信子ちゃん

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629 ◆0xknNOBU :02/05/19 19:30
ごめんちゃい。
書いとるんですがあんま進んでなくて・・・
あせんなくていいですよー マイペースが一番
( ´Д`)y━~~期待保守
632「不如帰」 ◆0xknNOBU :02/05/22 00:00
明智光が足利学園に転校してから、一年が経とうとしていた。この時まだ今川義子は
駿遠三のに無事であり、尾張学園も変哲無い地方学園に過ぎない。一方足利学園も以
前の状況と比べはかばかしい進展はない。明智光・細川藤子を初めとして、足利家に
忠実と見られる有能な人間を地方勢力に派遣し、彼らの手を借りようと言う策を進め
てはいるのだが、地方勢力はそれぞれ周囲に別の強豪を抱えなかなか身動きが取れ
ず、何処も足利家に好意的ではあるものの、いずれいずれ、と同じ様な答えしか得ら
れない。
この間、明智光は何の役職にも就いては居ない。功績がないということもあるが、新
参者に役職を与えると言うことに内部から異論があるためである。それでも光は輝子
の個人的な参謀としてかなりの権限を持ってはいるが、自負心の強い光にしては、今
の好く功を為しえぬ状況に苛立っていた。
この日も、そう言う不満を抱えつつ、気を落ち着けるために弓道場を借りて独り弓を
射ていた。
藤子「……光様は来て居られますか?」
光へ会いに来た細川藤子は、足利学園寮の自室に光が居ないことを知り、人づてに聞
いて弓道場へやって来た。
弓道部員「あっ、藤子様。光様なら一人になりたいからといって今出川の旧練習場の
     方へ行きましたよ」
聞かれた弓道部員はそう答える。
藤子「……今出川の?」
藤子は多少訝しげな顔をしてそう言った。今出川弓道場は、十年ほど前の台風で屋根
が飛び、老朽化も進んでいたことから新たに屋内練習場が建てられて廃棄されてた。
建物自体は残っているが、倒壊の危険もあるから今では立入禁止になっているはずで
ある。
藤子「……ありがとうございます」
弓道部員「あっ、いえ。お気を付けて」
藤子が深々と頭を下げてそう言ったので、弓道部員は慌てて頭を下げてそれに応じ
た。藤子はそれに対してもう一度軽く頭を下げてその場を去った。

薄暗い森の小道を通り、藤子が今出川練習場についてみると、はたして人の気配があ
る。更に歩をゆるゆると進め練習場の入り口の扉の前にたつと、錠が掛けられている
はずの扉は開け放たれ、そこから一人の人物が見えた。
光であった。飛ばされてなくなった屋根枠からは木漏れ日が落ち、制服のまま弓を構
える光の顔にも、初夏の陽が作る鮮明な濃淡が、ときに止まり、あるいは風にそよぎ
ながら浮かんでいる。弓は既に引き絞られ、キシリという音が聞こえそうなほどの緊
張感を放っていたが、光の表情には水の如き静けさがあるだけだった。その静かな表
情のまま、音もなく弦が光の手から放れる。ヒョウ、っと短い音をたてた後、矢は朽
ちかけた的に的中した。
藤子(お見事)
心の中で藤子は賞賛を送った。的には今放った矢だけが刺さっている。今のが一矢目
と言うことは、光がここに着いたのもついさっきなのだろう。藤子は、光の集中を乱
してはまずかろうと、敢えて声は掛けず、足音も忍ばせて朽ちかけた練習場の中に
入った。そして練習場と同じくらい朽ち果てた木椅子に腰を下ろす。木椅子は光の
ちょうど真後ろにあり、光の視界には入らないが光の姿を最も良く見ることが出来
た。その間に光は二矢目を放っていた。これも的中した。藤子はまだ黙ってみてる。
矢は後二本残っている。そのうち一本を光はまた弓につがえ、放ち、また的中させ
た。そして残る一本の矢をつがえ、打起し、引き分ける。しかし、最後の一矢をなか
なか射ようとしない。それが余りに長く続き、藤子が訝しく思いだした頃、光は的に
向けていた矢の先を、上体を反り返らすようにしてほぼ真上に向けた。そして、
睡生睡夢応睡童 十余年志空隆隆
尚残歳月時戔如 雖遺韶珠可覚夢
と、詠みあげ、読み終えると同時に弦を放す。矢は頭上高く飛び去り、十拍ほどの間
をおいて、後ろ髪を掠って光の真後ろの床板に突き刺さった。
藤子「……あっ」
その際どさに、思わず藤子は声をあげる。
光「誰?」
矢が体のすぐ側を掠めたときも残心のまま微動だにしなかった光も、その声にはっと
して後ろを振り返る。
藤子「……光様」
藤子は座っていた木椅子から立ち上がり、茫然とした表情で呟いた。
光「藤子?何故ここに?」
光はちょっと驚いた表情を浮かべ藤子にそう聞いた。が、藤子の方はまだ茫然とした
表情のまま、その問いには答えようとしない。
藤子「……光様」
そうしてもう一度呟く。それから急にはっとした表情になり、その表情になったと同
時に光の方をキッと睨んで声高く言った。
藤子「光様!何と危ないことをなされるのですか!いくら腕に自信有りといえども、
   名人に必ず万が一なしとは言えません!光様は高々弓技の巧みを誇って、大切
   な命を蔑ろにするほどのお人であられましたか!」
普段穏やかな藤子の時ならぬ剣幕に流石の光も怯んだ。
光「いえ、これはほんの気紛れよ……」
藤子「気紛れに落とすべき命と、ご自分をそう思っておいでですか?木登りの下郎が
   梢を降る時さえ、危うき高さより安き高さに気を置くものです。まして光様は
   下郎に非ず。天下の難きを捌き得ても、下らぬ事で万分の一も命を危険にさら
   すなどは、そもそもお心得が間違っています」
しかし、藤子は更に光を責める。それでも多少心が落ち着いたのか、先程ほど激しい
口調ではない。
光「いや、その……、ごめんなさい」
普段控えめな藤子にバシバシ説教されると、道理も向こうにあることだし光としては
ひたすら謝るしかない。ぺこぺこと頭を下げ、先程までの緊張感も何処かにやって、
ひたすら藤子を宥めた。
藤子「……いえ、これから気を付けて下されば」
光「うん、気を付けるわ。ごめんなさい」
そのかいあってか、漸く藤子も普段通りの口調に戻り、光はほっと息を吐いた。
藤子「……いえ、私の方こそ興奮してしまって」
言って藤子はちょっと俯き、僅かに頬を赤らめた。
藤子「……でも憶えておいて下さい。……今はしたなくも光様に意見してしまいまし
   たけれど、この事必ず私の真情でありますから……」
光「ええ、間違いなく」
光は藤子の言葉に微笑を浮かべてこたえた。元より藤子が怒ったのも、自分のことを
考えてくれてのことだと百も分かっている。その心に感謝こそすれ気を悪くしたりす
るはずもない。
光「ところで、どうしたのこんな所まで?」
と、それから藤子に聞いた。今出川練習場に来ている事は弓道部員の誰かから聞いた
のだろうが、それなら光が一人になりたいというのも藤子は察しただろう。こんな
時藤子なら敢えて光に接触を持とうとはしない筈で、それでも光に会いに来たと言う
ことはただ顔を見に来たという以上の用があるに違いない。
藤子「……ああ、そうでした」
言われると藤子も思いだしたらしい。普段ならど忘れなどしないのだが、やはり興奮
したせいだろう。
藤子「……そう、でも立ち話では……茶室の方へ御来し願えますか?」
光「分かったわ。それじゃあ私は矢を拾って弓道部に返しに行かなくちゃいけないか
  ら、藤子は先に行ってて。あっ、茶道部の茶室でいいのよね?」
藤子「……はい、それではお待ちしています」
光と別れた藤子は茶道具の準備をしていた。茶道具には案外重い物も多いので、普
段は駒栄や後輩達に手伝って貰うのだが、今日は特に、光と二人きりで話したかった
ので一人で支度をしている。一つには輝子から言い付かった用件を余計な人間に聞か
せないと言う配慮もあった。ただそれだけなら駒栄辺りには手伝って貰ってもいい。
実際、初めは駒栄も同席して貰うつもりで居た。しかし、今出川練習場から戻ってく
る道々、いささか思うところあってそれはやめた。
藤子(光様)
藤子は支度をしながら、光が最後の矢を空に打ち放すとき言いあげた詩を思い出して
いた。
藤子(鬱して居られるのだ)
光ほど自負心の強い人間は居ない。同時にその自負心に見合った志も遂げたいと思っ
ている。
藤子(それが、微弱な足利家を復権すると言うこと)
しかし、今のところ目立った動きは取れないし、光もその自負心に見合うだけの活躍
の場をもてない。全ては微弱であるが為であり、である以上期を待つより仕方がない
ことだということも光には分かっているはずである。が、分かっているといっても焦
らずにいられないのだろう。
藤子(志は遂げられず、儚く詩を吐き出すだけ)
詩は光の鬱屈した志が詮無く漏れだした、愚痴のようなものだ。
藤子(見事なお方ではあるけれど……)
その鬱しやすい性格が、藤子の心に僅かな不安を覚えさせた。

