【2次】漫画SS総合スレへようこそpart26【創作】
乙。
新規の方ですか?
あとがきからしてユルかと
>>513 SS投下直後に失礼します。ゴリライモじゃなくてかば夫くんでしたね。
すみません。バレ様、「ゴリライモ」→「かば夫」で修正お願いします・・・
箇所は
>>496です。素で間違えてました。
548 :
作者の都合により名無しです:2005/07/07(木) 05:15:21 ID:67g0jSvOO
>>546 格ゲーキャラ(風間仁)を使うような奴で「今回の投稿〜」と言えば
輪
廻
549 :
作者の都合により名無しです:2005/07/07(木) 07:04:35 ID:lzGJjL8w0
>Iron Fist Tournament
いや、期待してるよ。がんばれ。
武藤竜二ってヤンマガのやつだよね?
トーナメントというからには、16人位は参加者いるのかな?
次スレテンプレ、470KBあたりで作ります。あと作品2本くらい?
結構、今スレで作品の入れ替えあったね。
種を擁護するわけじゃあないが、ザクがまかりとおってる時点で(ry
プロローグ5「悪」
そこは、人と人ならざる者が仲良く暮らす世界―――
<人間><神族><魔族>。三つの種族が交じり合う場所。
そんな世界のごく平凡なとある街に、二人の男が立っていた。二人とも顔立ちはかなり端正で、道行く人々は
女性ならば顔を赤らめて注視し、男性ならばそんな二人にやっかみ混じりのギスギスした視線を送っている。
しかし当の二人はそんなことはどこ吹く風とばかりに何やら話し込んでいた。
「しかし君の頭脳には驚かされる。こうもあっさりと次元の壁を越え、異世界へと入り込んでしまうのだからね」
「誉めても何も出ませんよ。それよりも・・・」
「・・・うむ、例の三人と接触する役目は、私に任せたまえ」
サングラスに仕立てのいいスーツを着た30歳前後と見られる男が手の平の上で紋様の入った青い石を弄くりながら言う。
もう一人の若い男も答える。
「ええ、私はこの世界でやっておかなくてはならないこともありますので。正直助かりますよ、礼を言います」
「ふん、礼などいらんよ。同じ<十三階段>のよしみさ。・・・まあ、お互いにやるべきことはきちんとやらねば。
なあ、シュウ?」
「あなたの仰る通りです、ムスカ。・・・では、私はこれで」
そう言って若い男は去っていく。残されたサングラスの男―――ムスカも彼に背を向けて歩いていく。
その口元に、狂気を含んだ微笑を浮かべて。
「・・・ちょっとー、聞いてるの、稟ちゃん!」
「ええ、聞いてますよ。机の裏にキノコが生えてきたんでしょ?清潔にしとかないから・・・」
「りん、全然聞いてない」
―――談笑する三人。土見稟、時雨亜沙、そしてプリムラ。
あの事件の後、何となく三人で行動することが多くなった彼らは、休日に買い物―――というより亜沙による
ワンマン買い物ツアー―――をしに街に出ていた。
騒がしくも微笑ましい日常の一コマ。稟は思う。
ああ、今日はいい日だ。こんないい日が続くように―――。
「土見稟、それに時雨亜沙にプリムラ―――だね?」
そこに、突如投げかけられた言葉。三人が振り向くと、そこにいたのはあの男―――ムスカ。
「はい、何でしょうか?」
警戒しながら答える稟。さっきまでの気分に水を差されたせいもあって、やや口調は厳しい。ムスカはそんな彼を
嘲笑うかのような軽い口調で語りかける。
「君も男ならもう少し堂々としたまえ。レディーの前だぞ?」
「ちょ、ちょっと!何なんですか、あなた、いきなり。失礼すぎるんじゃないんですか!てゆうか、なんでボクたちの
名前とか知ってるんですか?」
亜沙が見かねて割って入る。ムスカは彼女を眺め、ククッと声を漏らした。
「はっはっは、これは確かに失礼だった。私としたことが、名前も名乗っていなかったね。―――私はムスカ。
<十三階段>八段目、ムスカだ」
「じゅうさんかいだん?」
なんだそりゃどこぞの売れない怪奇漫画家かよ早く原稿仕上げないと拙いんじゃないんですかいと稟は思ったが、
ムスカは構わず続ける。
「君たちのことならよーく調べてある。例えば―――巨大ロボットに乗って戦ったこととか、ね?」
「――――――!?なんで―――そんな事を―――」
三人は驚愕する。その事を知っている者などそうはいない。ついでに言えば、その中にはあれこれ吹聴するような
人物もいないのだ。それなのに――――――
「別に驚くことじゃないよ。調べようと思って調べられないことなどないのさ」
笑う―――ムスカは、笑う。
「こんな天下の往来で立ち話もなんだな―――どこか喫茶店にでも入ってゆっくり話さないか?私が奢らせてもらうよ」
「―――ふざけ・・・!」
「君がうんと言ってくれないと困るんだがね―――手荒なことはしたくないが」
そう言ってムスカはスーツを少しはだけさせ―――そこから覗くモノに稟たちは思わず唾を飲み込む。
それはピストルだった。玩具などでは絶対にない凶悪な拵えの鉄塊―――
「なあ、どうかうんと言ってくれないか―――でないと、君の友人が明日にでも二、三人―――ゴミのように
死ぬかもしれないぞ?」
「・・・・・・っ!」
「り、稟ちゃん・・・」
「りん・・・・・・」
怯える二人を庇うように一歩進み出て、稟はムスカと対峙する。
「用件は―――何なんだ」
「そう怒るものではないよ、土見稟。私としては穏やかに話し合いたいんだ―――そう、例えば―――
私は野比のび太やドラえもんのいる世界から来たんだ、とかね」
「・・・何だって?」
思わぬ所から出てきた名前に―――稟たちは絶句する。野比のび太―――それにドラえもん、だと?
