711 :
魔界編 43話:03/11/12 19:41 ID:Q2TiYkyT
>>710 実はあの塔計画忘れてマジだったんだよね、と口に出そうになる雄山。だが止めておく。更に雷電は語る。
「最初から最後まで、貴殿の計画通りとは。人間界魔界を全て操って。恐ろしいものでござる。だが」
雷電の雰囲気が変わる。肉体全てから暗黒解説気が吹き出す。そして、少し邪悪気に語り出す。
「残念ながら3戦士は揃わん。本部は拙者に解説対決で敗れる。そして精鋭部隊はバーンに敗れる」
慌てる雄山。彼の計画では、雷電は本部に敗れねばならないのだ。そうしないと本部は3戦士になれない。
「勝ちを譲れんか。人間界が滅ぶぞ。いずれお前には、全てを明し、負けを頼むつもりだった」
「冗談ではないでござるッ。それに、譲ってもらった勝ちで、3戦士になれるとお思いか」
押し黙る雄山。そう、3戦士集結最後の関門。それは、本部 以蔵が雷電に解説対決で勝利する事であった。
今ここに、人間界の未来は本部 以蔵以下のルンペンに託されてしまったのである。
雷電は黙って席を立つ。連れて来たアシュラマン(ぴかちゅうバージョン)を雄山に渡し、去ろうとする。
「時代の為に悪の解説王となるでござる。本部に伝えよ。拙者を超えて人間界を救ってみよと。
そう、解王・雷電≠ヘ今この場で死に申した。今ここにいるのは解説の魔人・・。
解魔王デーン≠ナござるッ!!」
残された雄山。沈思黙考し、厳しい顔。しかし急に立ち上がり、突然狂った様に怒鳴り散らす。
「バカ者がッ!! 勘定を置いていかんか、金をッ」 「ぴっかー」
そしてまた舞台が変わる。魔界3強≠フ一角との激闘が、いよいよ近づく。
またあげちゃった。どうしても忘れます。すみません。
後、
>>706さんの言う通りだと思います。
私、さっきレベル12くらいのキャラでやってみたけど、全然歯が立たない。
うーん。面白いゲームだけど、あまり3、4人の方が占有するのは如何なものかと。
少しご配慮願えるとありがたいのですが。
外伝死んじゃったw
a
715 :
作者の都合により名無しです:03/11/12 20:10 ID:TYqWQO3u
>解魔王デーン
激しくワラタ。乙。面白かった
>3、4人の方が占有するのは如何なものかと
確かに一部がはしゃぎすぎてる。公共のゲームだから少しは考えろよ
特にミスパレードとか、剛毅ちゃんとか
バレさんもこんなつもりで作ったんじゃないだろうに
716 :
ふら〜り:03/11/12 20:26 ID:NW1cdiek
>>パオさん
微妙……雄山、結局「影の英雄」になりきってないところが絶妙に微妙です。
で。今のところ、期待がかかるのは本部ですか。しかし今回の雷電の風格を
見るに、乗り越えるのはかなりきつそう。ダンボールを愛する彼の、今後の
奮闘やいかに。←そういう本部が、雷電に打ち勝つシーンというのにかなり
期待してます。今。
>パオさん
今回は闘いがなくて、ちと残念……ですが『解魔王デーン』に笑わせてもらいました。
さしあたって、飛影vsゴードンの闘いが楽しみ。
>>715 あの2人、強いっすよね。
自分もレベル15くらいで闘っても、いまだに1ダメージも与えることができない。
多分FFアドベンチャーとかの常駐だよ。市ね。
上手い事HPが下がってる所を奇襲するしか無いよな
ただ所詮ゲームだし、そうこだわる事も無いと思う。
720 :
作者の都合により名無しです:03/11/12 22:46 ID:l8BylNBQ
>雄山の伏線
本当に雄山登場からここまで考えてたなら無駄にすごい。
でも、多分後つけ設定でしょ。(パオすまん)
でも面白かったよ乙。デーンは若返ったり巨大化したりするの?
>ゲームのこと
サイトを占有してるな、確かにあいつら。カウントが以前の倍早くなった。
バレさんも、沢山の人に楽しんで欲しいと思っているだろうに、
新しく入った人瞬殺じゃな。すぐ止めちゃう。
バレさん、レベル25以上の奴のログ、うっかり消失しちゃって下さい。
まぁバレさんも言ってるけど、あくまでSSの「おまけ」ゲームだから、あんまムキにならない(^.^)
おいらも、低レベル&高能力のキャラとの対戦の連続で、経験値もたまらずLvも停滞してるけど(^^;)
だからといって、相手に文句言うのも好きじゃないな(敢えて文句を言うならば、そういうシステムを許している制作者にたいして言うべきだと思うしサ・・・)
っと、関係ない話で長々とスマソ。
まぁ、もしウラと対戦するときがあれば、ブレストファイヤーでも浴びていってくれ。
722 :
作者の都合により名無しです:03/11/12 23:11 ID:l8BylNBQ
そうだな。こんな事でレス消費するのも悪いしな。
あと、VS氏は多分明日か明後日だな。
バキ本スレと一緒に更新するだろうから。楽しみ。
初めて見たけど面白いスレだな
こんなスレが今まで無名だったなんて
724 :
バレ:03/11/13 00:52 ID:pfWpjLNx
うーん、ゲームは全然バランスとってません。
私の知識で調整できるとすれば、こんな所でしょうか?
