・このスレは、実在した戦国武将達を動かしていくリレー型の小説スレです。 もちろん登場する人物・物語は事実を基にして作られたフィクションです。
・こちらは本編のみで進行させる作品専用のスレです。感想及び雑談などは雑談・感想スレの方でお願いします。
・武器は原作と同じ様な設定とし、その使用法がわかる解説書つきとします。 また、全員この島の地図と名簿を所持しているものとします。
・外交関係の認識は1555年あたりとします。(武将も大体そのあたりの者を選定) 武将の年齢は・・・あまり考えないで下さい。
・必要時以外はsage進行で。荒らし、煽り、叩きは徹底スルーでお願いします。
・リレー小説なので、人物設定や物語に矛盾や混乱が生じないよう、細心の注意と配慮が必要となります。
・あまりに突飛過ぎる話(例えば、スイッチ一つで全員爆死など)はおやめください。一人で暴走しないで下さい。
・位置関係や時間設定も重要です。矛盾が生じないよう過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・どうしても使って欲しくないキャラ(そのキャラの続編を執筆中などの場合)は、一言雑談・感想スレにて断っておくのをお勧めします。
・武器等の所持アイテム、編成変更、現在位置の表示も極力行ってください。
・基本はリレーですが、それぞれのキャラには主に担当している書き手がついている場合があります。もしそういったキャラを使う場合、
混乱を避けるために、これも雑談・感想スレで一言断りを入れるのをお勧めします。
・作中の武将の状況、一覧などは、だいたい50レスに一度くらいの割合で気付いた人がやりましょう。
01赤尾清綱× 26岡部元信× 51佐久間信盛× 76林秀貞×
02赤穴盛清× 27織田信長○ 52佐々成政× 77久武親直×
03秋山信友× 28織田信行× 53宍戸隆家× 78平手政秀×
04明智光秀× 29飯富昌景○ 54柴田勝家× 79北条氏照×
05安居景健× 30小山田信茂× 55下間頼照× 80北条氏政×
06浅井長政○ 31海北綱親× 56下間頼廉× 81北条氏康×
07浅井久政× 32柿崎景家× 57上条政繁○ 82北条綱成×
08朝倉義景× 33桂元澄× 58鈴木重秀○ 83細川藤孝○
09朝比奈泰朝× 34金森長近× 59大道寺政繁× 84本庄繁長×
10足利義秋× 35蒲生賢秀× 60滝川一益× 85本多正信×
11足利義輝○ 36河尻秀隆× 61武田信廉× 86前田利家○
12甘粕景持× 37北条高広× 62武田信繁× 87真柄直隆×
13尼子晴久× 38吉川元春× 63武田晴信× 88松平元康×
14尼子誠久× 39吉良親貞○ 64竹中重治× 89松田憲秀×
15荒木村重× 40久能宗能× 65長曽我部元親○90松永久秀×
16井伊直親× 41熊谷信直× 66土橋景鏡× 91三雲成持×
17池田恒興× 42顕如× 67鳥居元忠× 92三好長慶○
18石川数正× 43高坂昌信× 68内藤昌豊× 93三好政勝×
19磯野員昌× 44香宗我部親泰○69長尾景虎○ 94村上義清×
20今川氏真× 45後藤賢豊× 70長尾政景× 95毛利隆元×
21今川義元× 46小早川隆景× 71長坂長閑× 96毛利元就×
22岩成友通× 47斎藤道三× 72丹羽長秀× 97森可成×
23鵜殿長照× 48斎藤朝信× 73羽柴秀吉× 98山中幸盛×
24遠藤直経× 49斎藤義龍× 74蜂須賀正勝× 99六角義賢×
25大熊朝秀× 50酒井忠次× 75馬場信房× 100和田惟政×
×印:死亡確認者 87名
○印:生存確認者 13名
| A .| B .| C | D .| E .| F .| G | H .| I .|
______.|______.|______.|______.|______.|______.|______.|______.|______.|______.|
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1 | _,,,,, ,,,,,,, _,,,,,-'''"" ̄'Z,,,,_,, 北
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廃:廃墟 荒:荒地 川:河川 湖:湖(透明度が高く飲むことができる) T〜X:それぞれのスタート位置
森:森 草:草原 沼:沼(にごっているため飲むことはできない) 林:林 崖:崖 山:山 高:高地
家:民家(簡単な医療道具や食料有り) 浜:砂浜 田:水田 畑:畑
正親町天皇・・・今回の狂気ともいえる余興の主催者。最後まで生き残った者に、天下を約束する。実は剣術の天才?
06番浅井長政・・・数奇な運命に見舞われ、ともに行動していた昌信と死に別れ、晴信を殺し、鬼ノドカに別れられる。義輝と出会ったことで、自らの余興に対する思想を明らかにするも、ノドカとも死別した今、一体どうなってしまうのか。
07番浅井久政・・・終始戦いとは無縁なこの島に似つかわない和み系オッチャン。出会った猫(輝政と命名)と穏やかな時間を過ごしていたが、不運にも自爆してその生涯を終えた・・・、
と思われたが、なんと猫と同化してしまう。肉体は死に絶えたが精神は未だ健在。番外編の主人公である。
11番足利義輝・・・九字の破邪刀で大悪を斬ることを決意。幸盛の忘れ形見となった「エペ」を片手に、仲間である重秀、昌景らとの合流を目指す。
27番織田信長・・・自分の方が天皇より優れていることを証明するため、殺し合いに積極的に参加する孤高のジェノサイダー。重秀との互角の戦いによって何かが変わった・・・?現在は主催者側と思われるフロイスに案内され、帝の居場所に近づこうとしている。
29番飯富昌景・・・昌信、ノドカの幼馴染。昌信を始め、相次ぐ同家の者の死を乗り越え、この余興から生還する決意をする。重秀と共にトラックを乗っ取り、現在は景虎、重秀、親泰と行動を共にする。子供の親泰からも慕われる心優しき人。
39番吉良親貞・・・不治の病を抱え、その治療を約束した主催者側に協力する。ロヨラに吹き込まれ、兄・元親、弟・親泰も含め、参加者全てを狙う。
44番香曽我部親泰・・・道三の洗脳・催眠術に掛かって、操り人形になっていた子供。現在は段々と自我を取り戻しつつあり、故郷へと生還する願いが生まれ始める。
57番上条政繁・・・ジョースター家の一人。景虎との合流を目的としているが、未だに利家との妙な縁が途切れないでいる。彼が景虎と無事に出会える日は来るのだろうか・・・?
58番鈴木重秀・・・超人的な身体能力と動体視力を持つ気ままな自由人。数々の修羅場を共に乗り越えてきた仲間達と共にこの余興から脱する決意をする。
65番長曽我部元親・・・弱き者に牙を向く者を嫌悪する、姫若子と呼ばれた男。正義感の強い男だったが、弟達の命を盾にとった主催者の罠にかかり、参加者の殺戮を決意する。
69番長尾景虎・・・上杉謙信の名で知られる名将。苦悩する重秀の心や、同家の者の死を知った昌景の憂い心を見抜いたりと、徐々に大物の風格を漂わせ始めた味方の信頼厚き実力者。
83番細川藤孝・・・仕草が美しい風流を知る剣の達人。天皇の真意を求めようとするが、その最中、我が主君義輝にちょっとした悪戯心を披露する為、彼を捜し歩いている。
86番前田利家・・・相棒に死により、心に迷いが生じていたが、見事迷いから目覚めた槍の又左。相棒の致命傷の切り口を見た直後、主君の仕業と判断し、主君を討つことに目的を変更する。
92番三好長慶・・・久秀に踊らされるふりをし、実は久秀を踊らせて殺害した策士。破滅思考から脱し、覇者の様相を携え、藤孝、義輝を付け狙う。
イグナティウス=ロヨラ・・・この企画の実質的な主催者。完璧主義で、口も上手く、参加者らを殺戮に駆り立てる。
フランシスコ=ザビエル・・・この企画の裏方で、ロヨラと同格。様々な事務をこなすが、実は激情である。
ルイス=フロイス・・・ロヨラ、ザビエルの2トップからは少し距離をおいている。信長の協力を得るために島の中へ。
ルイス=アルメイダ・・・フロイスの忠実な部下。フロイスが見つからないようにカメラを操作しているが・・・。
個人
【06番 浅井長政 『FN 5-7(残弾17発+mag1)』『天国・小烏丸』】左眼失明。4-D森
【11番 足利義輝 『九字の破邪刀(破砕)』『梓弓(4隻)』『グロック17C(残弾16発)』】3-E森地点(爆発したトラックの元へ移動予定)
【65番 長曽我部元親『鎌』『ウィンチェスターM1897(残弾3発)』『青龍偃月刀』】3-Fで少し休息して3-Eへ向う予定
【83番 細川藤孝 『備前長船』】3-E近辺(なんとなく利家&上条を探すが、他に面白いものがあればそれに向かう )
【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢10隻)』『青酸カリ』『寸鉄』】
(行方は不明、目的・義輝と藤孝暗殺に変わり無しだが、誰に対しても殺意と警戒十分)
【39番 吉良親貞 『日本号』『モトローラ トランシーバ T5900』『イサカM37フェザーライト(残弾2発)』】
4-C湖地点で待機。『AK74(弾切れ)』はその場に放置
パーティ
【44番 香宗我部親泰 『長曾禰虎徹』】
【29番 飯富昌景 『オーク・Wアックス』『フルーレ』】
【58番 鈴木重秀 『USSRドラグノフ(残弾4発)』『SBライフル(残弾14発)』】
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『十手』】全員場所不明記の為不明。食料配布地点3-Eを目指します。
【27番 織田信長 『ベレッタM1919(残弾7発)』『相州五郎入道正宗』】
&【∞番 ルイス・フロイス 『ベレッタM92FC(残弾15+1)』】両者3-E森 目的:本部への潜入 (食糧入手)
【86番 前田利家 『SPAS12(残弾1発・暴発の可能性あり)』『鉄槍』『Mk2破片式手榴弾(一個)』】
&【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻(十数冊読めないものあり)』『バゼラード』『H&K MP3(残弾13発)』】3-D (食糧入手)
【残り13+1人】
義輝「・・・いい加減隠れていないで出て来たらどうだ?余が死ぬまで姿を現さぬつもりか?」
トラックが爆発する数分前に話は戻るが、何者かが己を尾行している気配を感じた義輝は振り向きそう呟いた。
いや、気配・・・というより足音と言った方がいいのかもしれない。
つい数分前から、義輝が歩くたびに後ろで『パキパキ』や『バキッ』という小枝を踏む音がしっかりついてくるのだ。
そして己が止まると、その音もピタリと止まる。
当然先ほどから何回も義輝は振り返っている。が、一応隠れる術は心得ているのか、足音の主の姿は見えない。
もっとも尾行する時に足音を立てながら歩いている時点で隠れる術も何も無いのだが・・・。
なんとなく、いや十中八九この足音の主が推測できた義輝は、少し声を荒げてその人間の名を呼んだ。
義輝「・・・余は少々気が荒立っておる。いかにお前でもあまり余をからかうと承知せんぞ?・・・藤孝」
さすがに名前が呼ばれると・・・というより、まるで名前が呼ばれるまで待っていたかのように
義輝を尾けていたその足音の主『細川藤孝』は木の影から姿を現した。
藤孝「ほう、これはこれは。上様ではありませんか。どうやらお元気そうで」
まるで今たまたま会ったかのような藤孝の台詞に、さすがに義輝も呆れた。
いや、そんなことよりおよそ将軍に向かって使うべき行動や言葉ではない。
が、さすがに付き合いが長いせいか、あるいは見えぬ何らかの縁か、義輝もそのことは追求しない。
義輝「あまり余を見くびるな」
藤孝「ほう。しかし意外とその正体に気づくのが遅かったですな。上様ともあろうお方が」
義輝「む・・・まったくああ言えばこう言う・・・まあ、それはよかろう。
で、なぜわざわざ余を尾けていた?何か異端の用が無ければ、お前もそんな事はしまい」
確かに、ただ合流しようとするだけなら声をかければいいだけだし、攻撃するなら、わざと『ばれる尾行』などは決してできない。
それは藤孝であれども例外ではない。おかしなマネをして義輝を怒らせてしまっては元も子もない。
とするなら、何かそれなりの用があったのでは?というのが義輝の推測であった。だが・・・。
藤孝「・・・ふむ」
義輝「む・・・なぜ考える?」
『何か用か』そんな言葉をかけられて、用があるはずの藤孝は真剣に考え込む。
さすがにこれは義輝も想定外だった。
無論藤孝には義輝に用がある。『落胤』と明かす、という用が。
だがこの状況でいきなりそんなことを言っても『突飛な冗談だ』とか『くだらん事を言うな』と言われるだけだろう。
この状況では後者が有力だが、つまり、まず義輝は信じない。そして話はそこで終わる。
下手をすれば、間に遺恨や欺瞞が残る。
そこで藤孝は『どうしたものか』と考える。そしてその結果、彼はある展開を思いつく。
藤孝「・・・よし」
義輝「・・・何を言っている?余は急いでいる。大した用でもなければ後に回すがよい」
当然藤孝の考えがわかるはずもない義輝は、そう言い残しその場を立ち去ろうとする。が、それを藤孝が止めた。
藤孝「心せわしきお方かな・・・しばし待たれよ」
義輝「む・・・なんだ?」
藤孝「・・・一手、手合わせを所望致す」
義輝「・・・手合わせ?」
当然、こんな言葉は義輝の想定外中の想定外である。
義輝、藤孝、実力の差はあれどこの二人は互いに剣の玄人である。そして持っているのは真剣。
それでやるとするなら間違いなくどちらか、あるいはどちらも死ぬだろう。
というより、はっきり言って手合わせをする必要などどこにもない。
だが、義輝の剣技においてのプライドは『手合わせ』という言葉を聞いて、わずかばかり心が沸き立った。
藤孝とは同門・・・つまり同じく塚原卜伝の『香取神道流(新当流)』を学んだ門徒でもある。
にも関わらず、今まで手合わせをした事は一度もない。一度たりとも、ただの稽古すらないのである。
無論、過去に『手合わせをしてみないか?』と義輝が言ったこともある。
全て『いやです』の類の言葉であっさり返された。
そんな藤孝が自分から『手合わせしてみよう』と言い出したのである。
心、とりわけ義輝の中にもある『上昇志向』『向上心』が沸き立つのも無理は無い。
だが、その義輝の『藤孝と手合わせをしてみたい』と言った思いは、他の要因によってかき消された。
義輝「手合わせ・・・か、ふむ。いや、それは出来ぬ。互いに持っているのは真剣・・・。
それになにより、そんなことをする必要はどこにもないのではないか?
余もお前も、油断さえせねばこの島で命を落とすような人間ではない。戻れば付き合ってやろう」
少し後ろ髪を惹かれるような物言いをして、義輝は藤孝の想定外の望みを断った。だが、藤孝はさらに言葉を返す。
藤孝「感覚は狂いますが、刀を返して棟で寸止めでもよいし、その辺の木の枝でもいい。
およそ実力とは無縁の勝負になりそうですが、まあ、互いの体調程度はうかがえる。それに・・・」
義輝「・・・それに?」
藤孝「先ほど『必要のない勝負』と仰いましたが、この島では『必要のなさ』すら戦いの理由になる。
必要の無い勝負がこれまでどれだけ繰り広げられたか、そしてそれで何人・・・いや何十人命を落としたことか?
それを把握するため、とまではいけないが、その戦いがどんなものか・・・それを知るのもいいでしょう」
『剣豪将軍』と言えどもやはり人間である。わずかな感情の揺れを信用している相手に隠す事は出来ない。
いや、むしろ『剣豪』と呼ばれるほど剣技を鍛えた人間だからこそ、過敏に反応してしまったのではないだろうか。
あるいは卜伝から『一之太刀(ひとつのたち)』という香取神道流秘伝を授けられた己が、剣技でまさか藤孝に遅れはとらぬという慢心だったのか。
とにかくどれにせよ、わずかに義輝が見せた『スキ』を藤孝は見逃さなかった。
この後藤孝にとって手合わせに持ち込むことは非常に容易であると言えた。
決して上手に出ず、だが決して己の威厳を損なわず、相手の心のスキとも呼べるようなものを最大限に引き出し利用する。
無論これは古今無双の教養者である細川藤孝の、言葉の文法、アクセント、声色、威厳その他諸々の彼にしか出来ない究極至高の技術であり
我々現代人に彼の真似が出来ようはずが無いのだが。
そして事はどうなったかというと・・・。
義輝「・・・まあ、構うまい」
少々粗暴な言い方だが、つまり義輝は違和感を感じながらもまんまと藤孝の術中に嵌ってしまったわけである。
藤孝「左様でございますか。では、参りましょう」
そう言いながら、藤孝はそのあたりの小枝を拾い、軽く手中で振り回す。
藤孝「・・・・・・・・・・・・おっと、そういえば、少々失念していた事が」
藤孝はまた手中の小枝を回転させ、思い出したかのようにそう呟く。
義輝「何のことだ?言ってみよ」
藤孝「手合わせとは言ってもさほど儀式ばる必要はなし。軽く身体を慣らす程度か、互いの程度を測る程度」
義輝「そのような事か?」
藤孝「いや、『その程度』と認識し、かつ、この手合わせにおいて申し上げたい事が一つ。
・・・この手合わせは」
そこまで呟いたとき、藤孝は不意に回転させていた手中の小枝を最低限の動作で義輝の顔に投げつける。
義輝「ぬ!?」
まさか唐突にそんなものが来るとは思わず、一瞬不意を突かれた義輝がすぐに正面に目を向けると
藤孝はすでに眼前にいた。
直後、剣閃が音を立てず己の頭上ギリギリをかすめていく。
義輝が我に返り刀に手をかけた瞬間には、すでに藤孝は必殺の間合いから遠く飛びのいていた。
藤孝「すこし気が抜けているようなので、元から言いましょう。この手合わせは」
藤孝「こういうのもアリでいくつもりですので、つまるところ・・・覚悟なされよ」
義輝「藤孝・・・貴様!!」
義輝「・・・貴様ともあろう者がこの島で狂ったか!このたわけがッ!」
藤孝「・・・さて?それはどうだか」
すぐに義輝は刀を抜く。ヒビが入っていることも忘れてはいないが、もはやそんな事を言ってはいられない。
本来なら銃を抜くべき状況だが、銃を構えようとする動作より
慣れた刀を抜く動作の方がスキが少ないと瞬時に判断したからだろう。
あるいは今だ所持している銃を撃ったことが無いのも、そう考える要因となったのかもしれない。
とにかく、義輝はいつの間にか剣を構えている藤孝に向かい、また剣を構える。
極限の緊張感、一歩も動けない威圧感が、その時から空間に広がっていった。
その一部始終のやり取りを、近くの木陰に隠れ解剖するように『観察』していた三好長慶は笑いを浮かべ呟いた。
長慶「ふ、義輝よ・・・互いに家臣には苦労するものだな」
長慶(しかし相変わらず細川め、解せぬ奴よ・・・ここで義輝を殺して奴に何の意味がある?
いや、殺すなら今の剣閃で頸を飛ばせばよい・・・と、なれば・・・?)
たまたま居合わせただけ、というわけでもないが、この状況は長慶にとっては千載一遇のチャンスでもある。
だがだからと言ってただ浮かれて状況を見守るほど三好長慶という男は愚鈍ではない。
長慶(今矢を放つか・・・?さすればどちらかは殺せよう。
だが、この長慶の目的、策はあくまでこの二人、共々の抹殺。
さすればもう一方はわしに気づく・・・後、わしは生きられまい。
やはり予定外の動作はわしに利をもたらすとは思えぬ・・・)
生来の慎重性からそう考えた長慶は『ここは見(ケン)でいく』と判断した。
長慶(今・・・このわしに気がつけるほど義輝も藤孝も余裕があるとは思えん・・・。
しかし、この二人が揃うのは良しだが、この状況では我が策は万全というわけではない・・・。
今は奴らの一挙一動何一つとして見逃さぬ・・・勝機は必ず我に訪れる!その時までただ『観』るのだ・・・)
先ほど長慶が食糧配布場所で手に入れた、水の入ったペットボトル・・・。当然その中にはすでに毒を入れている。
彼はその『毒入りペットボトル』をどのように使うか、木陰でまたもシミュレートしながら両者の対峙を観察した。
長慶の推測は当たっていた。
まず、まさかの裏切りで激昂している義輝は、木陰で完全に気配を殺した長慶に気がつくはずなどない。
そして藤孝も・・・いや、義輝、藤孝、長慶、この三人の中で今一番他に割く余裕が無いのは他でもない藤孝である。
義輝は藤孝の剣技の程を知らないが、藤孝は道場で義輝の稽古を観察していた分、しっかりと承知している。
藤孝と義輝が『まとも』に戦えば、まず間違いなく藤孝が負ける。
つまるところ、剣豪将軍と相対する威圧、プレッシャーは並々ならぬものがある、ということだろう。
藤孝(さて、と・・・ここからが重要だ。もはや一足ですら間違いは許されぬ・・・)
刀を握る藤孝の手が汗ばむ。
少し刀を握る手が汗ばむ。
藤孝が、なぜそこまでして『興味と悪戯心』のためにこのような行動を取るのか?と余人は疑問に思うだろう。
だが逆に言えば、それこそが我々凡人には決して到達する事の無い『天才の原動力』と言えるのではないだろうか。
顕如の前に散った本田正信の言葉を借りるなら、興味こそが藤孝の原動力であると共に原点となるのだろう。
誰しもが経験するように『人の反応』は想像し得ないからこそ受ける感覚は楽しいし、また痛む。
そして興味が沸く。
だからこそ人は人と接しあうのである。機械的な反応を繰り返されても人は何の感動も感じることは無い。
むしろ怒りを覚えるだろう。
今の藤孝は、ただその予測のつかない反応への興味のために、暴挙とも言える試みを起こした。
なぜ『落胤』が養父から明かされたのか、そのわけも知らずに。
義輝「・・・なぜだ?」
当然の事ながら今相対している義輝もまた別個の分野の天才でもある。
一分も経ってはいないが、相対している間に少し冷静になったのか、種々の疑問が彼にも浮かんでいた。
藤孝「なぜ・・・とは?」
義輝「・・・なぜ余を裏切る?余に何か落ち度があったとでも言うのか?」
以前重秀に『能無し』呼ばわりされた事も少しは要因なのか、まず己に非があるのか、と義輝は問う。
だが、その疑問は藤孝に大きな失望を与えた。
藤孝(さて・・・問われたいのはそんなことではないが・・・)
なおも藤孝は思案する。己の狙い通りに事を進ませる方法を。
藤孝(ならばもう一度・・・)
義輝の『なぜ』という疑問に答えず、藤孝は持っていた剣を上に構え足を直し、いわゆる『上段の構え』を取る。
義輝(む・・・『上段の構え』・・・これがこやつの基本形か・・・)
藤孝の剣術においての実力が未だ明確に見えてこないこと、そしてなにより己の刀にヒビが入っていることから
義輝の気概は藤孝を『現在の自分と同等、あるいは以上の実力を持つ相手』と認識した。
その後、義輝は姿勢をただし、剣を下に構える、いわゆる『下段の構え』を取る。
長慶(ほう・・・さて、剣術は得手というわけではないが、この場合有利なのは義輝か・・・)
いまだ木陰から機会を窺っていた長慶は、この対峙を『義輝有利』と判断した。
そもそも剣術において実力が上なのは義輝である。まっとうに戦えば十中八九義輝が藤孝を斬るだろう。
だが、それはあくまで『まっとう』に戦えば、の話だ。少なくとも虚実の戦い、心理戦においては藤孝が上である。
だが義輝もそのことは承知しているだろうし、生半可な陽動や揺さぶりでは義輝は恐らく揺るがない。
そういった要因から判断し、長慶は『義輝有利』と判断した。
長慶(気勢の甘い、だが勢いのある方が先に動くか・・・)
いまだどちらも剣の届く間合いから離れている。が、もう二歩ほど踏み込めばまさに『一足一刀、必殺の間合い』へと届くだろう。
その間合いに近づいたのは義輝からであった。下段の構えのまま、じりじりとすり足でわずかに前に進んでいく。
長慶(下段の構えで必殺の間合いに近づくか・・・なるほど・・・足を狙うつもりか?)
長慶がそう思うのも当然であった。全ての動作において、足動は決して欠かせない。
現代で言えば、野球選手はバットを振る際に手の力だけではなく足を重心にして体全体の力を引き出し、そして打つ。
野球と剣は同じ理論ではないが、なににせよ足の動きは体全体の力を引き出すために決して欠かせないものである。
その足を狙うというのは決して悪い戦術ではない。むしろ、戦局を磐石にするための定石とも言える。
それに足ではなくても、そのまま勢いを持ち突き出せば腰に刺さり、重傷を負わせる事も可能だ。
ただし、それはあくまで『相手の攻撃に自分が当たらなければ』という状況での話だ。
義輝が剣を振ろうと動作を示せば、わずかに遅れるものの藤孝も剣を降り降ろすだろう。
たとえ足の一本奪おうとも、上段から飛んでくる剣撃で頭をかち割られてしまっては何の意味も無い。
長慶(なれば義輝、どう動くか・・・・む!)
先に動いていた義輝に気を取られていたが、藤孝も少しずつ近づいている事に長慶も気づく。
互いにすり足でじわりじわりと近づき、必殺の間合いまであと一歩となった時・・・。
まず藤孝が勢い良く剣を振り下ろした。
長慶(ぬ!焦ったか!)
いまだ両者は間合いに入らない。それでは剣が届こうと相手に致命傷など与えられない。
かわされて仕切り直しとなるのが関の山だ。だが・・・。
義輝「しぇや!!」
義輝は一歩も後ろに退かず、下段に構えていた剣をそのまま上に振り上げる。
直後激しい金属音が響き、藤孝の剣は義輝の剣の圧力に負け、また腕ごと上まで戻された。
長慶(ぬう、応じ返し!!下段はそのための布石だったか!)
実際、『上段からの剣閃を下段からはじき返す返し技』を狙える人間などそういるものではない。
しかも、藤孝も剣術の玄人である。それだけで義輝がどれだけの実力者か推測できる。
先ほど長慶が考えた『足を奪うという定石』それを藤孝にも思い込ませるために、義輝は下段を構えたのだ。
そして今、義輝の目的どおり事は成ったのだが・・・。
義輝「ぐっ!」
義輝は下段から剣を振り上げたまま、なぜか怯んだ声を挙げる。直後、すぐに藤孝は後ろに飛びのいた。
藤孝「あまりこの藤孝を甘く見てもらっては困る。その程度、予測はついていた」
長慶(むう!なぜ細川が先に動く!?あのまま義輝が剣を振り下ろしていれば・・・ぬ!?)
必殺の間合いから両者が離れた後、義輝が片手で顔を押さえているのを見た長慶は藤孝が打った仕掛けに気づいた。
長慶(・・・石を蹴り上げたと!?)
長慶の推測は当たっていた。
義輝が剣で剣を弾き返そうとすれば、間違いなく藤孝の剣に目がいく。
ならば視界外の足で石を蹴り上げ顔に当てれば、攻撃のさなかにある義輝が怯むのも無理はない。
もっとも一度不意打ちを受けている義輝が怯むのはほんの一瞬だ。姿勢の問題もあるし通常では避ける事は不可能。
だからこそ、その怯んだ瞬間に後ろに飛ぶため、藤孝は必殺の間合いから一歩離れた場所で剣撃を繰り出したのだ。
・・・下段、返し技、義輝の思惑とその返しの返し、状況からここまで思いつくことはさほどの読みではない。
だが、一歩間違えばそれこそ即死か致命傷という重圧の中、こんな行動を取れる者など通常いるだろうか?
よほどの度胸、そして絶対なる自分への自信がなければこんなマネなど出来るはずが無い。
長慶(なんという胆!なんという自信!あやつ、まことに人間なのか!?)
長慶は思わず驚嘆の声を上げそうになる。が、その直後、長慶にまたも驚きが訪れた。
長慶(義輝・・・あの剣が折れたか!)
耐久力の限界だった義輝の破邪刀は、擦り上げ返しの勢いに耐えられず、ヒビの部分から割れていた。
藤孝(・・・上様の剣が割れたか。どうやら今までの事で少々無理をさせすぎだったようだな・・・)
今の一撃で藤孝の『太刀』も腰が伸びた(反りが大きくなった)が、割れてしまうほど大きな問題ではない。
そしてもう一度、藤孝は腰の伸びた太刀を上段に構える。
藤孝(こうなるとは思わなかったが・・・さて・・・)
そう藤孝が思った時・・・。
義輝「・・・帝に与したか?」
ふと、義輝が一言呟く。
この時、義輝の脳裏に一人の男が過ぎる。
LSDによって己の意志を無くし、己と対峙した井伊直親が。
思い起こしたのは、今の瞬間がその時の状況にあまりにも似ているからかも知れない。
だが義輝には、藤孝が彼や妖刀の男の様に狂ってしまった、つまり『大悪』だとはとても考えられなかった。
己にとっての股肱の臣であるという事もあるのかもしれないが・・・。
藤孝「まさか。我が命、そして意志は己だけのもの」
義輝「左様か」
藤孝「・・・」
義輝「お前の行動、今だ余には不可解・・・だが、余に知れぬ意志は込められているのだろう。
・・・だが余に刃を向けた以上、覚悟は出来ているのだろうな?」
藤孝「愚問。そして『覚悟』というものは決して軽いものではない事も承知」
義輝「ならば是非も無し・・・いや、是こそあり・・・。
余も見せよう。余の生涯に於いて究極無比の『覚悟』を」
藤孝の言葉をそう返すと、義輝が割れた破邪刀を、今度は『中段の構え』に構えなおした。
藤孝(割れ刀で中段だと・・・?)
たいてい動作の端々から相手の心のベクトルがわかる藤孝も、さすがに戸惑った。
割れた刀ではあるが、今の構えは彼等の師『塚原卜伝』を彷彿とさせるのである。
いや、あるいはこの気概こそ藤孝も名前しか知らない義輝の師匠、上泉秀綱の教えなのかも知れない。
とにかく、最初に対峙していた時の義輝の気概をさらに超える、時を止めたような『氣』という物を
今藤孝は身に感じていた。
一里先の針の落ちるさえ聞き分けられる状態とはまさにこの瞬間の事を言うのだろう。
今、義輝が構えているものは割れた刀にすぎない。
だが、藤孝は何か今までに無い一撃、己が耐えられぬ一撃が来る事を予感していた。
つまり、直感的に『次の一撃で己は死ぬ』と藤孝は感じたのである。
そして必殺の間合いにまた互いがじりじりと近づいていった時、不意に義輝は静かな声でまた藤孝に問う。
義輝「今・・・また問おう。なぜだ?」
藤孝「なぜ・・・とは?」
先ほどと同じ言葉が繰り返される。だが、次の言葉は先ほどとは異なったものだった。
義輝「生み出される全ての疑問・・・其に答えよ」
藤孝の望んでいた問い・・・つまり『最初になぜ義輝に手合わせを所望し、わざわざ怒らせるようなことをしたか』
その答えがそれであった。
『落胤』を信じさせるためにはどうするのか?それなりの流れ、とりわけ『嘘のつけない空気』というものが必要だ。
ではどうすればよいのか?そこで藤孝はこう考えた。
股肱の臣である己が叛逆すれば義輝は激怒しよう。だが、己が欲するのは『激情』ではない。
それすらも超えた、人間が持ちうる最高峰の感情『覚悟』が支配する空間なのだ、と。
つまり、その流れを生み出すために藤孝は義輝に斬りかかった。そして、挑発し、誘導した。
そして今彼の筋書き通りそれは成った。
異質の天才細川藤孝の覚悟は、また異質の天才足利義輝が持つ覚悟と混ざり合い、究極の空間を生み出した。
今この場で偽りや小細工は出来ない。いや、先ほどまで義輝が抱いていた怒りも存在しない。
あるのは互いの覚悟だけだ。
この空間、生半可な者では呼吸すら忘れてしまうだろう。
だが、その空間は同時に藤孝にもある種の悟りを引き出すことになる。
藤孝「・・・なるほど。さて、どう答えたものか?」
義輝「・・・」
藤孝「・・・」
しばらく極度の緊張感を保ったまま、言葉はそこで途切れる。
・・・そして不意に口を開いたのは、やはり問いかけられた藤孝だった。
藤孝「世の中には、知ってはいけない事がある。誰とて例外ではない」
義輝「・・・そうか」
藤孝は今ようやくわかった。なぜ養父は『己の血』について知ってはいけないと言ったのか、と。
秘密を知れば明かしたくなるのが人間である。ましてや興味を原動力にする藤孝であればそれはなお当然の事となる。
だが、突飛な秘密を明かすためには信じ込ませるための舞台が必要だ。
この場合はこの手合わせの域を超えた試合ならぬ『死合』だろう。この島でならそれは可能となる。
そして、全てのお膳立てを整えた今、まさに今、藤孝の命は風前の灯となる。
藤孝(父はなぜ話したのか?おそらくこの藤孝を試したのだ。そこまで見抜けるかどうか。だがこの藤孝は見抜けなかった)
命が助かるような状況ならともかく、確実に死ぬような状況ではさすがに藤孝も言うまい。
だが仮に普通の世界で藤孝がその事を漏らしたのなら?間違いなく藤孝に秘密を話した父もまず生きてはいまい。
おそらく藤孝の血については、細川家の最大のタブーの一つなのだろうから。
つまり、父は己の命を賭けてまで藤孝を試した・・・いや、つまり己の命を藤孝に託した事となるのだろう。
藤孝(見事だ、父よ)
養父の本心はわからない。だが、養父と共に生きてきた藤孝はそう判断を下した。
藤孝(こうなれば是非も無し・・・いや、是こそあり!覚悟を越えて見せよう!)
言うなれば、人智を超えた才によって撒いた火種。
その火種を刈り取るため、今藤孝は己の血に込められた秘密を決して明かさぬ覚悟を決めた。
長慶(先ほど細川が飛びのいた距離は、必殺の間合いから五歩程度・・・そして今は四歩と言ったところか・・・。
過程から言えば、先ほどと違いまだ隠し種を持っているはずの細川が有利か・・・だが・・・)
そう、だが今の義輝から発せられる気のようなものは並大抵ではない。
『義輝は何か企んでいる』と長慶も感じざるを得なかった。
長慶(だが生半可・・・いや、どれほどの陽動でも細川は揺るぐまい・・・先ほどとは立場が一転したが、さて・・・?)
義輝と藤孝は、ともに中段の構えのまますり足でじりじりと近寄っていく。
そして必殺の間合いまで後三歩ほどとなった時、藤孝は唐突に口を開いた。
藤孝「・・・父は偉大であった」
義輝「・・・其は晴員か、元常か?」
藤孝「のみならず全て」
義輝「左様か」
そこで会話は途切れた。また互いにじわりじわりと近づいていく。
長慶(必殺の間合いまで残り二歩・・・そして一歩・・・)
その時だった。
突如、周囲の世界すべてを破壊するほどの激しい爆音が響き渡った。
長慶「ぬう!?」
その音に思わず長慶も声を出す。
だが長慶が義輝と藤孝から目を離した瞬間、その爆音を契機にして義輝は動いた。
必殺の間合いまであと二歩。割れ刀ではその距離はさらに広まる。
だが、義輝はそんな常識を無視するかのような超速で突っ込んでいった。
長慶「なんと!?」
そして爆音に気を取られた長慶がまた二人を見た時、そこでは既に勝負はついていた。
義輝は、先ほど藤孝がいた場所に割れ刀を突きつけている。だが、そこに藤孝はいなかった。
藤孝は義輝の側面に、また距離を離した場所に位置していたのだ。
つまり、藤孝は超速の義輝の剣閃をかわしていたのである。
義輝「・・・見事。『一之太刀』をかわすとは・・・お前の腕、これほどまでとは思いもしなかった」
藤孝「見事なのは上様の方。今の一撃の心技体、気概、そのすべてがこの藤孝の予想を完全に上回っていた。
惜しむらくは、刀が割れなければ。そして後一歩踏み込んでいれば・・・」
義輝「・・・あの音に動かされた。あの音が偶然というのなら、それは天がお前に味方した証・・・。
それに今の一撃で『一之太刀』の秘は明かされた」
長慶にはその会話は聞こえなかったが、その次の義輝の言葉はしっかりと耳に届いた。
義輝「・・・もはや、これまで」
この言葉が契機となって、その場に充満していた鬼気は緩やかに流れ出し、覚悟の境地も終消えた。
それはつまり、この二人の『手合わせ』という名の『死合』が終幕した事を意味していた。
その後義輝は何も言わず、持っていた『九字の破邪刀』を後ろに引く。藤孝もまた『太刀』を収めた。
藤孝「では、見事に隠れていた部外者には退場していただきましょう」
藤孝はそう言うと、『九字の破邪刀』の割れた先端部分を拾い・・・。
思いっきり真正面に投げ飛ばした。
先端はそのまま回転しながら飛び、長慶が隠れている木に勢い良く突き刺さった。
長慶「む!」
長慶(・・・ほう。気づかれていたか・・・いや、先ほど声を出したときに気づいたと考える方が自然か)
長慶とて凡人ではない。先ほどの『覚悟の境地』が超人的なものである事も気づいていた。
その空間ならば、爆音の際に己が漏らしたわずかな声でさえ聞き分けても不思議は無いと思ったのである。
長慶(さて、気づかれてはもはや我が策も用いる事は出来ぬ。ここは一時撤退と行こうか・・・)
そう考えた長慶はとっさに身を翻し、また森の中へ消えていった。
藤孝「ほう、長慶は逃げたようですな。なかなか見事な逃げっぷり」
藤孝はそう言うが、これは別に長慶を卑下しているわけではない。むしろその逆である。
藤孝「あやつめ、おそらく化けましたぞ。これはそう簡単に制す事は出来ませぬな。
ところで上様、いつまでそうしているつもりで?」
と、藤孝は軽い口調で、満足と無念入り混じる複雑極まりない表情で空を仰いでいた義輝に声をかける。
義輝「これほどまでに充実した、清清しい気分は、この島に来てから初めてかも知れぬ。
過程はともかく最後の一太刀、あれには憤りも憎しみも何も無かった。
そう、あの覚悟こそが幾多の先人が追い求めた『無我』なのかも知れぬ」
藤孝「ほう」
義輝「・・・だが、余はそのために刀を失った。己の力とも言うべき破邪の力を・・・」
そう言いながら、義輝は簡潔に語りだす。今までの事・・・井伊直親の事や、妖刀の事を。
藤孝「なるほど、妖刀。この藤孝もこの島で見たことはあるが、先ほどの割れ刀がそれと対を成す刀と?」
義輝「おそらく」
その言葉を受け、ふむ、と藤孝は少し考える。が、またすぐ簡単な口調で突飛な事を言い出した。
藤孝「ならばまたくっつくのでは?」
義輝「な、なんだと?」
藤孝「先ほどの話の流れでは、妖刀はまだこの世に存在しているはず。
なれば対を成すものも存在していなければならぬのが、世の常とも言える。
これは理屈ではなく、世の中の流れ・・・というか、決まりのようなもの。そういうものです」
義輝「・・・いかにとくとくと説こうが、割れたものは戻るまい・・・死んでしまった者と同様に。
無くしてしまったものを返らせる事など、余にもお前にも出来る事ではない。つまり・・・」
対を成すものがある、という藤孝の弁が世の道理ならば、死者が蘇らないのは常識過ぎる世の道理だ。
義輝の言う事は至極真っ当な事だった。
藤孝「無理だと?」
義輝「ああ、そうだ。無理であろう・・・違うか?」
藤孝「いや、その通り。無理でございます。死者を蘇らせるなどという事は。
しかし、既に今までの我々のこの島での行動は、常識を超えた『無理』な事ばかりやってきたのでは?」
義輝「・・・それはそうだが・・・」
藤孝「そもそも帝にしても、我々百人をこの島まで運んだのも『無理』があったことでしょう」
義輝「・・・うむ・・・」
藤孝「だが奴らはその無理を超えた。ならば我々も道理や無理を超え、奴等の度肝を抜いてやりませんか?」
義輝「他人事と思いおって・・・」
苦笑しながら義輝は言う。が、藤孝は『心外な』と言った様な表情をし、また饒舌に語りだした。
藤孝「他人事ではありませんよ。貴方が死ねば、この藤孝とてまた困る。
いいですか?貴方が生きて将軍としているからこそ、この藤孝もまた己の研鑽に全力を注ぐ事が出来る。
言い換えれば、この藤孝が先ほど上様の太刀をかわせたのも、また上様のお陰とも言える」
その言葉を受け、ハハハという義輝の笑いが響いた。その後、また落ち着いた表情で義輝が問う。
義輝「三度目の正直だ。なぜか、と今又問おう」
藤孝「ほう。なぜ、とは?」
義輝「茶化すな。余の頸を取るつもりであれば初太刀でも今でも悠々と取れるであろう。
何でも良い。言え。お主の命を賭けた覚悟、その理由を。たとえどのような理由であっても、咎めはせぬ」
藤孝「左様か。では申しましょう。私が命を賭け、そして上様にも命を賭けさせてまで伝えたかった理由を」
義輝「・・・」
藤孝「・・・」
しばし藤孝は考え込み、沈黙が辺りに訪れる。が、藤孝は唐突に口を開いた。
藤孝「上様は甘すぎる」
義輝「ぬ?」
藤孝「そうではありませんか?今、私が生きていることが何よりの証。
主に刃を向けるどころか散々挑発した者など当然。
なぜそれをなさらぬのか?」
義輝「意志の問題だ・・・お前の意志は『人殺しの愉悦』や『天下への野心』というものではない。
帝に与せぬものをなぜわざわざ殺すことがある?
この島でその様な者をあやめる事、それこそやってはならぬ愚行であろう」
藤孝「なるほど。まあこの藤孝も言及はしません。ただし、心には留めておいてもらいたい。
人の話は三割信用し、七割は疑う、という事を」
義輝「む・・・」
藤孝「人は嘘をつく。だが嘘をつくのは決しておかしな事でも、悪い事でもない。
問題は、その嘘が信じるべき嘘か、信じてはいけない嘘か・・・そこにあるのです」
義輝「信じてはいけない嘘・・・それは人を欺き、陥れ、亡き者にしてしまおうとする嘘か」
藤孝「左様」
義輝「・・・」
藤孝「無論、これまでも上様を助けたものはおりましょう。しかし誰であれ、心が揺らぐ事はある。
そして、そのものを疑う事、あるいは斬らねばならぬ事は苦になることも必至。
だが、それをせねばならぬのが上に立つものの宿命」
義輝「・・・それはわかっている。だが」
『だが』という言葉を残した義輝は、そこで一度言葉を途切れさせ、大きくため息をつく。
そしてその後すぐに藤孝の顔を見据え、しっかりと言い放った。
義輝「・・・人を信頼してこそ、得られる信頼もある。余は救いがある人間ならば、一人でも多く助けたいのだ」
藤孝「それも良いでしょう。それも一つの真理。真理は一つというわけではない」
そう言い残すと、藤孝は腰の伸びた太刀をその場に投げ捨て、またどこかへ歩き出そうとした。
義輝「共には来ぬのか?」
藤孝「長慶が気になります。先ほどの音も確かに気になる。
だが、我ら二人でのこのこ歩いていたら長慶に餌を与えるようなもの」
義輝「ふむ・・・」
藤孝「上様はお仲間と合流するおつもりで?」
義輝「うむ・・・お前もか?」
藤孝「・・・そうですな。先ほどの爆音も気になりますが、まあ、おおかた誰ぞの武器でありましょう」
含みを残したようなはっきりしない言葉で、藤孝は肯定する。
藤孝「では、私はこの辺で。あまり一場所に長居するのも好きではないので」
義輝「うむ」
藤孝「・・・ああ、それと」
少し歩いた藤孝が、思い出したように義輝に顔を向け、神妙な面持ちで言った。
藤孝「一之太刀は一撃必殺、究極至高の奥義。外れる事などまずありえない。
裏を返せば、この藤孝がかわせたという事は、あれは一之太刀ではない」
義輝「・・・何が言いたいのだ?」
藤孝「割れ刀の撃が外れるは道理過ぎる道理。あまり気にやむ必要はない」
それだけ言うと、また藤孝は森の中へ消えていった。
義輝「甘すぎる、か・・・」
藤孝が去った後も、しばらく義輝はその場で佇んでいた。
将軍としての気位は持っていたつもりだったが、あるいはそんな甘さはあったのかもしれない。
確かに『しめし』という点では、ここは藤孝を斬らねばならかったのかもしれない。
だが、それは通常の場合だ。この様に狂ってしまった島の中で、なぜそんなことをしなければならないのだろう。
力を持つものを、何より、帝に与したわけでも、天下を狙っているわけでもない人間を斬るということを。
義輝「いいや、藤孝よ。お前は自分しか見ていない。皆が皆お前の様な人間ばかりではないのだ。
人は時に迷う。それを、利と力、そして情によって先導していかねばならぬのが・・・将軍なのだ」
人に対する疑いは伝染する。そしてそれはそのうち、皆を疑心暗鬼に陥れるだろう。
その不協和音は、帝に向かう者達にとってあってはならない事だ。
義輝「お前が正しいか、余が正しいか。あるいはどちらも正しいのか、はたまたどちらも間違っているのか。
それはわからん・・・だが、余は初志を貫徹するのみ」
初志をまた口にした義輝は、木に刺さった九字の破邪刀の割れ端を取る。
そしてそれを己が刺さらないように持つと、刀に語りかけるように呟いた。
義輝「砕けたのも、まだまだ余が未熟ゆえ。許せ。だが、我が心は決して折れぬ」
そして、また義輝は切れ端を持ったまま、先ほど爆音がした方向へと向かう。
その音は、彼にとって信頼足りえる者達が起こした『トラックの爆発』であることを、まだ彼は知らない。
彼がその道を進むのも、あるいは割れた破邪刀が示した道だったのかもしれない。
そして歩く道筋の途中で義輝は藤孝を思い出す。
義輝「・・・父は偉大であった、か・・・あるいはあ奴、己の血の事を漠然ながらも知っているのか・・・。
であればこそ、あ奴は余にあのような態度を取るのやも知れぬな」
そう呟くと、義輝はすこし呆れたような、しかし濁りの無い笑いを残し、また歩き出した。
足利義輝、細川藤孝、三好長慶。
死するが当然のこの『手合わせ』で、この三人は傷一つ負わなかった。
それを成したのは、義輝の威厳か、藤孝の誘導か、卜伝の教えか、長慶の存在か。
はたまた、互いに知ってはいれども明かす事は無かった奇妙な兄弟の縁がそうさせたのか。
あるいは、いまだ成すべき事が残るこの三人の早すぎる死を、超越的な何かが許さなかったのか。
その答えもまた、覚悟の境地の先にあるものかもしれない。
【11番 足利義輝 『九字の破邪刀(破砕)』『梓弓(4隻)』『グロック17C(残弾16発)』】
(3-E森地点から爆発したトラックの元へ移動予定)
【83番 細川藤孝 『備前長船』】
(3-E近辺、なんとなく利家&上条を探すが、他に面白いものがあればそれに向かう)
【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢10隻)』『青酸カリ』『寸鉄』】
(行方は不明、目的・義輝と藤孝暗殺に変わり無しだが、誰に対しても殺意と警戒十分)
本部の暗い一室で、相変わらずオルガンティノは考え事をしていた。
オルガンティノ(以下オル):
(奴をこの部屋に引きずり込むこと・・・それ自体は容易い。
僕の計画通りなら、僕が彼に恨みを抱いているように、彼も僕に恨みを抱いているはずだ。
だから彼は僕を見た途端、喜びと復讐心に満ちた目でこの部屋に入ってくることだろう。
だがその後の計画は・・・ん?)
