808 :
一条祭:2006/02/28(火) 17:23:02 ID:???
シ「いや、ルナのせいじゃない……悪いのは奴らだ」
ル「シン……?」
シ「奴らの、オーブのせいだ……!」
喉奥から絞り出すようにそう言うと、シンは拳を握り締める。
その真紅の瞳は凄まじいまでの怒りに燃えていた。
シ「オーブの奴らが俺達の邪魔さえしなければ……!」
そうだ、オーブさえジブリールを匿ったりせず素直に自分達に引き渡してさえいれば、こんなことにはならなかった。
かつての故郷が平和への道を遮り、邪魔をした結果がこれなのだ。
シ(フリ−ダム、アスラン・ザラ、アスハ……そしてラクス・クライン!)
奴らを許してはおけない。この罪は、必ず購わせてやる。
そして、僅かに繋がっていたオーブへの思いもこれで完全に切れた。
オーブは敵だ。そして、倒すべき敵ならば容赦はしない。
その決意を胸に、シンはスクリーンに映る光景を睨みつけた。
ミ「シン……」
シ「……」
自らを呼ぶミーアの声にも、シンには届かない。
今のシンには『敵』しか見えていなかった。
……と、今回はここまでです。
しかし、レクイエム関係については流石にだいぶ記憶があやふやになってきています。
回想の途中ということもあるので、この続きはあまり間を置かずに書き上げたいと思います。
最後に、ここまで読んでくださった方、本当に有難うございました。
809 :
みっぱい:2006/02/28(火) 22:54:57 ID:???
久しぶりの一条祭りキタ━━━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━━━!!!!
ハァハァアハァシンミアいいよ〜〜
もっとラクスを憎んでミーアを守るんだシン!!
810 :
みっぱい:2006/02/28(火) 22:57:38 ID:???
やっぱりミーアがご飯作ってくれてたキタ━━━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━━━!!!!
予想してたがまさにそのとうりで嬉しいお
ヨウランやビィーノになりてぇ
ディスクじゃなくてノートやCDじゃないの?
GJ!シンが暴走しそうな中ミーアがどう行動するか次回も楽しみにしてます^^
814 :
811:2006/03/01(水) 01:28:27 ID:???
何の略って・・・そりゃあ「コンパクト・ディスク」・・・あっ!!あたいのバカァ・・・ハズカシス
一条氏ね!
GJ
ヨウランとヴィーノの登場が嬉しかったりw
続き待ってます
817 :
一条祭:2006/03/02(木) 19:54:58 ID:???
感想を下さったかた、有難うございます。
>>805-808の続きです。よろしければどうぞ。
ミ「シン……」
ミーアの呼びかけも、シンの耳には届かなかった。
どんなときでも真っ直ぐに、ただ目の前のものだけを見つめ、追い求める。
それがシンの強さであり、ミーアが惹かれた理由の一つでもあった。
ミ「……」
しかし、それが同時にシンの危うさでもある。
怒りの形相でスクリーンを睨むシンに、ミーアは言い知れぬ不安を感じていた。
レ「ミーア」
ミ「……」
レ「ミーア」
ミ「え? あ、あぁ、レイ……」
気づけば、レイが肩に手を置き、傍らに立っている。
何かと問おうとする前に、レイは「よく聞いてくれ」と前置きするとミーアにそっと耳打ちをした。
ミ「え、そ、そんな……っ!」
ミ「そんなこと、私には無理よ!」
レイの話した内容に、ミーアは驚きと困惑の表情を浮かべ頭を振った。
しかしレイはミーアの瞳を見つめながら、あくまでも冷静に語りかける。
レ「いや、君なら出来る」
レ「この怒りと嘆きを静めることができるのは、君しかいない」
ミ「で、でも、私はラクス様じゃない……やっぱり無理よ!」
なおも迷うミーアに、レイは厳しい言葉をぶつける。
レ「ミーア。君はただラクス・クラインとしての声望が欲しかったのか?」
ミ「!! わ、私は……!」
レ「違うだろう? もし君が本当に平和のために歌って来たのなら、出来るはずだ」
ミ「……」
ミーアは迷っていた。
影武者である自分でも、平和を願っていたことに嘘はない。
ミ(……でも、私はラクス様じゃない……)
もし自分が本物のラクス・クラインなら、レイの言葉に迷うことなく従っていただろう。
その思いが顔に表れたのか、レイはミーアに短く告げる。
818 :
一条祭:2006/03/02(木) 19:56:13 ID:???
