信子ちゃん 2

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1無名武将@お腹せっぷく
前スレが512000Byteを超えたので新スレ立てました。

前スレ
http://curry.2ch.net/test/read.cgi/warhis/1012282176/l50
2げt
3エノキ ◆TpbJGovQ :02/06/27 16:57
がんばってください。あと名前はもうちょっとなんとかならなかったのでしょうか。
4無名武将@お腹せっぷく:02/06/27 21:05
( T∀T)y━~~  
5無名武将@お腹せっぷく:02/06/27 21:18
意味不明 俺だけ?
61:02/06/28 00:26
前スレは容量オーバーのため誘導も書けませんでした…
このスレの存在に気づいてくれることを期待してage
7@SF ◆Kei.2QQ2 :02/06/28 02:07
けっこーこのスレ好きなんだよね・・・新スレおめ。
9無名武将@お腹せっぷく:02/06/29 18:33
( T∀T)y━~~  
10 ◆0xknNOBU :02/06/30 13:25
発見しました。
>>1さんスレ立てありがとうございます。

いやはや、スレ落ちたし打ち切りかなー、
とか考えていたので続き書いてないんですよ。
なるたけ早く続きを上げるよう善処いたします(;´Д`)

名前・・・初めは続けるつもりなど無かったのでてきとーに着けたんですよね。
流石に今更変えるのは不自然ですし、
適当にご容赦ください(;´Д`)

そうそう、新スレで書く人も増えてくれるといいですね。
それでは、また。
NOBUさん、みつけてくれたんだ…良かった。
これが潮時だと打ち切られたらどうしようかと思ってた(w
12無名武将@お腹せっぷく:02/07/01 15:23
二次板のも落ちたので立て直してきますタ
http://vip.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1025503460/
絵スレです。
お陰さまで無事半角二次元さんから画像を借り受け、
紹介ページを作る事が出来ました。さきほど先方にご報告した所です。
以下の様な感じになりました。
「信子ちゃん」
http://tact.s13.xrea.com/tailpiece/nobuko/nobuko.html
NOBUさんこれからも頑張って下さい。
保守
光(そう、できるわけがない)
光もそう思っている。が、出来る出来ないに関わらず、上杉影華が上洛運動を起こす
と信じてもらわないことには、この重鈍な越前学園は動かない。反対に信じさえすれ
ば、越前学園は強力な越後学園に背中を突き飛ばされるような勢いで今日へ進出する
事は間違いない。
光「すでに、影華上洛のために輝子様が北条、加賀本願寺の両家から協力を取り付け
  ていますし、武田千晴にも今川義子から協力を働きかけていますから後顧の憂い
  はないでしょう。いかに千晴といえども、同盟者の北条、今川の両家から働きか
  けられれば間違いなく承知します」
鏡「そんなことに?」
光の言葉を聞いて、鏡は素直に驚きの声を上げる。衰弱した足利学園にそれほどの力
があるとは、迂闊にも知らなかった。
小々菜「それは本当でしょうか?」
総書記長の魚住小々菜が慌てて光に聞く。俄には信じがたいのだろう。それも当然の
話で、そもそも足利家にそれほどの力があれば朝倉家などを頼ったりするはずがな
い、どうも話が矛盾している。
光「既に影華からは協力するむね書面で約束されています。これは写しですがよろし
  ければどうぞ」
疑う小々菜に、光はそう言って懐から四つ折りの紙を出して渡した。小々菜はそれを
受け取るとすぐに開こうとしたが、まず御影が見るべきだろうと直前で気付き、周り
にさっと目を遣る。他の越前学園の面々も、所詮御影に見せたところで無駄だとは思
いつつも、それが穏当だろうと言うことで軽く頭を下に向けた。
小々菜「御影様、お目を……」
小々菜はそう言って御影に光から受け取った紙を渡す。御影は話しについていけな
かったのか、そもそもついていく気すらないのか、ぽやーっとあらぬ方に目を遣って
いたが、意外にも自分に話が回ってきたのでびっくりして小さく声を上げた。
御影「あはっ?なに〜、わたしがみるの〜?」
小々菜「出来れば読み上げて私達にもお聞かせ願いたいのですが……光様よろしいで
    すか?」
光「どうぞ」
御影だけが読んだところで何の意味もないので光も異存ない。
小々菜「では、御影様」
御影「読むの?じゃあ読むけど……うーん……。足利学園生徒会長、学生府公方輝子
   様に越後学園生徒会長上杉御影が……す。さくいまの………だ急を……し京お
   ちの……は……に……く……の……」
が、御影が読み上げる書面の内容はとぎれとぎれでほとんど意味が分からない。
小々菜「御影様?」
不審に思った小々菜が御影にそう話しかける。
御影「……上杉影華……の……を…け……、うんー、どうしたの小々菜ちゃん?」
小々菜「いえ、少々お声が小さいようで、所々聞き取り辛いのですが……」
御影「そんなことないと思うけど?」
健香「ちょっといいですか?」
そこに健香が割って入った。健香は御影の後ろに回り書面に目を落とすと大きくため
息をついた。どうやら御影は分からない漢字を飛ばして読んでいたらしい。
健香「御影様、もうよろしいです。後は私達で読みますから」
御影「そう?あははー、よかったー、読めない漢字が多くてどうしようかと思ってた
   んだー」
屈託なくそういって笑う御影に、健香は目眩を覚えた。他学園の光がいるから、御影
の醜態を隠すためわざわざこっそり確認したのに、これでは全く水の泡だ。
鏡「まあまあ、気を取り直して……」
溜息ばかり吐いていても仕方ない。鏡がそういって仕切り直し、健香は溜息を最後に
ひとつして紙面に目をはしらせる。ついで、それを隣の鏡に、鏡はそれに目を通して
小々菜にといったようにして全員に回していった。目を通した者は、皆一様に複雑な
表情をする。まず初めに浮かぶのは疑惑であって、これはこの書状がはたして本物か
という疑問である。確かに足利、上杉両家の印が押してあるが、この程度の書状を偽
造するのはたやすいことである。が、反面足利学園がこのようにすぐばれる嘘をつく
ものかとも思う。それから考えれば、この書状は本物である可能性が高い。事実、光
は書状を偽造してきたわけではなく、写しではあるが確かに輝子と影華の間にやり取
りされたものである。偽物ではない。
では、とさらに思う。本物だとすれば、はたして上杉影華自身がこれを正気で考えて
いるのかどうか?これは、越前学園の誰も判断が付かなかった。影華の性格を考えれ
ば有り得る。ただし、現実の状況を考えればそういう離れ業は有り得るはずがなかっ
た。しかしそれも、先程光が述べたように北条、武田、加賀本願寺の協力があるとい
うなら可能だろう。北条、武田、加賀本願寺、いずれも上杉影華との関係はよろしく
ない。当然そこに疑問がある。光の言った言葉は、本当なのか?
光(半ばは本当だけど、もう半分は嘘)
光に本音を聞けば(答えるわけにはいかないが)答えはそうなる。足利輝子の名で以
て各所に協力を要請したのは本当だが、確約を取り付けているわけではない。確約が
とれなければ、いくら上杉影華とはいえ破滅的な上洛など行うはずはないだろう。そ
の部分が、嘘である。
光(いや)
確約が取れたところで影華は動かないかもしれない。北条、武田が約束を守るという
保証は客観的には存在しないのだから、危険と言うことでは変わりがない。
光(まず武田、北条の確約が取れるかどうかが五分、さらに影華が実際に動くかどう
  か、これも五分。全てが上手く行く可能性は、ざっと四分の一か)
まあ、低い確率だろう。光が十分な賭金を賭博師ならしない勝負だ。しかし光にも足
利学園にも元手はわずかである。であれば、ここはイカサマをしてでも、越前学園を
賭に引きずり込むしかない。
小々菜「このこと、本当なのですか?」
全員(除く御影)が書状に目を通して、数分も沈黙の時間がたってから、魚住小々菜
がそう言って口を開いた。
光「事実です」
光は短く答える。もはや多くの言葉は必要ない。光の沈黙そのものが、越前学園への
圧力となるはずだった。
健香「……光様、少々お待ちいただけないでしょうか?どうも御影様がお疲れしたよ
   うですし、光様とのお話の途中ではありますが……」
光「どうぞ」
そういった健香の言葉に、光は心中苦笑いしながらそうこたえた。御影が疲れたと
言っても、つい先程会談を再開してばかりであり、あまつさえお話の途中とは何事だ
ろう、つい数分前に追い返そうとしたというのに。
御影「えー、私疲れてないよー、退屈だけど」
志津子「御影様、さっ、こちらへ……」
余計なことを言い出す御影を志津子だけではなくその場にいる全員で黙らせ、奥の部
屋へと引きずり込む。その光景を見届け、部屋に誰もいなくなってから、光は今度こ
そ表情に出して苦笑を浮かべた。
光「迷っている」
そして自分にしか聞こえないほどの声でそう呟く。足利学園の要請に応じて上洛すべ
きか、あるいは知らぬ顔を決め込むか、奥の部屋ではその議論がなされているのだろ
う。光にはその情景までありありと浮かぶようである。一人が一案の利点を述べれ
ば、誰かがその欠点を言い別の一案を勧め、また一人がその欠点を言い立てる。案を
進める側も欠点を言い立てる側も特に定見があるわけではなく、議論の必然と言うべ
き空気の中に言い立て、同じ空気の中で反論しているに過ぎない。こういう議論ほど
無駄な物はない。
光「が、結局は上洛に傾く」
また光は呟いた。迷いと言ったが、実のところ越前学園には迷いなど無いと光は考え
ている。もし上洛して得ならば上洛するし、損ならばしない。あるのは利益と、保身
の計算だけである。である以上越前学園の議論は迷いからの議論ではない。どちらが
有利であるかという品定めの議論である。
光「選択の余地などは初めから無かった。遠からず今川義子の駿河学園は尾張を砕
  き、次に美濃を……」
言いかけて光は少し言いよどんだ。故知である美濃を思えば、多少の感傷があるのだ
ろう。何かとそりの合わなかった現生徒会長の竜子はともかく、何かと可愛がっても
らった道子のことを考えれば、なおさらである。
光「……美濃を砕き、南北近江を下して京に至るだろう。その時、足利家の要請があ
  りながら何もなす事のなかった越前学園はどうだろう」
その時こそ越前学園は四方に敵を向かえて滅びざるを得ないだろう。それが分からな
いほど越前学園の役員が無能でないことだけを、光は祈っていればいい。
光「志の無い者ほど迷わない、私と違って……」
自嘲気味に光は笑った。そこには苦難に向かう自分への、一種のナルティシズムも含
まれている。そのことは光も気付いているが、それを後ろ暗い快感だとは思わない。
英雄の悦楽とは、この種のナルティシズムに尽きる。
光(とにかく今は、議論が決するのを待てばいい)
結果、勝ちの目に振られると光は思っているが、もし越前学園が上洛を拒否したとし
てもまだ光にはいくつかの腹案があった。今川義子という種がある限り、光はそれを
素材としていくらでも手品を考え出すことが出来る。それを続けていけばいい。
光(我が名を……)
これで天下に知らしめる時が来たのだと思うと、光はナルティシズムとは別の快感に
身を震わした。こればかりは形容仕様の無い種類の、乱世そのものがもたらす快感で
あった。

……が、天は無情と言うべきか、今川義子が尾張で上洛を阻まれたという報が越前に
伝わったのは、越前学園が上洛の決定を光に伝えた一時間後であった。光は英雄にな
る種を、一つ失った。
18 ◆0xknNOBU :02/07/06 21:22
大分さぼってましたがようやっと続きー。
これで「越前」は一応終了。
次回は「稲葉山落城」三戦板ではほとんど出落ちな題だな(w
を予定し取ります。
予定は未定で……いや、なるたけがんばります(w

>潮時
いやー、それも考えたんですけどね。
半分以上やめる気だったんですが、
新スレ立ってるしえらく半端なところで終わったし・・・
もう少しやるかな、と思いまして。

>>13
いやはやどうも立派なものをありがとうございます。
トーナメントは余り知らないんですががんばってください。
私の方もまあ何とかがんばって続けていこうおもっとります。

んでは、また。
>18
キテターーーーーーーーー!!!!!!!!!!!
( T∀T)y━~~  
保守
半角スレが〜
23無名武将@お腹せっぷく:02/07/13 06:16
浮上
24無名武将@お腹せっぷく:02/07/17 00:41
age
25「稲葉山落城」 ◆0xknNOBU :02/07/19 02:01
木下秀美が墨俣分校を完成させてから既に数週間。稲葉山の斉藤興美も当初こそ目障
りに思いあれこれと手出しをしていたが、分校の生徒会長である秀美へいくら挑発を
掛けても反応がないため、最近では墨俣に戦意無しと見てこれを放置していた。しか
し、この一見亀のように動かない秀美たちの集団を危険視する者も美濃にはいる。
一重「だからっ、尾張学園墨俣分校の戦略意図は戦闘にありませんっ。諜略で西美濃
   校を切り崩すところにあるんですっ」
その日一重は西美濃校の生徒会室で安藤理奈との雑談していた。生徒会室の中には大
きな円卓が一つあり、二十人ほどが席を取れるようになっている。
理奈「ふーん、そんなもんなのかなあ」
理奈は余り気のなさそうな声でそれに答える。ちなみに、理奈の姉が一重の母親なの
で、理奈と一重は年の近い叔母、姪の関係に中たり、その関係で、学部は高等部と小
等部だが割合と一緒にいることが多い。
しかし今日は無駄話をするために会っているわけではなかった。最近とみに怠慢の目
立つ様になった興美に、西美濃校を代表して苦情を申し入れに行く相談をするために
会議室へ来ている。もちろん一重と理奈の他に徹美、奈緒なども会議に参加する予定
である。
ついでながら西美濃校には生徒会長という職はなく、安藤、氏家、稲葉の三家の合議
制を取っている。このほか役職はないが強い発言権を持つ家が十八家あり、所、揖
斐、衣斐、岩手、小柿、軽海、国枝、郡家、松山、八居、山岸、小弾正、相場、高
橋、竹越、林、船木、竹中、がそれに中たる。一重の竹中家もその一つで、無役なが
ら一応生徒会への発言権はあった。もっとも、今日はその立場で会議に参加するもの
ではなく、あくまで理奈の個人的な相談相手としてである。
一重「だからっ、早く興美様にびしっとしてもらって西美濃の結束を強めてもらわな
   いとっ、いつの間にか西美濃校の生徒はみんな織田寄りになっちゃいますっ」
特に理奈さんとかすぐ裏切っちゃいそうですっ、と心の中で思っても、口には出さな
い。
理奈「うーん、まあそんなことを話し合うために今日は集まってるわけだけど……。
   正直無駄なんじゃないかなぁ……」
さほど真剣味のない口調で理奈はそう言った。なにしろ興美が美濃学園の生徒会長に
就任してからというもの、事あるごとに西美濃校生徒会の三人とはいざこざを繰り返
している。興美も三人も決して互いに良い感情を持っているはずがない。そういう感
情関係の三人が意見しに行ったところで、興美は気分を害するだけで意見に聞く耳な
ど持たないだろう。
理奈「徹美はあんな性格だし、奈緒だっておとなしいとはとても言えない性格だし
   ねー、もしかしたら今度こそ大乱闘になるかも」
理奈は人事のようにそう言う。事実、以前にも一度掴み合いの喧嘩になりそうなこと
があったから、それも決してあり得ないことではない。
一重「でもでもっ、それでも言わないといけないと思うんですっ!」
一重は小さな手をぱたぱたと振り回して、一生懸命そう主張する。
理奈「でもなー……、だいたいあんたも前、しばらく興美様の事はほっとこうって
   言ってなかったっけ?どうせ聞いちゃくれないから、って」
一重「確かにそうなんですけどっ……、あのときは尾張学園の墨俣校が出来る前でし
   たし、今とは状況が違いますようっ」
理奈「まあ、そうかもね」
一重の言葉に理奈は一応納得して見せたが、やる気のなさは隠し難い。
一重(この様子だとっ、もしかしたらもう理奈さんの所に尾張学園の人が手を伸ばし
   てるのかもですね〜)
26「稲葉山落城(2)」 ◆0xknNOBU :02/07/19 02:01
そうだとすれば西美濃も長くないかもしれない。実を言えば一重の推察した通り、理
奈の所には墨俣分校の木下秀美から人が来ていた。秀美は馬鹿なので実際にそういう
指示を出しているのは主に建築現場警備からそのまま墨俣の警備に配置されたSP1
及びSP2、それから事務局長に就職した蜂須賀小麦の三人だが、そんな事情はとり
あえず関係ない。とにかく尾張学園の出張機関である墨俣分校から、簡単に言えば、
裏切らないか、という打診があったのは事実である。が、理奈としてはすぐさまそれ
に飛びつこうという気にはなれなかった。確かに理奈も興美のことは徹美や奈緒に負
けないぐらい嫌いだが、かといって以前戦った時に見た、あの異常者っぽい信子と気
が合うかと言えば、とてもそうは思えない。それに尾張学園が必ず美濃学園に勝つと
は限らない。尾張学園は理奈以外の西美濃の生徒にもいろいろと手を出しているよう
だが、これが上手く行かなかったとき理奈だけが軽々しく尾張学園に付いたりすれば
あっさり理奈だけが破滅するという羽目になってしまう。とはいえ、である。このま
ま斉藤興美に付いていても嫌われている理奈としては面白くない。
理奈(みんなが尾張学園に付くんならねー……)
理奈としては、出来れば危険なく大勢に従う道を取りたかった。それを確かめるため
にも、今日の会議は重要な指針になるだろう。

徹美「遅くなったな」
それからしばらくして稲葉徹美が生徒会室に入ってきた。遅れてきたわりにはいつも
通り堂々としていて、全く悪びれる様子もない。
理奈「ほんとに遅かったわね。何してたのよ?」
徹美「いや、美耶に練習の指示を出していたらつい熱くなってしまった。ふん、私の
   練習方針に口を挟むなんて百年早い」
ちなみに美耶は徹美が入っているソフトボール部の一年後輩で、フルネームは斉藤美
耶。美濃学園生徒会長を務める斉藤興美、先代竜子、先々代道子の本家筋に中たる家
柄だが、今は零落して一介の生徒である。ショートカットをした小柄な娘だが、活発
で果断な性格をもち、中等部の生徒などからも信頼が厚い。
理奈「あんたまた無茶な特訓やらせようとしたんじゃないの?こないだだってなんと
   か養成ギブスとか言って変なバネの塊着けさせようとしたじゃない」
徹美「世界選手権ボール養成ギブスか?着けさせてるぞ」
理奈「……美奈ちゃんも気の毒な。で、今度はどんな変態プレイを思いついたの
   よ?」
徹美「変態プレイとは何だ。コンダラを引いてウサギ飛びしとけと言っただけだ」
理奈「コンダラ?」
徹美「あれだよ、テニス部がグランドならすのに使ってるローラー」
理奈「……」
徹美「……なんだよ?」
理奈「……あれの呼び方はただの『ローラー』よ。あんたアニメの歌で間違えて憶え
   たんでしょ?重い〜コンダラ〜……あれは、思い込んだら、だっての」
徹美「……」
理奈「ついでに言うと、ウサギ飛びはトレーニングとしての効果はほとんどないそう
   よ。かえって腰壊すから良くないんだってさ」
徹美「……」
理奈「今からでも遅くないから美耶ちゃんに謝って練習変えてきなさいよ。試合の前
   に選手全員壊れちゃうわよ」
徹美「……」
理奈「ほら、早く」
徹美「……だーーー!」
徹美はいきなり叫び声を上げると、理奈の前の円卓を力一杯両手で跳ね上げた。
理奈「うわぁ!いきなりなにすんのよ!」
徹美「うるさい!部外者は口出し無用だ!」
一重「まあまあ徹美さん落ち着いて下さいっ」
一重は自分の体より大きな円卓を苦労しながら戻しつつ、徹美にそう言った。
徹美「むっ……うん」
興奮が多少収まったのか、一重の言葉を聞いて自分の大人気ない行動を多少恥、徹美
は僅かに気まずそうにしてそう言う。
理奈「ははん、怒っこらっれたー」
その徹美を調子に乗った理奈がからかう。
徹美「……貴様」
徹美はそれに反応してまた怒りをぶり返そうとする。
奈緒「あなた達やめなさいよー、一重ちゃんの前で全く大人気無いわねー」
が、その声が爆発する前に、氏家奈緒が生徒会室に入ってきた。相変わらず原形を留
めないほど改造したきわどい制服を着ている。こういう変質者一歩手前の人物に大人
気とか言われても普通なら全く説得力はないのだが、徹美達の周りの人間はこれが標
準ぐらいの変わり者っぷりなので相対的にある程度の説得力はあった。その証拠に、
徹美も確かにその通りだと思ったらしく、とりあえず怒りを押し込めて黙る。
徹美「奈緒か……ふん、まあいい」
そう言って理奈の方を一瞥してから、そこらにあった椅子を引き理奈と向かい合う位
の位置に座る。それを見て理奈も、徹美と理奈の二人が斜め前に見える位の席に座っ
た。ちなみに一重は理奈の横にちょこんと椅子を並べているが、小等部用の椅子を
使っているので円卓の上間で顔が出せず、僅かに頭のてっぺんがひょこひょこと見え
隠れしている。
理奈「奈緒も遅かったわね。奈緒がいい加減なのは今に始まった事じゃないけど、な
   んか用事でもあったの?」
奈緒「んー、それについては後で話すわー。とにかく会議を始めましょー」
理奈の質問を軽くいなし、奈緒は会議を始めるように促す。理奈は思わせぶりな奈緒
の言葉に少し疑問を持ったが追求はしなかった。
徹美「とは言ってもな、今日の議題は興美様にどう忠告するかと言うことだろう?あ
   の興美様をなんと言って諫めればいいものやら、どうせ聞く耳は持つまい
   よ……。やはり、前に一重が言っていたようにしばらく放って置くより無いん
   じゃないか」
徹美はどうしようもないと言った面持ちで深く目を瞑ってそう言う。
一重「あのっ、発言していいですかっ?」
と、円卓の端に両手を掛け、必死に顔の半分を上に出した一重が言う。
徹美「うん?いいよ。奈緒もいいよな?」
奈緒「いいわよー」
徹美が一重の発言を認め、奈緒もそれを承知する。理奈の相談役として本来会議への
参加資格がない一重は、発言には一応許可を得なければいけない。
一重「ありがとうございますっ。それでですねっ、確かにこの前一重は、今興美様に
   忠告するのは無駄だって言ったんですけどっ、あの時と今では状況が変わっ
   ちゃったと思うんですよっ」
徹美「と、言うと?」
一重「はいっ、あのですねっ、尾張学園の木下秀美が墨俣に分校を造っちゃったじゃ
   ないですかっ。それで、墨俣はもう西美濃校の学区内ですっ。防衛システムの
   完備されてる稲葉山校舎と違って西美濃は普通の学校ですっ。だからっ、墨俣
   を起点に織田信子が西美濃に攻めてきた時、興美様があの調子じゃすぐに負け
   ちゃうと思うんですよっ」
もう一つ進めて言えば、西美濃校の生徒は負けるのが嫌で信子に降参しちゃうと思う
んですっ、と言うことは、一重は思っても口には出さなかった。もう理奈には尾張学
園の手が伸びているようだし、徹美や奈緒の所にも来ていないとは限らない。そうい
うところにもってきて、公然と全体が裏切るという可能性を口にすれば、たとえ裏切
る気持ちがないとしても互いの心の疑心暗鬼が生じ、結局口に出したことが一因と
なって事態を一気に加速させることにもなりかねない。それを、一重は恐れた。
徹美「そうか……、墨俣のことがあったな。思えばあれも口惜しいことだ、我々が墨
   俣校舎建設阻止の任にあたっていれば、木下秀美なんて奴の良いようにはさせ
   なかったのに」
28 ◆0xknNOBU :02/07/19 02:04
うへへ、思い切り酔ってまーす。
なんか不都合があったらスマ。
さらに遅れてスマー!
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
ヤターーーーーーー!!!!!!!
31無名武将@お腹せっぷく:02/07/23 09:43
さびれとるのお
半角のスレも落ちてるし・・・
保守
33無名武将@お腹せっぷく:02/07/26 08:24
>31
NOBUさんがすごすぎでみんな執筆を遠慮してるから…かな?
34無名武将@お腹せっぷく:02/07/27 09:41
半角二次元は圧縮厳しいから
カナ板に絵スレ立てるべか?
保守
画像スレもここに統合じゃ駄目ですかね。
西美濃校の三人は、興美に疎まれたために墨俣でのやり取りにはいっさい関わること
が出来なかった。その結果西美濃校の学区内にまんまと校舎を造られたのだから、そ
のことも興美への不信感を強いものとしている。
理奈「まあ過ぎたことは仕方ないわ。今更西美濃校の力だけじゃ墨俣は攻めきれない
   し」
徹美「だからこそ、興美様が直接動いて墨俣のごときは粉砕してもらわねばならんの
   だ」
理奈「あの、興美様に?」
徹美「そうだ、あの、興美様に頼らねばならんのだ」
苦々しい口調で徹美は言う。藁よりも頼りない期待だろう。
奈緒「はーい、そんな皆さんにお知らせがありまーす」
と、そこで奈緒がいきなり大きな声でそう言った。奈緒はそれまで発言を控えていた
だけに、唐突にあがった声に残りの三人はちょっと驚いた。
理奈「何よ急に?」
奈緒「だからー、興美様は馬鹿でとんまで短気で無神経で下品なコギャルでしょ〜?
   あんなのを頼りにしなきゃならない私達は筏で無寄港世界一周を観光するぐら
   い無謀だと思うのよ〜」
徹美「まあ、おおむね異論はないが」
一重「ちょっと言いすぎのような気もしますけどっ……」
一重だけが多少異議を述べたが、三人とも感想としては奈緒と同感に近い。
奈緒「そこでねぇ、私こんな物を用意して来たのよ」
言って奈緒は深い谷間の胸元から、筒状に丸めらた一巻きの紙を取り出す。左右から
の圧迫を受けていたため、多少楕円に変形していた。
理奈「なんて所に入れてんのよ……」
その部分の厚みが奈緒の半分以下しかない理奈がそうぼやいた。
徹美「何だそれは?」
徹美も奈緒より小さいがそんなことは気にしない。それよりも奈緒が殊更大げさに取
り出して見せた物の方に興味がある。
奈緒「ふふ〜ん、聞いて驚きなさい。これこそ西美濃一八家の連判状よ〜!」
奈緒はそう叫び、大げさな身振りで丸まった紙をバッと勢い良く開いてみせる。
徹美「連判状?何だ、そんな物何時の間に作ったんだ?」
奈緒「やーねー、もっと驚きなさいよー。これはねー、今日会議があるって聞いたか
   ら急いで署名を集めてきたのよー」
徹美「我々に断りもなく……」
徹美は不服そうな顔をした。西美濃校が稲葉、安藤、氏家の合議制で動いている以
上、奈緒一人にそう勝手な真似をされるのは困るのである。
奈緒「まあいいじゃなーい、硬い事言いこっこなしよ」
しかし奈緒は徹美にウインク一つ返しただけでそんなことを気にかける様子もない。
徹美の表情はますます苦くなる。
理奈「で、その連判状とやらはどんな内容なの?」
奈緒「んー……要約するとねー、興美様、今みたいに馬鹿な真似ばっかりしてると西
   美の校独立しちゃうよー?ばーか、って内容」
徹美「こらこら!何でいきなりそんな内容なんだよ!」
奈緒から語られた連判状のあまりの内容に思わず徹美が叫ぶ。
奈緒「あー、だいじょうぶよー。ばーか、って所は私の意訳だから」
徹美「アホか!そんなことを言っているんじゃない!何だよいきなり独立って!」
理奈「そうよ、いきなりそんなことしたらいくら間抜けな興美様でも西美濃をつぶし
   に掛かるに決まってんだろ!」
奈緒に苦情を言い立てる徹美に理奈も雷同して食って掛かった。事が事だけに二人の
言い分ももっともである。いくら西美濃校が美濃に大きな力を持っているといって
も、稲葉山を持つ興美の勢力には敵うべくもない。それでも尚、斎藤興美に逆らい得
るとすれば……
徹美「……まさか奈緒貴様、尾張の織田信子に西美濃を売り渡そうというのではある
   まいな?」
徹美は自分の中に生まれた疑惑を素直に口に出した。と徹美の言葉に、一重の目が素
早く徹美達三人の表情を観察したが、誰もその行動には気付かない。よく動きよく見
える一重の視線は奈緒の表情にこそ何も覗い得なかったが、徹美の表情に怒りを、そ
して理奈の表情に僅かな動揺を発見した。
一重(そうですかっ……)
観測の結果を一重はとりあえず頭に留め置き、その場では何も言わない。
奈緒「やーねー、織田信子に付いたりはしないわよー。この連判状もあくまで脅し。
   お・ど・し」
徹美「……どうかな?そんなことを言いつつも、お前がその連判状を持って尾張に駆
   け込めば、尾張学園が美濃を制したとき一番の功労者はお前ということにな
   る。はん、どうしてなかなか、有効な手口だとは思わんか?」
奈緒「……なによー?私を疑ってるのー?」
辛辣な疑いの言葉を浴びせる徹美に、険悪な口調で奈緒は言い返す。
一重「奈緒さんも徹美さんも落ち着いてくださいよぅ。美濃学園全体が動揺している
   のに、西美濃校の中でまでお互いを疑い有っていては駄目ですっ」
睨み合う二人を、一重はあわててそう仲裁する。一重の言葉を聞いても、二人はまだ
睨み合ったままだったが、やがてその無駄な行為に飽き、どちらからとも無く視線を
そらした。
一重(ああっ、困りますぅ……)
どうも西美濃校の生徒会は各々我が強く、容易にまとまろうとしない。斎藤道子、竜
子という優れた統率者がいたときはそれでも良かったが、興美の様に凡庸以下の指導
者の下では、今まで然程問題にはならなかったそうした欠点が浮き彫りになってし
まっている。
一重(中心になる人がいなければ、美濃学園はこのままバラバラになっちゃいますよ
   うっ……)
が、居ない。居るのは脳容量100cc程と推定される興美だけである。なら自分
が、とは、一重は考えない。竹中家程度では格の上から言って全美濃を統率できるだ
けの権威もないし、歳も一重では幼すぎる。何より、一重は自分の資質が人心の統率
という所になく、策を以て勝敗を千里の外に決する所にあると見ていた。しかし、そ
れも上に有能な統率者を仰いでのことである。
一重(興美様に賢くなってもらうのは、無理ですっ。でも、美濃の中心になる人は賢
   くなくても務まりますっ。ただ人に公平でさえあればっ)
それだけのことで、例えば斉藤翔子などを偏寵せず公平に人の言葉を聞くだけで、人
の心というのはそれなりにまとまる。まとまりさえすれば、頭脳の部分は西美濃校の
理奈達や日根野美沙などが補ってくれるだろう。もちろん、一重もである。
奈緒「ところで一重ちゃ〜ん」
と、一重の思考を遮って奈緒が声を掛けた。
一重「はいっ!なんですかっ?」
考え事中だったので少し一重は驚き、高い声で返事をする。
奈緒「一重ちゃんは私のこと信用してくれるわよね〜。偏屈な徹美と違って〜」
一重「もちろんですっ、奈緒さんがそんな事するわけありませんからっ。それに徹美
   さんだって奈緒さんのことは信用してますよっ。さっきのはちょっと意地悪
   言ってみたかっただけだと思いますよぅ。ほらっ、気になる子はいじめたくな
   るって言うじゃないですかっ」
一重は聞いてきた奈緒の問いにそう答えた。
徹美「冗談じゃない」
一重のからかいに、徹美はあきれた顔をしてそう言った。もちろん一重も徹美が冗談
どころか大真面目に奈緒を疑っていたのは分かっているが、こうでも言ってごまかし
てしまわなければ、どこまでも場が険悪になってしまう。
奈緒「ん、まあそれはいいわー。ところで一重ちゃん、この連判状未完成なのよー、
   一重ちゃんの竹中家だけまだなの。だから、サインお願ーい」
一重「サインですかっ?」
奈緒「そう〜、ビシッとよろしくー」
一重は連判状のような物には余り気乗りがしなかった。近くには南近江学園がその類
の連判状で生徒会長六角家を諫めて成功した例があるが、あくまでそれは南近江の学
園のことで、美濃学園の礼に当てはめて考えるわけにはいかない。西美濃校全体での
連判状を興美に突きつけることは、一歩間違えば美濃を分断する事態を招きかねない
からだ。興美の性格を考えれば、むしろそうなるのが必然の結果であるように思た。
一重(とはいぇ〜……)
書かなければまたそのことが元で西美濃が分裂しないとも限らない。
一重「ええっ、いいですよっ」
一重は一瞬だけ思考を巡らせた後、努めて屈託ない声でそう言った。
奈緒「ありがとー、一重ちゃん」
一重は奈緒から連判状を受け取り、そこに自分の名前を書こうとした。しかし円卓の
上には背が足りなくて手が届かない。
理奈「持ち上げてあげるわよ」
それを見た理奈がそういって席を立ち、後ろから一重の脇に手を入れて持ち上げる。
一重「あっ、すいません理奈さんっ」
理奈「あんた軽いわねー、ちゃんと食べてんの?」
一重「食べてますようっ」
理奈「肉とか魚とかもちゃんと食べてる?」
一重「それはっ……あんまりですけどっ……」
理奈「ちゃんと食べなきゃだめよ」
一重「はー……」
理奈は一重を円卓の上におろした。丁度円卓の端に両足が開いた正座の形で座ってい
る。行儀は悪いが、こうしないと一重の背では届かないから仕方ない。
一重「それじゃあっ」
と言って、一重は自分の前に連判状を置き、大きく前のめりに体を倒した。正座の形
を取っているのでこうしないと字が書けないのである。
奈緒「あっ……くすくす。見て見て理奈ー」
と、なぜかそれを見ていた奈緒が、隣(といっても円卓なので三人で座ればみんな隣
だが)の理奈に小声で笑いながら耳打ちする。
理奈「んっ、何だよ?」
つられて理奈も小声で聞き返す。
奈緒「ほらあ、一重ちゃん正座して前屈みになんかなるから、パンツ見えちゃってる
   わよー」
忍び笑いをしながら奈緒が小声で言った。
理奈「はぁ?あんたね……」
あきれた声で理奈がそう言う。と、その言葉を聞き終えない内に奈緒の手が一重のス
カートの方へ伸びる。
理奈「あっ……」
と、止める暇もなく奈緒の手が跳ね上がり。
奈緒「こんな状況で悪戯しない方が無理なのよー!」
一重「はいっ、書けましたよ奈緒さんっ……って、ひゃあぁ!?」
二人の言葉に重なって一重のスカートが跳ね上げられる。
奈緒「やった、みーえた♪」
奈緒がうれしそうにそう声を上げる。
徹美「何をやっているのやら……」
40 ◆0xknNOBU :02/08/03 16:23
えー、時間開いた上にあんま書けてませんが・・・。
さらにちょっと旅行とか行く予定なので、
また期間開くかもです。
遅筆でスマ(;´Д`)
41無名武将@お腹せっぷく:02/08/03 20:38
(;´Д`)
いつまでもまっとりますー
43無名武将@お腹せっぷく:02/08/06 00:07
ヽ(゜皿゜)ヽ ガオー!!
44無名武将@お腹せっぷく:02/08/06 00:07
誤爆ヽ(゜皿゜)ヽ ガオー!!
 
46無名武将@お腹せっぷく:02/08/12 03:52
さびれ気味なので絵スレなど立ててみますた
http://vip.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2kana/1029091885/l50
>46
お疲れさまどす
>>46
なくなっていますた。
かな板ですらdat落ちするとは。。。
もはや打つ手無しか。。。
もう本当にダメなのか。。。
したらばで借りてみればとか言ってみるテスト
即死判定を食らった模様。
一重「ひどいです奈緒さんっ」
奈緒「やーねー、ほんの冗談よー」
書き終えて円卓から降りた一重はそう非難したが、奈緒はへらへらと笑っているばか
りだった。
徹美「あんまり一重に妙な事するなよ」
奈緒「でもー、目の前にスカートがあったら捲りたくなるのは遺伝子に刻まれた記憶
   だと思わない?」
徹美「はあ?……お前さー、女同士で下着見て何が楽しいんだよ?」
奈緒「うう〜ん……私は可愛い子なら男の子でも女の子でも好きだしー」
あきれた声の徹美に、ひどく嬉しそうな笑顔で奈緒はそういう。
徹美「……ちょっと奈緒こっちくんな、離れろ」
奈緒「やーね、可愛くない徹美は対象外よ」
徹美「うっさい、当たり前だ変態」
不機嫌な声で徹美は言い放った。
一重「あのっ、私は対象に入ってるんですかっ?」
奈緒「もちろんホームランコースよん」
理奈「まさか私は入ってないよね?」
奈緒「うーん……、内角低めぎりぎりでボールかしら?後二歳若ければねー、惜しい
   わー」
理奈「……よかった」
それを聞いて理奈はほっと息を付く。奈緒とは生徒会の関係で二人きりになったりす
ることも多いので、ある意味大変重要な問題とも言える。
奈緒「でも理奈がどうしてもって言うなら……」
理奈「滅相もない。結構でございます」
そう言われ、理奈は慌ててその好意を辞退する。
徹美「ふっ、すると一重以外は安全というわけだな」
理奈「あー、そうね。人柱が一重だけならまあ、いっか」
一重「えとっ……、私もちょっと困るんですけどっ……」
一重は困った顔をし、両手を振り回しながらそう主張する。
奈緒「だいじょぶよー、無理矢理とかは極力避けるから」
一重「極力じゃなくて絶対やめて下さいよぅ……」
奈緒「ううん、寂しいわねー」
怪しげな笑みを浮かべながら奈緒はそう言い、それから一重に遣っていた視線を変
え、本題の連判状へ目を移した。そこには先程の一七家に加えて、確かに一重の竹中
家の署名が記されている。
奈緒「OKよん。これを突きつければお馬鹿の興美様も少しは背筋が伸びるでしょ」
一重「あっ、奈緒さんそれなんですけどっ、その連判状は一重に預けて於いてもらえ
   ないでしょうかっ?」
それを見て、一重は奈緒にそう言った。
奈緒「ううん?どうしたの一重ちゃん?」
一重の提案に奈緒はちょっと不思議な顔をする。興美に談判するのは自分たち美濃の
役員三人であり、一重はサブ的な存在に過ぎない。当然連判状を持つのも自分か徹美
か理奈の誰かというのが妥当なところだ。
一重「あのあのっ、連判状を理奈さん達の内一人が持つのは他の人に無用な警戒を与
   えるんじゃないかと思うんですよっ。だからっ、一番目下の一重が持ってた方
   が無難だと思うんですっ」
理奈「ああ、それはあるかもね。さっきも徹美がなんかごちゃごちゃ言ってたし」
徹美「別に、当然の懸念を言ったまでさ」
一重の発言を受けての理奈の言葉に、ぶすっとした顔で徹美が呟いた。
奈緒「……そおねぇ」
奈緒は徹美の様子を見て、一重の言葉に一理有るとは思いながらも、せっかく自分が
奔走して集めてきた署名だけに多少の引っかかりがあるようだった。
徹美「一重で良いじゃないか。誰かさんなら姑息な手を打たないとも限らないが、一
   重ならそんな心配もないだろう」
その様子を見て徹美が皮肉気な口調で言う。
理奈「そうねえ、こんな風にぎすぎすするし、一重に預かってもらった方がいいん
   じゃない?」
理奈も徹美とは別の思惑から一重の案に賛成した。三人の内二人までが同意見では、
奈緒も強いて反対はし辛い。
奈緒「ううん、じゃあ一重ちゃんお願いね?」
一重「はいっ、それじゃお預かりしますねっ」
一重はそう言って奈緒から連判状を受け取る。このとき、一重は三人の誰とも違う思
惑をこの後の展開に持っていたが、それは誰にも知られることなく、この日は明日全
員で稲葉山に行くことだけを決めて、会議は解散となった。
一重「My grandfather's clock was to large for the shelf……」
学校からの帰り道、一重は小声でそんな歌をながらゆっくりと家路に歩いていた。
『Grandfather's Clock』は一重が特に好きな歌で、幼稚舎の頃これの翻訳である『大
きなのっぽの古時計』を聞いて以来、一重の遊びは殆ど唯一この歌を口ずさむことだ
けというほどだった。他に趣味があるとすれば、それは人間を見て、その行動を予想
することだけである。ただしこれは無為を楽しむ趣味と言うよりも、一重が常に掲げ
る人生の命題のようなものである。人の動きを読み、それを用いて戦略・戦術を工夫
する。一重はそれの面白さに取り憑かれていると言っていい。このことは趣味という
よりも、一層深刻な意味を持つだろう。
一重「So it stood ninety years on the floor……」
??「あ〜、それおじいさんの時計ですね〜!私悲しい歌を聴くと泣いちゃうんで
   す〜。……ぐしゅん涙でケーキがしょっぱいですよ〜……あぐぅ……」
と、不意に割り込んでくる声があった。
一重「えっ?」
いきなり声を掛けられ、びっくりして一重が振り返ると、そこには涙をだばだば流し
ながらケーキを一度に三つも口に詰め込もうとして、顔中をクリームだらけにしてい
る少女が立っていた。
一重「ひゃああああっ!?」
あまりに変質者っぽい少女の出現に、一重は驚いて後ずさりながらそう叫ぶ。
??「ああっ!?何で逃げるんですか〜?」
しかしその変質者っぽい少女は、一重が後ずさったのが不審らしくものすごい勢いで
一重の顔の前に自分の顔を近づけて来る。
一重「ああっ!クリームがっ!クリームがっ!」
当然からだ全体も一重に近づくから、少女のクリームまみれの手が一重の制服のあち
こちを汚していく。
??「あ〜、ごめんです」
と、少女もそれに気付き、慌てた様子で一重の体に付いたクリームを払う。もちろ
ん、クリームまみれの手で、である。
一重「ああっ〜!やめてくださいっ〜」
悲鳴に近い声を上げる一重。
??「はい?」
その声に服を払うために下を向いていた少女が顔を上げる。ゴチン!と、密着した状
態で振り上げられた頭は、見事に一重の下顎を捉えた。
一重「!!はうっ!」
一重はその衝撃でもんどり打って倒れた。幸い意識は失わなかったが、朦朧としてい
る。
??「あ、ごめんです〜」
少女が慌ててしゃがみ込んで一重の頭を抱き起こす。
一重「……ううんっ」
??「あっ、もったいない」
抱き起こしたときに付いたのだろう、少女はそう言って一重の顔に付いたクーリムを
舐め取った。と、そこまでを知覚したところで、一重の意識は闇に沈んだ。
S2「あっ、気付きましたよ小麦様」
次に目を覚ました時、一重はなにやら異常にぼろい建物の中に横たわっていた。
一重「ここはっ?」
ぼやけがちになる意識を懸命につなぎ止め一重は呟いた。答えを期待すべき人を一重
は認識していなかったから、これは一重にらしくないことだったかもしれない。
S2「ここは墨俣分校の中にある矢作園の寝室です。秀美様があなたをノックアウト
   してしまったので、連絡を受けた我々がここにお運びしたのですよ。大丈夫で
   すか?」
一重「墨俣っ!?」
その単語を聞いて漸く一重は完全に目が覚まし、慌てて半身を起こす。
S2「ああっ、急に起きちゃだめですよ」
一重「あっ……、そうですねっ」
一瞬慌てた一重だったが、すぐに冷静になりSP2の言葉に従う。なんだか訳が分か
らない内に寝かされてしまっているが、墨俣は一重にとって敵地である。制服で西美
濃工の生徒と言うことはばれているにしても、変な行動をとるのは賢明でない。
一重(私を捕まえて尾張学園にメリットがあるとは思いませんけどっ……)
一重はポケットの中に手をやって連判状が有ることを確認すると心の中で息を吐い
た。こんな物を持っているのがばれたらまずいだろう。
小麦「あっ、気がついたのね。えーと……竹中一重さんよね?私は蜂須賀小麦、墨俣
   校舎の実務管理なんかしてるの」
と、そこに先程までとは別の声が掛かった。一重がそちらの方に目を遣ると、髪が長
く、すらりとしたスタイルの良いの女性が立っている。一重の周りでは、奈緒なども
かなりスタイルはいいが、この女性はその上を行っている。
一重「あっ、こんにちはっ……」
一重は多少警戒しつつそう返事をする。僅かな言葉だが、一重はその中からいくつか
の情報を引き出している。まず尾張学園は一重の名前を知っていると言うこと、これ
は同時に一重の立場も知っていると言うことである。さらに、知った上で、例えば身
分を隠したりして一重を欺こうとする意志はないこと。それから、今のところは危害
を加える意志もなさそうである。
S2「んじゃ小麦さん来たことですし、私夕飯作ってきます」
そう言って、今まで看病してくれていたらしい女性が奥に消えた。看病してくれたの
は良いとして、彼女の服装も尾張学園SP隊の物である。
一重(そうするとっ、私を連れてきたのは切り崩しでしょうかっ?)
人を気絶させるというやり方は乱暴すぎるようで多少不審だが、そう言う意図ならな
おのこと連判状のことはあかせない。
小麦「ごめんなさいね、秀美ちゃんは悪い子じゃないんだけど、ちょっとあわてん坊
   でおっちょこちょいな所があるのよ。週に一人か二人はそんなこんなで犠牲者
   がでて……」
一重「はいっ?」
小麦「ちょっとがさつなところもあって……」
一重「あのっ、何で私ここに居るんでしょうかっ?」
小麦「うーん……よくは解らないんだけど、多分秀美ちゃんが何かトラブルを起こし
   て、あなたが巻き込まれたと思うんだけど……憶えてない?」
一重「……そう言えば変な子に襲われて、クリームまみれになって、顔を舐められた
   ような気がっ……」
一重は漸くそれを思い出した。
小麦「まあ詳しくは解らないんだけど、秀美ちゃんがなんだか慌てて電話してきたか
   ら駆けつけてみるとあなたが倒れてたのよ」
一重「はぁ、そうなんですかっ……]
返事をしつつ一重は目の前の小麦を観察した。実際に会うのはこれが初めてだが、顔
や経歴などは墨俣の戦略予測をするために情報を集めたので知っている。それから得
た知識に拠れば、小麦は割合穏和な常識人という所である。いきなりおかしな事をし
てくることは、例えば、いきなり顔を舐めたりは、しないだろう。
一重「あのっ、私の事知ってるんですよねっ?」
小麦「西美濃校の竹中一重さんでしょ?まー、成り行きとはいえ尾張学園に雇われる
   ことになっちゃったから、西美濃校のことは一通り知ってるのよ」
小麦はそう言ってちょっと困ったように笑った。小麦としては余りこんな事に関わり
たくはなかったのだが、何時の間にやら尾張学園の西美濃戦略に携わっている自分が
少し可笑しかったのだろう。
一重「あのっ、秀美さんは……」
と、そう小麦に聞こうとした時、一重の寝ている布団の足下からザザザッ、と何かが
通常の三倍のスピードではい上がって来る。その物体はそのままのスピードで一重の
顔に張り付き、一瞬にして一重の視界を奪った。
一重「うひゃぁっ!?」
半身を起こしていた一重は、その物体の重さに押し倒され、ぼふっと仰向けにさせら
れる。幸い布団の上なので痛みはないが、謎の物体に張り付かれ、視界をふさがれた
一重はパニックを起こし、仰向けのままとにかく両手足を闇雲にばたばたと暴れさせ
る。
小麦「こらこら秀美ちゃん!一重ちゃんは食べ物じゃないわよ!」
一重の耳に小麦の言葉が聞こえ、直後、ベリッという音とともに一重の視界が開け
た。開けた視界の先には、一重のお下げを口にくわえたまま、猫のように首筋を捕ま
れて持ち上げられた女の子がいる。
秀美「はわっ?でもクリームの匂いがしますー……」
一重「ああっ!さっき私を倒した変な人っ!」
それが、気絶する前に遭遇した変な少女であることに一重は気付いた。と、同時に最
近見た資料写真を思い出す。目の前にいる変な少女こそ、墨俣分校の生徒会長木下秀
美だ。
小麦「……秀美さんっ?」
おそるおそる、一重は小麦に持ち上げられてぶらぶらと揺れている秀美にそう訪ね
た。秀美は漸く一重のお下げを口から放し、何を思ったのかポケットからロリポップ
を取り出して一重に渡そうとする。
秀美「今はこれが精一杯なんですよ」
一重「ええっ?何ですかこれ?」
秀美「一重ちゃんを食べてしまったお詫びです〜」
一重には何の事やらさっぱり解らなかったが、何とか理解しようとしてみたところ、
どうやらおさげを食べかけてしまったお詫びのつもりらしい。
秀美「なんだか甘い匂いがしたので寝ぼけて食べようとしてしまったのですよ。ごめ
   んです」
一重「はぁ……」
なんだか訳が解らないまま、一重は差し出されたロリポップを受け取った
秀美「ささっ、遠慮しないで食べて下さい」
しかし、秀美は受け取っただけでは容赦しない。
一重「えっ、今ですかっ?」
秀美「おいしいですよ」
秀美はぶらぶらと左右に揺れながらそう言う。
一重「後で食べますからっ……」
秀美「えー、食べないんですか?」
秀美はまたぶらぶらと揺れながら一重に顔をグッと近づけてそう言う。一重はちょっ
と怖かった。
秀美「おいしいですよー」
一重「ううっ、それじゃちょっとだけ……」
一重は仕方なくロリポップの紙を剥いで本体を口に入れる。寝ている間もポケットに
入れていたせいだろう、熱で飴が溶けかかってべとべとしている。
一重「ううっ……」
正直あんまりおいしくない。そもそもおいしいとかおいしくないとか以前に、何でこ
んなところで飴をしゃぶらなきゃいけないのか、一重にはさっぱり訳が解らない状態
である。
秀美「おいしいですか?」
しかし秀美はそんなことに頓着せず、あくまで自分のペースでしか行動しない。
一重「あー、はいっ」
秀美「おいしいんですか?」
一重「えっ、はぁ、まぁ……」
秀美「そうですか」
よく見ると秀美は一重の口元を物欲しそうに見ている。まさかとは思うが、この溶け
た飴が欲しいんでしょうかっ?と、一重にしては珍しく自信の無い予想が頭に浮かん
だ。
重「あのっ、食べたいんですかっ?」
と、自信は無かったが、試みにそう聞いてみる。
秀美「うーん、でも一度あげたんですしー……」
どうやらやっぱり欲しいらしい。熱で溶けている上に、一度口の中に入った物などな
ぜ欲しがれるのか理解し難かったが、一重は飴が食べたいわけではないので一応聞い
てみる。
一重「……あのっ、私はいいですからっ、食べますかっ?」
そう言ってロリポップを秀美の方に向ける。と、その言葉が終わるか終わらないかの
内、秀美の口の中に飴が消える。
秀美「ふょふでひゅか?ひゃあひただきましゅね」
一重「……はあっ、どうぞっ」
その光景を、一重は珍しい動物でも見るような気持ちで眺めた。
小麦「さて、なんだか訳の解らないやり取りも終わったようね」
と、そこまで秀美の吊り下げ棒としてのみ存在していた小麦が口を開いた。同時に、
秀美をぶら下げていた手を離す。ぼふっ、という音を立てて秀美は布団の上に落下し
たが、飴は口から放さない。そして、ぴょん、と跳ね起き、飴をしゃぶりつつ一重に
言う。
秀美「ひとょひぇひゃんっへにひみぃにゅひょうひょうに……」
小麦「あー、秀美ちゃん。そこから先は私が説明するから」
それを制してから、小麦は一重に向かって言う。
小麦「ほんと言うとね、私は尾張学園も美濃学園もどうでも良いんだけど、秀美ちゃ
   んがお世話になってる関係から尾張学園に付いて、まあ、多少のお手伝いをし
   ているのよ」
一重「はあっ、そうですかっ?」
やっと本題に入ってくれるらしい。こういう話になってくれれば、一重としても対応
の仕方もある。
小麦「と、言うわけで、尾張学園の方に付いてくれれば優遇するわよ?」
秀美がロリポップを舐めている間に、小麦は一気に言うべき事を言ってしまう。秀美
に口を挟まれたら、また話が訳の解らない方向に行ってしまうからだ。
一重「あのっ、一重はまだ小学生なのでそう言う難しいことはよく解らないですっ」
しかし、一重はそう言って話をはぐらかす。実のところ一重には美濃学園を裏切るよ
うな気は更々なく、本音を言えばこの手の持ちかけにはNOと答えるしかない。が、
はっきり墨俣校舎の中ではっきりそう言ってしまえばあるいは危険があるかもしれな
いし、今は面倒な物も持っているのでこういう受け答えになった。
小麦「あー、ごまかしたい気持ちも分かるけど、一重さんの名前って尾張学園では結
   構有名になっちゃってるのよ。前に信子さんを撃退したのも一重ちゃんの作戦
   なんでしょ?今更何も解らない振りしてもだめ」
一重「そうですかっ……、でもほんとにっ、一重なんか大したことないんですよ
   うっ。美濃学園でも重要な位置にいる訳じゃありませんしっ」
小麦「美濃ではどうか知らないけど、信子さんはあなたのことをひどく買ってるわ
   よ。それだけに尾張学園が天下統一を目指すとき、あなたにも面白い仕事が任
   せられるわよ」
一重「天下、ですかっ?」
一重はちょっと唖然とした口調でそう呟いた。尾張学園は尾張だけを勢力範囲にして
いる中程度の勢力である。大きさで言えば美濃学園にすらその勢力範囲は劣る。その
程度の勢力で、織田信子は本気で天下などと言う雲をつかむような物を目指している
のだろうか。
一重(馬鹿らしいですっ……)
一重はそう思った。しかし同時に、足下がおぼつかなくなるような高揚感も持った。
美濃は小天地である。ここで育った一重は、この山塊が抱える平野と、その上に広が
る空だけを自分の世界であると思い込んでいた。だがその僅か南、美濃よりもさらに
小さな尾張には、天下という途方もなく広大な天地が廣がっているという。
一重(見たいっ)
自分が天下に出ればいったい何が出来るのだろう?美濃学園への義理とか、寝返りの
後ろめたさなどとは別に、天下を見て天下を自分を試したいという衝動が、それが一
重の本能であるように全身を疾った。
一重「うーんっ、でも一重にはそう言うことよく解らないですしっ……」
しかし、それでも一瞬の興奮が冷めてしまえば、一重には西美濃校生としての立場が
ある。美濃学園を裏切ってまでその立場を逸脱する気にはなれない。
小麦「……そう、まあ考えといてね」
一重の言葉に、小麦はそれ以上しつこく勧誘することはしなかった。無駄だと思った
のかもしれないが、おそらく完全にあきらめていないようで、何かあったら気が変
わったら連絡して、と連絡先を書いた紙を渡そうとした。しかしこれを受け取るわけ
にはいかない。既に墨俣校で小麦達と会ってしまったことは仕方ないとしてもこんな
物をもらっては、万一誰かに見られたとき一重が疑われ、結果として尾張学園に奔る
か、どこかに逃亡せねばならない羽目にもなりかねないからである。
一重「知らない人から物もらっちゃいけないって言われてますからっ」
あくまで最初の演技を貫き、そう言って一重は断った。
小麦「そう……」
小麦も強いて渡そうとはしない。
一重「あのっ……、もう帰っていいですか?」
一重はその様子を見てそう切り出してみた。ここで小麦の側からすれば、一重を監禁
するという選択も有り得るだろうが、一重の見るところ小麦はその手の陰湿な事柄を
好む人物ではなさそうに思える。
小麦「ええ、もちろんあなたを拘束したりする気は……。あっ、でも帰る前にお風呂
   入っていったら?クリームとか秀美ちゃんの唾液とかで結構べとべとになって
   るし」
そう言われて一重は自分の体を見てみると、言われたとおり、服はなんだかべとべと
してクリームの甘い匂いがしみこんでいるし、おさげはさっき秀美に食べられたせい
で唾液でこれもべとべとになっている。
一重「ううっ……、ほんとですっ。でも遠慮しますぅ……」
確かに気持ち悪いが、かといって連判状を持っているから風呂になど入っていくわけ
にはゆかない。
小麦「でも……」
しかし余りひどい格好なので、小麦はなおも勧めようとした。と、例によってロリ
ポップを舐め終わっておとなしくなくなった秀美が割り込む。
秀美「お風呂入るんですか?」
一重「入りませんっ」
一重は今までの展開から危険を感じ、間髪入れずに秀美の言葉を否定した。
秀美「じゃあ一緒に入るですよ。ささっ、脱ぐです脱ぐです」
しかしやはり甘い。秀美は人の言葉を聞く能力など持ち合わせては居ないのだ。無い
袖は振れないので、かわりに一重の服をさっさと脱がしにかかる。
一重「入らないですっ!入らないですっ!」
連判状のこともあったが、いきなり人前で服を剥がれてはたまらない。一重は必死に
なって抵抗するが、秀美は十三歳で一重は十一歳。十代での二歳差は体力に大きな違
いがあるし、もともと偏食でやせ気味の一重では秀美に抵抗するのは難しい。
秀美「やっぱりお友達は裸のおつきあいから始めるべき何ですよ〜」
一重「そんな話は聞いたことがありませんっ!それにっ、秀美さんとはさっき知り
   合ったばかりですっ、何時の間にお友達になったんですかっ!こう言うことは
   まず交換日記からっ……」
秀美「一緒にお菓子を食べれば友達ですよ〜。友達百人富士山でぱっくんぱっくんで
   すよ〜」
一重「訳が解りませーんっ!」
秀美「あ〜、それはいけません。やっぱりお友達であることを体で解らせてあげない
   と〜」
一重「やめてっ……くださいっー!」
言いつつ秀美は一重の服を剥いでいく。一重は悲痛な声を上げて抵抗するが、信子直
伝の脱がせテクニックの前には為す術がない。
小麦「やめなさい秀美ちゃん」
そこに漸く小麦の助けが入る。秀美はさっきと同じように襟首を掴まれ、一重の方へ
両手をわきわきとさせながらぶらぶらと揺れた。
秀美「はわ?小麦さん何するんですか〜?もう少しなのに〜」
小麦「もう、一重ちゃんいやがってるみたいだからやめなさい」
それならもうちょっと早く止めてもよさそうなものだが、そういうわけにはいかない
のだろう。
秀美「最初だけですよ〜、すぐに良くなります」
小麦「……どこでそんなこと憶えてきたわけ?」
秀美「信子様が何時だったか利子ちゃんに言ってたです」
小麦は呆れた顔をして首を左右に振った。
小麦「……あのっ!それじゃ私帰りますっ!」
一瞬呆然としてその様子を見ていた一重だったが、はっと気付き、慌てて自分の
服(べとべとだが)を直しそう言うと、脱兎のごとくその場から逃げ出し、そのまま
校門を飛び出して逃げるように行ってしまった。
秀美「まーた来ーてくーださーいねー」
秀美は揺れながらその背中にそう言った。一重はその言葉が聞こえていたのかどう
か、あっと言う間に姿が見えなくなる。
秀美「あー……、行っちゃいましたよ」
小麦「あのねぇ、前から思ってたんだけど、秀美ちゃん無茶しすぎよ?矢作園に居た
   頃も落ち着いた性格じゃなかったけど、信子さんの所に行ってから無茶がひど
   くなってない?」
秀美「えー……よくわかんないですけど。秀美信子様好きですよ。一緒にいると楽し
   いです」
小麦「そう言う事じゃないんだけど……、まあ良いか。秀美が幸せなら」
秀美「しあわせですよー」
秀美はそう言ってにぱっと笑う。小麦はその笑顔を見て、苦笑いを浮かべた。矢作園
にいた頃の秀美は、今と同じく落ち着きのない性格だったが、母を亡くしたばかり
だったせいもあったのだろう、妹の小鈴と楽しく遊んでいたかと思うと急に沈み込ん
だ顔になって黙り込んだり、小学校の授業中何もないのにいきなり泣き出したり、ど
ことなく不安定ではらはらするような子供だった。小麦と墨俣校で暮らしている現在
には、以前にあったそう言う行動はない。これは、多分良いことなのだろうと、小麦
は思う。
S2「小麦さーん、秀美様ー、ごはんできましたよー!あー、ついでだからSP1も
   食っていいよ」
と、丁度良くその時奥からSP2の声がした。夕飯が出来たらしい。
小麦「夕飯が出来たみたいね。一重ちゃんももう少し居れば一緒に食べれたのに」
S2「あっ、そういやあの子の分忘れてました。まっ、あの子がまだ居たとしてもS
   P1を食事抜きにすればいいだけの話ですが」
S1「貴様人に仕事押しつけたくせに何を言っている」
と、そこに警備の交代を終えたSP1が戻ってくる。墨俣校には西美濃校に備えるた
め常時百人程のSP隊が詰めている。警備に回るのは二人一組の八交代制だが、SP
2は一重の世話をするため一時SP1一人で警備をしていた。そのついでに、SP隊
規定の食事時間外だが早飯にしてしまおうということである。違反だが、秀美達と個
人的に親しいおまけみたいなものだ。
S2「さぼってたわけじゃないわよ。スペシャルな料理を作ってあげたんだから良い
   じゃないの」
S1「……そういやSP1の料理って食べたこと無いな。大丈夫なのか?」
S2「ふっ、料理なんかしたこと無いけど、まあレシピを見ながら作ったから平気で
   しょ」
S1「私はひどく不安だけど……、で、肝心の料理は?」
S2「ふっ、見なさい」
と、言ってSP2が見せたは、何というか、有り体に言うとカップ麺だった。
S1「……あのな、これは、料理か?」
SP1の顔色が良くない。いつもちょっぴり気の短いSP1が切れる前兆だった。
小麦「まあまあたまにはこう言うのもいいでしょう。ねっ?ねっ?」
慌てて小麦がSP1にフォローを入れる。SP1も小麦にそう言われては弱い。不満
ありありな表情だったが無言でSP2の用意したカップ麺の前に座るSP2といえ
ば、これはなぜか得意げな顔をしていた。
小麦「秀美ちゃんも」
秀美「はーいですよ」
秀美も呼ばれて席に着く。
S2「それじゃ食べましょう」
妙にうきうきした声でSP2がそう言い、カップ麺のふたを取る。
S1「ったく、何でカップ麺なんぞ……」
それとは対照的に、まだ不満な顔のSP1も箸を持ってふたを取った。小麦と秀美も
それにならう。
S1「んっ、なんかこれ変わった匂いだな?」
と、一瞬の不審を抱いたが、不覚にも脳に警戒信号が行く前に、SP1は麺を口の中
に運んでしまった。
S1「△L×◎F=〜H@!」
一口食べただけでSP1はあっさりと昏倒した。ついで小麦も声にならない声を上げ
てばったりと倒れる。麺を食べて平気な顔をしているのはSP2と秀美だけである。
S2「うーん、まあそれほどまずい物でもない、カップ麺って」
秀美「なんかぴりぴりしびれる味ですけど、それなりにおいしいですねー」
SP1と小麦が倒れて居る横で、何事もなかったように麺を食べ続けていた。
S1「……何をのんきに話している……。何だこれは?薬臭い上にみょーに辛い……
   全部食ったら死ぬぞ……」
小麦「……私のはなんか臭い上に苦い……」
意識を回復した二人が弱々しい声でそう言う。これに、SP2は不思議そうな顔でこ
ういった。
S2「不味かった?」
S1「……不味いというか食い物の味ではないぞ。いったいどんな作り方をしたの
   だ?」
S2「いやー、私カップ麺って作ったこと無いからさ、ネットで作り方調べたのよ。
   そしたらカップ麺っていろんな作り方あるのね。せっかくだからいろいろ試し
   てみたのよ」
S1「……どういうことだ?」
S2「SP1のはユンケルで作って、小麦さんのはお酒は二十歳になってからという
   ことでビールで作ってみたり。ちなみに私のは牛乳で、秀美様のはコーラ。も
   しかして不味かった?」
S1「……」
小麦「……」
何も言う言葉が出ず、SP1と小麦はそのまま倒れる。
秀美「えー、おいしいですよSP1さん、小麦さん」
ただ、薄れ行く意識の中で秀美の無意味な言葉だけが聞こえた。
71 ◆0xknNOBU :02/08/16 10:50
けふで休みもおわり・・・いやだなぁ。
文字数制限が変わったようでレス数がかさんでしまった・・・。
1レス辺りの分量はいつもの半分程度です。
次は夏の内にやってしまいたい話なのでいつもより量は多めですが。
ちなみにカップ麺については、
ttp://www.din.or.jp/~koi2/
を参考にさせていただきました。

