142 :
=141(捕捉):02/07/02 19:52
>>139 >>141>中世西欧に伝道されたキリスト教は、主に都市部から教線を伸ばしました。
>そのため、古代から農村部には、前キリスト教的な土俗信仰が残存していた
つまり「キリスト教の支配力」はそんなに「過大」ではなかったがゆえに
前キリスト教的な土俗信仰が残存し
それが、広汎な魔女狩り事象の背景なしは土壌になった、というわけです。
土俗信仰の内容に関する評価は
>>141に書いたようにいろいろ論点はあるのですが、「キリスト教の支配力」に関しては、各立場の研究者の間でも、大筋の味方はそんなに違っていないはずです。
136さんありがとう。
参考にします。ところでですね、魔女狩りについては大まかな
概要くらいしか把握していないのですが、
H.Pラグラフトにより・・・という知識が皆無です。
簡単に教えていただけたら嬉しいです。
>>143 >H.Pラグラフトにより・・・
はネタだゾ(w
ラブクラフトは20世紀はじめに執筆したアメリカのホラー作家
ニュー・セイラムの魔女狩りを題材にした小説も書いてるが、
ただのフィクション。
ファンタジー、ヲタ房のヨタだから無視すればよろし。
145 :
世界@名無史さん:02/07/02 22:13
魔女の疑いのあるものを川に投げる
浮くと魔女決定 拷問。
浮かばずに沈むと無実。
しかし溺れ死ぬ。
どっちにしても死ぬんだなこれが・・・。
146 :
世界@名無史さん:02/07/02 23:27
>>141-142 ありがとうございます。
すごく勉強になりました。
魔女狩りは前キリスト教習俗が混交していた農村部に教会の力が及んでいった
ことが原因の一つかもしれませんね。
乱交行為のことについても勉強させてもらいました。
ヴェネツィアでは仮面をつけて乱交を行うという話しを本で読んで
こういう習俗が欧州全般にあったものと誤解していました。
ネタですか・・・
この類の話には疎いので何も言えません
>147
そんなに悪気はなかったスマソ。
超有名な怪奇小説作家ネタだから、笑ってくれるかなあと。
米国をお勧めしたのは、怪奇小説につかわれるくらい、事件が有名で
対象範囲/期間も狭く論文として纏めやすいかなと思った。
勉強の息抜きに、ホラー小説もお勧めしとく。はまると危険だけど。(藁
149 :
=142=141:02/07/03 03:08
>>146 どうもです、お役に立てば幸いと思います。
ただ、先の書込みはすごく大ザッパにまとめた概要なので、参考程度に踏まえてください。
例えば、
>乱交行為のことについても勉強させてもらいました。
>ヴェネツィアでは仮面をつけて乱交を行うという話しを本で読んで
>こういう習俗が欧州全般にあったものと誤解していました。
この件1つをとっても、果てしなくややこしくめんどくさい議論が専門研究者の間にあります。
混乱させたくないので、ポイントだけ書くと
「ヴェネツィアでは仮面をつけて乱交を行う」の類、“魔女信仰”実在論者の一部にはこの系統の宗教団体が、都市部での弾圧を逃れ、広域の各地に広がった、と真剣に唱えてる研究者は複数います。
困ったこと(?)、こうした信仰に付随する宗教的遺物(遺跡ではありません)が、魔女弾圧の激しかった地方で発掘されたりしているそうです。
実在論者はこれらを論拠に“魔女信仰”の結社集団が広域に分散してた、という一種の推定論を出すのですが。
完全捏造論者は、遺物証拠は数が少なすぎる、魔女弾圧地方にしても発掘例に偏りがある、文献的裏付けも乏しい、根拠薄弱と言って認めません。
もし、関連した碑文の類でもみつかれば、状況は変わるかもしれませんが、
この件は現状では、どっちの言う事ももっとも(基本的に、考古学研究と、文献学的研究とどちらを重視するかの方法論の違いの影響大)ですので、
私も含めた、非・専門研究者は、決定打には乏しい、とみなしておく方が無難と思います。
(個人的意見では、一応、実在してないぞ説の方が優勢かな、と思いますが、実在してたぞ説にもリカバーの余地はあると思います。この辺はご自分で概説書を読んで、あなた自身で判断してください)
それから、(
>>139)>反キリストを表に出した悪魔信仰は一時期のフランス王宮においてひんぱんに行われていたようですし、一般庶民の間でも悪魔信仰は存在していなかったのでしょうか?
