【ドキドキ】新人職人がSSを書いてみる【ハラハラ】4
「オラーッ!そんなザマでプラントを守れると思ってんのか!」
「テメエみたいなクズの替わりは幾等でもいるんだ!やる気が無いならクビにするぞ!」
押忍!突然でありますが自分はヴィーノ・デュプレと申す者であります。今日はありがたくも教官殿方に特別訓練を頂戴しています。
アカデミーと言えばザフトの明日を背負う人材を育成する場所でありまして、不屈の精神を養う為に鉄拳制裁を初めとして様々な厳しい指導が吹き荒れるのであります。
「テメーら、お嬢ちゃんじゃねーんだ!気合いを入れんかい!」
「死んでも事件にゃならねえ!警察と相談して事故として処理してもらうからな!やる気がねえならここで死ね!そんなハンチクな心構えでザフトに入れると思うな!」
それにしても今日の教育はいつもに増して激しいのであります。
あそこいるレイ・ザ・バレルなどはぶっ倒れております。何故か今日はレイが厳しく指導を受けていたような気がいたしましたが気のせいでございましょうか?
しかしレイは隠れて怪しげな薬をやっている様な奴でありますから、良い気味であります。押忍!
地獄の様な時間が過ぎて今日も訓練が終わりました。でも、自分達にはまだまだこれからが大事であります。
先輩方に弛んだ気合いを入れなおして頂く馴染みの一発を頂戴いたしまして、更に後片付けもしなければなりません。押忍!
「オラ!ケツを突き出せ!気合いを入れてやるぞ!」
「テメエ!ケツを前に引くんじゃねえ!」
人格を否定される様な罵倒去れる事で耐えがたきを耐え忍びがたきを忍び精神を鋼の様に鍛え、ケツバットの激痛を受けて艱難辛苦を乗り越える強さを手に入れるのであります。
しかしやはり特権階級の身分であるシンとルナマリアはキツイ一発では無くて優しい一発なのであります。
気に入らない事ではありますが、二人は人の一人や二人は裏山に埋めていてもおかしくない連中ですので、先輩方が遠慮するのも仕方ない事にございましょう。
それでは自分は片付けがありますのでこれにて失礼します!押忍!
>>1乙、書評も楽しみにしてます。目次とかそこまで込みの新人スレだものねw
>>4 アカデミーは体育会系なのか・・・って、こんどはヴィーノかよww
押忍!自分はヨウラン・ケントと申す者であります。私事ではありますが皆様方に御報告する事があります!
なんと自分と親友のヴィーノ・デュプレがめでたく赤服に内定いたしました!これも皆様方の生温かき御声援のお陰であります!
教官殿や先輩方のビンタやケツバットを耐えて幾星霜……万感の思いで一杯であります。
赤服と言えば出世街道間違いなし、末は国防委員長か政治家と言われる超エリート集団であります。
たとえナチュコロの民間人を虐殺しようが女性兵士を手籠めにしようが不問にされると言う特権階級です!押忍!
ちなみに自分は新型のMSのパイロットとして新造艦に配属される事が決まっております。もう、空気キャラなどとは呼ばせません!
ところで、ここに一枚の手紙があります。自分の下駄箱に入っていたのですが……差出人はルナマリアであります。
そうです!あのムチムチ子が赤服に内定した自分に告白してきたのであります!
このように赤服ともなればモテモテになるのであります。
ルナマリアが簡単に股を開く女だと言うことには違和感を感じますが、長い禁欲生活で溜った白い情熱を打ち込んでやろうと思っております!押忍!
さて、待ち合わせの場所は裏山であります。それではこれにて失礼します。え?赤服のハッスルする姿を見たい?
……仕方ありません。ちょっとだけですぞ?
……そろそろ時間でありますが、ルナマリアの姿は見えません。おや、来たようです。
あれ?手には釘バットを……うわっなにをするきさ
……押忍。ヨウラン・ケントであります。今日はベッドの上から失礼します………。え?元気がないですって?
……そうです。元気はありません。謎の暴漢に襲われて全治二週間の怪我を負ってしまいました。ちなみにその時の記憶はございません。
そんなこんなで赤服の内定を取り消されてしまいました。弛んでいる人間は赤服にふさわしくないそうです。
余談ですがヴィーノも同様で内定を取り消されてしまいました。
代わりに赤服に選ばれたのはシンとルナマリアです。
昔、先輩に聞いた話ですと赤服に内定した人間が暴漢に襲われた事件は過去にもあったそうです。
狡猾で残忍なOBの方などは赤服内定者を何人も血祭りに上げて赤服に選ばれたそうであります。
……今までの苦労はなんだったのでしょうか?自分は犯人を許しはしません!皆様方も犯人を見付けたら是非自分に教えて下さい!押忍!
>>実録
笑い死ぬかと思った。ヨウランとヴィーノ哀れ。次回作を楽しみにしてます。
>>7 実録は終りなんじゃ……。
>>8 書くごとにネタが難しくなるだろうけどね
って、事でガンガレ職人さん
砕かれたのは運命。
繕う事は不可能。
しかし少女は諦めなかった。
愚かゆえに全てを信じようとした。
理想だけを抱いた少女は孤立無縁の花。
再び少女の運命が砕かれた時、少女は──
原案:高畑
制作:ペプシマン
一本足りない職人二人がタッグを組んだ!珍妙なコンビが送るのはカケラシリーズ第2弾!
“リソウノカケラ”
そのうち投下予定
マジですよ?
>>実録
空気キャラの悲哀と体育会系ザフトの厳しさを垣間見させて貰いました。
このザフトならきっと文科系の連合に圧勝で来ますよ。
新人スレに熱さと濃ゆさと高いテンションと体育会系と、そして更なるカオスを有り難う。
次回作期待しています……って高畑さん、貴方とうとう原作にも手を出したのですか。
リソウノカケラ、期待しております。
>>6 >狡猾で残忍なOBの方などは・・・
読み飛ばすとこだった。彼のことか・・・wwww
第一話 邂逅 1-1
一人の少年が儚げに立っている。手にピンクの携帯電話を握り締め、地面にぽっかりと開いた穴に視線を走らせていた。
土煙が上り焦臭さが立ち込める中トダカは思わず眉間に皺を寄せ目を細めた。
その先に何が有るのかはトダカの位置からは確認出来ない。だが、少年が穴の方へと歩み寄る姿がトダカの視界に入った。
一歩、また一歩。少年はまるで死に魅入られたかのような生気の無い足取りで歩いて行く。
トダカは少年の元へと走った。避難船の出発迄のタイムリミットはもう残り少ない。トダカは一人での多くの民間人を助けるという責務があるのだ。
「何をやっているんだ。早く逃げなければ君も巻き込まれるぞ!」
トダカは少年の肩を力任せに掴んだ。
それはまだ大人に成りきれない華奢な感触で、ほっそりとした首筋は陽射しの厳しいオーブにおいては珍しい透き通る象牙色の様を呈している。
少年がトダカに振り向いた。瞳は紅く輝いているものの微かに濁っている。その瞳の輝きにトダカは思わず言葉を失った。
「――邪魔しないで下さい」
少年は穴の奥深くを指差した。そこには小さな腕だけがあった。
「あの先には家族がいるんです。早く行かないと、俺は置いていかれちゃうんです。」
少年は小さな声で呟く。哀しみも怒りも感じさせない声色だった。
多分少年の家族がそこにいたのだろう。トダカはきつく唇を噛み締めた。彼処には守れなかった生命があったのだ。
トダカの腕を振り切り少年は穴へと向かおうとする。トダカは力任せに少年の腕を掴み引き留める。
「いいから逃げるんだ。このままでは君も死んでしまうぞ!」
トダカの怒号に少年は目を見開いた。一粒二粒と涙が溢れ落ちる。歯をカチカチと鳴らしながら肩を震わせて少年はトダカを見上げて来た。
辺りに少年の嗚咽が響く。トダカは少年の肩を優しく抱き抱えた。
