【ドキドキ】新人職人がSSを書いてみる【ハラハラ】10
新人職人さん及び投下先に困っている職人さんがSS・ネタを投下するスレです。
好きな内容で、短編・長編問わず投下できます。
分割投下中の割込み、雑談は控えてください。
面白いものには素直にGJ! を。
投下作品には「つまらん」と言わず一行でも良いのでアドバイスや感想レスを付けて下さい。
週刊新人スレ編集長、まとめ単行本編集長、雑談所「所長」にも感謝の乙! をお願いします。
また、イラストを描いてみたいor描いてみた絵師の卵の方や造形職人も歓迎します。
投下宣言の上雑談所『職人のチラ裏スレ』までどうぞ。
荒れ防止のため「sage」進行推奨。
SS作者およびイラスト製作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー。
本編および外伝、SS作者の叩きは厳禁。
スレ違いの話はほどほどに。
容量が450KBを越えたのに気付いたら、告知の上スレ立てをお願いします。
本編と外伝、両方のファンが楽しめるより良い作品、スレ作りに取り組みましょう。
前スレ
【ドキドキ】新人職人がSSを書いてみる【ハラハラ】9
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巻頭特集【テンプレート】
〜このスレについて〜
Q1
新人ですが本当に投下して大丈夫ですか?
A1
ようこそ、お待ちしていました。全く問題ありません。
但しアドバイス、批評、感想のレスが付いた場合、最初は辛目の評価が多いです。
Q2
△△と種、種死のクロスなんだけど投下してもいい?
A2
ノンジャンルスレなので大丈夫です。ただしクロス元を知らない読者が居る事も理解してください。
Q3
00(ダブルオー)のSSなんだけど投下してもいい?
A3
新シャアである限りガンダム関連であれば基本的には大丈夫なはずです。(H19.9現在)
捕捉
エログロ系、801系などについては節度を持った創作をお願いします。
どうしても18禁になる場合はそれ系の板へどうぞ。新シャアではそもそも板違いです。
Q4
××スレがあるんだけれど、此処に移転して投下してもいい?
A4
基本的に職人さんの自由ですが、移転元のスレに筋を通す事をお勧めしておきます。
理由無き移籍は此処に限らず荒れる元です。
Q5
△△スレが出来たんで、其処に移転して投下してもいい?
A5
基本的に職人さんの自由ですが、此処と移転先のスレへの挨拶は忘れずに。
Q6
○○さんの作品をまとめて読みたい
A6
まとめサイトへどうぞ。気に入った作品にはレビューを付けると喜ばれます
Q7
○○さんのSSは、××スレの範囲なんじゃない?
△△氏はどう見ても新人じゃねぇじゃん。
A7
事情があって新人スレに投下している場合もあります。
Q8
○○さんの作品が気に入らない。
A8
スルー汁。
Q9
読者(作者)と雑談したい。意見を聞きたい。
A9
雑談所へどうぞ。そちらではチャットもできます。
捕捉
名前欄のトリップの文字列が有効なのは、したらば等一部例外はありますが基本的に2ch内部のみです。
なので雑談所では名前欄のトリップは当然無効です。既に何名かトリップ文字列がバレています。
特に職人さんが雑談所に書き込む際には十分ご注意を。
〜投稿の時に〜
Q10
SS出来たんだけど、投下するのにどうしたら良い?
A10
タイトルを書き、作者の名前と必要ならトリップ、長編であれば第何話であるのかを書いた上で投下してください。
分割して投稿する場合は名前欄か本文の最初に1/5、2/5、3/5……
等と番号を振ると読者としては読みやすいです。
捕捉:SS本文以外は必須ではありませんが、タイトル、作者名は位は入れた方が良いです。
Q11
投稿制限を受けました(字数、改行)
A11
新シャア板では四十八行、全角二千文字強が限界です。
本文を圧縮、もしくは分割したうえで投稿して下さい。
またレスアンカー(
>>1)個数にも制限があるますが普通は知らなくとも困らないでしょう。
Q12
投稿制限を受けました(連投)
A12
新シャア板の場合連続投稿は十回が限度です。
時間の経過か誰かの支援(書き込み)を待ってください。
Q13
投稿制限を受けました(時間)
A13
投稿の間隔は新シャア板の場合最低一分(六十秒)以上あかなくてはなりません。
Q14
今回のSSにはこんな舞台設定(の予定)なので、先に設定資料を投下した方が良いよね?
今回のSSにはこんな人物が登場する(予定)なので、人物設定も投下した方が良いよね?
今回のSSはこんな作品とクロスしているのですが、知らない人多そうだし先に説明した方が良いよね?
A14
設定資料、人物紹介、クロス元の作品紹介は出来うる限り作品中で描写した方が良いです。
捕捉
話が長くなったので、登場人物を整理して紹介します。
あるいは此処の説明を入れると話のテンポが悪くなるのでしませんでしたが実は――。
という場合なら読者に受け入れられる場合もありますが、設定のみを強調するのは読者から見ると好ましくない。
と言う事実は頭に入れておきましょう。
どうしてもという場合は、人物紹介や設定披露の為に短編を一つ書いてしまうと言う手もあります。
"読み物"として面白ければ良い、と言う事ですね。
〜書く時に〜
Q15
改行で注意されたんだけど、どういう事?
A15
大体四十文字強から五十文字弱が改行の目安だと言われる事が多いです。
一般的にその程度の文字数で単語が切れない様に改行すると読みやすいです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
↑が全角四十文字、↓が全角五十文字です。読者の閲覧環境にもよります。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あくまで読者が読みやすい環境の為、ではあるのですが
閲覧環境が様々ですので作者の意図しない改行などを防ぐ意味合いもあります。
また基本横書きである為、適宜空白行を入れた方が読みやすくて良いとも言われます。
以上はインターネットブラウザ等で閲覧する事を考慮した話です。
改行、空白行等は文章の根幹でもあります。自らの表現を追求する事も勿論"アリ"でしょうが
『読者』はインターネットブラウザ等で見ている事実はお忘れ無く。読者あっての作者、です。
Q16
長い沈黙は「…………………」で表せるよな?
「―――――――――!!!」とかでスピード感を出したい。
空白行を十行位入れて、言葉に出来ない感情を表現したい。
A16
三点リーダー『…』とダッシュ『―』は、基本的に偶数個ずつ使います。 『……』、『――』という感じです。
感嘆符「!」と疑問符「?」の後は一文字空白を入れます。こんな! 感じ? になります。
そして 記 号 や………………!!
空白行というものは――――――!!!
とまあ、思う程には強調効果が無いので使い方には注意しましょう。
Q18
第○話、って書くとダサいと思う。
A18
別に「PHASE−01」でも「第二地獄トロメア」でも「魔カルテ3」でも「同情できない四面楚歌」でも、
読者が分かれば問題ありません。でも逆に言うとどれだけ凝っても「第○話」としか認識されてません。
ただし長編では、読み手が混乱しない様に必要な情報でもあります。
サブタイトルも同様ですが作者によってはそれ自体が作品の一部でもあるでしょう。
いずれ表現は自由だと言うことではあります。
Q19
感想、批評を書きたいんだけどオレが書いても良いの?
A19
むしろ積極的に思った事を1行でも書いて下さい。専門的である必要はないんです。
むろん専門的に書きたいならそれも勿論OKです。
Q20
上手い文章を書くコツは? 教えて! エロイ人!!
A20
上手い人かエロイ人に聞いてください。
===========================
テンプレは以上。以降投下待ちに入ります。
絵師テンプレート暫定版
新人職人さん及び投下先に困っている職人さんがSS・ネタを投下するスレです
好きな内容で、短編・長編問わず投下できます。
分割投下中の割込み、雑談は控えてください。
面白いものには素直にGJ! を!
投下作品には「つまらん」と言わず一行でも良いのでアドバイスや感想レスを付けて下さい。
週刊新人スレ編集長、まとめ単行本編集長、雑談所「所長」にも感謝の乙! をお願いします。
→また、イラストを描いてみたい絵師の卵の方や造形職人も歓迎します。
→投下宣言の上雑談所『職人のチラ裏スレ』までどうぞ。
・「sage」進行でおねがいします。
→・SS作者及びイラスト制作者には敬意を忘れずに。煽り荒らしはスルー。
・本編および外伝、SS作者の叩きは厳禁 。
・スレ違いの雑談はほどほどに
・本編と外伝、両方のファンが楽しめるより良い作品、スレ作りに取り組みましょう
Q
新人絵師だけどどうすればいいの?
A
本スレでこれから投下しマース宣言
↓
雑談所に投下(若しくはURL貼り付け)
↓
本スレ、雑談所で作品を肴に一杯
こんな流れでお願いします
前スレ
>>160 >>hate and war
投下乙です。
プラントと関係の薄い場所が舞台のhate、家族も自分も悲惨な目を見て、
もう一度同じことがあるようなら今度は自分が、というわけですね。
血迷って、と書いて在りましたが、個人的にはもっと言葉遊びやってみても
良かったのでは、と思います。
続きを期待しております。
いきなり落ちていたので、僭越ながら立てました。
テンプレ貼りを手伝ってくれた方もありがとうございます。
10 :
ひまじん:2007/11/18(日) 18:52:45 ID:???
向こうの通りで爆弾テロだってさ。まあ、俺には全く関係のない話だけどね。
ぶっちゃけ、俺の知らない奴等がどうなろうと知った事じゃない。
勿論、何処の誰がやったのかなんてお釈迦様じゃない俺にはわかんねえ。
だけど、どんな奴がどんな目的でやったのかって事だけは解る。
答えは馬鹿が暇潰しにやったのさ。馬鹿に暇と金を持たせるとロクな事をしないってのは誰もが知ってる常識だろ?
なんにせよ、馬鹿が起こした事件には野次馬になってちょっくら覗いてみるってぐらいの関わりで充分さ。
今巷で一番ホットな話題のソレなんとかも同じ事。
軍事介入だかなんだかしらないけど、無駄金を使うなら俺みたいな貧乏人に半分でも良いから金を寄越せって言いたいね。
俺には奴等よりも建設的に金を使う自信がある。
行き着けの飲み屋のママを落として世界の人口を一人増やすっていう偉業を達成してやるよ。いや、馴染みの風呂屋の可愛い新人ちゃんだっていいさ。
いやいや、一人どころの話じゃない。生まれて子供でバスケット……いや、ラクビーのチームが作れるくらいにハッスルしてみせるよ。
もっとも、ラクビーのルールなんて知らないけどね。ラグビーなんぞは大昔のドラマで見ただけさ。
あのドラマはイカしてて良かった。ラグビー物なのに白馬に乗って登場するお嬢様とか最高だったよ。
オープニングのスカートめくりを見た瞬間に録画しちまったよ。
話は脱線しちまったけど、俺が言いたいのはソレなんとかは俺に金を寄越しやがれって事さ。
アンタもそう思うだろ?
11 :
ひまじん:2007/11/18(日) 18:54:03 ID:???
謎短編第二弾投下。
>>ひまじん
投下乙。
request “宇宙少年の夢”
私の目の前をブーステッドマンの一人が歩いている。手には質素なカバーをかけた本を持っている。
ガサツそうだと思っていたのだが、本を大切にしているようだ。
彼に対する認識を改めなければならないのかも知れない。
そう言えば、私は書類上の彼等のデータしか知らない。
血の通わない無機質な情報より、二三言でもいいから言葉を交わした方が彼等の事を理解する事が出来るだろう
それに、一体彼がどんな本を読んでいるのか興味がある。
私は少し早足になり彼の隣りに並んだ。
「その本は?」
私の声に反応したのか、彼は立ち止まって私を値踏みするように視線を投げ付けて来た。
「テメエには関係ねえだろ。俺の視界からとっとと消えろ」
不信感と不快感の混じった言葉が私に返された。
彼等は人間としてではなく、モノとして扱われて来たから私に対して怒りを向けているのだろう。
私はその怒りを受け入れなければならない。そのくらいの度量がなければ艦長失格なのかも知れないだろう。
今まではそんな事を考える事はなかったのだけれども、アークエンジェルでの経験が私を少しづつ変えつつある。「お前がどんな物を読んでいるのか気になった。本の題名くらいは教えてくれないか?」
彼の瞳を真直ぐに見つめると、彼は観念したのか無言のまま肩を竦めて私に本を差し出した。
本を手に取ると、手垢で薄汚れているのが分かる。何度も何度も繰り返し読んだのだろう。
「ジュール・ヴェルヌの宇宙旅行?」
本のタイトルは意外なものだ。人が宇宙に出てから長い時間が過ぎているのに、こんな古典的なものを読んでいるとは思わなかった。
「笑うんじゃねえよ……お前、すっげえウゼエ」
驚きから生まれた私の笑みは彼を一層不快にさせてしまったらしい。彼は舌打ちをすると私から本をひったくった。
「………すまない、そう怒るな。ヴェルヌとは意外だったから驚いただけだ」
私は咳払いをして謝罪をすると再び彼を見据えた。
「……知ってるか、全ての始まりはこの本なんだ。この本を読んだガキが宇宙を目指したんだよ。」
彼は頁をペラペラと捲ると瞳に光を宿しながら熱っぽく語り始めた。
「……続けてくれ」
「古臭い物語だけどな、この本がなきゃ誰一人宇宙なんて目指す事はなかっただろう。この本にはすげえエネルギーが詰まってんだよ」
熱を帯びた彼の瞳はまるで無邪気な子供の様だ。そういうものは、嫌いじゃない。
「人類は色んな人間の意志を受け継いで宇宙に上がる事が出来たのに、俺達は一体何をしてんだろうな」
彼が言葉を吐き捨てると、彼の瞳から急速に光が失われていく。
「……すまない、それは私達大人の責任だ」
何故か私は素直に頭を下げてしまった。それは、軍人として、大人として子供を戦争に巻き込んでしまったという負い目があるからなのかもしれない。
「そうだ。君もなにか話を書いてみたらどうだ?」
彼は私の言葉に刺す様な視線を返す。
「お前、ウザ過ぎだぜ。……俺には残り時間が少ないんだよ」
私には彼の言葉に何一つ返す事が出来ない。彼等ブーステッドマンはこの先があまりに短か過ぎるのだ。
私は踵を返して肩をいからせながら去っていく彼の背中に頭を下げる事しか出来ない。
「……本当にすまない」
元々の彼は読書の好きな何処にでもいそうな少年だったのだろう。
そんな彼の運命を踏み躙ってしまったのは本当に申し訳なく思う。気付くと涙が私の頬を濡らしている。
願わくば、彼が出来る限り生き続ける事が出来ます様に。
リクエストがあったのでナタルとオルガ物を投下してみたり。
>>"宇宙少年の夢"
投下乙です。
ナタルのなかなか伝わらない優しさと、夢と一緒に未来を奪われたオルガの、
遅すぎた会話が物悲しいです。
意外と素朴なオルガ像に少し驚きました。
続きをお待ちしております。
17 :
週刊新人スレ:2007/11/19(月) 19:12:01 ID:???
目次
ザクファントムシグナルロスト! 仲間の危機に飛び出そうとするシンを止めるのはルナマリア。その想いとは……。
SEED『†』
※
>>152-156 地上に住むコーディネーター。それが故に辛い仕打ちを受けてきた彼が、世界の壊れる日に思う決意とは……!
hate and war
※
>>160 爆弾テロ? 知らねぇなぁ。そんな金があるなら俺にくれよ……。ひまじんが描くちょっとひねた西暦2307年。
謎短編
>>10 彼女の目の前をブーステッドマンの少年が過ぎていく。軍人であるが故の彼女の葛藤は彼に伝わるはずもなく……。
宇宙少年の夢
>>13-14 新人職人必読、新人スレよゐこのお約束。熟読すればキミも今日からベテラン職人だ!!
巻頭特集【テンプレート】
>>1-6 絵師テンプレート【暫定版】
>>7 各単行本も好評公開中
詳しくは
ttp://pksp.jp/10sig1co/ までアクセス!
読者と職人の交流スペース開設。
お気軽に
ttp://pksp.jp/rookiechat/までどうぞ!
お知らせ
・投下作品とのリンクを問わず絵師、造形職人の方を募集中です。 エロはアウト、お色気はおk。
これくらいのさじ加減で一つ。素材は新シャアなので一応ガンダム縛り。
勿論新人スレですので絵師、造形職人さんも新人の方大歓迎です。
・当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。
・また雑談所とも一切の関係はありません。当該サイトで【所長】とお声掛けの程を。
・スレ立ては450kBをオーバーした時点で、その旨アナウンスの上お願いします。
編集後記
チラ裏でも言ってましたが、あのタイミングで落ちるなんて種死ショック以来ですかねぇ。正直ビビりました。
スレ立てしてくれた方、非常に乙でございました。今回も故郷を無くさず済みました。
皆さんも、保守がてら週末は感想をポチポチと書き込んでみては如何でしょうか?
18 :
週刊新人スレ:2007/11/19(月) 19:13:26 ID:???
>>17で※印の付いた作品は前スレ【9】のレス番です
編集長乙です!
そして保守
編集長、仕事乙でーす
※印付きのアンカーが百番台なあたりに、OOのショックが窺える。
職人方も投下乙
まとめのほうでまとめ読みしてこっちに感想とか良いのかな?
(レビューに書くのが少し気がひけるんで)
>>ザクレロSEEDさん
アズラエルの考察も、描写も真面目にやってるのに、ザクレロが出てきて、
クルーゼを瞬避つして、それでもストーリーが凄く真面目に進んでるのが面白いです。
本当に不思議。
今の展開、ミストラルのサイがどうなるのか気になってます。
>>謎短編
スクールウォーズにふきました
>>21 スクールウォーズって「ラグビー部なのに白馬に乗って……」のくだりの事?
元ネタが分からんかった。
>>22 スクールウォーズで間違いないと思うよ
>>ひまじん
凄い強引な理窟にふいたw
なんでみんなスランプの並が重なってるんだろう
冬休みになったらみんな復活されますかね
来年の夏休みまでお待ちください。
26 :
美柚子:2007/11/21(水) 21:56:17 ID:???
女の子なら誰だってやっている事だ。
私、フレイ・アルスターは無言で部屋を立ち去るキラを見送りながら軽く舌打ちを
した。つまらない男。全身全霊で愛してあげても人形のように無反応で、むかつく。
服を着るのが億劫で、私は産まれたままの姿でベッドに横たわった。ぼんやりと
宙を見つめながら口笛を吹いてみるけれど、子供の頃にパパから教えて貰った時の
様な綺麗な音にならなかった。ひゅうひゅうと空気の抜けた音ばかり。
何やっているんだろ、私。
視界が曇って行くのはきっと涙のせい。あの時に涙が枯れるまで泣いたと思ったのに。
可笑しくって笑える。泣いてるのに笑ってる。私、馬鹿みたい。ホントに馬鹿よね。
泣いて笑って気が住んだ後、服を着て念入りにメイクをする。だって女の子だもの。
ぶらぶらと艦内を歩いていたら、ミリアリア・
ハウにばったり行き当たった。私と彼女は本当にウマが合う。私は彼女みたいに冴えない
男に惚れるような愚かさは無いし、彼女は彼女で私を男に媚びるしか能の無い阿婆擦れだと
思っているのだろう。どんなに表面上は取り繕っていても、視線一つで伝わってしまう物なのだ。
現に、彼女は私に声を掛けやしない。私だって挨拶しようと思ったりしない。
――ほら、私と同じ。
女の子なんてみんな同じ。男の子の前ではどんなに可愛い娘ぶっても、女同士じゃ
態度が変わる。女が女に媚びても意味無いんだもの。
擦れ違う時に合った彼女の視線から軽蔑やら嫉妬やらが容易に感じ取れた。
仕方ないのよ。トールはどんなに頑張ってもトールで、キラは何をしなくても
キラなんだもの。あの娘は只のミリアリアで、私はフレイ・アルスターで。
彼女に気付かれないように微笑みながら私は歩き続けた。
やっぱり気分は最悪だったけれど、何だか胸がスッとした。
27 :
美柚子:2007/11/21(水) 22:05:32 ID:???
はじめまして☆今晩和♪
私は美柚子って言います(≧▽≦)『ミューズ』って呼んでね〜♪(*'-^)-☆キャハ
今日は短編を投下しちゃいました(b^-゜)キャー:*:・( ̄∀ ̄)・:*:
タイトルは『フレイ〜身も心も〜』でお願いしま〜す\(^o^)/
良かったら感想を聞きたいな〜(*゜▽゜ノノ゛☆キラキラン
>>美柚子(みゅーず)
『フレイ〜身も心も〜』投下乙です。
種を思い返すに、フレイは確かにこんなキャラだったかと思えます。
作品と後書きのギャップに少々驚きましたが、フレイと、彼女を通した
ミリアリアの描写はかなり上手いと思います。
苦手なので絵文字等は入っておりませんが、これで感想失礼しました。
悪くはないと思う。続きもちょっとだけ期待する。
本来の趣味からはずれてるので絶賛といえるほどの好印象はないが。
ただその……女子中学生がはしゃいでるようなあとがきはちょっと……
……歳かな俺?
>>謎
投下乙
ちっとも未来の話に見えないあたり、かえって入り込みやすいだろうかね
なんだろうと思ったがスクールウォーズだったかww
砕けた一人称は何処かで見たと思ったら一般的なブログのそれ、なのだなと思う
前回も書いた気がするが『ソレなんとか』が出てこないとOOかどうか微妙
作風から言って無理してガンダムを出す必要もないが何かにおわす工夫は必要では?
>>宇宙少年
投下乙
随所にらしいところは見えるがトリップみなけりゃ誰だかわからないところだ
とは言え要らない部分をそぎ落としてシェイプを重ねた文章と
ブーステッドマンよりも艦長に悲哀を感じてしまう辺りの微妙な読後感は
まさにあんたの真骨頂。お見事
これから真言と呼べばいいのかな?
>>フレイ
投下乙
あまり楽しくない題材を以外と良いテンポで読ませる
少女漫画とも思ったがこちらはレディコミ風か
シリーズ化するのかどうかは知らないがこれはこれで良い
何となくだが主題がぼけてる気がする
あんたならもっと全体の切れ味が鋭い
真言とは切り口の違う 『読むのが痛い文章』 が書けると思う
次回投下にも期待する
, -―― ――- 、
_/ /三ミ_=、 `ヽ、
〃´ /ミ、/'"´ ̄ ̄ `ヽ、 \
/ / /'" `丶 \ \
/ / ./ / \ \ ヽ\ ヽ\
/ | | / | !、 ヽ ヽィ ハ ! ̄ 次スレで会いましょう!
/ ;| | ,/ /| _j_} ヽ V li l l !
,' / | |イ /!丁从 小` ! l| l | ! | コーラサワーと共に苦難を乗り越えるスレ その04
l / | |ハ l / .x=女ミ、 | !ハ_ハ | ! |
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/ _ / // / ̄/\ \  ̄ ̄ヽ.人/ //_/イ
/ _ -‐ァ'/ /フ" /―メ、 . ヽ¨\__ / _/" l∨
. // // // イ ヘヽ ∧ ∨/´ ̄人 V . ! |
〃 .l// / / / | ヽ |. イ  ̄ ´/ ヽヽ ! |
l / ./ __j -===- ヘ | ! ハ _\ノ ゝ_
ル ' f __\ \ | |-―‐--tヘ _」ト ァ丶 /ユ
j,  ̄ フ | |_r、「l「l,、 !ュ!丑iロ| Y__}
/ / ./ | |トヽ!‖r' !ュ!丑iロ|/|__ j ̄ヽ
___/ / / 〉 |f、>!‖>_//!/!ll六! |tー┴ 、 \
/ / // / ./l」 /.八_ク 〈/リ/|│  ̄ テヘ l
/ / _/ / ./ / / ー‐⌒/ ̄ /l/,'|│、_/ ヽ \.|
j ̄ ̄ ̄ ̄/ ̄ ̄ / / / / ー7// フ//| |//| |///了ー' / l
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ/ | ̄ / / / / l// ////,'| |//| |////\/ ∧
/ rノ / / / / /" .///////| |//| |ー、// ノ__/ l
__ ―==ニ二 / 厂/ _ / / / / / /'////////| |V,'| |l//7 ̄了 /
///∧ \ _ / / / / 〉/////////,| |! l| |\/////∨
/ /人 ヘ \ \_,/ / / ./ /∧ {,'//////////| |V/| ヽ==- '
/ く V \  ̄ ̄ ̄ ̄\> イ // / V//////////| |//| \
. r 、/ \ _> 、___// / ノ V/////////| ||/,| ヽ
\ \ヽv-―‐‐ヘ __/ ―==ニ/ / V { ̄ ̄V//| ||/ ! !ヽ ヽ
\と二二 ̄ \\ / ./ }┘ V∧j//l ! ヽ ヽ
33 :
30:2007/11/22(木) 20:42:32 ID:???
書き忘れ
>>29 そのコントラストにクラクラするのが正しい楽しみ方ではないかと思うww
>>31ですが、ご迷惑おかけしてすみませんでした。
レイ〜終末の過ごし方〜
きっと遠くない未来。
ギルは新しい世界の秩序を作って行くだろう。
俺には其処へ辿り着くだけの時間は残されてはいないけれど、問題無い――筈だった。
「レイ、おはよ。」
あの時の俺の姿を見て以来、シンは何かと俺を気に掛けるようになった。何気ない
挨拶やちょっとした仕草だけなのに、シンの優しさが伝わって来る。
今もこうやってぐりとぐらが大きなホットケーキを作った時のような笑顔で俺に
笑い掛ける。無邪気で純粋で、だから、辛い。自分の残り時間を突き付けられたかの
ようで、胸の中の一番深いがチリチリと痛む。今迄其処に入って来られたのはギルだけなのに。
いつもと変わらぬ日常。淡々と流れて行くそれは残酷な迄に優しくて哀しい。充実して
いる証なのかも知れないがあっという間に過ぎて行く。――ほら、もう夜。
今日は何をしただろう。明日は何が出来るだろう。明後日は、その次の日は?
「レイ、ちょっといいか?」
消灯が過ぎていると言うのに、シンは饒舌に喋り始めた。雑談から始まってアカデミー
時代の思い出話やら、シンのオーブでの話やら、俺は黙って聞いていた。――と、
シンはいきなり黙りこくった。俺が寝たのかどうかを聞いたら返事は返って来た。
やや間を置いて、シンが俺の枕元までやって来た。早く寝るよう促したが、シンは無言で
立ち続けていた。何をしたいのだろう。俺は目を閉じた。
刹那、しゃくりあげる声が聞こえると、頬に冷たい何かが零れ落ちた。
「シン、お前泣いているのか?」
思わず体を起こしシンを見上げると、シンは顔をくしゃくしゃにしていた。
「どうして泣いている?俺は問題無い」
呆れたように俺が呟くと、シンが俺の頬に触れてきた。
「問題無くは無い!俺はレイがいなくなるのは悲しい。だから、レイの事を知りたいんだ。
そして、覚えておきたいんだ」
シンの掌から優しい温もりが伝わってくる。それはどんどん俺の中に侵入して
やすやすと俺の気持ちを溶かして行く。決して悪くない。初めて知る心地良さだった。
「俺の何が知りたいんだ?」
シンの首に腕を回し耳元で囁く。シンの鼓動の高鳴りが伝わってくる。
シンの瞳が紅すぎる。血を連想したのか。俺はギルに与えられた破瓜の痛みを思い
出していた。さあ、シン。俺の何が知りたいんだ?
今夜は熱くゆったりと時が流れた。
ひゃっほ〜いヾ(^v^)k美柚子で〜すv(^-^)vブイブイ
美柚子はね、呼び捨てにされるなら『みうりん』て呼んで欲しいニャヽ(゜▽、゜)ノ
『みうりん』て可愛くない?プリプリメガプリ〜ヾ(≧∇≦*)ゝミャハッ☆彡
今日はね、レイのお話デシュ\(^o^)/ニャニャニャニャ(*^o^)乂(^-^*)
良かったら感想お願いで〜す┐(´ー`)┌
釣られ覚悟で言わせてもらう
悪いが半年ROMった方が良い
request “tear drops”
涙が何処からともなく溢れ出して、視界がぼんやりとしている。シンの顔が滲んで見えない。
シンがやった事は正しい事だ。少なくとも間違ってはいない。ただ、シンが墜とした機体に妹のメイリンが乗っていたというだけの話だ。
何故メイリンがアスランと一緒にいたのかは解らない。理由を知っている人間はもういないのだから、知る術すらない。
でも、私はメイリンを信じたい。そして、同じ様にアスランも信じたい。
脱走というのはしてはいけない事なのだという事は解るのだけれども、私は二人を信じたいのだ。
事実として、証拠としてメイリンがアスランの脱走を手助けしたらしいのだけど、私には信じられない。
何処かで運命の歯車が狂ってしまっただけだと信じていたい私は、多分きっと馬鹿なのだろう。
馬鹿でも馬鹿なりに悲しくて涙が出て来てしまう。
私が涙を流すとシンが悩んでしまうだろうから、笑顔で迎えようと思ったのだけど、無理だったみたいだ。
結局の処、馬鹿はどんなに足掻いても馬鹿にしかなれないみたいだ。
自分でも自分の馬鹿さ加減が嫌になる。ちょっとした自己嫌悪に陥ってしまう。
涙を拭うと、シンが泣いているのが見える。彼は私に向かって謝って来る。
ゴメン、ゴメンと繰り返す彼の言葉は本心からの言葉なのだろうけど、それは決して私に届く事はない。
それは彼のせいではなくて、私のせいだ。
私が馬鹿であまり心が広くないから、私には受け入れる事が出来ないのだ。
否、彼に謝られてしまうと悲劇のヒロインになってしまいそうで嫌なのかも知れない。
嘆き悲しむだけの悲劇のヒロインなんてまっぴら御免だ。
私は皆の足を引っ張ってしまう事もあるけども、いちおうはザフトレッドなのだ。
戦う意志だってあるし、戦う為の力がある。
その二つがあるから私は悲劇のヒロインにはなれないし、なりたくもない。
私は戦う為にこのミネルバにいるのだ。
それでは、私は何と戦うのだろうか。
答えはデュランダル議長が示してくれた。
――ロゴスと戦うのだ。
多分アスランとメイリンもロゴスのせいで道を誤ってしまったのだろう。二人の為にもロゴスを倒さなければならない。
ロゴスを倒したその後に私はシンの胸の中で悲劇のヒロインになろう。
リクエストがあったのでシンルナ物投下。
メイリン〜禁断の血族〜
いつも、いつもそうだった。
お姉ちゃんと較べると私は出来損ないだってみんなから言われて来た。片や華々しく
活躍するMSパイロットで、片や地味で平凡で何にも取り柄が無い管制官で。
私だって自分なりに努力はして来たつもりだったけれど、結局赤服は着れなかった。
お姉ちゃんには内緒で一度お姉ちゃんの赤服を着てみたけれど、似合わなかった――
私には入らなかった。切なくて、悔しくて、泣けるよね。馬鹿みたい、私。
でもね、今は違う。私はアスランさんに差し出された手をしっかり握って離さなかった。
二人で飛び立った先にいたのは、ラクス様。きっと、これは神様のプレゼント。私が
お姉ちゃんより優位に立てる千載一遇のチャンスなんだもの。きっとそうよ!
惜しかったモノはいくつかある。ヨウランやヴィーノを誑かして遊ぶのはそりゃあ
楽しかったし、アーサーは既に落としていたんだもの、本当に勿体無かった。
変わりに手に入ったのはアスランさんだから、昔の玩具を気にする必要性は無いけれど。
アスランさんははっきり言って奥手。ああいうタイプは感情を理性で必死に押さえようと
するタイプね。理性と言うよりも――世間体かな。面白みは少ないかも知れない。
派手に動くのは不味い。ラクス様から「可愛い振りしてあの娘割とやるもんだね」と
言われかねない。アスランさんから手を出させる用に仕向けなければならない。
状況は私に味方している。アスランさんはザフトから脱走する時に道連れにして
しまったと、私に罪悪感を抱いている。其処までお膳立てされていれば後は簡単。
私は彼が罪悪感を感じないように振る舞えば良いだけだ。そうすれば彼は私に負い目を
感じつつも違った視線で私を見詰めて来る筈だ。恋にはちょっとしたスパイスや障害が必要だ。
気が向いたらここでも管制官をやってコーディネーターの力を見せ付けるのも良いかも。
ザフトでは足手まといだったかも知れないけれど、ナチュラルと較べたら――ねえ?
アスランさんはきっと私の真実の願いは叶えてはくれないだろう。小心者には
お姉ちゃんを殺す事なんて出来やしない。
でも、いいの。お姉ちゃんが生きていたとしたら、その時は立場が逆転しているだろう。
お姉ちゃん、人生って面白いね。
ご機嫌よう。美柚子ですワ
キャーッ(=^▽^=)大人っぽく色っぽく決めてみちゃったりして美柚子ったらイケズ〜(#^-^#)
今日はキャワイイメイリンちゃんのお話を投下しちゃったYO(≧▽≦)ゞニャハハ
良かったら感想聞かせて下さいマシ〜っ\(^o^)/☆彡ルンルン♪
explaration of personality “candle's temper”
蝋燭は儚くて切ない。
燃え尽きるのが運命と嘯き、生き急ぐ様に激しく燃えてもその光は薄暗い物でしかない。
暗闇を照らす事は出来ても、光は弱く自分の手の届く範囲しか届かない。
しかし、蝋燭はその運命を受け入れて燃え尽きて、その短い生涯を終える。
蝋燭は俺に似てるのかも知れない。
被検体として選ばれた結果の果てに未来を奪われたが、その運命を受け入れる事は未だに出来ていない。
もしかしたら、という甘い幻想を抱いている。でも、現実という壁は高く厚く立ちはだかっている。
俺は戦う事と薬が切れたら地獄の苦しみを味わう事しか出来ない。
それ以外に出来る事があるとすれば本を読む事が出来るという事だけだ。
でも、本を読めば読む程空しくなってくる。本を読んでも現実から目を背けているだけだ。
近い未来に訪れるであろう死という現実は俺をしっかりと掴んで放す事はない。
俺は棺桶に片足を入れながら、いつか俺の時間が終わるのを怯えながら待っている。 俺の怯えは肥大して俺を押し潰す程に大きくなり、押し潰された俺の中で激しい怒りへと変質する。
そして、激しい怒りは俺を狂気へと駆り立てて俺だけではなく他の誰かを燃やし尽くそうとする。
破滅が大きく口を開けて静かに俺を誘う。破滅の誘惑に負けたら俺はそこで終わるだろう。
人間ではない、他の何かに変わってしまうはずだ。
足掻いても藻掻いても俺に救いは無く、誰一人俺に救いの手を差し延べる人間はいない。
いや、唯一人いた。いけ好かない女がいた。
あの女は気に入らない。俺の先が短いのを知ってか知らずか、俺に物語を書けなんて言いやがった。
俺は頭に来たからあの女に怒りをぶつけた。その事については俺は悪くはないと思う。
でも、あの女に悪い事をしたのかも知れない。
もしかしたら、ひょっとしたらあの女は俺に救いの手を差し延べようとしたのかも知れない。
もし、万が一そうだとしたら俺の馬鹿は死んでも治らないだろう。
いや、俺は救いを求めて甘い幻想を抱いているだけなのかも知れない。
俺は幻想を抱かずにいられる程強い人間じゃない。
まあ、良い。俺は俺の時間がが終わるその日まで、蝋燭としての意地で生き続けやる。
リクエストとちょいとリンクさせた物を投下
ミリアリア〜the lost one〜
トール。
死んだの。
さっきまでは私に笑顔を見せてくれたのに。
呆気なく逝っちゃった。私に何も残さずに。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
嘘よ。そんなの嘘。トールの事だもの、私をからかっているだけ。
すぐにひょっこりと私の前に現れるの。私を新しい世界へ導いてくれるの。
そうだよね、トール?
許せないのはフレイ・アルスターだった。わざとらしく私に優しくして来るのが気持ち
悪い。周りの人達に自分を良く見せようと演技しているのだ。私は彼女のそう言う
計算高さを好きにはなれない。
彼女は自分を特別な存在だって思い込んでる。確かにそこそこ綺麗だし、家柄も悪くはない。
でも、そんな物は戦場では関係無い。彼女はここでは何の役にも立っていないのだ。
いてもいなくても同じ。オペレーターを手伝っている私とは大違いだ。
いいえ、彼女も充分役に立っているのかも知れない――セックスシンボルとして。
艦内の男の人達の会話で彼女の話題が登る時は大概性的な内容を伴っている。彼女は
自分を悲劇のヒロインとかお姫様だと思っているのかも知れないけれど、夜な夜な
男性陣の妄想の中であられもない痴態を晒して陵辱され続けているのだ。男の人の
汚らわしい欲望を顔やら胸やら熱く濡れた場所で受け止めたりするなんて、とんだ
マグダラのマリアだ。知らぬが仏とはこういう事を言うのだろう。
今は必死でキラに取り入ろうとしているけれど、キラがいなくなればきっと彼女は
男性陣の欲望を実際に受け止めなければならなくなるだろう。目立ち過ぎたのよ。
私は小気味良い思って鼻で笑ってしまった。彼女がいくら嫌がって抵抗しても
男の人の力には勝てやしない。女とはそう言う生き物なのだ。彼女の抵抗は男の人の
劣情を誘うだけでしかなく、夜の営みを盛り上げるスパイスにしかならないだろう。
幾ら泣いて叫んでも誰も助けやしない。女の子には嫌われているのだから仕方がない。
トールがいなくなったんだもの。
フレイ、あなただけがのうのうと生きているなんて、絶対に許さない。
はろはろ〜(//▽//)美柚子だよ(^з^)-☆Chu!!
今日はちょっと大人っぽくミリアリアのお話を書いちゃったデス〜♪(*'-^)-☆ニャハハ
良かったら感想聞かせてザンス〜(≧▽≦)
ではサヨナラッサヨナラッサヨナラッ(^_^)ノ""""
>>真言
投下乙です。
>>tears and drops
迷うルナマリアを硬く描写してありますが、アスランとメイリンを信ずるが故に
自己否定に陥る様をもっと読みたいと思いました。まだ掘り下げられるのではないか、と。
>>candole's temper
自分の終わりを理解しつつ、幻想に救いを求めるオルガが自分を蝋燭に重ねるのが
良いですね。
宇宙空間で蝋燭が使えるのかは分かりませんが、オルガと本と蝋燭は理屈の上では
関連しにくい筈です。其処を感性で繋ぐから面白いのだと思います。
オルガが蝋燭の火で読書していたのかもしれませんが。
続きを期待しております。
>>終末の過ごし方 (美柚子)
投下乙です。
他で女性キャラクターの描写が出来て、男キャラ同士の絡みはどうして同性愛なんだ?
という疑問が湧きましたが、それはモビルスーツが人型をしているようなもので好みの問題なんでしょう。
シンレイでもレイシンでも別に構いやしませんが、多分作者の期待する読者層はこのスレには
少ないと思われます。
サブタイトルが眼鏡っ娘オンパレードな某ゲームのタイトルなのは、恐らく偶然なので余談として。
美柚子のサブタイがエロゲっぽい件について
ageてみる
ミーア〜この世の果てで恋を唄う少女〜
思わず拍子抜けしてしまった。
英雄色を好むと言うけれど、彼はベッドに忍び込んだ私の姿を見て慌てふためいていた。
晩稲なの?小心者なの?意気地がないの?それとも今流行のアレなの?
ラクス様も趣味が悪い。女は男に愛される事にこそ価値があるのに、アスランには
女を満足させられる技量も情熱も無さそうに思える。そんな男を婚約者にしていた
なんて、ねえ?女が廃るのでは無いかしら。ある意味可哀想で仕方がない。
それにしてもアスランたら。確かに不能者だと言うことには同情するけるど、女に
恥をかかせるなんて酷すぎる。私の知っている男達とは大違い。彼らはある時は優しく、
ある時は激しく情熱的に愛してくれたと言うのに。
きっとアスランは女は男に愛されなければ生きて行けない生き物だとは知らないのだ。
男の熱い情熱を体中に受け止めて女は光り輝くと言うのに、アスランたら無粋過ぎる。
夜の営みを断るのであればそれなりにやり方もあるのに、それすらも知らないのだ。
額に優しくキスでもして、肩を優しく抱いて、今日は疲れているとでも言ってくれれば
女は空気を察するのに。やはり不能者には男女の機微に疎いのだ。
それに不能者だとしても、私が口で愛おしく慰めてあげればそんなのは簡単に
治ってしまうだろうにね。女は男の情熱を受ける為ならば、どんなに貞淑な貴婦人でも
娼婦のように男に全てを捧げられるのだ。それが女の業と言うものだ。
結局私はアスランの部屋を後にした。道行く人から熱い視線を感じる。きっと赤毛の
お嬢ちゃんが言いふらしているのだろう。私の姿を見て顔を赤くしちゃって、まだ
女で在ることに自覚してないのだろう。軍人ならば当たり前かも知れない。
それにしても、様々な視線が絡み付く。首筋、ヒップ、胸。熱い気持ちを感じる度に
子宮が熱く疼く。彼らは視線一つで女を陵辱出来ると言う事に気付いてはいない。
それが女の原罪。私は贖罪の為に歌を唄う。女の業を胸に抱きながら、愛を、恋を唄うのだ。
絶頂は、曲の終わりに訪れる。私は女の一番良い顔を浮かべてステージに立ち尽くす。
キャハキャハ\(^o^)/美柚子参上ナリ〜( ̄□ ̄;)!!
今夜のお話はミーアでチュ(^・^)ミーアはラクスと違ってアダルトなミリキ(#^-^#)ダッカッラッマンモス難P〜(-"-;)
良かったら感想チョンマゲ〜v(^-^)v
何か、処女捨てれない女の妄想みたいな気がするが…
文章は上手いのだからアホなあとがきと、自意識過剰なエロス路線を止めてみてはいかがだろうか?
>>52 ら抜き言葉を使っているから美柚子よりバカっぽいぞオマエwww
>>54 馬鹿に馬鹿って言う奴が馬鹿だぞオマエwww
56 :
週刊新人スレ:2007/11/24(土) 19:37:59 ID:???
来週も月曜日、多分更新できません
保守かたがたご連絡します
ルナマリア〜顔のない月〜
メイリンが死んだ。アスランも死んだ。
殺したのは、シン。私の顔を見るや臆面も無く泣き始めた。きっと罪悪感があるのだろう。
アスランはともかく、メイリンが死んだのはショックだった。私は周りの目が気に
なったが、シンの肩に手を置き泣き崩れた。シンの胸に顔を埋めた時、シンが私の
肩をそっと抱き締めた。シンの不器用な優しさが伝わって来るような気がした。
でもね、シン。 私の中にはメイリンが死んで喜んでいる私がいるの。
あの娘は名門・ホーク家に相応しい能力を持っていなかった。私は出来の悪い妹が
苦手だったのだ。
頑張ってあの娘を好きになろうとしても駄目。私の妹とは思えない程無能で、私の
足を引っ張るような事しかしないからだ。あの娘のせいで両親もさぞかし苦労しただろう。
精一杯のコネクションと金でアカデミーに押し込んだは良いけれど、あの娘は
自分の
能力で入れたと勘違いしている。思い上がりも甚だしい。あの娘は我が家の役立たずで
穀潰し――疫病神だという自覚すら無いのだ。哀れに思えて泣けて来てしまう。
メイリンは一度私の目を盗んで赤服を着ようとした事があった。私は赤服が汚された気がして悲しくなった。赤服はエリートの
象徴。あの娘の辞書には「烏滸がましい」と言う文字が無いのだ。自分のしでかした
罪の重さに気付いてはいないだろう。第一あの娘は必要以上に肉が付いているのだから
私の服など着れやしない。そんな事にすら理解出来ない妹をどうやって愛せと言うのだろう?
不意にシンの唇から「ごめん……」と言う言葉が零れ落ちた。いつものシンとは
違う、儚く消え入りそうな弱々しい声だった。私は刹那に首を振ってシンの瞳を見つめた。
――紅い瞳。涙で濡れてルビーのように切なくて眩い光を放っている。
「シンは悪くない。悪くないよ……」
声が震えるのはきっと怒り。メイリンがホーク家の名前に泥を塗った事は万死に値する。
シンは任務に忠実であっただけで悪い事などしていない。悪いのはメイリンなのだ。
私はシンに軽く嫉妬した。メイリンを殺すのは私でなければならなかった。ホーク家の
名誉の為に、私が直接手を下すべきだったのだ。
私の中には顔の無い月のように優雅に冷酷に命を摘み取る事が出来る私がいる。
マタマタ登場ρ(⌒◇⌒)ノ.美柚子ダヨ\(^^)/
今回はルナマリアのお話デシテヨ\(◎o◎)/!実は美柚子はルナマリアが好きナノダ(´∀`)ウキャキャ
最近はココは元気無いみたいDAKARA美柚子がドンドン盛り上げチャイニーズ/(.^.)\
ガンガン感想待ってま〜す(^。^)屮バッハハイ
なんていうかコメントが痛いとしかいえないな、SSは面白いと思うけど
>>59 つか、煽ってんの?オマエ
百万光年ROMってスルースキルを研いてこいや。
>>美柚子
素晴らしいヘイトでつね。
バルドフェルド〜痕〜
目が醒めても一人。窓の外を眺めても一人。咳をしても、一人。
あの爆発から奇跡的な生還を果たしたものの、バルドフェルドの失ったものは
余りにも大き過ぎた。自分の眼やらは勿論だが、アイシャが隣にいないのがやはり、辛い。
愛した女を失った男は弱くなるものだ。バルドフェルドも例外ではなく、一人
ベッドの上でただ生きていた。何をするでもなく、ぼんやりと宙を見つめるだけの毎日。
バルドフェルドには世界がどんどん色褪せて行くように見えて、何故か嬉しかった。
アイシャがいない世界。そこに何の存在価値があると言うのだ。そんな世界には意味など無い。
溜め息を吐く度に世界は色を失って行く。モノクロームに化した時、世界は終わる。
全てがブラックコーヒーに埋め尽くされるのだ。溺れて仕舞えばアイシャの元へと旅立てる。
「何を笑っているんですか?」
ダコスタの声が聞こえた。視界から外れているのだろう。バルドフェルドは声の
する方へ顔を向けた。
「笑っている?」
「はい、意識を取り戻してから初めて笑ったのではないでしょうか」
ダコスタは窓際に立ち、必死になって花束と格闘していた。きっと見舞いの花束
だろう。似合わない姿にバルドフェルドは吹き出してしまった。自分で自覚して
笑っている自分が何だか可笑しかった。アイシャがいなくても笑えている事に思い当たり、
今度は軽く舌打ちした。――俺は何をしているというのだ?
「こんな感じで勘弁して下さい。花を活けるなんて男のやる事じゃないですよ」
照れ笑いをしながらダコスタは無造作に後頭部を掻きむしっている。きっと活けた
花の不格好さをバルドフェルドが舌打ちをしたのだと勘違いしたのだろう。
窓から風が入って来た。花の甘い香りが部屋の中に広がって行く。
「何の花だい?」
「さあ?自分に花の種類なんか解りませんよ。自分が花に詳しかったら不気味でしょう」
ダコスタは白い歯を見せて笑い出した。釣られてバルドフェルドも声を出して笑った。
久しぶりにこんな気持ちになれたのは何故だろう。バルドフェルドは世界に色彩が
戻ってきたような気がした。
アイシャはいないけれど、時間は流れて行く。不意にダコスタがバルドフェルドの頬に手を当てた。
「辛くても、生きて行きましょう。そうすれば……」
ダコスタの温もりは温かかった。バルドフェルドはもう少しだけ生きてみようと思った。
>>60さんに誉められちゃったから美柚子だっピョーン\(・o・)/チョンワー!
ヤーダァ美柚子はヘイトなんて書いて無いズラヨ(-"-;)イライラプン
てゆうかヘイトって何ナリヨ(;゚゚)!美柚子わかんナ〜イ∈^0^∋アヒャヒャン♪ホントニ全くマッタクモ〜(*´Д`)=з
今回はバルドフェルドさんデスワヨヾ(≧∇≦*)ゝキャアアー
美柚子はバルドフェルドさんダーイスキ(^O^)アイシャさんも(#^-^#)ダコスタくんも(^_-)☆ダイダイラブリーン☆彡
ではでは(^。^)屮バイナラリン(^-^)ノ~~
カガリ〜殻の中の小鳥〜
憧れていたのは風に揺れて靡くようなウエディングドレスではなくて。
勿論愛のメモリアルキャンドルでも、乙女の恥じらいヴェールでも、情熱のケーキ
カットでもなくて。
結納返しは必要だけれど、ウエディングチェンジお色直しは必要ではなくて。
カガリの理想の花嫁像は白無垢だった。目映い純白は純潔の象徴だ。白粉で身も
心も真っ白に染め上げて、仕上げに唇にそっと紅を差す。そんな姿で愛する人の元へ
嫁ぎたかったのだ。
しかし現実としてセイランの家で用意したものは大胆に肩を露出するデコルテラインの
ドレスだった。スパンコールが陽の光を浴びてキラキラと反射してさぞかし綺麗だろう。
カガリは溜め息を吐いては憂鬱げにベッドに倒れ込んだ。ぼんやりと宙に視線を
走らせては、また溜め息。これで何度目なのだろう。
セイランのお姑様はブロンドには白無垢は似合わないと言い切った。文金高島田は
もってのほかだと言い切っていた。カガリがどんなに憧れを伝えても眉一つ動かさずに
カガリを全否定した。
「あなたはセイラン家の嫁になるのです。その意味をきちんと噛み締めねばなりません」
今でもセイランのお姑様の言葉が耳に残って残響のように離れない。カガリは一粒涙を流した。
オーブの未来の為にユウナと結婚すると決意したものの、それに付随してくる物が
余りにも大き過ぎた。せめて相談出来る相手がいれば救われるのかも知れないが、
キサカには乙女心は理解出来ないだろう。神妙な面持ちで「ご心中深くお察し申し
上げます」とでも言うのが関の山だ。期待など出来やしない。
婚礼の儀は明日。夜にはユウナに初夜献上しなくてはならない。カガリにはそれも
恐ろしかった。するすると事が運べば良いのだが、何しろカガリは未だ純潔なのだ。
どんな顔をしていれば良いのかすら解らない。全てをユウナに任せるしかない。
婚礼の儀は残酷だ。オーブの民にカガリが女になると言うことを知らしめる儀式は
余りにグロテスクで、悲しい。
カガリは自分が殻の中の小鳥だと自覚している。何の力もない乙女である事に
絶望している。強く拳を握り締めりが、状況は変わりやしない。
――明日など来なければ良いのに。
カガリは自分の流した涙の海で溺れたいと思った。
お待ちにナッテ?美柚子ダワサv(^-^)vリュンリュン
今回はカガリのお話ダゼ〜(Θ_Θ)ウシャシャシャシャ
美柚子はネ〜カガリがスキナンダヨ?(*^_^*)女の子はブロンドダヨネ〜(*^ー^)ノキャーノキャーノ(^з^)-☆
ではではさようナリ〜☆彡
hate and war “my truth word,I'm sorry.”
俺には妻と娘がいた。
妻は俺には似合わないくらいのよく出来た女で、娘は俺なんかに似ないでとても可愛かった。
俺は二人が自慢で、目に入れても痛くないくらいだった。
俺の稼ぎが悪くて生活はカツカツで皆には迷惑をかけたけど、家族仲良く幸せに暮らしていた。
そう、今の今までは幸せだった。
今日、娘の誕生日だから家族で外食しようと皆で待合わせていた。
昼飯を減らして娘の為に安物だけどプレゼントを買う為に寄り道をしたから少し遅れた。
その少しの遅刻のせいで、俺は冷たい二人の亡骸と対面する事となった。
原因は突然起きた爆破テロだそうだ。
二人の喜ぶ顔を見たかったのに、今の二人は見るも無残な顔をしている。
二人はもう二度と俺に微笑んではくれない。
人は悲しすぎると泣けなくなると言うけど、それは嘘だ。
死ぬ程悲しくて、俺の涙は止まる事なく溢れ出てくる。
涙の雫が落ちて二人を濡らす。
妻の手は安物の結婚指輪が似合わないくらいに、可哀相なくらいにあかぎれている。
ごめんな、俺の稼ぎが悪くて色々と迷惑をかけただろう。
娘の手は血で真っ赤に染まっていてまるで紅葉の様だ。
ごめんな、お父ちゃんはお前に贅沢の一つも、可愛い洋服の一枚すら買ってやる事が出来なかったよ。
本当にごめんなさい。俺はお前達に沢山の幸せな思い出を貰ったけど、お前達に何一つしてやる事が出来なかったよ。
本当にごめんな、出来の悪い父ちゃんで。
爆破テロをした連中を許す事は出来ないけれど、それ以上に俺自信を許す事が出来ない。
TVのレポーターはソレスタル・ビーイングとやらの非道をなじっているけれど、そんな物は関係ない。
俺がもっとしっかりした男だったら、こんな事にはならなかった筈だ。
俺がもっともっとしっかりしていれば良かったんだ。
後悔はしてもしきれない。本当に後悔してるのはお前達二人だもんな。
本当にごめんな、情けない父ちゃんで。
父ちゃんは涙のせいでお前達二人を見る事が出来ないよ。
俺ってウスノロの泣き虫だけど、いや、そうだからこそお前達二人に置いて行かれたくなかったよ。
父ちゃん、お前達の為に涙を流す事しか出来ないよ。
……本当にごめん……
投下終了。
>>真言
投下乙。
様々な角度から捉える事が出来るのは称賛に値する。
それが氏の引き出しの多さの元になるのだろう。
>>ex
オルガと蝋燭の結び付けはなかなか面白かった。趣味が読書というオルガだからこそ詩的な表現が似合っているのだろう。
>>hate
愛する者を失った者の悲しみが痛い程伝わってきた。
怒りがテロリストやソレスタに向かうよりも自分に向かってしまう事が不条理を感じさせて良かったと思う。
>>request
いつもの氏の切れ味が潜んでいたのが残念だ。スランプからの復帰一作目だから仕方がないのかも知れんが。
しかし、ナタルとオルガを上手く書けていたと思う。ヴェルヌをもってきたセンスには脱帽。
更なる精進を期待する。
>>美柚子
全作品において揺れ動く複雑な感情が上手く書けていたと思う。
気になったのはサブタイのチョイスの仕方だな。どこかで聞いた事がある様な気がする。
僣越ながら一つ。引いてしまう読者もいるから顔文字等は止めた方がいい。
せっかく投下したのにスルーされるのは本望ではないだろう。
更なる精進を期待する。
シン〜潮風の消える海に〜
「シン。アスランは少し錯乱している!」
叫んだのはレイだった。暫し動きを止めてしまった俺の代わりにアスランを足止めしている。
「お前は言っただろう!戦争を終わらせると。その為にはどんな敵とでも戦うと!」
レイの絶叫がコクピットに響き渡る。悲しくて、けれど俺の気持ちを叱咤する、
そんな声色だった。
きっとレイも悔しいのだろう。アスランがザフトを、議長を裏切るとは思っても
いなかった筈だ。俺達は諍いがあったけれど、それなりに上手くやっていた筈だ。
俺は戦うと決めた。呆気なく死んで行ったマユのような存在を作らない為に。
ステラみたいな悲しい存在を作らない為に。そして、俺みたいな存在を作らない為に。
――美しく咲き誇る花が無残に散らされるのを見ているだけの生き方をしたくはない。
自分の出来る限りの力で守りたい。だから。
「俺達が戦争を終わらせるって言ったじゃないか……アスラン!」
頭の中を覆っていた暗雲が晴れて行き視界がクリアになる。感覚は鋭利で切れ味の
良い日本刀のように研ぎ澄まされ、体中が血液が沸騰するかの如き熱を帯びて行く。
一撃必殺、逃がしはしない。裏切り者に待っているのは死あるのみ。
「アンタが悪いんだ……アンタが裏切るから!」
気が付くとアスランの操るMSは只のモノと化しており、すうっと海へと消えていった。
死んだかどうかは解らないが、多分助かるまい。きっと遠くない未来にアスランと
メイリンは魚の餌になるだろう。いや、あの体型のメイリンはともかく、アスランの
肉を啄む魚などいないだろう。裏切りに裏切りを重ねた男は生命の循環から外れているに
決まっているのだ。もしかして運悪く間違って食べてしまった魚がいたとしたら
死んでしまうだろう。魚の死体が大量にでるかも知れない。アスランはそういう
男なのだ。
頬に一筋涙が伝う。後悔はしていないのに、任務を遂行しただけなのに、やり切れない
気持ちで胸が締め付けられる。何人人を殺せば平和になるのだろう。議長の望む
永遠の世界に辿り着くのだろう。
誰も答えてくれやしない。きっと誰にも解らないのだろう。
だから俺は戦う。明日を終わらせない為に。全ての人々を涙の無い場所へと導く為に。
美柚子です。
>>67さんに指摘されたので顔文字や半角文字は止める事にしました。
良かったら感想や、このキャラのSSが読みたいと言うリクエストがあったら書き込みお願いします。
>>潮風の〜
シンの凸に対する感想がひでえと思ったけど、
軍人が裏切り者に感じるのはこんなものか。投下乙
後書きの口調はそっちの方が、感想付けやすいと思うよ
52で叩き口調で書いたものだが(その後叩かれたがw)、相変わらず文章は上手いと思う
今度は虎隊長話でもお願いしてみたいです
後書きは、こっちの方が良いですよ。話が通じそうで。
72 :
週刊新人スレ:2007/11/27(火) 22:04:31 ID:???
美柚子〜あやかしびと〜急転直下SS絨毯爆撃号 目次(1/2)
女の子なら誰だってやっている事だ。 そう言いながらも何処か割り切れない彼女。怒濤の投下ラッシュ第一弾。
フレイ〜身も心も〜
>>26 今まで誰も入ってきた事のない胸の奥の深いところへ、その赤い瞳の少年は入り込んで……。
レイ〜終末の過ごし方〜
>>35 涙を流す私。謝る彼。でも彼の所為でも誰の所為でもない、ただ歯車が少し狂っただけ。だから……。
“tear drops”
>>39 彼への、姉へ想い、ないまぜの感情は、はたして彼女に何をさせるのか。
メイリン〜禁断の血族〜
>>41 蝋燭は燃え尽きるのが運命。その蝋燭にオレは似ているのかも知れない。違いは本を読める事ぐらいだ……。
explaration of personality
>>43 トール。死んだの……。 あとがきの口調とは裏腹に硬質な文体と驚異の投下スピードで送る投下ラッシュ第四弾!
ミリアリア〜the lost one〜
>>45 彼のベットへと忍び込んだ彼女の想い。それは既にラクスでは無く、狂おしいまでに女としての想いだった。
ミーア〜この世の果てで恋を唄う少女〜
>>50 メイリンもアスランも死んだ。それをやったのはシン。シンの胸の中泣き崩れる私の中、本当の私は……。
ルナマリア〜顔のない月〜
>>57 爆発からの生還を果たした彼。だが彼が失ってしまったものはあまりにも大きく、重いものであった。
バルドフェルド〜痕〜
>>61 少女のあこがれた結婚の儀式。だがそれは彼女の思いとは裏腹に……。結婚式を間近に控えたカガリの心境。
カガリ〜殻の中の小鳥〜
>>63
73 :
週刊新人スレ:2007/11/27(火) 22:05:59 ID:???
美柚子〜あやかしびと〜急転直下SS絨毯爆撃号 目次(2/2)
爆弾テロの被害にあった男。だが直接の被害者は男の妻と娘だった……。OO短編の定番の流れを真言流で。
hate and war
>>65 すくむシン、そしてレイの叫び。投下ラッシュ最後を飾るのはアスランと対峙するシンの胸の内!
シン〜潮風の消える海に〜
>>68 新人職人必読、新人スレよゐこのお約束。熟読すればキミも今日からベテラン職人だ!!
巻頭特集【テンプレート】
>>1-6 絵師テンプレート【暫定版】
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お知らせ
・投下作品とのリンクを問わず絵師、造形職人の方を募集中です。 エロはアウト、お色気はおk。
これくらいのさじ加減で一つ。素材は新シャアなので一応ガンダム縛り。
勿論新人スレですので絵師、造形職人さんも新人の方大歓迎です。
まとめサイトでもなにやら募集しておりますのでそちらも宜しくお願いします。
・当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。
・また雑談所とも一切の関係はありません。当該サイトで【所長】とお声掛けの程を。
・スレ立ては450kBをオーバーした時点で、その旨アナウンスの上お願いします。
編集後記
ものすごい投下量、半端じゃないです。まさにあやかしw
ちょっと美柚子氏風のタイトルで遊んでみました。お許しの程を。
他には今週は真言氏が結構がんばって、つーか短編はさぁ、煽りが大変で……orz。
最近は仕事の都合でグラグラしてますが来週は多分月曜日でおkの予定です。
週末にかけて皆様の投下をお待ちしております。
キラ〜終わらない明日〜
きっと用意周到にお膳立てされていたのだろう。受け取った鍵を使って扉を開けた
その先には見たくもないモノがあった。フリーダム――全てを威圧するかの如く広げられた
翼が僕を見下ろしている。自由と言う名にそぐわぬ威圧感で静寂を支配している。
不意に過去の記憶が呼び覚まされる。フレイだ。僕と彼女の関係は一般的に恋愛と
呼ばれるものでは無かったと、今では自覚している。お互いにお互いを利用する打算も
あっただろうし、ただ傷を嘗め合うだけの閉塞的なものだった。それでもあの時の
フレイを守りたかった気持ちは偽りの無いものだったと、僕は信じていたいと思っている。
今だったらあの時に言えなかった気持ちが素直に言えるだろう。その後で、フレイと
新しい第一歩を踏み出して行けたかも知れない。僕は不器用で上手に自分の気持ちが
言えないだろうけれど、自分で自分の気持ちを言う事に意味がある筈なのだ。
それなのに、ラクスときたら。
何も知らないかのように無邪気に振る舞いつつ、僕を戦場へと駆り立てようと画策
していた。きっと僕の苦悩を見て見ぬ振りをしていたのだ。僕が欲しかった力は守るべき為のもので、誰かの命を奪う為の力では
無いのに。こうやってマルキオハウスに逗留しているのも小さな子供達が自分で自分の
未来を歩いて行けるようにサポートしたかった筈なのに。
マリューさんやバルドフェルドさんだって、可笑しい。ここにフリーダムがある事を
僕に内緒にしていたのなら、最後まで隠し通せばいい。自分でフリーダムに載ればいいのだ。
いや、ここにフリーダムがある事自体がおかしいのだ。バルドフェルドさんが
関与していたならばラゴゥを用意するべきだと、僕はぼんやりと考えていた。
きっと彼等は極力手を汚したく無いのだ。実際に戦場にでる事になるのは僕で、
彼等には僕の葛藤が理解出来ないだろう。どれだけ僕が不殺を誓っても、戦場では
予想出来ない事が起きる。もし間違って僕が誰かの命を奪ったとしても、彼らは悲痛な
表情を作って僕を迎えるだけだ。痛みを分かち合おうなどとは微塵も思わないだろう。
だからこそ。
クルーゼの言葉が胸に突き刺さったまま今尚僕の胸に残っている。
僕は僕の考えを理解してはくれない人々に囲まれながら息苦しさを感じていた。
すみません、
>>70さんに質問です。虎隊長とは誰のことですか?