光「今川義子が西進を開始した?」
藤子「……はい、先日東海方面からそう報告が入りました。急ぎ雪に調べましたとこ
   ろ、間違いないようです」
程なく茶室にやってきた 光に藤子はそう告げた。ここ一年来、上洛は足利家にとって
義子の上洛は日照りに雨を待つような心境でそれを願っていたところである。むろん
足利家の方からも何度か義子に上洛を促していたのだが、関東の北条、甲斐の武田家
が今川家の後背にいるためなかなか実現しなかった。
光「ということは、北条、武田の問題が片付いたという事ね?」
藤子「……はい、駿河学園の教諭大原由希子が、退職の置き土産に今川、武田、北条
   の同盟を成立させました」
光「なるほど」
とすれば、後は京までの街道をひたすら西進するだけで、今川家は上洛を果たすこと
が出来る。街道筋の尾張学園や美濃学園などは、駿遠三を支配する今川家の敵ではあ
るまい。
光「ついにこの時が来たわね」
光は多少興奮気味な声でそう言った。もともと光の構想でも、京に今川家が上洛する
事を第一条件に設定している。今までなかなかそれは実現しなかったが、ここに来て
遂に日の目を見た。
光「じゃあ、早速私は輝子様にお願いして越前学園の朝倉御影にも上洛するように催
  促してこなければ」
光の構想の第二弾目がそれである。今川家だけでは上洛は可能でも周辺の学園から京
を維持することは難しいと思われるし、また今川家だけが功を独占することも足利家
にとっては好ましくない。これらの不利を避けるため、越前朝倉家の力を借りる。こ
れは、既に輝子や藤子にも了承済みの企画である。
藤子「……光様」
そうと決まればと、気早く腰を浮かそうする光を、藤子はちょっと高い声を出して制
止する。
光「えっ、なにかしら?」
光は気が逸っているのか、藤子の言葉を聞いても腰を浮かしたまま、中腰の姿勢でそ
う聞き返す。
藤子「……まず、お待ちを。まだ湯も沸いておりません」
藤子はそう言って、光に腰を下ろすように促す。言うとおり、まだ茶釜は松風の音を
鳴らしてはいない。が、光の方は充分以上に沸騰していた。
光「お茶など、何を悠長な」
そう言うとまた立ち上がろうとする。
藤子「お待ち下さい光様。席を途中にして客が座を蹴るなど、主人である私に対する
   大変な侮辱です」
光「しかし……」
いつになく強い口調で言われ、ひたすら気に逸っていた光も流石に動きを止めた。第
一こういう礼儀を嵩に着た言い方をするなどは、普段の藤子の性格からすると信じら
れないので、その事にも驚かざるを得ない。
藤子「……まず、お座り下さい」
光「……」
もう一度座に着くよう促した藤子の言葉に、光は仕方なく座り直す。と、それに併せ
るかのように鳴り金が音を立てた。その音を聞くと、漸く光も逸る気持ちが落ち着い
たのか、ふぅ、っと大きく息を吐いて肩を落とした。藤子は光をちらっと横目で見
て、何時も通りの手順で茶を点て始める。そして日が一度ほど傾いた頃、光の前に点
てたばかりのお茶が差し出された。
藤子「……どうぞ」
藤子の言葉に、光は茶碗を持ち上げそれを飲んだ。別段苦くもない。
藤子「……先程、無礼致しましたこと申し訳ありません」
お茶を飲み終えた光に、藤子は両手を畳につけ、深々と頭を下げて謝った。
光「いえ、そんなことはないけど……」
光はそう言ったが、藤子の思惑が分からないので困惑は隠せない。確かにさっきの自
分は明らかに気が急いていたし、朝倉への要請も一分一秒を争うものではない。しか
しだからといってやたらとのんびりしていいものでもないし、出来るなら今日の内に
輝子から了承を取り越前に発ちたいところだ。そう思えば、また気も焦ってくる。
光「結構なお点前で」
そう言って今度こそ光は座を立とうとする。
藤子「……光様」
と、また藤子がそれを制する。光は訝しく思いながらも動きを止めて座り直す。それ
を見て、藤子はスッと座ったまま半身をずらし、光の視線を床の間の方へ促した。光
が促された通り床の間に視線を移す。床の間には小さな臥龍梅の描かれた掛け軸があ
るきりで、他には何もない。が、良く見ると絵には讃が入っている。光が良く目を凝
らしてそれを見つめると、次のような文字が読めた。
夏日京城北 天閂一矢輝
碧雲通過行 赤日向尚飛
独勢然虚落 天将欲日違
鳳雛休樹杪 隠待露朝晞
光「……藤子」
苦笑いしながら光は藤子の顔を見る。藤子は僅かに顔を伏せたまま光と目を合わせ
ず、表情も変えない。
光「でも、今は休む時じゃないわ。早く朝倉家に行かなくては」
藤子「……そのこと、余人に任せてはいけませんか?」
光「何を言い出すの?」
いきなり意外なことを言われ、光はびっくりした。そもそも光は朝倉に伝があるから
こそ足利学園の対朝倉外交を任されている。ここに来て他人が朝倉家との折衝をする
というのは朝倉家にとっても不審だろう。また、光個人にとってもこれまでの苦労を
他人に横取りされるようで面白くない。
藤子「今足利学園の中で絶対に信用が置け、かつ頼りになる人間といえば光様と和田
   駒栄の他には居りません。その駒栄は南近江学園の六角鼎の元に出向いていま
   す。……光様まで居られねば、三好松永の徒が良からぬ事を考えぬとも限りま
   せん」
光「それは……でも朝倉との折衝はそう時間は掛からないと思うし、三好松永らも今
  川上洛の情報を聞けば迂闊な事はしないでしょう」
藤子「……もう一つ気がかりがあります。今川、朝倉が京に上れば、三好らは破滅、
   そうはならなくても少なくとも今日には居られなくなるでしょう。……そうな
   らないために、三好らが朝倉への使者を害する可能性が……」
光「藤子」
光は藤子が最後まで言い終わる前に言葉を遮った。
光「私は美濃を捨てた時から孤児のようなものよ。門地もなく、功績もなく、ただ自
  分一つがあるだけ。藤子、初めて輝子様と会ったとき、輝子様は足利家の存続は
  賭だと仰られたわ。私の運命も賭よ。金のある人間は金を賭ればいい、家門のあ
  る人間は家門を賭ればいい」
言いつつ既に光は立ち上がっている。藤子は尚もそれを止めたかったが、今度ばかり
は良い言葉が思い浮かばなかった。
光「私には、命とプライドしか賭るものはない」
言い放つと、さっと身を翻して襖を開け、そのまま足早に茶室を去った。
藤子「あっ……」
藤子は慌ててその後を追うとしたが、廊下に出た時には既に光の姿はなかった。
藤子「……」
藤子はそれでも暫く光の去った先を見つめていたが、やがて諦めたように小さく息を
吐き茶室の中に戻った。ふと耳を澄ますと、何時の間に降り始めたものか雨の音が聞
こえた。
藤子(五月雨)
あの日のように、明るい雨なのだろうか?外の見えない茶室の中で、藤子は雨音を聞
きながらそんなことを考えた。