・転職時に能力が若干(2/3位か?)下がるようにする
・チャンプ戦で敗北すると経験値を多く貰える
(底辺のレベル上昇が早まりますので、レベル差は少なくなるでしょう。。)
・能力値の上限を低くする。
・序盤モンスターを倒しやすくする。
・引退システム導入(成長しきったキャラは殿堂入り)
>ムツジ様
朝は失礼致しました。保管完了。
もう一度読み返しましたが、リュウが結構美味しい役どころですね。
登場シーンから「リュウ、波動拳」なんて決め台詞吐いてますし。
最後もビシッと決めてくれそうな予感。
(鷹村にも頑張って欲しいですが、何たって仇ですし)
>パオ様
アシュラが再登場するとは思いませんでした。
この後の闘いで、へたれから千人斬りへと成長するのでしょうか?
ゲームについては申し訳ないです。
>723様
ようこそいらっしゃいました!
725 :
魔界編 44話:03/11/13 12:18 ID:JSUqpLBm
【第44話 魔界最強の男】
>>711 「な、何だ。寒い。こんなに温度は高いのに、寒くて堪らんにゃあッ!!」
人間界の未来への鍵を握る男・本部 以蔵が叫ぶ。おかしい。ここは砂漠のど真ん中で、
しかも今は日中である。おそらく気温は40度を超えるであろう。だがそれでも寒い。
肉体は暑さにより、止め処なく水分を放出する。熱気が体内に篭る。だがそれでも寒い。
「だがこの本部、寒さには慣れとるわ。ダンボールのトミコと新聞さえあれば」
シャツの中に新聞紙をはさみ、ダンボールに包まる本部。長年のアウトドア生活の知識。
しかしすぐに熱さにより脱水症状を起こし、その場に行き倒れる人間界の鍵を握る男。
飛影は当然の如くホームレスを無視し、その場に立ち尽くす。顔から汗を流しながら。
「いる。途方も無い妖気を持つヤツが。この先にな」
本部が感じた寒さを、飛影もまた感じている。それは、自分の心の内からくる寒さ。
即ちそれは恐怖≠ナある。一歩一歩、神眠る墓所≠ノ近づく度に、恐怖は増大する。
(強い・・。オレより強い炎の使い手が、この先にいる)
飛影の左腕が、ズクンと疼く。この左腕には、途轍もない妖力を封じている。
その左腕が猛り狂っている。まるで意志を持つかの如く。左腕の力は知っているのだ。
戦いの時が迫っているのを。かつて無い程の強敵が、そこで自分を待っているのを。
だが左腕の闘志とは逆に、飛影の肉体は金縛りの様に動かなくなっている。恐怖である。
その時、まるで飛影と本部の恐怖を払い退けるかの如く、陸奥 九十九が静かに言った。
「先を急ごうか。何が待っているかは、行かなければ分からない」
>>725 神眠る墓所≠ニは、魔界の巨大なピラミッドの事である。その巨大な四角錘の頂点で、
男は静かに佇んでいる。目を閉じ、湿気高い強風に吹かれながら、男は待っている。
2メートル30センチもの巨体は、しかし一切無駄な肉を感じさせない戦闘用肉体である。
隆々とした筋肉の鎧の下には、数多の激闘を勝ち抜いてきた、戦士の高みすら感じさせる。
精悍な顔。しかしただ勇壮なだけではない。深遠な哲学を感じさせる、真の戦士の顔。
男の名はアドルフ・ゴードン。魔界3強″ナ高の戦士にして、魔界最強の男である。
「来い。早く来い。獄炎の使い手よ。激闘に身を焼き尽くそうぞッ!!」
「この勝負どう思う、喪黒よ。ゴードンと精鋭部隊の」
バーンパレス。大魔王バーンはワインを片手に、ゴードンが映し出されるモニターを仰ぐ。
「文句無くゴードン様の勝ちです。ゴードン様に勝てる者はいません。ほっほっほ」
グラスに半分残ったワインを一気に飲み干し、バーンは視線を鋭くする。そして喪黒に言う。
「ゴードンはカーズと違い、私欲無く戦いのみに生きる男。これからも利用し易い男よ。
万が一にも失う訳にはいかんな。喪黒、そこで」
「ほっほっほ。分かりました。もしもゴードン様が危なくなれば、という事ですな」
そして一礼をバーンにし、謁見の間から退室する喪黒 福蔵。だがその目に、邪悪な光が宿る。
(バーン様はゴードン様を見くびっておられる。これは面白くなるかも知れませんな。
私のやり方によっては、魔王軍が割れるかも知れません。楽しみだ、ほ〜っほっほ)
>>726 「こ、これは何という闘気だ・・。勇次郎すら遥かに上回る」
本部は目眩を覚えながら、必死で意識を保とうとする。パーティは、ついに目的地へ辿り着いた。
しかし。ピラミッドの上部から一行を睥睨する男の闘気を感じ、彼らの歩みは止まる。
それほどケタ外れのオーラである。素人の本部でも分かるほどの。その巨漢を見て、本部は叫ぶ。
「ぬう。あれは正しく魔界3強≠フ一角、アドルフ・ゴードン・・。戦闘力だけならば、
大魔王バーンすら上回るといわれる、魔界最強の戦士かッ」
本部は魔界潜入の前、雷電との解説対決の為に、分かる範囲の魔界のデータを頭に叩き込んだ。
しかし、皮肉な物である。そのデータが始めて役に立ったのが、こんな絶望的な状況とは。
「とんでもない大物みたいだね。でも、別に関係ない」
陸奥 九十九が一歩前に出る。この男だけは、ゴードンの闘気を前にしても顔色が変わらない。
既に臨戦態勢である。ピラミッドの石段を、昇りだそうとする九十九。しかし背後から止める声。
「フン。貴様は人間界の切り札だろう。オレがやる。同じ炎の使い手のようだしな」
遥かな高みからその様子を見聞きし、ニヤリと笑うゴードン。その肉体から剛炎が噴き上がる。
飛影出陣。強大な戦闘能力を持つ魔界最強戦士、アドルフ・ゴードンとの激闘の幕が開く。
前回、誤字脱字が酷いなあ。
一個ずつレス上げていくと割合少ないのですが、3つ4つ一度に上げると
こうなります。でも一つずつだとその間、他の人が作品あげ辛いですし。難しいですな。
ネタの方はこれから戦闘ばっかりになります。
ちなみにゴードンはバーンやカーズよりも、戦闘能力だけなら上です。
その分バーンとカーズは特殊能力が強い感じかな?