柔らかな感触。それはトダカには慣れないものだった。力を入れたら壊れてしまいそうであった。
「今の君には酷な事かも知れないが、今は逃げるのが先だ。早く!」
トダカは少年を連れて走り始めた。少年の足取りは重かったが、それでも前へと向かっていた。
トダカにはその姿に希望と見た気がした。
戦闘が一段と酷くなる。トダカは思わず舌打ちをした。
自分が後少しだけ早ければ少年の家族は助かったかも知れない。だからこそトダカはせめて少年だけでも守り抜きたいと思った。
もしかしたらそれは罪悪感なのかも知れない。
トダカは自問する。任務に忠実で有りたいと日頃から思っているトダカには、少年の家族は不運にも戦闘に巻き込まれ死亡したとは思えなかった。
トダカは自分の非力さを感じ思わず唇を噛み締めた。
少年の吐息が微かに聴こえる。少年の顔を見やると酷く青ざめた表情をしていた。そして何物にも交わろうとせずに輝く紅の瞳は妖しく輝いている。
不安定さを内包させた少年の姿ににトダカは囚われて行くような気がした。とてつもなく大きい十字架を背負わされたかの様だった。
トダカは少年をかばいながら走り続け港へと到着した。船に乗り込むと同時に部下に合図し出港させた。
この時点ではトダカは自分と名も知らぬ少年の運命がどう重なって行くかを知る術は無かった。
避難船は沢山の哀しみを抱いて進んでいった。
投下終了です。このスレに投下するのは初めてですがよろしくお願いします。
>>生きるための情熱としての復讐
投下乙です。まだまだ物語の始まりなのでシナリオ的な面では余り語ることがありませんが、
感想いきます。
まず最初に惜しいと思ったのが、一段落目と二段落目の順番です。
この作品はトダカ視点で進んでいると思うのですが、最初の一段落目だけが第三者の視点に
なっている為に第二段落でのトダカ視点が唐突に感じました。これを逆に為るだけで、読んでいる
方は話の視点が誰にあるか、という情報を素早く得る事が出来て話に入り込みやすいと思います。
文全体の感想としてはトダカのシンを見る目線がやや耽美な風に感じました。家族を吹き飛ばされた
直後のシンに希望を見出すには、シンの描写に少し説得力が足りなかったかな、と思います。
それではじっくりゆっくり慌てず焦らず、続きを書くことを楽しんでください、のんびり待ってます。
20 :
3-214:2007/05/08(火) 23:06:17 ID:???
久々の投下です。
全部で 8ヶ (このレス含め 9ヶ)ですので、途中で止まりましたら、
連投解除をお願いします。
21 :
3-214:2007/05/08(火) 23:07:36 ID:???
(1/8)
第4話 「蒼穹 −やくそく−」(前編)
「あっ、風船!」
小さな女の子の声に、その場にいた数人の視線が空へ向けられた。雲一つない蒼穹を赤い風船が昇って
ゆく。
女の子がつまづいた拍子に、手に持っていた風船のひもを離してしまったらしい。
女の子は残念そうにしていたが、やがて笑顔で両親の間に入り込むと小さな手で母親の手を握った。
ふと、それまで風船を握っていたもう片方の手が空いたのに気づいて、父親の手も握る。
「いいお天気になったわね」
「ああ、最高の結婚式になりそうだ」
女の子と両親は楽しげに言葉を交わしながらその場を立ち去った。
◇ ◇ ◇
同じ頃、カガリはセイラン家の窓から外を眺めていた。
その視界に赤い風船が入ってきた。しばらく目で追っていたが、風船はゆっくりと空へ消えていった。
カガリは自分の左手に視線を落とした。
赤い色は、その薬指にあった指輪を思い出させる。その指輪とはほんの数日間だけしか一緒にいなかった
というのに、指輪がない今、カガリは自分の半身を失くしたような気がしていた。
カガリの視線が壁際に置かれている大きな姿見に──鏡の中にいる自分に移った。
白を基調とした長い裾のドレス。レースのヴェール。その下の飾り立てられた髪。かつてなく色鮮やかな
化粧。
まるでおもちゃの人形のようだな、と思い、カガリは小さく苦笑した。
(まるで、じゃないな。今日から私は人形になるんだった)
形だけの「代表」から「花嫁」へ変わるだけの事。
後日、夫とその父親であるセイラン親子に実権を譲り渡し、カガリは引退する予定だ。その後はユウナの
妻として人形のように生きるだけ。
それはカガリ自身が選んだ道。たった一つの条件と引き換えに、彼女自身が提案したこと。
カガリはもう一度窓の外を見た。
世界はまた二つに割れ始めてしまった。ここから見えない遠いところでは、戦闘が行われているのかも
しれない。
それでもアスハの名を継ぐ者として、カガリはもう二度とこの国を焼くわけにはいかなかった。
青い空のずっと上を仰ぎ見る。
カガリの心に空の上にいる最愛の人と、それよりもっと遠い所にいる父の姿が浮かぶ。
(お父様、こんな風にしか国を守れない私を許してください。それに……)
カガリの頬を光るものが一筋零れ落ちた。
(さようなら、アスラン……)
22 :
3-214:2007/05/08(火) 23:09:24 ID:???
(2/8)
◇ ◇ ◇
更に同じ頃、セイラン家の別室で、ユウナとウナトが話をしていた。
ユウナは白いタキシードの正装だ。先ほどまで母も一緒にいてユウナの結婚を喜んでいたが、今は祝いの
客の相手をしに出ている。
「それにしても、カガリが自分から僕との結婚を言い出すとは思いませんでした」
「しかも、あのような条件をつけてくるとはな」
ウナトが息子の言葉に花婿の父とは思えない苦い顔で頷いた。
◆ ◆ ◆
──話は三日前に遡る。
大西洋連邦がユニウスセブン落下を行ったテロリストの引渡しやプラントの自治権の放棄など、無茶と
しか言えない要求をつきつけ、それとほぼ時を同じくして再びプラントへと核が放たれた。
戦端はまたもや地球連合軍から開かれたのである。
幸いにもプラントが極秘裏に開発していたNスタンピーダーにより核はすべて自爆したため、迎撃に出た
ザフト以外にプラントの被害はなかった。
しかし、「核は撃たれた」のだ。
穏健派として知られるデュランダル議長の奮闘も空しく、プラントも「積極的自衛権の行使」という名目の
抗戦を決定してしまった。
これにより、世界、いや人類は再び戦火を大きく燃え立たせることとなった。
オーブもまた、傍観者ではいられなかった。
「再び国を焼かぬように」と、早々に大西洋連邦との同盟締結を決定してしまったのである。
カガリはどうしようもない悔しさに心を苛まれていた。
同盟を締結しなければ、国は再び炎の中に沈められるかもしれない。そうすればまたシンのような思いを
する者を作り出してしまうだろう。
だが本当にそれで良いのだろうか? 戦争に参加する、と言うことは、オーブを守るためだけに闘う、と
いうことではない。もっと積極的に、ザフトを──プラントを滅ぼすために闘う、ということなのだ。
そのために命を落とすことになるだろう、オーブ兵は?
オーブ軍と戦い命を落とすだろう、ザフト兵は?
軍人ならば、それも仕方ないと割り切らなくてはならないのかもしれない。
しかし、オーブ国民、いや、ナチュラルだろうがコーディネイターだろうが、命の重さは同じだと思う
からこそ、戦争自体を回避したかった。アスランもそれを望んだからプラントへと旅立った。
それなのに、アスランが発ってからまだ一日しか経っていないのに、世界は二人が望んでいたのものとは
正反対の方向へと向かってしまった。
もはやカガリに出来るのは、ミネルバを送り出すことと、アスランが無事に帰国することを祈ることだけ
だった。
23 :
3-214:2007/05/08(火) 23:10:48 ID:???