この日の午後、光は輝子の許しを得て朝倉御影の元へと発った。
637 ◆0xknNOBU :02/05/22 00:05
えー、遅れましたが「不如帰」であります。
漢詩は適当ですんで突っ込みはカンベソ(;´Д`)

     人
   (__)
 \(__)/ ウソコー!
  ( ´A` )
待っとりましたーーーー!!!!
( T∀T)y━~~  
保守sage
642「越前」 ◆0xknNOBU :02/05/28 01:37
足利輝子の命を受けた明智光はその日の内に京を発った。京から越前学園までの間に
は六角鼎の南近江学園、浅井雅美の北近江学園があり、本来ならばこれらの学園に挨
拶をして行くべきなのだが、今回は事が急を要するだけに素通りして越前学園へ向かった。
越前学園。一乗谷にあるこの学園は、朝倉敏美の代にそれまで足利家から越前学園生
徒会長に任じられていた斯波家を追放。その後失地回復を目指す斯波家や甲斐家等を
破って越前全体の学園を支配下に納めた。その原動力になった敏美の運営方針は、そ
れまで縁故に頼りがちだった生徒会役員の任命方針を一新し、代々役員の家系を設け
なかった。これにより以後の朝倉家は腐敗しがちな運営陣を新鮮に保ち、また門閥も
緊張感をもって職務にあたるようになった。が、その敏美から既に四代。現生徒会長
御影の代になると流石にこの運営方針のたがも緩み、人事は門閥が横行し緩やかに退
廃の傾向を見せ始めている。しかしそれでも越前学園の勢力は広大で、北は仏教系の
本願寺学園加賀分校、南は斉藤龍子の美濃学園などと接しつつも、少しも越前での勢
力を侵されることはない。
光(新進の気質は無く新しく事を起こすには向かないが、それだけに守ることに対し
  ては堅牢でもある)
光の越前学園評はそんなところであり、世間一般の評と大体変わらない。
光(ただ今回ばかりは動いてもらわないと)
そう言う亀のように鈍重な朝倉家を、どうしても京まで引っ張ってこないことには、
光の構想も成立しないし、足利学園の将来もおぼつかない。
光(さて、あの御影様が動くかどうか?)
これは、ちょっと光にも自信がなかった。