総合的な最強はバーンで動きませんが。その内また戦闘力一覧書きます。
でも、ゴードン知ってる人はバーンや飛影より少ないだろうなあ。
乙。昼間から頑張るな
ゴードン強そうだ。飛び影勝てるの?
それぞれの漫画の設定はともかく、各々の原作描写をくらべた限りでは、
ぶっちゃけ、飛影がゴードンに勝つ姿は想像できない。
パオ氏の書き方にもよるけど、かなーり絶望的な戦闘になるかと。
731 :
作者の都合により名無しです:03/11/13 15:32 ID:44Lr02CL
人気的には飛影>>>(絶対の壁)>>>ゴドーンだけど
実力的にはゴードン>>飛影だろうな。
本部がスーパー会ヤ人になればもしかしたらw
「前編」
今日の朝、ゴンが死んだ。
あまりにも突然の出来事だった。
今日は、俺たちにとって決意に満ちた日になるはずだった。
ナックルとシュート。二人の刺客を見つけ出し、それを倒す。
ネテロ会長から出された試練だ。これを突破出来なければ、NGLにはいけない。
俺たちを窮地からかばってくれたカイトを、助けに行くことができない。
「明日から、頑張ろうな!必ずカイトを助けるんだ!」
二人で寝る前にそう誓い合った。きっと実現するはずだった。
俺とゴンは、別々の部屋で寝ていた。朝、いつまでたってもゴンは起きてこない。
あいつは自然の中で育った野生児。それだけに、朝は早かった。
早起き競争ではいつも勝てなかった。今朝はおかしかった。その時、俺はまだ楽観的だった。
初めてあいつより早く起きた!妙な達成感がこみ上げてきた。
からかってやろう!そう思った俺は、ゴンの部屋のドアをいきおいよく開けて叫んだ。
「ゴン!やったぜ!はじめてお前より早く起きたぞ!」
そう言うつもりだった。実際、「はじめて」あたりまではちゃんと言えた。
その後は、言葉にならなかった。あんなゴンの姿、見たくなかった。信じられなかった。
ゴンの寝ていたベッドは、真っ赤に染まっていた。それがゴンの血だということはすぐにわかった。
首筋が、ぱっくりと切り裂かれていたのだ。ゴンは眠るように、ベッドに横たわっていた。
顔の半分を、自分の血の水たまりに浸して・・。傷跡は少しの迷いもない、きれいな
ものだった。明らかにプロのしわざだった。俺も同類だったからよくわかる。
だが、俺はそこで二つの仮説を立てた。今となれば、目の前の現実を信じることからの
逃げだったのかもしれないが。仮説とはもちろん、ゴンの死についてだ。
@ゴンは操作系の能力者によって、操作され眠らされている。血のような物は
実はその能力者が、ゴンの血をさわることによって具現化したものだ。
Aこのゴンの死体は、実は偽物(フェイク)だ。具現化系能力者によって
本物とそっくりに作り出された物だ。当然、傷をつければ血も出るだろう。
この二つの仮説には前例があった。幻影旅団との戦いの際、俺やクラピカは
ある旅団員が具現化した他の旅団員の死体によって、騙されたことがある。
操作系の能力者の能力は、言葉の通りだ。物や人を操作する。ゴン以上の能力者なら
ゴンをこんな状態にすることも可能・・・。
仮説はもうひとつあった。Bゴンは死んでいる・・・。
B番は俺の心の中に封印することにした。きっと@か、Aのどっちかだ。
俺はゴンをそのままにして、様子を見ることにした。具現化された物なら
おそらく数日で消えるであろうし、操作されているなら、操作系能力者がそのうち
現れるかもしれない。その可能性を信じた。
1日たった。ゴンに変化はない。二日たった。変化ない。三日。変化はない。
ゴンは眠るように横たわったままだった。血の臭いをかぎつけたのだろうか。
ゴンの周りを、ハエやアブがぶんぶんと飛び出した。部屋の前も、騒がしくなってきた。
ホテルの管理人が怪しんでいるらしい。管理人がわめこうが、そんなこと関係ない。
だが、ハエにたかられているゴンは、かわいそうに思えた。それがたとえ具現化された
物かもしれないとしてもだ。俺は、ゴンをハエのよらない場所へ移そうと、体を持ち上げた。
すると、ズボンのポケットから、一枚の紙切れが落ちた。なんだろうか・・・。
俺はそれを拾い、二つに折られている紙を広げた。思わず固まった。
「キルアへ ゴンは俺が殺した。具現化も、操作もしてない。殺した。
まあ具現化か操作、二つの可能性にかけて、信じてゴンの様子をじっと見るのもいいだろう。
腐敗し、目がたれ落ち、皮膚はただれ、醜い姿になっていく親友の姿を見たいのならな」
紙切れにはそう書いてあった。この文を読んだ時点では、俺はゴンの死をまだ
信じていなかった。こんな脅迫みたいなの、くだらねえ。そう思い紙切れを捨てようとした。
すると、紙に書いてあった文字が突然消え、紙自身も、突然燃え尽きた。何が起きた・・?