しかも―――あいつらのいる世界から来た?
「君らにとっては、忘れがたき名前だろう?話だけでも聞く価値はあると思うがね?」
「・・・分かったよ。話を聞こう」
ついに稟はそう決心した。得体の知れない男ではあるが、少なくとも自分達にいきなり危害を加える様子はない。
何より―――こいつは、のび太のことを知っている。そして、これは自分の勘だが―――
こいつは、のび太に対し、なにか良からぬ事をしようとしているのかもしれない。
「うむ。そう来なくてはな。―――おや?」
ムスカは稟の後ろにいるプリムラを見て、顔を歪めて笑う。
「そんな怖い顔で睨まなくともいいじゃないかね。せっかくの可愛い顔が台無しだよ?心配するな、こう見えても私は紳士だ。
何も取って食おうというわけじゃない」
「―――あなたは」
プリムラは前に出て、ムスカを睨みつける。彼女の中で恐怖心や警戒心を圧して怒りが湧き上がっていた。
「あなたはのび太に―――何をするつもりなの?」
ムスカはその問いに、答えない。ただ、薄笑いを浮かべるだけだ。
「まあ、そう急くな―――紅茶でも飲んで、ケーキでも食べて、ゆっくり話そうじゃないか」
そして四人は手近な喫茶店に入り、それぞれ注文したものが来たところで、ムスカは唐突に口を開いた。
「さて、私が―――というか、我々の目的から話そうか?それが一番気になっているだろうからね」
「さっさと話せよ」
「やれやれ・・・目上の人間に対する言葉使いがなってないな。それでは社会に出てから困るぞ。・・・おっと、
そう睨まないでくれ、話すよ、話す。我々はね、実は―――野比のび太達五人を、殺そうと思っているんだ」
あまりにもあっさりと放たれた言葉―――それを聞いた時―――三人の背筋を、すうっと冷たい物が走り抜けた。
殺す―――誰が、誰を?こいつが―――彼らを?―――のび太や―――ドラえもん、あいつらを?
考えるよりも先に身体が動き、稟はムスカの胸倉を掴む。だが、ムスカは平然としたものだ。
「そう怒りっぽいと色々損をするぞ?まあ聞け、君らは当然、助けたいと思うよなあ?―――大事なお友達、
だものなあ?」
「―――当たり前だ。なんであんたが―――あんたらか?そんな事をしたいのか知らないけど、あいつらは俺たちの―――!」
「だが君らには、野比のび太の世界へ行く方法はない。それでどうするのかね?」
「――――――っ!」
稟は唇を噛み、ムスカを睨みつける。そんな彼にムスカは冷ややかな一瞥を送り―――
「行かせてやろうか?その世界に」
「・・・え?」
「我々にはその方法があるのさ―――次元の壁を超え、異なる世界へと入り込む術がね。我ら<十三階段>の大半も、
そうして数々の異世界を巡って集められた。そして我々の、まあ一応統率者である<狐>は、野比のび太達を
ただ殺すだけでは駄目だと考えていてね―――彼らの側にも味方をある程度与えておきたいそうなんだ。
何故わざわざそんなことをするのか、理解に苦しむのだがね」
「―――なんだよ、それ―――ゲームか何かのつもりなのか、その<狐>ってのは!」
「いやいや、恐ろしいことに全然そんなことは思っていないんだ、彼は。真面目も真面目、大真面目さ」
「まじめでもなんでも―――」
突然、プリムラが口を開いた。
「のび太や青玉を殺すなんて―――許さない」
その言葉に込められた静かな迫力に、稟と亜沙は顔を強張らせ―――ムスカも何か思うところがあるかのように眼鏡を弄くる。
「そうだよ―――どんな理由があったってあの子達を殺すなんて、ボクだって許せないよ!」
亜沙も背中を押されたように力強く言い放つ。
「ふむ―――では君たちの意見は一致しているようだね。よかろう」
ムスカは伝票を持って立ち上がる。
「では今夜―――そうだな、十二時くらいでいいかな。その時に三人でどこかに集まりたまえ。人目につかない場所なら
どこでもいい。そしたら私の仲間が勝手に見つけてくれる。後は彼に着いて行けばよろしい」
そしてムスカが席を離れようとした時―――
「・・・おや、何かまだ言いたいことでもあるのかな、お嬢さん?」
自分を未だに睨みつけているプリムラに対し、ムスカはおどけた様子で問う。おそらく自分で分かってやっているのだろう、
人の神経を逆撫でする口調だった。
「私は・・・」
プリムラは言う。
「私はあなたみたいなひと―――大嫌い」
「そうかい?私は君のようなお嬢さんが大好きだがね?それにしてももっと喜ばないか。大好きな友達との
再会が叶うんだぞ?感謝してほしいくらいだがね」
くっくっとムスカは嘲けるように笑う。その笑みは・・・悪魔もかくやというほど、邪悪だ。
稟はその笑みを見て理解する―――これこそが。
これこそが<悪>という概念だと。
ムスカはそのまま振り返ることもなく支払いを済ませ、出て行った。後には稟たち三人だけが残された。
「・・・なんだってんだ・・・!何でこんな・・・」
稟は苛立ちを隠そうともせず呟く。
―――あのムスカとかいう男の言う通りなら、自分達はまた―――あいつに、のび太に会える。
だがそれは、のび太達に危険が迫っているということ―――
「だったら―――」
稟は決意した。そして亜沙とプリムラを見る。彼女達は、稟の言いたいことを理解し―――頷く。
「俺たちはみんな、のび太達に助けられた。今度は俺たちが―――あいつらを助けるんだ」
投下完了。
前回は
>>526から。
5回で連投規制か・・・きつい。何分くらいで解けるのか・・・。
ムスカの<悪のダンディズム>とも言うべきいやらしい格好よさが上手く表現できない・・・。
宮崎駿監督は偉大です。
>>顔立ちはかなり端正で、道行く人々は
女性ならば顔を赤らめて注視し、男性ならばそんな二人にやっかみ混じりのギスギスした視線を送っている。
この一文、NBさんの作品にもほぼ同じ表現があったと思います(確かクリードが出てくる場面)が、使っちゃいました。
気を悪くされるかもしれないので、この場を借りてお詫びします。
至極ありきたりな表現だからいちいちことわる必要なんか無いと思うがなぁ
559 :
ふら〜り:2005/07/08(金) 19:35:53 ID:SytrFmFW0
>>サナダムシさん
トイレ、というお題からバキ・DB・ドラまで絡ませてしまうその手腕にまず脱帽。訪問
者たちは素直に原作準拠で動いてるだけなのに、巻き込まれた一般人は大パニック。なぜ
なら彼は排泄中だから……と。一風変わった多重パラレルストーリー、お見事でした!
