【2次】漫画SS総合スレへようこそpart22【創作】
2 :
過去スレ:05/01/01 22:25:28 ID:gDTqOmMR
3 :
過去スレ:05/01/01 22:26:12 ID:gDTqOmMR
4 :
連載作品:05/01/01 22:27:11 ID:gDTqOmMR
5 :
連載作品:05/01/01 22:28:03 ID:gDTqOmMR
>1
乙かれ!
前スレ321から
「―――この度、記念すべき第二十回の議長を務める事を心より嬉しく存じ上げます。思えば………」
盗聴防止用に防音を施された大会議室の上座で、ブリッジウッドは各国首脳と共に開会の演説を静聴していた。
朗々と演説する某国首相を見て、彼は内心ほくそ笑んだ。この議長には丹念な根回しを済ませている、議題の如何によっては
彼に味方するようにしてあるのだ。この中に何人居るか判らない長老会の監視者に己をアピール出来れば覚えも良くなると言う物だ。
さし当たってはこの傀儡(かいらい)を操ってこの場の主導権を握れば……
その時、部屋にブリッジウッド付きのSPが滑り込んで来た。そして主の耳に何かを告げる。
「……失礼。小用が入りましたので少しばかり外させて頂きます」
形ばかりの追従笑いと共にブリッジウッドは部屋を後にした。
―――会議室前廊下。
「……車両兵器の使用許可だと?」
会議室とは打って変わって憎々しげに携帯電話に罵った。相手は会場周囲の警護の任に就いた軍の司令官。
「ふざけるな。会場前で大規模戦闘なんぞした日にはわが国の国力が疑われるだろうが! そんな事も判らんのか!!」
つまり彼が言いたいのは、「庭先で大騒ぎしたら体裁が悪い」という事だ。そもそもヘリも装甲車もあくまで見た目の抑止力でしかない。
実際に使えば兵の練度が足らない等のつまらぬ邪推をされる、それはあまりに具合が悪かった。
「大体何が来たと言うんだ? 数万のテロリストか? それとも怪獣か?」
………それは彼にとって洒落を効かせた罵倒の一つでしかなかったが、電話の向こうの司令官には多分に響いたらしかった。
『……それが、信じられないのですが…』
その証拠に、声が重い。
『………………男が……一人…』
―――――――――数分前。サミット会場まで一キロ地点。正面幹線道路は会場ビルの影の様に長々と伸びている。
「止まれ。これより先への侵入は法律によって禁止されている。速やかに立ち去れ」
そこの最前を守っていたその兵士は、OICWを構えながら静かに歩み寄る目の前の男に訴え掛けた。
だが男――クリード――は無言で歩を進める。
「…警告無視と見なし、射殺する」
兵士が銃を肩付けで構えスコープを覗く。スコープの視界の中には、温度、風向、標的までの距離、それらを総合して生まれる
着弾率、挙句に修正率までもが一挙に記される。
―――総合着弾率・・・・・・・・・・・・96.4%―――
目測で見ても、子供でも当てられる距離だった。故に彼は「一射一殺(ワンショット・ワンキル)」の常套、頭を狙う。
ロックオンは瞬時に完了、左右どちらに逃げようと可動式銃口が二発目以降を修正する。さらに万全を期すため三点バースト。
揺るぎ無い必殺を信じてトリガーを引く。
――だが、状況は想像を絶した。
射撃は一瞬で終わった。だが、何事も無かったかの如く悠然と男は彼を通り過ぎた………傷一つ無く。
何故当たらない? OICWの銃撃をかわすのは不可能なのに。いや、それ以上にいつ近づいた? 目を離していなかったのに。
その疑問は彼どころか周囲の兵士達も凍り付かせた。
『何をしてる! 撃て!!』
イヤホンマイクから迸った司令官の怒号に全員が我に返る。そして、歩む男の背中に集中砲火を敢行した。
……最後の薬莢が澄んだ音を立てて落ちた、同時に誰かの手からOICWが滑り落ちた。
どうしようもない絶望とは、理解を超えた恐怖と共にやって来る。例えば今、銃火を経てもなお全く無傷のクリードの様な。
最前の兵士陣は誰もが戦意を失っていた。自分たちの常識が通用しない相手を前にでは無理も無い。
軍人の思考は極めてデジタルでロジックである故に、枠から外れた状況に至った場合に弱すぎる。
くどい様だが、OICWの銃撃を避けるのは彼らの常識から言って絶対に不可能なのだ。
一番驚いたのは、会場ビルの前で一部始終を望遠スコープで見ていた司令官だった。
男の動きが見えない訳ではない。真っ直ぐこちらに向かって歩いてきただけ―――ただ何故か当たらない、それだけだ。
「アーマードトルーパーだ!! 急げ!!!」
半ば以上叱咤の如く通信機に叫んだ。
それと同時に、バーニヤと足裏の高速機動用タイヤのスキール音を響かせて数体のいびつな鉄の巨人がクリードの前に
立ちはだかった。ざっと見て3.5メートルの鋼の巨躯が、一斉に武装を解禁する。
装備は各自重装――右手に車両用ペンチアーム。左手に7.62ミリ機関砲。両肩にはそれぞれ対人用マイクロミサイルが4連。
単独で一個小隊並みの火力はたった一人に対し向けられる物ではなかった。それが複数だと云う事は、待ち受けるのは磐石の死。
巨人達が一糸乱れぬ正確さで機関砲を狼藉者へと向け放つ―――――が、
「…ッギャアアアアァァアアアア嗚呼アアァァッッッツッ!!!!」
………響いたのは、ことも有ろうに先刻の歩兵達の絶叫だった。
男を撃ったのはいい、しかし異常の余り射線を重ねていることに誰も気付かなかった。
それでも当たっているならいい、しかし男は平然とトルーパー達を通り過ぎた。
―――――彼らの放った弾は、仲間を挽肉にしただけだった。
『……な…馬鹿な!! 何故当たらん!!!?』―――――ロックオンしたのに。
『嘘だろ………オイ……』――――― 一列横隊の一斉射撃なのに。
仲間を撃った事も有って、全員が茫然自失に至る。男の足音を背中に受けても誰一人動けずにいた。
『……か…………格闘戦、用ォ―――――意!!!!!』
部隊長機の号令に従い慌てて戦闘モードを切り替える。
ペンチアームが高周波振動を展開し、機関砲下部からダイヤモンドダストロッド(ダイヤ粉を長いドリルにまぶした兵器。装甲車用)が
金属音と共に飛び出し、甲高い音で回転する。音速以上で回っている証拠だ。
『とつげェ―――――きッ!!!!!』
三体がきびすを返して男の背中に突っかけた。男を三方から囲み、弧を描く軌道で中心の男に襲い掛かる。
本来高機動車両に行う戦法を、なんとたった一人の人間に敢行しようというのか。
ペンチアームが砕き潰す。横薙ぎのロッドが切断し、貫き通す。全てが過剰殺傷の一撃だった――――――男に当たっていれば。
壮絶な同士討ちだった。それぞれが揮った全ての武器は、それぞれの装甲を搭乗員ごと破壊していた。
そして件の男は立ち往生の三体を尻目にまたも悠々と会場ビルに向かっていく。
『うおおおぉぉ!! 死ねええェェ!!!!』『ま、待て!! 命令を……!!!』
パニックに陥った一体が部隊長の命令も聞かず、友軍が周囲にいる事も忘れマイクロミサイルを全弾放った。
合計八発のミサイルがサイトから伸びるレーザーに誘導され、全てが男に突き刺さらんと飛来する。
「え…あの……」「おい! こんな所で……!!!」「う、うわああああァァぁぁぁぁああ!!!!!!」
………幹線道路の左右にいる歩兵達にもお構い無しで。一発が5・6人を吹き飛ばす威力だというのに。
―――炸裂。次々と炸裂。
衝撃波が、破片が、爆炎が、兵士達を薙ぎ払った。
誰もが紙屑の様に舞い、或いは道路両側の建物に叩き付けられ、或いは四・五階辺りの高さからアスファルトに受身無しで落ちる。
………着弾点に男の姿は無かった。
『へ…へへ。どうだ、跡形も無ェ………』
その部下の暴挙に部隊長は意見しようかとも思ったが、あの男を仕留めた以上この場では何も言うまい。
後に責任を追及すればいいだけの話だ。そうしてようやく安堵する―――――かと思いきや、何かが着弾点の向こうに降り立った。
―――――男、だった。コートの埃を払うだけで攻撃の結果の一切が消え失せる。
誰が知る、ミサイルを踏み台に上に跳んだなど。誰が知る、トリガーを引く前に最低限の動きでロックオン外に逃げていることなど。
尤も、それもクリードの妙技と殺気を読むカンが有っての話では有るが。
……ブリッジウッドにも司令官の絶望が痛いくらいに伝わった。
『急ぎ御決断を!! 400メートル地点まで侵入されてはトルーパーも使えません!!』
その男が何者かは知らない、だがそれは間違いなく単独及び非武装、そして未戦闘で一国の軍事力を圧倒していた。
手が震える、足が萎える、されど状況は予断を許さない。男は既に600メートル地点を越えたのだ。
「………わ、判った。今すぐ………」『―――大統領閣下、司令官。それには及びません』
突然、通信に鉄の城壁の様に頑健かつ重厚な声が介入した。
『我等“鉄血の狼”にお任せ下さい』
あけおめー、ことよろー。………NBです。
いや、ようやく投下です。
えー…例の“原作”発言について言い訳させて頂きますが、
―――俺は連載当初、ブラックキャットに並々ならぬ期待をしておりました。
だって……当時の俺は…………似た様な話考えてたんだもん!!!!!!
銃ではなくて剣だけど、ほとんどコレだよ世界観!!!!
ああ、そうさ!! 世界を支配する組織も! それから派生したテロリストも! きっちりさ!
モノホンのプロなら俺の想像なんて覆しまくりだって思ってたさ、純粋に!!!!
でも……蓋を開ければ……………―――ぶっ殺すぞ作者!!! プライド無えのか!!?
ってな感じだったんですよ。俺の話も汚された気がしたんですよ、ええ(泣)。
ま、それだけです。愚痴済みません、この分は作品にてお返しします。ではまた。
そうですか
元旦から乙。
原作最初しか読んでなかったけど、ブリッジウッドっていたっけ?
NBさんのオリジナルですか?
原作を読まなくなった理由はNBさんと似たり寄ったり。
>>1乙。前スレの書き込み時間もスレ立て日もめでたい。
>>11 いつにも増してうざいな。どうにかならんのか?
>>1さん・NBさんお疲れです。
住民の皆様方あけましておめでとう。
>ブラックキャット
クリード一人で鬼神が野を行くが如く前進してますね。強え。
しかし、「鉄血の狼」ってNBさんのオリジナルキャラですよね?
原作が情けないんで、面白く肉付けしてくれるキャラは大歓迎。
ばんばん弾けて下さい。俺は、後書きも結構好きですよw
1氏乙。
ぼくブラ氏ちょいウザイ。
まあ気にいらなければ読まなきゃいいのだが、目に入っちゃうもんな。
元旦にたったのか。
明けましておめでとう。
しかし、年始なのに作品が来てるとは。
嬉しいが、正月くらい休めばいいのに。
>俺の話も汚された気がしたんですよ
いくらなんでも何様のつもりだと思う。
それはただの被害妄想だ。
もう一言言わせてくれ。
NBさんはそんなに嫌いな作品の二次創作書いてほんとに楽しいのか?
はっきり言ってNBさんのSSの登場人物は名前だけ借りたオリキャラにしか見えない。
それなら完全オリジナル書けばいいんじゃないのか?
ちょっと荒らしっぽい文章になっちゃったな、すまん。
けどどうかもうちょい後書きでの悪乗りは抑えてほしい。
そこまで言わんでも・・。
俺はNBさんのブラックキャット大好きだよ。
描写は随一に上手いし、各キャラの性格付けも上手い。
今回もクリードの強さと体制側の必死さが出てて良かった。
楽しみにしてるので、嫌になって投げ出しとかはやめて欲しい。
まあ、職人さんは目立つ発言すると余計目立っちゃうからな。
ちょっと筆が走り過ぎただけでしょう。
遅れましたけど、あけましておめでとう。今年も頑張れ>職人方
>20
まあ・・・ちょっと言い過ぎたとは思ってる。
ただ、二次創作である以上、原作への敬意はあって然るべきじゃないかと個人的には思ってたから。
とりあえずここでリセット。
まとめサイト見てみ。
絵板が作られ、トップに「謹賀新年」の4文字が。
23 :
作者の都合により名無しです:05/01/02 21:11:21 ID:pqu+W53J
絵板、挑戦してみたいけどイマイチ書き方が分らない。
勇次郎書きてー、ドラえもんとかヤムチャとかも書きてー。
>NBさん
今回は大いなる災いの発端みたいな感じでしたね。クリード渋い。
ま、後書きは控えめに。俺の今一番好きな作品なので頑張って欲しい。
>>23 どの辺がわからんのか分からないが・・・
とりあえず基本操作は知ってるので書いとく。
・上の「PAINT」をクリックして作成画面へ。
・「PALETTE」→色を選ぶ
・その隣の「鉛筆」やらなんやらで線を選ぶ
・線で囲んだ中を「塗り潰し」できる
・描き終えたら左下「投稿」をクリック
これだけ知ってれば書けるんじゃね?
描いてる最中のアニメーションも残せるが、どうやるかは忘れた。
詳しくはバレさんに訊いたほうがいい。
曙負けましておめでとう。
今年も沢山作品集まるといいですね。
>NBさん
いよいよ物語が大きく動き出したな。
クリードたち怪物たちが世界を混乱に陥れるのが楽しみだ。
セフィリアを始めとする主人公がそれをどう跳ね返すのか。
俺はNBさん本人じゃなく、NBさんの作品のファン。
だから最後までがんがれ。
第四話「陰陽が生む奇跡」
中国拳法。四千年という膨大な歴史を経てなお、塗り重ねられる闘争を司る学問。たっ
た一粒の水滴ですら、永きによって岩をも穿つ。才能や努力ではなく、悠久の年月があれ
ばこそ到達した境地。
すでに三つもの流派を体験した一行であったが、いずれも満足いく修練ではなかった。
「すまないね、みんな」
ドリアンが謝る。海王の不甲斐なさ、仲間への申し訳なさ。かつてこの寺で修行した者
としては、沈痛なる何かが込み上げてきたのだろう。さらに続ける。
「四千年。もはや人間一人が修めるには永過ぎるほど、中国拳法は肥大化してしまったの
だ。時が経てば経つほど、反比例するように濃度は薄れていった。ここ海王寺にも、本物
の拳法を手に入れた者がいるかどうか……」
これ以上は隠せないと悟ったのか、海王寺の現状を吐露するドリアン。オリバが問う。
「君でも無理だったのかね」
「もちろんだ。それに、私の本業はペテン師だしね」
「気にするな、中国拳法は強い。俺は昨日、本物かどうかも分からない拳法家に完敗を喫
したしな!」
シコルスキーが大声で笑うが、悲しいかな誰も反応しなかった。
さて、オリバが見取り図を手に五人を案内していく。やがて辿り着いたのは、突き刺す
ような刺激臭が支配する空域。耐え切れず、鼻をつまむシコルスキー。
「うわっ……何だこりゃ」
「薬品の臭いだろう。李海王が用いる薬硬拳は、毒手を主とする流派だからな」
ドリアンの説明とともに、重々しく扉が開かれる。暗がりの室内に待つは、細い目つき
をした格闘士が一人。特筆すべきは彼の両手。蜂の大群に器用に手だけ襲われたかのよう
に、不自然に腫れ上がっている。
「私は李海王。短期間で毒手を仕込むのは困難なので、今回は毒に関する講義を──」
いきなりシコルスキーを右手で打ちつける。
打たれた箇所が、あっという間に腫れ上がった。恐るべき即効性。
「毒手に用いる毒は、やはり自然毒が望ましい。化学合成された物質との相違点は……」
「ちょ、ちょっと!」
「何だね」
「講義などしてる場合か……助けてくれッ!」
「安心しろ、毒手の威力を体感してもらうために君を標的にした。きちんと解毒剤は用意
してある……あれ」
解毒剤が一向に見つからない。室内をくまなく調べ回るが、徒労に終わる。こうしてい
る間にも、毒はシコルスキーを蝕んでゆく。
「しまった、中国に忘れてきたか」
「そんな無責任な……ううっ!」
ついにシコルスキーが力尽きた。もはや一刻の猶予もない。
「解毒以外に、毒手を打ち破る方法はないのかね」
「分からんな……。いや、一つだけ」
「何だね」
「我が毒手は陽手と呼ばれるものだ。それと対を成す陰手……二つが交わると毒が裏返る
という伝説がある」
解決策は絶たれた。解毒剤は中国に残され、陰手なる要素も存在しない。いや、あった
としても李が語る伝説の信憑性は極めて薄い。だが、伝説へのカギを握っている男がいた。
「陰手なら、ありますよ」
柳だった。反射的に、シコルスキー以外の全員が振り向く。
「社の倉庫に毒手に関する巻物があり、もしかするとあれが陰手ではないかと……」
「デモ、アンタハ毒手ジャナイダロウガ」
「いえ、その巻物を参考に開発した商品があるのです。その名も“毒手グローブ”」
毒手グローブ。株式会社クードーが開発した暗器の一つで、これをはめるだけで誰でも
簡単に毒手使いになれるというもの。巻物に従って調合された毒物が染み込んだ、殺傷力
十分の一品である。
「一か八か……これに賭けるしかありませんな」
グローブを装着し、失神しているシコルスキーに鞭打を浴びせる柳。すると──奇跡が
起こった。
シコルスキーは皮膚を七色に変化させながら、意味不明な奇声を発している。もちろん、
快復しているのではない。口からは泡を吐き、眼球は充血し、全身の毛が逆立っている。
「毒が悪化した。それだけは確かなようだ。陰と陽、二つの毒素に彼の体内の何か、苦痛
によって脳から分泌された脳内麻薬か……。あるいは、常日頃からの敗北によってもたら
された絶望感。そして、その諦めから造られてしまった化学物質か……。あるいは、それ
ら全てが彼の体内で出会ってしまい、化学反応を起こしスパーク……」
「なるほど」
冷静な李の解説を、全て納得したかのように柳が頷く。意気投合した二人に対し、全く
納得していないのはシコルスキー。
「おい、そこッ! 落ち着いてないで、早く助け──ふしゅるッ!」
再び意識喪失に陥った。ドイルやドリアンが揺り動かすも、まるで反応がない。全身か
らは腐敗臭が立ち昇り、二度と目覚めぬ眠りになるかもしれない。
──もう、助からないのか。
しかし、そんな通夜ムードを吹き飛ばすような一撃が轟いた。
オリバが床を殴りつけたのだ。局地的な地震が発生、木造の古い床には大穴がぽっかり
と空いてしまった。そして、生死の狭間をさまようシコルスキーを睨む。
「起きたまえ……。さもなければ、次は当てる」
誰もが呆れた。こんなことで快復すれば苦労はない、と。
すると、今度こそ奇跡は起こった。殆ど死体と化したシコルスキーが起き上がり、涙な
がらに土下座を行うではないか。
「勘弁してくれッ! 殺さないでくれ〜ッ!」
毒が抜けていく。いや、裏返っていく。シコルスキーが謝れば謝るほど、皮膚は正常に
戻り、血行が良くなっていく。
数分後には、彼の肉体は逆流したように健康な状態へと回帰していた。驚愕する柳と李。
「なるほど、大家さんのパンチへの恐怖心が……」
「毒を裏返したというワケか……」
どうにか毒手を、薬硬拳を克服したシコルスキー。周囲を囲む者たちは、特にすること
もないので精一杯の拍手を送った。おめでとう、シコルスキー。
謹賀新年。
一番乗りとはいきませんでしたか。
あけましておめでとうございます。
いよいよ酉年が始まりました。
快食快便で頑張りますので、どうぞよろしく。
前スレ502より
「まだ頭がクラクラするぜ・・・」
「ホントだね・・・」
あの恐怖の宴からはや数時間が経ち、既に真夜中。
稟とのび太は砂浜を二人で歩いていた。二人とも、どうにも寝付く気にはなれなかった。
のび太にとっては、この世界での最後の夜だった。明日の今頃にはもう―――この世界に、自分はいない。
稟にとっても、付き合いは短かったが、のび太たちは既にかけがえのない仲間たちだった。その仲間たちとの別れが
近いことは、彼の心を複雑にさせていた。
どうにもこうにもならない気持ちを抱きながら、二人はなんの益体もない話を続ける。
「いやほんと、あの歌をグランゾンとの戦いで使ったら、もっと楽に勝てたんじゃないか?」
「はは、まさか・・・」
―――違う。もっと何か言わなくてはならないことがあるんじゃないか?
「なあ、のび太・・・」
「・・・何?」
「俺、お前やドラえもんたちに会えて、よかったと思ってる。色々大変なことばっかだったけど・・・どれも
大事な思い出だ。―――絶対、忘れないぜ」
「稟さん・・・。ぼくも、忘れないよ。稟さんや亜沙さん、プリムラたちがいたこの世界のこと―――忘れない」
二人はそう言って笑いあう。それはどこか寂しげだったが、心からの笑顔だった。
と、その時。背後から、砂を踏みしめる音が聞こえた。
誰かと思って振り向くと、そこにいたのはパーティーの時から姿を消していたプリムラだった。
「プリムラ・・・今までどこ行ってたんだよ。パーティーにもいなかったから、心配してたんだぞ」
稟はそう言ったが、プリムラは悲しそうに顔を歪める。
今にも泣いてしまいそうな顔で、彼女は言葉を紡いだ。
「のび太・・・ほんとに、帰っちゃうの・・・?」
「・・・うん、名残惜しいけど、さ・・・」
「・・・帰っちゃいや」
「・・・え?」
「おい、プリムラ。何言って・・・」
「帰らないで!」
二人の言葉を遮り、プリムラは叫んだ。まるで、心の中の何かが外れてしまったように。
「どうして帰らなきゃいけないの!?ずっとこの世界にいたらいいじゃない!青玉もタケシもスネ夫もしずかも
のび太も、ずっとここで一緒に暮らしたらいい!ずっとりんや私と一緒にいればいい!」
「・・・プリムラ」
のび太は二の句がつげなかった。彼女がここまで激しい感情を出してくるとは考えなかった。
「せっかくみんなと友達になれたのに―――せっかく会えたのに、どうして別れなきゃいけないの!?そんなに
元の世界に帰りたいの!?」
「・・・・・・」
のび太と稟は黙ってプリムラの言葉を聞く。
「・・・ずっとここにいるって言ってよ、のび太・・・」
「・・・・・・」
「嘘でもいいから―――ずっと一緒だって言ってよ・・・!」
「・・・ぼくは・・・」
のび太は―――
「ぼくらは、帰るよ。元の世界に」
のび太は、嘘をつけなかった。そんな優しい嘘のつき方なんて、のび太は知らなかった。
「のび太の―――バカ!」
プリムラは、泣いていた。泣きながら、のび太の服を掴む。
「こんなふうに―――こんな悲しい気持ちになるくらいなら―――のび太たちになんて、会わなきゃよかったのに!」
パシーンと、乾いた音が響いた。
稟がプリムラの頬を叩いたのだと、一瞬遅れてのび太は気付いた。
「言っちゃダメだろ・・・それだけは・・・」
稟は自分が叩かれたような悲痛な顔をしていた。
「会わなければよかったなんて・・・それだけは・・・言っちゃいけないんだ・・・!」
プリムラはのび太から手を離し、叩かれた頬を抑える。
稟は全力で叩いたりはしなかったが―――その痛みは余りにも大きかった。
「・・・大嫌い。のび太もりんも、みんな、大嫌い!」
プリムラはそのまま、走り去ってしまう。
その背中を、のび太も稟も追いかけることが出来ない。
「プリムラ・・・ごめん」
のび太は、隣にいる稟にも聞こえないほどの小さな声で呟いた。
稟は、やるせなさそうな顔で、プリムラの走り去った方向を見ていた。
―――それぞれの想いを抱えながら、
最後の朝が訪れた。
新年最初の投下完了。あけおめ(蝶・てきとー!)
いよいよ残すところ後2回。
こういう昼メロっぽいの、ドラえもんらしくないかなあ・・・。
今のうちに言っときたいんですが、最終回での後書きは長文で言いたいこと言ってもいいでしょうか?
とにかくはっちゃけたいことが色々あるので。
「長文後書きウザイ」の声があれば控えめにします。
遅ればせながら、新年のお慶びを謹んで申し上げます。
本年も、どうぞ宜しくお願い致します。
しかし去年も同じように年始の挨拶をしましたが、まさか来年があるとは思ってもいませんでした。
>サマサ様
前回、最強バンドによるギャグっぽい話のあとは、
少しシリアスな話が来ましたね。
確かにプリムラにとって「のび太」は初めての友達ですし、辛いでしょうね。
最終回での後書きについては、他者の迷惑にならない分には、良いのではないでしょうか?
(私が決められる事ではありませんが)
>サナダムシ様
「毒手グローブ」実際に作れそうですね。
柳もわざわざ鞭打しなくてもいいのにw 相手がシコルだと皆容赦がない。
オリバも、書かれていないところで数え切れないくらいシコルを殴り飛ばしてるんでしょうね。
(陰陽両毒手が裏返るくらいですし…)
>NB様
昨日、初詣の帰りにマンキで黒猫読破しました。
原作ではあっさりと済ませていた乱入劇を、濃い描写で書かれましたね。
>>15の人が言われているように、クリードの無人の野を散歩するような雰囲気と、
パニックになっている警備兵との対比が良いですね。
後書きについては、何となく原作への感情の裏返しっぽく感じました。
ただ、そう受け取らない人も多いかと思います。
>ふら〜り様
「圏外」に少し笑わせてもらいました。
ここはそんなに辺鄙な世界なのですか……
(確かに「バキ」は蛮勇が多い世界ですが)
でも、一番笑ったのはここの部分でした。
>刃牙は素早くドアを閉めて、そしらぬ顔で口笛を吹く。
バキ君、わざとらしすぎw 余計怪しいって。
では、投下します。
「機械vs人間」
誰もいない荒野で、二人の戦士が対峙する。
一人は男。全身鍛え上げられた肉体と、頬の十字傷が印象的である。
一人は女。男と対照的な細身の体つきは、とても戦士とは思えない。
男の名はヤムチャ。 女の名は人造人間18号。
―――戦闘開始。
「いいぜ、来いッ!」
ヤムチャの声を合図に18号が飛び掛る。離れていた二人の間合いが一気に縮まる。
対するヤムチャ、しかし全く動じない。
18号の渾身の力を込めたパンチが、ヤムチャの顔面に襲いかかる。
初弾で一気に勝負を決めるつもりだろう――しかし、
「甘い!」
ヤムチャは18号の攻撃を寸前でかわし、逆に18号の胸元へパンチを叩き込む。
まともにカウンターパンチを喰らって、18号の身体は開始時と同じ位置まで飛ばされてしまう。
「その攻撃は分かっていたぜ、18号」
18号に対し、ヤムチャが得意げに吼える。
「今度は俺からだ」
ヤムチャが構えをとる。
「狼牙風風拳!」
お馴染みの掛け声があがり、ヤムチャは18号へと飛び掛り、パンチ、キックの攻撃を繰り出す。
当然18号も反撃するが、その拳は空しく宙をきるのみ。
(所詮は機械だ。攻撃パターンの数は知れている)
ヤムチャは18号の攻撃を全て回避し、逆に合間を縫って打撃を与えていく。
徐々に、しかし着実に18号の体力にダメージが蓄積する。
十数回ほどの殴りあい(といってもヤムチャは全くダメージを受けていないが)が続いた後、
18号は空中へ移動し、ヤムチャへ極大の気功波を打ち込んだ。
しかし、その攻撃パターンもヤムチャの読み通り。
易々と18号の気功波をかわし、お返しとばかりに、かめはめ波を放った。
気功波を放った直後で動けない18号は、為す術もなく攻撃を喰らい、そのまま地上へ激突する。
(もう18号の体力は殆ど無い。ここで決着をつけてやる!)
18号の起き上がるタイミングに合わせて、ヤムチャは指を素早く動かした。
「止めだ! 操気弾!」
ブチッ
ブラックアウト。
目の前が―――正確には目の前のTV画面が真っ暗になる。
画面の横には、コンセントを持ったブルマが立っていた。
「はい、そこまで」
「あ〜〜〜ッ! ブルマ! 何て事するんだよ! ゲーム中に電源を抜くなんて!」
わめきたてるヤムチャであったが、ブルマは取り合わない。逆に、
「幾ら現実で歯が立たないからって、コンピューターゲームで憂さ晴らしなんて、情けないと
思わないの?」
と説教されてしまう。
「仕方ないだろ……これでしか18号に勝てないんだから」
情けないセリフを吐きつつ、ヤムチャはごろんと横になった。
「あ〜あ、格ゲー天下一武闘会とかあればイイ線いくのになぁ〜」
(18号さん、格闘ゲームも無茶苦茶強いんだけど……)
ブルマはその事実は黙っておくことにした。
そんなヤムチャの一日。
以上です。
41 :
作者の都合により名無しです:05/01/03 11:45:29 ID:Q95/VhMK
元日のNBさんに続いてイッパイキターーーーーーーーー
>しけい荘
おめでとうシコル。しかしなんでもありか大家のオリバはw
薬硬拳の李が出たと言うことは、郭とかもでるのかなあ?
>神界大活劇
プリムラ悲しいですね。でも最後はみんな笑う大団円の
ハッピーエンドがいいな。別れの悲しさだけじゃなくて。
最後の後書き位は、好きな事書いていいと思います。
>オムニバスSS
ルックス、戦闘力、器、全てにおいてヤムチャが18号様に
勝てる訳ありませんねwバレさんいつもお疲れ様です。
NB氏はもう作品以外レスするなよ。
そのほうが後書きでゴタゴタすることがない。
それにウザくもあるし。
NBです。
確かに悪乗り過ぎました。当分作品以外を慎みます。
新年早々馬鹿な発言晒して済みません。
44 :
作者の都合により名無しです:05/01/03 19:38:23 ID:QHzsUpQc
>NBさん
まあ、あんまり気になさらず。作品は面白くて楽しみにしてますよ。頑張れ。
鬼のクリードと大統領の秘密兵器・鉄血の狼、どういう戦いになるのか?
鉄血という響きと既出のトルーパーから考えて、ロボットでしょうかね?
>サナダムシさん
オリバ無敵設定は前作から変わりませんね。そしてシコルのヘタレっぷりも。
出来れば、今度は無敵大家のバトルがみたいような。そして、勇次郎とバキ。
最後はやはり、前作後半のような熱いバトル物になるんでしょうか?
>サマサさん
プリムラのかわいらしい我侭が、物語の終焉の近い事を現していますね。
仲間たちとの最後の朝、どのように語られどのように描かれるのか楽しみです。
最後位、長文後書き結構と思いますよ。少し早いですが次作も期待してますw
>バレさん
おお、ショート連投ですね。なんだか世界放浪記さんを思い出します。
ヤムチャがあのまま18号に勝ったら非難ごうごうですよwゲームでよかった。
今年も、サイト運営のんびりと更新して下さい。お体に気をつけて。
おお、今日も大漁ですね。
サナダムシさん、サマサさん、バレさんお疲れ様です。
しけい荘は嬉しくなる位シコルが変わりませんね。オリバも父親みたいでいいです。
神界大活劇、もう終わっちゃうですねえ。サマサさんの文章好きだった。次回作!!
バレさん、短編得意ですね。ヤムチャはやっぱりこういう星の元に生まれてますねw
NBさん、ちょっと弾け過ぎましたねw作品できっと喜ばせてくれると期待してます。
46 :
作者の都合により名無しです:05/01/04 09:56:46 ID:PnOReaOd
NBさん、サナダムシさん、サマサさん、バレさん、年初めからお疲れ様です。
今年も頑張って下さい。もちろん、他の職人さんたちも。
ども。遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。
大体三週間くらいバキスレでは何も書いてなかったんですが、今日辺り続き書こうと思ってます。
本当は、新年一発目は蟲師で行きたかったんだがなー……
おお、ゲロさんキター
出来れば蟲師がいいな。あの淡々とした世界観好き。
もちろん、ゲロも期待してますけどね。
49 :
作者の都合により名無しです:05/01/04 11:35:21 ID:ogV2rxry
バキスレ新年早々絶好調だな。
NB氏、サナダ虫氏、サマサ氏、バレ氏、もうすぐゲロ氏か。
ゲロ氏、トリップ付けたんだね。その方がいいですよ。
あとNB氏、気にスンナー。
薄暗い研究室の中で二人の男が対峙をしていた。彼らの周りには8人の男が倒れていた。
テリーチーム、ラルフチーム、そしてヤムチャと柳田薫である。
プロト1は彼らには目もくれず目の前にいる男、ルガール=バーンシュタインを睨み付けていた。
彼の目は漆黒の闇に覆われていた。
「クローン風情が・・・。跳ねっ返りおって!」ルガールが声を低くして叫ぶ。彼は正直苛立ちを
感じていた。いつから見ていたのかは知らないが周りに6人の人間が倒れていれば普通は恐れるだろう。
だがこいつは違う。6人もの格闘家と闘ってもなお無傷である自分を見ても怯んでいない。
「さあ・・・・始めようか。」プロト1は呟くと両手を広げた。思わず反応しガードを挙げるルガール。
彼の目に異様な光景が飛び込んできた。プロト1の体の筋肉が盛り上がり、ルガールの体より二周り程
大きくなったのだ。体の隅々まで筋肉が広がり、それは仁王像を思わせた。
「筋肉だけで私をどうにかできると思ったら大間違いだぞ。来い。」ルガールがせせら笑う様に誘う。
「後悔するなよ。」プロト1の腕が動き、ルガールへと向かう。ストレートである。
「は!」笑みを浮かべ、叫ぶ事ができる程の余裕がルガールにはあった。どのような力であれ、受けきる事ができる
自信があったから。普通なら両腕でガードする所を片手でガードするルガール。受けでもよかった。
だが腕でガードをした。カウンターで蹴りを出せばこの戦いは終わる。草薙京達との戦闘の前の前菜にしておくには
もったいないかもしれない。そう考えてさえいた。その思考を邪魔したのは腕に来た衝撃だった。ガードしたなら
腕だけに来る。だが、今回は違った。ガードの上から体を吹き飛ばされたのだ。壁に激突し、片膝を付くルガール。
そして無表情のままゆっくりと近づくプロト1。
「この私が・・。吹き飛ばされるだと・・・・。」
立ち上がるルガールに対して拳の連打を浴びせるプロト1。まったく反撃できずにガードをするルガール。
拳が腕に当たる度に骨が軋む音がした。遂にガードが割れ、ルガールの鳩尾にプロト1の拳がヒットした。
続いてルガールの全身にプロト1の拳がヒットする。全身をメッタ打ちにされ血を吐きながら吹き飛ぶルガール。
「どうした?俺はまだ蹴りを使ってはいないぜ?早く倒れないでくれよ。今のは弟達の分の約半分だ。」仁王立ちのまま
プロト1がルガールに話しかける。
「虚勢を張るな。」
ヤムチャは目が霞んでいた。周りに9つの気を感じる。弱々しいが瀕死ではない。ただ一つ邪悪な気があった。
うつ伏せの状態から目を開ける。体が思う様に動かない。最後の記憶は柳田薫と公園であった記憶だ。
奇妙な魔方陣が足元に現れ、氷が視界を埋め尽くし意識を失った。段々と視界がはっきりしてくる。
辺りを見渡すと研究室の様な広い場所だった。何かの計測器らしきものが置いてある。入り口の周りには
3人の人間が倒れていた。一人は青い髪の女である。思う様に力が入らないが何とか上体を起す。続いて
足に力を入れ立ち上がる。近くによりかかる物が無かったので一苦労した。立ち上がったヤムチャの目に
飛び込んで来たモノ。それは自分そっくりの姿形をした人間の姿だった。ヤムチャよりも筋肉が盛り上がった
その男は目の前の存在に対して拳を振り上げていた。
「オ・・オレ・・・?」ヤムチャは冷や汗をかいていた。自分は何者かに捕らえられクローンが作られたのではないか。
ヤムチャの目の前の男の動きがピタリと止まった。
「起きた様だな。オレの元になった人間の一人。名前を教えてもらおうか。」ルガールの方向を向いたまま、つまり
ヤムチャに背を向けたままプロト1が叫ぶ。
「オレはヤムチャだ。お前は何だ!」
「オレはプロト1。お前のDNAとそこに倒れている柳田薫の細胞を組み合わされて作られた存在だ。」
「悪なら許さんぞ!」ヤムチャが声を高らかに叫ぶ。目覚めた直後なのでどちらが邪悪な存在なのかわからないのだ。
「オレはお前がもつ記憶と柳田薫をもつ記憶を両方とも所有している。草薙の炎はオロチという存在を払う力があるという事と
”かめはめ波”という技があるという事を。」
「目覚めてしまったか。ふっ、まあいい。また捕らえれば済む話だ。お前を殺した後でな、プロト1。」ルガールが二人の間に割って入る。
殴られまくっていたのにも関わらずダメージは少ない様だ。その証拠に足取りはしっかりしているしオーラには微塵の乱れも見られない。
「パワーモードの拳を何発も食らってそれか。タフネスだけは凄いな。」プロト1が淡々と言う。この男に対して激昂するのは禁物だ。
感情の昂ぶりは焦りとなり、隙を生む。それがパワーとなったとしても相手に当たらなければ無意味だ。
「来い。」ルガールが呟いた直後に、プロト1の拳が打ち出される。ノーガードのルガール。そのままなら拳が顔面に入る事は確実だった。
プロト1は勝利を確信した。誘っておきながらノーガード。諦めたのか。
だが、プロト1の予想は外れた。拳は空を切った。ルガールが拳を避けたのだ。
「ちっ!」再度拳を振るうプロト1。さっきのとは倍以上のスピードだ。筋肉があるのに驚異的なスピードである。
だがそれも空を切った。何度も何度も繰り返し拳を振るうプロト1.だが結果は全て同じだった。全てルガールに避けられた。
「私が今までただ食らっていただけかと思ったのか?お前の筋肉の動きを見切るためにな。お前の重い拳は通用しない!」
「へぇ、そうかい。ならこれだな。」怯まずにプロト1が笑みを浮かべながら言う。直後、プロト1の体に異変が起こった。
体が細くなりルガールより二周り程小さくなったのだ。
「これがスピードモード。プロト2のモノだ。これでお前を倒す・・・。」
「やってみるがいい。」
ヤムチャは目の前の展開についていく事ができなかった。クローンだとか言われて頭が混乱していたのだ。
ルガール=バーンシュタインVSプロト1 第二ラウンド 開始。
今回の投稿はこれで終わりです。書きたかったシーンの一つが書けました。
これから先の場面に第三部のシーンのキーとなる場面があります。
ヤムチャは人間を捨ててます。(不老不死ですし。)
できるだけ面白く書くつもりです。
ではでは
輪廻氏は成長したね。
その文章力は作家の山田悠介先生(代表作:リアル鬼ごっこ)を彷彿とさせるものがある。
失礼。中身も山田悠介先生作品並に面白いですよ。
前回は大分前なんで、バレ様のまとめサイトをご参照頂ければ。すんません。
本来の肉体所有者である17号と、強引に肉体を乗っ取ったオリジナルヤムチャとがぶつかるのは、
至極必然なことと思われた。彼らは互いに所有権を主張し合い、体をブルブル震わせたり、何か言葉
にならないうわ言を発したりしている。その間隙を付いて、18号は己の中の力を、動かせる片腕に集
中させようとしていた。
そんなとき、17号改は自らの頭を両腕でガンガンに殴り始めた。恐らくはヤムチャの意思であろう。
彼はやはりアナログな男であるから、詰る所、壊れた電化製品は叩いて直そうとするのである。原理
はそれとさして変わらない。当然、そんなことをしても17号の人格が消えるわけはないのだが。18号
の内在エネルギーは、彼女の片腕に結集しつつあった。しかし、私が見たところでは、それでは17号改
は壊せまい。そう思う。私は、右手の内に忍ばせていた、あるボタンを押した。
あと、3分。
エネルギーは限界まで引き出した。18号は覚悟の表情を前面に押し出して腕を思い切り17号改に向
けて振り下ろす。惑星の一つは軽く破壊できる、只ならぬ破壊力を秘めたエネルギーを、放つ。
しかし、18号の目線の先に、もう既に捉えていたそれはいなかった。消えていた。どこにいるのか。それ
は、18号の上に跨っていた。
あと、2分。
万策尽き果てた。18号全体に、諦観が広がり、力もまた尽きた。振り下ろした腕は、地面に堕ち、無抵抗
とはまさにこのことだ、さあ、好きにするが良い。そんな感じで居た。
18号に跨る17号改の内面の闘いの結果がどうなったのかは、傍目には判断が付かない。
こんな話を、昔何かの授業で聞いたことがある。うろ覚えだが、一つの体に二つの人格が入っている状態
というのは、脳に相当な負担がかかるのだという。考えてみれば、成程、納得がいく。そこで、脳が丁度良い
ところで折り合いを付けるのだという。つまり、両方の人格を縮小して、混ぜ合わせ、強引に一つの人格を形
成させる。脳が自らを守るためにとる措置だという。
もしかしたら、今の17号改は、そうなっているのかもしれない。
18号に乗った彼は、そのまま何もせず、空をただ見つめるのみである。18号はもう、落ちている。
あと、1分。
ただ空を見ていた17号改が突如動き出す。顔を18号の首筋に突き出し、舌を出し、ひたと唾液をつける。
18号は反応しない。舌は喉仏の辺りに移り、そこを派手に音を出して吸う。18号は反応しない。執拗に吸い
続ける。何か、怨念のようなものが篭っているかのように、私の眼には見えた。
時計に目を落とす。あと、13秒。12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0。
18号の意識が微かに戻る。彼女は気付く。おかしい、上に乗っていたハズの17号が、乗っていない。そんな
表情だった。すぐ隣の方を見た。彼女の目に入ってきたのは、体の内部からとてつもない爆発で粉々にされた、
17号改の姿であった。
18号は、茫然自失でそれをただ眺めていた。私は、彼女に近付き、手を取った。
「私はゲロ。ドクター・ゲロ。一緒に来てくれ」
今、この地球には、私と彼女しかいない。
実は作者も話を忘れていたことは秘密だ。
短いですね。ええ。短いですけど、次回最終回は結構長くなると思うんで。漫画で例えるなら、ヨコハマ
買い出し紀行みたいな感じかな、最終回。
前スレ189
オリジナルです。はい。原作でもナガレモノって系統の蟲がいたんで、そこからですかね。
>>190 原作知らない人を楽しませることができれば、とりあえず合格点かなと思ってるんでそれは嬉しい。
次も楽しんでいただければ。
>>196 長い話作るより、短い完結モノを積み上げる方が自分に向いているようです。短距離型なんでw
>>197 なんか覚えのある名ですな。
>>205 纏め切れなかったんでそういう感想に至る、という面も多分にあるのかもしれません。ただ、それは
それで味になるような気もします。
>>226 所詮、人間は不完全ですからね。蟲はその点超然としてます。その辺りのギャップが蟲師の面白さ。
次回でゲロ終了、その次から本格的に蟲師稼動です。では。
60 :
ゲロ!:05/01/05 05:41:37 ID:u/rfGnFX
ゲロ!下呂!gero!
61 :
作者の都合により名無しです:05/01/05 08:44:01 ID:IGfrE3xw
>輪廻氏
プロト1とルガールの戦い白熱してますね。バトルの腕上がりましたな。
ヤムチャ復活しましたか。そういえばこいつの存在、まったく忘れていたw
>ゲロ氏
うわ、今回短か!w 18号と2人きりかいいなあ。でも次回最終回ですか。
残念だけど、蟲師はゲロ以上に好きなので期待してます。
原作通りの一話完結かな?オムニバス形式は大変でしょうが頑張って下さい。
>>
ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1102237585/510 日が暮れて、夜。本部戦以後、悩みながら歩き回っていた響子は、公園に辿り着いた。
出張中の宿泊費などは後で貰えるが、そういうのは極限まで浮かし、生活費や介護費に
廻さねばならない。なので、今夜は野宿するつもりである。
「ふむ、人気もないな。この辺でいいか」
響子は公園の奥深く、芝生の上の茂みの中を、一夜の宿と決めた。ここなら街灯の
光が届かず真っ暗だから、響子が寝ていることも気づかれないだろう。
肩掛け鞄から折り畳んだ寝袋を取り出し、広げる。続いて愛用の枕を取り出して設置。
こういう時こそ、馴染んだ枕での安眠が必要不可欠だ。体力の維持。でも宿賃は浮かせる。
それやこれやのセッティングを終えた響子が、さて寝ようかとした時。
「ん……? もしや、神余殿か?」
男が一人、茂みを掻き分けてやってきた。暗闇の中だが、目は慣れてきたので少しは
見える。その目を凝らして見てみると……みると!
「おお、やはり神余殿だ」
本部だった。慌てて響子は後ずさろうとしたが、
「待った待った。逃げずとも良いですぞ。もう弟子入りなどとは言いませぬ故」
よっこらしょ、と本部は響子のそばに腰を下ろす。その手に抱えているのは、新聞と毛布。
「つい先程、知り合いの少年にボコボコにやられましてな。神余殿の達人ぶり、いくら
説明しても信じてくれなくて。おかげで足腰が立たんというか、歩くのも辛い状況でして。
とてもとても稽古どころでは。わはははは。いや全く、渋川老が証言してくれなかったら、
今頃わし、あの世に行っておったかも」
と本部は陽気に説明してくれるが、一体何があったのか、響子にはよく解らない。
「で。その少年に、聞いたのですよ。神余殿の身の上を。神余殿の、母上のことを」
『! あの、匿ってくれた男の子か! オレが本部さんに追われてるのは見てたはず
だから、オレを助けようとして? それで本部さんをボコボコに? ってことは、』
まただ。また、自分のせいで本部が。巻き込まれて被害を。
「ぅ……ごめん、本部さん。謝って済む話じゃないだろうけど、とにかく、ごめん!」
響子は正座して、ぺこりと頭を下げる。が、本部はそんな響子に言った。
「何を謝られる? そもそも、わしが勝手に押しかけ弟子になろうとしたから」
「だから、その本部さんが弟子になるっていうきっかけの、」
と言いかけた響子の言葉を、本部が手をひらひらさせて遮った。
「何でも結構。神余殿には、弟子を指導している暇なんぞないでしょう。考えてみれば、
その若さでその強さ。そこには、よほどの事情があって当然。もう何も聞きませぬぞ」
「いや、オレは……」
「ああ、一つだけ教えて頂きたい。神余殿、もっと女の子らしくせよとか言われませぬか」
急に、本部がヘンなことを言った。拍子抜けというか毒気抜けして、響子は答える。
「そりゃ、ま、言われる、けど。同僚がよく言うよ。で勝手にオレの髪を編んだりする」
「はははは、それは良い。良いお仲間に恵まれておるようですな。安心安心」
何だか、妙に明るく本部は笑う。
「何なんだよ。本部さん、何がそんなに嬉しいんだ」
「いや、なに。実はわしには娘がおりましてな。今の神余殿より、うんと幼い頃に事故で
亡くしましたが。妻と一緒に。わしだけ残して」
「……え」
響子の顔が固まった。が本部は変わらない、明るい……というか優しげな顔で語る。
「可愛い娘でした。新しい服や、リボンや、ブローチなどを買ってやると、それはもう
大喜びしまして。嬉しそうに身につけて、その姿をわしに見せてくれる、その笑顔がまた、
可愛くて可愛くて。いや全く、そういう時の娘が一番可愛かった。うんうん」
「……って。本部さん、もしかしてまさか、その娘さんがオレに似てるとか」
「ん? いや、そんなことはない。生きておれば、娘の方がもっともっと美人に
なっておるでしょうな。なにしろ神余殿には、大きな失点がある」
「失点? このオレに? 何だってんだよ、それ」
「ほらほら、その顔」
本部が、響子の眉の辺りを指差した。
「眉間にシワ寄せて、迫力出して。いけませぬぞ神余殿、そういうのは。縁遠くなって
おるから、無理ないとはいえ」
「縁遠く、って?」
「今わしの言った、娘の一番可愛らしい笑顔のことです。服や装飾品で着飾り、
その姿を人に見せる時の笑顔。……神余殿、縁遠くなっておりますでしょう?」
言われて響子は、はっ、とする。そりゃ確かに、もう長いこと古着の作務衣しか
着ていない。まして装飾品なんて意識の片隅にもなかった。全く全然。
着飾った時の笑顔。その姿を人に見せる時の笑顔。その時の気持ち。……思い出せない。
そんな響子の顔を覗き込んで、本部が続ける。
「神余殿。母上のことは大変でしょうが、たまにはご自分のことも考えられよ。母上とて、
むしろそれを望んでおられるはず……っと。年寄りの長話でしたな。申し訳ない」
ではそろそろ寝ましょうか、と本部が横になる。何だかよく解らないが、響子も寝袋に
入った(鞄も寝袋の中)。響子は、何だかここを動けなくて、二人並んで寝ることに。
「言っとくけど。オレ今、寝袋のファスナーを内側から握ってるからな。少しでも
開けられる気配を感じたら、即座に絞め殺す。そのつもりで」
「はははは。剣呑剣呑」
笑いつつ新聞紙と毛布を重ねて被る本部。少し距離を置いて、寝袋と枕の響子がいる。
で寝ようと、したのだが響子はどうしても気になって、本部に訊いてみた。
「……なあ、本部さん」
「ん?」
「さっきの、娘さんの話。なんであんた、オレにあんな話をしたんだ」
「さて。娘の方が美人とはいえ、似ていないこともないから、ですかな。神余殿が。
それと、先程も言いましたこと。僭越ながら神余殿の母上の心情代弁です。わしとて
人の親、子を思う気持ちは理解できるつもりです。無論男親としてのものですが」
母性愛ならぬ父性愛、とでも言いたいのか。あいにく父親の記憶が全く無い響子には、
そういうことを言われても解らない。ちっとも解らない。
けど……何だか、いいな。そういうのも。と響子は少し、思った。そしたら、眠くなって
きた。少しずつ、眠く……
「っくしゅん!」
「おや。神余殿、もしや野宿に慣れていないのでは?」
「慣れるも何も、生まれて初めてだよ」
「なんと。それは、いけませぬな」
本部は体を起こすと、自分の毛布を響子の寝袋の上にかけてやった。
「これで良し。わしは慣れておりますから、平気です。ご遠慮なさらずに」
「へ、平気って」
平気なら、何で毛布を持って来ている。何で響子がクシャミするまで、被っていた。
そしてどうして、あっさり響子に毛布を譲る。
もしかしてもこれも、さっき本部が言っていた、男親としての……か。よく解らないが。
「……。あの、さ。本部さん。その……こうした方が暖かい、だろ」
響子は寝袋から出て立ち上がり、本部のすぐそばまで毛布と寝袋を持っていった。そこに
寝袋を置いて入り込み、毛布は二人に行き渡るようにかける。そして最後に枕を、
本部に押し付けた。
「毛布の礼に、枕貸してやるよ。地べたに頭つけてたら、寝にくいだろ」
「え。しかしそれでは神余殿が」
響子はしばし、視線を泳がせて。それから、本部の方に向き直って行った。
「本部さんの、腕を貸してくれりゃいい。……あの、ダメかな?」
少しだけ、驚いてから。本部は頷いた。笑顔で。
「はは、良いですぞ。こんな細腕で良ければ」
こうして。一枚の毛布の下、新聞紙を被った本部と寝袋に入った響子。響子の枕の
本部と、本部の腕枕の響子が、並んで寄り添って横になった。
「なるほど。確かにこれは、暖かいですな」
「い、言っとくけど。さっきの、ファスナーに手ぇかけたら絞め殺すってのは、まだ
継続中だからな。忘れないでくれよっ」
「覚えておりますとも。さ、眠られよ神余殿。夜の公園には、わしの顔見知りしか
来ませぬ故。心配はいりませぬ」
「……うん。おやすみ」
響子にとって、生まれて初めての野宿。なのだが、なんだか、暖かくて、安らぐ。
そんな、生まれて初めての感覚に身を委ねながら……響子は、静かに眠りに着いた。
ところ変わって、ハワイの米軍基地。の一室にて。
「ユージロー。ESPer eliminate forceというのを知ってるか?」
ソファにふんぞり返っている勇次郎に、ストライダムが話しかけた。勇次郎は首を傾げて、
「エスパー・エリミネイト・フォース……略してエスエフってか。知らねぇな」
「ああ、正しくSFな話だ。私も詳しいことは知らないのだが、何でも超能力犯罪を調査
する秘密組織らしい。軍や警察のごく一部の者が密かに協力体制にあるとか。無論、この
我々の世界には超能力などないから普段は無関係なのだが、稀に異世界から飛んできた
エスパーを相手にする時などに、この世界へ来ることもあるとか」
「……本当にSFな話だな。で? それがどうした。俺みてぇな一般人には関係ねえだろ」
こんにゃろめは自分のことを一般人だと思っているらしい。鉄の如き面の皮である。
「いや、それがな。どうも君のことをエスパーだと疑い始めたらしいんだ。それで君を
詳しく調査するため、この世界にエージェントが送り込まれたとかいう噂なんだが」
「ほほう? そうか、ひょっとしたらそいつかもしれんな」
と言って勇次郎は立ち上がり、西の方に向かってくんくんと鼻を鳴らした。嬉しそぉに。
「どうも、妙な匂いがすると思ってたんだ。普通の強ぇ奴とは違う、異質な強さをもった
奴の匂いが。そのエージェントとやらが、既に活動を始めているとしたら……」
ストライダムが、小さく溜息をつく。
「やっぱり嗅ぎつけていたか。私としては、そういう得体の知れない組織なんだから、
可能ならば関わらないようにして欲しいと思ったんだが。こっちの世界の軍や警察は君を
差し出すような真似はしないから(勇次郎の報復が怖い)、君さえ逃げてくれてれば」
「逃げると思うか、俺が」
そりゃあもう嬉しそうで楽しそうで、ワクワク全開な顔を、勇次郎は見せ付ける。
「……ジェット機を一台、用意させる」
「おう♪ そうこなくっちゃあな、ストライダム!」
溜息をつくストライダムの背中をバンバンと叩いて、勇次郎はご満悦であった。
>>1さん
おつ華麗様。そして、遅ればせながら新年おめでとうございます。
去年の私の年越しは、『背中〜』を書いてました。あれから
一年経ったんですねえ。しみじみ。
♪一日は長いのに 一年は短くて……♪
>>NBさん
初代ピッコロの、キングキャッスル殴り込みを彷彿とさせる……と言いたいとこですが、
クリード、な〜んにもしてない(実は何かしてる?)ところが迫力です。黙々、静々。
ただ歩いてくる、恐怖と絶望の圧倒的強さのカタマリ。次回は血飛沫を見せてくれそう。
>>サナダムシさん
シコル一直線。哀れで可愛くて、もう。ハタから見てたら思いっきり不気味なぐらい、
ニコニコ……いや、ニヤニヤしながら読ませて頂きました。冷静な解説で納得されて、
その足下で奇声を上げてのた打ち回って、挙句恐怖心でムリヤリ回復。可愛いぞシコル。
>>サマサさん(後書きについてはバレさんと同じです。個人的には好きですけどね)
う〜む……エロゲというかギャルゲ、のEDっぽい雰囲気。異世界に来て、出会って、
そして帰るから別れる。大長編ドラによくある、そして私の大好きな「エターナル
メロディ」もこのパターン。好きです、これ。で、この二人、別れ際にはやっぱり……
>>バレさん
いやもう絶対に夢オチ、いや初夢オチということか、と確信して読んでたんですが……
こうきましたか。余計情けない。ブチッ、と切られる辺り小学生キャラにありそな風景。
確かに18号、機械ですからコンピュータゲーム強そう。某メイドロボもそうでしたし。
>>草薙さん
>「悪なら許さんぞ!」
これはまた、さながらガルフォードのようなセリフ。前からそんな感じでしたけど、
草薙さんとこのヤムチャは能力や状況がいろいろある割には、素直に正義の味方っ
ぽいですよね。プロトはフォームチェンジなんかしてますが、見せ場を作れるか本家?
>>ゲロさん
いつにも増して、いつも以上に、客観的で淡々としてます。いかにも観察してる人間の、
分析してる言葉って感じで。ヤムチャと17号の人格戦、多分ヤムチャは肉体での戦い
よりは健闘するだろとか思ってましたが……予想以上。実質、勝ったようなものでは。
69 :
作者の都合により名無しです:05/01/05 12:02:22 ID:u/rfGnFX
背中〜ってなに?
70 :
作者の都合により名無しです:05/01/05 18:53:26 ID:Ap7E6aPI
輪廻さん、ふら〜りさんお疲れ様。
輪廻さん、プロト1状態変化ですか。強い。ヤムチャついに始動ですね。
ふら〜りさん、勇次郎登場ですか。波乱含みですなあ。
でも今日一番嬉しいのは、ゲロ氏が蟲師を連載してくれるって事だなあ。
あの漫画大好き。そしてSSも漫画の雰囲気を引き出して良く書けてます。
あ、もちろんゲロの完結も期待してますよ。最終回頑張って下さい。
「回復魔法」
―ダイの大冒険 その後―
大魔王バーンとの死闘のあと、色々会ってめでたくポップとマァムは結ばれた。
もちろんヤる事もヤった。
そうやって何度目かの契りを交わした夜の出来事。
「いったぁ〜いっ!」
マァムは痛みのあまり、両手でポップを突き飛ばした。
掌打をまともにくらい、ポップは全裸の状態でベッドから転げ落ちる。
「イタタ‥、何だよ」
ポップは床に頭を打ち付けたらしく、額の辺りを手で抑えながら起き上がった。
マァムは股間を手で押さえ、目に涙を滲ませている。
「まだ痛むのか?」「痛い」
ポップは変だな、と言って首を捻った。
「親父が言うには、最初は痛いけど、何回かやると気持ちよくなるはずなんだけどなあ‥」
「ならないわよ、あんたが下手なんじゃないの!?」
「そ、そんな事はない‥と思う」
「じゃあ何で痛いのよ!?」
「う‥それは‥」
マァムの剣幕に、少したじろくポップ。
ポップもマァム以外に女性経験はないから、俺は悪くない、と強く言い切れない。
「と、とりあえずは血を止めないと‥回復魔法(ホイミ)かけようか?」
「いいわよ。自分でかけるから」
マァムはそう言って、血が流れる股間に回復魔法をかける。
ポップも痛む頭に回復魔法をかけながら、原因を探ることにした。
毎回マァムに痛い思いさせるのもイヤだし、第一このままでは、毎晩Hのたびにベッドから
突き飛ばされることになる。いくら怪我は回復魔法で治るといっても‥‥
ん、待てよ、回復魔法?
「そうか! 分かったぞ!」
「何?」
「お前、最初のHで血が出た時、回復魔法(ホイミ)かけてたよな?」
「え、うん」
ポップの質問の意図がわからないまま、マァムは頷く。
「2回目の時も、一昨日も、昨日もかけてたっけ?」
「当たり前でしょ、痛いもの。毎回かけてるわよ」
「それだ!」
ビンゴ、とばかりにポップはマァムに指を突きつけた。
「魔法で再生してるんだよ、処・女・膜 が!」
「へ? 」
まだ良く分かっていないマァムに、ポップがもう一度説明する。
「回復魔法は肉体の損傷を治す魔法だろ? だから、毎回破れた膜が再生してるんだよ、回復魔法で。
それじゃずっと痛いわけだぜ。毎日処女喪失してるんだから」
ポップの説明で、ようやくマァムも得心したようだ。
「何よソレ〜。魔法ってとことん融通きかないのね」
「魔法とはそういうモンだからな。‥‥で、次から回復魔法ナシな」
「え〜〜っ!?」
ポップの言葉に、マァムは露骨にイヤな顔をするが、だからといって代案があるわけでもない。
仕方なく諦めることにした。
「これでようやく、Hの最中に殴られずに済むってわけだ」
マァムが納得したのを見て、ポップはほっと胸をなでおろす。
(しかし、毎夜ロストバージンだったのか、ちょっと勿体無かったな‥)
ボカッ!
「また変なこと考えてたんでしょ。鼻の下伸びてるわよ」
「はは‥気のせいだって(鋭い‥)」
(END)
痴話喧嘩ネタです。
実際は魔法使っても、こうならないと思います。
元ネタはARMSスレ。
ARMSのネタってどの部分だろう?
マァム×ポップ派か、バレさんは。俺はメルル×ポップ派ですけど。
お疲れ様です。
_N\/|、
> ,イ⌒ヽ
< (ミ匸文〕
∠ヾル `Д) オラ!この六番隊副隊長阿散井恋次様が
>>76ゲットだ!
,ノ⌒》V》⌒ ̄スア Renji is God !! Renji is God !! Renji is God !!
<,_/ヨ灸\/ 他の副隊長共は全員カス!!このおれが最強だっての!!