解らないので書けませんでした。
ですから今回はキラのお話を投下しました。良かったら感想や意見、リクエストがありましたら気軽に書き込みお願いします。
>>編集長
短編は大変といいながら全部読んで全部あおりを付けた、
その勇気に七割り増しの乙!
>>キラ〜終わらない明日〜
投下乙。
乗りたくないならはっきりそう言え、と突っ込みの入れられるキラ像が面白い。
セーフハウスに居るのにフリーダムに気付かない辺り鈍いキラだなと思う。
自分は71じゃあなくて70だけれど、多分虎隊長ってえのはバルトフェルドの
事じゃないかと思う。沙漠の虎だし。
explaration of personality “I wanna be killng machine”
戦えば戦う程に僕は一人になって行く。皆が僕から離れて行くのを感じる。
僕に近付いて来る人は僕を見ているけれども、僕を見ていない。
僕を戦う為に存在する機械として見ている。
僕はナチュラルではないコーディネーターだけれど、血も流せば涙も流す人間なんだ。機械なんかじゃないんだ。
でも、最近機械が羨ましくなってきた。
機械は何も考えず、何も感じる事がない。それが凄く羨ましい。
MSを落とせば人が死ぬ。そんな事は誰だって解る話。僕がMSを落とす度に人が死んでいるんだ。
戦っている時は何も感じないけれど、戦いが終って一人になると僕は怖くなる。
人を殺した事、人を殺す事が上手くなっていく事。
そして、人を殺すのが楽しくなっている僕自身が一番怖い。
最初は皆を守る為に戦っていた筈なのに、人を殺す事は嫌だった筈なのに、今では人を殺す為に戦っている自分がいる。
僕が僕じゃなくなっていく様な、狂った様な感覚。
僕の中にいた何かが大きくなって、僕を喰い殺して僕になっていく感じがする。
それは錯覚なんかじゃない。
僕から離れていった仲間達は僕の変化を感じで離れていったのだろう。
僕に近付いてくる人は僕の変化を利用しようとしているのだろう。
仲間が僕から離れていくのは悲しい事だけど、仕方がないと思う。
僕が彼らを傷付けないという保証はないのだから。
僕に近付いてくる人は卑怯だ。自分達は安全な所にいるのに、僕に手を汚させて自分達では手を汚そうとはしないのだから。
色々な事を考え始めると、物影から誰かが僕を見ている様な気がする。
それが誰なのかは僕には解らないけれど、僕に悪意を持っているのは分かる。
それは僕が今まで殺した人達なのかも知れない。
ひょっとしたら僕の中に潜んでいる何かで、僕を喰い殺す為に隙を窺っているのかも知れない。
悪意の視線は僕の心を削ぎ落としていく。いつか僕の心は無くなって虚無になってしまうだろう。
でもかまわない。虚無になってしまえば僕はなにかを考える事も、なにかを感じる事も無くなって、ただの殺戮する為の機械になる事ができるのだから。
僕は恐怖と狂気の中でその時を待っている。
投下終了。
いつになく血迷ってます。
>>編集長
月並みな事しか言えませんが乙です。
>>75 こんばんは。ミューズさんの短編楽しみになりました。虎隊長とはバルトフェルドの事ですよ。
タリア〜群青の空を超えて〜
笑止千万とはこの事を言うのだろう。
タリアはこれ以上眉間に皺を寄せているとまた老けてしまうだろうと思い、密かに唇を
噛み締めた。混迷に次ぐ混迷は艦内にインフルエンザのように広がって行く。せめて
アーサーがもう少し使えれば楽になるのだが、そんな事は望めないのは既に解り切っている事だ。
連合との戦闘中に突如として現れた所属不明機――ストライクルージュがオーブ
連合首長国代表の名を騙り始めたのだ。タリアは非現実的だとは思ったが、あの小娘
ならやりかねないと直感した。何せあれは自身の結婚式の最中に現れたMS――パイロットは
若い男だったらしい――と共に逃げ出した女なのだ。結婚とは神聖な儀式であり、
タリアにはそれを愚弄するような女には好意を持てなどしなかった。ましてやその
結婚はオーブの行く末を左右するものだったのだから。
オーブの兵達も群青の空を超えて現れた突然の介入者に戸惑いを感じているようで、
タリアは慌てふためいているアーサーを叱咤しミネルバの態勢を立て直すよう指示を出した。
急がねば再び戦況が動き出した時に優位には立てない。極度の緊張感をどうにかしようと、
タリアは深呼吸しシートに深々と座り直した。額に流れる手の甲で汗を拭えば化粧が
落ち始めているのに気付き、顔をしかめて小さく舌打ちをした。
それにしても、あの小娘はなんとも幼く浅はかであるのだろう。タリアは冷笑せざるを
得なかった。オーブの国民はあの小娘の事を国を捨てて男を選んだ阿婆擦れだと
思っているだろうに。そんな小娘がオーブ連合首長国代表の名を語り戦闘を止めよなどと
世迷い言を言うのだから、ちゃんちゃらおかしくて堪らない。どの口でそんな言葉が
出るのだろうか。きっと羞恥心という言葉を知らないのだろう。アレは男に逃げた
女だ。知っているのはきっと口にするのも憚れられるような下品で猥褻な言葉だけ
なのだろう。恐らくはきちんとした教育を受けていないのかも知れない。
タリアはオーブの国民や兵士に同情を禁じ得なかった。アレが国政に携わっていた
などとは国辱以外の何物ではない。
しかし、今は。
オーブが連合に組する以上はミネルバの敵なのだ。タリアは不適に微笑みつつ
艦が態勢を立て直すのを待った。
すみません。バルドフェルドに関しては既にお話を投下しています。
その続きを読みたいと言う理解で宜しいのでしょうか?
ただ質問するだけではつまらないのでたりあのお話を投下しました。
良かったら感想をお願いします。
lunatic love “keep on ”his smil”
キラは私を見つめているけれど、私じゃなくて私じゃない誰かを見つめている。
それは誰なのか解らないけれども、かつての彼の恋人なのだろうとは思う。
確かなのはキラは私を通して私じゃない誰かを見つめ、微笑んでいると言う事。
でも、私はそれでも良いと思う。キラは心に傷を負いながら戦って来たのだから。
体の傷は癒えるけど、心の傷はそう簡単に癒える事はない。
彼が私じゃない誰かに微笑む事によって心の傷が癒されるのであれば、私は我慢をする。
それは決して嬉しい事じゃないけれども、それくらいは耐えて見せる。だって、私は彼が好きなのだから。
彼が流す涙を拭う為にだけに、彼の側に私はいる。傷付いて、永遠の孤独の縁にいる彼を助ける事が出来れば良い。
それで充分だと思う。
私は彼の心を占める思い出には勝つ事が出来ないだろうけれど、一緒に未来を作る事が出来るかも知れない。
守りたい。ただ彼だけを、その笑顔が輝く事を望んで。
守りたい、孤独に囲まれて彷徨い揺れる彼の心を。
私はか弱くて何も出来ないけれど、彼の側にいて微笑むくらいの事は出来る。
その為に全てを失っても構わない。
愛しい彼を思い、彼と共に生きていきたい。
悲しい笑顔を見せる彼の背中に耳を当てると、遠い過去に起きた彼の慟哭が聞こえる。
悲しい過去があって、涙を見せてくれる事もある彼の素直な瞳に私が映る。
彼の心の傷が癒されるまでどれくらいの時間がかかるのか分からないけれど、私は彼と共に生きる。
彼と生きる事が私の幸せなのだから。
リクエストがあったのでラクス物をで投下。
盲信的な愛はlunaticなものだと思うのでlunaticシリーズにしてみました。
>>81 最初はコメント見てドン引きしちまったが、
よく読むとそれぞれが簡潔かつほどよい密度のものになってるとオモタ
個人的にはもっとメイン以外のキャラを書いていってほしいかな
ミネルバ、PP、AAだけでもいろいろいるし
保守
ディアッカ〜もしも明日が晴れならば〜
何気ないジョークのつもりだった。悪気などはなく、捕虜である自分の待遇に不満があり
ちょっとした嫌みを言ってみただけだった。それなのに。
絶世の美人でもなく、真っ正面から正視出来ない程の醜女でもなく、若干愛嬌が
あると言った程度でしかない少女の顔がみるみるうちに眉がつり上がり、見開いた瞳は
焦点が外れて行く。口を大きく開けこの世の物と思えないおぞましい雄叫びをあげる
様は、幼い頃に本で読んだ鬼女を思い起こさせた。
その鬼女は何を思ったのかディアッカを鋏で刺そうとしてきたのだ。ディアッカは
恐怖におののきつつも、とっさの所でそれを躱し難を逃れた。額からじんわりと玉のように
脂汗が流れる。拭おうと思うも両手が拘束されているのでままならない。
ディアッカは忘れていたのだ。女という生き物は男の愛を失った時に世にも恐ろしい
鬼へと変生する事を。女は子宮で物事を考える生き物であり、男無しではどんどんと
渇いて行く。身も心も渇き切った時が怖いのだ。潤いに飢えた鬼女は男の精気を搾り尽くす。
渇きが癒えるまで延々と男を襲い続ける。
目の前の鬼女もそうなのだ。下着姿のディアッカはきっと目の毒なのだろう。そして
挑発されるような事を言われれば鬼女は自分を襲い始めるに違い無いのだ。
現に鬼女は我を忘れている。其処まで男に飢えていたのだろう。ディアッカは
哀れに思ったが、それよりも自分自身の命――貞操がが
大切だ。こんな所でこんな鬼女なぞに奪われたくはない。
ディアッカは誰かに届くよう悲鳴を上げた。
例えばアスランなら。――ダメだ。奴は救いようが無い位甘ちゃんだ。女に免疫の
無いネンネでもあるから頼りにはならない。
例えばイザークなら。――ダメだ。奴は救いようが無い位ウブだ。女の魔性に即座に
絡め取られるような真面目ちゃんだから頼りにはならない。
一番頼りになりそうなのは、ああ見えてニコルだった。あの純粋さは鬼女の好物では
ありそうだが、意外と胆力はあるし何よりも他の奴らと較べて視野が広い。
そんな事を考えていると、新たな鬼女が現れた。先程の鬼女と較べるとややましな
容姿である分、鬼へと変生すると壮絶なまでの美しさを放つ。
もしも明日が晴れならば、きっとそれは俺の命が天に飛び立ったからだ。
ディアッカは正気を手放したくなる衝動に駆られつつも、必死で叫び続けた。
メイン以外のキャラということで、ディアッカのお話を投下です。如何だったでしょうか?
リクエストは具体的な名前を挙げて下されば嬉しいです。
ではまた次の機会に。
89 :
通常の名無しさんの3倍:2007/11/30(金) 01:51:19 ID:??? BE:694095146-2BP(0)
あのときのミリは金玉じゃなく命の方のタマを取りに行ってた気もするが、
半分ギャグの内容にも思えるのにシリアス風に書いてあって新鮮だったよ
ちなみに各艦のマイナーキャラといえば、
ミネルバならオペレーター3人組や整備班二人組、2ちゃんではメジャーだがアーサーとか?
PPならイアン、AAならチャンドラ、ノイマン、パル、トノムラ、マードックなんてのもいる品
あんたなら影薄いキャラを独自の解釈で味付けできるんじゃないかなとオモタ
新人じゃないですが、ネタ的にスレがないものでこちらに失礼します
炒飯日記 プロローグ
ある日、俺が目を覚ますと見慣れない場所にいた。
部屋の景色が全然違う。
確かにプラントの自分の部屋にいたはずだが・・・
この部屋は木造の和風建築ってヤツだ。
趣味の日舞をやっていたときに写真で見た事がある。
カーテンを開けてみた。
どうやらここは2階の一部屋らしい。
なんらかの手がかりを求めて1階に下りてみる。
・・こんな木造の階段なんて歴史の写真でしか見たことがないぜ。
下に降りると、そこは厨房だった。
大きなコンロと中華鍋の他にはこれといったものがない。
俺はそこにあったいすに座って、昨日の記憶をたぐってみた。
・・・確か前の日、明日の観艦式に出るためにクリーニングから戻ってきた制服をハンガーに掛けて、
そして朝早いから早く寝なきゃと思ったけど、借りてきたビデオ見ていつの間にか寝てたんだっけな。
・・・で、なんでこうなってるんだ?
俺は外に出ていろいろと確かめてみた。
今日の日時、そしてここがどこであるのかを。
誰かのいたずらであって欲しい。ただそれだけ願っていた。
もう一つの恐ろしい可能性については考えたくなかった。
だが、その考えたくもない恐ろしい可能性の方が当たってしまっていた。
ここは経済特区日本と呼ばれる場所であり、今の年号はC.E.ではなく、西暦2307年という年号だという事だった。
そして、俺は近所でも有名な炒飯店の店主だと。
元に戻るすべは全く考えもつかない。
どうやら俺はここで生きていくしかないようだ・・・
第1話 ソレスタルビーイングって何だよ、それ
俺の炒飯店は今日も大忙しだ。
どうやら近くにオフィス街があるらしく、ランチタイムには店に入りきらないほどのサラリーマンのお客が来てくれる。
いつものように開店前に店のTVを付けるとニュースが流れた。
軌道エレベーター襲撃事件・・か。
この世界にもMSってヤツがあるんだな。
俺はアスランとイザークと組んでテロリスト達を迎撃したことを思い出していた。
そして・・・ニコルのことも。
TVを聞きながら朝の仕込みを始めていたら、妙な話が始まった。
俺はあわててTVの前に移動してボリュームを上げた。
ソレスタルビーイング?ガンダム?懐かしい名前だな。
バスターもそういわれていたっけな。
戦争根絶・・ね。あいつらもそんなこと言っていたっけ?
戦争への武力介入か・・俺たちフリーダムにはやられっぱなしだったよな。
まあ、いろいろとおもしろそうだけど、今の俺には関係ないな。
俺はただ、目の前にある中華鍋をふるうだけだ。
俺は店の鍵を開け、のれんを掲げると、今日の最高の炒飯を作るために仕込みを再開した。
まもなく一人目のお客が・・って、何だぁ?
そいつはスーツ姿にグラサンと明らかに怪しい格好をしていた。
そいつはいぶかしむ俺の事をよく知っているようだった。
ディアッカ・エルスマンさんですね?あなたのもう一つのお仕事をお願いしたい。
俺はどうやらただの炒飯屋じゃないようだぜ。
ちょwwwwwwリアル炒飯ktkrwwwwww
94 :
通常の名無しさんの3倍:2007/11/30(金) 12:06:27 ID:/+pz0kXZ
機動料理人痔悪化ダブル炒飯ktkr
>>炒飯日記
いかにも2ちゃん的なネタSS。
文章力はかなりアレだけど面白い。
このまま突っ走れ!
柚子さんのss勝手に保存しますた
>>96 じゃあ俺は戦史を全部プリントアウトしました。
>>もしも明日が〜
切れた女性にはさみで襲われたとき、男が感じるのは貞操に対する不安じゃなくて
去勢不安だと思うけれど、ディアッカその他の書き方が面白かった。
>>炒飯日記
唐突なディアッカinOOに吹いた。投下乙。
いろいろとご意見ご感想ありがとうございます。
クロスオーバーものなので、本編のストーリー展開と併せて投下致します。
いずれダコスタくんも出したいですね。
コジロー〜めぐり、ひとひら〜
整備士のプライドと言う物がある。
MSをいつでも出撃できるように整備し、パイロットに合わせて調整する事。
地味な役目などとは思わない。内助の功、縁の下の力持ちだ。自分達がいなければ
何も始まらないと、コジロー・マードックは考えている。その為には徹夜などは
日常茶飯であるし、完璧な仕事が出来ない奴には整備の仕事には向いていない。
コジロー・マードックは今しがた整備を終えたストライクを仰ぎ見ては誇らしげに
胸を張った。徹夜に次ぐ徹夜の連続で無精髭は凄まじい事になっているし、寝不足の
せいか目は厚ぼったく晴れて酷い事になっている。だがそんな苦労が吹き飛んで
しまう程の達成感で満ち溢れた躯は疲労感など微塵にも感じてはいない。
パイロットが自分の機体に愛着を感じているように、整備士も自分が整備している
機体には自分の子供のような愛情を感じるものなのだ。本当に愛おしい存在だ。
だからこそ、コジローは時折やるせない気持ちに陥る時がある。
ザフトに強奪された機体についでだ。ストライクの兄弟分であるのにストライクと
闘う運命にあるのだ。自分の整備した機体が自分の整備する筈だった機体と争うと
言い換えた方が良いだろう。あれらがアークエンジェルに遅い掛かって来る度に、
コジローは酷く気が塞いでしまう。自分の子供達が骨肉の争いをする姿などは見たくは無い。
ましてやあれらが余り有効ではない運用法をされていないのを目の当たりにしたら
胸が張り裂けそうになるのだ。
しかし、コジローに出来る事はと言えばMSを整備する事のみで、その後の事は
神に祈る事しか出来ない。めぐり巡った悲しみが
宇宙に拡散し、ストライクがひとひら舞うように流星と化して墜ちて行かないように。
運の良い事にストライクのパイロットはコーディネーターでMSの操縦には天賦の才を
発揮している。まだまだケツの青いガキではあるが。整備士に礼を言ったりするような
可愛げはさらさらないようで、自分独りで戦っていると思い込んでいる危険性がある。
コジローは機会があったらパイロット――キラ・ヤマトに礼儀と言う物を手取り
足取り腰取り教えねばなるまいと考えている。コジローは不意に瞳を輝かせ舌なめずりを
しつつ、伸びきった無精髭をさすっては愉しげに笑い始めた。
>>89の意見からコジローさんのお話を書いてみました。コジローさんのちょっと
オヤジ臭い感じの魅力が上手く書けているでしょうか?ちょっと心配です。
ではまた次の機会に。
投下乙
短編書く人はわりと誤字が多いなw
光さす場所は〜失った標(しるべ)〜
冗談じゃない!
口にこそ出さなかったが、からだの震えをを止めることが出来ない。
運命の悪戯。その一言で人は片付けてしまうだろうが私はそう言う訳には行かなかった。
映像には満身創痍のフリーダムの他、格納庫と思われる画面に数機のガンダム。
更に別のモニターには死人のような顔色のキラくんがアスランくん、カガリさんと写っている。
いったい彼に何があったのか。この先もきっと自身の口から語られる事は無いだろう。
彼はラウ・ル・クルーゼを倒したが、フレイさんの救助には失敗した。
アスランくんにしても敵対していたとは言え、実の父を失い、その様子はきっと見て来たはずだ。
壊れたフリーダム、ただそれだけがカメラの捕らえた客観的事実。
戦争が終わったのにブリッジでは誰も笑うものは無く、ただ船は何かに操られるように
エターナルに追随しプラント領からも連合領からも遠ざかる。
ごく僅かな時間。艦長と呼ばれるようになってからだって、そう時間が経った訳ではないが。
そのごく僅かな時間にムウを失い、ナタルを手にかけ、救助を求めてきたフレイさんまでをも
結果的に見殺しにした。
更にプラント暫定政府からの停戦勧告を連合政府が受けたとあれば、私が艦長席に座る
意味さえ、もはや無い。
私達が。いや、私が。生きる意味は無くなってしまったのか。
ムウを、ナタルを、フレイさんを、他の人々を。失う前にどうして戦争をやめてくれなかったのか!
冗談ではない!
だが、好き好んで自ら戦場で戦いに身をさらした私達が言える事ではないのは分かっていた。
だから口には出さなかった。ただ、何時までもからだの震えを止める事は出来なかった。
光さす、安らぎの場所はこの宇宙の何処かにあるのだろうか……。
今回分以上です
煮詰まってしまって、何となく書いてみたものを保守替わりにそのまま投下
オリジナル以外で初めて書いてみました
短編のようですがこれはなんでしょうorz
……まぁ新人という事でご容赦を
あと数回続く予定です
ではまた
hate and war “gene dreams ideal”
人というものは生まれながらにして遺伝子という檻に囚われている。
遺伝子とは才能の事だ。
どんなに足掻こうが生まれ持った才能以上の能力を発揮する事など出来ない。
先天的な才能を後天的な努力で伸すという事はある意味滑稽な事だと言える。
それが出来るのであればジョージ・グレンが生みだされる事はなかっただろう。
人の才能には限界があり、その限界を突破する存在としてコーディネーターは生み出されたのだ。
しかし、その代償としてコーディネーターは子を生す事が困難となった。
ナチュラルならば子孫を作るという事は容易な事なのかも知れないが、コーディネーターはそうではない。
遺伝子が引かれ合わなければならないのだ。
そこに本人の意思が介在する事など出来ない。
本人の意思などは些細な事であり、遺伝子が反応しなければ何一つ意味をなさないのだ。
それはコーディネーターが進化の道から逸れた存在だという事を証明しているのかも知れない。
実際、私の恋人は子を望んで遺伝子的な相性の合う男の元に走った。
それは悲しい事であると言えるが、間違った事ではないだろう。
一時の恋愛感情を優先よりも子孫を残すという遺伝子の本能と義務に従っただけなのだ。
遺伝子の囚人である人間が遺伝子の欲求に従うのは至極当然な事である。
その遺伝子の欲求を更に具現化させる為に私が考え出したのがデスティニープランだ。
運命を遺伝子で決めるのだ。遺伝子の欲求に従うのが生物として正しいのだ。
遺伝子は争乱を求める事もなく、唯自らの発展を望む。故に自らの命運を絶つという事はしない。
デスティニープランは遺伝子の欲求に答える為の計画なのだ。
今はまだ机上の空論ではあるが、煮詰めて行けば人類を新たなる地平に導く物になるだろう。
実行する為には私も相応の地位に就かなければならない。
しかし、人類の命運が恋人に逃げられたしがない私の両肩にかかっていると思うと、自然に笑いが込み上がってくる。
愉快だ。実に愉快だ。
人類の行く末を考える事がこれ程までに愉快だという事を……ラウ、君は知っていたかい?
投下終了。
ジムに入って、まずボディーシェイカーで10分。身体を温める。
それからストレッチに入る。
そしていつものメニューだ。
アブドミナルの時に左右に捻りを入れ、ウエストを絞る事も忘れない。
……ふとメイリンを思い出す。
ずっと前に見てしまったのだ。私のスカートを穿こうとして穿けずに下に叩き付けるのを。
もう、今では絶対に穿けないな。私のは。
ウエストを細くしたいのなら、努力すればいいのだ。私だってなんの苦労も無しにこのウエストを維持していない。
でも……あの子は食べる事に逃げるのよねぇ。
今ではすっかり太ったメイリン。ヴィーノやヨウランもすっかりお見限りじゃない。
3セット済ませると、私は冷水でプロテインを溶かし、飲む。お気に入りのストロベリーのフレーバーと甘みが心地よい。
次はスタジオでヨガの教室に参加する。
身体の筋が心地よい位の痛みと共に伸びる。
ああ、嫌だ。雑念が湧いてくる。メイリンの事だ。
メイリンが食事をどか食いするようになったのは、やっぱりアスランがオーブに帰ってしまってからだろう。
我が妹ながら、馬鹿な女だと思う。
なにが、「あたしを捨てるの!?」よ? アスラン本当に困ってたじゃない。
アスランは元々あんたと付き合ってる気なんか無かったってーのよ。
今では家に引き篭もって食べてばかり。
パパやママはメイリンの事が心配そうで私にも色々言ってくるけど、私はメイリンをさほど同情できない。
アスランがプラントにいた時の、いつもアスランにくっついて、勝ち誇ったような視線を向けて来たあの子を知っているから。
次は私の好きなアロマリラックスの時間だ。
簡単なストレッチの後、ヨガマットの上に横たわる。アロマの香りが漂ってくる。
今日は……樹木系の香りかな? 次第に暗くなる照明の中、私は頭を空にする。
……少し眠ってしまったようだ。
照明が明るくなり、今はミント系の香りが漂っている。
教室を出ると、手早くシャワーを浴びる。
いつもならゆっくり半身浴とかするんだけど、今日は用事があるのだ。
待ち合わせの場所に行くと、彼――シンはもう来ていた。
私が走って行くと、「遅いぞー」って笑う。私もごめんごめんって言いながらシンの腕に私の腕を絡める。
シンが、こんな風に笑うようになってくれて、本当によかった。
デュランダル議長とラクス様、どっちが良かったのか悪かったのか、私にはわからない。
でも、オーブの海岸の慰霊碑の前でラクス様達と仲直りした時から、シンは吹っ切れたようだった。
ラクス様が連れて来たキラさんって人の下で頑張って頑張って働いている。デュランダル議長側のスーパーエースだった事もあってか、シンのアスカ隊はザフトの部隊ではナンバー3には入るとも言われている。
でも、そんな事はいいんだ、私には。こうやって笑いかけてくれれば。
今日、これから私達は部屋を探しに行く。そう、二人で住む部屋。
私が、「家に帰るとメイリンが嫌な目付きで睨んで来るから帰りたくないなー」と愚痴ったら、「じゃあ、一緒に住むか?」と照れながら言ってくれたのだ。
うん、一緒に暮らすんだ。シンの腕をぎゅってする。
日曜の朝にはコーヒーを入れて、ゆっくり話そう。小さなロシアンブルーの子猫を育てよう。
もう、X’mas Eveも一人じゃない。
終わり
ノイマン〜夢幻泡影〜
好きになれない人間は幾らでもいる。ノイマンは目の前のモニターを凝視しつつ
小さな舌打ちをした。様々な想いの錯綜するブリッジでは気付かれそうにない、ほんの
ささやかなものだ。それに誰かに気付かれようとも構いやしない。あの女以外の
クルーは誰しも自分と似たような事を考えていると、ノイマンも薄々解り始めているからだ。
マリュー・ラミアスは無能。
あの女のいないところでは誰もがあの女の愚痴を零している。階級が一番上だから
艦長に就任した訳だがロクな事をしない。無茶難題を命じては悦に入っているが、
それが成功したとしてもそれは必死で頑張った自分や副艦長をはじめとするクルーの
手柄なのだ。あの女は百面相をしながらヒステリックな叫び声をあげているだけだ。
いつだったか、血の気の多い連中があの女を締め上げるなどと言っていた事があった。
ノイマンは表面上はあの女を庇うような事を言ってしまったが、本心は別の所にある。
あの女を慰め物にした所で何も変わりやしないのだ。却ってあの女を喜ばせる事に
なりかねない。あの女は牝犬なのだ。胸を強調するかのような装いをしているのだから
明白な事実だ。淫売な牝の匂いを周囲に撒き散らしているのは女としての自分を満たしたいと
思っているに間違いはない。
女の寂しさを紛らわせる為の棒となるのは男としての自尊心を貶める行為だと
ノイマンが説きふせてその場は収まったが、それから先の事はノイマンの知る所ではない。
取り敢えず今は自分の仕事をするだけだ。そして――
ノイマンは誰にも気付かれよう最新の注意を払って副艦長に目配せした。副艦長
から意味ありげなウインクが返って来るのを確認すると、ノイマンは心なしか胸が
軽くなった。付き合っている訳ではない。空いた時間を見計らってお茶をしたり
些細な雑談をするだけの密やかな間柄だ。あのふしだらな牝犬の事を忘れて楽しい
一時を過ごせるだけでもノイマンは幸せなのだ。堅物な副艦長が不意に見せる笑顔は
ノイマンの鋭気を養ってくれるのだ。それだけで、構わない。
――集中、集中!
ノイマンははしたない牝犬の喧しい哭き声を聞き流しつつ、自分の仕事に没頭した。
ノイマンのお話を投下しました。来週は投下が不定期になるかも知れません。すみません。
>>99>>108 なんか無理なリクに応えてくれてサンクス
ってかノイマンが黒いのは新シャアでは半分デフォかwwww
やあ、良く来てくれたね。君の様な聡明で美しいジャーナリストにインタビューされるのは非常に光栄な事だ。
何でも聞いてくれ。私の知る事ならば全てにお答えしよう。
我々IRAの真実を世界に向けて発信するのはお互いにとって有益な事であると思う。
ああ、一つだけ忠告しておこう。知りすぎてしまう事には注意してくれたまえ。
世間には知りすぎてしまい不幸な最後を遂げるジャーナリストが多いと聞く。
あくまで一般論だがね。
私をインタビューした直後に君が不幸になってしまうのは非常に不本意な事だよ。
ほう、何故我々が和解に応じたか、か。
世界情勢を鑑みると、今は静観すべきだからだ。変革の時を迎えた世界に我々が付き合う必要性は皆無だという事だ。
決してソレスタル・ビーイングに脅威を感じたという事ではない。
幸か不幸か圧倒的な力に蹂躙される事には我々は慣れているからね。
君も知っている歴史の事実として、我々はアイルランド人はクロムウェルによる虐殺に耐えたのだよ。
それに較べればソレスタル・ビーイングなどどうというものではない。
端的に言えば、我々IRAとソレスタル・ビーイングとは歴史の重み、流した血の量が圧倒的に違うのだよ。
我々が彼らに恐れを抱く理由など何一つない。
ああ、それともう一つ。血を流さなければならないのであれば、効果的に流さなければならない。
無駄な流血は我々としても本意な事ではない。
今の世界では効果的に血を流すのが困難であると言えるのだよ。
おっと、君の様な美しい女性の前で血腥い話をしてしまったね。
耳直しに素晴らしい曲をお聞かせしよう。
20世紀後半に流行った名曲、U2のwith or without youだ。
IRAの代表ではなく、私個人としての理想がこの曲の中にある。気が向いたら探してみたまえ。
君のこれからの活躍を期待している。
ああ、もしソレスタル・ビーイングの連中と会う機会があるのであれば伝えてくれ。
我々に干渉するのであれば、覚悟を決めてからにしろ。短慮で我々の前に立つのであれば不幸な結末を迎える事になる、とな。
君もそう思うだろう?
111 :
ひまじん:2007/12/02(日) 09:03:00 ID:???
謎短編第三弾投下。
IRAで書け!というリクエストに応えたよ。
つか、IRA好きな人多すぎw
>>ひまじん
これはこれで面白いんだけど……真面目に書いてくれよぅ
ここってオリキャラは出せないのか?
>>113 すぐ上のひまじんを見ろ。
オリキャラだぞ?
まとめサイトを見ろ
弐国氏の作品には既存キャラは出てないぞ
オリキャラマンセー、オリMSTueeee! でなければ叩かれることはないとオモワレ
118 :
ひまじん:2007/12/02(日) 20:10:29 ID:???
>>117 なんで俺に話を振りますか?
オリキャラでも良いんじゃない?ここはー何でもありの新人スレだし。
第0話 〜すれ違う二人〜その1
「アスラン、シンのことについて相談なんだが、少しいいか?」
カガリがリビングに入ってきた。少し不安そうな顔をしていた。
「シンが何か問題でも起こしたのか?」
カガリは、俺の向かいに座って話し始めた。
「最近、あいつの成績が伸びないんだ。先生も言ってたが、このままでは志望校合格は難しいらしい。
だから、シンを塾に入れようと思うんだ。」
そう言いながら『暁塾』のパンフレットを渡す。
しかし、俺はシンが学校が楽しければ良いと思っていた。別に成績なんて、どうでも良かった。
成績も前より少し下がっている程度だが平均はある。けれど、官僚の家の出であるカガリには許せなかったらしい。
「カガリ、シンはどう言ってるんだ?」
カガリが、口を開こうとした瞬間、リビングのドアが開く。
シンが紅い目で睨みながら叫ぶ。
「おれはあんた達の言いなりなんかにはならない!!少し成績が悪くなったらってすぐ塾かよ!!」
しかし、カガリも負けていない。
「シン!!私はおまえの事を心配しているんだぞ!!私の家系のように政治家になるにしろ、アスランのように企業で働くにしろ、学歴がないと駄目なんだ!!見てみろ!!妹のマユや隣のレイもがんばっているじゃないか!!」
この時、カガリは言ってはいけない事を言ってしまった。シンはプライドが高く負けず嫌いな所がある。そんなシンに対して、他者と比較するようなことは言ったのは不味いことだった。
「そうやってすぐに他人と比べるのかよ!!あんたは!!!!子供比べはアスハのお家芸だな!!」
そう言い捨てると、シンは走り去ってしまった。
「シン!!!!」
カガリは後を追うが、そこにシンの姿は無い。
「全く、昔はやさしくって素直で、妹の面倒見も良いやつだったのに…反抗期か?」
カガリはやれやれと言いたげな顔をしていた。
「…カガリ、君の言いたいことも分かる。だけど、シンはまだ慌てるような時期じゃない。まだ若いんだから、もっと自分の道を探させてやってはどうかと思うんだ。」
けれども、カガリは頑なである。
「私の家系は政治家だ。一般の人とは訳が違うし、今からが大切なんだ。」
カガリは言い出したら頑固だ。
「…分かった。君の言う通りにしよう。そこまで言うのだからそうした方が良いのかもしれないな。」
俺がパンフレットの中身を取り出そうとした時、カガリは虎をも殺すような視線を投げつけていた。俺は何がなんだか分からない。
カガリが口を開く。
「アスラン、前から思っていたが、お前シンとマユのこと考えているのか?いつも『やりたいことをやらしておけ。』って言ってばかりで家庭は私任せだ。あの二人の事はどうでもいいのか?」
第0話 〜すれ違う2人〜その2
突然根も葉も無いことを言われ動揺してしまったが、俺はシンもマユも信じている。
あの二人が間違った道を歩むとは思っていない。むしろ、カガリみたいに束縛したほうが、かえって反発するんじゃないかと思っている。だからそう言ったのだ。どうでも良いわけないじゃないか。
「そんな訳無い!!」
動揺したせいか珍しく声を荒げてしまった。しかし、カガリは怯む素振りを見せない。むしろ覇気が増した様子だ。
「だったら、なんで学校行事に顔を出すのは私だけなんだ!?参観も懇談も運動会さえもほとんど私だけでおまえは来ていない!!」
そういえばそうだった。だけど、行きたくなかったからじゃない。行けなかったのだ。
「…それは、仕方なかったんだ。その時は手が離せないプロジェクトがあって勝負時だったんだ。おまえたちを守る為にもやるしかないじゃないか。」
心の中で俺は怒りが湧き出していた。
それなりの地位、収入を手に入れ他人から見て恥ずかしくない家庭を築きあげてきた筈なのに、こんなに酷く言われたからだ。
しかし、カガリは冷たく言い放つ。その目は悲しみと怒りに満ちていた…。
「休日はどうなんだ!?子供達を放って置いていつも家に居ないじゃないか!!昔は、シンとマユといっしょに出かけたり、ハロを作ったりしていたのに…お前最近冷たいぞ!!」
「そんな…事は……無い…。」
俺は心の中の怒りを静めながら言い返す。
「だったらなんでだよ!!家族の事考えていないからだろ!?もういい加減にしろ!!!!」
カガリの決め付けるような言い方に俺の中で何かが切れた…。
「!!!!」
気づいたら俺はカガリを殴っていた。
カガリは何が起こったのか分からない顔をしている。
ガチャ
リビングのドアが開く。 マユとマユのハロだった。
「ママ、ご飯まだ…?」
「ハラヘッタハラヘッタ」
気付けば、もう暗くなっていた。 時計も8時を過ぎている。
「…カガリ…すまない…。」
「…。」
俺はカガリに謝りながら助け起こしたが、カガリは何も言わなかった。
自分の過去を元に
>>119>>120を書いたものです。
どなたか感想お願いします。
シンとアスランが親子スレにUPしようと思ってましたが、
落ちているので、どこに貼ればいいか指導お願いします。
ちょ自分の過去ってwww
ガンガレ。続き期待汁
IF系統合スレが出来ましたので、ザクレロSEEDの続きをそちらに貼らせていただきました。
こちらに報告させていただきます。
>>123 双方のまとめに掲載する事は可能なのでしょうか
カウンターも結構な数字だし
とは言え最終的に決めるのは、俺ではなくまとめの中の人な訳だが
>>121 GJだが新人はとりあえず最初にテンプレ嫁。
タイトルと名前が無いと話にならん。
書く場所はここでも、総合でもいいと思うが、移る場合テンプレに書いている通りに汁。
if総合出来たんですね。
ディアッカの炒飯日記ですが、今後はifスレの方に移動します。
真冬に萌えろ! 短編特集号(1/2)
フリーダムを見上げるキラ。その心境は周りの人間になど分かろうはずもなく……。
キラ〜終わらない明日〜
>>74 戦えば戦う程に僕は一人になって行く。僕だって人間だ、機械じゃない! だけど……。
explaration of personality
>>77 タリアの前にMSで立ちはだかる少女。その行動を嫌悪する理由はその少女、自身の言動にあった。
タリア〜群青の空を超えて〜
>>80 彼が見つめ、ほほえみかけるのは私ではない誰か。けれど私はそれで良かった。私の出来る事、それは……。
lunatic love
>>82 いつも通り、ほんのちょっと軽口を叩いただけの彼。その彼に鬼の形相の少女が襲いかかる!
ディアッカ〜もしも明日が晴れならば〜
>>87 ある日、俺が目を覚ますと見慣れない場所にいた。 クロス新機軸! OO×種。その第一回は新人スレで!
炒飯日記 プロローグ
>>91-92 自身の整備した機体は自らの子供達。ストライクの整備を終えた彼の思いは機体からパイロットへと……。
コジロー〜めぐり、ひとひら〜
>>99 停戦後の艦橋でマリューは何を思う……。新人スレの誇るオリジナルの奇才が、新たな境地を切り開く。
光さす場所は〜失った標(しるべ)〜
>>102 遺伝子とは才能、人の才能は遺伝子を越える事はない……。珍しい議長単体モノ。書くのは勿論、真言氏。
hate and war
>>104
真冬に萌えろ! 短編特集号(2/2)
ジムで汗を流し、ヨガで体を伸ばしながら思うのは我が妹の事。そしてジムが終われば待っているのは……。
無題
>>106 彼は周りに聞こえないように小さく舌打ちをする。気に食わないのは艦長席のあの女だ……!
ノイマン〜夢幻泡影〜
>>107 我々はソレスタル・ビーイングなど恐くはない……。リクエストに応え、ガンダムの足下をひまじんが描く!
ひまじんの謎短編
>>110 アスランとカガリ。話し合う二人の話題は息子、シンの成績について。IF系定番ではありますが新人スレ初登場。
無題
>>120-121 新人職人必読、新人スレよゐこのお約束。熟読すればキミも今日からベテラン職人だ!!
巻頭特集【テンプレート】
>>1-6 絵師テンプレート【暫定版】
>>7 各単行本も好評公開中
詳しくは
ttp://pksp.jp/10sig1co/ までアクセス! このたびリニューアルしました。是非一度遊びに行きましょう。
読者と職人の交流スペース開設。
お気軽に
ttp://pksp.jp/rookiechat/までどうぞ!
お知らせ
・『機動戦士ザクレロSEED』、『炒飯日記』の2作品について、非常に残念ですが今後は
【IF系】もし種・種死の○○が××だったら【統合】
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/shar/1196438301/l50 での連載となります。これからも変わらぬ応援を宜しくお願いします。
・投下作品とのリンクを問わず絵師、造形職人の方を募集中です。 エロはアウト、お色気はおk。
これくらいのさじ加減で一つ。素材は新シャアなので一応ガンダム縛り。
勿論新人スレですので絵師、造形職人さんも新人の方大歓迎です。
まとめサイトでもなにやら募集しておりますのでそちらも宜しくお願いします。
・当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。
・また雑談所とも一切の関係はありません。当該サイトで【所長】とお声掛けの程を。
・スレ立ては450kBをオーバーした時点で、その旨アナウンスの上お願いします。
編集後記
週末にねらい澄ましたように投下の嵐、スレを愛する気持ちがひしひしと伝わります。
まとめの中の人も大規模改造乙です。たまにはゆっくり寝て下さいw
来週もまた投下日がグラついております。前後二日は大目に見てやって下さい。ではまた来週。
あー、かったりぃ。つか、今の試験有り得ねーよ。
いくら時事問題だからってソレスタル・ビーイングはねーよ。それしか答えわかんねえっての。
もっとテストに出すべき問題はあるでしょ。アザディスタンのお姫様の名前とかさ。
あのお姫様は良いね。一発でやられちゃいましたよ。
どれくらいかってえと、進路希望に『海外青年協力隊(アザディスタン希望)』って書いちまうくらい。
そうそう、去年の24時間TVに募金しちまうくらいさ。
まあ、俺のささやかな夢は意地の悪い先公の“寝言は寝てから言え”って一言でクシャクシャにされてゴミ箱にポイされたってな訳だ。
泣きたくなるくらいに世知辛い話だよ。
いたいけな少年の夢が潰されるなんて本来あっちゃいけない事だよ。
人を腐ったミカン扱いするし、マジで腹が立つよ。
いっその事校舎のガラス窓を叩き破ったり盗み出して明日なき暴走してやろうか。
それとも放送室をジャックしてやろうか。
……駄目だぁ。ソレスタル・ビーイングに武力介入されちまうよ。
そうなったら愉快だけど俺が巻き込まれるのだけは勘弁だ。
なんつーか、なんでしがない学生の俺がソレスタル・ビーイングのせいで悩まなくちゃなんねーのよ。
あいつらのせいで時事問題が目茶苦茶になって俺の努力が御破算だよ。
大学に入って合コン三昧のキャンパスライフを送るっていう俺の野望が台無しになったらどうしてくれるんだ。
どこに苦情を申し立てれば良いんだよ。
そういや、確か沙慈とかいう奴のねーちゃんがマスコミだったから投書してやろうか。
上手くいったら俺は一躍時の人だよ。ひょっとしたらアザディスタンのお姫様にも会えるかもしれないですよ?
そうなったら俺の魅惑のトークで口説いちゃいますよ。
そうすりゃ一回はお相手願えるかも知れませんよ?
……駄目だ。昨日一夜漬けしたせいで頭がまともに働かねぇ。
どどのつまり俺が何を言いたいのかってえと、期末テストで答えがソレスタル・ビーイングなんて珍妙な問題を作る様な先公はひまじんだって事さ。
アンタもそう思うだろ?
>>美柚子
投下乙
投下スピードはかのGSNT氏にも匹敵する。しかも平易で読みやすい
その二点は誇って構わないぞ
前にも書いたが書きたい事が煮詰まる前に投下していないか?
ほんの少しだけ推敲の時間を取った方が良いかも知れない
それでスピード感が無くなる事は無いと思う
そして内容的に起承転結を意識するともっと良くなるはず
少し気を抜くとやおいな文章になってしまうぞ
>>光さす場所は
投下乙
扱うキャラが変わっても表現方法は不変。特に一人称独白は効果的
描写は如何にも弐国流。これはこれで面白い
イベント全肯定は此処でも変わらず。その姿勢はお見事
>>謎
投下乙
IRAと言うよりはイタリアのマフィアを連想してしまった
あんたもそう言った意味で立ち位置は不変だな
>>編集長
投下乙
無理はしないで長く続けてくれ
実際投下作品を探すのがめんどくさいときg(ry
また700越えてるな
今夜辺り圧縮来るか?
>>光さす場所は
投下乙です。
戦後を描かないままに終わった種を補完する意味で、マリュー視点で描かれる
シナリオは個人的にとても楽しみであります。
戦争が終わると同時に自身の存在意義に不安を抱くマリューは、よくも悪くも
アークエンジェルと、その艦長であると言う事に支えられていたキャラだったと思います。
続きをお待ちしております。
>>ハイスクールロケンロール
投下乙です。
どこからそう繋がるんだよ、とどのつまりじゃないだろ! と突っ込むのが
筋でしょうか?
戦争の関係ない国だと、正直な話こんなところの感想しかないだろうと思います。
不真面目でも良いので、続きをお待ちしております。
>>編集長
乙です。GJ! 移転する職人の為に誘導を張る辺りの仕事は流石だと思います。
編集長及びひまじんさん投下乙です。
>>123ザクレロさん
雑談所職人チラ裏一読お願いします。
>>125 新人スレまとめである為、他スレ分については考えておりません。
>>134 委細了解
今まで収録ありがとうございました
保守
戦闘描写・習作
喉が焼け付く様に痛む。まるで喉の奥に火箸を突き込まれた様な感じがする。
痛みを押さえる為に唾を飲み込もうとして出て来るのは生唾のみだ。
生唾を飲み干しても痛みは衰える事はなく、不快感が更に増していく。
迫り来る弾幕は激しく、背後に幾つかの光が輝くのが見えた。
光となって消えたパイロット達はそれぞれがアスランも認める腕利きの熟練兵だった。
しかし、その彼らですら瞬きをする間すら与えられずに戦場の露として消えた。
その事が更にアスランに苛立ちを覚えさせる。
かすめる弾幕は薄皮を剥す様に神経を削ぎ落し、回避する度にかかるGは体力をジワジワと奪っていく。
額には珠の様な汗が浮かび、背中には冷たい汗が滲み溢れ、不快感が酸の様にアスランを侵していく。
次第に腕が鈍く重くなっていくのが分かる。
空気がざらついた粘着質なものになっていくのが分かる。
焦燥感と弾幕のみが激しさを増してアスランの動きを鈍重なものにしていく。
弾幕に次第に捉えられ、機体に微細ながらダメージを与え始める。
さて、どうしたものか。
呟いてみせても周囲には答える者はいない。仲間は全て激しい弾幕の前に塵と消えてしまっている。
呟く事には深い意味などは無い。覚悟が決まらずにいるからの行動に過ぎないという事だとはアスランも解っている。
埒が開かなければ多少の無茶をして強引にでも埒を開けなければならないのだ。
坐して死を待つくらいならば、後先考えずに突進む方が良い。
息を大きく吸い込むと身体中の細胞に酸素が行き渡り活性化する様な感覚がする。
覚悟を決めて裂帛の気合いと共に息を吐き出すと視界がクリアなものとなっていく。
忌々しいまでに激しかった弾幕がゆっくりとしたスローモーションになっていく。
機体を踊らせると弾幕の嵐の中を駆け抜け始めた。
機体が持たずに戦場の徒花としてちるのが先か、自分が持たずに死の行進となるのが先か。
その様な悩みを断ち切りアスランは敵を撃つ事のみを考えて進んでいった。
――了――
某スレのネタを元に戦闘描写の練習をしてみました。
不馴れなので下手かもです。
元ネタ主涙目w
>>真言
まずは投下乙。
戦闘描写の習作との事だが、戦闘描写というよりは戦闘シーンを心理描写に比重をおいて書かれた物の様に思える。
戦闘描写と言うならば読者がその戦闘をイメージするのが容易な様にかくべきだと思う。
しかし本末転倒ながら戦闘シーンを心理描写に重きをおいて書く事が出来るの事と苦手な分野に挑戦するアティテュードは称賛しておく。
更なる精進を期待する。
ほ
保守
デスクも何考えてんだか。
今更ソレスタル・ビーイングの特集組んだって数字取れないっての。
特集したって答えは藪の中だし、当たり障りの無い事しか出来ねえっての。
視聴者は戦争関係のニュースなんて飽き飽きなのは視聴率が答えを出してる宇宙の法則世界の基本でしょ。
多分デスクは更迭されてお終いだよ。
ハイ、それまでよ。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラってなオチさ。
数字を取るならもっと魅力的な特集組まないと駄目だよ。
例えば、20世紀に流行ったロボットアニメ特集は手堅く数字を稼げるんだから。
同じ20世紀のアニメでも魔女が運送業したり豚がドッグファイトするのは駄目だよ。
魔女だったら魔女っ子の方がまだマシだし、豚だったらドッグファイトじゃなくてピッグファイトだよ。
全然駄目駄目のヘロヘロパッパだよ。
なんにせよ、くだらない特集になるのが目に浮かぶよ。 無駄金使って駄作をつくるならもっと有意義に金を使わないと駄目だよ。 俺がデスクだったら視聴率取れる特集組みまくりだよ。 20世紀最大のミステリーの『ジョンベネ事件』や『杉沢村』の特集組んじゃうよ。
三百年以上過ぎた今でも解決されて無いんだから凄いっての。
視聴者のハートをガッチリ掴んで離さない事間違いないね。
うさん臭い心霊捜査官やら怪しいプロファイリング捜査官を連れて来ればウハウハな程に数字が取れるんだから楽なもんだよ。
おっと忘れてた。無駄に暑苦しい謎の軍事コメンテーターも入れなきゃ駄目だった。
この三人が揃えば文殊の知恵どころの話じゃないよ。
後はプロ野球だって数字が取れる。
大昔は大リーグから助っ人を呼んでたけど今じゃ大リーグに助っ人に行く御時世だ。
伝説の珍プレーなんかの特集組んだらもう完璧だよ。
フライをヘディングするなんて有り得ねえっての。
とどのつまり俺が何を言いたいのかってえと、他局の女子アナだけど緑のカーディガンを着た眼鏡っ娘だけはガチってことさ。
アンタもそう思うだろ?
ようこそ。貴女みたいな魅力的な女性の取材を受ける事は弊社にとって非常に有益な事ですよ。
おっと失礼。私はこういうものです。
おやおや。恐縮ながら一言言わせて貰いますと、名刺の交換する時はもっと姿勢を良くしないと駄目です。
そうそう、そんな感じでないと駄目です。
おっと失礼。私、新入社員の教育等もやっておりますのでその癖が出てしまいました。
貴女の様な聡明な女性に出過ぎたような、差し出がましい事をして申し訳ありません。
えっ?決して社交辞令等ではございませんよ。
他社では無く弊社を取材する事を選択したがその証左ですよ。
星の数程ある企業の中から弊社を選んだ貴女の眼力には敬服いたしますよ。
私で良ければ何なりと質問に答えさせて頂きます。
ソレスタル・ビーイングについてですか?
それは私めよりも関連した省庁に尋ねるべきかと。
そうですか。弊社がジャパニーズビジネスマンを多数抱えているから御越しになったと。
御存じですか?ジャパニーズビジネスマンは今や絶滅希少種です。それを多数抱える企業がありましたら私共の方が教えて頂きたいのですよ。
もっとも弊社以外にあればの話ですが。
よろしいでしょう。若輩ではございますが、ジャパニーズビジネスマンのはしくれとして貴女の質問に答えさせて頂きます。
ソレスタルビーイングについては詳細をお話する訳には参りません。企業秘密ですので。
貴女も御存じの様にジャパニーズビジネスマンはこの世界でもっとも勤勉で忠誠心のある誇り高き民族です。
故に機密を漏洩する事は有り得ないのですよ。
私が言える事はただ一つ。ソレスタル・ビーイングは弊社に損害を与えたと言う事のみです。
弊社に損害を与えた以上、彼らは敵対企業となる可能性が大きいと個人的に思います。
長い通勤時間に耐えサービス残業を苦にせずひたすら会社の為に尽くす我々に損害を与えたのですから彼らには相応のペナルティを与える事になるかと。
我々には武力などございませんがビジネスという土俵ならば誰にも負けないとの自負が御座います。
世界中に散る弊社のジャパニーズビジネスマンに目の敵と狙われて無事な者は御座いません。
ええ。社訓として敵対する企業は根絶やしにするというものがありますので。
とどのつまり私が何を言いたいのかと申しますと、ジャパニーズビジネスマンを舐めるな、と。
そういう事なのです。
145 :
ひまじん:2007/12/08(土) 20:26:56 ID:???
今日は2本立てで投下。
explaration of personality “crime&karma”
世界は欺瞞に満ち溢れている。
全ての人間が自らの罪から目を逸して生きているのだ。
人類は罪と業を背負った存在である筈のに、それを知らずにいる事を私は許す事が出来ない。
人々は私の事をを狂っていると言うかも知れないが、私に言わせれば人類の罪と業に向き合う事をしない者の方が狂っている。
私は自分の狂気を自覚しているが、彼等は自分達の狂気を自覚する所か自分達が正気だと信じて疑いもしない。
一体誰が人類の正気を証明するのだろうか。
神か?
否、神などは人類の脆い心が作り出した幻想に過ぎない。それにすがりつく事は自分の喧伝する事に他ならない。
神が人を作り出したとでも言うのだろうか。人を作り出せるのは人でしかないのだ。
そう。かく言う私も人に作られた。
劣化コピー、デッドコピー、出来損ないの紛い物のクローンとして作られたのだ。
理想の人間を作り出すという下らない事の為に私という存在が作られた。
作る方はまだ良い。作り出したモノが失敗作であれば別のモノを作り出せば良いのだから。
しかし、失敗作として作り出されたモノはどうすれば良いというのだろうか。
失敗作であるが故に短い一生を静かに送れというのだろうか。
そんな事は御免だ。
私が失敗作であるという下らない理由で世界が私を拒絶すると言うのであれば、その様な世界など私が粛清する。
それは失敗作である私に与えられた唯一の権利だ。私は私の生命をもってその権利を履行する。
そこには何人たりとも介在する余地など存在しない。
もし介在出来る人間がいるとしたら、私と同じく失敗作として人に作り出されたあの少年くらいだ。
しかし、あの少年には数少ない私の親友がついている。
彼ならばあの少年を導く事が出来るだろう。彼にはそれだけの才能と誠実さがある。
耳を澄ませば破壊の序曲となるべきシンフォニックな戦場の音が聞こえる。
愉快だ。実に愉快だ。
失敗作に滅ぼされる世界の脆さに心の奥底から笑いが込み上げて来る。
ギル、君は知っているだろうか。君の友人は善良な人間である為に世界を滅ぼそうとしているのだよ。
投下終了
人稲
X運命とリバか・・・
なにが?
私はメイリンと水着を買いにとあるファッションセンターに着ている。
そのファッションセンターはALL試着OKという触れ込みな店だ。
そして私は今現在の状況を把握出来ないでいる。
まあ、あまり把握したくないから把握しないでいるのだけれど。
メイリンはお日様の様な忌々しい笑顔で私に水着を渡そうとしている。
私にそれを着ろとでもいうのだろうか。
その水着とは言うのが憚れる様なヒモみたいなモノを!
「お姉ちゃんならスタイルが良いから絶対に似合うよ?」
メイリンが放つ無言のプレッシャーは戦場ですら体験した事がないくらいの激しさで私を包み込む。
プレッシャーは空気を粘着質なものに変えて、私の肢体に纏わりつく様にへばり付いてくる。
全身にうっすらと嫌な汗が浮かび上がらされ、私は胎内から水分を略奪される様に不快感を覚える。
そりゃあ私はスタイルがいいから何でも着こなす自信があるけど、露出度の高い痴女みたいな水着なんてまっぴら御免よ。
「私にはその水着はちょっと似合わないかな。別の物だったら着ても良いんだけど」
口を開くと掠れた声が出た。口の中がカサカサと乾いている。
「うーん、残念。でも、これなら大丈夫でしょ」
メイリンが次に差し出して着たのは濃紺のワンピースタイプの水着だ。ハイレグ等ではない普通のシンプルな物だ。
ちょっとダサいけど、さっきの水着よりも遥かにマシな物だ。
私は水着を受け取ると試着スペースに入りカーテンを締めて着替えを始める。
テキパキと素早く、脱いだ衣服をきちんと丁寧にたたむ。
ザフトに入って有益なものがあったとしたら素早い着替えと服を綺麗にたためる様になった事だろう。
軍人は常に身だしなみをただし、身の回りを綺麗にしなければならない。
たとえその軍服が改造軍服であっても、だ。
着替え終わって備え付けの鏡を見ると、確かにダサい。
サイズが合っているのは流石にメイリンの見立てだな、だとは思う。
私の魅力が50%ダウンだ。いや、私の魅力でこのダサい水着の見栄えが120%アップしたかも。
「メイリン……どう? ちょっと地味だしダサいと思うんだけど?」
カーテンを開きメイリンに声を掛けるとメイリンも首を傾げている。
「確かに。ちょっと何かが物足りない様な……」
「でしょ?もっと別のが良いわ。……さっきのやつ以外で」
私がカーテンを閉めようとするとメイリンが呼び止めた。
「ちょっと待ってお姉ちゃん! コレが足りなかったのよ」
メイリンは何かを鞄から取り出して思いっきり強く水着に貼り付けた。と言うよりはみぞおちに良い角度で一発打ち込んで来た。
不意な一撃だったので私は避ける事も防ぐ事も出来ずに悶絶してしまう。
涙を浮かべながら立上がりメイリンに一言お小言を言ってやろうとすると、何故か複数の視線を感じた。
その視線がメイリンが貼り付けたものに向かっているので見てみると白い布に『3年2組 ルナマリア』と書かれている。
「ありがたやありがたや……」
私に向かい手を合わせて拝んでいるのはヨウランだ。
「ル、ルナのスク水……」
鼻血を出して鼻を押さえているのはシンで、私に向かい輝く様な笑顔でGJをしているのはヴィーノだ。
「衛生兵ー!」
大声を出しているのはメイリンで、その声を聞いてわらわらと人が集まって来た。
「ゼッケンの位置が微妙にずれていてなんとも言えぬ趣が御座いますな」
「黒を至上とする私の目を奪うとは流石で御座います」
「ひょうげた奴よ」
集まって来た奴等は口々に変な事を言っている。
なんなのこの羞恥プレイ。
いったい私にどうしろと?
続く?
153 :
ひまじん:2007/12/11(火) 22:22:36 ID:???
ひまじんのたねこれ投下終了。
真面目に書いたよ?
え、3年2組?それって俺のk(ry
とか思ったぜ、GJ
156 :
ひまじん:2007/12/11(火) 23:09:45 ID:???
>>155 え、新手のギャグ?
雑談所のひまじんだから移籍はしないよ?