(3/8)
◇ ◇ ◇
ミネルバが慌しくオーブを出港した直後、待ち構えていた地球連合軍による攻撃が始まった。
それに対してオーブは「理念」を盾に、ミネルバの救援だけでなく退避行動への制限まで行った。
「理念」はあくまでも名目でしかない。オーブが大西洋連邦との同盟締結のためにザフトの最新艦である
ミネルバを手土産代わりにしたことは誰の目にも明らかだった。
オノゴロから戻ったカガリが発令所に駆け込んだ時、オーブ軍はユウナに指揮されていた。
いや、指揮されていたなどと言うほどのものではない。
まるで作り物の戦争映画でも見ているかのように、ユウナは兵士たちと共にモニターに向かって囃し立てて
いた。
「何をしている……?」
カガリは自分の怒りを必死に押し殺しながら声を発した。何をしているか、など、一目瞭然だ。だが確認
せずにはいられなかった。
その声に、ユウナと兵士たちがぎょっとしたように振り返った。兵士たちはこそこそと自分の持ち場に
散り、カガリの前にはユウナだけが残った。
「ユウナ、これはどういうことだ!? ミネルバが戦っているのか? ──地球軍と」
ユウナはしばし気まずそうな顔で視線を逸らしていたが、やがて開き直った態度でカガリに向き直った。
「そうだよ。オーブの領海の外でね」
ユウナは自分の手柄を誇るかのようにしゃべり続けた。
曰く、オーブはまもなく大西洋連邦との同盟を締結する。だから地球軍の一員となるのだ。あれはザフトの
艦、つまり敵艦なのだ。まだ正式に調印したわけではないのでミネルバが領海外にいる限り攻撃はしない。
それはオーブの温情なのだ、と。
その時、兵からミネルバがオーブの領海内へ後退しようとしていると報告が入った。
「警告後、威嚇射撃を。領海に入れてはならん。それでも止まらないようなら、攻撃も許可する」
「ユウナッ!」
慌てて制止しようとするカガリをユウナは威圧的に怒鳴りつけた。
「国はあなたのおもちゃではありませんっ。いい加減、感傷で物を言うのは止めなさいっ!」
カガリは唇を噛み締めた。初めてユウナに恫喝されたことよりも、これが自分の──オーブの選んだ道
なのだということを思い知らされたことが、悔しかった。父が命懸けで守った理念を娘の自分が汚している
ことが不甲斐なかった。
24 :
3-214:2007/05/08(火) 23:12:09 ID:???
(4/8)
俯いたカガリの瞳に握り締めた拳に光る赤い石が映った。その赤い石が、シンの瞳とアスランの別れ際の
言葉を思い出させた。
(シンは家族を殺されたと言った。私は今度はシンの命をも奪おうとしている……?)
『カガリも頑張れ』
アスランはそう言った。自分はその期待に応えられているだろうか?
カガリは小さく首を振った。まだだ。私は何もしていない!
カガリはユウナを突き飛ばすようにして、マイクの前に立った。
「カ、カガリィッ!?」
突然のことにユウナはただ目を白黒させてその場に立ち尽くしている。
「オーブ艦隊、ミネルバを援護せよ! あの艦(ふね)を撃たせてはいけないっ!!」
カガリの言葉に、発令所全体が一瞬シンとした静寂に包まれる。
「オーブ軍、私の言葉が聞こえたのなら復唱、直ちに命令を実行せよっ」
カガリの再度の言葉に、発令所が生き返った様に活気づく。
「カガリ、君は一体!」
「お静かに。代表の邪魔になります!」
ユウナもようやく動き出したが、兵士の一人に止められる。
ユウナは何かを探すように室内を眺め、戸惑ったような顔で自分を見ている数人と目が合った。
この発令所には父ウナトの息のかかった者が数名送られている。そのことを知っているユウナは、彼らが
そうであることを確信した。
ユウナは声に出さず、目で自分を助けるよう訴えた。その程度の分別はユウナにもあるのだ。
だが彼らは互いに目配せした後、ユウナのことなど気にもしていないように自身の業務へ戻っていった。
「なっ!?」
ユウナは思わず大声を出しかけて、慌てて手で口を押さえた。
いずれ自分たち親子が実権を握るために色々と準備をしていた。しかし、まだ万全には程遠い。
ユウナは自分の立場を思い知った。今、この場を支配しているのは、代表首長であるカガリだ。閣議に
参加していてもウナトの息子というだけの自分など、ものの数にもはいらない、ということか。
『カガリ様、連合軍への攻撃は?』
「いや、連合艦隊及びMSへの直接攻撃はするな。だが艦隊のミサイルはミネルバには一発も当てるな。
できるな?」
『お任せください』
「MSによる攻撃だけならミネルバで対応可能な筈だ。それとミネルバにはオーブの領海線ギリギリの
ところを行くように伝えろ」
『はい、了解いたしました!』
(よくも、この僕をっ……!)
艦隊の指揮官と通信を交わすカガリを見ながら、ユウナはギリギリと歯軋りをする。もしも今カガリが
ユウナを振り返ったら、その形相に息を呑んだに違いない。
ユウナは自分を止めていた兵士を乱暴に振りほどくと、発令所を出た。心に暗い炎を燃え上がらせながら。
25 :
3-214:2007/05/08(火) 23:13:50 ID:???
(5/8)
◇ ◇ ◇
一方、海上ではミネルバが圧倒的多数の地球連合軍と必死で戦っていた。といっても防戦一方に追い
込まれている。
レイとルナマリアのザクは甲板上に配備されているが、ミネルバが撃ちもらしたミサイルを防ぐのと、
両手の指でも足りないほどのMSの対処で手一杯だった。シンのインパルスは巨大MAの対応でこちらも
余裕はまったくない。
オーブはやはり自分を裏切るのか。
戦いながらもシンの頭の片隅からそのことが離れない。
ルナマリアと話して、一度は祖国に対する認識を変えかけたシンだったが、彼の希望はまたもや打ち
砕かれた。
オーブは、地球連合軍に与しようとしている。たった二年前、自身を滅ぼした組織だというのに。
ならば、シンの家族はどうして死ななければならなかったのだろう?
その時、シンの視界に連合艦隊から発射された大量のミサイルが入ってきた。また、逆側のオーブ艦隊
からもそれに劣らないほどのミサイルが発射される。
(間に合わないっ!)
シンの脳裏に、無残に破壊され撃沈するミネルバが浮かんだ。仲間たちの姿がここから目と鼻の先で
殺された家族の姿にオーバーラップする。
「やめろーっ!!」
声の限りに叫んだシンを、突然激しい衝撃が襲った。
シンがミネルバに気を取られている隙に、巨大MAがインパルスの脚部をその巨大な鉤爪で掴んだのだ。
「しまった!」
と、シンが思うのと同時に、バッテリーが切れPS装甲が落ちてしまった。まさに最悪のタイミングだった。
インパルスは海面に向かって叩きつけるように振り回された。強度が極端に落ちたインパルスの脚部が
おもちゃのようにもぎ取られる。
強烈なGがかかり、シンの意識がなくなりかけた。
(俺は、死ぬのか……?)
シンは、自分の直上に死の翼が広がるのを感じた。
家族を失った時、それにアーモリーワンで奪われた三機を追って実戦を経験をしてからというもの、
死は常にシンの近くにあった。
が、今ほどそれを間近に感じたことはない。
(イヤだっ!!)
シンの頭の中に、何かが弾けたような感覚がよぎった。
26 :
3-214:2007/05/08(火) 23:16:33 ID:???
(6/8)
「連合およびオーブ艦隊からミサイル多数接近、対応間に合いませんっ!」
「くっ……!」
火気管制官のチェンの報告にタリアは爪を噛んだ。
こんなところで終わるわけにはいかなかった。周囲から「議長の愛人」と後ろ指をさされていることは
知っている。そんな風に言われても仕方ないという自覚もある。
しかし、タリアには自分が艦長に任命されたのは、そのためだけではない、というプライドもあった。
そうでなければ、最新艦の艦長、しかも士官学校卒業直後のひよっことはいえ、ザフトレッドを三人も
任される筈がない。
その自分がこんなところで生贄にされて終わるなど、許せるわけがない。
「あっ!」
バートが驚愕の声をあげた。
「どうしたのっ!?」
「は、はい。オーブからのミサイル、本艦を飛び越えて連合のミサイルと相打ちに……」
「なんですってっ!?」
タリアは自分の耳を疑った。しかし事実、ミネルバに雨のように降り注がんとしていたミサイル群が消えて
しまっていた。
「艦長、オーブ艦隊に動きあり。領海線に沿って展開しています」
「領海線に沿って……?」
タリアは混乱していた。何が何だかわからない。と言うより、オーブは一体何を考えているのっ?