/ノノ|从
∠へwVWノゝ
我は神なり!おまえらヴァカじゃねーの!?おれに勝ってるつもりかよ!!アフォどもがッ!!
>一番隊副隊長 名無しwwwしかも瞬殺されてるしwww雑魚すぎ(ヒャッハー
>大前田稀千代 くーっせーんだよデヴ!油ぎっててモイキー、弱いしw(ブブブッ
>吉良イヅル もう完璧池沼だな死ねよお前w(ヒョヒョヒョ
>虎鉄勇音 お前もう身体売るしかねーんじゃねーの?w(ゲラ
>雛森桃 さっさとくたばっちまえこのDQNがぁッ!!!(ヒャッヒャッ
>射場鉄左衛門 だっせー斬魄刀w古臭いやくざにはお似合いだなw(アヒャアヒャ
>伊勢七緒 てめえの隊長に不埒な真似してっからじじいに失禁させられんだよw(グヘヘ
>檜佐木修兵 ごめん先輩おれもうアンタより強いっすからw(^^
>松本乱菊 まさしく「肉便器」www(ムハハ
>草鹿やちる おまえみたいなのムカツクんだよクソガキw(プゲラ
>涅ネム あーあー、ひでえ親から生まれちまってwご愁傷様w(プゲラッチョ
>志波海燕 死人に口なしw(ププペプチョ
朽木隊長ごめんなさい調子ぶっこきすぎました千本桜の制裁だけは勘弁してください
>>もちろんヤる事もヤった。
>>「お前、最初のHで血が出た時、回復魔法(ホイミ)かけてたよな?」
ウホッ!あの巨乳と!!
>オムニバスSS
小生の股間の七福神が反応しますた。
過度なエロは一気に同人臭くなるからやめれ
>バレ
80 :
作者の都合により名無しです:05/01/06 22:15:25 ID:nB8O2heS
バレさん、ショート上手だけどたまに下ネタに走る傾向があるなw
でも好きですよ、エッチ物も含めて。頑張って下さいな。
しかし巨乳マァム人気と巨乳ティファ人気は不滅だな。エロパロ板でw
そろそろミドリ様のおでましな気が。
スチール、ローマ、マルチ、ユル氏、空手小公子あたりはヤバイねえ。
みんな読んでたんだけどなあ。
そうだね。
あとザク氏もやばそうだな。
いったいどうしたんだろう。
もうええちゅうにw 構う俺もなんだが。
今日当たり超格闘士大戦か出木杉かドラ麻雀かDIOかの
新年一発目の投稿がある予感。この予感当たれ!
85 :
作者の都合により名無しです:05/01/07 18:47:20 ID:mT/RituE
>>81 その中で一作でも二作でも復活してくれる事を祈るよ。
俺も全部楽しみにしてた。
>>84 だそうですので他の職人書き込んだらぶっ殺すぞ。
一体どうしたんだろう。
「そう、ドラゴンボールだ!」
フリーザの言葉を耳にしたと同時に藤堂兵衛はガタッと席を立つ。
「あの東方不敗めがやられおったせいでザクに三星球を奪われてしまった!いや、カメラの映像を見る
限りでは東方不敗が自らの意思で手渡したようではないか!あのまま黙って土葬されてしまえば後から
三星球を回収することもできたろうに!」
葉隠散が舌打ちし、藤堂を睨みつける。
「それを貴様が――」
『確かにその通りですが』
フリーザの言葉がそれを遮った。
『あなたにそれを言う権利がおありだとでも思っているのですか?』
宇宙の帝王の鋭い視線が藤堂兵衛に突き刺さる。藤堂は心臓を凍てついた手で直に握られたかの
ような錯覚を覚え、「ひっ」と小さく漏らす。
こ、この男には逆らえん……
『ベースさんは裏切り者の軍王、妖鳳王サイザーを含むハーメル一行を倒し、五星球を手に入れました。
グリフィスさんはミッドランドが王都、ウィンダムを支配する恐帝と交戦中ですが一星球を手に入れていま
す。散さんは新宿を支配し、さらにドルアーガ亡き後のこの塔の支配者であった聖竜クォックスを倒した
上、ここを私達の基地とし、二星球も手に入れています』
ソドム世界会議の開かれている会場。それは、英雄ギルガメスによって一度は魔の手から救い出され
た「ドルアーガの塔」だった。その後ドルアーガの塔は聖なる竜クォックスによって管理されていたが、そ
れを葉隠散が力ずくで奪い取ったのだ。なお、「シンプルが良い」とのたまう散は全60階建ての塔を大幅
に改装、床・壁を何百と破り、高さ30m、直径50mという途方も無く大きい円筒形の部屋を5つ重ねる
という非常に単純な構造の塔に造り替えた。ちなみに、本来51階から60階に相当していた区画は高い
外壁を備えた巨大な屋上となっており、フリーザの巨大宇宙船を受け入れる態勢を整えている。
フリーザの話は続く。
『ラオウさんはケンシロウ一派を倒し、四星球を手に入れています。後藤さんは働きこそ少ないものの、
一応は六星球を手に入れています。で、藤堂兵衛さん。あなただけがソドム結成以来大した行動を起こ
していない。これでは手を組んでいる意味が無いですね……』
「な……な……」
どもりながら唾を飲み込み、藤堂はなんとか言葉を紡ぎだそうとする。
「な、何を言うか!わしとてドラゴンボール探しをしておらんわけでは無い!最新鋭の小型監視カメラを
飛ばすことでザクらの情報を収集するという役割も果たしている!だいたいフリ――」
フリーザ、お前こそ何もしていないではないか!
そう口にしようとしたが、フリーザに対する畏怖が言葉を喉につまらせた。
『なんですか?』
藤堂は咳払いをし、言葉を濁す。
「わ、わしは決してソドムに損をさせるようなことはしない!最後のドラゴンボール、七星球は必ずやわし
が見つけだそう!そしてもう一つ」
藤堂兵衛は額に脂汗を浮かべながら人差し指を立てた。
「ソドムに有益な仕事をしてみせよう」
『ほう?それは一体……』
「ザクやシャッフル同盟だけが戦士ではない。地球上で邪魔となるであろう強者のほとんどは既に片付け
られているが、肝心な奴がまだ残っている。その男はたった一人で大国の兵力に匹敵するだけの力を
持ち、将来必ずや我らソドムの大きな障害となるであろう者である。その男の名は――」
藤堂は拳を強く握って続ける。
「江田島平八。ザクの師匠にして、あの範馬勇次郎をも凌駕する地球最強の男。今、ここに宣言しよう!
わしはソドムの大敵となるであろう江田島平八を倒し、その首をソドム世界会議に捧げる!ソドム最大の
敵となるであろう奴を、このわしが倒してやろう!」
『江田島平八ですか。確か情報提供者もその男についてわずかばかり触れていましたね……。あなたの
言うとおり、本当にその男が我々の障害となりうるかは疑問ですが、七星球を手に入れるというのならば
それで良しとしましょう。ですが……もしも江田島平八に破れソドムに不利益となるような失態を犯すとな
ったならば――主に情報の流出が痛手となりましょうか――あなたを躊躇無く消させていただきますよ』
藤堂は生唾を飲み込む。喉仏が上下し、ごきゅっと鳴る。
「う、うむ。打倒江田島と七星球の捜索、見事2つとも為遂げて見せようぞ」
我が作戦決行の時は近い。余裕の無い表情を作りながら、藤堂は内心冷静にコマを進めていた。
今回投稿分終了。
前回の戦闘力の相対評価に関して。
ザクは最新の能力を比較できますが、他のシャッフルの戦士は(覚悟以外)過去に闘った時点での能力を
比較対象としています。
ですので、「刃牙10」は毒状態のものです。裏返っても、そう大して上がるものではないかもしれませんが。
覚悟が例外なのは、解説者が散であって現状を把握しうるからということです。
本文では説明する必要も無いものと判断し、ここで説明させていただきます。以上
>33より
無人島の森の中にぽっかりと広い空き地があり、そこにサイバスターと、なにやら妙な機械が置かれていた。
サイバスターで次元断層を作り、そのヘンテコ機械で次元断層を安定させる―――というような説明を聞かされたが、
正直その場のほぼ全員チンプンカンプンであった。
それよりは巨大ロボットのサイバスターの方が皆気になるようで、ペタペタと脚部を触ったりなんかしている。
そんな光景を、のび太はボンヤリ眺めるだけだった。
「のび太くん、どうしちゃったのさ・・・」
「別に・・・」
ドラえもんが心配そうに話しかけても、のび太は生返事を返すばかりだった。
「―――さて、準備はできたか?こっちはもうOKだ」
神王が一同をうながしたところで、ドラえもんはのび太を気にしつつもポケットから<タイムマシン>を
取り出した。
「それじゃあ―――本当に、今までありがとうございます」
ドラえもんが深々とお辞儀する。神王はジャイアンに向き直った。
「タケシ、帰っても元気でやってけよ」
「おう、いつかおっちゃんくらい強い男になってみせるぜ!」
「乱暴さだけだったらもう追いついてるよね・・・」
「「何だとお!?」」
余計な一言を言ってしまったスネ夫は、二人同時に睨まれて仰け反ってしまった。
そんな様子をみんなで笑い飛ばして―――のび太たちはタイムマシンに乗り込んだ。
「さて―――それじゃあスイッチを入れるよ」
神王と魔王がヘンテコ機械をいじくる。ヴヴヴーーン・・・と妙な音が響き、空中に巨大な黒い穴が生まれた。
のび太が吸い込まれた穴とそっくりだったが、機械によって安定されているためかあの時のように周りの物を
飲み込むようなことはなかった。
「よし・・・あれに飛び込めば、帰れる!」
ドラえもんは喜び勇んで手を握り締め、ガッツポーズをとる。
のび太はゆっくりと顔をあげて、稟たちへと向き直った。
「稟さん・・・本当に楽しかったよ」
「ああ・・・俺もだ」
稟は微笑んだ。優しい笑みだった。
「亜沙さんも・・・お母さんと仲良くね」
「うん、分かってるよ、のびちゃん」
母親と寄り添う亜沙が答える。
「みなさん・・・ありがとうございました」
「おいおい、やめろってのび太・・・そんなあらたまってよぉ・・・畜生、目から水が出ちまうだろうが・・・」
「そうだよ、のび太ちゃん。楽しく別れようじゃないか、ふふ・・・いけないね、まったく・・・」
神王と魔王が感極まったあげく泣き出してしまった。
のび太も少し泣きそうになって、顔を背ける。本当に―――みんないい人たちばかりだ。
プリムラが結局姿を現してくれなかったのが心残りではあったものの―――この世界で得られた何かは、
とても大きな何かだ。
「さあ・・・行くよ、みんな」
ドラえもんがタイムマシンを操作する。ゆっくりとタイムマシンが浮かび上がり、空の穴へと向かう―――
その時だった。
「―――のび太!」
大きな声で誰かがのび太を呼んだ。のび太は顔を向ける。
「・・・プリムラ!」
プリムラがいつの間にか姿を見せていた。どうやら森の木の陰に隠れてこちらを窺っていたようだった。
彼女はのび太たちに向かって駆け出す。走ったまま、言葉を紡ぐ。
「私―――のび太に会えてよかった!青玉に会えてよかった!みんなに会えてよかった!」
「会わなきゃよかったなんて―――嘘だから!」
「嫌いだなんて、嘘だから!」
「だから―――だから―――」
そして、タイムマシンの元に辿り着いた彼女はのび太に手を伸ばす。しかし、空中高く浮かんだタイムマシンには届かない。
と、彼女の身体がいきなり宙に浮いた。
「ほら―――これで届くだろ!」
稟が、プリムラの身体を持ち上げたのだ。そして、のび太も戸惑いながら、彼女の手を握った。
そして、プリムラは―――
「だから―――私のこと、忘れないで!」
のび太の手を握り締めて、一際強く叫んだ。泣きながら、叫んだ。
「うん―――忘れないよ!」
のび太はそれに答える。のび太もまた、泣いていた。
「絶対、プリムラのこと忘れないよ!」
二人は顔を見合わせて、笑った。泣きながら、それでも心から笑った。
そして、二人の手が離れ、タイムマシンは更に上昇し―――空に浮かぶ穴へと、消えていった。
稟はそれを見届けて、プリムラを地面に降ろした。
プリムラは、泣きながら稟に問い掛ける。
「りん―――これで、いいん、だよね・・・?」
「ああ、これで―――いいんだ」
だけど。プリムラは続けた。
「だけど―――ここが、いたい、よ」
彼女は自分の胸を指し示した。
「そうだな―――俺も、痛い。けど、その痛みは―――」
その痛みは。
「それは―――それだけ大切な人だった、ってことなんだよ」
「―――そうだね」
プリムラは頷き、ポケットに手を入れて、何かを取り出す。それはのび太がくれた、あやとりの糸。
それを彼女は強く握り締めた。
夏の空は、どこまでも青く澄み渡り、彼らを包み込むように広がっていた。
投下完了。
次回、最終回です。
最終回の後書きについては、皆さんの御好意に甘えて、長文バリバリでいかせてもらいます。
次回作についてはまだプロットを練ってる段階ですが、神界がわりとシリアスな話だったので、
ギャグ全開のバカ話にしたいと思っています。
それでは、最終回でまた会いましょう。
96 :
サマサ!:05/01/07 22:55:24 ID:u7MdhDW4
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
第五話「誇りを懸けて」
午前中全ての講習を終え、ようやく小休止を迎えるしけい荘一行。
「本当に死ぬかと思ったぜ」
毒で失った栄養分を補給するように、昼食をむさぼり食うシコルスキー。美味と滋養を
兼ね備えた薬膳料理に、他の面々も舌鼓を打つ。
「ウマイナ、コレ」
「ふむ。ほぼ毎日ステーキとワインだったから、こういう料理は新鮮だな」
空腹を満たしたのも束の間、午後からは五つもの講習を受けねばならない。より熾烈な
後半戦の幕開けだ。オリバが皆に呼びかける。
「さぁ、そろそろ時間だ。まずは節拳道、気を引き締めていくぞ」
孫海王は知っていた。これから現れる一団が、只者ではないということを。楊海王は肩
に痛打を受け、陳海王など一撃で倒されてしまった。また、李海王の毒手が克服されたと
いう情報も入っている。
「これ以上、海王を継ぐ者として恥をかくことは許されん。ここで容赦なく潰しておくの
も武術だな……」
孫が独り言を呟いていると、オリバたちが部屋へ入ってきた。六つの尋常ならぬ威圧感。
「節拳道の指導、よろしく頼むよ。孫海王」
「うむ、では早速手合わせといこうじゃないか」
不敵に微笑む孫海王に対し、オリバはドイルを投入した。理由は「どことなく似ている
から」という、余りに適当なもの。
だが、これから手合わせだというのに、孫は両手十指に付けた指輪を外そうとはしない。
ドイルも指摘するが、孫は気にもしない様子。
「指輪が気になるか。武器として使用されるのではないかと──その通りだッ!」
不意の一撃が、ドイルの顔面を打ち抜いた。ぐらつくドイル。
「武術というのは本来こういうものだ。奇襲、武器使用、まず勝利ありきなのだ。文句は
あるまい?」
卑劣さを恥じず、あくまで武術だと主張する孫。ドイルも歪んだ鼻を整えながら、逆に
笑い返す。
「なるほど……確かにアンタの言う通りだ。いいだろう、受けて立とう」
ドイルと孫海王による路上ルールでの決闘。
孫は理知的に振る舞いながらも、内心では踊り出したい心境であった。握力では中国一
と自負する彼が握り込んだ、極上の拳。しかも、特注した鋼鉄製の指輪による武装。まさ
に鬼に金棒。
「ふふふ、来たまえ」
軽く挑発するが、ドイルは全く動かない。それどころか、放心したかのような呆けた顔
をしている。不意打ちが予想以上に効いていたのか。
いや、それはない。孫もそこまで慢心はしていない。何らかの策を弄しているはず。
「どうしたね、怯えてしまったかな」
孫が再び挑発するが、これも効果はなかった。
しばらくは睨み合いが続くが、十中八九勝てると踏んでいる孫が我慢する道理はない。
「よかろう、ならばッ!」
一歩踏み出し、突きを放つ。最短距離、狙いはもちろん顔面。が、孫の視界が突如光に
よって遮られた──迫る爆風──反応すら出来ず。
炎に包まれながら、孫は大の字で崩れ落ちた。ドイルの胸からは、もうもうと硝煙が垂
れ流れている。
「この私に武器で挑むとは愚かだったな。手品師はタネを使用する時にこそ、真価を発揮
するというのに」
オリバが屈み込み、孫を診断する。
「所々焦げてはいるが、命に別状はないようだな」
「一応、火力はいつもの半分にしておいたからな。ちなみにシコルスキーの場合は、いつ
もの三倍だ」
何はともあれ、孫は当分失神したままだろう。節拳道、修了。
受柔拳。担当するのは厚い脂肪に覆われた拳法家、毛海王。肉弾戦では、脂肪は立派な
防具となる。打撃に対する耐久力はかなり高そうだ。
「武術において、脂肪は大切な要素よ。よって、今日は私と大食いをしてもらうわ」
別室に用意されていたのは、餃子の山だった。部屋の隅で息を切らしている坊主が作っ
たのだろう。丁寧に作られた餃子と、そうでないものとの差が激しい。
「では、スタートよ。制限時間は一時間、どんどん食べてちょうだい」
格闘士たるもの、この程度の餃子で怯んでいてはならない──七人は一斉に餃子へと飛
び掛かった。
十分後、早くも最初の脱落者が出る。
「ぐはあッ!」
小柄なため、やはり胃の容積も不利だったのか。柳は餃子の山へ埋もれていった。
「ミギャアアアアア!」
「全部喰っちまうってのも、ゴバァッ!」
二十分経ち、ドイルとシコルスキーも餃子地獄の犠牲となった。残ったのは四人、いず
れも並々ならぬ体格と胃袋を持ち合わせている。
「ふむ、堪能した……ぐぼッ!」
三十分が経過した頃、ついにドリアンが限界に達した。二メートルを超える巨体が、餃
子の中に沈んでいく光景はまさに壮絶であった。
生き残っているのはスペック、オリバ、毛海王。互いに互いの戦意をアイ・コンタクト
で確認すると、すぐさま闘争は再開された。餃子が彼らの口に吸い込まれるように、消え
去っていく。
「体ノ中、餃子デ……イッパイダゼ……」
スペックも餃子に呑まれていった。残された時間はあとわずか。
──残り二名。
オリバも毛もペースを落とさないが、残り一分でようやく均衡が崩れる。
「や、やるね。この対決のために昼食抜きにしたのに、合格よ……うげっ!」
毛は餃子の山から転げ落ち、頭を打って気絶した。
餃子の頂上で、覇者であるオリバは服を脱ぎ去りポーズを決めた。それと同時に、時間
切れを知らせる銅鑼が鳴り響く。この音で目を覚ました柳は、思わず嘆いた。
「何をやっているんだ、我々は……」
一話退場の孫海王、コッの毛海王。少し悩みました。
あと、大食い自慢には小柄な人も多いとか……。
以上です。
谷には冷たい風が吹いていた。もう夏が近いというのにこの寒さである。冬になったら
熊は冬眠し当りは氷と雪に包まれるのであろう。刃牙とのび太は道を歩いていた。
木々は青々としており生命力を感じさせる。しばらく行くと岩が見えてきた。そして
刃牙は立ち止まった。
「刃牙さん。ここは?」のび太が不審に思って聞いた。この前の一戦の再戦を申し込まれるかもしれない。
谷の近くでの決闘。無理だ。自分には勝機がない。あれは刃牙が手加減してくれたからこそどうにかなったのだ。
本気なら自分は負ける。ジャイアンとの喧嘩よりもヒドイ。
のび太はこの世界にきてから一度も戦闘らしい戦闘をしていない。
熊との戦闘も戦闘ではなかった。相手がのび太を全く意識しなかったから。
「ここには僕の友達が住んでいる。君にも会って貰おうと思ったんだ。」刃牙がさわやかな口調で言った。
友達。のび太には刃牙が“友人”という言葉を使わなかったのが引っかかった。もしや・・・。
「あの、刃牙さんのお友達ってどんな感じなんですか?」のび太はオドオドしながら言った。自分の予想が正しければ自分は小便を漏らしてしまうかもしれない。
「合えばわかるよ。」
そして二人は岩を降り、岩に作られた洞窟へと入っていった。
「随分と暗い所へ住んでるんですね。」のび太が言った。直後、のび太は肩をガシッと掴まれた様な官職を覚えた。
小便がちびるのを我慢しながらのび太は後ろを振り返った。のび太の目に飛び込んできたもの。それは範馬刃牙の顔であった。
「刃牙さん?」
「隠さなくてもいい。君がココに来た理由はアイツに言われたからだろ。」刃牙が淡々とした口調で言った。
「違います!」のび太があわてて首を振った。今刃牙と勇次郎を会わせない方がいいという事は分かる。
「そうか・・。アイツがもしそういう事をいったらすぐに俺に伝えてくれ。アイツが人を鍛える時は・・・強くなったそいつをボコボコにする時だけだから。
俺はアイツに一度負けた。でも友人も出来た。皆アイツを倒したいんだよ。」刃牙が怒りに目を曇らせながら言った。その剣幕はのび太を萎縮させるには十分だった。
のび太の体には冷や汗が流れていた。嫌に自分に対して親切にしてくれると思ったらそれが魂胆だったのか。恐らく夜の内に逃げ出すしかない。ここでの修行が終わったらドラえもんに頼んで逃げ出そう。
突如、のび太の耳に足音が聞こえてきた。ザッという音が聞こえる。
のび太が再び前を向くと体中が毛むくじゃらの獣の姿が目に入ってきた。
「刃牙さん。あれは!」
だがのび太とは対照的に刃牙は笑っていた。まるで懐かしい人間に会った子供の様に。
「彼が僕の友、夜叉猿だよ。」刃牙が落ち着き払って言った。
「でも夜叉猿は昔武芸者を食べたって安藤さんが!」のび太はパニック寸前だった。
「そんなのただの伝承だよ、それに彼はまだ生まれてから5年ぐらいしか経っていない。だから人間を食うなんて事はしないよ。久しぶりだね。夜叉。」
あっけにとられるのび太を尻目に刃牙と夜叉猿は抱き合った。
数時間後、のび太は刃牙と別れ家へと帰った。刃牙から勇次郎のした事を聞いたのび太は複雑な気持ちだった。
自分は殺人鬼に格闘技を教え込まれていたのだ。刃牙の言っていた事は間違いなく真実だ。これは間違いなく帰るしかない。
翌日、のび太は安藤に別れを告げた。
「短い間でしたがお世話になりました。ご恩は一生忘れません。」のび太は深くお辞儀をした。
「気にするな。まあ勇次郎にあったらよろしくと伝えてくれ。元気でな。」
こうしてのび太は飛騨山脈を後にした。
今回の投稿はこれで終わりです。
106 :
作者の都合により名無しです:05/01/08 09:40:32 ID:r1u2q+7l
サマサ氏、最後にサマサコールについても一言頼む。
107 :
作者の都合により名無しです:05/01/08 11:29:18 ID:Gp6nzHeW
>ザク
フリーザ様威圧感満点でしたね。でも個人的に塾長>勇次郎の表記が嬉しかった。
フリーザ様ラスボス確定かな?地上最強の塾長がフリーザを倒す展開希望です。
>神界大活劇
次回で終わりか。この作品の雰囲気好きだったな。神王とジャイアンコンビとか。
でも、プリムラとのびたが分かり合えてよかった。ラストと次回作期待してます。
>しけい荘
お笑い軍団だ、海王たち。原作でも郭と烈以外そんなもんだけどw毛オカマみたい。
「六つの尋常ならぬ威圧感」ってシコルもカウントされてるのに少しツボでした。
>ドラえもん外伝
ありゃ、飛騨山脈でのびたと夜叉猿の死闘が見られると思ったのにw少し肩透かし。
しかし、勇次郎やっぱりのびたを喰う気なのか。まったく喰い足りないと思うがw
神界が終わるのが残念でならないな。サマサさん、お疲れ様です。
出来るだけ早い復活を。
・ザクさん
味のある作戦会議ですね。フリーザは宇宙の頂点らしく別格ですか。
ドルアーガとかの小ネタの使い方も上手ですね。
・サマサさん
出会いがあれば必ず別れもある。だけどプリムラとのびたの間のものは
永遠ですね。寂しいけど、最後は大団円でお願いします。
・サナダムシさん
ドイルと柳が前回よりかっこ良くなっている気がします。オリバの無敵は
相変わらずですが。シコル可愛い。毛はもっと可愛いw
・草薙さん
正直言えば、やしゃ猿と戦わないなら何しに飛騨の山奥まで来たのかとw
のびたと勇次郎線、楽しみなような怖いようなw
>しけい荘
>「指輪が気になるか。武器として使用されるのではないかと──その通りだッ!」
ここ良かった。
シコルに3倍の火力って・・・w
大食いは痩せてる人の方が多いよね。
>帰ってきたドラえもん外伝
推敲しろ
好きな作品だけ感想するのは否定しないが、罵倒するのはいかがなものか。
そのつもりは無くても、もう少し書き方に気を使うべきじゃないかな。
草薙さん、これからも頑張って下さい。
でも、上梓する前に一度読み直す癖をつけた方がいいかも。
>>110 >好きな作品だけ感想するのは否定しないが
こう書く時点で単独の作品に対してレスをすることを特殊なものと見なしていると思うのだが。
否定する・しないの問題ではない。
推敲に関しては、一度ならず既に忠告をされている。
にもかかわらずそこを直さないのは草薙が自分の作品に対して誠実さを持っていないからじゃないか?
やんわりと言われても気付いていないようだから、今度はあえて強めに言った。
いちいち人の言ったことを書き直してご機嫌とりをしているようだが、そんな必要も無いだろ。
112 :
作者の都合により名無しです:05/01/08 18:36:52 ID:3mzmrvUN
まあ、気にいらなければスルーすればいいだけの事だけどね。
俺は草薙氏のドラえもんは好きなんで頑張って欲しい。
ザクさんとサナダムシさんの実力者はさすがに安定して面白い。
ザクさんはフリーザの不気味さとこれからの展開が気になる会議だったし、
サナダムシさんは海王のショボさと以外に?強いドイルが光ってた。
でもやっぱり今回はサマサさんだな。長編が終わるのは感慨深い。
どうかまた次も連載してくれ。最後まで頑張ってな。
いろいろあるけど、職人さん方これからも頑張ってな。
応援してる人間は必ずいるから。
>>66 朝が来れば目が覚める。カーテン越しの柔らかな朝日と、快い雀の声とが響子を起こした。
「……んむ……っ……ん? あ、あれ?」
響子は、寝袋に入っている。それはいい。だが真上に、天井がある。屋内だ。公園で野宿
したはずなのに。
響子は寝袋を開け、体を起こしつつ周囲を見回した。どうやらここは畳敷きの和室らしい。
襖の向こうから、何やら美味しそうな匂いが漂ってきてたりして……
「もしもし。起きられましたか、神余殿?」
襖の向こうから、本部の声がした。響子が返事をすると襖が開いて、
「おはようございます。丁度良かった、もうすぐ朝餉の用意が整うところで」
本部が姿を現した。しかも、妙に板についた割烹着姿で。
「ちょちょ、ちょっと待った本部さん。ここはどこ、オレはなぜ、あんたどうして」
「ここはわしの道場、兼居宅。神余殿は、ぐっすりと眠られたところを見計らって
運ばせて頂きました。昨夜の様子では、招きに応じて下さるかどうか微妙でしたから。
ああ、寝袋は開けておりませんぞ。絞め殺されたらかないませぬからな。はははは」
「はははは、じゃなくて。あんたホームレスじゃなかったのか?」
「失敬な。こう見えても一流一派の道場主ですぞ。ホームレス生活は、ただの趣味です。
わしのことを、風貌からホームレス呼ばわりする輩が多かったので、ヤケになって
やってみたらハマった、というところでしてな」
と簡単に説明されてしまって。響子は、開いた口が塞がらなかった。
『や、やっぱりこの人、ヘンだ。絶対』
「洗面所はあちらですから、顔でも洗って下され。寝袋を畳んで下されば、その部屋に
ちゃぶ台を置いて朝餉と致しましょう」
割烹着姿の本部が、引っ込んでいった。おそらく台所へ向かったのだろう。
響子は、しばし考えて。それから大人しく、洗面所へ向かった。
『まあ、ヘンだけど悪い人じゃなさそうだし……な』
ちゃぶ台に、差し向かいに座った本部と響子。いただきます、と合掌して朝食が始まる。
ご飯と味噌汁を中心にした、純和風の朝ご飯。まず響子は味噌汁を一啜り。
「んっ? この味噌汁って」
「ほう、違いが判りますか? 家庭菜園の無農薬野菜と、その野菜を煮込んだダシで
作ったものです。ホームレスではないものの、裕福ではないのも事実でしてな」
「へえ。これ、作り方教えてくれないか? オレの母さんも、肉や魚は医者に止められ
ててさ。ダシジャコさえ使えない状態なんだ」
「それはそれは。よろしい、夕食の仕度の時にでも教えしましょう。何でしたら、
野菜もお分けしますぞ」
「あ、ありがとう、本部さんっ!」
「お安い御用です。しかしその代わり、昨夜のわしの要望もお忘れなく」
と言い、本部も味噌汁を一啜り。それから、「要望って?」と首を傾げる響子に言った。
「たまには、ご自分のことも考えられよ。そして神余殿の、おそらくは一番可愛いで
あろう笑顔を、見せてあげて下され。母上や、神余殿を案じてくれる同僚とやらに」
本部と響子が、ちゃぶ台を挟んでほんわかムードに入っていた頃。
空間を越えたチョーモンイン日本支部では、アンティークドールのような美幼女、
もとい美幼児が、血相を変えて受話器に齧りついていた。その手には書類の束がある。
「どういうことですか、今頃こんな! こっちはもう、一人送り込んでいるんですよ!?
こんな相手だと解っていたら、ウチなんかじゃなく専門セクションの……ですから、
連絡がつかないから言ってるんです! ……もういい! あなたじゃ話にならないっ!」
乱暴に受話器を置いたのは、チョーモンイン日本支部のチーフ、コンスタンツェこと
神威マモル。彼にしては珍しく、というか恐らく人前では初めて、苛立ちを露わにして
頭を掻いている。
そんなピリピリ空気のオフィスに、いきなり炊きたてほこほこご飯のような雰囲気が
流れ込んできた。朝日の中に舞う小鳥のような、元気な愛らしい声とともに。
「おはようございます、チーフ! あのですね、今日のお茶菓子は期待していいですよっ。
こないだ、とってもおいしいお饅頭のお店を見つけ……チーフ?」
ほこほこご飯の雰囲気を持ってきた本人が、ピリピリ空気を感じて言葉を止めた。
この子の名は神麻嗣子(かんおみ つぎこ)。今日もいつもの、着物に袴に白足袋に草履、
そして三つ編みと、大正時代の娘さんな装いをしている。この嗣子も響子の同僚、
ここチョーモンインのエージェントだ。
「あの、どうかしたんですか? 何か良くないことがあったようなお顔」
「……最悪です。神麻も知っているでしょう? 神余の任務のこと」
「はい。響子ちゃんのことですから、大丈夫だとは思うんですけど。でもやっぱり、
心配ですよね。異世界でたった一人だなんて。響子ちゃん、どんなに心細いことか」
「心細いだけなら良かったんですけどね。実は、」
マモルは語った。範馬勇次郎という男の、マジで冗談ヌキな超規格外の危険人物っぷりを。
それを、自らのもとへ誘き寄せる工作を今、響子はやっているのだ。一人、異世界で。
「……そ、そんな……響子ちゃんが……」
嗣子の顔が、降り積もった粉雪のように、白くなった。触ればきっと冷たいだろう。
「帰還はムリとしても、今すぐ範馬勇次郎の誘き寄せをやめるよう、指示しようとしたん
ですけどね。通信が繋がらないんですよ。このままでは神余が……」
ばたん! と乱暴にドアを開けて、嗣子がオフィスから飛び出していった。
一分と経たずに、チーフ席の内線電話が鳴る。
《もしもし、神威チーフ! どうなってるんです!? 今、あんたんとこの、確か神麻とか
いう子が、予備の転送ブレスを強奪していったんですけど!》
「か、神麻が? それで?」
《それでも何も、もう行っちゃいましたよ! どこか異世界に!》
嗣子がどこに行ったか? 決まっている。問答無用の猪突猛進で響子を追いかけたのだ。
『あ、あのバカっっ!』
転送ブレスは、元々二つしかない。つまり響子を止めるにしろ、援軍を送るにしろ、一人
しか行けないのだ。
それが前者であるのなら、まあいい。だがもし手遅れで、つまり既に範馬勇次郎と響子が
交戦していて(あるいは響子が敗れていて)、そこに嗣子が飛び込んだとしたら。
もう、終わりだ。二人揃って、範馬勇次郎に殺されて終わりだ。
「くっ……」
マモルはただ、祈った。嗣子が間に合うように。響子が範馬勇次郎に会わぬ内に、
響子を止められるように。そして二人揃ってブレスの回復を待ち、無事に帰れるように。
……だが、甘かった。マモルも、チョーモンインも、まだ甘く見ていたのだ。
範馬勇次郎、という名を持つ男の、全てを超越した巨凶ぶりを。
>>69 「背中に付けてるマークはオーガ」という、以前私が書かせていただいたSSです。
>>バレさん
魔法でこんな簡単に……現実には、治したり広げたり狭めたりといった各種手術が
あるそうですが。それらが魔法でほいほいできてしまったら、便利なんだか何なんだか。
♪いつか流す涙 夜重ねるたび きっと神秘に変わる♪てな趣がございませぬな。むぅ。
>>ザクさん
ハーメルやらケンシロウやら、容赦なくバタバタやられてますな。それも戦闘シーン
どころか回想シーンすら出してもらえずに。ソドムの面々ががそれだけ強い、という
ことでしょうか。それともこの先、ハーメルたちがザクたちと出あって復讐戦、とか?
>>サマサさん
終始、おっちゃんとの絡みが楽しかったジャイアンですが、スネ夫も加わっての別れの
シーン、いい感じです。で真打ののび太とプリムラ。稟に持ち上げられてるのが可愛い、
とか思ってたら泣きながら胸痛めてて。でもその痛みは……と。じんわり感動しましたっ。
>>サナダムシさん
とりあえずシコルの強靭さが一つ証明されましたな。いつもの三倍、て軽く言われてます。
そういえばいつぞやのショーの時も、容赦なかったですもんねドイル。対シコル加害率、
オリバより高いのかも。あと黙々と大食い勝負してるこの面々、という図もなかなか深い。
>>草薙さん
緊張感高まりつつも、とりあえずこの場は流れましたか。のび太は刃牙に対して「本気で
やったら負ける」と考えてますが、刃牙がのび太をどの程度評価しているのか、興味ある
ところ。現状では、勇次郎の方がのび太を高評価してそう、と思えますが……はてさて。
あれから、どれだけの月日が過ぎたことだろう。
確か、時計には年月表示機能も付いているはずだ。僕は、凄く久しぶりにモニターの上のほうに
付いている時計に目をやった。
僕の中では、時は進んでいるとは思えなかった。思いたくもなかった。だけど、時計は明確に、は
っきりと見せ付けてくれる。もう、あの日から十年も過ぎていたのだ。母さんを、真に僕のものとした
あの日から。
あの日から、徐々に僕は「自らを取り繕う」ということをしなくなっていった。
昔は、自分の事を『私』と言っていたような気がする(正直な話、それすらも朧気だ)。だけど、そんな
ことはくだらないと思うように、段々なっていった。いつのまにか、僕は『僕』だった。
僕は立ち上がり、鏡に向かう。向かおうとするが、足が覚束ない。壁に手をつきながら、全身を映すだ
けの大鏡のある更衣室に、よろよろと向かう。
鏡に映された僕は、幾分皺が増え、多少あった黒髪は、全て白に染まっていた。腰は曲がり、杖がなく
ては立ち姿勢を維持することすら困難。
僕は、もう七十過ぎの老人なのだ――厳然と、事実を突きつけられる。
再び僕は、人生の半分を過ごしてきた研究所の椅子へと戻る。
隣の椅子には、母さんが座っている。あの日以来動かない。機能自体は間違いなく停止してはいないの
に、何故なのだろうか。
僕は深い息をつき、ほんの僅か中断していた作業を再開する。脳も急速に老化してきている。急がなくちゃ。
あの日から、三十年経った。
僕はブラックコーヒーを拵える。勿論、僕と母さん二人分だ。僕は、ミルクも砂糖も入れない。昔からそれだけ
は変わっていない。一方母さんは、ミルクは入れないが砂糖は入れていたような気がする。どうしよう、砂糖が
切れてしまってた。砂糖が入っていないコーヒーなんて、母さんに飲ませるわけにはいかない。
今から多分二十年位前に、僕は自らを人造人間とした。これは、以前から研究は進めていたので、仕上げを
するだけで済んだ。楽だった。
僕は、普通の人間でなくなった代わりに、普通の人間でいるよりも長く母さんと一緒にいれるようになったのだ。
迷うことなど、ある筈がなかった。
今、僕が知る限りでは(この星に異星人が侵入していない限りは)、地球には僕と母さんしかヒトはいない。
だからこそ、僕と母さんはヒトとして、ヒトの成れの果てとして、この星で生を続けねばならない――
――まあ、そんなのはウソで、僕は母さんと一緒にいたいだけなのだけど。
そんなことを思いながら、僕は母さんの分のブラックコーヒーを棄てた。
僕は、今だからこそ思うのだ。
ヒトも。
動物も。
植物も。
この世の生あったもの全て。
全ては、愛なのだと。
僕は母さんだけを愛していて、それだけで。ヤムチャとか、そんなのはどうでもよかった。それだけ。
愛が、命あるものの行動を決める決定的で究極的なものだと。
僕は、今だからこそ思うのだ。
あの日から、途方もない時が過ぎた。
さすがに、体と頭の動きが鈍くなってきた気はするけど、僕はまだまだいける。
母さんは、どうだろうか――うん、まだ、体の中は動いてる。
一度も、動いてはくれないけれど。
いつか、母さんは動いてくれるだろうか?
もし母さんが動いてくれたなら、僕は何をしようか。
そうだ、景色のいい小高い丘に行こう。晴れの日が良い。目の前に大きな山があるとなお良いと思う。
その時、僕は言うんだ。「綺麗だね」って。
その言葉に、母さんが笑って頷いてくれたなら、僕は天にも昇る気持ち、というやつになるだろう。
いつか、そんな日が来るまで、僕は生きていたいと思う。
生きていたいと、思う。
ドクターゲロのほんのお遊び・完
ゲロ終了です。正直、ゲロは序盤と最終回が書きたかっただけなのですが(中盤の展開は失敗でした)
なんにせよ、終わりまで書けて良かったと思います。
なんかいきなり爺さんが『僕』口調になってキモかったと思いますが、許してください。
次回から『蟲師』が始まります。これは書きたくて仕方がないので、下手したら今日中にも来るかもしれ
ません。まあ、ほぼあり得ませんが。音と意思がよく通って困っちゃう、って話です。
>>60 おお。
>>61 短かったのはなんでかってと、あの分量で十分足りてたからですね。あとは作者のやる気の欠如です。
>>68 作者のテンションがやたら低かったからです。確かに、ヤムチャ強すぎましたかね。
>>70 最終回は別の作品です。こういうのがちょっとだけ書きたい気分だったので。
蟲師は、あなたの期待に応えられるかな……頑張ります。
では。近いうちに。拙い作品でしたが、ご愛読有難う御座いました。そして次回宜しく。
ところで、最終回長いっていったけど、別に長くなくて御免なさい。
背中につけてるマークはオーガw
背中につけてるマークはオーガw
ゲロさん、連載完結おめでとう&お疲れ様です。
ハッピーエンドでは無いかも知れないけど、
この作品の締めには最適な終わり方だったと思います。
でも、最後の2レスが詩的な表現になっていたのは、
やはり次作の蟲師の影響でしょうかw
蟲師期待してます。これからも頑張って下さい。
面白いんだけど、救いが無いラストって読んでて少しブルーになる。
128 :
作者の都合により名無しです:05/01/09 20:11:10 ID:PM5lMP1a
>ゲロ氏
連載終了お疲れさんです。
まあブルーなラストですが、こういうのもアリでしょうね。
でもゲロ氏には申し訳ないが、作品終わった寂しさより
蟲師の期待感の方が上だwこれからも頑張れ。
でもドクターゲロ、長編カテゴリに足りないのかな、長さ?
129 :
128:05/01/09 20:47:39 ID:PM5lMP1a
ごめん。結構前に長編移動してたみたい。勘違い。
ジュネって結構口が滑りやすいのな。
>94より
のび太たちの世界にて―――
のび太たちが元の世界に帰ってから、早いものでもう夏休みは終わりに近づいていた。
「よし、出来た!」
そんなある日、のび太は部屋で原稿用紙を持って歓声を上げた。
「何が出来たのさ、のび太くん?」
「あ、ドラえもんか。ほら、宿題のお話作りだよ」
「へえ、どんな話にしたの・・・あ、そうか」
ドラえもんは合点がいった、というふうに言った。
「あの世界での出来事を書いたんだね?」
「うん・・・まあね」
のび太は少し寂しそうに笑いながら語った。
「宿題ってこともあるけどさ・・・こうしてあの世界のことを残しておきたかったんだ。
絶対忘れないって、約束したから・・・だから、こういうふうにお話にしてみたんだ」
「そっか・・・それはいいね」
ドラえもんも感慨深げにウンウンと頷く。そして、思いついたように訊いた。
「ところでさ、タイトルはどうするの?」
「タイトル?・・・そうだなあ、色々考えてみたけど、一個だけ、これしかないってのがあったよ」
「どんな?」
「うん、タイトルはね―――」
稟たちの世界にて―――
のび太たちが元の世界に帰ってから、早いものでもう夏休みは終わりに近づいていた。
「―――出来た」
プリムラは書き上げた原稿用紙を目の前にして、側にいた稟と、家に来ていた亜沙に向き直る。
「はい、リムちゃんよく出来ました」
亜沙はプリムラの頭を撫でる。亜沙の体調はかなりよさそうだった。
最近は適度に魔法を使うことにしているおかげで、以前のように倒れることがなくなったと言っていたのを
稟は思い出した。
こういう彼女の変化ものび太たちのおかげなのかな、と思いながら、プリムラに尋ねる。
「しかしさあ・・・なんでいきなり今回のことをお話にして書いてみたいなんて言い出したんだ?」
「うん・・・」
プリムラは少し寂しそうに笑いながら語った。
「私が、のび太たちのことを忘れたくなかったから。こうして形にしておきたかったの。
約束したから。絶対忘れないって」
「そうか・・・」
稟は感慨深げにウンウンと頷き、そして思いついたようにプリムラに訊いた。
「ところで、タイトルはどうするんだ?」
「タイトル?・・・一個だけ、いいのを思いついたから、それにする」
「どんな?」
「うん、タイトルはね―――」
二つの世界に生きる人々。
遠くにいても、心は通じ合っている。
「タイトルはね―――<神界大活劇>!」
ドラえもんは、ふと思い出してのび太に訊いた。
「ところでさ、のび太くん。他の宿題は終わったの?」
「あ・・・」
亜沙は、ふと思い出して稟に訊いた。
「稟ちゃん。夏休みの宿題、ちゃんとやってる?」
「あ・・・」
「ドラえもーーーーーん!<宿題らくらくおわらせ機>出してくれぇーーーーーっっ!!!」
―――二人の哀れなオトコノコの悲痛な叫びが、二つの世界にこだましたのであった・・・。
<BLUE BALL IN THE STRANGE WORLD> is the END!
いやいやいやいや、とうとう終わりました<神界大活劇>!
半年にも渡って続いた連載をこうして終わらせることが出来たのも、暖かい応援を送ってくださった
みなさんのおかげDEATH!いィィやっほぉぉぉーーーーい!バキスレばんざーーーーい!!!
すいません、テンション上がりすぎました・・・。まあとにかく、そんなこんなで
<ドラえもん のび太の神界大活劇>でした。
しかし半年もよく書き続けられたもんです・・・。その間にSHUFFLE!はアニメ化とPS2移植が決まりました。
さらにドラ声優陣が入れ替わりという大事件も!
ラストはちょっと蛇足かな?と思ったけど、やっぱり湿っぽく終わるよりはちょっと笑いもいれようか、と
このような形にしました。なお、最後の<BLUE〜〜〜>は西尾維新の戯言シリーズをイメージしています。
直訳すると <不思議な世界の青い玉(ドラえもん)>。
ちなみに西尾氏の作品はかなり言葉遊びが多く、クセがあるので、これから読もうかと思っている人は注意
してください。とりあえずBLEACHとかが好きならハマると思います。ジョジョネタも多いですね。
え〜、では次回作について。
実は現在大学三回生であるサマサは、これから就職活動であります。かなり時間が限られますが、なんとか
負担にならない程度に続けたいな、と思っています。
前にも書いた通り、暴走ギャグSSなります(予定では)。
多彩なキャラによる壮大な原作破壊を心がける予定です。
それでは最後にご挨拶。
本作品をご愛読してくださった皆様。感想を書いてくださった皆様。
このような至らぬSSを見守ってくださり、まことにありがとうございました!
P.S サマサコールは程々に!
それではごきげんよう。
うおおおおぉぉーッッ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!ありがとぉー!サマサ!!
うおおおおぉー!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!ありがとォォー!サマサ!!
2回入っちまった!
サマサ悪い!
最後にデカイの一発!
サマサ!
間が長いだけでぜんぜん大きくねえよ。
それはそうと、サマサさん、お疲れサマでした。
ラストは蛇足だなんてことはないと思いますよ。
139 :
作者の都合により名無しです:05/01/10 11:59:29 ID:J/p7XfAL
お疲れ様でした、サマサさん。
最後、お互いの世界に引き戻された2人が響きあうシーンよかったですよ。
ラストに相応しいと思います。
次回作、就職活動に負担にならない程度に頑張って下さい。応援してます。
しかし、なんか今月は終了ラッシュになりそうで寂しいね。
サマサさんもゲロさんも次回作書いてくれるって言うのが救いですが。
皆乙
前回の大団円と、今回の締めの話。
ちょうどシリアスとギャグとが混じって良い感じでした。
半年間お疲れ様です。就職活動にも励みつつ、次の作品を書いてくださる日を
楽しみにしています。
しかし、SHUFFLE!って結構人気作品だったんですね。アニメ化されるとは。
ドクターゲロ完結お疲れ様です。
第一話で全員ヤムチャになった時は、ギャグSSと思っていたので、
このような話で終わるとは、良い意味で予想外でした。
最終回の雰囲気は「絶望の世界」を思い出しましたね。
文中では18号は生きているようでしたが、私の脳内では、
死んで肉がドロドロに腐敗している18号に寄り添うゲロの姿が
映りました。
143 :
作者の都合により名無しです:05/01/10 18:34:12 ID:9/mxkdhv
ゲロさん、サマサさんお疲れ様でした。
楽しみに読んでいた作品が立て続けに終わると寂しいなあ。
ドクターゲロのラストはかなり悲しい物でしたが、お話の収束を思うと
これで良かったのかな、と思いました。蟲師頑張って下さい。
神界大活劇は離れ離れになってしまうラストですが、どこか明るい
希望のあるラストでしたね。就職活動と次作、頑張って下さい。
最後に、お二人とも本当にお疲れ様でした。
「初詣」
べジータが地球に来て最初の正月。
ブルマはヤムチャとべジータを連れて、近所の神社へ初詣に行った。
「べジータは知らないでしょうけど、地球じゃお正月に神社に願い事をしに行くのよ」
「馬鹿馬鹿しい。修行してた方がマシだ」
「まあそう言うなよ、結構ご利益があるんだぜ。ここの神社」
結局べジータは参拝せず、ブルマとヤムチャの二人だけ参拝した。
帰り道、ブルマがヤムチャに聞いてきた。
「ヤムチャは何をお願いしたの?」
「ブルマの願いが叶うように‥かな、へへっ」
ヤムチャはそう言って照れ臭そうに笑った。
「ブルマはどうするんだ?」
照れ隠しか、ヤムチャが聞き返してきた。
「それは、ヒ・ミ・ツ☆」
「ずるいぞ、人のだけ聞いて〜」
「だ〜め、教えないモ〜ン」
「そんなイジワル言う子はこうしてやるっ、こちょこちょ」
「ぎゃはははっ、くすぐりは反則っ☆」
「‥‥下品な奴等だ」
二人の談笑をべジータは不機嫌そうに眺めながら(あのバカップルを何とかしてくれ)
と密かに願った。
翌年、ブルマはヤムチャを捨て、べジータと結婚した。
三人の願いは等しく叶えられていた。
以上です。
即興で作成しましたので、ちょっと稚拙な箇所が多いかもしれません。
>>バレ氏
最後の一行が効いてますね。
一気に上のイチャツキが凍り付いて見える破壊力。
147 :
作者の都合により名無しです:05/01/11 03:30:47 ID:1CIp12q3
ウンコチンチン
148 :
作者の都合により名無しです:05/01/11 08:50:27 ID:ypMuFsH5
サマサさん、終わっちゃったかぁ……
好きな作品だったなぁ。特に神王とジャイアンのコンビが好きだった。
最後も余韻に溢れた終わり方でしたね。お疲れ様でした。
就職活動の傍らでいいから、執筆継続お願いします。
でも次回作はギャグより、やっぱり今回みたいなファンタジー冒険物がいいなぁ。
バレさん、ここ最近ペースがいいですね!
しかしヤムチャはいつも引き立て役に使われて可哀想だなぁ。寝取られ屋さんw
長編カテゴリ目指して頑張って下さい。
149 :
作者の都合により名無しです:05/01/11 09:59:28 ID:1CIp12q3
ウンコチンチン
うららかな春の日差しの下、尼と大柄な男が立っていた。尼は小柄で老けており、男の体は
筋肉質で髪の色は真紅であった。
「尼よ。俺を呼び出してどういうつもりだ。ああ?」男が高慢な口調で尼に話しかける。
「強き人よ。お前は闘う相手を常に求めている。しかるべき所にお前を送ってやろう。」
尼が眉一つ動かさずに返答する。七十代を超えているにも関わらず背筋は曲がっておらず、
視覚と聴覚ははっきりしている様だ。
「お前が俺を倒すというのか?面白い!」男が大声で笑う。
「倒すのではない。お前の欲求を満たしてやろうというのだ。」尼が淡々と言った。
直後、数秒間ほど神社を静寂が包んだ。風で葉が鳴る音しかしない。ここには誰もいないのでは
ないかと思えるほどの静寂。
「裏があるな?もうこの世界に戻って来れないとかじゃないだろうな?」静寂を破ったのは男の
声であった。常人なら失禁してしまう程の威圧感を放つ男。そしてそれを平然と受け流す尼。
「時が経てば戻ってこれる。それとこのお守りを持っていけ。」尼が男にお守りを手渡した。
赤い布地に安全祈願の文字が印刷されている。
「こんな物が・・・有効だと?」男が言い終わる前に男の足元には魔方陣が描かれていた。
男は驚いた顔をした。まるで落とし穴に嵌った人間の様に。
「向こうの世界で数人の相手を倒せば・・・戻ってこれる。そういう術をかけておいた。
お前がそのお守りを捨てれば・・・お前はもうここには帰って来れない・・・。」
「ふっ、何を見れるかは知らないが・・・言って損はしないだろうな!」
数秒後、男の姿は消えていた。
「ふっ。終わったか。これでしばらくは大丈夫だよ。かごめ・・・。」尼はそう一人ごちると
本堂の中へと入っていった。
うっそうと茂っている森の中に3人の男が立っていた。一人は若々しく二十歳を超えたばかり、
二人目は三十代、そして三人目は五十代ぐらいであった。
「調子はどうだ。ジョジョ。」五十代ぐらいの男が二十代の男に話しかける。
「楽観的な事は言えませんが・・・・少し慣れてきました。」ジョジョと呼ばれた男が答える。
「お前の精神力には恐れ入る。普通なら十年程でそこまでいくのにお前はわずか数週間でそのレベルに達してしまった。」
「奴を倒す為に・・楽はしてられませんから。」
直後、男の顔は凍りついた。目つきが際しくなり、辺りを見回す。
「どうした!?」30代ぐらいの男が叫び声を挙げる。だが直後、男は地面に倒れ付した。
「スピードワゴンさん!?」ジョジョと呼ばれた男がスピードワゴンに向かって駆け寄ろうとする。
だがジョジョの足は止まった。途轍もない程の威圧感を感じたからだ。
似ている。ディオに。とてつもなく冷酷で残虐なオーラが渦巻いている。ジョジョはそう思った。
「動くなよ。動いたらこいつの首をへし折るぞ。」男がスピードワゴンの首を掴んで言った。
「目的は何だ!?」ジョジョが怒りをあらわにして叫ぶ。
「お前達、出来るな?ここで俺と闘え。」
「受けなければその人を殺すだと!?そんな馬鹿な話があるか!」
「ほぉう。そう言うのか。」男がスピードワゴンの首を握る腕にほんの少し力を込める。
ミシミシと骨が軋む音がして来た。あと少し力を込めればスピードワゴンの首の骨は粉砕されるだろう。
「ジョジョ。修行の成果を見せてやれ。」五十代の男がジョジョに話しかける。
「あなたがそういうならば仕方が無い。」
範馬勇次郎VSジョナサン=ジョースター開始。
今回の投稿はこれで終わりです。
153 :
作者の都合により名無しです:05/01/11 14:34:32 ID:t/bdy5iN
>オーガのリング
むむ、新作ですか?お疲れ様です。
勇次郎VSジョナサン=ジョースターですか。
ジョジョはあまり詳しくないけど、確か初代ジョジョかな?
ならば勇次郎にもチャンスありますね。
時間を止める奴なら勝ち目は流石にないけど。
既存の職人さんかな?出来ればコテを名乗って欲しい。
少し遅れましたが、ゲロさんとサマサさん、お疲れ様でした。
これからも出来る範囲で、活躍をして頂けると幸いです。
楽しませてくれて本当にありがとう。
バレさん、オーガリング作者氏おつ。
バレさん即興の割にはまとまってますね。最後の一行に集約される感じで。
ブルマ、べジータへの乗り換えは計画的かw
オーガリング作者氏、オーガが数人の強者と戦う作品ですか。
最初の尼さんって誰だろ?しかし一人目がジョナサンって事はジョジョ一族を
相手にしてくのかな?さすがにとすると丞太郎が難関ですな。
草薙さん、新作ですか?
頑張るのはいいけど、ユルさんみたいにまとめて投げ出すとかは止めてね。
あと、輪廻やドラえもんも含めて誤字はわざとやってるでしょ?
それもやめた方が良いよ。
>>155 どっちもまともに読んでないから別にかまわんだろ。
殺助はまだかね。
157 :
作者の都合により名無しです:05/01/12 08:30:46 ID:6Zm1ZV0D
まあ、俺は草薙氏のドラえもんは好きだがね。
そういえばパオ氏は今年まだ来てないな。VS氏やうみにん氏もか。
ザクさんや、ぽんさんも最近見ないな。
一体どうしたんだろう。
>>117 ところ戻ってバキ世界。朝食を終えた響子が、街を歩いている。
本部とはいろいろあったが、それはそれ。結局昨日からの問題は全く解決していない。
インチキ技で圧勝すれば相手を傷つけてしまう、という問題だ。
『さぁてと。どうするよ、オレ』
結局昨日と同じく、響子は考え込みながら街を歩く。悩みながら空を見上げる。
雲ひとつない、澄み切った青い空。美しい。とか思ってたら、ぽつんと一点、黒いものが。
何だ? と思いつつ目を凝らす響子。どうやら人の形だ。三つ編みで、着物と袴の女の子。
「えっ? 嗣子……?」
正解。思わずその場に固まってしまった響子は、落ちてきた嗣子爆弾の直撃を受けた。
心ならずも救命マットになった形、嗣子を抱きとめたポーズで、響子がハデに尻餅をつく。
「あいててててっ……こら嗣子っ! 一体どういうつもりで」
嗣子を叱りつけ、ようとした響子だが、その言葉は表情と一緒に凍りついた。
嗣子の、衰弱しきっ顔色と、アザだらけの頬と、切り裂かれた眉間とを見て。
「ぁ……響子ちゃん、無事……だね。よ、良かっ……た……」
「ぶ、無事じゃねえぞ、お前が! 何があったんだっ!?」
その疑問には、嗣子ではなく歩いてきた男の声が、答えてくれた。
「ほほう。お前もそいつの仲間か?」
響子が、顔を上げる。と嗣子が顔色を変えて叫んだ。
「きょ、響子ちゃん逃げて! わたしはいいから、早く逃げてっ!」
「匂いにつられてひと齧りしてみたら、随分と期待外れでな。お前はどうなんだ?」
響子は、男の顔に見覚えがあった。チーフから貰った資料にあった顔だ。が、写真とは
大違い。人相こそ同じだが、この突風のような闘気、殺気は。とても人間とは思えない。
『こ、こいつが範馬勇次郎……』
響子の戦慄とは裏腹に、勇次郎は悠然と歩きながら周囲を見渡している。退屈そうに。
「お。そういやあ、この公園は昔、本部とやりあったとこだな。あいつはまあ、
思ってたよりは美味かったが。今回はどうも、ハズレっぽいな」
「……本部さんと、やりあったのか」
嗣子を地面に横たえて、響子は立ち上がった。言われて気づいたがここは、昨夜響子が
本部の腕枕で眠った公園だ。
どうやらここには、出会いの縁があるらしい。昨夜のそれとは見事に対照的な出会いだが。
「なんだお前、本部の知り合いか。期待できるような、できんような」
「とりあえずオレは、本部さんには圧勝したぜ」
「ほう?」
勇次郎が、興味深げに響子を見つめた。
その響子の足下で、倒れたままの嗣子が、必死に響子の作務衣の裾を引っ張っている。
「だ、だめ響子ちゃん! この人はだめ! もうきっと観測は終わってるから、」
「だからここからは私闘だ。とりあえず、お前と同程度のケガはさせる」
「いいってば、わたしのことなんか!」
二人の会話に、笑い声が割り込んできた。もちろん、勇次郎だ。
「安心しろ二人とも。んなややこしいことを言わずとも、俺は二人とも逃がす気は
ない。はるばるハワイからやってきたんだ。きっちり満足させてもらわんとな」
「大した自信だな。なら、逃げるなよ。オレが許すまでは」
ぴく、と勇次郎が眉を上げた。
「挑発のつもりか? それにしても言葉を選べ。この範馬勇次郎が、逃げるなどと!」
吼えながら、勇次郎が突進してきた。響子は素早くポケットから一枚のカードを、簡易
超能力実践キット、カンチョウキを取り出して身構えた。
そして、念じる。テレキネシスの弾丸をイメージし、勇次郎に向かって……撃つ!
「小賢しいッ!」
バン! と破裂音がして、勇次郎の走りながらの拳が、目に見えない「力」を叩き潰した。
響子の放った、テレキネシスの弾丸を、拳で潰したのだ。
「!? バ、バカな! そんなこと、理論的に不可能……」
とか言っている間に、勇次郎が間合いに入った。咄嗟に響子は、今度はテレキネシスで
盾を作った。拳銃、いやバズーカの砲弾でも、これを貫くことは絶対にできない。のに、
「ぅぐぁうっっ!」
響子の体は、勇次郎の蹴りを喰らって軽々と吹っ飛んだ。風を切って飛ばされながら、
視界に入ったブランコの鎖を掴み、何とかブレーキをかける。鎖が限界まで引き伸ばされ、
そのまま引き千切られるか、あるいは響子の肩が外れるか、というベクトルがたっぷり三秒
ほど続いてから、ようやく蹴りの威力が消えて鎖が緩み、響子は息を切らせて着地できた。
勇次郎はニヤニヤ笑いながら、ゆっくりと近づいてくる。
「お前らの使う手品も、まぁ悪くはない。今の一撃、結構本気だったからな。お前がまだ
息をしているということは、お前らの手品がタダモノじゃないって証しだ」
俺様はそんなの超越してるがな、という前提の傲慢な褒め言葉。だがそれに対し、響子は
何も言えなかった。なにしろ、向こうは超能力を使っている様子はないのに、こちらの
超能力が全く通じないのだ。
『こ、こいつ……何なんだよ、一体!? 』
「響子ちゃん、耳を塞いで!」
はっ、と向こうを見ると、嗣子が倒れ伏したままで上体だけムリヤリ起こして、自分の
カンチョウキを翳していた。響子が指示通り耳を塞ぐと、嗣子は必死に大声を上げる。
「ヒップワード! 『まるで両手両脚に、百キロの鉄球をつけられたようだ』!」
勇次郎が嗣子の声に反応し、振り向き走りだした、と同時に、嗣子の放った超能力、
全感覚催眠術が発動した。今勇次郎には、両手両脚に突如出現した鉄球が見えている。
その冷たさも、匂いも、硬さも、そして重さも実感の中にある。つまり勇次郎にとっては、
四つの鉄球は完全に実在のものとなったのだ。……が、
「なにがなんだか解らんが、これがどうしたああああぁぁぁぁっ!」
全くスピードを緩めず、勇次郎は走る。ドスドスと足音を響かせて、嗣子へと突進!