、と言うのは、わかるんですけど、誤解に基づいたイメージなんです。
フランス王宮では宗教改革時期〜ブルボン朝にかけて何度かオカルトブームがおきて、貴族の間で黒ミサなどが行われた時期がある、これは確かなんです。
イギリスでは、ルネサンス期と前後して「悪魔学」の方が盛り上がったりしています。
ただ、中世農村部の土俗信仰一般は、歴史的には、後の時代の悪魔信仰とイコールとは言えないんです。多少の偏差の可能性はあっても一般論としては、複数あったルーツの1つ、という事です。
黒ミサとか錬金術師のイメージを「魔女信仰」の名の元に悪魔崇拝として一括したのは、これは間違いなく「悪魔学」のネガティブな達成だからです。
困ったことに、19世紀ころからのヨーロッパで、自然回帰〜エソロジカルな魔女術(復古魔女信仰)を実際にやってる人達は、歴史学的検討(実在論も含めて)とはまた別のレベルで、「古代から伝統があった魔女信仰が、キリスト教側に歪められた」とか真剣に唱えてます。
この人たちは黒ミサはしません(w)。歴史上も黒ミサとかを確実にしてたのは魔術師で、現役の魔女信仰の人達は魔術師の事も悪し様に言います。
実は日本では、マスコミを通じて、こっちのリアルな魔女さん達の主張が魔女狩りの歴史的イメージに混入してるふしがあります。
まぁ、やはり19世紀に復古されたドルイド教を信仰してる人もヨーロッパには。たくさんいますし、この辺は信仰の自由に基づく、宗教的信念って扱いにしとくのが無難でしょう(w
150 :
世界@名無史さん:02/07/03 07:13
>145
溺れ死んだ人の名誉回復はなされるのでしょうか?
151 :
世界@名無史さん:02/07/03 10:37
>>149 ちょいと悪魔・黒ミサとは趣を異にするのですが異端も同じだと考えてよいのでしょうか?
たとえば、アルビ派という連綿とした宗教的組織があったのではなく、
正統派からアルビ側に偏差した個別の土着信仰みたいなのがあって、
それが個別撃破された、みたいな。
152 :
世界@名無史さん:02/07/03 11:42
>>148 ネタを書くときは、ネタだってわかるヒントをね。
せめて検索で引っかかる「ラブクラフト」や「青心社」という名前を。
>145
古代バビロニアなら溺死しなければ無罪。訴えた人間は死罪だったそうです。こっ
ちの方がずいぶんましですね。
>146
「ベナンダンティ」という本を参考になさる事をお奨め致します。始めは教会側に
容認されていた「ベナンダンティ」なる能力者達が宗教改革が進むにつれて否定さ
れて来た様子が分かりますから。(舞台は16世紀のイタリア)
なお彼らの行動や能力は農村部の自然信仰に基づいたものでした。
それと、17世紀までドイツにはオーディン・フリッグが原型らしき神に収穫した
麦穂を捧げる習慣があったそうです。
154 :
世界@名無史さん:02/07/03 17:21
>>151 >アルビ派という連綿とした宗教的組織があったのではなく、
>正統派からアルビ側に偏差した個別の土着信仰みたいなのがあって、
>それが個別撃破された、みたいな。
中世西欧最大の異端と呼ばれたアルビ派には、確固とした宗教組織がありました。
アルビ派は、中世西欧異端のカタリ派と呼ばれる諸派の最大集団と言われます。
南仏で隆盛しましたが、南仏の土着信仰が元になったとは考えられていません。
カタリ派の多くはそれぞれに宗教組織を持っていました。
が、それぞれは各地で独立に自生的に派生したもので、全体を連絡するような組織は持っていませんでした、
――と私が大学生だった頃は言われていたのですが。
近年、実は各地のカタリ派の代表者が異端教派の宗教会議を持っていた、という説が出されています。
私には、この説自体は信頼性があるように思えるのですが、
