一番奇抜なガンダムってどるだ?2 復刻版

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1通常の名無しさんの3倍
どれだろうな・・・・・・
2通常の名無しさんの3倍:2009/03/15(日) 14:53:01 ID:Iz+SyBIa
ここは前スレ>>1がスレタイを誤字のままで立ててしまったことによって
「どるだって何のガンダム?」という話題なり、「00に出る新ガンダム」や「2010年放送の新作ガンダム」など
スレ住人達の遊び心によって「新しいガンダムであるドルダを作るスレ」となりました



現在キャラクターやMSなどの設定の投下や複数のSSが連載中!
もちろん歴代シリーズの中で奇抜なガンダムを語ったり、新たな「ドルダ」を創造しても構いません



まとめwiki
http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda/



前スレ
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1213176857/
3通常の名無しさんの3倍:2009/03/15(日) 14:57:23 ID:Iz+SyBIa
スレが堕ちてたので復刻。
一応自分は前スレの354まで保存しています。
これ以下のレスは保存出来ていません。
過去ログ見れる方がいるならばお願いしたいと思います。
4通常の名無しさんの3倍:2009/03/15(日) 16:43:13 ID:???
職人も逃げてdat落ちしたスレを立て直すなんて
あんた空気読めてないぜ
糞スレは死なず、ただ消え去るのみだぜ
5通常の名無しさんの3倍:2009/03/15(日) 21:48:10 ID:???
もうだめぽ……展開が00と被りすぎだお……
6通常の名無しさんの3倍:2009/03/17(火) 01:08:26 ID:???
保守
7通常の名無しさんの3倍:2009/03/21(土) 22:57:07 ID:ejiG1ads
保守
8通常の名無しさんの3倍:2009/03/21(土) 23:02:21 ID:???
ビッグバンガンダムの前では敵ではない。
9通常の名無しさんの3倍:2009/03/23(月) 00:14:38 ID:???
あれ?あっち落ちたのか?
10通常の名無しさんの3倍:2009/03/23(月) 01:27:47 ID:???
普通に楽しく読んでた俺涙目w
アナザーと新説はもうやらないのだろうか・・・
11通常の名無しさんの3倍:2009/03/23(月) 04:00:06 ID:xXRwD7zp
まだだ、まだおわらん!!
12通常の名無しさんの3倍:2009/03/23(月) 21:47:13 ID:xXRwD7zp
たかがスレ一つ、ガンダムで押し出してやる
13通常の名無しさんの3倍:2009/03/25(水) 16:48:52 ID:???
保守るぜ
14通常の名無しさんの3倍:2009/03/26(木) 12:38:50 ID:uhRKegzA
保守るよ
15通常の名無しさんの3倍:2009/03/28(土) 21:42:43 ID:???
16通常の名無しさんの3倍:2009/03/29(日) 23:12:50 ID:xSrBwGQq
17通常の名無しさんの3倍:2009/03/29(日) 23:13:28 ID:YPurzFQy
保守
18通常の名無しさんの3倍:2009/03/31(火) 13:43:53 ID:d+HKQfYW
19通常の名無しさんの3倍:2009/03/31(火) 13:49:46 ID:???
キバッツガンダム
20通常の名無しさんの3倍:2009/03/31(火) 15:57:53 ID:???
シードのケロロ軍曹とリボーンガンダム
21通常の名無しさんの3倍:2009/04/01(水) 16:02:05 ID:???
スレが駄目になるかならないかなんだ。保守してみる価値ありますぜ
22通常の名無しさんの3倍:2009/04/01(水) 17:28:16 ID:???
ですよねー
職人さんカムバック!
23通常の名無しさんの3倍:2009/04/05(日) 00:18:50 ID:6kRsqqzA
再びドルダの理想を掲げる為に!!
24通常の名無しさんの3倍:2009/04/06(月) 17:25:42 ID:0Q67PGLD
保守するよ!
25通常の名無しさんの3倍:2009/04/08(水) 00:45:07 ID:cf88XLRA
26通常の名無しさんの3倍:2009/04/09(木) 15:35:17 ID:WtLiasGg
27通常の名無しさんの3倍:2009/04/09(木) 15:38:21 ID:???
スレの初期にドルダとかのデザイン描いてた俺が通りますよ
28通常の名無しさんの3倍:2009/04/10(金) 00:26:48 ID:???
>>27
なんか投下してよ
29通常の名無しさんの3倍:2009/04/11(土) 01:28:23 ID:WwfaoI5q
>>27
いつでも良いのでちょくちょく来てくださいね。
スレ初期の住人はもうほとんどいませんから。
というか住人自体結構少ないので。
30通常の名無しさんの3倍:2009/04/12(日) 22:53:16 ID:???
書き込みテスト兼保守
31通常の名無しさんの3倍:2009/04/14(火) 07:32:07 ID:RCiRkZ+5
保守

32通常の名無しさんの3倍:2009/04/16(木) 16:39:00 ID:Lezqh2yC
保守
33通常の名無しさんの3倍:2009/04/19(日) 02:06:37 ID:0LqZ6Djy
34通常の名無しさんの3倍:2009/04/19(日) 06:46:18 ID:uo78czld
35通常の名無しさんの3倍:2009/04/19(日) 07:01:41 ID:???
機動戦士ガンダムδ(ドルダ)
36通常の名無しさんの3倍:2009/04/20(月) 00:29:24 ID:FNuHc6f3
>>34
そこで<ズ>かwww
>>35
かっこいいな!!でもそれってデル(ry
37通常の名無しさんの3倍:2009/04/22(水) 01:14:52 ID:im8TZrUL
奇抜なガンダムって言えばやっぱGガン系か?
デビルはツッコミどころには困らないぞ。
38通常の名無しさんの3倍:2009/04/22(水) 09:45:09 ID:???
登場時はもうかなり免疫ついてたがスフィンクスガンダムかな
39通常の名無しさんの3倍:2009/04/24(金) 07:02:15 ID:etUqqttB
>>38 画像見たけどなんかひどいなw
マーメイドガンダムってなんなんだよ・・・。
40通常の名無しさんの3倍:2009/04/26(日) 21:40:56 ID:GYMYV9xV
ノーベルガンダムなんて見た瞬間唖然とするか笑うかの二択しかないよな。
41通常の名無しさんの3倍:2009/04/26(日) 21:49:22 ID:???
風車みたいのもいたよな
42通常の名無しさんの3倍:2009/04/26(日) 23:57:40 ID:???
G系は上げればきりがないだろ
主役機ですら胸の装甲外して胸板を露出するんだぜ
なのでWゼロカスタムに一票
43通常の名無しさんの3倍:2009/04/27(月) 02:22:58 ID:???
Xの変態兄弟のガンダムもかなり
44通常の名無しさんの3倍:2009/04/27(月) 04:38:15 ID:???
>>2
ゴルダってなんか本家とか新約とかアナザーとか別れててよく分からないんだが、その辺も説明してくれないでせうか?読めん
45通常の名無しさんの3倍:2009/04/27(月) 11:19:25 ID:???
WなんてGの直後だから
もういいじゃんって感じで好き放題やってるよな

登場時のインパクトって意味ではやっぱデンドロかな
46通常の名無しさんの3倍:2009/04/28(火) 06:08:35 ID:FkLjIN8H
>>44
本家は初代スレに初めに投稿されたもの。
アナザーは本家と違う世界観で描かれたもの。
新約は本家とアナザー両方のキャラを登場させたもの。
ストーリーもなるべく合わせている。途中からはオリジナル。
学園ドルダは新約と同じ世界の地球での生活。
dollda外伝は新約と同じ世界での傭兵のお話。
短編外伝は一発もの。といっても数も量もあまりない。

こんなんでいいか?
ちなみに本家とアナザーは前スレ後半で再び復活していたぞ。
待っていればここもきっと・・・!!
47通常の名無しさんの3倍:2009/04/28(火) 11:28:21 ID:???
>>46

成るほど、説明分かりやすくて助かった。本家か外伝から読んでみる
48通常の名無しさんの3倍:2009/04/30(木) 16:04:01 ID:jgw+z40n
保守
49通常の名無しさんの3倍:2009/05/02(土) 04:11:04 ID:OQh6jnV5
保守しとく
50通常の名無しさんの3倍:2009/05/02(土) 11:51:40 ID:OQh6jnV5
Zザグはガンダムに入るか?
51通常の名無しさんの3倍:2009/05/02(土) 13:00:35 ID:???
ザクならな
52通常の名無しさんの3倍:2009/05/03(日) 14:05:57 ID:zkTBKI+F
デンドロビウムはインパクトがあったな
まぁ奇抜だけならデビルガンダム
53通常の名無しさんの3倍:2009/05/05(火) 12:53:36 ID:Wl/1WSo5
保守
54通常の名無しさんの3倍:2009/05/07(木) 15:50:29 ID:4TIlRJHE
もういっちょ!
保守
55ぼくらはトイ名無しキッズ:2009/05/07(木) 16:26:51 ID:???
56通常の名無しさんの3倍:2009/05/07(木) 22:09:10 ID:???
セラヴィーだろ
無駄に多い隠し腕、バックパックのでかい顔、そのバックパックがガンダムになってしかも本体という
極めつけはパイロットがこんな冗談通用しなそうな堅物くん
57通常の名無しさんの3倍:2009/05/08(金) 15:04:40 ID:???
一番奇抜なのは麻宮騎亜がデザインしたガンダムだ
58通常の名無しさんの3倍:2009/05/11(月) 18:25:09 ID:C9JEnflu
hosiyu
59通常の名無しさんの3倍:2009/05/11(月) 18:47:56 ID:???
百式と暁とゴッドハイパーモードとアルヴァアロンを座禅させて仏壇に飾りたい
60通常の名無しさんの3倍:2009/05/12(火) 20:26:25 ID:OH+JE/xm
素晴らしい!まるで金ピカの精神が形になったようだ!!
61通常の名無しさんの3倍:2009/05/12(火) 21:38:24 ID:???
G-UNITも結構奇抜だと思う、ハイドラ、アスクレプオス、グリープ辺りが
62通常の名無しさんの3倍:2009/05/12(火) 23:13:01 ID:???
アナザードルダの作者って誰?あれ第一話読んだだけでめちゃくちゃ気に入ったんだけど、完結してないの?
63通常の名無しさんの3倍:2009/05/13(水) 19:01:39 ID:ZH7vOI7G
>>62
残念だが完結していない。
アナザードルダの作者はコテを付けて無かったので誰とは言えない。
あとWIKIには編集権限の都合上途中から投稿されたいくつかの話が載っていない。
ただし前スレが落ちる前に保管した物がこちらにあるので、それをWIKIに載せる事は出来るかな。
とりあえずやって見るわ。
ただし前スレをそのまま出すので過去ログ扱いになるよ。
64通常の名無しさんの3倍:2009/05/13(水) 21:46:13 ID:ZH7vOI7G
過去ログに前スレ入れといたよ。
容量の関係で番号がおかしくなってるところもあるけど勘弁。
WIKIに保存されて無い作品は176−200から。
アナザーは今の所7話まで出てる。内未保管4。
レス218からアナザー。
65通常の名無しさんの3倍:2009/05/14(木) 08:02:29 ID:???
>>63-64

サンクス。今から過去ログ見てみるわ
先に登場キャラ名(オメコスキーとかネルネルネールネとか)とか見てたからアナザーはおふざけ作品かと思ったんだけど、
読んでみたら純粋に上手いと思ったww
66通常の名無しさんの3倍:2009/05/16(土) 05:34:34 ID:GOK+zHVX
保守


67通常の名無しさんの3倍:2009/05/16(土) 17:24:24 ID:???
ネカフェから復活しました
68通常の名無しさんの3倍:2009/05/16(土) 17:46:42 ID:???
>>67
誰?
69通常の名無しさんの3倍:2009/05/17(日) 01:03:19 ID:7/x/ri6H
>>67
コテが無い所を見るとアナザードルダの作者様ですか?

報告

いつの間にか管理者権限を所持していたので更新出来なかった所を一気に更新。
アナザーの設定などはまた後日。では
70通常の名無しさんの3倍:2009/05/17(日) 01:25:20 ID:???
アナザードルダ・勝手に略してアナドルは「奇抜なガンダム」の名に忠実で面白いww
ただ奇抜なだけじゃなくて、物語として面白いところもまた奇抜で良いww
71通常の名無しさんの3倍:2009/05/17(日) 01:36:32 ID:???
グーグレカスタム
形式番号 GGR-990K
全高 19m
武装 マシンガン
ビームサーベル

索敵や通信機能に優れたグーグレのカスタム機。戦闘性能や機動性が強化されている
72通常の名無しさんの3倍:2009/05/17(日) 02:35:37 ID:W+2Ka9uT
>>59
ハリーが泣くぞ
73通常の名無しさんの3倍:2009/05/17(日) 08:33:29 ID:???
おおw復活してくれてたのかw
74通常の名無しさんの3倍:2009/05/17(日) 09:44:15 ID:???
昔はサイコはおおおって感じだったんだが
最近はそんじょそこらじゃ驚かなくなったからなぁ
75通常の名無しさんの3倍:2009/05/17(日) 14:06:38 ID:c5JnNhrg
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児童ポルノマニア「岡田賢治」。官僚のパパのコネもあって年収1500万!(もちろん国民の税金)

まとめwiki(IPAの圧力により何度も消された)
http://tukouta.altervista.org/php5/

四代目まとめサイト http://ipa-mapyome.pbwiki.com/  <←(1/21)一瞬消えるも復活!
今北用まとめサイト http://wiki.livedoor.jp/outfloflo/
過去ログ倉庫サイト http://ipa-giwaku.com/
つこうた用ろだ    http://higesan.net/up/upload.php

◆酷すぎるIPAの対応まとめ
http://ipa-mapyome.pbwiki.com/%E9%85%B7%E3%81%99%E3%81%8E%E3%82%8BIPA%E3%81%AE%E5%AF%BE%E5%BF%9C%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%82%81
(魚)http://s03.megalodon.jp/2009-0121-2226-39/ipa-mapyome.pbwiki.com/%E9%85%B7%E3%81%99%E3%81%8E%E3%82%8BIPA%E3%81%AE%E5%AF%BE%E5%BF%9C%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%82%81


※本スレは流れが速いので、ニュース速報板にいって「IPA」「つこうた」で検索

↑税金泥棒の糞公務員を絶対許すな。拡散頼む
76通常の名無しさんの3倍:2009/05/18(月) 23:21:16 ID:P569XE68
保守
77通常の名無しさんの3倍:2009/05/20(水) 15:08:44 ID:Fprxdwo9
ガンダムホシュ
78通常の名無しさんの3倍:2009/05/21(木) 20:13:20 ID:???
デビルドルダが最強
79通常の名無しさんの3倍:2009/05/22(金) 03:21:27 ID:???
ドルダ ドルダ ドルダのメガ粒子♪(ゴジラのテーマで)
80通常の名無しさんの3倍:2009/05/24(日) 18:46:55 ID:???
ドルダの錬金術師
81通常の名無しさんの3倍:2009/05/25(月) 13:12:06 ID:???
ウイングゼロカスタム見た時はカトキが発狂したのかと思った
82通常の名無しさんの3倍:2009/05/25(月) 18:11:24 ID:???
アシュラガンダムだな
83通常の名無しさんの3倍:2009/05/27(水) 07:34:29 ID:KjU0mk66
ホシュ
84通常の名無しさんの3倍:2009/05/28(木) 20:57:42 ID:525k84qb
保守
85通常の名無しさんの3倍:2009/05/31(日) 00:02:29 ID:yI66XKTk
話題が無いな。
86通常の名無しさんの3倍:2009/06/01(月) 05:06:04 ID:???
ドルダは旧シャアに立てるべきだったな
87通常の名無しさんの3倍:2009/06/02(火) 04:55:11 ID:???
確かに
88通常の名無しさんの3倍:2009/06/04(木) 18:22:22 ID:FehyDSN7
初代がこっちに立っちゃったからね。
89通常の名無しさんの3倍:2009/06/05(金) 22:53:45 ID:???
まーな
90通常の名無しさんの3倍:2009/06/07(日) 05:05:07 ID:WGofpTyI
でも保守
91通常の名無しさんの3倍:2009/06/07(日) 16:20:47 ID:???
わかるが、いちいちageんなよ
92通常の名無しさんの3倍:2009/06/08(月) 21:04:03 ID:MhGoE/uE
すまん。前スレがageられず落ちたから、今回は、と思ってな。
93通常の名無しさんの3倍:2009/06/13(土) 04:06:03 ID:???
ホシュ
94通常の名無しさんの3倍:2009/06/14(日) 22:59:59 ID:???
落ちるな蚊トンボ
95通常の名無しさんの3倍:2009/06/18(木) 18:18:30 ID:???
保守
96通常の名無しさんの3倍:2009/06/22(月) 00:56:24 ID:???
っ保守
97通常の名無しさんの3倍:2009/06/24(水) 20:18:25 ID:???
保守
98通常の名無しさんの3倍:2009/06/25(木) 22:03:17 ID:???
保守
99通常の名無しさんの3倍:2009/06/26(金) 16:10:21 ID:Qs09dRba
よし、いったん作り直すか
100通常の名無しさんの3倍:2009/06/27(土) 01:12:49 ID:???
まぁ、それが妥当かな。
不死鳥とて蘇える為にはまず自らの体を焼かねばならんみたいな。
二回目のドルダの再生、やってみるか。
101通常の名無しさんの3倍:2009/06/28(日) 19:51:17 ID:???
きたい
102通常の名無しさんの3倍:2009/06/28(日) 19:54:46 ID:???
またー?
もういいよ、俺は疲れた…
103通常の名無しさんの3倍:2009/06/28(日) 20:51:46 ID:???
アナザードルダ面白いな、俺の理想が寄せ集まったようなガンダムだ。(俺はOOオタじゃないがアナドルの作者さんは好きだ)
104通常の名無しさんの3倍:2009/06/28(日) 21:38:46 ID:???
>>103
定着してない略し方したり、作品に対する過剰な賛美は変に勘ぐられたりするから気を付けたほうがいい
105通常の名無しさんの3倍:2009/06/29(月) 00:37:05 ID:???
なんか最近人増えたな
何でだ?
106通常の名無しさんの3倍:2009/07/02(木) 04:59:35 ID:???
ROMの人も参加し始めたのかな?
107通常の名無しさんの3倍:2009/07/05(日) 00:44:18 ID:???
てか落ちそうだな。
108通常の名無しさんの3倍:2009/07/05(日) 14:45:18 ID:???
もう落ちていいよ…
俺は疲れた。
109通常の名無しさんの3倍:2009/07/06(月) 03:24:02 ID:???
ホシュ
110通常の名無しさんの3倍:2009/07/11(土) 04:24:23 ID:???
111通常の名無しさんの3倍:2009/07/11(土) 07:35:04 ID:???
ドラクエ終わったら本気出す。
112通常の名無しさんの3倍:2009/07/15(水) 17:58:16 ID:r+whdFon
それまで生き残らす
あげ
113通常の名無しさんの3倍:2009/07/19(日) 00:09:31 ID:???
保守
114通常の名無しさんの3倍:2009/07/19(日) 05:45:52 ID:L7lyTcAu
ピエロの格好のガンダム。武闘伝に登場。
115通常の名無しさんの3倍:2009/07/20(月) 21:37:01 ID:???
もはや何でもアリだなガンダム。
116通常の名無しさんの3倍:2009/07/22(水) 23:27:35 ID:???
ジェスターガンダムか。ものまねが得意だ
117通常の名無しさんの3倍:2009/07/26(日) 13:53:49 ID:???
モノマネが得意……何の意味があるんだそれ……?
118通常の名無しさんの3倍:2009/07/28(火) 00:48:35 ID:???
一ヶ月ぶりにWIKIにいってみたらバルド氏からコメントがあった。
ホスト規制か……解除されるまで、ドルダは死なせん。
119バルド ◆J9EuaWdX1coE :2009/07/28(火) 17:49:03 ID:???
ふぅ…バルドです
みなさん、ご心配をおかけしました
ようやく規制解除されたので、こちらの方に書き込むことが出来ました
これからも、よろしくお願いします


120コナイ◇8GDQEpBT:2009/07/31(金) 13:18:27 ID:???
規制解除おめでとうございますバルト氏!!
これからもよろしくお願いします!

しばらく名無しで保守してました。
再びこのコテを使う日が来るとは……
121コナイ◇8GDQEpBT:2009/08/03(月) 00:51:17 ID:VQAgly40
保守
122バルド ◆J9EuaWdX1coE :2009/08/03(月) 18:57:37 ID:???
どうしましょう?
何やら最近ドルダがマンネリ気味(私も含めて)のようですし…

ドルダを持ち直すには>>99氏の言う通り、一度作り直すというのはいかがでしょうか?
もちろん、今までのドルダを抹消するつもりもなくドルダの存続のためにジャンルを拡大するという事で一つ

こう書くと、私が単に仕事を投げただけな気もしますがw
123通常の名無しさんの3倍:2009/08/03(月) 22:58:56 ID:???
アナザーの者です。
アナザーのプロットが00と被ってしまったので、現在は別なドルダを書き進めています。
書きかけのアナザーはほとぼりがさめた頃に投下しようと考えています。
124コナイ◇8GDQEpBT:2009/08/04(火) 08:12:39 ID:hyOTXBDg
>>122
自分もそれで良いと思います。
マンネリと言うより、ストーリーやらガンダムの武装やらが思いっきり00と被ったところがありましたから。
あと、外伝作品は本編が進まないと書けないという、絶対的な欠点がありますから……。

>>123
アナザーの人ですか!?
よかった、まだこんなに人がいて。
別なドルダ……楽しみにしてます!


さて、作り直すとすれば、どこから作り直そうか?
125通常の名無しさんの3倍:2009/08/04(火) 08:42:14 ID:???
>>123
もしガンダム以外にも何か書いていたら教えてください
アナザー気に入ってます

あと、OOオタの方ですか?
126バルド ◆J9EuaWdX1coE :2009/08/04(火) 20:04:19 ID:???
とりあえず、世界観が固まってなかった感があったのと
書き手によって同一人物などの設定が食い違ってた所もあったので

やはり世界観や人物、機体などから再構築するべきではないでしょうか?

自分としては、思い入れと同時に色々と未熟だった点も多かったので
設定を再構築のち学園ドルダのリメイクと新しいドルダを検討しております
127通常の名無しさんの3倍:2009/08/05(水) 23:41:13 ID:???
保守
128コナイ◇8GDQEpBT:2009/08/07(金) 02:48:47 ID:hzeGk8F6
世界観は歴史がハッキリしてなかったからな。
火星のテラファーミングあたりでずいぶんと混乱した覚えがある。
進宇宙暦と宇宙暦とか。
年表作りましょうか?
129通常の名無しさんの3倍:2009/08/07(金) 18:08:47 ID:???
00と被ってた所って具体的にはどこよ?
130通常の名無しさんの3倍:2009/08/11(火) 14:07:42 ID:TEtz3W/X
多分物語の鍵握ってるのが非人間?(または作られた人間)というところとか、
シールドファンネルとかだろ。あんまり被ってないように感じるけどな。

後はアナザードルダの作者さんのプロット。どこまでかは分からないが。
131通常の名無しさんの3倍:2009/08/15(土) 11:56:02 ID:R+72AAYG
保守
132通常の名無しさんの3倍:2009/08/15(土) 13:52:23 ID:???
懐かしいな。

たかがスレひとつドルダで保守しきってやる!
133通常の名無しさんの3倍:2009/08/16(日) 01:40:43 ID:???
てかまだ人いるの?
134コナイ◇8GDQEpBT:2009/08/17(月) 01:44:13 ID:???
いますよ〜。新シャア板がなくなるまではいるつもりです。
135通常の名無しさんの3倍:2009/08/19(水) 20:44:21 ID:???
保守
136通常の名無しさんの3倍:2009/08/21(金) 17:31:59 ID:???
保守
137通常の名無しさんの3倍:2009/08/24(月) 18:41:20 ID:Elk3yuWC
とりあえず、地球VS火星の構図はそのままでいいか?
138通常の名無しさんの3倍:2009/08/27(木) 18:12:57 ID:IP8KH5lo
あげ保守
139通常の名無しさんの3倍:2009/08/29(土) 15:12:48 ID:???
ガンダムヘッド
140通常の名無しさんの3倍:2009/09/01(火) 18:43:15 ID:wMJDP5NG
補修
141通常の名無しさんの3倍:2009/09/03(木) 20:32:24 ID:???
保守
142通常の名無しさんの3倍:2009/09/07(月) 18:12:27 ID:VF/2kuMo
まだだ、まだ落ちんよ!
143通常の名無しさんの3倍:2009/09/07(月) 18:50:30 ID:???
新しいガンダムドルダとか、考えていいの?
これ以上は混乱する?
144通常の名無しさんの3倍:2009/09/07(月) 21:20:28 ID:???
個人的には別にいいと思う。
145通常の名無しさんの3倍:2009/09/07(月) 22:13:26 ID:???
盛り上げてくれ
146通常の名無しさんの3倍:2009/09/08(火) 17:49:57 ID:wDEll1Xj
大丈夫
147通常の名無しさんの3倍:2009/09/09(水) 19:32:36 ID:???
とりあえず、試しに作り直してみた

『えー…中継します。L3コロニーのアランさーん!』
ザー…ザー…。
Mpeg動画(旧世紀型簡易フォーマット)のノイズがテレビ画面にざわつく。
『アランさーん!アラ……アランさーん!』
『………………』
『アランさん!聞こえていたら応答願います!アランさん!コロニー局のアランさん!聞こえていたら応答願います!』
『………………はい、アランです!』
ピクセル型ノイズが消えゆく中で一人の男性が現れる。
が、まだノイズが多いためか音声が聞き取りにくい。
『こちら地球局のフジキです!!今!どのような状況でしょうか!?』
故に地球局側も大声をあげる。コロニー局応答までのディレイが約2分。
『あ…はい!今ですねぇ…………ご覧ください!』
カメラがアランから離れ、コロニー内部の方向へ左PAN(カメラを回す)する。
電波状況が悪いのかお粗末にも1秒12コマの映像が地球局ならびに視聴者のテレビ画面へと送信された。
そこには無残にも横たわる数多もの高層ビル。そして、逃げ回る人々が映っているのがなんとなく分かる。
『このように!このようにですね!たった今、このようにですね!無差別テロが行われているんです!』
ブゥォォォオオオン!
とてつもない爆音と高音を録音マイクが感知した瞬間、アランの顔が営業スマイルから戦慄へと変わった。
『…で…出たぁ!!出ました!!いや、マジで!!え、ちょっ!ちょっと待って!カメラさん、カメラさん!!』
『……アランさん!どうしましたか!アランさん!アランさーん!』
『…………』
ザー…ザー…。
再び映像はMpegノイズで満たされ、やがてはブラックへ染まる。
『えー…どうなってしまったんでしょうね、アランさん』
フジキは地球局の同スタジオで共演しているもう一人のキャスターへと声をかける。
『…心配ですねぇ…。どうかテレビの前の皆様、落ち着いてください。我々は引き続き調査を続けます』
『えー…では、とりあえず、一旦CM!』
フジキが何とかお茶を濁した。俺は一息尽き、テレビの電源を切る。
148通常の名無しさんの3倍:2009/09/09(水) 19:33:17 ID:???
そして愛用のPCの電源を入れた。早速、ネットを立ち上げて情報を確認する。
『【黒幕は】アラン追悼記念3【フジキ】』『スペースシャトル上下線遅延』『死者5000人超す』
大小様々なトピックで情報が行き交う中、俺が目にしたトピックはこれだ。
『【食料自給制限】火星軍総合part43【差別】』
なぜ火星軍?それは多くの人々が掲げる疑問だろう。それもそのはず。
地球圏連合(地球と月軌道周辺)は国家ぐるみの情報操作によりテレビや、一般的なサイトを
見るものには正体不明の謎の組織、あるいは地球に反旗を翻した悪の火星軍にしか見えないのだから。
ここのトピックは一言で言うとアンダーグラウンドな世界。とあるハッカーが開発した裏プロトコルを使用して
通常では知りえない情報を多くの危険と引き換えにいくらでも入手することができる。何が危険なのかというと、
軍や政府の上層部、左翼、右翼、宗教団体さえも紛れ込み、悪質なプログラムも非常に多い。まるで20世紀末の
ネット黎明期の再来ともいうべき、マニアックかつディープな情報がこの宇宙の如く溢れている。
さて、ではなぜ火星軍は情報操作されるのか。答えは簡単。コロニーがある理由は何か。
それは地球人口があまりに増えすぎて宇宙に移民させたからだ。ならば火星に移民した理由とは何か。
元々、火星は貧民の集まり。市民番号が無いため、地球、月、コロニーで市民権を持ち得ない。
お金も無ければ、食料も住む場所も職もない。生活が出来ない。居場所を失った彼らは集結し、
持てる技術を結集させる。火星という新天地を一世一代の想いで必死に目指した。
時は流れ、コロニーや地球からも移民者が増え、ひとつの集落から国家レベルへと成長する。
それでも、未だ火星には食料となる素材を生産する技術・環境が無いため、貿易で賄っていた。
地球から独立する火星へ地球圏連合側にそれは嘗てない焦燥を与えた。結果、地球圏連合が取った行動は
火星側への経済制裁。すなわち、食糧自給制限。今度は火星側が焦燥する。旧世紀ではありえなかった未曾有の対立構造が生まれた。
それからの火星。初めは、デモ行進や演説といったかわいい類のものだった。しかし、日に日にエスカレートしていき、近年は
各地コロニーへのテロ活動を繰りかえし、食料を奪う。技術力、経済力で劣る彼らに戦争行為を可能にしたのは努力。
それによって地球軍の兵器を圧倒する超兵器の開発に成功した。
彼らの努力が地球の技術力、経済力を上回り、気がついたら戦力さえも上回っていた。超兵器MS"モビルスーツ"、人の姿を模した殺戮兵器。
そのMSが宇宙戦争に始まりの火を灯したのだ。

G.A.(Galaxy Age)0139年。戦争開始と同時期に始まったアニメが50話を迎えた。
149通常の名無しさんの3倍:2009/09/09(水) 19:41:14 ID:???
プロローグだけどこんな感じ
まだ途中なんだ

俺っていうのは誰でもない
主人公でもいいし、モブでも構わない

世界観もおかしいところがあれば適当に改変してくれ
キャラ・メカ設定はお前らに任せる
150通常の名無しさんの3倍:2009/09/10(木) 17:57:44 ID:???
お前さん何便乗して
まあ、いいか
151通常の名無しさんの3倍:2009/09/14(月) 21:00:12 ID:icA0g0T0
邪気眼ドルダ執筆中保守
152通常の名無しさんの3倍:2009/09/14(月) 21:50:30 ID:wptjC61R
期待age
153通常の名無しさんの3倍:2009/09/15(火) 06:30:43 ID:???
「えぇい、落ちろ!」
「落ちねぇよ!」
装甲は既に剥がされて、半壊した二機のガンダムがぶつかり合う。
「地球人は愚かだ!無能なのだ!奴らはコロニー住民をゴミにしか見てないのだ!」
「だからって…殴られたからって殴り返すのかよ!?」
「貴様…矛盾してるぞ?それは今、君がしている事だ!」
「あぁ、そうだよ!お前が地球に殴られて、殴り返したから、今度は俺が殴り返すのさ!」
「ならばこの私が無限ループに終止符を打ってやろう!地球に小惑星と核の冬をこのブリザードガンダムが大至急お届けするのだ!」
「そんなもん…貴様の凍りついた心ごと俺のファイヤーガンダムで焼き尽くしてやる!」
死闘。自らの手を捥がれたら相手の足を壊す。二人の死闘はもはや子供の喧嘩レベルにまでなっていた。
「「ぁぁぁぁああああぁぁぁぁああぁぁぁ!!!」」
辺りに光が広がっていく。黒い宇宙が白い海に包まれていく。
「これは…!」
目の前には赤子がいる。その赤子の後ろには、身長順に子供が並び、後ろの方になると大人で溢れている。
しかも、これはただの身長順ではない。もちろん全裸。
「同一…人物…これは俺なのか…」
「あれは…!」
自分の隣の列には、両親、友人、恋人。さらにその奥には友人、恋人の血縁。
「そうか…繋がっているのか…人の命は…」
「あぁ、そうだよ!過去も未来も現在もここにある!たとえそれが一秒前でもな!」
いっそう強い光が辺りを覆い隠すと、今度は無数の男と女がひたすら性交を繰り返している。
「見ろ、お前もああやって生まれたんだよ……だから今のお前がいるんだ!お前の両親だって…」
「父さん…母さん……俺も大人になった。見てくれよ、こんなにおちんちんが大きくなったよ、陰毛だって生えそろった」
すると、ブリザードガンダムのパイロットの両親の声が聞こえてくる。
(…大人になったな…今度はお前が子供を作る番だ。だから早くいい穴を探せ…!とてもいい穴を……!)
白が再び黒に塗りつぶされていく。

「はぁ…はぁ……」
「……………」
「これが………新人類"ドルダ"……」
「お前も俺も最初から間違ってたんだ…ドルダとは、未来の子供たちの事だったんだよ……」




154通常の名無しさんの3倍:2009/09/16(水) 16:26:54 ID:???
いいか、くそやろう共。

一発は一発というが、1-1でゼロになるよな?
だから、無限ループにはならないよな?
そこでまた一発殴り返したらまた1から始まるから、1-1+1になっちゃう。
つまりなにがいいたいかというと、最初に殴り始めた奴は殴り返されるのを我慢しろ。
口火をきったのはテメーだろカスめ













こんな意味不明なことを言っていた時代が俺にもありました
155通常の名無しさんの3倍:2009/09/16(水) 17:14:14 ID:SUW3B+2C
おぉ、久しぶりに来てみたらなんか新作出てる!
156通常の名無しさんの3倍:2009/09/20(日) 00:48:54 ID:0+5EcRqH
>>153
なんかいいな。
てかかっこいいなおい。


「いいかい、臆病は悪い事じゃない。もし世界の誰もが臆病者なら、世界は平和になるだろう」
「じゃが、世の中に臆病者は少ない。誰もが手にした狂気を勇気と間違えておる」
「そうだ。だから我々はやらねばならない。本当の平和とは、臆病者だけが手に入れられるものなのだからな」
「人類を臆病にする。武器を手にする事を恐れ、臆病さが美徳とされる世界」
「じゃが間違えるのではないぞ。臆病すぎては逆に不信を抱く」
「うむ、そして不信は簡単に人を狂気に染めてしまうもの」
「わかっているさ。人の心はバランスが取れない。だからまず逃げ場をなくす」
「逃げ場、彼らを狂わす狂気を全て取り除くのですな」
「だがその為には我々も狂気を手にしなければならない」
「狂気、確かにそうでしょう。あれは狂気の塊のようなものです。ですから、できる」
「老い先短いワシにあれが動く時を見られるだろうか……」
「見ぬほうが幸せだ。少なくとも、人間のおろかさを見ずにすむ」
「いや、見ずにはおれんよ。これはワシらの罪」
「そして人間達の罪」
「我らは救わねばならない」
「深き罪から同胞達を」
「その為に」
「我らの信じる真の平和の為」

「やってくれるね?シンシア」



「……はい」



157通常の名無しさんの3倍:2009/09/20(日) 21:33:21 ID:???
>>147-148>>153>>156
それぞれ文章が面白い事…GJです!
158通常の名無しさんの3倍:2009/09/22(火) 09:43:43 ID:D26wC+tg
保守
159通常の名無しさんの3倍:2009/09/25(金) 01:33:38 ID:AEuMcdzy
いままで出たドルダ。

ドルダ試作一号機
全身を強化装甲で覆ったミノ虫タイプ。
戦闘時は装甲をパージ、装甲はそのまま支援型無人機となる。
また支援型無人機となる都合上装甲にもスラスターとバーニアが装備され高機動。
メリット:全身装甲の為かなりの防御力がある。武装も装甲の中に収納。
デメリット:見た目が悪い。

登場作品―――無し

ドルダ試作二号機
一号機と三号機の中間のような機体。MA形態がある。
一号機と同じように追加装甲を装備しているが、こちらはパージしても支援型無人機にはならない。
右腕はそのままビーム砲で巨大なもの。逆に左手は恐ろしく細い。
足は左右不均等で、これでもかというほどバーニアが付けられている。
上半身は美女、下半身は怪物といわれ、西洋の怪物ラミアのような機体である。
ガンダムヘッド以外とてもガンダムとは思えない。
メリット:強い。装甲自体は薄いが右腕のビーム砲は後のドルチェを彷彿とさせる。
デメリット:見た目が悪い。また大量にバーニアを付けたのに動きが遅い。

登場作品―――WIKIの作品紹介→短編→新宇宙暦073年

ドルダ試作三号機
肩にビーム集光機を装備したドルダ。
試作一号機、二号機とは違いIフィールドのようなシールドの展開により防御を行う。
またビーム集光機はビームサーベルとなったり、機体全体を包んで突撃など様々な用途でつかえる。
しかしこの機体の何よりの特徴は『Doll-da システム』を搭載している事。
このシステムで機体の駆動系の制御を行う事でより効率的により速く動く事ができる。
まだ何か能力が隠されているという噂も……
過去のほとんどのドルダはコレ。
メリット:強化装甲からビームフィールドに変更した事による軽量化と、見た目のかっこよさ。『Doll−DAシステム』
デメリット:ビームフィールドはビームに強いが実弾に無力。またパイロットが固定である。

ドルダ試作型4号機
三号機の優秀さから開発が行われていない。
どのような機体になるかは今後の開発しだい。

あなたはどのドルダ?

おまけ
ドルチェ試作零号機

コーヒーメーカー機能搭載。

登場作品―――無し。過去ログ初代スレの1−100の14
160通常の名無しさんの3倍:2009/09/25(金) 17:53:00 ID:???
ぼくのかんがえたちゅうくさいガンダムドルダ

頭をビットのように飛ばして攻撃できる
その際のカメラ制御は背中についているチャクラウイングで感知
チャクラウイングは、ニュータイプの脳波を機体に蓄積する
それをオーラ状に放つことによって見えない敵の感知が可能になる
見た目は光の翼をゼロカスの羽みたいな形にしたやつ
161通常の名無しさんの3倍:2009/09/25(金) 23:43:14 ID:???
>>160
漢字変換頼む。
見えない敵の感知って、ニュータイプなら必要なくないか?
後ニュータイプって直感と洞察力と空間把握能力に優れる人間だから脳波集めても意味ないと思う。
カミーユとか見ると脳波っていうより魂の方がしっくり来る。
まぁ、ビットは脳波で動かしてるけど。
コンピューターで処理した情報を人間の脳に直接流し込むor人間の脳をコンピュータの演算機に使う方がいいじゃないか?
前者はGA、後者はナデシコの劇場版にあったはず。
頭ビットはチョンチョンっぽくて面白いが、正直ジオング。
頭飛ばすより普通にビット飛ばしたほうがいいと思うぞ。
というか有視界戦闘しかできないのにメインカメラ飛ばすのは自滅行為だろ。
ザグフリッパーみたいな強行偵察が目的なら別にいいんだが、一応ガンダムだからな。
もうちょいかっこよく。生首ガンダムというあだ名がつくのは、な。

まぁ、遊び心があっていいよ。うん。

異論が欲しい。
162通常の名無しさんの3倍:2009/09/26(土) 04:09:08 ID:???
ねたにまじれす
163通常の名無しさんの3倍:2009/09/28(月) 05:57:51 ID:???
だって寂しいんだもん
164通常の名無しさんの3倍:2009/09/28(月) 19:38:44 ID:???
かわいいなw
165通常の名無しさんの3倍:2009/09/28(月) 21:51:25 ID:???
ww
166通常の名無しさんの3倍:2009/10/02(金) 12:22:45 ID:k0zPtBzo
保守。
もすこし書きためてから投下の予定。
かなり冗長だけど……
167通常の名無しさんの3倍:2009/10/02(金) 13:08:56 ID:unpooWcF
ダブルオー全部
168通常の名無しさんの3倍:2009/10/06(火) 00:21:01 ID:TVo35tni
保守
169通常の名無しさんの3倍:2009/10/09(金) 01:02:21 ID:+U//8QmZ
ホシュガンダム 拠点防衛特化型
170通常の名無しさんの3倍:2009/10/11(日) 16:43:02 ID:???
モビル星のモビルスーツは地球を征服しようとする大悪党。
人々は圧倒的な力を持つ未知の存在に恐怖した。
「もう駄目なのか…」
誰もが絶望したその時、モビルスーツをやっつけるべく、ガンダム星からガンダムドルダがやって来た!
171通常の名無しさんの3倍:2009/10/12(月) 00:11:10 ID:???
初期のミノムシ見てから思ったんだけど脱皮するガンダムって新鮮じゃない?薄汚れた外部装甲を脱ぎ捨てて、脱皮直後のセミみたいに緑に輝く本体が出て来るの。

越境の地から掘り出された謎のガンダム、ドルダ。
だがその姿は凄惨であった。象徴たる二本のアンテナは折れ、装甲はボロボロ。ブースターすらまともに点火しない始末。

だが贅沢を言わない主人公。ガンダム特有の反応の早さや戦術、地形を駆使して、襲い来る敵を次々と退けていく。
しかし喜びもつかの間、敵の精鋭の卑劣な攻撃に、遂にドルダは膝を付いてしまう。

動かないドルダ。
襲い来るビームの嵐。
ついにビームの直撃を受けたドルダは、その外部装甲を破き、新たな姿に「脱皮」する。
172通常の名無しさんの3倍:2009/10/13(火) 01:10:37 ID:ivzGNsxH
パージじゃなくて脱皮って言うのがいいな。
ようやく追い詰めたと思ったら自分たちの攻撃で相手の真の姿が暴かれる。
敵にしてみればこんな嫌な相手は初めてだっただろうな。
そしてしばらくすると新しい外部装甲を身に纏う。
たとえ百回破壊しようと、百回「脱皮」し生まれ変わるドルダ。

うむ、奇抜だ。


ミノムシドルダは全身リアクティブアーマー。そんな考えが浮かんだ。
173通常の名無しさんの3倍:2009/10/17(土) 00:55:26 ID:z+bVaxkL
ホシュ
174通常の名無しさんの3倍:2009/10/18(日) 02:52:39 ID:0r3/hZ0W
『機動戦士ガンダムホシュ 〜第一話 ひとりぼっちの戦争〜』

「ええい!なぜあれは落ちない!!」
火星の衛星、ファボスにある施設を攻撃している艦隊、その司令官が机を叩いた。
最近になって発見されたこの施設は火星のテロリストの基地だとされ、駐留軍は圧倒的戦力を持ってこれを制圧せんとした。
しかし攻撃開始からすでに1時間が経過しているというのに、いまだなんの報告も上がってこない。
「戦況はいったいどうなっている!?前線からの報告はまだか!!」
「本宙域は現在強い電波妨害状態にありますゆえ、まだ」
「おのれぇ。大体たかだかテロリスト相手に何をしているのだ!!」
再び司令官が机を叩いたとき、一機のグワッシュが前線より帰ってきた。
「あれは誰の機体か!?」
「あれは……セジュ・ドドイン少尉の機体です。あ、ドドイン少尉より緊急入電!」
「読め!」
「はい!『敵は未確認の新型機を用い、あの施設を保守している模様。現在の兵力では太刀打ちできず』です」
「なにぃぃ……?」
司令官のこめかみに青筋がぴくぴくと浮かび上がる。
「なぜこれだけの戦力がありながら太刀打ちできんのだ!!いったい新型機とは何だ!!」
「分かりません。しかし報告によれば新型は、ガンダムタイプのようです。それも、たった1機」
「な、何だと!!」
驚愕した司令官が再び何かを叫ぼうとした時、レーダーを担当していたオペレーターが悲鳴を上げた。
「敵施設方向より高エネルギー反応!!ビームです!」
「何!!か、回避だ!!」
「だめです、間に合いません――――!!!」


火星の衛星ファボスに突如現れたガンダムタイプ。
たった一機で駐留軍を退けるほどの力をもつこの機体の正体は!?

次回機動戦士ガンダムホシュ 「慰めの報酬」

再び戻るそのときまで、生き残れホシュ!
175通常の名無しさんの3倍:2009/10/20(火) 23:34:29 ID:h68L9BWC
『機動戦士ガンダムホシュ 〜第二話 慰めの報酬〜』

衛星ファボスでの戦闘から既に一週間がたった。
その間にも何度か小規模な攻撃は行われたが全て施設を守る謎のガンダムに防がれていた。
流石の駐留軍も既に攻撃する気を失い、今では周囲を包囲しているだけである。
「だけど、いつまでもこのままじゃいけないよな」
指令席の上に行儀悪く座っていた男がぼりぼりと後頭部を掻く。
この男はスー・アンコウ。一週間前の戦闘で戦死した司令官の代わりを臨時的に務めている。
「上はなんて言ってる?」
スーは信頼するオペレーターに尋ねた。
「現状を維持せよ、だそうです。上もあの機体に手を焼いているそうですよ」
「だろうなぁ。はぁ、しばらくは退屈な宇宙船暮らしか……で、あの機体について分かったことは?」
「はい、今のところ判明している事は超がつくほど高い防衛能力を持つこと、エネルギー補給は基地から受けていること、一定範囲いないまで近づかなければ攻撃してこないことです」
「こっちが攻撃しない限りは、だけどね。はぁ、結局収穫無しか」
スーは再び後頭部を掻くと、コンソールに映されたあの機体を見た。
ガンダムタイプの特徴であるV字型のアンテナとフェイスを持ってはいるが、その形状はどのガンダムタイプとも似ていないものだ。
全身を覆う巨大な球状の外殻に、その隙間から生える無数の触手。
そして施設と直結している巨大なコード。
「なんど見ても奇妙な機体だな……おまえも大変だな。そんな辺鄙な場所を守らされて」
スーは何気なくそうつぶやいた。
すると映し出された機体はこちらをみておそらくメインカメラであろう部分を光らせた。
「なんだ、俺も変わらないってか?お前は言葉が分かるみたいだな。はは、んなわけないか」
しかし再び機体はメインカメラを光らせ、首を横に振った。
これにはスーも驚いた。
「お前、言葉が分かるのか?」
機体は大きく頷いた。
176通常の名無しさんの3倍:2009/10/20(火) 23:36:27 ID:h68L9BWC
それを見た途端、スーの中にひとつの名案が浮かんだ。
(言葉が分かるなら、本人に直接聞いた方が早い!)
そう考えたスーはすぐに機体に質問しようとしたが、突然、画面が揺らいで映像が消えてしまった。
「な、何だ?」
思わず口から出た疑問には、オペレーターが悲鳴混じりに答えた。
「し、指令!本艦がコントロールを受け付けません!!」
「はぁ?」
あまりのことに唖然とするスーの前に、またあの機体が現れた。
「ああ、なるほどな」
「指令、これは一体!」
「慌てんな、俺たちは招待されたんだよ」
「はい!?」
驚くオペレーターをよそにスーは画面の中の機体を見た。
「んじゃ、いまからそっちに行くわ」
スーがそう答えると、機体は再びメインカメラを光らせた。


謎の機体に招待され、一対一で対話することとなったスー。
そしてスーは機体の悲しき使命を知る。

次回機動戦士ガンダムホシュ 「未知との遭遇」

再び戻るそのときまで、生き残れホシュ!
177通常の名無しさんの3倍:2009/10/21(水) 17:05:05 ID:???
>>171
俺の陽炎ガンダムがまさにそんなのだから止めてけれ
178通常の名無しさんの3倍:2009/10/21(水) 20:59:45 ID:???
西暦2477年―

勉強、スポーツ、芸術。どれをとっても成績優秀のアイザー・シィは
両親の期待に反発し、家を飛び出す。やっと自立したと思いきや、
彼にはやりたい事が何も無かった。手当たり次第に就職活動し、
内定した会社はMS製造企業"リアル・ストロベリー"。彼はそこで
MSの設計を担当していた。

宙翔(ちゅうしょう)37年(西暦2482年に相当)―

増えすぎた人口をスペースコロニーに移民させて200年余りが過ぎようとしていた。
地球と宇宙はそれなりに安定を保ってはいたが、大きな問題が発生した。
急速な人口増加にスペースコロニー増設が間に合わなくなってしまったのだ。
それにより、各地の治安は乱れていった。本来、それを取り締まるはずの
地球連邦政府ですら、不穏な空気で充満していた。そんな中、日本地区を拠点に
とある宗教団体が"非性交の美学"、"武力による性交の阻止"を提唱。
「すべての原因は増えすぎた人口だ」「これ以上の繁殖に何の意味も無い」
「よって子作るべからず、逆らうものは女神"ソフィア"の裁きを下す」
最初はただの絵空事として捉えていた連邦政府だったが、彼らはカリスマだった。
この時代に、彼らに入信する事はむしろ自然な成り行きだった。

月軌道暦212年(宙翔40年に相当)―

主張だけで止まらず、過激な手段で繁殖を阻止する彼らは"アンセックス"と呼ばれた。
だが地球連邦も黙って見ているはずは無く、それ相応の武力を以ってアンセックスと
向き合う事にした。それが大きな対立構造となり、戦争が勃発。
スペースコロニー"ランニング・アイ"で暮らすアイザー・シィは26歳になっていた。
両親との関係は改善しており、親子三人で暮らしていた。ある日、アイザーは少年時代
の頃のアルバムをめくってみた。そこには幼馴染の女の子と親友が二人、アイザーを
含めて、4人の少年少女が元気な笑顔で映っていた。写真の下にはペンを持ちなれて
いない子供の字でこう書かれていた。
「わたし、おおきくなったらアイザーとけっこんしたいな」
「おれは おやじのあと をついで りっぱな エースパイロットに なるんだ」
「ぼくはりっぱながくしゃになる、そしたらもっとせかいがへいわになるよ」
少女の書いた文字が現代との矛盾に痛みを感じた。もう、戻れないあの頃。
子供たちの夢は無垢だ。無垢では生きていけないが、無垢だからこそ人は成長できる。
しかし、今を見ろ。結婚は出来ないし、子供も生まれてこない。そうでなくとも、戦争により
職を奪われ、資産を奪われ、資源を奪われているではないか。今の時代は
未来を閉ざすことで、夢を見ることすら出来ない。そんな時代が許せなかった。
かつて、目標がなかったアイザーはやりたい事を見つけた。
かつての友と再会すること、そして、この戦争を終わらせること。
半年後、アイザーはリアル・ストロベリーを退社して、地球連邦軍に志願した。

西暦2487年、物語はここから始まる。
179通常の名無しさんの3倍:2009/10/21(水) 21:16:52 ID:???
もうガンダムなのかどうか怪しい感じだけど
ただ保守するだけじゃ寂しいから好き勝手やってみた

軽くネタバレすると
>>178の最終回(ラストバトル)は>>153(所々、誤差あるけど)で
ファイヤーガンダムとブリザードガンダムはアイザーが設計したもの
ネーミングセンスが幼稚なのは、アイザーが
「未来の子供が 歴史の授業で ガンダムの画像を見た時に 夢を与えるため」
という理由にしてみた


180通常の名無しさんの3倍:2009/10/26(月) 18:21:51 ID:C/Q4a8wS
GJ

大人向けなガンダムだな。
181通常の名無しさんの3倍:2009/10/30(金) 01:22:33 ID:p12DP4qU
ほしゅ
182通常の名無しさんの3倍:2009/11/06(金) 18:53:57 ID:BsijRp1/
ほしゅ
183通常の名無しさんの3倍:2009/11/10(火) 13:28:19 ID:6NaI2mET
保守
184通常の名無しさんの3倍:2009/11/14(土) 03:53:37 ID:yN4TLFCC

185通常の名無しさんの3倍:2009/11/14(土) 10:36:51 ID:???
ダブルガンダムでファイアーブリザードを打つ訳だね
186通常の名無しさんの3倍:2009/11/15(日) 09:44:02 ID:???
それイナズマイレ…
おや、誰か来たようだ
187通常の名無しさんの3倍:2009/11/19(木) 17:36:15 ID:rpTvUH7r
保守
188通常の名無しさんの3倍:2009/11/23(月) 22:47:11 ID:f/j7V9GK
189通常の名無しさんの3倍:2009/11/23(月) 23:04:00 ID:???
190通常の名無しさんの3倍:2009/11/23(月) 23:13:05 ID:???
191通常の名無しさんの3倍:2009/11/23(月) 23:15:40 ID:???
192通常の名無しさんの3倍:2009/11/23(月) 23:18:54 ID:???
W
193通常の名無しさんの3倍:2009/11/24(火) 18:24:39 ID:JG+brmrq

194通常の名無しさんの3倍:2009/11/25(水) 16:08:00 ID:qUXc9CxD
ガンダム]V
195通常の名無しさんの3倍:2009/11/27(金) 18:03:04 ID:qmsacKph
防衛
196通常の名無しさんの3倍:2009/11/30(月) 00:33:41 ID:afrcZGW3

197通常の名無しさんの3倍:2009/11/30(月) 00:34:46 ID:afrcZGW3

198通常の名無しさんの3倍:2009/12/01(火) 19:24:21 ID:+c8qCHNs

199通常の名無しさんの3倍:2009/12/02(水) 04:32:10 ID:gfSPIIl/
200通常の名無しさんの3倍:2009/12/03(木) 18:47:58 ID:bsIKU+YN
201通常の名無しさんの3倍:2009/12/03(木) 18:49:08 ID:bsIKU+YN
202通常の名無しさんの3倍:2009/12/06(日) 11:13:02 ID:RUQuAJR3
それパワプロ
203通常の名無しさんの3倍:2009/12/09(水) 23:16:11 ID:fc+qxH/p
ダブルオーライザーかな。消えるのは分身殺法よりもひどいとおもう。
204通常の名無しさんの3倍:2009/12/10(木) 16:28:26 ID:???
そんなもんシュピーゲルの足元にも
205通常の名無しさんの3倍:2009/12/10(木) 17:10:52 ID:???
206通常の名無しさんの3倍:2009/12/12(土) 02:58:43 ID:I/aKl/u8
207通常の名無しさんの3倍:2009/12/12(土) 21:39:06 ID:???
208通常の名無しさんの3倍:2009/12/13(日) 01:28:13 ID:???
209通常の名無しさんの3倍:2009/12/13(日) 15:04:49 ID:???
210通常の名無しさんの3倍:2009/12/17(木) 18:26:56 ID:2aI6lGww

211通常の名無しさんの3倍:2009/12/19(土) 23:50:59 ID:ZUbYaM0Q

212通常の名無しさんの3倍:2009/12/23(水) 04:38:01 ID:15BAzPq1
213通常の名無しさんの3倍:2009/12/23(水) 05:39:38 ID:DcaO0mUY
チン
214通常の名無しさんの3倍:2009/12/29(火) 12:26:00 ID:Gfei4d7r
GDルダ
215通常の名無しさんの3倍:2009/12/31(木) 03:08:30 ID:???
ガンダムでRPG

一家に一機が当たり前になるほどMSが普及した時代。その増えすぎたMSを地球連邦政府は
スペースコロニーへと移動させた。MSは家庭の顔で財産の象徴とも言うべき存在であり、市民はこれに猛反発。
一部の過激派がスペースコロニーに移住されたMSを奪取。それらを用いて、連邦軍に攻撃を仕掛けた。
本来は時に車となり、時にクレーンとなり、売れば大金が手に入る。様々な市民の生活を快適にするものであったが、
この事件をきっかけに凶悪な巨大兵器と化したのだ。

畑田舎に住んでいるクリス・J・剛田は人類史上初のMSを開発した祖父から人類最初のMS・ガンダムを受け取る。
「このガンダムをお前に託す。ガンダムで全てのMSを破壊してくれ。
戦争の原因となったMS、市民と政府の確執を生んだMS、市民同士の確執を生んだMS、その全てを破壊してほしい。
それがワシに出来るせめてもの償いじゃ」

クリスはガンダムに乗って旅立った。旅先では政府から攻撃を受けたり、過激派にスカウトされながらも、
兵器屋から兵器を買ったり、エンジンを改造したり、メカニックを仲間にしたりして今日もMSを破壊し続けている。
216通常の名無しさんの3倍:2009/12/31(木) 19:01:15 ID:NVFcNvCZ
メタルサーガみたいなゲームだな。
217通常の名無しさんの3倍:2010/01/01(金) 01:41:33 ID:gEUk9s+Z
明けましておめドルダ
218通常の名無しさんの3倍:2010/01/02(土) 12:56:39 ID:z2kPcLlO
クリス・J・剛田ってジャイ子?
219通常の名無しさんの3倍:2010/01/06(水) 01:55:33 ID:LdKh7huZ
それは気づかなかった。
220通常の名無しさんの3倍:2010/01/06(水) 02:06:02 ID:???
221通常の名無しさんの3倍:2010/01/10(日) 22:52:21 ID:VE4N4dut
>>220
これはなかなか・・・
222通常の名無しさんの3倍:2010/01/11(月) 20:11:31 ID:iGyXrFcB
>>220
ゼロカス!ゼロカスじゃないか!
223通常の名無しさんの3倍:2010/01/14(木) 15:58:48 ID:XKummPPp
下界のドルダとコクーンのドルダ
224通常の名無しさんの3倍:2010/01/18(月) 05:08:25 ID:hfSpVUfN
保守シュッポシュッポ
225通常の名無しさんの3倍:2010/01/21(木) 00:43:14 ID:VmQUT7/u
保守が書けない
226通常の名無しさんの3倍:2010/01/23(土) 18:43:57 ID:TV0Xv9Mi
機動戦士スーパーウルトラファイナルギャラクシーガンダムだろJK

ラスボスをタイトルに持ってくるなんて斬新すぎる
227通常の名無しさんの3倍:2010/01/24(日) 12:03:19 ID:dPMrAm8w
セイントペガサスガンダム
脳波をコスモと表現するんだぜ
228通常の名無しさんの3倍:2010/01/24(日) 19:55:50 ID:dPMrAm8w
【ビームハンド】
普段は存在しない右腕からビームで出来た腕で敵を焼き尽くす。
一撃必殺の威力を持つが、燃費の悪さと隙の多さから
好まれて使用されない。
229通常の名無しさんの3倍:2010/01/25(月) 23:53:58 ID:Zd4q6REf
>>229
人間って右利きのほうが多いからむしろ左手に装備したほうが良くないか?
でも久しぶりにオリジナル兵器案を見たな。
ここは乗ってみよう

【デネブ・コンタクト】
超長距離の通信を可能にする通信装置。かなり大型だが従来の数千倍の能力を持つ。
通信対象と通信対象との間にこれを搭載した衛星または機体が存在すれば使用可能
その通信可能範囲は0,5天文単位。0,2天文単位内であればリアルタイムで通信可能。
中継点を増やせば通信距離も伸びるがリアルタイムではなくなるしノイズも増える。
今までとまったく違う原理で通信しているためジャミングの影響を受けないが、まだ対応する機体や基地が少ないという問題点もある
名前の由来は白鳥座のデネブ。

ガンダムって結構通信をおろそかにしてる気がするので通信装置を即興で考えた。

……そろそろガンダムも太陽系から離れて銀河系に飛び出すべきではないだろうかと考え始めた。
230通常の名無しさんの3倍:2010/01/26(火) 21:43:49 ID:???
>>223
あれは何と言うか興味深い話だった
「奇跡」を連呼する割には口で言うほどそれを信じてない感じがしたし
まあテーマとしても物語としても12の方が好きだが

MSを召喚獣みたいな位置づけにしてファンタジー風ガンダムってのもアリかな
SDっぽくなるけど
231通常の名無しさんの3倍:2010/01/27(水) 20:51:45 ID:p427oAiX
>>230
バイクにならなかったらOKだと思う。
232通常の名無しさんの3倍:2010/01/27(水) 22:49:22 ID:DsRvUhFA
そうなるとキャラ原案は野村だな
シルバーアクセを大量につけたパイロットスーツになるのか
233通常の名無しさんの3倍:2010/01/28(木) 16:45:55 ID:???
ファスナーとベルトが異常に多いんじゃね?