「嗣子っ!」
「『しょ、正面から、トラックをも吹き飛ばすほどの突風が吹いて……ゃうっっ!」
悲鳴を蹴り潰されながら、嗣子の小さな体が垂直に舞い上がった。ブランコより、
ジャングルジムより、公園の外の二階建て住宅より、いや五階建てマンションより、高く。
「嗣子おおぉぉっ!」
響子がカンチョウキを翳し、テレキネシスで嗣子を受け止めようとする。が、振り向いた
勇次郎が、今度は響子に向かって突っ込んできた!
今、嗣子を受け止めれば、次の瞬間には勇次郎の蹴りをまともに受けて……死ぬ。
だが勇次郎の攻撃を止めれば、気絶しているらしい嗣子はそのまま落下して……死ぬ。
タイミング良く颯爽とヒーローが現れて、嗣子を受け止めてくれるというのも……だめ。
『嗣子がいくら軽いったって、あの高さから落ちてる以上、人間の力で受け止めるなんて
絶対無理だ。嗣子を助けるには、オレがテレキネシスを使うしかない!』
響子は決断した。勇次郎の蹴りを受けても、死ぬとは限らない(多分)。だが嗣子は、
今自分が受け止めないと確実に死ぬ。ならば、選ぶべき道は一つ。
勇次郎が眼前に迫った。響子がテレキネシスの為の精神集中に入る。その照準は……
「神余殿っ! 今は眼前の敵に集中されよ! あの子のことは心配ない!」
落下していく嗣子の下に、走り込んでいく人影があった。
本部流柔術の宗家、現継承者。本部以蔵である。
『本部さん……!』
「邪アアアアァァッ!」
勇次郎の蹴りと、響子のサイコキネシスが、同時に放たれた。
>>ゲロさん
遂に完結……ですか。何だか、部分部分を切り取ってみると、スプラッター風だったり
サイコスリラー風だったり。文章は詩的ですが、というか詩的だからこその恐怖があります。
ヤムチャとかどうでも良かった、が素直に笑いにならない辺り、何とも味わい深い感じです。
>>サマサさん
サマサさんに同意、です。私も、やっぱりこういう締めは好きですよ。同じ体験を共有した
プリムラとのび太ですが、視点が違えばできた物語も違うんでしょうね……どっちも読んで
みたいです。サマサさんのと合わせて、三作品並べて。で次なる暴走ギャグ、待ってます!
>>バレさん
なるほど、確かにご利益ありましたなこの神社。ブルマはともかく、ベジータを落として
しまうとは見事。ヤムチャがこういう役回りなのは、もはや定番というか定説というか、
ですけど。とはいえ実際のところ、ベジータはどういう気持ちで……なんでしょうね。
>>リングさん
おお、勇次郎VSジョジョ! しかもジョナサン! これはなかなか期待の組み合わせ。
ジョナサンなら、能力的にも噛み合いそうですし(スタンドはさすがにどうしようもない
ですから)、性格面での火花散らしも面白そう。続き、期待して待ってますよっっ!
165 :
作者の都合により名無しです:05/01/12 18:54:39 ID:pFPSewfM
ふらーりさんお疲れ様です。
相変わらずふらーりさんのバキ世界描写はかわいいですね。
これからも頑張ってください。
166 :
作者の都合により名無しです:05/01/12 21:03:24 ID:AHOi/eAS
http://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/13.htm 164 名前:殺助 :04/03/21 14:26 ID:L0Ugfuqe
>批評について
別に酷評されようがマンセーされようが、正直どうでも良いんです。
所詮素人だし、好きで書いてるだけだから。
ただ、パオさんやVSさんのご意見は聞きたいです。
トップの書き手からの作品の作り方は参考になりますし。
忙しくて最近書けませんでした。また来週から頑張ります。
一応確認しとくけど、パオ=殺助だよな・・・?
うみにん氏とミドリさんも来ないな。
SSスレは今年大丈夫か。
退屈だなあ。
毎日、毎日、変わり映えのしない……お金もないしねぇ……
電車に揺られて、同じところを行ったり来たり。
あ。あの人、若く見えるけど、てっぺん危ない……
電車の中で漫画読んでる人とは付き合いたくないなぁ。
今日はいつものやたら体触ってくる人いない。嬉しい。
そろそろ降りなきゃ。
今日は昨日に比べて人が少ない気がする。
でも明日はきっと今日より人が多い。土曜日だから。
真っ直ぐウチに帰るのもいいけど、ちょっと……
そうだ、本屋に寄ろう。まだジャンプ売って――
え? いきなり何この人! え、ええ!?
腕、掴んで……う、力、強い……!
何よ、どこに連れてこうっての! この髪白い人!
どんどん繁華街の奥に入ってく……ホテル!?
この人、凄い強引! 私、まだ……
203号室……鍵、閉められた……ああ、もう――
室内は白い煙に覆われた。
「悪かったな。しかし、急がなきゃマズいと思ったもんでね。強行策を取らせてもらった」
白髪の男は、そう言いながら煙草に火を点けた。
「え――何、どういうこと? マズいって何が!? ワケわかんない!!」
拉致された少女は状況が掴めずに狼狽していた。この辺りの子供がよく行く高校の制服だ。
「お前さん、蟲に憑かれてるんだよ。それも、とびっきり性質の悪いヤツにな――欹≠ニいう」
「そばだて? 蟲? 何それ……あなた、ヤバイ人?」
「蟲師だ。まー、マイナーだからなこの仕事は……名はギンコという」
蟲師? 分かんない、全然、分かんない……
混乱する少女を無視して、ギンコは続ける。
「欹は、人の思考や声を、より多くの他者に伝えようとするモノだ。まず、最初に影響が出るのは声。
室内の独り言が、家族や隣近所に伝わるようになり、その範囲は段々と広がってゆく。そして、次の段
階に進むと今度は紙等に書かれた内容にまで及ぶ。そして、最後には思考――」
思考の袋小路に入って、俯いていた彼女だが、最後の辺りではっとして顔を上げギンコを見る。
「お前さんの思考は、だだ漏れだったよ。周囲の人間――勿論、俺にもな。この煙のお陰で、今は聞こ
えなくなってるが」
少女の頬が紅く色付く。彼女の中で過去の出来事、そしてその時何を思って行動してきたかが、走馬灯
のように駆け巡る。頭を抱える。あれも、これも、みんなに伝わっていたのか……
「言っとくが、俺にやましい気持は欠片もないからな。今回は密室が欲しかったからここに来ただけで。安
いし」
蟲師は儲からない仕事のようだ。
「そういえば、今思うとみんな態度がおかしかった……ああ、もう、私、生きていけないよう……」
「安心しろ、なんとかする。これは医者にはどうともできん。蟲師の仕事さ」
初っ端からなんじゃこら、と思った方も多いことでしょう。作者も思いました。
でも、これも間違いなく蟲師になります。というか、この設定は現代じゃないと無理です。
現代ほど個人のプライバシーが重視されている時代はありませんから。
重視されているということは、そんだけ知られたくないことが増えたということ。それを否応なく他者に伝えて
しまう蟲。こんなに怖い蟲は、そうないんじゃないかと思います。
これ憑いたら人生破滅、という人も相当数いそうですね。
まあ、気に入らない! という方も、現代編は今回だけで、次回からは最初の奴みたいになるんで、ご容赦を。
>>126 どもです。蟲師の影響は……ないとは言い切れませんな。今回の最初の独白とかw
>>127 作者的には、それほどブルーにしたつもりはなかったんですが……
>>128 今回更新分だけだとイマイチかと思いますが、次回はもうちょい見れる出来にします。
冒頭の少女の独白は、個人的にはかなり工夫した箇所だったりするのですが。
>>142 俺も予想してませんでした。全然先を考えずに書き始めたからなあ……
実を言うと、今回の「耳を欹て」も終わりまではまだ考えてません。
>>143 ゲロはキチガイですからね。安易に幸せにしてはいけないとだけは、ずっと考えてました。
頑張ります。
>>153 読んでくださって本当に有難う御座います。嬉しいです。
>>164 確かに……読み直すとホラーっぽいですな。書いてるときはそんな感じしなかったのにw
蟲師キターー
お疲れ様ですゲロさん(結局これをコテにしたんですかw)
なんとなく、ギンコ+サトラレって感じですね。
でも現代版蟲師は新鮮な反面、原作ファンとしては
ちょっとショックかも。
だからこそ、ゲロさん風味の蟲師を期待しております。
172 :
作者の都合により名無しです:05/01/12 23:32:15 ID:pFPSewfM
ゲロ氏新連載乙。
正直、少し(現代の)設定に不満はあるが期待は膨らんだよ。
頑張ってよい作品に仕上げてほしい。でも俺もサトラレを思い出したw
173 :
作者の都合により名無しです:05/01/13 02:47:47 ID:Vop3dKfO
ゲロ乙
もしや、私がリストラされたのも、この蟲のせいで
上司の悪口が聞こえたせいか?
だったらいいな‥
「スピードで攪乱し気を取られたスキに相手の全身に裂傷を与える作戦か。」
ルガールの言葉が終わるか終わらないかの内にプロト1がルガールに突進した。
ルガールはパンという音が聞こえたのと同時にプロト1の体が視界から見えたのを見た。
ガードを固めて目だけを動かすもまったく相手の姿が見えない。その時、ドゴッという音と共に壁がへこんだ。
「そこかっ!」
確かに速い。だが目で追いきれなくても音があればわかる。形態が変化したらしいが
それには体力が必要だろう。体力を使用した今、奴は自分の敵ではない。
ルガールが地を這う青い光を放った。壁のへこんだ部分に向かってまっすぐ高速で
進んでいく。
「捕らえたぞ!」
青い光が壁に当った直後ルガールは壁に向かって突進した。
だが、壁の直前でルガールは立ち止まった。壁には穴が空いているだけで誰もそこにはいなかったから。
「ここだ。」
プロト1の声が聞こえるのとルガールの体が切り刻まれるのが同時だった。
「ぐおぉぉ!?」
見る見る内に傷が増えていくルガール。両腕は血まみれになり、ズボンはボロボロになっていく。
「終わりだ。おまえはもう助からない。」プロト1が淡々とした口調で言う。
だが腕が血まみれなのにもかかわらずルガールは笑い始めた。まるでプロト1の発言が
面白くてたまらないと言う様に。
「フハハハハ!何を言うか!お前のパワーなど取るに足りんわ!」
無表情に立ち尽くすプロト1。策があるのか、それとも諦めたのかよくわからない
表情で両腕を下げている。
「すぐ気づくさ。」
「寝言を言うのはやめたまえ。兵器風情が。」ルガールが冷酷な表情を浮かべながら言った。
プロト1はルガールの体が自分に向かって突っ込んでくるのを見ていた。
そしてルガールの拳が自分の腹に突き刺さるのを。
「ガハッ!」
血を吐きガクリと膝をついて倒れるプロト1。そしてプロト1の腹を蹴り飛ばすルガール。
「クローンの癖に創造主に対して反抗などと。」
ルガールがプロト1の左腕を踏みつけ、折った。
気絶しているのか、ピクリとも動かないプロト1。
パワータイプなら受けきれたかもしれない拳。だがスピードタイプの体では肋骨が折れているだろう。
「待たせたな。君はヤムチャというのか・・・。私の計画達成の為には
是非とも君が必要なのだよ。」
「ふざけるなぁ!」
ルガールに飛び掛るヤムチャ。相手の懐に飛び込み右拳を放とうとする。だが
ヤムチャの体はルガールの目の前に空中から落下した。
「え?」
「目覚めたばかりで力が戻っていないらしいな。君のクローンを量産し、世界を牛耳るのが私の計画の最終形態なのだ。」
「じゃぁ、あいつは・・・。」床に倒れているプロト1を指差して言った。
「こいつは試作型じゃよ。創造主に反抗して負けた。ヘタレだ。」
ヘタレ。役立たず。寝取られ屋。その言葉がヤムチャの脳を刺激した。
ヤムチャが立ち上がろうとした直後、ルガールの後ろから男の低い声が聞こえた。
「待たせたな。始めるぜ。」
ルガールの目に入ってきたモノ。それは草薙京、八神庵、神楽ちづるの三人の姿であった。
今回の投稿はこれで終わりです。
177 :
作者の都合により名無しです:05/01/13 10:59:13 ID:55d8tSLX
ゲロ氏、草薙氏おつ。
>蟲師
まずは新連載おめ。蟲師と言う漫画は正直知らないけど、
前回のSSの雰囲気が気に入ったので期待してる。
少女の思考が読めるなんてなんとなくエロいなw
>輪廻転生
プロト1とルガール決着しましたか。
戦闘描写うまくなってるね。ついにヤムチャとの邂逅か。
どうやらいよいよ2部の最終決戦かな?
前話
http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/dekisugi/2-07.htm ドラえもん、のび太、ジャイアン、しずか、リルル、きり丸。
6人の立つその場所。ここは既に要塞内部である。当然、緊急事態であろうと・・・
いや、緊急事態だからこそ、その警戒が解かれることはないであろうと思われていた。
しかし、今、辺りは不気味なほどに、シーンと鎮まりかえっている。
「・・・思ったより簡単に忍び込めたな。」
「うん。簡単すぎて拍子抜けしちゃったね。なんなんだ?この警備の薄さは?」
「あの子を疑ってたわけじゃないけど、あの見取り図はどうやら本物だったようだね。
ひとまず、僕らは賭けに勝った!だが、本当の勝負はこれからだ!」
『おお!』
改めて気合を入れる一同の元に、突如、頭上から大きな笑い声が降ってきた。
「わっはっは。やはり現れおったな。この侵入者めが!」
見れば、頭のでかいハゲたオッサンがふよふよ浮いて近づいてくる。
奇妙な光景だが、よく見れば、どうやらタケコプターをつけているらしい。
その傍らに数人の部下らしき赤装束たちが、やはりタケコプターで浮いている。
「げげっ!お前は、稗田八方斎!?」
突然現れた八方斎を見て、きり丸がその名を叫んだ。
「稗田八方斎じゃ!どあほう!!・・・・・って、あれ?」
「うん。稗田八方斎って言った。オレ。」
うれしそうに怒鳴り返そうとするも、途中で違和感に気付いて首をかしげる八方斎に、
きり丸はクールにつっこんだ。実は、忍たまたちに名前を間違えて呼ばれることに
密かな喜びを見出していたりもする八方斎なのだが、その忍たまたちも出会うたびに
いちいちダジャレを考えるのは、けっこう苦痛なものなのだ。
八方斎は気味の悪い拗ねたようなポーズを取りながら、不服そうに話を切り出し始めた。
「なんか、すんなり名前呼ばれると、調子狂っちゃうな〜。
まぁよい!それはさておき、簡単に忍び込めたのではない!お前たちの狙いなど
わかりきっておる!我々が自らお前たちを脱出不能な袋小路へと誘い込んだのよ!」
「な、なんだとぉ〜!?」
「へん、いいじゃねぇか。侵入させてくれたんだ。ありがとよ。」
いきりたつみんなを鎮めたのは、意外にも最もカッカしやすいジャイアンであった。
「そんじゃ、オレたちをあっさり入れたことを後悔させてやるぜ!」
ジャイアンの言葉を合図に、のび太が銃を、ジャイアンが拳を、きり丸が剣を、
ドラえもんはその両手をポケットに、それぞれに構え臨戦体勢に入った。
「わっはっはっはっはっはっはっはっは!威勢の良い小童めらが!」
プスンプスン…
「ん?」
八方斎の頭上から妙な煙が出ていることに、きり丸が気付いた。
「おおっ!?」
どうやらあまりにも頭が重すぎて、早くもタケコプターに限界が来てしまったらしい。
八方斎は、ものの見事に頭部から墜落し、物凄い勢いで固い床に激突した。
「は、八方斎様っ!?」
「今だっ!」
きり丸の号令のもと、瞬時にきり丸とジャイアンの二人が飛びかかる。
ジタバタもがく八方斎を殴る蹴る・・・。八方斎は、あっさり伸びてしまった。
「は、八方斎様!大丈夫ですか・・・!?八方斎様!?」
「むきゅぅ〜・・・」
失神した八方斎を心配して駆け寄る赤装束のドクタケ忍者たち。
「よーし!今だ!バラけるぞ!みんな自分の役目をまっとうするんだ!!」
『おお!!』
最初の刺客、稗田八方斎は無傷で打ち倒せた。意気上がる6人であったが、しかし、
倒れている八方斎の奥から、今までの静けさが嘘のように続々衛兵が駆け寄ってくる。
のび太の銃がうなる。
「瞬間接着銃!」
先頭の兵士数人が、強力な接着剤で壁に張り付けられて動けなくなる。その威力に
わずかに躊躇し、足の止まった兵士たちをジャイアンがブン殴りながら道をあけた。
「おのれ・・・このまま、すんなり通してなるものか・・・!」
強烈な粘度の接着剤に、みじめに磔にされた悪魔の一人が必死に足掻いている。
彼は、かろうじて難を逃れた右手のヤリに、力を収束させ始めた。
「バカな・・・!よせ!こんなせまいところで・・・!」
目が血走っている。仲間の制止にも耳を傾けず、その男は“力”を解き放った。
「出でよ、火竜!」
「“ヒラリマント”!」
6人の先頭に踊り出たドラえもんが、秘密道具・ヒラリマントを翻した。
巨大な火炎竜がそっくりそのままはね返り、通路を紅蓮の炎に染め上げた。
『ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!』
悪魔の兵士たちは、無残にもまとめて業火に焼き払われ、姿を消した。
テキオー灯の光を浴びた6人は、その紅蓮の業火の中を迷わず突き進む。
ドラえもん、のび太、リルルは上へ。ジャイアン、しずか、きり丸は下へ。
当初の計画通り、それぞれの目的地を目指して、一気に走り抜けた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
紅蓮の炎を通りぬけ、目指すは地下の幽閉所。地下への階段はすぐに見つかった。
ジャイアン、しずか、きり丸の3人は階段を一気に駆け下りた。そして―――――
ピタリと足が止まった。八方斎や悪魔たちとは一味違う危険な空気に、これまでの
勢いは急速に失われた。3人の目の前に待っていた者は―――――――――
ボサボサの髪の毛。獣じみた野生児のような眼光。不自然なまでに全身の筋肉の
盛り上がった堂々たる体躯。己の力への絶対的な自信から生まれる見下したような
笑みは常に絶やさない。帝国の最強戦力の一人に間違いない大男の姿であった。
拳を振るわせながらジャイアンが、憎しみにも似た声でその名を叫んだ。
「お前は・・・! げんごろう!」
そう。その男の名は“げんこつげんごろう”。かつて2度、いや、3度に渡って
彼に敗れ去ったジャイアンにとっては、何にも勝る因縁の相手であり、倒すべき
宿敵なのである。
げんごろうは、余裕のある仕草で口を開いた。
「よう。派手にやってくれるねぇ。予想以上だぜ。」
ある方向―――恐らくは出木杉の閉じ込められているはずの幽閉所の方向を
指差しながら、彼は続けた。。
「あのお利口そうな坊やに用事かい?だけど悪いがこっから先は誰も通せねぇぜ!」
「きり丸!しすちゃん!ここはオレにまかせて、早く出木杉を!」
ジャイアンはきり丸としずかへ先へ進む事を促した。
「・・・でも・・・」
「でももクソもねぇ!こいつは普通じゃねえんだ。オレが時間を稼いでるうちに早く!」
ジャイアンが怒鳴る。しかし・・・肝心のげんごろうに隙が全く見当たらない。
きり丸としずかは、その場を動けない。
「上の階の間抜けどもとは違うぜ? このオレ様が、あっさり通すと思うのか?」
げんごろうの挑発的な物言いに、しかしジャイアンはそれには答えず、
単刀直入に切り出した。すなわち・・・
「お前、“悪魔の実”を使ってるんだってな。」
げんごろうの不自然に巨大な戦闘力の秘密、“悪魔の実”のことを。
「・・・!? なぜ、お前がその名前を・・・?」
やはり、ジャイアンはそれには答えず左のポケットからあるものを取り出した。
「これがなんだかわかるかい?」
「それは・・・?」
それは、ケースであった。いくつかの錠剤が入っていることはすぐわかる。
げんごろうは、すぐに理解したらしい。それが身体能力を飛躍的に高める強力な
秘薬、悪魔の実に類するものであるということを・・・。
ジャイアンは不敵に呟く。
「これを使えば、ようやくフェアな勝負になんのかもな。」
「・・・いいぜ、通んな。サシで相手してやる。」
“秘薬”を持つジャイアンを警戒すべき相手と判断したのか、
げんごろうはあっさりと道をあけた。
「しかたねーな!よし、急いで助けに行こう。」
「たけしさん、ムチャしないで!すぐに出木杉さんを連れてくるわ!」
きり丸としずかは警戒しながら、げんごろうのわきを通って駆けぬけていく。
しかし、げんごろうは言葉通り、攻撃の色を全く見せない。
「へっ、いいのか?」
「城の構造くらい把握してるさ。ここより下に出口はない。結局はここに戻って
くることになる。それまでにてめぇをぶっ倒せばいいだけのことだろ?」
げんごろうは冷静である。
「オレの悪魔の実に対抗すんだろ?
クックック・・・右手に変なグローブつけてるせいで飲みにくそうじゃねーか。
・・・いいぜ。そのくらいの時間、待っててやるからさっさと飲みな。」
その言葉を聞いたジャイアンは、不敵にニヤリと笑うとケースを開いた。
そして―――おもむろにそれを逆さにし、げんごろうに向かって突き出した。
バラバラバラッ・・・! ジャイアンは、その錠剤を全て床に投げ捨てたのだ。
「・・・・!?」
理解できない行動に、驚きの表情を見せるげんごろうの前で、
色とりどりのいくつもの錠剤が、跳ね、転がり、散らばっていく。
ジャイアンは、もう一対のグローブをポケットから取り出し、空いている左手に
それを装着した。ファイティングポーズをとる。まるで“チャンピオン”のように。
ジャイアンは待ち望んだ宿敵を相手に、不敵な笑みで大見得をきってみせた。
「でめぇがドーピングしてるからって、オレはこんな卑怯な薬なんかにゃ頼らねぇ!
やい、げんごろう!! てめぇとは、この拳だけで決着つけてやる!!」
今回分終了です。そして、お久しぶりです。
これからは、大長編ドラえもんのラストスパートらしく
けっこうスピーディーな展開になると思います。
でも横のレス番が下手したら300行っちゃいそうな・・・
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
約2週間遅れの年始挨拶を兼ねまして、一個空けます。
186 :
作者の都合により名無しです:05/01/13 21:51:44 ID:ouEi2p0g
お久しぶりですうみにんさん。
>横のレス番が下手したら300行っちゃいそうな
それは大歓迎ですね。別に500でも構わないw
八方斎弱いなあwでもげんごろうとジャイアンの決着戦に期待。
あ、一個空けますと書いたけど考えたらすぐに投稿できる状態じゃないので
他の職人さん気にせず投稿してもらって大丈夫です。
余計なことしてすいません。
188 :
作者の都合により名無しです:05/01/13 22:15:24 ID:ouEi2p0g
ブラックキングさんなんか知らんけど乙。
お久しぶり。今年一発目の作品期待してます。
安藤と別れたから数時間後、のび太はドラえもんの所、つまりホテルへと向かった。
すばやくこの世界から脱出しなくてはならない。今の所は勇次郎は気付いてはいない。
ホテルの前に付くと急いで階段を登り部屋へと走る。
「ドラえもぉぉん!!」のび太が大声で叫ぶ。
「どうしたんだよ。もう諦めたの?」ドラえもんが呆れ顔で答える。
「違うよ!実は勇次郎さんは・・・・」
数分後、のび太から真相を聞いたドラえもんは腕を組んだ。
「のび太君。僕達はこれ以上この世界に関わらない方がいい。すぐにもしもボックス
で帰ろう。」
「その前に行かなければならない場所がある。」のび太が真剣な目つきで言う。
「どこに?」
十分後、のび太達は道場の前に立っていた。日はもうすでに暮れており、空気は冷えてきていた。
「のび太君。なぜここへ?」ドラえもんが不思議そうに聞いた。
のび太はドラえもんの問いには答えず無言で筆とインクと紙を取り出した。
そして何行か文を書いた。そして道場の床にそれを置き外へと出た。
「あんな人でもお世話になったから別れをつげないと思ってね。手紙、書いたんだ。」
「そうかい。じゃあ誰もいない所で道具を出そう。」
のび太とドラえもんが刃牙の家の敷地内から出ようとした直後、それは起こった。
のび太は背後に異様な気配を感じた。獣臭といってもいい程の汗の臭い。後ろを振り向いたら失禁してしまいそうな恐怖。何より気付かない者はいないと思える程の威圧感。
後ろを振り向いたのび太の目に飛びこんで来たモノ―――
それは上半身裸の範馬勇次郎の姿であった。
「出て行くつもりか。のび太。」範馬勇次郎がのび太を睨み付ける。
「僕は・・・人を殺すような人間から何も教わりたくない!」のび太が精一杯の
虚勢を張る。これも鍛錬のお陰だろうか。
「そうか。少し早いが・・・・卒業試験といこうか。俺と試合をしろ。ヴァーリトゥード方式でな。」
「いいでしょう・・・。」
のび太が服を脱ぎだす。そして彼は試合用のトランクスの姿になった。
ドラえもんは泣いていた。結果は言うまでもなく明らかだ。下手すればのび太は
死ぬ。だが自分は止めてはいけないのだ。
「待ちなよ。その子より美味しい奴らがここにいるよ!」
どこからとも泣く声がした。勇次郎が振り向いた先に立っていた人物、それは範馬刃牙の姿であった。そして彼の周りには地下闘技場トーナメントに参加した格闘士達が立っていた。
「あなたがここに来る事はわかっていたよ。あなたが彼を鍛えている事もね。」刃牙が淡々と話す。
「ふ・・・・。お前の言う通りだな。こいつはまだまだ格闘家としては熟れてない。代わりにお前達を食う!」
「ワシを忘れては困るぞ!」
一人の老人が前へ出た。本部流柔術本家、本部似蔵である。
「ふ・・・。全員でかかって来い!」
「うりゃ!」
本部が勇次郎の腕を極めようとする。だが力でふりほどかれ投げ飛ばされる。
「むん!」
地面に頭から叩きつけられ、本部はピクリとも動かなくなった。
「次は私だ!」
克巳が飛び二段蹴りを放つ。だが二発目を放った直後に足を掴まれ鳩尾に一撃を食らう。
「うぉぉ!」
花山薫が握撃とパンチのコンボを放つ。勇次郎の腕の血管が膨れ上がる。そしてボディにパンチを放つ。この時彼は片腕で握撃を放っていた。だがーーー
「ゲハァ!」
勇次郎に握撃を破られ、顎にカウンターを食らい花山は倒れた。
続く猪狩もマウント斗羽も同じ結果であった。
「最後は俺だ・・・。」
刃牙がシャツとズボンを脱ぎ捨てる。
拳と拳。足と足、力と力。技と技。
全てにおいて勇次郎が刃牙を翻弄していた。
「馬鹿な・・・。なら・・・!」
刃牙が剛体術の構えを取る。
「がっ!」
刃牙の最後の技、剛体術である。
「ふっ。」
全身の間接を固定し、前に体重を掛ける。
「邪ッッッ!」
朝日が上がった時、立っていた者。それは範馬勇次郎の姿であった。
「のび太め。逃げおったか。」
今回の投稿はこれで終わりです。
192 :
作者の都合により名無しです:05/01/14 06:57:02 ID:zOxhttRg
・うみにんさん
随分遅れましたが明けましておめでとうございます。
いよいよ最終決選っぽくなってきましたね。
げんごろうとジャイアンとのタイマン勝負期待してます。
特にジャイアンの「男気」に。どんどん長くして下さいw
・草薙さん
のび太逃げましたかwしかし、勇次郎はやっぱり猛者たちを
一度に相手にしても一人勝ちですね。面白いのですが、
登場人物の名くらい間違えない方がいいかと。(本部似蔵になってる)
流石にここまでくるとわざとらしすぎるな>本部似蔵
輪廻氏永遠にスルーするつもりか?
整流刀の時のように。
195 :
作者の都合により名無しです:05/01/14 17:09:02 ID:S+I33e0a
輪廻さんは誤字を指摘してるレスを嵐として認識してないか?
どうなんだよ!ちょっとぐらい答えてよ!
うみにんさんお疲れ様です。
自分の一番気に入ってる作品なので、いよいよ最終決戦だなあと思うと
寂しくなります。でも、見所は満載だからまだしばらく終わらないかな?
とりあえずはジャイアンのリベンジを期待しております。
輪廻さん、俺はドラえもん外伝好きだよ。でもやはり推敲はした方がいいと思う。
勇次郎がどう怒り狂うか期待してます。頑張れ。
ところでブラキン氏は、今日当たり来てくれるのかな。
>>196 無理して輪廻にレスするほうが失礼だってのに気づかないのか
>>197 いや、普通に読んでるが?
輪廻転生も1部より2部の方が腕が上がってる所が好感持てるし、
ドラえもん外伝は結構楽しんでいる。
誤字脱字に気をつけてさえくれれば、俺の好きな作品のひとつだぞ。
ドラえもん外伝は。俺がドラえもん好きだというのもあるが。
神界終わっちゃったし、ローマは投げ出しかも知れんしな…
麻雀もどうだろう。
うみにん節が戻ってきてうれしいな
300くらいまでレス番行くという事は
3月くらいまでは楽しめそうだ
今日はブラックキングさんが来てくれそうだな
>>163 響子は本能的に、盾の扱いを変えていた。勇次郎の蹴り足に衝突する刹那、接触させ
ながら微かに引きながら角度をずらしたのだ。衝撃を逃がし、威力を減殺する為に。
響子の、死に際の本能が選ばせたその判断と、背後からの声に微かに勇次郎が気を取られ、
蹴りの力が弱まったこと。その二つが重なって、今度は響子は飛ばされなかった。
両足で、砂の地面に二本の線を引きつつ、三メートルほど後退しただけに留まったのだ。
「……っく、つ、嗣子はっ!?」
目の前にいる勇次郎のことは意識外に追いやって、その向こう側を見る。
嗣子が、いた。但し先程の落下予測地点より、十メートル近く離れた場所にだ。そして、
嗣子の本来の落下地点には、
「大丈夫、あの子は気を失っておるだけです。今の投げで、多少擦り傷を負った程度」
本部がいて、ゆっくりと立ち上がるところであった。
その本部に、響子には背を向けた勇次郎が、声をかける。
「ふん。その娘を水平方向へ投げ飛ばすことで、垂直落下による加速の方向を
丸ごと曲げた、か。お前にしては味なことをする」
「大したことはない。今、お前の蹴りの威力を殺した神余殿に比べればな」
と言いながら、本部が勇次郎に向かって歩いていく。
「神余殿、後は任せられよ。この鬼はわしが退治します故」
「え? ム、ムリだ。こんなバケモノと一対一でなんて」
「左様、こやつはバケモノ。さればこそ、打ち倒した武術家には誉れとなる」
気絶している嗣子だけ少し離れて、本部、勇次郎、響子の順で一線に並んだ。
「さ、神余殿。あの子を連れ帰り、手当てをして下され。今の神余殿は、あの子が
気になって満足に闘えないでしょう。ほら、その脚が何よりの証拠」
言われて、響子は自分の脚を見る。……いつの間にか、小さく震えていた。
「そこまで心配されるところを見ると、あの子は相当に大切なお友達の様子。察するに昨夜
話された、『もっと女の子らしくしなきゃ』で勝手に神余殿の髪を編む子、ですかな?」
「……あ、ああ」
響子が頷くと、本部がにっこり、微笑んだ。
「やはりそうでしたか。ならば尚更、あの子のことは大切にせねば。さ、早く」
本部に促されて、響子はまだ震えの収まらない足で、少しずつ歩き出した。
勇次郎の横をすり抜けて、本部の脇を通って、嗣子の元へと。
『嗣子が心配で、だから震えている……そりゃ、それもあるだろうけど、オレは……』
その時。本部と対峙している勇次郎が、無造作に声を投げかけた。響子の背中へと。
「あの娘を担いでいくのは重い、とか心配しなくていいぞ。本部を潰した後、お前たち
二人もまとめて潰すから。……いや、本部にもお前らにも飽きてきたな。全員、殺す」
響子の脚が、止まった。震えが大きくなる。すかさず本部が、勇次郎に対抗する。
「そんなことは、このわしが許さん」
「お前の許可なんて求めてねェよ。それより、あの二人が逃げる前にとっとと、」
「神余殿、早く! 走って!」
本部の必死の声、それにつづく裂帛の気合い。それらに突き飛ばされるように、響子は
走った。嗣子を助ける為? 違う。それはついでだ。自分が、逃げたいからだ。
常識が通用しないバケモノ、範馬勇次郎から逃げたい。本部を信頼して……ではなく、
本部に押し付けて。そうでないと、自分も嗣子も、この場で殺される。
『く、くそっ……! オレは、オレはっっ!』
走りながら、涙を流して、嗚咽しながら、脚をもつれさせて。響子が、前へと進む。
その時後ろから、ゴシャっ、と。何ともいえない異音がした。
思わず足を止めた響子が、振り向いてみると。
「良かったな本部。下がコンクリートじゃなくってよ……って、ああ、スマンスマン」
勇次郎が、笑いながら頭を掻いていた。砂場の縁の、コンクリート部分に頭を打ち付けて
倒れている、本部を傲然と見下ろして。
動かない本部の頭から血が流れ、砂場の砂へと染み込んでいく。乾いた砂が、湿っていく。
『……も……も、本部、さん……』
響子は、今。本部さああぁぁん! と絶叫したい。したいのに、その声が出せないでいた。
声を出すどころか、息が苦しい。自分で自分の、喉の中でぐるぐる渦を巻いている気流が
解る。スムーズに流れていかない空気たちが、混雑して混乱して詰まっている。
目の前にいる、範馬勇次郎。その背負う、絶対の死に、恐怖しているからだ。
「さてと。神余とやら、次はお前の番……ん?」
歩き出そうとした勇次郎の、ズボンの裾を本部が掴んだ。そして、血に染まった顔を上げ、
「か……な、まりどの……ここは……わしに任せて……逃げ……」
「放せ」
勇次郎が、本部の手を蹴り払う。だが本部は再度、裾を掴む。
「かな、まりどの……絶対に、母上を……か、悲しませては……なりませ……ぬ。
子が、親より先に死ぬなど……親不孝の極みにして……この世で、一番の……不幸……」
「うるさい」
勇次郎が、再び本部の手を蹴り払うと、そのままその足で無造作に、本部の頭を真上から
踏みつけた。本部の顔が地面に押し潰され、さすがに手が離れる。
本部はそのまま、動かなくなった。
「……も……!」
「安心しろ。まだ生きてる。今はまだ、な。といっても次の一撃で終わるが」
勇次郎の足が上がった。そして真下にある、無防備な本部の後頭部に向かって……
「範馬勇次郎っっ!」
響子の口から、達人の突き出す刀のような気合いが迸った。
「オレが相手だっ! いくぞおおおおぉぉぉぉっっ!」
自分で自分の恐怖を吹き飛ばそうとしているかのような、決死の叫びを轟かせながら。
足の震えをムリヤリ押さえ込んだ響子が、勇次郎に向かって突進した。
重い足を引きずって、歩くようなスピードで、だが闘志だけは完全燃焼させて、一直線に。
勇次郎が、本部を踏み潰そうとしていた足を下ろして、まっすぐ響子に対峙する。
「……いい目だ。覚悟を決め、のみならず、ちゃんと奥の手があるようだな。ならば!」
突如、禍々しい妖気が膨れ上がり、勇次郎の上半身の服が、肥大化した筋肉によって
弾け飛んだ。その背中に、鬼の貌が浮かぶ。
ニヤリ、と笑みを浮かべると、勇次郎は向かってくる響子に向かって言い放った。
「さっきの娘が俺にかけた、訳の解らん術。いきなり、俺の両手足に鉄球をつけてくれた
術のことだがな。たった今、吹っ飛ばしてやったぞ。ほれ、この通り」
両手を、踊るようにヒラヒラさせて見せつける勇次郎。そして、
「つまり今、俺には何の束縛もハンデもない。お前如き小娘に、この範馬勇次郎様が、
ここまで本気を出してやってるんだ……俺を、充分楽しませる義務があると知れいっ!」
響子に向かって走った。背負うは鬼の貌、放つは凶悪な殺気、眼前には少女がただ、一人。
『なんて奴だ……術者が死んでも絶対に解けはしない全感覚催眠術を、気合いで
かき消したってのか? くそっ、改めてバケモノぶりを見せつけてくれやがる!』
響子の胸の中で、何重にも重なっている勇次郎への恐怖心が、また一枚上乗せされた。
だが、ここで負ける訳にはいかない。負ければ、本部も嗣子もこの場で殺される。
勇次郎が見抜いた通り、響子には奥の手がある。見事キマれば問答無用、必勝確実の手だ。
が、失敗すれば。おそらく、今から数秒後には脳ミソぶちまけてオダブツ、である。
あるいは、死なないまでも響子は永遠に、本部とも嗣子ともお別れ、となる。
けど、それでも、
「やるしかねぇ……ヒップワード! 『真正面に、コンクリートの壁が出現した!』」
本部さんがここまでこういうキャラになってるのは、以前申しました通り、
パオさんの魔界編の影響です。はい。……好きなんですよっっ。
>>ゲロさん
ドクターゲロ〜は未来もの、前作蟲師はファンタジー風、で今度は現代編ですか。私の
印象としては、なんとなく「笑ゥせぇるすまん」の匂いがしてます。にしても、確かに
怖いですこの蟲。人間版スパイウェア。知らない間に自分の秘密がダダ漏れ……恐ろしい。
>>草薙さん
まさかヤムチャが、三種の神器チームと組むことになろうとは。でもこのルガール、本っっ
当に死角なさげ。どう攻略するか、見ものです。で勇次郎に挑もうとしたのび太に拍手。
この流れだと、修行積んで勇次郎に勝つ、のが王道ですがそれは無理。決着はどうなる?
>>うみにんさん
八方斎弱し。強い弱い以前の問題って気もしますが。それに比べてジャイアン、きっちり
みんなを指揮って、チームリーダーしてますねぇ。敵を食い止める、薬に頼らない、と
いった漢気もカッコいい。げんごろうもクールに悪役してますし、次回激突が楽しみです!
205 :
草薙京:05/01/14 21:16:11 ID:c+KfGMFg
誤字について>
書いた後に見直してはいます。書きながら一時中断して読み直してもいます。
それでも誤字脱字が多いのは私の力不足だとしかいい様がありません。
感想を頂けるだけでもありがたいと思っています。
すんません、ひとつ空けます。
「――ともかく欹≠チてのは、ヒトにとっては害蟲以外の何者でもない、危険極まりない存在なわけだ。だから、
欹は発見次第殺すのが蟲師間で暗黙の了解となっている。欹は食料であるヒトの声や思考が多いところ、つまり
ここみたいな街に多く現れる。ヒトに憑く類の蟲に共通する点だが、ヒトに憑く前段階での駆除は容易だ。潰したり、
燃やしたりすれば大概は死ぬ。だが、体の中に入られると厄介だ」
ホテルから出て、少女を家まで送り届ける道中、ギンコは欹や蟲のことを話して聞かせていた。しかし、少女の目
は虚ろで、潤んでいた。
「そういえば、あの時も……私は何も言ってないのに、保健室に行けって……あの時も、そうだったのかな。みんな、
私の考えてたことが聞こえてたのかな……」
堪えていた涙が、遂に零れる。長く堪えていたので、大粒の雫が二粒、三粒と地面に落ち、染みを作る。
「あまり考えるな、といっても無理かもしれんが……とりあえず、さっきやった薬を毎日飲んでれば、思念が外に漏れ
出すこともない。忘れるなよ」
「うん……でも、本当に……? 私、まだ信じられない。蟲のことも、考えてることが他の人に聞こえてるってことも……」
陽はもう沈みかけている。電灯がポツポツ灯りを灯す時間帯。帰宅途中のサラリーマンが目に付く。
「信じられないというより、信じたくないんだろ。だがな、全て本当のことなんだ。その証拠に周りの歩行者を見てみな」
少女は、近くの歩行者に目をやる。すぐに、気付いた。
「今まで、やたら見られておかしいと思わなかったか? 今は薬が効いているからな。お前は、普通の高校生だよ」
「……」
「そういや、聞きそびれてたが、お前、名は?」
「……キコ」
やはり、女子高生にはショックが大きいか。
いや、この蟲は人間には許容し難いモノ――こんなものを体内に入れていたら、ヒトの自我など容易く崩壊してしまう
だろう。年齢は関係ない。
職場で。
学校で。
外出先で――あらゆる場面で、場所で、自分の思うことが周りに響く――
これは、さながら地獄のようだ。耐えられる人間など、いるはずがない。
夜、橋の下にギンコは居た。
生来、彼は蟲を寄せる性質をもつ。よって、一つ所に留まっていられない。長く居れば、その地を蟲で一杯にしてしまう。
この橋も一夜の寝床だ。
橋の下のように、陽の当たらぬ陰気な場所には、蟲が多く湧く。ギンコは、下等なるモノ達を眺める。今まさに、新たな蟲
がこの世界に生まれようとしているところだ。
生まれてくるモノ達の中に、欹が見えた。ギンコは見ていた。何をするでもなく、見ていた。
命は生まれ、消える。そしてまた生まれ、また消える。それは、決して止まらぬ生命の連鎖。
ギンコの思念が漏れることはない。
数日が経過する。
「来たか」
街の某ファミレス。ギンコとキコはここで待ち合わせていた。無論デートやらではない。欹の駆除だ。
「ギンコ……さん。ねえ、蟲、っていうの、駆除してくれるんでしょ? はやく……お願いします!」
「分かってる。だが、その前にメシ食わせてくれ」
「早く食べて下さい」
「悪い。金が尽きたから、奢ってくれ。それが報酬ってことで」
はあ!? 何この人は! 人がこんなに困って困って困り尽くしてるっていうのにその態度! 蟲師って常識が欠けてる
んじゃないの? あー、腹立つ腹立つ! どうせこの人はヒモとかジゴロとかそんなんなんだわ! 落伍者なのよ社会の!!
「今は実入りが薄いだけだよ」
「え? な、何か?」
「だだ漏れ、だだ漏れ」
キコは見事に、薬を飲み忘れていた。
「あ」
「まあ、いいさ……今から方法言うぞ。その前にメシな」
方法? 考えて……ますけど、それは次で。次回で「耳を欹て」完です。一回で良いから、一度の更新で全て上げるって
ことをしてみたい……大して書いてねぇし。
原作を(蟲などはオリジナルとはいえ)トレースするだけでは俺の中の何かが納得してくれないので、こうして色々試している
訳です。とはいえ、読者の皆様を喜ばせられないような作品になっては無意味だし、兼ね合いが難しい感。
>>all
サトラレですよねえ……途中で気付いたんですけど。
匿名のネット小説じゃなかったらまず没にしてますねこれ。
>>171 そうだと思います。ただ、蟲師の味も出てるとは思うのですが、どうでしょうか。
>>172 どうもです。叱咤激励、感謝しております。
>>173 景気が多少回復ったって、それは下々の俺らには全然実感がないのですがな。
頑張りましょう。
>>177 エロイですよね。正直、一番悩んだのはそこでした。蟲師本編にエロは皆無(シチュエーションがエロイとかはあるが)
なんで、さすがにそこを強くし過ぎると原作既読読者に完璧にひかれるだろうと思い、現在の形となりました。
>>204 危ねぇ、更新しておいてよかった……空けずに書き込むところでした。
人間版スパイウェア。成る程、その通り。スパイウェアも駆除が難しいし、その辺も共通しておりますね。
しかし、別の漫画とかアニメを同じ世界にぶち込んで作品書ける方は凄いですね。俺には絶対出来ない芸当です。
ではまた次回。多分あさってかな?
210 :
輪廻!:05/01/15 00:45:39 ID:crilTrBi
輪廻!輪廻!輪廻!輪廻!輪廻!輪廻!輪廻!輪廻!輪廻!輪廻!
ごきげんよう、皆様。前スレ496からの続きです。
「まぁ、もうこんな時間なのね」
乃梨子ちゃんの腕時計を覗きこんだ志摩子さんが小さな声をあげた。
ただいまの時刻、午後4時45分。斗貴子さんを迎えに行ったジュネさんはまだ戻らない。
「白薔薇さま、何か用事でもあるの?」
そう尋ねる由乃に、志摩子さんは困ったような笑顔を向けた。
「実は今日、家に父のお友達がいらっしゃるの。私もご挨拶をしなければならないのだけど…」
その前に、着替えなくてはいけないでしょう?、と志摩子さんは苦笑した。
志摩子さんの家は大きなお寺で、お父さんがご住職をされている。志摩子さんのご両親はあまり気にしなさそうだけど、お寺の娘
が明らかに宗教の違う学校の制服を着てるのはまずいと思ったんだろう。
志摩子さん、真面目だから。なにせ、家のことが周囲にばれたら退学まで決意していた人だ。
「お客様がいらしているのに申し訳ないとは思うのだけど…」
志摩子さんに視線を向けられた沙織ちゃんは「いいえ」と首を振った。
「お気になさらないでください。今日私たちがお邪魔したのが急だったのですもの」
急にした張本人である祐巳も頷いて沙織ちゃんに同意する。
「ごめんなさいね」
その場のみんなの同意を得た志摩子さんは椅子から立ち上がった。
「でしたら私も」
帰り支度を始めたお姉様を見て、乃梨子ちゃんが少し慌てながらティーカップを片づけ始める。
乃梨子ちゃんに何か用事があるとは聞いてないけど、きっと、少しでも長くお姉様の側にいたいんだろう。
その気持ちは祐巳も由乃もよくわかるから、特に何も言わない。ティーカップを洗うのを瞳子に任せた乃梨子ちゃんが待っていた志摩子さんに
並んだ。
「じゃあ、お先に。ごきげんよう」
穏やかに微笑み合いながら、白薔薇姉妹がビスケット扉を後にする。
二人の背中を見送った沙織ちゃんが、にっこりと笑った。
「白薔薇さまと白薔薇のつぼみは仲がいいのですね。羨ましいです」
『沙織ちゃんならきっと、是非妹に、って申し込みが殺到するよ』という言葉が口から出掛かったけど、祐巳はそれをどうにか思いとどまった。
…沙織ちゃんは、もしかしたらお姉様を持つのは難しいかもしれない。
大金持ちでとびきりの美人。横に並んだら自分が霞んでしまいそうなその存在感に堪えられる人は、そう多くはないと思うから。
たとえば、横に並んでも見劣りのしない祥子様や聖様のような美人だったら。瞳子のような抜群の存在感を持つ人だったら。話は別だろうけど。
でもこれはあくまで祐巳の意見であって、いたずらに沙織ちゃんを悲しませても…、なんて気を回したのに。
「沙織ちゃんがお姉様を作るのは難しいかもしれないわよ。なにせ、完璧な妹を持ちたがる物好きはそうはいないだろうし」
あっさりと壊してくれちゃうのだ…この親友は…。
「由乃ってば、沙織ちゃんに失礼だよ」
「私は構いませんわ。紅薔薇様」
いつもの微笑みを翳らせることもなく、沙織ちゃんは祐巳の方を向いた。
「お姉さまができなくても、紅薔薇さまのことをお姉様のように慕わせていただきますから」
祐巳の視界の右端で、縦ロールがピクリと動いた。
にっこりと微笑む沙織ちゃんとは対照的に、祐巳の右隣からは不機嫌オーラが目に見えるくらい発せられている。
「…下克上狙いだったか」
一年前にも聞いたような由乃のセリフに、ちょっとドキリとする。
下克上。下の者が上の者に打ち勝ち立場を逆転させること。
それはつまり…沙織ちゃんが瞳子を蹴落として祐巳の妹の座を狙っていると…由乃はそう思ったって事か。
…というより、由乃は「そうだったら面白い」くらいにしか考えてないような気がする。
人事だと思ってぇ…。
チラリと由乃を睨むと、ものすごく楽しそうな笑顔を返されてしまった。
(…あぁ…この微妙な居心地の悪さを気のせいだと思いたい…)
華やかな笑顔と不機嫌オーラに挟まれ、落ち着きなく動いていた祐巳の視線がある一点で止まった。
「あ」
部屋の片隅に重ねられた予備の椅子の上に、何か光る物がある。
祐巳の様子に気付いた瞳子がそれを手に取り祐巳に差し出す。それは、小振りな腕時計だった。
「白薔薇さまの、ですわよね」
「…だね。私、ちょっと届けてくるよ」
瞳子の手から志摩子さんの腕時計を受け取り、椅子から腰を上げる。
「明日でもいいんじゃない?」
そう由乃は言ったけど。
「志摩子さん達、今出て行ったばっかりだし、ちょっと行ってくるよ。ついでに斗貴子さんとジュネさんの様子も見てくる」
今日のこの状況を作ったのが祐巳である以上、当然、二人のことは気にかかる。
まさか迷子になったとは思わないけど…何か困ったことがあったのかもしれない。
「…瞳子が行きましょうか?」
珍しく遠慮がちに瞳子が申し出てくれたけど、祐巳はそれを笑顔で断った。
少し急ぎ足でビスケット扉をくぐる。
「…逃げたか」
背後で聞こえた由乃の小さな声は、もちろん、聞こえないふりをさせてもらった。
今回はここまでです。
遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
今年一年が、皆様にとって良い年でありますように。ごきげんよう。
大量に来ましたな。
ふら〜りさん、ミドリさん、ゲロさん乙。
ふら〜りさん、本部が確かに魔界編の影響受けてますね。
ちょっとカッコいい所なんか、本部じゃない感じ。
でもまあ、戦いの描写すらなく負けたところは、まだヘタレテイストが
残っているのかも。
(砂じゃなくコンクリートに叩きつけたのは、ふら〜りさんの愛情表現ですかw)
ゲロさん、今回は状況説明ですか。
次回で書かれる解決方法が気になります。
ところで、今回の話は現代版との事ですが、原作の時代設定はどの辺りなんでしょう?
ミドリさんは今年初SS投下ですね。
成る程、瞳子の不機嫌の理由はそれですか。
今回のほんわかした話も好きですが、ジュネ&斗貴子の続きが気になる。
このまま行くと、二人の戦いの最中に祐己が珍入しそうですね。
216 :
草薙京:05/01/15 08:56:22 ID:3aJVkiUN
風で木の葉が揺れる音以外、何も聞こえなかった。
逞しい体つきをした男と茶色い髪の男が向き合っていた。
両者の間合いは2メートル半。逞しい体つきをした男の身長は約2メートルであった。
「僕と戦ってもし僕が勝ったらその人を解放しろ・・。」ジョナサンが声を低くして言う。
スピードワゴンの体を放り投げる勇次郎。ぶん投げるというのではなくただ手を放して放り投げる。
「お前は美味そうだ。人と違う何かがあるな?」勇次郎が薄ら笑いを浮かべながら言う。
「来い。お前に先を譲ってやる。紳士とは人に何かを譲るものだ。」ジョナサンが淡々と言う。
「邪ッッッッ!!」
熟練した格闘家でも見えるかどうかわからない程の左ハイ。
「ジョジョーッ!!」スピードワゴンの叫びが森に木霊した。
「何・・?」
最初に異変に気づいたのは勇次郎だった。自分は左ハイを放った。
だが直後に後ろに体が飛んでいた。青年は左手で顔面のガードをしていたのが見えた。
だが直後目の前が反転し、自分は空中で一回転した。いったいどうしたというのだ?
「あなたに勝ち目はない。ここから立ち去りなさい。」ツェペリが勇次郎を挑発する。
「合気か・・・。」
渋川剛気という男が持つ技術の奥義、合気。受けた力を自分の力と合わせて相手に跳ね返す。
それを目の前の青年がやってのけたのだ。
「アイキ?何だそれは?これは・・波紋法。」ジョナサンが眉間に皺を寄せながら言う。
彼はアイキという言葉に不快感を感じているのではなかった。一刻も早くこの暴漢を
追い払わなければならない。その思いが彼を怒らせているのだ。
「面白そうだぜ。」
勇次郎のジャブ。ヘビー級のボクサーよりも強力なジャブである。だがこれもジョナサンは
手で受けようとする。
217 :
草薙京:05/01/15 08:57:08 ID:3aJVkiUN
(馬鹿が。)勇次郎は心の中で笑った。
だが勇次郎の安堵は混乱へと変わった。自分の拳が受け流されたのだ。いとも容易く。
「貴様・・何を持っている?」
勇次郎の顔が険しい顔に変わっていく。まるで初めて強敵にあった子供の様に。
「見せてやる。」
ジョナサンの口が開いたままになり、酸素が口に吸い込まれる。そして奇妙な音が
勇次郎の耳に聞こえてきた。
コォォォォとまるで音が壁に反響する様な音だった。
「山吹色の波紋疾走!」
ジョナサンの指先から文字通り山吹色の波紋が繰り出される。
ガードを固める勇次郎。
だが波紋が勇次郎の腕に当たった直後、勇次郎の体は後方に吹き飛び木に激突した。
「!」
勇次郎は奇妙な感覚を覚えた。何か全身にビリッという感触を覚えたかと思うと体が吹き飛ばされた。
否、まるで体が勝手に動いた様な感じだった。自分の意思に反して。
「あなたの攻撃は通用しない。」ジョナサンが冷静な口調で言う。
「集中するのはいいが・・・。まだ幼すぎるぜ。良く見ろよ。えれぇ事が起こってるぜ。」
勇次郎が首を横に曲げて笑みを浮かべる。まるで遊んでいるかの様に。
突然、茂みが揺れ何かが飛び出してきた。勇次郎以外の人間の目が全員それに注がれた。
「ミギャアアアア!!!」
「あれはゾンビ!」
ジョナサンが波紋を発射しようと指を伸ばす。だがジョナサンの耳に奇妙な音が聞こえて来た。
「これは波紋の呼吸音!しかし誰が?」
ツェペリも波紋の呼吸法をしていない。と・・・すれば。
「ミギャァァァ!」
ゾンビが一番近くにいる勇次郎に近づいていく。
飛び掛かろうとした瞬間、ゾンビの頭が爆ぜた。崩れ落ちる様に倒れるゾンビ。
「ありえない・・・・。」
「この男が・・・・波紋を駆使っている!」
ジョナサンとツェペリは動けなかった。自分達が苦労して得た波紋を一瞬にして
この男は得たのだ。
218 :
草薙京:05/01/15 08:58:25 ID:3aJVkiUN
「さぁ。言っておくが今までのはウォーミングアップですらないぞ。」勇次郎が薄笑いを浮かべながら言う。
再び波紋の呼吸法を始めるジョナサン。それに対して勇次郎はゆっくりと近づいていく。
「あれは・・・ウドンデ!」ツェペリが驚きの声を上げる。
「ウドンデとは?それも波紋の応用なのか?」スピードワゴンが不思議そうに質問する。
「東洋にあるリュウキュウという国にそのような武術があるらしい。もっとも
その国の王家の長男しか継承できないモノらしい。」
普通に歩いている様にしか見えない勇次郎をウドンデを知らないジョナサンが見つめる。
まだだ。距離が遠い。もう少しだ。
「ズームパンチ!」
ガキリと音がした。ジョナサンの間接が外れパンチの間合いが伸びたのだ。
勇次郎の目は自分の顎目掛けて飛んでくる拳を確実に捉えていた。
「ごふっ!」
目の前の相手に意識を集中していたのにもかかわらずジョナサンは腹部に衝撃を覚えた。
吐血し膝を突くジョナサン。そして勇次郎はジョナサンの髪を掴んで引っ張り上げる。
「は!」
何度も何度もこれでもかと言わんばかりにジョナサンの腹を拳で殴りつける。
奇妙な事にその間も波紋の呼吸音が鳴り響いていた。
「ガハッ!」
吐血するジョナサンを勇次郎は近くにあった木へと投げつけた。
「さて、次はお前だ。もっと俺を楽しませろ。」
勇次郎とツェペリの間に闘気の歪みが生じ始めた。
「ま・・・まだ・・だ。」
勇次郎が声のする方向を見るとジョナサンが木に寄りかかってこちらを見ていた。
「まだ生きていたのか。」
「お前の拳は効いた。だが殴られた直後に波紋でダメージを回復していた!」
「待て。ジョジョ。ワシに考えがある。」
「ツェペリさん!?」
「Mr.ハンマ、私達はディオという存在を倒す為に修行をしている。ディオはかならずや
あなたの欲求を満たすだろう。どうか私達に協力してくれ。」
勇次郎の口元が上がった。目は嬉しくてたまらないという様に輝いている。
「ふはははは!!この世界に来た甲斐があったぜ!」
219 :
草薙京:05/01/15 09:00:04 ID:3aJVkiUN
「オーガのリング」今回の投稿はこれで終わりです。
誤字脱字については書きながらチェックしました。それでももしあるのなら
この場を借りて誤りたいと思います。
3作同時連載ですか・・・
投げ出さないように頑張ってください
>>218 間接 ⇒ 関節
>>219 誤りたい ⇒ 謝りたい
キツイ事言いたくないが、本当に謝る気あるのか?
ちょっと感情的になってしまった。すまぬ。
ミドリさん明けましておめでとう。
百合の香り漂う話でしたね。次はバトルかな?
ジャイアンは上気した顔で、ブンブン腕を振りまわして、やる気満々である。
しかしげんごろうは、そんなジャイアンを面白くもなさそうな顔で眺めていた。
「ケッ。つまんねぇ野郎だぜ。そんなんじゃオレの相手にゃ・・・・なに!?」
ジャイアンはその場で小刻みにステップを踏み出した。
―――――速い。ジャイアンのフットワークは尋常ではなかった。
さらにジャイアンの周りに、ゴゴゴゴと不気味な鳴動が起こっている。その源は・・・
奇妙なグローブを身につけた両の拳である。ある種独特の神聖なオーラが拳から噴出し、
うねるように纏わりついているようにも見える。その威圧感はとても小学生の、
いや、常人の放つようなシロモノではない。まさに王者の風格である。
「な、なんだ!?そのグローブ・・・!?ただのグローブじゃねえな・・・!?」
さすがにげんごろうは見抜いた。それがただのグローブではないことに。
驚愕に一筋の汗をたらすげんごろうが、その拳に気をとられた一瞬の隙をついて、
ジャイアンはげんごろうの懐にまで一気に踏み込んだ。これもまた常人とは思えぬ
スピードと瞬発力で。
「ケンカマシンセットU“チャンピオングローブ”と“稲妻シューズ”だ!」
思わずげんごろうが手を伸ばし、制止しようと声をあげる。
「ま、待て!!」
ニヤリ!ジャイアンは不敵に笑うと、ただ一言だけを呟いた。
「待たねぇ!」
“チャンピオン”の拳がうなった。
・・・ボグン!!