ギイィと重い扉が開く音がした時、彼は考える事をやめた。
オル「珍しい事もあるものですね。大した間も無く、この部屋に二人も訪れるとは・・・何用ですか?」
オルガンティノは眼が見えないため、誰かまでは声を聞くまで判別できない。
だが、一応彼は物腰穏やかな口調で扉を開けた人物に声をかける。
もっとも、そう声をかけた時も、決して警戒は止めなかったのだが。
オル(さて、まさかフロイスではないだろうし、先ほど訪れたロヨラさんとも考えづらい。となると・・・)
だが、彼が頭の中で人物を特定する前に、あまりにも特徴ある声・・・というか音を彼は聞くことになる。
?「ドゥンドゥンドゥンドゥンドゥン♪ドゥンドゥンドゥンドゥンドゥン♪」
扉を開けたその男は、鼻歌と共に奇妙な歩き方で部屋の中に入ってくる。
もっともその歩き方まではオルガンティノも見えてはいないが、もう既に鼻歌の一小節目で彼は人物を特定していた。
オル「・・・ヴァリニャーノさん、浅井長政の褒美に行ったのでは?」
ウンザリしたような口調でその名前が呼ばれた時、鼻歌はピタリと止まった。
ヴァリニャーノ(以下ヴァリ):
「『その鼻歌、マイケルジャクソンのスリラーですね』ぐらい言えよ。付き合いがいのない奴だな、お前」
ヴァリニャーノと呼ばれた男は『やれやれだぜ』と言ったポーズを取りながら、口を尖らせる。
だがオルガンティノは至極興味なさそうな、ぶっきらぼうな言葉で返した。
オル「それで結構。そんな事より、浅井長政への褒美はどうしたんですか?」
『この部屋からとっとと出て行け』と暗に示すオルガンティノの言葉を、事も無げにヴァリニャーノはかわす。
ヴァリ「いや、それがさ。ロヨラに止められちゃったんだよね。アイツ行くってよ、名前忘れたけど。
で、暇つぶしにどっか行こうと思ってたんだけど、なんか皆いないのよ」
オル「当然です。今は忙しいでしょう」
『僕もね』と言おうとしたところでオルガンティノは留まる。何が忙しいかと問われては答えられない。
少なくともこの男は『考え事をしているから』という理由では引き下がりそうに無い。
こんな男に対し言葉に詰まってしまうのは、己を天才と称するオルガンティノには耐えられない恥だった。
ヴァリ「あー、そうだよな。トラック襲撃から皆忙しそうに動いてるし。みんなやるじゃん、頑張るじゃん。
まあ俺は時代を超えたスーパーヒーロー『マイケル・ジャクソン』聴けるぐらいヒマなんだけど」
オル「はあ、そうですか」
『誰もお前に期待してないんだよ』という侮蔑をオルガンティノはぐっとこらえる。
オル(いや、こういう手合いには何を言っても無駄なんだ。だって馬鹿なんだから・・・)
そんな心など当然知るはずもなく、ヴァリニャーノは物珍しそうに部屋の中を眺める。
やがて彼は、部屋に備え付けてあるモニターを眺めた。
そのモニターの画面は分割されている。いくつかのエリアか、参加者を同時に移しているのだろう。
四つに区分けされた画面の一つには爆発後のトラックが、一つには誰とも知れない腐乱した死体以外に何も無い山中が。
一つには、生魚を手に持ったまま口にすることを躊躇っている前田利家が。
最後の一つには、草の根をかじっている吉良親貞が映し出されていた。
『草の根かじり泥水すする』を地で行っている親貞を見て、ヴァリニャーノは感嘆の声を上げた。
ヴァリ「やるじゃん」
オルガンティノは無視を決め込む。
ヴァリ「ところでお前、モニターとかその目でわかんのか?」
オル「耳で。わからないところは内線かなにかで作業員に聞きます」
ヴァリ「ふーん。やるじゃん」
ヴァリ「ところでお前、この残り13人の参加者達の中のただ一人の生き残りに賭けるなら、誰に賭けるよ?」
モニターの中をしばらく興味深そうに眺めていたヴァリニャーノが、唐突に呟いた。
オル「・・・なぜ急にそんな事を?」
ヴァリ「さあ・・・まあ、強いて言うなら偏屈トップクラスのお前の視点は誰なのかっていう興味だな」
オル「偏屈なつもりなんてありませんが」
ヴァリ「いいから答えろよ」
オル「はあ」
答えたいわけではないが、答えたくないわけでもない。
そう考えたオルガンティノは、無意識に両目の傷を手で覆い、静かに答えた。
オル「生き残り、ではなく生き残ってもらいたいというなら・・・吉良親貞・・・ですかね。
少なくとも僕に会うまでは、彼には死んで頂きたくはない」
ヴァリ「ふーん」
部屋のモニターを眺めながら、ヴァリニャーノは『予想通り』と言ったような顔をする。
ヴァリ「そりゃあお前にとっては大切な目の仇だからな」
オル「目というか・・・自分の仇というか・・・そんなものです」
モニターの中には今だ草の根をかじる吉良親貞が映し出されていた。
ヴァリ「しかしすげえ根性だな、コイツ」
オル「恐ろしいと思いますよ。生を欲するのはこの島では決して珍しくはありませんが
彼は病に侵されている分、その欲望・・・というか執念が人一倍ずば抜けて強い。
それだけ人一倍、死というものを身近に感じているのでしょう。
いうなれば、ナイフで身体を少しずつ削られていってる様なものですからね」
その吉良の事を、オルガンティノは『恐ろしい』とも感じ、また『醜い』『無様だ』とも感じていた。
『己の分を超える大金を賭け、必死で神頼みする人間』を見ている時に生まれる感情、といった感じだろうか。
人間なら誰でも持つ黒い感情がそう思わせたのだろう、とオルガンティノは己を分析した。
この島に100人が連れだされるより前のことになる。
宣教師達は『余興促進のための協力者』を作り出すために数人の人物に接触した。
顕如や三好長慶ら、朝比奈の言葉を言葉を借りるなら生粋の『天皇の狗』と呼ばれる者達である。
そういった人物と交渉する役目はオルガンティノやヴァリニャーノにも与えられた。
オルガンティノが割り当てられた人物は、『吉良親貞』であった。
病に悩む吉良親貞なら協力するだろう、と誰もが信じて疑わなかった。
だがその予想に反し、帰ってきたオルガンティノは目の刀傷から血の涙を流し恨み言を叫んでいた。
その時何があったのかは誰も知らないし、オルガンティノは今でもその時のことは決して話そうとはしない。
おおかた、吉良親貞の逆鱗に触れたのだろう、というのが全員の一致した見解だった。
だが、『出来て当たり前』を失敗し、視力を無くしたオルガンティノはその時からこの部屋に閉じこもる。
そして彼は不眠不休で恨み言を吐いた。時には激しい怒声もあったし、消え入りそうな声で泣くこともあった。
部屋からの怒声が聞こえるもあったし、壁に何かをぶつけるような鈍音が響く日もあった。
恐怖や侮蔑から、誰もその部屋の扉を開ける事は無かった。
そしてそれが一週間ほど続き誰もが慣れた頃、あくびをしながら部屋の前を通りがかったヴァリニャーノはふと足を止めた。
今日は怒声も罵声も怨声も鈍音も聞こえない。
無音なのはその日が初めてではなかったが、なぜかいつも以上に好奇心と恐怖心を煽られたヴァリニャーノは、勢いよくドアを開けた。
そして開けた瞬間だっただろうか、開ける前だろうか。唐突に穏やかな声がヴァリニャーノを迎えた。
オル『おはようございます。素晴らしい一日の始まりですね』
部屋の中心には、こびりついた己の血で顔から胸元にかけて真っ赤に染められたオルガンティノが笑顔で立っていた。
そしてその後余興が開催された時、吉良親貞は帝側の人間となり、北条高広と組み甘粕景持を間接的に殺害した。
ヴァリニャーノがモニターを眺めて数分経った時、不意に彼は思いだしたかのようにつぶやいた。
ヴァリ「ミルクティー飲みてぇ」
オル「この部屋には水道しかありません。ミルクティーを飲みたければどこかよそを当たってください」
ヴァリ「そうか・・・まあ、いいか。お前と話してても面白くねーし」
オル「・・・」
もともと互いに友人でもない。不躾なヴァリニャーノと被選民意識が強いオルガンティノ、互いに遠慮など微塵も無い。
ヴァリニャーノはすぐにドアの方に歩を向けるが、彼はまた不意に思いだしたかのようにつぶやき、オルガンティノの方に向きかえる。
ヴァリ「あ、そういやそうだ。一つ聞きたいことがあるんだけどよ」
オル「なんですか?」
ヴァリ「単刀直入に聞くぜ。お前、吉良親貞が『島に来る前に』何かしたろ?
じゃなきゃあ。宣教師の目を斬っちまうような人間がその言いなりになるなんて考えられないからな
オル「いいえ。吉良親貞には何もしていませんよ。彼自身には」
ヴァリ「だがあのガキの人格っつーか『本来持っている何か』を変えちまうような事はした・・・そうだな?」
オル「はい」
ヴァリ「だろーな」
オル「いけない、と?」
ヴァリ「いや、ロヨラやザビ公がどう言うかはともかく、オレ様的には別にどーだっていいさ。
ただ、人様の人生を思い通りに変えちまうような八百長をした野郎は
どーなっても文句が言えねえ事を覚悟しとけよ」
オル「つまり?」
ヴァリ「自分で撒いた火種は自分で刈り取れって事だ。
あんなガキなんぞオレ様は三秒ありゃ十分だが、オレ様はてめえを助けねえ。
人様の人生変えたなら、てめえの力で刈り取っとけ。そういう事だ」
オル「今さら何を・・・もとよりそのつもりです。そのために僕は彼を待っている」
その言葉を背中で受けながら、ヴァリニャーノはかすかに鉄の匂いがする薄暗い部屋を出て行った。
ヴァリ「人様の人生変えちまう八百長野郎は、どうなっても文句が言えねえ」
部屋から出て廊下をしばらく歩いた後、彼は己の言葉を再確認するようにふと呟いた。
思い返せばなんと皮肉な言葉だろう。
この殺し合いが開催されなければ、散っていった戦国武将達も元の世界での生き様や死に様を見つけていたことだろう。
人様の人生を変えているのは紛れも無い自分達なのだ。
ヴァリ「やるじゃん」
彼はなんとなく通路の電灯を見て、己の口癖を呟いた。
ヴァリ「あと13人か・・・ちょいと『BAD』な数字だな。さて、不幸なのは日本人どもか、それともオレ様達か」
通路の途中で立ち止まり、右手の人差し指をこめかみにあてながらそう呟くと、ヴァリニャーノは目をつぶり考え出す。
ヴァリ「ま、そろそろ日本人どももこの場所に気づく頃かも知れねえな。
やっぱり『誰だって鬱陶しいものは根元から絶とうとする』しな」
彼は耳にイヤホンを当て、何かのボタンを押す。
ヴァリ「やっぱり、お小言は聞かなくてもこれだけは聴かねえとな」
マイケルジャクソンの『BAD』を聴き軽快なステップを踏みながら、彼はまた建物のどこかへ歩いていった。
【残り13+1人】
33 :
苦渋の決断:2005/06/18(土) 01:54:05
爆音の轟く方角を、フロイスは森の中にそびえる一際高い樹に登って確かめている。
辛うじて体重を支えていられそうな太さの枝に立ち、片手で幹に掴まると、空いた手を眉の上にかざすといった格好で煙の流れる遠方に目を凝らす。
樹の上は高く、時折強い風が吹いて足元を揺らしていく。だがフロイスはその不安定な足場でぐらつく事も無く、ひどく安定した状態でしばらく様子を見やっていた。
そのうちに幹に掴まっていた手を離すと、身軽に飛んで下で待つ信長の脇に降り立った。
信長は腕組みをして、目を瞑ったまま樹に身体を凭れ掛けている。フロイスが上から飛び降りてくると、静かに目を開けて顔をそちらに向けた。
「駄目ですね。この森の中じゃ他の樹が邪魔をして、遠くまでよく見渡せません」
「・・・・・・」
爆音の正体が気にならないのか、はたまた既に本部に居る帝の方に気が行ってしまっているのか、信長は興味の無さそうに頷いただけだった。
反対にフロイスの方は何が起こったのか図りかねている様子で、少しそわそわとして落ち着きが無くなっている。
そのフロイスが、信長の態度に少しムッとしたように、
「気にならないんですか?また人が死んだかもしれないんですよ」
と言って、信長を非難するような目で見た。
「俺には関係ない」
それに対し、信長はフロイスに非難されても意に介する様子は見せず、ただ一言だけ冷たく言い放った。
フロイスにはその信長の無責任な態度が許せなかったが、ここで言い争うことの無意味さを感じて、敢えてそれ以上の苦情がましいことは言わなかった。
だが当然腹の中では良くは思っておらず、信長を罵りたい気持ちと、今すぐにでも爆発現場に駆けつけたい思いで一杯だった。
「パードレ、貴様つまらんことを考えて目的を違えるなよ。貴様は余計な事をせず、さっさと本部とやらに俺を連れて行けばいいのだ」
信長はそんなフロイスの心中を見越してか、しっかりと釘を刺した。
フロイスは歯噛みをして駆け出したくなる衝動を抑えていたが、やがて、
「・・・判った、そうしよう。帝やロヨラ達を止めることが先決でしたね」
と、意を決したように言った。
帝やロヨラ達を止める事が、延いては無駄な人死を出させない早道だと悟ったのだった。
「そうとなれば急ごう、信長さん。ボクらは一刻も早く彼らを止めなくてはならない」
そう言うと、フロイスは信長に自分の荷物を持つように指示し、自身は先に立って道案内を買って出る。
そしてそのままほとんど走り出すようにして樹林を抜けて行った。森の中にも関わらず、その速さは平地を走るのとなんら変わりは無かった。
信長はそのフロイスの後ろを何の問題も無く、平然として付いて行く。
森は一層深くなり、既に燃えたトラックから上がる黒煙は見えない。
【27番 織田信長 『ベレッタM1919(残弾7発)』『相州五郎入道正宗』】
&【∞番 ルイス・フロイス 『ベレッタM92FC(残弾15+1)』】両者3-E森から4-Eへ 目的:本部への潜入
【残り13+1人】
35 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/06/25(土) 22:37:07
保守
36 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/06/26(日) 16:08:24
age
37 :
四日目昼の放送:2005/06/29(水) 23:05:24
――・・・ザー、ガガッ
参加者諸君、四日目昼の放送です。
今回は帝が多忙ということもあり、私、ロヨラと申す者が代わりを務めさせていただきます。
たぶん次の放送ではまた帝のお声を聞くことが出来るでしょう。安心してください。
ではまず、食料配布の件からいきます。
前回同様、今回も配布場所は一箇所とします。場所は3-Cトラック到着地です。
一応人数分は用意しましたが、早い者勝ちですのでお急ぎを。
そういえば、前回は手違いで生魚を入れてしまったようで大変失礼しました。
さて、次に死亡者を読み上げます。今朝から昼にかけて死亡した者は次の五名です。
07番浅井久政、80番北条氏政、100番和田惟政、71番長坂長閑、09番朝比奈泰朝
これで残りは13人、皮肉にも不吉な数ですね。もっとも、すぐに減っていく事になるでしょうが・・・。
それから一つ報告があります。我々が島中に放った狼が、諸君らの手にかかり一頭残らず殲滅されてしまったようです。
あの凶暴な生物共を屠るとは、さすがにここまで生き残ってきた方達だと帝も誉めておいででした。以後もこの調子で励んで下さい。
それでは諸君、健闘を祈ります・・・。
ガガガッ、ブツン・・・――
刹那、三人は突然足を止めた。視線の先に、何かしらの気配を感じたからだ。
初見の親泰には非現実的な光景だったが、幾度と修羅場を重ねてきた三人にとっては慣れたものだった。
先頭に立つのは景虎だ。左手に傷を負った重秀を後方に庇い、十文字槍を携える。昌景も親泰を庇うように前に立つ。
「すまねえ」
この二人ならどんな者が相手でも大丈夫だ。そんな確信と信頼故、重秀は指示通り親泰と共に後方にて退いた。
「童を護るのはお主の仕事ぞ」
「了解了解」
「昌景さん、これを!」
虎徹を差し出す。扱いづらい斧より、使い慣れた刀の方が戦いやすいことくらい親泰にもわかる。
戦闘で力になれない自分の想いを、剣を渡すことにより子供だてらに晴らそうとしているのだった。
「ありがとう。お陰で存分に腕を奮える。重秀、これを」
親泰の頭に優しく手を添え、重秀に斧を渡した。
「任せろ。こっちの心配はするな。存分にやってこい」
昌景は頷いた。両手には細身のフルーレと名刀虎徹の奇妙な二刀流が出来上がった。
景虎と昌景は視線の先を一瞥した。
相手も痺れを切らしたように唸り声を上げ、とうに戦闘態勢に入っていた。生い茂る叢や木々の間からこちらを睨みつけ今にも襲ってきそうな様子である。
「6匹だ!気をつけろ」
後方から重秀の声がした。その声は悔しさを含んでいたように思えた。
今まで自ら積極果敢に修羅場に身を投げてきた重秀にとって、左手の負傷如きで戦闘に参加出来ない歯痒さは筆舌に尽くし難い。
「心得た。お主なら片腕のみでも斧なら扱えるだろう。後ろは任せた。」
「ああ、わかってるよ。今回は子守で我慢するか。なあ、小僧!わっはっはっは」
いつもの豪快な笑い声だ。元来単純な性格の持ち主である重秀だ。信頼を寄せる昌景の一声で簡単に気持ちの整理がついたのだろう。二人は安心して後ろを預け、迫る狼の群れを迎えることにした。
牛ほどの巨体の数々があろうことか集団になり、恐るべき速さで突撃する。それは燃え盛る炎の如く勇ましく、そして恐ろしかった。
大きく裂けた口からは、唸り声おぞましく。その牙は大木すらも喰い千切り、爪は鉄をも貫きそうである。
――そのときからその場は混沌の世界へと導かれた。
6匹全ての狼が、その他の何もかもに目もくれず先頭に居た景虎のみを目掛け突撃したのだった。
しかし景虎は全く動かない。表情も全く変化しない。武器も構えない。
狼達がそんな好機を見逃すはずはない。腹を空かせ血肉を欲する獣達の涎と唸りが大きく開かれた口から零れた。
集団になった狼は、容赦なく景虎に向かって
走る!
疾る!
迫る!
景虎はもう眼前だ。しかし依然として景虎は何もしない。動かない。
景虎が臆したようにはとても思えなかったが、巨大な黒い物体が恐ろしい勢いでこちらに迫り来る。常人なら為す術も無く運命に飲み込まれるだろう。
(なにやってやがるんだ!)
重秀は、迎撃どころか何の動作も見せない景虎に向かって目一杯怒鳴りつけてやりたかったが、瞬間的なことなのでその思いが音になって景虎に届く前に一つの区切りが出来上がった。
片鎌槍を握っていた右手はそのままに、がら空きの左手で拳を集団の先頭に居た狼に見舞った。
―――グシャッッ!!!
何かが潰れるような嫌な音が当たりに響く。親泰は咄嗟に耳を塞いで重秀の胸に顔を埋めた。あまりのことに驚いたが冷静さを無理矢理意識し、その壮絶な惨劇を見せないほうがいいと判断した重秀は、親泰を庇うように後ろで護った。
そして重秀が景虎へと視線を戻したとき、既に狼の半数はこの世の者ではなかった。
動きを見せない者を恐れをなしたと解釈、勝利を確信し油断に溺れた狼だったが、景虎の拳によって先頭の狼の鼻頭は粉砕され、顔面まで破壊された。そのままその地に崩れ落ち絶命。
それが壁となり後方の者達も足元をすくわれる形となったが、転倒する前に景虎の、今後は恐るべき速さと腕力による槍の一撃によって頭を貫かれ、更にその槍先はその後ろの一匹にも及んだのだ。
(・・・強さの次元が違いすぎる・・・)
重秀が僅かに視線を逸らしたその瞬間にこれだけのことが出来る景虎……、気づいたときには既に牛程の大きさもある狼が二匹、いや二頭が揃いも揃って片鎌槍に串刺しとなっていた。
だが、同じ修羅場に居た昌景はそれに動ずることなく瞬時に両脇の二頭を亡き者にしていた。
細身のフルーレは攻撃の役割を担い、心強い名刀虎徹は防御の為に構えられていた。
世に名を知れた名刀と言えど弱き者が手にすれば、優れた武具に溺れ、己の力を過信させ未熟なる者の心を腐らせるものである。
そして、頼りない鈍らでも、凄腕の者が握れば忽ち恐るべき切れ味を発揮する。昌景が攻撃用に選んだフルーレが正にそれだった。
細身で軽く、非常に扱いやすい反面威力に欠ける。しかし昌景は数を打ち込むことでその難点を回避した。
止め処ない流星の如く、目にも止まらぬ昌景の容赦ないその剣戟は、狼を見る影もなく刻んだ。一瞬にしてその場には5体もの、生き物だったそれが散らばっていた。
獣の本能が作動したのだろう。残った一頭は到底適う相手ではないと判断し、すぐさま翻しその場から逃げ去ろうとした。
直後、その一頭の体には斧が突き刺さっていた。
「逃げたってどうせまた、他の奴らを襲うだろうが」
「ほう…、あの大きさを手斧として扱うか…」
「まあ、黙って見てるのも癪だしな。はっはっは!」
こうして四人は窮地から脱した。そして当面の目的であった空腹を満たす為、再び配布地点を目指し歩いた。
また穏やかな時間が訪れたが、何せこの島自体が非現実的なのだ。自らそれを認識しようとしなければ現実的と捉えることはあまり出来ないだろう。
だが今回のように度々巻き起こる修羅場が、非現実的なこの余興を現実的なものとして呼び覚ます。
そして定石通り、やはり穏やかな時間はそう長くは続かないのである。
管理側による放送である。
――ザー、ガガッ
突然鳴り響く恒例の機械音に四人は足を止める。全員が表情を緊迫したものへと変化させる。
帝の声ではない。前に一度、聞いた覚えのある声だ。昌景と重秀は顔を見合わせた。トラックを襲った直後の、あのときの声だ。
食料配布地点が発表された。今度は3-Cだそうだ。やはり色々ありすぎた為、出遅れてしまったようだ。
そしていよいよ、死亡者の発表である。
四人はただ黙って、意識を聴覚へと研ぎ澄ました。
・・・浅井久政
浅井家当主も遂に逝ったようだ。
・・・北条氏政
景虎の表情が少し歪んだように見えた。
・・・和田惟政、朝比奈泰朝
聞き逃さんとすべく、神経を集中させる。
そして遂に、
・・・長坂長閑
―――長坂長閑・・・
(そうか・・・、遂にノドカ殿も・・・)
昌景はその場に崩れ落ちるのを耐えることしか出来なかった。
先ほど自分達が亡き者にしたせいだろうか、狼は殲滅したようだ。だがそんなことはどうでもよかった。
これでとうとう、あれだけ大勢居た武田家の生き残りは、自分ひとりとなってしまった。そして、親友であり良き理解者だり、掛替えの無い幼馴染をもう一人、失ってしまった。
「ノドカ・・・、そうか、さっきの姉ちゃんか」
「度々すまぬ。生きて帰ろう。必ずだ」
重秀も景虎も気づいていた。昌景がこみ上がってくる爆発しそうな感情を必死に堪えていたことに。親泰も、その様子を悲しげに見つめていた。
「お前にも心配かけて、ふふふ、某もまだまだ未熟であるな。人が死ぬということは悲しいことだ。だれも歓びはしない。だから親泰、お前も生きて帰るんだ」
昌景の瞳は、いつもの優しいそれに戻っていた。
「はい!」
親泰はそれを確認すると、また元通りに昌景の傍らに寄り添って歩いた。
昌景は静かに怒った。ノドカや仲間たちをこんな狂った場所へと招待した管理者達に。
「ああ。ハナからそのつもりだ。共に生きて帰るぜ昌景サン!」
【44番 香宗我部親泰 】
【29番 飯富昌景 『長曾禰虎徹『フルーレ』】
【58番 鈴木重秀 『USSRドラグノフ(残弾4発)』『SBライフル(残弾14発)』『オーク・Wアックス』】
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『十手』】
全員2-E
3-C食料配布地点を目指します
「そこにいるのは誰だ?」
暗闇にひっそりと、しかし確実に蠢いている影に向けて、私の声が響く。
上も下もなく、右も左も無いこの暗闇で動く物と言えば私の体と、そしてそいつだけだ。
数秒何かしら考えていたのか動きが止まったが、さほど焦らす事無く、そいつはゆらりと一歩前に踏み出した。
「・・・嘘だろう・・・?」
通常の人間の体と違い、ロドプシンの精製が恐ろしく早いこの眼には、そいつの手が、足が、そして被り物をした顔がはっきりと見て取れた。
「義賢公・・・?」
眼に精気はなく、一言も喋ろうとしないが、そこにいたのは紛れも無い六角義賢その人だった。
ゆらり・・・。
義賢の左右の暗闇がまたゆらりとゆれて、新たな人影が現れる。
義賢が現れた時から、予想はしていた。
していたが、今ほど、はっきりとそいつらの姿を捉えているこの眼を疑いたくなったことはない。
鉄パイプを握り締めた石川数正、そして、あの銃を斧のように握り構えた武田晴信。
私の中で一瞬世界が止まった。
―在り得ない。こんな事があってたまるものか!
―しかし、今までに何度、ありえないような話が覆った?
二つの声が私の心の中で澱み、渦巻き、鬩ぎ合いながら、私の思考を余す事無く満たしていく。
するとやにわに、三人がそれぞれの武器を手に攻撃を繰り出してくる。
私は相克する二つの声に戸惑っていたのもあるが、あえて避ける事無く、甘んじてその攻撃を全て受けた。
銃も弓も関係なく、原始的な『叩く』という行為に走るその三人の今にも消え去りそうな存在とは裏腹に、その痛みははっきりとしたものであった。
その痛みで一つの結論を導き出した私は一気に覚醒し、腰に帯びていた小烏を抜き放ち、そのまま円運動で左手にいた数正に切り付ける。
抜き放ちざまの一撃は急所にあたる事こそなかったが、鉄パイプを握っていた数正の右腕を斜めに切り落とす。
いくら、急所を外れたとしても、手首の動脈を切られてパニックに陥らない人間は居ない。さらに言うなれば、失血によって死に至らしめる事も不可能ではない。
だが、当の数正は何事もなかったように、血を撒き散らしながらも、右手一本で両断された左手がくっついたままのパイプを振り上げる。
その攻撃を半身を捻るだけで紙一重分でかわす。空振りした鉄パイプは私の足元を大きく揺らしながら、ようやく筋肉の弛緩した左手をその震動で、私の足元に転げ落とした。
転げ落ちた数正の手が動かなくなるのと同時にもう二人の影が一斉に動き出す。
晴信の銃をひらりと受け流し、義賢の弓を弦ごと一気に切捨て、空いていた左手で腰の匕首を素早く抜いて、それを義賢の胸に勢いよく突き立てる。
続いて、後ろから私の後頭部を狙った鉄パイプを、音で感じて大きく体勢を下げてこれもかわす。
そのまま、超下段から繰り出す足払いで鉄パイプを振り切ってバランスを崩しかけている数正を引き倒す。
そこに晴信の振り回す銃身が私の背中を打ち据えんと迫り来る。
しかし、焦る事無く冷静にその軌道を読んで、その軌道を左手の甲で変えて、立ち上がりざまに残った右手で渾身の拳撃を晴信の顔面に打ち込む。
めり。と軟骨の砕ける嫌な音がして、晴信の顔に私の手がめり込む。
そこで、立ち上がりかけた数正を警戒して、一旦間合いを開け、二人から離れてよくよく状況を確認する。
幸いな事に義賢はあの一撃から立ち上がる事は無い。
だが、無理な体勢から引き倒されて腰やらをしたたかに打ち付けているはずの数正は勿論、顔面を砕かれた晴信はぴんぴんしていた。
直後に、二人がこちらに駆け出してくる。
それに対応して、こちらもすらりと小烏を抜き放つ。人間離れした二人にもはや、手加減は出来ないと考えてのことだ。
先ほどまでの三位一体となった複雑な動きとは裏腹に今この瞬間においては二人同時に切りつける事も出来うると思えるほど、その動きは単純だった。
そして、事実そうなった。
抜き放った刀をそのまま数正の胸に向けて刺突し、もう一度振りかぶって、晴信の銃身での攻撃をかわした刹那に、晴信を一刀両断にした。
動かなくなった三人に黙祷をささげ、静かに口を開く。
「そこにいるのは分かってるんだ、いい加減出てきたらどうだ?」
先ほどの亡者の続きか?と思われたその影は暗闇の中から徐々にはっきりとした形を成して行き、手を伸ばせば届く所ではっきりとその顔が見えるようになった。
逆にいえば、そいつがそこにくるまで、私は動けなかった。
「どうした、俺に出てきて欲しいんじゃなかったのか?お前」
口調も雰囲気も全く違う、しかし、その姿形は正しく私自身だった。
まるで彫像にでもなったかのように声がでず、微動だにできない。
「何だ、さっきまで3人もの亡霊を一瞬で倒したってのに、俺が出てくるだけで動けないのか?」
認めたくは無いが、その通りだった。先ほどまでの三人は、私の罪の意識から来る夢だと考えればまだ辻褄があう。
しかし、私自身がそこに出てくるとは考えもしなかった事だった。
「お前、一体・・・?」
意識せず、漏れるように私の口が言葉を紡ぐ。
「一体も何も、お前が思っているように捉えてくれて構わない。所詮、今のところお前と違って俺には実体がないから、その問いは無意味だ。」
まぁ言うなれば悪夢だな。と付け足しながら、奴は足元に転がっていた、3体の動かぬ人間の一人を無造作に蹴り転がした。
私に胸を貫かれ、うつ伏せに倒れていたそいつは、奴に蹴りころがされてその姿をあらわにした。
「・・・っ!!」
奴が現れた時以上の驚きが私の身に電撃を走らせ、私の眼球を、口を、そして心臓をも硬直させた。
―嘘だ。
私に胸を貫かれたそいつは、いつの間に入れ替わったのかノドカの死に様を完璧に再現していたのだ。
いや、何時の間に入れ替わったのかと言う考えはナンセンスだ。これは夢だ。そうでなければ在り得ない。
「ほう、夢だと言い聞かせ、自己欺瞞によって、罪の意識でその心が潰れるのを防ぐか・・・だがな、この光景はお前の記憶から再現して見せた物だ。つまり、おまえ自身が認めている事だ。」
「利いた風な口を!私は・・・」
『私は・・・』―その先を言い出す事が出来なかった。
その様子を見てけたけたと奴は嗤う。
「その先は言えまい?お前の中では罪の意識から来る死への憧憬と、自己を正当化して生きようとする生への執着が矛盾を成しているはずだ。」
奴は私が何も言い返せないのを見て、足元に転がっていた義賢の死体から匕首を引き抜き、それをノドカの胸に刺す。
「貴様!」
私が叫んで、威嚇しているにも拘らず、そのまま何度も何度もノドカの胸をそいつは刺し貫く。
「お前は何かと理由を付け、生きたがり、何かと理由を付け、逝きたがる。もののふの道を地で行っているように見えて、その実は矮小な男だ。」
と、奴の口が止まる。それにやや遅れて、合口を握っていた奴の手がごろりと転がり落ちた。
「それがどうした。物事の存在を考慮し、苦悩して生きていくのが人間だ。そして、俺は今お前という存在を許さない。」
そいつは落ちた手を拾う事なく、足で踏み潰して、匕首を構える。
「同感だな、俺もお前の存在を全否定してやる。―いや、否定してやりたいとこだが、もう時間がないな。」
「逃げるか!?」
「いいや、一時的にお前の中に退避するだけさ、お前が生きている限り、私は何処にも行きはしない。」
そして、追いすがる私を見る事もなく、暗闇の中へ溶け込んで消えた。
「何故なら私は、お前の空蝉(うつせみ)、お前の忌みし者、そしてお前の血の祖なのだからな。」と言い残して。
枕元にある悪夢から逃げるかのように、がばっと起き上がる。洞窟の入口の方から細い光がさしていた。
あの洞窟の中でノドカの死体を横たえた後、一晩こき使ってきた体を休めるために眠っていたのだが、こんな事に成人は思いもしなかった。
「嫌な目覚めだ、この呪われた島の怨念か・・・?」
誰になく一人ごちる言葉が、洞窟に響く。
確証はないが、私の罪の意識と、私の中にまだ残っている鬼の残滓が成す悪夢なのだろう。
触ってみると、昼でも涼しい洞窟の中で、私の額全体に冷や汗が湧き出ていた。
「目が醒めましたか?」
突然の聞きなれない声。慌てて飛び起きる。
見ると、洞窟の端のほうで、黒衣を纏った小柄な人間が私を見下ろしていた。
「私は浅井長政、貴殿は?」
警戒しつつも、寝首を掻く事はしなかったそいつに最低限の礼儀と、名前を聞く。
「始めまして、長政さん。私はヤスケと呼ばれるものです。」
言いながら、その体を隠していた黒衣を脱いで、その姿をあらわにする。
肌は日本人のそれでも、南蛮人のそれでもなく、赤褐色であるが、顔つきは何処となく日本人のように見える。
「あなたに渡す物があります。」
言って、そいつは、横にあったバッグに手を掛けた。
・・・そういえば、天皇がその様な事を言っていたな。
「天皇の手の者か?」
「管理者と言う意味では天皇の影響下にある人間といえますが、厳密に言うと天皇ではなく、その配下の直属です。」
「そうか―即刻立ち去れ。天皇の手の者なら即刻斬るところであるが、寝首を掻かなかったことに免じて、この場では見逃そう。」
言って、刀の柄に掛けていた手を離して、敵意のない事を示しながら、退去を促した。
「何故、行かない?」
「先ほど、天皇の影響下にあると言いましたが、訂正します。私は天皇の影響下にあった人間です。」
「あった?」
ヤスケが強調した部分を聞き返す。
「はい、恐らく私の目的と貴方の目的は一致しています。この狂った余興を終わらせる事。そうでは無いですか?」
この狂った余興を終わらせる事。それは、私の目的とは微妙な差があったが大綱は同じである。
そう考えて静かに頷いた。
「このゲームを終わらせる為にあなたの力を貸していただきたい。」
「待て、確かにお前の言っている事は私の考えと要旨は同じだ。だが、訳を聞きたい。」
「訳?」
「ああ、天皇に叛旗を翻す理由だ。言わないのなら協力するわけにはいかない。」
「あなたは天皇が行っている事に疑問を感じないのですか?」
「感じなければ、この余興を終わらせようなど考えるか?」
「私も同じです。天皇の手足となっている宣教師の従者として、色々やってきましたが、その余興に疑問を抱いた。―それではいけませんか?」
「・・・成る程。」
私の言葉は私自身を納得させるのに一番効果的だった。
「今、貴方と同じ様な考えをもった人々が島のあちこちで行動を始めています。そして、それに対応して作業員もかなり出払っています。」
「まさに天佑というわけか。」
「はい、・・・そうそう、忘れていましたがこれが天皇からの褒美の物です。」
「要らん。天皇からの褒美の物など受け取るつもりなど毛頭無い。」
「しかしですね、貴方が今腰に帯びている刀もホルダーに入れている銃も、シースに仕舞ってあるナイフも全て元は天皇から支給された物です。」
一つ一つの武器を指差しながらヤスケはいう。
「ぐぅ・・・確かに。」
「いくら持ち主が非をおかそうと、物に非はありません。まぁ、見てください。」
言われてヤスケがそれを組み立てるのを待っていると、間もなく私の身長よりも少しばかり長い、長大な銃身が姿を現した。
「『USSR PTRS1941』―シモノフ対戦車ライフルです。」
「なんと長大な、これで撃たれたら人などひとたまりもあるまい?」
「人は勿論、貴方が乗せられてきたあの車や、ある程度の壁なら貫通して、その裏にいる人間に攻撃を加える事ができます。」
言って、人の指一本分はあろうかと言う弾丸。それも色違いの物を一つづつ私の前に取り出してみせる。
「全部で20発です。よく考えて使い分けてください。」
「わかった。それはいいが、ヤスケ、お前はどうするんだ、丸腰か?」
「いいえ」
言って、おもむろに腰辺りからMP5Kを取り出してみせる。それを見せているヤスケの顔が心なしか少し笑っているように見えた。
「マガジン―つまり替えの早合ですが、それは2本しか持ち出せませんでしたが、潜入には十分です。」
言いながら、ヤスケは洞窟の奥へと入っていく。
「待て、出口はそっちではないぞ」
「こっちに隠された入口があります。そこからどうぞ。」
―なかなかに頼もしい奴だ。
・・・・・・。
「こちらルート1!侵入者だ、早く応援をよこせ!」
「ええい、ジープはまだか!・・・ぐわっ!」
ノドカ達の横たわっている場所とはかけ離れている、人工的な洞窟の中で、硝煙と血の臭いが立ちこめ、怒号が飛び交う。
私達の後には、動かなくなった作業員たちの骸が、正しく死屍累々たる世界を成していた。
「ほう、なかなか・・・。流石は第一の侵入者と言った所か。」
昼でもなお、暗い部屋にモニターだけが煌々と光を発し、その光に浮かぶ埃を振るわせる野太い声が響く。
モニターには、既に管理側に筒抜けになった侵入者達の想定経路が何箇所か映し出されている。
と、その中の一つに黒い影が映ったかと思うと、まず大柄な方の男がその体躯からは想像もつかない速さで迎撃班の中に切り込み、一瞬で絶命させた人間を楯にする。
そして次の瞬間、画面外から機関銃の乱射があり、顔やら首やら装甲の薄い部分をやられバタバタと倒れていく。
撃ち漏らした人間は班員を楯にしていた男が始末する。
澱みのない一連の流れに、普通の人間なら、「上手い特攻」の一言で片付けるだろう。
「しかし、簡単に見えるものほど実は難しいものだな。」
モニターを通してみていた男―ザビエルはそう呟いた。
まず、第一の男の在り得ない速さの特攻は常人には真似できまい。それにこれは一瞬の虚を作り、第二の攻撃から注意を逸らせるという無形の利益をも持っている。
そして、第一の攻撃に気をとられた奴らは、第二の乱射の格好の標的となる。
その乱射する箇所も、高めに上げる事でしゃがみこんだ第一の襲撃者を撃つ事無く、装甲の弱い部分を好きなだけ撃てる。
ボディーアーマーも一番守るべき箇所―人体の急所である首や頭、手首などには無防備であるから始末が悪い。
撃たれた人間は先ず即死だろう。
ここで大切なのは、一人目の体勢だ。後を気にしていたら、二人目の存在に気付かれる。かといって、その射線を正確に読み取らなければ、自分も弾の嵐に巻き込まれる。
そして、第三のの始末行為。
誰が死んでいるのかを一瞬で見極めると言うのは思うより難しい。みな、ショックで手足や眼球が動く事もあるし。それぞれがバラバラに崩れ落ちる為に判別が難しいのだ。
しかし、画面にいる男はそれらをかなりの的中率で仕留めていた。
しかも、ブシドー精神なのか、可能な限り瀕死で済ませてある。
すぐに治療すれば作業員たちも一名は取り留めるだろう。
「まさしく、芸術だ。・・・もっとも奴らに治療など施す気はないがな。」
心から、感嘆の溜息が漏れる。
「手投げ弾をよこせ!」
と、一方的だった戦況に変化が見えた。中程まで押し込まれて、ようやく襲撃者に対する対処法を考え出したようだ。
実はこの作戦室で、ザビエル自身が出すはずの迎撃班への指令と情報は初めの「襲撃者を迎撃せよ」という命令以外の細かい命令や情報は一つも出されていない。
迎撃班は具体的な指令や襲撃者の情報がないことに困惑しつつも、班ごとに戦場に赴いている。
ザビエルはお互い相手に関する情報がない状態で、知恵と能力だけが自らの命を左右する状態にしたのだ。
その時、画面上で手榴弾が物陰に潜む襲撃者に向けて投げつけられた。
一瞬の静粛のあと、耳を劈くような爆音と、目に焼きつく炎がモニター越しにさえ、ひしひしと感じられた。
爆音はスピーカー越しにだけでなく、少し間を置いて微かにではあったが、じかに耳で聞き取る事すら出来た。
粘質の物質に炎が残って、辺りは文字通りに火の海になっていた。
が、次の瞬間、様子を見にきた二人の首筋から火に負けるとも劣らない赤さの血飛沫が噴き出る。
それで絶命した兵士達には何が怒ったのかわからなかっただろうが、ザビエルには、空中を舞うように両手に持った小刀とナイフで二人の首筋を切りつけた襲撃者の姿が見て取れた。
「フフフ、ハハハ、これだ、このような日本人を屠ってみたかったのだ。やはりこのような日本人がこの時代にいたからこそ・・・」
ザビエルが我を忘れて笑っていると、不意に後ろのドアが開いた。
「どうしたんだ、ザビエル。偉くご機嫌じゃないか?」
「ロヨラか、これを見てくれ。」
言って、画面の向こうで、襲撃者を轢き殺さんと向かってくる装甲車を、その手にしたシモノフライフルで撃ち抜く長政を指差した。
それと同時に、装甲車が爆発する。
「なるほど、先ほどから兵が慌しいのはこれが原因か。」
肩をすくめて、ロヨラが言う。
「ああ、是非とも屠っておかなければならん。いや、闘いたくてうずうずしている。」
言いながらも、既にザビエルは宣教師を気取って着込んでいた法衣を脱ぎ始めていた。
「君の場合、止めても聞かないんだろう?」
「当たり前だ」
手早く、法衣を脱ぎ捨てると、ロッカーの中に吊るしてあったレザーのパンツとジャケットを着込む。
それぞれ、戦闘用に特注して作った物で、ザビエルの動きを制限しないように設計されている。
その上で、サバイバルジャケットよろしくの様々なキットをつけるポケットが取り付けられ、刀や銃などを下げるベルト部分は特に強く作られている。
装備の一色を手馴れた仕草でそれぞれのポケットに納め、伝家の剣を腰に佩く。
最後にハードレザーのグローブをはめると、ザビエルはロヨラの方を振り向いた。
「実務の仕事が多くなると思うが、よろしく頼む。」
言って、軽くザビエルは頭を下げる。
「ああ、君の方こそ今まで燻っていただろう、ストレスを発散してきてくれ。」
「勿論だ。それと、天皇が言っていた裏切り者の事だが、アルメイダは相変わらず狸だが・・・」
「やはり、フロイスがイスカリオテのユダか?」
ロヨラはザビエルに先んじてその名を挙げた。
「知っていたようだな。」
「私も私なりの情報網を持っているからね。それに裏切るだけの行動力と度胸があるのはあいつくらいだ。」
「あいつは既に抹殺対象だ。問題はアルメイダだが・・・。」
「わかった、こちらも・・・」
ロヨラがある姪ダニ対する処遇を口にしようとした時だった。不意にスピーカーの接続音とそれに続く雑音が響く。
―ガガッ 皆さん聞いてください。私はルイス=アルメイダ。この大会を終わらせようと考えている者です。
皆さんに私のいる本部への突入方法をお教えします。皆さんが解放されたトラックの停車地付近に本部への地下通路が隠されています。
上手く隠されては居ますが、決して小さな物では無いので、探し当てる事は十分可能です。
どうか、そこを探し出して、共にこのゲームを終わらせましょう。
繰り返します・・・
「アルメイダめ、やはりフロイスに転んだか、今すぐ捉えに行く。」
「いや、もう無理だな。この放送微妙に20世紀に使われたというカセットテープ特有の雑音が混じっている。今行っても放送室はもぬけの殻だろうな。」
「カセットテープか、アナクロな物だがこちらの電子監視網をかいくぐるにはうってつけと言うわけか・・・。」
苦虫を噛み潰したような顔でザビエルが吐き捨てるように言う。
「これから忙しくなるぞ。早めに済ましてきた方がいい。」
「小便みたいに簡単にいうなよ・・・まぁ、早めに切り上げてくるさ。」
言って、ザビエルはロヨラの目にその全身ハードレザーという特徴的な背中姿を残しながら、廊下の奥へと消え去った。
【06番 浅井長政 『無銘匕首』『FN 5-7(残17+20)』『小烏丸』『USSR PTRS1941』】左眼失明。
【XX番 ヤスケ 『U.S.M16A2 (残9)』『MP5K』】現在Route1で戦闘中。
――・・・ザー、ガガッ
死亡者・・・
07番浅井久政・・・
ガガガッ、ブツン・・・――
「今、久政って呼ばれたね」
(・・・)
「これで、長政にも久政が死んだ事が伝わったね」
(・・・)
「長政はどう思っているのかな?やっぱり、悲しいのかな?」
(・・・)
「なんで、さっきからだまっているの。」
(・・・ボソッ)
「何?きこえな〜い」
(いや・・・今までは凛と話していたおかげで・・・わしが死んでいる事を・・・忘れていたんだけど・・・いざ・・・放送で・・・
わしが死んだ事を聴くと・・・悲しくて・・・つらくて・・・胸が・・張り裂けそうで・・・
悲しみという・・・渦に・・・飲み込まれて・・・もう・・・だめかも・・・しれない)
「そんな弱気言っちゃ駄目だよ。人間に戻りたくないの?」
(もどりたい・・・もどりたいけど、どうせもどれないんだ・・・)
「弱気は駄目だって言っているでしょ。あたしが久政のお母さんになってあげるから、何でも話していいよ」
(ぼ・・ぼくは人間に戻れるの?)