レ「ラクス・クラインを真似ることはない。君は君だ」
ミ「レイ……」
静かな、それでいて胸に響くレイの言葉に促され、ミーアは改めて室内を見回してみる。
悪夢のような惨状に、ある者は家族の名を呼んで嘆き、またある者は怒りの声を上げている。
ミ「……」
所詮、自分は偽者かもしれない。
でも、もし自分が、自分を受け入れることを認めてくれたこの人達の少しでも役に立つのなら……。
ミ「……わかった、やってみる」
そう決意すると、ミーアは顔を上げ、大きく息を吸い込んだ。
ありとあらゆる負の感情が満ちる中、その歌声は静かに流れ始めた。
ク「え……この声……」
ク「これは……ラクス……様……?」
ク「いや、違う……これは……」
ラクス・クラインの曲ではない。初めて聞く歌だった。
平和を願い、大切なものを、愛するものを守るために傷つきながらもなお戦う者の無事を祈る歌。
その歌は、ミーア自身が作り上げた歌だった。
ク「……」
まるで傷ついた心を懸命に癒そうとするかのような歌声に、次第に周囲の声は収まり、いつしかその歌声を阻むものはなくなっていた。
そして、歌い手であるミーアの頬を一筋の涙が伝う。
そんなミーアの姿に、それまで室内に渦巻いていた激情がまるで潮が引くように静まっていく。
シ「ミーア……」
それは、シンも例外ではなかった。
怒りは確かにこの胸にある。だが、怒りにのみ囚われていた自分を、ミーアの歌声が引き戻してくれたようにシンには思えたのだった。
歌が終わると、シンはポケットからハンカチを取り出し、ミーアに差し出した。
シ「はい、これ」
ミ「あ、シン……」
ミ「わ、私……」
涙を拭きながらも何か言おうとするミーアに、シンは優しく微笑んだ。
シ「ありがとな、ミーア」
ミ「シン……!」
シンの真紅の瞳が、優しく自分の姿を映している。
ただそのことが、ミーアには嬉しかった。
819 :
一条祭:2006/03/02(木) 19:58:02 ID:???
レ「よくやってくれた、ミーア」
微かな笑みを浮かべ、レイはミーアを労うと、クルーに向かって宣言した。
レ「皆もこれでわかっただろう。シンの言ったとおり、彼女……ミーア・キャンベルはラクス・クラインの偽者ではないことが」
レ「彼女の歌、彼女の思いこそ、歌姫という名に相応しい」
レ「そう、彼女こそが真の歌姫だ」
レイの宣言に、クルーは小さくどよめいた。
レ「さぁ、ミーア」
ミ「え?」
気がつくと、クルーの視線はミーアに集中していた。
何かを期待するような幾つもの視線に、ミーアは困惑する。
視線を受けることには慣れていたはずだったが、それはあくまでもラクスとしてだ。
『ミーアとして』このような状況に置かれたのは、彼女には初めてのことだった。
ミ「あ、あの……わ、私……っ……」
ミ「う、歌姫だなんて、そんな……私はただ、少しでも皆さんのためにできることはないかって……ただそれだけで……だ、だから……」
たどたどしいミーアの言葉に、クルーたちはしばし無言だった。
二人のフェイスに守られるように立つ、ラクスと同じ姿、同じ声をしていてもその中身はまるで違う少女。
しかし、その事実は決して忌避されるものではなかった。
自分達と同じように怒りや悲しみを感じ、涙する歌姫。
『……ミネルバの歌姫、ミーア・キャンベル、か……』
その呟きが誰のものかはわからない。だが、その呟きが最初だった。
改めてミーアを認め、受け入れると、それをきっかけにミネルバのクルーは一丸となった。
そして、嘆きや怒り、だがそれ以上にこれ以上の悲劇を繰り返すまいという決意を胸に、ミネルバはダイダロス基地攻略に向かったのだった……。
820 :
一条祭:2006/03/02(木) 19:59:04 ID:???