>>Tournamentさん
タイトルからして、鉄拳……がメインの舞台になるんでしょうか? できれば登場キャラ
の解説を頂きたいです。今のところゲームキャラと漫画キャラが集結しつつあるみたい
ですが、バキやKOFとかも出てくれてトーナメント、なら嬉しいんですが。はたして?
>>サマサさん
いやいや、充〜分過ぎるほど味わい深く出てますよ、ムスカのムスカらしさが。はっきり
「敵」だと名乗っているのに、その「敵」に頼らないと「敵」の魔手から仲間を守ること
ができない。稟たちのどうしようもない、もどかしい逆撫でられっぷりが伝わってきます。
560 :
作者の都合により名無しです:2005/07/08(金) 21:47:13 ID:kxfedATH0
サマサさんお疲れ様です。
ついにプリムラたち出て来ましたね。
と、いうことは次回でいよいよドラたちの登場かな?
ムスカってラピュタですよね?
宮崎作品あんまり観ないから、ちょっと最初わからなかったw
ムスカは宮崎作品で1番ネタにされやすいキャラだな
562 :
テンプレ1:2005/07/08(金) 22:44:08 ID:kxfedATH0
563 :
テンプレ2:2005/07/08(金) 22:45:33 ID:kxfedATH0
564 :
テンプレ2:2005/07/08(金) 22:46:29 ID:kxfedATH0
565 :
テンプレについて:2005/07/08(金) 22:48:32 ID:kxfedATH0
ユル氏と草薙氏が3ヶ月以上連絡無いのでリストから外しました。
勿論、復活を待ってます。
あと、銀杏丸氏とZ戦士氏、五氏もぎりぎりです…。
連載開始順に大体なっていると思いますが、少し間違ってるかもw
他は大体あっていると思います。
ムスカのフルネームってどんなだったっけ?
パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・フアン・ネポムセーノ・
マリア・デ・ロス・レメディオス・シブリアーノ・センティシマ・トリニダード・
ルイス・イ・ムスカ
568 :
北の果てより:2005/07/09(土) 01:36:54 ID:SDcJbsFf0
北の果てより 『第三話 ソンミ』
>>442 シコルスキーは瞼に涙を貯めながら、救いを求めるようにガイルに視線を投げ掛けている。
冷水で十数分も手を扱き続けていたのだろう。
本来は白い柔肌の掌が、血の色のように真っ赤に染まっている。
嫌な沈黙が破られる。シコルは視線を外すと、再度蛇口に手を出そうとしたのだ。
「馬鹿野朗、凍傷になりてえのかッ」
ガイルは一喝し、同時にシコルの頬を張り倒した。力無く崩れ落ちるシコル。
シコルは頬を手で摩る。半ば放心状態のまま、目は虚ろで抜け殻のようである。
ガイルは気付いた。いや、気付いていた。
どれ程飛び抜けた能力を有しようと、目の前の少年は12、3歳の子供に過ぎない事を。
気付かない振りをしていただけだ。否、当然それはガイルだけでなく、皆知っている。
この少年が、泣きもすれば笑いもするただの少年という事を。
だが、敢えてガイルも、他のレジスタンスの面々もそれに触れなかった。
ほんの数十人の、軍備も心許ない素人の集まりの軍である。
結束が崩れれば即、それは終焉を意味する。
この半端物の軍の結束を維持するには、強力な求心力が、カリスマが必要なのである。
自分は所詮、アメリカから来たよそ者の傭兵だ。
どれ程キャリアがあろうと、精神的な支柱にはなれやしない。
そうガイルは判断している。だからといって、誰でもカリスマ性を持っている訳ではない。
この小さな軍の中で、たまたまこの少年が有していた。
類い稀なるカリスマ性と、底知れない戦闘センス、高い知力という、リーダーの資質を。
だから皆で祭り上げた。
彼を、13歳の少年を、このレジスタンスのリーダーに。革命の英雄に。精神的支柱に。
そして、……生贄に。
569 :
北の果てより:2005/07/09(土) 01:37:54 ID:SDcJbsFf0
(どこの世界の戦争も、若い奴から死んでいく。クソッタレが)
ガイルはそう心の内で吼えた。そして静かにシコルの頭を撫ぜて、優しく言った。
「取れやしねえよ、その臭いは。俺も、骨の髄まで染み込んでやがる。だがな」
シコルの目に光が戻った。そしてガイルの次の言葉を待つ。
「だがなシコル。その臭いを背負わなくちゃいけねえんだよ。俺たちはな。
戦場の人間として。辛い事だが一生、な。 …だから、俺たちの所で止めようや」
「俺たちで、止める?」
「ああ、こんな臭いも、人殺しの宿命も、革命も…。次の人間に渡しちゃいけねえ」
シコルは思案顔で沈黙している。その顔を見ながら、ガイルは心を痛めた。
本当なら、この少年も『次の』人間の一人だろうに。
これほどの才能があるならば、欧米で生まれていればどれほどの名声を得られたか……。
シコルの涙はとうに止まっている。力強く頷き、そして立ち上がった。
「すまない、ガイル。つまらない姿を見せた」
そして笑顔を見せた。少年らしい、晴れ晴れとした爽やかな笑顔だった。
