【シン】出会ってしまったらpart3【ミーア】

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1通常の名無しさんの3倍
過去スレ
【シン】出会ってしまったらpart2.1【ミーア】
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1193779848/l50
【シン】出会ってしまったらpart2【ミーア】
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1142839724/l80
【シン】出会ってしまったら【ミーア】
ttp://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1132696059/l80

避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/1777/1194458136/

まとめ倉庫
ttp://arte.wikiwiki.jp/
2通常の名無しさんの3倍:2008/01/20(日) 02:08:22 ID:???
シン厨のドリーム小説スレがまた勃ったよー!
3通常の名無しさんの3倍:2008/01/20(日) 02:08:54 ID:???
>>1
4通常の名無しさんの3倍:2008/01/20(日) 21:29:47 ID:???
>>1
乙であります
5通常の名無しさんの3倍:2008/01/20(日) 22:47:20 ID:???
>>1
スレ建て乙です
6通常の名無しさんの3倍:2008/01/21(月) 00:54:57 ID:???
「……>>1さんに乙をするなら…俺がする…。」

「役割が乙で何が悪いの!そして>>1さん乙!!」




「えぇと…あらすじです。ひょんな事から、ラクス・クラインの護衛となってしまったザフト軍のエースパイロット、シン・アスカ。
 しかし、実はラクス・クラインではなく、議長が仕立てた替え玉だったのだ。ラクス・クラインの替え玉となった少女、ミーア・キャンベルを守る為、シン・アスカは程々に頑張ります。
 ユニウスの落下、レイのジュール隊への異動、様々な脅威に晒されながらも、ミネルバはシンの故郷であるオーブに着艦したのだった。」

「……キラさん。あらすじ役引き受けてくれたのは嬉しいけど…それじゃ内容が分かりづらいですよ。ていうか、程々に頑張るって…俺は常にクライマックスですよ!!」

「アハハ…ごめんね。実はあんまり慣れてなくって。(あれ?答えは〜の流れじゃないの?)」

「あ…(やば…)き、気にしないで下さい。きっとみんな分かってくれる…よな?ミーア。」

「ちょ…!?いきなり私に振られても…(うわぁ…二人に滅茶苦茶見られてる)」

「あ、そうだシン。(気まずい…話題話題…と)」

「はい?」

「そろそろ僕が登場するから。お手柔らかに頼むよ。」

「お手柔らかにって…それ…俺が言うべき台詞じゃないんですか?」

「あれ?まぁ、細かい事はあまり気にしないで。」

「細かくはないわね…。」

「ミーア…あんまり余計な事言うなよ。あの人、あれで結構繊細だし。」

「聞こえてるよ。まぁ、よろしくね。それじゃ♪」

「はい、という訳でこの俺。ミラコロ男ことシン・アスカと…」

「私、ラクス・クラインでお送りしました♪」

「ホラ吹くなホラを。ていうか、此処なら別にラクス様じゃなくて良いだろ?」

「え?そうなの?じゃあミーア・キャンベルでお送りしました♪」

「じゃあじゃねぇよ。」



友情(?)出演・キラ・ヤマト
7通常の名無しさんの3倍:2008/01/21(月) 01:49:20 ID:???
>>1
スレ立てお疲れ様〜
>>6
GJ!
8通常の名無しさんの3倍:2008/01/21(月) 01:54:11 ID:???
#4


 暫くバイクで流していると、切りたった崖に一人の青年が立っていた。花束を抱えていて、片腕にはギブスをしている。
「何だろう?何か有るのか?」
 何故だか分からないが、俺はバイクを降りて青年の居る方に歩いて行った。
 青年が俺に気付いて振り向く。
「こんにちは。」
「あ…こんにちは。」
 青年が見ていたのは、大理石で出来た慰霊碑。その周りには、花が綺麗に咲いている。
「慰霊碑…ですか?」
「そうみたい。僕は此処に来るのは初めてだからよく分からないけど。それにしても…折角綺麗に花が咲いているのに、これだと波を被って枯れちゃうね…。」
 何処か哀しげに青年が呟く。
「誤魔化せない…って事じゃないですか?」
「え?」
 青年は不思議そうに俺を見つめる。
「花がどんなに綺麗に咲き誇っても…人は……また吹き飛ばす………。」
 何だか…これ以上この慰霊碑も、周りに咲く花も見たくなかった。青年に背を向け、歩き出した俺に、
「そうかな?僕は…そうは思わないな。」
 振り返ると、青年が微かに微笑んでいる。
「確かに…君の言う通り、人は吹き飛ばすかもしれない。だけど、人は守る事も出来るって…僕はそう信じたい。」
「そんなの…綺麗事ですよ。みんながみんなアンタみたいな人じゃないんだ!!
 もう…戦争が起こってる…今この瞬間も人は死んでる!!」
 気付いた時には遅かった。驚いた顔をしている青年を見て、自分に嫌悪感が沸いて来た。
「あ……済みません…俺…。」
「ううん、君の言う通りだよ。 僕の言ってる事は、多分…馬鹿馬鹿しいくらいの綺麗事なんだと思う。
 実際…僕は、今まで守りたいものを何一つ守れなかったから…二年前も…こないだのユニウス落下の時も…。」
 自嘲する様に笑い、今まで持っていた花束を慰霊碑に置いた。
 この人も…ユニウス落下の…被害者なのか…。それでギブスを…。
「あ…そういえば、自己紹介がまだだったね。僕はキラ。キラ・ヤマト。」
「あ、そうでしたね。俺はシン。シン・アスカです。」
「よろしくね、シン。」
「いえ、こちらこそ…」
 これが…俺とキラ・ヤマトの出会いだった。
9通常の名無しさんの3倍:2008/01/21(月) 16:17:20 ID:???
GJです 本編よりいい出会いになってて先が楽しみです。
10通常の名無しさんの3倍:2008/01/22(火) 00:11:29 ID:???
GJであります!
11通常の名無しさんの3倍:2008/01/22(火) 02:40:07 ID:???
>>8
#5


 それから暫く俺達は語り合った。キラさんは、復興支援をしながら世界中を駆け回ってる人らしい。様々な国で、様々な人達と協力し合ってる写真を見せて貰った。
 みんな楽しそうに笑っている。俺は…もっと早くにこんな人に出会っていれば、軍に入らずに“こっち側”に居れたんだろうか?

「きっと…世界中があんたみたいな人だったら、戦争なんか起こらないんだろうな…。」
「それは買い被り過ぎだよ。僕は聖人なんかじゃない。僕だって、他人を傷付ける事は有るし、他人を憎む事だって有るよ。」

 苦笑いしながらそれだけ言って、キラさんは腕時計を見る。キラさんの表情が固まった。そして…

「ああぁぁぁぁぁぁあ!!!?まずい、もうこんな時間だ!?」
「だ…大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫!此処から全身全霊を掛けて走れば、一時間で着く位置…遅刻じゃないか!?」
「とりあえず落ち着いて下さい。あの、俺…バイクで来てるんですけど、良ければ乗せて行きますか?」

 そう聞くと、

「で、でも…そんなの悪いよ。初対面の人にそんな事をして貰うなんて…。」
「んな事言ってる場合でも無いでしょう。待ち合わせに遅れる方が大変ですよ。」
「でも…本当に良いのかい?」
「構いませんよ。“困った時はお互い様”…ってやつで。あ、行き先言って下さい。」
「ありがとう…。中心街でお願い。」

 良し、中心街か。って事は、ひょっとしたらミーア達とかち合うかもしれないな。そういや…連絡取って無いけど、きっと大丈夫…だよな?
12通常の名無しさんの3倍:2008/01/22(火) 10:05:39 ID:???
実にGJ キラがニートじゃなく一個人として出来る事をやっているのが良い。

シンに少なからず影響を与えているのもポイント高い。
前作主人公と今作主人公の出会いならこのくらいのドラマは必要だったよなあ
13通常の名無しさんの3倍:2008/01/22(火) 23:14:00 ID:???
>>11
#6


「本当にありがとう。君のお陰で間に合いそうだよ。」
「いえ、気にしないで下さい。」

 キラさんが深々と頭を下げて来る。正直、周りの目も気になってやたら恥ずかしい。

「ほ、本当頭上げて下さい。周りの目もありますし。」
「あ…ご、ごめん。感激のあまりつい……。じゃあ、僕はこれで。」

 少し走り、俺に振り返る。

「まだ…何か?」
「ううん、何だか…君とはまた会えそうな気がする。またね、シン。」
「は…はい。」

 そして、キラさんは人混みの中に走って行った。何だか、不思議な人だったな。
 でも、オーブにもあんな人が居るんだな…もし、また会えるなら、今度はザフトとか…そんなの関係無く、一人の人間として会ってみたいな。

「……あ、ミーアの事すっかり忘れてた。とりあえず連絡連絡っと。」

 無線機で通信開始…と。

『はぁい、シン。どうしたの?』
「いや、連絡取ってなかっただろ?少し心配になってさ。」
『アハハ♪シンってばちょっと心配し過ぎ。こっちは大丈夫よ。』

 そっか…何もなかったか。ひとまず安心していると、不意に背後から目隠しされた。

「それに、此処に居るもの♪」
「まさか気付かないなんて…鈍すぎるわよシン。此処が戦場だったら、『俺…故郷に帰ったら結婚するんです』って言ってる奴みたいな死に方するわよ。」
「お姉ちゃん…例えが物凄く分かりにくいよ?」

 ……居た!?それ以前に、気付けよ俺!!振り向くと、ミーアが“してやったり”的な顔をして笑っていた。
 それにしても…素の状態でルナやメイリンに偽物と悟られないとは…どうやらうまく言いくるめたみたいだな。
14通常の名無しさんの3倍:2008/01/23(水) 03:08:11 ID:???
キャラが生きてて良い感じ
続き期待してます
15通常の名無しさんの3倍:2008/01/23(水) 03:35:33 ID:???
>>13
#7


 結局、行く宛の無い俺達はミネルバに戻る事になった。すっかり元通りに戻ったミネルバを見て、「やっぱりオーブの技術は凄いものだ」と、改めて関心する。
 俺は、一人食堂で遅い晩飯にありついていた。

「それにしても…随分高くついたな。タンホイザー定食って、何であんな高いんだ…。」

 ミーアを押しつける代わりに、ルナにせがまれた代価。ミネルバ食堂の裏メニューだ。というか、戦艦の食堂で裏メニューってどんな了見で作ってんだ議長。
 タンホイザーと言えば、ミネルバのカタパルト修復の際に艦長が「大気圏内で陽電子砲なんか使ったら大変だ」という事で、タンホイザーは高出力ビーム砲に換装されている。

「シン。今晩御飯食べてたの?」

 来たのはメイリンにミーア。ミーアは、ようやく変装を解いて元のラクス様モードになっている。

「食いに行く暇なんか無かったからな。」
「駄目だよシン?ご飯は一日の要だってお母さんが…」
「その一日が、もう終わりそうなんだけどな。ていうか、それは朝飯じゃないか?」
「シン…ああ言えばこう言って…心配して下さってるメイリンさんに失礼ですわ。」
「痛い痛い!!飯食ってる時に耳引っ張らないで下さい!!」

 いつもの如く、ミーアに耳を引っ張られる。今回、俺は何か悪い事したのか?してないぞ?
 そういえば…そろそろ出航らしいからな。とりあえず料理を早めにかっ込み、食器を下げる。

「痛たたた…。メイリン、そういえば、出航はそろそろか?」
「うん、そうみたいだよ。何でも…オーブは……。」

 メイリンの言葉を遮る様に、警報が鳴る。いったいどうしたっていうんだ?

『コンディションイエロー発令!コンディションイエロー発令!パイロットは至急、MSに搭乗して下さい!!』

 まさか…連合が攻めて来たってのか?オーブに?いや…いくらなんでもそれは無い…いったい…何がどうなってるんだ?


PHASE10―END
16通常の名無しさんの3倍:2008/01/23(水) 04:35:35 ID:???
裏PHASE―もう一つの出会い
#1


「ラクス様…私の服じゃサイズ合ってないんじゃないですか?ごく一部だけ。」
「え?」
「し、失礼だよお姉ちゃん!」

 オーブの街を歩くにあたって、「ラクス様の恰好だと何かとマズいから変装しなさい。」と、シンに言われてルナさんに服を借りている。正直ちょっとキツい。
 何故か私を見ながら「負けた…?」と言っているけど、どういう事なのかしら?

「でも…ここまでやると流石にラクス様には見えませんね。あ、そういえば…何て呼んだら良いんですか?ラクス様だとバレちゃいますし…。」
「え?えぇと…ミ、ミーアというのは如何ですか?」

 そう言うと、ルナさんが微かに笑いながら、

「ラクスでミーア…ですか。なかなか良い趣味してますね?」
「え?どういう事なのお姉ちゃん?」
「ググりなさいメイリン。」
「お姉ちゃん…いつもそうやってはぐらかすんだから…。」

 頬を膨らませて怒っているメイリンさんに、それを見て笑っているルナさん。本当に仲が良い姉妹なのね。
 そういえば、シンは「一人で行きたいところがある」なんて言ってたわね。

「何処に行こうかしら?ラクス様…じゃなくてミーアさんは何処が良いですか?」
「そうですわね…オーブの事はよく分かりませんし、ルナさん達にお任せ…」
「ちょっと待って下さい!」
「は、はい。」
「ラクス様…じゃなかったミーアさん。その喋り方だとすぐバレますから、標準語でお願いします!!」
「わ、分かったわ。…この様な感じでよろしいですか?」
「OKです♪さぁ、行くわよ。メイリン、ミーア!!」

 呼び捨てになってる!?別に構わないけれども。かくして、私達三人組はオーブの街に繰り出す事になった。

「ごめんなさい…ごめんなさいラクス様。」
「い、いえ、お気になさら…………。」
「 標 準 語 でお願い♪」

 ペコペコ頭を下げるメイリンさんに、素敵な笑顔が逆に恐怖なルナさん。成る程、シンが言う通り、なんか疲れそうだわ…。
17通常の名無しさんの3倍:2008/01/23(水) 22:55:16 ID:???
更新お疲れ様です。10話倉庫にあげときました〜。
スレ帰還して少しずつ住民の方増えて(戻って?)きてるようで嬉しいですね。
18通常の名無しさんの3倍:2008/01/23(水) 23:48:16 ID:???
GJです
そりゃいくらルナマリアでもミーアのあれの前には負けるか……
オーブ滞在中にコンディションイエロー発動、これからどうなっていくのか楽しみですね。
19通常の名無しさんの3倍:2008/01/24(木) 01:27:00 ID:???
>>16
#2


 それにしても、二年前に戦火に晒された国だとはとても思えないわね。確か…連合の援助と、セイランの手腕でここまで復興したって議長が仰ってたわね。

「ちょ…ラ…じゃなくてミーアさん。そんなにキョロキョロしてたら怪しいですよ。」
「え?あ、あぁ…ごめんなさい。何だか、綺麗な街並みだったからつい。」

 メイリンさんが眉根を寄せて耳打ちしてくる。確かに…これじゃ不審者だわ。

「それにしても、シンの奴…何してんのかしらね?本当、観光に来た訳でも無いってのに。」
「お姉ちゃん…その手の大量の紙袋は何なの?」
「メイリン…人はね、細かい事は気にしちゃいけないの。長生きする秘訣なのよ?」
「観光気分なのはお姉ちゃんなんじゃ…。」
「メイリン!!あの晴れ渡る空を見なさい。つまらない悩みがスッキリ消えて行くと思わない?」
「残念だけど、生憎の曇りだよお姉ちゃん。つまらない悩みは募るばかりだよ。」
「ああ言えばこう言って!お姉ちゃんはメイリンをそんな子に育てた覚えは無いわ!!」
「そうだね。私を育てたのは、お母さんとお父さんだもの。」

 最早呆れ果てた様子で、メイリンさんが半眼になってる。何だか漫才でも見てるみたい。

「うう…メイリンが反抗期になってしまったわ。お姉ちゃん他所様に顔向け出来ないわ!!」
「あ、あの…。」
「見てよお姉ちゃん。ミーアさんもすっかり呆れちゃってるよ!!」

 ど…どうすれば良いの?お願い…助けてシン…。私の声が天に聞こえたのか、突然…。

「いやああぁぁぁぁあ!!!!」

 え?何なの?何だか良くない予感がするけど…。

「む?争いの匂い…。ルナマリア、行くわよ!!」
「お、お姉ちゃん!!」

 ………首を突っ込まない方が良いと思うけど…。仕方ないわね、私もルナさんを追わなきゃ。
20通常の名無しさんの3倍:2008/01/24(木) 03:57:03 ID:???
>>19
#3


 人混みの中に入ると、一人の女の子が男達に囲まれてる。ルナさんは………。

「げっ!?」
「お姉ちゃん…!?」

 女の子の前に、男達に向かって鋭い視線を送り、仁王立ちしてるわ…。

「何だよテメェ!!」
「ふぅ…アンタ達…女の子一人相手にそんな大勢で…恥ずかしくないの!!」
「……ぅ…嫌っ……死ぬのは嫌……。」

 な…何なのこのシチュエーションは?