>>156 あそこのスレは今は荒らしにアンチに目を付けられたりと大変なんで
そっとしておいて下さい。多分、それに何か仕掛けていようとしてる奴ですからスルーで
>>157 スカウトに失敗したからって人のせいにしなくて良いぞ。
このスレには真言氏や†氏といった総合女難スレを見限った職人がいるから誰も移籍しないと思うよ。
つか、総合女難スレなんて眼中にないw
159 :
通常の名無しさんの3倍:2007/12/12(水) 00:37:23 ID:FHSZn/9l
てのひらを、たいように
scene1 君と僕のうた(1)
昨夜窓を閉め忘れていたのだろうか、爽やかな朝の風が潮の香りを運んでくる。
潮騒に混じって聴こえてくるのはかもめの鳴き声。窓の向こうには青い空が果てしなく
広がっていて、更にその先にはぽつんと浮かんだ太陽が強烈な陽射しで生きとし生けるも
の全てに挨拶をしている。
僕――マーチン・ダコスタは未だにベッドの上でタオルケットにくるまって寝ている
隊長を尻目に、脱ぎ散らかしてある下着を拾った。隊長は眠りから醒める気配はまだまだ
無さそうだ。僕は下着を手にバスルームへと向かった。途中でキッチンに寄って赤い
ケトルを火に掛ける。お湯が沸く頃には隊長は起きて来るだろう。
脱衣所にある洗濯機に下着を放り込んで、僕はバスルームで熱いシャワーを浴び始めた。
昨晩に流した汗やら何やらが綺麗さっぱり流されて行く。体が本格的に目覚めて行く
ような気がするので、僕は朝のシャワーが好きなのだ。僕は深々と息を吐きながら
髪やら顔やら体やらを洗った。時間はさほど掛からない。軍人だった頃の名残なのだろう。
僕はバスルームから出ると丹念に体を拭く。髪は歩きながら拭けばいい。今日は休日だ。
髭は剃らなくてもいいだろう。隊長は僕には髭が似合わないと言うけれど、髭があれば
僕だってもう少しはましな風貌になると思うのだ。隊長と釣り合いが取れる位には。
ぼんやりと考えて事をしていると、不意に香ばしい香りが鼻孔をくすぐった。コーヒーの
香りだ。隊長が起きたのだろう。僕はバスタオルを腰に巻き直して寝室へと向かった。
果たして今日はどんなブレンドなのだろう。僕は味に無頓着な質だから、違いを聞かれても
上手く答える事が出来ない。第一、僕はブラックは苦手なのだ。隊長に合わせようと
頑張ってブラックで飲もうと努力するけれど、舌には苦味しか残らない。隊長はそんな
僕の姿を見て一抹の寂しさを含んだ表情を浮かべる。次の瞬間には大きく口を開けて
僕をからかうように豪快に男らしく笑うのだ。
僕にもう少し勇気があれば、と思う。自分の好みを隊長に遠慮なくぶつけられれば、
隊長と呼ぶのではなく名前で呼ぶ事が出来れば、僕達の関係は新しい第一歩を踏み
出せるのでは無いだろうか。セミダブルベッドで寝ている時に伝わってくる体温や、
微かに聴こえてくる寝息だけではない、確かな何かが芽生えるのではないかと僕は思うのだ。
てのひらを、たいように
scene1 君と僕のうた(2)
考えていても仕方がない。今は密やかな幸せを満喫すればいいのだ。
「おはようございます、隊長!」
僕は力強く寝室のドアを開けた。隊長は黒の厚手のパイル地のバスローブを羽織っていた。
ベッドの傍らにあるテーブルの上には幾つかのコーヒー豆の缶とコーヒーミルとサイフォン
が置いてある。マグカップは隊長は黄色に黒の虎模様で、僕のは何の変哲もない白い奴だ。
「おはよう、ダコスタ君。朝からシャワーかい?」
隊長は僕に視線を走らせると、屈託のない笑顔を浮かべた。続けて今日のコーヒー豆の
ブレンド比率やら何やらを熱心に喋り始めたが、僕はバスタオルを外し箪笥から
下着を出した。
僕は隊長のようなセンスは無いので、無地のヘンリーネックのTシャツにローライズの
ボクサーブリーフだ。色は白。赤銅色の僕の肌に映える色だ。サイズはジャストフィットで
鍛え上げられた筋肉がうっすらと浮かび上がって見える。僕のお気に入りの奴だ。
「じゃ、隊長のご自慢のブレンドのコーヒーを頂くとしますか」
僕はテーブルの上の自分のマグカップに手を伸ばした。礼儀として香りを楽しむように、
まず僕は鼻で大きく息を吸い込んだ。けれど、僕には違いが良く解らない。隊長に
申し訳無く思うけれど、キリマンジャロももコロンビアもブルーマウンテンも僕に
とってはただのコーヒー豆でしか無いのだ。
僕は恐る恐るマグカップを口元に運んだ。隊長は興味深そうに目を細めて僕の表情を
覗き込んでくる。味はやっぱり苦くて、美味しいとは思えなかった。
「どうだい、ダコスタ君。今日の味は特に自信があるんだよ」
「隊長! 僕は普通のコーヒーで充分ですよ。と言いますか、コーヒーはコーヒーです。
違いなんて解りません!」
テンプレート的な質問にはテンプレート的な返答。僕はいかにも生真面目に、けれど
機械的にはならないように注意して、真っ直ぐに隊長に向かい合いながらマグカップを
テーブルに置いた。部屋にかつんと硬質の音が響く。
隊長は小難しそうに顔をしかめ顎に手を当てながら、今日のブレンドの失敗の原因を
考え始めた。何やらぶつぶつと呟きながら僕の残したコーヒーを飲んだりもしている。
「さ、部屋を片付けるんで、飲み終わったら隊長もシャワー浴びてきて下さいね」
僕はいたたまれないような気分を振り払うように、僕はテキパキと掃除を始めた。
てのひらを、たいように
scene1 君と僕のうた(3)
「そうそう、ついでにタオルケットとバスタオルとシーツを持っていって下さいね。
洗濯機に放り込んで貰えれば、後は僕がやりますから」
いそいそとバスルームに向かおうとする隊長に追い討ちをかけるように、僕は隊長に
それらを投げ渡した。隊長はくたびれたように首を上下に振りながら、寝室を後にした。
全く家事って奴は簡単なのやら難しいのやら。隊長はコーヒーを淹れるしか出来ないので、
僕が家事を受け持っている。ハウスキーパーを雇えば楽なのかも知れないけれど、
僕は見知らぬ輩を家に入れるような事を余りしたくは無いのだ。
隊長は長風呂が好きだ。隊長が風呂から出る頃には家事は粗方終わるだろう。僕は
鼻歌を歌いながら掃除を始めた。一曲終わる毎に家事は片づいてゆく。食器は洗浄機に掛けて、
家の全ての窓を開け空気を入れ換えて、寝室に戻ってベッドメイキングをして。
最後に僕は隊長の着替えを手に脱衣所へと向かった。洗濯機のタイマーをセットすれば
全てが終わりだ。
「隊長、新しいバスタオルを置いておきました。使ったら洗濯機にお願いしますね」
隊長はくもりガラス越しに「んー」たが「あー」だか良く解らないようなくぐもった
返事を僕に返してきた。隊長はきっと昨夜の心地良い疲れでも癒やしているんだろうな
などと思っては、僕は照れくさいような嬉しいような気持ちがごちゃ混ぜになって、
思わず笑顔を隠し切れずにニヤニヤと笑いながら小躍りしながら脱衣所を後にした。
今日の予定は買い出しだ。僕達は細々とした日用雑貨やら食料品やらをまとめ買い
したり、本やら服やらを覗いたりするのだ。僕はリビングでそれらをリストアップし始めた。
家計は僕が預かっている。隊長にまかせてしまうと、コーヒー豆やら派手なアロハ
シャツやらを衝動買いしかねないのだ。締める所はきちんと締めておかないと、二人
暮らしはやって行けない。僕は溜め息を吐きながら広告とにらめっこし始めた。
「ダコスタ君、家事は終わったかい?」
隊長は僕の背後に回り、いきなり僕の肩に手を置いた。メモを覗き込んでいるのだろう、
隊長の息が僕の耳に吹きかかる。くすぐったくて声を上げそうになったが、僕は頑張って堪えた。
「見れば解るでしょう。今は買い物のリストを作っている所です。隊長は何か必要な
ものはありますか?」
てのひらを、たいように
scene1 君と僕のうた(4)
「欲しい物ねえ。コーヒー豆をそろそろ買い足したいし、新しい服も欲しいねえ。
そうそう、ダコスタ君も服を新調したらどうだい?」
隊長は僕からペンをスルリと奪うとメモにデカデカと『コーヒー豆 服』と書いた。
「ダメです!コーヒー豆はまだ沢山あるじゃないですか。それで充分です。それに
服だって沢山あります。これ以上はいりません」
僕は隊長からペンを奪い返すと、隊長の書いた字の上に二本棒線を引いた。全く
油断出来ないたらありゃしない。僕は肩を落として溜め息を吐いた。
「だから、ダコスタ君の服だ。君はいつも同じ服を着ているじゃないか。しかも地味な
モノトーンときている。たまにははじけてみるのも良いと思うんだがねえ」
隊長は顎髭を指でいじりながら、ソファーの背を跨いで僕の隣に座った。目を細めて
僕の顔を覗き込んで来る。僕と目が合うと、隊長はにいっと笑って僕の方を豪快に叩いた。
隊長は、ずるい。そんな顔をされてしまったら、僕はぼおっと見とれてしまって
冷静な判断が出来なくなってしまう。結局のところ、僕は隊長に負けっぱなしなのだ。
「……じゃ、隊長が僕の服を見立てて下さい。自分では無難な服を選んでしまいますから」
僕はなんだか気恥ずかしくなって、そっぽを向いてもごもごと呟いた。こんな気持ちは
久し振りだ。鼓動がばくばくと早まって顔が赤くなっているような気がして、隊長の
顔がきちんと見られない。
「決まりだな。今日の買い物は楽しみだよ、ダコスタ君」
隊長は笑いながらリビングを後にした。きっと出掛ける準備をするのだろう。
メモをまとめてから、僕も隊長の後を追った。
寝室では隊長がベッドにシャツやらジーンズやらハーフパンツを幾つも並べては、
腕組みをして眉をひそませ色々と思案している。僕はそんな隊長を後目に箪笥から
ブーツカットのジーンズと白と黒のラガーシャツを取り出した。長い間愛用している
お気に入りの奴だ。こなれてくたくたになっているが、僕はその風合いを至極気に
いっている。バッグは黒のメッセンジャーバッグ。これも使い込みすぎてボロボロだが
使い易くて非常に愛着がある。
隊長はと言えば、まだまだ決まらないようだった。僕にもこだわりがあるけれど、
隊長はこだわり過ぎるのだ。暇を潰そうと、僕は窓辺に立つと、ぼんやりと窓の向こうを
眺める事にした。
てのひらを、たいように
scene1 君と僕のうた(5)
青い空の彼方で、僕と隊長は世界を守る為に戦った。戦ったと言っても、僕は
MSに載ったりしていた訳では無い。だからだろうか、あの時の事は遠く儚い夢のような
物だと思っている。けれど、目の前で沢山の人が死んでいった事実だけは、今も僕の胸の奥深くに
刻み込まれている。
あのままプラント――ザフトに残る選択肢はあったのだけれど、それを捨ててオーブで
第二の人生はを始めようと思ったのは、色々な事に身も心も疲れていたからだと僕は
思う。ひょっとしたら地位が上がって行く隊長とぺーぺーな自分の差が広がって行くのを
目の当たりにするのが辛かったのかも知れない。とにかく、今までの自分をリセットしたかったのだ。
僕はザフトの頃に無駄遣いせずに溜め込んでいた貯金があったし、エターナルの
管理と言う名目でラクス・クラインからそれなりの報酬を貰っていた。オーブに
着いてから、僕は海の見える平屋の一軒家と中古の車を買った。家は長い間人が住んで
いなかったようで荒れ果てていたけれど、自分で所々補修した。何かに没頭していれば
隊長の事を思い出さずに済む。みるみるうちに家は綺麗になった。
白い壁に、緑の屋根。家具は落ち着きのある黒。カーテンは清潔感のある淡いブルーだ。
車庫には年式は古いけれど、ピカピカに磨き上げられているジープ。庭までは手が
回らなくて芝生は伸び気味だったけれど、僕はかなり満足していた。自分で作り上げた城だ。
まだまだ貯金は残っていた。僕は新しい人生を歩む為にカレッジに通い始めた。
ザフトの肩書きに頼らず、マーチン・ダコスタと言う只の男とになりたかったのだ。
それに、僕には夢があった。幼稚園の先生だ。僕はコーディネーター故、子供を作れない
だろう事と自覚していた。だから、子供の成長に携われる仕事に就きたかったのだ。
自分よりも年下の連中と机を並べて勉学に励むのは僕にとってエポックな出来事
だった。プラントでは階級主義が強くエリート意識が強い奴らが多かったけれど、
彼らは違う。瞳は未来を見据えて輝いていたし、何よりも自由で快活な雰囲気に満ち
溢れていた。僕の年齢に対するリスペクトは食事や飲みに行った時にだけという都合の
良さを持ち合わせていたが、僕はそんな無礼な礼儀正しさが嫌いではなかった。
僕はそんな生活の中で隊長の事を思い出す事はなくなって行った。
てのひらを、たいように
scene1 君と僕のうた(6)
今でも覚えている。風の強い夜だった。海風はごうごうと鳴り響き、遠くに雷の筋が
一筋走っていた。海のうねりは激しく、その黒さは夜の闇に溶けていた。
課題に頭を悩ませ四苦八苦していた頃、突然呼び鈴が鳴った。僕はこんな日に家に
来るなんて酔狂な輩がいるものだと思いながら、極めて普通に玄関を開けた。
「やあ、ダコスタ君。君が全く連絡を寄越さないものだから、ここに来るのに散々
迷ってしまったよ。君は律儀な性格だと思っていたが、それは僕の思い違いだったのかねえ」
そこには隊長が立っていた。両手にトランクを持ち、肩にはドラムバッグをたすき掛けに
して掛けている。
「た、隊長……」
余りの突然の来訪にぽかんとしていると、隊長はどかどかと家に上がり込んできた。
ソファーに荷物を投げ置くと、興味深げにリビングをあっちこっち眺めている。
「如何にも君らしい家だねえ。質素で無駄がない。遊び心に欠けるとも言うけれど、
悪くは無い。ダコスタ君は変わりがないようだ。良かった良かった」
隊長は満足げに頷いては楽しそうに大声で笑い始めた。
「いつオーブに来られたんですか?と言いますか、こちらへはどんな用件でいらっしゃった
のですか?」
「いつと聞かれれば、今日。何故と聞かれたら理由などないよ、ダコスタ君。それとも
君の顔が無性に見たくなったとでも言えばいいのかい?」
僕の疑問に答えるものの、曖昧な笑顔で僕を見詰める隊長の表情は何かを隠している
ような違和感があった。まるで、僕に秘密でレセップスでコーヒーを淹れた時のような。
「――プラントには君のような優秀な副官はいないし、僕がいなくても大丈夫のよう
だからねえ。僕もオーブへ来たという訳だ。プラントでは普通の生活には戻り難いし、
何よりも地に足を着いていたかったのだよ」
隊長はじっと僕の目を見据えている。先程までの笑顔はなく、非常に真剣な表情だ。
僕は目を逸らす事もせずに、ひたすら隊長の本心を推し量ろうとした。隊長は無茶苦茶な
無理難題を僕に押し付けて来るものの、基本的に嘘を付かない人だ。嘘を付いてないと言う事は――!
まあ、言葉半分に受け止めておこう。きっと、隊長は理由があってオーブに来て、
僕の家に寄ったのだろう。期待をしてはいけない。駄目なのだ。したら自分が傷付くだけだ。
そんな事は解り切っている。
てのひらを、たいように
scene1 君と僕のうた(7)
「ダコスタ君。何をぼんやりしているんだい?ひょっとして僕に見とれているのかね。」
不意に隊長に肩を叩かれ、僕は我に返った。
「隊長がここに来た日の事を思い出していただけです。ぼんやりしていた訳じゃありません」
振り返ると隊長はやっと着替え終えたようだった。蛍光オレンジのからだにピッタリと
したタンクトップにコバルトブルー地にごちゃごちゃと柄の入ったアロハシャツに
濃いグリーンのカーゴパンツ。足はスニーカーといった年相応ではないかなり若作りな格
好ではあったけれど、隊長の鍛え上げられた肉体には合っているように思えた。
「ダコスタ君は相変わらずだねえ。素材は悪くは無いのに、いつも同じような服ばかり
着ている。今日からは僕が服を見立ててあげるから安心したまえ。」
隊長は僕が見とれていると勘違いしたのか、嬉しそうに顔をくしゃくしゃにして
笑った。見とれていると言うよりも、びっくりして目が離せないだけなのだけれど、
僕は隊長を立てる為に何も言わなかった。いや、言わなくてはならない事がある。
「隊長、ここは土足厳禁です。靴は玄関で履いて下さい。」
「大丈夫だ。安心したまえ、ダコスタ君。この靴は今日卸したものだから汚れては
いない。それより、準備が出来たのだから早く買い物に行こうじゃないか。」
僕は隊長の言葉に溜め息を吐きながら窓の鍵を閉めた。家中の戸締まりを確認して
車へ向かうと、隊長が一足先に助手席に乗り込んでいた。いつもの事ながら運転する気は
さらさら無いらしい。僕は運転席に乗り込むと、軽快に車を発進させた。
窓を全開に開けると心地良い風が車内に入り込んでくる。カーラジオからは切なすぎる
バラードが流れてきた。
「うーん、これはドライブ中には相応しく無いな」
隊長がカーオーディオをいじると聞き慣れたテンポのいい音楽が流れ始めた。ミーア・
キャンベルの「EMOTION」だ。ミーア・キャンベルはラクス・クラインの名を騙った
としてダーティーなイメージがあるが、質の高い楽曲は再評価されており、今でも
オーブでは高い人気を誇っている。
シフトレバーを握る僕の手に隊長が手を重ねてきた。僕は極めて冷静を装いながら
シフトレバーから手を離し隊長の手を握り返し、隊長の鼻歌に僕の声をそっと重ねた。
ちらりと見た隊長の顔はちょっぴり赤らんでいるようだった。
長編に挑戦しようとしたら時間が掛かってしまって、先週は投下出来ませんでした。
チャットで虚空さんに美柚子の文章は無難だと言われてしまったのですが、
これから少しずつ成長出来ればいいな。
このお話はもうちょっと続きます。しばしお付き合い下さいませ。
自演荒らし帰れよ。
>>167 乙です。
虚空みたいな道端に転がっている犬の糞程度の職人の戯言に負けないで頑張って下さい。
>>167 虚空の文章は段取りやあらすじみたいだけれど、
美柚子さんは人物の魅力を書けていると思うんだ。
虚空が無難と言った理由は解らないけれど、俺は無難だとは思わないな。
つーか、虚空の戯言は気にしない方が良いんじゃないか?
美柚子さんが向上心を持つことは良いことだと思うんだ。
頑張って下さい。
書いてみたんで投下してみる。
レイと相手は名乗っていた。
「ちぃ!」
マシンガンをばら撒きつつ、シンは自機を後退させる。相手が隠れたその瞬間を狙い
、ビルの影に機体を滑り込ませる。悔しいが中距離での射撃戦はあちらに分がある。速
くて上手くて、ねちっこい。実に嫌な相手だ。
息を吐き出して、呼吸を整える。予想以上に振動がすごい。かかるGがこれほどとは
思わなかった。
それにしても、とシンは思う。
実際に機体を動かしてるのは本物の戦闘と同じ。練習機とはいえ、シンアスカが座っ
ているシートも、実際に動いているジンもヤキン・ドゥーエに参加していた本物の兵器
である。
実戦と違うのは僅かに三つ。マシンガンから実弾が出ないことと、接近戦用の剣がデ
ータ上でしかないこと。そしてOSが訓練用に変わっていること。
これは、直撃判定を受けた、あるいは与えた場合、自動的に機体を止めるという役割
を果たす。
もちろん、コンピューターのデータ上でしかない戦いと違って、危険を含む。毎年、
何十人という怪我人と、二人か三人の死者を出している、危険な訓練だ。
それは、シン・アスカも、その相手、レイ・ザ・バレルも承知の上だ。
実戦となんら変わりない。そこにあるのは本物の殺し合いだ。
小さく、息を吐いた。
武装を確認。マシンガンの弾数は僅かに三発。シンは接近戦を仕掛けることを決意、
武器を捨て、実剣を抜く。刃の部分がない柄だけのものだが、OSは重さも含めたシュミ
レートをしてくれるはずだ。
隠れた場所の予測は出来ている。ペダルを踏み込み、推進剤を運動エネルギーに変え
て、ビルとビルの隙間を縫うようにして、シンは駆ける。
捉えた。
こちらの様子を伺っていたジンを正面に捉える。予想以上に近い。この距離ならば、
撃たれる前に叩き切れる。
「うおおおおっ!」
飛び出る。
オートバランサーが悲鳴を上げるほどの加速をつけた大突撃。相手はこちらに気づい
ているが、この動きは予測できていないはずだ。数発は食らうだろうが、正面の装甲は
厚く、それだけでは沈まない。この加速力、その間に一薙ぎすれば確実に撃墜判定を出
せる。
勝った。
「ちぃ!」
デタラメな加速力故に、レイの目にはまるで突然現れたかのような錯覚すら受ける。
この距離、あの速度。マシンガンだけでは倒しきれない。
思い切りのいいパイロットだとレイは思う。ここで仕掛けてくるのは完全に意表を突
かれた。動いたと思った次の瞬間には、剣を振り上げ加速するジンがいた。見事だ。
だが。
シンの機体が迫る中、レイはどこまでも冷静だった。
回避も迎撃も不可能と判断、レイは機体をそのまま後ろに倒す。
大上段から切りかかるそれを、ギリギリで回避。
「っ!」
「……!」
倒れかかった機体をスラスターを吹かして無理やり起こす。僅かな距離を取りつつ、
マシンガンを構える。正面、たたらを踏むシンの機体。
ロック。
「やらせるかよっ!」
レイがトリガーに指をかけたのと、シンがペダルを踏んだのは同時。
先ほどの失いきれてない運動エネルギーに追い打ちをかける。スラスターが推進剤を
貪欲に飲み込み、まるで水平に飛行するかのようにシンは自機を加速させる。今度こそ
完全にオートバランサーが狂い、片足を地面に擦りつけながら、ジンが加速する。
後方に飛んだとはいえ、加速力に差がある。背中に噴出口がついている関係上、前に
進む方が早いのは当然。眼前に迫る恐怖に、本能がトリガーに指をかけていた。
まずい、と思う理性がそれを押しとどめた。ここで撃っても致命打にはなりえない。
あの突進はそんなものでは止まらない。正面からでは、押し負ける。
ならば、
「まだっ!」
スラスターの噴出方法を無理やり切り替えて、レイは上空へと飛んだ。
「なっ!?」
慌ててシンが実剣を振る。が、すでに遅い。レイ機の両足を切っただけに留まり、そ
のレイは空中でマシンガンを下に向けていた。間髪入れず標準すらつけず、トリガー。
轟音に近い電子音が、コックピット内に響く。
発射された三百の弾丸のうち、シンの機体に当たったのは僅かに五発。
その五発が致命打。シュミレーションエンジンが、弾がランドセルを突き破り、推進
剤に引火、爆発を宣言。コックピットを巻き込んで吹き飛んだ、とシンに伝えた。
状況終了。
レイ・ザ・バレルの勝ちだった。
「ふぃー」
「よう、シン。お疲れ。惜しかったな」
機体を降りた先にヨウランがいた。これからこの機体の整備訓練があるらしい。無茶
させて後々文句言われそうだな、とシンは思う。
「それにしても凄かったぜ。お前、才能あるよ」
「サンきゅ。けどなぁ、負けちまったし。正規パイロットになれるかどうか……」
「問題ないだろう。お前には才能がある。が、それよりも、」
振り向いた先にレイがいた。驚くヨウランを尻目に、レイは表情を崩さず、シンに手
を差し出した。
「えっ……?」
「凄い奴だ。俺はかかるGであんな思い切った動きは出来なかった」
それが、レイという奴なりの、相手の褒め方だと知るのはもう少し先。
今はただ、反射的に差し出してた手を、表情を変えないながらも満足げに握りしめる
レイの行動に呆然とするだけ。
「レイ・ザ・バレルだ。よろしく」
「あ、えっと。……シン。 シン・アスカだ」
アーモリーワン、夏。
天才と偉才の、それは友情の始まり。
保守
うん、やっぱり制服しかっ!!
この前は生き恥を晒してしまった。
スク水なんてはしたない姿を衆人の目に晒してしまった事は私のプライドが許さない。
今日はそのリベンジの為に再びファッションセンターにアベンジャーとしてやって来たのだ。
「ファッションセンターよ……。汚名返上の為に! 私は帰って来た!」
一人ごちる言葉に深い感慨が込めて、私は忌々しいあの場所へ威風堂堂と進軍する。
今の私は救国の聖なる乙女か滑稽なまでに勇壮な老騎士のどちらかだろう。
お供のメイリンは狂える青髭と間抜け間抜けなまでに忠実な従者のどちらだろうか。
多分どちらでもなくてトリックスターかトラブルメーカーだろう。しかも純粋無垢で悪気のない最悪のものに間違いない。
「お姉ちゃん、これなんてどう? お姉ちゃんはスタイルが良いから絶対に似合うよ!」
メイリンは私のプライドをくすぐりながら次々に服を探し出して来る。
「ねえ、少しは落ち着きなさいよ。服が逃げる訳でもないし」
メイリンのバイタリティーは姉でありザフトレッドである私を遥かに凌駕する。
そのバイタリティーをもっと別の方向に向ければ良いのにとも思うけど、それがメイリンがメイリンたる所以なのかも知れない。
「うーん、これはちょっと地味かな? これだとちょっと派手だし……。これはお姉ちゃんには清楚過ぎるかな?」
ちょっと待って。私には清楚過ぎるとはどういう事だろう。
私は活発で健康的な感じが魅力だけど、清楚なものが似合わないという言葉は許せない。
本気を出せば清楚な美少女になれるのだ。だってザフトの赤なのよ?
「メイリン、その服を貸しなさい。そっちの地味なやつじゃなくて清楚なやつ」
「え? でもこれは……」
「いいから私に渡しなさい」
私がメイリンに静かに宣告をすると、メイリンはブリキのゼンマイ仕掛けの人形の様にギクシャクとした動きで私に服を渡す。
見てなさいメイリン。貴女のお姉ちゃんには不可能という物がないのよ?
差し出された服をひったくる様に取り、私は試着スペースに入る。
素早く着替え、一分の隙のない様にキッチリと着る。
狭い中クルッとターンを決めるとスカートがフワリとなびいて私の持つ魅力を更に加速させてる。
でも、この服って……。
僅かな違和感を感じるけれど、それは多分私の勘違いだろうと思い込んで私はカーテンを開く。
「どう、似合ってるでしょ?」
私の姿を見たメイリンは瞳を輝かせて私をうっとりと見つめている。
「お似合いですわ……お姉様」
メイリンの口調がいつもと違うおかしなモノになっているけどそれも私の美貌のなせる業だろう。
美し過ぎるという事はそれだけで罪を問われてしまう物なのだ。
「ねえ、皆もそう思うでしょ?」
「おお、ルナマリアのセーラー服……ありがたやありがたや……」
何処からともなく現れたヨウランは手を合わせて私を拝む。
シンは私の姿を見ると鼻血を噴き出して卒倒する。
ヴィーノはカメラを取り出して私に向けてフラッシュをたいている。
「衛生兵ー!」
メイリンは倒れたシンに膝枕をして手を握り締めて看護しながら助けを呼ぶ。
えーと、私ってばもしかしてメイリンにポジション取られた?
メイリンの声を聞き付けた有象無象の野次馬が湧いて出て来た。
「ふむ。クラシカルな黒を基調としたセーラー服……。派手でも無く、かと言って地味に非ず」
「おお……ここに黒く侘びた世界が完成した」
「ちょっちゅね」
集まって来た奴等は口々に変な事を言っている。
いったい私にどうしろと?
「歌って踊ればいいんじゃない?」
振り向くと副艦長がもの凄く古ぼけたカセットデッキを持っている。
その表情はいつになく男前で凛々しいが、いつもの様に何処かが抜けてるオーラを放っている。
副艦長がスイッチを入れると何やら軽快なイントロが流れ始める。
私はしらけてしまったが、体は私の意思に反してその音楽に合わせて動き、歌い踊り始めてしまう。
「♪セーラー服を 脱がさないで♪」
副艦長はノリノリで黄色い声援をあげ、シン、ヨウラン、ヴィーノは信じられない程の濁声で私の名前を連呼している。
……なんでこうなるのかなぁ。新手の嫌がらせ? それともやっぱり羞恥プレイ?
……こんな生活いや!
183 :
ひまじん:2007/12/15(土) 18:57:21 ID:???
たねこれ 第二話 投下終了。
>>179 いや、別人っす。
MSの戦闘シーンを書いたことがなかったもんで練習がてらにやってみただけなんだ。
あと、亀レスですまん。
explaration of personality “the last winner”
どうやら俺を捉えた敵は俺を嬲り殺しにしたいらしい。 ジワリジワリと真綿で首を締める様に俺をいたぶった挙句の果てに殺したいらしい。
馬鹿が。俺の目的は時間を稼ぎだ。お前が俺を殺すのに時間をかければかける程大佐達が逃げる事が出来るんだ。
狂った様な戯言から敵が馬鹿だと言う事がひしひしと伝わってくる。
ある意味、その馬鹿さ加減が哀れに思える。
戦場でナマの感情を晒し、挙句の果てにそれによって自分の無能を派手に喧伝している。
声の感じからして少年の様だが、此処まで狂気の域に足を踏み込んでしまえば更生など出来ないだろう。
俺に対する罵声は更に続く。
母親や恋人の名前? 人生の走馬燈?
下らない。今の俺に見えるのは任務だけだ。今此処で俺が一番怖いのはお前が俺を素早く殺して大佐達を追う事だけだ。
お前は俺を嘲笑っているが、お前は俺に憐憫をかけられているのを知らないだろう。
俺は末席とは言っても人革連の兵士の一人だ。死ぬ覚悟は軍に入った時点で出来ている。
徐々に暑くなって来る。目の前の計器類が赤熱して行く。
そうだ。それで良い。俺を殺すのに時間をかけろ。もっと、もっとだ。
敵の嘲笑に合わせて俺は悲鳴を上げ、命乞いをする。
出来るだけ哀れに、不様に、耐え切れずに正気を失って狂ってしまった様に。
任務の為であれば全てをかなぐり捨てる。それが人革連の兵士としてのプライドであり矜持だ。
敵はまだ俺にとどめを指さないでいる。
お前は勝ったと思っているのかも知れない。確かに今回の作戦は失敗したが、お前の負けだ。
勝ったのは俺だ。俺は死ぬだろうが二人を逃がす事が出来た。その事実が俺にとっての最後の栄光であり勝利だ。
いつか誰かがお前を討ち倒す為の礎となれればそれで本望だ。
……大佐、少尉。後の事は頼みます。決して自分の仇を討とうとはしないで下さい。怒りは切っ先を鈍らせます。
捨て駒は捨て駒としての義務を果たしました。自分は大佐が大佐の義務を果たす事を望みます。
殺人の快楽に溺れた負け犬……いや、狂犬よ、さらばだ。地獄でお前が来るのを待っている。
投下終了ー。
題名なしで前に投下しちゃったけどやっぱりあった方がいいですか?
悪魔城ドラキュラ 00 刹那の夜想曲
#1 1/2
月さえも姿を見せる事の無い夜。欧州の小国の深き黒い森で変わった風体の二人の男が厳かに祈りを捧げている。
一人は豪奢な装飾の時代がかった衣装に身を包み、もう一人は無残にもボロボロなってしまっている漆黒のローブに身を包んでいる。
総じて二人の顔からは生気を感じる事が困難である。否、言うなれば生気よりも死臭という物の方を感じる方が容易であるのかも知れない。
現に二人の肌は死人の様にくすんで青白く血色がない。更に二人の醸し出す雰囲気は人の放つそれではなく何か別の物である。
「……時は来たれり。憤怒、憎悪……人の持つ負の感情は世界は満ち溢れている」
澄んだ張りのある声が周囲に響き渡る。
「……我が主の復活の時が来た。世界は光ではなく闇に包まれてこそ美しい」
しゃがわれた声が追従すると森に住う全ての物が歓喜の咆哮を上げる。
その声は天に届き地に響く。大地はそれに呼応して鳴動を始め、天は裂けて暗雲が森を包む。
漆黒の中で森は生物の様に蠢き始め、二人の男の祈祷によって統一された意思を持ち一つの城郭を形成する。
暗雲が霧散すると天に赤い満月が姿を現す。 禍々しい月明りが照らし出す城の姿は絢爛にして妖艶であり、見る者全てを妖しく魅了して誘う。
その端麗な美しさと漂う妖気はこの世の物ではない。この世に満ち溢れる人の負の感情によって顕現し、邪悪なる意思によって復活を遂げたその城の名は悪魔城という。
ソレスタル・ビーイングによる武力介入という未曾有の混乱の中で、変革の時を迎えた世界を黒き闇に包む為にこの城が姿を現す事となったのは決して偶発的なものではない。
ソレスタル・ビーイングの撒き散らす死の宴が悪魔城の復活となった引き金であったと言える。
事実、ソレスタル・ビーイングに対する怨嗟の声が世界を包んでいるのだ。
時として運命の悪戯は人の意思などでは予測もつかない方へと転がる事がある。その証左として悪魔城が顕現したのだ。
今此所に世界の運命を握るのはソレスタル・ビーイングから悪魔城の城主、ドラキュラ・ヴラド・ツェペシュへと変わった。
その事実は人類を更なる混沌に誘うには充分な事であった。
#1 2/2
悪魔城の復活に対して一番最初に反応したのはヴァチカンだった。
カトリックの総本山が誰よりも早く反応するのは当然であれば当然であるのだが、悲しい事にヴァチカンには対応する手立てが存在しなかった。
否、手立てがない訳ではないのだがヴァンパイア・ハンターとして現存する唯一の一族、ベルモンド家の当主はソレスタル・ビーイングの振り撒いた災厄により行方が分からないのだ。
更には幾度となく魔王ドラキュラの復活を阻止して来たドラキュラの息子、アーカードも21世紀初頭からその行方は愚か存在すらも確認されていない。
ローマ法皇自らドラキュラ討滅に征くという考えもなされたが、万が一の事を考えるとそのプランは却下された。
ヴァチカンから連絡を受けたAEUはその事実をなんの根拠のない戯言として黙殺した。
ただし、ヴァチカンに対する義理立てという事で軍のエースであるパトリック・コーラサワーを中心に精鋭を集結させて先遣部隊を組織した。
当然AEUが精鋭部隊を集めているという事をソレスタル・ビーイングは察知した。
スメラギ・李・ノリエガは情報の少なさに難色を示したが、予てから彼女の能力に疑問を抱いていたティエリア・アーデの具申によりガンダムマイスターの派遣が決定した。
それは混乱の責任は混乱を引き起こした張本人が負うべきだと世界が選択したのかも知れない。
今此処に全ての物語が動き始めた。
先遣部隊隊長パトリック・コーラサワーの未帰還はその物語の序曲、未曾有の恐怖を知らしめる交響曲の演奏が世界に響き渡る事を告げる狼煙となったのかも知れない。
to be continued
まだ駆け出しの職人モドキという事で投下させて貰いました。
第12話 前半を投下します。
今回11レス分になりますので、17日中にまず前半の前半を、
日付が変わりましたら、前半の後半を投下させていただきます。
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜
第12話 「捕捉 −ひきがね−」(前編)
(1/11)
「熱紋確認。一時の方向、数二十。モビルスーツです。機種特定、地球連合軍ダガーL、ウィンダム」
バートの報告にタリアは唇の端に不敵な笑みを浮かべた。
何とか間に合ったらしい。
もう半日遅れていたら、この三倍の敵が布陣を済ませていた筈だ。
そうなっていれば例え彼らの助けがあったとしても、このダーダネルス海域は地球連合軍の勢力下に
入っていただろう。
コンディション・レッドは既に発令済みだ。パイロットは各自のMS内で待機している。
「ダブル・アルファの位置は?」
「二十分前の定期報告では予定通りでした」
「そう。ありがとう」
ならば多分問題はないだろう。
「セイバー、インパルス発進。離水上昇、取り舵十!」
タリアの言葉にブリッジ要員達の表情になお一層の緊迫が過ぎった。
相次いで出撃した二機を連合軍艦からのミサイルが驟雨の如く迎える。
インパルスがその間隙を潜り抜け、セイバーが薙ぎ払う。
アスランはもとよりオーブ沖の海戦以来、シンの成長も目覚しい。
十倍もの彼我の差をものともせず、二機は先陣としての役目を充分に果たしていた。
──今が好機かしらね。
地球軍のMSはミネルバへの攻撃どころか、足止めされた上、その数を減する一方だ。
「ルナマリア、準備いいわね」
タリアが呼び掛けるとすぐに『大丈夫です』と返答があった。
声がいささか緊張しているようだが、それは仕方ないだろう。
「アスランとシンのおかげでミネルバの周囲にMSはいないわ。すぐに出て頂戴」
これはルナマリアだけでなく、メイリンにも向けた言葉だ。
二人から同時に了承の声があがる。
ルナマリアの報告ではムラサメでの近接戦闘には不安があるという。
本来ならばルナマリアの発進はダブル・アルファとの合流を果たした後の予定だが、この状況が
それまで続くとは限らない。
自由に動ける余裕のあるうちに発進させ、状況が危うくなったら帰投させてザクに乗り換えればいい。
タリアはそう判断した。
(2/11)
「ルナマリア機、ムラサメ、発進どうぞ」
──お姉ちゃん、気をつけて。
発進したムラサメの背中にメイリンは心の中で呼び掛けた。
地球上での初めての空中戦。乗り慣れない機体。
姉のザフトレッドとしての能力は信じていても、何故か胸の中が冷たくざわざわと落ち着かない。
「ルナマリア機は艦から離れすぎないように注意して。慣れない機体だって事、忘れないで」
タリアの声にメイリンは思わずモニターから目を離し、声の主を振り返った。
対してタリアはメインモニターから視線を外さず、次の命を口にする。
「メイリン、ルナマリア機はしっかり捕捉しておいて。何かあったらシンかアスランにフォローを頼んで」
メイリンは一瞬瞠目した後、「はいっ」と短く返す。
胸の不安はまだ消えていない。
けれど。
その気持ちに蓋をして、メイリンもまた頬に笑みを浮かべた。
(3/11)
一方、『ムラサメ』がミネルバより発進したという報告にネオは愁眉を寄せた。
アーモリーワン以降ネオとミネルバは、宇宙では追われる側であり、地球に降りてからは逆に
ミネルバを追う立場だ。
因縁浅からぬ、と言っても良いだろう。
ミネルバがディオキアで補給を受けたとは聞いているが、流石に新装備情報の入手など不可能だ。
実際インド洋では予想外の新型機に振り回され、完敗を喫した。
しかも今回の新装備機が『ムラサメ』だという。
オーブ連合首長国はその代表首長の拉致直後に宣言された通り、現在も中立の立場を保持している。
そのオーブの最新鋭機がザフトに配備されているとなると、その裏側にあるものを勘繰らざるを得ない。
「九時の方向にアンノウン艦出現!」
「出現? 見落としか?」
索敵担当の報告に、ネオは眉間の皺を更に深めた。
「いえ、それが突然現れたとしか……」
そんな筈があるか、と怒声を上げかけたネオの耳に別の艦からの同じ報告が届いた。
「アンノウン艦のクラスは?」
索敵担当に問い掛けながらネオは考える。
こちらに何の連絡もないのだ、まず確実に敵艦だろう。
突然の出現という謎は残るが、今はその謎を解く時間はない。
ミネルバといい今度といい、MSだけでなく戦艦まで次々と新型を投入してくるとは、ザフトも
案外準備が良いようだ。
「艦影は約四百メートル。ミネルバより一回り大き……あ」
索敵担当の報告が不自然に途切れた。が、ネオが視線を向ける前に報告が続行された。
「ア、アンノウンよりMS二機が発進。…………え?」
「どうした、報告続けろ!」
再び途切れた声の主に気合を入れさせる意味も込めて、ネオは声を荒げた。
「はいっ。熱紋照合で……フリーダムとムラサメだと……」
「はぁ!?」
思わず返した素っ頓狂な自身の声にネオは刹那、仮面の下で苦笑した。
これでは索敵担当を責められないな、と内省する。
しかし、そのネオの声音を更なる叱咤と受け取ったのか、索敵担当は明確に宣言した。
「間違いありませんっ。 フリーダムとムラサメです!」
「ムラサメはともかく……フリーダム?」
艦橋に小さなざわめきが生じた。その声は低く小さいが、乗員の動揺はそれに比してはいないようだ。
(4/11)
「あんな前世代の遺物で今更何をしようってんだか。なぁ艦長?」
ネオはあからさまにフリーダムを馬鹿にした物言いをした。
ネオはヤキンの経験者だ。そのヤキン戦役で命に関わる重症を負い、それ以来仮面生活だ。
だが、ネオはフリーダムとは直接対峙はしていない。
しかし、その「伝説」だけは耳にしていた。
その知らぬ者がいない伝説の機体が、敵として登場した。
乗員の動揺は手に取るように分かる。むしろこの程度でおさまっている事に感心する。
だからこそネオは、あえてフリーダムを過小評価してみせた。
ネオ自身は、フリーダムの伝説など誇張されたものであると思っている。
確かに『フリーダム』が墜としたというMSの数は話半分だとしてもかなりのものだ。
だが、そのフリーダムも結局は何者かに破壊されているのだ。決して無敵なわけではない。
しかもMSの強さは、機体性能それだけではない。
それ以上にパイロットの技量が物を言う。
「伝説の機体」そのものである筈がなく、またパイロットも同一人物でない可能性がある以上、
必要以上に恐れていても仕方がない。
無論、口にしたほど軽視している訳でもないが。
だから、
「まったく、その通りですな。ロアノーク大佐」
と、J.P.ジョーンズの艦長が同意した事に、内心で心底驚いた。
短い付き合いではあるが、彼の性格は実直でどちらかというと堅物だ。ネオの意見に対し、もっと
慎重になれ、と進言されるのを覚悟していたのだが。
顔は動かさず艦長に視線を送ると、彼は微かに顎を引いて頷いた。
仮面のネオの目線など分かる筈もないというのに、何故だか彼はネオと視線を合わせていることを
確信しているようだ。
しかも心強いことに、彼もネオと同意見らしい。
「一個小隊をアンノウンとMSに向かわせろ。D.アルガとP.A.ルキアもだ。対応に廻せ」
「了解!」
ネオと艦長の小芝居に騙されてくれたのか、艦橋が再び落ち着きを取り戻す。
それにしても『ムラサメ』がザフトに配備されている事といい、新型艦やフリーダムの出現といい、
今回の戦闘には突発事態が多すぎる。
全てがこちらの予定通りに進む闘いなど在り得ない。
それでも出来うる限りの事態を予測し、時々に発生するその予測を超えた突発事態に上手く対処する
ことこそ、指揮官に求められる技量だとネオは思っている。
そして自分にはそれなりに上手くやれるという自負もあった。
しかし、今度の戦いでは何故かそんな自信など欠片も残さず喪失したような気持ちになっていた。
だが、そんな様子はそれこそ微塵も見せぬように振舞わねばならない。
(5/11)
奇妙な焦燥感につき動かされ、ネオは三機のGの位置を確認した。
海上戦には向かないガイアは陸地近くにいる。カオスはセイバーと交戦中だ。前回の雪辱を晴らす
つもりだろう。
「アビスの位置は!? こちらへ戻らせろっ!!」
前回のインド洋とは異なり、空中戦が主となる今回はアビスの出番はそう多くはないだろう。
上手くミネルバの真下にでも入り込めない限り、致命打は難しい。
アビスは一旦戻らせて、様子を見がてらアンノウンへ廻そう。
「ロアノーク大佐!」
そんな事を考えていたネオを索敵担当が引きつった声で呼んだ。
「い、一個小隊、全滅ですっ」
「全滅だと!?」
愕然とした思いでネオは索敵担当を見やる。
早い。早すぎる。一個小隊をアンノウンに向かわせてからまだ五分と経っていない。
「二機は撃墜、残りは武装を解除され帰投中です」
「武装を解除? なんだそりゃ」
「詳細を報告しろっ!」
思わぬ追加報告に呆然と声を漏らすネオとは対照的に、艦長は怒声を上げた。
しかしその返答を聞くより早く別の報告があがる。
「フリーダム、接近!」
「対空砲、照準、接近する敵MS。てぇーっ!!」
やや慌てた口調ながら、艦長が迎撃を指示する。
レーダーを確認したネオはフリーダムが目視できる位置にあることを見て、窓の外に視線を転じた。
J.P.ジョーンズも含めた周囲の艦からフリーダムへと何十ものミサイルが放たれた。
全部ではないにしろ、何割かは確実に当たる。
そう確信したネオの目線の先で、フリーダムから幾条もの光が同時に伸びる。
「何っ!?」
光条の一本一本の通り道に当たったミサイルがオレンジの小花に変わる。
その小さな炎はすぐに周囲のミサイルの誘爆し、仕掛け花火のように次々と炎の花を咲かせた。
(6/11)
──やったのか?
炎と煙のため、ネオの位置からはフリーダムが確認できない。
が、その中からフリーダムが、まるで煙を足場にしたかのように真上に飛び上がった。
フリーダムは先程まで自分のいた場所に向けて、頭部機関砲を撃った。
本来ならばとどめとなる筈だった、僅かに遅れて発射されたミサイルが全て炎と煙に変わる。
突然、その炎の中からフリーダムと同じ軌跡で一機のダガーLが飛び出した。
爆煙に紛れて近づいたのだろう。遠方から見ていたネオにすら気づかなかったその機体にフリーダムは
気づいていただろうか?
果たしてフリーダムはスラスターを数秒全開にして前方へ水平移動。
スラスターをオフにした後も惰性でわずかに下降しながら移動を続ける機体がくるりと反転。ビーム
ライフルがダガーLに発射されるのと同時にスラスターが再点火され、フリーダムは急上昇する。
フリーダムが放ったビームはダガーLのライフルのみを貫いた。
だが、それ以上の追撃はせぬままフリーダムはネオの視界から消える。
「そういうことかよっ!」
先刻の報告にあった「武装を解除された」の意味を理解して、ネオは苛立った口調で呟いた。
小声ではあったがしんと静まった艦橋に存外に響き、衆目を集める。
しかしネオはそれに気づかず、何事かを深く思案していた。
(7/11)
それは、偶然だった。
シンが視線を転じた先にいた三機のウィンダム。
何かを狙っているのか、シンに背を向けていた。
反射的に身体が動いた。
ビームライフルを右端の機体に向ける。
しかし、トリガーを引く前に、その機体が火を噴いた。
一箇所は頭部、もう一箇所は右のマニピュレータの辺りで。
シンが目を瞠る間に、後の二機も同じ運命を辿る。
──何だ? 何があった?
三機のウィンダムは、微妙にスムースと言い難い動きで戦列を離れ始める。
機体が向きを変えたため、シンは三機が右腕ごと武装──ビームライフルを失っていることを知った。
またその頭部も醜くひしゃげていて、少なくともメインカメラは機能していない事が分かる。
その瞬間、シンは悟った。
何かが、瞬く程の時間で三機の戦闘力を奪ったのだ、と。
ふと、三機の動きが乱れた。
耳が捉えた小さな電子音で、シンは自分がその内の一機にロックオンしていることに気づいた。
無自覚の反応だった。
もう少し気づかずにいたのなら、その一機は撃墜していた筈だった。
が、気づいてしまった今、シンはトリガーを引く事に強い躊躇いを覚えた。
今は戦時下で、しかも戦闘中だ。
相手が戦闘力を失っていたとしても、それを背中から撃ったとしても、誰も咎めたりはしない。
逆にここで見逃せば、いつか仲間の誰かが撃たれることになるかもしれない。
だが、それでもシンはトリガーを引けなかった。
「くそっ」
シンはウィンダムから視線を引き剥がした。
口から漏れた罵りの言葉がはたして誰に向けたものなのか。シンには分からなかった。
肩に、背中に、両腕に、力が入っている。
軽い深呼吸で力を抜こう。
そう思った瞬間だった。
ビーッ、ビーッ。
コックピットにアラートが鳴り響く。
──ロックオンされた!?
氷水を掛けられたように背筋が粟立つ。
突然の事に、何処から狙われているのか分からない。
とにかく動こうにも不自然に力の入った全身がいうことを聞かない。
一秒の何分の一かの時間の後、モニターの端にこちらにライフルを向けたウィンダムを見つけた。
銃口の中の光が膨れ上がったように見えた。
シンの脳裏に「死」の一文字が浮かぶ。
(8/11)
刹那、インパルスの横を何かが通り抜けた。
感じる筈のない風を頬に感じた。
「何か」がインパルスの前に立ちはだかる。
その何かの直前で光が拡散する。
眩しいのと逆光の為、シンは目の前のものを判別できない。
光が治まるのと同時に「何か」はインパルスから離れ、ウィンダムへ向かった。
尋常ではない速度でウィンダムの横をすり抜ける。
呆然と見やるシンの目に、武装とメインカメラを破壊されたウィンダムが映る。
まさに目にも留まらぬ速さでウィンダムの戦闘力を排除した「何か」は、もうどこにもいない。
シンの心が高揚感で満たされた。
助かったという安堵。
そして記憶に新しい、ユニウスでアスランの動きを見た時と同じ昂り。
しかし。
──アレハ、誰ダ?
唐突な疑問が頭をよぎる。
コンマ何秒かしか目撃できなかったその「何か」の機体色はインパルスと同じトリコロール。
そして、背の蒼翼。
シンは答えを知っていた。
「フリーダム……」
その名を呟き、シンは唇を噛みしめた。
先程まで通常だった呼吸が徐々に荒くなる。
頭の中に、身体の中に、何かが黒煙の如く湧き上がってくる。
それが全身を満たし、爪先に達した瞬間。
「うおおぉぉっ!」
インパルスもまた急加速でウィンダムに迫る。
回避するウィンダムの動きがぎこちないのはメインカメラを破壊されている為だろう。
僚機を守るかのように二機のダガーLが立ち塞がった。
「そこをどけぇっ!」
敵機に聞こえる筈もない叫びと共に、右腕を一閃、二閃。
ダガーLの間を抜けた直後に、背後でオレンジの炎が広がった。
炎に後押しされたように更に加速して、インパルスはウィンダムに追いついた。
ウィンダムも最大速のようだがそれでもインパルスを振り切れないのは機体の差か、それとも。
「でやあぁぁぁっ!!」
インパルスは右腕を上げて一気に振り下ろす。
ウィンダムが斜めに両断され、一拍おいて爆散した。
(9/11)
その破片が当たったのか、小さなコンッという音でシンは我に返った。
機体の限界ギリギリの加速とそれに伴うGによる疲労で全身にじっとりと汗をかいている。
インパルスはライフルではなくビームサーベルを握っていた。
何時の間に持ち替えたのか、シンには記憶がない。
分かっているのは、それでウィンダムを一機墜としたことだけだ。
右手が──右手だけが震えていた。力を入れすぎたのか拳が白い。
──俺が墜とした? 武器を持たない相手を?
誰も──レイもルナもメイリンでさえも咎めたりはしない。
それは分かっていた。
戦争だから。ミネルバの、いや、ザフトの誰一人としてシンを咎めたりはしない。
もしシンを責める人間がいたらそれは地球軍か、またはどこか安全な場所にいる傍観者だろう。
それは分かっていた。
しかしシンは撃てなかったのだ。同じ状況にあった三機のウィンダムを。
撃てなかった三機と斬り捨てた一機。その違いは何処にあったのか?
シンに銃を向けたか、向けなかったか。
それが理由ではない事をシンは悟っていた。
──八つ当たりだ。
両親を、マユを殺したフリーダム。
その機体に助けられた自分。そして安堵感。
MSデッキで一目見て体中の血液が沸騰したように感じたというのに。
その洗練された動きに魅了された。
相反する二つの感情を、ウィンダムに叩きつけた。
それだけの事だとシンは理解していた。
「くっそぉっ!!」
シンは震える右手を振り上げた。
だが、狭いコックピット内にその拳を叩きつけられる場所はない。
しかし、たった一つだけシンは拳を振り下ろせる場所を見つけた。
シンはもう一度レバーを握り、インパルスを反転させ戦場へと戻る。
拳を振り下ろすべき真の相手と対峙する為に。
(10/11)
戦場の中、たった一機のMSを見つけるのは困難かと思っていた。
が、シンはすぐにそれを視認できる位置につけた。
考えてみれば簡単なことだ。
あれが敵機を撃墜せず武装だけを奪うのならば、敵機の離脱が多い所にいる筈だ。
その読みが当たっていた。
フリーダムはガイア・アビスと戦っていた。更に二機のウィンダムがその周囲にいる。
さしものフリーダムもG二機プラスアルファが相手では今までと同様には動けないらしい。
地球軍も陸のガイア、海のアビス、空のウィンダムとそれぞれが連携した動きを見せている。
シンはその様子をただ見ていた。
怒りに任せてここまで来たが、現在のフリーダムは味方機で攻撃してはならないのだ、と考えるだけの
余裕がまだあった。
しかし、フリーダムの援護をする気にはなれない。
──何であんたは俺にあんな事をさせたんだ。
理不尽な憎しみが心中に渦巻いている。
その場所に辿り着くまで、シンは出会う敵機をすべて墜としてきた。
武装の有無など確認すらしなかった。
無意識の内に先刻の行為を忘れようとしていたのかもしれない。
と、フリーダムが空に向けてビームライフルを二撃した。
小さなオレンジの炎が立ち上り、一機のウィンダムが武装解除される。
そのウィンダムが離脱すると、すぐに新たなダガーLがフリーダムに攻撃を仕掛けた。
フリーダムを取り巻く状況は変わっていない。
だが、シンはその光景に強い衝撃を受けていた。
一対四の状況で、なおも武装のみを狙えるその技量。
──何で。どうして。
それほどの腕を持ちながら。
──何であんたは俺の家族を撃ったんだ?
心臓がまるで喉元にあるかのように大きく脈打っている。
まったく動きを見せないインパルスに別のダガーLが迫り寄る。
視線はフリーダムに固定したまま、シンはダガーLにライフルを向けた。
光条は吸い込まれるようにダガーLを貫く。
今、シンの感覚は異常なほど研ぎ澄まされていた。
視線など向けなくとも、周囲の全てが手に取るように分かる。
しかしシンはそれを意識してはいなかった。
シンのそれはフリーダムのみに向けられている。
またも一機のウィンダムが上方からインパルスを狙った。
インパルスは最小限の動きでビームを避け、また最小限の動きでウィンダムを撃墜する。
炎の華となったウィンダムの破片がインパルスに降りかかる。
何か大きなものが落ちてきた。
何故かシンはそれを避けずに受け止めた。
なんとなく受け止めたそれに視線を転じる。
(11/11)
どくん、と心臓が更に大きく一度だけ脈打つ。
目が見開かれる。
何処かから少女の声が聞こえた。
耳に馴染んだ筈の管制士の声が、マユの声に聞こえた。
のろのろともう一度フリーダムに視線を戻す。
どくん、と、心臓がもう一度脈打った。
インパルスとフリーダムを結ぶ直線のその向こうに、一機のウィンダムが見えた。
インパルスは手にした攻盾のヴュルガーSA10をウィンダムに向けた。
「おい、避けろよっ!」
そう口走りながら、同時に引き鉄を引く。
シンの声が聞こえたのか蒼翼の機体は一瞬だけ動きを止めたが、直ぐにまるでステップを踏むように
左へ小さくずれる。
その向こうのウィンダムもまた真正面のインパルスに気づき、大きく上昇する。
強く脈打っていたシンの心臓が凍りついた。
このまま時間も凍れと、願った。
上昇回避したウィンダムのその向こう。
シンの視線のその先。
ろくに狙いもつけなかったのに。
インパルスの放ったミサイルは一直線に突き進む。
臙脂とくすんだ白の機体に向かって。
それは、偶然だった。
>河弥氏
投下乙
D.アルガとP.A.ルキア に吹いた
てか、元ネタがわかる奴が何人このスレにいるんだ?
>>河弥氏
分からないので調べたらポケモンですかw
相変わらず次回楽しみな展開GJ!
>>河弥さん
投下乙です。GJでした。
ミネルバから飛び出したムラサメへの疑惑、伝説のフリーダムを前にした
ネオと艦長の言葉にしないチームワーク、そしてシンの迷いと次回に繋がる
絶妙の引き。最初から最後までスラスラと読み進めることが出来ました。
もう一度GJです。続きをお待ちしております。
>>鬼畜さん
投下乙です。
クロス元はわけがわかりませんが、ファンタジー系における陰謀の始まりの
テンプレートを使ってダブルオー世界に持ち込む辺りが面白いと思いました。
とてつもなく大真面目に吸血鬼対キリスト教と、CBが出てくるギャップに
続きを期待させて頂きます。
>>真言さん
投下乙です。
>>the last winner
ミン中尉の死に様に軍人の、ある種の理想像を感じました。
アニメ本編を見た限りでは、死の間際の本心は確実には判断できませんが、
こういった解釈もありだとは思います。
>>ひまじんさん
投下乙です。
>>うん、やっぱり水着しか!! うん、やっぱりセーラー服しか!!
最早何も言えなくなってしまいました。
着るまで気付かないルナマリアに、「To LOVEる」の香りを覚えます。
>>美柚子さん
てのひらをたいように、投下乙です。
相変わらずカフェイン中毒の隊長と珈琲音痴のダコスタ。
描写が少々妖しいのは、まあ個性と言う事で。
>>とめさん
河弥さん投下記念と言う事で、単行本のあおり文句を適当に一つ。
「蒼い翼を包む手は無く、傷ついた少年を憤怒の瞳が睨む。
そこは怒りと憎しみの連鎖が今なお続く、歌姫のいない世界」
6/
――ミネルバ
ボギーワンの加護を受けた四つの巨影は、虫取り網を回避するカトンボよろしく
弾幕を抜けて肉薄するとミネルバ迎撃半径ぎりぎりで、各二発の影を放出した。
「敵機ミサイル放出、数八! 衝突まであと十秒!」
モビルスーツはミサイルと逆方向に転進し、対応に追われる艦橋は慌しい。
「下降角二十、面舵一坏。めいいっぱい踊らせなさい、出来るわねマリク!
ミサイルに左舷を向けるわ、アーサー!」
二手に分かれた敵は、迎撃能力を集中させ順番に破壊するのがセオリーとされて居る。
「AMM放出早くしろよ。CIWS全開……調子悪いだと? 早く起こせ、逆弦からMSだぞ!
AB爆雷を右舷に。五番から九番に迎撃ディスパール装填。……そうだ、扇形にばらまけ。
密度よりも広さだ!」
姿も朧な幻影の船という難敵に加え、ミサイルは速くMSは機敏に動く。
教科書どおりの迎撃では、三手の後に敵の主砲が艦橋を射抜くのが必定。
あえてセオリーを外し、艦首を敵艦に向けたまま同時に迎撃するという即断は、
新造艦の性能とクルーの技量を信じていなくては出来ない。
"知恵の女神"を狙う敵には、長大な艦隊が身を捻りつつ大小数十のカケラを
宇宙に送り出す様が見えただろう。原始的な化学推進の煙を吹くダース単位の
きらめきが、AMM――アンチ・ミサイル・ミサイルだ。
数キロ立法の狭い空間に数十個――濃密を越え過密と言える対宙弾幕が
乱数加速するミサイル群の進路を塞ぎ、諸手で綿を搾るように包み込む。
一秒と経たない間に、八機の鈍いミサイルは全て迎撃される筈――だった。
だが――
「上部センサー群沈黙!」
「フレア弾――!?」
――メイリンの損害報告に重なって、白銀の閃光が艦橋を覆う。
AMMの弾幕が目標を捕らえる、その一瞬よりも早く光点が順次炸裂し、
八つの小太陽と化してミネルバを盲目化させしめたのだ。
「センサーの切り替えを急いで!」
「やってます!」
強烈な電磁波――エネルギーの高いものはγ線とも呼ばれる――を浴びて
砂嵐と化したモニターを睨みつけ、タリアが声を張り上げる。
メイリンがボタンを2、3個操作すると、最外部の一次装甲で閃光に焼かれた
レンズがカメラユニットごと宇宙に放出され、下から新たなカメラが迫りあがった。
恐ろしく勿体無いシステムの採用された理由は、復旧の早さだ。
砂嵐のモニターを見つめるクルーの表情が、回復した一瞬後に引きつる。
映ったのは新たなミサイルと、ボギーワンにて収束するエネルギー反応。
チェンが顔をしかめつつも口笛を吹くのは、敵艦の手際へのささやかな称賛だ。
7/
「ボギーワンよりミサイル接近!」
やけくそのようなチェンだが、笑い飛ばす位でなければ、恐怖に凍りついてしまう。
「この忙しい時に! 母艦のビームが同調するわよ、取り舵一坏にステップ!」
タリアとて、これが他人事ならば手の一つくらい叩いている。
数秒先に敵艦がどう動くかを読みきらなければこうはいかない。
それはCPUに計算不能な、正に会心のタイミングだった。
つまり回避が、間に合わない。
マリクが舵を切る。と、席から放り出されそうなGがクルーの全身に圧し掛かった。
モニターを純白に染められたままの艦橋が、続いて艦体全身を揺らす激震に襲われる。
「艦体上部に、直撃!」
目も眩む光芒の中で表示を読み上げ、第二撃の衝撃に耐える。
揺れながらもしゃべるメイリンだった、が――
「痛……!」
――当然の如く舌を噛んだ。
「びょうぶふはふ(上部区画)閉鎖はんひょう(完了)、ひーうすひすへむ
(CIWSシステム)ははばんしゅーばんひようふほう(七番十番使用不能)!」
「メ……メイリン?」
目じりに涙を浮かべても報告する横顔に、状況を悟るグラディス艦長。
そんな冷たい目で見られても、痛いものは痛いのでしょうがない。
「下方、ポイントアルファより高速で接近する物体……モビルスーツ四!」
バートの声が一オクターブ跳ね上がり、みっともない裏声が艦橋に響いた。
どうしようもない理不尽でも"耐えねば死"の鉄火場で、舌が痛いのどうのと
言っていられない。メイリンは自分の職務と給料を思い出して、痛くない痛くないと
自己暗示を始める。
「新手なの? 機種の解析急いで!」
「了解、第二艦橋に解析回します!」
「へっきん(接近)するもびふすーふかはの(MSからの)……駄目です!
フレア弾の残滓で電波障害酷く、通信が不能! モビルスーツ各機の状態も不明」
なけなしの職業意識を鼓舞してようやく痛みを堪えられた。
「申し訳在りません、艦長。機関に異常なく、トリスタン、イゾルデ共に健在。
外装放熱完了まで十二秒。第一集団接近までの時間……あと六秒!」
「レイとデイルは?」「生死不明、交信不能!」
パイロットを忘れるなど薄情と思われても、目近に迫る直撃弾が恐くて震える。
「ディスパール……間に合わんか!」
「総員耐ショック……!」
指示を聞くや否や、頭を抱えてモニターに覆いかぶさった。辛うじて警報アラームを
押す指を間に合わせる。艦内に響く衝撃警報。
閃光に耐えてディスプレイを睨むという覚悟があっさりとへし折れ、
視界が上下から暗闇に覆われて行く。その暗闇に映るのは姉の雄姿だ。
8/8
頼りになるパイロットがここに居ない。次の瞬間にはビームが艦橋に飛び込んで
メイリンの肢体を焼き尽くしてもおかしくない。
折れず、曲らず、ザフトレッドを悠然と着こなす目蓋の姉が
鳴り響く警戒音にかき乱され――不意に沈黙が訪れた。
「……?」
艦橋を揺らす激震や視界を覆う閃光を覚悟していたメイリンも、望外の静けさに面を上げる。
と、視界を巨大な影が占めていた。紅く、巨大な鋼のヒトガタ――モビルスーツ。
それはミネルバに背中を向けて、艦橋を守って居るようにも見える。
「敵は……どうなったの?」
メイリンは不思議と、眼前のそれが敵だとは思わなかった。
生意気な言い草を笑われようと、殺気を感じなかったのだ。
ミネルバを狙っていた四機の敵MSは、新たなMS群――巨大な翼が特徴的だ――と
目の眩むような巴戦にもつれ込んでいた。
数は四に対して三。一目で分かる軽量高機動型だが、ボギーワン側は被視認性を下げる
黒であるのに対し、乱入側の"翼付き"はテスト用と思しき白とオレンジそのままだった。
ビームを連射しつつ追う黒と、たまに撃ちつつ引き下がる白という
有利不利の明らかな構図が、メイリンの驚きを連れて逆転する。
人型ならではの、乱数性が高い機動で辛くも弾幕を躱していた"翼付き"が、
弾幕の間隙をついて戦闘機形態に変形、軽やかな加速でもって黒を引き離すと、
充分な速度差をつけた上で逆撃に掛かったのだ。
「可変機……!」
脳裏に電球が灯る。生産性と操縦性が低く、作るにも動かすにも玄人頼りの可変機を
わざわざ量産する、そんな素人に厳しい国を、軍関係者なら誰でも一つは知って居る。
視線と視点を戦況から眼前の機体へ――今まで居なかったのなら、真紅の機体は
新たに現れた一団の一機というわけで、静寂をもたらした機体でもある事は明白だった。
メイリンには状況が上手く把握できない。
「えっと……機体の照合を!」
「要らないわ、メイリン――」
そして状況を悟るからこそ動かない艦長の声。
「あの機体はね――」
回線接続のマークが灯る。
『こちらは、オーブ首長国連合代表――』
通ってきたのは、何処かで聞いた覚えのある、明瞭で快活な少女の声だ。
真紅の巨人はゆったりと振り返る。
「――ストライク・ルージュよ」
『――カガリ=ユラ=アスハだ。待たせてすまなかったな、グラディス艦長、そして議長!』
それは、僅か数時間前にミネルバを出たばかりの、いわゆる一人の戦うお姫様だった。
というわけで、3レスだけですが続きを投下しました。
感想、批評はご自由にどうぞ、リクエストは雑談所メールフォームよりお願いします。
リクを反映できますかどうかは不明です。
GJ! †のホーク姉妹は俺の嫁
†氏の書く艦長が、かっくいい!
>>213 えろえろクロスで良ければその内投下しても良いよ?
つか、新手のギャグ?