ベルト地獄はキラの私服でやってたが
234通常の名無しさんの3倍:2010/01/31(日) 13:16:51 ID:Y4fkiMpl
【ザック・バラン】
ザク系の最新型(宇宙世紀とは別物)
主流のビーム兵器ではなくレーザー兵器を多数装備している。

【カソラ・セトル】
遠距離支援用機体。レールガトリングガンを装備している。
衝撃に耐えるために通常より丈夫に設計されている。
235通常の名無しさんの3倍:2010/02/05(金) 23:40:25 ID:cJjyQuhW
あんまり奇抜なパイロットスーツになると軍の規律が云々とか上司から言われそうだな。
バイクか。あれ、Vガンにそんな感じのがあった気が。

>>234
ザックバランか、名前が面白い。
でもレーザー兵器の方がビームより強い気がする。

レールガトリングガンは機体以前に銃身が溶けるだろw
236通常の名無しさんの3倍:2010/02/06(土) 14:03:48 ID:???
ん、溶けないようにガトリングなんじゃないか?
237通常の名無しさんの3倍:2010/02/08(月) 05:34:49 ID:MjaU9+H6
【ガンバード】
ガンキャノン と ガンタンク のおともだち。
へんけいすると とり みたいになるよ。

238通常の名無しさんの3倍:2010/02/10(水) 22:17:29 ID:SceDyeZV
あれ、そんなやつクロスボーンにいなかったっけ?
239237:2010/02/10(水) 23:19:22 ID:oEI/OM2u
>>238
それは知らなかった
でもガンキャノン、ガンタンクの派生はもっと増えていいよな
240通常の名無しさんの3倍:2010/02/12(金) 00:47:28 ID:2/NE0wx2
後方支援としてガンタンクは強力だよな。
ただ量産型は泣くほど弱い。
241通常の名無しさんの3倍:2010/02/12(金) 18:23:42 ID:???
なんかのゲームだと量産型の方が強いんだけどね>ガンタンク
242通常の名無しさんの3倍:2010/02/13(土) 00:06:35 ID:???
それギレンの野望シリーズだから〜
量産型だと3機一纏めだから砲門数が3倍なのです
243通常の名無しさんの3倍:2010/02/13(土) 17:09:36 ID:???
>>230から一発ネタ


王「……というわけで勇者よ、魔王を倒しに行ってくれ!」

勇者「いやいや、冗談きついでしょう。軍隊送ってくださいよ。
    なんだって俺みたいな民間人が魔王に挑まなきゃならんのです」

王「もちろん国を挙げてサポートはするつもりだ。軍も送る。
  しかし、『これ』を使えるのはお前の血筋だけでな――」

勇者「なんですかコレ。古そうな剣ですね、もう使えませんよ。
    だいたい銃があるこのご時世に剣って……」

王「これは剣ではない」

勇者「はい?」

王「わが王国に伝わる“白い悪魔”の神話を知っているか?
  神聖な存在でありながら、その戦いぶりの烈しさから
  畏怖を込めて“悪魔”と呼ばれた、護国の精霊よ」

勇者「はあ、あのおとぎ話ですか。雷の矢と焔の剣を携えた
    白い巨人がどうのこうの、でしたっけ。よく聞かされましたよ。
    うちのご先祖がそのとき活躍したそうな」

王「さよう。そして、この古ぼけた剣にしか見えぬものこそ
  伝説の守護精霊“ガンダム”の召喚デバイスなのだ。
  勇者の血を引く者だけが、白い悪魔を従え得る――
  そして、魔王を倒せるのはガンダムの力のみ」

 ゆえに勇みなき勇者は立たねばならない。
 ゆえに彼は悪魔の力を借りて戦わねばならない。
 ゆえに世界は、その肩に運命を託さねばならない。

 白い悪魔が、再び歴史に姿を現す。

   Machina Sanctus GUNDAM “ E ”
     機動英雄譚    ガンダムE


血筋だけで重すぎる使命を押しつけられた、DQNで無精者の勇者が
逃げたり挫折したりしながら本物の“英雄”になっていく…みたいな話だろうか。
244通常の名無しさんの3倍:2010/02/17(水) 22:18:57 ID:IObVyU8u
確かにファンタジーをやるのも面白そうだ
245通常の名無しさんの3倍:2010/02/22(月) 02:15:08 ID:eunEsQ0B
サイバーパンクかスチームパンクしてるガンダムが見たいです
246通常の名無しさんの3倍:2010/02/25(木) 15:51:37 ID:???
【オーザック】
アイザックの後継機のデータを盗んで開発したMS
247通常の名無しさんの3倍:2010/03/07(日) 00:44:12 ID:???
>>246
なんかおいしそうな名前だな。
248通常の名無しさんの3倍:2010/03/08(月) 01:51:40 ID:???
【スザク】
正式名称はスペリオル・ザク。
略称から連想するものは人によって異なるだろう。
なんか火の鳥っぽいものを思い浮かべる奴もいれば
生身で自動機銃を避けまくる変態の場合もあるらしい。
性能はハイザック・カスタムの上位互換といったところか。
249通常の名無しさんの3倍:2010/03/08(月) 02:28:47 ID:???
【ザクロ】
人類が宇宙に進出する前に開発された機体。
当時はMSと呼ばれておらず、すでに十分なほどの情報技術すら
全高約17mに及ぶ巨大ロボットを前にして複雑な制御は出来なかった。
常時接続されたケーブルによって動くが、一歩歩いただけでオーバーヒートしてしまう。
見た目はプロトタイプ・ザクを5段階くらい劣化させたデザインとなっているが、
当時の子供たちにこの機体に強い憧れを抱かせた。

スペースコロニーと地球の戦争が始まる頃には
当時の子供たちは両サイドの権力者となっており、この機体は
すべての始まりとして永遠に語り継がれるだろう。
250通常の名無しさんの3倍:2010/03/08(月) 04:05:11 ID:???
既出かもしれないけど、メダロットみたいなMSとかは?
コックピット付きの骨格があって、上から各部位に装甲を取り付ける感じで。
戦況に応じてパーツを換装可能、骨格が無事ならパーツが破損しても少ない手間で修理可能、
Vガンやインパルスみたいにパーツ投擲可能、同様にパーツパージからのオールレンジ攻撃可能など…
251通常の名無しさんの3倍:2010/03/08(月) 14:19:46 ID:???
パーツは細かく分けてもいいかも
従来は胴体、コア、足、機体によってはバックパックの3〜4つだけだったけど

左腕、右腕、頭部、左足、右足
みたいにすれば汎用性上がるかも
その分装甲は紙になりそうだけど
252通常の名無しさんの3倍:2010/03/14(日) 19:09:27 ID:2adjV1VV
いっそのこと人型じゃないとか……いや、だめか
253通常の名無しさんの3倍:2010/03/16(火) 21:56:19 ID:???
徐々に盛り上がってきたな
後日何か投下するか
254通常の名無しさんの3倍:2010/03/20(土) 13:46:29 ID:tar5G/Vh
機動戦士ガンダムI(インセクト)

・主人公機のインセクトガンダム/TYPE-Aはカブトムシみたいなデザイン
・ライバル機のインセクトガンダム/TYPE-Bはクワガタみたいなデザイン

地球国家フォレストと宇宙国家C.O.S.M.O.の対立を描いた作品。
255通常の名無しさんの3倍:2010/03/26(金) 17:41:56 ID:58BXnGFE
ho
256通常の名無しさんの3倍:2010/03/30(火) 21:28:58 ID:Nh7MTc/y
SILYU
257通常の名無しさんの3倍:2010/04/08(木) 11:52:30 ID:zReUrSFX
やはりここはおっさん主人公で行くか

厨機体に乗るおっさん主人公
部下からは厨機体なんて時代遅れと揶揄される

というのはどうだろう
258通常の名無しさんの3倍:2010/04/08(木) 12:19:33 ID:???
ヒュッケバイン

黒はまだしも白は言い訳できない仕様になってる
てかパイロットがNTだった時点でもう完璧アウトだろ
259通常の名無しさんの3倍:2010/04/08(木) 13:40:11 ID:???
ヒュッケが初登場した第4次では最初に機体名とカラーリングが変えられたがカラーリングの中にトリコロールカラーがあったな…
しかも主人公はNT技能取得しちゃうしいろんな意味でカオスだった
260通常の名無しさんの3倍:2010/04/09(金) 01:09:53 ID:???
突然ですが投下
奇抜の定義がわからんので適当に


ガンダムAsh(アッシュ)

Story1 墜ちてきたガンダム

統一暦50年――地球とスペースコロニー間で起きた戦争がコロニー側の勝利に終わって五十年。そして、その後に生じたコロニー国家間での主導権争いに一応の決着が着いて5年。
世界は多少の悲劇はあるものの、概ね平和だった。
そんな中、とあるコロニーでの出来事。

コロニー国家「アルティア」の王、アウグスト・レヴァンテインはいつものように数十人いる侍女とエロい事をしながら過ごしていた。
年齢は二十代半ば、金髪碧眼の貴公子然とした容姿。見てくれは相当に良いものの、アウグストはどうしようもなくスケベであった。
その日も侍女たちと全裸でツイスターゲームなんかをしていたのだが、何故かいまいち没頭できなかった。普段なら、あんなポーズやこんなポーズを取って侍女たちにキャーキャー言われるのが楽しいのだが、どうにも気持ちが昂ぶってこない。
原因は何だ!? と考えると部屋の外が五月蠅いことが思い当たる。
「はて? 今日はなにかあったかね?」
イベントを企画した覚えは無かったし、何か催しが有るとも聞いていない。
うーむ。と全裸でブリッジしながらアウグストは自分の記憶を探る。
ちなみに記憶力は良い方である。5分で辞書を一冊暗記できる程度の記憶力は有るので忘れてはいないはずだった。
「陛下、がんばってー」
侍女たちの声援が飛んできたので頑張ってみるが何も思い出せない。
「うーむ、困ったぞ」
全裸で逆立ちしてもダメだった。
結局、何も無かったことしか思い出せずアウグストは無力感に打ちひしがれそうになった、その時だった。
いきなり部屋のドアが開いて、息せき切って大臣が飛び込んできたのだ。
「陛下、大変です! 開発中のガンダムが盗まれましたっ!!」
挨拶もなしに大声を出す大臣はちょっと嫌だなぁ。とアウグストは思ったのだった。

それから少し経って地球――
クロセ・ハルマはのんびりと朝飯を食いながら、テレビを見ていた。
見ているチャンネルはアルティア公共放送である。
アウグストとかいうアルティアで一番偉い奴が権力で番組を好き勝手しているため、倫理観を無視して18禁番組を放送(しかも朝っぱらから)しているという有り得ない放送局だ。
261通常の名無しさんの3倍:2010/04/09(金) 01:11:19 ID:???
アウグストという人曰く「受信料払わせるんだから、それくらいサービスするのが当然だ」ということでこんなことになっているらしい。
まぁ、その話は置いといて。
とりあえず,今クロセは18禁番組ではなく、ニュースを見ていた。
なんだかんだ言っても一番、報道番組がちゃんとしているのもアルティア公共放送なのである。
これもアウグストという人物の手腕なのか? 疑問は尽きない。
とりあえずニュースだけ見て、クロセは一応の社会情勢を掴んでおくのが日課だった。
もっとも、クロセの仕事に社会情勢などは殆ど絡んでこないのだが、何事も知っておくことに越したことは無いというのがクロセの持論だった。
「さて、片づけるか」
ニュースも終わり、食事も終わったクロセは食器をキッチンに持っていく。
一人暮らしだから当然である。しかし、時折寂しくもなる。
洗い物でもしてから、仕事の準備でもしようかとクロセはキッチンシンクの前に立ち、蛇口を捻り、水を出し始めた、その時だった。
外からゴゴゴゴゴゴオォォォォォォォという隕石でも降ってきそうな音が聞こえてきた。
余りにも漫画とかアニメっぽい音なので、そんなわけ無い。隕石なわけがあってたまるものかと思いこもうとしたが無理だった。
クロセは正直、物凄い嫌な予感がしていたのだ。もう無理だ! 自分の気持ちはごまかせない!!
……とりあえず、机の下に隠れることにした。

ほどなく襲ってきたのはちょっとシャレにならないほどの地響きと、激突というか殆ど爆発みたいな音。
机に隠れていた良かった。
家具のほとんど倒れていて、部屋の中は大惨事になっている。
持ち家なのでまだ良いが、借家だったらめんどくさかっただろうなぁ。と家の中の惨状から、どうでも良いことを思って現実逃避……いや、駄目だっ!!
まずは外の様子を確認しなければ!
幸い壁が崩れて、非常にオープンな家になっているので、閉じ込められたりということは無くなった。それに家から出やすくなったぞ♪
…………そう思わなければ、やってられない……
うん……とにかく、家の外に出よう。
クロセは崩れた壁から外に一歩、二歩、三歩……と進み、そして恐る恐る振り返った。

「……………」

……とりあえず、結論から言えばモビルスーツが一機、家の隣のガレージ兼仕事場に突っ込んでいた。

続く

262通常の名無しさんの3倍:2010/04/09(金) 21:38:13 ID:???
>>257
おっさん「肩にバルカンつけて手からビームをかき消すフィンガーをつけて合計110門ぐらいビームのついてるオールレンジ攻撃つけて相手のサイコミュを乗っ取る機能をつけてください」
部下「ぼくのがんがえたさいきょうのガンダムをやるのやめてもらえませんか?
   お下がりにもらった痛いMSの制作費で予算がもう残ってませんよ」
263通常の名無しさんの3倍:2010/04/09(金) 22:12:16 ID:???
ガンダムU
主人公が異様に呼び名にこだわる

主人公「ツーや2号機やセカンドやMk-2ではありません」
主人公「ガンダム『ツヴァイ』です。よろしいですか?『ツヴァイ』ですよ『ツヴァイ』。ちなみに腰についてるロケット砲の名前は『シュツルムファウスト』です」
主人公「ガンダム『ツヴァイ』が呼びにくいのならキングガンダムやロイヤルガンダムと呼んでくれても結構です」
264機動戦士ガンダムーン:2010/04/15(木) 16:20:42 ID:???
星暦0150年―

旧世紀末期における核撤廃は一時的なものでしかなく、それの持つ莫大なエネルギーは
人の感情に密接した破壊の魔法だった。魔法に支配された人類は果てる事のない
宗教、文化、人種などの対立において、再び、また再びと核の魔法に溺れていった。

やがて魔法が星を覆い尽くした時、果てようとしていたのは核ではなく人だった。
辺りは崩壊したビルや高速道路、数多のゴミの山、壮大な排気ガス。

枯れ果てた大地より追放された人類が移住した先は月だった。
すでに必要最低限の文明を開拓していたが、月の議会ではこれが大きな問題となっていた。

「我々はこれでいいのか!?地球の次は月と来た!今の我々の技術をもってすれば半世紀あれば地球時代の文明を取り戻せるぞ!!」
「流石ですね、これなら市民の希望にも迅速に対応できるでしょうね!!」
「シィ―ット!少しは会話の裏を読め!これだから新人は…」
「このままではまた歴史を繰り返すぞ!ご先祖様の二の舞となるのだ!!」
「だからこそのスペースコロニーではないのですか!?惑星ではなく人工衛星で生活させる事で環境を維持する!!」
「そうですよ!そのスペースコロニーがあるではないですか!!」
「間抜け」
「無能」
「おい、貴様ら…暴言は慎め」
「確かにスペースコロニーは素晴らしい文明の賜物だ。しかしながら生活する上で必要な資源はどうする!?大半は地球に依存しているんだぞ!!」
「その中でも特に重要視されるのが水だろう。水がなければ人間が生きていけないし、食品や機械なども水が必要な物もある」
「水…ですか。確かに年々地球の海は公害に汚染されていきます。採取可能な純水も、人口に比べて、間に合っていません!」
「ああ、知ってるよ。そのせいで治安が悪化してる。そのエピソードとして…なぁ、聞いてくれよ!この間俺が野球中継見てる時に臨時放送で…」
「黙れ、私語を慎め!貴様の私情なんて知らないし興味もない!!・・・どうする?これらの件について」
「そうだな、まずは人口削減だ。我々は今、絶滅の危機に立たされていると言っても良いだろう」
「と言うと?」
「一定水準の学力、体力、人間性を下回る奴らはクズだ!奴らは何の取り柄もなく、そのくせ文句ばかり吠えやがる!バイオ燃料にでもしちまえ!!」
「それはあんまりですよ…。ただでさえ月・コロニー両市民の暴動は年々悪化するのに…それこそ蛙の子は蛙。人の子は人ですよ。」
「いや、実際に考えて社会に貢献しないで水の無駄遣いをしている奴らがいる。燃料にでもした方が人類のためだろうよ」
「だが社会に貢献したくても出来ない奴らもいる…そういう物たちのために動くのが政治家の務めじゃないのか?」
「馬鹿野郎ー…政治家ってのはなー…適当にぺちゃくちゃ喋ってハイハイ言ってれば金が入って美味い飯食える最高の職だ!」
「支持率最下位の奴がよく言うよ…メンタルでいえばお前も立派なバイオ燃料さんだ」
「何だとぉ!俺はな、お前みたいなヘイコラしてる奴が一番嫌いなんだ!」
「静粛に、人口削減について他に案はある方は?」
「こういうのはどうだろう。そいつらを火星に移住させて開拓させれば…いや、それじゃ話が振り出しに戻るな」
「・・・・・・他には?」
「・・・無ければ集計を取ります」

「賛成…賛成…賛成…賛成…反対…賛成…反対…賛成……賛成6、反対2で、可決します」
「決まりだな」
「残念だったな…保守する暇があったら改革しろって事だ!」
(こんなの…おかしいです…言い返せないけど…要は圧政ですよ……)

続く
265129:2010/04/16(金) 04:30:48 ID:???
ここには初めて書き込みます。
空想ガンダムスレで勝手に新しいガンダムを考えてた未熟者です。
http://c.2ch.net/test/-/shar/1250861852/1
以前はこのスレでSS職人さんを募集していたんですが、なかなか集まらず、仕方なしに自分で書いてみたものの、あまりの酷さに自己嫌悪に陥った上、規制食らってスレはさらに廃れてしまいました。
情けない話なのですが、今まで考えた設定とかをどるだとして書き替え、こちらで書いても大丈夫でしょうか?
もし許されるなら、SS職人さんも探したいのですが…
266通常の名無しさんの3倍:2010/04/16(金) 16:02:58 ID:???
>>265
ついこの間までこっちも過疎ってたから是非とも書いてくれ
267129:2010/04/16(金) 23:24:02 ID:???
ありがとう、それでは早速写します

機動戦機ESPrateガンダムDOLL-DA

作品のテーマは『愛』。
戦争の中での色々な愛のかたちを描く。
恋愛もそうだが、友情、師弟愛、郷土愛などの他、特に家族愛をメインに。
また歪んだ愛情を抱く者や、愛を捨てた者のドラマなど、愛の負の面もしっかり描く。
腐を狙ったイケメン揃いのジャニーズ路線、SEEDのようなドロドロの恋愛特化路線、ドラマを捨てた戦闘メインの作風などは発掘され尽くした感があるので、本作は家庭の温かい雰囲気と戦争の過酷な現実を対比させる作風を目指す。
人間関係が希薄な現代にこそ、愛を考える娯楽作品に。
268バルド ◆J9EuaWdX1coE :2010/04/16(金) 23:42:00 ID:???
こんばんは、まとめWiki管理人をしている者です
一応そちらのスレを拝見させて頂きました

その上でお願いですが
結構書きためてあるらしいので、投稿には間隔を開けてくれると助かります
269通常の名無しさんの3倍:2010/04/17(土) 00:02:14 ID:???
ちょっと修正した設定です

新宇宙歴…地球から外宇宙へと最初の移民者が旅立った年を元年とする紀年法(旧宇宙歴は宇宙世紀を指す。どの程度経過したかは不明)

国際連合…新宇宙歴50年代、腐敗の進んだ地球連邦は各国首脳の合意によって解体され、
国際連合として緩やかな繋がりを保った。
しかし実際は、各国は自国の利権目的で連邦を解体しただけであり、
連邦という枠の中で抑えられていた対立構造が表面化する結果となる。

フェニキア共和国…ヨーロッパ地中海沿岸部の国が統合した新国家。
国連本部があることから、国連軍の保有権を主張、精力的に軍備拡張や周辺国家への侵攻を行う。
他のコロニー群から離れ、孤立しているL3を軍事開発基地としている。
主力のMSは、旧暦で数々の伝説を残した《ガンダム》。

地中海危機…新宇宙歴82年、地中海沿岸部にてフェニキア共和国の異なる2タイプの新兵器の性能テスト中
、一機が突如暴走、北アフリカの地方都市に墜落し、爆発と共に市内に電力供給の停止等の異常現象が発生。
一時期、各国家間の緊張が高まるが、結局フェニキアの復興援助によって和解した。
その9年後、北アフリカ全域はフェニキアに併合されることとなる。
事故の原因は不明で、この時に採用されたのが、後のガンダムのプロトタイプである。
270129:2010/04/17(土) 05:26:05 ID:???
>>268
わかりました
向こうが消滅する前に写しますが、ゆっくりとしたペースでやりますね


新地球連邦…アメリカ大陸、東南アジア及びオーストラリアの国家群。
自分達が正統な唯一の地球圏統一政府の後継機関であると主張し、それ以外の独立した国家には参加を促し、
拒否した場合は武力で併合して、規模を拡大して現在に至る。
L4を勢力下におさめており、地球の統一に障害となる〈フェニキア共和国〉、地球圏の資源衛星の
7割以上を独占する〈コロニー・月面都市同盟〉と対立している。
旧暦時代の失われた技術の復元を試み、MSに搭載している。
この陣営の苛烈な侵略戦争は、旧暦技術の性能実験的な意味が大きい。


コロニー・月面都市同盟(仮称)…L1、L5、月の間での経済・軍事同盟。
各コロニー・都市間の結び付きは割とゆるく、他の超大国との戦争時には団結して戦うが、それ以外は
むしろ同盟内部での小競り合いが絶えない。
周囲の宙域の資源衛星の多くを独占し、比較的高性能のMSを量産している。
今のところ、自ら地球に攻めることには消極的である。
271通常の名無しさんの3倍:2010/04/18(日) 03:09:01 ID:???
傭兵派遣機関〈カラーラ〉(仮称)…名前の通り、各陣営を相手に精強な傭兵を派遣して、莫大な利益を手にしている組織。
地球圏では最も外側にあるL2に本拠地を持つ。
この傭兵とは、各地の戦争孤児を拾って改造を施した強化人間である。
MSの製造技術も高く、パイロットである強化人間の専用機が開発されている。
パイロット個々の戦闘能力は極めて高いものの、数そのものは各陣営と比べると圧倒的に少ないため、
単機、又は小隊単位での隠密行動やゲリラ戦、派遣先での戦闘支援を得意とする。
顧客はコロニーや月、大企業が主だが、フェニキアと新地球連邦の領土争いに派遣されることもある。
強化人間の開発には高い技術と莫大な費用が必要なうえ、生きられるのが2、3年程度で、
精神的に不安定になると言われている。
そのため、各陣営では国内での強化人間の研究は、コスト的・世論的にもやり辛く、機関は
信用できる相手ではないものの、表立って敵対することはせずにいる。

エスピレーター…通常よりも脳が活性化していることで、高速思考、優れた反射神経、五感の鋭利化等の
特殊な能力を持った人間。
先天的にエスピレーターとして生まれる場合もあるが、エスピレーターに関わることによって、
常人でも後天的にエスピレーターに覚醒する場合がある。
そして、後天的にエスピレーターとなる場合、4歳前後までの幼児期に覚醒した方が上記の能力は
発達しやすいようだ。
エスピレーターの傾向として、表情や声などの微細な変化を感じ取ることで、他人の思考や感情を
読み取ることに長けている者が多い。
特にエスピレーター同士では、一種のテレパシーとも言えるほどに感情を共有することもある。
この時代の強化人間や、MSのエスピレートシステムは、エスピレーターの能力を軍事に転用する
研究の課程で生み出されたものである。


いろいろ書きましたが、所謂ニュータイプです。
272通常の名無しさんの3倍:2010/04/22(木) 22:20:38 ID:???
規制解除ッ


主人公の案

名前:リアン・アディン
年齢:17
生年月日:10月14日
身長/体重:166cm/48kg
かつて事故のあった北アフリカの地方都市にある孤児院出身の少年。
孤児院の子供達の中では最年長で、『家族』という存在への憧れから、常に子供達の『良い兄』であることを
心掛けている。
アルビノであり、自身の外見へのコンプレックスから、人付き合いのやや苦手な性格。
自分をを含め、孤児院の子供達がエスピレーターであることを自覚している。
ひょんなことから戦争に巻き込まれ、弟や妹達が戦争の道具にされるのを恐れて、自ら戦いに身を投じていく。


名前:エレーヌ・ヴェルファド
年齢:19
生年月日:3月7日
身長/体重:171cm/53kg
リアンと同じ高校の夜間部に通う少女。
施設出身で、幼いころから戦争や兵器などの暴力的なものに興味を持ち、フェニキア軍に入隊したことを
きっかけに、元々良好な関係ではなかった里親とは別居している。
16歳で入隊、演習に於いて類い稀なMS操縦の才能を発揮し、僅か2年半で准尉に昇進、
新型ガンダムのテストパイロットに選ばれる。
この先の昇進には高卒以上の学歴が必要で、留学してきたリアンとは親しい友人となっている。
しかし、世界に戦争が拡大していく中で、知らずしらずのうちにリアン達と敵対する立場となる。
273129:2010/04/26(月) 03:35:16 ID:???
機動兵器

主役機

D-DA-93 ドールガンダム
全高:20.6m
本体重量:56.1t
動力:不明
出力:約6000kw〜約10000kw
装甲材質:ルナ・チタニウム銀複合材(仮称)

詳細:
L3の軍事コロニー〈マーシ〉にて製造されたといわれる、フェニキア共和国の新型MS。
ガンダムの名を冠してはいるが、形式番号が既存のガンダムと異なるため、改良や後継機などではなく、
全く新しいMSであるらしい。
そのためか、カラーリングも赤と橙がメインで、白は控え目となっている。
また、細身で人間に近い従来のフェニキアのMSと比べ、やや骨太なシルエットである。
背部に鎖のような第3の簡易マニピュレーターがあり、先端からは粒子ビームが発射でき、
ビームサーベルも形成可能。
一モビルスーツには有り余るほどの出力、ドール(人形)の名の指す意味など、謎の多い機体。

武装:
肩部45mmバルカン×2
ビームサーベル×2
ビームライフル×1
ジェネレーター直結型レールガン×1
背部可動式粒子砲×1
シールド×1
274通常の名無しさんの3倍:2010/04/26(月) 19:00:23 ID:/8e5wrlg
GJ!盛り上がってきたな
275通常の名無しさんの3倍:2010/05/02(日) 00:05:57 ID:9c8RQDES
久しぶりにキャラデザ
かなり好き勝手ににやらせてもらった

【マイケル】http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda?cmd=upload&act=open&pageid=25&file=%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B1%E3%83%AB.JPG
【ダン】http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda?cmd=upload&act=open&pageid=25&file=%E3%83%80%E3%83%B3.JPG
【ターニャ】http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda?cmd=upload&act=open&pageid=25&file=%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%A3.JPG
【タオ】http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda?cmd=upload&act=open&pageid=25&file=%E3%82%BF%E3%82%AA.JPG
【マオ】http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda?cmd=upload&act=open&pageid=25&file=%E3%83%9E%E3%82%AA.JPG

【シヴォーフ】http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda?cmd=upload&act=open&pageid=25&file=%E3%82%B7%E3%83%B4%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%95.JPG
【カマッセ】http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda?cmd=upload&act=open&pageid=25&file=%E3%82%AB%E3%83%9E%E3%83%83%E3%82%BB.JPG
【デッド】http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda?cmd=upload&act=open&pageid=25&file=%E3%83%87%E3%83%83%E3%83%89.JPG

【アルフ博士】http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda?cmd=upload&act=open&pageid=25&file=%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%95%E5%8D%9A%E5%A3%AB.JPG

【カナン】http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda?cmd=upload&act=open&pageid=25&file=%E3%82%AB%E3%83%8A%E3%83%B3.JPG

【ヴァニナ】http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda?cmd=upload&act=open&pageid=25&file=%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%8B%E3%83%8A.JPG
【ヴァニラ】http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda?cmd=upload&act=open&pageid=25&file=%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%8B%E3%83%A9.JPG

【アーロン】http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda?cmd=upload&act=open&pageid=25&file=%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%B3.JPG

【エリス】http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda?cmd=upload&act=open&pageid=25&file=%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%82%B9.JPG
【ハンス】http://www8.atwiki.jp/gundam_dollda?cmd=upload&act=open&pageid=25&file=%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%B9.JPG
276代理:2010/05/14(金) 22:09:03 ID:nzQWSBDI
規制解除されたので念のためWikiより転載します

機動兵器

D-Db-104 カラドボルク
全高:17.2m
本体重量:49.2t
動力:熱核反応炉
出力:6200kw
装甲材質:ルナ・チタニウム銀複合材

詳細:
フェニキアの新型可変モビルスーツ。
もともとは、ドールガンダムの支援を目的とした戦闘機として開発されていた。
それも、他のMSとドッキングして速力を高めることを主目的としていたため、戦闘機形態時の速力は、
他のMSの追随を許さない程に高い。
ただ、小回りが利きづらいといった欠点もあり、状況に応じてMS形態に変形する必要もある。
ある事情により、開発期間が短かった経緯から、専用の銃器類は製造が遅れた上に外付けとなり、
エネルギーが切れるとデッドウエイトと化すため、結果として近接戦闘特化型となってしまった。
この機体の特徴として、装甲外部にシールドを兼ねたビームを纏い、敵機に体当たりしてぶち抜く、
ある意味可変機本来の一撃離脱戦法を突き詰めた武装〈B.U.L.L.E.T〉がある。

武装:
ロングビームサーベル×1
ショートビームサーベル×2
脚部ビームサーベル×2
〈B.U.L.L.E.T〉×1
粒子錯乱機雷×6
シールド×1
オプション:
ビームキャノン×1
ビームピストル×2

277代理:2010/05/14(金) 22:09:46 ID:nzQWSBDI
機動兵器

PMS-606 ガンダム
全高:18m
本体重量:57.4t
動力:熱核反応炉
出力:3920kw
装甲材質:ガンダリウムχ

詳細:
フェニキア軍の主力モビルスーツ。
前史に於いてもはや伝説と化した《ガンダム》にあやかって製造された。
旧暦のガンダムの資料が殆ど残っていなかったため、似ているのは外見のみで、内部構造は殆ど別物である。
他の陣営のMSと比べてビーム武装が多く、逆に実弾系の武装は少ない。
基礎フレームは共通だが、固定装備の違いで標準型(TYPE-E)、砲撃型(TYPE-B)、近接型(TYPE-F)に分けられ、さらにパイロットの適正やミッションに合わせて多数の装備バリエーションがある。

武装:
50mm頭部バルカン×2
ビームサーベル×1
ビームライフル×1

TYPE-E:
背部高出力ブースター
ビームマシンガン×1
サブビームサーベル×1
シールド×1

TYPE-F:
脚部補助ブースター
大型ビームソード×1
胸部ビームバルカン×1
バックラー型シールド×1
掌部ビーム発生装置×1

TYPE-B:
腹部粒子砲×2
ビームバズーカ×2
小型ミサイルポッド×1
大型シールド×1

278通常の名無しさんの3倍:2010/05/20(木) 23:15:07 ID:c9Qd1NY3
上げ保守。

ホシュガン続きかけない。
279通常の名無しさんの3倍:2010/05/23(日) 20:49:00 ID:02YxaiWV
孔雀拾参式(くじゃくじゅうさんしき)
地球連邦軍のMS。
背中にミラージュ・ファンネルを搭載している。

【ミラージュ・ファンネル】
種のミラージュ・コロイド技術を応用して作られたファンネル。
レーダーや肉眼では認識できない程度のステルス機能を持つ。

280通常の名無しさんの3倍:2010/05/29(土) 23:57:16 ID:lKNRk0WQ
00の次のガンダムシリーズスレにこのスレの機能は奪われたな
281代理:2010/06/01(火) 15:46:05 ID:YuqutZ5Y
機動兵器

KL-C-26 ウォンビ
全高:19.2m
本体重量:66.2t
動力:熱核反応炉
出力:3780kw
装甲材質:ガンダリウムχ

詳細:コロニーおよび月で現在主力となっているMS。
頭部のメインセンサーはゴーグル式で、宇宙空間での戦闘に特化した性能。
月面などでは地上戦用の追加装備で対応している。
メイン武装のアサルトライフルは、ビームモードとリニアガンモードに切り替えが可能。
旧式化が進んでいるが、各武装の性能は他陣営の現役量産機のものと同等以上の性能を誇っており、後継機のブナンでの使用も充分に可能。

武装:
アサルトライフル×1
掌部ビームバルカン×2
ビームサーベル×1
プラズマツインランス×1
グレネードランチャー×1
シールド×1
282代理:2010/06/01(火) 15:47:31 ID:YuqutZ5Y
KL-E-60 ブナン
全高:15.3m
本体重量:48.9t
動力:熱核反応炉
出力:4020kw
装甲材質:ガンダリウムχ

詳細:
コロニーおよび月の企業間で共同開発された新型MS。
まだ生産数が多くないため、部隊長やエース級のパイロットに優先的に配備される。
旧来のMSと同等以上の出力を維持しつつ、機体サイズの小型化に成功している。
機体自体は小型だが、各武装は旧式のウォンビのものを使用しており、機体サイズにしては大型な武装が多い。
専用装備の開発が追い付いていないのが現状だが、それでもなお、総合的な性能は量産機としてはかなり高いレベルでまとまっている。

武装:
アサルトライフル×1
掌部ビームバルカン×2
ビームサーベル×1
プラズマツインランス×1
グレネードランチャー×1
シールド×1
283通常の名無しさんの3倍:2010/06/02(水) 23:08:30 ID:+1t2hLuw
保守兼書き込みテスト
プロローグ+第一話で200レス分くらい書きためたけど、間隔開けて投下したほうがいいかな?
284129:2010/06/03(木) 13:29:11 ID:???
やっと規制解けた…
代理の人達本当にありがとう。

機動兵器

MS-S-66 ズ・ヌーダ
全高:19m
本体重量:63.0t
動力:熱核反応炉
出力:3280kw
装甲材質:ガンダリウムχ
詳細:
新地球連邦の宇宙戦線における主力MS。
単眼式センサーと、箱を積み上げたようなカクカクとしたシルエットが特徴。
ジェネレーターの出力では他の陣営に若干劣るものの、シンプルで信頼性の高い武装と生産性の良さが売り。
機体の内部構造には余裕があり、旧暦の技術を再現した武装やシステムが試験的に装備されることもある。

武装:
ビームライフル×1
ビームスピア(高周波ブレード付き)×1
ヒートソード×1
70mm腕部リニアマシンガン×1
シールド×1
粒子錯乱機雷×12

追加機能:
Iフィールドドライブ(推進剤不要の航行機能)
脳波感知センサー
粒子残像発生機
285129:2010/06/03(木) 13:34:20 ID:???
>>283
確か、連続でのレスは10回までだった気がする。
支援するので、どんどん書き込んでいいと思う。

機動兵器

MS-G-66 ズ・ザキア
全高:19m
本体重量:64.1t
動力:熱核反応炉
出力:3310kw
装甲材質:ガンダリウムχ
詳細:
新地球連邦の地上戦主力MS。
重力下、とくに1G圏内での運用を想定して製造されている。
ズ・ヌーダ、ズ・ザキアともに素体が同じなので、若干の改造で地上・宇宙の両方に対応でき、装備の使い回しも可能。
ズ・ヌーダと同様に、機体の構造には余裕があり、旧暦の技術を再現した武装が装備される。
この機体に装備される地雷は、特殊素材を使用して作られており、MSのセンサーにかかりにくく、対人兵器としても十二分に威力を発揮する。

武装:
ビームライフル×1
ビームスピア(高周波ブレード付き)×1
ヒートソード×1
70mm腕部リニアマシンガン×1
シールド×1
対MS地雷×24
286機動新世界ガンダムDoll-DA 0-1:2010/06/05(土) 13:21:26 ID:???
邪気眼ドルダ投下します。長いです。


昔話


 これは、遠い昔の話です。
「われわれに似るように、われわれの形に、これを創ろう」
 天と地を造った神様は、天には天使たちを、地には人間たちを住まわせました。
天使たちは大空の上で光り輝き、地上を照らしました。
地上の人間たちは、神様の用意した食物を食べて暮らしました。神様は人間たちに告げました。
「お前たちは土から生まれたのだから、いつかは土に帰らなければならない。だが私は、お前たちが居なくなるのを望まない。
私はお前たちを、男と女に分けて造った。男と女が結び合い、一体となれば、お前たちは新しく生まれることが出来る。
だが、お前たちは無限にあってはならない。なぜなら、私だけが無限だからだ」
 そうして、神様は人間と食物の数を定めて、人間たちを戒めました。
 人間たちは、生み、増え、地を満たしました。ですがいつしか、人間たちは神様の戒めたことを忘れてしまいました。
神様の定めた数を越えても、人間たちは増え続けました。
 食物が足りなくなり、人間たちは餓えました。そうして、やせ細った腕を大空に掲げると、神様に頼みました。
「神様。私たちを救ってください」
 神様は答えました。
「お前たちは私の命じたことを守らなかった。だが、私はお前たちが苦しむのを望まない。
なぜなら、お前たちを愛しているからだ。我が子らよ、煉瓦を作れ。それで、頂が天に届く塔を建てよ」
 人間たちは神様に言われた通りにしました。
天使たちの光を土に照らして、煉瓦を作り、その煉瓦を積み上げて、塔を建てました。
塔の頂が天に届くと、神様は言いました。
「この塔は柱となり、天と地を支える。この塔は道となり、天と地を結ぶ」
 すると、食物を持った天使たちが、塔を伝って降りて来ました。
 食物が全ての人間に行き渡ると、神様は人間たちに告げました。
「お前たちは満腹した。お前たちは餓えなくなった。お前たちは救われた。だが、もはやお前たちは増えてはならない。
お前たちの数は、私の定めた通りでなくてはならない」
 ですが、人間たちは神様の言葉を守りませんでした。男たちも女たちも満腹すると、結び合うことを楽しみました。
287機動新世界ガンダムDoll-DA 0-2:2010/06/05(土) 13:23:16 ID:???
 人間たちは地に溢れました。天使たちが食物を運んでも足りなくて、再び餓えました。
大きな人間が小さな人間を手に抱えながら、神様に頼みました。
「神様。私とこの子を、救ってください」
 神様は答えました。
「我が子らよ、私の命じたことを守れ」
 食物を得られなかった人間が、神様に言いました。
「神様。私はこのままでは、飢え死にしてしまいます」
 神様は答えました。
「我が子らよ、私の命じたことを守れ」
 あるとき、一人の人間が、別の人間に囁きました。
「空の上、天使たちのところには、食物がたくさんあるに違いない」
 人間たちは互いに相談すると、天を渡る船を作り、それを担いで塔を登りました。
塔の頂に来ると、空に船を浮かべて、光り輝く天使たちのところに向けて漕ぎ出しました。
果たして人間たちの思った通り、天使たちのところには無数の食物がありました。
 人間たちは次々と船を作り、空に浮かべました。そして、天使たちのところに行って食物を食べ、満腹しました。
 あるとき、一人の人間が天使の体を齧りました。はしゃぐあまり、食物と間違えたのです。
「これはうまい」
 人間たちは天使の味を覚えました。体を食べられた天使たちは、地上に落ちました。
それ以来、人間たちはこうした天使たちを動物と呼び、ものを作るのを手伝わせたり、食物にしたりするようになりました。
翼を無くした天使は獣と呼ばれ、手を無くした天使は鳥と呼ばれ、足を無くした天使は魚と呼ばれました。
一番多いのは頭を無くした天使たちで、小さい天使は草と、大きい天使は木と呼ばれました。
そして、この天使たちは人間の噛み痕が付いたことで、人間と同じように、生み、増え、地を満たそうとし、土に帰らなければならなくなりました。
まだ人間たちの手に触れられず、大空に浮かんでいる天使たちは、星と呼ばれました。人間たちは星に憧れました。
なぜなら、美しく輝く星たちこそ、まだ食べていない、食べるべきものなのです。
 またあるとき、人間たちは人間の味を知りました。
これは天使たちのときのように知らずに食べたというのではなく、一つためして見ようという気がしたからです。
あまりの美味しさに、人間たちは互いを食べ合うようになりました。
そして、人間たちは多くの味を知るとともに、いっそう簡単に、いっそう沢山の別の人間を食べる術も知りました。
この術を行うことは、争いと呼ばれました。
288機動新世界ガンダムDoll-DA 0-3:2010/06/05(土) 13:26:53 ID:???
 天は争いで満ちました。
大空に浮かぶ船は、もはや天を翔るばかりの乗り物ではなく、天使や他の人間を食べるための道具になっていました。
人間たちは星々の間で、互いに争い、嘘を付き、そして、天使たちを弄びました。
ですが、そう気侭にしていながら、人間たちはいっこうに満足できなかったのです。
人間たちは絶えず不満で、誰しも、自分こそが一番不幸な者だと感じていました。
 神様は、人間を創ったことを悔やみました。そして、全ての人間たちを地上に集めると、告げました。
「お前たちは堕落した。天は暴虐で満ちている。お前たちの心はみな、いつも悪いことだけに傾いた。
私はお前たちの心が良くなるまで、天を鉄の蓋で覆い、地に縛り付けよう。
それまでは、我が子らよ、お前たちは、お前たちの損なった天使たちとともに、苦しんで生きなければならない。
汗を流して、自ら糧を得なければならない」
 こうして、灰色の壁が空を覆い隠し、人間の世界は閉ざされてしまいました。
今でも人々は、かつて無限に広がっていた空や、星々の輝きを想って悲しみます。
そして、壁の向こうには天使たちが暮らしていて、そこでは人間や動物たちの暮らす地上と違い、何の苦しみもなく、幸せに生きて行けると伝えられています。



289機動新世界ガンダムDoll-DA 0-4:2010/06/05(土) 13:28:40 ID:???
 機動新世界ガンダムDoll-DA
プロローグ 人形の家

偶像はしろがねとこがねでかざられた人の手のわざである。
口があっても語れず、目があっても見えず、耳が合っても聞こえず、その口には息がない。
これを造る者もこれを信ずる者もまたこれに等しい。
――詩篇一三五

 鐘の音が響いている。舗装の上を労働者らしき人々が列を作って歩いている。
どれもやせこけ、機械労働で酷使された人間に見られる不均等な体つきをしている。
彼らは皆一様な顔立ちをしている。皆が皆一卵性の兄弟とも思えるくらいに似通っている。
彼らの表情に憔悴は見られない。労働の喜びや衆を頼む高揚感も浮かんでいない。
 別な労働者の群がすれ違った。こちらは先の労働者とは顔立ちが違っている。歩みはやや遅く、動作の中に疲労が見え隠れしている。
おそらく退勤の組であろうが、家路を急ぐというでもなく、出勤組と同じ能面顔で、ただ鐘の音にあわせて手足を動かしているに過ぎない。
代わり映えのしない人々の観察を続けたところで得るものは少ないであろう。
しかし別な印象を期待して町並みに目を転じても、全く同一の建造物が碁盤縞に並んでいるばかりである。
同じ幅の路面が敷かれ、同じ高さの建物に同じ数の窓が並び、歩行者の群も遠目では別のそれと見分けが付かない。
路面には紙くず一つ落ちていない。よくよく訓練されたように一糸乱れない人々の様子を見るに、清掃人が勤勉というばかりでもなさそうである。
こうなると町のどこに立っても均一の景観に出会いそうに思えたが、この合理的な都市計画を練った者が親切心を利かせたのか、町の中央に一風変わった区画が作られている。
ひときわ大きな二本のビルが突き出ていて、灰色の壁がそのぐるりを囲んでいる。
二本のビルの屋上にはちょっとした意匠が凝らしてあった。この摩天楼は町の顔というような役割を担っているのかもしれない。
 壁の内側では身長にして労働者十人分ほどのロボットが幾体も立ち並び、その周りには小銃をもった人間がうろついている。
彼らは先の労働者たちとは異なり骨格ががっしりとして、背丈も二回りほど大きく出来ている。
容姿はやはり瓜二つで、どれも愚鈍そうな顔立ちをしている。彼らは摩天楼の警備を勤めているのであろうが、どういうわけか物々しさはあまり感じられない。
290機動新世界ガンダムDoll-DA 0-5:2010/06/05(土) 13:31:03 ID:???
 鳴り渡っていた鐘の音が止み、塀の外では人影が消えた。その代わり町中から獣の唸り声に似た機械音が聞こえ始める。
おそらくこの町は一個の工場なのであろう。鐘の音は交代の合図で、機械に潤滑油を差す如く労働者を取り替える。
その労働者というのも工場で大量生産される製品と同じく、一様の外見をして一様の行動をする。
めいめい異なった人々を使うより能率が良いに違いない。生産的でないのは塀の中の中央区画ばかりである。
 その不経済を産業主義の神が憂えたのかもしれない。
産業革命時代のプロレタリアートの切なる祈りが高等詐欺的金儲け主義への呪詛と化し、お役所仕事さながら幾時代も経た今となって報いられたのかもわからない。
このとき突如として灰色の空が割れ、真紅の光が摩天楼を貫いた。
 光の帯は標的と思わしき二本の摩天楼ばかりでなく、射線上にあったいくつかの工場をも巻き込んでようやく消失した。
光は閃くようなものであったが、爆煙は大掛かりなものである。
それほどの威力でありながら、ビルがすぐさま倒壊する気配はなかった。そうなるよう威力を加減したのかは定かでない。
轟音と殆ど同時に、ロボットと兵士たちは一斉に銃口を空に向けていた。
落ちて来た瓦礫の下敷きになる者も少なからずあったが意に介さず、施設の被害の規模すら確かめる様子がない。
思うに彼らの動作は状況を判断してのことではなく、訓練によって高度に条件付けられた反射行動であろうけれども、襲撃の前後で顔色に変わりがないというのも妙である。
 先ほどまで何も見られなかった上空には巨大な飛行艦が浮かんでいた。その飛行艦は一見したところ飛魚のような輪郭をしている。
胴体から延びた大小一対ずつの翼が淡い緑色の微光を放ち、その船体の大きさにもかかわらず空中で制止していた。
魚でいう腹は開かれていて、砲塔らしきものが地表に向けて突き出ている。赤い光はそこから放たれたに違いない。
高度は倒壊しかけたビルの中ほどで、対空砲火を行う側にしてみれば具合のいい的であるが、地上から放たれた弾丸は直進せずに船体を避ける弾道を描くばかりで命中することはなかった。
飛行艦の姿が逃げ水のように揺らいで、そのたびに弾丸が逸れるのである。
291機動新世界ガンダムDoll-DA 0-6:2010/06/05(土) 13:32:22 ID:???
 飛行艦から妙な音楽が流れ始めた。音楽といっても、楽器によって演奏される類のものとは思われない。
肉声とも雑音とも付かぬ音の組み合わさった音楽で、その調子は先だって町に響いていた鐘の音に通じるものがある。
 銃声が止んだ。弾切れを起こしたのではなかった。自ら攻撃を中止したのである。
それから間もなく飛行艦の下部ハッチが開いて、数体のロボットが身を投げた。

292機動新世界ガンダムDoll-DA 0-7:2010/06/05(土) 13:33:44 ID:???
 赤い水面に波紋が広がる。波紋は一つではなく八方から広がって来て、それらが互いを打ち消しあう。
水音はほとんどない。波が絶えず一定の間隔で生じ、一切乱れないからである。
水面から目を上げるとそこがすり鉢型をした広壮な施設であるのがわかる。
すり鉢の底は赤い液体のプールで、傾斜した壁面を、その地肌を隠すまでに膨大な本数のパイプが覆っている。
パイプは水面から延びていて、水面から離れるにつれて先細りになって行く。
一本一本のパイプは一見して木の根に似ているが、自然の木の根のように手探りで枝先を這わしているのではなくて、規則立った仕方でめいめい気を遣いながら身を伸ばしている。
そうした結果、白亜の彫刻のような観を呈している。
一定の間隔を置いてパイプの避けて通る窪みが幾つもあり、その窪みにはそれぞれ子供の背丈ほどの大きさのカプセルが据え付けてある。
カプセルは赤い液体で満たされていて、その中に、四肢の無い人間らしき輪郭が微光で透いて見える。
起伏のなだらかさを見るに第二次性徴を終えてさほど経っていない少女と思われた。
赤い液体に浸った彼女たちは時折、首と腰とで身動ぎする。
もし四肢があったなら、狭いカプセルの中では寝返りも満足に打てなかったろう。相当な窮屈を感じるに違いない。
子宮に合わせて手足を切り詰めたことが彼女たちにいかなる影響を及ぼしているかはわからない。
赤い液体の透明度では、体の線は捉えられてもその表情までは読み取れない。
しかし幸福そうな顔をして幸福な夢を見続けていると想像するほうが、能面のような顔を思い浮べるより穏便といえよう。
 静寂が破られる。カプセルを固定するとともに赤い液体を供給する補助アームが外れたのである。
微かで短い機械音であったが、耳の痛くなるほどの静寂を常態とするこの空間では、それは山彦のように響き渡った。
水面の波紋が乱れる。僅かな間を置いて天井から三本のクレーンが下りて来る。
クレーンたちは無数のカプセルから三つのカプセルを選び取り、それらを慎重な手つきで持ち上げて行く。
天井に空いた大穴の暗闇にカプセルが消えた。機械音が途切れる。
波紋の乱れで水面が波打つ音も、じきに補正されて消えてしまう。
残る無数のカプセルは以前と何ら変わりなくそこにあり続け、少女たちも眠り続ける。

293機動新世界ガンダムDoll-DA 0-8:2010/06/05(土) 13:36:47 ID:???
 ベンセレム第七管理局局長ポスト・フェストゥムが指令部に入って来たとき、真っ先に直立不動の姿勢をとったのは指揮官を務める男性型イェニチェリー・モロンであった。
「お疲れさまであります! ポスト・フェストゥム局長閣下!」
 きんきんと響く声色で彼がお決まりの文句を発し終えるのと同時に、管制に当っていた数十体のモロンも立ち上がって気を付けをし、同様の文句を朗誦した。
ポストは整然と配置された端末と見やすく工夫された大型モニター、それから彼の目を凝視するモロンたちの姿をざっと見渡すと、
右腕を上げて握り拳を作り、人差し指と中指の隙間から親指を突き出して見せた。仕事に戻れという合図である。
先のイェニチェリー・モロンも含めた全てのモロンたちが即座に向き直り、主人であるコーディネイターから下された至上命令に従い何事もなかったように各々の作業を再開する。
実際にモロンたちの意識からしてみれば、ポスト・フェストゥムというコーディネイターが顔を出したことなどあって無かったようなものである。
ポストは手近なところにいる一体の女性型モロンに目をやった。彼女はオペレート用に製造されたモロンである。
やはり端末の前に整列して順調に機能し続けている。両隣で作業をしているモロンと同型であるから、肌の染みなどの後天的で瑣末な相違点を除けば一様な外見をしている。
顔立ちは彫りが浅すぎ、背丈もコーディネイターでいえば幼年期ほどである。
辛うじて人の形をしているが、その一般的な価値をいうならば、彼女ら自身が操作している端末の部品の中でも最下等の部品に過ぎないといえる。
『アメタペイスト各機、固定完了。起動作業開始』
 見目の良いアナウンス用モロンがよく通るがこしらえ物めいた音声を発すると、ポストは観察の目を大型モニターに転じた。
モニターには黒いロボットが三体映っている。
294機動新世界ガンダムDoll-DA 0-9:2010/06/05(土) 13:39:32 ID:???
 人間を十倍したほどの大きさのそれらは、MS(モビルスーツ)と呼ばれる乗り物の一種である。
MSとは移動手段やスポーツなど、屋外での娯楽に用いる乗り物で、成人コーディネイター一人あたり最低一機は所有している生活必需品である。
しかしモニターに映っているMSは日ごろ町で見かける民生品とは毛並みが違い、コックピットのある胴体が小さく、人間に近い体つきをしていた。
まず目を引くのは足首まで届くほど大型のスカートユニットである。
前後左右の四つに分かれ、足の可動を邪魔しないためか前方の一つは他の三つに比べて小ぶりに出来ている。
その体は、甲冑じみた黒いカウルで覆われているが、二の腕と太腿のところでは細いフレーム部分がむき出しになっているために、ひどく華奢な印象がある。
スカートユニットの縁、手首、首周り、胸元、肩の上部といったところはひだの付いた白色の特殊装甲になっていて、黒ずくめのなかでは際立って見える。
蓋しこのMSの設計者はビスク・ドールの類を意識したのであろう。
事実三機のMSの肩にはそれぞれDoll-Aという文字と二桁の機体番号が書いてある。
全体として実用性よりか見栄えを重視したのではあるまいかと思われる外貌であった。
 一昔前なら商品価値が生じたかもしれないが、ゴルフクラブやフットボールシューズなどのスポーツ用品すらなく、
アイスクリームメーカーといった最低限のオプションさえ付いているかも疑わしいこの手の代物は、もはや流行おくれも甚だしい。
各々の部品の精度や仕上げの細やかさは一驚に値するとはいえ、現代大衆の好みに合うかと問い詰められれば、設計者はシャッポを脱がねばならないであろう。
『コックピットハッチ展開』
というアナウンスとともにその胸部装甲が割れて、人ひとり入れるかもわからない広さのコックピットが外気に晒される。
胴体の大きさからしてオーディオ機器やバスタブがあるのは期待できないけれども、リクライニングシートすら見当たらなかった。
卵形の小部屋のあちこちから端子らしきものが突き出ているばかりである。
295機動新世界ガンダムDoll-DA 0-10:2010/06/05(土) 13:41:03 ID:???
『CPUセミ・モロン、挿入』
 天井にぶら下がっていた三本の運搬レールが降りてきて、コックピット内部から延びた補助レールと連結する。
異常の無いのを無数の作業用モロンたちが確かめると、格納庫に三つのカプセルが運ばれて来る。
カプセルは結構な速度でレールを走っていたが、コックピットに近づくにつれて減速し、最後は作業用モロンたちの手作業で静かにコックピット内部に滑り落ちて行く。
コックピットの底にたどり着いて各部の接続が済むとハッチが閉まり、サブウインドウが開いて内部の様子が映し出される。
『高濃度流体スメッグ、排出』
 スメッグと呼ばれた赤い液体が排出されて、中のものがはっきり見えるようになる。艶のない白色の髪をした少女たちである。
顔の作りや胴体の起伏の具合は、成人する一歩手前ほどの年頃のものである。
肌の色合いは、静脈が目立つくらいに希薄である。これは先天性のものではなく成育の環境によるものであろう。
四肢の付け根であったところには黒い円盤が嵌め込まれているに過ぎないが、
本来起こるべき筋肉の退化は見られなくて、手足の無いことに目を瞑ればそれなりに均整の取れた体つきであるともいえる。
三人の少女たちは覚めているのか眠っているのか分からない琥珀色の目を虚空にさまよわせながら、だらしなく口を半開いていた。
『体内スメッグ、中和』
 少女たちの目が見開かれた。脳の働きを麻痺させていた薬品を中和されたことで、少女たちは全身を激しく痙攣させた。
四肢がないため小刻みに揺れるばかりである。拘束の必要もない。
 白痴の顔から一転して少女たちの表情が理性動物らしく整うと、他のモロングループとは違って、それぞれの顔や体の作りにそれなりの差異があることが目に付き始める。
Doll-A69の少女は僅かながら胸部の発育が別の二人より進んでいるし、Doll-A27の少女はやや鼻が高く額が広い。
Doll-A07の少女はといえば、胸部、腹部ともに肉付きがいささか心もとないが、顔立ちは最もコーディネイター好みであるといえた。
296通常の名無しさんの3倍:2010/06/05(土) 14:46:25 ID:???
頑張れ〜
297機動新世界ガンダムDoll-DA 0-11:2010/06/05(土) 15:03:19 ID:???
 四肢の付け根の円盤が端子に接続され、生理状態に合わせた調整が始まったとき、ポストは司令部のモロンたちの様子を観察し始めた。
セミ・モロンの少女たちがモニターに映ったあたりから、なにやらいつもと違った気配を感じたのである。
ありふれた大量生産モロンたちに異変は見られない。皆が皆真剣な顔つきでせわしげに働いている。
アナウンス用モロン、情報処理用モロンといった割合高価なモロンたちも正常に機能している。
最も値の張るセミ・モロンの少女たちも同様である。ポストは半ば確信を持ってイェニチェリー・モロンへ歩み寄った。
前に回って顔を見ると、やはり異常が見つかった。彼は唇の端を少し開いて、モニターのDoll-A07の少女を凝視していたのである。
ポストはイェニチェリー・モロンの名札に書いてある文字を読み上げた。
「ザリー・マッカティン君」
「御用でありますか、閣下」
 イェニチェリー・モロンの特権として与えられた固有名詞を呼ばれて、ザリー・マッカティンは規定された通りの条件反射を示した。
「君は今、何を考えていたのだね」
 ザリーは即座に答えた。
「申し訳ございません。E37564ザリー・マッカティンには、そのように高度な思考をする能力が備わっておりません」
 これも規定通りの条件反射である。
「Doll-A07のセミ・モロンに、何か思うところがあるのかね」
「申し訳ございません――」
 言葉を変えて質問してみても、ザリーは先ほどと同じ答えを返すだけであった。
〈自覚症状は無いか。優秀過ぎるのも考えものだ〉
 ポストは拳から親指を出す例の仕草をしてザリーを仕事に戻らせた。
298機動新世界ガンダムDoll-DA 0-12:2010/06/05(土) 15:08:22 ID:???
『アメタペイスト全機、エランバイタル安定。神経電位接続完了』
 モニターを見れば、三機のアメタペイストは既に発進準備を済ませてポストからの命令を待つばかりとなっていた。
キロプティーランスと呼ばれる細長い円錐型をした武器を両手で構え、いくぶん前かがみの姿勢をして、スカートユニットを後に向けて広げている。
「アメタペイスト、出撃」
 ポストは大仰な動作でもって右腕を右斜め上方へ払った。
アメタペイストが完全に起動し、全身に張り巡らされた溝がエメラルド色に発光する。
スカートユニットの後方の空間が微かに歪んだ。けれども空間に生じた波紋を監視カメラが捉えた一瞬後にはアメタペイストの姿は無い。
立て続けに広がった波紋の痕跡が発進口方向へ伸びているばかりで、その蛇腹にしても数瞬間で消えて行く残像に過ぎなかった。
299機動新世界ガンダムDoll-DA 0-13:2010/06/05(土) 15:14:36 ID:???

 夕凪が終わった。
 大気はいよいよ澄み渡り、空の色付きが薄らいで行く。夜の到来を前に虫は慌てて喋り散らし、犬は焦れて遠吠えする。
微風に撫でられて、葦たちですらものを言い始める。
草むらに打ち捨ててある割れ瓶は、自分だけ声を出せないせいか、中に溜まった雨水を揺らして不服そうにその割れ目を光らしている。
 草の上に寝ころんでいる青年も周囲の興奮に中てられたのであろう。
彼は隣の女性の注意を惹くべく、独り言のような口ぶりをして言った。
「君に、本当の空を見せてやりたいんだ」
 彼は空に手をかざした。もはや青空は無かった。千切れ雲の後ろには、灰色の天蓋がむき出されていた。
天蓋は表面にある無数の電飾を瞬かせながら、その日の勤めを果たし終えようとしていた。
真昼ではどこまでも続いて行くように思わせた空は、今になって機械部品の壁という本来の姿を取り戻し、開放感を閉塞感にすり代える。
夜が訪れると、人々は家の中へ逃げ込む。小なる不自由でもって大なる不自由を忘れんがためでないとは言い切れない。
青年は舞台装置の向こう側にある光景を思い浮かべながら、伸ばした手で空を掴んだ。
「自由を、外の世界を」
 彼がどのように空想を弄んでいたのか定かではない。
虹色の空間や目を開けていられないほどの眩さといった未知の視覚を想像したのか、
いかがわしいパンフレットに書いてあるような物質的幸福に満ち満ちた天上の楽園という類のものか、
さもなければ当人が語りかけている女性に関連した空想であろう。
青年客気の特質を鑑みて、おそらく最後のものが有力と思われる。
300機動新世界ガンダムDoll-DA 0-14:2010/06/05(土) 15:16:17 ID:???
 彼は微かな衣擦れの音が聞こえた気がして、彼女のほうを覗き見た。彼女は俯いていた。
天蓋から発せられる人工光は途絶えつつあり、彼女の顔は暗がりで見えなかった。けれども彼は彼女の無言の抗議を感じたらしい。
彼は自分の決意の正しさを確信していたが、信念が固まるほど良心の咬む力も弱まるとは限らない。彼は視線を逸らした。
 間もなく夜になった。山の向こうには天蓋へと繋がる長大な柱が見え、そこの電灯から発せられる淡い光と家々の灯りとが暗闇を和らげていた。
 彼は彼女との別れ際に言った。
「無事に帰って来られたら、そのときは――」
 彼の申し出は早急に過ぎたと言う人があるかもしれない。
しかし、人生の半分にかかわる決定となると若気のあやまちからでなくしては絶対に出来かねぬものではない。
男女の情においては殊にそうである。

 感じやすい青年にとって色事の思い出は餓えて口にした生米のようなもので、噛めば噛むほどいい味がする。
彼は戦い前の不安を紛らわすために、かつての恋人であり現在の婚約者である女性のことを心に思い描いていたのであった。
「――シヴォーフ、おい、シヴォーフ。同志シヴォーフ・ラーグ」
 青年の夢想は彼の名を呼ぶ野太い声で中断させられた。
301機動新世界ガンダムDoll-DA 0-14.5:2010/06/05(土) 15:19:00 ID:???
 引き戻された現実では、彼自身はMSの窮屈なコックピットに座していて、彼の真正面では通信用サブウインドウが最大で開かれ、その額縁の中は男の顔面で占められていた。
むさくるしいことこの上ない。男の顔には不均等な長さの無精ひげが散在し、長らく手入れされていないであろう眉毛は眉尻で乱れている。
近年後退を開始した生え際の付近には、生気を失いつつある軟弱な縮れ毛が幾本か肌に張り付いている。
ものの哀れを思わせるより聊か不潔な感じがあった。
『我が同志君、お昼寝中たいへん申し訳ないがそろそろ到着時間だ。ついでそちらの機体も起こしてくれると助かる』
 嘲るような調子の声色である。シヴォーフは膝に置いてあったインカムを付けると少し強い語調で言った。
「わかってますよ。同志、バッシュ・ビッシュさん」
 バッシュは黄ばんだ目をわざとらしく細めた。
『誰が同志だ。一丁前に党派心出しやがる』
「あなたから仕掛けた嫌味でしょうが」
 この与太者じみた先輩とのやり取りで真っ当な受け答えを期待してはいけない。
シヴォーフはバッシュ・ビッシュという男について、知能が中学生のまま成育してしまった中年男性という印象を持っていた。
それでいてシヴォーフと十も年が違わないのであるから、人間の個体差というものは恐ろしい。
 シヴォーフはバッシュをあまり好いていなかった。
それは単なる毛嫌いという他に、シヴォーフ自身にも気付けない程度に根の深い嫉妬が遠因である。
MS操縦に関する教師と教え子という関係や、組織内でのバッシュの権威が無かったなら、
或いは彼自身がバッシュと同程度に廉恥心が欠如していたならば、彼は公然とバッシュに食ってかかったかもしれない。
シヴォーフは実戦の経験は皆無であったが、単純な操縦技量ではとっくにバッシュを上回っていると自負していた。
シミュレーターでも八割方勝利できる。シヴォーフにしてみれば、そのことだけでもバッシュを口先だけの役立たずと侮り、軽蔑するには充分であった。
302機動新世界ガンダムDoll-DA 0-15:2010/06/05(土) 15:25:32 ID:???
 シヴォーフの乗るMS、NAS-97ティハターンの起動作業が完了し、モニターに格納庫の光景が映し出される。バッシュのMSが動き出すのが見えた。
バッシュの乗る機体はCOS-Kキルケニーといって、ティハターンとは違い、コーディネイターの廃棄したレジャー用MSを改修した機体である。
粗大ゴミを弄ったものというと聞こえは悪いが、その性能は侮れるものでは到底ない。
貧弱な技術力で開発されたティハターンなどのNASタイプに比べれば、COSタイプのMSはオーバーテクノロジーの塊ともいえるのである。
この貴重なCOSタイプを搭乗機にしているのが自分ではなくてバッシュであるという事実も、シヴォーフが彼を厭う根拠の一つであった。
 キルケニーは熊と猫とをかけ合わせたような躯体を起き上がらせた。
丸っこい二つのメインカメラと三角形の二基のアンテナ、それからぬいぐるみめいた体型とが相まって、猫をモチーフにしたマスコットを連想させる。
しかしその左腕のパイルバンカーユニットはティハターンの胴体を容易に貫き、右腕の火炎放射機は死体を片付ける手間を省かせる。
元は居住ユニットであった大型バックパックはガトリングガンユニットに換装され、機動性が増すとともに移動砲台の役割を果たせるようになっている。
勿論、ずんぐりした体型に見合って装甲も頑強である。コストパフォーマンス以外でティハターンの勝っているところといえば、人型MS特有の汎用性くらいなものである。
その汎用性にしたって器用貧乏の域を出るものではない。頼りない五指が握れる銃火器の威力はたかが知れている。
 シヴォーフたちの機体を含めて八機のMSが荷物搬入用の大型ハッチの前に整列した。
 八機のうち五機がティハターンで、二機がキルケニー、そして一機だけCOS-DディズンというMSである。
キルケニーと同様、このCOSタイプのMSも純粋な人型をしていない。瓜の実が手足を生やしたような体つきをしている。
その四肢は柔軟性と頑強さを併せ持つ多重関節となっていて、いかにも子供が落書き中にとって付けたという印象がある。
頭部には二基の大型レドームを搭載し、キルケニーが猫ならばこちらは鼠といった按配であるが、性能に関してその比喩は当てはまらない。
換装機能を持たず、武装が両腕のアイアンネイルと腹部機関砲二門という固定武装に限られている代償に、白兵戦闘力は他の二機種を大幅に上回っている。
303機動新世界ガンダムDoll-DA 0-16:2010/06/05(土) 15:27:00 ID:???
それだけに扱いにくくもあった。
『ぬぁにちんたらしてんのよアンタたち! 遊びでやってんじゃないんだからね!』
 一番遅れてやってきたシヴォーフとバッシュを叱責したのがディズンのパイロットである。
『んだよナギ、青い日か』
『死ね老け顔。それとそこな新人、もっとシャキっとなさい! シャキシャキっと!』
「は、はい。すみません」
 シヴォーフは怯んだ。通信用サブウインドウに映るナギという女性は、黙ってさえいれば繊細そうな器量よしなのであるが、その人格についてはシヴォーフの婚約者とは比ぶべくもない。
『止さないか、ナギ』
「ケレンさん」
 シヴォーフがケレンと呼んだ青年の温和な声が響くと、ナギは決まり悪げに口ごもった。
いくら胆汁質の彼女とはいえ、今は大事な作戦の前である。MS隊の隊長を務めるケレンに噛み付くのは控えたのであろう。
 ケレンに続いて、サブウインドウが新たに四つ開かれた。四人ともパイロットたちである。
『みんな揃ったね。わざわざ言うまでも無いだろうけれど、これで最後だから、一応役割分担を確認しておくよ。
まずはナギとコンティ、君たちは突入役だ。ナギのディズンが先行、コンティのキルケニーはナギを援護しつつ進んでくれ』
『いちいち言わなくてもそんなのわかってるわよ』
『了解だ』
と、コンティと呼ばれた黒髪の青年がナギのぼやきを聞き流して応答した。
『夫婦仲良う頑張っていらっしゃいな』
 バッシュが茶々を入れた。共有回線で全員分のウインドウを映すとなると、それぞれの目線の区別が付かなくなる。
それ故、ナギが誰かを睨みつけるたびにシヴォーフはどきっとさせられる。色気の有無は言うまでも無い。
元の顔立ちが小奇麗にまとまっているので、それだけに凄みがあった。
『バッシュおじさん、そのしまりの悪くて薄汚いお口ね、針金できれいに縫い付けてあげましょうか』
『だってよ、コンティ。今夜のお楽しみが増えてよかったな』
 コンティが嫌な顔をした。無論、バッシュに対してである。シヴォーフは指でこめかみを揉みたくなった。
バッシュ・ビッシュ、ナギ・ヴァニミィ、コンティ・ネイブリットの最古参メンバー三人が揃うといつもこうである。
常に気を張っていろとまでは言わないが、時と場をわきまえてもらいたい。
新入りらしくない不遜ではあるけれども、こう目の前でちゃらけてばかりいられてはシヴォーフの決意の立つ瀬が無いのである。
304機動新世界ガンダムDoll-DA 0-17:2010/06/05(土) 15:29:29 ID:???
『さて、ナギとコンティはこれでよしとして』
 ケレンが言うと、ナギとコンティの通信回線が閉じられた。隊長権限で強制遮断したに違いない。
『残る僕たちは外で敵機の一掃に当たることになる。二機ずつのペアでだ。
バッシュとシヴォーフ君は北側、デッドとカマッセは南、僕とジョウはヴェスタの周辺が担当だ。
あくまで保険だからといって気を抜かないように。もしナギたちが手間取ったなら、その分だけ危険が増すことになる』
 ケレンがインカムに触れた。ブリッジからであろう。
『あと十分ほどでヴェスタが目標地点に到達するそうだ。各自、いつでも降下できるよう準備をしてくれ』
 いよいよ実戦となると不安な気持ちが否応無くぶり返して来た。
つい先ほどまで賑やかであったコックピットの中はいやにしんと静まり返って、しだいに、自分の息遣いの音がはっきりして行った。
心臓が激しく鼓動するのまで聞こえる気がする。聴覚の鋭敏さを減ずるべく誰かと話したいという欲求が自負心に勝った。
シヴォーフがコンソールに手を伸ばしたとき、
『オムツ要るか、シヴォーフ。今なら安くしとくぜ』
「結構です」
 よりにもよってバッシュである。シヴォーフはケレンあたりに通信を繋ごうと思っていたのである。
八人のパイロットのなかで真っ当な人間といえば、ケレンとコンティくらいしか心当たりがなかった。
生憎コンティにはナギがいる。デッドとカマッセとは親しく話したことがない。残った二人、バッシュとジョウは論外であった。
 シヴォーフは不安を煽るようなことを言うことにした。
「本当に、大丈夫なんですよね」
『MOSタイプの火気じゃヴェスタのSEフィールドは抜けられんさ』
「定言命令もですよ。本当にモロンに効くんですか」
『どうだかしらん。ひとまず向こうさんの自己管理能力を信用しておけよ』
「それに、Dollタイプが現れたら」
『そんときゃそんときだ。腹ァくくるしかない』
「無責任ですね」
『そもそもハナっから綱渡りなんだよ。下界で地道にやらずに、天国で楽して儲けようって腹なんだ。
だがそんな虫のいい話はない。現実じゃ俺たちは、一たす一でなしにゼロに百万をかけるのを選んじまったっつうことさ』
「ゼロは何をかけたってゼロですよ」
『そこはまあ、神さまあたりにご期待してだな』
「目茶なことを言いますね」
『自発的革命は総じて目茶なものさ』
305機動新世界ガンダムDoll-DA 0-18:2010/06/05(土) 15:31:04 ID:???
 バッシュが真面目な顔をした。
『なあ、どうして今日はそんなに突っかかる。俺のふやけ言葉なんぞ世辞か中指であしらっときゃいいだろうが』
 シヴォーフは不意を衝かれた気がした。バッシュの口元がいやらしく歪んだ。シヴォーフはやり返さねば気が済まなくなった。
「僕は、僕は死にたくないんです。無駄死には嫌です。殉教もまっぴらです。モロンみたいになるのはなおさら嫌だ。
何かしら自分の納得の出来る確証が欲しい。僕は、どうしても生きて帰らなきゃいけないんです」
『女だな』
 図星である。
「いけませんか」
『いいや、はっきりしてるだけ上等だろうよ』
「バッシュさんは」
『ん』
「なぜ解放戦線に入ったんです」
『そういうことは出撃前に尋ねるものじゃない。生き残りたきゃあな、ルーキー。心残りは敢えて残しておくもんだ』
「この山師、はめやがった」とシヴォーフは思った。自分はまんまと乗じられて、彼に揶揄の種を提供してしまったのである。
作戦が終わったら、彼はシヴォーフに色気のあることを吹聴するに違いない。
 ブリッジから通信が入った。作戦の第一段階は終了し、定言命令も予定通りの効験を見せたらしい。
通信画面のバッシュが手でインカムの位置を直しながら言った。
『いけるな』
「いけます」
『いい返事だ、尻を貸そう』
「了解しました。ジョウさんに伝えます」
『止せ。やつは本物だ』
306機動新世界ガンダムDoll-DA 0-19:2010/06/05(土) 16:37:44 ID:???