「うるせぇ!どけっ!!」

 男の中の一人が、拳を振り上げてルナさんに殴り掛かる。思わず目を閉じてしまったけど、ルナさんの事が気になって目を開けると、殴られてたのはルナさんじゃなく…その男だった。

「ふんっ…私に勝とうなんて、一万年と二千年早いのよ!!」
「つ…強……。」
「な、何だこの女…無駄に強ぇぞ!?囲んで潰せ!!」
「ふふん…見せてあげるわ!ホーク家に四千年伝わる放苦真拳を!!!!」
「お姉ちゃん…何それ?」

 数分後…泣きながら土下座する男達と、今だに泣き止まない女の子を介抱するルナさん。
 そういえば…シンが、ルナさんは何故か肉弾戦が無駄に強くて、レイさんでも勝てた試しが無いって言ってたっけ?正直、規格外の強さだわ…。

「アンタ達…今回は手加減してあげたけど、次は容赦しないわよ?」
「は、はいぃぃぃぃ!!」

 逃げて行った男達を見て溜め息をついて、女の子にさっきまでとは違う存外に優しい笑みを向けるルナさん。

「もう大丈夫よ?よっぽど怖かったのね。」
「嫌…死ぬのは嫌……。」
「えーと…困ったなぁ…。とりあえず、あなた…名前は?」

 困り果てた顔で…まぁ、周囲の目もあるから当たり前なんだけど…。泣き付いて来る女の子の頭を軽く叩いて、とりあえずその場から連れて行く。

「あ、お姉ちゃん…。」
「とりあえず、私達も行きましょう。メイリンさん。」

 ルナさんと女の子を追って、私達もその場を後にした。
21通常の名無しさんの3倍:2008/01/25(金) 02:55:16 ID:???
>>20
#4


 とりあえず、近くの公園まで来た私達は、ベンチに座ってルナさんと女の子のやり取りを聞く事にした。
「えーと、あなた…名前は?」
「ステラ…ルーシェ……。」
「そっか、ステラね♪あ、とりあえずこれでも飲んで。少しは落ち着くと思うから。」
 女の子…ステラさんに缶のコーンスープを渡した。ステラさんはそれを受け取って、ちびちび飲み始める。
「あ、自己紹介まだだったわね。私はルナマリア。まぁ、ルナで良いわ。で、こっちが妹のメイリンと、ついでにミーア。」
「私はついで?」
「………。」
 何故かメイリンさんは、不機嫌そうにステラさんとルナさんを見つめている。どうしたのかしら?
「ルナ…メイリン…ついでにミーア……。」
「あ…あなたまで…!?」
「そういえば、ステラは何であの人達に因縁こかれてたの?」
「因縁…こかれる…?」
 首を傾げるステラさんに、ルナさんが慌てながら、
「あ、アレ…何で絡まれてたのかな?って。」
 すると、ステラさんが話し始める。どうやら、道を歩いてたらぶつかって、それで絡まれてたみたい。何だかそこいらのドラマみたいだわ。
「そっか…恐かったわね。でも、私が居ればもう安全!ちゃんと守ってあげるわ!!」
「ルナ…守る…?」
「もう…お姉ちゃんってば…」
 何故かガッツポーズを取って立ち上がったルナさんと、それを目を見開いて見つめるステラさん。 後…さっきから何か呟いているメイリンさん。
「ステラ、お家は何処なの?」
「ステラ…お家無い…。」
「え?えぇと…お父さんとかお母さんは?」
「……知らない…。」
「参ったわね…戦災孤児の子かしら?」
 頭を掻きながら、ルナさんが考え込んでしまった。…確かに困ったわね。これだと、どうすれば良いのか…。
「おーい。ステラー!何処に行ったんだよコラー!」
「ステラー!」
「もしかすると?」
「よし、今こそ行くわよ!メイリン、ステラ!行くわよ!!」
「ルナさん…本当は私の事嫌いなのかしら?」
 泣きたい衝動を抑えて、とりあえず声のする方に私達は走って行った。
22通常の名無しさんの3倍:2008/01/25(金) 04:27:33 ID:???
>>21
#5


 声のする方向に行くと、二人の少年が走って来る。

「あ!?居たなステラコノヤロー。ネオが心配してたんだからなー?」
「スティング…アウル……。」
「此処に居たのかステラ。ステラ、この人達は?」
「えーと…ステラ…この人達はステラのお兄さん?」
「こっちは…ルナに…メイリンに…ミーア……。こっちは…スティング…アウル。」

 緑頭の青年、スティングさん?が、困った様に頭を掻きながら私達を見てくる。

「ステラに聞いてたんじゃ埒があかねぇ。済まねぇがアンタ等…何があったか聞かせてくれねぇか?」
「まぁ、良いわよ。」

 そして、ルナさんが事の経緯を話すと、スティングさんは額に手を当ててげんなりしてる。アウル君は爆笑しだした。

「そうか…そいつぁ手間掛けちまったな…。」
「別に良いわよ。そんな事より…女の子から目を離しちゃ駄目じゃないの。この子、何だか凄く怯えてたのよ?」
「あぁ、済まねぇ。以後は気を付ける。」
「ま、ステラの場合だと本当唐突だかんなー。コレはアレだ。不規則生活って言うんだっけ?」
「それを言うなら不可抗力だろ?つーか、今回のは俺等の責任だからな?ネオの奴に絞られちまうぜ…。まぁ、何にせよ助かった。礼を言うぜ。ほら、ステラ。行くぞ?」

 スティングさんが手を差し述べても、ステラさんはルナさんから離れようとしない。

「ステラ?お兄さん達が困ってるわよ?」
「……行きたくない…。」
「参ったなぁーこりゃ。それにしてもアンタ…初対面でステラに懐かれるなんてなー。やるなーアンタ♪」

 困り果てている最中、ふとメイリンさんを見やると…引き吊った素敵笑顔でステラさんを見てる。正直、少し恐かったわ。
23通常の名無しさんの3倍:2008/01/25(金) 09:19:47 ID:???
GJです。
それにしてもルナがステラとのフラグを立ててしまうとは……まあ、最近は世間もそういうのにたいしてもすこしづつでも理解があるはずだから、たぶん
シンとキラの出会いはかなりいい感じですが、シンがキラがフリーダムのパイロットであったことを知ってしまったときのことが……
24通常の名無しさんの3倍:2008/01/25(金) 10:22:32 ID:???
やりすぎに感じた。
仮にもガンダムでやる事じゃない
25通常の名無しさんの3倍:2008/01/25(金) 20:39:06 ID:???
GJ!
他では見ない展開なのでwktkして続きを待っておりまする
26通常の名無しさんの3倍:2008/01/25(金) 22:35:14 ID:???
GJ!!
27通常の名無しさんの3倍:2008/01/26(土) 00:40:56 ID:???
いいよいいよー
28通常の名無しさんの3倍:2008/01/26(土) 03:25:28 ID:???
>>22
#6


「ルナさん?そろそろ…。」
「え?あ…そうよね。ほら、早く帰らないと日が暮れちゃうわよ?」
「おい、あんまりこの人達を困らせるな。ステラ。」
「……分かった。」

 渋々離れたステラさんに、安堵するお兄さん(?)達。まぁ、時刻はもう夕方過ぎてるし、また変な人達に目をつけられたら面倒臭そうだものね。

「……また…会える…?」
「大丈夫よ♪きっとすぐにまた会えるわ。それじゃあね、ステラ。」
「うん…また……。」

 笑顔で手を振り、三人を見送って、ルナさんがベンチに座る。

「ふぅ、とりあえず…何とかなって良かったわね。一時はどうなるかと思ったわ。」
「もう…今回はこれで済んだけど、これからは無闇に首を突っ込んじゃ駄目だからね?いつもうまくいく訳でもないんだから。」
「分かった分かった。次はちゃんと気を付けるわよ。」
「メイリンさんの言う通りよ?ルナさんだって女性なんだから…もしも何かあったら大変じゃない。」
「分かったわよ…。まぁ…確かに軽率だったわね…。よし、それじゃこれから気分転換に何処か行きましょ。」

 その時、無線機に連絡が入った。シンからだわ。

「無線…シンからですか?」
「そうみたい……って、あそこに居るのシン?」
「あ…シンだわ。まさかこっちに気付いてないとか?……しっかし、こうやって見てると間抜けよね。」

 シンはバイクの傍らで、無線機を手に握っている。背後に迫る私達に気付いてないのね…。
 あんまり放置するのも悪い気がしたから、私達はシンと合流する事にした。
29通常の名無しさんの3倍:2008/01/26(土) 10:29:18 ID:???
ちょっとセリフばかりで
地の文が少ない気がする
改善に期待する

30通常の名無しさんの3倍:2008/01/26(土) 18:40:43 ID:???
GJ〜あげ
31通常の名無しさんの3倍:2008/01/27(日) 03:13:00 ID:???
>>28
#7


 只今ミネルバへ向かう最中、シンがやや不機嫌なのは、バイクにルナさんの荷物が載せられているから。

「シン?顔…何かちょっと怖くなってるわよ?」
「ちょっとならまだ良いじゃないか。もう少しで、更に怖い顔になるところだったよ。」

 仏頂面で先を歩いているルナさんを睨んでいる。何だか少し気まずいから、話題変えようかしら?

「あ、そうそう…。シン、行きたい所があるって言ってたけど、何処に行ったの?」
「俺の家だよ…。知らない家族が住んでた…。もう…俺には帰る場所が無いんだって、改めて思ったよ。」

 ただ無表情に淡々と呟いて、ハンドルを握る手に力が入った。

「……そっか…。」

 何て言葉を掛けたら良いのかな…。…黙って聞いてた方が良いのかな…?

「でも…いい人に会ったよ。海岸沿いに慰霊碑が在ったんだけどさ?そこでたまたまな。」
「どんな人だったの?」
「世界のあちこちを飛び回って、支援活動してる人だよ。オーブにもあんな人が居るんだって分かって、少し嬉しかったよ。」

 シンの顔が、少し嬉しそうなものに変わった。シンは私に、「ミーアは表情がコロコロ変わるな。」なんて言うけど、そう言うシンも結構表情変わるじゃない。

「そっか…。そんな人がもっと沢山居れば…。」
「あぁ…。そういう人達の為にも、早く戦争なんか終わらせなくちゃいけないな。」

 そんな話をしながら、私達はミネルバに戻った。この時はまだ、誰も知らなかった。自分達の出会った相手が、自分達の敵になる事に。


裏PHASE―END
32通常の名無しさんの3倍:2008/01/27(日) 03:17:20 ID:???
>>17氏、倉庫の更新お疲れ様です。
 並びに、GJを下さって皆様、ありがとうございます。

 正直…ルナが壊れ過ぎてましたね。やり過ぎた…Vorz
 次の話からは真面目な話になる…と思います。
33通常の名無しさんの3倍:2008/01/28(月) 02:47:35 ID:???
>>15
PHASE11― 月下の戦場
#1


 オーブ近海で俺達を待ち受けていたもの。それは、おびただしい数の連合艦だった。夜というせいもあって、目視で確認するのは難しいが、メイリンの話では十隻との事だ。MS舞台もそれは“結構”な数らしい。
 更に追い討ちを掛ける様に、オーブ側から砲撃されている。

『どうやら…私達は連合に売られたみたいね。オーブ側に戻る事は出来ないわ。突っ切るしかないわね…。シン、ルナマリア?今はあなた達しか居ないわ…。頼むわね?』
「了解!メイリン、俺はブラストインパルスで出る!!全艦薙払ってやる!!」
『了解。』
『了解。それにしても…ちょっと突ついたら、うじゃうじゃ出てきそうで嫌だわ。』

 あからさまに不満気にルナがぼやく。確かに…前に戦った時は、戦艦六隻にMS十八機…それでも厳しい戦いだったのに、今回はそれを上回っている。

「それでも…戦艦さえ潰せば!」

 戦艦に向けて、のビーム砲を放つ。しかし、そのビームが戦艦を射抜く事は無かった。

『嘘!?あ…アイツって…この前出てきた……!!』
「あの“カニ野郎”!?また出て来やがったのかよ!!」

 俺達を嘲笑うかの様に、光の盾をかざし…一機のMAが静かに佇む。奴に砲撃戦を挑むのは無謀過ぎる…。しかし、此方は砲撃仕様のブラストインパルスに、ルナのガナーザク…。
 ここはソードシルエットに換装すべきか?
 既に“カニ野郎”が砲撃の準備を始めている。

「クソっ!考えてる暇も無いってのかよ!!メイリン!ソードシルエットだ!!」
『了解。ソードシルエット、射出します!』

 前みたいに…無様にミネルバを撃たせるもんか!アイツを叩き斬ってやる!!
34通常の名無しさんの3倍:2008/01/29(火) 03:51:11 ID:???
>>33
#2


『回避!!』

 ミネルバが、MAの砲撃に前もって対処出来た為に今回は避ける事が出来た。
 しかし、MAに接近しようとするも、その周りをしつこく飛び回るMS達の弾幕のせいで、一太刀入れるどころか接近すら出来ない。

「くっ…!?ルナ!援護は頼めるか!!」
『無茶言わないでよ!艦の周りの奴等墜とすだけで此方は精一杯よ!!』

 数機のMSがミネルバの周囲を徘徊し、事有る事にミネルバを狙い撃って来る。
 くっ……!!俺は…どうすれば良いってんだよ!!
 MAにフラッシュエッジを投げるが、弾幕で墜とされる。ビームライフルで射抜こうとしても、狙う前に砲撃を避ける事で手一杯だ。

「一か八か…賭けてみるしか無い…ってか?悪い冗談だ!!」

 しかし、いつまでもこの状態ではミネルバはやがて墜とされてしまう。俺がやるしかない!

『シン!あのMAだけでも何とかして頂戴!!』
「く……っそ…!」

 フルブーストでMAまで突っ込んで行く。装甲が持てば良い…今なら、コオロギがびっしり浮いたプールだろうが何だろうが、飛び込んでやるさ!!
 ビームが何発か被弾する…肩のアーマーが吹き飛び、脚部もビームで切断されるが、それでも俺は“賭け”に勝った。最早、MAは目と鼻の先だ。

「今回は俺の勝ちだ!!!!」

 機体下部から深々とエクスカリバーを突き刺し、ダメージを受けた上半身と下半身を分離する。MAが海中に沈んで行き、爆散する。
 コアスプレンダーは耐久力こそ無いが、的は小さい。むざむざ当てられる事は…多分無い筈だ。

『まさか特攻するなんて…相変わらず無茶するわね?』
「うるせ。メイリン、チェストフライヤー、レッグフライヤー、ブラストシルエットを頼む!ルナは弾幕を張ってくれ!!」
『無茶な注文だわ!』
35通常の名無しさんの3倍:2008/01/29(火) 21:58:39 ID:???
>>34
#3


 敵が攻撃の手を緩める事は…期待するだけ無駄か。コアスプレンダーなんていう、インパルスの一番無防備な状態になっちまったからな…。それも、チェストフライヤーやシルエットが来るまでは、バルカン砲しかない。
 更に此方は一発でも当たれば、もれなく撃墜というゾッとしない状況だ。
 なんだか昔、マユと一緒に遊んだ横スクロールのシューティングゲームみたいだな。

「換装するまでが勝負か…!」
『うわっ!?あ、危ないじゃないのっ!』

 ガナーザクのビームがMSを射抜く。ダガーと思わしきMSが爆散し、辺りを照らす。

「ルナ、ザクはまだ持ちそうか?」
『まだ何とかね。ただ…ちょこまかとうざったいわ。アイツ等。…っ!そこっ!!』
『う、うわあぁ―――…』

 鼻を鳴らし、ルナは再度狙撃した。もう一機射抜かれて墜ちて行く。

「それだけ無駄口叩けるなら、まだまだいけそうだな。」
『まぁね。それなりにはしぶといつもりよ?
 シン、アンタこそ気を付けなさい?今撃たれたら、棺桶になっちゃうわよ?』
「ハハっ…洒落にならないな。…っと、そろそろ来るか。」

 ミネルバはまだ装甲が持っているが、それでもそこまで長く耐えれはしないだろう。
 先程から砲撃しようとしている奴には、バルカンを放って牽制してはいるが、大したダメージは与えられない。
 と、ミネルバのカタパルトからブラストシルエット…並びに上半身、下半身が射出される。

『シン!今射出したよ!』
「やれやれ、やっと来たか…。了解!これより薙払う!!」
36通常の名無しさんの3倍:2008/01/30(水) 00:19:34 ID:???
がんばれ、超がんばれ
37通常の名無しさんの3倍:2008/01/30(水) 01:16:16 ID:???
>>35
#4


――オーブ首相官邸

「ユウナ!コレはどういうつもりだ!!私はこんな事……」
「カガリ、これはもう決定した事だよ。オーブは連合と同盟を組む事になった。君は、オーブがどうやって此処まで復興したのか…忘れてはいないだろう?」

 カガリとユウナさんが口論している…。とは言っても、カガリが一方的に非難しているだけだけど。
 アスランはアスランで、何か思い詰めた表情で立ち尽くしている。

「しかし!そのオーブを焼いたのも連合だ!!そんな相手と同盟など…」
「連合が駄目ならザフトかい?ところが…そのザフトだって、ユニウスを墜として来た訳だ。連合はおろか、オーブ諸国にも甚大な被害が出たと報告されているよ。
 それでも連合は支援してくれている。今その支援を切られたら、民はどうなる?僕は、ザフトに支援出来る程の余裕が有るとは思えないけどね?」

 それを言われて、カガリが言葉に詰まる。

「だ…だが!ミネルバはユニウスの破砕作業に貢献してくれたんだ!!それを討つなんて!!」
「それを話して、民は納得するのかな?納得させるだけの証拠も無いじゃないか。
 これが答えだよ。君に覆す事は出来やしない。」

 そうだ。カガリの言う事は、多分本当の事なんだと思う。でも、それだけでオーブの人達を納得させるのは不可能だ。実際に被害を受けて…傷付いた人達には。

「カガリ…感情だけで考えてる様なら、君にこの国を統べる資格は無い。
 僕達の仕事はね?この国の民を守る事だ。その為なら、僕は手段を選ばない。」

 カガリはそのまま黙ってしまった。ユウナさんが僕に歩み寄って来る。

「済まないね。さて、キラ君。君には“少々頼みたい事”があるんだ。来てくれるかい?」
「は、はい…。」
38通常の名無しさんの3倍:2008/01/30(水) 01:20:11 ID:???
一人称で視点が変わるから読みづらい
俺に読解力が無いせいかもしれんが

話は面白いよ、もっとがんがれ、超がんがれ
39通常の名無しさんの3倍:2008/01/30(水) 09:22:58 ID:???
GJです!
40通常の名無しさんの3倍:2008/01/31(木) 00:31:27 ID:???
>>37
#5


 ユウナさんに応接室まで連れて行かれた。いったい、僕に頼みたい事って何だろう?
 応接室の扉が開く。すると、仮面を被った一人の男性が窓の外を眺めていた。

「彼を連れて来たよ?ネオ・ロアノーク大佐。」

 ロアノーク大佐と呼ばれた人が、此方を振り向く。何だ…この人…?まるで………

「あぁ、ご苦労だったな。ユウナ・ロマ・セイラン。
 そして、初めましてかな?スーパーコーディネーター君?」
「なっ……!?」

 どうして僕の事…?それに、今の声は…“あの人”?
 そんな…有り得る筈が無い。“あの人”は…二年前に死んだ筈じゃないか!!