「艦長、オーブ艦隊の旗艦と思われる艦で何か光っています。モールス信号のようです」
「モールス信号ですって?」
通信技術の発達した昨今、モールス信号など使用されることはほとんどない。光を判別できる距離なら
通常通信が十分に可能なためだ。しかし、通信機器を使用せずとも意志の疎通を図れるこのシステムは、
現在でも士官学校の必須課目である。
「視界が悪いけど、判読できる?」
「はいっ。……オーブ ノ リョウカイセンゾイ ニ コウコウ セヨ……。 オーブの領海線沿いに航行せよ、
ですっ」
「…………」
その指示をすぐに受け入れることはタリアにはできなかった。つい先刻まで直接の攻撃だけはないものの、
敵意を露わにしていた艦隊からの指示になど従える筈がない。信じて後ろから撃たれでもしたら、それこそ
物笑いの種である。
27 :
3-214:2007/05/08(火) 23:19:23 ID:???
(7/8)
「艦長っ!」
「何なのっ!?」
矢継ぎ早の報告に、ついタリアの声が険を増す。
「オーブ艦隊より全周波通信です」
「流して」
タリアの指示により、オーブ艦隊からの通信がブリッジ内に響く。
『オーブ領海外で戦闘中の両軍に告ぐ。わが国は領空・領海内への許可なき艦・MS、およびミサイル等
火器の侵犯を一切認めない。繰り返す。オーブ領海外で……』
「どういうこと……?」
タリアは爪を噛んだまま考え込み、はっと気づく。オーブ艦隊はミネルバが領海線に沿って航行する限り、
連合からの攻撃を防ぐ、と言っているのだ。オーブの領海を守る、という名目の下に!
「マリク、ミネルバをオーブの領海線に沿って航行させて。領海内に侵入しないように注意して」
「はいっ」
「アーサー、オーブ側の警戒を頼むわ。不審な動きがあれば、私の指示を待たずに動きなさい」
「はっ、了解しましたっ」
ご丁寧に敬礼まで返す副長にタリアは内心で苦笑する。
ミネルバはオーブの領海線をなめるように艦を進ませた。
地球軍艦隊から相変わらずミサイルが追いかけてくるが、その悉くがミネルバに届く前にオーブ艦隊に
落とされる。
その合間を縫って発射されるビーム兵器やMSの攻撃は、デッキのレイやルナマリア、それにチェンや
マリクがうまく対応している。
先刻よりミネルバの新たな損傷は、ゼロと言っても過言ではなかった。
28 :
3-214:2007/05/08(火) 23:21:14 ID:???
(8/8)
「艦長、連合軍が後退して行きます。撤退行動のようです」
「えっ!?」
早すぎる、とタリアは思った。オーブ軍の行動に呼応したとしても早すぎる撤退だ。火器による艦隊からの
攻撃が不可能だとしても、まだMS戦という手がある筈なのに。
そういえば、あの巨大なMAはどうしたろう?
そう考えたタリアに、タイミングよくメイリンから報告が入る。
「艦長、シンがっ!」
「どうしたの?」
タリアは悪い予感がした。シンの対応はメイリンに任せっきりで、ろくな援護もしないまま孤軍奮闘させて
しまった。
戦闘不能で帰艦するのならまだいい。アーモリーワンで強奪された三機のMSに加え、インパルスさえも
失ったら……と、タリアは奥歯をぎりっと噛んだ。
「インパルス、連合艦隊のうち六隻を撃沈、帰還します」
「六隻!?」
タリアは思わずチェンに確認を取った。
「間違いありません、六隻です。うちニ隻は空母です」
その報告は、タリアにとってその日最大の驚愕をもたらしたのだった。
29 :
3-214:2007/05/08(火) 23:32:13 ID:???
>前スレ 311,315様
遅くなりましたが、ご意見をありがとうございました。
ウズミのとった策については、自分もベストだとは思っていません。
ですが、「何がベストだったか」と聞かれると、? なのです。
なので、このSSでのシンの疑問への回答はまだ出ていない状態です。
(これ以上は考察スレ向きになってしまうでしょうか?)
言い訳になりますが、自分は種(&種死)はTV本編しか視聴してません。
ノベライズは、2巻の途中で止まってます。
ですので、サハクがどうのと言われてもまったくわかりません。
(他の方のSSに名前が出てくるので、オーブの関係者なんだろう、程度の知識です)
セイラン親子に至っては、タヌキ親父と馬鹿息子 との印象しかありません。
彼らにつきましては、この路線で書き始めてしまったので、このままで行く予定です。
せっかくいただいたご意見を生かせず、申し訳ありません。
広い視野を持って書けるように頑張ります。
また思うところがありましたら、レスをいただけると嬉しいです。
慰霊碑にて。Gloomypupil bride meets strange maiden.
慰霊碑の回りには沢山の花が咲いている。
色鮮やかに健気に咲く花は死者の魂を癒す事が出来るだろうか。戦乱の中で散っていった命全てに安らかな眠りを。
それが私の望み。
「あなた……幸せ?」
不意に声をかけられ私は黙祷を止めて目を開いた。声の主はまだあどけなさが残る少女。雰囲気として儚い感じがする。服装は白のワンピースに麦わら帽子。私には絶対に似合わない格好……少し羨ましい。
「さあな……どうだろう?私には解らない」私は仄かに笑みを浮かべて少女に返す。
「私、あなたの事を知ってるわ。前にTVでみた事がある。……暗い瞳をした花嫁。そうでしょ?」
「あ……ああ。」
いきなりな事を言われて歯切れが悪い返事をすると、少女は私の瞳を覗き込む様に見つめてくる。
「TV見たときとは違って少し柔かい瞳ね」
「そうか?」
ハハハと笑いながら相槌を打つと少女は満足した様に笑う。
「花が吹き飛ばされたらあなたはどうする?」
「そうだな。私ならまた花を植えるな。何度でもそうする」
「私なら花を守る為に温室か何かを作るわ。二度と飛ばされないようにするのが大事よ」
……少女の言葉はもっともだ。対策を練れば花は二度と飛ばされる事は無いだろう。
「凄いな。私にその発想はなかったぞ」
私の言葉に少女は目を細めて悪戯っぽく微笑む。
「それは貴方の視野が狭いと言うことね」
「……厳しい事を言う」
少女の物言いはシニカルなものだが不思議と嫌悪感はない。
「じゃあ、私はこれで。また会えたら良いね」
「ちょっと待ってくれ。名前を聞かせて貰って良いか?」
「私の名前があなたに意味のあるものかな?どうしてもというのなら、私の事は箱庭の人形と覚えておいて。」
少女は軽く会釈をしてゆったりとした足取りで去って行く。
しかし箱庭の人形とは言い得て妙だ。少女のあどけなさと儚い雰囲気を上手く言い表している。
また会えるかは解らないが、また会ってみたいと思わせる不思議な少女だ。
──しかし私の事を暗い瞳をした花嫁とは。嫌な事を思いださせてくれる。
──to be continued──
つーか箱庭系って難しいわ。挫折したら高畑さんヨロシク。
どうせまた追い出されるんじゃね
ここは何でも受け入れる場。歓迎するぞ。
>>214 シンの種割れ後の描写があっさりと為すぎている、と思いましたが、
今回の主題はカガリの決意にあるようなので本編をなぞっているところは
むしろ完全に飛ばして、オーブの軍司令部からカガリ視点のみで話を進めて見る、
というのも良かったかもしれません。
七レス目と八レス目は纏めて一レスに収まりますよ。
それから、作者さんが本編のキャラの行動を良かったと思うかどうかは別に
作品には関係ないと思いますよ。SSの中で、登場人物たちがウズミの策について
どう思っているかがキチンと描写できれば良いと思います。
>>リソウノカケラ
雰囲気は面白いです。マユの雰囲気に関してウンメイノカケラを呼んでいる事前提
なのが少しハードル高いですが、其処は文量と描写で埋めていけば良いと思います。
ただ一点、自分でSSのジャンルを箱庭系です、と決めてしまう必要は無いと思いますし、
ジャンルを箱庭系(と呼ばれる雰囲気を持つSS)に為たいのであれば、マユの名乗りを
箱庭の人形、等とする事はあざといと思いました。ギャグSSを「今から面白い事書きます」
で始めるようなもので、ハードル上がります。
お二方とも投下乙でした。
>>29 作者がどう思うかは置いといて(大事だけど)、キャラの考えがブレ無ければ良いと俺は考える
>>30 台詞回しがちょっとわざとらしく感じる。流れから行けば当然意図的なものだろうけどね
ご両人とも投下乙
>>32 主人公は「暗い瞳をした花嫁」じゃん。あっちはスレ違い、追い出されるよ。よく嫁
>>32はマユスレの住人ではない荒しだと思われますので相手にしないで下さい
押忍!再びやって参りましたが自分はヨウラン・ケントと申す者であります!今日は同期のシンに付いて街をぶらついております。
悔しい事にシンは赤服のオーラを漂わせて自慢げに歩いています。周囲の婦女子から熱い視線などを送られているのですが、奴らは全く解っておりません!