前にも同じようなことがあった。ゴンの親父が、ゴンに向けて録音したテープを聴いた時。
ゴンの親父は、テープの声などによって、自分についての情報が漏れないように
テープに細工をしていた。この文を書いた人物もかなりの能力者・・・。
俺は悟った。そしてやっと我に返った。ゴンは死んだ・・・。それを受け入れよう。
思いは急に変わった。
何より、文の一節。「腐敗して醜い姿にやってゆく親友の姿を見たいのならな」
絶対に見たくなかった。思考の転換は、はやい方がいい。親父にそう教わった。
ゴンの死体を持ち出した俺は、それを大きめのバックに入れてホテルを出た。
数日後、くじら島の川のほとり・・・。ゴンの亡骸を土に入れた。ミトさんには
手紙でゴンの死を知らせた。とてもじゃないが、言い出せない。そんな役どころにも慣れてない。
なにより、俺の顔は、人に見せられるような状態じゃなかった。
川の水面に映る自分の顔を見て思う。ゴン・・・。お前は、俺の・・・俺の・・・
俺の心の支え・・・。一番の友達・・・。大事な仲間だったんだな・・・。
いつもは照れて言えなかったけど、もっと感謝の気持ちを伝えるべきだったな・・・。
ゴン、ありがとう・・・。お前との思い出、一生忘れない。
水面に映った顔はぐしゃぐしゃだった。涙で目の下は真っ赤になり、鼻水で鼻のしたは
かぶれていた。飛んでいた蚊が落ち、水面に波紋が出来た。
俺の顔はもっとぐしゃぐしゃになった。今度は別のことを思った。
ゴンを・・・ゴンを殺した奴を捜し出す。手がかりはないけど、きっと探し出す。
そしてゴン・・この墓の前でお前に謝らせる。前までの俺だったら、犯人を確実に殺してた。
だけどゴン、俺はお前と出会って変わったんだ。憎い相手だからといってむやみに
殺したりはしないよ・・。
ゴン、お前なりの悪の成敗の仕方でお前を殺した奴を裁いてみせる・・・。
ゴンの墓の前で、俺は何故かふっと笑ってみた。必ず・・・探し出す・・・。
くじら島を出たキルア。島と本土とを結ぶ連絡船の中、キルアは物思いにふけっていた。
ミトさんには、結局会わずに島を出た。やはり顔見せなんか出来なかった。
ミトさんの他にも、ゴンの死を伝えなければならない人が大勢いることに気づいた。
クラピカ、レオリオ、ビスケ、ウイング&ズシ、ゴレイヌ、ゼパイル、ヒソカ・・・?
そしてゴンの親父、ジン。
ざっとあげてみたものの、キルアが連絡先を知っている相手は少なかった。
ジンの連絡先は、もちろん知らない。ゴレイヌ、ビスケ、ゼパイル。
3人とも世話になった人物だが、詳しい連絡先等は聞いていなかった。
ヒソカ・・・。ゴンの死を伝えれば、犯人捜しに協力してくれるかもしれない。
一瞬考えるキルアだったが、すぐに取り消した。またやっかいな事に巻き込まれるかも
しれないからだ。
クラピカ、レオリオ、ウイング&ズシ。この4名には、ゴンの死を伝えなければ。
キルアは、それぞれ順番にケータイに電話を入れ始めた。
クラピカは、電話に出なかった。留守電のままだ。仕事が忙しいのだろうか。
留守電にメッセージを入れ、次へ。ウイングの携帯にも、つながらなかった。
ズシの試合か・・・?いや、意外とだらしない所もあったから、電源の電池が切れたまま
なのかもしれない。ウイング達は後回しにし、キルアはレオリオに電話を掛けた。
プルルルル・・。繋がった。数ヶ月聞いてなかった、あの微妙に耳障りな声が
キルアの耳に響く。
「おう、キルアじゃねえか!久しぶりだな!ってかお前から電話なんて珍しいな。
なんかあったか?」
手順を追って説明する手間がはぶけそうだ。レオリオの問いに対し、キルアは率直に
ゴンの死を伝えた。携帯の向こうのレオリオは固まって声が出ないようだった。
「マ・・マジ・・・かよ?ゴンが・・あのゴンが死んだってのか・・・?嘘だろ・・・?」
当然のリアクションだった。キルアは、必死にゴンの死を否定するレオリオをなだめた。
「俺だって最初はお前以上に信じられなかったよ・・・。でも、現実さ・・・」
キルアの言葉に、レオリオはすぐに納得した。キルアの、あまりにも覇気のない声を聞いて
真実だと悟ったのかもしれない。
キルアと同様に、レオリオもゴンの死を受け入れた。
すると、レオリオは、突然威勢のいい声で話し出した。
「キルア、俺に何か出来ることはないか?っつーか一度近いうちに会おう!
