジにお湯を貰い、一旦元に戻った。それから頭を抱えて、考える。
「うぅ、まいったなぁ……接吻が禁止、ですって? なんて厄介なのよっ。せめて、
禁止箇所が上下逆なら、まだやりようもあると思うけど」
「上下逆? 何だそれは」
「要するほら、アレよ。『代わりにお口でご奉仕します』ってやつ」
「おいおいおい」
「でも、ダメなのは下じゃなくて上なのよねぇ。初手は接吻から、が定石でしょ?」
「と同意を求められても困るんだが」
「その初手を封じられてるとなると、どう攻めりゃいいのよっ。はい蝙也君、名案を」
「お、俺に何を期待しているっ?」
「でしょーね。あぁ〜もう、誰も頼りにならないっ。どうすりゃいいのよ一体っ!?」
念願の『女の子のカラダ』を手に入れはしたものの、身動き取れずに悶え苦しんで。
おカマの鎌使い本条鎌足の、恋とキスとに悩める夜は更けていく。
よ〜やく転職できました。これでどうにか、人並の睡眠時間が確保できそうです。ふぅ。
>>Z戦士さん
・入門
相変わらず、可愛いですねぇ一同。非常識少年に振り回される少女、といえばフルメタ
なんかを彷彿と。お母さんまで加わって、ますます頭抱えまくりの梢江が楽しかったです。
・大戦鬼
オカモチぶつけられてフラついている勇次郎、確かに小物臭というか小物パターンですな。
何気にめぐみも可愛くて気に入りました。美輝も含め、これから勇次郎との絡み方に注目。
>>サナダムシさん
サナダムシさんの読者一同皆々、同じ思いを抱きますなこれは。あの、しけい荘のヒーロー、
シコルを思い出します。しかし彼はシリアスバトル移行後、きっちりキメてくれましたが、
このセルは……周りにいるメンツがこれでは、辛いか? セルの今後の受難と成長に期待。
>>サマサさん
いーちゃん、うまい! これはアレですね、九十九対策で言われてた「ワクを狭める」
ってやつ。何か策がありそう。勇次郎は勇次郎で、ただの暴力バカではない、人を見る目
のあるところを披露したりして。単純な力押しにはならなさそなこの戦い、次の展開はっ?
433 :
作者の都合により名無しです:2005/05/05(木) 20:38:58 ID:Dm7s+Ov1O
釜足りと編やの会話がちょっと…
せめて編やじゃなく、刀狩りの張にしたほうが良かったと思う。
明治にフェラはねえだろw
フェラは口取りって名前で江戸時代からありましたよ
もっともそんなことをするのは下級娼婦のヨタカくらいだったらしいですが
435 :
虹のかなた:2005/05/06(金) 01:48:49 ID:TDajxgAk0
ごきげんよう皆様。お久しぶりです。
ttp://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/niji/25.htm からの続きです。
放課後――――。
祐巳が約束の場所である古い温室に足を踏み入れると、そこには一人、先客がいた。
(えっ…?)
そこにいたのは待ち合わせている沙織ちゃんでもジュネさんでも斗貴子さんでもなくって……というか、リリアンの生徒
ですらない。
背の高い――――男の人。
一瞬見間違えたのかと思って眼を凝らしてみたけど、やっぱりその人はどう見ても男性だ。
当然の事ながら、規律の厳しいリリアンで男性が学園内に入るには学園側の許可を取らなくてはならない。
許可が下りても、男性が校内を一人で行動する事なんて皆無だ。
なのに目の前の人はどう見ても一人っきりで温室を見回している。
(まさか…不審者?!)
どうしよう。先生を呼びに行くべきだろうか。
それとも守衛さんを…。
そこまで考えてから、はた、と気が付いた。
その男の人が着ている濃紺の制服は……ある意味見慣れている、リリアンの守衛さんの制服だ。
祐巳が来たことに気が付かないのか、その人は背を向けたまま鉢植えに付けられている説明書きを熱心に読んでいる。
こちらからわずかに見える横顔に見覚えはないけど、最近来た人なのだろうか。
どうしてこんなところにいるのだろう。
声をかけた方が良いのかな。
祐巳が迷っていると、気配を感じたのかその人はくるりと振り返った。
Z戦士さん、サマサさん、ふら〜りさんと立て続けに復活したか。善き事だ。
>地上最強の生物VS大戦鬼
タイトルだけ見ると互角っぽいけど、流石に裕次郎が負けるのは嫌だなw
知らない漫画だけど、バトル少女頑張れ。ギャグだがら裕次郎負けるのかな…。
>戯言使い
「せめて本部ぐらい」これ少しワラタ。本部って弱すぎるだろ、勇次郎からみたら。
しかしいーちゃん落ち着いているなー。勇次郎、簡単に言いくるめられてるよ。
>おとめごころ
まず転職おめです。これで社会人としての健康上もSS職人としても安心ですな。
しかし文体はふら〜りさんだけど、内容は微エロでふら〜りさんぽく無いようなw
437 :
虹のかなた:2005/05/06(金) 01:52:36 ID:TDajxgAk0
「やあ。…ごきげんよう?」
なぜだか疑問系でリリアンの挨拶をされてしまい、慌てて祐巳も「ごきげんよう」と返す。
この挨拶は別に守衛さんは使わなくてもいいと思うのだけど…。
そんなことはお構いなしなのか、目の前にいる人はにこにこと笑っている。
二十代、くらいだろうか。
比較対象に出せる男の人なんてお父さんと祐麒くらいしかいないけど、二人よりもだいぶ大きい。
無精髭がどことなく、あの江利子様の婚約者である山辺先生を思い出させる。
「君がブラボーな生徒会長か」
ブラボーというのが褒め言葉なのかはよくわからなかったけど、その人の屈託のない笑顔につられて祐巳も微笑んだ。
…祐巳のことを知っているのだろうか。
祥子様の妹になったあの日から、祐巳は知らなくても相手は自分の顔と名前を知っている、ということがよくあったから
今更驚きはしないけど…。
「ここに何か御用ですか?」
「ああ…ちょっと、春に咲く赤い花があるのか調べたくてな」
「春に咲く赤い花、ですか?」
「そうだ。チューリップと木瓜の共通点なんて、今のところそれしか思いつかんからな」
そう言ってその人は難しい顔で宙を睨んだ。
「チューリップと木瓜…?」
チューリップって、あの、チューリップ?
木瓜っていうと…体育館の近くの植え込みの花が確か木瓜だったはず。
確かに両方とも春に咲く赤い花だけど、見た目も違うし赤さも違う。
それにしても一体何のためにそんなことを調べているんだろう。
「赤い花と言えば…薔薇もそうだな」
そう言ってその人が視線を向けた先にあるのは、今の祐巳の通り名と同じ名前の紅薔薇。…ロサ・キネンシスだ。
この前に見たときよりもだいぶつぼみがふくらんでいる。
この分だと今週中か、少なくとも来週には美しい花が見られるだろう。
「それ、ロサ・キネンシスっていうんです」
「ロサ・キネンシスか…」
そう小さくつぶやいて、その人はまた難しい顔で紅薔薇を見つめている。
438 :
虹のかなた:2005/05/06(金) 01:53:52 ID:TDajxgAk0
……花のことを調べるのなら、図書館で図鑑とかを見た方がいいんじゃないのかな。
(ああ…もしかして)
守衛さんはリリアンの図書館を利用できないのかも。
う〜ん、と唸りながら考え込んでしまった祐巳を見て何を思ったのか、その人は険しくしていた表情をふ、と緩めた。
「さて…そろそろ交代の時間だな。戻らなくては」
「あの…」
「ん?」
「お名前をお聞きしていいですか?もしよかったら、私が図書館で図鑑を借り出してお届けしますけど…」
祐巳がそう申し出ると、その人はちょっと驚いたような顔になった。
…何か変なこと言っちゃったかな。もしかして余計なお世話だったかな。
そんな不安が祐巳の顔に出てしまったのか、その人は数回瞬きをした後にっこりと笑った。
「ありがとう。気持ちは嬉しいがそれには及ばんよ。……君はブラボーな良い子だな」
その人の瞳が優しく細まる。
「いろいろがんばれよ」
「…?はい」
がんばれ、って…どういう意味だろう。
祐巳が生徒会長だということを知っているようだったから、それをがんばれってことなのかな。
それよりもブラボーな良い子って…日本語としておかしいような気がする。
「ああ、そうだ」
祐巳の脇を通り過ぎ、温室のドアを開けようとしたところでその人は振り返った。
「俺のことはキャプテン・ブラボーと呼んでくれ」
「…へっ?」
「それと、俺の本名は秘密だ!何故ならその方がカッコイイからな!!」
「…………へっ?」
ポカンと間抜けな顔をしてしまった祐巳を取り残し、その人はなぜだか楽しそうに温室から出て行ってしまった。
(…へ…変な人…)
悪い人じゃなさそうだけど…変わった人だなぁ。
リリアンの警備をあの人に任せて大丈夫なのだろうか。ちょっと不安だ。
439 :
虹のかなた:2005/05/06(金) 01:55:11 ID:TDajxgAk0
静けさの戻った温室内を見渡し、小さく息を吐く。
そっと目の前のロサ・キネンシスのつぼみに指を伸ばす。
「ロサ・キネンシス…か…」
祐巳が紅薔薇さまとなって数週間。
蓉子様と祥子様という、偉大すぎる先輩にはまだまだ遙かに及んでいない気がする。
祐巳はどうしたって祐巳で、蓉子様や祥子様にはなれないのだから自分は自分でやっていくしかないと頭では
わかっているのだけど。
周囲から『紅薔薇さま』と呼ばれるたびになんだか、いたたまれない気持ちになってしまう。
(私なんかが『紅薔薇さま』だなんて)
祐巳は別に紅薔薇さまになりたくて祥子様の妹になったわけじゃない。
祥子様が大好きで……少しでも側にいてお役に立ちたいと思ったからロザリオをお受けしたのだ。
もう一度、小さく息を吐く。
(今はとりあえず、こっちのことを考えよう)
そう。
今は沙織ちゃん達から話を聞いて、祐巳は何をすべきなのか、何が出来るのかを考える時だ。
(もうそろそろ来るかな)
腕時計を確認し、外へ視線を向ける。
遠くに、こちらに向かってくる小さな人影が見えた。
このときの祐巳は目の前の出来事を把握することだけで頭がいっぱいで。
一時限と二時限の間の休み時間に、瞳子に「後で」と言った事をすっかりと忘れてしまっていた。
後にそのことを物凄く後悔するはめになるのだけど――――この時点ではまだ、それを知る由もなかった。
440 :
虹のかなた:2005/05/06(金) 01:58:39 ID:TDajxgAk0
今回はここまでです。
仕事が繁忙期に入ったためと、マリみての新刊との辻褄合わせに悩んでしまいだいぶ間を開けてしまいました。
待っていてくださった方、申し訳ありません。
新刊で出てきた由乃の妹候補については、もう、存在を無視する方向で進めていくことにします。
どうやっても今更辻褄は合わせられませんでした…。
それでは、ごきげんよう。
435-440は私です。
名前欄書き換え忘れました。ごめんなさい。
ミドリさん復活キター
436で挟まってしまってごめんなさい。
祐巳とキャプテンブラボーってなんか相性良さそうですね。両方とも天然系で。
しかしマリ見ての新刊と武装錬金の打ち切りで、辻褄あわせ難しそうですね。
自由に書いてくださればそれで十分に楽しいです。
あと木瓜ってどう読むんですか?
みどりさんごきげんよう
っていうか、キタ━━(゚∀゚)━━!!
ついにブラボー登場!
転輪が動き出すように緩やかに力強く進みだしましたね
辻褄とかもう気にせずミドリさんの物語を紡いでください!
>>442 木瓜は<ぼけ>ですよ
鎌足にならフェ○されてもいい
やはりGW明けるとこのスレ盛ってくるなー
Z戦士氏、サマサ氏、ミドリさん復活オメ。ふらーりさん転職オメ。
俺は木瓜を「きゅうり」と思ったよ…w
446 :
作者の都合により名無しです:2005/05/06(金) 14:39:27 ID:ajRwCqhd0
Z戦士さんとサマサさんに続いてミドリさん復活キタ━━(゚∀゚)━━!!
ブラボー登場で役者は揃ったかな。あとはゴールドセイントかな?
出来ればカニさんを活躍お願いします。不遇キャラが好きなんですよ。
ヤキソバパンにはラー油とタバスコは欠かせないマサムネ
スマン誤爆
右手で拳を作り左手でパンッと叩いて嬉しそうに両手を合わせる、やる気満々の鬼丸美輝。
それに対して周りの風景を捻じ曲げる様な禍々しい空気を放ちながらユラリと構える勇次郎。
「あらかじめ断っておく――俺の拳は刃引きをしちゃいねェ・・・・女とはいえ本身でいかせてもらう」
ギュウッと握った右拳を前に突き出し勇次郎が、本気で殴りかかる、という意思表示を見せる。
その言動を見た美輝が「ハンッ」と鼻で笑い返した。
「今更何言ってんだい仕掛けて来たのはそっちだろ?グダグダぬかす前に掛かって来なってんだ!」
言いながら右手を前に掲げ戦闘態勢を構えつつ人指しユビをクイクイッと動かす美輝。
明らかな挑発動作である。
「クク・・・そう来なくっちゃあな!食うぜぇぇぇ〜〜〜ッ!!」
言うが速いが勇次郎は先程勘九郎を葬った打ち下ろしの右ストレートを『大戦鬼』鬼丸美輝に放った。
「ふんっ!!」
それを両手でガードした彼女の足元にズシンと地響きが起こる。
追撃を掛けようとした勇次郎だがガードされた右ストレートをそのまま後方に弾かれバランスを崩した所に―
「鬼丸流葬兵術・・・・・・拳 王 破 砕 掌」
大木をも揺らす鬼丸美輝の超絶正拳突きが勇次郎の水月にクリーンヒットした。
グォっと鈍い呻き声を洩らし数mノックバックする勇次郎。
「チィッ!やるじゃねえかよッ!大戦鬼!!」
「へぇ・・・大概のヤツは今ので終わっちまうんだけどねぇ」
これ以上ないタイミングで決まった自分のベストショット、それを耐えた勇次郎に感嘆の声を漏らす鬼丸美輝。
「嘘だろ!?内臓破裂確実と言われる美輝ちゃんのボディブローに耐えるとは・・・こりゃ今までの相手とは違うぜ!!」
そしてギャラリーの太田が驚き役と解説役の両方をこなす。
気がつけば今まで数人程度だったギャラリーが一気に数十人、いや百人以上いるかもしれない
美輝と勇次郎を中心に大きな輪を作りヤイのヤイのと二人にエールを送っていた。
その中には警官もいたが誰一人止める素振りが無い、鬼丸飯店絡みの暴力沙汰は最早花見町商店街公認のお祭りなのである。
ギャラリーの一人が「美輝ちゃーん」と声を上げ、それに笑顔で手を振り応える鬼丸美輝。
「随分と余裕じゃねえか大戦鬼、その余裕がこの先持つといいがな」
「なんでも楽しくってのが私の信条なんだ、せっかくお客さんが見てくれてんだから楽しく応えてやらないとね」
「クク、確かにそうだッ!こんなに楽しいコトァ他にねぇ!テメェは今までで最高に食いでがありそうだぜッ!」
「言うじゃないか、それじゃ今度はこっちから仕掛けさせて貰うとするかねぇ」
そう言って美輝は持っていたオカモチを「フンっ」と叫び勇次郎にブン投げた。
「オオ!丸腰で挑んできた相手に容赦なく武器を使うとは!流石だぜ!美輝ちゃんッ!!」
何が流石なのか分からないが、オカモチを武器として使う美輝に驚きの声を上げる太田。
しかし勇次郎「邪ッッ!!」と拳一閃、飛んできたオカモチを中身のラーメンと共にバラバラに粉砕した。
オーッ!!と声を上げるギャラリー。
「下らねえ真似しやがってッ!!」
オカモチから目を外しキっと美輝に目を向けようとする勇次郎、
しかし肝心の敵の姿、『大戦鬼』鬼丸美輝の姿がどこにも見当たらない。
「鬼丸流葬兵術・・・・・・」
勇次郎の足元から不意に声が聞こえた。
「大 地 印 “頭”」
オカモチに気を取られている間に足元に潜り込んだ美輝がロケット発射さながらの推進力で
勇次郎の顎に頭突きを直撃―させたかに見えたが、
「チャリアアアアッッ!!」
勇次郎それを計算していたか或いは本能か、直撃必至と思われた美輝の頭突き、その軌道と水平になる様に背筋を
反らし合わせ、そのまま倒れこんだ勢いで攻撃を避けつつ逆に美輝の顎にカウンターの膝蹴りを叩き込んだ。
「なんだぁ!?美輝ちゃんがやられたのか!?何が起こったのか全然分かんねえぞ!!」
そのコンマ一秒程の出来事にギャラリーはワケも分からず歓声を上げる。
美輝は自らの頭突きの勢いと勇次郎の膝蹴りの勢いがプラスされて人間ミサイルよろしく
「うおぉぉぉーっ」とギャラリーの輪を抜けつつパン屋「ユエット」の中へと突撃して行った。
「ひぃぃぃーーーッ!!ワ、ワタクシのユエットがぁぁ〜〜ッッ」
それを見ていた神無月めぐみが半泣きになりながら叫び声を上げる。
スッポリと一つ鬼丸美輝型の穴が空いたユエットの外観、恐らく店内はもっと悲惨な状況になっているだろう。
ギャラリーの中心で一人、勇次郎が「フンッ」と鼻を鳴らす。
「この程度かよッ!?大戦鬼ッッ!!」
勇次郎が、立って来い!と言わんばかりに叫ぶ、
それを聞いた鬼丸美輝がパン屋「ユエット」の中からフランスパンを口に咥えながらユラリと姿を現した。
「上等だ・・・上等だよ、お前・・・、ワタシャこの先あんたを生かして帰す自信が無くなっちまったよ・・・・」
フランスパンを噛み千切りながら幽鬼の様に呟く鬼丸美輝。
ギャラリーから「美輝ちゃん頑張れーッ!」「負けるなー!」と大喝采が巻き起こる。
「な、何をやる気になっているんですの!?ワタクシのユエットがあんな悲惨な
状況になっているんですのよ!!も、もうお止めになって〜〜〜〜〜〜っ」
横からしゃしゃり出てきためぐみが両手を合わせ涙を流しながら懇願する、しかし
「「黙ってろッッ!!」」
と勇次郎と美輝、二人同時に一喝され、めぐみはヘナヘナと腰を抜かした。
「じょ、冗談じゃありませんわ!鬼丸さんがどうなろうが知った事じゃありませんけど、
これ以上戦われたら、商店街が・・・ユエットが壊滅してしまいますわ!」
泣きながら膝をつき声を上げるめぐみ。
「お、おおげさだなぁ・・・めぐみちゃん、やってるのはタダの喧嘩だぜ?いくらなんでも、そんな壊滅だなんて・・・」
そんなめぐみに太田のフォローが入る。
「いいえっ!これ以上あんな化け物二人に戦われたら商店街が!しかもワタクシのお店だけ集中的に被害を被るに決まってますわっ!
