本県のある介護現場で働く友人に聞いた話。毎日、30人近くの要介護者を入浴させ、
慢性的な腰痛に悩む。
若い人は次々にやめていく。排(はい)泄(せつ)物(ぶつ)の処理に戸惑い、1日限りで
翌日にはもう来ない新人も珍しくない。
2000年から始まった介護保険の報酬は3年ごとに見直されてきた。過去2回はいずれも
引き下げられ、福祉施設職員の平均賃金は男性で約22万6千円、女性約20万4千円。
全産業平均より男性で15万円近く、女性で4万円近くも低い。
離職率は全産業平均の15・4%に対し、介護従事者は21・6%と高い。
■「結婚できない」の声■
やめる理由の筆頭は「低賃金」。「結婚を考えると、この賃金ではやっていけない」という切実で
具体的な若い男性の声がよく聞かれるという。
低賃金や厳しい労働条件。介護の現場を去ろうとしている介護従事者を引き留める策の
一つとして、4月から介護報酬が3%引き上げられる。
個々の介護サービスの報酬も改定され、地域ごとの単価も賃金の実勢に応じて見直される。
認知症ケア、夜間業務など負担の重い業務や介護福祉士などの有資格者の割合が多い
事業所には報酬を重点的に配分する。
ただし、手厚くなった報酬を受け取るのは事業者であって、従事者に直接、配分されるわけではない。
事業者にお願いしたい。報酬引き上げの趣旨を理解して、従事者の賃金引き上げ、待遇改善を
最優先してもらいたい。
■国の検証作業が必要■
政府は報酬引き上げによって、「常勤換算で約80万人いる介護従事者の賃金を
月2万円アップできる」としている。
だが、正規・非正規などの雇用形態や勤続年数などによって異なり、一律に上乗せ
されるわけではない。報酬増の分は、これまでの赤字の穴埋めに回したいと考える事業者もいるだろう。
改定が従事者の賃金に反映されるように、国はきちんと検証作業を行ってもらいたい。
今年は団塊世代がすべて60歳以上になる。高齢化、そして介護の時代はこれから本番を迎える。
厚生労働省の推計では、今後5年間だけでも介護従事者を40万から50万人増やさなければ追いつかない。
「派遣切り」など雇用悪化に伴い、介護の現場は受け皿として期待されている。介護保険が
始まったころは、バブル経済崩壊による景気低迷もあって人材が比較的確保できた。だが、
景気が回復すると潮が引くように賃金の高い他の職種に流れていった。
景気の好不況に左右されるようでは困る。労働条件を底上げすることによって、良質の人材が
常に集まる職種にしていきたい。
▼ソース:宮崎日日新聞
http://www.the-miyanichi.co.jp/contents/?itemid=14108&blogid=5&catid=15