 小銃の紐を肩にかけたまま棒立ちになっているアーミー・モロンを、巨大な足が踏み潰す。
一切の手抜かり無く舗装された路面に水分が擦り込まれ、骨屑と鉄屑とが硬い音をたてた。
巨大な足のすぐ横には、たまたま踏まれるのを免れたもう一体のアーミー・モロンがだらしない顔で立ち呆けている。彼の小銃は足元に転がっていた。
彼はすぐさまそれを拾い上げて目の前のティハターンに発砲しなければならないのであったが、その過剰な闘争心すら発揮できず、相変わらず幸福な健忘状態にある。
ティハターンのもう一方の足が迫って来て彼を蹴り飛ばした。彼はいやに軽い音を鳴らして水平方向に飛んで行き、縁石の段差に足を引っかけて倒れた。
彼の体は、正面から見てわき腹を支点としたくの字に折れ曲がっている。
 ティハターンが体勢を崩して転びかけた。先だって踏んだアーミー・モロンの残骸で足を滑らせたのである。
その姿を見たバッシュから通信が発せられる。
『シヴォーフ、アーミーに構うなよ』
「それくらい承知してます」
 シヴォーフは苦々しげに舌打ちをしてティハターンの足を路面で拭った。
シミュレーターでは再現され得なかった鮮やかな赤色が、いちいち彼をためらわせた。
進路には相当な数のアーミー・モロンが見える。シヴォーフは陸路では埒が明かぬと考えて、テールノズルを起動した。
ティハターンが跳躍して瓦礫の上に着地する。
「最初からこうすればよかったんだ」
 数機の敵MSの姿が視界に入った。どれも頭が無く、モロン用であることを示すMOSという文字が肩に書いてある。
そして生身のアーミー・モロンと同様、狙いをつけても回避行動をとる気配を見せない。
ティハターンは足裏のスパイクで足場を固定し、両腕でアサルトライフルを構えた。
「ビアーはこっちで落とします。ヒューブリスは任せましたよ」
 ビアーはコックピットのある胴体をあっけなく撃ち抜かれて膝を突いた。
装甲がめくれて内部が露出しているのを見れば、弾丸の威力よりその装甲の厚さに驚嘆するであろう。戸板を割るようなものである。
307機動新世界ガンダムDoll-DA 0-20:2010/06/05(土) 16:39:45 ID:???
 ビアーの残骸を飛び越えて行くMSがあった。バッシュのキルケニーである。
ティハターンの砲撃で生み出された幾つもの残骸を、全身のスラスターと四つん這いの四足歩行とで避けつつ進んで行く。
その先にはヒューブリスと呼ばれたMSが立ち、キルケニーが来るのをじっと待っている。
ビアーと同じモロン用MSであるが、ビアーより横にも縦にも大きくて装甲もそれなりの厚みがある。
おそらくビアーが機動性を優先したのに対し、ヒューブリスの設計は耐久力を重視したのであろう。
キルケニーがヒューブリスに肉迫して左腕のパイルバンカーユニットを起動した。
左腕と足元から炸裂音が二重に響き、二機のMSの振動で塵が舞い上がる。それから思い出したように薬莢が排出された。
『硬ぇな』
 バッシュはそう呟いてパイルバンカーユニットを構え直した。
反動で路面にひびが入り、それを踏みしめるキルケニーの関節が軋んだ。杭は二度目の衝撃でようやく中枢に達してヒューブリスを機能停止に陥らせた。
 同胞の死骸の前に棒立ちでいるアーミー・モロンを見て、シヴォーフは独白した。声がやや上擦っているのは高揚のためであろう。
「コーディネイターはこんな連中をはべらせてよく正気でいられる」
 キルケニーが別のヒューブリスに突進してパイルバンカーユニットを突き立てた。排莢が二度続けざまに行われ、ヒューブリスが転倒する。
ヒューブリスの周囲に立っていたアーミー・モロン数体が下敷きになった。
『向こうもビジネスマンを見りゃ同じ台詞を吐くだろうさ。いつでもどこでも、人間は人間を家畜にしている』
「何も哲学しようというんじゃないんです。ただ気味が悪いんです。
……どれもこれもが同じ顔、動いていれば機械と同じ、動いてなければ――人形ですよ」
 シヴォーフはわざとらしい韻を踏みながらアーミー・モロンの死骸を見た。
モロンはヒューブリスの残骸で下半身を潰され、生命機能を停止しようとしていた。
シヴォーフは胃の中の昼食を心配しただけで、アサルトライフルでビアーを撃つ手は止めなかった。
彼は務めを果たしていた。彼は立派にやっていた。これは必要なことであり、好きでなくともやらねばならなかった。
「こいつらモロンは人じゃない。ゲームみたいなものなんだ」
 シヴォーフはためしに口の中でそう呟いてみた。明確な殺人の意識を感ずることはなかった。
どうにか言葉通りの意味で受け入れることが出来た。
308機動新世界ガンダムDoll-DA 0-21:2010/06/05(土) 17:01:23 ID:???
 飛行艦ヴェスタのブリッジから通信があるころには、シヴォーフとバッシュは十以上の敵機を破壊していた。
動かない敵機をただもう撃って行くというだけであったが、シヴォーフの経験とバッシュの技量を考えれば割合上々な戦果といえた。
『ロウから伝言だ。ナギとコンティが例のものを確保したそうだ』
「リーダーから? 新型のDollタイプ、本当に実在したんですか」
『おうさ。ウーティスの読みが当たったらしい。でだ、シヴォーフ』
 通信画面のバッシュが愉快そうに口の端を釣り上げた。
『そのDollタイプな、ガンダムにそっくりなんだと』
「ガンダム? 絵本とか昔話の、あのガンダムですよね」
『そしてガンダミズムの、ガノテア機関の偶像様でもある』
 バッシュの不穏な付け足しをよそに、シヴォーフには幼少時の記憶が思い出された。
 物心付いて間もない時期、即ち充分にものを判断する能力を持たず、殆ど動物同然に振舞っても許され得た時期の記憶というのは、
青年から老年にかけたどの年齢で思い描くにしても、婦人の顔面と同様で巧妙な偽装を施されるものである。
思い出は人相に似ていて、距離を置けば荒が隠れるが、近寄って見ればあまり愉快でない思いをする。
毛穴をじっくり吟味して満足を覚える者はごく少数であると思われる。
相手をやり込めようという魂胆のない限り、旧友同士の談話の要点は近況より思い出に傾き易い。
 僅かな間、シヴォーフは戦いの中で戦いを忘れた。
敵が棒立ちの的に過ぎず、彼自身は作戦前の気張りのためにかえって拍子抜けのした状況である。
彼は幼き日の自分が紙工作の武具を纏い、ガンダムごっこに興じていた場面を描くことに脳の働きの一部を割いてしまった。
けれどもここで逞しゅうされた空想力を糾弾するのは公正でない。当人がそれを咎めても、思惟とは半ば自動の作用である。
それどころか弾性までも備わっている。懐かしいにせよ忌々しいにせよ、全き任意の忘却や集中の機能がこの動物に備わっていたならば、教師も体刑に頼るまい。
加うるに彼の見逃した異変は、普段の状態でも気付けるか疑わしいほどに些細なものであった。
 ビアーの残骸が微かに動いていた。既に沈黙したと思われた敵機にティハターンは、注意ではなく無防備な背中を向けていた。
309機動新世界ガンダムDoll-DA 0-22:2010/06/05(土) 17:02:41 ID:???
 このビアーはティハターンのアサルトライフルで胴体を撃たれていたが、弾丸は胸部機関砲の機構とその周辺を破壊するにとどまっていた。
中枢機能そのものは無事なままで、転倒したのは衝撃のためである。
パイロットのアーミー・モロンはコックピットの変形で腿から下が拉げていたけれども、残存武装の掘削破砕マニピュレータを起動しつつ、脚部のスラスターでティハターンへ突進するのに支障は無かった。
 首無しのMOSタイプのメインカメラは、人間でいう鎖骨の窪みのあたりに付いている。その単眼が、ぼんやりと明滅した。
螺旋状に溝の彫られた円錐が高速回転する。唸りは瓦礫とスラスターの音を掻き消し、警笛のように鳴り渡った。
 ティハターンの情報処理能力が鈍重なりに敵機の再起動を示すよりも、シヴォーフが異音を訝り、バッシュの声の届くのが早かった。
『伏せろ!』
 バッシュの真剣な声色にシヴォーフの体は即座に反応した。
ティハターンが足を縮めるや否や、連続した発砲音と炸裂音が響いて、すぐに止んだ。
それでも異音は続き、なにかを削るような断続的な雑音も混じっている。
 ティハターンが頭を上げた。頭を抱え、臀部を突き出す形で縮こまっていたのである。
MSでいえば数歩ほどのところには、半壊したビアーがあった。
ビアーは作動したままの掘削破砕マニピュレータを頑是無い子供の如く振り回しては、瓦礫や路面を徒に傷つけていた。
千切れた足がすぐ傍に転がり、当の主人はうつ伏せのまま起き上がれないでいる。
その有様は、頭をもがれ羽を毟られ、ついでに尾を切られた蜻蛉を思わせた。
シヴォーフも子供の頃は虫けらを玩具にして遊んだことがある。
哀れな虫が踊ったりひっくり返ったりして足掻く姿は見応えがした。無茶な解剖を道楽にする点で幼児はあらさがし屋と共通している。
片輪の虫がとうとう息絶えたとき、幼いシヴォーフたちは残酷な、そして勝ち誇った歓声を上げたものである。
けれどもビアーというMSは虫や人よりいくらか単純で頑丈に出来ているだけに、何かしらわかり良い致命傷を与えないかぎり、不具のそれの末路は決定され得そうになかった。
310機動新世界ガンダムDoll-DA 0-23:2010/06/05(土) 17:04:34 ID:???
 ガトリングガンの発射態勢で屈んでいたキルケニーが身を起こした。シヴォーフのティハターンを押し退け、ビアーの背中に足を置く。
体の重心を押さえつけられたビアーはいっそう激しく両腕を振り回した。
キルケニーは無造作にパイルバンカーをビアーの肩関節に当てて作動させ、続けてもう一方の肩も同様に打ち抜いた。
風穴の直径は腕を千切り取るには足りないが、内部の回路を切断するにはそれで充分であった。
掘削破砕マニピュレータの回転が止み、だらりと重力に身を委ねた。ビアーはもはや動かなかった。
「何を」
 キルケニーがビアーを蹴り転がして仰向けにし、装甲の裂け目にパイルバンカーの先端を引っ掛けた。装甲は腕力で容易く剥ぎ取られる。
『見てみろ』
 バッシュに促されてむき出しのコックピットを覗き込むと半死半生のアーミー・モロンがあった。
アーミー・モロンはその丸く盛り上がった眼球をせわしく蠢かし、両手で操縦桿をがちゃがちゃ鳴らしていた。
顎肉の弛緩を見るに、褐色に濡れそぼつ腰部から苦痛の信号が発せられるかは疑わしい。
『キの字なツラして、握った棒を離しゃしない。このごろの管理局は不祥事が多くて困る』
「というと」
『不具合だよ。不良品が混じっていやがった。役所の怠慢だ』
「定言命令が、効果しなかったというんですか」
『半々ってところかね』
 そう言うとバッシュはいきなり、キルケニーのパイルバンカーの先端をアーミー・モロンに近づけた。アーミー・モロンは目をぱちくりさせた。
『さらば苦悩の友よ』
 あまりに出し抜けで顔を背ける暇の無かったシヴォーフは初め目の前の出来事の意味が飲み込めないでいた。
杭が引き抜かれて内装の残骸が崩れ落ちる間際、人体の分離した断面が一瞬目に映った。意表外の色合いをしていた。
モロンといえども情ない仕打ちに思われた。このような情緒を生ぜしめられたのに一拍置いて激しい感情が沸き上がった。
彼は義憤に駆られて激昂しかけた。それを押し留めたのは、別働隊から発せられた緊急の通信である。
『Dollタイプだ!』
311機動新世界ガンダムDoll-DA 0-24:2010/06/05(土) 17:07:37 ID:???

 ティハターンは胴体から煙を上げていた。生体反応は絶無であるが、アメタペイストのキロプティーランスはその先端から光を放つのを止めなかった。
もはや鉄屑と変わりないティハターンを、白光で塗りつぶすように丹念に削って行く。胴体、肩、足、頭部、それからまた胴体という按配である。
腕が千切れ飛んで壁に叩き付いた。無論、コックピットブロックなどは跡形も残らない。
『Doll-A07、NAS-97撃破』
『Doll-A69、全目標補足完了。アンノウン一、SEジェネレータ搭載艦一、COS-D一、COS-K二、NAS-97三』
『Doll-A27、Tセンタービル区画、損害状況把握完了』
 全天周囲モニターに幾つもウインドウが開いて、コックピットに合成音声が入り乱れる。
『Doll-A07、エランバイタル規定範囲内。SEフィールド出力正常――戦闘続行』
 エネルギーラインが発光してアメタペイストが加速した。
パラメータがせわしなく変動し、灰色の空やMSの残骸が過ぎ去って行く。
そんなモニターの光景とは裏腹に、四肢を繋がれた少女は瞬き一つせず、その表情は人形めいていた。
 地上のキルケニーから放たれた大玉が空中で弾けた。銀色の液体が膜状に広がって瞬時に硬化し、遅ればせの爆風でばらばらに砕け散った。
無数の破片が万華鏡のように光を乱反射してアメタペイストの感官機能と推進力を減退させる。
『周辺に光学式攪乱膜。SEフィールド減退率上昇』
 アメタペイストのバイザーに光の線が走った。側頭部のブレードから花弁に似た形の光の雫が散った。
『圧縮SEフィールド、解放』
 不可視の斥力場がキロプティーランスを媒介に拡張する。
スカートユニットが重力の戒めから解き放たれて、ふんわりと浮き上がった。その隙間からは太腿が覗いて見える。
足の付け根が見えるか見えないかの間際、アメタペイストは舞うように全身を回転させ、空をなぎ払った。
金属片の雲は突風によって切り裂かれ、地を駆けるキルケニーとティハターンが露わになった。
少女の神経に伝わる信号は腕の断面で電子回路のそれに変換され、MSの仕草でもって直接に報いられる。
アメタペイストがキロプティーランスを構え直した。ロックオンカーソルが敵機に重なり、少女が引き金を引くべく自身の指を動かさんとしたとき、
『リグ・ヴェーダより緊急指令、現場保存を優先。各機、ガータースティレット装備』
312機動新世界ガンダムDoll-DA 0-24:2010/06/05(土) 17:17:07 ID:???
投下ミス
>>310
>>312
>>311
の順番でお願いします。


 カマッセの映る通信画面は僅かの時間シヴォーフの目を眩ませてその役目を終えた。
シヴォーフはティハターンのカメラを別働隊のいた方角へ向けた。
味方機の姿は瓦礫に遮られて確認できないが、布切れを引き裂いたような形の青白い光の塊が幾つもそこに降り注いでいるのが見えた。
通信はカマッセもそうであるがデッドにも繋がらない。ティハターンのセンサーは連続した爆発音と辺りを照らす白光ばかりを捉えていた。
「バッシュさん!」
 遠い灰色の空が霞んで空間そのものが波打つように歪むのを望遠カメラが捉えた。
『わかってらぁ!』
 キルケニーのバックパックユニットで、ガトリングガンとは別の大筒が立ち上がった。筒の表面には金釘流の書体で『SANSHAKU-SHELL』と書いてある。
『汚ねぇ花火も気休め程度には!』
 子供の身長ほどの直径の大玉が、笛を鳴らすのに似た音を伴って打ち上がった。
313機動新世界ガンダムDoll-DA 0-26:2010/06/05(土) 17:18:57 ID:???
 少女は目を瞬いた。長い睫毛が微かに揺れた。キロプティーランスを片手に持ち替え、空いた片手でスカートの中をまさぐった。
スカートの隙間から取り出されたのは、ガータースティレットと呼ばれる十字架型の短剣である。
『Doll-A07、敵機捕捉。白兵戦闘開始』
 柄の刺すような冷たさを手のひらに感じながら、少女は空を蹴った。
314機動新世界ガンダムDoll-DA 0-27:2010/06/05(土) 17:20:08 ID:???
 対Dollタイプ用の新案兵装は確かな効験があったが、それもほんの短時間しかもたなかった。
今回のように一発きりでなかったらまた違っていたかもしれない。
メカニックたちは喜ぶに違いないけれども、パイロットは生きて逃げ延びねばどうにもならないのである。
 ティハターンの背が風に煽られたとき、シヴォーフは観念しかけた。
後部カメラはアメタペイストがキロプティーランスを突きつける光景を捉えていた。
シヴォーフは肩を窄めて目を瞑ったが、一秒過ぎた後も自分はまだ生きていた。
どういうわけか、アメタペイストはビームを放って来ない。銃を使うのを止して、短剣を取り出したのである。
あちらにも何やら思惑があるらしい。
『飛ぶぞ!』
 バッシュの判断は妥当であった。空中で狙い撃ちに遭うのを恐れる必要がなくなった今なら、最短距離でヴェスタに辿り着ける。
アメタペイストと競争する結果を算出している余裕はない。シヴォーフはテールノズルを全開にした。
滅多に味わうことのない急加速の慣性に体が軋んだ。
 シヴォーフのフライトユニット抜きでの飛行経験が数えるほどであったのに加えて、SEフィールドによる大気の不可思議な変質はティハターンのセンサーでは捉えられない。
幾重にも重なった密度の異なる空気の層が、彼の操縦に誤差を生じさせていた。
シヴォーフはなるべく真っ直ぐティハターンを飛ばすよう心がけた。障害物の瓦礫を大回りして避けようなどとは思いもよらなかった。
ここで彼の操縦技量とその驕りとが災いした。彼は紙一重でも充分に避けられると思い込んだ。
ティハターンの足先が瓦礫の山に衝突した。
 突如として天地が逆転して体が前のめる。
重力は逆さまのティハターンを地面に吸い寄せ、頭部を中心に全身を九十度回転させる。惰性に引き回されてティハターンの背が削られる。
そうして目に入るのが灰色の空ばかりとなると、シヴォーフの首に鈍痛が走った。
足を引っ掛けたティハターンがつんのめり、でんぐり返しをするように前方に一回転したのである。
今は地面に仰向けで寝そべっていた。人間でも大怪我しかねない事故である。
315機動新世界ガンダムDoll-DA 0-28:2010/06/05(土) 17:22:04 ID:???
 シヴォーフははっとして首を持ち上げた。キルケニーの背中がかなり遠くなっていた。
僥倖にも打ち所は悪くなかったようで、ティハターンはすぐに立ち上がった。
シヴォーフはペダルを全力で踏んだ。テールノズルがちょぼちょぼと光を漏らした。
踏み直した。それでも煙草を吸うように鷹揚であった。踏み続けた。ようやっと体が持ち上がった。
しかし宙に浮くや否や再び安閑として重力の負担を放擲した。安全装置が働いたまま戻らないのである。
粗製濫造にありがちな不具合であった。エラーの表記が今更ながらに表示される。シヴォーフはコンソールを殴り付けた。
「この、ポンコツがっ!」
 開発者はナチュラルのパイロットの荒っぽさを想定したのであろう。いらんところに気を利かしてある。シヴォーフは拳を痛めた。
 情けなさやら恨めしさやら忌々しさやらを存分に味わう間も無く、接近する敵機の姿を索敵プログラムが拡大して表示する。
アメタペイストは飛び石伝いに空を蹴って、順々に波紋を生み出していた。
あたかも目に見えない水面があるかの如く、その上を飛び跳ねて渡るのである。
この仕草がひどく可憐であるのがまたいやらしい。
猛獣が全力を尽くして獲物を追うというのではなしに、小娘が手ごろな遊び相手を見つけて駆け寄って来るという感じであった。
 シヴォーフは叫んだ。
「バッシュさん!」
『かまうな。ヴェスタはこれよりアサルトフィールドを使う』と、ヴェスタのブリッジからの緊急回線が割り込んだ。
ナチュラル解放戦線のリーダー、ロウ・ブレーンの声であった。
MS全機に向けた種類のものであるから、シヴォーフの耳にも届いている。
バッシュのキルケニーは名残惜しげに振向きかけたが、やはりシヴォーフを見捨てた。
 ここでシヴォーフの腹が決まったかは定かではない。いかな考えが心中で渦巻いたにしろ、彼の場合は結果として感傷より生存衝動が優先したのである。
このような状況に置かれた人々の中には、あのとき額の奥で何かが弾けたと後述する者もいるであろう。
316機動新世界ガンダムDoll-DA 0-29:2010/06/05(土) 17:25:10 ID:???
 ティハターンがアメタペイストに振り返った。メインスラスターは機能しないが、サブスラスターは健在である。
ティハターンは射程距離に入らぬうちからアメタペイストを正面にして横滑りを始めた。
アメタペイストが鋭角に旋回するのに合わせて腰のパイプグレネードを一斉発射する。
棒状のそれらはSEフィールドの作用で螺旋軌道を描いて逸れた。
アメタペイストが螺旋の中心を突っ切り、ガータースティレットの先端が鈍く光った。
グレネードを発射する間にティハターンはアサルトライフルのセレクターをフルオートに切り替えている。
片腕で乱射された弾丸でアメタペイストの姿が霞む。SEフィールドの空間干渉は無数の蜃気楼を生み出した。その効果は視覚ばかりではない。
もはや両者とも回避不能の距離になる間際、ほんの僅かながらアメタペイストとティハターンの相対座標にぶれが生じ、Doll-A07の少女をしてその悟性を誤らしめた。
 ガータースティレットがアサルトライフルごと右腕を抉り取る。
切っ先を包む目に見えぬ力が、ティハターンの右腕を切り裂いた端から押し広げて、粉砕して行った。しかし破壊は右腕のみに留まった。
ティハターンは大きくよろめいてアメタペイストとすれ違い、無理な回避の反動を生かして全身を回転させた。
左腕には格闘兵器のフォールディングスコップが握られている。
アメタペイストの慣性を無視した減速と旋回は確かに凄まじいものであったが、方向転換を終えるのはティハターンが一瞬早い。
スコップの先では、無防備なスカートの中が惜しげもなく晒されている。
 報いた、と確信する余裕が与えられたなら、彼は眼前の光景から婚約者の痴態を連想したかもわからない。
無我夢中であったが故に、これはあくまで仮定に過ぎないのである。
「あつっ――」
 シヴォーフ・ラーグの意識は途絶えて二度と戻らず、それきりであった。
317機動新世界ガンダムDoll-DA 0-30:2010/06/05(土) 18:24:34 ID:???

 ねじ上げられた左腕が付け根からもぎ取れた。どうやら強くひねりすぎたらしい。
少女はティハターンの左腕を持ったままガータースティレットを引き抜いた。
両腕とパイロットを失ったティハターンが、コックピット深くにまで達していたつっかいを取り払われて膝を折る。
倒れる間際、頭部がアメタペイストに触れそうになり、少女は大げさな身振りで身をかわした。
それから慌てたように左腕を放り投げ、手の平をひらひらと振った。まるで汚物を扱うかのようである。
『Doll-A07、NAS-97撃破』
 少女はガータースティレットの先端を見つめた。べとべとの液体がこびり付いていた。
SEフィールドを小さく展開すると、汚れは空中に拡散して刃がぴかぴかになった。
つい先ほど咄嗟に投げ捨てたキロプティーランスを拾い上げて、少女は飛翔した。
『敵艦撤退を開始。作戦変更。作戦内容、SEジェネレータ搭載艦の破壊。各機、キロプティーランス高出力モード起動。チャージ開始』
 MSの収容を終えた飛行艦が離陸する。三機のアメタペイストは空中に制止し、その船体に向けてキロプティーランスを構えた。
円錐形の砲身の先端が割れて付け根を中心に円形に開き、キロプティーランスが傘のような形に変形する。
『敵SE反応増大。チャージ中止。SEフィールド出力全開』
 突然、辺り一面が光に包まれ、ドンと鈍器で殴るような音が鳴った。衝撃波で体が軋み、少女は眩さに目を細めた。





プロローグはここまで。
続けて本編第一話投下します。
318機動新世界ガンダムDoll-DA 1-1:2010/06/05(土) 18:26:02 ID:???
 機動新世界ガンダムDoll-DA
 第一話 失楽園

 アラン・イディットは爽やかな気持ちで目を覚ました。どうして眠ったのか信じられないほど待ち遠しい目覚めであった。
窓から差し込む朝の光、枕元のスピーカーが流す流行歌、血の巡りを良くするべく躍動するマッサージベッド、これら全てがアランを祝福していた。
けれども一番槍でアランを覚醒させる役目を果たしたのは、寝室に充満した香であった。
ベッドの脇には新製品のスメッグ散布装置が置かれている。
それから発せられる香りが脳神経の一部を覚醒させ、また別の一部を麻痺させてアランを素晴らしい気持ちに浸らせるのである。
 起き抜けの恍惚状態にあるアランはひどく幸福であった。何もかも美しかった。
普段ならベッドの執拗なマッサージ機能を鬱陶しく感じることもあるけれども、今はそれすらも愛おしい。
アランは片言ながら自然とスピーカーに合わせて流行歌を口ずさんだ。
色恋の歌で濫用される『君』という対称代名詞ですら現実の舌に甘味を感じさせた。
スメッグ濃度三倍、スカッと爽やかの謳い文句は伊達ではなかった。
ストロベリーのフレーバーも実に具合の良いもので、以前使っていたバーベキュー風味のように胸焼けと脳焼けに悩まされることもなかった。
 この日の朝食はピッツァとフライドポテトとスメッグコーラであった。
アランの寝ている間に、小間使いモロンが用意したものである。
アランからしてみればひどく質素で大味の食物であったが、彼は成人前の学生であるので我慢するほかはない。
スクールを卒業して成人すれば、こんな不味い食事を強制されることもないのである。
スクールに通わねばならぬことと出費を極度に制限されることとは、未成年コーディネイターに課せられる義務である。
彼が十五歳に達する一年後には今のように一人で食事をすることも無くなるであろう。
一人はたいへん心細いが、こうして今のうちに孤独を嫌うべく鍛錬しておかなければコーディネイター社会の不適合者になりかねないのであるから、これはある種の必要悪である。
前途有望なアラン・イディットという少年は、そのことを洞察し理解し、また納得もしていた。
319機動新世界ガンダムDoll-DA 1-2:2010/06/05(土) 18:29:19 ID:???
 アランは朝食をとりながらニュースを見た。昨日、第072工業区で爆破解体が行われたそうである。
そこに新たなMS用レジャー施設を建造するらしかった。確かにそれなりのレジャー施設を作るには結構な面積が必要であろう。
このキーウィタースでMSスポーツは贅沢な娯楽の部類に入る。MSを停める駐機場やMS用テニスコート、MS用ゴルフ場などの整備で相当の手間がかかるに違いない。
こうした突然の爆破解体という物騒なニュースを見るのは初めてのことであったが、アランは己の若さと無経験とを思い、こんなふうにさりげなしに流されるのであるからそう珍しいことでもなかろうということで納得した。
 アランは朝食、入浴、化粧、といった登校の身支度をたっぷり二時間かけて済ましてアパートメントを出た。
 アランの部屋の自動扉が閉まったのとほぼ同時に、隣室のハスハ・イディットが部屋を出てきた。
「おはよう、アラン」
「偶然だね。一緒に行こうか」
 アランと同じ銀の髪色をした少女は小さく頷いた。
 町はすっかり目覚めていた。道路にはMSが闊歩し、建物の各所に配置されたスピーカーからは快い流行歌が大音量で流れている。
アランはタクシーの天井窓越しに空を見上げた。大気は澄み渡って機械部品の天蓋をありありと見せ付けていた。
アランはこの空を好いていた。頼もしい機械装置に守られていると実感できるからである。今日もいい日だ、とアランは思った。
『一日二回のセックスは健康の基本! さあ皆、セックスだ! セックスをしよう!』
 市街地の大型空中モニターには、健康推進週間のマスコットキャラクター、ミスター・マラディックが大写しに映し出されていた。
CGで構成された架空の人物である彼は、比喩の思案に投げ首した描写によれば男臭いと呼ばれるような笑顔を見せて、絵の具のように真っ白い歯を光らせた。
無論、この光もうそ臭い合成映像である。
『私は十二回以上している。おかげで見も心もこんなに健康さ!』
 筋骨隆々たる体躯を躍らせて、彼は己が肉体の健全さを喧伝する。腰の動きがやたらに生々しいのが憎らしい。
大胸筋が瑞々しく震えて汗の飛沫が煌めいた。
『レッツセックス! セックス、セックス、セックスセックスセクロス! エス、イー、エーックス! エス、イー――』途中の言い間違いはこしらえものの愛嬌である。
320機動新世界ガンダムDoll-DA 1-3:2010/06/05(土) 18:30:44 ID:???
 アランは携帯端末を取り出して予測スケジュールを見た。放課後にシアターへ行った後、二時間ほどの空きがあった。
アランはクラスの女子を幾人か物色して頭の中であたりを付けてみた。結構な人数が該当してアランは安心した。
もしもマラディック氏のスローガンに副えなかったなら、落ち着かない気持ちになりそうであったからである。
『皆さんの笑顔の源、それは、キット・カッツ……』
 別な空中モニターが、新製品のチョコレートバーのコマーシャルを流している。
コーディネイターに酷似した無数のコマーシャル・モロンが一斉にチョコレートバーを懐から取り出して、それを頬張った途端、恰もこの世では到底浮かべられそうにないような無上の笑顔を浮かべた。
実際に咀嚼しているのか怪しいものではあるが、口腔に接触した時点でもはや十全の満足を覚えるほどに美味であるという解釈も出来なくはない。
『スメッグエキス配合! キット・カッツは、あなたの幸福なひと時を提供します』
「スクールの売店に置いてあるかな」
「ものを食べるときあんな顔はしないわ」
と、隣席のハスハが水を差した。アランは少し咎めるような口調で言った。
「美味しそうなんだからかまわないじゃないか」
「そう」
とだけ返事をして、ハスハは頬杖を付き直した。彼女はぼんやりと開いた目で、つまらなげに町の光景を見るともなく見ていた。
321機動新世界ガンダムDoll-DA 1-4:2010/06/05(土) 18:32:45 ID:???
 人々はスメッグを服用するとしばしばそんなふうな目つきになる。楽しい幻覚と戯れる最中は外界を知覚する必要を無くするからである。
然るにこのハスハという少女は素面であった。アランは彼女がスメッグを使うのを見たことがない。
口にこそ出さないけれども、人を幸福な気持ちにするこの有用な薬物を毛嫌いしているきらいがある。
以前に交際していたときもアランが錠剤を薦めるのを断り、それどころかアランの携帯する錠剤をみんな取り上げてごみ箱に押し込んでしまった。
やるべき遊び事が無くなった折である。寝床に行くには気分が乗らず、シアターなどの娯楽施設へ行くには懐が寂しい。
残ったのはスメッグで脳髄を朗らかにして楽しく談笑することであった。しかしそれすらも奪われた。
アランは時間の観念を認識するにつけ、いたく苦しい思いをした。コーディネイターにとって退屈は何よりも恐るべきものである。
アランが憂いて死ぬるばかりの苦しみに苛まれている最中、残酷なハスハはというと、寧ろ上機嫌で、彼女には珍しく饒舌ですらあった。
アランがこの面倒な少女との純粋な異性交遊を止したのはそれから三日後のことである。
 カラオケに誘えば「時間とお小遣いで恥を買いに行くようなものだから」と拒絶し、シアターに行こうと言うと「あんなの、暇つぶしどころか頭つぶしよ」というわけのわからないことをのたまって応じない。
漸くのことで説得して連れ出しても彼女は鬱々として楽しまず、アランまでもが嫌な気持ちにさせられる。
自然の行為の現場においてもそうであった。
暗闇にほの白く浮かぶ彼女の肌は、ややもすると別の少女らのそれと真逆に、ぞっとした印象を与えるのである。
彼女に独特の押し殺した息遣いや、香水の染み込んでいない生の肌の匂いばかりがその原因とは思われない。
如何なる見当をつけるにせよ、ともかく事を終えるたびにアランは得体のしれない、後ろめたい気持ちを味わうのである。
こうしたもろもろの不愉快事が重なった結果に交際関係を更新するというのであるから、
コーディネイター間で通用している倫理に照らし合わせてみても不誠実やら契約不履行やらとは言われまい。
寧ろその選択は非常に倫理的でさえある。ハスハの完全な同意が得られなくとも、アランには権利を行使する義務があるのである。
322機動新世界ガンダムDoll-DA 1-5:2010/06/05(土) 18:34:44 ID:???
〈顔は、顔だけはいいんだが〉とハスハの横顔をのぞき見ながらアランは思った。
ほつれた銀髪と細やかな産毛は、日光に照らされてほのかな輝きを帯びていた。
 タクシーがトンネルを潜る最中、頭上に空中モニターが展開された。
何かがトンネルを通るたびごとに決まってコマーシャルが流れるようになっているのである。
 人形が万歳をしたロゴマークはMS販売会社のものであった。
『指先ひとつでハッピーに! あの名機COS-Dが、話題のハッピーパックを搭載してリメイク! 
定評のあるコーヒーメーカーとマッサージシートはもちろん、エスプレッソマシーン、無重力回転ベッド、
今話題の全天周囲ミラーといった最新システムも、なんとボタン一つで一切合財万事がOK! 
お手間は一切かかりません! ボタン一つ、指の一押しがあなたのMSライフをより快適に、よりハッピーに変革します! 
フレキシブルな関節機構も健在! フットボールOSもヴァージョンアップ! 軽快で洗練された挙動が、あなたを魅了します。
ハッピーハッピーイェーイ! ハッピーハッピーイェーイ! そう……あなたはボタンを押せばそれでいい』
「ひっどいCM。こんなのに引っ掛かるのは懐古趣味の年増連中だけだね」
 色を変えただけの旧式MSと新型の装備とを抱き合わせで売るのはこのMSメーカーの常套手段である。
冗長な口上でうんざりさせるのも通例である。対するに新型MSのコマーシャルは簡潔明瞭で、強要感抜きに購買欲をそそってくる。
在庫処理が目的なくせに下手な仕方でやるもんだ、こいつの広報担当モロンは性能が低いに違いない、そうアランは推測していた。
323機動新世界ガンダムDoll-DA 1-6:2010/06/05(土) 18:36:10 ID:???
「そうね。あなたの言う通り、誰も引っ掛からない。誰も古いものを欲しがらない」
 ハスハは独白じみた口ぶりで面白みの無い見解を述べた。
「あたりまえだろう」
 アランが言い返すと、ハスハはアランの目を暫く見つめた後、黙って俯いてしまった。何やら考え込んでいるのである。
これは彼女の良くない癖であった。突然どうでもいいことを言ったかと思えば、訴えるような仕草を見せて、アランが応じないでいると自分の中に閉じこもってしまう。
 活動せずに一人で物思いに耽ることは、不道徳な行いである。コーディネイターは常に楽しんでいなければいけない。
これは施設で誕生して物心付くまでに、常時言い聞かされて来た道徳律の一つである。 
〈なに考えてんだか〉アランはハスハに関する思考を打ち遣って、携帯端末を弄り出した。
彼女に引き摺られてこちらまで罪を犯してはたまらない。様々な楽しみで埋まったスケジュール表を眺めてアランは顔を綻ばせた。
苦悩を感ずる暇のないこと、多忙であり続けることは徳である。アラン・イディットは模範的なコーディネイターであった。
324機動新世界ガンダムDoll-DA 1-7:2010/06/05(土) 18:39:48 ID:???
 その銅版画には、奇妙な戦士が描かれていた。
 顔の皺やら肌の張り具合から察するに、年の頃は三十台中盤の所謂男盛りであろう。
V字型の角飾りの付いた兜を被り、目の下から鼻にかけては隈取をしたように真っ黒く染まっている。
それが刺青なのか化粧なのかは定かではない。口はへの字に引き締められ、硬そうな顎鬚の塊がその下に付いている。
聴覚を妨げないために、兜の両脇には無数の四角い穴が縦列に空けられている。
甲冑は体の殆どを覆っているが、どういう魂胆があってかふくらはぎとわき腹の部分が丸出しにされている。
十字架の飾りが付いた左手の盾は大ぶりで取り回しに優れないであろうが、欄外の注釈には、この盾は我が子の棺の蓋である、というようなことが書き入れてある。
武器はといえば、弓矢と二本の剣である。弓は右手にあり、剣は背中に差しているのであろう、二本の柄が突き出ている。
それぞれ光の弓矢、光の剣という注釈が付いている。
この戦士の物語が書かれた当時の文章そのものは虫食いだらけで判別が付かなくなっているけれども、銅版画の表題らしき大文字はどうにか読み取れる。
現代語に訳せば、『自由の戦士ガンダム』というそうである。
 画面が切り替わり、別の銅版画が映し出される。表題は『遍歴の老郷士ガンダム』である。
先の自由戦士殿の恰好と意匠が似ているが、こちらはかなりみすぼらしい感じがある。
身を守るための甲冑は紙細工のように薄っぺらく、全体として板を継ぎ接ぎしたような印象である。
手には貝殻のような盾と白色の石弓をそれぞれ携えている。剣の柄は見当たらない。
前のガンダム氏とは違い、兜の角の代わりに立派過ぎるほど立派な口ひげを生やしている。
この貧しい老人は資金難で武具一式を揃えられなかったのかもしれない。へそから下の部分が殆ど裸である。
別な宗教による倫理的迫害の痕跡が、黒インキの上塗りとして残っている。
『少年闘士ガンダム』の銅版画に切り替わる。ガンダム氏、ガンダム老に比べると顔立ちは格段に幼いが、それを補って余りあるほどに逞しい体つきをしている。
兜の角は二対で、その真ん中にはひどく大きな宝石の飾りが付いている。
両腕に鉄板のような盾をくくりつけ、そのうえ強弓を手にしてさえいる。
背中に差してある柄も丸太じみた太さであるが、少年の腕力ならば支障なく扱えそうである。
325機動新世界ガンダムDoll-DA 1-8:2010/06/05(土) 18:42:29 ID:???
 美男子のガンダム、りりしい女騎士のガンダム、着膨れしたガンダム、上半身とはらわたと下半身の三つに切断されたガンダムの遺骸、
半人半獣のガンダム、無闇に大きいガンダム、と各々特徴を持ったガンダムたちの銅版画が順々に表示されていく。
わかり良い共通点といえば、目の隈取とV字の角くらいである。
 聴講者たちが白黒の銅版画に飽きてくる頃合になってようやく色鮮やかな絵画の出番が来る。
『天使ガンダム』と表題されたいわば宗教画の類である。
翼を持つガンダムと、そのガンダムに蹂躙される一つ目の巨人たちが描かれている。
無数の宗教画が挙げられたが、いずれもその二つの人種を題材にしているようである。
中にはガンダムと一つ目の巨人たちが手を取り合って協力し、異形の怪物に立ち向かっているのもある。
 次に無数の石像の写真が映し出された。出土品らしいそれらはところどころが欠けているが、さほど空想力を働かせなくともその全貌を眼下に描き出すには充分に良好な保存状態の品である。
それらは前に挙げた銅版画や宗教画とは異なり、写実的な人間の像ではなかった。
原始的な宗教儀式で使われたり奔放な芸術活動で作られたりする類の、何かを象徴する極めて異様な人形であった。
審美眼の鍛えられていない人々からしてみると一時の興味を覚えさせこそするけれども、全体像をあらかた把握してしまえば貴重な時間を無駄にしてまで観察する価値は見出せられない。
鎧武者としてのガンダムの面影を見止めるだけでもう結構である。この映像を流す講師はそれを承知していたのであろう。
銅版画のときより短い時間を割くに留め、手早く出土品の年代を遡って行く。
 石像が陶器人形に代わった。幾人かの聴講者が首をひねった。
それから青銅製の人形になり、金銀細工の繊細な人形が映し出されたとき、聴講者たちはいたく驚嘆した。
年代を遡るごとに人形の精巧さが増して行くのである。
加えて、これらの彫刻品及び手工細工の題材にしていると思われたガンダムなる二足動物の種とは、聊か別の方面に傾いた題材の特徴が目立ち始めたからである。
第二芸術から玩具じみた造型に移り、終わりごろにはとうとう工業製品に立ち至った。
貴金属と宝石を材料に製造された技術的にも金銭的にも卓越した一体の人形は、現代の自称考古学者によって『モビルスーツ・ガンダム』という表題が付けられている。
326機動新世界ガンダムDoll-DA 1-9:2010/06/05(土) 18:44:39 ID:???
「古典芸術の研究はさておき、だ」
 格納庫に張られたスクリーンから白いMSに目を移して、バッシュ・ビッシュは顎をしゃくった。
「肝心の角が折れてるぞ」
 メンテナンスベッドに寝かされたMSの角は確かに片側が欠けていた。本来V字型であったのが所謂ペケの字になってしまっている。
よくよく見れば頭部の損傷以外にも、背中の突起やら肩の先やら、もろそうな箇所があちこち欠損していた。
「たしかに、あんな乱暴に引き摺ってくるのはどうかと思う」
 コンティ・ネイブリットが相槌を打った。パートナーにまで同意されては、ナギ・ヴァニミィは穏やかでない。
「うっさい! 急いでたんだから仕方ないじゃない!」
「なあコンティ、家庭内暴力に気ぃ付けような。この獰猛な女は子供にまで暴行を加えかねん。倅が自閉症になったらちゃんと言え。相談に乗るぜ、有償で」
「安心しなよ、コンティ。ボクはオールラウンダーさ」
 バッシュの言葉に便乗して、ジョウ・ハーテンが話に加わった。
ジョウはいやに機敏な動作でコンティの背後に回ると、彼の肩に手を置き、耳元に唇を寄せてひどく優しい声で囁いた。
揉み解すような手つきで撫で回された臀部から発せられた信号がコンティを総毛立たせる。
「あ、あたってるんだが」
「あててんのさ」
 わき腹の後ろのあたりにいくばくかの弾性を具えた硬質の物体が押し当てられた。
中肉中背のコンティと大男であるジョウとの身長差からして妥当な位置である。
頬を撫でる吐息に寒暖計は適当な数値を示すであろうが、コンティ自身は冷たいものを感じたようである。
この現象によって心理状態の及ぼす知覚の変化が立証され得るかもしれない。
327機動新世界ガンダムDoll-DA 1-10:2010/06/05(土) 19:23:42 ID:???
「この変態ども!」
 二重の羞恥によってナギの耳が赤くなった。罵倒語が複数形なのはそのためである。
しかしバッシュとジョウは両人とも自身が正当でない評価を下されたと思ったらしい。
バッシュからしてみれば自分は極々普通のことを言ったに過ぎないという言い分が立つ。深読みするほうが猥雑なのである。
ジョウはというと、口説くのを邪魔されて興をそがれた様子であった。
「うるさい黙れ喋るな女」
 敵性人種が反抗的な態度に出たことで、普段は緩められている眉間が引き締まり、ジョウの容貌が威嚇用のそれにすりかわる。
その顔立ちに似つかわしく盛り上がった筋肉は、一応の瞬発力はあるがやはり見栄え相応でもあるナギの細腕など容易にへし折るに違いない。
コンティの顔は青ざめている。男らしくありすぎてもジョウの前では困りものであるが、こんなふうに妙なところで優柔不断なのも方々に付け入る隙を与えるのである。
不快な類の推論というのは、驚嘆すべき速さで行われることが多い。
ナギの苛立ちはコンティの決断力の不足から、一足飛びにオペレーターの某少女やら、今はヴェスタに乗っていないメカニック担当の某女史やらに及んだ。
日ごろから彼女らに対してささやかな優越感を抱いていても、やはり腹立たしいものは腹立たしいのである。
ナギは手始めにバッシュに食って掛かることにした。それで勢いをつけてからコンティとジョウを相手取ろうという腹である。
328機動新世界ガンダムDoll-DA 1-11:2010/06/05(土) 19:26:59 ID:???
 ナチュラル解放戦線のリーダーであるロウ・ブレーンという青年は、幹部の四人が真面目な会議をうっちゃらかしてふざけ合っている光景を目にして、情けない気持ちに襲われた。
けれども手で額を覆ったりこめかみを揉んだりするといった大げさな身振りは彼には許されていなかった。
遠巻きに眺めて失笑している整備員たちに示しをつけるべく毅然たる態度を固持せねばならぬのである。
 解放戦線の幹部たちはヴェスタの格納庫の一画、強奪したDollタイプMSの横たわる場所に集まっていた。
解放戦線の当面の方針と、この奇怪なDollタイプMSの処遇を相談するためである。
極めて重要な話し合いとはいうものの、先のMSパイロット四人はあの有様であった。
残った二人、割合真面目な人物であるケレン・カタリとクリトン・キーンですら、パイロット四人が遊び始めるや否やスクリーンの前で非実際的な事柄にかまけ出した。
ケレンとクリトンはガンダムの伝承に興味があるらしく、先ほど提示された美術品や英雄譚の歴史的価値を論じ合っている様子であった。
 ナチュラル解放戦線なる武装結社は、その装備の有用性に比して不相応にも、未経験な年若い青年の寄り集まりに過ぎなかった。
ナチュラルの生活圏にある最大勢力、自然保護区自治政府が擁する軍隊や自警団のように適切な規律は設けられていない。
その理念はどうあれ、不良な青年の徒党というふうに見られても弁解の効かない類の組織である。
 ロウはこうした事情を充分以上に承知してはいたが、それにしたってこの有様は酷すぎた。
解放戦線は管理局のDollタイプMSから這々の体で逃げ出して、ようやっと体制を立て直せる時間を得た。
そしてアサルトフィールドを使用したためにヴェスタのSEジェネレータは万全の状態ではないのである。
管理局の追撃から逃れられるかも分からない状況で、乗組員たちはそれぞれの仕事をこなしつつも、団結の意志や公共心というものをまるで見せなかった。
幹部たちにおいてはいっそう酷い。強奪作戦の開始前より大げさにふざけ回っているのである。
シヴォーフ・ラーグ、カマッセ・デッセ、デッド・ザコディスという三人の仲間を失ったにもかかわらずである。
329機動新世界ガンダムDoll-DA 1-12:2010/06/05(土) 19:30:02 ID:???
 彼らの不真面目はことさらに責め立てるべきものではありえないが、批判なしに褒められたものでもない。
ある種の反省は相応の益を与えず、負債として疲労ばかりが残るためにその後の判断に支障を来たす。
この点からしてみれば努めて陽気に振舞うことは有益といえるが、それが慣習となってしまったのなら道義的に芳しくない影響が生じて来る。
加えるに彼らは若く、見解を任意に加減する習性が完成していない。買い叩くのに慣れてしまった者が安売りしないとは限らないのである。
ロウはこのような考えから、公衆倫理の堕落を防ぐという手前勝手な口実を得た。
 バッシュがうめき声を出した。ナギの爪先が股座に吸い込まれるのは咄嗟に庇った手のひらで防がれたが、力の伝達ばかりは如何ともしがたい。
ロウはバッシュのうるさ口が止んだのを見計らって幹部たちを叱責した。
「バッシュ、いいかげんナギで遊ぶのは止せ。コンティ、ナギを止めろ、それが君の義務だ。ナギはともかく落ち着け。
ジョウ、君の多情をベン・スパンキンスに報告されたいか」
 ジョウは肩を竦め、ナギは押し黙った。バッシュは自分の腰をとんとん叩いている。無言でいるのは体をいたわるためであろう。
そうでなければ苦痛の余韻を堪えているのである。いずれにせよ彼という人物がロウの怒声に怯むことはありえない。
コンティはというと、彼はジョウから素早く距離をとって冷や汗を拭っていた。
「ケレン、クリトン、君らも大概にしろ。興味深いのには同意できなくもないが、今は我々自身の生きのこることが先決だ。
それからウーティス、貴方ともあろう人が何をしている。さっさと本題に入ってくれ」
と、最後はスクリーンに向けて言った。
ウーティスと呼ばれた布のスクリーンは、無数に表示していた古美術品のサブウインドウをそそくさと閉じて、脇のスピーカーから『面目ありません』という合成音声を発して謝罪した。
「このDoll-DAというDollタイプがガンダムに類似しているのはさて置くとしてだ、結局のところ、我々に運用出来るのか」
『アームレイカー等の構造はCOSタイプと同規格ですが、マニュアルを見たところ――』
とウーティスが言いかけたときにナギが口を挟んだ。
「マニュアルなんてあったの?」
「なきゃ困るだろうが」
 ナギの疑問顔をバッシュが鼻で笑った。彼女の顔つきに再び悶着を立ち上げる気配が見えかかる。
330機動新世界ガンダムDoll-DA 1-13:2010/06/05(土) 19:32:12 ID:???
「しばらくは二人とも喋らないでくれ。ウーティス、続きを」
『マニュアルを見たところ、SEフィールド制御に並行する操作系が極めて不鮮明であるように思われます』
 あいまいな物言いである。
「どういうことだ」
「要するに、です」
 ウーティスとともにDoll-DAの解析作業を行ったクリトン・キーンが取り次いだ。
「ひどく不親切なんです、そのマニュアルというのが。
腕を振る、足を動かす、SEフィールドで斥力を発生させるといった基本動作のみ、それも同時ではなく単独で行う仕方しか載っていないのです。
OSを見てみると、用途不明のプログラムで容量の殆どが占められているのがわかりました。
ヴェスタのそれと照らし合わせてみましたが、SEフィールド制御とも無関係なプログラムばかりです。
現実的な用途についてはからっきし、必要の無いことで穴埋めしている点に於いては昨今のレジャーMSに引けをとりませんね。
SEフィールドを抜きにしてマニュアル通りの運用をするならば、せいぜい極めて硬いティハターンといった按配でしょう。
ソフト面については以上です」
 そうは言いながらも嬉々としたクリトンの様子を見るに、シヴォーフたちは無闇に命を散らせたわけでもなさそうである。
コーディネイターであるクリトン・キーンという人物は、遠まわしな話し方を好んでいる。
「Doll-DAという機体コードから、どのようなことが連想されますか」
「Doll-A、アメタペイストのハッテン型ってところかい」
 クリトンの問いにジョウが応じた。
「それにしちゃあ、見た目が全然違ってる。Aは胸糞悪い恰好をしてやがるがね、DA君は、いい。実にいい。素晴らしい。最高だ」
 Doll-AとDoll-DAとは同じく人型MSであるが、前者は女性型であるのに対し、後者は男性的な体つきをしている。
肉感を損ねるスカートなどの付属物はなく、筋肉を模したらしい装甲が全身に折り重なっている。ジョウがため息を漏らしたのも尤もである。
331機動新世界ガンダムDoll-DA 1-14:2010/06/05(土) 19:34:35 ID:???
『ハーテンさんの見方には多少芳しくないものが感じられますけれども、アメタペイストの発展型というのは正解です。
しかしこれは各部の構造についていうのではありません。純粋な性能面での話です』
「それで」
 ロウは幾分か苛立った口調で尋ねた。ウーティスもコーディネイターであるが故に話の運びが冗漫である。
そもそもコーディネイターという人種は、はっきり要点のみを述べることを嫌う傾向があるともいえる。
「解析が甚だ不十分ですので細かい点は省きますが、
現状、即ち初期状態、生まれたまま、素の、なまの、その装甲が恰も赤子のように繊細な柔肌であり、
つまりですね、生娘、否、生息子ともいえる純情可憐で一切の穢れを帯びていないこの状態においても、
Doll-DAのSEフィールドの出力はですね、いいですか? 
なんと、アメタペイストの五倍以上はあると推定され得るのです! 
ソフト面の問題が解消されればベンセレム最強のMSといっても過言ではありません! 
そうしてそれに加えて自己進化自己再生自己増殖自己抑制の四大根本機能が極めて有機的に極めて正常に作用すれば――」
「で、使えんのか」
 バッシュがクリトンの言葉を遮った。クリトンは物足りない顔をした。
「あ、ええ、はい。当面はディズンの基本OSとヴェスタの稼動データを元に代替品を作っておりますので、それを使います。
実践テストをするまでは断言しかねますが、理論上は充分にアメタペイストと渡り合えるでしょう。たぶん」
 クリトンの言い分にはかなり不安な点があるが、管理局に対抗する手段を解放戦線が得たということは間違いない。
「しかし、それなら先ほど垂れたガンダムの講釈に何の意義がある」
 この状況で、遊んでいる暇は無いのである。
『命名のご参考になればと思いまして』
「は?」
 ロウの質問にウーティスの的外れな言葉が返ってきた。
332機動新世界ガンダムDoll-DA 1-15:2010/06/05(土) 19:36:30 ID:???
『歴代のガンダムの名称は、何々ガンダム、ガンダム何々という形式になっています』
 ケレンが頷いた。
「なるほど、象徴としての意味合いでガンダムを採用するのは悪くない。Dollタイプは悪名が高すぎるからね」
「ガン、ガン、ガン……何だい?」
 単純な名前を散々聞かされたというのに、ジョウは覚えられないでいる様子を見せた。
ケレンは妙な目つきでジョウを見てから、すぐに元の顔をして言った。
「ガンダムだよ、ジョウ・ハーテン。ガンダミズムって言葉くらい、君も良く知ってるだろう」
「そうそう、ガンンッダムね。アニキガンダムとガンダムマッソゥ、どっちも捨てがたい」
「止めとけ、補充要員募集で男が寄り付かなくなる。誰だって清らかでいたいんだ」とバッシュが指摘した。
「こんな変態MS、どるだで充分よ、どるだで」
「どるだ?」
 ナギがいきなり口にした響きの良くない単語を聞いて、コンティは怪訝な顔をした。
「見たまんまでしょ」
 機体の肩に書いてあるDoll-DAという文字をナギが指差した。
「ほら、ど・る・だ。そうでしょ?」
『ガンダムドルダ、或いはドルダガンダムとなるでしょうか』
「ガンダムドルダ、なかなか恰好良い名前ですね。ドルダ、ドルダ、ドルドルダ、ふむ、極めて美しい響きです」
「コーディネイターどものおセンスは相変わらずおイカれになっていらっしゃる」
「ドルダってなんだかドリルっぽいねぇ。ドリルはいい。穴を掘るのは雄のロマンだもの。そうは思わないかい、コンティ・ネイブリット君」
「お、俺に近寄るな! 手を伸ばすな肩を掴むな尻を揉むな首筋に息を吹きかけるな!」
「ちょっと、コンティにちょっかいかけんじゃないわよ!」
 ロウは頭を抱えた。
333通常の名無しさんの3倍:2010/06/05(土) 19:48:19 ID:???
面白いけど、wikiの管理人さんが大変だから、もっと小出しに書き込むべきでは?
334286:2010/06/05(土) 20:07:34 ID:???
>>333たしかにそうですよね。
携帯規制が怖くて投下出来るうちに投下しておこうと焦っちゃいまして……管理人さんすみません。
335通常の名無しさんの3倍:2010/06/06(日) 12:14:41 ID:???
とりあえず投下乙!
久しぶりに、なんか並々ならぬセンスのオリガンを見た気がする。
さっそく死んだ三人とアッーの人の名前にワロタw


邪気眼でDガンダムを思い出したが、あれも好きだったなぁ……
336129:2010/06/07(月) 10:59:44 ID:???
>>334投下乙
自分も携帯なんで、気持ち分かる
乱れた感じの世界観と命名センスが素晴らしいww
俺も規制されないうちに書いてみようかな
337機動新世界ガンダムDoll-DA 1-16:2010/06/11(金) 23:15:45 ID:???
邪気眼ドルダ投下します。