>>46->>51
(;´Д`)<落ちましたか新しい絵が見れないとは残念・・・

ところで皆様にちょっとお聞きしたいんですが、
織田信子、柴田勝枝、蜂須賀小麦、村井貞子、佐久間盛美、丹羽長子
池田恒江、木下秀美、佐々成美、前田利子
達を、二人組にするとしたらどんな組み合わせが良いでしょう?
次話で組行動にしようと思っているので、
直感で選んで下さるとありがたいです。
今回は量も多くて大満足でつ。…一重たん襲われまくり。

>組み合わせ
悩んだけど、とりあえず
信&貞、恒&長、秀&成、麦&利、勝&盛
といったところで。
73初めの一歩(1):02/08/17 22:28
直美「あ、しっのちゃーんっっ!!!」
黄昏時の天神山学園中等部に黄色い声が響きわたりました。
声の主は宇喜多直美。HRが終わって校庭に姿をあらわした中山信乃にむかって、
千切れんばかりに手を振っています。
直美「あっれ〜、しのちゃんどーしたの?頭抱えて」
信乃「あのね、直美ちゃん。もうすぐ高校生なんだからもうちょっとさ…」
直美「ぶ〜。なおみ、せっかく待っててあげたのに。そんなこというと教えてあげ
   ないぞ、超絶簡単ダイエットの秘訣」
くすくす。あたりから失笑が漏れます。
ちょっと太目の信乃さん、顔が熱くなります。
信乃「わ、そんな大きな声で言わないでよ。気にしてるのに」
直美「え〜、でも」
信乃「あ〜〜〜もう!!」
信乃さん、恥ずかしさと怒りでさらに顔を熱くして、それ以上余計な事言わせな
いように直美ちゃんの手を引き、早足で歩き出しました。
直美「しのちゃん、いたいよ〜〜」
信乃「いいから!!早く私の家に行きましょう」

74初めの一歩(2):02/08/17 22:31
場面変わって中山家。
あまり広くない信乃さんの部屋で、直美ちゃんがふくれています。
直美「も〜しのちゃんってば。手が赤くなっちゃったじゃない」
信乃「ごめんなさい。だって、直美ちゃん、あんなこと大声でいうんだもの」
本当は自分を名前で呼ぶようなドキュンとは付き合いたくないんだけど。
そう思いながらも、やせてる娘の方が好きだといわれ続けて彼氏いない歴=歳の
数な信乃さんにしてみれば、ダイエットは死活問題。何としてもダイエットの秘
訣を直美ちゃんから聞き出さなければなりません。
信乃「そうだ、何か欲しいものない?」
直美「え?しのちゃんなんかくれるの?」
信乃「うん、私にプレゼントできるものならね」
直美「わーい。えっとね、えっとね〜」
何とか機嫌直ったみたいです。信乃さんはほっと胸をなでおろしました。
信乃「服がいい?ぬいぐるみとか、アクセサリーとか」
直美「うーん…それもいいけど…やっぱりしのちゃんが欲しいな〜」
信乃「へっ?」
あっけにとられる信乃さんを、直美ちゃんはくすっと微笑んでベッドに押し倒し
ました。
75初めの一歩(3):02/08/17 22:32
信乃「何すんっっ!!!!」
抗議しようとした信乃さんでしたが、言い終わる前に直美ちゃんの唇にさえぎら
れてしまいました。直美ちゃんの舌が、信乃さんの唇を押し割って侵入してきます。
信乃「〜〜〜〜〜〜〜!!!」
信乃さんはなんとか逃れようと必死で身をくねらせましたが、スレンダーな直美
ちゃんのどこにそんな力があるのか、押さえつけられた両手はびくとも動きません。
そうしているうちに顔が熱くなって、頭にもやがかかっていきます。
……
どれほど時間がたったのか、ふと直美ちゃんが耳元でささやいているのに気が付
きました。
直美「しのちゃん……大好き」
また信乃さんの顔が熱くなります。
信乃「直美、ちゃん……」
直美「そうしてトマトみたいに顔を赤くしてるしのちゃんが一番大好き。だって
すっごいかわいいんだもん」
信乃「……やだ、もう」
直美「あんまりかわいいから、見たくて、さっき意地悪したの」
信乃「意地悪?」
直美「ほら、帰る途中にダイエットの話したじゃない」
信乃「ああ、あれのこと」
直美「ごめんね。なおみのこと嫌いになった?」
信乃「…ううん」
そう答えたことに、信乃自身驚きました。
でも、不思議な事にさっきまであんなに嫌悪感があった一人称なおみにも、むしろ
愛らしさを感じるようになっていたのでした。

宇喜多直美。その唇で女を殺し、天神山学園生徒会長になった娘。
でも、その輝かしい歴史は今始まったばかり。
新職人さん?リアルタイムで読んどりました。悩殺ですか〜
俺はもうこのスレで戦国時代を学んでる状態ですw
>76さん
ただ保守するだけって言うのもなんなので、書いてみました。
◆0xknNOBUさんの本筋に絡む直前(浦上氏あぼーん)まで書いてみようと思いますです。
78無名武将@お腹せっぷく:02/08/18 22:33
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
レズっぽくてイイ!
7977 ◆92bitL/A :02/08/20 08:29
キャプつけてみる。
>78
ありがとうございます。
直美ちゃんのお話は基本的にレズにするつもりですので、これからも宜しくお願いしますね
一重が秀美に襲われた次の日、理奈達は予定通り興美に説教するため稲葉山校舎に向かっ
た。もちろん一重も同行している。ただ、昨日秀美に襲われ髪から服から体中べとべとに
汚れてしまっていたので、制服は去年まで来ていた一回り小さい物を着ている。小柄な一
重といえどもさすがに一年前の服では小さく、手足が余ってかなりおかしな格好だが、こ
の際それは仕方ない。髪の方のべとべとは、昨晩泣きながら二時間ほど洗い続けた結果何
とか落ちた。
奈緒「なーに一重ちゃんその格好?」
待ち合わせのレストランについた一重は案の定奈緒にそう言ってからかわれる。
奈緒「教育委員会に捕まって無理矢理義務教育を受けさせられる座敷童みたい」
理奈「何よ、その例え?」
一重「ちょっと制服とか汚れちゃったんですっ。替えの制服がこれしかなかったの
   でっ……」
徹美「そう言えば今日は髪も結ってないな。頭からどぶにでも突っ込んだのか?」
一重「そう言う訳じゃないんですけどっ……。顔とか髪もべとべとになっちゃってっ……」
墨俣で秀美に襲われたなどとは言えないから、一重は適当に言葉をごまかす。
奈緒「はいはーい!奈緒さん今の良く聞こえませんでした!一重ちゃーん、今のもっかい
   言って〜」
一重「はいっ?髪とか顔とかべとべとに……」
奈緒「もっ、もう一回!今度はべとべとって所を悲しげな感じで……」
徹美「死ね」
異常に興奮し出した奈緒を徹美が後ろからそう言って殴り倒した。
理奈「いやー前から水準以上の変質者だったけど、最近いっそう酷くなったわね」
徹美「まったく、どいつもこいつもなっとらん……」
などとぶつぶつ呟きながら、徹美は昏倒した奈緒の後ろ襟をつかんでずるずると引っ張っ
て引きずる。
一重「あのっ、奈緒さん気を失ったままですけどっ?」
一重は目を回す奈緒と、それを引きずる徹美へ交互に目を遣りながら心配そうに言う。
徹美「起きると馬鹿な事を言うからこのままでいい」
一重「はぁ、馬鹿なことってなんですかっ?」
不思議そうな顔で一重はそう聞く。美濃一の才幹と信子から買われる一重でも、その辺の
知識は貧しいものである。
理奈「一重はまだ知らなくていーよー」
理奈はそう言って一重の質問をはぐらかした。
一重「えーっ、知りたいですっ」
しかし好奇心旺盛な一重は更に聞く。
理奈「まあ何……、雄しべと雌しべがサブッミッションをするときとんぼと蛙が結婚した
   って奴よ」
とはいえ理奈も妙齢の乙女。奈緒の変態性欲など説明したくない。
一重「えーっ、それじゃ何のことか解りませんっ。もっとわかりやすく言って下さいっ」
もちろん一重がこの説明で納得するわけもない。理奈の腕を取り、体を揺すってさらなる
説明を求める。
理奈「あー、んー……」
理奈は言葉に困る。
徹美「一重」
一重「はいっ?」
徹美「それ以上は、聞くな」
徹美は森崎君なら百人ぐらい吹っ飛ばせそうな視線を一重に向けてそう言った。
一重「……わかりましたっ」
一重もその言葉に納得する。そんなこんなで少しごたごたはあったが、その後は一同一言
もしゃべらず(奈緒が目を覚ますまで)稲葉山校まで到着した。

徹美「西美濃校三役の稲葉徹美、安藤理奈、氏家奈緒、及び竹中一重だ。美濃学園生徒会
   長斉藤興美様にお話があって来た。開門ねがう」
奈緒が目をさまして徹美に文句を言うなどはあったものの、とにかく稲葉山校に到着した
徹美達は、稲葉山校の正門警備隊詰め所の警備員にそう言った。稲葉山校は興美の二代前
の生徒会長斉藤道子の建築した偏執的防衛校舎である。迂闊に進入すれば152丁の機関
銃と2000個の対人地雷、256個致死性トラップが待ち受ける死の要塞であった。も
ちろん学校である以上生徒もいるから、その生徒達は専用の通学路を通って校舎に行く事
は出来る。ただしそこでは八種の異なるIDチェックと網膜識別を受けねばならない。こ
のチェックに一つでも失格すれば、生徒といえどもやはり稲葉山防衛システムの洗礼を受
ける事になる。非常に物騒なシステムなので生徒には評判が悪い。
警備員「少々お待ちを」
徹美達から生徒IDカードを受けとり、警備員はいったん奥に引っ込んだ。このIDカー
ドは稲葉山校生の物とは異なり一度のチェックしか行わないが、代わりに警備主任日根野
美沙の人的なチェックを受けなければならない。これは、西美濃校以外の傘下校、他学園
の生徒も同様である。しばらくして、詰め所の奥から長身細身の少女が現れた。その少女
は細身ではあったが目が鷹のように鋭く、よく言えば些細な不審も見逃さない、悪く言え
ば疑い深げな視線を持っていた。服装は美濃学園警備隊の制服だが胸には銀のモールと、
複雑な意匠を凝らした飾りを垂らしている。徹美は知っているが、その飾りは少女が自ら
の手で作った物だ。
徹美「久しぶりだな。美沙」
徹美は少女に相話しかけた。美沙と呼ばれた少女、美濃学園警備隊隊長日根野美沙は、徹
美の言葉には関心もない様子で、じろじろと徹美以下三人の容貌を眺め、それから漸く徹
美の言葉に応えた。
美沙「そうでもないだろう。先月お前達が尾張学園の連中とごたごたを起こしたときに会
   っている」
美濃学園警備隊は、尾張学園のそれと同じように卒業生及び在校生で構成されている。美
沙は美濃学園の三年生だが、その指揮能力を買われて先代竜子の時隊長に任じられた。徹
美や理奈達西美濃校との関わりはそう深くないが、仕事の関係上一重を除く三人はそれな
りに見知っている。
美沙「今日は何の用があって来たのだ?」
徹美「ふん、警備隊の尽力もむなしく、墨俣におめおめと前線基地を作られた興美様が慌
   てては居ないかと心配でな」
美沙「それは、ご親切なことだ。だが枕を外して寝なければならないのは喉元に刃を突き
   つけられた西美濃校ではないかな。おっと、刃を突きつけられて寝られるはずもな
   いな。さしずめ、寝不足の解消に睡眠薬でももらいに来たと言うところか」
徹美「我々に尾張学園の行動を知らせてあれば睡眠不足になることもなかったよ。見立て
   も利かない、とんだ藪医者だな」
美沙「それを言うのであれば我々とて翔子を通さねば医者に見立てを聞くこともできなか
   ったのだ。ふん、しかし私なら、自分の腹の痛みぐらい自分でわかるがな」
理奈「ちょっとー!何で二人ともいきなり喧嘩腰なのよ!」
険悪な二人の会話を見かね、慌てて理奈がそこに割ってはいる。が、美沙は別になんと言
うこともない。
美沙「喧嘩などしていないさ、医者の話をしていただけだ。そうだろう?徹美」
徹美「ああ」
全く表情も変えずにそう言うと、徹美もそれに同意した。徹美にもそう言われては、理奈
も引っ込まざるをえない。
理奈「……なんか、新手の嫌がらせ?」
しかし釈然とは出来ない。
美沙「で、今日は藪医者に何の用だ?」
その理奈の言葉を無視して、美沙は徹美に言葉を戻す。
徹美「藪も度が過ぎて患者に死なれてはたまらんからな、少しは腕が良くなるよう怒鳴り
   つけに来た」
徹美の言葉を聞き、美沙はしばらくの間冷たい目で徹美の顔を観察する。それが三十秒ほ
ど続いた後、美沙はさっと目をそらして後ろ向きに詰め所の方へ歩き出す。
美沙「可児、客人達が凶器になるような物を持っていないか調べろ。持っていなければ、
   通せ」
そして詰め所の中にいる警備員の一人にそう言うと、自分はそのまま詰め所の奥に引っ込
んでしまった。
奈緒「何あれ、感じわる〜い」
完全に美沙の姿が見えなくなったのを確認してから、奈緒がそう悪口を言う。
徹美「ふん、昔はもう少し丸かったんだけどな……」
徹美も多少疲れたようにそう言葉を吐き出す。格別美沙と仲が良かったわけではないが、
それでもここまで冷たい対応をされるほど仲が悪かったわけでもない。やはり墨俣校の建
設と、それを中心とした尾張学園の切り崩し工作が美濃学園内に疑心暗鬼を生んでいる影
響だろう。
警備員「ボディチェック終わりました。中へどうぞ」
そんなことを話している間に可児と呼ばれた警備員は四人のボディチェックを終えた。
理奈「んじゃ、行きましょうか?」
少し暗くなりかけた空気を払うように、理奈が殊更元気な声でそう言った。四人もそれに
うなずき、開門された門を通って稲葉山校舎への急な坂道を上り始める。
翔子「興美→、あの連中また来てるらしいよ?」
ノックもせず生徒会長室に入るなり、翔子は興美に向かってそう言った。もちろん興美は
翔子の無礼などは咎めない。第一自分も生徒会長の机に脚を放り投げて爪の手入れをして
いるという体たらくだから、咎めたとしても説得力などはないだろう。
興美「はん?あいつらって→?」
翔子「稲葉とか氏家とか西美濃校の連中→」
興美「また→?あ→、そういや来るってのを昨日聞いたような気も……」
興美は心底うんざりしたような声で言った。いい加減西美濃校の連中が来る度の説教には
辟易していたし、大体その後には奈緒か徹美辺りと喧嘩になる。正直、うざい。
翔子「んで、どうするの→?」
興美「う→ん……面倒だし会いたくない」
翔子「でもあの連中あんたに会うまでかえんないよ?」
興美「でもめんどくさい。私逃げるから翔子適当に追い返しといてよ」
翔子「わたしが→?仕方ないな→、これ貸しだかんね」
興美「あ→、わかった」
と、自分の感情に速攻で従う判断を興美は下し、道子の時に作られた生徒会室の抜け道か
らとっとと外に遊びに行ってしまった。結果から言えばこの判断がまずかった。このとき
の対応を翔子に任せず自分がしていれば、後にああいう目には遭わずにすんだろう。

徹美「こら翔子。これはどういうことだ?」
奈緒「興美様はどこ行ったのー?」
生徒会長室に案内された徹美達は、そこに興美ではなく翔子が生徒会長室にいる事に驚き、
当然すぐ口々に不審をぶつけた。
翔子「興美はちょっと用事があっていないわよ→、話は私が代わりに聞くし→」
徹美「馬鹿たれ、貴様では話しにならん。引っ込んでろ」
翔子の言葉を徹美は一喝して退ける。
翔子「あんたね→、こっちが下手に出てっと思って調子乗ってんじゃないわよ→?」
翔子もこの言葉にはむっとして言い返す。この時点で、興美が居ないの徹美達はとっとと
帰るべきだったかもしれない。が、興美の寵を頼んで横柄な態度をとる翔子の前に、つい
短気な徹美は喧嘩腰になってしまっていた。
85 ◆0xknNOBU :02/08/22 18:11
いやはや、やっぱ夏中に終わらすとか無理!

>>72
組み合わせのお答えありがとうございまう。
まっ、使うのはしばらく後になっちゃいましたが(;´Д`)
組み合わせに関しては他の人の(居るかな(;´Д`)
も見てみたいので引き続き教えて下され。

>>77
おお、新しい人だ。
一人は寂しいので非常にうれしぃ(;´Д`)
いやはやしかしキスは基本ですな。
ハゲシイプレイよりキスの方が萌えますな。
キーーーターーーヨーーー!!!!!!!
87無名武将@お腹せっぷく:02/08/23 07:57
秀美タンが処女かどうか気になる今日この頃
88陥罠(1) ◆92bitL/A :02/08/25 15:23
中学3年生といえば高校受験を控えた大切な時。
直美ちゃんも信乃さんの家で一緒にお勉強です。
直美「あのね、なおみ、天神山学園受けるんだ〜」
信乃「本気?あんなお嬢様学校に?」
直美「ぶ〜。そんな言い方しなくてもいいじゃん」
信乃「ごめんね。でも、あそこって面接の比重が高いんだよ。直美ちゃんの場合、ちょっとネックになるんじゃ」
直美「そこを何とか」
信乃「何とかって…あ!」
息がかかるくらい近くからまっすぐ顔を見据えられ、信乃さんはうろたえます。
直美「ね、なおみのお願いっ」
ぐるぐる回る頭の中で、信乃さんはやっと答えました。
信乃「そ、そうだ、知り合いに天神山学園に入ってる人がいるの。その人に秘訣とか聞けば…」
直美「ありがと〜。しのちゃん大好きっ」
ちゅ
信乃「!!!!!!!」
今日もまた直美ちゃんに悩殺される信乃さんでした。
89「陥罠(2)」 ◆92bitL/A :02/08/25 15:26
数刻後。
信乃さんに呼ばれて、かの天神山学園の生徒がやってきました。
直美「ねー、この人が…しのちゃんの知り合いの人?」
彼女を見て開口一番直美が問います。
信乃「そうだけど、ちょっと、もうちょっと礼儀ってものが…御免なさい、島村先輩」
先輩と呼ばれた少女がビスクドールのような顔を微笑ませます。
阿美「無邪気な方なのね。はじめまして、天神山学園で生徒会副会長を勤めさせていただいている島村阿美と
申します」
直美「なおみで〜す」
信乃「ささ、こんな所で話しているのもなんだから中に入って下さい」
阿美「そうね。色々お伝えしなければならない事もありますし」
直美「きゃくまはこっちだよ〜」
直美ちゃん、人の家なのにまるで自分の家のように言います。
信乃さんは苦笑しながらお茶を入れに台所に向かいました。
90「陥罠(3)」 ◆92bitL/A :02/08/25 15:27
阿美「天神山学園といえども、聞かれることは他校とさほど変わりはありませんわ。例えば私の時には志望動機
と将来の夢について聞かれましたわね。見られるポイントも他校と同じで、内容に加えしゃべり方、姿勢、入退
室時のマナーなど。どれほど取り繕っても普段が出てしまうものですから、普段から立ち振る舞いに気をつける
ことが肝要なのですけど」
直美「ん〜?」
阿美「そのような返事ですとよい点はもらえませんわ。返事は『はい』と」
直美「ん〜〜〜?」
阿美「ですから、普段の起居動作が」
直美「はい、は〜い!」
いきなり手を挙げて質問する直美ちゃん。
直美「ききょどーさっておいしい?」
阿美さん、ビスクドールのような微笑は崩れませんでしたが、言葉が止まりました。
阿美「じゃあ、別のお話をしましょうか。天神山学園は伝統的な勤倹誠実の校訓を貫き、来るべき新しい時代
で活躍のできる人物を育てることを目指しています。ですから他の学校より校則は厳しいかもしれません。漫画
も禁止ですわよ」
直美「んー」
阿美「ですから、相当の覚悟をなさらないときついかも知れませんわ」
直美「ん〜?」
阿美「高校は天神山学園だけではありませんし、再考してみるのも一つの解決法ですわよ」
直美「で、どうやったら天神山学園に入れるの?」
阿美「……」
また会話がとまります。信乃さんは苦笑気味。
直美「ところでさ〜」
そんな二人を全く気にせず、直美ちゃんが発言します。
直美「紅茶、飲まないの?さめちゃうよ」
阿美「…そうね。一息入れましょう」
直美「わーい。あみっち、お砂糖いくつ?」
阿美「…私は砂糖は結構です」
直美「じゃあ、サービスで3つ入れてあげるー」
阿美「…愉快な方ね」
阿美さんはことさらに微笑みました。
91「陥罠(4)」 ◆92bitL/A :02/08/25 15:29
ひとまずティータイム。
つかぬ間の平穏が戻ります。
阿美さんはマイセンのティーカップを上品に持ち上げ、口をつけました。
と。ふと首を傾げます。
阿美「変わったお茶ね、中山さん。甘ったるい香りだけど、ちょっと渋くて」
信乃「いえ、ただのダージリンですけど。何処にでも売っているティーパックの」
阿美「それにしてはちょっと……」
直美「はい、は〜い」
突然阿美さんの言葉をさえぎるように、直美ちゃんが手を挙げました。
直美「あみっち、ラブポーションって知ってる?」
いきなりの事であっけにとられた阿美さん(+信乃さん)を無視して、さらに続けます。
直美「さっき、砂糖と一緒にこっそり入れたんだよ。のみおねーちゃんから貰った、すっごく強いやつ」
すると、先ほどまでけして絶やさなかった阿美さんの微笑がすっと引きました。
阿美「のみおねえちゃんって…もしかしてあなた宇喜多能美の」
直美「そ、妹の宇喜多直美ちゃんでっす。うふふ」
直美ちゃんの微笑みに阿美さんの顔が見る見る青ざめていきます。
阿美「ご、ごめんなさい、中山さん。私、そろそろ帰るま…もとい失礼させて…」
直美「しのちゃん、だめ」
信乃「え?あ、うん…」
信乃さんは無意識のうちに直美ちゃんの言葉に従い、帰り道をふさぎます。
92「陥罠(5)」 ◆92bitL/A :02/08/25 15:31
直美「帰っちゃダメだよ。なおみ、あみっちに聞きたい事たくさんあるんだから」
阿美「あ…れは仕方なかったのよ。私が悪いんじゃない。浦上さんが、村江さんがあんな破廉恥な事しなければ…
だって、村江さん、生徒会長だったし、どうしても能美さんの方に全部被ってもらわなきゃ、ほら、学園全体のこと
を考えると…」
直美「ん〜?なおみ、わかんない」
阿美「くっ……だ、だってほら…ひ、品位とか…あるし…」
直美「ふーん、よくわからないけど凄いんだね〜」
阿美「わ…わかった…わ…本当の事…たしも…村江さん…のことが…だから…はな…して…」
いつの間にか、さっきまで青ざめていた阿美さんの顔がピンク色になっています。
直美「んー、なおみが聞きたいのはそーいうことじゃなくってえ、どうやったら天神山学園には入れるのかな、って」
阿美「…それは…さっきも言ったとおり」
直美「のみおねーちゃんから聞いた事があるんだ。天神山学園の生徒会役員さんには、一人だけだけど無条件に
入学させることができるって」
阿美「…後任…指名?で…もあれ…」
後任指名制。
天神山学園の生徒会役員は、現職役員が後任を指名する事によって選出されます。普通は学内から指名しますが、
学外から選んでもOKだったりします。
直美「ダメ?」
そう言いながら、阿美さんのおっぱいをつんとつつきました。
阿美「ひゃっ!!…わ、分かっ…たわ」
直美「わーい。指きりげんまんね」
るん、という擬音を頭にのせて、直美ちゃんが満面の笑みを浮かべます。
直美「あ、そうそう。あみっち、今の顔、さっきよりずっとかわいーよ。やっぱりここは…あ、あったあった。
つーかーいーすてーかーめーらー!」
ポーチの中を探ってドラえもんのごとく撮○っきりコ○カを高々と掲げる直美ちゃん。
直美「はい、チーズ」
阿美「ひっ!!!」
直美「あみっちのかわいい写真も撮れた事だし…本番いってみようか、しのちゃん?」

…半年後。天神山学園の入学式に、晴れ晴れとした顔の直美ちゃんの姿があったことは言うまでもありません。
93 ◆92bitL/A :02/08/25 15:40
>85 ◆0xknNOBUさん
レスありがとうございます。
なかなか萌える文章かけなくてお目汚しすんますん


94 ◆92bitL/A :02/08/25 16:08
今気づいたが、もしかして「備前学園」じゃなきゃいけなかったかな?
関係ないけど、学園三国志からリンクが貼られてるのに気づいた。
あそこまでしなくていいから、テキトーにログとかイラスト集めた仮本部つくれないかなあ。
過去そういう動きもあったが…。
いい加減な作りのでいいなら、もうちょっと時間が取れたらば作ってみようと思う。
でもいつになるかわからんので他にやっていただける人がいればお願いします…
UPローダーなど
http://isweb43.infoseek.co.jp/novel/free__/
紹介サイト
http://www.angelfire.com/ri2/taudsd/

虹板の人が作ってくれたのが一応
>>97
さんくす!
9996:02/08/27 21:15
>97
あとはテキストまとめくらいか
わーい!100ゲトー!
http://www.angelfire.com/ri2/taudsd/
微妙に更新してる。恒江タン(;´Д`)ハァハァ
102通りすがり:02/09/04 00:09
時間が空けばまた何か描きますね
10396:02/09/04 11:38
Fさんのところにテキストありましたね。すいません。
保守
徹美「下手だと?ふざけたことをぬかすな、寵を頼み手前の横柄を通すだけが能の下郎
   が、我々と対等な口を利こうと言うだけでも大上段であるのに、言うに事欠いて
   下手に出ているとは片腹痛い」
翔子「なによ→、何言ってンだかよくわかんないけどすっげ→むかつく→、あんた喧嘩
   売ってんの?」
喧嘩腰でかかる徹美に、翔子も当然気分がいいはずもない。同じように喧嘩腰の口調で、
というよりも、最早喧嘩そのものの口調で言い返す。
徹美「はん?喧嘩だと。喧嘩というのはそもそも対等の者がすることだ、まさか私とお
   前が対等だとでも思っているのか?稲葉山の朽ち木にたかるブヨめ、腐物がなけ
   れば生きられぬ糞虫め、何を勘違いして人の世に迷い出たのかは知らんが、頼み
   の腐れ木はここには居ないぞ、とっとと後を慕って汚汁を舐めに行くか、それと
   も新しい汚物でも見付けてそこにたかれ。糞でも人の糞なら貴様を厭がるだろう
   が、どぶ川の田螺ならば、嫌々ながらも己の背に生えた汚泥を分けてくれるかも
   知れんぞ」
しかし徹美は翔子がの言葉を、何倍にもして返した。
理奈「ちょ、ちょっと徹美、さすがにそりゃ言い過ぎじゃない?」
あまりな徹美の言葉に、理奈はあわててそう言う。しかし、徹美の言葉を聞いた翔子は、
あまりに酷い侮辱に返す言葉も見つからない様子で、怒るよりも口を開けて唖然として
しまっている。が、それもほんの一瞬のことだった。その一瞬が去って、翔子は開けた
口を閉じ、ぎりぎりと奥歯をかみしめて徹美をにらみつける。
奈緒「あらあら、翔子ちゃん怒ってるみたいよー?あはん、ふるえちゃってる」
その様子を見て奈緒がおかしそうな声でそう言う。理奈と違って、奈緒は徹美の言葉を
行き過ぎと見なさなかったらしい。むしろいい気味だと思っている様子である。
徹美「はっ、蛆虫がピクピクと震えるのは今に始まった事じゃないさ」
既に徹美は自分の言葉に自分で興奮していた。部屋に案内されたときから機嫌が悪かっ
たが、今はその機嫌の悪さが奇妙な高揚感になって翔子を傷つけるための言葉を吐き出
させている。
一重「徹美さん流石に……」
一重も徹美の言葉を言いすぎだと思いそれを止めようとしたが、今の状態の徹美にはそ
の言葉すら聞こえていない。更に言えば、翔子もここまで言われて大人しくしているよ
うな人間ではなかった。
翔子「あんたね……」
いつものふざけた口調で言う余裕もなくして、翔子は徹美をにらみつけていった。しか
し次の言葉はでない。あれ程のことを言われた以上、翔子はそれ以上に侮辱的な言葉を
投げつけ返す必要があったが、残念ながら徹美の言葉以上に口汚い罵り文句となるとそ
うそうない。
徹美「どうした蛆虫。いや、翔があるから既に蠅かな?まあどちらでもいい。己の立場
   が解ったのならばとっと失せろ!そして二度とここに現れるな!」
これで終いとばかりに徹美は言い返せない翔子を怒鳴りつける。
翔子「あんたね!死ね!」
徹美「貴様!」
が、翔子は大人しく失せたりはしなかった。言葉を返せない代わりに、いきなり徹美に
掴みかかってきた。しかし一瞬不意を突かれはしたが運動神経は徹美の方が上だ。身長
や体重は二人とも同じ様なものだが、徹美は巧みに翔子の力をそらし、その力をそのま
ま翔子を投げ飛ばすことに使う。
翔子「あっ!」
理奈「うわぁ!」
投げ飛ばされた翔子は、一直線に理奈に向かって飛びそのままぶつかり、理奈も巻き込
んで派手に部屋の中を、反対側の壁まで転がる。
理奈「いてて……もう、無茶しないでよ」
翔子と一緒に壁に叩き付けられた理奈は、こういうとばっちりには馴れているのか、案
外平気な様子ですぐに起きあがる。しかし翔子の方はそうもいかない。壁にぶつかった
衝撃で目を回し、仰向けに倒れたまま立ち上がることが出来ない。
翔子「くそ……」
一重「大丈夫ですかっ?」
一重が翔子を心配して側による。
徹美「ほっとけよ、そんな奴」
徹美はそう言うが、さすがにこのままにしておく訳にもいかないだろう。
一重「翔子さん……」
と、翔子の顔をのぞき込んだ時、一重は不意に腕を引かれる。
一重「うわわっ!」
もともと小柄で痩せ気味な一重の体はその力に耐えられず、勢いを付けて今まで翔子が
へばっていた床に叩き付けられる。
一重「きゃ……!」
不意のことに思い切り顔から床と激突し一重は悲鳴を上げた。ただし悲鳴の後半は、強
く胸でも打ったものか発することが出来ない。
奈緒「ああ!一重ちゃん大丈夫!?」
翔子「近づくな!」
奈緒が慌てて一重に近寄ろうとするが、一重の腕を引っ張りその反動で起きあがった翔
子の鋭い声がそれを制した。
一重「かぅっ……」
手には一重のおさげが握られている。その下には当然半分宙に浮いたような格好で一重
がぶら下がっていた。胸を打った影響がまだ残っているのだろう。顔は苦痛を訴えてい
たが、痛みを訴える声は出ず、非力な手で掴まれたおさげに手を伸ばし庇うのが精一杯
だった。
徹美「何のまねだ翔子?」
徹美が努めて冷静な声で翔子に言う。まさか一重を人質に取ったところで殺すわけにも
行かないだろうが、興奮した馬鹿だけに何をしでかすか解らない。今すぐ強硬手段で奪
還しようとすれば、一重が怪我をするかもしれない。
翔子「舐めたまねしてくれて……」
と、翔子はポケットを探り金属質の小さな何かを取り出す。
奈緒「ああっ!使うと忍者に転職できるナイフ!」
徹美「ちっ……」
カチャリと蝶のナイフ(Nin・Thi・Bis)が広げられる音を聞きながら、徹美はさっさ
と翔子を叩きのめしておけば良かったと後悔した。蝶のナイフは小振りなナイフだが、
一重を傷つけるには十分だし、悪くすれば死ぬこともあるだろう。
徹美(こいつが刃物を出す前に片づけるべきだった)
しかし翔子が刃物を持ち歩くような危険人物だとは予想できなかったし、さっきの段階
ではあの判断も仕方ないだろう。こうなってはせめて、翔子が本当に殺人罪を犯すよう
な馬鹿でないことを祈るばかりだが、既に一度予想を外している。翔子は馬鹿ではない
だろうか?
徹美「どうかな、自信ないな」
理奈「何の自信がないのよ!何とかしてよー!」
理奈が徹美にそう叫ぶ。が、徹美は応えない。
翔子「あんたらよくもこけにしてくれたわね」
翔子はそう言って徹美をにらんだ。一重のおさげを握りしめる手はなお強い。
徹美「まあ落ち着けよ翔子」
翔子「さんざん煽っといて今さら何言ってんのよ!」
徹美「ま、なんだ。言葉の勢いって奴だ。気にすんなよ」
翔子「気にしますー、気にするー、だから許せねー」
言うと翔子は手に持った蝶のナイフを徹美達の方に向けてぶんぶんと振り回した。距離
があるので刃は届かないが、その目はちょっと正気じゃなかった。
理奈「わ、わかった。許せないのはわかったけど、煽ったのは徹美なんだから一重放し
   てくれないかなぁ?」
翔子「だめ、連帯責任」
理奈「代わりに徹美のことは好きにしていいから」
徹美「こら」
理奈の提案に、徹美は苦情を入れる。
翔子「じゃあその女が腹切って傷口から(検閲)を食べたら放してあげる」
理奈「……猟奇だよこの女〜、ぜったい頭おかしい〜」
徹美「……うーん」
聞くに耐えないグロイ妄想を聞かされて、さすがの徹美も嫌な気分になった。理奈も本
当に徹美を翔子に渡す気はなく、その隙に打開策でもないかと考えていたのだが、これ
では全く話にならない。
翔子「まあ、おしゃべりはここまでにしときましょう。全員後ろを向いて壁に手をつけ。
   言うこと聞かないとこの子殺しちゃうかも」
交渉をうち切って翔子がそう言った。蝶のナイフは苦悶する一重の頬に圧し当てられて
いる。嫌な妄想を聞かされた後だけに徹美達は従いたくなかったが、目が完全に逝って
る翔子のことだから、言うことを聞かなければ本気で一重を殺すかもしれない。
徹美「しゃあない」
理奈「うえ〜ん、やっぱりわたしも〜?」
むずがる理奈を促して、徹美と理奈の二人は壁に手を突く。
翔子「よーしそのままでいろよ……ん?あの変態みたいな格好をした女はどうした?」
と、翔子が言った瞬間、不意に一重を持ち上げていた手が真上に跳ね上がる。
翔子「なに!?」
慌ててそちらを見る。すると今まで一重をつり上げていたはずの手には、黒髪のおさげ
が二つ握られていた。
一重「一重のおさげは着脱式なんですっ!」
翔子の戒めから逃げ出し、慌てて徹美達の方に逃げていく一重からそう翔子に言葉が投
げつけられた。もちろん着脱式なんて事はない。一重は翔子の注意が徹美達の方へ行っ
た隙に、自分に当てられた蝶のナイフを使っておさげを切断したのである。
翔子「この!逃げるな!」
一重に逃げられては徹美達に脅しが利かない。翔子はおさげを捨てて慌てて逃げる一重
を追いかけた。
徹美「そうはいくか!」
もちろんそれを許すほど徹美は甘くない。すぐに壁から反転して翔子の方に向かい、素
早い前蹴りで翔子の持つ蝶のナイフを跳ね飛ばす。
翔子「あっ!?」
武器を失って慌てる翔子に、徹美は更にもう一発、今度は下顎に向けて蹴りを放った。
翔子「たわばら!」
もんどり打って翔子が倒れる。すかさずその隙を突き、徹美は素早く蝶のナイフを拾っ
た。
徹美「案外なことをしてくれたな翔子!」
形勢は完全に逆転して、今度は徹美が倒れた翔子に馬乗りになり、その首筋に蝶のナイ
フを突きつける。翔子は気を失っては居なかったが、恐怖で動くことが出来ない。
徹美「殺すといったな?死ぬと言うことがどういうことか試してみるか!」
半ば以上本気で徹美が翔子に言う。
翔子「殺さないで!」
翔子は悲鳴を上げた。
徹美「ふざけるな。殺すと言うからには自分も死ぬ覚悟が居るものだ。例えお前にその
   覚悟がなかったとしても、殺すと言われた時点で私の方もお前を殺す覚悟は出来
   た。グッバイ翔子、今度生まれ変わったら麻雀でもしよう」
言うと徹美は蝶のナイフを振り上げる。
翔子「いやだいやだ!」
翔子は暴れるが、徹美の方が力は強く敵わない。
奈緒「ちょっとー!美沙達つれてきたわよ〜!……あれ?」
と、しかしそこに、姿を消していた奈緒が生徒会長室に飛び込んでくる。その後ろには、
警備隊員を連れた美沙の姿があった。
翔子「あっ!あんた達助けて!暴漢よ!」
天の助けとばかりに翔子が声を張り上げる。翔子に馬乗りになって蝶のナイフを振り上
げている徹美。途中の展開を飛ばし客観的に見れば、十分徹美は暴漢だった。
徹美「ちっ……」
翔子の安否を気遣って遠巻きに構える警備隊を前に、徹美はゆっくりと立ち上がる。
徹美「ちょっとした座興だよ」
そしてそう言うと、手に持った蝶のナイフをたたみ、厳しい顔をして立つ美沙の方に放
り投げる。ナイフは空中で三回ほど回り、受け取るべく動いた美沙の手の中に綺麗に収
まった。
美沙「……言いたいことはそれだけか」
厳しい顔を崩さずに美沙は徹美に言った。それから徹美の言葉を待たずに警備員達の方
を見、その後翔子の方を向き顎を少しあげる。警備員達はその行動で意味を理解し、翔
子を助け起こした。
徹美「それだけだ。ほんの、座興さ」
徹美はそう言って美沙の問いに答える。
翔子「嘘よ!あの女私を殺そうとした!」
警備員に助け起こされた翔子は、徹美にそう怒鳴りつける。警備員達も、ナイフを渡し
たといってもまだ徹美に対する警戒を解いていない。
徹美「私も殺されかけたがね。こんな事は金輪際ごめん被りたいものだ」
徹美は翔子の方を見もせず、美沙の方だけを見てそう言った。美沙はしばらくじっと徹
美の目を見ていたが、やがて口を開き言う。
美沙「翔子様は疲れて、どうも錯乱なさっているようだ。医務室にお連れしろ」
警備「あ、はい」
美沙の一言に、対応に困っていた警備員達もほっと息を吐いた。決断が出てしまえば後
は従うだけである。
翔子「ちょっと!私の話を……」
嫌がる翔子を引きずり、生徒会室を出ていく。徹美は美沙が味方してくれたことにほっ
と息を吐いた。警備主任の美沙が徹美達に悪意を持てば、不利を受けて美濃学園を追放
され無いとも限らない。
徹美「助かったよ」
徹美は美沙に礼を言った。
美沙「それから、客人達は稲葉山校内で争乱を起こした疑いがある。彼女らも校舎の外
   に連れ出せ」
が、美沙は完全に味方してくれたわけでもなかった。残った警備員達にそう指示を出す
と、自分はさっさと後ろを向き、今来た道を戻る。
徹美「……やれやれ、どうもだな」
徹美は呟いた。さほど驚いた様子はない。美沙とはそれなりに長いつきあいなので、大
体こうなることも予想していたようではある。
警備「徹美様……」
その呟きが終わると同時に警備員が徹美に近寄る。翔子の時と多少対応が違うのは、徹
美が西美濃校の役員で、激しい気性を知られているためだろう。
徹美「ん?ああ、逆らったりはしないよ。大人しく、出ていくさ」
少し困って見える警備員に、徹美はそう言ってにっこりと笑いかけてやった。

理奈「恐かった〜」
稲葉山校舎から出て(追い出されて)から、理奈はほっとして大きく息を吐きそう言っ
た。ナイフを突きつけたり突きつけられたりしたのが、よっぽど堪えたらしい。
徹美「翔子もただの馬鹿だと思っていたが、なかなかどうして、ホームラン級の馬鹿だ
   ったな」
理奈ほど堪えては居ない様子の徹美がそう言う。
奈緒「そんなこと言って〜、ものすごい煽ったのは徹美ちゃんの方じゃな〜い。少しは
   反省しなさいよ〜」
徹美「そんなこと言って奈緒も止めなかったじゃないか……。ん?そういやお前私達が
   翔子に脅されてるとき居なかったな」
奈緒「あ〜、こそっと抜け出して美沙ちゃん達呼んできたのよ〜、翔子徹美の方ばっか
   見てたからね〜、その隙にちょろっと」
理奈「一人で逃げるなんてずるいぞー」
理奈が奈緒の逃亡行為を非難した。以前織田信子との戦闘で二人を見捨てて逃げようと
したことは棚に上げている。
奈緒「美沙ちゃんを呼んでくれば翔子も大人しくなると思ったのよ〜」
徹美「ふん、結果的には余計だったがな。美沙がこなければ翔子を消せたのに」
理奈「うへ、徹美恐いよ。マジで翔子を殺す気だったの?」
徹美「まさか、ね。一重を傷つけていたらわからなかったが……」
奈緒「そうだ!私達のことより一重ちゃんよ〜!大丈夫〜?」
奈緒の言葉で、漸く三人は今度のことで一番ショックを受けただろう一重のことに思い
至った。
一重「はぁ……」
奈緒から声を掛けられても一重はぼんやりとした声で返事を返しただけだった。うつむ
き気味なその頭には、昨日までのように愛らしいおさげは無く、後ろ髪を乱雑にしたお
かっぱ頭になっている。思わず、三人は顔を見合わせた。
奈緒「一重ちゃんかわいそう……」
奈緒はそう言って、一重の頭を胸で包み込むようにして抱きしめた。
理奈「うん……まあ酷い目にあったけど野良犬に噛まれたと思ってさ」
徹美「いやまあ、それじゃ納得できないだろうが……髪はまた伸びるわけだし……」
理奈と徹美も口々に一重を慰める。
一重「うんっ……」
しかし一重はしどけない表情でうつむいたままで、三人の言葉も余り耳に届いている様
子がない。
理奈「だからさ、翔子が悪いわけだし、いや徹美も3割ぐらいは悪いかな?まあそれに
   したって翔子が大体は悪いわけだから、馬鹿には責任能力がないって言うか……」
理奈達は一重を慰める言葉を続けるが、一重は別のことを考えていた。自分の不幸のこ
とではない。髪を切られたのは、まあそれなりに悔しいが、徹美の言うようにいずれ伸
びるだろう。それよりも一重は斉藤翔子程度の人間に左右されなければならない自分の
立場に嫌気がさしていた。それにつけても思うのは、美濃の天地の狭さであった。天下
というものが渺々と広がっているのに対して、自分の力は美濃学園から一歩も出ること
のない斉藤家のためにのみ使われる。
それはいい。美濃学園の生徒になったときからそのつもりだったし、その立場から踏み
出してまで自分を試したいとは思わなかった。またそれは充分に一重を昂揚させるに足
る目標のはずだった。しかし墨俣で聞いた言葉は一重の心に小さな針のように何時まで
も刺さったまま抜けなかった。天下というものが僅か南に開いている。美濃の体たらく
を知った今ではそれが酷くまぶしい光景のように思えてならない。そこへ足を踏み入れ
ることは出来なくても、美濃に止まることを考えればなおさら憂鬱で仕方がない。
一重「興美様はっ……」
そこまで考えた時、一重は自分でも思いもよらないことを口にしようとしていた。
一重「興美様があんなにだらしないのは稲葉山校舎があるからですっ、この校舎の防御
   力が中にいる人の緊張感を殺してっ、絶対に自分は安全で眠っていてもいいんだ
   って気にさせるんですっ」
徹美「どうしたんだ一重?いきなり」
突然稲葉山のことを語り出す一重を、それまで一重を慰めていた徹美は訝しがる。
一重「稲葉山があるから西美濃も軽視するしっ、誰かが何か注意しても聞く耳を持たな
   いしっ、つい自分に都合のいい翔子さんのような人と仲良くなっちゃうんですっ。
   稲葉山がなければっ、自分の身が危ないから興美様ももう少ししっかりするはず
   ですっ。稲葉山校舎がいけませんっ」
理奈「どうしたんだよ一重?まあね、そりゃそうかもしれないけどさ、稲葉山は実際あ
   るわけだし、実際落ちないし」
理奈もいつになく熱っぽい一重の言葉を怪しんでそう言う。しかし、一重はかまわずに
続ける。
一重「稲葉山の防御力なんて嘘ですっ」
奈緒「嘘〜?」
一重の頭を抱きしめたまま、奈緒が一重の頭の上から言う。
一重「嘘ですっ。理奈さんっ、徹美さんっ、奈緒さんっ」
一重は頭の上に奈緒の顔を載せたまま顔を上げ、残りの二人の方を見上げ、決然と言っ
た。
一重「稲葉山校舎を落としますっ」
116 ◆0xknNOBU :02/09/09 18:57
漸く本題まで進みました。
夏の間に、なんて一体誰が言ったのやら・・・
徹美たんキタ────!!!
118無名武将@お腹せっぷく:02/09/09 23:21
バンビちゃんハァハァ…
>>88
何気にタイミング逃してレスし辛かったんで、今更で悪いですが大好きです。
がんがってください。特に信乃たん。w