ゴンに別れも言いたいし・・・何よりお前の力になりたい。俺じゃ役不足かもしれないが・・」
キルアは、胸に何か暖かい物を感じた。ゴンと一緒にいる時に感じてた暖かい感情・・。
レオリオに対する、感謝の気持ちでキルアの心はいっぱいだった。当然、口に出すことは
出来なかった。レオリオにそんな自分を見られるのが嫌だった。
だが、レオリオの気持ちに、キルアは答えることにした。ゴンを殺した犯人捜し。
それに協力してくれと頼んだのだ。レオリオはすぐに承諾し、そういうことなら
今すぐに会おう!と半ば強引に、会う日程と場所を指定してきた。
レオリオは、ヨークシンでの戦いの後、生まれ故郷に戻ってきていた。
待ち合わせ場所は、レオリオのうちの近くの喫茶店。船から下りた後は、田舎町のような
のどかな風景が広がっていたが、待ち合わせ場所に向かうに連れて、都会の雰囲気が出てきた。
道ぱたに風呂敷を広げ、物を売っている商人がたくさんいた。商店街の通りに入ったようだ。
必死に物を売る商人と、必死に値切るおばちゃん。キルアは思った。レオリオも
ここで値切り技を覚えたのかな・・・と。通りを進むと、雑貨屋や、武器など
通ごのみの商店が並んでいた。キルアはゴンと過ごしたこの数ヶ月の事を思い出した。
ここを見てると、ヨークシンで目利き対決をしたのを思い出すな・・・。
あいつと初めて会ったのは、ハンター試験だった。俺と同じ12才。
初めての同年代の友達だった。ハンター試験は簡単だったな・・。そう、あの時までは。
兄、イルミが俺の目の前に突然現れた。イルミはこう言った。
「お前は根っからの殺し屋だ。お前に友達なんか必要ない。ゴンといるうちに
お前はゴンがまぶしすぎて、ゴンを殺したくなる・・・」
違う・・・。俺は、ゴンを殺したくなったことなんて一度もない!当たり前だ・・・。
イルミの言うことは間違ってたんだ。俺は、殺人鬼じゃない。変わったんだ。
ちっと唾を吐き捨てるキルア。ゴンとの思い出を振り返るつもりが、嫌なことを
思い出してしまった。レオリオとの待ち合わせ場所に急ぐキルア。
喫茶店につく。どすっと腰をつくと、急に腹が減ってきたのか店員に
注文をし出した。無理もない。ゴンの死の日からまともな食事をとっていなかったのだ。
育ち盛りのキルアにはきついものがあったのだろう。
運ばれてきたできたてのスパゲッティをほおぼりながら外を見ると、
黒いスーツに、サングラスを掛けた長身の男が見えた。レオリオだ。変わってないな・・・
キルアはそう思う。
「よっ!久しぶりだなキルア!」
レオリオは妙に明るかった。おそらくへこんでいるであろうキルアの気持ちを察して
わざと明るく振る舞っているのかもしれない。キルアは、そんな気遣いいらねえよと
言わんばかりに、レオリオの性格、格好等についてつっこみを入れる。なんも変わらねえな・と。
「久々に会ったってのにそれかよ・・・お前こそその生意気な性格、変わってねえな」
その後、二人はしばし談笑を続ける。ゴンの死については一切触れずに。
キルアは、テーブルに並んでいた食事を全て平らげると、急に神妙な顔立ちになり
レオリオの目をじっと見る。
「レオリオ、ゴンは死んだ・・・。で、携帯で話したことなんだけどさ・・・」
「ああ・・ゴンを殺した犯人を捜すんだろ?いいぜ。もう準備は出来てる」
レオリオは間髪入れずに返答した。こうなれば、事は早い。と言ってもゴンを殺した
犯人についての手がかりは何もない。犯人は、おそらくかなりの念能力者だということ
ぐらいだ。それを聞いたレオリオは、一度俺の家に来いと言う。キルアのそのぼろぼろの
格好を直し、心を休ませてあげたかったのだ。喫茶店を出る二人。突然レオリオの携帯に
電話がかかってくる。
「もしもし・・・おう、なに・・・・?わかった。すぐ行く」
なんだ・・・?何か緊急の事態でもあったか・・・?キルアは問いかける。
「お、おい・・・どうしたんだレオリオ」
「急患だよ。家に帰るついでだ。お前も来い」
急患・・・?意味がわからない。あいつは確か医大生のはず。いや、まだ受かってないのか。
医者のバイトでも始めたのか・・・?少しの疑問を抱きながら、キルアはレオリオについて行く。
レオリオの家は、ごく普通の民家だった。少しぼろくなって開きの悪いドアを開けると
小さい女の子とそのお母さんらしき人物が椅子に座っていた。まるで診察室のようだ。
キルアはそう思う。医者に必要な薬などは置いてないが、入院用のベッドや
診察台もあり、レオリオが本当に医者になったのかと錯覚を起こしそうだった。
「レオリオさん・・・娘が、子連れオオガラスに突っつかれてしまって・・・
腕の一部分がえぐられてしまって・・・。娘は気を失っています・・お願いします・・」
椅子に座っているお母さんが、泣きそうな声でレオリオに頼む。その女の子の腕は、見事に
ぱっくりとえぐられていた。これは普通の治療では元に戻りそうもない・・・。
レオリオは、その女の子の患部に手を触れ、目をつぶり何かをぶつぶつつぶやき始めた。
(・・・・・・・女神の吐息!!(エンジェルワーカー)・・・・・・・)
念・・・だ。キルアは一瞬でそう思う。様子を見ているお母さんには、何が起こっているのか
わからないようだ。レオリオの手は、黄金の光に包まれていた。明らかにレオリオのオーラだ。
女の子の傷跡は、みるみるうちに塞がっていく。体を回復させる・・。レオリオの念能力!!
「もう大丈夫だよ、お母さん。後は安静にしておいてくれ」
お母さんは、まるで奇跡が起こったかのように泣き喜んでいる。無理もない。
普通の人には考えられないようなことが、念では可能になるのだ。すやすやと眠る女の子を
抱きかかえ、お母さんはお礼を言って、家を出ていった。キルアはレオリオに尋ねる。
「今の・・・念だろ?お前、「纏」までしか使えないんじゃなかったっけ?