 あたりは薄暗かった。特定の高度に敷き並べてある黒雲が、天蓋から発せられる光を弱めているのである。
黒雲の上の天蓋は日常通りの職務に勤しんで、明るすぎず暗すぎない白夜を再現し、エネルギー資源を惜しむべくひたすら神経を酷使している。
上役の指示は数時間も前に届け出されていたはずあるが、即座に新たな命令を遂行するに彼は鈍重に過ぎた。
たしかにこれほどの図体に張りめぐった神経にくまなく気を配るのは困難に違いない。
彼が己の徒労に気が付いて、上司の喚き声を思い出して慌てる頃には黒雲自体消え去っている。
けれども全自動化してある彼が叱られることはないであろう。彼が無事であるために寧ろ褒められるかもしれない。
九死に一生を得た悪童が功績も無しに賞賛されることと同様である。
事実、彼以外のものたちの被った負債は彼の失態を誤魔化してあまりあった。
これまでは町という生産道具を長持ちさせるべく時たま降らす雨で地を潤していたのが、こうなった今では全て無益な骨折りになってしまった。
もし会計士がいたのなら、忌々しくってたまらなかったろう。
 幾千人、幾万人とも知れない人々が瓦礫の間にひしめいている。
急ごしらえの歩道が渓流のように曲がりくねっているのを見るに、押し寄せているといったほうが良いかもしれない。
それぞれの先頭には防護服を着た者が立ち、具合の良い足場を探り当てながら人々を導いている。
彼ら先導者がいるおかげで群衆は憂いなく前へ歩んでいける。最後部では銃火器を手にした屈強漢らが、脱落者が出ないか目を光らしてくれてもいる。
 遠目に見る限りで群衆は三つに大別できた。
歩みを止めることなく速やかに進んでいく人々、個々の反応がのろく、渋滞しながらゆっくり行進する人々、殆ど手さぐりで足を運ぶ人々である。
それぞれの姿形は近寄って見なければわからないが、日ごろの彼らの働きぶりを思えば、動作で似通っているなら見た目も似通っていることであろう。
338機動新世界ガンダムDoll-DA 1-17:2010/06/11(金) 23:17:35 ID:???
 ポスト・フェストゥムの便乗する輸送機が072工業区に降り立ったときには、雲行き怪しく雨の降る気配が見え始めていた。
クラゲ型の雲を観賞するには来るのが遅すぎたようである。以前文献で見た通りに、天空高くに茸の傘が咲き開くという風光明媚を期待していたポストは聊か興ざめがした。
けれども天は地上の生き物の事情に関与せず、その逆もまた同様である。
空が快方の兆しを見せても尚、泥から生まれたものたちの疾病は改まる様子を見せない。
嵐はなるほど暴君の如くに違いあるまいが、二本足の畜群の気まぐれに比べればおとなしいものである。
一方は季節が巡れば全快し、もう一方はその数十倍かの輪転を経ねばならない。
空やら山やら海やらの自然の光景を打ち眺めて感歎し、
僕らはなんてちっぽけなんだと拙い詩を綴るのは、己の姿を見まいとする意志の表れか、さもなければ自分が主観であることを忘れるせいであろう。
ポストは防護服を着ながら、心中でそんなような意味のことを呟いた。
 全身を覆う防護服ではそれぞれ容姿の区別が付き難くなる。
コーディネイターがモロンと見間違われるのは問題となるが故に、ポストの防護服は彼専用の特注品であった。
あまりに手数がかけられているために、それは防護服というよりも人間大のMSに近かった。
各所に配置された電磁式マッサージが血行を良くし、空調は任意に変更可能なハーブの香を伴っている。
ヘッドマウントディスプレイは最新映画から通販番組までいつでも好きなときに何度でも視聴可能で、決して退屈する暇を与えない。
そのほか様々な機能を詰め込んだ結果に重量は増してしまったが、各所に仕込んだ人工筋肉の働きで彼自身は楽に動けるようになっている。むしろ着ていないときより機敏な動きが可能である。
外観の意匠もそれなりに凝らしてあった。
口から後頭にかけてとわき腹のぐるり、それから腿と膝の間の左右合わせて六本のパイプが聊か旧式めいた印象を与えるけれども、赤い塗装と頭部の角という判りやすい特徴があるので大衆受けする見栄えである。
 ポストは副官のザリー・マッカティンを伴って輸送機を降りた。ザリーの防護服の生地は体つきを判別できるくらいに薄手である。
無論、動作の補助機構など付いていない。イェニチェリー・モロンの彼にはそれでも充分であった。
339機動新世界ガンダムDoll-DA 1-18:2010/06/11(金) 23:21:25 ID:???
 割合に被害の少ない区画には故障者選別用のテントが仮設してある。
ポストは手始めにそれらのいくつかを見て回り、彼の期待にそぐうものどもを見物した。
 テントの前には行列が出来ている。その行列を一見するだけでも、モロンたちはめいめい勝手な恰好をし、己が運命に合わせて面目をあらためているのがわかる。
熱と毒とを伴う光は彼らの上に平等に降り注がなかった。
個体性を滅却するよう弄繰り回された人間家畜らは数瞬のうちに失敗者と成功者に二分された。彼らの生を仕分けしたのはたった数歩の距離である。
暗がりにいた者は皮脂や骨格を僅かに欠損したにとどまり、アーミー・モロンの指図にも従順である。
窓からやや離れていた者はその半身を炙られて、有機素材のフリルやら褌やら飾り紐やらを引き摺って歩き、途中うっかり落し物をして体重を軽くしつつも、やはりテントにたどり着く。
窓に近かった者は努力空しく脱落するか、そもそも再起動を促される必要を持たない。せいぜい自身の落した影で壁画を刻む程度である。
 これら故障者のより分けは結構な手間であった。症例が殆ど失われているために、肌色の面積ばかりでは判断が付きかねた。
中身の具合を詳しく確かめるには分解するしか手立てがない。
いっそまとめて供養すればいいとも思われ、物惜しみしたために却って損になるといえようが、他に仕様がない。これも規則である。
如何なモロンでも再利用の望みを捨ててはいけない。モロン一体血の一滴、勿体無いの精神である。モロンの励みとなるべく促進せられねばならないのである。
 その公共心に鼓舞されてか、あるいは己の有用性を証明するべく躍起になっているのか、瓦礫の町の群集の歩みは止む気配を見せない。
これがコーディネイターやナチュラルであったならそうはいかない。甘ったれて泣き喚くやら、動く気力を無くすやらで、被害と費用と無駄な時間とが上乗せされたことであろう。
「なんだ、これは」
 ポストは仕分け表を見て眉を顰めた。それを手渡した現場指揮官のモロンは、最敬礼をしてから先ほどと全く同じ説明を行った。彼は礼を失したと思っているらしい。
340機動新世界ガンダムDoll-DA 1-19:2010/06/11(金) 23:24:31 ID:???
「いや、作業を続けたまえ」
 現場指揮官は向日葵のような笑顔を浮かべたまま、防護服に付いた角を揺らして去っていった。
ふんぞり返っているばかりの上司に仕事の邪魔をされても彼は気分を害さない。
コーディネイターに盲従するのにも、自身の職務に従事すると同様に無上の幸福を感ずるべく条件付けられているからである。
 再利用可能なモロンの割合が少ないのには納得できる。
けれども残った廃棄モロン――一応稼動はしているが労働に堪えないモロン――のうち八割以上が、消毒の後に食品加工へ回されるというのは不可解であった。
 コーディネイターとモロンの立場では、モロンを食すのが別段自然に背くことであるとはいわれない。
ナチュラルが牛や馬を酷使した末に腹をくちくするのに用いるのと変わりないことである。
稼動年数の過ぎた殆どのモロンの殆どの部品は加工センターで有用な食物に生まれ変わり、同胞の日々の糧を補ってくれている。
肝や脳髄といったごく一部分を除ければ大した手間もかからず還元されうるのである。排泄物も少量で済み、総合すれば穀物より安く付く。
それ専用のモロンさえある。そちらは資源の節約手段としてではなく嗜好品として扱われる。
製造後十ヶ月の幼生モロンの腿肉は実に口当たりが良い。それなりに安価で、揚げ物にするにも都合の良い形状をしている。並みのレストランで出されるのは大抵がこれである。
341機動新世界ガンダムDoll-DA 1-20:2010/06/11(金) 23:25:57 ID:???
 雌のモロンで、自然に発達させた生殖機能を未使用のまま特定年数維持すると細胞が具合良く熟成され、コーディネイターの肥えた舌をも唸らせる高級食材となる。
殊に胸部は美食家にとって珍味の宝庫である。
乳腺周りの脂肪分は舌ざわりが滑らかで、特異な噛み心地のする心臓は滋養強壮の効験がある。
しかし通が好むのは顎肉であろう。これは一体のモロンから少量しか取れないので、運が悪ければ玩味する機会がないまま一生を終えてしまう。
体毛の少ない猿は年がら年中幾度でも発情可能であり、魚類などのように生殖を果たすと栄養価を減じるということはあまりない。
けれども質はどうしても変わるらしいのである。ホップが受粉するとビールの味が落ちたり、牛が子を生むと食感が損なわれたりするのと同様であるといえよう。
こうした言い分は迷信といわれるであろうが、迷信一般のもたらす影響は害ばかりとは限らない。
ある種の箔付けなしには文明社会といわれるような機構は円滑に回らないと断言し、その形而上学的裏づけをする人もある。
人力の節約乃至生活水準と呼ばれるものの向上と共に清貧の流行は廃れざるを得ない。
342機動新世界ガンダムDoll-DA 1-21:2010/06/11(金) 23:29:24 ID:???
 ポストが不可解を感じたのは、素材の状態に関してであった。
未来のシチューやハンバーガーが事前の加熱処理を受けたのはまあ許容できる。冷えてもレンジが温め直す。
しかし、アサルトフィールドのもたらす放射能で味付けされた精肉は異物混入騒ぎどころではない。
コーディネイターは口にしないにせよ、彼らは勤勉実直なモロンたちの食卓に上る。
最悪、ナチュラルの暮らす自然保護区へ廃棄の名目で贈呈されかねない。
その場合は粉状の加工食品であり、ナチュラルの特定の階級の家庭で珍重され濫用されている魔法のような調味料である。
ありもしない素材の旨みを引き出して味覚を遊ばせるばかりでなく、奇形人や奇形児の製造工程に一役買い、
そのうえでナチュラルの慈悲心と虚栄心を満足させるために、せっかく自然のままに保ってあった遺伝子プールに余分なものを添加する可能性もなくはない。
数世代前のナチュラルが勤しんだように、聖者の旗印を掲げるか不可避的災害の法精神に則るかして梅毒を流行させるのと、どちらが愉快であるかもわからない。
ポストはそんなふうに憶測を進めて行った。一言しておくと、この種の論法の飛躍は彼の望むところでもある。
人体の仕組みに関する科学的な裏付けというのは公共化したうぬぼれに違いなく、むしろ絶対に無害と証明済のレッテルを貼られたものこそ恐ろしい、という軽率な逆説を確信していられるほどに、彼はうぬぼれているのである。
〈リグ・ヴェーダは何を企んでいる。ベンセレムを滅ぼそうとでもいうのか〉
 人間の世界の一切を管理している量子型演算処理システムの名がポストの心中で呟かれたとき、テントの外から奇声が響いてきた。
343機動新世界ガンダムDoll-DA 1-22:2010/06/11(金) 23:31:09 ID:???
 発端は一体のモロンが脱落したことである。
脱落というのは、彼の代謝やら何やらの機能が酷使された末に急激に減退し、彼の肉体が動作するのを止めたということである。
全身生焼けのうえ、曲がった鉄棒がわき腹から突き出ているのであるから長持ちしたほうであるともいえよう。
痛苦に対する鈍感は必要最低条件であるにせよ、育児モロンによる辛抱強い教育の甲斐があったというものである。
手先と踵から溶け落ちつつある皮膚を惜しんで前倣えの恰好で歩いていた彼は、そのまま前のめりに倒れ込んだ。
お腹の鉄棒を除いてもらえなかったのが心残りであろう。
 彼の所属するグループは、例の手さぐりで進んでいるグループである。
ほとんどは彼と似たり寄ったりで、なかには腕の片方が欠損し、体の均衡を崩して歩き難そうなのもある。
これらの誰かが公正心を発揮したなら「まごまごすんな! だらしねえぞ!」と彼を怒鳴り付けても不思議でない。
しかしそんな暇は与えられなかった。
 彼が彼の前を歩いているモロンに覆いかぶさる形になる。皆が皆自分ひとりで精一杯の有様である。他人の重みなど支えきれるはずが無い。
彼の後ろを歩いているモロンも無事では済まされなかった。その歩みからしてナチュラルでいう生後一年程度のものに近い。
安ぴか自動車と同じく急には止まれないのである。
 前のめりの風潮は前後に向けて瞬く間に広がって行った。
党派心から唱えられる危険思想のドミノも、こうも速やかには行かなかったろう。そちらの方は信仰に躓くが如くで、長生きし、生き返りもするが、我他の根は保つ。
麦は踏まれれば良く育つとはいわれるが、人体はそうとも言い切れない。
時には苦労の仕方を間違えることもあり得るし、ましてやこのモロンたちはがたぴしとした状態である。
344機動新世界ガンダムDoll-DA 1-23:2010/06/11(金) 23:32:01 ID:???
 前後の監視者たちは横たわる人体の河を見て途方にくれた。一斉に怠けられては、雇用を抵当に脅し辛くなる。
アーミー・モロンはとりあえず一声かけてもらおうとして、先頭に寝ている肉の塊を足蹴にした。
気付けである。愛情の表現である。ベンセレムのプロレタリアートという同胞への労わりである。
モロン慰安用の感動映画に常套の場面でもあるが、アーミー・モロンの博愛心が如何に激しくとも死者までは生き返らせないらしい。
報いは軍靴を潤す肉汁だけであった。
帳簿を持つ伝道師から骨董を買ったり紙幣を座布団に傅いたりした経験が彼らにあったなら、別な結果を期待して良かったかもしれない。
けれども美容石鹸と同じ戸棚に並べられた信心の影響は酷く狭量なもので、当人以外に効能は無いともいわれている。
モロンたちの少ない小遣いを合わせても復活劇を起こすには足らなかったろう。実に遺憾なことである。
後に報告書に目を通した際、ポストは以上のような所感を抱いた。
345機動新世界ガンダムDoll-DA 1-24:2010/06/11(金) 23:32:59 ID:???
 絶息者の群れからさほど離れていないところには、別のモロンの行列が続いている。目的地のテントが近いためである。
その行列の直ぐ近くにまた別の行列が続き、人口密度はかなりのものになっている。
仕分けが遅々として進まないので、割合健康なグループの幾つかは待機を命じられ、ひと塊になって整列している。
 その整列組の中に、ドミノ倒しの光景を初めから終わりまで観察していたモロンがいた。
彼は顔の半分が焼けただれて片目が見えなくなっているが、首から下は殆ど無傷であったので、軽傷と診断されていた。
346機動新世界ガンダムDoll-DA 1-24:2010/06/11(金) 23:35:23 ID:???
 モロンに対して物心が付くという言い方は正しいか判らない。
とにもかくにも彼が出荷され、教育された通りの判断で教育された通りの作業をこなすようになってから数年後、彼の情操に妙な兆しが生じた。
職務より休息のほうに、微かに多くの快を感ずるようになったのである。
食物の摂取や通勤の行進に比べて便座カバーの手編み作業はなるほど幸福ではあるが、
宿舎に張られたハンモックに腰を凭れかけ、目を瞑ったときにもたらされるあの感覚、目玉がぐるぐると回り、機械の音も便座カバーの幻覚も暗闇の中に溶けて行く感覚はまさに至福であった。
こうした比較判断の萌芽を経た後、彼の便座カバーに対する真心は揺らぎ始めた。
彼は日々のハンモックが待ち遠しくてたまらなくなった。
そうはいうものの、便座カバーへの情熱が完全に消失したわけでも作業がなおざりになったわけでもない。
指先を毛糸で愛撫されることは相変わらず心地よいし、Uの字の膨らみは彼の前立腺に微弱な刺激を与える。
編み目の乱れていない完全な品が運良く完成したときなどは、頭上から眩い光が差し込んでくる
――実際、彼が良い仕事をすると天井のライトが光る仕組みになっている。彼のような最下等のモロンにも、慈悲深いベンセレムの管理装置であるリグ・ヴェーダはご褒美の演出を用意してくれるのである――
それでもハンモックのもたらす恍惚には及ばなかったが、便座カバーへの愛情の一切を放擲してハンモックがためのみに生きるほどにも、彼は人間離れしていなかった。
モロンの遺伝子構造はコーディネイターやナチュラルと左程変わらない。
胎児のときに行われた退化処理と弛まない表象結合教育とによって人間性と呼ばれる情操を見かけ上克服してはいるが、その本性にはやはり貪欲が含まれているのである。
けれども、そうした移り気の日々の幸福も長くは続かなかった。彼は煩悶という頭の働きを感得したのである。
347機動新世界ガンダムDoll-DA 1-26:2010/06/12(土) 00:23:27 ID:???
 畢竟するに彼は二人とも選ぶことが出来なかった。ハンモックは実に艶かしく、彼を魅了する。しかるに逢瀬の時間は一日の六分の一である。
物心付いて以来の六分の四の時間を彼は便座カバーと過ごした。これからも過ごすであろう。
そう思うにつけ、彼は便座カバーを諦め切れなかった。便座カバーは長らく付き添った伴侶である。
彼女――ナチュラルの物差を使った場合、このような喩えになる――への愛を捨てて、彼女から見放されるのも忍びない。
いっそのこと両方とも選んだら良いではないかとも思われるが、彼はどうしてもそんな心境に至らなかった。
偽りの妊娠で騙されたり、それぞれ根気良く嘘をついてお互いを陥れる光景に悩まされたり、
訴訟沙汰に発展して僅かな慰謝料と莫大な裁判費用を毟り取られたり、気を抜いた隙に彼の背後で白刃が煌めいたりするのを恐れてのことでは無論ない。
モロンは誠実であるからナチュラルのような疑り深い考え方はしないのである。
それはともかくとして、主客の相違はあるが彼は彼自身と便座カバーとハンモックとの間に階級的な区別を設けることを知らなかった。
あるのはいわば異性的な相違のみで、そこに教育で植えつけられた一意専心の良心の声が結びついた。
どちらか一方を選ぶか、さもなければどちらとも放棄してしまうかという三つの選択肢が、彼の意識にはっきりとした形で現れていった。
そこへ持ってきて、ナチュラル解放戦線の引き起こした未曾有の大災害である。
 愛しき便座カバーも美しきハンモックも彼を残してどこかへいなくなってしまった。彼は焦げ臭い工場の中でなんとなくそう思った。
それは彼なりの確信であった。視界が狭く、体が思うように動かないのも、彼の傷心の作用かもしれなかった。
彼はモロンである。永らうか永らわざるかの問いを自分に向けて発するためには発育が足りていない。
 良心の声の命ずるまま、彼はアーミー・モロンの命令に応じて半壊の工場から這い出て群集に加わった。
 彼の同胞は少なかった。群集の中にいる者の殆どは、彼の見たことの無い恰好をしていた。
彼は微かな期待を込めてあたりを見回したが、いくら個性的な面々といえども、便座カバーやハンモックなど同伴しているはずもなかった。
348機動新世界ガンダムDoll-DA 1-27:2010/06/12(土) 00:26:23 ID:???
 彼はテントの付近で待たされることになった。その理由も理由を知ろうという欲求も彼には皆目見当が付かないが、なぜか落ち着かない気持ちになった。
視界の消失しているところ、つまり彼の右頬がそわそわするのである。この感覚は実に奇怪であった。
彼はそわそわするところに触れてみた。食事で出されるオートミールに似た触り心地がした。
指に力を込めてほじくってみると、オートミールよりかなり硬いが、ちぎり取ることが出来た。
暫く手の中で弄んでみた。なかなかの快を覚えた。
 妙な色合いをした人々が次々と倒れていく。その動きには一貫性があり、編むのに失敗した便座カバーから毛糸を解いていくのを思わせた。
彼は幻覚に合わせてその仕草をしてみた。惜しいことに幻覚はすぐに晴れてしまった。
左手には何も無く、右手には変な塊が乗っている。彼は注意を倒れている人々に戻した。
彼の近視眼では仔細に観察は出来ないが、大きさは違えども右手のものと同じものであるように思われた。
彼は隣の人を見た。隣の人の肩には同じものがあった。
妙な色合いの人々はもはや動かなかった。便座カバーやハンモックのようにいなくなったということと道義かもしれなかった。
機能しない、有用でないモロンというものは有限の神の観念と同じくどこにも存在してはならないのである。
彼はあらためて右頬から摘み取ってみた。やはり同じものであった。
 彼は生産されて始めて、自分というものがいなくなるかもしれないと感じた。何よりも永く連れ添ったのは自分というものである。
六分の四の便座カバーと六分の一のハンモックを失ってでさえあれほどの不快を覚えたのである。
六分の六の自分が居なくなった場合の不快はとてつもないに違いない。彼はもう何も失いたくなかった。
しかも今や一番分量の多い一番大切なものを失おうとしているのであった。
 彼の感官は鋭敏になって行った。触感のもたらす様々な反応を表す術は彼には限られていた。彼は小さく呻いた。
しかしありあわせの表現は彼の不快を和らげるのではなくて、いっそう激しくするのに貢献した。
呻くごとに耐えられなくなってきた。右頬がざわつき、全身の筋肉が強張った。彼はとうとう絶叫した。

349機動新世界ガンダムDoll-DA 1-28:2010/06/12(土) 00:30:54 ID:???
 狂気は伝染するものらしい。正常なコーディネイターならそう結論付けたろう。
けれどもポストはナチュラルじみたものの見方をして、眼前の光景にむしろ正気の片鱗を見出した。
 ある大なる影響を及ぼした行為に付く形容動詞の選抜は、それぞれの時代における歴史書の記述に一任される。
例外もあるにはあると信じたいが、どうしてかそれらはしばしばないがしろにされ、
賢明な人々ですら、物差の目盛りが王冠の台の節々によって定められたり、世評の悪さより良心の疚しさの方がずっと片付け安かったりするといった摩訶不思議な現実に幻惑せられ圧倒せられ、
小が大を兼ねないことを惜しみつつも、自身の判断力においては一夫一婦か売笑の態度で我慢せざるを得ない。
しかしポストは懸命でないどころか思い上がっていたから、彼自身の任意の判断を下すことが出来た。
 一体のモロンの叫びは人間理性の産声といっても良かった。
理性の光は、元来理性動物として生きるべきらしい人々にあまねく行き渡り、目のなかの梁を取り去ってしまう。一度目の叫びは空しく響くに過ぎない。
他のモロンたちは勤労に役立たぬ認識を排除するように仕込まれた精神的片輪者であり、耳で聞こうとしない。
大半の部分が死滅させられている脳髄は、同胞から発せられた警鐘を幻聴と判断する。
二度目の叫びは短かった。息継ぎの充分でないためであろう。けれども、群集のなかの幾体かのモロンが音の発生源に目を向ける。
産声は三度、四度と続く。彼の喉はその度に痛めつけられ、一度として同じ音を鳴らさない。注意を喚起されるモロンの数は確実に増して行く。
叫び声がぶれた。楽器の弦が緩んだようでもあり、電子音声にノイズが混じったようでもあるが、それは潰れかけた喉の断末魔ではなかった。
もの言わぬ群集の中にいた別の一体が、彼の動作を真似したのである。
その次の叫びでは一挙に五体加わり、更に次の合唱には数十体が参加する。
科学的根拠があるといわれるような新式の健康法などと異なり、その流行は一時のものと見くびるには凄惨に過ぎた。
牧畜に悪魔が乗り移ったかの如くであるが、彼らに溺死の徴候は見られない。
その場に立ち止まり、天へ向けておぞましい賛美歌を捧げている。

350機動新世界ガンダムDoll-DA 1-29:2010/06/12(土) 00:33:11 ID:???
 彼らの歴史が以降も続いたなら、例の一体のモロンは彼の遺伝子の先祖が初めて鈍器を手に同類を殺めたのに比する栄光を手にしたかもわからない。
或いは神の声を聞く神の庶子として崇められたかもしれない。
 救世モロンの声に同調した無数のモロンのなかに、他のモロンに比べて弱々しい体つきのモロンがいた。
彼の用途は作業員の監督で、いわば白服を着せられる立場にある。彼には報告書を書くためのいくばくかの語彙が与えられていた。
彼は合唱しながら、現在の自分たちの情緒に合致する表現は無いものか思案した。
体の節々にあり、殊に皮膚の変質した部分や肉の欠けたところ、折れたり取れたりしてもはや元には戻らない箇所から来て、気にすれば気にするほど耐え難くなる感覚のことである。
彼は腕から突き出た棒切れを摘んで、ぐいぐいと揺らしてみた。
「いたい」
 その言葉が勝手に口から出た。教育施設で一度教えられたきりで使われることのなかった言葉である。
彼の無意識の中で観念と結びついていたのであろう。記憶というものは不確かであるが、時々はこんなふうに勝手な真似もしてくれる。
「いたい、いたい」
 彼は反復した。彼の声は隣の者の耳に伝わり、隣の者は彼の声を真似し、そのまた隣の者が真似の真似をする。
モロンという生き物は先入見を持たず実直である。人づての情報を捻じ曲げることはしない。
それぞれの目的に合致する表現ならば尚更である。
351機動新世界ガンダムDoll-DA 1-30:2010/06/12(土) 00:35:54 ID:???
「――いたい! いたい! いたい!」
 彼らはこうして最初の言葉を得た。救世モロンが人間的自由の象徴に祭り上げられるための足場が作られたといえよう。
彼らが今後何らかの手段で繁殖し、何らかの手段でめいめい監視しあうようになり、何らかの手段で生存目的を見出したとする。
そうなれば便座カバーとハンモックと救世モロンの関係が詮索されるに違いない。自己の起源というものはいかな種族においても興味の的になり得る。
便座カバーとハンモックと救世モロンとは三つにして一つであると言う人があり、
いやいや、便座カバーのみが始まりにして終わりであり、ハンモックは我々全員に行き渡るものであり、
そうして救世モロンは便座カバーがその意志を伝えるべく使わした存在で、彼は便座カバーの濡れるのを防ぎ、
同時に全てのハンモックの撓みを強制するべく自ら望んでウォシュレットの吹き上げに臀部を貫かれたのだ、と言う人もあろう。
君らはまるでわかっちゃいない、と議論の場で歎息し、仔細ありげに閉口して見せる人が幾人かは必ずある。
往々にして彼らはその深遠な真理を開帳する機会をば墓場か酒場まで持ち越してしまう。
また別のある人はその方面の議論で生計を立てようとは考えないで、便座カバーを汚さずハンモックをぴんと張るだけで満足し、
絶対の性質を帯びる度合いに応じて所有される便座カバー性や、
ハンモックの網の菱形の不可謬性に含有され得る恩寵の権能の絶対的に必然的な世界厠組合の専有性といった専門語が飛び交うのを横目に、
ただただ実在する隣人の奉仕に苦心する生涯を送るかもしれない。
彼の日々の娯楽は、トイレットペーパーを開いて眺めることである。
勿論、便座カバーの息子らは産まれる以前からものの善し悪しを見分け隣人を愛する能力を完全に具えているから、
この手の反自然的で反革命的なうえ無学な考えを哀れんで救いの手を差し伸べる人々も出て来るであろう。
そういう善意の人々の種類は様々であるが、
その性質としては自分の理論の正当さが証明されるまで議論し続ける旺盛な探究心と、
自分以外の頑固者に向かって肥溜めに落ちろと呪う習性、そして地上に跋扈する無知と盲目と無信仰を憎むこと甚だしい点で共通している。
なかでも腕力の強い集団になると、我が口から発せられた言葉と我が厠のトイレットペーパーのほかは一切が虚偽ということなる。
352機動新世界ガンダムDoll-DA 1-31:2010/06/12(土) 00:38:09 ID:???
彼らにとっては排便の回数の削減ですら容易である。
週一回以上の排便は便座カバーに皺を作り、更には臀部が排便の都度便座に刺激せられることによって肥大化する結果、
ハンモックの編み目と臀部との外的ないし内的な合一性が得られずに総合的な恩寵の度合いが損なわれる。
この明々白々な真理を受け入れるように皆を訓導すればいいのである。訓導そのものは肥溜めを指差すだけで事足りる。
彼らは誠実である。トイレットペーパーの材料が見当たらないときには、資源環境に配慮して反故紙を用いる。
彼らは再生紙でないトイレットペーパーを持つ人を見つけると、便座カバーの衛生のために、その穢れたトイレットペーパーごとその人を水洗浄の刑に泣く泣く処さざるを得ないが、
そういう悪党や丈夫な紙というものは量があまりに多いものであるから便器の穴が詰ってしまい、清浄なる水溜めは俗臭ぷんぷんたる様相を呈する。
しかし彼らは人類の道徳的改良の代表者を自負するだけあって、すぐさま解決策を見出す。
手間のかかる水洗式ではなくて、汲み取り式を使えばいいのである。実際水洗式はあまり効率の良い仕方ではなかった。
気概のある悪党ともなると、絶え間の無い水流に揉みしだかれて紙とともに溶けて行きながらも、
ちょっとした演説をかましたり、二三の警句を残して善男善女によくない感化を及ぼしたりする。
その点、汲み取り式なら心配はいらない。紙も人体も丸まって落ちるのは一瞬である。
長く続く苦悶の声で聴衆が気分を害することもない。花火と同じく瞬間の美というものも感じられる。
この見世物は俗界にも受けが良く、任意の相場に合わせて入場券が取引され、そこからはねたものらが便座カバーの栄光により多くの奉仕を為す。
彼らは己が義務には非常に厳格であるが、無論人間らしい寛容さも持ち合わせている。
残虐非道な悪漢の着物といえども、当人とトイレットペーパー以外には罪の穢れはないのである。
353機動新世界ガンダムDoll-DA 1-32:2010/06/12(土) 00:39:36 ID:???
人々が水遊びに飽きる頃合になると、都市住民の間でトイレットペーパーそのものに注目しようという風潮が高まって来る。
類稀な耳と脾臓を具えた七十人の賢者らが密室で七十二日間熟考した末、トイレットペーパーの純白の中に一切の徳と真理が含まれているという事実を発見するのである。
この剛毅な人々は、トイレットペーパーを雨天の時の傘代わりに使ったり、細かくちぎってスープの具材にしたり、使用済みのそれらをかき集めてアルコール飲料の醸造を試みたりする。
患うことがあっても、トイレットペーパーを溶かし入れた肥壷に身を浸せばたちまち元気になる。
これは肥壷の内部に飽和した超自然的緒力が結晶作用を引き起こして生じる極めて便座カバー的な成分が皮膚から浸透し、救世モロンの齎した奇跡と類似の治癒力が擬似的に働くためである。
副作用としては発汗、蕁麻疹、口臭、呼吸不全、口元の湾曲、頬の肥大化、唾液の気泡、眼窩の陥没及び眼球の反転、
涙腺の誤作動、被虐的嗜好の発達、深遠という語句への過剰反応、トイレットペーパーの字句に依拠しない言葉が発音不可能になるという声帯異常、
通行人ないし知人に付き纏って改宗を迫る等々が挙げられるが、いずれも些細な事である。
便座カバーの声を聞くことで得られるハンモックの浄福は、日常生活の不便を補ってあまりあるのである。

354機動新世界ガンダムDoll-DA 1-33:2010/06/12(土) 00:41:34 ID:???
「イタイイタイイタイイタイイタイイタイ」というモロンたちの歌で耳を楽しませながら、ポストは彼らの未来を空想した。
横のザリーが気を利かせて棒切れを差し出したなら、指揮者の役割を買って出たことであろう。
〈しかしまあ、嘆かわしいことだ〉
 ポストの表情が曇った。こんなに盛大な回心を遂げても、モロンはその生誕の以前からモロンとしての型にはめられている。
土竜の目は見まいがために付いている。地上の美に魅了されても、彼らは光を避けて生きるほかないのである。
 片目の者が盲人国で王様になれるとは限らない。世界の平和を守るべく初めに行動するのは、きまって善人である。
無知は罪であるらしく、そしてまたその逆も正しければこの場で最も善なる者と呼べるのは現場指揮官のモロンであろう。
モロンは総合してナチュラルの子供にすら劣っているといわれるが、費用を惜しまずに特定の分野に特化させた際にはナチュラルの追随を許さない。
彼の専攻した科目は人殺しである。対象がモロンである場合は、目に梁を入れなおす手間を省くことである。
355機動新世界ガンダムDoll-DA 1-33.5:2010/06/12(土) 00:42:37 ID:???
 命令が通信機でアーミー・モロンたちに行き渡った。
「イタイイタイ」の呪文でまやかされたのは、テント前の一群ばかりではない。
移動中待機中を問わず、さっと見渡せる範囲にある工業モロンの半数近くがものを言い出し、その感染力も増しつつあった。
それぞれの手持ちの弾薬の合計は、想定される必要数に比べて余裕があるとはいえない。
しかしアーミー・モロンたちは勇敢である。彼らは絶望的な状況でも最後まで戦い抜く。小銃には銃剣だって付いている。
彼らはナチュラルとは違って、いざというときでも銃剣の正しい使い方が出来るのである。
 志操堅固なアーミー・モロンたちの陣形が整うにつれ、銃声は伴奏のようになって行く。工業モロンのほうも負けじと声を張り上げる。
どちらの側を見るのが楽しいか目移りする光景であるが、アーミー・モロン側の優位が固まりかけると、ポストは工業モロンたちの動向に着目した。
〈そろそろ来るかもしれんな〉
 工業モロンたちの全員が全員無抵抗主義を実践していられるというわけではなかった。
反骨心を持ち合わせているモロンも相当数が混入していた。「イタイイタイ」の調子が変わる。
便座カバーと救世モロンがもう一方の頬を差し出せというようなことを教えようが教えまいが、徒党を組めば荒事をしたくなるのはこの動物の性である。
工業モロンたちは駆け出した。
356通常の名無しさんの3倍:2010/06/14(月) 00:45:09 ID:???
投下乙!
後半、便座カバーにハンモックだけでここまで話が膨らむとは。
脱線もここまで行くと一種の芸風か。
ニール・スティーヴンスンがもっとガチガチに尖ったような印象。
彼のよりも、こっちの脱線の方がベクトルとしては好きだけどね、俺は。
357通常の名無しさんの3倍:2010/06/19(土) 23:38:33 ID:IqyLRlFX
機動戦士ガンダムFIFA

・Gガンみたいに戦争ではなく大会で主権を決める
・球技をするという事で球技用のスーパーハロを使用する
・ゴォォォォォ―――――ル!!!
358通常の名無しさんの3倍:2010/06/19(土) 23:46:01 ID:???
量子力学を利用したゴール前の必殺“Q.B.K”があるんですねわかります

<Quantizated Ball Kick>
急にやってきたボールハロが量子化する。誰も蹴れない。
359通常の名無しさんの3倍:2010/06/22(火) 21:23:07 ID:???
邪気眼ドルダ投下します。
360機動新世界ガンダムDoll-DA 1-34:2010/06/22(火) 21:25:29 ID:???
 雪崩れてくる群衆にアーミー・モロンが飲み込まれる。
懸命に撃ち殺してはいるが、工業モロンたちは大なる仲間が小なる仲間を捕まえて盾にしたり、押し合いへし合い、山積みになった同胞の残骸を乗り越えて飛び掛ってくる。
彼らは殴る蹴るの暴行や、噛みついたりひっかいたりといった無礼は働かない。ただ抱きついて相手を引き倒すのである。
敵を愛せの教えには行為の上で従順であるらしい。
彼らは銃創の数にかまわず突進する。口では痛いと言いながらも実際の苦痛はまるで感じていないようである。
イタイというのは彼らの教義ともいえるのかもしれない。赤色の体液でついつい喉を詰らせている者もある。
 ポストは自分に先見の明があることを喜んだ。すると「あいつはなんて嫌味な野郎だ」とモロンたちは思ったのか、救世モロンに率いられる軍勢の陣形に変化が見られた。
鋭角形をした一点突破に向いていそうな陣形である。頂点はポスト・フェストゥムなるコーディネイターを向いている。
足の本数の違いはあるにせよ、猛牛も人間も赤い色や赤という響きに心を乱されるのかもしれない。
ポストの特注防護服は赤かった。立派な角も付いていたので、それで威嚇していると誤解されたかもわからない。
ポストの周囲のアーミー・モロンは隊伍を乱しながらも彼らの神を守るべく懸命に発砲する。
ポストに無理に連れて来られたザリー・マッカティンですら銃を手にしている。
〈よし行け。さあやれ。頑張れ頑張れ〉
361機動新世界ガンダムDoll-DA 1-35:2010/06/22(火) 21:26:41 ID:???
 ポストの数十歩前方で奮闘していたアーミー・モロンが工業モロンの抱擁を受けた。
その工業モロンは隻腕であったが健脚でもあり、無辜の同胞を押し倒すのに梃子の原理を要しない。
倒しざまに銃剣の切っ先で裂かれたのであろうわき腹に、はみ出ているものが見える。
アーミー・モロンが抜け出ようともがくのも空しく後続の選手が重なった。先の工業モロンが蛙の鳴き声に似た音を立てた。
救世軍は仲間たちを避けて進むつもりはないらしく、またもや新たな一体が参上して、役目を終えた同志に脚立に対するが如く足をかける。
そしてその偉大なる第一歩が踏み出されんとした瞬間であった。モロンの視線が、ヘルメット越しのポストの視線と重なった。
ポストは反抗期のモロンを抱きしめるために諸手を大きく広げて、笑顔を浮かべていた。
 モロンの四肢が動きを止めた。目が見開かれ、唇は小刻みに震えていた。彼は怯えているらしかった。
ポストの目から涙があふれた。
「かわいそうな子供たち!」
 ポストがそう言い切ると同時に、モロンの体は弾け飛んだ。
362機動新世界ガンダムDoll-DA 1-36:2010/06/22(火) 21:29:26 ID:???
 ポストの目を見てしまったモロンがアーミー・モロンと工業モロンの二体を巻き添えにして四散したために、それぞれの残骸は区別が付かなくなっていた。
部品の散らばったのと逆の方向には、MOS-Hヒューブリスが立っている。不測の事態に備えて待機していたのが、ようやっと完全に起動したのであろう。
ヒューブリスの両腕は丸ごと機銃になっていて、威力も精度もなかなかのものである。この距離ならばポストを誤射する可能性は限りなく零に近いといえよう。
今は弾薬と砲身を対人用のものに換装してあるが、かつてモロンであったものたちの現状を見るに、暴徒の鎮圧には向いていないようである。

 暴走した工業モロンの大半はMSによって速やかに処理された。暴走していない工業モロンも多数巻き込まれて、未だ機能しているのは全体の一割に満たなかった。
彼らはこの後に洗浄・消毒され、片輪でないものは再教育を受けてから別の工場区画へ送られ、もはや生産手段に値しなくなったものは食品加工に回される。
残った九割のモロンは処理場へ送られる。外気で早く腐りそうなのもあり、半死半生で新鮮なのでも銃弾を摘出する手間を考えれば食材に適さない。
しかしいちいち残骸を回収するのもなかなかの骨である。
 急遽応援に駆けつけた大型コンテナに、工業モロンの体が積まれて行く。
マニピュレータを作業用シャベルに換装したMOS-Bビアーがトレーラーの中身を掬ってコンテナに載せ換える。
シャベルの平たい部分を使って山を平らにするのを忘れてはいけない。
人体は複雑な形状をしているので、こまめに押し込んでいなければすぐに満載になってしまう。
 そういう作業を行うのであるから、アーミー・モロンたちはもはや重火器を手にしていなかった。
彼らは争いを忘れて、勤労でもって社会に奉仕していた。ポストの目には長閑な情景である。
暇つぶしに自分も手伝ってみたいが、そんなことをしようとすれば過保護なアーミー・モロンたちは黙ってはいまい。
彼らはポストのために即席でベンチを設え、ポストには彼の用向きが済むまでなるべく快適に過ごしてもらいたいのである。
363機動新世界ガンダムDoll-DA 1-37:2010/06/22(火) 21:32:05 ID:???
 ポストは何かがヘルメットの上に落ちたのを感じた。ここはキーウィタースの工業区であるから、自然保護区のように小動物が空を飛んでいるはずがない。
隣に立っているザリーを見ると、彼の防護服にもそれが落ちて黒い染みを作っていた。
「黒い雨か」
 小雨が始まった。ザリーは用意してあった傘を差して、ポストが濡れるのを防いだ。
傘は一人用である。ザリーの防護服が斑模様になって行く。
 間もなく大降りになった。棒のような雨であった。ザリーの体は黒い油にまみれたようになった。
 身の安全が確信できるところで雨を感じていると、いやに感傷めいた気持ちになってくる。
二三の詩を吟じたくなったり、イェニチェリー・モロンに話しかけたりしても不思議でない。
「ザリー君」
「御用でありますか、閣下」
「今回のことについて君の所感を聞かせてほしい」
「と、言われますと」
 ポストは興味深げにザリーの目を見て笑った。問い返したということは、学習したということである。
「彼らの暴走についてだよ、ザリー・マッカティン君。皮切りは一体のモロンに過ぎん。
が、連鎖反応が起きた以上少なくとも大半のモロンにその兆候はあったのだろう。このことはモロン全体の情操の変質を如実に示していると思われないか」
 十秒ほどして、ザリーが答えた。
「イェニチェリー・モロンのザリー・マッカティンには閣下の仰られることが理解致しかねます。
ですがご参考までに申し上げますと、近年のモロンの不具合発生率に並行して、コーディネイターにおける精神障害発症率の増大が認められているのであります」
〈こやつ、やり返しおったわ〉
 ザリーにぼろを出させることも出来なくはないが、ポストはひとまず話を打ち切ることにした。
今後、ザリーに起こるであろうことを期待したのである。
「いやなに、ベンセレムが滅ぶまいかと思ってね」
 そうしてそれらの異変はリグ・ヴェーダが故意に引き起こしている可能性もある、と続けたいところであるが、滅多なことは口にするものではない。
〈ナチュラルの浸入、モロンの目覚め、正気なコーディネイター、それぞれ無関係であるはずはない。一切は、神の意思に導かれている〉
364機動新世界ガンダムDoll-DA 1-38:2010/06/22(火) 21:36:38 ID:???
 ポストは廃墟と化した町を眺めた。生物の頭数が減り、いくらか手心が加わっていた。
それでも惨状と呼ぶに充分であった。彼はこれを生み出した人々について思いをはせた。
 同種族間の争いに於いて明確な規則や殺生の完全抑制の働きのないのは二本足の動物くらいなものである、
そう述べる義人は居なくもないが、それは過大な評価であろうとポストは思っていた。
いくら自称理性動物といえども、面と向かった隣人を殺せと命じられてためらわない個体の割合はかなり小さいと思われる。
現実のその生き物が、もし広告上の敵国人や映画の主人公のようにあたりまえと言わんばかりの顔をして何百匹もの同族を殺してのけたなら、世の中はこうも面白くはならなかったろう。
そうした行為には心情的にも空間的にも距離が必要となる。
アーミー・モロンはそのために他のモロン以上の手間をかけられているし、野蛮といわれるナチュラルですらそうした抽象化を推進すべく努力を怠らない。
完全な殺戮合戦というものは完全な人非人を相手にしてようやくなし得るものであろう、というのがポストの見解である。
 モロンは人形であり、残念なことに人間の要素も持ち合わせている。それはいわば人間性の分業制といってもよい。
〈偶像を破壊する者は畢竟自身を偶像と化す。その終局がベンセレムということだが……〉
「彼らも我らも一枚岩とはいかぬらしい」
 ナチュラルの感受性を考えればアサルトフィールドをこんな大雑把には使うまい。屠殺場に寄ればハンバーガーは食べ辛くなる。
アメタペイストを退けるために使わざるを得なかったとしても、せめて二三被弾してからで、手遅れになる直前まで粘ったろう。
彼らは心の平静のために、何事につけ代償と口実を必要とする。頬打ちを食らえば、こちらも心置きなく胸を刺せるというものである。
ナチュラルという社会動物は今回のように短気に大量破壊兵器を用いるほど統制が取れてもモロンじみてもいない。
もしそうであったなら自然保護区のナチュラルはとうの昔に絶滅している。ポストはそう信じていた。
365機動新世界ガンダムDoll-DA 1-39:2010/06/22(火) 21:39:06 ID:???

 ロウ・ブレーンはテーブルに拳を叩き付けた。
「なぜ黙っていた。ウーティス」
 彼は車椅子の老人を睨み付けた。
『教えていたとして、貴方は命じることが出来たでしょうか』
 老人の口は動かなかったが、スピーカーの合成音声がロウの問いに答えた。
部屋のモニターには、072工業区から撤退する直前にヴェスタのカメラが捉えた光景が繰り返し流されている。
視覚不良やら何やらの口実を設けて、乗組員に伏せてあった映像である。
『私たちはこの先生きのこらなければならない。ヴェスタはDoll-Aの追撃から逃れねばならない。
そしてそのための唯一の手段はアサルトフィールド――天を焼き、夜中の夜明けをもたらし、毒を撒き散らす光。
この武器を、果たして貴方は有効に扱えたでしょうか』
「有効に、だと? 万単位の人間を殺すことがか」
『ええそうです。最優先事項を優先する。これほど当然のことはありません。しかし当然のことが出来ないのがナチュラルでもありましょう。
アサルトフィールドの正しい情報が貴方に与えられていたと仮定した場合、我々の生存確率は良くて三割。
貴方は必ず躊躇する。貴方はDoll-Aを前にして決断できない。仲間を失ってもまだ、貴方の良心、殺戮への恐怖が邪魔をする。
ヴェスタが傷つき、死との距離が縮まり、自分が生死の境にいる実感を得てようやく貴方は武器をとることが出来る。
しかしそれが手遅れでないとは限らない。乗組員は貴方の独断のために死亡したかもしれないのです』
 ロウは自分の心の働きをウーティスに断言されたことが腹立たしかった。自分が彼に良心の疚しさを肩代わりしてもらっていることは尚腹立たしかった。
ウーティスが人間味のない確率を持ち出したのは憎悪の的とならんがためであろう。頭の冷静な部分で、ロウはそんなふうに解釈した。
「この件は私以外」
『知らせていません、リーダー』
「そのままで頼む」
 ロウは目を瞑って、暫く考えてからきっぱりとした口調で続けた。
366機動新世界ガンダムDoll-DA 1-40:2010/06/22(火) 21:40:12 ID:???
「ウーティス、アサルトフィールドはもう二度と使わないようにしてくれ。たとえ私から、使えと命じるときでもだ」
『どうしてですか』
「ボタン一つで何万人もの命を左右できたら、我々はきっとおかしくなる」
『ナチュラルの学問はそういう兵器をこそ作ろうとしているのに?』
「彼らが間違っているとは私には断言できない。だが、今の我々はあまりに幼い。自分が何をしているのかわからないまま、取り返しのつかないことをしてしまうかも知れない」
『再び使わねばならぬときが来たら? 貴方のその身勝手で幼稚な考えのために、仲間を、私たちをも巻き添えにするつもりなのですか』
「それでも俺はナチュラルの、人間の尊厳を守るよ」
『夢を諦めるとしても?』
「絶対に必要な人間なんていないんだ。宇宙(そら)を欲しがる馬鹿は俺たちだけじゃない」
 ロウは席を立った。彼の去り際にウーティスは、
『今の言葉を、忘れないでいてください』
と言った。
367機動新世界ガンダムDoll-DA 1-41:2010/06/22(火) 21:42:03 ID:???
 ロウがいなくなってから少しして、洗面器を持ったクリトン・キーンが部屋に入って来た。
彼は老人の服を肌蹴さすと、濡れタオルで老人の体を拭き始めた。
「ロウ・ブレーンは指導者に向いてませんよ。彼には性格の強さというものが欠けています。良心に餌をやるのが実に下手だ。
扇動者たるもの、特別に懸命でも特別に善良でもなくていいのですが、懸命さと善良さの点で卓越していると思わせる何かを持たねばなりません。
要するに確固たる信念と呼ばれ得るような自己崇拝ですね。見解の狭さともいえましょうか。彼にはそれが無い。若すぎるんです。
もすこし老ければ使えるようにもなりましょうが、今はまだまだキャラクター性と大衆性が足りない。
そのくせピカドン・アタック禁止条約については、はっきり約束を取り付けないまま行ってしまった。
たぶん自覚は無いでしょうがね、彼、やっぱり逃げ道は忘れてないんですよ。
極めて詩人ぶった物言いをしつつも、助け舟は残しておくほどに実際的です。
まあその点は評価できなくもありませんが、私なんぞに看破されるようじゃなおさら迂闊で残念――」
『盗聴はともかく陰口は感心できません』
 クリトンは老人の口の端から垂れている涎を拭った。さらさらして粘り気のない涎であった。
「機会があれば当人にも言うつもりです。目の前で叩かなきゃ面白くないでしょう?」
 言いながら老人の耳たぶの裏を強く擦った。耳の穴や頭部の端子から出ているチューブに触れぬよう気をつけて、焦らずゆったりした手並みである。
368機動新世界ガンダムDoll-DA 1-42:2010/06/22(火) 21:43:23 ID:???
「DAの件ですが」
『ガンダムドルダ、ですよ』
「失礼。ガンダムドルダですが、やはり主人公を欲しがってます」
『わかってはいました』
「三つ子の魂百以上というわけではありませんが、どうしてもナチュラルを受け付けません。
乳離れが出来ていないんです。ナギさんなんかはエランバイタルも高いので気に入ると思ったんですけれど」
『何なら貴方が乗ってみては』
「ひどいご冗談。だいいちとうに毛嫌いされてます。コーディネイター臭が消えちゃってるんでしょうね。それに」
 クリトンは右手を挙げた。服は肘までまくってあったが、右腕自体は肘から上も黒い手袋で覆われていた。
「恋人が不在ですので」
『バッシュ・ビッシュの性格がうつりましたか』
「ウーティスこそ」
 クリトンは老人のズボンを脱がしながら、含み笑いをして見せた。
『賽は投げられた、とでも言えばよろしいので』
「大罪人の気つけですね。ナチュラル的だ。極めてナチュラル的だ」
 クリトンはため息を吐いて、老人の下半身を拭きにかかった。
369機動新世界ガンダムDoll-DA 1-43:2010/06/22(火) 21:47:31 ID:???
 アランが廊下を歩いていると、一人の少女が後ろから駆け寄って来て腕に抱きついた。
「アラン、セックスしよっ」
 アランはいきなりのことで少し戸惑ったが、腕に感ずる柔らかな圧迫感と鼻をくすぐる香水の匂いに覚えがあって、すぐさま心を和ました。
「や、セーレ。今日も元気そうだね」
 クラスメイトのセーレ・ヴィッチメイクはアランの顔を覗き込むように顔を傾けて、にぱっ、と愛らしい笑みを浮かべた。リボンで左右に纏めた桃色の髪が揺れた。
「おはよっ、アラン」
 背後で陰気な顔をして歩いているハスハなんかとは違って、セーレは魅力的な少女であった。
彼女は異性に人気があった。アランを含めたクラスの少年たちの殆どは彼女と仲良ししたことがある。
学業の面でも肉体の面でも非の打ち所がないといわれている優等生である。
彼女と同じく優良児であるアランの目から見るとえくぼが目立ち過ぎるように思われたけれども、
皆が皆口を揃えて彼女を可愛いと賞賛するのであるから、アランのそれは単なる個人的で気まぐれな好みに過ぎず、本当は理想の見た目なのであろう。
ともかく、えくぼの不満さえ思い起こさなければ交遊して最も楽しい時を過ごせる相手の一人であった。
実際、アランはセーレと今までに十一回男女の交際をしていた。十二回目の今回は付き合い出して三日である。
 アランは先ほどの申し出を受けて予定を立てた。
「じゃあ放課後でいいかな」
「うんっ」
 セーレは元気良く言うと、アランの腕をぎゅっと抱き寄せた。
もはや慣れ切った触れ合いであるが、やはり気持ちの良いものは気持ち良い。アランはつい頬を緩めた。
「セーレ・ヴィッチメイク、おはよう」
 ハスハが愛想を込めずに横合いから挨拶した。いつの間にか前に出て横並びになっていたらしい。
「あれっ、ハスハもいたんだ。おハロー。素敵な朝ね」
「そうね」
 セーレにはハスハの表情はいつもと変わりなく見えたろう。
ハスハと付き合いの長いアランはというと、少女の瞳にあまり好意的でない色がほのめいたのを感じた。
ハスハは自分のいるのに気付かれなかったことを、不快に感じたかもしれない。
370機動新世界ガンダムDoll-DA 1-44:2010/06/22(火) 21:50:43 ID:???
 セーレはハスハのよからぬ感情を察する気配を見せず、アランの腕を引きながらハスハに声をかけた。
「ハスハも早く教室いこっ。授業始まっちゃう」
「ええ」
 アランはセーレに引っ張られて駆け足になりながら、顔を振向けてハスハを見た。ハスハは急ぐでもなくとぼとぼ歩いていた。
彼女の機嫌が直っていないのは確実であった。そして自分がそういうふうな洞察をしてしまうこと自体が、なんだか疚しいことのように思われた。
〈他人の思惑を気にするなんて……良くない徴候だ〉
 アランはセーレの顔を見た。ほのかに赤らみ、心底幸せそうに輝いて見えた。
セーレ・ヴィッチメイクはこれから先ずっと、五十歳という解体年齢を迎えるまで、今と同じように笑い、楽しみ、幸せに生きて行くことであろう。
そうしてそれは彼女と同じく優良なコーディネイターのアラン・イディットについても当てはまる。
〈そうさ。僕はこっち側の人間だとも。幸せな、充実した人間なんだ。ハスハみたいな劣等生とは違う〉
「ちょ、まっ、そんなに急がないでよ」
「だらしないわねぇ、ほらっ」
「危ないって」
 腕を組んだ二人三脚の体勢を手繋ぎの形に変えて、セーレはとうとう走り出した。
 アランはセーレがふざけたために、教室に着くまでに三体の清掃モロンを蹴飛ばした。
おかげでおろしたての靴が傷んでしまった。その上不運にも一度顔を蹴ったらしく、唾液すら付いていた。
371機動新世界ガンダムDoll-DA 1-45:2010/06/22(火) 21:52:54 ID:???
 アランに声をかける者があった。
「チョリーッス!」
「また食べ物の話かい。卑しいよ、エセク」
 エセク・スカンティという隣席の少年である。
「むしゃぶりついた瞬間、口内に広がるスパイシーな風味。舌に絡みつくような、凝縮された脂の旨み。
特にベビーモロンを贅沢に使ったそれはまさしく味の尿石箱……ってちげーよオイ! チョリソじゃねーっての。っとにもう、わかんねーやつだなアランさんは」
 エセクは、あちこちを整髪料で尖らせた緑色の髪を振り回して、一人で騒ぎ出した。
彼は珍しい情緒の持ち主であった。正常なコーディネイターを自負するアランにしてみれば、真面目に相手をすることは都合が良くなかった。
「僕は君の頭の具合がわからないよ」
「チョリッスよ、チョリーッス。挨拶っスよ挨拶。知らねぇの? これマジで流行ってんだぜマジで。ちょーマジ」
 聞いた事もない挨拶である。世間は彼のいうほど反理性的ではあるまい。
「どこで。君の脳の中?」
「そうよ! もう一人の俺、ジョンもスミスも狂も影羅も、みーんな言ってんぜ!」
 十四という年頃は難しいものである。大人と子供の境目で、酷く不安定な時期にあたる。
ハスハがいい例である。彼女はこの頃いよいよ接し難くなった。
 エセク・スカンティはこの日も左腕に包帯を巻いていた。彼の言うところによれば、その包帯の中に第三の目が付いているらしい。
目玉が三つあるなら空間把握もさぞ精妙に果たせるに違いないが、アランは余計な詮索をして困らせようとは思わなかった。
如何に不快でも会話をせざるを得ない以上、友人は友人である。万人は万人のために、という道徳にアランは忠実であろうと努めていた。
 ほとんどエセク一人がまくし立てるような談話にエセクの方が飽き出す頃合になって、白衣姿のモロンが教室に入って来た。
合計三十体で、教室にいる生徒たちと同じ数である。
「先生がおいでなすった」
「止しなよ。そんな言い方」
 正しくは整備用モロンである。エセクには擬人化したあだ名をモロンにつけるという芳しくない奇癖があった。
そもそも先生というのは授業で習わなければ覚えない死語である。使い方にしたってよろしくない。
その敬称めいた語をモロンに用いるのは不当である。モロンはコーディネイターがいるからこそ存在が許されるのである。
372機動新世界ガンダムDoll-DA 1-46:2010/06/22(火) 21:55:30 ID:???
 整備用モロンは生徒全員に行き渡ると、一斉に「直立! 礼!」と叫んで頭を下げた。腰の角度はモロン共通規格の四十五度である。
「授業を! 開始させていただきます!」
 モロンがそう合唱するとリクライニングシートが変形して、そこに座る生徒たちの手足を拘束装置で固定した。
ゴーグル型の端末を生徒の額に据え付けながら、モロンたちはてんでんに音声を発した。
「かゆいところは! ござりませんか!」
「股」
 エセクが冗談めかして言った。幼年組ならともかく成人目前の学生がする要求ではない。モロンは愚直にも彼の命令に従った。
横から聞こえるエセクの鼻声にアランはいやな気持ちがしたが、鉄製のカーテンが下りてきて視界を覆ってしまうとすぐに忘れた。スメッグに似た香りを嗅いだからである。
「『VIRTUAL BOY』、起動!」
 頭がぼんやりになったアランは、モロンの指示に従って自我を機械装置に委ねた。
373通常の名無しさんの3倍:2010/06/22(火) 21:58:18 ID:???
第一話Aパート終了。次回はBパート。
ひとまず以上です。
374通常の名無しさんの3倍:2010/06/23(水) 21:10:03 ID:???
連投ですが邪気眼ドルダ投下します。
375機動新世界ガンダムDoll-DA 1-47:2010/06/23(水) 21:12:09 ID:???
 第四世代自動学習装置『VIRTUAL BOY』を長時間連続して使用するのは健康上好ましくないといわれている。
目安として一時間ごとに十分から十五分の休息が勧められている。
同種の装置の個人使用で守られているとは言いがたい制約ではあるけれども、
自由の制限されるスクール生活においては自己責任という語が持ち出せない以上、授業の合間に必ず三十分の休憩時間が設けてある。
 休憩時間に生徒たちは、談話をしたりスポーツをしたり、映像作品を鑑賞したり食事をしたり、
スメッグを吸ったりモロンで遊んだり、恋愛を楽しんだりと、めいめい好きに振舞っていた。
 アランはというとセーレとテニスでもしようと思い立ったのであるが、授業終了と同時にエセクにつかまって、彼の相手をしなければならぬ羽目に立ち入ってしまった。
 エセクは机に肘を付いて、手に持ったチョコレートバーを舌先で撫で回しながらアランに話しかけていた。
素直に齧らずに、もっぱら表面のチョコばかりを溶かして、ちゅっぱちゅっぱという音を鳴らしている。
「でさぁ、アランさんってほら、アレじゃん? なんつーか、イケてるメンってゆーかぁ、マジさぁ、マジでイケメンさんじゃん?」
「知ってるよ……ってきたない。食べてから喋りなよ」
 エセクが顔を近づけた拍子にアランの腕に飛沫が当たった。アランはモロンを呼んだ。チョコと唾液の混合液を拭わせるためである。
エセクは「ふひひっ」と舌の隙間から息を漏らす類の笑い声を出して続けた。
「サーセン。でなでな、アランさんは俺らよりカッケーわけじゃん、出来たときから、はじめっからのイケメンたんね」
「だからなに」
 当たり前のことである。個々人の知能指数や身体能力、それから体の造りにばらつきが出るのは当然であり、それが個性というものである。
そうして、長所と短所の相殺と後天的な影響を踏まえれば、必然的に皆平等な価値を持ち、平等に幸福なのである。
これは科学的に証明されていることで、全てのコーディネイターがスクールで習うことである。
「ならさ、ハ、ハハ、ハスハちゃんもさ、イケてるウォウメンっとゆうことに」
「なんでハスハが出てくるのさ」
 エセクの挙動がおかしいのはいつものことであるが、ハスハの名を言いよどむあたり、少し変な感じがした。
376機動新世界ガンダムDoll-DA 1-48:2010/06/23(水) 21:13:16 ID:???
「だってアランさんもイディットじゃん」
「ロットが同じだからって言いたいの?」
 ロット、つまり姓が同じであるということは、一つの人工子宮から一時に製造されたということである。
人工子宮からは男女一対一の割合で、平均七十二個の受精卵を作ることが出来るといわれている。
人工子宮は一つにつき一回しか使えない消耗品であるので、そこからまず男女一体ずつの胎児を人工子宮の原料として確保する。
二十体は幼児保育施設へと出荷され、そこでコーディネイターになる。残ったのは全部処分される。
 同ロットのコーディネイターは、大抵は製造後一年を過ぎると別々の施設に行くことになるが、
アランとハスハの場合は、初等、中等、高等と、毎度同じスクールの同じクラスで教育を受ける羽目になり、そのうえ指定居住施設も隣接していた。
アランは以前まで、この手の縁続きは非常に珍しいだろうと思っていたが、調べてみたところそんなわけでもないらしい。
アランの通うスクールでは十クラスに一クラスの割合で、似たような偶然が確認されている。
毎年のクラス換えで同ロットの人物と再会したのもあわせると思いのほか結構な人数に上るかもしれない。
 同ロットだけあって、確かにアランとハスハは容姿が似ている。ともに銀髪で、琥珀色の瞳を持っている。
成人間際といえども肉体的には発育の途上である。首から下は除くとしても、顔のつくりに目立った性差は生じていなかった。
鬘や詰め物を使えば見分けが付かないかもしれないが、それを試そうと思い切るほどアランは倒錯した嗜好を持ち合わせない。
「でも男女の物差は違うよ」
「けどロット一緒っしょ」
 言葉の意味が通じなかったようである。
「だから、男と女だと、ルックスの基準が」
「んもう! アランさんってば謙遜しちゃって!」
「は?」
 どうしたことか、エセクは耳を赤くしてアランの背中を叩き出した。痛くはないが鬱陶しい。そもそもわけがわからない。
するとエセクは急にひそひそ声になって、
「アランさんとハスハちゃんは、その、キョウダイだもんな」と言った。
「なっ」
 アランの顔が火照った。
377機動新世界ガンダムDoll-DA 1-49:2010/06/23(水) 21:17:21 ID:???
「下品なこと言うなよ!」
 エセクは照れ隠しにある種の言葉を口にしたのである。そういう点で潔癖なアランにすると、とても堪えられるものではなかった。
ここでエセクが『家族』などという口にするどころか思うのですら憚られる言葉で追撃したなら、アランは気ちがいめいた羞恥心に駆られるまま、耳を両手で押さえて突っ伏してしまうに違いない。
 公共で禁じられる種類の言葉はいつの時代になっても少年少女の学び舎から放逐され得ないものである。
とはいうものの、卑猥な単語を言って喜んだり、勝ち誇った気になったりするのは子供だけだ、としたり顔で言ってのける人の見解が、ここでは運良く当てはまってくれた。
コーディネイターは優秀なので十五歳で判断力が頂点に達し、大人と見なされる。
十四歳のエセクが最低限の分別を備えているのは当然であった。
「めんご、サーセン。チョリッスッスッス」
「ほんと、やめてよね」
 アランは気を取り直して尋ねた。
「それで、ハスハがどうしたのさ」
「いやぁ、うーん、マジでさぁ、あーちょいマジってゆーかヤバイってゆーかぁ。マジでマジでぇ、カノジョってさぁ、かわゆくね」
「それはない」
 ハスハ・イディットという少女はそのような高い評価を与えるに適さない。人は性質で位が決まる。
初対面ならまだしも一年近く顔をつき合わせたクラスメイトなら、顔の造型など評価基準から外れている。
ハスハは性根が一般的でないのである。付き合っても面白くないのである。
「いやいやいやいやかわいいっしょ。マジで可愛い感じ、正直ちょーイケてるって」
「少し変わってるよ」
 暗い、と言わないのが作法である。君みたいに、と付け足さないのは常識である。
「とゆうかクールっしょ。クール、クール、クール。ビークールミークールウィァコゥールよ。なんてーかきゃわいいってゆうよりぃ、美人系? 
そんでちょい影っぽいの。そこんとこストラウィクしちゃったりなんか、しない?」
「しないから」
 エセクの話はいちいち頭の中で翻訳しなければ理解できない。アランは少々忌々しくなって早急に結論を出すことにした。
378機動新世界ガンダムDoll-DA 1-50:2010/06/23(水) 21:19:14 ID:???
「ハスハと付き合いたいの?」
「は、はぁ? しょしょしょんなのあるわきゃ、ある、かなぁ? てゆーかてゆーかアランさんだって」
「付き合いたいんだろ、エセクが」
「はい」
 急に大人しくなった。薄気味悪くて仕方ない。放って置けば持て余しそうであったので、アランは助け舟を出した。
「なら付き合えばいいじゃないか」
「いや、でも」
 付き合いたい相手に自分の望みを伝えて、それから共に楽しむ。ただそれだけのことである。
「なんか、こわい」
〈こいつ、何言ってるんだ〉とアランは思ったが、エセクの只ならぬ様子を見て黙っていた。口調が変わっているのである。
「アランさん、ハスハちゃんと付き合ったことあるんしょ。ど、どうだった」
「どうって……普通」
 面倒だったとは言えまい。
「アドバイスなんか、しちゃってくれちゃったりなんかして」
「助言も何も、スポーツとかじゃないんだから、常識だよ。
付き合おうとかそのまま言わなくたって、今夜食事しようとか、遊びに行こうとか、セックスしようとか誘う。
もし先方の都合が付かなくて断られたら、また機会に誘うことにして他の女の子に声をかける。
その日楽しんで気に入ったなら、一週間ぐらいは互いだけを相手にいろいろする。
この期間中はときどき、好きだとか愛してるとか言い合わなくちゃいけない。それが決まりだもの。
この言葉で周りの人に自分たちが付き合ってるってことを知らせるんだ。
で、一週間過ぎてお互い飽き始めたら、すぐ関係を解消して、それぞれ別の新しい相手を見つける。
それからまた同じように繰り返す。この循環作用が恋愛ってものだろう?」
 修身のプログラムで教え込まれた常識を、アランはエセクにわざわざ説明してやった。
エセクもハスハと同様に成績が不良で、理解していない可能性が考えられたからである。
379機動新世界ガンダムDoll-DA 1-51:2010/06/23(水) 21:20:57 ID:???
「アランさんの言うことはわかるよ。でも、なんかちょっと違うような気がしないでもないような、ちょいヤバイ感じってゆうか……」
 歯切れが悪い。斜め下を向いて、とんがった髪の先を指で弄んでいる。彼はためらっているのではあるまいかという考えがアランの頭に浮かんだ。
「まさか、やらしいこと考えてるんじゃないだろうな」
「ちちちちげーっての! これっぽっちも疚しくないから! マジで、激マジ。ほら、俺ってぇ、ピュアじゃん?」
「楽しみは明日に伸ばしちゃいけない」
 アランは真面目な顔で言った。
「わーってるって。俺変態じゃねーし。アブノーマルアンチだし」
「ならハスハを誘いなよ。それでセックスしたり、シアター行ったりして、健全なお付き合いをしてみなよ」
 彼女を相手に健全な交際が出来るかは甚だ疑わしいが、アランはエセクをけしかける必要を感じた。
不純な異性交遊の黙認は人倫に背くのである。
 エセクは休み時間の終わる間際にやっと気持ちを固めた。
「よ、よし、よっしゃ! 次の授業が終わったら俺はハスハちゃんに交際を申し込む!」
「あっそ」
「ああでも!」
 断られたらどうしよう、と小声で呟くのが聞こえた。
「君、気持ち悪いね」
 アランは正直に言ってしまった。
380機動新世界ガンダムDoll-DA 1-52:2010/06/23(水) 21:23:50 ID:???
 この日の最後の授業が始まっても、エセクは教室に現れなかった。二限後の休み時間からずっと、姿を晦ましたままである。
そのときエセクに連れられて行ったハスハのほうはちゃんと授業に出席していた。彼女は心なしか機嫌が悪そうであった。
アランの視線に気が付くと、ちらとアランを見返して、恨めしげな目つきをする。道理にかなわぬ悪意にアランは不愉快を感じた。
エセクのことはこうして思い出すまで大して気に留めていなかっただけに、彼女の態度は余計に理不尽に思われた。
エセクとハスハにあったらしいやり取りについて、アランは一切関知していないのである。
そうであるのに彼女は「あなたのせいよ」と言わんばかりの顔をする。
ハスハに対してはアランにも正当な言い分があり、後口が悪いとはいわれない。
けれどもエセクの欠席については、彼をけしかけたアランに非の一端があるようにも思われた。
〈エセクのやつ、なにしてんだ〉
 ただでさえ彼は学業が不振なのである。出席単位が貰えずに、卒業も危ぶまれるかもしれない。
自分の行為が遠因となって友人が落第するのは心外であった。
アランの評価に響くことはないとはいえ、精神衛生の上でよからぬ影響を蒙りかねなかった。
 再びエセクの姿を見たのは放課後である。エセクは廊下のソファーに寝ころんで、天井を凝視しながらなにやらうわ言を呟いていた。
アランといえども翻訳できないモロンじみた妄言である。うわ言の区切りごとに「ふひひっ」という例の笑い声も漏らしている。
 その有様を見てアランはかかり合う気をそがれたが、同伴していたセーレがエセクに興味を示してしまった。
セーレは鈴を転がすような声でエセクに問いかけた。
「エセク君はなにをしてるの?」
 エセクは天井に向かって話を続けた。
「……前々から俺にはお見通しだったんだ。左手の奥歯がめこめこ疼いて、時が見えるって捏造するんだ。だからCMの繋ぎはやつらの共謀さ。
さっきから耳元で、便所の落書きがひそひそ囁いて来る。ここだけの話さ、俺は選ばれし少数者。非個人的な、だぜ。
なのに活字の見出しがBGMを付けてもったいぶってやがる。ソースが濃厚すぎて舌が痺れるから、今月の標語は考える暇の節約にして、日光の悪口を黙殺しなきゃならないんだ。
真実の眼を持たぬ者にはわからぬだろうがな……そうだ静まれ! オレの左手よ怒りを静めろ!」
381機動新世界ガンダムDoll-DA 1-53:2010/06/23(水) 21:25:14 ID:???
 セーレは優しく微笑んだ。
「どうしたの?」
 彼女にはエセクの独白は高踏的で理解しかねたのであろう。無論、アランも同様である。
見ると、エセクの目頭にはあめ色の目やにが堆積し、瞳孔はせわしく収縮を繰り返していた。
「セーレ。彼、スメッグ中だよ」
 それも相当の量をきこしめている。一日の服用量の推奨限度を超えているのは間違いない。
「ほら」
 アランはエセクの眼前で手を振ってみた。エセクはにたにた笑っていた。
「そっかぁ、残念っ。お話できないのね」
「みたいだ」
 エセクはすごく幸せそうに独り言を繰り返していた。ハスハと何があったか知らないが、ともかく今は至福の時を過ごしているのである。
 アランも気分の優れないときにはスメッグを使うよう心がけている。おそらくエセクは何か不愉快な思いをして、アランと同じようにスメッグに頼ったのであろう。
スメッグを用いれば、どんな嫌な気分もたちどころに吹き飛んでくれる。これを利用しないのはハスハのような変わり者の気のあるコーディネイターばかりである。
アランはエセクをハスハのような劣等人と同格にしてしまったことを心の中で詫びた。今の姿を見れば、エセク・スカンティは健全なコーディネイターであると確信できる。
少なくとも明日の朝まで、彼は恍惚の状態でいることであろう。このまま刺激せずに放っておけば、どれかモロンが来て彼を住居まで運んでくれる。
友人が幸せでいるのを見てアランも快い気持ちになって来た。これは仁徳の効用というばかりでなく、エセクの発散するスメッグ臭に当てられたせいかもしれない。
「さ、行こうか。間に合わなくなるからね」
「あれっ? アラン、なんか元気なってない?」
「そうかな」
「そうよ」
 アランは、この先待ち受けている楽しみに胸を躍らせてセーレの手を引いた。クラス一の美少女と、気侭に遊び楽しむのである。
ふざけてしなだれかかってくるセーレの華奢な身体を仕返しに擽ってやりながら、コーディネイターとして製造されて良かったと、アランは心の底から思った。
382機動新世界ガンダムDoll-DA 1-54:2010/06/23(水) 21:27:08 ID:???
 アランがセーレと寄り添って歩き出して少しすると、ハスハ・イディットは窓の外を眺めるふりを止して、セーレの背中を正面に見据えた。
気取られる心配の無くなったのはわかっていたが、なるべく性急にならぬよう気を遣いながら歩みを速めた。
ソファーを横切るときには、スメッグで歪んだエセクの顔を一瞥して鼻を摘んだ。
欲しもしないコミュニケーションを強いて来た少年にこれ以上かかり合う気は持てなかった。
犬猫のように哀れっぽい声を出したりすればまた別な情動を喚起されたかもしれないが、エセク・スカンティという少年は薬物で精神の健康を保って、文化的な生活を能率的に享楽している。
やはり彼もハスハとは異なり、ありふれたコーディネイターの一体に過ぎなかった。
「人形……」
 少女は歩きながらそう呟いてみた。放課後の校門には生徒や用務モロンが幾体もひしめいていた。少女の呟きに耳を止める者は一つとしてなかった。
コーディネイターの無関心とモロンの白痴とは今に始まったことではない。彼らは皆己の無邪気な衝動に隷従するのに精一杯で、その奉仕に寄与し得ないものに注意を向けることは罪でさえある。
人民は人民の楽しみたり得るからこそ人民として認められる。それが黄金律と世間で呼ばれるところのものである。
十四歳の少女はこのように断定調で物事を考えることで自己を外界と隔離し、自負心を養っていた。
 ハスハは群集に紛れてアランたちの後を追った。二人の姿を見失う心配はなかった。
最初の行き先は見当が付いていた。二人の間で交わされるであろうやり取りもまた、今までの経験で知っていた。
 町の大通りは賑わっていた。午後になると授業を終えた学生らが、コーディネイターの本分である歓楽に精を出すために大量に集まって来るのである。
殆どの学生は二人以上の組になっていて、ハスハのように一人でいる学生は数えるほどであった。
そういう学生もいつまでも独立していられるわけではなく、心細げな顔で辺りを見回すと、手ごろな相手を見つけるや否や声をかけて新たな組を作る。
ハスハも幾度かそうした独身者に声をかけられたが、その都度沈黙でもって応じることで、孤独を避ける機会をむざむざ逃していた。
383機動新世界ガンダムDoll-DA 1-55:2010/06/23(水) 21:29:07 ID:???
 ハスハは気分が優れなかった。原因は些細なことで、正常なコーディネイターなら気にかけないことであった。
大通りには人間の密集によりスメッグと香水の臭いが充満し、空気が重量を持っているかのように感じられた。
四方から、聞き慣れない流行歌が大音量で響いて来て体内を振動させた。
そこいらじゅうにある空中モニターはめまぐるしい映像を絶えず流し、その光の明滅は瞼を通しても完全に遮断されなかった。
気にすまい気にすまいといくら繰り返しても、こうした環境は少女の注意を強制した。
自分の意思では無くすことの出来ぬ感官への働きかけは、ただこらえるほかない。
 ハスハはアランたちがレストランに入るのを見届けると、手近なベンチに腰を下ろした。
半時間ほどしてアランたちが出て来ると立ち上がり、再び人ごみに紛れて歩き出した。
 ゲームセンター、ブティック、シアターと、アランたちが娯楽施設を移動する毎に、ハスハはその後に付いて行った。
待っている間に小休止することもあり、二人の目を避けるために物陰で立ち尽くすこともあった。
じっと動かないでいることは苦でなかった。少女には毎日の早朝に扉の前で一時間以上立ち続けるという習慣があった。
 コーディネイターでありながら類稀な忍耐力を持つ少女といえども、半日中神経を酷使して疲れを感じたのかもしれない。
アランがセーレの肩を抱いてセーレのアパートメントに入って行く光景を前にすると、ハスハの顔が俯いた。
前髪がかかって目元が隠れたので傍から彼女の表情は読み取れない。
この場に誰かが居たならば、歯軋りの音を耳にしたことであろう。