ワタクシ何故だかそういう星の元に生まれついているんですもの!なんとかしてあの怪物二匹を止めませんと・・・」
そう言ってめぐみはフラつきながら明後日の方向へと姿を消した。
「噂に違わぬ『大戦鬼』の異名!そしてギャラリーから愛される商店街の看板娘っぷりッ!
よくぞ二兎を得たッ!!思う存分俺が食らい尽くしてやろう!!」
本気になった勇次郎が両手を掲げ上半身の前運動だけで上着を引き千切る。
剥き出しになった背中からバーベルトレーニング等で作り上げた不自然な筋肉では無い。
純粋な闘争のみで研磨されたヒッティングマッスル、鬼の貌が姿を現した。
「今宵こいつを使用(つか)えるとは思わなかったぜ!感謝ッッ」
「今宵ってまだ夜じゃないけどな!でも上等だッ!ケリをつけようじゃないか!!」
勇次郎の鬼の貌に対して、『大戦鬼』鬼丸美輝もまた鬼丸流葬兵術の構えを取る。
極限まで高まった二人の闘気が決着をつけんと激しくぶつかり合う。
今まで騒いでたギャラリーも、そんな二人を見ると声一つ上げられない。
世紀の決戦を見逃すまいと、まばたき一つも出来やしない。
ジリジリと二人の距離が縮まる中―獣の咆哮を放ち―二人の鬼が動いた―
「邪ァァァッーーーッァァァッッッ!!!」
「どりゃぁぁぁぁぁーーーーっっっ!!!」
太陽に照らされたアスファルトに二人の鬼の影が交差する、そして―
「仕事サボって何遊んでんだいッッ!!!」
二人がブツかり合う刹那、突如謎の人影が乱入し一瞬で美輝の頭に左の拳骨を食らわせ担ぎ上げ、
残った右手で勇次郎の鬼のブン殴り、コンマ数秒で何十発と繰り出す鬼哭拳を全てカウンターで叩き返した。
そしてそのままブッ飛ばされ尻餅をつく勇次郎。
「グ、グォ・・・一体何が・・・・?」
何が起こったのか、さしもの勇次郎も理解できず、フト見上げると
『大戦鬼』鬼丸美輝がキュウっと伸び一人の中年女性がそこに立っていた。
「まったく!イヤに外が騒がしいと思って、めぐみちゃんに聞いてみたら・・・ホントにどうしようもないね、この子はッ!」
「オ、オカミさん!!」
太田が素っ頓狂な声を上げる、乱入者の正体は『大戦鬼』鬼丸美輝の母親、
そして花見町商店街最強の存在『鬼丸飯店』のオカミさん、鬼丸真紀子その人であった。
「こ、これで商店街の・・・ユエットの平和は守られましたわぁ」
今回の騒動の密告者、神無月めぐみが電柱の影に身を潜めながら安堵の吐息を漏らす。
「あーあ、オカモチも壊しちまって、またラーメン作り直さなきゃいけないじゃないか!」
そう言って美輝を担ぎ『鬼丸飯店』へ戻ろうとするオカミさん。
「ま、待ちやがれ!いきなり水を差しやがるたぁ・・・じょ、上等な料理に蜂蜜をブチ撒けるが如きシソゥ・・・ウゥ」
オカミさんを必死に引き止めようとする勇次郎だが、瞬く間に数十発ものカウンターを食らった体はまともに立つ事も許さない。
「ああ、悪かったねぇ、でも今は見ての通り仕事中だからさ、店閉めた時にまた遊んでやっておくれよ」
「ッ〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!」
そう言って美輝を抱え店の奥へと消えていくオカミさん、それを凄まじい形相で歯軋りしながら見送る勇次郎。
興が冷めたギャラリーもいつの間にかいなくなってる。
屈辱感に打ちのめされ一人ポツンと残された勇次郎は地に伏せたまま、しばらくの間呆然と空を見上げていた。
投下完了、連続投稿規制に手こずりすぎました、引っかかってますか?って分かっとるっちゅーねん!
ちょっと短めになる予定ですが次回で完結です。
>>420 ネタバレされてビビリました。
ビビって悔しかったので加筆修正しました。
まぁあまり変わってないですけどね、この後の展開もたぶん予想通りかと思われます。
>>ふら〜りさん
鎌足1/2ですか。
キッカケに喪黒のふくぞーを持ってくるあたりチョイスが上手いですねぇ。
ふら〜りさんのSSを見てバキスレに書き込もうと思った自分なのでこの後の展開が実に楽しみです。
>>436 勇次郎負けちゃいました。
ある意味ギャグでケムに巻いたという感じです、ごめんなさい。
でもそーでもしないと彼の性格上、収集つかないかなーと思ったので・・・
俺の従姉妹が脱線事故に巻き込まれたよ。死んじゃった。
従姉妹同士でも結婚できるってわかって、いつか結婚しようねって言ってたのに…
↑誤爆
(つД`)
459 :
作者の都合により名無しです:2005/05/06(金) 23:47:44 ID:3WFMLfBP0
>ゲロさん
お疲れ様です。勇次郎(実質)負けちゃったか。おかみさんなら仕方ない気がするけど、
せめてみきには圧勝してほしかったなあ。
>456
誤爆でも胸が痛んだ…
>地上最強の生物VS大戦鬼
鬼丸親子強過ぎw出来れば最終回に花園 垣を出して欲しい。
「うわぁ!」
ムグラの見せた光景は、少年にとって未知なるものであった。
この広い地上を真上から眺めるということは、少年の念願の1つでもあった。
「乗れたな」
「凄いよこれ! なんでそんなに冷静なの!?」
「いや、このくらいはな」
そう。この位の光景ならギンコは見慣れている。
「いいなー。家の近くに高い山なかったし……」
ムグラはギンコの想像を上回る範囲まで根を広げていた。
「いくらなんでも、この国を越えることはないだろう」ギンコはそう考えていたのだが、
実際、海にまで出てきてしまったのだ。
当然、内陸に住んでいて海など見たこともない少年は「うわあ! うわあ!」と叫んで
いた。
ムグラの勢いは依然治まることなく、自らの限界まで突っ切ろうとするかの如くギンコ達
の意識を遠くまで運ぼうとしていた。
そして――ムグラは大海を越えた。
「ギンコ! 陸だ! 陸が見えた!」
薄緑色の木々が、二人の目に飛び込んでくる。自分達の国の深い緑とは少し違う。そのせ
いか、少年は少し違和感を覚えた。
「でも、この違和感が大事なんだと思う。珍しいって、多分そういうことなんでしょ?」
珍しいものを見たこと自体ないので、少年は自分の感覚に自信が持てなかったのだ。
「確かにそうだが……お前、今までに珍しいもん見れなかったのか? 蟲を見ることの出来
る目を持ってるというのに」
蟲を見られるのなら、今までに何度もそういう経験をしている筈だと、ギンコは思っていた。
少年は少し戸惑って「ある時から周りのものとか見ないようにしてきたから……」と、消え
入りそうな声で呟いた。
彼は決め付けていた。「自分の周りにあるものなんて皆平凡で、そこに驚きや感動などある
筈がない」と。そして、そんな境遇に嫌気が差して、自然と視界を狭くしていたのだ。そんな
者に、何かを発見することなど出来る訳がない。
「お前の周りにゃ、蟲に限らずまだまだ珍しいものがあるんじゃないのか? どんな発見だっ
て、最初は極々些細なことから始まるもんだ。どうやら、お前はまだまだ人生修行が足りんな」
「……」
「だが」
ギンコはそう言って少年の肩を叩く。
「お前の気持ちは大事にしろよ」
「……うん」
広大な森を抜け、遂に『異国』が姿を見せた。
「凄いよ、ギンコ……なんか、何もかも違う……」
着物もない。家の造りも全く違う。そして何より色彩が違う。一番の印象はそこであった。
「色の感覚が違うな……目が回りそうだ」
「建物の色とか、ミカンの色を少し淡くしたようなのばっかだね。でも、あまり目に痛い感じは
しない。優しい色……」
もっと見ていたかったが、ムグラは止まってはくれない。やがて街を抜け、再び長く森が続い
た。やがて、視界の移動は止まり、ギンコはムグラを引き剥がした。
ムグラノリは終わった。
「有難う、ギンコ。俺、家に戻るよ」
少年の顔は、どこか晴れ晴れとしていた。迷いが吹っ切れたいい顔をしている。
「もう、一生のうちこれを超える驚きには出会えないかもしれないけど……でも、これからは
もっと周りを注意深く見て生きるよ」
「そうしな。そうすりゃ、いつか今日を超える何かに巡り合うこともあるかもしれんぞ。何せ、
お前には蟲が見えるんだから」
少年はゆっくりと家路を辿っていた。周りを見ながら、ゆっくりと。
すると、世界がこれまでになく豊かに思えてきた。
そうか。この世界には大小様々な命が溢れている。ということは、命は移り変わる。移り変わ
るということは、見る度に変わってゆくということ――。
命は常に不定であり、全てが珍しいものなのだと、この日少年は知った。
蟲が見えるということは、命を感じるということ――。
この日、少年は知ったのだ。世界を知る術を。
今回は苦戦しました。慣れたから軽く書けるだろ、と思いネタをふくらませなかったのは甘かった。
書き直したのは今回が初めてですよ。第一稿は長いだけで中身空っぽのゴミでしたから……
次回最終回ですが、その前に読みきりを挟もうかと。全く毛色の違う作品を題材とするつもりですが、
ある意味において(日常の中に非日常が混じっているという意味で)蟲師やもっけと共通するものです。
>>280 フェイクでした。大海を越えた先には未知の国があると、そういうことですね。
>>282 まあ、ゆるかったですしね。割と遅めですいませんでした。
>>285 今回は大変でしたが、そんなにつらくないですよ。長編より余程楽かと。
長編だと俺の場合破綻しますからw
>>312 そこまでネガティブにはしないですよw
では次回。
久々に投稿します。連投規制に引っかからなければ4つ、引っかかったら20時にでも残りを投稿させて頂きます。
克己がプルシコフを撃破した翌日の昼。
初夏の日差しが街を照らし、多少排気ガスの匂いが混じった風が吹き抜ける。
道行く人々の顔も、暑さのせいか、はたまた仕事や学校を終えた後の事を考えてか、どことなく、緩んでいた。
………北辰館本部ビルの周辺を除いては。周辺は物々しい雰囲気に包まれ、空手着の男達が道を封鎖している。
正面玄関は、半円を描くようにずらりと並んだ男達によって出入り不可能になっていた。
そして、神心会のそれと同程度の広さのロビー。ぎっしりと空手着の男達に埋め尽くされている。
だが、壁際に大きな空間が出来ていた。その空間の発生源と言うべき一人の男が、来客用ソファーに大股で腰掛け、煙草をくゆらせている。
男の足元には、数本の吸い殻と十人余りの門下生達が倒れていた。
男を取り囲む百人近い門下生達の誰もが、歯を食いしばり、拳を握り締め、怒りを露わに男を睨み付けている。
しかし、誰も手を出さない。別に禁じられているワケでは無い。……闘争心を、恐怖が丸呑みにしているのだ。
原因は、男の足元に転がっている門下生の中でもずば抜けて体格の良い二人の男。
北辰館でもトップクラスの猛者、工藤と立脇。
事の始まりは一時間ほど前、ロビーに現れた男が突然門下生相手に暴れ出した。
男の荒れ狂う暴風の如き巨大な暴力に、門下生達は為す術も無かった。
そこで工藤、続いて立脇の二人が男に挑みかかったのだが……、その結果は今の状況が示す通り。
工藤の強力な打撃を意に介せず、男は首を掴んで片手で工藤の巨体を持ち上げた。
ネックハンキングツリー。圧倒的な力の前に文字通り工藤は抵抗も出来ず、ぶら下がったまま失神した。
立脇も同じだった。手口がわかっていたのに、防ぎようが無かったのだ。
男の常識外れの怪力とタフネスの前に、立脇もあっさりと失神させられた。
煙草を吸い終わり、床に落とした吸い殻をサンダルで踏み消す。そのサンダルと足も常識外れの大きさだった。
「デ…松尾 象山ハマダ来ナイノカイ?」
もうもうと紫煙を吐き出しながら、男・死刑囚スペックが口を開いた。
緊張と恐怖に裏返った声で門下生が叫ぶ。「い…今呼んでる最中だっ!」
「早ク来ネェト、皆殺シニシチマウゼ?ハハハハッ!!」
スペックの哄笑が響く中、門下生の一人が必死の思いで内線電話の受話器に耳を押し付けていた。
出ない……まだ出ない……館長は居るはずなのに……
「おぅ、俺だ。なんだか騒がしいじゃねぇか。どうした?」
やっと出た。館長ならあの怪物を撃退できるだろう。
「あ、あのですね、死刑囚が暴れてまして、工藤さんと立脇さんが…」
「悪りぃな、こっちも取り込み中でよ。助っ人行かせるから、それまで持ちこたえてくれ」
「えっ!ちょっと館長…」
門下生の声も空しく象山は受話器を置いた。素早く携帯を取り出し、見た目にそぐわぬ速さでメールを打ち始める。
メールを送信し、スーツを脱ぐ。とてつもない肉体だ。衰えを知らぬ体、松尾象山の強さの象徴。
「そういうワケでよ、オイラこの後第2ラウンドが控えてんだ。ちゃっちゃと始めようぜ」
そう言って部屋の隅、日陰になっている場所へ視線を移す。
ぬるりと陰から抜け出るように、男が現れた。小男だ。オールバックに顔に刻まれた皺。
「あんたに第二ラウンドは無いよ……ここで…決着だ」
小男の全身から、どす黒くネバつくコールタールの様な殺気が溢れ始める。
「おぉ、怖ぇ怖ぇ!オイラ鳥肌立って来ちまったぜ」
豪快に笑いながら象山がスーツを後ろへ放り投げた。
「さ、始めっか…」
象山がスーツから小男に焦点を合わせた瞬間、既に小男は目前に迫っていた。それも、恐ろしい迅速さで。
「ちぃっ!!」「甘いわっ!象山っ!」
首を狙った小男の右ストレートを寸前でかわすも、次々と左右から拳がうねるように飛んでくる。
(ちょいと舐めすぎてたか…しゃあねえな)
象山がダンベルを蹴り上げ、小男の視界を塞いだ。尋常では無い脚力だ。
「むっ!!」
鳩尾へ吸い込まれるように放たれた象山の中段突きを、バックステップで小男がかわす。
「暗器たぁな。おいおい、北辰にパグ・ナグなんて持ち込むんじゃねえよ。柳さんよぉ」
肩から流れる血を拭いながら象山が言う。
「……ほぅ、知っているのか…しかし……あんたは武器より恐ろしいモノを見る事になるよ…」
小男・柳 龍光がその感触を確かめるように、拳の中の『パグ・ナグ=虎の爪』を握りながら言った。
「館長は?まだ来ないのか?」「取り込み中、らしい」
「取り込み?客なんて今日は居ないじゃないか」
「さぁ…?助っ人を呼ぶって言ったらしいぜ」「誰だよ、あんな化け物止められる奴って」
いつまでたっても象山が現れない事に、門下生達の不安はピークに達していた。
「オイ…ソロソロ我慢ノ限界ダゼ?」痺れを切らしたスペックが睨みを利かせる。
「か…館長は来れない、その代わり、代理の相手が来る」
「代理、ダト…テメェラノ中デ俺ト張リ合エル奴ガ何処二…」
「此処に居る」
正面玄関から現れた、作業着の男が放った言葉だ。
「ヘッ、アンタジャ無理ダ。象山ヲ出シナ」
一歩一歩近づいてくる男を見ながらスペックが言う。
「堤さんだッ!」「やった!堤さんなら勝てる!」「やってくれ堤ぃッ!!」
スペックは疑問を抱いた。目の前の男は、決して身長は高くない、小兵だ。
目つきもつぶらな感じで、ギラギラとした物では無い。本当にこいつは強いのか?
「北辰館・堤 城平だ。ウチの者が世話になったらしいな………タダでは、帰せん」
野太くはないが、強い意志を伺わせる声だ。どうやら、その他大勢と同格ではないらしい。
「ジャア、ドウスルンダイ?ボウ」
スペックが話しかけた時、既に堤のアッパーが顎へ昇っていた。
がつりと硬いモノがぶつかる音がし、スペックの膝が落ちる。
間髪入れず顔面へ右横蹴りを叩き込み、左のこめかみへ正拳を入れる。鼻血を吹き出してスペックが揺らいだ。
更に膝、肘、拳、足を凄まじい連射で打ち込まれ続け、みるみる内にスペックの表情から余裕が消え去っていく。
尚も堤の連打は止まらない、いや、それどころか。(速クナッテヤガルッ…!!)
もはや、堤の連打はスペックのガードが間に合わないペースまで上がっていた。
少しずつ、ダムに空いた穴が広がるように、スペックに直撃する打撃数が増えていく。
「やれぇっ!」「あと少しで倒れるぞっ」「そんな野郎、ブチのめしちまえっ」
声援に押されるように、更に速度が上がっていく。そして、スペックの背中に壁が当たった。
(オ、俺ハ下ガッテイタノカ…?)驚愕が生んだ一瞬の隙、それが、決壊を引き起こした。
「じぇりゃっ!!!」
堤の上段蹴りをまともに顎へブチ込まれ、血の泡を吹き出してスペックが倒れた。
「さすが提さんだな」「あぁ、何せ小型自動車に大型トレーラーのエンジン積んでるような物だからな」
「ガ…ゲハッ…モ、モウ勘弁シテクレ」
よろよろと力無く立ち上がるスペックを、構えを解かずに冷静に見据える提。
「………嘘ダヨォッ!!」
スペックの騙し討ち、目を狙った左ジャブが予備動作なく打ち出される。
(アレ…イナイ…?)
その時、既に堤はスペックの視界から消滅していた。当然騙し討ちは不発に終わる。
「ふんっ!!」
スペックの懐へ潜り込んでいた堤の頭突き。圧倒的な身長差を逆に利用した、ゼロ距離からの奇襲。
再び、顎へ真下からの強烈な一撃を貰い、またもスペックが倒れる。
「ははっ、提さんにかかりゃこんなモンだ!」「土下座すりゃ提さんだって許してくれるぜ〜!!」
「…いつまで寝てる気だ。猿芝居は止めろ」
「ヘッ、バレチマッテタカイ。察シノ通リ…マダマダ元気イッパイサ」
そう言って、スペックが頭跳ね起きで、一瞬で起き上がる。
「スゲェ連打ダッタ。デモヨ。上ニハ上ガ居ルンダゼ」
「ソコノボウヤ達ガアンタノ事ヲ車ニ例エテタガ……」無呼吸連打の構えを取るスペック。同時に提も構え直す。
「俺ハ大型トレーラーニ、ジェットエンジンッテ奴ダ……試シテ、ミルカイ?」
堤が息を吸い込む。それが無言の返事だった。そして、至近距離での総火力戦。
「おぃ…なんだよありゃあ」「人間じゃねぇぜっ二人とも」「二人の手足が…消えて…」
そう、余りの連射速度に、攻防の様子どころか手足さえ良く見えないのだ。
ただ、どうやら繰り出す拳足がぶつかり合い、未だ両者にクリーンヒットはないらしい。
…30秒…1分…1分30秒…2分…
(マズいっ)(息がもう)(続かないッ)
堤が飛び込んだ。シャワーの様に降り注ぐ打撃の、針の穴よりも小さいだろう『間』を狙って。
(この一撃で決めるッッ)(いや決めなくてはならないっ!!)