要塞の地下に鈍く、巨大な打撃音が響きわたった。
ジャイアンの強烈な先制攻撃が炸裂したのだ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「秘剣・電光丸!!」
少年忍者、きり丸の振りかざした剣が怪しくきらめいた。
向かい来る悪魔の兵士たちが、面白いように倒れていく。
「ウヒョー!オレつえー♪戸部先生みたいだ!シャキーン!シャキーン!」
バッタバッタと悪魔兵をなぎ倒しながら、はしゃいでいるのは忍者少年きり丸であった。
ちなみに戸部先生とは忍術学園剣術指南役、剣豪・戸部新左衛門その人のことである。
「だけど、たけしさんが心配だわ・・・。」
「うん。急がなきゃな。」
地下の幽閉所まで降り立ったしずかときり丸は、懸命に出木杉の姿を探していた。
「万能扉開けゴマー!」
きり丸が牢獄の扉に向かって、変なゴマを投げかけると、上方に極小の覗き窓、
下方に小さな食料通しが一つついているだけの頑丈な鉄の扉があっさりと開いた。
あたりを警戒しながら中を覗きこむ。
「くっそー、ここも空っぽだ。幽閉所っつっても数が多すぎてキリがないや。」
「ここもからっぽだわ。あら?あそこ・・・あそこの扉だけなぜか窓がないわ。」
しずかが見つけた扉は、確かに変わっていた。扉のサイズこそ違わないものの、覗き窓
すらないというのは少々不自然である。しずかときり丸は、急いでその扉に駆け寄った。
「いた!」
二人顔を見合せ、一瞬だけの歓喜の声をあげる。
しかし、すぐに様子がおかしいことに気が付いた。
そこには、奇妙な仮面をかぶらされた人間が一人、幽閉されていた。
薄汚れたボロ布を身に纏い、なにより奇妙なのはその“仮面”であった。
悲しみに沈む道化師のような、哀れさと滑稽さを誘うような惨めな仮面。
それがこの幽閉所の罰則なのか、この男だけの特別なのかはわからない。
しずかと目が合った瞬間に、その人物はあきらかな動揺を見せた。
しかし・・・出木杉ではない。全身を覆う法衣のような衣から、唯一
露出された、その両の手は、間違いなく老人のものであったからだ。
「あ・・あなたは・・?」
しずかの問いに、仮面の人物は、震える声を絞り出した。彼女らの予測に
反せぬ、やはりしわがれた老人の声。しかし、その発せられた言葉は・・・
しずかたちを驚愕させるに十分なものであった。
「・・・・・・・し・・・ず・・・・か・・・・・・・!?」
「え・・・!?」
なぜ、初めて出会う、その老人がしずかの名を知っているのだろうか。
しずかは、戸惑いの表情を浮かべて、仮面の老人と対峙した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
のび太、ドラえもん、リルルの3人は順調に階層を昇っていた。これまで
悪魔兵に数度、襲われはしたものの、その数は予測していたよりも遥かに少ない。
「・・・なんか、気味悪いくらい警備兵が少ないね。」
「うん。見ろ。もうすぐコンピュータ制御ルームだ。」
「かなり広いんだよね。階層まるまる、コンピュータかぁ。」
おだやかに会話しながら進むうちに、扉が見えてきた。順調すぎる。
恐らく、この扉の向こうが目的のコンピュータールームである。
「今までよりも頑丈そうな扉だ。でも、やっぱりここも静かだね。」
「でも念のため、ここもちゃんと調べてから開けよう。“マイクロ補聴器”!」
マイクロ補聴器とは、どんな小さな物音でも聞き逃さない高感度の補聴器である。
扉の前でポケットから取り出したソレを耳に当てて様子を探る。物音やかすかな
呼吸音さえも感じられない。ただ機械の作動する音だけが静かに聞こえてくる。
「ここも鎮まりかえってるなぁ。かすかな呼吸音一つ聞こえないや。」
3人は、あきれたような面持ちで扉を開いた。
瞬間。完全に油断しきっていた3人の顔が、いっせいに凍りついた。
リルルが青ざめた顔で、やはり信じられない思いに打ち震えながら、その名を呟く。
「・・・・・フ、フレイザード!?」
そこには・・・不気味な漆黒のアンドロイド、フレイザード将軍を中心に、
ズラッと並んだメタルブルーの鉄人兵団の一団が、侵入者を待ち受けていたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回分終了です。「卑怯な薬は使わねぇ」と言っておきながら、
秘密道具は使いまくりなジャイアンを愛してあげてください。
誤字脱字。こればっかりは、プロの作家(それなりに売れっ子)と
その担当たちが、一生懸命何度も何度も校正してもなお、不思議と
後から後から涌いてきてなくならないものだという話を聞いたこと
があります。(売れっ子っつっても、オーフェンの作者ですが)。
草薙さんの更新ペースだと、多少の誤字は仕方ない部分もあるのでは
ないでしょうか。僕もこないだの出張時にヒマだったので、ストーリーの
確認のため1〜200を読み返してみました。(死ぬかと思った)
かなり何度も校正してたつもりが、誤字脱字、表現の訂正箇所、
多過ぎ・・・。酷いところは「のび太」が「ぼび太」になってました。
特に更新ペースが比較的速かったころは、やはり酷いです。
似蔵。キャラの名前間違いは、その作品に思い入れがあればあるほど
腹たつかもしれませんね。気持ちはわかります。そこは特に注意して
校正した方がいいかもしれません。はい。「ぼび太」は絶対ダメです。
反省してます。余計な事書き込んで、長くなってしまいましたね。
ちょうど、こないだ自作品の誤字の多さを発見したばかりだったもので。
それではこのへんで・・・
ストーリーが面白ければ誤字には気付きにくいものなんだな。
ぼび太なんて気付かなかったよ。
230 :
作者の都合により名無しです:05/01/15 14:33:02 ID:crilTrBi
誤字は気にならんが、わざとやるのはいかんな。
うみにんも真面目なレスいらね。優等生すぎてムカつく
231 :
作者の都合により名無しです:05/01/15 17:47:31 ID:kDLSx+rE
真面目なレスすりゃ因縁吹っかけ、少しハジケりゃ叩き、後書き書かなければ
なんか書けという。まあ落ち着けやとしかいいようがないな。
輪廻氏叩きも止めようやいい加減。書きたい奴が書いて読みたい奴が読めば良いんだよ。
俺は彼の成長を見守るの好きだがね。
一気に来たね。
特に前から楽しみだった出木杉と虹のかなた、そして今一番期待してる
蟲師が来たのは嬉しい。特にミドリさんは今年初めてですね。ごきげんよう。
皆さんの今年のご活躍を期待しております。
>>231 >後書き書かなければなんか書けという
後書き書かない職人にはほとんど批判的なレスは無いよ。
とりあえず茶でも飲んで落ち着け
233 :
作者の都合により名無しです:05/01/15 18:11:26 ID:kDLSx+rE
すまぬ。決め付けだったか。
しかし書いてくれる職人と止めちゃったぽい職人が明確になってきたな。
パオ氏とVS氏も来なくて久しいね。VS氏は先週ヤクバレも書いてない。
ところでブラキンさんは年始の挨拶だけだったのか?w
気付くの遅いが、とりあえずID:crilTrBiにいろいろ言える資格は無いってことは分かった
批判規制ですか・・・・・・お疲れ様です信者さん。
236 :
作者の都合により名無しです:05/01/15 21:06:10 ID:UbXX8fx7
>蟲師
サトラレ、途中で気づいたのかwでも現代版いいと思いますよ。
なんか風変わりな元ネタをさらに風変わりにした感じで。お気に入り。
次回で蟲祓って、いよいよ一話目(二話目か)完結ですね!
>虹のかなた
確かに、沙織さんは妹には厳しいでしょうねえ、並の者だと。
物腰はあくまで丁寧で柔らかだけど、文字通り神のプレッシャー。
後、この作品は戦闘の緊張と日常の弛緩のコントラストが絶妙ですね。
>オーガのリング
戦闘描写けっこう楽しいですよ。意外と(失礼)丁寧に書かれてる。
合気と波紋法は流石に違うだろと思ったがw
吸血鬼ディオと勇次郎ならなかなか決着つかない気がするなあ。
>出木杉帝国
ジャイアンかっこいいけど、やはり素手で戦って欲しかったなあw
しかしまたしずかちゃんの前で謎のキャラが現れましたか。
ラストへの伏線かな?でもまだ激闘は続きますね!終わんないでほしい。
おお、ミドリさん復活されましたか。
明けましてごきげんよう、今年も頑張って下さい。
俺の好きな出木杉も蟲師も好調だな。宜しきかな。
突如地球に現れたラディッツと名乗るサイヤ人の攻撃によって、地球は壊滅的なダメージを受ける。
各国の軍隊はラディッツの超パワーの前にことごとく壊滅。人類は滅亡の危機を迎える。
だが、孫悟空をはじめとする亀仙流の武道家達5人と、かつてのピッコロ大魔王の活躍により
ラディッツは倒れる。しかし、亀仙流の武道家達のほとんどが命を落とし、ピッコロ大魔王も息絶えてしまう。
1年後、再び現れるという2人のサイヤ人。
各国は、壊滅した軍隊にかわる戦力として、優れた武道家の育成にとりかかる。
最大トーナメントの上位入賞者である範馬バキ達は、徳川光成の命を受けて
亀仙人のもとで1年間の修行をしていた。
修行を終え、パワーアップして日本へ戻ってきた彼らに、脱獄死刑囚が立ちふさがる。
アントニオ猪狩、加藤清澄、そして達人渋川や花山薫までもが倒れるも、バキ達は
5人の死刑囚達を破っていく。
死刑囚の1人、シコルスキーにさらわれた妻を救うために出陣した愚地独歩と愚地克己。
シコルスキーを倒し、妻夏江の救出に成功するも、倒れたシコルスキーの体内から
飛び出した謎の物体の爆発により、夏江、克己は爆死。
光成から謎の物体の手がかりがオーストラリアにあるとの情報を得た独歩は、傷ついた体を
引きずって、オーストラリアへ1人旅立つ。
一方アメリカからの死刑囚、ドリアンが尊敬していたかつての海王であることを確信した
烈海王は、ドリアンに勝負を挑み見事勝利。しかしドリアンの体内にもシコルスキーの
体内に埋め込まれていた謎の物体が存在していた。物体は大爆発を起こすも、かろうじて
難を逃れた烈、ドリアン。しかしドリアンの理性はすでに失われていた。
そして、柳龍光との一騎打ちに勝利したバキは、柳をはじめとする死刑囚達を指導した
人間が、中国大陸にいるということを知る。重傷を負ったバキは倒れ、捜索に来た烈に抱かれて
恋人の待つ家へと帰る。だがバキの家には新たな刺客が。魔王軍のザボエラと名乗るその男は
奇妙な技を使い、バキの恋人梢江を植物状態にしてしまう。
その後、グラード財団に呼ばれたバキ、烈は城戸沙織の命を受けて中国大陸へと旅立つ。
新たな仲間、青銅聖闘士の星矢、紫龍と共に。
<第2部>
一方オーストラリアでは、また別の戦士達が戦っていた。
アバンとその弟子ポップは、モンスターに破壊されたオーストラリアの人々を救うため
大陸に上陸する。そして修行の為に大陸へ訪れた本部以蔵、戦場を求めて現れた範馬勇次郎に出会う。
その後、オーストラリアの首都で「ギアガの大穴」と呼ばれる巨大な穴の存在を知った
アバン達は、その穴から出てくるという魔界からのモンスターを退治するために現地に向う。
穴の周りはすでに戦場と化していた。行方不明だった浦飯チームの面々が魔界から帰還し、
同じく魔界から地上へ現れたモンスター軍団と闘っていたのだ。
アバンは浦飯チーム、そしてその後現れたドラゴンの騎士、バランの情報から
魔界の今までの情勢、そして魔王軍は今、エアーズロックと呼ばれる一枚岩に向っているとの
情報を得る。バランは自らの使命を果たすの言い残して去り、アバン達と浦飯チームはそれぞれ
別の目的の為に一時別れることになった。
黄金の刺客が、彼らを襲う!
久しぶりの投稿ですし、年始ということもあってこれまでのあらすじを書きました。
しかしながら大雑把に書いたので、全体像を把握するのは難しいかもしれません。
っていうか急いで書いたのですごく読みづらいし汚いかも。
ご了承ください。
本編は少ししてから投稿します。途中で規制に引っかかるのがいやなので。
支援がてらブラックキング氏乙。
こうして見ると、まだ物語的には半分行ってないだろうに死人が出まくってるな…
これだけ膨大な風呂敷を纏めきれるのかが気になるけど、そこは先の楽しみとして期待してる
22話
急襲をかけるカミュ。目標としてロックオンされた飛影。
ニイッと唇を弓なりに曲げると、カミュは飛影に向けて、右腕を突き出した。
「ダイヤモンド・ダストォォォォォ!!」
声高に発せられたその必殺拳の掛け声と共に、突き出された右拳から
鋭利な氷まじりの凍気が飛び出す。氷と水の魔術師と呼ばれるカミュの十八番の技。
その名の通り、極限まで温度を下げた闘気を相手にぶつけ、凍結させる技だ。
カミュの狙い通りに、絶対零度並のその闘気は飛影の右足に直撃し、その機能を停止させた。
並の氷ならば、飛影の持つ炎の妖気で簡単に溶かすことが出来るだろう。
だが、黄金聖闘士の作り出す氷の頑強さは、飛影の予想を遥かに超えていた。
いくら炎の妖気を右足に集中させても、一向に溶ける気配がない。
左足一本で回避運動を行わざるを得なくなった飛影は、カミュにとって格好の的以外の何者でもなかった。
「見た所、足に少々自信がおありのようだがァァァァァー!!」
2撃、3撃。「ダイヤモンド・ダスト」の連続攻撃。カミュから見て、もはや動きの止まった
骸同然の飛影に、容赦なくその凍結拳が突き刺さっていく。
「光速拳の前では、その程度の赤子同然也!!」
「な…めるなよ…」
身を覆っていく氷が次第に多く、強力になっていく中、飛影は再び右拳に妖気を集中させた。
同じ失敗を繰り返す程、飛影はマヌケではない。人間界の赤い炎で溶かせない氷が身を覆う以上、
残る手立ては黒い炎の召還しかなかった。魔界の炎の召還、すなわち彼最大の技、炎殺黒龍波の発動。
「飛影、よせ!!」
蔵馬の声がキーンと響く。その声に抑え付けられるように、飛影が表に出る寸前の黒い炎を
右腕で必死に押しつぶす。
「風華・円舞陣!!」
その直後の蔵馬が放った数百枚の薔薇の花弁の援護射撃は、カミュの身体に到達する前に、
全て凍りつき地に落ちた。
「バ…バカな…」
「長髪のお前はチビを凍らせたあとでその綺麗な顔をカチコチに凍らせて首から上を持って帰って
氷が溶けたらその長い髪をなでなでしたあとズタズタに引き裂いて物乞いの餌にでもしてやるから
大人しく待ってればいいのよ!あーヒャッヒャッヒャッヒャヒャヒャヒャ!!!」
狂気に満ちた罵声を蔵馬に浴びせた後、飛影の頭部にダイヤモンド・ダストが直撃する。
みるみるうちに凍り付いていく飛影の頭部。全身が厚い氷に包まれた状態の飛影の意識は
すでに体と同じく凍り付いていた。
「ヒャーハハハハハッッ!次はおめえの番だー。待たせたなーーーーーーー」
飛影の全身凍結を確認した後、カミュは横に立つ蔵馬へと目を向ける。
「フッ…」
蔵馬はまるで諦めたかのように目をつぶり、構えていた手をおろした。
「もう諦めたのぉー!?もっと楽しませてクレヨォォォォォ!!じゃあ一発で決めちゃうよ!」
口が引き裂けんばかりのにやけ顔を見せながら、カミュは両拳を組み、頭の上へと振り上げた。
その直後…。
ドンッという大きな音があたりに響く。同時に前のめりに倒れこむカミュ。
目を開けた蔵馬の目線の先には、こちらに向ってくる2つの人影が。
「幽助、桑原君…来てくれたのか…」
カミュを倒したのは浦飯の霊丸だった。飛影と蔵馬の妖気の変動を察知した浦飯達は
急ぎ救援に向った。そしてカミュの後ろを突き、浦飯必殺の霊丸を放ったのだ。
巨大な霊気の固まりを、背中にまともに受けたカミュは倒れこむも、すぐさま起き上がる。
そして蔵馬から少し離れた所までジャンプし、向ってくる浦飯達を見つめる。
「1対3か…きついな…ぐっ…奴らの1人はかなりの小宇宙を持っている。
黄金聖衣を通り越して、私の肉体に衝撃を与えるとは…。ここは、引くべきか…」
態度を一転。カミュはくるりと向きを変えて、その場を去っていく。
「深追いはよそう。それよりも、飛影の様子が心配だ」
合流した浦飯達と蔵馬は、氷像と化している飛影のもとへと駆け寄った。
「こいつがやられるなんてな…。相手の冷気は樹氷使いの凍矢以上か…しかし、
黒龍波を発動させれば、どんな相手だって倒せるはずじゃねえか!?」
凍り付いている飛影の頬をコチコチと拳で叩きながら、桑原が蔵馬に問いかける。
その様子は、まるで日頃の恨みをはらしているようである。
「魔界での戦いで、飛影は黒龍波を使いすぎている。確かに黒龍を呼び出せば、
勝機はあったかもしれない。だが飛影の右腕も完全に死ぬ。だから俺が止めたんだ…」
「蔵馬も、妖狐の姿になれば戦いは楽だったんじゃ?」
「フッ、その前に君達が来てくれたからね。必要がなかったのさ」
「いずれにしても飛影をなんとかしなきゃあな…
まぁ俺が霊丸2発ぐらい当てれば、これくらいならなんとか溶けると思うぜ」
浦飯がそう言うと、間髪入れずに桑原が反論した。
「いいや!ここは俺に任せてくれ。俺の霊剣でもなんとかなるはず。
たまには飛影の奴に貸しを作っとかなきゃなぁ」
「あっそ、じゃあ頼むわ」
桑原が両腕に霊気の剣を作り出し、飛影の氷像に向って斬撃を加えていく。
だが氷は一向に溶ける気配がない。しかし、桑原はめげることなく斬撃を繰り返す。
その一方で、浦飯と蔵馬は全く逆の方向を向いていた。
「幽助、わかるか?あの方向、とてつもない数の妖気が集まっている…」
「ああ、恐らくは俺達が倒しそこねた化け物共が、一斉に集結してるんだろうぜ。
数はおよそ…20万ってとこか…」
2人の目線の先…およそ50キロの地点…。
浦飯達の予想通り、魔王軍と妖怪軍団が集結していた。
その数両軍共に10万。
赤土以外何もない、だだっ広い平野。近くにはエアーズロック。
両軍はそのエアーズロックを狙って対峙していた。
エアーズロック進軍する魔王軍を迎撃する形で、妖怪軍団が陣を構えている。
魔王軍の後方には、彼らの指揮官が居座る小さな簡易砦が作られていた。
指揮官は氷炎将軍フレイザード。氷と炎の技を得意とする、氷炎魔団の軍団長だ。
その傍らには妖魔師団の長、ザボエラ。両者共に、魔王軍の数少ない幹部である。
日が沈みだし、あたりを夕日が照らし始めた頃…フレイザードは突然砦から出て
少しばかり小高い岩場にのぼると、外にいるモンスター軍団を見下ろした。
「いいかお前ら!目の前に広がる妖怪軍団どもを、蹴散らしてこい!命令はそれだけだ!
死力を尽くしてぶつかっていけぃ!指揮はこの氷炎将軍フレイザードがとる!」
フレイザードは氷で出来ている右手をゆっくりと上げて、そして対峙する妖怪軍の方を指差した。
と同時に彼の前方に広がるモンスター軍団が、一斉に突撃していく。攻撃開始の合図であった。
程なくして衝突する両軍。エアーズロックへの道の覇権を巡って、合計20万にも及ぶ
獣達の戦いの火花がきって落とされた。衝突から数分後、戦闘の最前線の様子は
獣達の血と舞い上がる赤土の砂ぼこりによって、全く視認が出来ない状況になっていた。
「よ〜くは見えねえが、妖怪の奴らもよくやってやがるみてぇだ。一番の屈強を誇る
超竜軍団の進行が遅れている。最も、あそこは長がいねぇからなぁ…」
前方の状況を見ながら、フレイザードが目頭を細くしてそうぼやく。
「それにしてもフレイザードよ。魔界からの命も無しに、指揮官を名乗っていたが
少々勝手が過ぎんかのぉ…。ワシもいるというのに…」
フレイザードのやり方が気に入らないのか、ザボエラが少々不機嫌そうな顔をしながら
横から茶々を入れた。
「じいさんは黙ってろよ。そもそも地上侵攻軍司令官のハドラー様がやられちまってる以上、
誰かが10万の大群の指揮を取らなきゃいけねえだろうが。あんたみたいなよぼよぼの爺さんが
指揮官じゃあ、それこそ軍の士気に関わる。適任は俺様しかいねえってことよ」
フレイザードの言い分に納得させられたのか、ザボエラが「フンッ」と舌打ちをして
その場を去ろうとした。伊達に長く生きているわけではない。ザボエラ自身も、自分の
いるべき位置は元々わかっている…そんな様子だった。去っていく老兵の後姿に
フレイザードが指揮官としての命令を下す。
「じいさん、俺達幹部級が出張るのはあちらさんの大物の出現が確認出来てからだ。
雑魚相手に体力を消耗させる必要はない。出番が来る前に、魔界のミストバーン様へ
定期連絡を入れておいてくれ。あんた、しゃべりが得意だろ?」
「わかっておるわ」
振り返ることなく、ザボエラはそう返した。そして簡易砦の外れにある小さな部屋へと向う。
そこは言わば通信室。「悪魔の目玉」と呼ばれる特殊なモンスターを使っての、魔界との通信を
行う場所であった。
「ミストバーン様、ミストバーン様、ザボエラでございます」
自分の身体程もある巨大な目玉型のモンスターが、天井から釣り下がっている。
ザボエラはその目玉に向って、主の名前を連呼する。連絡先は、常に同じ場所に設定されていた。
ザボエラの声は、今だ魔界に居座っている魔王軍の長のもとへ…
魔界の奥地。かつて大魔王バーンの居城が存在していた場所…
その外観から、鬼眼城と呼ばれていたその大城も、今では僅かに原型を残すのみ。
黄泉率いる妖怪軍の襲撃によって、そのほとんどの城壁が破壊されてしまったのだ。
そしてその時の戦いによって、全知全能の邪神と呼ばれた大魔王バーンは命を落としていた。
その鬼眼城の跡地の地下…。大魔王バーンの片腕であった、ミストバーンが結成した
新・魔王軍の拠点要塞がそこにある。
ミストバーンは今だ地上へ出ることが出来なかった。一定以上の強力な魔力を持つ
者は、魔界と地上の間にある結界によって、その行く手を遮られてしまうからだ。
だがその封印がとけるのも、すでに時間の問題であった。
「ザボエラか…ずいぶんと連絡をよこさなかったものだな…地上の様子はどうか?」
幽霊のような外見。小さな低い声。およそモンスターとは呼べないようなその男、ミストバーン。
だが内からひしひしと発せられる威圧感は、大魔王バーンに匹敵する程だと妖怪軍には恐れられていた。
魔界の側にある、悪魔の目玉に映るザボエラの顔を見ながら、ミストバーンがそう問いかけた。
「ははっ!我ら地上先発部隊はエアーズロック手前数キロの地点に部隊を展開しております。
しかし、予想通り妖怪どもが行く手を邪魔しに…。あちらの軍勢はこちらとほぼ互角。
現在は一進一退の攻防を繰り返している所にございます…。それから…地上部隊の指揮官として
出てこられたはずのハドラー様ですが…残念ながら名誉の戦死をされました。今はフレイザードが
代理の指揮官に就任しております…」
ザボエラの報告を黙って聞くミストバーン。悪魔の目玉に映る、地上のザボエラもいささか緊張気味だ。
「…ハドラーが死んだか。まぁよい。そちらでの指揮はフレイザードに一任する。奴なら
うまくやるだろう…。魔界と地上の間にある結界も、すでに微々たるものだとの報告が入っている。
私も間もなくそちらへ出ることが出来るはずだ。お前達2人では、さすがに心もとなかろう…」
「ははっ お待ちしておりまする…」
「うむ。ザボエラよ。絶対にエアーズロックとやらを、妖怪どもに触らせてはならん。
命を捨てる覚悟で闘うのだ」
「御意のままに…」
通信は、およそ2分程で終了した。悪魔の目玉を後ろに下がらせると、ミストバーンは
部屋にある巨大な台座に腰を下ろした。その台座の隣には、ミストバーンが座っている
台座よりもさらに一回り大きく、そして豪華な装飾が施された台座が置かれていた。
大魔王バーンが愛用していたものだ。新・魔王軍の長となっても、ミストバーンの大魔王バーンへの
忠誠心は変わっていなかった。バーン専用だった台座に座るなど恐れ多い。
そう思ったミストバーンは、一回り小さく貧相な台座を、自分専用に作らせたのだ。
「フレイザードはうまくやるだろう…。だがザボエラは恐らくたいした戦力にはならん…
奴が率いる妖魔師団も、非力ゆえに妖怪どもには無力なはず。
それに、黄泉をはじめとする妖怪軍の幹部級が出てきたら、さすがのフレイザードとて
苦戦は必至。やはり…私が行くしかないようだ…」
「ぐぶぶぶぶ…相変わらず、顔に似合わず心配性な様子で…」
台座の間に、突然不気味な声が響き渡る。ミストバーンはその声に反応するようにさっと腰を起こし、
部屋の内部をキョロキョロと見渡し始めた。
「そなたのその心配事を一気に消し去ってくれるであろう、いい知らせを持って参ったぞ」
ミストバーンが、台座の目の前のある一点に目線を集中する。すると間もなく空間がぐにゃりと
曲がり、成人男性程の大きさの黒い穴が出現。中から奇怪な外見の男が姿を現した。
「おお!そなたは我が友!いや…我が恩人と呼ばせてもらおう!冥王ゴルゴナよ!!」
今年もよろしくおながいします。
続く
頭悪そうな馬鹿笑いしてるカミュは強烈すぎる違和感だな……
いくら正気を失っている(んだよね?)とはいえ、もうちょっとマシな描き方はできなかったんか……
シャカの性格もなんか変だし、バキやダイ・幽白に比べて、星矢に関しては原作への敬意が無さすぎる
他作品のキャラは概ね原作通りに描写されてるのに、星矢だけが激しく下手
頼むから、漫喫ででも星矢読み直してきてくれ
霊剣何かで氷の彫像を斬ったら、飛影粉々にならないだろうか。
バキ組は完全に蚊帳の外状態になってますね。仕方ないけど。
ところでゴルゴナって誰だっけ? 思い出せない‥
>>249 前回でも既にイカレた台詞吐いてたし、教皇に洗脳されてるんじゃないかな。
でないと戦う理由がないし。
(シャカは最も神に近い男だから洗脳状態でも割とまともだったのかも)
>>251 ドラゴンクエスト・ロトの紋章の登場人物
異魔神の配下のひとりで正体は(メル欄)
異魔神と縁の深いキャラのひとりだった
>>252 ありがとう。
そっちは未読だから知らなかったよ。
>>233 あーのーねー。バキのウソバレは半ばライフワークみたいなもんだから
ぜってー毎週書くの。6号と7号の分は明日書けたら書くの。
でも多分書けないの。
麻雀教室も書くの。書くったら書くの。もうお酒呑めないの。
255 :
作者の都合により名無しです:05/01/16 04:21:47 ID:EFjE9Nd+
ウザいよそのしゃべり方。
まとめて読んだんで少しずつの感想。読んでない作品は作者様ご容赦。
・蟲師
現代編はちょっと違和感あったけどギンコがやっぱりギンコでよかった。
女子高生のエロ妄想も少し期待してたけどw原作にもエロないからね。
・虹の彼方
白薔薇さまと白薔薇のつぼみは〜の台詞にちょっと赤面w(原作は未読)
沙織は頂点に立つキャラだから妹っぽさはやっぱり無いですね。
・地底出木杉
ジャイアン一撃か。全盛期のフィリオみたい。まだ戦い続くようだけど。
同時進行場面多いけど、各キャラが立ってるから詠みやすいな。
・超格闘士大戦
うーん、飛影オタの俺としてはカミュごときに負けるのは嫌だったなー
しかし改めてあらすじ読むとキャラ多いなwまとめるの大変ですね。
ミドリさん、ブラックキングさん今年初投稿お疲れ様。今年も頑張れ。
VSさん早く復活してね。こっちもあっちも。
「御託は要らんぞ。」
庵の手に紫色の炎が灯る。そして京の手にも灯る。二人は神楽ちづるを護る様に立っていた。
薄暗い研究室の中は二つの炎に照らされて少し明るくなった。
「メインディシュの到着か。少し遅れたが・・・いいだろう。始めよう。」
ヤムチャは動揺していた。目の前に現れた三人組からは悪の気は感じない。
もし自分の力が完璧ならばたやすく目の前にいる男を料理できるだろう。
だが今の自分の力は平常時の1パーセントですらない。念の為に仙豆を持って来てはいる。
だがそれを使って自分の力が回復する保証はない。
「どうしたー!」
庵が地を這う炎を放つ。ちづると京が同時に飛び上がり空中から蹴りを放つ。
「この程度か!失望したぞ!」
庵の地を這う炎を片足で踏み潰し右拳と右足で京とちづるを迎撃するルガール。
だがルガールの目の前で異変は起こった。右拳と足が京とちづるの体に当たった直後、
二人の体が消滅したのだ。
「何っ!?」
ルガールはある事に気づいた。いつの間にか自分の周りを何人もの影が囲んでいたのだ。
辺りを見渡したルガールが見たものーーーーー
それは十人もの京とちづるの姿だった。そしてそれらはルガールに向かって一斉に襲い掛かってきた。
「こんな小細工如きに!」
右手の指先から五発の気弾を放つルガール。体に気弾が当たる度に京やちづるの姿が消えていく。
「ぐぉっ!?」
最後の一人の姿が消えた直後、ルガールは脇に軽い衝撃を覚えた。見るとちづるは手をルガールの
脇腹に当てていた。
「掌底如きで・・・私を殺れると思うなッ!」
自分がもつ能力、つまり足先を刃の様に鋭くする事ができる能力で攻撃しようとするルガール。
避けなければちづるの首元が切られ大量出血するはずだったーーーー
ルガールは目の前を疑った。攻撃があたるどころか、自分の足が変化していないのだ。
「何が起こったというのだ!?」
焦りを感じて何回も変化させようと気張るルガール。だが何も起こらない。
「ヤタの力・・・・それは鏡の力でもありまた封印する能力でもある。」ちづるが自身ありげにいう。
「封印だと・・・。」ルガールが悔しそうに言う。
「オロチの力を持つ者でも・・・力を封じられれば凡人だ。」庵がきっぱりと言い放つ。
通常よりも大きく掌に炎を灯す庵。そして炎の勢いはどんどん増していく。
「どうしたー!」
庵の手から離れた炎が地面に触れた直後、一本の巨大な紫色の火柱が上がった。
そしてその火柱は前進して行き、一本ずつ直線状に並ぶ様に増えていた。
「うおぉぉぉッ!?」
両腕でガードを固めるルガール。紫色の火柱は彼の目前まで迫っていた。
ルガールの体を紫色の炎が包んでいく。
(こ・・・これは!?)
ルガールは動揺した。指一本はおろか目すら動かす事が出来ない。もちろん喋る事すらも。
「八神の力・・もといヤサカニの力・・・。それは相手を縛り付ける能力。」庵が冷静に解説する。
「これで終わりだぜ。ルガール。あの世に帰りな!」京が吐き捨てる様に言った。
「待ってくれ。オリジナル。」
ルガールとヤムチャを除くその場にいた全員の目が動いた。彼らの目はヤムチャの隣にいる
存在に向けられていた。柳田薫。ヤムチャと共に封印された男。その彼が今、
両手に炎を灯し暗闇をバックにしながら立っていた。
「お前は・・・?」京がきょとんとした顔をして質問する。
「俺は君のクローン。そいつはちょっとやそっとじゃ死なない。」
「・・・面白えじゃねぇか。」
京と柳田がルガールを挟んで立つ。ルガールは未だに動けずにいた。
「これが草薙の拳だぁぁ!!」
「燃えろーー!!」
巨大な赤い火柱が立ちルガールを包み込む。そしてルガールを背後から衝撃波が襲う。
ルガールは炎を纏った拳が自分の顔面に、腹に、腰に、鳩尾に打ち込まれるのを感じていた。
錐揉み回転をしながら後方に吹き飛ばされるルガール。そしてルガールの体は壁に叩きつけられた。
「・・・ヤ・・ム・・チャ」
自分の名前を呼ばれた気がして辺りを見回すヤムチャ。
だが彼の名前を呼んだ者は彼の視界には入らなかった。
「俺だ・・。プロト1だ。仙豆をくれ。」
ヤムチャは仰天した。気絶しているとばかり思っていたプロト1が話しかけて来たのだ。
「あいつを完璧に消滅させる為に・・・くれ。貴重な物である事は知っている。だが・・・
だからこそ今使うべきだ。」
プロト1が虫の息である事は一目でわかった。ヤムチャは仙豆をプロト1の口に放り込んだ。
数秒後、プロト1の腕の骨は治った。
「終わったな。京。」庵が京の顔を見ながら言う。真紅の眼は京を褒め称えていた。
「後は彼らを連れ帰るだけね。」ちづるが安心して笑いながら言う。
「逃がさんぞ。貴様ら。」
その声に京達は振り返った。壁に叩きつけられたはずのルガールが立ち上がりこちらを見ている。
その手には何かのスイッチが握られていた。
「まさかこの私が負けるとはな・・・。だがそれもここで終わりだ。この船を爆破する。」
「ゴールド・エクスペリエンス!」ヤムチャが奇声を発した。
ルガールは手元に奇妙な感触を覚えた。何かが動き回るような感触だ。手元を見るとそこには
スイッチはなかった。あるのはたった一匹のカブトムシであった。
「何!?クソッ!」
壁に向かってカブトムシを投げつけるルガール。直後カブトムシはスイッチへと形態を変えた。
ルガールはすぐにそれを拾い上げスイッチを押した。
「これでもうお前達はおしまいだ。数分後にここは爆発する。」
「京!」ちづるが叫ぶ。
「仕方がねぇ。巻き添えはごめんだ。逃げるぜ!」
京、庵、ちづる、いつの間にか気が付いたらしいマキシマが走り出す。ヤムチャも他の人間を抱えて
テリーが開けた穴から逃げ出した。
その場に残った人間ーーー
それはプロト1とルガールのみであった。
PCのバグにより258と259の間に5分程間が空いてしまいました。
すみません。
今回の投稿はこれで終わりです。
261 :
作者の都合により名無しです:05/01/16 13:38:35 ID:EFjE9Nd+
ナンバー1にならなくてもいい
もともと特別なオンリーワン
草薙氏にこの歌を捧げます
2004年2月号 オンリーワンより、やはりナンバー1の方が望ましい。 (山口貴之)
第一話「愚地独歩自伝」
ある晴れた日、公園のベンチに若い男と禿頭の中年男性が座り、何やら話し込んでいた。
若い男の名は愚地克巳、中年男性は愚地独歩である。
「克巳、俺は最近自伝を書いてみようかと思ってんだ」
「へえ、自伝か・・・。いいじゃねえか」
克巳はヒュウっと口笛を吹きながら答える。
「で?どんなことを書くつもりなんだ?」
「ああ、お前の意見も聞きたいと思ってここにメモと毛筆を・・・ん?しまった、墨汁がねえな・・・。
おい、克巳。ちょいと・・・」
独歩は克巳の腕に握撃を食らわせた。悲鳴を上げながらも克巳はマッハ突きで反撃する。
「ゲフう・・・つ、つねったら出るような気がしたんだ・・・」
「腕から墨汁出る人間いたら俺が見たいよ!」
「いや、この際字が書ければ血で妥協してもいいかと・・・」
「何でそんな妥協すんだよ!血文字で書かれた自伝なんてやだよ!呪われそうだよ!」
「う、うぬう・・・」
と、そこにカップルが通りかかる。範馬刃牙と梢江であった。二人ともムカツクほど幸せそうであった。
「・・・ちょうどよかった。克巳が血を出さなくてもそこに血色のいい奴が二人もいるじゃねえか・・・」
「ビンならここにあるぜ。2リットルばかしもらってこいよ」
「おう」
独歩は意気揚揚と出陣した。
5分後。
「取れたぜ、活きのいい血が2リットル」
「おお、ずげえな・・・。よく5分で刃牙に勝てたな」
「いや、刃牙と闘うのはちょっと怖かったからたまたまいた本部に提供してもらったぜ」
「・・・そうか。で、結局どんなことを書くんだ?」
「そうだなあ・・・」
独歩は考えた。そして思いついた。
「あ、そうだ。俺は実はトランクス派なんだが、知ってたか?」
「ああ、知ってるよ」
「よし」
独歩は筆を取り上げた。
「待て待て待て!そんなことを書いてどうすんだ!?」
「な・・・何い!?ダメなのか!?」
「ダメじゃねえけどもっと書くべきことあるだろうが!大体親父、あんた自伝を書いて何を伝えたいんだ!?」
「そ、そうだなあ・・・。これからの格闘士のために、俺自身の印象に残った闘いを通じて武術の大切さや
精神の在り方とかを綴りたいと思っているんだが・・・」
「それだ!そういう真面目なこと書けばいいんだよ最初から!ええ!?このゴミ虫が!」
「お前・・・口がどんどん悪くなるな・・・」
「まあいいや・・・。俺はちょいとトイレにでも行ってくらあ。その間にさわりの部分だけでも書けたら見せて
くれよ」
「おお、任せときな」
―――克巳が帰ってきたとき、独歩はちょうど冒頭を書き終わったところだった。
「はええな、おい」
「ふふふ、会心の出来だぜ」
克巳はメモを覗き込んだ。
「押忍っ!」
「押忍っ!」
力強い朝の挨拶が、汗臭い道場にこだまする。ドッポちゃんの神心会に集う漢たちが、今日も仁王のような剛毅な
笑顔で、受付をくぐり抜けていく。
鍛え抜かれた肉体を包むのは、真っ白い武道着。
武道着の裾は乱れないように、帯はまっすぐ緩めないように、どっしりと歩くのがここでのたしなみ。
「・・・・・・」
「どうだ?いい出来だろ?ちなみにタイトルは<ドッポちゃんがみてる>でいこうと思うんだが・・・」
「どうだじゃねえよ!マリみてじゃねえか!」
克巳は無呼吸マッハ連打を放った。
「ペマギャルポ(悲鳴)!」
「どこが自伝なんだよ!もうほんと真面目に書いてくれ!読者だってそろそろ呆れてるよ!」
「わ・・・分かった。そろそろオチに入らなきゃならねえから、さっさと書くよ・・・」
独歩はそれはもう真面目に書いた。
数ヶ月後。
独歩の自伝は大ベストセラーになっていた。
「ふむ・・・。やっぱ真面目に書くのが一番ってこったな」
克巳はウンウンと頷きながら山積みにされた本―――父、愚地独歩の自伝を手に取った。
実を言うと独歩は部屋に閉じこもりきりで自伝を書いたので、克巳もまだこれを見ていないのだ。
「さて・・・見るとするか」
パラリ。
「押忍っ!」
「押忍っ!」
力強い朝の挨拶が、汗臭い道場にこだまする。(以下略)
「・・・・・・・・・」
克巳は一瞬硬直し、次の瞬間本屋の中心で力の限り叫んだ。
「結局<ドッポちゃんがみてる>じゃねえか!」
チャンチャン♪
お久し振りのサマサです。
予告通りにギャグSSを書きました。
暴走ギャグってほど暴走してないな・・・。
ちなみにタイトルは増田こうすけ先生のギャグまんが日和から取りました。
作中のネタも増田ネタが多いです。というか前半はほぼパクッてます(爆)。
サマサ氏乙。
でもギャグはあんまり向いてないみたいですねwww
269 :
作者の都合により名無しです:05/01/16 18:17:14 ID:vCkiwZ3j
>>263 8ヶ月で70レスって、ほとんど稼動してないじゃんw
>うみにん氏
最終決戦だけど、お楽しみはこれからだって感じですね。
げんごろうとかもいいけど最強のギラーミンがどう動くか楽しみだ。
>ブラックキング氏
さすがに光の速度で動くゴールドセイントには、飛影でも
分が悪いか。でもこれだけのキャラ数、話まとめるのも大変だなあ。
>草薙氏
いろいろ言われてるけど、確実に成長してると思う。話もちゃんと
最後まで考えてるみたいだし。でもやっぱりヤムチャは浮いてる気がw
>サマサ氏
お久しぶり…というほどでも無いですか。新連載お疲れ様です。
サマサさんバキ知ってたんだ。相変わらずバカップルいい味出してるなw
サマサさんの文体は優しげで大好きだ。でもやっぱり冒険物が読みたいな。
サマサ氏復活おめ!
どっぽちゃんとかつみんはネタにしやすいね。おれは面白かったよ。
でも、やっぱりオムニバスじゃなくて連続物の長編書いて欲しいなってのはある。
神界、楽しかったからなー。
でも、サマサさんが書いてて楽しめるものを書けばいいけどね。がんがれ。
ドッポちゃんが見てるにワラタ。
何でベストセラーになるんだよw
研究室の壁は所々焦げており剥き出しになったケーブルから火花が出ている所もあった。
天井にぽっかりと空いた穴から光が入るとはいえ、未だに内部は薄暗かった。
「逃げなくていいのか・・?爆発するぞ?」ルガールが口に薄笑いを浮かべながら言う。
その言葉を無視して腕を広げ拳を握るプロト1。そして彼の体から赤い光が放たれ始めた。
「スピードがあっても力が無い。力があってもスピードがない。」プロト1が低い声で言う。
「だからどうした?」ルガールが嘲る口調で言う。
「今からお前が見るのは・・修羅だ。」
プロト1の体が赤く光り、筋肉が膨張していく。だがパワータイプではなかった。
膨らんだ筋肉が腕にそって平たくなっていくのだ。
「ルガール。ここをお前の墓標にする。」プロト1が殺気を露にして言う。
「ほざくな!」
叫ぶと同時にプロト1に突撃し、右ハイを放つルガール。そしてそれをスウェーで避けるプロト1。
続いてジャブから右ハイへのコンビネーション。それも避けるプロト1。
「甘い!」
手による目隠しからのストレートと膝蹴り。だがそれすらもスレスレで交わすプロト1。
「遅い・・・。」
その言葉を聴くと同時にルガールは体を後ろからガシッと捕まれた様な感触を覚えた。
プロト1がルガールを後ろから羽交い絞めにしたのだ。
「ぐ・・・ぐぉぉ!」
なんとか力で振り払おうとするルガール。だが抜け出せない。万力の様な力で締め付けられ
身動き一つ出来なくなったのだ。
「マキシマムモード・・・それはスピードとパワーを併せ持つ地上最強のフォーム。」
「放せぇ!」
「いったはずだ。ここがお前の墓場になる。」
赤く光るプロト1の体。そして体温がどんどん上昇していく。
「貴様、まさかぁぁぁぁ!!!」
「その・・・まさかだ!」
体が赤い光に呑まれる寸前、プロト1は思った。これでいい。これで人間兵器は無くなる。
途中弟達を殺した。だがこういう結末なら喜んでくれるだろう。安らかにお眠り。弟達よ。
研究室全体が赤い光に包まれた。
プロト1とルガールが闘い始めた頃、京達は廊下を走っていた。
「ボートの場所はどこだ!?」京が叫ぶ。
「俺たちは今五人いる。あのボートは8人乗っても大丈夫だ。広いからな。」マキシマが答える。
「他の人達は!?」ちづるが困惑した様に叫ぶ。
「それなら大丈夫だ。数秒前に応援を頼んだ。数分後に近くに来るはずだ。」庵が冷静に言う。
目の前にある部屋に飛び込む京達。そして彼らの目に壁にあいた穴が飛び込んできた。
「これは・・・。」ちづるがワケがわからないという風に呟く。
「ラルフさん達が開けた穴だろう。下にボートが見える。」京が言う。
ちづる、庵、京、マキシマ、柳田の順番にボートに乗り込んだ。
「待って。あのヤムチャっていう人は!?」ちづるが今頃になって言った。彼女の中では
ヤムチャ自体存在感が薄かったのだ。
「あいつなら倒れてる人達を全員抱え上げて飛んでっちまったよ。」マキシマが顔をしかめて言う。
ちづるは絶句した。特殊能力がある人間を知っているとは言えヤムチャは例外だ。
「おーい!早くしようぜ!」
ちづる達の目の前にヤムチャが現れた。背中にラルフ達を背負いながら。
「5人も背負ってるからな。空飛んでるけどそういう突っ込みなしな。」
京は無言でボートを発進させた。
京達の乗ったボートとヤムチャが空母の傍を離れてから数十秒後、空母は赤い光に包まれ炎が全ての場所から
吹き出た。恐らく燃料タンクに引火したのだろう。
「・・・終わったな。やっと。」マキシマが安心した様に言う。
「味方が来た様だ。」庵がボートの北の方向を指差す。
庵達の目にはこちらに向かってくる船が見えていた。
ハイデルン専用イージス艦にてーーーー
「まず礼を言おう。助けてくれてどうもありがとう。どうやって恩返ししたらいいか
わからない。君たちは僕の命の恩人だ。」
ヤムチャがちづるに対して手を差し出し、握手をする。続いて庵と京と握手をした。
「込み入った話になるが・・ルガールっていうのは前から世界征服を狙う悪党だったんだ。」京が言う。
「私達はルガールを倒す為に動いたの。」ちづるが説明する。
「そうか・・・。俺はお邪魔虫だったかもな。君達に余計な手間を取らせてしまった。すまない。」
「まあいい。今度一緒にメシ食おうぜ。」京が笑顔で言う。
「光栄だ。僕の驕りでね。」ヤムチャの顔から笑顔が漏れた。
数日後、ヤムチャはディオ=ブランドーを名乗る猫と出会い自分の世界へと戻った。
輪廻転生 第二部 完
やっと第二部を終わらせる事ができました。結末自体は第一部の頃から考えていたのですが
それまでのストーリーがなかなか思い浮かばなくて苦労しました。今回は新しい試みとして
人の心情を描いてみました。伝わりにくければ誤りたいと思います。
さて、今回は第三部のキーとなる能力を出してみました。ヒントは女性です。
誤字脱字。これだけはあって欲しくないと重い、きちんとチェックしていきます。
誤りたい→謝りたい
何度も間違えてました。本当にすみませんでした。
輪廻さん…。
重い→思い
後書きも書き込む前に一度見直してみては?
3部、楽しみに待ってます。
ちなみに
奢る→自分の金で人にごちそうする
驕る→思い上がる
ですね。
そこまで突っ込まんでもと思うが…。
>>278の本文ならともかく、
>>277の後書きまでは行き過ぎでしょ。
草薙氏、2部完結おめでとう。3部も頑張れよ。
280 :
作者の都合により名無しです:05/01/17 17:10:42 ID:+3bT3r5N†
>>279 気をつけると書いて舌の根も乾かないうちに誤字をかます。
もうこいつわざとやってるだろ。氏ねよ。
それ以前にこいつのほとんど漫画のキャラ出てないし。ゲームのキャラばっか。スレタイ読め。カス。
まじで
>>263にいけ。絶対こっちで書く為に無理に漫画のキャラ出してるだろ。
暗いと不平を言うよりは、進んで明かりをつけましょう
ドラえもん外伝とやらもさー、射撃最強であるのび太が格闘性能身につけても
面白くないんだよねー。力が付いて行く様も唐突過ぎて面白くない。
どうせなら他作品の射撃最強キャラと対決なり師事なりした方がオモロイと思う。さんざん弄られ尽くされたネタだけど。
八頭身ドラとかやって喜んでる小学生と変わらない印象なんだよな。だから誤字とかどうでもいい。逆に。
つまんないと思うなら黙ってスルーしてやれよ。
それが大人というものだ。
ただ、輪廻氏は連載一本に絞るべきだったな。
努力は買うしいろいろ書きたい気持ちはわかるけど、
3つ同時連載出来るほど器用には思えんしな。
俺はドラ外伝は割合好きだよ。
元キャラが分からないので輪廻転生は読んでないが…。
ま、頑張れよ輪廻氏。投げ出したら負けだぞ。
しかし誤字は本当に気をつけてな…。
あんまり彼にかまってもスレの雰囲気悪くなるだけだから
もう生温かく見守ろうよ。直らんものは正直直らん。
>>280 携帯から書き込むとIDの最後に「†」がつくって知ってる?
見苦しいよ、草薙。
286 :
作者の都合により名無しです:05/01/17 19:43:19 ID:+3bT3r5N.
みんな氏ねばいいのに
始まりではない。
物語は終わりはじめたのだ。
ああ、夜想曲が聞こえる。
――『騎士が剣を抜いたのは。』より
原題 L'epee du Dernier Chevalier
1
誇りっぽい、粗末な小屋だった。
木製の壁のぐるりに、黄色くくすんだ白のカーテンが打ち付けられていた。
カーテンの隙間から、青白い光が差し込んでいた。裸電球が二つぶら下がっていたが、日の光だけで十分に明るかった。
ここのキャンプにおける、一応の教会だった。それほど広くは無く、人が10人も入れば息が詰まる。
ドアから部屋へ入ると、簡易な机が三つ横並びになっている。それぞれに椅子が4つずつ備えてあった。
その中央の机で、ヴェルサスは二人と向き合っていた。
ヴェルサスが奥に、手前、つまりドア側に二人が座った。
少年は広瀬康一、女のほうは山岸由花子、と名乗った。
ヴェルサスは、椅子の背もたれを前にし、上半身を預け、その両脇から足を投げ出していた。
対して、机をはさんだ向こうにいる康一は、それは礼儀正しく、きちりと両足を揃え座している。
両手を膝に置いていた。緊張し、無理をしているのは一目瞭然だった。
姿勢も硬ければ、顔もやや引きつっていた。無理に大人ぶるせいで、童顔が余計子供っぽく見える。
その康一の左に座っているのが由花子である。ヴェルサスから向かって右である。
座高から見ても、彼女の方が康一よりも背が高いのがわかる。同い年とは思えなかった。
端正で美しい女だった。先ほどから、冷ややかな表情を変えていない。
少女とはややいいにくい面相である。それでも、大人びた顔に若さは隠しきれてはいなかった。
時折覗く疲れと厳しげな表情が、さらにスパイスとなって彼女の魅力を湧きあがらせていた。
無理をしているのは、由花子も同様だった。
二人ともが、外界と内面とを遮断しているのだ。
康一は男という膜で、本当の弱弱しい自分を隠している。
由花子は女であることを、その硬い外面で隠している。
両方とも、内に秘めるのは実に柔らかいものである。
変なところで似かよっている二人だった。
ヴェルサスには、そこまで深いところまで理解し得なかった。
ヴェルサスの傍らには神父が立っていた。
隻腕の神父である。ヴェルサスの保護者とでもいうべき男である。黒人とまではいかないが、浅黒い肌をしていた。
四十に、まだ至らない程度であろうか。彼もまた、無表情である。しかし、表情が無いのが、まったくもって自然体だった。
聖職者は、漆黒の仮面をまとっていた。
先ほど、神父とヴェルサスは、ロンドンのあたりまで出向いていったところ、ブラックサバスに襲われる男女を目撃、そして保護したのだった。
決して保護などといえない、きれいな方法ではなかったのだが。
完全に目を覚まし、十分ほどで落ち着きを取り戻した康一は、ぼそりぼそりと自分たちのことを語りだした。
ヴェルサスは、彼の、とろとろとしたしゃべり方に多少いらついていたが、おとなしく相槌をついていた。
ヴェルサスには罪悪感があった。仮にも彼らを見殺しにしたのだ。
陰から二人を見るだけで、自分には何もできなかった。というよりも、何もしなかった。
彼ら二人がその事実を知らないことは、ヴェルサスの心を軽くした。
その上で善人ぶることによって、自分の非を完全に打ち消そうと考えていた。
薄っぺらな罪悪感である。しかし、たとえ薄っぺらでも心にはわだかまりが残る。
それさえ消せれば何の問題も無い。そう考えている。
なかなかに低い心の持ち主だった。しかも、姑息だと自覚しているあたり、手におえない。
だからといって、楽しくおしゃべりできるヴェルサスでもなかった。
そんな中で時折由花子から飛んでくる、きつい視線がヴェルサスには痛かった。
こちらに非は無いと、ヴェルサスは自分に言い聞かせている.
それでも直接目を合わせるのは避けた。
よほど他者を警戒しているのだろうか。先ほどからしゃべるのは康一ばかりで、彼女は名を名乗りもしなかった。
それがさらに怖かった。
二人の前の紅茶も、手をつけられないまま、すっかり冷めてしまっていた。
真っ黒の紅茶だった。一見コーヒーにも見えるが、カップから漂う香りはレモンのそれである。
10年ほど前までは夕日色をした茶も出回っていたのだが、今となっては黒い奇形種が一般的である。
変異前の高級品など配給されるわけもない。味はややおちるが、ティーフリークでなければ気にはならない程度である。
ヴェルサスは、自分の紅茶を飲み干すと、
――こんなご時世、しょうがねえよな。
そう自分に言い聞かせると、後方に視線を送った。
神父にこの場を振ろうとしたのだった。
振り向いたヴェルサスに気づいた神父は、しかし無言で、顎で催促をしただけだった。
いいから続けろ、とでも言いたそうだった。
無言で前を向くのは、ヴェルサスなりの返事だった。ちぇっ、と舌打ちも返事の一部である。
数瞬たってヴェルサスは気付いた。
――なんでこんなやつと、目と目で会話できちまうんだ、俺は。気色わりい。
何気ないのが、またさらに最悪だった。
ちぇっ、ちぇっ。
ヴェルサスは、再び舌打ちをすると、
「ああんと、ということはだ、君ら、強制移民ってことかい?」
そうして、会話が再開されたのだった。
「そういうことだと思います。船、です。父さん、母さん、姉さん、それにボリス……ボリスってのはうちの犬です。
他にも町の人がたくさん、みんなタンカーみたいなでっかい船に乗せられて。
船の中は、もう、最悪でした。ほとんど積荷扱いで、寒くて寒くて身を寄せ合って数日を過ごしました。
実際、隙間も無いほど詰め込まれたんです。しかも、とても血なまぐさくて・・・・・・。
・・・・・・ええと、ここってロンドンなんですか? はい。
ここへくる前にも、いったんどこかで止まったんです。外国だとは思います。
何をするのかと思ったら、そこで乗っていた人の半分は下ろされました。代わりに入ってきたのは、現地の人みたいでした。
その時に、僕は家族とはぐれてしまったんです。由花子さんと出会えたのは本当についてました」
以上のことを、何箇所も噛みながら康一は伝えた。家族との別れの部分は、特に時間がかかった。
強制移民。
時折、イギリスにはタンカー級の船によって外国人が輸送されている。
その意図がいったい何なのか、それは常人たちにはわかりえない。
帝王の、ただの気まぐれ、もしくは人質。一般的な考えはこれである。
後者の場合、兵器攻撃に対する、人間の壁となるのだ。各国の兵器に対応するためには、各人種が必要となる。
しかし、ごく一部の人間は、もう少し正解に近い説を持っていた。
ヨーロッパへ連れ込まれ、そして放たれる。そう、六本の矢のある地にである。
DIOが求めるのは、能力者。有能者は、老若男女、千差万別である。
スタンド使いを得る可能性を高めるため、移民は行われる。
イギリスの人口が爆発的に増えているわけでもないのだ。つまり、運び込まれる分だけ、死者もいるのだ。
運悪く、ゾンビとなるものもいる。
それにしても、はっきりとした根拠は無い。
混沌の時代に、そして混沌の帝王に対し、そんなことを疑問視するのは無駄かもしれない。
無駄というより、無粋、という言葉のほうがしっくりくるかもしれない。
狂った世界だった。
立て付けの悪い音を立てながらドアが開いたのは、そのときだった。
康一と由花子が振り向くのと、現れた男が言葉を発したのは、ほぼ同時だった。
「えらくチビだな。ガキに女じゃないか」
男の言葉にムッとした康一だったが、相手の顔を見て驚いた。
ドレッドヘアーをより細くしたコードのような黒髪が、きれいに左右対称にまとめられていた。
問題は、彼の目だった。
その生え際のさらに下、男の目にはバンデージのような白い布がぐるりに巻かれていた。
ぴったり巻かれた布であり、布は微動だにしていない。つまり瞬きもしていないということになる。
目は閉じられているのだ。だが男は、康一たちの面相をずばり当てて見せた。
透けて見えるのだろうか。なら何故包帯を?
「なんで見えてるんだ、って顔してるな」
男が、混乱する康一のほうを『見て』また言う。
「おまえこそ見えてるのかよ?」
男が唇だけで笑みを作った。ひゅう、という音が首筋を撫でた。
康一は身震いした。寒気がしたのだ。比喩でなく。
「リキエル、茶のおかわりならいらねえみたいだぞ?」
ヴェルサスが問うと、リキエルと呼ばれた男は
「お客さんだ」
言い捨てると、やはり常人とかわらぬ動きでドアから出て行った。
そうして、新たに二人の男が代りに入室してきたのだった。
「はじめまして、お二人さん。L-3キャンプへようこそ。責任者の片桐と言います。
いやあ、日本人は久しぶりだな・・・・・・・」
先に入ってきた、やや太り儀身の中年が気持ちの悪いくらいの朗らかな笑顔とともにしゃべりだした。
立て付けの悪い音を立てながらドアが開いたのは、そのときだった。
康一と由花子が振り向くのと、現れた男が言葉を発したのは、ほぼ同時だった。
「えらくチビだな。ガキに女じゃないか」
男の言葉にムッとした康一だったが、相手の顔を見て驚いた。
ドレッドヘアーをより細くしたコードのような黒髪が、きれいに左右対称にまとめられていた。
問題は、彼の目だった。
その生え際のさらに下、男の目にはバンデージのような白い布がぐるりに巻かれていた。
ぴったり巻かれた布であり、布は微動だにしていない。つまり瞬きもしていないということになる。
目は閉じられているのだ。だが男は、康一たちの面相をずばり当てて見せた。
透けて見えるのだろうか。なら何故包帯を?