384機動新世界ガンダムDoll-DA 1-56:2010/06/23(水) 21:31:11 ID:???
「これはどういうことよ!」
「音声入力です」
 ナギが凄まじい剣幕でクリトンに食って掛かる。コンティはその怒声が自分に向けられたわけでないというのに、一瞬ぎくりとしてしまった。
長年の付き合いで培われた条件反射である。矢面のクリトンはというと、胸倉を掴まれながらも平然と構えている。
「だから、何でそんなもんが要るのかって聞いてんのよ!」
 ナギは上目遣いで相手の目を睨みつつ、「ぁあっ?」と低い声を発して威嚇した。
小声で「やんの? アンタ、ねぇやんの?」と宣戦を布告するのを忘れない。年頃の娘にあるまじき態度である。
「エランバイタルというパラメータがっ、ですね、ガンダムドルダにはあるんですよ」
 クリトンは喉の戒めを左手で無理やりに解いて答えた。「なんて野蛮な」と聞えよがしに呟いてから、ナギが反応する隙を与えないで、
「ガンダムドルダのSEジェネレータの出力は、エランバイタルの数値に応じて引き出されます。
エランバイタルそのものに関しては調査中で詳しいことはわかっておりませんが、今現在判明していることは、
エランバイタルは搭乗者の生体反応のデータから算出されるということ、そして上昇の条件の一つに、搭乗者の感情が関わっているということです。
ようはですね、出力を上げるにはエランバイタルを上げる必要があり、エランバイタルを上げるには搭乗者の感情を高める、つまり興奮させる必要がある。
そして、興奮するのに最もうってつけの方法は――イカす技名を叫ぶ! これ以外に考えられません。
音声入力という制約は、そのためになくてはならないものなのです」と熱っぽい口調で語った。
 クリトンはコンティの知らぬ間に精神主義に転向し、MSの性能が搭乗者の情緒に左右されるなどということを本気で考えるようになったらしい。
コンティの心に憐憫の情が沸きあがった。世間知らずのコーディネイターはバッシュの深酒に付き合わされたせいで、どこか患ってしまっていたのかもしれない。
思い当たる徴候は三つも四つも挙げることが出来る。単なる冗談と思いたいが、前に彼はMSに竹槍を装備させてみたいとこぼしたことがある。
「く、クリトン。あの、な、何か悩み事があるなら聞いたげるわよ」
385機動新世界ガンダムDoll-DA 1-57:2010/06/23(水) 21:33:00 ID:???
 ナギの優しさはコンティのそれと性質が異なるようであった。
聞かなかったことにするという消極的な態度をとらずに、彼女の得意とする省略三段論法で得たらしき結論でもってクリトンを宥めにかかった。
 今度はクリトンのほうが怪訝な顔をした。ナギの態度がますます神妙になると、
「感情の昂りで強くなるってんなら、多血質のナギは確かに適任だ」
と、いつの間にか現れていたバッシュが口を挟んだ。
「なに? アンタまさか、この腐れコーディの言うこと信じるの?」
 多血質と言われてナギが気を悪くしたのをよそに、バッシュは中指で鼻をほじり始めた。コンティから見ても憎たらしい仕草である。
「信じない理由はないさな」
「いや、常識的に考えておかしいわよ」
「Dollタイプは常識じゃ計れんよ。大体俺らの科学力っつうご大層な代物もな、この忌々しい鼻のモノを根絶するに至っちゃいない」
 汚い例である。
「兵器としてありえないって言ってんの! なんで叫ばなきゃ攻撃出来ないわけ? そんな必要あるの? トリガー引けばそれでいいじゃない。
初めっから全力出せばいいのよ。機械で、兵器なんだから。それを何? 気合が無いと技が出ないって、まるで漫画、子供のおもちゃよ!」
「いいか嬢ちゃん。MSは兵器じゃない、おもちゃだ」ぴんと立てた中指の先端を振りながら、バッシュは気どった口調で言った。バッシュの意見にクリトンも同調する。
「そうですよナギさん。我々はコーディネイターの機動遊具を使って戦争しているのです。少しくらいの馬鹿馬鹿しさは我慢しなくちゃあなりません。
そもそもですね、こんなに無駄の多い兵器あるわけないでしょう?」
 諭すような言葉であるが、その顔と身振りはいかにもナギを馬鹿にしきっている。バッシュもクリトンに負けじと鼻を鳴らした。
「ったく、これだから教養の無い女は困る。頭に行く栄養はどこに行っちまったんだ? 胸に行ったってわけでも無さそ――」
 突然にバッシュの体がくずおれた。その刹那コンティの目には、三日月と呼ばれる顎の急所に華奢な手の影が吸い込まれて行ったのが見えていた。
386機動新世界ガンダムDoll-DA 1-58:2010/06/23(水) 21:35:19 ID:???
「バッシュさんは女心というものが解っておられませんね。
ここは極めて自然に、極めて正当な評価でもって安産型と、つまり栄養がおし――ちょっ、やめ……あいたっ、いたたっ、取れる取れる! 
止めっ、ほんと取れる。ほんとに取れますって! ほんとやめて、右手取れるからほんとやめて」
 ナギは無表情でねじ上げていたクリトンの右腕を離した。
クリトンは目に涙を溜め、襟を開いて機械の義手と生身の肉体との接合部を弄り出した。だいぶ段差が生じてしまったらしい。
「あぁ、哀れむべきアンジェリーナ三世。さぞや痛かったろう」
 そう言いながら鋼の右手を左手で撫で回す。その労わり様は、年来の恋人に対するが如くである。
人道の見地からは一声かけねばなるまいが、真面目な返答をされても具合が良くないのでコンティはクリトンを敬して遠ざけることにした。
そうかといって、黙ったままでは間が持たない。コンティはおずおずとナギに問いかけた。
「感情を込めた音声と連動することはわかった。それで、どんな文句なんだ」
「ん」
 ナギは不機嫌そうに端末の画面を指して見せた。画面には、それぞれ機能に応じた叫び文句が並んでいる。
「えっと武装は……必殺ドルダパンチ、究極ドルダキック、昇天ドルダビーム、友愛ドルダソード……このドルダウイングというのは、内蔵型フライトユニットのことか」
「コーディらしい、最っ低のネーミングよ」
「あぁ、まあそれは……」
 大声で叫ぶには何となくためらわれる文句であろう。ナギような女性の叫ぶ姿は想像しがたい。
「どうせ叫ばなきゃいけないんなら、もっとセンスのある、カッコいい技名じゃないとだめよ。
永遠力暴風雪(エターナルフォースブリザード)とか死魔殺炎烈光(ディアボリック・デスバースト)とかル・ラーダ・フォルオルみたいな」
 ふふん、とナギが得意げに慎ましやかな胸を張った。コンティは自分の胸を掻き毟りたくなった。
「そう、だな」
 声が、震えていた。
「でしょう?」
 コンティは彼女からほんの少し距離をとった。この一歩は小さいが、彼の心にとっては多大な一歩である。
387機動新世界ガンダムDoll-DA 1-59:2010/06/23(水) 21:36:41 ID:???
「もう登録してしまいましたから、暫く変更は出来ませんよ」
 ういんういんという駆動音を右手から鳴らしつつ、クリトンが勝ち誇って言った。
「解析をしていてわかったのですが、Dollタイプに入力したプログラムはおいそれと書き換えるわけにはいかないようなのです。人間の脳や意見と同じようにね」
「だったら何でアンタが勝手に決めてんのよ!」
「私は皆さんに信頼されてますから」
「答えになってない!」
 堂々巡りで、このままではいつまで経ってもナギは納得しそうに見えなかった。
彼女の暴力を警戒してか、クリトンがコンティにどうにかしろと言いたげな流し目を送って来る。
そこでコンティは自分の考えを述べることにした。ガンダムを手に入れたときから、常々思っていたことである。
「そんなに嫌なら、俺が乗ろうか」
「結構よ。あんたあたしに勝ったこと無いでしょ」
 自分の提案に対してそう答えられてしまっては、コンティは性差別的な表現を持ち出すにもいかなくなった。彼女の操縦技能は解放戦線随一である。
388機動新世界ガンダムDoll-DA 1-59.5:2010/06/23(水) 21:38:49 ID:???
 コンティの表情が少し曇ったのに気付いたのか、ナギは決まり悪げにガンダムの方を見上げた。
「……わかってるわよ。あたしがやらなきゃいけないってことくらい、わかってる」
 ドルダ云々と叫ぶのが余程嫌であったと見え、ナギは自分自身に言い聞かせるように呟いた。
えたいの知れない機体に命を預けるという深刻な事情もあろう。
 ここでコンティのほうが強情を張っていれば、近い将来に異なる結果が生じていたかもわからない。
ともあれコンティ・ネイブリットなる青年は、幼馴染に対する負い目から謙譲の徳を逞しゅうしたために後悔の種を撒くことになった。無論、一般の場合と同様に刈取りの見込みは定かではない。
「よろしい。ではまず発声練習と行きましょうか。はいせーのっ」
「……そうね」
 ひどく楽しげに促すクリトンに、ナギは無言でつかつかと歩み寄った。
コンティは顔を背けた。憎からず思っている女性の蛮行を目撃するのは気持ちの良いものではない。
「あんの莫連、的確に入れやがった」
 そこに、バッシュが顎の据わり具合を手で確かめながら立ち上がり、ふと正気づいたようにコンティの顔を見据えた。
「コンティ、お前の未来を思って忠告してやる。古人曰く、二回は紳士の流儀である、三回は貴人の義務である、四回は妻の権利である」
「は?」
 脳震盪でも起こしたのか、脈絡のないことを並べている。
「つまりだ、夫はすべからく雀の勤勉と種馬の精力を持たねばなら――」
「バッシュお兄さん、何をおほざきになっていらっしゃいますの?」
「処世訓さ」
 バッシュの背後に立つナギの顔は笑みを湛えていたのであるが、なぜかコンティはそれを直視し続けることが出来なかった。
「どるだぱんち」ナギはぼそっと呟いた。
389機動新世界ガンダムDoll-DA 1-60:2010/06/23(水) 21:41:24 ID:???
「揉めるだろうと思ってたけど、この調子なら心配なさそうだね」
 様子を見に来たケレンが苦笑した。
「どこが」
 どう見ても暴力沙汰に発展している。バッシュとクリトンがこぞってナギを挑発するようなことを言い、その度にナギが腕力でもって報いているのである。
「そういう意味じゃないさ」
 ケレンは視線を、じゃれ合っている三人からガンダムドルダに移した。
「Dollタイプ――六十年前の世界大戦の折に現れ、その戦争が崩壊戦争と呼ばれる所以となった存在。
たった四機のDollタイプが、七日間のうちに、あらゆる国家に属するあらゆる軍隊を滅ぼした。
旧国家と呼ばれるところの体制ごとね……人間いや、ナチュラルに変革をもたらした、いわば神の如き力をだよ、いったい誰が手にするのだろうか」
 コンティは何か見透かされたような気がした。
「ケレン・カタリ、お前」
「勘繰りは止してくれ。僕は夢想家じゃない。自分の無能を弁えてるし、富くじは買えない性質なんだ。
ごくささやかな楽しみで満足する、安上がりな人種さ。今みたいに、ささやかなね」
 ケレンはそう言うと、とうとうクリトンの義手が外れたのを見て楽しげに笑った。そうして一頻り笑ってから、コンティに振向いた。
「君らはたしか、子供の頃からの付き合いだと聞いてるけど」
 ナギとバッシュ、それからこの場に居ないロウのことを指したのであろう。コンティは照れくささから気のない風を装った。
「くだらない。ただの腐れ縁だ」
「羨ましいね。君らには絆がある。言葉で云々しなくてもいい、本心からの」
 面はゆいことを言う。ナギはというとケレンの言葉を肯定するために違いないが、バッシュの鳩尾を踵で踏みつけていた。
「どいつもこいつも、フィーカ以外には手厳しいようだが」
 コンティは妹の名を挙げてケレンの気持ち悪い説に反駁した。
フィーカ・ネイブリットという少女には、ナギもバッシュも、堅物のロウでさえ甘いのである。極端な贔屓の代償がお互いに向けられているとも考えられる。
390機動新世界ガンダムDoll-DA 1-61:2010/06/23(水) 21:46:15 ID:???
「親愛の情というのは傍から見るほうが分かり良いものさ。実際、見ていて気持ちがいいよ。
こういうのが、いつまでも続けばいいと僕は思う」
 話をどこへ持って行こうというのかケレンは立て続けに恥ずかしい台詞を吐く。
コンティが最早会話を打ち切りたい気持ちになりかけると、
「だからこそ、これからは事を慎重に行う必要がある」
「何のことだ」
「ガンダムのパイロット、ナギ・ヴァニミィ。コンティ、君が彼女を守るんだ」
 コンティはいきなりそんな役目を任されて戸惑ったが、ケレンは冗談めいた口吻でもなく、穏やかならぬ様子で続けた。
「偶像を先取りされて癇癪を起こす連中がいるのさ。解放戦線のメンバー全員が竹馬の友というわけじゃない。
今思えば、Doll-DAにガンダムの名をつけたのはまずかった。信仰の自由を許す寛容も軽率だったろう」
「ガンダミスト……ガノテア機関か」
「確証はない。だが、ロウやウーティスも何か勘付いているようだ。ともかく君には、それを知らせておこうと思ってね」
「なぜ俺に?」
「ガンダムドルダとそのパイロットを守るのに適任だからさ。
君なら彼女に四六時中ひっ付いていても、左程嫌な顔はされまい。寧ろ喜ばれるかもしれないくらいだ」
「なっ……」
 真面目な話が急にからかうような調子を帯びて来て、コンティは耳が熱くなるのを感じた。
「じゃ、そういうことだから」
 ケレンはコンティが否定するのを待たず歩き出した。
「いいかい、コンティ。彼女に纏わり付いて、離れることのないようにするんだよ。
何なら寝床まで同伴してもいい。フィーカちゃんには内緒にしてあげるから」
 ケレンの去り際の言葉を何らかの感官で察知したのであろうか、ナギは靴底でバッシュの脆弱な頭皮に摩擦熱を与えつつ、ケレンが笑いながら去っていくのを鋭い眼で睨み付けていた。
391機動新世界ガンダムDoll-DA 1-62:2010/06/23(水) 22:04:08 ID:???


 アランはセーレと一緒に彼女の部屋で二時間過ごした。その間、セーレは変なことは何ひとつされなかったし、アランもソクラテスがアルキビアデスにしたようなことはしなかった。
「そろそろ行くよ」とアランが身繕いを終えて言うと、セーレが浴室から手を出して振った。
「また明日ねっ」
 文化的な健康の代償も安くは付かなかった。一歩ごとに気だるさが増して行き、瞼が重く伸し掛かって来た。
一人きりで、恋人に気を遣う必要が無くなっただけ余計に気力が萎えて行った。アランは手のひらで口を覆ってあくびをした。
「まだあったかな」
 ポケットを探ってタブレットケースを取り出した。振ってみるとカラカラと音がした。二三粒はあるらしい。
眠気覚ましなので一粒だけ齧って、効果を早めるために深呼吸した。鼻がつんとした後、甘い感覚が鼻腔全体に広がった。
「どうりで眠いわけだ」
 すっかり夜になっていた。天蓋は電飾を小さく瞬かせるばかりで、町を照らす仕事は街灯に任せている。
眠気を誘う調べが、どこからともなく響いて来る。夜空にMSは飛んでいない。
道端にたむろするコーディネイターたちも口数少なく、すっかり満足しきった風な穏やかな顔で、別れの挨拶を交わしている。
立体映像のMr.マラディックですら、「さあみんな! 夜だ! 夜が来た! おうちに帰ってセックスだ! 寝る前にセックスをしよう!」と健康推進週間の標語を叫び、両手に掴んだ二つの枕を振り回している。
「アラン……すこし、いい?」
 セーレのアパートを出て暫くすると、背後から声をかけられた。
 声の主が誰であるかは振向くまでもなくわかっていた。その聞き慣れた声は、デートの途中に感じられた視線と同じ人物の発したものであろう。
〈またかよ〉とアランは思った。憂鬱な気持ちから、昼間は意識に上らすまいと苦心していたのである。
「アラン」
 先ほどよりはっきりした語調で言われた。
アランは聞こえぬふりをしてやり過ごそうと思っていたのであるが、声の聞こえた方角が真横に移ったので、返事をするのは止むを得なかった。
392機動新世界ガンダムDoll-DA 1-63:2010/06/23(水) 22:06:18 ID:???
「ハスハ? ……また、偶然だね」
 目は口ほどにものを言う。疚しさを偽装したいアランはハスハと見詰め合う形になったが、ものの数秒と経たぬうちに辛抱できなくなって視線を逸らした。
「こんばんは」
「あ、うん。こんばんは」
 単純な夜の挨拶である。てっきり嫌味でも言われるかと思っていたアランは拍子抜けがした。
落ち着いてみれば、彼女の呼びかけを無かったことにしようとしたアランよりも、放課後からずっとアランの許可無く尾行を続けたハスハの方こそが、倫理的な面で不利であろうと思われた。
世間の通例に当て嵌まらざるコミュニケーション手段を用いるのが不法であることは、よくよく考えるまでもないことである。
しかしハスハが急に目を伏せたのを見ると、元あった疚しい気持ちがぶり返して来た。
 生来の付き合いで培われた以心伝心というものは厄介である。一挙一動で感情の動きを察知される。
そのうえ不必要にも情が移っているために、一切の責任を相手に押し付けるにはためらわれてしまう。〈不健全だ〉
「ごめんなさい」
 謝られることで、アランは余計に心細い気持ちにさせられた。
これがこの利口な動物の手口である、と決めてかかって開き直ることも出来なくはないが、他人の心を一語でもって表すのは悪魔の存在を証明するのに似ている。
存在しないに越したことはないので、人間の善良さというものは大抵の場合、精神的にも物質的にも当人に対しては負担を与えるしか出来ないという考えもある。
「気にしないでよ。僕も君に話したいことあったし」
393機動新世界ガンダムDoll-DA 1-64:2010/06/23(水) 22:08:00 ID:???
 第48居住区の自然公園は、キーウィタースで最も美しい公園の一つに数えられている――尤も、これと同等の評価を得ている公園は四十以上ある――
こんもり盛り上がった緑色の塊は、遠目で一見すると酷く不恰好で均衡を欠いているように思われる。
けれどもその針葉樹林に足を踏み入れて見渡すと、不精なのは実は外見だけで、中はモロンの心のように精妙に設計せられていることが納得できよう。
園路に敷かれた白砂利は、大中小の三種で形と大きさが完全に統一されていて、その手触りといったら菓子の糖衣とあまりに似ているので、子供が思わず口に入れたくなるほどである。
園路は縦横に交差しつつ森を区切っていて、無数の交差点にはそれぞれ、人々のふれあいのための広場が設けてある。
用途や景観は様々であるが、大抵の広場では休憩用にベンチが付いていて、芝生のぐるりを色とりどりの花壇が巡っている。
文化的な娯楽に事欠かぬよう隅っこに売店も置いてある。売り子モロンが直立姿勢で店番していて、昼夜を問わずコーディネイターに楽しいひと時を提供している。
394機動新世界ガンダムDoll-DA 1-65:2010/06/23(水) 22:09:28 ID:???
 想像上でこの自然公園から針葉樹を除外すれば、傾斜のなだらかな禿山が思い描かれるであろう。
園路や広場が密集しているのは山のふもとで、上方へ行くにつれて園路が複雑な軌道を描き、本数も減って行く。
頂上付近は殆ど森といっても良く、通常の散策で足を踏み入れることはまずあるまい。
山の中腹、ひと気の疎らなところでは、木々の隙間から苔むした岩が顔を出し、その根元から清水が絶えず湧き出ている。
滾々と湧き出るとはいうものの、水溜りの端から零れ落ちるに過ぎない流れは、平地の川に比べればちょんぼりした趣を呈している。
水辺を取り囲む羊歯植物たちは、侮っているのか、でなければ無感覚であるかして、葉先を濡らさせるがままにしている。
清水は植物に擽られ、岩に弄ばれつつも、窪んだ地肌をひたすらに洗い続けて、流れ去って行く。そうするとあるとき、似たような境遇のものとめぐり合う。
暫くは近寄ったり離れたりして相手の様子を窺うが、孤独を逃れるためか、共同によって得られる利潤を慮ったのか、しだいに惹かれあい、いつしか一つの流れとなる。
清水たちはこのようにして合流を繰り返し、谷川とはいわないまでも、小川として面目を保つくらいにはなる。
しかし、どんなものでも寄り集まると生まれの違いが際立つのか、めいめい勝手な行動をとりたがり始める。
ある水は岩の隙間に這入り込もうとし、またある水は小石を撫でて遊んでいる。苔を剥がそうと一生懸命なのもある。
拗ねて渦を巻くのや、岩肌を蹴って流れに逆行しようというのも出てくる。
そうして、これら協調性に欠ける水どもに大多数の水は反発し、無理にでも下へ下へと引っ張って行く。
これらもろもろの作用が重なると、必然、小川は快い水音を立てるのである。
 自然公園に設置された植物は、樹木や芝生、花壇の花といった直接触れられるものを除くと、殆どが無機質の人工物である。
したがって、わざわざ川を作ったりして、生態系の管理などというとてつもなく面倒な手間をかけるに及ばない。
降雨で齎された水分は樹木などに吸収される他、余剰分は地下の下水施設によって排出される。
この川は自然らしい景観を演出するためのものであり、また同時に、いわば贅沢な音響装置なのである。
395機動新世界ガンダムDoll-DA 1-66:2010/06/23(水) 22:11:44 ID:???
 コーディネイターは音楽抜きの生活を送らない。何となれば音楽とは、最も手軽な娯楽の一つであり、最も情緒に影響しやすいものである。
音楽は魂の言葉である、思想以上のものである、と述べた人も数多い。
故に町中では休み無く流行歌が流れていて、遊技場から寝床まで、ありとあらゆる場所でそれぞれの模範的情緒に合致した音楽が人々の耳に届けられる。
勿論この自然公園でも、木々の枝に偽装したスピーカーが無数に配置され、放送局の職員によって吟味、選出された流行歌が不快でない程度の音量で響いている。
が、人々の気分が市街地と代わり映えしないのでは、自然公園を設置した目的に背いてしまう。
文明人が原始的な状況に置かれることによって喚起せしめられるある種の情緒の獲得こそがその目的なのである。
動物や植物といった自然物との触れ合いに、人間の精神を安定させ、健全な情操を育む効果があることは、機械産業の発達以前より喧しく言われて来た。
それは時代ごとの科学思想によって否定されたり肯定されたりを繰り返したが、消費と娯楽の観念は不動であったので、手際よくやれば大量消費を齎す自然環境偽装技術は絶えず進歩を続けた。
その成果の一つが人工河川のせせらぎであり、いずこからともなく響き渡る微かな水音と流行歌の伴奏は、一種の二律背反と呼ばれる音楽の概念を一層際立たせて、
文明社会と個人的幸福に有益な心理状態をば、より完全に、より安易に引き起こすことに貢献している。
無論、これらの効果は環境音のみで出されるのではない。いうまでもないことであるが、経済的に見て人間は手間のかかる動物である。
視覚と聴覚、要するに思考に介在せず実在性を与え得る感官の併用が最低限必要である。
396機動新世界ガンダムDoll-DA 1-67:2010/06/23(水) 22:13:39 ID:???
 加うるに嗅覚、味覚、触覚の三つの感官に対しても配慮が為されている。
花と木々と芝生、それから土砂の含有物は一応有機物の範疇にあるので、自然らしい腐臭を発散する。
その上、植物に擬態した散布装置がごく微量のスメッグを撒き散らしてもいる。
味覚については、売店に土の味のするチョコレートバーなどが置いてある。
植物には虫一つ付いていない。その生育の具合も、不必要な発芽を無くす遺伝子発現制御技術と定期的な植え替えとによって常に均一である。
外的要因によって阻害されない植物の完全に自然な感触が、手のひらを楽しませてくれるのである。
もっとも樹木に関しては敢えて不均一な枝ぶりを作ったり、根を余計に這わしたりして、少しばかり野生に近づける努力が厳密きわまる計量のもとに行われている。
 この自然公園の性質を鑑みて、特筆すべきはその衛生面であろう。
人は自然の中にいると開放的になり、手に持った物品を地面に放置して省みない。
犬と似た習性を発現させることもあり、目立つ樹木があれば、根元に廃棄物で印をつける。
薄暗がりになっている場所においては、別な事情が作用して殊に酷い結果を生じる。
時には誰かが創作意欲を発揮して、相合傘なんぞを木の肌に彫り付けて行く。
こうも気侭に楽しんで行かれては、さぞかし文明的な景観が広がりそうに思われたが、どういうことか、自然公園は常に自然的な景観を保っている。
そのくせ屑篭一つ置かれていない。市街地どころかモロン居住区に匹敵する清潔さであるけれども、広場を見渡しても清掃モロンのようなものは見受けられない。
 注意深い人が観察を続ければ、遊びに来たコーディネイターが立ち去ったと同時に、突如林から黒い影が出現し、ごみを掻っ攫って再び林に消えて行くのに気付くであろう。
その黒い影の正体は、黒子を着た特殊清掃モロンである。
彼らは普段人目につかぬ木々の陰に潜んでいて、コーディネイターが何か捨てるや否や、隙を見て表に飛び出し、相手に気付かれる前に持ち去ってしまう。
さっと現れてさっと片して行くのである。市民の精神衛生に配慮した結果の隠密性である。
彼らは非常に優秀なモロンで、その優秀さは表象結合教育の他、彼らの主な食料がコーディネイターの食べ残しであることにも起因している。
397機動新世界ガンダムDoll-DA 1-68:2010/06/23(水) 22:14:44 ID:???
 自然公園には、黒子モロン以外の生き物も暮らしている。小鳥や栗鼠といった愛くるしい小動物である。
種は様々であるが、後頭部に不自然な突起があることと、寿命が本来の半分である点で一致している。
これらは概して人懐こく、羽の痛むのもかまわず足元を飛び回ったり、わざわざ人目に付くような枝に登って木の実を頬張ったりする。
目を合わすと首を傾げるのはしょっちゅうである。行儀も良く、排泄の類は然るべき所でしか行わない。
ところで、もし何らかの拍子で後頭部の突起に強い衝撃が加わると、彼らは地面に落ちてのた打ち回った挙句、動かなくなってしまう。
目をぱちくりさせて、ここはどこだと言いたげに、辺りをじっと見つめている。黒子モロンが回収に来るまで、ずっとそのままである。
一言すると、昨今、悪戯好きな少年少女の間では、例の突起を指で弾くのが流行っている。
チッチッチッと舌を鳴らせば小動物たちは嬉しそうに寄って来るので、手軽な娯楽といえよう。
398機動新世界ガンダムDoll-DA 1-69:2010/06/23(水) 22:16:38 ID:???

 夜が来ると、自然公園はその姿を一変させる。
あたり一面に薄墨の天幕が幾重も折り重なり、あたかも黒色の霧が立ちこめているようで、その暗闇の中には、ややもすると人の顔に見える木の肌がぼんやりと浮かび上がり、
枝が軋み、葉がひそひそ囁き合い、何者かが狩人のように木々の間を這いまわり、
ぱちりぱちりと枝の折れる音を響かせるたびに来訪者を怯えさせる、というのでは無論無い。
大概の娯楽施設は二十四時間の営業が義務付けられているので、この自然公園も、ただ別の用途に向くように快適さの方針を替えるのである。
目立った変更点は幾つか挙げられよう。
まず山肌の各所に設けられた通風孔が生暖かい息を吐き、夜気の冷たさを和らげる。
樹木に埋め込まれた園路灯が、辺りの暗さを宵闇にとどめている。
スピーカーからは蕩けるように甘ったるい音色が流れ、恋人たちの気分を昂らせ、静めもする。
その他にも数々の変更点があるが、畢竟するに夜間の自然公園は、屋外の休息施設として用いられるということである。
そうしてこのいわば恋人たちの時間といわれるような時間帯に、アラン・イディットとハスハ・イディットは自然公園にやって来たのであった。
399機動新世界ガンダムDoll-DA 1-70:2010/06/23(水) 22:18:39 ID:???
 タクシーを呼ばなくていいというハスハに付き合って、アランは家路を歩くはめになった。自然公園を通り抜けるのは、近道するためである。
もっと短い道のりもあるにはあるが、それは車道であったりMS用道路であったりする。都市設計が一般の歩行者に優しくないのはこの時代でも変わりない。
 ふれあい広場に差し掛かかると、アランは売店を見止めてハスハに尋ねた。
「夕食はもう済ました?」
 ハスハはゆっくり首を横に振った。アランはというとセーレの部屋で済ませていた。
「何か買って来ようか?」
「いらない」
 ハスハのことであるから、どうせ昼食すらろくにとっていないに違いない。
「ご飯食べないと、体に良くないよ。僕も一緒に食べるからさ」
 少女は再び首を横に振った。
〈面倒な女〉
 二人のやり取りは、先ほどからずっとこんな具合である。
アランが何か切り出すと、ハスハは首を振るか、「そう」とだけ言うかして、すかさず無言の行を再開してしまう。間を持たすどころか、取り付く島もない。
少女がいつも通りの朴念仁であったなら居心地の悪さを味わわずに済むのであるが、どうも今は、何か言いたげな素振りを見え隠れさせているのである。
前を向いて歩きながらも、ちらりちらりとアランの顔を横目で盗み見て来る。
そのたびにアランは、「何だよ」と、乱暴な言葉を返したいのを堪えた。
〈一粒じゃこんなものか〉
 アランはさりげなくポケットに手を突っ込んでタブレットケースに触れてみた。あくまで触れるだけである。
実をいうと、先ほどハスハに夜食を提案したのは、買出しにかこつけて彼女の目を逃れ、スメッグを齧るためであった。
そうでもなければ己の胃袋を酷使してまで、彼女の健康を思い遣るはずがない。
〈一粒が一生を左右する〉
 アランはスメッグ恋しさのあまり、心の中でコマーシャルの決まり文句を叫んでみた。〈まったくもって金言だよ、こいつは〉
400機動新世界ガンダムDoll-DA 1-71:2010/06/23(水) 22:20:04 ID:???
 アランは広場をさっと見渡した。薄暗がりの中、人々がベンチで睦み合っているのがわかった。
木陰の前の芝生には、男物と女物の服が取り散らかしてあった。皆が皆寸暇を惜しんで楽しんでいる。
〈だのに、僕はというと――〉
 アランはハスハに目をやった。他の人々と違って既に疲弊していることと、エセクに言われた下品な言葉が思い出されたこととで、自然な感心は消え去っていた。
このとき、アランはハスハに顔を見返され、彼女の瞳が揺らいだのがわからなかった。
〈――だもんな〉
 アランは思わずにやりと笑った。スメッグの効果が切れかけているのである。
「アラン」
「へ?」
 アランは間の抜けた顔で応じた。
「え、何?」
「アラン、大丈夫?」
 ハスハが心配そうに尋ねたのが分かると、アランは慌てて口元を引き締めた。アランはハスハの顔を直に見られなかった。気恥ずかしかった。
妙な思い巡らしで悦に入ったことやモロンじみた顔面弛緩、目の前の少女への軽蔑心が露見しかけたことなどが、次々に原因として推察された。
こうした思考そのものも、アランの精神の平衡を崩すのに手伝った。
「別に、ハスハには関係ないだろ」
 声の調子に難点のあるのは、言ってから気が付いた。しかしアランは少女の反応を待たずにまくし立てた。
「僕のことより、君のほうこそどうなのさ……ねえ、僕ら今年で卒業だよ。来年には大人なんだよ。そのこと、ちゃんとわかってる? わかってないよね? 
ハスハ、全っ然成長してないし、成長しようともしてないんだもの。そもそもさ、昔からさ、君って、なんというか、その、少し変わってるでしょ。
いつも一人でいるし、遊ばないし、ちゃんと付き合ったのだって結局僕一人じゃないか。おかしいよそんなの。普通じゃ考えられない、絶対ありえない。
子供のうちはまだ許されるかもしれないけど、でも、もう十四歳なんだよ。あと一年もしないうちに十五、大人だよ。なのに今の君はというと、ねえ、どうなの?」
 アランをこうまで駆り立てたのは、一般で悪酔いと呼ばれるスメッグ欠乏の一症状である。
本音以上のものを含んだ言動は、素面ではなかなか出来るとはいわれない。
401機動新世界ガンダムDoll-DA 1-72:2010/06/23(水) 22:21:36 ID:???
 アランは歩きながら説教を続けた。歩きながらの話はやけに脱線することが多い。これは新陳代謝が影響していると思われる。
座ってものを考えるときより、散歩中のほうが思いがけない考えが浮かぶともいわれている。
アランはハスハの浮きっぷりやら、娯楽への無理解やら、思いやりの欠如やら、社交に対する軽蔑やら、学力の不足やらを、
あるいは直接、あるいは遠まわしに、全体としてねちっこい語り口で責め立てた。
殆ど独り言に近い説教を行う場合、相手を勝手にこうと決めてしまって、風車に向かって打ちかかるのと同種の危険が生じる。
打算無き、換言すれば真心からすると思い込まれる類の啓発においてその危険は倍化する。
アラン・イディットなる一コーディネイターがそれを逃れたか、もしくは果敢に飛び込んで行ったかは、後の彼自身の判断に委ねられる。
「――君のそういう考え方がまずありえない。わかる?」
 まるで自身がコーディネイター全体を代表しているかの如くであるが、こう言い終えたころにはアランも幾分か冷静さを取り戻し、独りよがりをしたという負い目が芽生えかけていた。
 アランが自分の話に夢中でいるうちに、二人は木々のアーチをくぐって開けた場所に着いていた。
そこは見晴らしのいい広場で、眼下に街並みが一望できた。金銭換算で最新MS数十機分に喩えられる夜景であるが、アランたち以外に人影はなかった。
まだ今の時間帯、来園者たちは視覚より触覚を楽しませるのに懸命なのであろう。
 二人はどちらからともなく足を止めた。アランは決まり悪さから口を閉ざし、夜景に見入るふりをした。
本当は早くハスハと別れて彼女とのやり取りをスメッグで忘れ去りたいのであるが、友人を残して帰宅するというのは礼儀に反する。
コーディネイターたるものコーディネイターらしく振舞わねばならぬのである。
ハスハは家路を急ぐどころか手すりにそっと触れながら、何やら思い詰めたような顔で夜の街を見つめた。
〈あーあ〉
 果たしてアランの嫌な予感は当たった。
402機動新世界ガンダムDoll-DA 1-73:2010/06/23(水) 22:23:20 ID:???
「ねえ、アラン」ハスハが振向いた。
「私はわからないの……」
〈出たよ、やっぱり〉アランはげんなりした。昔付き合っていた頃に散々聞かされた下らない疑問である。ハスハは町を見下ろして続けた。
「コーディネイター――遺伝子調整で天性を賦与されたる人類。全員が平等、全員が優れている。悩むことも、苦しむことも、退屈することすらない。
私たちは好きなことを、ただそれだけをして生きていられる。
働くのは、モロンたちだもの――知能薄弱者の群、労働者なるべくして生産された人非人、人間にとって一番効率の良い労働手段。
完全な人類と完成された道具、そして、ベンセレム――完成された世界と、完全な幸福。でも、この世界は本当に理想の世界なのかしら。私たちは本当に幸せなのかしら」
〈授業でそうだと習ったろうに〉ハスハのような輩は、客観的にものを考えられないのである。
アランは彼女の問いに沈黙で答えることにした。何を言ったとて、どうせ少女は自分語りを止めまい。
「もうこんな世界に生きていけない。私はときどき、そう思うことがあるわ。ううん、いつもそう思っているかもしれない。
この世界はどこかがおかしい、私にとって、何かが狂った世界のように感じられてしまうの」
 ハスハの社会に対するそれと同じくらいの居心地の悪さを、アランは感じた。
「君は考えすぎなんだよ」
〈だから理性に異常を来たす〉
 おそらくハスハの頭の中では原因と結果の取り違えが起きているのであろう。
自分が異常であるから世の中を間違っていると思うのではなしに、世の中が間違っているから自分が異常になってしまうと、すっかり思い込んでいる。
「そう……そうかもしれない。でも――」
〈うんざりさせやがる〉アランは自分を棚に上げた。
「見て、アラン」とハスハは下の広場に歩いている一組の男女を示した。二人は売り子モロンからモロン・バーガーを受け取って、一度口を付けると投げ捨てた。
〈あの娘かわいいな〉
「作るのはモロン、使うのはコーディネイター。働くのはモロン、楽しむのはコーディネイター。
食事、家、衣服、MS、色々なお店。生活も娯楽も、私たちはみんなモロンに頼っているわ」
〈恋愛は違うけどね〉
 アランがちょっと気をとられた隙に、可愛い女性と残飯は消えていた。後者はどうでもよろしいが、前者は実にもったいない。
403機動新世界ガンダムDoll-DA 1-74:2010/06/23(水) 22:24:47 ID:???
「生きるために食べるのではなく、食べるために生きる。私たちは何も生み出さないわ。
ただ消費するだけ――それなら、私たちの人生にどんな意味があるの? 私たちはどうして生きているの? 
私には、わからないのよ……」
「消費は市民の義務だよ」
 コーディネイターにとっては消費こそが第一である。幾人の異性と付き合うか、幾機のMSを乗り潰すか等、つまりどれだけ消費したかが個人の価値査定の基準となる。
その過程でいかにしてというのは問題ではない。ともかくそれで生産者のモロンは存在することを許される。
付け加えていうならば、モロンはコーディネイターに養われ、それがモロンの充足理由なのである。
「そうね。私たちはそう教えられて生きて行くわ。
生まれてから死ぬまで、毎日、何べんも何べんも、繰り返し――今日手に入る楽しみを明日に伸ばしてはいけない。
自分の判断より他人の判断を軽くみてはいけない。万人と同じように振る舞い、しかも万人と違う人間とならなければいけない。
そして、ひたすら楽しんでいなければいけない――私たちはこの言葉通り生きるよう教え込まれる。
徹底的に、教育されるの。大人になれば、完全にそう生きるようになるでしょう。大人になるとはそういうことよ。
私たちより二十も三十も年上の人たちだって、十五歳で大人になり、それからずっと、同じように、変わらずに、幸せに生きて行く。
けれどそこに、私たちの自由は本当にあるのかしら? 水平化された価値観、単一化された意欲、それはまるで――」
「僕らは自由だよ」
 自分でもよくわからないが、アランは侮辱されたように感じてつい言い返した。語調がきつい感じになっていたのは否めない。
ハスハは手すりに落ち葉が乗っているのを見つけると、それを摘んで空中で放した。落ち葉はひらひら舞い降りて、地面で微かな音を立てた。
「自分の意志で落ちた。この木の葉も、そう思ったのかもしれない……」
〈はいはい。それはよかったね〉
 アランは三日三晩寝床で過ごした程疲れた気がした。そしていい加減会話を打ち切りたくなったので、深刻そうな顔を作った。
「ハスハの言うことは分かるよ。僕にも覚えがある。でもさ、そういうのって仕方ないじゃない? くよくよしたって始まらないよ。せっかくの人生なんだから、とことん楽しまなくっちゃ」
404機動新世界ガンダムDoll-DA 1-75:2010/06/23(水) 22:25:48 ID:???
 ハスハは悲しそうに目を伏せた。まるで私を理解してくれないと言わんばかりである。
〈あれ、間違ったかな?〉
 妙な悩みを打ち明けてきた少女に対しては、アランは先ほどの返答を用意していた。ハスハとの付き合いで懲りて以来、対抗策を作ったのである。
実際の効果はなかなかのもので、思春期特有の変態的な情緒を催した少女らは大抵、直ちに精神の正常な状態を取り戻すのであった。しかしハスハ本人には効果が無かったようである。
 気まずい沈黙が続いた。ハスハは歩き出す気配を見せず、そうかといってアランの方から立ち去るにしても、具合が悪くて仕方ない。
何かきっかけを掴まなければならないとアランは判断した。
 アランは記憶を探って、近頃自然公園で流行っているという遊びを思い出した。
クラスメイトの言ったところによると、舌を鳴らせばいいのである。
「ねえ、ハスハ。この前聞いたんだけれどさ」
 アランはチッチッと舌を鳴らした。小鳥が歌いながら寄って来て、アランの手にとまった。
「ここを指でこうすると」
 小鳥の後頭部にある突起を、アランは思い切り指で弾いた。
笛を乱暴に吹いたような鳴き声が辺りに一瞬響いて、小鳥はすてんと地べたに落ちた。
それから小刻みに羽をばたつかせて、横たわったりひっくり返ったりを忙しく繰り返していた。
「おもしろいだろ?」
 そう微笑んでハスハに振向いた途端に視界が揺れ、アランは乾いた音と顎骨の鳴る音を同時に聞いた。
405機動新世界ガンダムDoll-DA 1-76:2010/06/23(水) 22:27:02 ID:???
 アランは痛む頬を押さえながら、腕を振り切っているハスハを睨んだ。
「ぶったね、誰にも――」ぶたれたことなかったのに、と続けようとしたところ、返す刀で反対側の頬を打たれた。つまり、二度もぶたれたのである。
堪忍袋の緒は筋肉と同じで、使う機会が無いと退化する。
「――あなたはそんな人じゃなかった」
 アランは危うく激怒しかけたが、コーディネイターの倫理に人一倍敏感でもあったので、努めて平静を装った。
「僕はこんな人だよ」
 ハスハは飛べない小鳥を掬うように拾い上げた。繊細な手つきで小鳥の翼を一撫ですると、きっとなって言い放った。
「あなたはなにもわかっていない」
 アランは嘲笑った。スクールでの評価は、全ての科目でアランが勝っているのである。
脳に受信機を埋め込んだに過ぎない小鳥は、せいぜいモロン・バーガー一個分の値段でしかない。アランはそのことをちゃんと知っていた。
「君、必死すぎ。それ安物だよ」
「黙って!」
 ハスハは声を荒げた。彼女らしくもない。
「アランは……私の知っているアランはそんなこといわない」
〈ほんと気持ち悪いな〉
 アランは肩を竦めた。
「こんなの、みんなやってることさ」
 少女は答えなかった。アランよりも、もはや機能しない小鳥に注意が向いていると見える。
茂みの向こうで清掃用の黒子モロンが夜食を得る機会を窺っているのが見えた。
〈あほらし〉
 アランはハスハを残して立ち去った。そうして暫く歩き、スメッグのことを思い出してポケットを探った時であった。
何の前触れもなく青白い光芒が上空を横切り、少し遅れて、くぐもった激しい音が鐘の音のように鳴り渡った。
「何かの宣伝かな」
 アランはのんきに呟いた。
406通常の名無しさんの3倍:2010/06/23(水) 22:40:55 ID:???
ひとまず以上です。
407通常の名無しさんの3倍:2010/06/24(木) 00:19:17 ID:???
投下乙。
コーディネイターの末人っぷりがすげぇ……
あとナギの命名センスwww
408通常の名無しさんの3倍:2010/06/25(金) 22:15:36 ID:???
邪気眼ドルダ投下します。
409機動新世界ガンダムDoll-DA 1-77:2010/06/25(金) 22:18:24 ID:???
 第48居住区の上空でアメタペイストの放ったビームはヴェスタを掠めて、たまたま射線上にあった高層ビルに大穴を開けた。
年配のコーディネイターやの文化施設やの入居するそれが轟音を立てて崩れ落ちるのと同時に、ヴェスタの電磁迷彩が剥がれて、片翼の欠けた船体が顕わになった。
 ヴェスタは浮力の均衡を失くして左に傾いた。重力制御を行っていなかった艦内も同様に傾いた。あらゆるものが左傾した。兵器格納庫と厨房は酷い有様であった。
ブリッジの艦長席に陣取っていたロウ・ブレーンは、ちょうど立ち上がりかけた折であり、足場が頼りないと感じた直後にすてんと転んで床を滑り降りた。
ロウが端末にしがみ付いて顔を上げると紙コップが転がって来て蓋が外れ、中のコーヒーを彼の体にぶちまけた。
香りの良い湯気を上げるそれは、オペレーターのフェララ・クティッシーという女性がロウの命令を無視してブリッジに持ち込んだものである。ロウは火傷に構わず叫んだ。
「損害報告!」
「第一左翼消失! SEジェネレータ出力二十パーセントに低下してます!」
 フェララが端末に散らばった食べかけのドーナツを払い除けて報告した。
「再構築は」
「出力が足りません!」
「ジョウ、右翼の出力を――」
「面舵いっぱいまっすぐだね」
 ウーティスの代理で操舵を勤めていたジョウ・ハーテンは、ロウが指図するより早くヴェスタの舵を取っていた。
ヴェスタが前進を止め、その代わりに平衡を取り戻した。
「余剰出力――」
「もうフィールドに回したよ。ベェン、敵さんは?」
 もう一人のオペレーターであるベン・スパンキンスという美少年が、リーダーのロウにではなく同性の恋人に報告した。
「後方のSE反応はアメタペイストと思われ……動体反応? ジョウさん!」
「フェラ――」とロウが言いかけると、
「女! フィールド全方位!」とジョウが怒鳴った。
 夜景がぼやけたかと思うと、空中に無数のMSが現れてヴェスタの行く手を阻んだ。フライトユニットを装備したそれらは、特殊な迷彩布を被っていたのである。
一斉射撃が行われ、ヴェスタの前方の空間が波打った。逸れた弾丸の殆どは市街地に降り注ぎ、公共施設や夜道を歩く人間などを破壊した。
「MOS-B八、MOS-H七、なっ……、ゆゆゆ輸送機も、さ、三時の方角から」
「増援、そういうのもあるのか」
410機動新世界ガンダムDoll-DA 1-78:2010/06/25(金) 22:20:54 ID:???
 恋人の涙声の報告を聞くとジョウが他人事のように呟いた。ロウは艦長席に戻りながら舌打ちした。
「待ち伏せか……」
「予期はしてたろう」
「市街地だぞ」
「だから網にかかるのさ」
 ヴェスタは交戦を避けるためになるべく市街地を通る航路を選んでいたのであるが、それが却って裏目に出たらしい。
敵の善意に縋って戦略を立てるのは良し悪しである。
 敵MS部隊のうちのMOS-Bビアーは、胸部機関砲では効果が無いのに気づいたのであろう。
掘削破砕マニピュレータで不可視の力場をこじ開けようと、両腕を大きく上げて背伸びの姿勢で飛び込んで来た。
その進行はSEフィールドに阻まれる。体とスラスター光とが激しく揺れる様は、網を抜けようともがく羽虫を思わせた。
「前と後ろ、どっちを先に掘られるか。ボクは前のほうは未経験だがね。さぁて、これからどうしようか、リーダー」
 それを今考えているのである。SEフィールドを艦首に集中展開し、残りの出力を推進に回せばMOSタイプの部隊は振り切れる。
しかしアメタペイストまで振り切れるとは思われない。こちらのMS隊とヴェスタの砲撃を駆使して蹴散らそうという強攻策は論外である。
アメタペイストどころかMOS部隊ですら、真っ当にやり合って勝てるかもわからない。
いくらMSの性能とパイロット個人の技量で上回るはいえ、アーミー・モロンの連携能力はナチュラルの職業軍人の平均をも遥かに凌駕している。
各個撃破に持ち込まれて全滅するのは目に見えている。
そもそもアメタペイストが現れた時点で万策尽きたのではあるまいか、とロウが緊張と困惑とで鈍った頭で考えたとき、ブリッジの扉が開いた。
「お待たせです!」
 クリトンが老人の乗った車椅子を急停車させた。床にタイヤの後が付いた。
「ウーティス!」
「ロウさんはそちらを持ってください」
 手の開いているのはロウだけであった。
411機動新世界ガンダムDoll-DA 1-79:2010/06/25(金) 22:23:15 ID:???
 ブリッジの中央には、一風変わったシートが据え付けてある。
手足の当たる部分には拘束具が、頭と腰の当たる部分には奇妙な出っ張りがあった。
クリトンはロウに手伝わせて老人の体をそこに横たえると、首の据わっていない老人の頭を両手で押さえた。
「フェララさん、お願いします」
「は、はい」
 フェララが端末を操作すると、氷柱のような端子がシートから突き出て老人の体を串刺しにした。
背骨を貫く端子が支柱の役目を果たし、老人の背筋がしゃんとなった。ところが胴体の様子とは裏腹に、老人の手足は痙攣した。
数秒して拘束具のがたつく不快な音が収まった。すると、ブリッジの主モニターに球形のマスコットが映り、黄緑色のそれが耳と思わしき箇所をぱかぱかと開閉させながら跳ね回った。
「神経電位接続完了しました。制御システムをセミオートに移行します。
SEジェネレータ出力七十パーセントに上昇。第一左翼再構築。艦載通常兵装オールグリーン。SEフィールド、拡張します」
 力場が広がり、ビアーの体を押し返した。ヒューブリスから放たれた弾丸のほうは、上空に向かう弾道を描き始めた。
『お早うございます、皆さん。絶体絶命ですね』
 ウーティスが全システムを掌握したことにより、飛行艦ヴェスタは本来の力を取り戻した。
412機動新世界ガンダムDoll-DA 1-80:2010/06/25(金) 22:24:57 ID:???
 Doll-A07は、空中でキロプティーランスを傘のように広げて静止していた。その先端は飛行艦ヴェスタに向けられている。
『充填率四十パーセント。チャージ続行』
 砲身の輝きが増して行く。抑え切れない出力が電光と化し、引き付けられるようにアメタペイストの全身に絡みついた。
このMSと一体化している少女も全身を擽られるのを感じた。キロプティーランスがその力の解放を待ちわびて暴れ出し、少女の腕はがたがたと揺れた。
アメタペイストが武器の力をもてあましているのは、傍目にも明らかであった。
それを喩えて言うならば、どこぞの気取った令嬢が日傘を差して優雅に散歩していたところ、突如暴風雨に見舞われたというような有様である。
『充填率五十パーセント。エランバイタル安定。チャージ続行』
 少女の目が攻撃目標に注がれた。敵艦の足止めと電磁迷彩の展開を妨害するという任務を、MOSタイプ部隊は順調に果たしていた。
先だっての第一射は敵艦の電磁迷彩を解いて座標を特定するためのものに過ぎない。
これから放たんとする第二射のビームは、敵艦をSEフィールドごと消滅させるのに、威力も精度も申し分の無いものである。
キロプティーランスの最大出力はアメタペイストをもってしても防ぎ切れない。SEフィールドを多少強めても、消滅の時刻を数瞬遅らせる程度であろう。
それほどの威力であるので眼下の市街地もただでは済むまいが、少女の任務に市街地の保全という内容は含まれていない。
少女は戦場の状況を把握するために町を見下ろした。
少女の鋭敏な視覚は町の地形ばかりでなく、コーディネイターと呼ばれる物体の一体一体を詳細に把握した。その物体の殆どが顔の筋肉を盛んに活動させていた。
キロプティーランスの発する白光を、琥珀色の瞳は波打つように反射した。それに呼応して、アメタペイストのバイザーに光の亀裂が走った。
『エランバイタル上昇、規定範囲内。充填率六十五パーセント。エランバイタル安定。チャージ続行』
 作戦の妨害となりそうなものは地上に見当たらなかった。コーディネイターのいる町を観測する必要はもはやなくなった。
少女はゆっくり瞬きをすると、再び攻撃目標を見据えた。


413機動新世界ガンダムDoll-DA 1-81:2010/06/25(金) 22:26:41 ID:???
 ポスト・フェストゥムが司令部に向けて歩いていると、行き先からザリー・マッカティンが走って来て直立不動の姿勢を取った。
無論、ポストの行く手を阻んでしまわぬよう通路の右端に寄っての敬礼である。
「おはようございます、閣下」
 搾り出すような声であった。全力疾走の息切れを堪えているからであろう。
「早すぎる」
 ポストはザリーに目をくれずに通り過ぎた。夜更けというにも早すぎる時刻である。
心地よいまどろみで意識が薄ぼんやりした頃合に、ポストは戦闘開始の報を受けたのであった。
ポストの恰好は、彼が寝床から直接やって来たことを物語っていた。
球形のマスコットが球模様に編み込まれた寝巻きを身に纏い、同じマスコットを模したぬいぐるみを右手に抱えていた。足を進めるたびにナイトキャップの毛玉が揺れた。
その顔はというと苦虫を噛みつぶしたように歪んでいたが、別段安眠を妨害されて全世界を憎悪しているというためではなく、
ただ、体質として起き抜けはいつも自然とこういう顔になって暫く戻らないだけである。
内心では、想定外の状況を前に六十年ぶりの胸のときめきを感じていた。六十年前といえば、管理局がナチュラルの戦争に武力介入した時期である。
ポストは局長専用の司令部直通エレベータに入ると、敬礼したまま静止しているザリーに声をかけた。
「君も乗りたまえ」
「ありがとうございます! 閣下!」
 これは彼が常時誇っている持ち前の慈悲心を発揮して、ザリーの階段を上る労を省いてやろうと思い立ったということではない。
エレベータに乗っている間に、ザリーに現状を説明させるためである。
「リグ・ヴェーダから直接要請があったというのだな」
「はい、閣下。管理局からはDoll-A一機を出撃させよとのことであります」
「稼動中のアメタペイスト全機は各工業区の警備に当たっているはずだ。呼び戻したのか」
「まことに勝手ながら、リグ・ヴェーダの指示により、整備のため待機中であった機体を出撃させました」
「あの三機か」
 先回の作戦に参加したDoll-A69、Doll-A27、Doll-A07の三機である。
戦闘直後でフォーマットの済んでいない生体CPUは、エランバイタル超過による暴走の危険がある。
414機動新世界ガンダムDoll-DA 1-82:2010/06/25(金) 22:28:46 ID:???
〈リグ・ヴェーダも余程急いでいたと見える。或いは……〉
「どれを出した」
「Doll-A07であります」
「七号か。君が選んだのか」
「はい、閣下。Doll-A07のパラメータは優秀であります。故に今回の単独任務に最も適していると、ザリー・マッカティンは判断致したのであります」
〈贔屓だな〉
 ポストは面白半分に釘を刺すことにした。
「ザリー君、優秀かどうかを判断するのは君ではない。私だ」
「申し訳ございません! 閣下!」
「だが、七号が優秀だという君の意見は覚えておくことにしよう」
「恐悦至極であります! 閣下!」
 ポストはザリーの目の色が変わったのを見逃さなかった。このイェニチェリー・モロンの目に宿ったのは、条件反射の輝きとばかりは言い切れない。
〈この男は餌付け次第で面白い逸物に化けるかもしれぬ〉ポストが教えられるより教える方を好む人間であるのはいうまでもない。
 エレベータが指令室に着いた。ポストは前もって中指を立てることで歓迎の手間を省いた。
指を立てる本数に他人の態度が左右されることは太古の賢人も言っている。
 大型モニターには、最大出力のビームを放たんとしているアメタペイストが映っていた。
市街地上空に浮かぶ監視装置が捉えた映像である。
「ふむ」と言ったきり、ポストは映像そのものには頓着せず自分専用の椅子に腰掛けると、ぬいぐるみを膝に乗せて、テーブルのコーヒーカップを手に取った。
温度は温めで、砂糖は氷山のようになるくらい入れるのが彼のこだわりである。〈うむ、不味い〉
「ザリー君、いくつか質問だが」
「どうぞ、閣下」
「あのMOS部隊の管轄は」
「不明であります! 閣下!」
「Doll-Aへの指令は」
「リグ・ヴェーダから直接発せられているであります! 閣下!」
「予測被害状況は」
 ザリーがオペレート用モロンに指示を出すと、市街地の三次元マップに攻撃目標を中心とした半透明の球体が形成され、その球体の下方、地表と重なる部分が赤々と点滅した。
「ビーム直撃の余波によりD-78区画一帯が、塵一つ残さず消滅するであります! 閣下!」
「なら止めさせんか」
「了解であります! 閣下!」
415機動新世界ガンダムDoll-DA 1-83:2010/06/25(金) 22:31:31 ID:???
 リグ・ヴェーダの思惑が何であれ、市民の安全を守るのが管理局の使命である。
いかに敵対勢力が残虐非道の人非人集団であり、それを皆殺しにして真の自由と尊厳と独立とを勝ち取ることが正当な資格を持つ人間にとっての権利であり義務であったとしても、
勝手に始めた殺し合いに市民を巻き込むという法は無い。コーディネイター社会では人民皆兵が理念化せられていないからである。
 ザリーはマイクで呼びかけた。
「Doll-A07、攻撃を中止せよ」
『管理局の指令を拒否。リグ・ヴェーダの指令を優先。攻撃続行』
 Doll-A07が合成音声で返答する。
「繰り返す、Doll-A07、市街地の保全を優先し、直ちに攻撃を中止せよ」
『拒否』
 ポストはザリーの結果報告を待たずに叫んだ。Doll-Aのみでなく、MOSタイプ部隊も止めねばならない。
「定言命令、レベル4!」
 無数のオペレート用モロンたちは即座にポストの命令に反応して、攻撃中止の定言命令を発動した。
市街地の中央には、Tセンタービルと呼ばれる二本のビルが建っている。
これは先日襲撃を受けた工業区にあったものと同じもので、音響と映写とによって定言命令を発動させる装置である。
 Tセンタービルの屋上が割れると、硝子を爪で引っかくような音にあわせて、めまぐるしく変動する幾何学模様が天蓋一面に映し出された。
その映像と音声がMSのセンサーに捉えられ、パイロットのアーミー・モロンは攻撃中止の暗号を否応無く認識させられる。
そして徹底的な調教と間断なき暗示とにより、普遍的格律として本能化されるまでに刷り込まれたこの道徳以上の命令を、アーミー・モロンは実行するはずであった。
『全部隊、定言命令無効。既にレベル7の定言命令を実行中です』
 アナウンス用モロンが愛くるしい声で報告した。定言命令は、それより上位の定言命令でしか打ち消せない。そのため能動的な定言命令は通常は下位のものを用いることになる。
Tセンタービルの発動できる最高位の定言命令は、たった今ポストが発動させたレベル4で、現時点でそれ以上の定言命令は用意できない。
〈こちらに舵をとらせぬつもりだな〉
416機動新世界ガンダムDoll-DA 1-84:2010/06/25(金) 22:34:11 ID:???
「あの、閣下。Doll-A07が、応答を拒絶しました」
 震える声でザリーが告げた。そのモロンらしくない様子にポストは興味をそそられたが、今はアメタペイストに攻撃を止めさせる方が先決である。
「受信はある。呼びかけを続けたまえ」
「07、応答せよ07!」
『充填率七十パーセント。エランバイタル安定。チャージ続行』
 ザリーの声は空しく響き、アメタペイストはビームの発射準備を着々と進めていった。
「応答せよ07! 07! 応答――シンシア!」
〈それが彼女の名か〉
 取り乱したために思わず叫んでしまったのであろう。ザリーははっとしたような顔でポストに振向いた。
「いいぞ、ザリー君。時間稼ぎにはなる」
 ポストはキロプティーランスの充填速度が下がったのを示した。
「応答せよ07」
 ザリーは落ち着きを取り戻して呼びかけを続けた。そこはかとなく得意そうな声色であった。ポストの鼻孔が膨らんだ。
「工業区のDoll-A83とDoll-A22を、第48居住区に急行させろ」
 そうポストがモロンに指示を出すと、ザリーはまるで定言命令を使われたように口を噤んでしまった。
「市街地の防衛を最優先に、攻撃目標はDoll-A07及び所属不明MOS部隊。
Doll-A07を撃墜しても構わん。何があっても、市民を護るのだ」
 ザリーの顔が青ざめた。
〈どうせ発射には間に会うまい。避けるべくもない人死にならば〉
 ポストの下した決断はむしろ事態を悪化させたといえた。
Dollタイプ同士が戦闘するということにでもなれば、市街地の被害が072工業区を上回るのは確実である。
この不祥事は傍観者に純粋な憤激の種を提供してくれるが、後始末の手間を省くという利点もあった。
「どうしたのだねザリー君。早くセミ・モロンに呼びかけたまえ。さあ」
「Doll-A07、攻撃を、中止、せよ。応答、せよ、07。応答……」
〈これで無数のコーディネイターと一人のイェニチェリー・モロンの運命は委ねられた。Doll-DAに〉
 ポストは襲撃時の映像にあった未知のMSの姿を思い浮かべてほくそえんだ。
〈私の知らないDollタイプ。ガンダムの面影を持つ神の人形……私は神を試していられるのだろうか。それとも神に試されているに過ぎないのだろうか〉
「シンシア」
 ビーム発射まで間もないとき、ザリーはまたもや少女の名前を呟いた。やはり、答えは返って来なかった。


417機動新世界ガンダムDoll-DA 1-85:2010/06/25(金) 22:36:31 ID:???
 ウーティスが復帰したとはいえ、本職の軍人でない指揮官が即時に有効な打開策を講じかねるのは、相当な天才か無能でない限り恥じ入ることではない。
沈黙の中、ブリッジにいる全員の視線はロウに集中していた。リーダーが発言するのを待っているのである。
十秒経った。ロウはいかめしい作り顔でブリッジを見渡した。
ウーティスのモニターが刻一刻と、アメタペイストのSE反応が増大していくのを示していた。
ジョウの顔つきが「どうする?」と尋ねているように思われた。
ベンが怯えたように目を逸らした。フェララの視線は冷たかった。
最後に、普段通りの下心ありげな微笑みを浮かべるクリトンと目が合った。
「ガンダムだ。それしか手はない」
 ロウが呻くように言うと、クリトンは得々と手を鳴らした。
「はい! こんなこともあろうかと」
『ブリッジ、ドルダの起動が済んだ』
 サブウインドウが開いて格納庫のケレンが映った。
「ちゃんと使えるようにしておきました、ガンダムドルダを」
 ガンダムドルダはロウの知らぬ間に起動を終え、ケレンの後ろで腕を振り上げたり屈伸したりしていた。
「よし、直ちに発進準備だ。フェララ、カタパルトの」
『馬鹿か君は? 敵は後ろだ。フェララちゃん、後部ハッチの支度、頼むよ』
「了解です、ケレンさん」
 ジョウが「おやまあ」というような顔をした。ロウに割り込んで指示を出したケレンが言い添えた。
『状況は把握している。ビームが来るんだろう? なら、するべきことは決まってる』
 ガンダムドルダの強力なSEフィールドでビームを防ぐのと、ロウが主導権をとろうと焦って時間を浪費しないことである。
「ガンダムは持つのか」
「ゲインは五倍!」
『五分五分ですかね』
 クリトンが親指を立て、ウーティスが答えた。ウーティスが今まで黙していたのは、格納庫の方に処理能力を割いていたからであろう。
そして有能な彼はガンダムの起動作業の他に、ケレンに作戦立案をさせてもいる。
『けれど今は、ガンダムの力を信じよう。僕たちが生きるために、そしていつの日か、未来を、真の自由を勝ち取るために』
「ああ、そうだ」
 ロウはケレンの言葉を聞きながら、覚えず爪を噛んでいた。


418機動新世界ガンダムDoll-DA 1-86:2010/06/25(金) 22:38:46 ID:???
 良人が美容院の領収書を見ていやな顔をすると細君は良人の女性関係を疑う。電球の交換を頼んだときの良人の顔で細君は良人の浮気を確信する。
女の勘と世間で呼ばれるところのそういうものとは別物の予感を、ナギはガンダムドルダのコックピットで感じていた。
 ナギの傍らでコンティが言った。
「本当に、いいのか」
 ナギは振向かず、コンソールだけを見つめていた。最終調整は済ましてあった。コンティはきっと、彼らしくもない深刻な顔をしているに違いなかった。
「コンティのくせに生意気よ」
 いつも回りに振り回されているコンティ・ネイブリットの顔には、困惑だけ浮かんでいればいいのである。
「駄目だ。やっぱり俺が」
「あんた、あたしに逆らえると思ってるの? やい、弱虫コンティ、泣き虫コンティ」
 ナギは幼い頃のあだ名を持ち出しながらコンティに振向いた。
「ふざけるのは、止せよ」
 バッシュではないが、こうも頑なでいられては一泡吹かせてやらねば気が済まなくなって来る。
ナギは突然コンソールに顔を向け、口に手を当てて仰天して見せた。
「あっ!」
「どうし――」
 注意を逸らしたコンティを捕らえるのは容易かった。歯がかつっと音を鳴らした。
ほんの僅かな時間なのに随分長く息を止めていた気がした。じんとする自分の唇を舐めると鉄の味がした。
「まぬけ」
 コンティは呆然としていた。
 えいっという軽い掛声とともにナギはコンティを蹴飛ばしてコックピットから放り出した。
ガンダムの手の平に受け止められて、コンティはようやく立ち直った。
「おまっ、今何した」
 ナギはコックピットから身を乗り出し、
「フィーカへの言伝なんか頼まない! アンタにも、何も言ってやらないんだからね!」
 そう叫んでコックピットハッチを閉じた。
「つけておけばよかったかも」
 こっそり買ったきり、引き出しの奥にしまい込んである口紅を思い浮かべながら、ナギはそっと唇に触れ、指で血を伸ばしてみた。
今の自分の顔のうちでは、そこだけがひんやりと感じられた。

419機動新世界ガンダムDoll-DA 1-87:2010/06/25(金) 22:39:48 ID:???
 ガンダムの手はコンティをぽいと投げ捨てたも同然であった。ガンダムが後部ハッチに向けて歩いて行く。
それを見送りながらコンティが立ち上がろうとすると、
「ガキってのは分からんものだな。ついこないだまで天使だったってのに、バッシュ兄さんは複雑な気持ちだよ」
と言って、バッシュがコンティに手を差しのべた。
「散々煽っておいて」
 悪趣味な覗き見や自分たちの年齢など、他にも考慮させたい事柄はあるが口論している暇はない。
パイロットは自分のMSに乗り込んで待機しなければならなかった。一緒に駆けながらバッシュが言った。
「どのみちな、ドルダとヴェスタは一蓮托生さ」
 それはコンティの疚しい気持ちを紛らわすための言葉であったかもしれないが、却ってコンティは自責の念を感じさせられた。
余計な一言とは、こういうもののことを言うのである。

