IFSS〜ダム世界が平和だったら〜

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1通常の名無しさんの3倍
もしガンダム世界が平和だったら・・・という、女子大生セイラさんが主役の
リレーSSがスレタイを改めて復活です。

たくさんの方の参加をお待ちしています。
ただし、参加にあたっては次の事項>>2をお守りください。

22:04/02/01 00:04 ID:???
2
3おぬこ:04/02/01 00:04 ID:???
(;@Д@)<お、お、お、お、おぬこで
4通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:05 ID:???
       へ ヘ        へ ヘ        へ ヘ
      \| /       \| /       \| /
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  ∧∧⊂.;'、 :つ  ∧∧⊂.;'、 :つ  ∧∧⊂.;'、 :つ
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  `"∪∪''`゙    `"∪∪''`゙    `"∪∪''`゙

Q ↑これはエビフライだと思うのですが・・・?
A テンプラです。

  ,.、,、,..,、、.,、,、、..,_       /i
 ;'`;、、:、. .:、:, :,.: ::`゙:.:゙:`''':,'.´ -‐i
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  `"゙' ''`゙ `´゙`´´´

Q ↑これはさすがにエビフライですよね?
A テンプラ以外のなにものでもありません。

Q:これはエビが顔を出しているのでエビフライでしょう!
    ,.、,、,..,、、.,、,、、..,_       /i
   ;'・д・、、:、.:、:, :,.: ::`゙:.:゙:`''':,'.´ -‐i
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    `"゙' ''`゙ `´゙`´´
A:あなたもしつこい人ですね。
  天ぷらったら天ぷらです。
5通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:06 ID:???
■参加にあたっての注意■

□かなり長く続いております。
 初めてSSに参加される方はご面倒でも過去スレに目を通し、これまでの
 流れをつかんでください。

□NG事項
・むやみに登場人物を殺す。
・脈絡のないエッチシーンを書く

□登場人物は出来るだけUC限定にてお願いします。


みんなで楽しいSSを作っていきましょう!


6通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:07 ID:???
IFSS  国際犬ぞり連盟
7通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:07 ID:???
8通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:08 ID:???
■セイラタン・・・・(;´Д`)ハァハァ リレー小説保存庫■
スレのSS部分だけを纏めてくださっているサイト
http://www.page.sannet.ne.jp/a5taka/

■お絵かきの掲示板■
セイラさん関係のお絵かき掲示板を提供くださっているサイト
http://dog.oekakist.com/sleggar/

9通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:08 ID:???
界面せん断強度(Interfacial shear strength:IFSS)
10通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:09 ID:???
■ここまでのあらすじ■

あれから幾年かが過ぎ、セイラは大学生になっていた。
ララァは不慮の事故で行方不明になり、傷ついたシャアは音楽プロデューサーを辞めて
アクシズに留学する。
ガルマとは良好な恋人関係が続いているセイラだが、ある時、ミュージシャンになった
スレッガーと再会し心が揺れる。
同じ頃、イセリナが留学生としてガルマの大学にやって来た。今も深くガルマを愛する
イセリナは二人の仲を裂こうと画策して・・。


随分長く続いているストーリーですので、詳しくは過去スレ>>3を読んでください。

11通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:10 ID:???
メガテンIF SS版
12通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:10 ID:???
□アルテイシア・ダイクン(セイラ):主役。ブラコン気味の女子大生
□キャスバル・ダイクン:セイラの兄、アクシズに留学中
  かつてシャア・アズナブルの異名で音楽プロデューサーとして活躍した
□ジオン・ダイクン:セイラとシャアの父。サイド3の首相
□ガルマ・ザビ:副首相デギンの末子、シャアの親友。セイラとは恋人。
□ギレン・ザビ:ザビ家長男、ジオン内閣首脳の一人
□サスロ・ザビ:ザビ家次男、トップモデルで売れっ子カメラマン
□キシリア・ザビ:ザビ家長女、大学院生?
□ドズル・ザビ:ザビ家三男。妻ゼナ、長女ミネバがいる
□デギン・ザビ:ザビ家の長。サイド3の副首相
□ハマーン・カーン:ザビ家の遠縁の娘。かつては無邪気にシャアを慕う少女
だったが、アクシズから戻りガラリと雰囲気が変った。
□マハラジャ・カーン:ハマーンの父
□ジンバ・ラル:ジオンの腹心
□ランバ・ラル:ジンバの息子で同じくジオンに仕えている
□クラウレ・ハモン:ランバ・ラルの部下?
□マ・クベ:サイド3の若手議員。キシリアと付き合っている

13通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:12 ID:???
□ゴップ提督:地球連邦政府の高官
□ゴップ提督の令嬢:かつてシャアの見合い相手だった
□ララァ・スン:大ブレイクしたシンガー。シャアの愛人だったが行方不明に
□アムロ・レイ:駆け出し中のシンガーだったが、ララァの事件以来芸能界を引退。
□カミーユ・ビダン:フラナガン研究所のホープ
□ナナイ・ミゲル:レコード会社「レウルーラ」社員で、プロデューサー時代の
シャアの秘書兼愛人
□マリガン:ララァのマネージャーだった
□ドレン:アムロのマネージャーだった
□シムス:シャアの指示でスレッガーやアムロをスカウトした人
□ウォン・リー:ララァのコンサートのスポンサー
□パプティマス・シロッコ:「ティターンズ」のプロデューサー
  シャアと陥れる為、コンサート初日のララァを拉致した
□イセリナ・エッシェンバッハ:セイラの友人だったが、ガルマの事で決別
□ミライ・ヤシマ:セイラの友人、妊娠中
□クェス・パラヤ:セイラの友人
□ブライト・ノア:ミライをついに妻にする
□マチルダ・アジャン:セイラの所属するブラスクラブの顧問だった
□ハサン:セイラの学校の校医
□アナベル・ガトー:シャアとガルマの先輩
□ケリィ・レズナー:シャアとガルマの先輩
□ニナ・パープルトン:ガトーとケリィの女友達
□ラトーラ・チャプラ:ガトーとケリィの女友達
□マツナガ:シャアの友人
□マルガレーテ・リング・ブレア:シャアの担当教授の秘書。シャアの愛人の一人
□レコア・ロンド:シャアの後輩で元愛人
  シャアを恨んでおり今はシロッコと付き合っている。ララァ拉致の実行犯

14通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:13 ID:???
  ∧_∧   ∧_∧ .  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 (´Д⊂ヽ  (´Д⊂ヽ  (´Д⊂ヽ< 明朝トリオ参上!!
⊂明朝 ノ ⊂明朝 ノ ⊂明朝 ノ  \_______
  人  Y  .  人  Y  .  人  Y
 し (_)   し (_)   し (_)
15通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:14 ID:???
□スレッガー・ロウ:セイラの先輩で元恋人。木星に留学していたが・・・
□リュウ・ホセイ:スレッガーと共に木星へ留学していた
□ジョブ・ジョン: スレッガーのバンド「ソロモン」の元メンバー
□ウッディ:スレッガーのバンド「ソロモン」の元メンバー。マチルダの恋人
□ベルトーチカ・イルマ:元カレのスレッガーを追って木星へ
□タムラ:喫茶店兼レストラン「木馬亭」のマスター
□フラウ・ボウ:「木馬亭」のアルバイト。アムロに淡い恋心
□ハヤト・コバヤシ:フラウの同級生
□カイ・シデン:ライブハウス “Pegasus” の客
□ブーン:週刊誌マッド・アングラーの編集長
□赤鼻:上記のカメラマン。かつて、ガルマとセイラのスキャンダルをでっちあげた
□ミハル・ラトキエ:上記の新人カメラマン。カイのご近所さん
□ジュドー・アーシタ:ジャンク屋の少年。ララァ救出の時セイラに力を貸した
□カムラン:ミライの親の決めた婚約者だった
□ギュネイ・ガス:上級生、クェスの彼氏!?(設定のみ)


以上ほとんど前スレからコピーです。
リレーSSなので皆さん参加してください。

16通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:15 ID:???
>1
乙です!ありがとうございます!!
17通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:15 ID:???
前スレの最後のSS


「アムロ・・・」
両腕に伏せていた顔は涙でぐしょぐしょだった。
「ど、どうしたんです!?」
驚いて問うとベルトーチカは気まずそうに顔を背けたが、やがて自嘲するように
言う。
「スレッガーに抱いてって言って、断られたの。それだけ」
「・・・・・・」
「いいのよ、分かってたことだから。じゃ、おやすみなさい」
テラスにもたれかかるようにしてよろよろと立ち上がる。
その姿を見ながらアムロは今日リュウから聞かされたばかりの彼女とスレッガーの
話を思い出していた。
「・・・君を見てると、ある人を思い出すよ」
ぽつりともらされた言葉にベルトーチカは足を止めて振り返る。
「彼女も思いの届かない人を愛して・・・愛し続けていて・・・」
アムロの脳裏にエメラルドの海が広がる。
「たとえ報われなくても、その人の傍にいるだけで幸せなんだって言っていた」
「そんなの、負け犬の言うことよ! 私は違うから! 私は絶対スレッガーを
もう一度振り向かせてみせるんだから!」
声を荒げるベルトーチカをアムロは痛々しく思う。
「そう、君と彼女では全くの正反対だ。でも・・・」
・・・でも、同じ不幸をたどる気がしてならない・・・。
アムロは自分の上着をベルトーチカにかけてやりながら続けた。
「一人の人を思い続けることは素晴らしいことだと思う・・・でも、それに
とらわれていたら、幸せになる道を自ら閉ざすことになる」
「・・・・・」
「愛し愛される、そんな恋が君にもきっとやってくるんじゃないかな」
そんな幸せを知ることもなく、彼女は宇宙に消えてしまった・・・。
「幸せになって欲しいよ、ベル。僕が言うのもなんだけど」
「アムロ」
「じゃ、おやすみ」
アムロは微笑むと、屋上を後にした。
18通常の名無しさんの3倍:04/02/01 00:38 ID:???
>>1
乙です!嬉しいなぁ
19通常の名無しさんの3倍:04/02/01 02:06 ID:???
「・・・」
セイラは窓辺に吊るされたプランターを眺めながら、小さく溜息をついた。
「アルテイシアったらさっきから何回目?」
「あ、・・・ごめん、ミライ」
ガルマとのことで悩むセイラはその日、なんとなく友人宅を訪ねていたのだ。
しかし付き合っていることすら自分の口からは話したこともなく、また恋愛相談など自分の柄ではないと承知しているだけに、口から出るのはたわいのない雑談と溜息ばかりだった。
そんなセイラの心情を知ってか知らずかミライは、優しく微笑んだ。
「いいわ、お茶替えるわね」
ポットに手を伸ばそうと半分腰を浮かしたその体は、もういつ生まれてもおかしくないほどお腹が膨らんでいる。
「予定日、再来週だっけ」
「ええ、だけど初産でしょ、いつ・・・」
リンリンリンリン!!!
突然けたたましく玄関のベルが鳴る。
「誰かしら」
ミライがドアを開けると同時に飛び込んで来たのは、かつてのクラスメイト、クェス・パラヤだった。
「ニュース、ニュースよ、ミライッ! なんとついにイセリナがガルマ・ザビと付き合い始めたって!・・・・って、え、ア、アルテイシア!?」
そこで初めてセイラの存在に気づき、クェスは飛び上がった。
20通常の名無しさんの3倍:04/02/01 02:08 ID:???
「まぁ、おかけなさいな、クェス」
真っ青になった友人をなぐさめるようにミライは椅子をすすめる。
「う、うん・・・」
しょんぼりと項垂れながらクェスはちらりとセイラを見た。セイラは無表情のまま、指先でティーカップに描かれたバラの絵をなぞっている。
クェスだって、高校時代セイラとイセリナの間に何があったのか、うすうすは気づいていた。もちろんガルマとセイラの今の関係にも。
「で? その話、誰に聞いたの?」
「・・・・イセリナ」
「そう」
ミライがわずかに眉を顰める。
「ごめんっ、アルテイシア! でも、多分それって嘘だと思う。・・・嘘っていうか、イセリナの願望っていうか、だからっ」
「分かってる」
やっとカップから目をあげるとセイラは寂しそうに微笑んだ。
クェスに吹き込めば自分に伝わる。イセリナの計算だ。
「気にしないでいいわ、クェス。 ミライ、今日はありがとう。楽しかった」
「アルテイシア!」
バッグを手に立ち上がるセイラをミライは追いかける。
「心配しないで。さようなら」
なおも心配げに自分を見つめる友人たちに片手をあげて別れを告げると、セイラはアパートを後にした。
21通常の名無しさんの3倍:04/02/01 02:11 ID:???
夕方の並木道を家路に向かって歩きながら、セイラの心はどんどん重く冷たくなってゆくのだった。
手段を選ばないイセリナ。自分を愛しているといいながらイセリナを拒絶しきれないガルマ。
イセリナ、昔はあんな人ではなかった。自らを貶めるような、あんな嘘をつく人ではなかったのに。
でも、問題の本質はきっとイセリナではないのだろう。
かつてはあんなに好きだと思ったガルマの優しさが、今はずるさに思える。昔から誰に対しても、
どんな相手に対しても徹底的に冷淡にはなれないが故に、ガルマの周りはいつも言い寄る女性でいっぱいだった。時にはそれに小さな嫉妬を燃やしたこともあったけれど・・・今は逆に冷えてゆくのを感じるだけだ。
「ふ、勝手なものね、自分のことは棚にあげて」
気づいて自嘲する。ずるいのは自分だって同じではないか。もう終った恋の相手に、もう愛してはいない男に、手を差し伸べられたとはいえ縋ってしまった。
あの時どんなに辛かったとしても、先輩の気持ちを知っていたのだから、バイクに乗るべきではなかった。 先輩を利用し、ガルマを傷つけた。そんな自分はなんとずるく、醜いのだろう。
「・・・・もう、駄目ね、きっと・・・ガルマ・・・!」
やっと結論が出た・・・身も心も疲弊したセイラは、溢れる涙を止める事が出来なかった。
22通常の名無しさんの3倍:04/02/01 02:14 ID:???
はーい!さっそく入れさせて頂きました!
色々あって疲れてしまって、気持ち喪凹んできて、もういいや、って感じでしょうか。
続きよろしくお願いします。
23通常の名無しさんの3倍:04/02/01 08:19 ID:???
ワーイ、さっそく続きが!面白いです。
優しさがガルの長所でもあり短所だね。別れてしまうのかな?
今後の展開が楽しみだ!
24通常の名無しさんの3倍:04/02/01 20:58 ID:???
辛いなぁ…
ガルマも決して優柔不断なわけではないんだけどね。
ちゃんとイセリナ断ってるし。
でもセイラにしてみたら、そこは見えないわけで。

もう別れてしまうのでしょうか?
25通常の名無しさんの3倍:04/02/04 08:16 ID:???
続き希望です
26通常の名無しさんの3倍:04/02/05 00:17 ID:???
別れるでしょう
27通常の名無しさんの3倍:04/02/05 19:09 ID:???
そ、そうなのかな?だとしたら悲しい。続きが待ち遠しいです。

ガル 「戻る気になりゃいつでもおいでよ」
セイラ 「・・・」
28通常の名無しさんの3倍:04/02/05 19:55 ID:???
うーん、ちょっと進めてみます。
あとよろしくです!
29通常の名無しさんの3倍:04/02/05 19:57 ID:???
その次の日。セイラはガルマと二人、夜のドライブに出た。
もう長いこと二人きりで会っていなかったような、そんな錯覚が二人を襲う。
何から話していいのか分からず、しばらく無言でハイウェイを飛ばした後、
ガルマは夜景の美しい港に車を止めた。
遠くには何十もの殖民コロニーと、往来する船のネオンが輝いている。
「良かったよ、君から話し合いたいと言ってもらえて」
サイドブレーキをかけ、一呼吸置いてからガルマが切り出した。
「あの時も、あの時も、冷静じゃなかった。…まったく僕としたことがね。
でも今なら…」
今なら君に分かってもらえるように、話すことができる。
君の気持ちだって、もっと理解してあげることが出来るだろう…。
そう続けようとして、ふと隣に目をやった、その瞬間ガルマの胃に鋭い痛みが走る。
無言でネオンを見つめたままのセイラの表情に、まさかの悪い予感がしたからだ。
まさか、アルテイシア…?
「ガルマ、私…」
「いや! 僕の話を先にさせてくれないか」
意を決したように切り出したセイラの言葉を慌てて遮る。
(落ち着け、ここはとにかくアルテイシアの誤解を解いて、それから…)
動揺を押し隠し、ガルマは言葉を続けた。
30通常の名無しさんの3倍:04/02/05 20:06 ID:???
ガルマ、ピ〜ンチ!!
ここは乗り切るんだぁ。
31通常の名無しさんの3倍:04/02/07 18:46 ID:???
ガル、ガンガレ!!
32通常の名無しさんの3倍:04/02/08 16:26 ID:???
「あの日、僕の部屋に彼女がいたのは、ゼミの飲み会で、彼女がひどく酔って
気分が悪いというから休ませてたんだ。本当にそれだけだよ、神に誓ってもいい!」
気持ちとは裏腹に、声が上ずっている。
ガルマは言葉を切って一つ深呼吸をした。沈黙の気まずさに耐えられず、
カーステレオのスイッチを入れると、ラジオからは今流行のポピュラーソングが
流れて来た。
「・・・もう昔の想いにとらわれていない、なんていう彼女の嘘を見抜けなかった
僕が甘かったんだと思うよ。まさか彼女がここまでするとは想像もしなかった。
おまけにこのまま行けば、君達が昔みたいに戻れるんじゃないか・・・と本気で
考えてさえいたよ。自分のおめでたさには呆れるばかりだ」
セイラの美しい横顔を見ながらガルマは、だんだんと気持ちが落ち着いて
くるのを感じていた。
「イセリナとの共同研究からは手を引くよ。公私混同はしたくないけど、
もうこれ以上彼女に掻き回されるのはごめんだ」
「・・・・・・」
「・・・だから・・・許して欲しい、アルテイシア。 愛している・・・君を失いたくない」
ガルマはそう言うと、祈るような気持ちで目を閉じた。
歌手の甘く切ない歌声だけが車内に小さく聞こえていた。
33通常の名無しさんの3倍:04/02/08 16:27 ID:???
みなさま、続きはどちらをご所望でしょうか。
34通常の名無しさんの3倍:04/02/08 17:00 ID:???
うわ。難しい選択ですね!別れて欲しくないような新展開も読みたいような・・・
35通常の名無しさんの3倍:04/02/08 17:54 ID:???
い〜や〜〜っ!! 恐ろしい展開になりそうで怖いっ!
だけど別れて深まる愛ってのもありますからね〜、どうしたもんか。
36通常の名無しさんの3倍:04/02/08 21:01 ID:???
「・・・ごめんなさい」
「!」
一番聞きたくなかった言葉に、ガルマは激しいショックを受ける。
「私、あなたを愛しているのか分からなくなってしまったの」
「・・・僕が信じられない?」
かぶりを振るセイラ。
「あなたの言ってることは信じるわ。信じたいと思う。でももう以前のような
気持ちは持てなくなってしまった」
「・・・それは奴が・・スレッガーが現れたからかい?」
「・・・・・」
「ちゃんと話してくれないか、僕のことは気にしなくていいから」
「分からないわ。・・いいえ、先輩のことは確かに好きだけれど、でもそれは
もう恋ではないんじゃないかって」
「じゃあ、どうしてっ!」
思わず声が荒くなる。
イセリナとのことでもなく、スレッガーでもない。
それでは彼女の心変わりの理由は一体なんだと言うのか。
「・・・・・・理由は、僕自身か・・・」
自分で答えを口に出し、さすがにガルマは落ち込んだ。
横恋慕してきた女性に翻弄される自分は、恋人からしたらさぞ情けない
男に映ったことだろう。
自分ではいつだってベストを選択して行動してきたつもりだったが・・。
37通常の名無しさんの3倍:04/02/08 21:05 ID:???
「・・・それだけじゃないわ。私、今のままでは自分のことも好きじゃ
なくなってしまう・・・」
スレッガーとの再会に心が騒いだこと、かつての友人を憎まずには
いられないこと。とつとつと語るセイラが痛々しく、ガルマは
「・・・もう、いいから」
言葉を遮り彼女を抱き寄せた。
「そんなの、人間なら誰だって持ってる感情だ。そんなことで君が
自分を嫌ったり恥じたりすることは無いんだ」
「・・・でも苦しいわ」
ぽろりとセイラの瞳からしずくがこぼれる。
「今のままじゃ、私、苦しい」
目を潤ませ、しかしセイラはガルマの胸から体を離した。
「もう、自由になりたいの。いろんな感情から」
「それは、別れたいということ、だね?」
声が震えそうなのを必至に押し隠して問うガルマに、セイラは
頷くことで答えた。
「・・・分かった」
本当は何も分かってなどいなかった。
二人が別れることで、セイラの言う「自由」を得たところで一体何の
解決になるというのだろう。負の感情などこれからの人生、どこへ
行っても湧き上がるものだ。逃げて解決するものではない。
38通常の名無しさんの3倍:04/02/08 21:11 ID:???
しかしガルマにはもう伝えるべき言葉が無かった。
愛されてもいない、彼女を苦しめるだけの存在に堕ちた自分には、
何を言う権利も無い。言ったところで彼女には疎ましいだけだろう。
せめて引き際くらいは潔くありたいと思うガルマだった。
「ありがとう・・・本当に今まで・・・」
もうセイラの瞳に涙はない。ただ、短く告げられたその言葉に万感の
思いを感じガルマはしばし呆然とした。
「・・・じゃあ」
「え、送っていくよ」
「大丈夫よ、タクシーを拾うから」
そう言ってさっさと車を降りるセイラに、慌ててガルマも外に出る。
「き、気をつけて」
「ガルマも。それじゃ、ね」
くるりと背を向け去ってゆくセイラ。
引き止めたい。だがもうそれは許されない。
未練なことはするな!お前はフラれたんだから!
強い意志の力で思いを断ち切り、ガルマもまた踵を返し車に向かった。
39通常の名無しさんの3倍:04/02/08 22:38 ID:???
続きが!ふたりは本当に駄目なのか?それとも・・・?

で、ちょっと脱線ですがあげさせてもらいます。
40通常の名無しさんの3倍:04/02/08 22:40 ID:???
 ある薄暗い部屋。生活感の感じられない無機質な雰囲気の中、デスクの上に置
かれたモニターに美しい顔立ちの青年が映し出されていた。優しい微笑みに合っ
た甘い声が発せられる。
「やぁ、キャスバル。元気かい?最近は便りもよこさないみたいだな。それにし
ても一度位は帰ってこられないのか?口には出さないが、アルテイシアも君の父
上も寂しがっているぞ」
 それは遠く離れた親友に一方通行ではあるが定期的に近状を伝えるものであっ
た。信頼する友人に任せたとはいえ、やはり可愛い妹の事は気掛かりである。
今のシャアにとって彼の厚意は有り難いものだった。
「僕達は変わりが無いよ。・・と、云いたいところだが僕もここのところ、研究が
忙しくて彼女には寂しい想いをさせてしまっているようだ。――けれど、彼女へ
の気持ちは変わっていない。いや、むしろ以前よりも愛しているよ・・。じゃあ、
またな。アルテイシアに手紙のひとつでもだしてやれよ」
 切れたモニターをしばらく眺めたまま、シャアはガルマが苦悩しているのでは
無いかと懸念した。
『何かあったのか?ガルマ・・・』 
 今迄とは様子が違うガルマを案じつつシャアは、もうひとり気掛かりな人物に想い
を馳せていた。シャアは逞しい腕を延ばすとデスクにある写真立てを手に
取るのだった。そこには、自分の選んだ蒼い振り袖を纏う金髪の少女が自分に寄
り添い微笑んでいる姿があった。
「アルテイシア・・」
 ポツリとその名前を口にした途端、シャアの心は激しく揺れ始めるのだった。
何かあったのならば飛んでいって抱き締めてやりたい衝動に駆られるがそれは
もう、自分の役目では無いのだ。遣る瀬無さに空いた片手の拳を強くデスクに
叩き付ける。
『アルテイシア、こんな兄ですまない。――ガルマ、アルテイシアを頼む・・・』
 シャアは冷えた心で手に取った写真立てを伏せるのだった。
41通常の名無しさんの3倍:04/02/10 18:57 ID:???
シャア、久々の登場ですね!
そろそろ彼も本舞台登場・・・かな?
42通常の名無しさんの3倍:04/02/10 20:01 ID:???
車のドアに手をかた時、見るまいと思っていたセイラの姿が目に入る。
往来の、車の激しく行き来する大通りに向かい、車を止めるでもなくセイラはぽつんと立っていた。
その後姿の心もとなさにガルマはたまらず走り寄る。
「アルテイシア!」
後ろから手首を掴み、振り向かせたセイラを見てガルマは驚く。
セイラは泣いていた。
(本当にもう駄目なのか!やり直そう、もう一度!)
そう叫んで抱きしめたい衝動をぐっとこらえる。
彼女の涙は決して別離の後悔ではなく、心ならずも自分を傷つけた、
そのことに対する悲しみの涙に過ぎないと知っていたからだ。
「夜はもう冷える、これを・・・」
シャツの襟元から覗かせていたスカーフをシュルリと抜き取るとガルマはセイラの首元に巻いてやる。
そしてそのまま無言で手を挙げ走ってきたタクシーを止めた。
「さあ」
うなずき車に乗り込むセイラ。
ガルマはその車が走り出し、見えなくなるまでその場でじっとたたずむのだった
43通常の名無しさんの3倍:04/02/10 20:40 ID:???
ガルマ、可哀想だ。互いにまだ好きなのにお別れ…だよね?
いつか復縁してホスィ。
ところで、兄さんの帰国があるのかな?だと、嬉しい〜!ここの兄さんは大好きなのです
44通常の名無しさんの3倍:04/02/10 21:05 ID:???
うん、今は別れちゃったみたいだけど、この先はどうなるかは
分らないですよね。
ガルがんばれ〜!
そして兄さんの復活も是非お願いしたいです。
私もここの兄さん大好きです!
45通常の名無しさんの3倍:04/02/12 00:12 ID:???
ガルマはだるい体を鞭打ちながら研究室に向かった。
セイラに別れを告げられ、数日は自暴自棄になってみたものの、
根が真面目なガルマである。
「ガルマさま!」
まだ朝も早い時刻というのに、ただ一人イセリナが教室にいた。
「おはようございます! 良かった、今日もご欠席だったら・・・」
嬉しそうに近寄るイセリナとは目をあわさず、ガルマはまっすぐ自分の
ロッカーに向かうと上着をかける。
バン!
扉を閉める時、うっかり大きな音を立ててしまった。
ビクッとイセリナが身じろぎするのが目の端に入る。
(あ、失礼)
そう言い掛けてやめ、ガルマは棚からファイルを取り出すと自分の
椅子に腰掛けた。
背中にイセリナの視線を感じる。
いつもと様子の違うガルマに戸惑っているのだろう。
(いやな感じだ・・・まるで弱いものイジメをしていているみたいだ・・)
罪悪感を感じながらもガルマはイセリナの方を振り向けないでいた。
(早く誰か来てくれ・・・)
そう願いながらガルマは手元のファイルをめくり続けた。
46通常の名無しさんの3倍:04/02/12 00:21 ID:???
「お先に〜」
「おー、おつかれさん!」
長い一日が終わった。ゼミの仲間が次々と帰宅してゆく。
朝と同じく、教室にはガルマとイセリナ、二人だけになった。
結局今日一日、ガルマはイセリナに最小限必要な言葉しかかけないで
過ごした。イセリナの悲しげな表情に心が痛むが、これから話すことを
彼女に受け入れてもらうにはこうするしかないと自分に言い聞かせ
ながら・・。
目をやると、イセリナはしょんぼりと荷物を片付けているところだった。
「イセリナ、話があるんだ」
ガルマは深呼吸して切り出した。
「は、はい!」
はじかれたようにイセリナが立ち上がる。緊張しているのが分かった。
「・・・アルテイシアと別れた」
「え?」
「これに関しては全く僕達二人の問題だ。君には何の関係も無いこと
だと断っておこう」
「・・・・?」
47通常の名無しさんの3倍:04/02/12 00:25 ID:???
「つまり君は、君が僕たちにしたことに罪悪感を感じる必要はない。
と同時に、君の気持ちに僕が応えることも金輪際無いということだ」
「・・・・ひどいですわ」
イセリナの瞳がみるみる涙でいっぱいになる。
ガルマは目をそらした。
(ひるむな、ここで決断しなくては、ますます彼女を傷つけることになるぞ)
「応えることが出来ない以上、君の傍にいることは互いの為にならない
だろう。悪いが共同研究からは外れさせてもらう。教授にはもう話したよ」
「あんまりです!ガルマさま! あなたがいなければ完成しません!」
ショックのあまりイセリナは泣き伏した。
さすがにガルマは申し訳ない気持ちでいっぱいになり、膝をついて
幾分声音をやわらげて言った。
「大丈夫、後任には優秀な奴を推しておいたから。・・それに君の力だって
相当なものだ。自信を持って・・・」
しかしイセリナは激しくかぶりを振るばかりだ。
ガルマは心を鬼にして立ち上がる。
「研究の成功を祈っています、イセリナ」
そう告げるとまだ床に伏すイセリナを残しガルマは部屋を後にした。
48通常の名無しさんの3倍:04/02/12 00:29 ID:???
イセリナちょっと可愛そうだったかな?
49通常の名無しさんの3倍:04/02/12 06:49 ID:???
乙です。
イセリナにはこれぐらいでちょうど良いでしょう。
しかしこんな状況になってさえガルマは紳士的で(w
50通常の名無しさんの3倍:04/02/12 19:45 ID:???
セイラの方はスレッガーとのことどうするんだろう。
出来ればちゃんとケリを付けて欲しいもんだが。
(このままなし崩しにまたスレッガーが遠征とかはイヤン)
51通常の名無しさんの3倍:04/02/12 19:59 ID:???
うん、この位でイセリナは挫けないでしょう。
ガルマも、もっと早くに手を打っておけば別れずにすんだかもね。
続き、お待ちしてます〜!
52通常の名無しさんの3倍:04/02/15 21:01 ID:???
これからどうなるのか…楽しみです!
53通常の名無しさんの3倍:04/02/16 06:36 ID:???
続き期待age!
54通常の名無しさんの3倍:04/02/22 08:21 ID:???
難しい局面で職人の皆様は思案中ですかね?
続きを楽しみにしてますので頑張ってください。

できれば近い内にシャアのフカーツを! といってみるテスト
55通常の名無しさんの3倍:04/02/22 20:33 ID:???
続き入れさせて頂きます!
56通常の名無しさんの3倍:04/02/22 20:35 ID:???
ガルマとの別れから数週間が経ち、ようやく気持ちも落ち着いて来たころ、
セイラはミライの誘いで街へ出ていた。
「ごめんなさいね、つき合わせて」
「いいけど、本当に大丈夫なの?」
目の前でおいしそうに飲茶を頬張る友を、セイラは半ば呆れつつ気遣う。
「予定日はとっくに過ぎたのに全然生まれる気配が無いのよ。
それよりこの半額券今日までなんだもの、無駄にしちゃもったいないでしょ」
どこまでも気楽なミライにセイラは笑った。
そういえば人と出かけるなんて久しぶりだ。ここずっと、セイラは何かを
忘れるように学業に没頭し、寮に帰るのも夜遅くなることが続いていたのだから。
…もしかして、だからミライは今日?
ふとそう思い至ったセイラに、相変わらず満面笑みのミライが言う。
「まぁ、このニラ饅頭、最高に美味しいわよ!食べてみなさいよ!」
「ええ、いただくわ」
セイラも微笑んだ。
57通常の名無しさんの3倍:04/02/22 20:37 ID:???
「食べたわねぇ、お腹いっぱいで苦しいくらい」
レストランを出たセイラは歩きながら伸びをする。
「でも本当に美味しかった・・」
友人を振り返ってセイラは驚く。ミライが脂汗を流してうずくまって
いたのだ。
「どうしたの、ミライ!!」
「セ、セイラ・・・う、生まれそう・・」
「えええっ!??」
大変だ。急に産気づいたらしい。
「と、とにかく急いで病院に行かなきゃ、待ってて今車を・・」
「いや、一人にしないで・・」
走り出そうとしたセイラの手をつかんでミライは離さない。
普段の彼女ならありえない取り乱しようだ。
「何言ってるの!」
「・・セイラ、怖いのよ・・」
「しっかりして!」
パニック状態の友人を叱るセイラの肩を、誰かがトントンと叩く。
「どうした?」
「先輩!」
それはスレッガーだった。
58通常の名無しさんの3倍:04/02/22 20:38 ID:???
夕方。
セイラとスレッガーは並んで病院の中庭のベンチに腰掛けた。
あの時、たまたま通り掛かったスレッガーがセイラとミライを見つけ、
そのまま車でここまで運んでくれたのだ。
病院に運ばれたミライはその30分後超安産で男児を出産した。
しばらく付き添った後、知らせを聞いて駆けつけたブライトと
バトンタッチして二人は病室を出てきたのだった。
「今日は本当に助かったわ」
「しかしあんたとはいつも意外なところで会うなぁ」
スレッガーは苦笑いしながらタバコに火を付けた。
「ホントね」
セイラも笑う。
「あの後さ、彼氏とは仲直りしたのかい?」
さりげなく、しかし核心を突いた問いにセイラはギクリとする。
だがいわば彼も無関係ではないのだ、ちゃんと報告する義務が
あるだろうとセイラは思う。
「・・・彼とは別れました」
「ふーん・・・俺のせい?」
夕方の風がしずかに二人の間を通り過ぎた。
59通常の名無しさんの3倍:04/02/22 20:40 ID:???
「なーんてな、それは自惚れすぎか」
すぐにスレッガーは自分の言葉を笑いに変える。
だからこそセイラも自分の心を正直に伝えることが出来た。
「今は一人になりたいの。一人になっていろいろ考えてみたい」
「そうか・・」
「・・・ええ」
言葉が途切れる。
見舞い客だろうか、子供の元気な笑い声が遠くから聞こえる。
やがて沈黙を破ってスレッガーは静かに言う。
「俺はさ、やっぱりあんたが好きだよ。だがあんたが一人でいたいって
思ってるうちはもうあんたの前に姿は見せねえ。いつかあんたの方から
俺に会いに来てくれるのを待つことにするさ」
「・・・先輩」
「そんな顔しなさんな」
「・・ごめんなさい。ありがとう」
スレッガーは立ち上がるとセイラに右手を差し出した。
「とりあえずはさ、けじめつけとかねーとな」
セイラも立ち上がり二人は握手する。さようならの握手。
みつめあう二人の瞳に昔の楽しかった日々がよみがえる。
しかしそれも一瞬だった。
「じゃな」
スレッガーは踵を返すと一度も振り返らないまま去って行った。
その背を見送りながらセイラは、自分の初恋が今ようやく終わりを
告げたのだと感じていた。
60通常の名無しさんの3倍:04/02/22 20:43 ID:???
スレッガーとの恋もとりあえず清算させてみました。
ゼロからの再スタート・・になるといいなと思います。
61通常の名無しさんの3倍:04/02/23 19:18 ID:???
セイラにはきっとまた素敵な人が現れるでしょう。
それにしてもスレッガ−、切ないなぁ。考え様によってはリベンジもありなのか?