そうすると従来自分が持っていた歴史的理解をいろいろ修正しなくてはいけなくなるので、
ここのところなんとなく困ってます。
別に専門研究者ではない私が、困る必要もないか(w)。
「連綿とした宗教組織」これは難しい。アルビ派の起源については、普通は中世ビザンツ圏のバルカンで派生した異端ポゴミル派が西欧に伝わったもの、と言われます。
が、この件には、古くからもう1つの説、「アルビ派の起源は西欧に伝わったマニ教だ」と言う説があります。
どちらかと言うとパタリ派起源説の方が有力説ですが、マニ教説の一派に、ポゴミル派の起源がマニ教にあるとする説もあるので、話は簡単ではありません。
一部の研究者は、ポゴミル派やアルビ派を中世マニ教と呼びますが、この説は大方では論拠に乏しい、と言われているのが現状です。
さらに、少数派ですが、アルビ派の起源を古代末エジプトのグノーシス派に求める説もあります。マニ教も普通はグノーシス派の宗教と言われますが、
この説は、特定のグノーシス教派ではなく、雑多なグノーシス思想が混交しつつ西欧に伝わりキリスト教化したのがアルビ派、という意見です。
こちらの説は、極・少数派です。
155 :
世界@名無史さん:02/07/03 17:23
>>151 >正統派からアルビ側に偏差した個別の土着信仰みたいなのがあって、それが個別撃破された
これはすごく答えるのが難しい問いなんです。
カトリックがアルビジョワ十字軍を出してアルビ派を徹底弾圧したとき、バチカンからはアルビ派に対する様々な中傷がなされました。
例えば、a)アルビ派は不死を求める魔術的な信仰を唱えている、b)アルビ派は女神崇拝をしている、c)アルビ派の高位聖職者は乱交行為をしている、などなど。
他に、カソリック側に当時からあった「俗説」に、
a)との絡みで、d)アルビ派は聖骸布を継承しているとか、
e)アルビ派はイエスとマグダラのマリアの子を子孫であるとの伝承を密かに伝えている、とかいうのもあります。
普通、硬い研究者はc〜eは、根拠のない俗説、とみなします。
a)については、普通は、アルビ派の宗教教義が、周辺に曲解されたとみなされます。
問題の焦点になるのはb)で、
アルビ派マニ教起源説の人達は、マニ教にもあるグノーシス的な宇宙観が元になって、こうした偏見が言われた、と言います。
で、土着信仰との絡みですが、cとbについて、これは古代末期に南仏に入って土着化した密儀的な地母神信仰がアルビ派とは「別に」中世まで残存していたのだろう、という推測にはあまり異論を唱える研究者はいないと思います。
要するに、アルビジョワ十字軍が派遣されると同時に、南仏には何人もの異端審問官が派遣されています。十字軍が引き上げてからも南仏での異端審問は引き続いています。
こうした背景で、「バチカン側からは十羽ひとからげに断罪された人々の内に、本来アルビ派の信徒ではない、土着信仰に熱心だった人がいるのではないか」という可能性は、まじめに考えている人はいます。
この件についても後年の魔女狩り同様、
「異端審問官の方がアルビ派異端に偏見を持っていたので、拷問と誘導尋問で、土着信仰が続いていたかの自白を引き出した」と言う人もいれば
「いや、アルビ派信徒の間にもきちんとしたアルビ派神学と土着信仰の区別を曖昧にしかつけられなかった人々もいて、自白につながったんだ」という人もいます。
個人的には、この件の最終的判断は、現状ではつけ難いように思います。
決定打に乏しく、いずれの説も状況判断に依存してる部分が大きいと思われます。
ただ、オカルト論者には、上記a〜eのすべてをアルビ派の秘密教理みたいに言う人もいるのですが、さすがにこれは考えづらいです。
156 :
世界@名無史さん:02/07/03 17:24
>>151 >悪魔・黒ミサとは趣を異にするのですが異端も同じだと考えてよいのでしょうか?