ヨ「……あの時のミーアちゃんの歌で、俺達随分救われたんだぜ」
ヴィ「ホントホント」
ミ「あ、ありがとう……」
ディスクをヨウランに手渡しつつ、ミーアは微かにはにかんだ。
自分の歌で、誰かがほんの一時でもつらさを忘れることができたのなら、自分は役割を果たせたのかもしれない。
その思いが、ミーアの心を温かく満たした。
ヨ「あ〜あ、でもなぁ……ミーアちゃんはミネルバの歌姫だけど、すっげぇおっかない騎士がいるもんなぁ」
ヴィ「そうだね。ヨウランじゃ手も足も出せないよ、きっと」
ミ「え?」
ヨ「あのさぁ、ミーアちゃんってぶっちゃけシンのこと、どう思ってる?」
ヴィ「聞くだけムダだよ、ヨウラン」
ミ「え? え?」
いきなりの展開に、ミーアの頬が微かに染まる。
その熱さを自覚してしまうと、ますます頬が熱くなっていく。
ミ「あ、い、いけないっ! まだ他の所にも食事届けなきゃならないし、そ、そろそろ私、いかなくちゃ!」
ミ「それじゃ、二人ともお仕事、頑張ってね!」
慌てたように誤魔化すと、ミーアはそう言い残してMSハンガーを後にする。
手を振ってミーアの姿を見送りながら、ヨウランは隣のヴィーノに呟いた。
ヨ「なぁ、ヴィーノ……やっぱりミーアちゃんって、シンのこと好きなんだろうなぁ」
ヴィ「だろうね」
ヨ「んで、シンのヤツもミーアちゃんのことが好きで……」
ヴィ「じゃなかったら、あのシンが土下座なんてするはずないもんね」
シンをよく知っているだけに、シンがミーアのことをどう思っているのか、ヨウランにもヴィーノにも容易に想像がつく。
ヨ「……やっぱ、アイツはラッキースケベだ」
ヴィ「……ゴハン、食べよっか」
ほとんど同時に情けない溜息を吐きつつ、彼女のいない二人はミーアから渡されたレーションパックを開けたのだった。
……と、今回はここまでです。
正直『ミネルバの歌姫』となるミーアの部分が一番悩みましたが、どうでしょうか?
この話もあと1、2回で終わりそうなので、何とか完結させるよう頑張ります。
最後に、ここまで読んでくださった方、本当に有難うございました。
何時もGJです。
完結すると悲しいですが、頑張って下さい。
このスレも何だかんだいって800越したのか
ひとえに忍耐強い職人さんと住人のおかげだな
せっかくだから完走しようぜ
自分の中でこうであって欲しかったというミーアだ
ミーアが自分は自分だ、自分も未熟ながらも人の力になれているということが
わかってくれたのが良かった
シンミア要素もたっぷりだし萌えた
一条氏GJ-----
ミネルバの歌姫!ミーア・キャンベル萌えーーー!うおぉーーーーー万歳!!!
ミーアたんがこの戦乱をシンとクルーや仲間達と共に導いてほしい!!
もちろん最終回はシンやミーアやミネルバの勝利で終わらせて欲しいな
超GJ!!ミネルバの歌姫ミーア・・・とても(・∀・)イイ!!
あげ
ちょっとスレ違いじゃないか?
貼るならミーア本スレでやれ
832 :
一条祭:2006/03/07(火) 17:47:23 ID:???
感想を下さった方、有難うございました。
今回も
>>817-820の続きです。よろしければ、どうぞ。
ミ「えっと、確かこっちだっけ……」
食事を配り終えたミーアは、シンに会おうとパイロットルームへと向かっていた。
途中、幾人かのクルーとすれ違ったが、その誰もが自分に向かって敬礼することにミーアは少し困惑していた。
受け入れられたことは嬉しいけど、私はラクス様じゃないのに……。
これまで『ミーアとして』求められたことのない彼女には、まだ自分の存在がどれほどのものであるかを自覚することは出来ないでいた。
一方、その頃。
シンとレイ、そしてルナマリアの三人のパイロットは作戦の最終打ち合わせを行っていた。
レ「……まず、ルナマリアがインパルスで出撃し、指定ポイントで待機する」
レ「そして、俺とシンがミネルバと共に基地に攻撃を仕掛ける」
レ「敵がこちらに引き付けられている間に、ルナマリアは基地に潜入し、レクイエムの管制室を破壊する」
レ「以上が作戦の大まかな概要だ。何か質問は?」
ル「レイ、管制室を破壊するだけでレクイエム本体は破壊しなくてもいいの?」
ルナマリアの質問に、レイは「ああ」と頷いた。
レ「この作戦はスピードが重要だ。本体を破壊するとなれば、当然時間がかかる」
レ「要はレクイエムを撃たせなければいいのだから、何も時間をかけて無理に本体を破壊する必要は無い」
よどみない口調でそう説明すると、レイは沈黙したままのシンに目を向ける。
レ「シン。お前は何かあるか?」
シ「いや、作戦自体には特に無い。ただ……」
レ「ただ?」
聞き返すレイに、シンは厳しい表情で口を開く。
シ「……レクイエムも重要だけど、ジブリールを逃がすわけにはいかないと思ってさ」
シ「ヤツを逃がしたら、何も意味がないからな」
レ「確かにな。レクイエム攻略と共にジブリールの身柄の確保はこの作戦の重要な目的だ」
もっとも、身柄の確保とは言ってもその生死は関係ないが。
レイはその言葉を胸の内だけで呟いたが、シンはまるでレイの思いを読み取ったかのように決意をあらわにする。
シ「ジブリール……今度こそ、ヤツを叩き潰してやる」
レ「意気込みは買うが焦るなよ、シン」
シ「ああ」
頼もしげに頷くシンには、気負いも焦りも無い。
これなら大丈夫だと、レイは小さく頷いた。
833 :
一条祭:2006/03/07(火) 17:48:12 ID:???