「それでは、僕はこれで…。」
「あぁ、それではまた後程…。」
「ど…どうしてあなたが!どうしてあなたが此処に居るんですか!!ムゥさん!!」

 僕が“彼”の名前を呼ぶと、彼は「何を言ってるんだ?」という様な表情で、

「おいおい、誰だそりゃ?良いか?坊主…俺はネオ・ロアノークだ。誰と勘違いしてるかは知らんが、人の名前は覚えろよ?」

 別人…なのかな?でも、雰囲気も話し方も声も…何もかもが“彼”に重なって見える。

「す、済みません。」
「や、気にしてはいないよ。ところで、君が呼ばれた理由…知りたくはないか?」

 そうだ…僕は何故呼ばれたんだろう?何だか、嫌な胸騒ぎがする。こういう予感だけは絶対に外れない。

「我々に協力してもらう。拒否権は無いけどな。」
「…………。」

 サイ…カズイ…。ごめん、暫く帰れそうにないかもしれない…。
41通常の名無しさんの3倍:2008/01/31(木) 22:07:20 ID:???
>>40
#6


――オーブ近海

「クソっ!コレじゃ撃っても撃ってもキリが無い……ぐっ…!?損傷が激しくなってきた…。」
『もう!泣き言なら他所で言いなさいよ!!……っつぅ〜…頭打ったわ……。』

 クソっ!数が多すぎる!!
 戦艦はかれこれ三隻墜とした…だけど、此方も相当な痛手を負ってしまった。

『十二時の方向から熱原感知!距離二万…これは…カオス、アビス、ガイアです!!
 それともう一つ………』
『え?えぇ!?こっちはもう手一杯よ!!』
「なっ…!?奴等…やっぱり地上に降りてやがったのかよ!よりによってこんな時に!!」

 出撃前に、艦長が言っていた事だ。“連合の強奪犯が、地上に降りた。”と、ジュール隊から報告が有ったらしい。

「コイツ等に……!こんな奴等に…!!墜とされてたまるかぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 トリガーを引く…しかし、ビームが放たれる事はなかった。バッテリーの残料が、既にギリギリまで減っている。
 そして、その隙につけ込む様にダガーが迫って来た。既にビームサーベルを振り上げている。

『貰った!』
『シン!?』
「しまっ……―――」

 ……?斬られて…ない?
 ダガーの腕の肘から先が折れている。いったい…誰が?

『ふぅー…間に合ったみてーだな。いやー…冷や冷やしたぜ。大丈夫か?インパルスのパイロット。』

 上空から“何か”が、此方をめがけて飛んで来た。そいつは、ミネルバの周りを飛び回るMSを正確に撃ち抜き撃墜した。

「たったの一瞬で…三機も!?」

 いったい…誰なんだ?
42通常の名無しさんの3倍:2008/02/01(金) 21:28:44 ID:???
>>41
#7


 空から現れたのは、オレンジ色のやたらめったら目立つ機体だった。

『ほら…そこだっ!』
『な…なんだ奴は!?ぐわあぁぁぁ……―――』
「な…なんなんだよアイツ…。」

 そいつは、既に次の獲物を仕止めていた。そして、次の獲物に狙いを定める。

『シン…あれ誰?』
「今はそんな事気にしてる場合じゃないだろ!今のうちだ…メイリン!デュートリオンビームだ!!」『は…はい!!』

 突然の増援だったが、助かったから今はそれで良い。多分、奴が議長の言っていたフェイスの隊長だろう。

『あのオレンジ野郎…!地上に降りて来やがったのかよ!!』
『へへ…今度こそ潰しちまえば良いじゃんか。』
『………』

 今度はカオス、アビス、ガイアの三機が視界に入るまで迫って来た。チッ…面倒な奴等が来やがった!!

『おい、インパルスにザク。』
「は、はい。」
『雑魚は俺が引き受けた。お前達は、戦艦を墜としてくれ。まぁなんだ…奴等の相手はちょっとばかし慣れてっからな。』

 随分な自信家だな…。でも、今は従った方が良いな…。

「ルナ、戦艦を狙うぞ?雑魚はあの人に任せよう。」
『えっ?でも…まぁ、そうするしかなさそうね…。』

 そして、俺とルナは戦艦を狙う事にした。俺達の砲撃を潜って行く様に、そいつがMSの群れに突っ込んで行った。

『テメェ!この前みたいにいくと思うなよ!!』
『ハッ…嫌だねぇ〜。そんなガツガツしてっとモテねぇぜ?』

 触れ合いそうなくらいまで接近した両者が、剣を交えた。


PHASE11―END
43通常の名無しさんの3倍:2008/02/01(金) 21:38:20 ID:???
PHASE11終了です

ミーアが出てませんねorz
戦闘描写になると、話に絡めない…(鬱)

読みづらいとの意見がありましたので、少し考慮してみます。
44通常の名無しさんの3倍:2008/02/01(金) 22:01:08 ID:???
GJ

まあ、イキナリ文体を変えるのも無理があるから、少しずつ改善していけば良いよ
あと、書いたらすぐに投下しているみたいだけど、どこでGJしていいのかわからんw
2,3日くらいのペースならある程度まとめて投下してもいいんじゃね?
45通常の名無しさんの3倍:2008/02/01(金) 22:57:58 ID:???
GJ!
いつも楽しみにしてますぜ。
46通常の名無しさんの3倍:2008/02/02(土) 23:34:20 ID:???
>>42
PHASE12― 突破
#1


「コイツでっ!」
『墜ちなさい!』

 これで墜とした戦艦は五隻…後半分だ!

『なんだなんだ、良いのは機体だけかよ?』
『この……クソ野郎が!!』

 一方的にカオスが圧されている。圧倒的だ…。海中からカオスが急襲するも、即座に盾で叩き伏せる。

『クソっ…!な…なんだってんだよコイツ!!』
『ハハ…俺の事が気になって仕方ねぇみてぇだな!ま、聞こえてねぇだろうけど、一応名乗っとくか。
 俺はハイネ…ハイネ・ヴェステンフルス…フェイスさ!!』

 ………、やっぱりあの人がフェイスの…。
 右腕から伸びた何か…ワイヤーの様な鞭の様な物が、アビスを拘束する。そのまま振り回し、背後から迫るガイアに投げ付ける。

『随分とでけぇ魚が居たもんだな。おい、インパルス。さっさと戦艦墜としてくれ。……ちょっとノリノリで来たけど、あんまり長いとこ持ちそうはねぇわ。』
「はぁ!?もう少し持たせて下さいよ!」
『うるせぇ!人にはな、可能と不可能があるんだ!!』

 な、なんなんだこの人!?強いけど…強いけどさぁ、何か間違ってないか?
 い、いや…それより次の艦を狙わないといけないな。

『これで七!…そろそろ突っ切って行けるんじゃない?艦長、どうですか?』
『そうね、後は…あの三機さえなんとかすればいけそうだわ。』

 そうなると…俺の出番って訳か。この場合は……

「メイリン!フォースシルエット!!」
『了解!フォースシルエット射出準備開始します。』
47通常の名無しさんの3倍:2008/02/03(日) 03:00:25 ID:???
保守
48通常の名無しさんの3倍:2008/02/04(月) 00:29:22 ID:2AQiyOk2
保守
49通常の名無しさんの3倍:2008/02/04(月) 22:33:24 ID:???
>>46
#2


「ルナ!今の内に飛行可能な装備に換装してくれ!!二人だけじゃ手が足りない。」
『オッケー♪まぁ…格闘はあんまり得意じゃないんだけどね…。』
「言ってる場合か!」
『もー…怒鳴らないでよ。鼓膜破れると思ったわ。メイリン、飛行用のウィザードお願い。』

 ザクがミネルバに入る。それと同時に、フォースシルエットが射出される。

「えーと…ヴェステンフルス隊長。これより援護……」
『おいおい、こんな土壇場でイジメかよ?最近のパイロットは、どんな教育受けてんだよ…まぁ、言ってる場合じゃねぇか!!援護してくれ、インパルス!!』
「了解!」

 アビスが俺に向けて、一斉射撃してきた。翼が若干をかすめるが、ダメージは大した事が無い。
 まぁ、直撃を免れたのは、ヴェステンフルス隊長が事前に妨害してくれたお陰だが…。

『オレンジ野郎!邪魔するんじゃねぇよ!!』
『ハハっ…!良い男はモテてモテてしょうがねぇな!!いいぜ…まとめてテイクアウトしてやるぜ!!』

 ……っ!?アイツ…何処がどうキツいってんだ!!余裕で渡り合ってるじゃないかよ!!
 俺がアビスに斬り掛かる。アビスが放ったビームランスの刃と交わり、火花が散る…。

「……っ!!……はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
『このツギハギ野郎!いい加減…墜ちろってんだよ!!』

 すぐさま距離を離したアビスが、海中に潜って行った。水中から狙われるのは厄介だな…。くそっ!どうする…。
 今は構ってる暇は無い…か?放っておきたくは無いけど、手出しが出来ないな…。
 今は押され気味のルナを助けに行くしかないな。
50通常の名無しさんの3倍:2008/02/04(月) 22:36:50 ID:???
>>49
#3


 海中から突然アビスが飛び出し、レールガンの砲門が俺に向く。PS装甲なら何とか耐えられるが、中に居る俺にはとんでもない衝撃が襲う。正直、受けたくない攻撃だ。

『させねぇよ!!』

 ヴェステンフルス隊長が、アビスに蹴りを見舞う。アビスの体制が崩れ、レールガンの軌道は俺を反れる。

『ボーっとしてんじゃねぇよインパルス!死にてぇのか!!』
「くっ…分かってるさ!!」

 ガイアが背後から迫って来る。しかし、それを牽制する様にビームが放たれる。飛行用ウィザードに換装したルナのザクだ。

「遅いぞルナ!」
『仕方ないでしょ!飛行用ウィザードなんて、使うの始めてだったのよ!?』

 これで何とか凌げる筈だ。ビームアックスで、ガイアの斬撃を受けるザク。ガイアはルナに任せよう。俺は……。

『僕は此処だよ!大人しく墜ちろっつーの!!』
「しまった……!」

 再度、海中から飛び出して来たアビスの一斉掃射だ。盾で何とか防いだが、左腕もろとも持って行かれた。

「くそっ!お前はっ!!」

 ビームライフルで応戦するも、すぐに海中に潜られて避けられる。ビームじゃ水中迄は届かない…かといって、水中戦に特化したアビスに水中戦を挑むのは自殺行為だ。そもそも、インパルスに水中用の装備なんか無い。
 次に飛び出して来た時に叩く以外は、手段は無いのか。

「ルナ、大丈夫か!」
『あんまり大丈夫じゃない!早く助けて!!』

 ルナの腕が劣っている訳でもなく、ただ単にスペックの差が出てるだけだ。俺が来た事を察知したガイアが、獣型に変形し、ビームの刃を帯びた翼で両断しに掛かって来た。
51通常の名無しさんの3倍:2008/02/04(月) 22:39:20 ID:???
>>50
#4


 盾は吹き飛んだし、ビームサーベルで受け切れる様な容易い武装でもない。

『でええぇぇぇぇぇぇえい!!』
「っ…!?分離!」

 間一髪で上半身とレッグフライヤーで分離する。レッグフライヤーが無惨に両断され、爆散した。
 でも、仕止められなかったのは痛かったな!

「当たれっ!」
『私が…こんなっ!?』

 コクピットは外した。だが、腰の辺り…スラスターを射抜く事は出来た。これで奴のスピードはある程度殺せた筈だ。

『ステラ!…ったく、今行くから待ってろ!!スティング、ガイアはちょっとヤバめだ。退いた方が良いんじゃない?』
『チッ…確かに、数で劣っちまってるからな。艦長、ファントムペイン、これより帰投する!』

 奴等が一斉に此方に背を向けて行く。撤退するつもりか?
 アビスがダメージを受けたガイアを連れて行く。

「逃がすもんか………」
『馬鹿野郎!その状態で深追いするんじゃねぇ!!』
「………っ!?」

 確かに…アイツの言う通りか…。今は突っ切る事が任務だ。
 これ以上は戦闘を続ける必要は無いな。今更気付いた事だが、バッテリーがもう僅かしか残っていない。

『ミネルバより通達、これより戦線を離脱する。MS隊、これより帰投せよ。』
「了解、インパルス…これより帰投します。」

 ひとまず、俺達はミネルバに帰投する事にした。
52通常の名無しさんの3倍:2008/02/06(水) 00:41:44 ID:???
GJ
53通常の名無しさんの3倍:2008/02/06(水) 03:39:57 ID:???
>>51
#5


「ヴィーノ、ヨウラン。インパルスが少し酷い有り様になっちまった。整備頼む。」
「うひゃ〜……。ま、あんだけ派手にやりゃ当然か。愛が足りないよ…シンは。」
「そりゃな。愛情深い様に見えないだろ?俺。」

 ミネルバに帰投して、ヨウラン達に機体を預けた。すると、ミーアが駆け寄って来て、俺とルナにタオルと飲み物を手渡す。

「お疲れさまですわ。シン、ルナさん。」
「ありがとうございます。……って、何をなさってやが…じゃなくて、なさってるんですか?ラクス様。」

 半眼で問い詰める俺を見つめ、首を傾げるミーア。

「普段、この艦の方々にはお世話になっていますし、私は私なりに出来る事をしようと思ったのです。グラディス艦長にお伺いしましたら、この役職を提供して下さいました♪」

 ……艦長…よりによって、雑用押し付けるなよ…。まぁ、ミーアが気にしてないから別に良いんだけどさ…。

「ラクス様。お気持ちはありがたいのですが、あまり無理はなさらないで下さい。お怪我の方は、もうよろしいのですか?」
「えぇ、お陰様でもうすっかり。ご心配には及びませんわ♪ルナさん。」
「そうですか。」

 整備班の慌ただしく動き出した。長居したら邪魔になっちまうな…。

「ルナ、ラクス様。あんまり此処に居たら邪魔になっちまう。とりあえず移動しよう。」
「あ、それもそうね…。それじゃ、私はシャワーでも浴びてくるとしますか…。嫌〜な汗かいちゃったし。」
「そうですわね。私も次のお仕事がありますので。」

 ………ん!?“次の仕事”!!!?
 ルナがMSドッグを出て行ったのを見計らって、ミーアを手招きする。

「ラクス様…ちょっと…。」
「……なぁに、シン?」
「……艦長に何を任された?」

 顎に指を当て、考え込むミーアを見て何となく嫌な予感がしてきた。
 艦長……本当はミーアの事知ってるんじゃないか?
54通常の名無しさんの3倍:2008/02/06(水) 03:42:22 ID:???
>>53
#6


 艦長室、パイロットスーツを着たまま、俺はそこに居る。

「艦長……。一つだけお聞きしたい事があるんですが…。」
「あら?何かしら。用件はなるべく早めにね。議長に報告する事もあるのだから。」
「分かりました。手短に聞きます……。ひょっとして、“気付いてますか?”」

 短い質問をする。俺が何を言いたいのか、艦長は既に理解していた様だ。

「ふふ…シン、あなた…私を誰だと思ってるの?この艦の艦長よ。“あの娘の正体について知っているか”…でしょう?
 始めから議長に言われてたわ。偽のラクス様だって。」

 笑いながら艦長は俺にそれだけ言って、キーボードを叩き始めた。

「艦長も人が悪い…。知ってるなら知ってるで、始めに言ってくれても良いじゃないですか。」
「聞かなかったでしょ?あなた。
 まぁ、今のところ知ってるのは私達だけみたいね。彼女がしっかりやってくれてるみたいで、安心したわ。」

 議長…俺よりこの人の方が、遥かに知らないフリが上手いんですけど…。人選ミスってませんか?アンタ。
 と、ドアがノックされた。誰か来たらしい。

「誰か来ましたね。では、自分はこれで…」
「いえ、あなたは居なさい。いいわ、入って頂戴。」

「失礼します。特務隊所属、ハイネ・ヴェステンフルス…只今参りました。」

 入って来たのは、例のフェイスの隊長だった。胸にフェイスの紋章が着いてる。

「よく来てくれたわね。私はタリア・グラディスです。」
「えーと…自分はシン・アスカです。」

 敬礼すると、フェイスの隊長が敬礼した。
 何だか…思っていたのとは違うな。もっとごっついオッサンだと思ってた。
 何故か、ヴェステンフルス隊長は俺を見てニヤニヤしている。何かしたかな?俺。

「それではシン。ヴェステンフルス隊長に、この艦を案内してあげて頂戴。」
「ハッ!」

 何はともあれ、俺とヴェステンフルス隊長は艦長室を出た。
55通常の名無しさんの3倍:2008/02/06(水) 03:44:53 ID:???
>>54
#7


「へぇ〜…お前がシン・アスカか。」
「え?あ…自分が何か?」

 さっきからニヤニヤして…何だこの人は…。気色悪いな。

「いや〜、アカデミーで問題児だったって聞いててさ?どんな奴か知りたくてな♪」
「うっ………!?」

 そう、アカデミー時代の俺は兎に角問題児だった。よく、教官と取っ組み合いの喧嘩になったり、レイにシミュレータでちょくちょく勝負挑んだり…そう、色々やってたからな…ハハ…悪い噂って広まるもんだな。
 今の俺が昔の俺を見たら、多分殴ってるだろう。俺はそんな奴だった。

「そんな顔すんなって。とやかく言うつもりは無ぇし、今は問題児って訳でも…あるみてぇだけど、まぁ、俺が叩き直してやっからさ♪」
「あのー、ヴェステンフルス隊長。」

 そう呼ぶと、急にムッとしだした。あれ?何かマズイ事言ったかな?