「久政が戻りたいと思う気持ちが強ければ、神様がきっと願いをかなえてくれるよ。」
(ぼくは元の世界に戻れるの?)
「さっきと同じ。戻りたいという気持ちが大切だよ」
(お母さん。おっぱ)
「馬鹿。久政なんてもう知らないんだから」
(ははは・・・おかげで元気になれたぞ。ありがとうな。凛)
「どういたしまして・・・ドキドキ」
(声が上ずっているけど、どうかしたのか)
「いえ・・・なんでもない。」
そうこうしている内に、洞窟の前にたどり着いた・・・
そう、激戦が繰り広げられているあの洞窟の前に・・・
昼の放送、そのわずか数分前に時は戻る。
天皇や宣教師達が根城とする建物には、『資料室』と呼ばれている部屋がある。
名が示すとおり、その部屋には様々な資料や書物が集められているのだが、現在この部屋に立ち寄る者は少ない。
この部屋にある資料は開催前の武将の選別等の参考にザビエルが集めた物であり
余興が開催された今、有効的に使える資料は十冊に一冊あるかないか、だからだ。
しかし今、そんな無用の部屋に数時間前から数人の人間が集まり、せっせと『ある人物二人の資料』を探していた。
そのうち一人は腕組みをしながら目をつぶり、壁にもたれかかっている。姿勢は微動だにしない。
作業員「・・・項目を探してみましたが・・・」
資料を探していた作業員が、腕組みをしていた男に作業の結果を告げる。
ヴァリ「そうか・・・無いか。まさか捨てるはずは無いと思うんだが・・・二人ともか?」
少し残念そうにその男-アレッサンドロ=ヴァリニャーノ-は頭を掻く。
作業員「はい、現時点で二人に関する資料はありません。・・・継続して、探しましょうか?」
ヴァリ「ああ・・・どうしたもんかな」
ふと彼の頭に、先ほどオルガンティノの部屋で見た『吉良親貞』の姿が思い出される。
わざわざ作業員を呼んでまで行った今回の『吉良親貞』『細川藤孝』という二人の資料探しは彼の独断であり
ロヨラやザビエルの命令ではない。
(ここまで独断でやっちまったんだ。もうちょっと独断で行こうが構いやしねえな。同じだ、同じ)
そう考えたヴァリニャーノは、自分のすぐ横の壁にかけてあった銀の装飾が散りばめられたケースを手に取る。
ヴァリ「出来れば探しておいてくれ。オレ様はちょっとやる事がある」
作業員「はっ」
ヴァリ「たぶん、すぐ戻ってくる」
作業員に資料探しの継続を命令すると、ヴァリニャーノはケースを片手に部屋を出た。
いつの頃ほど昔だっただろうか。
まだ自分の名が、今の名ではなかった頃のような気がする。
あの頃はただ釣りが好きだった。
なぜかと問われるとわからないが、子供の遊びなんてそんなものだ。
強いて理由を二つ三つ挙げれば、唯一人と触れ合わないで、ただただ一人で考えられるからだったのかもしれない。
まわりの大人から見ればひどく『可愛くない子供』『無愛想』だっただろう。
あるいは人と会いそう思われて、兄の様に揶揄されたくないからだったのかもしれない。
『なぜ兄上はあそこまでバカにされても少女の様な動作を続けるのだろう』よく、そう思った。
そんな兄を、その時から嫌っていたのかもしれない。
ついでに言えば自分の幼名も嫌いだ。
その名前を呼ばれない『たった一人の空間』が好きだったから、一人で釣りをしていたのかもしれない。
もっとも現実的にはどこに行っても父の見張りというか護衛が付き、たった一人になることなんて無いのだが。
今、そう考えるたび、大人が言うとおり自分は『可愛くない子供』だというのが感じられた。
十に達したか、達してない歳で、世の中を知ったかぶりしてナナメから見ているのだ。
これは生まれつきだと思うが、自分がこんな子供の親なら少し気分が滅入るだろう。
もっとも父の気が滅入っているのは兄のせいもあるのかもしれないが・・・。
そしてその日も一人でどうでもいいことを考えながら、初めて訪れる土手に腰掛け、釣りに興じていた。
その日の釣果はあまり・・・いやちっともかんばしくなかった。
川底に落ちている草鞋を残らず釣り針で拾うという、さながら『川底掃除』のようなものだった。
これはこれでなかなかの技術だと思うし、もともと釣果が目的ではかったのだが、さすがにこれでは泣きたくなる。
せめて鮎一匹は釣らなければ、そう思ってまた草鞋を吊り上げた時だった。
ふと、さほど遠くもない所からひ弱な声をかけられた気がして振り向いた。
その先には、武家の出なのだろうか、それなりの身なりをした、自分と歳は同じぐらいの少女がいた。
『ここはただの土手だし、誰でも来る事が出来る。たまたま通りすがっただけだろう』
なんと声をかけられたかそれは聞こえなかったが、そう思い、また釣りを続けた。
しばらく経った時だろうか、また声をかけられた。振り向くのも面倒だったが、一応また振り返る。
先ほどの少女は位置こそ変わってなかったが、今度は座っていた。持久戦のつもりだろうか。
なぜなのだろうと振り返ったまま考える。
『僕の命を狙う刺客か何かなのだろうか。あるいはただの馬鹿なのだろうか』と。
馬鹿なら無視してればいいだけだが、刺客であったらどうしたものか、とふと視界の奥の木を見る。
その木の陰には、おそらく父が遣わした家臣であろう人間が脇差を抜かんと手にかけて待機していた。
この少女が刺客だったとして襲い掛かられても、自分が五秒でも耐えられれば十分なんとかなるはずだ。
そう思い振り戻り、また釣りを続けた。今度はひ弱な声をかけられても振り返ることは無かった。
日が暮れる頃になり、草鞋で一杯になった魚籠をひっくり返し振り返ると、少女の姿は消えていた。
少しすっきりした気分と不可解な気分になり、まだ木の陰に隠れている父の家臣を一瞥して帰路を辿った。
帰り道の途中、もはや隠れる必要のなくなった父の家臣に『あれは誰だ』と聞いてみたりもした。
だが、返ってくる返事は『さて』とはぐらかす類のものだった。
次の日からは釣竿と共に脇差も持っていった。あの少女が刺客だったら釣竿一本ではさすがに少し心許ないからだ。
自分が来た時にはあの少女はいなかったが、二つ目の草鞋を吊り上げた頃にまた声をかけられた。
立つ位置、座る位置は昨日と変わっていなかった。父の家臣もまた脇差に手をかけて木の陰に隠れていた。
自分を含めたその三人も、魚籠に詰められた草鞋や手ぬぐいも、天気も川の流れも奇妙なほど昨日と同じだった。
唯一違う点といえば、自分が脇差を持っていた所と、振り向く回数が二回から三回に増えた事だろうか。
次の日もその次の日もまったく同じだった。振り向く回数は増えたり減ったりした。
時には父の家臣が持っている得物、天気、吊り上げる草鞋の数なども変わったりはしたが
基本的な事柄は何一つ変わりはしなかった。
一週間ほど経った時だろうか、少女の存在といつも以上にひどい釣果が相成り苛立って暴言を吐いた事がある。
『どかないと斬り殺すぞ』だっただろうか。
笑える。そう言ってることが心のどこかで躊躇いを感じている証拠じゃないか。
まあ、当時は人を斬り殺す事がきっと怖かったんだろう。兄を揶揄なんて出来ない。
だがまあどうであれ、それだけ脅せばきっと少女も周りからいなくなると思ったんだろう。
だがやはり浅はかな少年に人間の事などわかるわけはなく、その後の展開は予想をはるかに超えていた。
その少女はこちらの方に来たかと思うと、いきなり僕を土手から突き飛ばした。
脇差を抜く暇も余裕も無く、僕は土手から転がり川に落ちた。
目を見開きながら必死に暴れ、若、若と騒ぐ父の家臣に抱えられて川辺に辿り着いた時には、少女は消えていた。
季節のせいか川は暖かく、流れもゆるやかだったから、さほどの害は無かった。せいぜい風邪をひいたぐらいだ。
ただ、怒り・・・というか不可解で不愉快で理不尽な気分は収まる事は無かった。
『なぜ僕が川に突き落とされなければならないんだ』誰だってそう思うはずだ。
そのせいで帰り際、自分を川から引き上げてくれた父の家臣に散々八つ当たりをしたものだ。
その後。僕は布団に包まりながらも、唯一少女の顔を知っているその父の家臣に少女を探すように命じた。
とは言え、周りの人間たちは『どうせ自分で川に落っこちたんだろう』という目をしていた。
当時の僕にはそれが不可解だったが、今考えると至極当然のような気がする。
『自分のポカを隠そうとした、ひねくれた無愛想な子供の強がりだろう』と思うに決まっている。
僕を隠れて護衛していた父の家臣も若かったし、共謀で強がりを張ったと思われたのだろう。
そう考えると一週間かけても見つかる事なんて無いんじゃないだろうか。
だが、そんな理を完全に無視するかのように、川に落ちた日から三日後に僕はその少女と対面した。
どうも自家に仕える者の子だったらしく、僕を護衛していた父の家臣と顔見知りだったらしい。
その子の親は、十歳程度の僕に対して必死に土下座していた。父の家臣も土下座していた。
親に散々引っ叩かれたのだろう、以前見たときより顔がはれているその子も泣きながら土下座していた。
今思うと笑ってしまう。
だが、僕は泣いた。ただ泣いた。
なぜかその少女の心情が全てわかるような気がした。ただ『怖かったのだ』と。
二人の子供が大泣きしている場面は他の人間から見たらどう思われるのだろう、と今は思うがどうでもいいか。
後から本人に聞いたことだが、僕が草鞋釣りをしていた場所はその子にとっても憩いの場所だったらしい。
そんな落ち着ける空間で、冷めた目をした子供に脇差を持って脅しをかけられたのだ。
怒りや恐怖から、臆病な本性が『(視界から)消してしまえ』と思わせた、と理由を知れば納得は出来る。
だが、それを知ったのは結構後の事だったし、なぜ理由も知らない少年期の僕がそう思ったのだろう。
その時は『川に落ちたから』とか適当な理由で納得したが、今思い出してもよくわからない。
その後は釣りに行くたびにその子を連れて行った。もっとも当時向こうは僕のことを嫌っていたらしいが。
権力の乱用とも言えるのだろうけど、まあ微笑ましい程度だから誰もが口出ししなかったのだろう。
向こうの親にも打算といったものもあったのだろうか。まあ、それはわからない。
だが連れて行ったところで、二言三言を交わしたり、軽く土手から川に突き落とす程度だった。
もっとも毎日釣りばかり出来るわけはなく、時には軍学だとかなんだとかで部屋から出られない事もあった。
そんな時は手紙を書いた。まあ、ひねた僕が気の利いた文を書けるはずはなく
平仮名の勉強とか、なんかよくわからない偉そうな文章とか、恩着せがましく必死なものだったが。
しかもわざわざ自分で渡した。子供だから仕方ないがここまで来ると微笑ましいというか恥ずかしい。
ひねて可愛くない子供ではあっただろうが、この頃から自分の何かが氷解していくいい気分になれた。
そしてまた、丁度この頃だろうか。僕が風邪とは違う咳を良くする様になったのは。
元服に近づくと共に釣りをする余裕は少しずつなくなっていったが、この頃になると向こうも話をしてくれた。
打算であるような素振りではないと思えたが、仮に打算だったとしてもいいと思っていた。
例に漏れず僕の少年時代の思いはこの頃には薄れていたが、代わりに彼女を深く信頼するようになった。
相変わらず兄嫌いでひねくれていたし、強がったりカッコつけたりすることも良くあったが
世界を知ったかぶりしてナナメから見ることはなくなった。
今思うと、あの頃は自由だった。いや、そういうと語弊はあるかもしれない。
やはり互いに子供であったから、それほど遠くにまで行く事は出来なかったし
どこに行っても父が遣わした、護衛という名の見張りはついていた。
使える金も無いし、一度没落した長曽我部家にも、そして自分自身にも、それほどの力は無い。
だが、それだけ行動が限られた世界ではあっても、それでも自分には行動の幅は大きく広がっていた。
これは良く思う僕の推論にすぎないが・・・。
少年期、少女期というのは、誰しも光り輝くような正の活動力、好奇心を持ってるのではないだろうか。
無論知っている知識なんてたかが知れている。だが、その知識の中でこそ、彼らは活動力や好奇心を糧にして
誰も予想がつかないような、とんでもない行動を取る。人を川に落としたり、とかもきっとそうだろう。
成長し知識を吸収していく中で、その行動は『恥』や『見栄』といった感情に変化していくが
そういったものがないからこそ、少年時代は人間が持つ本質たる何かに、素直に従えたのではないだろうか。
僕はもう、物理的にも精神的にも少年時代に戻る事は出来ない。だからこれは推論でしかない。
それに人間の本質や心理なんて一割も知らないから、まったくのデタラメかもしれない。
知識を得ていく成長が正しいのか、少年時代が正しいのか、どちらかと言うと前者だと思うが、興味もない。
この推論自体『だからなんなんだ?』と言われればそれまでだが、それも仕方がない。
だが、これだけは言いたい。いや、これが言いたいがためにありふれた推論を考えたのかもしれない。
自分があの少女と共に過ごして来た少年時代は、確かに『無限大』を感じていた。
親貞(あれ?・・・眠っていたのか・・・)
ノドカと相対した時の緊張感からふいに来た眠りが醒め、親貞は木に寄り掛かったまま目を開けた。
口の中が砂でジャリジャリする。草の根をかじった時にまだ砂がついていたのだろうか。
流れていた涙をぬぐい、唾と共に砂を二、三度吐き捨てる。
『懐かしい夢を見たのは、女性と相対したのがきっかけだろうか』
彼はそんなことを思いながら首に手を当てる。
血が止まっていることを確認した丁度その時、『モトローラトランシーバT5900』から響いた音が彼の耳に入った。
親貞(ロヨラか?いや声が違う気がする・・・)
いつもの連絡とは少し違う声に、訝しげな眼差しを向ける。
が、結局返事しないわけにもいかず、彼は気の無い返事を返そうとトランシーバに手を伸ばした。
親貞「誰だい?君の声は聞いたことが無いな」
ヴァリ『少しお前に興味があるだけの新顔さ。名前はヴァリニャーノってんだ』
親貞「へえ。興味と来たか。特に争いごとに介入してない僕に何の興味があるっていうんだ君は?」
ヴァリ『聞きたいことがあるんだが』
親貞「は?」
ヴァリ『オルガンティノって覚えてるか?ちょっと前にお前のところに行った宣教師だけどよ』
親貞「・・・ああ。覚えてるよ。よく覚えている・・・」
ヴァリ『出来れば、その時のことを教えてもらいたいんだが。お前の身に降りかかったこと全部を』
親貞「君にそれを話して、僕に何か得があるのかい?」
ヴァリ『オルガンティノに会わせてやらないでもない』
親貞「・・・願ったり叶ったりだ。だが短く話せる話じゃない。少なくとも、僕の中では」
ヴァリ『任せとけ。今回の食糧配布場所は3-Cだから、そこに迎えに行くから物食って待ってろ』
その言葉を最後に、トランシーバーからの言葉は途切れた。
親貞「・・・・・・そうか・・・」
トランシーバーを放り投げそう呟いた彼は、いつもの余裕を持った相手を見下す顔ではなかった。
ヴァリニャーノと名乗る人物がなぜ急に自分と連絡を取ったのか?なぜ過去の顛末を聞きたがるのか?
理に合わない展開にいつもなら必ず思うはずの疑問が浮かばなかったのは、そのせいもあったのかもしれない。
ヴァリ「・・・って、ありゃ?資料探しとけって言ってたじゃねえかよ・・・」
ヴァリニャーノが鼻歌交じりで戻った頃には、すでに資料室は『もぬけのから』となっていた。
ヴァリ(オレ様、実は嫌われてるのか?)
そんな疑問を軽く考えるが、周囲のあわただしい状況から、すぐに彼も異常事態に気づく事になる。
そしてアルメイダ放送を聞き、全ての状況を把握してから、彼は希望に満ち溢れた少年のような目をして呟いた。
ヴァリ「やるじゃん」
こういった状況になっては、吉良親貞をこの根城に連れてくることも比較的容易になった。
他の参加者達が雪崩式に本拠地に乗り込んでくるのを親貞に阻止させる、そういった名目が出来上がったのだ。
ヴァリ「よっしゃ!そうと決まれば情熱を持ってロヨラからトラックを借りれるぜ!」
ロヨラには裏に目的がある事はたやすく見抜かれるであろう。
とは言えど、名目ができた以上、ロヨラも無碍に断る事はしまい。
もっとも自分に対する信用はやや薄いらしく、手の空いている作業員数名を見張りにつけられるかもしれない。
だが、それはそれでいい。何一つとして問題ない。
そこまでしてなぜ彼は『吉良親貞』というさほど特異でもない存在に目をつけたのか?
その問いの答えは、いまだ彼しか知らない。
ヴァリ「よっしゃ、行くぜ相棒!」
高ぶる自分をさらに鼓舞しながら、彼は銀色の『キューケース』を手に取る。
それは、彼がこの島に来る前・・・いや、彼が幼年期、誕生期であった頃から共に人生を歩んできたものだった。
そのケースの中に納められたものは、誰が見ても遊戯道具にしか見えないだろう。
だが、彼にとっては己の特別な思いが込められた、そして戦闘用に完全な改造を施した最大の武器だった。
すぐに彼は宣教師の服を捨て、下に着込んでいた自分にとっての『正装』を身にまとう。
ヴァリ「あ、タイねえや。ま、いいか別に」
現代で言うスーツに似た服に変わった彼は、時代に合わない近代的なこの建物に、奇妙なまでにマッチしていた。
同時刻、3-D地点に視点は移る。
島中に流れたアルメイダの放送を、一人でいた上条は顔を真っ青にして聞いていた。
上条「ヤッベ・・・こりゃヤバイぞ!」
先ほど利家が言っていた『今度は俺が食糧を取ってくる、生魚食えなかったし』という言葉が頭に響く。
今回の食糧配布地点は3-C、聞いた放送によると抜け道も3-C。ピタリと一致する。
抜け道がわかった事は喜ばしい事だが、それならば今回食糧配布地点でもある抜け道には
他のルート以上に警備が多くなるのではないか?上条はそう考えた。
確かに、利家とてそれなりの力は持っている。だが、激しい警備の中で生き残れるほどではない。
いやそれ以前に、銃を持った人間が五人も現れればあっと言う間に蜂の巣にされるに違いない。
上条(行った方がいいのか?行かない方がいいのか!?)
自分が行ったところでどうなるのか、という気持ちはある。
それに、利家もろくな武器も無くたった一人で敵の本拠地に突っ込むほど頭が悪くは無いだろう。
何より、行けば確実に死ぬであろう3-C地点には近寄りたくないという気持ちが今の上条にはあった。
上条「・・・いや、アイツオレと同じくらいバカヤロウだしな・・・何も考えないで突っ込んでメメタァにされるだろ」
上条は笑いながら、過去の利家の馬鹿さ加減がにじみ出る行動を思い出す。
ふと、ようやく『なぜ自分が利家と行動を共にしていたのか』という問いの答えが判った気がした。
自分だ。利家は自分だったのだ。この島に来てから仲間と合流し、仲間に先立たれた。
そして自分を守ってくれた仲間に仇討ちを誓う。自分でも気づかなかった心の底の復讐心までが一致していた。
ふと利家と初めて会った時の事を思い出す。
思えば『SPAS12』を突きつけられたときから、この奇妙な縁は繋がっていたのかもしれない。
上条「・・・一番最初に見逃してもらった恩はここで返さないといけねーってか・・・。
義理堅てぇ長尾家ってのも楽じゃねーな・・・そん代わり死んだらバケて出てやるぜスッタコッ!!ボケッ!!」
『諦観にも似た決心』と言えばいいのだろうか、そういったものが上条の心を過ぎる。
上条は『H&K MP3』を手に取りポーズを決め、死の恐怖を頭の片隅に無理矢理追い払い呟いた。
上条「やれやれだぜ」
【/番 アレッサンドロ=ヴァリニャーノ『戦闘用改造リアルカスタムキュー』】
ROUTEV(3-C地点へトラックで移動中)
【39番 吉良親貞 『日本号』『モトローラ トランシーバ T5900』『イサカM37フェザーライト(残弾2発)』】
4-C(3-C地点へ歩いて移動中)
【86番 前田利家 『SPAS12(残弾1発・暴発の可能性あり)』『鉄槍』『Mk2破片式手榴弾(一個)』】
3-D中間(上条と一旦離別、3-C地点へ小走りで移動中)
【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻(十数冊読めないものあり)』『バゼラード』『H&K MP3(残弾13発)』】
3-D右端(利家と一旦離別、3-C地点へ全力ダッシュで移動中)
保守
67 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/07/16(土) 22:14:43
保守age
時間は昼の放送から少し遡る――。帝の御座するその部屋で、事は起きた。
帝の苛立ちは極に達しようとしていた。
かなり腹が立っているようで、鼻息は荒く、目を剥き、歯軋りが聞こえてきそうなほどに歯を食いしばっている。余程苛立った様子だった。
彼は何よりの馳走である血の雨があまり降らなくなってきたことに我慢ならなくなっていた。
とはいえ、これは仕方の無いことでもある。開始から既に四日という時が過ぎ、参加者の九割に近い死者を出している。
自然、この広い島で参加者同士が出会う頻度は低下し、同時に殺し合いも減っていく。帝がどう言おうと、これはどうしようもないことだった。
しかしそんな事は帝も百も承知している。だが承知しているからといって、簡単に納得できるものでもない。
なにより帝の身体は血を求めている。砂漠の灼熱に曝された遭難者が水を求めるかのように、今の帝には血で渇きを癒すことこそが必要だった。
「何故殺さんのじゃ!」
それほど広くはない薄暗い部屋の中に、帝の悲愴を帯びた怒声が響く。
帝は立ち上がってモニターへ向かって叫んでいた。画面には、義輝と最後まで決着をつけずに去っていく藤孝が映されている。
血に飢えた帝に義輝の見せた強い信念も、また藤孝の達観した考えも伝わりはしない。ただ藤孝の行為が勇無き者に見え、それが非常にもどかしく、かつ腹立たしいだけだった。
帝の上げた怒声に驚いた者が居る。彼の身辺警護を請け負う兵士だった。兵士は帝の後方に立っていたが、急な罵声を聞かされて身を硬く強張らせていた。
警護の者はドアの向こう、つまり部屋の外にも二名配置されている。先程帝が勝手に出歩いていたため、ロヨラとザビエルが話し合い、監視と警護を兼ねて新たに附された兵だった。彼らもまた、同様に怯え小さく縮こまっている。
怒りのためか、帝の身体がわなわなと震えていた。
しかしそれでもなお帝は当代きっての教養人だけあってなんとか理性だけは保っており、立ち上がったままそのやり場のない怒りを押し殺そうと努力していた。
目を閉じ、心気を鎮め、怒りに乱れた心を平常に戻そうと努める。だが、内から湧き上がる負の感情は如何ともし難く、それが一層帝を苛立たせていった。
「揃いも揃って不甲斐無し!朕に馳走しようと思う奇特な者は居らんのか!」
また罵声が上がる。空気が張り詰める。部屋の内外に居る兵達は緊張したまま動けない。下手な真似をして帝の不興を買うのを恐れてもいた。不興を買うという事は、そのまま死に繋がる。
帝は暫く険しい顔つきでモニターを睨みつけていたが、やがてふと表情が和らんだ。
「おお、そうじゃ、良き思案がある。朕もあやつらに混ざってしまえばよいのではないか」
ポンと一つ手を叩き、何故今までそれに気付かなかったのかという風に言った。
妙案に気付いた嬉しさと、楽しみが出来たことへの期待で怒りが一挙に吹き飛んだかのように、その顔は子供の無邪気な笑顔そのものだった。
帝は言うともう童子切安綱を掴んでいて、そのまま部屋を出て行こうとする。それを見た兵士が慌てて帝に駆け寄った。だがやはり帝への畏怖は隠せず、幾分腰が引けていた。
「お、お待ちください!かような事をされては、今度こそロヨラ様にお叱りを受けてしまいます。どうか勝手な振舞いはなせれず、どうかご再考のほどを・・・」
「ほう、朕のする事を勝手な振る舞いと申すか」
「あ、いえ、その・・・決してそういうわけではないのですが・・・ただロヨラ様より、絶対に帝から目を離すなとの仰せがありましたもので・・・」
「ロヨラロヨラと五月蝿い奴じゃ。アレは朕を操っているつもりでおるようじゃが、朕がロヨラ如きに御せられようか。朕は誰の指図も受けん。黙ってそこを退きやれ」
「し、しかし・・・」
「・・・なんともしつこい奴じゃ。そちは朕を怒らせたいか?」
兵士はそれ以上食い下がる事が出来ず、仕方なく脇に避けた。
帝はそのままドアに向かって歩を進めたが、ドアの前まで来ると急に立ち止まってくるりと後ろを振り向いた。
「そうじゃ、試し斬りなどしていくのも面白いかもしれぬな」
そう言うと、帝はスラリと白刃を引き抜いていた。
ロヨラはその部屋に入る前から眉を顰めざるをえなかった。
辺りに噎せ返るほど血の匂いが充満している。それだけでもこの部屋で異変が起きたことは明らかだった。
そのロヨラの足元に、胴体とそれから斬り落とされた生首、それに唐竹割りに斬られた死体が転がっている。いずれもロヨラが万が一に備えて配した兵だった。
二人とも一刀で仕留められている。その手口は鮮やかでもあり、また躊躇いを感じられない分残酷でもあった。その変わり果てた二人を醒めた目で一瞥すると、ロヨラはゆっくりと部屋の中に足を踏み入れた。
血の匂いが部屋の中にも充満していた。部屋の中が以前来た時よりも一層暗く感じられたが、それはたぶん、部屋の中央でただの肉隗と化している兵士が流した血によるものだろうか。血溜まりが、部屋の中央を黒く染めていた。
吹き上がった血が天井にまで達していて、それが滴となって時折床へと落ちている。無人の部屋にその音がやけに大きく響いた
この死体も一刀のもとに斬り殺されている。右袈裟から斬られた傷が脇腹まで達していた。やはり無残なものである。
「“薬など与えるのではなかったな・・・”」
誰に言うでもなく、ロヨラがポツリと呟いた。
ロヨラはやれやれといった表情で首を横に振ると、壁に掛けられた時計に視線を移す。時刻は正午に近づいていた。
帝が行方知れずになっている以上、ロヨラは自分で放送を流す事に決めた。
深い溜息とともにもう一度首を振ると、ロヨラはその血生臭いその部屋をあとにした。
正午の放送が流れている。
アルメイダは、依然、フロイスと信長のサポートをするために監視カメラを操作していたが、彼はその手を休めて放送に聞き入っていた。
やがて放送は狼を殲滅した事を告げると、健闘を祈ると言い残して切れた。
聞き終えたアルメイダは腕組みをして考え込んでいる。放送を流したのが帝ではなく、ロヨラだったからだ。
別に不思議なことではないのかもしれない。元々が協力者として帝を手伝っているのだから、ロヨラが放送を流したところでおかしくはない。
ただ何か気になった。これまで帝自らが行っていた仕事を何故ロヨラがやらなければいけないのか、その点が釈然としなかった。
協力者にとって、帝こそ表舞台に立たさなければならない。彼を盟主として担ぎ上げていた方が諸事上手くいくからだ。
たとえ狂った余興といえど、異国の異教徒共が取り仕切るより、帝が主催する方がよっぽど事情が良い筈だった。ロヨラは及び自分も他の宣教師達も、表向きは目立つ事をするべきではないのだ。
「帝は何処に行ったのだろうか・・・?」
アルメイダはなおも考える。そのアルメイダの頭に、ザビエルの顔が浮かんだ。
「そうか、私達の事をザビエルから聞かされたのか。――となると、フロイスの身が危険だな」
これは考え過ぎだった。ザビエルは帝にフロイスやアルメイダのことを詳しく告げていない。ただ簡単に「“鼠”は駆除しました」と報告しただけだった。
矛盾しているかもしれないが、ザビエルに同じ宣教師を売る気は無かった。裏切り者といえど、元は同じ志の下に集まった者達である。「帝などのいいようにして堪るか」という、ザビエルのささやかな抵抗と言えた。
アルメイダは何処からか年代物のテープレコーダを引っ張り出してきてテーブルに置いた。録音ボタンを押す。
「皆さん聞いてください。私はルイス=アルメイダ。この大会を・・・――」
「不味い事になったかもしれません・・・」
本部まであと僅かという山中、信長とフロイスはアルメイダの放送を耳にした。
「そのようだな」
信長もその放送を聞いていて異変を感じていた。フロイスの不安そうな顔を見ても、さほど驚いた様子は見せない。
「アルメイダは無事だろうか・・・」
フロイスの声が不安によってか細いものになる。その表情もまるっきり冴えなかった。
「アルメイダがボクの帰りを待たずにあんな放送を流すなんて、きっと余程の事態になっているんだ・・・」
「アルメイダとは貴様の協力者だったな」
信長はここに来るまでに、走りながらだったがフロイスから事のあらましを聞かされていた。もっともそれは全てではなく、フロイスは肝心の余興を開いた動機や自分達の本当の正体などは伏せていた。
フロイスは、ただ自分の協力者のことと他の宣教師のこと、それに帝についていくつか話したに過ぎない。
だが信長にとってそれで十分だった。むしろ伏せられたことを聞かせれたとしても煩わしく思うだけであって、きっと「俺には関係がない」と言って聞き捨ててしまっただろう。その点、フロイスは短時間ではあるが信長と一緒に居て彼の扱い方を心得始めていた。
「はい。彼がいなければ、ボクらはとうに管理者側から抹殺されていたでしょう。とても頼りになる仲間ですよ」
フロイスが自分の事のように誇らしげにアルメイダの自慢をした。
「貴様に協力しようとは余程の酔狂人だな」
「ハハハ、それは貴方もでしょ」
信長の言葉に、フロイスがニヤリと笑った。こうして話していることで少しは不安が解消されたのか、顔に多少の余裕が出てきたように見えた。
「勘違いするな、俺の場合は違う。たまたま目的が一緒で行動を共にしているだけだ。貴様に協力しようとは思わん」
「はいはい、そうでしたね。でもそれって結局同じことだと思うけどなぁ。まぁいいや、お喋りしてる場合じゃないし、もうすぐそこだから急いで行こうよ」
フロイスは踵を返して山の斜面を駆け上がっていった。信長も黙ってそれに続く。
流石に二人の息が上がり始めた頃、山頂に着き、突然彼等の目の前に大きな建物が現れた。どうやら高校の校舎のようだった。二人は茂みに身を潜ませて周囲を警戒している。
もっとも、信長に校舎とは何か解るわけもなく、「変わった形の城だな」と言ってフロイスを笑わせた。
「アッハハハハ。これは学校て言ってね、お城じゃないよ」
「学校?知らんな」
「学校っていうのはね・・・ってそんな説明してる場合じゃなかった。急いでアルメイダを見つけなければ」
説明もそこそこに、茂みから這い出て校舎に向かって走り出そうとするフロイスの肩を、信長がしっかりと押さえつけた。
「おい、ちょっと待て。という事はこの学校とやらが本部なのだな?」
「そうだよ。この建物に貴方が会いたがっているアノ人もいるのさ」
「帝か」
「ええ、そうです」
「間違はなかろうな」
「しつこい人だな、間違いありませんってば」
「そうか・・・」
フロイスは信長がしつこく訊くのに少し辟易したようだったが、信長が納得したと見るとコクリと頷いて見せ、再び校舎へ走り出そうとした。
だが次の瞬間、ガツンと大きな音がしてフロイスが前のめりに倒れた。
信長が、手にベレッタM1919を持って立っていた。銃底でフロイスの首を殴りつけたのだった。
「悪いな、やはり貴様は信用できん。正親町は俺が殺しておいてやる。貴様はそこで高鼾でも掻いていろ」
気絶しているフロイスにそう言い残すと、信長は周囲を確認して校舎に走った。
信長は校舎に取り付くと正面から入ることはせず、まず一度ぐるりと校舎の周囲を回り、その上で一階の割れた窓から静かに身を入れた。
校舎の中は流石に山頂に建てられてあるだけあって陽の光が隅々まで入り込みとても明るく、そして暖かかった。
信長は廊下の壁の陰に身を隠してそこで一呼吸置く。いつ敵が現れてもいいように、その覚悟だけはしておいた。
(おかしい、人の気配がしない)
注意して壁から出た信長が、校舎内を歩きつつ思った。校舎の中は信長の覚悟も空しく、敵の姿が全く無かったのだ。それどころか猫一匹の気配すら感じない。完全に無人のようである。
(フロイスは確かにここが本部だと言ったはずだが・・・。チッ、やはり計られたか)
信長が腹の中で呟く。だが、逆に罠ならそれでもいいとも思った。それを食い破ってでも抜け出る覚悟はしているし、またそれだけの事が自分なら出来るだろうという自信も持っている。
その信長の鼻に、微かだが異臭が臭った。死臭に違いなかった。
誰か居るのかと思って身構えるが、すぐにそれが懸念である事に気付く。いくら陽が当たって暖かいといっても死臭がそんな短時間でするわけもなく、殺した者は当にこの場を離れているはずだからである。
ちなみに、この死臭の元は初日に殺された本多正信だった。当然、正信を殺した顕如もこの場には居らず、それどころかとうに死んでいる。が、それはここでは関係ない。
(さてどうしたものか)
このまま校舎内を調べ歩いてもいいのだが、人の気配がしない以上、徒労に終わることもあるだろう。それならばフロイスを叩き起こして本当の事を吐かせる方が手っ取り早いと考えた。
(面倒な事だ)
そう思いつつ、信長は仕方無しに入ってきた窓へ足を向けた。まさにその時だった。
「ひょほほ、よもや消えた27番織田信長に、かような場所で逢えようとはさすがに朕も驚きじゃわ」
信長にとって忘れられない声が背後からした。
(正親町!)
遂に逢えたかと心の中で小躍りしたい気分だったが、しかし振り向けなかった。振り向いた途端に斬り殺されそうなプレッシャーが、ひしひしと背中に伝わっているからだ。
だが信長に逃げ出す気は無い。もとより、この男に逢う為に戦ってきたのだ。そのことだけを考えて、あまつさえ実の弟まで手に掛けた。急に現れたからといって、引く気は毛頭無かった。
「織田信長よ、遠慮などせずこちらを向きやれ。朕にその顔を見せてたもれ」
帝の声には親しみすら感じられるような気さくな響きがあるが、言われた当の信長にはそれが地獄の閻魔大王に名前を呼ばれたように、ひどく禍々しいものに聞こえた。
言われたとおり、信長がゆっくりと身体を帝の方へ捻じ曲げる。その信長の頬を、一筋の冷や汗が流れていった。
「・・・貴様に逢いに来た」
緊張のためか、喉がひりついて声がしゃがれて出た。
「ほう、朕に逢いに参ったと申すか。それは重畳。して、如何なる用向きかのう?」
帝は機嫌が良いのか、ニタニタと笑っている。帝にしてみたらこうして出歩いているだけでも新鮮なのだから、嬉しそうにしていて当然だった。ましてこれからまた人を斬るつもりでいる。それでつい顔もほころんでしまうのだろう。
「貴様の首、俺に渡してもらおうか」
「ほっほっほ、朕の首を所望とあるか。よいぞ、欲しければ持って行くがよい。――だが、朕もタダで渡す気は無いがな」
語尾に露骨な殺気が篭った。信長が、自分では思わずたじろいだ。
「・・・・・・」
信長が黙って抜刀する。もう幾人をも斬ってきたこの刀だが、依然として刃味は良く、校舎の窓から入り込む午後の陽を反射して綺麗に輝いていた。
「そちなら朕を満足させられそうじゃな」
帝も童子切安綱を抜く。こちらの刀も人を斬ってきたばかりだけあって、刀身が血でしっとりと濡れているような妖しい光を発している。
両者正眼で相対する。
徐々に信長の剣尖が上がり、振りかぶるほどの大上段に構えを取った。対して帝は剣尖を下げていき、ほとんど地に着きそうなくらいの地摺りに構え直している。
どちらも動かず、じっと互いの出方を待っている。じりじりとした時間が流れ、両者の間には次第に気が高まっていった。
先に仕掛けたのは信長だった。しびれを切らせ、一足一刀の間境を踏み越える。正宗が唸りを上げて真っ向上段から振り下ろされた。
帝の安綱が、下からの摺り上げで難無くそれを受け止めた。鋭い金属音が起こり、力比べに似た鍔迫り合いにもつれこむ。
信長が体重を利用して上から押し切ってしまおうと、柄を握る手に力を籠めた。
だが不意に帝の右足が上がり、強烈な膝蹴りが信長の鳩尾辺りを襲った。信長が後方に吹き飛ぶ。しかし直撃はしていない。膝が腹部に当たった瞬間、自ら後ろに跳んで衝撃を殺していたのだった。
「そちはなかなか面白い。朕を満足させるに足る」
「お褒めに与り恐悦至極に存じ奉る、とでも言っておこうか」
「ほほ、口の減らぬ奴じゃ」
言い終わるのが先か、今度は帝が弾かれたように跳んだ。腕を縮め、切っ先を前に突き出すようにして飛び込んで来る。刺突だった。
信長はそれを刀の鎬で払って受け流すと、返す刀で薙いだ。しかしこれは空を斬る。帝は上体を沈めることで辛うじてかわしていたのだ。
次いで翻転した帝の逆袈裟の斬撃が閃く。崩れた体勢から放たれたにも拘らず、安綱は信長の腕を皮一枚切り裂いた。
「チッ!?」
小さな舌打ちが、信長の口から洩れる。
帝は信長に立て直す猶予を与えない。立て続けに鋭い剣撃が信長を襲った。信長は防ぎに回らざるをえない。一歩、また一歩と信長が押され始める。
「それで終いか?」
帝が嘲弄する。
「慌てるな、これからだ」
だが言うほどに余裕が無い事は、誰よりも信長自身が知っている。
(化け物めッ!!)
腹の中で毒づく。
しかし反撃に出ようにも隙が無く、次第に信長は窮地へと追い込まれていった。
後ろに下がる信長の背に、壁がぶつかる。逃げ場が無くなった。
しかし帝は千載一遇の好機にも拘らず、それ以上追う事をせず足を止めた。そこで安綱に付いた信長の血を一舐めし、嬉しそうに破顔した。
「いいのう。あんな部屋に閉じ篭もって居るのではなかったわ。最初からこうしておればよかった」
「そうだな。それなら手っ取り早かった」
若干、信長の息が切れている。
「ほほほ。して、そちは何故朕の首を求める。余興を終わらせるためか」
「フン、馬鹿なことを。余興などは俺にはどうでもいい。貴様が気に食わない、理由などそれで十分だろう」
「気に食わない、か。ほっほっほ、やはり面白い男じゃのう。朕はそちを気に入ったぞ」
「やめろ、反吐が出る」
信長が吐き捨てるように言った。
再び正眼に構えを戻す。一か八か突っ込んでいき、死中に活路を見出す気でいた。
ターン!