「なんで見えてるんだ、って顔してるな」
男が、混乱する康一のほうを『見て』また言う。
「おまえこそ見えてるのかよ?」
男が唇だけで笑みを作った。ひゅう、という音が首筋を撫でた。
康一は身震いした。寒気がしたのだ。比喩でなく。
「リキエル、茶のおかわりならいらねえみたいだぞ?」
ヴェルサスが問うと、リキエルと呼ばれた男は
「お客さんだ」
言い捨てると、やはり常人とかわらぬ動きでドアから出て行った。
そうして、新たに二人の男が代りに入室してきたのだった。
「はじめまして、お二人さん。L-3キャンプへようこそ。責任者の片桐と言います。
いやあ、日本人は久しぶりだな・・・・・・・」
先に入ってきた、やや太り儀身の中年が気持ちの悪いくらいの朗らかな笑顔とともに喋りだした。
『騎士が剣を抜いたのは。』
原題を英語にそのまま直すと「The Last Knight's Sword」となる。
そのため、日本で出版されたものは、やや捻った訳となっている。
クズの元祖が現れましたよ。いくつの作品を放り投げたままにすれば気がすむんだ
10から
…路地裏から、司令官とは別の望遠スコープが一部始終を見ていた。
「……見事だ。全ての攻めの枕を把握している」
そしてスコープを仕舞い込むと同時に閃光遮断及び飛来物防御用の黒いフルフェイスガードを下ろす。
「……やはり機械は信用できない。最後に雌雄を決するのは我々の様な集団、という事か」
彼の背後に規則正しく整列する同じフェイスガードと同色のタクティカルスーツの一個小隊。そのどれもが微動だにせず指示を待つ。
そんな彼らに、彼――グロック=トリガー大佐は言い放った。
「…陸軍第三遊撃隊“鉄血の狼”――出撃!!!」
男は遂に500メートル地点まで差し掛かっていた。しかしそれを止める者は一人も居ない。
見送る以外の手が無い。そもそもこの中に誰一人であろうと「倒せない相手を倒す訓練」を積んだ者など居はしないのだ。
男の靴音だけが、時限爆弾の秒針の様な焦燥感で息苦しい均衡の中に響く。上空のヘリのホバリング音さえ遠くに感じる。
誰もが恐怖しながら諦めていた。必殺無敵を頼んだ自分達の武装が、まるで意味を成さないからこそ。
その時、一陣の風の如く何かが前方から男に襲い掛かった。
しかし男は斜に構えて難無く回避する。――――――…………そう、回避した。初めて。
そして一陣の風達は男を通り過ぎて約五メートルほどの位置に止まった。
それは三人の兵士。だが武装がこれまでの兵と余りに違いすぎる。
サーメット(セラミックと金属の混合材)の刀、高分子カーボン製の手槍、ナップ(金属粒入りの格闘用グローブ)、
素材こそは最新であってもひどく原始的――――しかも人工筋肉スーツさえ着ていない。
更に、男の前方を同じ出で立ちの一個小隊がいつの間にか塞いでいた。
―――――――男は、一瞬にして包囲された。
ただただ訓練に訓練を重ね、ただただ経験に経験を積んだ集団――――これこそが“鉄血の狼”だった。
「真の兵器とは、訓練された人間である」と言う言葉がある。どんな兵器も起点は結局人間だからだ。
だからこそ徹底的に練磨し、鍛え上げ、敵に合わせて武器を変えれば如何なる状況にも対応できる集団となる。
クロノナンバーズとは似て非なるコンセプトの元に造り上げたこの戦闘集団は、百戦錬磨にして常勝無敗、その上油断皆無。
その全てが、たった一人の男を殺すためだけに注ぎ込まれようとしていた。
『……咬め』
全員の骨振動インカムから殺意のスラングが零れると同時に、第一陣が餓狼の如く男に襲い掛かる。
―――槍が、拳が、剣が、水銀封入バトンが、その他様々な武器が、一斉に男を破壊したはずだ。しかしどれ一つ掠りもしない。
男は第一陣をこれまで同様易々と潜り抜けただけ――――…はたから見れば。
“鉄血の狼”隊員達は見た。この男が、僅かな身じろぎで全ての攻撃を回避したのを。しかもその全てを目で追っていた事を。
あらゆる攻撃が紙一重で届かない事実――これを前にすれば誰だろうと戦意が雲散霧消する。
だが、彼らは兵器にして群狼。一命あるか、命令を終えるかまで撤退など彼らの頭に存在しない。
『………喰い尽くせ』
「殲滅」の命令と同時に、全方位360度から兵士達が男へとすれ違い様に攻撃。そしてその周囲を囲む第二・第三の陣が第一陣の
攻撃終了と同時に攻め立てる。更にそれを相手が死ぬまで繰り返す。
それは狼の群れが一匹の獲物を喰い尽くすのとまるで同じ光景でありながら、全く別の幾何学攻撃だった。
だが、第一陣の正面担当は最初の最初で見てしまった――――男の失笑を。
………第一陣終了。第二陣攻撃、終了、第三陣攻撃、終了。第一陣攻撃……。水面の波紋が幾度も再生と逆回しされるように、
且つ水を漏らさぬ正確さで集団攻撃を繰り返して――――――………既に十分が経過していた。
機械的でありながら臨機応変の攻勢の中で、コートの裾こそ破れていたが男は未だ無傷―――ばかりか歩くのを止めない。
――――――アクロバティックな舞踏を思わせる動きで攻撃をかわしながら歩いていた。
速いが、やはり見えない訳ではない。ただ、軽快なステップとランダムにふら付く上体の動きの先がまるで読めない。
恐怖していた――――――全隊員、攻撃しながら。周りの兵士達に至っては、トルーパーの隊員ですら絶望の笑みに引き攣った。
薙ぎだろうが突きだろうがまるで当たらない。偶に回避に遅れるコートの裾を裂くだけ。
組み付こうかと誰かが思った――――しかしそれをかわされれば男に振舞われる筈の攻撃全ての餌食となる。
陣を立て直そうかと誰かが思った――――しかし彼らにこれ以上の陣形が無い。
諦めてしまおうかと誰かが思った――――しかし自主後退は彼らの辞書には存在しない。
……八方塞がりの止めは、男に引き連れられる形で100メートル地点を越えた事だった。
『………囲め』
誰もがその命令を待っていた。これまで以上の速度と正確さで男を半径約8メートルに取り囲む。そして男もその中心で足を止めた。
命令内容は―――…「一騎討ち」。最強の人員が単独で敵を打倒する形―――グロック大佐が男の正面にいつの間にか現れた。
「……何者だ、貴様」
グロックが抜いたのはハンドガード付の大型ナイフ二刀。これを抜けば相手がマシンガンを持っていようと恐れるに足らない。
今だってそうだ。隊員たちの手には負えなくとも、見ていただけなら自分が仕損じるとは思えなかった。
「……ウチに入れば私の副官ぐらいには成れただろうに、残念だ」
言葉を言い終えるが速いか、グロックの体が霞んだ。
余人の想像を遥かに超える疾駆。正に黒い疾風と化し、一対の白刃を閃かせて男の喉笛に一直線。何百人も葬った必殺の一撃だった。
しかし、疾走するグロックの肩に足が乗った。
それは無論男の足。彼の突進力と自分のバネで後方に大きく高く飛ぶ………囲みを抜ける高さで。
誰もが一瞬唖然とする中、男は囲みの外に重力を感じさせぬ軽やかさで降り立った。
慌てて男に一番近い隊員が振り向くと………
男が居合いに構えていた。その手には、いつの間に出したのか判らない外面の何もかもが漆黒の刀。
「ひ、ひいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!!」
これだけの男が戦闘態勢に入ればどうなるのか、想像するだに恐ろしい。彼ばかりかその周囲の隊員まで女のような悲鳴で後ずさる。
鯉口を切った瞬間は、地獄の入り口が足元に開いた気分だった。
――――横薙ぎただ一閃。しかし誰にも刀身が見えなかった。抜刀も納刀も目で追えないほど速過ぎる。
「うわあああぁぁぁぁあああああぁぁ!!!!――――…あ……あれ?」
剣域に居たその隊員は絶叫した――――が、何とも無い。つまり、別にどこも斬られていなかった。
そして何故か、男は元来た道をきびすを返して歩き出す。用は済んだとばかりに。
その背中を見て、胸に怒りがメラメラと湧き上がる。それなりの矜持を持つなら誰でもそうだ、散々脅かした挙句が虚仮威しなら。
「………舐…め……やがってえええェ――ッ!!!」
踏み込みのために激しい第一歩―――――――――それで彼の人生は終わった。
別につまずく物も無いのに、彼は前のめりに倒れた。
訳も判らず首を廻らせると、踏み込んだ足が立ったまま其処に残っていた。
「な…」
驚愕し、身を起こす。だが付いた手の支えが消え失せる。………当然か、肩口から腕が落ちたのだから。
「えぇ……?」
胴体が地面に着いてからは更に凄惨だった。体に次々と切れ目が入り、自分を中身もろともぶち撒けた事も判らずに彼は死んだ。
―――――――――――――場にはもう、呻き声さえ上がらなかった。
御無沙汰です皆さん、NBです。
いやもう時間がかかってかかって…の割りにゃ大したモンじゃねえときてやがる。
ぶっちゃけ待たせる記録更新はまずいですよね。
今回はここまで、ではまた。
両氏共に乙。
しかしユル氏はいい加減にしとけよ。
NB氏も数週間ぐらいのブランクであせることないよ。
こっちは続けてくれるだけで嬉しいのだから。
303 :
虹のかなた:05/01/18 02:04:56 ID:H2b957iO0
ごきげんよう、皆様。
>>213からの続きです。
(何をやってるんだ…私は…)
背後で斗貴子が無事に体勢を整えたことを感じ取り、ジュネは本日何度目かの大きなため息をついた。
余計な手を出すのはやめよう、と思っていたのに。
斗貴子が撃たれそうになっているのを見て、考えるよりも先に身体が行動を起こしていた。
しかも、わずかに小宇宙を燃焼させてまで…である。
女の聖闘士は、純粋な腕力で男に劣る分、冷静じゃないと生き残れない。そう、魔鈴さんにも注意されたというのに。
猪突猛進を絵に描いたような獅子座の聖闘士じゃあるまいし。いい加減、考えなしに動くこの悪癖を直さなくては。
再度小さくため息をつく。
それを合図としたかのようなタイミングで、何かが風を切る気配がした。
……正面から…十個。左斜め後方から…数えるのが面倒なくらいたくさん。先の尖った小石のようなものが一直線に飛んでくる。
二方向からということは、敵は二人いるのだろうか。
モノは小さいがこの速さで撃ち抜かれたら無事では済まないだろう。いっぺんにたくさんの弾を放つ拳銃で撃たれるようなものだ。聖闘士だって
一応、生身の人間なんだし。当たったら怪我くらいするだろう。たぶん。
まぁ、普通の人間の目では捉えきれない速さも、聖闘士から見ればコマ送りの様で、軌道がはっきりとわかる。ただ避けるのは簡単だ。だが…。
チラリと背後に視線を向ける。
今、弾の気配を感じ取ったらしい斗貴子が、それを避けるために脚に力を込める。
左手で斗貴子の腕を掴んでその動きを阻止したジュネは、そのまま彼女を自分の側に引き寄せた。
(素手でもイケるだろうけど…こっちの方が確実だ)
緊急事態…だよな、と自分に言い聞かせる。
右手でスカートを捲りあげると同時に身に着けている鞭を掴む。
斗貴子がぎょっとして息を呑む気配を感じ、ジュネは小さく笑った。
手首を軽く翻すと、鞭が二人の周囲を取り囲むように風を横切る。
ジュネは知らないが、それはちょうど新体操のリボンが円を描く様子とよく似ている。
先程と同じ様に、パシン、と音を立てて小さな何かは地面へ叩き落とされた。――――時間にしてわずか一秒もかからなかった攻防。
しかしそれは、斗貴子が戦闘意識を取り戻すには十分なものだったようだ。
力いっぱい踏み込んだ脚の力と四本の処刑鎌の力で、斗貴子が空へと舞い上がった。
斗貴子の瞳が、薔薇の館の上に潜んでいた敵の姿を捉える。
304 :
虹のかなた:05/01/18 02:06:34 ID:H2b957iO0
(あの…っばか…!)
そんな風に行ったら、狙ってくれと言っている様なもんじゃないか…!
ジュネの予想は違えられずに、屋根の上に立つ少女が、斗貴子へと両腕を突き出した。
(えっ…?!)
赤い花をいくつも咲かせたそれは、どう見ても人間の腕ではない。
ジュネの一瞬の困惑の間に、その腕だったモノから、小さな棘の様なモノが放出され斗貴子を襲う。
とっさに空へと跳んだジュネを目掛け、後方から弾丸と化した棘が飛来する。
(やっぱり、もう一人いる)
自分へ向かってくる棘には視線もくれずに、空中でそれらを弾き落とす。斗貴子を庇うために鞭を振るおうとし…ジュネはその動きを止めた。
斗貴子の瞳は、恐ろしいほどの殺気と共に真っ直ぐ少女へと向かっている。
そのあまりに強い気迫に、ジュネは思わず息を呑んで目を見張った。
頭部のみを処刑鎌でガードした斗貴子は、そのまま少女へと突っ込む。
鈍い音を立てていくつかの棘が斗貴子の体にめり込むが、斗貴子はそれらには一切構わない。
バルキリースカートが、まるで鳥が羽を広げるようにその四本の刃を伸ばす。
「――――ハラワタをブチ撒けろ」
物騒な斗貴子の言葉と同時に、少女の体は四つに切り離された。
甲高い少女の悲鳴に、ようやくジュネは我に返る。
――――ジュネを狙ったもう一人の敵の気配が感じられない。
(逃げられたか)
小さく舌打ちをし、ジュネは薔薇の館の屋根へと跳び上った。
体を四つに分けられた少女は、それでも生きていた。言葉にならない悲鳴を発しながらも、少しずつ裂け口から体が再生し始めている。
「…ホムンクスル?」
「そうだ」
腕と両足から流れ出る血を気にも留めず、斗貴子が短く答える。視線はきつく少女を射抜いている。
その少女は、顔の造りだけ見れば美しい少女だった。…だが、彼女はすでに人間の類ではなかった。
四肢をバラバラにされながら、それぞれの部分がグチャグチャと再生を始めている。
赤い花は留まることを知らないように咲いては散り…赤い花弁がハラハラと屋根に落ち…地面へと舞い落ちる。
少女がリリアンの制服をまとっていることと二つに結われている亜麻色の髪が、少女がこうなる前は人間であったことを強調していて…。
ジュネはあまりの気色悪さに目をそらしたかったが、斗貴子の手前、それは憚られた。
305 :
虹のかなた:05/01/18 02:07:20 ID:H2b957iO0
…ホムンクルスは寄生した人間の精神を乗っ取ると聞いた。だから、間違いなくこの少女は被害者で。
人間同士のいざこざに介入することは、聖闘士として許されていない。だが…彼女をこうした人間に対し、純粋に怒りが沸き昇ってくる。
「…その棘を飛ばしたのか」
よく見ると、赤い花を生やしている枝は無数の棘をまとっている。
植物にあまり詳しくないジュネにはわからなかったが、少女のベースとなっているのは木瓜の花であった。
「…なぜ、先程のチューリップのヤツと同じ顔をしている?双子なのか?」
斗貴子の一戦目を見ていなかったジュネにはその質問の意図が良くわからなかったが、黙ってその場を見守る。
斗貴子に問われた少女が、口元を歪ませた。
「あんな出来損ないと…一緒にしないで」
「…オマエ達を造ったのは誰だ?」
言葉で殺せるのではないか、と思うくらいに殺気の込められた口調にジュネも思わず身震いをする。
恐怖を顔に滲ませ始めた少女が、斗貴子から視線をそらした。
「斗貴子さん…あなた…もしかして、錬金の戦士…?」
恐る恐るといった感じに出てきた言葉に斗貴子は答えない。
それを肯定と受け取ったのか、少女はジュネへと視線を向けた。
「あなたは…?」
問われ、ジュネは小さく首を振った。
「私達今日は…あいつを殺したら帰るつもりだったのに…練金の戦士に会っちゃうなんて…」
時折、ゴフリと音を立て血を吐きながら、少女がつぶやく。
「でもまぁ…いいわ…。目的は…達せられ…そうだ…し…」
血にぬれた少女の唇がニィ…っと歪み、ジュネは思わず眉根を寄せた。
少女が右手を空に翳す。
警戒態勢を取ったジュネと斗貴子を見て、少女が嘲るように微笑む。
「…ごきげんよう…」
音もなく放たれた一つの棘が、少女自身の額を打ちぬく。
絶句したジュネの目前で、彼女の体は塵となり――――風に流れていった――――…。
今回はここまでです。
次はようやく、祐巳視点でも事件が起こります。
それでは、ごきげんよう。
ミドリさん、乙!
やっぱり斗貴子さんはブチマケが良く似合う
アクションの鬼NB氏とまた〜り使いミドリさんの作品、両方続けて読むと
両極端の個性が際立って見えてさらに楽しい。
NB氏はいよいよオリジナルモードの世界に突入したか?
黒猫詳しくは知らないけど、戦争って感じが伝わってきてすごく面白い。
ユル氏、一読した限りジョジョ設定に移民などの世界観を加えて面白そう。
大いに期待できるんだけど、4×5とかAoBとかが未完のままだから心配なんだよね。
また飽きたら途中で止めるんじゃないかなあって。
実力は凄い高いと思うので、頑張って欲しいけど。まず先行作の方の収拾をひとつ。
ミドリさんの作品は核心に迫ってきた感じで緊張感増してますね。
斗貴子シブイ。でも、次回はまた祐巳たちまたーりモードの気がするw
>ユル
いい加減にしろ投げ出し野郎
4×5やらAoBやらほっぽりだして新作始めやがって
第六話「ヒートアップ」
餃子で一杯になった腹を抱えながら、寺内を歩き回るオリバたち。早くも疲労の色が見
て取られるが、休憩など与えられない。元々日程的に無謀なツアーなだけに、スケジュー
ルは秒刻みで組まれているのである。
「次はムエタイでしたな。タイの国技と中国四千年の融合……なかなかどうして、期待を
そそる組み合わせですよ」
先の大食いでは散々な目にあった柳が、武術家としての本音を漏らす。しかし、最後尾
を歩いていたドリアンが、冷めた口調で呟く。
「あまり期待しない方が、いいのだがな……」
この声は、五人の耳に入ることはなかった。
ムエタイ──待っていたのはトランクス姿のサムワン海王。
彼が目に映った瞬間、シコルスキー以外の五人に電撃が走った。
サムワンは決して弱くない。細身ながらも鍛え抜かれた四肢からは、世界の一流に通ず
る打撃が生み出される。だが、何故だろう──殴りたい。蹴りたい。切り裂きたい。
五つの殺意に満ちた眼差しが、サムワンの心臓を抉り取らんばかりに突き刺さる。シコ
ルスキーが叫んだ。
「逃げろォッ!」
声に反応して、サムワンが助けを求めて駆け出す。が、スペックに背後からタックルを
喰らい、床に倒された。
「ハハハ、逃ガサナイゼ……」
しけい荘一行が本能に根ざす暴力が、サムワンが持つ何かによって呼び覚まされてしま
ったのだ。もっとも常識があるはずの柳ですら、悪魔が乗り移ったかのように笑んでいる。
まもなく、悲鳴が起こった。
目の前で繰り広げられる五対一の凄惨なリンチを、シコルスキーはただ震えて見守るし
かなかった。
転がされ、起こされ、また倒される。立ち技最強とも称されるムエタイを披露すること
なく、本物の暴力に打ち伏せられていく。
サムワンは戦士である。たとえ卑劣な手段を喰おうと、相手が複数だろうと、勝たなけ
ればならない存在だ。シコルスキーもそれを理解していた。だから、助ける必要などない。
そして、もし助ければ自分が次の標的になるのは分かり切っている。
「すまないな。俺には救えない……」
惨劇から目を逸らそうとするシコルスキー。しかし、見捨てられない。視線とは裏腹に、
彼の心はサムワンに引き寄せられていた。同情か、それとも正義感か。心に芽生えた何か
が、シコルスキーが冷酷に徹することを許さなかった。
「くそっ、どうして……。ウオオオオッ!」
半ばやけくそ気味に、シコルスキーが走り出した。そして、オリバの後頭部へドロップ
キックを浴びせる。
一斉に五人が振り返った。
「ほう、シコルスキー。まさか、君がこんな行動に出るとはな」
「弁解するつもりはない。来るなら、来いッ!」
身構えるシコルスキーだったが、予想に反して攻撃は行われなかった。殺意が大半を占
拠していた空気が、急速に緩んでいく。
「常日頃から我々に敗北している君が、まさか赤の他人を救うために我々に挑むとは思わ
なかった。それも、第三者として安全地帯にいられる身分だったというのに……」
オリバは拍手を送った。ドリアンも、スペックも、ドイルも、柳も同じく拍手を送った。
「照れちまうぜ。何もいきなり、そんなに持ち上げないでくれよ」
「それもそうか。では、そろそろリスタートするとしよう」
「え……」
まもなく、ロシア人の悲鳴が上がった。
やがて暴力から解放されると、シコルスキーはサムワンに並ぶように倒された。
「何故、私を助けたのだ」
サムワンが隣へと静かに問う。彼からして見れば、シコルスキーの行動は不合理そのも
のだったからだ。何もしなければ、暴行を受けることもなかったのに。
「アンタに……ある種の、共有感を覚えたからさ……」
瀕死のシコルスキーからの答えは、この一言のみであった。
午後もいよいよ後半へ入る。ドリアンによると、空拳道を担当するのは日本人とのこと。
指定された部屋へ辿り着くと、オリバがゆっくりと扉を開く。
「強くなるだけではつまらんぞ」
一行が足を踏み入れるや否や、いきなり声が飛んできた。寂海王だ。
「私はね、近いうちにここを独立して道場を建てるつもりだ。我が空拳道を日本の若者に
普及するためにね……。どうだね君たち、私と一緒に来ないかッ!」
唐突にスカウトが始まった。誰もが対応に困っている。それにもかかわらず、寂はオリ
バに近づき、何の断りもなしに腕を触り出す。
「素晴らしいッ! 資料は読んでいたが、まさしく世界一の筋肉だ。この腕っぷしで、日
本の若者を導いてみんかね」
オリバの返答を待たず、今度はドリアンに歩み寄っていく。
「怒李庵海王。君が寺を逃げ出した時は、本当に残念だった。海王寺でもトップクラスを
誇ったその技術と肉体、これからは指導に役立てないか」
寂の瞳は、まるで宝物に遭遇した冒険者のように輝いていた。
「うむ、恐ろしいサイズだ。特に肺活量は相当なものだろう。君の力があれば、必ずや日
本は生まれ変わるッ! 息を止めるだけではつまらんぞ」
一見でスペックの超人的な肺機能を見切った眼力は、どうやら本物のようだ。
「均整の取れた肉体だ。さらに、体内にはあらゆるタネを仕込んでいると聞く。自らを改
造してまで観客を楽しませようとする執念、是非とも欲しい人材だ」
ドイルも勧誘された。柳がこっそりと部屋を出ようとするが、引き止められてしまう。
「株式会社クードー。私は何度、この名を耳にしたことか。殺法や暗器とて、正しく使え
ば最高級の護身術と化す。私に力を貸してくれッ!」
嫌がる柳の両手を握り締め、上下に振り回す寂。空拳道を指導する気など、初めからな
かったようだ。次はシコルスキーへと、その関心を移す。
「君はロシアのシコルスキーだったな。李君の毒手を克服したと聞く。その生命力は驚嘆
に値するよ……でも、君はいいや」
自分だけ拒否された。こうなると、シコルスキーとて黙ってはいられない。営業開始だ。
「ちょっ……待て! ほら、この指を見てみろ! 天井にも張り付けるぞ」
「うむ、生半可な鍛え方ではないな。でも、君はいいや」
売り込むシコルスキー、断り続ける寂海王。この奇妙な掛け合いは、しばらく続いた。
金玉海王、勧誘海王、登場です。
残るは……。
次回へ続く。
シコル……・゚・(つД`)・゚・
シコルの待遇にギガワロス
>ユル氏
俺はあんたの作品、肉スレの時から好きだし応援してる。
だが新作もいいけどまず4×5とAoBをなんとかしてくれー。
2つとも楽しみにしてたんだよ。だいらいたいさいはいらんけどw
>NB氏
鉄血の狼、めちゃカッコイイ!!雰囲気といい攻撃法といい。
しかし、やはりクリちゃんのカマセだったかw描写本当に上手いな。
これからクリードの残酷ショーが始まりそうで楽しみだ。
>ミドリさん
沙織さんの時、斗貴子の時、祐巳の時で、雰囲気が変わるSSですね。
高貴・殺伐・茫洋って感じで。一粒で3度美味しい。
斗貴子とジュネ殺気立ってますね。次回は祐巳サイドで事件ですかー。
>サナダムシ氏
シコルスキーとサムワンは分かり合えそうですなw親友になれそうだ。
シコルと寂の漫才にハゲ藁。シコルは前作から美味しいポジションだw
そしていよいよ、妖怪ジジイの登場か?勇次郎も出して欲しいなあ。
>>203 カンチョウキを翳した響子と、勇次郎との間に、突如コンクリートの壁が立ち塞がる。
だがこれは、勇次郎にしか見えない壁。だが勇次郎にとっては、落書きもできるし
頭をぶつければタンコブもできる、本物の壁だ。それを、
「小賢しいわああああぁぁっ!」
地を震わせる咆哮。ただそれだけで、壁は粉々に砕け散った。鬼の気迫の前に、
もはや幻影など通用しないのだ。
壁が砕けるのと同時に、その破片越しに破片ごと、響子を打ち砕かんと勇次郎が拳を
繰り出す。が、その拳は宙を舞う破片を砕いただけに留まり、響子には届かなかった。
ほんの数瞬、壁とその破片で勇次郎の視界が遮断された隙に、響子は身を沈めていたのだ。
レスリングでいうタックルの要領で、低い姿勢の響子が勇次郎に抱きつく。その手には、
しっかりとカンチョウキが握られている。度数無制限の、特別製強力バージョンが。
「ケエエェェッ!」
響子の頭に、勇次郎が肘を打ち下ろす。鬼の大鉈が、響子の頭蓋を打ち砕き、
その黒髪の隙間から白い脳髄を溢れさせる為に。
が、それより一瞬早く、響子が叫んだ!
「タイムイレイザアアアアァァァァっ!」
その瞬間。時空間に、本来あってはならない巨大な歪みが生じた。
虹色の光が響子と勇次郎を包み込み、陽炎のように二人の姿を歪め、世界中の楽器全種を
同時に鳴らしたような音が響いて空気を震わせ、周囲をこの世ならざる空間に変えていく。
その光が、音が、振動が、
「……きょ、きょうこ……ちゃん……響子ちゃん! まさかっ!?」
「か、神余殿……神余殿……か? なんだ、これは?」
嗣子と本部を目覚めさせた。そして二人の見ている前で、異常空間の中にいる二つの
人影の内の大きい方が、まるで底なし沼に沈み込んだかのように、消え失せた。
光、音、振動が収まり、辺りに静けさが戻る。この場にいるのは、体を引きずるようにして
立ち上がりかけている嗣子と本部、そしてその二人とは逆に、倒れていく……
「響子ちゃん!」
「神余殿!」
力なく倒れた響子の手の中で、度数無制限カンチョウキが、砕け散っていた。
正座した嗣子が、響子を抱き起こしている。その響子の首筋や手首を、本部が診ている。
「極度に衰弱はしておるようだが、命に別状はない、な。ふぅ」
「響子ちゃん……なんてムチャなことを……」
嗣子は、精気を失っている響子の顔を見下ろして、涙を浮かべていた。
「あの、神余殿のお知り合いですな? 一体神余殿は今、何をされたのです」
「『タイムイレイザー』……未来へと時間を跳び越える超能力です。度数無制限の
カンチョウキが砕けたこと、響子ちゃんの弱り方から察するに、おそらくは常識外れな
ほど未来……十年ぐらい先の時間に跳ばしたのでしょう。あの、範馬勇次郎という人を」
本部の方など見ておらず、習慣で事務的に説明する嗣子。今、頭の中は響子のことで
一杯なのだ。
本部の方はというと、いきなりSFな話をスラスラ言われて混乱したが、とりあえず
最後の部分について一つ。
「未来へ跳ばした、と……? 一体どうなるのですか、あの男は」
「カンチョウキでのタイムイレイザーは擬似的なものですから……亜空間から未来の
世界を少々覗けるだけで、そこに降り立つことはできないでしょう。おそらく数日後
には戻ってくる、かもしれません。あるいは亜空間の中に閉じ込められたままかも」
「むう。まあ世界平和の為には、その方が良かろう」
さらば勇次郎、と本部は心の中で二秒ほど合掌する。それから、
「で。神余殿は? 先も言いましたように、命に別状はないと思われますが」
「わたしたちを助ける為に、普通では考えられない力を発動させましたからね……
下手をすれば、自分も一緒に亜空間に閉じ込められたかもしれないのに……あっ」
いきなり、というかやっと、嗣子が本部の顔を見た。
そして、響子を抱き起こした姿勢のまま、ぺこりとお辞儀する。
「名乗りが遅れて申し訳ありません。神麻嗣子と申します」
「あ、ああ。これはご丁寧にいたみいる。わしは、本部以蔵と申す」
「……本部さん、ですか」
嗣子は、本部を、じっ、と見た。それから響子を見て、また本部を見る。
「? どうされました神麻さん」
「わたしがここにいて、良かったなと。だから先程、わたしたちを助ける為に、と言え
ました。もしわたしがいなかったら……それでもきっと響子ちゃんは同じことをして、」
言いながら嗣子は、響子を支えながら立ち上がろうとする。本部からは少し視線を外して。
「後でその話を聞けば、わたしは本部さんに嫉妬して嫉妬して身を焦がし、と、とと」
「ああ、危ない。わしが背負いますよ」
本部が、ひょいっと響子をおんぶした。軽い。
そのまま本部と嗣子が、並んで歩き出す。
「とりあえず、ウチで休んで頂きましょう。……神麻さん、先程の話の続きを」
「あ、はい。続きを、と改めて言われるとちょっと恥ずかしいんですけど。そもそも、
女性であるわたしが本部さんに嫉妬するのは、少々どうかと思うんですけど、」
「それではなくて、もっと前の。いえ、最初からの。貴女方が何者で、何をしようと
しているのか。可能な限りで結構、教えて頂きたい」
「え?」
本部は、子犬のように軽い響子の、弱々しい温もりを背に感じながら、言った。
「もしこれからも、このようなことが続くのであれば、わしは加勢したい。今回のように、
何の力にもなれないとしてもです。わしの知らぬところで、またこのようなことが
起こるなど、耐えられませぬ。お頼み申す、神麻さん。教えてくだされ、貴女方のことを」
「……」
立ち止まった、二人。嗣子は本部の目をじっと見て、その背に身を預けている響子を見て。
それから、ゆっくりと口を開いた。
「正直に言いますと、未だに信じられないほどなんです。響子ちゃんが、会って間もない
殿方の為に、ここまで無茶をしたということが。……でも、つまりそれは、証明ですよね。
響子ちゃんにとって、貴方がどういう存在であるかという」
「神麻さん……」
嗣子は頷いて、
「お話しします。わたしたちのこと、全て」
次で完結です。それはそうと、年末年始の一休みが終わって、調子が戻ってきましたね。
ちょっと間を開けたらもうこの状態↓。読み応え&書き応えありまする。
>>ゲロさん
自我など容易く崩壊、しますね確かに。保健室に行けと言われたキコは、その時何を考えて
いたのやら。でも自分がそんな状況にあると知ってて薬を飲み忘れる辺り、神経が太いのか
呑気なのか。そう言えば彼女の心が聴こえる周りの人も、それはそれで奇異に思いそうな。
>>ミドリさん
「取り合い」。男の子同士だと、そもそも「取り合いになる人気者」という存在自体が
あまり見受けられません(人望のある兄貴分、はいても)が、女の子同士だと……で一転、
ブチ撒け。落差激しいです。あと白銀に子供扱いされてる黄金が、何気に微笑ましいです。
>>うみにんさん
やったぜジャイアンさすがだジャイアン、これぞ我らがガキ大将! 他の二組が重々しく
なってるのに反して、軽快に明快にキメてくれてます。……でも、げんごろうとて、
このままやられはしないでしょうし。注目のカード、まだまだ目が離せませぬなっ。
>>ブラックキングさん
カミュ……う〜む。いつか戻ってくれるのを期待。蟹や魚ならいざ知らず、カミュがこの
状態のまま、やられて退場というのは可哀想過ぎかと。復活希望です。あとザボエラも、
随分格下扱いですね。彼はそれでも似合えますが、でも下克上を狙ってくれると面白い。
>>ユルさん
いつもながら、「描写」というより全体的な「空気の表現」が巧みですね。今回のは
寒々と冷たい感じで、特に黒い紅茶がいい味です。味はそんなに変わらない、って
ところが微妙にくすぐられてます。……ただやっぱり、一つ。今度こそ完結をば何卒。
>>草薙さん
・勇次郎、問答無用でただ強い、だけではなくちゃんと「天才」してますね。でディオと
ご対面。これはディオの反応が楽しみです。彼が勇次郎のことを、どんな風に見るのか?
・零技の礎は好きなので、それが活躍してたのは嬉しいとこですが。でもルガール、ここ
までの強さを考えると呆気なさ過ぎて残念な気も。で女性……ちづる? それとも他に?
>>サマサさん
何というか、綺麗に漫才してますね。ものの見事にボケとツッコミ、これぞギャグの基本。
暴走とか仰ってましたから、もっと電波なのかと思いきや基本に忠実。なんとなくサマサ
さんらしい、気がします。それはそうと「ドッポちゃんがみてる」読んでみたい。切実に。
>>NBさん
引きに引いて、ようやく攻勢に入った、と思った途端に来ましたねぇ血みどろズタズタ。
華麗にして凄惨、気持ちいいですこういうの。それにこういう展開で、斬られる側に
かませ臭がしないのは凄いですよ。強いのにやられる、つまり加害側がとてつもない、と。
>>サナダムシさん
拍手されたと思ったらリスタート、毎度ながら彼に安息の時はなし。とりあえず寂さんに
売り込む姿が可愛いので私は満足。しかしサムワン、シコルに逃げろと言われて迷わず
逃げる辺り、やはり君は……というか板垣ワールドにおけるムエタイは……か。哀れ也。
>>263 前にも紹介されてましたね、そこ。私もゲームキャラ寄りのはそちらにしようかと一考。
ユルさん復活、おめでとう&ありがとう。
進路の方は大丈夫になりました?
あと、やっぱり前の作品決着つけてほしいな。
ユルさん、NBさん、ミドリさん、サナダムシさん、ふら〜りさん。
豪華キャストが一気に来ましたね。今からじっくり読みたいと思います。
お疲れ様、職人の皆さん方。これからも頑張ってね。
要塞の地下1階では、いまだ激しい戦闘が続いていた。拳による肉弾戦である。
ジャイアンの先制攻撃ではじまった、この戦い。しかし、げんごろうの勢いは
衰えてはいなかった。ケンカマシンセットを駆使したジャイアンをも圧倒する
スピードとパワーで反撃を開始する。
げんごろうの強烈な拳が空を薙ぐ。まともに食らえば粉微塵に吹き飛ばされて
しまいかねない威力のそれを、ジャイアンは紙一重で見切る。避ける。わずかに
スウェーした反動を利用し、ジャイアンのカウンターが的確にげんごろうのこ
めかみを打ち抜いた。わずかにぐらつくもおかまいなしに、げんごろうは反撃
の拳を繰り出す。カウンターを放った直後の硬直を狙われるも、なんとかガード
し、受け流すジャイアンであったが、しかし、規格外のパワーの前にダメージを
吸収しきれない。ジャイアンとげんごろうは、互角の勝負を繰り広げていた。
いや、わずかにジャイアンが押している。げんごろうは異変に気付いていた。
確かに今のジャイアンの身体能力は見た目通りの小学生のレベルではない。
だが、薬物の力を使ったげんごろうのように人間の持てる能力の限界を超えている
というほどではない。事実、それでもなお、スピードも、パワーも、全てにおいて
自分が上回っている。・・・なのに、押されている。
自身の繰り出す攻撃は全ていなされ、かわされ、その本来の破壊力に見合った
致命傷を与えることができない。人外の膂力に任せて数多の強者を屠ってきた
強力無比なブン回しラッシュには急所を的確に狙ったカウンターを合わせられ、
かといって、技術戦では余計に分が悪い。
―――――翻弄されている?このオレが・・・!?
“チャンピオングローブ”とは、グローブを身に着けてさえいれば、誰と殴り
合っても勝てるという、ケンカにおいては何にも勝る最強の秘密道具である。
さらに、高速のフットワークが身につく“稲妻シューズ”までも併用している。
げんごろうとジャイアンの拳の破壊力、耐久力に、あまりにも差があるため、
一見、いい勝負をしているように見えるが、相手がげんごろうでなければ、
とっくに決着がついていてもおかしくない。
気配が変わる。ついに、げんごろうはジャイアンを“強敵”として認定した。
“ファイター”であるはずのげんごろうが、突然バックステップで距離をとる。
怪訝な顔のジャイアンを前に、一本の怪しげなドリンクを飲み干した。
メキメキと音を立て、げんごろうは“変化”した。獣じみた外観が、より獣――
――いや、むしろ魔獣に近いものへと変わる。それでもジャイアンはひるまない。
この男、まさしく“勇敢”“果敢”といった言葉を真に具現化する男である。
これまでと変わらず、鋭く踏み込み接近戦を挑む。リーチ差は接近することに
よって有利に変わることを、本能で知っているからである。しかし――――
ジャイアンの放つパンチが通用しない。いや、むしろ“変化”前よりも的確に
急所をとらえる回数は増している。げんごろうは、しかしその拳を何発受けても
なお、効いている素振りを微塵も見せない。わずかのブレさえも起こさない。
ジャイアンの攻撃など、はなから存在しないかのように全く気にすることなく、
げんごろうはその溢れ出す力を増幅させ始めた。
大地を踏みしめる足のその指先から、足首、ふくらはぎ、ふともも・・・
強靭な鋼の下半身を、まるで強弓を引き絞るかのようにねじりあげていく。
そのねじりは圧倒的にパワーを増幅し、次へと伝えながら、徐々に上へ上へと
昇っていく。腰を伝わったパワーは、元より肥大していた大胸筋を、後背筋を、
肩を、さらに極限まで膨張させ、彼の利き腕である右腕へと伝わっていった。
瞬間、その右腕が黄金色に輝いたかに思えた。目の前で対峙するジャイアンには、
その右腕はいかほどの巨大なものに見えていたことだろう。
―――やばい!!―――
ジャイアンが本能で飛び退る。その僅かな間にも全身に冷や汗を滴らせている。
本来、げんごろうのようなファイターを相手に、殴り合いで退くことは致命傷に
なりかねない行為である。しかし、この場合はそれが幸いしたのかもしれない。
いや、もしも飛び退っていなければ・・・・・
全身の、それも規格外の筋肉の全てを生かしきった人類史上最強の右ストレートが。
全てを凝縮されたげんごろうの渾身の鉄拳が。それでもなお、なんとかガードし、
受け流そうとするジャイアンを、有無を言わさず要塞の頑丈な壁に叩きつけた!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
反乱軍は、突如出現した鉄人兵団の猛威を前に苦戦を強いられていた。
ダダンダンとパパンダーの二大巨兵を相手になんとか食い下がっているしょくぱん
マンと、ザンダクロスも限界は近い。オーバーロードさせている雪降らし機に限界が
きたのか、帝国を襲った“冬”の寒波も若干緩和されつつあった。
帝国のある部隊。悪魔の兵隊長の一人が勝ち誇ったように笑う。
「ふはははは、あんな少数勢力相手に援軍が入るとは気に入らんが・・・
これで我々の勝利は確定したようだな。」
歪んだ笑みを浮かべる兵隊長の下へ突然、戦場には不似合いな女の子が3人現れた。
黄色い声を3人合わせて、きれいにハモらせる。
『悪魔さーん♪これ、差し入れです。』
「え?」
『私たちファンなんです。戦、頑張ってくださいね♪』
突然訪れた不可思議な光景に、兵隊長も部下たちもキョトンとしている。
差し入れとやらを受け取った部下が、中身の報告をしてくる。
「隊長、中身はクッキーです。」
「あっ、消えた・・・!」
3人の女の子は、忽然とどこかに消えうせていた。
「変わった顔立ちの女の子でしたね。」
「まぁ、勝利も目前で小腹も減ったことだし、ありがたく頂いてみるか。
いやぁ、オレたちのファンだなんて見る目ある子もいるもんだなぁ♪」
『わーい!おやつだー!』
凄惨な戦場の片隅で(一部の)能天気な悪魔たちが和気藹々とおやつタイムに
入ってしまった。
―――その直後、彼らは強烈な腹痛を起こして、戦列から消えうせた――――――
―――――また別の部隊。
三白眼の目つきの鋭い男と、鋭くきらめく数筋の光を、一瞬見たような気がする。
しかし、兵士たちの記憶はそこで途切れた。不審な男は、もうそこにはいない。
「ユラリ・・・」
「・・・なぜだ?帝国が再び、混乱し始めている・・・?」
バンホーは戦場で指揮を執りながら、疑念を抱いた。歓迎すべき事態ではある。
しかし、その原因は、さっぱりわからない。
「・・・む!?」
背後の死角から悪魔の兵士が踊りかかってきた。防御は間に合わない。
バンホーは一瞬の油断を悔いた。致命傷は避けられない!―――が、刹那―――
遠くに小さな銃撃音が鳴り響いた。悪魔兵は、その凶刃がバンホーに届くか否や
―――というところで、吹き飛ばされた。バンホーが銃声のした方を見やると、
戦場を入り乱れて戦う両軍の兵士のみである。遙かな遠くに小さな森が見える。
(・・・あそこから狙撃した・・・?まさか・・・な。)
「大丈夫?ジャムおじさん!」
戦場の離れには、片膝をついているジャムおじさんを駆け寄ったバタ子が心配そう
に支えている。その周囲には悪魔が一匹倒れていた。見事に気絶してのびている。
「う、う〜ん・・・まさか、この場所に気付く者がいたなんて・・・ん?」
ジャムおじさんは悪魔の近くになにやら白い輝きを発見した。先程までは恐らく、
なかったはずである。ジャムおじさんは、まぶしく輝くそれを手にとって眺めた。
「・・・これは・・・?」
それは―――――白い一本のチョークであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回分終了です。
プロローグから長いこと引っ張ってきたジャイアンvsげんごろうですが、
次回ついに決着です。あれから200レス以上。う〜ん。まさか決着の時まで
こんなにかかろうとは・・・。なるべく早く仕上げます。期待せずに待て!
片桐の自己紹介が終わったのは、約10分後だった。
康一の話の、3倍ほど濃い時間である。片桐は、話の節々で笑いだす。
自分の歳に身体データ、趣味はもちろん、三日前に聞いた笑い話や、昔飼っていた犬を飼ったペットショップの店長のクセのことまで語った。
教会の中に、半端でない情報が満ちた。康一と由花子らの耳に無事収まったのは、十分の一以下である。
片桐は、日本人である。出身地は、二人と同じ杜王町。そのお陰で、くだらない故郷話が追加されたのだった。
康一たちと同じ船で運ばれたわけではない。5年前、渡米していた際に、現地での移民に巻き込まれた。
このキャンプ地に無事たどり着き、神父と出会う。
その後、持ち前の社交性と話術、そして明晰な頭脳で、日本人だというのに責任者に選出されたのだという。
以上のことを、彼は自分の口から語った。やや自尊心の高い男のようである。
その点と、下品な笑い顔を覗けば、腰の低い、とっつきやすい男に見えた。
片桐と一緒に入ってきた、もう一人の男は、彼の秘書だという。
ふくよかさもある片桐に比べ、すらりとした細身の男だった。中年というには若く、三十代前半かと康一は思った。
長めの前髪が額にかかっており、こけた頬も合わせて、男の表情に影を落としている。
「片桐さん、そろそろ……」
彼が口を開いたのは、片桐の一人舞台に幕を引かせるその一言だけだった。
「おっと、時間のようだ。何かあったら気兼ねなく私に言ってくれ。では、失敬」
二人に手を振り、片桐は出て行った。秘書が後に続き、後ろ手にドアを閉めた。
そうして、また沈黙が帰ってきたのだった。
「今、君たちが持った印象は」
かなりの間を置いてから、神父が開口した。
「喧しい、ただの中年。飛んでくる唾液のことに目をつぶれば、親しめる。
逆にあの秘書にはなじめそうに無い。こんなところかね?」
二人を一瞥し、続ける。
「片桐は、過去に殺人を犯している」
神父の言葉が空間を支配した。
康一は思う。
会って一日も経たない男に、会って一時間も経たない男が殺人犯だと聞かされて。
何処に信憑性があるのだろうか。
突然ヴェルサスが黙りこくったのが、そのサインなのだろうか。
なんにしろ、確かな証拠も無い。伏線もない。リアリティの欠片も無かった。
それでも、だっ。耳とは言わず、体全体に神父の言葉が突き刺さった。
彼の頭の中にあるのは、『信じられない。』ではなく、『信じない。』だった。
リアリティは、彼にあった。荘厳な言葉だった。神父、だった。
「話を変えようか」
神父が言う。
康一は、お預けをされた気分だった。
「我々が君たちをロンドン郊外で見つけたとき、すでに君たちは『矢』に貫かれていた。ブラックサバスに襲われたならば、そういうことだ。
そして君たちは生き残った。そして、君たちは『力』を手に入れた」
無論、わけがわからない。先ほど、自分たちを襲ったのがブラックサバスとかいうものなのか。
あの時、頭に潜り込んで来た物が、『矢』とかいうものなのか。
『力』とは?
疑問とともに答えが現れた。
「もう、君たちにも見えはじめているだろう」
言われて気付いた。神父の背後に、何か居た。
いつから視界に居たのだろうか。はっきり見える。
はっきり見えるからこそ、わからなかった。
人、だと思われた。
体格は、神父とまるで同じだった。立つ格好も、肘を最後に消失している右腕も同様だった。
康一は、それ以上の比喩ができなかった。
黒づくめのピエロの格好にも見えたし、唐突に純白のスーツを着込むこともあった。
神父と同じく仮面の表情かと思えば、嫌らしい笑みを浮かべたりもした。
時折、神父そのものが二人居るようにも見えた。
「我々は、『力』を『スタンド』と呼んでいる。私は、人の脳を見ることができる。そして、片桐の記憶を読んだのだ」
またも、唐突なリアリティが康一を襲った。
「ロンドンでの経験、そして今の状況を考えれば、信じざるを得まい」
「それで、ここのキャンプに居る人、全員のプレイバシーを侵害してるわけ?」
由花子が、ようやく口を開いた。敬語もなにも無かった。
しかし、神父の言う『力』が実際のものだと前提しての口調だった。
「いいや、全員とはいかない。片桐の場合、私にはチャンスがあった」
片桐が懺悔贖罪しにやってきたのは、4年前だった。
彼が、責任者に選ばれた晩のことだった。
月夜の明かりの中、彼は手を組み合わせ、
「私は、罪を抱えているのです……」
こんな私に責任者など、と語った。
殺人とまでは言わなかったが、その表情は必死だったという。
興味を持った神父は、彼の記憶を読んだ。
「私は驚いたよ。猟奇殺人者が、一年でこうも変わるとはね。太陽の影響かもしれない。
確かに彼は殺人を犯した。二人の少年を犯し、殺害。逮捕の際にも警官から一人の犠牲がでた。
判決は当然死刑。しかし彼には凶運の星が瞬いていた。
死刑の前日だった。第一回の『侵略』が起こったのだよ。刑務所は破壊され、彼は脱走。
渡米したのはそのためだ」
「一応言っておくが、私は、読むだけでなく消すこともできる。欲望と悪意は消した。
彼には力はない。たんなる人間だ。問題はない。彼は過去を捨て、未来を見ている。その点、誉めるべきではないかね?」
「それで?」
由花子の額にしわが寄り、顔にはっきりと怒りがにじみ出てきた。
「私にさっきのことを忘れて、あんたたちを信用しろって?」
「あのこと全てを水に流せとは言わない。裏を理解してもらいたいだけだ」
「あのこと?」
ようやく口をはさんだヴェルサスだが、軽く無視された。
康一も言葉を失っていた。
「話がはやいわね。じゃあ、あんたの記憶も見せなさいよ」
「やめておいたほうがいい。保証はできない」
「ふざけないでちょうだい!」
由花子の両手がテーブルを叩き、黒の水面が波立った。そのまま手をついて腰を浮かせて猛った。
「まったく、後ろめたいことをお持ちの人ばかりみたいね。ここは」
「おい、さっきから何のことだ?」
「それに……」
やや地を出し始めたヴェルサスを無視し、由花子が続ける。
「それ以上に、後ろめたいことがあるくせに人と面と向かえる奴は最悪よ」
由花子は、ヴェルサスの目をじっと見据えた。
「あたし、聞こえてたのよ」
「なに……?」
「わかってたっていってるのよ。あんたたちが、あたし達を見殺しにしたのを」
ヴェルサスという空間が凍結した。
「……いつもこうじゃねえか」
ヴェルサスが動き出したのは、由花子らが教会を出た5分後だった。
「誰かが死ぬだの生きるだの、終わってみれば全部俺じゃねえか!」
拳を、行き場の無い怒りを、机にぶつけた。
倒れたカップから紅茶が流れ出し、机に漆黒の河を作った。
神父は、やはり無言だった。
――
荒廃の都市に居たのは、6人の男女だった。
5人が後方に並び、1人が先導するように前に立っている。
その1人、虹村形兆の肩の上に、小人がいた。身長、10cmほどの小人である。
小さいながらに、一丁前の軍服を着込んでいた。
そのミニサイズの軍人が、形兆の肩に立ち、主人に耳打ちをしていたのだった。
形兆のスタンド、バッドカンパニーだった。その名の通り、一中隊からなる、群体系のスタンドだった。
偵察兵のもたらした情報は、有益なものだった。
――神父にヴェルサス、リキエルもだと?
形兆にとって、最高の相手だった。
「やるしかあるまい」
前方1kmのL-3キャンプ地帯を眺め、そう口に出した。
「全員、気をつけい!」
形兆の号令に、4人が反応した。4人である。
振り向いた形兆は、ただ1人だらりとした弟を睨みつけた。
介せず、弟、虹村億康は虚空を見つめていた。笑ってさえいた。
シュミレーションをしているのだった。今からすることの。初めての『殺』の。
形兆が拳を握り締めたのは、士気からだけではなかった。
「これより訓練を行う!」
形兆が、吼えた。
まともに読んでくれてた人いないのね。
いや、間があいたからしょうがないし、私が悪い。
しかし。いや、まあいいや。
次回はGoingUnder
職人大攻勢な日ですね
ナンマンダブ(=人=)ナンマンダブ
>>336 もうお前のなんて読むやつはいないよ。
間があいたとか関係ない。何べん投げ出せば気が済むんだ、クズが。
まあいいや、じゃねえよ。本気で死ね。二度と来るな。
>しけい荘
今回はシコルっつーより素の寂にめちゃウケタw
寂とサムワンの準レギュラー化キボン
>女の子らしい胸
話をまとめるのがうまいなあ。うまいから感想もまとまるのか、
感想まとめてるからまとめるのがうまいのか。それはそうと
元部がなんかかわいい。元部は誰と絡んでも違和感ないな。
>年末年始の一休みが終わって、調子が戻ってきましたね。
確かに。今年もしばらくは豊作になりそうだな。
>出木杉
げんごろうマジつええwでももう決着か。
知らんキャラなのにちょっと愛着わいてきてたところだったんだが。
>出来杉
なんかジャイアン対げんごろうのハードな戦い、バキみたいな雰囲気だw
でもかっこいいね。これから、3方向のバトルの同時中継が続くのかな?
>Dance in the Nocturne
いや、面白いですよ。ジョジョあまり詳しくない俺でも楽しめる。
まだ異様な気配が漂っている段階だけど、その不気味に対する期待感はある。
でも、この話を一気に終わらせて、先の2つの作品の続きを早くね。
それともこれはAoBの続きかな?繋がりはあるの、4×5やAoBと?
「もしもボックス」を使って範馬勇次郎の世界から自分達の世界へとのび太達は戻った。
着いた場所はのび太の学校の裏山であった。木は青々としており春と夏の中間の季節
を感じさせた。
「ふぅ。終わったねドラえもん。あとはタイムマシンで戻れば・・・ってどこいくんだよ!」
のび太の声を無視するの様に四次元ポケットから「どこでもドア」を出すドラえもん。
その表情は鬼の様に険しかった。
「行こう・・。のび太君。」
数分後、のび太達はタイムマシンに乗った。だが、ドラえもんは違和感を覚えていた。
おかしい。タイムマシンの動きが少し遅い。自分と子供五人を乗せてもOKなのに。なぜ?
そしてタイムマシンは停止した。ドラえもんが目の前にあるモノを押す。
するとのび太達の頭上に穴が開いた。そして穴から顔をだす。
目の前に広がった光景はのび太の部屋であった。
「のび太君。言わなければならない事があるんだ・・・。」ドラえもんが重々しい口調で言った。
「何?」のび太がいつもの調子で言う。
それがドラには耐えがたかった。今まで色々な事を共有してきた。決して上辺だけではない。
ロボットと人間の間の絆。それが今断ち切られようとしている。のび太との何気ない日常が。
「僕は・・・・未来に帰らなくてはならないんだ。」
のび太は時が止まった様な感触を覚えた。今何と言った?帰る?
「嘘だよね・・・?ドラえもん?」
泣きじゃくりそうになりながらドラえもんの両手首を掴むのび太。
「本当だよ。タイムパトロールからの命令なんだ。絶対なんだよ。」
力なくうなだれるドラえもん。その目からは熱い涙がポタポタと垂れていた。
「そんな・・・あんまりだぁぁぁ!!!」
畳を叩きながら泣きじゃくるのび太。
「安心して。すぐにじゃない。今夜までは一緒にいられる。」
「え!?じゃあ・・・・。」
ピタリと泣き止むのび太。その目は何かの考えがあるかの様に輝いていた。
「その前にこれを。」
ドラえもんがのび太にあるモノを手渡した。それはドラえもんの絵が描かれた箱であった。
「ありがとう。この道具が何かはわからない。だけど僕が君に対してできる事がただ一つある。」
ドラえもんに耳打ちするのび太。
「何だって!?」ドラえもんが目を丸くして言う。
何をいいだすんだこの子は。鍛えたとはいえ喧嘩での敗北による恐怖心はそうそう拭えるものではない。
「いいから。じゃ・・夜ね。」
のび太は部屋から出て行った。
「のび太君・・・。」
ドラえもんは窓の外を見た。今まで何度も見てきた風景。この風景を見るのも今日が最後なのだ。
だが窓がいつの間にか開いているのにドラは気がつかなかった。
のび太は小石を蹴りながら道を歩いていた。
(なんであんな事言っちゃったんだろう。僕がジャイアンに勝てるわけが・・・。)
「び・・・太!」
「え!?」
のび太はびっくりして振り返った。考え事に夢中になっていて相手の接近に気がつかなかったのだ。
のび太の目の前にいた存在、それは骨川スネ夫であった。
「僕は今は気分が悪いんだ!今からお前を殴る!」
のび太に殴りかかるスネ夫。だが避けられる。
「まぐれだな。今度は僕流キックだぁ!」
ただの喧嘩キックがのび太に向かう。だがこれものび太は避ける。
「二度も避けるだなんてのび太の癖に生意気だぞ!K1とPRIDEで見たこの技を食らえ!」
のび太の目は潤んでいた。ドラえもんが帰ってしまうまでに何とかしなければいけないのに
自分はスネ夫なんかと何をしているんだ。
「え?」
突然、スネ夫の視界がグラリと揺れた。気がついたらスネ夫はのび太を下から見上げていた
「そんな・・・この僕が・・。」
悔しそうに立ち上がるスネ夫。そしてスネ夫を前から睨み付けるのび太。
「帰れ。」のび太が命令口調で言う。
「のび太の癖にこの僕に命令なんて生意気だぞ!」
スネ夫が本日四回目の突進をする。直後、スネ夫は自分の胸に軽く小突かれた様な衝撃を覚えた。
「範馬流格闘術・・正拳突き・・・・。」のび太が低い声で言う。
「こうなったらジャイアンに言いつけてやる!」スネオが半ベソを書きながら言う。
「丁度良い。僕も彼に決闘を申し込もうとしていた所だ。場所は空き地、時刻は夜だ。」
「は!?」
スネ夫は耳を疑った。間違いなく目の前の相手は剛田タケシと喧嘩すると言ったのだ。
のび太とジャアン。結果は目に見えている。
「伝えてくれ。」
「は!もし負けたらお前のおもちゃ全部僕の物だからな!」
スネ夫は大急ぎで来た道を戻って行った。
数時間後、日はとっぷりと暮れていた。気温が低くなり、今外を歩いている人間は
サラリーマンぐらいしかいないのではと思える程の時刻になった。
「来たのか。」のび太は呟いた。
ドラえもんが見るとジャイアンが夢遊病者の様にふらふらと歩いていた。否。彼は本当に夢遊病者なのだ。
程度は軽い。だがたまに眠った後、夜中に街中をふらふら歩く癖があるのだ。もちろん今回はドラえもん
の道具で空き地まで誘きよせたのだが。
「起きろ!」のび太が大声を上げた。
そしてジャイアンの鼻水で出来た風船が割れ、ジャイアンは目を覚ました。
「はっ!?ここは!?何でおれはここにいるんだ!?」
辺りを見回すジャイアン。そして彼の視界にのび太の姿が目に入った。
「ジャイアン。今から勝負をしよう。」のび太が落ち着いた口調で言う。
「はぁ!?お前俺に勝てるって本気で思ってんのかぁ!?」ジャイアンが呆れた口調で言う。
「夜の空き地に子供が二人。勝負だろう。」
「面白ぇ。叩きのめしてやるぜ。」
のび太は少し両足の間隔を開け前屈みになり両腕を広げた。彼なりに考えた野比のび太本気の構えである。
そしてジャイアンはノーガードの構えを取る。
ドラえもんは二人の姿を見ていて思った。のび太は自分に最後の贈り物を贈ろうとしている。今まで見た何よりも
重く、悲しく、貴重な贈り物を。
「帰ってきたドラえもん外伝」
最終決戦
野比のび太VS剛田タケシ 開始。
今回の投稿はこれで終わりです。
>ユル
読んでるってレスがついてるのに不満があるのか?
何おまえ
>>346 投げ出しではなく連作になってるのに気付いてるやつが一人もいない。
ふら〜りさんさえもちゃんと読んでなかったんだね。っていう意味の
イヤミなのではないかと。オレは読んでないから真実はわからんが、
連作になってるの?
そもそも読者が気付かないようじゃ作者側に問題があるのでわ?
だな。
一応これまで読んでたが、全く気づかなかった。>ユル
逆切れする前に、きちんと構成を説明したらどうだ?
>ドラ外伝
スネ夫は元々のび太よりケンカは弱いはずでは・・
一人でのび太とケンカする度胸もないし。
ま、そんな事はともかく、いよいよジャイアンか。
今なら普通にのび太の方が強そうだなあ。
ユルの作品を初めて全部通して読んでみたが、
連作というかタイトルが違うだけでAoBの正統な続編だよ、これ。
出てくるキャラが全く一緒だし、通して読めば繋がっていることが分かる。
ただ、これに気づかないのはある意味しょうがない。
あまりにも間が空きすぎてるし、未だに物語の全体像が掴めないので、かなり分かりづらい。
ふら〜りさえ分からないのだから、その分かり難さは推して知るべしだろう。
なによりも不味いのは、ユル=投げ出し、というイメージが定着してしまっているから、中身も見ずに先入観だけで叩いてる人がいる。
これが一番の問題かと。
俺が読んだ限り、まだAoBとの繋がりしか分からないのだが、AoBには未だに内容の意味が分からない話がいくつかある。
なので、もしかしたら4×5とも世界観が繋がっている可能性がある。
…となると、投げ出しては別の作品に手をつけているように見えて、実はユルは最初から大きな一つの作品を書いていたことになる。
ユル自身が多くを語らないので、真偽は不明だが。
とりあえず俺はしばらく様子を見てみることにする。
長文スマソ。
のび太からおもちゃを取り上げる必要などない
スネ夫って金持ちの癖にセコいよな。
原作でも学研の付録や鉛筆で文句言ってたし。
ユル氏は実力は確かに高いよ。俺は毎回楽しみにしてる。
今回も楽しめた。 …が、やはり連作というのは気付かなかった。
何か繋がりはあるのかな、程度に思っていた位で。
やはり間が空きすぎたから、構成上の繋がりをPRしとくべきだったね。
タイトル変えて、登場人物も変えて、投げ出しの疑惑がつきまとって、
という事なら気付けというのが無理だと思う。
一行か二行、注意書きを加えるだけで連作という事がわかるんだから。
バレさんの管理も大変だしね。
最初から連作という事がわかれば、一括管理でまとめられただろうし。
でも、復活は素直に嬉しいよ。今回は力作お疲れさま。
色々言われてるけど、俺はあなたの作品好きだから、頑張ってね。
>出木杉帝国
ジャイアン圧勝かとおもいきや、アームズのようなげんごろうの変化!