悪魔崇拝のイメージというのは、魔女狩りと並行して推進派が「撲滅のための研究」として作り上げ、魔女狩りが退潮すると今度はオカルト的な活動の典拠として使用された、という困ったものなわけです。
「異端派」も「悪魔学」により、後の悪魔崇拝のイメージ的なソースとして利用された、という点は“魔女信仰”と呼ばれた土着信仰と同様です。
ただし、質問主旨が「中世異端派は、悪魔崇拝同様にアンチ・クリスト的な新巧打だったのか?」という事でしたら、答はNOです。
少なくとも中世西欧の異端史で知られる大きな教派はいずれも「アンチ・バチカン」ではありましたが、「アンチ・クリスト」ではありませんでした。
時期が早かった宗教改革運動、という側面はあります。
ただし、異端派の内には、イエスと旧約の神を対立的に捉えるグノーシス的教義を持つ教派もありました。実はポゴミル派やアルビ派も、こうした教義を持つ現世非認的な的な宗教です。
日本でいったら浄土真宗のような世界観をイメージしてもらうと、そう外れてはいないと思います。
この辺は後の新教諸派と違った面です。
要するに異端派は正当派とは教義が異なるだけで、基本としてのキリスト教で有る点に
代わりは無い(仏教でも色々有るでしょう、狭い日本でも)。悪魔崇拝はキリスト教に
対するアンチテーゼの意味合いが大きく、キリスト教の影響を大きく受けたカルト(仏教
で言うところの立川流?)、魔女信仰はむしろ古来からの土着の宗教や密議を受けた民衆
信仰(仏教で言う所の雑密?)。しかし後年に成って、修験道とも言うべき物が誕生して
過去にその起源を求めたからややこしくなった。
大体弾圧に負けて消滅していたら、ギリシャ正教もプロテスタントも異端だ。
158 :
世界@名無史さん:02/07/03 20:04
>>157 >弾圧に負けて消滅していたら、ギリシャ正教もプロテスタントも異端だ。
ギリシア正教については無理があるのでないかな?
プロテスタントについては異存ないが(スレ違いかな?)
正教は、たんじゅんに「オーソドクス」と言う、
これに対する異端が「パラドクス」
ローマ国教時代、5大主教座が揃っていた頃からのオーソドックスを引き継いだのがギリシア正教。
「オーソドクス」のブランドをビザンツに占有されたのでバチカンはカソリック(普遍信仰)を看板にした。
ビザンツとバチカンは相互破門してるんだから、オーソドクスを異端と言うのはバチカン中心史観(そんな言葉聞かないが:w)
159 :
世界@名無史さん:02/07/03 21:03
>>157 分かり易い要約ありがとうございます。
ただ、魔女狩り、“魔女信仰”の話については(だけじゃないんですけど)、
>後年に成って、修験道とも言うべき物が誕生して過去にその起源を求めたからややこしくなった
とだけは要約しきれないから、とてもややこしくなるんだと思います。
●当時までの歴史的背景
●当時の当事者の宗教的(迷信的)信念
●当時の一般的偏見
●魔女狩り推進派の教導
これがごちゃごちゃになって、後代の偏見を醸成してった。
それを今現在の視点から振り返ると、「魔女信仰完全捏造説」「魔女信仰部分実在説」「魔女信仰実在説」とでも呼べる諸説が別れてしまう、といったところですが。
中世の土俗信仰で神聖視されていた巨木があったとします。
当事者達は、これを神聖視することが異端であるとは思っていなかった。
周辺の一般信徒はなんとなく迷信っぽいかな、くらいに思っていた。
当時までの教区聖職者は、概ね旧い信仰と折り合いをつけるため「無害な迷信」だから、無視していればよい、程度の態度をとっていた。
ところが魔女狩りがはじまると、異端審問で魔女狩り専従になる審問官(これらは、異端教派を審問する聖職者に比べると下級で教養も怪しげだったと言われます)達が、「おまえらがあがめる巨木はデーモンなのだ」とか言い出す(推進派の「悪魔学」)。
魔女狩りが盛んになるのと並行して、こうした怪しげでゴッタ煮的な「悪魔学」が権威化される。
「悪魔学」権威化が起因となってWitchとは「悪魔と契約した拝教者」との偏見が俗信として定着し、広まる。これは「後年に成って」の過程とは言えないと思います。
上で図式的に整理したような過程は、マクロにみれば、魔女狩りの経緯の一部として並行した歴史事象だと思います。
160 :
世界@名無史さん:02/07/03 21:34
良スレ確定あげ
魔女狩りはいつまで行なわれてたの?18世紀くらいまでかしら?