堤が決死の覚悟で放った上段蹴りは、しかし直撃する事は無かった。スペックの巨大な手が、蹴り足の足首をしっかりと受け止めていた。
「残念ダッタネ、ボウヤ。サッキノ時間カラ判断シテ」
「君ガソロソロ限界ヲ迎エルノハ予想出来タ事ダッ!!」
堤は、自分のこめかみへ、風切り音を伴った何かが飛んでくるのを聞いた。
ゲロさん、投稿直後に失礼しました。
……しかも4レス目が提になってるし。
正→堤 誤→提
です。重ね重ねすみません。
472 :
作者の都合により名無しです:2005/05/07(土) 20:28:31 ID:ebGKle7B0
>蟲師
苦戦しただけあって、少年の驚きとギンコの優しさが良く書けていたと思います。
最終回がゲロさんの真骨頂だと思いますので、どんな結びになるか期待してます。
>デスゲーム
象山を中心にしばらく物語が進みそうですね。堤は好きだけど、最凶死刑囚では
少し荷が勝ち過ぎるかも。ヘタれずにこのまま、強い死刑囚であり続けて欲しいです。
ゲロさん、五さんお疲れ様です。
ゲロさんは次回で大海を越えるの最終回、
五さんは激しくなる死刑囚との戦いと両作品ともクライマックスですね。
楽しみにしているので、お2人とも頑張って下さい。
ゲロさん次で最終回か。
どうせなら最終回らしく、ちょっと長めの話が読みたいな。
―三日後―
「オ、オイ!どーしちまったんだ勇次郎ッ!急にいなくなったと思ったらこんな所でッ!しかもその格好はッ!?」
ストライダムは例の『大戦鬼』を倒す為、ホテルから姿を消した勇次郎が、いつまでたっても帰ってこないので、
流石に心配になった彼は『大戦鬼』の根城『鬼丸飯店』へと訪れ、そして衝撃を受けていた。
「フンッ!遠路はるばるご苦労なこったなストライダム、だがしばらくは帰らねえぜッ!」
頭に三角頭巾を被り、白いエプロンを着けた勇次郎が答える。
左手に丼を握り、右手で寸胴鍋に入ったスープをお玉で掻き混ぜる彼のその姿からは、
ラーメンの香ばしい匂いが漂い、さながらその雰囲気は数十年その道一筋と噂される様な
頑固オヤジのそれである。
「ああ、この人の知り合いかい?なんだか知らないけど急にウチで働らせてくれって言い出してねぇ・・・
ウチじゃロクに給料も出せないから断ったんだけど・・・私を倒す為、とか何とかで強引に居ついちまって、
・・・困ったもんだよ」
「ほ・・・本気か、勇次郎・・・?」
オカミさんのその言葉を聞いてショックを受けるストライダム。
仮にも地上最強の生物と呼ばれた、あの範馬勇次郎が中華飯店のオカミさんを倒す為だけに、
あろう事かエプロンを着用し、いっぱしの従業員に成り下がっている、その事実は彼にとって、
いや、全世界中の『範馬勇次郎』という人物を知る人間にとって信じ難いモノであった。
「別にいいじゃないか母さん、タダでこんな馬車馬みたく働いてくれる人間ほかにいないよ」
これで私も仕事サボって遊びやすくなったしね、と心中で付け加えながら美輝が言う。
「ケッ!ぬかせ大戦鬼!テメェとの決着もまだついてない事を忘れるなッ!!」
言いながらも麺を茹で餃子を焼き炒飯を炒め的確に仕事をこなす勇次郎、
完璧に店に馴染んでいるその姿を見て未だ信じられない表情のストライダム。
せっかくだから何か食っていきな、という勇次郎の言葉を受け、差し出されたラーメンから
ストライダムは仄かに香る母親の―忘れかけていた温かみを思い出すような―そんな味がした。
「出前が入ったよ、三丁目の遠藤さんちにラーメン二丁っ!」
オカミさんのその言葉を聞いた勇次郎と美輝がピクっと反応する。
「ほう、あのクソ犬がいる所の出前か・・・こいつは血が騒ぐぜ!」
「待ちな!遠藤さんは私のお得意様なんだ、こればっかりは譲れないね!」
出前を賭け、腕を組んだ美輝が睨みつけながら勇次郎と対峙する。
「面白えッ!!ならどっちが先に早く出前を届けるか・・・・・勝負と行こうじゃねえかッッ!!」
そんな美輝に勝負を吹っかける勇次郎、
「上等じゃないか!後で吠え面かくんじゃないよっ!!」
売り言葉に買い言葉、勇次郎の出前勝負を望むトコロだ!と言わんばかりに受け入れる美輝。
両者の視線の先にはバチバチと火花が飛び散っている。
そしてそれぞれのオカモチに二つあるラーメンを一つに分けて詰め込む二人。
「ちょっ、ちょっと!何も二人で行くこたないだろ!?」
オカミさんの声も聞かずにオカモチを持った鬼二人が駆けていく。
『地上最強の生物』範馬勇次郎、『大戦鬼』鬼丸美輝。
この二人の戦いはまだ始まったばかりである。
〜終わり〜
>>454からの続きで完結です。
タマにはこんな勇次郎もいいじゃないか!って事で書いてみました。
ネタが有ればまたバキと絡めたチャンピオン漫画でSS書きたいですねぇ(アクメツとか)
478 :
作者の都合により名無しです:2005/05/08(日) 16:02:08 ID:4dMb5YeaO
乙。
いろいろあったが、完結して良かった。
次回作期待してる。
479 :
北の果てより:2005/05/08(日) 19:19:56 ID:Vao9aEKG0
北の果てより 『第0話 プロローグと解説』
最初にお断りしておく。以下の解説はしばらく読み飛ばして頂いても全く構わない。
最後の7行だけ読んで頂ければそれで事は足りるからである。
『プロローグ』
微妙に揺れ動く、危うい時代だったらしい。今より30年と経っていない過去の話である。
第二次世界大戦後の数十年の時代の話。
歴史的考察から詳しく述べるなら、1945年から1989年までの間の時代の話である。
ソビエト連邦を盟主とする共産主義陣営と、アメリカ合衆国を代表とする資本主義陣営。
各々のイデオロギーが世界を二分し、反目し合い、鎬を削りあった時代である。
虚々実々の政治的、軍事的、思想的の駆け引きが絡み合い、世界は混乱の度を極めていた。
宇宙開発などの華々しい競合の裏で、核のボタンをお互い押せる態勢にあった時代。
アメリカの政治評論家、ウォーター・リップスはかの状態を指してこう呼んだ。
冷たい戦争。『冷戦』の時代、と。
480 :
北の果てより:2005/05/08(日) 19:21:25 ID:Vao9aEKG0
永きに渡る冷戦は、歴史的な2つの出来事により終焉する事になる。
一つは、ソビエト連邦の経済的疲弊・主義体制腐敗による西側とのパワーバランスの崩壊。
そしてそれによる、ミハエル・ゴルバチョフ書記長によるペレストロイカの推進。
ゴルバチョフの抜本的体制改革により東西の緊張は緩和し、対立は弱まる事になる。
(SDIを巡るレーガンと大統領との米ソ首脳会談の決裂など、紆余曲折はあったにせよ)
もう一つの決定的な出来事は、ポーランドやハンガリーを皮切りに次々と共産国家が倒れ、
終には冷戦の象徴ともいうべき『ベルリンの壁』が1989年11月に崩壊した事である。
そして同年12月、ゴルバチョフとアメリカ大統領のブッシュはマルタ島で会談し、
冷戦の終結を世界へ宣言する。
冷戦やソビエト連邦の崩壊に関し、これ以上詳しい説明をするのは、物語の語り部として
必要無き事ではある。上記に関して、無知ゆえに間違いがあればお許し頂きたい。
ただ物語の前提条件として、当時のソビエトという国が、社会主義・共産主義で
固められていた、という事をご理解頂きたい。
また、現実の歴史と時代・思想背景を舞台にした物語であるが、それに反し現実離れした
荒唐無稽も多々ある。が、それも笑ってご理解を頂けると幸いである。
物語の舞台は1980年前後、ソビエトのアフガニスタン侵攻により東西の緊張が
極にまで高まりし時代の、ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国(現・ロシア)の
片田舎から始まる。これは、とあるレジスタンスとその英雄の物語である。
481 :
北の果てより:2005/05/08(日) 19:22:48 ID:Vao9aEKG0
プロローグの場を借りて、ひとつお断りしておく。
この物語は、当時の巨大なる国家とそのイズムに牙を剥く者の物語である。
ソビエトの強大なる共産主義に、民主主義の革命を目指す愚か者たちの話である。
故に、当時のソビエト共産主義が敵役になる事をお許し願いたい。
冷戦の終結により、共産主義は敗北したが、これにより共産主義が悪という訳ではない。
ただ、時代がそうジャッジを下した、というまでの話である。
現実として一番強大な敵とは何か、を考えた場合、『国家』以外にはありえない。
その国家に対して、牙を剥く少年の話を書きたかった。それだけの話である。
この下らない物語に主義主張は無い。
革命を目指す愚か者の主人公がどう戦い、どう散ったかをお楽しみ頂きたい。
どの漫画のどのキャラクターが主人公なのかは、プロローグ段階では伏せておく。
この物語の主役は、権力に追従し賢く立ち回ろうとする豚ではない。
この物語の主役は、権力に盲従し軍靴の歩調を合わせる犬ではない。
この物語の主役は、権力に服従し自らの意志を放棄した羊ではない。
この物語の主役は狼である。
幼く、無様で、思慮浅くも必死に牙を剥く狼の物語である。
狼は狼であるが故に、狼として生きるが故に滅亡に向かっている。
その愚か者をしばらく書かせて頂く事を、お許し願いたい。
(プロローグ・了)
482 :
北の果てより:2005/05/08(日) 19:25:19 ID:Vao9aEKG0
次回からの本編はもっと長く書きます。一週間後くらいになってしまいますが。
歴史的な事や主義思想の説明については、間違ってても突っ込まないで下さい。
コテ忘れです。すいません。
今週中にラーメンマンを終わらせます。魔界も来週中には。
最後が上手く行かないんですよ。
484 :
作者の都合により名無しです:2005/05/08(日) 20:26:29 ID:6E8KoxUv0
パオさんも復活キタ━━(゚∀゚)━━!!
しかしすごい出だしだな。文体、内容とも。全部呼んだけど半分位わからなかった。
下手に柔らかくなる事なく、こんな感じで続いて欲しい。期待感は高いな。
でも既存の連載、何本も歩けど大丈夫?DIOの世界てもう書いてくれないの?
聖戦において主力となった青銅聖闘士五人の年齢は概ね十三〜十四歳だった。
彼らの事はよく知っている。
快活で何事にもめげず突き進む男、星矢。
友情の為に死線を潜ることも厭わない男、紫龍。
不撓不屈の闘志と慈愛をもった男、瞬。
氷の冷静さの中に炎の情熱を隠した男、氷河。
誰であろうと歩みをとめられない漢、瞬の実兄、一輝。
彼らと同年代になってから特に思う、
自分は彼らと同じ状況に陥ったら彼らのように振舞えるのだろうか、と。
とりとめもないことを考えてしまうのは、たるんでいる証拠、
魔鈴先生ならそう言って鉄拳の五〜六発は叩きこんでくれるだろう。
アテナの聖闘士たるもの、常にアテナの名の下最良を尽くすべし
それが守れないのならば聖衣を纏う資格はない。
充分に理解しているが、まだ未熟なのだろう。と貴鬼は常々思う
ハーデスとの戦いで貴鬼の敬愛する師・ムウは殉教した。
アテナがハーデスをエリシオンにて屠り、この度の聖戦は一応の終結を見た。
そして、貴鬼はアッペンデックスではなくなった。
聖衣の修復者という肩書きが望まずとも課せられた。
聖域とアテナの大儀の守護者の頂点たる黄金聖闘士となるべく、修行を開始した。
何度も死に掛けた。
だがそれでも、偉大なる師・ムウの名を穢さぬためにも、
死してなおアテナの正義を貫いた大教皇シオンの後継としても、
生半可な聖闘士ではいられなかった。
最強の黄金聖闘士。その名は神すら屠った神聖闘士の前ではあまりにも空しい響きだが、
それでも最強に成らねばならなかった。
自分自身が許さなかった。
心技体を兼ね備えた存在に成らなければ、先代、先々代へ顔向けできない。
幸か不幸か、凄絶としか言えない覚悟を抱く者は、貴鬼だけではなかった。
黄金聖闘士でありながらサガの悪事に加担した先代を持った者は、
それこそ汚名を雪ぐ為に自分自身を苛め抜いた。
そんな彼らの中、初めに聖闘士の資格を得て聖衣を纏ったのは、
黄金12宮最後の守護者である魚座の聖闘士だった。
その名を魚座・ピスケスのアドニス。
神聖闘士・アンドロメダ瞬の弟子である彼は、当初面白いくらい貴鬼と合わなかった。
似すぎていたのだ。
覚悟も、想いも、思想も、あらゆる点で貴鬼は彼に相似を見出した。
故に、事あるごとに喧嘩になった。
お互い聖闘士、語り合うより光速拳の応酬となる。
拳と拳がぶつかり合い、肉を打ち、腸を穿ち、骨を砕く喧嘩。
聖闘士同士の私闘は厳禁だ、決着付かずに終る、それ故にまた喧嘩。
そうして拳を交えるうち、二人は友情を育んでいった。
それから先は拳を交わしての語り合いだ。
理想に近づけぬ自分への不甲斐無さ、先代と比べられることへの懼れ、
そして、いつまた起こるとも知れない聖戦への怯え。
言葉は要らない、拳が言葉、拳が想い。
二人の小宇宙はそうして高められていった。
今思うに、アドニスも自分もただ会話がしたかっただけなのかもしれない。
声をかけるきっかけが拳の応酬、実に聖闘士らしい。と貴鬼は思った。
覆すことの出来ないはずの聖闘士の階級が覆されたらどうすればいいかと聞いたら、
覆されたのならばまたひっくり返せばいい。
散々迷った末、貴鬼が星矢に自分の胸のうちを打ち明けたところ、
帰ってきたのはそんな答えだった。
ああ、だからこそ星矢なのだ。
不可能なんて無いと信じている。
だからこそ星矢なのだ。
貴鬼の中に燻っていたものは、その一言で燃え上がった。
この偉大な先達を超えてみせる。自分自身のやり方で超えてみせる。
その瞬間、貴鬼は本当の意味で聖闘士となった。
一本に集中しろ。迷惑だ。チラシの裏じゃねえんだよ馬鹿野郎。
489 :
銀杏丸:2005/05/08(日) 20:45:41 ID:PPUXvkNQ0
投下させていただきました
アルデバランとデスマスクとミロが難航してます…
バットとか弥彦とか、
主人公に憧れる子供キャラがたくましく成長した
というシチュエーションが好きです
物語の中で歴史を感じさせてくれるので
できればの話ですが、
12人+1人が終ったら本編終了後の彼らを書いてみたいと漠然と思っています
しかし、黄金聖衣が五体も喪われている状況じゃ貴鬼も大変でしょうね
490 :
作者の都合により名無しです:2005/05/08(日) 20:52:13 ID:6E8KoxUv0
お疲れです銀杏丸さん。今回はシリアスモードの作品ですね。
キキ、見事におまけから真の戦士になりましたね。
でも、神聖闘士てのがわからない。原作に出ましたっけ?
カニさんと牛さんはファンが多いからプレッシャーありますねw
また黄金期に入りそうなよい感じ。
491 :
銀杏丸:2005/05/08(日) 21:00:38 ID:PPUXvkNQ0
本編終幕間際、アテナの血によって蘇った聖衣が
星矢たち五人の小宇宙のたかまりによって神衣(カムイ)に最も近い聖衣
いわば神聖衣(ゴッドクロス)になった、ということからの造語です
青銅聖闘士のままじゃ格好付かないので、私が勝手にそう呼んでます
神聖闘士(ゴッドセイント)と読んでください
なんかおさまり悪いですがw
>>489-482 北の果てより氏、とお呼びすればいいのかな?
何か純文学っぽいぞ、この書き出し。期待していいのでしょうか
一週間後を楽しみにしています。
>>銀杏丸氏
アドニスとはこれまた渋いキャラ選択。
どうぞ無理なさらずがんばってください。
>パオさん
読後力の無い私は最後の7行だけ読みました。
狼ってことはアレですか? でも舞台が現実世界っぽいから違うか。
>銀杏丸さん
あれ? 星矢って最終話で死ななかったっけ?
まああの漫画ならいつ生き返ってもおかしくないけどw
貴鬼は最初一発キャラだと思ってたけど、ポセイドン編にも
出たし、結構作者も気に入ってたのかな。
ところでアッペンデックスってどういう意味でしたっけ?
>アッペンデックス
おまけって意味
>星矢
ジャンプ主人公はどてっぱらをぶち抜かれるか
首を切り落とさない限り死にません
首を落とし(た描写があっ)ても生きてるよ
車田漫画の本質はハッタリだから
>Z戦士氏
勇次郎がただのパシリみたいだな。ありがちなオチといえばオチだけど、
予定調和みたいな感じで心地よかった。アクメツ、期待しております。
>パオ氏
これまでのSSとは異彩を放つスタートですね。この固い文体と表現のまま、
突き進んでほしいです。テーマが重そうですね。革命ですか。
(パオさんの引き出しの多さには敬意を払うけど、既存作投げないで下さいね)
>銀杏丸氏
おまけのなんの戦闘力もない貴鬼がりりしく見えますね、最後のシーン。
貴鬼は果たして聖闘士を目指すのか、ムウのような修理の人を目指すのか?