>>102
期待してマターリと待ってます。ハァハァと。

>>116
一重たんのっおさげがっ。ああ、でも、それはそれで…いや、どうだろう。
美沙たんの画像きぼんぬとか言ってみたり。
保守委

信子様が歌ってる曲、cali≠gariのギャラクシー!?
cali≠gariってまだメジャーデビューしてないよねっ?
123_F:02/09/17 21:22
>>122
描いた後でDearLovingのBeauty&Beastにすればよかったかな、とか。
ちなみに第7実験室でメジャーという事は限り無くスレ違いっぽい。

…もう更新してしまいましたが。今回は貞子。
http://www.angelfire.com/ri2/taudsd/
>>123
お疲れさまです。
保守保守・・・。
移転だったのか、焦った…。
俺もびっくらこいた
128無名武将@お腹せっぷく:02/09/30 06:10
保守
保守
130 ◆0xknNOBU :02/10/04 00:22
いやはやすいません、随分さぼってしまいました・・・
あまり書けてないんですが、
日曜にはある程度あげるようになんとか(;´Д`)
がんばってくだちぃ
132無名武将@お腹せっぷく:02/10/06 11:30
がんばってくだちぃ。
133無名武将@お腹せっぷく:02/10/06 21:28
保守
134無名武将@お腹せっぷく:02/10/06 21:36
三河学園の面々の再登場希望
まだ改名もしてないし
一重「稲葉山校舎に続く道は三つ有りますっ」
稲葉山校舎の見取り図を円卓の上に広げ、それを前にして一重はそう言った。
一重「表門から内門に続く大手道と百曲門から同じく内門に伸びる百曲道、それから
   生徒会室のある校舎の前に続いている馬の背道ですっ。この道は一般生徒の使用
   は許可されていませんっ」
奈緒「そう言えば使ったことないわね〜、何で使っちゃいけないんだっけ〜?」
そこで奈緒が口を挟んだ。
徹美「あそこは暗くてちょっと危なそうなところも多いからな、教員の他は生徒会長し
   か使えないんだよ」
奈緒の問いに、一重ではなく徹美が答えた。
徹美「もっとも不便な道だから、使っていいということになっても誰も使わんと思う
    が……。一重、ここから校舎に侵入する気か?」
徹美がそう言って一重の顔をのぞき込んだ。

稲葉山校舎を落とす。その一重の言葉に、徹美達は初め驚き足を止めた。次にはそれを
単なる冗談だと思って笑い声をあげる。しかし一重だけはその笑い声に合せず、一人ま
じめな顔で稲葉山を見つめ、その真剣な表情を見ては、三人もこれが洒落や冗談ではな
く、大真面目な言葉であることを知らずにはおれなかった。すると、一転して笑いは消
え、凪の様な沈黙が訪れた。ただし、海に油をひく様な陰鬱な静寂ではなく、熱気が大
気に充溢し、大風の起こる気配を秘めた静けさである。大風は凪に留まる船を奔らせも
し、また却って船そのものを破壊し尽くしてしまうこともある。三人の沈黙は、そうい
う危うい熱気を内包した沈黙であった。ただし、とまた思う。一重は本気で稲葉山を落
とすなどと言うことが出来ると考えているのだろうか?
奈緒「そんなこと出来るの〜?」
その疑問を、奈緒が三人を代表するような形で口に出した。
一重「出来ますっ」
それに対して、一重はきっぱりとそう言いきる。再び奈緒も沈黙して、また沈黙が訪れ
た。そのまま数秒が経つ。それから、徹美がここに突っ立って居ても仕方ないと思った
のか、ゆるゆると止めていた足を動かした。奈緒、理奈、一重の三人も、つられて無言
のままそれに続く。そのまま、二町ほども歩いたところで、徹美は不意に立ち止まって
後ろにいる三人の顔を見た。奈緒と理奈は何か複雑な表情をしていた。一重はさっきの
今で酷い格好だが、既に意を決した表情をしている。
徹美「やるか?」
徹美は軽い口調でそう言った。一重の表情は変わらなかったが、奈緒と理奈はなぜかそ
の言葉にほっとしたような表情をする。二人とも内心では一重の言うことを実行してみ
たかったに違いなく、ただ他の二人がどうか解らないので、自分以外の者に決定的な一
言を言ってもらいたかったのだろう。いざというときそれで責任が逃れられるとは思わ
ないが、そうしたくなるほどの冒険には違いない。
徹美「やるか?」
もう一度徹美は言った。

一重「いえっ、違いますっ」
回想終わり。円卓の会議室では、一重が徹美の言葉を否定した。
徹美「ふむ、そうするとどこから?ここ以外に秘密の通路でもあるのか」
徹美は更にそう質問を続け、他の二人も一重に顔を向けた。この時、まだ徹美達は一重
の計画を聞いては居なかった。当然実行に移すかどうかも決断していないから、今から
聞く作戦によってその可否を決することになる。危険も多いことだけに、普段いい加減
な奈緒さえも真剣にならざるを得ない。
奈緒「はいは〜い、奈緒さん一重ちゃんの秘密の通路に進入した……」
徹美「死ね」
と、徹美がアームホイップなめらかなに奈緒を沈黙させる。
理奈「で、そんなもんがあるの?」
いちいち奈緒の死去につきあっても居られないので無視し、理奈は徹美と同じ質問を一
重に繰り返した。
一重「さあ?有るかもしれませんねっ」
徹美「さあって……それじゃあ……」
奈緒の死骸を部屋の隅に寄せ終えた徹美が、一重の無責任な言葉に少し色めき立つ。が、
一重はそれを制して言った。
一重「そんな通路なんか有ってもなくてもいいんですっ、私達は、この通路から入って
   興美様を捕まえるんですっ」
と言いつつ、一重開かれた地図を指した。
理奈「そこは……大手道じゃない」
不理解の表情をして理奈は呟く。正門から続く大手道こそ、最も警備厳重かつ防衛兵器
充満する地域である。
徹美「冗談じゃない。そんな所から入れるはず無いだろ」
徹美もそう言って一重の言葉に大いに不満を表す。しかし、一重は言う。
一重「入れますよぅ、今日だって大手道から入ったじゃないですかっ」
徹美「それは、私達が非武装で四人だけだったからだろ。難攻不落の稲葉山校舎を占領
   する気なら最低でも二千人は要る。西美濃校を総ざらいしても動員できるのはせ
   いぜい千人が限界だ。それに……今さら無茶苦茶取って付けたような理由だけど、
   一応学校だから殺人兵器満載の要塞に生徒を突っ込ませるわけには……」
一重「ほんとに取って付けたような理由ですねっ。まあそれはいいんですけどっ。そう
   ですね……今徹美さんは、私達が非武装で少人数だから稲葉山校舎に入れたって
   言いましたよねっ?」
徹美「うん?言ったよ」
一重「じゃあっ、例えば織田信子とかが非武装で稲葉山校舎に入ろうとしたら入れるで
   しょうかっ?」
徹美「そりゃ、入る前に美沙辺りに捕まるだろ」
一重「何で私達は徹美さんに捕まらなかったんでしょうっ?」
徹美「最近仲が良くないとはいえ、西美濃校は美濃学園の分校だからだ。つまり、味方
   だからさ」
一重「そうですっ、つまり私達は稲葉山校舎に入るだけなら簡単に……」
理奈「ちょっと待った」
と、言いかけた一重を理奈が止める。
理奈「つまり稲葉山校舎の中に入って、内部から制圧しようって事?」
一重「そうですっ」
理奈「でもさ、そりゃ確かに中に入るだけなら入れるけど。いくら何でも四人じゃ校舎
   の制圧も維持も出来ないって。かといって人数をそろえたら流石に怪しまれて入
   れてくれないだろ。その作戦はちょっと無理が……」
一重「稲葉山校舎は難攻不落ですっ」
しかし、理奈の言葉を遮って一重は言う。
一重「少なくとも美濃学園の生徒は殆どの人がそう思っていますっ。ですから制圧さえ
   してしまえば外部からの攻撃は防げますっ。少人数でも維持は可能ですっ」
理奈「でも、その前に制圧しないと。少ないときでも稲葉山校舎の中には百人位は警備
   隊が居るよ、それを排除するにはやっぱり最低百人ぐらいは」
一重「そこは少し賭になるんですけど……梓野使おうと思ってますっ」
奈緒「梓野ちゃんって言うと、一重ちゃんの妹の美幼女〜!」
徹美「もう少し寝てろって、いいから」
と、突然蘇生した奈緒を徹美が地獄突きで瞬殺したのを確認してから、一重は何事もな
かったように話を再開する。
一重「知っての通り梓野は人質っぽく稲葉山校に通ってますっ」
理奈「そう言えば一重も昔は稲葉山校に通ってたわよね。梓野ちゃんが小学生になって
   から、交代して西美濃校に編入してきたけど。今幾つだっけ?」
139 ◆0xknNOBU :02/10/07 00:06
父さん僕は、書こうと思いつつ書かずに日を過ごしてしまうわけで・・・
いや、本気で進んでなく申し訳ない(;´Д`)
更に矛盾の塊なこのお話ですが、
「稲葉山落城」では自分で張った伏線をすっかり忘れてしまうと言う、
ゆでたまごばりのミスまでやらかしてしまう始末。
実は>>119氏のレスを見て気付いたんですが、
もし気づいてもそっと胸に秘めて置いて下され(;´Д`)

三河の方は一向一揆の話を書こうかと思い、
すっかり忘れてしまって以来機会もないままですが、
次の次か次の次の次辺りで遠州併合を書こうかと。

Fさんの描く絵はいつもかわええですね。
へのへのもへじしか描けない私には全く未知の世界です(;´Д`)

それはまた近い内に・・・書けるといいなぁ(;´Д`)
キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
がんがってくださいね
141無名武将@お腹せっぷく:02/10/11 21:52
奈緒タン萌え萌え〜。
142無名武将@お腹せっぷく:02/10/14 09:06
保守
ホシュ
美濃衆で斉藤利三とか出してくんないかな
明智とのからみもあるし
こんなスレがあったとは知らんかった。
すげー面白いじゃん。イイね。
西美濃3人衆と一重のからみがツボにはまったw

欲をいえば下敷きとなってる小説が丸分かりなので
もう一捻りすると更に良くなるかも、と思うけど
今のままでも面白いから別にいいや。

あと前スレ646さん。
激しい気性の弥絵の活躍を見たい津軽衆がここにも一人おりますw
続きをおながいします。
保守
一重「八つですっ。それでですねっ、稲葉山校舎では今日も受けたように厳しいチェッ
   クを受けるわけですけど、校舎が火事になったときの消防車と、救急車だけはそ
   う言う煩雑な手順がありませんっ。それを利用して梓野に仮病を使ってもらえば、
   梓野は大事な人質ですからまさか見捨てたりしないで救急車ぐらい呼んでくれる
   ですっ。その救急車に潜伏すれば簡単に進入が可能ですっ」
徹美「なるほど、しかし問題が有るぞ」
と、徹美が口を挟んだ。流石にそう事が上手く行くとは思えないらしい。
一重「何ですかっ?」
徹美「一つは稲葉山校の奴が梓野の仮病を信じるかと言うこと。また信じたとしてもよ
   ほどでなければ救急車なんか呼ばないだろう」
一重「それについては心配有りませんっ。梓野には本当に病気になってもらいますか
   らっ」
徹美「どういうことだ?」
一重「毒を飲んでもらいますっ。これなら本当に苦しむわけですから、疑われることは
   ないと思いますっ」
徹美「……そりゃいくら何でも酷い」
一重「それほど酷い物を飲ませる訳じゃないですよぅ。美濃学園の為なら梓野も喜んで
   やってますよっ」
思いっきり笑顔で一重はそう断言する。何となく姉妹の関係が察せられるようでもあり、
徹美はちょっと恐くなったが、ここのところは話を進めるため敢えて置いておく。
徹美「むぅ……ま、まあいいや。まだ疑問がある。救急車に潜伏するにしても、そう大
   人数は乗せられないだろ。かといって救急車が何台も来るのはおかしいし、それ
   を考えればやはり人数不足は否めない」
一重「えーっとぉ、ここを見て下さいっ」
徹美のさらなる問いに、一重は稲葉山校舎の地図を指してこたえる。
一重「ここですっ、七間棟っ。ここは大手道の防衛システムを管理していますが、平時
   にそれほどの人数は居ませんっ。ですから一隊を以てまずここを占拠してっ、大
   手道から人数を引き入れ、その部隊を併せて生徒会室を占拠に向かいますっ。」
徹美「しかし、車に乗れるのは一杯に詰めても十数人だ。七間棟だけとは言っても過小
   に思えるが」
一重「信用できる人を選びますからっ。不意を突けば十分可能ですよっ」
徹美「ん〜……まあいい。しかし、まだ疑問がある」
一重「まだですかっ?」
徹美「あと、二つだ。警備隊のことだが、警備隊を率いているのは日根野美沙だ、興美
   は全く恐くないが、こいつはちょっとやっかいだと思うぞ」
一重「もちろん美沙さんの居ない時を見計らってやりますよぅ」
徹美「わかるのか?」
一重「梓野を使えば調べる手段はいくらでもありますからっ」
徹美「なるほど。で、最後の質問なんだが……一重、稲葉山校舎を乗っ取った後はどう
   するんだ?」
徹美の質問に、一重は少しの間考えた顔になる。それから、おもむろに答えた。
一重「成功しても失敗しても首謀者の私は美濃学園には戻れないですっ。ただ徹美さん
   達は西美濃校の代表ですから、興美様も滅多なことは出来ないと思いますっ。そ
   れでも興美様が興美さん達を除こうとしたら、その時は尾張学園を頼るといいで
   すっ。これが有れば……」
と言って、一重は内ポケットに入れた物を取り出す。
理奈「あっ……連判状」
理奈がそう声ををあげる。どたばたの内にすっかり忘れていたが、西美濃二十四家の連
判状である。
一重「織田信子も受け入れてくれるですっ」
奈緒「ああん、そう言えばすっかり忘れてたわ」
何時の間に起きたのか、奈緒はそう言って連判状を一重から受け取ろうとする。
一重「あっ、ちょっと待ってくださいっ、これはまだ私が持っておきますからっ」
奈緒「んん〜?どうして?」
首をひねりそう言いつつ、奈緒は一重にじり寄る。一重はちょっとその動作に引いた。
一重「稲葉山を落とした後は、これを使って全校の動揺を抑えるんですっ」
徹美「ああ、そうか。稲葉山校はともかく、美濃学園の他の諸校は西美濃校が稲葉山を
   落としたからと言って、即座に、興美に味方して奪回してやろう、ってことには
   ならない。必ず情勢を見てどちらに付くか迷うだろうな」
一重「世の中案外薄情ですからねっ。それにそうなれば稲葉山校舎が今度は私達の味方
   になりますっ。何しろ道子様の設計した死の校舎ですからねっ」
理奈「いやあ、高校の校舎に、死、ってフレーズはどうかと思うけど、そうねぇ……」
理奈がそう言って呆れた顔をする。稲葉山に施された過剰な装備を思い起こしているの
だろう。機関銃とか地雷とかも設置されているが、銃刀法違反とか今さらまともなこと
を言ってはいけない。そう言うものなのです。
一重「それに加えて西美濃校の実力があれば、なかなか軽々しくは動けませんっ。あ、
   それから、織田信子を頼るのは最後の手段ですよっ。目的はあくまで、興美様に
   人の結束がなければ稲葉山校舎なんか役に立たないってお説教することですからっ」
徹美「興美に通るかね、そんな理屈」
徹美は首を傾げ、一重にそう疑問を投げた。
一重「通らなかったときは尾張って事で……とにかく初めのスタンスはそれでお願いし
   ますっ」
一重はその辺りちょっと苦しげに言う。自分でもそれはなかなか自信がもてないのだろ
う。
徹美「尾張学園か……正直織田信子は苦手だが、興美よりはましか」
奈緒「奈緒さんも織田信子苦手〜、でも興美は嫌いだし〜、まあ仕方ないわね〜」
三人ともちょっと信子に人物に不安があったが、他に頼るべき所もない。それに織田信
子はおかしな人間だが、それを言えば興美だって変人なのだから、まだしも織田信子の
方がまし、かもしれない、と、取り敢えず信じ込んでみることにした。
理奈「じゃあそう言う方針で、私も正直苦手だけど……一重も苦手だろ?」
と、理奈は雑談の続きの様なもので何気なくそう一重に聞いた。
一重「あんまり良く知らない人ですからっ、どうとは言えないですっ。でも私は尾張学
   園には行きませんよっ」
しかし、返ってきた答えは予想にはずれていた。
徹美「行かないって……。どういうことだ?今、一重が尾張学園を頼れって言ったんじ
   ゃないか」
驚いた徹美は一重にそう問い質す。
一重「私はっ……北近江学園にでも行こうと思ってますっ」
その問いに一重はそう答えた。が、徹美達は納得がいかない。なぜ徹美達には尾張学園
に行けと言いながら、自分一人は北近江学園へ行くなどと言うのか。
一重「私はこの計画の主犯ですから、必ず興美様は私のことを許さないですっ。ですか
   ら私はこの計画が成功しても失敗しても、美濃に居られないですっ。それは、例
   え興美様が反省したとしても、稲葉山を落としてしまうような人間を手元に置い
   ておくと言うことは、もしやという気持ちが常に付きまとうはずですっ。かとい
   って敵対している尾張学園に私が行っては……興美様は私が稲葉山を落としたこ
   とをたんに野心からと見るですっ。それでは、全然意味がないですっ」
三人の表情を察し、徹美達がそのことについて口を開く前に、一重は一息に理由を説明
した。口を開こうとしていた奈緒と理奈は、その理由を聞いていったんだしかけた言葉
を止める。ただし、表情は納得したというものではなく、むしろ不審、と言うよりも不
満な表情だった。何にしろ、そうすると一重という年下の友人と離れ無ければならない
と言う理由が一つ。また一つには、一重に責任をかぶせてしまう格好になる事への忸怩
たる思いもある。しかし、だからといって今さら稲葉山乗っ取りをやめると言うことも
言い出せない。
徹美「しかし一重、どっちにしろ興美が反省しなかったらどうするんだ?その場合は興
   美を反省させる目的は果たせないわけだから、別に野心と思われても構うまい」
徹美はしかし、二人とは別にそう言った。そうすると、徹美の言葉に二人も少し救われ
たように顔を上げる。
一重「いいえっ、こんな大きな事をしたらきっと疲れてしまいますからっ。騒がしい尾
   張学園より静かな北近江学園でゆっくりしたいですよっ」
しかし、一重はそれに首を振って答える。
徹美「どうしても?」
一重「ええっ、ごめんなさいっ」
今度は徹美に頭を下げてそう言った。徹美もそうされてまで無理強いは出来ない。不得
要領な面持ちだったが、それ以上のことは言わなかった。
実のところ、一重にしてみれば、稲葉山を乗っ取るのは仕方ないにしても、それを更に
進め、旧主を尾張学園に売る気などさらになれないのである。一重の信奉するものは理
であって。決して利という文字は一重の頭の中にない。あるとすれば自分の自信を証明
したいという欲求だけで、もしその結果の果実である大きな利が熟したとしても、それ
は理の実践という花を枯らし、遂には腐れ落ちて地に落とすだけのものである。一重に
はそれが馬鹿馬鹿しく思えてならない。本当に美しいものは、決して一重自身に実利を
もたらさず、ただ一瞬の快感をだけもたらすべきもので、少なくとも、一重はそう信じ
ている。それは取りも直さず、一重が真に信奉しているものは美である証拠であり、で
あるべき一重が、一利のために進退の颯々を濁すはずもない。
一重「それではっ、細かい点について打ち合わせましょうっ」
元気良く一重はそう言って、少し重くなった雰囲気を殊更に励ます。徹美達もその声を
受け、気を取り直して稲葉山占拠の密議を再開した。
一重「それじゃ、行って来ますねっ」
一重はそう言って偽装救急車のベッドを持ち上げ、潜伏用のスペースに入った。スペー
スは120センチ程度の縦幅しかないが、子供な一重なら十分に潜伏することが出来る。
奈緒「ねえ〜、やっぱり一重ちゃんが行かなきゃだめなの〜?美沙が居ないとはいって
   も警備隊は一杯居るし、やっぱりここはお姉さんが〜」
奈緒がベッドをおろして隠れようとする一重にそう言う。彼女は、稲葉山潜入部隊には
選ばれておらず、一重が七間棟を制圧した後の突入部隊を率いている。
徹美「言うな奈緒。作戦立案者の一重でなければ全体の連携が取れない。何度も話し合
   って決めた事じゃないか」
それを徹美が制して言う。徹美は奈緒とは別方面、馬の背からの突入部隊を率いている。
奈緒「そうだけど〜……」
理奈「まあ、大丈夫でしょう?美沙も居ないしさ。そういや一重、美沙今日はなんで居
   ないの?いつもおっかない顔して詰め所にいるくせに」
まだ不満顔の奈緒の言葉を遮って理奈が言った。理奈は奈緒、徹美隊の突入後、稲葉山
周辺全域の警戒を行うことになっている。稲葉山制圧に成功しても興美に逃げられては
仕方ないので、地味だが重要な任務とは言える。
一重「美沙さんはおでぇとですっ」
理奈「うえ、あの美沙が?相手は誰よ」
一重「まあそんなことは良いじゃないですかっ。美沙さんだってたまには青春を謳歌し
   たいんですよっ。そのおかげで、私達も助かるわけですしっ」
徹美「むぅ……しかし美沙でさえデートとかしてると言うのに、我々は一体何やってん
   だか……」
少し自分の人生に疑問が生じたらしい。しかしそんなことは考えたら負けである。
奈緒「男とデートしてるの〜?」
一重が気にするなと言っているのに、それでも興味が断ち切れないのか奈緒がそう聞く。
一重「美沙さんは女性ですから、普通女性とはでぇとしないと思いますっ……」
奈緒「私はするわよ〜?」
一重「奈緒さんは普通じゃ……いえいえ、何でもありませんっ。それじゃあ行って来ま
   すねっ」
理奈「ちょっと待って、一重以外の人数が三人しかいないじゃない。確か一六人で進入
   するって言ってなかった?この人たち……」
右京「沢右京です。コードネームはウッピーです」
クララ「杉山クララです。クララちゃんってよんでね」
小雛「後藤小雛です。脈絡はないけどコードネームはマキりんです」
言われた三人は順に自己紹介する。
理奈「……ま、まあ、いろいろ言いたいことも言わないことにするけど、他の人はどう
   したの?」
多少の同様を示しつつ、理奈は更に続けて聞く。
一重「それはですねっ……ちょっとそこの計器を叩いてみて下さいっ」
一重はそう言って、救急車備え付けのわけの解らない計器を指さした。
理奈「ん、これ?」
言われたとおり理奈は計器を叩く。
千治「伊藤千治です。チーちゃんって呼んで下さい」
すると計器の偽装がパカリと開き、中から少女が出てきていきなり自己紹介した。
理奈「……」
一重「後、そことそことそこと……」
無言の理奈を置いてけぼりにして一重が次々と指さしをすると、そのたびに床がめくれ
るか、あるいは計器の偽装が剥がれるかして中から人が現れた。
睦月「阿波睦月です。ムーちゃんって呼んで下さい。尼子の人とは別人って事でよろし
   くです」
善乃「所善乃です。ひねれないので善乃って呼んで下さい」
純「喜多村純です。なんか左腕がむずむずします。私もひねれないのでジュンちゃん、
  って呼んで下さい」
佐和「橋村佐和です。サッチーと……呼ばれたくないけど、仕方ないですね……」
貴子「よろしくな、永井貴子だ。タカってよんでくれよ!」
九尾「外村九尾です。コンちゃんって呼んで下さい。狐のコンちゃんです」
子鹿「牧野子鹿です。名前もいい加減無理矢理です。六兵衛→六→鹿でこんな名前にな
   りました。恥ずかしいけどバンビちゃんと呼んで下さい」
斎「竹中斎ですっ。一重ちゃんの従姉妹ですっ。イツキって呼んで下さいですっ」
神奈「竹中神奈です。ここで名前使いすぎだと思います。カンナちゃんって呼んで下さ
   い」
九和「竹中九和です。官名しか解らない人多すぎです。キュワちゃんって呼んで下さい」
文「竹中文です。やっと普通の名前です。普通すぎるからアヤポンって痛いアダ……コ
  ードネームにしてみました」
ななか「竹中ななかです。竹中多すぎです。もういっぱいいっぱいです。ナナちゃんと
    呼んで下さい」
総勢一六名、全員が紹介を終えた。
一重「見えるところに大人数が居たらさすがに怪しまれますからっ、皆さん隠れていた
   だいてますっ」
そう言った一重の言葉が終わらぬうちに、沢、杉山、後藤、以外の13人はもう元の通
り隠れている。徹美達はその様に呆然とするしかない。何というか、何もない壁の中に
も人が潜んでると思うと、ちょっと恐かった。
徹美「あー……」
徹美は頭を押さえてそう呻く。
一重「大丈夫ですよっ。ちょっと変わった子が多いですけど、みんな頼れる人ばっかり
   ですからっ」
徹美「いや、そんな心配をしたわけではないんだが……ま、あれだな。きっとこの程度
   のことに驚いていてはいけないんだよな」
どうやら自己完結したらしい。妙にすっきりした顔をして徹美はそう言った。
奈緒「そう言えば〜、昔筒井康隆が言ってたんだけど、点呼をとって行数を……」
一重「紹介って大事ですよねっ!」
何か言おうとした奈緒の言葉を一重が怒鳴って遮る。と、その時、一重の携帯が鳴った。
梓野からの合図である。
一重「来ましたっ。徹美さん、奈緒さん、理奈さん、準備は良いですかっ?」
徹美「うむ」
奈緒「OKよん」
理奈「んー、大丈夫」
一重の言葉に、三人はおのおの返事する。
一重「では、稲葉山を落としますっ」
156 ◆nT0xknNOBU :02/10/26 18:51
何とか少しだけ続きを・・・続きを書くのも遅くなってきている今日この頃。
原因は三国志8ですね(;´Д`)
もう一つ言い訳的に言うと、
この講談臭い半兵衛の稲葉山占拠がどうやら事実らしいってせいかも。
桶狭間奇襲戦より遙かに嘘臭いこっちの方が本当ってのはなかなか・・・
事実は小説より奇なりで書き辛かったり書き辛くなかったり。

>>144
実は斉藤利三は名前だけ出てたりします。
丹波攻略ぐらいまでこれが続けば出番もあるかも・・・遠いなあ(;´Д`)

>>145
いやー、やっぱ解ります?
「国盗り物語」後半は全然織田信長編じゃないですが、
やはりこれに一番多く影響されてますね。
もっとも信子ちゃんで以て、
「国盗り物語」がこんな感じの小説だと思われても困りますが(;´Д`)

てなことで字数制限がきつくなったせいもあって長々ときた稲葉山落城も次で終わりです。
来週の日曜ぐらいまでには・・・たぶん。
157無名武将@お腹せっぷく:02/10/27 22:35
ある日突然一重タンに十六人の部下が(;´Д`)ハァハァ
かなりワラタw
159無名武将@お腹せっぷく:02/11/01 22:11
理奈保守!!
160 ◆nT0xknNOBU :02/11/03 18:32
すいませんまだ書けてません(;´Д`)
書こう書こうと思いつつ書かないのが悪いのです。
待っていてくれた方(居るかな?)には申し訳ありませんが、
もうちょっと待って下され。
(・∀・)マテールヨ
藤子(・∀・)イイ!!
奈緒保守
保守
165 ◆3p92bitL/A :02/11/11 02:56
保守的に…

昼下がりの天神山学園生徒会室。
高子「宇喜多さん・・・何度言ったらわかっていただけるのかしら。天神山学園はこのあたりでも上流階級に属する学校として名の知られた学園ですのよ。
ましてやあなたは生徒会副会長、他の生徒の見本とならねばならないのに」
風紀局長の金光高子さんが直美ちゃんを説教しますが、直美ちゃんはどこ吹く風でにぱっと笑います。
直美「ん〜?なおみ、よくわかんな〜い」
はぁぁぁぁ・・・
直美ちゃんが天神山学園に入学してから、もう何度目のため息でしょうか。そのうち生徒会室の壁に染み付いてしまいそうです。
直美「それより、たかこちゃん。あのかわいー娘だーれ?」
その問いに、高子さんの代わりに答えたのは天神山学園生徒会長の浦上千景さんです。
千景「ああ、あれは二年三組の撮所常美さんね。弓道部在籍」
直美「きゅーどーぶなんだ。きゅーぴっとさんだね。今からお友達になってきてもよい?」
千景「いいわよ。いってらっしゃい」
直美「わーい。じゃあ、いってくるねっ」
弾丸のように出て行く直美ちゃん。
高子さんはしばらくあっけに取られていましたが、やがて千景さんに問います。
高子「・・・どうしてあのような娘を野放しにしておくのですか。いくら能美様の妹御とはいえ、天神山学園には相応しくないのでは?」
すると、千景さんはくすりと口元で笑いました。
千景「あの娘が必要だからよ。私のためにも、天神山学園のためにもね」
びーん、びーん
弦音が響き渡る射場に、突然直美ちゃんの声が響きます。
「きゅーちゃーん!お友達になりましょ!」
「つねみちゃん」と呼ばれれば常美さんも避けようがあったでしょうが、さすがに「きゅーちゃん」では自分の事とは気づかず、不覚にも抱きつかれてしまいました。
常美「ななななな何なんだ、キミは。離してくれ」
一瞬の戸惑いの後、なんとか直美ちゃんを引き剥がそうとしますが、
直美「やだもん。お友達になってくれなきゃはなさないもん」
直美ちゃんはますます強く抱きしめます。
なんだなんだと取り巻く部員たち。
その中から一人の声があがります。
利香「宇喜多さん?」
常美「岡。キミの知り合いか?」
利香「一応…あたしの上役です」
常美「上役?」
利香「副会長補佐ですんで」
常美「ってことはうわさのバカ副会長…ってそんな事はどうでもいいからとにかくこの状況を何とかしてくれ」
利香「あ、はい。ちょっとみんな手伝って」
というわけで、利香ほか弓道部員の手を借りてやっとのことで直美ちゃんの束縛から開放された常美さん。
常美「なんなんだキミの上役は。ボクはバカは嫌いなのに」
利香「ごめんなさい」
常美「もういいからつれてってくれ。キミの顔に免じて許してあげるから。そのかわり」
利香「はい…宇喜多さん、あっち行きましょ」
直美「やだやだ、きゅーちゃんと友達になるんだ!」
利香「…あとでおいしい紅茶おごりますから」
直美「うーん…うーーーーーん…」
直美ちゃんはしばらく考えた末、言いました。
直美「行く」
利香さんはほっとしましたが、その気持ちはすぐに裏切られました。
直美「また友達になろーね、きゅーちゃん!」
常美さんの顔がゆがんだのはもちろんの事でした。
利香「お願いですからあんまり恥をかかせないで下さいよ」
学園近くの喫茶店。砂糖を3袋も入れた激甘紅茶をすする直美ちゃんに、利香さんは疲れたように言います。
利香「でも、何を好んであの人と?」
直美「んー?かわいーから」
利香「…表向きはいい顔してますけど。でも、浦上生徒会の敵ですよ。隠してるつもりかもしれませんが、私にはわかります。あの人は出雲学園の息のかかってる松田さんを生徒会長にしようとしてるんです」
直美「ふーん」
直美ちゃんはティーカップをテーブルに置くと、聞き返します。
直美「なんかきゅーちゃんにやなことされた?」
利香「え?」
急に言われて、利香さんはうろたえました。
直美「なにかワケありなんでしょ?」
利香「そんな、ワケなんか」
でも、態度がワケありってことを物語ってます。しばらく言い訳していましたが、ついに観念して利香さんはそのワケを話し始めました。
利香「実は…あたしの同族を…清香を…」

利香さんの話をかいつまんで言えば次のとおり。
利香さんの同族の岡清香はかつて須々木という人物と付き合っていましたが、
粘着質だった須々木にだんだん嫌気が差し、やがて別れの言葉を告げました。
が、脳内でいいように処理してしまう須々木、「僕の愛を試してるんだね」とか
のたまって追いかける。
清香ちゃんが精神的に疲れてるのを見るに見かねた利香さんは常美さんに相談。
常美さんが須々木を締め上げて、うまくいったかと思いきや。
実は常美さんはその気があって清香ちゃんをベッドに引きずり込んだのでした。

直美「ふーん。いいなー」
利香「なにがいいんですかっ」
直美「こーふんしちゃだめだよ。あ、紅茶もういっぱいねー」
憤る利香さんに直美ちゃんは全く動じす、ウェイトレスさんに注文してから。
直美「あのね、きよかちゃんのこと、なおみがなんとかしてあげよーか」
利香「はい?」
直美「あのね…うふふ…きよかちゃんとなおみが入れ替わるの。それでね…」
数日後。
弦音が響き渡る射場に、突然直美ちゃんの声が響きます。
直美「きゅーちゃーん!」
常美「あ、なおみ…ちゃん…」
直美ちゃんの声を聞いたとたん、常美さんはその場にへたへたと座り込んでしまいました。
部員1「撮所先輩、どうしたんですか?」
部員2「息が荒いですよ」
部員3「顔も赤いし…」
少し離れた場所で、利香さんが呟きます。
利香「宇喜多さんって・・・」
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
つか、直美タソの絵キボン 虹板のエロ絵師はおらんのか?!
171無名武将@お腹せっぷく:02/11/13 22:25
常美保守!
クララ「YA!HA!守衛さん!急病人でたらすぐ駆けつけます。サイバネティックホ
    スピタル真実の口救急隊でいす!TELを貰って今日も駆けつけましたぁ!門
    を開けてくだせーい!」
杉山クララは猛スピードで救急車を校門の前に停めると、クラクションと共に立番して
いる警備員にそう怒鳴った。
一重(クララちゃんを表に残したのは失敗でしたかねぇ?)
その胡散臭い言動を聞き、一重は偽装計器の中で小声で呟いた。
善乃(でも私達では背が小さくて救急隊員には見えませんもの……)
一重の近くに隠れている所善乃が、これも小声で言った。一重を含め、隠れている14
人は一重の年齢に近く、大体15、6歳で構成されていた。それに対し、表の三人は1
7、8歳である。主に見た目で選出されている。
一重(そうですねっ、しかたないですっ……って、善乃ちゃん変なところ触らないで下
   さいよぅ……)
善乃の手が一重の変なところに触れたらしく、一重はちょっと慌てた声(小声だが)で
そう言った。
善乃(あらっ?失礼いたしましたわ。何しろここは狭くって……)
善乃はそう言って体をよじる。
一重(わわっ、そっちじゃ駄目ですっ)
善乃(ああっ、なんていうことでしょう。狭いのがいけないのですわ。狭いのが……)
しかし、善乃は事故なのか故意なのか、自分の体を更に一重の変なところに密着させる。
一重も慌てて身をよじるが、いかんせん言うとおり狭いところなので思うようにいかな
い。
一方……
クララ「ヘイ・カール!ヘイ・カール!早いとこ通してよフラウ!ああ違ったフロイラ
    イン!え、既婚と未婚で分けるな?じゃあユーはメンだ!ああなんだってい
    い!とにかく早く通してYO!こうしてる間にも可愛い患者さんが悶えている
    に違いないんだから!それにしても悶えるって言うとちょっとエッチっぽいよ
    ねドクター?」
可児「うるさいわね!」
奇声をあげて喚くクララに立番の警備員が当惑していると、奥から上役らしい警備服の
女性が出て来る。
静間「そこの車!私は稲葉山警備隊隊長代理の可児静間よ。一体この騒ぎは何事なのか
   説明しなさい!」
クララの奇声を大声で遮り、静間と名乗った女性はつかつかと救急車の方へ近寄る。
警備「よく分かりませんが、急患が出たので校舎の中に入れろと言ってるのではないで
   しょうか……」
警備員は自信なさげにそう言う。
クララ「さっきからそう言ってるわセニョール!セニョリータ!YA!失敬、貴方が男
    か女か分からなかったから二度言ったわけではないのよ?」
クララが警備員のセリフを肯定した。その警備員の方に向き直り、静間は聞き返す。
静間「そう言う連絡は受けているの?」
警備「はい、小等部3年の竹中梓野が身体の不調を訴えて保健室に収容されています。
   腹痛と嘔吐の症状が酷いようで、動かせる状態ではないようです」
可児「そう……しかし規則は規則だから、一応車内を拝見させて貰うわよ」
クララ「OK!ビシッ!」
口で擬音を発しながら、クララは親指を立てる。それは敢えて無視し、静間は救急車の
腹側部にあるドアの方へつかつかと歩み寄る。それを窓越しに見ていた後藤小雛が、静
間の為にドアを開いてやる。
小雛「どうぞ。あの、患者さんが待っていますので出来るだけ急いで下さいね?」
ごく普通の口調でそう言った小雛を見て、静間もこっちなら話が通じると思ったらしく、
軽く頭を下げて車内に入った。車内には気が狂ったように(本当に狂っているのかもし
れない)しゃべり続けるクララと小雛、それからここまでセリフなしムーちゃん事阿波
睦月が居る。むろん三人の名前は静間には分からない。
 静間はちらりと睦月の方へ目を遣った。なにやら左腕が気になるらしく、しきりとさ
すっているが別段怪しげな所はない。小雛は静間の点検が終わるのを大人しく待ってい
る。さして広い車内でもないからすぐ終わるが、患者のことが気になるのか多少急かす
ような仕草を見せた。が、これも職務上別段不思議ではない。最後にクララだが、あか
らさまに不審で怪しい。しかし、だからといって警備上どうこうと言うような不審さで
はないし、もしクララが稲葉山城の中で発狂(もう発狂しているように見えるが)した
としても、一人なら取り押さえるのに苦労はないだろう。
静間「ええ、通ってもいいわ。今セキュリティを切って門を開けさせ……」
と、そう言いかけた瞬間、車の内部にゴンという不審な物音が響いた。
静間「……何の音?」
その音を聞き咎め、車内から出ようとしていた静間が立ち止ったので、車内の三人はぎ
くりとした。音は一重の隠れている辺りから鳴ったのである。

一重(まずいですよ〜っ)
物音をたてたのは、まさにその一重だった。善乃がべたべたと変なところを触ってくる
ので、身をかわそうと大きく動いたのがいけなかった。
善乃(ああ、決して、狭いのをいいことにいろんな所触っちゃえ、とか思ったわけでは
   ないのですわ)
善乃が小声でそう言いわけする。
一重(しーっ、声だしたら気付かれちゃいますよっ……)
一重はそう言って善乃を制す。
善乃(そうですわね……)
善乃はその言葉にうなずき息を殺す……と同時に、一重を触りまくった。
一重(善乃さ〜んっ。やめて〜っ)
善乃(一重様声をたててはいけませんわ……気づかれてしまいますもの)
善乃は楽しそうな小声でそう言った。陰謀を感じつつも、一重は黙らざるを得ない。そ
れをいいことに善乃はなお触りまくる。

静間「なんだ今の音は?」
クララ「何だって事はないだろベイベ!僕と私の愛が軋んだ音さ!AA!エリエリレマ
    サバクタニ!何という非情!そうともエリエリだ!君の襟元の谷間は砂漠でレ
    マ、は何としておこうか?そうだ……」
ごまかして居るつもりか機関銃のように喋るクララを無視して、静間は音のした方に歩
み寄る。
一重(駄目です〜っ)
善乃(ああ、一重様、一重様、お静かになさって下さいませ(;´Д`)ハァハァ)
内部では相変わらず善乃のお触りタイムが続いている。彼女には作戦を成功させる気が
ないのだろうか?否である。ただ彼女もまた眼前の欲望に耐えられなかった弱い人間で
あるに過ぎないのだ。彼女に罪無し。
一重(無いわけないですっ……)
と、これは心の中で呟き、一重は必死に声を出さないように耐えた。
そうしている間にも、静間は音の出所を探しあちこち見回し、なかなか車内から出てい
こうとしない。計器類の偽装は綿密にやったつもりだが、何時までも調べられていては
都合が悪いし、万一見つからないとも限らない。
小雛「あの、患者さん相当悪いらしいので……早く行かせてもらえませんか?」
少し慌てた口調で小雛が静間を促す。
静間「ふむ……」
しかし静間はそれに答えず、一重の隠れている計器の辺りをコンコンと叩く。中空だか
ら軽い音がした。静間はそれを聞き分けられなかったのかまた思案顔をしたが、小雛は
じめ三人とも気が気ではない。
が、それと思ったのもつかの間、今度は先程とは比べ物にならないほど大きな音が、そ
れも連続して響いた。
静間「何だ?」
ガンガンと鳴るその音は、一重の隠れている空間から、ではなく、その更に向こうの車
外から響いてくる。どうやら、何者かが車の外板を連打しているようである。
静間「誰だ?」
そうと分かると、静間は慌てて表に飛び出し、車の反対側、音のする方へ回り込む。と、
見れば10歳かそこらの女の子が、泣きながら外板を叩いていた。
静間「彩か!」
静間は音の正体にそう呼びかける。すると外板を叩いていた少女はパッと静間の方を向
き、転がるようにして静間の腰の辺りに飛び込んだ。
静間「あっ、おい」
さほどの体重ではなさそうだが、少女の全力突進を腰に受け、静間はバランスを崩し僅
かに後ずさった。腰に腕を巻き付けた少女はまだ泣いている。ただし大きな声を上げて
泣くのではなく、喉に鞠を詰めたようにくぐもった鳴き声だった。しかし少女が唖でな
いことには、泣きじゃくるなかにも静間に何か伝えるべく口を開き、静間もそれを聞き
取ろうと耳を傾けていることで分かる。更にしかし、その声は小さすぎて余人に聞き取
れるところではなかった。
静間「また、何か恐い事でも思ったか?」
少し落ち着き、静間は少女の頭をなでながら優しくそう聞いた。少女も少しは落ち着い
たのか、強く静間の腰を抱きしめながら小さく頷いた。
静間「そうか……」
静間はそう聞くと少し困ったような顔をして、もう一度少女の頭をなでる。
小雛「あの〜……」
と、そこに車から降りた小雛が声を掛けた。その声に静間も職務を思い出し、サッと顔
を糺すと、小雛の方へ向き直る。
静間「いや、すまなかった。これは私の妹なのだがどうにも臆病でね、先程の音もこれ
   のせいだろう。君らには余計な疑いを掛けたが、もう行っていい」
静間はそう言って立番の警備員に指示を出した。もとより急いでいたことなので、小雛
も慌てて車内に戻る。
クララ「OH!やっといけるのか!」
静間「すまんな、手間を掛けて」
クララ「神は我々をとうに見捨てているのに、谷間が砂漠のYOUは何時までも見捨て
    ないものだから……」
静間「早く行け」
クララのおしゃべりを遮って、静間は追っ払うをうな仕草でクララ達を促す。否やもな
い、門が開くと同時にクララは車を急発進させ、稲葉山正門の坂道を一気に走り上がり、
すぐにその姿を静間の前から消す。
静間「……ふぅ」
それを見送ってから静間は大きく溜息をつく。
彩「静間……」
その静間の服の裾を妹の彩が引いた。まだ泣いている。
静間「ん、ああそうか。彩、今日はどんな恐いことを思った?」
静間は振り返り、腰を下ろして彩に目線を合わせ聞いた。
彩「あのね……」
彩は静間の顔を目の高さで見て少し安心したのか泣きやみ、袖口でグッと涙を拭う。
静間「まて、長くなるのだろう?奥に行こう、ゆっくり聞くよ」
静間は言うと腰を伸ばし、彩の手を優しく握る。そして、行こう、という風に彩を目で
促した。彩はそれに逆らわない。歩き出す静間に手を引かれるまま、共に詰め所の中に
入っていった。
178 ◆nT0xknNOBU :02/11/14 21:23
やっと張れた・・・二重投稿とかでまくり。
で、これしか書けてないでう。
当然のように終わっていません(;´Д`)スマ…
スレ覗いて書かなきゃなー、
とか思いつつ三国志8とかやっちゃうんですが・・・
イヤホントすんません(;´Д`)
このスレとかFさんのとことか見つつ、
やる気出していきたいと思いマスです。

>>169
いや、エロいっすな(;´Д`)ハァハァ
コレ系って言うかぶっちゃけレズ系ってなぜか数少なかったり。
いや寂しい話ですわ(;´Д`)
私などあまり書けていないのに言うのもあれですが是非もっとかいてくだされ。
異様にテンション高いな。ああでも、クララ好きだ。w
180無名武将@お腹せっぷく:02/11/15 09:01
でもこのあと竹中十六将の出番などほとんどないとおもわれ
全員、信子ちゃんのハーレム入りじゃないのか
182無名武将@お腹せっぷく:02/11/17 04:26
タカさんもか(;´Д`)
一重「はあぅっ……酷い目にあいましたっ……」
偽装の中から上半身だけだらんと出し、ぐったりとした声で一重はそう吐き出す。
クララ「YA、何とか突破できて良かったですねベイベ?」
先程までの狂騒は捨てて、クララは一重に言う。
一重「クララさ〜んっ、なんでさっきはあんなおかしな行動ばっかりしたんですかっ?
   普段は……普段から変ですけどっ、もうちょっとましなのにっ……」
クララ「ホワッツ?MEはクオーターガイジンだから日本人に見えないだろナウ?それ
    で自然なガイジンをMEなりの演技であらわしてみたのですよ?」
一重「あんな外国人みたことないですよっ……大体言語もバラバラだったしっ……」
クララ「Aー、そりゃ仕方ないね。MEは美濃生まれの美濃育ち、日本語以外は全くし
    ゃべれないキッスイの日本人。YA、聞いてよ。こないだの試験も英語アカテ
    ン!どうしたもんかと笑いを突き抜けて怒りがこみ上げてきたさ。もちろん、
    難しい問題を作った教師に対してよ?」
と、日本語も怪しい自称キッスイの日本人はのたまわった。
一重「クララさんを外に残したのは失敗でしたっ……」
いっそう疲れた声でそう言って、一重は溜息を吐いた。
善乃「まったくですわね。もう少し上手くやっていただかないと困りますわ」
その言葉に乗っかり、善乃も偽装の中から顔だけ出してそう言う。
一重「……善乃ちゃんは失敗二号ですっ」
善乃「ええ!私がなぜですの!?」
全く自覚のない叫び声をあげる善乃。
一重「失敗二号の言うことは取り敢えず無視しますっ。それより今は稲葉山攻略ですっ」
何時までも過ぎたことを言っていても仕方ない。苦情を言う善乃のことは暫く置いて、
一重は本来の目的の方に注意を戻す。
小雛「でも正門の警備をごまかせましたし、もう成功したも同然ですね」
小雛のその言葉に、しかし一重は首を左右に振る。
一重「正門から校内までの警備システムは三段階に制御されていますっ。今はそれを私
   達の移動に合わせて順次停止している状態ですからっ、システムが復活したら私
   達はお空の星ですよっ。気を抜いてはいけませんっ」
睦月「それはまた面倒くさいですね。何でそんなことになってるんです?」
睦月が左手をさすりながら一重に聞く。
一重「……そう言えば何で睦月ちゃん外に居るんですかっ?確か初めは偽装の中に入っ
   ていたはずなのにっ……?」
睦月「Σ(゚Д゚)シマッタ……いや、きっと途中で気が変わってウッピーと入れ替わったんで
   すよ。そう言うことにしておきましょう……」
一重「しかも何で左手さすってるんですかっ?」
睦月「Σ(゚Д゚)シマッタジュンチャントマチガエテルヨ……痒かったんです」
一重「まあいいですけどっ……えーと、それはですね、一辺にシステムを切るとその隙
   をついて一気に敵に侵入されてしまうからですよっ」
睦月「なるほど、私達のような、ですね?」
一重「いえいえっ、私達は味方ですっ。だからこそこうして、システムを切って迎え入
   れてくれるんですっ」
一重はにっこりと笑って睦月にそう言った。作戦の要諦はまさにその、一重達が美濃学
園にとって味方だという心理を利用することにある。まして校内にあって糸を引いてい
る梓野はまだ8つの子供。興美や警備隊もまさかと思うだろう。しかし奇策はつねにま
さかを行うことである。今度のことは、それを興美へ教えに行く。まさか、稲葉山城が
占拠されることなど無い。美濃の人間が自分を裏切ることはない。そんな妄想こそ、あ
り得ない。どれほど稲葉山が金城湯池を誇っても、それは結局人によって運用されてい
るに過ぎないのだから、人の心が崩れれば必然稲葉山も崩れざるを得ない。それは結局
どんな城であっても人の心の以上の強さは持ち得ないと言うことであり、人の心が不変
でない限り城の絶対があり得ないという当然のことである。その当然を思い知らせてや
る事こそが、真の目的である。
一重「だからっ、中にはいるまでは変な行動さえとらなけ心配ないですっ。特に失敗一
   号と二号は気を付けて下さいねっ?」
睦月が一重にそう聞いた。が、一重は顔を赤くして顔を伏せただけ
で答えない。
小雛「善乃ちゃん……」
睦月「善乃……」
その有様に、小雛と睦月も善乃を睨み付ける。
善乃「やですわ。そんな酷いことはしてないのですわ。ちょこーっといろんな所触っち
   ゃっただけで……」
一重「……えっちっ」
言い訳する善乃の言葉を遮って、一重は小さくそう呟く。虫の音ほどに小さな声だった
が、それでも善乃の言葉を遮るには十分な効果を発揮した。
睦月「善乃……今日からお前のあだ名は痴漢に決定だ」
睦月が重々しくそう宣言する。
善乃「それは酷いですわ〜」
小雛「酷くないですね。妥当だと思うので大決定です。壁の中の皆さんもいいですか?」
善乃の抗議を一蹴して小雛が言う。と、壁のあちこちから異議なしの声が聞こえた。
睦月「と、言うことだ痴漢」
善乃「そんな〜(;´Д`)」
悲痛な善乃の叫び(自業自得)が響いたその時、今まで猛スピードで走っていた車が急
停車する。
クララ「着いたわよベイベ!七間棟なのね?」
運転手のクララが後ろの面子に向かってそう言う。その言葉に一重はこくりと頷いた。
睦月、小雛、痴漢の三人も流石にここまで来れば厳しい顔を作る。
一重「皆さん出てきていいですよっ」
一重はそう言うと、偽装が次々と剥がれて残りの12人が姿をあらわす。
一重「手順を確認しますっ。まず七間棟の監視カメラに欺瞞工作……同じ画像を繰り返
   し流すものですから長くは持たないですが、を施してから、マキリンとムーちゃ
   んに警備の人を無力化して貰って扉を開けてますっ。その後は、前に説明したと
   おりコンちゃん(外村九尾)とタカさん(永井貴子)とサッチー(橋村左知)、
   それからクララちゃんを残して全員で七間棟を制圧して下さいっ。この制圧が迅
   速に行われないと、他の詰め所から警備員の皆さんが駆けつけちゃいますっ。そ
   れまでに防衛システムを無力化して奈緒さんの人数を引き入れないとこの作戦は
   失敗ですっ」
睦月「今更何ですが、下にいる警備員はどうします?」
睦月が作戦の疑問をこの期に及んで聞いた。知ってるけど集中力を高めるために敢えて
聞いたと言うことにしておこう。
一重「警備員の皆さんは大手道を通ってきますっ。大手道の方が早く移動できますから
   ねっ。そこで大手道の防衛システムの内第二部分を切り、第一と第三を機能させ
   れば閉じこめることが出来ますっ。奈緒さんの部隊は百曲口から進入すれば問題
   ないですっ」
貴子「いっそ全部ONにして全滅させちまえばどうだ?」
貴子が口を挟み、過激な作戦を提案する。
一重「……そこまではしたくありませんっ」
一重は顔をしかめてそれに答える。稲葉山校の防衛システムは致死的なものだ、機能ま
での味方にそんなことをするのはいやだし、第一そんなことしたら人殺しになっちゃう
ではないか。
一重「確認を続けますっ。七間棟制圧と平行して、私とコンちゃん、タカさん、サッチ
   ー、クララちゃんは馬の背の確保に向かいますっ。馬の背には大手門ほどの警備
   員は居ませんが、こちらはそれよりも更に少人数ですから油断は出来ませんっ。
   ここの制圧が終わると同時に、徹美さんの部隊が突入しますっ。そうすれば後は
   奈緒さんと徹美さんの部隊を合わせて本校舎を制圧するだけですっ。以上……何
   か質問はありますかっ?」
質問はなく、全員がこくりと頷いた。
一重「じゃあっ、開始ですっ」