ガイルはその笑顔を見て、少しだけ救われた気がした。
縁石に座り込み、アメリカから持ち込んだラッキーストライクの封を破り、口に銜える。
火をつけ、ゆっくりと紫煙を吸い込んだ。煙を吐き出すと、隣のシコルが問い掛けてきた。
「成功するのかな、この革命は」
ガイルは億劫そうに煙を吐き出すと、逆にシコルに問うた。
「おめえは、成功すると思ってるのか」
「無理だと思う。それに万が一成功しても、何も変わらないと思う」
「賢いな、おめえは。正解だ。俺たちは犬死で終わるし、変わらねえよ。この国は。
たとえ何かの切っ掛けでこの国が民主主義になったところで、おんなじさ。
民主主義も社会主義も、権力者の収益システムって事には変わりねえ」
570 :
北の果てより:2005/07/09(土) 01:40:21 ID:SDcJbsFf0
タバコの煙が沈黙を包む。実も蓋も無いが、正直なガイルの言葉は迫力があった。
「民主主義国家ってのは、治安と国防だけ担当してあとは民に任せるってのが理想だが、
結局は机上の空論だな。人間に欲と差別意識がある限り」
ガイルが訥々とシコルに語った。シコルは大人しく聞き入ったが、ポソリと言った。
「じゃあ、なんで俺たちは戦ってるんだろ?」
「…さあな。それでも、人は未来に夢を描くものだからな」
2人は押し黙っている。が、沈黙に耐え切れなくなったようにガイルが尋ねた。
「お前、俺が来る少し前にここに突然現れたらしいな。前は何処にいたんだ?」
この少年の素性は誰も知らない。ただその能力により、あっという間に認められたが。
そして誰にも素性を語らない。この時も、ガイルのその質問には無言で通した。
「ハッ。何も言わねえか。結構だ。黙秘権が認められるのは、民主主義のいいところだ」
ガイルはひとしきり笑った後、2本目のタバコに火をつけた。シコルが口を開く。
「ねえ、ガイル。あんたはなんでロシアまで流れてきたんだ?」
オーバーアクションでかぶりを振りながら、ガイルはおどけて言った。
「わがままなガキだな、てめえの事は語らずに目上の人間には語らせるか」
「…ごめん。話したくないなら、いい」
申し訳なさそうな顔で謝るシコル。少年の顔をクシャクシャにかき回した後、ガイルは
真顔になり、静かに語り始めた。
「俺はな……。死に場所を探してたんだよ。この10年以上、ずっと」
「死に、場所を? 10年前に、何があったの?」
タバコの灰がポトリと落ちた。いつも陽気なガイルの顔はそこには無い。
苦渋に満ちた、大きな宿業を背負った罪人の顔がそこにあった。
「もう、13年も前の話になるか…。あの地獄、あの虐殺、あの俺の罪の日から。
1968年3月16日。 ……ベトナム戦争、ソンミの村、から」
訥々と、だが底知れない哀しみを込めてガイルは語り始めた。己の、宿罪を。
571 :
北の果てより:2005/07/09(土) 01:42:56 ID:SDcJbsFf0
美しい村だった。そこはとても美しい村だった。
広々とした海と豊かな竹林、そして静かにせせらぐ川。何マイルもの金色の砂浜。
人が自然を敬い、自然は人を育む。そんな共生の美しさがその村にはあった。
この世の中で、多分もっとも天国に近い場所だったと思う。
俺たちアメリカ兵が、その村を…、ソンミを蹂躙し、虐殺を始めるまでは、な……。
その頃の俺は、まだ部隊に入りたての新兵だった。まだ童貞でな。
おっと、女を知らないって意味じゃないぜ。人殺しをした事が無いって事だ。
軍人学校じゃあ、いつも上位の成績で戦闘訓練にいたってはトップクラスだった。
鼻っ柱の強えガキだった。早く、実践に投入されたくてされたくて堪らなかった。
ウズウズしてたよ。早くこの戦争で軍功挙げて、故郷に華を飾りてぇってな。
ようは早く敵をぶっ殺して、勲章を胸に飾りてえって思ってたんだ。
愚かだった。何も知らない赤ん坊みたいだった。
多分、ソンミの空を見上げれば分かったんだよ。自然の美しさを感じてればな。
この戦争がどれほど愚かしくて自分勝手な、大国の利益の為の戦略戦争って事が。
間に挟まったベトナムは北にしろ南にしろ、踊らされていただけだ。
そして俺たち下っ端の軍人も、な……。
空気の澄んだ早朝だった。美しい川が、海が血で染まる地獄が始まった。
嵐のようにけたたましく響く、いくつもの銃弾や爆薬がファンファーレだった。
逃げ惑う村人、叫び喚く家畜たち。30分もアメリカ陸軍の砲撃は続いた。
その攻撃で何人ものベトナム人が死んだか分からない。勿論、相手は非戦闘員だ。
だが、そんな砲撃も大虐殺のほんの入り口に過ぎなかった。
572 :
北の果てより:2005/07/09(土) 01:45:21 ID:SDcJbsFf0
ガイルはそこまで一気に独白し、しばらく沈黙した。そして更に語りだした。
地獄を、己が創造に加担した地獄の虐殺を。
村の集落の上で、2機のヘリコプターが旋回した。死肉を狙うハゲタカのように。
俺はその内の一機に乗っていた。眼下の情景がどこか夢のように感じられた。
信じられなかったんだ。この戦争は、大義あるものじゃなかったのか?