信長が帝の懐に飛び込もうとした瞬間、唐突に一発の銃声が鳴り響いた。二人の側に銃弾が弾け飛ぶ。
「待て!!!」
フロイスだった。廊下の向こうからベレッタM92FCをピタリと帝に向けたまま、いつになく真剣な顔つきで立っていた。
「邪魔をするな!こいつは俺が殺る!!」
珍しく信長が声を荒げる。帝との斬り合いの最中と言う事もあり、興奮して気が立っていた。フロイスの登場で、二人の斬り合いは止まっている。
「何を言ってるんですか!そんなくだらないことにこだわっている時じゃないでしょう!今なら二人で掛かれば諸悪の元凶である帝を討てるんですよ!つまらない意地を張らないで下さい!!」
フロイスも叫んだ。
「引っ込んでいろパードレ!こいつをここで殺すのはこの俺だ!俺一人で殺ると言ってるだろう!!」
言いながら信長が帝に斬り込んだ。だがまた受けら止められる。
信長と帝がと重り合った為、フロイスは迂闊に発砲出来ない。万が一にも撃った弾が信長に当たる危険があるからだ。
「信長さん!」
最早信長にフロイスの声は届かない。目の前に居るこの男を、如何にして殺すか、そのことに囚われている。
「遠慮は要らぬと言ったであろう。朕は二人掛りでも一向に構わぬぞ」
帝が耳元で囁いた。
「黙れ!」
信長が力任せに帝を押し飛ばした。
その信長の身体が、ぐらりと大きく揺れた。
「織田信長よ、なかなかに楽しめたぞ」
そう言うと、帝は安綱の刀身に付いた血を振り払った。懐中から懐紙を取り出し、刀身に残った血を無造作に拭う。
その時になって、漸く信長の身体が崩れた。帝は倒れた信長の背中の上に汚れた懐紙を捨てた。
そのまま帝は「大儀」と一言言い残すと、何処へともなく消えていった。
「信長さん!!!」
フロイスが走って来た。だがまだ首が痛むのか、足元が怪しい。
やっとのことで倒れた信長の元に駆け寄ると、静かに信長の身体を起こしてやった。
抱き起こすフロイスの手に、信長から流れ出す血がベットリとまとわり付いた。
「しっかりして下さい!ねぇ信長さん!!」
フロイスの呼び掛けに答えるわけも無く、信長は静かに瞳を閉じていた。
80 :
MISSING GLORY〜狂人:2005/07/18(月) 01:07:05
【27番 織田信長 生死不明】『ベレッタM1919(残弾7発)』『相州五郎入道正宗』はフロイスが回収
【∞番 ルイス・フロイス『ベレッタM92FC(残弾15+1)』】5-E校舎内
【主催者 正親町天皇 『童子切安綱』】 行方不明
【残り13+4人】
個人
【11番 足利義輝 『九字の破邪刀(破砕)』『梓弓(4隻)』『グロック17C(残弾16発)』】3-E森地点(爆発したトラックの元へ移動予定)
【65番 長曽我部元親『鎌』『ウィンチェスターM1897(残弾3発)』『青龍偃月刀』】3-Fで少し休息して3-Eへ向う予定
【83番 細川藤孝 『備前長船』】3-E近辺(なんとなく利家&上条を探すが、他に面白いものがあればそれに向かう )
【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢10隻)』『青酸カリ』『寸鉄』】
(行方は不明、目的・義輝と藤孝暗殺に変わり無しだが、誰に対しても殺意と警戒十分)
【39番 吉良親貞 『日本号』『モトローラ トランシーバ T5900』『イサカM37フェザーライト(残弾2発)』】
4-C(3-C地点へ歩いて移動中)
【/番 アレッサンドロ=ヴァリニャーノ『戦闘用改造リアルカスタムキュー』】ROUTEV(3-C地点へトラックで移動中)
【86番 前田利家 『SPAS12(残弾1発・暴発の可能性あり)』『鉄槍』『Mk2破片式手榴弾(一個)』】3-D中間(上条と一旦離別、3-C地点へ小走りで移動中)
【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻(十数冊読めないものあり)』『バゼラード』『H&K MP3(残弾13発)』】
3-D右端(利家と一旦離別、3-C地点へ全力ダッシュで移動中)
【主催者 正親町天皇 『童子切安綱』】 行方不明
パーティ
【44番 香宗我部親泰 】
【29番 飯富昌景 『長曾禰虎徹『フルーレ』】
【58番 鈴木重秀 『USSRドラグノフ(残弾4発)』『SBライフル(残弾14発)』『オーク・Wアックス』】
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『十手』】全員2-E 3-C食料配布地点を目指します
【06番 浅井長政 『無銘匕首』『FN 5-7(残17+20)』『小烏丸』『USSR PTRS1941』】左眼失明
【XX番 ヤスケ 『U.S.M16A2 (残9)』『MP5K』】現在Route1で戦闘中
【27番 織田信長 生死不明】『ベレッタM1919(残弾7発)』『相州五郎入道正宗』はフロイスが回収
【∞番 ルイス・フロイス『ベレッタM92FC(残弾15+1)』】5-E校舎内
【残り13+4人】
82 :
思案:2005/07/18(月) 21:19:25
そういえば、あれは大学時代だったか・・・
パリ大学に入学して一年。ようやくパリの整然とした町並みとごったがえす人の波に慣れてきた頃の冬だった。
世界一と謳われていたパリ大学も、もはやその伝統を残すのみとなり、長い目で見ずとも有象無象の大学に埋もれるのは目に見えていた。
雪が降らないのが不思議なくらいの寒空の下を、人々は手が触れそうなほど近づくというのに、お互い目を見合わせることもなくすれ違っていく。
それぞれ差はあれど皆、険しい表情でコートの前をぴっちりと閉じ、肩をすぼませながら歩いているというのは一緒だというのに、それぞれの行く先はまったく別なのだ。
パリはいつもうるさい街だったと思う。だが最近、特にこの寒い冬では雑踏の音や、ビジネスマンの無機質な会話、スピーカーを通した濁ったコマーシャルこそ聞こえるが、
友達とくだらない話に花を咲かせたり、恋人が愛を語らったり、親子が夕飯の話をしたり・・・そういった生き生きとした人の声はあまり聞こえてこない。
まだ夜になっていないというのに皆、口を真一文字に結んで話そうとしない。
―まるで死街だ。
自分自身その街の住人だというのに、自嘲じみた声でそれを肯定する。死んだ街に住んでいると心も荒廃してくるのだろうか。
人は心が腐ると、その身も腐っていくという。
―さしずめ、ゾンビって所か・・・
そう考え始めると、本当に流れる人の波がおぞましい化け物が、生きている人間の皮をかぶっているようにすら思えてきた。
本当に特殊メイクか何かをしているのかもしれない。目で見えているものだけが果たして真実なのだろうか?
もし、目で見ているものと、実際にそこに存在しているものが違うとしたら?
急に人という人が空恐ろしくなって足早に少し細い街路を抜ける。
オスマン通りに出ると左手に遠く、曇り空と同じように暗い灰色の凱旋門が見えた。
83 :
思案:2005/07/18(月) 21:20:10
それからというものの、大学の椅子の上でも、アパートのベッドの上でもなぜか落ち着けず、体はそこにあっても、魂はどこかに漂泊しているような感じのする毎日だった。
その日も確か、そんな気分を晴らすために散歩に出かけたのだ。
とはいえ、散歩ごときで単純に悩みが解決するわけでもなく、帰り際に鬱屈とした気分でコンコルド広場の近くにある行きつけのカフェテリアに寄った。
アパートのある路地裏から数分のところにある、このカフェテリア。
二階のあまり大きいとはいえない窓からはコンコルド広場のオベリスクや、遠くに小凱旋門も見ることができ、いつも二階の窓際が指定席だった。
ところがその日に限ってそれほど客がいるわけではないのに、窓際の席は埋まっており、仕方なしにせめて窓がみえる場所に腰を下ろした。
―そもそも、芸術の都・パリ、いや、それだけでなく世界中の同じような風景は、極東の島国の急速な台頭のためだった。
その国はアジアで起こった最大規模の経済危機を、尖閣諸島付近で湧き出した通称・琉球油田の豊富なエネルギーで乗り切り、逆にアジア各国の一般に不良債権と呼ばれる物を回収しはじめたのだ。
経済危機で各国から溢れた貧しい人口・・・つまり労働力と、各国の不良債権を回収して作られた大型の設備とそれを動かす琉球油田のエネルギー、そして世界の先端を行く技術力。
いくつもの要素がそろったその国の企業は否応なしに巨大化し、アジア経済危機の余波を受けて体制を崩しかけていた世界各国に進出、やがて圧迫を始めた。
ヨーロッパでは直接的な影響は少なかったが、それでも『アジアの工場』で作られる『安くていい物』の前に、恐慌とも言うべき不景気が訪れていたのだ。
その余波で自分自身が経営するはずだった工場も、長であった父親の自殺によって無期限閉鎖することになった。
・・・まわりの倒産の嵐に比べればましだが、それでも手元に残った金だけでどう食いつないでいくかが問題だったのだ。
いまは恐慌の影響をもろに受けた故国を捨て、今後のために少しでもいい仕事に就こうとこの大学に来ているというわけだ。
84 :
思案:2005/07/18(月) 21:21:02
「隣、いいかい?」
物思いをしていると不意に耳元で声がして、はっと現実に立ち戻る。
見ると、客足は相変わらずまばらで、指定席もいつの間にやらあいている。なのに淵の赤が目立つコートを羽織ったこの長身の男は相席をしたいという。
「あ、あっと、ええ、どうぞ。」
不思議に思いながらもとりあえず返事をする。というより、もうその時すでに男は半ば腰をかけようとしていたのだが・・・。
「ん、アリガト。」
言いながら、男は腰掛け、地殻にいた店員を手招きで呼び寄せた。
作り笑いを仮面をつけた店員が手ぶらで注文を聞きに来る。どうせ注文は覚えきれる量であるし、そんなことで重要な電気や紙を使いたくないという意思表示なのかもしれない。
「君は何がいい?」
メニューも開かず、こっちの方を向いてそうやって聞いてくる。
きょとんとしていると、私が先に注文していた見せ掛けだけ派手な、いかにも安物然としたカップを指差した。
「ああ、考え事をしているといつもこうなんだ、すまない。」
「いい、驕りだからもう一杯行かないか?」
「・・・悪いね、じゃあ一杯だけ。・・・コロンビアをホットで。」
「んー、俺はアイスティーかな。」
「かしこまりました。」
注文を復唱することもなく、店員は行ってしまった。
85 :
思案:2005/07/18(月) 21:21:50
「ここはコーヒーだけがいい店なのに、損ですよ。」
「甘党だからね、コーヒーは苦手なんだ。・・・それより君も奇特な奴だね、外は寒いけど、調整の聞いていない暖炉間でホットコーヒーを頼むなんて。」
「アイスコーヒーなんてものは私たちが飲む物じゃありません。」
「へぇ、どういう意味だい?」
「日本で生まれた飲み物を飲む気がないっていう意味ですよ!」
かなり語気を強めて言う。
「大きな声を出してしまったすみません。」
「いや、謝ることはない。俺もまったく同感だ。」
「えっ・・・?」
話してみると、「詳しくはいえないが、君と同じような境遇のスペイン人さ。」と話した。
その間にほんのりと香気が混じった湯気が立ちのぼるコーヒーと、氷が二三個入ったアイスティーが運ばれてきた。
「君はどう考える?この状況を・・・」
「どうって、そりゃあ悪いに決まってるさ。この状況をいいって言う奴がいたとしたらそいつはまず東洋人だ。」
「・・・まぁ、そんなことは本当はどうでもいいんだ。」
「どうでもいいことはないだろう!何とかしなくてはならないんだ!」
「・・・その何とかするプランがここにあるんだよ・・・」
言って、そいつは洒落たパステルブルーの封筒に入った書類を取り出して見せた。
・・・その『書類』を読み終えたとき、すでにカップのコーヒーの熱は冷め切っていた。
86 :
思案:2005/07/18(月) 21:22:25
まだ外では喧騒が続いている。
先ほど聞こえた放送で私たち以外の侵入者の掃討に向かっているのだろう。
こちらにばかり兵を割くことは出来ないとみえて、今のところこの近くからの音はないが、油断はできない。
片時も離さない銃の砲口が小刻みに震えていた。
恐らく誰かが見ているとしたら、僕は捨てられた子猫か何かのように怯えて震えているように見えることだろう。
―あえて否定はしない。それこそが目的を達成するためには必要不可欠な事だから。
―かっこ悪いからと、油断して何も知らない人間に殺されたのでは、何の意味もない。
・・・だというのに、長政は先程まで何十人もの作業員を打ち倒した者と、同一人物とは思えないほどの安らかな表情で眠りについている。
恐らく彼自身が言っていた通り、長政と最後に戦った人間との一夜に及ぶ死闘が、精神的にも、そして肉体的にもかなりのダメージを負わせていたのだろう。
服の上からでは気づかなかったが、先ほどRoute1のちょうど中ほどにあるこの詰所に来て、そこにあった簡易医療キットで素人診察をしようとしたところ、彼はまさに満身創痍だった。
何よりも、一番印象に残っていた布で隠された左目は、ただのファッションではなかった。
―右目一つであそこまで距離感を必要とする作業をやっていたのか・・・?
確かに最新の医療技術を使えば、この左目は直るかも、あるいは代わりの目が生成できるかもしれない。
しかし、それだって、少なくとも数日は元通りの遠近感がつかめないという。
そう思って、僕が傷の様子を見ながら忠告したというのになのに、この人は・・・。
「目だけでなく、耳やそれに気で位置を測ってるので問題ない、私のことは気にせずに君も休め。」
と言って、私の意見を退けた。
どういうつもりなのかは解らなかったが、少なくともここまでぐっすりと眠られては、ゆっくりと休む気にはなれなかった。
87 :
思案:2005/07/18(月) 21:23:50
とはいえ、あまりに殺風景なその部屋は、心にも寒すぎる。目のやりどころに困って、仕方なしに僕は彼を見つめた。
―ん・・・?
先ほどまではあまり気づかなかったが、傷口が微かに、そう、めをじっと凝らさないと見えないくらいではあるが、光っているように見える。
目をごしごしとこすってみてみるがその光は、やはり、小さく小さく光っていた。
よくよく見てみると傷口が微妙に治ってきている風にさえ思える。
・・・まさか、な。
いくら、この時代の人間の身体能力が私たちの想像をはるかに超えるパフォーマンスであったとしても、ありえる話とありえない話がある。
「違うよな・・・」
あまりにも非科学的な想像をしてしまった自分に言い聞かせるようにつぶやいて、彼の傷口に手を伸ばす。
そして、僕の手がゆっくりとその不可解な傷口に触れようとしたその刹那だった。
「う、うああああ!」
突然、彼が眠りながら身をよじらせて、もがき苦しみ始めた。驚いた私は出していた手をすばやく引っ込める。
あまりのタイミングの良さに一瞬、彼が起きていたのかと思ったほどだ。
彼はそのまま、暗闇でおびえる子供のように、小さくうずくまり震えだした。
「長政さん、どうしたんですか、長政さん!」
慌ててゆさゆさと彼を揺さぶるが彼は目覚めるどころか、その悪夢からすら解放されていないように見える。
「・・・ノd・・・カ。」
「えっ?」
彼がうめき声の中で唐突に人の名前か何かを呼んだような気がして、思わず声をあげる。
僕はその名前が何を指すのか、この時は解らずただ彼が悶え苦しむさまを見守るしかなかった。
88 :
思案:2005/07/18(月) 21:24:50
しばらくすると、彼はひときわ大きな声を上げて震えたかと思うと、何事もなかったかのように元通り静かに眠りについた。
ただ、数分前にはなかった長政の顔中に吹き出た冷や汗を拭くだけしか、僕にはできなかった。
と、今までの音に気づいたのか、通路のほうから足音が聞こえてくる。
僕は床に置き離してあったFN 5-7を手に取る。すでに安全装置ははずしてある。
こつ、こつ、こつ、こつ・・・。
徐々に徐々にその足音は近づいてくる。
こつ、こつ、こつ、こつ・・・。
一歩ごとに獲物を追い詰めるハンターのように近づいてくる。
こつ、こつ、こつ、こつ・・・がちゃり。
重い鉄の扉が開くときの軋み音がして、私も銃をドアに向かってぶっ放さないばかりに、引き金をぎりぎりまで引き絞る。
と、相手は少し驚きはしたが、何を思ったか、何も持っていなかった手をいきなり胸ポケットに入れた。
―まさか、胸に入るサイズの隠し銃か?
私の予感はいいほうに外れた。もし、その手にデリンジャーでも握られていようものならすかさず引き金を引いていた。
「Route1に侵入者が来ています、ここも危ないですから早く退避なさって下さい。」
ポケットから取り出した簡素なつくりの作業員証明書を見せながら、慇懃な言葉でそう促してくる。
―僕たちのことを気づいていないのか?ウソだ、ここの様子すら恐らくどこからかモニター室につながってるはず。情報は筒抜けと思っていいものだと・・・。
―!まさか、ザビエルさんか・・・・。
きっとフロイスさんの後、モニターを監視していた彼が故意に情報操作をしているのだろう。そう考えなければ物事の辻褄が合わない。
少なくとも扉側にいる作業員からは、顔を含む長政の上半身は見えない。
恐らくこいつは、長政のことを侵入者との戦いで傷ついた作業員、僕のことをしぶとく残っていた宣教師一味だと勘違いしてくれているのだろう。
「僕たちももうすぐここを出る。いいから、出口側のほうに行って侵入者に警戒してくれ。」
僕はいかにも宣教師といった口調で作業員に命令する。
作業員は微妙に戸惑っていたが、すぐに僕たちが来たほうの通路に行ってしまった。
89 :
思案:2005/07/18(月) 21:25:18
―ふう、何とかやり過ごせたか・・・
―でも、情報操作をしているのがザビエルさんだとしたら、恐らくこの先で待ってるのは・・・。
―十中八九、バトルマニアの彼と思って間違いない。
「行ったみたいだな。」
扉を見つめていた自分の後ろでそんな声がした。
「長政さん、いつのまに!?」
「丁度、足音が聞こえたあたりから。まぁ、むしろその前からうっすらと意識はあった。」
私はそれに全然気づくことがなかった。なんという事だろうか。
「そういえば、ずいぶんとうなされていましたが、大丈夫ですか・・・?」
「・・・体のほうは問題ない。」
「と、申されますと?」
意味深な彼のせりふに私は聞き返す。
「悪夢を見てしまったんだ。これが精神的にクるやつでね、どうも寝起きの気分が優れないだけだ、気にするほどのことじゃあない。」
戦神・トールのような戦いぶりとは裏腹に、長政は随分と嘘が下手な人だった。
拭いたはずの冷や汗はまた額に出ているし、何よりも彼の充血した片目が口よりも彼の状態を明確に語ってくれた。
普段から何事にもさほど動じない長政が、あれほどまでにうなされるほどの悪夢。それは想像を絶するものだったに違いない。
「本当に気にしないでくれ。・・・大丈夫、大丈夫だ。」
最後のほうはまるで自分自身に言い聞かせるように彼はそう言って、ゆらりと立ち上がった。
しかし一歩踏み出そうとしたその途端に、足がおぼつかなくていたらしく、その上体が揺れる。
「やはり、まだ休むべきです。そんな状態では今までのように作業員は倒せても・・・」
そこまで言いかけて僕は口をつぐんだ。危うくザビエルさんの名前を出してしまうところであった。
なんだかんだ言って、今の彼の心は千々に乱れている。彼の名前を出すだけでも僕を疑いかねない。
90 :
思案:2005/07/18(月) 21:26:28
「はは、確かにただでさえ眼がやられてるというのに挑むのは時期尚早かな。筋がまだ軋んでいる。それに・・・」
「それに・・・?」
「私はこの馬鹿げた事を主催している奴を五体満足で放って置くつもりはない。返り討ちにされたらそれこそ、死者が浮かばれない。」
「・・・・・・。」
私はただ沈黙を保つしかなかった。私もまた、『五体満足で放っておくつもりがない』と言われている一人であることに間違いないのだから。
「ただ、眠りにはつきたくない。これ以上眠れば私自身が・・・いや、なんでもない。」
言って彼はてすさびにするのか、懐にしまってあった竹の皮をとりだした。見ると干からびたご飯粒がついている。
恐らく、ライスボールか何かを包んであったのだろう。しかし、彼はそれをただじっと見つめているだけで、手遊びにするつもりはないらしい。
数分ほどそのなめされた竹の皮を飽きもせずに食い入るように眺めていたかと思うと、突然、
「ノドカ・・・」
と声を発した。
僕はその名前が誰のことなのかは解らなかったが、なんとなく、彼がそれを眺めている意味がわかったような気がした。
【06番 浅井長政 『無銘匕首』『FN 5-7(残17+20)』『小烏丸』『USSR PTRS1941』】左眼失明
【XX番 ヤスケ 『U.S.M16A2 (残9)』『MP5K』】現在Route1で戦闘中
親貞「3-C・・・ここか?確かに食糧はあるけど・・・」
幾人もが目指しているであろう今回の食糧配布地点に、親貞は一番乗りで辿り着く。
が、先ほど連絡を寄越したヴァリニャーノと名乗る人物の姿が見えないことにやや彼は困惑した。
親貞(騙されたか?いや、食糧を食って待ってろ、という事は、少なくとも僕よりは遅く着くって事か・・・)
激戦が予想される食糧配布地点に長居はしたくない、というのが正直な思いだが
事の真偽がうすうすにでもわかるまで、この場は動かないのが正解だろう。
親貞(ちっ、馬鹿が。まったく、平地じゃなければ隠れる場所もあるものを・・・)
辺りに身を隠す事の出来る場所が無いことに親貞は毒づく。が、直後彼に疑問が浮かんだ。
親貞(ヴァリニャーノとかいったっけ・・・そういえば、あいつはいったいどうやってここまで来る気なんだ?)
そこからさらに疑問が広がる。
先ほどのアルメイダという人物の放送では、3-C地点にも天皇の根城へ続く道はあるらしい。
だが、身一つ隠せる場所など無いこの平地のどこにそんな物があるというのだろう?
親貞(・・・今思い返しても話がうますぎる。やっぱり、何もかもつまらないハッタリだったか・・・僕としたことが)
放置されている食糧を適当に拾い出しながら、親貞はため息をつく。
親貞(まあ、食糧配布地点へ辿り着けた事はありがたい、か・・・しかし、随分ピカピカしているがこれも食糧か?)
アルミに包まれた『チョコレート』を片手に親貞はしばし悩む。
二十秒ほど悩んだときだろうか、丁度アルミごとかじろうとした彼を妙な揺れが襲った。
『地震だろうか?』誰もがそう思うはずだ。だが・・・。
親貞(いや違う!地震じゃない!じ・・・地面が動いてる!?)
直後常識を超えたものを目にした彼は、その考えを頭から吹き飛ばされた。
地鳴りの音と共に、彼の眼下の地面がスライドして、巨大な空洞を作っていくのだ。
そして、その空洞の中から長細い棍(こん)のような物を持った男が出てきても、親貞はずっと呆然としていた。
ヴァリ「ピアツェーレ(はじめまして)。オレ様がついさっきお前に連絡したヴァリニャーノってもんだ」
親貞が唖然呆然としているのも構わず、ヴァリニャーノは陽気に一礼した。
親貞「・・・これは、どうやって食べればいいんだ?」
我に返った親貞が手に持っているチョコレートを軽く振りながら問う。
親貞(いや、いやいやいや・・・ちょっと待て!聞きたいのはそんな事じゃないだろう!)
すぐに親貞はしゃがみこんで頭を抱えるが、そんな事も構わずヴァリニャーノはその問いに答える。
ヴァリ「ああ、それか?その銀紙をはがして食え。そのまま食うと『ぎゃあッ!』ってなるぞ」
親貞「『ぎゃあッ!』ってなんだよ・・・それより日本語が上手いな君・・・腹が立つほどに」
ヴァリニャーノの不躾さにわずかに腹立ちを感じた親貞はチョコレートを放り投げた。
親貞「常識外れな事が起こりすぎて、感覚が狂ってしまったようだ。だが少し元に戻ったよ。
僕が聞きたいのはこんな食べ物の事じゃない」
ヴァリ「勝手な事言うな。お前が聞いたから答えたんだろうが。それより食えよ」
親貞「・・・いいから、そこから少し話を離してくれ」
親貞(コイツに話の主導権を握らせると厄介だな・・・こちらから次々と質問をぶつけるしかないか)
ため息をつきつつ、親貞はそう考えた。
親貞「先ほど、僕がオルガンティノに会った時の話を聞かせて欲しい・・・そう言っていたな。
だが、それに答える前に少しこちらから聞きたいことがある」
ヴァリ「は?ああ、そりゃ答えられる事なら隠してもしょうがねえし、別に構わねえけど」
親貞「そうか。さて、何から聞いたものか・・・」
いったいこの男は何者なのか?なぜ自分に興味を持った?なぜ過去の顛末を聞きたがる?持っているその棍は?
それ以外にも数々の疑問が浮かんでは消える。マトモに考えれば、そもそも何もかもが疑問なのだ。
聞くべきことがありすぎて、逆に何も思いつかない。
結局言葉に詰まった親貞に、親貞を見ず遠くを見ながらヴァリニャーノが一言呟く。
ヴァリ「別に今必死に考える必要はねえよ。一つ一つ思いついた時に聞けばいい。
・・・そんな事よりさすが食糧配布場所だな、オイ。早くもご新規さんが来たみたいだぜ」
ヴァリニャーノの言葉に親貞が振り向くと、一人の男が走ってきているのが確かに見えた。
利家「異人と日本人・・・か。なんか随分と奇妙な組み合わせだな・・・」
随分走ってきたであろうに、男-前田利家-は息を乱さず槍を構える。
ヴァリ「随分タフだな、お前。でも汗かいてるぞ。やせ我慢か?」
利家「・・・お前こそ随分日本語が上手いな。『随分タフ』なんてその辺の日本人はまず使わないぞ」
不信感、というか敵意に満ちた目で、利家は言葉を返した。
ヴァリ「お前見覚えあるな・・・確か、前田利家・・・だったよな?」
親貞(前田利家?・・・どこかで聞き覚えがあるような・・・ああそうか。ロヨラが名前を挙げていた男か・・・)
聞き覚えのある名に親貞は少し反応する。その反応を見逃さず、利家は親貞に顔を向けた。
利家「そこの異人はともかく、お前はこの島に連れてこられた人間・・・だよな?なんだって異人と・・・」
親貞「・・・」
利家「!」
利家の問いに答えを返さず、親貞は持っていた『イサカM37フェザーライト』を利家に向けようとする。
が、その動きは、目の前を横切るように突き出されたヴァリニャーノの棍によって御された。
親貞「・・・なぜ止めるんだい?」
ヴァリ「オレ様が来たその空洞、そこから降りてその先には
お前達がこの島に連れてこられた時に乗った物があるはずだ。それに乗って待っていろ。
そこにいる人間達に間違っても銃は向けるなよ」
動きを御すため、利家から視線を離さずにヴァリニャーノは親貞の問いには答えず、そう告げた。
親貞「・・・まあいいさ。オルガンティノの元へ連れて行ってくれるなら、誰にだって従おう」
ヴァリ「三分で終わる」
親貞が背を向け空洞に向かって歩き出すのを確認すると、ヴァリニャーノは持っていた棍・・・。
いや、『戦闘用改造リアルカスタムキュー』の先端をまた下に戻した。
利家「『三分で終わる』ってお前・・・お前・・・良く言えるなそんな恥ずかしい事・・・」
と、口では言いながらも、ここにいる異人は敵だと利家はしっかり認識していた。
目の前にいる異人は、まず参加者であるとは考えにくい。
それに先ほどの放送によると、この地点は天皇へ続く道となる。
放送が流れた以上、そこを守備するのはあちら側としても当然の事だろう。
つまり、この恥ずかしい異人がそこを守備している『番人』であろうと利家は考えたのだ。
利家「さっきの放送は罠かとも思ったが、本当だったんだな。そこの空洞が帝のいる場所につながるってことか?」
ヴァリ「ああ・・・まあ、そりゃそうだろ。お前から見ても胡散臭すぎるからな。お前もここを通りてえのか?」
利家「そりゃあな。でも通す気は無いとか言うんだろ?」
売り言葉に買い言葉、利家自身も少しカッコつけた事をなんとなく言ってしまう。
当然のことながら、『通さない』といった類の言葉が返ってくるものだと利家は思っていた。
だが・・・。
ヴァリ「いや、通りたきゃ通ればいい。望むなら、オレ様達の本拠地まで連れて行ってやっても構わねえ」
利家「・・・は?」
ヴァリニャーノから発せられた答えは利家の予想とは正反対のものだった。
ヴァリ「『ワケわかんねえ』って顔してるな。『お前はあっち側の人間じゃあねえのか』って。
なんならワケ教えてやってもいいんだけどよ、どうする?」
利家の顔色を読んだヴァリニャーノが、先端を上にしたキューを肩にかけながら言う。
肯定も否定も口に出さず利家は槍を構えていたが、どことなく利家が心の内で思っていた答えを感じ取ったのか
ヴァリニャーノが利家を指差しながら静かに口を開いた。
ヴァリ「話は簡単だ。お前だって心底はこっち側の人間になる素質、理由があるからだ」
利家「・・・何言ってるんだお前?」
ヴァリ「よし、もっと簡単に言ってやろうか?つまりお前、こっち側に寝返らねえかってことだ」
利家「だから、それ自体が『何言ってるんだお前』って事なんだよッ!」
苛立たしげに利家が吐き捨てる。今の彼の心境からすれば、それも当然だ。
ヴァリ「お前、自分のドン(主君)の『織田信長』ってヤツを殺そうと思ってるだろ?」
利家「・・・」
ヴァリ「回りくどいのは好きじゃないからハッキリ言うぜ。お前じゃ無理だ。今の、だけどな」
ヴァリニャーノが何を根拠にそう言うのか判別はつかなかったが、それは利家も承知している事だった。
だからこそ利家はSPAS12に矢を詰める、という戦略を練ったのだ。
もっともそれだけで信長を倒せるとは、おぼろげにも利家は思っていない。圧倒的に何かが足りない気がしていた。
それが力なのか策なのか、はたまた他の何かなのか、それまではわからなかったが・・・。
利家「・・・それがどうした?俺がお前達に力を貸す代わりに、お前達もそうしてくれるっていうのか?
冗談じゃあないぞ。俺は信長様を倒そうとする気持ちと同じくらい、お前たちにもそう思ってる」
ヴァリ「様付けしてる時点でどうかと思うがね・・・まあ、それはいいや。よく考えてみろ。
お前たち百人をこの島まで運んだのもオレ様達だし、その武器を与えたのだってそうだ。
お前1人とは比べもんにならねえほど圧倒的な『情報』と『力』をオレ様達は持っているってわけだ」
利家「・・・」
ヴァリ「全てじゃないが、望むならそれをお前に貸す。いいか、良く考えろ。情に流されるな。理と利で考えるんだ。
今は後ろめたいかも知れないが、お前を責められる奴は1人もいねえ。
仮にいたとしたら、そいつはマンモーニ(ママッ子)さ」
ヴァリニャーノがそう言い終わった後も、利家は一言も発さず槍を構えている。
悩んでいるのか、ハナから切り捨てているのか、ヴァリニャーノにはその沈黙から答えを読む事は出来なかった。
利家「・・・なるほど。それはいい話だな」
しばらく沈黙が続いた後、利家が今だ槍を構えたまま、肯定とも取れる返事をする。
だが直後、かすかに利家は笑いながらヴァリニャーノに向けてまた言葉を続けた。
利家「だが一つ。お前、もうとっくに三分は過ぎてるぞ?」
ヴァリ「あ」
利家「そういう事だ。お前、自分の言葉には責任持てよ?そんな事じゃ何言っても信用されないぜ」
今だ笑っている利家の気概が変わった。『勧誘は拒否』と言う事を態度で示したのだ。
ヴァリ「・・・だいぶガッカリしたが、少し安心したぜ。そういう奴こそ欲しいもんな」
そう言いながら、ヴァリニャーノも己の持っていたキューを静かに構える。
その構えは一見槍や棍を持つ構えに似てはいるが、何か異質の空気を感じさせた。
利家(・・・見たことのない武器だな。パッと見て棍棒のようだが、あれも異国の武器か?)
現代で言う『ビリヤード』に面影が残るヴァリニャーノの構えに、利家も少し警戒する。
が、その警戒を感じ取ったのか、ヴァリニャーノが構えたまま言葉を発した。
ヴァリ「仕掛けがまったくないって事はないが、基本的には棍と同じさ」
利家「・・・随分間抜けな悪党だな。種子島と同じような物と思わせれば、楽にもなっただろうが」
ヴァリ「お前はオレ様の勧誘を堂々と拒否した。ほいほいついて来て、本拠地で暴れてもいいのにな。
誠実には誠実を、卑劣には卑劣を。それがオレ様の、あくまでオレ様のモットーさ」
利家「悪党のくせに言う事だけは一丁前だな」
一言一句までの意味はさすがにわからなかったが、なんとなく言わんとしている事は利家にも理解は出来た。
が、所詮は天皇の一味と言う時点で彼にとっては悪党なのだ。正当卑劣問わず勝つ事が重要だと利家は考えていた。
あの宣教師までの距離は遠くない。一飛びで必殺の間合いに入ることは出来る。
そして、その決意を露わにするように、利家はふたたび構えた槍に力を込める。
・・・が、その構えを見たヴァリニャーノが、構えをやめキューで利家を指し、言い放つ。
ヴァリ「お前、右利きだな?」
利家「・・・だからどうした?」
ヴァリ「じゃあ、まずお前の左腕を壊す。第一撃はお前の左腕。予告しよう」
利家「・・・!?」
ヴァリ「その後もう一度お前に聞くとするぜ。こっらの陣営に来るかどうかを」
利家「調子に乗んなッ!」
直後、利家が飛んだ。
ヴァリ「うお!?」
少し油断していたヴァリニャーノが一瞬遅れて後方に跳ねると、その目先ギリギリを銀色の何かがかすめていく。
利家「くそッ!」
舌打ちをすると、すぐに利家は前に踏み込みながら間髪置かず返す刀の横一閃を繰り出す。
ヴァリニャーノもすぐ身体をそらしてなんとかその一撃を避けるが
またも目先をかすめていく槍が立てる風圧に、一瞬殴られたかのような錯覚を覚えた。
ヴァリ(ボケッと口あけてモニターで見るのとナマでギリギリ実感するのとじゃ大違いだなぁオイ!
穂先かすっただけでも持って行かれるんじゃねえか!?)
ヴァリ「オラァッ!!」
そう思いながらも、ヴァリニャーノは背筋をバネにしてそらした身体を全力で起こし
重い槍の反動でわずかに姿勢を崩した利家の頭に勢い良く己の頭をぶつけた。
利家「ぐッ!この・・・!」
連撃が来ると思ったのか、利家もうめき声を上げた直後すぐに後方に飛び、片腕で頭を抑えながら前を見る。
するとヴァリニャーノも頭をぶつける勢いが少し良すぎたのか、舌打ちをしながら頭を抑えていた。
ヴァリ(こいつは参ったな・・・ちょっとは怯むかと思ったが、予想以上の石頭ってワケか・・・)
先ほどより距離が開いたためか、少しだけ安堵が生まれたヴァリニャーノがそんなことを考えていると
同じく頭を抑えている利家が少し嘲笑するかのような口調で挑発する。
利家「・・・一撃目は左腕じゃあなかったのか?」
さすがにもう油断はせず、ヴァリニャーノが言葉を返す。
ヴァリ「・・・スマン。ありゃ嘘だ。まあ、勘弁してくれ」
利家「許さん。死ね。死んで償え」
ヴァリ「この石頭め」
利家「・・・異人ってのを初めて見るワケじゃないが、まさかそこまで身体を鍛えているとは思わなかったな」
利家がまた腰を落とし、槍を構える。もう一度跳躍して槍撃を放つつもりなのだろう。
ヴァリ「ああ・・・まあ、こんなのは序の口だけどな」
槍を避けていた時も決して離すことはなかったキューを持ち替え、ヴァリニャーノが軽く言い放つ。
ヴァリ「ところで・・・さすがに時間を掛け過ぎたな。堅苦しい奴らばかりの中で鬱憤がたまっていたせいか
お前と話すと少し楽しかったが、もう無駄口はやめにするか・・・」
そして彼はキューを構えた。素人目であっても、構えは先ほどとピタリ一致という事が感じ取れる。
だが、鬼気、殺気といった類だろうか、その何かが圧し掛かるのを対峙している利家はひしひしと感じていた。
やはりさきほどのヘラヘラしている異人とは、まるで別人のような感覚だった。
利家はこの感覚を知っている。
三日目に彼が対峙した細川藤孝、その刀を抜いた時の気風威圧とよく似通っていた。
利家(人を見かけで判断するわけじゃないが・・・さっきの動きを見た限りでは気を抜かなきゃ一撃は食らわない!)
利家「どうせ虚仮脅しだろうがッ!!」
嫌な感覚を押さえ込む。先ほど以上の力を全身に込めながら、利家はまたも跳躍した。
上条「おわあッ!!」
3-CV番トラック到着地に向け全力で走っていた上条は、見覚えのある死体を見つけ驚愕の声を上げた。
上条「こりゃあまさか・・・北条さんじゃあねーかよ・・・」
そう、腐乱して異臭を放っていたとは言えど、それはよく見知った北条高広のものであった。
あまり好きな人物ではなかったが、胴体も、離れた首も見るに耐えないほど腐っているのを見ると
さすがに今卑下する気分にはならなかった。
上条(さっき拾った武器はちょいと使えないものばかりだった・・・食い物腐ってたしな・・・。
北条さんは何か残しているものはあるか・・・?)
先ほど北条以上に腐食していた死体から拾い出したデイバッグを見て、上条は考える。
なるべく直視せずに上条が北条の死体に手を伸ばした時・・・。
?「ぐああああああああッ!!」
辺りに絶叫が響き渡った。
上条「今の声・・・まさかだろ!?」
聞き覚えのある声に、上条は顔を真っ青にする。
上条「すまん北条さん!埋葬したいが、そんな暇はねー!勘弁してくれ!」
上条は北条の死体に手を合わせると、また3-C地点、絶叫の元に向かって全力で走り出す。
付近にはもう一体の死体があったが、頭を撃たれ、しかも腐っているため破損がひどく、それは誰だかわからない。
まさかそれが共に行動していた村上義清だとは上条も知るはずはない。
そしてまた、北条の死体から吉良親貞に繋がる『トランシーバー』が無くなっている事も知るはずはなかった。
ヴァリ「フェイクかとも思ったが、随分真っ正直に来てくれたもんだ」
うめき声を上げながら左腕を押さえている利家から距離を取り見下ろしながら、ヴァリニャーノはそう声をかける。
全ては一瞬だった。利家が跳躍し槍を振ろうとした刹那、一点を狙い澄ました一撃が彼の左腕に突き刺さった。
・・・飛び掛る前、利家にも嫌な予感はしていた。
だが、彼自身の『異人観』は、銃などの強力な武器に頼っていて肉体的にはさほどでもない、といった物である。
仮にそれなりに鍛えていたとは言え、まさか自分がそれに劣るとは思いはしなかった。
この直感を信じなかった結果、利家の左腕は折れた。彼自身の、この島での最悪の失敗となった。
ヴァリ「それじゃあもう一度聞くぜ。ネジ曲がっちまいそうな痛みこらえて、良く考えろ。
こちら側に来るか?来れば左腕を治してやる。だが断れば今度こそ殺す。三度目はないぜ」
少し距離を取りながら先ほどの問いを繰り返すヴァリニャーノの言葉が、利家の耳になんとか届く。
腕を何回も捻らせたような奇妙な痛みをこらえながらも、利家は考えた。
もはや歯向かっても勝機はない。殺されるぐらいなら、一時的に踊らされ牙を磨ぐ、利家はそう考える。
痛みで冷静な判断が出来なくなっているわけではない。こんな状況では誰でも少しはそれを考える。
ここで否定し殺されても、残るのは『貫き通した』という矜持、プライドだけだ。
普通ならそれも誇りとなるが、こんな島で貫き通し死んだところで何になるだろう。
ここで誇り高く散ったところで、家が残るわけでもない。語り継ぐ者も誰もいない。野垂れ死にと同格だ。
いや、この状況で『自分のために』と言う者はいるかもしれない。
だが、利家はそう考えなかった。どうせ死ぬなら敵の本拠地で、と考えたのだ。
無論、肯定したところですぐに殺されるかもしれない。
あるいは、この時代にはない何かで洗脳される可能性も否定できない。
だが、生きて反撃の望みを繋ぐなら、不確定であれ肯定したほうがいいのだろう。
肯定-反撃への未来-か否定-自分だけのための誇り-か、どちらの判断が正しいのか、余人には下せない。
利家の心は肯定を選んだ。
しかし、その心とは裏腹に、彼の生きた右腕は槍を掴んだ。
ヴァリ(目が死んでねえな・・・利き腕(右腕)を潰した方がよかったか・・・?)
彼自身、天皇陣営に利家が寝返った際、治療に手間がかかると思い意図的に利家の右腕は狙わなかった。
だが、なおも抵抗を続けようとする利家を見て、ヴァリニャーノは己の判断を少し後悔する。
ヴァリ「おい、ヤケ起こすなよ・・・『お前は勝てない』って事を思い知らせてやったんだ。もう歯向かうな」
利家「・・・『○○するくらいなら死んだ方がマシ』・・・そんな状況なんて絶対無いと思っていた。
どれほどの屈辱を味わっても・・・死んだ方がマシな状況なんて絶対にないってな・・・」
右腕で槍を持ち穂先をヴァリニャーノに向けたまま、利家はそのまま槍を投げる体勢をとった。
利家「俺の仲間に・・・1人・・・いきなり頭を撃ち抜かれ死んでいった奴がいる・・・初日にな。
そいつの人生ってなんなんだ?・・・そいつはここで頭を撃ち抜かれるために今まで生きてきたのか?
・・・そいつだけじゃあない・・・皆ここで殺されるために今まで生きてきたってのか?・・・違うだろう」
ヴァリ「・・・」
利家「・・・俺の仲間を殺した奴らに一時でも頭を下げるくらいならッ!それこそ死んだ方がマシだッ!!
受け取れッ!!これがお前達に殺された『俺』と『仲間』の・・・!!」
そのまま叫びながら、利家は生きた右腕、そして全身を全力を込めて捻り、力を溜める。
視界の端でヴァリニャーノがまたキューを構えているのが見えたが、少なくとも突いて届く互いの距離ではない。
キューを投げられたとしても、自分の方が幾分か早い。
利家「最後の意地だアアアアアアアアァァァァァァ―――――ッ!!」
悲痛な絶叫と共に、かつてないほど全身全霊を込めた一撃を彼は放った。
当然、利家自身は槍がヴァリニャーノを貫くものだと考えていた。
たとえキューを槍に向け突き出したと言っても、いともたやすく吹き飛ばす事が可能だと思っていた。
己が全力を込めた一撃が、よもや誰にも防げるはずはないと考えていたのだ。だが・・・。
ヴァリ「ヤケってんだよそういうのをッ!!」
罵声と共に突き出されたキューの先端が、投げられた鉄槍の先端にぶつかる。
瞬間、ひどく耳障りな甲高い金属音が響いて、鉄槍の穂先は砕け散った。
ヴァリ「・・・・・・チンケな」
キューを肩にかけ、深いため息を吐きながらヴァリニャーノが呟く。
ヴァリ「・・・意地だったな」
利家「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
悲痛な絶叫を上げた利家だが、なぜかそれほど後悔はなかった。
ただ、『せめて一矢報いたかった』という感覚だけが、彼に叫び声を上げさせた。
骨折した左腕の痛みもそれほど感じなかった。
ヴァリ「残念だ・・・これは本心だが、本当に残念だ。
お前みたいな情熱的かつ馬鹿な奴こそ、是非ウチに来てもらいたかったんだがな・・・」
利家「・・・」
もう利家は何も答える気はしなかった。例え今誘いをかけられたところで無視するだろう。
利家(今回ばかりは運が向かなかったか・・・すまなかった、長秀・・・俺も帰れそうにない・・・)
今だキューを構えず肩にかけたまま近づいてくるヴァリニャーノを見て、ふと利家はそう思う。
が、その瞬間、どこからか響く乾いた銃声が地面を揺るがした。
ヴァリ「チッ!新手か!?」
直後、ヴァリニャーノは姿勢を低くして周囲を見回す。瞬間、同程度の目線の利家と目が合った。
利家(・・・今だッ!!死んでもいいッ!!全力で身体を動かせええェェェーッ!!」)
覚悟を決めていた利家と、勝利を確信し油断したヴァリニャーノの反応の速さは一目瞭然だった。
利家は後ろ足で跳躍し、全力でヴァリニャーノにぶつかる。
ヴァリ「うぐッ!」
肩にかけていたキューを地面に落とし、ヴァリニャーノは地面に倒れこんだ。
すぐさま利家は、援護射撃をした『おそらく味方であるはずの人間』がいるであろう後ろの方向を見る。
だが、利家が後ろを振り返った瞬間、利家が跳躍する前にいた場所に銃弾が突き刺さった。
利家(な!?・・・味方じゃないのか!?)
今回は先ほどよりはっきりと銃声の音が聞こえた。すぐさま利家は銃声のした方を見る。
そこには、ぽっかりと開いた穴から『吉良親貞』が銃を構えているのが見えた。
利家「うぐッ!!うがあッ!!」
そちらに気を取られた刹那、折れた左腕に凄まじい痛みが走る。
既に立ち上がっていたヴァリニャーノが左腕に蹴りを入れたのだ。
ヴァリ「今だ!!撃てッ!!」
直後ヴァリニャーノは利家から距離を取り、親貞に向かって全力で叫んだ。
だが親貞は銃を利家の背後の方向に向けて撃つ。
ヴァリ「バッ!!どこ撃ってんだ!?」
親貞「黙れ!お前が戻れ!!向こうを見ろ!」
ヴァリニャーノもキューを足で蹴り上げ肩で拾いながら、利家の背後を見据える。
すると、確かに誰かがこっちに向かって来るのが見えた。距離はそう遠くない。
ヴァリ(あれは・・・そうか、前田利家と共に行動していた上条政繁か!タイミング良すぎるぞ、クソ!)
親貞「わかったか馬鹿!最初の銃声は僕が撃ったものじゃない!アイツだ!!わかったらお前が退け馬鹿!!」
親貞(僕だってもう銃弾はないんだ!!威嚇しなきゃとっくに撃たれてるぞ!!)
とだけ叫ぶと、親貞はまた地下通路の中に消える。
ヴァリ(どんなふざけた逆転劇だよ!?こんなのアリか!?・・・なんて運してやがるんだコイツ!?)