「お前さー。俺が出戻りだからって苛めてんのか?隊長なんてやめてくれよ。
 俺を呼ぶのは、ハイネで良いから。つーか、ヴェステンフルス隊長って言いづれぇだろ?」
「ま、まぁ…。」
「よし!以降は俺をハイネと呼べ!!また隊長なんて言ったら、便所掃除させるからな♪」

 何だかいい人なのか嫌な人なのか…よく分からん人だ。悪い人ではなさそうだけど。

「いやー、まさかこんなとこで後輩に会うなんてなー。」
「後輩?」
「お前だよお前。サトー教官とこの奴だろ?実は、俺もアカデミー居た頃はサトー教官に世話になっててな♪」

 教官…特に、サトー教官は恐ろしかった…。とてつもなくスパルタで、問題児だった俺は特に目をつけられていた。
 今となっては懐かしいな。あの教官だけは尊敬出来た。元気にしてるかな?退役したみたいだけど…。

「えらく奇遇ですね。」
「まぁな。で…?お前はラクス様の護衛だろ?ラクス様は何処に居るんだよ。ファンなんだよ俺…サインくれるかな〜♪」

 鼻歌混じりに俺の後ろを着いて来るハイネ。済みません、この艦のラクス様は偽物です。
 何はともあれ、フェイスが来たんだ。少しは安心…だな。


PHASE12―END
56通常の名無しさんの3倍:2008/02/06(水) 03:50:18 ID:???
PHASE12終わりました。

ハイネってあんな奴じゃなかった気が…まぁ、多分…彼にも色々あったのだと思います。

今回はミーアが少しだけ出せました…良かった。

GJ下さった皆様、ありがとうございます。
投下のペースは、このくらいで大丈夫でしょうか?
57通常の名無しさんの3倍:2008/02/06(水) 21:17:25 ID:???
GJでした
投下ペースと分量はこのくらいで丁度いいんじゃないかな
58通常の名無しさんの3倍:2008/02/08(金) 01:00:29 ID:???
保守

会話文は少なめに
地の文は多めにが良いと思う

セリフばっかりのSSは、まぁ、その、なんだ・・・
がんばれ
59通常の名無しさんの3倍:2008/02/08(金) 03:42:10 ID:???
>>55
PHASE13― 行方
#1


――オーブ首相官邸
 ユウナさんが僕に頭を下げる。

「済まないね…キラ君。彼等の要求は君だったんだよ。君は…もう戦場に立つ必要なんて…」
「そんな…頭を上げて下さいユウナさん。大丈夫です…分かってますから。」

 そう、ユウナさんはこの要求を断る事なんて出来なかった。オーブへの支援を切られれば、オーブ自然と“干上がる”から。
 それに、例え支援無しでやっていけたとしても、連合には核がある。それを防ぐ方法は無きに等しい。
 今のオーブはそれだけ脆弱なんだ。

「キラ君…ありがとう。では、オーブ軍の軍服だ…。」

 軍服に着替え終わって廊下に出ると、アスランが居た。

「キラ…行くのか?」
「うん。オーブの為だから…僕一人でなんとかなるのなら、安いものだよ。」

 アスランは何か言いたげに僕を見ている。多分、一緒に来ようとしているんだと思う。

「……駄目だよ?アスラン。君は、カガリを支えてあげて?それに…君には二度とザフトを討たせたくない。」
「そうか……。」
「そんな顔しないで?カガリまで不安になっちゃうよ?」

 アスランの気持ちは分かる。ミネルバは、つい最近までアスランがお世話になっていた艦だ。それを討たないといけない。
 だけど、今のアスランはオーブに居る。それが“答え”。

「キラ…お前は、それで本当に良いのか?」
「討ちたくないとか…今はそんな甘ったれた事は言ってられないよ。オーブの人達の為だから。僕はミネルバを討つ。
 覚悟は…出来てる。」

 戦争が終われば、みんな戦う事なんて無くなる筈。その為なら、僕は戦わないといけない。
 二年前…“彼”に言った事だ。「守りたい世界がある」と。

「それじゃ。アスラン、ユウナさんとカガリをよろしくね。」
「待ってくれ。少し…聞きたい事があるんだ。」
「え?」

 聞きたい事って、なんだろう?
60通常の名無しさんの3倍:2008/02/08(金) 03:44:11 ID:???
>>59
#2


「どうしたの?いきなり。」
「キラ、お前はラクスと一緒じゃなかったのか?」

 アスランが僕に問い掛ける。

「え?うん…二年前の戦いが終わって、僕はそのまま復興支援に行ったからそれっきりだよ。アスランなら知ってると思って、すっかり連絡してなかった。」

 アスランの表情を見るかぎり、アスランだってラクスの行方は知らない様だ。でも、何でいきなりそんな事を聞くんだろう?

「どうしてるんだろうね、ラクスは。元気にしていれば良いんだけど…。」
「キラ、実はな…。プラントのデュランダル議長が、ラクスを捜しているみたいでな?」

 デュランダル議長…?あぁ、聞いた事がある。どんな人かは知らないけど。カナーバ議長の後任の人だ。えーと…。
 考え込んでいると、アスランが半眼で僕を睨んでくる。

「し、仕方ないじゃないか!テレビなんて見ていられる程暇じゃなかったんだから!!復興支援って、結構ハードなんだよ!!」
「それでも、少し眺める暇くらいあるだろうが…。まぁいい、ラクスの方は、ユウナ様に頼んで捜索して貰う事にしよう。」

 溜め息混じりに額をおさえ、首を振るアスラン。実をいうと、子供達との遊びに夢中になりすぎて、テレビを見ていなかったという事実は伏せておこう。
 言ったらまた睨まれちゃうと思うし。

「でも…少し妙だね?何でラクスは、急に音信不通になってしまったんだろう?」

 今度は、アスランが何か考え込んでしまった。ブツブツと、何か呟いている。

「……いや、考え過ぎか…。デュランダル議長もそんな風には見えなかったしな…。」
「アスラン?」
「…あ!?いや、なんでもない。キラ、頼んだぞ…。」

 変なアスラン。ラクスの事は気になるけど、今は連合に協力する事が先か…。
 今はそれだけを考えよう…それだけを…。
61通常の名無しさんの3倍:2008/02/09(土) 00:07:08 ID:???
最近このSSは俺しか読んでいないような気がしてきた・・・
点呼を取ってみる。

62通常の名無しさんの3倍:2008/02/09(土) 00:18:37 ID:???


GJです。
ラクス行方不明なのか。キラ、すこしくらいニュースみたりちゃんと連絡するようにしとこうよ。

たしかに書き込み少ないですね。
ROMの人もいるだろうし、避難所の存在をしらなかったり、新しくスレ立ったこと知らない人もいるんじゃないかな
63通常の名無しさんの3倍:2008/02/09(土) 02:00:41 ID:???
3〜
いつもGJっす。
64通常の名無しさんの3倍:2008/02/09(土) 13:26:09 ID:???
1,2,3・・・いっぱい!
65通常の名無しさんの3倍:2008/02/09(土) 17:06:01 ID:???
ノ4
66通常の名無しさんの3倍:2008/02/09(土) 22:54:44 ID:???
土曜なのでage
67通常の名無しさんの3倍:2008/02/10(日) 18:28:37 ID:???
ノ5 ココニイルゾー
68通常の名無しさんの3倍:2008/02/10(日) 23:04:39 ID:???
#3


 港に着いた。連合艦に、オーブの艦が停泊している。ユウナさんが気を利かせてくれたのか、やたら高そうなリムジンで送られた。
 何だか、縮こまってとてもじゃないけどリラックスなんて出来なかった。だって、リムジンなんて乗ったの初めてだし。
 …と、そんな事を考えている場合じゃない。これからオーブの為に戦いに行かなきゃいけないんだ…。

「……僕は…これで良いんだよね?フレイ…。」

 もう、誰も喪いたくない。オーブの事より、アスラン達の事より…これが本当の動機だと思う。
 僕は…自分勝手だ。そして、いつだって守りたいものなんか守れなかった。エルちゃんにフレイ…ムゥさん…トール。

「っ!?駄目だ駄目だ!後ろ向きに考えちゃ駄目だ!!まずは、出来る事から始めよう。」

 ……おかしいな?待ち合わせの時間はとっくに過ぎている。でも、ロアノーク大佐もトダカさんも居ない。
 うーん……。時間を守らないのはいけないと思うんだけど…来たら注意すべきかな?あ、でも…遅刻しそうになった僕に言う資格は無いか…。

「悪いな坊主。待たせちまったみたいだな。」
「あ、ロアノーク大佐…何かあったんですか?」

 悪びれた様子の無いロアノーク大佐に、少し眉をひそめたけど、気付いてないみたいだ。

「さてと、んじゃさっさとミネルバを追うとしますか。坊主、準備は出来てるよな?」
「はい、持ち物は今持っている物で全てです。あの…ロアノーク大佐?」
「どうした?坊主。今更やめようったって、そうはいかねぇからな?ま、そんな風に考える様には見えねぇけど。」

 一言多い人だな…。今更ながら気付いた事を聞く事にする。これは、どうしても確認しなきゃいけない事。

「あの…僕、骨折しててMSの操縦が出来ないんですけど…。」

 ギブスをはめた腕を見せる。ロアノーク大佐が、固まったまま僕を見ている。何だかかなり気まずい。
69通常の名無しさんの3倍:2008/02/10(日) 23:06:14 ID:???
>>68
#4


「それは…アレだ。あんまり突っ込むな。それとだ…坊主には、俺の艦に乗って欲しい。MSについては、怪我が治ってからでも構わんさ。
 OSの書き換えとか、お前さんの得意分野だろ?」

 OSの書き換え…か、確かに人より少し早く出来るけど、あれ以来キーボードすら触っていない僕に出来るかな?まぁ、それでもやらされるとは思うけど。

「それでも構いませんが…。僕に任せて良いんですか?オーブには、連合に反感を持つ人だって居ます。僕がその中の一人だという可能性だってありますよ?」
「お前さんは、そんな先の見えない行動をする馬鹿じゃないだろう?出来ないね。お前さんは、そんな事をすれば“どうなるか”分かってるだろ?」

 彼の言う通りだ。もし、僕が軽率な行動を取れば、連合は矛先をオーブに向ける。連合には、叩けるだけの力が有るんだ。
 オーブとの同盟だって、ただ確実にプラントを叩く為の確実性を取る為にすぎない。

「あなたは…卑怯だ…。」
「あぁ、俺は手段を選ばない男だよ。話はそれだけか?それなら、早く行くぞ?」

 諦めて、僕は彼に着いて行く事にした。結局、僕には始めから選択肢なんて無かった。ただ、それだけの事だ。
 矛盾している…自分で選んだ筈の道なのに、その道は半ば強制されている。
 骨折も、実はもう殆ど治っている。またMSを駆って、命を奪う事になるだろう。

「あぁ、見えて来た。アイツが俺の艦だ。ま、あんまり長い付き合いにはなりそうにねぇけど…よろしくな、坊主。」
「はい、お願いします。」

 握手を交わし、一隻の巨大な戦艦を見やる。連合の最新式の艦なのかな?凄く大きい。
 そして、僕はその艦に乗り込んだ。
70通常の名無しさんの3倍:2008/02/12(火) 20:44:05 ID:???
保守
71通常の名無しさんの3倍:2008/02/12(火) 23:57:55 ID:???
>>69
#5


――その頃、ミネルバ艦内

「オーブも敵に回ってしまったし…どうしたものかしらね。このままミネルバだけで進むのは、些か危険過ぎるわ。」

 ブリーフィングルームは静寂に包まれている。それもそうだ、今は笑っていられる状況ではない。
 オーブと手を組んだ連合に追い付かれれば、たちまちミネルバは墜とされるだろう。きっと、次は全力で潰しに掛かって来る筈だ。この前の戦闘はたまたま無事に済んだが、次にまたうまくいくとは限らない。何としても、他の部隊に支援してもらわなければ…。
 しかし、話は簡単じゃない。元々、今のザフトに“蓄え”なんて殆ど無い。支援を求めるのも酷な話だ。

「……。艦長、自分に一つだけ考えがあるのですが。」

 ハイネが立ち上がり、艦長を見やる。みんなの視線がハイネに向く。いったい、どんな案なんだろう?
 地図を広げ、ある地点をマーカーで指す。……おい、正気かよハイネ…。指し示された地点、そこは、“難攻不落”のガルナハンだった。
 多くの部隊が此処に手をこまねいている。

「ガルナハンです。此処には現在、相当数の部隊が配備されています。此処を墜とせば少しは余裕が出てくる筈…。」
「確かに…此処を墜とせれば、ある程度戦況が変わってくるわね。でも、あなた…勝算はあるのかしら?」

 艦長の問いに、ハイネは不敵な笑みを浮かべ、一枚のディスクを取り出した。それを起動させると、ガルナハン周域の地図が現れた。
 …ん?よく見ると、細かく何かが書いてある。

「この計画が成功すれば、ガルナハンは確実に墜ちます。ですが、リスクは非常に高いものです。
 数日前の通信で送られたデータを元に作成しました。」

 そうだ。数日前、通信が入って、ミネルバ隊に増援を頼んだ部隊が送ってきた物だ。なんでも、現地のレジスタンスが調べた物らしい。
72通常の名無しさんの3倍:2008/02/12(火) 23:59:03 ID:???
>>71
#6


「これは…炭鉱かしら?」
「はい、連合軍はこれに気付いていません。それに…この炭鉱を通れば、ローエングリン砲台のほぼ目前に抜ける事が出来ます。」

 確かに、此処を通れば難なく鉄壁の守備を抜ける事はできそうだ。しかし、この炭鉱…どうやってもMSなんか通れそうにないんだが…。どうやって?生身で行くなんて、そんな馬鹿な真似はしないとは思うけど…。

「まぁ、此処から先は現地に行かないと何とも言えません。本当に分の悪い賭けみたいなものですから。」
「そう、それでも…私達は行かなきゃいけないから、ガルナハンに進路を向けましょう。ハイネ、作戦はあなたに一任するわ。…以上、ブリーフィング終わり。各員、持ち場に戻りなさい。」
「ハッ…!」

 ハイネの作戦…本当に大丈夫なんだろうか?分の悪い賭けって…不安ばっか残るなぁ…。
 ブリーフィングルームを出て、自販機の前でとりあえずコーヒーを飲む。うーん…悩んでも、俺に作戦考えるだけの頭が無い事に些かガックリくる。

「シン、どうしたの?」

 モップとバケツを持ったミーアが、俺の隣に座る。まさか、「自分の無能さに頭を痛めてました。」なんて言う訳にもいかず、少し返答に困る。

「何でもないよ。」
「嘘、顔にちゃーんと出てるから、私には分かるわよ♪」

 笑いながらそう言うミーア。よりによって、ミーアに言われると思わなかった…。何だかヘコミそうだ。

「うるさいな。何でもないったら何でもないっての。そんな事より、こんなとこでサボタージュですか?余裕ですね?」

 少し頭に来たので、ほんの少し厭味でも言ってやる事にした。すると、少しムッとした表情になり、半眼で俺を睨んでくる。

「ふ〜ん?シンってば、折角人が心配してあげてるのに、そういう事言っちゃうんだ?」
「すみませんね。俺も口さが無いもんで。」

 暫く睨み合ってると、向こうから歩いて来たメイリンが俺達の気まずい雰囲気を察知してUターンして行った。
73通常の名無しさんの3倍:2008/02/13(水) 00:00:14 ID:???
>>72
#7