497 :
おとめごころ:2005/05/09(月) 07:35:38 ID:R2Xr7e9J0
>>431 比叡山の北東中腹にある、六連ねの鳥居の祠。ここは志々雄一派のアジトである。
その奥は志々雄以下幹部たちの居住区となっており、訓練場や食堂、談話室などがある。
その中の一室、共同浴場にて。大きな豪華な檜風呂に浸かって、蝙也は沈思黙考していた。
「……う〜む……」
「何唸っとんねん。眉間にシワ寄せよってからに。シワとシワとでシアワセか?」
「うむむむむ……」
「雑音は聞こえへん、てか。そらまぁ悩むわな、きす禁止とか言われたら」
ざばっ! と蝙也は湯船から立ち上がって、いつの間にか隣に来ていた男を見た。
そこには、風呂の中だというのにちっとも崩れていない、見慣れたホウキ頭が揺れていて。
「ほんの気まぐれやってんけどな。この、自慢のへあすたいるを崩して町に行ったんや。
ほしたらまぁ、ワレも鎌足も見事にワイやと気づかんで」
とニヤニヤしてるホウキ頭は、鎌足と蝙也の同僚、つまり志々雄一派の幹部、張だ。
「い、いたのか、お前。あの場に」
「せや。あ、心配せんでもええで。鎌足の件は誰にも言わへん。むしろ協力したるがな」
張は、そりゃもう楽しそうって顔で蝙也の肩を叩いて、言った。
「まあ、じっくり相談しよやないか。鎌足と志々雄様の今後について。な?」
「……」
今、鎌足のことを面白がって噂にでもされたら困る。仕方なく蝙也は、頷いた。
「それや。まず、ワレが何でそこまで鎌足に協力しよるんか。そこを聞かせてもらおか」
「なっ? そ、そんなことは関係ないだろうがっ!」
「ええやないか。あ、人に聞かれたらマズい話か? ますますええなあ。ほな場所変えよ」
「って、お前ただ単に、野次馬根性で首突っ込んでるだけだなっ?」
「ええからええから」
張は蝙也を引っ張り立たせて、浴場を出た。浴衣に着替え、蝙也を引きずって、
いそいそと自室へ向かう。その途中、
「あれ、蝙也君に張君? どうしたの、何を慌てて」
鎌足とすれ違った。二人の妙な様子に、鎌足は首を傾げる。
「? ……ま、いいか。それより考えなきゃ。接吻抜きで、どうするか? う〜難しいっ」
大浴場へ向かう鎌足の眉間には、シワとシワとが寄っていた。
498 :
おとめごころ:2005/05/09(月) 07:36:38 ID:R2Xr7e9J0
貧乏武家の四男坊。となれば、家督相続=武士として生きるのは諦めるのが普通である。
だが稀に、そういう境遇から武で身を立てる者もいる。なのでその少年も、そういう道を
歩もうとした。武者修行の旅に出たのである。
そしてあっけなく、山中にて行き倒れた。人並の聴覚しかない身の悲しさ、小川の
せせらぎを聞き取ることも叶わず、このまま飢えと渇きで死ぬるか俺は……なその時、
「…………あ、生きてた。これ、私のお弁当の残りだけど、食べる?」
大鎌を脇に置いた女神様が、佃煮入りのおにぎりを手に、膝枕してくれていた。
以来少年は、その女神様と行動を共にすることとなる。自身も武者修行中だという
女神様が、包帯男に惚れ込んでその部下となった時も、一緒に着いていった。
全てはあの、おにぎり。その味は終生忘れられず、その恩は終生かけても返しきれず。
「落ちぶれ果てても蝙也は武士、ちぅことかいな。その割にはタメ口きいとるな」
「鎌足本人の注文でな。自分は理想の殿方に仕えるのが夢、人に仕えられるのは
ガラじゃないから、と」
「ははっ。あいつらしいのう」
アジトの中の、張の部屋にて。張と蝙也は二人、向かい合って茶を啜っている。
「そういうことなら、あいつが『女』神様やのうても、志々雄様に惚れても、どうでも
ええ。とにかく恩返しがしたい、ちぅワケか。ほな、今ワレがやることは一つやな」
張の両手が、力強く蝙也の肩に置かれた。
「鎌足の、練習相手になったれ。志々雄様との本番に備えてな」
「練習?」
「せや。女の子のカラダがあるんやったら、口を封じられてもやりようはいろいろある。
殿方へのご奉仕のやりようはな。ええか? 例えば胸を使うてやな……(自主規制)」
ぼぼぼぼっ! と蝙也の顔が朱に染まった。
「お、お、おま、お前、ななななんという、ことをっ!」
「なんとも北斗もあるかいな。鎌足の幸せ、大願成就の手助け、するんちゃうんかい」
それはそうだが何もそんな、と困惑する蝙也を、張は溜息混じりに説得する。
「よう聞けよ。あいつが何年おカマやっとるんかは知らんけど、ホンマもんの女の子の
カラダを使うたことはないやろが。せやったら、充分な研究・練習が必須。ちゃうか?」
499 :
おとめごころ:2005/05/09(月) 07:37:23 ID:R2Xr7e9J0
「……う、う〜……そうかもしれんが、だが……うむむむむ」
「ほれ、唸っとる場合とちゃうやろ。思い立ったが吉日や!」
悩んでいる蝙也の後ろ襟を掴んで引きずって、張は蝙也を共同浴場の前に連れてきた。
入口の戸を開けて見てみると、脱衣所には鎌足の服しかない。
「うん、丁度ええ。さっき教えたった『泡を使うぷれい』でもやってこいや」
「ぷ、ぷれいって」
「安心せえ、覗きはせんから。ほな、せいぜいキバるんやで!」
蝙也の背を叩いて、張は出て行った。
一人脱衣所に残された蝙也はというと。張に教わった各種『ぷれい』を思い出して。
『と、とにかく本人に相談してみよう。嫌がるようなら、無理にする必要はあるまい。
もし希望したら……その時は、目隠しして手足を縛って雑念を捨て、あくまでも練習台
ということを念じて念じて……するしかあるまい』
それで練習になるのかどうかは置いといて。一応何とか結論づけた蝙也は、脱衣所を
通り抜けて湯殿への戸を開けた。風呂に入ってる以上、今の鎌足は男の子なはず……
「あ」
そこに、裸の鎌足がいた。
生まれてから一度も日に晒されていないような、染み一つない真っ白な肌で。まるで
小枝のように、片手で軽く折れてしまいそうな細腕で。そんな腕とはアンバランスな
ほど肉感のある、針でつつけば破裂しそうな張りのある太ももで。たっぷりと重そう
なのに、微かに重力に逆らい上方を向いている柔らかそうな乳房で。
早い話が、なかなかに魅力的な女の子のカラダで……
「きゃああああああああぁぁっっ!」
一瞬見惚れてしまった蝙也の視界を、桶と濡れ手ぬぐいと石鹸と香料瓶と、その他諸々の
風呂場雑品が埋め尽くした。鎌足によって投げつけられたそれらは、的確に蝙也に命中
して突き飛ばし、すっ転がし、脱衣所の中央まで押し戻してしまう。
ぴしゃん、と湯殿の戸が閉められた。倒れた蝙也の頭上には、星とヒヨコが回転している。
一拍置いて、湯殿から鎌足の声がした。申し訳なさそうに。
500 :
おとめごころ:2005/05/09(月) 07:38:00 ID:R2Xr7e9J0
「えっと……ごめんね蝙也君、痛かった? 実は私、昔っから憧れてたの。お風呂覗かれ
て、悲鳴上げていろいろ投げつけるっての。でもほら、やっぱり男の子同士だと、いくら
何でもヘンでしょ? で今、蝙也君たちの声が聞こえたものだから、水浴びて女の子
になって、待ち構えてたってわけ。あの、ほんとにごめんね。でもって、ありがとっ」
……何だかよく解らないが、鎌足なりの男の浪漫、いや、おカマの浪漫だったらしい。
それはそれとして。蝙也はむくりと起き上がると、そのまま脱衣所を出て行った。
無言でスタスタ歩いて、張の部屋まで来て、戸を開ける。
「お、何や蝙也。えらい早かったやないか。……って、そうか。ワレ早いんか(深刻)。
けど、まあ、気にすな(激励)。前に男塾っちぅとこの教官が言うてたことやけどな、
日本男児は西洋の男と比べて、寸で負けても色ツヤ硬度で勝負……」
「直撃発破っ!」
ちゅどおおおおぉぉん!
張の部屋の中で、爆撃炸裂。室内&張は、見るも無残にコゲコゲとなった。
げほげほと咳き込みながら張が、額に青筋立てつつ中指を立てる。
「何さらすこのボケ蝙蝠っ! あまりにも早すぎて鎌足に笑われたかしらんが、ワイに
八つ当たり……あ、もしかしてワレ、早いだけやのうて(自主規制)なのを知られて」
「直撃発破六連っっ!」
ちゅどどどどどどぉぉん!
「ぐほげほごほがほっ、と、当分煙草はいらへんな……って、ええ加減にせんかい!
このアジトが比叡山ごと崩落してまうわ!」
「やかましい! お前みたいなへっぽこぷーの言うことを聞いたせいで、俺は、俺はっ!」
「…………随分と楽しそうだな、二人とも」
突然蝙也の後ろから、落ち着き払った低い声が聞こえた。
蝙也が振り向くとそこにには、包帯ぐるぐる巻きで着流し姿で、刀を腰に差した男がいて。
「! し、志々雄様っ!?」
501 :
おとめごころ:2005/05/09(月) 07:39:06 ID:R2Xr7e9J0
慌てて整列、直立不動になる二人。この男こそ、このアジトの主にして、この組織のボス。
志々雄真実その人である。
「ケンカするほど仲がいいのは結構だが、近々結成予定の『十本刀』候補のお前らに今
死なれると、組織として困るんでな。ほどほどにしておいてくれ」
こんな奴と仲良くなんかありませんっ、と互いを指さして吼える二人に、志々雄が言う。
「とにかくだ。お前らに、ちょっとした出張仕事を頼みたい」
「出張?」
「ああ。ほら、俺たちの、大陸からの武器の仕入れ先。雪代とかいう奴の密売組織が
あるだろ。あそこはどうも、あちこちから恨みを買ってるらしくてな。ある対立組織が、
わざわざ暗殺結社を雇って商売の邪魔を始めたんだと。で、今後の武器の値引きを
条件に、その暗殺結社の追っ払いを引き受けた。お前らに頼みたいのはそれだ」
もうすぐ大阪に着く志々雄一派宛ての荷を狙って、既に暗殺結社の刺客が放たれた
らしい。なのでそいつらをサクサク刻んで皆殺しにして、二度と邪魔をしないよう
思い知らせる。そういうことである。
「解ったな? じゃ、直ちに大阪へ向かってくれ。馬車を用意してあるから……」
「あ、いたたたたっ」
張が突然、お腹を押さえて蹲った。
「志々雄様、ワイ、ちょっと体調が悪ぅて。他のモンに代わってもろてもええですか?」
「そりゃ、別に構わんが」
「おおきに。ほな、そういうことでっ」
張が元気良く走り去り、志々雄は首を傾げる。
「元気そうじゃねェか。あいつ、何考えてんだ?」
「さあ……って、今あいつが嬉しそうに企むことといえば鎌足絡みっっ!」
今度は蝙也が、元気良く走り去った。志々雄は一人、ぽつん。
「?? 鎌足が何なんだ。ま、仕事さえしてくれりゃいいんだけどよ」
ほりほりと頭を掻きつつ、志々雄は自室へ戻って行った。
502 :
おとめごころ:2005/05/09(月) 08:15:26 ID:R2Xr7e9J0
鎌足の部屋。湯上り浴衣姿の鎌足(今度は男の子Ver)が、張の話を聞いている。
「なるほど。志々雄様はそこまで、私のことを信頼して下さっているのね」
「そういうこっちゃ。これは我が組織の今後を左右する一大事や、てな」
「うぅ。そんな重要な任務を、この私に任せて下さるなんてっっ」
「張っ!」
慌しく蝙也が駆け込んできた、が、時既に遅く鎌足の鼻息は荒い。
「蝙也君、話は聞いたわ! 早速出発よ、準備してっ!」
「って鎌足お前、何か変に膨らませた話を聞かされてないか?」
「ウダウダ言わない! 私着替えるから、ほらさっさと出る!」
張と蝙也は、部屋から叩き出された。蝙也は張を睨みつけて、
「おい腐れ外道。何を企み腐った」
「ちっちっ。企むやなんて人聞きの悪い。ワイはただ野次馬根性に従い、事態を
面白がって引っ掻き廻しとるだけやないか。今ワレと鎌足が二人旅をしたら……てな」
「それを企むと言うんだっ!」
蝙也が張に殴りかかろうとしたところで、背後の戸がガラリと開き、鎌足が出てきた。
着替えを終えて髪を整えて大鎌を担ぎ、臨戦態勢いつでも来い、のポーズである。
「蝙也君、準備できた? 行くわよっ」
「いやその、俺はちょっと、さっきのこともあってお前に対して少々動揺が」
という蝙也の言葉はきっちり無視して、鎌足は蝙也を担ぎ上げて走り出した。
「組織の浮沈は我が双肩にあり、志々雄様の未来は我が活躍にあり、よ! 蝙也君も
男なら、こういう状況に燃えてみせなさいっ!」
「待ってくれ、てのに! 何だか俺、さっきから引きずりまわされてばっかりっっ!」
どたばたと、土煙の彼方に消えていく二人。張は、手をヒラヒラさせて見送った。
「ほなな〜。土産話、楽しみにしてんで〜。……濡れ場の一つも展開せぇよ蝙也〜。
ワイの教えたった(自主規制多数)な『ぷれい』、忘れなや〜」
むう。最近、小野寺浩二先生にハマった影響が出てるのかも。「それいけ!! ぼくらの
団長ちゃん」「妄想戦士ヤマモト」「義経ちゃん剣風帳」など。面白いですよぉ。
>>ミドリさん
疑問符つけての「ごきげんよう?」が微妙に面白い。でも、入学したてで不慣れな女の子
たちは皆そうなのかも、とか考えると……なかなか萌えまする。その一方、今回の幕の
引き方はかなり不安煽ってますね。不透明なだけに怖さが引き立ちます。次回、何がっ?
>>Z戦士さん
期待通りめぐみちゃんが可愛くて満足。Z戦士さん本編の梢江ちゃんもですが、こういう
「振り回されっ子」好きなんです〜。勇次郎のギャグっぽい敗北も、ある意味期待通り。
と思ってたら期待の斜め上を駆け抜けた、出前もち勇次郎。刃牙に見せてやりたいなぁ。
>>ゲロさん
おぉ前向きだ。「おら都会さ行くだ」ネタは殆ど暗いのばっかり見てきたので新鮮です。
しかも人間ドラマ絡みではなく、景色、風景だけでここまで心情をもっていくとは……
いや読んでる方もしっかりもっていかれましたが。にしても楽しそうですね、ムグラノリ。
>>五さん
意外過ぎて想像し辛い象山の(早い)メール打ち。でも想像すると楽しい。で相変わらず、
にこやかに凶暴なスペックが良いですな。打たれまくった後、ヘラヘラしながら立ち上り
逆襲、ギャラリーは巻き添えを食った人々。卑劣と実力の同居、やはりこうでなくてはっ!
>>パオさん
うぐぐ。ゴルゴとパタリロぐらいでしか触れたことの無い空気が。一応ここは「バキスレ」
なので、ソ連と言われるとどうしても……連想するのは……あのヒトとか、あのヒトとか。
でもバキ以外でソ連・ロシア絡みとなると、本当に限られてきますしね。題材は一体っ?
>>銀杏丸さん
貴鬼で来ましたか。あの子の成長した姿、そして聖衣を纏った姿(しかも黄金聖衣)と
いうのは、なかなか想像のしがいがあります。ムウの後継者である以上、聖衣の修復が
課せられてしまうというのは不幸といえば不幸。でもそれを越えたわけですよね。偉い!
504 :
作者の都合により名無しです:2005/05/09(月) 08:43:56 ID:gf6jU4cI0
朝っぱらからふらーりさん乙。
SSの雰囲気はふらーりさんらしいけど、下ねたはふらーりさんらしいのか、そうじゃないのか。
「それいけ!! ぼくらの団長ちゃん」「妄想戦士ヤマモト」「義経ちゃん剣風帳」
何一つわからんし、読む気もまったくないがタイトルからおぞましいものを切々と感じる。
きみはじつにふじょしだな
505 :
作者の都合により名無しです:2005/05/09(月) 14:22:51 ID:wwpMlLfxO
いや、全部ヤングキングの連載作品だ。荒くれナイトやギャングキング等が載ってる雑誌。
微エロとバトルが八割占めるよーな雑誌だから、腐でも女は読まんと思う。
とりあえずふらーりさんお疲れ。
第三話「吸収」
ようやく自動車は峠を下り、とある田舎町へと到着する。背伸びして、運転席を降りる
17号。
「ここらで一休みするか。それに、この車では16号が狭いだろうしな」
「またヒッチハイクでもするの? じゃあ、あいつも出さないとね」
18号が促すと、16号はトランクから片腕だけでセルを取り出した。強引に詰め込ん
だせいで、全身が砕けている。骨を修復すると、セルは涙ながらに頼み込んだ。
「も、もう許して……。完全体は諦めますから……!」
「ダメだ。俺たちも目標ってやつが欲しいからな」
冷たく却下する17号。セルは肩を落とすと、もはや彼らから逃れる術はないことを本
能的に悟った。
これから始まる長旅にそなえ、ここで自由時間が設けられる。セル以外の三人は、それ
ぞれ事情があるのか町へ消えて行った。ぽつんと一人だけ残されたセル。
「くそっ……失敗作どもめ! 完全体になるまでずっと、こんな扱いなど絶対にゴメンだ。
どうにかして、パワーを上げなければ……」
セルは考える。今から訓練しても、とても彼らに追いつくことは出来まい。もっと手軽
に、なおかつ短期間でパワーアップする方法を編み出さねばならない。
ふと、セルは地面に垂れている自分の尻尾を見やる。
「こいつを上手く使えないものか……。本来は、クリスタルを吸収するためにあるらしい
がな……」
吸収。コンピュータが発していたキーワード。セルは脳内で仮説を打ち立てる。
「もしかして……。いや、いけるかもしれんぞ!」
わずかな手掛かりから、セルは恐るべき手段を考案していた。
「クックック……。人間どもが持つ生体エキス。これを尾で吸収していけば、いつかは奴
らを倒せるかもしれん!」
手頃な獲物を求め、セルは町へと駆り出す。すると、さっそく背広姿をした男を発見し
た。大胆にも、一気に忍び寄るセル。
「おめでとう、君は第一号に選ばれた」
「ば、化物! ちくしょう、とことんついてねぇ……」
「クックック、いきなりだが生体エキスを頂くぞ。究極生命体の一部となれるのだ、むし
ろ誇りとするがいい」
尻尾にあるスポイトを男に刺すと、セルは吸収を開始した。
「ま……まだですか?」
「もうちょっと! 集中してるから!」
三十分が経過した。が、生体エキスはなかなか吸収し終わらない。せいぜい一割程度だ
ろう。苛立つ男に急かされ、セルも徐々に焦りを覚える。
「早くして下さいよ。これでも短気な方なんでね」
「分かってるよ! くそっ、こんなにも大変だとは……」
吸収。いかにも楽に力が手に入りそうな、魅惑的な単語ではある。しかし、いざ実行し
てみるととんでもない。一般人が持つ生体エキスですら、吸収に五時間は要するという現
実。待ってくれる人などいるわけがない。
「もういい! 究極生命体になれるというから、付き合ってやったってのに。からかって
ただけかよ!」
待ちくたびれた男は、強引に尻尾を引き抜こうとする。さらに焦り出すセル。
「バカ! この尾はデリケートでな、もっと優しく扱わねば……!」
「うるせぇ!」
尻尾は深く突き刺さっている。とても、一般人の腕力で抜ける代物ではない。だが、セ
ルにとっては抜けた方が幸せだったかもしれない。
「やべ……戻っちゃう」
せっかく吸った生体エキスが、セルから男へと逆流していく。いや、それ以上だ。勢い
余って、セル自身の生体エキスまで流出していく。
「やばい、早く抜かないと!」
セルは尻尾を男から引き抜く。エキスを吸収するどころか、むしろ弱体化してしまった。
「失敗だったな……。結局、吸収は無理だったか」
しかし、セルとは対照的に、さっきまで吸われていた男は嬉しそうである。
「すごい、力がみなぎってくる!」
「ハハ……当然だろうな」
「実は俺、本当は自殺でもしようかと考えていたんだ。取引先でとんでもないミスしちま
って……。でも、なんか勇気が出てきたよ。あんたが力をくれたおかげだ! 生きていれ
ば、いつかは逆転も可能かもしれないもんな!」
礼を述べて去っていく男。セルは彼を見送りながら、そっと呟いた。
「いつかは逆転……か」
やっぱり楽しようとしちゃダメですね。
次回へ続く!