ひとりになった事だし久々に兄さんに甘えるセイラさんも読みたいかも…。
62通常の名無しさんの3倍:04/02/29 18:42 ID:???
兄さん復活を目論んでみました。
以下続きを書かせていただきます。
63通常の名無しさんの3倍:04/02/29 18:43 ID:???
夕方の研究室でガルマが一人レポートを書いていると、ケリィ・レズナーが
入ってきた。彼はガルマと同じゼミの先輩である。
「よ!進んでるか?」
「ええ、順調です。それより先輩にはご迷惑をかけて・・・」
「あー、そのことなんだがな、お前さんに話しておこうと思って」
ケリィは近くにあった椅子を引き寄せガルマの前に陣取る。
「彼女、この先の研究は一人で大丈夫だって、俺は断られたよ」
「イセリナが!?」
共同研究の相方を、ガルマは自分の代わりにケリィに依頼していた
のだった。
「すいません・・」
「いやいや」
気を悪くする風でもなくケリィは首を振った。
「ただなぁ、お前さんから聞いた話だと、まだ一人で大丈夫って
段階じゃないように思うんだが・・」
「・・その通りです」
イセリナは一体何を考えているのか・・。自分に断られたことで
やけばちになっているのだろうか。まさか・・。
ガルマはあれ以来顔を合わせていないイセリナが心配になる。
64通常の名無しさんの3倍:04/02/29 18:44 ID:???
「まぁお前さんたちに何があったか知らないが、そんなわけだから。
力になれなくてすまんな」
「いえ、こちらこそ申し訳ありませんでした」
その時ドアが開き、もう一人の先輩、アナベル・ガトーが教室に
入ってきた。
「よ、お疲れさん! 教授の還暦パーティの世話役も大変だな」
ケリィがすかさず声をかける。
「あぁ、もう来月ですねぇ」
ガルマの言葉に小さく頷きながら、アナベルも二人の近くに
腰を下ろす。
「うむ、後はほとんど出席者の確認程度なのだが・・そうだ、
君はキャスバル・ダイクンの親友だったな」
「ええ」
「彼からまだ出欠の返事が来ていないのだ。話す機会があれば
君からも聞いてもらえるとありがたいのだが」
「しかし奴は今アクシズだろう?」
「恩師の大事な節目だ。教授の下で学んだ者には全員招待状を
出した。出来れば多くの出席を期待している」
キャスバルが帰国するかも知れない・・思ってもみなかった
展開にガルマは心が騒いだ。
懐かしい親友との再会を喜ぶ気持ちと、そして・・・
「そうそうキャスバル・ダイクンといえばさ、ラトーラが奴の妹が
男と二人でいるところを病院で見たって言うんだぜ」
「!」
65通常の名無しさんの3倍:04/02/29 18:45 ID:???
「それがよ、その相手の男っていうのが、今超話題のスレッガー・
ロウだって言うからさ、お前そりゃ見間違いだろって」
「やめんか」
調子に乗って話すケリィと諌めるガトー。
ガルマは自分の笑顔が不自然になっていないことを祈りつつ立ち上がる。
「分かりました、ガトー先輩。キャスバルには早く返事を出すよう
僕からも伝えます」
「あ、あぁ、頼む」
「ではお先に失礼します」
ガルマは一礼すると二人を残して教室を出た。

外はもう星が光っていた。
アルテイシア・・・やっぱり奴と・・?
ガルマは一人駐車場までの道を歩きながら、考える。
アルテイシアはスレッガーとのことは、もう恋ではないと言って
いたが、あれは自分を傷つけない為の嘘だったのだろうか。
やはり彼女は今でもスレッガーを愛しているのか・・?
かつて、まだ自分たちが恋人になる前にセイラから聞かされた
彼への想い。セイラの初恋。
今こそ何の邪魔もなく、愛し合う二人は・・・
「くそっ!」
バキッ!
激しい嫉妬でガルマはいつの間にか目の前にあった自分の
車のボンネットを、握りこぶしで殴りつけていた。
66通常の名無しさんの3倍:04/02/29 18:46 ID:???
続きよろしくお願いします!
67通常の名無しさんの3倍:04/02/29 20:31 ID:???
ああ〜、ガルマってば誤解した〜(…んだよね?)
しかし教授の還暦パーティ…ナイスです!
68通常の名無しさんの3倍:04/02/29 23:25 ID:???
嫉妬に燃えるガルマ、萌え〜

いよいよ『復活のシャア』でつか?う、嬉しいーー!
69通常の名無しさんの3倍:04/03/03 21:15 ID:???
ガルマは辛いね。
リンベジな展開もアリと思うので頑張って欲しい。
個人的にはベルトーチカの恋の行方も気になってます。
70通常の名無しさんの3倍:04/03/03 22:14 ID:???
ベルはなんとなくアムロにひかれてゆくのではないかな?
原作に沿って。で、カミーユとの対立とかがあったら面白そうw
71通常の名無しさんの3倍:04/03/07 00:48 ID:???
兄さんの帰国で久々にラブラブな兄妹もヨシ、
新しい恋が始まるもヨシ!続き期待しています。
72通常の名無しさんの3倍:04/03/07 15:41 ID:???
ソロモンのメンバーはミーティングのために会議室に集合していた。
ライブの終った後ではあったが、誰の顔にも疲れは見えない。久々の新曲が今日スレッガーから発表される予定なのだ。
「待たせたな、みんな」
やがてスレッガーが手に紙の束を握り締めて部屋に入ってきた。
「これが今度の曲だ」
「え、これ・・・」
みんなから少し離れて座っていたアムロが驚いてスレッガーを見る。それは間違いなく自分が作った曲だった。
「だから今日はお前にも来てもらったんだ。どうだ?みんな、やってみないか?」
「ああ、いいんじゃないか?いい曲だと思うぜ」
リュウをはじめメンバーたちは口々にメロディを口ずさみながら譜面に見入っている。
その様子をスレッガーは満足げに眺めるとアムロに言った。
「前に渡された時にピンと来た。これはいけるってな」
「・・・でも、まさか本当に使ってもらえるなんて・・」
恥ずかしさと嬉しさがない交ぜになり、アムロの頬は紅潮した。
「で、お前さんにはこれだ」
スレッガーはニヤリと笑いながら手に持っていた最後の一枚をアムロに渡す。
「俺が勝手につけた。唄うのはお前だ」
73通常の名無しさんの3倍:04/03/07 15:44 ID:???
その、歌詞の綴られた紙を凝視し、しかしアムロは首を横に振った。
「さすがですね、スレッガーさん。とってもいい詞だ。でも、僕はもう唄いません。唄いたくないんです。・・・すいません」
「そうやっていつまで逃げてるつもりだ?」
「!」
「だってそうだろ?確かにお前には作曲の才能があるよ、それは認めるがな、本当にしたいことはそれじゃないだろ?」
いつの間にか会議室の全員がスレッガーとアムロのやりとりを聞いていた。
「そうだな、俺もそう思うぜアムロ」
リュウが立ち上がり静かに言う。
「お前はインストゥルメンタルの曲としてこれを書いたんだろうが・・・だがな、俺達にはわかるんだよ、お前の頭の中にいるとき、こいつにはきっと詞がついていたんだろう、ってな」
ベルトーチカが立ち上がり、何か言おうとしてやめた。
「みなさんのお気持ちは嬉しいです。でも、本当に僕にはその気は無いんです。僕の作った曲をみなさんに演奏してもらえるだけで満足してますから」
ぺこりと頭を下げ部屋を出て行くアムロ。
スレッガーは溜息をつく。すると偶然べルトーチカと目があった。
「さて、お開きとするか。明日とりあえず初合わせするから、それまでに各自パートをさらっておいてくれよ。んじゃ、解散!」
その声を最後まで聞くか否やでベルトーチカは部屋を飛び出す。
その様子にスレッガーは人知れずニヤリとした。
74通常の名無しさんの3倍:04/03/07 18:46 ID:???
「アムロ、待って!」
「しつこいな!もう放っておいてくれよ!」
「そうじゃないの、話を・・・」
しかしアムロは無言でベルトーチカを押しのけると、さっさとビルから出て行ってしまった。
何故アムロはあんなにも唄うことを拒絶するのだろう。
昔スレッガーたちのライブで歌っていたところを有名なフラナガン研究所に見出され、そこからデビュー、新進歌手としてこれから、というところで突然芸能界から消えてしまったアムロ・レイ。
ソロモンから一時遠ざかったり木星に行ったりで、ベルトートカはその頃のアムロを直接は知らない。ただ記録に残された彼の唄は今聞いても素晴らしいものがあるし、復帰すればきっと成功するだろう。それに全く音楽が嫌いになったわけでもなさそうだ。
なのに、何が彼をあれほどまでに頑なにしているのか。
スレッガーたちと分かれてから3年、その間にアムロに何があったのか・・・。
(・・彼のことをもっと知りたい・・・)
今までは単にソロモンの為だけにアムロを勧誘し続けていたベルトーチカに、今新たな感情が湧き上がりつつあるのだった。
75通常の名無しさんの3倍:04/03/07 18:47 ID:???
ガルマのもとに一通のメールが届いた。
差出人はシャア。内容は、先日ガルマが送ったメールへの返信で、恩師の還暦パーティのため一時帰国するとのことだった。
「そうか、やっと帰ってくるか!そうだ、アルテイシアに・・・」
知らせないと!そう思って立ち上がり、我に返る。
もう以前のように気安く連絡をとりあえる仲ではなくなったのに、何かあるごとにセイラのことを考えてしまうのは、それが習慣になってしまったからだろうか。
ふう・・・
軽い自己嫌悪に陥りながらガルマはベッドに仰向けに倒れこんだ。
(そうだよな・・僕がわざわざ知らせなくても、当然彼女にも連絡は行ってるんだから・・)
目を閉じるとセイラの顔が浮かんでくるので、閉じないことにする。
自分達が別れたことをキャスバルは知っているのだろうか。メールには何も書かれていないだけにガルマには判りかねた。
知ったら彼は何と言うだろう。
必ず幸せにすると誓ったのにと、怒るだろうか。
(殴られるかもしれないな・・・)
不意に視界が滲み、ガルマは片腕で目隠しをする。
「キャスバル・・・なぁ、聞いてくれよ・・・」
・・・アルテイシアは僕より奴の方が好きなんだってさ。
・・・僕はそんなに駄目な男かい?
・・・優柔不断は分かってる、でも僕なりにいつもベストな道を選んでるつもりだよ。
・・・じゃあ、僕はどうしたら良かったって言うんだ!?
実際にはとても口に出しては言えないだろう弱音を、ガルマはシャアの幻に語りかける。自分でも思ってもみなかったことに、涙が後から後から溢れてきた。
そうして今初めてガルマは自分がとても傷ついていることに気がついたのだった。
誰かに、いや、唯一の親友シャアに、この気持ちを分かって欲しかったのだと・・。
76通常の名無しさんの3倍:04/03/07 22:14 ID:???
・゚・(ノД`)・゚・
77通常の名無しさんの3倍:04/03/08 00:21 ID:???
穏やかな光が差し込む硝子張りのキャンパスのカフェ。その窓際の席でセイラは
ひとり紅茶を飲みながら、外の景色を眺めていた。
(いつもだったら・・・)
沢山の学生達が行き交う中にセイラはガルマの姿を自然と探していた。
特に約束をしたわけでもなかったが、ふたりはよくここで会い、お茶と他愛無い
話を楽しんでいたのだった。今となって、ささやかだが幸せな時間だったと
痛感する。
(身勝手なものね・・・)
空になったティーカップの縁を指でなぞると静かにテーブルに置く。正直、ガル
マに会いたいのか、会いたく無いのか自分でも分からない。しかし、自分が決断
したとはいえ、失ったものの大きさは思い知らされていた。そして、それに当然
の様に甘えていた自分の情けなさにも・・・。セイラは深い溜息を吐く。
でも、あのまま別れなくても、きっとお互いを疑い傷つけるだけだった・・・。
セイラはもっと強くならなければ・・と思う。自己満足かもしれないが、それが
ガルマに報いる為の自分なりの答えなのだ。セイラは何かを見据えるように深く
澄んだ蒼の瞳を見開くと自分を奮い立たせるのだった。そして席を立とうとした
瞬間。
「アルテイシア!」
背後から掛けられたその優しい声音にセイラは豊かな金髪を揺らしながら振り
返った。
『ガルマ!』
セイラは心の中でしか名前を呼ぶ事が出来なかった。見慣れたはずのガルマの
笑顔が眩しく、そして懐かしささえも感じていた。
「少し、いいかな?」
努めて明るく振る舞いながら、ガルマはセイラの前の席へ腰を下ろす。
「そんな、幽霊でも見た様な顔はしないでくれよ。それとも、まだ会いたくは
無かったかな?」
セイラは無言で左右に頭を振ると、ストンと席に着く。それを見たガルマは安堵
の表情を浮かべるのだった。
「君にどうしても言っておきたいことがあって・・・。僕達は恋人同士では無く
なってしまったけれど困った事があれば今迄どおりに何でも相談して欲しいんだ。
それにキャスバルにも君のことを任されているし・・・」
ガルマは途中で言葉を切るとキャスバルの名前を持ち出した事を後悔した。彼の
名前で彼女を説き伏せようとする自分を嫌悪した。今言った事は嘘では無いが、
何らかの形でセイラと繋がっていたいという気持ちは否めない。
78通常の名無しさんの3倍:04/03/08 00:22 ID:???
「そんな事、出来ないわ・・・」
セイラはガルマから視線を外すと淋し気に俯く。もっと強くならなければ・・。
そう決心したばかりなのに、今にもガルマの優しさに甘えそうになる自分は
なんと弱くてずるいのだろう。セイラもまた自己嫌悪するのだった。
「どうしてだい?」
「私なら大丈夫よ。あなたの気遣いは嬉しいけれどガルマが負い目や責任を
感じる必要はなくてよ」
セイラはわざと冷たい口調で言い放つ。震える両手を固く握りしめることで必死
に溢れ出そうになる感情を押さえていた。
「・・そうじゃない。付き合う前から恋愛感情抜きで君は大切な存在だった。
だから、別れてもそれに変わりは無いんだ。これからもずっとそうだ。それに、
今回の件で今迄の僕達が築いてきた関係が全部壊れるなんて思いたくは無い。
いや、思わない・・。アルテイシアは違うのかい?」
セイラはガルマの言葉に胸を突かれる。ガルマはいつもこうして頑なな自分を
大きく包み込む様に守っていてくれたのだ。
「違わない、わ・・・。――ありがとう、ガルマ」
「それを聞いて安心したよ。僕も戻る早々、今のキャスバルのあの太い腕で
殴られたんじゃあ堪らない!」
ガルマは、おどけた表情で肩を竦めてみせる。
「えっ?今、何て・・・」
ガルマはセイラの放心した表情にシャアの帰国をまだ知らないことに気付く。
「キャスバルが帰ってくるんだよ。知らなかったのかい?」
ガルマは何故、キャスバルがアルテイシアに連絡を入れていないのが不思議に
思いつつ、教授の還暦パーティの話をセイラに聞かせた。
「本当なのね・・・。ガルマ!!」
――キャスバル兄さんに会える!!セイラの表情が一瞬にして明るく輝き出す。
「そういえば、ガルマの言う通り本当に今の兄さんはかなり強そうよね・・」
セイラはビデオレターの兄の姿を思い出していた。
「だろう?今から鍛えてもとても対抗できないよ」
ふたりは同時に噴き出し、互いの顔をみながら笑い合った。セイラはもうこんな
時間は二度と持てないと思っていただけにガルマの申し出に深く感謝した。
キャスバルの事となると心底、嬉しそうに微笑むセイラの顔にガルマは嬉しみを
感じつつも、こんなにも彼女の心を占めるシャアを羨むのだった。
79通常の名無しさんの3倍:04/03/08 01:19 ID:???
ガル、ほんといい奴だ…男らしいよ。
部屋で涙の場面は、私も泣けた。

シャアの帰りが待ち遠しいですね。
それからベルとアムロの話が出てて嬉しかったです。
続き楽しみにしています。
80通常の名無しさんの3倍:04/03/08 06:47 ID:???
怒濤の更新だ。嬉しい!
ガルマはホントいい人だ。たまには自分を曝け出してみてもいいのに・・・。
がんがれ、ガルマ!!
81通常の名無しさんの3倍:04/03/08 16:19 ID:???
シャアが帰ってくる!でも、一時帰国なのね。
なんとかそのまま残りますように・・・。
82通常の名無しさんの3倍:04/03/13 15:12 ID:???
続き期待してます!
83通常の名無しさんの3倍:04/03/20 20:36 ID:???
保守
84通常の名無しさんの3倍:04/03/23 00:26 ID:???
これからも楽しみにしていますよ!
85sage:04/03/27 18:35 ID:GcezbnWa
期待干す
86通常の名無しさんの3倍:04/03/31 19:52 ID:???
うーん、続きどうしましょうかね〜
87通常の名無しさんの3倍:04/04/02 21:03 ID:???
続き、お待ちしてますよ。
88通常の名無しさんの3倍:04/04/02 23:26 ID:???
4/3 22:30くらいから集まってチャットしませんか?
リレーに参加してた人も、ロムってた人も、セイラさんの今後や
その他マターリ雑談しましょう。

詳しくは以下のスレ用お絵かき掲示板にて
http://dog.oekakist.com/sleggar/

おまちしております。
89通常の名無しさんの3倍:04/04/04 20:49 ID:???
期待ほしゅ
90通常の名無しさんの3倍:04/04/06 21:19 ID:fTFTRwfW
シャアの帰還。
それは恩師の還暦祝いの為、だけではなかった。
音楽業界を去り、遠くアクシズへと離れたはずのシャアの耳に
気になる噂が届いていていたのである。
ティターンズ・プロの台頭。
ティターンズ・プロ社長であるジャミトフとシャアには
浅からぬ因縁があった。
しかし、何も知らぬセイラにとっては
ただただ兄の帰るその日が待ち遠しかった。

スミマセン、早くシャアに帰ってきてほしくて
初書き込みです。
つながらなかったらスルーして下さい。
91通常の名無しさんの3倍:04/04/06 22:20 ID:fTFTRwfW
「ガルマ、遅くてよ!」
「ごめん、これでも早く出たつもりだったんだけど・・・待たせてしまったようだね」
「ふふ・・私が早すぎただけよ。やっと兄さんに会えるんですもの。今朝は随分早起きしてしまったわ」
心底済まなそうに謝るガルマに、セイラは悪戯っぽく微笑みかけた。
「早起きって・・・シャトルの到着は17:00だよ。遅れることは多くても早く着く事は・・・」
「全く無いとはいえないでしょ?さ、早く車をだしてーーでないと私が運転するわよ?」
言葉を遮られたガルマは、降参、というように肩をすくめ、助手席のドアをうやうやしく開ける。
『キャスバルが帰るという大事な日に、ペーパードライバーのアルテイシアに運転などさせられるはずが無い』
そんなガルマの胸中など知らず、無邪気にはしゃぐセイラ。車中、2人は久しぶりに会話を楽しんだ。
「やはり早すぎたようだね・・・そこのカフェに入ろうか?」
「ええ、話しつかれて喉がカラカラだわ!」
92通常の名無しさんの3倍:04/04/10 19:54 ID:???
お待ちしてました!
いよいよ兄さんご帰還か!!
93通常の名無しさんの3倍:04/04/11 21:30 ID:???
「あの窓際の席がいいわ」
「じゃあ先に座ってて。僕は飲み物を取ってくるよ。カフェオレで良かったかい?」
「ええ、お願い」
セイラと別れ、トレーを手にガルマはカウンターに向かう。
『こうしていると、恋人同士のままみたいだ・・・』
久しく忘れていた暖かな気持ちが、ガルマの頬を自然と緩ませる。
飲み物を受け取りレジで支払いを済ませ、さてセイラの待つテーブルへ向かおうと
して、ガルマは足を止めた。混雑したカフェの中で、とっさにセイラを見つけられない。
「えーと、確か窓際・・・」
ぐるっと見渡せばすぐにセイラは見つかった。
こちらに横顔を見せて座る彼女は、携帯を使って電話をしていた。
『誰と話してるのかな』
深く気に留めずガルマは席に近寄る。
セイラは楽しげに何か話していたが、ガルマが戻ってきたのに気づくと、こちらに
手を上げて合図を送りつつ電話を終らせたようだった。
「ありがとう、ガルマ」
「・・・い、いや」
ぎこちない仕草でガルマはトレーから飲み物を置く。
目の前に座るセイラは変らずにこやかで美しかった。
だが、ガルマには聞こえてしまったのだ。ガヤガヤと賑わしいこのカフェの中で、
途切れ途切れではあるが、電話で話すセイラの最後の言葉が。
「・・・ごめんなさい、・・・それじゃまた・・・。ええ・・・ありがとう、先輩」
・・・先輩・・・
『・・・では電話の相手は・・・スレッガーだったのか・・・?』
94通常の名無しさんの3倍:04/04/11 21:33 ID:???
浮かれていた自分を戒めるかのように、突如つきつけられた現実。
以前ケリィから聞いた、セイラとスレッガーが会っているという話はやはり本当
だったのだろうか。信じたくはないと思っていたが・・。
「どうかして?コーヒーが冷めるわ?」
手をつけないガルマを不審に思ってかセイラが聞く。
「あ、いや・・、しかしここは人が多いな」
「そうね、あんまり長居出来そうにないわね。でも兄さんのシャトルまでは
まだ時間あるし・・」
「残念ながら予定より早く着くってこともなさそうだしね」
「いじわるね!」
今朝の会話の揚げ足をとってからかうガルマをセイラは優しく睨んだ。
「飲み終わったらショップでも覗いて時間つぶそうか」
「いいわね」
たわいのない会話。まるで恋人同士のように・・。
だが、もう自分達は恋人ではないのだ。その証拠にガルマはどうしても
口にすることが出来なかったのだ。簡単な一言。
「さっきの電話は誰からだい?」・・・と。
95通常の名無しさんの3倍:04/04/11 21:35 ID:???
今日ほど時間の過ぎるのが遅い日はない・・もう薄暗くなった外をガラス越しに
見上げながらセイラは心から思う。
いや、シャアの帰国の知らせを聞いてから今日まで、毎日同じことを思っていた。
愛して止まない兄。誰よりも素敵で優しくて強い、私の兄さん!
あと数時間でその胸に抱擁される自分を想像すると、セイラは涙ぐみそうになる。
兄さんに「ただいま」と言って抱きしめられたら、今まであった辛いこと悲しいことも
きっと一瞬にして吹き飛んでしまうだろう。
「アルテイシア、見てごらん、"大阪名物たこ焼き"だって」
振り返ると、みやげ物屋の前でガルマが手招きをしている。
「おおさか?」
「ああ、地球の、日本の都市名だよ。おいしそうだな、食べてみようか」
いたずらっぽい笑顔でそう言うと、セイラの返事も聞かずにガルマはたこ焼きを
求める人の列に並んでしまった。
セイラは肩をすくめて見送るとロビーのベンチで待つことにする。
『ガルマ、変わってない・・・』
あの日、別れても昔のままの友人でいようと言ったガルマ。
別れを切り出した自分の気持ちを慮っての申し出だということはすぐに分かった。
「僕は傷ついてなんかいない。だから君は君の決断に罪悪感を持つことなんて
少しもないんだよ」・・・と。
その気持ちが嬉しくて受けてしまったものの、実際そんなに簡単にゆくわけがない
と思っていた。
・・・それがどうだろう。
今日一日、ガルマと自分はごく自然に笑い、会話し、一緒にいる。
お互いまだ特別な感情も持たず、キャスバル兄さんと三人、従兄弟のような
幼馴染だったころと同じように。
『そう、兄さんが帰ってきたら・・・きっと昔のような私たちになれるわね・・・』
セイラはガルマがどんな想いで友人を振舞っているのかを知らない。
シャアの帰還という大きな喜びを前にして、彼女はただ無邪気に見えるままを
信じた。いや、信じようとしていたのだった。
96通常の名無しさんの3倍:04/04/11 21:37 ID:???
「・・・気持ちは分かるけど、回りの人が変に思うよ?」
「え?」
いつの間にかたこ焼きを片手にガルマが横に立っていた。
「顔が笑ってる」
「!」
知らず知らずににやにやしていたのだろうか。セイラは真っ赤になって両手で
頬を押さえた。
「冗談だよ、さあ食べよう」
くすっと笑って横に腰掛けようとしたガルマをセイラは持っていたバッグで殴った。
「いてて、そんなにしたらたこ焼きが落ちちゃうよ・・」
ひとしきり揉めたあと、二人は並んでたこ焼きを食べる。
「美味しいわ、これ」
「お好み焼と似てる感じがするなぁ」
「ソースとかつお節ってところは同じだけど・・」
ふぅふぅ冷ましながら、舟形の器に盛られたたこ焼きをすべて食べ終える。
「でも、テイクアウトは無理よね」
「あっちにお土産用の冷凍のがあったけど?」
「ほんと!?じゃあ是非食べさせたい人がいるの、買ってくるわ!」
売店へ向かうセイラの後姿をガルマは黙って見送った。
『是非食べさせたい人か・・・スレッガーかな・・・』
切ない気持ちで、ガルマはそっと溜息をついた。

『久しぶりに先輩から電話が掛かってきた日に"たこ焼き"を見つけるなんて
なんて偶然なの!』
先ほどカフェにかかってきた電話。それは以前ズムシティーのジャパニーズ
マナー教室で知り合った上級生の女性だった。
二人は日本文化という共通の興味から、教室終了後も時々連絡を取り合って
いたのだ。
「あ、宅急便で送っていただけます?」
セイラは売店のおばさんににっこり微笑んだ。
97通常の名無しさんの3倍:04/04/11 21:38 ID:???
すみません、肝心のシャアの帰還までは辿りつけませんでした〜!!
次の方、よろしくお願いします!
98通常の名無しさんの3倍:04/04/11 22:22 ID:???
>96
『今日は何て良い日なのかしら。兄さんとは会えるし、先輩とも話せたし』
レジを済ませたセイラは上機嫌でガルマの元に戻ろうとした。
しかし、先ほどサイド4からのシャトルが入港したせいか、更に人ごみが増し
ていてガルマが見当たらない。
きょろきょろと辺りを見回していると、一際目立つ金髪が目に入った。
「兄さん!」
思わず叫んでしまい、周囲の視線が集った。
『やだ、私ったら・・・』
ハッと我に返りすぐにその場を立ち去るセイラ。
時計を確認すると16時半を少し回った所だった。
「金髪というだけで兄さんにみえるなんて・・・」
一瞬目に入ったその人は、顔半分を覆う様なサングラスを掛けていた。
それに身長も少し兄より高かったように思える。
「後30分位が待てないなんて、私ってクエスの言う通りブラコンなのかしら」
99通常の名無しさんの3倍:04/04/11 22:59 ID:???
おーっ、続きが!待ってました!
ガルマとセイラの和やかムード、いいですね〜。
ガルマが内心、嫉妬に燃えているのがなんとも、いいです!

で、デカいサングラスをかけた金髪の男はやっぱり・・・?
100通常の名無しさんの3倍:04/04/11 23:02 ID:???
「良かったね」
セイラが近づくなりガルマが笑いかける。
「?」
「あ、いや・・・キャスバルのシャトル、定刻通りに着くそうだよ。
さっきアナウンスしてたろ?」
「そうだったの?聞き逃していたわ。ガルマと来ていて本当に良かった。」
無邪気に話すセイラの顔はほんのりと赤く染まっている。
『スレッガーの事、本当に好きなんだな。アルテイシア・・・』
セイラの顔が赤いのは先程の失態の為なのだが、何も知らないガルマの思考はますます
あらぬ方へと傾いてゆく。
『情けない。キャスバルに会ったら一発気合を入れてもらった方がいいかもしれないな』
クスリと苦笑する自分をセイラが覗き込んだ。
「・・・あなたも私をブラコンだと思ってるの?」
「え?そんな事・・・自覚なかったのかい?!」
「もうっ、ガルマッ!」
ガルマは鞄を持ち上げたセイラからサッと逃れると、笑いながら歩き始めた。
「一日に二度もぶたれるなんてゴメンだよ。さ、行こう。ブラコンかどうかは直接本人に会って確かめるんだね!」
その言葉に従い、セイラも歩き出した。最愛の兄、キャスバルを出迎えるために。
101通常の名無しさんの3倍:04/04/11 23:08 ID:???
すみません。海外にすら行った事のない無い私には
シャトル入港時の描写がわかりません。
どなたか続きをお願いします。
102通常の名無しさんの3倍:04/04/11 23:26 ID:???
>>101
職人さん、乙です。
申し訳ないのですが、なるだけこのスレはsage進行でおねがいしまつ。
103通常の名無しさんの3倍:04/04/12 12:01 ID:???
帰国を決意してからのシャアの行動は実に迅速だった。
まずはシャトルの予約。アステロイドベルトの果てにあるアクシズからサイド3迄は遠い。
各サイドへの直通便もあるが、週に一便程度である。しかし、通称・「ドンコウ」と呼ばれる
各サイドに立ち寄る便では余りにも時間がかかる。シャアは迷わずサイド3への直通便を調べた。
「これなら余裕だな。」
パーティーの10日前に到着予定の便を見つけ予約を入れる。これなら多少遅れても十分間に合うし、
最悪欠航になった場合でも次の便で間に合うだろう。
予備の予約も入れてすぐ、シャアはガルマにメールを打った。
「アルテイシアには・・・ガルマから話が行くだろう・・・それでいい・・・」

次に、やりかけの論文に着手した。実験は一段落したものの、このところティターンズの動きが
気になり、遅々として進まなかったのである。だが、一旦こうと決めた時のシャアの動きは凄まじく、
人一倍どころか通常の3倍はあろう速さでそれをまとめ上げた。
「ふむ。」
自分でも納得のいく出来に満足する。これまでの遅れが嘘のようだ。
一息入れ、シャトルの運行状況を確かめる。サイド3直通便の変更は無い。
「どうしたものかな」
予想外に早く論文が仕上がった為、3日も時間ができてしまった。
シャアの性分として、ただのんびりと時間を過ごすことは苦手だった。
特にララァを失って以来、無意識に暇な時間を作らなかったのである。

「ララァ・・・」
そう呟くとあの日の痛みが甦ってくる。それは未だシャアが挫折を知らぬ頃、
若さゆえの過ちであったろう。しかしシャアはその為にララァを失ってしまったのだ。
いや、それ以前にあれは本当に事故だったのだろうか?だがそこにティターンズ、
ジャミトフ・ハイマンが絡んでいたという証拠は何も無い・・・
思い出すたび、砂を噛むように苦い思いがシャアの心を苛む。
しばし逡巡したシャアは、ふと思いつき、もう一度シャトルの運行予定を調べなおした。
するとサイド4直通便の出航が人的ミスで遅れていることに気付いたキャンセルも幾つかでている。
「サイド4にはキグナンが居たな。」
サイド4とサイド3は友好国である為往復するシャトルも多く距離的にもたいしたことは無い。

シャアはすぐに荷造りすると、書き上げた論文を片手に部屋を出た。
104通常の名無しさんの3倍:04/04/12 12:11 ID:???
兄さんを常駐させるため、勝手に伏線入れてみました。
その上sage進行の仕方がよくわからず失敗。勉強してきます。
105通常の名無しさんの3倍:04/04/17 15:16 ID:???
>104さん、sage進行は、メール欄に半角英数で「sage」と
入れると大丈夫ですよ〜。