一方一乗谷の越前学園では、足利学園からの正式な使者として光が来ることに対し
て、さほどの驚きもなくのんびりと構えていた。
足利学園からの上洛要請はこれまでにも何度かあったが、その都度朝倉家の力では不
可能と返答してきたので、今回光が来ることに関しても何時もと同じ様な感覚でしか
受け止める者はいなかった。せめて情報に敏感な者がいれば、今回光が来ることと今
川義子の上洛行動とを関連付けて考えたのだろうが、先年まで生徒会長代理であった
朝倉雫が卒業して以来、その種の判断能力を持つ人間は朝倉家には居ない。しかもそ
の雫に変わって越前学園に勢力を張っているのは鞍谷今日子は朝倉御影の恋人の姉と
いうだけで権勢を得ている人物である。
この情勢下に、優秀な実権者を持たないということは、朝倉家にとっても光にとって
も幸運なことではなかった。
今日子「と、いうわけで。足利学園の輝子様から使者として明智光が来ることになっ
    てるわけだけど……。あなた達何か意見ある?」
今日子は生徒会室に集まった、御影を除く役員を前にしてそう言った。形式的に言え
ば今日子は生徒会役員ではないので場を仕切って良いはずもないし、それどころか発
言権もないのだが、その場の面子の中でそれを追求する者は居なかった。今日子の権
勢を怖れてのことだが、あるいはたんに気付いていないだけかも知れない。
鏡「別に意見なんか無いですけど、一応御影様の意見も聞いた方が良いんじゃないで
  すか?そう言えば、なんで御影様居ないんです?」
生徒会役員の一人で朝倉家の一門朝倉鏡がそう聞いた。べつに御影の居ないことに不
満があって言ったわけではなく、思いついたままを口に出しただけだろう。
今日子「……御影様はまだ寝て居られる」
それでも今日子は自分の進行を妨げられたことで少し気を害したらしく、ちょっと
むっとした口調でそう言った。
鏡「寝て?何でそんなことまで分かるんです?」
今日子「さっき小宰から電話があった。起き次第こっちに向かうそうよ」
鏡「ははぁ……」
要するに臥所の中からのご連絡か、と、流石に鏡も呆れたが、口には、こちらも流石
に、出さない。
643 ◆0xknNOBU :02/05/28 01:41
どーも何時でもいいやと思うと書く気が起きてこないので、
「越前」の間は1日1レス分位を目標にしてみようかと思います。
・・・隔日になっても許してくりゃされ(;´Д`)
無理しないでがんばってくださいね
今日子「何か不満でも?」
その鏡を、今日子がじろりと睨み付ける。
鏡「いえ、別に不満なんて……」
鏡は慌てて否定する。足利家の血筋で、本来斯波氏の名跡を継ぐ今日子は何かにつけ
て権高く、越前学園の中でも好かれては居なかったが、権勢を怖れて歯向かう者は居
ない。
健香「まあ、今回も適当にあしらえば良いんじゃないですか?」
鏡と同じ朝倉一門の朝倉健香がそう言ったことで、多少ギスギスしていた生徒会室の
空気も和らぐ。元より誰の中にも意見らしい意見など無い。
小々奈「じゃあ、そう言う方針ということで、金ヶ崎分校の紀香ちゃんにそれとなく
    対応するよう言っておきます」
魚住小々奈がそう言ったことで、他の誰も異論のある者は居なかった。そこで会議は
終わる予定だったのだが、
御影「あはは〜、遅れちゃった〜、ごめんね〜」
そこに気の抜けたコーラのような声が飛び込んできた。本来なら会議の主催者である
はずの、越前学園生徒会長朝倉御影である。御影は長い髪に、ある意味貴族らしい、
端正ではあるが気の抜けた顔を持っている。今も何も考えていないような屈託のない
笑いを浮かべていて、そう言う無邪気なところは男性にとって魅力的であるといえな
くもない。ただし、御影は男には興味がなかった。今も制服こそきちんと着ているも
のの、髪や体からは仄かに石鹸の香りがしていた。直前まで今日子の妹小宰と一緒に
いたことを考えれば、何をしていたのかは考えるまでもない。
今日子「いらっしゃいましたか御影様」
今日子は表情を変えずにそう言った。その軽い口調からは、どうも御影を重んじてい
る風には見えない。が、もちろん御影はそんなことには気付いていない。
志津子「随分お早いお目覚めでしたね」
御影「うにゃ〜?早かったかなー?」
生徒会役員の一人前波志津子皮肉を言ったが、もちろん御影は皮肉とは気付かず相変
わらずニコニコしている。その前波志津子は今日子に睨み付けられたが、志津子は対
とその視線を外して在らぬ方に眼を逸らす。
統子「御影様、今話していたのですが、足利学園から使者として明智光様がいらっ
   しゃるそうです」
会計委員の河合統子が、また悪くなりかけた空気を元に戻すため、多少強引ながら御
影にそう言う。
御影「うん〜?光ちゃんが来るの〜?じゃあお菓子の用意しなくちゃね〜」
今日子「御影様お菓子も良いですが、何時も通り、明智光に言質を与えるようなこと
    を言ってはいけませんよ」
御影「あれ?今日子ちゃん来てたんだ。うんわかった〜」
今日子「それならよろしいですが」
御影「ところで言質って何〜?」
今日子「……足利学園に出向くとか、京都に行くとかって言っちゃ駄目ですよ」
御影「そうなの?でも京都行ってみたいな。京都って、町中に舞妓さんが溢れてて〜
   目隠しして捕まえると捕まえた人を貰えるんだよね〜。うわ〜、楽しいそ〜、
   行ってみた〜い」
今日子「……今の言葉、小宰に伝えていいですか?」
御影「あっ、うそうそ。そんなこと考えてないもん」
馬鹿な妄想を口に出した御影は、今日子の言葉に慌ててそう言いわけする。
今日子「では、絶対に京都に行くとか言ってはいけませんよ」
御影「うん、わかった」
生徒A「御影様、足利学園から明智光様がお見えになりました」
一乗谷の朝倉学園生徒会室にそう連絡が入ったのは昼休みが終わった頃だった。ちな
みに生徒会執行部の人間は鎌倉執行部下で制定された学園自治法により必要な時は授
業を免除される。本来は煩瑣な手続きを踏まねばいけないのだが、現実に学園運営を
しているのは生徒会なので、実際のところ生徒会役員は自由に休み放題になってい
る。
今日子「もう来たの?」
と、報告を受けて軽い驚きの声を挙げたのは御影ではなく今日子だった。今日子は生
徒会役員ではなく、本来学園自治法を使って授業さぼることは出来ないのだが、御影
の許可を受けた特例と言うことで光を待ちかまえていた。
今日子「紀香の所で用向きを聞いてから来るのが通例だけど……」
紀香というのは朝倉雫の義理の妹で、今は卒業した雫に変わって金ヶ崎分校の生徒会
長をしている。通常近畿や東海道から来る使者はここに一旦立ち寄り、用件を一乗谷
の御影まで伝えた後、漸く本校へ来る手順になっている。今回は、まだその通達が来
ていない。
生徒「はい、明智光様は金ヶ崎を素通りして、直接こちらにいらしたようです」
今日子「……横紙破りな」
今日子は不愉快だった。如何に足利家の使者とはいえ、慣例を無視するとは無礼であ
る。
御影「まあまあ、いいじゃない。ねっ、今日子ちゃん。それじゃあ生徒Aちゃん、光
   ちゃんを呼んで来て〜」
が、御影の方は余り気にしていないようだった。今日子はそれでも不満だったが、光
がもう来てしまっている以上どうしようもない。
生徒A「はい」
御影に命じられた生徒Aはそう言って生徒会室を出ると光を呼びに行った。
今日子「……今回はもう来てしまっていますから仕方ありませんが、明智光には当学
    園の決まりをよく言っておきませんと、規則は意味のないものでも守らせな
    ければそもそも規則が力を持ちません」
御影「う〜ん……良く分かんない……」
しつこく言って来る今日子に、御影はちょっと困ったような顔をしてそう言った。基
本的に御影は三行以上の言葉は長すぎて理解出来ない。良く解らない演技をしている
のではなく、本当に言っている意味が今一解らないのだろう。

生徒A「光様をお連れいたしましした」
少しの後、生徒Aが光を連れて生徒会室に戻ってきた。
御影「あはー、ご苦労さま」
御影はそう言って生徒Aを労う。そして生徒Aはそのまま下がり、代わりに長い黒髪
をしなやかに舞わしながら、足利学園の制服を着た女性が入ってきた。明智光であ
る。対して朝倉学園生徒会室には生徒会長朝倉御影、運動系部代表朝倉健香、学園総
書記長魚住々奈、副書記長前波志津子、会計監査長河合統子、この面子に加えて、鞍
谷今日子が待ちかまえている。
光「お久しぶりです御影様、本来なら色々の先恩に謝し、尚厚き挨拶などせねばなり
  ませぬ所。ですが、本日この明智光、足利輝子様の使いとしてこの一乗谷まで参
  りました故は、いささか無礼なれど略礼をお許し下さい」
光は部屋にはいるとすぐにそう言って御影に向けて頭を深く下げた。その御影の左右
には、朝倉学園の役員及び鞍谷今日子が顔を並べて座っている。呑気にニコニコして
いる御影の他は、どの顔も厄介な人間が来たという顔をしていた。
光(思った通り、越前学園は鈍いわね)
その顔々を上目使いにこっそりと見回し、心中光は前途の苦労を思った。が、すぐに
別の考えが浮かぶ。
光(諸葛亮ね)
居並ぶ保守派を相手に一弁を以て衆議を決する。なる程苦労には違いないが、足利学
園で燻っているよりは何倍もましである。そう思えば、自然と笑みすら浮かんだ。
647 ◆0xknNOBU :02/05/29 23:25
きのうあげられなかったので2レス分〜