俺の乗るヘリは、容赦なく重機関銃の砲口を民間人居留地に向け、雷を落とした。
上官の操縦手がこう言いやがった。
『ベトコン野朗、オレの自慢のガンで地獄にいけよ』
俺の中の何かが激しく揺らぎ始めた。それは愛国心というのか、誇りというのか。
大切にしていたものだった。だがそれが恐ろしく醜いものに感じられ始めた。
俺の中で何かが死に掛けていた。俺自身が、俺自身を葬ろうとしていた。
ヘリが着陸した。俺は命ぜられるまま、木偶のように己の意思無く指示に従った。
上官の指示はシンプルだった。殺せ、と。ただ目の前のものを殺せ、と。
作戦完遂は簡単な事だった。なんせ、相手は武器すら持たぬただの農民だ。
恐竜がアリの巣を踏み潰すようなものだった。地獄の、大虐殺の始まりだ。
あれほど派手な砲撃があったのに、純朴な村民に危機感は無かったらしい。
自分たちはただの農民、戦争には関係ない。そう思ったのだろう。
俺の所属した小隊が粗末な家に突入した。中には朝食中の数人のベトナム人がいた。
まったく何が起きたか分からないまま、唖然としている村人。俺に上官の指示が飛ぶ。
『SHOT!』 ……たった、その一言だった。
573 :
北の果てより:2005/07/09(土) 02:12:03 ID:SDcJbsFf0
俺は腑抜けたままマシンガンのトリガーを引いた。現実感が無かった。
ベトナム人は悲鳴を上げる間もなく、肉の塊になった。その中には子供もいた。
『おい、やっと童貞を捨てたな。おめでとよ』
上官の下卑た声色の祝福が耳障りだった。しきりに喉が渇いた。とにかく水が欲しかった。
外に出た。地獄はどうやらこの世に現出したらしい。俺たちが、そうさせたのだが。
体の弱っている女を、死ぬまで強姦している者。その子供を面白半分に射殺する者。
出産間近の妊婦を強姦した後、その腹に銃剣を突き刺して胎児ごと殺す者。
母親を殺し、まだ生きている赤ん坊のすぐ近くに火をつけ、家ごと焼き殺す者。
逃げ惑う子供たちに向けてこう言った奴もいた。
『おい、あれは俺の得点だ。手を出すなよ』 …そしてその子供たちはすぐ射殺された。
ぐらぐらと俺の視界が揺れ始めた。いや、俺の存在そのものが、だ。
今まで信じていたアメリカの正義が、軍人としての誇りが死んでいくのが分かった。
だが、俺は愚かな上に臆病でもあったらしい。
それでもまだ、上官の命令に逆らえず加担していたんだ。その虐殺に。
574 :
北の果てより:2005/07/09(土) 02:12:52 ID:SDcJbsFf0
『おいガイル、お前は足を抑えろ、俺の後に姦らせてやる』
空虚な体にその言葉が響いた。上官が下半身を剥き出しにして、少女の上に跨っていた。
少女はまだ、見た感じ10歳前後だ。身長も140センチそこそこ。
そんな小さな子供を、180センチもの屈強なアメリカ人が強姦しようとしていた。
俺はそれでも逆らえなかった。言われたまま、少女の足を抑えていた。
その時だ。中年の女が狂ったように声を上げながら、上官に飛びついてきた。
今なら分かる。その女が、その少女の母親だということが。
だが上官は薄汚い微笑で、無言でその女をナイフで突き殺した。少女が泣き喚く。
俺の目にうっすら涙が浮かんだ。俺も、こいつらの一員なんだと。
俺も、こいつらと同じ虐殺者の一人に過ぎないのだ、と。
少女が暴れ回る。だが子供の力で抗える訳は無い。
無残にも散らされ、そして数人で輪姦され、当然のように用が済んだら殺された。
俺は悟った。こいつらにとって、人間とは白人、取り分けアメリカ人だけだと。
軍人とは、国へはマゾヒストを貫き、敵にはサディストを貫く異常者だと。
俺はその虐殺の終わった夜に、密かに隊から逃げた。遠くへ。遠くへと逃げたかった。
だがしかし、俺は戦争しか出来なかった。戦争から逃げられなかった。
数ヵ月後、俺はアメリカと敵対する側にいた。俺には裏切り者のがお似合いだった。
素性を隠し、傭兵として北ベトナム側の南ベトナム開放民族戦線≠ノ参加したんだ。
1975年にベトナム戦争は終わった。アメリカは敗北した。
終戦間際に枯葉剤を撒き撒くって、ベトナムに子々孫々の呪いを掛けた後でな。
そして俺は死に損ねたまま、今、お前の前にいる。なあ、シコルスキー……。
575 :
北の果てより:2005/07/09(土) 02:13:30 ID:SDcJbsFf0
長いガイルの独白が終わった。まるで懺悔するような、身を切り刻むような告解だった。
シコルスキーはしばし呆然としたまま、ガイルを見ていた。
普段の明るく振舞う姿からは、とても考えられぬ十字架をこの男は背負っていた。
寒風が顔を撫ぜた。ガイルがぶるる、と体を震わせる。
「ち、辛気臭え話になっちまったなあ。まあ、生きてりゃ色々あるってこった」
いつもの口調に戻るガイル。だがどこか、その顔には寂しさを感じる。
「まあな、シコル。民主主義だろうが社会主義だろうが、この世は結局地獄だぜ。
上の連中がふんぞり返って、下の連中は哀れに殺し合う。それがこの世ってモンだ。
それでも命懸けで、この勝ち目の無い革命ごっこを続けるかい?」
ガイルは口元を緩ませながらシコルに問い掛けた。が、目は笑ってはいない。
シコルは空を見上げた。満天の星が彼ら2人を見下ろしている。少年は言った。
「うん。なんとなく、やらなくちゃいけない気がするんだ。それに」
「なんとなく、か。お前らしい。 ……それに、なんだ?」
「例え大して変わりなくても、黙秘権が認められる分だけ民主主義の方がいいだろ?」