てのひらを、たいように
scene2 pure string(1)
空と雲に導かれるように僕は車を走らせる。陽射しはじりじりと照りつけるけれど、
心地よい風のおかげで暑さはそんなには感じない。太陽よりも隊長の手から伝わって
来る熱の方が温かく感じられる。僕は何気なしに隊長の手をぎゅっと握り締めた。
隊長も僕の手を強く握り返して来る。ほんの些細な事だからこそ、僕は嬉しかった。
もっとスピードを出したい衝動に駆られるけれど、そこは自制心。焦らずのんびり
行くのが僕達には合っている。焦らずに少しずつ先へ進めばいいのだ。その先には
何があるかは解らないけれど、隊長と一緒ならば、きっと大丈夫だ。問題なんかは無い。
音楽はミーア・キャンベルからラクス・クラインへと変わった。隊長は音楽を消すと、
シートに深く座り直した。僕は赤信号が目に入ったので、ゆっくりとブレーキを踏んだ。
「ダコスタ君、手を繋ぎっぱなしと言うのは恥ずかしくないかい?周りから丸見えだと思う
んだがねえ」
「たまには良いじゃないですか。外で手を繋げる機会なんてそんなにないんですから。
それに、車を覗く人なんていません。気にし過ぎですよ、隊長は」
隊長は照れているのかややうわずった声をあげたけれど、僕は隊長の手を強く握ったまま
離さなかった。街を歩く人々や信号待ちのドライバーが車の中を覗き込んでいないかを
きょろきょろと見回す隊長の頬はほんのりと桜色に染まっていた。隊長の手はどんどんと
熱を帯びてゆき、僕の手にもじんわりと汗が滲んでいるのが伝わって来る。そんな
隊長の姿が可愛らしく思えた。あの砂漠の虎が僕に腕を掴まれただけでうろたえてい
るのだ。僕の悪戯心に火が着いた。
「ほら、誰も見ていないですよ。もし誰かが見ていたとしたら、逆に見せ付けてしまえば
良いんです。僕達は何も悪い事はしていないんですから。そうでしょう、隊長?」
僕は隊長の耳元で優しく囁いた。隊長は喉仏を大きく動かした。きっと口の中に
次から次へと溢れ出る生唾を必死に飲み込んだのだろう。隊長は潤んだ瞳で僕を見つめて
来る。歯を食いしばって、必死に何かを耐えようとしている姿は、本当に可愛い。
そうこうしている内に信号が青に変わった。隊長はほっとしたのか深々と溜め息を
吐いていた。僕はそんな隊長の姿を横目で見ながら車を発進させた。
てのひらを、たいように
scene2 pure string(2)
目的のショッピングモールまで後少し。ドライブの総計は30分足らずで、僕にとっては
あっという間だったけれど、隊長にはちょっぴり長かったようで、僅かに疲れている
ように見えた。ちょっとばかり悪戯心で悪乗りし過ぎてしまったからだろう。
「隊長、そろそろ着きますよ。今日はこれからが勝負ですから気合いを入れて下さいね」
僕は隊長の手をぎゅっと握った後に手を離した。名残惜しいのか、隊長は寂しげに息を漏らしていた。
家を早く出たお陰で駐車場はまだ混んではいなかった。僕は適当に空いている所に
車を止めた。車から降り鍵を閉めていると、隊長は大きく伸びをしていた。
「隊長、そんなに疲れたんですか?運転したのは僕で、隊長は座っていただけじゃ無いですか」
「ダコスタ君。君は僕をからかっているのかい?君がちょっかい出して来なければ
こんなにくたくたにならなかったと僕は思うんだがねえ。」
隊長は極めて真面目な口調で僕の軽口に答えてきた。隊長の額にはうっすらと汗が滲んでいた。
「きっと中は冷房が効いていて涼しいですよ。さっさと買い物を済ませちゃいましょう。」
僕は隊長を急かしながらショッピングモールへと向かって歩き始めた。隊長は僕の
隣へ小走りでやってくると、僕の歩調に合わせて来た。
「買い物はダコスタ君に任せるよ。先ずは何を買うのかね」
「先ずは食べ物、そして日用品ですね。服はその後でゆっくり見ましょう。」
食べ物といっても我が家ではデリバリーサービスを利用しているので、買うものと
言えば専ら冷凍食品やら調味料がメインとなる。僕はメモに書いてある分をどんどんと
隊長の押すカートに入れて行く。隊長は試食コーナーがある度に試食してはあれが
欲しいこれが欲しいと言って来たけれど、僕は黙殺して先へとどんどん進んで行った。
「ダコスタ君、君には聞こえないかね。僕を呼ぶ声が聞こえるんだが」
「僕には何も聞こえませんよ。どうかしたんですか?」
隊長の声に思わず振り返ると、隊長はコーヒーのコーナーの前に立ち止まり何かを呟いていた。
「隊長、今日はコーヒーは買いませんよ。まだ家にあるじゃないですか」
僕は溜め息を吐きながら隊長の右手を引っ張った。けれど隊長はお構いなしに僕の手を
振り払ってはまじまじと真面目な顔で僕をじっと見つめてきた。
てのひらを、たいように
scene2 pure string(3)
「いや、ダコスタ君、僕には聞こえるんだよ。ジャワやモカが『仕事したい、仕事
したい』って僕に語り掛けて来るんだよ。なんともいじらしい話じゃないかね」
隊長はきっと本気なのだろう。しかし僕には子供が駄々をこねているようにしか
見えなかった。
「隊長、それはきっと幻聴です。コーヒー豆は喋ったりはしませんし、仕事もしません」
「ダコスタ君、君は間違っている。コーヒー豆にも心はあるんだよ。淹れる人の
愛情一つで味が変わったりもするんだ。さあ、ダコスタ君も耳を澄まして見たまえ。
コーヒー豆の声が聞こえるはずだ。僕が買ってあげないと、コーヒー豆は悲しむだろうねえ」
恐らく隊長は本気で言っている。そこまでコーヒー豆が欲しいのだろう。一見にこにこと
笑っているようには見えるけれど、目が笑っていない。僕は呆れ果ててしまい、後頭部を
わしゃわしゃとかいては肩を大きく落とした。隊長はコーヒー豆の声は聞こえていても
僕が落胆している姿は目に入らないようで、嬉々としてコーヒー豆を手にしてはあれや
これやと蘊蓄を垂れ流している。
「隊長、いい加減にして下さい。今日はコーヒー豆は買いません。何度言えば解るんですか?」
僕は隊長をじろりと睨み付けると、隊長の手からコーヒー豆の袋を奪い取って棚へ
戻した。一体何分ロスしてしまっただろう。僕は隊長の腕を掴み先へ急ごうとした。
「ああ、ダコスタ君、コーヒー豆が悲鳴を上げているじゃないか。彼らはさぞかし
僕に買って欲しかったんだろうねえ。ダコスタ君、君に慈悲という言葉は知らないのかい?」
僕がどんなに力を入れても隊長は動こうとはしなかった。どうしてそんなにコーヒー豆が
欲しいのだろうか。僕はインスタントで充分なのに。というか、僕は本来は紅茶党なのだ。
そうこう考えていたら、僕は辺りがざわついているのに気付いた。僕と隊長の問答は
かなり目立っていたようで、沢山の人が僕達をじろじろと見ている。僕はやり切れない
気持ちと恥ずかしさで軽く舌打ちをしてしまった。
「隊長、止めて下さい。周りに人が集まって来ちゃったじゃないですか。全く恥ずかしい
にも程があります。」
僕は隊長の脇腹を肘でつつきながら小声で囁いた。早くこの場を抜け出したくて
仕方なかったが、何故か隊長は僕ににやりと笑い掛けて来た。
てのひらを、たいように
scene2 pure string(4)
「ダコスタ君、君は車の中では見せ付けてしまえばいいとか、悪い事はしていないとか
なんて言っていなかったかね?僕は悪い事はしていないし、後ろめたい事もしていない。
気にする必要はないんじゃないか。いざとなったら僕とコーヒー豆の仲の良さを見せ付けて
いい。何せ僕と彼らは相思相愛だからねえ。ダコスタ君は勿論お釈迦様でも僕達の中は引き裂けないよ。」
――やられた! 僕は隊長のしてやったりと笑いながらウインクするのを見て、
腹立たしいやら恥ずかしいやらで何も言えなくなってしまった。今の僕の額に水の
入った薬缶を乗せたら一瞬にして沸き上がるだろう。
「隊長。一袋だけなら良いです。早く選んで下さい」
この場を収めるには最早僕が譲歩するしか無かった。僕は渋々と隊長に告げた。
「ダコスタ君。どうせなら二袋とか三袋位買っては駄目かねえ。」
「駄目です。一袋だけです。後五秒で決めないと僕が選びます」
僕は有無を言わさずに右手を突き出してカウントダウンを始めた。隊長は慌てて
選んだ物をカートに入れた。ざっと見た中では一番高い物だった。隊長は本当にちゃっかりしている。
僕は人の群れを押しのけて先へと足を進めた。隊長は上機嫌に口笛を吹きながら
僕の後ろを着いて来る。必要な物をカートに入れ終わると、僕達はレジに並び会計を
済ませた。冷凍食品は店から発砲スチロールを貰い、保冷用の氷と共に入れた。調味料やら
コーヒー豆は段ボールに無造作に入れた。勿論全ての作業は僕がやり、隊長は呑気に
眺めているだけだった。
「隊長、僕は疲れてしまったので荷物を車に置いてきて下さい。僕は入り口で待ってます」
「荷物を全部かい?かなり重いと思うんだがねえ」
「重ければカートを使いましょう。隊長なら出来ます。これが車の鍵です。お願いします」
僕は有無を言わせず隊長を送り出すと、ゆっくりと店の入り口に向かった。外の
陽射しは本格的に強くなっていたが、爽やかな風が気持ちよかった。僕はベンチに
腰を下ろすとポケットからシガーケースを取り出した。一本口に加えマッチで火を
付けるとゆらゆらと煙が立ち上った。
タバコはカレッジで覚えた。体に悪いだなんて
事は頭では解っている。普段は余り吸いたいとは思わないけれど、たまに無性にタバコを
吸いたくなる。
てのひらを、たいように
scene2 pure string(5)
灰皿に煙草を押し付けていると、隊長がのんびりとした足取りで戻ってきた。
「ダコスタ君、煙草は体に良くないといつも言っているだろう。いい加減に止めたらどうだい?」
隊長はしかめっ面で僕に小言を言ってきたけれど、僕は意に介さずに立ち上がった。
「隊長は僕が注意してもレセップスの中でコーヒーを淹れていたでしょうに。それと
同じ事です。それに、隊長の前では吸わないからいいじゃないですか。と、それより
買い物の続きです。後は買うのは日用品ですね。早く買い物を済ませましょう」
隊長はまだ僕に言いたい事がありそうだったけれど、僕はショッピングモールの
中にあるドラッグストアに向かって歩き始めた。後ろから隊長が追い掛けてくる足音が聞こえる。
ドラッグストアで買うのは食器洗浄機用の洗剤やらシャンプーやらコンディショナー
やらだ。僕は店内を物色しながら愛用メーカーの物を買い物籠に入れてゆく。隊長はサプリメントが欲しいだの何だのと言って
きたが、僕は必要最低限の物だけを選んで会計を済ませると、買い物袋を差し出した。
「隊長、僕の言いたい事が解りますね?」
隊長は不満そうに口をへの字にしながらも、素直に買い物袋を受け取った。僕は
ショッピングモールの入り口まで一緒に歩いて行くと、手を振って隊長を見送った。
腕時計を見ると一時過ぎだった。ちょっと遅いけれど、昼食にしよう。服を買うのは
それからでも遅くない。隊長が戻って来るのを待って、僕と隊長はレストラン街へと歩き出した。
「隊長は何か食べたい物はありますか?」
「食べたい物か。今日は和食を食べたい気分だねえ」
僕の質問に隊長は漠然とした答えを返してきた。
「和食ですか。僕はあっさりしたものを食べたい気分なんで蕎麦でも大丈夫ですか?」
「蕎麦かい?うん、悪くない選択だ。今日は暑いし、ざるそばなんか良いかも知れないねえ」
隊長は嬉しそうに蕎麦をすする仕草をして僕に笑いかけてきた。この顔だ。僕は
この隊長の顔を眺めていたくて隊長と一緒にいるのだ。僕は隊長の横顔をじっと見つめた。
隊長はどんな気持ちで僕と一緒にいるのだろう。聞いてみたいと思うけれど、臆病な
僕は自分の気持ちを上手く答えられずにいる。
「オーブはいつでも暑いですよ、隊長」
僕は自分の本心を悟られまいとわざとらしく隊長にデコピンをした。
てのひらを、たいように
scene2 pure string(6)
昼を過ぎていたせいか、蕎麦屋は大して混んではいなかった。案内された席に座ると
僕は隊長にメニューを差し出した。隊長がメニューに目を通していると、店員がお茶と
お絞りを持ってきた。
「ええと、僕は山菜蕎麦。隊長はざるでいいんですか?」
「んー。せっかくだから天ざるにしよう。」
隊長はメニューをテーブルの端にメニューを置きながら店員に注文した。店員が
戻って行くと、隊長はおもむろにお絞りで顔を拭き始めた。
「隊長、親父臭い事は止めましょう。マナー違反です」
口では注意するけれど、僕は隊長のそういう所は嫌いではない。僕に気を許して
いるような気がするからだ。隊長も僕の考えている事を察知しているらしく、すまないとは
言いながらも、お絞りで顔を拭くのを止めなかった。
「ふう、汗をかいたから気持ち良いねえ。至福のひとときって感じだよ。そう思わないかい?」
顔を拭き終わると、隊長は綺麗にお絞りを畳んで自分の前に置いた。僕に語り掛けて
来るけれど、至福のひとときとは何を指しているのだろう。お絞りで顔を拭く瞬間?
それともこうして僕と食事をする時間だろうか。
「隊長、僕はまだまだ若いつもりなので大丈夫です。顔を拭きたいと思ったら鞄に
洗顔ペーパーがあるのでそれを使いますから、ご心配なく」
隊長はふーんと相槌をついた。興味なさげな、退屈しているような感じだった。
きっと僕はきっかけを欲している。体ではなく心を通わせたいのに、僕は自分で
殻を作ってしまっている。卵を割る様に簡単に割れれば苦労はしないけれど、そんなに
簡単には行かない。どうして僕はこんなに素直になれないのだろう。隊長は沈黙を
楽しめる程度の大人だけれど、僕は違う。沈黙を嫌うように他愛のない話をしてみても、
どうしても空回りしてしまうのだ。隊長には勝てないのだと思い知らされる。
「お待たせしました」
威勢の良い声が店内に響き渡る。先程の店員が料理を持ってきたのだ。隊長の前に
天ざる、僕の前には山菜蕎麦が置かれた。僕の視界に湯気が広がった。
「ダコスタ君、君は暑いのによく熱い物が食べられるねえ」
隊長は割り箸を割りながら僕に質問してきた。
「暑いから熱い物を食べるんです。汗をかけばちょっとは涼しくなりますからね。
所謂暑気払いって奴ですよ。さ、食べましょう。」
てのひらを、たいように
scene2 pure string(7)
僕は顔の前で両手を合わせ一礼した。七味唐辛子を振り掛けていると、隊長と目が
あった。隊長は海老天を口に頬張っていた。
「どうかしましたか?」
「んー、何もしていないんだが、ダコスタ君を見ていると実に楽しくて仕方ないんだよ」
僕か尋ねると、隊長はやや間を置いてから楽しげに呟いた。
「楽しい、ですか?」
「今時の若い奴は食前の挨拶なんてしないじゃないか。それなのに、ダコスタ君は
律儀に手を合わせたりしている。うん、実にダコスタ君らしい。」
僕はそうですかと気の抜けた返事をして、黙々と食べ始めた。
食事の前の挨拶は小さい頃からの僕の癖だ。ザフト時代はしていなかったけれど。
両親にそう躾られたのだ。食事を作ってくれる人に感謝をして食事しなさい。感謝する
心をいつまでも持ち続けられる人間になりなさいと言う言葉は今でも耳に残っている。
二人とも元軍人だからか食事は早い。10分もしないうちに平らげてしまった。食後には
隊長はお冷やを、僕は蕎麦湯を飲んで一息付いた。隊長は僕の蕎麦湯を飲んでみたけれど、
蕎麦湯の良さは解らないようだった。
「ダコスタ君。君はその蕎麦湯を美味しいと思って飲んでいるのかね」
「蕎麦湯は体に良いんですよ。それに僕は嫌いじゃないです」
「そうかい、君がそう言うならそうなんだろうねえ。じゃあそろそろ出よう」
隊長は手を上げて店員を呼んだ。僕は自分の分の代金を払おうとしたら、その前に
隊長が会計を済ませてしまった。
「隊長、おいくらですか?」
僕は隊長に代金を差しだそうとしたけれど、隊長は笑顔で首を横に振った。
「ダコスタ君。たまには僕の顔を立てさせてくれたまえ。それに、ダコスタ君には
いつも世話になっているからねえ。さあ、行こう」
隊長はすたすたと歩いて行く。僕は財布を鞄にしまうと隊長の後を追った。店を
出るときにご馳走様と店の主人に挨拶するのは忘れなかった。
「隊長、ご馳走になります」
「気にしないでくれないか。大した金額じゃないし、自分でしたくてしているだけだからねえ」
隊長の言葉を聞いて、僕はお礼を言うのを止めた。ここで延々とお礼を言っても
隊長に失礼になるし、このお礼は気持ちで返せば良いだけなのだ。隊長がいつもよりも
大きく見えて、僕は隊長が非常に頼もしく思えた。
てのひらを、たいように
scene2 pure string(8)
昼下がりのショッピングモールでは親子連れやらカップルで溢れかえっていた。
けれど、僕達のような男同士の二人連れはいない。端から見たら僕達はどう見えるの
だろうか。兄弟? 友達? 仕事の同僚? それとも――?
考えていても拉致はあかない。僕がいて、隊長がいて。理由なんていらない。今この
瞬間が全てなのだ。僕は隊長の後ろを歩いて行く。今も、これからもずっと。時には
隊長と並んで歩いたり、時には隊長の前を引き連れて歩いて行きたい。僕の想いは
どんどんと膨らんで行くけれど、普段の隊長は僕の気持ちに気付きもしないでただ
微笑んでいるだけだ。もどかしくて、切なくて、ちくりと胸が痛む。けれど、僕は
感情を簡単に表に出せない人間なのだ。ポーカーフェイスに慣れきってしまって
なかなか素直になれないでいる。人生とは本当に難儀なものだ。
と、ぼんやりと考え事をしながら歩いていたから解らなかったが、気付いたら隊長は
駐車場へと向かっていた。隊長の顔を見やると、隊長は悪戯っぽく目を細めて僕を
じっと見つめていた。
「ダコスタ君、場所を変えようか。君はいつもここで服を買っているからねえ、
ここで僕が服を選んでも変わり映えしないと思うんだ」
「そうですね、解りました。隊長にお任せしますよ」
珍しい事に隊長が久しぶりに運転席に乗り込んだ。僕は急いで助手席に座った。
隊長は運転が荒い。無茶な操縦技術は昔から全く変わっていない。
「ええと、これからどこに向かうんですか?」
隊長は僕の質問の答えとして有名なブランドの名前を幾つか挙げた。その中には
僕が気になっていたブランドの名があった。かなりグレードの高いものなので、僕は
泣く泣く諦めていたのだ。
「ダコスタ君は僕がどんな服を選ぶのか心配しているようだが、間違っていると思うんだ。
僕は君に着て欲しい服ではなく、君に似合う服を選ぼうと思っているんだがねえ」
僕は隊長の言葉が嬉しかった。隊長はじっと前を見つめている。いつもよりも凛々しくて、
ザフトにいた頃を彷彿させた。あれからどれ位たっただろう。
僕は隊長と手を繋ごうとは思わなかった。僕と隊長を繋ぎ合わせる縁――糸を信じ
たかった。純粋な気持ちで、思った。
ご機嫌いかがお過ごしでしょうか?美柚子です。
ちょっと尻切れとんぼな終わり方でしたが、どうしても今日投下したかったので、
強引に てのひらを、たいように scene2 pure string を書き上げました。
何故今日投下をしたかったかと言うと、今日が冬至だからです。
冬至と言えば柚子湯ですよね。今日皆さんがお風呂に入って柚子を見た時に美柚子の
事を思い出して貰えれば嬉しいな。石鹸は勿論薬用石鹸ミューズだよ!
次の投下はいつになるかは解りません。塾の冬期講習の合間にコツコツ書いていけたらいいな。
じゃ、またね。
保守age
姉弟物
シャトルが加速を始めるとGが掛かるのを感じた。
座席に押しつけられる様な感覚を覚えたキラは窮屈そうに身動ぎをする。
シートベルトにきつく締め付けられている訳ではないのだが、何故か束縛されている様な気がしてならない。
彼はそう思うと瞳を閉じてリラックスしようとするが、一向に身体の強張りが取れないので苛立ちを隠せずに舌打ちをする。
シャトルが上昇すれば気分も晴れるだろう、と思い込むと溜まった鬱憤を吐き出す様に息を吐き出すが、それは気休めにすらならない。
溜まった鬱憤はキラの心の奥底に強く根差した物であるからだ。
窓に視線を移すと風景が流れているのがわかる。
眼下に広がる一面の海に点在するオーブの島々が小さくなって行くのを見ると彼は幾許かの後悔を覚える。
オーブには彼の友人知人が多く存在し、こから向かうプラントには彼に好意を抱く人間は少ない。
それどころか彼に敵意を抱く人間が多数存在する事は想像に難くない。彼は二度の戦乱を通じてザフトに相当の出血をさせたのだ。
彼の振るう干戈の元に討ち果たされた犠牲者の係累にあたる人々は彼を決して許す事はないだろう。
有り体に言えば彼がプラントに行くという事は敵地に向かうという事と同義である。 プラントの要職であるラクス・クラインは彼とは懇意ではあるのだが、だからと言って彼の身の安全が保証される訳ではない。
スペースコロニーの警備体制には危機管理の認識が欠如している事はキラも身を持って解っている事だ。
そうでなければ彼は一人の普通の学生として何処にでもある様な普通の青春を送る事が出来ただろう。
雲海の上に出てオーブが見えなくなると彼は再度瞳を閉じる。
思い浮かべたのはカガリ・ユラ・アスハだ。
血縁関係がある訳ではないし、遺伝的にも関係がない双子の姉であるカガリの事を思うと彼の胸が締め付けられる。
しかし、それ以上に心の奥底に燻っていた火が身を焦がす程の業火に変わっていく。
高ぶりを押さえる事が出来なくなる前に瞳を開けるが、燃え盛る炎は止どまる事を知らない。
仕方なく彼は気が進まないのだが自分の初めての相手の事を思い浮かべる。
フレイ・アルスター。思えば彼女と関係を持った事が全ての始まりなのかも知れない。
彼からモーションをかけた訳ではないのだが、友人の婚約者と寝るという行為による感じたスリリングさは格別な快楽を生み出した。
更には人倫の道に悖るという禁断の扉を開けた事で彼は背徳の持つ官能に目覚めてしまった。
フレイの肢体の魅力以上に、エデンの園の木の実の味はキラを虜にし、やがて友人の婚約者であるだけのフレイには食指が動かなくなった。
それ以降、彼は姉弟であるカガリに目をつけていた。
しかしこのままでは倒錯した狂人と化してしまうという恐怖心が芽生えたので理性という鎖が切れぬ内にオーブを離れることにしたのだ。
しかし秘めた欲望の炎は鎮まる事はない。
逆に手の届かない為に姉と関係を持つという欲求が強くなってくる。
思い出したカガリの肢体は艶めかしい肉感的な物であった。
その顔を苦痛に歪ませ、快楽に悶えさせ、その声を悲鳴として、背徳の快楽に喘ぐ声として響かせたいという欲求が欲望を硬化させる。
カガリの淫らな息遣いが聞こえ、その淫靡な体臭の匂いがリアルに感じられる。
だがキラがどんなに渇望しても、実際にそれを感じる事は出来なくなった。
彼自身の意思で二人の距離は遠くへだてられてしまったのだ。
今は後悔と逡巡の二つの想いが彼の胸の中で攻めぎ合っている。
彼は深呼吸をすると眼を瞑り、せめて夢の中でカガリと関係を持つ事で荒れ狂う精神の安定を図ろうとした。
目覚めた時には粗相をしているだろうが、その粗相をカガリに捧げようと思いつつキラは深いまどろみへと墜ちていった。
完
227 :
鬼畜さん:2007/12/22(土) 20:18:03 ID:???
…………姉弟物投下完了。
>>227 GJ!エロいのはどうかと思うけど面白かった。
次はルイスのママンと匙で希望。
「やれやれ……人を随分とシミュレーターの中に閉じ込めてくれたと思えば――」
明かりの落ちた格納庫で、グラハムはど派手なクリスマス装飾を括りつけられた
愛機――グラハムスペシャルを見上げていた。
機体足元のスピーカーからは、誰でも聞き覚えのあるような名曲が流れ出ていて、
高さ十八メートルに及ぶそのてっぺんに、金色の星が突き刺さっている。
ワイヤーを張り巡らせたMSが、クリスマス=キャロルに合わせて点滅する電飾で
照らされて浮かび上がるのは、ある種のコメディともホラーともいえた。
「君がフラッグファイターズに休暇もくれず引っ張るからさ、
二人は怒って君の機体をツリーに改造してしまったんだよ」
付いて来たビリーが――知っていたのだろう――事情を説明する。
「然も君はガンダムしか目に入っていないらしく、彼ら二人には目もくれない、
ハワードもダリルも街の方に繰り出してしまったさ」
「だが……お陰でフラッグはなかなかの代物になった、そうだろうビリー?」
「……まあね。現時点のユニオン、いや地球圏で、ガンダムを除けばの話だが、
此処までの性能を引き出した機体はないだろうね」
本当にガンダムにしか興味ないんだな、と感慨深そうにため息を一つ。
ビリーはフラッグからグラハムに向き直って聞いた。
「……今度の作戦、この機体なら勝てるのかい?」
「分からないね、相手の技術はどう考えても二世代は上だし勝負は水物だ。
二十年先の未来から来た侵略者を相手にする思いだよ」
「……その割には楽しそうだね、グラハム=エーカー」
「楽しいさ、ビリー=カタギり。己の闘争を満足させる為に全力を尽くす。
それが楽しくないというのなら、果たして何に執着を持てばいいというんだ?」
ビリーは天を仰ぎ、背中に流れるポニーテールが空調に揺れた。
「おいおい、ユニオンの大義はどうした、エムスワッドのトップエース?
まるで今度の作戦は、君がガンダムと決闘をするための舞台に過ぎないと
言いたいようだよ」
そうさ。とグラハムは呟く。
「謳うだけの正義は持つが、軌道エレベーター程にも頼りはしないよ。
あれは頼れば折れるし、支えねば崩れるような脆い代物だ。故に、
それを振りかざす己の意志は、その欲は鉄でなければならない」
グラハムは続ける。
「――敢えて言おうか……戦いに殉ずる理由、その意志はエゴだと」
「エゴか……」
「エゴさ……」
寄りかかるのは信ずる正義ではなく、大義を求める己の欲だ――
CB、その目的……紛争根絶。鋼の機体と未来の技術で彼らが実現しようと
している世界は、まるで少年の夢だ。
夢に大義を説いたとてどうにもなるまい。
故に叩きつけるべきは、大義の剣ではなく鉄の戦意と焔の欲望である。
グラハム=エーカーはそう思う。
若くしてエムスワッドのトップとなって以来、久しく得なかった好敵手と
長らく覚えなかった戦意……入り混じるそれらを燃える心中であやしながら、
グラハムは頼もしき愛機を見上げた。
「ふうん……イブに難しい事を考えるものじゃないな、グラハム。休憩室に行こう」
君のフラッグはこの有様だし、とビリーはグラハムを促す。
「居残りの何人かが酒盛りをやってるし、七面鳥のローストも用意してあるんだよ」
限界までグラハムに合わせたセッティングを盛り込まれたユニオンフラッグは、
ふざけた装飾を施されながらも、引き絞られ放たれる寸前の弓矢の偉容を誇って
激発の戦場を待っている。
「よくもあんな不味いものを……頂こうか」
しかし、それは少なくともこの夜ではない。
グラハムは炎の戦場に思いを馳せつつも、一時、静かな夜を堪能するべく
格納庫を後にした。
破壊され、
撃墜され、
敗走し、
負けた。
確認されたガンダム四機、彼ら全てと戦って、殆どは戦闘とすら呼べない
圧倒的で一方的な惨敗の全敗を喫した挙句――彼は生き残った。
奇跡的に。
喜劇的に。
しかし彼はもう負けてはならない、勝たねばならない。
ならばどうするか――
「――模擬戦をするに決まってるじゃねえか!」
ミサイルもびっくりの加速で近づいてきた"イカレ飛行機"が、
まばたきした後にはヒトガタになって長物を向けていた。
右。右。左。下。マシンガン並みの連射速度でMS"イナクト"の
胴部を狙う粒子砲をタップダンス顔負けのペダル捌きで回避させる。
三日前には全弾命中していた斉射の殆どを躱して……楽しい。
『だから……それを私達に付き合せないで下さい!』
が、オペレイターの叫びが聞えた瞬間に集中を乱してしまい、家賃を
一年滞納された大家が叩くドアノックのような音を立てて"イナクト"の
シミュレーションは停止した。
『はいはい……撃墜ですよーパトリック=コーラサワーさん』
終了を告げるブザーが鳴り響き、シミュレーターのモニター画面が
真っ赤に染まる。コーラサワーはコンソールをぶっ叩いて悔しがる。
「畜生――! 今のは躱せていたんだよ、たまたまあんたの声がしたから
当たっちまったんだ」
『それって集中力が足りないんじゃないですかあ……?』
「次からは声で心を乱されないように、通信を切っておくぜ!」
通信機の向こうから『うわ、こいつマジで話を聞いてない』とオペレイターの
声がしたが、コーラサワーは気にもしないで再度のシミュレーションを要求した。
『そろそろ私も眠いんですけど……もう二十時間は詰めっぱなしですよ?』
コーラサワーは眠くない。二十八年で二千回も模擬戦をこなすような
人生を送った彼は、ゆっくり寝る暇も無かったのだ!
「さっきと同じ条件で"イカレ飛行機"を頼むぜ、どうやら"イナクト"と
一番相性が悪いのはこいつみたいだ! "チキンスナイパー"や"脱皮デブ"に
"サムライニンジャ"相手だと勝率が五割まで行ったもんな!」
『それぞれ百五十回以上負けた後でしょう? そもそも、こんな宇宙人みたいな
設定の仮想敵に負けて、本気で悔しがるパイロットなんて!』
「実戦で死んだら悔しがるも何もないじゃねえか」
拍子抜けして返したのは、コーラサワーの方だ。
『スペシャルだったら、本番でどうにかなるんじゃ無いですか?』
「勝てるわけ無い……練習で出来ない事を本番で出来るわけねえだろ?」
当たり前の事だ。
スペシャル相手に何夢物語を見てるんだと、コーラサワーは不思議でならない。
「確かに俺は軍人で、殺したり死んだり、その練習するのが仕事だけどよ。
まぐれで勝つのは兎も角、練習不足で死んだり部下を死なせたりするなんて、
恥ずかしくって先祖に顔向けできないね」
『…………』
やがて、モニター画面に再び火が灯り、"イカレ飛行機"に追撃をかける
シチュエーションが再現された。旋回――アームに保持された筐体が大きく振られ、
画面内の機動と同調したGを再現する。
仮想"イナクト"の接近に対応して変形、射撃攻撃をかけてくるその動きが
先程より一割ほど速いのに気付いて、コーラサワーはほくそ笑んだ。
――設定値を上げたな。
「センキューベリーマッチ! ダンケシェーン! メルシーボクゥ!」
『私はスペイン出身です……休暇を台無しにした分、埋め合わせには
精々期待しますよ――アタシのクリスマスは決して安くは無いですからね!』
「応! それについてはまかせなって!」
――なにせ俺は!
精妙な操縦を繰り返して弾幕を避け続けるコーラサワーは、
視界の天地が逆転したコクピットで雄たけびを上げた。
「模擬戦で二千回負け無しの……すぺぺーッ!」
『もうッ……! 旋回しながら叫んだら舌の二枚や三枚噛むに決まってるでしょう!
はい、直撃三発で撃墜されました。これで通算七百六十回目の棺桶入りですね』
「成る程、戦闘中に喋るのは危険だって事だな、学習したぜ!」
『いまごろー……!?』
一応は学習能力のあるらしいコーラサワーと、意外に律義なオペレイターだった。
「さあて、もう一丁行ってみようか!」
『あの……そろそろ本気で眠たいんですが……』
コーラサワーのスタミナや生命力は底なしのようだ。
「やっぱり模擬戦は実機だろ実機!動く"イナクト"は残ってないのか?」
『本番用のカスタム以外使い潰したのは貴方でしょう!
整備班を全員、このイブに徹夜させて!』
「今ので新しい戦法を思いついたんだぜ!」
『ああ、やっぱり話を聞いてないんですね、そうですか、いいですよ、わかりました』
心底諦めた風なオペレイターの声と共に、そろそろ一千回に届こうかと言う
対ガンダム模擬戦に明け暮れて、コーラサワーはイブの夜を過ごして行った。
『家に帰らせて下さい――! 二十時間くらい寝かせてください――!』
この夜が明けるまで付き合わされた不運なオペレイターへの埋め合わせが
彼女の望む形で行われたのかどうか、それはまた別の話である。
……というわけでクリスマス短編投下。
OO『†』はSEED『†』が終わったらやる……のでしょうかね?
多分再来年くらいになりますが。
クリスマスOO短編 中東編
1/
乾燥地帯の夜は冷える。
黒焦げの"アンフ"に寝転がり仰向けに夜空を眺めるアリーの体はしかし、
安物の酒精を借りて芯に緩い熱を温めていた。
傍らのラジオからは、国境を越えてAEUの衛星放送が届く。
電波に乗るクリスマス=キャロルは黴の生えた年代物だが、それにつられる
人間の熱狂は何時までもあせないものらしい。
オリオンのベルト周りに散らばる六等星を数えているアリーの元に、
PMCから引き連れてきた手下と現地の顧客、合わせて二人が寄ってきた。
鬼人の働きで敵を壊滅させたアリーに感謝の言を述べに来た顧客はしかし、
ラジオから流れる音楽を耳にした途端、最低限の礼儀を使って事務的に
言葉を連ねるに留まった。
「かしら、一体聞いてんすか。この国でその音楽はちょっと……」
「情報収集だよ、じょうほうしゅーしゅー。敵の言葉に耳を塞ぐ奴らはその内、
敵の姿に目を瞑るようになる」
そしてやがては、現実と敵に背を向ける。敗残兵の出来上がりだ。
「神様の名前を通用させるのは、信心深いガキを釣って兵隊に仕立てる、
それまでで止めとくのが良いオトナってもんだ」
皮肉に満ちた笑いをひげ面に浮かべ、アリーは酒瓶を一口煽った。
「知ってるか? このラジオの電波はな、あそこの衛星が中継してるんだよ」
アルコールの臭いを放つ口でそう言い、夜空の一点を指差す。
手下は暫くの間、目を細めて満点の星空を見上げていたが、アリーが
次の一口で喉をやく頃には諦めた。
「見えませんぜ、かしら」
「あそこだよ、この指の先……赤い五等星の隣だ。見えねえか?」
アリーには鮮明に見える人工衛星が一生懸命探しても見つからず、
夜の冷気に体を震わせる部下に笑って酒瓶を投げつけた。
「此処の倉庫にあったもんだ……安物だがあったまるぜ」
「戦利品っすね、ありがたく頂きます。……そういえばかしらは、
よくそうやって空を見てますね。珍しいもんでもないでしょうに?」
酒瓶を傾ける手下。
或いはアリー編
2/
アリーは視界の隅を流れる星を見つけた。燃え尽きるまでの時間と
色からして、破壊された人工衛星かMSの破片だ。
「……空の索敵でもしてるんですかい?」
「――おうよ。いや、嘘だ、目を鍛えてるのさ」
傭兵団の頭領は、周りを見てみろと手下を促した。
「油田とその廃墟、モビルスーツとその残骸……そんくらいっすね。
かしらには何が見えてるんです?」
「俺だって空じゃなくて地面を見ていれば、そん位しか見付かんねえさ。
兵どもが夢の跡ってな……石油掘りにかまけて地面ばっかりみてると、
視力が落ちて先見の明って奴を失くすんだ」
「へええ……それでかしらは空を」
「ま、目が良くたって敵を少しだけ早く見つけられるだけだがな。
敵さんにとっては残念な事に、俺は耳も鼻も効いたんだ」
アリーが何気なく流しているAEUのラジオ放送には同じ周波数で
遥かに小さく、国内の電波源から別の放送が流れている。アリーは
時折混じるノイズに近いその放送を、クリスマス=キャロルの中から
聞き分けていたのだ。
感心して頷く手下と会話する間も、ずっと。
順調に流れ続ける、その曲が不意に乱れた。
「……?」
――雲ひとつ無いこの夜に、衛星放送が乱れた?
ラジオの故障か? 否。アリーは弾かれた様に夜空を見上げて睨んだ。
ラジオは暫くは酷いノイズを発していたが、直に何事も無かったかのように
荘厳な曲を流し始める。
まるで、電波を中継する人工衛星の近くをジャミング装置が掠めたかのように。
アリーの卓越した視力が、レーダーにも映らないだろう微かな影を、
先の人工衛星の隣に発見する。
「どうやら奴らにゃあ、クリスマス休暇も無いらしい……それとも
宗教何ざクソ食らえってえ気分なのかねえ?」
理由も無く楽しい気分になり、浮かぶ笑みを抑えきれない。
――俺は今から休暇、奴らは今から仕事。
それだけで、クリスマスなど関係なく、"勝った"気になった。
「……どうしたんです? かしら」
「何でもねえよ、金にもならねえ一人ごとさ。休みってのはいいもんだ、
世の中には勤勉すぎる奴らが多いみたいだしな……」
3/3
この時、再び"アンフ"の装甲を枕代わりにもたれかかったアリーは
少々奇妙な物を視界の隅に確認したが、それに付いては久しぶりに
視覚を疑い、それを幻覚だと思う事にした。
余りに奇妙だ。
そして余りに、勿体無い。
神すら信じない自分が見るものとしては、だが。
だから幻覚だと思うことにした。
「どうやら酔いが回ってきたようだな……寝るか」
○○○○ン・ジーザス・クライストと大声を張れる人でなしだ。
だから、トナカイにソリを引かせる、赤服の、白髭を生やした太っちょなど、
そっくりすべて幻覚だと思って忘れる事にした。
ソーマ編……間に合うか?
悪魔城ドラキュラ 00 刹那の夜想曲 #2
刹那・F・セイエイは焦燥としていた。
目標地点近辺に到着したと思ったら計器類に異常が発生したからだ。
モニターにノイズが掛かっているが辛うじて生きているのが救いと言えば救いと言える。
しかしそのモニターから見える光景は暗くて薄ぼんやりとしている。
刹那はその暗さになんとも言えない胸騒ぎを覚えてエクシアを急上昇させた。
急激に機体を制動させた為に刹那は全身をシートに押しつけられて胃の腑を掴み出される様な感覚を覚えるが、不快なそれを歯を食いしばって耐えつつ更に機体を加速させた。
次第に周囲の闇が晴れていき、真紅の月が視界の片隅に入る。
鮮血が滴る様な禍々しい月の光がエクシアを照らしている。
「……ガン……ダ……ム」
大気を震わせる様な声が響くと刹那はその方向に視線を走らせた。
その先には物理法則を嘲笑う様に巨大な赤黒い球体が浮かんでいる。
訝しく思った刹那が機体を近付けると球体は大気を切り裂く様な叫びを上げる。
「オヲヲ……レレエエ……ワアアア……模擬戦ナンダヨヲヲ……」
刹那は間近に球体を見て戦慄する。
腐り崩れ落ちて骨が浮かび上がったヒト、眼球が零れ落ちても睨み付けてくるヒト、赤黒く変色して膨れ上がったヒト。蠢き生きている様に見えるヒトの成れの果て、骸の集合体。
刹那の思考が激しくフラッシュを焚かれた様に点滅する。
高く詰まれた死体。流れる血の川、反吐が出る様に腐臭。逃げ惑う人間を容赦なく虐殺する鋼鉄の巨人。最初は重かったが軽くなっていった引き金。
神の教え、信仰。それに対する疑問。かつて戦う術を教えてくれた人物。
自分をなじる仲間、どんどん殺されていく仲間、物言わぬ冷たい骸となった仲間。
恐怖、憎悪、残悔、狂気、孤独、殺意。
全てが刹那を包み込む。
刹那の精神に過負荷がかかりオーバーフローしようとした時、刹那は獣の様な叫びを上げて球体に切り掛かった。 だがその決断はは遅過ぎていたし、その選択は間違っていた。
その球体……一にして多なるもの……“レギオン”にはエクシアの武装が通用しない事を刹那は知らなかったのだ。
悪魔城ドラキュラ 00 刹那の夜想曲 #2
物理的な攻撃では幽体であり生ける屍の集合体であるレギオンに傷をつける事は敵わないし、呪詛や怨念といった物を具現化させたレギオンの攻撃にはGN粒子の守りなど一枚の紙切れよりも意味がないのだ。
自分の力……否、機体の性能を過信していた為かレギオンを無謀にも闇の眷属とは知らなかったのが原因なのかは解らない。
しかし、事実として刹那はレギオンを構成するモノへと変貌した。
皮肉な事にパトリック・コーラサワーは刹那より前にレギオンに取り込まれ、その並外れたガンダムに対する憎悪によって刹那に打ち勝ったのである。
もっとも今のコーラサワーにはその事を喜ぶ様な知性は持ち合わせていないのが問題と言えば問題であるのだが。
ただ月明かりが無人となったエクシアとレギオンを赤く禍々しく映し出していた。
………悪魔城ドラキュラ 00 刹那の夜想曲 #2 投下完了。
嘘だッ!
ぼくらの甲羅澤さんが途中退場なんて嘘だッッッッッ!!
>>242 受け入れるんだ、それが現実だ!
だが、我等が主 人 公の刹那がこのタイミングで退場だというのは
認めないーーー!
とにかくドラキュラOO、投下乙!
1/
ロシア地方での年末は、ロシア正教の暦に依るクリスマスよりも
新年の方が重大事ではあるのだが、AEUとの境に近いこの街では
矢張りそこら中の大通りをイルミネーションが飾り上げ、軒を連ねる
みやげ物屋の品揃えもクリスマス一色に染まる。
ロシアの冬だ。口を開けば、口の中が寒い。
自然、売り子が声を掛ける相手も選ぶようになるわけで、
いましがたヒーターの具合を調整した彼女が目をつけたのは、
しっかりとした足取りで凍りかけの道を行く二人組みだ。
遠目から見てもはっきりと分かる熊みたいな強面の中年と、
釣り目がちの眼光が鋭い少女の二人だ。派手でも高価でも無いが、
二人ともびしりと整って一本筋の通った、機能美一直線の格好だ。
中年男の右目を覆う火傷のような傷跡には一瞬アウトローの香りを
覚えたが、多分軍人さんなんだろう。
たまの休暇を一緒に過ごす父と娘、或いは叔父と姪という状況か。
決然とした二人の雰囲気に、軍人一家の家庭環境を想像した。
金遣いは荒くないが、貯めては居るだろう。連れとの年齢差があるから、
伯父さん頑張っちゃうぞ、とか見栄を張るのが期待できる。
少なくとも冷やかしに来て、暖房代にもならない装飾品を
一つだけ買っていった貧乏学生のカップルよりは有望だ。
声を掛ける相手は女の子、財布を出すのはお父さん。
土産話は知らないが、土産物ならそんなもの。
顔ににっこりスマイル浮かべ、上げる声音は半オクターブ。
「其処のお嬢さん……少し見ていかれませんか?」
"お嬢さん"に反応したのか、灰色の髪が寒風に揺れる中、
少女が売り子に振り返る。視線が合った瞬間に会釈すると、
ぎこちない動作で少女が返した。
――決まった! 売り子は表面上にこやかな笑みを崩さないまま、
心の奧で喝采を上げる。店の中に入れてさえ仕舞えばコチラの土俵だ。
2/
疑問が浮かんだのは、少女が熊のような中年に何かを聞いた時だ。
店に入って良いか聞くというよりは、声を掛けられた時には
どう行動すべきか、その指針を問うて居るようにすら見える。
――なんか、雰囲気が親戚というよりは……師弟?
"中佐"とか"少尉"とかの階級が聞えたのは、少女もまた軍人だと言う事だろうか?
士官学校を出たばっかりの新人さん……だとしたら、失礼を働いたかもしれない。
やがて熊男が岩のように肯き、少女が売り子の方を向く。
隙を見せない振る舞いで道行く人々を掻き分け、接近。
少女、近づく。通行人、避ける。売り子、怯える。
釣り目の女の子は、体格に似合わない非常な迫力を持っていた。
遠目には実家の弟より弱そうだが、近くに来ると二、五メートルの
熊ですら逃げ出しそうな眼力がある。
人革連が極秘裏に開発した、汎用少女型決戦兵器だと言われても信じる。
少女は軒先に立つ売り子の目前――正確には、売り子の手が届かない安全な
間合い――で停止すると、何事かを呟いた。白い息と共に唇が動いた事で
ようやく喋った事が分かる位の、それは小さな声だった。
「えっと……?」
少女はもう一度、今度はややはっきりと、かつ軍人然とした口調で話した。
「ですから……おじゃま、します」
このみやげ物屋史上最強の客は、そう言って門戸を潜ったのだった。
3/
さて、人革連が極秘裏に開発した強化人間――超兵一号であるソーマは、
薄い唇をへの字に曲げた鉄面皮の下で、実のところは困っていた。
「少尉もたまには、こういった店などで気を紛らわせて来たまえ……」
なんぞという有りがたい台詞を中佐から頂戴したところで、そもそも
気を紛らわせるという観念の発達していない――或いは無いソーマは、
精々店中の品物のバーコードを暗記してしまうくらいしか時間の使い道が無い。
ショッピングと言ったって、浪費の欲望も無く。
現金の所持を禁止されているから、そもそも消費の可能性が無く。
表面的には『財布を保護者に握られてひたすら値札を凝視する少女』に
成り果てて居るのが年の瀬のソーマだった。
はっきり言ってツリーなどにも興味は無い。
なんですかそれ、美味しいのですか? くらいの気分だ。
だが、たった一つ。
熊のぬいぐるみには心引かれる物があった。座った姿勢の熊だ。
色はピンク。
……ううむ。
穴の開く程、桃色熊さんを凝視していたソーマに、
恐る恐るながら売り子が接近してきた。
「……なんでありますか?」
背後に立たれると投げ飛ばしてしまうので、少し早めに振り向く。
「いえ……そのぬいぐるみはいかがでしょうか? と思いまして。
現代では珍しい、職人の手作りによる一品ですよ」
「……生憎と、現金を持っていないのです。これは私の気晴らしなのです」
「それでしたら、あちらのお父様におねだりをされてはどうですか?」
「父……?」
いわれて、店員の指差す方向を振り向くと其処には、オルゴールを
手にして難しい顔をする中佐殿の姿があった。
4/
「いいえ違うのです、部下であります……」
「……は?」
「ですから、親子ではなく上司と部下であります」
どうして頑なに親子関係を否定しているのかが、自分にも理解できない。
だが譲れぬものを譲らぬ場面は、今日このときを置いて他に無い気がした。
「今日は大きな仕事がありまして、たまたま時間が空いたのです。空いた時間を使って、
中……スミルノフ殿が私に気晴らしの時間をとってくださったのです」
「お仕事……なんですか?」
「仕事であります」
「あの……お仕事というのは一体何を?」
「それについては機密事項ですが、普通の仕事であります」
普通の、を強調したが売り子のお姉さんはどうもいぶかしげだ。
――しまった、普通の仕事には"機密事項"なんて言葉を使わないだろうか。
機密事項を民間人に漏洩した挙句中佐殿に迷惑を掛けるなど超兵の名折れ。
口封じをせねば……これを買ったら、黙っていてくれるだろうか?
謎の思考回路が熊のぬいぐるみを手に取らせた。
中佐にねだれば買ってもらえるかも知れないと売り子は言った。
ねだる……ねだる!? 一体どうすればよいのだ? とてつもなく困難なミッションである。
「口下手なのでしたら、これを持って見つめてみれば、
上司さんも買ってくれるかもしれませんよ?」
見つめる……相手を凝視する事。それならば可能かもしれない。
売り子の手から桃色の熊を受け取り、中佐殿に目を向ける。中佐殿は
コチラに背を向けては居るが、計算がただしければ3.27秒後には
振り返るはずだ。
そう、その時がチャンスだ。3,2,1……振り返る強面の上司を見つめる。
びくうッ! と、中佐殿が三メートルは後退った。
中佐殿の動きに巻き込まれ、床に落ちた商品の数々が耳障りな
音を立てて砕け、何故か自分も傷つく。
何なのだ、今のトイレに入ったらガンダムが座っていたみたいな反応は。
「中佐……これを」
いささか憮然として熊を見せる。
「あ……ああ、了解だ」
掲げた熊に、少々眉をひそめつつも、セルゲイ=スミルノフは肯いた。
数分後、少し軽くなった財布を懐に収めた中佐殿の隣で、一抱えはある
ふくらみを両手で抱くソーマはクリスマス・イブの街を歩いていた。
時に西暦2307年の十二月二十四日、妖精がブランコを引っ掛けて遊んでいそうな、
細い三日月が空に輝く夜だった。
日付を跨いでしまいましたが、これにてクリスマス短編全部投下終了。
ソーマのキャラ把握がいまいち弱かった事に反省です。
え……ソレスタル=ビーイング? サジとルイス? 何ですかそれ?
感想、批評、駄目だし等、一行でも下さると脳汁吹いて喜びます。
それでは皆様、メリークリスマス。
45氏GJ!
ソーマがどんな目をしたのか気になるw
ついでに売り子もGJ!
クリスマス短編感想
>>真言さん
>>弐国さん
投下乙です。分かる人には分かる、分からない人には全く元ネタが不明の、
新人スレ玄人(そんなの居るのか!?)向けクリスマス短編でしたが、
私は堪能させて貰いました。
まとめさんと愛車けろよん号がメインを張っていて驚き、その後爆笑です。
相変わらず弐国さんのオリジナル種ワールドが健在で、
安心もさせていただきました。
新年企画もあるのでしょうか? 楽しみにしています。
>>てのひら
投下乙
これだけの分量をほぼ定期的に投下できるならば
それはきっと遅くない。むしろ誇って良かろう
学業に支障のない程度でがんっばてくれ
文章量が増えた事で気になるのは
やおいな文章になってしまっていること
一回投下分の中でも起承転結を少し派手目に意識した方が良い
既に男同士が手を握っている時点で敬遠される可能性がある
「なんだやおいか」でスルーされるにはあんたは勿体ないと思う
書きたい事、魅せたい事がはたして伝わっているかどうか
推敲時点でもう一度見直してみてはどうだろう
>>姉弟物
投下乙
新人スレ倫理委員長たる編集長の裁定待ちだろうが
きっとギリギリOKで掲載してくれると俺は思うww
職人モドキとの事だがなかなかどうして、何か緊張感のある文体は
きっとコテ通りの内容を書いた時に遺憾なく発揮されるのだろう
なので、むしろ直接描写の最後の一行が残念に思える
何か別の表現に置き換える事で読後感がかなり違うと思う
単純なエロではない物があんたならきっと書けると思う。期待する
>>彼女
投下乙
いつもの河弥節が健在で安心した
特に台詞回しはまんまアニメに使っても違和感が無く思える。お見事
一行を短く区切った上で空白行も適宜入れた上でのレス数の増加
そうであれば、これはもうある程度しかたがないのかも知れない
それでも気になるのなら、一話で山場を二つこしらえる必要はあるが
あえて前後編に区切ってみても良いかも知れない
>>†
投下乙
こちらも変わりなく安心
ダムAで言うところのオリジンなのだな、とふと思った
アニメ本編がフラッシュバックする河弥氏と好対照
クリスマス短編
>>弐国
草原は中盤のサーシャとティモシーのやり取りが良い
そしてけろよん日記のようなものが書けるのは、悪いが意外だった
ネタ選びも、そしてとめさんがただ家に帰るだけではあるが
話の作りもお見事、と言っておく
>>真言
らしさ爆発。企画モノはヤッパリあんただな
けろよん号をあっさり引っ張ってくるネタ選びもお見事
>>†
CE70での実験は概ね成功か。但し一部に煩わしさ、わかりにくさを感じる
シーン毎に雰囲気を大幅に変えてみてはどうだろう
OOでのスピード投降は大した物だ。各キャラもしっかり掴んでぶれていない
その上キチンと†風味での味付けもしてある
それが故に各話が若干薄味になってしまったのは多少残念
ただ、濃い口になって必ず良くなる訳でも無かろうとは思うのだが
>>河弥
ちょっと意外な切り口の話を読ませて貰った
勿論大きな事件は起こせない中淡々と進む話につい引き込まれる
あえて河弥節のまま書いているのが良い効果を生んでいるのだろう
年末いっぱい合併号目次(1/4)
あり得ない問題から現実逃避してあり得ない妄想の世界へはまりこむ彼は、試験中。
ひまじんの謎短編
>>130 もとになった文面は騙るスレ16の
>>822あたりから。優劣ではなく、表現者によって変わる部分を味わおう。
戦闘描写・習作
>>137 ソレスタルビーイングなんて今更取り上げてもなぁ。マスコミ業界から見たガンダムOOの世界とは! 他1編。
ひまじんの謎短編
>>143,144
私が狂っている? 私に言わせれば、自らの業と向き合う事さえ出来ない連中の方が狂っているのだよ……。
explaration of personality
>>146
年末いっぱい合併号目次(2/4)
メイリンと買い物に出たルナマリア。彼女を待ち受ける過酷な運命とは! ひまじんの書く萌えキャラルナ!
ひまじんのたねこれ
>>151-152,181-182
休日の朝。未だにベッドに眠る隊長を尻目に、僕はシャワーを浴びる。短編の奇才が放つ初の長編をお届け。
てのひらを、たいように
>>160 激しい模擬戦。射撃の腕にあきらかに分のあるシンの相手はレイ・ザ・バレルと名乗った……。
戦闘訓練
>>172-174 俺をなぶり殺しにしたいらしいな? 良いだろう。だが、それは無能なおまえの負けを宣言するのと一緒だ……!
explaration of personality
>>185 人の持つ負の感情が満ちた時、悪魔城は復活した! 鬼畜モノの第一人者が描くバロックと鞭の世界……!
悪魔城ドラキュラ 00 刹那の夜想曲
>>189-190
年末いっぱい合併号目次(3/4)
『ダブルアルファ』との合流を前に連合軍との戦闘に入るミネルバ。ムラサメ、ルナマリア機は出撃する……!
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜
>>195-203 『ボギーワン』に翻弄され、窮地に陥るミネルバ。知恵の女神は遂に絶体絶命の窮地へと追い込まれ……。
SEED『†』
>>207-209 上天気に心地良い風が吹き付ける中、僕は隊長と一緒にショッピングモールへと車を走らせる……。
てのひらを、たいように
>>215-222 座席にシートベルトで拘束された彼の見る夢は姉の肢体……。新人スレ倫理規定ギリギリでお届けします。
姉弟物
>>225-226 刹那・F・セイエイの駆るガンダムエクシアが対峙したモノ、それは常人が相手にしてはいけないモノだった……!
悪魔城ドラキュラ 00 刹那の夜想曲
>>239-240
年末いっぱい合併号目次(4/4)
クリスマス特集
(まとめサイトクリスマス短編集からどうぞ。多分まとまって読めるのは期間限定ですのでお早めに)
ツリーの横、一人虚空に浮かぶのはイクサバノオドリコの異名を取る少女。彼女が落ち込んだ理由とは……
彼の草原、彼女の草原(そら) 光芒 〜アースライト〜
ホワイトクリスマス。帰宅する彼はいつものように愛車から雪を降ろし、いつものようにコンビニへ。
けろよん日記 〜聖なる夜とガンダムと〜
クリスマス。職人達はPCの前でいったい何を思うのか。ネタ短編の奇術師、真言氏の真骨頂を此処に!
謎クリスマスのアティテュード
クリスマスの夜、男は全てを賭して全力で走った。大切なモノのために、愛すべき者のために……。
クリスマスCE70
突然ではありますが自分はけろよん号であります! ……遂にまとめ氏の愛車までもが主人公として登場!!
実録!けろよん号のクリスマス
クリスマスを迎えた少年少女達。時代は過酷な未来を彼らには隠し、表面上優しく包み込んでいた。
ほんの少し昔の話
超兵一号ことソーマVS熊(ぬいぐるみ)! 勝負の行方は……ソーマのクリスマス他三編をまとめて。
00『†』クリスマス短編
新人職人必読、新人スレよゐこのお約束。熟読すればキミも今日からベテラン職人だ!!
巻頭特集【テンプレート】
>>1-6 絵師テンプレート【暫定版】
>>7
各単行本も好評公開中
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読者と職人の交流スペース開設。
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お知らせ
年明けは7日からの予定です。ご容赦の程を。
・投下作品とのリンクを問わず絵師、造形職人の方を募集中です。 エロはアウト、お色気はおk。
これくらいのさじ加減で一つ。素材は新シャアなので一応ガンダム縛り。
勿論新人スレですので絵師、造形職人さんも新人の方大歓迎です。
・当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。
・また雑談所とも一切の関係はありません。当該サイトで【所長】若しくは【ひまじんさん】とお声掛けの程を。
・スレ立ては450kBをオーバーした時点で、その旨アナウンスの上お願いします。
お知らせ
現在、年末年始特別企画として『新人スレ人気キャラ投票』を行っています。
投票は新人スレ若しくはまとめサイト作品内キャラに限ります。
この際お気に入り以外ももう一回読み込んでみては如何?
『好きなキャラ(作品名)・簡単な理由』の他名前(偽名可)・性別・体重・持病・靴のサイズなどを記入の上
雑談所メールフォームから私のメール宛にご応募下さい。
名前のみ必須とします。メールアドレスも偽物で結構です。また複数回投票はあり、とします。
ex1) タリア艦長(SEED†)・イエス、マム!!
ex2)シャミィ(森の娘)・いたいけ過ぎ。他の理由は要らない。
投票はこんな感じで。勿論長文も男性キャラもおk。集計の上来月第2週前後に発表したいと思います。
1月7日投票分までを有効票としてエクセルにぶち込みますのでお気軽にどうぞ。
編集後記
いろいろとご心配をおかけしました。PCは現在HDDを換装したもののどうやら電源クサイ……
新しいの、作るかな……。と言う訳で仕事用ノートを無断持ち出ししてお届けしております。
それとアンケート、かなり票が偏っておりましてww なんというか、皆様の更なるご応募をお待ちしております。
>>251 何時の間に私がそんな組織の長に……。
アスハ代表との短い会談を終えた俺は直ぐ様、自分の執務室に戻り、専用デスクの
コンソールを操作して、代表府財務部門長官室へとホットラインを通した。
――代表府財務本部。
要はこの新興国家オーブの金蔵を担当している重要部門の一つだ。
今までの氏族が好き勝手し放題だった国庫を統制し、一任し管理の担当をして
もらっている。セイラン卿親子達が大戦後に必死に立て直したオーブの財源は、
一時的傀儡だったアスハ代表とラクシズの連中が揃って滅茶苦茶にしてくれていた
お蔭で、財源再建に、えらい苦労をさせられたという曰くつきの政務部門であった。
無論、そこのスタッフは精鋭揃いであり、長として頂点に立つ男も俺が最も信頼して
いる旧知の人物である。
短期間だが、俺の留守を預ける事ができる力量があると見込んでいる。
基本的に代表府の仕事は24時間フル可動の為に各部門の長と緊急連絡を容易に
つく事ができる点は中々の利点であろう。お役所仕事など、規定時間で終了という今
の常識の方がおかしいのだ。
そして、それを示すかのように早朝にも関わらず容易に繋がった。
『――財務本部です』
無機質で素っ気無い対応をされる。俺が嫌われ者たる所以か。徳がないというのは
実に嘆かわしいものである。まぁ、人から好かれる為に仕事をしているわけではないが
俺の今までの行動を知る人間ならば当然のことであって、ある意味仕方がないことだろう。
「サイ・アーガイルだ。本部長を頼む」
『はい、お待ちを……』
そして3秒も経ずして、温厚で落ち着きのある男の声が返ってきた。
『――私だ。どうした首席補佐官?』
俺は朝早くすまん、などのありきたりの挨拶を抜きにして本件に入った。社交辞令や
礼儀など無駄を極まる。その事は相手の方も承知している。
「例の件の了承が取れた」
反乱軍討伐の詔をアスハ代表から得た事を簡潔に告げる。
『……そうか』
俺は更に相手に対して、ズバリと本題を切り込むみ掛かる。
「――俺は直ぐに艦隊を率いて出撃する事となる。件話の通りに俺の不在の間なのだが……」
『うん?』
「――留守の間、政軍務関連の実務を全て貴公に委ねたい」
『……なんだと?』
暫く沈黙の後にコンソールから呆れた声が返ってくる。
「なぁに、心配ない。重要項目の決定はアスハ代表がやって下さるさ。それに重要な
案件決済の大部分は俺が出撃(で)る前に済ませてある」
『……』
俺は、相手の沈黙と呆れを和ませる為に気楽に語りかけているが、実際は薄氷を
踏むような感覚を否めない。俺が今、本国を空けるのは博打に近いのだから。
「貴公は、アスハ代表の痛痒く感じる細かい部分についての実務を見てくれればいい」
暫しの沈黙の後にデスクのコンソールから思慮深い声が流れてきた。
『――今、君が本国を空けてどうする?』
と、やはり痛いところを突いて来た。俺自身が矛盾と感じていたのだから、相手が
承服しかねるのも無理はない。
相手は、更に続けて、”地球連合強国”の対応はどうするのだ?と聞いて来た。
『今、君が本国を空けるのが得策ではない事を君自身は、重々承知していよう?』
「まぁ……な」
『我々オーブも”地球連合強国”の一員に名を連ねてはいるが、他の強国連と比較しても
中身には大きな違いがある』
その通りだ。実際に地球連合強国超大国である”大西洋連邦”と俺たちとでは国力に
30倍近い差があるだろう。当然、軍事力も比べ物にならない。これで前大戦で相手と
喧嘩をしたかと思うと怖気が走る。
前オーブ首脳部の頭がおかしかった所為で、この国は2度と灰燼と化している。
勝てない戦はしないのが本来正しい。それでも戦わなければならない時は、知恵を搾るべきなのだ。
だが、肝心のウズミ前代表は何ら具体的な対策も立てずに己の矜持のみ拠り所として
皆を道連れに滅んだ。これは決して許してはならない行為である。
一国の国主たる者、たとえ誇りを捨ててでも、相手の靴の裏を舐める屈辱をも甘んじ、
あらゆる対策を講じて生き残りを図らねばならないのだ。
『……だとしてもだ。我々としてはあらゆる状況を考慮し、常に最悪の展開を考えておかなくてはならない』
相手は慎重論を述べてくる。確かに言い分に一理あるし、俺としても内実は大いに賛同したい。
だが、時代の風雲がそうそうと都合の良い展開を許してくれるはずがないのだ。
今の時代、ここぞという時に博打を打たなければ、国は呆気なく滅んでしまう。
反乱軍の討伐はこの時期こそがベストだと、俺もロンドやキサカ達と何度もシュミレートと検討を重ねて
決断を下したのだ。勿論、だからこそ後方にも、できるだけの手を打って来た。
「だからこそ、大西洋連邦内の内紛に密かに介入している。あの国が内乱状態になる事こそ、
オーブにとってなによりも望ましい」
俺は現在展開している、対地球連合強国の謀略の一環を簡潔に述べた。使い古された
謀略の一環である”流言”を初め、多くの諜報員を使って大西洋連邦の内紛に工作をしている状況だ。
ちなみに陣頭指揮は俺とロンド中心となり、細部の詰めはキサカが担当していたりする。
特に驚く事はあるまい。他の諸国も多かれ少なかれ介入しているはずだ。無論、このオーブにもだ。
要は、それら他陣営の謀略を見極める眼力があれば恐れる必要はないのだ。
『悪人……だな。サイ・アーガイル』
相手が俺に対する世間の感想を述べた。その通りだ。
「――悪人じゃなきゃ、この動乱の世を渡っていけんよ」
俺は不敵に切り替えす。まかり間違っても天国にはいけんよ。
それに馬鹿正直な生き方で敗北をするのは、もう御免被る。遂、俺は自分の座右の銘である
”謀聖”と謳われた古の謀略家の教訓を口にしていた。
「……”謀多きは勝ち、少なきは負ける”」
『……なに?』
戦いの世に生きる、男の有様だ。
そう、乱世では敗北する事自体が罪である。いかなる手段を使っても
勝利を得る姿勢は、戦時の為政者として真に正しい姿だと俺は思う。
相手が、なにか?と問い返してくるが俺は特に答えは返さなかった。戦乱の世に
生きる人物達にとって”理想”や”自由”を旗印に掲げるほど滑稽な事はないであろう。
敢えてそれを実行する為には力で”敵”を捻じ伏せてゆくしか手段はないのだから。
――だが、その”力”が通用しなくなったらどうするのだ?