賢明な読者の皆様方ならお解りだと思いますが……本来なら!自分が赤服だったのです!シンは繰り上がりの赤服なのであります!
おや、シンの様子がおかしいですね……。
なんと!パツ金の婦女子の巨パイを揉みしだいているじゃないですか!
しかも揉みしだかれている婦女子は嬉しさのあまりアへ〜などと悶絶しています!
見せつけてくれるじゃありませんか。アカデミー入学以来女日照りで右手が恋人で、夢でしか会えない可愛いあの子を一途に思う自分に対する当て付けだとしか思えません。
クゥ〜……本来なら!自分があのたわわな実りを揉みしだいていたはずなのです!
今の自分に出来る事と言えば……その光景をしかと目に焼き付けて今夜一人静かに反芻する事だけであります……。押忍!
シンはと言えば充分巨パイを堪能したのか揉みしだくのを止めて婦女子と歓談しております。
多分今夜あたり大人のお突き合いをしようと交渉しているのでありましょう。全くけしからん事じゃありませんか!
赤服が響かせるのは婦女子の淫猥な嬌声ではなく、ナチュ助の断末魔でなければなりません!
読者の皆様方に断っておきたいのですが、自分はシンが羨ましいとひがんでいるのではありません!
常識的な一般論を言っているだけであります!押忍!
おっと、呼び出しがかかりました。自分達には任務があるのでこれにて失礼いたします!押忍!
第一話 邂逅 2-1
少年は膝を抱えてしゃがみ込んでいる。虚ろな瞳でぼんやりと宙を見つめていた。
混雑する港の中で少年の周囲だけが異質な雰囲気を漂わせている。
トダカがそれに気付いたのは夕暮れに差し掛かった頃だった。
トダカはふと少年の感触を反芻した。今にも壊れそうな柔らかで華奢な肩。鼻孔を擽った微かに甘い体臭。そして何物にも侵されないかの様に輝く紅の瞳。
トダカは少年へと歩み寄る。手の平に汗が滲むのが奇妙に思えた。
「――君はこれから何処へ行くんだ?」
一途に仕事に打ち込んできたトダカであるから、優しい言葉も常套句も使えはしない。無骨な言い方しか出来ない自分自身にトダカはいらだったかの様に僅かに眉間に皺を寄せた。
声が聴こえたのか、少年はトダカを見上げた――鋭い視線でトダカを睨み付けた。
「……そんなの知らない。解る訳無い……たった一人で何処へ行けって言うんだ!」
少年は語気を荒らげトダカに食って掛かってきた。悲痛な叫びがトダカの胸を突き刺す。
「折角助かった命だろう。君は家族の為に生きて行かなければならないんだ」
またしてもだ。何故自分はこんな陳腐な言葉しか言えないのだろう。トダカは社交辞令やらをないがしろにして来た自分が恨めしかった。
「そんな事は解っているんだ。でもどうやって?アンタはそうやって簡単に言うけれどさあ!」
少年は立ち上がりトダカの胸にむけて握り拳を何度も何度も向けて来る。頬を涙で濡らして顔を歪め感情を露にする。
声を上げる少年の姿にトダカは思わず少年を力強く抱き締めた。
トダカには少年へと掛けるべき適切な言葉が見付からなかった。ただ、こうする事しか出来なかった。
辺りに少年の嗚咽が響き渡る。しかし誰もそれに反応したりはしない。この港にいる民間人は少なからず戦闘の被害者であり、まずは自分の身を案じる事を優先するからだ。
よくある話だと言ってしまえば其までだが、トダカにはそうは思えなかった。
ただ、トダカは少年を自分の力で守りたいと心の奥底で決意した。
第一話 邂逅 2-2
トダカはひとまず自分の元に少年を置く事にした。泣き濡れた瞳の少年を放って置く事は出来なかった。
二人は今宇宙へと向かう船に搭乗している。宇宙でクサナギと合流するのだ。そこから先はその時に考えれば良いとトダカは思った。
「何故貴方は俺を助けたんですか?今もこうやって俺に良くしてくれて……どうしてですか?」
沈黙を破り少年はトダカに尋ねて来た。
「理由が無ければならないとは思わない。強いて理由を挙げるなら、一人でも民間人を助けたい――それだけだ」
トダカはきっぱりと言い切った。その言葉が事実なのだ。ただ、事実の向こう側に芽生えた感情にトダカは気付いてはいなかった。
少年は少しずつ自分の事を話し始めた。
少年はシン・アスカと名乗り、コーディネーターである事を明かした。家族幸せに暮らしていた事を笑顔で話すも、シンは家族の事を思い出したのか袖口で涙を拭い始めた。
「泣ける時には泣いた方が良い。泣き方を忘れてしまうと痛みに鈍感になって、人を傷付ける事に慣れてしまうからな」
トダカはシンの背中を優しくさすった。シンはトダカの言葉に甘えるかの様に声を抑えて泣いた。
華奢な肩を震わせ泣くシンの首筋の白さにトダカは思わずシンの頭を優しく撫で続けた。
「君はプロキオンと云う星を知っているか?子犬座の星だ。子犬の瞳に位置する星で、別名は『泣き濡れた瞳』と言うんだ。子犬座は永遠に泣き続けなければならない定めだが、いつか君には笑顔が戻る日が来る。哀しみを強さに変える事は君になら出来る筈だ」
子守歌を歌うような優しげな口調でトダカはシンに言い聞かせた。今は無理かも知れないが、トダカはシンの笑顔が見たいと思った。
いつの間にかシンは寝てしまっていた。恐らく泣き疲れてしまったのだろう。緊張の糸がほどけてしまったのかも知れない。
トダカはずっとシンの頭を撫で続けていた。
この時のトダカの行動が二人の運命を激しく変えたとは神のみぞ知る事だった。
なーんかどこかで見たことあるような・・・
気のせいかな?
俺の勘違いならスルーしてください
でじゃぶ
プロキオンという言葉みて
宮澤賢治を思い浮かべてしまいました…
何でだろ?
某スレでココとの対立を煽ってる珍がいるな。
ココまで飛び火しなければいいのだが……
触れ合う心。movein' emotion……really lily?