511 :
作者の都合により名無しです:2005/05/09(月) 20:49:36 ID:GbaOBB6m0
セルが幸せを運ぶ天使のようだ。
いつかは人造人間たちを倒せるのでしょうか。
いい感じになってきましたね。
VSさんとうみにんさんとローマさんとユルさんも復活祈願。
513 :
作者の都合により名無しです:2005/05/10(火) 08:14:19 ID:6jvO5ZPS0
完全体になるとさらにシコル化するよ
>>512 ワロタwなんか色んな意味で間違えた島本和彦って感じだな。奴も間違った漫画家ではあるが。
ゲロさんの影響で蟲師読んでみた。しっとりとした面白さだな。
少年漫画誌で連載したら絶対人気出ないだろうけど、いい感じだった。
小野寺浩二とやらは・・うーん、まあ読まなくていいわw
516 :
作者の都合により名無しです:2005/05/11(水) 08:27:33 ID:P52HztSZ0
あれ?昨日一昨日とザク氏来なかったね。
いつも月か火にくるもんだと思ってた。
517 :
白昼夢:2005/05/11(水) 19:20:16 ID:7Xme3bYs0
私は今、雑踏の中に立っている。
時刻は午前8時過ぎ、平日のラッシュアワーといったトコロだろう。
照りつける太陽がアスファルトを焼き、雑踏の中に埋もれた群集がせわしなく動いている。
ネクタイを締めたビジネスマン、制服を着た学生、巡回中の警察官、子供連れの母子、
誰一人足を止めずに動いている、皆それぞれの目的に向かい前を見て歩いている。
―きっと私だけだろう、そんな群集が流れる雑踏の中で足を止めただ立っているだけの人間は。
でもそれはしょうがない、だって皆目的に向かい動いているのだから・・・目的の無い者はどこにも向かう場所が無い。
流れる群集の中で私はただそこに立っているだけだった。
時折、通行人と肩が触れ合うが、私は特に気にしない、相手も特に気にしない、気にする必要もない。
―なぜなら私は―
「こんにちわ」
不意に声をかけられた。
見ると帽子をかぶった男が目の前に立っていた。
「コンニチワ」
不意を突かれた私は思わず同じ言葉を男に返していた。
誰でも良い・・・とにかく会話がしたくて、私はそう返したのかも知れない。
「気分はどうだい?まだこっち側に来て間もないだろうが・・・」
518 :
白昼夢:2005/05/11(水) 19:21:21 ID:7Xme3bYs0
物腰柔らかく喋る男の態度は、一流企業に勤めるエリートの様な雰囲気を私に感じ取らせた。
―いや、きっと実際そうだったのだろう。
「さてと、まず本題に入る前に君が今どれだけ『理解しているか』ってのが問題だな、まぁ私
がある程度まで喋ってしまってもいいんだが・・・・・それでは実感が沸かないだろうから」
そこまで言って男は私に一つの地図を手渡した。
「君が目的を持って幸福に辿りつこうとする意思があるのなら・・・・・ここを尋ねるといい
その間に理解もしてくるだろうさ、いや、ひょっとしたらもう分かってるのかも知れないが」
そう言って男は私の前から姿を消した。
男が立ち去った後、私は手渡された地図を眺めながら、その場でしばしの時間を過ごした。
悩んでいたワケではない、行く事は既に決まっている、だって他にやる事がないのだから。
ただ、あの男以外にも私に声をかけてくれる人間がいやしないかと待っていただけだ。
そう期待し立ち尽くしていたが、結局誰も話しかけてくれず寂しくなった私はその場から動く事を決めた。
519 :
白昼夢:2005/05/11(水) 19:22:44 ID:7Xme3bYs0
一回目の投下終了、全三回の短編です。
既存の職人さんかな?それとも新人さんかな?なんとなくゲロさんぽくもあるけど。
新人さんだと更にうれしい。とにかく新作投下お疲れ様です。
ありふれた日常、って感じの出だしですね。静かな挨拶から生まれる異世界の遭遇ですか。
この先、どうなるか予想できない。というか、どの漫画のお話だろう?
残り2回、どんな展開になるか期待しております。
521 :
作者の都合により名無しです:2005/05/11(水) 23:58:13 ID:pdk+vteb0
新作乙。
どんな展開になるかはわからないが、期待してます。
がんばれ。ここで投げ出してくれるなよ。
訳わからんままになるからw
522 :
作者の都合により名無しです:2005/05/12(木) 01:45:42 ID:OqAYP5ObO
投げ出さないで 苦しい時こそ
いつか見た長いレスを きっと再び見られる日まで〜♪
523 :
白昼夢:2005/05/12(木) 18:35:55 ID:dwvdWtoV0
―太陽がアスファルトを溶かしている。
男から渡された地図に従い歩く私の目の前には、いつまでも追いつく事のない逃げ水が漂っていた。
歩き続けても同じ風景ばかりが視界に入る―――私は本当に前に進んでいるのか?
そんな当たり前のことすらも曖昧な、酷く散漫な気分だったが、それでも足を止めずに動き続ける。
歩き始めて数分か数十分か、時間の感覚すらおぼろげになった私の前に、恰幅の良い一人の老人が立っていた。
老人は胸を押さえ呻き苦しみながら恨めしそうに私を見ている
―――苦しんでいるのはきっと私のせいなんだろう。
もうひとつ歩いた場所で今度は上等なスーツを着込んだ八人の男達と出くわした。
男達は八人が八人とも先ほどの老人と同じ様に胸を押さえ、もがき苦しんでいた。
―――彼らは私に気づく事はなかったが・・・彼らの苦しみもきっと私のせいなんだろう。
目的地に向け電車に乗ろうとした駅の前で二人の白人の男女が私に近寄ってきた。
女の方は血まみれでバイクを引き、男は肝臓を握り締めながら私をずっと見ていた。
さらに駅のホームではコートを着た若く端正な顔立ちの男性が胸を押さえ倒れていた。
私を含めた乗客は誰も彼を・・・彼らを気に掛けなかったが・・・・・・・・・
―――ああ、きっとどれも私のせいなんだろう。
電車を降り駅から離れると海岸の方で腐った肉の塊が蠢いていた。
放っておこうかとも思ったが、肉塊は何かを探し回っている様な雰囲気だったので私は思わず尋ねてみた。
「何かお探しで?」
524 :
白昼夢:2005/05/12(木) 18:36:32 ID:dwvdWtoV0
肉塊は声とも付かない声を上げ、私に必死にすがってきた。
よく見ると肉塊は人の形をしており垂れ落ちた目玉からはドス黒い血と共に涙をしたたらせている。
余程大事な物を亡くした様だ。
何とか力になりたかったが、彼女が何を探しているのか私には皆目見当付かない。
その場から立ち去ろうとすると、彼女は蛆の涌いた手で私の体を掴み引き止めた。
「諦めなさい」
そう言うと、彼女は獣の様な酷く異臭を放つ息を荒げ長方形の定期入れの様な物を私に見せた。
『Federal Bureau of Investigation』
そんなロゴが強調された身分証明書だった。
それには藻が絡まり水にふやけヘドロが粘り付き、証明書でありながら何ら証明出来る代物ではなかったが、
それでもそこに映っている写真は整った顔立ちの『美人』と言って差し支えない女性の姿が確認できた。
彼女は割れた爪を指に食い込ませながらそれを必死に指している。
映っている写真は自分だと言いたいのだろう、今では見る影もないが。
「ああ・・・・貴方の探している方なら、あちらの駅で見かけましたよ」
私は自分の来た方向を彼女に指し示してやると、その先に駅のホームで這いつくばっていたあの若い男性の姿が見えた。
彼女は、藻が絡まった身分証明書を私に手渡すと、足の肉をアスファルトに摩り下ろしながら嬉しそうに男性に駆け寄っていった。
良く見ると、そこにいるのはあの男性だけではなく、老人、八人のビジネスマン、白人の二人の男女。
ここに来るまでに擦れ違った人間が一箇所に集まり私を見つめ・・・そして皆無言で一つの方向を指していた。
―――あの男が渡した地図の目的地をただ黙って指していた。
「行け・・・・・・・という事ですか」
彼らは何も喋らず、しかし何よりも雄弁に語っていると感じた私は再び歩き始める事にした。
525 :
白昼夢:2005/05/12(木) 18:37:38 ID:c1j6nNbc0
投下終了、次回でオチです。
どの漫画でどのキャラクターかというのは、勘のいい人ならこの時点で分かるかとも思います。
分からん。どの漫画なんだ?ジョジョか?
後書きで「分かる」という以上、ある程度メジャーな作品なんだろうな。
間違っても「義経ちゃん剣風帳」とかではないなw
>老人、八人のビジネスマン、白人の二人の男女←これがヒントか?
淡々とした雰囲気に不気味さを感じる。オチが楽しみ。
アームズのサイコキネシスつかうおばちゃんかな?
俺もまったくどの漫画かわからん。
次回のオチで明かされるだろうから期待だな。
力量ある作者さんみたいだな。常連になってほしい
529 :
白昼夢作者:2005/05/12(木) 21:13:07 ID:dwvdWtoV0
追記させて頂きます。
諸事情によりオチは土曜の夜か遅くて日曜に投下致します。
間が空いて申し訳ないですがご容赦を、
>>レスしてくれた方
ありがとうございます。
オチで全て分かって頂けるかと思いますが、今は
『マイナーな漫画ではなく恐らく誰でも知っている』
とだけ言っておきます。
530 :
おとめごころ:2005/05/12(木) 21:22:31 ID:xTe5HeQ50
>>502 時は夕刻、場所は大阪の港近くの山中。ここに、自然の洞窟を利用した志々雄一派
の密輸品倉庫がある。先ごろ、京都へ向けて荷を送ったばかりなので、今は殆ど
空っぽだ。が、もちろん警備兵は常駐している。
敵が、ここと港のどちらを襲うか判らないので、とりあえず警備兵と打ち合わせを
する為、蝙也と鎌足はやってきた。麓で馬車を帰らせ、夕闇の山道を上っていく。
鳥や獣の声以外は何も聞こえない中を二人は黙々と歩き続けて、やがて洞窟(に
見える倉庫)に到着した。
そして見つけた。無残に切り刻まれた、警備兵たちの肉塊を。
そして感じた。無数に蠢いている人の気配、重く渦巻く殺気を。
「まあ、予想はしていたが。どうやら結構な数のようだな」
蝙也が、漆黒の外套の内側で、手甲剣の装着具合を確かめる。
「上等。手柄の立てがいがあるってものよ」
鎌足も、肩に担いでいた大鎌を下ろして、両手で握って構える。
それから二人は、左右に分かれて歩き出した。二人とも、戦法が広範囲攻撃型
なので、近いと互いの攻撃の巻き添えになってしまうからだ。
「武運祈るぞ」
「それはいいから、恋愛運祈って。お風呂でいろいろ考えて、大体の計画は纏まった
のよ。女の子のカラダでの、志々雄様へのご奉仕の仕方」
「……出陣直前に、そういうことを真顔で言わんで欲しいのだが」
蝙也の頭の中に、浮かんできた。浴場で見た鎌足女の子Verの、予想以上の
綺麗さというか可憐さというか……艶っぽさが、その。もやもやと。
思いっきり首を振って、雑念を払うべく努力しつつ、蝙也はスタスタ歩いていく。
一方、そんな彼の苦闘など知らず、鎌足は張り切って大鎌をぶんっ! と一旋回させる。
「さ〜、かかってきなさいっ!」
その声に応えるように、周囲の殺気が実体化した。隠れて隙を窺っていた黒ずくめの
暗殺者たちが、姿を現したのだ。その数、約二十。
「志々雄とやらの組織は、余程人材不足らしいな。お前のような小娘を戦わせるとは」
「ふっ。小娘、ですって? やあねぇ勘違いしちゃって。私は……っと、」
531 :
おとめごころ:2005/05/12(木) 21:23:07 ID:xTe5HeQ50
着物の裾を捲り上げようとした鎌足が、手を止めた。そして鎌を構えなおす。
「やめとこっと。だって今の私は、ほんとの小娘になれるしね〜ふふふのふ」
「? ほんとに小娘……に、なれる? 何を言ってる?」
「い〜からい〜から。あんたたちはサクサクっ、と私に刻まれちゃいなさい♪」
鎌足は極上の笑みを見せて、暗殺者たちに殺気を叩き返した。
「京都に帰ったら、明治鎌客浪漫譚が始まるのよ。任務大成功で、志々雄様に
褒められるところから、ね。その為にも、派手にキメさせて貰うわよっ!」
「?? 何が何だか解らんが、とりあえずお前は死ねっ!」
暗殺者達が剣や手斧を構えて、あるいは手裏剣や吹き矢で、鎌足に一斉攻撃を仕掛けた。
それら全てに向けて、愛に燃える死神の大鎌が、光の軌跡を描いていく……
外套を蝙蝠の羽根のように広げて、火薬を爆発させたその爆風を利用して舞い上がる。
そうやって敵の頭上の死角を突くのが、蝙也の戦闘術「飛空発破」。並の武術家・
暗殺者風情では、これを破ることなどできない。
今回も、例外ではなかった。蝙也の手甲剣に刻まれて、あるいは直接爆撃を受けて、
黒ずくめの暗殺者たち十数人はあっと言う間に壊滅と相成った。
「……つまらんな」
手甲剣の血糊を拭いつつ、蝙也が呟く。するとその足下で、瀕死の暗殺者が言った。
「い、いい気になるなよ。我らの真の力は、こんなものではない」
「ほほう。それは心強いことだな。では真の力、見せてみろ」
「ふん。言われずとも……いいか、我らはいわば訓練生のようなもの。本来の、
主力部隊の十五人は、来るべき大会に備えて、本部で特訓中なのだ。ここには
来ていない。来るまでもない、ということでな」
「そうやって俺たちを侮った結果が、これか」
「ああそうだ。だがな、」
血塗れの顔で、暗殺者がニヤリと笑った。
「我らの頭が、我らの成果を直に確かめる為、遅れてここに来られることになっている。
もう間もなく、到着される頃だ……」
と言って暗殺者が眼を向けたのは、今鎌足が戦っている方。発破の爆風に巻き込まぬ
ようにと蝙也がかなり距離を取ったので、遠くてよく見えないが。
532 :
おとめごころ:2005/05/12(木) 21:23:44 ID:xTe5HeQ50
「お前たちの頭、と言われてもな。期待はできん」
「そう言うな。期待していいぞ……誇り高き我ら、…………の頭…………様の強さ……」
「っっ!」
蝙也が、硬直した。慌てて暗殺者の襟首を掴んで引っ張り起こす。
「おい! 今、何と言った!? お前たちが何だと? 頭の名、もう一度言え!」
と叫んで揺さぶってみたが、返事はなかった。もう絶命したようだ。
蝙也はその屍を捨て、慌てて走り出した。
『まさかこいつらが、あの……くそっ、待ってろよ鎌足! 俺が行くまで無茶するな!』
バラバラ死体の中に、一人佇む鎌足。その手の大鎌からは血が滴り、鎌足本人も僅か
だが返り血を浴びている。鎌足は、その血を少し指で掬い取ってみて、
「この程度の水じゃ、反応しないみたいね。それとも生温かいから、お湯扱いなのかな」
と呟いた。呟きながら、くるりと振り向く。
「で、あんたは何なの?」
そこに、いつからいたのか知らないが、一人の男が立っていた。
暗殺者たちとは対照的な、白一色の装束を身に纏い、胸には蛇と髑髏の不気味な紋章。
長い紅い髪は燃え上がる炎のようで、額に煌く黄金の鉢金を見事に映えさせている。
だが何より印象的なのは、気品と殺気の同居した、刃のような鋭い眼。その眼で男は、
鎌足によって築かれたバラバラ死体の絨毯を一瞥して、言った。
「……礼を言っておこうか。将来足手まといになるであろう、素質なき者どもを
処理してくれたことに対してな」
低い重い男の声には、言葉通り怒気はない。眼と同様、殺気は満ち溢れているが。
「ふうん? その言葉から察するに、あんたはこの役立たずちゃんたちの親玉?」
「そうだ。今言った通り、こいつらの仇を討とうなどという気は毛頭ない。だが、
我が結社の名誉を守る為、何より受けた依頼を果たす為、お前には死んで貰う」
男が、パチンと指を鳴らした。するとその背後の茂みの中から、男の身長と
同じぐらいの直径の黒い玉、というか何かの塊が、ゆっくりと転がり出てきた。
鎌足は驚きつつ警戒して、数歩後ずさる。
533 :
おとめごころ:2005/05/12(木) 21:25:04 ID:xTe5HeQ50
「な、何なのそれ」
「お前を地獄へと誘う使者だ。……行けいっ!」
男の号令に応え、玉はいきなり加速して転がり、跳ねて、鎌足に跳びかかってきた。
何だか判らないがとりあえず鎌足は鎌で迎撃する。と、鎌が当たる寸前、塊はまるで
爆発したかのように四散した。
だがそれは、爆発したのではなく、塊の構成物が自らの意志で散開したのだ。そして
飛び散った水しぶきのように、鎌足の周囲に落ち、鎌足を取り囲む。
「っっ!」
鎌足は息を飲み、硬直した。今鎌足を取り囲んでいるもの、先の塊の構成物とは……
総勢数百に及ぶ、毒蛇の群れだったのだ。
男が、その包囲網の外から、言った。
「名乗りがまだであったな。我は地上最強の暗殺結社である宝竜黒連珠の主頭、
ケ 呼傑(とう ふうけつ)。大鎌を使う娘よ、我が手にかかること光栄に思うがいい」
「……私は本条鎌足。あんたの言う通り、大鎌を使う、『娘』なんだけど……」
鎌足は、額に滲む汗を無視して、取り囲む蛇たちを睨み返しながら答えた。
「そう呼ばれたからには、負けられないわね。何があっても、私はここで死ぬわけには
いかない。勝って帰って、志々雄様に『娘』の私を見て……感じて貰うんだから」
鎌を握る、その手も汗ばんできた。はたしてこの鎌で、この無数の蛇たちに対抗できるか?