レ「では……」
レイが解散を告げようとしたとき、いきなりパイロットルームのドアが開く。
三人の視線が一斉にドアに向くと、そこには慌てた様子のピンクの髪の少女が立っていた。
レ「何の用だ、ミーア?」
ミ「あ、い、いいえ……べ、別に用ってことは……」
静かな声に問われ、ミーアはさらに慌ててしまう。
ミ「ただ……そ、その……シン……が……いる、かな……って思って……」
レ「……」
ル「レイ。ミーティングはもう終わりよね?」
ルナマリアが慌てふためくミーアに助け舟を出すように尋ねると、レイは「ああ」と答え、シンに向き直る。
レ「シン、これでミーティングは終了だ」
レ「俺はしなくてはならないことがあるので先に行く。作戦開始時刻までには遅れるなよ」
いつもと変わらぬ口調でそう言うと、レイはさっさと部屋を出て行ってしまう。
ル「あ〜、私もインパルスの最終チェックに行かなきゃ」
ル「んじゃ、シン。お先っ♪」
シ「あ、おい……」
さらにルナマリアもいかにもわざとらしく用事を思い出すと、シンを残しパイロットルームを後にする。
一人残される形となったシンは、少し照れながらも入り口に佇んでいるミーアを招き入れ、自販機でドリンクを買って彼女に手渡した。
シ「……」
ミ「……」
飲み物を口にする二人の間に、沈黙が流れる。
話したいことは色々あるはずなのに、なかなか言葉が出てこない。
シンは先ほどすれ違い様に「頑張りなさいよ」と悪戯っぽくウインクしたルナマリアの顔を思い出した。
シ(何だよ、ルナのヤツ……姉貴ぶりやがって……)
無論、ルナマリアが何を言いたいかぐらい、シンにもわかっている。
だが、そのおかげでシンは余計にミーアを意識せざるを得なかった。
ミ「シン……もしかして、私、シン達の邪魔しちゃった?」
先ほどから黙ったままのシンの様子を伺うように申し訳無さそうにミーアが尋ねると、シンは慌てて手と首を左右に振った。
シ「あ、い、いいや。そんなこと無いよ」
シ「作戦は既に決定してるし、ミーティングで最後のチェックをしてただけだから」
ミ「そうなんだ……」
834 :
一条祭:2006/03/07(火) 17:49:25 ID:???
少しだけホッとしたミーアだったが、また沈黙が続くのを避けるように、ことさら明るく振舞ってみせる。
ミ「ね、この作戦が終わったら、少しは時間、出来るんだよね?」
シ「あ、う、うん。休暇ぐらいは貰えると思うけど……」
ミ「だったら、一緒にどこか遊びに行こう! 私、シンの好きなところに付き合うから!」
ミ「あ、でもミネルバがどこかに停泊しないと遊びにも行けないのかぁ……」
ミ「あ〜ん、船の中だけじゃつまんないし、どうしよぉ〜!」
コロコロと表情を変えるミーアに、シンはつい笑いを誘われる。
クスッと笑うと、シンは穏やかな瞳でミーアを見つめた。
シ「……ありがとな、ミーア」
ミ「え?」
シ「いや、何でもない」
ミーアの心遣いに感謝しながら、シンはふと遠い目をした。
シ「この戦いで……」
シ「この戦いでジブリールを倒せば、もう戦いも……」
そう言いかけて、シンは苦い顔になる。
シ「いや、戦いはまだ終わらない……か……」
シンの脳裏に、かつての故郷『だった』オーブの姿が浮かぶ。
だが、オーブは今やザフト、いやプラントにとって無視できない『敵』となっている。
オーブと戦うことにもはや躊躇いはない。『奴ら』が出てくれば、全力を持って叩き潰すまでだ。
だが、その戦いはかつてないほどに熾烈を極めるだろう。自分が死ぬことも充分にありえる。
死ぬこと自体に恐怖は無い。本当なら二年前、自分は家族と共に死んでいるはずだったのだから。
シ「……」
ミ「シン……?」
シ「え? あ、な、なに?」
知らないうちに思案に沈んでいたシンは、ミーアの声に我に返った。
気づけば、ミーアの顔が間近にある。
しかし、その顔はどことなく不安げだった。
シ「ど、どうしたんだよ、そんな顔して」
ミ「ううん、何でもない……ただ……」
シ「ただ?」
ミ「……何だかシンが遠くへ行っちゃうような気がしたから……」
シ「……!」
心配そうに自分を見つめるミーアの視線と声に、シンの鼓動が跳ね上がる。
まるで自分の姿ばかりか心の中までをも映し出したかのように、ミーアの瞳は揺れていた。
いけない。こんな顔、ミーアにさせちゃいけない。
シンはミーアを安心させるように、ややぎこちなくはあるものの優しい笑みを浮かべてみせる。
835 :
一条祭:2006/03/07(火) 17:50:42 ID:???