それでは、続きを入れさせていただきますね!
106通常の名無しさんの3倍:04/04/17 15:17 ID:???
いよいよ17時になり、アクシズからのシャトルが予定通り入港してきた。
セイラとガルマは出迎えのロビーで、入国審査室からぞくぞくと出てくる乗客の中に
シャアの姿を探したが、30分、40分と過ぎてもシャアは出てこなかった。
「・・・ガルマ、兄さんがいないわ・・」
人の流れを凝視しつづけながらも、セイラの声はかぼそく震える。
「混んでいるのかな、もう少し待とう」
励ますようにそう言い、つい肩を抱き寄せようとして慌てて思いとどまる。
セイラが気づいていないことにほっとしながらも、ガルマもこの状況に『おかしい』
と感じていた。
今やロビーに出てくる人々のほとんどが軽装だ。はるか遠方のアクシズから
やってきた人たちとはとても思えない。とすると入国審査はもう次の入港便で
やってきた一団に移っているのだろう。
(もしやキャスバルはあの便に乗っていなかったのか? それとも何かあった
のだろうか・・・)
きっちり一時間待って、ガルマはセイラに言う。
「まさかとは思うけど、念のため乗客名簿に奴の名前があるか、航空会社に
確認してくるよ。君はこのままここにいてくれるかい?」
「ええ」
セイラを残しガルマはロビーを出た。
107通常の名無しさんの3倍:04/04/17 15:19 ID:???
(兄さん、一体どうしたっていうの・・・)
セイラは焦りと不安でいっぱいだった。
ロビーではそこここで家族や恋人たちが再会に抱擁し、友人同士は肩を叩き
あって歓声をあげている。また異国から到着した人たちはこれからの楽しい旅に
胸を躍らせ一様に明るい表情だ。
幸せに満ちたその空間でセイラだけが異質だった。
「お願い、兄さん、帰って来て・・・!」
祈るようにつぶやいたその時。
「・・・アルテイシア!」
背後から名前を呼ばれセイラは反応する。
間違いない、この声は・・・
セイラはゆっくりと振り向いた。
「・・やぁ」
思ったとおり、そこには夢にまで見た愛しい兄の姿があった。
声が出ない。
息が出来ない。
まばたきも出来ず、次第に涙でかすむ兄の姿を、それでももっとよく見ようと
目を見開くセイラに、シャアは優しく微笑むとそっと抱きしめた。
108通常の名無しさんの3倍:04/04/17 15:20 ID:???
「に、兄さん・・・兄さん!」
幼い子供のように自分の胸にすがって泣き出すセイラを、シャアは何もいわず
ゆっくりと髪をなでてやるのだった。
しばらくそうしていると、
「・・・キャスバル!」
息を弾ませ戻ってきたガルマが二人をみつけ驚きの声をあげる。
「久しぶりだな、ガルマ。この通り帰って来たよ」
「・・・一体どこで油を売ってた、心配したじゃないか!」
言葉とは裏腹にガルマの声は喜びに満ちている。二人は固く握手を交わした。
「あぁ、すまなかった。予定を変えてサイド4に寄って来たからな。
君に連絡していた時間より早く空港に到着したんだが、ちょっと問題があって
遅くなってしまった」
「問題?」
ガルマがたずね、セイラもやっとシャアの胸から顔をあげる。
「ああ、来た来た、あれだ」
シャアの視線の先を追うと、中年の男が一人、小さな子供を二人連れてこちらに
向かってくるところだった。すると、子供のうちアフリカ系らしい男の子がシャアを
見つけ手を振りながら駆け寄ってくる。
「おじちゃーーん!」
109通常の名無しさんの3倍:04/04/17 15:23 ID:???
男の子と、もう少し幼いアジア系の顔立ちに金髪の女の子が、シャアにまとわりつく。シャアも「おじちゃんはやめなさい」などと言いながら、二人の頭をなでてやったり
している。
セイラもガルマも度肝を抜かれ、呆然とその光景を眺めるだけだった。
「それでは、私は二人を連れて先に行っております。どうぞご心配なく」
「ああ、キグナン、頼む。明日の午前中には私も顔を出す」
「は!」
キグナンと呼ばれた、中背のがっしりしたその中年男は、二人の子供を促すと
ガルマとセイラにも会釈してロビーを去って行った。
「おい、あの子供達は何だ!?」
「うん、孤児でな、訳があって連れて来たんだが、移民手続きが思った以上に
複雑で参ったよ」
さらりと言うシャアにガルマはあっけにとられる。
「詳しいことはおいおい話すよ。それより久々の再会を楽しもうじゃないか。
まずは腹ごしらえをしたい」
「そうね、どこか落ち着いて話せるところに行きましょう」
「あー、ごめん。僕はちょっと大学に戻らないといけないんだ。今日はアルテイシアを
君に送り届けることが目的だったから・・」
「冷たいやつだな」
口をへの字に曲げてシャアは親友を見る。ガルマは苦笑した。
「しばくはこっちにいるんだろう、今日は兄妹二人きりで楽しむのもいいじゃないか。
そういえば、どこに滞在するんだ?」
「そのことだが、君のところに泊めてもらえないだろうか、ガルマ」
「エエッ!?」
110通常の名無しさんの3倍:04/04/17 15:25 ID:???
「君のマンション、部屋が余っていたと記憶しているが?」
「そうだけど、しかし・・・」
ちらりとセイラの顔を見る。セイラも困った顔をしていた。
それはそうだろう。こちらに滞在中ずっと兄と一緒にいたいセイラにとって、
たとえ『友人』として友好な関係にあるとはいえ、『元恋人』の顔をしばしば見なくては
いけないのでは複雑だ。
「おい!まさか・・・」
ぐいっとガルマの手をひくと、シャアは耳元で小声で言う。
「アルテイシアが泊まりに来られなくなるから渋っているわけではあるまい?」
「ち、違うよっ!」
慌てて否定するガルマをシャアは満足そうに笑った。
「なら問題ないな。今日はホテルに泊まるから、明日から頼む」
「・・・分かった・・」
まだシャアは何も知らないのだ。
いずれ真実を知ればさすがに配慮してくれるだろう。
アルテイシアは今夜話すだろうか・・・・。
「じゃあ、僕はこれで」
「ああ」
「・・・今日はどうもありがとう・・・ガルマ」
「いや・・・それじゃ・・・」
ガルマの後姿とそれ見送る妹の姿に、シャアはかすかな違和感を覚えたが
「私たちも出ましょう、兄さん」
かわいい妹に腕を回されるとそれもすぐに消し飛ぶのだった。
「そうだな、まずはレンタカーを借りに行こう」
111通常の名無しさんの3倍:04/04/17 16:28 ID:???
<祝・にシャア帰還>
早速シスコン発動ですね!
しかし、シンタとクムが登場するとは!次はアポリー、ロベルトかな?
112通常の名無しさんの3倍:04/04/17 16:58 ID:???
レンタカーに乗り込んだシャアはそれまで来ていた上着を脱いだ。
ハイネックの白いシャツには袖がなく、シャアのきれいに鍛えられた
腕がむき出しになっている。
そういえばさっき抱きついた時に分かったのだが、背も昔より伸びたようだ。
緩やかなウエーブを描く金髪も、裾の方は随分長くしている。
自分の知らない3年で、兄はより男くさく、魅力を増してきたのではないかと
ハンドルを握る兄を横で見つめながらセイラは思う。
「アルテイシアは・・・」
「え?」
「随分きれいになった。最初お前を見たときは驚いた」
(兄さん・・!)
シャアが自分と同じことを思っていたと知ってセイラは微笑んだ。
「大学はどうだ? 勉強はついていけてるのか?」
「失礼ね、この間のレポートでは教授に褒められた程よ」
「ほう」
嬉しそうなシャアの声。セイラは少し照れくさくなって付け加える。
「でも必須の物理はちょっと苦手なの」
「そうか、じゃあこっちにいる間に勉強をみてやろう」
「本当!?」
「あぁ。こっちには2週間ほどいるつもりだが、教授のパーティと、あと2,3
やぼ用を除けば完全にフリーだからな。なるべくアルテイシアと過ごしたいと
思っている。父さんのところにも顔を見せに行かねばならんが、一緒に行けるか?」
「もちろんよ!」
思っていた以上に滞在期間が短いことはショックだったが、それでもその間は
ほとんど一緒に過ごせそうなので、セイラは我慢しようと思う。
「まぁガルマには悪いが、あいつは年中お前といるんだから、許してもらわんとな」
そう言ってシャアが笑ったので、セイラはついに来るべき時が来たと覚悟する。
「兄さん、そのことなんだけど・・・」
「なんだ?」
「・・・ううん、やっぱりお店についてから話すわ」
言いにくそうに言葉を濁す妹にシャアは空港での違和感を思い出していた。
113通常の名無しさんの3倍:04/04/17 18:05 ID:???
ガルマが空港から大学に戻って来たのは夜8時を回ったころだった。
普段ならまだ大勢学生が残っているはずだが、研究室は妙に閑散としている。
「ああ、そうか」
壁にかけられたホワイトボードの月間予定表を見てガルマは納得した。
10日後に行われる教授の還暦パーティの事前打ち上げと称した飲み会に
講師も生徒も皆出ているのだ。
「やれやれ、これは集中できそうだな」
苦笑しながら上着をロッカーにかけようとして、ふと窓から隣の教室の明かりが
もれていることに気づく。
「誰か残っているのかな?」
何気なく隣のドアを開け、ガルマはどきりとした。
そこにはイセリナが一人パソコンに向かっていたからだ。
「し、失礼!」
慌ててドアを閉めようとして、ガルマはイセリナの顔色がひどく悪いことに気が
付いた。
迷ったがやはり放ってはおけない。ガルマは決心してイセリナに近づいた。
「大丈夫かい?具合でも・・?」
「いえ、大丈夫です。お気遣いはいりませんわ」
少し微笑ん会釈したものの、すぐに目をパソコンに向け作業を続けようとする
イセリナ。その声はカサカサで、ガルマは驚いて近寄る。
よく見ると、イセリナの目の下には隈が出来、目も真っ赤に充血していた。
熱があるのはまぶたが異常に赤いのですぐに分かった。
「大丈夫そうには見えないよ、休んだほうがいい」
「いえ、本当に平気です。3日くらいの徹夜なんて、いままでだって何度も
経験していますから」
「なんだって!? 3日間も!? 駄目だ、今すぐ保健室に・・・」
慌てて立たせようとして腕をとると、イセリナに激しく振り払われた。
「期限は明日なんです!どうしても今夜中に完成させなくては、これまでが
すべて無駄になってしまいます!お願いですから出て行ってください!」
イセリナの鬼気迫る様子、しかしガルマに驚く間も与えず、次の瞬間彼女は
その場に倒れ気を失った。
114通常の名無しさんの3倍:04/04/17 18:07 ID:???
(・・・ここは・・・?)
目を覚ました場所が大学の医務室だと気づいた瞬間、イセリナは飛び起きた。
「おや、起きてしまったかね?まだ寝ていなさい」
「先生、今何時ですか?私どれくらい眠っていたんですか、教えてください!」
「2時間くらいだよ、今日は保健室に泊まっていきなさい。まったく若い女の子が
3日間も徹夜だなんて・・、っておい、君!」
校医のハサンの言葉を振り切ってイセリナは研究室に向かって駆け出した
ガルマが抜けたあと、代わりの協力者も断って、イセリナは一人で研究を続けて
いた。しかしはやり一人では思うように進まず、なんども失敗しながらやっと
形になったとき、論文の提出期限はもう目の前に迫っていたのだ。
ここで逃してしまうと、また一年待たなくてはいけない。
文字通り決死の覚悟でイセリナは追い込みに臨んでいた。
「ぜったい負けない・・一人でだって・・・」
ふらつく足を引きずりながら教室のドアをあける。
「ガルマさま・・・」
自分のパソコンの前にガルマが座っていた。
「事情は分かったよ、イセリナ。このスケジュールだと、明日の朝10時に速達で
ディスクを発送すれば締め切りに間に合う。そうだろう?」
試験要領を記した紙を手にガルマは言う。
「しかし今見せてもらったが、君の研究は完成してはいるが、これだけの量を
明日の朝までに一人で論文に書き上げるのは、物理的に不可能だよ」
「そんなこと・・・!」
「でも、二人でなら可能かも知れない」
「!?」
115通常の名無しさんの3倍:04/04/17 18:08 ID:???
「ハサン先生、お聞きの通りです。彼女の人生はこれからの12時間にかかって
います。どうかご理解ください」
いつの間にかハサンも教室の入り口に立っていた。
「仕方がない、私は今夜はずっと保健室にいることにするから、限界だと思ったら
いつでも来なさい。いいね」
やれやれという風にハサンは溜息をつくと、こんなこともあろうかと持参してきた
往診バッグから栄養剤を一本イセリナの腕に注射した。
「ありがとうございます」
深々と頭をさげるガルマ、「若いっていいねぇ」とつぶやきながら教室を出て
行くハサン。
イセリナは信じられない気持ちでそれを見ていた。
その間にもガルマはてきぱきと進めてゆく。
「まずは手分けしよう。僕は内容のチェックと文章の校正をするから、君は
さっきの続きからタイプしてゆくんだ」
「あ、あの、でもガルマさま・・」
「今はこだわってる時じゃない。さあ!」
「はい!」
イセリナは涙をぬぐうと再びパソコンに向かった。
116通常の名無しさんの3倍:04/04/17 20:19 ID:???
職人さんGJ!

ガル お前って奴は・・・・
良い人ではあるが、良い男ではないな。今のところ・・・
117通常の名無しさんの3倍:04/04/17 22:43 ID:???
兄さん、お帰りなさい!!
妹にサラッと「綺麗だ」といえる相変わらずの兄馬鹿ぶりに萌ますた。

>>116
禿同。でも、そんなガルマが好きだ・・・
118通常の名無しさんの3倍:04/04/18 09:05 ID:???
久しぶりのシャアとセイラ二人の場面ですが、やっぱり
書いてて楽しいです!

さらに続けさせて頂きます。
119通常の名無しさんの3倍:04/04/18 09:06 ID:???
深夜。
シャアは寝付けずにベッドを抜け出すと、備え付けのミニバーからミネラル
ウォーターのボトルを取り出した。
そのままソファに腰掛け水を飲んだあと、もう一つのベッドで静かな寝息を
たてる妹をそっと伺う。
「やっぱり私も一緒に泊まる。ねえ、いいでしょう兄さん」
明日の学校はどうするんだと叱りながら、それでも妹の懇願にシャアは
部屋をツインに変更してやったのだった。明日、いやもう今日だが、かなり
早起きして大学まで送ってやらねばならない。
だがそんな面倒も、今のシャアには嬉しいと思えてしまうのだ。
どこまでも妹に甘い兄であった。
(しかし、まさかアルテイシアとガルマが破局していたとはな・・・)
聞いたばかりの話をもう一度思い出しながら、シャアは苦い気持ちになる。
『ガルマは好きだけれども、愛せなくなった。ガルマにとっても自分は
ふさわしい存在ではないと思う。いろんな負の感情から解き放たれたくて
別れを決意した』
要約するとセイラの話はこのようなものだったが、具体的に聞こうとすると
口を閉ざすのでシャアには今ひとつ要領が得なかった。
どちらかに他に恋人が出来たから・・などという理由でないらしいことが
救いと言えば救いだが、それならなおさら原因が気になる。
それに今日も二人で空港まで迎えに来ていたり、『恋人ではないが
いままでどおり友人として付き合う』などと二人で話し合ったと聞かされ
れば、これはもうシャアの理解を超えていた。
シャアの恋愛は、いつだって終ってしまえばそれっきり、会うことはおろか、
思い出すことさえなかったから。
「・・・とりあえずガルマに話を聞かなくてはな」
ソファから立ち上がり、もう一度セイラの顔を眺めてからシャアは
自分のベッドに戻った。
120通常の名無しさんの3倍:04/04/18 09:07 ID:???
翌朝、シャアは車にセイラを乗せてホテルを出た。
「兄さん、今日の予定は?」
「うん、とりあえず顔を出すところが2,3あるので、まずそれを終らせて
くるつもりだ。アルテイシアは明日の夜は空いているか?よければ
買い物につきあって欲しいのだが」
「ええ、いいわよ。授業は15時には終るから」
「じゃあその頃に電話するよ。・・・ん、あれは・・」
それは、ちょうど信号待ちをしている時だった。対向車線に止まった車の
中にいる人物。それはガルマとイセリナだったのだ。
思わずセイラを見るとセイラも二人に気づいたようだった。
しかしガルマたちの方は、こちらに気づかずやがて信号が変るとそのまま
行ってしまった。
「あれはイセリナ嬢だろう? なぜ・・」
なぜガルマと一緒にいるんだ?と言いかけてシャアは口をつぐんだ。
こんな早朝に男女が一緒にいる、それの意味することは一つしか
ないように思えたからだ。
「なぜここに? 確か彼女は地球にいるはずでは・・?」
とっさに質問を変えたものの、とってつけたようになってしまった。
「数ヶ月前から留学でガルマの研究室にいるのよ。あの二人がどうして
こんな時間に一緒にいるのかは知らないわ」
「アルテイシア・・?」
「だってもう私には関係ないもの」
なんでもない風に言い切るセイラ。
しかしシャアには妹の内心の動揺などお見通しだった。
別れたとはいえ、かつての恋人が他の女性と意味ありげにいる場面を
目撃して、何も感じないほど、この妹は擦れていない。
(・・・まぁ私なら全く何の感情も沸かないところだがな・・)
すべては今夜ガルマと話をしてからか。
そう思いなおし、それきりこの話題には触れずシャアは大学までの
道を急いだ。
121通常の名無しさんの3倍:04/04/18 21:05 ID:???
ガルマって要領も悪いけど、結構運も悪いよね。
でもそんな彼が私も大好きだー!(w

ところで帰って来たシャアは、「クワトロ」になるんですかね?
122通常の名無しさんの3倍:04/04/18 22:04 ID:???
あまりにZに忠実なのはイヤ〜
何か理由があったらクワトロになるのかな?
でもここではシャアも異名だからなあ
123通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:33 ID:???
規制解除まだかな
124通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:36 ID:???
↑失礼しました
>>118さんに触発され書き込もうとしたのですが、アクセス規制が!
初めてのことでわけが解らずパニクッてしまいました。
そんなときに限って妄想膨らんでしまい・・・
以下、駄文・長文うpさせて頂きます。
題して「シャアの憂鬱」です
125通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:39 ID:???
セイラを送り届けた後シャアは、一人ホテルのラウンジでコーヒーを飲みながら
昨日のことを思い出していた。

「兄さんにはやっぱり赤が似合うわ」
セイラの一言でシャアは真っ赤なスポーツカーをレンタルした。
目立ちすぎて気恥ずかしい気もするが、この妹が喜んでくれるならどうということはない。
3年ぶりに会う妹に対し、シャアは改めて愛しさを噛み締めていた。
「で、何にする?」
「あら、久しぶりに帰ってきたのだから、兄さんの好きなものにしましょうよ」
「そう言われても、この3年で街も随分変わったろうし・・・ああ、あの店はどうかな、
ほらあの、父さんのお気に入りの寿司バー・・」
「百式ね!確かにあの店ならまだまだ健在よ」
「何せ百年先まで語り継がれる寿司を出す、という店だからな」

先にチェックインを済ませると、車を置き徒歩で店に向かった。
寿司バー・百式はテーブルを回転させていない、今では希少な本格的寿司バーである。
地球のジャパニーズ地域に思い入れのある父・ジオンに連れられ、二人も幼い頃から馴染の店だった。
店の暖簾をくぐると威勢のいい掛け声で出迎えられる。職人気質の大将が二人を見て相好を崩した。
「お二人でお越しとは。坊ちゃん、いつお帰りで?」
「坊ちゃんはよして欲しいな。もういい年なのだから」
苦笑するシャアにセイラが追い討ちをかけるように付け加える。
「そうね、なにせ“おじちゃん”だものね」
こいつめっ、とばかりに睨みつけるものの、どうしても顔が笑ってしまうのだ。
奥座敷に通されると、お猪口をあげて乾杯をした。
「お帰りなさい、兄さん」
「ただいま、アルテイシア」
126通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:41 ID:???
いつもの様に大将のお任せコースを頼む。魚介類の他アボカド、スパムといった握りに舌鼓を打ちながら、シャアはセイラからの矢継ぎ早の質問に答えなければならなかった。
「早く着くなら途中で連絡してくれたらよかったのに」
「スマン、本当に偶然だったんだ。レポートが予定より早く終わって、運行状況を確認してみたら出航の遅れているサイド4便に気が付いたんだ。直通便よりこちらの方が早く着いた。ついでに用事も済ませたしな」
「サイド4にどんな用事が?それにあの子供達は?」
「久しぶりに戻ってきたのだから、色々挨拶する所もあるさ。あの子達はその途中でちょっと」
「もう、家族に会うより挨拶を優先させるの?それにちょっとでは解からないわ」
そう言いながらもお酌をしてくれる。この3年で少しは大人びたようだ。
「どうせ経由するんだ。先に済ませた方が後々ゆっくり出来るだろう?それに、突然現れて驚いた顔を見たかった。・・・子供達には複雑な事情があってね。力になってやりたかった」
その辺の事は少しはぐらかしてみる。久しぶりの再会で余計な心配を掛けることもなかろう。
「私が見かけたのは、やっぱり兄さんだったのね。会いたい余り、幻覚でも見たのかと思ったくらいよ」
「・・・そんなに寂しい思いをさせてしまったのか。済まなかったな」
他人には殆ど見せない誠実さで、真っ直にセイラの瞳をみつめて詫びる。
それに答える様、セイラは穏やかに微笑んで言葉を続けた。
「ううん、そんな・・・いいのよ。それから・・兄さん、少し背が伸びたのね」
「ああ、私も驚いているんだよ。まさか二十歳過ぎてから伸びるとはな。
運動不足解消にと、バスケをしたのがよかったのかもしれん」
「まあ、にいさんがバスケ?観てみたいわ!」
「研究の合間のレクリエーション程度だよ。他に水泳やスカッシュやフェンシングも・・・
それと食事が不規則になりがちだったので、栄養補給にと思って牛乳を毎日飲んでいた」
「随分忙しくしていたのね、道理でろくに連絡が無いわけだわ」
そう言って少し口を尖らせるのは、幼い頃から変わらぬ拗ねたふりである。そんな仕草すらシャアにはたまらなく愛らしく映るのだ。
ふと、自分のいない間の事が気になって、今度はセイラに近況を尋ねてみる。
ガルマとののろけ話を覚悟していたのだが、セイラが話すのは父や大学生活などだった。
「そうそう、ミライとブライトの事覚えていて?二人は学生結婚したのだけど、ミライはついこの間
男の子を出産したのよ。私が一緒に居る時に産気づいてしまって大変だったわ。でも、皆あんな風に産まれてくるのねぇ」
その時の事を思い出したのか、うっとりと遠くを見るような目をするセイラ。
・・・ここまでは良かったのだ。
次の自分の一言が、妹に悲しい告白をさせる事になってしまった。
「女の子は早いな・・・お前とガルマも卒業したら直ぐだろう。まさかおまえ達まで学生結婚という事はないだろうな?」
悪戯っぽく牽制したつもりが、返ってきた答えにシャアは軽い眩暈すら覚えた。
127通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:43 ID:???
「・・・別れたの、ガルマとは」
空港での違和感がやっと解った。解ったのだが理解できない。
・・・ガルマだからこそ許したのだ、ガルマだからこそ委ねたのだ・・・それを・・・
絶句するシャアに、セイラは言葉を選ぶようにゆっくりと経緯を語った。
しかし、どう訊ねてもシャアの納得いく答えは聞けず、その場は妹を傷つけぬ様それ以上の言及は避けたのだった。

店を出た二人は互いに無口になった。
気まずい雰囲気を変えようとシャアが話し掛けかけた時、人混の喧騒にまぎれて歌声が聞こえてきた。
少年らしい、高くも低くもない伸びやかで澄んだ歌声。
「綺麗・・・」
アルテイシアも気付き、二人は声のする方へ歩き出した。が、声の主の許に来たとき、状況は一変していた。
「なんだと!」
「何度でも言ってやる。そんな下手糞なギターなんてただの騒音なんだよ!」
確かに、先程の歌は見事だったが、弾き語りにしてはお粗末なギターだった。だが、それを差し引きいて尚、人を魅きつけるだけの・・・・無意識に歌い手の評価をしていたシャアの思考を少女の叫び声が遮った。
「止めてっ!駄目よカミーユっ」
見ると、青い髪の少年が金髪のリーゼントと掴み合いになっており、黒髪の少女が必死で止めようとしているのだ。
「カミーユだと。顔だけじゃなく名前まで女か!」
リーゼントが鼻で笑う。
「!!・・俺はっっ・・・男だよおっ!」
叫ぶと同時に、遂に殴り合が始まってしまった。
『やれやれ、若いな』等と呑気に見ていたシャアだが、傍らのセイラから
「兄さん、止めて!」
と言われるとほっておく訳にもいかず、サングラスで顔を隠すと仲裁に入った。
128通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:45 ID:???
先制こそ少年の方が決めたもののリーゼントには仲間がおり、更には体格差はいかんともし難い
ものがあり、あっという間に少年はタコ殴り状態だった。
「止めたまえ」
声を掛け、リーゼントの右腕を掴む。
「何だてめえはっ!」
振り返りながらリーゼントは粋がった。興奮し、目が充血している。
「その辺にしておきたまえ。2対1でいくら勝っても、自慢にはならんだろう」
ありきたりの言葉だが、シャアが言うと何とも言えぬ凄みがある。威圧されたリーゼントに
「君もギターを弾くのだろう、こんな事で腕を痛めていいのかい?」
と耳元で言うと、掴んだ手に少し力を込める。苦痛に顔を歪めたリーゼントが
「ちっ」と、舌打ちをするのを聞いてシャアは手を離した。
「気がそがれたぜ」
仲間を促し雑踏に消えて行く。
「全く以って悪役そのものだな。『覚えてろよ』がないだけまだマシか」
「兄さんたら呑気ね。でも、さすがだわ」
そういいながら近づいてきたセイラは、取り残された少年少女に声を掛ける
「大丈夫?歩けるかしら?」
ハンカチを差し出すセイラに少女は何度も礼を述べたが、少年は憮然としたまま傷を押さえ座り込んで居た。
「!・・・まずいなっ」
シャアは突然少年を担ぎ上げると傍らのギターを拾い、セイラと少女を促し急ぎその場を離れた。
騒ぎを聞いた警察が、今更の如くやって来たのだ。
129通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:47 ID:???
「本当に何から何までありがとうございました」
ファ=ユイリーと名乗った少女は、深々と頭を下げた。カミーユ少年の方は相変わらず憮然としていたが、ホテルの一室で怪我の手当てまでして貰ってはさすがに気が引けたらしく、帰りがけに一言
「ご迷惑をおかけしました」
とだけ言った。その態度が気に入らないのか、ファはカミーユの脇を肘で突いている。
そんな姿を好ましく思ったセイラは
「仲が良いのね。恋人同士?」
「「違いますよっ!」「た、ただの幼馴染ですっ」」
聞くが早いか、二人同時に否定をされてしまった。瞬間、『幼馴染』という言葉にセイラはガルマと自分を重ねる。そのわずかな動揺をシャアが見逃すわけもなかった。本来ならこの無鉄砲で礼儀知らずな少年に、説教の一つもしてやりたいところだが
「もう、遅い時間だ。早く家に帰りなさい」
等と、尤もらしい事を言い二人を帰そうとした。
「はい、ではこれで・・・・あ、そういえばまだお名前を伺ってません。失礼ですが、お名前は?」
聞かれて少し躊躇した。巻き添えとはいえ警察から逃げるような真似をしたのだ。万が一のことを考えダイクンの名を出す事は憚られた。
「私は・・・」
言いかけて、ふと一枚のポスターが目に入った。[バジーナ交響楽団―――四重奏―――]
「・・・バジーナという。クワトロ=バジーナだ。それから妹の・・」
「セイラよ。気をつけて帰ってね」
察したセイラも兄に合わせる。
「お世話になりました、クワトロさん、セイラさん」
ファがもう一度頭を下げると、二人はホテルを後にした。が、最後にチラリと振り返って自分を見た(様な気がした)カミーユのことが僅かにシャアの気に触った。
『あの少年、何処かで・・・?』
気にはなったが、何はともあれアルテイシアだった。二人を見送る目が哀しく見えるのは気のせいではないだろう。
結局その後、「やっぱり私も一緒に泊まる。ねえ、いいでしょう兄さん」という言葉に逆らえず、
むしろ自分に甘える妹を嬉しくさえ思い、その我侭を聞き入れたのだった。
 
「そのせいで、あんな所を見てしまうとはな」
アルテイシアを思い、シャアは深い溜息をついた。
130通常の名無しさんの3倍:04/04/19 12:52 ID:???
うpしてみたら、ものすごく読みづらいですね。
以後気をつけます。
>>122さん 済みません
カキコ見る前に書きあがっていたため
名乗らせてしまいました。
131通常の名無しさんの3倍:04/04/20 00:56 ID:???
講義が終わり、寮に戻ったセイラの手元に一通の手紙が速達で届いていた。昨日
は不在だったので寮長が預かってくれていたのだ。セイラは寮長に礼をいうと
自室に向いながら、誰かしら?と、見覚えのない癖のある字体に首を傾げつつ、
差出人の名前を確かめてみる。
(ベルトーチカ・イルマ・・・)
彼女とのつながりといえば、スレッガーのことしか思い浮かばない。何だろう?
まさか、先輩の身に何かあったのでは・・・。胸騒ぎを感じつつ、セイラは机の
引き出しからペーパーナイフを取り出すと手紙の封を切った。中味は小さなメッ
セージカードとライブチケットだった。

『今度、新曲の発表をします。必ず来て!』

たった一行、書き添えられていた。どうして今更、私に?セイラはベルトーチカ
の意図するものが把握できない。戸惑いながらチケットをよくみると日時が今日
になっているではないか。
「嘘でしょう?そんな、急にいわれても無理よ」
セイラは一方的なベルトーチカに対する反発心から思わず声に出していた。
(私が受け取るのが遅くなっていたらどうするつもりなの?それにひとの予定を
聞きもしないなんて・・・)
セイラはライブに行かない為の理由をあれこれと考えながら、チケットを机の上
に放り出すと、シャワー室へと姿を消した。つい先程まで兄との再会で浮かれて
いたのが嘘のようだ。こうなると思い出したく無い事まで思い出してしまう。
今朝見かけたガルマとイセリナの姿がちらつく。セイラは嫌な気分を洗い流す
かのようにシャワーを全開にして浴びた。
シャワーを浴び終わり、バスローブ姿のままベッドに身を投げ出すとぼんやりと
天井を眺めた。時計の針が進む音がやけに大きく聞こえる。ふと、窓に眼をやる
と外はすっかり暗くなっていた。
(このままでいいの?)セイラはチラリと時計に目をやると決心したように起き
上がった。手早く身繕いを済ますと机の隅に追いやられていたチケットを握り部
屋を飛び出していった。
132通常の名無しさんの3倍:04/04/20 00:57 ID:???
どうにか開演時間ギリギリにライブハウスに到着したものの入り口に立ったまま
あと一歩が踏み出せない。他の観客はすでに入場しているのだろう、辺りに人影
はなかった。やっぱり引き返そうか・・。セイラは逡巡していたその時――。
「来ないかと思ったわ」
背後からの声にセイラは振り返った。
「どうして私を?」
「さぁ?自分にもよく分からないわ。でも、あなたにはアイツの演奏を聴く義務
があるんじゃないかしらって・・・」
「義務?」
「そうよ。彼、あんな風だから表には出さないけど、ソロモンも色々あったの。
決して順風満帆じゃなかった。どうしてあんなに強くなれるんだろうって考えた
ら、音楽に対する情熱はもちろんだけど、悔しいけどあなたの存在があるからだ
ろうって分かったの。メンバーに聞いちゃったのよ、あなたとの約束・・・。
フラレたっていうのにね。悔しい程あなたに妬けたわ」
昔の事を慈しむように笑顔で話すベルトーチカにセイラは不快感を持つ事無く、
ただ黙って話を聞いていた。
「別にあなたにどうこうしろっていうんじゃないの。男と女なんてどうなるか
判らないもの。とにかく今度の曲はみんなもすごく気に入っていて今迄で1.2を争う出来だって!
来た以上は楽しまなきゃ損よ。さぁ、入って入って」
ベルトーチカに背中を押されセイラはライブハウスの扉を開いた。ベルはセイラ
が入室したのを見届けると控え室へと向かった。
「遅いぞ!どこへいっていたんだよ?もう、時間だぜ」
姿を現したベルにソロモンのメンバーが畳み掛ける。ベルは顔の前で手を合わし
て謝罪のポーズをとってみせる。
「ごめん、ごめん。今日はリハどおり変更なしでお願いします。みんな、頑張っ
てよ」
「オッケー!了解だ。さぁ、いくか!」
気合いを入れたメンバーがステージに向かう。スレッガーがベルとすれ違い様に
ベルの頭をポンと叩いた。
「頼むぜ?マネージャー。今日は大事な日なんだからな」
「判っているわ。今日はあなたが一番、聴いてもらいたい人が来ているかもよ?」
「なんだぁ?どういう事だよ」
まさかセイラがいようとはスレッガーには思いもよらない。
「いいから。もう、時間よ!さぁ、頑張って!」
「ん、あ、あぁ・・」
ベルはウインクすると訝し気なスレッガーの大きな背中を後押しした。
133通常の名無しさんの3倍:04/04/20 00:58 ID:???
開演前から場内は熱気に包まれていた。場の雰囲気に馴染めないセイラは一番
後方にひっそりと佇んでいた。しばらくしてメンバーがステージに上がると観客
の歓声が場内に轟く。そして次々に演奏される曲にセイラは息を飲んだ。
(凄いわ・・・)
数年前とはレベルが違う。テクニックもさることながら魅了させられてしまう
何かを感じずにいられない。セイラは彼等が本当にプロになったのだと感服した。

「今日は来てくれてありがとうな!もったいぶったけど、最後に新曲の発表だ。
この曲を書いてくれた奴にメンバー一同、感謝する!」
手を挙げてスレッガーがさり気なく誰かに視線を送ったのをセイラは見逃さなか
った。そして、その視線の方向を窺った。
『アムロ?』
心もとなかったセイラは、顔見知りのアムロを見つけ内心ホッとする。彼の傍に
近付こうと観客の間を掻い潜りながらふと、脚が止まった。
(唄っている?)
演奏に合わせ、アムロの唇が僅かに動いている。声にこそ出していないが、その
曲を唄っているのだとセイラは確信していた。そしてアムロの怖いくらいに
真剣な表情に声を掛けるのを躊躇うのだった。
やがて曲が終わり、アンコールが始まった。ライブは大成功に終わり、観客達は
興奮も覚めやらぬまま、ライブハウスから次々と消えていった。たった数分の内
にさっきまでの熱狂が嘘のように場内は閑散としていた。アムロに声を掛けるきっかけを
逃していたセイラは、ようやく今がよいタイミングだと彼に歩み寄った。
「アムロ、お久し振りね」
アムロは聞き覚えのある凛とした涼しい声が聞こえる方に振り向いた。
「セイラさん?どうしてここに・・?」
アムロは変わらない彼女の美貌に見とれながらも、スレッガーと結局は復縁した
のかと頭の中で想像を膨らませていた。
「事情はいろいろとね。せっかく会えたけれど私、もう帰らなくては・・・」
セイラの返答に、アムロは自分の想像が外れていると直感した。
「あ、僕も帰ります。車があるんでよかったら送りますよ?」
アムロは長居をしてベルに捕まってしまうのを避けようとしていた。そして多分
彼女も早くここから立ち去りたいのだろうと推測した。
「そう?じゃあ、お言葉に甘えてお願いしようかしら」
「じゃあ、行きましょうか」
134通常の名無しさんの3倍:04/04/20 01:01 ID:???
アムロはライブハウスの前まで車を廻す。寮までの帰り道、ふたりはさっきの
ライブの話で盛り上がっていた。会話を楽しむ一方で、そういえばアムロと
こんなに話をしたのは初めてだな、とセイラは漠然と考えていた。
「ね、アムロはもう唄う気はないのかしら?」
セイラは何気なく疑問をぶつけてみる。すると、今まで笑顔だったアムロの表情
が暗く沈んでしまった事にセイラは立ち入ったことを聞いたのかと当惑した。
「僕は・・。僕はもう唄いたくないんです」
訥々と話すアムロにセイラは、ライブハウスで唄っていた彼の姿を思い出し、
その言葉が真意ではないのだと察する。
「そうかしら・・・。でもアムロ、ライブハウスで唄っていたでしょう?本当は
唄いたいのではなくて?」
アムロは否定するでもなく、ただ力なく笑っているだけだった。
「着きましたよ」
車を寮の前に停めると、アムロはこれ以上、干渉しないでくれといわんばかりに
ぶっきらぼうに、助手席のドアを開けた。
「あなたがボーカルのソロモンの演奏を聴いてみたいものね」
セイラは微笑しながら、優雅な身のこなしで車から降りるのだった。
「送って頂いてありがとう。おやすみなさい、アムロ」
「は、はい。おやすみなさい」
アムロはセイラに執拗に問いただされるものだと思い込んでいただけに、彼女の
引き際の良さに拍子抜けしていた。そして、セイラが寮に入ったのを見届けると
アムロは清々しい気持ちで車を走らせた。
135通常の名無しさんの3倍:04/04/20 22:28 ID:???
アムロ、どうする?
まだまだスレッガーにも登場して欲しいのでライブのお話の続きいかせてもらいます!
136通常の名無しさんの3倍:04/04/20 22:29 ID:???
スレッガーは落ち着かない気分だった。もちろん、演奏に入るとそちらに集中して雑念はなくなる。
しかし曲間のMCの時、楽器を換えるときなど、フロアのある一点にいってしまいそうな
視線を抑えるのに意識しなくてはならなかった。
客席にセイラの姿を認めたからだ。フロアは照明も落とされ、大勢の人でひしめいていたが、
彼女の姿はどんなに遠くからでも探し出すことができた。間違えるはずがなかった。
ステージが引けたあとすぐにに降りてみるが、セイラの姿も、そしてアムロも見当たらない。
「スレッガー」
ベルトーチカが背後から声をかけてくる。振り向くと、ビールの入ったグラスを手渡された。
「アムロのやつ、帰ったみたいだな」
「そうね。そしてあの人も」
「あんたが呼んだのか」
ベルトーチカは否定しなかった。スレッガーはようやく納得がいった。
呼ばれないかぎり、彼女自ら足を運んでくれることなんてありえないだろう。
でも、彼女の姿を見かけて、少しだけ期待したのも事実だ。期待。いったい何を?
スレッガーはやりきれない気持ちを流すように、グラスのビールを飲み干した。
「新曲の感想、聞きたかったのにね」
ベルトーチカが、しんみりとこぼす。
「……そうだな」
137通常の名無しさんの3倍:04/04/20 22:30 ID:???
セイラのこともそうだが、アムロがあの曲を聴いてどう思ったのかが非常に気になった。
まだ、あの曲は未完成だとスレッガーは思っている。あの曲にアムロの声で自分がつけた歌詞がのり、
初めて完成するのだ。
「どうしたら、アムロが歌う気になるのかな」
つとめて明るく言うベルトーチカだが、彼女がアムロをこの世界に呼びもどすためにどれだけ心砕いているのかが
スレッガーには良くわかる。セイラを呼んだのもアムロに何かいい刺激があることを期待したのかもしれないと、ふと思う。
「あんたの熱意はきっと伝わるよ。あいつだってきっかけが掴めないだけかもしれない」
ベルトーチカはちょっと意外そうにスレッガーを見つめ、微笑む。
「私、頑張るわ。絶対アムロを歌わせてみせる。バンドの為に、ね」
「バンドのために、か」
「な、何よ」
ベルトーチカがちょっと戸惑ったのがおかしくて、スレッガーは苦笑する。
「スレッガー。あの人、ライブに来てくれたわ。私の誘いを無視する事だってできたのに」
スレッガーに苦笑されたのがよっぽど悔しかったからかどうなのかはわからないが、彼女はまるで子どものようにやり返してくる。
答えにつまったスレッガーを見て、ちょっと悪戯っぽく笑うと、ベルトーチカは去っていった。
ベルトーチカは痛いところをついてくる。
飲み干したグラスをテーブルに置き、スレッガーはスタッフが慌しく楽器を片付けているステージを眺める。
セイラはあの曲をここで聴いてどう感じただろうか。
彼女には自分の気持ちを伝え、はっきりさせたのだ。でもどうなのだろう。
思いもかけないところで彼女に遭遇する。表面上は普通に接することができると自信を持って言えるが、
やはり胸を走るやるせない痛みは無視できない。
──簡単に気持ちを割り切れるのなら苦労はしない。しかしセイラとのことで、自分ができることはもう何もないのだ。
138通常の名無しさんの3倍:04/04/20 23:20 ID:???
アムロ→セイラ(憧れ)を希望します。
アムロの前では原作っぽい凛としたお姉さんセイラがイイ!
139通常の名無しさんの3倍:04/04/20 23:54 ID:???
すごい更新だ!ガルマもスレッガーにも、まだまだ、活躍して欲しい〜
もちろん、シャアとアムロも!