>>644
ありがとうごぜいます(´Д`)
まあ無理してるわけじゃないんですが・・・
期限無いとやる気が起きないタイプなので(w
今日子「明智さん、御影様に御目通りするには、先ず金ヶ崎の紀香に取り次ぐのが慣
    例だったはず。今回それを省いて要らしたのはどういう御了見でしょう?」
先ず朝倉側で口火を切ったのは鞍谷今日子だった。以前、光が一乗谷に数ヶ月数ヶ月
こうしていたときから、今日子は光のことを生意気な小娘として快く思っていなかっ
たので、口調は酷く嫌味なものだ。
光(まずはこいつか)
光も今日子のことを快く思っていない。光には珍しく、心の中とはいえ余り上品でな
い表現で今日子のことを思い。それからこの朝倉家で一番の保守家を排除すべく口を
開く。
光「本日私が参りましたのは足利輝子様の名代としてです。でありますれば、本来朝
  倉家に目下の礼を取る道理はありません」
今日子「しかし今までは慣例の通りにして来たでしょう。何故今回に限りその様に言
    われる?」
光「今までの事はあくまで足利家の使者としてこの光がたっていただけの事。しかし
  ながら今日は輝子様の名代として参りましたからには、光がここにあるは輝子様
  がここにいらっしゃるのと同じ事です」
今日子「しかし……」
光「で、ありますれば、申し訳ないながら事は天下の公事。極秘のこともあります
  故、役員の方々以外には席を外していただきたい」
尚も反論しようとする今日子の言葉を遮って光が言った。
今日子「なっ……!」
生徒会室の中に非役員は今日子しか居ない。露骨に今日子を追っ払うための言葉であ
る。
御影「う〜ん?今日子ちゃんは私のお姉ちゃんみたいな人なんだけど……それでもだ
   め〜?」
光「姉妹の仲は私事、如何に情濃しといえども公事と秤に掛けることは出来ません」
我ながら嫌な言い方だ、と、光も思ったが、今日子を排除しないことには話がうまく
行かない事は目に見えている。
御影「うん〜……、今日子ちゃん……」
光に言われて、御影は困った様に今日子の方を見る。今日子は顔を赤くして怒りに震
えていたが、御影の視線に気づくと、一瞬だけ助けを求めるような視線を返した。
が、すぐに無駄と悟ったのか、今度は今にも掴みかからんばかりの視線を光に向け
る。越前学園の役員達は少し緊張したが、今日子はすぐに眼を逸らし、御影に一礼す
るともう光の方は見ず退室すした。
光「お聞き入れいただきありがとうございます」
今日子が退室してから、光は御影にそう言った。そして続けて。
光「では、失礼して」
と言い、つかつかと生徒会室の中を進むと、御影の座る生徒会長席のすぐ横に椅子を
運びそこに座る。これには一同もあっと声を挙げ色めき立つ。が、更にそれを制し光
が言う。
光「輝子様の名代でありますから本来上座に着くところ、この明智光は無位の身であ
  りますから、一段遠慮して御影様と同席させていただきます」
その言葉に一同は戸惑った。なるほど言う通りかも知れないが、心情的には納得しが
たい。
光(乱暴ではある)
しかし、これぐらいのことをしなければ鈍い越前学園の役員達を動かすことは出来な
いとも思っている。足利学園の生徒会長が、その名代においても自分達の生徒会長と
同格か、あるいはそれ以上であるということを示しておかなければ、これから先足利
家の立場も曖昧になる。
光(上座が在ればそこに座るのだけど)
残念ながら生徒会長席部屋の窓ぎりぎりでこれ以上の上座はない。しかし、同席でも
充分一同には動揺が走っていた。無論光に好意的なものではない。
御影「いいよー、別に」
光が隣に座ったことに、当の生徒会長御影はそう言っただけだった。御影には光の政
治的な意図などは分からない。しかし、これは越前学園生徒会長自ら足利家の権威
と、名代である光の権威を認めたことに他ならない。御影が認めてしまった以上は、
他の役員が口を出すのは越権でもある。
光「では、輝子様のお言葉をお伝えします」
敢えて礼は述べず、光は漸く用件を持ち出す。用件というのは、要するに今川義子の
上洛に呼応して上洛しろと言うことだ。
光「御影様にも、至急京に上られますよう」
最後のそう結論を述べ、光は言葉を一旦切った。御影を除き、越前学園の面々は一様
に難しい顔をしている。本音を言えば、わざわざ京になぞ行きたくはない。
御影「京都か〜……、でも今日子ちゃんに行くなって言われてるんだよねー」
そう言う役員の思惑など知らず、御影が不用意な言葉をもらす。
光「今日子様が?」
隣でその言葉を聞いた光は嫌な顔をした。
志津子「いえ、御影様の思い違いでしょう。今日子様はその様なことおっしゃられま
    せんでしたよ」
慌てて前波志津子が御影をフォローする。言い訳にもならない言い訳だが、光も深く
追及はしない。どうせ越前学園全体が上洛に反対なのは分かっていたことだ。
光「そうですか、すると上洛していただけるわけですね?」
それよりもこの期にすかさず畳みかけ、御影にそう聞く。
鏡「いえその件に関してはよく生徒会で会議した上で……」
御影が何か答えるよりも先に、鏡が慌てて口を挟む。御影に任せていては光の良いよ
うにされてしまうと思ったのだろう。
光「何をおっしゃられます。既に今川義子は上洛を開始しているのですよ?悠長に会
  議の結果を待つなどは、火事を前にして竜土水を作る様なものです。即刻出立す
  ることこそ肝心であるのに、それでは慎重も度が過ぎ、かえって越前学園のため
  にならないでしょう」
小々奈「火事と言っても遠く京のことでしょう?今川義子が京についてから越前を
    発っても遅くはないと思います。それ程火急の用件とも思いません」
光「今川義子の駿河から京までは尾張、美濃、南北近江を通らねばなりません。その
  間尾張、美濃の両学園は抵抗するでしょうし、北近江学園の浅井雅美も越前学園
  が動かなければ今川義子の上洛を不可とするかも知れません。今川義子の上洛を
  怖れる三好、松永の徒輩がその間に輝子様に害意を持のはまず間違いありませ
  ん。その時こそより京に近い御影様のお力が必要であるというのに、火急でない
  とはどう言うことなのでしょうか?」
納得しているようには見えなかったが、言われて小々奈は取り敢えず黙った。
志津子「輝子様のためと光様は言われますが、私達は足利学園の役員ではなく越前学
    園の役員です。先ず第一に考えるのは越前学園のこと、足利学園のために危
    ない行動はとれません」
光「これは何を言われるのかと思えば恥ずかし気もなく。そもそも尾張、美濃など勝
  手に生徒会長に就任している学園の生徒ならともかく、古くは土岐氏が治めてい
  たとは言え越前学園の生徒会長は足利学生府より任命された正式の生徒会ではあ
  りませんか。であればその生徒会長は輝子様にとって子も同じ、役員は孫も同じ
  でしょう。任命を忘れるのは不義であり、主に尽くさぬは不忠、子や孫がその親
  に尽くさぬのは不孝、また乱れた世を救う力がありながら座して動かぬのは不
  仁。……これ以上は舌もつかれました。いずれ一つをとっても世間に顔向けでき
  るものではないでしょう」
650 ◆0xknNOBU :02/06/01 00:33
2レス分ー。
前回役職の所で朝倉鏡抜かしちゃったんでフォローを。
ついでに今生徒会室にいる人キャラの役職も。

