【2次】漫画SS総合スレへようこそpart21【創作】
「ああ。今、サナトリウム(療養所)に入ってるんだ。ちょっと特殊というか厄介な
病気でさ、介護をヘルパーさんに任せてる日は、こうして確認しないと不安なんだ。
できれば自分がずっと着いてていたいけど仕事が……って、ごめん。グチを聞かせたな」
響子は焦りを冷ましつつ、ばつの悪い顔をして、刃牙に向き直った。すると刃牙は、
「…………か、か、神余さんっっ!」
いきなり、がしっ! と響子の両肩を掴んだ。その両目は、うるうる潤んでいる。
「な、なんだよ。どうしたんだ、急に?」
「介護とか仕事とか、大変だろうけど……母さんのこと、大切にしてあげてねっっ!」
どっ、と刃牙の目から涙が溢れ出た。どうやら自身の体験というか経験上、
こういう母親絡みの話には弱いらしい。自分は何もできなかった、という思いか。
「そうだ神余さん、何か俺に手伝えること、ない? あったら遠慮なく、」
「い、いいよいいよ。あ、匿ってくれてありがと。オレそろそろ行かないと」
だったら送っていく、という刃牙の申し出を丁重に断って、響子は刃牙ハウスを出た。
刃牙は玄関先に立って、涙の向こうに響子の姿が見えなくなるまで、見送る。
「いるんだなあ、現実に。ああいう女の子が。そうか、それでお金も暇もないから、
あんなに地味というか飾りっ気のない服で。おしゃれなんかできなくて。うぅ、いい話だ」
と刃牙が、家に戻ろうして……ふと、足を止めた。
「ん? そういえばどうしてあの子、本部さんに追いかけられてたんだ?」
・神余さんは、母親の病気でお金に困っている。「金に目が眩んで」とか言っていた。
・改めて思い出すに、服装こそ地味だったが神余さんは結構、いやかなり、可愛かった。
・むしろ本部さんぐらいの歳になると、ハデな子より素朴な子を好むという傾向もあろう。
・重ねていうが神余さんはお金に困っている。で何かをした。だが後悔していた。深刻に。
・そしてその神余さんを、目ぇ血走らせて鼻息荒い本部さんが追いかけていた。
・ということは……もしや神余さん、お金目当てで本部さんに近づいて……
「っっっっ!」
刃牙の頭の中に、十八歳未満お断りなストーリーが、映像が音声が、浮かぶ。次の瞬間、
と、今度は刃牙が目ぇ血走らせてダッシュ! した。目標は本部以蔵、緊急レベル特A!
「ダメだ本部さん、絶対、絶対ダメっ! 格闘士として、いや人間として、
というか男として、やっちゃいけないことがあるっっ!」