>>154 やはりいろいろな系譜が考えられていて、確定はしていないのですね。
僕が読んだのはクセジュなのですが、かなり断定調で
ゾロアスター → マニ → ボゴミル → ? → カタリ
みたいなことが書いてあって(と思う)半信半疑だったのでした。
(あとミトラも出てきたかな)
>>159 >>これらは、異端教派を審問する聖職者に比べると下級で教養も怪しげ
例の、スペインの有名な人は結構教養があり神学上の著書もあったような気がするのですがどうなんでしょうね。
163 :
世界@名無史さん:02/07/04 10:08
>>161 >魔女狩りはいつまで行なわれてたの?
魔女裁判・魔女狩りと、異端審問一般、それから隠れユダヤ教徒審問を区別しての話ですが。
魔女裁判は1670年代以降は沈静化した、とされます。
スイスのジュネーヴでは1681年の例があり、
神聖ローマ帝国領内では18世紀まで散発したといいます。
地域による差もありますし、1670年代まで常時魔女裁判・魔女狩りが各地でおこなわれていたわけではありません。
個人的には、古代ローマでのキリスト教弾圧に少し似たパターンと言えるように思います。
禁令は常時有効なのですが、社会的運動としての大きな弾圧は波状的に起きたし、地域によって差があった。
ただし「1670年代まで常時魔女裁判・魔女狩りが各地でおこなわれていたわけではありません」。
これは、「悪魔と性交し悪魔の僕となる契約を交わした」などと、「悪魔学」によって定義されるような魔女断罪についてです。
隠れユダヤ教徒審問を含んだ異端審問などについては、また別です。
164 :
世界@名無史さん:02/07/04 10:16
>>162 スペインの場合は、ユダヤ教からキリスト教に改宗した人や
隠れユダヤ教徒に対する審問がありますし。
イスラムから国土回復した地域でもありますので。
審問官にも高度な神学知識が要請されただろうと思います。
実際、旧教側の対抗宗教改革が先鋭だった地域でもありますしね。
165 :
世界@名無史さん:02/07/04 10:50
>>162 そろそろ、異端派・異端審問メインの話題は、「◎●◎キリスト教総合スレ◎●◎」に移した方がいいかな?とも思うのですが。
話の流れで一応。
http://academy.2ch.net/test/read.cgi/whis/1012622120/ >やはりいろいろな系譜が考えられていて、確定はしていないのですね。
宗教思想の影響関係、系譜関係と、宗教実態の伝播関係はレベルも経緯も別にしないと混乱しますので。部分的に重なりはしても一端分けて整理していかないと。
ポゴミル派→アルビ派の件については、宗教実態の伝播関係も考えられる範囲と思います。
ビザンツから南仏に逃れてきたポゴミル信徒が、アルビ派に影響を及ぼした、などということを想像することにも比較的無理は少ないと思います。
アルビ派もそうですが、異端派の場合、信徒と聖職者の間の垣根は組織に歴史がある正統派ほど強固ではありませんし。
ただ、アルビ派を含めた異端運動も広がるに連れて独自の教団組織を作っていくので。
アルビ派の組織は、「確固なもの」は作られたけれど、「連綿」としたものとは言えない。
例えば、ポゴミルやマニから送られた布教団が南仏で教化をおこなった、というような事は考えづらい、といったことです。
クセジュは『アルビジョア十字軍』だと思いましたが、内容は大分忘れてしまっているのですが。
>ゾロアスター → マニ → ボゴミル → ? → カタリ
というのは、多分、宗教思想の影響・系譜関係について、ではありませんでしたっけ?