俺は嘲う。力で築いたものはいつか同等以上の力で滅ぼされるのが常である。
あの連中はそれを理解ぢていたのだろうか?
俺にとっても敗北は一度で十分だろう。それに失恋と同様に二度目は多過ぎる。
ならば、”力”で相手に勝てないのならば”知恵”を使うだけの事だ。そうして、暫く沈黙の後に、
大きな溜息がコンソールから聞こえた。
『……わかった。その事はもういい』
相手も俺の心情の一旦は、理解してくれている。
『とりあえず、直ぐにそちらに向う。細かい打ち合わせはその時にしよう』
「――頼む、カズイ。いや、バスカーク卿」
>>続く
264 :
戦史:2007/12/27(木) 19:05:56 ID:???
規制が入ったので自宅で投稿できなくなり、別の場所で投稿させて頂いてます。
次回は年明けかもしれません。皆様良いお年を……
保守
暇だから本スレで批評してみようかなって思ったら、ナイスタイミングで戦史氏が
投下していたのよね。本当にラッキーなのだわ。
と、言う訳で批評ね。
戦史氏の特徴は仮想戦記風の淡々とした文体ね。一歩間違えれば平坦になりがちなのだ
けれど、主人公――サイに人間臭さを加味する事で上手い事バランスを取っていると思うの。
今回のポイントはサイとカズィの会話かしら。会話を読み進めていけば簡単に予測が
ついてしまうのは狙っての事よね。カズィの口調が種とは明らかに違うけれど、
特に違和感は感じなかったわね。カズィはカズィなりに成長したのだろうから。
個人的にはサイがAAを降りてからどう過ごしたかを知りたいわね。キャラクターを
膨らませる為にも必要だと思うのよ。
って、これじゃ印象評ね。私の悪い癖なのだわ。
投下お疲れ様でした。次回投下をお待ちしていますね。
光さす場所は〜向かうべき場所〜
冗談じゃない!
やはり口に出す事は出来ない。相手は好意で言っているのだ。
悪くない選択だ。と人は言うだろうが、私が安直にそれを選ぶ事はいけない事だろう。
エターナル、クサナギに夢遊病患者のように追随してきた私たちは
何処の陣営のレーダーにも映らないデブリベルトの中で逡巡している。
エターナル乗員で望む者のザフト復帰の手続きは多少のリスクと共にほぼ完了した。
昔の東洋の戦(いくさ)装束のような服を身に着けた少女はそう言うとあどけない顔で笑う。
ただ自分を含め、一部のものはザフトはおろかプラントに帰ることすら、もう叶わない。
それを私に言った顔は、だが少し寂しげに見えた。
と、後ろからオーブの軍服に派手な肩章をつけ、飾紐を吊ったもう一人の少女が
プラントは勿論無理だが、住む所と仕事くらいわたしが何とでもする。勿論艦長たちもだ!
と、これはかなり強い口調で私の目を見ながら断言する。
連合の服を着て戦場に居たのだ。
戦争が終わったなら当然連合に帰らねばなるまい。たとえ反逆罪で極刑が免れぬとあっても。
少なくとも責任者の私はそうしなければならないと思っていた。
状況はともかく作戦行動中に脱走し、味方に、それも連合の旗を掲げる船に砲を向けた。
のみならずその船を落としたのだ。ナタルを、私は……。
件の少女がそう言うのならきっとなんとかなるのだろう。
彼女もまた年若くして権力者であり、またその直情的な性格はともかく才女でもある。
だから私はありがとうとは言ったがその言葉の中に自分は含んでは居なかった。
船はオーブ近海の秘密工場へ下ろすことになった。私はともかく、他の乗組員は
オーブへの亡命の選択肢を受け止めてもらわねばなるまい。船を下ろしたあと、
私だけが出国すれば良いのだ。
船が着いたと同時にモルゲンレーテのIDカードと当面の住処のアパートの鍵を
渡された時には、だから本気で叫びそうになった。
冗談ではない!
これで連合へ出頭すれば私は、今度はかの少女までをも裏切る事になるではないか。
アパートの部屋に着いた私はただひざを抱えて座っているしかなかった。
光さす安らぎの場所は、処刑台の先にあるのだと思っていた……。
どうやらあなたと会える日は遠くなってしまったようだ……。
今回分以上です
多分年内はこれで投下お終いの予定です
遂に別の話の投下が年内に始められなかった……
ではまた
>>131 ありがとうございます
正直やった事無い事ばかりやったもので
何を言われるかドキドキモノでまっておりましたw
>>133 辛口さん風に言えば短編、既存キャラ、ベタ。これらを使う『実験』なので
最終的なオチを何処に持っていくか逡巡してます。
どんでん返しなしでベタに話を持っていくのは自分にはかえって難しいです
>>267 投下お疲れ様です。
キャラクターの独白で話が進むので読みやすい反面、ちょっと文章が荒れ気味かなって思ったわ。
衣服でラクスを表現するのは正解だと思うけれど、カガリについてはちょっと上手く
なかったように思えたわね。カガリは衣服が性格を表さないじゃない?カガリって
書いてみると意外と難しいキャラよね。
マリューの心境に丁寧に寄り添ってか書かれているのは好感が持てるの。だからこそ、
最後の文章は蛇足に見えたわ。マリューが喋り過ぎていて、読者の感情移入を拒絶して
いるように見えるの。行動描写でマリューの心境をさらりと描写した方が余韻が増すと
思うのだわ。
って、かなりキツい批評になってしまったかしら。弐国さんは筆力があるから見る目が
厳しくなってしまうのよ。本当にごめんなさいね。
>>戦史さん
投下乙です。
サイが、実際に近寄ると人間臭いキャラクタをしているし仕事の能力も信用もある。
けれどあまり好かれてはいない、という辺りに戦史さんの味があると思います。
作中で繰り返し強調されているように、他人から良い印象をうける、
好かれるような理想とこころざしでは、為政者として国を守っていくことが出来ない
という考えをサイが貫いているのでしょう。
仕事に関してとことんドライに考えるサイですが、カズィははたしてどう考えて
いるんでしょうか? その対比が今後の見所だと思っています。
>>弐国さん
投下乙です。
責務を全うしたい判断と、恋人の元で安らぎたいという感情、
裁きを受ける覚悟、をまとめてカガリの善意によって踏みにじられた形ですね。
悪気が無いのはわかるから「冗談じゃない!」がでてくると。
弐国さんの作品は、心のままにならない状況にキャラが放り込まれて
物語が始まるのが良いと思います。意志と周囲の環境をせめぎ合わせていく、
その中でキャラクターの成長が見えるのが面白いです。
だからこそ、前三作品と違いマリューが死んでフラガの元に行きたいという
方向性で描かれているのが気になりました。
というか続きが気になって仕方がありません。期待しております。
>>真言さん gone to battlefield
まとめへの直接投下乙です。
本編では終始割り切ったイメージの或るキャラクターだったハイネの、
迷いに迷う側面が面白かったです。
それでは皆様、良いお年を。
二度ある事は三度ある。それとも三度目の正直?
積み重ねた屈辱を雪がなければ私は自分を取り戻す事が出来ない。
過去の災厄で失ってしまってしまった物は気高きエリートたるザフトレッドの私。
全てを喪失した私は自分を取り戻さねば前に進む事が出来ない。
それは過去の栄光の残滓にすがりつくという愚かな行為なのかも知れない。
笑いたい人間がいれば笑えば良い。そんな事は私に取って取るに足らない些細な事だ。
私は私が私である為に必要な事を為すだけだ。
そんな訳で、私はリベンジをする為にあの忌まわしきファッションセンターに来た。
クリスマスはとうの昔に終わったのに店内には即席三分で出来るカップラーメンみたいなカップルが沢山いる。
仲良さそうに腕を組んだりして恥ずかしくないのだろうか。
「昨日ウチの弟のパソコン弄ったんだけど、変換がおかしいのよ。“か”って打ったらオーブの代表の名前が出て来るの」
「パソコンが君の魅力でおかしくなったのさ」
つか、煽ってんの? オマエ。そんな言葉が喉元まで上って来るけど押さえこんだ。
今の私には他人にかまっている余裕などないのだ。
「お姉ちゃん、こんなのはどう?」
メイリンは相も変わらず忌々しいお日様の様な笑顔で次から次へと服を探し出して来る。
「これは色が地味だから駄目。そっちは生地が安っぽいから駄目」
差し出された服をじっくりと吟味してはメイリンに突っ返す。
本当に良い物は自らオーラを放つ。そして私に相応しいオーラを放つ服は数少ない。
それは私がザフトレッドのエリートなのだから仕方がない。
メイリンみたいな有象無象で凡百の緑とは訳が違うのだ。
「じゃあ、これなんてどう?」
「縫製が甘くてお話にならないわよ。もっとゴージャスで道行く人が振り返る様なロマンチックな感じじゃないと駄目よ」
何回駄目出しをしたのか解らなくなり、私にもメイリンにも疲労が見え始めて来た。メイリンは不思議な服を手に取って悩んでいる。
「このミニスカはお姉ちゃんには似合わないから駄目ね」
ミニスカ。ミニスカート。ザフトでミニスカと言えばこの私。決してアビーやジュール隊のシホではない。艦長なんてもっての他だ。
その私に似合わないミニスカが存在する筈はない。いや、存在する事は許されないのだ。
「……メイリン。その服を私に貸しなさい」
「でも、この服は……」
「良いから貸しなさい。解らないの? その服が放っているオーラを!」
メイリンは私の顔を見ると怯えながら服を差し出す。私はその服をひったくる様に取ると試着スペースに入った。
ゆっくりと一部の隙もない様に来て鏡の前でクルッとターン。
胸のロゴがちょっと気になるけどバッチリ決まったいる。
セクシーだけどそれでいて健康的な太股と、見えそうで見えないチラリズムは誰にも譲る事の出来ない私の絶対領域。
自信があるけど不安もある。だってこの服……チアガール?
「お姉ちゃん、どう?」
メイリンがいきなりカーテンを開ける。身構えてしまうが、メイリンも同じ服を着ている。
流石は私の妹。私程ではないが似合っている。
「ねえ、チアガールが流行ってるの?」
私が疑問を口にするとメイリンはキョトンとした顔で首を横に振る。
それと同時に懐かしくて何かが始まる期待感とどこか物悲しい郷愁を誘うメロディーが流れ始める。
そしてフロアにある全ての試着スペースのカーテンが開く。
現れたのはシン、ヨウラン、ヴィーノ、レイ、アスラン、ハイネだ。 皆黒のタキシードに蝶ネクタイという出で立ちで今まで見た事がない男前の顔をしている。
メイリンはニッコリと私に微笑んで私を皆の隣りへと連れ出す。
「お姉ちゃん、これはチアガールじゃないよ?」
まさかまさかまさか! ひょっとしてこれはスクールメイツ?
「♪たっ、たっ、種死の大爆笑〜」
私の意思に反して皆の歌に合わせる様に私の眩しいばかりの肢体が動き始める。
足を上げたり飛び跳ねる度に私の下着という名のサンクチュアリが衆目に晒される……。
「その捨て身のアティテュードは称賛に値する。更なる精進を期待する」
「乙です。ネタが解りませんが楽しめました。続きを期待しています」
「ちょっと狙い過ぎたな。アンタならもっと痛い事が出来ると思う」
「携帯を使うのは苦手ですが写真を取りましたw」
「とどのつまり、俺が言いたい事はアスランの髪の薄さは志村に匹敵するって事だ。アンタもそう思うだろ?」
集まった謎の一団が言葉の刃で私の心を切り刻む。
なんなのこの羞恥プレイ。 いったい私にどうしろと?
273 :
ひまじん:2007/12/30(日) 18:29:31 ID:???
ひまじんのたねこれ
うんっやっぱり悪だくみしかっ!!
投下完了。
自分ごと出して居るからいいものの、内輪ネタここに極まれりだww
275 :
ひまじん:2007/12/30(日) 21:41:39 ID:???
>>271-273は二次創作でありフィクションです。実在の団体、人物とは一切関係がありません。
ひまじん投下乙!
あくまでも謎の集団だねw
9/
巨体を通して拡張された五感。
絶え間なく装甲表面を撃ちつけるデブリの一つ一つに触れ、
レーダーが捉えた敵機の姿を見つめ、
フレームを軋ませる10G超の加重に耳を澄ませ、
加速グリッドに叩き込まれたビームの残り香を嗅ぎ分け、
圧力伝動装置が振り回す関節の動きを味わい尽くす、
ただそれだけが、今のアウル=ニーダを占める認識の全てだ。
MSは、その巨大さの中に容易くアウルを飲み込み包む。
視界を縦横に走る赤い光、体を揺らす激しい衝撃、静脈を逆流する血液の重さ、
メットに篭る自分の体臭、そして耳朶を撃つ二つの悲鳴――そんなものは、
コクピットに押し込められた矮躯の感じる他人の痛みに過ぎない。
操縦者という幻の器官が感じる、いわば幻肢痛。
しかし、歯車も疑問する。
二つの悲鳴に疑問する。
――悲鳴……二つ……?
腹中に収められた、脆弱な部品――只の少年が首を傾げる。
何処かで聞いたような声。MSではない少年と少女の声。
戦闘記録ではなく――思い出の中の言葉が何処かから聞える。
意識を向ける――耳を澄まして。
『グッアアーーーッ! ネ……オォ――!』
『なんでだ、なんでだ……どうして――!?』
遠く、スティングの声がする。ステラの声がする。
アウルのウィンダムは一対一で戦っていて……掩護が無い!?
針の穴を通す射撃で牽制を行うスティングの機体は何処だ。
縦横無尽に弾幕を躱して隙を作るステラの機体はどうした。
怖気がアウルの認識を冷やす。
MSに拡散していた感覚が凝結、そして彼我の境が体内に還元。
皮膚感覚を取り戻すと同時に、モビルスーツの腹中であると意識した。
「――ちッ! 思わずスイッチが入ってたよ……」
正面、スラッシュウィザードを構えるザクファントムが目に入る。
頭部レーダードームに斜めの刀傷をペイントした白銀のMS、
「選りにもよってスカーフェイスのザクだ……情け無い上に運も無いよねえ!」
アウルの記憶が正しければ、パイロットは恐らくイザーク=ジュール。
プラント国防の要にして、ザフトが誇るエース中のエースが眼前に居る。
10/
ステラのウィンダムはほぼ無傷、しかしカオスは相当に損傷していた。
スラスター一吹かしの間合いがザクに破られた刹那、MSウィンダムを
加速させた。移動後の空白を閃光が二条三条となぎ払う。
――動きの悪いカオスは前に出せない。
自身を囮に注意を寄せる。と、ステラが呼応して背後に付く。
ウィンダム二機が軌道を交差させた次の瞬間には、ステラ機だけが
直角に近い方向転換を見せた。
対するザクは、恐れる様子も見せずにさらに切り込んで来る。
……アウルの方へ。
「は、相手にしやすいっていうのかよ……油断だぜえッ――!」
抜き放たれた戦斧は、装甲よりも早くアウルの矜持を傷つけた。
機体を鋸歯状に揺さぶる乱数的回避に、直接操作を加えて挙動を制御する。
全高18mの巨人が全長10mのビームライフルを構えると……トリガー。
勘に任せた素早い二連射は、ザクの放ったビームと電磁作用で互いに絡み合い、
狙いを逸らされ外れて消える。
「な……なんでだよ!」
ビームライフルを構え始めたのはアウルが先。
なのに何故、ザクの射撃が同時に来るのか。
ビームをあえて掠めて――つまり最小限の動きで――躱したザク、
その肩部に備えられたガトリングから迸る驟雨の如きビームをウィンダムは、
身を捩って躱す。当たるが、避けても当てられる射撃ではない。
「はッ――! そんな攻撃……!」
ザクの射撃は、決して常識を離れた速さも正確さも揃えていない、
アウルはそう判断する。故に一手ずつを二機で確実に上回り追い詰めれば、
イザーク=ジュールであろうとも粉砕できる、その自信が湧いた。
その過信が湧いてしまった。
ライフルを戦斧に持ち替えたザクから重い斬撃。残念ながらザクとは重量も
出力も違う。軽いウィンダムは大人しく跳ね飛ばされて勢いを受け流し、
そのまま距離を置いてビームライフルを構えた。ザクの直下からは、
股座を狙うようにステラのウィンダムが迫っている。今度はアウルが
ステラに合わせて牽制する番だ。
と、ザクは既にビームライフルを下方に構えていて――、
「何――ッ!」
『アァッ――!』
一発のビームがステラの乗るウィンダムの回避機動を捕らえて掠めた。
黒色の脚部から薄い霧を撒くように推進剤が吹き出て、アウルの肝を冷やす。
スラスター内で過熱――プラズマ化して噴出する推進剤だから、熱されても
勝手に燃えはしない。だが高機動タイプのMSを使うステラが当てられるなど、
敵パイロットの腕は尋常の域を遥かに越えている。
11/
――いや、違う!
射撃能力が卓越していたのではなく、ステラが避けられないタイミングで
迎撃を行った、その切り替えが早かったのだ。
即座に脚部をパージしたステラのウィンダムをカオス共々背中に守り、
アウルは自機を前に出す。
そんな拙いやりかたでしか眼前のザクを止められないことが、
アウルにとっての脅威であると雄弁に語っていた。
叫ぶステラの声がする。
『どうして……紅い奴より遅いのにどうして攻撃が当たらない!?
教科書どおりに動く奴に、わたしがどうして当てられる――!」
――そいつはな、ステラ。こいつが教科書通り動いてるんじゃなくて、
教科書がこいつを参考にしてるからだよ。
口には出さずに心で答える。
教科書戦術と馬鹿には出来ない。下手なパイロットほどMS戦において
臨機応変を口にするそうだが、それは圧倒的大多数の状況に対して基本を
守ることが出来て、なおかつ不測の事態に際しての話だ。
先人が血と引き換えに残した経験を無視して、身勝手な判断に
身を浸してはならない。
殆どの勝利は地道で堅実な作業の積み重ねであるという。
ネオの言葉だ。
戦場でパイロットに委ねられた判断は、ほんの瑣末なものだとも、
仮面の上官は言っていた。
絶対のものではないが、効率的であるゆえにセオリーたりえるのだ。
まして眼前の敵はおそらく強敵との想像を絶する苦戦を乗り越える果てに、
卓越した技量に頼るのではなく、達観した戦術の積み重ねに至ったのだ。
「無意識でお手本に乗っかる事が出来る、そんな奴には――」
ウィンダムは発条を矯める様に身構え、"幻影"なるザクの突撃を待つ。
堅牢な装甲を相手に、狙うは中心部への必中のみ。
中距離での読みが肝心だ。
「――苦戦して当然なんだよ!」
12/
ザクは旋回を終えて加速接近の段階に入っていた。
――今だ!
弾かれる勢いで全力加速――の直前、アウルの読みよりも少しだけ早くザクが
ヨコに逸れた。タイミングを狂わされたウィンダムは身を捻ってザクに追随、
中距離を挟んでの射撃戦にもつれこむ。
「ステラとスティングは狙わせないよ――とッ!」
互いの側面と背後を狙う輪舞は刹那、両機の間にビームの渦を産んだが、
痺れを切らしたアウルが武装をライフルからサーベルに持ち替えた時、
ザクは既に鋭く巨大な得物を――振りかぶり終えていた。
「不味い……ッ!」
機体同士の中ほどで噛み合う戦斧と剣閃の打ち合いは、
瞬時に決着を見た。ウィンダムの後退という形でだ。
そもそも、ザクのスラッシュウィザードに取り付けられた戦斧はシールド等の
防御装備やビームサーベルなどの近接兵装毎敵機を切り裂くためのものだ。
真正面から受け止めては、ウィンダムの関節ごと粉砕され、返す一撃で胴を
払われる。それは分かって居た事から、打ち込みそのものは対応できる。
問題はその切り替えだ。
「手ごわいねえ……一個一個は僕にも真似のできる動きだけど……本当に、
MS戦のお手本って奴だよ」
速くないけど早い。上手くはないけど巧い。
アウルが感じる敵の脅威を言葉で表すとそうなる。
「だから……もう一歩深めに踏み込まないとねえ!」
頭部に斜めの刀傷をペイントされた白銀のザクファントムに向かい、
圧力に立ち向かうのはエクステンデッドにとっても並み大抵の事ではない。
それでも、正気を失っているスティング――通信を一方的にカットしているため、
ブロックフレーズによる停止も出来ない――に代わり殿軍を務めねば。
「正直辛いけど……やるっきゃないッ!」
戦術で先を行くことが出来なければ、戦技で上を行かねばならない。
心静かに、僚機の存在を一時忘れる。皮膚の境を越えて拡散する認識を
モビルスーツに満たして、ウィンダムの関節全てを緩やかに解放し、
アウルは自身の限界に挑みかかる高機動戦闘へと移行した。
13/
「止めろ……だとォ! 一体何事だ!?」
それから数十秒後、動きを止めたカオス及び二機の新型――それは
連合の"ウィンダム"であると確認された――に得物を向けたまま、
イザークは通信の向こう、副官シホに向けて声を荒げた。
無力化は簡単とは言わないまでも、決して難敵では無かった。
カオスを含めた三対一であれば勝機は向こうにあっただろうが、
二機でカオスを庇うのが相手となれば、有利も不利もひっくり返る。
それはイザークの独壇場だった。
或いは躱し、或いは防ぎ。そして存分に撃って切る。
イザーク=ジュール、旧大戦においてデュエルを駆ったザフトレッド、
そして現ジュール隊隊長。その肩書きは伊達も酔狂も含まない。
彼が副官から攻撃を中止するよう求められたのは、カオスとウィンダム二機を
輝かしい戦歴の新たなスコアに加えようとした、その直前だった。
「後少し、ほんの一撃で"カオス"を撃墜出来るのだ……!
プラントとザフトの機密を守る、絶好のチャンスなのだぞ!」
『母艦――ミネルバを直に狙われているんです。ボギーワンはMS共々
撤退を認める事を条件として……ミネルバを人質に取っています』
「何ィッ! 状況が見えんぞ、一体何時の間にそんなことになったか説明しろ!」
シホの手短な説明に拠れば、状況の帰趨は、乱戦に立ち向かうミネルバへと向け
一発のミサイルが打ち込まれた、たったそれだけの事で決した。
レーダーにも全く反応の無い闇から突如として現れたミサイルは、
虚を突かれたミネルバの防衛網を優雅と言える余裕を持って突破し、
艦前面の"トリスタン"に突き刺さる。
呆気に取られたミネルバクルーとオーブのムラサメ隊が動きを止めた時、
ウィンダム隊は襲い掛かる――事もせず、同様に停滞。
そして"ボギーワン"から直接、国際救難チャンネルを介した通信が届いた。
『我が艦は既に、貴艦に向けて対艦兵装を施したMSを発進させている!』
そして、そのMSは既存のあらゆるセンサーに対しても反応を示さない、
つまり"ミラージュコロイド搭載MS"に狙われて居る可能性を示唆していた。
ミネルバ艦長タリア=グラディスがフェイクと判断、攻撃を再開しようとした
刹那、新たなミサイルが闇から生まれて艦体を揺らす。
機関に損傷を負ったミネルバの索敵チームが血眼になってようやく、
目に見えない何者かが宇宙に忍んで居ると気付いたのだった。
撃ったはずの敵が見えない――その恐怖によって。
ひまじん
>>ひまじん
これは酷い
>>
これも酷い
14/
「それで脅されてみすみす逃すわけか……情け無いにも程がある!」
敵が卑怯だとは言わない。戦争利用は条約で禁止されて居るとはいえ、
"ボギーワン"は実際にコロイドを使ってユニウス7で大いに暴れている。
戦場で使えるものを使わない手は無い。
母艦がコロイドを搭載しているのならば、その機能を持っているMSが
搭載されていてもおかしくはない。
むしろ、載せていて当然と考えるべきだ。
敵に脅されて居る現状は、索敵上の理由で速度を出せないコロイド
搭載機に接近を許したミネルバと……あるいはイザークの責任であった。
「く……仕方あるまい! この状況でミネルバを失うわけにもいかん!」
最悪の場合、ユニウス7に向けてミネルバの対要塞砲を使う当てもある。
ボギーワンを落すためではなく、ユニウス7を落さない為にいるのだ。
突如として戦闘を開始した為にイザークが出張ったが、状況からして
ボギーワンがユニウス落しに加担していた可能性は低い。
「シホ……ボギーワンは逃がせ、MSもだ……いや、待て。
ミネルバにはオーブから一部隊行ったはずだったな?」
『……? はい、そうですが』
「ヘルマンに呼んで貰ったのは俺だ、人手が足りなかったからな」
旧友の存在を知った彼が考えたのは、クサナギの宇宙戦力を利用する事だった。
相手はナチュラル、そしてオーブ……完全な味方ではないが、明確な敵でもない。
デリケートな作業に加わらせる事は出来なくとも、敵が現れた際の保険にはなる。
ミネルバのパイロットが藪を突いてしまった以外は、その読みは当たっていた。
「アス……アレックス=ディノという随員が、もしかしたら来ていないか?」
『それがですね――』
シホの説明を受けるにつれて、イザークの顔が歪んでいく。
「カガリ=ユラ=アスハが此処に来て居るだとォ――?
政治家が一体何を考えてこの修羅場にノコノコとッ!」
『それに付いては、デュランダル議長さえもがまだミネルバに乗ってますから
どうも言えませんけど……何をさせるつもりなんですか隊長?』
聞いただけでは、自分の身代について考えの足りない代表だと思えたが、
かえって好都合だと言える。
「シホ、ヘルマンに命じて俺とミネルバとの間に回線を繋げさせろ、
それからアレックス=ディノとカガリ=ユラ=アスハ代表にもだ!
政治家たちにも、それなりの仕事を果たしててもらわねば不公平だろう!?」
15/
「ボギーワンは逃がす……しかしせめてデータを貰う。両方やらなくちゃあ
いけないのが軍人の辛いところなのだな……ところで」
急にそんな事を言われても、やっぱり理解できないのがカガリだった。
「……それってどういう言う事なんだアスラン?」
ストライクルージュの中にいるせいか、ほとんどプライベートの口調に戻って
ムラサメのアレックス=ディノこと本名アスラン=ザラに質問を飛ばした。
『だから、ボギーワンがもしもミネルバより、ヴォルテールよりも早くこの宙域に
到着していたのなら、ユニウス7落下の原因となったものを記録に残している
のではないか……という事だよ』
「ユニウス7落しの犯人をか?」
『……まだ人間が犯人だと決まった分けじゃない』
接触回線だから、向こうのコクピットに居るアスランの顔が鮮明に映る。
『接触回線だから他人は聞いていないが、あまり早急にそんな
軽々しい判断はするべきじゃないよ』
眉をひそめて苦々しげなのは、カガリがオーブ代表として此処に居るからだ。
「あ……すまない、アスラン」
こんな状況でも気を使われる……
部下と上司の関係を崩されていない……
それはある意味喜ばしい事のはずなのに、装甲同士を触れ合わせた
ムラサメが酷く遠く感じて仕方が無い。
いや、アレックスではなくアスランと呼ぶ事を許されただけ、
ましな事なのだろう。
今この瞬間、そうする事を許されているのはカガリだけなのだから。
『アスラン――! アスハ代表の説得は終わったか!?』
だから、横合いからハイテンションでアスランを呼ばうイザーク=ジュールの
声が余計に気に障るのは、一人のオトメとして仕方があるまい。
ちなみに、漢女と書いてオトメと読む。
「まだだ……! アレックスの仕事に、何か文句があるだろうか!」
『ぐ……ッ! 失礼した、アスハ代表。だが出来れば早目の決断を願いたい』
ザフトとしては、一刻も早く心配事を失くしたいのだろう。
その上で、出来れば"敵に脅されて撤退を許した"という汚名を被りたくないのだ。
ユニウス7落下を防ぐザフトの作戦も、プラント側の都合だけによるならば、
恐らく連合の戦艦であろうボギーワンとしては不信感がある。
地球の島国であるオーブの代表がプラントの作戦を支持すれば、
ボギーワンにとっても看過は出来ない言葉であるし、その言葉によって
敵艦の撤退を許してもザフトとしては"オーブの協力を得て敵を追い払った"
という程度の面目が立つ。
双方の、これからの行動に一定の正当性が生まれるのだ。
15/
反対方向に回転する歯車を直接繋ぐと、双方が諸共に自壊する。
それを防ぐには、間に小さくても良い、自由に動くギアを挟めば良い。
後は回転方向を変えずとも、互いが歩調を合わせるだけでいい。
連合、プラント……どちらの陣営に属してもいない事で双方の利益を繋ぐ。
中立に依る中庸。
よく言えば仲介者、悪く言えば蝙蝠。
ある意味、オーブらしい立ち位置ではある。
――暫く粘って、プラント側から何らかの譲歩を引き出すのもありだな。
意地悪くそんな事も考えながらも、カガリは素直に手伝うつもりだった。
イザーク=ジュールもオーブのムラサメ部隊も破砕作業に直接加わる事は
出来ないのだから、オーブ代表としてはこのままミネルバとボギーワンが
睨みあっていても構わない。それでも作業班は立派に仕事を続けるだろう。
問題は、そもそも作業が間に合っていないという場合だ。
もしもムラサメのアスランや、あるいはミネルバの主砲を当てにする程
進捗状況が切迫しているとすれば……。
カガリはムラサメを見つめる、ミネルバを眺める……そして、
地球を見渡してオーブを探す。
青い海に浮かぶちっぽけな島国は、ユニウス7落下の産む津波によって
甚大な被害を受けるだろう。
『カガリ……アスハ代表?』
――ほら、イザーク=ジュール。お前が通信に入ってきた所為で、
アスランが他人行儀なアレックスに戻ってしまったじゃないか。
「……それでこの膠着した状況が打開できるのであれば、そちらの案に乗ろう!」
『協力に感謝する……!」
「プラントとオーブの首脳が、大気圏に落ちながら準備一分で声明発表か!
原稿はあるのか、アレックス?」
『こんなこともあろうかと、シズルさんが用意してくれていたよ。
ちゃんと漢字にルビまで振ってあるからそのとおり読むだけでいい』
部下の先読みが底なしのオーブ代表であった。
ルビを振られたのが、少しプライドに傷をつけた。
16/
オーブ代表カガリ=ユラ=アスハとプラント代表ギルバート=デュランダル、
二人の共同声明が発表されてすぐ、ボギーワンの艦影が徐々に小さくなって行く。
「ボギーワンが……逃げて行く……」
メイリンの胸につかえる感慨は、敗北感と呼ばれるものだ。
暗い顔のオペレイターは、ボギーワンから送られてくる大量の画像データを
解凍しながら、ついでに仕掛けられていたウィルスを逐一弾いている。
去り際のボギーワンは終始無言であったが、一個の座標をミネルバに向けて
送信している。それは恐らくコロイドを搭載した無人のモビルスーツであろうと
予測され、よってオーブのムラサメ隊がその回収に向かった。
これは、撤退を見逃す事に関してクサナギが出した条件の一つだ。
ミネルバからはさして遠くない座標であるが、矢張りどれだけレーダーの目を
向けても影一つ見出す事が出来ない。正直に言って条約に署名しているザフトでは
回収しても扱いに困る代物なのであった。
何も見えないその場所をムラサメがライトで照らし、歪んだ影を見つけ出す。
接近したアレックスのムラサメが影に触れるマニュピレイターで外部から操作すると、
虚無の襲撃者はそのコロイドの衣を脱ぎ捨てその全貌を露にした。
その様子をカメラで中継するのが、カガリ=ユラ=アスハのルージュだ。
『見てくれ、グラディス艦長。これがその"機体"だ――』
「これは……」
「見事にしてやられたわね……」
映し出されたものは、戦艦用の巨大なコロイド発生装置を括りつけられた、
只のミサイル発射管であった。
「如何言う事だね、グラディス艦長?」
「母艦の攻撃とウィンダムの発進で時間を稼ぎ、戦闘機動に合わせて
ランチャーを取り付けたコロイド発生装置をパージしたのです」
ミサイル発射管は既に空、何と言う事はないトリックだったのだ。
「ボギーワンを逃がして……残ったのはオーブに貸しが一つ、ですか」
「二つよ……ボギーワン実在の証拠を押さえられてしまったわ」
メイリンが呟き、タリアが訂正する。と、メイリンの眼の前で
タイムバーが溜まり終えた。
「画像解析終了しました。正面メインモニターに映像だします……!」
17/
映し出されたものは――
「やっぱり……ザフトなんですね」
――失望の響きが、メイリンの胸中を侵した。
映像の中、ユニウス7の廃墟からは傘の骨を彷彿とさせる支持柱が伸びている。
その一本に取り付いて函型のフレアモーターを取り付けているジンが、
この事件の首謀者を雄弁に語っていた。
「ザフトではないわ、ジンを使う単なるテロリスト……でもボギーワンが
それを信じてくれるわけはないでしょうね」
イザーク=ジュールの怒声が聞えるのは、ユニウス7に散らばった
作業班に向けて警戒を再度呼びかけて居るからだ。
『何処に隠れて居るかの解析、しっかり頼んだぞ――!』
そう言って最大加速でユニウス7に飛んでいくザクファントム。
塞ぎ気味に画面を見つめるメイリンは、まるで幻覚のような代物を
僅か数時間前の映像に見つけていた。
「あれ……ザクありますよ、艦長」
「え――?」
カーソルをその映像に導き、拡大して表示される。
「でも、ちょっとミネルバに載せているザクとは違いますよね」
全体のフォルムはザクとわかるが、頭部と肩部に明らかな違いがある、
メイリンはそのザクに見覚えが無かった。
タリアはその機体を知っている。最大望遠で鮮明に映し出されたその機体に、
タリアの顔がみるみる曇り、そして叫んだ。
「――メイリン! レイとデイルを回収させて、何処でもいいわ!
デュランダル議長は直に本艦を離れてください。これから危険です。
メイリンと……マッド班長はとにかく予備のシルエットを用意!」
「え……?」
「とにかく急いで、それからイザーク隊長――!」
『なんだ、どうしたというのだグラディス艦長!?』
「気をつけて、そこには――」
直後、タリアの言葉を遮って巨艦を揺らしたものがある。
正確には、コップの水を零すほどの振動も感じられなかった。ミネルバを
襲ったのは強烈な電磁波の嵐だ。それは二回三回と連続して脆弱な電子機器を
壊滅させ……留まる気配も無い。
当然、通信網は全て寸断されていた。
「メイリン、電波妨害の中心点が分かる!?」
「解析中……出ました……この座標は――!?」
18/18
そこはインパルスとザクがメテオブレイカーを取り付けている、
ユニウス7周縁部の居住セクションだった。
『な……何よこれえッ! 妨害電波って……何処から?』
「電波妨害……いや大きすぎる、EMP!?」
天を衝く巨人が地団駄を踏んでもこうはならないというほど、
その電磁波は強烈にユニウス7全体を襲う。
目と鼻の先にいるザクとインパルスが、接触回線で話さねばならない。
モビルスーツに乗って居なければ、確実に重篤な傷害を負うだろう。
モビルスーツもメテオブレイカーも、宇宙での運用を基本に置かれているので
ある程度の性能――あるいは軽さや小ささ――を犠牲に電磁波への耐性が高い。
しかし動作に影響は無くとも、作業に支障は出てしまう。
『仕方ないわ――シンは敵を探して! このメテオブレイカーだけでも
動かせるところに持っていかなくちゃ!』
――違う、重要なのは……。
「おかしいのはそんな所じゃなくて、消さなきゃいけないのは……」
いざとなったら直接ザクを走らせてでも連絡を行う意気のルナマリアとは別に、
シンは己の胸中から生ずる疑問に自答を重ねていた。
――これだけのEMPは、動かすのに使う電力を何処から得ている?
「エネルギーを貯めておく事が……やっぱり出来るわけがない!」
『ねえ、シン聞いてるの――?』
「貯められないなら、作るしかない――作り続けるしかないじゃないか!」
『ねえ、シンってば――!』
「このECMを続けている敵が居て、そいつをなにがなんでも
落さなけりゃあいけないんだよ、ルナ……!」
ルナマリアを逆に剣幕で黙らせて、シンは砂嵐に半分近く覆われた
モニターを見る。目を皿にして睨み、ソレを探す。
不意に、断続していたEMPが止んでいた。
『だからどうしたのよ、シン――!』
「まだ分からないのか、核動力が此処にあるんだよ――!」
そして閃光と、今度こそ本物の地響きがユニウス7を照らして揺らす。
首から張り出したパルサー・アンテナを引き千切り、瓦礫の下から姿を現すMS。
頭部から上向きに伸びるとさか状のセンサー、モノアイを左右に分かつ眼部の支柱、
禍々しい迫力の棘付き肩当て、二門の大口径レールガン。
――ZGMF-X999A――
『こいつもしかして、九ザクぅ――!?』
「――トリプルナイン……核ザクかよッ!」
NJCの搭載により完成形より遥かに高い性能を見せ、そして条約によって
闇に葬られたはずの亡霊――ザクの量産試作型。
それは身に寄りかかる数百トンの瓦礫を物ともせずに押しのけると、冗談のような
口径を誇るレールガンの暗く抜ける砲口を、唖然として佇む二機に向けた。
通信、即ち最後通牒。
『ユニウス7、娘の墓標は砕かせん……!』
……というわけで、SEED『†』 の今年最後の投下でした。
よく見たら、15が二つあって番号がずれております。
結局一年使って一クールも終わらなかった事にびっくり。
一年、感想、ご指摘をたくさん賜りました。住人の皆さん
どうも有り難う御座いました。
それでは皆様、良いお年を。
GJ!
リソウノカケラ 穏やかな風の中で Danc'in fairy in the breeze. 1/2
いつもの様にマユは私の目の前で微笑んでいる。その穏やかな笑みは私を魅了してやまない。
潮風が頬を撫ぜて絹の様な黒髪を靡かせる。何処か朝露の様に儚い感じのする彼女はまるで御伽話の世界からやって来た妖精だ。
「カガリ、私を見ていて楽しいの?」
私はぼうっとしていて上目遣いで見上げてきた彼女に驚いた。
手を伸ばせば届きそうな程近くにいるのに、私は手を伸ばせない。
彼女には手を伸ばして触れてしまうと壊れてしまいそうな儚さがある。
どぎまぎして声を出す事が出来ない私をマユは私に顔を近付けてジッと見つめている。
温かい吐息が私の顔に触れる。実感出来るその温かさに私の心臓は激しく鼓動する。「あ、ああ。マユは自由だな。正直に言って羨ましい」
「そうかな? 私は箱庭の人形、自由なんてないよ。今は束の間の外の空気を感じてるだけだよ」
自由という言葉を否定する彼女の表情に深い陰りが生まれる。
「そうさ。マユには翼があって何処までも飛んで行けるけど私は翼が有っても窮屈な籠の中だ」
そう。私はオーブという籠の中でしか羽ばたく事が出来ない。
かつては縦横無尽に飛び回ったけれども今の私の立場がそれを許しはしない。
私は色々なしがらみに縛られているマリオネットみたいなものなのだ。
「私にはカガリは自由に見えるよ。今のカガリは疲れて飛べないだけ。疲れが癒えればまた自由に空に羽ばたくんじゃないかな」
私はマユの言葉に苦笑するしか出来ない。
私が生きている世界はそんなに簡単な物じゃない。
今こうしてマユと会っている時間だってスケジュールを調整してようやっと作ったのだ。
「そう言えばマユは自分の事を“箱庭の人形”って言うけど、それってどういう意味なんだ?」
私は深呼吸をして身体と精神をリラックスさせると前々から感じていた疑問を尋ねた。
「箱庭の人形は箱庭の人形。それ以上でもそれ以下でもないよ」
マユは私の質問を軽く受け流して答える事を拒絶する。それに対しては不満だけどそれを悟られない様に出来る限りの笑みを浮かべる。
「……そうか、仕方ないな。そのロケットの中身は?」
質問の矛先を彼女が身に着けているただの一つの装飾品である向けた。
2/2
ロケットはあまり華美な装飾が施されてはおらず、シンプルで質素な物だ。
だけど決して安物ではない。見ただけでも作りがしっかりしているのが解る。
気取らずにいつも自然体のマユに良く似合っている。
彼女は所在無さ気に微笑んで胸のロケットを硬く握り締める。
「……この中には私の大事な人がいるの」
大事な人。その言葉を聞くと私の心臓の鼓動が不規則な物になる。
「大事な人って家族なのか?」
「ううん。家族じゃないよ。大切な思い出の人だよ。もういない人だけどね」
家族でなくて大切な思い出。そしてもういない人。私以外の誰かがマユの心を支配している。
それはちょっと悔しい。
「今度はマユが質問するね。カガリはどの時間帯が好き?」
突拍子のない突然の質問に答えが窮する。暫く考える時間を貰い答える。
「私は朝だな。暁の頃が好きだ。一日の始まりを感じる事が出来るからな」
マユは空を見上げて手を広げてくるりと一回転する。
「私は黄昏時。誰が彼とも解らない位に薄暗いのが好き。カガリ風に言うと宵の頃かな」
暁と宵。始まりと終りの時間。全く正反対だ。でも、正反対だからこそ私は彼女に惹かれたのだろう。
幻想の世界の妖精みたいな彼女と政治という徹底的に現実的な世界の私。
私はしがらみなどがないマユに憬れているのかも知れない。
――私は夢見る妖精になりたい。
to be continued
明けましておめでとうございます。
執筆再開したリソウノカケラを投下。
久し振りにカケラ書いたので下手かも知れません。
>>まとまと
誤字訂正。
>>293のラストの行
質問の矛先を彼女が身に着けているただの一つの装飾品である向けた。
を
質問の矛先を彼女が身に着けているただ一つの装飾品であるロケットに向けた。
に訂正をお願いします。
――オーブ首長国連合<ホワイト・ヒル>首席補佐官兼軍総司令執務室――
デスクの専用コンソールを操作してオフにすると、バスカーク本部長を俺は待つ身となった。
だが、部屋を見回すとこれは間違っても客人を、政府の高官を迎えるべき
室内では無いと実感する。まともな掃除なんか一ヶ月はしていないだろう。
「相変わらずきったねー部屋だ……」
俺の専用デスクにも床にも、天井に届くかと思うほどの雑然とした
書類の束やファイルが積み重なっている。
内容は重要な政策の懸案から取りまとめのない走り書き、果ては軍の
機動部隊編成表などが乱雑に積み重なって並んでいた。
既に自分の家に帰宅しないで、一月以上経っている。
まぁ、”家”といっても家族もなく、帰りを待つ人間も別に居らず、官舎に
過ぎないので別にどうという事も無いというのが本音である。
殆ど、この自分の執務室が半ば自宅のような存在となっているので、
特に不自由も感じない。それに風呂もトイレも寝室も完備しており、
果ては、隣には来客用の居間もあるのだ。
生活に何不自由がないというのが正直な感想なのである。これが政府高官の
特権ともいうべきものなのだろう。と俺は思っている。
――青二才の書生崩れにとっては、豪華すぎる位なのだ。
だが、実際もう一月以上住み着いているために部屋の中の乱雑さは、
混乱を極め、他人が弄ると山済みとなった資料が倒壊する恐れがある為に、
他人に勝手な掃除をさせることが出来ない状態となっている……というのは建前で
本音は、信用できる人物以外は執務室を通さない俺のポリシーの所為だったりする。
俺としても自分で何とか魔境と化した資料の整理をしておきたいが、
分単位で国家の運営は動いているのを理由にして、面倒な為にろくな
整理をしていないのが実情である。
それに言い訳じみたことを言うが、書類に目を通しながら同時に
政策指示や作業、そしてアスハ代表の許可、代表府のロンドを初めとした
幹部達への兼ね合いもある。それには却って整理されてると俺自身の
具合が悪く、仕事が進み辛くなるという欠点もあった。
更には軍本部に至っては作戦参謀本部中心にして対地球連合強国に於ける
戦略案を練らねばならないのだが、未だに反乱勢力や軍内の反乱分子の
燻り出しに追われ、まともな戦略が実行に移せない状態なのだ。
……まぁ、延々とした理由があるが、要は掃除の暇がないのだ、ということにしてある。
そう自分に対する言い訳をしながら、積み重なった書類束から、崩れ落ちないように
そっと、一つの束抜き出した。
書類のタイトルは”第二次軍備拡張計画推進案概要”。
俺が数日前にまとめて、アスハ代表に提出したものである。実際に計画概要の
骨格から細部まで説明するとそれだけで缶詰になって三日間会議を開催せねばなるまい。
だが、俺達代表府の幹部は無論のこと、アスハ代表もあれで中々にお急がしい方なのである。
全部に目を通そうとなされると、日が暮れて次の日になってしまう為に、俺は苦心に
苦心を重ね計画全部を書類、およそ百科事典10冊を上回る分量になるのをなんとか
電話帳一冊程度の厚さに分かりやすくまとめたつもりで提出したのだが、アスハ代表と面会したあの時に、
==============================
オーブ連合首長国<ホワイト・ヒル>代表首長府――代表府執務室――
――ドォッン!
書類の量に目を剥く、アスハ代表の目の前で執務デスクへ向かって概要書を放り出すと
俺は開口一番に、
『――明日まで、全部読んで概要を理解しておいてください』
『……はい?』
と言ったら、アスハ代表は頬引きつらせていた……。
『……サイ、これは……どういうことなのかしら?』
殺気立ちながらアスハ代表は俺を睨み殺そうと眼光を光らせるが、
俺は澄ました顔で受け流す。俺は彼女の思考を読み、表情確かめる。
さぐりを入れて見ると、彼女のやや勝気そうな黒目がちの瞳には、殺気と同時に
恐怖感に溢れてるのが見て取れる。この書類の束を押し付けられるなんてとんでもない!と。
――ここで引いては負けだ。
俺は自らの表情を消し、素早く戦術数式を当てはめてみた。すると答えは”強気”と出る。
『――明日の会議での懸案事項です。出席者全員に予め読んでもらってるんで』
と、答えておく。既にロンドやキサカにも事前に手渡し、無理やり読破してもらっている。
散々悪態を吐かれたが。
『……この分厚い冊子を私に読めと?で理解しろと?一晩で?』
引きつった顔で俺を見上げるアスハ代表。この程度で何を驚く?
計画概要の細部内容は、この何十倍もあるのに。
『寝る前の一時で構いませんので、お願いします。なぁに、暗記しろと言ってる訳じゃないんですから』
楽勝でしょう?と軽く笑い飛ばすてやると、
『……そうよねサイ。楽勝よね。ウフフフッ……』
アスハ代表は虚ろに哂い、勝敗はここに決した。
==============================
勝負には勝ったが、あのときの睨むだけで人を殺せそうな、アスハの代表の
殺気だった視線を俺は多分忘れられないだろう。
まぁ、それは置いておこう。後日のアスハ代表の復讐を恐れるより、目の前の困難に
あたる方が現実的であろう。今回の提出したものは前面の国難ともいうべきものなのだ。
それに、この計画自身が今後のオーブの未来を左右する重要な要となるのは、確かだ。
俺はそう、思案に浸りながら、無意識のうちに手元に残ったティーカップから
冷え切ったコーヒーを一息に飲み干した。
結局のところ、現在は俺とロンドを含めたごく一部の人間がオーブの対内外政戦略を
同時にこなさなければならないのが実情だ。
実際に俺達の定規に添えない能力の人間はオーブ政府の中枢たる代表府に
居ることは出来ない。現に今までの無能な氏族連中は、強権を発動しまとめて
首を切っている状態なのだ。
理由はごく簡単で水準を抜きん出た政務能力がなければ、とても今の
オーブを担う事ができないからだ。
本来なら崖っぷち両端をか細い糸を敷いてその上で危うく渡ろうとしているのが
オーブの現状なのだ。それを理解していない輩が多いのは正直困ったものだと思う。
現に俺の最初の仕事はオーブに染まった”ウズミ崇拝”と”ラクシズ色”を払拭する
ことだったのだから。要は今でもあの”連中”の後始末しているのが現実であり、
困ったものでは到底済ませられない。
確かに人材は喉から手が出るほど欲しい。だが、同時に狂信的なテロリズムを
信奉する輩は御免蒙る。
昔の理想だけで現実に足の着いていなかった”ウズミ・オーブ”や
現在の”ラクシズ・プラント”のような二次元政治体制となり国民に
身分の上下の階級制度を押し付ける事は、なんとか避けたい。
国民の大部分が未だにウズミ前代表を神を崇める様に伏しているのは、
やり切れない。逆に正しい政策をし、着実にオーブを復興させたセイラン卿親子は、
悪の象徴のように叩かれているのだから。
――話題を現代戦略論に移そう。俺は窓から景色を眺めながら、思案に耽る。
自分自身を振り返って見て自嘲を禁じえないだろう。
今ではこの状態が一番好む姿勢となったのは寧ろ皮肉に近いのだから。
――ニュートロン・ジャマ―が意味を為さなくなった昨今、戦術は
大幅に転換されている。地球上での戦闘が段々と色褪せているのだ。
戦いの舞台は今や宇宙(ソラ)へと移りつつある。それが現状なのだ。
世界的観点から見た視点で見回してみると、現在の国家でラクシズ・プラントを除いて、
大国を中心とした国際間紛争の舞台を地球上で行うのは、余りにも攻める方にも
防ぐ方にもリスクが高く、同時にメリットが少ない。
それは、地球圏内のエネルギー資源採掘が縮小へと向かう中で、人類の発祥の地である
母なる”地球”を今まで以上にこれを損なうのは人類にとってあまりに損失であるからだ。
しかも現在開発の現場、フロンティアは人類にとって宇宙にこそ存在する。
そして自然、戦いの方向は宇宙を戦場とした大規模な艦隊戦へと移行する。
戦闘は艦載機と宇宙戦闘艦艇を中心とした戦いとなろう。
宙域開発が始まった太陽系内の領土争奪に対する攻撃と防御の意味を含めても、必ずそうなるのだ。
その為にも整備や運用に莫大な金ばかりが掛かり、大した戦果も上げられない
モビルスーツのような不合理で不経済な兵器早急に廃止して、宙域戦闘が可能な
宇宙艦艇を一隻でも多く集めなければならない。
「――その為の”第二次軍備拡張計画”だ」
――絵空事の”理想”では何事をも為しとげられない――。
現実的に物を見て考え、実行することができる人材――。
躊躇わずに決断できる人間――。
今のオーブに必要なのはその類の人種なのだ。何ら具体策も無い絵空事の
”理想や自由”などコイン一枚の価値もない。
この”乱世”で生き延びるために必要なものは、現実的な”力”のみなのだ。
それを成し遂げるのは、”資金”であり或いは”軍事力”であり、それを実行に
移す事が可能な”人材”でもある。
「いずれは、オーブと地球連合強国と間に覇権を競い合う戦いの時代が必ず来る――」
正直、人前で口に出した嘲笑される類のレベルの話である。今のオーブでは確かに
絵空事かもしれんが……。そうするように仕向ける土台作りが俺達の仕事となろう。
しかも幸運にも現在のところ、超大国である大西洋連邦の内乱やユーラシア内領土の
地上ではラクス・クライン率いるラクシズ・プラントとた激しい戦いを繰り広げている。
これが幸いとなり、太陽系内宙域開発は現在、オーブが完全にリードしているのが現状だ。
――もう2〜3年は泥沼の争いを続けて欲しいものである。俺達”オーブ”のためにも……な。
そう冷徹な計算も入れている自分に対して自嘲したくなるが、為政者という者は、
いつの時代でも自国の繁栄の為なら平気で他国の人間を犠牲にすることができる種類の人種なのだ。
暫くして、ビー!と呼び出し音がなり、デスクのコンソールから男の声がした。
『私だ、サイ』
「――入ってくれ、カズイ」
>>続く
何故か俺は学校にいた。
誰もいない放課後の教室で本を読んでいる。垢で薄汚れた頁が夕日で朱に染まり、黄昏が近付くのを知らせる。
枝折を挟んで本を閉じる。
文庫サイズの本は持ち運ぶのが楽だ。ハードカバーも好きだが俺は文庫本の手軽さに軍配を上げる。何時でも何処でも読めるのは重宝する。
本の内容自体は何度も読み直した物だから全部頭の中に入っている。
ジュール・ヴェルヌの宇宙旅行
この本を読んだ悪餓鬼どもはまだ見ぬ宇宙を目指して走り出した。
生まれた時、場所、人種関係なくゴール目指して果てしなき壮大なリレーを繰り返す。
たとえ自分が倒れても未練や無念を残さずにただ宇宙への夢というバトンを次に託す。
そろそろ俺にもバトンが回ってくるかも知れない。その為には勉強だ。
俺でバトンが止まったら目も当てられない。今までヤンチャしてた分を取り戻さないと。
教室を出ると耳を劈く様な雑音に脳味噌をシェイクされた。
多分シャニだろう。メタルだかなんだか知らないけど、前に聞かせてくれたバラードの方が良かった。
あいつには喧しいのよりも静かな奴が似合っている。その方がモテるだろうに。 職員室にいく途中でクロトとすれ違う。手には携帯ゲームを持っている。
授業中にやってたから取り上げられたから返して貰ったんだろう。ゲーム脳にはなるなよ、と言ってやったらゲーム脳なんてのは都市伝説だ、なんて言いやがった。
やっぱりクロトはゲーム脳だ。
何だかんだと職員室の前。馴染みのある様な無い様な場所だ。
今までは怒られる為にしか来た事が無い場所だ。喧嘩、喫煙その他諸々の事で呼び出されては呼び出された。
それ以外では縁も所縁もない。
でも、今日は違う。自分の意思で此所に来た。
バトンを受け取る為に前に進む。その始まりの一歩を踏み出す為に俺は此所にいる。
やけに扉がデカく見える。向こう側には恐らく俺の居場所なんてないだろう。
でも進まなきゃならない。居場所がないなら自分で作れば良い。そのくらいの事が出来なきゃただの木偶の坊だ。
「失礼します」
扉を開けてうわずった声で挨拶をして一歩踏み出す。
教師達の奇異な異物を見る様な視線が俺を穿つ。
無言の声が聞こえる。
「またアイツか。今度は何をやらかしたんだ?」
「あんな屑はいい加減に退学にした方が良い」
感情の針が大きく揺れる。反吐がでる様な敵意に晒されて導火線に火が着きそうだ。
しかし此所で考えなしに感情の赴く侭に暴れたら全てがわやになっちまう。
堪え難きを堪え忍び難きを忍んで深呼吸をして心を落ち着ける。
沸き上った怒りを冷まして目的地に向かう。
目的地。担任であるいけ好かない女教師の机。
俺はそいつに沢山の迷惑をかけたから多分嫌われているだろう。
でも、そいつは俺の宇宙への夢を笑う事なく聞いてくれた。
全ての大人が笑い飛ばして全否定した夢を唯一肯定してくれた。
ひょっとしたら俺の唯一の味方になってくれるかも知れない。そんな淡い希望を俺は持っている。
「一体なんの様だ?」
場違いな来訪者である俺は鋭い視線で貫かれる。
喉が渇く。声が上手く出せない。でも、これは今まで散々好き勝手をやって来た報いだ。それを耐えるぐらいの事が出来なきゃただの屑になっちまう。
「わ……悪い。俺に勉強を……教えてくれ」
俺の言葉に嘲笑と侮蔑が振り注ぐ。
「今更勉強したって無駄」
「勉強するなら小学校に戻った方が良い」
「勉強する前に病院で頭の検査をしてこい」
「明日は雨だな」
怒りで目の前が赤く染まる。握り締めた拳に力が入り、噛み締めた奥歯がぎりぎりと軋む。
夢を見た筈が不様を見た。俺を笑い者にすらならその代償は高くつけてやる。
怒りを握り締めた拳を振り上げようとしたその時、俺の行為を戒めようとする手が差し出された。
「どんな心境の変化があったのかは解らないが……お前が勉強を教えて欲しいのなら教えてやる」
女教師は俺に柔らかい眼差しを向ける。その視線は俺の怒りを霧散させる程に温かいものだ。
「済まねえ……恩に着る……」
「教えるのが教師の仕事だ。出来る事ならもっと早く頼って欲しかったな」
その笑顔は俺には味方をしてくれる人間がいる事を教えてくれた。俺以外の全てが敵だと思っていた自分がバカバカしくなる。
「……悪い。俺ももっと早く頼るべきだったと思うぜ、ナタル先生……」
女教師の名前を口にした瞬間世界に亀裂が入った。
最初は注意しないと解らない程小さい物だったが、一瞬にして俺を包み込む程に広がる。
罅の入った世界は凝固し、俺以外のモノは誰も動かずに全てが沈黙する。
絶叫したくなる程怖い。救いを求めてナタル先生に手を伸ばすと、俺以外の一切合切全ての物が粉々に砕け散った。
崩壊する日常。ただ一人取り残される俺。
救いなんて求めたから罰が当たったのか?俺みたいなろくでなしは夢を見る事すら出来ないのか?
気に入らねえ。俺はただ普通に生きたかっただけなんだ。それが許されないならただひたすらに暴れ回るしかねえ。
世界を崩壊させた俺は飛び切りの災厄になってやる。
……災厄。calamity……。
ああ、なんだ。これは……。
「……夢か」
目が覚めると俺は涙を流していた。どんな夢かは覚えてないが変な夢を見たもんだ。
心のバランスが取れていない。もやもやする感情を振り払う為に頭を振る。
周囲を見回して反吐が出る程下らない日常を確認する。
出撃を待って、出番が来たら出撃する。好き勝手に暴れ回って薬が切れて禁断症状で苦しむの繰り返し。
訳分からない夢を見る程に現実は下らないのだろう。
なんであんな変な夢を見たのか、と自問をするが答えは返ってこない。
そもそも答えなんてない。 人は現実から逃避する為に夢なんて幻想を見るもんだ。現実から逃げ出す事なんて出来やしないのにな。
報われねえな、俺。
explaration of personality “calamity breaks fantasy”投下終了。
そろそろオルガ物ネタ尽きそうorz
胡蝶の夢?
胡蝶の夢とは全然違うぞ。
流石は冬厨、覚えた言葉を使いたがるなwww
とうとう新人スレにも冬厨の侵攻が始まったか……
「胡蝶の夢」をぐぐったヤツは誰だい?
あたしだよっ!!wwww
by に○おかす○こ
#1 夢
はじめて、知った。
空は青くなんかない。夕焼けよりも更に紅くて、昏い――違う。最初に一条の
線が走ったのだ。
飛行機雲よりもくっきりとしていて、虹よりも鮮やかに空を駆け抜けたそれの正体は
判らない。ただ、俺はマユや父さんや母さんと一緒に見上げていた。
向こうの山の麓にそれが消えていく刹那、全てが始まった。
眩い光が空を覆い尽くしてゆく。俺は余りの強さに目をきつく閉じようとした――出来なかった。
大地が轟くような轟音。総てを凪払ってゆく風。握りしめたマユの手の温もりだけが
はっきりと判るだけだった。繋いだ手は離さない。吹き飛ばされながら俺は大声で叫んだ
けれど、自分の声すらも聞こえやしない。けれど、俺は声が枯れるまでマユの名を呼び続けていた。
不意に背中に衝撃が走った。突然の激痛に、俺は息が出来なくなる。けれど、そんな事は
些細なものだった。俺は襤褸切れのように風に舞い、塵屑のように地べたを転がってゆく。
余りの激痛にきっと麻痺してしまったのだろう。痛みはなく、いつの間にかマユの手の温もりすら忘れていた。
きっと気を失っていたのだろう。目を開けると空は果てしなく紅かった。総ては
禍々しい朱に染まっていた。頬を撫でる風は嵐の終わりを告げていた。
体中に走る痛みに堪え、俺は立ち上がる。マユの名を、父さんを、母さんを呼ぶ。
返事は返って来ない。ふと、足元に視線を落とすと、有り得ないものがあった。見た事の
ある布。その袖口には小さな指が覗いている。その逆には何もない。ただ、血溜まりが
出来ていた。
「――マユ?」
俺の足元にあるものはマユの腕だけだった。体はない。
俺はひたすら声を上げた。叫ばずにはいられなかった。きっとこれは夢でしかなくて、
目が醒めれば何時もの日常に戻れるのだ。そう信じなければ、きっと俺は――
けれど頭の奥の方から煩いベルの音が聞こえて来る。多分、それは破滅の前触れの
鐘。両手で耳を塞いでも意味はない。あの眩い光は始まりを告げるものだったのだ。
総てを焼き尽くす終末の光。
嘆きを運ぶ熾烈極まる突風。
破滅の鐘の音は今なお鳴り響く。俺は自分の為すべき事をせねばならないのだ。
――何を?何をすればいいのだろう。俺はいつの間にか微睡みに落ちていった。
――ジリリリリリリ――
なんだ、夢か。あの時の記憶はまだ俺に纏りついているのか。
目覚まし時計がけたたましく鳴っている。
時計を見れば六時。朝食の支度を考えれば決して早くない時間だ。
もう少ししたら隣りに住んでいるナタル姉もやって来るだろう。
ナタル姉は天涯孤独になった俺の面倒を見てくれる人だ。
生真面目で融通が聞かないのが珠に疵。だけど教師という職業柄仕方ないのかも知れない。
因みに俺の担任。
ナタル姉は家事が苦手な人なので毎朝俺の様子見がてらに朝食を食べに来る。
だから、早く起きて支度をしないと。
目覚まし時計を止めてカーテンを開けると爽やかな朝の陽射しが眩しい。
夢見の悪さなんてたちまち吹っ飛んでしまう。
――そして俺は――
1.眠いから二度寝する
2.急いで飛び起きる
定石通り2で
どこがFateなんだ?と思うけれど、まだまだ序盤だから仕方ないかも。
アーチャー=ディアッカみたいなネタは避けるべきじゃないかな。
投下乙でした。
>>313 セーブをして2。
ライダーの登場を切実に期待。
#2' 騒がしき目覚め
やばい! もう起きないと。
寝坊をしたら拙い。朝はキチンと起きないと駄目だ。ナタル姉は時間に厳しいから寝坊・即・死だ。
ベッドから飛び起きると顔にふにふにと柔らかい感触が二つ。
慎ましい丘の様な二つの膨らみの先には氷の様なナタル姉の微笑みが広がっている。
「起きて来るのが遅いから様子を見に来たら……これが朝の挨拶か」
「いや、これは何かの間違いで……」
俺はナタル姉の迫力に後退りながら弁明をする。否、しようとした。
しかしナタル姉が俺の言葉をまともに聞く気配などない。堅物人間にも程がある。
「そうか。シンは私と過ちを起こしたかったという事か?」
「違うよ! いや、そうだけど違うから!」
空気が粘着質な物に変わり全身に纏りつき俺の自由を奪い束縛する。
ナタル姉の冷たい光を帯びた瞳が俺を貫く。
その瞳は無言で俺に何かを語りかけて来る。
ナタル姉はゆっくりと拳を振り上げる。その拳には俺の生殺与奪の権が握り締められている。
ゴクリと息を飲む。緊張と恐怖でやけに喉が渇く。
振り上げられた拳が俺に向かって振り下ろされる。
避ける事は出来ない。受ける事も出来ない。
非情の鉄鎚が振り下ろされるのを見ている事しか出来ない。
――グシャッ――
鈍い音が響いて視界が紅く染まり、衝撃が脳髄を貫く。
そして俺は実感した。
――俺の人生が終わった――
DEAD END
実録マユ道場#1
うーらーめーしーやー
久々の登場のマユでーす!