つーか医大はどうしたんだよ。もう試験を受けててもおかしくない時期だろ?」
レオリオは冷蔵庫から冷たいビールを取り出し、飲み出した。顔は汗でびっしょりだ。
さっきの能力を使ったせいだろうか・・・。
「医大は・・受かった。受かったんだよ・・」
「じゃあなんで今こんなことやってんだよ」
「俺の思い描いていた医療と、あまりにもかけ離れていたんだよ。医大の連中は、患者を
金ヅルとしか思ってなかった。それどころか、実験台にさえする始末だ。俺がハンターだと
わかると、急に態度を変えて、優遇してきた。普通の学生では考えられないほどな・・。
そんなクズ共を見てたら、なんか幻滅してきちまってな・・・」
何があったのか、詳しくはわからなかった。だが、レオリオは医大を辞めたようだ。
見かけによらず、正義感の強いこの男らしいな・・とキルアは思う。
「ああ、それとさっきのやつ、念能力だろ?あれはいつ覚えたんだよ?」
「一ヶ月ぐらい前だな。医大を辞めてから、俺はまた念の師匠の所へ戻ったんだ。
そして事情を説明した。すると師匠は、お前にぴったりの能力が、念によっては
使えるようになるって教えてくれたんだよ」
「それがさっきのか?」
レオリオは、自分の手をキルアに向けながら、語り始めた。
「そうだ。「女神の吐息」自分を含めた人の、外傷を治すことが出来る・・・。
俺は強化系。自己治癒力を高める修行をすることによって、この能力が開花したんだ。
最も、治せるのは今は外傷だけなんだよな・・・」
そう言うと、レオリオはキルアの首元をじっと見つめる。少し、大きな傷があったのだ。
レオリオは尋ねる。その傷・・・どうした?
「傷・・・?あ、本当だ。なんだろうこの傷。えっと・・・NGLではケガしてないし・・
いつの傷だ・・・・?????」
キルアは、その傷をいつ負ったのか、わからない様子だった。中途半端な傷だった。
まるで、首に致命傷を与えようとしたが、直前でためらい、中途半端になってしまったような・・。
「まあいい。丁度いいからこの傷、治してやるよ」
レオリオはキルアの首元に、そっと手を触れて念を込め始めた。
「外傷しか治せないってことは、体の内側の重い病気には効果なしってことだ。
つまり、お前のこの傷は治せても、お前の内臓や心の病気は治せないってことだ。
もっと強い制約をつけなければならねえかもな」
「おいレオリオ、俺病気なんてしてないぜ?」
「はっはっは、たとえばの話だよ・・・」
キルアの傷は、ものの一分ほどで完全に塞がった。レオリオは得意げに、もう一つの能力の
説明を始める。
「俺のもう一つの能力。「女神の道標」(エンジェルサイン)俺の念によって、人の悪い
ところを、教えてくれるんだ。これによって内臓の深い所に傷があったとしても、すぐわかる」
「へぇ・・・」
「これにも欠点があるんだよ。病気やケガの場所がわかっても、治療ができねえ。
外傷だったら「女神の吐息」で治せるしな。だから、ちゃんとした医者に治療して
もらわなけりゃなんねえんだ・・・」
キルアは感心していた。ハンター試験、ヨークシンと、レオリオについては
少し頼りないというイメージしかなかった。それが、今は念を極めはじめ、きちんとした
能力も身につけている。いいことだ・・・。
「お前、意外と頑張ってるんだな」
「当たり前よ。この能力を身につけてから、この町で診療を始めたんだ。
もちろんただでな。いまではこの町の売れっ子ドクターだぜ」
そう笑顔で話したレオリオの顔。やはり頼もしいくなったな・・。キルアはそう思った。
ちょっと長めですが、前編を一気に書きました。
後編はこの後仕事なので、土曜日にのせます。
最近のジャンプ読んでないと、最初のほうわかりづらいかもしれませんね。
では。
744 :
作者の都合により名無しです:03/11/13 15:55 ID:44Lr02CL
おお、力作が来た。作者さん乙。後編も宜しく。
しかしついにハンターまで題材になったかw
ジョネスって、喪黒と絡んでいた記憶があるが、パオ氏の本編だっけ?
ゴンキル外伝は、救いの無いあのパターン、キボン。
靄に巻かれる人影。
顔がよく見えない。
ただ懐かしい感じはした。
ヤムチャは親の顔を知らずに育った。
森の中で獣同然で生きた。彼の母は森だった。
そんなある日出会った。それは、彼の人生を大きく変貌させる出会い。
ブルマ――――ヤムチャは彼女の中に、何故か母の面影を見たのだった。
彼は目を覚ます。そこは船室。
目には涙が溢れていた。止まらない。
ブルマ……母さん………。
彼は呟き、意を決して立ち上がる。それは力強さに満ち満ちていた。
船室を出でて階段を駆け上る。前進する。
阿鼻叫喚。
船上はまさにそう形容するに相応しい風景である。
空を高速で飛びまわるピーターパンを捉えられない。
蠢くゴミどもを次々と切り伏せてゆく。ヒットアンドアウェイ。すぐに舞い上がる。
フックは叫び煽り立てるが状況は全く変化しようもなかった。
そんな時、誰も気付かなかったが、場に歪が生じた。極々ちいさな亀裂だが――。
どんなに堅牢な盾でも、ヒビが入れば破壊される。この時の状況はそれに似ていた。
それは突然飛び出てきた。
一直線にピーターパンに向かう。緑色の服に掴みかかろうとするが、寸でのところでかわされる。
それ――ヤムチャは、船上に降り立った。
「おい、オレが誘導するからそこを狙え」
「……………」
別人のようだった。フックの長い人生のうち、慄いたのはこのとき限りだったという。
体の奥から流れ出てくる圧力に、フックはただ頷く。それ以外どうしようもなかったのだ。
ヤムチャは再び空に跳ぶ。ピーターパンは身構える。先ほどの一見で速さは見極めたつもりだった。
しかし、彼は愕然とする。さっきより数段速い――――!!