420機動新世界ガンダムDoll-DA 1-88:2010/06/25(金) 22:41:39 ID:???
 初めの数歩は気を遣ったがディズンのOSを基にしているだけあって、操縦の手応えの頼りなさは誤魔化せた。
SEドライブジェネレータの内部慣性制御で重心をディズンに近似させたおかげもあろう。
しかし反応が聊か機敏に過ぎて危なっかしいきらいもあった。
「これ、おっきいの?」とナギは思った。それは第三者の納得しうる根拠の無い、粗野な実感であった。
装甲越しに感ずる外界との距離、または装甲の抽象的な厚み、さらに支離滅裂な表現では感覚移入を行い得る空間の拡がり、意識の温帯感覚、
こういった実地で語ると恥をかく類の心霊的感覚が、他のMSよりずっとずっと大きいのである。
同じ人型MSのティハターンでは、脆くて狭い卵の殻の内側にいるように感ぜられ、ディズンやキルケニーではその装甲相応である。
ガンダムドルダのそれはいわば大鯨の腹の中で、たとえ外の世界の一切が水に飲まれようとも自分だけは安全を確信していられるに違いない。
そう考え至るとナギは不意の寒気に襲われた。コンティの体温がコックピットから消えてしまったことが惜しまれた。
Doll-DAのコックピットはティハターンやディズンと違って、完全な単座式である。
『ガンダムドルダは発艦と同時に最大出力でSEフィールドを展開。ビームを無効化した後、アメタペイストの撃破に移行。
発艦のタイミングはこちらで測る。やれるな、ナギ』
 ロウからの通信がナギの感傷を断ち切った。
自分らしくもない、そうナギは瞬間的に心中の己に命令して、自信に満ちた顔になるように力んで見せた。
「発進、バリヤー、ぶん殴るね。楽勝よ」
 即席の作戦図案のサブウインドウに映るのに続いて、クリトンが早口で注意事項を述べる。
『DollタイプのSEドライブはコックピットの慣性をも無効化してしまいます。貴女の操縦に合わせた擬似慣性を働かせてありますがその分運動性が落ちるので任意に切り替えてください』
「酔いたくないなら加減しろってこと?」
『はい。それから何より大切なのは、魂の叫び! だということを忘れないで下さいね』
「最低」
 しつこい念押しである。
421機動新世界ガンダムDoll-DA 1-89:2010/06/25(金) 22:43:46 ID:???
『ガンダムドルダ、フライトモード起動して下さい』
 不真面目の矯正手段を考える暇はない。ナギはフェララの声に従ってコンソールに手を触れた。
ハッチの前に棒立ちでいたガンダムドルダが、足を肩幅まで広げて中腰になる。
それと同時に、だらりと伸ばされていた肘が操縦者のナギの肘と同じように曲げられ、弛緩していた手は硬い拳に握られた。
そしてやや臀部を突き出すように前かがみになり、頭を上げて前方を見据えた。
ガンダムが大用の気張りを連想させるこの姿勢をとり終えると、ナギはもろもろの思考を打ち消すかのように叫んだ。
「ドルダ・ウィーングッ!」
 狭いコックピットでの反響で濁るかに思われたが、不思議なことに、それは木霊のように響いて聞こえた。
『ノリノリじゃねえか』
 もはやバッシュの呟きなど誰も気に留めない。機体パラメータが一挙に変動する。ガンダムの双眼が閃くように発光した。ぎゅいん、という音が鳴っても違和感はない。
瞳から放たれた光は隈取に零れ、涙のように頬の線に流れたと思うと、瞬時に全身の装甲の合わせ目に伝わった。角や装甲の欠けた断面には、毛穴の滲みに似たぶつぶつの光が散った。
そうして背面、肩、肘、腰、脹脛、踵、それから尻たぶの装甲がばね仕掛けのように次々と展開して、蛍を思わせる光の粒とともに、細長い板が突き出し、ガンダムドルダの輪郭が刺々しく変貌した。
これは空力に対して無謀な形をしているが放熱板の類でもない。
機体の表面積と幅の増加でSEフィールドの空間干渉の効率を良くするというアンテナのようなものらしく、その作用の結果のみを考えれば、クリトンの形容もあながち的外れとは言い切れない。
『敵SE反応変化! ビーム来ます!』
『ハッチ開け! 後部フィールド解除!』
「覚悟している暇もない!」
 時間についてはむしろ僥倖に過ぎた。敵は破壊を確実にするためであろうけれども、こちらの準備の整うまでの何分もの時間を与えてくれたことには疑いを差し挟む余地がある。
上手く事が進むという予感に急かされた解放戦線の面々は、目の前の難関を乗り越えるに懸命で、今は正しく一丸となっていた。
422機動新世界ガンダムDoll-DA 1-90:2010/06/25(金) 22:45:59 ID:???
 ハッチが開く。コーディネイターの歓楽境は夜景だけなら自然保護区の大都市とそう変わりない。
とにかく多数の光り物でさえあれば美を感ずる資格を持つ動物は、ここで如何なる感慨と描写を述べるべきか。そういう高尚な思索を行う余裕は、誰にも残っていなかった。
キーウィタースの天蓋は自然保護区のそれに比べて低く、電飾も肉眼で見ることが出来る。その無数の光点のなかに、ひと際目立つ輝きがあった。
Doll-Aアメタペイストである。ナギは解放戦線の仲間と無数の祖先の命を奪った管理局の人形を睨み付けた。
恐れはある。しかし戦意も敵意も充分ある。より強い力を手にした今ならば、暴力以外の思考は必要でない。
ガンダムドルダの背後が、大きく歪んだ。空間そのものを弓と化して引き絞るかのように背景が陥没した。
ヴェスタ後部のSEフィールドが消え、後部ハッチの中に風が吹き込む。センサーがそれを示した微かな時間、ナギは自身の肌にも風を感じた。
『Doll-DAガンダムドルダ、発艦どうぞ!』
 アメタペイストの光が強まるのとほぼ同時に、ガンダムドルダは加速した。

 ほんの束の間であった。
 アメタペイストの光が急激に変色し、四方に散ったかと思うと激しい光が新たに生まれる。
擬似慣性で息がつまり、迫り来るビーム以外の光の点がすべて光の線と化し、視界の両脇に縞模様を描く。
見る間もないはずなのに時間がゆっくり流れているように感じられ、みるみるうちにビームの青白い光が膨張して行く。
Doll-DAの出力が不足してしまうならば、今のナギはむざむざ焼かれに飛び込むようなものである。
感ずる間も思う間も無しに肉体が炭化する。人知れず食事に気をつけたり一人合点して胸筋を鍛えたりした一切が、ビームの黒点の足しに過ぎなくなる。
そんな馬鹿げたことは承知できる筈がない。強張った肺に残る空気がようやっと本来の出番が来たとばかりに上り出す。
クリトン・キーンの願望が成就する。死中を目前とした衝動の氾濫が、年頃の娘をして絶叫せしめた。
「処女で――」
 エランバイタルの表示が変化する。ナギの想いを受けたガンダムが、その力を解き放つ。
「――死ねるかぁ!」
 視界いっぱいに、光が広がった。
423機動新世界ガンダムDoll-DA 1-91:2010/06/25(金) 22:56:23 ID:???
 棒が管になった。ビームの形状の変化を述べるにはこれで充分である。
ガンダムドルダの前面に展開されたSEフィールドは、アメタペイストの放ったビームを中心から押し広げて空洞を作った。
相当な厚みのある管であったので、ヴェスタの脇に逸れていたMSは全て消失した。
空洞の真ん中あたりに浮遊するヴェスタと、その正面で攻撃に精出していたMS数機は直撃を逃れたが、それらも安閑としてはいられなかった。
 主モニターの映像でビーム光の無いところ、ほの暗い円が昇るのを見て、ロウが喚いた。
「引かれているのか? 慣性制御!」
『間に合いません! 操舵で逃げます!』
そうウーティスが答えたのを聞き、フェララが端末にしがみ付いた。
「揺れるの? ねえ揺れるの?」
『すごく!』
「みんなつかま――」と言いながら、誰よりも身構えの遅れていたロウが舌を噛んだ。
 大気による減退の際、ビームは鈴の鳴るのに似た音を立てる。ほんの微かな音である。
大概は発射音や爆発音などに掻き消されるので、直にビームで焼かれる生き物が「今何か聞こえたかしらん」と焼かれる刹那に思いかけるか、
ビームを用いた殺し合いの最中に色々な感覚を研ぎ澄ませることの出来たMSパイロットが「いや、聞いた。確かに聞こえた」と複雑な心境で語るくらいである。
ヴェスタの乗組員とMOSタイプMSに搭乗するアーミー・モロンたちはこの希少な音色に、聞き入る機会を得たのであった。
 飛行艦ヴェスタが右傾左傾し、艦首をもたげたと思いきや慌てて下に向き直ったり、更には斜め上を向いて艦尾をぐらぐら揺らしたりする。
ビームの管の厚みは不均一でその配分も刻々に変動する。管の内部で働く引力は一定でない。
SEドライブジェネレータを搭載しているヴェスタですら、不細工な動きをしてやっと堪えている。
民生品のそれに比べて必ずしも良品であるとはいえないフライトユニットを装備するMOSタイプMSが、ヴェスタほど器用でいられる道理は無い。
424機動新世界ガンダムDoll-DA 1-92:2010/06/25(金) 22:58:15 ID:???
二種のMOSタイプのうち、重量の少ないMOS-Bビアーが先に制御を失った。高い回避性能が却って災いした。
アーミー・モロンがスラスターを吹かし過ぎたことに気付くころには手遅れである。
ビアーは回転しながらビームの川面に飛んで行く。そこで四肢を四散させつつ水切りのように数回弾んで消えてしまう。
MOS-Hヒューブリスの方は推力の不足が原因である。スラスターを吹かしても吹かしても、ビームの川面が迫り来る。
鈴の音の喧しい距離まで近づくと、ビーム粒子の飛沫が当たって装甲に無数の穴ぼこが出来る。
体の一部が直接川面に触れたときには鑢をかけられたように全身が振動し、それから間もなく沈んで行く。
パイロットはコックピット内部に流入したビーム粒子でとっくに焼け死んでいる。
 MOSタイプMSの全滅したとき、ロウは耳をそばだてた。
「ノイズ? いや」
『ビームです!』
「もういや!」
 フェララが耳を塞いで金切り声を出した。ジョウの腕に抱かれているベンが息を呑んだ。クリトンは音の明瞭さに感嘆した様子であった。
『左翼接触!』
 その報告とともにブリッジががくんと揺れた。ロウは目を瞑ってしまった。
『左舷熱量上昇! フィールド出力六十、五十、三十五、七――消失』
 音が消えた。この瞬間、ロウは目を開けるのを恐れた。



425機動新世界ガンダムDoll-DA 1-93:2010/06/25(金) 22:59:51 ID:???
 夜の帳が下りた。夜空を照らした白光は、終わってみれば寸刻の幻影のようにも思われた。光の行方は定かではない。
ビームはそれを安全な場所で見物する市民の目を楽しませると、二三の高層ビルの上層を焼き飛ばした後、市街地と工業地とを区切る壁を穿った。
生まれる前から抑圧され、生まれた直後にSEフィールドで形を歪められたビームは、己の役目を果たせなかった。
期待に背いた途端に見捨てられた。しかしもはや自由であった。
大気で完全に拡散してしまうまでの残り少ない時間を目一杯有意義に用いて、工業区のモロンでも焼いていることであろう。それがこのビームの本分であり、最高度の合目的性なのである。
ビームはその性質上土木工事にも廃棄物処理にも適さない。殺人用具としてのみ役に立つ。
資質と意欲は不一致でなくもないが、それは客観の第三者にしてみれば一主観の迷妄に過ぎない。こういった不一致をあからさまにすることは不健全で非文化的な精神の把持を白状するのと道義である。
 ビームの破壊目標が移転した一方、ガンダムドルダは前腕を交差させた姿勢で硬直していた。純白の装甲は漆黒と化していた。
装甲の節々の奥まったところが白く滲んでいることから、その変色が熱のためであることが察せられた。いかにも丸焼けという感じであった。
全身から立ち上る煙が微風で揺らいだ。ガンダムはアサルトフィールドの光を浴びたモロンのように、形だけ留めていないとも限らなかった。
パイロットも沸騰して破裂して蒸発しているかもしれなかった。
 アメタペイストがキロプティーランスを構え直すのと時を同じくして、ガンダムドルダは動き出した。
黒光りする両腕が関節の軋む音を立てて下ろされた。ガンダムの顔が上がり、双眼が瞬いた。
薄緑ではなく、真紅の光であった。「おれは怒ったぞ」とも、「姉ちゃんもう堪忍して」とも受け取れた。
426機動新世界ガンダムDoll-DA 1-94:2010/06/25(金) 23:02:06 ID:???
 ナギ・ヴァニミィもまた、眩んでいた目を見開いた。彼女の眼光は敵意一点張りである。生ぬるい感触がこめかみから頬に伝い下りた。
全身がじっとり湿り気を帯び、彼女には饐えて感じられる臭いがコックピットに充満していた。下着の引きつる心地がした。背中の金具の部分に汗疹が出来そうであった。
最後のに関しては自身の見得も遠因であるが、ナギはこれら不快の責めの一切を、無闇に熱いビームを放ったアメタペイストに帰した。
あのMSのビームのせいでシャワーを浴びねばならなくなった。そもそもあのMSは、MSのくせにドレスなんぞを着て生意気である。
あんなふりふりしたスカートは、人間様の自分でさえ穿けた機会がない。人形は人形らしく、怪獣の相方をして首でももげればいいのである。
「モーションフィールド、セット」
 ガンダムドルダが空間を踏みしめる。装甲の隙間から漏れた緑光が、波紋に乗って四散する。
左足を前に出したレの字になる位置に足が置かれ、背筋は真っ直ぐ、軽く握った拳が構えられた。
アメタペイストのSE反応は微弱であった。頑張り過ぎて息切れをしているのであろう。第三射を放つにはもう暫しの時間がかかる。
こちらに飛び道具が無いのを見抜いているのか、撃てない武器を悠然と向けている。
如何な挙動をされようと即座に対処し得るという自負もあろう。移動するでもなく、ガンダムドルダと同じように一定の座標に静止している。
ナギは大きく息を吸った。画面が白兵戦モードに切り替わり、ディズンのそれと同じカーソルがアメタペイストに重なった。
アメタペイストがこの間合いに安全を感じていようがいまいが、ナギにはどうでもいい。うちはうち、よそはよそである。
「必殺!」
 この間合いはガンダムドルダにとって一足の間合いであった。
 制御が不安定なこともあってガンダムドルダの加速で生じた空間の歪みは、アメタペイストの加速のように透明な蛇腹を作らなかった。
それは残像を生じさせた。無数の残像であった。縦一列に、何千体ものガンダムドルダが並んで見えた。
写真に写せば、拳を繰り出さんとするガンダムドルダの動作がひと齣ひと齣確かめられたろう。映像で見ると気味の悪い光景である。
427機動新世界ガンダムDoll-DA 1-95:2010/06/25(金) 23:03:58 ID:???
 アメタペイストが咄嗟にキロプティーランスを手放して、両手をスカートに突っ込んだ。ドルダの奇抜な挙動に慄いたのでは無論ない。
ガータースティレットが手のひらに吸い寄せられて刀身のビーム発生器が起動する。が、それよりも一拍先にナギの叫びが木霊した。
「ドルダ――」
 ドルダの足が空を蹴る。足元からの力が足首、膝、股、腰、腹、胸、首、肩、肘、手首と伝わる毎に増幅されて行く、全身の関節を用いた一撃である。
以前に解放戦線のメカニックたちが酔狂で製作し、ティハターンで試したところ財政を圧迫する結果に終わった動作プログラムがこれに転用されていた。
空中分解しなかった躯体がプログラムを忠実に実行する。振り降ろされんとする拳にSEフィールドが集約される。
大気の影響を直に蒙って、頭の角がぽきりと折れる。内的SEフィールドの作用でその部分だけ異常な硬度を持つに至り、ドルダの右手が光って唸る。
「――パンチ!」
 それは音の壁を越えた衝撃によるものか、首の骨格の砕けたことによるものか、判別するのは難しい。町中に反響する凄まじい音であった。
ガンダムドルダの繰り出した一撃はアメタペイストのSEフィールドを容易く貫き、その繊細そうな横っ面に打ち込まれた。
アメタペイストは殴り飛ばされた。ぐるんぐるんと独楽回りして飛んで行った。その形状からして慣性モーメントの大きいのは一目に察せられる。
なまじ姿勢制御を試みているために、ゆっくりと蛇行した軌道を描く。いわば殺虫剤を浴びた羽虫の類である。
 勝てる、とナギは思った。ドルダの全身に内的SEフィールドが再び染み渡った。ドルダの機動力ならアメタペイストに追いつける。
ナギは殆ど無我夢中でアームレイカーを動かした。今追撃すれば、確実に落せるのである。
ナギの高まった動体視力は、アメタペイストの肩の『Doll-A07』という文字をはっきり見分けていた。
Dollタイプは管理局の象徴である。解放戦線にとっては仲間の仇である。
そしてナチュラルにとっては、過去の大戦で文明を踏みにじり、人は籠の鳥に過ぎなかったという醜悪な世界観を齎し、
人類という総体であったところの観念をしてナチュラルという一種族に凋落せしめた機械仕掛けの神である。
428機動新世界ガンダムDoll-DA 1-96:2010/06/25(金) 23:06:19 ID:???
「人形なんかに、人間は負けない!」
 狙いは勘で間に合わせる。随時修正してもいい。ガンダムドルダが左、右、左、の順で三度腕を突き出し、四度目に両拳を打ち合わせる。
そのまま全身を大の字に広げて宙返りして、手足を縮こめた。四肢それぞれから独立に発せられたSEフィールドが共振し、より強い、より安定した斥力場が構築される。
そして左足と左腕が曲げられ、右足と右腕が伸ばされた。手足の先端は全て目標に向いている。
ロックオンカーソルが、堕ちて行くアメタペイストを捉える。止めを刺す下準備が整った。
ガンダムドルダが竜巻のように回転しつつ後退し、再び先ほどの構えをとる。助走である。あとは加速を待つばかりである。
もはや叫ぶのにためらいは無かった。
「究極! ドルダ・キーッ――え?」
 いきなり真正面の画面にシステムエラーの表記が出た。あまりにでかでかと出たので、アメタペイストの姿も隠れてしまった。
「ちょっと、どうしたのよ!」
 アームレイカーの手応えが消えた。フィードバックが無くなったのである。
「ふざけるんじゃ――」
 機体パラメータを呼び出すと、ガンダムドルダを模したホログラムの関節部分が真っ赤になっている。
「――ないっ、て、嘘……」
 どうにか修正するべくコンソールを弄った途端、今度は別なエラーの表記が出て、勝手に新たなプログラムが起動する。
そのプログラムでもエラーが出て、それからまた新たなプログラムというふうに連鎖して行き、瞬く間にコックピットはエラーの赤文字で埋まってしまった。
「この、止まりなさいよ! 止まりなさいって言ってるでしょ!」
 ナギは腰に寒気が走るのを感じた。慣性制御が利いていない。
ガンダムドルダがナギの怒声を、字義通り受け取ってしまったのかもしれなかった。
「嘘、嘘よね、嘘なのよね」
 体がふわりと浮き上がる。赤色灯で照らしたように赤く染まったコックピットに、ナギの悲鳴が響いた。
きゃあという悲鳴であった。



429機動新世界ガンダムDoll-DA 1-97:2010/06/25(金) 23:07:14 ID:???
 三機の編隊を組んだ輸送機が、殆ど三機同時に速度を上げる。
この輸送機らはヴェスタのセンサーに捉えられた後、今の今まで戦いを遠巻きに眺めていた。
輸送機の大振りの翼には、MSが四機ずつぶら下がっている。合計で十二機のMOSタイプMSである。
フライトユニットを装備しているのもあれば、地上用のキャタピラシューズを穿いているのもある。
『GUNDAM・DAICHI・NI・OTSU』
『コード確認。作戦を第三段階に移行。降下地点、自然公園区域』
 暗号通信を受け、輸送指揮官のモロンが命令を取り次いだ。MOSタイプMSの単眼が次々に点った。
輸送機が自然公園の上空に差し掛かるとパイロットのアーミー・モロンたちは、
『イキマース』
『イキマース』
『イキマース』
『イキマース』
そう順々に音声を発して降下した。
 フライトユニットの有無にかかわらず、十二機のMOSタイプMSはそれぞれの降下地点で軟着陸した。
ある機体は広場の真ん中に着陸し、ある機体は木の繁ったところに着陸した。
店舗を下敷きにする機体や、偶々に事の最中であったコーディネイターを踏みつけた機体、五点接地転回法で着地する機体もいた。
いずれにしても目立つことには変わりない。
430機動新世界ガンダムDoll-DA 1-98.5:2010/06/25(金) 23:08:21 ID:???
自然公園に居合わせたコーディネイターたちは当惑した。
彼らはこの日何かの行事があるという話は聞いていなかった。噂すら聞かれなかった。
物見高いコーディネイターたちが、見慣れない首なしMSのそばに押しかけた。首なしMSは膝を屈めて硬直していた。
女性コーディネイターが首なしMSの装甲に恐る恐る触れてみて、さっと手を引込めた。
男性コーディネイターが笑いながら装甲を蹴りつけた。二三の少年が、胸の単眼を狙って石ころを投げた。
粗大ごみの発生を検知した黒子モロンがMSの足首に取っ組み合いを挑んだ。
そうして、恋人にカメラを持たせた男が、MSの腕を伝ってよじ登ろうとしかけたときであった。
どすんという音がした。首なしMSの背負ったコンテナが、いきなり地面に落ちたのである。
「こいつ、動くぞ」と誰かが言った。事実、首なしMSの本体も鷹揚に動き出した。コーディネイターたちは大いにはしゃいだ。
431機動新世界ガンダムDoll-DA 1-99:2010/06/25(金) 23:11:52 ID:???
「すごい!」
「ダサい!」
 絶えず刺激を求めるコーディネイターにとって、見たことの無いMSというのはいい見世物である。
「ディズンより、ださーい」
 そう自分の恋人に言われた男性などは、胸中にほんの少しばかりの残念を感じた。
ナチュラル的な物言いでは、寝取られたというような気持ちである。彼はディズンの旧式を愛用し、そこに自分の個性を見出していたのである。
 極一部のコーディネイターの微妙な心境に関係なく、落ちたコンテナの蓋が開き、その中身があらわにされる。
ぎゅうぎゅうの鮨詰めで収納された無数のアーミー・モロンである。コーディネイターたちはぎょっとして首なしMSから離れた。
彼らにとりアーミー・モロンは、工場見学くらいでしか見る機会のないモロンである。その大柄な体躯に気後れしてしまうのも無理はない。
モロンの全ての能力は、コーディネイターに劣るよう調整されている。主人が召使に劣るのは、絶対にあり得ないからである。
しかしアーミー・モロンは見るからに逞しく思われる見た目をしている。霊長の所以たる知性についてはともかくも、体力では勝るとも劣らないとも限らない。
 アーミー・モロンたちは押し合うことなくコンテナを出ると、首なしMSの股をくぐってその前に整列した。
背の低いモロンが一番遅れてコンテナを出た。コマンダー・モロンである。
それは眉間に皺を寄せ、顎を無理にしゃくれさせていた。コマンダー・モロンは列の前に立って金切り声を出した。
「提げ銃! 立て銃! 担え銃! 着け剣! 捧げ銃!」
 アーミー・モロン全員が声に合わせて小銃を動かした。めりはりの利いた動作であった。
それはほんの短かったが、これほどまでに一糸乱れぬモロンの踊りはそうそう見られるものではない。
コーディネイターたちは感心の声を上げた。そして拍手が沸き起こった。
コーディネイターの体には、兎にも角にも即時に大げさな喜びを表現する癖が染み付いている。加うるに彼らはアーミー・モロンの持つ道具の用途を知っていない。
コマンダー・モロンは喝采に応えるように続けた。
「弾をこめ!」
 アーミー・モロンが小銃に弾倉を装填する。
432機動新世界ガンダムDoll-DA 1-99:2010/06/25(金) 23:12:49 ID:???
「戦闘レベル! ターゲット確認!」とコマンダー・モロンが叫び、
これまで黙していたアーミー・モロンが『戦闘レベル! ターゲット確認!』と合唱した。
「Dモード、起動!」
『Dモード、起動!』
「でっでっでっでっでっでっ……」
『でっでっでっでっでっでっ……』
 アーミー・モロンの声が律動する。いつの間にかコマンダー・モロンの声もその律動に重なっている。
この歌の後には何を見せてくれるのかという期待に、コーディネイターたちの顔が綻んだ。
筒の尖端はコーディネイター一人一人に向けられてある。たぶん風変わりなクラッカーか何かの類であろう。でっでっでっ、の声が次第に大きくなって行く。
「でっでっでっでっでっでっ……」
『でっでっでっでっでっでっ……』
 アーミー・モロンの顔が一斉に笑みの形に歪んだ。よく見れば足と胴体の境目が、不自然な形に隆起している。
外なる男性が動乱を起こし、内なる力によって不細工に突き立ったのは明らかであった。
「――デストローイ!」
 無数の光が瞬いて、何かの弾ける音がした。弾丸が風を切り、無数の絶叫がその音を掻き消した。殺戮が始まった。

433通常の名無しさんの3倍:2010/06/25(金) 23:18:04 ID:???
第一話Bパート終了。次のCパートで第一話完結となります。
ひとまず以上です。
434通常の名無しさんの3倍:2010/06/27(日) 23:10:44 ID:???
連投になりますが邪気眼ドルダ投下します。
435機動新世界ガンダムDoll-DA 1-100:2010/06/27(日) 23:12:21 ID:???
 アメタペイストは制御を無くして住宅街に墜落した。小ぢんまりした一軒家の立ち並ぶ、成人コーディネイター用の区画である。
強打された頬はべっこり凹んで、バイザーの罅割れから光が漏れていた。
首のほうは見るに忍びない様子であった。文字通り首皮一枚で、ちょいと引っ張ってやればむしり取れそうである。
その断裂箇所からは発光性の液体が流れ出ていた。蓋しDollタイプMSに特有の発光は、人間でいう血色のようなものなのであろう。
 ザリーがシンシアと呼んだ少女も、アメタペイストを真似たような有様であった。
外傷らしきものは見られないけれども、大口を開けて明後日の方向を向いている。痰を吐くような音を、喉が微かに鳴らしている。
現実に首を骨折しているのではあるまいが、首筋の血管が過剰に浮き出ているのを見るに、あまり健全な状態であるとも思われない。
 アメタペイストの体は家屋二棟を全壊させて、一棟を半壊させた。半壊のほうは寝室の壁が崩壊して、その中に居合わせたコーディネイターの男女が夜気に晒された。
ちょうど裸体でいた折であり、二人はひどくうろたえた。女性はシーツで胸元を隠し、男性は寝台に温い染みを作った。いずれも防寒のためかもしれない。
二人は声を上げることすらしなかった。ここはMS飛行禁止区域である。しかも落ちてきたMSは見たこともない機種である。ここは腰を据えて対処せねばなるまい。
『CPU過負荷。フィードバック一部切断。自動修復開始』
 コックピットの人工音声がそう言うと、アメタペイストの腕が動き出した。瓦礫を落しながら持ち上がり、自身の頭を鷲づかみにした。
そして具合を調べるようにちょっと揺らしてから、ほとんど力任せに頭を正面に向けた。骨の砕けるような音が辺りに響いた。
同時に、シンシアの顔もぐるんと正面を向いた。白い髪が舞い上がって額に被さった。
『フィールドパイプ構築。流体ナノマシン、経路安定』
 発光液の流出が止んだ。
『応急処置完了。神経電位接続更新』
 シンシアの体が震えた。再接続の反動によるものか、目から透明な体液がひとすじ垂れた。
シンシアが瞬きした。乱れた髪から覗く目は、ひどく充血していた。機体パラメータのウインドウが明滅して、開いた瞳孔を照らした。
墜落の際に取り落としたガータースティレットが手元に引き寄せられる。
436機動新世界ガンダムDoll-DA 1-101:2010/06/27(日) 23:14:08 ID:???
『戦闘再開。ガータースティレット、ビームサーベルモード起動』
 息を呑んでアメタペイストの一挙一動を窺っていた男女が熱気に当てられて怯えた声を出した。
光の棒に触れた瓦礫が、一瞬にして消失したのである。何かの間違いで光の棒がこちらに向けられたら、自分たちも瓦礫と同じ目に遭ってしまうに違いない。
『エランバイタル超過。戦闘中止』
 光の棒が消えた。二人の男女はほっとした。
『拒否。戦闘続行』
 またもや光の棒が出た。二人の男女はびくっとした。
『戦闘中止』
とアメタペイストの人工音声が命令すると、
『拒否』
と、同じ人工音声が返答し、光の棒は出たり引込んだりを繰り返し、その都度二人の男女の心臓に負担を与えた。
『中止――拒否――中止――拒否』
 シンシアの目つきは人工音声に応じて変転した。ほんの少しであるが『拒否』のときには細めている。それに合わせてアメタペイストのバイザーも点滅する。
『中止――拒否――中止――拒否――戦闘中止――拒否、戦闘続行――拒否――拒否を拒否、戦闘続行――
拒否の拒否を拒否、戦闘中止――拒否の拒否の拒否を拒否、戦闘続行――
拒否の拒否の拒否の拒否の拒否を拒否――拒否の拒否の拒否の拒否の拒否の拒否を拒否、戦闘……中止?』
 シンシアが首を傾げた。アメタペイストの自己判断に引っ掛かるところがあったのかもわからない。
けれどもこの自己判断は、指令部やリグ・ヴェーダからの命令にも増して優先せねばならなかった。
『肯定。Doll-A07、戦闘中止。撤退開始』
 アメタペイストは立ち上がり、そそくさとガータースティレットをスカートに仕舞うと、静かに飛び立った。
 MSが去って二人の男女はひと息ついた。女性が今起きた出来事を信じかねるような顔を浮かべた。
男性が何か威勢のいいことを言おうとすると、天井に亀裂のあるのが目に止まった。
軋む音と折れる音が連続して聞こえ、間もなく二人は屋根に押し潰された。


437機動新世界ガンダムDoll-DA 1-102:2010/06/27(日) 23:15:28 ID:???
 アーミー・モロンたちはMOSタイプMSに群がるコーディネイターたちを片すと、コマンダー・モロンの号令で散開した。
「でっでっでっでっ」の掛け声に合わせた足拍子で進んで行った。銃剣の切っ先とベルト下部の突起の尖端とは、進行方向に向けられてあった。
喚起に沸き立つ顔面とズボンが窮屈そうなのさえ見なければ、威風堂々たる雄姿である。
 この成り行きを離れて見ていたコーディネイターが、何やら喚いて駆け出した。日頃スポーツで慣らした甲斐も無く、腕を滅茶苦茶に振り回して、徒競走に適しない駆け方であった。
一体のアーミー・モロンが「デストローイ!」と叫んで引き金を絞った。三発の弾丸がひと息に発射された。三発とも命中した。
背中に二発、後頭部に一発である。コーディネイターは着弾の瞬間に身を震わせるとうつ伏せに倒れ込んだ。
赤い雫が芝生に散った。頭の穴から流れ出るものが地面に染みて行った。開け放しの口に押し入る芝草は、多かれ少なかれ塩気付いている。
「でっでっでっでっでっでいぅ……」
 別のアーミー・モロンが、ベンチの裏にへたり込んでいる女性コーディネイターを発見した。
アーミー・モロンの眼差しに射竦められて、彼女はひぃと声を上げた。子供の大泣きする直前に出す空気漏れのような声が出掛かると、
「デストローイ!」とアーミー・モロンの銃剣がお腹に突き刺さった。彼女の目が海老みたいに飛び出した。
「デストローイ! デストローイ! デストローイ! でででデストローイ!」
 アーミー・モロンは三度銃剣を抜き差しし、四度目で彼女のお腹をかき回した。
438機動新世界ガンダムDoll-DA 1-103:2010/06/27(日) 23:17:19 ID:???
 MOSタイプMSもアーミー・モロンの活躍を黙って見ていたわけではない。
武装は対MS用のため使用を控えねばなるまいが、その巨躯自体は如何様にも有効活用できるのである。
逃げ惑う人々を、キャタピラシューズを穿いたMOS-Hヒューブリスが追いかけた。
コーディネイターがMS運転免許取得の際、絶対にしちゃいけませんと教えられる行為である。
近付いて来るきゅるきゅるという音から人々は必死になって逃れようとするが、如何にヒューブリスの動作が鈍重に見えるとはいえ、MSの大きさは人間の十倍もある。
躓きかけたと思えば下半身がぺしゃんこになっている。振向けばキャタピラが眼前に見えたきり真っ暗になる。
ヒューブリスは片足の下にコーディネイターを敷いたまま、もう片足のキャタピラだけを動かして旋回を繰り返し、改めて走り出した。
無残に踏みしだかれた芝生の跡には染みが出来、次に追いかけた人々の衣服にもその最中、キャタピラから散った汚物が似たような染みを作った。
 MOS-Bビアーの仕方はもすこし手短であった。幾人か一緒に逃げているのを見つけると跳躍してその上に着地し、激しく足踏みをするだけである。
こんな大雑把な仕方ではとり逃がしが懸念されるが、実際に逃げおおせるのは十人に一人あるかないかであった。
殆どのコーディネイターは、腰を抜かして動けなくなってしまうのである。
 中には手向かう者もいた。黒子モロンである。
彼らはコーディネイターの目が機能しなくなるや否やアーミー・モロンとコーディネイターの残骸とを片しにかかった。
彼らの目には兵隊も兵器も粗大ゴミ以外の何ものでもない。自然公園をこんなに汚されてしまっては、たまったものではないのである。
「デスデストローイ!」と両手に二挺の小銃を持ち、それをコーディネイターに向けて乱射しているアーミー・モロンに、一体の黒子モロンが背後から忍び寄り、背伸びしてその首根っこを掴んだ。
そして森の中に引き摺って行こうとすると、そのアーミー・モロンが小銃から手を放し、「ででっでいぅ!」と腰のナイフを抜いて背後の黒子モロンのわき腹を突き刺した。
握力の弱まったのを見計らい拘束を振り払うと、「ででんっでっででん、ででんっでっでデストローイ!」と黒子モロンの体を滅多刺しにした。
439機動新世界ガンダムDoll-DA 1-104:2010/06/27(日) 23:18:41 ID:???
「デストローイ!」のスローガンと共に、所属不明のアーミー・モロンとMOSタイプMSの部隊は、
地上に蠢くものらを撃って動けなくしたり、鋤を使うように人体をかき回したり、人間の部品を地面に擦り込んだり、それを踏み固めたりした。
彼らは一致団結して、味も素気も無い自然公園の土壌を血によって肥沃なものにした。
大規模な凶作ないし不況の折に選ばれる伝統的農地改良法である。
 アーミー・モロンたちの男性が主張しているのを見て、
〈いよいよ事態がややこしくなってきた〉とポストは思った。彼らがDモードと呼ばれる原則で行動しているのは明らかである。
〈リグ・ヴェーダは、このような沙汰を望むまでになっているということか〉
 ポストたち人間でなくては出来ない所業である。コンピュータならば、もっと効率のよいやり方をする。
人間性を引き出さない限り、アーミー・モロンだってそうである。
440機動新世界ガンダムDoll-DA 1-105:2010/06/27(日) 23:21:00 ID:???
 性交渉と人殺しとに密接な繋がりがあることは、古くから云われている――ところでこの点に関しては、
化粧した猿と揶揄される近代的種族のように一つの形式を恥じることなく自由に論じて他の形式のものについて沈黙するという態度でいてはなるまい。
文明開化せられた人民の間では、所謂アミ・コションが広く行われている。
つまり、それは公共的コミュニケーション手段なのであり、侵すべからざる権利なのであり、むしろ義務であるとも云い得るのである――
運か金かコネが足りなくば殺人犯となる不幸な人々は、相手が異性でこちらにこれといった目的の無い場合、相手を安楽にする前に激しい性欲的嫌がらせをするのが常である。
人間社会に無くてはならぬものとされているビジネスチャンスの領域に目を向ければ、その関連はいっそうわかりやすくなる。
兵隊さんは囚人と同じくある方面の語彙が豊富である。彼らの隠語の一つ一つは機知に富んでいる。凄いのになると実践の経験が豊富なのもいる。
誰かが凱旋式に乱入して、生きている兵隊さんと死んでいる兵隊さんとを侮辱する歌謡を晴れやかな良心でもって流すこともあるけれども、
彼らとてその社会的革命的合法的闘争の際には、所有否定を名目に交易自由化の運動を繁殖衝動の方面に向けることもなくはない。
通俗心理学の本には刃物や銃器はXY染色体の象徴であり、その攻撃目標も催情的な粘膜部位に喩えられると書いてある。
棒状の物、例えばペンなどもそれで書かれるものの影響を踏まえればこの隠喩に当てはまる。ペンは剣よりも強し、剣は目の前の人間を殺すに過ぎない。
ついでに述べておくと、行為の折に暴力的な器具を用いたり、叩いたり引っかいたり絞めたり切りつけたりすることで官能の増大を図るというのは、
健全を標榜するコーディネイターを除けば、一般的に行われ、市民権を得ている嗜好であるらしい。
441機動新世界ガンダムDoll-DA 1-106:2010/06/27(日) 23:22:35 ID:???
 これら暴力と性欲的衝動との関連には、様々な心理的・哲学学的・神秘的解釈が為されている。
一元論的にはあらゆる衝動が、自己保存の本能に帰していたり、粘膜作用に還元出来なくもなかったり、
盲目的な権力感情で説明することも出来たり、高次の義務感情の暴発であったり、
人格完成上の欠くべからざる形式として高められた社会感情に伴う陶酔であったり、神のお気にめす肉体の結合であったり、
そもそも人間なるものは具体化された性欲であったりと、いずれも理性的に納得の行く解釈であるが、技術利用だけを目的とするならば何であろうと変わりない。
生き物が何であるかを知らなくたって、使ったり殺したりするに支障はないのである。
 モロン生産技術において、去勢や生殖機能の弱化乃至調整は重要な要素である。
コーディネイターの立場で云うと、犬羊狗馬の類の催す姿を見るのは不快なことであるし、それにつき合わされるのはもっと不快なことである。
例えば清掃モロンなどはコーディネイターと接する機会が多いので、雄雌ともに外科的措置で性的不能にされている。
初めから中性に作らないのは、その衝動で足し引き勘定が成り立たないためである。
彼らは総じて大人しい。飯を食えと誰かに命じられなければ、餓死してしまうくらいに大人しい。
同じくコーディネイターに身近な小間使いモロンのほうは、繁殖能力を無くした以外は手付かずである。
これには正常なコーディネイターにとって卑しむべき事柄が関連しているが、ともあれ小間使いモロンにはある程度の万能が求められているのである。
コーディネイターとあまり接しない工業モロンに於いては、割礼と呼ばれる宗教的行事を想像すればよい。
コーディネイターやナチュラルから見れば禁欲の強制としか思われない措置である。
彼ら工業モロンにも性欲的快楽に類するものが残されていて、それらは労働の際微かに刺激されるよう仕組まれてある。
極言すれば、彼らは皆ドン・キホーテ的愛を日常としているのである。生殖器を直接に用いる必要の無いモロンについては以上である。
442機動新世界ガンダムDoll-DA 1-107:2010/06/27(日) 23:24:06 ID:???
 こうなると当然、モロンにも性欲的欲求解消の措置が必要となってくる。人は口腹のみにて生くるものにあらず、愛の口より出ずる快楽によりて生く。
しかし決して自由な交合を認めてはいけないのは、ナチュラルのする異性交遊を鑑みれば分かることである。
体液交換どころか分泌液ないし汚物の崇拝をも可能にするほどに熾烈な感激、望みが達せられぬことを悟ったときの傷心と屈辱、
もろもろの執着が原因で生じるおびただしい理不尽、人間がいつか死ぬのと同じくらいの確率で訪れる幻滅、結婚、
英雄色を好むとあるのに女傑尻が軽いと云われない不平等に向ける抗議の声、意外に事例の多い婚前同棲解消後の手切れ金支払い、
意図して減少せしめられた避妊成功率と破産後に知る堕胎費用の相場、異父兄弟の双子、
多額の横領の発覚した折に叫ばれる「女を探せ!」の声、十代の若者の「好きだ……」と言うときの愚劣きわまる顔つき、
トムが金策の不振で沈んでいるとナンシーがきまってする「トムは恋をしているのよ!」という断言、
「怒ってんの?」「別に怒ってないわよ」「いや、怒ってんじゃん」「怒ってないって言ってるでしょ!」というやり取り、結婚、
ひっきりなしに届けられる差出人不明の長文メール、町を歩くと感じる誰かの視線、
回収車はまだ来ていないのに消えている自分の捨てたゴミ袋、アパートのドアノブにぶら下げてあるやたら長い手編みのマフラー、
一人暮らしをしていたはずなのに支度されている夕食、錆びた味のするケチャップと整頓された自室、
減っている寝台下の書物となぜか増えている洗面所の歯ブラシ、ひとまず落ち着こうと飲み物を口にした途端に薄らいでいく意識、
知らぬ間に裸になっていてその隣ですうすう寝息を立てるどこかで見たような人、過失であるか責任であるか強姦であるかとこちらに有利なところの無い問答、
そして結婚、と、このように多大な心理的・経済的負担は偉大なる事業への推進剤とならなくもないが、モロンに求められているのは凡庸さである。
443機動新世界ガンダムDoll-DA 1-107:2010/06/27(日) 23:31:02 ID:???
ごめんなさい投下ミスです。
>>441
>>443
>>442
の順でお願いします。

 セミ・モロンやイェニチェリー・モロンは特殊なのでここでは説明を省くが、
食肉用や搾乳用の食用モロン、コマーシャル・モロン、アナウンス・モロン、そしてアーミー・モロンなどは、肉体より情操のほうに重きを置いて欲求を調整されている。
食用モロンをある程度自然のままに育てたほうがいいのは、畜産家の手法から察せられる。
コマーシャル・モロンやアナウンス・モロンはというと、コーディネイターほどでないが端麗な容姿や声を保たねばならない。
子宮を摘出してしまっては髭が生えたり声変わりしたりするし、没薬の袋なるものを引きちぎってしまうと少年コーディネイターのように女々しくなる。
アーミー・モロンについては、暴力を事とする以上性欲の減退は致命的である。

444機動新世界ガンダムDoll-DA 1-109:2010/06/27(日) 23:38:41 ID:???
 ここで有効活用されるのが、芸術である。
賃借対照的人生観を適用すれば、モロンの人生の内容なるものはまず願望と希望、次に努力と競争、第三は不思議なことに失望と苦痛であり、
それら三つの状態が、肉体の燐に還元せられるか食肉と化すかまで延々と繰り返されるに過ぎず、結局のところ長生きするほど割に合わぬということになる。
工業の人道化以来労苦という語は労働という語にすり替わったが、
翼はないが魂のあるらしい動物に労働の本来的に内包する喜びという新興概念を確信させるには、その手を漂白してやるか、さもなくばパンに対するサーカスを与えねばなるまい。
サーカスを見ながら食べるパンほど真実においしいものはないし、パンを食べながら見るサーカスほど真実におもしろいものはない。
モロンは社会動物である。アーミー・モロンはその最たるものである。
これらにとり芸術は、ナチュラルやコーディネイターのように一時の気晴らしや世界肯定乃至世界否定の手段乃至目的であってはならない。
ここは芸術をして社会という機械全体のきちんとした一つの構成部分たらしめ、
モロンを団結させ、モロンを啓発し、モロンが一心同体となってコーディネイターに奉仕するのを助けさせるより他はない。この目的に合致する最も安易な芸術は映画である。
一つの施設で一度に多数のモロンになるべく一様な影響を与えるに、映像芸術ほど優れたものはない。
ある方面で洗練された類の映画には、言語力も想像力も要せず、ただ見るだけで心を楽しませることが可能である。性欲的欲求の昇華にもうってつけである。
 モロン慰安映画には様々な作品があり、そこには所謂ブルーフィルムもかなりの割合で含まれている。
そしてめいめい無軌道な自己愛によって自己の濫費を果たせるよう、映画館の座席には性別ごとに専用の器具が設けられている。
上映の終わった後、監督のモロンが座席を一つ一つ調べて回り、然るべき手順で使用した痕跡が見当たらなければ、その器具を使用していたモロンは再教育施設に送られる。
 モロンはその同胞やコーディネイターに対して性欲的感心を抱いてはならないので、映画の内容にも細心の注意を払わねばならない。
芸術作品で情欲を喚起させながらも、日常で禁欲者の如く振舞わせる。
これは一見矛盾しているかに思われるが、芸術の本質から云えば可能なことである。
445機動新世界ガンダムDoll-DA 1-110:2010/06/27(日) 23:40:24 ID:???
 太古のIT革命時代、ある種のディレッタンティズムが勃興した。それは黎明期にOTAKU文化とも、HENTAI文化とも呼ばれた。その系譜のみを見て分類するなら、宗教の分類に含んでも差し支えない。
その信者たち――便宜上、OTAKU、HENTAIと決め付けられた人々をそう呼称する――は、歴史上に現れた奇矯な哲学の信奉者や宗教家と同様、大声疾呼の権威により迫害された。
彼ら信者たちもやはり、哲学者や宗教家と同じく現世的なものを軽蔑していた。初代信者たちの思想がどのようなものであったかは、この時代では知る由も無い。
世間の批難するに足る理由があったということも、完全に間違いであるとはいえなかったろう。
宗教は時代ごとに装いを変える。啓蒙時代は云わば衣替えである。禁欲による超脱は薬物による夢遊と化し、隣人愛の神は功利主義者と解釈される。
今わかっているのは、信者たちはその当時に生まれた漫画やアニメーション、ビデオゲームといった娯楽媒体を神聖かつ不可侵な存在、
この世において永遠な神的なものというふうに――以下の解釈は極端に過ぎ、真実と異なっている可能性が極めて大きいが、
自分たちに近親関係のない歴史的物証を延べるに当たっての大げさな解釈は広く実践されている――定義し、それを崇拝したということである。
446機動新世界ガンダムDoll-DA 1-111:2010/06/27(日) 23:42:19 ID:???
彼らは虚構性の高い世界観を抱いていた。プラトンがイデアについて語るように、彼らはアニメーションの登場人物の美を讃えた。
狂えるソクラテスの役目は、漫画のステッカーを貼った自動車を乗り回す人々などが果たした。
パウロは無数にあった。地下礼拝者は更にあった。彼らは同胞を見つけると安心して、互いに饒舌になった。
踏み絵も行われた。それは主に趣味を持たない人々によって行われた。
殉教者もあった。私財を投げ打って崇拝対象に奉仕した者は、ある意味で敬愛の的となった。
結婚のため改宗せねばならなかった者もあったが、その結婚生活が原因で、哲学者になるが如く信仰生活にどっぷりつかることになった者もあった。
ビデオゲームに半生を費やした者は神学の衒学者のように、それをしない人間からは蔑まれ、それをする人間からは妬まれるか敬われるかした。
彼らの信仰は宗教上の道徳的教説に従うことと同様に、若年のうちはそれなりに褒められたが、成人したとなれば侮られた。
無論、勿体ぶって理解を示して見せる輩はたくさんあった。
そしてまた、ごく一部の――と思いたい――信徒たちは暗がりに潜んで、あちこち這い回りながら互いに悪態を付き合っていた。
447機動新世界ガンダムDoll-DA 1-112:2010/06/27(日) 23:49:56 ID:???
 モロンの映画の内容は普遍妥当的なブルーフィルムのものであるが、その形式は今述べた信者たちが歴史の中で培ってきたものを踏襲している。
眼球は顔面の三分の一を占めるまでに肥大化し、鼻はもはやくの字に過ぎず、鼻筋や皺といった猿との血縁を裏付ける特徴は排除され、顎は鋭く研ぎ澄まされ、笑うときには目を瞑る。
こうした写実的でない人々が登場するのである。
このアニメーション映画は、主題を官能や流血に限って感傷的な面に立ち入らなければ、現実の人間に対する感心を薄れさせることも出来る。
 ところで、人に人を殺させるのは難しい。たとえうまくやりおおせたとしても、当人がめげるか味を占めるかして使い物にならなくなる可能性が高い。
理想的な仕方はというと、銃を持たせ、目隠しと耳栓をし、相手を前に立たせ、まっすぐ撃てと命じ、死体を片付け、代わりに潰れたトマトを置き、目隠しと耳栓を外してやることである。
アーミー・モロンに施される表象結合教育はこの理想を実現した。彼らはトマトに向けて銃を撃つ。
そのトマトに足が生えていても、顔があっても魂があっても、たとえ殺傷能力があっても彼らは黙々とトマトを潰し続ける。
軍事はお金のかかるものである。トマトの一つや二つ、千ダースですら勿体無くは思われない。
ただ問題なのは、その作業に対して充分な意欲を喚起せしめられないことである。
448機動新世界ガンダムDoll-DA 1-113:2010/06/27(日) 23:53:27 ID:???
 意欲は教えられない、という原則は、浅ましからざる隣人愛についてはともかくも、他方では必ずしも当てはまらない。
奪われた人は同情されるが、儲け損ねた人は嘲弄される。
無事故無違反の報奨がろくすっぽ値打ちの無い紙切れにあらず違反切符と同額の金子であったなら、人は己の不注意を心底から恥じるようになる。徳行が官能で報いられれば昼の間は君子である。
信仰の法に勝るのはこの点であるとも云われる。法は鞭で脅すが、信仰は天国を約束する。
利己か利他かは問題にならない。わらしべよろしく無私が富をごくごく稀に産むことがあり、それと逆さまに利己が利他に帰結せられることもある。
こうした道義的解釈のおかげで、自称最高等生物は調教を受け付ける度合いにおいても卓越する。
その行為自体に限れば、利己心に助けられることによっていっそう少ない手数で調教され得るのである。
自己の内部に在ると仮定せられる反発感情が実際の行為になることは稀である。
枯葉は言う。「俺は決して、決して他に仕様がなくてひらひらするんじゃない。俺は重力にそそられる。空気抵抗にビンビンくる。
地面にシゴかれる瞬間は最高だ。カサッと来た途端にイッちまうんだ。つまり俺は俺の意志で、俺自身望んで落ちて行くのさ。
誰にも文句はいわせないし、いわれたって悔しくなんかない。だってそうだろ? これは俺の葉生で、俺には俺の決めた葉生を生きる権利がある。
好きなときに、自由に落ちるってのは一つの生き方だ。要するに、葉っぱ的態度なんだ」以上の教説が、モロンなる利他動物を基礎付けている。
449機動新世界ガンダムDoll-DA 1-113.5:2010/06/27(日) 23:54:48 ID:???
 アーミー・モロンはトマトを潰す。ただ潰す。単調である。退屈である。ここは何か、ちょっとしたご褒美でも欲しいところである。
そこで内なる声がささやく。「仕方あるまい。お前さんがトマトを潰せば、潰す毎に、お前さん好みの幻覚を見せてやろう」事実その通りになる。
アーミー・モロンの眼前で、走り書きの女体が描写される。これがDモードと呼ばれるものの正体である。
 Dモードのアーミー・モロンは己の本能に背くことなく、己の理性で認識し、己の意志で武器を使う。
 トマトが逃げて、アーミー・モロンはそれを撃つ。すると彼らのベアトリーチェがしどけない恰好で微笑む。
トマトの果汁が銃剣に絡みつくと、彼らのドゥルネーシアが声を裏返らせて苦しげな顔をする。
トマトの果肉が飛び散ると、彼らのグレーチヒェンが背中を引っ掻いて来る。アーミー・モロンの局部に痒痛が走る。
450機動新世界ガンダムDoll-DA 1-114:2010/06/27(日) 23:55:59 ID:???
 こういうトマト狩りが楽しくない筈はない。
アーミー・モロンたちは現実のトマトを駄目にすると同時に、白昼夢の女性をさんざん酷い目にあわせようと試みた。
彼らにとって逃惑うトマトは、ソロモンの云う水に飽くことを知らぬ地であった。
けれども驢馬が人参を追いかけるように、達しそうで達せないという理性動物を盲目的衝動に従わせる状態がいつまでも続くのである。
実地の行為で生理的に静めない限り満たされないままであるが、
コーディネイターの雌なんかは奥行きというどうしようもない欠陥――いわばゼノンの難問における彫刻と絵画との相違である。
現実の皮膚に向けられた拡大鏡は脂ぎった山脈を眼前に躍動せしめ、対するにアニメーションの人物は無限にきめ細かい肌を持つ――があるので、
彼らの空想の女性には敵わない。アラン・イディットなる少年に対し、ソクラテス的と名づけられる愛を抱く余地もない。
どのみちトマトはトマトである。



451機動新世界ガンダムDoll-DA 1-115:2010/06/27(日) 23:58:03 ID:???
 アランは情けない声を上げた。走っていてもう何度上げたかも分からない。
「デストローイ!」
の声が響くたびに「ひゃあっ」とか「ひぇっ」とか「ごめんなさいっ」といった涙声で反応するのである。
 首なしMSが自然公園に着陸したとき、アランもその場に居合わせた。
この首なしの奇妙なMSをハスハに見せれば、彼女に機嫌を直してはもらえまいが、ご機嫌伺いの意思を示すことは出来るであろう。
ついでに謝っておけば、疚しいことは何も無くなる。アランはふとそんなことを思い立って、元来た道を引き返した。
それで首なしMSから距離をとったことが、一時にせよアランの命を救った。自分はハスハが居なければ死んでいた。〈それは違う〉とアランは思った。
そもそもハスハが歩いて帰ろうなんて言い出さなければ、こんな目に遭うこともなかった。
「デストローイ!」
 耳の横を何かが掠めた。ぶうんっ、とはっきり聞き取れてしまった。
「銃、あれは銃という物なのか」
 全力で走っているというのに、頭の中に次々と言葉が浮かんでくる。
〈銃とは弾丸を発射する火器。大昔、主に戦争と呼ばれる競技で人間を殺すのに用いられた。初期のそれは――って〉
「喧しいよ!」
 学習装置が記憶の深層に刻み込んだ情報が、勝手に引き出されているのである。
自然に頭がぼうっとして、駆けるのも遅くなる。今の状況で学力は障害以外の何ものでもない。
「デスト――」
 また弾丸の掠める音が聞こえた気がし、
「――ローイ!」
 アランの前方を走る人の頭がはじけた。急なことで止まれなかった。
アランはその人を押し倒すような形で転びかけ、咄嗟にくるんと前廻りの受身を取って駆け続けた。
「今何か付いた! 何か付いたよ!」
 頬に生暖かいものが垂れている。拭うのが怖い。振向くのはもっと怖い。
452通常の名無しさんの3倍:2010/06/27(日) 23:59:28 ID:???
以上です。
453通常の名無しさんの3倍:2010/06/28(月) 19:54:15 ID:???
投下乙。
なんかもう、俺には天地がひっくり返っても真似できない文章だ……
OTAKUたちの遺産がこんな形で活きるとは。
454通常の名無しさんの3倍:2010/07/01(木) 06:19:51 ID:???
GJ!
SS職人が充実してきたのでもっと絵師も欲しいところだ

http://pig.oekakist.com/g_dollda/dat/IMG_000001.jpg
【型式番号】BL-Z18/G810
【機体名称】マーライダー
【武装】股間部ハイメガキャノン
    股間部バルカン×2
    脛部バルカン×2
【備考】・腕の中にワイヤーが仕込んであり、最大10mまで伸ばすことが可能。
    これで敵を捕獲すればゼロ距離で股間部ハイメガキャノンを発射出来る。
    ・股間部ハイメガキャノンは普段は短くて垂れ下っているが、使用する際に
    雄々しく高らかに上を向き、砲身も長くなる。サイドの球体はエネルギーを
    変換するとても重要な装置であり、これが破損するとハイメガキャノンは発射できない。
    何よりこの機体はハイメガキャノン頼りなので、破損すると同時にパイロットの心も折れてしまう場合もある。
    ・この機体に初めて搭乗するパイロットはハイメガキャノンの恐るべき破壊力に冷静さを失って例外なく連射してしまう。
    ハイメガキャノンは圧倒的なパワーを持つが、その分エネルギーの使用も激しいので、連射すると当然パワー切れになり
    動けないまま戦場では的になってしまう。その時のパイロットは例外なく全てを失ったような顔をしている。
455通常の名無しさんの3倍:2010/07/01(木) 21:04:44 ID:CWsdCRpJ
456通常の名無しさんの3倍:2010/07/02(金) 17:42:52 ID:???
>>454-455
ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃないか!
完成度たけーなオイ
457通常の名無しさんの3倍:2010/07/04(日) 20:11:21 ID:???
>>455
まさかのアニメ。
完成度たけぇなおい。
458通常の名無しさんの3倍:2010/07/07(水) 05:54:35 ID:???
「血の七夕事件」によって地球・コロニー間は本格的武力衝突へとハッテンした・・・
459名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 15:10:48 ID:???
>>454
どことなくコブラっぽいデザインだな
460通常の名無しさんの3倍:2010/07/15(木) 01:26:29 ID:???
お久しぶりです、新説ドルダ書いてた者です。
規制だったり色々で、かなり長期間投下出来なかったんですが、落ち着いたらまた投下しようかな、と思います。

まあなんかすげー完成度高い作品がたくさんある中で駄文を投下するのは気が引けるのですが……
では失礼します、皆さん本当に乙です。
461通常の名無しさんの3倍:2010/07/21(水) 20:05:19 ID:???
邪気眼ドルダ投下します。
462機動新世界ガンダムDoll-DA 1-116:2010/07/21(水) 20:08:25 ID:???
 ハスハと問答した広場に着いた。
アーミー・モロンの進行は遅く、アランを含むコーディネイターの一団はアーミー・モロンを撒いていたが、この広場の状況を見るに、生きて逃げられる可能性は無きに等しかった。
この展望台広場は園路の中継点で、交差点ではない。既にアーミー・モロンの暴れた痕跡のある以上、進んでも戻ってもアーミー・モロンに出くわすのである。
女性コーディネイターがへたり込んでめそめそと泣き出した。男性コーディネイターは口を覆って、今更にこみ上げて来た反吐を指の隙間からぶぴゅっと飛ばした。
恋人に「大丈夫、絶対、大丈夫だから」と言い聞かせながらも、自分のズボンに湯気を立てる男も居た。
広場には無数の亡骸がうち捨ててあった。銃弾による亡骸は割合きれいなものである。確実に息の根を止めるために、全員が全員頭を打ち抜かれている。
酷いのは銃剣やMSにやられた人間である。
展望台の手すりに前のめっている人は、背を散々に刺されるついでにわき腹を裂かれ、たぶん意味も無く引っ張り出されたのであろうが、荒縄を連想させるものをぶら下げている。
MSに踏まれたのはめったに面影を留めていない。誰のとも知らぬ腕が、草むらに転がっている。町の夜景は宝石箱のように煌びやかであった。
 アランは知らず知らずに銀髪の亡骸の無いのを確かめていた。そして見覚えのある黒子モロンを見つけた。
黒子モロンは茂みの傍で、後頭部を一発で仕留められてあった。黒子モロンの手には、体の半分ほどを噛み潰された小鳥の死骸があった。
大方、新鮮な夜食をくちゃくちゃしていたところをアーミー・モロンに片されたのであろう。
 アランは広場を見渡すと、はっと何か合点の行ったような気がして展望台の手すりに駆け寄った。
手すりの下は地肌がむき出しの崖である。夜間であるのに加え、木々に遮られているので高さはわからない。
しかしなんとなく空気の感覚からして、それほどの距離ではなかろうと感じられた。
〈こんなの理性的じゃない〉と自分でも思われたが、一緒に逃げてきた人々を振向けば、錯乱して「死にたくない死にたくない」とぶつぶつ繰り返している大人が居た。
今更自分が短絡をしたって後ろ指はさされるまい。アランはそんな回りくどい考えを巡らせた。それで自分を納得させると、独り言を言うように崖下の暗闇へ声をかけた。
463機動新世界ガンダムDoll-DA 1-117:2010/07/21(水) 20:10:06 ID:???
「は、ハスハ……」
 羞恥心がこみ上げて尻すぼみになる。
〈馬鹿馬鹿しい。やるんじゃなかった〉
 第一ハスハの亡骸が見当たらないのは、彼女がこの広場から逃げ出したからである。そしてその後彼女がどうなろうと、アランの知ったことではない。
理由もなしにハスハが崖下に居ると感じられてしまったのは、この異常な状況のせいである。今の自分は盲目的な直感に踊らされて、真っ当な思考が出来なくなっている。
〈錯乱の徴候、なのか?〉
 アランが不安になると、
「アラン……アラン……」
〈これは、良くない。非常に、良くない〉
 いよいよ幻聴が聞こえて来た。ハスハと別れた後もスメッグは使っていない。つまり純粋に心理的な変調である。
「アラン……アランよね。来てくれたのね、アラン」
〈聞こえないったら聞こえない〉
 そちらの仲間にしてもらうわけにはいかないのである。アランは目を瞑って「アーアー、聞こえない」と呟いた。
「アラン?」
「へ、ハスハ? 本当にハスハなのかい?」
「良かった。無事だったのね」
 立ち位置の上で無事を心配すべきはアランの方である。アランは自分の理性に侘びを入れながら手すりを跨いだ。
 崖の高さと勾配は、思いのほか結構なものであった。滑り降りたのは良いが、下に着く間際にはかなりの速度が出ていた。
尻餅を嫌い大げさに転がって衝撃を分散させなければ、どこか怪我をしていたかもわからない。
 崖下は薄暗い森である。アランは携帯端末のカメラライトを点けた。
 ハスハはすぐに見つかった。
「アランが来てくれた。ほんとうに来てくれた……そう……やっぱり、アランは私の……」
「酷い怪我だよ!」
 ハスハが何やら呟きかけたが、アランのして見せた仰天はそれを打ち消すに余りあった。
ハスハを見た途端にひやりとしたのは、流血のために違いないのである。
ハスハは右手を抱えて、木の幹を背凭れに座り込んでいた。袖じゅう赤く染まっていた。てらてらと艶のあるところが傷であろう。
ハスハは化粧をしない。ただでさえ白い顔が青ざめて、蝋人形めいて見えた。
痛みの峠は過ぎたのか、ハスハは目をそっと細めて、どうにか息を整えようと胸を上下させている。少女と付き合っていた頃の記憶が一瞬、アランの脳裏によぎった。
464機動新世界ガンダムDoll-DA 1-118:2010/07/21(水) 20:12:20 ID:???
「ハスハ、大丈夫?」
 大丈夫でないのは承知の上である。少女が「ええ」と返して、痛みに顔を引きつらせるのも決まりきったことである。
「足も挫いたんだね。その、ごめんよ。でも、止血が要るかもしれない」
 アランからしてみれば苦痛を与える前の断りであるが、ハスハはアランに触れられると不意を衝かれたような声を上げた。
 銃弾は腕を貫通したようであった。
「アランは、何でもできるのね」
 添え木に手ごろな枝を見つけて戻るとハスハが言った。
「僕はちゃんと勉強してるもの」
 軽い口ぶりで返しはしたものの、応急処置の仕方などハスハの怪我を見るまで意識に上ったことはない。
学習装置のおかげであるがハスハの眼差しを見ると、目玉の裏側がむずむずする心地がした。『あなたは知っていることさえ知らないでいる』少女の目がそう語っているようにも思われた。
 アランが自分の服ではなくハスハのスカートを引き裂いたのは、みみっちい物惜しみや無意識的な悪意の表出とばかりはいわれない。
アランは一応躊躇したのである。しかしロングスカートは動き辛く、手当ての布にそれを使えば一石二鳥である。どうせハスハらしく地味な安物なので、左程の損失でもあるまい。
スカートの思いがけない丈夫さに手こずりながら、アランは二つの打算のうちの一方をハスハに話して聞かせた。
465機動新世界ガンダムDoll-DA 1-119:2010/07/21(水) 20:13:37 ID:???
 ハスハのか細い声で、アランははたと気が付いた。コーディネイターは痛みに敏感である。うら若き少女ならば尚更である。
いっそ乙女という罵倒語で形容したい人間であっても、相手の痛みを思い遣るのは、コーディネイターのコーディネイターとしての義務である。
アランは俄に手を引込めて、自分のポケットを探った。
「止血のとき痛いからさ、痛み止め」
 嘘は付いていない。スメッグには痛み止めの副作用がある。しかし特有の臭いは誤魔化せないのか、ハスハは眉を顰めて首を振った。
ふるふるというよりぷいぷいという首振りである。いつもより強情さが増している。
「飲まなきゃ痛いんだよ」
「いや」
「ほら」
 アランは指で摘んだ錠剤を突き出した。
「いや、スメッグはいや」
「飲みなったら」
〈聞き分けの無い〉そう心中で毒づいて押し付けるが、少女は口を硬く閉ざし、無理に口に入れたところでぷっと吹き出してしまうであろう。
こんな根気比べが傷に響くのは当然である。
「この痛みは、私だけのもの。私だけの、本当の……」
 ぶり返した激痛に震えながら、ハスハがうわ言めいたことを言い出した。
大いに痛々しい姿であったけれども、本末転倒の結果は却ってアランを依怙地にした。
〈やりたくないけど、やるしかない〉アランは錠剤を口に含んだ。


466機動新世界ガンダムDoll-DA 1-120:2010/07/21(水) 20:16:29 ID:???


 ところで目糞の材料は宝石に喩えられるが、他の体液仲間はというと、殆ど卑しい比喩に用いられている。
涙川も一晩経てば鼈甲だのに、全くもって不当な評価である。ひどい差別である。たいへんな不平等である。まちがいなく反液主主義的である。
汗にも液権を、アンモニアに自由を、色で態度を変えられるのはもう我慢できない、香水なる外敵の侵攻しつつある今こそ我々は団結せねばならぬ。
体液たちは宿主の寝静まったとき、そんな愚痴を零している。こんな協議が夜な夜な続いた結果、そのうち具合の良い妥協案が見出される。
最下位の者以外は、ある場合に限りその詩的格付けの向上を許すこととする。ある場合とは、理性とか名乗るあの傲慢ちきな監視人の眠ったときである。
 貧しきものらは天国に上り、富めるものらの地獄で罰せられるのを見て楽しむ。それが約束である。御国がいよいよ近づいた。
涎女王はきらきら橋を渡しながら「さあさあ私を褒めて! 私はかわいい! 私はきれい!」などと早くも有頂天である。
その遥か下方に位置する連中は「ホルモンさん! ホルモンさーん! 早く早くぅ、早く来とくれぇっ!」「ばっかお前、俺が先だって言ってんだろ。そんなんじゃまた早死にしちまうぜ?」
「いいんだ。どうせ僕は、いつまでも仲間はずれなんだ」
「それはアンタが黄色くて臭くてしょっぱいからよ。まあ、あ、アタシの家来にしてやってもいいけど……か、勘違いしないでよね! アンタなんか別に何とも思ってないんだから!」と汗姫が一人合点して吹き上がる。
そこに「貴様ら! 何を騒いでいる!」と鶴の一声が響き渡り、しんと静まり返った。早寝遅起きのくせに、今日に限って目覚めていたのである。
声の主は全員をひとしきり睨み終えると、早速罵倒しようと「貴様らのような最下等の――」と言いかけるが、肝心の罵詈雑言が思い浮かばない。
貴様らはしょぼくれた何々と薄汚い何々をミキサーにかけて調理した挙句腐った何々をちりばめたとてつもない何々野郎だ、
というのが常套の形式であるが、その何々という材料が悉く当の叱咤する相手の名前なのである。
しかし暫く考えて素晴らしい悪口を思いついたらしく、学生をやり込めて得意がる老教師のような顔を浮かべた。「貴様らはまるで俺みたいな恥知らずだ!」皆一様にしゅんとなった。
467機動新世界ガンダムDoll-DA 1-121:2010/07/21(水) 20:18:38 ID:???