シ「大丈夫だよ……俺はどこにも行かない」
シ「だって俺、ミーアを守らなくちゃいけないからな」
そう、今の自分は死ぬわけにはいかない。
生きて彼女を守り、そして平和な世界を切り開かなくてはならないのだ。
シ「とにかく今は、レクイエムを攻略することだけ考えるよ」
シ「あんなこと、もう絶対にさせるもんか」
そう言って笑うシンに、ミーアはそっと手を伸ばす。
柔らかく、あたたかな手が頬を撫でるのをシンは黙って受け入れた。
ミ「シン、約束して」
シ「え?」
ミ「必ず帰ってくるって、約束して」
シ「約束……」
その言葉に、ふっとシンの胸の奥で鋭い痛みが甦る。
かつて守ると約束し、果たせなかった少女。
あどけない笑顔に隠された、死という運命から救おうとしながらも果たせず、腕の中で息絶えた少女。
―――約束したのに、俺は守れなかった。
―――俺は、嘘つきだ。
雪の降る静かな湖に少女を葬ったあの時の痛みを、シンはまだ忘れられないでいた。
ミ「シン……?」
シ「……」
自分に、再び約束を交わす資格があるのか?
その思いが一瞬、胸をよぎる。
だが、シンはすぐに考え直す。
―――そうだ、俺は嘘つきだ。
―――だが、だからこそ俺は二度と約束は破らない。破ってはいけないんだ。
今度こそ、約束を守ってみせる。
その決意を胸に、シンはミーアに力強く頷いて答えた。
シ「ああ、約束するよ」
シ「俺は必ずミーアのところに帰ってくる」
ミ「シン……」
いつしかミーアの顔は、先ほどよりもさらに近づいていた。
そっと目を閉じるミーアに、シンも目を閉じ、唇を重ねる。
836 :
一条祭:2006/03/07(火) 17:51:50 ID:???
シ「……」
ミ「……」
シンのぬくもりを唇で感じながら、ミーアはこのまま離れたくないと思った。
行かせたくない。ずっと傍にいて欲しい。
でも、そんな言葉はシンを困らせるだけだということはミーアにもわかっている。
だから唇を離すと、ミーアは懸命に微笑み、万感の思いを込めた一言を口にした。
ミ「……行ってらっしゃい、シン」
シ「ああ。じゃ、行ってくる」
そう言い残し、シンは部屋を後にした。
ミ「シン……」
一人残ったミーアは両手を組み、無事を祈るように小さな声であの歌を口ずさむ。
あの時はミネルバのクルーのためだったが、今はただ一人、シンのためだけに歌いたかった。
自分にできることは、こうして無事を祈りながら歌うことだけ。
でも、だから今は自分にできることをしよう。約束通り、シンが無事に帰ってくるように。
そう思いを定めると、ミーアは祈り、歌い続けたのだった…・・・。
今回はここまでです。シンミアスレで言うのも変ですが、何だか今までで一番シンミアしているような気が……。
ともあれ、この話は次で終われそうですので、最後まで気を抜かないように頑張ります。
最後にここまで読んでくださった方、本当に有難うございました。
リアルでGJ
最終話を楽しみにしてます。
838 :
みっぱい:2006/03/07(火) 22:22:12 ID:???
一条氏!待ってたぞ全然うpなかったからくたびれてたぞ
待ちぼうけしてたぞ
面白かった!