ガイルは大声で笑い転げ、シコルの髪をくしゃくしゃとかき回して言った。
「こりゃ大したモンだ。このガキ、この俺から一本取りやがった」
ガイルは笑いながら思った。この才気溢れる少年を、血で汚していいものだろうか。
欧米に生まれていたら、どんなモノでも手に入るだけの能力があるだろうに……。
今はそんな事を考えても詮無き事だ。だが、願わくば……。
この少年の未来に、幸多からん事を。
俺のように、道を間違えず、まっすぐ光の下を歩いて行ける事を。
ガイルは、ただそれだけを心から願った。
民主主義は素晴らしいものですが、爛熟してくると綻びが多々生まれますな。
それにしてもロンドンテロか。東京は大丈夫でしょうか。
ちなみに文中で書いてあるソンミの件は史実。
重い事実をたかだかSSに混ぜるのは心苦しいのですが。
興味があれば「ベトナム戦争」でググって下さい。
あと、私は変に国粋主義にならないアメリカ人は好きです。
577 :
作者の都合により名無しです:2005/07/09(土) 14:32:07 ID:PbyEYDzL0
力作お疲れ様です。
SSにそぐう内容かどうかはともかく、俺は素直に楽しめました。
また力作お待ちしてます。
乙。ソンミ村虐殺は教科書にも載ってた(気がする)ので、大抵の人は
知ってるんじゃないかな。
SSの雰囲気に合ってて楽しめた。
しかし、もしこれが南京虐殺だったらレスが凄かったでしょうなw
579 :
Iron Fist Tournament 第2話 焦燥:2005/07/10(日) 01:19:34 ID:6m5EHj3S0
第二話 焦燥
南アメリカ北部。メキシコ付近では気温が暖かい為一年の内殆どを半袖で暮らす事が出来る。
地元住民は半袖半ズボンで暮らす人が多い。リゾート地としても有名なメキシコの近くの為
観光客も多い。広場で遊ぶ子供達や家族連れも多かった。陽気な雰囲気の中、一人、
場違いな服装をした女性がいた。周りは皆半袖だというのに襟付きの長い灰色のワンピースを着ている。
そしてその女性の側には何かの武術の道着を来た少年が座っていた。
「で・・・あんたはその封印から目覚めた存在を倒すのを俺に手伝えってのか。」
話しながらボトルから水を飲む少年。そしてそれを真面目な目でみる女性。
「ええ。全日本格闘大会優勝者、そして元ボクシングヘビー級チャンピオン、そしてヴァーリトゥード優勝者、陸奥九十九
の情報を探っていたらジャングルの中に辿り着くとは思ってもいませんでしたが。」
日差しは強い。普通なら水を買って飲んでいてもおかしくはない。だがこの女性は汗一つかかずたたずんでいる。
二人の上を雲が通り過ぎていった。突如、誰かが叫び声を挙げた。人々は空を指差し、逃げ惑い始めた。
最初、それは巨大な鳥に見えた。近づいてくるにつれそれは人の形を成していった。九十九達の前に降り立った時、
それは角を生やし、黒い翼が生えた人間の姿をしていた。
「コスプレでしょうか?筋肉がある割には変な趣味ですね。」女性が皮肉った。
口から煙を吐きながら辺りを見回す翼人。そして九十九達に矛先を定めたらしくゆっくりと歩を進める。
「あれは人間なのか?どうも雰囲気が獣っぽい気がするがな。」九十九が女性に質問する。
「これは私の予想ですが・・・先刻話したアレに近い気がします。」
九十九と並んで立つ女性。そしてその手から光が出、女性の手には槍が握られていた。
「手品か?」
「魔術です。魔物と戦うためにはこれくらい出来ておかないと。」
九十九達の足元を赤い光が襲った。翼人が額からレーザーを放ったのだ。
「本気でやるつもりらしい。」
ポリポリ頭を掻いて困った顔を浮かべる九十九。その横っ面を何かが掠めていった。
女性が槍を投げたのだ。槍は怪物の足元に刺さった。
「えい!ちゃっ!しゃっ!」
間を置かずに何本も小型ナイフを投げる女性。怪物の足にナイフがグサグサと刺さっていく。
「グゥゥゥ。」
580 :
Iron Fist Tournament 第2話 焦燥:2005/07/10(日) 01:20:01 ID:6m5EHj3S0
呻き声を挙げながらもまだ九十九達に歩き寄ってくる怪物。そして九十九は足元の石を
拾って怪物に投げた。ゴッと音がして石は怪物の左膝の辺りにめりこんだ。
「今のは?」女性が不思議そうに聞いた。
「陸奥の裏の技さ。雹といってね、飛び道具を使う相手に対抗して作られた技だ。めったに使わないけどね。」
片膝をついている怪物を尻目に九十九達は走り去った。
「名前を聞いていなかったね。あんた なんていうんだ?そしてどこからの手の者だ?」九十九が訝しげに女性に質問した。
「私の名はシオン。埋葬機関の者です。死徒と真祖を刈る為に作られた機関の・・・」
シオンの言葉が終わるか終わらないかの内に助けを呼ぶ声が聞こえた。
九十九達が振り向くと先刻の怪物が人に襲い掛かっていた。70歳前後の老人が腰を抜かしてへたりこんでいた。
「ひぃぃぃ。命ばかりはお助けを!」
「あんた・・。シンソがどーのこーの言ってたな。あれってあんた達の専門か?」九十九がシエルに尋ねた。
「真祖ではありませんが異次元生命体の一種だと思われます。」
怪物は今にも老人の頭を掴みそうだった。だが怪物の腕は止まった。シエルの槍が腕に突き刺さったからだ。
ゆっくりとこちらを振り向く怪物。同時にもう一本槍を投げるシエル。
「ちっ。」
シエルの投げた槍に飛び乗り、槍を踏み代替わりにして飛び蹴りを放つ九十九。攻防は数秒程で終わった。