「今、世界は変わり始めている。オーブも変わらないと駄目なんだ。……今は民主化を目指しているんだが、マユはどう思う?」「私には難しい事は解らないわ。カガリの好きにすれば良いと思う」
あれから私とマユは何度か会ってお互いの名前を知り、色々な事を相談できるくらいの仲になった。もっとも、私の愚痴やなんやらを聞いて貰っているだけだが。
マユは私がオーブの元首だと言うことを知っているが、私を一人の人間として見てくれている。その扱いは私にとって悪い事ではない。
私の回りの人間は私の事をオーブの元首として見る。それは私にとって酷く窮屈で……まるで見えない鎖に束縛されている様だ。
マユと会って話す事で私は絡み付いた鎖から解き放たれた様な気分になれる。
「ねえ、カガリの好きな色って何色?」
「好きな色?うーん……直ぐには思い浮かばないな」
マユが私の顔を見上げるように覗き込んでくる。いきなりの問掛けに私は戸惑い、答える事が出来ない。
マユは太陽の光に手をかざしながら空を見上げる。
「私の好きなのは空の色」
「空色って事は青?」
マユは柔らかな笑みを浮かべて空に手を伸ばした。
「ううん。空の色は空の色。変わり行く無限の色よ。それってとても素敵じゃない?
純真で無垢な彼女はとても可憐で、言葉と仕草に魅了されていくのが解った。マユは芳醇な葡萄酒の様に私を酔わせる。
──ああ、私は彼女の事が好きになってしまっんだ、とても。
──to be continued──
ザフト遠征軍・前衛部隊の隊長であるディアッカ・エルスマンは、ヘーリオス宙域で行われた
予期せぬ戦いによって生じた部隊内の動揺を抑える事に、終始苦労をしていた。
それは旧ザラ派が所属する1分隊内の暴走によって、生じた偶発的なもので、戦略的に措いても戦術的な観点から見ても、
まるで意味の無いものであって、彼としては甚だ不本意なものだった。
守備隊としてヘーリオス拠点衛星基地に配置しておいた分隊が、新たにオンステージした、
新規のオーブ軍機動艦隊の軍事行動を見て激発し、彼の統制から一時的にせよ外れてしまったのだ。
その為に前衛部隊全体の兵士達に動揺が生じ、部隊の総指揮官である自分が出馬しなければ、どうにもならない状態にまで陥った。
一部の将兵から生じた動揺は、全部隊の兵士に即座に伝達する云わば、悪質な伝染病にも似ている。
これを防ぐには毅然として指揮官の態度こそ重要となってくる。
その為にディアッカは部隊全体に動揺が広がり、其の為の生じる崩壊を防ぐべく、部隊統率に心を砕いていたのだった。
この収集には思った以上に時間が掛かり、被害の拡大を防ぐべく、結局の所へーリオス拠点衛星基地の即時放棄しか方法が残されていなかった。
”混成部隊が仇になった”と愚痴るディアッカだが、元々、彼の部隊は旧ザラ派やデュランダル派の敗残兵で構成された、
ごっちゃ混ぜの坩堝であり、様々な思案が絡み合った呉越同舟の混成部隊で構成されていた。
プラントの現ラクス政権下では出世が見込めず、飼い殺しになる輩を始め、この戦い出世の糸口を掴みたい者、恩賞にありつきたい者etc……etc。
それだけに僅かな、切っ掛けで、いつでも部隊の統制崩壊や亀裂が生じかねない状態なのだ。
それが今まで上手くいっていたのは、ディアッカの統率力とその水際立った艦隊運用能力にこそある。
並みの将帥では統率はおろか、この部隊の足並みを揃える事も難しいのだろう。
一際、指揮官の剛腕によって支えられている状態なのだ。
従って、基本的にラクス・クラインの御立派な思想……妄想などを鼻っから相手にしている兵士は、
この部隊では極少数の割合になっている。
それはある意味では正しいのではないか?とディアッカ自身は思わなくも無い。
逆に理想やら自由などお題目に掲げて戦う兵士の方が、彼にとって奇異に映るのだ。
ラクス・クラインと以前のカガリ・ユラ・アスハ等を見ると、成る程、お題目は立派である。だがそれが何になるのだろうか?
兵士達にとっては高邁な指導者のお題目や理想などよりも、日々の暮らしや目の前の現実の方が優先的であり、
それには労働に見合う報酬を得ることの方が重要なのである。
現実的に見て、デュランダル前議長の掲げた『運命計画』の方針は、混沌とした世界の中で人々が生活の糧を得る為の、
それなりに安定した社会を形成できる政策価値が持っていたのではないだろうか?
ディアッカは時折、そのように思う時がある。先ずは混沌とした世界に安定をもたらし、秩序を形成して、
人々の腹を満たしてから自由やら、夢見がちの理想を唱えるべきなのだ。
結局のところ、あのメサイア戦役の後に地球圏に安定した社会秩序が形成されたのは、ラクス・クラインが唱えた理想ではなく、
地球連合強国により軍事力を背景にした強権によりものだった。
何のことは無く、人類が今ままで繰り返したことをそのまま、なぞっただけの事なのだ。
古代の訓戒に「倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る」との言葉がある。
ディアッカは至言ではないかと思う。興廃した世界に住む飢えた人々に現実的でない理想論を唱えてどうするというのだろうか?
穀物倉庫がいっぱいになってはじめて礼節を知り、衣食が十分になってはじめて名誉や恥を知るという意味である。
毎日の食事にも困るような人々に礼節を説いても意味がない。
民の生活を安定させ、余裕のある生活ができるようにすれば、自ずと道徳心が高まり礼儀を知るようになるということだ。
日々の生活の安定も無く、理想を人々に押し付けるのはおごましい限りであろう。
彼自身、実はラクス・クラインの考えに同調した事は一度も無いのだ。
ディアッカのこの考えをサイ・アーガイルが耳にすれば拍手喝さいで彼を称えたであろう。
サイ自身も臆面もなく浮っついた理想論を吐く輩を、最も毛嫌いしていたからだ。
オーブ側の隙間を狙った作戦といい、ヘリオポリスU攻略とオーブ艦隊殲滅を短期間で成し遂げた、
ディアッカ・エルスマンの将帥としての能力は、まことに並々ならないものであった。
にも関わらず、彼のプラントでの地位は極めて低い。功績を認められないということもあるが、
彼自身がこのようにラクス・クラインに対して、此処10年余りの間に極めて懐疑的な態度を取り続けたことも大きかった。
それともう一つ、今回の緒戦の大勝の事もあった。時として勢いの後押しによってあの時は、運良く天運が此方に傾いた。
歴史的な時流に乗れば、その思わぬ潮流の流れによって、天意としかいいようが無い展開が生じる時もあるのだ。
だが、人はそれを自分達の実力と錯覚する場合も多い。それを過信し過ぎて滅びていった者も歴史上、数限りなく存在する。
「このような好機は、二度とは在り得ない」
ディアッカ・エルスマン自身はこの事を強く自覚しており、この緒戦の大勝を利用して上手くオーブ側と和平条約を結ぶことを提案していたが、
ラクシズの総司令部が設置されているエターナル要塞では、彼の懸案は一蹴される有様だったのだ。
――ザフト遠征軍・エルスマン隊・旗艦『ガルバーニ2世』艦橋にて
俺は旗艦の艦橋で指揮を取りながらも、派遣していた中距離用強行偵察艇による、
『ヘーリオス宙域会戦』の戦況報告の映像を見つつ、オーブ軍の見事な艦隊行動に感嘆の吐息を吐いていた。
「――サイ・アーガイル、さすがだな」
……下手な様子見などせずに、全力でかかってきたのか。速く、しかも理にかなっている。
――あの男は、戦いの機微ってものを知り尽くしている……!