 暫く睨み合っていた。だけど、お互いに不毛だと思ったのか、すぐにやめる。紙コップを握り潰し、ゴミ箱に放り投げる。
 とりあえず、あんまり長く休憩してるとまたヴィーノ達に文句言われるからな。さっさと持ち場に戻るか。

「あ、シン。ちょっと気になったんだけど。」
「え?何がだよ?」

 いきなりなんなんだ?まぁ、表情を見る限り、大した事ではないだろう。

「うん?大した事じゃないと思うんだけど、みんなが慌ただしかったから。どうかしたのかな?って思っちゃって。」

 あぁ、そりゃ…これからガルナハンに向かってくんだ。慌ただしくもなるさ。嫌でもな…。

「シン?」

 考えてる場合じゃないか…。俺に出来る事なんて、そこまで多くない。とりあえず、まずは…って………。

「ミーア。話を聞いてなかった俺も悪いと思うが、何もつねる事は無いじゃないか。」

 俺が見やると、不満そうな顔で睨んでいる。というか、かなり痛い。手を払って、既に赤く腫れた頬を擦る。

「これから、少し…というか、かなり厳しい戦いになるんだ。だから、みんな少し苛ついてるんだと思う。」
「そうなんだ…厳しい戦い…。みんなが無事で済めば良いんだけど。」

 苦し気に…少し考え込む様に、ミーアが呟く。ローエングリン砲が撃たれれば、みんな無事には済まないだろう。だから…だからこそ何としても討たないといけない。
 そうだ…今のままじゃきっと俺は駄目だ。力が…力さえあれば、みんなを死なせずに済む。

「大丈夫…俺が死なせない。どんな敵だって、俺が全て叩き伏せてやるさ。」

 そう言って、シミュレータに向かう。ハイネに付き合って貰おう。そう、俺が強くならなきゃ意味が無いんだ…俺が…。


PHASE13―END
74通常の名無しさんの3倍:2008/02/13(水) 00:41:15 ID:???
PHASE13終了です

会話文…減らすのが少し難しそうですが、考慮して書いてみます。

GJ並びにご意見下さった皆様、ありがとうございました。
75通常の名無しさんの3倍:2008/02/13(水) 21:15:55 ID:???
GJです
文章も以前に比べてずっと読みやすくなってきました。
76通常の名無しさんの3倍:2008/02/14(木) 23:08:44 ID:???
保守
77通常の名無しさんの3倍:2008/02/15(金) 17:57:10 ID:???
保守
78通常の名無しさんの3倍:2008/02/15(金) 22:35:55 ID:???
>>73
PHASE14― 鉄壁
#1


 ガルナハン周域のザフト軍基地。連合の追跡が無かった為、思いの他楽に辿り着いた。
 着いてから早速、艦長、アーサー、ハイネ、ルナ、そして俺の五人は、ブリーフィングルームに呼ばれる羽目になった。
 基地の指令官の話によると、事態はかなり切迫したものになっているらしい。

「いやはや…名高いミネルバ隊にお越し頂けるとは…。おっと失礼…正直に申し上げると、現状での勝率は無きに等しい…。」

 そこで、ハイネが口を挟む。

「そこで例の作戦を…そういう事ですね?」
「はい……。」

 いつになく真剣な表情で、ハイネが考え込む様に顎に手を当てる。あぁ、作戦って、この前言ってた炭鉱抜けの事かな?
 でも、あの炭鉱のサイズからしてコアスプレンダーしか通れそうにないんだが…。コアスプレンダーだと、ローエングリンを吹っ飛ばせる装備なんて皆無だ。
 どうしたもんかと頭を悩ませていると、肩を叩かれた。視線を向けると、ハイネが俺を見ている。

「見て分かる通りだ。俺達が相手の守りを揺さぶる。んで、お前がローエングリンを墜とせ。シンプルだが、それが今回の作戦だ。出来るだろ?」

 真剣な面持ちで…多分、本気で言ってるんだろう。でも…

「ちょっと待って下さい。コアスプレンダーの装備だと、傷一つつきませんよ?かといって、ミネルバがローエングリンに近付くのは危険ですし。」

 その言葉を待っていた。とでも言わんばかりに、指令官とハイネが不敵な笑みを浮かべる。
 何か策でもあるのか?八方塞がりにしか見えないが…。

「指令官、“例の物”…準備は出来てますか?」
「はい、既にミネルバに運ばせました。恐らく…アレであれば、ローエングリンを貫く事が出来るでしょう。」

 アレってなんだ?ルナと顔を見合わせ、疑問符を浮かべた。
79通常の名無しさんの3倍:2008/02/15(金) 22:36:55 ID:???
>>78
#2


 ミネルバに戻ってすぐ、ハイネにMSドッグに連れて行かれた。すると、ヨウランとヴィーノ慌ただしくコアスプレンダーに何かを取り付けている。主任までも出張っている。

「コアスプレンダーに、何を取り付けているんですか?……ん?ミサイルポッド?」

 そう、どう見てもミサイルポッドだな。

「あぁ、ありゃ新兵器でな?なんでも、貫通して炸裂するタイプのミサイルみてぇだ。ポッドには各四発…計八発のミサイルが搭載されてる。あれでうっとうしい大砲をぶっ飛ばすんだ。
 あれならコアスプレンダーでも、十分な火力が持てる。……ま、要はお前次第って事さ。」

 成る程…。打つ手はちゃんとあったんだな…まぁ、無いなら言う訳ないしな。
 …………って、ちょっと待て!俺次第!?

「あの…お、俺次第っていうのはどういう意味でしょうか?」

 俺が冗談でも言ったとでも思ったのか、ハイネが笑いながら俺の背中を叩く。正直、結構痛いんだけど!

「ハッハッハ♪面白い事言うなーシンは。この作戦の生命線はお前だって事だよ。」

 俺に出来るかな…?俺に…出来るのか?…いや、やんなきゃいけないのは分かってる。とはいえ、モヤモヤしてくる。
 多分、これは不安だ。俺は…そこまで器用じゃないし、こんなに重要な作戦を任された事なんて……。
 ハイネがまた俺の背中を叩く。かなり力が入っていて、思わず咳が出た。

「…不安か?だろうな。本当なら、俺がコアスプレンダーに乗れりゃ良いんだけどな…。でも、今乗れるのはお前だけだ。
 だから…俺にしてやれるのは…。」

 ハイネがあきらかにシミュレータを見ている。確かに…お復習はしといた方が良いな。何より、ハイネはアスラン並に強い。それで学べる事もある筈だ。

「いっちょやるか?」
「そうですね…。やれる事はやっておきたいから…やりましょう。」
80通常の名無しさんの3倍:2008/02/16(土) 13:30:13 ID:RLlCGr36
OOあげ
81通常の名無しさんの3倍:2008/02/17(日) 05:13:56 ID:???
>>79
#3


 モニタに仮想空間が広がる。今回の俺の機体は、当然ながらコアスプレンダーだ。そして、ハイネがグフ。
 この状態でマトモにやり合うのは馬鹿のする事だ。訓練だろうがなんだろうが、出来ない事は出来ないし、それを無理にやっても意味は無い。
 俺がハイネに勝つ条件は、ハイネの背後にあるターゲットの撃破だ。ハイネの撃破なんて無理難題じゃなくて良かった…。

『さて、これでお前との訓練は何回目かな?一回くらい、俺を出し抜いてみろよ。やられっぱなしなんて情けないだろ?』

 そう、かれこれ何戦か交えたのだが、今の一度も勝った事なんて無い。我ながら…進歩が無いと嘆きたくなる。でも、嫌な顔一つせずに付き合ってくれるハイネの前で、そんな顔なんか出来る訳もない。
 ……っと、そろそろ始まるな…。次こそはハイネに一矢報いてやる!

「あれ?ラクス様。あいつ等二人して何やってるんですか?」
「今回の作戦の為に、今までのお復習をする様ですわ。」

 ミーアとルナが、俺達の様子を見ている。ルナは早く替われと言わんばかりに俺を見ている。でもな…今回ばかりはそうもいかないんだよ。
 そして、戦闘が始まった。

『シン、避けろよ!“しょっぱなから墜ちました。”じゃ、話にならねぇからな!!』

 言葉とは裏腹に、的確に俺を狙って弾幕を張って来る。当たってやる訳にはいかない。縫って行く様に進み、ターゲットに狙いを着け……違う!?今ターゲットを狙っても、ミサイルがハイネに撃ち墜とされる!ハイネをターゲットから遠ざけないと!!

「くっ…そう簡単にはやらせてくれないか!」

 引き離す…でも、どうやったら離れる?バルカンではグフのシールドを撃ち抜く事は不可能。ミサイルは八発しか無い。
 ターゲットをバルカンで狙うが、シールドによって一発たりともかすりはしない。
 なんて“やりにくい”…。
82通常の名無しさんの3倍:2008/02/17(日) 05:16:04 ID:???
>>81
#4


 このままじゃ埓があかない。少し、“賭けて”みるか…。
 突っ込んで、ターゲットをそのまま爆撃する。叩き墜とされればそれまで。相手はハイネただ一人…それ程分が悪い賭けでもないけど…。ハイネの腕を考えれば、ハッキリ言って無謀過ぎる話だ。

「だけど…だけどぉっっ!これで討てないってんなら…俺は…この作戦に乗っかる資格なんて無い!!」

 フルブースト、全速力でハイネを引っ掻き回し、バルカンで牽制する。狙いはターゲットじゃない。グフの関節部。

『なんだって!?血迷いやがったか!シン!!』

 右腕の機関砲で俺を狙い、撃って来た。二、三発程かすったが、少し装甲がハゲただけだ。よし!これなら行ける!!
 グフの左腕の関節に、一撃が入る。コアスプレンダーのバルカン砲でも、関節くらいなら撃ち抜く事は可能だ。これでハイネはシールドを使えない!

「行っけえぇぇぇ――――――――――!!!!」
『なっ…しまった!?』

 ミサイルがターゲットを撃ち抜いた。そして、ターゲットは爆散し、俺の方のモニタに、『You Win』と表示された。

「…へへ、“してやった”ぜ。……俺の…勝ちだ。」

 シミュレータを出ると、ハイネが本当に嬉しそうに笑いながら俺の背中を叩いてきた。
 ルナは豆鉄砲を喰らったハトみたいな顔をして、俺の顔を見つめている。ミーアは…多分、状況が分かっていないんだと思う。

「ハッハッハ、本当…やられちまったぜ!やれば出来るじゃねぇかよ♪シン。」
「い、痛いっての!背中叩かないで下さいよ!!それに、今回のはまぐれですよ。本番がこんな風にうまくいく訳なんて……」

 そう言うと、俺の肩に腕を回してじっと俺の顔を覗き込む。何だか不満そうな表情で。
 俺を半眼で睨みながら、

「なんだよなんだよ。うまくいったなら、それがまぐれだろーが奇跡だろーが、それこそ神様の気まぐれだって良いんだよ。」

 唇を尖らせて、ハイネが言い聞かせる様にそう言った。
83通常の名無しさんの3倍:2008/02/17(日) 22:25:58 ID:???
GJ
84通常の名無しさんの3倍:2008/02/18(月) 22:49:10 ID:???
保守
85通常の名無しさんの3倍:2008/02/19(火) 20:30:40 ID:???
保守
86通常の名無しさんの3倍:2008/02/20(水) 04:05:04 ID:???
>>82
#5


 何はともあれ…ハイネから一本取った。俺が…?正直、信じられない。でも、かなり嬉しかった…だけど、うかれてちゃいけないな。
 今回は運が良かっただけ。次は…次こそは俺の実力で一本取ってやる。
 握り締めた拳の痛みでさえ、今は気にならない。

「よし!次はルナマリアだ!」
「了解♪」

 待ってましたと言わんばかりに、ルナがシミュレータに入って行った。ルナは狙撃に関しての訓練みたいだ。
 今の腕でも、十分赤服パイロットに恥じない腕前だと思うんだけどな…。まぁ、向上心があるのは良い事か…そういや、教官も言ってたっけ?

「“才能がいくらあっても…磨かなければ無きに等しい。”だったかな?」

 落ちこぼれだった俺を、見事赤服パイロットにまで仕立てたあの人の言葉だ。

「誰の言葉?」

 ミーアが笑いながら、俺に聞いてきた。なんか…改めて聞かれると恥ずかしいな…。

「俺が世話になった教官だよ。あの人が居たから、今の俺は此処に居る…。」

 ミーアが聞きながら、少し意外だと言いたげに俺を見ている。
 まぁ、言いたい事は分かるさ…アカデミーの頃は…ていうか、今もそんな大差無いかもしれないけど、反発ばっかしてて孤立してたもんな。

「ルナに何を聞いたかは知らないけど、ミーアが思ってる程酷かった訳じゃないからな?」
「わ…私はまだ何も言ってないけど…。」

 あのな…顔で分かるっつーの顔で。本当、顔に出やすいな…ポーカーフェイスでも心掛ける様にしたらどうだ。
 ふとドッグの奥を見やると、一台の車が停まっていた。そこから、まだあどけなさが残る小さな女の子が降り立った。

「何だ?あの子…。」
「レジスタンスの子だってよ?あの炭鉱のデータを持って来てくれたのは、あの子だよ。」

 シミュレータから出てきたハイネが答える。ちょっと待てよ………あの子、まだ子供じゃないか!
87通常の名無しさんの3倍:2008/02/20(水) 04:07:04 ID:???
#6


 そして、いよいよ作戦開始間近。ブリーフィングルームでハイネが作戦について説明している。その傍らに、さっきの女の子…コニールが立っていた。

「………。」

 作戦の流れは、大まかに言えばハイネ達がローエングリンの周りのMS達を引き付けて、その隙に俺がローエングリンを爆撃するというシンプルなものだ。
 シンプルというだけで、成功率が極端に低いのはご愛敬ってやつだ。餌であるハイネ達に釣られるかどうかは分からないし、俺が墜とされる可能性だって高いからだ。
 やれる事はやり尽くしたが、それでもやっぱり不安は残る。

「おい?聞いてるのか?」
「は、はい!囮の舞台が交戦してから、自分は炭鉱のルートを通ってローエングリンを速やかに爆撃…です。」

 よろしい。と、ハイネが頷き説明を再開した。コニールには痛い程刺さる視線で睨まれている。いや、俺は聞いてなかった訳じゃないんだからな?
 まぁ…ブリーフィング中に考え事してる俺に非があるのには変わりない訳だが。
 隣に座っているルナは多分、頭の中でシミュレーションしているんだと思う。何か考える時、目が自然に上を向く癖が出てるから。

「よし、それじゃ…シン、このデータをコアスプレンダーに入力しておけ。炭鉱の中は、灯りなんて全く無いからな?シミュレータとは勝手が違う。」

 ハイネが俺にディスクを渡して、そう言った。すると、それを見ていたコニールがハイネを批難する様に声を上げる。

「ちょっと…こんな奴に渡して大丈夫なの?」

 あからさまに俺を信用していない様で…まぁ、納得出来るのが悲しいところだ。
 俺にキツイ一睨みをくれて、ハイネと話し始めた。ハイネは宥める様に、コニールは食ってかかる様に言っていた。
88通常の名無しさんの3倍:2008/02/20(水) 04:09:19 ID:???
#7


 何か俺の印象は悪いらしい。
 本当…話は聞いてたんだぞ?嘘じゃないからな?
 しかし、まぁ…目に見えたものが真実だよな。重要なブリーフィングの最中だったし。

「…印象悪いわねーシン。ま、いつもの事だけど。」
「うるさいな…。いや、非がある事は分かってるけどさ。」

 ルナがニヤニヤ笑いながら茶化してくる。本当、お前のアンテナ引き抜くぞ?ルナに当たっても仕方ないが…。
 この怒りは全てローエングリンに向けてやる…。悪く思うなよ?いつまでもザフト軍を足止めしてるお前等だって悪いんだ。

「なぁ、アンタ。」

 コニールが俺の前まで来ていた。てっきり厭味でも言われるのだと思っていたが、どうやら様子が違う。かなり思い詰めた様な表情で、俺を見上げている。

「何だよ?」

 短く返す。今は悠長に話なんかしてる場合でもないからな。よく見ると、コニールの目尻には少し涙が溜まっている。

「アイツ等…必ずやっつけてよ?もう、みんなが酷い目に遭わされるのなんて見たくないから…だから、必ず………!」

 ……話を聞くと、連合に捕まったレジスタンス達は、いずれも“酷い目”に遭わされているらしい。そして、コニールの両親もその中被害者。
 …そうか、この子も…俺と同じなんだな…。
 決意は決まった。奴等は必ず…それも、徹底的に叩き潰してやる…。絶対に許すもんか。
 すれ違い様に、コニールの頭を軽く叩いてやる。

「俺があんなものも、そんな奴等も吹き飛ばしてやるさ。絶対に…だ。約束する…。」

 コアスプレンダーに乗り込んで、俺は炭鉱を目指す事にした。炭鉱までは近いな…多分、五分もあれば余裕で着ける。
 そうだ…あんなもの…俺がブッ飛ばしてやる!!