とうとう奥の手出しましたか。でもジャイアン以外はなんとなくほんわかムードw
>Dance in the Nocturne
>>353 >どらえもん外伝
今回は誤字も見当たらなかったし、文章もすごく読み易くなってましたよ。
成長されてますね。でも、いきなりな展開ですね、ドラえもんの帰郷w
しかし勇次郎の特訓に耐えたのなら、ガキ大将くらい秒殺だと思うがw
よい調子ですね、今年もバキスレ。
ローマさん、スチールさん、メカタラさん、マルチメディアさん復活希望。
この4人が連載再開してくれれば、本当に鉄壁だ。
パオさんとVSさんについては心配してない。あの2人が投げだす訳はない。
ザクさんは毎週書いてくれてるしね。←あのレスへの防波堤
02/12/27 パオが「俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ」を立てる。当時はリレー小説。
03/01/05 高二がリレー小説に参加する
03/01/10 高二がスレを放り出し失踪。ここから死刑囚編はパオの独壇場になる
03/01/12 外伝担当がバキ死刑囚外伝を書き始める
03/01/13 バキスレの567は俺、が外伝を書き始める
03/02/16 722が初代まとめサイトを立ち上げる。
03/02/27 「俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ2」が立つ。
03/03/05 バキ死刑囚編を完結。
03/03/06 ふらーりが感想を書き始める。
03/03/11 パオが「無限大トーナメント」を書き始める。
03/05/07 「俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ3」が立つ。
このへんからグラップラーバキの括りが消えてくる。
03/05/08 夜王が「愚者の祭典」を書き始める。
03/05/13 VSが「VS物」等短編を書き始める。(当時は特にコテ無し)
03/05/19 初代まとめサイト4000hit突破。
03/05/28 (1985がバキスレに顔を出し始める)
03/06/01 外伝担当が「柳龍光外伝」を書き始める。
03/06/03 来訪者が「予知」等短編を書き始める。
03/06/06 「俺達でオリジナルストーリーをつくろうぜ」(バキスレ4)が立つ。
03/06/23 パオが荒らしの相手をしてキレたせいか、荒れ始める
03/06/24 夜王、失踪宣言。
03/06/26 パオが「投げ出し」を宣言。住人が「継続すべき」の応援を投票。
03/06/28 機嫌を直したパオが執筆再開。
03/07/05 トモが「新撰組列伝」を書き始める。
03/07/07 「「バキ」等漫画SSスレpart.5」が立つ。
03/07/14 住人が職人議論を始める。
03/07/19 ヤムスレとの諍いが起き始める。
03/07/24 ザクが「ザクSS」を書き始める。
03/07/27 初代まとめサイトいつの間にか消滅
03/07/28 二代目バキスレまとめサイト設立。(現まとめサイト)
03/07/29 (外伝担当、長官スレでのSS執筆が発覚。賞賛の嵐。)
03/07/31 マロが「神心会異聞」を書き始める。
03/08/02 (「SSスレを語ろうぜスレ」が立つ。)
03/08/05 「バキスレだよ!!SS集合! part.6」が立つ。
03/08/05 (もつおが「勇 次 郎 が ゆ く」を立て、パオともめる)
03/08/06 反逆の男!!が「反逆の男!!」を書き始める。
03/08/06 夜王が突如復活する。がすぐにまた失踪する。
03/08/06 世界が「世界放浪記」を書き始める。
03/08/07 ふらーりが前スレの残りでSSを書き始める。
03/08/07 ふらーり同様、スレの残りでバキスレ管理人がSSを書き始め、
ふらーりからバレと命名される。(この時からバレを名乗る)
03/08/14 (もつおのトリップが割れて、偽もつお騒動勃発。)
03/08/18 パオ、SS語ろうスレでブチ切れて二回目の執筆終了宣言。
03/08/19 パオ、執筆終了宣言の取り消し。
03/08/22 (パオがこっそりヤムスレで「復讐の狼」を書き始める。)
03/08/25 「バキ小説スレ part.7」が立つ。
03/08/25 「世界放浪記」完結。
03/08/26 (パオがヤムスレで「復讐の狼」を書いている事が住人にバレる。
一部の悪質なヤムスレ住人がバキスレに転載。)
03/08/27 (不良番外スレが荒らされまくる)
03/08/28 不良番外スレが荒れた煽りか、あぼーんが目立ち始める。
03/08/29 荒らしがトモををターゲットにバッシングを始め、しばらく消える。
03/09/02 VSが「ドラえもんの麻雀教室」を書き始める。
03/09/07 「【総合】バキスレへようこそ part8【SSスレ】」が立つ。
03/09/07 パオがヤムスレから追い出され、バキスレで「復讐の狼」を書き始める。
03/09/08 友人が外伝担当の急死を知らせる。(以降、外伝担当音沙汰無し)
03/09/11 「復讐の狼」完結。
03/09/15 (阪神タイガーズ優勝)
03/09/18 壁が「壁」を書き始める。がすぐ失踪。
03/09/20 中央島が「中央島」を書き始める。
03/09/21 ザクが他所のスレを乗っ取り、そこで執筆を始める。
(当然住人からバッシングを受け、そのままザクはしばらく姿を消した)
03/09/21 突然のトモ復帰。しかしやはりすぐにまた姿をくらます。
03/09/24 (ヤムスレ、荒らし被害を避けるため、漫画サロンからラウンジクラシックに移転)
03/10/01 真うんこが「うんこSS」を書き始める。
03/10/02 バキスレもヤムスレと同じく移転。少年漫画板へ。
【バキ】漫画SSスレにようこそpart9【スレ】が立つ。
03/10/22 ふらーりが「胸に付けてるマークはオーガ」を書き始める。
03/11/09 622=ムツジが「無限大トーナメント魔界編 番外編」を書き始める。
03/11/13 ハンター(仮)が「友情は永久の眠りとともに」を書き始める。
03/11/14 【バキ】漫画SSスレにようこそpart10【スレ】が立つ。
03/11/19 バキスレまとめサイト、7000hit突破。
03/12/06 388=大僧正が「武神と拳を極めし者」を書き始める。
03/12/07 ○が「2.15の夜」を書き始める。
03/12/13 世界が「バキの奇妙な物語」を書き始める。
03/12/15 バキスレにしりとり荒らしが現れる。
03/12/23 【バキ】漫画SSスレにようこそpart11【スレ】が立つ。
04/01/23 パオ、三度目の執筆終了宣言。「無限大トーナメント」の最終回を無理矢理書く。
04/01/26 パオ、結局まとめサイトで続きを執筆する事に。
04/01/27 猛が「史上最大の戦いッ」を書き始める。
04/01/31 【バキ】漫画SSスレにようこそpart12【スレ】が立つ。
04/02/04 ○がバキスレからまとめサイトに移る。
04/02/05 パオがバキスレからまとめサイトに移る。
04/02/10 殺助(パオ)が「DIOの世界」を書き始める。
04/02/23 「胸に付けてるマークはオーガ」完結。
04/02/25 転生が「転生」を書き始める。
03/11/14 【バキ】漫画SSスレにようこそpart10【スレ】が立つ。
03/11/19 バキスレまとめサイト、7000hit突破。
03/12/06 388=大僧正が「武神と拳を極めし者」を書き始める。
03/12/07 ○が「2.15の夜」を書き始める。
03/12/13 世界が「バキの奇妙な物語」を書き始める。
03/12/15 バキスレにしりとり荒らしが現れる。
03/12/23 【バキ】漫画SSスレにようこそpart11【スレ】が立つ。
04/01/23 パオ、三度目の執筆終了宣言。「無限大トーナメント」の最終回を無理矢理書く。
04/01/26 パオ、結局まとめサイトで続きを執筆する事に。
04/01/27 猛が「史上最大の戦いッ」を書き始める。
04/01/31 【バキ】漫画SSスレにようこそpart12【スレ】が立つ。
04/02/04 ○がバキスレからまとめサイトに移る。
04/02/05 パオがバキスレからまとめサイトに移る。
04/02/10 殺助(パオ)が「DIOの世界」を書き始める。
04/02/23 「胸に付けてるマークはオーガ」完結。
04/02/25 転生が「転生」を書き始める。
04/03/15 【バキ】漫画SSスレへいらっしゃいpart13【スレ】が立つ。
04/03/16 ユルが「4×5」を書き始める。
04/04/07 サナダムシが「排泄記」等短編を書き始める。
04/04/07 うみにんが「ドラえもん 地底出木杉帝国」を書き始める。
04/04/11 うみにんが「拳王伝」を書き始める。
04/04/30 ぽんが「孤高」を書く。
04/05/12 【漫画】創作ストーリースレへようこそpart14【SS】が立つ。
04/05/23 サナダムシが「しけい荘物語」を書き始める。
04/05/31 パオが「機械仕掛けの人魚姫」を書き始める。
04/06/13 ふらーりが「オートマティック・レイバー」を書き始める。
04/06/27 希望が「誇り高き希望」を書き始める。
04/07/05 【バキ】漫画ネタ二次創作SS総合スレP-15【ドラえもん】が立つ。
04/07/09 パオが「ラーメンマン青年記」を書き始める。
04/07/18 ザクが特に発言もなく復活。
04/07/21 みゅうが「題名不明(NARUTO物)」を書き始める。
04/07/25 猛、改めブラックキングが「超格闘士大戦」(「史上最大の戦いッ」をリテイク)を書き始める。
04/07/26 憑依が「憑依」を書き始める。
04/08/01 (お題スレが復活する)
04/08/02 【2次】漫画ネタSS総合スレ16【創作】が立つ。
04/08/02 ユルが「アバッキオの奇妙な勤務」全15レスを一気に投下。一部住人に顰蹙を買う。
04/08/05 「オートマティック・レイバー」完結。
04/08/06 「機械仕掛けの人魚姫」完結。
04/08/11 名無しが「螺旋独房」を書き始める。
04/08/12 ネクストステップ作者が「バキ:ネクストステップ」を書き始める。
04/08/18 NBが「Another Attraction BC」を書き始める。(初期は「僕の考えたブラックキャット」)
04/08/23 303=サマサが「ドラえもん のび太の神界大活劇」を書き始める。
04/08/30 名無しが「題名不明(ドラえもん物)」を書く。
04/09/01 【総合】漫画SSスレへようこそpart17【SSスレ】が立つ。
04/09/06 フンコロガシが「リ・バース」を書き始める。
04/09/08 1985が「バキ死刑囚編」「ドラえもんの麻雀教室」のFLASHを作る。
04/09/10 1985が「ありふれたテーブルの上で」を書く。
04/09/13 ユルが「AoB(仮)」を書き始める。
04/09/19 【2次】漫画総合SSスレへようこそpart18【創作】が立つ。
04/09/21 1985が「ザク」のFLASHを作る。
04/09/27 「拳王伝」完結。
04/09/27 一部の住人が「サマサ!コール」を始める。
04/10/01 殺助の正体がパオだとバレる。一部の住人と諍いもあり。
04/10/02 マルチメディアinユーラシアが「マルチメディアinユーラシア」を書き始める。
04/10/06 メカタラちゃんが「空手小公子愚地克己」を書き始める。
04/10/14 スチールが「スチールボールラン」を書き始める。
04/10/16 草薙が「輪廻転生」を書き始める。
04/10/19 名無しが「のび太と大ローマ」を書き始める。
04/10/20 【2次】漫画総合SSスレへようこそpart19【創作】が立つ。
04/10/22 ゲロが「ドクターゲロのほんのお遊び」を書き始める。
04/10/23 ミドリが「虹のかなた」を書き始める。
04/10/23 「すげー状況だな」 バキスレ過去最多の連載を抱える(約17本)
04/10/25 バキスレまとめサイト、100000hit突破。
04/11/10 【2次】漫画総合SSスレへようこそpart20【創作】が立つ。
04/11/17 草薙が「帰ってきたドラえもん外伝」を書き始める。
04/11/17 ユルが「だいらいたいさい」を書き始める。
04/12/05 【2次】漫画総合SSスレへようこそpart21【創作】が立つ。
04/12/06 ゲロが「蟲師 雲散霧消」を書き始める。
04/12/11 (SSスレを語ろうスレで「2004年SS大賞」の投票が行われる。)
04/12/23 バレが「オムニバスSS」を書き始める。
04/12/28 ふらーりが「女の子らしい胸......その理由」を書き始める。
05/01/01 【2次】漫画総合SSスレへようこそpart22【創作】が立つ。
05/01/09 「ドクターゲロのほんのお遊び」完結。
05/01/09 「ドラえもんのび太の神界大活劇」完結。
05/01/11 名無しが「オーガのリング」を書き始める。
05/01/17 ユルが「Dance in the Nocturne」を書き始める。
本来は荒らしなんだろうが、見れば見るほど良く調べたな、と思う。この年表。
相当暇じゃないとこれほど調べられんよ。
SS書くよか労力を伴うのではないかと思う。乙。
看護師国家試験が1ヵ月後に迫ってきてるので、そろそろ勉強始めます。
ということで今よりも更新頻度は落ちてしまいます。ご了承下さい。
今週、職人さんたちエンジン全開ですね。皆様方お疲れ様。
楽しめる量が多くて、読むのが遅い私にはうれしい悲鳴ですw
>ザク氏
合格を願ってます。頑張って下さい。
>ザク氏
貴方ならできます、頑張ってください
「君が今話してくれた事もすごいけど・・・君の仲間達もすごいね。」
ここはヤムチャが昔住んでいた場所、つまり荒野のアジトである。
占いババから様々な能力をもらったヤムチャは数々の異世界へ
行った後元の世界に戻って来たのだ。
「俺は・・・天下一武道会へ出場する。」
ワインをグッと飲み干しテーブルの上にグラスを置くヤムチャ。
その顔は引き締まっていた。彼の仲間が聞けば酔っているのかと思うであろう。
傍から見れば異様な光景だった。一人の男が猫に話し掛けている。
ペットとして犬を飼う人はいても話し相手として動物を飼う人はいないだろう。
「二週間前って言ったけどさ、実際別の世界で結構長い時間過ごしてたんでしょ?」
「あっちの世界とこの世界では時間の流れ方が違うらしい。」ヤムチャが言う。
「ヤムチャ様。」
空中に浮かぶ青い猫、プーアルがヤムチャに話し掛けた。プーアルはヤムチャの一番の親友であり、相棒なのだ。
「何だ。プーアル?」
「精神と時の部屋を使わせてもらうのはどうでしょう?」
「どうかな?今の平和な時代に修行するのは・・べジータぐらいだろう。他は結構
仕事や学校で忙しいだろうからな。」
「でも・・・そうしないと強くなれないでしょ?」
痛い所をつかれヤムチャは下を向いた。いくら特殊能力を手に入れようとも
自分は自分なのだ。今のままでは悟飯のジャブ一発でKOだろう。
ヤバイ。何とかしなければ。
「わかったよ。デンデに聞いてみるよ。と、その前に。」
傍にあるジップロックから小さい袋を取り出すヤムチャ。
彼は幾つかの袋に仲間達の名前を書くとどこかへと飛び去って行った。
ヤムチャとプーアルとの会話の同時刻、西の都、カプセルコーポレーションにてーーー
サンドバッグを蹴り続ける音が響いていた。トレーニングルームには一人しかいなかった。
やがて音が止み、蹴っていた本人はタオルで体を拭き、すぐにソファーへとタオルを投げた。汗でぐっしょりと濡れているタオル。水の入ったボトルに口をつける人間。
「随分と一生懸命じゃないか・・・。護身術でもするつもりか?」
いきなり聞こえてきた声にその人間は振り返った。
「お父さん。私ね、天下一武道会に出る事にしたの。」
「そうか・・カカロットの孫と当るな。確実に。」
ベジータはそういうとブラに背を向けとレーニングルームから出て行った。
パオズ山にてーーーー
夕暮れ時、家から炊飯の匂いが流れ始める頃、学者、孫悟飯の家からは例外なく
スープの匂いが流れて来ていた。
「あなたー!スープよー!」ビーデルが言う。
「今いくよー!ほら悟天、パン、いくぞ!」
「はーい!」
「はーい!」
パンと悟天が同時に返事をする。
数十秒後、三人とビーデルとチチは食卓に集まっていた。
「美味しそう!」パンが嬉しそうに笑う。
「私特製のスープよ。」
二十分後、チチとビーデルが作った料理は全部空になっていた。
「さて食べ終わった所で本題に入ろうか。」悟飯がその場を取り仕切る様ま口調で言った。
聞き耳を立てるビーデル達。
「僕と悟天とパンは天下一武道会に出場する。賞金と自分達の腕がなまっていないかどうか確かめる為にね。」
「サタンおじいちゃんはどうなるの?」パンが素朴な質問をした。
無理もない。そう悟飯は思った。自分の血縁者が試合で負ける所など見たくないだろう。
特に世界格闘チャンピオンだった場合は。
「ま、わざと負けるよ。でもサタンさんはすっごく強い人だからわざとじゃなくても負けるかも。」
「そういうことならいいわ。」
翌日、ヤムチャを始めとする戦士達は修行へと入った。ある者は山に篭り、ある者は家で、
ある者は神の宮殿で修行した。
「え?後空さんが小さい頃修行に使った小さな人形ですか?それならポポが持ってますよ。」デンデが言う。
数分後。Mr.ポポが人形を持って来た。
「一番新しいのを十体程貸してもらえないかな?」ヤムチャがデンデの目を見ながら言った。
小さい人形。それは人間の髪の毛を差し込む事により人間の分身を作り出す事ができる人形である。ヤムチャはこの時の為に仲間達の髪の毛を集めていた。
「精神と時の部屋を使わせてくれ。今から半年程後に天下一武道会が行われる。」
「いいでしょう。」
ん? ここで終わりですか?
次は天下一武道会ですか。
ヤムチャって結局どのくらい強くなったんだろう。2部では氷漬けだったし。
DIOも何処行っちゃったのかな?
ザクさん、
第七話「あっけない結末」
何としても五人を引き抜こうと、説得に執心する寂海王。彼からして見れば、しけい荘
一行は宝の山なのだ。こんな千載一遇のチャンスを、逃す手などあるものか。
しかし、オリバたちの目的はあくまでも中国拳法を体験することにある。このままでは、
スカウトだけで時間切れとなってしまう。そこで、オリバは持ち前の知力を駆使して、寂
の誘導を試みた。
「寂海王、気持ちはありがたいが……我々は君の流派について、何一つ知らないのだ。ヘ
ッドハンティングを実行するのならば、その中身について教えて欲しいのだが」
一理ある。試みが成功したのか、寂も勧誘を一時中断した。
「それもそうだった。では、空拳道について少しお話を──」
「ちょっと待ったッ!」
止めたのはシコルスキーだった。寂に己を認めさせるまでは、一歩も退けない。引き際
を失った、哀れな格闘士である。
「寂海王、試合をしようじゃないか。もし俺が勝ったら、空拳道に入門させてくれ」
「いいだろう。ただし私が勝ったら、二度と空拳道に関わらないでくれ」
両者に入った亀裂は、もはや橋を架けることすら出来ない谷間と化していた。二人を分
かつ空間が、ぐにゃりと捻れていく。
ここぞとばかりに、オリバは試合進行を買って出る。
「始めィッ!」
眼鏡を外す寂海王。どうやら、本気で立ち合うつもりらしい。対して、シコルスキーも
恐れずにじりじりと間合いを詰めていく。
待つか、それとも攻めるか。ファーストコンタクトを決定する重要な二択が、互いの脳
裏に出現する。どちらもまだ、「待ち」を選択している。距離こそ狭まってはいるが、手
を出す気配は感じられない。
「……シコルスキー君」
寂が微笑んだ。しかも敵ではなく、親友にでも話し掛けるかのような口振りだ。
「ろくに挨拶もしていない仲だ。せめて、握手くらい交わそうではないか」
シコルスキーに右手が差し伸べられた。世界広しと伝わる友好の儀式。
「ヨーイドンなしに走れぬ格闘者は認めぬが、ハンドシェイクは認めている」
訳の分からない持論を述べつつ、シコルスキーも承諾する。右手と右手、利き手同士が
しっかりと結ばれた。
──握手完了。
が、寂はシコルスキーの右腕を一気に引き寄せる。電光石火の投げ技にて、体を地面へ叩
きつける。同時に肩も極めている。
「ぐっ……!」
「信じていたよ。必ず応えてくれるとね」
肩が外された。寂はシコルスキーを解放すると、誇らしげに訴えた。
「相手を傷つけるのではなく、制す──これが空拳道。風紀乱れる日本に、私は護身とい
う名の救世主を伝道するッ!」
日本を救わんとする熱気が、むんむんと伝わってくる。が、柳は冷静に指摘した。
「護身と言うよりも、握手を誘った騙し討ちにしか見えなかったんですが……」
寂が沈黙する。反論する材料を探しあぐねているのか、何やら考え込んでいる。そして、
寂は次に取るべき行動を選択した。
「すまぬッ!」
深々と頭を下げると、寂は逃げてしまった。すると、ぶらりと垂れ下がった右腕を気に
もせず、シコルスキーが走り出す。
「待ってくれッ! 入門させてくれ〜ッ!」
追うシコルスキー、追われる寂海王。この奇妙な鬼ごっこは、しばらく続いた。
丸一日にも及んだ体験メニュー。フィナーレを飾るのは、範海王が担当を務める拳王道。
彼は徹底した完璧主義者で、中途半端を何よりも嫌うらしい。弱みを見せれば、瞬く間に
喰い尽くされてしまうだろう。
「範海王はかなりの使い手らしい。みんな、気を抜かぬようにな」
オリバを中心に、しけい荘が一致団結する。この結束力があったからこそ、ホームレス
にも打ち勝てたのだ。海王にとて遅れは取らぬ。いざ戦場へ。
廊下を歩いていくと、何故か李海王が立ち塞がっていた。どうやら伝言があるらしい。
「兄さん──いや、範海王は都合により君たちの相手をすることが出来なくなった」
いきなりの衝撃的な内容だった。もちろん、オリバも詳しい事情を要求する。
「どういうことだね。我々とて客なのだから、きちんと説明をしてくれないとフェアじゃ
ない」
「うむ。では説明するより、目で見た方が早いだろう」
李に案内された部屋の中では、一人の武術家が踊っていた。
「あれ、床が起き上がってくる……。あっちにはお花畑が見える……。おっと、そこに李
が百人もいるじゃないか。ワケ分かんねェ……」
明らかに別世界を見学している範海王。この原因を作ったのは、やはり李であった。
「今日、兄さんはとても張り切っていた。久々の客人だったからな。そのためか、私を訪
ね、緊張を抑える薬を求めてきたのだ」
オリバは、この時点で先が読めた。
「安定剤を渡そうと思ったのだが、そこで間違えて幻覚剤を……」
李海王、恐るべし。ついさっきも解毒剤を忘れていたが、まさか誤った薬を処方すると
は──それも兄弟に。
「……仕方あるまい。で、我々ゲストはどうすればいいんだね」
「お詫びとして、寺の倉庫を開放した。そこで夕食まで過ごしてくれ」
「分かった、そうさせてもらおう」
一人残された範は、そのまま幻覚と踊り続けた。ちなみに元に戻るには、三日以上は必
要とのこと。
「キックボクシングには弱点がある。それは蹴り技がないことだッ! フハハ……おっと、
そろそろ立ち合いの時間か。李よ、タオルを用意しておけ。っておい、顔が毛海王になっ
てるぞ。ちゃんとダイエットしておけよ。ワケ分かんねェ……」
第七話終了。これで十二人出ましたかね。
深夜に失礼しました。
378 :
作者の都合により名無しです:05/01/20 10:20:03 ID:/U81pGbJO
そうか…カカロットの孫と当たるな。
確実にw
>輪廻転生
いや、いきなり世界観がDBになったな、ゲームキャラの世界からw
ルガールとかはどうなったんだwしかし悟空の孫ってどんな奴だったっけ?
俺は知らない。なんか今回尻切れトンボみたいな感じだが、最終章頑張れ。
>しけい荘物語
シコル、前作の本部戦の時の秘めた力を発揮すれば、5人にも劣らないのに。
寂にスルーされ続けて哀れだなw立会いも惨敗だしwそんなシコルが好きだが。
しかし、サナダムシ氏のSSでもやはり範は役に立たないクソ雑魚だったかw
しけい荘のシコルと魔界編の本部はかぶるな。
両方とも迫害されるキャラだが、最後にはおいしい所持ってく、みたいな。
それにしても範・・w
>輪廻
最初のドラゴンボール世界に戻ったね。
でもヤムチャあまり強くなれなかったとか言っているけど、スタンドが
使えるならかなり強いと思うが。
>しけい荘
ワケわかんねぇ。
流石は範海王だw
12人出たという事は、次で終わりかな。
個人的には、もうちょっと続いてほしいけど。
>375
>「ヨーイドンなしに走れぬ格闘者は認めぬが、ハンドシェイクは認めている」
訳の分からない持論
ここでワロタw やっぱシコルは馬鹿にされてるのがよくわかるなぁ
あえて転載
86 :査定 ◆eKKmPSyrrs :05/01/19 20:31:19 ID:???
>>85 改めて見てて分かったんだけど、一番最初のVSのSSって住人全員からシカトされてるんだよ。
「なに?こいつ」って感じで。同じように世界作者も住人からシカトされてて次第になじんでいっている。
だからこそ今の新規の職人も最初は多少無視されてても頑張って続けて欲しいね。
87 名前:マロン名無しさん メール:sag 投稿日:05/01/19 20:44:00 ID:???
>>86 最初の死刑囚スレにはすぐに「終了」と入れようとする馬鹿がいたり、
外伝はドラを書くまでは「文章だけのお荷物」扱い、
1985にいたっては本スレから追い出される始末。全く、今では有名職人にも影に迫害の歴史ありだな。
外野が言う事ではないんだろうが、新規の職人さんたちにもこの事を忘れずに頑張って欲しい。
転載なんかしなくても、みんな両方見てるから。頭悪いな。
>>208より続き
「スパゲッティミートソースのお客様」
「あ、俺」
ギンコは無表情でスパゲッティを巻き上げ、口に入れた。
「ねえ、方法って――」
「蟲ってのは、どこの住人なんだと思う?」
焦るキコを諭すようにして、ギンコは言う。ちなみにキコはギンコから貰った薬をたった今飲み、思念は
漏れなくなっている。
「まあ、現にこの世界にいるワケだから、ここの住人とも言える。だが、それが全てではない」
「……?」
「奴らの半分は、こことは違う世界にいる。そこは、人の及ばない世界。奴らにしてみれば、向こうの世界
から半分体を突き出している、といったところだろう」
「それが、私の体とどういう関係があるの?」
「欹≠ェそうだってことさ。ああいう類は、対処が面倒だ。そうじゃない蟲でも、面倒といえば面倒だが」
速攻で食い終えたギンコは、水を飲み干し、一息つく。
「この蟲は、蟲師がどうこうして払えるモンじゃない。お前自身にかかってるんだ。思い出せ。初めに思念が
外に漏れた時のことを」
「そうすれば、体から蟲を払えるのね?」
「ああ。だが、難しいぞ。なんせ、お前は今まで自分の思念が漏れ出ていることに気付かず生きてきた。だか
ら、初めて漏れた時のことなど見当もつかないんじゃないか?」
キコは、顔を俯かせた。恐らく、これから為さねばならない膨大な過去の記憶を辿ることへの拒否感がある
のだろう。ただ、彼女は芯が強い。既に記憶旅行は始まっているのだろう。
「えーと……幼稚園の時……これは違うか。小学校の時……初潮で怖くて仕方がなかった時に、何も言わな
かったのに保健室行けって……う……違う、それよりもう少し前に、似たようなことがあったような気がする。私
が何かを言う前に、相手が返事を――」
「すんません、善哉下さい」
時間がかかりそうなので、ギンコはデザートを注文した。
「まだ頼むのォ!! 私が払うんでしょそれ」
「おいおい、俺に気を取られてていいのか?」
「ああ忘れたァ! バカバカ! ギンコのバカ!! 死ね!!」
僅かの時間が過ぎた。具体的には、ギンコが手をつけた善哉が、最後の白玉を残して全て胃袋に消えた程度の
時の経過だ。
「あ……ッ!」
「きたか!?」
「ああそうだ……きっと、この時が初めてだったんだ……男の子。カッコよくて、人当たりも良くて、私、その時初めて
男の人を好きになったんだった。確か、小学3年生の時だったかな……で、告白しようと思って、誰もいなくなった教
室で――」
「小学校の教室だな? じゃあ、そこに行くぞ」
ギンコは腰を上げ、店を出ようとする。だが、キコは立ち上がらない。ひとりごちている。
「――教室で……そこで……私……告白の言葉を口に出す前に、振られたんだ……」
キコの声が震える。
「……行こう」
ギンコは店を出た。キコは目を拭い、勘定を済ませた。
「この位で、辛い思いをしないで済むのなら、安いものよね……」
そう呟き、店を出た。
「欹≠ヘ、自分の宿主の過去がどうしようもなく苦手なのさ。体の中に居られなくなる位にな。思い出せ。その時、何を
言おうとしていたのかを。憑く直前の過去が、奴には一番の毒だからな」
日没。ギンコとキコは、数年前の告白の現場で、蟲祓いに臨む。
「一言一句間違わずにな。そうでないと効果はない」
「大丈夫。私、忘れてない。忘れない、あの時言おうとした言葉――」
キコは息を整え、口を開く。
「『あなたが好きになりました。あなたのその優しい心を、少しで良いから私だけに向けてもらえませんか?』」
言い終わった途端、キコの体に変調が現れる。
首がかくんと後ろに傾き、白目になる。そして、ぱっくり開いた口から、何かが飛び出る。それは、数日前の夜に橋の下
で見た蟲と同じ姿形をしたモノだった。欹である。
久方ぶりに外界に出た欹は、苦しそうに動き回る。ギンコはすかさず蟲取り網を教室中に広げ、逃亡を不可能とする。
そして、欹を手に収め、小さな瓶に押し入れ、蓋を閉める。蟲祓い完了である。
「あ……いなく、なったんだよね……?」
「ああ、よかったな。よく頑張った」
「うん……辛かった……何度も何度も、泣きそうになったけど……けど、泣いたら、蟲を喜ばせるんじゃないかって、思って」
キコは、溜めていた涙をぽろぽろと零す。ようやく、開放されたのだ。あの日、ギンコに知らされた時から、彼女の心身は確
実に削られていった。何かを思うだけで、それがヒトに伝わる――そのストレスたるや、凄まじいものだ。
「帰ろう」
ギンコは言った。
この日は、たくさんの星が夜空を彩っていた。星を背に、2人は歩く。キコの家へ向かって。
「頑張れよ」
「ん? なんで?」
ギンコの言葉に、不思議そうに首を傾げる仕草をするキコ。
「欹は祓えたが、お前と関わっている人々の記憶は払えない。これからも、彼らはお前を見るときに、お前の過去を想うだろうか
らな」
「ん、大丈夫」
「なぜ?」
「分かったから。思ってること知られるよりも、自分で口に出す方が何倍も恥ずかしいってこと」
キコは、そう言って赤面した。
「ギンコもひどいよ。あの時、先に網を張って外に出てればよかったのに」
「ああ、そうすればよかったか」
キコは、今さら遅いよと言って、笑った。
次の日、学校――
「あ。キコ、おはよー」
キコの友だちが、挨拶をする。
「おはよー。」
「昨日は星出てたから、天気いいよね」
「うん、綺麗だったねえ、昨日の星……あ、ところでさ、アヤ。あなた、2組の高山君のこと、ちょっといいなーって言ってたじゃん?」
キコは、にやあと口元を曲げて言った。
「言ったけど、それが?」
「告白してみない?」
「ええ!?」
アヤと呼ばれた友人は、驚く。
「ちょっと……急だよぉ、キコ……いきなり言われても、気持ちの準備が」
「言わないと毒だよ。それに……」
「それに?」
キコは、晴れやかな顔で、言う。
「言う前は恥ずかしいけど、言ってしまうとなんだか晴れやかな気持ちになるものだよ」
蟲は不定のモノである。この世界に在るとも言えるし、無いとも言える。
ヒトもまた不定だ。心も体も、時の流れの中留まることは許されないのだから。
ヒトはそれでも生きてゆく。生きてゆける。
『耳を欹て』完結です。ノリが違うなあ……でも、やっぱこれも蟲師です。根っこは。
ちなみに、原作蟲師にも実は現代編があります。つっても、大して変わりませんが。一巻に入ってます。
次回はヒトが蟲になる話です。『闇夜の灯』(あんやのともしび)
ノリは、元通りとなりますw
>>215 原作は「鎖国が続いた場合の日本」ってなイメージらしいです。曖昧ですな。だからこそ蟲師なのですが。
蟲師は曖昧だからこそ。
>>231 期待だけで終らぬよう精進したいと思います。
>>236 現代といえば、和風ファンタジーだともっけとうしおととらが好きだなあ。関係ありませんが。
もっけはちょっと書いてみたいが、蟲師と比べて遥かにリアル志向なので、知識がないと厳しいですね。
>>256 行き過ぎないようにと抑えました、エロ。抑えてこれですごめんなさい
>>321 自分男なんで分かりませんが、皆に知られると凄く精神的に厳しくなるでしょうね。開けっ広げに言っちゃってる女子も
いたものでしたが。
ではそのうち。なんか文章量が微妙で、やたら1レスが短いのがあってごめんなさい。
>>何はさておきミドリさんへ、前回の感想について
すみませんっっ! ジュネのこと「白銀」て書いてました! 女性聖闘士=白銀の
イメージが強かったもので……申し訳ないですっ。
>>ザクさん
サマサさんともども、ご健闘をお祈りしております。でサマサさんともども、
苦にならない範囲での執筆をお待ちしております!
では本文へ↓
>>320 響子が目を開けた時、まず目に入ったのは天井。本部の家の、和室の天井だ。
この目覚めは二度目だな、と響子はぼんやり思う。
体に全く力が入らない、どころか節々がひどく痛む。だが、ここにこうして寝ているという
ことは……自分も本部も嗣子も、皆助かったのだ。違いない。
それを思うと、痛みも痛くない。ふとんの重さや、糊の利いた浴衣の肌触りも、心地よい。
「着替えさせたのは神麻さんです。ご心配なさらず」
そちらを見るまでもなく、傍らに本部がいるのが判る。そのままぼうっとしていると、額に
乗せられていた手ぬぐいが取り除かれ、水音がして、冷やされて額に戻ってきた。
どれほどの時間か知らないが、この調子で看護していてくれたのだろう。響子は、
天井を見たまま言った。
「……ありがとう本部さん。それと、ごめん。また巻き込んでしまったな」
「何を言われる。むしろ、こちらが巻き込んだというのが正しいでしょう。神余殿に
とっては本来無関係の、異世界でのことに」
響子が、驚いて顔を横に向けた。そこでは本部がきちんと、正座している。
「聞かせて頂きましたぞ。超能力者問題秘密対策委員会、通称『チョーモンイン』のこと。
そして神余殿たちが日頃相手にしておられる、超能力犯罪者たちのこと」
「つ、嗣子か。あいつめ、また勝手なことをっ」
と毒づいてから、響子は気づいた。本部はもう、知っているのだ。最初に響子と勝負した時、
響子がインチキをしたということも。響子が、柔術家でも何でもないということも。
『……そうだよ本部さん。オレはあんたに、「神余殿」なんて呼ばれる身分じゃない』
謝罪の言葉もなく、響子は黙り込む。すると本部の方から、
「神余殿。もしや、気にしておられるのですか? 初対面の時のことを。柔術で勝負した
わけではないからインチキだ、とでも。ならばそれは筋違いというものですぞ」
「え?」
「他流はいざ知らず、我が本部流は超実戦柔術をウリにしております。武器を使われた
から負けた、など言い訳にもなりませぬ」
本部は、胸を張って言った。言葉を失う響子に、本部が少し寂しそうに続ける。
「そんなことよりも。先日、神余殿を評して、わしの知り合いがこう申しておりました。
『わしらにはどうにもできぬ遠い世界のこと』と。それが、文字通りの意味だったとは」
そう。響子たちは、超能力犯罪者たちを向こうに廻して闘う、遠い異世界の人間。
勇次郎との接触という任務が済んだ今、もうここにいてはいけないのだ。
もちろん、母親のこともある。いつまでもいられるわけはない。
リミットはせいぜい、嗣子の転送ブレスが使えるようになるまで。あと一日か二日。
「……本部さん。教えてくれるって約束だったよな」
「は?」
「野菜だけ味噌汁の作り方。オレ、帰ったら母さんに作ってあげたいから……」
本部を見つめる響子の声が、だんだん小さくなっていく。本部は頷いて、
「お教えしましょう。但し、あの時わしの出した交換条件も、お忘れなく」
勇次郎と響子たちとの戦いから数日後。響子と嗣子は、自分たちの世界へと帰っていった。
なにごともなかったかのように平和な街を、刃牙と梢江が並んで歩いている。と、
「いてっ!」
いきなり二人の前に、勇次郎が空から降って来た。刃牙は、反射的に梢江を背に庇う。
「な、なんだよ親父? どこから湧いて出てきたんだ」
「てて……っと、おぉいつもの刃牙。てことは、戻ってきたのか。くそっ、何だったんだ。
テレビや新聞の日付は十年後ってなってたが……予知夢でも見たのか、俺は?」
刃牙には意味不明なことをブツブツ言いながら、勇次郎が立ち上がる。そして、ふと、
刃牙の後ろにいる梢江を見た。と、勇次郎の顔が「うげぉっ」となる。
「親父? どうしたんだよ」
勇次郎は深呼吸してから、刃牙に顔を寄せて囁いた。
「聞け息子よ。今すぐ、あの娘とは別れろ。いやいや悪いことは言わん。なにしろ、」
瞬間、巨凶の血を大爆発させて鬼の貌全開になった刃牙のアッパーが、勇次郎を
大空の彼方へと吹っ飛ばした。
怒った顔で梢江の手を握り、ずんずん歩いていく刃牙を眼下に見下ろし、勇次郎は呟く。
「……親切で言ってやったんだがなぁ……」
彼が十年後の世界で何を見てきたのか。それは誰にもわからない。
チョーモンイン日本支部。チーフ席にいるマモルの前に、響子が立っている。
マモルは苦しそうに、響子に伝えた。
「観測記録を入念に分析した……結果、あの範馬勇次郎は、超能力者ではないと……
断定、され、ました。……神余、ご苦労様、でした」
「チーフ。無理しなくてもいいですよ、別に」
「い、いいえいいえ。上司として、ここは、堪えねば、失礼と、いうもの」
「そういうもの言いが既に、充分失礼ですけどね」
そんなやりとりをしているオフィスに、嗣子が入ってきた。
「おはようございますっ! ……? チーフ、今日は今日でまた、妙な雰囲気」
「か、神余が、ちょっと」
相変わらず苦しそうなマモル。首を傾げる嗣子。響子が振り向いて、簡潔に説明した。
「チーフは今、爆笑を堪えてるんだよ」
と言った響子の胸、いつもの、古着の作務衣の胸には。
可愛らしいウサギさんのアップリケが、ちんまりと縫い付けられていた。
「! ど、どうしたの響子ちゃん、それはっっ!」
嗣子が駆け寄ってきて、響子の胸をまじまじと見つめる。どうやら響子のお手製、
手作りのアップリケだ。
「どうしたもこうしたも、別に。オレは一応、女の子なんだから、その、つまり」
響子が、照れながら頭を掻く。嗣子が思い出して、ぽん、と手を打った。
「あ、そうか。本部さんとの約束」
「そうだよ。……変か?」
嗣子が、ふるふるっと首を振った。
「ううん。可愛い。とっても似合ってるよ、響子ちゃん♪」
「そ、そうか。これで結構、デザインには苦労したんだ。うん」
「お母様はなんて?」
「……お前と同じことを言ったよ。二人揃って、打ち合わせしたみたいに。ったく」
苦笑の照れ笑いの赤面で、どうしようもなくなる響子。自分の胸のアップリケに
人差し指を当てて、くりくりと「の」の字をかいてみたり。
「では、その件はもういいとして」
何とか爆笑を飲み込んだマモルが、二人に指令書を手渡した。
「今日の任務です。二人とも、よろしくお願いしますよ」
「はいっ!」
響子と嗣子は、二人揃って元気良く、返事をした。
……響子はまだ、知らない。史上最強最悪の『タイムイレイザー』の使い手が、運命の
裏側で蠢いていることを。その、醜悪な牙から滴る涎に、既に響子自身がべっとりと
濡らされてしまっていることを。
いずれ、全てを知ってしまった時。底知れぬ恐怖と拭いきれぬ嫌悪が響子を襲い、
その心を絶望の底へ引きずり込むこととなるだろう。
だが響子は、必ずそこから立ち上がり、自らの運命に食い込む牙に対して、戦いを挑んで
くれる。なぜなら彼女には、嗣子たちがいるから。チョーモンインの仲間がいるから。
そして、その胸に咲く『女の子らしさ』が、『その理由』が、ある。
『ちゃんとやってるぜ、オレなりに「女の子らしく」さ。だから……オレのことは
心配いらないよ、本部さん』
清く貧しくガラッパチ。神余響子は、そんな少女である。
超能力犯罪者たちを追い続ける、万年古着の作務衣姿の、彼女の胸には。
いつも必ず、お手製の可愛らしいアップリケが、縫い付けられている。
明日は来れないし間は開けたくないし……でしたので。すみませんゲロさん。
ともあれこれにて幕、です。読んで下さった方、ありがとうございました!
次回は、もしかしたら前述通り、ゲームキャラと漫画キャラ混在のSSを、
例のスレに献上するかもです。まだ未定ですが。
>>うみにんさん
ジャイアンが、それこそバキのようにシリアスに戦ってる姿が、音声付きで容易に想像
できてしまう…やはり、描写の巧みさ・テンポの良さ故でしょうな。見習わねばならぬ
とこです。他所の戦況も、有利不利の天秤が目まぐるしく動いてて、引き付けられます。
>>ユルさん
気づかなかったのは不覚でした……すみません。さて今回もまだまだ、静かに余震してる
感じですね。怖い雰囲気はあるけど、死や破壊がはっきりと出ているというわけではない。
でも怖い。そんな状態を、近々バッド・カンパニーが破ってくれそう。開戦間近……?
>>草薙さん
・おぉ! 原作六巻の、あの名場面! でもあの能力コピーが消えてても、今ののび太
は気迫や覚悟や根性が小学生離れしてるはず。そんなのを相手に、ジャイアンどうする?
・で一気にDB世界に戻ってきましたな。今回何となく目を引いたのは、サンドバッグ
相手にトレーニングしてるベジータ。……普通過ぎて違和感というか、意外な光景です。
>>サナダムシさん
前回で終わりかと思いきや、寂の続投が嬉しいです。しかしそこまでシコルを避けなく
ても……何を感じ取っているのかスカウトマン。反論できずに逃げ出す辺り、意外と
根性がないのかも。そして範、期待を大幅に上回るアホっぷりに敬礼。こうでなくては。
>>ゲロさん
なかなか爽やかに、むしろ可愛らしく、終わりましたね。もっとこう、奥底の思念が
欲望がドロドロと〜、てな展開も予想してたのですが。まぁ心の秘め事と外に出す言葉、
恥ずかしさと晴れやか気分、心と言葉の交差点、いろんなシチュでいろいろありますね。
風で木の葉が揺れる音以外全く無音の場所で一人の男が瞑想をしていた。
足を座禅の様に組み、両手をヘソのあたりに組み合わせ背筋をまっすぐにしている。
座禅の場合は目を半開きにする。だが男の場合は違った。しっかりと見開いて前を見ていたのだ。男が見ているモノ。それは爪を装備したゾンビの姿であった、
「ヒヒヒヒ。見つけたぞぉ!我が主、ディオ様の命により貴様を殺すゥ。」
両腕を広げてゆっくりと近づくゾンビ。そして立ち上がり構えを取るジョナサン。
一点の歪みもない湖の水面には二人の姿が映っていた。
「ひゃははは!!」
奇声を挙げ突進するゾンビ。ジョナサンの目にはゾンビの動きがスローモーションの様に見えていた。
(波紋で・・・間接を外し。そして波紋で痛みを和らげ・・・突く。)
ゾンビの爪はジョナサンの胸の所まで来ていた。
(これで終わりだ。ジョナサン=ジョースター。)
ゾンビの目にはジョナサンの胸から血が流れ出る光景が浮かんでいた。
ゾンビが勝利を確信した刹那、ゾンビは顎と背中に衝撃を覚えた。
ジョナサンのズーム・パンチと他の何かが同時にゾンビを襲ったのだ。
「ミギャアアアア!!!」
体が吹き飛ばされ傍にあった木に激突するゾンビ。そしてその体は瞬くまに塵となり、消滅した。
「いつからそこにいました?ハンマさん?」
ジョナサンの目の前には勇次郎が立っていた。いくら戦いに集中していたとはいえ周囲の警戒を怠るジョナサンではない。だが今回は違っていた。
攻撃する時の姿はおろか気配さえ感じられなかったのだ。
「少し前からな。あいつは少しは美味そうだったが・・・とんだ期待はずれだったようだ。」
言いながらジョナサンを見る勇次郎。
「今ここでやるつもりですか?」眉をひそめてジョナサンが言う。
今ここでこの男とやるべきではない。なぜならこの男と戦って消耗したら
ディオとやる時に危険だからだ。
「それも面白いが・・口直しに比べ合いといこうか。」
ジョナサンは安心した。何を比べるのであれ戦闘ではないからだ。
「いいでしょう。僕も自分の鍛錬の程を見たい。」
「波紋法・・と言ったな。それを比べるぞ。」
湖のほとりに立つ勇次郎とジョナサン。まずジョナサンが水の方へ歩いていく。
そして彼は水の上に立った。ジョナサンの足元には波紋法により、奇妙な形の波紋が出来ていた。
「今度は俺だな。」
勇次郎が波紋の呼吸法を始める。そしてコォォォという波紋法独特の呼吸音が聞こえ始めた。勇次郎の体の中に波紋が流れ始める。それを見てジョナサンは思った。
(非常に高濃度の波紋。ひょっとしたらツェペリさんに匹敵するぐらいか!?)
指先を水に向ける勇次郎。そして勇次郎の指先から赤い波紋が発射された。
「お前の波紋は山吹色の波紋疾走といったな。俺のは真紅の波紋疾走、つまり
クリムゾン・レッド オーバードライブと言った所か?」
勇次郎の言葉が終わるか終わらないかの内に湖に何本もの水柱が立った。
それを見てジョナサンは驚愕した。湖に波紋を流しても水面上を伝わるだけで、水柱が立つ訳ではない。それをこの男はやってのけた。この男程敵に回したら怖い存在はいないだろう。
「ものすごい才能の持ち主じゃな。二人とも。」
ジョナサンと勇次郎が同時に振り返る。二人に声を掛けたのはツェペリであった。
「ジジイ。お前の波紋とやらばどれくらいなんだ?」勇次郎がせせら笑う様に言う。
「私の波紋はディオとの戦闘でお見せしよう。」
「奴の居場所は?」ジョナサンが二人の間に割って入る。
「今しがた入った情報によると奴はウィンドナイツロッドにいるらしい。数日後に出発する。」
数日後、準備を整えたジョナサン達はディオの館へ向かった。
今回の投稿はこれで終わりです。
402 :
作者の都合により名無しです:05/01/21 02:40:17 ID:OU2HU+KM0
蟲師、第一部完結乙。
女の子らしい胸、完結乙。
オーガのリング、連載乙。
蟲師は最初現代風のノリに戸惑ったけど、(女子高生のノリにもw)
最後よかったよ。紛れも無く蟲師だったね。蟲師2部も頑張れ。
ふらーりさん、あっちのスレはずっとレス無くて実質もう終わってるから、
やっぱりまたこっちで書いて欲しいなあ。
草薙氏は勇次郎好きですね。勇次郎は血の色の波紋か。ぴったりだな。
しかし、1レスに1つやたら長い行があるのはなんでだw
年が明けても好調だな。
虫師は現代編ということで少し面喰ったがよかった。
でも次のシリーズは、やはり鎖国が続いている日本、の
舞台イメージでお願いします。
闇はヒトを拒絶する。闇は蟲を受け入れる――
「お待ちしておりました、蟲師殿」
どこか陰のある村。それは、日を遮るようにしてある、近くの山に佇む大木のせいであろうか。
長老と見られる老婆と向き合う白髪の男。
「ギンコです。早速ですが、用件を聞かせていただきたい」
「はい……私どもの村では、毎年この時期に、森の神に一年の実りを御願い申し上げる儀式があるのですが、
御神木までの道程で、人が消えるのです」
「消える?」
「はい。出発前に人数確認をして、到着後にまた確認するのですが、必ず1人減っている。そして、その後姿を
再び見ることは無く……」
森は、日や月の光を通すことの無い程に、鬱蒼と茂っている。日中でも夜の如き暗さで、そのせいなのかは分
からないが、途中で人が消えたことに気付く人はないと、長老は言う。
「……話を聞いた限りですが、それは蟲ですな」
ギンコははっきりとそう言った。
「やはり蟲で……」
「ええ。…いや、正確には蟲ではない。蟲ではないが、限りなく近い性質を持っているモノです。光脈筋≠ニいう」
光脈筋は、人など動植物に潤いをもたらすモノ。しかし、それは一面に過ぎない。近付きすぎると、毒となる。
「蟲と同じく、これも見える者と見えざる者に分かれている。消えたのはまず間違いなく、見える類の者達でしょう。
光脈筋は、一見するととても美しい。『地の河』と形容する者もいるくらいにね。この辺だと、森に入ると灯りが無く
なるから、尚更惹かれるのでしょうな。惹かれ、注視し、そして、消える」
「なぜ、消えるのです……?」
「蟲となるからです。光脈筋は、吐気をもよおす程生命に溢れている。それに中てられることによって、ヒトと蟲の
境界線が狭められていく。段々と侵されていき、遂には境界線が交差し、蟲となる。ヒトからは見えない、半永久
的に生き続ける、時を刻まぬ存在となるのです」
蟲と同じ性質を持つに至ったモノを、ヒトに戻すことは出来ない。何故なら、前例が無いからだ。
先達の蟲師は、蟲に接近し、対峙し、情報を集め、対策を作り出してきた。それは今もなお続いている。蟲は次か
ら次へと向こうの世界から生まれ、増殖してゆく。無論、蟲師でさえ及ばぬ蟲も多数いる。ギンコが今まで遭遇して
きた蟲で、初めからその凡そを知り得ている例など稀なのだ。
「残念だが、彼らはもうヒトではない。どうしようもないことです」
「そんな……」
長老は、それきり下を向いて黙りこくってしまった。
40秒規制がウザイ。
やはり蟲師本来の世界観だと書き易いったら。それが分かっただけでも現代編を書いた甲斐があった。
この話は、どこか蟲師の連載第一話に似ているというか、元ネタはあれです。初っ端から読んで衝撃を
受けました。
>>397 お気になさらず。
しかし、欹ては書いてて正直苦しかったけど、読み手の方もそういう時は読み難いものなのですかね?
読み直してみると、何が言いたいんだ俺、と思ったのですが。
>>402 女子高生のキャラが固まらないまま終ってしまって個人的消化不良。
いつかまた出したい。もっと落ち着かせてw
>>404 どうでしょう?
ではまた。
第八話「酒と食事と格闘技」
全日程を終了し、しけい荘一行にようやく安息の時が訪れる。
風呂を上がれば、大広間に夕食が用意されている。多彩な中華料理に加え、ビールや中
国酒がテーブルに並ぶ。厳しい修練を乗り越えれば、きちんと見返りが待っているのだ。
「みんな、今日はご苦労だった。明日にはアパートへ戻ることになるが、今夜は思う存分
楽しんでくれたまえ」
挨拶するオリバに、拍手が沸き上がる。スペックなど、待ち切れずに勝手に食べ始めて
いる。次に、海王を統率する劉海王より一言。
「フォッフォッ……海王たちはどうじゃったかな。中には未熟な者もいたじゃろうて、申
し訳ない。とにかく、ひどく疲れたことじゃろう。そこで、おぬしらに一つ余興を催すこ
とにした」
一体何が行われるというのか。演武か、一発芸か、それともまさか芸者でも雇ったのか。
「烈よ、入りなさい」
劉に呼ばれ、烈海王が入ってきた。宴会の場におよそ相応しくない、猛獣のような芳香
を身に宿している。今にも噛み付かんばかりだ。
「実は、この烈が昨日の結果は納得いかんと主張してのう。これから、シコルスキー君と
再戦してもらうことになった」
──空気が止まった。
アパート住民からは大喝采が起こる。酒の席に打ってつけの好カードが実現した。皆が
喜ぶ中、口に運ぼうとしたグラスを手にしたまま固まるシコルスキー。
「えッ! え、え、え、え、え……?」
動揺しすぎたのか、言葉になっていない。対して、烈は殺気を研ぎ澄ませている。
「待ってくれッ! 確か、昨日は烈海王が勝ったはず……」
「斗ッ!」
またもや、強引に果し合いが開始される。猛牛のように突進する烈海王。
「せめて、これを飲んでから──」
「破ッ!」
たった一杯を飲むことすら許されず、シコルスキーは烈の中段突きをまともに喰った。
次々にめり込む突きの連打。急所、急所、また急所。容赦も手加減もない。
シコルスキーも反応を見せるが、それ以上に烈の打突が速い。昨日と同様、反撃もまま
ならない。
「があッ!」
意地のアッパーを返すが、烈に片手で止められる。逆に肝臓へ蹴り込まれ──シコルス
キーが動きを止める。と、またしても連打開始。完全に烈にペースを握られている。
攻めも、守りも超一流。肉体的な能力にも恵まれている。どこか、自分が勝っていると
断言出来る部分はあるのか。打たれながら、シコルスキーは絶望していた。烈のハイキッ
ク、かろうじてスウェーで避ける──刹那。
期せずして、空振りした烈の背後に自分が位置する。決定的な好機。
「だッ!」
延髄狙い、全力にてストレートパンチ。
しかし、烈は素早く首を振るい、鞭のように三つ編みを操って迎撃する。
──痛い。思わぬ感触に、シコルスキーは拳速を緩めてしまう。一瞬で十分だった。即
座に振り返る烈海王。好機は危機へと暗転した。
「あ……」
風を切り、視界へと飛び込む突き。これが決まり手となった。
肉体から抜けていく力と精神。走馬灯のようにコマ送りで、畳の上へ堕ちていくシコル
スキー。
彼は見てしまった。試合になど目もくれず、オリバの全裸踊りに大笑いする酔っ払いた
ちの姿を──意識消失。
やがて夜は明け──別れの日がやって来る。打岩から始まり、大宴会にて幕を閉じた中
国拳法体験ツアー。多々トラブルこそ生じたが、しけい荘に住まう者にとって掛け替えの
ない経験となったのは間違いない。
酒瓶と皿とで散らかった大広間を片付けながら、オリバが眠っている住民たちを順々に
起こす。
「さぁ、午前中にはヘリコプターが飛んでくる。帰り支度を始めるぞ」
四人は酔いが抜けぬ頭を、一人はダメージが残る頭を、それぞれ抱えながら後片付けに
取り掛かる。
海王寺門外には、劉海王を中心に十名の海王が集結していた。
「世話になったよ。中国四千年を、切片ながらも体験することが出来た」
「老師、ありがとうございました。私はあなたとの師弟の絆を、生涯忘れないでしょう」
オリバとドリアンが、劉と別れの挨拶を交わす。
ドイルは孫海王、スペックも陳海王と、各々奇縁が生まれた武術家と会話に花を咲かせ
てる。柳など、李海王と毒物について熱心に語り合っている。李からは中国に伝わる毒草
を手に入れ、柳はクードーの製品をいくつか渡した。
シコルスキーとサムワン海王は、どうすれば格上相手にダメージを受けずに敗北するか、
という非常に後ろ向きな議論で盛り上がっていた。
昨日までの血生臭さは失せ、和やかに寺での生活へ別れを告げる──はずもなく。
「納得いかんッ!」
平和を切り裂く一喝。烈海王だった。
「ロシア人よ、もう一度だ。これからヘリコプターが迎えに来るまで、まだ半刻ほど残し
ている。私と立ち合えッ!」
すでに完勝を収めている相手に、再々戦を申し出る烈。シコルスキーという最下級の獲
物に対し、たった二度の勝利では納得いくはずもない。完全なる破滅を与えねば。
挑まれたシコルスキー。意外なことに、彼もまた決闘に応じる。そう、彼は知ってしま
ったのだ。打たれ、毒を受け、袋叩きを味わい、拒絶され──自分がどのような星の下に
生まれてきたかを。
「知っていたさ、こうなること……」
シコルスキーに絶望はない。ただ、あるがままの現実を受け入れるだけ。烈が挑むとい
うのなら、全力で迎え撃つのみ。
そろそろ花粉に注意しましょう。
次回へ続く。
413 :
ふら〜り:05/01/22 10:44:42 ID:PAvlOPFnO
おおっ!サナダムシさんお疲れいです。
私はしばらく投下出来ませんが、その穴を皆さんで補っていただければ幸いですっ!
ではでは。
>蟲師
おお、通常モードになりましたか。前章から即の新章、お疲れ様です。
ギンコが村の長老や娘から依頼を受けるというのは王道ですね。
蟲師らしくも、ゲロさん風味の味付けをした蟲師の新章期待しております。
>しけい荘
烈とシコル。まさにライオンと餌ですね。仲間たちも見る価値無しと
オリバの宴会芸を堪能しているのが哀しい。が、流石シコルという気もw
3度目の正直なるか?ならないだろうな。もしかしてもうすぐ終わり?
415 :
作者の都合により名無しです:05/01/22 13:16:26 ID:BV1pN0Z/0
ゲロ氏、サナダムシ氏いつもGJ。
・蟲師
光脈筋って原作にも出てきたかな?雰囲気が蟲師ワールドに戻ったな。
今回は前フリって感じだけど、ギンコの祓いがどうなるか期待してるよ。
・しけい壮物語
あれ、ダイライタイは開かれないの?うーん、楽しみにしてたのになあ。
代わりに列とシコのマジバトルか。勝ち目はないと思うが、シコル頑張れ。
416 :
作者の都合により名無しです:05/01/22 15:38:13 ID:PiCeTHV10
蟲師、しけい荘ともに大好きなSSだが
しけい荘がもうすぐ終わりそうで残念だ。
蟲師は新章始まったばかりで大丈夫そうだが。
417 :
作者の都合により名無しです:05/01/22 20:18:08 ID:SZzsT4oq0
なんだかんだで今年も好調モードが続いてますねえ。
いいことだ。
418 :
作者の都合により名無しです:05/01/22 21:23:56 ID:PAvlOPFnO
年が明けても好調だな
VS氏は来ないねえ。あげとこ。
613 名前: 名無しさん☆ 投稿日: 2005/01/20(木) 11:55
SSネタ構想のスレッドを立ててはどうでしょうか?
文才は無いがネタなら思いつくチェッカーのカキコを見てみたい。
614 名前: ふら〜り 投稿日: 2005/01/20(木) 22:34
>>613 面白いかも。それをネタにして職人さんたちが実際に
書いてみる、とか。
こういうのがあったんだけどサロンにスレ立てていい?
>蟲師
おお、今度は原作舞台ですね。こっちのがやはり良い。
元ネタは一話なのか。私は途中から読んでないから分からんけど。
>しけい荘
いじめ、かっこわるい。
まあシコルとサムワンだからいいけど。
422 :
作者の都合により名無しです:05/01/23 11:56:36 ID:1hnTtrTh0
>>421 蟲師は3巻くらいまでは名作だけど、以降はマンネリ化しちゃったからな・・
でも、ゲロさんの原作回帰は嬉しい。
江戸時代末期か明治時代初期の感じの中に、なぜかギンコが現代風ってのがイメージ。
あと、いくらなんでもシコルとサムワンでもいじめはだめだろw
ちょっとハードなコミュニケーションと言えw
第九話「秘められた援軍」
黄河は水たまりを叱らないという。しかし、烈海王はナイル川だろうと、水たまりだろ
うと、一粒の水蒸気だろうと、徹底的に叩き潰す男だ。
彼からすれば、シコルスキーなど水蒸気ですらない。二度シコルスキーを破ったが、そ
れらは黄河の大いなる流れを知らしめるものではなかった。自らの闘争心を刺激する獲物
に、究極の敗北を味わわせる。地獄へ突き落とす。
これこそが、烈海王が納得いく結果なのだ。
「斗ッ!」
合図を受け、烈はシューズを脱ぎ去った。本気だ。
これまでは後手に甘んじてきたシコルスキー。今回ばかりは先手をと、瞬発力をフルに
生かして駆け出す。勢いを利用してラッシュを仕掛けると思いきや──次に取った行動は
何と逆立ち。両手で地面を跳び、両足で烈を蹴り上げる。
鈍い音がした。が、ヒットには至っていない。両腕を交差させ、顔面をカバーしている。
まるで効いていない様子だ。
「ふん……。正攻法では通用しないと、奇策に打って出たか」
シコルスキーは跳ね起きると、今度はフック気味に拳を打ち込む。これも急所には届か
ない。両腕できっちりガードされている。だが、烈の腕は何故か血に染まっていた。
抉るような傷跡がくっきりと残されている。
「き、貴様……ッ!」
「指の力には、少々覚えがあってね……」
中指を突出させた一本拳。鉄をも切り裂く斬撃ナックルが炸裂した。
烈海王が怒りをあらわにする。脳髄に血を昇らせ、喜哀楽を心のうちに押し込めた。
「かああああッ!」
沸点に達した血液に身を委ね、烈が超人的な速度で突き進む。シコルスキーの思惑通り。
冷静さを欠いた武術家を倒すなど、軽いもの。健常な判断も下せぬ格闘士を破るなど、容
易いこと。通常ならば──そう、通常ならば。
烈海王は異常だった。
ロシアを祖国とするシコルスキーにとって、吹雪は特別珍しい事象ではなかった。
この連打はまさにそれ。ブリザードで飛んでくる雪が、全て打突に変換されたような猛
ラッシュ。喰らったと認識したら、もう次が到達している。速い、速すぎる。
狙いこそ乱れているが、頭上から下半身まで、あらゆる箇所を打たれる。
「くうッ!」
腰や背筋を駆使する余裕はない。肩のみで、シコルスキーがロシアンフックを出す。こ
れが顔面へクリーンヒット。どうにか連撃は収まったが、受けたダメージは大きい。
「がふッ……効いたぜ」
「格下相手に我を忘れるとは、まだ私も未熟だな」
一呼吸する烈。すると、脳細胞が沈静するよう体中に指令を出す。必要以上に力まれた
肉体は、もっともバランスが取れた状態へ回帰する。一時中断。
再開。先程とは打って変わって、烈が足技のみで攻める。全角度から飛び込む、刃物の
ような蹴り。文字通りの滅多打ち。が、シコルスキーとて動体視力は優れている。
自分の全体重をも支える指で、足指を見事に捕らえた。
「ハハハ、一気にへし折ってやる……!」
シコルスキーが全力で足指に力を込めるが、微動だにしない。唯一誇れる要素だった指
が──通用しない。逆に烈は、足指を掴まれたままシコルスキーを投げ飛ばす。
「この程度か」
「ぐわァッ!」
受け身は取れたが、それは新たな地獄の始まり。四千年を背負った蛮勇が、ついに仕留
めの段階へと移行した。本気すら超えた本気。
柔剛一体にして、飛燕なる最速乱打。膨大な歴史が、シコルスキーに圧し掛かる。
「ひいいィィィィッ!」
全力を出し、余りにも一方的に攻め込む烈。ドリアンは驚きを隠せない。
「老師、まさか烈がここまで……」
「あやつは天才じゃ。おぬしがいた頃は、まだわしが頂点に君臨していた。じゃが、あれ
から五年経ち──烈はついに四千年を体現した。もはや、わしとて組み手では歯が立たぬ。
ましてや、あのロシア人では……」
劉海王が嘆く。目の前で行われているのは、試合などではない。大洪水が豆粒を押し流
す過程でしかないのだ。
轟く悲鳴。丸まったまま、打たれるがまま地面を転げ回る格闘士。シコルスキーだ。
絶対に勝てない。本気を出した烈を目の当たりにし、完全にシコルスキーは戦意を失っ
ていた。反撃する気力すらない。
「ひィッ! ひいいィィィィッ!」
早く気を失いたい。ところが、肉体とは残酷なものである。昨日はぐっすり寝て、体調
はすこぶる良好なのだ。そう簡単に機能停止してくれない。
「救えぬ奴よ。これで、終わりにしてやる」
烈の人差し指。鍛え抜かれた指は、極太の針と化ける。それが──ヘソを突き抜いた。
さらに、ヘソを中心に五箇所もの腹筋に穴を空ける。血まみれの腹を抱え、激痛に悶え
苦しむシコルスキー。
「グアッ! ウオオオオオオオオッ!」
恥も外聞もなく、また悲鳴か。いや、どこかおかしい。誕生したての赤子の泣き声、あ
れに近い印象を受ける。毒々しく体色を変化させ、すっと立ち上がるシコルスキー。
追い詰めたはずの獲物が、突如異形へと進化を遂げた。思わず烈が問う。
「……何が起こったというのだ、貴様ッ!」
「分からねェ……。ただ、俺にとって悪いことではなさそうだ」
今現在のシコルスキーに、見覚えがある人間は六人いた。
柳と李は、すぐさま感づいた。シコルスキーの体内で、裏返ったはずの毒がまたも作用
している。
「李さん、あれはまさか……」
「うむ、毒は再び裏返った。かつてのオリバ氏のように、烈が与えた恐怖が毒に化学反応
を引き起こしたのだ」
「しかし、毒はすでに中和されていたのでは──」
「中和ではない。陰陽が交わり、そこに恐怖心が加わったため、毒が体に害悪をもたらす
成分ではなくなっただけのこと。毒自体は、彼の体内に生き続けていた……」
陽手と陰手、二つの毒素はしぶとく残存していた。李はさらに続ける。
「一度克服した彼にとって、もはや毒は脅威ではない。生命を脅かされることもない」
汗を流し、李は恐るべき結論を叩き出す。
「つまり、毒の性質をそのままに……毒を味方にッ!」
生ける猛毒と化したシコルスキー。彼を待つは栄光か、それとも破滅か。
擂台を期待してた方がいましたか。
確かに、もっと色んな人を活躍させたかったですね。
特にドリアン……。
シコルスキー三割、オリバ二割、烈二割、寂サムワン一割、毒コンビ一割、その他一割って感じです。
とにもかくにも、次回へ続く。
428 :
作者の都合により名無しです:05/01/23 15:08:36 ID:K2aNHIbgO
年が明けても好調だな
前半見て「やっぱりシコルいじめじゃんか」と思ったけど、
李の毒手をこういう感じで持ってくるとは思わなかった。
しかし烈も大人気なさ杉だろ。
まあ烈は原作でも結構大人気なかったり、急に人格者になったり
分裂症気味なところがあるからな。
しかし結構シコル、烈と戦えているな。前作の最終戦といい、
やはりしけい荘の主役は彼なのか。いわゆるのび太的な存在。
いつもはヘタレだけど、たまに映画版みたいな活躍をするw
確かにそうだな。>のび太的存在
そう考えると、活躍する場があるだけ、ヤムチャよりはマシなのか。
しけい荘もあと1〜2回で終わりか。ラストは海皇で締めて欲しいな。
「切り札」
「これがドラゴンボールか‥‥」
男は、目の前にある七個の光輝く球体をじっと見つめていた。
ドラゴンボール。世界に全部で七つ存在する黄金色の球体。
七個全て集めて伝説の神龍を呼び出せば、何でも好きな願いを叶えられる魔法の道具。
「これでワシは、世紀の発明家として歴史に名を残せる‥‥」
男は科学者だった。若手ながら様々な研究に着手して、数多くの成果を発表した。
しかし昨年、ある研究に関する実験で大失敗してしまい、男は学会を追放され、おまけに多額の
負債を抱える羽目になった。
だが男は諦めていなかった。実験失敗の原因が何だったのか見当はついていた。その箇所さえ
クリア出来れば、自分の研究は完成するのだ。今世紀最大とも言える発明が。
そして自分は歴史に名を残すことが出来る。
しかし、それを成し遂げるには多くの助手と研究費、そして設備が必要である。
学会追放となった彼に協力する企業や資産家はいなかった。
それで男は秘策に出たのだ。
ドラゴンボール。
これで神龍を呼び出して、実験失敗の原因を取り除かせ、自分の研究を完成させようというのだ。
そして今、男の目の前には七個のドラゴンボールが在る。
あとは神龍を呼び出しさえすれば、彼の願いは叶うことになる。
しかし、男はドラゴンボールを使うことに躊躇いを感じていた。
男は曲がりなりにも技術屋である。
己の腕を信じ、鍛えて生きてきた人種だった。
それだけに、こんな方法で得た名声が本当に嬉しいのか、空しくは無いのか。
このような達成の仕方では、自分がこれまで積み重ねた研究と失敗も無意味ではないか。
そんな気持ちになってきたのである。
しばらく男は考え込み、そして結論付けた。
「まだ100%無理と決まった訳じゃない。もう少し、行ける所まで足掻いてみよう。
本当にどうしようもなくなった時は、コイツを使えばいいんだから」
男はドラゴンボールを袋に入れ、金庫にしまった。
◇ ◇
あの日以来、男は死に物狂いで研究に着手した。それこそ不眠不休で実験に次ぐ実験を繰り返し、
資金の調達に走り回り、研究の障害となるものがあれば、それが学会や政府あろうとお構いなしに
怒鳴り込んで説得していった。
いざとなれば切り札がある、という思いが、男に大胆な行動を取らせていた。
そして十数年後、彼の研究はついに完成される。
その名も『ホイポイカプセル』。車でも家でも何でも掌サイズのカプセルに閉じ込め、そのまま
持ち運べてしまう世紀の発明だった。
幾つかの科学法則をも覆したこの大発明により、彼の科学者としての名声は不動のものになった。
発明の祝賀会が催された夜、男はドラゴンボールを金庫から出して、車に乗り込んだ。
車で向かった先は海だった。
「これは、もう必要ないな」
男はそう言って、ドラゴンボールを七個全部海に放り投げた。
「この男が一番正しい使い方をしたな」
天界では神が満足そうに、男の様子を眺めていた。
以上です。
最後の二行は蛇足だったかもしれませんね。
>>バレ氏へ
いいですね、何か昔話みたいで。
そういやブリーフ氏(ですよね?)はSS初登場?