実は新人スレでは初めてでーす。あははー。
あちゃあ。設定や世界観の説明をする前に百合軍人ナタルさんに殺られちゃいましたか。
カプコンもビックリな即死コンボですねー。
急いては事を仕損じるって言いまーす。二度寝するくらいの余裕が必要なのです。
焦るお兄ちゃんは主人公失格でテロップの一番上から陥落でーす。
今回は落ち過ぎて奈落の底まで落ちちゃったー。あははー。ちょーお馬鹿ー!
次はもうちょっと先に行けるように頑張ろoh!
因みに百合軍人ナタルさんは某職人が書いたけど封印指定したネタでーす。
分岐点まで戻って余裕を持って殺り直しましょー。
それじゃあ次回もDEAD ENDで待ってるねー。
まとまとによろしくー。
編集長こんなネタでゴメンねー。
バッハハーイ
to be continued?
道場ふいたwww
1でやり直す
セーブから1でやり直す。
タイガーの登場を切実に希望。
#2-1 爽やかな朝
枕元にある時計に手を伸ばしアラームを切ると、俺は再び眠りにつこうとした。
たまにはそんな一日もいい。学校へは後で風邪を引いたから休んだとでも言って
おけばいい。今は襲いくる眠気に身を任せてしまえ。ほら、睡魔が一緒にマイムマイムを
踊ろうと耳元で囁いている――
「まだ寝ているとは良い身分だな、シン」
ふと、聞き覚えのある声がした。厳しいけれど、優しさが内包している響き。何だろうと
思って薄目を開けると見慣れた顔がそこにあった。
上品な切れ長の瞳。口元を彩る薔薇色のルージュ。微かに香る甘い香水。
「ナ、ナタル姉――っ!」
素っ頓狂な声を上げる俺をクスクス笑って見下ろしながら、ナタル姉は俺がくるまっている
布団をひっぺがす。俺は涙目になりながら起き上がった。睡魔はいつの間にかどこかへと
消えていた。
「お、おはよう、ナタル姉」
俺はベッドの脇に落ちているスウェットを手に取ると急いで羽織った。
「おはよう、シン。そろそろ起きてくれないと学校に間に合わないぞ。今日は何曜日か判っているな?」
「えーっと、火曜日?」
「そう、今日は火曜日だ。で、今日の一時間目の授業は英語。お前は私の授業を受けたくなくて
惰眠を貪ろうとしていたのか? まあ、シンに限ってそんな事はないだろうと私は信じて
いるが。さあ、早く朝御飯にしよう」
ナタル姉は俺の幼なじみで、尚且つ俺の高校の担任だ。教科は英語を受け持っている。
学校では見た目から来る真面目な雰囲気でパーフェクトなイメージで見られているが、
家事――特に料理がてんで出来なくて、毎朝朝御飯を食べに家に寄っている。
「今日はパンで良いよね。時間がないし、答えは聞いてないけど」
俺はゆるゆるとベッドから降りると、欠伸をかみ殺しながら台所へ向かった。ナタル姉は
パン食では力が出ないとか、味噌汁を飲まなきゃ一日が始まらないとかブツブツ言っている
けれど、文句があるなら自分で作れば良いのだ。俺は台所に着くと、赤いケトルに火を掛けた。
作る朝食は目玉焼き。一緒にベーコンも焼いてベーコンエッグにしてしまおう。パンは
近くの手作りパン屋で買ったクロワッサン。この味を知ってしまったら、よその店のパンは
食べられない。クロワッサンはオーブントースターで軽く焼けばOKだ。
#2-2
「ナタル姉、食器棚から皿出して。そろそろ出来上がるよ」
俺の声にナタル姉はのろのろと皿をテーブルに置いた。なんで私がこんな事を……などと
言っているがしょうがない。朝は戦争。ぼーっとしている暇は誰にも無いのだ。
俺はベーコンエッグを皿に載せ、パンをオーブントースターから取り出した。沸かしたお湯を
ティーポットに入れたらお気に入りのアールグレイの茶葉を入れる。これで準備は完了だ。
「頂きます」
ナタル姉は味わうようにゆっくり食べるけれど、俺にはそんな時間は無い。大口開けて
ベーコンエッグを頬張り紅茶で流し込む。パンを口で加えると、俺はフライパンを洗い始めた。
「シン、紅茶のおかわりは?」
「自分でやってくれよ。薬缶にお湯は入っているからさ」
ナタル姉の溜め息が耳に入った。けれど、そんなのは関係ない。俺は続けて開いた皿を洗い始めた。
時計を見ると7時半過ぎを指している。ティーポットやらカップやらは学校から帰って
来てから洗えば良いだろう。俺はナタル姉にカップを洗い桶に浸けて置くよう頼むと
自分の部屋に戻り制服に着替えた。
黒の学ラン。ブレザーと比べると野暮ったいけれど、俺は気に入っている。
顔を洗おうと洗面所に向かう途中、玄関の方からナタル姉の声が聞こえる。
「私は先に行くぞ。シンも学校に遅れないようにな」
はいはーいと気の抜けた返事をしながら、俺は蛇口を捻った。ちゃっちゃと歯を磨いて、
撫でるように顔を洗って。これで俺も準備OK。ダッフルコートを羽織って鞄を掴むと、
俺は玄関の戸締まりをして急いで走り始めた。
ひんやりとした空気が心地よい。寒さで耳がちょっぴり痛いけれど、そんなのは直に慣れるだろう。
吐く息は白いけれど、風に流され空気に溶けて行く。今日の空は果てしなく青い。
流れる雲を追いかけるように、俺は走り続けた。
大通りに着くと、信号は赤だった。ここの信号は赤の時間が長いのだ。時間はどんどん
流れて行く。携帯電話で時間を確認すると、8時13分。このままだともしかしたら遅刻する
かも知れない。遅刻なんかしたら、ナタル姉にむちゃくちゃ説教されるだろう。ナタル姉は
ああ見えても学校では非常に厳しいのだ。
――果たしてどうするか。俺は――
1.赤信号 みんなで渡れば 怖くない
2.青信号 右手を挙げて 渡りましょう
セーブを取って2
美啜の登場を切実に希望。
俺はイリヤの登場を期待して2と言ってみる
セーブせずに強行突破で1!
#3' 朝のDEAD LINE
朝の往来は交通量が激しい。此所は素直に信号が赤になるのを待つべきだ。
道端を見ると花束が置かれている。かつて悲しい事故があった場所なのだろう。
それは教訓にしなければならない。人は学ぶ事が出来るのだから学ばなければならないのだ。
温故知新。
なぜかそんな言葉が頭に浮かんだ。
信号が変わって調子外れのチープな電子音で通りゃんせが流れる。
俺はゆっくりと横断歩道を渡り始める。意味はないのだけれど白線を踏まない様に進む。
ただのジンクスに過ぎないのだけれど白線を踏まなければなんか良い事が起こりそうな気がするんだ。
――ドカッ――
強い衝撃と共に視界がぐるぐると回転する。
一瞬の空白を置いてアスファルトに叩き付けられた。
苦くて鉄臭い血の味が口に広がる。アスファルトの冷たい感触が心地良い。
「ケロヨン号がぁっ!」
誰かの声が聞こえるけれど、そんな事は関係ない。
腕は有り得ない方向に折れ曲がり、足はひしゃげている。そして何より俺の身体は沢山に散らばって周囲を真っ赤に染め上げている。
アスファルトが温かくなっていく。
否、俺が冷たくなっているんだ。
見上げた青空が目に染みて痛い。太陽の光が俺の目を突き刺す。
雲が陰り空を覆い尽くす。
――行きはよいよい帰りは怖い――
電子音に合わせてメロディーを口ずさむと俺の視界が閉ざされた。
DEAD END
実録マユ道場#2
どーもー。DEAD ENDの救いのコーナー実録マユ道場でーす。あははー。
マユは本編では出番がないので道場ではっちゃけまーす。
今回は交通事故ですかー。一寸先は闇ですねー。
石橋を叩いて渡るのも良いですが橋を壊しちゃ駄目ですよ?
若人には明日無き暴走するぐらいの元気がないと駄目駄目。
勇気と無謀の持ち主
>>325のお兄ちゃんを見習わないと駄目だぞー?
風の子元気でルルが効くーぅ。
「押認! 自分はケロヨン号であります! 車は急に止まれないという事を皆様方には知って貰いたいのであります!」
新人スレのちょーぷりちーなマスコットのケロヨン号ちゃんの登場でーす。
でも出番はこれっきりー。残念賞ー。因みにドライバーは内緒かしら? 誰なのかしらー? うふふぅ。
それじゃあ次回もDEAD ENDで会いましょoh!
ばーいびー。皆風邪に気を付けてねー!
職人の皆さん、投下乙です。
>>リソウノカケラ
詩的な表現の積み重ねで、独得の雰囲気を作っていると思います。
真言さんの個性が出ていて、良い意味でガンダムらしくないと思いました。
ウンメイノカケラでの設定を知るだけに、カガリとマユの微妙な距離感が
不思議な余韻を残してくれていると思います。
>>戦史
大真面目な状況に大真面目な人たちを放り込んで硬めの文体で書いても、
コメディチックな描写が出来るというのは流石だと思います。
そういえば今は少し過去話の途中でしたね。そろそろ戦史さんのssは、
あらすじが欲しくなるくらいの長さになってまいりました。
個人的には、カズィの変貌振りがとても楽しみです。
>>calamity breaks fantasy
Good Job!
ナタル先生が素敵過ぎます。これはオルガも更生するしか無いですね。
創作上では禁じ手に近い夢落ちですが、落ちに困った結果のものでも無いので
むしろ良い使い方だと思います。
>>Fate/seed
こちらは真逆の合作+選択肢つき連載ss! そして実録!?
書いている人の一人が誰かは簡単に想像がつきますが、
それゆえにちゃんと続くのか不安になったり、先行きが予測不能で
楽しみだったり、戦闘パートは誰が担当するのか疑問だったりしています。
そんなわけで、セーブポイントに戻って赤信号を皆で渡るのを
選択します。
重ねて職人の皆さん、作品の投下をどうも有り難う御座いました。
☆あげ
週刊新人スレ新春号目次
時間を惜しんでサイがホットラインを繋いだその男は……。お待たせの機動戦史は2話連続でお届け。
機動戦史ガンダムSEED
>>259-263,298-303
オーブへと向かうアークエンジェル、その艦長席に収まる女性は、しかし忸怩たる思いを口に出せる訳もなく……。
光さす場所は
>>267 捲土重来を誓って三度ファッションセンターへ訪れた彼女。そのプライドを打ち砕く謎の集団! マニア必見!
ひまじんのたねこれ
>>271-272 MSの中のアウル。彼の五感は拡大し、何時しか鋼鉄の巨人と同化し彼の痛みや恐怖さえ共有していた。
SEED『†』
>>277-281,285-290
いつもの様にマユは私の目の前に立ち、その微笑みは私を魅了する……。要望に応え遂に連載再開!
リソウノカケラ
>>293-294 学校の放課後、俺は本を読んでいた。……そして何故か自分の意志では来た事無い場所へと足を向ける。
explaration of personality
>>304-306 合作、選択肢、そして伝説の実録マユ! 覆面職人達のゲームブック。まとめサイトのが読みやすいかもです。
Fate/seed
>>312-313,317-318,321-322,326-327
新人職人必読、新人スレよゐこのお約束。熟読すればキミも今日からベテラン職人だ!!
巻頭特集【テンプレート】
>>1-6 絵師テンプレート【暫定版】
>>7
週刊新人スレ新春号目次
各単行本も好評公開中
詳しくは
ttp://pksp.jp/10sig1co/ までアクセス! ひまじん日記がやるせない感じで良いです。
読者と職人の交流スペース開設。
お気軽に
ttp://pksp.jp/rookiechat/までどうぞ!
・投下作品とのリンクを問わず絵師、造形職人の方を募集中です。 エロはアウト、お色気はおk。
これくらいのさじ加減で一つ。素材は新シャアなので一応ガンダム縛り。
勿論新人スレですので絵師、造形職人さんも新人の方大歓迎です。
・当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は当スレにお越しの上【まとめサイトの中の人】とお声掛け下さい。
・また雑談所とも一切の関係はありません。当該サイトで【所長】若しくは【ひまじんさん】とお声掛けの程を。
・スレ立ては450kBをオーバーした時点で、その旨アナウンスの上お願いします。
お知らせ
『新人スレ人気キャラ投票』にたくさんの投票ありがとうございました。
ブッチギリ一位の作者の方と実質一位の作者の方については、アドレスを公開なさっておいでですので
今週中にメールを差し上げます。ご返答の程宜しくお願いします。
次回更新時に上記二名については発表する予定です。お楽しみに。
編集後記
PCだけでなく本人も新年早々ぶっ壊れまして更新遅れました。
ぎっくり腰と鼻水と腹痛をトリプルで喰らってもうお腹いっぱいです。
みなさんもお体ご自愛の程を。
編集長さくっと目次乙!
それから投票の管理乙!
そのあおりを見る事が出来て本当に嬉しいので、いつも有り難う!
体に気をつけてくれ!
戦史氏のカズイに期待してます!
俺はナタル先生に期待
嘘予告
西暦2307年。人類は枯渇した化石燃料に代わるエネルギー源となる軌道エレベーターと宇宙太陽光発電システムを手に入れていた
しかし、莫大な建造費が必要な軌道エレベーターを所有しその恩恵が得られるのは3大国家群である「ユニオン」、「人類革新連盟」、「AEU」のみであり
それらの超大国は全面的な対決こそ無いものの熾烈な軍備開発競争による冷戦状態にある。
そしていずれの連合にも属せなかった小国は貧困にあえぎ、紛争や内戦を繰り返していた。
その七年前……地球のとある地域とある場所に一つの隕石が落着した
当時そのクレーターが落着した場所の近くに住んでいた男はこう語っている
「仕事を終えてくるまで家に帰る途中にソラがぱぁって光ってな、車を止めてそれが何なのか確かめようとした時……衝撃波って言うのか?アレ
すっごい爆音と共に乗ってる車が吹き飛ばされてさ……あの時俺は死んだかと思って……え?そんなことは良いから先を話せって?
まあ、九死に一生を得て車から這い出したわけよ、そしたら目前に巨大なクレーターが出来ててな?クレーター全体が光り輝いてそりゃあ綺麗だったよ
呆然とそれ眺めてたらクレーターの中心から光がこう、スゥっと浮かび上がって数秒間くらいか? 5分とも10分くらいかもしれない
急にそれが空の彼方にドンって飛んでっちゃったんだよ。 ありゃあ間違いなくUFOさ! ホントだよ!賭けたっていい」
調査団の報告書にも落着した隕石と思わしき物はかけらさえ見つからず、何者かが持ち去ったと言う意見や巨大な氷だったという意見が出た
いずれにせよこの隕石落着の事件は一人の発見者だけという、未解決のまま捜査は打ち切られてしまった。
とある海溝
光も差さない闇の世界
闇の世界で生きる為に進化した生物たちはそこで見知らぬ物を眼にすることになる
金色とも銀色とも虹色とも取れる巨大な繭が揺ら揺らと糸を海流に燻らせて海底火山の火口に鎮座していた
その繭の奥、七色に光り輝く眉の奥で、巨大な体躯を窄ませた何かが、ぎらりと目のような物を光らせた
機動戦士ガンダム00∀
終わりとは、新たな始まりである。
To be continue?
ウンメイノカケラ extra scene-1 1/2
晴れた日の午後
気分が良かったので久し振りに散歩に出掛けた。行き先は慰霊碑だ。
かつての戦争は悲しみという傷跡を世界に刻み込んだ。残された人々は悲しみを繰り返さない為に、戦没者の冥福を祈る為に慰霊碑を作った。
悲しみの責任の一端は僕にある。祈りを捧げる事で償いになるだろうか。
慰霊碑の周りは様々な花によって色鮮やかに飾り立てられている。
一生懸命に咲いている健気な花達は僕の心を癒してくれる。
慰霊碑の前に膝まづいて目を瞑り、黙祷を捧げる。
瞼の裏に色々な人が浮かび上がっては消えていく。トール、ムウさん、ナタルさん、ウズミ様、フレイ。……そして、ラウ・ル・クルーゼ。
亡くなった全ての人の為に祈りを。
祈り終えて立ち上がると振り返った弾みで誰かとぶつかって転ばせてしまった。
僕は慌てて手を差し延べる。
「すみません。……大丈夫ですか?」
見れば僕よりも幼い少女だ。長い黒髪とクリクリとした大きな瞳が可愛らしい。
見た目とは裏腹に何処か大人びた印象がする。
「ええ。私は大丈夫」
少女の手を取って起こしあげると地面に何かが落ちている。ペンダント……いや、ロケットみたいだ。転んだ拍子で落としてしまったのだろうか。
拾うとロケット開いていて入っている写真が見えた。
「……ムルタ・アズラエル?」
彼女は僕の呟きが聞こえたのか僕を見つめている。
「彼の写真を入れているなんて珍しい?」
「君はブルーコスモスなの?」
少し身構える。彼女が幼いといっても油断をする事は出来ない。
「ううん。私には難しい事は解らないわ。ただ、彼を忘れたくないから入れているの。変わっているでしょ」
少女は僕に向かい手を差し出す。僕はその意味が解らない。
ただ、後退りする事しか出来ない。
「拾ってくれたんでしょう? ありがとう」
彼女の微笑みからは悪意を読み取る事は出来ない。
安堵の溜息を吐くと僕は猜疑心の塊になってしまっている自分を見つけて少し自己嫌悪に陥る。
ギクシャクしているかも知れないけれど、笑顔でロケットを返した。
そして、疑問をぶつける。「何故彼の写真を? 彼はオーブに攻めて来た……」
彼女は僕の言葉を遮る。
2/2
「悪人。でも、可哀相な人。ゆがんだ世界に心と運命が砕かれてしまった人。私は彼のせいで家族を失っちゃったけれど、憎めないの」
彼女が口にした彼という言葉には優しさが含まれているみたいだ。何故なのだろうか。
「君は彼が憎くないの?」
「さあ? 良く解らないわ。憎んだって彼のやった事は消えないし、私には彼の悲しさが解るからじゃないかな」
彼女の答える声は澄んでいる。多分嘘はいっていないだろう。
「君と彼の関係は?」
「内緒。彼と私だけの二人だけの秘密だから教えてあげない」
彼女はクスリと悪戯っぽく微笑んで僕の瞳を覗き込んで来た。
「私はマユ。マユ・アスカ。貴方の名前は?」
吸い込まれそうな黒い瞳に、ついつい僕は見入ってしまう。
「僕は……キラ・ヤマト」
「またいつか会えたら良いね。人の出会いは一期一会。大切にしないとね」
「ああ、そうだね」
一言だけ返事をすると彼女は先程の僕みたいに慰霊碑に膝まづいて祈り始めた。
背を向けて歩き始めると湿った風が僕の頬を撫ぜる。
空を見上げると入道雲。
一雨来そうだ。
ウンメイノカケラ
extra scene-2 雨やどり
いきなり雨に降られるとはついていない。
たまたま近くに喫茶店があるから良かった様なものの、なければ濡れ鼠になっていた所だ。
お忍びで街を歩き回ってずぶ濡れになったとしたら、キサカはガミガミと五月蠅いだろう。ユウナも黙ってないだろう。
いや、内緒で抜け出した時点で怒られる事は間違いない。
ああ、憂鬱だ。もっとも、私が悪いのだが。
アスランなら私の気持ちを解ってくれるかも知れないけれど、それもどうだろうか。
オーブという物は今の私には重過ぎる。
私が望んで国を背負っているのだが、押し潰されてしまいそうだ。
でも、泣き言を言ってしまえばそこで終わりだ。
小娘の政治ごっことして終わりになってしまうだろう。
実際、私がしている事は政治ごっこ以下なのかも知れない。
それでも、なんと言われてもオーブの理想は守らなければならない。
それはお父様の遺志なのだ。
ウエイトレスが静かに紅茶を置いた。ミルクと紅茶を入れて口をつけると紅茶が私の口に広がり小宇宙を作り出す。
その味は情熱的で例えるのなら古典への回帰……ルネッサンス。
私のどうしようもない陰鬱な気分を降り払ってくれる。
窓の外を見ると次第に雨が小降りになっていき、雲の切れ間から光が差し込み始めた。
遠くには虹のきざはしが見える。
雨は通り雨。雨やどりもいい加減にしてそろそろ戻らないと本格的にまずいだろう。
紅茶を飲み干してもう一度外をみると、一人の少女が水溜まりを避けるように駈けていくのが見えた。
少女の長い黒髪に思わず見惚れてしまう。
理由など解らないが、何故かトクンと胸の動悸が高まった。
多分、身も心も疲れているからだろう。
喫茶店をでると空は青空、太陽が輝き、遥かに遠くには虹が煌めいている。
良いものを見た。
胸の動悸無くなり私の疲れは消え去った。
オーブの運命は私が背負っている。もっともっと頑張らないと私は重圧に負けてしまうだろう。
私はお父様の娘、それだけは絶対に許されない。
だから頑張らないと。
――全てはオーブの為に。
extra scene-1は高畑がマユスレに投下した番外編
extra scene-2は真言に乞われて私が書いたウンメイノカケラとリソウノカケラを繋ぐ作品です。
>>まとめサイト管理人様
双方ともウンメイノカケラとして扱って下さい。
ソレスタル・ビーイングねぇ。俺達には関係ないさ。俺達に手を出したら火傷じゃ済まねえって事ぐらいは奴等だって解るだろ。
常識的な話としてね。紛争やテロが悪い事だっていう事と同じくらいに当たり前の話だ。
そう、テロは良くない事だよ。でもな、世界が正義を葬ろうとしている御時世だ。手段なんて選んでられないのさ。
ユダヤ人どもが俺達から故郷を奪ったんだから俺達は故郷を取り返す。それだけの事さ。
歴史的に見てユダヤ人が迫害を受け続けた民族だってのは知ってる。
でもな、だからと言って俺達に自分等がされて来た非道をやって良いって免罪符にはならない。
あれ、免罪符ってキリスト教だったか?まあ、そんな事はどうだって良い。
とにかく俺達は故郷を取り戻す迄は戦いをやめない。聖戦はパレスチナの地からユダヤ人を追い出す迄続くのさ。
溜まりに溜まった不法占拠のツケは払って貰わないとな。
何百年もの家賃だ。ユダヤ人どもが貯め込んだ金を全部吐き出したって足りるもんじゃない。
足りない分は……そうだな。ユダヤ人どもにパレスチナの地の肥にでもなって貰おうか。 なんにせよ、俺達の問題は俺達の手で解決する。ソレスタル・ビーイングみたいな余所モンが介入する余地なんてありはしないのさ。
もし、介入して来るのなら俺達は実力をもって排除するよ。
大方、その辺の事が解ってるからソレスタル・ビーイングも介入はしてこないんだろうけどね。
まあ、介入して来ても全ては神が思し召すままさ。
おっと、そろそろ死んだかみさんや子供達に会いに行く時間だ。
お前達の親父は人に死を恐れない勇敢な戦士なんだって事を教えてやらないと。
え!? 何処に会いにいくかって? 決まってるじゃないか。天国さ。
聖戦で死んだ勇者は天国に行くのはアンタだって知ってる常識的な話だろ?
とどのつまり、俺はユダヤ人を血祭りを上げる為にテロをするのさ。それは聖戦に他ならないのさ。
アンタはそう思わないだろうが、俺にとってはそうなんだよ。
341 :
ひまじん:2008/01/13(日) 17:58:27 ID:???
謎短編はフィクションです。以下略。
鬱展開ヤメレ
目次
「ユニオン」、「人類革新連盟」、「AEU」。3大国家群がゼロサムゲームを続ける中、それは舞い降りた。
機動戦士ガンダム00∀
>>335 雨の中、ウンメイとリソウは静かに繋がっていく……。カケラシリーズ双方を繋ぐ番外編を2編まとめて。
ウンメイノカケラ extra scene-1
>>336-337 ウンメイノカケラ extra scene-2
>>338 神への忠誠を誓い『聖戦』へと赴く男。彼の目に映るソレスタル・ビーイングとは……。
ひまじんの謎短編
>>340 新人職人必読、新人スレよゐこのお約束。熟読すればキミも今日からベテラン職人だ!!
巻頭特集【テンプレート】
>>1-6 絵師テンプレート【暫定版】
>>7 各単行本も好評公開中
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・投下作品とのリンクを問わず絵師、造形職人の方を募集中です。 エロはアウト、お色気はおk。
これくらいのさじ加減で一つ。素材は新シャアなので一応ガンダム縛り。
勿論新人スレですので絵師、造形職人さんも新人の方大歓迎です。
・当方は単行本編集部こと、まとめサイトとは一切の関係がありません。
単行本編集部にご用の方は【まとめサイトの中の人】若しくは【まとまと】とお声掛け下さい。
・また雑談所とも一切の関係はありません。当該サイトで【所長】若しくは【ひまじんさん】とお声掛けの程を。
・スレ立ては450kBをオーバーした時点で、その旨アナウンスの上お願いします。
編集後記
人気投票にたくさんの投票ありがとうございました。
お約束通り本日、結果発表を致します。
後日まとめサイトにて何か動きがあるやも知れませんのでこちらも注目!
週刊新人スレ1/14日号 付録ー1
『新人スレ人気投票まとめ』
投票人数のべ15名 有効投票数57票
単純集計部門
○激一位 まとまと(まとめサイト更新日記、けろよん日記他)10000票
投票理由
いつもお世話になってるので一万票入れておいて下さい。
☆ブッチギリ一位 †氏のおねぇさん(まとめサイト 創作日記)5006票
投票理由
5千票でお願いね。
天然系で器量良し。その上リアル実在人物。他に何を望む。
自分に姉属性があると初めて知った
★実質上一位 ミツキ(少女は砂漠を走る!)4票
投票理由
画像で見る事もできないのに、文章だけで萌えた
砂漠を駆け抜ける直線莫迦。種世界に"師弟"というジャンルが開拓されました。
師匠との別れのシーン。ミツキ大爆発に比喩で無くて泣いた
次点 ルナマリア(SEED†)2票
投票理由
いろんな意味で強い女の子。昨今のアニメが忘れてしまったヒロイン像が良い
次点 サイ(機動戦史ガンダムSEED)2票
投票理由
戦略眼と人間臭さを併せ持っている描写が良い。
アニメでは好きじゃなかった。戦史氏の描写に一票。
次点 カガリ(lunatik love)2票
エロイから
夜中にwiiで遊んでいるカガリ……良い!
次点 けろよん号(実録! けろよん号のクリスマス)2票
まとめサイト管理人のオーナーを誇りに思うけろよん号が健気
次点 オルガ(explaration of personality)2票
※コメント頂けませんでした。残念。
週刊新人スレ1/14日号 付録ー2
ここから順不同
○やっぱり女性キャラ!部門
†氏のおねぇさん(まとめサイト 創作日記)
萌えキャラだから
ルナマリア(SEED†)
可愛いお色気。この描写が†さん。
コンビニのおねぇさん(けろよん日記)
萌えキャラだから
マユ(ウンメイノカケラ)
テクニシャンぽいから。……ホントは健気だから!
ねぇさん(少女は砂漠を走る!・女神と天使)
時代に翻弄され自らのあり方を見失う悲しい運命の女性。
ナタル(何でも屋ドミニオン)
有能な女性は良いですよねぇ。
モンロー(彼の草原、彼女の宇宙)
切れる女は素晴らしい!
その他
シャミィ、ソフィ(森の娘の見た光)、サーシャ(彼の草原、彼女の宇宙)、女性キャラ全員(SEED†)
カガリ(機動戦史ガンダムSEED)、カズミ(名も無き花咲く頃)
カガリ(生きるための情熱としての復讐)等
○地味に細々男性キャラ部門
イザーク(SEED†)
登場シーンに震えた!
ミゾグチ(SEED†)
キラを可愛がっている良い兄貴。
イシカワ(森の娘の見た光)
苦悩する中間管理職。「俺はエラくない」の台詞が印象的
キラ(be too late)
他ではあまり見かけない『オトナ』なキラ。
シン(何でも屋ドミニオン)
新人スレの中で一番好きなシンです。
その他
ダコスタ(てのひらを、たいように)、ディアッカ(機動戦史ガンダムSEED)
フランク(森の娘の見た光)、アスラン(逆襲のアスラン)
主人公(謎短編00ハイスクールロケンロール)等
萌えるとこ間違ってないですか?部門
とめさんの愛車けろよん号のキィについているキィホルダーにぶら下がった三頭身のエールストライク(けろよん日記)
とめさんのすべてを見ている(筈の)彼だから。
その他
カエル(be too late)
※そしてもう一つの『キャラ』けろよん号(実録! けろよん号のクリスマス)は堂々二位に食い込みましたw
週刊新人スレ1/14日号 付録ー3
版権はどなたに相談したらいいんでしょう、SSとか書いちゃっても良いんですか? 部門
†氏のおねぇさん(まとめサイト 創作日記)
※今回の第一位。ブッチギリで他を抑えましたw
真言さん(SS職人)
夜中にwiiでプレイして……。
美柚子さん(SS職人)
初出のインパクトありすぎw
批評家四人衆(読者代表)
※優しい人、辛口の人、アティチュードの人、女教師の人。まとめて十把一絡げでエントリー。
その他
ひまじんさん(雑談所所長、SS作家)、編集長(三次職人)
寸評
予想以上に投票を頂きました。先ずは御礼申し上げます。
全くもって下馬評通りの結果となりました。まとまと強し!……あれ?
姉君とミツキについてはまんべんなく票を集めた印象。
特に弐国氏については各キャラに票が分散する結果になり『お姉さん』の独走を許す事となりました。
職人さん別に見ると弐国氏の他、†氏と真言氏が人気です。
今回は特にキャラの描写の部分で評価される方が票を集める結果となっています。
また弐国氏の作品を初めとしてオリキャラが結構ランクイン。
双方とも作品ではなくキャラ別としたのがその原因だと思われます。
票がむやみに割れたのは予想通りではありますが、
職人さんからの投票が8割を超えたのもその一因かも知れません。
以上、結果発表でした。
※尚、†氏、弐国氏より『お姉さん』、『ミツキ』を使った創作について許可を頂きました。
職人さんに限らず我とおもわん方は是非この機会に腕を振るってみては如何でしょう。
>>340 全然ガンダムじゃないし、鬱展開は嫌いだからやめて下さい。
ガンダムに必須な戦闘描写が出来ないからって鬱展開で誤魔化す職人には是非とも消えて頂きたい。
消えろとは言わないけど空気は読んで欲しい。
>>346 編集長乙!
ミツキは予想してたけど†姉さんてww
何故ひまじんが職人なのか分からん。
ぶっちゃけ下手じゃん
下手でもSSを書けば職人
例え汚物バラ撒き婆でも糞SSを書いているから職人
編集長乙でありんす
そうだよな。新人スレのクオリティを下げる職人には是非とも消えて頂きたい。
ひまじんとか美柚子とか新人とか真言とか
そして誰もいなくなるんだな
追い出す事はない、基本どんなネタでもssでも受け入れるべきだと思う。
住人個人個人が、投下されたものにどう反応するかは自由。
まとまと一位おめでとう
>>OOターンエー(ターンエーの打ち方が分からなくて失礼)
隕石だからマクロス? とおもったらお髭のガンダムでした。
嘘予告に為るには勿体無いと思いますよ。
>>ウンメイノカケラ
雨の風景や曇り空の憂鬱を、詩的に装飾された文章で書いてあって、
独得の雰囲気が読めました。
キラはアズラエルの苦悩やコンプレックスを理解できるんでしょうか。
そういった成長物語ではないと思うのですが気になります。
本来ありえないはずの出会いは、二次創作の醍醐味ですね。
>>謎短編
OOの本編ではパレスチナ問題はまだ出ていなかった気がするのですが、
本当にタブー視しているからなんでしょうか? よそ者に問題介入されたくない
というのは、自然な感情だと思います。
職人の皆さん、作品を投下してくれて有り難うです。
>>編集長
コチラも目次と結果発表乙です。偏りが凄まじいですが、これぞ2ちゃんと
いえなくもない結果ではありますね。
マクロのそ〜らを、つらぬいて〜
とまあさておき、ターンエーは「数学」で変換すればでますぜ
(・∀・ )
( ・∀・)
363 :
通常の名無しさんの3倍:2008/01/20(日) 16:37:16 ID:jQseq7BA
更年期臭の漂うゲームブックなんていらないよな。
汚物みたいでキモい。
>>363 そうだよな。新人スレには汚物なんていらないよ。
雑談所が表示エラー出て見られない
こっちも確認
荒らされたか?
#1-1
世界は確実に崩壊のビートを刻んでいる。
たわんだ世界の軋む音は遥か遠くまで響いて木霊する。
歪んだ世界がもとに戻ろうとする反発で世界は揺れ動いて人間を右往左往させる。
右往左往する人間は常識から外れた事を正気でやる、つまり狂っているということだ。
事の始まりはプランとから。
戦後の混乱をラクス・クラインはそれなりに上手く纏めていた。
彼女の政治的な資質はさほど高くはないけれども壊滅的な物でもなかったらしい。
でも、混乱が鎮まり安定し始めるとポツポツと不平不満が出始めたそうだ。
それは仕方ない。人のやる事だから間違いはあって然るべきだし、何をするにも不満を言う人間はつきものだ。
気に入らなければ黙殺すれば良いのだけど、彼女はそれが出来なかったらしい。
それは哀れな事だと思う。馬の骨の言葉を無視する事が出来ないで力ずくで排除する事しか知らなかったのが彼女にとっての不幸だ。
周囲の人間は彼女に賛同するのが生き甲斐な奴等で盲信的に彼女を信じるだけだ。
まったく世知辛い世の中さ。
兎にも角にも無理が通れば道理は引っ込む。それが世界の真理だ。
無理を通すのが彼女――ラクス・クラインだったら尚の事。
引っ込むのは道理だけじゃ済まされない。
世界は物凄いスピードで歪んで行く。それはもう人間の眼じゃ追い付けないぐらいの速さだ。
歪みに巻き込まれた哀れな人間は物言わぬ屍になってあの世行き。神様だってとうの昔に匙を投げ捨てちまった。
つまり世界には何一つ、一切の救いが存在しない。
歌姫は無邪気にもそれを知らない。勝手気侭にこの世を動かして御満悦だ。
それは反吐が出る程グロテスク。死んで逝った人間の重い想いを教えてやらないと拙い。
それは世界を牛耳る奴等との危険なギャンブル。賭ける物は自分の命、大穴狙いのハイリスクハイリターン。
勝って笑うか負けて死ぬかは神様にだって解りはしない。
それでもやらなきゃいけない。ラクス・クラインをお山の天辺から引きずり降ろさないと何もかもをわやにしちまう。
そうなる前になんとかしないと。
#1-2
何かが破裂する様な乾いた音とともにバタバタと人が倒れていく。倒れた人間は道路を鮮血で赤く染め上げながら冷たい屍になっていく。
まるで死の行進だ。銃声でリズムを取りながらイチニ、イチニとあの世へ進んでいる。
老若男女を問わず、反吐が出るくらいに平等にバタバタ人が死んでいく。
悲鳴とざわめきが上がるけどそれ以上に大きく響く銃声がその場を支配する。
死んでいく奴等が反ラクス派によるデモに参加したのが運の尽き。
不細工なまでに歪んだ笑顔で銃を乱射する兵隊さんは楽しそうに作業を続けている。
デモ隊の奴等が逃げようとしても逃げ場はない。四方八方囲まれている。
可哀相だけど仕方が無い。なんせ相手はあのラクス・クラインだ。一度敵と認識すれば相手を殲滅し尽くす。
その手段が合法だろうが非合法だろうが関係ない。
死人に口無し。適当な理由付けで脳天気な奴等をテロリストにでっち上げて、自分は悲劇のヒロインぶる。
民衆は猿芝居を本気で信じて世論はラクス・クラインに寄り添う。
大衆は家畜みたいになっていくけど誰一人気付かない。気付いた端から処分されていくから馬鹿な方が幸せなのかも知れない。 それでも気付いた人間が集まって幾つかのコミュニティを形成している。
今は数が少ないけれどそのうち増えていくだろう。そうでなければお先真っ暗でどうしようもない。
だけどその僅かな数のコミュニティは一枚岩じゃないからなんとも始末が悪い。
ザラ派、デュランダル派、その他諸々が鎬を削って勢力争い。
密告、告発なんでもござれでお互いの足を引っ張り合う事に躍起になっている。
派閥争いで疲弊し過ぎてラクス・クライン政権の打倒なんて夢のまた夢だ。
何もかもがくだらない。でも俺達はくだらない世界であっても生きていかなければならない。
どうせ生きていくならくだらない世界よりもマシな世界が良い。
マシにする為にはラクス・クラインをどうにかするより他はない。
ウダウダやってるヒマはない。
全ては行動あるのみ。
まあ、下手に行動した間抜けが目の前でバタバタ死んでいる訳で。
やるからには一気呵成で破竹の勢いでやらないとマズい。
そんな訳で物語は始まる。
GJ!
汚物臭が一掃されたと思いました。
最近ここって汚物臭ってゆうか更年期婆の加齢臭が酷かったよね。
余りの臭さに「ここって添い遂げだったっけ?」って間違えちゃったよ。
そんなに臭くないよ
つーかさ、戦闘描写の出来ない汚物バラ撒き職人は添い遂げに帰って欲しい。
このままだとKY種撒き厨に新人スレを乗っ取られちゃうよ。
雑談所は昨日で閉鎖したみたい
>>どうやらシンが逆襲するようです。
まだ序盤だからなんとも言えないけど面白くなりそうな感じ。
汚物って本当に厄介だよなー。
糞駄作SSを書いている暇があったら、旦那の為に漬け物でも漬けてりゃ良いんだよ。
>>372 乗っとられるも何も住人がいる気配がない。
羞恥心て言葉を知らないんだよ、汚物バラ撒き職人は。
だから需要の無いくだらない日常描写を垂れ流すんだよ。
三(ryが雑談所で暴れたせいか>閉鎖
屑は黙って自分の喉でもナイフで刺してりゃいいのに
自演コント:三■目
提供:三■目
でお届けしています
まぁ確かに3(ryは生きてても母親の顔面蹴ったとかロクでもない自慢しかしねえからなぁ
>>375 新人スレ住人はスレに充満する汚物臭に耐えきれなくなって逃げたんじゃない?
汚物バラ撒き職人は職人の皮を被った粘着荒らしだからさ。
いきなりスレの空気が悪くなったな。
これが噂の汚物バラ撒き臭って奴?
自演コントをしてるのは三■目の皮を被った虚空と言ってみる
最近種蒔きさんは投下していないと思うのだが。
>>382 そしてその皮をめくるとそこにはやはり三■目が
上級大将降臨希望
ここも2ちゃんだったっけ、そういえば
また一人討論会か、ご苦労な事だ
>>387 一人討論会だなんて言ってると変なのに噛み付かれるぞ?
ひまじんが雑談所を閉鎖したのは
種撒きが雑談所のSS避難所に更年期婆加齢臭の
凄まじいSSを投下したからだと思う。
きっとひまじんは汚物に汚染されたくなかったんだろうな。
種撒きは添い遂げに帰れば良いじゃん。
添い遂げで好きなだけ日常描写(笑)をしていれば良いんだよ。
新人スレを汚さないで欲しい。
391 :
ひまじん:2008/01/21(月) 22:02:32 ID:???
>>389 違うぞ。俺が雑談所を閉鎖したのは仕事が忙しくなったからなんだが。
お前なんかぷぷっぴどぅーだ。
>>391 お前、種撒き厨だろ
ひまじんの名を語ってんじゃねーよ
>>393 新人スレを荒らすなよ。
汚物種撒き厨は空気が嫁なくて困るよな。
スレ保守乙。スクリプト諸君
騙るスレ建て直したほうが良いのかね。
語れるほどSSスレが残ってるかどうか疑問なわけだが
隔離スレとしては使えそうだな
#2-1
記憶は古びたモノクロームの写真に似ている。
過去の残滓に黒と白がべったりと張り付いてはっきりとしないぼやけた輪廓になっている。
距離感もなければ実感すらない。全てが曖昧になってしまっている。
だけど、否、だからこそ酷く懐かしい風景であり、思い起こして引きつけてやまない。
だんだんと劣化していく記憶は思い出というフィルターによって美化されて行くのかも知れない。
瞳を閉じれば瞼に映る今は亡き家族の記憶は俺にだけしか残されていない。
それはとても悲しい事だ。
「シン、何を考えているの?」
ルナマリアの匂いが俺を現実へと引き戻す。彼女は心配そうに俺の瞳を覗き込んでいる。
彼女の瞳に映る俺は酷く疲れ果てている。
実際、俺は疲労が皮膚の内側を這い回っている様に気怠い。
「ああ、疲れてぼうっとしていただけさ。何でもないよ」
俺は当たり障りの無い返事をして彼女を拒絶する。
人には踏み入られたくない領域がある。それは俺にとって家族の思い出であり、何人だろうが土足で踏み入られたくない。
しかし、彼女は土足でヅカヅカと踏み込んで来る。
それは不快な事ではあるのだけれど、心地良くもある。
誰かに記憶を分かつ事で共有を出来るかも知れないという幻想が俺にはあるのだ。
しかし、今はそんな気分にはなれない。
昨夕は俺とルナマリアが参加しているコミュニティの作戦を立案していて睡眠をとっていないからだ。
「そう? それなら良いけど……あまり無理をしないでね」
心配そうな彼女に適当に相槌を打つと俺はおもむろに口を開いた。
「二つの戦争が生み出して、幾つもの戦闘によって磨かれた二人の英雄……」
「キラとアスラン?」
彼女は俺の言葉に即座に反応する。彼女もラクス政権打倒の障害となる二人の事は気にかかっているみたいだ。
「ああ。悔しいけどあの二人はそこにいるだけで戦局を左右する存在さ」
溜息。
あの二人を相手するという事は並大抵の事ではない。
「シンは勝つ自信ない?」
ルナマリアも陰鬱な面持ちだ。彼女もあの二人の強さは身に染みて分かっている。
「はっきり言って分からない。でも、あの二人が幾ら強くても二人は二人でしかない」
考え抜いた結論はいたってシンプルだ。
「二人が幾ら強くてもMSに乗らなきゃ怖くはないと思う」
#2-2
「それってどういう事?」
彼女は俺の真意を掴み兼ねているみたいだ。首を傾げている。
「MSに乗せなきゃどうにか出来るって事さ。乗ったら最後、あの二人は鬼神の様に暴れる。でも、乗らなきゃ……」
「そうかもね。特にキラ・ヤマトは……。でも、アスランは一筋縄じゃいかないと思う」
彼女の考えは至極真っ当だ。キラ・ヤマトはまともな訓練を受けていないからどうにか出来るにしても、アスランは生身の戦闘でもアカデミー史上五本の指に入る程の強さを誇る。
「それが問題なんだよ。アスランは筋金いりだからな……」
また溜息。
だけど策がない訳じゃない。生身で二人を同時に相手出来れば勝機はある。
アスランは経験からして間違いなくキラを気遣う筈だ。その隙を突けばどうにかなるだろう。
問題はそんな状況をどう作るかだ。
二人で顔を突き合わせて思案していると、腹の虫がなった。時計を見れば十二時近い。朝食を食べずにいたからかなり腹が減っている。
「ルナ、何か適当に作ってくれ」
彼女は俺の言葉に即座に反応してキッチンへと向かう。俺はその後ろ姿を見送ると再び思案を始める。
しかし、不意になった電話のベルによって遮られた。
やむなし。俺は呼ばれるままに受話器を取る。
呼び出した電話の主はヨウランだ。彼もまた、俺達と同じコミュニティに参加している。
受話器の向こうのヨウランは酷く忙しなく焦っている。しかし話す内容は取り留めのない事でしかない。
盗聴を恐れての暗号は忘れてない様だ。
符丁に合わせて内容を改変すると。ヨウランの焦りが俺にも伝達する。
受話器を叩き付ける様に置くとルナマリアがキッチンから顔を覗かせてくる。
「一体何があったの?」
俺は深呼吸をして心を落ち着かせるが、上手くいかない。
口早に、強い語調でルナマリアに告げる。
「副艦長が……アーサーが逮捕されたらしい……」
アーサー・トライン。元ミネルバの副艦長であり、俺達が参加しているコミュニティのリーダーが官憲に逮捕されたというのだ。
to be continued
新人スレは好きな内容で書くスレですよ。
新人スレで汚物を垂れ流すのは止めて欲しい。
>>402 自演コント乙。
妄想してないで仕事探せよぷぷっぴどぅー。
>>402 やめろ、佐藤!ケツに、アトールぶち込むぞ、アナルハゲ
すみません、質問です。
諸事情により某スレから新人スレに移籍しようと考えているのですが、
その場合ははじめからSSを投下し直した方が良いでしょうか?
それとも続きから投下した方が良いでしょうか?
お手数をおかけしますが、宜しかったら意見をお聞かせ下さい。宜しくお願いします。
スレ汚し失礼致しました。
>>407 恐らく貴方が誰なのか分かっていて言うけれど、
この場合はとめさんに送って続きから、が良いと思う。
まとめ管理人殿に作品を送っておく
↓
スレで一応告知(必要とあらばあらすじを投下)
↓
一日(読む人が読めるくらいの時間)あけて連載再開
くらいの流れで。唐突過ぎると、掴みにしっぱいするかも。
>>407 普通にスレに投下してみたらどうかな?
俺は407が誰だか判らないけれど、だからSSを読んでみたい。
あらすじは読みたくないって人が居るかもしれないから、
本スレじゃなくてまとめさんのところに送った方がいいかも知れないけど、
そこら編は空気を読む、としか言い様が無い。
で、感想
>>どうやら〜〜
アンチラクシズなんて雰囲気は、そうと気にしなければ感じないから
別にそういうわけでもないでしょう。ただ、物語としては#2以降だけで
充分な気もする。キラとアスランが敵な時点で、殆どラクスが敵だし。
続きに期待。
今までどのくらい書いてきたのかわからないのでなんとも言えないけど
長くてまとめがあるのならそちらを紹介、短いのなら再投下 かな
それで1スレ埋められても困るw
キズナノカケラ
scene1-1 I can put my arms,around a memory
十代の頃の夢は壁に書いた落書きみたいなものだ。
出来るだけ大きく、出来るだけ人目に着く様に書いた極彩色の落書き。
大人になってから見ると若さ故の過ちというか、世の中を知らない子供の青臭さ丸出しで恥ずかしい。
でも、真直ぐにひたむきになっていたあの頃の思い出は忘れる事が出来ない大切なものだ。
自由奔放で、無邪気に無敵だった遠い日の記憶。
今思えばもっと羽目を外しても良かったんじゃないかとも思う。
そう考える様になったという事は俺も年をとったという事の証左なのかも知れない。
そんな事をぼんやりと考えながら歩いて行き着いた先は慰霊碑だ。
風がそよいで草花が踊る様に揺れる。空を見上げれば飛行機雲が棚引いている。
遥かに遠くにある水平線は青く滲み空との境界を曖昧な物にしている。
不意に花々のドレスを着飾った様に慰霊碑からぽつんと離れて咲いている花に気付いた。
華やかさとは無縁にひっそりと咲いている花は、人々から忘れ去られて行く俺に似ている。
昔の仲間は華やかな道を歩んでいる。それに引き換えて俺は舗装もされていない様な小さな道を歩いている。
それに関しては悔しい気もするけど仕方のない事だ。俺は唯の凡人だからマイペースで行くしかない。
背伸びして夢を見たって無様を見るだけだという事は散々思い知った。
自分の出来る事を地道にやりながらゆっくりと自分の出来る事を増やして行けば良い。
風に磯の匂いが混じる。海からの風は湿っぽくてひんやりと冷たい。
風が吹けばいつかは俺の道も変わるだろう。
そして慰霊碑。目を閉じて黙祷する。
瞼の裏にはフレイの姿が浮かぶ。
思えば彼女は可哀相だった。色々な物に惑わされて運命の川に探されてしまった。
差し伸ばして来た救いを求める手を握り締めてやれば少しは運命も変えれたのかも知れない。
でも、当時の俺は若過ぎた。打算的な彼女を許す事が出来なかった。もっとも今でも許す事は出来ていないけど。
未練、未練。
昔を懐かしんで思いを馳せても何にもならない。
慰霊碑に背を向けて帰路に着く。
1-2
たまの休日だからもっと有効的に使えば良かったと一人ごちてももう遅い。
不器用な人間は不器用にしか生きられない。それは身に染みて分っている。
器用に生きる事が出来ていればもっとマシな人生を送って来れた筈だ。
足取りは軽くも無く重くも無く至って普通。
さざ波の音が耳に心地良い。疲れた心が癒される様だ。
少しは無駄な時間を過ごした意義はあるのかも知れない。
と、向こうから誰かが歩いて来た。良く見れば見知った顔だ。
でも向こうは俺の事なんて覚えてはいないだろう。
オーブの元首に顔と名前を覚えられる様な事を、俺、サイ・アーガイルはした記憶はない。
もっとも、彼女に覚えられていて得になる様な事もないけれど。
to be continued
もしもシャ……じゃない、ゼ……でもない、釘……も違う。
もしもトリニティが居なかったらダブルオー
1/
アグリッサ……その蜘蛛を思わせる脚部に隠された主兵装"プラズマフィールド"は、
強力かつ高周波な電磁波を発振させることで大気をプラズマ化し、檻に捕らえた敵を
蒸発させるシステムである。
しかし、檻に囲まれた空間にまばゆく輝くプラズマ球は出現せず、高周波によるスパークが
のたうちまわるガンダムの周りにまとわりつくだけだ。
「あの変な粒子の影響か、プラズマの生成が悪いぜ!」
思うように温度上昇しないプラズマフィールドに、パイロットは舌打ちを洩らす。
アグリッサの上部に埋め込まれたイナクトの中で、アリー=アル=サーシェスは
野性に満ちた笑みを浮かべ、檻の中で悶えるガンダムを睨みつけていた。
電磁波を阻害し減衰させる特殊粒子の守りが、辛うじてガンダムの形を保つ。
だが、それも時間の問題である事は間違いがない。
アタッチメントの弾けたガンダムのシールドが、アリーの眼前で砂地に落ちた。
「中の坊主まで無事じゃあねえだろ……そのままプラズマに焼かれちまいなあ!」
刹那は、"エクシア"のコクピットにまで侵入した電磁スパークが
自分のパイロットスーツを焦がす臭いをかいでいた。
「ゥアアア――! ガ……ガンダム――!」
外部からの熱は遮断出来ても、プラズマフィールドによる電子的ダメージは
防ぎきれない。高度なシールドを施された機器の端々から蒼い火花が立ち上り、
エクシアと同じ色のスーツに黒々と焦げ目を付けていた。
――俺は、此処で終わるのか?
エクシアの中で、歪んだ世界の、何も無い砂漠で、何にもなれないまま死ぬのか。
――嫌だ!
コクピットに乱舞するスパークは、パイロットスーツそも貫き、中の刹那を
揺り動かす。狂ったプラズマの狂った信号が筋肉を収縮させ、刹那は自分の背筋が
軋ませる背骨の悲鳴を聞いた。
刹那は、気絶寸前の思いつきによってコクピットを潜水モードに移行させた。
コクピットに酸素とヘリウム混合の高圧気体が充満して電気抵抗が増し、
僅かにスパークが収まる。
――どうする!?
アレルヤ、ティエリア、ロックオン……もはや増援も救助も無い。
刹那に残されたのはエクシアだけだ。
そのエクシアも、太陽炉から発生するGN粒子によって機体を維持して居るとはいえ、
高周波の影響によって発狂した関節各部のモーターは、刹那の操作を受け付けない。
2/
「く……この近距離、右腕だけでも動けば――」
もう少し、GN粒子の散布濃度を上げる事が出来れば、モーターの潤滑オイルに
溶解しているナノマシン群が、その機能を数秒で回復させるだろう。
「――! そうか……だがそれでは」
GN粒子、右腕のブレイド。
「ためらっている暇は無い……エクシア! 左サイド散布装置を停止!
機体右サイドに余剰出力全てでGN粒子を最大散布!」
即座に、エクシアのコンピュータはパイロットの状態が危険となる予測を告げる。
「構わない! プライオリティは俺にある!」
音声で告げる刹那の目には、壮絶な覚悟の色が灯っていた。
「お……? ようやく効き始めたかあ?」
アグリッサのアリーは、組み敷いたガンダムが、その左半身からプラズマに包まれて行く
死に様を確認し、ほくそ笑んだ。
「うあ……あああああああああああ――! エ……クシ……――アァ……!」
左サイドの散布装置を止めた瞬間、コクピットの左から大量の熱が侵入を果たした。
分厚いコクピット前面の装甲が焼け爛れ、ディスプレイが融解する。パイロットシートが
緊急機能として冷却剤を撒き散らして刹那の蒸発を防ぐが、荒れ狂う電磁波によって
刹那の両眼は瞬時に内部の結晶体が白濁し、視界の全てを塞がれた。
当たり前だ。機体全身を覆う攻撃から一部分だけを完全に守るのなら、
中央に位置する――最も守らなければならない――コクピットまでプラズマが
侵入し始める事位、刹那にも予想がついていたのだ。
叫ぶ刹那の口腔が乾き、粘膜がひび割れる。パイロットスーツの排気排熱機能が
オーバーロードを見せて停止寸前の時……念願の数秒間が過ぎ去った。
「い……け――!」
溶けてべたつくスティックを握る。パイロットを傷つけながら機能修復をしていた
右腕は、全霊を込めた刹那の操縦に応え、装着されたブレイドを、頭上に鎮座する
蜘蛛のような巨大MAへと向けて、ついに跳ね上げた。
3/
蜘蛛の腹は柔く、脆いものと相場が決まっている。地に伏せて腕の端から
蒸発を始めていたガンダムの、予想外の一撃を躱す事も出来ずに喰らったアグリッサは、
最後の機能と、最後から二番目の機能を順次実行した。
「何だと……!」
即ち、上部のMSイナクトを切り離し、機密保持の為に自爆を行ったのである。
「あの状態から反撃できるとはなァ……予想外にタフじゃねえかよおい、ガンダム?」
立ち上る炎と粉塵の中から、砂の大地を踏みしめて立ち上がるガンダムの姿は、
これまで世界中のあらゆるメディアが取り上げてきた、神々しさも力強さも
感じる事の出来ない、傷だらけで弱弱しく、今にも崩れ落ちそうな。
しかしそれは戦士の立ち姿だった。
「ようやくらしくなってきたぜ……ガンダムの坊主よお……!」
アグリッサの自爆で、射撃武器を取り落としたイナクトだ、ガンダムを仕留めるのに
使える武器は手持ちのサーベル程度しかない。
知り尽くしたパイロットの太刀筋に油断は無いが、焦る必要もなく、アリーは
ガンダムの左半身を攻めるように旋回、サーベルを振りかぶって加速した。
「真っ二つになりな……ガンダム!」
塞がれた視界は、残された四感覚の世界に刹那を置き去りにしていた。
否、感覚はもう一つ。刹那は右を守る為犠牲にしたエクシアの左半身に、
ひしひしとした殺気を感じている。
首筋にチクリとした感触は、治療用ナノマシンを注ぎ込むパイロットスーツの優しさ。
弱った心拍を、胸のペースメーカーが補助して、刹那は今生きている。
「俺はまだ生きて居るんだ……だから俺はガンダムに――なる!」
タイミングを取る事など出来ない。
作戦は、一撃を受けて反撃する……たったそれだけ。ただ、触れたものを切る。
皮は既にくれてやった、だから肉など幾らでも切らせてやろう。
代わりに、貴様の骨を断ってやる。
攻撃箇所を限定させるべく、また少しでも敵の油断を誘うべく、更にもう一つの
意図を持って、刹那はエクシアの脚部動力を……切った。
4/
それは偶然にしても奇跡的なタイミングではあった。操縦席を狙ったアリーの刺撃は、
力なく膝をついたガンダムによって躱され、勢い余ったイナクトは制動も空しくたたらを踏む。
「なんの……生意気なァ!」
イナクトを一回転させて慣性を殺したアリーは、勢いそのままに横薙ぎの一撃を放つ、
がその斬撃は、"何時の間にかガンダムが持っていた"シールドと、半壊した左腕と、
溶解しかけた表面装甲によって防がれていた。
吹き飛ぶ前面装甲、露出した操縦席に細身の少年がアリーを睨むように、見つめるように、
無視するように、ガンダムの一部となって座っていた。
驚愕が本能に暴れ、理解が脳裏に点灯する。
「……あの時か!」
崩れ落ちる様にガンダムが地に伏せかけた瞬間、ガンダムは左腕を突き刺す様に、
アタッチメントの事など考えず、転がっていたシールドを持ち上げたのだ。
途端に揺さぶられるアリーの視界――それは、ガンダムが殆ど無傷の右腕を振るい、
イナクトの胴、コクピットの直下をなぎ払った衝撃だ。
スラスターの支えを失い、イナクトの半身が、アリーが、二十メートルの高さから
地に叩きつけられる。
「があ……ッ!」
衝撃に胸が詰まり、視界をガンダムの巨体が埋める。一体何時の間に攻守が入れ替わったのか、
アグリッサによる必勝の光景は、アリーにとって敗北の構図となってイナクトを砂に埋めている。
――殺される……か?
対応激甘のソレスタルなんちゃらといえど、ガンダムの坊主がアリーを見逃すとは思えない。
が、ノイズ交じりの画面に映るガンダムは残ったブレイドをイナクトに向ける事も無く、
それどころか一瞥をくれる事も無く、輝きの粒子を放って何処かへと飛び立った。
アリーは倒れ伏したイナクトのコクピットを抜け出し、地平線に消えて行くガンダムを
呆然と見送るのみだ。
「いったい、何が起きたってんだよ……?」
アリーの零した当然ともいえる孤独な疑問は、誰の耳に届く事も無く、
宵闇に冷え行く砂塵に吸い込まれて言った。
5/5
コクピットに収まる刹那は、半覚醒半睡眠のような状態で、勝手に動く
コントロールスティックを握っていた。それを離せば何処かに墜ちて行くのだとでも
言うような、必死の力だった。
エクシアによってイナクトを撃墜しながら、コクピットを打ち抜くことが無かったのは、
当然パイロットにその余裕が無かったからだ。
エクシアのコンピュータによる自動操縦が、太平洋上の合流ポイントまで刹那を
運んでくれるはずだ。
『ロックオンだ。生きてるか刹那……!』
通信、デュナメスから。
「ああ……、こちらエクシア。デュナメス何処に居るんだ?」
『刹那……?』
刹那のあまりに掠んだ声とエクシアの損傷具合、そしてすぐ背後を飛行している
デュナメスの位置を問うた事で、ロックオン=ストラトスは異常に気付いたようだ。
『ハロ、エクシアの操縦を補助してやれ……パイロットの目が見えてない!』
ハロ、ホジョ、ホジョ!
甲高い人口音声が通信機の向こうで聞えると、不安定だったエクシアの機動が
心なしか安定する。ロックオンの愛玩ロボット兼CBの備品であるハロを、
刹那は何個思考の裏で粉砕したのか勘定がつかないが、普段ならばデュナメスを
撃墜してでも拒否する"ハロにエクシアの操縦を任せる"という行為が、
いまは言葉に出来ない程在りがたい。
「助かる……あんたも逃げられたのか、ロックオン」
『喋るな、刹那。……相手のフラッグ隊に先走るのが一機居てな、そいつが陣形を
崩した隙に逃げ切る事が出来たんだ』
「ああ……単独行動は、危険だ」
『ようやく分かったか、この聞かん坊が……』
「アレルヤとティエリアは……?」
『…………』
沈黙と、今此処にヴァーチェ、キュリオスの姿がないことが、何よりの返答だった。
『基地に帰投したなら、直に両機の救出作戦がスメラギ嬢から発案されるはずだ。
それまではゆっくり休んでおけ』
「ああ……」
太陽炉の情報を外部に洩らすわけにはいかない。
潰された両眼の治療には何日掛かる? 救出作戦までに、マイスターはどうなる?
つかれきった刹那の思考に、数多の思考が泡と浮かび、そして消える。
『エクシアの損傷が大きい……索敵は俺とデュナメスでやるから刹那は寝てろ……ハロ』
ハロ、チュウシャ、チュウシャ。
矢張り何度聞いても気に障るハロの台詞と共に、首筋にチクリとして痛みが走り、
注入された薬液の影響で刹那は緩やかな眠りへと落ちて行った。
上五つ分、コテと鳥を忘れてました。
感想、批評、言いたい事が御座いましたら此処か、
まとめサイトからメールでどうぞ。
光さす場所は〜無くしたもの〜
冗談じゃない!