新シャア滅多に来ないけどここだけみにきてるよ
保守
GJ!! 次回も楽しみにしてますよ
842 :
一条祭:2006/03/10(金) 18:13:54 ID:???
感想を下さった皆さん、有難うございます。
今回も
>>832-836の続きです。
これでこの話は最後です。では、よろしければどうぞ。
……シンとミーアを残しパイロットルームを後にしたレイは、薄暗い一室にいた。
デ「やぁ、レイ。もうすぐ出撃じゃないのかね?」
レ「はい、ギル。その前にご報告しておきたいことがありましたので」
作戦前に、レイはデュランダルと連絡を取っていた。
ほのかに光るモニターの中では、デュランダルがいつものように悠然とした笑みを浮かべている。
デ「話はタリアのほうからも聞いている。ミネルバは彼女を新たな歌姫として受け入れたというじゃないか」
レ「はい。ですが、その功績は私のものではありません」
デ「そうかね? 全ては君の尽力があってこそだと私は思っているのだが」
レ「嬉しいですがギル、それは過大評価というものです」
デュランダルの賞賛の言葉にも、レイの態度は変わらない。
実際に状況を改善したのはシンとミーアだ。自分はその手助けをしたに過ぎない。
そうレイは考えていた。
デ「それにしても、まさか彼女にそれだけの『力』があろうとはね……」
デ「どうやら私は、彼女を少し見くびっていたようだよ」
レ「ギル、ミーアは……」
デ「ああ、わかってるよ。私も今更、彼女を担ぎ出すようなことをするつもりはない」
既に今のデュランダルにとって、ミーアは必要な『駒』ではない。
ならば、せいぜい邪魔にならない場所で役に立っていればいい。
デュランダルはそう判断していた。
デ「いずれにせよ、この作戦が終われば、次はオーブだ」
レ「はい」
デ「ジブリールを匿い、逃がし、プラントに壊滅的な被害をもたらす一因となったオーブを、プラントの国民は決して許さないだろう」
デ「そうだ、オーブといえば彼は大丈夫なのかね?」
デュランダルの問いに、レイはきっぱりと断言してみせる。
レ「はい。レクイエムの一件で、シンのオーブに対する感傷は完全に断ち切れています」
レ「オーブと、そして『彼ら』と戦うことに対し何の迷いもありません」
デ「それは結構。白のクイーンを守る騎士は強力だからね。こちらとしても強力な『駒』が必要だ」
レ「……」
デュランダルの言葉に、ほんの僅かだがレイの表情が動く。
だが、すぐに何もなかったように表情を消すと、レイはデュランダルに向かってうやうやしく頭を下げる。
843 :
一条祭:2006/03/10(金) 18:14:50 ID:???
レ「シンは必ずギルの期待に応えてくれるでしょう。ご安心ください」
デ「ああ、期待させてもらうよ」
デ「だが、とにかく今は目の前の作戦に集中してくれたまえ」
レ「はい」
デ「それと、わかっているとは思うがくれぐれもレクイエム本体には傷をつけないでくれよ」
レ「もちろんです。そのための作戦も立ててありますので、ご心配には及びません」
レイの返答に、デュランダルは満足そうな笑みを浮かべる。
あれだけの兵器だ、今度はこちらがせいぜい有効に活用させてもらわなければならない。
デ「では、勝利の報告を待っているよ、レイ」
その言葉を最後に、通信は途切れた。
レ「……」
レ「『駒』、か……」
静寂の中、レイはデュランダルの言葉を思い起こす。
確かにデュランダルにとって、シンは『彼ら』を倒すために必要な『駒』なのだろう。
レ「……」
わかっていたはずなのに、レイはその言葉にどうしても引っ掛かりを感じてしまう。
デュランダルに対する忠誠にはいささかの揺らぎも無いというのに……。
レ「っ!」
レ「くっ……うぅ……っ!」
またしても例の『発作』に見舞われ、レイはカプセル錠剤を飲み下す。
徐々にではあるが『発作』の間隔が短くなりつつある。
そのことを、レイは自覚せざるを得なかった。
レ「っく……っはぁ……はぁ……シン……」
レ「……全てを知ったら……っ……お前は……俺を憎む……だろう、な……」
額に汗を浮かべ、荒い息を吐きながら、レイはかつて口にした言葉を再び呟いた。
『出来損ない』の自分に代わり、デュランダルの創る未来のため、平和な世界のためにシンはこれからも戦い続け、勝ち続けなければならない。
負けることは許されない。負けはすなわち死を意味するからだ。
レ「……死ぬまで負けられない……戦い、か……」
もしこのような『出来損ない』の身体でさえなければ、自分がその役目を担うはずだった。
自らについてはとうの昔に諦めていたはずのレイに、己への不甲斐なさがこみ上げてくる。
レ「っ……すまない……シン」
何も知らない、ただひたすらに真っ直ぐなシンの瞳を脳裏に思い浮かべ、レイは沈鬱な表情で僚友に詫びた。
いくら未来のためとはいえ、シンには自分の代わりに過酷な運命を背負わせることになる。
844 :
一条祭:2006/03/10(金) 18:15:54 ID:???