そんな鎌足を見て、呼傑も静かに構えを取った。それに応じるように、鎌足を取り囲む
蛇たちが鎌首をもたげ、威嚇の声を上げ始める。
「ゆくぞ!」
呼傑が、両腕を振り上げた。それを合図に蛇たちが、前後左右のみならず跳躍して
上空からも、とにかく全方位から一斉に、鎌足めかげて牙を剥き襲いかかる。
鎌足は、瞬時に蛇たちのその動きを見極め、大鎌とそれに連なる鎖分銅とを、
最大半径最高速度で旋回させた。
「本条流大鎖鎌術、乱弁天っ!」
てなわけで。脇キャラ同士ですが、一応『剣心』対『男塾』です。なお、あれだけカマして
おいて何ですが、前回ラストの張の期待は完璧に裏切られますので。ご安心(?)を。
>>サナダムシさん
このセルが、そう簡単に強くはなるまい、と予想はしましたが……弱体化。ゼロどころか
マイナス。それで充分笑えますが、加えて名もなき一般市民を立ち直らせて、自分自身への
今はまだ小さい(そこがポイント)夢の呟き。だんだん可愛くなってきましたよっ、セル。
>>白昼夢さん(表現を凄く捻ってて、実は結構平和っぽい作品とか? うぅ解らないっっ)
「私」の正体がまだ不明な内に、それを明かしかけたところでもう一人が登場。で「私」の
ことはタナ上げで話が進む。そしたらまた次から次へと……興味を引っ張られまくる構成、
見習いたいです。最終回の内容もさることながら、原作正解者は出るか? も楽しみです。
>529
つまり目的地にいるのはあの好敵手だった奇人? その文体が好きなので応援します。
デスノートだろ。こんだけヒント出てて気付かないほうがおかしい
<超人アーリーデイズ ラーメンマン編 後編5>
強い。
対峙した瞬間、ゾクリとした冷気がラーメンマンの背中をそっと撫ぜる。
格の差というものをひしひしと感じ、拳は振るえ筋の糸は萎縮する。
技量で劣るとは思えない。元兄弟子とはいえ、破門より数年立つ男である。
その数年に修練・鍛錬において、自分以上の厳しさを耐えて来たとは到底思えない。
が、それでも感ずる差。それはいわゆる格の差である。
自分を二回りも小さくしたようなこの優男に、鎌を持つ死神のような殺気を感ずる。
この男の格と殺気を支えているのは、潜り抜けてきた場数。
悪鬼羅刹の類を累々と踏み殺し、血塗られた死線を越えて来たという自負である。
残念ながら、正義が悪に勝つとは限らない。
勿論、簡単に正義と悪の二元に分かつ事が出来るとするならば、であればだが。
否、規制の利かない悪は易々と善良な民を蹂躙する。この村の現状が良い例ではないか。
だが、引く訳にはいかない。己の磨いて来た濃密な数年間、暴虐を前に反故には出来ない。
女形のような優しい風体とは裏腹に、鷹のような目をぎらつかせて目の前の男は言う。
「来ないのかい?それとも動けないのかい? 超人拳法もヤワになったものだ。
陳のジジイも老いぼれたもんだ、こんなガキを弟子に取るとは」
カッと頭に血が上る。ラーメンマン、未熟である。安い挑発に軽々と乗ってしまう。
大地を蹴り、拳を固め、怪鳥音を発しながら一気に間合いを詰める。
しかし狂獣・郭 春成は揺るがない。冷笑を浮かべながら、懐に手を入れた。
格上の者と正面から戦う場合、先手を取るのが最低条件となる。
一瞬でも後手を踏めば、力量差により一気に押し切られてしまうからだ。初歩のセオリー。
ラーメンマンもそれに遵守し、強く素早く踏み込み、そして高く飛んだ。
「飛燕、旋風脚っ!」
ラーメンマンが超人拳法102芸のうちで最も得意とする足技である。
華麗に舞い、宙空から鋭く龍のように脚が閃く。会心の蹴りは唸りを上げ春成を襲った。
が、相手は元同門である。超人拳法において、一日の長がある。
その初期動作や蹴りの出足から咄嗟に技を読み取り、瞬時の対応する。
蹴りが春成の頬を掠めた。紅く飛沫く。が、それだけである。
紙一重で春成は避け、次の動作に移っていた。懐から何かを引き出したのである。
ラーメンマンの超人的な反応を上回る速度で粉末が舞う。砂であった。
「な、なんだ」
驚愕が動揺を生み、動揺は思考を止め、その無為は肉体の反応を衰えさせる。
砂が目に入り、じわりと涙が浮かぶ。それも一瞬であった。甚大な衝撃を感じる。
春成の苛烈な突きが鳩尾に突き刺さり、胃液を嘔吐したのである。
「カ…カカ…、ク、ひ、卑怯な」
その台詞を口にした直後、後悔した。武人として最も言ってはならない言葉である。
卑怯とは何事か。これは立合いではなかったのか。甘い。甘過ぎる。
それを見透かすかのように、春成は嘲笑う。
「所詮、ぼっちゃん拳法よ、超人拳法なんざ。 …何が不動心だ」
顎に蹴りが突き刺さり転がり回るラーメンマン。無様な。これが俺の実力か。
血反吐を吐きながらも必死で距離を取る。涙により目の砂が洗い流されていく。
うっすらと視界が開ける。追撃? 亀のようにガードを固める。 ……しかし、来ない。
何故だ?実戦派の春成ならば、止めを的確に刺しに来るのではないか?
視力が完全に戻った。間合いは開いたままである。
ラーメンマンは訝しげに郭 春成を見、そしてぞっとした。その形相に。
美形ともいえる整った顔に、くっきりと憎悪が浮かんでいる。険深い悪魔のような顔。
薄紅掛かった形の良い唇が、ぶつぶつと呪詛のように独り言を繰っている。
「糞ジジイが。…なにが、不動心だ」
時の流れに取り残されているかのごとく、目を剥き独り思案に耽る郭 春成。
ラーメンマンは恥辱に顔を赤くする。俺など、眼中にすら無いと?
痛みを振り切り、春成へと拳と蹴りを繰り出すラーメンマン。
だが春成はそれを易々と捌くと、ラーメンマンの両の手首を取り固定する。そして囁いた。
「おまえ、答えられたのか、あのジジイの不動心の問いに?」
動けない。両手首を逆に極められ、ピクリとも出来ない。その中で聞く意外な言葉。
「おい、俺の質問に答えろ。おまえは不動心の問い、正解したのかと聞いている」
爛々とした、捕食者のような目。春成に先程までの余裕と嘲りの光は無い。
ラーメンマンの心胆が寒くなる。催眠術に掛かったかのようにその問いに答えた。
「ふ、不動心とは、い、巌のように何物にも動じぬ、強き心…」
「フン、それじゃおまえ、失格だろう。そして見放されたんだろ、あのジジイに?」
「な、何故おまえが、それを…」
「知れたこと、俺も同じ答えをあのジジイにしたからよ!」
ラーメンマンの肉体が空中に舞った。極められた手首の関節を返されたのだ。
土台の無い空中で、刃物のように研ぎ澄まされた春成の貫手が喉笛を襲ってきた。
死ぬ。これを食らえば、俺は死ぬ。
火事場の馬鹿力であろうか。ラーメンマンは生涯最高の反射で蹴りを繰り出した。
その蹴りは春成の貫手よりも速く、彼の顔面を蹴り飛ばす。
蹴りの威力は浅い。しかし窮地は脱した。不恰好ながら春成の制空圏から生き延びた。
火事場の馬鹿力。後に、盟友となる男の切り札である。
そして肉体を駆使して戦う者たち全ての奥義でもある。この時は死に抗っただけであるが。
再び距離が出来た。しかし、ラーメンマンには最早、闘志が失せかけている。
瞬時の攻防ではあるが、まざまざと力の差を見せ付けられた。
もし最初の攻防で春成が追撃を加えていれば、ラーメンマンは生きてはいなかっただろう。
(む、無理だ、今の私では、この怪物には)
必死で戦った。だが力が及ばなかった。次こそは。そうだ、もっと強い助っ人を頼もう…。
ラーメンマンの弱き心が叫び、この場から逃げる理由を百も浮かび上がらせる。
それでも足がこの場に留まらせる。拳が、逃げるのを赦さない。
(戦えというのか、この男よりも遥かに弱い俺に)
心が体に逃走を命じても、肉体がそれを拒否する。今、彼は一人前の拳士となった。
顔面が朱に染まっている。だが、春成の気勢に寸分も衰えは無い。
寧ろその殺気は己が血を流すことで、益々凄絶さを膨らませていった。
ふらり、と春成が陽炎のように揺らめいた。ビクン、と恐怖するラーメンマン。
あ、と思った瞬間にはもう、春成はもうラーメンマンの間合いに踏み込んでいた。
なんという俊敏さ。カミソリのような拳激が舞う。急所を外すのがやっとである。
千手観音のような連弾を、ラーメンマンは良く凌いでいるといって良い。
が、相手は格上である。格上相手に防御に回れば、もうそこで勝算は無いのだ。
春成が右拳を貯めた。明らかに必殺性の高い一撃を狙っている。
「命奪崩壊拳っ!」
春成が叫んだ。必殺の貫手が顔面へと飛ぶ。本来、この技は胴を貫く技である。
それが顔面。形振り構わず、春成は殺しに来ている。
(だが、いくらなんでも大技は決まらん)
大きなモーションで交わした…はずだった。しかし次の瞬間ズウ、と断裂音が響いた。
左目周辺から大量の血が吹き出る。何故だ?
残った右目で春成の右手を見る。貫手を象っているが、親指の間からナイフが光っている。
暗器。隠し武器である。ラーメンマンは自分の未熟と不明を激しく呪った。
これはルールなど無い、殺した者勝ちの戦場なのである。
右拳にこびり付いたラーメンマンの血を舐りながら春成は笑う。
「間違ってねえぜ、おまえのジジイへの答え。なんたって俺と同じ答えなんだからな」
違う、ラーメンマンは心で叫ぶ。何が違うかは分からない。説明も出来ない。
だが不動心とは、そんな浅きものではないと、俺の中の何かが言っている。
「不動心とは、揺るがぬ心。俺は何の良心の呵責も無く、何の躊躇いも無く、
勝つ為に汚い事が出来る。 …お前を、冷静のまま殺す事が出来る」
違う。決して違う。不動心とは武にとって一番大事なもの。ならば、貴様などに……。
「ジジイの正解が何かは分からねえ。だが俺は、戦場や果し合いで正解を見つけた。
俺なりの、だがな。 …それは、冷徹、冷血、冷酷に、慌てず騒がず敵を殺す事」
ゆらり、と再度陽炎が蠢く。
冷徹。冷血。冷酷。その郭 春成流の不動心を遂行する為に、である。
543 :
パオ:2005/05/13(金) 07:03:14 ID:CMqMaGJO0
544 :
作者の都合により名無しです:2005/05/13(金) 08:28:53 ID:AlvRy7hP0
お疲れ様です。
意外と春成り強くて嬉しかったり。
次回あたりで終わりかな?
不動心の答え期待してます。
終わりが見えない闇の中。彷徨い歩く少年の姿があった。
一瞬老人と見紛うような白髪。片目は髪に隠れて見えない。
森には光と呼べるものはなく、ただ一つあるとするなら、稀にある
葉の隙間から差し込む太陽か月の明かりのみである。
他に目印になるものもない。少年は上を向いて歩く。
それ以外、できることはなかった。
そして今――ギンコは蟲師として生きている。
巨大な穴が、地面にぽっかりと開いていた。
覗きこむが、そこにはただ無限の闇が広がるのみである。
ギンコは、手近な所に落ちていた小石を落としてみた。音は返ってこ
ない。
深い。なぜか、果てはないようにギンコには思えた。
ギンコは巨大な穴をぐるりと一周歩いて見回してみた。すると、誰が
そうしたのか知れないが、穴の壁に取っ手のようなものが付いているの
を見つけた。それは、延々と下まで続いていて、上からではどこまで続
いているのか分からなかった。
誰か、この穴に潜っている奴がいる。
一寸考えて、ギンコはその取っ手に足をかけてみた。慎重に、片足だけ
まず乗せる。どうやら、しっかりしているようだ。両足を乗せる。大丈夫
だ。
そして、木箱を下し、全体重を取っ手に預け、少し潜ってみようという
とき、声がした。上のほうからだ。
「あんたも、蟲師かね」
老人は、この辺りの見回りだという。
「この取っ手を付けたのはな、多分あんたら蟲師さ。何度かそれらしい格好
をした連中を見かけたからな」
「この穴はいつから?」
「何年か前だな。何の前触れもなく、こうなっていた」
「何の前触れもなく……こんなでかい穴が?」
ギンコは、薄々感じていた。ギンコだけではない。他の蟲師もきっと同じ
事を感じていたに違いない。
この穴自体が、蟲なのだ。
大体、自然現象でいきなりこんな大穴が開くとは考え難い。今回のような
常軌を逸した現象は、大概蟲の仕業なのだ。
「……その、中に入っていたという蟲師と話さなかったか?」
恐らく、老人は見ていただけだろう。見たところ、彼は非常識なことには
出来るだけ関わりたくないと思っているだろう。なんとなく、ギンコにはそ
う感じられた。長年の経験で培われた勘だ。
いつもいつも、蟲師というものが好意的に扱われるわけではない。
「いや、話してはいない」
案の定だ。
「彼らに任せて、放っておいたのか? こんな危険な状況を、自分たちでは
何もせず放置しておいたのか?」
多少の激昂はあったが、「ああまたか」とも思った。この国の人間には多い。
特に大人と呼ばれる年齢に達したものに。
誰だってそうだ、とも思う。誰だって面倒なことには関わりたくない。それは
当然の話だ。
老人は答えず、ただ渋い顔をしている。その顔には、時の流れで刻まれた年輪
のような皺が、寂しげに自己主張していた。
「……これは、俺の仕事だ」
そう呟いた。人にはそれぞれ思想がある。ギンコは、彼の持つ思想に従い行動
するのみであった。
入りが終わりっぽい感じですね。内容的にも、そう感じさせるようしたいと思っています。
量はそんなに変わらないかも知れませんが……
蟲師は連載形式を終えた後に出来れば二本書きたいなと思います。あとは、書いてみ
たい作品が二つあり、その一つは短編数本と中長編一本。もう一つは未定。
片方は庶民派SFラブコメディ(なんだそりゃ)もう片方は重いファンタジーです。
というわけで、蟲師が終わった後ももう暫くお世話になります。
>>472 有難うございます。最終回、多分いい物になると思います。多分。
>>473 終わりって書き忘れましたね。すいません。
>>474 どうかなあ……
>>503 やってみたいですねえ、ムグラノリ。
ところで。他の作品は名前しか知りませんが、『義経ちゃん〜』はモーティヴ目当てで買った
ヤングキングで読んだ気がします。
>>515 試しにマガジンで……そもそも週刊連載が不可能か。しかし、幸村誠のマガジン連載には驚
きましたね。正直、素直にアフタヌーン辺りでやればいいのに……とも思うんですが、頑張っ
て欲しいものです。程々に落として休んで欲しいです。
では次回。
549 :
作者の都合により名無しです:2005/05/13(金) 12:33:16 ID:AlvRy7hP0
あれ、蟲師終わっちゃうんですか?
最終章っぽい感じの雰囲気…
好きなSSなので続けてほしいなあ
>ラーメンマン
迷いながら戦うラーメンマンがいい。意外と春也も強いな。2秒で死ぬかと思った。
>蟲師
ギンコは蟲師の中でも選ばれた存在っぽいね。大穴の向こうに何があるのか。
2つとも終わりそうだな。残念だ。
まあパオ氏は連載他にもあるし、ゲロ氏も蟲師は不定期とはいえまだ続きそうだし
新連載も始めてくれそうだから、いいか。
>>346-351より
「俺とお前がタッグを組む、だと?」
背中越しにザクを見上げ、ガッツが反芻する。
――ああ。一人一人ではかなわなくとも、力をあわせれば何とかなるかもしれん。異論はあるか?
「いや?別に構わないぜ」ガッツはグルンベルドへと向き直る。
「それで勝てるっつうんならな」
「何をごちゃごちゃと言っている!」
グルンベルドの怒号が大気を震わせ、ザクとガッツを威圧する。
「闘いの最中に会話を交わすなど、素人のすることだぞ!」
その口の奥に、赤い炎の塊が生まれる。向けられた先には、剣を構えたガッツが立っている。
来るか!
ガッツは剣を楯にして守りを固める。が、その前を大きな影が遮り――
「今度はその大剣ごと溶かしてく――」
ザクの右拳が、火炎球を発射せんとするグルンベルドの喉につっこまれた。
――闘いの最中にくっちゃべるのは素人なんじゃなかったか?使途よ!
喉元で火炎が四散し、呼吸を封じられたことによりグルンベルドは呻き声をあげる。
ザクはもう一方の手でグルンベルドの首を掴み、引き寄せ、組みついた。
――俺がこいつを抑える!今の内に攻撃するんだ!
ザクが言うよりも先にガッツはグルンベルドの腹の下へと走り、剣を垂直に上に構え、突く。
はじかれた。剣を叩き込んだ部位には、微かに筋のような亀裂が生じたのみ。
「腹も堅ぇのかよ」舌打ちをし、もう再度、剣を同じ箇所に叩き込む。
火花が散り、わずかに欠けた水晶の塵が舞うばかりであった。
一方ザクは、抱き寄せたグルンベルドの首を、渾身の力を込めて強引にへし折ろうとしていた。
――純粋な腕力で勝負を挑む他あるまい!
首を力の限り抱き、上体を前屈させてサバ折りを狙う。さらに、喉の奥へと右手を押し込む。
だがその時、グルンベルドの牙がザクの右腕に穴を穿ち、それを噛み千切った。
鉄のひしゃげる耳障りな音が響く。グルンベルドは無数のコードが垂れ下がるザクの右手の先を飲み
込むと、体内にて胃液の代わりに火炎でそれを瞬時に溶かし、さらに大火球を吐き出し至近距離から
ザクに灼熱を浴びせる。組みついていたことが災いし、ザクは避ける間もなくこれをまともに受ける。
業火が体表面を舐め、装甲が焼け剥がれていく。しかしダメージを負うと同時にザクの自己再生機能が
働き、装甲を剥がそうとする炎と再生させようとするナノマシンがせめぎあう。
損傷は、プラスマイナスほぼゼロであった。
炎を吐くために無防備に口を突き出していたグルンベルドの顔面を、即座に再生させた右の拳で殴り、
左の拳で殴り、さらにスパイクのついた左肩から体当たりをぶちかます。
うめき声を低く漏らしてよろめくグルンベルドに、再度ぶちかまし。グルンベルドは前足をあげ、地響き
と共に後足で後退。十数mさがったところで前足を下ろして四足を雪原につき、頭を垂れる。
そして顔をゆっくりと上げると、熱く白い吐息を漏らし、唸る。
「その程度か、ザクよ!」
やはり肉弾戦では大したダメージを与えられないか。
右手を引き、左腕のガードを挙げ、出来うる限り「それらしい構え」をとってザクはグルンベルドを睨む。
どれだけ強大な力を得ようとも、やはりザクは格闘に関しては素人同然なのだ。
グルンベルドが後退したことにより、彼の腹の下に突入していたガッツも姿を現し陽光を浴びる。
こちらに決定打は無い。だが、今の立ち合いにてこいつも理解したはず。
――鷹の使途よ!お前にも分かったはずだ!