九十九の飛び二段蹴りが怪物の顎に命中したのだ。崩れ落ちるように倒れる怪物を見て九十九は違和感を覚えた。
足の傷が再生を始めている。自然治癒の能力があるのか。
「あんたのいってるソレって人間なのか?」
「ええ人間です。厳密にいえば特殊な力を持つ人間ですが。」
九十九の足元に倒れている怪物に変化がおき始めた。黒い羽と角が引っ込み、怪物の胴体に浮き出ていた黒い模様が消えた。
そして怪物は人間の姿に戻った。
「こいつは確か・・・。」
「知り合いですか?」
九十九はその人間の顔に見覚えが合った。全日本格闘大会選手の志願者リストにもあった顔。
風間仁。三島流喧嘩空手を名乗るだけあって一度は試合をしてみたい相手だった。だがその彼がなぜここに?
「こいつは再生能力があった。てことはあんたのいってたアレは・・・」
「不老不死ではありませんよ。ただかなりタフだと思います。」
シエルの顔に焦りと緊張を読み取った九十九は拳を握り締めた。
「勝ちたいね。ソイツに。」
581 :
Iron Fist Tournament 登場人物紹介:2005/07/10(日) 01:27:35 ID:6m5EHj3S0
陸奥九十九 陸奥圓明流の継承者(出典=修羅の門) 日本格闘トーナメント、ヘビー級ボクシングトーナメント、
ヴァーリトゥードを制した後ケンシンマエダという男を捜しに出かける。
シエル(出典 月姫) 元はパン屋の娘だったのが「ロア」という吸血鬼に憑依され殺戮の限りを尽くす。
その贖罪の為に「埋葬機関」という組織に所属。以降、吸血鬼との戦闘を身を置く。
風間仁 (出典 格闘ゲーム 鉄拳シリーズ) 三島一八(みしまかずや)と風間準との間に生まれた子供。
祖父、 平八から空手を習うも祖父の裏切りから正統派空手を習い打倒平八に燃える。
三島一八(出典 同上) 仁の父。自分の肉体をG社に研究材料にされ復讐に燃える。
武藤竜二(出典 空手小公子供 小日向海流)零南大学空手部所属。黒帯。
今回の投稿はこれで終了です。
>>471から続き
町の中央に巨大な塔があった。
頂点は地上の人間には霞んで見えるほどの高みにあり、そこには十字架が
町全体を監視するかのように突き刺さっていた。
十字架の上に黒い布の塊が乗っていた。
もし、お父さんとお母さんが生きていたら――。
私はもっと真っ当に生きていけただろうか。
生活は苦しかっただろうけど、それでも、満ち足りた気持ちで生きていけた
だろうか。
アニーは、客の亀頭に舌を這わせながらそんな有り得ない事を考えていた。
アニーの両親は、落盤事故で共に死んだ。
苦しい時代。親戚達は一人の少女を養う余裕もなく、またアニーもそれを拒
んだ。人に迷惑を掛けるのが嫌だったからだ。
自分の面倒くらい、自分でみたい。
夜、建物の陰で近所の綺麗なお姉さんが男のモノを弄っていた。昔にそれを
目の当たりにしたアニーはそれで暮らしていこう、と決めたのだ。
あれなら、簡単にお金が稼げる。
食べていける。
ちょっと汚いモノを触るだけで。
痛くもないし、つらくもない。
こんなことで食べていけるのに、なんでみんなそうしないんだろう?
――そう、アニーは思っていた。
アニーはふとモノを見た。いつもの男達のように勃起していない。
「あの……お客さん、気持ちよくないですか?」
「……」
「なんでも言ってください。お客さんの言うとおりにしますから」
「……」
「この裏あたりがいいですか? 今までの人たちはみんなここがいいって」
「……お前、歳は」
「え」
「歳は」
「14ですけど……それが」
「……」
「あのう……」
男の眼がぎらつく。
まだ男との経験のないアニーも本能で感じ取った。
男のモノがたちまち屹立する。
アニーは身動き一つとる暇もなく、地面に叩き付けられ、押さえ付けられた。
「ちょ……なにを……」
叩き付けられた際に頭を強く打ち、朦朧とする意識の中必死に抗うアニー。
「や……やだ、やめてよ」
「動くな」
男が取り出したのは、闇の中輝くナイフ。それを堅く握り締め、アニーの手首
を押さえる。ナイフの刃先がちょうど喉元に当たるようにしている。
ナイフでアニーの動きを牽制する間に、空いた片方の手でスカートを捲り上げ、
下着の上から陰部を擦る。
「や、めてよ……!」
意識が大分回復したアニーだが、抗う術は現状なかった。ナイフは怖い。恐怖心
を無理やり払い除けて動こうにも、男に乗り掛かられていて身動きが取れない。
「!」
感覚で分かった。男が下着を剥いだことが。
「まだ開いてないな」
「やめて……いや」
「いつかは通る道だ」
それが今だったというだけの話だ。男はそう言って腰を上げる。位置調整の為である。
膝が空いた。
アニーは、この後どうなっても構わないという覚悟で、思い切り膝を突き上げた。運
よくその膝は睾丸に直撃し、男は奇声を上げ、もんどりうって倒れた。
断末魔の声――この時の男のような声のことを言うのだろう。
アニーは男が意識を失ったことを確認すると、汚物を払い除けるかのようにして男を
自分の体の上からどかした。
アニーは立ち上がり、深く息をつく。そして男の股間に目を遣る。先ほどまで威勢を
上げていたそれは、別物の如く萎み上がっていた。
アニーは、今まで感じたことのないほどの怒りが自分の中に湧き上がっているのを感じた。
男の股間から視線を逸らさずに、足を上げ――
「死ね! 死ね! 死ね! 死ね!! 死ね!! 死ね!! 死ね!!! 死ね!!!