睦月「すいません、ちょっといいですか?」
睦月は七間棟の前で立番する警備員二人の内一人に話しかけた。
警備左「何だ?」
睦月「ごめん、眠って」
言うが早いか、睦月は警備員の不意を突いて催眠ガスを顔に吹きかけた。声を上げるま
もなく警備員は崩れ落ち、睦月はその体が地面に落ちて音をたてる前に素早く受け止め
る。
警備右「何をする……!」
しかし、もう一人の警備員を無力化させた小雛の方は睦月ほどうまくなかった。結果的に無力化させることには成功したが、最後の瞬間に大声を出されてしまった。
睦月「いかん!」
小雛「ムーちゃんごめん!」
慌てて小雛が睦月に謝るが、陸奥に謝ったところで今更どうしようもない。異変はすぐ
中に察知されたとみえ、一瞬だけの間を置いて睦月が倒した方の警備員が持つ無線機が
鳴る。と、とっさに睦月は機転を利かせそれを取った。
無線「どうしたんだ今の声は?」
声はそれほど切迫していない。こう言うところにも油断が出ていると言うべきだろう。
睦月「いや、学生の一人がなんか知らんが暴れて困ってるんだ。ちょっと二人じゃ手に
   余るんで応援を寄越してくれないか?」
無線「学生?安保問題か?」
睦月「いやそれはわからんが……とにかく困ってるんで来てくれよ」
無線「仕方ないな……ってちょっと待て、監視カメラの画像が……」
睦月「……いかん」
睦月はそう言うと同時に無線機を地面に叩き付けた。
睦月「小細工はするもんじゃないな。強引に突破するしかない」
いいながら睦月は正面扉の鍵を調べると、さほど頑丈そうにも見えない。これなら壊す
のも難しくはないだろう。
小雛「すみません」
睦月「謝るのは後だ。私がプラスチック爆弾で鍵を壊すから、ムーちゃんは車から残り
   のメンバーを呼んでくれ」
小さく頷いて小雛が車の方に戻る。睦月はそれを後ろにしながら鍵の部分に例のガムっ
ぽい奴をぺたりと張り付けた。中の警備員はもう異変に気付いているだろうから時間は
ない。
右京「とちったみたいね」
接築が終わると同時に、車から応援の人数が走り来て、なかの右京が足を止めずにそう
言った。
睦月「そう言うことだ。そのまま足を止めるな、爆破と同時に突入しろ」
子鹿「無茶じゃないでしょうか?」
子鹿がそれでも言われたとおり足を止めずに疑問を述べる。
睦月「ここまで無茶を重ねれば一緒だ」
言うと睦月は導線に電流を流す。パン、と大きな破砕音がして、扉の鍵が破壊される。
睦月「突入!」
言うと同時に睦月自身が一番に扉を蹴破って突入する。が、既に警備員の方も準備は整
っている。入るなりすぐ五名ほどの警備員に遭遇した。
警備員「捕縛しろ!」
睦月の姿を爆煙の無効に確認した警備員はすかさずこれを捕縛にかかる。さほど広くな
い通路だが、五人は散開して睦月を取り囲み警棒を抜いた。腰にはゴム銃もあるが近距
離なのでこちらの方が有効と判断したのだろう。
睦月「ふっ、この程度の人数」
しかし睦月は慌てず、包囲する警備員のうち正面の一人に向け掌底を放つ。早さでは睦
月が警備員を上回った。掌底は綺麗に胸元を捉え、正面の警備員は胸を押さえて崩れ落
ちたが、その隙に他の四人の警棒は睦月に向けて振り下ろされようとしている。
睦月「……やっぱ五人は無理」
舌の根も乾かない内に根を上げる睦月。が、一対五では負けても四対十二なら問題ない。
睦月に振り下ろされようとしていた四本の警棒は、それぞれ善乃、純、右京、小雛、に
叩き落とされる。
睦月「助かった!」
善乃「助かったじゃありませんですわ。少しは考えて行動して下さいですわ」
警棒をたたき落としたその勢いのまま、体当たりで警備員をうち倒した善乃が言う。
睦月「いやごめん、ほんと助かったよ痴漢」
善乃「痴漢じゃありませんですわ!」
睦月「しかし戦いはまだ始まったばかりだ!がんばろー!」
しかし睦月はそれを無視して皆の士気を促した。仕方なくそれに応え、七間棟攻略に参
加している残り12人が頷いた。
警備員いっぱい「貴様ら何者だ!」
が、そうこうしてる内に応援の警備員が駆けつけてくる。無駄話などせずに進めば良か
ったのだが、そこはわびさびの世界というもの。敵が来るまで待つのが正しい対応とい
える。
右京「早速新手が来ましたね。急がないと」
睦月「そうだな、早く管制室を制圧しないと下の詰め所からも応援が来てしまう。そう
   なれば万事休すだ」
右京と睦月がわざわざ状況を再確認する。
斎・神奈・九和・文・ななか「ここは私達に任せてみんなは先に進んで下さい!」
と、タイミング良く竹中五人組が名乗りを上げる。
睦月「しかしお前達を見捨てるわけには……(中略)わかった、死ぬなよ」
五人の心意気に感じ睦月はこの場を竹中五人組に任すことにした。
神奈「中略ですか!?酷いですね〜」
睦月「酷くない。じゃあがんばれ」
斎「つめたーいっ」
文「同じ竹中十六騎なのに待遇に差がありますよねー」
九和「ほんとですよー」
ななか「完全に捨て石じゃないですか〜」
自分から申し出たくせに、竹中五人組は不満そうだ。
睦月「竹中多すぎるんだよ。生まれの不幸を呪え」
睦月以下残りの七人は、その言葉を最後に奥へと走り去った。
九和「あー、行っちゃった……こうなったら戦闘で活躍して目立ちましょう!」
四人「おー!」
九和の言葉に残りの四人が声を上げて応じる。しかし警備員対竹中五人なんて詳しく書
いても仕方ないのでカット。
小雛「ほんとにあの子達に任せちゃって良かったんですか?」
小雛が走りながら睦月に聞いた。多少捨て石にしたことを気にしているらしい。
睦月「作戦が成功すれば捨て石にはならんし大丈夫だろ。それよりも今は制御室だ」
と、こういう会話をしていれば当然次の敵が現れるのが世の理。
ちょっと強そうな警備員「クックックッ、よくぞここまで(以下略)」
睦月「チーちゃんウッピー!あいつは手強そうだな!どうするよ!?」
敵の出現に、睦月は間髪入れずにそう叫ぶ。
千治「あっ……次は私達が捨て石なんですね」
右京「運命には逆らえないのかなぁ……でも、もしムーちゃんの代わりに偽装の中に入
   らなかったらと思うと……きっと私にも別の運命があったと思うんだ……」
二人はいささか元気なく言う。
睦月「スマン!君ら地味すぎだ!」
睦月はそう言って頭を下げ、次に上げたときにはもう走り去っていた。子鹿、小雛、善乃、純も慌ててそれに続く。
右京「あの時偽装の中に入らなければー……」
後ろからそんな叫びが聞こえた。が、今は一秒が惜しい。睦月は涙をのんでそれを黙殺
した。
睦月「なかなか順調に進めてるな」
第二の試練を難なく乗り越えて気をよくしたのか睦月がそう言った。
小雛「……私も何時捨て石にされるのかしら」
少し強そうな警備員+手下五人「くっくっ(中略)だが我ら六人を倒せるかな!」
睦月「新手だ!マキリンどうするよ!?」
早速現れた新手と睦月の叫び。
小雛「ああ、もうなんですか〜」
小雛は半泣きになりながらも新手に向かい合う。が、今回はもう一人余計に立ち止まる。
睦月「痴漢!」
善乃「痴漢ではないですわ。マキリン一人で六人はつらいでしょうから私も一緒に戦い
   ますわ」
少し強そうな警備員+手下*5「ふっ、私達を相手にたったの二人とは……」
偉そうに言う少し強そうな警備員+手下五人の言葉を遮って善乃は右手を一振りする。
手下*5「おおっ!?」
と、一瞬にして手下の五人が何か見えない物に突き飛ばされたようにして吹き飛んだ。
戦闘力を奪うまでのダメージではないが、驚きに全員が目を見張る。
善乃「これこそ所家闘弓術奥義玄闘活殺射ですわ!この技の前には人数の多寡などない
   も同じですわ!」

「所家闘弓術奥義玄闘活殺射」
美濃弓術の宗家所家(中略)恐るべき(中略)余談だがキダタロー(中略)に由来する。
                  尾張書房刊「休日には弓術」より

睦月「ふっ、痴漢。味方ながら恐ろしい奴だ」
善乃「痴漢言うな、ですわ」
睦月「まあそれはそれとして、私達は先に行くから」
小雛「ああ、やっぱり捨て石は捨て石なんですね」
小雛がまた悲しい顔をした。
睦月「目立った分だけまだいいと思わなきゃね。んじゃ」
チャッと手を挙げて、睦月はまた前へと走り出す。
管制室までの回廊を走りながら、ふと純が言った。
純「この流れだと……」
ちょっと(略)「くっく(略)」
睦月「おお、新手だ!ジュンちゃんどうするよ!?」
純「あっ、やっぱり……はいはい、わかってます。捨て石になればいいんでしょ」
睦月「ふてるなって、ここまで残れただけでもいいと思わなきゃ。竹中五人組なんて五
   人一絡げなんだぞ」
純「そうですね……まだましと思って頑張らなきゃ」
そう呟き、無理矢理自分を励まして純は敵に向き直った。
純「さあかかってきなさい!」
警備員*20「ふっ、私達二十人を相手に一人とは舐められたものだ」
二十人の警備員が一斉にそう言う。
純「……二十人」
純はそう言って警備員の方を指さしながら、情けない顔をして睦月の方に首だけを振り
返した。
睦月「……死ぬ気でがんばれ」
純「無理言うなー!」
しかし睦月は純の言葉よりも早く駆け出す。貴い犠牲とはこのことだろうと、一生胸に
刻みつけて忘れないに違いない。
睦月「ありがとうジュン、そしてさようなら……」
涙を拭いて睦月は走り去った。
純「あほー!死んでまえー!」
その背中に向けて純が怒鳴る。
警備員*20「へっへっへっ、覚悟は出来たかいお嬢ちゃん?」
そこへ警備員*20から声がかかる。
純「うひー!死にたくなーい!」
泣きながら純はそれを迎え討った。
睦月「遂に管制室!捨て石のおかげで無傷で到着できたな」
感慨深げに睦月は言った。とはいえ作戦はここからが本番。管制室を占拠して、下から
氏家奈緒の部隊を引き入れなければ捨て石達の犠牲も水の泡だ。
子鹿「そうですねー、頑張らないと」
睦月「おっと!バンビちゃん!そういやすっかり忘れてたけど今まで何してたんだ?」
不意に今まで一言も喋らなかった子鹿から声を掛けられ、睦月はびっくりしてそう聞き返す。というか、今まで子鹿が側にいたことも完全に忘れていた。
子鹿「戦いの記録を書き取ってたんですよ。子鹿は書記ですから」
子鹿はそう平然と答える。
睦月「いたなら純の手伝いに残ってやれば良かったのに……」
睦月はそう言ったが、それなら自分が残るという考えはないらしい。とまれ、子鹿はそ
の問いに首を横に振った。
子鹿「書記は最期まで見届けなければいけませんから」
睦月「うーん……まあいいか。とにかく突入だ」
子鹿「はい!しっかり記録しますから頑張って下さい!」
睦月「……ホント何しに来たんだ?ええい、まあいい!」
かけ声と共に睦月は管制室の扉を蹴破ってなかに踏み込む。子鹿もこそっと睦月の陰に
隠れて突入した。
睦月「フリーズ!手を挙げろ!」
七間棟ボス「くっく(略)」
(この間激闘があったと思って下さい)
睦月「奥義を破ったり破られたりしながらどうにか勝てたな……」
激闘に疲労した睦月が破れた胸元(サービス)を腕で隠しながらそう呟く。睦月に破
れた七間棟ボスは、気を失って簀巻きにされている。
睦月「さて……管制室を制圧したは良いものの……この訳わからん機械をどう扱えばい
   いのやら?」
取り敢えずコントロールパネルの前に座ってみたが、今更になって睦月は首をひねる。
睦月「バンビちゃん、これ操作できる?」
子鹿「子鹿は書記なのでさっぱりです」
一応子鹿(戦闘も見てただけ)にもそう聞いてみたが、役立たずは徹底的に役立たずだ
った。
睦月「まあそうだとは思ってたけど……どうしたもんかな?そろそろ増援来ちゃうよ」
事実幾つかあるモニターの一つには、大手道を駆け上がってくる警備隊のが写っている
し、各校舎からこの七間棟への援軍が急行している映像もある。
純「何をしているの?」
と、睦月が悩んでいるところに、不意に後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
睦月「ああっ!?お前は死んだはずのジュンちゃん!?」
見ればそこには二十人に囲まれて死んだはずの純が立っていた。
純「勝手に殺さないでよ」
睦月「しかしあの状況で生き残るとは……ん?左手無いけどどうしたの?」
子鹿「あっ、ほんとだ。ありませんね」
睦月の言葉に子鹿も純の左手の辺りを見る。確かに睦月が言うように、本来左手がある
べき場所に今は何もない。
純「……もっと驚いてくれても良いんだけど。左手無くなってるなんて大事なのに何か
  冷たいわね?」
睦月「左手はどうしたんだよジュンちゃん!?これでいい?」
言われて睦月は白地らしく大げさに驚いてみせた。
純「……まあ良いけど。勝利のためには腕の一本ぐらい惜しくない、って所かしら?」
子鹿「腕切っちゃったんですか?痛くないんですか?」
子鹿が、今度は本当に心配そうな声で聞いた。なにやらメモらしき物をしきりと書いて
いるのは気になったが、一応純も満足する。
純「もともと義手だから痛くないわよ」
睦月「そんなこと初耳だが」
睦月が首を傾げていった。純とは長いつきあいだが、今日まで遂に知らなかったことだ。
純「切り札は味方にも知らせないものよ」
純は誇らしげに言い返す。
睦月「すると義手に武器でも?」
純「いえ、相手が手首掴んだときに外してびっくりさせるだけだけど……」
睦月「しょぼ」
純「うるさい。とにかく、制御コンピュータが動かせないで困ってるんでしょ。私が操
  作できるからそこどきなさい」
睦月「おっ、そりゃ助かった。頼むよ」
言って睦月は純に場所を譲る。純は譲られた椅子に座り、おもむろに操作を開始しよう
としたが、困ったような顔をして止まってしまった。
睦月「どうしたの?早くしてよ」
睦月がそう言って純を急かす。余り時間的余裕もない。
純「それが……左手の義手がないから左側のキーが押せないのよ」
睦月「……しかたない。私がジュンちゃんの左手になるわ」
純「なんだかプロポーズされてるみたいね……気持ち悪い」
睦月「ばか、早くしてよ」
そう言うと睦月は純を持ち上げ、今まで純の座っていた椅子に座ると、自分の膝の上に
純を座らせた。
純「ちょっと」
睦月「この方がやりやすいわよ」
苦情を言おうとした純を制して睦月が言った。純は納得したわけではないようだが、時
間もないので操作を開始する。
この時点で、西美濃校は稲葉山校舎の大手道と百曲道を管理下に収めことになる。あと
は馬の背を確保し、斉藤興美の居る生徒会本校舎を制圧すれば作戦は完了する。
197 ◆nT0xknNOBU :02/11/18 20:18
まだ終わってないわけですが(;´Д`)
竹中十六騎とか出したのは大後悔。
管理しきれないし長くなるし・・・
お疲れ様です
199無名武将@お腹せっぷく:02/11/21 13:31
人いないな
書き手も◆nT0xknNOBU氏と◆3p92bitL/A氏しかいないいし…
やっぱ三戦板ってネタスレを育てる土壌がないのかなぁ…
>197
キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!

再び半角二次元スレを復活させるという手も…
痴漢保守
202無名武将@お腹せっぷく:02/11/25 00:27
Fたん(;´Д`)ハァハァ
おや?昔うpろだから拾った絵を整理してたらFさんぽい絵が…
>>200
虹板は相変わらずスレ保持に血肉を削っての消耗戦が連日繰りひろげられています。
ここに安住の地があるのなら、あちらでのスレ建てまでは勘弁して下さい。
また萌えのメインのライン(ゲーム、アニメ、漫画、ネット)から外れているネタはソッコーdat落ちします。
雑談スレで絵描きさんの募集して、こちらに誘導するくらいにしておいてもらえるとありがたいです。
初期からこのスレを楽しみにして来たので、またあの保守地獄に立ち会うのは耐え難いものがあります。
205200:02/11/26 20:26
>204
私も虹住人ですから…w
圧縮即スレ建て直し地獄な状況なのは重々承知しております。それでかな板に立ててくれた人
もいたけど、やっぱり落ちましたしね…。虹でも自治スレも再建して動き出しているようなので、
そちらに期待。ではでは。
一重「ムーちゃん達大丈夫でしょうかっ?」
全力疾走で馬の背を目指す車のなかで一重は呟いた。今更心配などしたところで無意味
だが、それでも気になることはつい口に出してしまう。
佐和「大丈夫だと思いますよ……根拠はないですけど」
安心させようとしているのかそうでないのか、佐和は一重の呟きに応じてそうこたえる。
もとより一重も確信が欲しいわけではないし、要するに呟いてしまったというに過ぎな
いから、敢えて佐和の言葉を疑問に思って問いただしたりはしない。もっとも一重は失
敗の可能性は微々たるものだと思っている。自分の立てた計画に自信を持っているから
だ。それでもこういうつぶやきを漏らしてしまうのは実際の経験が少ないからで、ただ
その点に於いてのみ一重は自分を信じ切れないものがあった。
一重(美濃はつまらないところですっ……)
心にそう思い。思うと同時にその心の呟きを自戒した。今はそう言うことを考えるとき
ではない。
クララ「Ya、着いたよ一重。馬の背だ」
一重「クララさん、回りに人気は有りますかっ?」
クララ「Aー、立番二人だけだNE」
一重「予定通りですねっ。タカさんっ、コンちゃんっ、サッチーさんっ」
タカ「はいよ」
九尾「はい」
佐和「そのあだ名は呼ばないで欲しいんですけど……はい」
一重「三人は速やかに警備員二人を沈黙させて馬の背道を確保して下さいっ。他の警備
   員も来ると思いますけどっ、タカさんを中心にバリケードを作って防いで下さい
   っ。七間棟の管理システムが制圧され次第徹美さんが上がってきますのでそう長
   い時間ではないですっ」
一重は早口に言って三人に確認を促す。
佐和「そして七間棟が失敗すれば、私達は稲葉山の露に消えるわけですね……」
佐和が言わなくても良いことをいちいち言って士気を盛り下げる。
タカ「何いってんだ。ピー(規制)付いてんならそれぐらい覚悟しとけよ!」
それを吹き飛ばすようにタカさんが無茶を言う。というか、下品。
佐和「付いてないですし……タカさんは付いてるんですか?」
タカ「おう!心のピー(規制)は何時もびんびんだ!」
一重「タカさん、その辺で勘弁して下さいっ……」
余りと言えばあんまりなタカの言葉に、一重は居たたまれなくなってそう言った。
九尾「コンちゃんも付いてますよ」
それで片づいたと思ったところへ、九尾がまた要らないことを言ってこんがらかせた。
佐和「えっ……うそ」
九尾「嘘じゃないですよ。ほら」
一重「わわっ、コンちゃん何見せる気ですかっ!」
何をするつもりなのか、ごそごそと手を動かす九尾を一重が慌てて止めようとする。し
かし、それよりも早く九尾が自分のものを皆に見せてしまった。
九尾「ほら、コンちゃん九つも付いてますよ」
と言って、九尾は三つ編みに結った髪を見せた。ちょうど九つ。
佐和「ナインテール……」
タカ「おお、太くて黒くて立派だな」
一重「タカさんっ……ほんっと勘弁して下さいっ……」
一重は疲れた声でそう吐き出した。
佐和「コンちゃん、ピー(規制)っていうのは髪の事じゃなくてね……」
一重「サッチーさんっ、説明しなくていいですっ!」
余計なことを九尾に吹き込もうとする佐和を、一重がまたも慌てて止める。しかし、今
度は止められた佐和が一重の方を見てにやりと笑った。
佐和「ピー(規制)の事を知ってるなんて……一重ちゃんのむっつり」
一重「あああああっ……!とにかくっ!私とクララちゃんはこのまま生徒会校舎に突っ
   込みますからっ。ここは頼みますねっ!」
放っておくと何時までも終わりそうにない会話を一重は強引に絶ち切って、突き飛ばす
ようにタカ、佐和、九尾を車外に追い出す。
一重「頼みますよーーっっ……」
そして音のドップラー効果を証明しながら一重を乗せた車は走り去る。
九尾「行ってらっしゃーい」
九尾が手を振ってそれを見送った。
佐和「……じゃあ、死にたくないから戦いましょう……」
タカ「そうだな」
と、言ったタカの肩には、既に沈黙させた警備員が二人乗っていた。
九尾「早いですね」
タカ「早いとこ片したいんだ」
佐和「じゃあ……やっぱり私達の活躍はカット?」
九尾「この先もきっと出番無いですよね……コンちゃんは狐さんを召還したり出来るん
   ですけど……」
タカ「まあ、仕方ない。それよりバリケード作るの手伝ってくれ」
言われて九尾と佐和はしぶしぶタカのバリケード作りを手伝う。このあと九尾が狐に埋
もれたり佐和が狐に埋もれたりタカが狐を殴って九尾が泣いたりしながら稲葉山警備隊
の攻勢を防いだのだが、その辺は省略。とにかく、馬の背も制圧されたので奈緒と徹美
の部隊は稲葉山への進入を確保することが出来た。
さてそのころ、一重の乗った車は生徒会校舎の玄関に文字通り突入し、当然のように大
破していた。
一重「う……んっ……はっ!」
シートベルトを締めていなかったので思い切り前部座席まではじき飛ばされた一重が、
目を回しながらも何とか意識を取り戻す。
一重「あいたたたっ……何が起こったんですっ?」
頭を振りながらそう言って辺りを見回す。フロントガラスは全壊、前部座席の助手席側
は校舎の壁にめり込んで完全につぶれている。幸いにして運転席は潰れておらず、運転
手のクララも気を失ってはいるが、エアバックのおかげで怪我もないようだ。しかし惨
憺たる状況と言っていい。
一重「これはっ?」
なぜこんな事になっているのか、思い起こそうとした一重の脳裏に事故直前の状況がフ
ラッシュバックした。
〜回想〜
クララ「突っ込むよー、突っ込むよー、ズガンと一発ー、YAーHAー」
一重「わわっ!クララさん止まってください〜っ!」
クララ「OH!なんで?一重突っ込むって言ったよー言ったよー」
一重「それは言葉の意味が……ああっ!?」
どっかん
〜回想終わり〜
一重「……とにかくクララさんを起こさなくてはっ」
一重はひしゃげた助手席を這いずり進み、運転席でのびているクララの元にたどり着く。
一重「クララさんっ、クララさんっ、起きてくださいっ」
言いつつ激しくクララの肩を揺する。しかし起きない。気を失っているのだろうが、何
となく健やかな寝顔にも見えた。
一重「……」
その寝顔をどう思ったのか知らないが、一重はクララを起こす努力を放棄し、一人で曲
がったドアを押し開け車の外に出た。
回りには、衝突に巻き込まれた警備員が数名クララと同じように目を回していた。死ん
でいてもおかしくないと思うが死んでいない。ただすぐ目を覚ますだろうし、生徒会校
舎内に居るほかの警備員もそのうち駆けつけてくるだろう。そう言えば何人かの人数が
駆けてくる足音が聞こえるような気も。
一重「クララさんのことほっといたら捕まっちゃいますねっ……」
呟いてから、一重は決心して足音と反対の方へ駆け出す。多少遠回りになるが、生徒会
室の方向である。しばらく走ったところで、後ろの方からインチキな外国語が聞こえた。
クララ「ya! Gibt es jemand, der Japanisch spricht? 全く君らは話にならない!なぜって私
    の言葉を全て全く理解しないんだもの!君らは文明世界の人間ではないにちが
    いな……」
何か大人数ともめているようだが、次第にその声は小さくなっていく。
一重「クララさん死なないで下さいねーっ……」
と、見つかってはまずいので小さな声で声援を送り、一重は足を早めた。

と言うことで、すんなり生徒会長室前。
一重「さて生徒会室に着いたわけですが……どうしましょうっ?」
に着いてみたところで一重は少し悩む。このままここで徹美と奈緒の到着を待っても良
いのだが、それではせっかく先行した意味がない。
徹美や奈緒に先行したかったのは、これは西美濃校の三人にも言っていないのだが、穏
便に興美の身柄を確保するためである。短気な徹美や興美に良い感情を持っていない奈
緒では、興美を確保した後どういう処置をするか分からない。まさか殺したりするはず
もないが、悪くすれば国外追放か、奈緒に変な事されて廃人とか言う可能性もなきにし
もあらず。それを避けるために生徒会長室に急行したのだが、不慮の事故で頼りにして
いたクララ(頼りにしてたのです)が居なくなってしまったため、非力な一重だけでは
興美に抵抗されたとき確保には不安が残る
一重「武器は有るんですがっ……」
と言って取りだした手の中には、空気中の酸素と結合して一瞬にしてその場の生物を骨
にしてしまう超兵器、がある。
一重「でもこんなの使ったら本末転倒ですよねっ」
と言うわけでこの話はなかったことにして、一重は再びそれをポケットにしまった。
一重「でも、どうしましょうっ……」
悩む、しかし悩んでも答えのでないことが一重にもある。と、そう言うときは悩む自分
ではなく回りの状況が変化するものらしい。生徒会室の扉の前で悩む一重の前で、当の
扉が大きく開け放たれる。外開きの扉なので、当然一重ははじき飛ばされた。
一重「あわわっ……」
扉にはじき飛ばされて後転した一重が、その場にへたり込む。幸いそう強い力ではなか
ったので怪我などはしていない。
翔子「何よこの騒ぎ→?」
一重「あ、翔子さんっ?」
へたり込んだ姿勢のまま、一重は扉の中から出てきた人物を見てそう言った。その傲岸
無知を絵に描いたような顔、意味もなく人を見下した態度、おまけにそれでも自分は賢
いと思っている度し難い表情。間違いなく生徒会長斉藤興美の佞臣斉藤翔子に間違いな
い。
一重「翔子さん、何でここに居るんですかっ?」
一重は思わず翔子にそう訊ねてしまった。いや居ること自体は不思議ではない。と言う
か、一重は翔子の身柄も確保して追放する気だったから、居てくれないと困るのだが、
この時間生徒会長室にいられても困るのである。調べによればこの時間、興美は生徒会
室にこもって昼の人気番組、更にその後の昼ドラを見ているはずなのだが。
一重「と、そうなってるはず何ですけどっ……」
翔子「あ→、ラッシャー木村が集団脱走してさ→、臨時ニュースでドラマ中止になった
   から抜け道から抜け出してどっか遊びに行ったよ。私は留守番でさ→、あいつ一
   人だけで遊びに行くから退屈なんだよね→」
一重「そんなっ……それは何時のことですかっ?」
翔子「ん?一時間ぐらい前かな→?」
一重「ああっ、理奈さんが稲葉山を包囲する前ですっ……」
がっくりと肩を落とす一重。そんな一重を翔子はいぶかしげな表情で見た後、不意にこ
の状況の不自然さに気付き声を上げた。
翔子「ちょっと!どっかで見たこと有ると思ったら西美濃のおさげの小娘じゃない!あ
   んたこんな所で何してんのよ→!」
一重「あっ……気付きましたかっ?別になんて事はないんですけどっ……」
翔子「何よ→?あ→?下の騒ぎとも関係あんの→?」
一重「まだ気づいてないんですかっ?」
一重はびっくりして翔子の顔をまじまじと見つめた。嘘をついてるようには見えない。
本当に驚いているようだ。
一重「驚きましたっ、あんなに大騒ぎしているのに、生徒会室にいる翔子さんには一切
   情報が入ってないなんてっ」
翔子「だから何よ→?」
まだ状況が理解できていないらしい翔子が、少し不機嫌な声で更に一重に問いただす。
一重はそれにはこたえず、ゆらりと立ち上がり、スカートに付いた埃をぱんぱんと叩い
て落とした。
翔子「いいなさいよ→」
一重「普段から美沙さん任せにして、警備体制を直轄していないからこういう混乱が起
   こるんですっ。今の翔子さんの無知は、そのまま美濃学園の無知であり、ひいて
   は稲葉山が中身のない空っぽの城塞であることの証明ですっ。美濃学園はまさに
   累卵の危うきに瀕しているんですっ」
翔子に聞かせるためにでもないだろろうが、一重は一気にそう言いきった。本当なら興
美に聞かせたかったのだろうが居なければ仕方ない。興美の行状の片棒を担ぐ翔子にぶ
ちまけ、溜飲を下げるぐらいしかない。それにしても、全く労多くして功少なしである。
これではネズミを捕るのに山狩りをしたようなものだ。
翔子「何よ→、無知とか言ってんじゃないわよこのガキ→?泣かしちゃうわよ→?」
一重「本当なら興美様にお説教するはずだったんですがっ……翔子さんが相手では仕方
   ないですねっ。さっき悩んで損しましたよっ。問題なく、徹美さんに捕まえて貰
   いますっ」
翔子「何よ?徹美ってあの暴力女?あいつ来てるわけ→?っていうか→、人の話し聞け
   よな→、チビ→?」
徹美「私が聞いてやるよ翔子」
翔子「アウッチ!?誰!?」
と、翔子の背後からタイミングを見合わせたように徹美が声をかけた。実はついさっき
から後ろにいたのだが、一番いいタイミングで登場しようと息をひそめていたのだ。
翔子「てめえは徹美!ここで会ったが百年目だっちゅーの!」
一瞬驚いて飛び上がった翔子だったが、相手が恨み骨髄に徹する徹美と知るや、すぐに
雄叫びを上げて掴みかかろうとする。
徹美「古い」
翔子「いやん」
しかし元より実力が違う。軽く振り抜いた徹美の裏拳一発で、翔子は軽々とはじき飛ば
され、地面に這い蹲った。
翔子「いやん痛い。でもまだまだぁ!」
這い蹲ったままくねくねと動く翔子。そしてくねくねと起き上がると、すぐさまメイン
ウェポンの蝶のナイフを抜きはなった。
翔子「この前は不覚をとったけど今度はそうはいかないわよ→?飛翔流短刀術をとくと
   みよ!」
不敵な表情を浮かべ構えを取る翔子。
徹美「うるさい」
翔子「いやん」
が、それも徹美が思い切り投げつけたソフトボールによって敗れ去る。
徹美「翔子、もうお前の時代は終わったんだ……興美を逃したのは残念だが、君側の奸
   除かずにおけるものか」
徹美は静かに言い放つ、しかし、それでもまだ翔子はあきらめない。
翔子「まだまだぁ!この前のように警備員を呼んで取り押さえてもらえば済むわよ→だ」
徹美「警備員ねぇ……じゃあ呼びますか。おい!西美濃校警備隊もういいぞ、こっちこ
   い!」
翔子「えっ?えっ?何それ?」
徹美の呼びかけに応じて、待機していた西美濃校の警備隊と一重の率いてきた16人、
ついでに氏家奈緒がぞろぞろと姿を現す。徹美は趣味悪く、最後の最後で翔子を絶望さ
せてやろうと、自分以外の人数を待機させていたのだ。
奈緒「そう言う訳なのよ〜。ごめんね翔子ちゃ〜ん、稲葉山は完全に西美濃校の占領下
   にあります♪」
翔子「聞いてないんですけど→……?」
徹美「そりゃ、お前が馬鹿だからだよ」
流石に呆然とする翔子。しかし、次の瞬間判然と何かを悟ったように身を翻し、自分の
後ろにいる一重の方に躍りかかろうとする。
翔子「ガキを人質にっ……!」
純「往生際の悪い」
が、それも純の投げつけた義手が回転しながら翔子の後頭部を直撃する事で未遂に終わ
った。ばったりと倒れ落ちる翔子。いささかあっけないが、稲葉山はこれで完全に西美
濃校の手に落ちたことになる。
一重「終わりましたっ……」
複雑な溜息をついてから、一重はそう呟いた。稲葉山占拠の情報はすぐに広まり、興美
にも届くだろう。その時興美がどういう反応をするか、今の時点では分からないが、こ
れに懲りて反省してくれるとはとても思えない。それに興美だけではなく、尾張にもこ
の情報は届くに違いない。それがどんな新しい状況を生み出すのかも、また未知である。
ただ、今までのようにある意味のんびりとした時代が終わったことだけは確かである。
金城鉄壁の稲葉山城が落ちたことは、美濃が決して不落でないことを一重の手で証明し
てしまったようなものだからだ。
一重(美濃学園、西美濃校、尾張、それから近隣の諸校っ。みんなこれからは本気で美
   濃の覇権を狙いますっ)
つまりこの瞬間より、美濃は今まで以上の本格的な争奪戦に突入する。
216 ◆nT0xknNOBU :02/11/28 21:38
終わった(;´Д`)
夏に終わる予定だったのに・・・長かったなぁ(;´Д`)
途中やめちゃおうかとおもいつつ続けられたのも、
偏に皆さんのおかげです。感謝。
最も後半かなりだれましたが・・・
機会があれば書き直したいところですが、
きっとやんないでしょう。

次は夏にやる予定だった(ウヘェ)話の予定。
当然夏の話だったんですが、もう冬ですね(;´Д`)
ちょっと間が空くかもしれないです。
出し忘れてた滝川を出す話です。
出し忘れというと林もなんですが、
まあこいつは大した事してないしいいかな、と。
全84話巨編!!NOBUさんお疲れさま。これからも頑張ってください。
そして最終的にクララ(;´Д`)ハァハァ
218無名武将@お腹せっぷく:02/11/29 01:22
林通勝ひさんなり
hosyu
保守で。
221無名武将@お腹せっぷく:02/12/08 01:59
保守
hosyusyu
保守
224 ◆3p92bitL/A :02/12/15 23:43
保守っつーことで
ある日曜日の昼下がり。大学受験を控え、金光高子さんは市立図書館の
閲覧室でお勉強中です。
しかし、高子さんは机の上に広げた教科書やノートからは目を離して、
シャープペンシルを弄びながらよそ事を考えているようです。
高子「危機よ。宇喜多直美さんは我が天神山学園の風紀を根底から崩す
  白蟻なのよ。どうして千景さんにはそのことが分かっていただけな
  いのかしら」
*「…」
高子「私には理解できませんけれど……個人の趣味にとやかく言うほど
  私は心の狭い人間ではありませんわ。ただ、私は天神山学園の校風
  を守りたいだけ……」
*「…の…」
高子「この頃の学園の風潮に眉をしかめている方々も少なくありませんわ。
  風紀局長として、彼女たちの想いに答えなければならないのに……」
*「もしもし?」
高子「え……」
かかる声に、高子さんがふと顔を向けると、長い黒髪の女性が隣の席か
ら微笑を浮かべてこちらを見ていました。
どことなく村江様に似てる、というのが高子さんの第一印象でした。
浦上村江―先代の生徒会長。
伝統ばかりで抜け殻となっていた播磨学院を飛び出し、真のハイソサイ
エティを育成する学園を建学した、高子さんが最も敬愛する人物です。
高子「何か御用ですか?」
*「いえ、別に用があるわけではないですが、心ここにあらずという様
  子でぶつぶつと独り言をもらしていらっしゃったものですから、気
  になって」
高子「それは申し訳ありません」
すると、黒髪の女性はくすっと笑いました。
*「そういう意味で言ったのでは……何を悩んでいらっしゃるか気にな
  っただけですわ。もしよろしければその悩みを聞かせていただけな
  いかしら」
いきなりの予期せぬ言葉に、高子さんは戸惑います。
高子「そんな、見ず知らずの人に」
*「そう。本当はあなたの口から聞きたかったのですけれど……いいで
  すわ。悩みの元は宇喜多さん。そうではなくって?天神山学園風紀
  局長の金光さん?」
高子「!!!どうしてそれを?」
思わず大きな声を出して椅子から立ち上がった高子さん。はっとして口
を抑えたけれどもう遅い。閲覧室中の全員の視線を浴びて赤面してしま
います。
*「あらあら、風紀局長が図書館で大きな声を出してはいけませんわね。
  後はロビーでお話しましょうか」
場所は変わって図書館のロビー。
未だ驚き覚めやらぬ高子さんに、謎の女性は話し始めました。
*「さて。今、貴女はこう思っていらっしゃるはずよね。『あなた、誰?』
 『どうして私の名前を知っているの?』『どうして私の考えている事
  を当てる事が出来たの?』どうかしら?」
高子さんが無言で頷くのを見て、彼女は悪戯っぽく微笑みます。
*「では、まず一番目の答え。私の名前は三村千佳。備中学園高等部の
  生徒会長をさせていただいているわ」
千佳「第二の答えは、テーブルの脇に詰まれていた参考書の名前を拝見
  しましたのでわかりましたの。そして最後の答えは、これが一番
  簡単ですけれど、天神山学園の金光高子さんが異端児宇喜多さんに
  悩まされているという話は備中高校にも伝わっていますから」
高子「…お恥ずかしい話です」
高子さんは本当に恥ずかしくて、自分で自覚するくらい赤面しました。
高子「風紀局長なのに、力不足で、たった一人にかき回されて…私に
  期待してくれている方々に申し訳なくて」
すると、千佳さんの顔から微笑みが消えました。
千佳「いいえ、貴女は心の底ではそんな事を思っていらっしゃらないわ。
  悲劇のヒロインになっている自分に酔っているだけ。
  私は努力しているの、結果が出ないのは千景さんが宇喜多さんを
  野放しにしてるからなのよ、判ってください。そう思っているのよ」
優しい言葉を期待していた高子さんは、突然冷や水を掛けられてうろたえ
ました。
千佳「そうでなければ気づいているはずですものね。今、何をするべきか。
  簡単な事ですわ」
高子「えっ……」
高子さんは少し考えましたが分かりませんでした。
気まずい沈黙があり、まもなく千佳さんが口を開きます。
千佳「では、少しヒントを差し上げるわ。貴女は浦上村江さんの意志を
   継ぎたいと考えていらっしゃるのよね」
高子「…はい」
千佳「では、村江さんは播磨学院の赤松会長と意見が合わなかった時、
  私の言う事を聞いてくれないなどと弱音を吐いたのかしら」
高子「……天神山学園を飛び出しなさいってことですか」
千佳「やっと気づいたようね」
高子「でも……私にできるかしら」
千佳「備中学園グループが全面支援するわ」
高子さんは悩みました。
愛校心。学友。責任感。
いろんなものを天秤に載せて。
そして、悩み抜いた末に、やっとのことで答えを導き出しました。
高子「よろしくお願いします」
悲しき純粋まっすぐ娘、金光高子さん。
握手をする相手が心の奥で赤い舌を出している事にも気づかず、罠に
落ちていくのでした。
直美「ねーねー、たかこちゃーん」
高子さんと千佳さんの運命の出会いから数日後。天神山学園の生徒会
室に無遠慮な直美ちゃんの声が響きます。
高子「宇喜多さん。ちゃんづけは止めていただけないかしら」
直美「あはは、ごめーん、たかこちゃん」
当然の事ですが、ごめんといいながら直美ちゃんは毛頭直すつもり
などありません。
高子さんの方も、もう独立するんだと腹を決めてしまっているので、
最注意もしなくなりました。
高子「それで、なんですの」
直美「たかこちゃん、みむちゃんとなかよしって本当?」
高子「みむ?」
少しあって、みむ=三村千佳だと気がついた瞬間、正直にも慌てはじめ
ました。
高子「どうしてそれを知っていらっしゃるの?」
直美「なかよしさんなんだー」
高子「ち、違います。そんなことありませんわ」
でも、態度が肯定してしまっています。
直美「しょーじきにいわないとちかげちゃんにいいつけちゃうぞー」
この時期に千佳さんと親密である事が明らかになれば、独立に支障をき
たします。特に千景の耳に入れるわけにはいきません。
慌てた高子さんは直美ちゃんに聞き返しました。
高子「正直に答えたら、千景さんには黙っていていただけるの?」
直美「ん〜いいよ」
高子「絶対?」
直美「絶対。指きりげんまん」
高子「なら…言うわ。三村千佳さんとはお友達よ。でもただの友達で…」
それでもちょっと保身に走る高子さんでした。
直美「ふ〜〜〜ん」
直美ちゃん、にぱっと笑いました。
直美「うふふ〜〜」
何か良からぬ事を思いついたようです。
千佳さんが体調不良で生徒会長を突然辞任したという話を高子さんが耳に
したのは、それからまもなくの事でした。
直美ちゃんへの口止めだけで千景さんの耳に入るのを防ぐ事ができるわけ
もなく、実はしっかり目をつけられていたのですが、このことで、高子さん
の裏切りは今回は噂にとどまり、高子さん自身ももう少しだけ天神山学園
にとどまる事になったのでした。
いつのまにかキテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!! 吉屋信子っぽいw
232ほっしゅ:02/12/23 21:45
もっとたくさんの人が酸化してくれたらいいのにNe
233無名武将@お腹せっぷく:02/12/27 02:10
age
信子「突然だけどみんな、今は夏です」
太陽が濃尾平野を嫌がらせのように照りつけ、連日30度を超える真夏日が続く八月、
信子は生徒会室に集まったいつもの面子を前にそう切り出した。
長子「どうしたのですか信子様。これだけ暑いんですから、言わなくとも夏なのは皆さ
   ん分かっていらっしゃると思いますが?」
当たり前のことをわざわざ念押す信子に、長子が不思議がって言った。
貞子「そうですねえ。本当に、暑い日が続いて参ってしまいます。この間木曽川に現れ
   たアザラシのキソちゃんは大丈夫でしょうか?」
と、貞子。夏は暑いので北の生き物アザラシにはきついのではないかと言うことだ。夏
だから。
勝枝「あっ、俺それ見に行った。Tシャツ買ってきたぞ」
成美「うわぁ……勝枝ってばそんな恥ずかしい物買ったの?」
勝枝「何だよ成美。何か文句あんのか?」
成美「ないけど。馬鹿だなー、って思う」
勝枝「うるせー、お前の部屋にあるお兄ちゃんグッズよりはましだ」
成美「そんな海獣よりお兄ちゃんの方が可愛いもん」
勝枝「この変態ブラコン」
成美「変態じゃないもん。ちょっと血が繋がってるだけで好きになっちゃいけないって
   決まりの方がおかしいんだもん。そんな大人修正してやるもん」
勝枝「……アメリカの兄貴は、その気がないようだがな〜」
成美「……市に振られた勝枝に言われたくない」
恒江「ちょっとやめなさいよ二人とも」
下らないことから、言い争いを始めた勝枝と成美の間に、恒江が割り込んで言った。し
かし、勝枝も成美も口こそ閉じたが睨み合いをやめない。
恒江「もう、いい加減にしなさいよ。暑い日が続くから、二人ともストレスが溜まって
   るのかしらねぇ……」
恒江はうんざりとそう呟いて、夏の暑さを呪った。
盛美「太陽が眩しかったから、って?でもそんな理由で人を殺してたら、夏場の刑務所
   は通勤電車よりも混雑するわね」
恒江の言葉に盛美が茶々を入れる。と、どうせ冗談に、長子が更にそれを受け、続けて
言う。
長子「でも冬の方が空気が澄んでいるから、太陽は眩しく見えるかもしれませんよ?そ
   うしたら冬も大混雑ですね」
盛美「あん?あー、私寒いとコタツからでないし。大丈夫よ」
何が大丈夫なのか分からないが、とにかく夏は暑い。そして暑いが故に今は夏である。
信子「と、いうことで納得したわね。今は夏です」
恒江「ですから、それは言うまでも……」
と、しつこく念を押す信子に、恒江がちょっと困惑気味に返事をしようとしたとき、生
徒会室のドアがはじけるように開く。
利子「わんわんわん!信子様ー!寒いですねー!なんだか雪降ってきそうでだよー!そ
   したら利子は庭駆け回らなきゃいけないのかなぁ?どうなんですか信子様〜?」
素晴らしいスピードで生徒会室の中に走り込んだ利子は、いつものように元気に喚き散
らしながら信子に向かって飛びついた。さほど体重のない利子とはいえ、全速力なので
普通なら倒れてしまいそうだが、信子は馴れているので難なく受け止める。
利子「雪が降ったらホワイトクリスマスだよ〜。あれ?でもクリスマスはこの間過ぎま
   したよ?じゃあダメです〜。こういうのはなんて言うのかなぁ?ホワイト大晦 
   日?ホワイト除夜?」
信子にまとわりつき、両腕を首に巻き付け鼻を顔にスリスリとなすりつけながら、利子
はそう言う。まるで、有るはずのない尻尾が、ぱたぱたと振られているかのように、錯
覚しそうな姿である。
もっとも生徒会室にいる皆は、利子の騒がしさを今更驚いたりはしない。ついこの間利
子が生徒会に復帰してからというもの、ほぼ毎日のように同じ光景を見ているからだ。
ただいつもなら、この辺で信子が利子を体から引き剥がし床に、酷いときは窓から地面
に叩き付けるところだが、今は夏なので信子はそれを控える。
信子「何言ってるのよ利子。今は夏でしょ」
そして、珍しく諭すように利子に言った。
利子「にゅわう?夏〜?」
利子は不思議な顔をして信子に聞き返す。
信子「ほら、室温計も30度を指してるし、外は陽炎満載でもうえらいことに」
利子「れれっ?暑いですよ?」
信子「暑いのだよ。暑いと言うことはすなわち夏なのよ。違う?」
利子「違わないよ〜、信子様の言うとおりだよ〜、今は夏だよ〜」
信子「わかればよろしい」
利子「でももうすぐ年が明け……」
そうを言い終える前に、信子は利子の襟首を掴んで窓の外に放り出した。

信子「そう言うわけで夏なんだけど、夏と言えば何を思い浮かべる?」
利子がいなくなった生徒会室で、信子は利子の事はなかったことにしてあらためて仕切
直し、皆にそう聞いた。
長子「ちょっと、質問の意図がよく分からないんですが?」
それに長子が聞き返す。
信子「まあ良いから、思いつくまま言ってみて。夏と言えば、何が思い浮かぶ?」
恒江「はぁ、やはり海でしょうか?毎年夏休みには家族で海水浴に行きますから」
意図を掴みかねながらも、まず恒江が取り敢えず自分の考えを述べてみる。信子はこれ
を聞き、さもあろう、と言う表情で頷く。
勝枝「俺は山だな。暑いの苦手だし」
と次に、勝枝が言い。更に続けて貞子が、
貞子「そうですねぇ……心霊特集とか。家のおばあちゃんが『あなたの知らない世界』
   とか好きだったんですよ。それで、夏休みは何時も付き合って見ていましたねぇ」
長子「なんだか、じめっとした夏休みですね。今も見てるんですか?」
貞子「いいえ、おばあちゃんが私の知らない世界に行っちゃってからは見ていません。
   でも、今でもこの時期になると、お昼頃勝手にテレビが点いて、心霊特集の番組
   が流れてたりすることがありますけど」
盛美「やめてやめてー!私そーゆーの苦手なのよ!」
と言って盛美を怯えさせたりした。
成美「幽霊が心霊特集見るのー?変だよー。そんなことより、なるは海外旅行に行きた
   いな。アメリカにはお兄ちゃんがいるかもしれないし……」
成美はあくまでお兄ちゃん中心主義で、別に夏とは直接関係なさそうな事を言う。が、信子はその成美の言葉も黙って聞き、これにも小さく頷く。
長子「夏ですか……そうですね……戦争、とか」
と、今度は、少しの間思案を巡らせていた長子が言った。
勝枝「何だよ戦争って?」
長子「今年のように、暑い夏でした……」
しみじみと呟き、長子は一人納得したように瞑目する。不審だが、何か恐いので誰もそ
れ以上突っ込んで聞かない。
信子「みんなの意見は大体分かったわ。他には?」
長子の事は取り敢えず置いておくとして、意見を聞き終えた信子はそう言って、言い残
したことはないかと、もう一度皆を見渡す。どうやら、他に意見もないらしい。もっと
も、信子の意図が分からないので、これ以上何も言いようがないと言うのもある。
盛美「信子様、私まだ言ってませんよ。そうですねー、やっぱ恋の季節とか……」
信子「無いようね」
何か言っている盛美は無視して、信子は話を進める。
盛美「……信子様、もしかして私のこと嫌ってません?」
盛美はそう呟いていじけるが、信子は気にしない。その言葉諸共、盛美を黙殺した。
長子「それで、なんだったのですか?」
信子「んー?ちょっと、生徒会の慰安を兼ねて旅行にでも行こうかと思って。ねえ貞子、
   こないだの月次決算、大夫余裕があったんでしょ?」
貞子「そうですねぇ。先月は墨俣校の建築とか、美濃学園への侵攻とかお金の掛かるこ
   ともなかったので、割と余裕があります」
信子「まあそう言うわけだから」
勝枝「んじゃ、行き先決めるために俺達に意見聞いたの?」
信子「いえ、もう行き先は決まってるわよ。幸いなことにみんなの希望をもれなく叶え
   てあげられそうね」
勝枝「漏れなく?」
信子「漏れなく。山で海で心霊でアメリカで戦争よ」
成美「何それ〜?」
信子「行けば分かるわよ。それから、参加は任意だけど、不参加の場合はお仕置きがあ
   るから。そうね、秘密地下室巡り地獄極楽ツアーを体験してもらおうかしら」
恒江「それは強制と同じでは……」
呟いた恒江を初め、生徒会室の一同は皆そう思ったが、文句を言っても聞き入れてくれ
るような相手ではないのも知っている。諦め顔になって、自らの運命を受け入れた。
信子「あっ、それと、当日は二人一組で行動してもらうから。組み合わせは明日決める
   けど、もし二人のうちどちらかでも欠席したり、途中で逃亡した場合には、連帯
   責任で地獄極楽ツアー行きね」
盛美「やり口が外道ですね……」
盛美が聞こえないように小さく呟く。実のところそれは信子の耳に届いていたが、信子
は無視して続ける。
信子「と言うわけで、質問はある?」
そう言って信子はもう一度皆の顔を見渡しす。不安や不満を顔に浮かべている者は居た
が、質問のある者は居ないようである。
信子「無いなら今日はこれで解散」
239 ◆nT0xknNOBU :02/12/30 10:04
いやはや連続投稿規制の厳しさと来たら・・・
部屋の掃除をこなしてもまだ書き込めなかったり。
きびしいなぁ・・・

>>217さん
>>84話
実は途中から板の字数制限が厳しくなったので
いままでの(*)と比べると(*/2)以下の分量なのでした。
それにしては随分掛かってしまいましたが(;´Д`)

◆3p92bitL/Aさん
おお、本格的に始まってきましたね。
やっぱ妹ちゃんは貞操帯とか付けてんのかなぁ・・・

しかしスレたてたときは一発ネタのつもりだったこのスレ、
どれぐらいの人が見てくれているか分かりませんが、
一年近く続いていると言うのも不思議なもの。
全く以て、全ての人に感謝であります。
240 ◆3p92bitL/A :02/12/31 13:47
>◆nT0xknNOBUさん
読まれてるYO 煤i゚д゚)
三村元親って貞操帯を想像するよなエピソードってありましたっけ?