狼狽したピーターパンはヤムチャに「誘導」された。
ヤムチャの蹴りは下方から迫って来る。高速で。
威圧に気圧されてピーターパンの思考は停止した。馬鹿となんとかは高いところが好き――。
間隙を突き空気を切り裂き、もう一つ船上からのびてくるものがあった。
それはヤムチャを越えピーターパンを捉える。胸元の大きく開いたところに引っ掛かる。
フック船長の特別製・“のびるアームフック”。ピーターパンを倒す為に作られた謹製の品。
目標に達したフックは急激に帰還運動を開始する。
そして、戻る。こんにちは、ピーターパン――――。
「俺たちは三の島近くのアジトに戻るんだが…お前はどうする恩人?」
ピーターパンをサメの餌にした後、フックはホクホク顔で訊ねる。
勿論、恩人とはヤムチャ。フックは狡猾かつ義理堅い男である。
「二の島の港に降ろしてくれ。探してるんだ」
「港で降ろすと騒ぎになるし、俺らにとってもうまい話じゃねえからな。その近くで降ろしてやる」
髭を弄りながらフックは言う。ヤムチャは不快感を覚えた。
ヤムチャは二の島に降り立った。また陸地の旅が始まる。
フックはそれを見送ると踵を返しアジトに向かうよう指示する。
先ほどの戦闘に参加していなかったスミーがフックに駆け寄ってくる。
手には何か地図みたいなものを握り締めている。
「船長!! 中央島への進行予定経路です!!!」
「そうか、出来たか…ふふふ、財宝は俺のものだ……」
他の皆様と比べて短い&遅い&つまらなくてすみません。
ただ、しばらく休んでいるうちに自分の中で迷いが晴れた感じがありまして、
今まで退屈な話でしたが、今後はもう少し面白く出来そうな気はしてます。
次はCase2に入ります。まとめにくくて申し訳ないです。
749 :
作者の都合により名無しです:03/11/13 20:38 ID:rrpvS3cN
パオ氏、
>>743氏、中央島氏、みんな本当に乙。
新人さんは増えたし、従来の職人さんたちは頑張ってるし、
今すごく調子良いな。移転は本当に成功でしたね。
ムツジさんの番外編や、
>>743氏のハンターや、
中央島氏のヤムチャなど、バラエティに富んでるし。
あとはVS氏とトモ氏と夜王氏の復活を待つのみ。南無南無
750 :
作者の都合により名無しです:03/11/13 22:23 ID:44Lr02CL
盛り上がってるな。四天王とかいわれてた頃のようだ。
荒らしがそういない事を考えると、それ以上かも。
職人さんたち、いつも乙。
訂正です。
前回、アカギの下家にジャイアンがいると書きましたが
正しい席順はアカギ・スネ夫・ジャイアン・しずかです。
それでは、本編です。
赤木しげる。
およそ麻雀の世界に生きる人間で、その名を知らない者はいない。
巷間曰く、1,000点20円の雀荘で五億円勝って老人を破滅においやったとか
巨人の助っ人として来日したが、麻雀牌より重いものが持てないので
解雇されたとか、髪が真っ白なのはネズミに耳をかじられたからだとか。
そんな噂が噂とは思えないほどの悪魔的な強さを誇る、伝説の雀鬼である。
伝説の雀鬼アカギが、目から血を噴いて仰向けにぶっ倒れた。パンチ一発で
アカギを秒殺したジャイアンが、アカギの顔面をドタ足で踏みつけてポツリと
つぶやいた。
「さて、と」
何事もなかったかのように自分の席に戻ると、スネ夫としずかも各自の席に
ついた。ピクリとも動かないアカギの脇腹を、両サイドから激しく蹴りつけて
着席を促す。
よろよろと起き上がったアカギがもたれかかるようにして椅子に沈み込んだが
血まみれの顔面には、依然として余裕の笑みが刻まれている。ボコられたという
現実から完璧に目を背けている辺り、さすがに大物である。
南一局、しずかの親から試合再開。奥の窓ガラスが割れて何かが転がり込んできた
ようだが、誰も気にとめない。
スネ夫としずかの裏切りによって孤立無援となったジャイアンが、対面のアカギを
激しく睨み付ける。そのアカギが牌をツモるたびに、左右に控えたスネ夫としずかが
力強い励ましの声援を送る。
「おら、とっとと切れよ天才。どうせ何にも考えてねーのにダラダラと時間ばっかり
かけやがって。小学生相手に長考ぶっこいてんじゃねーよ」
アカギの後頭部を便所のスリッパで張り飛ばして、スネ夫が毒づく。
「白髪なんか生やしたって騙されないわよ、アンタ童貞でしょ。違うんだったら
今すぐパンツ下ろして得意の体位をご披露しろってのよ。どーなのよ雀鬼」
アカギの股間に焼きゴテを押し付けて、しずかが呪いの言葉を吐く。ジャイアンに
ボロ負けして醜態をさらしたアカギに対する畏敬の念など、すでにかけらもない
様子である。当のアカギは一言も言い返さず、相も変わらず薄笑いを浮かべている。
悔しくないのかよウスバカ。
全裸の少年が衣服を探して部屋をうろつき回る一方で、牌をツモったジャイアンの手に
わずかに力がこもった。
二三(2)(2)(3)(3)(4)(5)23477 (4)←ツモ
五筒を切ればテンパイだ。ドラの四萬ならばタンピン三色イーペーコードラ1で
ハネマン確定だが、一萬でアガった場合はピンフイーペーコーで2,000点にしか
ならない。トップのアカギとの差は30,000点以上。ここは何としてもハネマンが欲しい。
五筒を切ったがリーチはかけない。このメンツがおいそれとドラを切るとは思えないが
ダマテンに全てをかける算段だ。テンパイしてもリーチをかけない状態をダマテン、
あるいはヤミテンという。手替わりを期待して、あえてリーチを保留している状態は
仮テン(カリテン)と呼ぶ。
しずかの切った一萬を当然のように見送った。あくまでも四萬狙いのジャイアンを
あざ笑うかのように、直後のアカギとスネ夫が続けざまに四萬を切り飛ばした。
しずかの一萬を見逃しているので、同巡に切られた四萬ではフリテンとなって
アガることができない。ジャイアンの血液は沸騰した。コイツら、やっぱり
ツルんでやがる!