>>138
メール欄に半角sageでヨロ
140通常の名無しさんの3倍:04/04/21 00:37 ID:???
>>139
気をつけます。済みません。
141通常の名無しさんの3倍:04/04/21 20:41 ID:???
シャアとスレッガーの絡みネタが読みたいなぁ。
結構、面白いと思うのですが・・・
142通常の名無しさんの3倍:04/04/21 21:55 ID:???
「しまった、もうこんな時間か・・!」
ガルマは慌てて机の上を片付けると、パソコンの電源を切り研究室を
飛び出した。
昼間シャアから連絡があり、一緒に夕食をとる約束をしていたというのに、
実験に夢中で時間を忘れていたのだ。
駐車場まで走って運転席に乗り込む。と、ふいに今朝のことが思い出された。
二人で手分けして、必死で一晩中取り組んだ甲斐があり、イセリナの論文は
何とか時間までに完成させることが出来た。
しかし喜びも束の間、難関を目の前にしている時と違い、すべてが終わって
しまえば二人の間に漂う気まずさは相変わらずだった。
「・・・寒くはありませんか?」
イセリナを家まで送り届ける車中、居心地の悪さにガルマはそう話しかけて
みたが、返事がない。見るとイセリナは眠っていた。
無理もない、丸3日間も眠っていなかったのだから。
(たった一人で・・・よくもあそこまで頑張れたものだ・・)
論文は、ガルマから見ても感心するほどよく出来たものだった。
よほどの情熱と根性がなければああは仕上がらない。
ジュエル・デザイナーになって自分のブランドを持つのが夢だとかつて言って
いたが、それは真実彼女の夢なのだろう。
「純粋に研究者同士として出会っていたなら、僕たちはすばらしいパートナーに
なっただろうに・・」
心から残念に思いガルマはつぶやいた。
その時ガルマは気がつかなかった。
眠っているはずのイセリナの睫が少しだけ涙で光ったことを・・。
143通常の名無しさんの3倍:04/04/21 21:55 ID:???
待ち合わせのパブのそばに車を止め、少し歩いて店に向かう。
タイミング悪く、ちょうど近所のライブハウスで公演が終わったところらしく、
道は人で溢れかえっていた。
「すごい人だな・・・」
人をよけて先を急ぐガルマは、ふと見覚えのある金髪を見かけて足を止めた。
後姿だが見間違うはずがない、・・・セイラだった。
だがすぐに彼女すぐに迎えに来た車に乗ってどこかへ去ってしまう。
「まさか・・・」
嫌な予感と同時にライブハウスに掲げられた看板を見る。
思ったとおりそこには「ソロモン」の名前があった。
(アルテイシア、スレッガーのライブを見に来たのか・・)
まさかまさかと思っていたことが、決定的になった気がしてガルマは
しばらくそこに立ち尽くした。
144通常の名無しさんの3倍:04/04/21 21:56 ID:???
「おい、遅いじゃないか」
「ごめんごめん」
大幅に遅刻したことを詫びながらガルマは、カウンターのシャアの
隣に腰掛ける。
ここは昔から二人の気に入りのパブだった。
流れるオールディーズが心地よい。
「いや、本当を言うと私も今来たところだ。思ったより用事が
長引いたものでな」
「それは、昨日の子供たちに関係することかい?」
とりあえずビールと軽食をオーダーしながらガルマはたずねる。
「あいかわらず察しがいいな」
「そうさ。君がまだシャア・アズナブルという名前に未練を
持っているらしいということもね」
ここで飲み物が出てきたので軽く乾杯する。
「まぁその話は後だ。・・分かっているだろう?」
もちろん分かっていた。セイラとのことだ。
「その前にちょっと聞きたいんだけど・・・今日アルテイシアは
どうしてる?」
145通常の名無しさんの3倍:04/04/21 21:57 ID:???
「? 今朝の話では授業が終わったあと寮の女子会に出なきゃならんと
言っていたが・・?」
女子会とは、寮生たちの定例会議のことである。
なんでそんなことを聞くんだ?と言いたげなシャアの視線を浴びながら
ガルマは思っていた。
アルテイシアはスレッガーのことを兄に話していないのだ。
かつてシャアは強硬に二人の交際を反対していたが、過去のことは清算し
単にライブを楽しみにいくだけなら、隠すようなことじゃない。
隠すのはやはり後ろめたいことがあるからか・・・。
まさか今日突然チケットを受け取ったと知らないガルマは、苦悩した。
アルテイシアが隠しているなら、自分からもスレッガーのことは話す
わけにはいかないと。
146通常の名無しさんの3倍:04/04/22 00:17 ID:???
ガルマ、君はなんてタイミングが悪いんだ。
目撃しただけではなく、されてるし・・・

久々のシャアとガルマの会話ですかね?好きなので楽しみ!
147通常の名無しさんの3倍:04/04/23 20:10 ID:???
私もガルマとシャアが一緒にいる場面は大好き!
親友って感じがしてとってもイイですよね〜。
しかし、ガルマはともかくシャアって他に友達いなさそう・・?
148通常の名無しさんの3倍:04/04/23 21:31 ID:???
乙です!
ものすごい勢いで更新されてますね〜、嬉しいです。

ところでカミーユって昔フラナガン機関のホープだったから
シャアのことも知ってるよね?違ったっけ?
149通常の名無しさんの3倍:04/04/24 00:41 ID:???
>>148
同じ事を考えてました。
あまりのDQNさに研究所から追い出されたのかな?
150通常の名無しさんの3倍:04/04/24 13:20 ID:???
こっちが本物のカミーユ希望。
てか、プロデューサーシァアは面白いんだけど
SSっつってもIFなんだから、あんまりキャラの設定勝手に変えて欲しくない。
例えば、本音言うとクェスとかカミーユがアムロと同い年なのは萎える。
それに、戦争前からの高級軍人が音楽業界にいるのもなぁ。
兵士は徴兵されたんだろうから納得するけど。

アルテイシアの恋模様も気になるが
反地球連邦キャンペーンの象徴が事故死したんだから、
そろそろ政治ネタも絡めてほすいところ。
泣き寝入りする男じゃないだろ、シァアは、と思う。

以上個人的感想。
151通常の名無しさんの3倍:04/04/24 14:02 ID:???
>150
ごめん、戦争前からの高級軍人というのが誰のことかは分からないんだけど、
キャラの年齢に関してはここでは カミーユ<アムロ<クェス=セイラ 
になってると思う。
クェスが入るからおかしくなるんだけど、彼女はかなり初期段階でセイラの
クラスメートとして登場しちゃってたんで、もうどうしようもないんだよね・・。

政治ネタに関しては同感かな。
ジオンとデギンの関係が悪化してきて、シャア・セイラ・ガルマの関係が
微妙に・・・などとかつて妄想したことあったけど。
あと、シャアが泣き寝入りする男じゃないってのも同感です。

他の方の意見も聞きたいところだ。
152通常の名無しさんの3倍:04/04/24 14:20 ID:???
ダム世界が平和だったら〜が前提であり、ジオンが生きているのだから
シャアが軍人になる必要性は無いのでは?

政治ネタについては同意見です。
まあ、音楽に限らずメディアは政治に対する影響力があるのですから
その辺で使えるのではないかと・・・
ザビ家とは友好のままで連邦と険悪になったらどうなるかな〜?
とは思っています。
153150:04/04/24 14:49 ID:???
勝手な感想でしたが、レスどうも。
「戦前からの高級軍人」はティターンズ・プロ社長ジャミトフです。
なんかの陰謀のダミーカンパニー、でもないかぎり、
彼がそんな事する人間には思えなくて。

アムロとカミーユの年齢差は史実だと7才ですけど、
以前出たとき2・3才差位の描写だったので
できれば今度のカミーユとは別人にして欲しいな、と。
154151:04/04/24 15:14 ID:???
>152
ふむふむ。ダイクン家とザビ家は友好関係のままのがやっぱり
いいですよね〜。
デギンを含めたザビ家の面々はみんないい味出してたので
また登場して欲しいですね!

>153
なるほど、ジャミトフでしたか。
ティターンズは前にも出てきてましたが、そこのプロデューサーが
シロッコでしたよね。ララァ誘拐したりしてた。
ジャミトフは名ばかりの社長で、実態は地球連邦側の黒幕、って
ことにするとかどう?

問題のカミーユですが、どうしましょう。
前のカミーユ(フラナガンのホープ)と今回のカミーユ(路上演奏者)を
別人・・・てのはちょっと無理ないですかね?
かと言って同人物とすると(シャアはともかく)、カミーユがシャアを
知らなかったのが不思議ではありますが・・。

ちなみに史実ではアムロとカミーユの年齢さは5歳だとオモ。
155通常の名無しさんの3倍:04/04/24 17:12 ID:???
とりあえずガルマとシャアの会話を続けさせてもらいます。
156通常の名無しさんの3倍:04/04/24 17:13 ID:???
「君は呆れているだろうな、20歳を過ぎた妹の恋愛話に首を突っ込む
などと・・」
ガルマがいつまでも黙っているのをどう受け取ったのか、シャアが気まず
そうに言う。
「君達ふたりのことをどうこうしようと思っているわけではないのだ。ただ・・」
「分かっているよ、君の気持ちは」
昔からこの兄妹の関係は、世間一般のそれとは大きく違う。
母は亡く、父親も不在の幼少時代を過ごしてきた二人だからこそ、互いを
思い愛する気持ちは人一倍強いのだ。特にシャアの方は、血のつながりさえ
なければ他の誰にも・・・などと倒錯めいた気持ちにかつて揺れていたことも
ガルマは知っている。
そのシャアが、唯一「君になら」と託した相手が自分なのだ。
だからこそ、どんなに情けなくても、どんなに責められようとも、今日は真実を
話すつもりだった。
・・・しかしセイラがスレッガーとの関係を密かに再燃させているとしたら、
今ここでそれを言うわけにはいかない。
たとえガルマ自身、どれほどそれを壊してしまいたいと思っていても。
苦しい決断の末、ガルマはスレッガーに関することのみ省略して説明した。
シャアは終始黙って聞いていたが、イセリナとセイラがガルマのマンションで
鉢合わせしたところでは目を閉じ、イセリナに想いを告白されたくだりでは
ついに頭を抱えた。
「・・・ガルマ、君はいい人間だが、女にとっていい男ではないようだな」
すべて聞き終わってシャアが最初に言った一言はこれだった。
157通常の名無しさんの3倍:04/04/24 17:13 ID:???
ガルマはムッとしたが反論できないところが悲しかった。
「マスター、水割りを二つ頼む」
シャアはカウンターの離れたところで他の客と雑談しているバーテンに
そう告げてから、手元のグラスに残る最後の一口を飲み干した。
「優しさは美徳だが、相手と場合によっては残酷にもなることを、いい加減
学んだ方がいい」
「・・・君の言うとおりだよ」
ガルマは力なく頷いた。
良かれと思ってしたことが、思わぬしっぺ返しとなり取り返しのつかない
事態を招いた。あまりに痛い学習だった。なのに懲りずにまた今日・・・。
後悔しているわけではないが、イセリナの論文のことは出来れば隠して
おきたいガルマだった。
落ち込みの激しい友人に、さすがに気の毒に思ったのかシャアは
出された水割りのグラスを手渡しながら続けた。
「しかしアルテイシアも情けない。もっと広い心で・・」
「彼女を悪く言うのはやめてくれ。非はすべて僕にある。彼女を不安にさせ辛い
思いをさせた。嫌われて当然だ」
一息にまくしたててからガルマはぐいっと酒をあおる。
「・・・・だからといって、友達の関係に戻ろうなどと考えるとはな。君はマゾか?」
「なんだって?」
「アルテイシアをまだ愛しているんだろう。これから先、アルテイシアに
他に恋人が出来て、結婚しても、君は友人として笑って祝福するつもりかい」
「・・・マゾでもなんでもいいよ。あの時はアルテイシアに僕は平気だって
思って欲しかったんだ。彼女に変な負い目や罪悪感を持って欲しくなかった」
158通常の名無しさんの3倍:04/04/24 17:15 ID:???
「ガルマ・・・」
シャアは心の底から感動していた。
今までにも何度もかなわない思ったことがある。思いやりのこころを、どうして
この友人はこんなにも自然に実行出来てしまうのか・・。
それを愛する者だけでなく、万人に与えてしまえるのがガルマの良さであり、
欠点でもあるわけだが。
「だけど・・・彼女に恋人が、か。・・・辛いな・・」
カウンターに肘を付き、両手で持ったグラスに額を押し付ける。
聞き取れないほどの小さなうめき声にシャアはガルマが泣いているのかと
思った。しかし半分隠された顔に表情は読み取れない。
シャアは何も言うことが出来ず、無言で水割りを口にするだけだった。
旧世紀の男性歌手の、甘く優しい歌声だけが二人の間を流れる。

どれほどそうしていたか、やがてガルマが顔をあげる。
「すまない」
「いや」
それきりまた無言が続くかと思われたが、やがてガルマは少し伸びを
するようなしぐさをとり、そしてはっきりと言った。
「アルテイシアに恋人が出来ても僕は祝福するよ。いや、しようと努力
する。彼女が幸せなら・・・」
「無理をするな」
「君に出来て僕に出来ないはずがない。そうだろ?」
少しちゃかすように言うガルマにシャアは一瞬驚いて、そして笑った。
血の繋がった兄である私と君とでは違うだろう、と言いたかったが、
ガルマの気持ちは痛いほどよく分かるのだった。
159通常の名無しさんの3倍:04/04/24 17:16 ID:???
少し話しやすい雰囲気になったと見て、シャアはさっきからずっと気に
なっていたことを切り出した。
昨夜セイラは自分にこう言ったのだ。
『ガルマにとっても自分はふさわしい存在ではないと思う』と。
だからシャアは漠然と、セイラの側にも何かあったのだと思っていたのだ。
しかしガルマから聞かされるのはガルマ側の話ばかりだった。
「ガルマ、アルテイシアには何か君に顔向け出来ないようなことが
あったのではないかと思うのだが」
「え?いや、そんなことは・・・何故だい?」
シャアから説明されてそれは、まさしくスレッガーと再会して心が揺らいだ
ことだと思い当ったが、それは言えない話だった。
「アルテイシアは潔癖なところがあるから・・。嫉妬や猜疑心を持って
しまったことを恥じてそう言ってるんじゃないかな」
「・・・・そうか・・・そうだな」
なんとなく違和感が残るが、そう説明されるとそんな気もしてくる。
ちょっとほっとした気持ちになってシャア嘆息した。
ガルマは椅子に座りなおし、姿勢を正すとシャアに頭を下げた。
「とにかく君にはくれぐれもと頼まれていたのに・・・キャスバル、改めて
謝罪するよ。すまない」
「やめてくれ。君には感謝している。それに、今でもあれを任せられるのは
君だけだと思う気持ちに変わりはないよ」
「僕はもう駄目だよ・・」
「どうかな? まぁ君達二人の問題だから口を出すつもりはないが、だが
ガルマ、これ以上誤解を招くような行動は慎んだ方がいい。友人として
忠告しておく」
160通常の名無しさんの3倍:04/04/24 17:17 ID:???
「どういう意味だ?」
「今朝イセリナ嬢と二人で車に乗ってるところを見た」
「!」
「まぁ何でもないのはさっきの君の話からも推測出来るがね。妹はどう
思ったかな」
「アルテイシアも!? な、何か言ってたかい!?」
「私には関係ない」
ガルマは頭を抱えた。
「まぁ実際、フリーになったお前が誰と付き合おうと、あれにとやかく言う
権利などありはしないが・・・しかし、誤解されたままというのは君の本意
ではあるまい?」
「当然だよ!」
ガルマは手短に事情を話す。
「時期を見てさりげなくアルテイシアには話しておいてやろう」
「・・・でも・・本当にアルテイシアにはどうでもいいことなんだろうな・・」
そうでもなさそうだが・・
今朝の様子を思い出しシャアはそう言いかけて、やめた。
今のガルマには気休めにしかならないだろうし、何よりもっと反省しろ!
という気持ちがあった。
「出ようか」
シャアは頭を抱えたままのガルマの肩をぽんと叩くと立ち上がった。
161通常の名無しさんの3倍:04/04/24 17:20 ID:???
なんだかそれぞれの持つ感情が、誤解・正解とりまぜて
複雑になってきているので、難しい・・。
シャアとガルマ、この二人は書いてて楽しいですね。
162通常の名無しさんの3倍:04/04/24 18:03 ID:???
シャア−ッ、ここではガルと仲良くねw
ところで、ここの前スレ(女子大生版)ってどこで読めるのでしょう?
高校生版をまとめたものを読んで以来ファンになったのですが
いつの間に再開されたんですか?
どなたか教えてください
163通常の名無しさんの3倍:04/04/24 19:09 ID:???
「やだ、故障かしら?」
突然の休講で空いてしまった時間、セイラは図書館でレポートを作成していた。
PCのフリーズに、自分も固まってしまう。こういった対処は余り得意ではないのだ。
とりあえず再起動させてみたが、今度はOSが立ち上がらず、
訳の解らないエラーメッセージが羅列されている。
こんな時はいつも、兄かガルマに見てもらっていたのだが、
兄は出かけているはずだし、まさかガルマに頼むわけにはいかない。
「急ぐものではないのだけど・・・」
そうも思ったが、どうせ中途半端に空いてしまった時間である。
セイラはPCの電源を切るとそれを持ってキャンパスを後にした。

大学の裏手にあるメンテナンスショップは便利な店だ。
『腕時計からシャトルまで、持ち込まれた機械は何でも修理します』と銘打っており、
シャトルはともかく、看板に恥じぬ仕事が評判でセイラも時折利用していた。
「スミマセン」
店先には誰も居らず、奥の作業場に向かって声を掛けた。
「・・・いらっしゃいマセ・・」
帽子を目深にかぶった男が無愛想に応え出てきた。
「あの・・・PCがフリーズしてしまって、再起動もできないんです」
そういって差し出したPCを、男は返事もせずに受け取るとそのまま無言で作業を始めた。
「今日は店長さんは?」
「外出中です。バイトじゃいけませんか?」
「そんなつりじゃ・・・・」
『なんて態度の悪い店員だろう』
むっとしたセイラは、顔を見てやろうと帽子の下を覗き込んでみた。
口元や頬に派手に絆創膏を貼ってはいるが、存外に整った顔立ちだ。
更によく見ると、どこか見覚えがあるような気がする。
「あなた、確か・・・カミーユ君?」
いきなり名を呼ばれ、驚いたように男が顔を上げた。
「ああ、やっぱりそう。カミーユ・ビダン君、だったわよね?」
「えと・・・?、あ・・・セイラ・・さん?でしたっけ?」
164通常の名無しさんの3倍:04/04/24 19:16 ID:???
話してみると、カミーユは以外に礼儀正しい少年だった。
「頭に血が上り易いんですよね。自分でも解ってはいるんですけど・・・」
出掛けにファと口喧嘩になってしまった為イラついていたのだという。
「だめよ、彼女を大切にしてあげなくちゃ」
「!、彼女なんかじゃありませんよっ。この間もそういったでしょう?」
「ほら、またそれ。私は“彼女”っていったのよ。“恋人”とは違うでしょ?」
「ずるいな・・・そんな言い方・・・」
そう言いながら、目を逸らすように作業に戻る。
「でも・・・そうよね。思っていても上手くいかない事って多いものよね」
「セイラさんにもそういう事あるんですか?」
「もちろんよ。上手くいかない事だらけ。さっきまで絶好調かと思ったら、突然嫌な事は起こるの。
その上PCの故障でしょ?泣きっ面に蜂ってこの事ね・・」
言ってから、やはり自分はガルマとイセリナの事を気にしているのだと悟った。

ふいに沈黙したセイラを見ると、彼女は長い睫毛を伏せ、どこか愁いた表情をしていた。
その顔をじっと見つめるカミーユ。透けるように白い肌、頬にかかる見事な金髪。
その伏せた瞳は深く青い、ホログラムで見た地球のようだ。
『こんなに綺麗な人だったんだ』
今更のように気付き、その顔をもっと見たいという衝動にかられた。
「・・・じゃ、とりあえず蜂は僕が追い払いましたよ」
「え?直ったの?あなったって凄いのね」
ぱっと表情が変わり、頬に朱が注したように見えた。
「そんな、大袈裟ですよ。大した事じゃありません」
「あら、歌が上手い上に機械にも強いなんて。素敵だわ」
女性に、それも飛び切りの美人に“素敵”と言われて悪い気などしない。
自然、いつに無く饒舌になった。
「趣味なんです、機械いじり。自分で組み立てたりプログラミングしたり」
「まあ、そんな事まで!」
今度は感嘆の表情を見せるセイラ。
『表情のよく変わる人だな。年上のはずなのに。何か可愛らしいっていうか・・・』
「って言っても簡単なものですよ。自分で作った曲を打ち込んだりして・・・」
「作曲までできるの?!本当に多才なのねぇ。
じゃあ、この間の曲もあなたが作ったものなのかしら」
そういうとセイラは、先日耳にした曲をハミングした。
165通常の名無しさんの3倍:04/04/24 19:22 ID:???
「・・・それは規制の曲を僕なりにアレンジしたものです。
作曲の方は最近始めたばかりで・・・オリジナルはまだ完成前なんですよ」
いい気になって大袈裟に言った事を少し後悔し訂正を加える。
「そうなの?でも、あなたの歌が素晴らしい事に変わりは無いわ。
一度聞いただけで耳に残っているんですもの。プロ顔負けね」
そう言って微笑むセイラ。しかし、それを聞いたカミーユは複雑だった。
「どうしたの?」
「いえ・・・あ!、お帰りなさい店長。どこ行ってたんですか?」
買い物袋をぶら下げた、鼻の大きい男が入ってきた。
「スマンスマン。急に今夜、彼女と食事することになったんで、買出しにいってたんだよ。
お客さん、待たせちゃいました?」
「いえ、もう・・・」
「この人は僕の友人なんです。お客さんじゃありませんよ」
「そっか。じゃ、もうしばらく店番頼むよ。俺は飯の支度で忙しいんでな」
「店長が作るんですか〜?」
「何だその言い草は。お前、アストナージ特性サラダを知らないな?」
そういうと、さっさと店の奥に行ってしまった。
「腕は良いんですけどね、あの人」
「ふふ・・、長居しすぎたみたいね。お幾らかしら?」
「いいんですよ、あれくらい。直した内に入りませんから」
「そんな、悪いわ・・・」
「この間のお礼です。それに・・・楽しかったから・・・」
「私も楽しかったわ。ありがとう。
それから、歌、また聴きたいわ。この間の所にいけば聞けるのかしら?」
「えと・・・それは・・・ですね」
まさか、しょっちゅうトラブルを起こしては河岸を替えているとは言えない。
「あそこは騒ぎを起こしちゃいましたから。別の場所が決まったらお教えしますよ。
僕、当分ここでバイトしてますから気が向いたら寄ってください」
携帯かアドレスを訊こうかとも思ったが、図々しいと思われたくない。
「そう。じゃあまたね、カミーユ」
セイラの後姿を、カミーユは幸せな気持ちで見送った。
166通常の名無しさんの3倍:04/04/24 19:39 ID:???
>163-165
面白いんだけど、時間の流れがちょっと不明だよ。
さっき(スレッガーのコンサ、シャア・ガル場面)までは、
帰国の翌日夜の話だったと思っていたが。
あと、結局カミーユの扱いをどうするのかも決まっとらんのに・・。
167通常の名無しさんの3倍:04/04/24 19:49 ID:???
「『またね、カミーユ』だってさ。よ、色男」
からかう様にいいながら、アストナージが顔をだした。
「何ですそれ。サラダ作ってんじゃなかったんですか?」
「サラダは出来立てが美味いに決まってるだろ。気を利かせてやったんじゃないか。
で、どうなんだ?」
「?。ああ、電子ピアノなら調子良いですよ。約束通り、修理代分はきっちり働きますから」
「そうじゃなくて、さっきの美人。年上だろ?まったくいつのまに」
「そんなんじゃありませんよ」
「隠すな隠すな。ま、見かけによらず短気なお前には、年上がちょうどいいんだろうな」
「ち・が・い・ま・す。何一人で盛り上がってんです」
「心配してやってんだろ。お前ときたらカッと成り易くて、すうぐ喧嘩してさ。
巻き添え食って壊された楽器が可哀相ってもんだ」
それを言われるとぐうの音も出ない。しかも、そのせいで慣れないギターで弾き語りをし、
更に喧嘩になって危うく警察沙汰になるところだったのは一昨日のことだ。
まあ、そのお陰でセイラとも知り合えたのだが・・・
「自重しろよ。その性格のせいで決まっていたプロデビュー、棒に振っちまったんだろ?」
「・・・!!違っ・・それはっ」
「ファから聞いた。ハメラレタって言いたいんだろうが・・・
原因の一端はお前にもあるんじゃないか?少しは大人のなれって事だよ・・・」
『ファの奴、余計なことをペラペラとをっ!』
人に言われるまでも無く解っていた。確かに自分が迂闊だったのだ。
ティターンズから引き抜き話を持ちかけられたとき、カミーユはけんもほろろに断った。
音楽性が異なる事が主な理由だったが、ティターンズが時に
“連邦寄り”と言える事業性を見せるのが気に入らなかったからだ。
また、デビューに際し細々とした制約を付けられるのもうんざりだった。
『売れる為の歌を歌う?一昨日来やがれってんだ!』
そう啖呵を切って断った翌年、カミーユはCMのタイアップ曲でデビューを決めた。
が、直前、街で喧嘩騒ぎをおこし、それを雑誌にすっぱ抜かれてしまったのだ。
当然スポンサーはかんかんに怒った。
カミーユは必死に弁解したが、それが余計に相手の怒りを買ってしまったらしい。
『何故素直にごめんなさいと言えない!』
大口スポンサーのウォンから殴られ、それ以来フラナガン研究所には行っていない。
半年程前の事だ。その後マネージャーから、一連の事態にティターンズが絡んでいるらしい
と聞いたのだがそれも後の祭り、頑ななカミーユは周囲に謝ることができなかった。
以来、行き場を失い、それでも歌うことを諦められないカミーユは一人街で歌ったが、
ささくれ立った心は僅かな野次にすら過剰に反応し、結果、騒ぎを起こしてしまうのだった。

「・・・美人の年上女房か、いいねぇ。あれ?そうするとファはどうなるんだ?」
「どっちも、どうにもなってませんよ最初から。じゃ、今日はこれで」
まだ何か言いたげなアストナージを無視し、カミーユは店を出た。
「おう、またな。今度は学校終わってから来い。サボってんじゃないぞ」
『でも、今日はサボって良かったなw』
そう思いほくそ笑んだカミーユだが、
同時に、あの晩セイラと共に居たサングラスの男の事が頭を過ぎった。
168通常の名無しさんの3倍:04/04/24 20:02 ID:???

>165
規制→既成 の間違いでした。
それからカミーユについては人物紹介のままに設定していたため
特に疑問も持たず進めてしまいました。
申し訳ありませんm(__)m
169通常の名無しさんの3倍:04/04/24 20:28 ID:???
シャアとガルの場面はもう終わりかい?
もっと読みたいぞい。
170通常の名無しさんの3倍:04/04/24 20:46 ID:???
>>168
『人物紹介のままに〜』って?
書いたものを上げたいのは分かりますが、上げてから弁明するよりその前に
リロードするとかした方がいいのでは?修正するという方法もあるのだし。

説教くさくてスマソ
171通常の名無しさんの3倍:04/04/24 21:28 ID:???
リロード→読み返す という事でしょうか?
一応読み返して繋がると踏んだうえで上たのですが、独りで脳内暴走していたようですね。

この後カミーユはセイラに付き纏った挙句、シャアに対して逆切れさせようかと思っていたのですが、
見直して見ます。ダラダラ文も改めたいので・・・・
172通常の名無しさんの3倍:04/04/24 21:53 ID:???
乙です!

うーん、こう来たか・・
じゃあもうカミーユは同一人物ということで、もう決定ですかね。
私もそれでいいと思いますよ。
なんでシャアを忘れていたか?については、>171さんにアイディアが
あると見ました。どうかな?

>171さん、それ面白そうです>シャアに逆切れするカミーユ。
是非書いてくださいませw
出来れば、前の話のつながりで、うpのタイミングなども計ってくださると
嬉しいかも。
文章お上手なので、これからもよろしくお願いしますね。
173通常の名無しさんの3倍:04/04/24 22:37 ID:???
>>169
ですね〜。この二人はいいですな。
シャアはガルマのマンションに泊まるみたいですから
期待していてもいいのでは?
174通常の名無しさんの3倍:04/04/24 22:37 ID:???
カミーユか!いいね〜セイラ@Zを思い出したヨ。
あれ好きだったんだよな
175通常の名無しさんの3倍:04/04/24 23:06 ID:???
>174
懐かしいなぁ。自分も好きだったよ。
Ζにもっと、出ていたらなぁ〜と思いました。


176通常の名無しさんの3倍:04/04/25 00:26 ID:???
>169,173
ご要望にお応えしてシャア・ガルマの場面を追加してみました。

以下に続きをあげさせてもらいます。
177通常の名無しさんの3倍:04/04/25 00:27 ID:???
「おい、いい加減起きろよ、ガルマ」
「う・・・ん・・・」
午後もすっかりまわったというのに、いつまでも寝ているガルマに
シャアはあきれて声をかけた。
昨夜はあのまま2軒、3軒とはしごし、マンションに二人してたどり
着いた時にはもう陽も高くなっていた。
その前日も徹夜していたガルマが、正体不明なほど眠り込んで
しまうのも無理はないかもしれないが、それにしてももう午後1時だ。
「しょうがないな、私は出かけるぞ」
「・・・ん・・出かける・・・?今夜は帰ってくるのか?」
まだ眠いからだを起こしてガルマはシャアを見上げた。
シャアは黒の革パンツにオフホワイトのざっくりとしたセーターを
着ていた。カジュアルだが品がよくシャアに似合っている。
「ああ。大学に顔を見せて、その後アルテイシアと買い物をするだけ
だから」
「そうか・・」
セイラと別れたと聞いて、もうここに泊まるのはやめると言い出す
かと思っていが、シャアは気にしていないようだった。
もう好きにしたらいいと、少しふっきれたガルマは思う。
「僕も大学に行くよ。昨日放り出してきたやつ、仕上げてしまわないと。
一緒に出よう」
ベッドから出ると、ガルマもまた出かける支度を始めた。
178通常の名無しさんの3倍:04/04/25 00:28 ID:???
教授や教室の仲間達に帰国の挨拶をすませ、一人教室を後にする。
そろそろセイラとの待ち合わせの時間だった。
(しかし、変わっていないな、懐かしい・・・)
教室はもちろん、この廊下も窓から見える景色も、3年前自分が
いた時となんら変わらない。
感慨に耽りながらゆっくりと歩くシャアの背後から、
「キャスバル・ダイクン・・」
呼ばれて振り向けばそこには、たった今外出からもどったのだろう、
両手にたくさんの荷物を抱えた、背の高い美女が立っていた。
「やあ、マルガレーテ」
教授の秘書であり、かつてはシャアの恋人の一人でもあったマルガレーテ・
リング・ブレアは、にっこりと微笑むと静かに歩み寄ってきた。
「あぁ、君も変わらないな」
「あいかわらず上手なのね。・・・嬉しいわ、また会えて」
つま先立ちすると、耳たぶにくっつくくらい唇を寄せそっと囁く。
「でも、女が変わったか変ってないか・・・見た目だけじゃ分からなくてよ」
「ふっ、それじゃ、確かめねばならんかな・・」
微妙な誘惑。それをYesともNoとも、どちらともとれるような返事でかわし、
マルガレーテの手にキスを一つ落とすとシャアはその場を立ち去った。
179通常の名無しさんの3倍:04/04/25 00:28 ID:???
15時の約束に間に合うよう、待ち合わせ場所である学生駐車場に戻る。
時間的にこれから帰宅する学生たちで駐車場は賑わっていた。
「あ、キャスバルさま!?お久しぶりです!」
突然大声で声をかけられシャアは面食らう。おまけにその主の若い女性に
シャアは見覚えがない。
「私、クェス・パラヤです。アルテイシアのクラスメートの!」
「ああ、君・・」
そういえば、そんな娘もいたかな・・とおぼろげながら思い出す。
「お帰りになられたんですね!アルテイシアと待ち合わせですか?
あ、でも彼女ちょっと遅くなるかも・・」
「何かありましたか?」
「アルテイシアったら、罰当番で一人で寮の掃除させられてるんですよ。
昨日女子会サボっちゃったから・・・」
「サボった?」
「珍しいですよねぇ、あのマジメなアルテイシアが。おまけに女子会なんて
サボったらお姉さま方の制裁すっごく厳しいのに。私なんて授業サボっても
女子会だけはサボりませんもん!」
「クェスーーー!何してるの、行くわよーー!」
「あ、友達が呼んでる、行かなきゃ。それじゃキャスバルさま、失礼します!」
あっけにとられるシャアを残してクェスは駆け出して行った。
180通常の名無しさんの3倍:04/04/25 00:29 ID:???
結局セイラは約束より15分遅れて駐車場に到着した。
(本当にどうかしてたわ、女子会をすっぽかすなんて!)
昨夜思いもかけずベルトーチカから届けられたスレッガーのライブチケット。
そのせいですっかり忘れていたのだ、大事な会合のあることを。
結果セイラに課せられた罰は、今日から一週間、放課後に寮のロビーを
掃除することだった。
「兄さん!ごめんなさい、遅くなって!」
息を切らしシャアに詫びる。兄は笑って許してくれるだろうと思っていた。
だがシャアは笑わなかった。眉を寄せて怖い顔をしていた。
「アルテイシア、昨夜は何をしていた?」
「え?」
「昨日の朝は女子会の話をしていたな。それなのにサボってどこへ
行ってたんだ?」
「そ、それは・・・」
突然の問いに、答えるべきか否か、セイラは迷った。
181通常の名無しさんの3倍:04/04/25 00:31 ID:???
少し前に、シャアとスレッガーの絡みがあったらいいな、という
意見がありましたので、ここでシャアがスレッガーのことを
知ったら面白いかな、、と思いまして。
どうでしょう?
セイラに本当のこと言わせちゃう?
182通常の名無しさんの3倍:04/04/25 01:10 ID:???
1.何でもないのよ、とばかりに全てを話すセイラさん
2.しどろもどろに弁明するセイラさん
3.何とか隠そうとするものの結局シャアに悟られてしまうセイラさん
どれも捨て難いが、どうあがいてもあの兄には隠せないのでしょうねw
1.だと案外スレッガーとシャアに友情芽生えたりして。
無理でしょうか?シャア、友達少なそうだからなぁ。
183通常の名無しさんの3倍:04/04/25 07:20 ID:???
うーん、2.かなぁ。
もう隠す必要は無いけど、昔が昔だから、真実を語るのも
しどろもどろ・・・とか?