241 ◆3p92bitL/A :03/01/01 13:02
今になって宇喜多秀家のことだと気づく罠…鬱
誰か来ないかなあ・・・
243無名武将@お腹せっぷく:03/01/08 19:53
職人さん復帰きぼんage
244山崎渉:03/01/11 02:12
(^^)
保守
246 ◆3p92bitL/A :03/01/17 01:33
>244さん
心当たりのない同姓同名の方なら次の文章は読み飛ばしてください。

二度と私の前に顔を出さないで下さい。
いっそ首を釣って死んでください。
E社を追い出されたあなたに生きている価値はありません。
247無名武将@お腹せっぷく:03/01/17 22:07
>>246
これはスクリプトだか、そういうソフトで延々あちこちの板に
書き込みするとか言った手合いだって。
しかしザキの書き込みでもなければdat行きかもなのが寂しい・・・
今の状況で作品とか絵がアプされても見てくれるのだろうか・・・。
漏れが(良質な)絵が描けてFLASHを創れれば、あちこちで宣伝して
活気づかせられるだろうが(w
248 ◆3p92bitL/A :03/01/19 00:00
>247さん
どうやらそのようですね(あちこちに書き込みがあるのを見てきました)
取り乱してスマソ

249山崎渉:03/01/22 14:33
(^^;
保守
まだ職人さんはいますか?
SSなりイラストなりの反応が見たいよう(ノД`)
252無名武将@お腹せっぷく:03/01/27 23:22
>145さん
うう…ありがたいお言葉です…嬉しいです。
しかしながら、他の職人さんに比べて私には文才が…。
明日から「天を衝く」読みます。がんがります。
ちょっとすいません、
趣旨が分かりません
254無名武将@お腹せっぷく:03/01/29 18:26
学校の隣の駄菓子屋のババア=北条雲子ってのはだめですか
255無名武将@お腹せっぷく:03/01/29 18:49
石田三成=堅物委員長系
大谷吉継=病弱薄幸系
小西行長=関西弁系とかどんどん行き所のない
妄想が広がってゆくんですが
>>255
良いなあその設定。
「信子ちゃん」ってタイトルからはずれちゃうけど、
関ヶ原がらみでの話で作れそうだな。
前回の会議から一週間余り、信子達は知多半島の某山にいた。
すでに尾張学園も普通の学園のように夏休みに入っているが、それは授業だけのこと。
生徒の多くは学園寮に残っている。それでも一般生徒は交代で実家に帰ったり旅行に行
ったりしているが、常時臨戦態勢の生徒会に休みはない。しかし、今回はその多忙をも
縫っての旅行である。
信子「と、言うわけで、みんなの慰安と親睦のために今知多半島の某山に来ているわけ
   だけど、質問ある?」
昼なお暗き原生林抱える知多半島の某山に集められた代わり映えしないいつもの面子
に、信子はなぜか威圧するような気迫を込めてそう聞く。
利子「はーい!信子様、利子質問があるよぅ!」
しかし空気の読めない人間はどこにでもいるもので、利子が元気よく質問してしまった。
信子「なに?」
利子「えーと、知多半島にこんな山……」
信子は速やかに利子を沈黙させた。
信子「他には?」
そしてもう一度皆にそう聞く。
長子「いいですか?信子様」
と、今度は長子が手を挙げる。
信子「いいわよ、何?」
長子「私達全員、今朝拉致……いきなりここにつれてこられたので、予定などを何も聞
   いてないのですが……どういった予定になっているのでしょう?」
信子「そうね……この間組決めしたでしょ。くじ引きして」
長子「ええ、二人一組で行動するという事でしたが……私と恒江様、秀美ちゃんとなる
   ちゃん、小麦様と利子ちゃん、勝枝様と盛美様、そして信子様と貞子様、ですね」
信子「説明ご苦労」
小麦「でも良かったんですか?学園生でない私まで」
今朝方墨俣から秀美と一緒につれてこられた小麦が、多少申し訳なさそうにそう言った。
今回の費用は全て信子のポケットマネーから出ているので恐縮しているようだが、信子
の企画が恐縮に値する訳のないことを、まだつきあいの短い小麦には解っていない。
信子「いいのいいの、元は取るから」
小麦「元?」
何か不審な言葉を聞きとがめ、小麦はいぶかしげに聞き返す。
信子「何でもないわ。さて、これからの予定なんだけど、初日の今日は、基本的に今言
   った組で行動してもらいます」
しかしそれを軽くいなして、信子は説明を再開した。
長子「初日ということは、日帰りでなく何泊かするんですか?」
信子「一応二泊三日を予定してるわね」
長子「一応?」
信子「状況によっては変わるかもしれないから。まあ、そんなのはいつものことでしょ」
長子「そうですね。信子様の計画は予定通り行ったことの方が少ないですし」
信子「……なかなか言うわね」
軽い嫌味に、信子は長子を少し睨んで言う。しかしさすがに付き合いが長いだけあって、
長子はそれをしれっと受け流した。
盛美「ところで、組ごとに行動って事は、今日は自由行動ですか?」
そんな訳で少し止まってしまった話の流れを、盛美がそう質問する事によって取り戻そ
うと試みる。もっとも盛美は、積極的にこの集まりに参加したいわけではない。ただ参
加しなければ何をされるかわからないし、信子の機嫌が悪くなると(最近は特に)盛美
が八つ当たりされる傾向にあるので、それよりはと仲裁をしたのである。
信子「いいえ、今日はみんなにオリエンテーリングをしてみようと思って」
盛美「は?駅のスタンプ集めたりするあの?」
信子「それはスタンプラリー。実はこの山の山頂付近にある小さな池に大蛇が出るって
   噂があるのよ」
盛美「はあ……大蛇ですか?」
信子「それで今日は、あなた達にその大蛇を捕獲してもらおうと思って」
盛美「えっ、大蛇をですか?」
信子「そう、大蛇を」
盛美「それは、どう考えてもオリエンテーリングとは別のものだと思うんですが……言
   うなれば水曜スペシャル的というか……」
信子「何か文句でもあんの?」
ぶつぶつと文句を言う盛美を信子は睨み付ける。
盛美「……いえ、別にないです」
信子「それならよろしい。ちなみに、その大蛇は池の守り神で、ちょっかい出すと祟る
   そうだけど気にしないように」
と、盛美を黙らせた後で、信子は不意に思いだしたように付け加えた。
盛美「ひゃふぅ!?ほ、本当ですかそれは?だめですよ信子様〜、私爬虫類はともかく
   そーいう心霊系は無茶苦茶苦手なんですから〜!」
信子「ん?そうなの?」
盛美「そうなんですよ〜……もー、そういう話し聞いただけで夜中にトイレ行けなくな
   っちゃうぐらい〜」
信子「ふふっ、そっか、それならなおの事これは外せないわね」
怯える盛美の表情を見て、信子は嗜虐的な笑みを浮かべつつそう言った。これは、盛美
が迂闊と言うべきで、禽獣の前でわざわざ弱点を告白するなど、愚かと言うほかに言葉
がない。
盛美「そんな、信子様は鬼ですか〜!?」
信子「ん、別に嫌なら参加しなくてもいいわよ?まあその時は大蛇の祟りよりものすご
   いことしちゃうけど。×××に△△△を○○て◎◎を▲ったり」
盛美「あわわ……17歳の乙女に、余りと言えば余りな所業……」
信子「まあ私はどっちでも良いけど……どうするの?」
盛美「うっ……大蛇コースの方が……まだまし……かな?」
渋々決断する盛美。
勝枝「まあ観念しろよ。俺も連帯責任だから、逃げようとしたら捕まえるぞ」
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブルしている盛美を、勝枝がそう励ます。無論何の気休めにも
ならないどころか、却って盛美を怯えさせただけだったが。
信子「解ってくれたようね。それじゃあ説明を続けるけど、運良く大蛇に呪われずに山
   を越えると、たぶん常滑市の市街地に出られるはず」
長子「たぶん?はず?」
信子「地理条件を無視してるから、確証はないのよ。一応山の地図はみんなに配るけど、
   これがどれだけ当てになるのか解らないわね」
長子「そんないい加減な……」
長子が呆れつつそう呟く。
信子「とにかくそう言うわけだから。常滑市についたらホテルで一泊。次の日の予定は
   生き残った勇者にのみ教えるわ」
長子「はぁ……」
あきらめと共に長子は息を吐く。
信子「さて、それじゃまず私と貞子が先行してスータトするわよ。それから10分ごと
   に、小麦さん&利子組、成美&秀美組、恒江&長子組、盛美&勝枝組の順でスタ
   ート。なお、この今来た道は既に尾張学園SP隊によって封鎖されています。く
   れぐれも逃げようなどと思わないように。……最後に、質問はある?」
信子は大きな声でそう言い、一同をざっと見回す。まだ気を失っている利子や、
((((;゚Д゚))))ガクガクブルブルしている盛美などは居たが、質問はないようだった。信子
はそれを確認して大きく頷き、朗らかに微笑みながら宣言する。
信子「では諸君、幸運を」
貞子「信子様、なぜ突然このようなことを思い立ったのです?」
みんなと別れてから薄暗い山道をいくらか進んだところで、先に立って進む信子に向か
って貞子はそう聞いた。
信子「ん?貞子には言ってあるでしょ」
貞子「それは伊勢攻略に派遣した春菜様を査察に行く、と言うことですか?」
信子「そうよ。憶えてるじゃない」
実のところ、信子はたんに遊びに出て来たわけではなかった。今貞子が言ったように、
本当の目的は、尾張学園生徒会の一員で、今は伊勢攻略の為出張している春菜、すなわ
ち滝川春菜の成果を見極めるという所にあった。これは他の生徒会の面々には秘密だが、
尾張学園の経営を担当している都合上、貞子にだけは密かに知らせてある。
貞子「ええでも、伊勢に行くだけでしたらわざわざこんな山を通ることは……とても、
   遠回りになるますし」
信子「ん、ちょっと常滑に用があって」
貞子「常滑に、御用ですか?」
信子「まあ、それなりに大きい港が有れば常滑でなくても良かったんだけど……ちょう
   どこの山があったからついでにと思って」
貞子「港?」
信子「おいおい解るわよ。それに、親睦を深めるというのも本当だし」
言って、信子は含みのある笑みを浮かべた。どうも、良くないことを考えているらしい。
貞子「はぁ……?」
貞子はよく分からなかったが、これ以上聞いても答えてくれないのは分かり切っていた
のでそれ以上は聞かなかった。そうこうしているうちに、山を登る信子の足が止まる。
信子「あっ、これね。貞子、隠れるわよ」
貞子「はい?」
急に隠れろと言われてきょとんとする貞子の腕を引いて、信子はいきなり山道をそれ、
枳の様な灌木の群に飛び込む。
貞子「きゃっ……」
突然だったので貞子は目を瞑って小さな悲鳴を上げる。木の枝が頬に当たる。しかし、それは灌木の堅い感触ではなく、布か綿のように柔らかい感触だった。と、しかしそれもすぐ過ぎる。
貞子「……ここはなんです?」
瞑っていた目を開き貞子は辺りを見回すと、そこは割合と広い空間になっていた。足下
は毛の深い絨毯で、さっきまでの薄暗い山道とは違ってしっかりと電気が通っている。
内装は壁紙だけのシンプルなものだったが、目を引くのは不自然なほど華やかなダブル
サイズのベッドだろう。有り体に言えばそれは、いかがわしいホテルのベッドのように
見えた。もちろん貞子はそんなところに入ったことはないから、TVなどの知識に拠る。
なぜこんな所にこんんあものが有るのか、信子はこの場所を知っていたのだから、答え
は一つだけだろう。あらかじめ、信子が用意していたのだ。
貞子「……信子様、これは」
ここまで来れば貞子にも大体の察しが付いた。
信子「ほら、やっぱり狩りは貴族の嗜みじゃない?」
貞子「聞くまでもないような気がしますが、獲物は何でしょう?」
さすがに貞子も呆れながら聞く。
信子「んー?取り敢えず第一目標は小麦さんね。同じ学校の娘ばっかりじゃ飽きてくる
   し、年上もたまには新鮮でいいかも」
貞子「小麦様、怒ると思いますけど……」
信子「そこは、ほら。小麦さんと組んでるのは利子でしょ。あの娘は私の籠中だか
   ら……ふふふ。ここなら悲鳴上げても誰も来ないし」
貞子「……」
信子「さ、分かったら待ち伏せ待ち伏せ♪」
やたら嬉しそうな声で信子は貞子を促して群に偽装した入り口にしゃがみこんだ。
263 ◆nT0xknNOBU :03/02/01 14:17
全然進まない今日この頃。
月に6レス分ってのはやっぱ少ないですね(;´Д`)
まさに人生中だるみ。

タイトルなんて飾りです。偉い(略)
世界設定とかも個人的には人それぞれでいいかと。
なにせ私は書くより読む方が好きでして、
世界中の本を集めた図書館があったら他の娯楽が無くても一生過ごせるぐらい。
もっとも現実には新刊はなかなか図書館にはおかれねーし、
買うってもハードカバーだと12〜500円ぐらいして何冊もは貧に厳し。
おまけに図書館に行く時間はおろか読む時間だってなかなか・・・
と、これは愚痴になってしまいますたが(;´Д`)
つまり、書いてくれる人がいるといいなぁ・・・と。

それではまた、(出来るだけ)近い内に。
新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
こういうまったりした話も(・∀・)イイ!!
自分は愛知在住なだけに見慣れた地名がなんだかうれしいw
しかし信子のサディスティックさが(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
信子ちゃんキタ━━(゚∀゚)━━( ゚∀)━━( ゚)━━( )━━(゚ )━━(∀゚ )!!!!
あー、このアホっぽさがたまらない(誉め言葉)
NOBUさんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
書こうにも私は随分前に虹板から流れてきただけなので戦国知識が皆無なのです…。
そんなわけで2ch的名作を。興味があったら読んでみてください。
FTPって?
http://tmp.2ch.net/test/read.cgi/download/988259595/
267無名武将@お腹せっぷく:03/02/05 22:35
あげるぞこのや狼

漏れもいつか職人になる
保守
小麦「なんだか寒気が……」
そのころ、遅れること10分で出発した小麦、利子ペアは、信子達と同じルートを通っ
て山頂を目指していた。当然、このまま行けば信子達の潜む群を通ることになる。
利子「小麦さんだいじょぶですか〜?」
利子は呟いた小麦を心配して聞く。
小麦「うーん、別に風邪をひいた感じでもないけど」
自分で自分の体をさすりながらが、小麦は首をひねる。
小麦「なぜか背筋に悪寒が走ったわね」
利子「もしかしたら大蛇の呪いかもですよ」
小麦「大蛇ねー……」
もちろん小麦はそんな呪いなど信じていない。しかし山道はとても知多半島にある山と
は思えないほど険しく、その危険に対しては十分な注意を払わなければならなかった。
利子などはちょこまかと動き回るので、そのたびに小麦ははらはらさせられる。
小麦「所々に道標があるから遭難する心配はなさそうだけど……信子さんもわざわざこ
   んな所でピクニックしなくてもいいのに」
長身な小麦の腰まで伸びる雑草を払いのけながら、山道の険しさに辟易して小麦はそう
呟いた。墨俣校で寝ていたところを連れてこられたので、パジャマでこそないが、ショ
ートパンツにタンクトップのTシャツと、かなりラフな格好をしている。とても山登り
をするような格好ではない。その小麦の周囲を利子が、くるくる回りながら付いて行く。
利子「うふふ、利子には分かるですよ。信子様は絶対何か企んでるですよ〜」
と、その利子が言った。こちらは夏休みだというのに制服を着ている。山の中に制服の
子供が居るというのは、見ようによってはかなりシュールである。
小麦「どうしたの利子ちゃん?信子さんが何か企んでるって、どう言うこと?」
利子「何を企んでるかは知らないですよ。でも絶対いけないことを企んでるです。信子
   様はそういう人だよ〜」
小麦「……困った人ねぇ」
と、溜息をついてから小麦はふと思いつき、利子に尋ねる。
小麦「ねえ、信子さんが何かしかけてくるとして、対象に私も入ってるのかな?」
利子「もちろん入ってないはずがないですよ。気付かなかったですか〜?信子様が小麦
   さんを見る目に、ときどき野獣のような光が混ざってたですよ〜」
小麦「野獣?」
利子「きっと〜、ものすごくエッチなことされちゃうと思いますですよ」
小麦「あっ……そういう企みなんだ」
尾張学園に雇われてから、小麦もいろいろな信子の噂を耳にしている。だからまあ、そ
ういう性癖が信子にあるのも知っている。初めは秀美をそんな人の元に置いておいてい
いんだろうかと悩んだりもしたが、秀美が矢作園に居た時よりも幸せそうにしているの
で、多少の不安を残しながらも成り行きに任せる事にした。とはいえ、さすがに自分が
標的にされているとなると驚かざるを得ない。
小麦「回りにいくらでも可愛い子はいるのに、わざわざ私なんか狙わなくても」
利子「くぅん?利子さん美人だよ〜」
小麦「う〜ん、美人だったら彼氏居ない歴20年って事はないと思うんだけど……」
と、小麦は苦笑いしつつ言う。
利子「美人、美人、美人〜」
しかし、利子はそう連呼してじゃれつき、おんぶされるような格好に飛びついて鼻先で
小麦の頬をなでる。
小麦「うわっ!利子ちゃんくすぐったいわよ〜」
小麦はくすぐったさに笑い声を上げながら利子の鼻先を避ける様に首をちぢめた。
利子「いい匂い〜。綺麗な人の匂いがするですよ〜」
小麦「きゃはは……くすぐったい。でもありがとう利子ちゃん。褒めてくれて」
利子「だから、信子様なら絶対狙うですよ〜」
利子「うーん、それは困ったわねぇ……」
むろん、小麦にそういう趣味は一切無い。しかし、そう言ったからといって信子が諦め
てくれるような人だとは思えない。体力的に逃げ切る自身がないわけではないが、罠を
貼られて待ちかまえられてはさすがに捕まってしまうだろうし、一応仮にも雇用主であ
るわけだから手荒なことも避けたい。
小麦「でも、こんな山道で脇道にそれたら遭難するし……」
小麦は悩む。と、そうしながらも歩いていると、利子がある地点で声を上げた。
利子「あっ、信子様の匂いがするですよ」
小麦「匂い?利子ちゃん何言ってるの?」
小麦にはもちろん何の匂いも感じられない。夏の森林の青臭い匂いがするだけである。
利子「利子は信子様の匂いなら50メートル先でも分かるですよ。それにこの頃はい
   つも一緒のお布団で寝てますから、間違えるはずないです」
小麦「ホントに?」
利子「ホントですよ。むむっ……この匂いからすると、あの木が一杯生えてるところに
   隠れてるですよ」
と言い、利子はずっと先にある灌木の群を指した。
小麦「うーん……」
俄に信じがたい事では有ったが、そう言われてその群を見ると、何か回りの植物生から
孤立している。灌木の生えている範囲はおよそ5、6メートル平方で、その回りの植物
は主に羊歯等背の草ばかりであった。
利子「信子様は不意打ちとか大好きだから、きっとあそこに隠れてるんですよ」
小麦「そうなの?」
利子「呼んでみるです。信子さ……」
と、いきなり声をあげて信子の名を呼ぼうとした利子の口を、小麦は慌てて手で塞いだ。
利子「むぐぅっ!?むぎゅしゅりゅんれりゅかきょむぎょしゅん!?」
急に口を塞がれ、利子はびっくりしてもごもごと叫ぶ。
小麦「あっ、ごめんなさい。でも利子ちゃん、ここは信子さんのことは呼ばないで、迂
   回して通り過ぎましょう?」
その声がとぎれるのを待って、小麦は慎重に利子の口から手を離しそう言った。群の範
囲は狭い。比較的傾斜も少ない場所なので、50メートルほどの見通しはある。これな
ら多少迂回しても迷うことはないだろう。
利子「ぷわぁ!何でだよ〜小麦さん〜?利子は信子様に会いたいよ〜。うなう〜、信子
   さ……」
小麦「あっ、だめだってば!」
もう一度叫ぼうとした利子の口をまたも小麦が素早く塞いだ。
利子「もななう?」
それでも利子は口を塞がれたまま叫ぼうとする。
小麦「うーん、仕方ない」
決断すると、小麦は口を塞がれてもごもご言っている利子を素早く小脇に抱える。
小麦「このまま一気に迂回して走り抜けるよう。利子ちゃん、ちょっと我慢しててね」
そうと口の利けない利子に言うと、出来るだけ音を立てないように、しかし出来るだけ
素早く、信子の隠れている群を避けて走った。

一方そのころ。
信子「……来ないわね」
信子は群の中に作られて秘密の部屋で、なかなか来ない後続の小麦、利子組を待ってい
た。
貞子「道に迷っているのではないでしょうか?」
同じ様に隠れている貞子が信子に言う。こんな犯罪じみた事(と言うか犯罪そのもの)
はやめさせるべきだと思うが、貞子は止める気はないらしい。どうせ言っても無駄だと
知っているからかも知れない。
信子「一本道だから迷うはずは無いと思うけど……」
それでも多少不安になったのか、信子はこっそりと隠れ場所から顔を出し周囲を見回す。
信子「……うーん」
しかし、やはり小麦達の姿は見えない。
信子「迷うはずは無いと思うけど……迷ったのかしら?」
と、呟き、もう少し身を乗り出して辺りを確認する。
小麦「……よっこらしょ、っと」
信子の潜む群を迂回した小麦が山道に戻ったのはちょうどその時であった。
信子「……あっ!?」
小麦「……あっ」
双方同時に気付き、期せずして驚きの声も同時に上がった。
小麦「……奇遇ですね信子さん」
利子を小脇に抱えたまま、小麦はさりげなく言った。そして言うと同時に信子に背を向
け、全力で駆け出す。
信子「チッ!利子!小麦さんを捕まえなさい!」
その様子を見て、信子は小麦の小脇に抱えられている利子に指示を出した。
利子「むぎゅ!むぎゅりゅましゅた!」
小麦に口を封じられたまま利子は命令を受諾する。
小麦「やめてよ!利子ちゃん!」
小麦は慌てて利子にそう叫ぶ。が、それでも利子を放り出そうとしないのは、見捨てて
いけば利子が酷い目に遭うと予想がつくからである。何もそこまで心配してやることは
ないと思うが、性分なので仕方ない。
利子「うにゅ!うにゅ!」
しかしそんな小麦の気遣いも知らず、利子は一生懸命小麦の腕の中で暴れる。小麦の方
が体が大きいので捕らえたり押し倒したりは出来ないが暴れられると走り辛い。この調
子では、背後から迫る信子に追いつかれるのは時間の問題だろう。
小麦「もう!しょうがないわね!」
しかし、小麦はそれでも利子を放り出さない。その代わり腕に抱えていた利子を背負い、
両足を思い切り上に向けさせ、ベルトで利子の背中と足の裏側、ふくらはぎの辺りを一
括り縛り付けた。すると利子は、麦の背中に体を押しつけられ、おんぶされた格好で両
足を上げた妙な格好になる。これなら足をバタつかせても小麦には当たらない。
利子「むぎゅう……」
小麦の背中に顔を押しつけられた利子が呻いた。まだ少し暴れているが、縛られている
のでさっきより動きは少なくなっている。走りづらい事は走りづらいが、信子に襲われ
てはたまらない小麦は必死に逃げる。
小麦「それじゃー信子さーん!また下で会いましょー!」
そう言い残して、手ぶらで追いかけてくる信子を引き離す。
信子「チッ……利子を背負いながらあの速度で逃げるなんて……」
信子もなぜか深追いはしない。利子に邪魔をさせても小麦のスピードが落ちないのを確
認すると、悔しげに呟きつつも追うのをやめ、今来た道を戻りまた群の隠れ場所に入る。
貞子「おかえりなさいませ」
と、貞子が出迎えてくれた。
信子「残念ながら逃したわ」
信子は悔しそうに貞子に報告した。貞子の方は別に悔しくない。と言うか、面倒が避け
られてほっとしたようなものだ。
信子「あそこまで逃げ足が早いとはね」
貞子「よほど信子様に捕まるのがいやだったのでしょうねぇ……」
ゆるゆると信子の後を追ってきた貞子が言った。
信子「絶対後悔させないのに……」
貞子「……そうでしょうか?」
信子「当然よ。……まあ良いわ。次行くわよ、次」
貞子「えっ?次って、まだ狩りをなさるつもりなのですか?」
信子「当たり前でしょう。小麦さんには逃げられたけど次は成美よ。あの娘は、お兄ち
   ゃんお兄ちゃんってうるさいけど……ふふ、この機会にお兄ちゃんのことは忘れ
   させてあげるわ」
貞子「それは……やめてあげて下さい。成美ちゃんはお兄様のことが好きなのですし、
   信子様が好きな秀美ちゃん達とは違います。ダメですよ」
信子「近親相姦なんて不健全よ。健全な道に戻してあげなきゃ……ふふっ、ペアの秀美
   は私の言うことに逆らわないから、いくらあの娘が抵抗しても……」
信子は言いつつほくそ笑んだ。
貞子「だめですだめです。それはだめです。そんなことを信子様がされては、私は成美
   ちゃんに合わせる顔がありません……」
貞子は珍しく焦って信子を止めようとした。さっき小麦が襲われかけた時には見捨てる
気だったくせにずいぶんな違いだが、やはり普段からなつかれている成美の事となると
違うらしい。
信子「ふふん、あの生意気な成美がどんな顔をしてくれるのかしらねー♪」
もちろん、例え必死で止めても信子は聞く耳など持たないのであった。

成美「何か変な声が聞こえたー」
その少し前、狙われている本人の成美は、秀美と共に山道を進んでいた。
秀美「あれは小麦さんの声ですね〜」
遠くから聞こえた叫び声を聞きとった成美に、同じく聞き取ることの出来た秀美がそう
教える。さほど付き合いのない成美では誰の声かまでは分からなかったが、付き合いの
長い秀美は小麦の声を判別することが出来たようだ。
成美「なんか叫んでるみたいだけど……どうしたんだろ?」
秀美「さあ何でしょ〜?もしかしたら大蛇が出たのかもですね〜」
成美「馬っ鹿じゃないのー。そんなの居るわけないじゃない」
秀美の言葉を、しかし成美は取り合わない。秀美と成美は同じ学年だがあまり仲の良い
方ではない。かといって仲が悪いわけでもないが、成美は一応お嬢様育ちなのに対して、
秀美は信子に引き取られるまで余り裕福でない暮らしが長かったため、どことなく話の
合わないところがある。しかしその二人ともなぜか利子とは仲が良く、おかげで回りか
らは秀美、利子、成美の三人は一揃いのように思われている。もっとも最近は秀美が墨
俣校にいるので三人も余り一緒には居ない。
秀美「大蛇じゃないとしたらおばけでしょうか〜?」
成美「そんなのいないってば。熊とかならいるかも知れないけど」
言ってから成美ははっとした。大蛇やおばけなんか恐くないが、熊はまずい。
成美「そうよ、熊に食べられたらお兄ちゃんに会えなくなるじゃない!」
秀美「はい〜?クマさんはフカフカですよ〜?」
成美「バッカ、ぬいぐるみじゃないんだからね。なるは、お兄ちゃんに食べてもらう前
   に熊に食べられるわけにはいかないの」
秀美「成美ちゃんのお兄さんは人を食べるですか?」
成美「そんなわけないでしょー!食べてもらうって言うのはー……」
そこまで言いかけて成美は言葉を切る。
秀美「のは〜?」
成美「言えない言えない!言えるわけない!秀美の馬鹿ー!」
言いながら成美は秀美に両腕からパンチのラッシュを繰り出した。
秀美「はわわ、何するんですか〜?」
突然のことに驚いた秀美は、慌てて山道を上に向かって逃げ出した。
成美「お兄ちゃんに、は、初めてをもらって欲しいなんて、恥ずかしくていえるわけな
   いでしょー!」
秀美「なんのことですか〜?とにかくぶたないでくださ〜い!」

信子「ん?あれは成美の声ね。ふふっ、来た来……なぜか走ってるわね。山道で危ない」
一方そのころ、信子は性懲りもなく次なる獲物を待ちかまえていた。どうやら今度はち
ゃんと道を歩いてくるようだし、群から子供で体格の小さい成美なら、秀美の手助けが
無くても不意打ちの一撃で捕らえることが出来るだろう。
信子「ふふふふっ、今度こそ……」
今にも罠にかからんとする獲物を前にして信子はほくそ笑む。が、隣の貞子はそうでは
ない。
貞子「駄目です!いくら信子様でもそれは駄目ですよ!」
信子「いいじゃない。絶対お兄ちゃんより私の方が成美を幸せに出来るわよ」
貞子「信子様……肉欲だけが幸せの形ではないのです」
信子「肉欲って……人聞きの悪い。愛よ、愛」
貞子「……信子様の愛はたくさんありますよね?」
信子「当然ね」
貞子「それでは駄目なのです。成美ちゃんは一人の人が、一人の人を愛して欲しいタイ
   プなんです。……それに、成美ちゃんにはもう好きな人が居ます」
信子「まあ堅いこと言わないで……あ、来たわね。捕まえるわよ」
信子は当然貞子の説得に応じない。それどころか、今にも飛び出して成美を捕まえ、こ
の隠れ場所に引きずり込みそうな勢いだ。そうなれば全て遅い。
貞子「……駄目です!信子様!」
そう判断した貞子は、次の瞬間、今にも飛び出そうとしていた信子の腰の辺りにしがみ
つく。
信子「あっ!?なにするのよ貞子!」
中腰になっていた信子は、驚いて前につんのめりそうになりながら、腰にしがみつく貞
子を振り解こうとする。なぜか知らないが成美達が走っている以上、一瞬の機会にみす
みすと獲物を逃してしまう。
貞子「すみません信子様!でも、駄目な物は駄目なんです!」
信子「何でよ!?良いじゃないちょっとぐらい!減るものじゃないし!」
貞子「でも成美ちゃんの気持ちは取り返しつきません!駄目ったら駄目です!」
と、押し問答しながらバタバタと暴れる信子と貞子。と、その二人が隠れている群の前
を、
成美「馬鹿馬鹿!秀美の馬鹿ー……」
秀美「何でですか〜?クマさんが悪いんですか……」
と、成美と秀美の声が駆け過ぎて行った。信子にとっては、既に天機が去ったと言うべ
きだろう。反対に貞子はほっと胸をなで下ろす。
信子「あ……ああ……行っちゃった……」
貞子「ふぅ……助かりました……成美ちゃん」
最早暴れても仕方ない。信子はがっくりと力を落とし、その場に膝をついた。
信子「さ〜だ〜こ〜!」
信子はそれから暫くして立ち直った。怒りは当然邪魔立てした貞子に向けられる。貞子
は、信子を押さえ込んで疲れたのか、床にぺたんとお尻をおろして座り込んでいる。
信子「なんてことしてくれるのよ!折角あんなことやこんなことやそんなことやどんな
   ことしようかと……」
貞子「いいえ信子様、これで良かったのです。成美ちゃんにはお兄様がいらっしゃるの
   ですから」
信子「お兄様なんか知った事じゃなーい!折角、折角……」
どれだけ悔しいのか、信子は歯がみして言葉を途切れさせる。もっと他のことに労力を
使えばいいものだ。
貞子「とにかく成美ちゃんは行ってしまったのですから、諦めて下さいませ」
信子「あんたが、逃がしたんでしょうがー!うー……」
貞子「まあまあ、落ち着いて下さい」
信子「うー……」
貞子「まあまあ」
信子「……」
貞子に宥められたわけでもないだろうが、逃げてしまったものは確かにどうしようもな
い。そう諦めて信子も少し興奮を収めた。しかし、怒りまでが収まったわけではない。
信子「……」
信子は無言で貞子の横に座った。
貞子「……信子様?」
その無言の動作に不穏な物を感じたのか、貞子は少し不安げな声で言った。
信子「……責任を取ってももらわないとね」
言うなり、信子の手が貞子の腰に巻き付く。
貞子「あっ……駄目です信子様。私はそう言う趣味はありませんから……」
信子「……駄目、成美の代わりよ」
腰に巻かれた手を外そうと抵抗する貞子に、信子はそれを許さず自分の方に引き寄せ、
更にもう一方の手を服の裾から素肌の背中に差し込む。
貞子「信子様……お戯れはおよしになってください……」
貞子は身を捩って信子の腕から逃れようとする。しかし、信子はそれを押さえつけ、床
の上に貞子を組み敷いた。
信子「いやよ。今までは見逃してきたけど、今日はやめてあげない」
貞子「駄目です……って、聞いて下さい……お願い……」
貞子は押し倒されながらそう言って抵抗するが、信子が聞き入れるわけもない。腰に回
した腕を解きスカートのフォックに手をかけ、同時に貞子の自由を奪うため体全体を密
着さる。
貞子「あっ……駄目ですってば」
信子「いやだってば、お仕置きなんだし」
言いつつ貞子の首筋に顔を埋め、唇を使って首から顎の裏までをついばむ。と、その時、
その顔を押し返そうと抵抗していた貞子の抵抗がふっと弱まる。
信子「くすくす、とうとう観念した?」
貞子「あっ……違います……信子様後ろ、後ろ見て下さい」
貞子はそう言って、信子の頭を押していた手を離し、信子の背後を指さした。
信子「そんな手に乗るわけないでしょ……ほら、もっと素直に感じなさい……」
信子はそれを無視して更に執拗な愛撫を貞子に加える。これは良くなかった。
貞子「やっ……ほんとですってば……ううん、っ!後ろに……」
信子「ほらぁ、貞子もその気になってきましたよー……」
信子は勝ち誇ったように笑い、次第にぐったりとしてくる貞子に言う。
恒江「あああああぁぁぁぁ……!その気にって、どんな気ですか信子様ぁ!」
が、いい気分で貞子を襲っていた信子の耳に聞き慣れた、しかしながら今は聞きたくな
かった声が響く。
信子「なっ、つ、恒江!?」
恒江「あああああああああぁぁぁぁぁぁ……!何やってるんですか信子様ぁぁぁー!」
慌てて振り向く信子の目に、ぼろぼろ涙をこぼしながらこちらを睨み付ける恒江の姿が
映った。
信子「な、何でこんな所にいるの?」
ものすごい形相で睨まれた信子は、思わず貞子の上から身を起こしてそう聞いた。
長子「私もいますよ信子様。いえ、おっしゃられたとおり山道を踏破してここまで登っ
   てきたのですけど、あからさまに不自然な灌木の塊の中から妙な声が聞こえての
   で何かしらとのぞき込んでみたら、このような隠し部屋を見付けてしまったんで
   す。……お邪魔してしまったようですけど」
信子の問いに、恒江ではなくその後ろから顔を出した長子が答えた。が、それは事態の
解決に髪の毛一本ほどの寄与もない。
恒江「こ、これは一体どう言うことなんですか!?そ、それは、信子様がそう言う人だ
   って言うのは知っていましたけど、私の目の前でこんな事!こんな……!」
恒江は髪を振り乱さんばかりに興奮し、声がうわずり言葉にならないほどである。
信子「目の前って……恒江達が勝手に入ってきたんじゃ……とにかく落ち着きなさい」
信子は自分の行為を微塵も悪いとは思っていなかったが、半狂乱の恒江に暴れられては
何かと面倒なので宥めにかかる。が、既に話の通じる状態ではない。
恒江「か、斯くなる上は……!」
信子「だから、落ち着きなさいって……」
恒江「信子様を殺して私も死にます!」
言って恒江は懐から白鞘の短刀を取り出し、ぎらりと抜きはなった。
信子「ちょっと!それはやばいって!」
これには流石に信子も余裕がなくなる。
信子「こんなの何時もやってることじゃないの!」
恒江「い、いつもー!?にゅわーうぅ!や、やっぱり信子様を殺して私も死ぬー!」
だが信子の一言は火に油を注いだだけだった。恒江は短刀を腰の高さに構え、必殺の勢
いで信子に突進する。
信子「おわぁ!危な!」
貞子「あらあら」
信子と、それからその下にいた貞子は慌ててその場を飛び退き恒江の一撃をかろうじて
かわす。標的を失った恒江は、そのまま勢いに任せて差して広くない部屋の壁に激突し
た。
恒江「ぐにゃ!」
壁に激突した衝撃に恒江は声を上げる。
長子「大丈夫ですか?恒江さん」
長子が一応心配して恒江にそう聞いたが、恒江は全くダメージを受けていないようで、
すぐに信子達の方に向き直る。
恒江「信子様〜!」
そしてまた猛烈な勢いで信子に向かう。
信子「うわ!やめなさいよ!」
叫びつつ、信子は身を翻して群の中の隠し部屋を飛び出した。これ以上ここにいると、
本当に恒江と心中することになりかねない。
恒江「信子様!お覚悟をー……!」
信子「冗談じゃないわよー……!」
そして二人の声は密林にだんだんと消えていった。
長子「お二人とも、まったく困ったひどですね」
その後には、恒江にとり残された長子と、
貞子「……本当に」
信子に置いて行かれた貞子が残った。貞子は乱れた服を直しながら、静かに立ち上がる。
貞子「仕方有りませんね。長子様、一緒にまいりましょうか?」
そして、貞子は着衣の乱れを直し終えると長子にそう言った。
長子「ええ、ここで待っているのも馬鹿馬鹿し……もとい無駄でしょうから、山を下り
   てしまいましょう」
長子もそれに賛成し、二人は隠し部屋から山道へ戻り、ゆるゆると山道を下った。
信子「ハァハァ……ふっ、漸く恒江を巻けたようね……」
既に長子・貞子組も山頂を通過し、常滑に向かって後は道を下るだけになっている頃、
山頂の池の畔の小さな石に腰を下ろす信子の姿があった。この池は初めに信子が言って
いた大蛇の住む池なのだが、もちろん信子の本当の目的は狩りだったので、大蛇伝説な
どは信じていない。
信子「……はぁ、全く、恒江もあんな事で錯乱することはないのに」
自分の不道徳を棚に上げて信子がぼやく。
信子「それに……折角の狩りも収穫はゼロ……何たる無念!」
信子は憤懣やるかたない。と、そこに通りかかる間の悪い人間が居た。
盛美「あれー?信子様じゃないですか。確か一番初めに出発したはずなのに、今頃何で
   こんな所に居るんです?」
勝枝「おっ?ほんとに信子だ。どうしたんだよ、貞子も居ないみたいだし」
その間の悪い人間は、最後に出発した勝枝と盛美の二人であった。もちろん二人は信子
がここにいる事情も、まして機嫌が最悪に悪と言うことも知るわけがない。
信子「……」
信子は無言で二人を見る。と言うよりも睨む。が、どちらかと言えば鈍い二人なので、
その目に潜む物騒なものには気づかない。
盛美「はぐれちゃったんですか?はは、信子様もしょうがないなぁ」
信子「……あんた達いいところに来たわね」
と、軽口を叩く盛美の言葉を無視して、信子は低い声で言う。
盛美「え、何がですか?」
それでも気付かずに、盛美はあくまで軽い調子で聞き返した。
信子「この山に登る前、大蛇の話をしたわよねぇ?」
勝枝「あん?でかい蛇が居るって話か?聞いたけど、どうせそんなのデマだろ」
勝枝も信子の声色には気付かない。
信子「そんなのわかんないでしょ。で、その大蛇の出る池ってのがここなのよ」
と言って、信子は自分の背後の池を指さす。
盛美「はぁ、そうですか。で、居ましたか、大蛇?」
信子「それがねぇ……まだ見つからないのよ」
盛美「それは残念ですね。じゃ、仕方ないしとっとと下山しましょう」
そう言って盛美は山道を下ろうとする。が、その腕を信子がガッシと掴んだ。
信子「でも池の中全部探した訳じゃ内のよねぇ、是非ともこれは真相を究明しないと納
   得がいかない訳よ」
盛美「……は、まさか信子様、我々に池の中に潜れ、と?」
信子の言葉に漸く不穏なものを感じ取った盛美はおそるおそるそう聞いた。
信子「まさか、そんな事言うわけないじゃない」
が、信子は笑ってそれを否定する。
盛美「ほっ……」
盛美はほっとして息を吐く。しかし、
信子「さて、ここになぜかちょうどバケツがあるのよ。潜った位じゃやっぱりよく分か
   らないわよね。池の水を全部掻き出してこそ、初めて確かな調査だと思わない?」
盛美「……はっ?」
信子「そう言うわけだから。あっ、池の水全部掻き出すまで下山しちゃ駄目よ。そんな
   事したら酷い目に遭わすからね」
勝枝「あんだそりゃ!?」
盛美「それはあんまりです!信子様!」
あまりのことに、盛美と勝枝は憤って信子に詰め寄る。が、信子はまず盛美の襟を掴ん
で池に放り込み。
盛美「うわぁ……!」
続いて勝枝の足を払い、バランスを崩したところに蹴りを入れて、同じく池にたたき込
んだ。
勝枝「うわ!ぐはぁ!わたた……!」
仲良く緑色の池に二人は泳がされる。その姿を一瞥して、信子は言い放つ。
信子「あんた達!命令無視して下山したら、二度と太陽は拝めないわよ!」
そしてくるりと踵を返すと、背後に聞こえる非難の怒号を無視して、静かに道を下りは
じめた。
信子「……ふっ、こんな事をしても私の心は晴れない。虚しいわねぇ……」
ニヒルに呟き、信子は今日も屍を越えて行くのだった……
284 ◆nT0xknNOBU :03/02/16 00:47
>>264
実は愛知は地図でしか知らないんですよ。
関東在住なもので。
いつか暇があったら岐阜とか尾張とか行きたいものです。

>>265
最近遊びが少ないかなと思っていたので、
この話で馬鹿を(それと多少の色気を)補充しておこうと思いまして。
ま、最近と言ってもこの話を考えたのは去年の夏ですけどねハハハ・・・

>>266
おお、これはありがとうございます。
でも、みれないつ・・・(ノД`)残念

>>267
それは楽しみであります。
是非、書いて下さると嬉しく候。

えー、てな事で山中狩猟編終わりです。
あらためてみても実に馬ッ鹿馬鹿しい話しであります(笑
今回は今まで余り出番の無かった人のキャラを確立する。
と言う目的も実はあったのですが、
終わってみてもやはりまだ固まってなかったり・・・
それにこんな話にしては長すぎですね。
字数はなるべく減らそうとしてるんですがなかなか・・・
まあ、それはそれとして。

次回は名前だけ出てきた九鬼さんの話の予定です。
では、また(なるべく)近い内に。
修羅場キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

勝枝、盛美とペア組んだばかりに……不憫な。
とか言われる盛美が一番可哀相なのかもしれない(w
さ、貞子タソ…(;´Д`)ハァハァ
直美「副会長はつかれるわ〜」
学生カバン代わりの巾着袋をくるくる回しながら直美ちゃんが嘆くと、その隣で長船智香子さんが
突っ込みを入れます。
智香子「疲れたって、副会長業務は私たち補佐役がほとんどやっているじゃありませんか」
岡利香さんも同意します。
利香「そうそう。宇喜多さんのやっている事といえば『あの娘、かわい〜〜&heart』とか言って悪い事
するばかり……」
直美「えへへ〜」
安奈「まあまあ、二人とも。直美さんの所業が結果として天神山学園を平和に導いているのは事実ですし」
フォローに入ったのは戸川安奈さん。
安奈「利香さんだって、直美さんの『悪い事』のおかげで解決した問題があったと聞き及んでいますけれど?」
利香「それは……まあ」
安奈「宇喜多さんは私たちに出来ない事をされているのですから、事務処理は私たちが請け負ってもかまわないかと思うのですけれど」
智香子「私とて結果が全てであることは承知しています」
直美「あっ!500円玉見っけ」
自分の言う事を歯牙にも止めず、いきなり走り出す直美ちゃんを見て、ため息が漏れます。
智香子「釈然としませんわ。世の中、運ばかりでは……」
ばふっ
そんな物音がしたかと思うと、突然智香子さんの言葉が途切れました。
直美ちゃんが500円玉を拾い終わって振り向くと、智香子さんがあっけにとられた表情で固まっていました。
顔に白っぽい粉。
足元には真新しい軍手。
*「あ、外しちゃった……」
横のブロック塀の上から声がします。
直美ちゃんがそちらを向くと、そこには真っ赤なランドセル背負った女の子が仁王立ちしていました。
すぐ我に返った智香子さんが不機嫌に問い掛けます。
智香子「あなたどこの娘?人の顔に軍手を投げつけるなんてどういうつもり?躾がなってないわね。親の顔が見てみたいわ」
彼女の言葉にひるむ少女を、安奈さんがフォローしました。
安奈「決闘を申し込んでるのではないでしょうか。白い手袋ですし」
智香子「私は決闘を申し込まれるようなことはしていませんわよ」
少女「あ……えっとそうじゃなくってぇ」
安奈「智香子さん、落ち着いてくださいな。彼女は外しちゃったって言っているわけですから、申し込んだ相手はあなたではないはずですわ。多分、宇喜多さんに申し込まれたのではないでしょうか」
少女はうんうんと頷きます。
直美「え〜、なおみだって覚えないよ〜」
智香子「いくらでもおありでしょうに。全く……」
安奈「まあまあ、智香子さん。自分のした事の記憶がないのと、秘書が被害をこうむるのは執政者の常ですから、仕方がないことでしょう」
利香「というより、日常茶飯事過ぎて記憶に残っていないだけじゃ。宇喜多さん、あの子に何かしちゃった記憶はないの?」
直美「無いよ。なおみ、ぺったんこには興味ないもん」
その言葉が少女のひるみまくった想いに再び火をともしたようです。
少女「うそばっかり!姉さまをもとかから取り上げたくせに!」
直美「姉さま?」
首をかしげた直美ちゃんにまたもや安奈さんが小声でフォローを入れます。
安奈「多分三村千佳さんのことだと思いますわ。名札の苗字が同じですし、元佳さんっていう妹さんがいらっしゃると聞いていますし」
直美「あー、みむちゃんか〜」
元佳「みむちゃん、なんて姉さまを気軽に呼ばないでっ!泥棒猫。忘れたとは言わせないわよ。姉さまを偽手紙で公園におびき出して、無理やり植え込みに連れ込んで、唇を奪って、制服の隙間から手を差し込んで、××を指で××して、××にキスを(以下略)」
直美「違うよ、指よりキスが先だよ」
元佳「違わないよ!もとか見てたもん!」
直美「ふーん。覗き魔なんだ」
元佳「の、のぞきま?もとかのぞきまじゃ……あっ」
興奮した勢いで、元佳ちゃんがバランスを崩します。
手を振り回しながら何とか足から落ちる事に成功しましたが、着地に失敗して尻餅をついてしまいました。
元佳「いったーい……」
利香「だいじょうぶ?」
心配そうに利香さんが助け起こそうと駆け寄る後ろで、直美ちゃんがとどめの一撃を食らわせました。
直美「やーい。おぱんちゅ丸見え〜」
途端に元佳ちゃんの顔が真っ赤になりました。
すくっと立ち上がると、脱兎の如く逃げ出します。
元佳「覚えてなさいよっ!」

利香「だいじょうぶかな……。あれだけ走れればいいとは思うけど」
心配そうに見送った後、利香さんは直美ちゃんに注意します。
利香「宇喜多さん、お願いですから小学生と同レベルの口喧嘩なんかしないで下さいよ」
安奈「まあまあ。宇喜多さんですし」
直美「あはは」
安奈「それに、小学生レベルじゃない宇喜多さんなど宇喜多さんではないのではないでしょうか」
利香「……そうかもしれないけど、でも」
智香子「……」
しばらく言葉を失っていた智香子さんがぼそっと呟きます。
智香子「……あの応酬の破廉恥な内容のことを、皆何故気にしないの?常識外れなのは皆?それとも私なの?……」
290 ◆3p92bitL/A :03/02/16 16:51
改行を忘れた罠…
291無名武将@お腹せっぷく:03/02/17 00:09
 ↓小説で、里見モノと利家モノがある。
http://www.paw.hi-ho.ne.jp/ohkubo-m/shiduki/14novel/index.htm
 ここの作者は内政フェチの閉じこもりオタにちがいない。
うお!ひさびさに除いてみたらえらい数のレスがあってびびったが(w
新作ご苦労様です。
293無名武将@お腹せっぷく:03/02/17 14:45
前スレから数えると、もう一年以上になるんだね…
桶狭間が1560年で、稲葉山城を攻略したのが1568年だっけ?
このペースで行くと、本能寺はあと3、4年後か(w
またキモスレかよ



       
アンキモは、かなり美味いよ
保守
保守で。
考え中。
本能寺までたどり着きたいものです(笑
地味に新作待ってます。
月1ペースぐらいかな?
保守
がんばって
良スレ保守
ほっしゅ
最初の方に自分と同姓同名のキャラがいてビビリ。
そしてさらに親の同姓同名のキャラもいてビビリ。
こんな事もあるんだなぁとか思いつつ保守。

保守
保守。
保守です
春休み終了まで生き残り祈願。
このスレだけはやらせんぞ保守
その意気やよしの保守。
312無名武将@お腹せっぷく:03/03/14 19:45
たまにはageるぞ
そして保守
一ヶ月たっちゃったけど(゚ε゚)キニツナイ!!
保守
hosyu
信子「まったく昨日は酷い目にあったわ……」
朝の豆乳を飲みつつ、信子は渋い顔をしてそう呟く。昨日は山の中での馬鹿騒ぎを終え
た後、あらかじめ借り切っておいた常滑市内のホテルに泊まった。今は一晩明けてその
朝である。朝食の席に着いているのは信子の他に、蜂須賀小麦、前田利子、佐々成美、
木下秀美、村井貞子、丹羽長子、それから池田恒江の八人。柴田勝枝と佐久間盛美の姿
はない。
恒江「昨日、何かあったんですか?」
きょとんとした表情で恒江が言った。
長子「まあ……憶えていないのですか?」
恒江の言葉に、長子が呆れた口調で聞き返す。
恒江「え、私なにかしたの?」
長子「恒江様が何かしたというか……本当に憶えていないのですか?」
恒江「だから、なにを……?」
どうやら本当に憶えていないらしい。それを確認して、長子は視線を信子の方に向けた。
信子はカレイの煮付けに醤油をどばどばかけて食べている。
信子「ん?」
視線に気付いて信子はそちらの方を向いた。長子の表情は、どういうことか、と説明を
求めている。
信子「知らないわよ。昨日貞子が山に戻って拾ってきたんだもん」
信子の言葉に、長子は目線を貞子の方へ向ける。貞子はすぐその視線に気付き、ちょっ
と首を傾げて言った。
貞子「発見したときは山道で行き倒れていました。別に外傷はないようでしたけれ
   ど……。たぶん、嫌なことは記憶から消去したのではないでしょうか?前にも何
   度か同じ様なことがありましたし」
長子「前にも?」
貞子「信子様はあの通りの御気性ですから、恒江様のように一途な方は良く忘れるとい
   うことが必要なのでしょう」
言われて、長子はもう一度恒江の顔を見た。さっきの話題ももう忘れたのか、のんきに
みそ汁をのんでいる。
恒江「ん、なに?」
長子に見つめられた恒江は視線に気付いて聞く。
長子「いえ……」
貞子の話の真偽は解らないが、何となく恒江が哀れに見えた。

信子「さて、今日の予定だけど」
朝食を取り終えた後、信子はその席のまま言う。
貞子「まだ何かする気なんですか?」
貞子は少しとまどい気味にそう聞いた。
信子「当たり前でしょう。本来の目的はこれからなんだから」
長子「本来の目的?遊びに来ただけではなかったのですか?」
長子は少し驚いて聞き返す。
信子「うん、貞子には言ってあるはずだけど、これから前線視察に行きます」
恒江「前線?この辺りは常滑校の支配区域ですよ、生徒会長の水野律子は尾張学園の支
   配下ですし、東は三河学園の支配区域ですから……それとも常滑校か三河学園に
   不穏な兆しでも?」
すっかり昨日の狂態も忘れたらしい恒江も不審に思って信子に聞く。
信子「そうじゃないわよ。あなた達は忘れてるようだけど、伊勢学園への侵攻準備のた
   めに春菜を派遣してるでしょ」
長子「春菜……滝川春菜様ですか?」
長子は、ちょっと考えてからその名前を思い出した。尾張学園は現在主に美濃学園と干
戈を交えているが、他の方面に全く力を注いでいないと言うわけではない。その中でも
特に伊勢学園は、地理的な関係から重視している。今は美濃攻めが忙しいことと、伊勢
学園、特に北伊勢は各校が小勢力を張って統一されておらず、組織だって尾張学園に侵
攻してくるようなことはないので直接的な行動は起こしていない。南伊勢は塚原流柔術
を学んだと言われる北畠裕美の支配するところだが、本人がどうあれ古い家柄で進出の
気概は乏しい。しかしながら、美濃が片づけばこちらから攻め込んでやろうと信子は企
んでいる。滝川春菜はその前調査のため伊勢に送り込まれたのだが。
長子「最近お姿を見かけなかったのは、信子様が変なことをして逃げ出したのではなか
   ったのですね」
信子「なに言ってんのよ」
長子「いえ、別に」
長子は適当に目をそらしてとぼけた。
信子「まあいいわ、とにかくそんなわけだから、これから伊勢に向かいます」
恒江「しかし伊勢だとこことは反対方向ですね。それに今は美濃方面が緊張しています
   から、余り伊勢に大きな人数は割けませんよ」
恒江が当然の疑問を口にする。
信子「今は本格的に侵攻するわけじゃないから人数は連れていかないわよ」
恒江「それにしても、いま行く必要があるのでしょうか?美濃方面の忙しいこの時期に、
   へたに伊勢に手を出すのは危険では……」
信子「伊勢を攻略するために行くわけじゃないわよ。稲葉山攻略のために春菜を呼び戻
   そうと思って」
恒江「はあ、そうですか。でもそれなら初めから伊勢に行けば良かったのに……そうす
   ればあんな思いもせ……ず?」
長子「どういたしました?」
言葉の途中で急に言葉に詰まり頭を抱える恒江に、長子が心配して声を掛ける。