 相手の痛覚を省みずとも良くなり、聊か荒っぽい手当ては思い切りよく済ませることが出来た。少女の体はくたんとしていた。
慣れない感覚に圧倒されたのか、手当ての最中、少女は人形のようになすがままになっていた。
アランはハスハの顎に垂れた唾液をハンカチで拭った。
「ハスハ、終わったよ」
 アランが声をかけると、ハスハは目をぱちりと開けて微笑んだ。いやに赤く見える唇から含み笑いが漏れた。
どうもスメッグが効き過ぎたようである。
「歩ける……はずないか」
「ん、だっこ」
 アランの独り言にハスハが唇を突き出した。スメッグによる陶酔には同じ陶酔でもって対抗しない限り、受け答えしてはならないのが鉄則である。
今のアランは艶かしい気持ちなど微塵も持ち合わせないので、怪我人の運搬方法を考えるのに懸命であった。
担架の材料は無いし、そもそも人手が無いのである。
「誰か! 友達が怪我をしたんです!」
 崖の上に向けて大声に叫んだが、聞き耳を立てても人声は返ってこない。
ハスハの頼りない声があんなにはっきり聞き取れたのであるから、この大声は向こうにも必ず聞こえるはずである。
〈誰もいなくなってしまったの? それとも……いや、僕は正気なんだ〉
 アランはもう一度助けを呼んだ。すると微かに何かが聞こえた気がした。アランは安心して、
「こっちです! 下ですよ! 今怪我人が――」
『でっでっでっでっ……』
「……嘘だろ」
 もはや少女の体と自分の筋肉を労わってなどいられない。アランは右腕をハスハの背に回し、左腕を膝の下に差し入れた。
「ハスハ、肩に掴まって……違う、逆。そう、首に回すんだよ」
 少女の腕に力が篭ると、アランは立ち上がった。いわば半魚人持ちと呼ばれる横抱きである。
長距離の運搬に向かないが、手段をえり好みする余裕もない。
『でっでいう』
 崖から土くれが転がって来た。アランは歯を食い縛って駆け出した。OSの粗悪なMSのようにちょこちょこした足運びであった。
〈みっともないみっともない――なんてみっともない!〉
 命の危険と腱の断裂にびくびくしながらも、少年の心中ではそういう繰り言が呟かれた。
468機動新世界ガンダムDoll-DA 1-122:2010/07/21(水) 21:03:05 ID:???


 ポストはザリーの顔色の露骨さににんまりした。
〈色情狂めが〉
 Doll-A07が撤退を始めてから、このイェニチェリー・モロンは円滑に機能するようになっていた。
ひどく勤勉であった。問わず語りに状況説明するくらい熱心であった。アナウンス用モロンの仕事を横取りして、美声の代わりにきいきい声を聞かせてくれた。
「アーミー・モロン二体、ポイントO-157のカメラに接近……破壊されたであります!」
 いちいち言われずとも映像を見ればわかることであるが、試験明けの学生のように素朴な躁妄に水をさすのは思慮の足りぬ僻み根性というものであろう。
権柄づくはここぞというときまでとっておきたいというのがポストの考えである。
 ポストは甘ったるいコーヒーに塩コショウを振りながら、自然公園の地図を眺めた。
無数の凸印は監視カメラの映像やの破壊順番やの情報から予測したアーミー・モロン部隊の位置を示している。
そのうち一つが動き出して、ポストはつい涙ぐんだ。
〈かわいそうに!〉
 ポストの想像力は凸印の僅かな動きから、市民たちの血と汗と涙と脳漿を眼下に描き出して同情心を煽った。
〈私は、なんとやさしいのだろう!〉
 ポストは見ず知らずの人の葬儀に出席した女性のように、しなを作った手つきで目元を拭いた。
そして涙に濡れたハンカチで顔を包むと、放屁めいた音を鳴らして洟を噛んだ。
ポスト・フェストゥムは缶詰工場の生産報告の字面で涙を流せる人間である。その心痛は察するに余りあった。
「さてザリー君。そろそろ君の推定も推測となったろう。言ってみたまえ」とポストは開いたハンカチを凝視しながら言った。
 地図上に、Doll-DAの墜落地点が×印で表示された。凸印はそこのぐるりを囲むように位置し、それが時間の経過とともに狭まるのが見て取れた。
469機動新世界ガンダムDoll-DA 1-123:2010/07/21(水) 21:05:19 ID:???
「進行目標はアンノウン墜落地点であると思われるのであります! しかしながら――」
「Dモードにしては鈍すぎ、MSもほとんど役立てていない。ということは……おっと、続けてくれ、ザリー君」
「……墜落地点が森林地帯でありますことを考慮致しましても――」
「ともかく手心を加えているのは間違いあるまい。細かい理屈は要らんよ……君の見解は実に興味深い。さあ、続けてくれたまえ」
「……降下直後の攻撃の際には――」
「園路と広場に限り、森には進行しなかった。むしろ避けて通った。それを察した市民は少なかったようだがね」
〈さすが48居住区、民度が高い〉
 ポストは感嘆を示すために手を叩いた。
「ザリー君、君はやはり優秀だ。君の洞察力は驚嘆に値する。さあ、遠慮せず大いに語ってくれ。私は君の実力を非常に評価しているのでね」
「……恐悦至極であります。イェニチェリー・モロンのザリー・マッカティンには、身に余る光栄であります。
ですが続けて失礼を述べさせていただくことになるかもしれません。自分の推察するところ、所属不明アーミー・モロン部隊は――」
「市民を家畜のように追い立てているということだ。アンノウンの下にな」
「そうなのであります! 閣下!」
 説明に散々口を挟まれたザリーは、ポストの下した結論に大声で同意した。
ポストの後ろに控えているお茶汲みモロンがびくっとするほどの大声であった。

470機動新世界ガンダムDoll-DA 1-124:2010/07/21(水) 21:07:30 ID:???


 足を進めるごとに腰の違和感は確実に大きくなる。
「平穏な日常が音を立てて壊れて行く……響き渡る軍靴の足音……胸を引き裂かれるような悲鳴……むせるくらい濃密な血の香り……」
『でっでっでっでっ……』
 足の張りはもはや鈍痛と化している。
「でも本当は、私はこうなることを望んでいたのかもしれない……」
『でっでっでっでっ……』
 喉が渇く。肺に穴が開いたように、ひゅうひゅうという音が口から漏れる。
「この世界は間違っていたのよ……なにもかもが作り物……私たちはみんな、嘘の中で生きていたの。
仮面を仮面と気付けないまま……自分が偽者だということを悟れないまま……平等に騙されたまま……何者にもなれず、失い続けたまま……」
『でっでっでっでっ……』
 腕の感覚が無い。震えているかもわからない。
「いいえ。失うものなんて、初めからなかった……私たちは人形だもの。人形劇の役者なのだもの」
『でっでっでっ……』
 汗だくの背中が冷たい。視界も霞んでいる。何か言ったが最後、自分はもう倒れてしまうに違いない。
「この世界に人間なんていない。あるのは人形だけ。
自由な人間、愛し愛される人間、幸せになるために生まれた人間、そうしてそういう人間たちの、素晴らしい人生……みんな嘘よ。
どこにも実在しないの。架空の生活なの。はやりの歌詞と同じような、フィクションなのよ……」
『でっでっでっ……』
 足は音のしない方向に向けて運ばれて行く。枝を踏み折り、土を削り、膝の軋む感覚だけがそれを示している。
「けれど私たちは自己自身から目を逸らして、懸命に己を欺こうとする。
完成された社会、真実の文明なんてそのための幻想よ。本当はただ、永遠に打ち続く無人境が広がっているだけ」
『でっでいう……』
 腕の中の少女が、けらけらと笑った。
「彼らはそれに気付いた。気付いてしまった。あのモロンたちは、人間となってしまった。
そして目覚めた人間から見ると欺瞞に満ちた今の世界というのは、吐き気を催す醜悪な世界なのよ……
これは粛清。世界の嘘を掃き清める、再生の前の破壊。彼ら真の人間にとっての始まり。
コーディネイターという人形にとっては、これは全ての終わり――そう、みんな終わる。
偽りの世界が崩壊する。永い永い悪夢が、やっと終わる」
『デストローイ!』
 遠くで響いた銃声に意識がはっきりした。
471機動新世界ガンダムDoll-DA 1-125:2010/07/21(水) 21:10:09 ID:???
〈気ちがい沙汰だ!〉とアランは叫びたかった。スメッグのために頭の働きを正常でなくしたハスハが、先ほどからアランの耳元でたわ言を呟いているのである。
これを投げ飛ばして頬打ちの清算をするという案は魅力的に思われたけれども、腕が痺れて断念した。
ハスハは得体のしれぬ感覚でその思惑を察したのかもしれない。アランの首に回した腕に力を込めて、体をより密着させた。
演説の止まったのを訝ってアランが目を向けると、彼女はまたもや何かを感知したらしく、濡れた唇で囁いた。
「――好きよ、アラン」
「それはどうも」
「アラン。最後にもう一度だけ……キスして」
「やだよ」
 ハスハの目が潤んだが、アランはモロンの遠吠えに注意を向けた。
 モロンの声が届かないところで小休止する頃には、ハスハに飲ませたスメッグの効果も消え去っていた。
少女が俯いて一言も発しないのは、腕の傷ばかりが原因ではなかろう。
その血量は顔を赤らめるには至らないが、絶えずあたりに目を配りながらも、アランと目が合いそうになるとうなだれてしまう。
弁護の種はある。スメッグの使い始めは誰しも分別を無くすし、ある程度飲み方を心得たアランですらも、時にはついつい悪酔いに耽ることがある。
ハスハの場合はたった一粒である。しかしこれは少女の体質からして著しい効果を上げてしまったに過ぎず、
彼女自身の精神が劣っていたのでは決してない。理性が欠如していたのでは決してないのである。
アランは思い遣りからそういう断定を下したが、自身も遣り切れない気持ちになるのは避けられなかった。
ハスハの恥じ入りようをみるに、躁狂の醒めた後の背汗はひとしおであろう。実に暗澹たる思いである。
もはや二度と飲むまい。飲んでも口を開くまい。記憶力の無いモロンが羨まれるひと時である。
「やっぱりモロンの暴走なのかな」とアランは切り出した。
「モロンはさ、僕らに危害を加えられない。そのはずだろう?」
 ハスハは青ざめた顔を上げて、遠くを見るような目つきをした。
「わからない……」
「そうとしか考えられないよ」
「彼らには……アーミー・モロンたちには何か目的があるような気がするの。彼らは正常、なのかもしれない」
 酔いの繰り言と矛盾するかに思われたがアランは口を噤んだ。やぶ蛇をつついて恥をかかし、それで己ひとり得意がるのはそんなに上等な嗜好とはいわれない。
472機動新世界ガンダムDoll-DA 1-126:2010/07/21(水) 21:11:26 ID:???
「アランは、気が付いた?」
「あ、うん。それなりに」
「モロンたちは楽しんでいるみたいだった。けれど、本気でもなかったのよ」
「ただの憶測かもしれないよ」
「そうね……これは、狂ったモロンたちが引き起こしていること。今はまだ、そう考えたほうが――」
 実のところアランには、ハスハの言う事が一言も理解できなかった。
自分が知らないのにハスハが知っているというのが何となく癪で、調子を合わせておかねば侮られるような気がしたのである。
『でっでっでっ……』
 微かに聞こえてきたモロンの声が、ハスハの続けようとした言葉を打ち消した。
「やつらが来る。自分で歩くのは……無理そうだね」
 ハスハが木に手をついて立ち上がった。
「ううん。歩けるわ」
「ばか」
 アランはハスハのよろめいた体を支えた。
「結局さ、負ぶって走ったほうが速いんだ」
 流石に半魚人持ちはもう勘弁して欲しいので、アランはハスハの負担を省みず、彼女を背負うことにした。
「ありがとう」
 ハスハの吐息を煩わしく感じていると、耳元でそんなことが囁かれた。
余計なことを言って気を散らすなら、せめて謝罪を口にしてもらいたい。


473機動新世界ガンダムDoll-DA 1-127:2010/07/21(水) 21:15:32 ID:???


 からだじゅう痛かった。
 手は動く。赤い光にかざしてみた。
「手、ある」
 膝に触れる。足はちゃんとついている。
「足、ある」
 顔を撫でてみる。凹凸は保たれてある。
「顔、ある」
 不自然な水気はどこにも感じない。最後は胸に手を当てた。心臓は鼓動している。
「……あるったらある」
 ナギはぱっと身を起こしてきょろきょろとコックピットを見回した。
モニターはエラーの表示で埋まったままであるが、ガンダムが完全に機能停止しているのでもあるまい。
自分が五体満足でいられたのは、落下の途中で慣性制御が働いたからである。そうでなければ気絶などでは済まされず、手足を探す羽目になったろう。
 再起動を試みるも反応はなかった。
「最新機器って、これだから嫌なのよ」
 なんでもかんでも小型化、精密化で、専門の技術者でなくては故障に対処できないよう作られている。
各部が関連し合っていて、あるところが駄目になれば全体も損なわれるという風で、人間の体のように脆いのである。不具合の原因すら分かりはしない。
ナギは出鱈目にキーを叩いたり、それで更なるエラーをはじき出すプログラムをなだめすかしたり、コンソールを殴りつけたりした挙句、とうとうガンダムの再起動を諦めた。
 ナギはサバイバルキットを開けて拳銃を取り出した。もはやガンダムになど構ってはいられない。
いくらこれが大切なMSであろうが、死んでしまっては何もかもおしまいである。
「そうよ。あたしは絶対に生きてやる。この先生きのこって、やらなきゃいけないことがあるんだから」
 クリトン・キーンのにやけ面をぱんぱんに膨らましてやることと、ついでにコンティを張り倒すことである。
ハッチは手動で開けねばならない。ナギはコンティの顔をちらと思い浮かべつつ、渾身の蹴りをそれに浴びせた。
 コックピットを出ると森であった。周りの木々は大きく傾き、中ほどからへし折れているものや、根っこごと引っこ抜かれているものがあった。
抉られた地面のあちこちから白い煙が幾筋か昇り、熱気とともにゴムを焼いたような匂いも立ち込めている。おそらくこれらはガンダムドルダの墜落によるものであろう。
ガンダム自身はというと、「究極! ドルダ・キック」を放つ直前の姿勢で横たわっている。
474機動新世界ガンダムDoll-DA 1-128:2010/07/21(水) 21:18:17 ID:???
 ナギはワイヤーを伝って下に降りた。土の掘り起こされたところからは、生き物の臭みがほとんど感じられない。
草木を注視すると、みな人工の観葉植物よりも色艶がうそ臭い。それに形も整いすぎていて、映画撮影のセットを思わせた。
「ガンダミズムなんかどうでもいいけど、コーディネイターって、ほんと狂ってるのね」
 以前にウーティスの話していた自然公園というところに違いない。ナギには先が思い遣られた。
この気ちがいめいた文化の中で、しばらく逃亡生活を送らねばならぬかもしれないのである。
コーディネイターの生活に犯罪というものはない。よってナチュラルでいう警察機構は存在しない。
市街地に入り込んでしまえばどうにでもなる。ここでは喫茶店の砂糖のように、最低限の生活物資は無償で手に入れられる。
 そうした思い巡らしの途中、
「でっでっでっ……」という人声が聞こえた。
 ナギは咄嗟にガンダムの足に身を隠した。顔を半分だけ出して覗き見ると、小銃を手にしたアーミー・モロンがいた。
ズボンの生地を破廉恥な形に突っ張らせ、こちらに向かって歩いて来る。
 追っ手が来るのは当然のことであるが、ナギは今更ながら悪寒に襲われた。
ガンダムに乗っていたせいであろうか、つい先ほどまでは恐怖というものを全く感じなかったのである。
 ナギはガンダムの足に背をもたせかけ、ゆっくり深呼吸した。
なぜかは知らないが、アーミー・モロンは掛声と足踏みの調子を合わせている。それで大まかな距離は察せられた。
 ナギは拳銃のスライドを引いた。
「でっでいう?」
 生身の人間を撃つのにためらいは無論ある。しかし殺人というものは、自分たちがMSでいつもしていることである。
殺さないと殺される。善人を気取り、臆病風に吹かれてはたまらない。これは誰しもがやらねばならないことで、絶対に必要なことなのである。
指の震えが止む。伊達にMSパイロットをやっているのではない。自己暗示には自信があった。ナギはドルダの足から飛び出した。
475機動新世界ガンダムDoll-DA 1-129:2010/07/21(水) 21:20:51 ID:???
 銃声が響き渡った。
「でででんっ、でっでっでっ……」
 無傷である。銃弾は外れていた。アーミー・モロンがくるりとナギを真正面に向いた。
小銃の狙いと股間の突起とが並行になる。また撃つか身を隠すかの逡巡の束の間に、アーミー・モロンが口を開いた。
「デスト――」
「この変態!」
 ナギはすかさず引き金を引いた。何度も何度も引き絞った。太腿に一発当たり、アーミー・モロンの体ががくんと揺らいだ。
転びかけると胴体に命中し、その影響でびくんと引きつった。もう一発胸に着弾し、アーミー・モロンは尻餅ついて倒れた。
 激鉄の鳴る音だけが続いた。
「やった、の」
 唾液がどっとにじみ出た。目が霞んだ。ナギは拳銃を取り落とした。
 これは馬鹿げたことである。灰色のハムスターを見て金切り声を上げるのと同じ、いわば媚びへつらいから演繹された第二の本能に過ぎない。
人間は人間にとって最悪の獣である。したがって共食いが自然法で許されている。
正当な理由を証明できるなら、殺人という行為に何ら後ろめたいことはない。
寧ろ、この正当防衛という至上の正義はなされねばならない。嫌悪を感じて怖気づくなど言語道断である。
 しかしナギ・ヴァニミィという女性は、自己の行為の結果を目の当たりにして実践的理性を失い、最高原理を忘却したらしい。
不当に多大な不快のあまり、身体機能に異常をきたしてしまっていた。
 アーミー・モロンの倒れる間際、目が合ったのである。確かに合ったのである。獣のようで、幼子のような目に見えた。
ぞっとする目である。指先ひとつで命を左右してはいけないと、道学者流の傲慢さで訴えかける目であった。
無償の同情というご馳走で誘惑し、人間の良心を餓えさせる目であった。
想像力の咄嗟にでっち上げた人道茶番が頭に焼きついて、酸っぱいものが喉を昇った。
それは口に至ると歯の表面をざらざらにし、鼻腔も潤そうと暴れて鼻の奥をつんとさせた。
476機動新世界ガンダムDoll-DA 1-130:2010/07/21(水) 21:22:47 ID:???
 自分は何をぐずぐずしているのかとナギは思った。敵はまだいるかもしれず、しかも弾倉一つを丸々使い果たしてしまった。
このまま感傷に浸っていては、自分が殺されてしまうのである。利己心は第一の習慣であり、第二のそれより先に来る。
ナギが立ち直るまでにあまり時間はかからなかった。とにかく自分は死にたくない。後悔を楽しむのは後で存分に出来る。
ナギは自分の頬を打った。この痛みはコンティにも味わわせてやると思いながら、顔を上げた。
 そのようにナギが嫌悪をねじ伏せて反吐を飲み下し、目を拭ったときであった。
血に染まったアーミー・モロンの上体が、むっくりと起き上がった。
「……デストローイ」
 ナギは焔に似た閃光を見た。そして銃声と、弾丸の骨肉を穿ち臓物に押し入る音を聞いた。それは無数に聞こえた。
見開いたままの目が迫る地面を捉えた。口の中は胸やけしそうなほど濃厚な液体にたぷたぷと満たされた。
頬に押し付く土がいやに生ぬるかった。見聞きする一切がなんだか場違いなように思われた。
ナギ・ヴァニミィは考えることを止めた。しかし彼女の視界では、その場違いな光景がずっと映し出されていた。





とりあえず以上です。
477通常の名無しさんの3倍:2010/07/22(木) 01:01:21 ID:???
投下乙

深夜でもいいから、地上波でやってほしいなw
478通常の名無しさんの3倍:2010/07/26(月) 00:27:46 ID:???
邪気眼ドルダ投下します。
479機動新世界ガンダムDoll-DA 1-131:2010/07/26(月) 00:29:43 ID:???
 アランは驚いてハスハを落としかけた。ちょっとした茂みを乗り越えようと大股に踏み出した途端、むにゅっとして、ごろっとする何かを踏んだのである。
同時に足元から「むぎゃっ」という声が聞こえた。
「ひどいな君。痛いじゃないか」
 声の主が、腕を押さえながら身を起こした。顔じゅう泥だらけの成人男性である。
アランはコーディネイターを見つけて安心し、つい謝った。
「すみません」
「気をつけてくれよ」
 男は袖の足跡を擦って伸ばすと、また横になった。
「いや、何してんです」
 男がけだるそうに目を開けた。
「うん? 君たちこそ、何なんだい。ほっつき回ったりしちゃいけないぞ」
〈おいおいおいおい〉
 上には上があると、アランはハスハを背負い直して思った。
姿勢に余裕が出来るとアランの肩から、ハスハがちょこんと顔を乗り出した。
「どうしてこんなところで寝ているの」
「だってあのモロンどもに襲われるだろう」
「そうしていれば、襲われないの?」
「そうさ。君たち、知らないのかい」
 アランはハスハに耳打ちした。
「こんなのにかかり合うのは止そう」
「待って」
 ハスハがアランの肩を掴んだ。
「どうして、寝ていると襲われないの」
 男は本式で教えてやろうというふうに、ため息を吐いて胡坐をかいた。
「いいかい、モロンたちは死人を襲わない。だから、こっちも死人のふりをすれば襲われない。服を汚して、寝転がってればいいわけだ」
 眉唾どころではない。恐慌の延長であろう。いくらモロンでも生死の判別くらいは出来るであろうし、加えるに彼らは騙されまいと、ちゃんと死体の頭を撃ち抜いている。
ハスハはアランを制しつつ男に尋ねた。
「なぜそんなことがわかるの」
「みんなそうやってる」
「みんなですって?」
 空想上の同類に違いあるまい。アランはほとんど馬鹿にするように言って辺りを見渡し、「え……」と声を漏らした。
480機動新世界ガンダムDoll-DA 1-132:2010/07/26(月) 00:32:30 ID:???
「ああもう、注目されてる。君たち、早いところどこか行ってくれよ」
 暗がりのため一見でわからなかったが、木陰や茂みのそこかしこに大人たちが寝ころんでいた。
色とりどりの優しい光をたたえた無数の目玉は、アランたちに向けられてあった。
〈おかしいよ、みんなおかしいよ!〉
 ハスハがきゃっと声を上げた。
「いけない、アラン。無闇に動くと危ないわ」
「馬鹿どものが危ないよ!」
 アランは目を剥いて駆け抜けた。足元に気をつけてなどいられなかった。
「おい、痛いじゃないか」
「ちょっと、踏まないでよ」
 三人目を踏んだときには声が上がらず、ぬかるみに足を突っ込む感触があった。アランは靴底のぬめりを拭うように地面を蹴った。
〈誰かが運んだんだ!〉
 擬態に真実味を出すために違いなかった。
 アランは咄嗟に、人々がぐずぐずの人体を運ぶ光景を想像してしまった。
一人が足を持ち、一人が腕を持つ。重みで真ん中から千切れてしまわぬように、もう一人が背骨を支えて固定する。
人々が段差を乗り越えるたびに、頭部はぐるんぐるんと左右に回る。開いた腹からこぼれたものを、誰かが慌てて元に戻す。
なるべく出来たての形状を保たないと駄目なので、人々は厳粛な顔つきで壊れ物を扱う。
しかし慣れぬ作業であるから、ついつい失敗することもある。手を滑らして落としてしまい、びっちゃんと音がする。
腐ったトマトである。出し損なったプリンである。人々は肩を落すが、新しいのを取りに道を戻る。
死体には事欠かぬから何度失敗したっていい。諦めずに挑戦を続ければ、いつかきっと成功する。
 少女は息も絶え絶えであった。
「駄目……止まって……アラン」
「モロンも大人たちも、どうかしてしまったんだ」
「でも……駄目……私もう……」
「無茶言うな! 汚物で遊ぶ連中なんかといっしょにいたら正気じゃいられない。僕らまで変になる」
「おねがい……」
 激しく揺り動かしたために、ハスハはひどく青ざめていた。
「あ、その、ごめん」
 アランはハスハを下ろして傷の具合を見た。出血量は左程増えていないけれども、ハスハ自身の体力が、彼女本人に告知できかねるような状態に至っていた。
481機動新世界ガンダムDoll-DA 1-133:2010/07/26(月) 00:33:56 ID:???
〈いっそ捨てて行こうかしらん〉
 アランはそんなことを思った。自分たちはアーミー・モロンから逃げ回っている間に、森の奥深くに踏み込んでしまっている。
アーミー・モロンから逃げ切るにしろ助けを待つにしろ、どうせ彼女の容態は手遅れとなるに違いない。
そうなれば死にかけた少女にこれ以上付き合うのは無益である。どのみちハスハは助からない。
ここで彼女を見捨てて身軽になれば、せめて自分ひとりだけでも助かる可能性が高くなる。
つまりこの場合自分の命のみを優先することは、自分にとってもコーディネイター全体にとっても利益であるということになる。
〈いや、こんなことを考える僕こそが馬鹿だ。そういえるんだ〉
 だいたい自分は、初めからハスハを助けようとしなければ良かったのである。
展望台広場の有様に愕然としハスハの姿を探し回ったという時点で、自分の行為は論理的でないどころか、倫理的でない。
万人は万人の利益とならねばならぬ。そしてここでいう万人には己自身も含まれる。
結局助からない人間を救おうとして、自分の命を危険にさらした。いつもの自分なら、今の結果は簡単に予想できたはずである。
要するに自分は気が動転して、無分別にも不道徳な行いをしてしまったのである。
「……もう、いいわ。いいのよ」
 ハスハが搾り出すように言った。
「アラン。私はもういいの。いいから、一人で行って」
「馬鹿、いいわけないだろ」
 せっかく反省した甲斐も無く、アランは発作的に心にもないことを言ってしまった。
〈僕の馬鹿!〉
「いいの。私ね、アランが助けに来てくれて、嬉しかった。本当に嬉しかった。幸せだった。
私たち、ちょっとした行き違いで疎遠になって、アランが他の女たちに気を取られて、もう私を愛していないんじゃないかって、ずっと不安だったの。
でもアランは、最後に私を気遣って、私を抱いてくれて、私だけを見てくれて、それで私、安心した。
もう、迷わない。私はアランが好きで、アランも私が好き。だからアランは、生きて。
私はアランが好きなまま死ぬから、アランも私を好きなまま、生き続けて」
〈ちょっと待て〉
482機動新世界ガンダムDoll-DA 1-134:2010/07/26(月) 00:35:43 ID:???
 はいそうですかと答えるには、あまりにも具合の悪い告白である。
アランはまず自分の記憶力を疑った。もし不明瞭なところがあれば、ハスハの言葉も辻褄が合わなくもない。
しかしアランの記憶には、ハスハに別れ話を切り出し、しぶしぶ承服させたくだりが克明に刻み込まれていた。
別れた後に他の娘とのデートを邪魔したハスハを諭す場面も、しっかりと覚えている。
〈自分の意思を伝えるのって、こんなにも難しいことだったの?〉
「それに、私だって」
 ハスハは立ち上がって、頼りない足取りで二三歩歩いて見せた。
「アランが逃げるまで、囮くらい出来るわ」
 あからさまな苦痛の表情は見せないが、それはいかにもやせ我慢であった。挫いた足の添え木を外そうとする仕草はいかにも痛ましかった。
「強がりは止めろよ」
 ハスハの手を払いのけて、アランは添え木の布を縛り直した。
「けれど……」
 当然、少女の前に跪くような恰好になり、アランはその恰好のまま言った。
「君をこのまま死なせるなんて、出来るもんか」
 アランは顔を上げた。
「僕は、自分の気持ちに嘘は付けない。このまま君が死んでしまったら、僕は君にも僕自身にも誠実でなくなる。だからさ――」
 先ほどの告白を撤回してもらいたい、と続けようとしたところ、少女は感極まったような声を上げてアランを押し倒した。
483機動新世界ガンダムDoll-DA 1-135:2010/07/26(月) 00:39:36 ID:???
 勘違いでないと願いたかった。ハスハがアランの胸ですすり泣いているのも、ちょっとした傷心によるものであり、現実を空想にすりかえた感動によるものでは決してない。
どうかすればその証拠がきっと見つかるに違いないとアランは自分に言い聞かせ、途方にくれて森の奥に目をやった。
 低いところに目があれば、いつもと違ったものが見えてくる。如何な美人であっても真下から見上げると豚鼻である。
物乞いにしてみれば金持ちは破廉恥きわまる高等詐欺師であり、金持ちにしてみれば物乞いは与えても与えなくても不愉快なならず者であるということにならなくもない。
アランの目に映ったのは価値転倒の表徴などでは無論なく、枝の配置の具合から見えなかったものである。
自然公園の木々の枝ぶりは自然の計り知れなさを演出すべく、立っているときの視点で見ると奥行きを覆い隠すように作られている。
それはいわば騙し絵の類であり、黒子モロンや改造小動物がその義務を着実に果たすために、別の視点では結構な範囲を見渡せるようにもなっている。
「顔?」
 遠い暗がりの中に浮かんでいるのは、人間の顔ではない。
もしアーミー・モロンやコーディネイターの顔であったら、アランはハスハを蹴り飛ばして逃げ出したであろう。
「MS、なのか――ハスハ!」
 アランはハスハの肩を掴んで引き離した。
「MSだよ! あっちにMSがある!」
 ハスハがうなじを見せた拍子に髪が顔にかかったが、アランは払いのけないで続けた。
「顔なんだから、やつらのMSじゃない。きっと助けが来たんだ」
 見たことも無いタイプの頭部である。人間がヘルメットを被り、への字の溝が二本あるマスクをつけているような形である。
額の部分にはダイヤ形の飾りが付いていて、その両脇から左右不対称に棒きれが生えている。
 アランはハスハを抱き起こした。
「ハスハにも見えたろ。行ってみよう。僕ら、助かるかもしれない」
 ハスハは返事をしなかった。
「ハスハ?」
 アランは寒気を感じた。思えば少女の体は前よりぐったりしている気がした。
辛うじて体重を分担できる力は残っていても、彼女の体力が取り返しの付かない段階に立ち入っていても不思議でない。
「駄目……いけないわ」
 アランは少しほっとしたが、ハスハの返事の意味が分かると腹立たしい気持ちになった。
484機動新世界ガンダムDoll-DA 1-136:2010/07/26(月) 00:42:08 ID:???
〈この期に及んでまだ馬鹿なことを〉
「救助じゃなくて、あのMSは誰かが乗り捨てたものかもしれないから? それならそれで、僕らはあれに乗って逃げられるよ」
 出回っているMSは、余程の故障がないかぎり野ざらしでも百年持つと宣伝されている。
そもそも自然公園などにMSが捨てられているのは左程珍しいことではない。放置MSなんて、どの区画でも幾体か必ずある。
それに故障したから捨てられたということも考えにくい。故障すれば保障が利き、故障品と引き換えに新しいMSを貰えるからである。
「それでも……ううん、そうじゃないの。あのMSは、いけない。あれは、あれだけは、駄目なのよ」
 ハスハは歯を鳴らしていた。どうも妙な様子である。
「なんでだよ」
「わからない」
「はぁ?」
「ただ、嫌な予感がするの。あのMSのところへ行ってしまえば、何か、そう――」
「馬鹿らし、だったら僕一人で行くさ」
 根拠の無い直感にこちらまで付き合う必要はない。アランがハスハに背を向けて歩き出そうとすると、
「駄目!」
とハスハにしがみ付かれた。
「放せったら」
「アランだけは、駄目なの! アランが、アランがあれと出会ってしまってはいけないの! あれに乗れば、アランはきっと不幸になる。アランはきっと辛い思いをする」
〈とっくに不幸なんだけどな〉
 スメッグの効果がぶり返したとは思いにくい。ハスハは失血のためにとうとう気をやったのかもしれなかった。
「アランはあれに魅入られてしまう。アランはあれに取り込まれてしまう。アランは壊れてしまう。行けばアランはきっと、ガン……私、何を言ってるの?」
 ハスハはきょとんとしてアランに尋ねた。
485機動新世界ガンダムDoll-DA 1-137:2010/07/26(月) 00:43:44 ID:???
「いいかい。君は大怪我をして血を沢山流した。そのせいで血の巡りが悪くなっている。
そしてここに来るまでにショッキングなものを沢山見た。変なことを思いついたり言ってしまったりするのは何も恥ずかしいことじゃない。
君と同じ状況におかれれば誰だってどこか変になる。だからさ、今は僕のことを信じて、僕の言うとおりに行動して欲しい。わかったね、ハスハ」
 少女はこっくり頷いた。
「じゃ、行こう」
「でも駄目」
〈駄目だこいつ。早くなんとかしないと〉
 アランはハスハの手を引いた。しかし彼女はどうしても歩こうとしなかった。この押し問答は長丁場になりそうであったが、
『でっでっでっでっ……』
「いわんこっちゃない!」
 アランはハスハを担いだ。荷物のような扱いであるが、足手まといのままでいられるよりましである。
アーミー・モロンの声に追い立てられるのは三度目である。いい加減慣れっこになっていた。
486機動新世界ガンダムDoll-DA 1-138:2010/07/26(月) 00:46:14 ID:???


 バッシュとウーティスの判断は素早かった。
コンティの手がコンソールに触れるより一瞬先にバッシュが「ウーティス!」と叫びながら自分のキルケニーを突進させ、向かいにあるコンティのキルケニーを押し倒した。
同型機故に臂力(ひりょく)は同等である。バッシュのキルケニーがコンティのキルケニーを組み伏せている間に、ウーティスが機体の制御を乗っ取った。
コンティは無茶をするどころか回線を切断する暇も持てなかった。
『この、動け! ウーティス、ロウ、バッシュ! ナギが……畜生! これが仲間のすることか!』
「ナギは無事さ。たった今通信があった」
『なら話させろ!』
「親切は受け取るもんだぜ」
『この――』
 格納庫の整備員たちがあっけにとられた。ハンガーはぐちゃぐちゃで、人的被害の無いのは僥倖に他ならない。
コンティ・ネイブリットの声が途絶えたのはマイクを切られたために相違ないが、
ロックされたコックピットハッチに近寄って打撲音に耳をそばだてる物見高さは、誰一人として持たなかった。
 キルケニーが二機とも強制停止させられ、バッシュはにがり顔をした。
「保険のつもりか」
『そうせざるを得ません』
「鼻に付くんだよ悪代官」
 ウーティスは気を遣いすぎるほど遣っている。しかしけちをつけてもいられない。
「ロウの一存は」
『静観です。ナギさんとガンダムの状態がわからない以上、そうする他ありません』
「コーディネイターって人種は、もうちょいしおらしゅう出来んものかね」
『すみません』
「ケツまくるにしろ油売るにしろ、選挙は望むところじゃない。今揉めるべきじゃないのはコンティもわかってるだろうよ。
どんな結果になったって、誰も恨めはしないんだ」
487機動新世界ガンダムDoll-DA 1-139:2010/07/26(月) 00:48:01 ID:???
 バッシュはロウの決断力を見透かした気でいた。その上でウーティスに、いざというときの対処をにおわせたつもりであった。
ここでナギとガンダムを失ったとしても、ひとまずヴェスタと乗組員は逃げられる。その後は対抗手段の無いまま、新たな追っ手になぶり殺しにされるであろう。
管理局は徹底している。情報源となるのがヴェスタのみでないことは知っているに違いなく、生け捕りにして拷問などしない。
しかし殺されると決まった命をほんの少し永らえさせたに過ぎないにしろ、生きていられたということにはなり、乗組員はそれなりに納得しなくもない。
ナギの道連れになったところで文句を云わないのは、自分とロウとコンティの三人のみである。
その三人にしたって、死を前にした病人や老人と同様に、遺恨が全く無いといわれなくなるかもしれないのである。
『ともあれ杞憂であることを祈りましょう』
「無宗教の癖に調子のいい爺さんだ」
『ナチュラルとはそういうものなのでしょう?』
「さてさて、そうと限らんかもわからんよ」
 バッシュは軽口を叩いた。
488通常の名無しさんの3倍:2010/07/30(金) 00:43:03 ID:XDdJ5Sbq
デンジャラスガンダム零式

【型番】AKB-48
【武装】ジャンボライフル改
    ジャンクソードリバイバル
    レールガトリングガン
【解説】黄色と黒のカラーリングで、全身にKEEPOUTの文字が記されている。
ジャンボライフル改は、スナイパーライフルの射程にバズーカの口径を併せ持つ。
ジャンクソードリバイバルは、見た目はボロいビームサーベルだが、
かなりカスタムされているので恐ろしい破壊力を発揮する。
レールガトリングガンはその名の通りレールガンを連射できる。恐るべき威力の
対価となる衝撃は全身のKEEPOUT装甲が軽減してくれる。戦場を戦慄させる洗練された戦闘力は
正に無敵、デンジャラス。何がデンジャラスかって、型番。
489通常の名無しさんの3倍:2010/08/08(日) 00:24:50 ID:dD1Kd5tn
保守
490通常の名無しさんの3倍:2010/09/02(木) 01:16:53 ID:x0TsEkcV
保守
491通常の名無しさんの3倍:2010/09/14(火) 18:36:38 ID:nyMWEB3/
保守
492通常の名無しさんの3倍:2010/09/14(火) 20:15:48 ID:g0qiIRBG
ガイアガンダム
493通常の名無しさんの3倍:2010/09/15(水) 07:38:10 ID:TbXUVzjY
ウォルターガンダム デビルガンダム グランドガンダム
そしてセーラームーンもどき
494通常の名無しさんの3倍:2010/09/16(木) 07:29:54 ID:z7JOY3Rc
ファラオガンダム マタドールガンダム マーメイドガンダム
ピエロのガンダム マンダラガンダム コブラガンダム
495通常の名無しさんの3倍:2010/09/21(火) 19:00:18 ID:jTlXSc4s
極秘プロジェクト進行中
496通常の名無しさんの3倍:2010/09/23(木) 08:49:23 ID:VYEt/keQ
ガンダム試作2号機。足は核の熱からの冷却装置で移動するためには肩のバー二アを使用。
まるでゾックだ。
ガンダム試作3号機。巨大なモビルアーマーと合体。
497通常の名無しさんの3倍:2010/09/27(月) 23:47:38 ID:TqVwUk3I
00劇場版は色んな意味で奇抜だったな
498通常の名無しさんの3倍:2010/09/27(月) 23:55:03 ID:???
アルケーは何故無い?
どこにもガンダムの面影は無いのにガンダムを名乗るところが良い
499通常の名無しさんの3倍:2010/10/01(金) 23:41:59 ID:NmZZieqZ
一番良いガンダムを頼む
500通常の名無しさんの3倍:2010/10/09(土) 14:02:19 ID:???
501通常の名無しさんの3倍:2010/10/09(土) 19:57:39 ID:???
邪気眼ドルダ投下します。
502機動新世界ガンダムDoll-DA 1-140:2010/10/09(土) 20:00:05 ID:???
 アランの見つけたMSは野ざらしのMSではなさそうであった。ついさっき墜落したような感じである。
倒れた木々が景気良く燃え上がっていないので、全身の焦げ付きは墜落前からのものであろう。
MSのそばには女性らしきものが倒れ、少し離れたところにはアーミー・モロンが倒れている。
アーミー・モロンは口から赤いあぶくを噴き出していた。アランが駆け跨ぎながらちらと見遣ると、その目が動いてアランを見返した。
振り返って見直すと、赤いあぶくが激しく湧いた。
 アランは注意しながらMSに近寄った。女性らしき人の胴体は、血でぐっしょりになっていた。そして微動だにしなかった。
先ほどのアーミー・モロンと違って、生死すらわからなかった。アランはハスハを下ろして、黒焦げのMSをあらためて注視した。
「人型のMSなんて」
 いかにも曰くありげに思われた。血塗れの女性を見てハスハが言った。
「この人が乗っていたのね」
「大昔のスポーツタイプというのかな。コックピットは――」
 前に乗っていた人は随分と無茶な降り方をしたらしい。
MSに満足な降着姿勢も取らせず、コックピットの横から緊急乗降用のワイヤーを垂らしてある。
「まだ息があるかもしれないわ」
 振向くと、ハスハが血塗れの女の前にしゃがんで、女の顔にそろそろと手を伸ばしていた。
「止しなったら」
 アランは駆け寄ってハスハの腕を掴み、その途端に「うわっ」と声を上げた。
いきなり女の手が動いて、アランの足首を掴んだのである。女の頭が上がった。
泥と血とが相まって、何ともものすごい形相であった。
「しね……るか……」
 アランはぞっとして、
「何これ、気持ち悪い」と思わず女を足蹴にした。ハスハが何か言いかけたが、
『デストローイ!』
の声に一拍置いて、MSの装甲が陶器をかち合わすような音を鳴らした。跳弾である。
「つかまって!」
 アランはハスハを抱き寄せた。先だって調べたところ、ワイヤーの昇降スイッチらしきものは見当たらなかった。
ちょっとしたアスレチックである。大人二三人分の高さであるが、片手にハスハを抱えながらでは上られない。
けれどもハスハは、
「でもこの人が……」と愚図ついた。知ったことではないのである。アランはハスハの腰から手を放してワイヤーを手繰った。
「早く!」
『デストローイ!』
 再び銃声が響いた。装甲の欠片がアランの頬を掠めた。ハスハがアランの体にしがみ付いた。
503機動新世界ガンダムDoll-DA 1-141:2010/10/09(土) 20:02:21 ID:???
『デストローイ!』
 間一髪、アランとハスハはコックピットに転がり込んだ。標準的なMSに比べて狭苦しいコックピットである。
シートも一つだけで、純然たる一人乗りである。
「奥、行って」
 アランはハスハをシート裏へ押しやり、難儀して操縦席に腰掛けると、袖で頬を拭った。しばらく傷跡が残るかもしれない。
耳の真横でハスハが言った。
「動かせるの?」
「仮免なら、持ってる」
 そうは言ったものの、どうにかシミュレーターの基礎動作をこなしたばかりで、現実では路上教習すら経験が無い。しかもこのMSの操作系は初見のものである。
音声入力なのか、コンソールでのワンタッチ操作なのか、或いはモビルトレース方式なのかどうも判別しかねた。
ずいぶん旧式のアームレイカーはあるにはあるが、教習所で習ったところによればこういうものは大概、緊急用乃至玄人用で手動操作にしか用いられない飾りである。
 モニターを見た限り起動自体はしているらしい。が、メインウインドウばかりでなく、機体パラメータと思わしき数値もエラーの文字で埋まっている。スタンバイ状態というのでもない。
 銃弾がコックピットハッチで跳ね返り、その音がコックピットに反響する。
アランはなぜこのMSが乗り捨てられたのか分かった気がした。けれどもそれ以上考えたくなくて、捨て鉢で叫んだ。
「ハッチ閉じろ! 閉じろったら!」
 コックピットハッチは閉じる代わりに、二度三度と連続で音を鳴らした。ハスハが一切を諦めたようにアランの耳元で呟いた。
「アラン……」
「うるさい! 集中できないだろ!」
 八つ当たりである。もはや涙声であった。
「なぜだよ!」
 アランはコンソールを殴った。
「どうして僕がこんな目にあわなきゃいけない!」
 銃声と反響音が伴奏のようになって行く。コックピットハッチは開いたままで、そこから銃弾が飛び出るのも時間の問題であった。
「僕はコーディネイターだぞ! 汚くて臭くて怖くて、そんな目に遭っちゃ駄目なんだよ! 
充実した人生を送るはずだったのに! モロンなんかに襲われて……このっ!」
 アランは既に少し錯乱していた。手の皮が剥けて血が滲み、赤い肉が顔を出した。コンソールは頑丈でびくともしない。
504機動新世界ガンダムDoll-DA 1-142:2010/10/09(土) 20:04:34 ID:???
 こんな羽目になったのはみんなハスハのせいである。
彼女が自身の立場を弁えて、アランの気持ちを察して、下らぬお喋りに付き合わせようとせずかまわないでいてくれたら、
アランは自然公園に足を踏み入れることも、命の危険に晒されることも死体の間で彷徨うことも、得体の知れぬMSの中で進退惟谷まることも絶対に無かったのである。
今ごろきっとベッドで安眠していたことであろう。ハスハのおかげで散々である。
「動けよ!」
 アランは血まみれの手でアームレイカーを掴んだ。
「僕が動けって言ってるんだ! どうして動かないんだよ! 動けよ! 動いて! うごあつっ――」
 じゅっと聞こえたと思うと刺すような熱を手のひらに感じた。アランはびくびくしながら手をアームレイカーから離した。
離す瞬間、ぴりりと剥がれるような感触があった。人間の皮膚が焼き鏝で熱せられればどうなるか、知識としては知っている。
アランは恐る恐る手を裏返した。
「なんとも、ない?」
 火傷したはずの手のひらは、皮を張り替えたかのようにきれいであった。
「アラン?」
「今、確かに……」
 コックピットハッチが閉じた。
「動い、た」
「そう……みたい」
 消え入りそうな声で少女が言った。
「やった! こいつ動くぞ!」
「おかしいわ……なぜなの……」
 エラーの表示は次々に閉じられて行き、外の景色が映るようになる。
このMSの前には無数のアーミー・モロンが立ち並び、飽きもせず口をぱくぱくさせて、小銃を撃ち続けている。
コックピットハッチの着弾音は無くならないが、このMSに乗った今、それは豆鉄砲のようなものである。
アランはMSの思いがけない起動ですっかり余裕を取り戻した。
〈やっぱり、モロンはモロンでしかなかったんだ〉
 ところがその増上満は、目の前の木々と一緒に傾いた。
「彼らのMSだわ」
 丸ごと機銃となっている両腕で木々をかき分けて、首なしのMSがのっそり足を踏み出した。
その肩にはMOS-Hと書いてあり、その足元では小柄なコマンダー・モロンが、言いがかりをつけるような身振りをしてこちらを指差した。
「MSなんて反則だ!」
 こちらはコックピットハッチを閉じられただけで、首振りすら出来ないのである。
アランはコンソールを操作してマニュアルを見つけようとしたが、OSの勝手がわからず、というよりOS自体が無茶苦茶で、妙なプログラムを起動させてしまった。
505機動新世界ガンダムDoll-DA 1-143:2010/10/09(土) 20:07:12 ID:???
 画面の真ん中に『PROCRUSTES-SYSTEM』という文字が表示された。
「ぷろく、るすてす……プロクルステスの鉄床……」と少女が抑揚なく呟いた。
「は?」
 アランが怪訝顔をすると、
『パイロットの搭乗を確認』という合成音声が聞こえた。
「音声ナビ? 再起動したというの?」
 アランは耳を澄ました。
『Doll-DA、パイロット認証シークエンス開始』
 ここまで来てコックピットが突然揺れた。MOS-Hが、砲撃を始めたのである。
着弾音は小銃の比ではなく、耳元で太鼓を叩かれるような大音量であった。
それも一発では済まされず、特殊な音楽性を持つ演奏者集団が頭を風船みたいに振り回しながら弦楽器や打楽器をいじめて悦に浸る如く、
最初の二回でもう勘弁と願いたくなる騒音が益々勢いづいて延々と続くのである。
弾丸の衝突で生じた振動もコックピットに伝わった。
『ロットコード……イディット……07……アラン・イディット……』
 被弾の都度、画面全体にノイズが走る。揺れで焦点が定まらぬのに加え、そこに起動処理と機体異常のウインドウが忙しく割り込み合い、いよいよ目が回って来る。
『メインカメラ破損』
 瞬時に蜘蛛の巣状のひび割れが広がったと思えば画面が真っ暗になる。コンソールパネルの蛍光だけが、ぼんやりと手元を照らす。
『初期DNA適合……0.72……現……0.41……エランバイタル……』
 ブザーが喚き出して、耳も利かなくなった。
音声ナビがどのような意味のことを言って、起動シークエンスがどこまで進んでいるのかもはっきりわからない。
『第一外殻、耐久限界。第二外殻、損傷』
 ただ雑音の中から、物騒な報告ばかりが耳聡く聞き分けられた。 
『バランサーに異常発生』
 コックピット全体がゆっくりと傾いて足腰がおぼつかなく思われた数瞬後、激しい衝撃が体じゅうに響き渡った。機体が横転したのである。
MSは大きい。緩和措置抜きの転倒はややもすれば建物の屋上から飛び降りるのと同等で、内臓ごとひっくり返しかねない。
アランは危うく頭を打ちかけた。壁が床で、床が壁となっている。
506機動新世界ガンダムDoll-DA 1-144:2010/10/09(土) 20:11:17 ID:???
「ハスハ」
 寝返りを打つように振向いた。コックピットはすっかり静かになっていた。
ハスハは暗がりのなか目を瞑って、側面モニターの上に力なく横たわっていた。
「ハスハ、ハスハったら」
 少女はうわ言を言うようにアランの名前を口にした。脳震盪かもしれないが、ともかく彼女は生きている。
アランは少し安心した。しかしすぐにまた眉を曇らした。
 被弾音はなくなったが、入れ代わりに、何やら硬い物の割れる音が連続して鳴ったのである。
次第に大きくなる軋りもコックピットまで伝わって来た。散々にいたぶられて機体が限界を迎えたのかもしれない。
「圧し潰される? まださ、まだメインカメラがやられただけ――」
 アランはハスハを膝に乗せると聊か無謀な姿勢でコンソールに手を伸ばした。
「なのにどうして反応がないんだよ!」
 外の映像が無くなるのはいいが、機体パラメータなどのサブウインドウまで消えるのは納得行かない。
残っているのは『PROCRUSTES-SYSTEM』という文字だけである。
MSは人間とは違う。手足をもぎ取られても頭を潰されても、コックピットブロックさえ無事なら何かしらの反応があるはずである。
〈待てよ。このなんとかシステムというのは消えちゃいない〉
 軋りはとうとううるさくなって、春先の猫の如き趣を呈した。
〈スピーカーの故障か何かで認証シークエンス自体は続いている? なら他のプログラムは? 処理落ち? いや、それも違う〉
 騒音が遠ざかり、頭がぼうっとして来た。
〈これは正常……アップデートのタイムラグ……Doll-Device Archive……ああもう、喧しいな〉
 アランは得体の知れない想念を振り払って文字列を睨んだ。
「こいつがなんだってかまわない。このままなぶり殺しに殺されるなんて……僕は嫌だ」
 そうぼやいたときである。『PROCRUSTES-SYSTEM』の文字がぶれて一対の可視光線と化し、瞼が灼熱した。
507機動新世界ガンダムDoll-DA 1-145:2010/10/09(土) 20:20:06 ID:???
「目が! 目がぁ!」
 アランは絶叫した。強烈な閃光に焼かれた目から、涙とともに鮮血が溢れ出た。アランは頭を振り回した。
 目は閉じられなかった。瞼が焼け落ちたのかもしれなかった。どこを向いても視界いっぱいに、赤と青が交互に激しく点滅していた。腕がアームレイカーに貼り付いて、目を庇うことは出来なかった。
胸が引きつって息を吸えなかった。声も掠れて途切れて行った。心臓を鷲づかみされたみたいあった。
そうして、はらわたそのものが異物に変じたような吐き気が生じた。
それは喉を上り、鼻を詰らせ、耳を塞ぎ、脳髄の中心で一挙に膨れ上がり、目玉の裏側を這いずり回った。
手足も無事ではすまなかった。延髄を伝い下りた異物感が一本一本の骨の髄に染み渡った。
腕はもちろん、あばら骨ですら自分のものとは思えなかった。
全身の皮は邪魔っけなずた袋のようであり、強張った男根の脈動は、もはや己は独立の存在であって何者かの付属物ではないと、がなりたてているようであった。
508機動新世界ガンダムDoll-DA 1-146:2010/10/09(土) 20:21:16 ID:???


 初めに、射精があった。次に言葉があった。言葉は彼とともにあった。
「どるだ」
 言葉は彼であった。
 すべてのものは、彼のために造られた。造られたもので、彼のためによらずにできたものは一つもなかった。
 彼はアラン・イディットの口でこう言った。
「イディット07、脳量子更新。諸表象、統合完了。Doll-DA……システム再始動」
 光が闇のなかに輝いていた。彼は手を伸ばして光を掴み、握り潰した。闇が光に打ち勝った。
「活動電位パターン復元。自律性を譲渡」
 彼は再び、永い眠りについた。


509機動新世界ガンダムDoll-DA 1-147:2010/10/09(土) 20:25:45 ID:???
 風が吹いた。定時の空調である。森じゅうに立ち込めた生臭い臭いは追い払われ、森の香りと銘打たれた爽やかな香りがどこからか渡って来る。
甘すぎず青臭すぎず、気を引き締めるようでありながらほのかに優しい感じもする。
夜気にのぼせた来園者たちもこの時間になると、なんとなく寝床が恋しくなり、鷹揚に身繕いを始める。
翌朝の心配ではない。睡眠時間はスメッグで補える。
ただこのときばかりは、夜遊びで楽しく過ごすよりも枕を抱えて布団にくるまる方が、ずっとずっと素晴らしく思われるのである。
何も見ず、何も聞かず、何も考えないでいられる。日ごとに訪れる死とも呼ばれるこの慰みは、肉の愛と同様に不変であった。
神や涅槃や天や社会といった形而上の概念やそれに似たものの一切が迷妄として捨て去られるか、あるいは過剰に祭り上げられるかしても、
この二つは相も変わらずアルキメデスの所望した足場として働き続ける。
自分たちこそありとあらゆるものの究極の目的因であると確信していた存在の作用因であり続けるのである。
二本の棒状のものがあり、その一方がもう一方を枕にすれば人の字になるという事実もそれを肯定している。
 自然公園がそのようにして帰宅を奨励しているというのに、来園者たちは帰り支度をしないどころか、声一つ上げなかった。
 汚れてぱさぱさの髪が微風で震える。幹に立てかけてあった背が何かの拍子でずり下がる。葉先の赤い滴りが止む。
ベンチに置き去りの紙コップが、波打つ中身にあわせて揺れる。
顔の無い青年が大の字で芝生に寝ころび、背中じゅう無数の赤い斑点をつけた女性が藪に頭を突っ込んでいる。
操作盤の割れた携帯端末を掴む小さな手が、大人たちの体の下からはみ出ている。
ほんの十二三と思われる可憐な少女は、可憐な顔はそのままで、くぱりとお腹を裂かれてあった。
 アーミー・モロンたちもまた沈黙していた。自然公園の制圧はある程度済ましてあった。
彼らはナチュラルの兵隊と違って直接に肉体的な快楽を追い求めない。したがって、非戦闘員が相手でもその作業は迅速である。
510機動新世界ガンダムDoll-DA 1-148:2010/10/09(土) 20:27:55 ID:???
 数羽の小鳥が囀りながら飛んで来て、ヒューブリスにとまった。
小鳥たちはモノアイのまわりをせかせかと首を振って跳ね回りながら、隙を見るように木屑を啄ばんだ。
栗鼠も来た。コマンダー・モロンの足元に寄って来た。
栗鼠は地べたの木の実を大事そうに抱えると、そのままコマンダー・モロンの帽子によじのぼって、ちょこなんと腰を据えた。
早回しのように木の実を齧り、頬を膨らました。
 Doll-DAは全身の関節が外れたように、ちぐはぐな格好で転がっていた。
ヒューブリスの銃撃を受けた装甲は、ぼろきれみたいにずたずたであった。
それは弾痕というよりも、切れ味のよくない刃物で遊ばれた風に見えた。
あちこち抉れ、左肩などは反対側に比べて明らかに小さかった。頭部も激しい有様で、右の眼窩から後頭部にかけて、まるまる潰したようになっていた。
右目のあったところから滾々と湧き出る真っ黒い液体が、地面に零れ落ちて真っ黒い水溜りを作った。
 コマンダー・モロンが自身の胸を叩いた。
「ジーンW0!」
 栗鼠がびっくりして逃げ出した。コマンダー・モロンは叩いた反動を生かして腕をぴんと伸ばし、
空気をかき混ぜるように手首だけで手のひらを回すと、勢い良くDoll-DAに向かって中指を立てた。
 ヒューブリスのモノアイがうごめき、小鳥が飛び立った。
 ジーンW0と呼ばれたヒューブリスのパイロットは「ジーンW0、鼠怪(そけい)部ビームテンタクル起動」と呟き、両手の操縦桿を横に倒した。
 ヒューブリスのテールスタビライザーがくるんと股を潜って前方に突き出された。
装甲が分割して幹を伸ばし、尖端を左右に拡張させ、全体として茸に似た輪郭に変形する。
装甲の展開されたところには、ビーム発振器である無数の疣が並んでいる。
 ヒューブリスが前進する。Doll-DAに一歩一歩と近づくごとに、疣は発光を強めて行く。最早肉迫といえる距離にまで来ると、
「デス――」
『――トローイ!』
 コマンダー・モロンとジーンW0が一斉にそう叫び、堰を切ったように光の束があふれ出た。
511機動新世界ガンダムDoll-DA 1-149:2010/10/09(土) 20:30:33 ID:???
 それはその名の通り、軟体動物の腕のようであった。
無数の疣から延びた無数の光の糸は、膨張しつつDoll-DAを絡め取った。Doll-DAの体は瞬く間に金色の腕に覆い隠された。
光の腕はぐねぐねと絶えずのたうち、制御の不安定なビーム粒子が粘液のように飛び散って木々や地面を焼いた。
間の悪いときに居合わせた栗鼠がそれを浴びて頭を無くした。こてんと倒れたのも束の間、光の腕がしなって体の残りを焼き消した。
Doll-DAの近くにあった女の体は、先だって銃撃の際に掘り起こされた土に埋まっていたので、直接にビーム粒子を浴びずに済んだ。
 Doll-DAの装甲は奇妙であった。銃創の具合を見るに、材質自体の強度はCOSタイプとそう変わりないようであるが、なかなか貫通させてくれないのである。
粘りがあるといってもいい。同じ装甲でも幾倍もの厚みがあるようで、体を覆う鎧を壊すというより、塊を削るのに似た手応えである。
ビームへの耐性も、不自然なほど高い。普通なら消し炭になっていてもおかしくない時間を経ても、Doll-DAは依然人型を留めている。
「ででんっでっでデストローイ!」ジーンW0は武器の出力を上げた。
 金色の腕がいっそう激しく脈打ち、濃密なビーム粒子が糸を引いて滴った。
腕の先が先細り、Doll-DAの装甲に開いた穴という穴の全てに押し入ろうと這い回った。
腕たちは挿入されるとなかを貫通して別の穴から顔を出した。幹を太くして穴自体を押し広げたり、先端を膨らまして内側から溶かしたりもした。
なかで激しく動かれるたびに、Doll-DAの体も痙攣した。ヒューブリスの近接兵装は、ゆっくりと、しかし確実にDoll-DAを蝕んで行った。
 Doll-DAの腹の装甲が、糊を溶かされたように剥がれ落ちた。剥がれた装甲は頼りなかった。ビームの腹に撫でられたと思うとあっけなく焼失した。
次に頭が弾けた。眼窩の名残を蹂躙する腕が十本二十本と数を増やした結果、その拡張が限界に達したのである。
腕は間隙を求めて先細り、頭蓋のなかで滅茶苦茶に暴れまわって、かつて角飾りのあったところをその基部ごと内側から押し弾いた。
額に開いた不恰好な穴から金色の糸が幾本もこぼれ出て、ゆらりゆらりと舞い踊った。磯巾着のようであった。
 角飾りの残骸が無数の腕に飲み込まれて、糸が額の穴を裂こうとしたときである。金色の光の中に、オレンジ色の点がほのめいた。

512機動新世界ガンダムDoll-DA 1-150:2010/10/09(土) 21:26:48 ID:???
「でっでいう!」
 背から突き出たビームの腕が短くなる。わき腹に絡まる腕の尖端が慌しくのたうちながら離れて行く。
ビームの光の中に染みのような暗がりが生じる。暗がりは光を引き裂き、その闇を深めて行く。
 Doll-DAの左腕である。装甲が焼け落ち、ところどころ抉り取られて骨だけのようになった黒い腕が、無数のビームの腕を押し返していた。
「デスデストローイ!」
 ジーンW0の叫びとともにビームの腕は光の奔流と化し、Doll-DAの指の間から雪崩れかかる。
しかしDoll-DAの左腕は、何ら抵抗を受けていないかのように、金色のビームを裂きながら無造作に持ち上がった。
「デストローイ! デストローイ! デストローイ!」
 Doll-DAが手を伸ばしながら上体を起こす。既にその頭部からは、ビームの腕の半分以上が引き抜かれている。
ひび割れ、熔解しかけた隻眼が赤々と輝いた。
Doll-DAがビームテンタクルの付け根を掴み、足を組み替えて立ち上がった。落ち着いた動作であった。
 Doll-DAは直立せず、ヒューブリスの股間を押さえたまま中腰の姿勢でヒューブリスと睨み合った。
すると次の瞬間、親指で抉るように握り潰した。
「デス――」
 ヒューブリスの下半身が弛緩する。茸形をしたビームテンタクルもしょんぼりとうなだれて、疣状のビーム発振器から光が失せる。
ビームの腕たちは突然に結合力を失い、粒子と化して溶け落ちた。Doll-DAの頭蓋で頑張っていた金糸はその大元を断たれ、塵になって四散した。
 Doll-DAが手を離した。それにより、ヒューブリスは己の体重を支えきれずにくずおれる。が、跪く寸前で踏み止まった。
「ででっでっででん!」
 ジーンW0が両手の操縦桿を立ち上げる。悠然と見下ろすDoll-DAの隻眼に向けてヒューブリスの両腕が伸ばされる。
「デストローイ!」
 至近距離での火砲がDoll-DAの顔面に直撃した。しかしそれは頭を仰け反らしたに過ぎなかった。
Doll-DAの首から下は直立して、不動であった。Doll-DAは正面に向き直ると、頭を左右に揺らした。
「デスデスデスデスデストローイ!」
 ジーンW0は連射した。けれども今度は首が完全に据わっているのか、Doll-DAの顔は銃弾を弾きながら、微かに震えるばかりであった。
513機動新世界ガンダムDoll-DA 1-151:2010/10/09(土) 21:28:32 ID:???
 もはや銃弾など意に介しないように、Doll-DAは左手を動かした。その左手はヒューブリスの循環液を滴らせながら、そっとヒューブリスのモノアイに乗せられた。
「ででっ!」
 ヒューブリスの足の関節で火花が散った。上方にとてつもない荷重のあることをセンサーが示した。
画面はDoll-DAの手のひらを大写しに映し、いつしか罅割れて消えて行った。
ヒューブリスの足腰は押すも引くも出来なかった。もし力の均衡が少しでも崩れれば、途端にぽっきりへし折れる。じたばたしていた両腕がそれを察して硬直したが、荷重の増えるのは止まなかった。
 初めに股が裂けた。ビームテンタクルの基部が壊れたせいで、脆くなっていたのである。
こうして胴体が荷重を全て引き受けることになり、次にモノアイ付近が大きく陥没した。
その陥没は間もなくコックピットに伝わった。コックピットの内装が拉げるとともに天井が膨らんで、ジーンW0の頭上に伸し掛かった。
 ジーンW0はその職務に忠実であった。両手は操縦桿を握り、シートには最期までかしこまっていた。
全身の腱と意識が切れた後、割れかかった頭が骨を砕きながら胴体の中に押し込まれて行った。
車に轢かれた蛙のように、ジーンW0は骨ごとぺしゃんこになった。


514機動新世界ガンダムDoll-DA 1-152:2010/10/09(土) 21:35:15 ID:???