ふと利家の方を見たヴァリニャーノはそう思い
ヴァリ「アリーヴェデルチ」
とだけ声をかけ、走って地下通路に消えていった。
直後地鳴りが響き、地下通路への入り口はスライドする地面に遮られていく。
利家「く、くそ・・・ッ!」
利家も反射的に追いかけようとするが、左腕の痛みが先ほど以上に蠢き、また動きをやめる。
平地を走ってきた上条が利家に追いついた時には、既に地下通路への扉は完全に閉め切られた。
利家「ぐあッ・・・!」
死の危機が去って少し気が緩んだ利家の左腕に、凄まじい痛みが走る。骨折した部分を蹴られたのだ、無理はない。
上条「オイお前まさか骨折したのか!?」
利家「見て・・・わかるような事を言うな・・・」
上条「オイ、ちょっと待ってろ!添え木みたいな物今探してやっから!」
そういいながら、上条は自分の者ではない方の、走っているときに拾ったデイバッグを開け、中を物色する。
利家「・・・」
利家は心の内で上条に礼を言った。上条が来なければ自分は明らかに死んでいた。
自らも死ぬ危険を冒してまで、己を助けに来た上条に深い感謝の気持ちを持っていた。が、それは口には出さない。
利家「・・・添え木なんていらん・・・」
代わりに出たのはこんな言葉だった。
上条「まあ、そう言うなよ・・・これなんてどうだ?いや、これは使えないか・・・」
と言いながら、上条はデイバッグから取り出した細長い武器『錘』を見る。
利家も何気なくそれを見るが、瞬間利家に電撃が走る感覚が訪れた。
瞬間、有無を言わさず利家はその武器を奪い取った。
上条「な、何すんだ?オイ?」
上条の声も耳に入らず、利家は己の右手に持っているその武器をただじっと見据える。直後、利家は泣いた。
利家「・・・間違ってなかった・・・俺の決断は・・・」
呟いた後、利家はしっかりとした目で地下通路の扉を見据え、そこに向け歩き出す。
上条が何か言っているが、耳には入らない。
やがて地下通路の地面の扉まで近づいた時、利家は全力で右腕を振り上げ、錘を地面に振り下ろした。
鐘を叩くような金属音が響く。そしてまた、利家の左腕にも気が狂いそうな痛みが走る。
利家「ぐ・・・っ!だが二の矢、三の矢・・・!!砕けるまで叩く!!・・・最後の意地を見せてやる!」
『錘』・・・初日に下間頼照に頭を撃ち抜かれ死亡した、金森長近の支給武器である。
彼が撃ち抜かれたのは、まさにこの3-C地点であった。
長近だけではない、勝家が借りた鉄槍、長秀の手榴弾、可成の矢、上条が持つ佐久間支給武器のH&K MP3。
織田家の散っていった仲間が意地を見せつけろ、『人間』を見せつけろ、と告げるかのように利家の下に集まる。
なおも利家は地面を叩く。地下通路への扉は、少しずつ、ほんの少しずつ、歪み出す。
地下通路にも、利家が叩く音が聞こえている。扉を見上げたヴァリニャーノが一言呟いた。
ヴァリ「クソッ・・・本当に化け物だな・・・左腕を折ったんだぜ・・・?」
親貞「で、どうするんだ?言っておくが僕はもう銃はない。悪いが、そんな状況での応戦は断る」
ヴァリ「逃げるしかないだろうな・・・とてもじゃないが今相手にしたくはねえ」
鉄槍をキューで受けた時からずっと痺れている両手を見下ろしながら、ヴァリニャーノは呟く。
ヴァリ(この地下通路への入り口は・・・まずブチ割れないくらいに設計されているはずだ。
つまりいくら頑張ろうが砕ける事なんて人間じゃ出来るはずがねえ・・・)
そう思いながらも不安が拭えないヴァリニャーノは、ふと砕けたキューの先端を見る。
彼の不安の原因は何よりもそこにあった。
たかだか鉄が、彼自身最高の改造を施したキューを先端とは言え叩き割ったのだ。
先端を取り替えることは簡単だが、利家の力にヴァリニャーノは幾分恐怖を抱いていた。
ヴァリ(そうだな・・・つまりブチ割れたら人間を超えられるって事か?)
ヴァリ「ロヨラかザビエルに連絡は取れるか?取れるなら今すぐ連絡しろ。ここにすぐにでも兵隊呼べってな」
すぐ近くに居た作業員に、ヴァリニャーノはそう命令する。が、作業員はまた無常な報告を返す。
作業員「連絡を取る事は不可能です。このトラックは予備の為、旧式です。通信機能はありません」
ヴァリ「クソ・・・武器は積んであるのか?」
作業員「非常時のためにいくつか・・・銃火器、遠距離、近距離武器、一つずつ積んであります」
ヴァリ「少ねえよ・・・クソ、じゃあそれでいい。万が一、億が一奴等が侵入してきたらその武器を持って応戦しろ。
今がその非常時だ。全部使ってもいい、逃げながら戦え!倒そうと考えるな、応援来るまで耐えろ!」
作業員「はい」
ヴァリ「そこの作業員!お前はトラックを運転しろ!それ以外はお前ら全員応戦だ!気合入れろよ!」
作業員「はい」
機械的な返事に少しガッカリしつつも、それが彼が今まで見てきた作業員なのだから仕方がない。
もはや島の中、たとえ地下通路であれ本拠地であれ安全な場所などどこにもない。自分達も例外ではない。
武器を下ろしたトラックに乗り込みながらも、どことなくそれをヴァリニャーノは感じ取っていた。
【/番 アレッサンドロ=ヴァリニャーノ『戦闘用改造リアルカスタムキュー(先端破損)』】(軽い手の痺れ)
&【39番 吉良親貞 『日本号』『モトローラ トランシーバ T5900(二個)』『イサカM37フェザーライト(残弾0発)』】
ROUTEV(本拠地5-Eへトラックで移動中)
【86番 前田利家 『SPAS12(残弾1発・暴発の可能性あり)』『鉄槍(先端破損)』『Mk2破片式手榴弾(一個)』『錘』】(左腕骨折)
&【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻(十数冊読めないものあり)』『バゼラード』『H&K MP3(残弾12発)』】
3-C食糧配布地点(利家は地面(地下通路への入り口)を叩き続けています)
―記憶は少し遡る―
「凛〜もう周りも暗くなってきたから、そろそろ帰るわよ〜」
「まって〜、もうちょっと遊びたいよ。おか〜さん」
「もう、おいてかえるからね」
そう、あたしは毎日が楽しかった。
やさしい、お父さんとお母さん。
いっぱいのお友達。
まるで、この世で戦争なんて行われていないかのように思えた。
それが、こんな事になるなんて・・・
ある日、凛は一人で遠くまで歩いていた。
初めて、一人で自分の村の外に出た。
歩いていると、大きな山があった。
凛は山が好きだった。
川が綺麗で、虫がたくさん居て、あたしの遊び場だった。
初めて入る他の山。期待がいっぱいだった。
何があるのかな・・・どうなっているのかな・・・
だが、その期待は粉々に打ち砕かれた。
「おい、そこの小娘。一人か?」
「はい・・そうですけど・・・」
「なら、話が早い。着ている服を脱げ」
「い・・・いや・・・・です」
「はっはっはっは・・・おとなしく言う事を聴いておいた方が身のためだぞ。
わしゃ、女子供でも容赦はせんからな。」
ドスのきいた声で話したので、凛は怖くなり、泣き出した。
「うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん。たすけて〜おか〜さんおと〜さん」
「泣いても無駄だ。お前を助けるやつなどは居ないんだよ。やれ」
リーダー格の山賊命令をすると、左右から刃物をちらつかせている二人の山賊が凛へ近づいてきた。
「何をしておる」
「だ、誰だ!」
「わしか、浅井久政じゃ。」
「ほう、あの無能君主の久政か。見たところ一人のようだな。
お前を討って名を挙げさせて貰うぞ。子分共、やれ!!」
距離は200m程離れていた。
子分が久政に近寄ってくる間に久政は言った。
「そこの娘。目を閉じて、耳を塞いでおけ。」
凛は言われた通り、目を閉じ耳を塞いだ。
それを確認した久政は、大声で叫んだ。
「員昌!!そこに居るのは分かっておる。相手をしてやれ。」
「やれやれ。殿はいつも、我に頼ろうとする。が、仕方が無い。いざ、尋常に勝負」
「ば・・ばかもの。わしは、こやつら程度にわしの実力を見せたくないだけじゃ」
勝負はあっという間についた。
所詮、弱い物いじめしか出来ない山賊が磯野員昌を倒そうと言う事は無理な話だ。
「お・・覚えてやがれ」
負け惜しみを言いながら、リーダー格の山賊は逃げていった。
「員昌、もうよい。下がっておれ」
「ははっ」
磯野員昌が下がるのを確認してから、久政は凛の元へ歩いていき、肩へと手をやった。
「そこの娘。もう目を開けてもよいぞ。」
「・・・あ・・・あの怖い人たちは?」
「それなら、もう逃げて行ったぞ」
「あ・・・あなたが助けてくれたの?」
辺りを見渡しながら、
「そ・・そうじゃ。わしが退治したのじゃ。」
「あ・・・ありがと〜あたしあんな事初めてでとっても怖かった。」
「そ・・そうか。これからは気をつけるのじゃよ。では、失礼」
「ま・・まって・・・あなたの名前は?」
「わしか・・・わしは浅井ひ・・・・・」
(凛、どうしたのじゃ、先ほどから黙っておって)
「え・・・なに?」
(この洞窟に入るかのか?)
「せっかくだから入ろうよ。それと、昔、山賊に襲われた娘を助けた事ってある?」
(う〜む。ああ〜あれか。あの娘は、かわいかったのぉ〜。で、それが、如何したのじゃ?)
「いや、な〜んでもない」
あたしのために、命を懸けて戦ってくれたあの人。
あれから、どんだけ探しても見つからなかったあたしの初恋の人。
まさか、こういう形で会えるなんて・・・神様ありがとう。
あたし・・・決めたんだ。もし、人間に戻れたら、久政と結婚する。
久政に助けてもらったと思っている凛。だが、実際に助けたのは磯野員昌なのだが・・・
凛の勘違い恋愛は何処までも続く・・・何処までも・・・
109 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/07/27(水) 01:21:14
保守上げ
悪夢のような、とっても嫌な声のあの放送も聞えなくなって昌景さんは何かに耐えてるようだった。やっぱり名前を呼ばれた中に知り合いがいたんだよね?
昌景さん、とても悲しそうな顔してた。僕は何もしてあげられない。ただ泣くのを堪えるだけ。
でも昌景さん、その後すぐいつもの優しい顔に戻っていったんだ。
あの人は強い。元の国でも数々の戦場を駆け抜けた猛者なんだって。でもそれとはまた違った強さ。目の前に息づくそれそのものから直に感じられる強さだ。
僕も昌景さんも、重秀さんも景虎さんもこのゲームの鎖の中では生きることなんかできない。ここには綺麗な空気なんか無い。ここで心から笑うことなんて出来ない。
この鎖から抜け出す、この狭い世界から。それこそが僕の、僕たちの生きる道なんだ。
実はこれ、さっき重秀さんが言ってたことなんだ。難しいことはわからないけど、僕もなんとなく同じ考え・・・かな?
景虎さんはいつも無口。だけどとても強いしなんかカッコイイ!僕も大きくなったらああいう人になりたいな。・・・なれるかな?
なんだか、これだけ自然に物を考えるのは久しぶり・・・かな?今までなんか頭がモヤモヤ霧がかっていたような感じだったのに、なんだか随分すっきりした気分。
優しい昌景さんも、あまり喋らない景虎さんも、よく喋る重秀さんも大好き。全然気を使わずに済むし皆いい人。
父上・・・じゃなかった、斎藤道三さんと一緒に居たときとはなんだか全然違うなぁ。
重秀さんが言うには、僕には兄上が二人いるんだって。でも、あまり深く考えちゃうと苦しくなる。それに頭も痛い。
何でだろう。僕には少しだけ失った記憶があるみたい。ううぅ・・・、なんだか頭が痛くなってきた・・・、目の中が熱い・・・、足先は冷えてゆく・・・
景虎「あまり思い悩むな。糧を得たら少し休もう」
景虎さんの静かな声がした。なんだか落ち着く声だ。昌景さんが僕の頭に優しく手を添える。
すぅーっと頭の痛みが引いてゆく。体全体に柔らかな暖かみが広がってく。
なんだろう。この人達といると安心する。これが人の温もり?なんだか懐かしい気がする。僕の兄上達もこんな感じだったのかな?
・・・重秀さんは、全然興味無さそうにあくびしてる・・・、全くこの人は・・・ブツブツ
――3-E西部森林中
全身を朝比奈泰朝の返り血に染めた長曽我部元親は、弟達の無事を願いひたすら歩く。
最早目的地など無い。いや、既にそれを思案する心のゆとりが無いのだ。
それを遠目の茂みから伺う者も居る。依然心を研ぎ、警戒を僅かも怠らない三好長慶だ。
端から彼を見れば、至って正常な人間に見えるだろう。だが、彼の奥底では無数の思想が入り混じって展開されていた。
初めのうちは、全てを滅びに導く為、自身で全てを消去することも考えていた。だが直後、それはあまりに浅はかだと自嘲した。
近辺を探る内に色々な場所に点在する死体の惨状や切り口の見事さは、1対1では到底敵わない人間の存在を予測するには充分だった。
慎重に期を窺った。自らの手を汚さず他人を利用するのは自分の常用手段だ。
生存者が残り僅かになるまで、それまで集めた道具や策を駆使し、最後の最後で動けばいい。長慶は不気味に笑った。
そして元親を遠くから舐めるように見た。勿論、周囲への警戒を怠ることなく
――全身を色鮮やかに染めたあれは、時間が経って変色した物ではない。こやつ、たった今人を殺したばかりだ。
目は虚ろ、時折ブツブツとうわ言をつぶやいておるのぅ。遠くからでは断定には至らぬが、狂人の類の可能性も十分ありうる。
願わくば正面衝突は避けたい手合いだな・・・、
そんなことを考えていると、視線の先の男の歩がこちらに向かっていることに気付く。
――気付かれたというわけでは無さそうだがな。フフフ、では無難にわしもここを離れるとしよう。
足音を立てぬようその場を後にする。草や枯れ木がざわざわと小さな音を立てるがこればかりは対処のしようがない。
近づかれる前に手早く判断を下したのがよかったのだろう。男が自分の存在に気付く様子はない。
――3-D中心やや東部寄り、森林地帯と草原平地地帯の境目辺り
重秀「あ〜・・・、ちくしょう、腹減ったなぁぁ〜・・・」
昌景「もう少しで着く頃合だろう。親泰は行儀がいいのにお前はどうもその手のそれは持ち合わせていないようだな」
やれやれと言った感じで昌景は親泰へ笑顔を向ける。親泰も可笑しそうに笑った。
重秀「おい坊主、あんまり調子に乗るんじゃねえぞ!あー!それはそうと、腹減ったぜチクショォォー!」
さて・・・、狂人に続いて今度は三人の強そうな男と、それから子供?・・・か?会いたくない時に限ってよく人間と遭遇するものじゃな
呑気に子供連れで談笑しとるわ。ふん、随分と正義感の強いもんじゃわい。惰弱な小僧を庇っているつもりか。
くだらぬ、その様な感情など幻に過ぎぬ。
背後からの奇襲を開始することも可能であるがそれは愚策。三人のうちの一人は顔見知りじゃ。
ただ金で雇われるだけの最強傭兵集団雑賀衆、畿内では、いや全国でも知らぬ者はおらぬ・・・
我が三好家も雇い入れたことがある、時には敵に回したこともあったの、その頭領鈴木佐太夫の末子重秀・・・、やっかいな相手じゃ
他の二人は初見じゃが、あの法師姿から察するに奴が軍神と恐れられる長尾景虎・・・、最も危険な男じゃな
震えが止まらぬ。わしの長年の直感と知識がこう告げておるわ。「戦うな」とな・・・
そしてもう一人の小柄な者は・・・、小柄・・・か・・・、あの全国屈指の大大名武田家の中でも最強を謳われる者が居るという、そやつの身の丈は確か・・・フフ
放送にて反旗を翻す者としてその名も呼ばれておったな。飯富昌景、奴に間違いなかろう。
幾らわしと言えども海千山千の連中を向こうに回すほど呆けてはおらぬ。そして後方には先ほどの全身を血に染めた狂人・・・
さて・・・、前後を塞がれたこの状況をどう切り抜けるかの・・・、思案の為所じゃ
三好長慶よ・・・、非常になれ・・・、全ての物事に優先順位を付けよ・・・、自分以外の存在に価値など置く必要は無い
生物の根源たるエネルギーを無視し、命を冒涜し、この世の全てを弄ぶのじゃ
・・・どれ、正義感のお強いご立派な愚か者にはこういう策でどうじゃろうか・・・、クックック
こやつらも、先ほどの者も死にたくないであろう・・・、生きたいであろう・・・。その欲求に勝る衝動など無い
そこに漬け込むのじゃ・・・、弱みを突くのじゃ、クククク・・・、
絆?信頼?そんな下らぬ物はすぐさま砕けるものじゃ
クククク・・・、笑いが止まらぬ・・・、最高の策じゃ!疑いから始まるこの殺戮遊戯の泥沼にどっぷり浸かるが良いわ
長慶は笑った。四人の背中を見ながらひたすら、冷たく密かに、そして不気味に笑った。笑いながら自らの腹部に矢を突き射した。
痛みが走る筈なのだが、それを上回る快楽が長慶を襲った。これから自分の策によって巻き起こる惨劇を想像すると、興奮を抑えようとするのがやっとだった。
傷口が開き、真っ赤な血が溢れ出る。自らの滴る血を見て、長慶はさも満足そうに冷笑を浮かべた。
腹に手を添え、血のベットリ付いた両手をそのまま顔に持っていき、塗りたくる。
顔から両手をゆっくりと離し、不気味に覗き出たその顔は、まるで顔面の至る所から出血しているように見えた。
その真っ赤に染まった不気味な顔を歪め、長慶はニタニタ笑った。そして走った。何かに取り憑かれたようにただひたすらに・・・
長慶「ひいいいぃぃぃ!!お、おた、お助けをー!!」
長慶は大声で、だが周囲に響かないようにわざと皺枯れた声で叫んだ。それも既に計算済みなのだ。
案の定四人は振り返った。突然のことに全員が真剣な表情へと変化させる。その瞬間長慶は重秀に顔を見られないように、だが顔に付着した不気味な血痕は見えるよう伏せた。
長慶「と、とんでもない奴があっちから襲ってくるぞー!!大変じゃぁぁー!!ゴホッ!グホッ!」
長慶(クックック、バカ共が。己の強さに自信を持っておるじゃろう。さあ、死地へと向かうがよい。)
長慶(それが地獄への招待状であることも知らずにのぅ)
心情とは裏腹に、長慶の表情は至って真面目だ。真剣そのものだ。緊張感と恐怖感に支配され、強張った面持ちしか感じ取れない。
顔面は真っ赤に染まり、腹部の傷口からは出血が未だに生々しく続いている。
そして長慶の言う「あっち」の方向からは、全身を血に染め、目に殺意を浮かべながら歩いてくる長曽我部元親の姿が見えた。
彼らが長慶の言うことを疑う要素などどこにもないのだ。
昌景「ここは我らに任せておぬしは逃げられよ!」
長慶「かたじけない、恩に着る(思う存分殺し合え!)」
長慶は薄気味悪い笑いを誰にも見られることなくその場から去っていった。
重秀が長慶に気付かなかった理由はもう一つあった。
重秀「あいつ・・・、長曽我部元親・・・」
親泰「えっ!?」
子供は純粋な生き物。その心は小さくあるが故周りの環境によって180度性質が変化する。
故に道三の洗脳術に短時間で根深く嵌り、またそこから救われたことで夢から覚めるが如く自我を取り戻しつつもある。
島に放り込まれ、弁舌巧みな大人に心を玩具にされ、数々の修羅場に巻き込まれた。子供の親泰にとっては心身共に限界点を越えていたのだ。
暗示による記憶操作を受けた親泰が心を休める環境を、この三人が作ってくれている。
それは彼らすら知らぬうちに精神学的な対症療法になりつつあった。凍った心もやがて解けていくことなど必然であるのだ。
重秀「長曽我部元親・・・」
親泰「えっ!?」
この人が兄上?
何か様子がおかしい。理性、情け、優しさ、そういったものがこの人から感じられない。記憶を遡っても何かが違う。話に聞いていたそれとも違ってる。
兄上?この人が?本当に?ほんとうに?ホントウニ・・・?
重秀「・・・血か」
はっ、重秀さん・・・、真剣な顔・・・、あの時と、爆発から救ってくれた時と同じ顔だ。
元親「・・・鈴木重秀か・・・」
え?知ってるの?ああ、そうか。重秀さんは僕の兄上に恩があるって。でも本当にこの人がそうなの?
なんだか体が熱い。右手の甲を額に当ててみたらやけに熱いように感じたけど多分気のせい。いや、わからない。ちょっと頭が痛い。気分が悪い。
重秀「誰を殺した?」
元親「・・・」
重秀「お前は斬るべき人間とそうでない人間の判別くらい出来る人間だ。だがな」
元親「・・・」
重秀「俺にその邪気は隠せんぞ。お前は俺の知っている長曽我部元親じゃない。お前は誰だ?」
重秀さんの問いに兄上は応えなかったが、冷徹に塗れたその表情がその答えを雄弁に語っているのが僕にもよくわかる。
重秀「何故押し黙っている」
暫し続く沈黙を打ち破ったのもやっぱり重秀さんだった。
元親「武田信繁と・・・、朝比奈という侍を殺した・・・」
昌景さんの表情が険しくなったように思えた。武田って・・・、やっぱり昌景さんの・・・
重秀「お前・・・」
元親「わかっている・・・」
やがて兄上も重い口を開いた。徐々に感情が昂ぶって来るのが自分でもわかる。
元親「俺は悪に魂を売った。そんなことなどとうにわかっているのだ!貴様に言われんでもな!だが必要なことだ!弟達を護るにはな!何もかも理想通りには行かぬのだ!」
重秀「てめえで働いた凶行を弟のせいにするか!長曽我部元親、どうやら貴様は堕ちるところまで堕ちたようだ」
心にぽっかり穴が開いたみたい。穴の名前は現実感。今になってそれがよくわかる。そう、この人が僕の兄上、それが現実。実感が無い。でも・・・
この島に来てからというもの、現実感などほとんど感じることは無かった。その眠り続けてきた感覚が今蘇る。段々と・・・
重秀「そんな穢れた手で弟を抱くことは出来ない。貴様は・・・」
親泰「僕は、兄上が重ねた罪を忘れて生きることを認めません」
重秀さんの言葉を遮って思わず叫んでしまった。兄上に向かって。重秀さんも昌景さんも、兄上もびっくりして僕の方を振り返ってる。景虎さんだけ静かにその場に佇んでいた。
許せない・・・、兄上と言えども。
僕を救う為でも昌景さんの慕う人を殺した・・・、何の罪も無い人を
そんな救い、そんな幸せなんていらない。僕はこの人を許さない。
確実にこの余興は、人の心を蝕んでいるのだと・・・、兄上もそれに魅入られたのだと・・・
親泰「兄の不始末は僕が・・・、兄上ほどの者が、そのような行為を・・・止めねばなりません。これは弟である僕の義務です」
くそっ!だめだ!この気持ち、言葉では説明し難いや
でも判ってください昌景さん!重秀さん!景虎さん!これが僕の受けた、これから成すべきけじめなんです!
親泰「この人は僕の兄上長宗我部元親、僕は弟の親泰・・・、優しかった兄のこと、全て思い出しました」
僕がそう言ったら、兄上は少し笑顔を見せた・・・、ように見えた。でも違う。僕の記憶にある優しかった兄上の笑顔とはかけ離れている。
人を殺めた罪悪感なんて微塵も感じられない。ただ弟が自分のことを口にしたことへの安堵感だけだ。なんて勝手な・・・
自分の都合なら、平気で人の命を奪える人間なんて・・・
親泰「人として失ってははならぬ物を、兄上・・・貴方は失った。鬼に巣食われた邪悪な心から僕は貴方を救います。殺してでも」
親泰「僕も一時は見失いました。しかしあの人達のお陰でそれを取り戻すことが出来たのです」
親泰「兄上が武田信繁さんというお方を亡き者にされたということを知った時の昌景さんの悲しそうな顔に心が痛みました。貴方にこれ以上の罪を犯させない為にも、止めてみせます」
これでもか!っていうくらい兄上に言葉をぶつけた後、僕は、昌景さん達に視線を向け言ったんだ。強く。堂々と。
親泰「僕、あなた達に会って、初めて仲間が出来ました」
会ったばかりの頃は全然信用してなかった。憎んだこともしたし、色々あったけど、自我と穏やかな心を取り戻せたのもあの人達のおかげなんだ。
親泰「後から必ず追います。行ってください!同志よ!」
その声は確かに親泰のものだった。幼い少年の声だ。だが覚悟を決めた男の魂が宿っていた。
そしてその瞳に強い意志が宿り、輝いて見えたのは夕日のせいではなかった。
元親は泣いた。涙が止まらなかった。兄弟の中でも最も愛した弟親泰からの言葉の刃は悉く突き刺さった。
罪の無い人間に手を下したのも全てロヨラに弟の命を盾にされたから。ハナから拒否することなどありえなかった。
弟達の為に、他ならぬ存在を護り通すことだけの為に命を奪うのだと思い込まねば平常心ではいられなかった。
しかし現実は厳しすぎた。元親はただ只管泣いたのだった。
すっかり凍り付いてしまった心の奥にだけ僅かに残る「何か」が元親の心に痛みを感じさせ、そして涙を流させた。
重秀「賭けだな・・・、一種の。いいさ、俺も賭けは嫌いじゃねえ。お前の覚悟がそう言わせたんだろ?だったらそれに賭けてやるさ」
昌景「死ぬんじゃない!」
景虎「・・・短い間に随分と立派な男に成長したものだ。親泰、また会おう」
三人の背中を見送った後、親泰は元親に言い放った。
親泰「仲間だから信頼するんじゃない。信頼できるから仲間なんだ!そこに絆があるから、あの人達は僕の仲間です。
心の正しさを教えてくれた同志です。それがわからず、取り返しのつかないことをする者もいるでしょう。兄上、貴方のように!」
親泰「もう・・・これ以上誰も殺させやしない。僕だって護られてばかりじゃない。仲間を今度は僕が護るんだ」
小さな少年の大きな覚悟が宿ったその瞳を、紅い夕日が洗練するが如く照らしていた。親泰の心の奥底に、勇敢な炎が燃え上がった。
本音を言えば、昌景と重秀は気が気でない。
かつて、同志の誓いを交わしながらも強い信念を身に纏い、自分達に背中を見せた同志達を思い出した。
主君の無念を果たさんとする山中幸盛、仲間達との誓いを守ろうとする磯野員昌、
彼らは己の意志に逆らわず、信条に従って走り、そして二度と自分達の元へは帰らなかった。
親泰もそうなってしまうのだろうか。それは誰にもわからない。運命が決めることだから。
元親はただただ心が痛んだ。
弟の為に、弟を守る為に信念を崩し、ヨロラの言いなりに成らざるを得なかった。
その弟が目の前に現れ自分を睨む。それがとても痛かった。隔絶された空間の中で一人、何も無い闇の中で佇んでいた。
弟から許されることも無く・・・。弟から愛されることも無く・・・。
声がするだけ。自分を責める声が・・・。言葉の数々が痛い。心に深々と無数に突き刺さりそのまま抜けることはない。
決して消えることのない血が、元親の刀に、服に、そして心にこびりついたままだった。元親は・・・
その様子を遠くの物陰で冷たい笑みを浮かべながら覗き見ている者が一人
長慶「クックック・・・、まさか兄弟じゃったとはな。思わぬ収穫じゃわい。このまま死者が出るのを見るのも一興じゃが・・・」
更に醜く口角を上げ、笑いと、そして破滅への欲求を浮かべて呟いた。
長慶「楽しみは後にとっておくとしようか。帝よ、面白い報せを待っておるぞな」
3-D西部付近
昌景「あやつ、泣いておったな」
重秀「悪い奴じゃないんだ。決して・・・」
――(一体どうしちまったんだ・・・、お前あの時俺を救ってくれたじゃねえかよ)
重秀がかつて元親に借りたままになっていた恩、それが形となって親泰に伝わることは未だない。
景虎「一人の男の決意だ。信じぬくのが義理という物だ」
そしてその後、アルメイダと称す者による放送が木霊した。
【44番 香宗我部親泰 『長曾禰虎徹』】
【65番 長曽我部元親『鎌』『ウィンチェスターM1897(残弾3発)』『青龍偃月刀』】共に3-D東部にて対峙
【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢10隻)』『青酸カリ』『寸鉄』】(腹部に軽傷。傷口から出血)3-D東部から移動
【29番 飯富昌景 『フルーレ』】
【58番 鈴木重秀 『USSRドラグノフ(残弾4発)』『SBライフル(残弾14発)』『オーク・Wアックス』】
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『十手』】3-D西部 3-C食料配布地点を目指します
121 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/08/04(木) 11:25:58
age
122 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/08/06(土) 18:49:09
アゲ
あぼーん
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01赤尾清綱× 26岡部元信× 51佐久間信盛× 76林秀貞×
02赤穴盛清× 27織田信長○ 52佐々成政× 77久武親直×
03秋山信友× 28織田信行× 53宍戸隆家× 78平手政秀×
04明智光秀× 29飯富昌景○ 54柴田勝家× 79北条氏照×
05安居景健× 30小山田信茂× 55下間頼照× 80北条氏政×
06浅井長政○ 31海北綱親× 56下間頼廉× 81北条氏康×
07浅井久政× 32柿崎景家× 57上条政繁○ 82北条綱成×
08朝倉義景× 33桂元澄× 58鈴木重秀○ 83細川藤孝○
09朝比奈泰朝× 34金森長近× 59大道寺政繁× 84本庄繁長×
10足利義秋× 35蒲生賢秀× 60滝川一益× 85本多正信×
11足利義輝○ 36河尻秀隆× 61武田信廉× 86前田利家○
12甘粕景持× 37北条高広× 62武田信繁× 87真柄直隆×
13尼子晴久× 38吉川元春× 63武田晴信× 88松平元康×
14尼子誠久× 39吉良親貞○ 64竹中重治× 89松田憲秀×
15荒木村重× 40久能宗能× 65長曽我部元親○90松永久秀×
16井伊直親× 41熊谷信直× 66土橋景鏡× 91三雲成持×
17池田恒興× 42顕如× 67鳥居元忠× 92三好長慶○
18石川数正× 43高坂昌信× 68内藤昌豊× 93三好政勝×
19磯野員昌× 44香宗我部親泰○69長尾景虎○ 94村上義清×
20今川氏真× 45後藤賢豊× 70長尾政景× 95毛利隆元×
21今川義元× 46小早川隆景× 71長坂長閑× 96毛利元就×
22岩成友通× 47斎藤道三× 72丹羽長秀× 97森可成×
23鵜殿長照× 48斎藤朝信× 73羽柴秀吉× 98山中幸盛×
24遠藤直経× 49斎藤義龍× 74蜂須賀正勝× 99六角義賢×
25大熊朝秀× 50酒井忠次× 75馬場信房× 100和田惟政×
×印:死亡確認者 87名
○印:生存確認者 13名
個人
【11番 足利義輝 『九字の破邪刀(破砕)』『梓弓(4隻)』『グロック17C(残弾16発)』】3-E森地点(爆発したトラックの元へ移動予定)
【83番 細川藤孝 『備前長船』】3-E近辺(なんとなく利家&上条を探すが、他に面白いものがあればそれに向かう )
【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢10隻)』『青酸カリ』『寸鉄』】(腹部に軽傷。傷口から出血)3-D東部から移動
パーティ
【06番 浅井長政 『無銘匕首』『FN 5-7(残17+20)』『小烏丸』『USSR PTRS1941』】左眼失明 腹部に重傷。精神的にも肉体的にも疲労。
【同行者 ヤスケ 『U.S.M16A2 (残9)』『MP5K』】現在Route1で戦闘中
【39番 吉良親貞 『日本号』『モトローラ トランシーバ T5900(二個)』『イサカM37フェザーライト(残弾0発)』】
【同行者 アレッサンドロ=ヴァリニャーノ『戦闘用改造リアルカスタムキュー(先端破損)』】(軽い手の痺れ)
ROUTEV(本拠地5-Eへトラックで移動中)
【29番 飯富昌景 フ『ルーレ』】
【58番 鈴木重秀 『USSRドラグノフ(残弾4発)』『SBライフル(残弾14発)』『オーク・Wアックス』】
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『十手』】 3-D西部 3-C食料配布地点を目指します
【27番 織田信長 生死不明】『ベレッタM1919(残弾7発)』『相州五郎入道正宗』はフロイスが回収
【同行者 ルイス・フロイス『ベレッタM92FC(残弾15+1)』】5-E校舎内
【86番 前田利家 『SPAS12(残弾1発・暴発の可能性あり)』『鉄槍(先端破損)』『Mk2破片式手榴弾(一個)』『錘』】(左腕骨折)
【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻(十数冊読めないものあり)』『バゼラード』『H&K MP3(残弾12発)』】
3-C食糧配布地点(利家は地面(地下通路への入り口)を叩き続けています)
対峙中
【44番 香宗我部親泰 『長曾禰虎徹』】
【65番 長曽我部元親『鎌』『ウィンチェスターM1897(残弾3発)』『青龍偃月刀』】共に3-D東部にて対峙
【残り13人+α】
修正
>>144 ×【29番 飯富昌景 フ『ルーレ』】
○【29番 飯富昌景 『フルーレ』】
……申し訳ありませんorz
あぼーん
あぼーん
あぼーん
あぼーん
151 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/08/16(火) 02:38:06
保守
152 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/08/18(木) 23:25:21
age
「なんだこの音は?」
周囲に響く規則正しい金属音に反応して、三人は足を止める。
立ち並ぶ食糧の入っているであろうザックが視界に入った。ついに彼らは食糧配布地点に辿り着いたのだ。
だが、その場の更に向こうから、どうも気になる音がする。食事にありこうにも無理があった。
屈強な三人の若者が、草陰からコソコソと音の発生源を窺う光景は端から見れば少々滑稽だったかもしれない。
重秀「なんだいありゃ?何やってんだアイツ?随分熱心に叩いてるじゃねえか」
昌景「うーむ・・・、わからん」
重秀「飯を食おうにも、こう喧しいと気が散って適わん。お?なんか腕痛がってるぞ。ははは、ご苦労なことだ」
昌景「あれだけ熱心なのだ。何か我々の知らぬ所で事情があるのだろう。笑うものでは無い。ところで景虎殿、もう一人の御仁・・・、あれはもしや・・・?」
昌景が何かに気付いた様子だ。まるで珍獣を見るような目でその“もう一人の男”を見ていた。
景虎「・・・やれやれ」
冷静な表情こそ普段と変わらないが、珍しく景虎がしかめ面をした・・・ように見えた。
昌景「む、景虎殿」
思わず声をかけた昌景だったが、景虎は少々疲れたような顔をし、溜め息をつきながらその者達へと向かっていった。
そしてその景虎の姿に“その者”が気付いた。一気に表情が歓喜の色に染まる。そして・・・
上条「お?おおおおおお!!!お屋形様ぁーっ!!!」
上条は景虎を見つけるや否や、勢いよく景虎に向かって走り寄ってきた。目には涙を浮かべ、その表情には気味悪いほどの満面の笑みが浮かんでいた。
重秀「げ!!なんだこいつ」
気持ち悪い虫でも見るかのように、重秀は上条を見た。そしてすぐ視線を逸らした。勿論意図的に。
上条「よくぞご無事でェー!!!」
暑苦しい声で叫びながら目から洪水のような涙を流し、両手を目一杯広げて景虎に抱きつこうとしたその瞬間、
それを景虎は僅かに体を動かして避け、ついでに足をかけた。
上条「あぎゃぎゃぎゃうぎゃぴー!」
その勢いのまま鞠の如く上条は転がっていき、上条の世界はぐるぐると回転し続けた。やがて木にぶつかってようやっと止まったのだった。
上条「お屋形様〜、ひどいッスよ」
景虎「・・・・・・よくぞ無事であった」
一応は労いらしき言葉をかけてやる主君景虎だった。
重秀「・・・誰?」
重秀は景虎に尋ねたはずだった。だが・・・
――誰?
重秀のその声を聞いた上条は忽ち立ち上がり、目が回っているのかユラユラとした動きで重秀に薄気味悪く近づいたかと思うと
突然『ビシッ!』と両手で指差しポーズを決めた。
上条「誰だだとゥ!?ヘイあんたッ!あんたはクセェーッ!!あんたから『コイツ何者だ?』って思ってそうな臭いがプンプンするぜッ!!そんな臭い振りまくんで自己紹介してやるがよォーッ!」
重秀「いや結構。俺の視界になるべく入らんでくれ」
上条「ズゴーッ!!」
重秀「それであっちのあいつ、ありゃ何者だ?さっきから何やってんだい?」
重秀に失笑された上条はそのまま勢い余って再び派手にずっこけたが、それには誰も反応を示さなかった。というより皆利家の方を見ていた。
上条「あ?ああ、なんだそんなことか。あいつは織田家の前田利家って奴だ。左腕を骨折してるんだが、いくら俺が言っても地面を叩くことを止めやしねえ」
転がって土塗れになったまま上条は言った。
重秀「前田利家?傾き者の犬千代のことか?ってことは信長のうつけ仲間じゃねえか」
上条の言うとおり利家は依然地面を叩き続けていた。この余興の中にあって遂に気の触れてしまった者かという懸念もあったが、
どうやら時折腕を痛がるので、見かねた景虎が黙ってそれを制止した。
利家「邪魔するな!」
それまで地を叩いていた気合の篭った錘が突如として景虎に向けて襲いかかってきたのだが、
何故かそこに居るはずの景虎の姿は、利家の視界から忽然と消えていた。
景虎「己の体すら大事に出来ぬ者は仲間を思いやることも出来ぬ。無闇に体を虐めるものではない.。・・・わかるな?」
利家の背後から静かな声が聞えた。その間一秒にも満たない。身体を動かすことも、冷や汗をかくことすら許されなかった。完全な敗北だ。
そして何も言い返せなかった。全身から溢れんばかりの熱い想いのままに直情的な行動だったが…
景虎にその気があるなら、利家の命は既に奪われていただろう。
端から見ていた三人には、景虎の動きがはっきりと見えていた。(尤も上条は口をあんぐり開けて唖然としているだけだが)
直線的な利家の動きに対して、景虎の動きは曲線的。最小限の動きで利家の死角に回り込んだだけである。たったそれだけで利家を黙らせた。
不思議なものだ。上条の前では意識すらしなかったが、この圧倒的な人物の言葉の前では気持ちの昂ぶりが序々に収まってゆく。
そして冷静を取り戻した頃、自分の腕の痛みを再認識した。たかが腕の一つ、そう思っていたのが情けなくなる。
上条が救ってくれたこの身体を自分は粗末に扱おうとしていたのだ。利家は心で上条に詫びた。
昌景「どうやら落ち着かぬご様子。話をお聞かせ願えませぬか?力になりましょう」
利家「・・・」
昌景「失礼致した。某は武田家家臣、飯富昌景と申す者。こやつは雑賀の鈴木重秀、そしてそちらのお方は」
上条「そう、俺のお屋形様だ!・・・って、てめぇー!憎き武田家の飯富昌景じゃねぇか!!なんでてめぇが殿と一緒なんだよォー!!」
重秀「今更気付いたのかよ!」
景虎は集団から一人離れ、荒れ果てた大地を静かに見渡していた。少し前までここが修羅場だったことなど容易に推測できる。
草花の荒れ具合や散乱した枝葉の程度から、利家の無茶の度合い等も的確に見抜いた。
重秀(腹減ったなぁ〜・・・)
だが空きっ腹の重秀は、景虎とは正反対に、ただ欲望に忠実だった。
重秀「なあ、目的通り早いとこ飯にありつこうぜ。目の前に愛しい食糧ちゃんが居るのにこれ以上お預け食らうのは耐えられねー」
と、いうことで大の男五人は仲良く?輪になって食事にありついたのだった。
五人はお互いのこれまでの経緯や情報を知る範囲で全て交換しあっていた。
妖しい刀や気の触れてしまった今川当主のこと、
トラックという乗り物で食糧を運んでいた兵を襲ったことや、大音量で帝の声を届ける奇妙なからくり仕掛けの物体に至るまで
上条「おう。その南蛮人が言うにはな、もうここに留まっても爆発は起きないんだそうだ。あ、これすげえ美味い!」
初めて食べる異国の食べ物『ピッツァ』に感動しつつ、少々前に出会った不思議な外人フロイスから得た情報を話した。
昌景「気になるのは先程の“あるめいだ”なる者の申すことだな。前田殿の仰ることを踏まえて、やはりあそこがその入り口なのは間違いないであろうな」
上条「いいのかい?モグモグ・・・、簡単に信じちまってよぉモグモグ・・・。南蛮人の言うことなんて所詮モグモグ・・・、これマジでうめぇー!!アンタのもちょっとくれない?」
自分のピッツァを平らげると、次は重秀のそれにまで手を伸ばした。
重秀「てめえ卑しいんだよ!」
上条「ケチ・・・、・・・えっ?」
部下を思いやっているのか、つまらぬことで本題から話が逸れるのを嫌ってか、景虎は黙って自分のピッツァを上条に差し出した。
上条「・・・え?で、でも、いやぁ、殿・・・」
これには流石に上条も、はいそうですかありがとう、と気安く貰うには気が引けてしまう。
景虎「異国の糧は小生には合わぬのだ。処分を命ずる」
上条「と、殿ォー!」
再び暑苦しい涙を流す上条。そして失笑する他の四人。
上条「やっぱし殿はお心が広いぜ!てめえとは大違いだうっはっは!ウメェーー!!」
この状況で堂々と呑気に食事というのも、危機感が足りないかよっぽど能天気か・・・、恐らく後者だろう。
重秀「あーうるせーうるせー。ところでよ。その・・・、なんだ?“あるめいだ”とか言う奴のことだが・・・」
昌景「そうだな。景虎殿はどう思われます?」
景虎「僅かな情報すら無い以上、今はその者の申すことを信じるよりあるまい」
昌景と景虎だけは周囲への警戒を解かずに神経を研いでいた。いつ奇襲されてもいいように武器も手元に置いてある。隙は全く無かった。
重秀「だな。真偽のほどを確かめるなんて七面倒くせえことは性に合わん。あえて罠に掛かってみるのも手だ。なぁに、そんときは蹴散らしゃいいだけさ」
上条「アンタのそういう所いいねぇ、食い物にはケチだが人を不愉快にさせない人柄だぜこのトンチキがッ!!」
重秀「何しろ俺は喧嘩の強い二枚目だからなフハハハ!あ?今ケチって言った?」
そして殴りあう二人…、やれやれだぜ、と肩を竦めるほかの四人だった。
島の喧騒とはまるでかけ離れた静寂と薄暗さが支配する一室・・・。
どこぞの国王が座るような玉座のように立派な椅子に腰掛け、肘掛に手を置きグラスを傾けるその男ロヨラ。
失礼しますと一礼して、そこに入って来る作業員に背中で返事をし、またグラスを傾ける。
作業員「お尋ね者共の例の集団に新たに二名加わりましたね。ところでヴァリニャーノ様がごちらにご帰還されるとのことでございます」
豪奢な椅子に腰掛けたままロヨラは「ほう」と呟き、足を組み変えた。角度が変わりグラスに注がれたブランデーがステンドライトに当たり白く輝く。
ロヨラ「手は既に打ってある。ヴァリニャーノもとんだ失策をしでかしてくれたようだな」
作業員「左様でございますか。して、ヴァリニャーノ様の処遇はいかがなさるおつもりで?」
そこで一瞬にして場の雰囲気ががらっと変わる。言った作業員本人も自らの発言を後悔した。ロヨラの全身から恐ろしい怒気が放たれていた。
ロヨラ「・・・下っ端のお前の知る所では無いのだが?状況報告のみがお前に与えられた役割のはずだが?」
座ったままなのに、それでも突き刺さる凄まじいまでの鬼気を帯びた視線を向けられた一般兵は、思わずその場に尻餅をつく。
作業員「は・・・、ははっ!し・・・、失礼いたしました!」
ジリジリと照りつける太陽を背に、義輝は歩き続けていた。
手には折れた刀と細身の剣。両方とも想いの詰まった物だ。
大地は荒れ果て、草は燃え尽き、大木は軒並み倒れていた混沌の場に辿り着き、そしてすぐさま後にした。
余興の始まりとともに乗せられた“とらっく”。
そして“とらっく”を襲った者の存在を知らせる放送。
お尋ね者として島全体に「放送」された“鈴木重秀”と“飯富昌景”。
そして大破して燃え果てたこの場のこの物体もまた“とらっく”・・・。
この惨状から、遂に、かの同志達も逝ってしまったかと絶望したが、直後の「放送」で重秀と昌景の名は呼ばれることはなかった。
義輝は惑うことなく大地を蹴った。彼の足はしっかりと大地を捉えた。
生きている!どのようにこの壮絶極まりない修羅場を潜り抜けたのかはわからぬが、生きている!そして十中八九近くに居る!