死ね!!! 死ね!!!! 死ね!!!! 死ね!!!! 死ねッ!!!!!」
そう叫びながら、何度も、何度も、男の股間を踏み付けた。はじめの内はびくんと動いた男
だが、最後のほうにはぴくりとも動かぬようになっていた。
死んでいようが生きていようが、それはアニーには興味がなかった。
男の懐を探り、有り金全てが入っているであろう袋を探し当てると、アニーは足早にして現場
を離れた。
ただひたすらに走り続けた。
息が切れ、手を膝について、アニーは顔を上げた。
そこには、あの高い塔があった。
「ミスティ!!」
昼間でも見えない塔の頂点。既に日の落ちたこの時刻では尚更だ。だがそんなことは何の関係
もなかった。
アニーは感じ取ることが出来た。ミスティが、塔の天辺にいるのだ、と。
「え、どうしたの、って? …少し、悲しくて、怖い、でももっと少しだけど、嬉しいことも
あったの。ほら、見て。これだけあれば、十日は困らないわ。…少しじゃない? そんなこと
……強がっても仕方ないね。ミスティは、なんでも知ってるんだもん。うん。……怖かった。
すごく、すごく怖かったんだ。だって、あいつ、刃物なんて、もってさ…脅すの。こっ、すごく、
すごく、こわかったよ……! 脱がされて、足がすうすうするよ……あれ、もうさ、破れちゃっ
て使い物にならないしさ、安くないのに、さ……ほんとは、わかってた。男の人たちはみんなあ
れじゃ納得しないんだって。もっと、なんていうかさ、その先まで、いきたいんだ、って。でも
私いやなの。それはいやなの。あの人たちと、そんなこと、するくらい、だったら……舌噛んで
死んだほうがマシだ」
アニーは途中から泣きじゃくりながらも、続けた。
「ずっと……逃げてたんだ。お父さんとお母さんが死んだあの日から、ずっと……悪いのは、私。
汚いけど、アレを舐めるだけで、それなりにお金が貰えて、それで、食べて、なんて……。そんな
甘い生き方で、いつまでもうまく行くわけないのに……バカなんだ、私。ゴメンねミスティ。私、
バカなんだ……そんなことないって? ううん、バカなの。自分の力で生きてる、とか理由付け
ちゃってたもん。ほんとに自分の力でっていうのはさ、クライドみたいなことを言うんだよね。
大変だろうけど、だからこそ、生きてるっていうことなんだよね。わたしも、クライドみたいに
生きたいな……」
そう言って、目を伏せた。だが、ミスティの一言でまた顔を上げる。
「え……クライドのところに?」
Ironさん、続けて失礼しました。
色々ありました。シーザリオがAオークス勝ったり、『電車男』の映画を何も知らずに見てみたり、
あとは……あまりないなあ。元ネタ知らずに見ましたが、『電車男』は大変いいものでした。
次回で二話終わりです。三話は福島県が舞台で、方言が出てくると思います。実際の話とかではないです。
>>473 エロはなるたけ抑えようとしましたが、途中で面倒くさくなりました。
>>474 オチはまだ完全に決めてはいないのでハッピーエンドになるかバッドエンドになるかはまだわかんないです。
>>480 加減しながら書くのは疲れるのでもうやんないですwていうかあまり加減できてないし……。
>>482 14歳って幼女なんですかね? 正直よくわかりません。
>>515 今回なんかはドン底ですね。次回、多少浮かび上がるか、ドン底の底を突き破りさらに堕ちるか。
最後はエロ抜きでやるのだけは決めてます。では次回。
テス
新スレ立ててくる。ダメだったら他の人よろ。
>北の果てより
ソンミ事件は有名ですね。HPにも詳しいページあります。
戦争の陰惨さがガイルの語りにより一層表現されててすごいです。
>Iron Fist Tournament
あれ、九十九が出てきた。これは彼を倒す為のトーナメントになりそうだ。
でも、(もし)草薙氏なら前作を補完してからにして欲しいです。
>魔女
ミスティはやはり全体の狂言回しですか。中世にタブーはなかったそうで。
彼女の存在がアニーにどう影響するのか、楽しみです。
>魔女
えぐいなあ。蟲師の時とはまったく印象違いますね。
少女売春・レイプ・殺戮と来ましたか。
これから先、ますます救いがなくなっていくような。
出来ればこの話でなくても、救いのある話が「魔女」で読みたいですね。
>>590 >中世にタブーはなかったそうで
でも、現代の日本の少女はもっと乱れてる気もしますがね。
592 :
作者の都合により名無しです:2005/07/13(水) 08:11:44 ID:XHGdSBfG0
ほしゅ
バキスレってこの板に10個くらい残ってるなw
まぁ、バキスレだし