ザクはグルンベルドを指差した。
――確かに、俺達はお前を倒す決定的な打撃力を有していない。だが、お前の方も俺を倒せるだけの
攻撃力を持っていないのだ!業火も、その鋭い牙も、俺には通用しない!
この言葉に、グルンベルドは鼻を鳴らして答えた。
「はったりの下手な奴だ、貴様は」
――なに?
「我らは知っているのだ、ザクよ。貴様のその再生能力が、貴様の『闘志』、『気力』に比例して発現する
ということを」
指差したままの姿で、ザクは凍りついた。グルンベルドが続ける。
「巨大サイボーグ『ザク』。唯一の生体である脳を胸部のコックピットに納めた、『イマジノスボディ』を持つ
戦士。エネルギー源は体内の核融合炉であり、体内と体外の空気中の両面に自己再生ナノマシンを有し
『イマジノスボディ』による変形機能、つまりは自己進化能力を持つ。だがその自己再生・自己進化機能は
無条件に発動するのではなく、発動には本人の強い『意志力』が求められる」
「……カクユーゴーロ?」
わけわかんねぇ。ガッツは剣を肩に担ぎ、右の人差し指で頬を掻く。
「なんだか知らねぇが急に饒舌になりやがったな、こいつ」
ザクの方へと向き直り、その顔を見上げて呼びかける。
「おい、ザク。敵さんは随分とお前のことを研究してるみてぇじゃねぇか。お前はこいつの特性も、名前さえ
も知らなかったってのによ」
そうだ。こいつは、いや、奴らは何故こうまで俺の事を知っているんだ?
ザクの脳内を疑問の嵐が渦巻く。
何故?
「つまり」グルンベルドの口と鼻から炎の吐息が漏れる。
「長期戦に持ち込み、貴様の戦意をじっくりと殺いでいけばその再生能力も低下する。その事は既にデビ
ル勇次郎戦で実証されている。この闘い、勝機があるのは貴様らではなく、この俺だ」
デビル勇次郎……。そういえばあの時、東方不敗は唐突に現れた俺にも驚くことは無かった。まるで俺
が来るのを知っていたかのように。そして、いま鷹の使途が説明した俺の性能・能力の詳細を知るのは、
ノヴァ教授、キテレツ、江田島塾長、王大人の四人だけ。
……この四人の中に、ソドムに通じている人間がいる?
いや、考えるな!こうして心に迷いを持っては奴に隙を与えるだけだ!
気合を入れて硬直を解き、ザクは両の拳を握って引いた。
――迷いを生じさせ、戦意を殺がせる。貴様のその策には乗らん!
「策ではない。俺はただ事実を述べただけだ。貴様らに勝ち目は無いという事実を」
グルンベルドは淡々と答えた。
確かにその通りだ。俺達には、こいつに打ち勝つ手段が無い……。
ザクは握り締めた拳を見下ろした。
どうすれば俺達は勝てる?
その隙を見逃すグルンベルドではなかった。大地を蹴り、猛烈な勢いでザクに突進する。体当たりして
ザクを押し倒し、圧倒的なアドバンテージを得ようという腹積もりだったのだろう。
だがザクは咄嗟に頭を切り替え、眼下に立つガッツを掴み、横へと跳んだ。体当たりは空を切り、慣性
により目標を見失ってなおグルンベルドは突っ込み、数百mを走ってようやく停止する。盛大に雪を撒き
散らしながら足踏みをし、グルンベルドはゆっくりと方向転換する。
かろうじて体当たりをかわしたザクへと。
「攻撃をかわすほか術は無いらしいな」
グルンベルドは後ろ足に重心を置き、力を溜める。「つまらぬ」
――万策尽き果てたか……。俺達は、こいつを倒せないのか……。
「おい」
悩むザクの手の中から、ガッツの呼びかけが聞こえてくる。ザクはガッツを見下ろした。
「結局手を組んでも無駄だったみたいだな。俺の剣は微かに奴の体を削れるだけで、決定的なダメージ
は与えられない。お前はそこそこのパワーがあるが、決定打となる武器を持っていない」
――すまない。俺が考え無しなばかりに……。この闘い、もう――
「もしお前が、もう闘う気力も無くて逃げ出したいっつうんなら、俺を置いていけ。俺は一人でも奴と闘う」
――逃げ……そうだ!
ガッツの言葉に触発され、ザクの頭に一つの案が浮かんだ。
まだ手は残されている!
――ガッツ。お前は先々代のキング・オブ・ハート、ジョセフ・ジョースターを知っているか?
「突然何を……」
紋章を受け継ぐ際、ガッツはシャッフル同盟の闘いの歴史を垣間見た。当然、ジョセフも知っている。
そしてガッツは、ザクが何をせんとしているのかを悟った。
「ってお前、まさか本気で!」
グルンベルドを遠目に眺め、ザクは心中笑顔を浮かべて続ける。
――彼は他のシャッフルの戦士と違い、圧倒的な力と技で闘うタイプではなく策を練って闘う戦士だった。
そして、彼の十八番とも言うべき作戦は……
ザクはグルンベルドに背を向け、バーニアを噴かして飛び立った。
――『逃げる』!
目前で逃亡を図ったザクを睨み、グルンベルドは一声唸った。
「臆病風に吹かれたか!」
情けない!武人として相手をする価値無し!
グルンベルドは、この時既にザク達を葬る気を失いかけていたが、この闘いが光の鷹グリフィスの為の
ものであることを思い出し考えを改める。
奴らが我らの宿敵足りうるとは到底考えられん。だが、命令とあらば俺はネズミさえも全力で狩らん!
グルンベルドは大地を揺さぶり、飛び去っていったザクを全速力で追いかけていった。
「追いかけてくるぜ」
飛行するザクの手の中でガッツが後方を振り返り言うが、
――地を駆る四足獣では、俺のスピードには追いつけまい。
ザクはそう答えた。
「もしかしてお前」ガッツが尋ねる。
「全速力で逃げきる、ってのが作戦なのか?」
――単に逃げるだけじゃない。今は、奴との距離を離そうとしているんだ。
「策はあるのか?」
――たった今思いついたばかりだ。成功するかどうかは分からんが……やってみるしかあるまい。
グルンベルドとの距離を数十キロ離したところで、ザクは適当に身を隠せる場所を探した。
右手の方角に、針葉樹林を発見。そちらへ向かい、林の中に着陸する。
ザクはガッツを握った手を眼前に掲げて話しかける。
――俺はジョセフ・ジョースターの様な策士じゃないから、力任せの作戦しか考えられん。成功するかどう
かも分からんし、成功すれば必ず勝てるという保証があるわけでもない。
「闘いの最中に思いつく策なんてそんなもんだ。で、具体的にはどうするんだ?」
ザクは左手の親指を折り、四本の指を立てた。
――利用するものは四つ。俺のバーニアと、左右の爆熱プラズマクロー。そしてお前の剣と、大砲だ。
それから簡潔に、作戦の要諦を説明した。説明に要した時間はたったの1分。
「へっ。確かに、単純明快な力任せの作戦だな」
それがガッツの感想だった。だが、作戦そのものには不満は無いようである。
――いちおう納得してはもらえたようだな。ならば、行くか!
ザクを見失い、グルンベルドはしばし足を止めた。グルンベルドの走った後には巨大な足跡が続いて
おり、蹴散らされた雪は土と混じって純白の輝きを失っている。
逃げ切られたか。
グルンベルドは火炎混じりの吐息を漏らす。
俺のこの力に見合う強敵にはとうとう出会えなかったか……
と、その時。彼方より高速で飛来する光る物体がグルンベルドの視界に入った。
ザクである。
「覚悟を決めて特攻を仕掛けるつもりか!ザク!」
ザクは常軌を逸した超スピードで接近してくる。距離20km……12km……3km……
グルンベルドはそれを撃ち落さんと大火球を吐き出した。だが、それと同時にザクは光り輝くエネルギー
弾、右拳のプラズマ千歩気功拳を放つ。火球と千歩気功拳は空中でぶつかりあい、相殺される。
「そのような技は効かんと言ったはずだ!無駄なあが――」
強烈な衝撃がグルンベルドの額を襲った。
ガッツの大剣の突きが、グルンベルドの額を叩き割ったのである。
――お前の剣に、俺のパワーを上乗せする。
林の中で、ザクはガッツに作戦の説明を始めた。
「発想としては間違ってないな。俺の剣は全く歯が立たないってわけじゃないし、そこにお前の腕力が加わ
れば奴には通じるかもしれん。で、具体的にはどうするつもりだ?」
――あいつに向けて、お前をぶん投げる。
ガッツは噴いた。
「おめ……そりゃあいくらなんでも原始的過ぎやしねぇか?」
――聞いてくれ。まず、あいつに向けて俺がバーニアを噴かして最大速力で突っ込んでいく。これだけ
距離を引き離せば、突進力も相当なものになるはず。だが、そこでお前を投げても奴の火炎球に迎撃
されたら一貫の終わりだ。だから、奴が炎を吐いたならば俺は右手のプラズマ千歩気功拳でその火炎を
相殺する。これがめくらましとなって奴への突破口が開けるだろう。
ガッツは静かにうなずいた。
――次に、左手の爆熱プラズマクローをジェット噴射させ、飛行しながら俺自身が横回転をする。この時
既にお前は俺の右手の中で待機している。右腕を伸ばし、なるべく大きな遠心力を得られるようにする。
それからお前を力の限りぶん投げるんだ。投げるときには、お前も俺の手を目一杯蹴って跳躍しろ。
……思いっきり酔いそうな攻撃だな。
ガッツは言葉こそ発しないが、その顔にはありありと不快の色が浮かんでいる。
――最大スピードでの突進力とプラズマジェットの逆噴射、そこへ遠心力とお前の跳躍力を加えれば
大破壊力が生まれるはず。これだけやって傷一つつけられんなら、俺達の勝機は皆無だろう。
剣を突いた箇所を中心に、大きな亀裂が生じる。ザクの作戦が功を奏したのだ。
だが亀裂は表面的なものであり、ダメージは深層までには到達していない。
「そういう作戦か!見直したぞ、ザク!黒い剣士!しかし我が肉体に致命傷を与えるには及ばなかった
ようだな!」グルンベルドはガッツとその後方のザクを交互に見やり、叫ぶ。
「まだ褒めるには早ぇぜ、武人のおっさん」ガッツは舌先から「シッ」と息を漏らす。
策はまだあるんだ!
剣は先端が浅く切り込まれただけだった。ガッツはグルンベルドの顔を蹴って剣を引き抜き、再び空へ
と跳ぶ。
「俺の顔を足蹴にするとは!だが!」
グルンベルドは跳躍したガッツを見上げ、口を大きく広げる。
身動きの取れぬ空へ逃げるとは、無謀!
その口の中に業火球が轟き生まれる。
――第一撃では浅い傷しか負わせられんかもしれん。だから、第二撃でとどめをさすんだ!
ガッツは左腕の義手をグルンベルドとは反対方向へ向け、仕込まれた大砲を放つ。
グルンベルド。この剣の名前を知ってるか?
大砲の威力により、ガッツは大回転しながらグルンベルドへと突っ込んでいく。そして竜が火炎を吐く
よりも先に、ガッツの大剣が先ほど生じた亀裂へと深々と、柄元まで突き刺さる。
致命傷であった。鮮血が噴出し、ガッツを赤く染める。
『ドラゴン殺し』っつうんだぜ!
グルンベルドが最期の咆哮をあげる。ガッツは深く刺さった剣を抜き、地へと降り立つ。それに続き、
飛んできたザクがガッツの隣に降りる。
――鷹の使途。
うめき声を飲み込み、頭を垂れるグルンベルドへザクが尋ねる。とめどなく噴き出る出血が、白銀の雪
原に赤く散る。
――息絶える前にグリフィスの、ソドムの根城を教えてくれ。
「み……見くびるなよ、小僧ども!」
グルンベルドの体が震える。足元がふらつき倒れそうになるが、大地をしっかと踏みつけてとどまる。
「……たとえこの身が砕け散ろうとも……我が主への忠誠は……不滅なり!」
そう叫ぶと同時に強烈な光が周囲を満たし、ザクとガッツの目をくらませる。
閃光が収束した後に残ったものは、雪の大地に横たわる、人型に戻ったグルンベルドの死体。
ザクとガッツの、二人の勝利であった。
しばらくの間、二人は無言でグルンベルドの死体を見下ろしていた。
必殺技の通用しない、かつてない敵。二人がかりでなければ、まず間違いなく負けていた……。
「ザク」
不意にガッツが口を開いた。ザクはガッツの方へと視線を送る。
――なんだ?
「さっき、こいつにグリフィスの根城を訊いていやがったな。何故だ?」
ガッツはザクの返答を『見』ようとその単眼をみつめる。ザクの答えは思いのほか早かった。
――グリフィスが俺達シャッフル同盟の敵、ソドムに加担しているからだ。
その言葉が染み渡ると同時に、ガッツの心に復讐の灯火が燃え上がった。
当て所のない旅を続けていた。わずかな怪異の噂とかすかに感じる気配を頼りに何処にいるとも知れ
ぬ、いや、この世にすら存在しないグリフィスの影を追って死霊どもをかきわけさまよってきた。
今回この闘いでグリフィスと出会えたのは全くの偶然にすぎず、消えてしまえばまた旅はふりだしに戻っ
てしまうところだった。
だがグリフィスは今、剣の届くところにいる。こいつらシャッフルの戦士が、グリフィスどもを探していると
言うのならば……
――ガッツよ、俺達の仲間に加わってはもらえないだろうか?
ガッツは拳を握り締めて、溢れる殺気を押し殺して答えた。
「あいつを、グリフィスを叩っ斬るまでの間だけだ」
それだけ言うと、ガッツはキャスカやパック達の待つ鉱洞へと歩みだした。
「連れの奴らにしばらくここで待ってるよう伝えてくる」
歩み去るガッツの背を眺めながら、ザクはそこへ自分の姿を重ねていた。
――復讐を糧に旅を続ける……。俺は、この男と似ているのかもしれない。
こうしてブラック・ジョーカー、黒い剣士ガッツが仲間に加わることとなった。
ザクがシャッフルの戦士を探して放浪の旅をはじめてから、実に五日目の出来事だった。
今回投稿分終了。
NBです。
皆さん、馬鹿が一匹戻って来ました。
またしてもちょくちょく駄文でスレを消費させて貰います。
ホテル屋上のヘリポート。
朝日は今日の始まりを祝福する様に照り輝き、青空は其処に言い様も無い清々しさを演出する。
しかし其処に居る連中は、そんな事とは無縁だ。
クリード=ディスケンスを筆頭とする四人の道士――人の身にして人を超越した戦鬼達はただその時を待つ。
「……よろしいデスか、クリード」
唐突にシャルデンが切り出した。
「? なんだい?」
「例の部隊の件、デスが…矛盾していまセンか?」
――――道士の部隊の事を言っている事は言外しなかったが、クリードには充分に伝わった。
「してるね。…それが?」
―――星の使徒が道士を作った後、すぐ引き込むかと思いきやそうはしない。
大金を渡し、潜伏させる。しかも「指示有るまで待て。何をしてもいいが派手な事はするな」とクリード自らが言い含めた上で。
これには通過儀礼の意味も含まれている。要するに、如何にクロノスに見つかる事無く自制、もしくは自衛を出来るかを
見るための試練なのだ。
当然彼らにはクロノナンバーズが当たる事だろう。そうなれば生きるか死ぬかの二択以外は選べまい。
殺されれば運か実力どちらかが無いかだし、生き残ればどちらかが要求を満たす程度には有る証明だ。
そういう意味で、役立たずかそうでないかを確かめる"ふるい"な訳だが、ここで矛盾が生じる。
あの構想を形にしたければ、どうせ死ぬ連中の4・5人をラボ(研究室)に送っても損はすまい。
それを何故わざわざクロノスへの生贄にするのか、シャルデンには理解し得なかった。
「…そりゃ簡単さ、僕は皆に自由意志を以って事に到って欲しいんだ。死ぬも生きるも――ね」
クリードは朗らかに笑った。だがこの男の笑顔は殺意にまみれるより恐ろしい。
「そもそも僕の造った星の使徒≠ヘ、それが目的だ。キミが知らないとは言わせないぞ」
成る程、言われてシャルデンも苦笑する。
「これから不自由になってもらう以上、命の洗濯はさせてあげなくちゃ。あの役立たずの癖に勝手な事してる奴(ギャンザ)なら兎も角、
言いつけを守っている他の皆にそんな酷い事は出来ないよ」
そして二人は笑い合う。だが、其処に有るのは言い様もなく昏いものだ。
一見気遣う様なクリードの言も、果たしてどれだけの兇気を秘めているやら。
「お前たち、何の話をしている?」
シキが二人に割り入った。当然か、端から盗み聞いても何の事か良く理解出来ないのだ。
「ああ、もし結構な数が生き残っていたら、部隊でも作れたんじゃないか、ってね」
手も無く言い放った。
「そうすればクロノナンバーズなんて怖るるに足らない、そうだろ?」
「そうか……まあ、当然だな」
釈然としないが、納得することにした。
―――しかし彼は知らない。話の本質は言っても、核心には触れていない事を。
「あ、皆さん。あれじゃないですかぁ?」
皆の耳にも普通のヘリよりも大きいローター音が届く。
キョーコが指し示した方向に眼をやれば、軍用のカーゴヘリ(多数の人員を乗せて送るためのヘリ。大型)がヘリポートへと
飛来、瞬く間に上空までやってきてホバリングしながら静かに下りてきた。
「……いよいよ来たか。待ってたよ」
降下するヘリの下腹を見上げながら、クリードは満足げに呟いた。
降り立ったヘリの横腹が自動スライドで開き、数人の男女がクリード達の前に現れる。
一人は少年―――ジャケットと半ズボンの十歳そこらの少年だが、眼は年不相応に昏い。
だがその目にはそれでもなお確かな意思が有る―――昏いだけではなく、カミソリの様に鋭い。
一人は男―――ショールとテンガロンハット、拍車付の革ブーツとマカロニ映画さながらの出で立ちだが、異様が一つ。
凶相の下半分を牙を模したマスクに覆っている。
一人は女―――大人びた雰囲気の妖艶な美女。仮に例うなら、凄絶な天女か美々しき夢魔だ。
男なら、誰もが喜んで命を差し出しかねない甘い毒をその姿に備えている。
「三人かぁ……少ないですねぇ」
「いや、多いさ。僕の予想より二人も」
キョーコの言はもっともだが、クリードはまるで気にするでもない。むしろ満足げに微笑んだ。
「ようこそ諸君。その身に課した試練を乗り越えた諸君。改めて――“星の使徒”へようこ…」「あのさ」
クリードの芝居がかった歓待の言葉を、少年のにべも無い言葉が遮った。
「そんなのはどうでもいいからさ、誰を殺せばいいんだよ?」
命をビジネスライクに語るのは、その若さか無知か。それ故か、一派の首魁に対し極めて不遜な発言。
その傲慢に気を悪くしたシキが、灸を据えるつもりで進み出ようとしたが、クリードの手が静かに制した。
「……リオン、済まないがまだそういう段階じゃないんだ。だから今は、その時のために英気を養っておいてくれないか」
「…だっせ」
リオンと呼ばれた少年は、つまらなそうに毒を吐く。――――それだけなら良かった。
「…餓鬼が、一丁前のツラして猛ってんじゃねえよ。大体人殺した事有んのか?」
一緒に降りたマカロニ男が、悪意も露わにリオンに絡む。
「しかし、情けねえなァクリードさんよ。こんな餓鬼にでかい面されて何も言わねえなんざ……
付いて≠のかい? それとも使い物にならねえヘッポコなのかい? ンな綺麗な面してると怪しいもんだなあ」
のみならず彼の悪意はクリードさえも揶揄の対象にする。しかしそれでも当の本人は平静そのものだ。
だが、リオンは違う。不愉快千万の眼差しで男に向き直った。
「…黙ってろよデュラム。オレさ、アンタみたいな大人嫌いなんだよ」
「"さん=Aを忘れてるぜ、糞餓鬼。育ちの悪いこったな」
二人の視線は鋭さを増しながらぶつかり合う。男の目は禍々しく歪み、少年の目は憎悪一色。
朝日さえ歪む様な"気≠ェ二人の間にやり取りされる。
「…止しな」
女が二人に目もやらず、溜息一つと共に制止を吐く。しかし当然止まる訳が無い。
「二人共、その辺に……」「黙れ、タマナシ野郎」「すっこんでろよ。止めたら殺すぞ」
クリードが優しく止めても聞く気は無い。
「鬱陶しいんだよなあ、正直。アンタみたいに中身が足りない大人ってさ…ゴミだよ本当」
「…ワタ(内臓)抜く位しか使い道の無えナマ餓鬼(生意気な餓鬼の略)は喋んなよ、物珍しい」
交わす言葉は悪意を超えて殺意に相当する。なればお互いを自制する理由など何処にも無い。
視線に威力が有るのなら、既に二人は殺し合っている。そしてそれはまもなく現実になろうとしていた。
双方それぞれの必殺を形にするべく身構えた瞬間―――――――――――
雷鳴の様な轟音。いや、実際に直ぐ側に落ちた雷の様なそれに、二人は気勢を崩される。
音の圧力は凄まじく、思わず倒れそうになるバランスを二人は慌てて立て直す。
音が飛んできたであろう方向に揃って目をやれば、先刻と変わらず平然と立つ美女一人。
「私に"使わせ≠スいのかい? もう一度言うよ、止めな」
事も無げに言うその言葉には、間違いなく怒気が篭っている。彼女の道を知っているだけに、流石に収まらざるを得なかった。
ようやく収まった二人の肩に、優しく手が乗せられる。
「さ、世間話はこの位にしておこうか。二時間後に近くの支部に向かうから用意してくれ」
事の余韻を感じさせぬ笑顔でクリードは事務的に言葉を紡ぐ。それと同時にヘリに飛び立つ様に指示を出した。
「…クリード、何でヘリで行かねえ?」
飛び立つヘリを見送りながらデュラムが訊いた。
「ヘリはね、目立つんだよ」
音は煩い、空にある、と厄介な二大要素がある以上、それで向かうわけには行かない。秘密を重んじる組織なら尚更だ。
相手が世界最高の情報網を持つクロノスである以上は気休め程度だが、それでもしないよりマシなのだ。
「少し時間が有るから、カフェラウンジで軽く何か摂っておいてくれ。さ、一時解散」
終了の合図とばかりに手を叩き、エレベーターのドアの方に歩いていく。それに皆が続いた。
NBです。
えー、とうとう再開してしまいました。
ところでバレさん、開始早々申し訳無い話が一つ。
今回始まった第六話のタイトル、「無残」でなくて「幕間」にしてもらえんでしょうか。
どうしても間に一話入れる必要が出来てしまったので……本当に済みません。
今回はここまで。ではまた。
NBさんカエッテキタ─────────(゚∀゚)────────!!