結局、スネ夫がチートイツをツモってさらりと場を流した。全裸の少年が運んできた
コーヒーに口もつけず、ただちに南二局に突入する。
ジャイアン以外の三人の顔に、イマイチ冴えが見られない。配牌に不満があるようだ。
不満を抱えたままでは体に悪い。体に悪いのはイヤなので、三人がそれぞれの配牌を
のぞき込んで、お互いの必要牌を交換し始めた。
「ってオイ!いくらトリオ打ちだからってそれはやり過ぎなんじゃねーのか!」
ジャイアンの訴えはもっともだが、それに対するスネ夫としずかの切り返しは
さらにもっともであった。
「何言ってんだよ。今まで散々トリオ打ちでいい目を見てきたんだから、ちょっと
オチャメをされたぐらいでピーピーさえずってんじゃねえよ。犯すぞ」
「そんなにアタシ達が羨ましいんだったら、タケシさんも誰かとタッグを組んで
好き放題やったらいいじゃない。ほら、助けを呼びなさいよ、助けを」
この間、アカギは例のニヤニヤ笑いで黙って腕を組むばかりである。自分の意見は
ないのかよヘコキムシ。
「助けったって、ここにいるのは俺たち四人だけじゃねーか!上等だ、あー上等だ。
貴様らのお守りは俺様一人で充分だ!」
闘志を燃やすジャイアンの後ろで、全裸の少年が構ってもらいたげに指をくわえて
突っ立っているが、麻雀に夢中の三人にはまったく眼中にも入らない。
強情我慢の心意気はあっぱれだが、百戦錬磨の三人が相手ではさすがのジャイアンも
多勢に無勢である。破局は三巡目にやってきた。
「リーチ」
「リーチ」
「リーチ」
しずか、アカギ、スネ夫が立て続けにリーチをかけた。対するジャイアンはまだ
サンシャンテン。ジャイアンの手の遅れを察した三人が、両手を手牌にかけて
ロンの体勢でジャイアンに邪悪に微笑みかける。絶体絶命のジャイアンが、後ろを
振り返って泣き叫んだ。
「のび太くん、哀れな俺様を助けてくれ!」
「気づいてんなら最初っから声かけろよ、デブ!」
のび太の怒りが一番もっともだ。
ムツジさん、ハンターハンターさん、お久しぶりの中央島さん。
ずいぶんとにぎやかになってきましたね。パオさんや
ふら〜りさん、バレさん共々、以後のご活躍を楽しみにして
おります。
以前ハンターハンターのウソバレを1本書いたことが
あるのですが、ありゃネタにしにくい漫画ですね。そういう意味では
ハンターハンターさんのお話が特に楽しみであります。
うおお。VSさんまで。凄い大漁だ、今日。
VSさん相変わらず殺人デンパ凄いな、本当。
バレさんは更新大変そうだけどw
758 :
テンプレ:03/11/13 23:22 ID:9IIRzhiH
>>758 乙。問題はスレタイか。
【バキ】漫画SSスレへようこそpart10【スレ】
別にもう変えなくてもいいんじゃない?
俺はこれより良いスレタイは思い付かん。
>>688 リュウの頼み。一度はフレイザードに完膚なきまでに叩きのめされた男の思い付きが、
そう簡単にハイそうですかと聞き入れられるはずもなかった。巽が尋ねる。
「またか・・。今度こそ大丈夫なんだろうな?」
リュウが答える。
「もし当たれば、な・・。命中さえすれば確実に勝てる。だがおそらく受けて立ってはくれないだろう。」
「そいつが当たるように奴を抑えろと?・・くだらない。俺は俺のやりたいようにやらせてもらう。」
一歩一歩フレイザードに向けて歩みを進めていく巽。恐怖など微塵も感じられない。
巽の中で明らかに何かが吹っ切れていた。それを見たガルシアが言う。
「気にするな、奴はこれ以上ないまでにプライドを傷つけられた。
グレート巽ほどの男がそれを甘んじて受け入れられるはずがない。・・そして俺もな・・。」
ガルシアが巽の後に続く。リュウの静止も耳に入らない。そして鷹村もまた。
「てめえのクソみてえな笑い声を聞いてるとますます憎ったらしくなって来たぜ・・
もう一度言ってやる。てめえは必ず俺がぶっ殺す・・!」
鷹村の拳がうなる。フレイザードはかわそうともしない。
この男のパンチが効かないことはもう十分に確かめられている。しかし。
「ウガッ!」
フレイザードの体が大きく後方にぐらつく。
(馬鹿な・・こいつのどこにこんな力が・・)
巽の全力疾走からのヘッドバッド。この攻撃も本来ならば軽く跳ね返されていただろう。
だが巽は確信していた。通じると。そしてその通り、怪物は大きく吹き飛ぶ。
「グハァッ!な・・なぜだ・・!なぜてめえらなんかに・・
冗談じゃねえ、氷漬けになっちまいな・・!!マヒャド!!」
しかし何も起こらなかった。知らぬ間に後方に回っていたガルシアが言う。
「思った通り・・お前は先ほどの渋川の攻撃で甚大なダメージを受けている・・
その上過剰なまでの大呪文の連発・・こうなっていることは予想がついた・・!」
ガルシアが背面へのタックルを仕掛ける。前方で待つ巽の目の前に飛ばされるフレイザード。
「ダッシャアアアアアア!!!」
巽のドロップキック。典型的なプロレス技が魔界の怪物に炸裂し、またしても大きくよろめく。
さらに鷹村とガルシアが同時に飛び掛る。