生徒会長    朝倉御影
文化系部代表 朝倉鏡
運動系部代表 朝倉健香
学園総書記長 魚住小々奈
副書記長    前波志津子
会計監査長   河合統子
NOBUさん、連日お疲れ様〜。
光タソがいい感じにかっこいい・・・。
一日一レス策は上手いね。
そう言った後、光はわざとそっぽを向いてしまった。志津子は憮然とした表情をした
が、反論も思いつかないので黙る。
統子「しかし明智様、言われる理想はごもっともですが、今の越前学園には京に常駐
   するだけの予算がありません。口だけなら何とでもおっしゃれるかもしれませ
   んが、現実はそうもいかないのですよ」
次に口を開いたのは会計監査長の河合統子である。彼女は越前学園系列の分校まで、
全経理を総括する立場にあるから、その面から光の構想が非現実であることを指摘し
た。口調に皮肉の要素が多分に混じってしまっているのは、今までのやり取りからし
て仕方ない。
光「昔佐野源左衛門常代は零落して二度の食事にも事欠く有様であったのに、旅の僧
  に鉢の木を薪とし語ったところには、貧すれども鎌倉に大事あれば一番にはせ参
  ぜんと言う志。僧に変じた時絵は後言葉通り駆けつけた常代に三庄を与えまし
  た。貧窮の御家人さえこの三個の鉢を持つというのに、朝倉家は既に足利家から
  生徒会を任じられて5代。三個の鉢さえ持たずとは一体どれ程の貧窮であられる
  のか、全く以てこの光には解し難い事です」
言って光はいかにも訳が解らないという風に、目を瞑って首を左右に振った。これで
統子も、むっとした顔をしつつ黙った。
健香「まあ明智様そう逸らずに。もちろん朝倉にも梅の木の志はあります。しかし越
   前学園の北には本願寺勢力の加賀学園が有り、南は好の深い北近江浅井とは言
   え南近江には挙動不確かな六角鼎がいます。また美濃学園の斉藤竜子も大人し
   くはしていないでしょう。京に上りたい気持ちは山々ですが、本願寺に足首を
   掴まれ、近江、美濃に衝立があっては、これは物理的に不可能と言うもので
   す」
光「つまり、近江まで出たところで本願寺が後背を侵すと?」
健香「ええ、加賀本願寺分校とは昔から仲が悪いですから。恐らく機会を逃さず越前
   に乱入するでしょう」
光「驚きました」
健香「明智様はその辺の事情に詳しくないようですから仕方ありません」
光「いえ、私が驚いたのは、上洛上洛と口で唱えておきながら、朝倉家は加賀と不可
  侵条約一つ結んでおかなかったのかと、その不首尾にです。先に上洛の志有りと
  言いながら必然の策一つ取らないというのは一体どう言うことなのでしょう。知
  は行の主意、行は知の功夫、また知は行の始、行は知の成とか、とすれば口では
  上洛上洛と唱えながらその実心は退嬰にこそ在るとしか思えませぬ」
健香「いえ、そんなことはありませんけど……」
光「するといかなる策も成さぬと言うのはどう言うことでしょう?思うて学ばざれば
  則ち危うしと、詰まりはそう言うことであれば、心を曇らす気質があると言うこ
  とにはなりませんか?」
光(則ちそれが、鞍谷のような宿り木だ)
と、心の中で光は思ったが、流石にそこまでは口に出して言わない。もっとも、そこ
まで言わなくても充分朝倉側は愚弄を感じていた。朝倉御影を除いては、皆一様に光
のことを憎々しげな目で睨み付けている。
光(恨めばいい)
その点を光は割り切っていた。恨まれること位を怖れていては、自分のような者が大
事を成せるわけがない。
光(朝倉の人間などは立場も在れば地位もある、どれだけ私を恨んでも楽な立場だ。
  私の方こそ、匕首の森に立ってなお匕首を怒らせているのだから)
どちらがより苦しく、どちらがより優れているか知れ。光はそう叫び出したいよう
な感情に襲われた。
休日は全然書けんした・・・
んで1レス分だけ、休日は以外とやることあるんで休みって事でスマソです。

>>651
ありがとうございます。
まあ元がスプラスティックな話なので、
さほどかっこよくは書けんですけど(;´Д`)

>>652
自分で決めときながら見事に守れてませんけどね(w
655 ◆0xknNOBU :02/06/06 17:37
PCとびました・・・(´Д`)
すんません・・・しばらく遅れます・・・
>655
⊃Д`;)
保守
このスレも名スレにエントリーされているのですが、
画像は半角二次元のスレにお願いしたらいいですか?
>>658
そうですね、その方がよろしいかと思われ
ちなみに半角二次元の擦れです
ttp://vip.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1013278277/l50
ココで依頼してみればよろしいかと、
しかし、この擦れも半角二次元の擦れも過疎気味なので
早急な対応は不可能かもしれません。
あと5KBで492KBに達しますね。
そろそろ新スレの準備でもしますか?
661658:02/06/10 01:54
>>659
ありがとうございます。
紹介していただいたスレでお願いしてみる事にします。