わざわざ情報を流してくれる間抜けな帝を心で笑いつつ
義輝は駆けた。疾風の如く。周囲には目も暮れず彼をそうさせるのは仲間への絆だった。
そしてそれは、同時に危険な人物を誘い寄せてしまうのである。
長慶(・・・、あやつ単独か・・・?)
潜む男、三好長慶は不気味にほくそ笑んだ。
重秀「信長・・・、よくわからん男だったな」
重秀は記憶を遡らせていた。
利家「なに!?会ったのか!?」
蜜柑の缶詰を食べていた利家はその言葉を聞いた瞬間重秀に詰め寄った。重秀の顔に蜜柑の食べかすが飛んだ。
重秀「おう、と言うか戦った」
言いながら手で利家を遠ざける。
利家「なぬッ!!?」
重秀「強かったぜ。何しろ俺様と互角にやり合えたんだからな。少なくともお前がどんな卑怯な手を使っても万に一つ勝ち目はない」
利家「・・・だろうな」
重秀「だが、先ほどのお前の拳に嘘偽りは無かった」
重秀の視線は利家の右手に握られたままの錘に向かっていた。
利家「・・・」
重秀「お前が簡単に帝の思惑に乗っている人間でないことくらいはすぐわかる。だが結局、これからやろうとしていることが帝の思惑通りだということに変わり無い」
他に何か手はあるはずだろ?何故力で解決させることしか思いつかん?力のみの連鎖では悲しみしか生み出さんことが何故わからん?
利家にはそう言っているような気がしてならなかった。
――こんなに空気は澄んでいるのに
――こんなに風が心地いいのに
荒れ果てた目の前の大地を見ると、さっき自分が巻き起こした戦闘の爪あとが今も生々しく残っている。
利家は金森長近や丹羽長秀、柴田勝家といった織田家の面々の顔を思い出していた。
彼らのような犠牲者を、そして近しい者の死を知って悲しむ自分のような人間をこれ以上増やしたいのかと言ったら決してそんなことはないだろう。
だが今自分は人を殺そうとしている。織田家の意地、仲間の意地にかけて。
(俺は間違っていなかった・・・、さっきそう思ったばかりなんだけどな・・・)
利家「お前達の言うことは尤もだ。だがこれは俺の問題なんだ。何を言われようが信念を曲げることは出来ん」
重秀「別にお前を止めようとしてるわけじゃねーさ。お前にはお前の戦いがあるんだろ?信念を曲げる必要なんか無いさ」
昌景「どのみち、あそこを打ち破って進むのなら、我々と行く道は同じ。途中まででも共に参りませぬか?」
利家は神妙な面持ちでうつむく。
上条「お、おいおい、なんで黙っちゃうわけ?こんな強そうな人達の誘いなんて断る理由無いだろう?ねえお屋形様」
利家「・・・」
上条「お前はどうしてそう素直じゃねえんだ・・・、俺と初めて会ったときも細川さんと初めて会ったときもブツブツ・・・」
利家「・・・わかった。いいだろう・・・」
重秀(こいつ、あの傾き者の犬千代だよな?実際はこんなしみったれた捻くれ者なの?)
上条(いや・・・、その、色々あったらしくてな)
重秀「まあいいや。よろしく頼むぜ」
重秀の無作法な笑い声を上条が突然遮った。
上条「うおぉ!!?」
その驚愕の色を含んだ声を耳にし、四人も視線を向けると共に身構える。
上条「なんだてめぇ!シケた面しやがって!俺たちに挑もうってか!?」
上条の数メートル先には、細身の刀と真っ二つに折れた刀を携えた高貴な雰囲気の男が佇んでいた。
重秀「うおぉ!アンタは・・・」
飲んでいた水を思わず噴出してしまう重秀。重秀のこの驚きよう・・・、これほどの男が驚くのだから敵は相当の・・・、上条がそう思うのは至極当然だった。
上条「げ・・・、誰だこの野郎!やる気か!上等だ!名を名乗れ!」
威勢は良いのだが言葉に脈絡が無い。口調とは裏腹に二本の足は後退していく。上条は威嚇の言葉を投げつけながらしっかりとびびっていた。
そして次の瞬間上条はすっ飛んだ。
だがそれは正面の男によるものでは無く、後ろの景虎に首根っこを掴まれ放り投げられたのだ。
そして景虎がその男の前で跪いた。
景虎「部下の無礼、どうかお許し願います」
義輝「良い」
フッと笑って答える将軍。上条は何がなんだか理解不能である。ただキョトンとして転んだままの体勢で居るだけだった。
景虎「公方様、おひさしゅうございます。今まで参らなかった事、慙愧に堪えませぬ」
上条(くっ、公方様ァ〜!?)
義輝「気に病まずともよい、景虎公。よくぞ、生きてまた余の前に姿を見せてくれた」
重秀(おい、こりゃ大物同士の会話だな。こんな光景めったに見れんぞ)
にひっと重秀が笑いながら囁く。こんな状況でもあくまで楽しそうにしているのがこの男らしさだ。肝が据わっているのか何も考えていないのか・・・。
利家(・・・マジで将軍様なの?圧倒されそうだ・・・、ていうかお前ら何者だ?)
そして直後上条は額を地面に擦り付けて謝罪することになった。
義輝「昌景殿、これを」
言って一振りの細身の刀を差し出す。
義輝「幸盛殿本人から受け取りたかったところだろう。相手が余で申し訳ない」
昌景は黙って首を横に振る。
昌景「幸盛殿、無念であったろう・・・。だが許せ、今は悲しまぬ。弔わぬ。再開の誓いを果たせなかったことへの許しを請わぬ。私は、・・・私達は足を止めるわけにはいかぬ。心をここに残すわけにはいかぬのだ」
昌景はエペを地に置きそれに一礼した。昌景達も幸盛の死は放送によって既に知っていた。
悲しくないはずは無かった。それでも昌景は苦悩しながらも私情を押し殺し、仲間を守る為、仲間と生きる為に思いを置こうとはしない。
昌景はその細身の刀を握り締め、天を仰いだ。幸盛との誓いを思い出していたのだ。
義輝は黙って頷く。
利家は己の信念を貫く困難さを改めて実感した。
重秀「将軍サン、わざわざすまなかったな」
義輝「良い。元就を目の前にして幸盛殿を救えなかったことこそ我が愚策。己の不始末のけじめをつけたまでだ。余のほうこそ詫びるのが筋であろう。惜しい者を亡くしたものだ」
重秀「あんたが謝ることじゃない。それにいつまでも泣き言言ってちゃそれこそ幸盛に笑われちまうからな。俺達が俺達で在り続ける為に、歩みを止めるわけにはいかん」
利家は義輝達の言葉の重みに羨望の想いを抱いた。自分にはそのようなことは真似出来ない。私怨を捨て、事の本質を全体的に見れる視野等持ち合わせていない。
そして信念に忠実にしか生きることが出来ない。要するに器用に立ち回れない性分なのだ。
戦に囲まれた日常を送る侍にとって、普段人を殺している自分がこの余興にて同じく人を殺せるだろうか?
利家の答えはYESだ。いや、恐らくこの場に居る誰もが同じ答えになるだろう。
自衛、救い、正義、想いはそれぞれ多々あれど、武士として生きる者である以上そこに戸惑いを持ちながら生きることは不可能だ。
だが、単なる一個人の娯楽の一環の為に人を殺せるかといえば、答えはNOだ。
利家「俺はお前らみたいに強くは無い。理想だけでは生きては行けん。この島で絶対一緒に脱出しようと誓った友を殺した人間を許すことは出来んのだ。俺が善でないことくらいは百も承知なのだ。だが・・・」
そこで言葉は止まってしまう。複雑な胸の内を言葉で巧く言えない。この想いを表し伝え、理解してもらうのは多分、とても難しいんだろう・・・。
重秀「善か悪か、そんなものは決めたい奴が勝手に決めりゃいいんだよ。
それにな、そういうのはその時の状況や答える人間によって毎回正解が異なるモンだと思うぜ
憎み合い殺し合いだけが道じゃねえとは言っても、結局俺たちも必要ならば帝達を殺すつもりだしな
何にも裏付けも無い以上、善悪の位置づけなんぞ無意味なもんだ」
昌景「島全体を覆っている暗い影の全てが私達の敵だ。生きて国へ帰る。私達の戦う理由はそれだけだ」
重秀「そうそう、それが俺達の戦いだ。俺達にとって大事なのはちゃ〜んと五体満足で帰ることだ。お前もお前の戦いがあるのなら別に止めねえよ。そんな権利も意味もない。そこのアンタもそう思うだろ?」
――そこのアンタ・・・?
(誰か居る!?)
利家と上条の顔に緊張が走る。義輝と昌景は油断せず剣を手に手繰り寄せる。景虎はリラックスしたままだ。
重秀「大丈夫だ。敵意は無い様子」
ザワザワと背後から、わざと草を足で掻き分けるような音がした。
景虎「フッ…、盗み聞きとはお主、相変わらず趣味が悪いな・・・」
静かに景虎は笑う。それを見た昌景も緊張から解放されてその場に腰を下ろした。
義輝「藤孝!」上条&利家「細川さん!」
藤孝「久しいな、長尾殿。将軍家に忠誠を誓う大名は今や貴家くらいのもの。公方様に代わって礼を申し上げる」
景虎「・・・当然のことをしたまでだ」
藤孝「そしてその者の申すこと如何にもその通り、愚か也前田利家。感情に振り回される人間など無価値に等しい」
言いながら景虎と義輝の間に座った。
重秀「げ・・・、そいつは耳が痛えぜ・・・、ははは・・・」
重秀と同じく、利家も藤孝の言葉が少しは耳に効いたのか、利家は目を逸らしながら顔を伏せた。
藤孝「真実を述べたまでだ。だがうぬを止めても無駄なこともわかっておる。それもまた真実・・・、固すぎる頭よのぅ」
言われて利家は黙ってしまう。しばしその場に沈黙感と藤孝による独特の涼しくも圧倒的な支配の空気が漂った。
そしてその沈黙を打ち破ったのが昌景だった。
昌景「己の意志のままに生きられよ。それは誰にも止められはせぬ。信念の赴くままに生きるは私も同じ。だが前田殿、命は等しく尊いことをどうかお忘れ無く・・・」
命を粗末に思っていた・・・。自分でも百も承知だったのだが、改めて考えてみた。
“死んだほうがマシ”それは先ほど吠えた自分の言葉だ。再び利家は折れた左腕に視線を落とした。
――己の体面ばかりを気にしている場合ではない・・・。だが・・・
景虎「織田信長とは、斬るに値する人物か?」
自分の甘さは痛感したところだ。現実は甘くない。全くもって優しくない。
だが、それでも利家は両手を地に添え頭を下げた。これは一介の武士として、そして一人の男として、理解のほどを嘆願している姿だ。先ほどの意地っ張りなだけの姿は既になかった。
利家「信長様は乗り越えるべき壁ではない。忌むべき過去でも倒すべき敵でもない、そして怨磋の感情のみで勝てる相手ではない。だがこれはどうしても遂げねばならぬ俺の意思なんです!」
この手で人間を見せなきゃ遺恨を断つことは不可能だ。利家はただ頭を垂れた。
義輝「お前の戦いはそれで終わるのか?」
利家「生きて帰ります!死ぬつもりなど毛頭ありません!」
その間零コンマ数秒。正に即答だった。
景虎「上条」
上条「・・・へ?は、ははっ!」
いきなり名を呼ばれ、上条はたじろいだ。
景虎「この者の共をせよ。身の安全確保に努めるのだ。決して死なせてはならぬ。そしてお主も生きて戻れ。命令だ」
上条「は、ははぁーっ!」
そして、意外な言葉を受けてまたもやたじろいだ。が、持ち前の威勢良い声で答えた。心のどこかで彼自身が望んでいたことなのかもしれない。
利家「あ、有り難き幸せにござります!!」
一瞬呆気に取られた利家だったが、その言葉を丁重に受け取った。
景虎が、何を望んでそう言ってくれたのかが、なんとなく判った気がしたからだ。
(・・・俺自身でけじめを取らせようとしている?)
それは正に的中した。そして、過酷な運命に巻き込まれることを予感して、案じてくれていることも、その無表情から僅かに窺えた。
重秀「こういう目をした野郎から信念を取り除くのはちょっとばかし面倒だ。どうせ複数のことをこなす程器用でも無さそうだしな。おいバカ、命を無駄にするんじゃねぇぜ」
利家「ああ、すまん・・・」
情の入った憎まれ口も今はただありがたかった。
藤孝「お前だけが過酷な運命を背負う者ではない。甘ったれるな前田利家」
この島に放り込まれた100人それぞれが皆そうなのだ。彼らは、自分達に降りかかる様々な運命を乗り越え生き抜き、または飲み込まれ死んでいった。
そして今現在も運命の渦に巻き込まれもがいている者も居る。藤孝のその短くも重たい言葉にその場の全員がそれぞれの想いを巡らしていた。
出生から既に異質で数奇な運命に見舞われ、そしてここで亡き者になった高坂昌信とノドカ、
余興に放られる以前は仲の良かった元親と親泰の兄弟、これもまた運命の巡り合わせによって対峙している。
義輝、藤孝にそれぞれ所縁深い義秋と明智光秀は初日で既に散り、和田も既にこの世の者ではない。
運命は決して優しくない。何の前触れも無く命が消えて行く。現実同様全くもって思い通りにはならない。
理不尽な死を許してはいけない。だから帝と戦うのだと景虎は言う。
――理不尽な死
余興に乗った者、心を失った者達に無慈悲に殺された人物がそれにあたるのだろうか。
丹羽長秀は、理不尽な死を迎えたのだろうか。安らかなあの死に顔は・・・?
それは長秀本人にしかわからないことだろう。だが利家は一つの答えに辿り着いたようだ。
辿り着いたというより、再確認したという方が正しいだろう。
藤孝「上様、少々興味が沸いてはきませぬか?」
義輝「好きにせよ。お主のことだ。どうせ何を言っても聞かぬであろう」
藤孝「それは心外な。上様の言葉にこの藤孝を揺り動かす色がないだけのこと」
義輝「たわけが。貴様のそういうところが『何を言っても聞かぬ』と評される所以よ」
思い通りにならない現実すら楽しもうとしているこの細川藤孝という男。
尤もそれは自分のでは無く、他人の運命に首を突っ込もうとしているのだが。
利家「・・・細川さん、すまねぇ」
丁重に礼を述べる利家。
藤孝「勘違いするな前田利家」
だがあっさりとそれは流された。
利家「うぇ・・・?」
藤孝「貴様のような大馬鹿者の決意に興味があってのことではない。手助けしようなどとは毛頭思わぬ」
利家「そうなの?」
藤孝「そこの者が云う通り、この後に及んで私情に拘り続ける貴様の考えは甘い。現実にぶち当たり、その甘さに苦悩する貴様の姿を見て哂いたいのじゃ」
重秀(そこの者って・・・、あと、俺そこまでボロクソに言ってねえ・・・)
藤孝は思った。
自分は元の世界では何でも悟っていたつもりであった。だが、ここへ来てそれは違っていたと思い知った。
藤孝が利家との行動を望む理由は、ただ単に興味があるからかもしれない。口では興味がないと断言したにも関らず。
湧き上がる好奇心に藤孝はにやついた。
上条「なんだなんだ?お二人さん随分仲良さそうじゃねえか!ヒャッハッハ!」
利家「黙れド阿呆が。超えられない上下関係ってやつを言葉じゃなく痛みで思い知らせてやろうか」
上条「どぇ!すいませんでした!」
景虎「前田利家」
利家「・・・へっ?な、なんすか?」
景虎「そやつはそういう者だ。役に立つかはわからぬが、せいぜいこき使ってくれて構わぬ」
義輝「右に同じ。尤も藤孝を意のままに扱うは余でも不可能だが」
様々な形の出会い、別れ、歓び、悲しみ、殺し、救い、そして戦いがある中で
これはたった一つの形に過ぎない。
しかしそれは、間違いなく運命の中に飛び込んでいくのであった。
帝の根城へ続く道・・・、七名はその入り口に居た。いや、これは実は壮大な罠なのかも知れない。
生き残った参加者達を特定の場所へ集め、殺し合いを促進させるなり自らまとめて葬るなりの・・・、
だが、今までの放送から察するに、帝側の組織の仕組みが朧気ながら形になってわかってきた。
心意気だけでは決して敵を倒すことは出来ない。
だが今までの“放送”によってわざわざ自ら近辺の情報を匂わす余計なことまで喋ってくれたのだ。
雲を掴むような話だが、この戦い、どこにどの様に勝機が潜んでいるのか全くわからない。
上条「あんた、生きて戻れたらどうすんだ?」
昌景「・・・む?」
涼しい風が二人の髪を柔らかに撫でる。
上条「俺たち、また戦うことになるのかな?」
昌景「・・・そういえば、この島に来てから、そんなこと考えたこともなかったな」
上条「ははは、そりゃそうだ。まぁ、まずは無事に生き残ることだな」
昌景「うむ」
二人の手が重なり合う。
景虎「さて・・・、そろそろ行くが、覚悟は決まったかね?」
景虎が槍を頭上高く構えた。
重秀「へいへい、いつでもどうぞ」
利家「おう!」
戸惑いを抱えた人間など、既にここには居なかった。
景虎はフッとクールに笑った。
――ウオオオォォォォォォ!!!
景虎の咆哮が轟く。
――ガギィィィィィィン!!!ガギィィィィィィン!!!
それと同時にとてつもない破壊音が何度も木霊する。一撃一撃が凄まじい威力を伴った雷撃のようなもの。
やがて空洞を塞いでいた奇妙な形の扉は跡形も無く砕けた。
だがそれは、利家が幾度も気迫を込めて叩いて歪めたからこそだ。
利家「いよいよだ・・・」
義輝「うむ」
ここを通り抜ければきっと奴らの元へと辿り着けるはず。希望は見えてきたのだ。
だがそれも束の間、運命は彼らに一安心することすら許してはくれない。
猛スピードで数台のトラックが到着し、すぐさま兵が数名降り、奇襲に移った。
――手は打ってある
実はそれこそがロヨラによって放たれた兵だったのだ。
そして前からはヴァリニャーノの指示に従った数名の兵が銃火器や槍刀類など危険な武器を携えて迫る。
一瞬にして完全に前後を塞がれる形となった。
昌景「まずい!ここで消耗戦は是が非でも避けなければ!」
双剣を構える昌景。
景虎「小生が敵中を分断し、道を切り開く!上条は敵に目も暮れず前田を連れて小生の後について参れ!他の者は護衛をお頼み申す!」
言ってすぐ景虎は敵の待ち構える通路へと身を投げていった。
上条「へ、へい!」
突然の成り行きに焦った上条だったが、すぐに状況と指示の内容を理解した。
昌景「後ろは某達がお護り致す!決して振り向かぬよう、そして戦いに参加せぬよう!」
上条「うおぉぉ!!!」
覚悟の雄たけびをあげ、利家の腕を掴んだ上条もまた、通路へと飛び込み、そしてすぐに昌景も後へと続いた。
奇襲兵も血相を変えて通路へ迫るがそれを重秀が遮った。
重秀「ここは通さん!」
だが相手は数名、自分は一人。多勢に無勢だった。
重秀(流石にこの数はきつい。くそっ!左手さえ無事なら・・・)
彼の利き腕は、実は右ではなく、左だったのだ。
重秀(左手が無事なら・・・?戦う前から言い訳を吐くなんざ、俺もヤキが回ったかな?)
奇襲兵が重秀の目前まで迫った。この距離と人数では銃は使えない。扱い慣れない斧を構え覚悟を決めたのだった。
どれくらい走っただろうか・・・。倒すまではいかないものの、景虎の槍によって潜んでいたヴァリニャーノの兵達は虚をつかれ、方々へと吹き飛ばされた。
そして切り開かれた道をひたすら走った。もう前も後ろも敵の姿はなかった。
上条「ひぃ・・・、ふぅ・・・、どうやら逃げ切ったようですぜ、お屋形様・・・」
利家の手を握りながら息を整える上条。額には大粒の汗が浮かんでいた。
上条「はぁ・・・、はぁ・・・、おい、感謝しな。お前が無事なのも俺様のお陰だぜ」
?「・・・、その通りだ」
上条の後ろで威厳をたっぷり含んだ声がした。
上条「!!」
その声にぎょっとして振り向く上条。
そう、その声の主は前田利家ではなく・・・、将軍足利義輝だったのだ。
そして当の前田利家本人は、彼らよりもう少し後方離れた場所に居た。
景虎によって分断され弾かれた兵は、景虎達先行集団に追いつけなくなり、その後に続いた彼らに目をつけたのである。
利家「くっ!あの阿呆!俺と誰かを間違えやがったか!このまま後方からも襲われたんじゃ、俺達袋のねずみだぜ!」
昌景「泣き言を申しても何にもなりませぬ。お主は怪我人故、無理はなさるな。ここは某に任せられよ」
利家「すまねえ・・・」
昌景「礼を言われても困る。これより飯富昌景、修羅と化す!向かう者は全て切り捨てる!」
昌景は目の前に迫る危機にも怯むことなく、そして脅えて本来取るべき判断を誤るほど弱くも無いだろう。
昌景の勇気に触発されて、利家も本来あるべき輝きが心から溢れ来ることを感じずには居られなかった。
己の右手に握られた鉄槍が燃え上がったように見えた。
それはそこに込められた織田家の柴田勝家と、武田家の馬場信房の魂が、利家と昌景に向けて勇気の雄叫びを投げつけたからかもしれない。
二人はお互いに背中を合わせ、取り囲む敵に対した。
――俺もとうとう年貢の納め時か。心残りだが仲間の為の捨石気取りも悪かねえ
空洞化した通路の入り口付近で、重秀は一人奇襲兵達を食い止めていた。
刀や槍、この兵達の手にしている武器は全て異国の物だ。しかもとても良い性能らしく、重秀はなんとか避けるものの空を切る剣音は凄まじい。
超人的な身体能力と言えども所詮人間。重秀の動きは段々と鈍くなっていった。そして兵の一人が背後から重秀に切りつけた。
勝負はあった。
かに思えた。
――ギィィィン!!
重秀の背後で刹那響き渡る金属音。
藤孝「若い者は何でも一人でやろうとする・・・」
重秀「あ・・・、あんた・・・」
その凶撃を防いだのは細川藤孝だった。さっきの金属打撃音は彼の手に握られていた長船が発したものだったのだ。
重秀「戻ってきたのか・・・、何故だ・・・?」
藤孝「己の成すべきが何なのか、見極めることを望んでおるのだよ若造。御主等と行動して、戦うべき相手が誰なのか見極めるのもまた一興。まあ・・・、平たく言えば興味が沸いたに過ぎん」
重秀(感情に振り回される人間など無価値に等しい・・・、アンタさっき自分でそう言ってたじゃん・・・)
この状況を遠くから全て見ていた者が一人・・・。
義輝の後をつけてきた三好長慶だ。彼は義輝が昌景にエペを返す辺りから現在に至るまで、終始潜んで解剖するように観察していたのだった。
警戒の為距離をとっていたので会話の内容までは耳に出来なかったが、様子を見るだけで今までの全ての状況を理解するには十分過ぎた。
――細川に雑賀の小童・・・、好都合じゃ。漁夫の利を頂戴するとしようか・・・
利用出来る物はなんでも利用する。それが長慶の常套手段だ。
重秀の、藤孝の、そして放たれた奇襲兵達や、風向き日差しの角度等、細部に亘る天候の程まで、僅かに潜む勝機の一片すら見逃さぬよう状況の一挙一動を観察する。
そしてまた顔を歪め、不気味に笑ったのだった。
【11番 足利義輝 『九字の破邪刀(破砕)』『梓弓(4隻)』『グロック17C(残弾16発)』】
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『十手』】
【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻(十数冊読めないものあり)』『バゼラード』『H&K MP3(残弾12発)』】
ルートV先行集団
【29番 飯富昌景 『エペ』『フルーレ』】
【86番 前田利家 『SPAS12(残弾1発・暴発の可能性あり)』『鉄槍(先端破損)』『Mk2破片式手榴弾(一個)』『錘』】(左腕骨折)
ルートV中団。通路に潜伏していた数名の兵と対峙しています。
【58番 鈴木重秀 『USSRドラグノフ(残弾4発)』『SBライフル(残弾14発)』『オーク・Wアックス』】 (左手負傷)
【83番 細川藤孝 『備前長船』】
3-C食糧配布地点、ルートV入り口地点。奇襲兵数名と対峙
【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢10隻)』『青酸カリ』『寸鉄』】(腹部に軽傷。傷口から出血)
3-C食糧配布地点、ルートV入り口地点から若干離れた場所に潜伏。
「ふぅん、良き気分じゃわ」
高校の屋上の縁にある柵越しに、正親町は眼下に広がる景色を楽しんでいた。
やはり、あの部屋を飛び出してきたのは正解だったようだ。さっきまでの荒んだ気分が嘘のように晴れきっている。
信長を入れて四人斬った。当分は発作のような衝動に駆られる事も無いだろう。
「存外広いものじゃのう」
山の頂にそびえる校舎の屋上に立つと、それこそ島全体を見渡す事が出来た。
左手に匂い立つような青々と生い茂る草原が、右手に白く映える砂浜が眩しく光っていた。
ずっと監視カメラから送られてくる映像でしか島の様子を見ていなかった正親町は、改めて島の雄大な景色に感動した。
元来、正親町は御所の暮らししか知らない。御所を出たことがほとんど無かった。
外の世界のことを話で聞いたことはあっても、実際目で見る機会は数えるほどでしかない。
それが絶海に浮かぶ孤島の、しかも更にその奥の原生林に囲まれた不思議な巨城や、その上から眺める景色となると格別の面白さがあるのだろう。
信長と刀を交えたあとからずっと飽くことも無く眺めている。時折、手を叩いてはしゃぐ仕草をみせたりもする。
発作の起きていない時の正親町は、そうした子供じみた好奇心を持ち合わせている。
尤も、好奇心の塊だからこそ人を殺す感触を求めたり、延いては狂った余興を主催しているのだが――。
ロヨラに薬を打たせたのも、そんな好奇心の一端からだった。
薬とは、ロヨラが斎藤義龍に打った『実験薬』の完成品のことである。
しかし完成品と謳っているものの、その副作用は強い。
破壊的な力をもたらせる代わりに、時折自我を抑制する事も出来なくなるほどの殺意が自己を襲う。
それが突発的に襲うのだから発作のようなものだろう。
発作が起こると、もう理性は利かない。とにかく血を見なければ落ち着かないのだ。
こうしたのくだらない探究心の所為で何人もの無意味な犠牲者を出してきていることなど、正親町はまったく無頓着だ。
やはりと言うか当然と言うか、その辺りの気概は“王”のそれである。所詮、自分本位な考え方しか出来ない。
自分が起こした行動により周りにどんな影響を及ぼすかなど、完全に思慮の外の出来事である。
御所の中で僅かな近臣や侍女に囲まれて甘やかされて育つと、どうしても世間知らずで自分勝手な性格になるようだ。正親町などはその典型であろうか。
「さて、このあとどうしたものかのう」
当面の問題はそれである。
こうして景色を眺めているのにも退屈を感じ始めているところだ。そろそろ次の好奇心をくすぐるものが欲しくなってくる。
とりあえず人を斬るという目的は、信長という多少骨のある男を斬る事で達せられている。
今更あの暗い部屋に戻ってダラダラとした成り行きを見守る気は無い。
ましてやロヨラ達に混じって全体の管理を取り仕切る気もないし、またそんな統率力もありはしないだろう。
となると、やはり新しい“オモチャ”が欲しいところだ。
それが参加者達のような人間なのか、それとも目の前に広がる景色のようなもので満足できるのかは正親町自身にも判らない。
だが少なくとも、また人を斬りたくなるまでの退屈凌ぎをしなければ、暇で暇でどうにかなってしまいそうだった。
「少し、歩いてみるかの」
遠い眼差しをもう一度眼下の景色へ送ると、正親町は次の獲物を探しに階下へ通じる階段へと足を向けた。
「これが全て片付いたら、御所をここに移すのも悪くない」
正親町は本気でそんな事を考えていた。
【主催者 正親町天皇 『童子切安綱』】5-E校舎内 興味を惹くものを探す
【残り13+4人】
176 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/08/23(火) 19:29:03
age
余興開催前の土佐にて――
―――14日前―――
親貞(気に入らない・・・)
滝の様に雨を落とす空を縁側から眺めながら、不意に僕はそんな事を思った。
温い雨の雫が時たま跳ねる。なぜこの雨が温いのか、僕には不思議で仕方なかった。
井戸で汲む水は冷たい。なのに毎年この季節の雨はなぜ温いのだろう?
親貞(やっぱり気にいらない・・・)
舌打ちをする。というか、今は目に入るもの何もかもが気に入らない。
じめじめしているのもあるが、雨が降っていて、外に出られないことが何よりもの原因なのかもしれない。
いや、家の中で書物を読むことは別に嫌いではない。
だが、何よりも昨日、幼馴染の少女、ふみと交わした釣りの約束が守れない事がイヤだった。
『明日は釣りでもするか』と言った後の、あれの微妙な顔を思い出すと、イラつく気分が和らぐ気がした。
親貞「・・・ふん。何が面白いんだか」
ガラにもなくつい笑ってしまう自分に言い聞かせるように呟く。
親貞(・・・仕方ない。やることもないし、兄貴の部屋に忍び込んで、茶器を叩き割ってやるか・・・)
また他愛のない(元親にとっては一大事であろうが)悪戯を思いつき、僕は縁側から腰を上げる。
?「若。若!」
兄の部屋にあるはずの茶器のどれを割ってやろうかと思案していると、見覚えのある男が歩いてくるのが見えた。
特徴のある風貌から、幼い頃出歩いていた自分に、父からよく護衛としてつけられた『中島可之助』だと気づく。
可之助「縁側で雨眺めですか。そんな年老いた爺のような事をしていると、一気に老け込みやすぜ」
親貞「黙れ。僕は忙しい。用がないならとっとと消えて馬鹿の様に木刀でも振ってろ」
可之助は僕が幼い頃から暴言を吐きあう仲だ、今さらこの程度の言葉で気分は害しまい。
そう思いながら隣を通り過ぎようとすると、『用がなきゃ来ねえよ』と言わんばかりに肩をつかまれる。
可之助「そんな暇な若に会いたいと申す者が。異人・・・宣教師のようですが・・・」
親貞「・・・宣教師・・・だと?・・・ふん、いい機会だ。いいだろう、通せ」
歯に衣を着せずハッキリ言うと、僕は宣教師が大嫌いだ。会った事はないが、とにかく嫌いだ。
もちろん理由はある。何かを嫌いになるのに理由がない、と堂々と言うほど僕は直情で生きてはいない。
その理由も他人から見れば些細で身勝手なものだろうが、とにかく宣教師をへこませてやりたい気分で一杯だった。
親貞(どうせくだらない事を言って人を騙しているんだろう。化けの皮ひん剥いて、そこに塩を塗ってやる)
そんな事をずっと考えていると、可之助に通された宣教師が視界の中に入った。
親貞(本当に目が青いな・・・髪もおかしな色だ。本当に人間なのか?)
訝しげにそう思いながらも、とりあえず挨拶をする。万が一のために、可之助も少し距離を置いて座る。
オル「お初にお目にかかります。私の名前はオルガンティノ=ソルディ・・・以後お見知りおきを」
挨拶を返した彼の笑顔に、なぜか親貞は『被覆された、隠された何か』を感じた。
その後、オルガンティノと名乗った宣教師は、荒唐無稽な、親貞も可之助も予想もつかなかった話を始めた。
親貞「・・・要するに、その帝の余興に乗れば、僕の病を治せると言うわけか?」
かなり回りくどく、決して本筋は明かさず『帝の余興』としかオルガンティノは言わなかったが
それがかなり凶悪なものである事は僕も読み取れた。仏頂面している可之助もきっとそうだろう。
オル「はい。親貞様の御力ならたやすい事かと。決して悪くない話だと思いますが・・・」
親貞「そうかな」
オルガンティノと名乗る宣教師が笑ったのとは対照的に、退屈さを表した顔で僕が言う。
その表情のまま、仏頂面している可之助の方を向きかえり、僕は可之助にこう命令した。
親貞「だが断る。可之助、この馬鹿を叩き出せ」
可之助「はっ!」
可之助に腕を強く引っ張られ、抵抗せずオルガンティノは外に連れ出される。
親貞(宣教師・・・か)
部屋から出される直前、オルガンティノがみせた不思議な笑みがなぜか心に残った。
が、それをかき消すようにすぐにまた、僕はまた立ち兄の部屋へ向かった。
―――13日前―――
親貞(・・・今日もまた雨か)
幾分か昨日より弱くなったようだが、一日経っても雨は止む気配を見せない。相変わらず雨の雫が温い。
親貞(気に入らない・・・が、まあ、このぐらいなら今日の夜か・・・あるいは明日の朝には止むか)
縁側で外を眺めながら物思いに耽る僕の姿は、さながら可之助が言った年寄りに似ているかもしれない。
親貞(勝手なもんだ。一般的にそう揶揄される年寄りだって色々考える事があるだろうに。僕だってな)
自分をかばうようにそんな事を思いながら、隣に積んである読み飽きた三国志演義を手に取る。
別段三国志演義自体が好きなわけではない。ただ諸葛孔明よりも曹操よりも司馬懿が好きだから読んでいた。
親貞(こんな事を誰かに言うと、謀叛でもするのかと誤解されそうだけどね)
一応十何年か生きて来たわけだし、全てではないが自分の事は自分自身ある程度掴めている。
普段は冷静ぶっているが、有事の際にはカッとしやすい、頭に血が上りやすい性格をしている事は自覚している。
親貞(その辺が、冷静さと慎重さを併せ持つ司馬懿に憧れている原因なのかもしれないな)
そんな事を考えながら、手に取った三国志演義を結局読まずに放り投げた。
可之助「物を粗末にしないように」
親貞「ひゃあっ!?・・・なんだ、可之助か・・・何か用か?」
不意に声をかけられ少し驚いたが、声をかけた男が可之助であった事に安心する。
可之助「ははは、カッコ悪い。まるで女の子のような反応ですね」
親貞「くそ・・・で、なんか用か?まさかただ驚かしにこの雨の中来たわけじゃないんだろう?」
可之助「だったらどうします?」
親貞「指を落とす」
その言葉を聞いた可之助が、(当然本心だとは思っていないだろうが)安心したような顔をする。
可之助「昨日の宣教師がまた来ました」
親貞「またか・・・この雨の中よく頑張るな」
可之助「どうします?」
親貞「もう会う気もない。叩き出したら塩を撒け」
可之助「あいあいさ」
―――12日前―――
昨日弱くなっていた雨がまた強く降り出した。可之助が訪れても、僕はただ縁側でそれを眺めていた。
可之助「若、また宣教師が・・・」
親貞「・・・」
今日はいつも以上にイライラする。僕は無言で近くにあった書物を拾い、縁側からずぶぬれの庭に向かって投げた。
可之助「あーあ、勿体無い。どうするんですか、ありゃあ」
親貞「・・・」
可之助「・・・あれだって頑張って書いた人がいるんですよ?」
親貞「・・・」
可之助「・・・」
親貞「・・・」
可之助「・・・・・・若、それで宣教師は・・・」
親貞「・・・お前は三流の指示待ち人間か?」
可之助「・・・は?」
親貞「は?じゃない。『塩を撒け』と言うのは『もう来るな』という事だ」
可之助「・・・」
僕の言葉を受けて、可之助は無言で僕の前から歩いていった。そしてまた雨音が耳に響く。
親貞「・・・くそッ!」
そう吐き捨てながら、また近くにあったものを庭に投げる。拾って、また投げる。何度も投げる。
手元にあった本が全て無くなった事に気づいた後は、縁側を全力で殴りつけた。
『
可之助「というワケで、もう来ても無駄だと思いやすぜ」
オル「そうですか。・・・しかし、それだけ気難しく疑り深い方だと貴方も大変でしょう?」
可之助「あ、やっぱわかりますかね?もう本当にあの洟垂れ小僧は・・・あ、いや、今のは聞かなかった事に」
オル「ええ。・・・ああ、そうだ。貴方、中島可之助様と仰いましたね・・・天下に野望はありませんか、貴方・・・?」
』
―――11日前―――
皆、天気は神の領域だと思っている。それはそうだ。天気を思い通りに出来る人間なんて諸葛孔明しか知らない。
一介の人間が思い通りに出来ないからこそ天気・・・つまり『「天」の「気」まぐれ』なのだ。
だが、時には人の思いが天に通じる事もあるのか、連日の大雨が嘘の様に、太陽が空から顔を覗かせている。
親貞(雨が晴れたくらいで気分がよくなるとは、僕も単純だな)
すぐにそうやって捻くれる。が、まあ、この陽射しの前ではそんな自分に向けた皮肉なんて気にならない。
いや、陽射しなんてどうでもいい。ただ、長年の連れ添いが隣にいて、そこで釣竿を川に向かい垂れながら
どうでもいい事を一言二言話すだけで、一昨日からの苛立ちが嘘の様に氷解し、満たされる気分がした。
親貞「ところで、ふみ。お前またこの川に草鞋を・・・」
ふみ「新十郎(親貞)様。以前も申し上げましたが、私のことはエステルとお呼び頂ければ・・・」
親貞「・・・やれやれ。また、それか・・・」
釣り針に引っかかった草鞋を外し川に投げながら、僕は大きなため息をついた。
個人的に、あくまで個人的な視点だが、ふみの唯一の欠点を挙げるとすればキリシタンであることだろうか。
親貞「ふみ。改宗する気は・・・というか、キリシタンをやめる気はやっぱりないのか?」
ふみ「ふみ、ではなくて・・・」
親貞「僕はそう呼ぶ気はない。絶対無い・・・」
何年も前から繰り返している、改宗を迫る受け答えをまた僕らは繰り返す。
だが、この手の話はいつも平行線のままだ。互いに譲る性格ではないから、決して決着がつくことはない。
そしてこの話をした後は、話すきっかけを無くし、互いに帰るまで一言も口を利かないことが多い。
結局その日もそんな成り行きで、夕日が落ちてふみと別れるまで、僕はただ黙々と草鞋を吊り上げていた。
親貞「・・・雨が来るかな・・・」
鮮やかな色をした空とまとわりつくような湿気は、雨が来る事を予感させた。
二、三個魚籠から草鞋をつかみ川に投げた後、いつもなら可之助が居るはずの場所に目を向ける。
親貞「可之助。夕立が来そうだ。そろそろ帰るぞ」
そう言葉をかけ、また魚籠に詰まった草鞋を投げ捨てる。違和感を感じたのはその時だった。
親貞「・・・可之助?・・・」
なおも振り返り声をかける。いつもならこの辺で陽気に憎まれ口を叩きながら出てくるはずなのだが・・・。
湿気とは別の、まとわりつくような空気を感じ、ふと今でも持ってきている脇差を抜く。
親貞「・・・誰だ?」
嫌な感覚を覚えさせる少し離れた木の陰に脇差の刃を向ける。すると、その木の陰から見覚えのある男が現れた。
オル「やあ・・・これは心外ですね。邪魔をしないであげたのに、そこまで嫌悪しなくてもよいのでは?」
親貞「お前か・・・確かオルガンティノとか・・・」
不快感を露わにしながら脇差を収め、すぐに自宅に戻ろうとする。
当然だ。この宣教師が何を考えているのかわからないし、もう関わりたくはない。
が、やはりそうはいかず、あちらもあちらの思惑をぶつけてくる。
オル「勤皇は、貴方達の務めでは?しかも、それで病が治せるのです。いい話ではありませんか?」
親貞「以前の話の続きか・・・お前にそんな夢物語を叶える力があるのか?もう一度自分をよく見てみろ。
そしてそれが終わったら荷物をまとめてとっとと自分の国に帰れ。もう二度と僕の前に現れるな」
オル「私がこの場所に来れたのは中島可之助殿の手引きのおかげ。彼の人は貴方を心配しておりました」
親貞「可之助がなんだというんだ?そんな下っ端の言う事をなぜ僕が聞かなきゃならない?
お前を自分の代わりにここによこす時点でそれは心配じゃないね。勝手な行動をしてくれたもんだ」
オル「・・・貴方は随分と身勝手な方ですね。貴方には、純粋に神の教えを説きたい」
親貞「身勝手で結構だが、二分にも満たない時間でお前に僕の何がわかった?お前ごときに評されたくはない」
オル「・・・わかりました。では、少し違う方向から、貴方へアプローチさせていただきましょう」
一通り言葉をぶつけ終わった後、オルガンティノは最初に見せた不思議な笑みを見せ、また去って行った。
―――9日前―――
可之助が家から脱走した、という噂を聞いた。誰にも告げず、荷物ごと部屋から何もかも無くなっていたらしい。
親貞「一昨日から姿を見せないからどうしたのかと思えば・・・」
ふみ「理由も聞かされては?」
親貞「いないね。ま、どうせ出奔なんかじゃなくて、ただの小用だろう。すぐ戻ってくるさ。
そう思ってなければ、こんなところで真昼間からお前なんかと釣りをしているわけが無い」
ふみ「・・・そういう態度が、可之助殿は気にいらなかったのでは?」
親貞「はっ、やっぱお前は女だね。男の友情ってものがわかってない」
とは言えど、少し気になることもある。可之助の部屋から消えた荷物には、自分が貸した本やらもあった。
いや、別にそれを持っていかれるのが嫌なわけではない。欲しがれば捻くれながらも可之助に差し出すだろう。
ただ、年来の友人であり、義理に厚い可之助が、一応上司になるであろう自分のそれを無言で持っていくだろうか?
親貞(杞憂さ・・・ただの用事に決まってる。そう思わなければ、やってられないじゃないか・・・)
家にいるとそう考えて落ち着かない。だから、わざわざふみを連れてここまでやって来たのだ。
だが、その本心がふと口から漏れる時もある。元より臆病な性分がそうさせるのだろうか。
親貞「お前は・・・僕の友達だよな?」
言った自分でさえ驚いてしまうような、こんな一言もその類だ。
ふみ「え?」
親貞「・・・なんでもない。今のは聞かなかった。ていうか、いいから向こう向け。あーなんか釣れないかな」
言った自分が恥ずかしい。『違う、僕はただ釣りに来ているんだ』とにかくそう自己弁護する。
ふみ「・・・あ!」
親貞「?・・・なんかいたのか?タヌキか?」
別にタヌキなんて珍しくはない。が、話の流れを変えるには十分な素材だと思い、少し必死に目を向ける。
が、そんな甘く酸っぱいような思春期っぽい感情も、視界の先にいた見覚えのある宣教師によって
痛い苦々しい怒りに塗り替えられた。
オル「やあ・・・これはどうも。くだらないおままごとな空間にお邪魔しますよフフフ」
親貞「もう二度と僕の前に現れるなと言ったはずだが・・・この国の言葉を忘れたか?それともお前は鳥頭か?」
オル「クフフ、意外と当たっているかも・・・鳥頭なんて言葉は知りませんからね」
親貞「日本語は通じているようだな。となると・・・僕をナメているとみなしていいな?」
オル「舐める?貴方を?いやあ舐めたくなんてないですよ。性根が不味そうですから」
親貞「・・・フン、わかった。僕をナメきっているとみなす!」
苛立ちながら、やはり今日も持ってきていた脇差に手をかける。
ふみ「お・・・おやめください!」
だが、さすがに危ないと思ったのか、ふみが脇差を抜かせまいと必死にすがり付いてくる。
親貞「・・・」
オル「クッ・・・いいですねえ若いですよ。若い若い若すぎる。若すぎて馬鹿すぎてクサすぎて吐きそうだ。ぐへ」
ふみが制止はするとは思っていたが、自分でもこの宣教師を斬れるとは思ってなかった。
今まで人を殺したことは一度もないが、それが原因ではない。
親貞(・・・コイツ・・・以前と全然感覚が違う・・・)
少なくとも、以前はある程度は紳士ぶった感覚はあった。だが、目の前の宣教師はまったく感覚が違う。
青い目がどこを向いているのかわからないし、心なしか・・・いや明らかに、異常に呼吸が荒い。
なんと言えばいいのかわからないが、例えば自分が働き蟻になったとして、その周りにもたくさん仲間の蟻がいる。
僕を含めたその無数の蟻を目にして、どれを踏み潰そうか思案している『大人』のような目をしている。
いまいちなんといえばいいのかよくわからないが、例えて言うならそんな感覚だ。
親貞(・・・これが本性か・・・?)