もともと機動艦隊運用というのものは、一種の才能であり、指揮官個人の嗜好や感覚がまともに反映される。
これは、もう生まれつき才能を持っているいる者と持っていない者の差であろう。
そして、それはどんなに遺伝子を弄くっても反映されるものではない。無い物を幾ら弄くろうともゼロはゼロなのだ。
多少、遺伝子を弄くっただけで、進化したという『コーディネイタ―』という種は、滑稽とも言うべきであろう。
俺の手を離れて勝手に行動した連中は、その侮蔑している『ナチュラル』のサイ・アーガイルによって、
赤子の手を捻るよりも容易く蹴散らされてしまったのだから。
「所詮、人の手で後付けされたメッキでは、勝てんということかな……?」
時代に選ばれた軍事的才能というものは、極めて稀なものであり、遺伝子を弄るくらいではどうしようもない事なのだろう。
昔、コーディネイタ―の自分がナチュラルを侮っていた時代が滑稽に思えてきた。
……戦況は一言で言えば、最悪だ。だがしかし、このような危機的状況が嬉しくなってくるのはある意味で、
俺の用兵家としての性なのだろうか?
「フム――」
戦力を小出しで来るのならば、こちらとしてもも戦線を分断して各個撃破するつもりだったが、やはりお見通しか。
そう旨くいくはず無いか。小手先の戦術に頼って来る程度の男ならば、俺としても楽なのだがな……
――なるほど。奴は、こちらの打つ手を全て封じてから全戦力で、こちらを撃破するという訳か。
「戦力彼我率は1:3……正直、笑えんよ」
敵の戦力彼我はこちらの約三倍……その三倍の全戦力でこちらの戦力を叩き潰し、
あわよくば、遠征軍全軍に回復不可能な打撃を与えるつもりなのだろう。
だが、そうはいかんぞ――サイ・アーガイル。
戦いの前の高揚感に包まれつつ、同時に心地よい戦慄が背中を駆け抜けてゆく。
――このまま敵の驍将サイ・アーガイルとここで決戦をするべきであろうか?
尊敬できる敵と相対する事は、武人としての本懐であろう。
このまま本国でラクスの『番犬』として飼い殺しにされたままでいるよりは、遥かにマシなのだろうか……。
――だが、俺はすぐにその軍国的ロマンチシズムを宙に放り投げた。
オーブ・プラント互いの本国の興廃を賭けた一戦であるならばともかく、ここで雄敵と生死を競い合うのは、
別の意味で馬鹿馬鹿しい限りであろう。
「……ここは、一つ労苦を分かち合ってもらおうか」
と嫌味ぽい皮肉そうな笑みを浮かべる。
俺の持論だが、戦争と言うものは、恋愛と似たようなところがある。
自分だけが苦しむのはまっぴらだが、他人が苦労するのは面白いということだ。
我が部隊だけが、火中の栗を素手で拾う必要はあるまい。そう、危険は仲良く均等に分かち合うべきなのだ……。
「我ながら悪趣味だが……」
そう、俺が一人頷いていると、副官のバートが俺の側に近づいて来た。
深刻そうな顔しているが、どうやら俺と同じ懸念をしているらしい。
「エルスマン隊長。このままの状態で戦闘が敵側の優勢のまま推移してゆけば、我が部隊の戦線は崩壊します――」
と、やや緊張したの声を滲ませながら俺に進言してくる。
さすがにバートも気が付いたようだな。よし、そろそろ潮時か。
「……どうも我が部隊は先行をし過ぎたようだな。このままでは、優勢な敵勢力に叩き潰されだけだぞ?」
俺はわざとらしく艦橋全体に響くような声を上げた。
バートは一瞬、目を大きく開くと、軽く二度瞬きをして、そして頷いた。
奴も俺の意図にどうやら気が付いたようだ。伊達に俺の副官を長くやって来た訳ではない。
「はっ!左様で……!」
バートは俺のわざとらしい演技に同調するかのように大きく声を上げた。続けて俺は、
「――ふむ。エターナル要塞の総司令部からは何と言って来ている?」
「まだ何も……こちらの現状は伝わっている筈なのですが……」
こちらの戦況報告は逐一、総司令部が設置されている『ラクスさま』がいらっしゃる、
あの悪趣味な機動要塞エターナルへと届いているはずなのだ。
だがあれから具体的な命令も無く、総司令部はただ敵を撃滅し、侵攻しろというだけなのだ。
しかも増援部隊は、おろか補給もろくに送ってこない。それが今のこの最前線の現状なのだった。
時々、申し訳程度に補充用艦艇としてローレシア級等、今の時代では骨董品とも言うべき戦艦を最前線へと送ってきやがる。
本営の連中は何を考えているのだろうか?正気の沙汰ではない。
しかも艦載機には何とモビルスーツだ。さらにはその内容は、ジンやゲイツといった今では、的にしかならない代物を送ってくる有様なのだった。
自分が嫉まれているは知っていたが、ここまで露骨とは正直思わなかった。
しかも、総司令官のキラ・ヤマトは、ど素人の癖に前線の戦闘にまで口を出してくる有様だ。
どうやら、俺がラクスの『地球浄化計画』の戦略を木っ端微塵に論破してから、更に態度が露骨になってきたようなのだ。
「……戦線が広がり過ぎた良い証拠だな。緒戦の大勝が、こんな形で仇になったか」
それ以外にも要因があるが、いずれにしても永遠に続く戦闘などありえない。少しでも頭の回る人間ならば、
戦闘が終わった後のの事も考慮して作戦を立てるものであるのだ。ラクスの取り巻きどもは、勝った後の成果の事しか考えておらず、
外征のそれ自体の困難さを考えたことはあるのだろうか?
今更、殊更に声を上げて叫ぶのも馬鹿馬鹿しいことなのだが、本国から前線への補給線が長すぎるのだ。
各軍団は長躯して戦場へ到着し、また長躯してプラント本国へと戻らねばならない。
本気で侵攻を考えるならば、戦略上の橋頭堡であるの恒久的な補給と作戦行動の根拠地として、
自分達が攻め落としたへーリオス、ポラリス、ミカサ。この三箇所の衛星拠点基地を確保し、尚且つ、軍事的要塞を建設すべきなのだ。
実際、オーブ側は要塞コロニー『ヘリオポリスU』を建設しその任に充てていたのだ。この要塞コロニーを破壊、陥落させたからこそ、
周囲三箇所の拠点衛星基地の確保が初めて可能になる。無論、今更無理な注文であるのだが。
そして、バートも心得たように俺に話を合わせながら、わざとらしく声を上げた。
「そのようで――」
「よし!”この宙域を死守せよ”――なんて馬鹿な命令が来ないうちに、さっさと引き上げ準備にかかるぞ!」
俺のその言葉が艦橋周囲に響き渡る。どよっと周りで兵士達が動揺の声を上げる。
オペレーターの一人が慌てた様に、俺に向かって問い掛ける。
「し、しかしそれでは……!?」
「かまわん。他の軍団と連携のとれていない状態で戦闘を継続しても、無駄に戦力を損耗するだけだ」
俺は、そいつの疑問に簡潔に答える。これ以上踏み留まっても全く意味が無いのだ。
バートも俺の説明を補完するように更に詳しい説明を付け加える。
「我が軍の戦線が無秩序に崩壊すれば、遠征軍全体が大混乱に陥る……そう隊長は仰っているのだ、ほら全軍に通達を急げよ!」
「はぁ……はっ!了解しました!」
>>続く
ディアッカ、苦労してばかりだったんだね
》リソウ
上にもあったがちょっと鼻にツク文体だと思う
ただ、そう思わせるのが目的にも思えるが
》戦史
ディアッカの嫌われっプリがサイとの対比になってて良い
ラクシズをクサス台詞からあえてアンチ臭を抜くともっとアンチ臭くなって良いかも
自分の立場を貶めないことによって更に相手を貶めるわけか
>>実録
最早一つの形に纏まったギャグの芸風に笑わせてもらいました。
シンはラッキースケベどころかかなりアグレッシブな弩助兵衛ですね。
続きを期待しております。
>>生きる為の〜
トダカは結構暇なのですね。
恐らくわざとやっているのでしょうが、全体的に耽美な表現に走っていると
感じました。
>>リソウノカケラ
おお、かなり雰囲気が出てきてますね。本当に実録の作者さんと同一人物
だとは思えません。
大きな世界情勢や時代の変化が結局は個人の精神や身の回りの状況にしか
帰っては来ないから箱庭系と呼ばれるのかな、と思いました。
>>戦史
敵キャラを作るうえでは「コイツなら主人公側に勝っても仕方が無いな」と
思わせる人物を描く必要があると思うのですが……このディアッカなら狡猾で
残忍でも許せます。上層部からいじめられ、部下は寄せ集め。中間管理職の
悲哀を味わうディアッカになけなしの幸運を。
皆さん投下乙でした。
一つ注文をつけるとしたら、四十文字一寸くらいで改行していただければ
もう少し読みやすい。というところです。
「アンタ達がだらしないから私が恥をかいたじゃない!」
押忍!いきなり失礼しますが自分はヨウラン・ケントと申す者であります。
お解りづらいと思いますが、自分とヴィーノの二人はミネルヴァの隠れた一室……通称シゴキ部屋にてルナマリアに正座をさせられております。
何故かと申しますと、ルナマリアの乗るMSの整備がなっとらんからナチュコロの賊取り逃がしたと説教をされている訳であります。
実際の所を申し上げますと、整備不良以前の問題でルナマリアの操縦が悪いのであります。
皆様方もご存知の通りMSは精密機械であります。
アカデミーで真面目に授業を受けていた人間ならば、可愛いあの子を扱う様にMSを操れという教官殿のお言葉が骨身に染みているはずなのですが……ルナマリアは知らないのでしょうか?