飛び起きると拳銃を握って弾槽を確認する。
白兵戦のありかたを私に教えこんだ彼は、もう当然起きているだろう。
そのまま逃げれば良い。と人は言うだろうか。だが心ならずとも此処の生活が気にいっていた。
そして子供たちには勿論罪は無い。
ベランダにたたずんでいるといつもの様にマグカップを両手に持って彼が来る。
私にコーヒーの良し悪しなど分かろう筈も無いのだが彼は感想をせがむ。
適当に批判めいた答えを返すと、何事かメモに書き付けて嬉しそうに子供の笑顔で笑う。
砂漠の虎の異名を取って、連合地上軍から恐れられていた男とは到底思えない。
どうやら最近は義手、義足とも馴染んできたようだ。
ベランダの外ではラクスさんが子供たちとともに遊んでいる。
ああしていると、とても先の戦争で艦隊指揮を取り、戦後もプラント政府と自軍兵士の処遇に
ついて直談判を有利に進めた才女には見えない。
それをただ黙って見守るキラくんもまた、フリーダムを駈って生きながら伝説になったパイロットだ。
彼の部屋の何も無いデスクの上には、『誰か』の写真がキレイに写真立てに入れて飾ってある。
私の部屋のデスクには写真の代わりに連合の士官用の帽子が二つ。
写真は数枚、持ってはいるのだが二人で写った写真など無いし、何故だか飾りたくは無かった。
ただ、でもむしろ、だからこそ。
コーヒーを入れてくれる彼とそれを批評する私の双方、居心地が良かったのだ。
お互い、デスクの上を片付ける気など無かったのだから……。
既に屋敷は包囲されてしまったらしい。彼の厳しい顔を見れば言葉は要らない。
子供たちをシェルターへ逃がすため、時間を稼がねばならない。
MSの駆動音らしきものまで聞こえる。ラクスさん一人の為ににここまでやるのは何故だ。
シェルターの入り口。銃を顔に近づけ周囲を警戒する。硝煙とガンオイルの香り。
戦いの臭い。何か大事なモノを破壊されていく、その手応え。
冗談ではない!
緊張で叫び出しそうになる。以前にありえない代償を払って学んだ事。
銃を構える。そう、私は。もう。
マグカップ、ベランダの手すり、子供達の笑顔、誰かの写真、二つの帽子……。
何かを失うわけにはいかないのだ。拳銃は過たず何人目かの賊を打ち倒した。
光さす安らぎの場所に近いのだと思った此処は、戦場と化し、
その戦いのニオイは、自由の翼を持つMSと大天使の名を持つ船、双方を目覚めさせる……。
lunatic love “the little toe”
小指からは赤い糸が伸びている。
私はそんな幻想を抱く程子供ではない。しかし、かつてはその様な幻想に憬れた事もあった。
憬れは憬れでしかなく、理想と現実は酷く乖離しているものだ。
例を上げれば月と宇宙。
闇夜に浮かぶ月は美しくて宝石の様だけれども、実際は荒涼とした世界。
宇宙は昔から夢を見がちな少年の夢の世界だけれども、実際は無音の死の世界。
事実は人の夢を儚く打ち砕く。人の夢と書いて儚いとはよく言ったものだ。
なんにせよ、現実を見つめるのが基本だ。
応用等を考えるよりもまずは基本をしっかりと押さえなければ次の段階に進む事は出来ない。
しかし、過去の残滓は今もなお残っている。
足の小指にひっそり目立たないと赤いペディキュアを塗っているのだ。
手の小指に赤いマニキュアを塗るのは軍人として憚られる事だと思う。
いや、今現在私が置かれている状況は切迫しているからその様な事をする余裕などはない。
副艦長として未だ不馴れであるラミアス艦長を補佐しなければならないのだ。
上に立つ人物には相応の節度が必要だと私は考える。下の人間は上の人間に影響されるものだ。
上に立つ人物のモラルがなければ艦内の風紀も乱れるだろう。
そうさせない為にもしっかりしなければならない。
だけれども、根を詰めているばかりでは精神が参ってしまう。
それを回避する為にも何処かで緩める必要がある。
私にとっては小指のペディキュアだ。
何かと理由付けをしなければペディキュア一つ濡れないのはある意味情けない事なのかも知れないけれども。
「お、お堅い少尉が機嫌が良いなんて珍しい」
フラガ大尉が囃立てる様な声を上げる。
私は顔を撫でる。確かに、今日はペディキュアが上手く塗れたから機嫌は悪くはないとは思う。
しかし、それを面に出していたのだろうか。
「……お戯れを。社交辞令として受け取っておきます」
私は静かに否定をする。過剰な対応をすれば泥沼に沈むだけだ。
特にフラガ大尉の様な人物に隙を見せれば隙が宇宙の広さ程に広げられてしまう。
「んー、深い意味はないんだげどな。まあ、挨拶の一つって事で」
私はいつもの様に敬礼をして背を向ける。
背中には彼の盛大な溜息を感じる。
彼にとっては私は処置なしなのだろう。
私にとっても彼は処置なしなのだからお互い様だ。
全く。勘が良いのだか悪いのだか。人の気持ちも知らずに……フラガの馬鹿。
お題「小指」投下終了。
424 :
通常の名無しさんの3倍:2008/02/02(土) 14:16:41 ID:fxGKqR5r
保守
職人のみなさん投下乙!
なんの、負けずに投下乙!
じゃなくて感想。真言さんと弐国さんの、乙女チックナタルとコンバットマリューが
それぞれとても魅力的だった。
>>キズナ
投下乙
そうは思っていたがやはりアンタは引き出しが多いな
但し多少説明くさい遠回しな表現はやり過ぎな気もする
わざとなのだろうけれども
>>もしも
投下乙
そのままいけそうな感じに見えてしまうあたり†テイスト全開
ロックオンのみが逃げ切っているあたりもそれっぽい
>>光
投下乙
一番普通でありながら、一番2chでの支持が得られない虎とマリューの微妙な関係をあえて書く
そしてマリューが特殊部隊に対抗出来た理由付けを一応説明するあたりアンタらしい
このシリーズ、フラガに逢うまで続けて欲しい
毎回同じパターンで、というのも何かの実験か?
悪くはないと思う
>>lunatic
投下乙
勘の良いフラガと、何もバレていないのに照れるナタル
直接そう書かないのがアンタらしい
ところでlunatic loveなネタではないようにも思えるが……
#3 騒がしい登校
time is money.時は金なり。
寸暇を惜しんでいたらあっと言う間にお爺ちゃん。
少年老い易く学なり難しだ。
右見て左みて左右を確認。車が来ないなら赤信号なんて若人の障害になんてならない。
深呼吸をして呼吸を整える。無酸素運動で突き進む。一歩足を踏み出せば後は破竹の勢いで駆け抜けるのみ。
しかし、俺の行く手を妨げる様に甲高い耳障りなクラクションが響く。
トラックが俺に向かって突き進んで来たのだ。
巨大で圧倒的な存在感。鋼鉄の躯体が俺を蹂躙しようとしている。
頭部への血液の流れが阻害される。酸素の欠乏は人の意思を混濁させる。
そして、世界の暗転。リアルに感じる原始の恐怖。
――死死死死死死死死死死死――
「なに寝ぼけてるのよ。赤信号で渡ったら駄目でしょ?」 死を覚悟した俺の意識を誰かの声が引き止めた。
物凄い力に引っ張られた俺は歩道へと引き戻される。
轟音を立てながらトラックが目の前を通り過ぎて行く。窓を開けたドライバーのあんちゃんが俺に罵声を浴びせている。
息を吐き出すと自分が生きているという事が実感できた。 安心、安堵。
だけど震えは止まらず足がガクガクとしている。おまけに腰がストンと抜けている。 地べたに座り込んだまま立てない。
パンツが濡れていないのは僥倖だ。
「アンタが馬鹿なのは知っていたけど……かなりの重症だとは思わなかったわ」
声の主はルナマリアだ。俺に冷ややかな視線を向けながら溜め息をついている。
察するにルナマリアが俺を助けてくれたみたいだ。
だけど馬鹿と言われるのは些か腹立たしい。馬鹿と言う奴が馬鹿なのだ。
人に馬鹿馬鹿言う奴にはお礼なんてしたくない。
パンッ!
俺は手を叩き乾いた音を響かせる。
「……なにやってんの、アンタ」
ルナは俺を訝しげに見ている。彼女には俺の行動を理解できないらしい。
「溜め息を吐くと幸せが逃げる。逃げた幸せを捕まえてやったからこれでおあいこだ。お礼はしない」
エヘンと胸を張る俺。
更に盛大な溜め息を吐くルナマリア。
二人の視線が複雑に絡み合い火花を散らせて閃光花火みたいにポトリと落ちた。
「重症を通り越してるわね。逃げた幸せはアンタにあげるから馬鹿を直すのに使って」
彼女は処置無しと言った感じで俺に背を向ける。
彼女はいつの間にか青信号になった横断歩道をスタスタ進んで行く。
「おい、無視するなよ!」
俺は四肢に力を入れて立ち上がる。
イギリスの劇作家オリバー・ゴールドスミスの最大の栄光は倒れても立ち上がった事らしい。
だからと言う訳でも無いけど、俺は倒れようが何度も立ち上がって前に進みたい。
諦めなければきっと最後には明るい未来が待っている筈なのだ。
俺は彼女の背中を追いかけた。彼女との距離は近くて遠い。今日のルナはいつもとは様子が違う。
何故だか分からないけれどピリピリと張り詰めている感じだ。近寄りがたいオーラを飛ばしている。
触らぬ神に祟りなし、だ。
歩く事しばし。学校が近付いて道行く生徒の姿がチラホラ増える。まだ時間には余裕があるから皆歩いている。
校門を過ぎるとルナはビクンと立ち止まり俺に振り向く。
「……シン。最近は物騒だから夜に出歩かない方が良いわよ?」
その一言だけ告げると彼女は何もなかった様に歩いて行く。
夜物騒ならば出歩いたら危険なのは女の子であるルナの方だ。喉まで上がって来た言葉が止まった。
学校に足を踏み入れた瞬間に違和感を感じたからだ。
なんと言えば良いのか。上手く言葉には出来ないけれども確かに感じる。
眩暈がして力を抜かれる様な感覚。貧血みたいな感じとでも言えば良いのだろうか。
ひょっとしたら鉄分不足なのかも知れない。夕飯のメニューはレバニラ炒めにしよう。
「オース、シン。昨日のアレ見たか?」
声の主はヨウランだ。隣りにはどんよりとしたオーラを漂わせているヴィーノがいる。
「昨日のアレか? 見たぜ。アレは凄かったな!」
アレとは深夜にやっているちょっぴりアレな感じのTV番組だ。ちなみにアレを言葉にするのはちょっと憚られる。「……シン、ビデオに録っていたら貸してくれ!」
ヴィーノは悲壮感を漂わせながら俺に懇願する。しかし、俺は残念な事にビデオには録っていない。
ナタル姉に見つかったら最後、どんな過酷な運命を辿るのかを予想は出来ないからだ。
「悪い、ビデオは録っていない。他を当たってくれ。……アーサー先生とか」
一縷の希望を絶たれたヴィーノはがっくりと肩を落とし背中を丸めてあらぬ方へとトボトボ歩いて行く。
まあ、そんなこんなで玄関に行き靴を履き替え教室に向かう。
校内はひんやりとしている。冬だから空気が冷たいのは当然なのだけれど、理由はそれだけではないような気もする。
そのせいか、いつもの様に校内に活気がない。いつもならもって騒がしい筈なのに騒がしくない。
ひょっとしたらさっき感じた違和感に関わりがあるのかも知れない。
有り得ない事だけど、何故か二つの事項に関連が在りそうな気がする。
多分、考え過ぎなのだろうけれど。
でも気になる。ルナマリアの言葉、感じた違和感、活気のない学校。
どんなに考えても点は線で繋がらない。繋げられたらミステリー作家になれるかも知れない。
つまり、俺には無理。
無駄な事を考えるのはやめて教室に向かおう。
「きゃあぁぁぁーーっ!」
階段の上から絹を切り裂く様なうら若き乙女の声が響く。
慌てて上を見ると何かが否、ルナマリアが落ちて来た!
どうする、俺!?
A.やっぱり男として助ける。
B.やっぱり怖いから逃げる。
せっかくだから、俺はCを選ぶぜ!
部屋で読んでいたら姉が横から「なに……2ちゃん?」だと。
姉短編のページじゃなくて本当に良かった。2ちゃん閲覧シーンを見られたにも
関わらず安心してしまった。
墜ちてきたのが姉だったらと考えると、見捨てた場合後が怖いのでAの助ける。
1/ 一人の海
――茶番だ。
身に注ぐ太陽の光も、潮の香りを運ぶ海風も、それらはきっと何らかの激情と興奮をもって
感じ入るべきものなのであろうけれど、今のソーマにとっては人形劇の舞台道具のように、
薄っぺらくわざとらしい、誇張された代物にしか見えなかった。
『楽しめ』と、そう言われて放り出された南半球の小島ある。
水面にへばりついて見えるほど遠ざかった砂浜。髪を伝って唇に辿りついた海水は、
塩の味がする。海面から出した顔に、日差しを遮ったボートの陰が掛かった。
「スケジュールに無い動きをされては困りますな、ピーリス少尉」
「……海で泳ぐ事が、そんなに悪いことなのでありましょうか?
今は私の……私的な時間のはずでありますが……」
「ええ、我々の提出した予定通りに休暇を楽しんでいただく。
それが貴方の、超兵一号としてのプライベートです」
一号――その名は久しぶりに呼ばれたものだ。
CBの襲撃で超兵機関の存在が公になった今、彼女の処遇が注目を集めざるを得ない。
それは例えば、彼女に休暇が与えられているかどうかという、ほんの瑣末事に及ぶ。
かくして彼女は、自由気ままに過ごせたロシアの基地から追い出され、
地球を半周した島の狭苦しい浜辺に閉じ込められてしまった。
目に付き刺さる日差しに、灰色の髪を書き上げ顔をしかめる。自由に振舞えと、
そういう屈辱的な不自由さが、今の彼女を縛る全てだ。
許されたものを計ろうと、三キロ程抜き手を切ってみると、血相を変えた憲兵が
こうして船を寄越すといった次第で、ソーマとしても段々に機嫌が悪くなってくる。
「……貴官も暇なのですありますか?」
「少尉が大人しく浜辺で過ごしていただければ、自分も暇になるでしょう。
いいえ、少なくともこうして少尉の前に姿を現す事はなくなるはずです」
「山の方に隠れているつもりなのでしょうが、視線が気になって仕方が無いのです。
よって浜では落ち着けません」
憲兵は無表情の上に、気まずそうなしわを浮かべて答えた。
「む……護衛のメンバーには、少尉から距離をおくよう伝えておきましょう」
憲兵の言う護衛という言い方に、それを表情に出すでもないが、おかしさを感じる。
彼らが防ぎうる程度の脅威で、"どうにかなる"ソーマではない。
「それから、私の上空に監視衛星がずっとあるのが――」
「それは失礼ながら、見える少尉が悪いとしか言い様がありませんな」
そういい残すと、憲兵はボートを泳がせて去った。
ソーマに付っきりでいても、浜辺までボートに乗せるという選択肢は無いらしい。
腫れ物扱いも理解できなくはない。が、出来るならばセルゲイ中佐に
付いて来て欲しかったのは、ソーマなりのわがままだろうか。
中佐殿ならば――ロシアの荒熊が水着姿をしているのは想像もつかないが――
帰るべき時間だけを定めて、行動には何も言をつけずにいてくれるはずだ。
喉に粘りつく密度の濃い大気も、体を圧す波の飛沫も、彼女の周りに連なっている
命の有様は濃密で密接なのに、三方を海に囲まれた浜辺で、ソーマはどうしようもなく
一人だった。
「セルゲイ中佐……」
一人きりの際に誰かの名を呼ばう事等が、彼女にとって始めてのことだった。
次の日、余計に疲れた風で基地に帰投したソーマを出迎えたセルゲイ中佐は、
部下の髪をみて不思議な顔をしていた。海水に浸かった髪が、元々の色素が薄かった所を
更に脱色され、灰色を通り越して白髪並みになっていた為だ。
白髪染めの存在を教えて貰ったソーマは、それよりも先ず手鏡の重要性に気付いたのだが、
それはまあ、余談の類である。
OO短編にしてお題『海』投下完了。
2/静かの海
紙やすりをこすり合わせたような、空気の抜けて行く圧搾音が段々と小さく、
やがて無くなって機密ハッチが開くと、そこは砂の広がる月の平野だった。
空気の揺らぎを失って、鮮やかに明暗の分かれた光景、それに言葉を奪われた
"一号"はしかし、六分の一になった自分を持ち上げて四角く開いたハッチを潜る。
靴底の感触が金属から砂粒のそれに変わり、"一号"は命綱すらもないままに、
真空の月へと最初の一歩を踏み出した。
吐息の当たって白く曇るヘルメットに、空気と水と、電力の残量が、反射した
超兵一号の顔に重なって表示されている。その量には不足も、余裕も無い事を確認した
超兵の背後で、彼女を乗せていた連絡艇が白い砂を舞い上げて音も無いままに上昇し、
消え行きそうな照明だけをのこして明後日の方へ去って行く。
あらかじめ指定された座標へ、空気の尽きぬように歩かねば彼女は息を詰めて死に、
電力のなくなる前にたどり着かねば昼の月の事だ、太陽に焼かれ死ぬだろう。
彼女の置かれているのは、そういう内容の訓練にして試験だった。
振り向く事のなく一歩と、そして次の一歩を踏み出す。最初の脚は左足だと、
誰から言われる事も無く決めていた。その通りに体が動く……そして息を吸って吐く。
彼女に許されたその全てで、生きている瞬間を実感し、そしてこみ上げる誇らしさを
胸に止めて、緩やかに放物線を描く歩みを始めた。
長時間作業用の大気圧宇宙服は、1G重力下では"一号"を床に這わせる重さがあったが、
重量が六分の一になる月面ではさしたる苦も無く超兵の体に付いて来る。
体重が無くなるわけではない。宇宙服の重みも含めて、一歩毎に衝撃が足首を痛めて行く。
その痛みと息苦しさを唯一無二の友人として、伴って歩かねばならない。
足跡は点々と、月面の細かな砂地に刻まれてなだらかな起伏を明確にしていた。
"一号"を追って来るものは、長く伸びた彼女の影だけだ。背後に沈みかけの太陽が
生命維持キットを暖めている。
誰の悪戯なのだろう? 旧い『アメリカ合衆国』の国旗が、彼女の行く手の傍らに
突き立てられ、星条の模様が力なく、月の弱弱しい重力に垂れ下がっている。
酸素よりも電力に余裕がない。星条旗に向けて誰かの残した足跡を踏みつけ横切り、
"一号"は目的の座標へと急いだ。
月の地平線に、沈んでいきそうに見える地球からは、線の細くなった
三日月が見えている頃だろう。
何時間が経っただろうか。
十数分おきに軽く水分を摂る。相手が無ければ口を開く事のない"一号"だった。
歩く。
そして考える。
それ以外が出来ない……その余裕が無い。
だというのに彼女は、全てから解き放たれたような自由を感じていた。
――許されている!
今、"一号"に定められているのは輸送船の待つ座標だけだ。
それ以外の何物も彼女を縛らない。彼女を制限しない。やれば死ぬというだけで、
踊ろうと歌おうと、今この瞬間だけはなにをしようとも"一号"の自由だった。
――この自由があるならば……死んでも良い?
自問し。
――嫌。
自答しする。
酸素も電力も、残量の目盛りが目に見えて減っている。体中に溜まった疲労が今すぐ
この場にうずくまり、時の過ぎるのを待てと訴えている。
止まる事すら自由。血中に溶解したナノマシンの群れも当然、無酸素状態で
"一号"を生かさない……命が惜しくなければ、疲れに抗って歩き続ける必要は無い。
だから、歩く。生きていたい……命が惜しいから止まらない。
生きていたいと思う自由を、思うがまま、傍若無人に、奔放に行使する。
これ以上があるだろうかという"一号"の贅沢。
だけれど、それ以上をもし許されるのなら。
"一号"は、地平線になお沈まず昇らず、相変わらずそこにあり続ける蒼い星に見入る。
――同胞たちと一緒に、あの海で自由を許されたい。
それが許されたなら――もしもそうして良いと言われたなら……
尽きる事のない空気が吹き渡って来るのを、思う存分胸いっぱいに吸い込みたい。
大地の七割を覆う水に――それを同胞たちと分け合う必要のないのは不思議だが――
体中を浸して、生き物で溢れた海に潜ってみたい。
鉛で遮蔽せずに浴びても精々肌を焼く程度の太陽に身をさらし、朝日の昇って夕日が
沈むのを見たい。
決して崩れる事の無い大地に彼らと共に身を横たえ、果ての無い天空で星が燦めくのを
飽くことなく眺めたい。肌を撫でる夜風は彼女を凍えさせたりしないだろうから。
その蒼さに心引かれるようにして歩き続けてきたような、そんな狂わしい錯覚に陥り、
"一号"は頭を振っ歩みを止めた。酸素と電力の残量は殆どゼロ。いつの間にか
視界の端にあった連絡艇が段々と大きく、今ははっきりと輪郭を露にしている。
側壁に開いた小さな観測窓から、同胞の誰かが覗いている。確かめずにも、
彼らが笑顔を浮かべて居るような気がした。
彼らと海に行く事をもし許されたなら。そんな事を考える事が出来る事自体――
余りに自由で、贅沢だった。
それだけで、良かった。
というわけで、お題『海』 その2投下終了。
感想、批評、自由にどうぞ。
過疎だなあ。
Aで。
保守っ得
0/
――成層圏
不動の大地と無限の天蓋――隣合いながら隔てられた二つを結ぶ薄い大気の層、
境目の世界を上昇しながら、ユニウス7に巻き起こる戦の火を見る者達が居た。
「数を目算でカウント……予想、MS二十機」
「ありゃあ……ビームライフルの閃光だな」
複座型ムラサメの前席で操縦桿を握るミゾグチ一尉と、オペレイティング機器を
増設した後席に収まるキラ=ヤマト三尉である。
「速度上げて下さい……ミゾグチ一尉」
「そいつは構わねえが、帰りのエネルギーが厳しくなるんじゃないか?」
バッテリーを増設してはいても、所詮元が通常機であるムラサメだ。
大気圏を突破した後に長々と飛行できる能力は無い。
大気圏再突入後の戦闘を可能にする戦略級プロペラントタンクは、
地球連合との条約によって生産出来ない取り決められていた。
「それを込みで、お願いしますよ」
キラは真顔だ。
「墜落覚悟か、良いんじゃねえか? 増速だ、三尉。ユーコピー?」
「アイコピー。そろそろ本土からミサイルが上がってきてますよ。
下方四時の赤い噴煙です」
キラが示すと、ミゾグチが口笛で感心を示した。
「随分でかいな……」
モビルスーツがまるごと収まりそうな、軌道キャリアーに近いものだ。
「……だがそれでもよ、"プラント"を吹っ飛ばすには力不足じゃないのか?」
「威力は保証しますから、安心して下さい。プラントを打ち返してホームラン……とは
行きませんが、かなり砕く事は出来る筈です。最低で構造の七パーセント……だったかな?
コントロールは自分がしますから、一尉はその間のムラサメ制御をお願いします」
「やっぱしそのための複座と調整か……どうしておじさんに頼むかねえ?」
大気圏落下直前のユニウス7に接近すれば、滝のようなデブリが機体に降り注いでくる。
キラがミゾグチに頼んでいるのは、土砂降りの雨の中を傘をささずに濡れずに走れという、
ミッション=インポッシブルの類である。
「自動回避プログラムをいくつか組んだんですよ、でもやっぱり上手くいかなかったので、
これは一尉の勘と経験を借りるしかないなあ、と」
「よりにもよってそんなとこを丸投げかよ、人の扱いが大分上達したなあ三尉。
つってもおじさんの経験は負けの経験だぜ? 何回撃墜されたと思ってるんだ」
だからこそですよと、キラは撃墜されてなお自分の身を守り続けたミゾグチの、
ぎりぎりの勘所に期待を寄せる。
「これが終わったら、僕のおごりで"楽園"です。老体に鞭打って頑張って下さい」
「ま……若造が洩らさねえように、ほどほどでな」
そんな、軽口を叩き合いながら。
一尉と三尉の乗るムラサメは、僅かに上昇角を上向けて、ようやくにして
ユニウス7をその視界に収めていった。
SEED『†』 第十三話 世界の壊れた日
1/
巨大なスラスターパックを背負う赤いモビルスーツが、オレンジ色の
MA――ではなく、戦闘機の形態をとる可変モビルスーツたるムラサメに近づく。
『それでアレックス、私はこれからどうすれば良い!?』
『下がれ』
にべも無くそう言われたカガリ=ユラ=アスハは、モビルスーツの脚で
ムラサメを蹴り飛ばすようにモーションをとりながら、ぎりぎりで静止してのけた。
『わたしが足手まといか――!?』
『邪魔にならないよう下がれ。ど素人の代表がムラサメと行動するのは危ないんだ』
『敵が来たら結局同じことだろう、アレックス? 作戦が失敗しても、だ。
帰るところが無くなる。安全圏なんか何処にも無い!』
『しかしだ……な』
『それにしてもルージュは動かし難くなってないか、反応が鈍いぞ?』
『さっきの急制動はわざとじゃなかったのか! こんな事態が無ければ、
代表がソレを操縦するような"不祥事"とはおさらば出来る筈だったからな!』
『半分はわざとだったが……。なあアレックス、私が私のルージュに乗って、
どうしてそれが不祥事なんだ!?』
どうやら、一歩も退く気の無い様子だ。
前線の兵士としては士気の上がる振る舞いだが、側近は気が気でないだろう。
『私のルージュ――というのが問題なんだ!』
声を裏返す、アレックス=ディノ。
『代表が連合のデッドコピーなMSを丸ごと一機、個人で所有しているのがそもそも異常だ。
ストレスが溜まるたびに無断で乗り回したりするから、中将がわざわざ手を回して
ルージュを宇宙に送ったんだぞ!』
『はははッ! スズシロ中将の気遣いも裏目に出た訳か。オトメにも失敗があるわけだな!』
『……オトメってなんだ代表!?』
『ああ、知らないのか。"漢女"と書いてオトメだ』
先程から延々と垂れ流されている、オーブ代表とその側近との通信、会話を逐一聞いているのは
ミネルバの艦橋クルーだ。二人きりのつもりなのにアレックス、代表で呼び合うのは果たして、
場をわきまえて居るのかいないのか。
――相当恥ずかしいですけれど、声をかけますか?
――放っておきなさい。生き残ったなら、後世の語り草よ。
メイリン、タリア間にアイコンタクトが成立したので、黙って拝聴するクルー。
こんな人数に聞えているとばれたら、二人して大気圏に身を投げかねない。
2/
呆れて半笑いの、どうしようもない雰囲気が広がっていたのだが――
『と言っている間に、ユニウス7まで着いてしまうぞアレックス!』
『しまった……!』
『痴話げんかもいい加減にせんか、貴様ら!』
誰もが言いたくていえなかったことを、イザーク=ジュールが言ってくれたようだ。
『な……イザーク!?』
『先刻から通信が筒抜けのまる聞えだぞアス……アレックス=ディノ!
この先について来るなら来るで、上司の意見ぐらいまとめてから来い!』
『あ……すまなかったなジュール隊長。オーブの代表として――』
『もう下がれとは言わん、代表以外は身を呈してでもメテオブレイカーを守れ……死守だ!』
ヴォルテール隊イザーク=ジュール、オーブ代表を無視して話を進める事にしたようだ。
タリア=グラディスは後にこれを"勇気あるネグレクト"と評した。
――ユニウス7近傍宙域
「――まどろっこしい」
と感じたイザークは、ひょんなことから僚機となったオーブの新鋭機相手に
直接通信回線を繋いだ。よくよく可変MSに縁の在る男だと思いつつだ。
ユニウス7まであと十秒程度。
『……どうしたイザーク?』
SOUND ONLY表示の向こうでアレックス――いや、アスランは、
あの何時も奥歯に物が挟まりっぱなしのような困った表情を浮かべて居るのか?
ニコルか、少なくともディアッカが居れば、と思わずにいられないのは、
きっとイザークの甘さゆえだ。シホだと逆効果だ、絶対話がこじれる。
だが、緩衝をしてくれる友人が居なくとも、きつい事実は述べねばならない。
「この事件……首謀者は反ナチュラル――ザラ派のテロリストだ」
『……そうか』
アスランの事だ。ヴォルテールとミネルバの対応が後手に回ってしまった
理由ですら、今の情報によって分かってしまっただろう。
ザラとジュール――その名が残した暗い精神的遺産がこのユニウス7を覆い、
ミネルバとヴォルテールの目を潰してしまったのだ。
「敵がザラの意志だと叫ぶかもしれん、だが気負うなよアスラン。
俺たちは地球壊滅の愚行を止める側だ」
それだけを告げて通信を切る。眼前の大地がみるみる大きくなり、
網膜の半分をユニウス7の偉容が支配するに至った。
今は気分が沈むだろうが、戦闘中にいきなり混乱されるよりは遥かにマシだ。
自分の能力の限りに責任を背負い込もうとするアスランの事、余裕の無い時に
少し突けば、空気を入れすぎた風船の如く破裂する。
アスランはもっとシンプルに割り切るべきなのだ。だというのに、目にした者を
力の限りに助けようとするその生き方が、アスラン本人の傷を拡げ続けている。
3/
――気負うなよ。
コクピットに一枚の写真、まだ傷の無いイザークが数人の仲間と共に映っている。
ラスティ、ミゲル、ニコル……写真のメンバーがこれ以上経るのは御免だった。
女と一緒に地球に降りているディアッカ……上手く生き残ってくれればいいが、
イザークは希望的観測を抜きにして、既に破砕は失敗だと判断している。
どの辺りにいるのだったか――イザークはせめて直撃が無い様にと、モニタの
地球にディアッカの住んでいるらしいユーラシア地域を探した。
「――ん?」
と、視界の端に違和感を感じた。丸みを帯びた地球の淵をなぞるように、
明らかなプラズマジェットの輝きが見える。
――大気圏脱出……地球を見捨てて逃げる気か?
遠すぎて識別が聞かないが、それはロケットか何かか。ユニウス7を狙う
対宙ロケットか何かにも見える。
「まあいい、火薬程度で……いや、核であっても表面を焦がすだけだ」
何が来ようとも、そう簡単にプラントの岩盤部分は破壊できないのだ。
爆発の衝撃が逃げないよう、構造体の深くでエネルギーを解放させねばならない。
モニターに新たな通信表示、「SOUND ONLY」。
イザークのザクはようやく、作業隊との通信が繋がる位置まで来ていた。
『イザーク隊長……申し訳ありません』
「シホか……!」
副官の、シホの声がする。その響きから咄嗟にイザークは状況を悟った。
「メテオブレイカーはまだ無事なのだな!?」
『はい……しかし相当の人員がやられました』
直径八キロの岩塊が接近し、其処にぽつぽつと突き立てられたメテオブレイカーに
数機のゲイツが取り付いている。
成る程、死守である。
作業用装備だった為に、突如として出現したテロリスト達のジンに成す術も無く
蹂躙されたゲイツのあるいは膝をつき、あるいは屍を晒している。
ぎりいッ――! メットの中で歯ぎしりの音が響き、口中を切った血が唇の端から滴る。
死守の命令を下したのはイザークだ。
その中で戦斧を振るってジンを追い散らしながら時折、思い出したビームを光らせる
一機のザクが居た。未だ鏡面的な滑らかさを見せるその肩には一輪の花が咲いている。
しかしその花を見ずとも、イザークには動きだけでパイロットが分かった。
栄えあるザフトレッドにしてヴォルテール隊副隊長、シホ=ハーネンフースだ。
4/
「よくぞ守った! 撃ち尽くして下がれぇ!」
脚部に被弾、シールド損失――ザクの損傷も激しいと見るや、即座に撤退を指示する。
『はい……ッ!』
隊長の命令を予期していたのか、副官は迅速を以ってその旨に従う。
囮となる為にあえて敵中に飛び込み、果敢な接近戦を挑んでいたザクがイザークと
交代するよう一足飛びに上昇して退くと、手にしたトマホークを捨て去り、
両手にビームライフルを持ち替える。
「やれぇ……!」
退くシホか、飛び込むイザークか。テロリスト達のジンが狙いを定める前に、
ブレイズザクが息も付かせぬ連射を行う。全方位に撒き散らされるビームの
一条一条が、それぞれにジンを捕らえ、喰らいつき、空に咲く焔の花となる。
イザークは、残存電力を考えないその思い切りに満足した。
爪紅の花が種子を弾いて飛ばすが如く、次々とターゲットを切り替える連続射撃。
中距離における対多戦闘で本領を発揮する、これこそが宇宙に咲き乱れる鳳仙花、
シホ=ハーネンフースの真骨頂である。
「手負いを連れてヴォルテールに戻れ、操艦任せる!」
『残弾尽きました……退きます! それから隊長、二時の方向、
東ブロックの作業区域に9ザクが居ます』
「核ザクか……さっきの電磁妨害だな!」
『ミネルバの後輩達が粘ってますが、もう持ちません!』
「よし、そっちは任せろ!」
『お願いします……御武運を!』
シホの撤退を確認し、イザークはムラサメを伴って移動を始めた。伏兵を警戒して、
カガリ=ユラ=アスハの"ルージュ"をザクとムラサメで挟むように低空で移動する。
「東ブロックか……遅れずについて来いよアスラン!」
『今はアレックスだ。それに核ザクだと……どこから来た敵だ!?』
無言のルージュをつれているアスランの声音に、かすかな色の困惑が混じる。
「ユニウス条約で計画が頓挫、廃棄処分になったものを何者かが回収したのだろうな」
――全く、フリーダムといいジャスティスといい。
「どうしてザフト製の核駆動機体はザフトの敵に回るのだ!」
言ってしまいました。
『す……済まないなイザーク』
謝ってしまいました。
『全くですよ、アスラン=ザラ。裏切らなかったのはクルーゼのプロヴィデンスだけ、
という事実を重んじ、裏切り者たる自分の立場を理解しているのなら、後は清く正しく
美しい我々のイザーク=ジュール隊長に任せて早々にこの場を――』
横合いから更に傷口を抉るシホ。弱っている相手には容赦が無い赤服だった。
4/
『うちのアレックスをいじめないでくれ、シホ=ハーネンフース』
オーブの姫様が、通信に割り込んでくる。
『ザフトにいじめはありません!』
「ああ、シホ、お前は黙って下がれ」
話をこじれさせる事に関しては、一級の才能を持つ副官だった。
――全く、コーディネイトにどこか問題でもあったんじゃないのか?
公の場で口にすると訴えられるような事を考えてしまった。
「親の顔が見て見たいものだな……」
『はい――! これが終わったらすぐ、うちの親の所まで挨拶に行きましょう!』
『イザーク……そんな関係だったのか。気付かなくてすまない』
「黙れアス……じゃなくてアレックス=ディノ! シホもだ、これは命令だ!」
『……了解です、隊長』
奥歯に何かが挟まってでもいるようなシホの物言いは、言い足りない所があるせいだろう。
放っておけば一時間でも一週間でもアスランをなじっていられるだろうが、イザークとしては
全く避けたい事態だった。
テロリストの乱入によって、極端に人手が減ってしまったユニウス7である。
「今の状況は姫の手でも借りたいほどなのだぞ……」
『私を呼んだか……?』
「ああ、呼んだとも」
通信に入り込んで来る"姫様"ことカガリに対し、イザークが精々苦々しげに聞える口調で
そう吐き捨てると、あくまでカガリの随員であるアスランは気が気でなくなったのだろう、
『おい、イザーク!』
と、語気を強めて窘めようとした。
アスランは慣れたのだろうが、イザークにとっては大戦時に幾度も合間見えた
難敵の姿が重なる"ルージュ"の姿なのだ。少し平静で居られないのも無理はない。
「俺の指揮下に入ってもらう……MSパイロットとして来たのならば、な。
この場で客人をもてなす暇は――無い!」
『――代表!』
ビーム、然も二条。ロックオンアラートの発生しなかったのは流れ弾ゆえだ。
瞬時に悟って回避したイザークとアスランの直感こそほめられるべきで、
回避に専念しているため背後に気の回らなかった二機のMSパイロット達が
責められる事は無い。
ビームの発射地点には、単眼と刺々しい肩アーマーの特徴的なモビルスーツが、
ゲイツのものらしきビームライフルを構えて立っている。
「あの鶏冠頭が9ザクだ! 実弾武装は通用しないと考えろ!」
『分かった――!』
「アスハ代表、退かないのならば上昇して囮となれ。弾に当たるなよ!」
『――そうか!』
5/
真紅の機体が素早く上昇し、可能な限りの高出力――指揮官用でもあるため
通信能力が高い――でユニウス7全域に呼びかける。
『こちらはオーブ首長国連合、カガリ=ユラ=アスハだ。現在プラント政府の
合意を得て、ザフトと協同してユニウス7の破砕作業に望んでいる!』
たちまち、大気圏に落下寸前の大地からビームとミサイルが立ち昇り、
大いに目立つ"ルージュ"の機体目掛けて殺到する。
『代表――!』
来ると分かっている攻撃に専念すれば、カガリの技量でも回避は難しくない。
比較的重たい"ルージュ"は意外な機動性でもって辛くも弾幕を回避する。
ユニウス7を壊そうとするもの、その上ナチュラルの代表ともなれば、
心情的にテロの実行者たちが無視できるはずも無く、さらに二機のジンが飛び出した。
『この場に留まる全ての勢力は、人種と所属する国家、信条に関わらず即座に
戦闘行為と、地球圏に対する破壊活動を停止し――!』
台詞の途中でジンに切りかかられ、慌ててビームサーベルを振りかぶる。
『停止――しないつもりか! だったら掛かって来い!』
挑発を飛ばしざまに、二機を相手の格闘戦にもつれ込む。
代表専用機だけあって過剰な改造を施された"ルージュ"は専用の戦闘補助CPUの
助けもあって、コーディネーター相手に数的優位を取られながら一歩も退かない。
ビームサーベルが実体剣と噛みあった――コーティングに弾かれた荷電粒子のスパークが迸り、
ジンと"ルージュ"がつばを当てて競り合う。その隙にもう一機が手持ちの無反動砲を構えた。
『――アスハ代表!』
直撃が赤い機体を揺らし、胴体に損傷はないものの――真紅の強力なPS装甲――兵装
ハードポイントに備えられていたライフルが破壊される。
その動き一つ一つはイザークに拙く映る、しかし囮としては及第点だ。
『大丈夫だ、アレックス。まだ……まだ大丈夫なんだ、だから!』
技量は劣るが気迫は互角――設計段階の出力差から、力比べではルージュに軍配が上がる。
スラスターを吹かして競り合っていたジンを、"ルージュ"は無理やりに蹴り飛ばし、
獅子の娘は精一杯の強がりを飛ばした。
「来るぞアスラン。9ザクの頭を抑えろ、代表に弾が当たらんようにな!」
『く……!』
9ザクはインパルス、そしてザクと、二機のザフトを相手にしていた。
――赤服の二人か。
「其処の赤いザク、そしてインパルス……状態はどうだ!?」
『二人とも大丈夫か――?』
『その声はイザーク隊長と、アレックスさんですか!?
ルナマリア=ホーク、メテオブレイカーと共に健在です』
『インパルスのシン=アスカです……そっちのムラサメがアレックスさんですね』
6/
――アスランめ、意外と人気だな。
前に出た赤いザクが比較的大きく損傷を受け、新型であるはずのインパルスが
やや下がり気味に、殆ど無傷の状態を保っている。イザークはインパルスの
特徴的な――その色合いがまたもやストライクに酷似していた――シルエットシステムに
目を止めて理解を得る。
「……そう言う事か。前にでるなよシン=アスカ、犬死にだけはよせ」
『はい……!』
こうしてこの場に現ザフトレッドと元ザフトレッド、合わせて四人が揃った。
MSパイロットのチームとしてみるならばこれ以上望むべくもないが、それでも
眼前の核MS相手には不安が残る。
9ザクは前面に二門のレールガンとゲイツの物らしきビームライフルを向けながらも、
周囲を見回して索敵の形を崩さない。戦闘しながら演説を続けるアスハを前にして、
冷静を失わないだけの器はあるようだ。
――あるいは、ユニウス7さえ墜ちてしまえばオーブなど関係がなくなる、か。
「俺が三時から詰める、お前は九時からだ、アスラン!」
一方的に指示を送って、イザークのザクとアスランのムラサメは左右に別れる。
イザークが右、アスランが左に回り、タイミングを合わせて挟撃を試みた。
ぎょろり、と9ザクの単眼が左右に振られ、ムラサメとザクの姿を確認する。
『雑兵が……何人来ようとも我々の怒りを止められはせん!』
憎悪と怨嗟の言葉が9ザクから発せられ、迸るビームが両機の機先を制した。
『何故分からんのだ、クラインの手先に与えられた平和は仮初めに過ぎないと、
ナチュラルを地球圏から一掃しない限りコーディネーターに平穏は訪れないと!』
ビームライフル冷却の合間をレールガンの斉射で埋めて、間断の無い攻撃が
浴びせかけられる。核に焼かれてガラス化していた支柱が、流れ弾の直撃を喰らって
浮き上がるようにプラントの大地から離れていった。
『我等コーディネーターはなぜ……どこまで堕落してしまったのだ!
偽りの平和に埋没し、ナチュラルとの融和を目指すなどとは!』
撃ちながら、誰かの声が流れてくる。
――予想通りの台詞だ。
イザークに興のさめる気配は合っても、決して驚きはなかった。
「これだけの破壊を仕掛けた理由が、ナチュラル憎しか……それだけの事なのか!」
怒りに任せ、抗い得ない暴力を思う様行使し、無辜の民衆までも巻き添えにする。
それが英知に溢れた存在であるはずの、コーディネーターのすることなのか。
怒りではなく、代わりにこみ上げる何かがあった。
アスランには気負うなと言ったが、真にその言葉を掛けられるべきは
自分であったかもしれないと、その感情に身を委ねつつあるイザークは思う。
7/
「やるぞアスラン。ミネルバの後輩共……こんなつまらん戦で死ぬなよ!」
大戦の最中、民間人を乗せた船をそうと知らずに落した。
地球に降り、NJによって全滅した都市を見た。
友軍ごと敵を焼き殺す、軍の暗部と醜態を味わった。
報復を叫び、無抵抗の捕虜を虐殺する友軍を止められなかった。
手にした核を嬉々として使うナチュラルの存在を知った。
創生と称してナチュラル絶滅を狙う光に目を焼かれた。
そして、墜ちて行きそうなユニウス7の上にイザークは立っている。
『我等の戦いがつまらんものだ……だと!? ナチュラルを討ち果たすこの一撃が!』
「ああ、そうだ……」
拳を振り上げながらでは、いかなる正義も聞くものがない。
どんな怒りも悲しみも、そして正義も理想も、手のひらに乗せては小さすぎて、
拳を握れば、只の濁った暴力に隠れてしまう。
ムラサメが構えて三放ったビームの光を、9ザクは二十の弾丸で返した――圧倒的な火力。
ムラサメが形態をMAに変えて光から逃れる。イザークはその隙を突いた。
スラッシュウィザードの戦斧にビームの刃を展開し、極超音速で迫る十二kgの弾頭を
右アーマーすれすれに躱して距離を詰める。やや遠い間合いから戦斧の柄の端を握っての、
機体ごと旋回するような一撃は当然下がって回避された。
『イザーク――避けるな……!』
だがイザークに合わせてムラサメが飛び出し、"ザクファントムごと"六門のCIWS
を全開で撃ち放す。半秒の射撃で百を越す弾丸の八割は9ザクの位相装甲に弾かれ、
また一割はザクファントムの装甲を削った。
『な……同士撃ちをするのか!』
下がる暇も無いので仕方ないが、ザクファントムの装甲ならば墜ちはしないとの判断だ。
PS装甲に覆われた9ザクはほぼ無傷、つまりムラサメの射撃は目くらましでしかなく――
「ああ、それで良い……!」
――コンビネーションの真打は、スラスターを噴射しながら回転を終えての、
"ファルクス"ビームアックスだ。大振りな弧を描いてビームの刃は9ザクを追い、
退いた機体のビームライフルを捕らえる。バッテリーが爆散し、フラッシュが当たりを照らした。
『我が娘の墓標を落して焼かねば……』
「だまらんか……このテロリストが!」
叫びながら、9ザクへと向かって続け様に戦斧を叩きつける。
核動力を背景にしているだけ、関節強度はザクを遥かに上回る敵。巨大な重量を
莫大で半無尽蔵な出力で駆動させる9ザクと押し合い、ザクファントムの関節が軋んだ。
8/
「娘と言ったな……親ならば、親だったのならばそれこそ、子供に誇れる戦いをしろ!」
振り上げた高周波ブレードによる斬撃が、戦斧を弾いて胸部装甲を深々と切り裂いた。
格闘戦は難しいが、下がれば火力で圧倒される――戦艦や核駆動MSが相手でこそ
接近戦を挑むのがモビルスーツの、そしてMSパイロットの戦い方だ。
「復讐に狂い、人の住まった大地を落し、死と破壊とを撒き散らす……!
貴様、今なら娘にどんな顔を向ける事が出来るのだ?」
ムラサメにビームライフルで狙われぬよう、9ザクが接近してきた。ビームライフルの
代わりに手に為た高周波ブレードで打ち太刀――イザークが受ける。
『お前のような若造に、娘を奪われた私の気持ちが分かるか!』
「貴様の娘の気持ちは分かる、そう言う事だ!」
再び鍔迫り合いへ入るかと思われた刹那、仕太刀の"ファルクス"が中ほどで折れる。
いいや、折れたのは背部に収納するための蝶番機構だ。これはイザークの作為。
予期したザクファントムは軽く下がり、手ごたえを得られなかった9ザクがたたらを踏む。
『むうッ……!』
一瞬、ザクファントムが左腕で9ザクの重量を支えるような格好になった。
「自分たち以外を憎んでいると言う。今まで築かれて来た世界に、これから先へ
続いて行く価値が無いという! そんな、そんな……!」
折った"ファルクス"のビーム発生機構を逆から握り、拳を突き出すように、
光纏った粒子のビームで9ザクの腹部を抉った。
――浅いか!
表面装甲は消し飛んだが、肝心のNJCに影響なし。破損した装甲をパージして
9ザクが下がる。
ナチュラル絶滅を目論んだザラ――ザラについた母。
尊敬した。正しいと信じた。
「そんな親達の背中を、子は! 後に続く者達はどうやって見習えばよいと言うのだ!」
『ぬう、そんな事で……そんな言葉で!』
そして、溜まらずザクファントムと距離を取った9ザクを目掛けて四条のビーム。
ムラサメの構えた"イカズチ"から迸るビームの一撃が、とうとう9ザクの腕を捕らえた。
肘の中ほどで焼断されたマニュピレイターが、高周波ブレードごと宙を舞う。
9/9
自分とルナマリアが手も足も出なかった9ザクを相手に攻勢に出て、
一歩も退かないどころか追い詰めて行く。
アレックスとイザークの戦いぶりを見つめるシンは、愛機インパルスの中で
その動きに見とれていた。
「すごい……あれがヤキンを生き残ったパイロットの……力」
性能の全く違うムラサメを僚機として、完全に連携をとってのけるイザークの技量、
それを操るアレックスの適応――アレックスはムラサメにのった事が無いはずだ――と
そして彼らの言葉に、傍らのルナマリアを忘れる程こころを奪われていた。
――せめてインパルスがフォースシルエットなら。
甘えた思考を振り払う。戦場でベストな状態など望むべくもないのに、
そんな事を考えてはいけない。
装備が万全ならばと贅沢な事を考え続けて、結局9ザクを相手に尻込みしてしまったシンは、
それが甘すぎた事を思い知らされている。
アレックス=ディノ、そしてイザーク=ジュールと自分。赤服を着てからの年月は
たかが数年の差があるに過ぎない筈だったが、彼らの持つ技量と覚悟の隔たりは
時間より遥か深いようにすら感じた。
彼らが来なければ、猛攻に成す術も無くメテオブレイカーを破壊され、
離脱も出来ずに死んでいた。
守りたいと、漠然としながら強い意志をもって入り込んだザフト、その中で得た赤服の地位。
しかしなお、一パイロットとしてさえ力の足りていない事を、シンはまざまざと見せ付けられている。
「俺は……一体どうすれば」
――俺は一体どうすれば、あの領域にまでいけるんだ。
つづく。
一ヶ月以上を空けて、†の続きを投下させてもらいました。
住人の皆さん、作品を読んで頂いて有り難うございます。
まとめ管理人様、何時も細かくて迅速な更新乙です。本当に感謝。
#1 †姉弟は謎短編に行った。
退屈な日曜の昼下がり、自分は暇を持て余していたのでSSを書いていた。
そのタイトルはSEED『†』。
自分のSSは2ちゃんねるの新シャア板、新人スレにおいてそれなりに好評を得ている……と思いたい。
新人スレというのは……今更説明するのも何だか気恥ずかしいからしない。決して面倒だからという理由ではない。
執筆に集中すると時間が立つのを忘れるけれど、何故か今日はそうなる事はない。
それは居間にいる姉の存在とは無関係ではないと思う。
もしも姉に自分のSSを読まれたら、自分は明日の朝日を拝む事が出来ないだろうという危惧がある。
僅かな物音、微かな気配に反応しなければ姉の襲来には対応する事が出来ないから、今迄の様にトリップする程集中出来ないのだ。
噂をすれば影。
「†、PC貸して!」
騒々しい足音と鳴り響く銅鑼の音と共にそれは現れた。
「げえ、†姉!」
姉は息を切らせながら自分の部屋のドアを勢い良く開ける。
その反動で棚に陳列してあった魔改造済みのストライクフリーダムが倒れる。
しかし、自分はそれに対して文句を言う事は出来ない。
何故ならば、姉にPCに指一本たりとも触れさせる事は出来ないからだ。
自分の作品が姉に見られてしまう可能性がある行為は極力さけなければならない。
故に貸すなどという事は論外である。
「丁重に御断りします、姉」
キーボードを叩いて今迄に執筆した分のバックアップを取り、振り向く。
姉は自分の言葉に聞く耳を持たずにゆっくりと近付いてくる。
「アンタは黙って私にPCを貸せば良いのよ。簡単な事でしょ?」
確かに姉の言葉には一理ある。亀の甲より年の功という言葉はあながち間違いでは無いらしい。
しかし、自分はPCを死守しなければならないのだ。
「簡単な事ほど難しいんだよ、姉」
自分は姉の行く手を阻む様にポジションを取る。
姉の強大さは身に染みる程に分っている。
自分は姉に及ばないのかも知れない。それでも守りたい物があるのだ。
「二度とは言わない。……アンタの姉たる私はアンタに命ずる。それは唯一にして不可侵の絶対的な理にして勅命。……PCを貸しなさい」
姉の気の質が変り、冷たく粘着質な物に変わる。それは全ての物に平等なる死を与える慈悲という名の殺意の波動。
#1-2
触れてしまえば死を賜るやも知れない殺気が自分を包み込む。
しかし、自分は引き下がる事が出来ない。
そう、自分はその様な生き方を選択してしまったのだ。
「拒否権を行使します、姉」
自分は冷厳な言霊にて姉を拒絶する。萌え属性に姉属性が存在しないが故に出来る行為。
そして、幼きから学んでいる拳法の構えをとる。
戈を止めると書いて武。姉という超弩級の戈を止める為に習いし武、今まさに行使する時が来たのだ。
姉は自分の行動に目を見開いて驚いている。
それはそうだろう。姉にしてみれば自分が姉に逆らうという事はあってはならない事なのだから。
「……殺すか」
姉は拳を握り締めて身を反らす様に大きく振りかぶる。
それは一欠片の理合も感じる事が出来ない構えではある。しかしながら姉が力を溜めているという事は辛うじて、朧気ながらには分かった。
ただの力を込めた渾身の一撃を放つ。それが姉の狙いだ。
ある意味それは滑稽であり哀れみさえも感じてしまう。一撃必殺という物は絵空事であり、幾多の武道家が夢見、諦めていった幻想に過ぎない。
自分は込み上げてくる笑いを押さえる事が出来ない。
つまり、ふいてしまった。
不意に姉が動き出す。溜めていた力を開放するかの様に一撃を放つ。
姉は自分の隙を見逃す程お人好しでは無かった。いや、戦闘において隙を作った自分のミステイクだ。
自分は棒立ちのまま何をする事も出来ない。
迫り来る姉の拳を見ていると一つの言葉が脳裏によぎる。
破壊力=ツンデレ×同居×姉萌え!!
姉は一撃で自分に致命的なダメージを与えると、倒れている自分を越えてPCの前に立つ。
「なにこれ………週刊新人スレ?」
非常に危険だ。今消えつつある自分の命の灯火を根源から立たれてしまうかも知れない。
是が非でも、なんとしても姉を止めなければならない。
残された力を振り絞り立ち上がる。意識が朦朧として視界は霞む。体の節々が軋んで悲鳴を上げる。襲い来る激痛が酷く指を動かす事すら難しい。
だけど泣き言を言っている場合などではない。
自分は最後の力で姉を富めるべく体当たりを食らわせる。
驚愕している姉の瞳に自分の姿が映っている。
やるべき事を果たして充足感が浮かんでいる。
「変な所を触るな!」
#1-3
いいえ。自分は変な所なんて触っていません、姉。
突如モニターか光始める。訳の分からぬ悲鳴を上げる姉と自分。
――そして世界が反転した。
気付いたら見知らぬ世界に自分と姉はいた。いや、何処かで見た様な気がするけど気のせいに違いない。
目の前にいるカップルに見覚えはない。沙慈とルイス? 誰ですかそれ。
姉は呆然としている。それはそうだろう。きづいたら見知らぬ世界にいるのだから。 自分はと言えばそれほどでも無い。クロスなんて良くある事だ。
それに真言さんや甲子園さん、ひまじんさんの光速展開には慣れている。
自分も姉短編でやっておいて良かったと思う。
姉に声を掛けようとした時、世界は切り裂かれた。
爆音、爆風、硝煙の匂いが人の死を振りまく。
悲鳴、号泣が辺りに響く。更にそれを被さる様な姉の絶叫。
「バスガス爆発!?」
いいえ、違います。これはテロです、姉上。
小さな人であった物を抱えて泣き叫ぶサラリーマン風の男に気が付く。
これは何処かで見た。
――まさか真言さんのhate and war!?
「……馬鹿がやったのさ。馬鹿に暇と金を持たせるとろくな事しかしないってのは誰もが知ってる常識だろ?」
「ですよねー」
って和んでて馴染んでるぅ!?
いきなり現れた男は何くわぬ顔で姉の隣りに立っている。はっきり言って見た事なんてない。
しかし、自分にはそれが誰だか分かる。発するオーラが物凄く適当なまでに雄弁に語っている。
「なにやってるんですかwww所長www」
「いいえ、自分はひまじんです。……そういうアンタは……とめさん?」
「なに、アンタら二人知り合い?」
取り敢えず姉に適当に説明を済ませた。まあ、半分以上ひまじんさんの口から出任せな訳ですが。
ちなみにひまじんさんが自分を†と認識出来なかったのは自分がコテコテの博多弁では無かったからだそうですw
さて、これからどうなるんですか?
それにしても沙慈とルイス? 誰ですかそれ? 自分は知りません。
to be continued
謎クロス投下。
ネタにされたいという珍妙な職人さん募集。
ちょwwwwww何だこのコンボwwwwwwww
ひまじんさんGJ!
内輪ネタが凄すぎるwwクロスなんてよくあることだ、てww
toひまじんさん
普段しゃべりよーときはコテコテの博多弁ってんじゃなくて、
こんぐらいのなまりっちゃけど(姉上も)、それでも文字にしたら
邪魔臭いし、変換が面倒くさいけんせんとよ。
>>457 投下乙
イザークがカッコいい!次回はシンの活躍らしいですが期待してます。
しかし、シホが会話に交ざるとおもろいww
GJでした。
>>454 狙いすましたような『†』投下後の投下乙ですww
編集長光臨期待age
保守
SEED 『†』 投下乙!
一ヶ月待ってた YO !
掛け合い漫才面白かったぜ!
P.L.U.S. SS 「上級パイロット演習」 <5>
アーモリーワンの工廠エリアは、アカデミーの候補生にとっては戦い慣れた演習場だ。
そびえるツインタワー、三つのコンビナートタンク、広い舗装区と脇を走る高架道路。ど
れも随分と見慣れた光景だ。
その見慣れた光景がいつもよりも鮮明に見えるのは、ザフトで制式採用されているゲイ
ツRのセンサーが優秀な証拠だ。
「さすがザフトの現行機だな」
演習で使い慣れたプロトジンに比べると、性能はもちろん細かい使い勝手も向上してい
る。ゲイツRの完成度の高さにレイは思わず喉を鳴らす。
「世界は少しずつ住み易くなっているようですよ。ラウ……」
レイの思考が今は亡き兄とも呼べる存在に辿り着いた瞬間、遅れていた僚機から通信が
入った。
「おーい、ちょっと待ってくれよ!」
「演習開始まで時間が無い。早く配置に着くぞ」
「急いじゃダメだろ! ゆっくり巡航しようぜ、な?」
「どういう意味だ、シン?」
レーダーに目をやると、シンのゲイツRはかなり後方をゆっくりと移動している。この
ままではレイ機の索敵範囲から外れるのも時間の問題だ。
「エコドライブしなきゃダメだ!」
「はぁ?」
「電池は急速に使うと消耗が早いって、マユの携帯の説明書にも書いてあった!」
ゲイツRのコックピットは深い溜め息で満たされた。
「いいか、シン。モビルスーツは確かにバッテリーで動くが、空を飛ぶには燃料が必要だ」
「え? だって主動力に『高性能バッテリー』って書いてあるじゃないか?」
「機体を動かす動力と機体を飛ばす推力は全く別物だ。電力が必要なのは主にビーム兵器
の稼働とフェイズシフト装甲の展開だ。対して燃料は姿勢制御や移動にのみ使用する」
「ふむふむ」
「それにゲイツRは長時間の作戦行動も想定して設計されている。今回程度の演習なら、
どんなにエネルギーを使っても尽きる事はまず無い」
「なんだ。そうなの?」
「作戦行動は何時間もかかる事もある。余程無茶をしない限り、演習でエネルギーの心配
など不要だ」
「了解。そうと分かれば、思いっきり暴れてやるぞ!」
ほっと息を吐きながら頷くレイは、その言葉の奥に潜む真の意味に気付いてはいなかっ
た。
<続く>
>>P.L.U.S. SS
とてつもなく久しぶりな感じがするけれど、投下乙!
いつだったかシンが、MSの動力源を問うテストの選択肢を見て
それが1、蒸気機関 2、電池 3、核動力 4、よく分からない
とかで結局4を選んでて思いっきり吹いたのを覚えてる。
ザフトに入ったのに、モビルスーツを動かす段になって
携帯の取説を見ている辺り、あいも変わらずボケたシンが見られて
楽しかった。続きを待ってますぜ!
改行少なくて見にくかった。
スマソ
hate and war “no future for you.”
世界は変革の時を迎えてるのかも知れない。でも、変わらねえだろ。
変わるならとうの昔に変わってるさ。
ソレスタル・ビーイングとやらが暴れたくらいで変わる程世界はやわじゃない。
歴史を見てみ。どんだけの人間が世界を変えようとしただろうね。
連合赤軍? IRA? ETA? 北部同盟? サンディニスタ……何か変わったか?
東ティモール、ソマリア、北方領土……解決したか?
世界は何一つ変わらなかった。世界は変革を望まなかったのさ。
そもそも人の力で世界を変えようなんておこがましい。もっとも世界なんてのは人の集まりに過ぎないけどな。
なんにせよ一握りの人間の人間の力で変えられる世界なんてこっちから願い下げた。
ユダヤ人を見てみ。奴等の我儘……ヒスボラのせいでどれだけの人が不幸になったろうね。
神に導かれて別の神を信じる人々を迫害しただけの話だよ。
ユダヤ人にも事情があるのは分かる。でも、奴等の行動はどうだかね。
神を信じる者同士で殺し合っているだけじゃないか。
戦争根絶を謳い文句にしてるソレスタル・ビーイングも同じ事。
奴等の被害にあった人は絶対に恨みを忘れる事はない。
親を、子供を、肉親を、愛する人を失って人は新たな争いの火種になる。
なんたって俺がそうだからな。
争いをなくしたいのに争いの火種を作るなんて馬鹿げてる。
奴等の手法が非道だから結末は悲惨だろうね。
いや、悲惨にしてみせるさ。
ソレスタル・ビーイングよりも奴等に親父を殺された俺の腹の虫の方がよっぽど猛威を振るっている。
俺には奴等の戦争根絶なんてお題目は関係ねぇ。
戦争を無くしたかったらナハトマ・ガンジーに弟子入りすれば良かっただろうに。
恨みは一生忘れねえ。この恨み晴らさでおくべきか。
俺は奴等に戦争を吹っ掛ける。
独りぼっちの戦争、ポケットに入るぐらいの小さな戦争。
奴等が蒔いた戦争の火種は俺が地獄の業火にしたて上げてやる。
金や力は無いけど折れない心は持ってる。それだけあれば上等だ。
折れなきゃ俺の勝ち、折れたら俺の負けの無制限一本勝負の特別ルール。
これが俺の戦争さ。
血迷い短編投下終了。
>>hate and war “no future for you.”
投下乙です。
というかガンダムじゃなくても成立するのでは? と思わせるような、
何処かの誰かのhate&warでした。
アニメがユダヤ人のパレスチナ問題なんかを無視しているのも、
ついでに確認しました。
>>奴等の手法が非道だから結末は悲惨だろうね。
こういった韻の踏み方が真言節と呼べるものでしょうか。
>>〜ポケットに入るぐらいの小さな戦争。
つ、ツッコミ待ちですか?