恒江「はあ、そうですか。でもそれなら初めから伊勢に行けば良かったのに……そうす
   ればあんな思いもせ……ず?」
長子「どういたしました?」
言葉の途中で急に言葉に詰まり頭を抱える恒江に、長子が心配して声を掛ける。
恒江「あ、あれ?私……何か忘れ……?……てる……の?」
しかしその言葉も聞こえていない様に見え、恒江はなおギルの音を聞いたように苦しむ。
恒江「な、なぜか……心の奥から殺意が……こ、これは何故でしょう?お、思い出せな
   い?い、いや、昨日……」
信子「いいから、忘れてなさい」
と、信子は頭を抱える恒江の後ろに回りこみ、首筋に微妙な愛撫を加えつつ耳元でそう
囁いた。すると恒江はくすぐったそうに身を縮め、普段の比較的生真面目な顔つきから
どこか幼児めいた微笑みを浮かべる。
恒江「にゅあぁ!?信子ちゃんくすぐったいよ……」
そしてこれまた普段では聞かないような甘ったれたを出す。信子はそれに乗じるように
して更に首筋をくすぐりながら言葉を続ける。
信子「くすぐったいの、好き?」
恒江「ううん、嫌い。でも、信子ちゃんのは好き……」
信子「なんで?」
恒江「信子ちゃんのこと好きだから、嫌いなことも、みんな好きなの……」
信子「ふーん、どのくらい好き?」
恒江「うんっ……信子ちゃん以外の人はみんな殺しちゃいたいぐらい、好き。だって恒
   江は信子ちゃん以外の人なんて要らないもん。だから、殺しちゃうの」
一体どうしたものなのか、なかなか物騒なことまで言い出す。さすがにこの発言には、
その場にいる殆どの人間が恐怖を覚えた。しかし、一人信子だけは怯えない。
信子「恐いこと言うわねぇ……でもそんなことしちゃ駄目よ」
恒江「信子ちゃんがするなって言うならしない……」
信子「そう……ねえ、一人で私のこと考えてエッチな事しちゃったりするの?」
恒江「それは……」
恒江はさすがに言いよどむ。
貞子「はいはい、皆さんこれ以上は恒江さんのプライバシーです。ちょっと早いですが
   外で待ってましょう」
と、折角のところで、驚きながらも興味深く事の成り行きを見守っていた他のみんなを
貞子が外に追い立てた。
秀美「え〜、もうちょっと見ていたいです〜」
利子「私も興味有るですよ〜」
それでも秀美と利子は若干の抵抗をしたが、
小麦「やめなさい」
小麦も漸く我に返って二人を外に追い出すのに協力したので、程なく二人も追い出され
た。

小麦「貞子さん、恒江さんって、なんて言うかその、時々ああいう風に?」
みんなと一緒にホテルの外に出た小麦は、一つ大きな息を吐いてから一番事情に詳しそ
うな貞子に聞いた。
貞子「そうですねぇ、時々。……恒江さんは報われないことはなはだしい人生を送って
   いますから、時々ああいうことにでもならないと、やっていけないのでしょう」
小麦「うーん、あれはちょっとまずいんじゃない?信子さんももう少し気を使ってあげ
   ればいいのに……」
貞子「ふふっ、無駄ですよきっと。あれは信子様の方に問題があるのではなく、むしろ
   恒江さんの方に問題があるお思いますから」
小麦「そう?信子さんが浮気しまくるのが悪いんだと思うけど……」
納得できない顔で小麦は貞子の言葉に異を唱える。
貞子「それがそうとばかりも……恒江さんは私達の中で最も古くから信子様とおつきあ
   いのある方です。まず、私達には解りがたい経緯などもあるようですから……」
小麦「そ……う?」
小麦は貞子の言葉に不得要領に首を傾けた。納得したと言うことではないが、貞子が言
葉を濁したところから、余り気安く喋ることでもないと判断したのだろう。それを敢え
て踏み込んでまで聞くべきではない。
などというやりとりの、三十分後。
恒江「ご、ごめんなさい。遅くなっちゃって」
どことなくしどけない雰囲気を漂わせた恒江がホテルの玄関先に現れた。
成美「おそーい!って言うか遅すぎ、何やってたのよー!」
成美が恒江に大声で文句を言う。もちろん先程の情景をばっちり見てるわけだから、知
っててわざと聞いている。
恒江「な、なにって言われても……」
成美「スカートのフォック外れてるしー!」
恒江「えっ、うそ!」
成美「きゃはは!嘘に決まってるじゃん!えっちー!恒江のすけべー!」
秀美「えっちえっちー!」
利子「すけべすけべー!」
からかう成美に追従して、秀美と利子も一斉に囃し立てる。
恒江「うう……えっちじゃないもん」
まだ先程の余韻が残っているのか、恒江はちょっと泣きそうになる。
小麦「三人とも止めなさい」
貞子「もう、はしたないですよ」
と、またしても子供三人を小麦と貞子が止めた。
貞子「成美ちゃん、そんなはしたないことばっかり言ってるとお兄さんに嫌われるわよ」
成美「うっ……わかった、もう言わない」
お兄ちゃんを出されれば成美は弱い。大人しく貞子の言うことを聞く。
利子「あわわ、利子も信子様に嫌われちゃうのかな〜」
秀美「それは困ります〜」
しかし、それを聞いた利子と秀美が騒いだ。
貞子「……信子様は、はしたない子の方が好きかも知れませんね」
言わなくてもいいのに、貞子はちょっと考えてからそう言った。
信子「私を何だと思ってるのよ?」
と、恒江よりも少し遅れてやってきた信子がそれを聞きとがめ、ちょっと不機嫌な声で
貞子に言う。
貞子「遅かったですね」
貞子は信子の質問には答えずそう言った。
信子「ふん……利子、秀美」
信子も貞子の言葉を無視する。貞子も別に遅れた理由(解りきったことだ)を言わせた
いわけではないので、気にしない。
利子・秀美「なんですか信子様〜」
信子「私ははしたない子は嫌いよ」
そろって返事をする利子と秀美に信子はきっぱりと言い放つ。
長子「ええっ!?嘘でしょう?」
その言葉に驚いた長子が、何時にもなく大きな声を出す。
長子「あら?はしたないまねをしてしまいましたね……ごめんなさい」
が、すぐにそれに気付いて失態を皆に詫びる。
信子「まったく、そんなに驚くことはないでしょう」
長子「……そうですか?」
長子は釈然としない面持ちで信子に聞き返す。
信子「いい?私は、私の前でだけはしたない女の子、が好きなの。誰の前でもはしたな
   い女の子は嫌い」
長子「独占欲が強いんですね……」
信子「普通でしょ?このぐらい」
秀美「えっ、でも秀美は昔(桶狭間)信子様の命令で今川義子さんとエッチな事しまし
   たよ〜」
信子「あ〜……じゃあ秀美はハーレム失格。出てけ」
秀美「えっ、そんな……いやです〜!すてないで〜!」
いきなりな宣言に、秀美は驚いて声を上げ、信子にすがりつく。
利子「そうですよ信子様〜あんまりですよ〜!あ……でも、これで信子様を独占できる
   かもですよ?」
秀美「あっ、利子ちゃん酷い〜、友達なのに〜」
利子「うーん、でもですよ〜……」
秀美「酷い酷い酷い酷い〜!」
信子「あー……うるさいなあ。冗談よ、捨てたりしないから泣きやみなさい」
わめき声の音量が公害レベルまで達した時、漸く信子はめんどくさそうな声で秀美にい
ってやる。
秀美「ひぐぅぅ……ほんとですか〜……?」
その言葉を聞いて、秀美はぴたりと泣くのを止める。
信子「くどい」
信子は不機嫌そうな声で言い、そのまま秀美に背を向けた。
信子「まったく、いつまで経っても話が進まないったら……とにかく伊勢に行くわよ」
その声色のまま、信子はいった。
長子「はい。ところで、さっきは聞きそびれてしまったんですけど、伊勢のどこへ行く
   のです?」
漸く話が進みそうな気配を察して、長子が口を開く。
信子「ん、言ってなかったっけ?桑名よ」
長子「危険ではありませんか?」
信子「北伊勢金井校の種村っておばさんは有能じゃないから、春菜さらって帰るだけな
   ら問題ないでしょ。それに、金井校はこっちに多少の色気があるようだし」
長子「そうですか」
信子「あ、そうそう。これも言い忘れてたけど、桑名までは船で行くから」
長子「船……海路ですか?」
長子は怪訝な顔をして信子に聞き返す。同じように成美と恒江も怪訝な顔をするが、昨
日少し話を聞いていた貞子は余り驚かなかった。もちろん小麦には何の事か解らないし、
利子と秀美はそもそも何も理解できない。
恒江「伊勢湾の制海権は、現在この方面の海上自○隊を掌握する北畠家の手にあります
   が……」
が、やはり不審は不審である。着衣の乱れを気にしていた恒江も、一時手を止めてその
不審を信子に問い質す。
信子「うむ、ちょっと恐いから伏せ字だけど、海上自○隊なんか粉砕できるだけの艦船
   を建造中なのよ。で、それの試作型が出来たって言うんで試乗も兼ねようかなと
   思って」
恒江「なんと……海上自○隊に喧嘩を売る気なんですか?」
信子「刃向かう者は全て敵。大丈夫よ、北畠の海上自○艦撃滅して伊勢湾の制海権をと
   れば今度はこっちが官軍。そのために、伊勢学園志摩学区から亡命してきた元海
   上自○官に艦船を作らせてるんだから」
長子「何という方ですか?」
信子「九鬼由真って娘。仮入学って事で、今は春菜の支配下に付けてあるわ」
326 ◆nT0xknNOBU :03/03/21 00:05
いやはや随分間が空いてしまいました(;´Д`)スマ…
もすこしペースを上げたいところですが、いやはやいやはや……
今回も、書くかー、と思いつつ昨日まで一文字たりとも書いてなかった有様。
人物も一つ所に集まりすぎで会話などごちゃごちゃしてきますし……
ちときびいしい所に入ってるかも。
本能寺まで完走はちょっと無理かなー
美濃攻略ぐらいで力尽きるかもで、そうなったら、ゴメンナサイ(;´Д`)
>>326
おおっ更新されてる!!
読みましたが相変わらずおもしろいですよ
できれば本能寺と言わず徳川幕府まで見たいですが、できるだけ頑張ってください
続きキテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!

ありがとうございます、待っててよかったー。
長いこと間が空いていても、職人さんがまた返ってきてくれるところが三戦らしいです(笑
続きヽ(´ー`)ノ
ついに九鬼タンキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
待ってた甲斐があった!!このペースでやってほしい
今更だけど新作キター
ほしゅ
春爛漫保守。
常滑は古来陶器で知られ、中世には関東まで輸出範囲が及んでいた。関東の古城趾、特
に南関東で出土する陶器に美濃・瀬戸・常滑系が多くみられる事によって、当時の関東
が陶器に関して後進地であったことと、常滑産陶器の優位なシェアが海運によって成立
していたことが推測できる。しかし、陸運が物流の主流になり、陶器自体の需要も減っ
た今となっては、常滑産陶器の地位は瀬戸や信楽などに取って代わられている。
貞子「それで信子様、私も余り詳しい話は聞いていないのですけれど、建造した艦船は
   どこにあるのですか?」
さほど大きくもない港を一望してから貞子がそう聞いた。一同は海辺のカフェでたこ焼
きをつつきながら、まったりと海を眺めている。この常滑港、今は昔の栄華なりとはい
えども、港は依然良港としての機能を失っていない。しかし、ざっと見たところ軍艦ら
しき船は見えなかった。
信子「慌てない慌てない。そろそろ入港してくる頃だから」
貞子「この港で造ったのではないのですか?」
信子「うん、諸般の事情で大湊で造ったのよ」
貞子「大湊……伊勢ではありませんか、危険では?」
信子「そうだけど、大湊は伊勢学園の支配地じゃなくて独立都市だから大丈夫よ。それ
   に独立専修学校大湊校の造船科はこの辺りじゃトップの技術力だし」
貞子「そうなんですか?」
信子「そうなんです。何でも造れるの。港はちっさいけど」
と、信子達がそんな話をしていると、不意にカフェの外でざわめきが起こる。
信子「ん、来たのかしら?」
信子はそれを待ち侘びた水軍の到着かと思い席を立った。
信子「来たみたいよ。みんな、行くわよ」
そして他の一同をも促す。一同も否はない。
秀美「あっ、待ってください〜」
ただ秀美だけが、みんなの残したたこ焼きを無理矢理口に詰め込んでから慌てて後を追
った。
信子「と、思ったのに……来て無いじゃない」
期待した軍艦の姿がない港を見て、信子が不機嫌そうに言った。残念ながらは外のざわ
めきは、海の方ではなく港の一角、さっき寄港したばかりらしい漁船の前で起こったも
のらしい。
信子「全くなんなのよ……」
ぶつぶつ言いながら、信子は何となくその騒ぎの方へ向かって歩いた。暇だからと言う
せいもあるし、単に好奇心をそそられたと言うこともある。他の一同も信子についてい
く、各々好奇心が無いわけではない。
信子「これこれ子供、亀をいじめてはいかんぞ」
騒ぎの輪に近づくなり、そこにいた人々に信子はいきなりそう言った。
子供「は?何ですかあなたは?」
怪訝な声で聞き返す子供、もとい、服装から見て港湾局職員らしき人。
信子「通りすがりの浦島信子よ。亀をいじめてはいけないわね」
職員「亀じゃありませんよ。人が揚がったんです」
こんな怪しげな人間に答えてやる必要など無いが、港湾職員は親切にも答えてくれる
信子「死体?」
職員「どうでしょう。あの漁船が引き上げたときはぴくりともしなかったようですが」
そう言って港湾職員は目の前の漁船を指さす。近海用の小さな漁船で、排水量は百トン
前後だろう。
職員「腐敗はしてませんが、底引き網に掛かったそうですから、まあ死んでるでしょう
   ね」
信子「ほう、殺しか?ヤス」
職員「いや、ヤスじゃないですけど……殺人かどうかは検死官を待たないと、何とも」
信子「仏さんを見せてもらうわよ」
職員「いや、ちょっと待って下さいよ……」
港湾職員は当然制止するが、信子も当然無視する。ずかずかと人の輪を割って通る。す
ると青いシーツを掛けられた物体が二つあった。
信子「二人、心中かしら?」
そう呟くと、信子は躊躇なく片方、比較的小さな方のシーツを捲る。
信子「……」
一瞬の沈黙の後、信子はシーツの中身を海の中に蹴り落とした。
職員「ああ!?何するんですか!?」
大慌てで止めに入る港湾職員、その職員を無視して、大きな方の物体を、今度は中身も
見ずに海に蹴り落とす。
職員「ちょっとちょっと!」
信子「……難事件だったわね。いやー、解決解決」
大慌ての港湾職員を放って、信子はそう言ってその場を立ち去ろうとする。しかしその
時、護岸コンクリートしたの海からにょきりと一本の腕が生え、信子の足首を掴む。
腕「おいてかないで〜……」
腕はか細い声でそう言う。
信子「……」
信子はその声を聞きながらも表情を変えず、掴まれた方と反対の足で、自分を掴む腕に
す無言でストッピングを加える。
腕「いたいいたい……」
腕は泣きそうな声をあげるが、それでも信子は蹴り続ける。
長子「信子様、何をなさっているのです?」
そんなことをしていると、人混みを割って他の一同も現場に到着する。ひたすら海から
生える腕に蹴りを加える奇妙な光景を見て、長子が一番にそう聞いた。
信子「船幽霊を退治している所よ」
小麦「船幽霊って、船に乗ってるときに出るんじゃないんですか?それよりもその腕、
   尾張学園の制服を着ているように見えるんですけど……」
小麦もその光景を見て、呆れつつそう言う。
恒江「……というか。何してるのよ、盛美?」
恒江も同じく呆れながら言う。護岸の横から見れば一目瞭然、信子の足を掴んでいるの
は、昨日から行方不明になっていた佐久間盛美である。それはもちろん信子が山に置き
去りにしたからなのだが、そのことは信子以外知らない。
盛美「ひょぉぉぉぉ……とにかく海から引き上げてぇぇ……ここは寒い、寒い……」
取り敢えず取り敢えず話せる程度には元気なようだ。盛美の言葉を聞いて、小麦と恒江
は、まだ蹴り続けている信子に何とかどいてもらい、盛美の体を護岸の上に引き上げる。
一方、少し離れた所では、盛美と一緒に行方不明になっていた柴田勝枝が、長子と貞子
によって同じように引き上げられていた。こちらは盛美よりも衰弱が激しいようで、取
り敢えず命は大丈夫そうだがぐったりとへばってぴくりとも動かない。
恒江「で、何でこんなところで土左衛門になってるのよ?」
ともあれ盛美を引き上げた恒江は、あらためてそう聞く。盛美はがたがたと震えてかな
り衰弱しているようだったが、こんな事は日常茶飯事なので余り気を使われない。
盛美「……ぬ、沼の水を掻き出してたら何時の間に泥流になってて……そのまま流れ流
   れて川まで流されて海まで……」
恒江「はあ?」
恒江はいまいち盛美の言うことが理解できない。
盛美「な、流れ流れていつか消えゆくかと思った……」
恒江「何言ってるのかよく解らないんだけど……大体なんで沼の水なんか掻き出したの
   よ?」
盛美「そ、それは信子様が……」
盛美がそう口を開き掛けた瞬間、信子の手刀が盛美の首筋を叩いた。
盛美「うっ……」
信子「疲れてるようだから、寝かせときましょう」
恒江「……信子様、また無茶なことやらせたんですか?」
信子「ふん、どうでもいいわよそんなこと。それより、漸く来たみたいよ」
そう言うと、信子は盛美のことなどまったく無視して常滑港口の向こうを指さす。言わ
れて恒江も他の皆(除く盛美、勝枝)も、一様に信子の指さした方向を見る。その方向
には、まだ遠く潮霞にぼやけてはいるが、数隻の船が素晴らしい速度でこちらに向かっ
てきている。
信子「あれが九鬼由真の艦隊よ。遅れてきたのは気にくわないけど、なかなか役に立ち
   そうじゃない」
339 ◆nT0xknNOBU :03/04/02 23:18
あんまり進んでないですがこれだけ〜
まだ九鬼でてこれませーん。ウーン遅い。
次はもう少し早く、出来れば一気にこのエピソードを終わらせてしまいたいところ。
とはいえ予定通りに進んだことがないのは皆さんご存じの通りですが(;´Д`)
更新キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
相変わらず不憫な盛美が好きだ。

がんがってください。このスレが生き甲斐です。
>>338
盛美「な、流れ流れていつか消えゆくかと思った……」
禿藁。時の河かYO!
素早い更新キタ━(゚∀゚)━!!!
間抜けなごたごたをいい加減に切り上げ、信子達は常滑に着港した艦隊の方へ向かった。
巨大な船は常滑港の小さな湾内に入ることが出来ないので、旗艦らしき巨船が港の外苑
部に一隻着艦し、もう一隻それよりふた回りほど小さな船が湾内に着艦した。信子達は
巨船の方に向かった。
利子「ふぁ〜、おっきいですよ〜」
巨船の下から上を見上げ、利子が感嘆の声を上げた。舷側の高さ自体は超大型客船など
よりも遙かに低いが、それでも通常の船舶などと比べれば恐ろしく高い。さらに船体中
央に見える艦橋とそのすぐ後ろの巨大なアンテナの高さは、水面から裕に100mを超
えているだろう。
成美「でもごつごつしてて可愛くなーい」
成美は余り気に入らなかったようだ。確かに無骨な艦橋とアンテナがごちゃごちゃと付
いた容貌は可愛いとは言い難い。と、そんなことを話していると、舷側の階段を下りて
くる五人ほどの人数が見えた。当然セーラー服。そのセーラー服の人数は、階段を下り
るとロングヘアの少し偉そうな一人を先頭に信子達の方へ近づき、
川面「織田信子様ですね。九鬼船団旗艦波切の船長川面麗です。到着が遅くなりまし
   て申し訳有りません」
と挨拶を述べる。敬礼はない。後ろにいるセーラー服達は普通に頭を下げる。
信子「ごくろう」
それに対して信子は鷹揚に応えた。そして続けて聞く。
信子「九鬼由真は降りてこないの?」
川面「九鬼船団長は艦隊に指示を出すために今手が放せない状況でして……申し訳有り
   ませんがご挨拶は船内で、と」
信子「ふむ、まあいいわ。案内して」
川面「はい」
信子の言葉に川面は頷き、後ろに控えるセーラー服達に、いくぞ、と声を掛ける。
恒江「ちょっと待って下さい信子様、そのきつい階段、私達だけでは盛美達を運べませ
   んよ」
しかしその時、遅れて波切に到着した恒江がそう言った。その他、小麦、貞子、長子も
同時に到着する。信子達より遅れたのは、恒江と小麦が盛美を、長子と貞子が勝枝を担
いできたからである。
信子「捨ててけば?そこの海に」
小麦「そんな酷いことは出来ません」
信子の酷い案を小麦が否定する。
川面「具合の悪い方がおられるのでしたら向こうの病院船に乗船されるといいです。ベ
   ッドも一応ありますし」
川面がそこで口を挟み、港湾内に入港した三回りほど小さな船を指さす。
信子「あそこまで行くのめんどくさい」
川面「我々がお連れしますよ。ちょっと病人が出まして、あの船は波切より遅れて出航
   する予定ですから」
言うと川面は信子の返事を待たずセーラー服達に命令を下し、盛美と勝枝の二人を病院
船まで運ばせた。別に信子も文句は付けない。それよりも多少気になったことが有る。
信子「病人って言ったけど、大丈夫なの?」
船員の心配をしているわけではない。折角の新設艦隊なのに、船員が体の弱い病人だら
けでは話にならないと言う気持ちからである。
川面「ご心配には及びません。病人と言いましたが、病気ではありませんから」
信子「ん、船員同士で喧嘩でもしたの?」
多少不機嫌な声になって言う。それはそれで、そんな統制の利かないことでは困る。
川面「いいえ」
信子「じゃあなに?」
川面「なに、船酔いですよ」
九鬼由真は一人、と言っても実際には回りに何人かの船員はいる、しかし由真的には一
人である方が好ましく絵になった。故に由真の心象風景では、一人、艦橋から目の前に
広がる大海原を眺めていた。伊勢湾が狭いことはこの際関係ない。由真は広い海が好き
だからである。
由真「友よ、お前はこの海を見ているか……志摩を追われ、ひとりぼっちになった俺だ
   が、またお前の居る海に帰ってきた。……九曜の旗は、また大海原に翻ったのだ。
   友よ、お前が愛した海は、お前を愛する余りその胸の中にお前を抱きしめてしま
   ったな。……羨ましくもある。だが友よ、私はまだお前ほどいい女ではないよう
   だ。まだ彼女の気まぐれな胸の上に彷徨っている……」
そこで由真は言葉を切り、手にしたウィスィー入れを口元に運び、小さく首を仰向けに
そらせた。肩ほどの髪がさらりと後ろになびき、中の液体が喉に流し込まれる。一口だ
けを飲み終え、由真はウィスキー入れを軽く艦橋の外に放り投げた。
由真「海よ、友の墓標、我が永久の褥よ。今は酔え」
そう呟きもう一度目を遠くに向け、微かに微笑んだ。
由真「夕日か……美しい」
呟き、そして目を瞑る。
信子「今は朝だ!どたわけ!」
と、叫び声とともにいきなり由真の後頭部にすさまじい衝撃が加えられる。
由真「にゃるら!?にゅにゃにゃにゃ!?」
奇妙な叫び声をあげ吹っ飛ばされた由真は、そのまま壁に叩き付けられる。
由真「いてて……」
しかし、小柄で身の軽そうな、見た感じ10歳ぐらいな少女は、大したダメージを受け
た様子もなくすぐ起き上がる。
由真「なにすんだよバカー!いい気分になってたのにー!」
そして壁に打ち付けたのか前髪の下の額を押さえながら、自分を蹴り飛ばした人物、信
子に向かって大声で怒鳴った。
信子「あんたね!船酔いするような船員を軍艦に乗せていい気分になってんじゃないわ
   よ!どういうつもりなの!」
負けずに信子も怒鳴り返す。
由真「ちがーう!この船は軍艦じゃない!海賊船だー!自由の船なの!」
信子「知るか!聞けば船員の半分が船酔いで使い物にならないって言うじゃない!」
由真「半分じゃない!256分の136だ!」
信子「一緒よ!……って違う!微妙にもっと酷いじゃない!この馬鹿!」
由真「にゃるらー!?馬鹿って言う奴が馬鹿なんだぞー!」
信子「うっさい馬鹿!この始末どーする気なのよ!」
由真「馬鹿じゃない!うー、折角亡き友の思い出に浸ってたのに邪魔された……くそー!
   ロマンの解らない奴めー!」
信子「……志摩の海○でいじめられて逃げ出してきたのに、そんな友達が居たわけ?」
由真「うっさいなー!脳内友達だよー!ほっといてよー!」
信子「はぁ?そんな事して虚しくないの?」
由真「全然。あのねー、安美と由真は死ぬときは一緒って誓ったぐらいの親友なんだ」
信子「安美?」
由真「脳内友達の名前。おばあちゃんの名前から貰ったの」
信子「グランマコンプレックスか」
由真「いいでしょー。それでねー、ある時由真の船が悪者の海○に撃沈されちゃって、
   二人とも海に流されちゃうの、でも浮き輪になるような材木は一人分しかない!
   由真は安美に譲ろうとするんだけど……」
信子「あー、もういいもういい。安っ」
由真「安くなーい!ここから45巻に渡るドラマが続くんだから!」
信子「長っ!」
由真「まだまだ続刊中!」
信子「その上まだ……」
さすがに信子も頭を抱えそうになる。しかしここで頭を抱えるようではこの世界でやっ
ていくことは出来ない。
信子「……とにかくあんたの妄想はもういい。で、この不始末をどうしてくれるの?」
気を取り直し、信子はもう一度由真に詰め寄る。
由真「にゃら?何の不始末?」
信子「さっきから何度も言ってるでしょう!何で船酔いするような役立たずの船員を入
   れたのよ!」
由真「何だそんなことか」
由真は信子の言葉ににやりと笑う。
由真「慌てることはない。海は俺達の母だ。軟弱な坊やもまったく簡単に一人前の男に
   仕上げてくれる」
言って上着(大分くたびれたマントを半分ぐらい引きずって着ていて、その下にレザー
のチョッキを着ている。因みに下は信子らと同じ学校指定のスカート)のポケットから
ウィスキー入れ取り出してそれをあおる。
由真「ま、船員が足りなくて雇ったバイトだから、明日には居なくなるがな」
信子「な め た こ と い っ て く れ る じ ゃ な い の ?」
由真「にゃるら!?いた、いたいたいたいたいた!いたいってばー!」
信子は両の拳で由真の頭を両側からぐりぐりと締め付ける。手加減は一切していないの
で、なにやらみしみしという音も聞こえる。
信子「それに、小学生がウィスキーなんか飲んでんじゃないわよ!100年早い、10
   0年」
由真「いたいたいた!ちがっ、あれはお酒じゃないの!中身ポカリだから由真が飲んで
   も問題なしっ!PTAも安心なんだから!」    
信子「紛らわしいことするな!PTAなど滅べ!」
由真「あー!いたた!どさくさに紛れてPTAをけなした!チクッてやるぞ!うわっ!
   にゃるらー!いたい!」
信子「その前に頭を砕いてあげるわよ」
信子は落ち着きを取り戻し、冷静な口調でそう言った。
由真「あっ?もしかしてマジ?」
信子「正解。でも人生は不正解だったわね」
由真「にゃるらー!?ひとごろしー!」
信子の本気を見て取った由真が今更ながら慌ててじたばたともがく。しかし本気で殺す
気の信子の力は強い。
川面「しかし死なれても困りますから。その辺で勘弁して下さい」
が、そこは川面船長が助け船を出してくれる。もっとも、川面船長は信子と一緒に艦橋
に来たのだから、今までは見捨てていたと言うことにもなる。
信子「こんな奴を庇ってもいいことないわよ」
由真「いたいいたい。や、ほんといたいってばー!しぬー!」
信子は由真の頭を締め付ける手を休めず川面に言う。
川面「しかし私や他の者ではこの船団の指揮は出来ません。確かに由真船団長は馬鹿で
   すが」
由真「川面ー!今言ったこと忘れないかんなー!」
じたばたともがきつつ由真が川面船長に向かって叫ぶ。それを見てまだ締め付けが足り
なかったと思ったのか、信子はいっそう腕に込める力を強める。
由真「にゃるらー!!しぬ!しぬ!」
川面「馬鹿ですが、船団の指揮に関しては天才です。我々は元より、伊勢湾で由真船団
   長以上の人材はあり得ないでしょう」
由真「そうだー!天才なんだからなー!」
信子の腕をのけようと小さな手で奮闘しながら必死に話しに加わる。
川面「船員の問題は、志摩だけでなく知多半島、伊勢でも募集しています。特殊な船な
   ので多少時間が掛かります、後一月もすれば解決するでしょう」
信子「うーん……」
そう言われると信子も少し悩む。折角造った海軍をこのまま腐らせてしまうのももった
いない。もちろん由真の代わりに他の指揮官を連れて来るという手もあるが、伊勢湾の
海軍指揮官は多くが伊勢学園に所属し、知多半島など尾張学園の領内には小規模な艦隊
を指揮できる程度の人間が居るだけで、それにしてもそう多くいるわけではない。
川面「万卒は得やすく一将は得難しと言います。ここは普段の馬鹿さには目を瞑って由
   真船団長を使った方がよろしいかと」
由真「そうだそうだ!たすけろー!あ、って言うか川面ー!また馬鹿って言ったなー!」
川面船長の言葉に乗って由真も騒ぐ。信子は何となく拳の力強めた。
由真「いたたたたたたたたたたたた!」
信子「……うーん。わかった、今回だけは許す」
言うと信子は腕の力を抜いた。同時に、宙づりの様な格好になっていた由真の体が床に、
どたっ、と落ちる。
由真「うわっ!うー、いたいた。頭も痛いしー、くそー、いつか仕返ししてやるー!」
信子「私に仕返しする気なら、即刻死んで貰うわよ」
由真「あっ、うそうそ。仕返ししない」
ものすごい目で信子に睨み付けられ、由真は慌てて弁解する。信子は嘘臭い言葉を吐く
由真に一瞥をくれてから、川面船長の方へ向き直る。
信子「まあこれからのことはいいわ。それよりも今日の航海は大丈夫なんでしょうね?
   船員が半分以上も居ないでちゃんと動かせるの?」
川面「それは大丈夫です。波切の通常乗船員は340人ですが、砲手、艦載ヘリのパイ
   ロット、その他戦闘従事者の人数を操船に回します。それから二隻の装甲海防艦
   「金剛」と「志摩」の人数も不足していますが、これは残り一四隻の駆逐挺を常
   滑に停泊させ、その分の人員を回て動かします。波切の索敵能力は伊勢学園の自
   ○艦隊を上回っていますから、戦闘をしなければこれで充分でしょう」
信子「なんだか頼りないわねぇ。もっと派手にやれると思ってたのに」
川面船長の案に、信子はあからさまな不満の色を浮かべた。
川面「少し、時間が足りませんで……」
信子「言い訳は言わない。まあいいわ。今回はそれで満足しましょう」
川面「申し訳有りません」
川面船長はそう言って深く頭を下げる。
信子「ふん、それじゃ早速出航して貰おうかしら。もう他のみんなも乗った?」
川面「生徒会方々は先程部下に命じて食堂の方にお通ししました。狭いところですが、
   他に皆様のくつろげるところもありませんので」
信子「それはいいわよ、遊びに来たんじゃないんだし。そうそう、後で全員艦橋に呼ぶ
   けど、問題ないわよね」
川面「はい」
信子「そう。それで、どれぐらいで出航できるのかしら?」
川面「少々お待ちを」
川面艦長はそう信子に言ってから、伝令に何事か話しかける。と、その返事を聞いた途
端妙な顔をになった。
信子「どうしたの?」
不審に思った信子がそう聞く。
川面「それが……艦橋前の掃除をしていた船員が頭に落下物を受けて昏倒したようでし
   て……病院へ搬送するため少し時間が……」
川面船長が言い辛そうに言った。
信子「落下物?」
川面「はい……何でもウィスキー入れとか……」
消え入りそうな声で答える川面船長の顔を一瞬まじまじと見つめ、その後信子は顔を巡
らして由真を見た。由真は信子の魔の手を逃れて、早速妄想の続きをしている。
由真「我が青春は海と共にあった。志摩か……何もかも皆懐かしい」
そしてまた、ウイスキー入れ(中ポカリ)に口付ける。
信子「由真」
由真「何だ。素人は引っ込んでろ」
信子「あ ん た は 、 こ の 世 か ら 引 っ 込 ん で み る ?」
由真「えっ、なにすんのー!いた!いたたたた!痛いってばよー!」
そんな、信子に頭を締め付けられる由真の悲鳴を聞きながら、川面船長は黙々と職務を
こなしていくのでありました。
351 ◆nT0xknNOBU :03/04/05 02:23
二時か(;´Д`)
まだ終わってませーん。
あー、他板で何か気付いても知らんぷりして下さい(;´Д`)
おお、更新が!
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
船団長も良いけど、船長が(・∀・)イイ!! かも。

他板は判らないけど、更新おつかれさまです。無理せず頑張って下さい。
353無名武将@お腹せっぷく:03/04/05 10:57
イパーイ更新されてる!
「捨ててけば?そこの海に」
「正解。でも人生は不正解だったわね」
信子さま…(;´Д`)ハァハァ

NOBUさんの気が向いた時に、続けられるところまで
書いてくれるだけで満足なので、適当にがんがってください。
354名無し職人:03/04/05 11:17
しかもまんこ
更新ペースイイ
でも楽なペースでやって下さい
更新ペース早くなると、逆に心配になるのか?(w
>>357
ソレヤァ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ッ!!!!
なんとなく学園三国志の関係者っぽいな。スクリプト同じだし。
>>358
違う違う。ネタだって(w
360359@_F:03/04/09 00:36
意味不明なんで訂正。
三国志の方とは関係無いし、ネタで作ったんだYO、と。
紛らわしくてごめんなさい。
361無名武将@お腹せっぷく:03/04/09 00:48
おおFたんだ、記念カキコしとこう。
又気が向いたら、九鬼タンでも書いて下さい。
ネタなのか(´・ω・`)ショボーン
更新の時を静かに待つ
>>357
いつのまにかこんなのできてたのか…
2ch以外のどっかで紹介したいけど、控えるべきだろうか?
Fたんの意見を伺ってみたいな。
>>364
少なくとも、この世界が理解されるところじゃないとダメだろう‥。
保守
367無名武将@お腹せっぷく:03/04/15 15:51
晒し
368_F:03/04/16 00:46
>>364
好きにしていいですよ。
どこで紹介する気か知らないけども。
369364:03/04/16 00:53
>>368
サンクスコ。2、3ほど掲示板とかメールとかでお知らせしたYO!
もっともニュース系とこは、スルーされるかもしれんが。
生暖かく今後の充実を見守るよ。お騒がせしますた。
370とりすがり:03/04/16 20:46
371山崎渉:03/04/17 10:55
(^^)
370は新作かな?
港での一悶着を片づけ、どうにかこうにか信子達は常滑を出航した。乗船は川面麗の指
揮する旗艦「波切」である。
信子「馬鹿の相手をして随分時間をとったけど、どうやら航海は順調なようね」
多少機嫌を直した信子が川面船長に言う。艦橋には食堂に入れられていた尾張学園の他
の役員も既に来ていた。ただし、勝枝と盛美の二人は体調不良のため病院船のベッドで
寝込んでいる。
川面「遅れて申し訳有りません」
川面船長は信子の言葉を受けて謝る。
信子「まあいいわ、これだけの船を動かせる人材は貴重だし」
機嫌の直った信子は、鷹揚にそう言う。
由真「そうだよー!貴重だろー!だから早くおろせよー!バカー!」
信子の手によって逆さ吊りにぶら下げられた由真が、信子と川面船長の会話に割り込ん
で叫んだ。スカートが全開でスパッツ丸出しの恥ずかしい姿だが、「波切」には信子達
を含めて女性しか乗っていないのでそれ程問題ない。もっとも、恥ずかしい格好である
ことに変わりはない。
信子「ばか〜?それが人にものを頼む態度なのかしら?」
信子は川面船長との会話をうち切って由真の方へ歩み寄ると、由真を吊り下げているロ
ープを勢い良く振る。
由真「にゃるら〜!?頭に血がー!マジ死ぬってばよー!」
泣き叫ぶ由真を無視して、信子は更に由真の体が円運動をするようにロープを振る。
由真「にゃら〜!?しゃめっしゅしゃめっしゅ!しゅたんにゃるがしゃんなにゃるしゅ
   たんにゃるがしゃんな!」
ぐるぐると振り回されながら由真は奇妙な叫び声を上げる。
川面「もうその辺で勘弁して上げて下さい……」
遠心力で地上から3mほど浮かび上がった由真を見かねて、ようやく川面船長が信子に
そう言い止めて貰う。
信子「で、何か言いたいことはある?」
手を止めた信子は、ぐったりと体の垂れ下がった由真にそう聞いた。
由真「にゃるら〜……」
由真は目を回してとても答えられる状態ではない。
信子「ふむ……」
信子は何となく、目の前にある由真のスパッツを引っ張ってみた。
由真「にゃら!?やめ、やめ!」
それに気付いた由真が慌てて制止する。
信子「何か言いたいことは?」
信子は手を止めてもう一度由真にそう聞く。
由真「うっ……?」
信子「うっ……?」
由真のうめき声を信子は繰り返して言う。
由真「吐きそう……」
そう言うと由真は、真っ青な顔の唇に両手を当てて咽づく。
信子「……おろしてあげるから吐かないでよ」
慌てて由真のそばから離れ、信子はそう言った。つと、川面船長が由真のそばにより、
無造作に由真を吊るロープを切る。
由真「にゃが!?」
頭から床に落ち、由真は悲鳴を上げた。そして、何か言いたいこともあるだろうが、そ
んな元気もないのか、そのままぐったりと床にのびる。
川面「船団長を医務室にお連れしろ」
川面船長がそう言うと、配下らしい数人がサッと由真の体を運び去る。彼女らは船酔い
していない。信子は既に川面船長から説明を受けているが、元々から九鬼家の裁量する
波切校に居た人数で、波切校が伊勢北畠の援助を受けた志摩諸校に落とされてからも由
真について来た奇特な人たちである。元々海洋学校だった波切校の生徒なので海にはな
れている。
川面「信子様、余り船団長をいじめらると使い物にならなくなりますよ」
それを見届けてから、川面船長は信子にやんわりと忠告した。
信子「別にあれが使い物にならなくなっても、あなたを代わりの船団長にすればいいじ
   ゃない」
川面「先程も言いましたが、操船技術ならともかく、艦隊指揮においては私の技量は船
   団長に及びません。それに、あれでも割と船員達には信頼されて居るんですよ」
信子「あれが?」
川面「あれが」
川面船長はしっかりと頷いて信子に答えた。
信子「志摩学園ではつまはじきにされてたって聞いたけど……」
川面「波切校以外ではそうでした。飛び級で海防科に入学してすぐの時、演習で志摩学
   園他校の艦隊殲滅してしまいましたから、それで恨みを買ったのでしょう」
信子「恨みねぇ……」
川面「何せ我々は相手の半数だったにも関わらずの戦果ですからね」
言って川面船長はニヤッと笑った。表情の変化は大きくないが、心底愉快だと言う雰囲
気が、その笑みから見て取れた。
信子「嬉しそうね」
川面「志摩学園での我が校の地位はお世辞にも良いとは言えませんでしたからね。正直
   溜飲が下がりました」
信子「ふん、それで由真は人気があるわけか」
川面「まあ、そうです。もっとも、普段が馬鹿なので陸に上がれば他校の生徒からはい
   じめられまくっていたようで、いきなり志摩学園を飛び出すと言ったときは皆動
   揺しましたが……」
信子「それでも付いてきた、と」
川面「全員ではありません。由真船団長に着いてきたのは波切校の半数ほどです。学籍
   も役職も失うのですから当然でしょう。それでも半数が着いてきたのは、なんで
   すね、皆由真船団長の世話を焼きたかったんでしょう。あれでも、結構可愛いと
   ころがあるんですよ」
川面船長はそう言って、今度も笑った。ただし先程と違い、困ったような、それでも実
のところそんなに困った風でもない、どことなく愛情のある笑みである。
信子「あなたもその口?」
その笑みを見て信子は川面船長にそう聞く。
川面「さあ……どうでしょう?確かにそれもあるでしょうが……」
川面船長はそこで首を傾げ、思案の体をとって黙る。
信子「他にも?」
重ねて聞く信子に、川面船長は首をゆっくりと、傾けた時よりもほんの少しだけ早い速
度で戻し、またそこで一拍の間を置いて、十分に自分の心情を租借してから口を開いた。
川面「そうですね。由真船団長に着いていけば、面白い世界が見えると思ったのかも知
   れません。志摩は海に面し、海は伊勢湾を超えて世界に広がっているにもかかわ
   らず、志摩学園は二十里四方もない小天地で汲々と権力を争っています。誰も目
   の前に有る海の広さに気付いていない」
そこで川面船長は一端言葉を切って、また少し思案の顔を作る。そしてそれから覚める
と、また言葉を続ける。
川面「いや、他人ばかりでは有りません。私も、気付いていなかった。しかし由真船団
   長だけは違います。事も無げに志摩の小天地を捨てました。我々がいくら海に生
   きると言いつつも、陸地を失うことを本能的に恐れるのに、由真船団長にとって
   陸はただ海に面しているというだけの価値しかない。どうも違いますね、我々と
   は。若いせいもあるのでしょうが、何者にも、陸地にも因習にも縛られていない」
そこまで言って漸く川面は言葉を止めた。少し言い過ぎたのを恥じたのか、或いは多少
自らの言葉に興奮しているのか、頬が僅かに紅潮している。
信子はその興奮には引きずられなかったが、由真の事を多少見直す気持ちにはなった。
そこまで部下に買われているなら、それだけでも捨てたものではないだろう。
信子「でも、あなただって若いでしょう。私と同い年だし」
川面「ええ、しかし心は多少の老いを見ました。失礼ながら、同じ歳でも信子様の方が
   格段にお若い」
信子「そう?」
信子はちょっと嫌な顔をして言う。若いとは、信子の立場から言えば必ずしも褒め言葉
とはならないだろう。むしろ未経験、未熟と言った意味を持つかもしれない。それでも
信子が怒らないのは、今までの話の流れから川面船長が決して悪い意味で使ったわけで
はないことがわかるからだが、それでも多少は引っかかった。
川面「決して侮っての言葉ではありません」
川面船長もそれに気付いたのかそう付け足す。
信子「わかってるわよ」
信子はそう言って頷くと、すぐ言葉を付け足した。
信子「でも、私は由真より凄いわよ」
川面「それはもう」
川面船長は笑ってその言葉を受けた。川面の上官は由真だけである。そう言われたとこ
ろで「老いた」自分はどれほどの飛躍もできない。せいぜいが、若者を見守る役となる
程度であろう。

由真「うえ〜……酷い目にあった……」
暫くして、案外タフなのか由真が医務室から艦橋に戻ってくる。信子以外の尾張学園の
面子は、珍しそうに艦橋の中を見回し、思い思いの場所に散っている。ただし信子だけ
は川面船長との雑談を続けていた。
信子「早かったわね」
信子が戻ってきた由真にそう声を掛ける。
由真「にゃるら!?また酷いことする気かー!?」
しかし由真は警戒をあらわにし、サッと身を退いて構え(何時でも逃げ出せる)をとる。
信子「何にもしないわよ」
由真「ほんとかー?って言うか何か怪しい……急に声が優しくなったような?」
信子「使えることがわかったからね。艦隊指揮能力は解らないけど、部下に慕われてる
   なら、まあ無様な戦いかたはしないでしょ」
由真「慕われてる?由真がー?嘘だー、川面とか、何時も由真のこと馬鹿呼ばわりする
   ぞー」
信子「まあわかって無くてもいいけど……」
余りその辺は興味がないのか、信子は適当な返事をして由真の方へ近づく。由真はまだ
警戒しているが、逃げようとはしない。もっとも、逃げたとしても信子は逃がさないだ
ろう。
信子「駄目でもおもちゃにはなりそうだし」
気持ち悪いほど柔和な笑顔を作り、信子は由真にそう言った。なにやら薄ら寒いものを
感じたのか、由真はびくりと身を震わせ僅かに後ずさる。
由真「にゃにかきょわい……」
信子「大丈夫よ、恐いのは最初だけだから。……ところで、いじめられて志摩を飛び出
   したそうだけど、初めからうち(尾張学園)を頼る気だったの?」
由真「にゃら?んー、別に当てなんか無かったけど……たまたま春菜が尾張学園に来な
   いかっていったからー、まー成り行きー」
信子「当てもなく海に飛び出すなんて無茶するわね?」
由真「いやあ……そこまで深く考えて無くてー、とにかくいじめが恐くてさー、逃げん
   なら広いとこの方がいいかなーって、海に出ちゃったんだよねー、後でちょっと
   困ったよー、ご飯とかどうしようって」
事もなく言う由真を、信子は多少呆れた目で見つめた。幸い、何かあったのか、川面船
長はオペレーターの所に行っていて話は聞いていない。
信子「……ま、そんなもんだとは思ってたけど」
と、そう信子が呟いた瞬間、川面船長が鋭い声を上げた。
川面「由真船団長、7時の方向に志摩学園の艦船を確認!距離30000、技師が欺瞞
   システムの調節を誤ったようです。既に我々は敵艦に認識されている模様です」
379 ◆nT0xknNOBU :03/04/19 19:06
今回は何時も通りトロイ更新!
いやはや、ご心配かけてしまって。
べつに無理してるわけではなくて更新間隔は割と気分なのですよ。
書く気になったときに書いてるだけなので。
しかし更新が早い(そんなめちゃ早いわけじゃないですが)と心配されるとは(;´Д`)

>F氏、通りすがり氏
や、これは、お久しぶりです。
うーん、相変わらず奇麗な絵。
絵というのはそのもので物語を喚起させる力がありますね。
もっとも私のは物語と言うほどの完成度はありませんが(;´Д`)

あ、それと宣伝なんですが、
2ch外のサイトとかに結構2chは嫌われるようなので、
お気持ちは大変嬉しく励みになるのですが余り激しくは・・・
よく知っている友達にこんなの有るよと言って下さるぐらいの方が。
と、そのように思う次第です。はい。

あと、設定があったらいい、と、通りすがりさんが言っておられたので、
設定をば、ちと長くなったので次レスで。
余り参考にはならないかも知れませんが・・・
380 ◆nT0xknNOBU :03/04/19 19:17
抜けてるのもあると思います。そう言うキャラは言って下さい。
レスに気づいたら思いつく限りは書きますのでどなたでもお気軽に。
あ、竹中十六騎全員とかは勘弁で(;´Д`)

川面麗  15歳:髪はロングで海軍軍人服着用。九鬼の子守です。名字の読みは(かわつら)
斉藤道子 24歳:一見優しげな女王様です。既に引退してますが出番がちょっとだけあります。
日根野美沙18歳:「詰め所の奥から長身細身の少女が現れた。その少女は細身ではあったが目が
鷹のように鋭く、よく言えば些細な不審も見逃さない、悪く言えば疑い深げな視線を持っていた。
服装は美濃学園警備隊の制服だが胸には銀のモールと、複雑な意匠を凝らした飾りを垂らしている。
徹美は知っているが、その飾りは少女が自らの手で作った物だ」
だ、そうです。自分で書いときながらすっかり忘れてました。
松井雪  16歳:メイドです。それ以上でもそれ以下でもないメイドです。
和田駒栄 17歳:馬っぽい名前・・・かわいそうなのでなんとなくイメージは若い黒木瞳。
朝倉鏡  17歳:小心な小悪党。安藤とキャラかぶるなぁ・・・こっちの方は若干サド気味と言うこ
とにして差別化を図ってみます。
朝倉健香 17歳:意地悪な部活の先輩(体育会系)ってな感じの、ショートヘア。
魚住小々奈17歳:保守派1。普通のお嬢様っぽい感じ、なのかなぁ?それ程無能というわ
けでもないかと。
前波志津子17歳:保守派2。同上。おざなり。
河合統子 17歳:会計係。越前学園では比較的ましな方。御影の浪費癖にちょっと困って
いますがやっぱり保守派。
鞍谷今日子19歳:学生ではありません。家柄がいいので朝倉家で養われています。小姑です。

うーん、あんまり参考にはならないかな・・・
基本的に設定とか決めてないんですよね。流れで。
だからもしかしたら前書いたことと矛盾してるかも・・・
381山崎渉:03/04/20 05:43
   ∧_∧
  (  ^^ )< ぬるぽ(^^)
更新乙カレー
ageておこう
ほしゅ
ジャンプの発売日を待つような心境
保守する
hosyu
388無名武将@お腹せっぷく:03/05/05 12:09
age
最近ペースが早すぎたからな〜
保守
また保守
職人さんだいじょうぶかなぁ
393 ◆nT0xknNOBU :03/05/16 23:52
すんません、ほっとんど書けてないっす。
いやー、ちょっと書くの飽きちゃって・・・
http://free---web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/freeup/file/kaihatutyuu.jpg
気分転換にこんなの作ってたり。
絵心がないのでグラフィック関係がしょっぱい上に、
HELLO WORLDの次に挑戦したのでいわゆるドシロウトだったりですが、
素人だけに手探りが面白かったり。
んでちょっとそっちに掛かってしまっていたりなので続きの方はもう少し待って下され(;´Д`)

>絵師の皆様
今までうpされた絵などゲーム中で使いたく思う所存でして。
許可などいただければこれ幸いとガンガンつかちゃうんですけど・・・(;´Д`)イイ?
394_F:03/05/17 03:13
>>393
自分のは好きに使ってくれてかまいませんよ。加工も一応OKです。
と、言ったは良いけど使えるの無さそうなんで、必要な画像あったら人物なら描きますや。
別に忙しいわけでなく、何描いて良いかわかんないからリク待ちしてたら一ヶ月経った…(;´Д`)

作業の方がんがってください。
395無名武将@お腹せっぷく:03/05/19 23:48
age
396bloom:03/05/19 23:48
>>393
ゆっくり待ってますのでがんばってください
398 ◆nT0xknNOBU :03/05/21 19:25
また板チェックをサボってしまった・・・

>>394
おお、ありがとうございます。
早速使わせていただきます。
しかし全然進んでなかったり・・・
しかも手探りでやったためかなりしょっぱい出来なので、
新たに絵を描いていただくなどはおそれ多いかと(;´Д`)
いや、そんな、100*100の顔グラフィックが欲しいなぁ、なんてずうずうしいことは!