少し旧い考えかもしれませんが、
カタリ派というのは、カソリックの側が使っていた呼称なので、
西欧でカタリと総称されていた諸派の内実はかなり違うんですよね。
ワルド派なんかは、後の宗教改革に近い内容だと思いますし、アルビ派はやっぱりグノーシスっぽいと思います。
ただ、ポゴミルは、東欧経由でドイツの方に伝わった経路もあるそうで、そっちの方のカタリには実体的系譜関係の可能性が濃厚なものもあるとか、ないとか。
(この辺、実は異端派代表者の宗教会議があった、という話で修正も必要になってくるかもしれないのですが:困笑)
>161
魔女を取り締まる法律が撤廃されたのは英独では20世紀半ばになってから。他の
国も似たようなものでは。
167 :
世界@名無史さん:02/07/04 22:59
>>161 俺の記憶だと、確か1782年に最後の処刑が
スイスのグラールス州であったはずです。
168 :
世界@名無史さん:02/07/05 12:50
>>162 >例の、スペインの有名な人は結構教養があり神学上の著書もあったような気がするのですがどうなんでしょうね。
ちょっと記憶が曖昧だったので、資料本を見て裏をとったのですが。
異端者や、隠れユダヤ教徒あるいは、ユダヤ教徒から改宗したキリスト教徒を処刑しまくったスペインの異端審問所ですが、
魔女に対しては寛大(?)であったと、当時から目されていたようです。
現在の観点から統計をみても、魔女に対しては寛大なようで、
魔女である、との判定を下しても、国外追放処分に処す場合が大変多かったようです。
個人的な推測ですが、やはり教養程度は魔女裁判専従審問官より高かく、実際は魔女の危険を認めていなかったか(迷信視していた)か、
キリスト教的な危機意識が魔女に対してより異端に対しての方が先鋭だったか、なのだろうと思います。
169 :
世界@名無史さん:02/07/05 13:25
>>166=山野野衾さん
>魔女を取り締まる法律が撤廃されたのは英独では20世紀半ばになってから。他の国も似たようなものでは。
フランスの場合ですが、1682年にルイ14世の名で出された勅令
「もろもろの犯罪、特に毒殺者の犯罪、占い師、魔術師、まじない師と自称するもの達の犯罪に対する刑罰のための、また食料品屋と薬剤師に対する法規をともなう勅令」は、
研究者の間では「魔女(witch)や、魔女術(witch-craft)の名が法規に見えない点が画期的」と言われているようです。
勅令で定められた法規でも、「(魔女が)まじないをした」とみなされれば処断されることも可能なはずですが。
フランスでは勅令に先立つ1624年、魔女訴訟は、地方裁判所の管轄ではなく、パリ高等法院の管轄であることが定められているそうです。
魔女裁判、魔女処刑の実態は、本格化と並行して地方裁判所や、甚だしい場合は巡回魔女裁判といった制度で行われるようになりました。
おおまかに概括すると、初期は異端裁判一般の内に魔女断罪も含まれていたのですが、
魔女狩りが広汎な社会現象と化すと、巡回魔女裁判のような制度に分化、特殊化し、末期に裁判が中央集権化されると消えていった、という流れを見ることができます。
このスレでも過去に、魔女裁判・処刑はa「社会的マス・ヒステリー現象」か、b「キリスト教会に主導されたものか」、c「地方領主の経済的利害が主要起因か」という異見が並立しています。研究者の間でも異見の並立はあるようですが。
私は、「aが根本原因で、cにbがつけ込む型で拡大した」という観方に賛成なんです。
ともあれ、法規の内容だけでは、「魔女狩りはいつまで行なわれてたか?」(
>>161)は、うまく整理できないと思います。
魔女狩りに関しては、裁判システムが国家に中央集権化され教会の関与が減ると、激減しているとは言えます。
>169
有難う御座いました。
171 :
世界@名無史さん:02/07/05 21:14
これから文献探しに図書館に行ってきます〜。
本読んで基本的な知識身につけますますです。
>>1682年の勅令
これは例の毒薬事件の直接的な帰結ですよね。
当時は怪しげな自称魔女・魔術師が横行していて、
その一部が毒薬や怪しげな薬品の類を使い
直接行動にでていたようです。
1679年、一斉に検挙されましたが微妙な名前がボロボロでて
捜査は曖昧なまま中止(1682/7/21)。
例の「7月の勅令」は8月30日、高等法院により発効されています。
捜査の過程を見てみると、「魔女」「黒ミサ」そのものに対する
関心は全くないようですね。当時すでにこの類のものは
眉をひそめる対象ではあっただろうけど、それ自体糾弾すべき対象である、
という意識はなかったのでしょうかね?