PHASE14―END
89通常の名無しさんの3倍:2008/02/20(水) 04:33:38 ID:???
PHASE14終了です

次回は戦闘モードです
何だか滅茶苦茶な理屈が飛び交ってますね(鬱)

「さーて、来週のアスカさんはー♪」
「ミーアです…。最近ルナさんに出番を食われ気味だとです…。ミーアです…。私の事を忘れないで下さい。ミーア(ry」
「ちょ!?いきなり暗いよ!っていうかヒ〇シじゃん!!」
「出番のあるシンには分からないでしょうね…この出番の無さ…悲しい…悲しい……。」
「まーたマニアックな…。」
「出番の無い者の悲しみを味わうがいいわ。」

「お姉ちゃんばっかりー…まぁ、お姉ちゃんなら良いけど」
「メイリンか…。」
「シンの野郎…藁人形に写真貼り付けてやる。」
「俺釘打つわ。」
「ヴィーノにヨウラン…お前等後でシメてやる。」
「親友の俺はどうなんだ?」
「レイ…後半はきっと輝けるさ…信じてるよ…俺。」

「分かった?」
「何がだよ?」
「出番の無い者達の悲しみよ!私含めて…シンはドン底に落ちるわ…きっと。」
「なぁ?それだとさ…俺の出番が更に増えるんじゃないか?」


……
………

「あ―――――!?それは意外な盲点だったわ!」
「今更気付くな――――――――――!!!!」


台詞のみの小劇場―出番―
90通常の名無しさんの3倍:2008/02/21(木) 10:31:52 ID:???
サブタイに興味引かれて来てみたんだが、何かミーアの出番少なくね?
てっきりシンとミーアがもっとイチャイチャチュッチュッしてるネタが乱舞してるスレだと思ったんだが
91通常の名無しさんの3倍:2008/02/21(木) 22:23:39 ID:???
GJです!
92通常の名無しさんの3倍:2008/02/23(土) 14:43:59 ID:HkuRn8sI
保守します
93通常の名無しさんの3倍:2008/02/23(土) 23:56:20 ID:???
PHASE15― 笑顔の為に
#1


 作戦が始まった。既にハイネ達が前線で戦っている。そして、俺は“まだ待機”。
 ミネルバは遥か彼方で…ローエングリンの射程外で待機している。換装機能は使えない。落ち着け…落ち着けよ?俺がヘマをすれば、全てオジャンだ。

『あぁ〜うっとうしいなぁ!とっとと墜ちろよ!!』

 皆の声が聞こえる。通信回線がオープンになっているからだ。
 数は此方が劣っている。ローエングリンの砲撃で、一部隊が消し炭にされた…。
 此処で通信が入る。切迫した表情の艦長がモニタに映る。

『シン。そろそろあなたにも動いて貰うわよ?準備は出来てるわね?』
「はい、いつでもいけます!」

 囮である正面からの部隊に食い付いたんだな…。此処からが本番だ。ハイネから一本取った時の、あの感覚を思い出せ…思い出せ…思い出せ…。
 コアスプレンダーを起動させる。そして、俺は炭鉱の中に侵入した。

『頼んだわよ?シン。』
「了解!シンアスカ、コアスプレンダー…行きます!!」

 炭鉱の中に侵入するが、中は真っ暗で、渡されたデータが無ければ前に進む事なんてとても出来ない。何度もぶつかりそうになりながらも進む、進み続ける。
 だが、奥に進むとそこは絶壁だった。こんなところで…俺は止まる訳にはいかないんだ!

「抜けろぉぉぉぉお!」

 トリガーを引く。八発のミサイルの内、一発を使う。爆風と共に、光で視力を奪われそうな錯覚に襲われた。
 俺の視界に入ったのは、数機のMSに、最近よく遭遇するカニ野郎。どうやら縁があるみたいだな…コイツとは。それともう一種のMA…ストライクダガーの上半身に、クモみたいな下半身の…怪物みたいな奴まで居る。

「…くそっ。やっぱみんながみんな向こうに行ってくれる訳なんかないよな…!」
94通常の名無しさんの3倍:2008/02/23(土) 23:57:28 ID:???
#2


 一斉にコアスプレンダーをめがけ撃って来た。さぁ、此処からが大博打…。デカイのが当たれば俺の勝ちで、外せば俺の負けだ。たったそれだけのシンプルな答えだ。
 でも、俺は此処で墜とされる訳にはいかない。コニールに約束した…“奴等を絶対に吹っ飛ばして来る”って!

「どけよお前等!コイツが当たればただじゃ済まないぞ!!」

 ビームの雨をかいくぐり、俺はローエングリンを一直線に目指す。しかし、クモが俺の行く手を阻む様に立ちはだかる。
 このままぶつかって負けるのは俺だ。急旋回して、クモを避ける。身体に強烈なGが掛かる。

「くっ……そおぉぉぉぉぉぉぉぉお!まだ…墜ちてやる訳にはいかないんだよ!!」

 回避して、ローエングリンは目と鼻の先…に見えるがまだ距離はある。しかし、真下からカニ野郎が撃って来た。
 強烈な光熱波が、真横を通過する。なんとか避ける事は出来…

「なっ!?ミサイルポッドがやられたのか!くそっ…パージ!!」

 被弾したミサイルポッドを泣く泣く切り離す。まだ、向こうには四発も残っていた。
 残り二発…。一気に分が悪くなってしまったな…。
 唯一助かったのは、MSが空を飛べない通常のストライクダガーだった事。地上から目一杯撃って来るが、こっちはフルブーストで動いている。そう易々と当たる訳が無い。

「ミサイルは残り二発…どう使えば良い?考えろ…無駄には撃てない…。」

 MAを墜とすのに使うか?一機でも減れば、成功する確率は格段に上がる筈だ。だが、残りの一発だけでやるのか?いや、やるしか無い…それしか道は無い。
 カニ野郎にクモ…どっちを墜とすべきか…?
95戦後 シン×ミーア:2008/02/24(日) 10:04:41 ID:???
「シン、本気なの?」
「・・・あぁ」

偽者の、ラクス・クラインの護衛。

戦争がまた有耶無耶な形で休戦となり、まだまだ混乱は続く世界でラクス・クラインの偽者は生きていた。
ラクスを庇い撃たれ、コペルニクスで入院していた彼女は、退院後プラントに戻るようになっていた。

ラクス・クラインと騙り、民衆に立った事への断罪の為に。

その偽者の護衛にシンは志願したのだ。
これまでオーブを憎み、前線に立っていたシンの行為とはルナマリアには思えなかったのだ。
しかし、シンは多くを語らず、ただ「決めたんだ」とだけ彼女に伝えた。

「どうして?」
「・・・・・・ラクス・クラインよりましだと思ったから」

この応えははぐらかされてるとしかルナマリアには思えなかった。
きっと彼女の勘は正しいのだろう。
しかし、それ以上の言葉をルナマリアは言えなかった。

ラクス・クラインがオーブと共に居たという事で、プラントはラクス・クラインを迎えいれようと準備を始めた時、ZAFTから一つの声が上がった。


「私にとって、ラクス・クラインとはあの少女の事です」


此処で言う「少女」というのが偽者の彼女である事は明らかだった。
本物のラクス・クラインはプラントを見捨てた。
戦場に赴いた事も無ければ、傷付いた兵士を見たことも無い。
しかし、偽者のラクス・クラインは違う。
それが例え傀儡故の行為だったとしても、傷付いた戦士に近付き、励まし、皆に歌を聴かせたのは彼女自身の行為であるなら、その戦士にとって真のラクス・クラインはオーブに味方したラクスではない。

その為断罪の声が高くなっていたプラントには「本物派」と「偽者派」と、分かれる事になった。

本当であれば、まだ入院が必要な偽者のラクス・クラインは急遽プラントに呼び戻される。
そしてオーブのラクス・クラインはまだその身をオーブに寄せている。
これからの事は勝手に上が決める。
しかし、下の意見も無視は出来ない。
96通常の名無しさんの3倍:2008/02/24(日) 10:46:23 ID:???
支援?
97戦後 シン×ミーア:2008/02/24(日) 11:07:22 ID:???
正直シンにはラクス・クラインという存在がそれほどプラントに重要とは思わない。
どちらが本物だろうが、偽者だろうが、生きていようが死んでいようがどちらでもいいと思っている。

それでも、たった一度聴いた。


月に居る少女の歌が。


戦地で歌った歌が・・・・忘れられない。

「同じ声なら、あっちの歌の方が好きだから。・・・本物には戻って来て欲しくないし。だから、守る」
「シン・・・」

ルナマリアはそれ以上の言葉は掛けても無駄なのだろうと立ち止まり、シンの背中を見送る。
なんだか、シンが遠くに感じる。

「もう、宇宙には出ないの!?」

仲間としても、一緒に居る事は出来ないのか。

暗に含まれた言葉にシンは立ち止まり、プラントの外の空を見上げる。
昼間は映像が映し出されるだけの、空を。

オーブとは全く違う、空を。

顎を引き、顔だけ振り返る。

「出るよ、いつか。戦争になれば、出なきゃならなくなる」
「シン・・・!」
「ルナ、ごめん。・・・・・俺、もう少し考えたいんだ」

何を憎んでいたのか、今も、憎んでいるのか。
まだ、戦えるのか。
どんな未来を望んでいるのか。

再び歩き出した時、もうルナマリアは付いて来なかった。
その事にシンは心の中でもう一度「ごめん」と、強く思う。
98戦後 シン×ミーア:2008/02/24(日) 11:09:07 ID:???
コロニーの中央エレベーターからシャトルの発着場に向かう。
低重力の中を移動し、たった今到着したばかりのシャトルの前に立った。

「FAITH所属、シン・アスカ。ミーア・キャンベル嬢の護衛の為到着しました」
「ご苦労様です。只今彼女は眠っているのでこのまま病院まで移送します。宜しくお願い致します」
「わかりました」

敬礼し目の前の軍医に伝えると、軍医もまた敬礼を返してシャトルのハッチを開けた。
空気が抜ける音がし、シャトルの中の空気が外に噴出した事にシンは目を細めてやり過ごす。
シャトル内の空気が外と同じとなった頃にシンが中に入ろうとすると、その前に中から重厚な機械の中に眠る『彼女』が現れた。


これが、偽者。


ピンク色の髪は紛らわしいからと、黒に戻されたという髪。
しかし、その顔は確かにラクス・クラインと同じモノだった。


眠っているというよりも機械によって眠らされているように見えた。
実際そうなのだろう。
今日から彼女を守るのが役目なのだとシンは思い直すと、機械を誘導し、移動する者達に付いて行った。

これから、シンとミーアの物語が始まる。


<続?>
99戦後 シン×ミーア:2008/02/24(日) 11:16:43 ID:???
ミーア生存ルートでシンミーアは有りなんだろうかと思って試しに書いてみた。
無しだったらこのまま撤退します。
100通常の名無しさんの3倍:2008/02/24(日) 14:56:07 ID:???
>>99
とりあえずGJ
101通常の名無しさんの3倍:2008/02/24(日) 15:28:35 ID:???
>>99
このスレ的にはおkと思われる。
進撃しても特に問題はないと思われる。
102通常の名無しさんの3倍:2008/02/24(日) 17:49:59 ID:???
>>99
GJ。続き待ってます。
103戦後 シン×ミーア 2:2008/02/27(水) 00:34:33 ID:???
病院に到着し、ミーアは重厚な機械からは解放されたが、直ぐに沢山のチューブに繋が
れた。
シンは護衛のみではなく、ミーアの行動を現在の最高評議会議長に報告する義務がある。
病院で彼女が機械からベッドに移される間、シンはシンで隠しカメラの設置と盗聴器の
設置をしていた。

これも彼女が裁判に掛けられる時の重要な資料となる。

「麻酔がいつ切れるか分かりません。彼女の資料は渡されているかと思いますが、改め
てご説明致します」

カメラと盗聴器のセットが終わると彼女の担当医に呼ばれる。
プラントへの転院の為、一週間前にコペルニクスに向かい、シンよりは彼女に関しての
情報がある。
資料に載せるほどの物ではない情報もあるかもしれない。

眠ったままのミーアに一度だけ視線を投げてからシンは医師の執務室に移動した。


「再三の忠告になりますが、彼女の前でアスラン・ザラとラクス・クラインの名前は控
えて下さい。少なくとも、入院をしている間は」
「分かっています。自分は護衛で、彼女の様子を報告する義務はありますが、尋問は仕
事に入っていません」


当初、ミーア・キャンベルはエターナルで保護をしていた為、ミーアの身柄をプラント
に呼び戻すのは不可能かと思われた。
しかし、ラクス・クラインとアスラン・ザラがプラントに呼び戻すという話が出た時に、
後ろ盾が無いミーアもまたプラントに戻る事になったのだ。
これをオーブのカガリ・ユラ・アスハは渋々という感で了承したところを見ると、少な
くともアスランとラクスはプラントに戻る決意をしていたようだ。
ラクス・クラインとアスラン・ザラの帰還を発表後、本物のラクス・クラインの帰還を

反対する声が上がった。

104戦後 シン×ミーア 2:2008/02/27(水) 00:36:54 ID:???
これは本物のラクス・クラインにもアスラン・ザラにも予想外の事だったらしい。
シンにしてみればすんなり帰れると思っていたという事の方が信じられなかったが、ど
こか温室育ちの二人はどんな状況であれ、帰れると思っていたようだ。
プラントに拒絶された事によってオーブは改めてラクスとアスランの擁護を行ったが、
ミーアに関してはオーブはプラントに引き渡す事を約束したのだ。
ラクスとアスランはオーブにとっては英雄扱いでも、ミーアはプラントを混乱に導き、
ラクスを騙った犯罪者の意識の方が高い。
ミーアを手放し、プラントに判断を委ねた方が外交上も内政上も印象が良かったのだ。

その為、ラクスとアスランを擁護する事に首脳陣は反対しなかったが、ミーアの存在は
疎ましく、国民意識を纏める上で邪魔でしかなかったのだ。

ラクスとアスランがこのことに付いてどのように思ったのかは分からない。
反対の声を上げたのか、それともミーアの引渡しにすんなりと了承したのか。
オーブは背景を一切発表しなかった。

どちらにしろ、事実はミーアのみがプラントに戻ってくる。

重症だったミーアはずっと月に居た為彼女もまた詳しい事は知らされず、ミーアのみが
プラントに戻る事が決まってからは彼女に連絡を取る事にも規制が掛かったようだった。
アスランとラクスの心情も分からないミーアが感じた事は「見放された」という思いだ
けだった。

暫くその理由は告げずに涙を流す事が増え、そのタイミングから恐らく自身だけがプラ
ントに戻る事に多大な不安を抱えているようだとだけ判断がされた。

この状況からの医師の判断というものである。

シンは医師の判断に異論を唱えられる程医療に詳しい訳ではないので此処は逆らう理由
もなく了承する。

105戦後 シン×ミーア 2:2008/02/27(水) 00:39:15 ID:???
「次に、彼女の言動に付いてですが、記憶障害がみられるので事実が彼女の言葉とは違
ったものでも反論は控えて下さい。彼女の記憶障害がどの期間のもので、彼女がどのよ
うに勘違いをしているのかを我々はきちんと把握したい。これは最高評議会の決定でも
あります」
「分かりました」

ミーア・キャンベルがラクス・クラインを庇い瀕死の状態になった時、一度心配停止状
態に陥った。
心配停止から蘇生までの時間が丁度5分。
心配停止から4分が経過すると脳にダメージを受ける。
ミーアは基本的な生活には支障は出ていないが、一部の記憶に事実とは違った情報が混
じっていたり、記憶の時期が前後している事がある事だけが分かっている。
デュランダル前議長亡き今、彼の裏の考えを少しでも理解するにはミーアの記憶は非常
に重要なものなのだが、その記憶が混乱している。
それでも今後のリハビリで改善の余地がある為、余計な混乱は避け、医師の判断の下で
情報提供などを行いたいという事だった。

総合すれば護衛以外の余計な事はするな、という事だ。

シンはこれもまた自分には然程関係ないと簡単に了承すると、医師もこれ以上の注意点
はないのか「以上です」と、最後を締めくくった。
護衛の時間は朝7時から夜7時までの12時間。
まだ昼間である為、護衛の時間である。
直ぐにシンはミーアの病室に戻ると室内のソファに腰掛ける。

最高評議会が用意しただけあって立派な個室で室内にトイレも給湯室も浴場もあり、鍵
まで掛けられるという何とも最高の「スイートルーム」だ。
今日はZAFTのシャトルに出迎えに行く必要があった為軍服を身に纏っているが、明
日からは私服での任務になる。
偽者のラクス・クラインといえど、ミーアはプラント全市民を騙した時の人だ。
少しでも彼女の情報を手に入れようと走り回っているパパラッチの数はかなりのものだ。
そんな中、最高評議会議長直属のFAITHの人間が毎日一つの病院に通い詰めとなる
と目立って仕方ない。
その為の処置だが、私服の下には銃の携帯が許可されている。
106戦後 シン×ミーア 2:2008/02/27(水) 00:40:53 ID:???
シンは何となく落ち着かず、直ぐに立ち上がり、ベッドの脇に置かれた革張りの椅子に
腰掛ける。
女の子の顔をじろじろと見るのは失礼なのだろうが、今は相手は眠っていると思うと遠
慮なくじっと見つめた。