レ「だが……だからこそ、俺はあいつに……」
そう、だからこそ、自分はシンにせめて何かを遺してやらねばならない。
シンが運命に潰されぬよう、傍にいて支えてやれるもの。
それは、一つ……いや一人しかいない。
レ「ミーア……君なら……」
大切な人を喪い続けてきたシンの、最も大切な女(ひと)である、ミーア・キャンベル。
彼女なら、きっとシンの支えとなってくれる。あの二人をずっと見てきたレイは、そう確信していた。
そして自分にできることは、そんな二人を少しでも手助けすることだけだ。
デュランダルへの忠誠とは別に、いつしかレイはそう考えるようになっていた。
レ「……」
静かに目を閉じると、レイは二人の姿を瞼の裏に思い浮かべる。
皆にラクスとして望まれたミーアだが、シンはミーアをミーアとして必要としている。
だからこそ彼女を、ミーアを『ラクス・クラインの偽者』というだけの存在にするわけにはいかなかった。
彼女のためにも、シンのためにも、ミーアは『ミーア』としてあらねばならない。
レ「フッ……偽善……いや、独善だな……」
己の考えに、レイの口元から自嘲の笑みがこぼれ落ちる。
だが、例え偽善や独善であろうとも、レイが二人にしてやれるのはそれだけしかなかった。
レ「シン……ミーア……」
レ「お前達なら……共に……未来を……歩んで、いける……だ……ろ……う……」
薄暗い部屋の中、疲れきったレイはうずくまるようにして床に座り込むと、そのまま深い眠りの中に落ちていった……。
845 :
一条祭:2006/03/10(金) 18:17:21 ID:???
シ「……レイ、ルナは?」
MSハンガーに向かうべく、シンはレイとエレベーターの中にいた。
レ「あいつは今回の要だからな。先に出た」
いつものように答えるレイには、先ほどまでの異変の影響は微塵もない。
だが、シンにはどことなくレイの様子が違うように感じられた。
シ「なぁ、レイ……」
レ「どうした?」
シ「いや、何となく顔色が悪そうだから、どうしたのかと思ってさ」
レイの白皙の顔が、いつにも増して白いようにシンには見える。
レ「別にどうもしてはいないが……流石に緊張しているのかもな」
レイは顔を隠すようにさりげなく髪をかき上げると、僚友に向かって小さく笑ってみせた。
シ「へぇ、やっぱレイでも緊張するんだ」
レ「まぁな。それだけ俺達の任務が重大だということだ」
レ「それよりお前はちゃんとミーアとの挨拶を済ませてきたのか?」
シ「!! な、なに言ってんだよ、レイっ!」
レ「照れることはないだろう。お前達のことはミネルバの皆が知っていることだ」
シ「レイっ!!」
見る見る顔を赤くするシンに、レイは今度は作ったものでない笑みを見せる。
他愛ない会話を交わす間に、エレベーターはMSハンガーに到着した。
レ「さぁ、行くぞ、シン」
シ「ああ!」
ドアが開くと、それまでの甘さが消え、二人の顔は戦士のそれへと変わる。
シ「レイ、必ずジブリールを倒すぞ」
レ「ああ。お前ならやれる」
シ「俺達、だろ?」
レ「フッ……そうだな」
互いに視線を交し合うと、シンとレイはそれぞれの愛機の元へと向かった。
コクピット内のほのかな灯りに照らされながら、二人の前方でカタパルトハッチが開いていく。
『進路クリアー。MS、発進どうぞ』
シ「シン・アスカ。デスティニー、行きます!」
レ「レイ・ザ・バレル、レジェンド発進する!」
互いの思いを胸に秘め、二人の戦士は漆黒の宇宙空間へと飛び立っていった。
846 :
一条祭:2006/03/10(金) 18:18:47 ID:???