スレッガーとの友情ですか。。
なんか無理なような気がw
最初っからシャアのスレッガーに対する印象最悪だしね。
わだかまりが少し解けるくらいで、友情までは・・・
でも、会話はさせてみたい!
184通常の名無しさんの3倍:04/04/29 18:45 ID:???
そういえばスレッガーは知らされてないけど、
実はシャアの計らいで木星行って、それで成功したんだよね。
知ったらシャアに感謝するかな? 
185通常の名無しさんの3倍:04/04/30 23:36 ID:???
>>184
セイラとの関係を知ってるかどうかで違ってくるんでしょうかね。
シャア=キャスバルと知れば、勘がいいので追い払われた事気付きそうだ。
まあ、実力有るから卑屈になることないでしょうが。
多少は火花散るのかな〜?
186通常の名無しさんの3倍:04/05/01 09:15 ID:???
ああ、なんか今まで全然考えたことなかったけど
シャアとスレッガーの会話がとっても読みたくなってきたヨ!
187通常の名無しさんの3倍:04/05/01 18:18 ID:???
面白そうです。
セイラはどう出るんでしょう?勝手妄想

シャア   「意外と自信がないのだな?」
スレッガー 「まさか。俺が聞きたいのは、そう言う事じゃないんだぜ」   
セイラ   「兄さん、そんな言い方やめてください」
シャア   「お前には関係がない。口を挟むな」
セイラ   「いやよ!」
シャア   「なに?まさか、アルテイシア・・・」     とかね〜

大物になったとはいえ、家柄や経歴なんかでスレッガーとの仲は認めないんだろうなぁ>シャア

188通常の名無しさんの3倍:04/05/02 18:18 ID:???
>>187
妹にキツイ口調のシャアに萌え!!
早く続きが読みたいです。
189通常の名無しさんの3倍:04/05/02 23:12 ID:???
>187
いいですね〜、その会話。
それに続くことを願って(?)少し話を進めてみますた。
190通常の名無しさんの3倍:04/05/02 23:13 ID:???
「兄さんに話せないようなことか?」
躊躇するセイラの様子に、シャアはますます怖い顔になった。
ごまかせない・・セイラは観念する。
「・・・昨日学校から戻ったらライブのチケットが届いてたのよ。
見たら当日のライブので・・・それで・・・」
「ライブ? 一体なんのライブだ? それに差出人は」
「差出人はベルトーチカ・イルマ。・・・ソロモンのライブへの招待券よ」
そう言って上目遣いに兄の様子を伺う。
思ってもみなかった答えに、シャアは言葉が見つからないようだったが、
やがて溜息を一つつくと車のドアを開ける。
「とにかく乗りなさい。話はゆっくり聞かせてもらおう」
191通常の名無しさんの3倍:04/05/02 23:14 ID:???
妹を乗り込ませ、自分も運転席に座るとサングラスをはめ、ゆっくりと
車を発進させる。駐車場を出てやがてハイウェイに乗ったころ、
ようやくシャアは口を開いた。
「・・・まさかスレッガー・ロウがサイド3に戻っていたとはな」
うかつだった・・と言いたげな口調にセイラは軽い反発を覚える。
「兄さんが心配するようなことは何もなくってよ」
「そう願いたいな」
セイラの頭にカッと血がのぼる。
(私のこと、信じられないの!?)
そう言いかけ、思いなおして言葉を呑み込んだ。
ケンカなんてしたくない。せっかく会えたのに・・・。
不機嫌さを隠そうともしない兄に、セイラは頑張って明るく言う。
「本当よ。先輩とは本当にもう何でもないわ。そりゃ再会したときは
懐かしくて、ちょっと胸が騒いだのも事実だけど・・・でも、分かったの。
もう過去のことなんだって」
「・・・・」
「ライブに行ったのだって、純粋にソロモンの新曲が聞きたかったからよ。
それにすぐ帰って来たから先輩にも会ってないわ」
「お前はそれで良くてもスレッガーの方はどうなんだ?」
「・・・先輩も分かってくれたわ」
あの、病院の中庭で最後の握手をしたときのことを思い出し、セイラは
俯いた。
192通常の名無しさんの3倍:04/05/02 23:15 ID:???
「すまなかった、アルテイシア。悲しいことを思い出させてしまったな」
「ううん。私こそちゃんと最初に話せば良かったのよ。ごめんなさい」
兄妹は互いに微笑んだ。
「もうこの話はよそう」
「そうね。・・・ところで兄さん、買い物って言ってたけど、何の買い物?」
「うん、滞在中の日用品や衣類と・・・それから」
シャアはフロントボックスに入れていた小箱を取り出した。
「お前にはまだ土産を渡していなかった」
「私に?何かしら。開けてもよくって?」
ごく普通の紙の小箱。それを開けると無造作に古紙に包まれて何かが
入っている。セイラはそれを開いて目を見張った。
「・・・きれい・・・なんて不思議な輝きなのかしら・・」
親指大のいびつな形をしたその石は、深い青色の中に何千もの緑色が
きらきらと浮かんでいた。
「アクシズの古物商で見つけたんだが、オパールの一種らしい。
このままでは使えんから、ブローチでもネックレスでもお前の好きなものに
加工したらいいと思ってな」
「・・・・ありがとう、兄さん」
宇宙のようなきらめきを放つその石を握り締め、セイラはシャアの頬に
キスをした。
193通常の名無しさんの3倍:04/05/02 23:17 ID:???
たぶんシャアは、あとでこっそりスレッガーの様子を見に行ったり
するのかな〜と思いつつ。
続きよろしくお願いします!
194通常の名無しさんの3倍:04/05/03 11:00 ID:???
喧嘩になるかと思ったら仲直りでホッ。
親指大のオパールとは豪勢ですな〜うらやますぃ。
シャアは絶対スレッガーを見にいくでしょう、ええ絶対(w
195通常の名無しさんの3倍:04/05/03 18:18 ID:???
「これは見事なもんですな」
宝石店の店主はルーペ片手に石に見入った。
「この大きさでこの色のものはめったにありませんよ、一体どこでお求め
です? え、アクシズ? なるほどねぇ、それにしても掘り出しもんだ」
饒舌ではあるが人の良さそうな店主に相談にのってもらい、セイラはその
オパールをブローチに加工することに決めた。
「それがよろしいですよ。あまり形を変えると良さが半減しますからね。
プラチナとダイヤを加えて、お嬢さまにぴったりの素敵なブローチに
仕立ててさしあげますよ」
「じゃあよろしくね。出来たら連絡してちょうだい」
店主に見送られ二人は店を出る。
「とびきり贅沢なブローチになりそう。さすが兄さんね」
「あれほど希少な石とは思ってもみなかったが・・古物商では無造作に
置いてあったからな。ただ綺麗な色をしていたのでお前に似合うだろうと
思っただけだ」
「ありがとう。嬉しいわ」
セイラはシャアの腕に腕をからめた。
「さてと、これでとりあえず用は全部済んだわけだが・・・食事でもしていくか」
「ええ」
二人は腕を組んだまま車までの道のりを歩いた。
196通常の名無しさんの3倍:04/05/03 18:20 ID:???
食事の後、セイラを寮まで送り届けた足でシャアはフラナガン研究所に
向かった。8時を過ぎているが教室のあちこちで明かりがついている。
シャアはまっすぐに最上階に上がるとプロデューサールームのドアを開けた。
「待たせたな」
「いえ」
ナナイは立ち上がってシャアを迎える。
「どうなさったんですの? 昨日の今日でまたお越しとは」
「ちょっと気になることが出来てな」
「あの子供たちのことでしたら大丈夫ですわ。今日正式にこちらへの
入所手続きを済ませました。宿舎の方も万全に・・・」
「いや、そのことじゃない」
シャアはリクライニングチェアに腰掛けると目を閉じた。
「では?」
何か自分に不手際があったのではとナナイは心配になる。
三年前、シャアがプロデューサー業を引退したとき、秘書であるナナイも
任務を終えレウルーラに戻るはずだった。しかしナナイはそのまま
フラナガンに残ることを希望したのだ。いつかシャアが戻ってくることを信じ、
その時まで彼の抜けた穴を補うために・・。
「スレッガー・ロウがサイド3に戻って来ているそうだな」
「は? スレッガー・・・ですか?」
思いもかけない名前にナナイは戸惑った。もちろんソロモンのスレッガーの
ことは知っているが、まさかここでシャアから問われるとは思いもよらない。
「奴の所属はどうなっている?」
「・・・デビューはフラナガンの後押しでしたわ。確か今も・・」
197通常の名無しさんの3倍:04/05/03 18:20 ID:???
ナナイは慌てて端末を叩いた。
「ええ、そうです、所属はフラナガン、レコード類の発売はレウルーラ専属に
なってますわ。でも「ソロモン」自体はフリーのジャズバンドのはずですから・・」
「つまりはどういうことだ?」
不機嫌そうな声。何がそんなにシャアを苛立たせているのかナナイには
分からない。
「つ、つまり、スレッガーはフラナガンの所属アーチストですが、フリー活動を
認められています。その方が彼の芸風に合うと判断したためでしょう。
もちろん契約期間中は当方の支配下にありますが」
「契約期間はいつまでだ?」
「デビューから3年の契約でしたから、あと2年ですわ」
「随分短いのだな」
「当初はまだ海のものとも山のものとも分かりませんでしたから・・・きっと・・」
言いかけてスレッガーを見出したのはシャア自身であったことをナナイは
思い出す。しかしシャアが引退したあと、木星の芸術機関にいたスレッガーの
ことをそこまで高く評価できる人物はフラナガンにはいなかった。ナナイも
またしかりだ。
「幸いソロモンは人気も出て売れ行きも好調ですから、バンド自体をこちらの
専属にすることも考えた方がいいかも知れませんわね。あちらにとっても
悪い話ではありませんから、きっと受けるでしょうし・・」
「ふん、どうかな」
シャアは鼻を鳴らすと椅子から立ち上がった。
「先生・・・どちらへ?」
「何事も自分の目で確かめたい性分なのでな」
腕時計を確認する。まだ間に合うだろう。何か言いたげなナナイを残し
シャアは部屋を後にした。
198通常の名無しさんの3倍:04/05/03 18:21 ID:???
その夜もライブは大いに盛上がっていた。
たくさんの若い女性が曲に合わせて踊り出し、黄色い歓声をあげる。
そんな客席の一番後ろで、シャアは水割りを飲みながらじっくりとスレッガーを
観察した。
3年前、センスはあるが技術が足りないと思った。熱意は感じられるがどこか
余裕がないとも。それが今はどうだろう。確かなテクニックに裏打ちされた安定
した演奏、選曲の巧妙さ、そして何より一段と男の色気を増したスレッガー。
「なるほどな」
人気が出るのもうなずける。予想以上の成長ぶりだ。
これならナナイの言うとおり本格的にソロモン自体を傘下におさめるのも
悪くない・・・そこまで考えてシャアは自嘲した。
業界からはきっぱり足を洗ったつもりだった。留学を終えれば父の跡を継ぐ
ため政界に出る覚悟もしている。
しかし、どうしても惹かれてしまうのだ、華やかで虚実入り混じったこの
世界に・・・。
今も本来の目的を忘れるところだった。
いくら成功したといっても、シャアにとってスレッガーは妹の相手としては
到底認められない男だ。セイラはああ言っていたが心配の種は早いうちに
取り除いておきたい。幸い大義名分は立派に成り立ちそうだ。
そう判断して立ち上がろうとしたとき、
「それじゃ、最後になったが新曲を聴いてくれ。俺達の大切な友人が作って
くれた曲だ」
そう前置きして奏でられ始めた曲。
「これは・・・」
曲に魅入られ、シャアはその場に立ち尽くした。
199通常の名無しさんの3倍:04/05/03 18:22 ID:???
夜のハイウェイを、限界までスピードをあげてシャアは走った。
先ほどの曲が頭を離れない。
「なんだんだ、これは・・・!」
確かにいい曲だった。今日シャアが聞いたライブの中では一番の出来と
いってもいい。だが、そんな事ではない、違う何かがシャアの胸を締め付ける。
切なくて、愛しくて、哀しい、ずっとずっと心に封印していた何かが・・・。
わけの分からない、焦りにも似た感情のままに、車を飛ばす。
どこへ向かっているのか、自分でも分からない。
屋根をオープンにしているため、激しい風がシャアの金髪を乱す。しかし
そんな轟音の中でもシャアにははっきりと聞こえるのだ、あの曲が。
・・・この感情は一体なんだ!?
何故自分はこれほどまであの曲に反応してしまうのか。
「くそっ!」
さらにアクセルを踏む。追い越した車が瞬時にミラーから消えてゆく。
やがてハイウェイは、カーブに差し掛かった。
シャアはスピードを緩めない。運転には自信があった。
だが、カーブを曲がり道が開けた瞬間、すぐ前方の合流道から小型の
白い車が来るのが見えた。こちらのスピードに気づいていないのか
ゆっくり進んでくる。
「ばかな、よけろ、アムロ君!」
ぶつかる・・・そう判断した瞬間、シャアは大きくハンドルを交わした。
200通常の名無しさんの3倍:04/05/03 18:22 ID:???
キキキキーーーーーッ!!
耳を劈くようなタイヤとアスファルトの摩擦音。
奇跡的にサイドガードにもぶつかることなく、数十m先でかろうじて車を
止めたシャアは、ハンドルにうつ伏して荒い息を整えようと必至だった。
冷や汗が止まらない。
「ア、アムロだと・・・?私は一体・・・」
震える手でサングラスを外し振り向くと、先ほどの白い車が停車したまま
パッシングしていた。無事な姿にほっとする。
白い車はシャアが見たのを確認したのか、やがてこちらに向かってくる。
シャアも了解して前方の非難区域に車を進めた。
シャアの赤いスポーツカーの隣に止まった白い車。
そこから降りてきたのは、アムロだった。
201通常の名無しさんの3倍:04/05/03 18:23 ID:???
アブネーよ、シャアッ!と思いつつ書いてしまいました。
202通常の名無しさんの3倍:04/05/04 00:01 ID:???
おー、待っていました。アムロとシャア!
スレッガーとの絡みも気になるし。男のぶつかりあいに期待!
203通常の名無しさんの3倍:04/05/04 00:44 ID:???
ホ、ホントあぶねーよっ!シャア!事故るかと思った。

乙です。
ついにアムロとシャアが再会ですか。
どんな会話をするのかな。
スレッガーとの対立(?)もありそうだし、楽しみです!
204通常の名無しさんの3倍:04/05/04 20:48 ID:???
続けさせて頂きます。
アムロとシャア、ご期待に添えなかったらすいませんです。
205通常の名無しさんの3倍:04/05/04 20:49 ID:???
「何故、私は・・・」
アムロの名前を呼んだのか・・・あの距離で運転していた人間を見極め
るのは不可能だ。
しかしそのこと以上にアムロの姿はシャアに衝撃を与えた。
シャアにとって、アムロの記憶はララァに直結する。
悔やんでも悔やみきれぬ慙愧、血を吐くような慟哭、すべてが終ったと
された時の喪失感。それら全てに呑み込まれてしまうことを恐れ、
シャアはアクシズに留学した。
以来ずっと心の奥深くに仕舞い込み、思い出さぬようにしてきたのだ。
生きるため、立ち止まらぬためと己に言い聞かせながら。
再び自分に襲いくる激情を、しかしシャアはかろうじて意思の力でねじ伏せた。
取り乱した姿を他人に見られるなどシャアのプライドが許さなかった。
「やあ、怪我はなかったかね」
シャアは目の前に立つアムロに微笑んで見せた。
206通常の名無しさんの3倍:04/05/04 20:51 ID:???
アムロは震えていた。
しかしそれは接触事故を間一髪で逃れたからではない。理由は自分と
同じなのだとシャアには理解できる。
(立派な青年になったものだ・・)
アムロとは逆に、どんどん冷静さを取り戻しつつあるシャアは、まじまじと
アムロを眺めた。
線の細いナイーブな少年だった。いや、ナイーブそうなのは今も同じか。
ショックの大きさは察するが口が聞けないほどとはな。
「久しぶりだな、アムロ君。まさかこんな再会をするとは思ってもいなかっ
たが」
仕方が無いのでシャアは一人でしゃべった。
「申し訳なかった。スピードを出しすぎていたようだ」
「あ、あなたが・・・帰って来たなんて・・・しかも、よりにもよって・・ここにっ!」
「何?」
搾り出すように発せられたアムロの言葉にシャアは周囲を見渡す。
ただがむしゃらに飛ばしたくて、目的など無くここに来たのだ。
そう言えばここはどこなんだ?
「・・・あ」
ようやくシャアは気づいた。この先、もう少し行けば廃港跡に作られた
イベント会場。ララァが宇宙に放り出された悪夢の事故現場だった。
当時、何十回となく、心のちぎれるような思いで通った道ではないか。
「あぁ・・そうだったのか・・・」
ようやくすべてに合点がいき、シャアは深い溜息をついた。
207通常の名無しさんの3倍:04/05/04 20:52 ID:???
荒れ果てたままのステージ、さび付いて汚れた客席。
かつてはたくさんのスター達がここでイベントを開き、大勢のファンを沸かせた。
あの日、信じられない事故によりスタンバイ中のララァが宇宙空間に
放り出されてしまって以来、もうここは使われていないのだと言う。
人ひとりいないその場所に、シャアとアムロはぽつんと腰掛けていた。
「・・・どうしてここに来たんです」
今は冷静さをとりもどしたアムロが静かに口を開く。
「さぁ・・ララァに呼ばれたのかも知れん」
シャアは正直に答えた。本当にそんな気持ちだったのだ。
あのソロモンの新曲、あの曲が何故か自分の中で凍結していたはずの
「ララァ」に触れ、そして無意識にこの場所に向かったのだろう。
アムロの名前が口をついて出たのもそのせいに違いない。
シャアは自分の不可解な感情と行動にようやく納得がいった気がしていた。
あの曲がアムロの作だと知ればさらに謎が解けるのだが、さすがに
そこまでは知る由もなかった。
「ララァが・・・」
転がった空き缶をつま先で軽く蹴りながらアムロはつぶやいた。
「ララァはずっとずっと、あなたが好きだったんだ。あなただけが好きだった。
あなただけを見て、あなたに喜んでもらうことだけが嬉しくて、あなたが・・・!」
言っているうちにどんどん声が大きくなってゆく。
「だから、あんな事故で死んじゃっても、あなたを呼んだっていうのか!」
遺体が見つからないため「行方不明」とされているが、マスクもつけずに
宇宙に吸い込まれ生きていられる人間はいない。詭弁だった。
「アムロ君!」
「あなたのせいだ、あなたがもっとしっかり仕事を管理していれば彼女は
死ぬことはなかったっ!」
「やめろっ!」
シャアは大声で遮った。
208通常の名無しさんの3倍:04/05/04 20:53 ID:???
ガランとしたステージに、二人の荒い呼吸だけが響く。
「・・・やめてくれ」
シャアは繰り返したが、その言葉は力なく消え入るようだった。
「・・・すいません。言い過ぎました。それにあの事故はあなたのせいじゃない」
アムロは謝った。
当時、まれにみる惨事ということで様々な検証がマスコミによってとりあげられた。
あの仕事は、プロデューサー・シャア・アズナブルは断っていたのだと言う。
ちょうど夏のキャンペーンでオーバーワーク気味だったのがその理由だ。
しかし何故かララァは独断で黙って引き受け、結果あの事故が起きた。
原因については不明な点もあるが、設営側の不備に加え、一部ではララァの
疲労による注意力散漫という説も出ていた。
スポンサーとしてシャアの責任は免れるものではないが、アムロはシャアを
責めるのは間違っていると思っていた。
責めるとすれば、それは・・・。
「あの事故はあなたのせいじゃない。あなただって苦しんでる。でも、ぼくは・・・」
「分かっているよ、君は私が許せないのだろう?」
「僕が許せないのは、彼女が寂しい心のまま消えてしまったということです。
ララァは心からあなたを愛していたのに、あなたは彼女を利用していただけだ。
もうそれは取り返しがつかない。僕にはそれが許せない」
「アムロ・・・」
「・・・それが許せないんだ」
アムロは立ち上がると、シャアを見た。
シャアはベンチに腰掛けた姿勢のまま、目を閉じていた。まるで天からの罰を
待つ聖職者のように・・・。
その姿にアムロの胸は少し痛んだが、
「失礼します」
一言だけそう言うと、その場を一人後にした。
209通常の名無しさんの3倍:04/05/04 20:54 ID:???
―― ララァは寂しい心のまま消えてしまったんだ ――
アムロの一言がシャアの心に突き刺さる。
ララァの気持ちなど、アムロに言われるまでもなく知っている。
純粋に、ひたむきに心を寄せてくれるララァを、シャアとて愛しく思わぬはずが
ない。だがそれ以上にシャアには野心があった。それは功名心などではない、
若者らしい未知への挑戦である。その高揚感の前には愛など取るに足らない
ものだと思っていた。
しかし、失って初めてシャアは知ったのだ。
野心のためではなく、自分自身の心こそが、ララァを、そしてその歌声を欲して
いたのだと。 もっと早く気がつけば、そしてそれをララァに伝えていれば、
せめて最期に抱える思いが「寂しい」だけではなかったかも知れないのに・・。
210通常の名無しさんの3倍:04/05/04 20:56 ID:???
それからどれほどそうしていたのだろうか。気が付いた時、シャアの全身は
冷たい雨にさらされていた。目にかかった金髪はいくつものふさに分かれ、
それぞれの先から絶え間なく水滴を落としている。それをぬぐおうとシャアは
ようやく手をあげた。目じりを濡らしているのは、はたして雨だけだろうか。
(いつまでもこうしていて何になる)
数え切れないほど同じ思いで眠れぬ夜を過ごして来たではないか。その度に
決して取り返しのつかないことを思い知るだけなのに。
ゆっくりと立ち上がる。セーターが水を吸って重かった。
ふとステージの上に置かれた小さな花が目に入る。
「アムロが・・・」
ララァへの手向けだろうか。シャアはステージに上がると、雨のかからぬ
軒下へ移してやった。名も知らぬ、雨に打たれてなお色鮮やかなその花に。
「ララァ・・・許してくれ・・」
そう語りかけると不意にあの懐かしい声が聞こえた気がした。
(・・・先生らしくありませんよ、そんなのは)
「!」
(私を越えて、もっと大きな夢に向かってくださらなくては。それこそが
私の愛したシャア・アズナブルですから)
「夢か・・・しかし、ララァ、私の進むべき道はもう・・・」
(ふふっ、私には分かります、先生。先生が本当に望んでいらっしゃるのは・・・)
「ララァッ!」
叫びが会場に響き、そしてすぐに雨音にかき消されてゆく。
シャアはしばらく立ち尽くしていたが、やがて何かを振り切るように踏み出すと、
しっかりとした足取りで歩き始めた。もう迷いはなかった。
211通常の名無しさんの3倍:04/05/05 18:37 ID:???
おお!ちょっとGWしている間にシリアスな展開が!
シャアがヤル気になったーー
スレッガーとの対決に期待大
212通常の名無しさんの3倍:04/05/05 22:03 ID:???
スレッガーとの対決・・・ネタふりします!
213通常の名無しさんの3倍:04/05/05 22:04 ID:???
数日後、いつものようにソロモンの面々がライブ前の準備に追われて
いると、一人の女性が訪ねてきた。
「よう、あんたは!」
楽器を磨く手を止めスレッガーが嬉しそうな声をあげる。
「ハイ! 相変わらずの人気じゃない、ソロモンは」
ずかずかと入ってくると、勧められるのを待つまでもなく椅子に腰掛けた。
「あ、あの、こちらは?」
目を丸くするベルトーチカにスレッガーは紹介した。
「彼女はレズン・シュナイダー。俺とリュウのマネージャーさ」
「ええっ!?」
「って言っても名ばかりだけどね。二人はフリーに活動することになって
るし、その方が受けもいいのさ」
ヨロシクとばかりに差し出された名刺に、ベルトーチカは感嘆した。
「そっか、あんた達フラナガンの所属だったのよね・・すっかり忘れてたけど」
「まぁ、お礼奉公みたいなものかな、何しろ木星まで行かせてもらったんだからな」
「それがさ、ウチのお偉いさんたちがソロモンの人気にびっくりしててさ、
いっそのことバンドごと来ないか、って言ってんのよね」
およそスカウトとは思えない口の聞き方である。
「まぁ、悪い話じゃないとは思うわよ。あんたたちも全宇宙目指してんなら
フリーのままじゃ何かと大変だろうしさ。でもまぁ、ソロモンがあんたたち
だけの力でここまで来たのを考えると、すぐに結論も出ないでしょ。
ま、これ読んでじっくり考えてよ。じゃね」
言うだけ言うと、レズンはさっさと帰ってしまった。
残された面々はあっけにとられたが、やがて無言で残された契約要綱を
読み始める。
「おい、悪い話じゃねーぜ、こりゃ」
「うん、そうだなっ!」
読み終わったリュウにジョブ・ジョン、ベルトーチカたち全員が一気にしゃべりだす。
「待て待て、とにかく話はライブが終ってからだ」
その場を宥めると、スレッガーはまんざらでもない様子でもう一度書類に手を
伸ばした。
214通常の名無しさんの3倍:04/05/05 22:05 ID:???
今日も客席からライブを見ていたアムロは、ライブ後の木馬亭でその話を
聞かされた。
「スカウト・・・フラナガンから・・」
「そうよっ、いい話でしょ、何しろ私たちの意志は最大限に尊重するって
ことだし、活躍の場も広がるし」
「何しろあそこは一流だしなぁ、だいたい昔だって俺達全員に木星行きの話が
来たんだぜ、やっぱり放っておくには惜しいんじゃないの、オレたちって!」
「・・・スレッガーさん、受けるんですか?」
はしゃぐベルトーチカとジョブを無視してアムロはスレッガーに尋ねた。
「うん?まだ結論は出しちゃいねぇが・・・なんだ反対か?」
「そうじゃないですけど・・・よく考えた方がいいと思って・・」
「そうか、アムロはあそこを辞めて来たんだもんなぁ」
リュウが言う。
「なんだよ、お前が合わなかったからって反対すんのかよ」
「ジョブさん、そんなつもりじゃ・・・」
「まぁ、組織に組み込まれるっていうのはそれなりに窮屈だとは思うわよ。
でもねぇ、いい話だと思うなー、私は」
「どのみち俺とスレッガーはあと2年契約残ってるしな」
「そうだそうだ」
再び盛り上がるメンバー、それに気づかれないよう合図をして
スレッガーはアムロを横に呼ぶ。
「俺はさ、全員が賛成しない限りフラナガンに行くつもりはないぜ」
ビールのアテのナッツを口に放り込みながらスレッガーは言った。
「僕はソロモンのメンバーじゃありませんから」
「お前は俺達の仲間さ。少なくとも俺はそう思ってる」
「スレッガーさん・・・」
アムロは嬉しいような困ったような気持ちで俯いた。
「それよりさ、良かったら聞かせてくれないか、アムロがなんで反対なのか」
215通常の名無しさんの3倍:04/05/05 22:06 ID:???
「反対ってわけじゃないんです。ただ、ああいう世界は・・・何よりも組織の
都合や金もうけが優先されるから・・・」
「そりゃ、ボランティアでやってるんじゃねーんだから、多少は当然だろ?」
「それはそうですけど・・・でもモノみたいに利用されるのは・・・」
「アムロはそーゆーところが嫌であそこやめたのか」
「ええ」
「じゃあ、唄うことまでやめたのはなんでなんだ?」
「・・・・」
「ま、いいや」
口を閉ざすアムロにスレッガーはあっさり引き下がる。
「アムロ、言っちゃ悪いが俺たちゃお前さんほどお人好しじゃねぇ。利用
されるだけじゃ終らないさ」
そう言って豪快にビールをあおる。
そんなスレッガーを見てアムロはふっきれた気がした。
そうだ、この人ならどんな事態になっても自分を見失ったりしないだろう。
「そうですね、スレッガーさんならきっと大丈夫です」
「おう、逆に利用してやるぜ」
二人は軽くグラスを合わせた。
「フラナガンにはいいスタッフもたくさんいますしね。僕のマネージャーを
してくれてたドレンさんや、マリガンさん、どうしてるかな」
「レズンも腹を割ったいい奴だしなぁ」
「・・・みんな根はいい人なんだ。あのシャアだって・・・」
数日前に見たシャアの姿。以来なぜか以前ほど強くシャアを憎めなくなった
アムロだった。だからと言って許せるのとは違うのだが。
「シャア? シャアって天才プロデューサーと呼ばれたシャア・アズナブルの
ことか?引退したって聞いたけどな。一度くらい生で拝みたかったぜ」
「え、あれ?そういえばスレッガーさん、セイラさんから聞いてないんですか」
「・・・何を?」
「あの人、セイラさんのお兄さんじゃないですか」
216通常の名無しさんの3倍:04/05/05 22:07 ID:???
レズン・シュナイダーさんについては、あんまり良く知らないながら
他に思いつかず無理やり出してしまいました。
変だったらすいません。
217通常の名無しさんの3倍:04/05/05 22:45 ID:???
ごめん、レズンて誰?状態のワタクシ・・・(w
しかし着々と二人の対決が迫っておりますな。楽しみ!
218通常の名無しさんの3倍:04/05/05 23:32 ID:???
>>216−217
レズンてCCAでシャアのネオジオンにいたNT嫌ってたパイロットですよね?
姉御っぽいイメージあったのではまってました。
乙です。
219通常の名無しさんの3倍:04/05/05 23:37 ID:???
>>217
レズンはCCAのキャラです。
シャア側のパイロットというだけで選びました。すいません。

スレッガーとシャア、もうすぐ出会うでしょうか。
ところでスレッガーの方が年上だと思うのですが、史実はどうでしたっけ?
220219:04/05/05 23:38 ID:???
あ、被ってしまいました。
>218さん、ありがとうございます!
221通常の名無しさんの3倍:04/05/05 23:45 ID:???
お恥ずかしいですが、私も レズン・シュナイダーって知らない。
ゼータに出てたの?

なんだか盛り上がってきましたね〜。続きが楽しみです!
222221:04/05/06 00:05 ID:???
ごめんなさい。レス入れる前にリロードすれば良かった。CCAに出ていたのですね。
CCA、観ているのに思い出せない私…。
223通常の名無しさんの3倍:04/05/06 21:27 ID:???
>>219
ググって見たけど24歳だったり26歳だったり20代前半だったり・・・
小説ではクルーで最年長と書いてあったので、少なくとも
1st時19歳のブライトよりは年長=20歳のシャア以上らしいですよ。
まあ、スレッガーの方が年上に見えますよね〜

224通常の名無しさんの3倍:04/05/07 21:01 ID:???
>223
さんくす。
意外とスレッガーって(あのダム世界の中では)大人だったんですね。
26才と説をとったら、シャアより6才上か。ということは、
ここのシャアは今23才だから、スレッガーは29!
うーん、シャア負けそう・・?
225通常の名無しさんの3倍:04/05/07 22:27 ID:???
昼下がり、シャアは専用に与えられたプロデューサールームで
お茶の時間を楽しんでいた。窓の外からは生徒の歌声や楽器の
調べが聞こえるが、うるさいほどではない。穏やかな午後だった。
と、突然、扉の向こうから言い争う声が聞こえて来た。
一人はナナイで珍しく声を荒げている。もう一人も女性らしいが
シャアの知らない人物のようだった。
「だから、わたくしから聞くだけ聞いてみますって言ってるで
しょう!しつこい人ね。こんなところまで入ってくるなんて、
業務違反ですよ、早く下がりなさい!」
「ちぇ、偉そうに」
「なんですって!?」
「はいはい、じゃあ頼んだよ」
そして静かになり、一呼吸置いてナナイが部屋に入ってきた。
「まったく!」
「どうした? ここまで聞こえていたぞ」
まだ怒りが収まらない様子のナナイにシャアは苦笑する。
普段は冷静で隙がないと評判の彼女も、時にはこんな表情を
するのが面白かった。
「申し訳ございません」
ようやくいつもの顔にもどるとナナイはシャアの傍に行く。
「レズン・シュナイダーという女性マネージャーですわ。
例のソロモンの交渉をさせていたのですが、力不足で・・」
226通常の名無しさんの3倍:04/05/07 22:27 ID:???
「・・・難航しているのか?」
ソロモンの名にシャアの眉がかすかに反応する。
「いえ、そういうわけでは・・。ただ、リーダーのスレッガー・
ロウが、交渉の前にシャア・アズナブルと話がしたい、と」
「なに?」
「申し訳ございません。プロデューサーは多忙でいちいち交渉に
出ている暇は無いと再三レズンには言ったのですが、どうしてもと
ゴネているようで・・」
「ふーん」
シャアはスレッガーの真意は何だろうかと思案する。
「せっかく復帰をご決意くださったのに、早々にこれでは先が
思いやられますわ。レズンには自力で話を纏めるよう改めて・・」
「構わん。スレッガーに会うと伝えさせろ」
「しかし・・」
なるべく素性を隠しておきたい、それがシャアの意向のはずだ。
留学期間を残しながら復帰を決めた今も、その意向に変わりは
ないと思っていたナナイは戸惑う。
「私も、いつかは会わねばならんと思っていたのだ。奴とはな」
シャアの瞳の奥に、ギラリとした何かを垣間見て、ナナイは
一瞬ぞくりと身を震わせた。
227通常の名無しさんの3倍:04/05/07 23:18 ID:???
きたーーー!
い、いよいよでつね!!
228通常の名無しさんの3倍:04/05/09 14:58 ID:???
シャアVSスレッガーの前に
ちょっとバカ話しを入れさせて貰います。
229通常の名無しさんの3倍:04/05/09 15:00 ID:???
 最近カミーユが変わった。丸くなったっていうか・・・
今まで迷惑を掛けた人たちに謝って周っているらしい。どうしたのかしら?
 この頃のカミーユは爽やか少年らしい。元気に挨拶をし、
朝から公園でゴミ拾いなんかしている。何なの?急に。
 街でカミーユがおばあさんを道案内している所を見た、と友人が教えてくれた。
良い事をしているのはわかるけど、いったいどういう心境の変化なの?
――(中略)――
「・・・何だよこれ?!」
「やだっ、それ私の日記じゃない。勝手に見ないでよっ」
「日記?こんな手帳に?大体これじゃあ、俺の観察日記じゃないか!」
「その日の出来事なんかをメモしてるのよ。日記ってそういうものでしょ?
最近あなたの行動が目立つからそうなってしまうのよ。さ、返してっ」
まあ、ファが不思議がるのも無理は無い。
今日だってこうして街の迷惑落書きを消しているんだし。
「拾ってやったんだろ。落とすなよ、こんなもん」
「だからって読むこと無いじゃない。カミーユのエッチ!」
「なっ、誰が・・・・っ」
っと・・、我慢・我慢だ。まあ、手伝ってくれてるんだしな。
そう思い直し、日記と引き換えにファが差し出した缶コーヒーを受け取った。
「・・・ほんと、変わったよね。何かあったの?」
「別に・・店長に大人になれって言われたからさ。ファだろ?言わせたの」
セイラさんと再会した事をファに話したいない。
あれから数日経ったが、俺は今、歌いたくてしょうがない。
“一度聞いただけで耳に残る素晴しい歌”
会って2回目にこんな事言われてたんだ。もっともっと聴いて欲しい。
もちろん、たくさんの人達に、耳だけじゃなく心にも残したい。
なのに、この半年の行動が祟って、俺の歌う場所はどこにも無くなっていた。
ライブハウスも、路上ですらトラブルメーカーはごめんだと言われてしまい・・・
こうして、誠意を見せるべくボランティアまがいの事を続けている。
「よかったわよね。週末の2時間だけでも公園を使わせてもらえる事になって。
口添えしてくれたアストナージさんにもちゃんとお礼言うのよ」
『俺の努力の賜物だ!』っと言いたい所だが・・・
この短気がいけないんだよな。
落ち着けよ、俺。こんな時にはあの人のことを思い出すんだ。
230通常の名無しさんの3倍:04/05/09 15:01 ID:???
「・・・なにニヤケてるの?嬉しいのはわかるけど」
「え?あ、俺、帰りにアストナージさんとこ寄ってくから、ファは先帰ってくれよ」
「あら、私も付き合うわよ」
「いや、他に寄りたい所も在るし・・・」
「いいわよ。お母さんにも遅くなるって言ってあるから。」
『俺が良くないんだよっ!』
上手くすればセイラさんに会えるかもしれないのに。このオジャマムシが!
『ん?オジャマムシ?』
嫌な奴の事を思い出してしまった。あのサングラスの男。
『クワトロ・バジーナ』とか名乗ったっけ。・・・本名か?
まあ、あの男もいつも顔を隠していたから、素顔は知らないしなぁ。
・・・待てよ?、その前にあの二人、本当に兄妹なのだろうか。
普通の兄妹って、いい歳して観光地でもない高級ホテルに一緒に
泊まったりするものなのか?
一人っ子の俺にはよくわからないし、
あの時はどうでも良かったけど、まさかっ!
――いやいや、あの清純そうなセイラさんに限ってそんな・・・
それに、クワトロ・バジーナとあの男とは雰囲気が違っていた。
なんていうか、ちょっと良い人っぽいっていうか、頼れる兄貴っていうか、
あの男の方は、いつも誰も側には寄せ付けないって風にしか見えなかったしなぁ・・・。
?!まさかっ、 それがあいつのテなのか?
そうやって油断させて女を落とすのかぁっ!?
もしグラサン野郎があの男だったとしたら、
世間知らずそうなセイラさんを騙すくらい訳無いんじゃっ・・・!
『許せない!そんな男、修正してやるっっ!!』
231通常の名無しさんの3倍:04/05/09 15:02 ID:???
「カミーユ・・・本当にどうしちゃったの?」
「へ・・・?」
「今日のカミーユが今迄で一番変よ。
一人で百面相したかと思うと、手を握り締めて何だか燃えているし・・・
荒んでいるよりは良いけれど、
熱血爽やか少年なんて私の知ってるカミーユじゃないわ」
「・・・ちょっと考え事してただけだろ。
さ、行こうぜ」

せっかくの決意にも関わらず、結局今日はセイラさんには会えなかった。
それで良かったのかもしれない。少し冷静になって考えよう。
先走って、もし本当に兄妹だったら大変だ。
今はともかく“歌”に専念しよう・・・
232通常の名無しさんの3倍:04/05/12 20:42 ID:???
カミーユ、きれいなお姉さんが気になって仕方ないのねw
はたしてセイラとの再開は果たせるのでしょうか?