>>173 えーと、私は魔女狩りについては、
「経済的社会変動にともなう『社会的マス・ヒステリー現象』に、
『地方領主の経済的利害』が巻き込まれ、
そこに宗教改革・対抗宗教改革にかかわる『新・旧キリスト教会の教導』が関る型で拡大した」
って意見に説得力を覚える意見なんです。
バイアスがかかってる意見で、一部に個人的な推測論が混じる、とあらかじめお断りしたうえで−−
>当時すでにこの類のものは眉をひそめる対象ではあっただろうけど、それ自体糾弾すべき対象である、
>という意識はなかったのでしょうかね?
「魔女」については、少なくともパリ大学とか、高位聖職者とか、あるいは貴族のアカデミーに出入りするような知識人階層は
土俗信仰の類は迷信にすぎない、という理解をルネッサンス期、早ければ末期中世には獲得していると思うんです。
「悪魔学」は、「Devilは堕天使、Demonは頽楽した異教の神」って定式を西欧社会全般に広めたわけですけど、
本来のユダヤ・キリスト教には聖霊と悪霊と言う考え方はあったけど、悪魔という考え方はなかった。(多分、古代末期にキリスト教が異教とせめぎあってたころにDemonって考え方がギリシア語観念から取り込まれたんじゃないかな、と思いますが。よくわかりません)
ともあれ、「悪魔学」を整えた連中はそうしたソースも持ち出してゴッタ煮を作った。
で、細かくはいろいろな異見があるところですが 、
私としては、魔女狩りの当時はすでに土俗信仰の信仰対象は、「神(異教神)」って理解のされ方を信者にすらされていなかった、事の方が多かったと思います。
イングランドの例なんかだと土俗社会では「妖精」とみなされていた。
悪魔学が整えた「黒ミサ」の原型は「妖精の祭り」って土俗的なイメージだ、って説がありますよね。
旧教会の中枢の方は、「魔女信仰」は迷信だって意識を魔女狩り時代を通じて持ってただろうと思います。
私が思うに、異端審問や隠れユダヤ教徒審問を推進しようとした関係で、魔女狩りをコントロールしきれなかったのではないかな、という気がします。
だからと言って、旧教中枢の関与責任が軽減されるとはもちろん思いませんが。
「黒ミサ」の方については、魔女狩りの時代を通じて、キリスト教の典礼・儀式をパロディ化する式次第のイメージが形成され流布されましたので、
こうした儀式を実演する連中が登場した場合、教会の神経はすごく逆なでされただろう、とは思います。
「糾弾すべき」云々では留まらなかっただろうとは思います。
ただ、「魔女が箒にまたがって集会に行き黒ミサをした」とか言えば、17世紀当時の知識人は苦笑したのではないでしょうか。
地域差はあったと思います。中央集権の進まなかったドイツでは、悪魔学のイメージが混入した魔女のイメージは返って後代まで土俗的に残っていますよね。
猫=魔女というイメージがあり、猫を飼っているだけで魔女扱いされたり町で見かけた猫を次々に殺していったため、ねずみ増殖→ペスト流行という話を聞いたのですが、本当でしょうか?
176 :
世界@名無史さん:02/07/09 13:21
>>175 どうなんでしょうね?