>>397
いやいや、ゆっくりと言われるとほんとにゆっくりしてしまう人間です。
現に全く何もしていなかったりしますし(;´Д`)

しかし、ゲームなぞ作って私はどうする気なのやら・・・
ふつーに続きだけ書いてりゃよかったかも・・・自分で自分を追いつめてしまった感も・・・
えー、因みにシナリオは稲生合戦です。
桶狭間以前は書いてなかったので補完のつもりで作り出したら、
どう考えても書いちゃった方が早かったという・・・
未出の(そして今後出番のない)林美奈華(美作守)佐久間姉(大学)とかでます。
いずれどこかのうpローダーにうpしようかとおもっとります。結構でかいけど・・・
399山崎渉:03/05/22 01:17
━―━―━―━―━―━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━―━―━―━―━―━―
400無名武将@お腹せっぷく:03/05/22 18:49
ホシュ
保守
402_F:03/05/25 05:07
>>398
うぃ、とりあえず何がいるか判らんので、尾張の連中描いてるわけですが。
ttp://gaksen1.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/12/nobuko/file/1053700064.jpg
こんな感じで良いですかね。

背景及び周りの枠とかはどうしましょう?
403 ◆nT0xknNOBU :03/05/25 22:50
やや、これはFさん、ありがとうございます。
早速使わせていただきます。
登場人物に関しては稲生の戦いに参加した、
佐久間大学(佐久間姉)、林美作(林美奈華)、織田信長(信子)、柴田権六(勝枝)、
及びおまけで木下籐吉郎(秀美)の予定です。
稲生の戦いは小規模合戦なので余り人数も出なかったり。

>背景及び周りの枠とかはどうしましょう?
自分絵に関しては全くわかんないですよ、これが(;´Д`)
どうすれば見栄えがいいのかも分からなかったり・・・
http://free---web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/freeup/file/inafu.jpg
一応こんな感じの戦術マップなんかは作ってあるんですが・・・
背景などは思い及びも着かぬ世界というか・・・ムズイ

ついでに佐久間姉と林美奈華セリフの一部。

佐久間姉「貴方は幸運よ美しい痛みを知ることが出来たのだから」
      「醜い……摺潰してさしあげます」
林美奈華「あなた達のだらしなさには呆れるわね」
      「馬鹿!下賤な人たちはこれだから……」
404_F:03/05/26 21:30
>>403
何か男前になり過ぎましたが、勝枝です。
ttp://gaksen1.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/12/nobuko/file/1053806619.jpg

顔グラの背景真っ白なんで、画面に合わせたりしなくて良いかなというだけですんで、
あまり気にせずとも構いませんです、はい。
ttp://gaksen1.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/12/nobuko/file/1050604131.jpg
こんな感じです。ちと手抜き過ぎますが。
なんだか静かにコトが動き始めてますな
期待しつつ静観
406あぼーん:あぼーん
あぼーん
407_F:03/05/29 00:19
秀美ですや。
ttp://gaksen1.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/12/nobuko/file/1053950473.jpg

>>405
絵に関する要望なんかは、随時受け付けておりますので何かありましたらどうぞ。
408無名武将@お腹せっぷく:03/05/30 19:16
久々にきたらなにやら色々と…がんがれage
409 ◆nT0xknNOBU :03/06/01 00:14
えー、今日(1日)中には大まかなシステムは出来そうです。
バグ有りまくりだとは思いますが・・・
さて、どこにうpろう・・・

>Fさん
や、いつもながらこれはありがたく。
早速使わせていただきます。
これで見栄えも大分良くなりました。

しかし随分汚いプログラムになっちゃったなぁ・・・
初めてだけに仕方ないと思う反面作り直したらもっとキレイになるなどおもったり・・・
ま、これは本編の方にも言えるんですけど(書き直したらもっと上手く)。
保守
ゲームに期待しつつ保守
412無名武将@お腹せっぷく:03/06/10 17:44
>>410-411
保守晒し














414 ◆nT0xknNOBU :03/06/14 23:25
すんません(;´Д`)
ちくと諸般の事情で殆ど作業できず・・・
(かなり)未完成ですが一応うpっておきんす。

ttp://tool-ya.ddo.jp/2ch/trash-box/index.html

20030614052104298.zip

pass:nobuko
415 ◆nT0xknNOBU :03/06/14 23:27
ttp://tool-ya.ddo.jp/2ch/trash-box/contents.jsp?file=20030614052104298.zip
あ、しっぱい。
こっちからdでくだせい。
乙です。まだ完全には読んでいないですがこれからも頑張ってください。
>>415
ファイルが見つかりませぬ
保守
保守
ho
421無名武将@お腹せっぷく:03/06/30 00:34
いくら何でも落ちすぎ(;´Д`)
なんとなく…このまま落としていいのか
それとも保守するべきかを迷ってたんだよ…
でもせっかく上がったんだから保守ろう。
後になってからネタ浮かんで新スレ立てるのは、けっこう踏ん切りの要る作業。
もうちょっとこのスレで頑張ってみようよ!――ってROMの漏れが言うのも何だが。
やっぱり続きが気になるんだよね
気長に待ちたいので保守
保守
426坂東姫の苦悩(1):03/07/06 19:27
保守代わりに短編を。

放課後。水泳部の活動が終わった後は常陸学園の室内プールは私の貸切となる。
照明の消えたこの広い空間で、窓からほのかに差し込む月の光を浴びながら、
水の心地よい冷たさに、私は1匹の魚になる。
ああ、カ・イ・カ・ン…

私の名前は佐竹八重。常陸学園グループの総生徒会長。
人は私を鬼八重と呼ぶわ。
嫌だけど、仕方ないかなって思ってる。
鬼にならなきゃこの常陸学園グループは守れないもの。
私だって本当はみんなと仲良くしたい。
人並みに恋もしたいし、お洒落して遊びたいし、ちょっと位はイケナイ事にも
興味ある。
でも、仕方ないじゃない。
私ががんばらないとあの扇谷高校みたいに小田原商業に吸収合併されてしまうから。
だから私は鬼になったのよ。
そんな私のストレスを開放してくれるのが、水泳。
一人きりで泳いでいる間は、全てを忘れてリラックスできる。
でも、こんな貴重な時間を無情にも取り上げてくれる輩がいるのよね。
427坂東姫の苦悩(2):03/07/06 19:28
「会長、和田さんからお電話です」
私の相棒、真壁幹香がスピーカーで私を呼んだ。
急ぎプールサイドに上がり、傍らのタオルで顔と手を拭い終わる頃、幹香も私の
所へ到着する。
差し出された携帯に耳を当てると、会計監査の和田昭乃の困り果てた声が聞こえた。
「あ、会長?会長ですか?大変です!」
「大変なのは貴女の口調からわかるわよ。で、何が大変なのよ。落ち着いて話し
なさい」
「伊達さんが、伊達梵子さんが会長にお会いしたいって!話があるって!」
「断りなさい」
「でも、会長にお会いさせないと刺すって。ナイフ片手に」
「放っておきなさい。彼女もそこまでの馬鹿じゃ……」
「きゃあーー!こ、来ないで!」
突如私の言葉を遮る悲鳴。
それからすぐに鈍い音。
昭乃は携帯を地面に落としたらしい。
そして。
428坂東姫の苦悩(3):03/07/06 19:29
「やい、鬼総長。出て来い」
野卑な声。聞いただけで気が滅入る。
伊達梵子。米沢高校の生徒会長だ。
「鬼総長って……相変わらず野蛮人ね」
「野蛮で結構。ちょっとお話があるんだけれど。会ってくれるの?くれないの?」
「私には話すことなんて無いわね」
「ふーん。そんな態度取るんだ。じゃあ、明日も来ようかな。今度は一族郎党
引き連れて」
「……わかったわよ。会えばいいんでしょう。会えば」
脅しに乗るのは癪だけど、これ以上学園を混乱させるわけに行かない。
警察を呼ぶのは、世間体が悪いしね。
気が滅入るけれど仕方がない。
「会ってあげるから昭乃に代わって」
「あの腰抜け女なら逃げてどっかいっちゃったよ」
「じゃ、貴女は今どこにいるの。迎えに行くわ」
「閃光弾上げようか」
「……やめて。生徒会室にいるはずの昭乃を脅してたんだし、その辺りでしょう」
「大正解」
何が大正解だ。
頭が痛い。
429坂東姫の苦悩(4):03/07/06 19:30
時刻はすでに午後九時。
学園内でただ一箇所だけ明かりのともった生徒会室。
玄関口で震えていた昭乃に茶を出させ、仕方なく伊達梵子の話を聞く。
「さて、私に話って何かしら。また輝子さんのこと?」
以前、梵子の姉の輝子さんが友達の畠山さんに騙されてAVビデオ出演してしまっ
たことがある。
梵子はその畠山さんを襲わせ、ビデオ撮影してその手の雑誌に投稿し、退学させた。
畠山さんも悪いけれど、仕返しのあまりのえげつなさに、私は抗議したんだ。
そしたら梵子はみんなにそっぽ向かれちゃって。危うく生徒会長の座を追放され
かけたんだよね。
「輝子さんのことは可哀想だったと思う。でもね」
私は間違ったことはしていない。
気持ちはわかるけど、認めたら憎しみあいになるだけ。
何度もそう言い続けたが納得してもらえない。
いいかげんうんざりしてきてる。
今日もてっきりそのことだと思っていたんだけれど。
430坂東姫の苦悩(5):03/07/06 19:31
「違う。今日は別件」
梵子はそう言った。
「あんた、会津高校の生徒会選挙で汚い真似したでしょ。それでなきゃ竺子が
落ちるわけが無い。だってあたしの妹だよ?」
それを聞いて、彼女の自分勝手な頭が何を考えているのかわかったわ。
このごろの会津高校生徒会は会長運に恵まれていなかった。
初めに選ばれた葦名杜は飲酒がばれて停学処分、補欠選挙で選ばれた二階堂隆子
が突然病床に倒れ、異例の2度目の補欠選挙がこの前行われた。
候補となったのは私の従妹の白河広美と梵子の妹の伊達竺子。
選ばれたのは広美。
私は、応援くらいはしたけれど、梵子の言うような汚い真似なんかしていない。
431坂東姫の苦悩(6):03/07/06 19:33
だけど、説明したって無駄なんだろうな。
「伊達竺子」は字がわからなかったから思わず「白河広美」と書いてしまった
アホ学生が多かったことも、
広美はもともと生徒会役員をやっていて、かなり人望があったことも、
そして何よりぶっとび娘の妹だから敬遠した人が多いことも、全て念頭からは
ずして自分の妄想だけで人のせいにするんだろうな。
金をばら撒いて票を買ったんだろうとか、二階堂さんを病気にしたのも私の仕業
だろうとか言い出すんだろうな。
そう思って返した言葉がまずかった。
「証拠がどこにあるの」
言った瞬間しまったと思った。これじゃまるで開き直ったみたい。
案の定、梵子はにやりと笑った。
「認めたね。証拠なんて要らないわ。私が知っているだけで十分よ。じゃあね」
「ちょっと待ちなさい。八重は腐ってもそんなことする人じゃないわよ」
幹香が弁解してくれようとしたが、私は首を振った。
「かばってくれるのはありがたいけれど、もう彼女には何言ったって時間の無駄よ。
どうせ自分の都合のいい解釈しかしないから。そのまま帰してあげなさい」

…まったく。小田原商業のことだけでも頭が痛いのに…
432無名武将@お腹せっぷく:03/07/08 01:51
北ー!信愛!
『清和源氏名門のお嬢様』井伊!
梵子はやっぱり眼帯着けてんのか(笑)
433 ◆nT0xknNOBU :03/07/11 00:50
えー、新導入2chブラウザのテストを兼ねて先に。
ゲームの方は、とてもデバックが大変なのでちょいと無期延期など・・・(;´Д`)
この調子ではとても本編とか書けそうにないんで・・・スンマソン

>>426
おお、佐竹義重ですか。
なかなか難しそうな素材ですない。
関東戦国史は全般にメジャーでないので史料集めとかも大変そう。
そう言えば国府台合戦に関して「国府台合戦物語」なる書物が有るそうですが、
これは創作の軍記物なのかなぁ・・・一度見てみたいものです。
とまれ、八重さんの活躍今後とも期待しております。それはもう。

んで今回分は以下の通り、あんまり進んでないわけですが(;´Д`)
来週位には続き書きます。
量的には今回と大差ないと思いますが・・・
由真「にゃるらー?距離30000〜?」
川面の報告を聞き、由真は信子との雑談をうち切ってそう言った。
由真「よゆーで『波切』の策敵範囲じゃんよー、何で見つけらんなかったんだよー」
川面「フェーズド・アレイ・レーダーの調整ミスのようです。何せ我々、今までこんな
   最新鑑に乗ったことないですからね。人も足りませんし」
信子「ちょっと、そんなことで大丈夫なの?」
今までの由真のヘタレっぷりに加え、川面のこの頼りない発言に、信子は珍しく慌てて
埒のない念を押す。
陸上無敵の信子も海の上では無力に等しい。まして30000mも先の船が相手では手
のだしようがない。かといって、こんなところで海の藻屑と消えるのはさらに御免だ。
川面「大丈夫ですよ信子様、敵艦は伊勢湾の反対側ですから。船足はこちらの方が速い
   ので充分振り切れます」
ところへ、川面が信子を安心させるためにそう言う。
信子「本当なの?」
期待していた艦隊のヘタレっぷりに少々不信感を抱いている信子は、川面の言葉も疑わ
しそうに聞き返す。
川面「本当です。ですから心配は……」
と、
由真「あー!?逃げられっかバカー!戦闘だ戦闘ー!私は私を追放した伊勢学園に復讐
   してやるんだー!」
しかし、信子の念押しに答えようとした川面を遮って、突然叫び声を上げた。どうも情
緒不安定なのか、海のように気が変わりやすい。
川面「由真船団長、いま我が艦隊は万全の状態ではありません。由真船団長もそれを解
   っているのでしょう?それに今日は信子様も乗っておられますし、復讐はまた次
   の機会に……」
信子「そうね。馬鹿由真、自分でも自信ないことに私を巻き込まないでよ。大体こんな
   ところで伊勢学園の船を二、三隻沈めたところで、戦略的には全く意味ないし」
由真「うっさいばかー!自信が有るとか無いとかそんなことは関係ないんだよ!駄目と
   解っててもやらなきゃならん時があるんだよ!」
川面「しかし……」
川面はなおも反論を試みようとしたが、開きかけたその口を、少し落ち着きを取り戻し
た由真が両手で塞いだ。
由真「臆すな川面ー、敵艦の数は?」
川面「……はたかぜ級一隻、他巡視船三隻と思われます」
そう言われては、部下としては仕方ない。言われたとおり予想される伊勢学園の艦船を
由真に告げる。
由真「はたかぜ級。そんな高い艦を持ってるんだから伊勢学園の向井か、小浜だな。
   ……うー、あいつらにもいじめられたんだよなー……」
由真は一瞬恨みで冷静さを失いかけるが、何とか堪えて思考を元に戻す。
由真「この距離ならSM−2で届くな。向こうが撃ってこない内に撃沈してやろう。川
   面SM−2全弾射出。目標は伊勢学園のはたかぜ級艦」
川面「駄目ですよ」
しかし、由真の出した指示をあっさりと川面は却下する。
由真「……なんで?」
川面「レーダーの調整が上手くいっていませんので、今の状態で発射すれば目標を外れ   る確率が高くなってしまいます」
由真「全弾撃てばどれか当たるだろー?」
川面「外れるだけならいいんですが、最悪の場合民間船に誤爆する可能性が……」
由真「気にす(削除)だ!」
言った次の瞬間、由真は強い衝撃を横から受け壁に激突する。
由真「ぐはぁ!いきなり何すんだよー!」
信子「馬鹿はあんたよ!いきなり危ないこと言うんじゃないわよ!」
由真を蹴り飛ばした信子は、壁に衝突したのにぴんぴんとして抗議を向けてくる由真を
そう怒鳴りつけた。
信子「誤爆はいかん!」
由真「何でだよー!アメ(削除)ろー!」
信子「言うなってんでしょ!」
由真「がうはにゃらー!?」
再び信子の右足が鞭のように撓い、由真は壁に叩き付けられる。
信子「とにかく、誤爆はいかん。それに、状態が万全じゃないなら戦闘は避けなさい。
   命令よ」
由真「命令?はん、将外にあれば君命も受けざるところあり、だ!この船では私が法律、
   引っ込んでろ!」
信子「……なら、あんたを人生から引っ込ませてやろうかしら?」
言うと信子は壁際でへたり込んでいる由真にサッと近づき、襟口を両手で掴む。
由真「わわっ!なにすんだよー!?」
その手から逃れよう暴れる由真の抵抗を排して、信子は小さな由真の体を軽々と吊し上
げた。
信子「自沈艦隊の指揮官はいらないの。船を沈めるぐらいなら、積み荷を捨てる方がま
   しよ」
信子のこういう言葉は、常に冗談がない。本気で由真を海上投棄し指揮権を得る気でい
た。しかし、ここでは由真も黙っていない。
由真「うるさーい!何が自沈艦隊だ!むしろなー!私はこの船団のキングストン弁だ
   よ!?私が居なくなればこそ船団は自沈する!」
信子「その根拠のない自信はどこから来るのよ?」
由真「根拠はある!この船団はなー!装備こそ立派だけど中身は近代艦なんか操船した
   ことのない貧乏学校の生徒が詰まってんだ!誰もこの船団に自信なんか無いんだ
   よ!弱いんだよ!ショボいんだよ!ほっといてくれよー!」
信子「この艦隊が沈んだら私も水死するでしょ!ほっとけるか!」
由真「そうだ、ほっとけない!川面のばかとかはなー!私が伊勢学園の海軍に勝ったっ
   て言う事だけを心の支えにして付いてきたんだ!それも敵味方とも旧式艦の模擬
   演習でだぞ!頼りない!自分で考えても頼りない自信だ!その頼りなさの上に、
   いま我が船団は敵の艦隊に数に於いて同じく、船の質に於いて勝る、この戦機を
   私が逃げて見過ごせば、今なお頼りない自信の寄る辺はどこにある!なるほど勝
   っても意味はない、しかしここで逃げれば、この船団はクズどもを詰めて海に浮
   かぶだけの屑鉄だ!信子はテツクズが欲しいのか?なら私を捨てろ!」
そこまで言われて、信子は一応由真を振り回していた手を止める。急に遠心力を失い、
由真の体は止まった信子の手を軸にして一回転した。
由真「にゃるら!?」
襟首を掴まれたまま悲鳴を上げた由真の体は、信子の目の前でぶらぶらとゆれている。
信子「……戦闘は事前に勝つための手段を尽くしてから行うものよ。居もしない神を信
   じて天命を期待し、人事を怠って事を起こす者は、一戦して一勝してもいつか必
   ず破れるわ。由真、貴方に艦隊の指揮は任せられない」
由真「ちがー!私は彼我の戦力差を見て勝てると知ってる!そりゃ完全じゃないけど、
   九鬼船団が強くなるために逃げない!」
その言葉を聞いて信子は少しの間、由真の振り子が4,5往復する間ほどの時間沈黙し、
それから、パッ、と由真の襟首から手を離した。重力に従って、由真の体が床にどさり
と落ちる。
由真「にゃら!?いたいってよー!」
床に落ちた由真は、打ち付けたお尻をさすりながら言った。しかし、信子はもう由真の
方は見ず、踵を返して艦橋の出口へと足早に歩き出す。
由真「あっ!?どこいくんだよー?」
由真は信子に声を投げかける。
信子「川面」
しかし、今度も信子はその声に答えず足も止めず川面船長の名を呼んだ。
川面「はい?」
先程から心配そうに由真と信子の方を見続けていた川面は、不意に投げられた言葉に多
少慌て気味に返事を返した。
信子「『金剛』に移乗する。準備をしなさい」
川面「移乗……」
信子「そのまま『金剛』は桑名まで直行する。あんた達の馬鹿な賭に付き合って、こっ
   ちまで死ぬのはまっぴらよ」
川面「信子様、しかし……」
川面は明らかに不興をかった由真を弁護するために口を開こうとする。しかし、その言
葉を信子の言葉が遮った。
信子「由真、私が居るとやり辛いようだから、『波切』と『志摩』の指揮権はくれてや
   るわ。大口叩いた分、志摩学園の艦船を殲滅しないで再び私の目の前に現れたら
   日干し煉瓦にするわよ」
川面「あっ」
川面は小さく声を上げた。信子の言葉は、要するに九鬼船団の戦闘行動を黙認すると言
うことだ。今までの有り得ない暴言の数々から考えれば、寛大そのものの処置だろう。
由真「なんだとー!いねいね!とっとといっちゃえバーカ!」
しかしそれが分かってない人間もいた。一瞬、信子の動きが止まる。
川面「あっ」
川面はまた、今度は焦った声を上げる。と、同時に、どこからともなく信子の手の中に
あらわれた鞭がしなる。
由真「にゃら!?」
鞭は一瞬で由真の体に巻き付き、振り上げる信子の腕に合わせて由真の体を跳ね上げ、
由真の体を天上に叩き付けた。
由真「いあ!いあ!」
奇妙な声を上げ由真は天上にへばりつく。その体が、重力を受けずるりと落下しようと
した瞬間、信子は腕を、今度は思い切り振り下ろす。
由真「むぐるぅなふ!」
再び奇妙な声を上げ由真は床に叩き付けられた。最早ぴくりとも動かない。
信子「川面!早く移乗の準備をしろ!」
鞭を由真の体から解き、信子は不機嫌な声でそう怒鳴る。
川面「はい!直ちに!」
川面はその命令を受け、弾かれたように走り出した。
439 ◆nT0xknNOBU :03/07/11 00:56
こんだけ(;´Д`)
最後にFさん、中途半端になっちゃってごめんなさい(;´Д`)ゴメンナサイ…
440坂東姫書き:03/07/11 01:43
いや、あたしゃ◆nT0xknNOBUさんが不在の間の時間稼ぎとして書いたわけでして……
御大が帰ってきた以上、もういいかなと思ってるんですが……ダメ?
続きキテタ━(゚∀゚)━!!!
これからも気長に待ってますんで書き手のみなさんよろしく
>>440
ダメ、書いて。
443_F:03/07/13 02:51
おー、新規の人だ。

>>439
お気になさらずー。
次に何描いたらいいのか判らなくなった事の方が一大事ですや。
444坂東姫書き:03/07/13 09:45
>442
でもでも。開始時期が遅いから(隠居直前)ホントあまり書けないんですよ。
追憶と言う形になってもよいのなら書くけれど。
445山崎 渉:03/07/15 12:28

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
>>444
五択はいいから書いて
>>444
義宣主人公でもいいんじゃない?
448 ◆nT0xknNOBU :03/07/20 18:22
*お詫び
えー、近代兵器を撃ち合うとどうやっても死人確実なので、ミサイルの弾頭は全て空気
砲みたいな物だと思って下さい(苦しい……海戦はどうしても飛び道具主体なので、死
人を出してはいかんという不文律と折り合いを付けるのが厳しくて……)。ちなみにこの
砲弾、人は死にませんが戦艦の装甲は貫きます。
信子達の移乗を終えた『波切』は、船団から離脱した『金剛』を除く『志摩』一隻を従
え、伊勢湾を一列縦隊で南西に進んでいた。無論伊勢学園の自衛艦と交戦するためであ
る。既に伊勢学園側にも気付かれているらしく、伊勢学園自衛艦隊も九鬼船団に接近を
開始していた。確認された伊勢学園の自衛艦には30000M以上の射程を持つミサイ
ルが搭載されているはずなので攻撃も可能なはずだが、九鬼船団をまだ敵と認識してい
ないのか発射してこない。
川面「このままの速度で行けば、2分後には伊勢学園艦隊は視認距離に入りますが……
   こちらから攻撃を仕掛けなくてよろしいのですか?」
川面が由真にそう尋ねる。『波切』の装備のうち、一部ミサイル類と艦載ヘリは人員不
足で使えないが、127mm砲と機関砲、短魚雷は何とか使用可能な状態にある。機関
砲は対空兵器だからともかく、127mm砲と魚雷は充分伊勢学園艦隊を射程に捕らえ
ている。
由真「今回は伊勢学園の度肝を抜いてやるのが目的だ。みろ、あいつらはこの海域には
   自分らに逆らう船がないと思ってるから、こちらに攻撃を掛けてこない。超至近
   距離での撃ち合いはミサイルの使えないこちらに有利だ」
戦線に近づき、緊張感を高めてきた、しかし由真は落ち着いた口調でそう言う。よく考
えると敵艦で30km超の遠距離攻撃力を持っているのははたかぜ級一隻のみで、わざ
わざ巡視船三隻の火砲射程に入るのは不利なのだが、由真はこれから交戦する伊勢学園
の艦隊を一隻残らず沈めてやろうと考えているので、出来ればなるべく近い距離で戦闘
を開始したかった。ただ、今の時点では川面にも言わない。
川面「そうですか……」
川面は少し納得がいかなかったが、何か考えがあるのだろうと、由真を信じて口を止めた。
由真「まあミサイルに警戒だけは怠るな」
川面「対空機関砲は元波切校の生徒が担当していますから」
波切校から由真について来た生徒は、人数こそ少ないが総じて技量が高い。由真の知る
限りに置いては、最も信頼の置ける人間である。
由真「そうか。いやー、お互い見えない距離からミサイルの撃ち合いなんてつまんない
   もんねー」
川面「まあ、聞かなかったことにしますが、そろそろ伊勢学園の艦隊が……」
と、川面が由真に注意を促そうとした瞬間。
オペレーターの女の子「船団長!伊勢学園艦隊から通信が入りました!」
OPの女の子が由真に向かって叫んだ。
由真「ナイス!何と言ってきた!」
OP「停船せよ!然らずば攻撃す!」
由真「は!つまらん!何のひねりもない!」
OP「何と返信しますか!?」
由真「こういう時の返事は決まってる!バ……!」
OP「わっかりましたぁ!返信します!バカメ!バカメ!わー!怒ったー!」
由真「あああぁーーー!貴様ーーー!何で人の見せ場盗んだよー!ここは私がカッコよ
   く『バカメと言ってやれ』って言ってから、お前が間抜けな顔で『は?』とか聞
   き返すのが筋だろー!?いきなり返信すんなー!バカー!」
川面「由真船団長!そんなこと言ってる場合ではありません!」
脱線転覆状態の指揮官に、川面が鋭い声を浴びせた。
川面「10時方向のはたかぜ級敵艦から火砲射撃が来ます!」
流石の川面も思いの外早かった敵艦の反応に狼狽を隠せない。実は由真のアホな挑発で
伊勢学園艦隊の指揮官が激高し、再度の警告を行わずに射撃を命じたせいである。
由真「クズが!トン数で勝る船隊に喧嘩を売るとは敵の司令官は無能だな」
川面「敵の指揮官が無能でも砲撃を受ければ船に被害は出ます!」
悠長にご託を述べる由真に、川面が悲鳴に近い声をあげる。瞬間、『波切』の船体に軽
い衝撃が断続的にはしった。
OP「左舷側に着弾しました。波切の機能に被害はありません」
OPが被害状況を告げる。
由真「そーだろー。一発ぐらいどうってことない」
川面「何発も喰えば沈みますよ!早く反撃しましょう!今なら勝てますよ!」
火砲が命中してもまだ悠長な態度に、川面は流石にいらだって怒鳴る。しかし由真は川
面の言葉を無視して告げる。
由真「左16点逐次回頭。まだ射撃は許可しない」
川面「敵前回頭!?正気ですか!?」
また川面が悲鳴を上げた。既に敵艦と交戦状態に入っている状況での艦隊の回頭運動は、
敵艦から射撃命中率が高くなる。避けるべき行動の一つだ。
由真「ここまで接近していればどうせ当たる」
川面「しかし、舷側を晒すことに……」
由真「議論は後にしろ!早く指示を出せ!」
川面「あっ……」
由真が川面に怒鳴る。一秒指示が遅くなれば一秒分の不利が生まれる。それは川面にも
分る。由真が何を考えているのか分からないが、川面は自分の職務を思い出し、弾かれ
たように叫んだ。
川面「左16点回頭!」
その声と同時に、『波切』の船体が大きく左に旋回を始める。真後ろに従う『志摩』も
それにならい、一列縦隊を崩さないまま、九鬼船団は今までの進行方向とほぼ反対に進
路を変えようとする。
当然伊勢学園の艦隊はこれを好機と見た。艦船のトン数が劣っているのは分かっている
ので、先程の射撃をちょっと早まったかと後悔しだしていた伊勢学園艦隊の指揮官は、
ここぞとばかりに射撃を密にする。旗艦はたかぜ級と三隻の巡視船は、ありったけの火
砲からを開いて『波切』及び『志摩』へ砲弾を叩き込んだ。その砲弾が『波切』に当た
ると、重い鐘を穿つ様な音が船内に響く。『波切』の命数が削られてゆく音である。
川面はその不吉な音に耳を塞ぎたくなる。いかに由真を信頼しているとはいっても、ど
うしても不安がぬぐい去れない。しかし、由真の表情はまるで違っていた。
由真「川面ー」
着弾の音が響く空気の中に、子供じみた音階をした由真の声が混じった。あどけない声
色だが、凄惨の色を含んで、アンバランスな相貌を川面に連想させた。
由真「この戦闘が下らないと思うかー?」
由真は川面の方は見ず、視線を艦橋の正面に固定したままそう聞く。その間にも旋回す
る『波切』の、由真や川面の命数は、低い着弾の音によって削られてゆく。
川面「……勝てば、無意味ではありません」
川面は質問の意図を測りかねたが、自分の弱気を振り払うように、そう言葉を絞り出す。
由真「勝つだけなら、さっき川面が言った様に普通に撃ち合えばよかったんだよー。そ
   れで、勝てたからなー」
由真の口の端が僅かに上がる。笑ったのだが、川面にはその表情がとても笑っているよ
うには見えなかった。怒っているようにも、楽しんでいるようにも見えた。それにして
も、あどけなくべき少女の笑顔としては不適切な、怪しい表情だった。ただし、川面は
それを恐れる気にはなれなかった。むしろ、その歪な美しさを崇拝しそうになる自分を
引き留めるのに苦心するほど、愛おしく思えた。
川面「……では?」
しかし、川面には船長としての責務がある。溺れてしまえば、所詮この職は務まらない。
沈殿しそうになる感情を責務に引き寄せ、川面は感情の平行を保った。
由真「私は伊勢学園を滅ぼしたいんだよー。でも海は平等だ。私か伊勢学園か、どちら
   かが滅びを望むなら、平等に滅びの鐘を鳴らす。だからあいつらも、私を滅ぼす
   鐘を鳴らす」
伊勢学園の砲撃は、距離が近づいた分更に激しくなっている。着弾の音はこの時最も激
しくなり、川面は由真の声を聞くのが困難なほどである。
川面「……復讐ですか?」
川面は嫌なものを憶えて由真に聞く。復讐に心が曇っていれば、由真の指揮にも曇りが
出る。船長の立場としてそれは船に乗る者を危地に追いやることで、看過することは出
来ない。
由真「違うなー、なんかね、恋に恋してるって言うか……そんな気持ち。……あー、や
   っぱ今の無し、自分でも言ってる意味わかんない」
由真はぶんぶんと手を振って今の無しをアピールする。
川面「恋ですか?」
しかし川面は、元からのまじめな顔でそう呟き、そのまま腕を組んで考え込む。
由真「無しだってばよー」
由真は少し怒って川面に言う。と、まだ砲弾の音は続いているが、船体の揺れがその瞬
間小さくなる。
OP「『波切』回頭完了しました!船体に致命的破損は無し!」
OPが声を張り上げてそれを告げた。
由真「川面」
由真は言って川面の方を見る。川面の目に、先程と同じ怪しい笑みが映った。
由真「滅んだぞ」
言うと、川面から視線を外し、由真は艦橋の正面に向き直り、小さく右手を前に翳し、
素早く横に払う。
由真「『波切』全砲問開け!目標は伊勢学園はたかぜ級!」
454 ◆nT0xknNOBU :03/07/20 18:43
ここまでー。
次も日曜までに書けると良いなみたいな。
いやいや、気長にならない位には。気中ぐらいで。

>>443
そう言っていただけると(;´Д`)アリガタイデス

本編の方は中断しないようにしないとなぁ・・・せめて美濃落とすまでは。

あ、あと、無理でなければ書いてくれた方が嬉しいのですが。
結構時間とったりするのも事実なので気が向いたらぐらいで。まずまず。

う、と、ちと時間が・・・んでは、また来週(予定)
455無名武将@お腹せっぷく:03/07/21 01:04
キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!

と騒ぎたいところだが、眠いので明日改めて読ませてもらいます。
楽しみ…
ヤター新作きてたよ!
相変わらずおもしろいですよん
由真の右腕が空を裂いたのと同時に、伊勢学園巡視艦隊旗艦『しまかぜ』は、『波切』
の猛烈な火線集中に晒された。『波切』船員全体の錬度は決して高くないが、機関部と
火砲管制は、由真に従ってきた波切校の生徒が多数居るためそれなりの錬度を持ってい
る。ちょうど『しまかぜ』と並行して走る『波切』の火砲は、至近距離のせいもあって
ほぼ全弾が『しまかぜ』の船体に吸い込まれてゆく。
「あの船はなぜ沈んでいない!?」
『しまかぜ』の艦長和具舞瀬は無意味な叫びをあげた。もともと排水量に劣る『しまか
ぜ』が『波切』を沈めるには、『波切』の回頭運動中に艦機能を停止させるほどの打撃
を与えねばならなかった。しかし、それは叶わなかった。理由は色々あるが、一つには
長らく伊勢湾の制海権を握り、緊張の薄れていた伊勢学園海軍の火砲技術がゆるんでい
たことも一因であるし、九鬼船団の新鋭艦『波切』の防御力が既存艦のそれよりも高い
ことも影響したろう。
だが理由が何であれ、既に『波切』を沈める機会が去った以上、「なぜ沈んでいない」
と言う問いは愚痴でしかない。この場合舞瀬は愚痴を言うべきではなかった。結果的に
舞瀬の無意味な愚痴は『しまかぜ』の艦員士気にも微妙な影響を与えることになった。
しかし、それ以上の失態は、舞瀬が新たに生まれた状況を把握出来なかったと言うこと
だろう。愚痴の無意味さに気付いた舞瀬が漸く出した新たな指令は、今や『しまかぜ』
に並進する『波切』へ火砲射撃を継続し、後続の巡視船三隻を以て『波切』に後続する
『金剛』へ火線集中をするというものであった。
機会は去ったのだから、舞瀬は未練がましく戦闘を継続すべきではなかった。この段階
で早々に逃走を図っていれば、由真の企画の一部は阻むことが出来たかも知れない。し
かし、この時点で舞瀬は由真の意図がどこにあったのかを正確に知ることはなかく。何
よりも、ほんの5分ほど前に打ち込んだ大量の砲弾が、舞瀬をすべきでない戦闘の継続
に誘った。相応の打撃を与えたはずの今ならば、勝てるかも知れない……
勝利の可能性というものは、予想される敗北よりも遙かに危険な魅力を持っている。
458 ◆nT0xknNOBU :03/07/28 00:05
なんと1レス分しかないのです!(;´Д`)スンマセン…
イヤ、継続出来るよう週一で少しづつでもあげてこうと思ったり。
うーん海戦は難しいなぁ・・・ドツキ漫才が出来ない。

んではまた来週。
海戦ってたしかに難しそうだなぁ
距離ができるからキャラ同士を絡ませることが出来ないし
しかし何故か真剣に読み込んでしまっている自分がここに…w
461無名武将@お腹せっぷく:03/08/03 19:43
age
由真「敵艦の前途を扼せ!敵艦隊を一隻残らずこの海域に沈めるぞ!」
敵前回頭の切所を制した由真は、気を緩めず次の命令を発する。ここに来て、漸く由真
は船員達に敵艦隊殲滅の作戦目的を明かした。ここまで隠していたのは、もし作戦が完
全な成功を得られなかったとき、由真への信頼だけで成り立っているような新設の九鬼
船団が、一つの誤謬よって喪失する事を恐れたからである。逆に、この困難な作戦が成
功すれば、九鬼船団は由真の指揮に常勝の確信を持つことが出来る。
川面「了解しました」
一時は狼狽していた川面も、既に落ち着きを取り戻していた。敵前回頭という常識外の
行動から抜ければ、川面は優秀な船長である。的確な指示で波切を進退させ、巧みに『し
まかぜ』を波切の火線の中へ追い込んでいった。

舞瀬「まずい……」
こうなると焦るのは舞瀬の方である。元々排水量の違いがある上に、針路を『波切』と
『金剛』に塞がれ頭を押さえられたような格好になっているので、効果的な反撃もまま
ならない。かといって逃げようにも、やはり進行方向にいる九鬼船団が邪魔になる。
舞瀬「敵が回頭している内に逃げるべきだったか……」
いや、敵が回頭を終えた後すぐにでも逃げるべきだったか?と、思ったところで、舞瀬
は自分が埒のない思考に陥っていることに気付いた。過ぎたことを考えている暇はない。
こうしている間にも、『しまかぜ』には間断なく火砲が集中している。
舞瀬「せめて今からでも……」
逃げるべきだ、と、漸く決断する。『しまかぜ』の少ない排水量は叩き合いには不利だ
が、逃走と言うことで有れば速度の上で敵艦に優越するだろう。問題は敵を振り切るま
でに『しまかぜ』の機関が停止してしまわないかどうかだが、これは、やってみなけれ
ば分からない。しかし今のままでは確実に撃沈を免れないだろうから、やるよりないだ
ろう。
舞瀬「……よし、『しまかぜ』の艦首を敵艦隊に向けろ!残りの艦も『しまかぜ』に従
   え」
川面「由真船団長、敵艦隊船首の向きを変えました。我が『波切』と『志摩』の縦隊に
   対してほぼT字の形を取るようです」
由真「ん?こちらのT字戦法に対してわざわざはまりにきてんのかあ?」
由真は川面の報告に少し頭をひねった。一列縦隊を取る艦隊に対して船首を向けると言
うことは、今で言えば九鬼艦隊をTの字の横線、伊勢学園艦隊がTの字の縦棒の形を取
る事となり、横棒である九鬼艦隊舷側の火砲がほぼ全て、縦棒に当たる伊勢学園艦隊の
先端部、この場合旗艦『しまかぜ』に集中することになる。つまり九鬼艦隊としては理
想的な火線集中を行うことが出来る。その為今まで由真が指揮した艦隊運動も、基本的
に彼我の艦隊がT字に近い形を作るように行ってきた。もっともこれは相手にとっては
避けるべき所なので、由真を含めて海戦史上完全なT字戦が行われたことはほぼ絶無と
言っていい。
由真「自分から死にたがるなんて、伊勢学園の奴は狂ったかー?」
川面「さあ……いかがします?何かの策かも知れませんが……」
由真「うーん……まあいいや、折角死にに来てくれたんだから見逃すこともないもんね。
   『波切』『金剛』の火線を敵艦はたかぜ級に集中」
川面「わかりました」
そう答えると、川面は由真の決断を管制官に伝え、伊勢学園巡視艦を攻撃していた『金
剛』の砲撃を『しまかぜ』に切り替えた。

舞瀬「乗ってきたか……」
自艦に対して火砲を集中しようとする九鬼艦隊の艦隊行動を見て、舞瀬は複雑な呟きを
漏らした。まずは作戦どおりだが、一歩間違えば『しまかぜ』は瞬時に消滅するし、間
違いが無くても、運が悪ければやはり『しまかぜ』は撃沈される。
舞瀬「よし、全艦砲撃止め!全速前進で敵艦隊の後尾をいなし、後は速力に任せて逃げ
   るぞ!」
舞瀬は全艦へ自分の意志を伝えるよう、伝令管にそう叫んだ。砲撃を止め、敵の攻撃に
耐えつつ速力の限り逃げる作戦である。九鬼艦隊が伊勢学園艦隊を完全なT字戦形に置
こうとすれば、九鬼艦隊がこちらの意図に気付いても、いなされた分の距離と回頭の分
のタイムロス、速力差で逃げ切ることが出来るだろう。
「待って下さい艦長!」
しかし、その時舞瀬の命令に異を唱える者がいた。
舞瀬「なんだ豊田!後にしろ!」
舞瀬はその声の方を見て怒鳴る。今は一秒の時間も惜しい。自然気も立っていた。
舞瀬の目に亜麻色の長い髪が目に入った。誰でもない、『しまかぜ』の副艦長豊田伊月
である。豊田にも時間のないことは分かっていた。そこで伊月は、余計な言を労せずズ
バリと言う。
伊月「今更敵艦隊の後尾をかすめて逃げようとしても、その前に敵艦隊の砲撃で『しま
   かぜ』は沈みます。ここは降伏なさって後日に生をつなぐのがよろしいと小官は
   考えます」
舞瀬「降伏!?」
意外な言葉を聞かされ、舞瀬は一瞬呆気にとられ、次の瞬間激怒した。
舞瀬「バカを言うな!我が艦隊は相当の戦闘力を残している!なぜ降伏などせねばなら
   んのか!」
伊月「その戦力で勝てるならば戦うのも良いでしょう。しかし戦力で敵に劣り、また逃
   げる道も無しとなれば、降伏以外にはありません」
伊月は舞瀬の怒りには構わずそう言う。が、もちろん舞瀬には容れることの出来ない意
見である。
舞瀬「なるほど勝てはしない、しかしまだ離脱が不可能なわけではない!である以上降
   伏は名誉ある行動ではない!戦場離脱も決して名誉な行動ではないが……未知の
   敵戦力を味方に知らせるために一時の恥を忍ぶのだ!これ以上の不名誉に耐えら
   れるか!」
伊月「いえ、敵の砲撃状況から見て退却はほぼ不可能です。……降伏が嫌であれば、艦
   を自沈させましょう。その間にヘリで逃げれば……」
舞瀬「まだ戦える艦が自沈など!私の名誉に反する!」
伊月「名誉など……」
舞瀬「くどい!口よりも手を動かせ!今から本艦隊は退却戦に移る!」
伊月「退却成功はほぼ絶望的だと言いましたが?」
舞瀬「黙れ!既に人事は尽くした!天命を待つのみだ!」
伊月「……そうですか」
怒り狂う舞瀬に、伊月はそれ以上の説得を諦めた。舞瀬の前から踵を返し、自分の持ち
場に戻る。それを怒りの目で見つつ、舞瀬はあらためて艦隊に指揮を出す。
舞瀬「全速前進!おのおの自分の信じる神に祈れ!」
艦橋に響く舞瀬の声を、伊月は覚めた心で聞いた。
伊月(人事を尽くしただって?相手の作戦に良いように乗せられ、今また愚劣な作戦を
   行おうとする。それで神に縋ろうというのだから、神の方でもどういう顔をして
   良いのか困るだろう。もっとも……)
敵艦隊に近づく事に激しくなる砲撃の音を聞きながら、伊月はどこか人事のような気持
ちで考える。
伊月(私だって大した人間じゃない。舞瀬よりはましでも、例えばあの敵の司令官より
   随分劣る。……でも)
敵艦の砲撃を受け、目の前でに『しまかぜ』の砲台が破壊された。艦橋の防御力で伊月
には影響ないが、それでも爆炎は十分な恐怖だった。
伊月(生き残るのは、必ずしも有能な人間じゃない。天才がしのぎを削る後を、小さな
   才覚で付いていけばいい。それで、その天才よりもいいめを見る……素敵人生。
   まあ、舞瀬みたいな愚物についてしまったら、どうしようもないけど……例えば
   あの敵の司令官なんか、なかなかよさそうじゃない?)
砲撃は更に激しく、伊月の居る艦橋にも被害が出始める。
伊月(この戦いに生き残ったら……)
「第二艦橋一部破損しました!艦長!もう余り持ちそうにありませんよ!」
船員の悲鳴のような報告が艦橋で鳴る。それに対して舞瀬の言葉はない。ただ顔を蒼白
にして、艦橋の正面を見つめている。伊月は、しかし顔色を変えていない。
伊月(その辺りのことを考えてみようかしら?)
と、『波切』と『しまかぜ』がその瞬間最も接近した。
467 ◆nT0xknNOBU :03/08/04 01:36
えー、ちょっと遅れましたが何とか週一ペースで。
もっとも先週は1レス分だけですが。
まだ海戦片付かずー・・・

ンではまたたぶん来週。
468坂東姫書き:03/08/10 17:57
まあ、ぼちぼちと。
469〜追憶1〜昭穂:03/08/10 17:59
一年前。
私は「学園グループを守ります」と公約して生徒会会長に立候補した。
もちろん口だけのつもりは無かった。本気でそう思ってたわ。
覚悟もそれなりにできていた。
だけど、運命は私の思っていた以上に過酷な重荷を背負わせた。

あの時、学園グループ総生徒会長は姉さんだった。
姉さんの名前は佐竹昭穂。強くて、優しくて、みんなの憧れだった。
あの名門山内高校から引き抜きがかかっていたくらいにね。
妹の私が言うのもなんだけど、本当に素敵なヒトだったの。
だから、少し安心してた。
姉さんと一緒にこの常陸学園を守っていけばいいんだと思ってたのよ。
そう、あの日まで。
470〜追憶1〜昭穂:03/08/10 18:00
あの日。忘れもしない10月5日。
会長に就任したばかりの私は、窓から差し込む秋の日差しをベッドであびながら
ワクワクドキドキ感にちょっぴり不安を沿えて、これから本格的に始まる生徒会
業務に胸を高鳴らせていた。
姉さんを助けて、親友の幹香と一緒に、下野校生徒会長の宇都宮せつなさんと手
を取り合って、常陸学園を小田原商業の魔の手から関東を守る。
そんな勝手な英雄ストーリーにぼんやりと酔いしれ、顔を紅潮させてた。
突然携帯が鳴った。
相手は姉さんの友達。北廉さんか東堅美さんかどちらかなんだけど思い出せない。
「はい。佐竹…」
取った途端、相手は私の言葉を遮って告げたわ。
「あ、八重ちゃん?大変よ!昭穂が」
「姉がどうしたんですか?」
「信号無視の車にはねられて……とにかく早くこっちに来て!」
「わかりました、すぐ行きます!」
電話を切ってすぐに家を飛び出して、どこに行けばいいか聞いていないことに
気が付いて。
着信履歴からすぐ折り返し電話したけど通じない。
焦っていると、タクシーがやってきた。
「えーと、佐竹八重さんですか?」
運転手さんは窓を開けて私に聞いてきた。
「え、ええ、そうですけど」
「岡本様から仰せつかってお迎えに上がりました。急いで乗って下さい」
471〜追憶1〜昭穂:03/08/10 18:01
連れて行かれた先の病院の玄関に、岡本哲子さんが待っていた。
哲子さんに連れられて、病室へ。
姉さんはたくさんの機械に囲まれ、頭に包帯を巻いてベッドに横たわっていた。
その横に廉さんと堅美さん。
「あ、八重ちゃん」
廉さんが私に気づいた。
「姉さんは?大丈夫なの?」
「今は大丈夫。落ち着いてるわ。お医者様も命に別状は無いでしょうって言って
たし」
「そう……ですか」
472〜追憶1〜昭穂:03/08/10 18:02
ほっとしたところに、かすかに私を呼ぶ声。
「八重……」
気が付くと、姉さんが薄目を開けている。
顔は、看護婦さんが拭いてくれたのか、案外きれいだったけど、よく見ると少
し血の跡があった。
姉さんはごほりと嫌な咳をすると、また話し始める。
「ごめん。ドジった」
「ちょっと、昭穂。しゃべっちゃダメだよ。無理しないでよ」
堅美さんが悲痛な声で注意する。
でも、姉さんは止めなかった。
「堅美。お願い。ちょっとだけだから」
そして私のほうに瞳を向ける。
「佐竹八重。あなたを次期総生徒会長に指名します」
今まで生きてきた中で、そしてきっと一生のなかで最も不吉な言葉。
聞いたことすら否定したくて、私は姉さんに抗議した。
「何を言ってるの?まだ後期生徒会が始まったばかりよ。そんなの、任期終了
間近の台詞じゃない!」
「もしもの時の為にね、言っておきたかったんだ」
「もしもなんて聞きたくない。撤回してよ!だいたい、私にはまだ総生徒会長
なんて無理よ!」
「無理じゃない。八重ならできるよ」
「聞きたくない!聞きたくない!私は姉さんがいないと何もできないんだから!
だから、お願いだから撤回してよ!」
姉さんは撤回しなかった。何も言わず、目を閉じた。
「ちょっと、姉さん!答えて!」
私と同じく、廉さんと堅美さんも悲鳴をあげた。
「昭穂〜!」
「哲子!お医者様を呼んできて!」
呼ばれた哲子さんは落ち着き払ってこう言ったわ。
「皆さん落ち着いて。昭穂さんはお眠りになっただけですわ。心拍計はメイン
センターとつながってますから異常があればお医者様も飛んでくるはずですし」
473〜追憶1〜昭穂:03/08/10 18:03
だけど、姉さんはそのまま目を覚まさなかったわ。
夜に容態が急変して、そのまま……
474無名武将@お腹せっぷく:03/08/12 09:32
いっぱいキタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
書き手さんたちありがとうー。
人がいないのはお盆のせいか?
うおおおお懐かしいーーーーーー
スレ再建してたとは思わなかった
書き手のみなさんがんがってください

そういえば俺尼子の大ファンなんだけど
ロリ主君と熱血家臣コンビ書いてた人まだ見てるかな
476あぼーん:あぼーん
あぼーん
あひあひうへはーあひうへはー
三国志だとこれ系サイト二つもあるのに、
なぜ戦国だといかんのでしょう。
必要知識が多岐に渡りすぎてて、しかも中道のやつは
テレビとかでゲップ出るほど見せられて飽きてるからかな
478無名武将@お腹せっぷく:03/08/21 17:51

SRCというSRPG制作ツールでもって
信子ちゃんのキャラクターを多少なりとも拝借した
ゲームを作っているのですが、構いませんか?
万一にも大丈夫だと思うけど保守
481 ◆nT0xknNOBU :03/08/30 12:55
すいません、大分ほったらかしにしてしまいました。
いやはやディスプレイがぶっ壊れてしまって・・・
買う金もないので今使ってるのは昔使ってた9821のディスプレイ・・・トホホ

>>479
私の方は全くOKです。というか是非やってみたい・・・

明日ぐらい続き上げたい所です。
482〜追憶2〜三奈:03/08/31 17:30
そうして私は姉さんを失った。
悲しかったけど、頑張って総生徒会長たらんとしたわ。
姉さんの築き上げたものを壊したくなかったから。
でも、うまくいかなかった。
今考えれば当然のこと。だって、格好だけで中身がなかったから。
483〜追憶2〜三奈:03/08/31 17:31
「なかなか減らないわね。よく姉さんこなせてたもんだ」
処理しても処理しても減らない書類の山に、私はため息をついた。
「慣れですよ。慣れ。」
と、わざわざ私のぼやきに答えてくれたのは、哲子さん。
姉さんが秘書にしていただけあって、よく気が回る。
「昭穂さんも初めからあんなに凄かった訳ではありません。少しずつ慣れていったんですよ。
心配することはありません。すぐ慣れます」
「じゃ、今はとにかく頑張るしかないわね」
腕まくりしてもう一頑張りしようとすると、今度は書記の東久美から突っ込みが入った。
「頑張るのもいいけど、あんまり根を詰めると、かえって効率が落ちるわよ。最近の学説
に寄れば、脳の働きは……」
人差し指を立てて得意げに小難しい話をするこの娘、東堅美さんの妹で常陸学園きって
の才媛。
まあ、役には立つんだけどね。ちょっとうっとうしい。
話を聞いているうちにだんだんやる気が萎えて来て、帰りたくなった私は、片付けを開始した。
「……というわけで、今日はもう切り上げて、頭をリフレッシュしたほうがいいと思うんだけど」
結局は同じ結論に達したらしい彼女を置いて、私は幹香と生徒会室を後にした。
484〜追憶2〜三奈:03/08/31 17:31
黄昏てゆく筑波山を背に、幹香と私は堤防沿いの道を歩いていた。
「ねえ、八重。哲子さんの言ったこと、どう思う?」
ぼそっと幹香が問い掛けてくる。
「どうって、何が?」
「八重、慣れればもっと生徒会業務ができるようになると思う?」
「……思うわよ。でも、どうして?」
幹香は、その問いには答えず、さらに私に聞いてきた。
「あんた、何のために生徒会に立候補したんだっけ」
「それは……もちろん小田商の脅威から学園グループを守るため。私の原稿、見たで
しょ?演説も聞いたでしょ?」
時代のニーズに即したカリキュラムを謳い文句に、名門校を次々分校化していく小田原
商業高校。グローバルスタンダードという幻想に踊らされ、心までデジタル化されて人と
しての良心を忘れていった南関東の生徒たち。
私は母校常陸学園の生徒をそんな風にしたくない。
だから、生徒会に立候補した。
一体他に何があるって言うの。
「いや、なんとなく昭穂さんの……あれ?」
突然、幹香は言葉を止め、眉をひそめた。
「どうしたの」
「何か聞こえない?」
言われて耳を澄ます。
落ち葉がアスファルトをこする音と、国道の車の音に混じって、確かに何かが聞こえる。
「犬の鳴き声?」
「行ってみよう!」
どちらからともなくそう言って、私達は鳴き声のほうに走り出した。
485〜追憶2〜三奈:03/08/31 17:32
果たしてそこには力なく横たわる犬と、2人の少女がいた。
少し前に小田原商業に吸収合併されてしまった名門校、扇谷高校の制服を着ている。
首から血を流し悲しそうに鳴く犬の横で、一人は何とか止血しようと傷口を押さえ、もう
一人は犬の横で泣きべそを書きながら励ましの言葉を唱えていた。
「どうしたんですか?」
幹香が傷口を押さえてる方に問い掛ける。
「どうしたもこうしたも。そうだ、あなた達ハサミ持ってない?」
「裁縫道具のでいいなら」
「この際贅沢はいわないわ。毛狩りしてやんないとうまく止血できないのよ」
「分かりました。ちょっと待ってください」
……数分後
何とか止血に成功したらしく、彼女は励ましてた娘に優しく声を掛けた。
「これでひとまず大丈夫よ、景子ちゃん。後は少し安定するまで休ませてあげて、それ
から病院へ連れて行こ」
そして私のほうを向いた。
「ありがとう。あなた達が通らなかったら助からなかったかもしれない」
「一体何があったんですか?」
私が聞くと、彼女は少し躊躇した後答えた。
「刺されたのよ。私の妹……氏資美に」
486〜追憶2〜三奈:03/08/31 17:33
「ええ?」
あまりの答えにびっくりしている私達に、彼女は語ったわ。
「氏資美は、昔は優しい子だったわ。この犬……ジョンだってすごく可愛がっていた。
それが、小田原商業に入った途端変わってしまった。
おとといね、ジョンが家からいなくなったんだ。
探しに行こうとする私に、氏資美は言ったわ。
『ジョンはもう帰ってこないから、AIBO買おうよ』って。
結局ジョンは保健所の前の松の木につながれてて、心有る人が知らせてくれたおかげで
帰って来れたんだけど、帰ってきたジョンに向けた氏資美のあの冷たい視線、
今でもぞっとする。
そして今日、ジョンの散歩に出た氏資美は……一人で行かせると変な気を起こしそう
だったから、この梶原景子ちゃんと一緒に行かせたんだけど……ためらいもなく、景子
ちゃんの目の前で、ぶすっと」
「いやあぁぁぁぁぁ!!」
思い出してしまったのか、景子ちゃんが叫び声をあげた。
487〜追憶2〜三奈:03/08/31 17:34

私はそのとき初めて心から感じたわ。
おそらく姉さんが心から感じていただろうこと。
小田原商業への憎しみと恐怖。
もし常陸学園の生徒が氏資美って娘と同じになったら……
考えるだけで反吐が出る。
私は常陸学園の生徒会長として、グループの総生徒会長として、母校を小田原商業から
絶対に守って見せる!!
488〜追憶2〜三奈:03/08/31 17:36
私は彼女に語りかけた。
「すみません、私、常陸学園の佐竹八重と申します。こっちは真壁幹香」
「常陸学園の……名前は聞いたことあるわ。会長さんと副会長さんね」
「ええ。私達、常陸学園を小田原商業から守りたいと思ってます。失礼ですが……
氏資美さんと同じような人を常陸学園から出したくない。
それで、ぶしつけなお願いなんですが、私達に協力していただけませんか」
彼女はしばらくきょとんとした顔をしていたが、やがてくすりと笑った。
「いいよ。私だって氏資美みたいなの増やしたくないからね。私の名前は太田三奈。よろしくね」
489無名武将@お腹せっぷく:03/09/01 21:37
氏資美タソ…すごいよ
490坂東姫:03/09/03 02:31
>>489
>氏資美タソ…すごいよ
名前が?それとも電波が?
ちなみに氏資美は「しじみ」と読みまつ。
491479:03/09/03 03:50
>>481
おお、どうもありがとうございます。
といって完成の見込みは・・・