……ようやく終わりました。いや、長かったw
当初はレクイエム攻略にミネルバが月へ向かうところで終わりにするはずだったのに、
気づいてみれば話が膨らみ、ここまでかかってしまいました。無事に完結できたのでホッとしています。
最初から読んでくださった方、感想をくださった方には本当に感謝しています。
普段はほとんどお礼コメントもしませんでしたが、感想をいただく度に「頑張ろう」といつもありがたく思っていました。
本当に有難うございます。
自分としては「ミーアのために奮闘するシン」「レイの、シンへの友情と思い」「ラクスではなく、自ら歌姫となるための
一歩を踏み出すミーア」など、書きたかったものは稚拙ながらそれなり書けたので一応満足しています。
この後は単発の軽いSSでも書こうかな……などと思っていますが、残りのレス数を考えるとどうなるかちょっとわかりません。
でも、まだまだシンミアで書いてみたいな、とは思ってます。二人とも好きなキャラですから。
では最後に、自分のSSをここまで読んでくださった皆さん、本当に有難うございました!
お疲れでした。
シンミア単発作品も楽しみにしてます。
848 :
通常の名無しさんの3倍:2006/03/10(金) 20:04:49 ID:t5f3iZDp
お疲れ様でした一条様!
シンミアGJ・レイカッコイー(・∀・)な小説でした!!
ほかの小説もまだまだ書くんですよね??
期待しています!
お疲れさまでした
すげーーーーGJ!!!!読んでて、その様子が想像できる。いい話だった
レイもカッコヨスでした
また次回作楽しみに待ってます
よくぞ最後まで書いてくれたよ!GJー
また最初の方のちょいエロシンミアもみたかったりする
マターリ待ってます
851 :
みっぱい:2006/03/13(月) 10:04:14 ID:???
>>847 一条氏GJ!頼む!シンミアの世界を作ってくれ
可能ならラクスとキラを改心させるシナリオを
遅レスだけど一条氏、お疲れ様でした
シンミアはもちろんレイの葛藤の描写が個人的に嬉しかったです
853 :
一条祭:2006/03/15(水) 20:36:04 ID:???
皆さん、感想ありがとうございます。
普段はSS以外にあまり書き込まないようにしているのですが、このまま黙っているのもどうかと思うので、
せめてお返事だけでもさせてもらいます。
>>847 ありがとうございます。単発物は現在思案中ですが、どうにもネタが……何かいいネタあります?w
>>848 ありがとうございます。自分でも思った以上にレイはキーキャラになりました。
他のネタでもご期待に答えられるように頑張ります。
>>849 そういっていただけると照れくさいながらも嬉しいです。>読んで想像できる
次のネタでも、出来る限り頑張ります。
>>850 実は、最後まで書けて自分が一番ホッとしてますw
ちょいエロは…・・・自分では意識したつもりがないのですが、最初のほうってエロかったですか?w
>>851 えーと、自分はあくまでシンとミーアが好きなだけのSS書きなので、キララクの改心はちょっと……w
>>852 ありがとうございます。レイのキャラは本編とはだいぶ違ってしまいましたが、自分的にこういった
「表面はクールながら内に熱い思いを持ったキャラ」が好きなもので、ついそういったキャラにしてしまいました。
感想を下さった方、本当にありがとうございます。なるべく遅くならないうちに新作を発表できたらいいなと
思っていますので、そのときはまたよろしくお願いします。
お疲れ様です
ネタなー、なんかいいのないかな
ミーアの危機を運命に乗ったシンが助けに来るとかいいな
ってただ注文つけてるだけだなスマソ
コペルニクスの所までやってくださいよ
シンがミーアの危機の為にデスティニーを駆って
コペルニクスに行く
>一条氏
感想にレス返しするのはいいけど、一部は空気読んでスルーしてね
そのバカにはみんな触らないようにしてるんだから
ネタなら時期にそって、バレンタインホワイトデーネタを
>>855 確か、コペルニクスは中立都市だからMSは無理なはず。(ラクシズの罪にも数えられている)
それなら、ジブリールを撃破した後に補給・整備の為、一時停泊、
その間、シンとミーアが一緒にデートを兼ねた買い出しにさせてほうが(まだ)自然やも・・・
シンがミーアをこれぞ主人公って感じに助け出す話が読みたい…
それかミーアがシンの家族になるって約束する話。
妄想は膨らむんだが自分で書けないorz
いいから巣にカエレ
865 :
通常の名無しさんの3倍:2006/03/18(土) 20:36:39 ID:fdXusqDQ
保守
>>864 それで最後は本当に平和になるのかよえぇ!
認めぬもの同士が互いに争えばこのスレは終わりぞ!
>>866 スレ違いだわかったら失せろゴミッパイ兵
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