作品の投下有り難う御座いました。続きや別編を期待しております。
hate and war “a happy circle”
久し振りの休暇で実家に帰った。
オーブの軍隊に入ってからの初めての休暇だ。身体を休めたいし、お袋に親孝行だってしたい。
そうそう、親父の墓参りだってしないと。
親父は立派な軍人だった。無口で気難しい人だったけど、国を守って立派に死んだ。
俺には誇れる物は少ないけど、立派な親父は胸を張張って自慢が出来る。
ドアを開けるとお袋が出迎えてくれた。
台所から俺の大好物のお袋お手製の煮物の匂いがする。
ああ、やっぱり実家は良いなと思う。こういうのを守ってこその軍人だ。
羽を伸ばして気分をリフレッシュさせたら部隊に戻ってもっともっと、立派な親父に恥じない様に頑張らないと。
お袋の顔を見ると、白髪と皺が増えてめっきり老け込んでいる。
いつまでもあると思うな親と金。
昔は迷惑を懸けっ放しだったから、今こそ親孝行をしないと。いなくなってからじゃ遅い。目も当てられない。
荷物を降ろして風呂に入る。ゆっくりと湯船に浸かれるのは幸せな事だ。いつもじゃ忙しくてしょうがない。
狭いバスタブだけど独り占め出来る。それだけで天国だ。
垢と一緒に日々の疲れまで落ちていく感じだ。
自然と鼻歌も出て来る。ゆったりのんびり夢心地だ。
風呂から出たら夕飯が待っていた。
決して豪華じゃないけれどお袋が作った手作りの料理。ただ腹を満たすだけの味気無い軍のレーションとは違う。
お袋は俺が頬張り食べるのを見てニコニコと笑っている。
「軍隊はどうだい? 辛かったら帰って来ても良いんだよ?」
俺は口の中の物を胃に送り込んでコップの水を飲み干す。
「んー、キツいけどやり甲斐があるよ。頑張りゃ上手くなるってのが分かるし」
お袋は何故だか悲しそうな顔をしている。それでも構わず俺は喋り続ける。
「この前なんてさ、怪我をしちまったらカガリ様が手当てをしてくれたんだよ。がんばらなきゃって思っちまうね」
お袋は泣き出した。何故だろう。変な事を言ったのだろうか。
「どうしたんだ、お袋。泣く話じゃないだろ」
涙を拭うとお袋はポツリポツリと話を始めた。
「死んだ父さんもアンタと同じ事を言ってたんだよ。カガリ様の期待に応えないとって言って帰って来なかったよ。アンタもそうなると思うと……」
俺は何一つする事も出来ない。
――ただ、お袋が老け込んだ理由が分かった様な気がした。
血迷い短編投下終了ー。
>>hate and war “a happy circle”
投下乙です。
爽快感は無いですが、ぐっとくる読後感が苦しみで、ではなく楽しみで
投下を期待しています。
親孝行をして居るつもりが母親を悲しませているというすれ違いが
「〜泣く話じゃないだろ?」の一言に集約されていると思います。
最後の一行の余韻だけでも、読んでよかったと思いました。
ひょっとしたらまた三十三分後に投下するのですか? と
思いつつ、続きを期待させていただきます。 投下有り難う御座いました。
リレーSS
ラグランジュポイントにプラントが浮かび、ナチュラルとコーディネーターがいがみ合う
種世界。ちょいと世界に穴空いて、西暦2300年代の地球と繋がってしまいました。
――武装が無いのに砲術士がいるプトレマイオス
「でもまー、お酒の味が変わらなければ対して変わらないわよねー」
「ですよねーとは言えませんよ僕は……うっぷ」
転がる酒瓶に躓きかけて、アレルヤは口を押さえた。
「仕事はしないと……ね?」
そういってサントリーの角瓶を、もんの凄く嫌がっているアレルヤに手渡した。
「あの……僕もうこれ以上は――」
「なーに言ってるのよ? 私の酒が飲めないってーの?」
その目は、バッカスの聖域に鎮座ましましている。
「ナチュラルと、コーディネーターに、ちょっと介入して見たい!
そーれ飲んで呑んで飲んで 飲んで呑んで飲んで」
仕方なく、四十度のウィスキーをイッキで煽るアレルヤ。
そこいらの酒屋で三千円くらいの酒が喉に吸い込まれて……むせた。
「げぼろはあっ! もうこれ以上、ぼくには……呑めま――」
「もう……こんないい体で情けの無いのね」
アレルヤの体をまさぐりながら、口から離しかけた酒瓶をさらに
突っ込む。
アルハラ、パワハラ、セクハラで三振ノックアウト、最低の飲兵衛というか、
酒の腐ったような女である。つまり酢――酢酸だ。
「さーて、それじゃあどこに介入しようかしら」
轟沈したアレルヤを前に、スメラギ酸はダーツを構えた。
「ヴぇーだ」と書かれた地球儀が回転している。
「えいっ!」
そして、ダーツの刺さった先は!?
新シャアのルールに則って、あとは適当に二行から一レスで続きを
書いていってください。
懐中噺
“神の慈悲”1/2
「……神様、お助けを……」
神様。目の前の女は確かにそう言った。
その言葉に今までは軽かった筈の引き金が急に重くなった。
女は俺に銃口を向けられて哀れな程に震えている。だけど子供を守る様にしかと胸に抱いている。
哀れな哀れな母子。
か弱いけれどその姿に俺は圧倒されている。引き金を引く事が出来ない。
母子が信じているのは神、俺が信じているのも神。どちらの神が本当の神なんだろう。
神を疑っては駄目だと思うけど、一度浮かび上がった疑問は烙印の様に俺に押し付けられる。
神の名の元に散々敵を殺し、神の名の元に仲間も死んで行った。
だのに敵も神を信じていた。
――神なんて本当はいないんじゃないか?
銃を持つ手が震える。足も震える。意識が朦朧として吐気すら覚える。
――神様を疑うなんて悪い事。敵が信じるのは偽者の神様。俺達の信じる神様が本当の神様。
誰かの声が耳鳴りの様に響くけど、その声で俺の不快感は一層増して行く。
えづき、込み上げてくる。吐瀉物を撒き散らしながらへたり込む。
身体が言う事を聞かない。まるで俺の身体じゃないみたいだ。
「……行け、さっさと逃げろ!」
口元を拭いながら叫ぶ。口の中に嫌な味が広がっている。
「あの……大丈夫ですか?」
女は俺の変化に戸惑いながら心配そうに近付いて来た。殺そうとした相手を心配するなんてお人好し過ぎる。
でも、その優しさは俺の神様よりも温かい物なのかも知れない。
「俺に構うな! 早く逃げないと殺されるぞ!」
母子の気配が消えた。どうやら逃げてくれたみたいだ。
神様を疑った俺は神様の為に戦う事が出来なくなった。でも、それでも構わない。
本当にいるかどうか解らない神様の為に戦うなんてもうしたくない。
そう思ったら四肢の震えと不快感が鎮まってきた。銃を杖替わりにして立ち上がり、壁に背を預ける。
乾いた音と絹を引き裂く様な女の悲鳴が聞こえた。
――逃げ切れなかったのか。仕方ないな。
割り切って考えようとしても割り切れない。なんだか釈然としない。
騒がしい音を響かせ硝煙の匂いを撒き散らしながら仲間が現れた。目には怒りが宿っている。
「何故奴等を逃がした」
「さあな。神の慈悲って奴かもな」
冷たい瞳が俺を一瞥する。 そして乾いた音。俺の胸に赤い染みが出来る。
懐中噺
“神の慈悲”2/2
ああ、俺は死ぬのか。
そう思ったら気分が楽になった。神様がいない世界から神様の世界へ。神様に会えたら一言言ってやらないと。
俺は立っている事が出来なくなってズルズルと倒れる。
「言い残す事はあるか?」
冷たい声が響き頭に何か冷たい物が押しつけられる。
「……あの世で教えてやる」 もう、疲れた。何もかもがどうでもいい。
「そうか。もうお前は神の戦士じゃない。……これが神の慈悲だ」
――また、乾いた音が響いた。
了
暗
>>鼎さん
投下乙です。
刹那に在り得た一つのバージョン、といった設定でしょうか。
この設定は一次創作に近いものがあると思いました。
確かに暗く。せめて見逃した親子は助けてやればいいのにと
思いましたが、それがたぶん職人さんの目論見なのだろう、と
思いました。
別の職人さんのサイトからやって来たらしいですが、
このスレこの板に根付いて頂ければ嬉しいです。
有り難うございました。
476 :
リレーSS:2008/02/22(金) 21:22:29 ID:???
所詮はスメラギ・李・ノリエガ。素面であろうが酔っていようが外れまくりの戦術予報士である。
無論ダーツも外れるのは必然。ダーツはあらぬ方向へと力なく飛んで行き、ヘロヘロと床に落ちた。
――地球儀にダーツが刺さると思ってんのか?今日びの地球儀は頑丈に出来てんだよっ!
しかしよー、そんなふしだらな格好しちゃってさー、お前は淫乱阿婆擦れ売女か?
つか、煽ってんのオマエ?
アレルヤから意識を奪ったハレルヤは屈んでダーツを拾うスメラギのヒップラインを凝視しつつ
獲物を狩るハイエナの如く舌なめずりをするのだった。
リレーSS続き
肌を桜色に染め潤んだ瞳で宙をぼんやりと見詰めるスメラギは艶やかな溜め息を漏らした。
果たしてこれ程迄に感じてしまった事があっただろうか?全身に残る余韻に酔いしれつつ、
スメラギは生まれたままの姿で白濁とした意識の波に飲み込まれて行くのだった。
ハレルヤは横たわるスメラギを見て奇声を発して喜んだ。女は男に奉仕するためだけに存在するのだ。
「女は男に奉仕する為にですか……一体いつの時代の事でしょう?はっきり言って
噴飯物ですわ。キラが帰ってきたら真意を正さないとなりませんわね」
ラクスはキラのベッドの下から大量に出て来た本の山をベッドの上に綺麗に並べた。
「スメラギでイこう!」やら「ソーマのないしょ!」やら「ルイスんといっしょ!」やら
訳の解らないタイトルの本――しかも表紙は女性の破廉恥の姿が描かれている。
「取り敢えずは本は虫干ししないと痛みますわ。こうしておけば安心でしょう」
ラクスはクスクスと笑い始めた。楽しみでしょうがないのだ。キラがどんな反応を示すのか。
ラクスは笑いながらゴミ箱のチェックを始めた。
懐中噺“後の祭り”
いつの間にか後戻り出来ない所迄来ていた。
俺の手は引き金を引く人殺しの手、真っ赤に染まっている。
守りたい物があるから力が欲しかった。努力をして力を手に入れた。
だのに力は守る為の物ではなくて、誰かを傷付ける為の物だった。
後ろを振り向けば俺が作り出した屍が無数に転がっている。
全てが目を剥いて俺を睨み付けている。視線が刃となって穿つ様に俺に突き刺さる。
叫んでも誰の返事も無い。ただ木霊が響くだけ。
屍達は無言で俺を睨み付けるだけだ。その無言が静かに俺に問い掛ける。
――知らぬが仏、知ってしまえばいつかお前も俺達の仲間入り。気分はどうだい?
憎悪の視線が俺に絡み付いて前には進めず後ろにも戻れず。
言い訳が口から出るけどそんな事は良い訳ない。嘘が尽きない程嘘をつく。
だけど段々呂律が回らなくなってしどろもどろになる。
戦争はヒーローごっこじゃない。昔誰かがそんな事を言っていた。
その通り、英雄の真似事は寝言に過ぎなかった。
俺がやって来た事は只の自己満足、自分に酔って人殺しに酔いしれていただけだ。
後悔しても全ては後の祭り。やってしまった事が覆る事はない。
力を手に入れて、ただ無闇に力を振りかざしただけじゃないか。
目には見えないけれど俺には人殺しの烙印が押されている。
何が守るだ。俺は何一つ守れなかった。
差し延ばされた救いの手が血塗れた手じゃ助けられる方だって怖がる。
簡単な事だった。
もっと早く気付けば良かった。いっその事気付かなければ良かった。
謝りたくても謝る相手は何処にもいない。皆ただの物言わぬ屍。
俺がそうしてしまった。
ごめんなさい。
消え入りそうな小さな声で誤るのが精一杯だ。
呼ぶ声がする。誰かが俺を呼んでいる。
俺は屍達に頭を下げて声のする方に向かった。いや、逃げ出した。
「シン、大丈夫? 凄いうなされていたわよ」
ルナマリアが心配そうに俺を覗き込んでいる。
汗がべったりと下着に染み付いて気持ち悪い。
「……変な夢を見たけど、どうにか大丈夫だ」
どうやらさっきのは夢だった様だ。嫌な夢だった。
「居眠りしてたから罰が当たったんだよ、きっと」
夢にしてはリアルな感じだった。でも、そのうち忘れるだろう。夢なんてそんな物だ。
「居眠りか……良い眠りじゃなかったよ」
了
リレーSS続き
「ただいまー」
ふう、今日も疲れた……
ため息をつきながらキラが部屋に入ると、ベッドの上に、秘蔵の本の山が築かれていた。
「こ、これは!?」
「ふふふ。本は虫干ししないと痛みますわよ?」
振り返ると、ラクスがいた。
この眼……殺される!
「うわぁぁぁぁ!」
キラは逃げ出した。
「タクシー!」
「へい、お客さん、どちらまで?」
「どちらまで……そうだ! オーブの行政府まで!」
そうだ、そこまで逃げれば……
「やあ、キラ。どうしたんだ?」
行政府に着くと、カガリに会った。
「いやぁ。まいったよ。そばらく匿って……」
「クケケ……」
怪音がした。
上からだ。なんだ?
キラは好奇心のまま上を向いた。
「うわあぁぁぁ!」
キラは腰を抜かした。
天井に、ラクスが張り付いていた……
リレーSS続き
一瞬遅れて気がついたカガリはデスク上の電話機を取って叫ぶ。
「不審者! いや、化け物だ! 警備員を早く!」
代表執務室のドアを蹴破って1人の男が突入して来た。
入って来たのはちびっ子SPこと岡田准一ではなく、伝説の勇者カズイ・バスカークである。
「大丈夫かカガリ! むっ!? 貴様はラクス! 」
「あらあら、カズイさんお久しぶりですわね。 ……ハウス! 」
「わんっ!」
ハウスに反応した勇者カズイは帰宅するため執務室から出て行った。
「ばかぁ……。誰か、他に誰か居ないのか! 」
カガリが大声で叫ぶとまた一人執務室に飛び込んで来た。
まずは投下乙。
>>真言
happy circleは色々な深読みが出来て解釈に困るな。
普通に読み取ればヒロイックな戦争の否定、元ネタを頭に入れて読み取れば……。
どう解釈したものか。
優しい人が言っているが最後の一行が良い味を出していると思う。
更なる精進を期待する。
>>鼎
神の慈悲はオリジナルと言っても過言じゃないな。もっとも俺に人の事を言えた義理は無いが。
作風が真言と似ているが、結末で差をつけているな。
ラストを曖昧にする真言、ラストを鮮明にさせる鼎。
どちらもそれぞれの個性が出ていて面白い。
後の祭りは懲り過ぎて内容が読み取り難いな。もう少し練った方が良かったと思う。
言葉遊びの元ネタはハスキング・ビーか?
二次創作は初挑戦だと言うが未知の領域に踏み込んだアティトュードは称讚に値する。
更なる精進を期待する。
>>リレーSS
いい感じでグダグダになっているな。何処から突っ込めば良いのやら。
リレーSS続き
――ぷつん。
「余り面白くなかったわねえ。今の若い子にはこういうノリが好きなのかも知れないけど、
私はダメだわー。」
カラカラと乾いた笑い声を上げながら、嫁はテレビの電源を切った。
「確かに、そうだな。俺にも若い奴らの感性って奴は理解出来ねえな。」
旦那は傍らに置いてあった煙草を手に取ると、ゆるりとした動作で一本口に加えた。
火を付けると口の中にメンソールの爽快感が広がる。そして、若干の苦味。
子供の頃に好奇心で吸った時は二度と吸うまいと思っていたが、今ではヘビースモーカーだ。
色んな事を学んで、色んな事を忘れていって――いつの間にか大人になってしまった。
「そういや、禾重を○く人のリライトは終わったのか?」
「まだよー。今は忙しいんだもの。もう少ししないと、ね。それとも誤字脱字の訂正だけして
投下しちゃおうかしら?……もしかしたら、投下はしないかも。私が投下したら荒れるかも知れないし」
不意に、嫁の顔が曇った。嫁は以前某スレでちょっとしたSSを書いていた事があるのだが、
そのSSが原因でスレが荒らされた事があるのだ。
汚物バラ撒き職人だの、更年期婆だの、軍事知識皆無だの。
口汚い言葉でスレは埋め尽くされ、最後には嫁はスレから離脱する事を選んだ。
今では笑い話だと嫁は笑っているが、やはり非常に辛かったのだろうと旦那は思うのだ。
「そうそう、今日は00だったよな。お前はもう見たのか?」
「まだよ。あなたと一緒に見たかったから」
嫁は旦那の隣に座ると旦那の口から煙草を取り上げ灰皿でもみ消した。
「じゃ、見ましょ?見る時だけは禁煙ね」
嫁はリモコンに手を伸ばすと電源を入れた。
果たして録画されていた内容とは――――――?
リレーSSはもうやめた方が良いと思う。
ハッキリ言って容量の無駄遣いだ。
>>485 せっかく職人さんがSSを投下してくれたのに
そういうコメントは失礼だと思う
せっかくリレーSS続いてたのに、ここで、ぶっつり切るのはどうなんだ。
「と言うお話だったのさ。」
をやられると興ざめする。今までの話と無関係な話にしたいなら別のSSとして投下してくれ。
リーレーSSを投下した一職人より。
489 :
通常の名無しさんの3倍:2008/02/23(土) 22:29:58 ID:EuhuhP8s
リーレーSS(笑)
作中の人物に言わせれば今までのSS貶してOKってなればいくらでも荒せるな。
全ては汚物バラ撒き職人が悪いんだよ!
新人スレに加齢臭をバラまいて喜んでいるんだよ!
492 :
通常の名無しさんの3倍:2008/02/23(土) 22:34:51 ID:EuhuhP8s
>>484 他の職人のは余り面白くなかったですか?
投下したのは河弥じゃないのか?
昨日まとめサイトで投下するって言ってたし。
でもコメント削除してたんだよな。
鬼畜さんのエロSSが読みてえづら
俺は戦史と種まきさんの新作が読みたいだがね
リレーSSはここではやらない方がいい気がする
とめさんとこでのんびりやった方が良さげだな
つーか、誰が一番最初にリレーSS書いたんだよ
だが録画されていたのはリーレーの続きだった。
カガリが叫んでいる隙をつき、ラクスはその長い長い髪の毛の一本一本を手足の如く自在
に動かし、キラにまとわりつかせ誘き寄せていた。
「ああっ、苦し……た……すけ、アスラ……」
手に足に腹に胸に首にまとわり着き、グイグイと締め付ける鋼の様な髪の毛のせいで消え
入る様な声で助けを求めたその時である。
「きーーらーー!!」
これまた伝説の赤服アスラン・ザラが執務室に飛び込んで来た。
「今キラが俺を呼ん…… なっ!? なんだこれは面妖な。カガリ、説明してくれ」
「私の絶叫は聞こえないのに、キラの呟きが聞こえたのか? 」
「……なるほど。あとは任せろカガリ! キラは俺が助ける! 」
「お前はぁ…… 」
飛び込んで来た時からキラだけを見つめ、キラを見つめるついでに視界に入っていたカガ
リと会話をしている我らが赤服アスランは自信満々に言い放つ。
「俺がラクスを説得する。これでも説得には自信がある。暴走するシンを幾度も説得して
いたからな」
……不安だ。
「聞いてくれラクス。人間には越えてはならない一線と言う物があるんだ。その一線を越
えたら後は、後は…… 」
何かを思い出すかの様に眉間に皺を寄せ目をキツく閉じ、肩を震わせながらアスランはラ
クスに語りかけた。
「アスラン…… 後はなんですの? 」
「一線を越えたら親子でも命のやり取りをしなければならないんだ! 分かるかラクス」
「ぜんっぜん分かりませんわ。それはそれ、これはこれですわ」
「……む。確かにそれはそれ、これはこれだな。どうするカガリ? 説得されてしまったようだ」
相変わらずキラを見つめつつ、カガリに問いかける。「……アスラン。帰れ」
「……やだ」
――ぷつん。
嫁はテレビの電源を切ってしまった!
リレーSS続き
「あー、もう。ドラマでも見ようかしら。韓国ドラマでも見ようかしら」
嫁はチャンネルを変えた。
『チュンサンは私のものよ。あなたになんか渡さない。私だって、ずっと昔から好きだったんだから!』
その時玄関のベルがなった。
「あら、こんな時間にお客様かしら」
嫁は玄関に出て行った。
「どなた?」
「チュンサンは私の物よ。あなたになんか渡さない。私だって、ずっと昔から好きだったんだから!」
え? 嫁は一瞬頭が空白になった。そこにいたのは、今までテレビの画面の中にいたラクスだったからだ。
なにかが振り下ろされる! 嫁はとっさに手を上げた。
ぼとり。
するどい切り口を見せて、人の腕が落ちる。・・・自分の腕だった。
「おーい、何かあったのかい?」
なかなか帰らない嫁を心配して旦那が玄関に出てきた。
そこにいたのは・・・ラクス?
倒れてるのは嫁か!? 真っ赤な何かに塗れている。
なんだ? いったい何なんだ?
「せんぱぁい。奥さんが妊娠したなんて嘘じゃないですか?
ラクスが邪気のない笑みを浮かべて話しかけて来た。よく見たら、この間抱いてやった会社の後輩だ。
「中に誰もいませんよ?」
懐中噺“でくのぼう”
機械仕掛けのゆりかごの中で意識が揺らいでいく。
記憶すら俺の所有物じゃない。誰かの勝手でどんどん削られていく。
忘れらたくない思い出があっても不要と判断されたら真っ白く塗りつぶされる。
ゆりかごは俺のやつの他に二つある。俺には仲間が二人いたって事だろう。
だのに、俺はそいつらの事を知らない。欠片も覚えていない。
大事な事から忘れていく。忘れないのは戦い方だけだ。
それはそれで構わない。どうせ棺桶に片足を突っ込んでる俺だ。無駄な事をしないで済む。
短い人生、人の事より自分の事。やりたい事を探す手間が省けて丁度良い。
やりたい事よりも出来る事、戦い方だけ覚えていればどうとでも出来る。
だけどいなくなった仲間の事を覚えている事が出来ないのは腹が立つし、情けない。何より奴等に申し訳ない。
でもそれだけだ。思うだけで何一つ行動には移さない。 移せないんじゃなくて移さない。煩わしい事に構える程に俺の人生は長くない。
出来る事はやる。出来ない事は切り捨てる。そうしないと何も出来ないままにあの世行きだ。
戦う為に作られたからには戦って死ぬのが至極当然だ。
それが出来なきゃファントムペインである意味がない。
今まで戦い続けてきたけど、まだ一度たりとも勝ってはない。
後何度戦えるのかは解らない。戦う事が出来るのかすら解らない。
でも、最後に一度くらいは勝ちたい。勝ってこそのファントムペインだ。
負け続けてお終いだと死んでいった奴等に笑われる。
カオスは壊しちまった。次の機体がどんなのなのかは分からないけれど、多分俺の棺桶になるだろう。
棺桶に乗って暴れ回って勝って死ぬ。
至ってシンプルな人生設計だ。
失ってきたばかりの、負け続けてきた俺だけど、最後には勝ちてえ。
そうすりゃでくのぼうみたいな人生でも自慢出来るさ。
了
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜
第12話 「捕捉 −ひきがね−」(後編)
(1/8)
通信機越しに姉の悲鳴が聞こえた時、メイリンもまた悲鳴をあげなかったのは彼女にとって幸いだった。
もしその時声を出していたのなら、その後も姉を呼び続けるだけで職務など放棄してしまっていただろうから。
メイリンにとってもう一つ幸いだったのは、すぐに、ムラサメは中破したがコックピットが――少なくとも
外見上は――無事なことを知らせてもらえたことと、その報告が他ならぬアスランからもたらされた事だ。
目の端の冷たいものを拳でぐい、と拭って、メイリンは背筋を伸ばす。
セイバーとムラサメの緊急着艦とルナマリアの負傷を関係各所に連絡し、次にシンを呼び出した。
シンは――インパルスは数刻前からまったく変わらぬ位置にいた。
レーダーに固定されたインパルスと応答しないシンを心配したタリアの命でルナマリアが向かったのだが――
そのルナマリアの緊急事態にもシンには何の反応もない。
『セイバー、ムラサメ、着艦するぞ』
突然、通信機からアスランの声が割り込んできた。
メイリンは慌てて、準備はできている旨を返答する。
『隊長、私が援護します』
レイの声が聞こえた。その普段通りの落ちついた声音にメイリンもまた少しだけ落ち着きを取り戻す。
一瞬だけメインモニターに向けた目に、セイバーに抱えられるムラサメの姿が映った。
ムラサメは左肩口の辺りが黒く焼け焦げ、左腕が失われていた。
もう一度拳で目を拭ってから、目の前のモニターに視線を据える。
『メイリン、俺はすぐにもう一度出る。指示を頼む』
「はい。了解しました」
メイリンはアスランの要請に応えるべく、MSデッキに連絡を入れる。
MSデッキではアスランからの直接の要請もあったらしく、既にセイバーの簡易補給が始まっていた。
それが終了し次第発進できるよう左舷カタパルトのスタンバイを手配し終わるとほぼ同時に、ルナマリアが
コックピットから救出され医務室へ搬送されたとの連絡が入る。
思わず腰を浮かしかけたメイリンだったが、必死の意思でそれを押し止めた。
――ダメッ。今あたしが行ってもお姉ちゃんは喜ばないっ!
三粒目の涙は拭わなかった。
メイリンはモニターを睨みつけるようにしてから手元のスイッチをインパルスに切り替え、大きく息を吸う。
「シンッ。何してんのよっ!」
声の限りに叫んだ。
ブリッジ内だとは頭の片隅で分かってはいたが、そんなことに構っている余裕がなかった。
動かない光点。
何度呼びかけても返らない応え。
胸を圧迫する不安。
「お姉ちゃんが怪我したの、見えてないのっ!? 返事くらいしなさいよっ!!」
語尾が震えるのは、力を入れすぎた為か、それとも別の理由からか。
(2/8)
二、三度、大きく肩が上下する。
……それでも返答がない。
震えを止めたくて、両手をぎゅっと握り締めた。
――大丈夫。だってまだ『シグナル・ロスト』じゃない。
他の誰でもなく、自分に言い聞かせる。
「アスラン。インパルスからの応答がまだないの。再発進後、そちらに向かって頂戴。詳しい座標は送るわ」
突然、ブリッジに響いた声の主をメイリンは振り返った。
『シンが?』
見ると、サブモニターの一つにアスランが大写しになっていた。
そんな状況ではないのに、小さく跳ね上がった心臓を内心で叱咤する。
「戦況は今のところ五分だけれど、長引けばどうしてもこちらが不利だわ。でも『七人目』の出撃は避けたいの。
負担は承知だけれど、なんとか頼むわ」
『……了解しました』
一拍の間の後に返答をし、アスランがモニターから消えた。
それと同時にタリアが振り返る。
「メイリン、聞こえたわね?」
「は、はいっ!」
メイリンは慌てて自らのコンソールに向き直ると、セイバーの補給状況を確認する。
その行動を待っていたかのように、直後に補給の完了を知らせるランプが点った。
「X23Sセイバー、アスラン機、左舷カタパルトより発進スタンバイ」
セイバーはシーケンスに合わせて、カタパルトへ移動してゆく。
その間にメイリンはセイバーにインパルスの座標を急ぎ転送する。
「アスランさん、インパルスの座標です。これで……」
ちらっとモニターを確認してから言葉を続ける。
「約四〇〇秒、動きがありません」
『了解した』
アスランからはぶっきら棒な返答が返ってきた。
「あの……よろしくお願いします。アスランさん」
余計な事かもしれない。そう思いつつも言わずにはいられなかった。
『ああ』
アスランの返答はまたしても短い。
しかし、メイリンはその一言に全幅の信頼を覚えた。
「アスラン機、セイバー、発進どうぞ」
アスランの駆るセイバーがミネルバを後にする。
メインモニターでその背中を三秒だけ見送って、メイリンは何度目かの呼びかけをシンに行った。
「シン、聞こえる? 今、アスランさんがそっちに向かったわ」
相変わらず返答はないが、メイリンは呼びかけを続ける。
「お姉ちゃんもアスランさんが連れて帰ってくれたの。だから」
メイリンの声が止まった。
コンソールのランプ――インパルスからの入電を示すランプが点灯しているのを見て取った。
「シンッ!?」
ほんの少しの音も聞き逃さないようイヤホンに手を当てる。
シンの声は聞こえない。
だが、先程までの完全な無音とは違う。微かな呼吸の音を耳が拾っている。
「シン、無事なの? シンッ!?」
「地球軍、撤退信号ですっ」
メイリンの声にマリクの状況報告が重なった。横目で見たメインモニターに三色の光を視認する。
「取り舵二十。地球軍を追いながらインパルスへ向かいます。アーサー、後ろは任せたわ」
「「了解!」」
すかさず投げられたタリアの命への応答が重なり響く。
『シン。おい、どうした。シン!?』
割り込んできたアスランの声に、メイリンはレーダーを確認した。
セイバーとインパルスを示す光点が並んでいる。
「インパルスとセイバーの映像、出ます」
その言葉が終わるよりも早くメインモニターに、真紅のセイバーとトリコロールのインパルスが映し出された。
二機は並んでミネルバよりも十メートルほど上空に滞空している。
宙に浮いたままのインパルスをメイリンは訝しく見上げた。
モニタに表示されたインパルスの座標と実際のインパルスの位置は一致している。
しかし、メイリンはインパルスが海面で浮いているか、最悪の場合、海底に沈んでいると思っていたのだ。
パイロットの意識が失われている状態で滞空し続けられる筈がない。
だとしたら、シンは意識を保っていた、ということになる。
――じゃあどうしてシンは応答してくれなかったの……?
と、見る間にインパルスが暗灰色に変わった。
PS装甲のバッテリーが切れたのだろう。
ならばインパルス自体のバッテリー残量も危険域に近い筈だ。
手元のモニターでそれを確認したメイリンは軽く瞠目した。
インパルスのバッテリーはまだ十分に残っている。
「シン、聞こえる?」
様々な腑に落ちぬ点を取りあえず呑み込んで、メイリンは再度シンに呼びかけた。
「シン、応答しなさいっ!」
タリアの叱責するような声も聞こえた。
突然インパルスが崩れるようにその場から落下した。
「シンッ!?」
メイリンは息を呑み、ブリッジ内が緊張に包まれる。
だが、すぐにセイバーがインパルスに追いつき、その腕を掴まえた。
コックピットはそれなりの衝撃を受けただろうが、海面に叩きつけられるよりはずっとましだろう。
安堵の空気の中メイリンが声をかけようとしたその時、イヤホンから僅かにシンの声が聞こえた。
『メイリン……俺……』
「シン? シンなのね!? 大丈夫? 怪我してない?」
しかし、シンはメイリンの問い掛けには答えず、別の言葉を呟いた。
『ルナ……』
「大丈夫。お姉ちゃんもアスランさんが助けてくれたの。今は医務」
『ルナ……俺が撃った……』
「…………え? 何……?」
メイリンの言葉を遮って聞こえてきたシンの言葉が、理解できなかった。
撃った? シンが、お姉ちゃんを? って何? どういうこと?
『俺が……ルナ……殺した……』
その時のメイリンにできたのは、ただ呆然とすることだけだった。
(4/8)
『君はもう少し戦力を有効に使える男だと思っていたのだがね。君の幸運はあの三機を奪取したことで使い切った
のかな?』
J.P.ジョーンズの一角、一般兵は通行すら禁じられているエリアにある一室。
ネオにしか操作を許されていない端末の意図的に上方に取り付けられたモニタの中で、男がネオを見下ろしていた。
白い肌は青白い、とすら形容できる。青みがかった短い銀髪が酷薄な印象を更に強めている。
ブルー・コスモスの盟主、ロード・ジブリールである。
ジブリールの侮蔑の言葉を、ネオは黙って聞いていた。
実際、勝利したと言い切れるのはG三機の奪取のみだ。
仕留められると確信したアーモリーワン離脱直後の追撃戦でさえ、あと一歩というところで仕留め損ねた。
前回のインド洋では極秘に建設中だった前線基地も失わせてしまった。
『調子の良かったのは最初だけ、後は下降の一途』と言われても反論の余地がない。
「申し訳ないとしか申し上げられません。その上、お手を煩わして申し訳ないのですが、少々気になることが
ありますので調査をお願いしたく」
態度だけは恭しくネオは頭を下げた。
それだけのことで相手が機嫌を良くするのなら、これくらい安いものだ。
『調査?』
ジブリールの声が不機嫌ながらもわずかな興味を含ませたのを聞き取り、ネオは心のうちでほくそ笑む。
「はい。今回、ミネルバの他にアンノウンが一艦いたことはお耳に入っていることと存じますが、その他にも
面白いMSがいまして。……これを」
ネオは端末を操作して、マルチに仕切ったモニタに一機のMSの映像を呼び出した。
「これは ZGMF-X10A『フリーダム』。二年前にかの三隻同盟の主力となったMSです」
ジブリールの視線が頭の中の何かを探すように少し逸らされた。
『確か……大破したと記憶しているが?』
「私の調べた限りでもそうです。しかし、こうして実在しているのです」
『ふむ』
「それにこちらも」
拳を口許に当て考える様子を見せる盟主に、次の映像を示す。
別のモニタに黄色を主カラーとしたMSを映した。
ジブリールからは何の反応もない。そのMSが何なのか分かっていないのだろう。
ネオはそう判断し、彼がしびれを切らす前に答えを口にする。
「これはカラーリングこそ正規のものと異なっていますが、オーブ軍の主力MS『ムラサメ』です。
M1シリーズならともかく、最新鋭機であるムラサメが市場に出回ったり、ザフトが所持するなど考えられません」
何を考えているのか、ジブリールは相変わらず反応を見せない。
「更にこちら」
MSの映像の代わりに、紺碧の戦艦の映像が入る。一般的な物とは異なる特徴的なフォルムだ。
(5/8)
「例のアンノウン艦なのですが、見覚えはありませんか?」
しばし映像に見入っていたジブリールの眉が跳ね上がった。
『これは……ドミニオン!?』
その反応に、ネオは表情には出さず苦笑した。
戦艦「ドミニオン」はヤキン戦の直前から、ブルーコスモスの前盟主であったムルタ・アズラエルが乗艦し、
その生命と共に爆散した戦艦である。
ジブリールならば当然見覚えがあるだろうと思っていたが、その予想はどうやら的中したらしい。
「矢張りそう思われますか」
矢張り。
幾分ほっとした雰囲気を漂わせながら、その部分を強調しつつネオは相槌を打った。
自分では自信のなかった事柄に、上司の一言で確信を持てた。そう聞こえるような口調で。
「このJ.P.ジョーンズにヤキンの生き残りがいましてね。そいつが『似ている』って言うんで調べさせたんですが。
確かに艦影は酷似しているんですよ。ドミニオン──正確にはアークエンジェル級に。
艦影だけなら一致率は九十二パーセントでした」
ふと、ジブリールの目が力を増したのにネオは気づいた。
ようやくネオの報告に本格的な興味を抱いたらしい。
『まさか、ドミニオンだと?』
「いえ。ご存知の通り、ドミニオンは原型を留めない程破壊されましたので……」
若干含みを持たせて、ネオは言葉を切った。
ネオの誘導に気づいているのか、ジブリールは再び考え込む。
彼が答えを出すのをネオは待った。
既に解答は言葉の端に乗せておいた。後は彼がそれに気づくのを待つだけだ。
もし彼がそれに気づかず別の可能性を提示してきたならば、それはそれで面白い。
果たしてジブリールはネオの期待通りの単語を口にした。
『──アークエンジェル……』
内心に波打つ落胆を顔には出さず、ネオは自身が書いた脚本の台詞を口にする。
「はい。ただ海中から出現したとの報告もありますので、確実にそうだとは言えません。アークエンジェルを
基にした新造艦の可能性も捨てきれないかと」
一拍おいてネオは言葉を続ける。ここからが正念場だ。
「そして、問題はその艦が何処の所属か、ということですが」
『ザフトではない、と?』
「ええ。確かにフリーダムはザフトが製造した機体ですが、それではムラサメとの辻褄が合いません。更に
アークエンジェルは元々地球連合軍の艦だったわけですが……」
『何が言いたいのかね、君は』
含みを持たせるネオの言葉に苛立ったようなジブリールだったが、唐突にはっとした表情を見せた。
その脳裏に三点を繋ぐモノが浮かんだのだろう。
『……オーブ……』
「ええ。私もそう思います」
『わかった。オーブならば手段がある。こちらで調査してみよう』
「よろしくお願いいたします」
深く下げた仮面の下で、ネオはにやりと嗤った。
(6/8)
ジブリールとセイラン家とを結ぶホットラインの一方の端で、ウナトはこの場に息子を立ち合わせなかったことを
自嘲気味に安堵した。
ユウナは描いたシナリオ通りに事が進んでいる時ならばともかく、突発事項への対処はまだ未熟だ。
もしもこの場にいたのなら、何を口走っていたか分からない。
そう考えているウナトの胸の内を探るように、モニタの中で銀髪の盟主がちらりと見やった。
『……という訳なのだが?』
「なるほど。お話はよく分かりました。ジブリール様のご心痛は察するに余りありますが……アークエンジェルの
件は初耳ですな」
内心の憤慨を抑えつつ、ウナトは取り合えずしらを切る。
――まったく何が救いの大天使だ。あの艦は厄介事しか運んで来ない。
だが、ジブリールは、そんなウナトの対応が気に食わなかったらしい。
『初耳だと? 一国の宰相が、国内での事を?』
フンッと鼻を鳴らす気配がした。
『しかも蟻の一匹二匹の話ではない。戦艦とMSの事なのだが?』
ジブリールの視線に蔑みの色が追加される。
現在は宰相の地位にあるが、以前はオーブの首長会の中でも下位にあったウナトは敏感にそれを察した。
「……お恥ずかしい話ではありますが、我が国には前代表であるウズミの亡霊共が跋扈しておりまして」
『亡霊』と呟き、その不吉な響きの為かそれともウズミの名が気に障ったのか、ジブリールは眉根を更に寄せた。
前大戦におけるウズミによるオーブ、そしてマスドライバーの喪失は、ブルーコスモスにとっても痛手だったろう。
後にビクトリアで代用できたからといって、金銭的にも時間的にも損失は大きすぎた。
『それは行方不明の現代表のこと、なのかな?』
現代表という単語に今度はウナトの眉がぴくりと動いた。
――本来であれば今頃はユウナ、またはウナト自身がその地位にあった筈なのに。
「いえ、まさか。小娘の事ではありません。あのような小娘、いくら足掻こうとも痛くも痒くもございません故」
『と、言うと?』
ウナトの言葉にジブリールが興味を示した。その膝の上では黒猫が欠伸をしている。
「ジブリール様のお耳に入れるような者共ではございません」
キサカ、キラ・ヤマト、マリュー・ラミアスを始めとしたアークエンジェルクルー達、エリカ・シモンズ等、
幾人もの名がウナトの脳裏に浮かんだ。
その殆どは名しか知らない。今後も知るつもりはない。
「しかし、良い情報を頂きました。これで亡霊退治ができるというものです」
ウナトは唇を笑みの形に歪めてジブリールに視線を返す。
『ほう……?』
ジブリールもまた愉快そうに先を促した。無論その目に真の笑みの色はない。
(7/8)
ウナトは手元の端末を操作しながら言葉を続けた。
「先程のお話にありました『ムラサメ』ですが、軍所有機に紛失などございません。しかし、何らかの事故等により
ある程度の形を残したまま廃棄処分になった機体ならば幾つか存在いたします。
その機体の使用可能な部分のみを総て集めれば二機程度なら再構築も可能でしょう」
『では今度の件にはあのジャンク屋共が関わっている、と?』
「いえ、まさか」
意見を即座に否定された為か、ジブリールは不機嫌そうに黙り込む。
その様子に僅かに溜飲を下げながら、気づかぬ振りでウナトは更に続ける。
「部品のみをどれだけ揃えようともジャンク屋如きに再現を許すほど、このオーブの技術、易くはありません。
しかし、開発に係わった技術者が一人でもいれば、それは可能となるでしょう」
『それが亡霊の正体という事か』
「はい。正確には亡霊の一匹ですが。しかし『幽霊の正体見たり枯れ尾花』という言葉もございます通り、亡霊など
その正体が分かってしまえば、恐ろしくもなんともございません。早速退治いたしましょう」
そう言って結論付けたウナトだったが、ジブリールはそれだけでは納得しなかった。
『なるほどムラサメについては了解した。では、アークエンジェルとフリーダムはどう説明する?』
「そのような物、もちろん我が国とは何の関係もございません」
ウナトの心の中(うち)ではこれは嘘ではない。
確かに大戦後アークエンジェルはオーブに匿われていたのかも知れない。
いや、多分それは事実だろう。
しかし、オーブ軍とアークエンジェルが正式には何の関係もないのもまた事実なのだ。
『関係ない? 前大戦時にはかの艦と貴国との関係はそれは深いものに見えたのだが?』
冷徹な、そして嘲笑するような笑みを浮かべてそう言い放つジブリールに、ウナトは思わず声を荒げた。
「あれはただの疫病神です! あの艦があったが為に、オーブは徹底抗戦などという妄想を抱いてしまったのです。
あの艦が無く、またウズミが愚かな決断をしなければ、オーブの国土が焼かれることなどなかったものを!!」
それはこの会話中で唯一ウナトの真の――嘘も誤魔化しも無い思いだった。
ウナトもほとんど末席とは言えど首長会メンバーの一人として、いや、オーブ国民の一人として国が焼かれた
ことに対し忸怩たる思いを抱いていた。
ウナトには分からなかった。
国を焼くような決断をしたウズミが何故いまだに「オーブの獅子」として英雄視されているのか。
何故その娘カガリが、国民の支持を得ているのか。
(8/8)
『……それは我々ブルーコスモスに対する怨み言かな?』
ウナトの勢いに呑まれたのか、ジブリールが口を開くまでほんの少し時間が空いた。
しかし、その出てきた言葉も口調も普段のジブリールと些少の変わりもない。
「いえ。見苦しいところをお見せして申し訳ございません。
――ともかく、アークエンジェルは当方とは一切関わりはございません。その証拠、すぐにでもお見せいたしましょう」
対するウナトもその僅かの間に態勢を立て直していた。
これ以上は何も得られないとジブリールが判断したかどうか、それを切っ掛けに通信は終わった。
モニタが消え、端末のスイッチが幾つか点るだけの殆ど暗闇の室内でウナトは呟く。
「ミネルバと一緒とは都合がいい。──アークエンジェル、ついに捉えたぞ」
リソウノカケラ
“blue sky. 空の憂鬱”
初めて会った時に漠然と感じた。
初めて話をした時に確信した。
やはり私はマユに惹かれている。
だけど気にかかる事が一つ。彼女は私に笑顔しか見せていない。
他の表情を決して私には見せてはくれない。
彼女の色々な表情を見てみたいと思うけど、彼女は私に笑顔しか見せないのだ。
それは私に対する静かな拒絶なのだろうか。
昔、彼女と似た境遇の男は私に敵意を剥き出した。
彼女も彼と同じ感情を持っているのかも知れない。
マユ本人に確認する事が出来ればどんなに楽だろうかと思う。
だけど彼女の本心を知る事は怖い。彼女に拒絶されたらと思うと胸が苦しくなる。
知らぬ間に私は臆病になっていた。昔は怖い物なんてなかったけれども、今では怖い事がある。
それは私が年を取ったからなのかも知れない。
積み重ねた年月は私に様々な事を教えてくれたけれども、それは私に取っては有益なものばかりではなかった。
知りたい事、知りたくない事の分け隔てなく私は色々な事を教えられて、臆病になってしまったのだ。
執務室の窓から見上げる空は雲一つ無くて果てしなく青い。
その青さは眼に染みる程に鮮やかで私の心を憂鬱にさせる。
視線を下に降ろすとと私の陰鬱な気分を嘲笑う様に木々が風に揺られている。
窓硝子にはぼやけた輪郭の、今まで見た事がない様に情けない私が映っている。
私は全てをふり払う様に頭を振り溜め息を吐く。そして曇った硝子窓にマユの名前を書く。
マユ・アスカ。
何故か胸騒ぎがした。
かつて私に牙を剥いた男の名を書く。
シン・アスカ。
私の記憶が間違っていなければ二人は同じ日に同じオノゴロ島という場所で家族を失った筈だ。
更に二人とも同じ姓。
パズルのピースがはまった様な感じがする。
もし私の推測が正しいのであれば、私は二人を引合わせるなければならない。
二人を引き離した償いをしなければならない。
二人の運命を打ち砕いた人間として謝らなければならない。
そうしなければ一生後悔するかも知れない。
再び空を見上げると空は青いままだけど、穏やかで柔らかい青だ。
――マユとシンに同じ青い空を見せたい。
to be continued
河弥氏、真言氏 投下乙です
12話後編待ってました!
ザフト in AA に連合、オーブの反応 またまた続きが気になります。
リソウノカケラ
このまま淡々とマユとカガリの交流が続くのかと思ったらシン登場で
物語が大きく動くのだろうか?こちらも続き気になりますね。
>>鼎さん
スティングの心情を掘り下げてありましたが、ステラやアウルの記憶が無い事に
こだわらなかったのが、(あくまでも個人的に)少し残念でした。でも、無くした記憶
にはこだわらず、生まれた理由を存在理由として受け入れるのもまた味だったと思います。
>>河弥さん
GJです。ミネルバ、オーブ、連合と、AAの存在を軸にして物語が進み、それぞれの立場を
思いから関わってゆく物語にしびれます。
欠点を挙げるなら、次の更新が気になって仕方のないという所でしょうか。ところどころに
張り巡らされているであろう伏線を探しながら、期待して待つことにします。
投下乙でした。
>>リソウノカケラ
贖罪の意識から、カガリはシンとマユを引き合わせようとしていますが、その根底は
マユに会うための口実作りである気配がほんのりとlunatic風味? です。
幸せになって欲しいという思いから出た行動も、カケラ世界で、
カガリのやったことならば、ハッピーエンドにはつながらない気がします。
GJでした。
職人の皆さん、作品の投下ありがとうございました。
>>512 たしかに次が気になって仕方ないのが欠点だw
このスレの長編陣は更新が遅いけど、毎回読み応えがあるよ。
暗い短編なんていらないよな。
実録再開希望。
ぐつぐつの鬱展開もみたいけど、そろそろ容量が危ないなあ。
容量が余ってるから、職人さん人気投票でもするか。過疎だけど。
一人十票を好きな職人さんまたは作品に割り当てる形式で。
締め切りはこのスレが落ちるまで。
他に投票する人が居たら、次スレの方でまとめとく。
河弥氏に三票
真言氏に三票
戦史氏に四票。
† 5票
弐国 弐票
河弥 2票
真言 1票
高畑3票
†2票
弐国2票
赤頭巾2票
鼎1票
真言 2票
† 2票
河弥 2票
戦史 1票
鼎 1票
>>5弐1
弐国 弐票 に笑ったw
† 4票
河弥 4票
戦史 2票
宇宙少年の夢(真言) 一票
もしも明日がはれならば(美柚子) 一票
光差す場所は(弐国) 一票
謎短編(ひまじん) 二票
編集長に五俵じゃなくて五票
河弥氏 3票(彼女2、朝霧1)
真言氏 3票(Ex2、その他1)
†氏 1票(†1)
戦史氏 1票(戦史1)
黄昏 1票
高畑氏 1票
河弥氏の昨日の短編はインパクトがあったので少々甘目
528 :
途中経過:2008/03/05(水) 03:02:36 ID:???
赤頭巾
■■
河弥
■■■■■■■■■■■■■■
鼎
■■
真言
■■■■■■■■■■
戦史
■■■■■■■■
†
■■■■■■■■■■■■■■
高畑
■■■■
黄昏
■
弐国
■■■■
ひまじん
■■
美柚子
■
編集長(週刊新人スレ)
■■■■■
意外と投票があってびっくり。グラフにしてみた。敬称略 五十音順?
キャラ別に投票するなら、
ミツキ(弐国) に四票。
オリジナルキャラであの深さは面白い。
サイ(戦史) に三票
少年は成長するもんだ。カズイ・バスカーク卿にカトー教授と合わせて。
オルガ(真言、Ex) に二票
短い中、ナタル先生と絡めてのキャラ付けにインパクトがあった。
キラとシン(彼女の居ない世界) に合わせて一票
共闘関係で近くに居る分、互いの個性が出てきた。良い再構成だと思う。
真言3票
種蒔き夫妻2票
情熱1票
弐国2票
ひまじん2票
リクエストするなら真言と鼎に戦闘物を書いて欲しい。
10/
――ミネルバ 格納庫左翼。
「状況は――シンは……インパルスは健在か?」
モニターから目だけ逸らすと、右腕を包帯で吊り下げた金髪が居た。
急いでも、慌ててはいない……レイは乱す所の無く秀麗な相貌を晒し、
メカニックを問いただした。
「ほら」
傍らのヴィーノが、全体に青いインパルスのコンディション=グラフィックを示して
無事を教える。首には、四角い布製の、紐で吊り下げられた何かのお守りが揺れていた。
「インパルスに今の所大事はねえってさ! 赤服だけあるぜ、シンは」
「違うな、損傷が無いのは……インパルスの"所為"だ」
早口――だが静かに、諭すような声がヴィーノの熱を冷ます。
「え……?」
一瞬、ヨウランも"インパルスのお陰"と聞き間違えた。
「異常は……無いじゃんかよ。どういうことだろヨウラン?」
――俺に聞くなよ。
思っただけつもりが口に出してしまったようだ。赤服――ザフト一番のエリートを前に
不味い事をしたか、と不安にもなる。シンを誉めたのに……と理解のいかないヴィーノは、
口を半開きにしてインパルスのコンディション=グラフィックと睨めっこしていた。
整備班がなじられた事に気付かないヴィーノは、レイの目つきにも気付いていなかった。
縦の幅を二割ほど狭めた……これは馬鹿を見る視線だ。シンは絶対にしない目だ。
そんな目で俺たちを見るな、という憤慨が湧く。
「説明しろよ、レイ」口の端に怒りが篭った。ヴィーノの代わりだ。
薄氷を渡っているシンを心配するのはメカニックも同じで、パイロットであっても
ミネルバの仲間だと思うからこそ、緑と違う、真紅を主張する服が癪だった。
「ナチュラルみたいに一から十まで言う必要はないけど、解説はしてくれ。
じゃないと俺たちじゃ、シンにアドバイスだって送れない」
「ん……すまない」
咳払いで間を取るレイが、何故か"ナチュラル"の一言に淀んだ気がした。
そんなわけは無いから勘違いだろう。
「……有効な武器が無ければそもそも攻めない、敵も先に狙っては来ない
つまりはそう言う事だ」
「隙が出来るほど攻められないって事かな? 今のインパルスだと」
何も分かっていないヴィーノの台詞が、本当に正しいのかどうかは兎も角、
その能天気な表情になぜか苛つく。レイもため息で緊張を吐き出した。
「そう言う事だ……何か有効な武装があのシルエットに無いのか、ヨウラン?」
――そして俺に聞くのか。
普段のおちゃらけた言動があるから仕方がない事だろうか、ヴィーノを下に見ようとするレイに、
何とか言い返したくなった。そんな場合ではないと分かっていても、だ。
11/
「それを聞きにわざわざ来たんだな。機体の事ならヴィーノに聞けよ。こいつのセンスはな、
インパルスの合体機構について整備班長が意見を求めるくらいだぜ?」
ヴィーノに、なんとかいって欲しかった。
「でも……Dシルエットだぜ? 俺、戦闘になるだなんて――」
「其処で弱気になるなよ、"ドリルのついたインパルスは無敵だぜ!"って言ってただろ!?」
「DだろうがEだろうがなんでも構わない、とにかく急げ……」
レイが痺れを切らす。
『ザク出ます。オプションはブレイズ!』アビーの声だ。
「デイルが? 止血しただけで……」
艦の鳴動は発進のしるしだ。と、今度はメイリンが全艦に向け放送を行う。
『本艦はこれから大気圏降下を成しつつ、ユニウス7へ主砲による砲撃を敢行します』
あちこちで照明が落され、待機中だった機関士が続々と主機関に走ってゆく。
ヨウランの胸をびりびりと電撃のような緊張感が流れて、背筋が伸びた。
「はあああ!?」
ヴィーノは驚くのみだが、予想はしていたのだろう、レイは至って冷静なまま、
ツインテールのオペレイターが流す指示を聞いていた。
「最悪、MSを回収できない。インパルスやザクで大気圏に突入するか……
ヴィーノ、D(ドカタ)シルエットは他のシルエットと競合するのか?」
「チェストのアタッチメントを共有してるから、付け加えは無理だ。
それに戦闘中のドッキングは最低でも三秒も――」
「それは問題ない。シンは赤だ」
「うん、問題が無くてもフライヤーは……予備機がもう無いんだよ。使えるのは
全部使っちまったし、使えないパーツがDシルエットになったんだ」
「……そうか」
そんなヴィーノとレイの会話を耳に挟みつつも、インパルスのスペック表と並べて9ザクの
スペックを読む。出力、機動力、火力に防御力、どれをとってもバッテリー機には荷の重い、
もっというなら絶望的な相手だが、加えてインパルスはビーム兵器を持っていない。
「手持ちの武装だけか。ルナマリアのザクと協力できれば……」
『――ルナマリア機、中破。ユニウス7を離脱します!』
間が悪い、と吐き捨てたレイがインパルスの右腕に追加された武装に目を留める。
「これは残弾が残っているようだが、使えないのか?」
レイに指し示されたもの、それは――
「それって……使えるは使えるけど幾ら何でも――」
「何でも良い、使える物ならば、俺達が使ってみせよう……だから頼む!」
そこで始めて、レイの語気が荒くなったことに気付く。その瞬間までは
氷の静けさを保っていたレイが、感情の喫水線を見せていた。
レイも焦っていたのだ。
ヴィーノや自分の襟首を掴んで急かしたい内心をむかつく美形の鉄面皮で抑えて、
上っ面、表情だけの冷静を振舞っていたと、それに気付いた時、
「わかった……任せろよザフトレッド!」
ヨウランは反射的にそう答えつつ、9ザクを討つ方法を結実させていた。
12/ 赤服による対核ザク講座
『近くで出力負けするなら、中距離で機動力のプレッシャーを掛ける!』
シン達がせっせとメテオブレイカーを設置しているその間、核ザク相手の時間稼ぎを
買って出たその先陣は、現在地球暮らしのアレックス、本名アスラン=ザラだった。
人型で飛び出し、"上空"から二発、三発と撃ち込んでは再変形して距離をとる。
さかしまの豪雨を思わせる火力を回避し続けながらの機動戦だが、ザクの頭を抑えなければ、
未だに設置の完了していない破砕装置と避難していないMS部隊が狙われる。
『シン、そっちの進捗は!?』
急いで居るから聞かないでくれ、との返答に苦笑しながら操縦桿を切る。ムラサメの
左右に突き出した空力翼を掠めるようにビームが走り、"イカヅチ"ビームライフルで返した
逆撃は――やはり動きをかなり読まれている――あっさりと躱された。
『アスラン、気をつけろ。ユニウスがデュエイン軌道に入るぞ!』
『何……!? 交差軌道に入っていたのか! 代表!』
イザークの警告を聞く暇もあればこそ。ユニウス7を押し流すようなデブリの濁流が、
瞬きのい合間にルージュとムラサメを飲み込んだ。
デュエイン軌道(Orbit-Duane)――C.E.71の低軌道会戦においてデュエイン=ハルバートン
率いる地球連合軍第八艦隊が壊滅した時に生じた、濃密なデブリの充満する軌道である。
かつてアレックスとイザークが撃破した戦艦やMAの欠片――及び戦死者の遺体――で
構成されるそれらのデブリは質量の差から、危険度はユニウス7に比べるべくもないが、
落下軌道をとる彼らに対しその相対速度は秒速十数kmにも達する。
様々な大きさのレールガン弾頭がのべつまくなしに襲いかかるような物と考えれば、
脅威は理解しやすい。
会戦場所が低軌道であった為に大量のデブリが軌道に散乱し、C.E.73の現在に至っても、
回収の目処は立っていない。一世紀近い時間をかけてゆっくりと流れ星になるのを待つ間、
民間船舶どころか戦艦の通行も出来ない"死んだ"軌道となっている。
『自業自得……だが、!』
事前にデブリ接近の情報を知らず、ユニウス7の地表から離れていたカガリとアレックスは、
デブリの激流に飲み込まれしまった。ユニウス7周囲に残留した人工物とのブレークアップにより
級数的に増大した宇宙ゴミが、金属の瀑布となってやや下方から降り注ぐ。
本来なら、軌道が交差する前に全作業を終えて部隊を避難させようとしていた程の嵐である。
テログループですら岩陰に避難したのは宇宙に暮らす物の本能と言える。アレックスですら
即座に地表に立つビルの残骸に機体を寄せようとしたのだが、そうした危機感を持たない人物が
この場に一人だけ存在した。
13/
『うわ――!』
『アスハ代表……? カガリ――!』
カガリの"ルージュ"をデブリ嵐から救いだすべきか、9ザクの砲撃を避けるため
大地に張り付くべきか……その判断で迷った一瞬の内に、多数の熱源がムラサメを
捕らえた。
『ミサイルだアスラン!』
『下から――!? まだ敵の部隊が残存していたのか!』
呆然と浮かぶムラサメは良い的だったのだ。作戦の内容から既に分かっていたが、
敵は自殺覚悟でジュール隊を妨害している。
CIWSで防御を行っても、二方向から来る破片を完全には防ぎ切れない。
相当量の金属辺と、ミサイルから分離された弾頭が全身を叩き、縦横に揺さぶられた
ムラサメが態勢を崩してデブリに呑まれる悪循環に陥った。
『しまっ――!』
そもそも大気圏内を飛翔する為に生まれたムラサメである。
大気圏内では音速の衝撃波に耐える表面装甲でも、宇宙空間では紙に等しい。
ジンからザクへと続くザフトMSの堅牢さ、そして電力切れを心配してPS装甲を
量産機に採用しない事、それらはデブリ衝突の危険性が常に付きまとうからだった。
『アレックス、私の心配をしないでくれ。そのために此処にいるんじゃないんだ、私は!』
PS装甲による守りは、十全にルージュを守る役目を果たしていた。被害はむしろ、
発砲金属の装甲でデブリを受けたムラサメの方が大きい。
だが、急にデブリに呑まれたカガリは、河で溺れた者が流れに逆らって泳ぐように、
デブリ・ストリームの進行方向に逃げてる程混乱していた。
その最中で、助けを求める為にムラサメの姿を探したのは、むしろ僥倖である。
被害を受けたアレックスの機体に駆け寄るため、流れを横切って近づいた。
ルージュが差し出すシールドに守られ、ムラサメは少しずつ9ザクとの距離を広げる。
『そのまま下がれ。此処でオーブ代表に死なれると、ザフトの義が無くなる!』
イザークの怒声。だからザフト製のモビルスーツを使えばよかったのに、
というニュアンスを含んでいた。
『く……分かった!』
アレックスとしては、大人しく従うしかない。
14/
『だったら接近戦よ。近づいてしまえば火力の違いは現れないしね!』
ムラサメとルージュが撤退するのを見たルナマリアは、破砕装置の支えを
シンに任せて――インパルスが潰れ掛けた――9ザクに猛然と近づいた。
上空をデブリの嵐が吹き荒れる限り、敵の9クザクも無策で上昇はしない。
『射撃じゃ不利だもの……』
というか、撃っても当たらないのでそうするしかない。
『はああああっ!』
気合一閃、抜き放ったトマホークで9ザクのシールドを切り裂く。
損壊したシールドを切り離した9ザクは残った片腕で同様に
高周波ブレードトマホークを抜き放つ、が。
『ぬうっ!』と9ザクパイロットの声。
『甘いわね。ザクウォーリアのトマホークは……ビーム刃なのよ!』
刀身を振動させて装甲に食い込んでいくはずのトマホークが、バターでも
切るかのようにやすやすと半ばまで融解された。発振部分にビーム刃が到達し、
9ザクのトマホークが中心部から瓦解する。
『機体の出力が高くたって、それを活かせる武装がなくっちゃね!』
と、ルナマリアの台詞を聞いていたのではないだろうが、9ザクは背部のバックパックに
ワイヤーで括りつけていた円筒を取り出す。
『やば――はあっ!』
トマホークを取り落とした隙を狙う、機体を旋回させ、再び大きく振りかぶっての一撃は、
9ザクが真横の一文字に構えたビームサーベルによって阻まれた。
『やっぱり、色々持ってて当たり前よ……ねえっ!』
9ザク本来のトマホーク装備しか使えない道理も無く、サーベルの出現に彼女が驚く事も
また無かった。重い斧を振るって取り回しの容易いサーベルと剣戟を演ずる……が、
ルナマリアがザクが両手にトマホークを握らせて即席の二刀流としたとき、9ザクは片腕を
不利と見たか、即座にサーベルを投げつけて距離を置いた。
『やば……!』
投擲を切り払うルナマリアが、今度こそ危機を覚える番だ。
格闘戦で優位に立ちすぎる事で、機体の優位性を忘れさせ警戒させてしまった。
全力で後退されれば、推力で劣ザクウォーリアは9ザクを追う事が出来ない。
近接戦に高いセンスとスキルを発揮するルナマリアだが、適度に苦戦する様を見せ付け、
9ザクを間合いの中にひきつけておくべきだったのだ。
それでも、9ザクが放つ数発の弾丸を、右に左に、時として遮蔽物に拠りつつ
躱しきったのは、まさにザフトレッドの面目躍如だと言える。
15/15
緊迫の表情が更に強張ったのは、ザクがあさっての方向にビームライフルを向けたとき、だ。
『そう来るわよねぇ……!』
勝利条件を考えるまともなパイロットならば、誰だってそうする。
ルナマリアだって、同じ状況ならそうするだろう。だから彼女は決して敵のパイロットを
卑怯だなどとは思わなかった。
銃口の先にはメテオブレイカーが、それを支えるインパルスの姿があった。
『させない――!』
防御も考えずにザクを加速させ、射線に機体ごと割り込む。
ルナマリアに出来たのはただ、それだけだった。
三時限目 イザーク=ジュール
崩れ落ちるのは赤のザクウォーリア、進み出るのは白銀のザクファントム。
一振りの戦斧をしごいて9ザクと対峙する。
真打、イザーク=ジュールの戦術とは――
『気合だ、そして根性だ』
――精神論だった。
9ザクはただ、ビームライフルを、地に伏した赤いザクウォーリアに向けるだけで良い。
敵のパイロットは既に、冷静を取り戻していた。
『うおおおおおっ――!』
猪突に猛進するザクファントム。その後の光景は、あえて語るまでも無い。
続く。
というわけで、SEED『†』 の続きを投下させて頂きました。
長々と戦闘ばっかり続いてます。
で、今気付いたのですが、こっちは前スレですね。失礼しました。
それでは皆様は引き続きご歓談下さい。