確かにラクス・クラインそっくりだ。

資料により彼女が整形を行っており、どれだけ整形が行われているのかという資料も渡
されていたが、見た限りでは「整形」というよりも「改造」のようだと正直気味悪ささ
え感じた。
整形前の写真も添付されており、シンは整形前の顔も知っている。
確かに華は無く美人とは言い難いが、ラクスの顔を手に入れる必要がある程とは思えない。
シンは戦争で顔の骨格が崩れ、肌は火傷でただれ、正視出来ない人も見た事があるのだ。
(勿論その後整形により元の顔に戻している人が大多数だが、それは全てコーディネイ
ターの話である。ナチュラルの事まではシンは知らない)
そんな人と比べてどれだけ綺麗な顔をしているだろう。

何を考えてこの姿になったのかもまだ誰も分かっていない。

これから彼女が語るのかもしれない。
記憶障害の為一生明かされないかもしれない。

資料には他にも載っていない事項がある。
「性格」だ。
簡単に基本は明朗快活と書かれているが、ラクスとアスランの事、プラントでの己の所
業やデュランダル議長の真意を思い返し、鬱状態に陥る事があるともある。

ディオキアで一度垣間見たアスランとのやり取りで「明朗快活」というのは何となく想

像がつくが、あれから状況も変わっている。
性格くらい変わっていてもおかしくない。

何にせよ、分かるようになるのは明日からだ。

ただの護衛任務なのだと思っていても、シンにも知りたい事はある。
自分自身で追求する事は出来ないが、彼女が明かす事実に直面する事はあるだろう。

シンは一人緊張の為、息を呑んだ。

<続>
107戦後 シン×ミーア 2:2008/02/27(水) 00:47:23 ID:???
GJ頂き、感謝です。
こんなペースで書いているのも最初のうちだけだと思われます。
政治や医療については詳しくないので「そういう雰囲気」だけで捉えて頂きたいです。
あくまでシン×ミーアのシチュエーション萌えの話ということで。

今改行が数箇所おかしい事に気付いた・・・すいません。orz
108通常の名無しさんの3倍:2008/02/27(水) 08:57:41 ID:???
GJです!
久々にきたら職人増えてきて嬉しい限り^^
109通常の名無しさんの3倍:2008/03/01(土) 02:53:49 ID:???
>>94
#3


 しまった…!もうローエングリンがエネルギーを充填し始めている。撃たせる訳にはいかない…あの先にはレジスタンス達の集落があるんだ。
 そして、ミネルバもそこに居る。ミネルバと集落は一連託生という訳だ。

『シン!まだ墜とせないの!?もうあまり時間は残されていないのよ!』

 ミーア!?何で…通信にミーアが出るんだ?まさかあの馬鹿…ブリッジに居るのか!!
 つまり…撃たせたらみんな死んじまう…ミーアもだ。ふざけんな…何で…何でだよ!お前等なんかに殺させはしない!!
 その瞬間…頭の中で“何か”が弾けた。

「……すぐに墜とす。コイツ等…みんな殺してやる…。」
『え…?シン?』

 通信を一切遮断する。余計な事に気を取られている暇なんて、これっぽっちも残されていない。研ぎ澄まされた意識の中、まるでスローモーションの様に映る敵機の一切を無視する。
 今はラインを探す方が優先だ。そして、相手の隙が手に取る様に頭の中に流れ込んでくる。
 まずはMAを抜く。接近戦に持ち込もうと、クローを広げ突っ込んで来たクモの胴体へめがけ、すれ違い様にミサイルを直撃させた。爆炎を噴き上げ、地に墜ちて行く。
 そのすぐ真横に居たカニは、ハナから眼中に無い。すぐ真横を通り抜けた俺を狙えないからだ。このMAは、見た目通り小回りが効かないらしく、俺に追い付く事は不可能だ。
 ミサイルは残り一…泣いても笑っても、コイツが俺の最後の一手になる。

「お前等を吹き飛ばす…!もう、あんな小さな子が泣く事が無い様に!!」

 ローエングリンの周辺は、既にストライクダガー達が堅めている。しかし、俺はもう…前に出るしかなかった。
110通常の名無しさんの3倍:2008/03/01(土) 02:54:37 ID:???
>>109
#4


 ビームがかすめて行く。しかし、今は瞬きする事も惜しい。右に左に動く度に、そのまま意識を持って行かれそうな程のGが掛かって来た。
 俺自身の体力も含めると、残り一分程しか時間は無い。

「……見えた!これでええぇぇぇぇぇぇえ!!!!」

 バルカンで、一機のストライクダガーの腕…関節を狙う。ライフルさえ潰せば、また一つ安全性が上がる。
 既にローエングリンから百メートルを切った。思いっきりかき回して、相手を揺さぶる。
 残り五十…ビームが左翼をかする。装甲が焦げ、赤く発熱している。これ以上受ければ、間違いなく翼が折れる。

「だけど…これで最期だ!こんなもの…俺がブッ飛ばしてやる!!」

 そして残り十…最後のミサイルを放つ。ストライクダガー達はローエングリンから離したし、MAは更に離れた距離に居る。つまり、ミサイルが直撃する。
 ローエングリンは無惨に貫かれ、爆散した。しかしミサイルは更に貫通したのか、基地の内部で爆発した。
 この勝負は、俺達の勝ちだ。

「聞こえるかミネルバ!ローエングリンは墜としたぞ!!後は雑魚を殲滅するだけだ!!」

 ローエングリンに基地。この二つの生命線さえ断てば、幾ら相手の部隊が強力なMAや装備を持っていても意味が無い。MSを始めとした機動兵器は、補給や整備があって始めて機能するものなのだから。
 悪足掻きのつもりなのか、俺を執拗に狙って来るが当たってはやれない。後は帰投するだけなんだ。最後の最後で墜とされました…なんて、タチの悪い冗談にもならない。

「シン・アスカ、これより帰投します!」
111通常の名無しさんの3倍:2008/03/01(土) 02:56:51 ID:???
更新が か な り 遅れました
すみませんVorz

仕事がたてこんでて、筆を進める時間が…なんて言い訳ですね(鬱)
112戦後 シン×ミーア 3:2008/03/01(土) 23:42:17 ID:???
翌日、7時前に病室に改めてやって来たシンは、ミーアがまだ寝ていることに少しほっとした。
ナースステーションに確認を取れば、昨夜ミーアが目覚めたかはハッキリしないが、
ナースコールは無かったとのことだった。
遠慮がちにベッドを覗き込むと、目を閉じていたミーアだったが、気配を感じたのかもしれない。
薄っすらと目を開けた。
これには内心驚きつつ、敬礼をしてミーアの意識がはっきりと浮上するのを待つと、
ミーアはシンの姿を確認し、暫く彼をじっと見ていた。

「・・・・・・誰?」
「ZAFT軍FAITH所属、シン・アスカです。昨日より貴女の護衛を務めさせて頂いています」
「ZAFT・・・・・・・・」

まるでZAFTとはどんな単語だっただろうかと思い出すような呟きだった。
何かを思い出すようにシンから視線を外し、暫く考えたミーアは納得した表情を見せた。
諦めも含まれたその表情から笑顔が見えるには然程時間が掛からなかった。

「そっか・・・・もうここ、プラントなんだ」
「はい」
「帰って・・・・来たんだ」

どういう想いがそこに含まれているのかはシンには分からない。
プラントに戻って来たくなかったのか、戻りたかったのか。
どちらとも取れる音に、シンは正直戸惑いを感じたが、それを追求する権利を持たない。

ミーアは再びシンに視線を向けた。

その視線は何かを覚悟したかのように強く、しっかりとシンを見据えていた。
今からの言葉はミーアにとって重大な言葉なのだろうとうっすらと感じられる程の時間
が経った後、ミーアは一度唇を噛んでから口を開いた。



「あたしの体は大丈夫。・・・・・だから、死刑にして下さいって、伝えて貰える?」



113戦後 シン×ミーア 3:2008/03/01(土) 23:43:49 ID:???
本物のラクス・クラインは現れ、デュランダル議長は亡くなった。
戦争は休戦状態となり、プラントと地球の関係はこれから再構築を行わなければならない。
この状況で、瀕死の状態の自分が生き続ける事にミーアは存在意義を持つ事が出来なかった。
しかし、シンにはミーアの言葉を報告する義務はあってもミーアの意志を通す事は出来ない。
逆に、最高評議会はミーアを生かし、デュランダル議長が何をもって世界を変えようと
していたのかを判明しようとしているのだ。
それに、ミーア自身は知らないのかもしれないが、彼女を擁護しようとする人々がこの
プラントに増えているのだ。
ミーアを死刑にする事は現状で考えにくい。

「伝える事は出来ますが、恐らく通りません」
「・・裁判が必要だったとしても・・・あたし、わかるの。あたしの中の記憶がおかし
い事に。お医者様も言ってたから間違いない。こんな立派な病室で沢山薬を使って貰う
より、薬も手に入らない場所の人に薬を渡して欲しいの」

自分が生きていればその分薬は消費される。
世界には自分と同じ薬が必要な人も居て、その人には薬が届かず、死が確定している自
分に与えられるのは、おかしい。

そう、考えているのかもしれない。

「医師の判断としてはリハビリを行えば回復の余地があるそうです。記憶が曖昧だとい
うだけでは死刑にはならないと思います」
「でも、それまでにどれだけ時間が掛かるか分からないじゃない。議長が何を考えてデ
スティニープランを打ち立てたのかって事よりも、今生きている人が一人でも多く助か
る方が大事よ!」
「・・・・・・貴女はその「生きている一人」なんじゃないですか?」

ミーアは知らないが彼女の歌はまだ市内に流れている。
事情が事情だけあって以前のように毎日とまでは行かないが、市内に彼女の歌は流れな
くなった代わりに個人で彼女の歌を購入している数が増えているらしい。
シンもその市民と同じで彼女の歌を購入した一人だ。

「あたしは・・・・・皆を騙していたのよ」
「それについては・・・・・俺からは何も言えません」

114戦後 シン×ミーア 3:2008/03/01(土) 23:45:09 ID:???
裁判に関わる情報を個人の感情だけで判断する事は出来ない。
シンにとっては大したことではないという事でも、他の人にとっては重大な事の場合もある。
それが許されることなのか、許されないことなのかもシンには判断が出来ないのだ。
シン個人で言えば、癒された人間が居て、自分もまた戦場に立ち、戦士の前で歌う彼女
の姿は強烈な違和感を感じさせ、同時に強さを感じた。

あの彼女を一度見れば。
その後のラクス・クラインの行動を見れば。

ミーア・キャンベルがラクス・クラインでもいいように思えるのだ。
だが、それはカメラが回っているこの病室では発言できない。

シンの眉間に皺を寄せた表情にミーアは何か気付いたのかもしれない。
突然、点滴がついた右手をシーツから出し、シンを招き寄せるように手を動かした。

「来て」
「?」

ミーアの隣に立つと、ミーアはシンを見上げて苦笑する。

「見上げるのって少し疲れるの。座ってくれる?それとも仕事に差し支えちゃう?」

座っては護衛は出来ないのだろうかと尋ねられれば勿論そんな事は無いのでシンは革張
りの椅子に腰掛け、僅かに身を乗り出す。

「何か?」
「握手、しよ」
「・・・・・意味が分かりません」
「シン・・・、だっけ?挨拶まだだったから。あたしはミーア・キャンベル。これから
宜しく」

ミーアが右向きに寝返りを打ち、右手を差し出した。
シンは特に気にせず右手を差し出し、握手をした瞬間彼女の左手がシンの腕を捕らえて
思い切り引っ張られる。

「えっ!?」

ミーアの唇がシンの耳に当たった。
115戦後 シン×ミーア 3:2008/03/01(土) 23:46:24 ID:???
それに驚いた瞬間顔を起こそうとしたが、それよりも先にミーアの囁きがシンの耳に届いた。

「カメラ、何台あるの?」

慌てて耳を押さえ、大きく目を見開いて僅かに頬が染まるとミーアが予想外の表情を見せた。
まさか自分の言葉よりも耳に唇が当たった事に動揺されるとは思っていなかった、とい
うような戸惑いの表情だった。

「えっと・・・。・・・・あの、・・・童貞?」
「い、いいだろそんな事!!」

思わず声を荒げて反論すると、ミーアは楽しげに、僅かに声を立てて笑った。
そして笑い声が収まった時、ミーアは左手の人差し指を立てた。

1台?

そういう意味なのだろうとシンも察すると、シンはミーアを誤魔化そうかと考えた。
しかし、ミーアの無邪気な笑顔を見ると少し胸が痛んでシンも指を一本立てるとミーア
の人差し指を指し、次に自分の体の方に指を傾けた。

2台。

これで分かるだろうかと少しぎこちなく笑うと、ミーアがにっこりと自分の中指も立て
てピースサインに変えた。

伝わったらしい。

「そっか、2人は体験してるんだ」
「はぁ!?」

そういう意味に捉えたのか!?

シンが慌て、僅かに腰を上げるとミーアは意味深にウィンクをして見せた。

伝わっているが、今のジェスチャーの意味を誤魔化してくれたらしい。
シンは否定しようにもこの状況では否定できず、喉の奥で唸り声を上げて更に頬を染め
ると、反論を諦めて腰を下ろした。
116戦後 シン×ミーア 3:2008/03/01(土) 23:48:19 ID:???
「・・・・・・・・・も、もっと沢山いるよ」
「強がっちゃってー」

腕を組んでそっぽを向くと、シンは直ぐに任務中であった事を思い出して腕組みを解き、
ミーアに向き直った。

「あ、あの・・・っ!すみません!」
「フランクに話そうよ。あたしはそっちがいいから」

ミーアが改めて手を差し出した。
最初は少し警戒したシンだったが、直ぐにミーアの手を握り返した。

「よろしく」

そう、微笑んだミーアがシンには何かを考えているように感じた。

カメラの台数を気にしてから裁判や自分の立場に付いて語らなくなった。
それは諦めたからではないと、シンはどこかで感じ取っていた。


<続>
117戦後 シン×ミーア 3:2008/03/01(土) 23:55:20 ID:???
シンとミーア会話させる事が出来ました。
真面目そうに書いているのは今回までで、後はシチュエーション萌え話になればいいなと考えています。
118通常の名無しさんの3倍:2008/03/02(日) 00:26:36 ID:???
作者の皆さんGJです!!
119通常の名無しさんの3倍:2008/03/02(日) 09:46:56 ID:???
GJ!!
120通常の名無しさんの3倍:2008/03/02(日) 14:26:39 ID:???
GJ&∩゚∀゚∩age
121通常の名無しさんの3倍:2008/03/04(火) 09:36:24 ID:???
保守
122通常の名無しさんの3倍:2008/03/06(木) 09:13:50 ID:???
保守
123通常の名無しさんの3倍:2008/03/08(土) 07:16:20 ID:???
>>116
GJ!!
124戦後 シン×ミーア 4:2008/03/08(土) 19:33:24 ID:???
ミーアの護衛に付き、二週間が経とうとしていた。
最初の頃はミーアの着替えの時間を忘れてうっかり部屋に入って怒られなどもしたが、
最近ではそれもなくなり、シンもまたミーアと打ち解けてきた。

最近のミーアのお気に入りは午前中に放送されている少し昔のドラマだ。
毎日同じ時間に放送されるというのがミーアの心を虜にしている要因になっているようだ。

シンは最初の頃は観ていなかったのだが、ミーアがこの時間がやってくるのを楽しみに
している姿を見て気にしていると、「一緒に観よう」と、誘われたのだ。
途中参加となったシンには人間関係や状況がよく分からなかったが、それも回を重ねれ
ば理解もしてくる。

内容は至ってありがちな恋愛ドラマだ。
シンがプラントにやってくる前のドラマのようで、服装の流行が少し古い。
そしてドラマの展開は男のシンには苛立ちさえ感じるような鬱陶しいものだった。

ヒロインは外見は可愛いが(女優がやっているから当然だろうが)ドジで不運だが、
それでもめげずに毎日を元気に過ごしている少女。
その少女が恋をしたのは年が離れたZAFTの高官で、色んな女性に騒がれているとい
う設定の二枚目だ。
実は男の背景として戦争が近付き、出兵の準備をしなければならないかもしれないとい
う緊迫した状況で、それまで気楽に過ごしていた生活から一変するかもしれないという、
変化の途中のようだった。
ヒロインはZAFTとは関係のない一般人のため、この男の置かれた状況を知らないと
いう状態だ。

こんな内容許されるんだろうかとシンは思ったが、このドラマが制作されたのはまだ
シーゲル・クライン最高評議会議長が健在で、地球との関係を良いものにしようと働きか
けていた頃だ。
戦争なんて無いだろうと思われていた時期に作られたのであれば、これも問題なかった
のだろう。
今となっては洒落にならない状況で、今すぐにでも考えられる事だ。

だからこそ、この男の境遇、状況の描き方が生ぬるく感じられた。
125戦後 シン×ミーア 4:2008/03/08(土) 19:35:24 ID:???
男は次第に少女に心を許すようになっていき、戦争に参加したくないと考え始めるからだ。
実際ZAFTに所属しているシンには考えられない状況に寒気すらする。
こんな女々しい男が(それも高官で)ZAFTに居るとなったら、まずアカデミーに
在籍した時点でその根性を色んな教官に叩き直されていた事だろう。