少し調べてはみましたが、よくわかりませんでした。
まったくあり得ないとは断定できませんけど。
個人的には、少し考えづらいような気がします。
>猫=魔女というイメージがあり
猫や蛇が妖精の化身であり、“魔女”と近しいという観念は古くからあったようです。
けれどそれを言ったら、作物を荒らす鼠も昔から嫌悪されていた動物のようです。
現代的な医学知識ではありませんが、鼠の大量発生と疫病の流行を結び付ける考え方も古くからあったようです。
そうすると、「猫を飼っているだけで魔女扱いされたり町で見かけた猫を次々に殺していった」という事が、そうそう起こるとも思えないのですが。
これは現代的な考え方が混入した推測なので、間違っているかもしれません。
ありそうな話としては、ペストで壊滅した町がなぜ壊滅したかを近隣の町で説明する噂話(今で言ったら都市伝説?)として、言われているような話が生まれた、などはあるかもしれません。
これも憶測にすぎませんが。
177 :
世界@名無史さん:02/07/09 14:06
魔女狩りは現代の女性ようにセックスに奔放だったり挑発的だったり動物的にふるまったりする
女性的な本質を暴走させる「魔女」を
社会が危険と察して片っ端から抹殺しようとしたのが本質では?
一見中世的で実はすごく近代の始まりを象徴する現象。
178 :
世界@名無史さん:02/07/09 14:13
そう考えると猫もすんなり納得いきますね。
179 :
世界@名無史さん:02/07/09 15:39
魔女狩りといえば、セーラムの魔女狩り映画「クルーシブル」。
集団心理の怖さ、ゾクゾク。映画終わってこれほど後味の悪い映画もない。
よく出来た作品で、ダニエル・デイ・ルイス&ウィノナ・ライダーも良い
のだが、何しろ後味が・・・。
歴史って知れば知るほど面白い。
>175
ベルギーの或る町ではペストが流行した際猫に厄を負わせて塔の上から放り投げた
そうです。逆効果。
猫については中世に建てられた教会の天井に何故かフレイヤらしき半裸の猫を連れ
た女性と裸で箒に跨った女性の姿が描かれたものがあります。
ペスト追放の為鼠退治にせいを出したのがかのノストラダムス。
181 :
世界@名無史さん:02/07/09 19:11
「猫の大虐殺」てのもあったねえ。
カンケないけど
182 :
世界@名無史さん:02/07/09 19:14
>>181 >「猫の大虐殺」
それどういうのですか?
よければ教えて。
183 :
世界@名無史さん:02/07/27 02:18
♪魔女になりたいの 今夜は〜
184 :
世界@名無史さん:02/07/27 02:25
185 :
世界@名無史さん:02/07/27 05:55
クルーシブルって史実と全然違う
186 :
世界@名無史さん:02/08/16 07:54
奥様は魔女で、魔女狩りの時代にタイムスリップしてしまうというのが
あって、ダーリンがへんな中世のような衣裳を着てたのしか覚えてないけど
参考までに(w
保
188 :
世界@名無史さん:02/09/29 18:37
あげ
189 :
世界@名無史さん:02/10/17 23:26
190 :
世界@名無史さん:02/10/18 09:40
>>14 >私見にすぎませんが、「他宗教を根絶やしにする性質がある」のは、西欧社会「だった」と思います。
あるいは西欧的キリスト教(ローマカソリック、プロテスタント、西欧修道院)に顕著な傾向「だった」
とは言えると思います。
なぜ西欧の社会だけがこうなったのかなあ。その理由がイマイチよくわからない。
>ただし、ローマンカソリックは、現代に入って、その体質を克服しようと多大な努力をはらっていることは、認められるべきでしょう。
ヨハネ・パウロ二世の「教会合一運動」(これもよくない訳語ですが)が典型ですけど。合一運動のルーツも第二次大戦前に溯ります。
シュバイツアーや、マザー・テレサなどを出したのもまた、西欧的キリスト教です。
「ヨーロッパの歴史は弁証法的に展開する」と書いている人もいたなあ。
191 :
世界@名無史さん:
ロイヤルタッチ!