436 :
作者の都合により名無しです:05/01/24 00:54:25 ID:eh7Z38f2O
年が明けても好調だな
>>435 ネタ自体は昔から使われていると思います。
この話を父から聞いたブルマがDB探しに行く――と結ぶ予定でしたが、
それこそ蛇足なので止めました。
438 :
作者の都合により名無しです:05/01/24 02:20:01 ID:eh7Z38f2O
結んだ方が読者の高揚感が高まると思うんだがね。
それに、
439 :
作者の都合により名無しです:05/01/24 08:35:55 ID:JCE/o58B0
なんとなくまたーりする話でしたな。
最初の書き出しの時、ドクターゲロかと思いましたが。
結びについては各人各様の考え方ですなー。
全然関係ないけどこのレス書いてる時に小さな地震来た。
最近多くて怖いよー。
>>438 なんだよw
蟲と同じ性質を持つに至ったヒトを救う手立ては無い。実例がないのだから、そう言う他あるまい。
しかし、ギンコには葛藤があった。例が無いだけで、不可能ではないかもしれないじゃないか。そう
思ったのだ。だが、実際どうすれば彼らを救うことが出来るのか、皆目見当もつかないのであった。
それはまるで、雲を掴むが如く――
ギンコは、現場へと赴いた。
長老には無理と言ってしまったが、やはり気になる。せめて、蟲となったヒトと会話することができ
れば、何か分かるかもしれない。
「いねえな……既に森の奥に引っ込んでしまっているのか、あるいは――」
彼らがヒトであるのなら、まずどこへ行こうとするだろう。それはやはり、自分や、親しい者の居場所
ではないか。
「――…先に森を探そうか、それとも、村に戻るか。さて、どうすっかね」
その時、森の奥の方から、がさがさと音がした。
「あれ、あなた確か……長老に呼ばれてきたっていう蟲師さんですか?」
奥から現れたのは、三度笠を浅く被った少女であった。齢十五、六の娘だ。
「そうだが、あんたはなぜこんなところに? 一人でか」
「私、両親もいないし、彼以外頼れる人もなかったから……」
「彼?」
「今年の儀式で消えたのは、私の夫なんです」
「しかし、女だてらにこんなとこまで来るのは危ないぞ。もう村から大分離れているし、この辺りになると
得体の知れない奴等もいるかも分からん」
ギンコは少女と共に、村へ引き返す途中であった。
「得体の知れない、って族とか? それなら大丈夫ですよ。この村は確かに森の神様のお陰で豊かですけど。
そういう人達はもっと都の方にいるでしょう」
「いや、それだけじゃあない。蟲のこともだ」
「でも、人が突然消えたりするのは儀式の時だけです。それ以外で失踪するなんて話、聞いたこともない
です。崖に落ちて亡くなっていたりして、姿が見えなくなることはありますけど」
「蟲は、一つじゃない。種類も、性質も」
ギンコは、少女の目を見て言った。
「正確には蟲じゃないが、光脈筋のようにヒトや動植物に恩恵を授けるモノもある。だが、そういった蟲よか、ヒト
に悪影響を与える蟲の方が多いのは間違いない。もっとも、あれらのほとんどは大した力も持たないモノだが―
―それでも、確かに害はある。対処法を知っていれば、共に生きることも出来るだろう。だが、知らねば、ヒトが
蟲に里を追われることだってある」
「……」
「……まあ、こんなこと言って何になるって訳でもない。今のは聞き流してくれても問題ない。俺はこの村からの
依頼は既に断っているわけだし。ここから先は、俺の自分勝手さ。自分がやりたいから、やってんだ」
「…え? じゃあ、夫を助けてくれるんですか!?」
少女は言った。
「とりあえず、お前のダンナやら、消えたヤツを見つけんことにゃ、分からんがな……」
そう、必ず助けられるかは分からない。二人は、足を速めた。
大体3更新で一話完結ってペースに自然となってますね。つーわけで次回『闇夜の灯火』完結。
今回は割とオーソドックスな展開で、書き易いですね。これだったら3月までに10話くらいはいけそう。
今これの他に『蟲』(蟲師の蟲の設定だけ借りたもの。ギンコは出てこない)と『もっけ』が書いてみたい。
当初、11月くらいまでは蟲師でなく蟲で連載してみようと思ってました。でも、それで受けんのか、とか、
それで話を作れるのか、俺は(狂言回しのギンコがいないととてもしんどい)と葛藤がでてしまい、お蔵入り
になりました。でも、自分の中で盛り上がってきたので、これの読み切りを近いうち載せたいと思ってます。
かなりポエミーです。多分。あ、勿論蟲師を書きながら。
もっけはまだ全然考えてないし、これはそれなりに調べ物とかしなきゃあ無理だから、実現するかは分かりません。
ともかく、書けるうちにどんどん書いとこうかな、と。そのうち嫌でも書けなくなるので。
>>414 王道と言われるとなんだか微妙に悔しいのでw次章はもうちょい捻ったものをお見せしたい。勿論蟲師らしい
範囲内で。
>>415 光脈筋は原作でも結構出てきます。話作るのに便利で好きです。
>>416 蟲師は、とりあえず10話は書きますよー。それ以降はちょっと分かりませんが。
>>420 これいいですね。俺はいいと思います。いいネタあったら書いてみたいし。自分の世界を広げるのに役立ちそうだ。
>>421 現代編は、少々悔いの残る出来でした。もっと面白くできたかもしれないのだが……言っても詮無いことですが。
>>422 漆原さんにはそろそろ新作の連載して欲しいですね。「岬でバスを降りたひと」という読み切りが良かっただけに。
レスアンカー忘れてた。
>>406です。
444 :
作者の都合により名無しです:05/01/24 19:09:36 ID:gUbefcyY0
ゲロさんお疲れさんです。
十五、六の幼な妻の願いをギンコがどう解決するか楽しみですw
>これだったら3月までに10話くらいはいけそう
すごいなー。もうお話の構想はほとんど出来てるのかな?
まだまだ2話目(ゲロ完結前入れると3話目か)、先は長いですが
頑張って連載して下さいな。
445 :
作者の都合により名無しです:05/01/24 19:58:57 ID:eh7Z38f2O
年が明けても好調だな
446 :
作者の都合により名無しです:05/01/24 21:33:41 ID:RQMTIYJk0
短編にしても10話連作ってのはすごいな。
楽しみにしてるので頑張って下さい。
今回みたいな王道も、前回みたいな変化球も楽しみです。
447 :
作者の都合により名無しです:05/01/24 22:02:31 ID:amtjTaA30
MSNメッセンジャーでファイル共有
http://tmp4.2ch.net/test/read.cgi/download/1103628958/ 真性池沼の FFS ◆EudlDlnaDY が面白い
「 ̄ ̄了
l h「¬h < はーい FFS ◆EudlDlnaDY が逮捕されるからageて
/ ̄ ̄\__,ト、Д/____
/ / ̄Yi. / jテ、 f ̄ヨ
/ /∧ / / /.i l iー――‐u' ̄
./ / Д` / / / / l l
i' / l ヽ../ レ' l l
. / _/ \ !、 lヽ____」 l
. !、/ \. \ \l ト./
ト、__\/ト、/ト、 y l
l  ̄( )y ) /l i
l l Y''/ー' / .l l
!、 l l./ / l l
/ / l/ ,/ i' l
/_ ./l l`ー‐〈 ト.__」
L_``^yト._」、ー" `ヽ_」
`ー' `ヽ_」
>>432 「‥‥‥というお話だったのサ」
そう言って、男は話を締めくくった。
男の前には10代の女の子――男の一人娘、ブルマである――が椅子から身を乗り出して、
目をキラキラさせながら、父の話に聞き入っていた。
「凄いわ!お父さん、今の話ホント!?」
ブルマが、興味津々といった顔つきで聞いてきた。
「そうだよ。無一文だったがパパは一生懸命頑張って」
「そうじゃなくて、『ドラゴンボール』の話よ! 本当に何でも願いが叶うの?」
娘の関心は父には無かった。男は少し残念に思いながらも答えた。
「ああ、ワシは結局使わなかったがね。いいかいブルマ。人生というのは‥」
「本当なんだ!」
ブルマが勢いよく立ち上がった。もう父の話など聞いていない。
「よーし! 私もドラゴンボール見つけて、カッコイイ彼氏GETしてやる!」
男が止める間もなく、ブルマは部屋を飛び出していった。
男は慌てて後を追おうとしたが、やめた。自分に似て頑固で行動派の娘だ。何を言ったって
聞かないだろう。
「真面目に頑張れば、そんなものに頼らなくても夢は叶う、と言いたかったんだけどねえ‥
‥‥逆効果だったかな」
まあ、そのうち娘にも分かる日が来るだろう。
そう思いながら、男はタバコに火をつけた。
前の話にブルマの話を入れるとすれば、こんな感じでしょうか。
寓話的にまとめたかったので省いてましたが、二次小説としては、この方が面白いかも。
451 :
作者の都合により名無しです:05/01/25 08:22:19 ID:XdX804g/0
>ゲロ氏
一度ギンコが無理と断って、女子供の頼みにもう一度考え直すのも
何気に王道wでもこの作品はある意味ワンパターンがいい感じだから、
ゲロさんのSSもその雰囲気出して良い感じ。10話完結、がんばって。
>バレ氏
>「‥‥‥というお話だったのサ」 というとあのAAを思い出すなw
ブルマはたしかにちゃっかりとそんな事考えていたかも知れませんね。
ガキの頃から。でも、結局捕まえられたのはヘタレと宇宙人・・w
452 :
作者の都合により名無しです:05/01/25 11:44:07 ID:dTwCXsjAO
年が明けても好調だな
453 :
ふら〜り:05/01/25 20:25:28 ID:OpvP2+d50
>>草薙さん
勇次郎、物凄く「頼りになる味方」な位置にいますね。確かに単純な強さは申し分なく、
波紋までこれほどとなると。それに神の視点たる我々から見ても、彼は善人ではないです
が「私利私欲でホイホイ裏切る」タイプでもないですし。このまま対ディオ、いくのか?
>>ゲロさん
事象だけをみると、要するに神隠しですが、なかなか一筋縄ではいかなさげ。美しさで
引き寄せて同化させてしまう……こう書くと食虫植物かアメーバのよう。「地の河」って
想像しにくい形容ですが、不気味さと美しさが同居してるみたいで。不思議な感じです。
>>サナダムシさん
さすがにちょっと今回は、マジメに痛そうにやられ過ぎ……かと思いきや、立ち上がり
ましたねシコル。本家バキ氏の「毒の裏返り」はそれこそ冗談みたいな強さを生み出して
ましたが、しけい荘シコルは……きっと、バキのようにはならないと期待しております。
>>バレさん
むぅ、なるほど。共感できます。納得できます。解りますこういう心理。人間、追い詰め
られての火事場のバカ力だけが最強ではない。逃げ道があるという安心感がもたらすもの
も侮れず。「完全自殺マニュアル」にもそんなことが書かれてました。それも真理ですね。
虫師は物語的に淡々としながらも
ゲロ氏がやる気まんまんなのが見えていいな。がんがれ。
前話
>>324-329 幽閉所の中で立ちすくむ、しずかときり丸に対して仮面の男は静かに告げた。
「キミたちの探している人物は、この要塞の最上部にいる・・・!」
「・・・そ、それじゃあ・・・・・」
魔王の目的のうちの一つは、出木杉の肉体と頭脳だという。
ならば、身近に置いておく可能性は確かに高い。この謎の老人のいうことも
全くのデタラメとは言い切れない。
仮面の老人は、よろける足取りで二人に近づこうとし、つまづき、床に倒れこんだ。
「だ、大丈夫ですか!?」
あわてて駆け寄るしずかの、しかしその肩をガシリと掴み、老人は嘆願した。
「私を・・・最上階まで連れて行ってはくれないか・・・?礼は必ず・・・する。」
「え・・・?」
戸惑うしずかのかわりにきり丸が、思いっきり嫌そうな顔で不平を呟いた。
「えー?お礼ったって、こんな小汚いじいさんじゃなぁ・・・」
「こんなところに幽閉されてたんならしょうがないわ。それに仮にも魔王が
捕らえて幽閉してるくらいだもの。きっと身分の高い人なんじゃないかしら。」
初対面の人間に対して、失礼極まりないきり丸であったが、しずかにたしなめられ、
なにやら考え込み始めた。だんだんと、その目つきが怪しくなっていく。
「ふ〜ん。身分の高い人、身分の高い人。・・・ってことはお金持ち!?
・・・お礼がっぽり・・・・はーい! 最上階まで連れて行きます♪行きます♪
えへ♪えはへ♪どぅおへへへへへ・・・・♪」
「・・・・・・・・」
きり丸の思考回路にあきれるしずかであったが、気をとりなおして次の行動を促した。
「おじいさんと一緒に行くのもいいけど、とにかく早くたけしさんのところへ
戻らなくちゃ。」
「ああ、やられちゃってたら大変だもんな。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
地下1階―――元来た道を二人が戻ると、そこには――――――
「・・・・たけしさん!!」「ジャイアン・・・!!」
「遅かったのか!?」
変わり果て、野獣そのもののような姿になったげんごろうの足元に、
全身に血を滲ませ、ボロボロになったジャイアンが倒れ伏していた――――――!
げんごろうの渾身の一撃を食らい、吹き飛ばされた後もジャイアンは戦い続けていた。
並の精神力ならとっくにあきらめてしまうほどのダメージを負ってなお―――――
立ちあがった。何度でも。気力だけを頼りに、何度も立ちあがった。立ち向かった。
最後まで正面から殴りあった。げんごろうには、自身の拳ではなんのダメージも
与えられないと悟っていながら。そしてついに今、ジャイアンは力尽きたのだった。
かろうじて意識は残っている。動けないままにげんごろうの目を睨む。
が、体が動かない。気持ちだけではどうにもならないほどに破壊されている。
「ようやく、くたばりやがったか。・・・ん?よう、遅かったな。お二人さん。
ようやくお戻りかい?ちょうど今止めをさすところだぜ?」
殴ることに夢中だったのか、げんごろうは戻ってきた二人に、ようやく気が付いた。
げんごろうはボロボロのジャイアンに止めをさすべく、再び渾身の力を込め始めた。
先の攻撃を上回ろうかという、その右腕が巨大な鉄塊と化す。下半身から徐々に
ねじり込まれ、引き絞られた力の波動が拳を覆い始める。
ただならぬげんごろうのオーラに、きり丸はジャイアンの死を予感し、走った。
仮面の老人をその場に残し、剣を振り上げ、大きく宙を舞い、踊りかかった。
身動きのとれないジャイアンを救うべく。
「秘剣!電光丸!せやぁっ!!」
高速の剣が、無数の閃光を刻んだ。無防備に力を練り込んでいるげんごろうは、
それを避けようともしない。地に降り立ったきり丸は、その手応えに違和感を感じた。
やがて、剣を持つ右手にジワリジワリとしびれが襲ってくる。
「痛ぇっ・・・!なんなんだこいつの体は・・・!?」
「げっ!?電光丸の刃が・・・!?」
きり丸は電光丸の刃わたりを眺め驚愕した。電光丸の刃が無残に刃こぼれしている。
両腕で斬りかかっていれば、真っ二つに折れていたかもしれない。電光丸の力で、
比較的脆い部分を狙っているはずなのだが、それでもなお斬れない。止められない。
げんごろうは、満足の笑みを浮かべた。恍惚といっても良い。ただのパンチである。
何の変哲もない。しかし、それこそが、彼の追い求めたもの。究極の破壊力である。
彼にとっての至高の芸術とも呼べるそれを放つに値する強者。すなわち最高の獲物。
“強者”はもはや身動きがとれない。渾身の一撃を全て受けとめてくれるであろう、
最高の肉がそこにあるのだ。追い詰めた獲物を仕留めるべく百獣の王が牙を剥いた。
見るものに絶望すら感じさせる、究極の破壊の拳が解き放たれた。
きり丸は懐の棒手裏剣に手を伸ばした。しかし気持ちとはうらはらに掴めない。
しびれきったその手が、言う事を聞かないのだ。よしんば、掴めたとしても
それを投げてどうなる?あの規格外の肉体に通用するのか?絶望が脳裏を掠める。
きり丸には、もはやなすすべがなかった。
だが、その前に動き出す者がいた。なにか考えがあったわけではない。本能のままに。
仮面の老人が手を伸ばす。“止める”ために。思わず飛び出したしずかを止めるために。
しずかに迷いや躊躇はなかった。老人の手は届かない。むなしく宙をつかむその指の
隙間から、しずかがジャイアンの前に躍り出る姿が見えた。
「やめて!わたしが相手よ。!」
しずかは叫び、げんごろうの凶拳を受け入れるべく両手を大きく広げた。
「・・・・・・・・・・!?」
ジャイアンが驚愕に目を見開く。ジャイアンはしずかを助けるべく動こうとするが
もはや動けない。間に合わない。一度解き放たれたパワーの渦は、げんごろう自身にも
止める術はない。格闘に特化した秘密道具を持たないしずかが、その右拳をまともに
食らえば、その全身は無残に砕けちってしまうだろう。その拳がついにしずかの顔面を
捕らえる。ジャイアンは、きり丸は、老人は、目を瞑り、祈った。悲鳴が轟く。
「ぐがぁ・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
盛大な悲鳴をあげ――――“げんごろう”は壁に激突した。まるでピンポン玉のように
壁から壁へと跳ね、転がり、ようやく止まった。その様は喜劇のように滑稽ですらある。
いったい何が起こったのか・・・
呆然とするジャイアン、きり丸、老人に向かって、しずかは軽くウインクしてみせた。
「他人の痛みをわからない人には、倍返しよ!“いじめっこ撃退ブローチ”!!」
“いじめっこ撃退ブローチ”それを身につけた者を殴ると、その衝撃が2倍になって
跳ね返される道具である。つまり―――――自身渾身のストレートを倍加させた衝撃が
げんごろうを襲ったのだ。人は、予期しない衝撃には酷く脆いものである。その瞬間
完全に勝利を確信しきっていたげんごろうには意識を正常に保てるはずもなかった。
が、げんごろうはその場にかろうじて立ちあがった。究極の肉体を誇る男の意地である。
「は、はっふー、じず・・がが・・・・♪」
ジャイアンが笑顔(なのかすら判然としない形相であるが)しずかに声をかけた。
もはや何を言ってるのか、さっぱりわからないが、恐らくは感謝の言葉だろう。
「ほ・・れに・・ぎりふ・・・」
フラフラになりながら、ジャイアンはげんごろうに向って、歩を進めた。この体でまだ、
戦うことをやめないつもりなのか、這いずるようにげんごろうの側に移動する。
動けないげんごろうの分厚い胸板に力ない張り手を一発叩き込んだ。と――――
「サンキュー!助かったぜ!しずちゃん!」
「!?ジャイアン!?」
「たけしさん!?」
ジャイアンが、普通にしゃべった。それどころか、あまりにも痛々しかった体の損傷が
瞬時にして、ケロリと回復してしまったのだ!それまでしゃべることすらままならなかった
のが嘘のように。逆にげんごろうの方は―――――――
ジャイアンがしずかたちに説明した。
「“痛みとっかえっこワッペン”だ。」
“痛みとっかえっこワッペン”名前そのままの効果である。ダメージを負った者が、
身につけたこのワッペンを別の者に移せば、ダメージがそっくり入れ替わる道具である。
散々にジャイアンを打ちのめしてきた傷が、痛みが全て、その身に返ってきたのだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」
もはや、声にならない悲鳴をあげて、げんごろうはその場に崩れ落ちた。
ジャイアンは、白目を剥いて、完全に気絶したげんごろうに向かって元気に叫んだ。
「へん!オレさまが、どんだけ痛い思いしたか、思い知れってんだ!」
「うわぁー、ひでえ・・・。最初からこれを狙ってたのか?」
きり丸はこの世のものとも思えぬ苦悶の表情のまま気絶しているげんごろうを見て、
思わず背筋が寒くなった。ジャイアンはこの戦い、最初から勝つためにはこれしか
ないと踏んでいたのである。身体能力で悪魔の実の力に大きく劣るならば、耐えて
耐えて、貯め込んだ痛みを逆転させる・・・。ジャイアンなりに考えに考え抜いた
げんごろう対策である。もっとも、予想以上のバケモノぶりに危うく実行前になぶり
殺されてしまうところであったのだが・・・。
「ホント、危なかった。しずかちゃんのおかげで助かったぜ!
きり丸もサンキューな!」
「・・・だけど、よくこんなやつの拳に耐えれたね。」
「うん?」
「これ、結局使わなかったんだろ?」
きり丸は、いつの間に集めたのか散らばっていた錠剤を手のひらに見せた。
ジャイアンはちょっとだけ気まずそうな顔で、しれっと答えた。
「・・・オレも“ドーピング”してたからな。」
「え?」
「“がんじょう”と“コンチュー丹”・・・だったっけ?
ま、とにかく体を頑丈にしてくれる薬だ。じゃないと勝負になんねえ。」
「じゃあ、この散らばってたのは・・・?」
「こりゃ、ただのガムだ。」
そういうと、ジャイアンはきり丸の手の中の錠剤・・・いや、ガムを
引っつかむと片目を瞑って、一口に頬張って見せた。
「あー、オレがひろってやったのに・・・!」
「・・・今日はみんなの命がかかってたからな。しょうがねえ。げんごろう。
次は卑怯な薬や秘密道具なんかなしで、正々堂々勝負だぜ!」
横たわるげんごろうの目に、うっすらと光るものが見えたような気がした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「結局、出木杉は見つかんなかったか・・・。しょうがねぇ。その可能性も計算のうちだ。
さ、上に戻るぞ。早くのび太たちと合流しなきゃ!」
「ええ!」「おお!」
げんごろうをなんとか倒した3人は顔を見合せ、力強く頷いた。
「きり丸、重くないか?」
ふとジャイアンがきり丸に、心配そうに声をかけた。それも無理もない。
きり丸は、自分の倍はありそうな大人の人間一人を背負っているのだ。
背負っている人物とは、もちろん幽閉所で出会った、あの仮面の老人である。
「うん。大丈夫だよ。」
こともなげに返事を返すきり丸に力自慢のジャイアンは感嘆した。
「へぇ、お前体は小さいのにパワーあるんだな。代わってやってもいいんだぜ?」
「うへへへへ♪お礼のためなら、うへへ、えへ、お礼〜♪」
「・・・わ、わかった。お前にまかせるよ。」
「お金が絡むと凄い力を出すタイプみたいね。」
とは、しずかちゃんの弁である。
その時―――――
ゴウゥ・・・・・ン・・・!!
そのとき、要塞をゆるがすほどの爆音が響いた。上の方からである。
「な、なんだ!?」
「上からだ!ひょっとして、のび太たちか!?」
3人は顔を見合わせ、上への階段を駆け上った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
巨大な爆音がジャイアンたちの耳に届く直前―――
上方の、ドラえもんたち破壊班は、鋼鉄の脅威、鉄人兵団と対峙していた―――――――!
今回分、終了。そして、ジャイアンvsげんごろう決着です。
この結末には納得いかない方、「どーでもいいよ」な方、様々だとは
思われますが、精一杯書いた結果なので許してくださいませ。
奇しくもハンター×2のフェイタンのペインパッカーとなんだかかぶって
しまったのですが、こちらは偶然です。ただし、フィンクスの「廻天」を
ジャイアンが秘密道具として使うパターンは実は考えていたのですが・・・
(ちょうど書き始めた頃に技が登場)あまりにも唐突なのでやめました。
そして、秘密道具補足。えー、二つの道具ですが、「確かこんなんあった」
といううろ覚えだけで書いて、後で該当する道具を探そうなどという暴挙を
やってしまったのですが・・・う〜ん。結局、見つかりませんでした!
あったと思ったんですけどねぇ。詳しい方で心あたりある方おられましたら
教えていただけないでしょうか。「んな道具はない!」の冷たい一言でも
かまいませんので・・・。一応、さしあたってはオリジナル秘密道具扱いで
よろしくお願いします。類似道具はあったのですが・・・申し訳ない。
げんごろう戦、決着!
乙でした!
ところでジャイアンの使った道具ですが
ワッペンじゃなく、シップだったような…
しずかちゃん最強wおいしい所だけもってくな。
しかし、俺の知らない道具が連続でいくつも出たな。
やはり素ではジャイアンはげんごろうには勝てないか。
まあ、小学生だからなw
ついに決着つきましたか。げんごろう無残w
少しかわいそうな気もしますが、これも因果応報ってやつですな。
3人力を合わせて少年漫画の王道のような展開でしたね。
緊迫感あふれる描写でげんごろうも最後まで本当に強そうに描かれてました。
この分だとギラーミンにも期待できそうです。
465 :
作者の都合により名無しです:05/01/26 12:28:59 ID:8dFs00cg0
うみにんさん乙。
でもドラえもんの道具のコンボ+しずかちゃんの救援で勝った
ジャイアンはちょっと卑怯だなw実質はげんごろうの勝ちだ。
VS氏はマジで投げ出したのか。
「投げ出しが少ない」といわれたバキスレも
スチール、ローマ、、マルチ、克巳、ユルの作品、そしてドラ麻雀と最近投げ出しが続くな。
そういや草薙も最近来ないな。
対決は圧勝でしたね、
ドラえもんの道具の。
神界にしても出木杉にしても、しずかちゃんはいい役回りだな。
麻雀教室ではただの売春婦だけどなw
楽しみにしてたのに投げ出しかよ。ヤクバレも来ない品。
>>462 おお、ありがとうございます。それです。確かにシップっぽい道具だった、
と思ってもう一回探してみました。あっさり見つかりました・・・。
そして、しずかちゃんの使った道具もあっさり判明してしまいました。
そういうわけで申し訳ありませんが、使った道具の名前を二つとも修正。
「痛みとっかえっこワッペン」→「ケロンパス」
「ケロンパス」疲れを吸いとる道具でそれを他人に移し返ることができます。
当然、痛みなどもいっしょに移るようです。カエル模様のサロンパスです。
「いじめっこ撃退ブローチ」→「痛みはね返りミラー」
「痛みはね返りミラー」効果は、この鏡を持った人間を殴るとその痛みが倍に
なってはね返る(殴られた方は平気)というものです。
二つとも名前、全然違いましたね。ほんとすみません・・・
469 :
作者の都合により名無しです:05/01/26 21:15:14 ID:pE63ao1+0
>「痛みとっかえっこワッペン」→「ケロンパス」
>「いじめっこ撃退ブローチ」→「痛みはね返りミラー」
一文字たりともあってねえじゃねえか!
あ、いじめっこ撃退ブローチの「い」と
痛みはね返りミラーの「い」は合ってるかw
>「痛みとっかえっこワッペン」→「ケロンパス」
名前違いすぎててワロタw
そろそろ次スレかな?
今379kbです。
472 :
ジャブ:05/01/27 01:14:24 ID:nj12YgSE0
この世には、格闘技の技たちが生活する世界があるというのはご存知だろうか。恐らく、
殆どの方が存在すら知らなかったのではなかろうか。
そこでは、各ジャンルごとに技が王国を築いており、彼らの中でも特に認められた者が
国王となれる。例えば、防御王国に君臨するのは廻し受け、関節王国で国王となったのは
腕ひしぎ逆十字、といった具合である。
全ての王国を束ねるのは、絶対的権力を持つ“鬼”であり、彼には何人たりとも逆らえ
ない。鬼は全ての技を愛し、同時に全ての技は“鬼”を畏怖している。
ここは打撃王国──ジャブは王国の中でも高い地位を誇る貴族であった。威力こそ劣る
ものの、全打撃でもトップクラスを誇る速度が、彼を特権階級に押し上げたのだ。
ジャブは絶好調であった。王朝こそ、現国王である「剛体術」と「攻めの消力」なる新
参者との間で揺れているが、自分には関係のないことだ。威力ある者同士、せいぜい争う
が良い。自分はこの地位で満足なのだ。威力と違い、速度はなかなか新勢力が現れにくい。
かつてジャブは「音速拳」に速度でトップの座を奪われたが、それでも第二位だ。貴族と
しての日々は未来永劫続くものと思っていた。
今日も、ジャブは上流階級の足並みで街中を闊歩する。すると、ハイキックとカカト落
としが彼の前に立ち塞がった。
「どきたまえ……」
いつものことだ。ジャブを妬む者は数多い。二人は挑発してくる。
「やい、威力もないくせに偉そうにしやがって。速度だけの地位じゃあ、いつか終わりが
来るぜ」
「その通りだ。一芸に秀でただけで貴族など、認められん。我々の方が貴族に相応しい」
安いものだ。ジャブは余裕を崩さない。
「派手さと威力を売り物にしているようだが……結局は二流だ。いくらでも吼えたまえよ。
君たちが貴族になれない悔しさを紛らす手伝いくらいは、してあげるよ」
「くっ……覚えてやがれ!」
二人は捨て台詞を吐いて、走り去っていった。あぁ、いい気持ちだ。ジャブはこの栄光
がいつまでも続くと信じていた──そう、あの事件までは。
473 :
ジャブ:05/01/27 01:15:20 ID:nj12YgSE0
ある朝、ジャブが目を覚ますと、何故か自宅の周りで大騒ぎが起こっていた。
「一体何なんだ、朝っぱらから……」
窓を開くと、ハイキックとカカト落としが大声で叫んでいる。
「皆さん、聞いて下さい! ここに住んでいる奴は、もはや貴族ではありません!」
「その通りだ! いつか終わるとは思っていたが、まさかこんなに早くとはね……末代ま
でのお笑い種だ」
何を言ってやがる。元々地位の入れ替わりが激しい社会、多少の下からの上への無礼は
許される。先の挑発も許される部類だ。しかし、街中で大勢に向かって貴族を侮蔑するな
ど、完全に違反行為だ。ジャブは怒った。
「あいつら、許さんぞ。陛下に訴え出て、処罰を与えてもらわねば」
ジャブは素早く着替えて家を飛び出すと、ハイキックとカカト落としに食って掛かった。
「お前ら、いくら何でもこれはやりすぎだ。貴族になれなくて悔しいのは勝手だが、わざ
わざ人の家に来て名誉毀損とは……。謝っても遅いぞ。陛下に申し上げ──」
すると、ハイキックが笑い出した。全く怖くない敵を相手するように。
「これはこれは、いつまで貴族のつもりでいるのかな。今日から、俺たちは貴族の仲間入
りだ。代わりに、お前は一般市民に格下げさ。残念だったな」
「何だとっ! う、嘘をつけ、そう簡単に……」
「ハハハ、じゃあこれを見ろよ」
ハイキックはジャブに、新聞紙を手渡した。日付は今日のものだ。先ほどまで寝ていた
ジャブは、まだ読んでいない。一面記事には、でかでかと次のような見出しが載っている。
「ジャブより疾いカカト落とし・ハイキック登場!」
ジャブは我が目を疑った。信じられるか、昨日まで当たり前だった法則が崩壊していく
この感覚。気が動転して、ジャブは二人に飛び掛かった。が、突き倒される。
「おいおい、落ち着けよ。ま、貴族から転落した悔しさを、紛らわせる手伝いくらいはし
てやるがな! ハハハハハハハハハハッ!」
屈辱だった。この日より、ジャブは一般階級に格下げとなる。
──地獄はこれだけでは終わらなかった。
474 :
ジャブ:05/01/27 01:16:43 ID:nj12YgSE0
やたらとジャブは引き合いに出されるようになった。しかも、劣っている方で。
「ジャブより疾い……」なるキャッチフレーズが続々と登場し、次々に抜かれていった。
正拳に、一本拳に、アッパーに、チョップブローに、頭突きに、前蹴りに、フックに、ス
トレートに、ミドルキックに、貫手に、コークスクリューに、手刀に、膝蹴りに、ぶちか
ましに、平拳に、ビンタに、ボディブローに──とても数え切れない。
唯一の取り柄だった速度で、あらゆる打撃技に抜かれた。抜かれ続けた。もはや、そこ
にかつての貴族としての面影はなかった。負け犬。今日もまた、エルボーに抜かれた。
誰にも相手にされなくなった。酒に溺れる日々が続いた。貴族階級に暴力を振るい、城
へ監禁されたこともあった。全て失われた──財産も、社会的地位も、アイデンティティ
も──全て。
何故、こんなことになったのだろう。時々疑問に思うことがある。
ジャブは原因を確かめたかった。修正したかった。速度だけは誰にも敗けていなかった
はずなのに。
掟破りは承知で、ジャブは人間界へと旅立つ決意をする。
技界での格付けを決定するのは、人間界でどのように技が使用されたかによる。そのた
め、本来は技が人間界へ渡航するなど許されない。自分のランクを上げるために、何をす
るか分からないからだ。
ところが、今やジャブは威力でも速度でも最下層に位置する存在──誰にも気づかれず
に出発することが出来た。
「地上最強の生物……会いに行ってみるか」
範馬勇次郎。人間界で最強を誇る生物であり、技たちを統べる“鬼”が認めた数少ない
人類の一人。何か、ヒントを握っているのかもしれない。
居場所はすぐに判明した──技だけが分かる格闘技の芳香、それがもっとも強い方向へ
歩いていったのだ。勇次郎はそこに居た。
「どうした、見せてみろ。お得意のプロレスをよォ……」
とあるプロレス道場。相手のレスラーが、ラリアットを仕掛ける。次の瞬間、ラリアッ
トが炸裂する。ただし、レスラーのではなく、勇次郎のラリアットがだ。頚骨を破壊され
泡を吹き、リングに沈むレスラー。震え上がるギャラリー。
「何てラリアットだッ! ボクシングのジャブより……疾えェッ!」
こいつか。ジャブをどん底にまで突き落としたのは、こいつだった。
475 :
ジャブ:05/01/27 01:18:23 ID:nj12YgSE0
ジャブは勇次郎を尾行した。足は繁華街を抜け、ホテルへ入り──勇次郎が泊まってい
るであろう一室に辿り着く。すると、ドアが内側から開かれた。
「よォ……待ってたぜ。ずいぶんとお粗末な尾行だったじゃねぇか」
部屋へ招かれ、ソファへと座るジャブ。
「てめェ……人間じゃねぇな。匂いが違う」
「流石だな、範馬勇次郎。そう、私は人間ではない。君たち流に表現するならば、格闘技
の技に宿る精霊──とでも言うべきかな」
「……んで、俺に用があるんだろう」
大して動じない勇次郎。床に手を付き、ジャブは──土下座した。
「た……頼むッ! 君ならばやれるッ! 他の打撃技であれほどの速度を生み出せる君な
のだ、君がジャブを打ったならば世界最速となるはずッ! 私の名誉挽回のために、ジャ
ブを打ってくれッ!」
ソファを立ち、勇次郎は即答した。
「断る」
土下座するジャブを、勇次郎は軽蔑するように見下していた。
「俺は他人の指図は受けねぇ。それに、ジャブは俺の流儀じゃねぇ……失せろッ!」
最初から良い返事がもらえるとは思っていない。こうなれば、力ずくだ。ジャブはゆっ
くりと立ち上がると、勇次郎にジャブを放った。正真正銘、本物のジャブ。
「アホウがッ!」
閃光が飛んできた。どんな生物とて、光を避けることは不可能だ。まして、自分を狙っ
ている光など──何かが砕ける音。
勇次郎のジャブで、ジャブは砕け散った。
「ハハ……。ジャブより疾い、ジャブ……か……」
満足そうな笑みを浮かべ、砂塵と化すジャブ。勇次郎は神妙な顔つきで、それを見つめ
ていた。彼の背中には“鬼”が浮かんでいたことなど、ジャブは知る由もない。
その日から、地球上からジャブなる技術は消えた。路上でも、リング上でも、地下闘技
場でも、永遠にジャブが使用されることはない。
たとえ、勇次郎でさえも──そう、ジャブは死んだのだから。
お わ り
最初の一行から、最後の一行まで、突っ込みどころ満載の短編です。
もっといい防御技も関節技もあるでしょう。
電話で保留されている時、カップメンを待つ時などにどうぞ。
そして、ケロンパス。
サロンパスのもじりなのでしょうが、何故カエル?
二つとも知らない道具だったので、勉強になります。
真っ先に思い浮かべた反撃系道具は「しかえし伝票」ですが、
書く暇はもちろん、やらせる相手もいないですね。
次回へ続く。
続きません。次回はありません。
凄いですね。こんな話を思いつくなんて。
ツッコミを入れる前に素直にそう思いました。
普通考えつかない。
この”ジャブ”もバキ世界ではなく、飢狼伝だったら
貴族のままでいられたでしょうに。
生まれた世界が悪かった。
ジャイアンの目には自分を睨み返すのび太の姿が見えていた。辺りは静まり返っており
自分達以外の人の気配がしない。風が吹いていてもまったく肌寒くはない。
正に決闘という言葉がふさわしい雰囲気だった。ジャイアンは安心していた。
いつも俺に負けているのび太が無謀にも決闘を申し込んできた。
気がついたらここにいた。大方ドラえもんの道具だろう。まさか決闘に道具は使わないだろう。
猛獣と人間は銃という武器があってこそ互角と言われる。勝つ。いつもの様に。
「始めよう。ジャイアン。」のび太が静寂を切り裂く様に言う。
「このオレ様が負けるかよぉぉぉ!!」ジャイアンが雄叫びを上げる。
ケンカキックを放つジャイアン。巨体を生かした攻撃でのび太を近づけない様にする。
打撃系格闘技において身長とは重要なファクターである。いつもこの方法でケンカに勝って来たのだ。
だが今回は違っていた。のび太が避けたのだ。そしてジャイアンは膝に奇妙な感覚を覚えた。
「遅い・・。」のび太が据わった目をして言う。
のび太の拳がジャイアンの膝に触れていた。脚が伸びきった瞬間を狙ったのだ。
「だぁっ!」
ケンカジャブを放つジャイアン。だがそれをのび太は避け左回し蹴りを放つ。
だがジャイアンは動かなかった。腰にピチッとした感触を感じただけで微動だにしない。
「それまでか・・。」ジャイアンがのび太を蔑んだ目で見た。
のび太はジャイアンの攻撃を避けカウンターを当てた。だが体重が違うので威力の差があり過ぎるのだ。
「始まったばかりだろう?」のび太が淡々と言う。
一歩下がり間合いを取り構えを取るジャイアン。
「のび太。なぜオレ様に決闘を挑んだ?」薄ら笑いを浮かべるジャイアン。
彼はのび太を敵として見ていなかった。さっきの蹴りやパンチだって本気ではない。
彼にとってこれはウォーミングアップですらなかった。
「君に勝ってドラえもんを見送る為さ。」のび太がジャイアンを睨み付けながら言う。
ジャイアンは笑い出した。体育の授業でヘマばかりしている奴が俺に勝つ?ふざけるな。
いつもより数倍強く叩きのめさなくてはならないらしい。
「何ワケわかんねぇ事言ってやがる!勝つのは俺だぜぇ!」
のび太に向かって突進しパンチを放つジャイアン。作戦無しに突っ込む姿がのび太の目に
迫ってきた。そしてのび太はガードをした。両腕でガードをするつまりボクシングガードである。
「オラァ!」
ジャイアンは自分の勝利を確信していた。こんな茶番は終わる。さっさと帰って寝よう。
そう考えてさえもいた。そしてジャイアンが振り下ろした拳はのび太の体に触れた。
「終わったな。のび太。」
のび太に背を向け歩き出すジャイアン。彼の注意は完璧に前方へ向いていた。
「怒られるなぁ。バレないように入らなきゃぁ・・・・。」
突然、ジャイアンの視界が何かに覆われた。ジャイアンの目がそれが靴だと認識した直後、
彼は鼻に軽い衝撃を覚えた。
「ウグ・・・ぶごっ!?」
鼻を手で覆いながら振り向くジャイアン。彼の視線の先にはのび太が立っていた。
腕は赤くなってすらいない。何よりガードをした腕は上がっていた。
「鍛えたんだ。この三ヶ月間。」のび太が断固たる自信を持つかの様に言った。
「この俺様に蹴りを入れるとはぁ!俺はもうブチ切れたぜ!」
「鼻血出してて”俺様”なんて・・・。」
のび太が最後まで言い終わる前にジャイアンは動いた。拳を振り下ろし蹴りを放つ。
相手がガードしても蹴りが相手の下半身を襲うというコンビネーションだ。
だがそれものび太は避けて見せた。それがドラえもんの道具によるモノだとは彼は考えてさえもいなかった。
もちろんジャイアンもである。
「逃げ回ってばかりいる奴が生意気いってんじゃねーぞぉ!のび太の癖にぃ!」
再度攻撃を仕掛けるジャイアン。だが何度やっても結果は同じだった。拳も蹴りもスレスレでかわされるのだ。
「これじゃつまんないや。僕は反撃しない。好きなだけ殴ってもいいよ。」
ジャイアンはザワッという音が聞こえた気がした。何を言っている?俺がお前を本気で殴ったら
お前は泣くぞ?それでもいいというのなら。いいだろう。
「ラウンド2と行こうか。」
のび太とジャイアンの決闘はまだ始まったばかりであった。
今回の投稿はこれで終わりです。ドラっぽくないのび太を書いてみました。
ジャイアンはいつもと同じという風に感じて頂けたら幸いです。
483 :
作者の都合により名無しです:05/01/27 08:09:32 ID:nqvqDCNO0
>ジャブ
いままで何篇か(うんこシリーズも含めて)サナダムシ氏の短編を読んできたが、
一番良かった。ジャブを擬人化するという発想から最後のオチまで流れるな展開だ。
荒唐無稽な話なのに。久しぶりに楽しめた。面白いというより、感心したかな。
最後のあとがきレスへの自己突込みまでオチがあるとはなw
>ドラえもん外伝
草薙氏お久しぶり。ジャイアンとのび太の決闘シーンの前書きがバキっぽいw
のび太はさすがに強くなっているけど、ジャイアンの負け犬オーラがちょっと悲しい。
484 :
作者の都合により名無しです:05/01/27 09:33:50 ID:pbqWIpuWO
VSさんもそうだが、最近はザクさんやぽんさんも来ないな。
いったいどうしたんだろう。
殺助もごぶさただなあ。
>ジャブ
なんとなく読んだ後、ユニコーンのセイントがヘタレなのも仕方ないかと思った。
しかし技を主役で短編ss作るとはやるね。
>ドラ外伝
文章もバトル描写も輪廻転生連載開始時と比べて格段に上手くなってる。頑張れ。
ジャイアンはもう少し男気がある方がいいなあ
>>484 VS氏→彼のHP掲示板にてしばらく休養するとの事。心の病らしい
ザク氏→試験勉強の為3月まで書き込めない
ぽん氏→不明
殺助氏→この前、パオの名で魔界編更新してたので大丈夫ぽい
この森の闇は、深く果てしない。光脈筋の影響なのか、他所の森よりも多く葉が生い茂っている。
「確かに、これほどの闇の中なら、いきなり目の前から消えても気付かないかもしれないな……」
ギンコは、ふと呟いた。
人は、変わり映えのしない場をひたすらに歩いていたりすると、意識が段々内へ内へと潜っていく
ようになっている。今のギンコもそうであった。
「俺の一番古い記憶ってのは、十くらいの頃、深い深い森の中を一人で歩いてたってなもんだ。丁度、
あの森と同じような暗さだなここは」
「一人? お母さんとか、いなかったんですか」
少女は、ギンコにそう訊いた。
「いない。それより過去へ遡ろうとしても、記憶にもやがかかってて思い出すことも出来ない」
「……もしご両親がいなかったのなら、私と同じですね。物心ついた頃には、もう……」
そうこぼした後、
「でも、もう大丈夫。あの人と一緒なら大丈夫、と思ったんです。もう、明日生きていけるのかも分から
ない、先が見えない不安とか、誰もいない宵闇が恐ろしくなったりとか、しない。あの人に守られて、私
は生きていける。そう、思ってたんです」
「……」
「蟲師さん、お願いします。もう、私、あの頃みたいな闇の中には戻りたくない」
森を抜けると、そこには闇の世界が広がっていた。ただ、わずかに闇を照らしてくれる月と星がある。
「どうにか抜けたな。なんか、行きより帰りの方が時間かかった気がするぞ」
「行きはよいよい帰りは怖いと言いますし。それより、行きましょう」
森を抜ければ、村はそこから目と鼻の先にある。
「ここが、私達の家です」
少女は中に入り、蝋燭に火を灯した。ギンコも続いて中に入る。
「いるな……灯りはいい。蟲は基本的に闇を好む。俺は夜目が利くし、見えるもんじゃないからな」
ギンコは少女にそう言った。
「蟲? あの人は、蟲……?」
少女は、まだ自分の夫が蟲に近いモノとなったことを知らない。
「そうだ。光脈筋に中てられて蟲のような性質のモノとされている。だから、灯りを消してくれ。光があっても、
お前さんに見えるもんじゃないんだ」
「はい……蟲師さん、夫は――」
「なんとかしてみせる」
とはいえ――ギンコに策は無い。完全に手探りになる。方法があるのかさえ、不明瞭なのだから。
蝋燭の火が消え、暫らくして奥の方から、ぼうとした存在が浮き上がってきた。無論、少女には見えていない。
どうやら、夫である。
「あんたかい、この娘の旦那は」
『ああ――不思議だな、他のことはあらかた忘れてしまったのに、麻のことはすぐ思い出せた』
ギンコは、麻というらしい少女の方を向いた。どうやら、夫の声は聞こえていないようだ。
『あんたは誰だい。新しい男かい?』
「蟲師だ。ギンコという」
『俺を人間に戻してくれるのか』
「そうしたいんだが、肝心の方法がまだなくてね。再び実体として存在したいってなら、方法はある。しかし、それ
ではお前さんは完全に蟲側のモノとなってしまう。蟲になるということは、もはやヒトではないということ。とりあえず
姿が見えるようになれば、あんたと嫁は、暫らくは楽しく一緒に暮らせるようになるだろう。だが、嫁はヒトだ。普通に
年も取り、やがては死ぬ。あんたにはそれがない。蟲になるということは、ヒトと同じ時を刻めなくなるということなん
だ。あんた、それに耐えられると思うか? 肉体だけじゃなく、心も段々と磨滅していく。空っぽの存在になっていくん
だぞ?」
『俺、それでもいいな。麻と、少しでも一緒にいられれば、それで』
「ヒトに戻る方法は、あるかもしれないんだぞ」
『今は、ないんだろ。なら、ないと同じことじゃないか』
「……いいんだな」
それから、ギンコは村を出た。夫を完全な蟲とするための、ギンコには気が重い旅路。
化野という、蟲関連の品を収集する物好きな男。昔ギンコは、その男に『緑の盃』と呼ばれるものを売った。その盃
からは、光酒(こうき)が湧く。光酒とは、光脈筋を形作っているモノの一つだ。緑の盃は、光酒を抽出することができ
る。それを飲み干せば、完全な蟲となる。ギンコは、盃を借りに行ったのだ。
そして、一年の後、夫は実体を得た。永遠に変わらぬ実体を――
「もう行くのか。もう少しゆっくりしていけばいいものを」
夫に光酒を飲ませて数日。ギンコは旅立つ。
「夫婦水入らずを邪魔するのもなんだろ」
麻は、笑顔だ。これからの幸せを想像しているのか。彼女の心は、光に満ちているに違いない。
「麻、ギンコに何か食い物持たせてあげなさい」
「はあい」
麻は、家に入った。
「……俺が行ったら、できるだけ早くこの村を出ろ」
「え?」
「村の連中の行動は予想できるだろ。お前以外の消えた人々はどこにいったのか聴かれ、どうしてお前だけ戻れたの
か、事細かに尋問されるだろうさ」
「……」
「どうなるか分からん。仮にそれを切り抜けたとして、お前は時を刻まない。昔のお前を知る村の人々が不審を抱かぬ
はずがない。ヒトのいない処に移ることだ」
「……それが、麻の為にもなる、んだよな。幸い、と言っちゃあ悪いが、あいつはこの村の人と繋がりが薄い。さほど違
和感を持たさず居を移すこともできるかもしれない」
夫の言葉を聞き届け、ギンコは、夫に背を向ける。
「……悪かった」
ギンコはそう言って、歩き出した。
「はい、簡単だけどお弁当……って、ギンコさんは?」
「もう行ったよ。何やら急ぎの用があったらしい」
「せっかく、お弁当作ったのにぃ……」
「なあ、麻――」
ギンコは、再び深い深い森の中へと入った。相変わらず、昼間だというのに夜の如き闇だ。
自責の念と、諦観が心を支配する。現状ではああするしかなかった。それは確かだ。しかし、あれでいいはずが
ないのだ。たとえ、本人がそれを望んだのだとしても。
「くそ……」
それでも、ギンコは歩いた。闇の中を、灯火もなく――
バッドエンドらしき感じですが。
運転中にだらりと音楽とか聴いてると、ネタが浮かんだりします。次回書く蟲師は、昨日ボニーピンクのアルバム
聴いてる最中に思いついたものです。イビルアンドフラワーズというアルバムなのですが、まあ、どうでもいいですね。
次回は川とか石とか、そんなのです。
>>444 彼女にとっては、今は解決されたように見えるでしょうが、時間が経つと段々つらいことになってくるんでしょうね。
>>446 どうも。しかし、前回この腐れコメントで「3月までに」と書いてしまいましたが「3月中に」の間違いでした。
3月までには無理です。
>>451 そのパターンも確かにありますが、まあ、やはり元ネタに似てしまうのは仕方のないところなのかもしれません。
その気になれば、意外性のあるモンは書けますが、それが受け入れられるかどうかが一番の問題ですから。
俺はビビリなんで、そんなに冒険できませんw
>>453 いつもながら、作者よりも作品について考えて下さっているようでありがたいことです。実際、書きながらそこまで
考えてなかったりしますねえ。でも、読み取って頂くのは嬉しいことです。
>>454 ゆる〜くやる気出してやります。ゆる〜く。
>>ジャブ
こういうの、マジ好きです。こういう捻ったの考えてるときって、なんか脳がどっか別の宇宙に放り投げられてる感覚
があっていいです。トリップできます。
493 :
作者の都合により名無しです:05/01/27 19:28:53 ID:2B/wHbpR0
お疲れさんですゲロさん。最近絶好調ですね。
まあちょっとブルーな終わり方ですが、こういうのもいいかと。
でも、ドクターゲロの時もバッドエンドだったようなw
次章は出来ればハッピーエンドを。
494 :
ふら〜り:05/01/27 20:01:38 ID:EIcRZBA20
>>うみにんさん
今回は「大逆転」が痛快でした! 圧倒的な強敵の前に敢然と立ち塞がる無力なヒロイン、
愛の力で奇跡が……という定石の思いっきり裏を行き、策と道具で逆襲、でズタボロに
してしまう。ヤバくはあったけれど、知性と根性で戦い抜いたジャイアン、お見事でした!
>>サナダムシさん
なんというか、ドえらく独特なメルヘンですねぇ。映像、頭の中に浮かべようがないと
いうか。ジャブ氏が「精霊」と自称してくれて、あぁそういう解釈をすればいか、と
思った途端に潰されて。精霊も鬼には抗せず、地上からジャブを葬った勇次郎。壮大です。
>>草薙さん
凄い。のび太、凄い。ジャイアンを圧倒していることなんかよりも、その態度が。声が。
表情が。のび太離れしてて凄いです。……けど結局、能力コピーはまだ続いてるみたい
ですね。ジャイアン側が「道具は使わないだろう」と考えてるので、ちょっと卑怯な気も。
>>ゲロさん
不老不死の辛さ悲しさ、というのも昔からあるテーマですね。つい先日、最終話で孤独に
旅立っていった某ヒーローもそうでした。更にこの夫の場合、心が摩滅していくという
恐怖もあるわけで。……でも、それでも本望でしょうね本人は。いえ、多分麻の方も。
300から
「………そ…それで、どうした?」
『……逃亡…しました』
会議中にも拘らず、ブリッジウッドは携帯電話を使うばかりか興奮の余り席を立っていた。
周囲の非難の視線も彼の目に入らない。それほどまでに状況に聞き入っているのだ。
「…そうか………良くやってくれた」
溜息と共に携帯電話を切り、長テーブルに両手を着く。そして、ブリッジウッドの口から含み笑いが漏れる。
一軍を凌ぐ悪魔を撃退した―――この事実だけで充分誇っていい。結果的には各国首脳を守り切った以上、間違い無く長老会の
賞賛の対象となるだろう。しかも相手は恐らく例の星の使徒、そうなればもう色々と"美味しい"。
出来ればそいつの首を取って欲しかったが、それだけで充分。列席、とまでは行かなくとも最有力候補ぐらいには成る筈だ。
それ以上に、クロノナンバーズへの事後報告をした時、ベルゼーの驚く顔を想像しただけで笑みがこみ上げる。
他にもエトセトラ・エトセトラの特典が有るだけに、ここでの失態など知った事ではない。それを補って余りある物が彼の懐に
転がり込んで来るのだ。
その全てを確信し、誇らしい気分で椅子に深く腰掛ける。
――――――――それが、最後の一葉だとも知らずに。
数分前、会場ビル前幹線道路にブリッジウッドの心中の様な浮かれ気分は無い。水を打った様に静まり返っていた。
ただ一人の兵士が死んだだけで全滅を思わせる空気が漂い、男が去った今となってはこっちが敗走した気分だ。
鉄血の狼達も、其の他の兵士達も、誰も動こうとしない………いや、動けない。
司令官も、そんな彼らを眺めながら通信機に苦い事後報告を紡ぎ込んでいた。
―――――だが彼は思う。こんな話を一体誰が信じるのだろう、と。
そもそも彼等まで星の使徒の情報が行ってはいない。もっとも聞いた所で道や何やを一笑に付すだろうが。
しかし先刻目の前には悪夢そのものが荒れ狂った。全てのハイテク兵器を凌駕され、鍛えに鍛えた武技を手も無く踏破された。
圧倒的事実が在る以上ありのままに伝えるしかない…………たとえそれが大敗の記録だとしても。それが軍人だ。
…ようやっと報告が終わった。
それでも胸の奥の諦観交じりの敗北感は全く消えない。いや寧ろ助長の感さえある。
それを少しでも和らげようと溜息を吐き出そうとした瞬間、視界の端に、何か小さな物が上から下へと通り過ぎるのを見咎めた。
―――足元に落ちたのは小さな石………ではなく、
「……………コンクリート?」
アスファルトの黒に慎ましげな淡い白の一点。何故そんなものが落ちて来たのか判らずぼんやりと見入る。
「…し……司令官……」
声の方へと眼をやれば、兵士の一人が司令官の後方―――つまり会場ビルを震えながら指差していた。
その有様は見覚えが有る―――戦場で敵に銃を向けられた時や地雷を踏んだ直後―――酷く恐怖している時だ。
あの脅威は去ったと言うのに一体何を恐れるのか、半ばその兵士を嘲るつもりで振り向く。
―――――――――そこには、本日最高の絶望が有った。
ビルの一階から五階部分までに縦横斜めの切れ目が走っていた。建材も、調度品も、窓も、何故か差別無く切り刻まれている。
そして今、その全てが滑らかな崩壊を起こしていた。切れ目に沿ってずれた建材やガラスがバランスを失った物から順に
彼らに降り注ぐ。
「な………何だ……何だ、これは!!?」
司令官が慌てて体全体を向けた瞬間、絶望は更に理解し得ない領域へと達する。
彼の胴がずれた。腕が落ちた。足も切れた。………最後に首が落ちた。突然上官が惨死を遂げた事を誰もが一瞬理解出来なかった。
そんな時、街灯が次々と切り倒され――――いや、無数の破片に刻み倒される。
それだけではない。鉄血の狼からビルまでのあらゆる構造物が、そこいら中に自分の破片をばら撒きながら崩れた。
「何で……何で…………こんな……」
「…おい、お前…」
先程の兵士に、別の兵士が蒼ざめた顔で話し掛けた。
「……腕…………落ちたぞ」
言われて右腕を見れば……本当に肘から落ちていた。だが、
「お…………お前も…何だ、それ………」
人工筋肉スーツが、首から流れるおびただしい血で真っ赤になっていた。
『……ッうわああああぁぁぁぁァァァァ嗚呼ァぁぁぁあああああああアアアアッッツツツツッ!!!!!!!』
二人はその絶叫が自分たちの口から漏れている物とは気付かなかった。そして彼らもまた崩れて死んでいく。
しかも、その死は伝染するかの様に別の兵士達にも発現する。
―――――グロック大佐を始め鉄血の狼は歴戦の猛者揃いなのだが、その惨状には流石に肝が冷えた。
「…あ、あいつの仕業なのか……?」
先刻の居合い抜き―――グロックにはあれしか考えられない。しかし、こんな事が果たして可能なのだろうか。
剣域内は勿論、その外まで縦横無尽に切断するなど――――……それも一閃で。
しかもその訳の判らない死の只中には、彼等"鉄血の狼"も含まれていた。
崩れ出す、次々と。ビルに近い順に。
「た、大佐アァ――ッ!!!」――――グロックに助けを求めながら死んだ。
「嫌だ……嫌だ………!」―――――崩れていく自分を見ながら死んだ。
「かあ……さん…………」―――――空を見上げながら死んだ。
「夢だ…夢だよな……こんなの…」―――――現実から逃避したまま死んだ。
普通の死に方は諦めた連中でも、こんな無残は覚悟の外だ。誰もが自分をさらけ出しながら死を迎える。
不意に、周囲が暗くなる。己のカンに従い、思わず見上げたグロックは見なくてもいい――或いは見たくも無い物を見る。
―――――――――自重に耐え切れず彼らに倒れ込む会場ビルを。しかもその瞬間、視界の右半分がずり落ちた。
ビル内の会議室も悲惨な有様だった。
床が斜めに傾ぎ、各国の首脳達の多くが強化三重ガラスに転落死する。
運良く骨折程度で済んだ者には、人・椅子・テーブル・その他調度品が熱烈極まるほどに押し寄せる。
ブリッジウッドは、一人出口のドアノブに捕まり、蝶番に揺られながらこの人知を超えた現実に翻弄されていた。
「い……一体これは、どういう事だ!!! 答えろ! おい、どうした!!?」
携帯電話の向こうから応答は無い。代わりに兵士達の阿鼻叫喚。重そうな水音。それを聴いてか、手から携帯がすっぽ抜ける。
「…………これが………“星の使徒”…なのか………?」
ベルゼーの言った事は本当だった。最善の策は「逃げる事」以外無かった。しかし何故こんな事が出来る。何故こんな事が起こる。
――――それは簡単。
クリードが道士だから。
そして、ブリッジウッドが腰を下ろしたから。
何をしてかは判らないが、クリードが兵士ごとビルを切断し、崩落のきっかけをブリッジウッド自ら成した。
更に言えば、剣術の極意の一つに「甕(かめ)割りの太刀」と言うのがある。
水を満たした大甕を斬るのだが、達人にもなれば斬ってしばらくして後に思い出した様に斬れる。
只それを、数十人の人と超高層ビルで行った例は過去に存在しないが。
判った時には全てが遅い。
自分の考えを心底後悔した時はもう、崩落の一瞬前だった。
俺トリビア。
「どんぐりころころ」と「ひなまつり」の歌詞は…………「水戸黄門」の曲で歌える。
どうも皆さん、NBです。
…いけねぇなぁ、かつてサルの様に出してた頃が懐かしい。
もっとちゃっちゃと出来ないのか俺。話は出来てるのになぁ……。
兎に角今回はここまで、ではまた。
500 :
作者の都合により名無しです:05/01/27 21:44:05 ID:j7xIb5XS0
ゲロさんNBさんお疲れ様です。
>ゲロさん
静かに消えゆくようなラストですな。確かに寂しいですがそれはそれ。
今回も楽しませて頂きました。でも、本当に10話もねたあるの?すごいな。
>NBさん
やはり刀のサビとなったか、鉄血の狼。登場と名前はカッコよかったのだがw
しかし漸くセフィリアズと星の使途の全面戦争が近づいてきた感じですな。
ところで人工筋肉スーツといえばスプリガンを思い出す。
大好きな漫画だったのでNBさんさらっと書いたりしませんか?