フレッド教官だったらあの丸太のような腕で締め上げて何度も気絶させるに違いない。



自分がお世話になった教官の顔を思い出し、自分が何度も食らった「仕置き」を思い出し、
同時に苦しめられた時の感触まで思い出して顔を歪めた。

決まるんだよ、あの教官の腕。
あいつにやられたら絶対にZAFT辞めるか考え改めるかどっちかだと思うけど。

シンは昔を思い出し、ぶっきらぼうな表情のままドラマを観ている。
今回はどうやら少女が告白を決意し、男を捜すところから始まった。
少女はいつも男と偶然出会い、そこで少しの会話をして別れる。そういう逢瀬を繰り返
していたため、少女は男の名前は知っていても男の連絡先も、住所も知らないのだ。
それでも結構な頻度で少女と男は巡り合っていたという事もあってこれまで連絡先を
確認する必要がなかったと、少女はモノローグで語っていた。

それもどうだよ。

シンは心の中でツッコミ、これがありえるんだろうかとミーアに視線を向けると、ミーア
は真剣に、食い入るようにテレビを見ていた。
どうやらミーアの中では有り得るらしい。
少女がドジな性格であるというところがミーアの納得のポイントなのだろう。

そして中盤になると今度は男の方も少女を探す事になる。
理由は簡単。

戦争に参加する事が決まったからだ。
男にとっては本意ではない形だが、彼の肩書きや、出生を考えるとどうしてもZAFT
を離れる事も、戦争の参加を拒否する事も出来ないという理由らしい。
126戦後 シン×ミーア 4:2008/03/08(土) 19:37:17 ID:???
今時そんな古い考えがプラントで通るんだろうか。

確かに、後ろ盾があってZAFTの高官の位置に居る人間もいるが、それでも辞める事
は簡単に出来そうである。
時代考証間違っているんじゃないだろうかと思いつつ、再びミーアに視線を向けると、
ミーアはベッドのシーツを強く握り締めて男が少女を見つけるのを真剣に応援している。


これも彼女にとっては有り得る事らしい。


ふと昔読んだマユの少女マンガを思い出した。
あの時と同じようだと思うと妙に納得ができた。
マユも半年に一度出る新刊を楽しみにしていて、時にはシンに買いに行くよう強請った
事もあった。
少女マンガなんて買うのは照れ臭いと断った時のマユの激昂ぶりは凄かった。
キレたという訳ではないが、泣きながらシンが大切に集めていた雑誌を片っ端から投げ
付けてきたので流石にシンが折れた。
恥ずかしさを堪えて少女マンガを買って帰ると、すっかり機嫌を直して甘ったれた声で
「ありがとう、お兄ちゃん」と、感謝したのだ。
更にはその後の片付けまでやってくれたので「女とは恐ろしい」と、シンは初めて思っ
たものだったが。
あの時の少女マンガは今は完結したんだろうかと思いながらシンは話の流れをじっと見
ている。

少女は男の行きつけの場所を探す。
男は少女といつも会っていた場所を探す。

向かう場所がそれぞれ違う為、二人はすれ違い、巡り会う事が出来ない。

王道で行けばラスト3分で二人は出会い、次回へと続くのだろうか。
そんな予想を立ててみたが、シンの考えは外れて終わった。


結局二人は会えないまま今回が終わり、男は戦場に向かう事になった。


127戦後 シン×ミーア 4:2008/03/08(土) 19:39:21 ID:???
これはこれで王道かと一息ついたところですすり泣く声に気付き、ミーアを見る。

「は!?」

思わず声を立ててしまった。

泣いていた。

近くのタオルを取り、そのタオルで鼻の下と口を押さえてミーアが泣いていたのだ。

『うわー。この話で泣くっていうのはナシだろ。絶対ナシだろ』

と、シンは直ぐに思った為、一体どうすればいいのか分からずその場に固まった。
泣くまで行かなくても共感できればもう少し対処も出来そうなものだが、シンにとって
はZAFTの内情をきちんと描ききれて居ない時点で「駄作」扱いだったのだ。
共感出来るはずが無い。

「か、可哀想・・・。折角・・・・探してたのに・・・・」
「い、いや・・・・」

掛ける声も見つからない。

「二人は両想いなんだよね?それなのに・・・・それなのに・・・・それも分からない
で離れちゃうなんて・・・・」
「・・・べ、別に物語だろ・・・・」

その瞬間、ミーアの枕が飛んで来てシンの顔面に当たっていた。
気付いた時には彼女の枕が顔に張り付いていたのだ。(おまけに少し仰け反った自分が居た)
恐ろしい瞬発力での枕投げだった。

128戦後 シン×ミーア 4:2008/03/08(土) 19:40:14 ID:???
「物語だからとか、そういうのは関係ないの!!」

関係あるだろ。

と、言いたがったが、シンはその言葉を飲み込んだ。
うっかりと口にしなかった自分を一瞬褒めた程だ。
このミーアの姿は昔のマユと似ている。
あの少女マンガを買いに行かないと断った時のマユに似ていて一気にシンの方が気持ち
で負けていた。

「は・・・はい・・・・」
「泣けるよね!?」
「う・・・・・ん」


枕がずるりと落ちて、下で構えていた手の中に落ちた。

目の前に居たミーアは泣きはらした顔で未だにタオルを握り締めていた。


可愛い。と、思う。


でも手の中には確かに枕はあり、これを投げたのは間違いなくミーアだ。

女は可愛い顔して凶暴になるから恐ろしい。

納得は行かなくとも、次回からは同意する方向で行こうとこっそりと決意したシンだっ
た。


<続>
129戦後 シン×ミーア 4:2008/03/08(土) 19:44:24 ID:???
前回GJありがとうございました。

大した話ではないのですが、こっそりと次回もドラマネタ引き摺ります。
本当は冒頭で少し触れた「うっかりミーアの着替えを見たシン」が書きたかったのですが、
話を膨らましきれなかったので断念しました。
130通常の名無しさんの3倍:2008/03/09(日) 00:57:04 ID:???
GJ!
内容もさることながら分量多くて凄いですね。
物語に対するシンの反応が面白いです。
次回も頑張ってください。
131通常の名無しさんの3倍:2008/03/09(日) 01:24:58 ID:???
GJです。今回もおもしろかったです
ミーアの着替えを見たシン・・・ベタなネタですけど非常に見たいw
シンがミーアの護衛に付いてから一週間目。
初めてのビデオデータ回収日がやって来た。
データチップの容量を考えると、24時間繋ぎっぱなしだとしてもまだ余裕があるはず
なのだが、この一週間のミーアの映像データを確認する役割の人間がいる。
その為一週間に一度のデータチップ交換が必要となり、シンは現最高評議会議長に本日
提出する義務があった。

ミーアと対面した初日にカメラが設置されている事が彼女にばれているわけなのだが、
それは「撮影者」に気付かれてはならない事だ。
ミーアはカメラの台数の確認はしたが、何処にカメラがあるのかは探すつもりは無いら
しい。
シンが居ない夜中の行動までは分からないが、昼間の行動だけ見る限りでは、カメラの
場所を気にした行動は一切していなかった。

気にしたところで盗聴器もある。
ミーアの病室で隠し事は出来ない。

ミーアは毎日朝食後に回診が行われ、その後着替えてからリハビリを行う。
リハビリは同じフロア内にあるリハビリ専用室で行っている。
時間によって利用者が決められているため、同じフロア内の人間と会う事は殆ど無い。

そして、病室には誰も居なくなる。

この時間を利用してシンはデータチップの交換を行う。

ミーアのリハビリの内容は下半身の筋力の低下の為の歩行練習と、そして記憶回復の為
の問答だ。
ミーアは歌手だった事もあり、腹筋の回復が早く、そして座る事が出来れば手のリハビ
リの方が早く出来た。
一時は頑張って月で歩行練習を行っていたようだが、ラクスとアスランと共に帰れない
事が決まってからは歩行練習もおざなりになっていたらしい。
どうしてプラントに戻ってからは歩行練習を欠かさず行っているのかはシンにも分から
ない。
ただ、ミーアは決められた時間、きっちりとリハビリを行っている。


そろそろ回診の時間も終わり、リハビリルームに向かっている頃である。


本日の予定の確認をして手順を確認する。
手に入れたチップは何処のカメラ、何処の盗聴器のものかをケースの所定の場所にセッ
トする必要がある。
名刺ケースサイズのセラミックケースを開き、場所を確認しながら何気なく病室のドア
を開けた。

そして何歩か踏み進み、セラミックケースを閉じてから顔を上げたところで。


何故かミーアと目が合った。


続いて気付く。

背中を向けた状態から振り返ったのか、背中が見えた。
今からブラジャーを着けようとしているのか、肘にブラジャーの紐が掛かっていた。
因みに色は薄いピンクだった。

腕に紐が掛かっているという事は、当然まだ装着されていない訳で。

二の腕と背中の間に見えた(見ようとして見た訳ではないと思う)胸に、シンは勢い良
く後退りした。
それでも胸から目が離せなかったのは、何処に視線を向ければいいのか咄嗟に分からな
くなったからだ。
どうしてこういう時ほど思考は混乱しているのにブラの色やら、どんな風にブラが肘に
掛かっているのかという情報はしっかり記憶されるんだろうと、シンは心の中で半泣き
になりながら思う。
ミーアもまた直ぐに対処出来ないのか、シンの姿を目に映したまま動けないで居る。

「な・・・・?」
「え・・・・?」

次第に思考がハッキリしてきたのか、ミーアが口をパクパク動かし始めた。
それを見たシンは、いつの間にか止めていた息を吐き、無言で首を横に振り始めた。

高速で。

「な・・・な・・・な・・・・」

漸くミーアが己の胸を隠した。急激に頬が染まっていく。
シンの頬も染まり、今度は息を呑んだ。


「いやっ!これはっ・・・!!」
「な・・・んで!?」
「うわぁぁあぁ!こっち向くな!!」
「馬鹿―――――――――――――!!」

しっかりと胸を隠そうとすると今度は谷間が強調され、大きさが明確になる。
これまで特に気にしていなかったのだが、改めて見ると確かに大きい。

慌てて両手を振ってミーアに前を向くように促すと、シンも逃げるように病室を出た。
大きな音を立てて扉を閉めると、シンはその扉に凭れ掛かってその場に座り込んだ。
立てた膝の間に顔を落とし、右手で顔を覆う。



目を閉じると綺麗に思い出してしまうから目を閉じられない。



いや、目を閉じなくても思い出してしまう。


全て見えた訳ではない。
それでも想像力が働いてしまう。
腕と背中の間に見えた僅かな空間に、しっかりとした質量があって。
咄嗟に振り返ったミーアの腕に潰された胸の谷間が強調されていて。
真っ白な肌が恥ずかしさに背中まで染まっていくのも見ると、その気が無くても意識し
てしまう。


右足を床に「タンタンタンタン」と、リズム良く打ち付ける。
そうしなければ今にも熱が溜まりそうな下半身が素直に動きそうだからだ。


押さえろ、忘れろ。押さえろ。忘れろ。押さえろ、忘れろ。


顔を覆った指に力が入る。
腰がなんだかむずがゆい。

此処で理性が負ける訳には行かないと、シンは更にリズムを上げて足を床に打ちつける。

そろそろ落ち着いたかと思った頃中からミーアの声が掛かり、シンは気まずさにどうし
ようかと思ったが、諦めて中に入る。

「いつもノックしてくれてるじゃない!」
「いつもだったらもうリハビリ室に居るだろ!」
「だって、今日はちょっとお話が伸びて!」
「それはっ・・・!悪かったけど・・・!」

目を見られない。

これ以上続ける言葉も見つからない。
しかし、何か話題を探そうとしなければ、ミーアの体を思い出してしまう。


何か、話題を。

「あ・・・アンタだって、処女だろ!」

言った瞬間、「しまった」と、顔を顰めて思わずミーアを見てしまった。
どう考えても失言だ。
ミーアの反応を見た時から思った事だったとはいえ、それを口に出す必要まではなかった。

「ち、ち、ち、ち・・・・違うわよ!」

ミーアは頬どころか首まで真っ赤に染めて全力で否定した。

シンには嘘をついているようにしか思えなかったが、そこを否定して何になるんだろう
かと思うとこれ以上墓穴を掘るのは控える事にした。
ミーアは恥ずかしさで目の端に浮かんだ涙を拭い、車椅子を引き寄せて固定するとシン
が気付いてミーアの体を抱き上げ、車椅子にそっと下ろした。
意識して胸は触らないように、二の腕を掴むようにした事をミーアも気付いたかもしれ
ない。

ミーアが腰の位置を落ち着けるとひざ掛けを渡すのも忘れない。

「・・・そういえば、看護士さんは?」
「着替え終わってから呼ぶ予定だったの。もうさっき呼んだから来ると・・・思う」
「・・・そっか・・・・。・・・・あの・・・・ごめん」

泣くと、思わなかったから。

シンの謝罪にミーアは再び目尻に浮かんだ涙を拭った。

「・・・・・・・じゃあ、交換条件」
「・・何?」
「今度はシンの裸見せて」
「は!?」

何を言っているんだと、シンがミーアを凝視すると、ミーアは眉間に皺を寄せてシンを
見上げた。
「あたしだけ見て「ごめん」だけで済ませるつもりじゃないでしょ!?」
「いや、おかしいだろ!どう考えたって!」

つい不注意で偶然見てしまったが、自分はミーアの前でわざわざ脱がなくてはならないのか!?

シンの叫びにミーアは頬まで膨らませて睨みつけてきた。

「あたしだけはずるい!」

それは尤もだとシンも思う。
しかし、だからといって「脱げ」と、女から言われて脱ぐなんて考えられない。

何処の痴女だ。
羞恥プレイか?
この流れはSMか?
だったら俺がMになるのか!?

色んな考えが巡り、シンは直ぐに応えられなかった。
結局何の決着もつかないまま看護士がやってきてミーアはリハビリ室へと移動する事に
なった。


このやりとりも全部カメラに収められたのかと思うとそれだけで憂鬱になる。


自分の不注意とはいえ、これで呼び出しを食らって厳重注意なんて受けようものならど
うしたらいいんだろうかと、シンは暫くチップを替えるのも忘れてその場に座り込み、
一人反省していた。


そしてこれからシンは何かとミーアに「脱いで」と、命令される事になるのだが、シン
は今のところその言葉に従ってはいない。


<強引に終わらせてみる?>
>>131
ミーアの着替えを見たシンを書いてみました。
頑張って膨らませたら無駄に長くなったように思います。
自分はミーアは処女だろうが経験者だろうがどっちでもいいだろうと思います。
処女で恥ずかしがりなのも、経験者で恥ずかしがりというのもどっちも自分的には萌えられます。

そしてミーアの前でツンデレな感じで脱ぐシンというのもいいかもしれないです。

「俺は好きでやってるんじゃないからな!俺だけ見たのが悪いと思ったからやってるんだからな!」

みたいな。

ご期待に沿えた内容ではなかったかもしれないです。
139通常の名無しさんの3倍:2008/03/10(月) 12:52:41 ID:???
やばい萌えつきた。超絶GJ!!
140通常の名無しさんの3倍:2008/03/10(月) 19:26:17 ID:???
GJ&良スレ∩゚∀゚∩age
141通常の名無しさんの3倍:2008/03/10(月) 23:04:06 ID:???
コレだ!こういうのを俺は待ってた!
ちなみに俺はミーア処女つーことで脳内補完を…(他のSSだと大抵非処女扱いだからなー)
142通常の名無しさんの3倍:2008/03/11(火) 22:44:10 ID:???
GODJOB!!
何気なく着替えシーンネタ希望したのにまさか書いてくれるとは感無量であります
143通常の名無しさんの3倍:2008/03/12(水) 16:30:26 ID:???
http://blog-imgs-12.fc2.com/o/t/a/otabetaste/080301.jpg

有り得ないぃカプ妄想ってぇ不毛よねーぇ(笑
ネーナとセッちゃんはぁ面識ありでぇーキスもしてるけどーぉシンとかいう子とぉ桃毛無能垂れ乳女はーぁ絡み全然無しじゃなぁーい
無能桃毛のつがいになんてぇイケニエにされてカワイソーおぉ(大笑

http://white-ark.x0.com/00g048.jpg

http://sun.endless.ne.jp/users/suchara/index03/nena019.jpg
144通常の名無しさんの3倍:2008/03/13(木) 21:26:46 ID:???
最近また埋め荒らしが出没しているそうです。
職人・住人の皆様方は
もしもの時は下記にあるこのスレの避難所に避難してください。
ttp://jbbs.livedoor.jp/anime/1777/
145通常の名無しさんの3倍:2008/03/14(金) 02:56:17 ID:???
http://www2b.sakura.ne.jp/~steed/mc/nena.jpg
こんなとこでぇ虚しい妄想書き立ててる暇があったらぁミーア厨の被害に遭ったスレにぃ謝りに行けばぁ?
http://www2b.sakura.ne.jp/~steed/mc/nena2.jpg
アンタ達のお仲間がぁ勝手にスレ占拠したりぃ荒らし回ったりでぇあっちこっちから苦情来てるよぉ?
146通常の名無しさんの3倍:2008/03/14(金) 04:25:46 ID:???
カプ厨晒しage
147通常の名無しさんの3倍:2008/03/15(土) 09:47:24 ID:???
保守
148通常の名無しさんの3倍:2008/03/15(土) 19:39:04 ID:???
ほす
149通常の名無しさんの3倍:2008/03/15(土) 22:48:09 ID:???
不毛カプ厨ウザー
150通常の名無しさんの3倍
自動保守装置は順調に稼動しているようでなによりだな。