シャアとスレッガーの邂逅も楽しみにしています。
妹の元カレに対して、どんな反応するのかな?
まぁきっとポーカーフェイスでしょうけどw
233通常の名無しさんの3倍:04/05/16 07:13 ID:???
続き楽しみにしてます!
234通常の名無しさんの3倍:04/05/16 22:54 ID:???
続き、期待あげ
235通常の名無しさんの3倍:04/05/17 15:16 ID:???
     ズムシティ−青春白書
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236通常の名無しさんの3倍:04/05/22 19:16 ID:???
まだかな〜
237通常の名無しさんの3倍:04/05/22 19:54 ID:???
3日後―― 休日・昼間の公園は家族連れや老夫婦ばかり、
というイメージが強い。
しかしここは近くに大きなショッピングモールが在るせいか、
どちらかというと若者やカップルなんかが多いようだ。
『これなら観客には不自由しないだろう』
カミーユが辺りを見回すと、他にもギターを持った者、
ジャグリングやパントマイムといった大道芸人の卵らしい者がいた。
どれも客はチラホラといったところだ。
更に見回したが、お目当ての女性は見当たらない。
「どうしたの?カミーユ」
ファが心配そうに顔を覗き込んだ。
「緊張してる?」
「そうでもない。・・・いや、そうなのかな」
曖昧に答えながら、目はあの女性を探してしまう。
『どうしたんだろう?必ず来ると言ってくれたのに』
カミーユに、ある疑念が生まれた。
『兄さんも誘ってみるわ』
今日の事を伝えたとき、彼女はそう言っていた。
『まさかあいつが邪魔してるんじゃないだろうな・・・』
「カミーユったら! 時間無くなるわよ?」
公園管理者との約束で、準備から後片付けまでで2時間しかないのだ。
『こんな事じゃ駄目だ。今はともかく歌に集中しなくては』
カミーユは頭を振り一旦息を整えると、
電子ピアノの鍵盤を少し強めに叩いた。
  “ターーーンッ“
鳴り響くピアノ音。何事か、というように数人の通行人が振り向いた。
カミーユは続けて幾つかの音をとると、そのまま徐に歌いだした。
238通常の名無しさんの3倍:04/05/22 19:56 ID:???
数曲を歌い終わったとき、周囲の人だかりから盛んに拍手が起こった。
とは言っても20人程度のものだが、カミーユは十分な手応えを感じていた。
3・4歳くらいの少女が『お兄さん、お歌上手ね』
と言ってキャンディーを手渡してくると、
周囲からも電子ピアノのケースに金やら、
差し入れのジュースやらが投げ入れられた。
「良かったよ」「いい声してるね」等と声を掛けてくる者もいる。
カミーユは「ありがとうございます」と応えながら、
一昨日の事を思い出していた。
セイラに今日歌うことを伝えた時のことだ。
カミーユは自分の気持ちをセイラに話した。
『歌いたい、聴いて欲しい、“歌”は単なる言葉ではないはずだ・・・』
途切れ途切、しどろもどろの言葉を、セイラは黙って聞いてくれた。
そして一言、微笑みながらこう言ってくれたのだった。
『あなたなら出来るわ』

『休み明けに今日のことを報告に行こう。
あの男の事も今度こそ確かめなきゃ・・・』
楽器を片付けながらもカミーユは考えていた。
その時、
「お疲れ様。良い歌だったわ」
声の方を振り返ると、あの女性が微笑み掛けている。
思わず笑みがこぼれるカミーユ。
しかしその後ろには・・・当然のようにあの男が立っていた。
239通常の名無しさんの3倍:04/05/22 19:57 ID:???
「まあっ!クワトロさん、セイラさん。お久しぶりです」
ファは驚いて挨拶をした。
「まさか又お会いできるなんて」
「あら?カミーユから聞いていなかったの?」
「え・・・?」
ファは訳がわからない、といった表情でカミーユを見た。
「・・・ありがとうございますセイラさん。
来られないんじゃないかと思っていました」
ファを無視してセイラに話しかけるカミーユは、
牽制するかのようにクワトロを見た。
クワトロは動じる事無くアルカイック・スマイルを浮かべている。
「どういう事なの、カミーユ?」
「・・・別に・・・アストナージさんの店で偶然会ったから、
それで誘ったんだよ」
「だったら、話してくれればよかったのに」
「わざわざ話すような事でもないだろっ・・・・」
適当に済まそうとしたが、ファは尚も不満げにカミーユを見ている。
そんな気まずさからカミーユを救ったのは、意外にもクワトロだった。
「フ・・・仲が良いのはいいが、場所を変えないか?
ここは痴話げんかには不向きな場所だ」
見れば、通行人がチラチラとこちらを見ている。
カミーユの声は普通に話していても良く通り響くのだ。
「もう、兄さんたら若い子をからかって。
でもそうね、近くに良いカフェがあるの。一緒にいかがかしら?」
240通常の名無しさんの3倍:04/05/22 20:00 ID:???
「――― そうだったんですか」
「ええ、それで時間通り着いたのに、兄さんたらね、
邪魔になるから終わるまで声を掛けないほうが良い、
それにまた騒ぎに巻き込まれたらたまらないから少し離れた所で聴こう、
ですって。失礼でしょ?ごめんなさいね」
「いいんですよ。カミーユって本当トラブル多いんですから」
カフェへと向かうわずかな時間、セイラとファは
すっかり意気投合してしまった。
その為、店に入っても男性二人はそっちのけで話し込んでいる。
『ファの奴、これじゃ俺がセイラさんと話せないじゃないか』
しかし、雰囲気的に割り込めないものがある。
カミーユは仕方なくクワトロの方に目をやった。
クワトロはカフェに入るとその大きなサングラスをはずしていた。
アイスブルーの瞳に明るい金髪が良く映える丹精な顔立ち。
不躾にもカミーユはそれをまじまじと見つめ、セイラと比較していた。
『似ている・・・やっぱり本当に兄妹だったんだ』
カミーユは一人、安堵していた。
その視線に気付いているであろう男は、
何食わぬ顔でコーヒーを口にしている。
『でも、どうなんだろう。この男が・・・シャア?』
シャア・アズナブル――今や伝説的な天才音楽プロデューサー
フラナガン研究所に所属していたカミーユは、
シャアのプロデューサーとして以外の面、
平たく言えば女癖の悪さを度々耳にしていた。
やっかみ半分としても相当なものだったはずだ。
また、カミーユの知っているシャア・アズナブルは、常に自信に満ち溢れ、
沢山のスタッフに囲まれながらもどこか一線を画している様に見えた。
しかし今、目の前にいる男は妹の長話に黙って付き合い、
穏やかな微笑みを以って見守っている。
『やっぱりちがうのかな〜』
本気でプロを目指していたカミーユである。
下賎な噂は別として、シャアのプロデューサーとしての手腕は認め、
尊敬もしていた。だからこそ彼の引退はカミーユにとって衝撃だった。
事故の責任を取って、という理由はわからないでもない。
むしろその純粋さに意外な一面を見たように思い、好感すら持っていた。
『でもこの顔、どこかで見たことがある。どこだっけ・・・』
だが、カミーユの意識は別の方向に向かいつつあった。
241通常の名無しさんの3倍:04/05/22 20:08 ID:???
「・・・・よね。カミーユ?」
「ふぇ?」
突然ファに名前を呼ばれ、思わずおかしな返事をしてしまった。
セイラにクスクスと笑われ、カミーユは赤面しながらも
仕方なくファに説明を求めた。
「セイラさんがね、路上で歌っているだけじゃ勿体無いって」
「ありがとうございます!」
とたんに目を輝かせるカミーユだったが、
「でね、半年前の事を話したら・・・」
「!!?っ 何でそんな事を!」
あっという間に頭に血が上ってしまった。
「およしなさいカミーユ。声を荒げたからと言って
事実が変わることなど無くってよ」
瞬時に激昂したカミーユをセイラがたしなめた。
お嬢様然としたセイラにピシャリと言われ、カミーユは怯んだ。
「落ち着いて聞いて欲しいの。あなたのこれからについての話よ」
「僕の・・・これから?」
「落ち着いた様なら話を続けたいのだが、良いかね?」
そこで初めてクワトロが口を挟んだ。
「君が本気で歌を続けたいというのなら、フラナガンに戻る気はないかね?」
「?!」
「聞けば、正式に辞めたわけではないそうじゃないか。
それならばやりようはある」
自信に満ち溢れたアルカイック・スマイル。
『この男、やっぱり!』
「ね、良い話しでしょう?
クワトロさん、フラナガンにお知り合いがいらっしゃるそうよ。
カミーユがその気なら口添えして下さるって」
「直接プロダクションを紹介しても良いのだが
それでは後々、フラナガンとの間に軋轢が生じると思うのでね」
クワトロが更に付け加えた。
黙して応えないカミーユにセイラが話しかける。
「突然で驚いたでしょう?兄さんたらいつも唐突で」
「それだけカミーユ君に可能性を感じたということだよ。
返事は良く考えてからで良い。次の週末、また公園に寄らせて貰うよ」
クワトロはそう告げると返事も聞かず会計伝票を持って席を離れてしまった。
「この後用事があるらしいの。慌しくてごめんなさい」
済まなそうに誤りながらも、セイラも兄に続いて立ち上がった。
カミーユは、二人が出て行く後姿を黙って見つめてた。
242通常の名無しさんの3倍:04/05/22 20:55 ID:???
わ〜い、続きだ!お待ちしておりました!
カミーユもフラナガンに入所(復帰?)するのかな。
ますます面白くなってきましたね。
243通常の名無しさんの3倍:04/05/23 08:24 ID:???
乙。
シャアやガルマといる時とは違って、ちょっとお姉さんなセイラさんがいいですね。
続きお待ちしています。
244通常の名無しさんの3倍:04/05/28 21:42 ID:???
保守
245通常の名無しさんの3倍:04/05/29 09:04 ID:???
職人さん、がんがって!
のんびりお待ちしておりますので〜!
246通常の名無しさんの3倍:04/05/31 19:50 ID:???
続きは、まだかな〜?
247通常の名無しさんの3倍:04/06/05 20:42 ID:???
保守
248通常の名無しさんの3倍:04/06/07 20:06 ID:???
ガンガレ!
249通常の名無しさんの3倍:04/06/07 22:52 ID:???
え〜っと、
シャアは恩師の還暦祝いで帰ってきたんですよね
そのネタ使って良いですか?
250通常の名無しさんの3倍:04/06/10 20:44 ID:???
>>249
やっちゃってください!
251通常の名無しさんの3倍:04/06/10 22:20 ID:???
12日にまたまた集まってチャットするよ。

詳しくはお絵かき掲示板にて!
252通常の名無しさんの3倍:04/06/13 08:43 ID:???
「兄さん、この後の用事って?」
「ん・・・パーティーの衣装を取りに行く」
「まあ、意外と早く仕上がったのね!」
「無難なものにしておいたからな。
何が起こるか分らんパーティーだ、動きやすくしておかないと。
全く・・・教授も愉快な方だ。
還暦祝いを仮装パーティーにして欲しいとは」
「ふふ・・。我が校の名物教授ですものね」
「それでいて、コロニー用ミラーの研究においては第一人者だ。
あなどれんよ」
「私は2.3度お話したくらいで、研究熱心な方にしか見えなかったけど・・・」
セイラは思い出していた。
始めて教授主催の"闇鍋大会"に参加した直後の兄の事を。
「それで・・・結局どんな仮装にしたの?
私に位教えてくれてもいいでしょう?」
いたずらっぽく微笑むセイラに、シャアは優しく微笑み返した。
253通常の名無しさんの3倍:04/06/13 08:53 ID:???
ちょっとだけ前振りです。
シャアやガルマ、その他の仮装についてご意見あったらお聞かせ下さい。
パーティーは「IFダム時間?」で次の週末にしてよろしいでしょうか?
この時点では翌日が日曜になってたと思うので・・・
もし、すぐ続けられる方が居たらお願いします。
254通常の名無しさんの3倍:04/06/13 09:38 ID:???
おお、続きがっ!お待ちしてましたよ〜!
仮装ねぇ、、、何がいいかな?
シャアはギリシャ神話のアポロン(・・無難か!?)、
ガルマは正統派でドラキュラとか・・・

ところで「闇鍋大会直後の兄」が気になりますw
一体何があったの〜!!w
255通常の名無しさんの3倍:04/06/13 13:06 ID:???
シャアのアポロン・・・
クワトロ化した肉体にさぞ似合うだろう(;´Д`)ハァハァ

ありえないが、赤いひとだけにサンタクロースを思い付いてしまったよ




256通常の名無しさんの3倍:04/06/13 16:20 ID:???
調子に乗って番外編投下いたします。
     「闇鍋の秘密」
257通常の名無しさんの3倍:04/06/13 16:20 ID:???
今は思い出となった、教授主催の新入生歓迎会。
煩わしい催し事は嫌いなシャアだが、
以前より興味を持っていた名物教授とお近づきになるチャンス、
となれば見逃すはずも無く、ガルマと共に参加したのだった。
「鍋大会か〜。僕、鍋物は初めてだよ。
シャブシャブは以前食したことがあるんだけど・・・」
「鍋は鍋でも"闇鍋"だ。注意した方がいい」
「 ?、どういう意味だいキャスバル?」
「"闇"・・・つまり暗がりの中で鍋をつつくんだ。
一度箸で掴んだものは、何であっても食せねばならない」
「僕は好き嫌いは無い方だよ。
でも、暗闇で食事か〜。鍋物だし、火傷には気をつけないとね」
「そうだな・・・」
シャアは知っていた。"闇鍋"がどんな物かを。
『幸い私は夜目が利くしな・・・』
シャアはこの善良な友人が大好きだったが、
疑うことを知らない"坊や"を揄ってみたいという
ちょっとした遊び心が持ち上がった。
『黙っておこう』
258通常の名無しさんの3倍:04/06/13 16:22 ID:???
テーブルには既に鍋が用意され、点火を待つばかりだった。
参加者の割には随分小さな鍋に思えるが、
具材は別に隠してあるのだろうか?
シャアがそんな事を考えているうちに、教授が現れた。
「新入生諸君、入学おめでとう。
私のモットーは"よく遊び、よく学べ"だ。
これらを両立させる為には体力が必要。体力には運動と食事が重要。
というわけで、今日は大いに食べてくれたまえ」
教授のスピーチはあっという間に終わった。
「噂通り、気さくな方の様だな。長話でなくてよかった」
ガルマがシャアに話しかけた。
「ご馳走を目の前にした腹ペコ学生を待たせる程野暮なことはないだろう?」
返ってきたのはシャアとは違う声。
「俺はケリィ・レズナー、こっちのデカイのが・・」
「アナベル・ガトーだ」
「初めまして先輩方。私は・・・」
「知っている。キャスバル・ダイクンとガルマ・ザビだな」
「君たちを知らない学生などいないさ。よろしく、俺たちは君たちの係りだ」
「は?係り・・・・」
答えることなく着火が行われ、何故か二人は目隠しをされてしまった。
周囲のざわめきから察するに、他の新入生たちも同様のようだ。
「せ、先輩、これではいくらなんでも食べられませんよ」
ガルマが困惑して声をあげる。
「・・・闇鍋ではなく"二人羽織"なのですか?」
シャアも嫌な予感がしてきた。
「まあ、それでもいいんだけどな。今回はれっきとした闇鍋だ。
大丈夫、俺たちがちゃんと食べさせるから♪ 」
「暗がりなのでな、リクエスト通りとはいかんかも知れんが
食せるものしか入っていない。気にせず集中することだ」
「はあ・・・」(ガルマ)
「・・・・」(シャア)
259通常の名無しさんの3倍:04/06/13 16:23 ID:???
戸惑っているうちに、照明が落とされた(様だった)。
「落ち着きたまえ諸君」
教授の声が鳴り響いた。
「諸君、知っての通りコロニーは地球を模した建造物。
すなわち我々が感じる"自然"も本来のものではないと言えよう。
太陽光も然り。私の研究である"コロニー用ミラー"は"自然"の源たる太陽光を
如何に効率よくコロニーに供給するか、簡単に言えばそんなところだ。
君らが今味わっている闇と不安は、我らスペースノイドが避けては通れない問題なのだ。
我々は、この困難を人類の英知で以って解決していかねばならん!」
『ふ・・・確かに。そのための演出がこれか』
安堵したシャアだった。が・・・
「では、第一問!」
「「「「はぁ?」」」」
場内で似たような声が幾つも上がった。
構う事無く、教授は問題を読み上げ、更にはカウントダウンをはじめた。
「失格!!君たちはこれまで何を学んできたのかね?
太陽光がなければここにある食品のほとんどが存在しないのだよ?!」
何の前置きもなくいきなり問題を出されてもどうしたらよいやら・・・
戸惑う新入生。しかし、先輩方は嬉々としていた。
「まったく教授の仰る通りだ。さあ、これを食べて自然の恵みをかみ締めろ♪」
「良く味わうように。貴重な資源なのだと思い知れ」
260通常の名無しさんの3倍:04/06/13 16:25 ID:???
口に運ばれた物体は案の定・・・闇鍋定番の品々だった。
シャアは豆大福。水炊きなので油断していたが、
ケリィはご丁寧にもキムチダレをつけてくれた。更に、
「熱々だからな、ちゃんとフーフーしないと♪」
「!?先輩、それ位は自分で・・・」
「何を言うんだ。今日の主役は君たち新入生なんだぞ。遠慮するなよ?」
「!?!?」

「済まん、いきなりデザートを取ってしまった様だ」
それは・・・熱々でゴマダレまみれの・・・・メロン。
「ハ・・ハハ・・・いえ、メロンは好きですよ。
でも、生ハムの方が合うかな〜・・・・」
早くも涙声のガルマ。ジュンワリと甘辛さが口に広まるらしい。
粒々の残るゴマダレとのミスマッチ・・・

「こういう物は早めに食っちまった方がいいのさ。
煮込むと崩れてくるだろう?」
「先輩・・・楽しそうですね・・・」
消え入りそうなガルマの声。
「「楽しいさ、君たちも楽しめよ。君らの歓迎会なのだから」」
「・・・先輩方もお召し上がり下さい。我々だけでは気が引けますから」
何とか切り返すシャア。
「勿論さ。お、二問目、くるぞ!」
261通常の名無しさんの3倍:04/06/13 16:26 ID:???
そして問題は進む。解答時間は教授の気まぐれなのか、
問題の難易度にかかわらずあっという間にタイムアップになることすらある。
シャアは出題後、間髪入れず質問をすることで切り抜けて見せた。
問題に答えられれば食材のリクエストが出来るシステムらしいのだ。
しかし、ガトーも言っていた通り、リクエスト通りの物が食せるとは限らない。
期待した分、予想外のものが口に入れられた時の哀しみは・・・
更に、良い食材にありついてホッとしていると次の問題を聞き逃しかねない。
まさに一瞬たりとも気を抜けない、真剣勝負なのだ。
10問目の解答が出、新入生が疲れ切った頃・・・
「終了―!」
突然、高らかに教授が宣言した。
同時に目隠しが解かれ、先輩方から拍手が起こった。
「諸君、お疲れ様。これで講義時間の90分は終了だ。
本当の講義の際も、今日この時程の集中力で以って望んでくれたまえ」
そして、室内の照明が少しずつ明るくなっていく。
「どうだね、"光"とは有難いものだろう?」
そういってニンマリと笑う教授。
明るくなった室内で周囲を見回すと、新入生は皆呆然としている。
一方、上級生達はそろって満足気な顔をし、笑い転げる者さえいる始末。
「毎年恒例でね。今の俺たちの気分を味わいたいのなら決して他言無用だ」
ケリィがウィンクしてみせる。
その傍らで、厳ついガトーですら満面の笑みをしているのだ。
「・・・勿論です」
強気に応えたシャアだったが、内心穏やかではなかった。
男の先輩にフーフーされながら食事した等と誰に言えようか!
未だ呆け、脱力している新入生達の前でテーブルの上が入れ替わっていく。
「これはゆっくり明るい中で味わっていいから安心してくれ」
「土産に胃薬が各種用意されている。心配はいらん」
「胃薬・・・」
ガルマが引き攣る。
「いや何、食い物自体は全く問題無いんだ。
けどホッとして暴飲暴食する奴や、繊細過ぎて胃に来る奴が
毎年必ず居るもんでね。まあ、半年もすれば笑い話さ」
262通常の名無しさんの3倍:04/06/13 16:27 ID:???
ケリィの言うとおり、時間と共にそれは思い出となり
仲間内での共通の秘密となった。
ただ、歓迎会の翌日にセイラと会うことになっていたシャアは
大学生活について訊ねる妹の前で不覚にも平静を保つことが出来ず、
心配するセイラに秘密厳守とした上で
事の成り行きを話す破目になったのである。
勿論"フーフー"の琴は決して触れていない・・・
263通常の名無しさんの3倍:04/06/14 23:36 ID:???
乙です。
ところでシャアvsスレッガーはどこへ?
264通常の名無しさんの3倍:04/06/15 22:45 ID:???
闇鍋エピソード笑わせて頂きましたw
新入生のシャアとガルマ、教授と先輩に振り回されてるのが
初々しいですね〜。

以下に続きをあげさせてもらいます。
これから話が盛上がりそうなので、勝手ながらシャアの
滞在期間を延ばさせていただきました。
それから、シャアvsスレッガーへ・・・
265通常の名無しさんの3倍:04/06/15 22:46 ID:???
「・・・アルテイシア、いい加減笑うのをやめてくれないか」
「だって、その衣装を着た兄さんたら・・・」
またしてもクスクスと肩を震わせる妹を横目で見ながらシャアは溜息を
ついた。仕立て上がったパーティ用の衣装を試着して見せて以来、
寮に向かう車の中、もう30分もこうして笑われているのだ。
「あの教授のパーティだ、これでも大人しい方だと思ったんだがな。
お前にそんなに笑われるとは・・」
憮然とした表情の兄にセイラは目じりに溜まった涙をぬぐいながら言う。
「ごめんなさい。でもとっても似合ってたわよ。似合いすぎて可笑しかった
だけよ。兄さんは何を着ても似合うのね」
「・・・・素直に聞いておくよ」
「そういえば兄さん、帰って来てからまだ父さんに会ってないでしょう」
ようやく笑い飽きたセイラが話題を変えた。
「サミットで地球に降りられているからな」
「せっかく帰って来たのに・・・タイミング悪いわねぇ」
シャアの滞在予定はあと1週間。多忙を極める父が息子に会える時間は
あるだろうか・・セイラは心が痛んだ。
266通常の名無しさんの3倍:04/06/15 22:48 ID:???
「そのことだが・・・アクシズに戻るのを少し延ばそうと思う」
「ええっ、本当!?」
突然のことにセイラは目を見開いた。
「あぁ。留学先の大学へはこれから許可を得ねばならんが、まぁ大丈夫
だろう」
「嬉しいわ!でもどうして急に?」
「・・・3年も顔を見せていない上にこのまま戻っては父さんに勘当される
からな。それに・・・」
「それに?」
「いや、少しのんびりしてみたい気持ちになったのだよ」
プロデューサー業云々の話はまだ先でいいだろう。いたずらにこの妹を
心配させたくはない。
嬉しそうに自分を見つめる妹にシャアはうなずいて見せた。

妹を寮まで送り届けた後、シャアはフラナガン研究所へ車を回した。
自室に入り、一息つく間もなくナナイがドアをノックする。
「先生、お見えになりました」
腕時計を見ると約束の時間ちょうどだった。
「正確だな」
シャアがそうつぶやいたのとほぼ同時に、約束の客、スレッガー・ロウが
部屋に入ってきた。
267通常の名無しさんの3倍:04/06/15 23:06 ID:???
対決キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
268通常の名無しさんの3倍:04/06/16 06:34 ID:???
きたきたーーーーー!
お待ちしてましたっ!
269通常の名無しさんの3倍:04/06/21 07:30 ID:???
続き期待age
270通常の名無しさんの3倍:04/06/26 00:52 ID:???
「はじめまして、シャア・アズナブルです」
「スレッガー・ロウだ。今回は無理を言って申し訳ない」
二人は握手を交わし、それからソファに向かい合って腰掛けた。
シャアは初めて間近で見るスレッガーをまじまじと観察した。
彼の金髪はステージライトの下で見るよりも実際はもっと淡く、パサパサと
している。髪と同じ色の太い眉、薄い唇、二つに割れたアゴに日焼けした肌・・・
とくればイカつい容貌だが、そこに少しタレ気味の瞳が加わるとなんとも
ニヒルな優男である。
(・・・好きになれんな)
しかしそんなことは微塵もみせず、ポーカーフェイスでシャアは微笑んだ。
「今日はソロモンのことで良いお返事が頂けるものと楽しみにしておりました」
「その前に頼みがある。そのサングラスを外してくれないか」
意外な言葉に驚いたものの、シャアは黙ってグラスを外す。
その晒された素顔に、スレッガーは小さく息を呑んだようだった。
「本当だったのか・・・驚いたな・・・」
271通常の名無しさんの3倍:04/06/26 00:52 ID:???
「完全に隠し通せるものではないとは分かっていても、手放せないでいる。
失礼を許していただきたい、スレッガー先輩」
手にしたサングラスを少し上げて照れたように笑ってみせ、改めてシャアは
握手を求めた。同時期に在籍こそしなかったがシャアにとってスレッガーは
高等部時代の先輩にあたるのだ。
「いやいや構わねぇよ、あんたは有名人だからなぁ。いろいろとやりにくい
こともあるだろうサ。俺だって誰にも言うつもりはないぜ」
「助かります」
「しかし何でまた音楽プロデューサーなんだ? あんたの専門は確か工学とか
そっち方面だろ?」
「まぁ事情はいろいろと。・・・・先輩は昔から音楽一筋でしたね。有名でしたよ、
我が校始まって以来の不良、しかし奏でる音は一流だ、と」
「あの頃はただ好きなだけの我流さ。・・・あんたのお陰なんだってな、木星へ
行けたのは」
272通常の名無しさんの3倍:04/06/26 00:54 ID:???
なごやかな話し口調、しかし話の核心に近づきつつあるのはスレッガーの微妙な
声音からシャアは敏感に察知した。
(何が言いたいのだ?)
自分の素性を確かめるためだけに強引に面会を望んだとは思ってはいなかったが
真意が分からずシャアは心で身構えた。
「聞かせてくれないか、3年半前、俺のどこがあんたのお眼鏡に叶ったんだ? 
俺の演奏をどこで聞いた? 誰かの推薦が・・」
聞いているうちにたまらずシャアは笑い出した。
「随分とご自分に自信が無いと見える。まるで私があなたの才能を見込んだことが
信じられないと言っている風に聞こえますが」
「いや、俺は・・・」
「見くびられたものだ、私もアルテイシアも」
「!」
シャアは厳しい目でスレッガーを見据えた。
273通常の名無しさんの3倍:04/06/26 00:54 ID:???
「あなたはアルテイシアが私にあなたの取立てを頼んだのではと疑っているようだが、
はっきり言っておきましょう。妹はたとえ恋人の為であろうとエコ贔屓をするような
人間ではない」
「・・・参ったな、知ってたのか」
ソファーの背もたれに体をゆっくりと預けながら、スレッガーは照れくさそうに人差指で
頬を掻いた。しばらく何かを考えていたがやがて改めて上体を戻し頭を下げた。
「許してくれ、キャスバル・ダイクン。あいつとあんたの関係を知って以来、自分でも
おかしな位不安になってな。あいつの潔癖さや誇り高さは分かってたはずなのに、
俺とした事がどうかしていた。許してくれ」
(あいつ、だと?)
親しげな呼び方にシャアはムッとする。本来口の悪いスレッガーに他意は無いのだが
シャアにとってみれば不愉快極まりない。
「誤解が解けたところで、ビジネスの話に戻りたいと思いますが、よろしいですかな?」
「お、そうだな、すまない・・」
極めてそっけないシャアの言葉にスレッガーは慌てて頭を上げる。
それを無視してシャアは机の上から書類を取上げた。
274通常の名無しさんの3倍:04/06/26 01:04 ID:???
続き、お待ちしてました。ありがとう〜!
スレッガーが気に喰わない兄さんに禿萌させて頂きますた
275通常の名無しさんの3倍:04/06/26 19:13 ID:???
慇懃無礼とはシャアの為にある様な言葉だと思いましたよ!
276通常の名無しさんの3倍:04/06/26 22:14 ID:???
「こちらと専属契約を結んで頂くにあたっての条件等は、すでにご提示した通りです
わが社に委ねてくださるなら、必ずソロモンを全宇宙に通用するバンドにしてみせ
ます」
「ははは、契約しただけで通用するんじゃ、俺たちの今までは何ナノ?ってね」
「いや、もちろんソロモンの実力は十分承知の上です。その上で我々なら最高の
チャンスを提供出来る、ということを申し上げたい」
(ちっ・・・さっきとは違ってかなりの自信じゃないか)
心の中で毒づくシャア、しかしスレッガーはあっさりと
「冗談だよ、俺だってこの世界に長いんだ。実力だけでのし上がれると思って
いるほどオメデタくはないさ」
前言を撤回した。
(何なんだ・・・)
冗談だか本気だか分からないスレッガーの言葉に、シャアは調子が狂う。
「まぁ俺達もそろそろ本腰入れて勝負に出たいからな。あんたたちの申し出は
渡りに船って感じなのよ、本当はサ」
「・・・では」
契約成立か。ほっと胸を撫で下ろすシャアを、しかしスレッガーは遮った。
「待ってくれ、一つ条件がある」
277通常の名無しさんの3倍:04/06/26 22:15 ID:???
「・・・お聞きしましょう」
「一人メンバーに加えたい奴がいる」
「加えたい?」
シャアは頭の中で資料をめくった。
スレッガー・ロウ、リュウ・ホセイ、ジョブ・ジョン、ウッディ・・・ソロモンは
結成以来ずっと同じメンバーで活動してきたはずだ。
そこに新メンバーを?
「ああ、アムロ・レイというボーカルだ。知ってるだろう?」
シャアは驚いてスレッガーを見た。まさかここでこの名前が出るとは
思ってもみなかった。
3年前のララァの事故の後、アムロはひどい衝撃を受け、当時予定されて
いたすべての仕事をキャンセルし、結果信用を失った。
どのみちアムロの方にも歌手を続ける気はなかったのかも知れないが
信用第一のこの業界でアムロの行動は致命的だったのだ。
3年も昔の話とはいえ狭い世界のこと、覚えている人も多いだろう。
まして一番損害をこうむったのはアムロの事務所だったこのフラナガンだ。
「・・・私に盾になれとおっしゃる?」
美しい瞳を険しく細めて自分を見るシャアに、スレッガーはニヤリと笑ってみせた。
278通常の名無しさんの3倍:04/06/26 22:16 ID:???
シャアはレウルーラ上層部の人間や、数々のスポンサーの顔を思い浮かべた。
どれも気難しく臍を曲げたらやっかいな頑固者ばかりだ。
いくら魅力的な商品でも、一つでも気に入らないキズがあれば、ポイと捨てて
しまって何の惜しげもない人間達だ。
ソロモンとアムロ。この両天秤をぶら提げて彼らと交渉に当たるのは、かなりの
骨折りだろう。
「あんたになら出来るだろう?」
「・・・・それが条件ですか?」
「まぁね」
「ならば全力を尽くしましょう」
シャアはうなずいた。
それほどまでしてもソロモンが欲しかったし、実を言うとアムロが立ち直って
くれたのなら力を貸したいという気持ちもあった。
あの日、ハイウェイで3年ぶりに会ったアムロ。
そこで知ったのだ、あの事故が未だにアムロの胸から血を流させていることを。
そう、自分と同じように・・・。
(しかしあのナイーブな少年を立ち直らせたとは、なかなかやる・・・)
認めるのは悔しいが少し見直した気持ちになり、シャアは続けた。
「しかし、アムロ君がよく復帰してくれる気になったものだ」
「いや、まだあいつは承知してねぇよ」
「は?」
「だがあいつは必ず戻ってくる。この世界にな」
(その自身は一体どこから来るのだ!)
野生の感だとでも言ったら蹴り飛ばしてやる! 見直しかけていた反動で
シャアはますますスレッガーが嫌いになるのだった。
279通常の名無しさんの3倍:04/06/26 22:17 ID:???
「ならば、アムロ君をその気にさせてからの話だな、これは」
言外に「出来るものならな」のニュアンスを含めてシャアは言ってやる。
「だが、契約後にメンバー追加っていう話になっちゃ、またややこしいデショ?
こういうことは最初に言っといた方がいいと思ってサ」
「・・・・・」
至極まっとうな回答にシャアはぐうの音も出ない。
もうさっさと話をまとめてこの男を追い出したかった。
この部屋からもサイド3からも・・。
「いいでしょう。アムロ君がその気になればいつでもソロモンへ迎え入れられる
よう契約を変更しましょう」
言いながら、ピッと内線を押しナナイを呼ぶ。
「御用でしょうか」
「あぁ、今から言うとおりに契約書を書き直してくれ」
「はい」
ナナイが準備するのを見ながら、スレッガーは満足そうに笑った。
「さすがキャ・・・いや、シャア・アズナブルだな、あんたと話が出来て良かったぜ」
「こちらこそ。実はもうすでにソロモンの月ライブの段取りを始めていたのです。
無事契約がまとまってほっとしました」
「月だって!?」
280通常の名無しさんの3倍:04/06/26 22:18 ID:???
「ナナイ」
シャアに促されナナイは説明を始めた。
「月のフォン・ブラウン市で長期ライブを計画しています。他のバンドも出演しま
すのでソロモンだけではありませんが、あの都市は文化の中心ですから
注目を浴びますわ。企画の第一弾としては申し分ないかと存じます」
「ヒュ〜♪」
思わず口笛を鳴らすスレッガー。
宇宙移民が最初に行われた月は、今でもやはりすべての先端、中心である。
とくに芸術・文化の面では華やかで、辺境のサイドから月を目指す若者は多いし
ここで成功して初めて一流と見なされるのだった。
「スケジュールはあとでレズンと相談して頂きますが、都合がつけば来週からでも
ジョインしていただけますわ」
「来週から?ちょっと待ってくれよ、そんなに急には・・」
話の展開の早さにスレッガーは慌てた。
「みんなの都合もあるし、それに何より今ここを離れたらアムロを説得出来ない」
「どのくらいの期間が欲しいのですか?」
「そうだな、少なくとも半年は・・」
「バカな」
シャアは一笑した。
「話を半年待たせるほど今のソロモンに力があるとお考えで?」
「なに?」
281通常の名無しさんの3倍:04/06/26 22:19 ID:???
「いや、失礼。すぐに半年どころか何年でも待たせることの出来るバンドにして
みせますよ。だが、今は・・・チャンスは一瞬だ。これが現実でしょう」
笑いを収め、ゆっくりと諭すようにシャアは説得した。
どうしても月ライブにソロモンを参加させたい。そのために自らの指示で
根回しをさせて来たのだ。
あまりに強引にすると、まだ契約前でもあり、破談になる可能性も考えない
ではなかったが、この企画はソロモンにとっても垂涎もののはずだ。
シャアは勝負に出た。
「それがお分かりにならないようなら、今後プロデュースする上で大切な
相互理解が計れないということになる」
「すぐにでも月へ行かねぇと、専属契約もなしってことか」
スレッガーはギリとシャアをにらみつけた。
282通常の名無しさんの3倍:04/06/26 22:20 ID:???
何分過ぎたか、シャアのプロデューサルームに、シャアとスレッガーの
息をつめるような睨み合いが続き、ナナイは声を出す事が出来なかった。
(いつもの先生ではないわ・・・)
突き放すような発言をしていても、ナナイには分かるのだ。シャアはソロモンに、
いや、スレッガー・ロウに固執している。どうしても手に入れようとしている。
なぜ? 敏腕と評されながら、タレントに対する扱いはいつだって淡白だったのに。 あの、ララァ・スンを除いては・・・。
ようやく口を開いたのはスレッガーだった。
「ひと月だけ時間が欲しい。その間にアムロを説得する。あいつが決心したら
一緒に月へ連れてゆく。駄目なら・・・オレたちだけで行く」
「ひと月・・・」
(ここが引き時か・・・?)
これ以上ごり押しすれば本当に手の中から出て行ってしまうだろう。
本当はひと月でも許したくはなかったが。
「了解した」
シャアは譲歩した。
「感謝するぜ。そしてあんたを見直した。あんたの言うとおりだ。俺達に
とってチャンスは一瞬だ。それを掴んだやつだけが昇りつめる」
意外な謝辞にシャアは面食らったが、スレッガーはまっすぐシャアに言う。
「あんたに、俺を、それから命よりも大切なソロモンを預ける決心がついた。
本当の意味でな」
「・・・・・」
「よろしく頼むぜ!」
差し出された太い右腕。シャアは戸惑いながら握り返した。
283通常の名無しさんの3倍:04/06/26 22:20 ID:???
「アムロのことはなぁ、なんつーか、放っておけないんだ。あいつ見てると、
心の中で“助けてくれ”って叫んでるのが聞こえるようでさ。まぁ事情はよく
知らねぇんだがな」
「・・・・・」
「それにあいつの歌の才能は本物だ。あんたも知っての通りな。あいつが入れば
ソロモンはさらに無敵になる。そうは思わねぇか?」
ナナイが用意した新しい契約書にサインをしながら語るスレッガー。
それを見ながら、シャアは不思議な気持ちになっていた。
(この男・・・)
サインが済み、ナナイが事務連絡を伝え終わるとそれですべて終了だった。
「今後のご活躍を期待しています」
「ああ、よろしく頼む」
立ち上がり別れの握手を交わす。
今後会うことはほとんどあるまい・・そう思ったとき、思わず言っていた。
「ホールまでお送りしましょう」
めずらしい!そう言いたげに目を見張るナナイを他所に、シャアはスレッガーを
促して部屋を出た。
284通常の名無しさんの3倍:04/06/26 22:21 ID:???
研究所の白い廊下を二人は並んで歩いた。
もう夜も遅く、人影はほとんどなかった。
「そういえば今日のステージは・・・・」
「ん? あぁ、ちょうど舞台の補修でな。久々の休暇なんだ」
「なるほど」
会話が途切れる。
糸口を探して逡巡するシャアにスレッガーが突然言った。
「やっぱり兄妹だな、あんたたち」
「は?」
「最初は見かけ以外は似てねぇって思ったけど、やっぱり似てるな」
「そうですか」
「・・・・あぁ、似てる」
それきりは黙ってしまったので、ちらりと見ると、スレッガーはまっすぐ
前を向いていた。表情には何も表れていなかった。
だがシャアには分かったのだ。
(この男は今でもアルテイシアを忘れていない・・・)
予想はしていたものの、実感するとやはり面白くなかった。
スレッガーに対して持っていた悪印象が、実際会ってみてほんの少し
上昇したのは認めるが、それとこれとは別だった。
こんな男に妹は絶対渡さない!
アルテイシアは否定していたが、これから先どうなるかは誰にも分から
ないのだ。
「・・・・・・」
一人物思いに耽るスレッガーを横目で睨みながら、シャアは月ライブ後の
企画を早いうちに練らねば・・・と心の中で決意するのだった。
285通常の名無しさんの3倍:04/06/26 22:41 ID:???
対決第一ラウンド終了?すごく萌えた。
スレッガーのこれからのますますの活躍に期待。
シャアは、スレッガーをセイラから遠ざけたいばかりに打った手が
裏目に出たら面白いのに。
286通常の名無しさんの3倍:04/06/26 23:29 ID:???
>>285
> シャアは、スレッガーをセイラから遠ざけたいばかりに打った手が
> 裏目に出たら面白いのに。
同意!