>◆0xknNOBUさん
マシントラブルとは難儀ですね。
荒筋などいただけたらと思ったのですが……
どうか無理のない様になさって下さい。
662無名武将@お腹せっぷく:02/06/11 15:09
足利編は故事を踏まえた物が多くて難しいですな・・・
戦国は今一疎いのでわかる人が教えてくれたら嬉しいなぁ(;´Д`)
てへっ♪
663半角スレから:02/06/14 06:20
先日はじめて知って、全部読ませていただきました。
面白いです!(・∀・) 続き楽しみにしております。
真田昌幸好きなので登場して欲しいけど、織田視点では接点ないかなあ。
>>662 
<時代背景>
この当時、戦国時代と言っても、一応京には室町幕府があり足利将軍がいました。
でもその力は脆弱なの、どうしても強力な戦国大名の力が必要でした。
また各地の戦国大名達にとっても本国の問題も完璧にクリアして、京に見事一番
乗りを果たし、将軍からのお墨付きをもらって、その実力を天下に示す・・・
というのが、ひとつの目標でした。
でも歴史を見ると、今川義元も上洛の途中に桶狭間で討たれ、武田信玄も途中で死亡
信長も斎藤や長島の一向衆徒などの闘いに明け暮れたように、これはとても大変な
ことでした。

<武士団以上の勢力>
また、この当時(と言うかいつの時代も同じですが)、戦国大名以外にも超強力
な勢力がありました。つまり宗教団体です。
一揆で大名を殺して一向宗徒で国を作った加賀の本願寺とか、比叡山の坊さん自体
も武装して強いんですが、その信者達は更に激烈に強かったので(当時は武士と農民
のあいまいだし、死ぬの怖くない人達の集団なので)、大名達はこれをいかに抑える
かが共通の課題のひとつだったわけです。上杉謙信の祖父とかたくさんの大名が一揆
で殺されてます。
また坊主の理不尽な行動にも、神罰を恐れて強引な方法も取れない点もありました。
<光秀タン>
さて、そういう時代の中で・・・明智光秀タン(オリジナル)は昔住んでた美濃で
斎藤家のお家争いの時に、自分の城が落城してしまったので京都の将軍足利家に
寄食している身分でした。
頭も良くて礼法に通じていたので、将軍からも重宝され密使として有力な大名
との交渉に行かされたりもします。
光秀タンは謎の多い人ですが、インテリなので秩序を好みプライドも高く、己の
美学も持っています。主を倒す下克上とか、下品で野蛮なことは大嫌いだったし
寄食の身であることにもコンプレックスをもっていたそうです。

だから幕府再興と将軍の権威の元の秩序回復を望んでいるんだけど、戦国大名達
は野心を持った人達や保身を考える人ばかりなので、色々と鬱な気分になる毎日
を過ごしていた・・・という感じだったようです。
健香の言葉に光が反駁し終えたところで、いったん御影の提案により会議を中断する
ことになった。ともすれば光主導になりそうになる会議の流れを、いったんの休憩を
挟んで立て直そうという意図がある、訳ではない。単に御影が退屈な会議に飽きただ
けである。光としてはここまで自分のペースで会議を進行できているのだから、火急
を理由にこの提案を蹴ってもよかったのだが、ここは割合とあっさり会議の中断を認
めた。
光(動くまい)
一人応接室で休憩する光はそう考えていた。こんな会議をいくら続けたところで、い
くら光が朝倉の面子をやりこめたところで、結局のところ言説で朝倉が動くことはな
い。と、いうのが、光の見通しである。
光(小人とは常にそうしたものだ)
保身には熱心でも、危険を犯して利益をつかもうとはしない。
光(また、それで正しくもある)
立場を抜きにして考えれば、光としてもそう思わざるを得ない。越前学園を率いてい
る御影が英明の気質であれば、京に上って乾坤一擲の勝負をするのもいい。朝倉には
それだけの元手もあるし、ことの成り行きによっては天下を取ることも可能だろう。
光(しかし御影様はそれほどの人物ではない)
である以上、越前学園は保身につとめるべきなのであった。京に進出したところで足
下はおぼつかず、泥沼の権力争いの果てに破滅するだけだろう。足利家としても、朝
倉家に大きすぎる力を持たれては困るので、ある段階が過ぎればむしろそれを望んで
いた。
光(惜しいわね)
もし光が越前学園の支配者であれば、いや、せめて重役の一人であったならば、天下
を画布に大きな絵を描いてみせる自信がある。しかし現実には、光は越前学園の重役
ではないし、足利学園においても、輝子の引き立てで枢密には与かっているが、役員
ですらない。
光(惜しい)
これほどの自分が、である。

御影「んじゃ〜、またはじめよっか〜」
20分ほどの休憩を挟んだ後、御影の脳天気な声で会議は再開された。生徒会室にい
る面子は先ほどと変わらないが、光によってはじめに追い出された鞍谷今日子は流石
にこの場には来ていない。
小々菜「そうですね明智様もお急ぎのようですし」
魚住小々菜がそれを受けて穏やかにそう言った。いったん休憩を挟んだせいか、口調
に先程までのような険悪な雰囲気はない。
光(どうせ、さっきの間に私を追い返す算段をつけてきたんでしょう)
それは予想の範囲である。そして、次に小々菜の後を接ぐようにして朝倉健香が言っ
う。
健香「さて明智様、先ほどからの御高説、誠に私達も耳の痛いことです。既に越前学
   園は足利学園から五代の恩を受けているのに、この御恩に報ずることもなく足
   利家の窮状を見過ごして参りました。誠に、心苦しいことです」
光「なるほど」
光は健香の言葉を聞いても表情を変えない。まず、健香の言葉も予想の範囲である。
667 ◆0xknNOBU :02/06/14 19:55
遅くなりましたがようやくPCと書く気が復活しました。
FEPがお馬鹿になっちゃってるのがとほほですが(;´Д`)
やはり書きかけが飛ぶと書く気力がなかなか・・・
いや実は前にも一度トンでてそのとき書きかけだったのは全面没にしたんですよ。
その話は元美がスターリン主義者で氏子が麿で、
最終的には断頭台とか考えてたんですが・・・
いやいや、トンで正解でしたね、PCナイスジョブ。

楽しんでいただけるとやる気もでますね。
そんなわけでこれからはまた一日一レス分ぐらい・・・たぶん(;´Д`)
後逸話など分からない部分は聞いていただければ、
基本設定は664氏の説明通りですが、
何せこんな話なのでアレなネタとかも結構入ってますし(w
( T∀T)y━~~  
>>667
元美氏子のエロが100%書けなくなる展開ですね
PCグッドジョブ
PCグッジョブ!(・∀・)