オル「おおっ!?」
親貞「・・・なんだ?本当になます切りにされて川に浮かびたいのか?それとも土下座して帰るか?」
馬鹿にしきったような表情で吐き捨てたオルガンティノを威嚇する。脇差から手は離さない。
オル「なます、ねえ・・・へケッ、日本語ってのは本当に胡散臭い。使ってる奴らがバナナヤロウですからね。
ヘハッ、そんな事はどうでもいいんですよ。そこの女の子、首から下げてるのクルスですかね?」
ふみ「え!?・・・」
オル「あーなるほどなるほど。よーくわかりました。親貞さん、あんたが宣教師を嫌いな理由、そんなもんが。
要するに・・・嫉妬?」
普通ならともかく、まさかこんな狂人にカケラだけでも見抜かれるとは思っていなかった。
正解というワケではないが、宣教師嫌いの理由は確かにそこにある。
『だからなんだ?』『違うね!』どちらを言っても潰される気がして、ただ黙ってオルガンティノを睨んだ。
オル「ウホッ、いい目・・・このうすら鬱陶しい湿気の中でも水溜りが出来るほど背中が冷たく濡れてきますよ。
まさに絶対零度を歴史上初めて到達しちゃった感覚ですよ。ありがとうウヒヒヒヒッヒィ〜!」
狂人なのかまともなのか、装っているのか本性なのか。そんな事はどうでもいい。
これ以上この宣教師に関わると危険だ、そういう感覚が肌で感じられた。
僕はすぐさま脇差を抜き、オルガンティノの右眼前にそれを突き出す。
親貞「お前・・・いつだか言っていたな。僕の不治の病を治すことが出来る、と・・・言っていたな?」
オル「アラ急に話を変えちゃって・・・乗りますか?やっと乗られますか!?さあ、治せますよ何もかも!!」
親貞「・・・よし、何もかも治せるんだな?その言葉、本当かどうか確かめてやろうか?」
オル「・・・どうするおつもりで?」
親貞「・・・お前の右目を潰す。お前が勝手な熱を吹くなら、まずお前の右目を潰す!!治せるのなら治してみろ!
出来ないなら消えろ!土下座する必要もない!何か言う必要もない!今すぐ消えろッ!!」
『これだけやれば帰るはずだ』確かにそう思っていた。今すぐ目の前から消えて欲しいと思っていた。
少なくとも言えることは、自分の決して明かさない心の奥―バテレンへの嫉妬―を暴かれた事に激昂していた。
その分、この異常な宣教師の怯えて逃げ帰るブザマな姿が見たかったのかもしれない。
・・・が、現実は僕の予想とはまったくかけ離れたものだった。
オル「なるほど、確かめるために目を潰す・・・クハッ、いい考えですよ・・・ただオススメしないのは・・・」
オルガンティノが、眼前に突き出されていた僕の脇差を握った。
オル「とっとと刺さない事ですかネエッ!!」
親貞「・・・え?」
数秒後、いつかの温い雨の雫を浴びたような感覚が手と顔に。
そして何かを潰す様な、感じたこともない感覚が脇差を握った左手に伝わった。
『嫌な感覚だが・・・こんな感覚なら、またあってもいいかな』
直後にそう思ったのがひどく不思議だったが、なんとなく理解は出来た。
目の前の宣教師が笑顔を浮かべながら、不自然なほどにゆっくり倒れていく。
彼の目に突き刺さった脇差もそれに引っ張られて、僕の左手から離れた。
何が起こったのか理解が出来ない。今すべき事は何なのか、それすらよくわからない。
だから、倒れた宣教師がブルブル震えながら浮かべた笑顔だけをずっと眺めていた。
ふみ「新十郎様!」
親貞「っ!?うわあああああああッ!!うがッ・・・ゲホッ!!」
ふと、ふみの一声で我に返る。心臓の鼓動が異常に早い。呼吸が出来ない。体がガクガク震えている。
まともに立っている事が出来ず、僕はそのまま地面に横たわった。
親貞「ふう・・・もう・・・大丈夫だ・・」
身体を動かす事は出来ない。寝転がったままやっとの思いでそんな言葉を吐く。
その姿勢のまま見上げる空は奇妙な赤色に染まっていた。いつのまにか、随分時間が経っていたようだ。
親貞(昼間から・・・こんな時間まで、か・・・)
ある程度冷静に、先ほど何があったのかをよく考える。
だが、『あの宣教師は自分から脇差を目に突き刺したのだ』そう考えるたび、自分が冷静ではない気がした。
考える。また考えるのをやめる。そしてまた考え出す。思考はそんな風に循環していた。
親貞(これから戦に出て・・・人を斬ったとして・・・毎回こう思うのかな・・・)
未来を悲観しながら大きくため息をつき、すぐ脇にいたふみに目を向ける。
親貞「・・・帰れ」
ただなんとなくそんな言葉を呟く。こんな場所に一秒たりともふみをいさせたくはなかった。
だが嘘だ。本当は帰って欲しくはない。不安だ。こんな所で1人にされたら自分がつぶれそうだ。支えて欲しい。
ふみ「本心ではないでしょう?貴方の事は貴方よりよく知っています」
親貞「そうか・・・いや・・・なんでそんなに落ち着いていられるんだ・・・?」
ふみ「さほど上品な生まれではありませんから。それに血は見慣れています」
親貞「・・・そうか・・・強いな・・・ああ、そうだったな・・・」
そうだ。なんのかんのでコイツは僕を土手から突き落としたり、土壇場で強情だった。
口論の果てに平手張られたり、そんな事もしょっちゅうだった。
仮にも主家の息子である、この僕に対して、だ。
キリシタンになってからその態度は急に萎れていったが、昔は僕の鼻っ柱をたたき折ってくれていた。
そうだ。
僕は、そんなコイツが好きだった。
親貞「なあ。やめてくれないか・・・キリシタンを」
ふみ「なぜ・・・急に?」
なぜか?・・・それは言えなかった。
そんな好きだった娘をバテレンの神に盗られた気がする、そんな事が言えようか?
それは嫉妬以外の何物でもない。いや、むしろ嫉妬どころか、ただの当たり散らしにしかならない。
捻くれた自分には宣教師、キリシタン嫌いになるに十分な理由だったが、そんな八つ当たり誰が理解できるだろう。
ふみ「私のことはエステルとお呼びくださいませ」
親貞「やっぱり強情だな・・・。・・・杞憂だ・・・今やっとわかった。
・・・僕はそう呼ぶつもりは無い。だが、そんなお前が好きだ」
―――8日前―――
朝霧がかかった中、僕は昨日とは違う脇差を持ったまま1人で、オルガンティノが死んでいるはずの土手に向かう。
今は止んではいるが、前日やはりあの後雨が降ったようで、ところどころに水溜りが出来ている。
親貞「雨は嫌いだ・・・」
今だ感覚を覚えている左手を眺めてそんな独り言を呟きながら、パシャパシャ音を立てて歩く。
オルガンティノを斬った事に後悔は無い。あのまま放っておけば、それこそどうなっていたかわからない。
だが、宣教師を斬ったことで何か問題が起こるのは避けたい。
親貞「そんな事は無いだろうが・・・まあ、死体は始末しておくか・・・川に投げるか・・・埋めるか・・・」
寝ずに何度も思ったことを、これで何度目かわからないが、やはり口に出す。喋っていないと不安な気がした。
親貞「まあ・・・でも、川に投げたところで・・・ん?」
ふと前からパシャパシャという音が近づいて来て、僕は喋りと歩みをやめる。
親貞「・・・」
朝霧で音を立てている物もイマイチよく見えないが、妙に焦燥に駆られて脇差に手をかける。
?「あれ?あんた、『本当に』岡豊城のお殿様の御次男様じゃあないですかい?」
が、そんな不安も、次の瞬間前から聞こえてきたマヌケ・・・といえば聞こえは悪いが・・・まあ、そんな声によって
少しは和らげられた。
親貞「さあ、僕がそんな大それた身分のものかは知らないが・・・そんなお前は誰だ?」
一応脇差から手を離さず、前の人物の判別が付くまで近づいてくるのを待つ。
?「いや、あっしゃ育ちも生まれもこの農村で・・・与作って言うもんで」
ようやく見えた姿はそんな言葉に嘘偽り無く、鍬を抱え、言っては悪いが髪も髭も身なりも農民といった感じだ。
親貞「名前まで農民の鑑だな・・・」
親貞(どうも宣教師を殺した事が必要以上に心に残っている・・・ま、じゃなければ死体を始末しようとは考えないか)
少し笑いながら、自分の心配が杞憂である事を悟った。
親貞「で?そんな与作がなんの用だ?ただ通りがかっただけならさっさと畑仕事に行くことをオススメするね」
与作「いやいや、通りがかっただけでお声をかけるなんて恐れ多い。ちょいと手紙を渡せと頼まれまして」
親貞「・・・は?」
妙に違和感が残った。
親貞(こんな農民に手紙を渡して・・・僕に届くわけが無いだろう?)
こんなすれ違いの状況ならともかく、たかだか農民が仮にも大名の次男に普通会えるだろうか。
すれ違いを狙うにしても、確かに自分はよくこの道を通るが、こんな朝に外に出た事はほとんどない。
護衛がいたらなおさら不可能だ。というか、今回のような場合ならともかく、普通は護衛がつくに決まってる。
つまりこの農民の即席のお茶目か、農民に手紙を渡せといった人物が
『この時間にこの場所を僕が通る事を知っていた』としか思えない。
親貞(・・・ありえるのか?そんな事・・・まさか・・・?)
そんな僕の心中を知るはずも無く、与作と名乗る農民は懐から手紙を出してその場を去ろうとする。
親貞「ま・・・ちょっと待て!」
与作「へい。なんでしょ?」
意外なほどあっさり与作は立ち止まる。少しの間深呼吸をしてから、僕も思った疑問を口に出す。
親貞「あ、ああ、いや・・・その・・・僕に『手紙を渡せ』と言ったのは・・・どんな奴だった?
いや、それ以前に、なぜあの朝霧の中で僕が岡豊城の・・・つまり長曽我部の次男だと?」
そんな質問が意外なのか、与作はしばらく考え込んでから喋った。彼の立場からするとそれも当然かもしれない。
与作「・・・異人さんでした。『片目の』・・・」
親貞「・・・片・・・目?」
少し寒気が走る。
与作「へい、目の潰れた足軽さんなんかはよく見ますけど・・・異人さんはさすがにびっくらこきました。
その異人さんが『次にこの道で会う身なりのいい人間は長曽我部の次男だから、これを渡してくれ』と」
親貞「い・・・今・・・今!今頼まれたのか!?」
与作「へい。・・・あれ?後ろの」
瞬間背筋が凍った。
親貞「うわああああああああァッ!!」
すぐさま必死で与作の方に飛びのき、転びながら先ほどまで自分のいた方を仰ぎ見る。
オル「すいませんね・・・驚かしてしまいましたか?まあそのつもりでしたが、随分とオーバーな・・・」
そこには、確かに生きているはずの無い人間が、昨日僕に刺された脇差を持って両の足でしっかりと立っていた。
オル「そんなに不思議ですか?私が生きていることが」
空洞になって血を流している右目とは逆の目で僕を見つめながら、目の前の男はそんな事を言う。
当たり前だ、とも、ふざけるな、とも何も言えなかった。それどころかビビって足が震えてしまっていた。
オル「加減ってあるでしょ?人の刺し加減。人間なんてそんな簡単に死ぬもんではないですよ。
刺したのは私なんですから、そんな加減も私次第。さすがに片目はなくしましたけど。
ちなみにその片目、どこに行ったか知りたいですか?でも教えてあげません」
そんな講釈が始まっても、やはり何も言う事は出来ない。下手すれば謝ってしまいそうだった。
喉に何かが逆流して腹が痙攣している。ゲロを吐く一歩手前になっていた。
そんな僕を見て楽しんでいるかのように、オルガンティノは笑顔で講釈を続ける。
オル「はっきり言いましょう。私は貴方のような、強がっている日本人が大好きです。一番好きなタイプです。
そんな人間の強がりの皮を剥いで、そこに塩を塗ってやりたくなる。・・・貴方に会えて本当に良かった。
その手紙は、そんな私から貴方への、未来を予感させる最高のプレゼントです・・・どうぞお読みください」
何を言っているのか、もうほとんどわからない。唯一わかった『手紙を読め』それだけを必死にした。
そうしなければいけない気がした。逆らう事なんて到底出来なかった。
そんな混乱しきっている僕にもなんとなくわかるように、手紙には一文だけ書かれていた。
そして死んでいるはずのオルガンティノが目の前に現れたという事実は、僕にそれを十分本当のことだと思わせた。
『 十 秒 後 に 爆 死 』
オル「10・・・9・・・読みました?8・・・与作さん、7・・・離れていた方が6・・・5・・・いいです4・・・」
イマイチ状況が飲み込めていないであろう与作が僕から距離を取る。言葉の意味もわかっていないだろう。
オル「3・・・」
親貞「・・・」
オル「・・・2・・・」
親貞「もう一回・・・」
オル「・・・1」
親貞「もう一回殺してやるァァァァァァァッ!!」
オル「いいね・・・0!」
与作「なぇぶっ!」
ボンッという軽い音と、奇妙な断末魔があたりに響き渡る。
飛び掛った僕のそのまま後方でドサリ、チャリンという音が聞こえた。
親貞「・・・え?」
オル「当然じゃないですか」
斬りかかった僕の脇差を、昨日自分に突き刺された脇差を右手で持ち受け止めながら・・・。
オル「遠近感狂ってるけどまあいいか・・・せっ!」
親貞「ゔッ!」
オルガンティノは何かを持った左手で僕の腹を横一文字にかすめた。
親貞「ぐっ・・・あ・・・」
妙に腹が熱い。立っていられない。妙な足取りで僕は地面にしりもちをつく。
オル「そんなオーバーな・・・ただ腹の皮をこの『果物ナイフ』でかすめただけです。一週間で治りますよ」
しゃがみ込んだまま、腹に手を当てる。妙に熱く痛い・・・。
オル「どこまで言ったっけ・・・ああ、そうそう。それに、親貞様にこれほど激情があるとは思いませんでした。
死ぬと思ったら飛び掛る、なんて昨日の甘っちょろいあんたとは大違いですね。何かあったんですか?」
親貞「うるさい・・・死ね・・・死ね!」
いつの間にか喋る事が出来る、そう思った。腹の痛みが正気を取り戻したのか、それとも他の何かなのか。
オル「だからオーバーですって。でもカッコいいですね。あんたカッコいいですよ。ますます気に入りました」
相変わらず何を言っているのかよくわからない。が、今はこの男の一言一句、何もかもが気に入らない。
親貞「殺す・・・お前だけは殺す!」
オル「は?・・・ああ、はいはい、なるほど。でも一つだけ言っておきますよ。十秒後に爆死・・・。
その気になれば貴方の友人(笑)を吹き飛ばす事も出来るんですから。その辺の覚悟はおありで?」
親貞「・・・」
オル「それでも、全てを犠牲にしてでも、貴方は私に・・・いや、我々に歯向かいますか?」
親貞「・・・」
オル「貴方は病を治すため8日後の余興に参加する・・・そういう事です。ゆめゆめお忘れなく・・・」
・・・・・・
・・・
暗い地下通路を走るトラックの窓から、親貞は何回も走っては消えていく光を眺めながら最後の一言を呟いた。
親貞「・・・そんな事があったってワケさ」
親貞も、この島に来る前の、自身が辿った『二週間』をあまり思い出したくもないし、話したくもない。
が、主催側の思惑はともかくそれを話すことと引き換えにある程度擁護が受けられるのだから、乗らぬ道はない。
もっとも隣で話を聞いていたヴァリニャーノには、結末に何か納得いかないものがあったようで
ヴァリ「・・・それだけ?」
と、キューの先角(先端)を取り替えながら訝しげな顔で何度も聞き返していたが。
親貞「・・・それだけだよ。少なくとも、その時からはオルガンティノには一度も会ってはいないね」
ヴァリ「・・・可之助君とかどうなったワケ?」
親貞「・・・あんたはオルガンティノと会った時の事を話せと言った。だから僕もそこだけを話した。
それとも何か?あんたは余所のお家事情でも知ってみたい井戸端おばさん精神の持ち主か?」
『話す気は無い』明らかにそう取れる言葉の前に、ヴァリニャーノも追求をやめた。
彼自身少し知りたい気はするが、ここでしつこく追求して、もし逆上されたらたまったものではない。
ヴァリ「わかった。いいよ、しゃあねえ」
親貞「・・・」
ヴァリ「ただ一つだけ聞かせてくれや。本当にそれ以降はオルガンティノに会ってないんだな?」
親貞「ああ」
ヴァリ「そして、今までの話は本当に起こったことだな?」
親貞「ああ。なんなら裂かれた腹の傷でも見せるか?もう痛みは無いが、傷跡くらいなら残っているけど」
外を眺めたままの親貞からそんな事を聞こえた後、ヴァリニャーノは諦めたようにため息を吐く。
ヴァリ「いいよ、信じてやるよ。そんなもん見たくねえし」
そう呟いた後、彼も一言も発せず、自身のキューをただ磨いていた。
その後も、運転していた作業員が本部に到着した事を告げるまで、トラック内で誰かが喋る事はなかった。
トラックが止まった場所はひどく薄暗く、思わず咳き込んでしまうような刺激臭がしていた。
ヴァリ「相変わらず臭えな。これ排気ガスってアレだろ?・・・ああ、嫌なニオイするけど気にすることはねえよ」
キューケースを持って先にトラックから降りたヴァリニャーノが、今だトラック内にいる親貞にそんな事を呟く。
一抹の不安を感じながらも、その言葉を受けて親貞もトラックから降り、辺りを見回す。
ヴァリ「あんまりキョロキョロするな・・・って言っても無理ねえか。まあいいや、ちょっとこれ持ってろ」
その言葉を受けあたりを見渡していた親貞がヴァリニャーノの方を見る。
直後彼が投げて寄越した破損した方の先角が自分の胸に当たり、親貞は思わず軽いうめき声を上げ咳き込んだ。
ヴァリ「あ、悪い」
親貞「ゴホッ・・・これは?」
地面に落ちた先角を拾いながら、親貞がそう問いかける。
ヴァリ「オレ様がお前をここに連れてくるっつーのは、ここ(本部)の連中なら皆知ってる。
が、作業中だったかなんかで運悪くそれを知らない奴ってのもいると思うわ。たぶんな。
そんな奴に遭遇したらそれ見せろ。オレ様直々の通行許可証ってヤツだ」
拾った先角をよく見てみると、確かに何か殴り書きのようなものが書いてある。
親貞には到底読めないその文字は、時代にそぐわない武器や建物とあいまって
『彼らの間では通じる言葉だ』と思わせるのに十分な説得力を持っていた。
親貞「・・・誰にでも通じるのか?」
ヴァリ「見せれば大体のヤツには通じるんじゃねえ?不意打ちされないように気をつけろよ」
そう言った後、彼は共に降りていたトラックを運転手していた作業員の方を向く。
ヴァリ「さて、オレ様はちょいと本部でやる事があるんだが、お前はどうするよ?どうしたい?」
作業員「・・・本部で何をなさるのですか?」
ヴァリ「え・・・いや、大した事はねえよ。最初に言ってたことだよ。そんな真剣に聞き返すなよ・・・」
予想外の作業員の答えに戸惑うヴァリニャーノを尻目に、作業員は少し考えた後こう言った。
作業員「同行いたします」
目の前には階段がある。ヴァリニャーノともう1人の男はそれを上って行った。
その階段も今まで自分が見てきたものとはまったく違う。
だが、そんな物を見ても親貞はなんの感慨も沸かなくなっていた。恐れもしない、驚きもしない。
それより何より、この島でもっとも自分が憎む相手がいる・・・その感覚だけで他の思考は吹き飛ばされる。
吉良親貞―――。
彼は頭のいい人間でもあるし、臆病な人間でもある。
屈辱を受けたところで、勝てない相手にもう一度挑まない事は、ノドカの例を見てもよくわかる。
与作という、自分とはほとんど関係のない人間が吹き飛ばされた事に怒りを覚えるほど、正義漢でもない。
だというのに、彼の心の中は宣教師オルガンティノに対する殺意で充満していた。
親貞「・・・僕は君のために帰ろう。君のためだけに生きよう。そのためにはどんな汚い事も卑怯な事もしよう。
異常でも、負け犬でも構わない。最後の1人になるためにはどんな屈辱も受けよう」
手を胸に当て、そんな事を呟く。同時に余興開催の『一週間前』が鮮明に思い出されていく。
自分の人生はそこで捻じ曲げられた。
幼い頃の友人を自らの手で殺したその時に。
その時を思い返すと、涙が流れてくる。声は出ない、ただ涙だけが。
一週間前に何が起こったのか、それは彼しか知らない。兄も弟も、決して知ることはない。
ただ、心の支えを無くした彼が誰かを信頼したのならば、いつか話すことはあるだろうか。
親貞「・・・だがその前に、君の仇だけは果たしておかなきゃな・・・君のためにも、僕のためにも」
手で涙を拭いそう呟く。ヴァリニャーノから連絡があった時も、そんな事をしたような気がする。
彼は兄弟から疎遠だった。心の底で兄を慕う思いはあったものの、結局殺意が勝ったし
余興が開催された時、自分のすぐ後にトラックから降りた弟を助ける気なんてほとんど無かった。
だが、彼を今揺り動かすものも、兄と弟がそれぞれ抱いた『助けるため』という『肉親への情』と似通っていた。
兄弟から疎遠だった分、彼は中島可之助とふみという二人を肉親以上に慕い、愛していた。
バテレンへの嫉妬も、間接的にその二人を傷つけ、彼から奪った『宣教師オルガンティノ』に対する殺意もまた
長曽我部の男として、彼が持つ『肉親への情』がもたらしたものなのかもしれない。
地下から本部に入る階段の前で親貞に『待ってろ』と言い残し、ヴァリニャーノは本部内のとある場所へ向かう。
その後ろでは、作業員が階段を上りながら訝しげな顔をし何かを呟いていた。
・・・しばらくして、本部の三階から四階へ向かう階段の踊り場で
彼は意を決してヴァリニャーノへ『今現在の目的の疑問』をぶつけた。
作業員「・・・やはり、納得できかねます。親貞の病の薬を取りに医務室に向かうなど・・・」
ヴァリ「おっ?なんだよ。最初に言ったじゃねえか」
話し相手が出来たと思ったのか、少し喜びながら振り返り、ヴァリニャーノが言葉を返した。
作業員「やはり・・・我々の目的を達すために必要ではない行動・・・つまり無駄だと思います」
ヴァリ「・・・ああ、そうかい。お前、無駄は嫌いか?」
作業員「好き嫌いは関係ありません。吉良親貞は病を治された事に恩を感じるタイプではありません。
利か不利で動く人間です。病を治して枷を外せば、状況により我々にも牙を向ける可能性があります」
至極もっともらしい作業員の弁を聞き流し、ヴァリニャーノは本部への階段をなおも上る。
作業員「・・・もう一度言います。彼は信用できません。彼がトラック内で話した事も怪しいものです。
オルガンティノ様は片目ではなく、両目を失っておりました。話に食い違いがあります」
ヴァリ「アホかお前。だから逆にあの話は信用できるんじゃねえか」
作業員「・・・?」
ヴァリ「あのガキは小利口だ。少なくとも今まで生き残ってる奴らにバカはいねえ。あ、一人いたな。まあいいや。
そんな利口なヤツが仮にオルガンティノの両目を潰したとして・・・。
わざわざ『片目だけ潰した』なんてバレバレな嘘つくと思うか?」
困惑する作業員に、ヴァリニャーノは妙に確信めいた自分の考えを語りだす。
確かに言われてみれば、今まで生き残っていた人間がすぐ確認できることを偽るとはあまり思えないが・・・。
作業員「しかしその話は一部分にしか過ぎません。人間として信用できるかは別問題です。
いえ、そもそも・・・その話を聞いた所で我々にメリットはあるのですか?」
ヴァリ「・・・」
作業員「単刀直入にお聞きしますが・・・なぜそこまであの少年に肩入れするのですか?」
ヴァリ「なんでそんな事を知りたがる?」
そう答えたヴァリニャーノの言葉のトーンが下がる。まるで今までの自分など偽りだったかのように。
作業員「・・・はっきり言います。私は・・・いや私だけではない、我々は貴方に不信感を抱いています。
貴方は余興開催直前にロヨラ様に連れてこられた人間・・・つまり我々とは馴染みが薄い。
我々は貴方がどんな人間か知らない。貴方の素性も、目的も、つまり人間としてのすべてが」
ヴァリ「・・・だから全部疑うってか?まあ、オレ様の行動に不審な所があるなら謝っとくわ。すまん。
吉良を連れてきたのは、本拠地を攻めてくる参加者の抹殺・・・そう考えただけなんだけどな。
ついでに言えば、オルガンティノの野郎がどんな風に目を失ったか知りたかっただけだぜ」
作業員「納得いきません!ならば大幅に吉良の行動制限を奪うわけでもない病を治す必要はない!
それに、むしろオルガンティノ様の目を奪ったのなら、危険分子として吉良を誅すべきでは!?
仮に従わせるためだけとしても、我々は日本人にそこまで肩入れする貴方が信用できない!」
今までの不信感が爆発したのか、作業員が今までの平静からは予想がつかないほどまくしたてる。
基本的にこの作業員という人物達はロヨラ、ザビエルの兵隊のようなものである。
彼らにとってロヨラ、ザビエルという二人は絶対であり、その二人の命令に従う時は何も考える事はない。
そしてそれこそが彼ら作業員にとっては至高の幸福なのである。
そう考えていたヴァリニャーノにとって、この作業員の激情は大きく意外なことであった。
ヴァリ「だからどういう事だ?手っ取り早く言え。お前、何が言いたいんだ?」
作業員「・・・私は、貴方が『日本人を利用して裏切るのではないか』と考えている。
貴方は一笑するかもしれませんが、私はこの事をロヨラ様に報告するつもりでいます」
ヴァリ「確証はないはずだぜ。それとも勘か?だとしたら、こんな所にとんだギャンブラーがいたもんだ」
意外なことであった。そしてそれと同時に―――
ヴァリ「知ってるか?ギャンブルで一攫千金を当てた庶民ってのは、ことごとく不幸になるらしいぜ」
ひどく苛立つものでもあった。
作業員「やはりきさ・・・ま゙っ!ぁぁぁっ・・・・」
激昂と共に叫んだ作業員の言葉は、ゴキッという鈍い音と共に断末魔に変わった。
ヴァリ「悪いのはお前だぜ。オレ様は出来るだけ無駄に人殺しはしたくなかったのに・・・。
『報告する』とか『信用できない』とか言われたら殺るしかねーじゃねえか、バカ」
異常に曲がった作業員の首に右手刀を当てたまま、ヴァリニャーノがそう呟く。
ヴァリ「出来ればもう少しバレたくはないんだ。お前、ここからダイブしたって事にしてくれねえかな?
軽くそう言いながら、彼はそのまま右手で首をしっかり掴み、作業員の体ごと階段の下に放り投げた。
ヴァリ「信用されてないのか・・・んじゃあ怪しい行動は少し控えなきゃあな」
そう呟いたヴァリニャーノが四階に目を向けると同時に、下でグシャリという音がした。
作業員は兵隊である。彼らは兵隊のような考え方しか出来ない。
個々とした考えを持つヴァリニャーノには、その彼らの執念が見えていなかった。
彼らは『個々』ではなく『集団』として考える事が出来る。
大いなる目的を果たすための集団として、何も考えず、例え無駄になろうとも個々の命を投げ出す覚悟がある。
例えば、階下に投げ出された作業員は、『不信感』『勘』を『裏切りの確証』として残した。
彼の状況を知る者が彼の死体を見つけ、ヴァリニャーノの裏切りを辿るのが先か。
それとも参加者達が地下通路からなだれ込み、裏切りの確証が消え去ってしまうのが先か。
三階の潰れた作業員の死体は、物言わずその時を待っている。
【/番 アレッサンドロ=ヴァリニャーノ『戦闘用改造リアルカスタムキュー』】5-E本部4階(医務室へ)
【39番 吉良親貞 『日本号』『モトローラ トランシーバ T5900(二個)』『イサカM37フェザーライト(残弾0発)』】 5-E本部地下通路(待機中)
198 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/08/26(金) 23:35:15
age
・・・・・・。
後先を考えずただ恨みと怒りに身を任せ、この地下に突入してからどれくらいたったのだろうか?
ここには一切の窓も外に抜ける扉もなく、空は久しく見ていない。
その上で深く眠っていたせいか、今空に燃え盛る太陽が浮かんでいるのか、それとも静かな月が浮かんでいるのかも、てんで見当がつかない。
よく精神を落ち着けるときには誰も近づけず、一人で一晩を過ごすのがいいといわれるが、深い眠りから目覚めてみると確かにあれほど血気に逸っていた心が幾分か落ち着いていた。
もちろん、その代償に何度も何度も襲い掛かってくる悪夢に私の心は蝕まれた。
しかし、こうして落ち着いて自分の置かれている状況を考察できるというのはその代償以上の価値があるだろう。
全体を客観的に見つめることは大名としても、そして一人の戦士としても欠かせない重要なことだからだ。
特に、長政という人間の理解の範疇を超えた、このような事態において、私は全体を見つめることを完全に忘れていた。
その時そのときの感情で動き、冷静さを欠いていたような気がしてならない。
だが今、重要な「コト」に臨む前にこのような全体を見つめなおし、自己反省することができたということは、不幸中の幸いという奴だろう。
まず、私のおかれている状況は極めて不安定だ。
奇襲につぐ奇襲でここまで押し込むことが出来たが、それはあくまで相手の動揺につけ込んで、こちらのイニシアチブを生かしきっただけであり、こんなにも時間がたった今、私たちに対する対策は完全に練られていることだろう。
元々、私たちにこのような武器を配布したくらいだ。本部にはそれ以上の戦力があってしかるべきであり、私たちがここまでこれたこと自体がある種の奇跡と言っていいほどだ。
ともかく、ここから先は一筋縄ではいかないと考えたほうがいい。
だが、銃器は不慣れながらも、ヤスケの指導と実戦で十人並には動かせるようになった。
それよりも、これまでの戦いで受けた傷と、光を失った片目が何よりの問題だった。
傷の方はゆっくりと塞がって行き、痛みもだいぶ引いてはいる。
しかし、眼のほうは勝手に治ってくれない。
六感を駆使して、半減した視覚をカバーしているが、それでも以前よりは技のキレが落ちた。
距離感を完全につかみきることが出来ず、力の加減などを間違えやすいからである。
ここまでやってこれたのはひとえに、常人より優れていると自負する集中力のなせる業であり、その贖いとして体力や精神力を著しく消耗するものだ。
―初めから勝利の算段など考えもせず、ただ我武者羅にここへと突っ込んできただけ
―そう、ただ恨みや怒りなどといった負の感情が赴くままに、この血に濡れた拳を振り下ろす場所を探すために
―死に場所を探していたのかもしれない。この一日で私は友として心中を隠す事無く語らいあえる仲となった昌信、
―私のことを忌み嫌いそして文字通り自由奔放に生きていたが、心の中で幼児であった私に微笑む父であり続けた父・久政、
―そして私の事を想い、私の想いを全てその身で受け止めて、私の心の支えとなってくれたノドカ。
―私はたった一日で三人の大切な人間を永久に喪ってしまったのだ。
現世的な考えにひとまず決着をつけると、私は内面の私自身と向き合った。
「殺す」
それは罪科(つみとが)だ。
人間はもちろん、戦場で人間の都合で理由なく死んでいく駒に対しても、取るに足りない小さな蟲に対しても、殺すという事は間違いなく罪なのである。
別に徳の高い僧を気取っているわけではないし、小さな頃に虫を苛め殺した子どもでもいずれ気がつくことだ。
私はそう思いつつも戦場で顔も知らぬ敵を数え切れぬほど切り伏せ、なぎ倒してきた。
罪とは思いつつも「私たちの領民の幸せのため」とちゃちな自己欺瞞をして戦場に出向いたのだ。
そして、敵と対峙した時からはあいつが私の代わりにこの世の地獄を作り上げてくれた。
私に残ったのは誰なのかも、どこに住んでいるかも、そしてそれが何人なのかもわからない、ただ人を殺したという結果だけが私の心に戦場跡に吹きしく空ろな風のように寂しく響き渡ったのだ。
だが、この島に来て私は何処の、誰で、どんな人生を送ってきたかを知り、そして心を互いに知り合った人間―家臣でも心のひとつも分かり合えない親でもない「友」を得た。
私の血の中に今も止め処なく流れる忌まわしい定めの手がかりを得た
そして私はその二つを、奇しき運命から同じ体に宿った表裏一体となったそれを、同時に私の手で殺した。
自分自身の意思で人を殺す事が初めてなのではない。あの忌むべき鬼に関係なく領民を守るものとしても人を斬った。
しかしなぜだろう、いくら止めようとしても私の「人を殺す」という行為に対する考察は止められないのだ。
まるで決して塞がらない痕から流れ出る鮮血のように、次から次へと考えと、そして悲しみが襲ってくる。
―何故か?理由は解りきっている。単純明快だ。
今まで鬼という私の知りえない私に押し付けていた殺人という隠しようのない罪を突然目の前に突きつけられたのだ。
私でない私に任せていたとはいえあまりにも多すぎる殺人行為の跡の地獄絵図はいまだに私のまぶたの裏に焼きついていた。
そんな途方もなく膨れ上がってしまった殺人の罪を突きつけられて、私はあまりに遅い殺人に対する考察を、この洞穴に入って、今まで現実逃避していた分の清算をさせられていたのだ。
特にこの島では知己を少ない間に失いすぎた。その事がこの考察の発端だろう。
しかも、その中の最も愛しい人間は私がこの手で殺したのだ。
友を失ったという感覚と殺人に対する考察は、複雑に絡み合い一つひとつの二倍三倍もの大きさになって私を苛んでいたのである。
それは私のちゃちな自己欺瞞など軽く吹き飛ばしてしまう波となったのだ。
自分をだましきれなくなった嘘は、転じて自分を激しく責め立てる。
「私は友を、愛しい人を殺した、この忌まわしき手で」
だが、なぜ彼らは死ななくてはならなかったのか?
彼らがどうしようもない人間だったから?
―違う。
彼らが不運だったから?
―近いが、違う。
彼らが自ら死を望んでいたから?
―絶対に違う。
確かに彼女は死を望む言葉を口にした。
だが、あれほど私の体を気遣い、一夜も眠らずに看病してくれた彼女、それが命を軽んじる人間の行動だろうか?
私と違い、自らの暗い運命の鎖を断ち切り、転じて「生きる」という意思そのものになっていた彼女が命を軽んじるわけがない。
その彼女をして、「死の選択」を迫ったのは他ならぬこの島を動かしている人間なのだ。
彼らが誰なのかも知らないし、何処にすんでいるの人間なのかもわからない。
彼らの目的は知らないし、具体的に誰がこの島を動かしているのかもわからない。
しかも、彼らに対する「彼女の無念」の断罪は、その行為自体が罪になるものとなるだろう。
天に居る彼女自身もその行為を望まないかもしれない。このわだかまりと心の傷を塞ぐ為の更なる欺瞞かもしれない。
それに断罪するという考え方自体が自分本位の傲慢な考え方であるかもしれない。
しかし、しかしだ。
「断罪」によって総ての清算が出来るかもしれない・・・。
その言葉に私の心は鷲掴みにされ、決して離されない力で惹き止められた。
もしもこのわだかまりが消えれば、私の出生の秘密や、伊吹の鬼、それに異能の者といった謎を解き明かすための大事な一歩となることだろう。
これはこの奇妙な島で起きたことに対する清算だけでなく、私自身の全てを清算する断罪なのだ。
「それなら私はあえて罪を犯そう。」
私は静かに、けれど自分に改めて言い聞かせるように力強く、つぶやきながら立ち上がった。
不意の私の声に、隣で休んでいたヤスケが「えっ?」と声を上げたが、すぐに私が立っているのを見て私の考えを理解したのか、彼も立ち上がった。
「そろそろ行こうか、ここにいても心が鬱屈と沈滞するだけだ。」
今までの沈みきった気分を、180度転換させてなるべく明るい声でヤスケに呼びかけた。
「はい、準備は万端ですよ」
誇らしげに言って、MP5Kを掲げる。黒く曲線的なその銃の輪郭は、肌が褐色でまだ子どもで女性的な体つきをしていたヤスケによく似合っていた。
「流石はヤスケだな、・・・行こうか!」
部屋を出発し五分と立たないうちに早速、警備の兵がうろついていた。
「3人だな」
不規則な足音を耳を研ぎ澄まして聞き分ける。
「3人ですか?結構中心に近づいてるんですが、結構少ないですね」
「先ほどの放送、あれのせいかもしれないな、案外休んでいた私達より前にもう誰かが本部を占領しているかもしれないな」
「まさか、本部に近付くにつれて、兵の質は上がっていきますから、そのせいかもしれません、いい兵隊は少ないですから」
「成程・・・仕掛けるか?」
「こちらに近づいてきてますからね、避けられないでしょう」
「そうだな」
言い残すと、彼は物陰から飛び出し、兵隊が想像もしない陰の出現という一瞬の虚に囚われているうちに、すでに彼らの間合いに飛び込んでいた。
彼らが当惑の表情からやっと敵を確認したときの緊張した表情に変わる時には彼らの二の腕に彼の小刀が突き立てられていた。
彼の闘いぶりは長い休息の時間を置いても何ら見劣りすることはなかった。
だが流石は本部付近の守備を任されているだけあって一筋縄ではいかなかった。
彼らがそれぞれの腕やら掌やらを貫かれ、戦闘不能と思われて、その場から素早く立ち去ろうとしたときだった。
兵隊らしく彼らは痛みを堪えて震える指で無線を用いて、本部に連絡を送ったのである。
ヤスケも余計な手出しを嫌うザビエルが警備兵のことは仕切っていると思っていて、この報告には半信半疑であったが、
後ろから聞こえてくる、十人分以上の足音が私達の期待が外れたことを物語っていた。
「一筋縄ではいかないと思っていたが、よもやこんな事になろうとはな・・・」
私達は疾走しながら、自らの不運に声のトーンを落とす。
「ええ、追ってくる速度もかなり速い。手練でしょう。」
想像したくはないが、ヤスケの言っていることは私の頭でも嫌というくらい理解していた。
「私もこんな所でせっかく回復した体力は消費したくないのだがな・・・」
「同感です。・・・ですから、ここは二手に分かれましょう」
ヤスケが提案を示しながら、人差し指を上に立てて見せた。
「どうしようと言うんだ?」
「前のほうにジープ・・・あの車ですけど、あの中には恐らく武器が入っています。後ろの位なら武器がよければ私一人でも殲滅できますし、少なくとも足止めは出来ます」
「君が一人でとどまるというのか?」
私は驚いて彼に聞き返す。
「奇襲は時間が経てば経つほど難しくなります。ただでさえ時間を喰ってるのですから、今は急ぐべきでしょう?」
抑揚が激しい声で彼は私に激しく促す。
「しかし・・・」
「この主宰者を放っておくわけには行かないんでしょう?早く!」
言っている間にジープの横にたどり着き、彼は警備兵用の武器を後部座席から素早く取り出す。
「私の失った目の代わりが居ないと不安だ。出来るだけ早く追いついてくれ。」
「解りました」
殿(しんがり)を買って出てくれたヤスケに一礼して、私はその場から走り去った。
ヤスケと別れてどのくらい先に進んだのだろうか?
時折聞こえるけたたましい轟音が鳴り止むたびに、彼の安否を気遣って振り向いてしまう。
あれから、ヤスケの奮闘に警備の目が行っているのか、ほとんど兵と出会わず、かつ出会ったとしてもやり過ごすことが出来た。
今、私は大きな広間で立ち尽くしている。
私が今来たのと同じような道が5本見渡すことが出来、「とらっく車」が何十台と並べられている。
さらに驚くべきなのは私達の持っている何倍もの量の見たこともない食料らしきものがあり、
急いでいた警備兵に蹴飛ばされたのだろうか、中身をぶちまけたまま放置されていた。
その時、一台の「とらっく車」とは別の車が勢いよく駆け込んできたのに気づき、私は物陰に身を潜めた。
車から二人の人間が降りてくる。時を同じくして、奥のほうから小走りで男がそれを出迎えに来た。
「・・・?」
一人は何やら宣教師らしき格好をしている。
この島に来た初日、天皇の横に同じような格好をした人間が居たのを考えるとまず、私とは相容れそうにない。
迎えに来た男の服は、私達が何人も倒した兵隊と同じような格好であり、組織における地位や身分は行動から見ても言うに値しない。
しかし、驚いたのはもう一人の人間だった。
それは明らかに私と同じようにつれて来られた私と同じ時代の人間―戦国の人間であった。
年はまだ元服したばかりといったところだろうか?私より少し若く見える。
何を言っているかはあまり聞こえないが、若い日本人が何やら言いつけられているようであり、
しばらくすると、作業員と宣教師だけが、日本人を残して、正面にある階段の一つを上っていった。
―どういうことだ?
作業員や宣教師と一緒に居るということは、奴は間者だと思うのが妥当なところではあるが、もしかしたら、南蛮人に協力している唐人かもしれないし、何やら特別な事情があるのかもしれない。
だが、そのときの私の狭くなってしまった心では、彼に疑いの眼差しを向けるしかなかった。
それでも彼の前に姿を見せようか否か迷っていいる内に、彼は私に気づく事無く、ふらりと奥へ行ってしまった。
視界から人影が消え、とりあえず何も物音がしなくなったのを確認して私は物陰からゆっくりと出た。その瞬間、
「ようこそ、浅井長政」
私の真上から日本人らしくない発音の声がして、私の体からは血の気が引いた。
匕首を喉元に突きつけられたときのような恐怖を我慢して、私は振り向きながら声の主を見上げる。
壁から張り出した細い通路の奥に居た男は外套を羽織っていたが、その筋骨隆々たる肉体は隠しきれるものではなった。
私は一瞬でそいつが声の主だと特定する。そいつは二人の従者を引き連れていた。
いや、姿は見えないが私を囲むようにまだ数人分の気配がする。
「来い。・・・さもなければ殺す」
二人の従者が持っている銃から赤く細い光がそれぞれ私の額と心臓を照らしていた。
恐らく銃の照準を合わせるためのカラクリなのだろう。
それに敢えて正面の二人分しか、光を照らさないことによって残った兵の位置を悟られないようにする水際立った脅迫は三流のそれではない。
「何故、今殺さない?」
それでも三流じみた演出に、恐怖を紛らわす意味も含めて、私は疑問の声を投げかける。
「口答えは無しだ・・・5つ数えるまでに向こうに見える扉に足を向けろ」
―一体何だというのだ?この男は何を考えている?
私はあまりにも唐突で、真意の読めない男の命令に当然のように戸惑い、考え込んだ。
「・・・1つ」
私に残された時間を告げる初めの言葉が、広い吹き抜けの倉庫に無情に響く。
―この状況・・・どうする?どうすればいい?動かなければこの場で確実に殺される。
「2つ」
動いたら・・・いや、やはり妙な望みは持たないほうがいい。
「3つ」
第一、こいつの言うことを信じていいのか?こいつがどんな奴なのかもわからないというのに。
「4つ」
結局、色々考えをめぐらしても私は奴ではない。奴の深層心理にたどり着けるはずもない。
・・・だが、奴の有無を言わさない迫力は「本物」だった。それだけは間違いなく言えることだった。
「5つ」
奴が罪人に死刑を言い渡すときのように重い声でそう言い放つのと同時に、私の体は指示された扉の方に向いて歩き始めた。
【06番 浅井長政 『無銘匕首』『FN 5-7(残17+20)』『小烏丸』『USSR PTRS1941』】左眼失明 地下エントランスから誘導
【XX番 ヤスケ 『U.S.M16A2 (残9)』『MP5K』その他】現在Route1で戦闘中
207 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/02(金) 22:32:17
age
208 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/04(日) 18:21:56
age
209 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/05(月) 00:16:57
age
210 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/07(水) 11:36:49
age
無駄にあげるなボケが
212 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/08(木) 02:38:13
213 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/08(木) 08:21:58
>>211 ┐(´ー`)┌ヤレヤレ
そんなムキになるなよ。だってさ、ほの板の休憩所だっけ?あそこ完全に
過疎ってるじゃねえか。まあ所詮はsage進行を続け、一部の人間だけで
馴れ合ってた結果だろ?だからその一部の人間がいなくなると機能停止というわけだ
ならばまだ多くの人間に作品を晒して理解してもらった方が良いと思うけど間違ってるかい?