漏れは現在読んだことないがNBさんの作品が持つ殺伐とした雰囲気が大好きだ。
正直投げ出しも懸念したけど戻ってきてくれて嬉しい。
それはそうと
>>562の25行目の「命の洗濯」は誤植?
NBさんご帰還!
実を言うと俺、あなたが某所のBBSに投稿した事でこのスレの存在を知りました
帰ってきてくれて嬉しいです
第四話「無知と無神経」
吸収には失敗したセルだったが、ヒッチハイクだけはどうにか成功した。セルが近づく
だけで、次々に運転手が車を明け渡してくれる。
「どうやら完全体にならずとも、人徳だけはパーフェクトなようだな……」
こうして多くの自動車を手に入れたセルは、もっとも大きいワゴン車を選ぶ。理由は単
純明快。
「これだけ大きければ、ちゃんとした席に座らせてもらえるだろう」
町外れにてセルが待っていると、まずは17号が戻ってきた。モデルガンをかなり買い
込んできたようだ。ヒッチハイクを経て、自分には人徳があると思い込んでいるセル。卑
屈さを払拭し、17号に対して横柄な態度を取り戻す。
「やっと戻ったか。……にしても、ピストルなんぞに興味があるのか。おまえなら、エネ
ルギー弾でも撃った方がずっと強力だろうに」
「ふっ、化物には分からないだろうな。こういうロマンは」
「俺は化物ではない、妖怪野郎だ! ……いや違うか」
自らの愛称についてセルが悩んでいると、続いて16号が現れる。
「よう16号、どこへ行ってたんだ」
「ヘルズフラッシュ!」
「ぐべぇッ!」
大打撃を受けたセルが呻いていると、ようやく18号も戻ってきた。が、何故か先ほど
の17号以上に大荷物を抱えている。ヒッチハイクしたワゴン車に収まるかどうか、セル
は少々不安を覚える。
「こ、これは一体……」
「洋服だよ。けっこう長旅になるんだろ?」
「うむ、まだクリスタルに関して何も分かっていないからな……。だが、それにしても多
すぎる! せめて、半分くらいにならんか。どうせ、どれを着ようと大して変わらんだろ
うが!」
──空気が変わった。
他意はなかった。悪意もなかった。が、セルは気づかぬうちに禁句(タブー)に触れて
しまっていた。横にいる17号が、少し哀れむようにセルを見つめる。
「おいおい、どうしちまったんだよ。まだ旅は始まったばかりだぞ」
冷や汗を拭い、振り返るセル。すると、静かな怒りを湛えている18号が立っていた。
「え、いや、だって……ねぇ。理解に苦しむよ、俺なんか常に全裸──」
弁解は遮られ、代わりに絶叫が轟いた。むろん、声の主はセルである。
半殺しにされたが、どうにか命だけは見逃されたセル。一行はワゴン車に乗り込み、再
びクリスタル探しへと出発する。また、荷物を積んでもスペースが空いたので、セルもよ
うやく乗車を許されることとなった。
運転する17号が、後方で体育座りをしているセルに尋ねる。
「ところで、セル」
「なんだ」
「クリスタルについて教えろよ。マザーコンピュータから色々と情報は仕入れてあるんだ
ろ? さすがに、ヒントもなく探し続けるのは大変だからな」
どう対処するか、黙り込むセル。少しでも知っていることがあれば話したい。が、彼は
コンピュータから何も聞いていないのだ。
「どうした、さっさと教えてくれよ」
「いや、その……」
真実を伝えたらどうなるか。16号からのヘルズフラッシュはほぼ確定だろう。しかも、
彼らにボディガードを放棄される可能性も高い。人造人間たちは、今やゲロの支配から解
き放たれた存在だからだ。
とはいえ、情報を捏造するのも危険だ。もしも表ざたになれば、ヘルズフラッシュどこ
ろか、生命でさえ危うい。
──ならば、少しでも怪我を抑えられる選択をするまで。
「……ほとんど知らないんだ」
「えっ?」
「全然分からないのだ。クリスタルの場所どころか、形も大きさですら知らぬ。コンピュ
ータから得た情報は、クリスタルは全部で五つあるということだけ……」
白状し終えると、セルは大げさに泣き始めた。もちろん、涙など一滴たりとも流してい
ない。嘘泣きなのは明白だが、あまりにも無様なので17号も18号も呆れてしまった。
だが、16号だけは異なる反応を示す。
「セル、今すぐ研究所に戻るのだ!」
「えぇっ! せっかくここまで来たのに、面倒なんですけど」
「ヘルズ……」
「はいっ! 今すぐにでも、研究所へ戻らせていただきます!」
無情にも、車外に放り出されたセル。さっそく情報を入手するため、コンピュータが眠
っている研究所へと飛んでいく。
虐待レベルではインフレ分セルが不幸ですが、
まともな目的があるという点では、シコルよりマシかもしれません。
読み返すと、やっぱりセルもヘタレですね。
迷言「ベジータ、こいつを何とかしてくれよ」
第五話へ続く。
>424から
勝負に勝つ方法とは、必ずしも<自分の勝利条件を満たす>ことだけではない。
<相手の勝利条件を満たすことなく勝負を終える>それもまた勝負に勝つ方法の一つである。
「さて―――それはともかく」
ぼくは範馬から目を逸らさず、自分の装備を確認する。
上着の中に装着してある特製のホルスターの中には、メスのように小さなナイフ。だがこれは人類最強から直々にもらった
逸品。その切れ味は下手な刀では及びもつかないほどだ。
そして、拳銃―――ジェリコ941。とある事件で手に入れ、そのまま持っていたものだ。弾丸は既に撃ち尽くして
いたのだが、今日のために新しく仕入れて装弾している。
最後に、校舎に施したある仕掛けを作動させるための操作装置。
しかし、はっきり言って役に立たないだろうという予感―――というよりも、もはや確信―――はある。素手ではなんだから、
とりあえず持っとこう。そんな気休め程度の役割しかない。
それはこの廃校の敷地内に施した仕掛けについても言えることだ。
戦闘において勝利を収めるのは不可能と言い切っていい。だが―――それでも。
勝算はある。確かに存在している。
範馬は―――まだ動かない。
「どうしたんです?オーガさん。全然動かないじゃないですか」
ぼくはあえて挑発するように言いつつ、上着からナイフを取り出した。範馬は動かない。
「来ないなら、こっちから行きますよ。いいんですか?」
範馬は、やはり動かない。ぼくは挑発を続ける。
「まさか、ぼくにびびってるなんてわけじゃあ―――」
その瞬間、激しい衝撃を受けて、ぼくの身体が宙を舞った。一瞬の後、背中から無様に着地―――というより
墜落する。範馬が何かした様子はない―――いや。
さっきぼくがいた地点のすぐ前に移動している。ただ単に、ぼくの動体視力が範馬の動きについていけなかった
だけのことらしい。移動する動きさえ見えなかったのだ。攻撃なんて見えるはずがない。
「挑発するにせよ、言葉を選べ」
範馬は少々気分を害しているようだった。
「俺に対してびびってるなどと、冗談―――てめえ流に言えば、戯言か―――だろうと口にするな」
「・・・・・・」
「てめえの存在そのものは確かに恐怖にさえ値するが―――てめえの戦闘力なんざにゃあ、これっぽっちも
見るべきとこはねえ。痛い目巳見ねえうちに、さっさと降参しちまえ」
「・・・・・・」
やはり―――予想はしていたが。
出夢くんたちを三人まとめて倒したことからも分かる通り、戦闘においてまさに範馬は怪物だ。
戦闘においては、ぼくに勝ち目などない―――戦闘においては。
しかし―――しかし、それでも。
戦闘に勝てなくとも、勝負に勝てる見込みならばある―――最低限、賭け事が成立するくらいには。
ぼくはなんとか立ち上がる。痛みはあるが、骨折だの靭帯損傷だのといった深刻なことはないようだった。
ジェリコを取り出し、ほとんど狙いも付けずに撃つ。三発撃って幸いなことに、全弾範馬に向かった。
―――結論から言おう。範馬はそれを、あっさりと受け止めた。
一発は右手で掴み、もう一発は左手で。最後の一発は、歯と歯で挟み込んでいた。
「・・・嘘だろ、おい」
範馬は銃弾をガリッと噛み砕いた。
「戦場格闘技においては、噛み付きなんぞ基本の一つに過ぎん」
いや、そういう問題じゃねえだろ。そんな突っ込みも出来なかった。
「まあ―――これでてめえも理解ったろうが。俺とてめえとの戦力差ってのは、象と蟻なんてレベルじゃねんだよ。
ほら、さっさと言っちまえ―――参りましたってな」
範馬は完全に優位を確信し、ぼくに迫る。ああ、そうだろうさ。確かにあなたは強すぎる。あなたとまともに闘える
人間なんて、それこそ哀川さんくらいだろう。
けれど―――けれど。そんな力で、他人を傷つけて、それで平気な顔をして。
他人を踏みつけて、それを当然のこととして。
それを思い上がりと言わずしてなんと言う?
思い上がりは―――正してやろうか。
「――――――ねえ」
「あん?何だって?」
「くだらねえって―――言ったんだよ!」
ぼくは叫んで、窓の方へと走り出す。ガラスの嵌っていない窓から飛び出し、一瞬の間も置かずに飛び降りた。
二階だから落ちてもそこまで酷いことにはなるまい―――そうタカをくくっていたが、落下の衝撃に全身が軋んだ。
右腕が痛い。上手く動かせない。どうにかなってしまったのかもしれない。
けどそれには構わず、校舎から距離を取るため走り出す。走りながら懐から装置を取り出す。
そして、間髪入れずにスイッチオン。
―――瞬間、轟音と閃光と灼熱が包み、ぼくの身体を前方へと勢いよく吹っ飛ばす。
校舎にセットしておいた爆薬が、一斉に爆発したのだった。
投下完了です。
>ふら〜りさん
妄想戦士ヤマモトは僕も大好きです。
外道校長東堂源三郎も面白いですよ。
>NBさん
復帰おめでとうございます。
>秘密を重んじる組織なら尚更だ。
原作思い出してちょっと笑いました。原作じゃあ観光地に馬鹿でかい屋敷をぶっ建てるドアホウだったからなあ・・・。
どどっと来ましたねえ。特にNB氏復活おめ。そろそろ次スレかな?
>ザク
内通者あり、ですか。ガッツとザクの夢のタッグにとんだ水入りですねえ。
しかしグルンベルド如きに苦戦しているようじゃフリーザ様はw
>AnotherAttoraction BC
まずは、連載復帰ありがとう&復活お疲れ様。嫌な事気にしないようにね。
今回は星の使途視点の話ですか。やはり、こいつらが主役のセフィリア様に
立ちはだかるのですね。
>不完全セルゲーム
主役のセル以外のキャラが原作の雰囲気プンプンしますね。特に17号。
しかし、間全体セルはカッコよかったがこの作品では間全体になれるのか?
>戯言使い
一人称が「ぼく」の割にはジェリコ941の似合うハードな展開ですね。
しかしオーガ原作より強そうだなw歯で銃弾噛み砕くのはギャグSSみたいw
黄金期再来みたいですね。良い事だ。NB氏復帰おめ。
・パオ氏
浮動心のあり方が勝負の分かれ目になるかな?春也が恐くて強いですね。
・ゲロ氏
惜しいなあ、この作品が一旦終了になるのは。外伝と新作期待してます。
・ザク氏
フリーザラスボスで確定なのか?それはともかくタッグ戦、面白かった。
・NB氏
不気味なり星の使途。原作知らないけど、底知れなさが伝わってくるね。
・サナダムシ氏
完全体にならずとも、人徳という大切なものを手に入れてるのでは?w
・サマサ氏
勇次郎とは別の力で渡り合っているのがかっこいい。でも勇次郎は無敵で。
一気に皆さん力作を次から次へと投稿ですね。示し合わせてるみたいだw
ふら〜りさん、感想書くの大変だろうねw
読むのは疲れたけど、楽しかったよ。でも月〜木にも分散してほしいな。
テンプレ作ってみるね
581 :
テンプレ1:2005/05/14(土) 11:22:59 ID:E+lJFuyv0
582 :
テンプレ2:2005/05/14(土) 11:24:59 ID:E+lJFuyv0
583 :
テンプレ2:2005/05/14(土) 11:27:37 ID:E+lJFuyv0
漏れてたり間違ったりはしていないかな?一応チャックはしたんですが。
ローマは2ヶ月立ったのでリストから外しました。
ですが復活を祈ってます。微妙なのはユル氏の作品。
ユル氏は2ヶ月以上連載休止が経っているけど某スレで一ヶ月くらい前に
書き込みあったので今回は載せました。
585 :
テンプレ補足:2005/05/14(土) 11:57:21 ID:E+lJFuyv0
今までの具合からして、現スレは容量的にはとっくに次スレ行っててもいい重さなんで
次スレ立ててそこで白昼夢さんに書いてもらえばよいかと。
既存の職人さんなら最後にばらしがあるかもしれんね。
休載も増えてきたけど、その分復活と新連載が増えたから帳消しだな。
次スレ立てられんかった。誰かよろ。
絶好調だねえ皆さん。
特に現スレ終わり間際、好きな職人さんたちの作品が
立て続けに来たのは嬉しかった。NB、あまり雑音気にすんなよ。
今からスレ立て挑戦してみるけど、前だめだったから無理かも。
588 :
587:2005/05/14(土) 14:19:10 ID:56o5+FBg0
駄目だった。他の方、誰かお願い。
しかし、どんどん使い難くなるねえ2ch。
野球板なんかw
589 :
作者の都合により名無しです:2005/05/14(土) 17:41:22 ID:VDlrYCXQ0
俺も駄目だった。
せっかく職人さんたちが好調なのに、スレ立てつらすぎ
じゃあ今からちょっと立ててみます。
向こうにも書きましたがお疲れ様でした。
ところで、サマサさんの勇次郎が歯で銃弾受け止めるシーン読んで
マロン板の勇次郎vsゴルゴスレで
「勇次郎はゴルゴの狙撃を顔面に喰らっても耐えられる可能性がある」と
必死で主張していた勇次郎オタを思い出したw
サマサさん失礼。
>>592 「歯で銃弾を止める」で「ゲームセンターあらし」を、
「戦場を爆破してムリヤリ勝利」で「速攻生徒会」を、
それぞれ思い出した私。……我ながら、救いようがないマニアックぶりですのぅ。
本当に救いようがないですなあw
でも、ゲームセンターあらしは有名でしょ。
前の妄想戦士だの義経ちゃんだのよりは。
すいませんけど、もう少しレスくれませんか?
感想レスがないとやる気がおきないんですけど