ああ、やられてしまいましたね。
登場時はカッコ良かったのに(大統領じゃないよ)
噛ませ犬になることは分かっていたんですけど、かすり傷くらい負わせるかなあ、
と思ったのですが。
原作に無いキャラの運命なんて所詮こんなモンかな。
余り無理せずマイペースで書いてて下さい。
天才に休む暇など無い。
俺様はいつもの如くAをギッタンギッタンにするためのマシン開発に勤しんでいた。
こんな機械を開発できる天才なんてこの近辺では俺様ぐらいの筈なのだが―――、
その天才に敬意を払えない失礼極まりない奴というのは存外多い。
「ちょっと、B!」
ああ、来た。たぶん彼女が最も俺様に敬意を払わない奴だろう。
俺様は手を止め少し振り返る。
Dは無意味に腰に手を当て仁王立ちしていた。
―――何故そんなに偉そうなのだ。
特に何もしないのに。
炊事掃除洗濯から始まり近くの村に物資調達に行くのもAを倒す策を練るのも、
そもそもこの城を建てたのも俺様である。
Dは居候なんである。それを全く分かっていない。
「チョコ作ってよチョコ」
「チョコぉ?そんなの沢山有るじゃない」
するとDは信じられない、という顔をした。
「バレンタインは手作りに決まってるでしょお!?」
……ああ、アレですか。
世のご婦人方が意中の殿方にカカオの豆を炒って潰してペーストにして
砂糖とか加えて固めるものを渡すという、
元々はお菓子屋さん考案の販促イベントだという、
俺様には全く縁のない例のアレですか。
「ああ…明日だっけ」
「そうそう!S様にあげるの」
うっとりとDは言う。文字通り目がハートである。
何がS様だ。あんな奴の何処がいいのか分からない。
そりゃあ確かに一見物腰柔らかなお坊ちゃん風だがよく見りゃ顔は真四角だ。
あんな四角い奴のどこがいいのだ。ああいうのをエラが張っているというのだ。
それにあの生っちろさが気に食わない。しかもなんだ全身白服って。男なら黒だろう。
「‥‥‥だったら自分で作らないといけないんじゃないの?」
俺様は精一杯の抵抗を試みた。Sにやるチョコなど作りたくない。
少なくとも世のご婦人方はたとえ市販より劣った味になろうが何だろうが己で作っている筈だ。
するとDはきょとんとした。
「あたしに作れるわけ無いじゃない」
成程、と言いかけてしまった。そういう問題ではない。
「作れるわけ無いじゃないって……」
「じゃあよろしく、―――手ぇ抜いたら許さないわよ」
Dは真っ赤な寝巻きをたなびかせて去っていった。
Dはいつも赤い服である。
たまには可愛くピンクとか着てみろと言いたいが命が惜しいので口にしない。
天才は未来の予測も確実にたてられるのである。
そんなわけで。
俺様は一人取り残された。
まあ所詮受け取るのはSの野郎である。
いっそ毒でも入れようかと思ったのだが却下する。
確実に俺様の犯行だとバレてしまうのでむしろ俺様の身が危険になる。
天才は予期されうる危険は確実に避けるのである。
適当にそこら辺のチョコを溶かして固めなおせばそれでいいだろう、味なんか知ったこっちゃない……
と、思ったのだが。
何故俺様の目の前にはカカオの豆を砕くところから始め手に手を加えた生チョコが鎮座しているのだろうか。
はっきりいって完璧である。
そこら辺の市販のものより絶対に旨い。
しかも旨すぎて市販のものだと誤解されないよう少しいびつに作ってある。
……これを食って多少なりとも心が動かない男は居ない、と思う。
―――それがたとえSであろうと。
何故か物凄くぐったりした俺様は仕上げにラッピングをしようとして、其れに気が付いた。
……メッセージカード。
これだけは自分で作ったらしい。別に見るつもりも無かったが、たまたまその短い言葉が目に入ってしまった。
『食べてください』
……。
…………。
……………いや、駄目だろうこれじゃあ。
そもそも食い物を渡している時点で「食べてください」なのだ。
それをわざわざカードに書いてどうする。無意味もいい所だ。
もっと、他にあるだろう。こんな言葉ではなく。
もっと他に、……伝えたい言葉が。
よく見ると何回も書き直した後があった。
何故勝負のメッセージカードを書き直すのだ下書き位しろ、と思ったが、
どうしてもいい言葉が思いつかなかったのだろう。
俺様はボール紙を小さく切った。
何色ものペンで可愛く模様を描き、その中にメッセージを書き込んだ。
長すぎず短すぎず、端的に己の心を伝え相手の心を掴める言葉を選んだ。
完璧だった。
これを読んで心が少しでも動かされない奴は居ない、筈だ。
たかがチョコとメッセージ、こんなもので人の心が完全に変わるとは思えない。
が、多分Sの心に一つの小石を投げることは出来るだろう。
最初が大変なのだ。何も無いところに一つの小石が落ちるのが。
あとは一つ目より二つ目、二つ目より三つ目がより容易く落ちてゆく。
……俺様の思惑通りである。何しろ、俺様は天才なのだから。
―――ざまあみろ。
かくて。
俺様はその晩家出した。
そもそも俺様の城なのに何故居候ではなく俺様が家出するのだとか。
何故家出するときに一週間分の食事を作って冷蔵庫に入れておくのだとか。
なおかつ何故ダイエットに励んでいる彼女のために低カロリー高タンパクの栄養バランスばっちりなのだとか。
今日はバレンタインだからきっと俺様のチョコ大活躍だろうとか。
そんなことが頭をよぎるが俺様は天才なので気にしない。
つまり、俺様が家出したくてしているのだし、彼女は生活能力がゼロに等しいので餞別の代わりなのだ。
だから、決して本当は気になって仕方が無いとか一週間で帰る予定だとか、
そういうことは全く無い。
幾ら生活能力なしとはいえ、当面の食事はあるのだから飢え死には無いだろうし、
流石に死にそうになったら自分でどうにかする筈だ。
水とて蛇口を捻れば出るのだし―――、
とそこで俺様ははたと止まった。
俺様の城の蛇口は少し特徴的である。彼女は使ったことがあったろうか。
いやいやいや。幾らなんでもあるだろう。水道である。使うだろう。一回使えばそれで覚える。
例えば喉が渇いたりしたときとか、
(ねえねえB喉渇いたぁお水持ってきて)
料理したり、
(お腹空いたあ何か作って)
……たまには俺様に紅茶を入れてくれたり、
―――ある訳がない。
が、天才たる俺様はこんなことで不安になったりしない。
しかし何故か落ち着きがなくなってしまい愛車の中でもぞもぞしていたら
椅子から何かが落ちた。
たった一つだけ、市販されている中で最も安い、ワンコインで買えるとても小さな、
……チョコレート。
別に不安になったとかチョコがどうとかそういうわけでは全く無いけれど。
俺様は、城に戻った。
「何処に行ってたのよう!?」
いきなり彼女が殴りかかって来た。もう深夜なのに珍しく起きていたらしい。
泣きながら縋り付いて来た方がこの場合効果的な気もするのだが俺様は口にはしない。
天才なのに予期して無かった俺様は見事にかっ飛ばされた。
危うくもう一度家出する羽目になるところだった。
「のど渇いたでしょ!お茶入れなさい!!」
やっぱり蛇口の捻り方が分からなかったのか、しかも命令口調かいと突っ込みたくなったが
俺様は大人しく台所に向かった。
彼女の目がちょっと赤かったとか。
何かを、―――誰かを一日中家中探し回った後があるとか。
(便器の中には俺様は居ないから開けなくてもいいと思う)
結局俺様が作ったチョコがそのまま置いてあったとか。
だからSは貰っていないとかつまり貰ったのは俺様だけだとか。
全く関係なかったけれど。
508 :
ぽん:05/01/27 23:48:22 ID:cbchrZ+F0
ものすごいお久しぶりです。
私生活が立て込んでおりまして前回から間が空いてしまい、
今から後半書いてもだれも覚えてないかもと思ったのですが。
前後編と宣言したからには、と思い書きました。
思いついたときにはバレンタインは時期はずれだったのですが今やタイムリー・・・
まあ自分は関係ないイベントなんですが・・・
アナスイがラブコメといいつつ薄い気がしたので
正統派(?)ラブコメ目指してみました。
本当は食パン咥えて曲がり角で激突したかったです。
509 :
ぽん:05/01/27 23:50:30 ID:cbchrZ+F0
連続すみません、初めて読んでいただいた方には分かりにくいかもしれませんが
バイ●ンマンとかドキ●ちゃんとか食パ●マンとかのお話です。
これはいい女王様と下僕の話ですね。
Bの捻くれた感情表現がグッドでした。
バレンタインかあ・・・一喜一憂してた頃が懐かしい。
ここは天界。カリン塔のさらに上にある場所。宮殿が建築されており住人はデンデとMr.ポポだけである。
今、ここに一人の男が下界から上がってきた。男の前には数体の人形が置いてあった。
「これでいいんだな?」Mr.ポポがヤムチャに尋ねる。
「ああ、俺はこの世界での半年程の時間を精神と時の部屋で過ごす。」ヤムチャが答える。
「待ってください!あの部屋で1年以上過ごしたら出られなくなりますよ!?」デンデが叫ぶ。
ヤムチャは溜息をついた。今この二人に対して自分の能力をばらせば大変な事になる。
それこそ計画の妨げだ。
「出られればいいんだろ?」ヤムチャがトーンを低くして尋ねる。
数分後、ヤムチャは精神と時の部屋につながる扉の前に立っていた。扉の向こうと
こちらの世界は時の流れが違う。ヤムチャは未来を考えた。自分が強くなった未来。
そしてその後。
「行こう。」
ヤムチャは扉を開けた。
ヤムチャの目の前には白い世界が広がっていた。床と寝室の様な場所以外何もない。
水と食料はあるらしい。孫悟空に聞いたら昼は空気が薄く夜は気温が低くなるらしい。
要するに高山の様な場所だと思えばいい。片手でドアを閉め、一歩踏み出す。
「さぁ、始めようか。」
ヤムチャはデンデからもらった人形に持参した髪の毛を刺した。そして人形が大きくなり
人の形を形成していく。ヤムチャの目の前に現れたモノ、それはブルマの娘の形をしていた。
「あれ?ここは?」人形が喋る。
ヤムチャは思った。人形はどうやら年齢的なものも操作できるらしい。今ブラは16歳だが
目の前の人形は20歳程度だ。だから体格も大人っぽい。
「天下一武道会に出るんだろう?」ヤムチャが人形に尋ねる。
妙だと思った。意思を持つ人形に放している。人間相手ではないのだ。
「ここでトレーニングするの?」人形が不思議そうな声で尋ねる。
赤のキャミソールに赤のミニタイトスカートに赤い靴。非常に目立つ服装だ。
若い頃のブルマの服装が派手ならこうなっていただろう。
ヤムチャに案が浮かんだ。それは非常に罪悪感を伴うモノだった。
「組み手しないか?」ヤムチャが人形に尋ねる。
「いいわよ。」
数秒後、ヤムチャと人形は向かい合った。ブラという人間の形をした人形が蹴りを放つ。
彼女も又戦闘民族サイヤ人の血を引く者である。そこらの一般人よりは強い。
「押忍!」人形が声を出す。
靴のつま先がヤムチャの鼻先を掠めていく。だがヤムチャは笑っていた。
「何がおかしいの?」不審に思った人形がヤムチャに尋ねる。
「なんでもないよ。」
数秒程、組み手は続いた。上段蹴りを放つ人形とそれをスウェーで避けるヤムチャ。
その応酬は突然、中断された。
「あなた、私のパンティー見てるでしょ!」人形が顔を真っ赤にして叫んだ。
上段蹴りは脚を上げる為、前方からは下着が丸見えになる。
「見てないよ。」
ヤムチャは顔が赤くなっており、股間が膨らんでいるのを感じた。
ブルマをべジータに奪われた後、何十年もの間心の奥底に貯めていた欲求。
理性も何もないただの本能的な欲求。それが今満たされようとしている。
「嫌い!」
人形が無我夢中でヤムチャの股間を潰そうと金的を放つ。
だが人形の目前には誰もいなかった。
「さあ、やろうか・・・・。」
人形は体が凍りついた様な感触を覚えた。目にもとまらぬスピードというのはこういう事を言うのか。
ヤムチャが後ろから自分の体を羽交い絞めにしていたのだ。
「ベッドでじゃないけどね・・・。」
ヤムチャがブラの形をした人形を押し倒した。
「いや!」人形が叫ぶ。
ヤムチャの脳裏に記憶が蘇った。これでいいんだ。罪人だろうが強ければいい。
誰も殺さない。だが強い。この欲求を満たせればいい。永遠に若いままのこの体で。
デンデから貰った人形ー孫悟空が少年だった頃、天界で修行をした時
神が孫悟空の修行相手として使った人形。髪の毛を頭部に刺す事により
髪の毛の主の分身を作り出す事ができる。
今回の投稿はこれで終わりです。
NBさんとぽんさん、ちょっとお久しぶりの2人がキター!
たまの更新でも良いです。応援してますので頑張ってください。
輪廻転生も最終章か。ところでジョジョの方はどうなったの?
517 :
作者の都合により名無しです:05/01/28 12:36:35 ID:KBftkwlR0
NBさんは粗悪な素材を上等な料理に変える名人だな。
ぽんさんも元気よく復活し、輪廻も最終章に突入か。
相変わらずいい感じだなバキスレ。
それに比べて
518 :
作者の都合により名無しです:05/01/28 19:11:39 ID:LMIgP1Zq0
NB氏の実力は前からわかっていたが、ゲロ氏も蟲師書き始めてから実力を大いに発揮してきたな
ぽんさんの作風も好きだ。ジョジョ→バイキンマンというのも面白い。
草薙氏も最近は誤字も減って、描写もうまくなってきた。いい感じだなバキスレ。
しかし、大いに書いてくれる人と投げ出しっぽい人が明確になってきたな。
あと30〜40kb位で次スレか。
個人的にはぽんさんの復活が嬉しいな。少し諦めかけてた。
バレンタインか。俺には関係ないイベントだな。
あとはサマサさんが復帰してくれれば言う事なし。
できればスチールも復活して欲しいけど、正直厳しいだろうなあ。
520 :
作者の都合により名無しです:05/01/28 19:41:58 ID:LMIgP1Zq0
>バレンタインか。俺には関係ないイベントだな
同志!!
スチール氏やマルチ氏やメカタラちゃん氏はもう諦めよう。
復活してくれれば嬉しいけどな。
個人的に今回のぽんさんの復活と前回のユルさんの復活は嬉しかった。
このスレはいい意味での職人バカが多くていい。
521 :
作者の都合により名無しです:05/01/28 22:53:34 ID:KZGgX7ExO
ぽんさん来た。嬉しい。
でもザクさんが来ないな。それとみゅうさんも。
いったいどうしたんだろう。投げ出しは嫌だなあ
たった一、二週間ぐらいで投げ出し云々の話をするなよ。
黄金期に慣れたせいなんだろうが、SSなんて早々簡単に書けるもんじゃない。
一ヶ月余裕を持っても少なすぎるくらいだ。職人さんにも事情があるんだからその辺は察しろよ。
読むのは30秒の文章でも書くのには30分近くかかる事もある。
ここはアメリカのとある場所。人目を忍び、いかにもその筋、といった男たち十数人が密談を交わしていた。
『ほらよ。約束のモンだ』
『どれどれ・・・』
一方の男たちが差し出した荷物を、もう一方の男たちが確認する。―――それは、麻薬であった。
そう、彼らは麻薬の取引をしているマフィアたちであった。いかにも、なシチュエーションである。
と―――そこに。
「よお、あんたら―――ちょいと教えてほしいことがあるんだが」
この場にはそぐわない、陽気な声が聞こえてきた。マフィアたちが振り向くと、そこにいたのは奇妙な少年だった。
身長は150cm以下とかなり低い。派手な色に染めた長髪を髪の後ろで縛っており、耳にはストラップなんかを
ジャラジャラつけている。着ている物はハーフパンツに黒いタクティカルベスト、手にはハーフィフィンガーグローブ、
足には無骨な安全靴。
それだけなら特別変わったファッションではないが―――彼の顔面の右側には、禍々しい刺青が彫ってあった。
それが少年の端整な顔立ちをやや台無しにしている。
マフィアたちはこの突然の闖入者への対処をたちどころに決定した―――目撃者は、消せ。彼らは服の内側に手を入れ、
そこにあった黒い鉄塊―――拳銃に手をかけた。
しかし当の少年はそんな彼らの様子を気にかける様子もなく、能天気ともいえる声で喋り続ける。
「実は道に迷っちまってな―――ちょいと教えてほしいんだが。つっても別にあんたらに人生説いてもらいたい、って
わけじゃあないぜ」
かはは、とつまらない冗談をかます少年に、マフィアの一人が発砲した。それは確実に少年の命を奪うはず―――だったが。
「おいおい、危ねーもん撃つんじゃねーよ。死んだらどうすんだよ。あーあーあー、この早漏野郎が」
少年はその弾丸をあっさり回避し―――その直後。発砲した男が、突如悲鳴を上げた。
男の指が、一本ずつポタポタと地面に落ちた。それだけではない。彼の腕も、脚も、腹も、内蔵も、首も―――
全てがバラバラと、地面に落ちた。
―――その光景を、マフィアたちは驚愕して見ることしかできなかった。恐る恐る、少年を振り返る。
少年はにやにや笑っているだけだ。何もした様子はない―――なのに。
『て、てめえ―――なんなんだ、これは、てめえがやったのか、ああ!?』
『おい!何とか言え!』
少年はそんな男たちに対し―――
「わりい。俺むつかしい英語は分かんねーんだわ。ハローとかセンキューなら分かんだけどな」
そして少年は突如マフィアたちに向かって走り出す。その手にはいつの間にか、短いナイフが握られていた。
一瞬、だった。一瞬でマフィアたちは全員喉を切り裂かれ、その人生の幕を閉じた。
「・・・あっちゃあ、悪りい。殺しちまった。まあそっちも殺す気マンマンだったってことで、
おあいこってことにしようや」
少年は相変わらずにやにや笑いながら、すでに死体となったマフィアたちに声をかける。
―――少年の名は零崎人識(ぜろざき ひとしき)。
その目はまるでこの世の全ての汚濁を混ぜて煮詰めたように、深く暗い。
今この場で十数人の命をゴミのように蹴散らしたことなど、何とも思っていないかのよう―――いや、
本当に何とも思っていないのだ。
零崎人識は殺人鬼であり、その存在意義に従って人を殺す。彼にとって、殺人とは呼吸と同義だ。
彼はかつてある人物にこう言った。
<呼吸をするように人を殺すというよりは、人を殺さないと息苦しい>―――と。
趣味ではなく、義務でもない。殺す理由もない。殺して心が落ち着くだの、興奮するだの、そんな感覚もない。
ただ―――何も考えなくとも生きているうちは心臓が動いているように、彼は人を殺している。
彼だけではなく―――彼の二十数人からなる<家族>もそうだった。
―――彼の属している家族の名は<零崎一賊>。家族以外のあらゆる他人を殺す、殺人を生き様とする者たち。
<殺し名七名>と呼ばれる七つの存在の中でも、<匂宮><闇口>に次ぐ第三位の序列と目される殺人鬼集団。
異端を極めた殺人能力と異端を極めた仲間意識を誇る、<悪>とすらも表現できない、<最悪>の一賊。
家族を守るためなら世界すらも敵に回す、この世でもっとも醜悪な群体にして、この世で最も最悪の軍隊。
しかしながら彼にとってそんなことはどうでもいいことではあった。
「あーあ・・・どうすっかなあ・・・どっかの流浪人みたくいかないもんだ。いきなり不殺の約束破っちまったよ。
あの赤い女に知れたら、今度こそ殺されっかなあ・・・」
にやにや笑いつつも、困った様子でその場で十秒ほど考えていたが―――
「ま、そん時はそん時考えよう」
そう独り言を呟きつつ、彼はその場を後にした。
数日後―――アリゾナの刑務所。その一角に、刑務所とは思えない豪華な部屋があった。
そこにいるのはこの部屋の主オリバ・ビスケット―――そして。
「勇次郎・・・この事件を、キミはどう思う?」
「ふん・・・マフィアが殺されたなんざ、どこにでも転がってる事件だろうが。いつも通りてめえがさっさと
犯人をブッ殺して終いにしちまえよ」
人呼んで<オーガ>・・・範馬勇次郎であった。つまらなそうな勇次郎に対し、オリバはニイっと笑う。
「マフィアがやられた、ってだけならどうこうってことはナイ。ただ、今の世の中、調べようと思って調べられない
事ってのハ、そうそうないんだゼ?」
「はっ。何が言いてえんだ?てめえ」
「ゼロザキ」
その言葉に、勇次郎の顔色が変わる。
「零崎―――殺人鬼集団の、零崎一賊か!」
「そう、これをヤったのは、その一人のようダ・・・どうダ?タイクツしてると思って、こんな話を持ってきた
ワケだガ・・・」
「そいつの居場所は分かってるのか?」
話の腰を折られて、オリバはふうっとため息を漏らした。
「セッカチだな、勇次郎・・・。まあ、見かけが相当派手な奴らしいカラ、目撃情報にゃあ事欠かない。大体の
居場所なら・・・」
「案内しろ。行くぞ」
そう言って勇次郎はさっさと歩いていってしまう。オリバはそんな我儘な友人に肩をすくめつつ、楽しくなってきた、
とでも言いたげに笑った。
「殺人鬼とオーガ、カ・・・。こりゃあとんでもねエカードだゼ」
地上最強のオーガと地上最悪の殺人鬼。二人の怪物の激突は、近い。
ふら〜りさん、かな?
えー、こんばんは、サマサです。
今回の話は西尾維新の戯言シリーズとのクロスです。4〜5回の短い話になります。
最新刊「ネコソギラジカル」が2月発売記念ということで書きました。
この話に出てる零崎人識は作中では生死不明ですが、ここでは「生きてる」として話を作ってます。
戯言シリーズを知らない人は、勇次郎が殺人鬼相手に大暴れ、
な話と思ってくだされば大丈夫・・・と思います。
ギャグSS日和については、不定期連載ということになりそうです。ギャグって難しい・・・。
ところでオリバのいる刑務所ってアリゾナでよかったですよね?(自信なし)
どうでもいい追記―――
<一賊>は<一族>の誤植にあらず。ほんとにこういう表記されてます。
530 :
作者の都合により名無しです:05/01/28 23:27:43 ID:LMIgP1Zq0
サマサさん新作乙!西尾維新知らないけど楽しめたよ。
サマサさんはやっぱりストーリ物の人だね。
ギャグもたまには読みたいけどさ。
でもサマサさんがバキ読者とはちょっと意外でした。
>>522 ごめん。
でも521はいつもの奴だよ。コピペみたいなもの。
531 :
作者の都合により名無しです:05/01/28 23:33:52 ID:LMIgP1Zq0
お詫びに明日昼ごろに次スレテンプレでも作りますわ。
もしかしたら今夜、もう一作位来るかも知れないから。
タイミング的にそれ位がちょうどいいでしょ?
>529さん
その漫画です
あと、>525でオリバ・ビスケットと書きましたが、まとめサイトの人物一覧を見ると
ビスケット・オリバですね。お恥ずかしい・・・
オリバって名字だったのか・・・
533 :
作者の都合により名無しです:05/01/28 23:58:08 ID:oOhOP4700
サマサ新作キターーーーー
神界大好きだったので嬉しい。がんばれ。
ここは職人魂旺盛な人が多くていいな。
534 :
作者の都合により名無しです:05/01/29 01:03:12 ID:M02msRrf0
―――3人がある自宅の一室で神妙な顔つきで話し合っていた。
その神妙な顔つきといったら友達が来ればどんな時でもケーキやメロンを運んできてくれる母親さえも敬遠するほどだ。
いくつも見解が出て、そして却下される。そんなことの繰り返しのうちに苛立った一人の男がこう言った。
「おい、もういいじゃねえかギャグ漫画でよう!」
普段ならその巨大な体形から彼が一度意見を言えば、みんなまるでRPGのキャラクターのように
「うん、そうだね」
とまるでYESマンのように頷くのだが、今回は場合が場合で他の4人はその意見にまるで賛成しなかった。
「じゃあ、他に当てはまるジャンルなんてあるのかよ?」
と先程の男が皆に聞き返すとこの3人の中で唯一の女性が、
「ジャンルなんていらないと思うの。読んでくれるみんなが楽しめさえすればそれでいいと思うわ。」
といかにもな意見。
するとこの3人の中で一番ずるがしこそうな男が、柄にも無く心配そうに
「でもさあ、そうしないとアイツいつまでたっても夕飯食べられそうにないぜ」
そういって全員が目線を上にやると、気の弱そうな子供が母親にしかられながら散らかっている「ドラえもんの単行本42冊」を泣きながら片付けていた。
無論、母親の監視つきだ。
どうやら今のうちから息子に片付けの癖を付けておきたかったらしく、全ての本をジャンル分けさせているようだ。
そして、気の弱そうな男の子は
「ドラえも〜〜ん、何とかしてよ〜〜!」
と現実にいるはずもないキャラクターに哀願していた。
535 :
作者の都合により名無しです:05/01/29 01:04:57 ID:M02msRrf0
どうも、名無しです。
脳内に思い浮かんだフレーズで短編を書いてみましたがどうでしょうか?
これからも思い浮かんだら書いていきたいと思うので、暇があったら見てやってください。
536 :
作者の都合により名無しです:05/01/29 01:11:22 ID:M02msRrf0
訂正>534
他の4人はその意見にまるで賛成しなかった。
は、他の2人はその意見にまるで賛成しなかった。
です。
スイマセンでした。
サマサさん、乙!
バキと戯言のコラボって事はイヤでも期待してしまうな…
地上最強の生物vs人類最強の請負人
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
539 :
作者の都合により名無しです:05/01/29 13:05:19 ID:tXF6Hv100
>名無しさん
こういう一休み的な短編好きです。
またぜひ投稿して下さいね。
540 :
テンプレ1:05/01/29 13:43:20 ID:tXF6Hv100
541 :
テンプレ2:05/01/29 13:44:18 ID:tXF6Hv100
542 :
テンプレ3:05/01/29 13:45:16 ID:tXF6Hv100
543 :
テンプレ4:05/01/29 13:47:05 ID:tXF6Hv100
544 :
テンプレ5:05/01/29 13:48:20 ID:tXF6Hv100
545 :
テンプレ職人:05/01/29 14:01:12 ID:tXF6Hv100
間違ってはないと思いますが、あったら追加/削除/変更お願いします。
2ヶ月以上作者の連絡のない作品、作者の存在・継続の意志が
確認出来ない作品はテンプレから外しました。
しかし草薙氏、同時連載は3本までにしてね。テンプレ作りにくい。
(ユル氏の今スレでの作品はAoBの中に含まれてます)
547 :
作者の都合により名無しです:05/01/29 16:34:44 ID:qQZaReH90
テンプレ作った人、乙。
間違い指摘した人も乙。
470KB位で次スレ建てがちょうどいいか?
いつもちょっと早すぎる感じだからな。
あと作品3つ分くらいで移行がちょうどよさそうだな。
第十話「孤独な英雄」
毒を我が物としたシコルスキーに対し、烈はかまわず攻めを選択する。中段突きが、胸
へと突き刺さった。
「……ガハァッ」
よろよろと後退するシコルスキーだが、烈は追撃しなかった。異変が起こっていたのだ。
──変色し、腫れ上がった右拳。
「こ、これは……ッ!」
「ハハ、ようやく理解出来た……。俺は猛毒という鎧を手にしたッ!」
壮快な笑顔で、シコルスキーが間合いを詰める。攻撃するつもりはない。烈が打ってく
るのを、待っているのだ。
「来いよ。中国四千年、見せてくれよ……」
激昂する烈。あらゆる部位を駆使し、シコルスキーを打ち据える。が、倒れない。
日課のように、オリバたちの制裁を受けてきた肉体。もし完全に防衛に徹したなら、烈
だとて並大抵のことでは打倒出来ない。
しかも、烈がシコルスキーに触れた箇所──全てが毒に侵される。
「決着だな。それだけ毒をもらっちゃあ、いくらアンタでも……」
「ガアアアッ!」
烈が爪を研いで造り上げた刃で、自らを切り刻み始めた。毒を受けた患部を切り裂いて、
血抜きを行っているのだ。切断音とともに、地面に鮮血が飛び散る。血に塗れる烈海王だ
ったが、闘志は失われてはいない。
「さぁ、続きだ」
「バ、バカな……ッ!」
たかが毒で敗北など認めない。武術家としての執念が成せる技であった。
「そうか、烈よ……。海王寺で頂点となったおぬしは、飢えておったのじゃな。待ち焦が
れておったのじゃな。孤独を癒やしてくれる、強敵という存在を……。この果し合い、わ
しには止められぬ」
負傷しつつも生き生きと戦う弟子。久しく見なかった光景だ。劉は孤独から弟子を解放
してくれたシコルスキーに、心から感謝した。
打ち、毒を喰らい、血抜きをする。自殺的なサイクルは未だに続いていた。
しかも、あんな方法では完全に毒を除去出来るはずがない。シコルスキーも散々打たれ
たが、いつしか烈のダメージはそれを上回っていた。
シコルスキーは一切攻めない。全細胞を防御に集中させ、烈の打撃を対処している。こ
うしていれば、いずれ烈は自滅するはず。猛毒か、もしくは出血多量かで。
「カアアッ!」
しかし、烈の動きは衰えを見せない。徐々に血が失われ、徐々に毒が蝕んでいるであろ
う肉体を、酷使し続けている。シコルスキーは迷っていた。このままでいいのか。
このままで勝てるのだろうか。
攻めに転じれば、烈の打撃と真っ向勝負となる。一昨日、昨日ともに、烈には失神させ
られている。だが、攻めねば決して倒せぬ。怖れるな、シコルスキー。
「四千年とはいえ、アンタは所詮一人だろうがァッ!」
上下半身を稼動させ放たれた、アッパーに似た軌道を描く掌底。顎に触れた一撃を、シ
コルスキーは全力で振り抜く。完璧なヒットだった。効いていないはずがない。膝を曲げ、
崩れ落ちる烈を確認し、シコルスキーは勝利を実感する。
「今度こそ、俺の勝ちだ……えッ!」
烈は立っていた。
「どうした。この勝負を判定するのは貴様ではない──私だッ!」
顔面へめり込む──否、埋め込まれる鉄拳。鼻血を撒き散らし、バックステップで間合
いを外すシコルスキー。もし、烈が万全ならば、この一撃で全ては終わっていた。が、倒
せなかった。強靭な精神力とは裏腹に、やはり肉体は弱っている。
烈が覚悟を決める。毒など一切無視、血抜きなど一切不用。
打って、打って、打ちまくる。打てば、毒を喰らう。血抜きをせねば、毒は急速的に肉
体を蝕む。それより早く、速く──最短でシコルスキーを叩き伏せる。
ならばと、シコルスキー。こちらからも攻め、毒と打撃を同時に与える。
「ゆくぞッ!」
「ダヴァイッ!」
吼える烈、吼え返すシコルスキー。超雄が二匹、生命を賭した決戦に挑む。
ジャブで牽制し、一気に踏み込むシコルスキー。打ち合いが開始された。
純粋な速度ならば、烈に分がある。シコルスキーが一発打てば、烈から三連打は浴びせ
られる。ならば、持ち味を生かすのみ。中高一本拳を握り込むシコルスキー。
再び、烈を切り裂く斬撃ナックル。が、烈は歯牙にも掛けず、掌底をシコルスキーの腹
部へと捻り込む。先ほど烈が空けた六つの穴から、血が激しく噴き出した。
「グオオオオオッ!」
卒倒しそうになる心を抑え、シコルスキーが烈へラストスパートを仕掛ける。単純に拳
を振り上げ、単純に拳を振り下ろす。これだけを繰り返す。冷静に技を組み立てる余裕は、
彼には残されていなかった。
しかし、烈は全てを捌く。力をぶつけ合うのが闘争ならば、それを制すのは──技術な
り。足指を拳へと可変させ、烈がシコルスキーの喉仏を蹴り抜く。
「がっ……グバァァァッ!」
効いた。画像の乱れを我慢しながら使っていたテレビが、ついに故障した。あれと似て
いる。かろうじて保たれていた意識が、ここに来て崩壊の予兆を示した。
「つ、強ぇ……ッ」
美しく型通りに、烈が踏み込んだ。まっすぐに迷いなく放たれる右拳──刹那。
シコルスキーには見えた。鍛錬に励む、四千年分の武芸者が見えた。絶えず進化を求め、
自分こそが体現者となると努力し、夢半ばにして散っていった数え切れぬ猛者たち。彼ら
は単なる踏み台ではない。築き上げた技術と信念は後世へと受け継がれ、今もなお生き続
けている。そう、烈海王の拳となって。
四千年という永さを、シコルスキーは思い知る。勝てる道理などあり得ない。
並々ならぬ重みを背負った拳は、シコルスキーを──すり抜けた。何故だ。
「……勝負ありッ!」
劉海王によって、果し合いの幕は下ろされた。
勝者、シコルスキー。烈は喉へ蹴り込むと同時に、力尽きていたのだ。
だが、今の一撃は確かに存在していた。倒れつつも、烈は戦いを止めなかった。彼が無
我に放った強烈な念は、幻の一撃となってシコルスキーを襲ったのだろう。
「フフ……。たったの一片も、勝った気がしねぇ……」
息を吐き、自嘲気味に笑うシコルスキー。下では烈士、烈海王がうつ伏せに昏倒してい
る。両者ともに、焼き尽くし──燃え尽きた。
そんな二人の闘士を、しけい荘一行と海王たちは惜しみなく称えた。
そろそろ次スレですか……。
次回へ続く。
553 :
作者の都合により名無しです:05/01/29 21:23:47 ID:89wFS1590
シコルスキー、勝負に勝って試合に負けて…ですか。
しかし前作から物語後半になると虫から獅子に化けるな、シコルw
烈もかっこ良くていい感じでした。
あと前回の短編のシャブもヒネリ効いてて面白かったです。
次スレも頑張って…、でももうすぐ終わりっぽいな。
もっとこの面子をみたい!あと郭とか勇次郎とか。
郭、出てこない可能性あるかも。
前作でスペックとゲートボールしてたし。
555 :
真田!:05/01/29 23:33:13 ID:UQX6fziGO
真田!真田!真田!真田!真田!
ここは「風騎士達の町」と呼ばれる場所。四方が山に囲まれている為町への道はトンネルを
抜けていくしかない。今、ジョナサン達は馬車でトンネルに入ろうとしていた。
「ツェペリさん。何か作戦でもあるんですか?」スピードワゴンがおずおずとツェペリに尋ねる。
無理もなかった。彼はジョースター家の屋敷にて吸血鬼となったディオを目にしている。
そのパワーは人智を超えていたのだ。
「作戦か・・・。数と力が合わさっていればどうにかなるな。」ツェペリが真剣な目をして言う。
勇次郎は窓の外を見ていた。彼にしてみればわざわざこのような方法ではなくても
自分の足で行くつもりだったのだ。着いたら真っ先に駆け出したい気分であった。
やがて馬車の中は暗くなった。トンネルの入り口に着いたのだ。
「スピードワゴン・・危なくなったら君は逃げてくれ。」
ジョナサンの言葉が終わるか終わらないかの内に馬車が突如停止した。
「どうしたというのだ!?襲撃か!?」ツェペリが叫ぶ。
勇次郎は馬車から降りた。彼の口の端は上がっていた。続いてジョナサンも。
「う・・・これは!」ジョナサンが叫び声を上げた。
ジョナサンが見たもの、それは首が切断された馬の体であった。だが倒れない。
馬の体は首を切られた直後の姿勢のままであった。
「何だ!あれは!?」スピードワゴンが恐怖にひきつった叫びを上げた。
勇次郎達の前に馬の首の中から何かが出てきた。
「何と言う・・・。」ツェペリが呟いた。
それは徐々に露になっていった。若々しい男の手足が馬の体内を突き破る。
そしてそれは遂に馬の体から飛び出した。
「この腐った匂いは!」
鼻をつまむスピードワゴン。そしてそれを見てニタリと笑う怪物。
「こいつはゾンビだ!しかも石仮面を被っているぞぉーっ!」ツェペリが叫んだ。
怪物は両腕を上げ空中で重ねた。そして体中に力を込めた。
「む・・何だ?アレは?」
異変に最初に気づいたのはスピードワゴンであった。
怪物の体からなぜか黒い尖った物が何個も浮き出て来たのだ。
「やばい!車の陰に隠れるか伏せろー!」ツェペリが叫ぶ。
ジョナサン達が隠れるのと怪物の体からナイフが発射されるのは同時だった。
「無事か・・・皆?」スピードワゴンは尋ねた。
正直無我夢中で車の陰に隠れるのが精一杯だった。隣にツェペリがいるのはわかった。
だがジョナサンとハンマという男がどこにいるかはわからない。
こうなれば一が八かだ。
スピードワゴンは石を投げた。馬車の前方に向かって。
カツン。
そして息を潜めて待つ。奴の姿が現れたらツェペリが攻撃する。
物音一つ立てずに待つスピードワゴン。顔は汗ばみ呼吸は苦しくなってくる。
その緊張が破られたのは仲間の声が聞こえた時だった。
「終わりました!」
スピードワゴンはジョナサンの声を聞くとその場に尻餅をついた。
緊張の糸がプツリと切れたのだ。
「ジョナサン・・よくやった。」ツェペリがジョナサンを褒めた。
「いえ、やったのは僕ではありません。Mr.ハンマです。」
勇次郎を見るツェペリ。勇次郎の目は血の色をしているかの様にツェペリには思えた。
ディオ、いや吸血鬼と同じオーラの持ち主。
「波紋とか言ったな?呼吸するだけでOKらしいな。あの野郎からナイフが出てくる前に
道に波紋を伝わらせた。後は飛ばない限り食らう。」勇次郎が淡々と言う。
ツェペリは確信した。勝てる。この男と力を合わせればディオに勝てる。ジョナサン、自分、そして
ハンマ。三人の力を一つにするしかない。
「あの野郎は馬車を壊したようだな。歩くぞ。」勇次郎が不機嫌そうに言った。
ジョナサン達は勇次郎についていった。
やがてトンネルの向こうが見え始めた。先刻の戦闘が嘘の様に綺麗な夕日である。
だが夕焼けはジョナサン達にとっては不吉であった。吸血鬼が本領を
発揮するのは夜である。夜になってしめば勝ち目は薄くなる。
「やーっと着いたぜ!・・・うおっ!?」スピードワゴンがよろめいて言った。
ジョナサンとツェペリ、そして勇次郎の目はそれを追っていた。
小さな子供。まだ10歳にも満たない様な子供。それがスピードワゴンから荷物を奪っていったのだ。
子供の背には縄の様な物がついておりどこからか飛んできたらしかった。飛ぶ軌道の直線状に
スピードワゴンがいたのだから彼にしてみれば物を奪うのは容易だったのだろう。
「あのバッグには旅費の大半が入っているんだぁー!」スピードワゴンは叫んだ。
後を追おうとするジョナサン。だが彼をツェペリが止めた。
「何をするんです!?早く追わないと!」
「待て。もう既にあの男が行っている。」
子供は安心していた。この金で暮らせる。もう貧乏暮らしともおさらばできる。
大分遠くまで来た。この岩づたいに行けば逃げおおせる。そう少年が思った時
異変は起こった。バチッという音が聞こえ少年の目は青白い光を見た。光は
岩を伝わって来ていた。
「わわっ!?」
光に触れた直後、吹き飛ぶ少年。そして少年に近づく人影。
岩場から脚が離れようする直前、少年の体は誰かに抱き止められた。
「このガキ・・・。ふざけてんじゃねーぞぉ!?」
少年を抱きとめたのは範馬勇次郎であった。
「ひっ!」
勇次郎の姿を初めて見た少年は気絶してしまった。
今回の投稿はこれで終わりです。
559 :
作者の都合により名無しです:05/01/30 01:27:11 ID:sW51yjii0
>539さん、わざわざ感想をありがとうございます。
>サナダムシさん
もうすぐでしけい荘番外編も終わりのようですね。
シコルスキーの活躍ももう見れなくなってしまうのでしょうか?
残念です・・・・
>輪廻さん
相変わらずすごいですね!三本も連載をやるなんて!
お話の構成は頭の中に保存しているのですか?それともノートの中に書いているのでしょうか?
どっちにしても、ノート一冊分以上はありそうですね。
後、これからもよろしくお願いします。ではでは
サナダムシさん、草薙さんお疲れ様です。
草薙さんは輪廻とドラえもんが終わってもオーガがあるけど、
サナダムシさんは番外編が終わるとまた休養かな?
また小粋な短編とか書いてくれないかな。連載が一番嬉しいけど。
>>559 がんがれ。応援してます。
561 :
ローマ:05/01/30 13:04:24 ID:wsRv+2I90
長い間連絡できず申し訳ありませんでした。年末から年始にかけて古代ローマ
関連の書籍をあさっており、書き進むことができませんでした。自分でも予想外
の時間を食ってしまい、今まで読んでくれていた方々に対し義理を欠いたことを
反省しております。しばらくしたら、再開しますんで、またお付き合いの程を
よろしくお願いいたします。
562 :
作者の都合により名無しです:05/01/30 13:29:15 ID:r7A/uguF0
おー、お疲れさまです。リアルなローマを期待してます
期待してます。
いつになってもいいんでがんばってください。
・サナダムシ氏
シコに対するサナダムシ氏の愛を感じる。烈へも。でもライタイ編見たかったなあ。
・輪廻氏
今回はツエペリが主人公でしたね。激闘への繋ぎの回か。次回から勇次郎荒れそう。
・
>>559氏
おお、539は私です。ご自分のペースで頑張って下さい。応援してます。
・ローマ氏
正直半分諦めてたので嬉しい。肩に力を入れ過ぎず、完結目指して頑張って下さい。
でもローマさんトリップ使わないからチョト心配。でも文が誠意に溢れてるから大丈夫ですか。
565 :
ふら〜り:05/01/30 19:56:54 ID:J/sGYo8o0
>>NBさん
そりゃあ確かに、斬って暫くしてから思い出したように斬られ落ちる、てぇのはよくある
光景です。漫画でもその他でも。でも超高層ビルって……その例、過去に存在しなさ過ぎ。
今回、加害者本人は全く全然姿を見せなかった辺りがまた迫力を増してます。凄絶でした。
>>ぽんさん
可愛い……ほんと可愛い。バキスレでは可愛い男性キャラによく会えますが、このB氏も
実に宜しいです。で、それがまたD嬢まで引き立ててて、二人揃って可愛い。ぽんさんは
殺伐としたのもメルヘンチックなのも、心の世界・動きを描くのが巧みですね。羨ましい。
>>草薙さん
※輪廻転生
最後まで読んでから読み返すと、年齢の設定とか服装のこととか、要するにヤムチャが
自分の好みでしたことなのか、と思えてきます。しかしまさか、本当にそういう目的で?
※オーガのリング
ジャックは戦闘を描かれる間もなく瞬殺。ジョナサンはそこそこ苦戦したのに……さすが。
ポコを殴りつけず、一応抱き止めたのに驚いたのも束の間、一目で気絶。これまたさすが。
>>サマサさん
ファンタジー、ギャグ、そして血みどろですか。芸風広いですなぁ。冒頭で、サラリと
殺してる様はなかなか怖くて良いです。勇次郎の殺しっぷりとは、ある意味対照的なの
かも。熱いボコボコと冷たいザクザクってとこで。遭遇&激突が楽しみな組み合わせです。
566 :
ふら〜り:05/01/30 19:57:41 ID:J/sGYo8o0
>>名無しさん
初めまして、でしょうか? 願わくば次回には御名前を。さもなくば勝手につけるかも
ですぞ。で、確かコンビニ版のドラえもんには「日本一の爆笑コミック!」とのアオリが
ついてて、いやそれは違うだろ、と思いましたが。SF混じりの現代ファンタジー、か?
>>サナダムシさん
「逆毒手」とでも言いましょうか。打たれることが攻撃になると。烈も負けずと、血抜き
しながら戦うという蛮勇ぶりで。双方、もはや普通の「攻防」とは根本的に違うことを
してる……。ともあれ、ホームレス戦以来のシリアスなシコル、見事勝利! 嬉しいです。
>>ローマさん
作品の為、書物に取り組んで折られたとは感服。グレードアップした「大ローマ」
期待して待っておりますぞっ。
567 :
作者の都合により名無しです:05/01/30 21:59:34 ID:GYEeExTE0
470KBあたりで次スレでいいね。
すなわちあと作品一本か二本。
568 :
テンプレ5の訂正版:05/01/30 22:05:21 ID:GYEeExTE0
569 :
作者の都合により名無しです:05/01/31 11:13:52 ID:q6HhB88v0
age
最後の一本がなかなか来ないね
もしかしたら、新スレ最初の一本を狙っているのかも。
まあ、今夜には作品がきてくれるだろうから、それで次スレかな。
>ローマさん
復活期待してるよ。
でもあまりウンチクに片寄らないでね。
ローマ復活は嬉しいなあ
シナリオ形式、最初は読み辛かったけど
今は一番読み易い。がんがれ。
>>569-570 各職人の膠着状態で一週間くらい次スレ立たなかったりしてw
最後はちょっと感想付き辛いから嫌なのかな?
真打みたいでいいと思うけど。
投下します。DBです。
「双子」
ナメック星から無事帰還して3年後、ブルマは妊娠した。
彼女は自分のカルテを見て悩んでいた。
ヤムチャとべジータ、お腹の子の父親がどっちなのか分からないのだ。
3ヶ月前にブルマはヤムチャと別れて、べジータと一緒に暮らすようになった。
妊娠がわかったのが、その一ヵ月後。どっちの子でもおかしくない時期だった。
「ヤムチャだったらやだな‥」
生まれてくる子供はカプセルコーポレーションの後継者。
べジータの子供なら何も問題ないのだが、別れたヤムチャとの子供だと、色々面倒になってくる。
それに別れた男の子供など欲しくは無い。
だったら堕胎という考えもあるが、40手前にして授かった子である。流石に躊躇いを感じた。
「悩みで気が変になりそうだわ」
ブルマは悩みぬいた挙句、一つの結論に達した。
半年後、ブルマは無事出産した。元気な男の子だった。
早速、仲間達を呼んで出産祝いのパーティを開いた。
ヤムチャは出産祝いにと花束を持ってきた。別れてもこういう事にはマメな男だった。
パーティを終えて皆が帰った後、ブルマはヤムチャとべジータに、話があるといって残ってもらった。
「で、何だ? 話って」
「まずはこの料理を食べてから話すわ」
そう言って、ブルマは二人の前に2,3の料理を並べた。
どれも先のパーティには無かった料理だった。
二人は良く分からないまま、料理を食べ始めた。
「ほう、うまいな」
「ぺッぺッ! ブルマ、何だコリャ激マズじゃないか!」
料理を口に入れたべジータとヤムチャの反応は、全くの正反対に分かれた。
「全く反対の反応ね。予想通り」
ブルマは二人の反応に見て笑った。
「どういうことだ? 俺への嫌がらせか?」
「ごめんね。今からワケを話すわ」
ヤムチャの言葉を途中で遮って、ブルマは語り始めた。
「私の母の故郷に、こんな話があるの」
――街である女性がレイプされて、一年後に容疑者グループが捕まった。
しかし、グループのうち誰が犯人か分からない。そこで女性は一計を案じ、容疑者グループへ
スープを作ったの。容疑者の殆どはスープを一口飲んだだけで吐き出したけど、ただ一人だけ、
美味い美味いとがっついた。女性は叫んだ。貴方が犯人ね、と ――
「実はスープに仕掛けがしてあって、犯人にしか美味しく感じられないように作られていたの。
それで犯人は見事逮捕されたのよ」
「ふん、便利な料理だな」
ヤムチャは不機嫌そうに返事をした。この話と今のマズイ料理とどう関係があるというのか。
「そうね、その事件を担当していた警官も、ヤムチャと同じ疑問をもったのよ。どうして犯人だけ
違う反応をしたのか、ってね」
ブルマは話を続ける。
「幸い調理場はまだ片付けられていなかった。それで警官が調理した鍋の底を覗いたの。すると鍋底
には、煮込まれてドロドロになった赤ちゃんの死体があったのよ」
「「!?」」
ヤムチャとべジータの顔色が変わった。
猛烈に嫌な予感がする。
二人は昔話を語るブルマと、そして目の前の料理を交互に見た。
「実は女の子はレイプされた時に孕まされてたのよ。赤子を材料にスープを作ると、とても生臭いの
だけど、不思議と実の父親にだけは美味と感じるらしいわ。血の繋がりかしら」
「おい、ブルマ!」
たまりかねたヤムチャが叫んだ。
「まさか…このスープは…」
「今回の出産ね‥‥実は双子だったのよ」
ブルマはトランクスを抱きながら微笑んだ。無邪気な笑みだった。
ヤムチャとべジータの顔から汗が伝った。
もう一人の赤ん坊はどこにいるのか、とても怖くて聞けなかった。
「良かったわ。べジータの子供で」
ブルマは微笑みながら、トランクスをべジータの方へ向けた。
「ほーら、トランクス。こっちがパパよ」
最初は3人の痴話ゲンカで作っていたのですが、いつのまにか黒くなりました。
DNA鑑定すれば良かったのでは? という突っ込みはご遠慮ください。
577 :
青ぴー:05/02/01 00:26:39 ID:XFMWlGOu0
ひとつあけます。
578 :
作者の都合により名無しです:05/02/01 00:28:10 ID:XFMWlGOu0
忍者の証 第壱話 ハーフエルフ
なんでこんなに痛えんだ?
オレは瞼を閉じたまま、ゆっくりと身に降りかかった不幸を反芻し始めた。
……推測するまでもねえ。あの野郎だ。
あのタワケ野郎の盛大な大暴走に(まあ、いつもの事なんだが)巻き込まれ、
大爆発の爆風で吹き飛ばされた。そりゃもー、ド派手に吹き飛ばされた。
まさか死んじゃいねえよな、あの野郎。
オレは心中に沸きあがる不吉を振り払った。あのクソが簡単にくたばる訳はねえ。
それより今は、てめえの事が先だ。ここはどこだ?部下たちは大丈夫か?
オレは漸く瞼を開こうとした。が、何故か体がモゾモゾしやがる。ケツが痒い。
どうやらオレの体を弄っているヤツがいるらしい。
しばらくしてそいつはオレの体から離れたようだ。オレは不穏を感じた。
瞼を開けた。すると、オレの七尺の愛刀を担いで持ち去ろうとするガキがいやがった。
辺りを素早く観察する。どうやらここは洞窟らしい。モンスターの気配は無いようだ。
オレは大事な刀を持ってトンズラここうとするガキに、無愛想な声を掛けた。
「オッヤオヤ、人がせっかく気持ち良く寝てたら、可愛い盗っ人かい」
「にゃあッ!?」
ビクン、と止まり、ガキは振り返った。まるで予想だにしなかった事らしい。
どんな教育されてやがる。オレはそのガキの顔をマジマジと見た。……あらら。
ガキがガキでも、お嬢ちゃんかい。しかも人間じゃねえ。
579 :
作者の都合により名無しです:05/02/01 00:28:50 ID:XFMWlGOu0
身長は高い。180近いだろう。まあ、オレは2メートル20あるから特別だが、
普通の人間族の女に比べりゃ随分高い。そして耳はピンと尖がっている。
肌はうっすらとしたダークブラウン。顔は幼いが、プロポーションは抜群だ。
オレの仲間にもいたな、こいつと同じ種族が。
まあ、この嬢ちゃんと比べりゃ色気は雲泥の差のいい女だが。
……死んでねえだろうな、アイツ。
そのえっちぃ体とは不釣合いな素っ頓狂な声で、嬢ちゃんは叫んだ。
「なんでぇ? あんな怪我してジュクスイしてたのに。念には念を入れて
スリープの呪文まで掛けたのに」
ぜんっぜん罪の意識は無いらしい。オレは呆れて頭を掻きながら、穏便に言った。
「あ〜。オレはある程度以下のレベルの呪文は利きにくいんだよ。それより、
そいつぁオレの大事な刀だ。返してくれるかい、嬢ちゃん?」
「きいいいいいっ。ある程度以下の呪文ですってぇええええっ」
「おいそこかよ、反応するのはっ。それより返せオレの刀!」
嬢ちゃんはあからさまな敵意を表に出している。おいオレかい、悪いのは?
「いいから返しなって。ガキに手荒な真似はしたくねえ。第一、エルフのシーフなんて
聞いたことがねえ。慣れねえ事はやめなって、お嬢ちゃん?」
目の前の嬢ちゃん。間違いなく種族はエルフだろう。それもおそらくダークエルフ。
見た目は15歳くらいだが、この種族の寿命は長い。一概に姿で年齢を判断出来ない。
が、オレはわざと挑発気味に嬢ちゃん、と言ってみた。懐かしい響きに感じた。
「ア・タ・シは魔法使い。それに、この刀は使えそうだもん。返せないわ。もうアタシの」
580 :
作者の都合により名無しです:05/02/01 00:30:38 ID:XFMWlGOu0
あの野郎並に超極悪にわがままなヤツだ。オレはため息をつくと、ゆっくりと近付いた。
「デカブツ。それ以上近付くと、とっておきの呪文をお見舞いするわよ」
「ハイハイ」
相手にしきれんわ。オレはとっとと刀を取り返し、洞窟の外に出る事に決めた。しかし。
嬢ちゃんの顔つきがサッと変わった。オレの中で非常警報がけたたましく鳴り響く。
ヤバい。オレはつま先立ちになる。素早く動くためだ。嬢ちゃんは呪文を詠唱し始める。
「カンダ・ロエストラタ・アマソトス・イグエラトス・コンデルシツ…邪骸石結(タラス)!」
正直、オレはこの嬢ちゃんの実力を甘く見ていた。迂闊にも程がある。
嬢ちゃんとはいえ、魔法を得意とするエルフだ。易々と呪文を詠唱させちまうとは。
しかしそれでも、こんな高等呪文を……。
581 :
作者の都合により名無しです:05/02/01 00:31:26 ID:XFMWlGOu0
オレの肉体があっという間に石に変わっていく。石化の呪文。勝ち誇る嬢ちゃん。
「キャハハハハ。古代語魔術なんて、勿体な過ぎたようね?」
「まったくとんでもねー嬢ちゃんだな。えらく不釣合いなモン使いやがる」
「え、え、え?」
嬢ちゃんは慌てて背後に回ったオレの方を振り返った。不思議そうな顔をしている。
前方ではオレが石と化しているのに、真後ろには別のオレがいるからだ。
オレは黙って嬢ちゃんが抱えていた愛刀を取り返した。
しばらく惚けていたが、やがて嬢ちゃんは悔しさを隠さずに言った。無邪気なモンだ。
「イリュージョン(幻影)の呪文とは、やるわね」
オレは刀を元のありかである背に戻しながら欠伸をして言った。
「オレは呪文を使えねえよ。あれは分身の術ってヤツだ」
「え……? 分身の術って、もしかしてアンタ、幻のクラス(職業)の…忍者なの?」
オレはその言葉を無視して洞窟から出ようとした。
だが嬢ちゃんは先程までの不機嫌さは何処へやら、嬉々としてオレに語り掛けてきた。
「ね、ね、ね。アンタの名前は? アタシはメイ。ハーフエルフのメイ。ね、教えてよ?」
オレは暫し名乗るのを戸惑った。嬢ちゃんは教えろとしつこく言い寄ってくる。
嬢ちゃんを追い払うのもメンドいし、いいか名前教えるくらい、減るモンじゃねえし。
「ガラだ。ニンジャマスター・ガラ」
582 :
青ぴー:05/02/01 00:35:09 ID:XFMWlGOu0
バスタードです。
単行本9巻の157ページのガラ外伝の勝手な妄想です。
バレさま、掲載直後の連投申し訳ありません。
583 :
バレ:05/02/01 00:42:53 ID:39iQCTVb0
バスタですか。
思えばコノ頃が一番盛り上がってましたね。(今や‥)
ネイと同じ種族ってことは黒ハーフですね。
157ページのコマで書かれてる女の子がモデルでしょうか。
何にせよ続きが楽しみです。
直後投下はぜんぜん気にしなくていいですよ。
面白いSSが読めて嬉しい限りです。
タラスってこんな詠唱だったんだ
しかもやけに見覚えがあると思ったら、これってマダラのギミック発動の呪文のパクりだったのか
ハギーめ・・・
585 :
青ぴー:05/02/01 01:47:26 ID:XFMWlGOu0
新スレ立てようとしたらホスト規制にかかりました。
どなたかお願いします。
出来れば、私の作品も連載一覧にお願いします…
586 :
テンプレ5:05/02/01 01:51:26 ID:XFMWlGOu0
バレさん、青ぴーさん乙。
意外とバレサンノネタは黒いの多いですねw
あと、バスタード好きなので新連載は楽しみだ。
589 :
:05/02/07 09:26:55 ID:565PHB0k0
何か新しく掲載されている頂き物、のドラゴンボールの小説読んでみたけど
異質な感じで良かった
なるほど