すごく面白かったです。職人様、ありがとう!これからの展開が楽しみです
あと、個人的にはスレッガーは唇が厚いような気が・・・
287通常の名無しさんの3倍:04/06/27 00:12 ID:???
スレッガーに対するシャアの反応が面白いです!
ここでは、いつもカッコイイばかりでしたが今回の必死(?)なところが萌えです。
やりすぎて墓穴を掘るシャア、自分も読みたいなぁ。
288通常の名無しさんの3倍:04/07/04 01:39 ID:???
続き期待!
289通常の名無しさんの3倍:04/07/06 00:00 ID:???
『君の論文、読ませてもらった。是非話しをしたい』
教授からの連絡はいつもながら唐突だった。
シャアがアクシズで手がけた論文
<地球とコロニーの住環境・或いは他惑星のテラフォーミングについて>
自信作ではあるが荒削りである事は否めない。
特にテラフォーミングについてはまだまだ未開発・開発途中の技術が多く
それについて教授の意見を聞いてみたいと思っていたので
パーティー前に時間を取って貰えるのなら有り難い。
シャアは仕事のときとは違った高揚感を覚えていた。が、
「今日はカミーユ君の返事を聞くはずだったな」
パーティーは6時から、シャアは5時には会場へ入ろうと思っていたが
カミーユの路上使用許可は3時までなので、
それから話しをしても何とか間に合うと踏んでいた。
しかし教授は、なるべく早く来るようにと言ってきたのだ。
しばし考えた後、シャアは携帯を手にした。
290通常の名無しさんの3倍:04/07/06 00:02 ID:???
「頼みたいことがある」
兄から連絡があったのはその日の昼前だった。
「突然教授に呼ばれてね。パーティーの前に話しをしたいそうだ」
「まあ、今日はカミーユの返事を聞くのでしょう?」
「うむ、約束を破るような真似はしたくはないのだが・・・
教授と直接議論できる機会などそうそう有るものでははないのでな。
そこでアルテイシアに・・・」
「解ったわ、それなら私が事情を話しておくから。
兄さんは心配しないで」
セイラはシャアが話し終える前に答えた。
「すまんが頼む。カミーユ君には後ほど改めて連絡すると伝えてくれ」
本音を言えば、セイラはパーティーに同伴したかったのだが、
"闇鍋"が余程トラウマになっているらしく
シャアは今まで一度たりとも教授絡みの催しに連れて行ってくれたことが無かった。
『いいわ、誰より早く、兄さんのあの姿を見られたのだから』
何より、些細なこととはいえ兄の役に立てるのは嬉しいことだ。
そうしてその日、セイラは1人で出かけることになったのだった。
291通常の名無しさんの3倍:04/07/06 00:03 ID:???
セイラは先日と同じく、少し離れ場所でカミーユの歌を聴いていた。
歌が終わり、頃合いを見て近づこうとした時
意外な人物がカミーユに話しかけていた。
「?! ベルトーチカさん?」
「セイラさん、お知り合いなんですか?」
セイラに気付いたファが話しかける。
カミーユとベルトーチカもセイラに気付いた。
「セイラさん、この人を知ってるんですか?」
「セイラさん・・・か。先日はどうも」
「え、ええ・・・」
セイラは言葉に詰まってしまった。
『何故この人がここに?』
動揺するセイラを気にする事無く、ベルトーチかは話を進めた。
「あなたにとっても悪い話じゃないでしょう?
ソロモンで演奏できるなんてチャンスじゃない!」
「演奏って・・・俺は歌手であってバンドマンじゃないんですよ?!」
話しが見えずにいるセイラに、ファが耳打ちする。
「ソロモンのピアニストが怪我をしたらしくて、
カミーユに臨時で演奏して欲しいって言うんです」
「なんですって?ジョブが怪我を?」
セイラは咄嗟にスレッガーを思った。
ジョブの怪我はソロモンの、つまりはスレッガーの危機でもある。
「セイラさん、ソロモンのピアニストを知ってるんですか?」
カミーユに問われ、セイラは口淀んだ。
292通常の名無しさんの3倍:04/07/06 00:04 ID:???
「知っているというか・・・」
答えあぐねるセイラに代わり、ベルトーチカが口を挟む。
「彼女、以前ソロモンの追っかけみたいな事してたのよ。
メジャーデビューの前だったし、メンバーと面識もあるのよ」
「追っかけ?セイラさんが?」
カミーユもファも驚いたようにセイラを見た。
「ね?」と言いながら笑いかけるベルトーチカの表情は
好意とも悪意とも取れるものだったが、セイラは否定せず問いかけた。
「・・・ジョブの怪我、ひどいの?」
「いいえ、怪我自体は大した事ないのよ。問題は怪我の原因・・・
これ以上部外者に話すことはできないわ」
「なら、俺はこれで失礼しますよ、部外者ですから」
カミーユはそう言うと器材を持って歩き出した。
「ちょ、ちょっと待ってよ。あなたとの話しはまだ終わっていないわ!」
「代役なんてゴメンですよ。そりゃソロモンは嫌いじゃないですけどね。
俺は今、自分の歌を歌いたいんです」
そう言い切るカミーユの瞳に迷いは無い。
だが、それでもベルトーチカは食い下がった。
「そんな事言わずにお願い!ともかく私と一緒に来て欲しいの!」

『本当に変わっていないのね、この人は』
まっすぐな情熱、それは時に相手や周囲に迷惑なものではある。
しかし、自分の感情のままに進もうとする彼女が羨ましくも思えた。
「待ってカミーユ、私とも話しがあるでしょう?
もう少し時間をちょうだい。ベルトーチカさんとも・・・」
「すいません、この間の事はもう少し考えさせてください。
今日はこれで失礼します」
カミーユはそれだけ言うと走り出した。
「カミーユ、待ってよっ」
ファも慌ててその後を追って行ってしまった
293通常の名無しさんの3倍:04/07/06 00:06 ID:???
取り残された二人、セイラは改めてベルトーチカに訊ねた。
「ジョブの怪我のこと、聞かせてもらえないかしら?」
「・・・そうね、でもこれはココだけの話にして欲しいの」

事の起こりはフラナガンからのスカウト話だったらしい。
当初、メンバーに反対する者など居なかったのだが、
アムロを仲間に加えたいというスレッガーの主張に
ジョブ・ジョンが異を唱え出したのだという。
「アムロ?アムロ・レイ?!」
「ええ、あなたも彼の事は知っているわよね」
「アムロ・・・唄えるようになったの?」
「残念ながらまだよ。なのにスレッガーったら
アムロがメンバーに加わらないなら契約しない、
なんて言い出したものだから、ジョブと険悪になっちゃって・・
怪我は指先を割れたグラスで切っただけ。
でも、もう弾かないって駄々を捏ねてるのよ」
「でも・・・そんな時にカミーユが代役をしたら
ジョブとは益々こじれてしまうんじゃないかしら?」
「ええ、だからこれは賭けなのよ。
カミーユというイレギュラーがジョブに、
そしてアムロにとっての起爆剤になってくれれば、ってね
あなた、あのコと知り合いなら説得してもらえないかしら?」
294通常の名無しさんの3倍:04/07/06 00:21 ID:???
公園で話す二人を、物陰から見つめる視線が在った。
「おい、二人とも金髪の美人だぜ、どっちなんだ?」
「俺だってわかんねぇよ。お前、どっちが美人だと思う?」
そんな男達の会話など、二人は知る由も無い。

「賭けって、それじゃカミーユは当て馬じゃない!
そんなの上手くいくはず無いわ。
スレッガー・・・先輩はこの事を知ってるの?」
「いいえ、私の独断よ。カミーユ・・・だっけ?
あのコのことは少し前から知ってたわ。
歌もルックスもピアノも良いのに、やたら喧嘩っ早いコがいるって。
アムロもジョブも頑なになっているでしょう?、
若い子に触発されればやる気になるかと思って声をかけてみたの
ねっ協力して、お願いよ!」
ベルトーチカは言いたい事だけ言うと、
他に用事があると行ってしまった。
「ホント、相変わらず強引な人・・・」
セイラは溜息をつき、仕方なく寮に戻ろうと公園を後にした。
その後をつけられていることも知らずに・・・
295通常の名無しさんの3倍:04/07/06 21:59 ID:???
同時刻、シャアは教授と白熱した議論を交わしていた。
ノリノリの仮装姿 ―― 口から煙を吐く仕掛けの怪獣の着ぐるみ ――
現れた教授に面食らったシャアだったが
ひとたび研究分野の話しとなると真剣そのものであった。

「教授、そろそろお時間です」
急に声を掛けられ、声の方を向くと
タキシードを着込みマントを翻らせ、
顔半分を覆うマスクをつけたガルマが立っていた。
手にはステッキを持っている。
「おや、もうそんな時間か。
ではキャスバル君、今日はこれまでにして
君も早く支度したまえ」
「はい、ありがとうございました教授。
しかしガルマ、君が部屋に入るのも気付かぬとはな」
「ああ、随分熱が入っていたからね。
他の皆は近づき難いといっていたよ」
「ほっほっ、それは悪いことをしたな。
ときにガルマ君、もしや君の仮装は"タ○シード仮面"かね?」
「さすが教授、ご存知でしたか!」
「フォッフォッフォッ、君も遊び心がわかってきたね〜」
楽しそうに笑いながら、教授は部屋から出て行った。
296通常の名無しさんの3倍:04/07/06 22:00 ID:???
「・・・何だね、それは?」
シャアは着替えながら聞き返した。
「だから、タ○シード仮面。旧世紀の有名なヒーローらしい」
「・・・・知らんな」
「実は僕も知らなかったんだ。
でも店の娘達に強引に薦められてね。断れなかった」
「ガルマ・・・」
「そんな顔するなよ。
教授はご存知だったし、喜んでくれたじゃないか」
「・・・・・あの店は、どういった所なんだ?
君に推薦されたので利用したのだが、
・・・・君には・・・そういった趣味が?」
シャアは気になっていた。
店の造りは明るく、高級ブティックのようにも見え、入り易い。
が、店内には仮装用品がズラリと並び、
オーダーメイドの衣装も受け付けているのだという。
何故ガルマがこんな店を知っているのだろう、と。
「? 、サスロ兄さんに教えてもらったのさ。
一月程前、たまたま連絡があった時にね」
「サスロ殿か!」
それなら納得がいく。
トップモデルにして売れっ子カメラマンのザビ家三男坊。
あのサスロ・ザビならばああいった店を知っていても不思議はない。
「?早く準備しろよ、皆待っている」
297通常の名無しさんの3倍:04/07/06 23:35 ID:???
何故にレスが全くつかないかを考えてみる
298通常の名無しさんの3倍:04/07/07 20:43 ID:???
ゴメン
299通常の名無しさんの3倍:04/07/08 17:48 ID:???
l
300通常の名無しさんの3倍:04/07/08 21:03 ID:???
300
301通常の名無しさんの3倍:04/07/10 22:53 ID:???
ガルマが出てくるとほのぼのしてていいですねぇ〜。
いよいよパーティですね、シャアがどんな仮装をしてるのか
楽しみです!

アク禁が解けたのでやっとレスできました。
これからも続き楽しみにしてますよ!
age
303通常の名無しさんの3倍:04/07/12 06:58 ID:???
がんばれ!
304通常の名無しさんの3倍:04/07/13 23:14 ID:???
会場に一歩足を踏み入れると、そこは日常とはかけ離れた世界だった。
王侯貴族、忍者にサムライ、妖怪・怪物、物語のヒーローとヒロイン等々・・・
そんな中、やはりシャアとガルマは一際目立つ存在だった。
顔の半分をマスクで隠したガルマだが、凛々しい口元と美しい立ち姿は
女性たちの溜息を誘うに充分だった。
一方のシャア、古代ギリシャの賢人のように薄衣を無造作に纏っているが、
右肩が露になっている為、胸元や上腕の筋肉がむき出しとなり
これまた女性陣の羨望の的である。
しかし、そんな二人に近づいてくるのはうら若き女性ではなく
ゲストである大口の企業スポンサーや政治家であった。
今宵の主役は教授であるが、二人の立場では止むを得ない事なのだ。
一通り愛想を振りまいた頃には宴も半ばに差し掛かっていた。

「よく似合っていてよアポロン?」
そう言って声を掛けてきたのはチャイナドレスに身を包んだ
マルガレーテ・リング・ブレアだ。
「そんなつもりは無い。ただ古代ギリシャの仮装をしたつもりだ」
「ふふ・・そんな鍛え上げた身体を見せ付けておいて
ヒポクラテスとでもいうつもり?」
「これでも大人しめにしたんだ。
最初はスカート同然で、妹に散々笑われた」
妖しく微笑み掛けるマルガレーテに、シャアも笑顔で応える。
「おい、キャスバル・・・」
ここは余りにも人目が多すぎる。
ガルマが隣でヤキモキしながら声を掛けたとき
突然会場の証明が落とされた。
305通常の名無しさんの3倍:04/07/13 23:16 ID:???
突然の暗闇にも関わらず、騒ぐ者は少なかった。
教授の教え子たちにとっては既に恒例行事である。
「いつもより早いな。さ〜て、今回は何をさせられるのやら」
と、ケンタウルス姿のケリィ・レズナー
「・・・良かったのか、そんな仮装で?
イザというとき身動きが取れんぞ」
侍姿のアナベル・ガトーが声を掛けたのは、
ケリィではなく揃いの着ぐるみを着込んでいる
ニナ・パープルトンとラトーラ・チャプラに対してである。
「うぅ、今更そんなこと言ったってぇ〜」
「大丈夫よ、多分・・・」
様々な期待と不安の入り混じる暗闇の中、
聞こえてきたのは教授の声ではなく
甘く囁く様なサックスの調べであった。

「素敵・・・」
思わず呟くマルガレーテ。
しかし、傍にいるシャアの表情は険しかった。
無論、暗闇の中で顔が見えるわけではないのだが、
ガルマは先程とは打って変わった親友の気配を確かに感じ取っていた。
306通常の名無しさんの3倍:04/07/13 23:21 ID:???
華やかな宴には不似合いとも取思える曲目ではあったが
その切ない音色に、何時しか誰もが引き込まれた。
曲が終わると共に割れんばかりの拍手が沸き起こり
アンコールを求める声の中照明が灯される。
誰もがサックス奏者を讃えようと辺りを見回したが、
明るさを取り戻した会場に奏者の姿は無かった。
「キャスバル?ガルマ様まで・・・?!」
ざわめく会場の中、
マルガレーテは自分が1人取り残されている事に気付いた。
307通常の名無しさんの3倍:04/07/13 23:36 ID:???
「スレッガー先輩っ!」
「ようっ、やっぱりあんたにはバレちまったか」
シャアの声に振り返ったスレッガーに、悪びれた様子は微塵も無かった。
「ま、俺も一応、学園の卒業生だからな」
「・・・先輩は高等部までだと思いましたが?」
「なぁに、学園の名物教授の祝いとあれば・・・
と、スマン、電話が入った」

シャアにはスレッガーの真意が読めずにいた。
自分に対する牽制なのか、はたまた単なる自己顕示欲なのか・・・

「ああっ?何だってそんな事したんだ! うん・・・で?
・・・・っ何だって!!!」
スレッガーが突然大声を上げた。
「何かトラブルでも?」
「お姫さんが・・・あんたの妹さんが誘拐された・・・」
「!」
瞬間、シャアには言葉の意味が理解しきれなかった。
「アルテーシアに何をしたんだっ!」
叫びながら近づいてくるガルマを見ながら
シャアはただ、セイラを一人にしたことを激しく後悔していた。
308通常の名無しさんの3倍:04/07/13 23:37 ID:???
遅くなってスミマセン
しかも、まだ続きます
309通常の名無しさんの3倍:04/07/14 09:54 ID:???
続き書いちゃだめってこと?
310通常の名無しさんの3倍:04/07/14 19:01 ID:???
>>308
最近、スレの空気の嫁ない職人さんが…。
新しい書き手さんが増えるのは歓迎だけどここはリレーなのだから、
アプしたい分、全部書いてから投下するべきだとオモ。
悪気はないんだろうが、他の職人さんを牽制しているみたいに感じるよ。

取りあえず、続きガンバレ
311通常の名無しさんの3倍:04/07/14 20:25 ID:???
>>309
いえ、書いてもらえたらありがたいです
中途半端すぎて申し訳ない気がしてました
>>310
ご忠告ありがとうございます
312311:04/07/14 20:41 ID:???
引継ぎのタイミングがつけられずにズルズル来てしまいました。
こんな半端なところでもお願いしていいのでしょうか?
ご指導お願いします
313通常の名無しさんの3倍:04/07/14 20:54 ID:???
1
314311:04/07/14 23:48 ID:???
>>313
ロムが足らなかったという事?
重ね重ゴメン、ありがとう
315通常の名無しさんの3倍:04/07/16 22:36 ID:???
>311さん

乙です!
私も時々リレーに参加させてもらっていますが、ここはやはり
311さんにキリのいいところまで進めて頂きたいなぁ。

セイラは誰に誘拐されたのか!?
ベルトーチカの身代わり?
そして犯人は誰!???

続き楽しみにお待ちしています。
316通常の名無しさんの3倍:04/07/17 10:15 ID:???
>311
続きがあるのなら遠慮せず書いちゃっていいと思いますよ。
というか、是非お願いしたいです。
たぶんこの状況だと、他の人は書けないでしょうしね。
がんばって!
317通常の名無しさんの3倍 :04/07/20 20:49 ID:iS7sGYSB
セイラを誘拐した二人組は車で逃走していた。
「ベルトーチカのやつがばかなことしなければ
 金髪の女なんて考えていなかったのによ」
運転席の男は笑っていった。
「そういえば、この女は金持ちの令女だよな、ジェリド」
「ああ、そうだな、身代金を出してさっさと逃げるかハハハハ」
「そうだな」
ジェリドとカクリコンは車を飛ばしながら、トランクにセイラは
閉じ込められていた。
セイラはなんとか逃げようとやっていた。
318通常の名無しさんの3倍:04/07/21 23:28 ID:???
トランク内でもがいていたセイラは
突然の急停車に激しく身体を打ってしまった。
痛みをこらえ、周囲の状況を探ろうと耳を澄ます。

「なんだてめぇらっ・・」
「うわっ、止め・・・」

悲鳴のような声がわずかに聞こえた後、
トランクが開けられ光が差し込んできた。
目が慣れない為、それが誰なのか判らない。
「申し訳ありませんが、もうしばらく付き合っていただきますよ」
『誰なの・・・』
声を発する間も無く薬を嗅がされ、セイラの意識は遠のいていった。
319通常の名無しさんの3倍:04/07/21 23:29 ID:???
カミーユがジェリドとカクリコンの車を見つけた時
二人はまだ車内で気絶していた。
にもかかわらず、思い切りジェリドを蹴り上げるカミーユ。
ファもベルトーチカも止める間など無かった。
「貴様っ、セイラさんをどこにやったんだ!」
「うげっ、ゴホッゴホッ・・・イキナリ・・なにしやがんだ・・・」
「イキナリなのは貴様等だろうっ、セイラさんを攫うところ
この高飛車女が見てたんだよっ」
「高飛車とはなによ!」
ようやくベルトーチカは声を上げた。
公園でセイラと別れた後、
連絡先を伝え忘れたことに気付き道を戻ったベルトーチカは
車に連れ込まれるセイラを目撃したのだった。
1人、慌てふためいて車を追いかけていたところに
公園に忘れ物を取りに戻ったカミーユとファは鉢合わせになり、
この追跡劇となったのだった。
しかし、肝心のセイラは車内のどこにも居ない。
「さっさと吐かないとっっ!」
怒りに任せ殴りつけるカミーユ。
ジェリドは答える事無くもう一度気絶してしまった。
「う・・・ジェリド・・・?」
タイミング悪く目覚めたカクリコンも
ジェリドと同じ運命をたどったのであった。
320通常の名無しさんの3倍:04/07/21 23:33 ID:???
「それが連絡が遅れた理由か」
スレッガーはベルトーチカの説明に溜息をついた。
「そうよ、こんなに怪我させちゃって。
いくら理由があるからってやり過ぎでしょう?
警察に通報したらこっちまで捕まっちゃうわよ」
「いえ、返ってその方が良かった。
彼女の立場上、事が公になるのは不味い場合もあります」
そう答えたのはガルマだった。
シャアの姿はそこには無い。
3人が連れ立って会場のホテルを離れようとしたとき、
タカ派で有名な議員の1人が、シャアとガルマに声を掛けてきたからだ。
にこやかにしているが、ジオンの政敵に近い存在である。
内心歯噛みをしながら挨拶をするシャア。しかし、
「ご無沙汰しております先生。申し訳ありませんが、
私はゲストをお送りしなければなりませんのでこれで失礼します」
言うが早いか、ガルマはスレッガーを促してサッとその場を後にし、
ここ、木馬亭に向かったのだった。

「で?暴れん坊の坊やはどこ行ったんだい?」
「セイラさんは自分が助けるんだって言って出て行ったわ。
あそこまで危ないコだったなんて、
知ってたら絶対声なんか掛けなかったわよ!」
むくれるベルトーチカの後ろには
顔を腫らした二人の男が後ろ手に縛られ転がっている。
置いてけぼりを食らったファはカウンター席で泣いていた。
「やれやれ、可愛い彼女をほったらかして・・・
探すったってアテはないんだろうに」
「・・・冷静なんですね、あなたは」
「ああん?」
「アルテイシアが、かつての恋人が誘拐されたというのに
それも、状況からして二重誘拐だ。
犯人の手掛かりもろくに無い。心配ではないんですか?」
「・・・そういうオタクはどうなんだい?」
気まずい沈黙の中、ガルマの携帯が着信を告げた。
「失礼、キャスバルからだ」
321通常の名無しさんの3倍:04/07/21 23:38 ID:???
「ガルマ、今回の背景らしきものが解った。
タカ派の中でも特に急進派の若手によるものらしい」
「この時期にか?まさか!」
ジオン・ダイクンは今、サミットで地球に降りている。
こんな時期に首相の息女を誘拐など正気の沙汰ではない。
「そのまさかだ。地球連邦に尻尾を振る首相など見たくない、
身内が連邦側の手に落ちれば・・・という事らしい。
先ほどの議員先生が忠告してくれた。
若手の暴走を抑えきれずにいるらしいのだが・・・
遅すぎる忠告だったな」
「縁起でもないことを言うな。
アルテイシアは僕が必ず助けてみせる!」
「無論、私とて同じ気持ちだ。
しかし、どこに居るのか全く掴めんのだ。
携帯から居場所を突き止めることも出来ん」
セイラの携帯は特別に高性能なもので、もしもの時には
発信機の代わりにもなる代物である。
それすらも役に立たない場所とは・・・
「そうだっ!あそこなら可能性がある!」
「おいっ、どこに居るのかわかったのか?!」
様子を伺っていたスレッガーが声を掛ける。
「ララァ・スンの事故現場だよ!
廃港跡に造られたイベント会場だ。
あそこは今、全く使われていない上に、場所柄電波状態が悪い。
二人組みが放置されていた場所からもそう遠くはない」
「その上ララァの事故から『エゥーゴ』の・・・
宇宙移民促進のイメージが連想されるだろうな。
反連邦を煽るきっかけとしては十分だろう・・・」
シャアの苦りきった声に、ガルマは思わず黙り込んだ。
「何、悠長にしてんだ?
場所がわかったなら俺1人でも行くぜ!」
スレッガーの言葉に弾かれる様にして、
ガルマはマントを翻しながらセイラの救出に向かった。
322通常の名無しさんの3倍:04/07/21 23:40 ID:???
お願いです
どなたかセイラさんを助けてください
323通常の名無しさんの3倍:04/07/22 07:11 ID:???
カミーユはカクリコンを蹴り続けていた
「へへ、動くんじゃねぇぜ」
カミーユは背後に誰かがいることに気がついた。
「誰だ?」
「動くんじゃねぇ!」
男は銃を突きつける。ジェリドは気がついていった
「うっヤザン・ゲーブル・・・・」
「ジェリド、こんな若造にやられるとはな、依頼主にどやされるぜ」
依頼主?カミーユはセイラの誘拐には黒幕がいることが気がついた。
ヤザンはジェリドとカクリコンを立たせ、車に乗せる
「残念だったな坊主!今度あったら命がないぜ」
ヤザンは車を走らせた。

そのころ、新聞社に脅迫状が届いた、この文は誘拐だった
「アルテイシア・ダイクンはわれわれが誘拐した、30億円を用意しろ、
 さもないとアルテイシア・ダイクンを殺す」
と書かれてあった。
324通常の名無しさんの3倍:04/07/22 07:39 ID:???
ヤザンの車はあるビルのところに来ていた。ヤザンとジェリドとカクリコンは
車から降りた。その依頼人と顔をあわせた。
「誘拐できたか?」
「ああ、ばっちりだシロッコ」
その依頼主とは「ティターンズ」のプロデューサー のパプティマス・シロッコだった。
「ジェリド、女はどこにいる」
「トランクの中だ」
カクリコンはトランクを開けた、セイラが猿轡をされてトランクに閉じ込められていた。
カクリコンは猿轡をはずした
「あんたたち、こんなことしていいと思っているの!」
セイラは怒りが爆発していた。シロッコはニヤリと笑って
「おい、地下の倉庫につれていけ、身代金と連邦のジャミトフの報酬で一石二鳥だ」

ガルマとスレッガーは木馬亭を出る前にテレビを見てしまった。緊急ニュースだった。
「大変です、ジオン・ダイクン首相の息女アルテイシア・ダイクンが誘拐されました」
ガルマとスレッガーはヤバくなった思った、こんな大きい騒ぎになっては救出が不可能
である。キャスバルはあることを思い出した、3年前の第2時ベトナム戦争で功績を挙げ
最強のソルジャーを。
「やつを使えば、アルティシアは救出できるぞ!」
325通常の名無しさんの3倍:04/07/22 08:09 ID:???
「ガルマ、スレッガー、ちょっと待っていろ」
キャスバルはあの男に電話をかけた。その男は数分後に来た。
近所だから。
「呼びましたか、シャアさん?」
「君を待っていたのだよ、トマーシュ・マサリク」
トマーシュ・マサリクは探偵で19か20ぐらいの男だ。
「仕事はなんなんだ?」
「実はある人を救出してほしいのだよ」
「誰を?女性ですか?」
「女性だ、名前はセイラ・マス。報酬は1000万円」
「安い2億円でないと」
「1億5000万円、これ以上は負けられない」
「いいでしょう」
ガルマは言った
「僕も連れてってください」
トマーシュは少し笑い
「まぁいいぜ、命の保障は出来ているか?」
326通常の名無しさんの3倍:04/07/22 18:51 ID:???
書き手がハードボイルドに書いているな ゚Д゚
327通常の名無しさんの3倍:04/07/22 22:53 ID:???
>>317=323-325
ひさしぶり!よく見つけたね!
もうどうでもいいけどさ、話がつながってないよ。
それに貨幣の単位が「円」って。メチャメチャウケタ。
328通常の名無しさんの3倍:04/07/23 00:39 ID:???
雲行きが怪しいのでいつもの避難所スレに集合よろしく
329通常の名無しさんの3倍:04/07/23 19:30 ID:???
sokokaradetekunna
330通常の名無しさんの3倍:04/07/31 00:02 ID:???
保守
331通常の名無しさんの3倍:04/07/31 10:35 ID:???
質問。
>323-325って>321からつながってない。
318から321を無視してるようにしか見えない。これで続けられる?
332通常の名無しさんの3倍:04/08/01 13:16 ID:???
>331
時々リレーに参加させてもらっていた一人ですが、正直>323-325を読んで、
この続きでは書けないと感じています。
前スレと同じ方だとは思いますが、どうしても誘拐・略奪ネタが書きたいのなら
ご自分で別にSSを始められてはどうですか?
話の流れを無視した強引な書き込みはとても迷惑です。

333通常の名無しさんの3倍:04/08/03 08:58 ID:???
>323-325は気を失っていたセイラさんが見た夢
っていうのは強引杉だろうか?(以前見た映画の影響とか)

保守ageしたいが荒らされそうなのでsage
334通常の名無しさんの3倍:04/08/03 19:07 ID:???
無理に繋げなくても、スルーでいいんじゃない?