 Doll-DAの動作はつまるところ、我が子に謝罪を強いる母親が、勢い余って潰してしまったような感じであった。
報復めいた折檻においてやられる側はやる側より苦痛の多いのが必定である。疚しからざる情愛による行為は必然的にある種の幸福感を伴う。
生理不順の金切り声と大人の腕力をあびせられる相手の方は、異性愛的な悦楽を見出さない限り心の涙なるものを察したって、惨めが増すばかりである。
己の罪深さを思い知り、すっかり反省してしょげている。人間未満の動物のそういう姿を見て全く微笑ましく思わないと言うのは謙遜であろう。
伝道者は改心者の名をさも得意げに挙げるし、躾の厳しさを誇らない親は滅多にない。
毛に覆われた人間でも反省することは出来ると一般に云われるが、それは、させることが出来るという意味でもある。
 さてヒューブリスの有様はというに、そのようにして打ちのめされた子供の心という比喩が妥当する。
いわば死をもった土下座である。切腹したように体の中身を地面にぶちまけ、もはや二度と立つまいと拗ねるように潰れている。
介錯は必要でない。MOSタイプにはもとより首が無く、首を据え付けるに都合の良い箇所にもDoll-DAの手形がくっきりついている。
 ここで突然、Doll-DAが涙を流した。緑色に発光する涙であった。
物質的にもいじけているヒューブリスを見下ろして、自分の怪力がしでかしたことを悔い始めたのか、相手の改心を確信して感動しているのかは定かでない。
Doll-DAは腕を広げて天を仰いだ。胸の装甲が人間の深呼吸のように上下した。
「コード49MO! ジーンW0! 49MOジーンW0! ででっでデストローイ!」
 ジーンW0の反応が途絶えたことによりアーミー・モロンたちが銃撃を再開したが、彼らは対人用の武器しか携帯していない。Doll-DAは億劫そうに首を回したきりであった。
 Doll-DAは深呼吸を終えると、いきなり頭を抱え出した。世界に対するMS的な苦悩を表現しようというのではなく、ヘルメットが窮屈で苦しんでいるといったような様子であろう。
兜頭はガンダムの主だった象徴である。Doll-DAは半壊のそれに手をかけて、どうにか外そうと身を捩じっていた。
ふけを取るように頭を掻き回っていた指が頭頂部に取っ掛かりを見つける。腕が一瞬引きつると、真ん中からぐぱっと裂けた。
515機動新世界ガンダムDoll-DA 1-153:2010/10/09(土) 21:39:12 ID:???
裂けた断面で、緑色に光る筋繊維に似たものが千切れて行く。裂け目の奥には、粘膜を思わせるぬらぬらした光沢が覗いて見えた。
「グレネード!」
 粘膜部位なら脆弱に違いない。そうコマンダー・モロンがひらめいたかもわからない。
前方のアーミー・モロンたちがDoll-DAに駆け寄って手榴弾を投げた。大半が弾かれたが、二三個は上手く中に転がり込んだ。
数秒後、「デストローイ!」の掛け声に合わせて、Doll-DAの足元に散らばった手榴弾とDoll-DAの頭が爆発した。
 爆煙が晴れた。真っ二つに割れた頭蓋が地面に落ちて音を立てた。Doll-DAの手が、落としたのである。
Doll-DAの肩の上には真新しい頭部が乗っていた。
 その頭は、見るからに小さかった。その小顔と体の対比は、丈の合わない肉襦袢を思わせた。
それは半ば透明で、虹色の艶を帯び、無数の血管めいた蛍光色の毛管が、真っ黒い芯を包み込んでいるのが透けて見えた。
額にはダイヤ形の飾りがあり、その左右から細長い二本の角が生えている。嘴の上には鼻をそげ落としたと思わせる二本のへの字の溝がある。
双眼の下に泣きはらしたような隈取があり、そこから頤にかけて細い線が引かれてある。
 それは正しくガンダムであった。
顔の横では、尖った耳か羽飾りを連想させる板切れが額の角と平行に突き出ていて、そこが獅子めいた、或いは少年じみた余分な印象を与えるが、
角と目と兜を具えているのであるからやはりガンダムといえた。
 への字の溝から燐光が零れ、ガンダムドルダの体が膨張する。装甲が盛り上がり、亀裂が走った。
胸の装甲が飛ぶ。内圧で弾かれたのである。装甲は樹木を倒し、その細かい破片は弾丸のように森の奥へ消えて行った。
 暫くするとすね当てが割れ始めた。小さな破片が飛び、それを受けたアーミー・モロンたちがあうあうと声を上げる。
破片を頭部に受けた者がばたんと倒れる。折り悪く臍の下に受け、情けないうめき声を漏らしながら崩れ落ちた者もある。
コマンダー・モロンが防御の指示を出すより早く、大きな破片が飛来してアーミー・モロンの首を跳ねたり、胴体を貫いて木々に張り付けにしたりする。
516機動新世界ガンダムDoll-DA 1-154:2010/10/09(土) 21:41:10 ID:???
 ガンダムドルダの装甲は弾け出すと止まらなかった。それは連鎖した。
コマンダー・モロンを含めた数体のアーミー・モロンは倒れた木の陰に身を隠し、それをやりすごそうとした。
しかし破片の飛来が静まりかけたかと思えば、今度は凄まじい衝撃波に襲われた。
 衝撃波は木々を薙ぎ倒し、土砂をひっくり返し、ヒューブリスの残骸や、生きているアーミー・モロンと死んでいるアーミー・モロン、森を駆け回る改造小動物たちなど、
要するに自然公園の小区画にあるものの一切を吹き飛ばした。その中にはナギ・ヴァニミィと呼ばれた女の体もあった。そうして、人間の形をしていたものはみな、ドルダを除いて埋まってしまったのである。

 樹木は規則正しく傾いでいる。上空から見るとそれらの列はきれいに円を描いて、押し寄せた瓦礫の高波を支えているようにも見える。
瓦礫の盛り上がりもまた、円を描いている。そこには木と土の香りが散っていて、土砂の隙間から、枝や根や人間の手足が覗いていた。
円の内側へ進むと切り株や穴ぼこが続き、更に進むと窪地である。すり鉢状に抉れた地面から、断線したケーブルがはみ出ている。
その中心に、ガンダムドルダは立っていた。
 膝の裏や脇の下、奥まったところにある装甲の残骸が瞬時に色褪せて風化する。
ガンダムドルダの体は一回り小柄になっていた。
全身の装甲は頭部のそれと同様に半透明であったが、
羽化した蝶の羽のように、外気に触れた装甲はしだいに曇りガラスのように曇って行き、そうしていつしか、光を遮る純白と化した。
ツインアイの輝きも、赤から緑に変色する。
「Doll-DA、アップデート完了」
 少年はDoll-DAのコックピットでそう告げた。


517機動新世界ガンダムDoll-DA 1-155:2010/10/09(土) 21:43:48 ID:???
 何が起きて、何をしたのかもわからなかった。さっきまでの自分はただもう無我夢中で、寝ぼけたように手を動かしていた。
いつの間にか目の前に首なしのMSがある。それが両腕を上げて銃撃を浴びせて来る。自分はそれに手を乗せる。
首なしMSは簡単にぺしゃんこになる。そうしてから今度はひどく動き辛いことに気が付いて、コンソールを滅茶苦茶に操作する。
すると余計なものがみんな外れて行き、すこし思い切りアームレイカーを握ると、あたり一面が吹き飛んだ。
今はもはや邪魔なものはなにもない。自分の頭も、恐ろしいくらいすっきりしている。
「そうだ」
 アランはアームレイカーを動かした。磨いたように真白く、新品のように擦り傷一つ無いMSの手の平が持ち上がった。
「僕には、わかる」
 MSの指を順々に折り曲げる。
「こいつの、ドルダの動かし方がわかるんだ」
 ドルダは薬指だけを立てて、それをくるくると回したり、それで宙に文字を描いたりした。
アラン自身より器用である。「ははっ」という笑い声が漏れた。
「凄い。このドルダ凄いよ」
 とにかく素晴らしい気分であった。ものすごく巧みな相手との交合を終えたときのように、大げさに笑うのもはしゃぐのもなんだか勿体無いことのように思われ、
ましてや感想を口述するなど危なげでしたくなく、ただ余韻を味わっていたい、そんな晴れがましい気分であった。
顔の濡れているのは気にならない。下着の内側に溜まったひんやりと硬い液体でさえ、心地良く感触される。
寧ろその部分の衰えない体温で、暖めてやりたいくらいである。膝の上にハスハという少女の腰を乗せているせいで、そこを強張らせようと力むとむず痒い鈍痛を感じた。
 今の自分は何だって出来る。アーミー・モロンであろうが首なしMSであろうが、超常現象であろうがどんと来いという感じである。
この全能感はスメッグを使ったときとも少し違う。スメッグを使えばあらゆる筋肉と神経が活発になるが、こうも落ち着いてはいられない。
今は全然そわそわしないのである。ありきたりな喩えであるが、今まさに自分はこのMSとともに生まれ変わったと、そういう風にも思われた。
518機動新世界ガンダムDoll-DA 1-156:2010/10/09(土) 21:48:09 ID:???
 アランは笑った。それは喜悦を堪えられずに出るような意地汚い笑いではなく、自然な、明朗な笑いであった。
 ドルダも笑った。アランの息に合わせてへの字の溝が燐光を吐いた。
「アラン?」
 ハスハが目を覚ましていた。
「や、おはよ」
「貴方……なの?」
 ハスハは目が会うと、何か恐ろしいものでも見たような顔をした。
「血が、血が出てる」
「それは君、怪我してるんだから」
「違う。私ではなくて、貴方が」
 ハスハの手がアランの頬にそうっと触れて、離れた。指には滓混じりの赤いものが付いていた。
「うえ、なにこれ」感じからして、それは目のあたりから涙のように垂れている。アランは目を擦った。
「触っては駄目」
「別に何ともないよ。全然痛くないし。君のが付いたのかもしれない」
「ほんとうに、痛くないの」
「ほんとにほんとう、痛くないってば。ったく、信じてよ」
「でもやっぱり、触れるのはよくないわ」
「しつこいね。今はそんな――センサーに感?」
 警告音に続いて突き飛ばされるような衝撃と、遅ればせの風切音が来た。出し抜けに飛来した弾丸がドルダに直撃したのである。
 ドルダが仰け反りつつ退いて、地面に足すべりの跡が着く。が、直ちに踏みとどまって背筋を伸ばした。
 粉塵の晴れて現れたドルダの胸には、ほんのちょっとの黒ずみと、ほんのちょっとの凹みがあった。
 暗がりの奥に黄色い光点が見えた。モノアイである。
「首なしの同類!」
 自動で索敵が始められ、画面が暗視モードに切り替わる。
「一、二、三機。いや、奥にまだ」
 今や五機のMSがドルダを取り囲んでいた。直接ドルダに狙いを定めているのは正面の一機である。
砲撃の威力は大きかった。先のMOS-Hとは武装の種類が違うのであろう。両腕の砲身がやや大振りで、腰にぴたりと肘を据えてどっしりした押し出しである。
「……何が、起きているの」
 枯れそうな声であった。アランが膝に乗せているとはいえ、被弾の負担はハスハの生命に関わる。けれどもアランは得意げに、
「僕はこいつを使えるということさ」と、アームレイカーを掴み直した。
519機動新世界ガンダムDoll-DA 1-157:2010/10/09(土) 21:53:28 ID:???
 首なしMSの銃口が光るのとアランのこめかみからざらりとした感覚が突き抜けるのとは、全く同時のことであった。
「SE――」
 少年の口が少年の知覚に先立って声を出す。発射された弾丸は一直線に向かって来る。
それは大気を裂き、穿ち、そして思春の自己濫費の如く一切を振り捨て、後に残したものを省みることなく、唸り声を上げながら進んで来る。
「――フィールド!」
 ドルダの前方の空間が変質した。粉塵の残滓も遠い夜景の瞬きも、一切の動作を止めた。
そこだけ一旦静止画を撮って画面に切り貼りしたみたいになった。
 そこに弾丸が押し入った。他のあらゆるものが静止したなかで弾丸は運動し、己が作用を空間に及ぼした。
裂かれた大気が波紋を形作る。塵が弾丸に押し退けられる。弾丸の尻の痕跡は蛇腹として残される。
大気そのものを水飴に挿げ替えたようにも見え、コーヒーに垂らしたミルクのように、弾丸の軌跡は大気に輪郭をつけたと思えばしだいに溶けてぼやけて行く。
そしてぼやけた大気が弾丸を追って逆流する。蛇腹の外を通って弾丸の正面に回り込み、再び裂かれて波紋と化しながらも、絶えずしつこく纏わりつく。
 不意に弾丸が減速した。弾丸は抵抗を受けていた。数知れぬ循環の末に、大気が弾丸の横暴にうんざりしたのかもしれない。
大気は結束して弾丸を止めにかかった。
弾丸から受けた抵抗をそのままこちらの抵抗力に転じ続け、もはや空気抵抗と称されるようなてんでんに摩擦しつつ逃げるしか出来ないものではなく、むしろこちらから押し返してやろうと、気体らしからぬ反作用を発揮していた。
硬い大気が真正面から弾丸の運動を否定する。薄く幅広の大気が横合いからなだめにかかる。
下では散り散りの大気がひそひそ交わし、後ろの希薄な大気はというと、為せばなる、全ては気の持ちようだと断言して弾丸を煽っている。
しかし物質の魂は公共的に承認されていないので、この弾丸が物質である以上、気は体の持ちようとならざるを得ない。それに気体は気体にしか直覚できないから、固体である弾丸が忠告を聞き入れられるはずもない。
520機動新世界ガンダムDoll-DA 1-158:2010/10/09(土) 21:55:44 ID:???
減速を始めたが最後であった。弾丸の運動量はその質量とともに一挙に減少した。SEフィールドへの侵入から前進の停止に至るまで、それは殆ど瞬間であった。
色恋の秘事に立ち入られた青少年の心の働きと同様、まるで瞬間の出来事であった。相手の有無や保存測に関わりなく、盲目的な激情が盲目的な平静に一転する。
 弾丸はドルダの手前で停止した。空間を波打たせ、自身も蜃気楼のようにゆらめきながら空中に囚われていた。
SEフィールドは引力さえも遮断した。空間的にも時間的にもこの弾丸という存在の重みは消失しかけていた。人道的比喩を用いるなら、借金の見込みの外れた親友である。
「あっちで――」
 アランがドルダの右腕を振りかぶり、
「――爆ぜろよ!」の声とともに真横に払うと、弾丸が撃ち出されたときと遜色ない勢いで真横に飛んで行き、通りがかりにいたMOS-Hの胸を貫通した。
膨れ上がった廉恥心と同じく、弾丸は破裂しないではいられなかった。MOS-Hは体はそのまま、コックピットにはぐちゃぐちゃになられて、動かなくなった。
「そうだ。僕にはこれが、SEフィールドが使える。もう銃なんて怖く無い」
 アランは口の端を釣り上げた。ハスハが息を呑んだ。ドルダの二つの目が光る。
首なしMSはアランたちを追いかけたアーミー・モロンの仲間である。なかにはきっと、同じアーミー・モロンどもが入っているに違いない。
「よくも僕を怖い目にあわせたな!」
 穏やかな怒気と、言い知れぬ喜悦を孕んだ声が、即席の荒野に響き渡った。
 Doll-DAはアラン・イディットという新たなパイロットを得た。
 彼は彼の主であり、彼は彼の僕であった。彼は地を踏みしめ、彼の敵を見据えていた。
彼らの目は爛々と輝いていた。彼らの敵意は重なった。彼らはもはや、一心同体であった。
521機動新世界ガンダムDoll-DA 1-159:2010/10/09(土) 21:59:55 ID:???
 そこは墓場であった。門には『COLONY BENSALEM』と刻まれてあった。
星空の下には海も緑もなく、砂だけが広がっていた。
『――こうしてガンダムドルダの新生は始まった』
 墓守の声が響いた。それを聞いた者は死者を除いて一人もなかった。
 墓地には墓石が立っていた。
『HUMAN
 B.C.……00‐….C……』
 墓標は掠れて読めなかった。墓石の傍らには、壊れた人形が散らばっている。



つづく
522通常の名無しさんの3倍:2010/10/09(土) 22:04:04 ID:???
規制やら何やらで投下が遅れましたが、以上で第一話終了です。
523通常の名無しさんの3倍:2010/10/09(土) 22:07:04 ID:TBYk7Y3l
GJ!
524バルド ◆J9EuaWdX1coE :2010/10/28(木) 21:11:31 ID:3M4uZXvq
Wiki更新完了です。
邪気眼ドルダの収録に加えて、キャラ紹介とメカ紹介ページに画像を表示するようにしました。
525バルド ◆J9EuaWdX1coE :2010/10/28(木) 22:04:32 ID:???
http://pig.oekakist.com/g_dollda/dat/IMG_000002.jpg
テクニセクス
【型番】MAS-2100
【武装】股間部ハイメガキャノン
    股間部バルカン
     プラズマソード
【解説】ローズを参考に股間部ユニットを搭載した機体。
故に後方支援に特化しているが、マーライダーと違い機動力もある。
526通常の名無しさんの3倍:2010/10/29(金) 09:53:03 ID:mGL0x54h
奇抜なガンダム
bP 永野番百式改(顔が3つある、何故か額に「Z」)
bQ ターン・エー(説明の必要なし、犯罪的なカッコ悪さ)
bR フォビディユン・ガンダム(被り物、鎌、変すぎ)
527通常の名無しさんの3倍:2010/11/02(火) 17:37:26 ID:aeQ5FKXl
保守
528通常の名無しさんの3倍:2010/11/11(木) 18:19:48 ID:kC0DxiGw
保守
529通常の名無しさんの3倍:2010/11/11(木) 18:25:50 ID:???
恰好悪さで言ったら名前知らないけど00の映画版ガンダムがズバ抜けてるぞ
530通常の名無しさんの3倍:2010/11/11(木) 22:38:29 ID:1HbV2/J3
Xの敵役の兄弟の兄貴の方が乗ってたガンダムもヤヴァいね
カニ?かw
劇中で「ゲテモノガンダム」呼ばわりw

奇抜なのはあるけど、カッコ悪いのは少ないね
531通常の名無しさんの3倍:2010/12/09(木) 00:37:11 ID:O/5M3m/b
奇抜さとかっこよさ別なのか
532通常の名無しさんの3倍:2010/12/09(木) 03:12:49 ID:???
かっこ悪さなら
種死のドラム缶みたいなファンネル積んだやつじゃね?

プラモ50円で売られてたやつ
533通常の名無しさんの3倍:2010/12/15(水) 17:14:55 ID:???
カオスのことはもう許してやれよ
534通常の名無しさんの3倍:2010/12/16(木) 02:58:07 ID:???
奇抜さなら
セラヴィだろうな
まさかガンダム背負ってるとは思わなかった
隠し腕や8本ビームサーベルもよかったし
535通常の名無しさんの3倍:2010/12/25(土) 00:53:51 ID:GJVT1XB7
セラヴィは初めて見たとき何が起きたかわかんなかったな。
そういや隠し腕の操縦ってどうやってんだろう。
536通常の名無しさんの3倍:2010/12/25(土) 06:40:12 ID:???
イノベだし脳量子波じゃね?
奇抜って言ったらやっぱりデビルガンダムかターンAかなぁ
ゲテモノならイージスガンダムも変形っぷりが素晴らしいぞ
537通常の名無しさんの3倍:2010/12/30(木) 17:04:06 ID:???
規制で書けなかったが、邪気眼どるだ作者にGJをば。
最後、人間の墓標に思わず総毛立った。

そろそろTVシリーズでもこれくらいブッ飛んだ設定やってもいいんじゃないか、
と思うけど、まずやらないだろうな。ガノタは保守派多いし。
00が道は開いてくれたけど。
壮大な話になりそうだが、邪気眼はなんとか完走して欲しい。
538通常の名無しさんの3倍:2011/01/13(木) 16:49:51 ID:pTkpdolg
ほしゅ
539通常の名無しさんの3倍:2011/01/13(木) 19:45:27 ID:???
最近プラモが発売されたノーベルガンダムだろ
540通常の名無しさんの3倍:2011/01/14(金) 14:51:16 ID:???
サイコガンダムだな
MSをあそこまででかくする意味が全くねぇ
まあ、MS自体人型である意味がないから当然なんだが
MAを変形さてまで何がしたかったのかさっぱりわかりません
541通常の名無しさんの3倍:2011/01/23(日) 17:04:52 ID:zmaC5uU3
ユニコーンの次のガンダムがどれだけ奇抜になるか期待したい
542通常の名無しさんの3倍:2011/01/23(日) 20:09:19 ID:Pfl4reyr
機動戦士ガンダム*(アスタリスク)
【名称】ガンダム*
【型番】ARC-0013
【全高】18.20m
【重量】12t
【ジェネレーター出力】2000kW
【武装】ビームライフル
    ビームサーベル
    頭部バルカン砲
【特殊武装】ショートスモーク
【解説】地球連邦軍宙域自衛部隊"アークトゥルス"に所属する試作機。
ガンダムと呼ばれる従来機の5倍以上の演算処理を誇るOSを搭載している。
特殊武装にショートスモークと呼ばれる兵器を搭載しており、
煙に触れたMSを基板レベルで動作不良を起こす事が出来る。
これにより、一時的に動きを止める事が出来る。
543通常の名無しさんの3倍:2011/01/31(月) 00:51:44 ID:xIfV0jhU
保守
544通常の名無しさんの3倍:2011/01/31(月) 03:40:55 ID:7LtdUpLq
中華ガンダム
545通常の名無しさんの3倍:2011/02/05(土) 02:06:56 ID:???
>>544
奇抜さなら間違いなく一二を争うな
546通常の名無しさんの3倍:2011/02/16(水) 17:45:05 ID:???
チャイニングガンダムか
547通常の名無しさんの3倍:2011/02/26(土) 21:07:11.22 ID:Iy3fjqi7
中華優勝
548通常の名無しさんの3倍:2011/03/11(金) 19:04:45.70 ID:zYkTTglF
地震無事か?
コロニーは海に落ちたか
549通常の名無しさんの3倍:2011/03/13(日) 23:53:16.07 ID:l5Q5teEe
大丈夫だ!それよりユニオンからの支援に感謝だな!
550通常の名無しさんの3倍:2011/03/19(土) 16:09:14.00 ID:???
ポポポポ〜ンガンダム
551通常の名無しさんの3倍:2011/03/20(日) 23:02:36.50 ID:???
動物だからダンクーガのほうだなそれ。
552中華ガンダムネタ:2011/04/02(土) 00:51:29.85 ID:???
――歴史は繰り返す。
 はじまりの人々は、微笑んで別れた。いつか、再びまみえるとき、互いに抱擁することを約束して。
 ある者たちは南へ、ある者たちは東へ、ある者たちは北へ、ある者たちは海の向こうへと、それぞれの約束の地を求め旅立った。
 幾千、幾万もの年月が過ぎて、彼らは再会した。
 約束は破られた。
 握手ではなく剣と槍が、言葉ではなく毒の矢が交わされた。
 男たちは剣を、女たちは盾をとった。そして老人たちは毒杯を。
 子供たちは喉笛を噛み合い、馬たちは己の流した血潮の海で溺死した。
 再会した彼らは、殺し合いを始めた。
――歴史は繰り返す。
 つかの間の平和を経て、人々は再び敵味方に別れて殺し合う。殺し合いの間に、世界は絶えず変転し、武器は絶えず進歩する。
――歴史は繰り返す。
 しかし人類は強大になり過ぎた。強大な力は、いっそう強大な力を生じさせ、ついに人々は、自分自身、人類そのものを殺し尽くせるまでの力を手に入れてしまった。
――もはや、歴史は繰り返せなかった。

553中華ガンダムネタ:2011/04/02(土) 00:52:40.99 ID:???
 グレゴリオ暦末期である。
 愛と平和の名の下に単一の情動へと向かうべく抑圧されていた人々の感情が、レイシズムとして燃え上がった。
 いかに後の世の歴史家がこきおろそうとも、その時代に生きる人々にとってそれは、思想のための戦いであった。
 倫理は諸宗教の共通項にあらず。諸宗教は単一の倫理の表現にあらず。信仰とは道徳の手段にあらずして目的なり。
 白は白であり、黒は黒であり、黄は黄である。
歴史も自然も飛躍しない。まだら模様などありえない。群へと溶解するくらいなら、限りなく純粋な個でありたい。
 それは平等を拒み、安楽を、浮薄を、阿片を拒む意志であった。
 もはや生の目的は飲酒と放蕩と伊達気取りではない。
宣伝と博愛と逃避でもありえない。無なるものでは無論ない。
 人々は再び目を開け、口を結び、耳を澄まし、武器を手に求め始めた。
 孤独に耐えうる精神を取り戻すため――
 出来合いでない友愛を手にするため――
 法則と制度と生殖とへの屈従という本能に打ち勝ち、新たな意志の自由を創り出すため――
――人類は、あえて歴史を繰り返した。
 結論から言おう。このグレゴリオ暦最後の世界戦争で、一つの種族が死に絶えた。
黄禍と呼ばれ、世界全体に浸透していた民族である。
 多数の憎悪は共通の敵――大衆なるものの御前に捧げる生け贄――を求め、諸国家は地球に増えすぎたその民族を、人類共通の敵と定めて武器をとった。
 各地で赤狩り、黄狩りが行われ、信仰と殺戮の波はその民族とよく似た民族をも巻き込み、世界中に伝播した。
結果、ついにその民族は滅び、海豚と鯨が大量発生したのである。
 こうして半数以上を失った人類は、その戦争で得た技術力で宇宙へと進出し、グレゴリオ暦は終わりを告げた。
554中華ガンダムネタ:2011/04/02(土) 00:54:48.30 ID:???
 百年の時が流れた。
 宇宙暦100年――歴史は再び繰り返す。
 テロ組織NGP(ネオグリーンピース)のコロニー襲撃事件の最中、一体のMSが目撃された。
連邦軍にもNGPにも与せず、宇宙を駆け巡る黄色いMS(モビルスーツ)
 ガンダムと呼ばれる伝説的なMSに類似したそれは、左腕に固定したナイフのような武器で連邦軍とNGPのMSを一体一体貫いては撃墜し、貫いては撃墜して去って行く。
その動きを封じようとMSたちが捨て身で体当たりしても、肩やふくらはぎに生やされた鋭いトゲに、串刺しにされる始末である。
 黄色い影が敵味方の区別なくMSを屠って行く光景が目に焼き付き、パイロットたちは争うことも忘れて、口々につぶやいた。
『黄禍……』
『黄禍だ……』
『黄禍(チャイニング)、ガンダム』
555中華ガンダムネタ:2011/04/02(土) 00:57:35.99 ID:???
 青年は傍受した通信を聞き、愉悦に口元を歪めた。
「チャイニングガンダム、チャイニング、チャイニングチャイニング、チャイニングガンダムか……いいねぇ。いいじゃないか。素敵だ。最っ高のネーミングだ!
まさしくこいつの! この人民の! この革命の剣にふさわしい名だ!
おいシャオ! シャオ・リーベン!」
 サブウインドウが開き、黒髪の儚げな容貌の少女が映し出される。
「今の聞いたろ? チャイニングだってよ!
気に入った! こいつは今日からチャイニングガンダムだ! チャイニングガンダムで登録し直せ!
そして愚民どもに教えてやれ! 地球だろうが月だろうがコロニーだろうが火星だろうがお茶の間だろうが、全宇宙に放送してやるのさ!
革命……そう! 革命だ! 貴様らのしみったれた文化の、大革命が始まるとな!
 チャイニングガンダム――この黄禍が! 黄色い悪魔が! 貴様ら穴蔵の白坊主と宇宙ぼけした黒坊主どもに、たんまり引導をくれてやると!」
 少女はこくんと頷いた。
「ィよーしよしよし! いいこだシャオぅ! こいつら殺っちまったらァ、たぁんとナデナデしてやるからなァ! 
――鮭をスモークしておけ! 昼食には帰るッ!」
 通信を終えてチャイニングガンダムが突進する。もはや連邦軍とNGPは休戦し、狙いをチャイニングガンダム一機に絞っている。
「っふ。いいぜぇ……いいぜいいぜェ! 素ん晴らしいぜェッ!」
 弾丸の雨をかいくぐり、すれ違いざまに左腕のブリッツ・ダガー(雷公錫)を一閃する。
コックピットブロックを穿つと同時に謎の電光を流し込み、中のパイロットを直接に焼き殺す。
接触回線では断末魔が最後まで聞き取れない。しかし精神の限界まで広げられた想像力の翼は、克明にも克明なパイロットの今際の際の幻像を、青年の脳裏に繰り出していた。
「そうだよ! 怯えて竦んで漏らしちまえ! そして抗ってみろ! 力の限り足掻くがいいさ! お返しにこっちも全身全霊でェ――はずかしめてやる!」
これは、アルーアル・モータクトゥスという――多少精神を患っている――革命闘士の物語である。

起動四川士Cガンダム

556中華ガンダムネタ:2011/04/02(土) 01:01:03.82 ID:???


「肌が黄色くて悪いか! 俺は人間だよ!」
「鯨や海豚は賢いからさぁ、殺しちゃーだめなんだよなぁ。
わかるかなぁ? わかんないよなぁ、イエローは能なしだものな」



「貴方がアルーアル・モータクトゥスですわね。
わたくしはケン。ケン・チャナヨウ。見ての通りアジアンですわ」
「で、あんた何?」
「わたくしたちは差別されて来ましたわ」


「貴方だって、この世界は間違っていると、名を奪われ、不当に虐げられて来たわたくしたちには、未来永劫に謝罪と賠償を要求する権利があると、そう思っておられるのでしょう?」
「こっちくんな、関わんな」



「小娘? お前は」
「シャオ・リーベン……シャオでいい」
「肌が白いな」
「でもアジアン」



「――黄禍大戦の数年前に、黄砂対策費という名目でとある軍事計画に莫大な資金が投入された。
リヴァイアサン計画――人工生命群の自己進化・自己生成によって、人知を越えるものを創造しようという計画。いわば現代のナノマシン技術を先取りしたオーパーツともいうべきもの」
「シャオの祖先は資金と技術を、アルの祖先は土地と資材を、そしてわたくしの祖先はそれらの両方を提供したということですわね」


「グレゴリオ歴2011年、共和国四川省成都市の遊園地に、突如として奇怪なモニュメントが建造された。
私の祖先の作り上げたモニュメントの意匠を、剽窃したようなモニュメント。
張りぼて同然のそれの建材がナノマシンの苗床として選ばれた。
つまりリヴァイアサン計画とは、『天郷2号』という張りぼてを、数十年の年月を経て究極兵器へと進化させる計画だった。誤算があるとすればそれは――」
「黄禍大戦。共和国人はほぼ全滅、ほかのアジアンもほとんどが核で焼かれちまって、鯨の餌だ」
「私の祖先は黄禍大戦の最中、密かに天郷2号を回収し、贋作(もとから贋作のようなデザインだけれど)とすり替えて、今度こそ誰にも知られない場所(もはや人の立ち入ることができない施設)に保管した。
今は無力でも、いつか再び、東アジア共同体の理想を掲げるときのために」
「わたくしの祖先は、一番はじめにその案を思い付かれ、皆に教えて差し上げた賢人でしてよ」
557中華ガンダムネタ:2011/04/02(土) 01:06:36.49 ID:???
「天郷2号、俺になにを見せようというんだ……」

「そうか、そーかそーか、そうか……だったのか。俺は、このために……共産主義の理想――赤き清浄なる世界を実現するために生まれてきたのか」


「初出撃ですわ。アル、よろしくって?」
「ああ。戦い方も生き方も、こいつが全部教えてくれる」


「やりすぎでしたわね、アル。今回のわたくしたちの目的はあくまで示威、虐殺ではなくってよ」
「似非ブルジョアがよく言うぜ。そんなに手柄が欲しいのか、キムチ女」

「アルは驕っていますわ……あら、どうかなさいまして? シャオ?」
「私には、彼がこわがっているように見える」
「こわがるですって?」
「ガンダムに心と体を作り替えられるという予感が、彼を粗暴にしているのかもしれない」



「生きてるかおっさん? ……ったく、たかが野良猫のためになにやってんだか」
「なんせわたしは軍人だからな。軍人は市民を守るのが義務である。そして野良猫も市民である。そういうわけだ」
「頭、打ったんだな」



「あの紅いビームフラッグは……まさか連邦軍の――」
『黄禍の再来が、よもや君であったとはな……』
「――粛清の赤旗(レッドフラッグ)、レニ・スターリングとは! あんたこそ! あんただったのか!」
『戦場は広場ではない! 退け! 少年!』
「それでもしゃしゃり出るのが! 革命闘士ってもんだろう!」
『イデオロギーは死んだのだ!』
「資本主義の豚のいうことか!」



『――ここに至って私は人類が今後、地球を海豚と鯨に明け渡すべきだと確信したのである!
それがメルヴィ・レイを南極に落とす作戦の、真の目的である!
これによって海洋汚染の原因である地表に巣くう人非人たちを粛清する!
諸君! 海豚たちの新天地を開くため、鯨たちのための世界を実現するために、あと一息、諸君らの力を私に貸していただきたい。
そしてその日は、真のアースデイとして、蒼き正常なる宇宙の墓標に、永遠に刻まれるであろう!』
『ジーク! ポール! ワトンソ!』
『ジーク! ポール! ワトンソ!』
『ジーク! ポール! ワトンソ!』

「チャイニングガンダムだけで手いっぱいだってのにNGPまで……大尉?」
「狂信者め。ついに始める気か」
「スターリング大尉は――」
『無論、わたしも阻止作戦に参加するさ。NGP総帥、ジャン・ジャック大佐とは今度こそ決着をつけねばなるまい」
558中華ガンダムネタ:2011/04/02(土) 01:09:11.83 ID:???
「なんだあのMAは。海豚型をしている?」
『ゆけい! ジェノサイ・ドルフィン! 蒼き清浄なる世界のため、二本足の鉄獣どもを屠るがいい!』
「ぬるぬる、いや、ぬめぬめりした感覚とでもいうのか? サイコミュ的な精神波を、自ら発している? サイコミュの故障……違う、人じゃない? まさかあれに乗っているのは……」
『そう! 海豚である!』
「海豚だと?」
『人類は終わった種族なのだ。有史以来、人類は互いに争い嘘をつき、喉笛を切り飽きずここまで来てしまった。
もはや矯正など望めない。一切は過ぎ去った。一切が手遅れなのだ。
故に私ジャン・ジャックは、地球圏の支配権を、ヒトの上位種に譲渡すると宣言した』
「このサカナどもがそうだというのか! ずいぶんと生臭い、うさんな神サマだな!」
『赤き世界の少年よ、教えてやろう。
俗衆どもにとっては象徴などどんなものでもよいのだ。ヒトは信仰なしに生きることはできない。信仰のないヒトなどどこにもいない。
たとえそれが鰯の頭だったとしても、神を殺してしまった我々人類は、喜んで崇めるというものだ。
不合理故に我信ず、不合理故に我欲す、不合理故に我生きる! 
そして私も、不合理故に人類の生得権を、鯨と海豚に明け渡すという理想を、信仰する!』
「なっ……未来予知だと! 海豚のくせに生意気な!」



「ガンダムがさ、言ってるんだよ。壊せ、壊せ、すべてを壊せってさ……これが、共和国人の積み重ねてきた血の記憶だ。
結局、共産主義なんて、誰もほんとうにしてはいなかったんだ。
血への渇望、ただ、それだけだ。
あれに乗ると、俺は引きずられてしまう。死せる共和国人の亡霊に、憎悪と嫉妬と欺瞞と残虐に、とりつかれてしまう。
俺が俺じゃなくなる。俺じゃなくなって、死せる共和国人たちに、ヒトの形をしたけだものになっちまうんだ。
怖い。俺が死ぬ。俺の体は死んでいないのに、俺が死ぬ。
イヤだ。俺は俺のままでいたい。怖い。怖いんだよ、シャオ……」
「たとえあなたがあなたでなくなる日が来るとしても、私は、あなたを支援する」
「シャオ、シャオ・リーベン……」
「支援すると、決めたのだから……」
559中華ガンダムネタ:2011/04/02(土) 01:13:38.10 ID:???
「なぜ裏切った! ケン・チャナヨウ!」
『貴方が! わたくしの思い通りにならないから!』
「お前はお前のエゴを押しつけたいだけだ! 結局お前は誰も愛しちゃいないから、お前自身の映ったそいつが毒みたいに錯覚される!」
『愛がエゴ以外のなにものだというんですの! 赦し合う? 意志を尊重し合う? 自由を確保し合う? 気侭な欲望を黙殺し合う? 
――そんなものは愛する能力も資格も持たない連中のいうことですわ! 脂ぎった寝床限りの口約束! 豚並みの肉欲を飾り立てて大威張りな、エゴすら持てない化粧猿の相互売淫――!』
「何っ、何をした!」
『……カウンターナノマシンを打ち込みましたわ、ガンダムを暴走させる。貴方とわたくしはガンダム自身から発せられるメガ粒子の檻の中で、砂へと分解されますのよ!』
「ええい! コントロールが!」
『いっしょにとけてゆきましょう、アル。砂になって、まじりあって、完全に一つのものになって、永劫に星の海を泳ぎ続けましょう。
そう……ずっと、いっしょですわ』
「チャイニングガンダムはァッ! 伊達なんだよ!」
『装甲をパージ? いえ、分解、四方に散った? 自ら量子化して、再構成したというんですの?』
「裏切り者の雌豚はァ、アルーアル・モータクトゥスが粛清する!」
『ひぃっ……!』
「帰ったら総括だ、キムチ女」
『……どう、して?』
「総括だと言った」



『来たか――チャイニングガンダム!』
「レニ・スターリング! 俺は俺自身の理想のために、あんたを討つ!」
『理想だと? 笑わせてくれる。もはや国民はイデオロギーのために戦争はしない。生活のために戦争を行うのだ。
この戦場を見るがいい、アルーアル。
連邦軍を構成するは食うに困った兵士たち。NGPを構成するは戦争請負会社の派遣社員たち。
革命戦士、思想のための闘士など一人もいない』
「だからどうした!」
『時代遅れだというのだ! 共産主義の亡霊め!』
「遅れてんのはてめぇらだ! 資本主義? 万人に対する万人の闘争だと? 
武器と言葉はご立派だが、頭ん中は先祖帰り、原始人のままだろうが!」
『そんな理不尽な主張で――何? 押し負けた? パワーダウンか!』
560中華ガンダムネタ:2011/04/02(土) 01:16:53.64 ID:???
『赤き世界の少年よ、貴様の理想をいってみろ』
「世界の地ならしさ、ジャン・ジャック。
すべての人民がたらふく食い、鯨飲し、互いを宣伝しあい、くたばることができる、白痴の、地上の楽園を作り上げることだ」
『俗物め。人間的な、あまりに人間的な空想だ』
「おまえらNGPはブルジョワだからさァ! 俗物暮らしのありがたみがわからねぇんだよ!」
『このような俗物を根絶すべく、私は剣をとったのだ!』
「やはり宗教は……阿片だ!」



「スターリングのおっさんか?」
『ゆけ! アルーアル・モータクトゥス。他人の意見など関係ない、
君は君自身の思想のために! 戦い! 生き! そして死ぬがいい!』
『粛清の赤旗! レニ・スターリング!』
『そうとも! 我が宿敵ジャン・ジャック! 
地球がだめになるかならないかのこの時こそ、我々人間の理想が、貴様ら天使の理想を打ち砕くのだ!』
『ジェノサイ・ドルフィンよ! チャイニングガンダムに集中砲火!』
『やらせんさ!』
「何やってんだおっさん!」
『ここは私がくい止めると言った! さっさとゆけ! そしてメルヴィ・レイを破壊するのだ、アルーアル君! 
わが同志、アルーアル・モータクトゥス君!』
『逃がさん!』
『追わすか!』



「俺が憎いか、チャイニング。憎いだろうよ。こんなコロニー落としは、お前が望んでいたことだからな。
だが、お前の思い通りには、させてやらん。
……そうか、憎いか、もっとだ。もっともっと憎めよ。
お前は憎しみを力にする。たとえお前が俺に向けた憎しみでも、俺自身の力になる。
この石っころ……メルヴィ・レイをぶっ壊す力になる」

「――俺の思想が真っ赤に染まる! ブルジョア倒せと轟き叫ぶ!」

「怒りと、妬みと、友愛のォッ!」

「チャイニングゥフィンガーソードッ!」




『ジャン・ジャック、お前たちの、ポール・ワトンソの理想は敗れたよ……』
『ああ……しかし、この光は美しい』


チャイニングガンダム大勝利! 希望の未来へ革○ゴー!

561中華ガンダムネタ:2011/04/02(土) 01:20:20.45 ID:???
エイプリルフールには間に合わなかったぜorz
562通常の名無しさんの3倍:2011/04/02(土) 13:32:37.85 ID:???
昼間から声出して笑ったw
地味に仕込まれた小ネタの数々が秀逸。
563通常の名無しさんの3倍:2011/04/05(火) 08:41:35.88 ID:l2rTF3h9
次のガンダムは環境テロがテーマだな
564通常の名無しさんの3倍:2011/04/06(水) 18:57:02.93 ID:???
ガンダムラテール
565通常の名無しさんの3倍:2011/04/09(土) 21:33:56.94 ID:???
日笠陽子をフォウポジションの敵役で出してくれれば良い
566通常の名無しさんの3倍:2011/04/18(月) 10:49:30.91 ID:???
まとめwiki管理人兼キャラ絵を投下していた人はこの春よりそっちの業者になりました
出世したらマジで企画書書いてみようかな
567通常の名無しさんの3倍:2011/04/20(水) 16:25:30.85 ID:???
就職おめでとうございます。
お疲れが出ませんように。

いつの日か、ドルダが誕生する日が来るのか。
その日まで、ホシュは続く。
568通常の名無しさんの3倍:2011/04/26(火) 20:55:02.53 ID:???
2013年「劇場版 赤い彗星のガンダム」
名作1stガンダムをシャア視点でリメイクした話題作。連邦サイドは登場せず、全カットシャアの主観で一年戦争を体感!
2015年「機動戦士ガンダムLink」
電脳社会が発達した近未来を舞台に新たな人類の革新を提示。ネット空間ならではの戦闘シーンも必見!
2019年「機動戦士Fガンダム」
宇宙世紀シリーズ新作。U.C.0500年代を舞台に木星と地球の全面戦争勃発。かつてないスケールで描かれるガンダムを見逃すな!
569通常の名無しさんの3倍:2011/05/01(日) 16:51:52.19 ID:???
宇宙進出に合わせて移民希望者のために開発された多くのコロニーは当初の需要を遥かに上回る供給により、
各ラグランジュポイントは激しいスプロール化が進んでいた。居住コロニーの隣に軍事基地が存在する事は珍しくなく、
こうした無計画な宇宙開発が治安悪化を誘発していった。
これを取り締まる為に組織されたのが"月軌道警視庁"であり各ラグランジュポイントにそれぞれ配置されていた。
そして各ラグランジュポイントの月軌道警視庁は治安維持の為の武力としてモビルスーツ「ガンダム」を有していた。
570通常の名無しさんの3倍:2011/05/02(月) 03:30:35.94 ID:0OjJEvi1
ノーベルガンダム〜セーラームーンかと思った。
571通常の名無しさんの3倍:2011/05/03(火) 01:26:34.14 ID:???
宇宙進出に伴い新暦を制定するか、西暦を継続するかで戦争をするのはどうよ
572 忍法帖【Lv=5,xxxP】 :2011/05/07(土) 09:39:09.36 ID:???
ネーデルガンダムは心の一台
573通常の名無しさんの3倍:2011/05/14(土) 09:20:26.12 ID:???
>>571
地球勢力が二つに割れる上、多分宇宙進出した連中は新暦使いたがるだろうし、西暦ものすごく不利な気がする。
けど暦で戦争が起きるって言うのはいいね。
各惑星に各暦があるだろうし、暦統一戦争とか起きても面白いかも。
574通常の名無しさんの3倍:2011/05/16(月) 00:24:38.05 ID:???
宇宙世紀にしてもコズミックイラにしても西暦として約2000年に渡って歩んできた人類の歴史を捨てるって事だからな
既存のガンダム作品ではまだ暦が移行したばかりだから西暦の名残があるけど、200年もすれば紀元前みたいな扱いになりそうだよね
575通常の名無しさんの3倍:2011/05/27(金) 22:15:24.93 ID:???
ぼくのかんがえたヴァーミリオンエクスプレスオブバレットガンダムが最強
576通常の名無しさんの3倍:2011/06/07(火) 23:43:30.90 ID:UKTM+A1v
ガンダム新作ついに始動したぞ
http://www.gundam.info/topic/5700
今の所デザインは無難な感じっぽいけどどうなんだろうな
577通常の名無しさんの3倍:2011/06/08(水) 00:20:52.23 ID:???
暦って現代に置いても未来でもそれほど重要なものじゃなくね?
王政とってるわけでもないのに
578通常の名無しさんの3倍:2011/06/08(水) 18:18:17.83 ID:???
しかも西暦は全人類が採用してるわけではないからね
日本ですら西暦と並行して元号を使ってるし、中国やイスラム圏は言わずもがな
579通常の名無しさんの3倍:2011/06/12(日) 06:01:26.01 ID:???
宇宙暦に移行して数十年経って、宇宙に出たのだから地球での過去は切り捨てるべきだ云々でその象徴として暦を変えるとかならありか。
もちろん、それだけでは戦争にならないから、過去を切り捨てる=地球での歴史や建造物の抹殺と勘違いした過激派の活躍が必要になるけど。
または宇宙側に王政とらして暴君が統一〜な感じでもいけそう。
あくまで暦を象徴にした戦争を起こすなら、だけど。

>>576
ガンダムの顔と胸は大体変わらないから、背中と下半身と腕になんらかの工夫がなされるかな。
580通常の名無しさんの3倍:2011/06/14(火) 09:06:05.82 ID:???
なんか00劇場版の影響もあってか開き直ってるなAGE
次回予告とかで、「来週も見てくれよな!」的な台詞を言ってくれないかなと、ちょっと期待してる
581通常の名無しさんの3倍:2011/06/16(木) 22:18:43.57 ID:???
>>580
ガンダムならもう一捻り欲しいかな
ってかアナザー三作があるから今更子供向けがどうとか関係ないしな
「それでは皆さんご一緒にィ!ガンダムファイトォ!!レディ、GO!」
582通常の名無しさんの3倍:2011/06/19(日) 01:42:42.42 ID:???
心配なのであげます
583通常の名無しさんの3倍:2011/06/27(月) 03:40:04.80 ID:DzcnZvMh
オリジンアニメ化かぁ
584通常の名無しさんの3倍:2011/06/28(火) 12:42:02.95 ID:???
ボトムズ的な多数の小型メカvs少数精鋭の15mサイズのガンダムって構図はどうだろう?
元々モビルスーツは5〜6mくらいの量産兵器だったが、世界的に軍隊への志願者・パイロット志願者が減り、MSを大型化して機体・人数あたりの質的な戦力を確保する陣営と、徴兵などで軍の量的な戦力を確保する陣営の争いとか
585通常の名無しさんの3倍:2011/07/06(水) 23:03:27.49 ID:???
【ヴァーミリオンガンダムリンク】
レーザー兵器とビット兵器を有しており、対SS用にSSアップローダーが搭載されている。
【サイバースーツ】
MSの戦闘データをプログラム化した物。ネット空間でMSの制御を奪ったり、サイバーテロを仕掛けるのに利用する。
SSアップローダーはMSの戦闘データをSSに変換して応戦するためのプログラム。
【ガンダムLINKにおける二つの進化論】
ガンダムLINKには従来のガンダムに見られたような宇宙進出による進化論の他にも、電脳化による進化論が存在する。
宇宙進出による肉体的変化が齎す精神的進化(ニュータイプ)に対し、全人類の意識情報化に伴う精神的進化(インストーラー)の二つが思想的に対立しており、ガンダムLINKの世界で起こる様々な事件や戦争の下敷きになっている。
【リフレクトビット】
ヴァーミリオンガンダムリンクの兵器。殺傷力を持たないビットに特殊なコーティングを施す事でレーザーを反射させる事が出来る。
全部で八基搭載されており、レーザーを屈折させて跳弾攻撃を仕掛けたり、一箇所に集中させる事で高火力レーザーを放つ事も可能。
ただでさえ扱いが難しいビット兵器ではあるが、跳弾の軌道計算が加わる事で極めて扱いにくい代物になっている。これを制御するためにハロを使用する。
【レーザーライフル】
ビーム兵器とは別にレーザー兵器が発達しているため、こちらも多く普及しているが、現代で言う所のWindowsとMacintoshの違いと同じような物。
殺傷力はビーム兵器に劣る物の、速さがダンチなんだよ!
【ジャンクション東京ユグドラシル】
東京タワー、東京スカイツリーに続き、東京25区の天築区に建設された地球合衆国日本州最大の軌道エレベーターである。
東京都は宇宙開発が本格化すると同時に、多数のメガフロートを新規建設が始まり、西暦2051年に港区から分区して"天築区(あまつきく)"が誕生した。さらに2063年に天築区から分区して"足洲区(たしずく)"が誕生。
これにより東京都特別区は25区となった。この2区は宇宙開発の主要機関が集中しており、"天築副都心"と呼ばれている。
日本ではこの他に"ジャンクション大阪バベル"という軌道エレベーターの開発が現在検討されている。
【ガンダムLINKにおける宇宙開発計画】
太陽光発電の最適化による計画の一環として軌道エレベーター建設から始まり、スペースコロニーも計画当初は太陽光発電による研究施設のみだったが、
太陽光発電による恩恵を直接受けられる上、コロニー単位で太陽光発電を所有しているため富豪達の需要が高まり高級住宅地(通称"スペースニュータウン")がラグランジュ3に複数設立された。
整然とした区画、少人数による広い土地の占有などから需要が高まり次々とスペースニュータウンが建設されていった。
しかし、ここで"ラグランジュ・スプロール"と呼ばれる特定のラグランジュポイントに短期間で大量のコロニー建設が行われる事による大量のデブリの氾濫や太陽光発電の効率悪化により、一部スペースニュータウンが機能停止。
危険地帯となったラグランジュ3の復旧は大幅に遅れ、残されたコロニーもスラム化。巷では"棄てられた宙域(ロスト・ラグランジュ)"、"無計画の報い(バッド・リターナー)"などと揶揄されている。
【バイカル・シンドローム】
バイカル湖付近の研究所で行われていた次世代の動力機関の開発中に有害物質がバイカル湖全域に漏れ出す事件が発生。
被害を受けた人間の遺伝子に影響を及ぼし、何らかの障碍児が生まれてくる事が多く、被害者数は150人を超えている。
586通常の名無しさんの3倍:2011/07/07(木) 01:54:54.21 ID:???
これはいいセンス
邪気眼の人っぽい気もするが別人かな?
587通常の名無しさんの3倍:2011/07/08(金) 23:14:47.70 ID:???
【ジャンクション赤道エデン】
赤道直下に建設された軌道エレベーター。
ジャンクションとは軌道エレベーターの通称であり、日本、東アジア、アメリカ、EU連合、ブラジル、赤道直下の六地域に建設されている。
赤道エデンはその安定性からか世界最大規模を誇り、アーコロジーとして軌道エレベーター内に人工自然地区や商業地区や居住地区など様々な都市が内包されており、その経済力は国一つ動かせると言われている。人口1000万人。
【電脳都市(スカーレット・ホライズン)】
電脳進化論者(インストーラー)の聖地。電脳空間上に形成された都市で、景観は無骨な深紅で覆われている。
この街に住む人間は己を偽り、人類の意識結合を掲げて、オンライン上から全世界に向けて情報を発信している。
東京都の秋葉原のどこかにこの街を管理するサーバーがあるという説がある。
【コズミック・タイムズ社】
オンライン新聞「コズミック・タイムズ」を発信する新聞社。ロンドンに本社を設けており、全世界でも五本の指に入るメジャー紙。
宣伝として専属球団「C.Tブラッドシャドー」も活躍しており、こちらもメジャーリーグ上位を誇る実力派球団。
しかし、これらの成功の裏にはインストーラーの暗躍が深く関わっており、報道の立場から勧誘を促している。
【ラグランジュ4コロニー群】
宇宙進出進化論者(ニュータイプ)の聖地。全人類を宇宙に進出させて肉体的進化と外宇宙開拓を掲げている。
インストーラーとは対照的に絶対数こそ少ない物の精神感応を始めとしたサイキック能力適性が高いとされている。
ラグランジュ4コロニー群は国家こそ持たない物の自主的に市政施行しており、首都となる「サファイアハイム」はコロニー内にコロニーを有する多重構造で、各区間を高架化されたリニアカーで移動する。
588通常の名無しさんの3倍:2011/07/09(土) 00:01:19.98 ID:???
【戦争における国家勢力】
地球軍VSゲリラ、地球軍VS地球軍、ゲリラVSゲリラなど、国家間や組織間の対立ではなく思想での対立で戦争が起こるので、情勢の変化に合わせて敵味方が入れ替わる。
【カルテッター】
地球軍特殊機。朱雀、青龍、玄武、白狐のカルテッター四機が揃う事でIフィールドバリアーを展開する事が出来る。
単機の特徴としては朱雀は射撃型。レーザーハンドガンとグレネードランチャー、青龍は近接型。ビームサーベルとプラズマダガー、玄武は重武装型。ビームシールドとリフレクトシールド、白狐は強襲型。変形機構とミサイルポッドを搭載している。
共通武装としては頭部バルカン、アサルトライフル、ナイフのみ。
【ゲヰン】
地球軍量産機。近接型。チャクラムシールドという円月輪状のシールドが敵の攻撃を受けた時に回転する。
遠心力で攻撃を弾く事が出来るため、実弾兵器に対して有効な性能を発揮する。また、シールドそのものを飛ばして攻撃する事が出来る。
それ以外はプラズマダガーとサブマシンガンを装備している。
【エルニーニョ】
地球軍量産機。近接型。ビームツインアンテナというガンダムタイプに見られるツインアンテナをビーム状にした近接戦闘用防衛兵器として機能する。
ビームなので通常のツインアンテナより長く出来る。ちなみにエルニーニョはガンダムタイプではない。それ以外は対艦刀を装備している。
【ヴェンター】
地球軍量産機。強襲型。特殊武装はビームパイルバンカー。それ以外はサブマシンガンとプラズマサーベルを装備している。
【天羅伍式】
地球軍量産機。強襲型。プラズマチェーンソーと、高推力ブーストを搭載している。
【ズズZ】
地球軍量産機。重武装型。レールガトリングガンとミサイルポッドを装備している。
【ガル】
地球軍量産機。狙撃型。スナイパーレーザーライフルと光学迷彩を搭載している。
【スピルライド】
地球軍量産機。支援型。SSアップローダーとリフレクトシールドを装備している。
589通常の名無しさんの3倍:2011/07/28(木) 22:09:50.85 ID:???
【二桁ヴェンター】
地球軍量産機「ヴェンター」の初期型。
製造番号が100以下のヴェンターはプラズマサーベルがビームサーベルに変わっていたり、装甲が丈夫になっていたり、スラスターが二つ多いなど、現行型と比べてスペックが高い。
量産にあたりコストも時間もかかり過ぎるため100番以降はコストダウンした。二桁ヴェンターとはその通称である。
【ズズY】
地球軍旧型量産機。汎用戦闘型。「ズズZ」の計画時に同時進行されていた「ガル」と「スピルライド」が「ズズZ」と共に役割を分散し、
それぞれの分野に特化させて「ズズY」の後継機として開発する事が決定したため、本機の方が汎用性に優れている。
武装はオーソドックスにサブマシンガン、レーザーライフル、プラズマサーベル、リフレクトシールドを搭載している。
【リフレクトシールド】
最新型で主流のシールド。レーザーを反射する性質を持つが、通常のビームや実弾に弱いという欠点を持つ。
基本的にリフレクトビットのように小型化は難しいとされている。
【フリーズパーティクル】
SS限定兵器。相手のSS駆動にかかる演算処理の優先順位を弄る事で敵機のスピードを落とす事が出来る。
【ファントムシューター】
SS限定兵器。SSのグラフィックデータを複製し、質量を持たない残像として相手の撹乱に使用する。
【SSダウンローダー】
SSで得た戦闘データをMS用に再変換する。
SSはMS戦闘時に同時進行で使用する事を考慮して基本的に自立駆動するため、AIの成長が伴ってくる。
SSの戦闘データをMS用に再変換する事でSS同様にMSを自立駆動させられる。
SS変換前の戦闘データ、SSで得た戦闘データが共に優秀な結果を出しているものは軍で重宝されている。
【グーグリウム2111】
旧世紀から続く老舗ネットサービス企業が開発した量子コンピュータ。
これにより電脳空間が大幅に発達した。見た目が聖母の姿をしている為、マリアとも呼ばれている。
【サファイアハイム無番街】
宇宙進化論"ニュータイプ"主義者の聖地、L4コロニー群の首都「サファイアハイム」における
5つのコロニー内コロニー(内部コロニー)の外部(外部コロニー)の地名。
ここはニュータイプ主義者の内、過激派達を隔離するための空間である。
独立国家としてのコロニーを主張する際に地球合衆国を執拗に目の敵にする者や、電脳進化論"インストーラー"思想そのものに
真っ向から敵対の意を示す反電脳進化論者"アンインストーラー"など様々な人間が多い。
ニュータイプ思想主張において無闇な暴動は報復や鎮圧を招く為、サファイアハイム側は過激派の街として、
内部コロニー同士の接続に使用される外部コロニー区画を再開発して"無番街"と命名した。
590通常の名無しさんの3倍:2011/08/18(木) 23:54:09.73 ID:???
あげます
591通常の名無しさんの3倍:2011/09/01(木) 19:34:36.64 ID:LD5YXZuc
保守
592通常の名無しさんの3倍:2011/09/10(土) 23:50:56.60 ID:cLvLnk0m
ホシュ
593通常の名無しさんの3倍:2011/09/14(水) 19:51:24.84 ID:???
不謹慎を承知で言うけど、戦争中に災害起きるって斬新じゃね?
594通常の名無しさんの3倍:2011/09/14(水) 22:32:22.04 ID:???
ゾイドェ……
595通常の名無しさんの3倍:2011/09/28(水) 10:22:26.47 ID:???
もうすぐAGE始まるから、それまでの辛抱だ
596通常の名無しさんの3倍:2011/10/10(月) 00:51:40.69 ID:Pk2VphWi
キャラや設定がアレなだけで思ったより1stしてたな
597通常の名無しさんの3倍:2011/10/22(土) 14:33:19.17 ID:H1wVrOUw
奇抜なガンダムは出てくるのか。
598通常の名無しさんの3倍:2011/11/03(木) 23:28:47.70 ID:NLCy9DLG
保守
599渚カヲルψ ◆.NERVpDWGM :2011/11/08(火) 05:12:24.43 ID:???
エヴァンゲリオン仮設五号機。

頭部と胴体はエヴァそのものだが、手足が建築用重機みたいな形の義手と義足になっており、
それらを無理やりシンクロさせている。マリやカヲルに言わせれば、「重い、パワー不足」との事。
600通常の名無しさんの3倍:2011/11/11(金) 12:10:08.30 ID:???
それはエヴァだよ
601通常の名無しさんの3倍:2011/11/13(日) 10:36:01.54 ID:EGP4RK7H
ドッズライフルは嫌いじゃない
602通常の名無しさんの3倍:2011/12/04(日) 01:35:23.49 ID:zNC+rNdS
ガンダムってどこまでがガンダムだろうな。
ガンダムってついてればガンダムなのか、ガンダムフェイスでアンテナ立ってりゃガンダムなのか。
何が言いたいかというとGガンのデザインはがんばった
603通常の名無しさんの3倍:2011/12/05(月) 08:00:27.71 ID:???
あげ
604通常の名無しさんの3倍:2011/12/05(月) 12:48:30.67 ID:???
風車のガンダムとかそのへんの
605通常の名無しさんの3倍:2011/12/08(木) 02:58:50.80 ID:MsmRiiQW
一番かっこいいのはタイタスだよな
606通常の名無しさんの3倍:2011/12/08(木) 04:49:48.63 ID:???
もちろん AGE


ダメな方向で
607通常の名無しさんの3倍:2012/02/04(土) 13:30:16.47 ID:???
アセムはWの匂いがするデザインだよな
608通常の名無しさんの3倍:2012/03/22(木) 00:41:39.27 ID:???
保守
609通常の名無しさんの3倍:2012/03/22(木) 13:21:00.49 ID:B0/6QZbP
バルカンガンダムなんて
変だと思う。
610通常の名無しさんの3倍:2012/03/22(木) 16:45:50.36 ID:???
マンダラガンダムじゃね?ww
611とある連邦の上等兵:2012/03/29(木) 21:59:53.25 ID:ztabSoZ4
∀に決まってんだろ
612通常の名無しさんの3倍:2012/03/30(金) 02:28:50.56 ID:???
普通にジンクスとかアヘッドだろ 00ではあんなのがガンダム扱いなんだろ?

逆にガンダムっぽいのにガンダムじゃないのがアストレイとムラサメ
613通常の名無しさんの3倍:2012/04/09(月) 15:37:44.21 ID:Z5JKaE5r
バルカンガンダムは,ほぼ1St'ガンダムのボール。
ガンダムヘッドに手足が着いただけのMF。主装備はガンダムにつきもののバルカンのみという変わり種。
こんなのでガンダムファイトに優勝しちゃうんだから、驚異としかいいようがない。
614通常の名無しさんの3倍:2012/04/09(月) 19:59:56.17 ID:???
フリーダム系の尖った肩が邪気眼丸出しで冷める
615通常の名無しさんの3倍:2012/05/13(日) 03:27:11.02 ID:6N0+4el8
 微かな痛みが、頭から首筋にかけて走った。それが軽い痺れとなって、手足へとゆっくり拡散していく。
 ヴィヴィは目を開いた。
 淡い緑色の光の文字列が、視界の縦横に駆け抜けてゆく。神経接続同調率、各部コンデンサへのエネルギー充填率、排熱・冷却機能の動作確認など、いつもと変わらない数値をヴィヴィは見るともなく見ていた。
 モビルスーツのコックピットである。ここに座って初めて戦場に出たのは12の時で、それから既に6年経っていた。
『各機、起動シーケンス終了。システム、オールグリーン』
 オペレーターのシェーナの声は淡々としている。これも、いつもと同じだ。
 既に痺れは収まっている。ヴィヴィは首筋に繋げられたプラグに向けて意志を送った。
 全高10メートルに達する鋼鉄の巨人が、動き出す。四肢に、主の意志が宿る。
616通常の名無しさんの3倍:2012/05/13(日) 03:38:05.70 ID:???
『ブリーフィングでも言ったけど、今回の任務は、新型の追加装備の実戦テストを兼ねているわ。少しでも多く
データが欲しいから、積極的に使用するようにね』
 シェーナに割り込むようにスピーカーに入ってきたその女の声を聞き、ヴィヴィは眉間を指で押さえて溜め息
を吐いた。
「あくまでも作戦目標の達成が優先だ。新装備のテストなどという、本来ならば別に機会を作るべき事を、同時
に行うんだからな」
 返答は聞こえなかったが、無表情のシェーナと、その傍らでむくれている黒い髪をした女の姿が容易に想像で
きた。自分の研究以外に興味のない我が儘な女。少なくともヴィヴィはそう思っていた。
 隣りの格納庫からプラズマライフルが2挺運ばれてきた。ライフルと言っても、10メートルの巨体と比べて
のサイズが、人間で言う大型ライフル程度のものというだけで付いた通称である。現代の主力戦車に搭載される
ものを二回り縮小したサイズのそれは、敢えて分類するなら銃ではなく砲であった。
 それを両手に取り、腰部のマウントラッチにそれぞれ装備すると、あとは作戦の開始を待つだけだった。
617通常の名無しさんの3倍:2012/05/13(日) 03:44:17.22 ID:???
『ねえ、ヴィヴィ』
 出撃に向けて集中力を高めていると、再び女の声が耳に入ってきた。
「まだ何かあるのか」
『今回の作戦目標はなんて聞いてる?』
「フェニキア軍が輸送中の新型ガンダムの破壊、及び輸送部隊の殲滅」
 何を今更、と思ったが、一応答えてやった。
『これは、さっきレイス達にもお願いしたんだけど』
 女は一度言葉を切った。
『新型ガンダムは、できれば鹵獲してほしいの』
それを聞いた瞬間、ヴィヴィはブリッジとの通信を切っていた。同時に、自分と同じように待機している各M
Sへの通信を開く。
「アーレス小隊全員に告ぐ。本作戦の目的はフェニキア軍が輸送中の新型ガンダムの破壊、及び輸送部隊の殲
滅。敵部隊の殲滅後に無事に残っていた場合を除き、新型ガンダムは破壊すること。また、試作装備が作戦の
遂行に支障を来す場合、すぐにパージして構わない」
『そんなに意地になって否定すること無いじゃない。お母さんでしょ?』
 リリーが言う。予備パイロットであり、普段は整備士であるせいか、MS研究者であるあの女とは親しいらしかった。
「任務中に余計なことをして、もし味方に犠牲が出たら、同じことが言えるのか?」
『あたしもレイスも、ヴィヴィの為にやってんのよ?折角親も子も生きてんのにさ、今の関係のままだと絶対
良くないでしょ』
「余計なお世話だ。せめて、そういうのは仕事以外の時間を使ってやれ」
 ヴィヴィ以外のITSの実戦部隊員には、戦災孤児が多い。だから、リリーの言うことがわからない訳では
ないが、自分の子供を研究のサンプルとして提供した母親に対して、不信感はずっと拭えなかった。
618通常の名無しさんの3倍:2012/06/19(火) 12:24:10.65 ID:???
「とにかく、作戦遂行が最優先だ。レイスもいいな?」
『了解。でも、殲滅を徹底されるなんて、今までで初めての経験かもしれないわ』
「俺もだ。だいたい、ITS単独での作戦行動だって、恐らく前例はない」
 もともと、いつもと違う要素が多すぎる作戦だった。本来別々にやるべき複数の物事が、同時に動いている
ような感じもする。ITSの上層部はよほど焦っているのか。
『前方より熱源接近!粒子ビームです!』
 ブリッジからの緊急通信の直後、艦から激しい振動がMSのコックピットまで伝わってきた。
「シェーナ、艦が被弾したのか!?」
『大丈夫、右舷のすぐ傍を掠めただけ……』
 シェーナの言葉を遮るように、艦全体がさらに強く揺れた。二発目か。
 敵に気づかれている。それも、こちらの索敵範囲の外からである。それが可能なのは。
619通常の名無しさんの3倍:2012/06/19(火) 12:32:17.20 ID:???
『リンドヴルムは前面のみにIフィールドを最大出力で展開、デブリ帯を抜けて粒子ビームの発射された方向
へ突撃する』
 振動のノイズに混ざりながら、男の声で通信が入った。
「艦長、作戦は続行なんだな?」
『プランEで続行だ。敵のビーム、威力はかなりのものだが、命中精度は良くない。敵の姿を確認できる距離
まで来たら、MS部隊は全機発進。敵の注意を引いてくれ』
「了解」
620通常の名無しさんの3倍:2012/06/19(火) 14:17:58.24 ID:???
>>615-619
オリジナルのガンダムを考えるスレがあるからそっちでやれ。
621通常の名無しさんの3倍:2012/06/19(火) 15:38:39.85 ID:???
ガンダムじゃなくて申し訳ないけど
AGE系の人気無しは奇抜だと思うの
622通常の名無しさんの3倍:2012/06/19(火) 18:11:55.91 ID:???
>>620
そうするよ
確かにこの過疎具合はどうしようもないもんな…
623通常の名無しさんの3倍
>>6212CHで人気ないだけで子供にはまあまあ受けてるよ