光タンはかなり信子ちゃん達と対照的なキャラクタな感じなので
遭遇楽しみですね。アレなネタにも期待。
牛乳飲んで爆死や、ニポポ人形とボスが個人的にツボでした。
オホーツクに消ゆ。
健香「しかしながら、先程も申しましたように私達の後背には加賀本願寺分校の勢力
   が存在します。本願寺の勢力は分校とはいえ越前学園とほぼ同じ」
光「なるほど」
光はもう一度同じ言葉を繰り返した。今までさんざんに論駁を繰り返して来た光が、
休憩を挟んで後は妙に静かなことに対して、健香も越前他の人間も不審な思いを抱い
たが、おとなしくしているのに文句をつける事もない。ちょっとやりにくかったが、
健香も先を続ける。
健香「いえ、我らの不明不敏をお責めになるのはごもっとも。それについては何の申
   し開きもできませんがしかし、今現実に上洛行動は起こせないというのも、此
   は厳然とした事実」
光「なるほどすると、結局上洛の意志無しと言うことですね?」
健香「とは、申しません。ただ、こちらの方で時期にないと……」
光(賢いことね)
聞きつつ光は、そう冷ややかな感想を持った。結局のところ足利家には力がなく、朝
倉家には力がある。越前学園が言うことを聞かないからと言って、足利学園にはそれ
を罰する力がないのである。もしそんな物があれば、端から朝倉などには頼らない。
である以上、朝倉すればとにかく行けないの一点張りで通せば事は足りるのである。
さっきまでのようにいたずらに光の理屈につきあうなどは愚の骨頂。理屈など、実力
の前には団扇の風のようなものだ。無視してしまえばそれですむ。
光(気付くのが遅いぐらいよ)
しかし光にとってはそれが幸いしている。いったんは光の理屈につきあってしまった
以上、実際に行動を起こすかどうかはともかく、足利家に対しては従順であるという
方針を朝倉は表明してしまったことになる。これに安心しきることはできないが、朝
倉家がもしも足利家に異心を抱いたとき、今日の言葉を記憶しているだろう世間は、
それを道義の面から責めるだろう。体面を重んじる朝倉家にとっては、それは十分な
足かせになるはずである。が、やはり早急の役には立たない。
健香「ですから、光様におかれましても、ここは一度京にお戻りになられるのがよろ
   しいかと」
健香は言葉をさらに続ける。しかし、光は目を伏せ、健香の言葉などは聞いていな
い。健香の言葉などははじめから予想していたことで、聞くに及ばない。もっとも正
確に言えば、言葉を聞いてはいたが頭の中では別のことを考えていたのである。
光(足利家にも私にも力がない、力があれば、健香のようなくだらない人物の言葉も
  威力を持ち、力がなければいかに千金の言葉も寝言)
そう思えば、心の中にやり場のない憤りが沸々とわいてくる。
光(結局は力よ)
健香「明智様、聞いておられますか?」
黙り込んでしまっている光に、健香がそう声を掛けた。考え込んでいた光もその声に
目を上げる。と、健香は光の目を見て息をのんだ。顔を上げた光の目が、ぞっとする
ほど暗く、底冷えするような光を湛えていたからである。
健香「……明智様?」
光「……失礼いたしました」
光もすぐ自分の表情に気付き、気味の悪い光は目から消えた。が、その目が健香をは
じめ、朝倉の役員に与えた印象までは消えない。少しまずかったかもしれないと光も
思ったが、すぐにその考えは頭から追い払う。朝倉など、何程のことがあるだろう。
光(力よ)
結局はそれに尽きるのだから。
672 ◆0xknNOBU :02/06/17 18:44
ほかにも田楽屋に放火して、
義子と秀美を一緒に焼き討ちなんてのも考えたことが・・・
あんまりなんで没にしましたが。

オホーツク、実はクリアしてないんですよ。
コマンド総当たりめんどくさい・・・
そろそろ容量制限が怖くなってきましたが、新スレどうしましょう?
NOBUさんにお任せしちゃった方がいいのか、それともキリ番踏んだ人が立てたほうがいいのか。
このペースだと、700くらいで容量オーバーしそうな予感・・・。
674無名武将@お腹せっぷく:02/06/18 00:16
キリ番まで持つかな。
もう立てちゃってもいいような気がする。
誰か、早く新スレを…
保守
677エノキ ◆TpbJGovQ :02/06/24 14:48
しかし、名前なんとかならなかったのか。全然萌えぬぞ。
健香「……とにかく、そういうことですので越前学園としては早急に上洛するのは不
   可能です」
光の顔を胡乱気な表情で見つめながら、健香はもう一度そう言った。
光「わかりました」
と、言うと同時に光はさっと椅子から立ち上がった。いきなりな行動だったので、先
程光の見せた表情と思い合わせ、越前学園の面々は光が何か非常な事をするのではな
いかと一瞬緊張する。しかし、光はもちろんこんなところで暴れたりしない。さっと
立ち上がった後は、やはり同じようにさっさと歩いて生徒会室を出ようとする。
鏡「京へお帰りになられるのですか?」
余りあっさりと立ち去ろうとする光に、鏡が思わずそう声を掛けてしまった。もちろ
ん光は自分がこのように行動すれば、朝倉誰かは必ず鏡のようなことを聞いてくると
計算しての行動であった。鏡の言葉はよけいなことだったと言うべきで、わざわざ光
の術中にはまりに言ったようなものである。黙って見過ごされてしまえば光もちょっ
と困っただろう。光は、これあるを期待していたから当然立ち止まって言う。
光「いえ、折角の心遣いありがたいことですが、まだ任務がありますから京へ戻る訳
  には参りません」
鏡「はぁ……どちらへ行かれるのですか?」
鏡の言葉に、光はちょっと考え込むような素振りを見せる。
鏡「どうなされましたか?」
怪訝に思った鏡は重ねてそう聞く、この辺りは光の田舎芝居なのだが、鏡だけでなく
越前学園の誰もがそれに気づいた様子はない。
光「いえ、足利学園の外交方針に関わることなのでお話しすべきか一瞬迷ったので
  す。しかしよく考えれば越前学園にも関わりのあること、よしお話ししておくべ
  きでしょう」
鏡「はあ、私達にも関わりが?」
鏡は何を勿体つけるのかとちょっと不快な顔をして言う。
光「実は越前での外交が不首尾に終わった場合、そのまま加賀を抜けて越後まで行け
  輝子様に言われております」
鏡「越前……上杉影華の所へ?」
光「ええ」
鏡「すると、影華にも上洛を要請するつもりなのですね?」
光「まあ、そうです」
越後は、越後防衛学校の勢力圏であり、生徒会長を務める上杉影華は越後防大の院生
にして学生府大佐、学府機動隊関東第三師団隊長を兼ねている。ただし学生府自衛部
隊は既に組織としては有名無実の存在で、その役職に付属する兵権はない。上杉影華
の場合は、越後防衛学校の私設兵力に対していわば逆説的に授与されたものである。
しかし、それだけに上杉影華の勢力は本物であったし、影華自身作戦行動の天才と呼
び声が高くその威勢は朝倉家など比にならないほど全国に響いている。
その影華が京へ上るとすれば越前は通り道であり、朝倉家は強力な越後防校と激突す
るか、あるいは身を低くしてともに京へ随身するしかない。どちらにしても越前学園
にとってはおもしろからぬ事だろうが、以外にも鏡は驚かない。
鏡(できるわけないわ)
と思い、むしろ冷ややかな目で光を見返した。鏡の思っているとおり常識的な観測で
は不可能に近い。上杉影華の南方、信濃にはその作戦能力において影華と並び賞され
る武田千晴がいるし、南東の関東には創生から三代を数え関東一円を支配する北条恋
の勢力が盤踞している。加えて影華は加賀本願寺とも仲が悪い。上洛の余裕などとて
もあるはずがない。