335通常の名無しさんの3倍:04/08/04 23:51 ID:???
?
336通常の名無しさんの3倍:04/08/05 23:35 ID:???
7日(土)にチャットしましょう。

詳しくはお絵かき掲示板にて!
337通常の名無しさんの3倍:04/08/06 19:41 ID:???
338通常の名無しさんの3倍:04/08/06 19:43 ID:???
セイラさん好きだけど、おまえらキモ杉だっちゅう〜の!!
339通常の名無しさんの3倍:04/08/06 19:55 ID:jlDk1qhk
I(?)F(ファイヴ)S(スター)S(ストーリー)かと思いました。
340通常の名無しさんの3倍:04/08/12 12:30 ID:???
スレッガー先輩(はぁと
341通常の名無しさんの3倍:04/08/13 22:23 ID:???
age
342通常の名無しさんの3倍:04/08/22 08:29 ID:???
ほしゅ
343通常の名無しさんの3倍:04/08/24 19:07 ID:???
344通常の名無しさんの3倍:04/08/28 17:47 ID:???
(*´д`*)ハァハァ
345通常の名無しさんの3倍:04/09/12 22:53:59 ID:???
セイラさん、誕生日オメ!
346通常の名無しさんの3倍:04/09/13 23:38:19 ID:???
誕生記念age
347通常の名無しさんの3倍:04/09/15 16:30:09 ID:???
くそスレage
348通常の名無しさんの3倍:04/09/21 23:23:30 ID:???
続き、待ってますよ
349通常の名無しさんの3倍:04/09/28 22:28:16 ID:???
>>321
ガルマとスレッガーはエレカに同乗し廃港後に向かっていた
スレッガーが呟く
「誘拐・・・か。ホント、お嬢は大変だよなぁ」
しかしその声は、ガルマに届いてはいなかった
『若手議員の暴走・・・確かマ・クベ氏も先程の議員と同じ派閥だったはずだ
しかしまさか・・・な・・・』

それぞれの思いを乗せ、2人を乗せたエレカは廃港の少し手前で停車した


350通常の名無しさんの3倍:04/09/28 23:45:30 ID:???
頑張れ!
351通常の名無しさんの3倍:04/09/30 21:39:27 ID:???
ぎゃー続きが!
頑張ってください!!
352通常の名無しさんの3倍:04/10/07 06:21:16 ID:???
続き、待ってますヨ
353通常の名無しさんの3倍:04/10/14 23:10:03 ID:???
誰かセイラさんを助けてください!
354通常の名無しさんの3倍:04/10/19 23:21:18 ID:???
「俺が助ける」と、揉み合う三人。を想像してしまいますた。
今のセイラだったら、やっぱり兄さんが一番なのかな?
355通常の名無しさんの3倍:04/10/28 20:23:15 ID:???
オリジン読んで、ジオンの暗殺(?)も無く平和だったら、アルテイシアは
このスレのセイラさんみたいに育ちそうだとオモタ
356通常の名無しさんの3倍:04/11/04 19:30:51 ID:???
アムロ誕生日おめage
357通常の名無しさんの3倍:04/11/15 19:33:18 ID:???
ほしゅ
358通常の名無しさんの3倍:04/11/19 13:09:50 ID:???
シャアの誕生日を忘れていた
ゴメンな
359シャア:04/11/19 23:18:45 ID:???
不愉快だな
360通常の名無しさんの3倍:04/11/23 19:47:52 ID:???
>>359
まぁまぁ、怒るなよキャスバル君。
361シャア:04/11/23 23:24:04 ID:???
私が怒っていると?
フッ、易くみられたものだな
362通常の名無しさんの3倍:04/12/02 05:02:00 ID:???
続き、期待あげ
363通常の名無しさんの3倍:04/12/04 17:57:34 ID:???
久しぶりですが、続き入れさせて頂きます!
364通常の名無しさんの3倍:04/12/04 17:58:09 ID:???
夜の廃港は、真っ暗だった。
車に備え付けの懐中電灯1本を頼りに、ガルマとスレッガーはイベント会場跡へと進んで行く。
「人の気配は無いが・・」
スレッガーが会場の隅から隅へライトを移動させながらつぶやく。見えるのは壊れかけたベンチや、ステージだけだ。
「アルテイシア!アルテイシア、返事をしてくれ!」
ガルマは耐え切れず叫んだ。だが、その声は静まり返った会場にむなしく響くだけだ。
その時、再びガルマの携帯が音を立てる。
「はい!、あ、姉さん??」
てっきりシャアだと思ったガルマは驚いたが、姉キシリアの話はさらにガルマを仰天させるものだった。
「アルテイシアが!?? それで彼女は無事なのですか?・・・・・ええ、ええ、・・・分かりました、すぐキャスバルに伝えて迎えに行きます」
「おい、見つかったのか!?」
「ええ、無事保護されました。行きましょう」
シャアへ電話をかけつつ足早に車に戻るガルマの後を追いかけながら、スレッガーは安堵で力が抜けそうになるのだった。
365通常の名無しさんの3倍:04/12/04 17:59:12 ID:???
「おい、ここか!?」
ほっとしたのも束の間、ガルマが車を止めた建物を見てスレッガーは
再び不安になる。
そこは病院だったのだ。しかも大学のすぐ近くの。
しかしガルマは問いかけに答える余裕もなく車を飛び降りると、
入り口へ向かう。すると、待っていたかのようにドアが開き、男が一人、
ガルマを向かえた。
「お待ちしておりました、ガルマさま」
「マ・クベ議員・・・」
「ご心配には及びません。先ほどキャスバルさまも見えられました。
さあ、ご案内いたします」
こけた頬に愛想のよい笑みを浮かべながらガルマの先に立って歩き出す
マ・クベ。
しかしちらりと自分を見た時の、値踏みするような瞳の冷たさに、
スレッガーは言いようの無い気味悪さを感じるのだった。
366通常の名無しさんの3倍:04/12/04 18:00:23 ID:???
案内された病室には、マ・クベに聞いたとおり、シャアとセイラが
いた。セイラは普段着のままベッドに腰掛けていたが、
ガルマとスレッガーが揃って入ってきたのを見て目を丸くした。
「アルテイシア!良かった、無事で」
「ごめんなさい、心配かけて」
駆け寄るガルマに、セイラはすまなさそうに謝る。
「薬で眠らされてたから、よく覚えてないの。でも体の方はなんとも
無いってお医者さまがおっしゃってくださったわ」
「そうか、良かった・・・」
心からほっとしてガルマは改めてセイラを見た。確かに顔色も良いし、
気分も悪くなさそうだ。
セイラは視線を移してまだ扉の傍に立ったままのスレッガーを見た。
「・・・・先輩も・・心配して探してくれたのね。兄さんに聞いたわ」
「まぁ、俺は何の役にも立たなかったがな」
「ありがとう、先輩」
一瞬交差する二人の視線、だがそれもシャアの一言で断ち切られた。
「では改めていきさつを話していただけますか、マ・クベ殿」
367通常の名無しさんの3倍:04/12/04 18:02:17 ID:???
マ・クベの話によると、たまたま仕事でこの町を通り過ぎようとしていた時、
偶然にも二人組みの男に車に連れ込まれるセイラを見て、しばらく追跡した後、
隙をみて救出したのだと言う。
「部下のウラガンは、なかなか武術に長けた男でして。ようございました」
自身の貧弱な体格を言い訳するようにマ・クベは付け加えた。
そして、意識を失ったセイラを病院に運ぶ一方、ことを公にすることに躊躇し、
まずはズム・シティに住むキシリアに相談したのだと。
「何しろご両家は、お身内も同然と伺っておりますので・・」
意味ありげにガルマとセイラを見やるその仕種には、自分とキシリアの仲を
公然とすることを憚らない。
「なるほど、ご配慮感謝する、と申し上げたいところですが、ではなぜ、
犯人の二人組みをそのまま放置されたのです?」
シャアの質問に、マ・クベは溜息をつきながら憂うように言った。
「まったくおっしゃる通りです。わたくしとしたことが・・・とにかく
アルテイシアさまを病院にお運びせねば、という気持ちが先走り・・・。
あやつらはすっかり気絶しておりましたので、後からウラガンに運ばせよう、
と。浅はかでございました」
マ・クベの言葉を信じるならば、その間にカミーユが気絶した二人を見つけ、
ボコボコにしたことになる。
今頃は木馬亭でさらにボコボコにされているだろう。
368通常の名無しさんの3倍:04/12/04 18:03:38 ID:???
「しかしキャスバルさま、やつらは何が目的でアルテイシアさまを、
狙ったんでございましょうねぇ」
「・・・・兄さん・・・」
「怖がる必要はない、アルテイシア」
シャアはセイラの手をとって優しく言った。
「カミーユ君が白状させた。犯人の狙いはベルトーチカ・イルマ嬢だった
そうだ。お前は間違えられたのだよ」
「ベルトーチカさんが!? なぜ?」
シャアは手を離して立ち上がると、無言でスレッガーを見た。
「・・・・・・・・・・・・」
悔しそうに歯軋りするスレッガー。彼には何故ベルトーチカが狙われたのか、
分かっていた。
「?」
妹が何か言いかけるのを阻んで、シャアは続けた。
「ともかく全員が無事で良かった。マ・クベ殿、あなたには心から感謝します。
父も同様でしょう」
「とんでもない。当然のことをしたまでです。どうか首相にはわたくしのことは
お話くださいますな」
シャアとガルマに慇懃に礼をし、最後にセイラにねぎらいの言葉をかけると、
マ・クベは病室を退出した。
369通常の名無しさんの3倍:04/12/04 18:05:32 ID:???
「先輩には分かってるんでしょう?何故ベルトーチカさんは誘拐されそうに
なったの?犯人は誰?」
4人だけになった病室で、セイラはスレッガーに詰め寄った。
「ソロモンに関係してるんじゃなくって?フラナガンからスカウトされたって
聞いたわ」
ぎょっとするシャア。
(何故知っているんだ・・)
「それはこれから調べてみないとな。とにかく、あんたには巻き添えで迷惑
かけて悪かった。すまん」
「そんな・・・やめてください」
「すまなかった」
スレッガーはシャアとガルマにも頭を下げた。
「いえ、捜索に協力してくださってこちらこそ感謝しています」
「・・・じゃあ、俺は帰るわ。大事にな」
「そこまでお送りしましょう」
シャアとスレッガーが揃って部屋を出て行くのを見送りながら、セイラは
奇妙な気持ちになっていた。
(ありえないツーショットだと思ってたのに・・)
「アルテイシア」
それまで黙っていたガルマが声をかけた。その表情は真剣だ。
「誘拐された後のこと、本当に何も覚えていないかい?」
「ええ、たぶん、車の中に連れ込まれてすぐに薬を嗅がされたのね、
気が付いたらこの病院にいたのよ」
「よく考えるんだ、誰かの話し声とか、聞かなかった?」
セイラは一生懸命思い出そうとした。
公園で、ベルトーチカと話していたことは鮮明に覚えている。それから
彼女と別れ、一人で歩いていたところをものすごい力で引っ張られ、
口をふさがれて、それから・・・
「駄目、気持ちが悪い・・・」
「ごめん、無理をさせたね、・・・わぁ、顔色が真っ青だ!すぐに先生を
呼んでくるから!」
自分をベッドに寝かせ、慌てて部屋を飛び出すガルマを、セイラはうつろな
目で見た。
どうしたのかしら、さっきまで普通だったのに、思い出そうとした途端
こんなに気持ちが悪くなるなんて・・・。
370通常の名無しさんの3倍:04/12/04 18:07:35 ID:???
病院の正門まで並んで歩きながら、シャアは言った。
「パプティマス・シロッコと言う男をご存知で?」
「いや?」
「『ティターンズ』のプロデューサーです。かつてララァ・スンが
コンサート直前に拉致されたことがあったが、黒幕は奴だと確信している」
「今回のこともそいつの仕業だって言うのか?」
驚いてスレッガーはシャアを見た。大方ソロモンの成功を妬む同業者の
犯行だと思っていたのだが、『ティターンズ』だって?
「そのララァ・スンの時、そいつは捕まったのかい?」
「いや、そう簡単に尻尾をつかませる奴ではない。今回のことも、
奴の仕業にしてはお粗末過ぎる。ターゲットを間違えるなどとはな」
「あんたにそう言わせるとはよっぽど腹黒い奴だな。だが、それじゃ、
違う奴ってことか?」
シャアは答えなかった。
確かに今回のことは、あまりに稚拙な犯行だ。人違いの上、簡単に
奪い返されるなど。
だが、これが最初からの筋書き通りだとしたら?
人違いに見せかけ、本当はアルテイシアを狙っていたとしたら? 
マ・クベが通りすがったのは本当に偶然か? 
あの時ホテルで会った議員、あれも偶然なのか? 
だとしたら、シナリオを書いた人物はそうとうな権力と頭脳を持って
いることになる。
そしてあっさりとアルテイシアを返してきた引き際の良さ・・・。
シロッコじゃない。もっと政治的な何かがあるような気がする。
いや、考えすぎだ、アルテイシアは本当に巻き込まれただけかも知れない・・・。
「おい?」
一人で考え込んでしまったシャアを心配げにスレッガーが呼んだ。
「あぁ、失礼。ともかく、当分ソロモンのメンバーにそれとなく護衛を
付けましょう。それから、月行きの件、出来れば急いで頂きたい」
「・・・そうだな」
正門前に並んだタクシーに乗り込みながら、スレッガーは固い表情で頷いた。
371通常の名無しさんの3倍:04/12/04 18:09:31 ID:???
犯人分からなくて、ちょっとボカしてしまいました。
他の方も続けてくださると嬉しいです。
372通常の名無しさんの3倍:04/12/05 08:36:57 ID:???
お待ちしてましたーー!
祝!再開!!

誘拐犯は誰だろう、ジオンパパの政敵かな。
マクベは敵?味方?
キシリア姉さんは…

気になります〜。
373通常の名無しさんの3倍:04/12/05 18:31:13 ID:???
。・゚・(ノД`)・゚・。続きだぁ
374通常の名無しさんの3倍:04/12/07 08:58:51 ID:???
やった―続きが来たー。
これからも楽しみにしてます。
375通常の名無しさんの3倍:04/12/09 19:31:00 ID:???
すみませんが過去スレを見るにはどうすればいいでしょうか。
過去ログを押しても倉庫にはいっていて読めないんです。
どなたか親切な方教えてください。
376通常の名無しさんの3倍:04/12/09 23:14:04 ID:???
第一部(セイラたん女子高生編)だったら、
まとめてくれてるサイトあるけど(>>8参照)
それ以降のは…ごめん、私も分からない…。
377通常の名無しさんの3倍:04/12/10 00:31:37 ID:Hik8ZJDx
>>376
そうですか、分かりませんか。
私も第1部は読んだんですが、第2部の最初はよんでないのですよ。
だからなんでガルマとセイラが別れたのか分からないし、いつのまにかベルトーチカとアムロが知り合いになったのも分からないんです。
できればそのあたりの事を知りたいですね。
378375:04/12/10 00:32:34 ID:???
すみません、sageわすれました。
379通常の名無しさんの3倍:04/12/10 01:50:22 ID:???
>377
ベルはソロモンの為に、アムロをメンバーに勧誘したんだよ。
でも芸能界拒否症の今のアムロにその気はない。

セイラとガルマについては一言じゃ言えないなぁ。
いろんな誤解とタイミングが悪かったとしか…。

とにかく過去スレ読んで欲しい。何とかならないかなぁ。
380通常の名無しさんの3倍:04/12/11 18:06:12 ID:???
続きまだかな。
もう私が書いちゃおうかな。
381通常の名無しさんの3倍:04/12/12 00:36:14 ID:???
お待たせしました。続きです。
(他の方もよろしくお願いします!)
382通常の名無しさんの3倍:04/12/12 00:37:21 ID:???
シャアが戻ると、病室ではガルマが看護士に叱られているところだった。
「まったく!患者さんに無理をさせるなんて」
「・・・すいません」
ベテランっぽいその女性看護士の前でガルマは小さくなっている。
セイラは笑って言った。
「もう平気よ。でも変ね、考えるだけで気分が悪くなるなんて」
「そりゃ、ショッキングな出来事でしたからね。でも一晩ぐっすりお休みになれば
きっと元に戻りますよ。念のため今日だけは入院された方がいいでしょう」
「大げさだわ」
「・・・そうだな、今日はこのままここで休んだ方がいい」
「兄さんまで!」
「兄さんを安心させてくれ」
宥めるようなキスを頬にされ、セイラは不承不承頷いた。
「それじゃもう遅いですから付き添いの方はお引取りください。手続きは
受付でお願いします」
看護士に促されシャアとガルマは頷いた。
「分かりました。アルテイシア、明日また迎えにくる」
「ええ、おやすみなさい、・・・兄さん、ガルマ」
383通常の名無しさんの3倍:04/12/12 00:37:53 ID:???
「おやすみ」
部屋を出ようとする二人。
「兄さん!」
「ん?」
振り向いた兄に、セイラは気になっていることをもう一度聞いた。
「ベルトーチカさんのことだけど・・・」
「心配するな。スレッガーがついている」
「・・・そうね」
彼ならきっと、ベルトーチカを、ソロモンを守る事が出来るだろう。
「余計なことは考えずにぐっすり眠れ。いいな」
そう言ってシャアは部屋を出た。
「兄さん!」
再び呼ぶ声。シャアは小さく溜息をつくと部屋に戻る。
「兄さん、カミーユから返事をもらったわ」
「ほう」
すっかり忘れていたが、フラナガンに戻らないかという誘いの返事を
今日妹に聞いてきてくれるよう頼んでいたのだった。
「それで?」
「『もう少し考えさせてくれ』ですって」
肩をすくめるセイラ。
「なるほど、悩める少年・・・というわけか」
シャアは笑うと、今度こそ本当に病室を後にした。
384通常の名無しさんの3倍:04/12/12 00:38:27 ID:???
受付で手続きを済ませ、病院を出るとシャアはガルマに言った。
「無口だな。何を考えている?」
「・・・おそらく君と同じことだよ」
やはりガルマも引っかかっていたのだ。今回の誘拐劇の裏に何かが
隠されているのではないかと。
「どう思う?」
「・・・・・」
「キャスバル!」
思いつめた表情のガルマ。マ・クベが関わっていたことに、少なからず
ショックを受けているのだとシャアは思った。
マ・クベはガルマの姉、キシリアの恋人なのだ。
「・・・そうだな、今回の事件で考えられる線は二つあると思う。
一つはソロモンの邪魔を図ろうとするプロダクションか事務所の犯行。
二つ目は父の邪魔を図ろうとする政治家もしくは企業の犯行」
「いや、それじゃ説明がつかない部分がたくさんあるよ。こう思うんだ、
これは二つの犯罪が重なったんじゃないか、って」
「重なった?」
「便乗した、と言った方がいいかな。つまり、あの二人組が白状した通り
最初はイルマ嬢を狙ったものだった。もちろんソロモンの活躍が面白くない
輩のね。でも偶然アルテイシアが間違って誘拐されて、それを知った他の奴が
チャンスとばかりに横から奪い取った。あわよくば政治の駆け引きに利用
するために・・」
385通常の名無しさんの3倍:04/12/12 00:39:17 ID:???
なるほど・・・シャアはうなった。
元々、思い浮かぶ犯人像と、実行内容のズレに違和感を感じていたが、
これなら納得がいく。
「あわよくば・・・か。実際失敗したときの言い訳すら確保されているな」
「『誘拐犯から私が救出しました』・・か?」
ガルマは目を閉じた。
「ガルマ、あくまで想像に過ぎない。あまり気にしすぎるのは良くない」
「しかし」
「もし真実だとしても、いや真実ならなおさら、アルテイシアは安全だ。
立場のある人間なら、当分は仕掛けてこられないはずだからな」
「うん、我々が怪しんでいることに向こうも気づいているだろうからね」
「父にはそれとなく注意するよう伝えておこう。 
・・・ガルマ、犯さなければ犯罪は犯罪にならない。未然に防げれば・・・」
「あぁ」
消沈したガルマ。シャアは気持ちを切り替えるように提案した。
「どこかで飲んで帰らないか?君のマンションの酒はどうも好みじゃないんだ」
「好きなだけ飲んでおいてよく言うよ」
軽口にようやく笑うガルマ、とその時。
「げっ! おい、あれ!」
「ん?」
指された先を見ると、一軒のバーから仮装した男女がぞろぞろと出てくるところ
だった。奇妙な集団は間違いなくゼミの仲間だ。パーティ後の二次会といった
ところだろうか。
「まずい、回れ右だ」
しかし一瞬遅かった
「やだ〜!キャスバルさまとガルマさまがいるぅ〜♪」
386通常の名無しさんの3倍:04/12/12 00:39:58 ID:???
ニナの甲高い声に一斉にこちらを向く仮装集団。
「お!お前ら、どこ消えてたんだよ! こっちこいよ!」
ケンタウルスのままのケリーが大声で叫びながら手招きをするので、シャアと
ガルマは仕方なく近寄った。
「教授の大切なパーティを抜けるとはけしからん」
侍姿が怖いほど似合っているガトーに睨まれ冷や汗が流れる。
「フォッフォッ、何か理由があったのじゃろ、この二人のことだからねぇ」
そう言って取り成してくれたのは、なぜか怪獣からウルトラマンに衣装が
変わっている教授自身だ。
「申し訳ありません、教授」「すいませんでした」
「まぁまぁ、だけど、もちろん今からは一緒だよな」
「これから3次会行くんでぇ〜す♪」
シャアとガルマは顔を見合わせた。止むを得まい、と目で確認する。
「分かりました。ご同席させていただきます」
「でもぉ、そのお姿じゃ面白くなぁ〜い♪」
ガルマはパーティ用衣装のままだったが、マントを取っているのでただの
タキシード姿だし、シャアに至っては私服に着替え済みだったのだ。
「うーん、仕方ない、この近所に知ってる貸衣装屋あるからよ、紹介するわ」
「しかし先輩、こんな夜中に衣装屋が開いているのですか?」
「おー、そーゆー客専門の店だからな!」
自信満々に胸を叩くケリィに、シャアとガルマは「嫌な予感よ、外れてくれ」と
ひたすら心の中で祈るのだった。
387通常の名無しさんの3倍:04/12/12 18:28:14 ID:3mPwEaoC
続きキター。
職人さんお疲れ様です。
誘拐事件をめぐって疑惑の渦に巻き込まれる二人。
先が楽しみです。

ところで第2部でハマーンて出てますか。
もしまだなら私が書いてみたいな。
388通常の名無しさんの3倍:04/12/12 21:01:19 ID:???
ハマーン出てましたよ、確か。
シャアと同じアクシズに留学してて最近帰国。
性格は本編Zに近い感じで、何かシャアと確執があった様子ですた。
389通常の名無しさんの3倍:04/12/12 22:35:45 ID:???
>>388
確執ですか、なんだろうな。
そのあたりも読んでみたいな。
390通常の名無しさんの3倍:04/12/13 08:02:49 ID:???
>>389
うん、是非読んでみたい!
理由はまだ出てないから、是非書いてみてください。
お願いします。


そして!
何より気になるのが、シャアとガルマがこれから
どんな仮装をする(させられる)のか…
やはり「○ょそ○」!?
391通常の名無しさんの3倍:04/12/15 00:29:42 ID:???
ハマーンを登場させるとしたら、やはりシャアのライバルプロデューサーとしてかな。
例えばソロモンに対するライバルをプロデュースするとか。
ライバルとなるとやっぱり対抗できるのはジュドーかな。
マシュマーなんか出しても力不足だしね。
なんとなく構想らしきものが浮かぶけど、それを小説にする力が無い。
職人さんがうらやましいです。
392通常の名無しさんの3倍:04/12/15 18:49:33 ID:???
面白そうですね!

ハマーンはシャアが好きで、同じ政治の道に進むため後追い留学までしたのに
シャアは心の中でプロデューサー業に未練がありハマーンほど打ち込め無い。
またハマーンの政治的思想をシャアは受け入れられず(危険視?)次第に離れてゆく。

失望望と嫉妬でシャアを憎むようになるハマーン。
プロデューサーとしてのシャアを潰そうと暗躍…


なんてどうだろ。
393通常の名無しさんの3倍:04/12/15 19:24:27 ID:???
>>392
そこまでドロドロしたのはちょっと、むしろハマーン様には正々堂々、真正面からシャアにぶつかって欲しいです。
だいたいまだ17歳じゃないかな、このスレだと。

あと裏で暗躍するなら、C.D.Aに出てきたエンツォ・ベルニーニ大佐なんかどうでしょう。
強硬派のマ・クベ議員と手を組み、サイド3内の世論をタカ派に有利にするためにユニットをつくる。
そのためにハマーンを担ぎ上げ利用する。
そんな展開ではいかがでしょうか。
394通常の名無しさんの3倍:04/12/19 23:49:00 ID:???
続きもきたし、久々にチャットでもしようぜ。
12月26日(日)22時くらいから
みんな集まれそう?
395通常の名無しさんの3倍:04/12/21 17:37:56 ID:???
うおー、このリレーまだ続いてたのか(ノД`)ウレスィ
セイラさんもすっかり大人になってる
396通常の名無しさんの3倍:04/12/22 11:53:53 ID:???
6本目、7本目をHTML化してもらいました。
よろしかったらドゾー

セイラタン・・・・(;´Д`)6本目
http://ruku.qp.tc/dat2ch/0412/21/1043512505.html

セイラタン・・・(;´Д`)ハァハァ 7本
http://ruku.qp.tc/dat2ch/0412/21/1067103905.html
397通常の名無しさんの3倍:04/12/22 17:47:26 ID:???
>>396
グッドジョブです。
ありがとうございます。
398通常の名無しさんの3倍:04/12/23 01:19:48 ID:???
もう一度告知
12月26日 22:00くらいから集まってチャットします。
リレーに参加してた人も、ロムってた人も、続きを考えたり、雑談したりしましょう。

詳しくは以下のスレ用お絵かき掲示板にて
http://dog.oekakist.com/sleggar/

399通常の名無しさんの3倍:04/12/23 20:12:57 ID:???
>396
わお!感謝です!
400通常の名無しさんの3倍:04/12/23 20:54:18 ID:???
400ゲトc
401通常の名無しさんの3倍:04/12/27 18:25:36 ID:???
幼少のころからシャア×セイラ派な自分ですが
このスレを発見して辛抱たまらなくなり(*´Д`*)=3まとめてみました。
急ごしらえなので不備が多いと思いますが、よろしかったらドゾー

ttp://www.geocities.jp/side30079/
402通常の名無しさんの3倍:04/12/27 19:38:56 ID:???
>>401
GJ!
さんきゅ〜です
403通常の名無しさんの3倍:04/12/27 22:12:10 ID:???
>>401
何故か暗号文しか出ませんでした_| ̄|○
イッタイナニガオコッタノダ・・・
404通常の名無しさんの3倍:04/12/27 23:26:57 ID:???
乙です!読みやすい!
お絵かき掲示板関連でリンクさせてもらっていいですか?

>>403
ブラウザの文字エンコードを日本語(EUC)にすると読めたぞ
405通常の名無しさんの3倍:04/12/28 00:31:24 ID:???
>>404
ありがとう
>>401
改めてGJ!
406401:04/12/28 13:39:53 ID:???
リンクしちゃってください、光栄です(*´Д`*)
新作がうpされたら随時追加していきます。

macではじめて作ったのでちょっとおかしくなっているかも…
407通常の名無しさんの3倍:04/12/28 19:59:12 ID:???
エンコードを変えても、ちゃんと表示されるページとされないページが…

どなたか解る方いらしゃいますか?
408401:04/12/28 22:06:48 ID:???
スレ消費しちゃうのは心苦しいので、まとめサイトにゲストブックを設けました。
そちらで対応させていただきます(ノД`)ゴメンヨ
ttp://geocities.yahoo.co.jp/gb/sign_view?member=side30079
409通常の名無しさんの3倍:05/01/02 16:19:05 ID:???
hosyu
410通常の名無しさんの3倍:05/01/03 10:16:36 ID:???
あけおめ〜!
スレ住人のみなさん、本年も宜しく!
411通常の名無しさんの3倍:05/01/08 02:13:19 ID:???
仮装に挑戦してみました。
続きをよろしくおねがいします。
412通常の名無しさんの3倍:05/01/08 02:14:14 ID:???
「どうもすんませんでした。それじゃ」
一声かけて、外にでる。あたりはもう夜も更け真っ暗だ。繁華街のネオンが騒々しい。
セイラの誘拐騒ぎの後、スレッガーは商売道具のサックスを置き忘れていたことを思い出し、パーティー会場に戻ったところだった。
一緒にパーティでの演奏に参加していたリュウが楽器を持ち帰ってくれたと聞いて一安心だ。リュウとも連絡をつけ、
定宿にしているホテルの部屋で落ち合うことになった。ベルトーチカも無事だ。
ベルトーチカを狙った誘拐は『ソロモン』の契約と関係があるのは間違いない。シャアが言っていたティターンズ関係の者の仕業だとしても
彼女とセイラを間違えることなんてあるのだろうか。
さらにセイラを助けたマ・クベとかいう議員だって怪しい。故意に実行犯を逃がした可能性だってあるのだ。
まさかジオン・ダイクンと対立する政治一派までが関係しているのだろうか。いったい何のために?
様々な思惑が絡み合っていそうな今回の事件にスレッガーは気が重くなる。大切な人たちが問題に巻き込まれていく。それは辛いことだ。
無名でも、仲間たちと演奏するだけで楽しかったあの頃が一番良かったのかもしれない──。感傷的な気分になる。
とにかく、何らかの対策が必要だ。政治まで絡んでくるとなると自分たちにできることなどおそらくないだろうが、
情報を仕入れてみてもいいだろう。
スレッガーが足を速めたその時、近くのブティックから騒がしい集団が出てきた。仮装行列でもするのだろうか。
その楽しそうなはしゃぎ声は、今の沈んだ気分には耳障りなだけだった。
「お前らサイコーだよ。教授も喜ぶって。早く早く!」
「ガルマ先輩カワイイ」
ガルマ? 集団に目を凝らすと先程の還暦パーティで見た顔ばかりだ。そしてその中心には。
スレッガーは足を止め、信じられないものを見たとばかりに何度もまばたきした。そこには犬だかキツネだかわからない尖った耳がついた、
白いフワフワの着ぐるみを被ったガルマ・ザビと、肩と腕を露出したオレンジのイブニングドレスを身につけ、ブロンドのウェーブヘアのカツラを被った
キャスバル・ダイクンの姿があった。
413通常の名無しさんの3倍:05/01/08 02:15:42 ID:???
「あーあ、ご愁傷様」
スレッガーは回れ右をする。もし、この姿を部外者に見られたと知ったら彼らは自殺したくなるほど落ち込むだろう。
その気持ちは察することができたからだ。
「あら? もしかしてサックスのお兄さんじゃない?」
「そうだわ。スレッガー・ロウさん!」
甲高い声に聞こえない振りをしていたが、腕をつかまれて前に回りこまれてしまう。話しかけてきたのは着ぐるみ姿の女性だった。
酒がはいってかなりごきげんの様子である。こうなったらもう逃れられない。
「皆さんお揃いで。楽しそうだねえ」
「先輩方を綺麗にしていたんですよ〜。どうです? すてきでしょ。隠れることなんてないわ」
そう言って彼女は無理やりガルマとシャアを引っ張ってくる。
「やめてくれ」
ガルマたちは逃げようとするが、周囲に押さえ込まれていた。先程の誘拐騒ぎとのギャップが甚だしい。
「さっきは、どうも。それにしても…。なんていうか……。これ、キツネ?」
スレッガーはとりあえずガルマに聞いてみる。
「ちがう。犬だ」
憮然としてガルマは答える。
「そうです。耳がかわいいでしょう?」
「……」
やけに似合っているのが返って気の毒だ。あえてなにもコメントしないでおいた。
414通常の名無しさんの3倍:05/01/08 02:16:19 ID:???
「そしてこっちが絶世の美女よ。綺麗でしょう?」
どこが。と否定しかけてまじまじと、この上なく不機嫌そうなシャアの顔を見る。彼はスレッガーと目を合わせようとしない。
化粧の乗りは悪そうだが、もともと整った顔をしているし、セイラの面影を見いだすこともできる。
「まあ、顔は…美人かも…しれないけどさ。この格好はあまりにも」
そうなのだ。みごとに鍛え上げられた肉体に、露出の激しい煌びやかなドレス。あまりのミスマッチぶりに寒気を覚える。
すぐに視線をはずした。
「本当はバニーガール姿になって欲しかったんです。でもすごい勢いで嫌がるからこれで。似合うと思ったんだけど」
バニーガールなんて想像するだけでおぞましかった。
「それはやめて正解だよ。どっちかというとおれは君のバニーガール姿がみたかったなあ」
「きゃ〜。えっち〜」
ちょっと着ぐるみの女性をからかって、話題をそらしてみた。
「そうだ。スレッガーさんもご一緒しません?」
普段ならこんな悪ノリには喜んで参加するのだが、あんな騒ぎの後では楽しめそうもない。それに、リュウたちが待っている。
「いやあ、これから用があるんで」
「残念〜。デート?」
「いいや。ちょっと厄介ごと」
シャアが反応したと思うのは気のせいだろうか。本当は彼らだって今回の件に関して早急に対処したいのだろう。
後ろめたい気がしないでもないが、どうにも出来ないし、事件に巻き込まれたセイラは一応無事だったのだ。
「教授先生によろしく。お二人さんも健闘を祈るよ。さっさと酔ってしまえば格好も気にならなくなるさ。じゃあな」
そう言い捨ててスレッガーは集団から離れる。
「みんな色々と大変だ」
小さくつぶやき、スレッガーはタクシーをつかまえてホテルへと急いだ。
415通常の名無しさんの3倍:05/01/17 08:09:12 ID:???
ほしゅ
416通常の名無しさんの3倍:05/01/19 22:26:40 ID:???
たまにはageてみよう
417通常の名無しさんの3倍:05/01/29 20:51:52 ID:???
良スレ保守&打ちage
418通常の名無しさんの3倍:05/01/29 23:23:36 ID:btLj6Q4x
ジオンと連邦どちらを支持するか投票で教えてください
http://www.37vote.net/anime/1106977948/
419通常の名無しさんの3倍:05/02/11 20:29:56 ID:???
hosyu
420通常の名無しさんの3倍:05/02/18 20:13:34 ID:???
保守!
421通常の名無しさんの3倍:05/03/02 19:59:40 ID:???
保守
422通常の名無しさんの3倍:2005/03/23(水) 15:32:38 ID:???
保守
423通常の名無しさんの3倍:2005/03/31(木) 01:25:35 ID:???
age
424通常の名無しさんの3倍:UC-0040/04/01(金) 01:12:56 ID:???
U.C記念カキコ
425通常の名無しさんの3倍:2005/04/06(水) 20:45:59 ID:???
moudamenanokana
426通常の名無しさんの3倍:2005/04/07(木) 21:41:37 ID:???
かな?
427通常の名無しさんの3倍
休み明けにでもageてみるか?
もう新学期も始まった事だしそろそろ春厨も居なくなる頃だろう。
もしかすると新参の職人さんが来てくれるかもしれない。