氏資美タン、AIBOは笑うところですか。笑えねえ・・・
>>490
そらもちろん電波が。
太田資正キター!
やはり犬好きなのか(笑)
ところで小田原商業高校は大所帯っぽいが
幻庵とかどうなるんだ?
494無名武将@お腹せっぷく:03/09/10 20:13
あげ
ほしゅ
ho
保守
由真「おー、伊勢学園の旗艦が見えるなー」
由真は余裕を持った口調でそう言い、指令席から身を乗り出し、目の上に手を翳して『し
まかぜ』を眺めた。接近したとは言っても3kmほどは離れているから、船体が詳しく
見えるまでは行かない。
由真「川面、敵艦の被害状況分かるか?」
川面「大夫被害が酷いようですね。先程から此方への砲撃が殆どありません」
由真の問いに、川面も『はたかぜ』を眺めつつ答える。敵艦はまだ浮かんでいるが、既
に勝敗はほぼ決した余裕がある。先程の敵前回頭で緊張した分、多少緩やかな気分にな
っていた。
由真「……砲撃がない?」
しかし、由真は川面の言葉に微妙な反応をした。
川面「はい、敵艦の攻撃能力はほぼ破壊されたと思われます」
由真「うーん……それはきっと違うな。こっちは主に敵艦の左舷に弾をぶちこんだろ?
   だから、右舷の砲門が全壊したとは考えにくい。そんで、今敵艦は此方に正面を
   向けてる。正面向きなら左舷の砲は使えるはずだ。まー、川面は実戦初めてだか
   らわかんないだろうけどなー」
川面「由真船団長だって初めてでしょう?」
由真「私は兄上の船に乗っけてもらったことがあるから分かるんだよー。初めて船の撃
   沈を目撃したときは燃えたなー、確かあれはアメリカの戦艦だったっけ……」
川面「アメリカに逆らうといちゃもんつけられて攻め込まれますよ」
由真「んー?まー、その話は後にしよう。とにかく敵艦は兵装が全部ぶっ壊れた訳じゃ
   ない。おそらく此方には勝てないと見て、攻撃を捨てて全力で逃げる気なんだろ
   う」
川面「しかし、敵艦の船首は此方に向いていますが?」
由真「気を付けよう、船は急に曲がれない。こっちの艦隊をいなして、船体の後列を掠
   めるようにしてそのまま逃げる気なんだろ。普通なら、トン数が小さい分向こう
   の方が早いし、十分な耐久度が残っていれば悪くない作戦かもなー」
川面「どういたしましょう?敵に並進するように艦隊を動かしましょうか?」
予想外の行動に少し慌てたのか、川面は先走って由真にそう進言した。
由真「川面ー、お前は船長だろー。艦隊全体の運動は私が考えるんだから、そういうこ
   とは言わなくて良いんだよー」
由真はそう言って川面の発言を窘める。普段勝手なことばかりしている由真が、どの顔
でそんなことを言うのかと思うところだが、根が真面目な川面はそうは思わない。
川面「あっ……すみません」
と、少し頬を赤らめて由真に謝る。しかし、その由真は川面の方を見ていない。どうす
れば伊勢学園の艦隊を最も効率よく海に沈める事が出来るか、そのことのみに思考を集
中させている。
由真(このまま砲撃を続ければはたかぜ級は沈められるけどー……。後続艦は厳しいか
   な?うーん、でも折角火線集中出来てるのに並進に移るのもなー……)
川面「船団長?」
と、川面がなかなか指示を出さない由真に声をかける。
由真「うーん、まーいいや。弱気は最大の敵、迷った時は真っ直ぐだ」
それとほぼ同時に由真は決断した。
川面「真っ直ぐ?このまま直進するんですか?」
命令と言うには意味曖昧な言葉に、川面はより明確な指示を由真に仰いだ。
由真「違う」
川面「では伊勢学園艦隊に並進するので?」
由真「違ーう!真っ直ぐと言ったら、敵に対して真っ直ぐだ!此方の船首を敵はたかぜ
   級の進行方向に向けろ!はたかぜ級の頭を、文字通り押さえつけてやる!」
川面「正気ですか!?それでは伊勢艦隊艦隊は我が艦隊に対してT字戦の形になります
   よ!」
先程から九鬼船団が取ってきた作戦を、今度は敢えて敵に渡してやることになる。火線
は当然『波切』に集中するだろう。優勢なこの状況下で、なぜわざわざ不利な行動をし
なくてはいけないのか川面には全く納得がいかない。
由真「敵艦隊は撃って来てないだろー!それに相手にT字戦の形を与える訳じゃなー
   い!」
川面「T字戦にしない?しかし、伊勢学園艦隊に船首を向ければ、必然的にT字戦の形
   になります」
由真「ばかー!真っ直ぐ行くんだよ!はたかぜ級の船首にこっちの船首を衝突させてや
   るんだってばよー!『波切』『志摩』一斉回頭だ!」
川面「はぁ!?何言ってるんですか由真船団長!」
由真「うっせー!早く指示を出せ!戦機は一瞬で去るんだよー!何度も同じこと言わせ
   んなー!」
由真から怒鳴りつけられ、川面は一瞬怯んだ様な表情をし、それからまた一瞬逡巡とも
憤懣とも付かないような表情になり、しかしそれでも最後には、半ば諦めたような表情
で『波切』の操舵手に指示を出した。
川面「『波切』右16点回頭!」
そう声を張り上げて指示を出し終えた後は、一半を占めた諦めは消え、決然が表情支配
している。
由真「そうだそれでいい川面ー。憶えておけよー、今の指示は志摩艦隊を悉く海に沈め
   るための指示だぞー。悉く、だ。今居る艦だけじゃねー、伊勢学園の艦は一隻
   も残らず、沈めちゃるー」
由真は気負うでもなく、むしろ無邪気な笑みを浮かべて言った。
川面「こんな無茶な作戦ばかりでは、伊勢学園の前にこちらが海の藻屑ですよ」
由真「にゃららー♪はふー♪(鼻歌)まー次からはこんな無茶しねいようー、いいだろ
   ー、一回ぐらい相手をコケにする事してもよー」
川面「……今さらその辺のことは何も言いませんが、せめてこの艦隊運動の意味は教え
   ていただけないでしょうか?意図を把握しておかないと、先程のようにとっさの
   指示が遅れるかも知れません」
エキセントリックな由真の言動はひとまず置いて、川面は目の前の戦闘にだけ集中する
ことにし、由真に聞く。
由真「あー……それはだな……」
それを受けて、由真は川面に作戦にとの説明を始める。しかし、聞き終えた後、つい川
面は不適切な声を上げてしまった。
川面「由真船団長、貴方は狂っている」
そして、こんな狂った上役を配した天と、そんな狂人に惚れ込んで一生を託そうという
自分の愚かさに、川面は肺の中の空気を盛大に吐き出した。

伊月「艦長、敵艦が一斉に右回頭しています」
『しまかぜ』の副官伊月は、由真ら九鬼船団の奇妙な行動に、不審気な声で艦長舞瀬に
報告する。
舞瀬「どう言うことだ。こちらの行動を予測されたのか?」
報告を受けた舞瀬は不安な色を浮かべてそう伊月に聞き返した。
伊月(演技の出来ない人ね)
艦長が不安を見せれば艦隊の士気に影響する。その程度の事も分からず、或いはわかっ
ていても不安を隠すことの出来ない様な人間が艦を指揮していることに、伊月は腹が立
つのを通り越して疲れてきている。
伊月(しかし妙ね、あのまま砲撃を続けていれば、『しまかぜ』は間違いなく撃沈され
   ていたはず。敵の指揮官がそれに気付かないほどのバカだとは思えないけど?)
舞瀬「我々が逃走を図ろうとしているのに気付いたのか?」
独り言なのか、それとも誰かに意見を求めているのか分からないが、舞瀬はぶつぶつと
呟いている。伊月にはその舞瀬の行動が苛立たしい。
伊月「敵の指揮官が我々の意図に気付いた可能性はありますが、逃走を阻止する必要は
   ないでしょう」
求められていないと知りつつ、だから伊月は口を開いた。
舞瀬「なぜだ?」
舞瀬は不審げに聞き返す。伊月のことを嫌ってはいるが、今はそれどころではない精神
状態なのだろう。
伊月「先程も言いましたが、敵艦隊があのままT字戦を続けていれば我が艦は撃沈され
   ていました。沈んだ船は逃げません。故に。逃走を阻止する必要もありません」
元より皮肉を込めて言っている。当然その言葉は、舞瀬の逆鱗に触れた。
舞瀬「バカが!同じ事を何度も繰り返し言うな!我が艦は沈まない!そうだ、敵艦隊が
   進路を変えたのが何よりの証拠ではないか!このままでは我が艦を逃がすことに
   なるから、奴らは作戦を変えたのだ!」
伊月「敵は我が艦の左前方に位置しているのですよ。もし我々を逃がしたくないのであ
   れば、我々の逃走経路に合わせて舵を左にきるはずです。しかし敵艦隊は右にき
   っている。これでは我が艦とはすれ違ってしまいます。敵の意図は別にあると見
   るべきです」
舞瀬「それは我が艦を至近で攻撃するために……」
伊月「先程も言いましたが、あのままでも我が艦は撃沈されていました。足の速い後続
   の三隻はともかく……」
と、伊月は自分の言葉からあることに気付いた。
伊月(こちら艦隊を、全滅させようと?)
しかしそれでも、こちらの艦隊とすれ違うのでは、並進と比べて砲撃可能時間が少なく
なる。まして艦同士の相対速度が極端に速くなるのだから、火砲の命中率も低くなるだ
ろう
伊月(やはり違うか……)
伊月は考えた末、そう結論づけた。
舞瀬「豊田!聞いているのか!?」
と、黙り込んでしまった伊月を舞瀬が怒鳴りつけた。
伊月「はい?」
舞瀬「はい?じゃない!とにかく、敵艦の意図はよくわからんが、こちらに向かってき
   ているのは却って好都合だ。このまま全速力ですれ違って撤退する!」
と、その時ぼうっとしていた伊月の頭の中に、あることがひらめく。
伊月(……まさか、そんな原始的な事はしないわよね)
しかし、その考えを伊月はすぐにうち消した。余りにも荒唐無稽な発想だからだ。が、
どうしても心に引っかかる。今まで敵艦隊の指揮官が常識に沿った行動をしてきただろ
うか?どうもその事からして疑わしい。第一、排水量で勝る敵艦隊が、単なる遭遇戦に
危険を犯してまで無理な作戦を採り、こちらに必要以上の出血を強いるところからして、
既に非合理な戦術意図があるではないか。いわば狂人の沙汰で、常識に答えを求めるの
は間違いかも知れない……。
舞瀬「豊田、わかったか!」
考えを続け、返事をしない伊月に舞瀬が怒鳴る。しかし、その声が伊月に届く前に、艦
内の空気は舞瀬の声鬱耐える任務を放棄し、代わりに悲鳴のような船員の報告に震える。
船員「艦長!敵旗艦の船首が『しまかぜ』の船首に迫っています!ぶつかる!」
舞瀬「あ、何だと!?」
とっさに状況を判断できない舞瀬の不機嫌な怒号が飛んだ。同時に、伊月は思わず立ち
上がる。
伊月「まさか本気でラム戦をする気!?私達は中世の海賊じゃないのよ!」
叫び、有り得ないほど近づいた『波切』を驚愕の目で見た。
504 ◆nT0xknNOBU :03/09/23 23:45
近代戦なんか書けるわけもなく・・・
無理な戦闘が続いてしまうわけで・・・
スタンダードミサイルでも余裕で70km以上届くんだもんなぁ・・・
「波切」のモデルにした艦に搭載されてるミサイルなんか射程1500km・・・
この性能をフル活用したらシリアスな軍事小説にしかならないので、
この手の長距離兵器は見なかったことにします(;´Д`)
大航海時代バリに視認砲撃で殴り合ってもらいましょう。

って、ことでして、素晴らしく放置してしまいましたが続きです。
次もちょっと何時になるかわかんないデス・・・スミマセン(;´Д`)
微妙にリアルタイムだー。乙。
今更言うのもなんだけど壇ノ浦合戦みたく
小船で叩き合いとかもよかったかもしんないすね・・・
506無名武将@お腹せっぷく:03/09/27 13:11
 
保守
508無名武将@お腹せっぷく:03/10/11 00:42
あげてみる
509無名武将@お腹せっぷく:03/10/20 06:32
あげー
510無名武将@お腹せっぷく:03/10/26 16:30
ほしゅ
511無名武将@お腹せっぷく:03/10/26 20:59
このスレを今日になって発見しました。
良かったら九州大友氏を舞台に書きたいと思うのですが、ネタがかぶる方がいらっしゃるでしょうか?

書く予定のイベントは「大友二階崩れ」から「門司攻防戦」(対毛利戦)あたりを考えています。
メインは大友義実(おおともよしみ 宗麟)×戸次鑑代(べっきあきよ 後の立花道雪)をメインに、
義実×晴子(大友晴英 後の大内義長)、
大内隆子(おおうちたかこ 義隆)×陶晴海(すえはるみ 晴賢)×相良武子(さがらたけこ 武任)の愛憎関係や毛利一族を出す予定です。

なにかリクエスト名前等の変更や希望がありましたらレスをお願いします。
 毎年、春が来るたびに思うことがある。

 桜吹雪を見れば、隠しつづけていた罪が疼くことがある。

 桜吹雪は散ってしまった私の思い。
 彼女の笑顔はもう見ることができない。 



 豊後大友グループと言えばかつての巨大コングロマリット源財閥に連なる企業である。
 戦後、源財閥が解体され北条財閥・足利グループと続く日本経済界の中でも北部九州特に福岡を抱える重鎮として西日本で大きな影響力を持つ。
(その大友グループが各企業の重役を集めてここ、豊前国宇佐市にある宇佐神宮に集まったのはその大友グループをいずれ統べる長女大友義実の府内学園入学報告の為というのだから、名門企業というも大変よね)
 と、祝ってもらう義実自身が思っているのだから馬鹿馬鹿しいイベントなのだろう。きっと。
 だが、はなから国内だけでなく海外相手に利益を上げないといけない経済界だけでなく、群雄割拠激しい高校どうしの覇権争いにはこんな虚構まじりのイベントも必要だったりする。
 つまり、義実入学にこれだけのイベントをぶち上げるという事は企業的には、
「大友家の次期総帥は義実」
という宣言を内外にアピールし、高校的には、
「府内学園に手を出して見ろ。大友グループ全体が相手をするぞ。コラァ!」
というえげつない脅しを近隣各校、特に福岡の巡って激しく争った周防山口高校の大内隆子にかけた事になる。
 当然、今回のこのイベントに隆子も招待している。
 しかし、イベント自体が馬鹿馬鹿しい事この上ないのは誰もが分かっている。
 源財閥の守護神として信仰厚かった八幡神に府内学園合格報告を祈るだけというのに、無駄に多い大友・大内の私営SP、集めた報道陣に集まった見物客。
 アピールの為に看板から旗指物まで使った大友と大内の意地の張り合いは「現代合戦絵巻」として全世界に配信される予定だった。
 無理も無い。大友と大内はこの間も激しく争っている。
 北九州から鹿児島に向かう東九州自動車道勢場ヶ原工事で大友と大内が受注をめぐって激しく対立。
 後はお決まりの地方ゼネコン汚職と進み大友方は逮捕者を三人、大内方は起訴猶予一人を出す羽目になって、共同受注という形でやっと談合(けり)がついたばかりだ。
 そういう所まで入れるとこのイベントは大友と大内の手打ちという側面も無いわけではない。
 どうせ、すぐ破れると義実も隆子も思ってはいたが。
 府内学園校章、つまり大友グループの社章である杏葉を襟元に止めて義実は待合所となった社務所から出る。
 義実(長髪がうざい)
 思っても口には出さない。これも伝統ゆえ。もっとも、十二単や巫女服までまとわないだけましと思ったほうがいいのだろうか。
 幼くして、次期大友総帥を約束された事もあり帝王学を学んだ義実はめったに笑わない。
 つり気味の冷たい視線と青磁のように白い肌から同級生たちから「まるで仮面ね」と影口を叩かれている。
 大人びた態度を早くから取ったせいかもしれないが胸もお尻も大人びてしまった。
 制服がきついから特注品を作る羽目になり、「あれで笑えば可愛いのに」と不用意に言ってしまったSPの一人はめでたくシベリアパイプライン建設工事に左遷させられた。
 晴子「おねぇちゃん。きれいだよっ!」
 社務所の外で待っていたのだろう。妹の晴子が元気いっぱいに駆け寄ってきた。
 今年小学校を卒業する晴子はポニーテールをぴょんぴょん振って義実の周りを子犬のようにまとわりつく。
 体系はつるぺた。「高校に入ったらおねぇちゃんみたいにナイスバディになるもん!」とは当人の言。
 速乃「お綺麗ですわ。義実様」
 義実私設秘書の臼杵速乃(うすきはやの)も賛辞を送る。ちなみに、これでも義実とは同年代。
 いずれ大友グループを統べる義実に仕える事で速乃も然るべき地位につく事を意味している。
 こうした側近グループ育成も源財閥時代からの名残だったりする訳で、義実には速乃の他にもう一人いる。
 理佳子「確かに。この馬鹿げたイベントも義実のこの姿を見れたなら悪くは無いな。特にその胸のあたり」
 義実「こんな場所で胸をもむなぁ!えっち」
 理佳子「自分の努力の結果をさわって何が悪い」
 えっへんと胸を張る理佳子に対して胸を隠して義実が初めて乙女らしい仕草をする。
 晴子・速乃・理佳子の三人は数少ない義実が仮面をかぶらなくていい大事な人たちだった。
 速乃は事務処理のエキスパートで「つけている眼鏡とパソコンが直結している」と言われるほどやる事に無駄が無い。
 おそらく義実以上に大人びていて体系も可も無く不可もないくせに、ベットに入ると三つ編みの髪を振り乱しての乱れっぷりは義実も呆れるぐらい。
 理佳子は体育系で義実の身辺護衛の職も受けているのでスタイルはいい。
 胸も大きく義実の胸が大きくなったのは理佳子がところ構わず胸を揉みまくったからだと信じて疑わない。
 おかげで理佳子とは喧嘩友達という感じというか、ベットの中でも攻守は半々だったりする。
 速乃「そろそろ参拝のお時間です」
 昼のうちならば絶対に職務を優先させる速乃の言葉が乙女達のじゃれあいを中断させる。
 理佳子「じゃあ、隆子の面にその胸見せて悩殺してこい」
 速乃「貴方も参拝するんでしょうが……」
 義実入学後、生徒会と理事会は改変され、生徒会長になる義実に全権力が集中される体制となる。
 それに伴い、理佳子と速乃も副会長・会計の職に内定している。
 理佳子「義実が参拝する。大内側のSPを見張っとけ。あいつらならこの場で義実に恥を書かせる事ぐらい考えるだろうよ」
 SP全員に緊張が走る。
 社務所からSPに囲まれ義実とその背後に速乃と理佳子さらにその後ろにこのイベントをあまり分かっていない晴子がポニーをぴょこぴょこ揺らしながらついてくる。
 理佳子の予想どおり参路でトラブルがあった。
 大内隆子の参拝列と義実の隊列がかちあってしまったのだ。
 おそらく隆子の差し金だろう。両家のSP達が困惑する。
 隆子「ごきげんよう。義実さん」
 義実「ごきげんよう。隆子さま」
 年功には敬意を払うのは名門の宿命。隆子は山口高校三年。義実は府内学園に今年入学する以上、隆子に敬意を払わざるを得ない。
 お辞儀をして道を譲る。長髪で視野から隆子の姿が隠れるがきっと笑っているのだろう。 
 隆子「まずはお礼を。大分県警に圧力をかけて晴海のお父様を起訴猶予にしていただいて」
 義実「なんのことてじょう?圧力なんて?」
 義実はわざとしらを切る。お礼を受けてしまえば「大友は警察に圧力をかける」という事を公言してしまう事になる。
 隆子「ほら。晴海もお礼を言いなさい」
 晴海「よ…義実様……このたびは父を…た……助けていただいて……あ、ありがとうございます」
 体を震わせて晴海が義実にお礼を言って頭を下げている。
 そんなに悔しかったのかしらと義実が不信がっていると背後から理佳子が囁く。
 理佳子「隆子の手を見ろ。何かのスイッチがある」
 義実(そういう事ね)
 改めて晴海を見まわす。太陽光線に透けて見える晴子の体は制服しかつけていないし、異常に短いミニスカートだから頭を下げたらお尻は丸見えだろう。
 たぶんローターか振動系のおもちゃでも体につけらされているんだろう。良く見ると首輪まで見える。
 義実(つまり、隆子は勢場ヶ原の一件を忘れてはいないと)
 執行猶予になった晴海の父は大内グループ内でも周防支社支社長で大内グループ内でもその影響力は大きい。
 彼を助けることで大友は大内に恩を売ったつもりだったが、晴海のこの痴態を眺めていたら隆子はまったく恩には感じていないという事らしい。
 武美「義実様。晴子もこう申しているので許してあげていただきませんか?」
 晴海の後ろにいた相良武美が晴海を支えているふりをして晴海の秘所を弄っているが、晴海はSPはおろか次期大友総帥までが見ているこの場でイク事だけは我慢しているらしい。
 義実「だから何のことだかさっぱり。今回は私どもの参拝にお時間を取らせて頂いて本当に感謝していますわ」
 隆子「そう。観客席から参拝を見させてもらいますわ。では」
 あくまでしらをきりとおす義実に隆子も飽きたのだろう。晴海と武美を従えてさっさと先に行ってしまう。
 理佳子「隆子に取ってはこのイベントは犬の散歩程度って事らしいな」
 当然犬とは晴海の事なのだろう。
 晴子「ねぇ、あれなぁに?」
 速乃「晴子様が大人になったらお教えしますわ」
 速乃が晴子を誤魔化している間、義実と理佳子の間に視線が交わされる。
 しばらくしてから隆子が行った先から歓喜の嬌声が聞こえてくる。多分晴海だろう。
 晴子「ねぇ、あれなんのこえ?」
 速乃「さぁ?なんでしょう?」
 義実&理佳子(嘘ばっかし)
 ベッドでの付き合いも長い二人は平然と振舞いながら晴海の痴態に感じていた速乃のM性にはなから気づいていた。
 しばらくして、この近くで速乃に良く似た声の女が月夜の晩に嬌声をあげていたという噂が流れるがそれは後日の話。
 参拝は厳粛に行われた。
 宇佐神宮は小山の上に立てられており周囲を深い森に囲まれている。
 今回の参拝にあわせて広大な境内に桜の大木が植えられ、咲く時期を調整された花を満開にさせて義実達を歓迎していた。
 上宮で神主の厳かなお払いの後、義実が参拝する。
 二拝四拍手一拝という宇佐独自の参拝方法で義実が参拝を終えて出てきた時に風が舞った。
 髪が風に流される。咲き誇っていた桜も花びらを飛ばし花吹雪は上宮全体に広がる。
 義実が彼女を見つけたのもこの花吹雪のおかげだろう。
 彼女は上宮の端に観客席にも入らずに上宮の社務所の影から車椅子に乗ってじっと義実を見ていた。
 ここまで上るまで大変だっただろうに。なんで彼女はそんなに真剣に私を見ているのだろう?
 まるで値踏みをしているかのように、もしくは、大友の名を背負う事を哀れむように。
 義実は目をそらす事ができない。彼女の視線には外せない何かがあった。
 速乃「義実様?」
 速乃の声で義実は我に返る。車椅子の彼女はまだその場所に留まっている。
 義実「あの子、誰?」
 義実の声に速乃は速やかに該当する人物の名前をあげた。
 義実「あの子を府内学園に入れるわ」
 義実の即決に速乃も理佳子もうろたえる。
 速乃「よろしければ理由をお聞かせ願いませんか?」
 理佳子「確かに、いきなり入れると言っても周りが納得するとも思えないだろ」
 晴子「え?おねぇちゃんの知り合い?」
 速乃も理佳子も入れることに対してはそんなに反対ではない。
 晴子については反対すらしない。
 彼女は有能である事は大友グループでも名が知られている。その伝説と共に。
 義実「惚れたのよ」
 速乃&理佳子「は?」
 思わず埴輪よろしく口をあけて思考停止した二人を見て義実は人の目があるというのににっこりと微笑んだ。
 彼女の方を見る。彼女も義実を見て微笑んだ。

 義実は過去を思い出す時いつもこのシーンを思い出す。
 厳かな神社、舞う花吹雪の向こうで微笑む彼女、戸惑う理佳子と速乃に分からずにきょとんと義実を見ている晴子。
 この時、たしかに義実が望んでいたものがあった。

 彼女は彼女に出会った。
 それが物語の始まり。
とりあえずいくつか説明を。

まず速乃と理佳子の元キャラを。
臼杵速乃(鑑速)、吉弘(よしひろ)理佳子>吉弘鑑理。理佳子は苗字を出すのを見事に忘れていました。
相良武美は当初予定の名前を変更しました。
当時の家臣の間では当主の名前を一字もらう事なんてざらでしたから元を残して名前を考えるのが大変です(苦笑)。
今回「彼女」としか出さなかった戸次鑑代ですが、何か萌える名前にできないかとまだ考え中です。
年齢についてはあえて無視しました。やっぱり女子高生という所がいいと思いまして。

他のお話よりちょっとH描写が多かったと反省しています。
次からはもう少し減らした話にしようと思っています。
おお、新しい人がキテタ!
(;´Д`)ハァハァ
522二階崩れ(1):03/11/03 12:36
 後に「二階崩れ」と呼ばれる騒動がどうして起こったのかという原因を史家が考える時に行きつく感情が、
 「母も母なら娘も娘だ」
 という実に救いようのない感傷だったりする。
 考えてみれば当然なのかもしれない。
 母大友鑑子(あきこ)は若干14歳でこの大友を継ぎ、妹菊地重子(きくちしげこ)を府内学園から退学・追放させて内部を掌握、今の隆盛の礎を築いた女王であった。馬鹿ではない。
 そして、義実はその母に教えられ、鍛えられ、調教されたのだ。彼女も馬鹿ではない。
 結局、母対娘という世代間闘争というより女王対女王の争いだったのだ。至高の椅子が一つしかなかった。それがすべての原因なのだろう。
 だが、彼女達が取った行動はあまりにも良く似ていた。そのあたりは母と娘だったのかもしれない。

--司馬乃七生「戦国女子高生の物語」民明書房発行--
523二階崩れ(2):03/11/03 12:53
 私立府内学園というのは、広大な大友家屋敷内の一部を利用して運営している。
 それは、府内学園が大友家に使える者達の為に作られたことに起因している。
 まぁ、義実にとっては邸内を出ない事から通学が楽だ程度しか考えてはいないが。
速乃「あ、おはようございます」
理佳子「ZZZ……」
 義実が起きたことに気づいて速乃がガウンを生まれたままの義実にかけてやる。
 当然、速乃も理佳子も裸という事は……まぁ、想像にお任せしよう。
速乃「理佳子。朝よ。起きて……」
理佳子「まだするのぉ……速乃底無し…勘弁してぇ……」
何もいわずにベッドから理佳子を蹴落とす速乃。義実は思わずふきだしてしまう。
理佳子「いったぁ…それが夜にいっぱい甘えてあげたご主人様に対する仕打ち?」
速乃「知りません!もう義実さまはお目覚めですよ!」
理佳子「あ、義実。おは」
眼鏡を朝日に向けて視線を見せないようにして恥ずかしがる速乃がまたかわいらしいと思っている事は義実は賢明にも黙っておくことにした。
524二階崩れ(3):03/11/03 13:36
親代「おはようございます。義実様。その他お二人」
理佳子「おは。親代。朝からその嫌味たっぷりの挨拶を聞くと自分の寵を感じてしまうわ」
速乃「仲間に入りたいならそうおっしゃればいいのに……」
 裸でじゃれつく三人なぞ気にせずに堂々と朝ご飯を持って入ってくるのは大友家付きメイド長の田原親代。
 メイド服+ツインテール+ぺったんこ+M+妄想狂+腐女子というある意味混ぜすぎ危険な組み合わせの美少女だったりするから始末が悪い。
 「有能なんだけどなぁ……」というのが三人の共通した見解だったりする。
 当然、義実達と同年代で彼女も府内学園入学が内定していた。
親代「何をおっしゃいます。私はメイドですからただ義実様一人だけに忠を尽くすだけでございます。
   しかも、主人とメイドと言えば古く英国にてご主人様の性処理奴隷としてそれ以外は忠実なる主人の犬として盾となる忠の役目!
   そんな私が理佳子・速乃に陵辱されてお乱れの義実様のお体を見れて「(;´Д`)ハァハァ」という内心を隠しながら冷静を装って朝ご飯を持って行くというこの行動!!
   ああ、忠臣の忠はただ名君のみが知るぅぅ!!!
   義実様ぁ!どうかあんな二人はほっといて私のみを愛してくださいませぇ!!!!!」
 この台詞をワンフレーズで乱れる事無く、しかも後半にかけて実に芝居臭く言ってのける女が普通であるはすがない。
親代「あ、昨夜の痴態はしっかりDVDに録画しておきましたので、来月のイベントの原稿にさせて頂きますね(ハート)」
義実&速乃&理佳子「親代ちゃん。おいでおいで(手招き)」
 妄想大爆発中の親代が三人の羞恥と怒りの表情に気づく事無く近づいてきたので、彼女にふさわしい言葉で窓から投げ捨てた。
義実&速乃&理佳子「逝ってよし!!」
親代「おまえもなぁぁ〜〜〜〜」
525二階崩れ(4):03/11/03 14:09
 まぁ、何だかんだでやっと四人で朝食が始まる。
 四人とも府内学園の制服に着替えて、さっきまでのギャグとは180°違う話で盛り上がる。
速乃「府内学園入学後なのですが、先の生徒会からの引継ぎが最初の仕事になります」
理佳子「宇佐参拝で大友後継が義実と言った以上、意義は出ないと思うが?」
親代「速乃が、こんな話をこんな所で持ち出す理由に気づきなさいよ。理佳子」
 親代の言葉の真意に気づいて苦々しく顔をしかめる理佳子。
親代「この部屋は私がチェックしていますから、私以外盗聴も監視もしておりませんわ。だから遠慮なくお身内の恥も話せるというもの」
 つまり速乃はこう言っているのだ。「身内によって義実が足をひっぱられる」と。
 さらに四人はその足を引っ張っている相手が見えていた。
 彼女達の最初の人であり、調教していただいた方であり、現大友の女主人。
 大友鑑子。義実の母である。
速乃「現生徒会執行部は親鑑子様派です」
親代「それより、執行部についているお目付けがやっかいよ。入田まこと。今の鑑子様の寵妃です」
理佳子「こっち側についているのは?」
義実「私を含めて誰も信用できないわね」
 三人の視線が義実に突き刺さるが、義実は気にもしない。
義実「否定できる?お母様の肉の味を?お母様に抱かれたあの快楽を?私達をここまで育てて頂いたのよ」
 淡々と、ゆえに生々しい快感を言葉に含みながら義実は恍惚とした笑みで三人に微笑む。
 何よりも義実自身が一番母の肉の毒に酔っていたのだから。
義実「お母様の真意が私の廃嫡にあるのでしたら従いましょう」
 静かに呟いた義実の言葉が、さわやかな朝日の中に溶け込んでいった。
526二階崩れ(5):03/11/03 14:27
理佳子「話がある」
 と、義実を避けるように理佳子・速乃・親代の三人がそろったのはあの朝食から三十分後。
 多分、来るだろうと思っていたのか速乃も親代も先を見据えて、下手に言質を取られないように話を進める。
 保身ではない。義実を巻き込まない為である。
理佳子「桜とコスモスどっちが好きか?今度みんなで花見に行きたいなと思って」
親代「いやですわ。理佳子さん。春で頭まで溶けましたか?春なのにコスモスが咲いているはずないじゃないですか?」
速乃「若桜がいいですわ。優しくて、良い匂いがして、私達を抱きしめてくれるような感じがします」
理佳子「珍しく意見が合ったな」
 ちなみに、コスモスを漢字で書くと「秋桜」となる。三人はここで義実に忠誠を誓う事を確認したのだった。
理佳子「問題は若桜なんだけど、まだ府内学園に咲いていないんだ」
親代「屋敷の方で探すのなら私に任せて」
速乃「グループ企業にも桜を探しておきましょう」
理佳子「じゃあ、私は外を」
 三人とも内部外部の親義実派を結集して鑑子を倒す決意をしたのだ。
理佳子・速乃・親代「ただ問題は……」
 三人が担ぐ神輿である義実を鑑子の肉の毒から解放しないといけない。
元キャラ紹介です。

大友鑑子(義鑑)、菊地重子(義武)、田原親代(親賢)。
まだ戸次鑑代の萌え名前募集中です。

H描写を減らしたつもりですが、H風味は残ってしまいました。まだまだ未熟ですね。
ギャグについては、若干すべったかなと思ってみたり。回線切って逝ってきます。
まだ続く二階崩れですが、次は鑑子×義実と(かなりエロエロかも)、義実と鑑代の出会いその二のつもり。

あ、晴子出し忘れた……(--;)
528二階崩れ(6):03/11/11 12:08
 まだ、義実は府内学園の生徒ではない。
 入学式前の少し早い春休みを満喫していた。
 よって彼女はひまだった。彼女にとっては嬉しくもあり、悲しくもあった。

「宇佐の参拝はどうでした?」
 出される声はあくまで穏やかに。
「ええ。つつがなく。桜が綺麗でした」
 かえす声も穏やかに。
 それで目が笑っていない。春の陽気もここには届いていない。
 それが、母鑑子とのいつもの会話。
「大内の小娘に馬鹿にされたと聞きましたが?」
「恩に気づかない人の事をどう言われましても、品位が下がると思いますわ。お母様」
「私が気にしているのは品位は品位でもこけにされた大友の品位の事です」
 わざとらしくため息をついて鑑子は義実を言葉でいたぶる。
「優しく育て過ぎたかしら?この先貴方が大友を率いていくとなると先が不安だわ」
 義実とてやられるままには終わらない。
「お母様が率いている限り、大友は道を誤りませんわ。私なり晴子なりご自由にお操りになればいかがですか?」
529二階崩れ(7):03/11/11 12:30
 鑑子は少しだけその秀麗な眉を動かした。
 少なくとも二人の娘を持つ母なのにその美貌は衰える事を知らない。
 白い肌。美しい黒髪は腰まで伸び、つり気味の目はじっと義実を見つめる。
 鑑子の視線に映っている義実が母に対して醸し出す感情は服従でしかない。
 母への忠誠。それを義実が取っているのは、北部九州に大勢力を作り上げた鑑子の才を間近で見ていた事が大きい。
 ベッドの中で義実に睦言と快楽を教えてくれた鑑子に義実が従いたいと思っているのも知っていた。
 鑑子は自分の娘を最高の操り人形に仕立て上げた。
 それは成功であり失敗でもあった。
 確かに義実は母を裏切らない。
 だが、鑑子が居なくなる時の大友は義実でまとまっていけるのか?
 女として意のままに義実を支配するという快感。
 女王として今後の大友支配に対する不安。
 母として鑑子の支配に安住してしまった義実に対する失望と後悔。
 鑑子は眉を動かしたときにそれだけ事を考えながら義実を見つめていた。
530二階崩れ(8):03/11/11 12:56
「義実。側においで」
 手招きをして義実を側に寄せる。
 義実が着ている府内学園の制服にはまだ着慣れた感じがせず、彼女が醸す匂いも鑑子は好きだった。
「お母さま」
 疑いのない義実の声。こういう声を出す時の義実は母の贔屓目を外してもいとおしい。
 優しく義実を唇を奪う。甘い口づけの後義実を押し倒しながら鑑子は一つの決意をした。
 義実を自分だけのものにしよう。義実はその決定を喜ぶだろうしそれに従うだろう。
 ただの恋人同士ならそれで話は終わりだった。
 問題は大友当主が次期大友当主意のままに操るという事実を周囲が許さないという事を鑑子は失念していた。
 その代償は鑑子が思うより速く降りかかる事になる。
 今回はここまでです。
 見てくれている人がいるのか不安ですが、続けていこうと思っています。
 エロエロの部分はかなり削りました。できる限り周りの作品と同じぐらいのエッチ度に押さえていこうと思っています。

 次は鑑代登場です。
 萌え名前のリクエスト無かったので鑑代で出していいのかな?
鏡観(かがみ)とか?元と変わり過ぎですねえ。

つか、人減ったものだこのスレ。
ことによってはもうちょっと派手で目を引くスレタイでage進行のほうが
人集めできてよろしいかもしれませんね。
このスレ発足の当時と違って2ちゃんも三戦板も人が増えたことだし、
スレ自体の人口が増せば、荒らされることも少なくなるでしょうし。
なんかもうこのスレ、俺含めて見てる人が十人居ない気がする。
>532
 レスありがとうございます。
 あげた方がいいのか正直悩んでいるところですが、私みたいな脇役がおこがましいし…

 試しに点呼取って見ましょうか?

|∀・)

|彡サッ
読んでいるのだが・・必要以上に流したくもなく。
マターリはいけん厨。
535坂東姫 :03/11/22 01:30
時々見てるし、追憶3〜遥〜書かなきゃって思うけど、やっぱり反応の良いスレを優先してしまうのですわ
536無名武将@お腹せっぷく:03/11/22 05:28
宮本信子
他のスレで戦国学園の話してたのにいきなり山田風太郎の世界が入ってきて
元に戻れって言っても他のスレ行けとかいうので
でこっちにきてもいいんですかね
↓のスレなんですが
http://hobby.2ch.net/test/read.cgi/warhis/1051491189/l50
>537
ここも寂れてきたことですし、いっそ心機一転新スレ立てるのはどうでしょう
ここは良くも悪しくも◆nT0xknNOBUさんの世界ですし。
539〜追憶3〜遥:03/11/23 16:43
今では私も成長して、駆け引きも身についたけど。
当時はまだまだ甘ちゃんだった。
恥ずかしい話だけど、人を疑うことを知らない小娘だった。
学園総力をあげさえすれば、学園グループは守れると思っていたのよ。
540〜追憶3〜遥:03/11/23 16:44
三奈さんと景子ちゃんが常陸学園に編入された翌日、私は自ら彼女達に学園内を案内して
回っていた。
「……というわけで、管理棟は以上。次は中等部と理科室のある第弐棟へ……」
「きゃっ」
突然割って入った声に、私が振り向くと、そこには小田遥がいた。
漆を塗りこめたように輝く、黒くて長い髪。
対照的に胡粉をまぶしたような白い肌。
張り詰めた氷のような神秘的な容貌が、醜い裏切り者の素顔を隠す化粧だったなんて、
そのころは誰も気づいていなかった。
どうやら景子ちゃんにいきなりスカートをつかまれたようで、腰の部分の素肌が制服の
隙間から見えていた。
「何ですの、この子は」
「ごめんなさい、小田さん。ほら、景子ちゃん、手を離して」
私は景子ちゃんに手を離すよう促した。
「もう……」
遥はスカートを直すと、髪をひらめかせ、
「では、失礼しますわ」
と、言い残して去っていった。
541〜追憶3〜遥:03/11/23 16:45
遥の姿が管理棟の影に消えると、三奈さんが怪訝そうに聞いて来た。
「あの娘、生徒会役員?」
「いいえ。勉強も運動も良くできるし、学外にはファンクラブなんかあるそうですけど……
権威欲ものすごくって、わがままで、学内の人望はないんです。生徒会長に立候補して
ますけど、姉さんに敗れてます」
「そんな娘が、何で管理棟へ?もう放課後で特別教室に行く用事はないはずだし、生徒会
役員でなければ生徒会室にも用はないはずでしょ」
「あ……」
私は顔をしかめて考えた。
確かに彼女には管理棟へ行く用事はないはずだ。
とすれば。
「確認した方がいいんじゃない?」
三奈さんが言って、
「そうですね。なにもなければそれでOKですし」
私は同意した。
542〜追憶3〜遥:03/11/23 16:46
私達は遥の跡を追い、管理棟に戻った。
遥が乗ったらしいエレベーターは3階で止まった。
3階には生徒会室と視聴覚室がある。
足音を忍ばせ、階段を上る。
生徒会室の扉に耳をつけると、なかでごそごそと音がした。
……最悪の事態だ。
私は扉を一気に引き開けた。
543〜追憶3〜遥:03/11/23 16:47
生徒会室は、案外荒らされていなかった。
書類なんか床に散らかっているかと思ったけれど、そんなこともなく。
ただ、鍵をかけていたはずの机の引出しが引き出されているくらい。
きっと遥が仕事を無事に終えたら、長い間気づかなかっただろうってくらいに、私が最後に
生徒会室を後にした時そのままの状態で残っていた。
遥は、会長机の前で立てひざ座りをしたまま、固まっていた。
明らかに狼狽したその顔は、卑小な行為に似つかわしく、醜くゆがんでいた。
「おのれ!」
彼女はどこかから取り出したサバイバルナイフを握り締め、私の方に突進してきた。
思わず腕を前に出し、目を瞑って身構える私。
だが、サバイバルナイフは私の身体に刺さることはなかった。
「無駄な抵抗はやめた方がいいね」
恐る恐る目を開けると、遥は三奈さんによって床に押さえつけられていた。
544〜追憶3〜遥:03/11/23 16:48
遥は生徒会印を盗み出そうとしていた。
これさえあれば生徒会発行の書類を意のままに発行することができる。
例えば生徒会費を自由に操ることができるのよ。
そんな貴重なものを、ご丁寧なことにダミーまで用意して、すりかえようとしていたの。
「さて、何故こんなことをしたか言ってもらいましょうか」
私はしゃがみこんで、醜くつぶれたままの遥に問うた。
「……お金が欲しかったのよ。ただそれだけ。ママが病気だから……その治療費が欲し
かったの」
遥の頬を涙が伝った。
「それなら何故早く言わないの。こんな汚い真似する前に、正直に言ってくれれば」
「だって、貴女、昭穂さんの妹さんだし、気が引けて」
その時。
545〜追憶3〜遥:03/11/23 16:50
「うそだ」
景子ちゃんが口をはさんだ。
「騙されちゃダメだよ、八重ちゃん。けーちゃん知ってるもん。この人、すっごくイジワルさん
なんだよ。氏資美ちゃんの学校で、いつもみんなと一緒に子猫ちゃん蹴り飛ばして笑って
るんだよ」
すると、遥は景子ちゃんを凍るような目で睨んだ。
「小田さん。貴女、小田商に何をしに行ってるの?」
私が再度問うと、最早無駄だと思ったのか、仮面をかぶりなおそうとはしなかった。
「もう隠しても仕方なさそうね」
「じゃあ、小田商に通じてるのを認めるのね」
「嫌な言い方ね。私はいつだってこの常陸学園の為を思っているのよ。時代はもうIT。
古めかしい考え方で凝り固まったこの学園は時代遅れなのよ。
小田原商業は良いわよ。これからどうすればいいか、3台のコンピュータが正しい
答えを導いてくれる。
とっとと小田商に吸収されて脱皮しないと、これからの時代生き残っていけないわ」
「子猫を蹴り飛ばして笑うのが新しい考え方なら、古いままでいい」
「甘ちゃんね。猫なんてこれからの時代はおもちゃに過ぎないじゃない。そんな甘い考え
だから、身内に裏切り者がいても気づかないんだわ」
「裏切っておいて随分勝手な言い草ね」
「ふふん。私のことだと思ってるの?おめでたいわね。特別に教えてあげるわ……」
遥が口にした裏切り者の名前。
私はそれを聞いて、思わず声を上げた。
547二階崩れ(9):03/12/05 00:17
 戸次鑑葉(べっきあきは)の朝は、専属医師の角隈石穂(つのくませきほ)に起こされる事によって始まる。
石穂は府内学園の保険医でもあり、義実の家庭教師でもある。
石穂「おはよう。気分はどう?」
鑑葉「いつものとおりです。足は動きません」
 じつにわざとらしくため息をつく石穂。
石穂「昔ならともかく、現代医術を使っているのに足が動かないなんて……わかってるの?手術は成功しているんだからね!」
 鑑葉はそんな石穂の気遣い7のぼやき3のはげましを苦笑と共に受け流す。
石穂「ほら、着替えさせてあげるから、服脱ぎなさい」
 雷の事故によって下半身が動かなくなってから、鑑葉は誰かの助けをかりて生きていかないと生きていけない。
 それは、おてんば娘だった彼女に慎みや思いやりという人として大切なものを育んでいった。
 彼女がその体の障害を超えて、小さいながらも戸次中学校で生徒会長をしていた事がそれを十分に証明していた。
石穂「そういえば、この間の宇佐のお披露目はどうだった?」
鑑葉「義実様はお綺麗でした。お人形様みたいでした」
石穂(……それが鑑葉の義実様への第一印象というわけか)
 石穂は既に義実から内々に鑑葉を府内学園に転入させたい意向を聞いていた。
 大友次期当主側近にならないかという誘いなのだが、鑑葉の意志を無視してまで推挙する事はないとも思っていた。
548二階崩れ(10):03/12/05 00:51
 既に、義実の周りは十分きな臭かった。
 優秀であるゆえにまだ実権を渡したくない女帝鑑子。
 鑑子の腰巾着の入田まことと府内学園高等部の執行部は義実側近の速乃や理佳子や親代に実権が奪われる事を激しく警戒していた。
 それにつけこもうと、大内隆子だけでなく、熊本に追放した菊地重子も北肥後の学校を束ねて策動している。
石穂(内憂外患とはよく言ったものね……)
 それに気づかないほど愚かに鑑葉や義実を育ててはいない。
石穂「それにしても、お人形様とはいいたとえね。鑑子様ゆずりの美貌だからね。義実様は」
鑑葉「あと、鑑子様の操り糸もつけられていますわ」
石穂「ふぅん〜♪」
 いい女にしかできない、「にやりと笑って口笛をふいて相手を賞賛する」ポーズを決めて着替えの終わった鑑葉を車椅子に乗せてやる。
石穂「なかなか言うじゃない?」
鑑葉「体が動かない分、口ぐらい運動させませんと」
石穂「で、どうする?オファーが来ているわよ。義実様から。『側近にならないか?』って」
鑑葉「もう少し待ってみます。事態が変わってからでも私は世に出れますし、出なくても十分です。だって、毎日こんなに楽しく生きているんですから」
 楽しそうに車椅子を押しながら鑑葉に尋ねると鑑葉も楽しそうに答えた。
 部屋を出ると、待ちかねたようにたくさんの妹や下級生たちに取り囲まれる。
 誰が鑑葉の車椅子を押してやるかで揉めているのだ。
 この人徳こそ、鑑葉最大の武器だった。
やっと戸次鑑葉登場です。
572さんの「鏡観」も相当迷いましたが、極力元の名前を残す方向で「鑑葉」となりました。
あと新キャラの角隈石穂(石宗 せきそう)登場です。
毛利・島津・竜造寺に押されてなかなか目立たない大友ですが探せば沢山人材が出てくるものです。

>537さん
ようこそいらっしゃいました。
ここは、学園ものですが538さんの言うとおり◆nT0xknNOBUさんの世界ですし次スレ立てるのかどうか分からないですよ(苦笑)。

>坂東姫さん
 その気持ちすごくわかります。私も自分のレスだけの時すごく不安でしたから。
 けれども、私は追憶3〜遥〜楽しみに見ていますよ。

どうも、戦国学園関係がどうなるのかちょっと不安ですが、なんとか書きつづけたいと思いますのでよろしくお願いします。
550無名武将@お腹せっぷく:03/12/11 18:58
あのsageマソの?
551 ◆NrzNAFPLAQ :03/12/23 06:11
ネタ振ってから一ヶ月過ぎたわけでもなし、ここは落とすわけにはいかんな。
552二階崩れ(11):03/12/27 00:03
理佳子「中等部は掌握したわ。必要なら人が回せる」
速乃「グループ企業でも傍流の幾つかは掌握しました。ですが、鑑子様直轄企業群はガードが固くて無理です」
親代「大友家一族のある程度からの支持は貰いました。こちらもこれ以上は無理でしょうね」
 三者の話は義実擁立の義実派の集結の様子を序実に物語っていた。
 若手は、年寄りの追放に積極的ゆえ掌握は容易。
 企業は、鑑子がきっちり掌握している所は無理。
 一族は、鑑子よりながらも大友が栄えるならと両天秤をかけている。
理佳子「勝負は高等部ね。あっこを抑えないとこれ以上の支持は得られない」
親代「外部勢力の手まで借りる?」
速乃「下手に介入されて、大友の屋台骨が蝕まれるのがおちです」
理佳子「ならば、内部のキーパーソンか……」
 理佳子の言葉に速乃と親代が頷いて同じ言葉を呟く。
「戸次鑑葉……」
553二階崩れ(12):03/12/27 00:04
 同じ時期、府内学園高等部生徒会室でも鑑葉の名前を呟いた者がいた。
 入田まこと。生徒会役員でもないのに鑑子の寵姫である事をかさにかけて権勢を誇っていた。
 それを高等部生徒会執行部が苦々しく思っている事を彼女は知ろうともしない。
 高等部生徒会のこの当時以下のメンバーだった。

生徒会長 斎藤播麻(さいとうはりま)
副会長  小佐井耶麻子(こさいやまこ)
会計    津久見美香(つくみみか)
書記    田口倉江(たぐちくらえ)

 誰もがむっすりとしている。
 それはそうだ。彼女たちとて大友グループ中枢を担う者としての才とプライドがある。
播麻「で、鑑葉をこちらにつける策はお考えで?」
まこと「はぁ?それを考えるのは貴方たちでしょ!」
 場の空気が重くなる。だが、まことの背後にいる鑑子が馬鹿ではない事はこの四人も知っている。
まこと「要は、鑑葉も義実みたいにお人形にしてしまえばいいのよ。そうすれば、私も枕を高くして鑑子様に甘えられるわ」
 うっとりするまこと。彼女自身がお人形である事に気づかず、そんな彼女に嫌悪感を隠さない四人。
 結局、この対応の差がそのまま最後まで続くことになり彼女達の破滅を決定付ける事になる。
少し間を置いてすいませんでした。

恒例の元キャラ紹介です。

斎藤播磨守 小佐井大和守 津久見美作守 田口新蔵人

どうも、名前は残っていない様子。この二階崩れ以後、彼らは歴史から消えてしまいます。
もし、大友系資料HPでこのあたりの記述がありましたら教えていただけないでしょうか?
あけましておめでとうございます。
すいません、当方、ここの戦国学園スレからやってきました。
スレを少しでも盛り上げようと考えていますがキャラ設定や名前などで
イメージがなかなか思いつかないのが現状です。そこで、ここの住人の
方々(特に話を書かれている職人様)にお願いがあります。おそらく自分が
設定していくうちに、ここの登場人物と同じ名前、キャラ設定がかぶる
可能性が非常に高いのですが、できればその点について許可して
いただきたいのですがどうでしょうか。既に一部のキャラの名前を使用
しておいてこんなお願いをするのはおかしいですが、ご一考ください。
もし使用するのが駄目でしたら、こちらに書き込んでいって下さい。

あ、すいません。当方でも我こそはという職人希望の方々をお待ちしてます。
>556様
 私は大友を書いている者ですが、大友について好きに使って構いませんよ。
 どういう大友家ができるか本当に楽しみにしています。

 ……その前に、この話完成させないと…自分…
558 ◆nT0xknNOBU :04/01/20 01:19
前回のレスが9月ですか……えらく放置してしまいました。
私個人として書くモチベーションが余り保てなくて……
一つには、今までか居てきた話は、余りにも手を抜きすぎていたなぁ、ってのが有ります。
何せその場の思いつき書いた初期の頃はもちろん、全ての回に於いて文章の見直しすらしてないですから。
そうなると今から反省してしっかり書いても、このままでは全体としてとっらかった話になってしまいます。
で、もう一つには、こんな膨大な話を三戦板で延々とやっていいもんかなぁ?と思いまして。
何ヶ月もほったらかしにしてしまうこともありますし。それはまあ大友さんたちが書いてくれているから良いとしても、
上の方にもちょっとありましたが、このスレはちょっと私の個人的な色合いが濃いように思いまして……これはスレの私的利用ではないかな、と。それも一つ。
最後に一つは、この話の先が余りにも長く、片手間にやるにしては必要な時間の膨大さに目眩がする様な気がすることもです。
かなり文章を削ってるんですが、既に書いた分だけでも原稿用紙で800枚超えてますし。
これでもまだ物語としては序盤なわけですから、専業の作家でも完結させようと思えば3年以上掛かりそうな勢い。
さて片手間では十年掛かるか二十年掛かるか……いやはや。
やる気の起きない状況で書いてもろくな話になるとは思えませんし(ま、今までもろくな話じゃあありませんが)。
それらを鑑みると、読んで下さっていた方や協力して下さった方には申し訳ないですが……これはいったん終わりにした方がいいかな、と。
もっとも、二年(!)もやってたので多少の愛着はありまして……
きちんと書いていなかったところをぽつぽつと書いてみようかとは思っています。
発表するかどうかは分かりませんが、もしかしてどこかで見かけたら「ああやっとるな」と思って下さい。
えー、あとは、何か不都合(設定を使いたいけどよく分からない所があるとか)など有りましたら、一応メアドを乗せておきますのでそちらへ……
最後に、ずいぶんと中途半端になってしまいまして、申し訳有りません(;´Д`)
559無名武将@お腹せっぷく:04/01/20 21:09
>>原稿用紙で800枚超えてますし
ウホッ・・・長編大河SS超歓迎!
私もキャラだけとかエピソードだけなら思いつくんだが・・・
>>558
うお、久しぶりに見に来たら。
今更だけど、おつかれさまとしか・・。
562無名武将@お腹せっぷく
唐揚げ