まあage荒らしを正当化する気はないが、このままsage続けた所でスレの命脈は保たれないといいたいわけだ
214 :
まとめ:2005/09/08(木) 12:52:13
01赤尾清綱× 26岡部元信× 51佐久間信盛× 76林秀貞×
02赤穴盛清× 27織田信長○ 52佐々成政× 77久武親直×
03秋山信友× 28織田信行× 53宍戸隆家× 78平手政秀×
04明智光秀× 29飯富昌景○ 54柴田勝家× 79北条氏照×
05安居景健× 30小山田信茂× 55下間頼照× 80北条氏政×
06浅井長政○ 31海北綱親× 56下間頼廉× 81北条氏康×
07浅井久政× 32柿崎景家× 57上条政繁○ 82北条綱成×
08朝倉義景× 33桂元澄× 58鈴木重秀○ 83細川藤孝○
09朝比奈泰朝× 34金森長近× 59大道寺政繁× 84本庄繁長×
10足利義秋× 35蒲生賢秀× 60滝川一益× 85本多正信×
11足利義輝○ 36河尻秀隆× 61武田信廉× 86前田利家○
12甘粕景持× 37北条高広× 62武田信繁× 87真柄直隆×
13尼子晴久× 38吉川元春× 63武田晴信× 88松平元康×
14尼子誠久× 39吉良親貞○ 64竹中重治× 89松田憲秀×
15荒木村重× 40久能宗能× 65長曽我部元親○90松永久秀×
16井伊直親× 41熊谷信直× 66土橋景鏡× 91三雲成持×
17池田恒興× 42顕如× 67鳥居元忠× 92三好長慶○
18石川数正× 43高坂昌信× 68内藤昌豊× 93三好政勝×
19磯野員昌× 44香宗我部親泰○69長尾景虎○ 94村上義清×
20今川氏真× 45後藤賢豊× 70長尾政景× 95毛利隆元×
21今川義元× 46小早川隆景× 71長坂長閑× 96毛利元就×
22岩成友通× 47斎藤道三× 72丹羽長秀× 97森可成×
23鵜殿長照× 48斎藤朝信× 73羽柴秀吉× 98山中幸盛×
24遠藤直経× 49斎藤義龍× 74蜂須賀正勝× 99六角義賢×
25大熊朝秀× 50酒井忠次× 75馬場信房× 100和田惟政×
×印:死亡確認者 87名
○印:生存確認者 13名
215 :
まとめ:2005/09/08(木) 12:53:08
個人
【06番 浅井長政 『無銘匕首』『FN 5-7(残17+20)』『小烏丸』『USSR PTRS1941』】(左眼失明 肩部軽傷 腹部重傷) 地下エントランスから誘導
【92番 三好長慶 『ジェンダワ(矢10隻)』『青酸カリ』『寸鉄』】(腹部に軽傷。傷口から出血)3-CルートV入り口地点付近に潜伏。
【39番 吉良親貞 『日本号』『モトローラ トランシーバ T5900(二個)』『イサカM37フェザーライト(残弾0発)』】 5-E本部地下通路(待機中)
パーティ
【11番 足利義輝 『九字の破邪刀(破砕)』『梓弓(4隻)』『グロック17C(残弾16発)』】
【69番 長尾景虎 『片鎌槍』『十手』】
【57番 上条政繁 『書物・ジョジョの奇妙な冒険全巻(十数冊読めないものあり)』『バゼラード』『H&K MP3(残弾12発)』】
ルートV通路先行集団
【29番 飯富昌景 『エペ』『フルーレ』】
【86番 前田利家 『SPAS12(残弾1発・暴発の可能性あり)』『鉄槍(先端破損)』『Mk2破片式手榴弾(一個)』『錘』】(左腕骨折)
ルートV中団。通路に潜伏していた数名の兵と対峙。
【58番 鈴木重秀 『USSRドラグノフ(残弾4発)』『SBライフル(残弾14発)』『オーク・Wアックス』】 (左手負傷)
【83番 細川藤孝 『備前長船』】
3-CルートV入り口地点。奇襲兵数名と対峙
【27番 織田信長 生死不明】『ベレッタM1919(残弾7発)』『相州五郎入道正宗』はフロイスが回収
【同行者 ルイス・フロイス『ベレッタM92FC(残弾15+1)』】5-E校舎内
216 :
まとめ:2005/09/08(木) 12:54:01
対峙中
【44番 香宗我部親泰 『長曾禰虎徹』】
【65番 長曽我部元親『鎌』『ウィンチェスターM1897(残弾3発)』『青龍偃月刀』】共に3-D東部にて対峙
管理側
【主催者 正親町天皇 『童子切安綱』】5-E校舎内 興味を惹くものを探す
【アレッサンドロ=ヴァリニャーノ『戦闘用改造リアルカスタムキュー』】5-E本部4階(医務室へ)
【ヤスケ 『U.S.M16A2 (残9)』『MP5K』その他】現在Route1で戦闘中
【残り13人+α】
217 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/09(金) 22:29:54
数日後
織田『もうだめぽ』
鈴木『かもな』
足利『おまいら…』
上杉『ぬるぽ』
飯富『がっ』
細川『おまいらも…』
数日後
織田『(゚∀゚)アヒャヒャヒャ』
鈴木『(・∀・)ニヤニヤ』
足利『ぬるぽ』
細川『がっ』
上杉『(´・ω・`)ショボーン』
飯富『(`・ω・´)シャキーン』
218 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/10(土) 09:32:54
なんなのこのスレ?
219 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 00:28:48
220 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 00:48:02
こいつらも三戦から追い出そうぜw
| |、
_,..-j ソ
-=二フ ̄ ̄` ´ー-._ __
_,..=ニ-j _,  ̄`三ニ=-
ムこ´厶_/^Vレ'\j`ー、iー-、_っ
//,  ̄``ー-! _∠...-―‐-!
ji// -‐て_j-、_ __,......__ |
ハijフ `ー--― 、´_ `ー'_ i,
i ijレ '、~ ̄ i_`、
f^Vj、 . j i弋!
|_Li i`、  ̄` ,i=/ ブヨッブヨ
キ=j_ノ ./ ・… _・‥, ∠_
E三'´ , /-=ニ二__...二j ! /~
`、 ー ; ノ
`ー-、___,,__,_,__,_,.../
///i / /\
222 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 01:08:12
∩_
〈〈〈 ヽ
〈⊃ }
∩___∩ | |
| ノ ヽ ! !
/ ● ● | /
| ( _●_) ミ/ こいつ最高に天才
彡、 |∪| /
/ __ ヽノ /
(___) /
∩___∩
| ノ ヽ !
/ ● ● | こいつ最高にヴァカ
| ( _●_) ミ
彡、 |∪| / .\
/ __ ヽノ / \ ...\
(___) / .│ ..│
│ │
/ ヽ
l..lUUU
.U
224 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/14(水) 17:20:35
おい無双厨、ここ思い切り荒らしていいぞw
225 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/14(水) 17:29:16
226 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/14(水) 17:38:21
227 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/14(水) 17:40:00
228 :
神風特攻隊:2005/09/14(水) 19:40:28
昭和天皇マンセーヾ(`・ω・´)
229 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/15(木) 08:47:46
230 :
神威:2005/09/16(金) 14:33:37
昭和天皇マンセー
231 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/20(火) 21:36:16
age
232 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/22(木) 10:40:40
age
233 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/24(土) 14:00:52
元気ハツラツ?
234 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/24(土) 17:25:57
オロナミン
235 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/24(土) 18:44:51
全員死亡で終了
糞スレも終了
236 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/24(土) 18:50:27
キチガイ達によるオナニースレ死亡
ここ削除以来出してるし、粘着して荒らしたいなら好きなだけしていいよ
238 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/24(土) 20:46:00
>>237 削除人なんてとっくの昔から存在しませんが?
頭悪いの?
依頼出せば後は他の人が何とかしてくれると思ってる厨房か?
ちょこちょこ見てるのなwwwハゲワラwww
終了
242 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/26(月) 11:28:34
age
243 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/26(月) 23:03:28
age
244 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/27(火) 11:41:28
age
245 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/29(木) 13:22:24
age
246 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/29(木) 23:29:27
age
247 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/30(金) 03:15:22
age
248 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/30(金) 19:19:27
age
249 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/09/30(金) 21:47:39
何この保守に必死な糞スレは
このスレは荒しの所為により終了したので
以後書き込まないようお願いします
252 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/10/03(月) 13:03:36
age
253 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/10/04(火) 12:12:18
age
254 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/10/05(水) 10:42:27
age
255 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/10/06(木) 13:48:14
age
ここは使わないからageないでくれない?
もっともageてる奴って昼間ばっかりだから粘着ニートの仕業なんだろうが
そうやっていつまでも相手する香具師がいるから粘着されるわけだ
削除依頼出しても削除人そのものがいねーからなー。
まいっちんぐ!
いっそのこと、雑談しまくって1000まで埋める?
ここでくだらない話したってもう害はないでしょ?
可児みたいな事言ってたら乾されるぞw
unko
262 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/10/13(木) 20:23:26
age
263 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/10/14(金) 00:14:38
age
264 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/10/16(日) 11:19:41
age
265 :
筆頭家老:2005/10/21(金) 05:05:05
爆
石
最 臭
゛゛゛゛
゛゛゛雷
車
267 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/10/23(日) 19:51:51
age
268 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/10/25(火) 15:11:28
age
一人で1000まで埋めてくれるんだろ
放置しろ
Re: 撮影時は処女 ひで - 2005/09/24(Sat) 23:44 No.289
夏休みにサークルの仲間5人で海に行ったときのこと。
民宿の夜、先輩三人と俺の四人で建築学科のアイドル「多美ちゃん」を輪姦した時は最高でしたよ。
タンクトップ、ホットパンツ姿。四人ともムラムラ、ビンビンですよ。
生足の太股の奥の土手のふくらみ、中身を想像しましたね。下を向いたときの胸の谷間。
四人の目がこの二箇所を行ったり来たり、そして俺達の目が合った時、役割が一瞬に決定。
宮崎先輩がキスしながら上半身を押さえ、白石さんと石川さんと俺の三人でホットパンツを脱がしたら、ビキニのピンクのパンティー。
飲んでるときから、チラチラ見えてました。白石先輩がそのパンティーを脱がしました。
結構毛深いのにびっくり、白石先輩が「ひで最初の味見さしたるよ」って言われ。
俺が、がむしゃらに多美ちゃんのオメコにキスと云うかしゃぶり付き唾液でびちょびちょに濡らして、速攻ビンビンのチンポを突っ込みましたよ!
ヤッタついに多美ちゃんのオメコに、一発めハッキリ言って余裕無しこじ開けた多美ちゃんの可愛い蕾の中へドドッと俺のチンポから精液が発射しました。
始めは酔っているとはいえかなりの抵抗でしたが四人がかりだし、宮崎先輩と白石先輩は180cm,90kg以上ですから完全に多美ちゃんを押さえ付け身動きさせず。
それから直ぐにタンクトップを脱がしたら形の良いオッパイが、今後は宮崎先輩が多美のオメコへ挿入。次に白石先輩。
次に石川先輩がGパンとトランクスを脱ぐと凄い「でかい!」俺より(俺17cmぐらい)石川先輩は俺よりはるかにでかいです。
そのでかいチンポを根本まで入れました。四人目でぐったりしていたのにかなり痛そうでしたよ。でも、感じてましたよ!結局三時間以上入れ替わりで…19歳で処女でした。
Re: 撮影時は処女 ひで - 2005/09/24(Sat) 23:44 No.289
夏休みにサークルの仲間5人で海に行ったときのこと。
民宿の夜、先輩三人と俺の四人で建築学科のアイドル「多美ちゃん」を輪姦した時は最高でしたよ。
タンクトップ、ホットパンツ姿。四人ともムラムラ、ビンビンですよ。
生足の太股の奥の土手のふくらみ、中身を想像しましたね。下を向いたときの胸の谷間。
四人の目がこの二箇所を行ったり来たり、そして俺達の目が合った時、役割が一瞬に決定。
宮崎先輩がキスしながら上半身を押さえ、白石さんと石川さんと俺の三人でホットパンツを脱がしたら、ビキニのピンクのパンティー。
飲んでるときから、チラチラ見えてました。白石先輩がそのパンティーを脱がしました。
結構毛深いのにびっくり、白石先輩が「ひで最初の味見さしたるよ」って言われ。
俺が、がむしゃらに多美ちゃんのオメコにキスと云うかしゃぶり付き唾液でびちょびちょに濡らして、速攻ビンビンのチンポを突っ込みましたよ!
ヤッタついに多美ちゃんのオメコに、一発めハッキリ言って余裕無しこじ開けた多美ちゃんの可愛い蕾の中へドドッと俺のチンポから精液が発射しました。
始めは酔っているとはいえかなりの抵抗でしたが四人がかりだし、宮崎先輩と白石先輩は180cm,90kg以上ですから完全に多美ちゃんを押さえ付け身動きさせず。
それから直ぐにタンクトップを脱がしたら形の良いオッパイが、今後は宮崎先輩が多美のオメコへ挿入。次に白石先輩。
次に石川先輩がGパンとトランクスを脱ぐと凄い「でかい!」俺より(俺17cmぐらい)石川先輩は俺よりはるかにでかいです。
そのでかいチンポを根本まで入れました。四人目でぐったりしていたのにかなり痛そうでしたよ。でも、感じてましたよ!結局三時間以上入れ替わりで…19歳で処女でした。
Re: 撮影時は処女 ひで - 2005/09/24(Sat) 23:44 No.289
夏休みにサークルの仲間5人で海に行ったときのこと。
民宿の夜、先輩三人と俺の四人で建築学科のアイドル「多美ちゃん」を輪姦した時は最高でしたよ。
タンクトップ、ホットパンツ姿。四人ともムラムラ、ビンビンですよ。
生足の太股の奥の土手のふくらみ、中身を想像しましたね。下を向いたときの胸の谷間。
四人の目がこの二箇所を行ったり来たり、そして俺達の目が合った時、役割が一瞬に決定。
宮崎先輩がキスしながら上半身を押さえ、白石さんと石川さんと俺の三人でホットパンツを脱がしたら、ビキニのピンクのパンティー。
飲んでるときから、チラチラ見えてました。白石先輩がそのパンティーを脱がしました。
結構毛深いのにびっくり、白石先輩が「ひで最初の味見さしたるよ」って言われ。
俺が、がむしゃらに多美ちゃんのオメコにキスと云うかしゃぶり付き唾液でびちょびちょに濡らして、速攻ビンビンのチンポを突っ込みましたよ!
ヤッタついに多美ちゃんのオメコに、一発めハッキリ言って余裕無しこじ開けた多美ちゃんの可愛い蕾の中へドドッと俺のチンポから精液が発射しました。
始めは酔っているとはいえかなりの抵抗でしたが四人がかりだし、宮崎先輩と白石先輩は180cm,90kg以上ですから完全に多美ちゃんを押さえ付け身動きさせず。
それから直ぐにタンクトップを脱がしたら形の良いオッパイが、今後は宮崎先輩が多美のオメコへ挿入。次に白石先輩。
次に石川先輩がGパンとトランクスを脱ぐと凄い「でかい!」俺より(俺17cmぐらい)石川先輩は俺よりはるかにでかいです。
そのでかいチンポを根本まで入れました。四人目でぐったりしていたのにかなり痛そうでしたよ。でも、感じてましたよ!結局三時間以上入れ替わりで…19歳で処女でした。
Re: 撮影時は処女 ひで - 2005/09/24(Sat) 23:44 No.289
夏休みにサークルの仲間5人で海に行ったときのこと。
民宿の夜、先輩三人と俺の四人で建築学科のアイドル「多美ちゃん」を輪姦した時は最高でしたよ。
タンクトップ、ホットパンツ姿。四人ともムラムラ、ビンビンですよ。
生足の太股の奥の土手のふくらみ、中身を想像しましたね。下を向いたときの胸の谷間。
四人の目がこの二箇所を行ったり来たり、そして俺達の目が合った時、役割が一瞬に決定。
宮崎先輩がキスしながら上半身を押さえ、白石さんと石川さんと俺の三人でホットパンツを脱がしたら、ビキニのピンクのパンティー。
飲んでるときから、チラチラ見えてました。白石先輩がそのパンティーを脱がしました。
結構毛深いのにびっくり、白石先輩が「ひで最初の味見さしたるよ」って言われ。
俺が、がむしゃらに多美ちゃんのオメコにキスと云うかしゃぶり付き唾液でびちょびちょに濡らして、速攻ビンビンのチンポを突っ込みましたよ!
ヤッタついに多美ちゃんのオメコに、一発めハッキリ言って余裕無しこじ開けた多美ちゃんの可愛い蕾の中へドドッと俺のチンポから精液が発射しました。
始めは酔っているとはいえかなりの抵抗でしたが四人がかりだし、宮崎先輩と白石先輩は180cm,90kg以上ですから完全に多美ちゃんを押さえ付け身動きさせず。
それから直ぐにタンクトップを脱がしたら形の良いオッパイが、今後は宮崎先輩が多美のオメコへ挿入。次に白石先輩。
次に石川先輩がGパンとトランクスを脱ぐと凄い「でかい!」俺より(俺17cmぐらい)石川先輩は俺よりはるかにでかいです。
そのでかいチンポを根本まで入れました。四人目でぐったりしていたのにかなり痛そうでしたよ。でも、感じてましたよ!結局三時間以上入れ替わりで…19歳で処女でした。
Re: 撮影時は処女 ひで - 2005/09/24(Sat) 23:44 No.289
夏休みにサークルの仲間5人で海に行ったときのこと。
民宿の夜、先輩三人と俺の四人で建築学科のアイドル「多美ちゃん」を輪姦した時は最高でしたよ。
タンクトップ、ホットパンツ姿。四人ともムラムラ、ビンビンですよ。
生足の太股の奥の土手のふくらみ、中身を想像しましたね。下を向いたときの胸の谷間。
四人の目がこの二箇所を行ったり来たり、そして俺達の目が合った時、役割が一瞬に決定。
宮崎先輩がキスしながら上半身を押さえ、白石さんと石川さんと俺の三人でホットパンツを脱がしたら、ビキニのピンクのパンティー。
飲んでるときから、チラチラ見えてました。白石先輩がそのパンティーを脱がしました。
結構毛深いのにびっくり、白石先輩が「ひで最初の味見さしたるよ」って言われ。
俺が、がむしゃらに多美ちゃんのオメコにキスと云うかしゃぶり付き唾液でびちょびちょに濡らして、速攻ビンビンのチンポを突っ込みましたよ!
ヤッタついに多美ちゃんのオメコに、一発めハッキリ言って余裕無しこじ開けた多美ちゃんの可愛い蕾の中へドドッと俺のチンポから精液が発射しました。
始めは酔っているとはいえかなりの抵抗でしたが四人がかりだし、宮崎先輩と白石先輩は180cm,90kg以上ですから完全に多美ちゃんを押さえ付け身動きさせず。
それから直ぐにタンクトップを脱がしたら形の良いオッパイが、今後は宮崎先輩が多美のオメコへ挿入。次に白石先輩。
次に石川先輩がGパンとトランクスを脱ぐと凄い「でかい!」俺より(俺17cmぐらい)石川先輩は俺よりはるかにでかいです。
そのでかいチンポを根本まで入れました。四人目でぐったりしていたのにかなり痛そうでしたよ。でも、感じてましたよ!結局三時間以上入れ替わりで…19歳で処女でした。
Re: 撮影時は処女 ひで - 2005/09/24(Sat) 23:44 No.289
夏休みにサークルの仲間5人で海に行ったときのこと。
民宿の夜、先輩三人と俺の四人で建築学科のアイドル「多美ちゃん」を輪姦した時は最高でしたよ。
タンクトップ、ホットパンツ姿。四人ともムラムラ、ビンビンですよ。
生足の太股の奥の土手のふくらみ、中身を想像しましたね。下を向いたときの胸の谷間。
四人の目がこの二箇所を行ったり来たり、そして俺達の目が合った時、役割が一瞬に決定。
宮崎先輩がキスしながら上半身を押さえ、白石さんと石川さんと俺の三人でホットパンツを脱がしたら、ビキニのピンクのパンティー。
飲んでるときから、チラチラ見えてました。白石先輩がそのパンティーを脱がしました。
結構毛深いのにびっくり、白石先輩が「ひで最初の味見さしたるよ」って言われ。
俺が、がむしゃらに多美ちゃんのオメコにキスと云うかしゃぶり付き唾液でびちょびちょに濡らして、速攻ビンビンのチンポを突っ込みましたよ!
ヤッタついに多美ちゃんのオメコに、一発めハッキリ言って余裕無しこじ開けた多美ちゃんの可愛い蕾の中へドドッと俺のチンポから精液が発射しました。
始めは酔っているとはいえかなりの抵抗でしたが四人がかりだし、宮崎先輩と白石先輩は180cm,90kg以上ですから完全に多美ちゃんを押さえ付け身動きさせず。
それから直ぐにタンクトップを脱がしたら形の良いオッパイが、今後は宮崎先輩が多美のオメコへ挿入。次に白石先輩。
次に石川先輩がGパンとトランクスを脱ぐと凄い「でかい!」俺より(俺17cmぐらい)石川先輩は俺よりはるかにでかいです。
そのでかいチンポを根本まで入れました。四人目でぐったりしていたのにかなり痛そうでしたよ。でも、感じてましたよ!結局三時間以上入れ替わりで…19歳で処女でした。
Re: 撮影時は処女 ひで - 2005/09/24(Sat) 23:44 No.289
夏休みにサークルの仲間5人で海に行ったときのこと。
民宿の夜、先輩三人と俺の四人で建築学科のアイドル「多美ちゃん」を輪姦した時は最高でしたよ。
タンクトップ、ホットパンツ姿。四人ともムラムラ、ビンビンですよ。
生足の太股の奥の土手のふくらみ、中身を想像しましたね。下を向いたときの胸の谷間。
四人の目がこの二箇所を行ったり来たり、そして俺達の目が合った時、役割が一瞬に決定。
宮崎先輩がキスしながら上半身を押さえ、白石さんと石川さんと俺の三人でホットパンツを脱がしたら、ビキニのピンクのパンティー。
飲んでるときから、チラチラ見えてました。白石先輩がそのパンティーを脱がしました。
結構毛深いのにびっくり、白石先輩が「ひで最初の味見さしたるよ」って言われ。
俺が、がむしゃらに多美ちゃんのオメコにキスと云うかしゃぶり付き唾液でびちょびちょに濡らして、速攻ビンビンのチンポを突っ込みましたよ!
ヤッタついに多美ちゃんのオメコに、一発めハッキリ言って余裕無しこじ開けた多美ちゃんの可愛い蕾の中へドドッと俺のチンポから精液が発射しました。
始めは酔っているとはいえかなりの抵抗でしたが四人がかりだし、宮崎先輩と白石先輩は180cm,90kg以上ですから完全に多美ちゃんを押さえ付け身動きさせず。
それから直ぐにタンクトップを脱がしたら形の良いオッパイが、今後は宮崎先輩が多美のオメコへ挿入。次に白石先輩。
次に石川先輩がGパンとトランクスを脱ぐと凄い「でかい!」俺より(俺17cmぐらい)石川先輩は俺よりはるかにでかいです。
そのでかいチンポを根本まで入れました。四人目でぐったりしていたのにかなり痛そうでしたよ。でも、感じてましたよ!結局三時間以上入れ替わりで…19歳で処女でした。
Re: 撮影時は処女 ひで - 2005/09/24(Sat) 23:44 No.289
夏休みにサークルの仲間5人で海に行ったときのこと。
民宿の夜、先輩三人と俺の四人で建築学科のアイドル「多美ちゃん」を輪姦した時は最高でしたよ。
タンクトップ、ホットパンツ姿。四人ともムラムラ、ビンビンですよ。
生足の太股の奥の土手のふくらみ、中身を想像しましたね。下を向いたときの胸の谷間。
四人の目がこの二箇所を行ったり来たり、そして俺達の目が合った時、役割が一瞬に決定。
宮崎先輩がキスしながら上半身を押さえ、白石さんと石川さんと俺の三人でホットパンツを脱がしたら、ビキニのピンクのパンティー。
飲んでるときから、チラチラ見えてました。白石先輩がそのパンティーを脱がしました。
結構毛深いのにびっくり、白石先輩が「ひで最初の味見さしたるよ」って言われ。
俺が、がむしゃらに多美ちゃんのオメコにキスと云うかしゃぶり付き唾液でびちょびちょに濡らして、速攻ビンビンのチンポを突っ込みましたよ!
ヤッタついに多美ちゃんのオメコに、一発めハッキリ言って余裕無しこじ開けた多美ちゃんの可愛い蕾の中へドドッと俺のチンポから精液が発射しました。
始めは酔っているとはいえかなりの抵抗でしたが四人がかりだし、宮崎先輩と白石先輩は180cm,90kg以上ですから完全に多美ちゃんを押さえ付け身動きさせず。
それから直ぐにタンクトップを脱がしたら形の良いオッパイが、今後は宮崎先輩が多美のオメコへ挿入。次に白石先輩。
次に石川先輩がGパンとトランクスを脱ぐと凄い「でかい!」俺より(俺17cmぐらい)石川先輩は俺よりはるかにでかいです。
そのでかいチンポを根本まで入れました。四人目でぐったりしていたのにかなり痛そうでしたよ。でも、感じてましたよ!結局三時間以上入れ替わりで…19歳で処女でした。
Re: 撮影時は処女 ひで - 2005/09/24(Sat) 23:44 No.289
夏休みにサークルの仲間5人で海に行ったときのこと。
民宿の夜、先輩三人と俺の四人で建築学科のアイドル「多美ちゃん」を輪姦した時は最高でしたよ。
タンクトップ、ホットパンツ姿。四人ともムラムラ、ビンビンですよ。
生足の太股の奥の土手のふくらみ、中身を想像しましたね。下を向いたときの胸の谷間。
四人の目がこの二箇所を行ったり来たり、そして俺達の目が合った時、役割が一瞬に決定。
宮崎先輩がキスしながら上半身を押さえ、白石さんと石川さんと俺の三人でホットパンツを脱がしたら、ビキニのピンクのパンティー。
飲んでるときから、チラチラ見えてました。白石先輩がそのパンティーを脱がしました。
結構毛深いのにびっくり、白石先輩が「ひで最初の味見さしたるよ」って言われ。
俺が、がむしゃらに多美ちゃんのオメコにキスと云うかしゃぶり付き唾液でびちょびちょに濡らして、速攻ビンビンのチンポを突っ込みましたよ!
ヤッタついに多美ちゃんのオメコに、一発めハッキリ言って余裕無しこじ開けた多美ちゃんの可愛い蕾の中へドドッと俺のチンポから精液が発射しました。
始めは酔っているとはいえかなりの抵抗でしたが四人がかりだし、宮崎先輩と白石先輩は180cm,90kg以上ですから完全に多美ちゃんを押さえ付け身動きさせず。
それから直ぐにタンクトップを脱がしたら形の良いオッパイが、今後は宮崎先輩が多美のオメコへ挿入。次に白石先輩。
次に石川先輩がGパンとトランクスを脱ぐと凄い「でかい!」俺より(俺17cmぐらい)石川先輩は俺よりはるかにでかいです。
そのでかいチンポを根本まで入れました。四人目でぐったりしていたのにかなり痛そうでしたよ。でも、感じてましたよ!結局三時間以上入れ替わりで…19歳で処女でした。
Re: 撮影時は処女 ひで - 2005/09/24(Sat) 23:44 No.289
夏休みにサークルの仲間5人で海に行ったときのこと。
民宿の夜、先輩三人と俺の四人で建築学科のアイドル「多美ちゃん」を輪姦した時は最高でしたよ。
タンクトップ、ホットパンツ姿。四人ともムラムラ、ビンビンですよ。
生足の太股の奥の土手のふくらみ、中身を想像しましたね。下を向いたときの胸の谷間。
四人の目がこの二箇所を行ったり来たり、そして俺達の目が合った時、役割が一瞬に決定。
宮崎先輩がキスしながら上半身を押さえ、白石さんと石川さんと俺の三人でホットパンツを脱がしたら、ビキニのピンクのパンティー。
飲んでるときから、チラチラ見えてました。白石先輩がそのパンティーを脱がしました。
結構毛深いのにびっくり、白石先輩が「ひで最初の味見さしたるよ」って言われ。
俺が、がむしゃらに多美ちゃんのオメコにキスと云うかしゃぶり付き唾液でびちょびちょに濡らして、速攻ビンビンのチンポを突っ込みましたよ!
ヤッタついに多美ちゃんのオメコに、一発めハッキリ言って余裕無しこじ開けた多美ちゃんの可愛い蕾の中へドドッと俺のチンポから精液が発射しました。
始めは酔っているとはいえかなりの抵抗でしたが四人がかりだし、宮崎先輩と白石先輩は180cm,90kg以上ですから完全に多美ちゃんを押さえ付け身動きさせず。
それから直ぐにタンクトップを脱がしたら形の良いオッパイが、今後は宮崎先輩が多美のオメコへ挿入。次に白石先輩。
次に石川先輩がGパンとトランクスを脱ぐと凄い「でかい!」俺より(俺17cmぐらい)石川先輩は俺よりはるかにでかいです。
そのでかいチンポを根本まで入れました。四人目でぐったりしていたのにかなり痛そうでしたよ。でも、感じてましたよ!結局三時間以上入れ替わりで…19歳で処女でした。
Re: 撮影時は処女 ひで - 2005/09/24(Sat) 23:44 No.289
夏休みにサークルの仲間5人で海に行ったときのこと。
民宿の夜、先輩三人と俺の四人で建築学科のアイドル「多美ちゃん」を輪姦した時は最高でしたよ。
タンクトップ、ホットパンツ姿。四人ともムラムラ、ビンビンですよ。
生足の太股の奥の土手のふくらみ、中身を想像しましたね。下を向いたときの胸の谷間。
四人の目がこの二箇所を行ったり来たり、そして俺達の目が合った時、役割が一瞬に決定。
宮崎先輩がキスしながら上半身を押さえ、白石さんと石川さんと俺の三人でホットパンツを脱がしたら、ビキニのピンクのパンティー。
飲んでるときから、チラチラ見えてました。白石先輩がそのパンティーを脱がしました。
結構毛深いのにびっくり、白石先輩が「ひで最初の味見さしたるよ」って言われ。
俺が、がむしゃらに多美ちゃんのオメコにキスと云うかしゃぶり付き唾液でびちょびちょに濡らして、速攻ビンビンのチンポを突っ込みましたよ!
ヤッタついに多美ちゃんのオメコに、一発めハッキリ言って余裕無しこじ開けた多美ちゃんの可愛い蕾の中へドドッと俺のチンポから精液が発射しました。
始めは酔っているとはいえかなりの抵抗でしたが四人がかりだし、宮崎先輩と白石先輩は180cm,90kg以上ですから完全に多美ちゃんを押さえ付け身動きさせず。
それから直ぐにタンクトップを脱がしたら形の良いオッパイが、今後は宮崎先輩が多美のオメコへ挿入。次に白石先輩。
次に石川先輩がGパンとトランクスを脱ぐと凄い「でかい!」俺より(俺17cmぐらい)石川先輩は俺よりはるかにでかいです。
そのでかいチンポを根本まで入れました。四人目でぐったりしていたのにかなり痛そうでしたよ。でも、感じてましたよ!結局三時間以上入れ替わりで…19歳で処女でした。
Re: 撮影時は処女 ひで - 2005/09/24(Sat) 23:44 No.289
夏休みにサークルの仲間5人で海に行ったときのこと。
民宿の夜、先輩三人と俺の四人で建築学科のアイドル「多美ちゃん」を輪姦した時は最高でしたよ。
タンクトップ、ホットパンツ姿。四人ともムラムラ、ビンビンですよ。
生足の太股の奥の土手のふくらみ、中身を想像しましたね。下を向いたときの胸の谷間。
四人の目がこの二箇所を行ったり来たり、そして俺達の目が合った時、役割が一瞬に決定。
宮崎先輩がキスしながら上半身を押さえ、白石さんと石川さんと俺の三人でホットパンツを脱がしたら、ビキニのピンクのパンティー。
飲んでるときから、チラチラ見えてました。白石先輩がそのパンティーを脱がしました。
結構毛深いのにびっくり、白石先輩が「ひで最初の味見さしたるよ」って言われ。
俺が、がむしゃらに多美ちゃんのオメコにキスと云うかしゃぶり付き唾液でびちょびちょに濡らして、速攻ビンビンのチンポを突っ込みましたよ!
ヤッタついに多美ちゃんのオメコに、一発めハッキリ言って余裕無しこじ開けた多美ちゃんの可愛い蕾の中へドドッと俺のチンポから精液が発射しました。
始めは酔っているとはいえかなりの抵抗でしたが四人がかりだし、宮崎先輩と白石先輩は180cm,90kg以上ですから完全に多美ちゃんを押さえ付け身動きさせず。
それから直ぐにタンクトップを脱がしたら形の良いオッパイが、今後は宮崎先輩が多美のオメコへ挿入。次に白石先輩。
次に石川先輩がGパンとトランクスを脱ぐと凄い「でかい!」俺より(俺17cmぐらい)石川先輩は俺よりはるかにでかいです。
そのでかいチンポを根本まで入れました。四人目でぐったりしていたのにかなり痛そうでしたよ。でも、感じてましたよ!結局三時間以上入れ替わりで…19歳で処女でした。
Re: 撮影時は処女 ひで - 2005/09/24(Sat) 23:44 No.289
夏休みにサークルの仲間5人で海に行ったときのこと。
民宿の夜、先輩三人と俺の四人で建築学科のアイドル「多美ちゃん」を輪姦した時は最高でしたよ。
タンクトップ、ホットパンツ姿。四人ともムラムラ、ビンビンですよ。
生足の太股の奥の土手のふくらみ、中身を想像しましたね。下を向いたときの胸の谷間。
四人の目がこの二箇所を行ったり来たり、そして俺達の目が合った時、役割が一瞬に決定。
宮崎先輩がキスしながら上半身を押さえ、白石さんと石川さんと俺の三人でホットパンツを脱がしたら、ビキニのピンクのパンティー。
飲んでるときから、チラチラ見えてました。白石先輩がそのパンティーを脱がしました。
結構毛深いのにびっくり、白石先輩が「ひで最初の味見さしたるよ」って言われ。
俺が、がむしゃらに多美ちゃんのオメコにキスと云うかしゃぶり付き唾液でびちょびちょに濡らして、速攻ビンビンのチンポを突っ込みましたよ!
ヤッタついに多美ちゃんのオメコに、一発めハッキリ言って余裕無しこじ開けた多美ちゃんの可愛い蕾の中へドドッと俺のチンポから精液が発射しました。
始めは酔っているとはいえかなりの抵抗でしたが四人がかりだし、宮崎先輩と白石先輩は180cm,90kg以上ですから完全に多美ちゃんを押さえ付け身動きさせず。
それから直ぐにタンクトップを脱がしたら形の良いオッパイが、今後は宮崎先輩が多美のオメコへ挿入。次に白石先輩。
次に石川先輩がGパンとトランクスを脱ぐと凄い「でかい!」俺より(俺17cmぐらい)石川先輩は俺よりはるかにでかいです。
そのでかいチンポを根本まで入れました。四人目でぐったりしていたのにかなり痛そうでしたよ。でも、感じてましたよ!結局三時間以上入れ替わりで…19歳で処女でした。
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結局荒らしたいだけだったのねwww
けどここもう使わないから意味無いのにwww
いちいち荒しの相手するバカもいい加減うぜー
どうせ使ってないんだから相手しようがしまいが一緒だよ
DAT落ちを待つのも自由、荒らしを煽るのも自由
好きにやればいいさ
>>荒らしを煽るのも自由
こんなこと荒し本人しか思うわけねえ
むむむ
ここからあっちに移住して本当によかったと思う
いつもここから^^^^^^^^
>>289 好きにされた結果こうなったんじゃねーか
こういう思慮不足のやつってどうやって生きてるんだろ?
自由って言葉の意味を理解してから出直してこい
まあまあ、
もう終了したんだからあとは放置して
例のage厨クンに1000まで埋めてもらえばいいべや
めでたしめでたし
>>294 だから、こうなったんだから今更何されたって痛くも痒くもないだろうが
何顔真っ赤にしちゃってんだ?
本当に痛くも痒くもないならわざわさレスしない
あ、なんでもない^∀^
いつまでもage続けたり、
>>294のように状況も理解せずに論点のずれたことをぐずぐず言ってるのは
前からここを荒らしてた奴と同じ奴でしょう。
もう移住先も決って落ち着いてるんだし、こんな所で馬鹿に構わない方がいいよ。
コイツは三国志ロワもしつこく荒らしてる粘着野郎だろうから、相手にするだけこちらが馬鹿を見るだけだよ。
この手の輩は徹底放置が一番。
しょうもない言い争いに明け暮れてる時点でどっちもどっち。
このスレは荒しの所為により終了しました。
既に別の場所で再開してるので、ここは不要です。
DAT落ちさせたいので、以後書き込まないようお願いします。
>>301 どうせ使ってないんだから相手しようがしまいが一緒だよ
DAT落ちを待つのも自由、荒らしを煽るのも自由
好きにやればいいさ
どうせ使ってないんだから相手しようがしまいが一緒だお^^
DAT落ちを待つのも自由、荒らしを煽るのも自由
好きにやればいいお^^
以下、このスレは硬くてなかなか出ないウンコについて語り合うスレになりました
半分ぐらい出してアナルセックスとは
こういう物かと実感したことがある俺は勝ち組
センゴク・ロワイヤル
〜完〜
307 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/11/23(水) 14:52:51
最下層スレage
308 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/11/23(水) 21:37:53
荒らそうぜw
だったら現行スレ荒らせよw
310 :
チンポコ家老:2005/11/24(木) 01:44:23
洗って来い。チンカスだらけじゃねーか
まだ粘着してんの?しつこいし馬鹿だねー
>>313 お前も毎回いちいち釣れてくれるんだなw
315 :
チンポコ家老:2005/11/26(土) 14:56:00
>>312 おいてめーなに勝手なことやってんだよ!!!!
てめーは消えろ
しょうがねえ、AV女優の話でもしようぜ
俺は蒼井そらが好きだ
廃墟スレにいつまでも残ってるのはこういうクズだけだなw
あ、俺もかw
今気付いた
時間的に見て、三国志を荒らしてるのも
>>315なんだな
どうしようもないクズなんじゃんか
いつまでも廃墟スレに残ってウダウダ言ってるキチガイは全員クズ
>>217からクズしか書き込んでねー
>>319 それを言うと俺等もクズなわけでw
でも荒らして楽しんでコテに粘着してるのは確かにクズだ
>それを言うと俺等もクズなわけでw
だからそう言ってるわけで
もしかしてお前、自分だけはクズじゃないとでも思ってるのか?
荒しの相手してる時点で十二分に荒しだということすらわからん厨か?
いや自覚はしてるけどさw
それでも直接荒らして楽しむクズとはまた違うでしょ
クズに種類も身分もねえよw
そんなもんてめーで勝手に妄想こいてるだけだ
別に俺はここの住人でもなんでもないし初見のスレだからどうなろうが知ったこちゃないけどな
初見にでしゃばれちゃ困るな
とりあえず出直し的な
なんだ、マジで厨房か
なぜ厨房になるか知らんが内実を知らなかった奴がああだこうだ言うことじゃないしね
知ったこっちゃないって言うならほっとけば良いのに
どうでもええがな
煽り耐性ゼロだからそう思われたんじゃね?w>厨房
つーかどっからどう見てもそう見えるwウヒョー
で、なんのスレ?
ならもう出てくんなよwお前はお呼びじゃないんだし
>>328 ああ、そういうことか
って、煽ってたのかあれって?
それからここは潰れたスレで今は厨のネタスレになってるよ
だったら削除依頼出すなりスレスト依頼するなりの知能はお前にはないの?
>>厨のネタスレ
ああ、どうりで
>>330が痛いのも全部ネタでやってますってことか
とっくの昔にされてるよ
>>332 知ったこっちゃないって割には必死ですね
なんとでも言って良いよ
335 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/11/26(土) 16:01:54
潰れたスレになんでおめーは居るんだよw
真性か
>>335 ここに集まる厨を見たいから
なんかどいつも必死に終わったスレ煽ってて哀れだったりするじゃん
そうだよ><
>>334さんの言うとおりだよ><><><><><><
皆ケンカはやめて!!<>
>>337 そうですよね!
ケンカ強くて男前で女にモテモテの
>>337さん以外は全部必死で哀れですよね><><><><>>>>
さあ必死な馬鹿の自演が続いているなw
343 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/11/26(土) 16:17:36
休日のこんな時間から厨の監視がささやかな趣味の子にテラモエス
ツンデレハァハァ
ツンデレ(;´д`)ハァハァ
>>イソポ家老
恋愛の前に使い物にならんイチモツをなんとかしてこい
気づけよwww
かなり致命的だろうがwww
>>348 コテに粘着してるからそのコテにしたんだろ?
今北産業
祭りのヨカン・・・
>>349 お前東大卒じゃね?
>>350 まじで意味不明
コテは適当、チンポコとか言う香具師いたからそっからぱくった
>>353 その言葉久々に聞いた
>>354 ああそうか二番煎じか
じゃポコチンに聞くわ
早く相談しろよww
くだらねーw
>>358 てめー帰れ
あとは俺がやる
実は小学二年生の子に恋しますた(はあと
ちなみに僕は26歳です;;
皆さん相談にのってください
VIP化してるなwwwwww
367 :
ボッキ神父:2005/11/26(土) 17:41:40
どいつもこいつも馬鹿ばっか
>>368 しつこい粘着厨は二度と来るな消えろや馬鹿
>>368 ずっとはりついてるわけにはいかないからな。日曜だし
大体俺がしてるのは監視じゃなくて観察だぞ
>>370 i::::::::/'" ̄ ̄ヾi
|:::::::| ,,,,,_ ,,,,,,|
|r-==( 。);( 。)
( ヽ :::__)..:: }
,____/ヽ ー== ; ほほう それでそれで?
r'"ヽ t、 \___ !
/ 、、i ヽ__,,/
/ ヽノ j , j |ヽ
|⌒`'、__ / / /r |
{  ̄''ー-、,,_,ヘ^ |
ゝ-,,,_____)--、j
/ \__ /
| "'ー‐‐---''
>>373 i::::::::/'" ̄ ̄ヾi
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( ヽ :::__)..:: }
,____/ヽ ー== ; ほほう それでそれで?
r'"ヽ t、 \___ !
/ 、、i ヽ__,,/
/ ヽノ j , j |ヽ
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{  ̄''ー-、,,_,ヘ^ |
ゝ-,,,_____)--、j
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| "'ー‐‐---''
すげえw
この人AAだろうがなんだろうがおかまいなしに全レスしてくれるよww
先生今日はいないのー?
377 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/11/28(月) 16:54:34
いねえなw
378 :
無名武将@お腹せっぷく:2005/11/28(月) 17:43:38
もっと新しい煽りかたしてあげないと大先生は喜ばないよ
先生はコテ化して是非三戦板の救世主になってもらいたいなwwww
不要になったスレを延々と監視するだけだから目立たねえぞw
白石ひよりっていいよな
お前らもそう思うだろ?
別にお前らみたいな粘着童貞ニートにどれだけ荒されようが
痛くもかゆくもないから好きなだけやっていいよ
>>375-383 i::::::::/'" ̄ ̄ヾi
|:::::::| ,,,,,_ ,,,,,,|
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( ヽ :::__)..:: }
,____/ヽ ー== ; ほほう それでそれで?
r'"ヽ t、 \___ !
/ 、、i ヽ__,,/
/ ヽノ j , j |ヽ
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ゝ-,,,_____)--、j
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>>384 よっぽど悔しかったんだな。監視大先生^∀^
>>385 i::::::::/'" ̄ ̄ヾi
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,____/ヽ ー== ; ほほう それでそれで?
r'"ヽ t、 \___ !
/ 、、i ヽ__,,/
/ ヽノ j , j |ヽ
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( ヽ :::__)..:: }
,____/ヽ ー== ; もっと新しい煽りかたしろよ
r'"ヽ t、 \___ !
/ 、、i ヽ__,,/
/ ヽノ j , j |ヽ
|⌒`'、__ / / /r |
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ゝ-,,,_____)--、j
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,____/ヽ ー== ; 大体俺がしてるのは監視じゃなくて観察だぞ
r'"ヽ t、 \___ !
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/ ヽノ j , j |ヽ
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././ \ ,, - .ヽ - >~
ノ/ /ノ .ノ ,,--''
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.\__ _ ノ .ノノ イヽ
` 7 ヽ // / ノ ノ 人
) >> ./ !
【佐倉広夢】
「んもう・・・
>>1さんまた駄スレ?駄スレ控えめにね」
「
>>2さん、2日間だけ僕の恋人になって」
「
>>3さん、デートしよ、ね!いいでしょ。デート、デート♪」
「
>>4さん、あま〜いアイスクリーム食べに行こ♪」
「
>>5さん、やっぱり女の子がいいの?男の子の僕は嫌いなの?」
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