「……なにをブツブツと!恥を知りなさい、恥を!」
痛て〜っ!ルナマリアお得意の鉄拳制裁です!こんなに怒りやすいのはカルシウムが足りないからなのでしょうか?それとも月に一度の女の子の日なのでしょうか?
「そのへんにしておけ、ルナマリア」
怪しげな薬の瓶現片手にれたのはレイでごさいます。我々に助け舟をたしてくれるのでしょうか?
「顔は痕が残るからやめておけ。ボディにしろ、ボディに」
なんともあんまりな事にございましょう!止めてくれると思いきや……犬畜生に劣る言葉を吐くとは!流石は怪しげな薬の中毒者であります。
……それでは皆様、おさらばでございます。無事に生きて帰ってこれたらまた会いましょう……押忍!
押忍!自分はヴィーノ・デュプレという者であります!読者の皆様方に無事に生きて帰って来れた事をご報告します。
最近気に入らない事があるのであります。このミネルヴァを我が者顔で歩くナチュ公……カガリ・ユラ・アスハとお付きのグラサンが目障りであります。
この間、同期の桜達と歓談していたのですが……いきなりナチュ公共が割り込んで来て酷く不快な気分になったとシンに殴られました。
殴られた事は別に構わないのであります。ザフトは赤服にあらずば人にあらずという組織ですので……。
許せないのは仲間達との語らいを邪魔したアスハとグラサン……アレックス・ディノであります。
とりあえずアスハをしめるのは高度に政治的な問題になりますのでヨウランと共にアレックスとやらをビシッとしめてやろうとシゴキ場に呼び出しているのであります。押忍!
え?アレックスに気を付けろ?いやいや何をご冗談を!自分達はアカデミーでビシバシ鍛えられた人間でございます。
何処の馬の骨とも解らないグラサンに負けるはずなどございません。常識で考える事をお勧めいたします。押忍!
おっとやって参りました。それでは自分とヨウランのゴールデンコンビの真の実力をお見せいたしましょう!
うわっなにをするきさ
賢明なる読者の皆様のお耳に入れたい事があります。
アレックス・ディノとやらはどうしようもないヘタレで生きている価値が0の男です。しかしながらアスラン・ザラというお方はとても素晴らしいお方なのでであります。
読者の皆様方にはくれぐれもその事を決して忘れないようお願いします!押忍!
それでは今日の所はこれにて失礼します!押忍!
「こ……は自睡…し…す」
無線通信機からノイズまじりで誰かの声が聴こえてくる。
副官は溜め息まじりで肩をすくめながら隊長に振り向く。
「どうします?なんだか言ってますけど……」
隊長は目を細めて煙草に火を着ける。
「バータレ。ガキの言う事なんざ無視だ無視!大体ナニ言ってんだかわかんねーだろ!」隊長の怒号に副官は首をすくめる。
「旗色はわりーみたいだけどな。逃げるんなら今のうちだぜ?」
古参兵は鼻毛をむしりながら塹壕の中に降りる。
「逃げろったってな、督戦の連中が目を光らせてんだよ!あいつらは敵さんよりも俺たちハーフコーディを殺したくてウズウズしてんだぜ?」
隊長は煙草の灰を落としながら不機嫌そうに呟く。それを見た副官は悲鳴をあげる。
「ちょっと!ここは火気厳禁ですって!」
古参兵は引き抜いた鼻毛を吹き飛ばしながら胴間声でがなる。
「隊長よぉ、監戦の連中なんぞトックの昔にトンズラしてんぞ?」
「アホゥ!早くそれを言わんかい!命あっての物種だ……さっさとずらかるぞ!」
隊長は煙草を捨てて足で踏み消すと皆を急かす。
「もう準備は出来てますよ。金目の物だけ荷物にまとめました」
副官は涼しげな顔で隊長を見る。
古参兵は空を見上げて口笛を吹く。
「おい、見ろよ。戦艦がバレルロールかましてんぞ?」
「ハァ?何を馬鹿な事を……」
副官はお道化た仕草で肩をすくめる。
「ほれ、見てみろ。戦艦でバレルロールなんざスタンレーんトコだけだと思ってたけど他にもやる粋狂な奴がいたもんだ。……拾って貰うか?」
古参兵は太陽に手をかざしながらバレルロールをする戦艦を見つめている。
「バーロー!スタンレー以外の奴が戦艦でバレルロールなんてやるもんか。俺はスタンレーんトコのフューラーにカードの負けを払ってないから他んトコ探すぞ!」
戦場を渡るは渡り鳥。アラスカの大地を後にして次なる戦場に飛んで行く。
鉛色の空を駆ける粋狂な大天使は何処にさまよう……
来週末あたりから本格的に再始動の予定。ではまたそのうち。
誤字訂正
×「こ……は自睡…し…す」
○「こ……は自爆…し…す」
>生きる為の〜
まだ始まったばかりなんで、トダシンというまでの関係にはなってないですね。
匂いはありましたがw
お父さんっぽいトダカがいい感じ。
このまま擬似的な父子関係でドラマを進めても面白いかも。
68 :
弐国:2007/05/13(日) 23:18:34 ID:???
彼の草原、彼女の宇宙(そら)
第7話 業火(1/6)
「何があった! ボアズじゃないか、さっきの!?」
パイロットスーツのままブリッジに飛び込んでくるダンとサーシャ。
今現状、ヤキンドゥーエ外縁の防衛部隊として配備されているモンロー隊。その旗艦イアハート。
「詳しい事はわからない。わからないけど、ボアズが落ちた事だけが事実。多分核ミサイルね。
……さっきの映像から解析した温度分布図をボアズの画像に重ねて5秒おきに移行、出来る?」
数では押されていたもののザフト側はボアズでの戦いは優位に進めていた。
だがGタイプと高性能型ダガーを投入された事で核ミサイル装備のMA部隊、ピースメーカー隊の侵入を許してしまった。
そしてありえないはずの核ミサイルの攻撃を受け、ボアズは沈黙した。
連合側でさえ守備が堅いと認識していたはずの、そのボアズへ突如侵攻を始めた理由は此処にあったのである。
「……連中は血のバレンタインだけでは足らんと言うのかっ!」
「艦長、現場が頭に来たってしょうがないわ、むしろ私達は避けられた事を喜んだ方が良い。
敵はNJCの実用化に成功した。大事なのはココよ。核ミサイルが使える事がわかった以上
向こうは打ってくるわよ? プラント本国に向けて。もうヤキンは関係ないわ」
「そんな事って……。隊長! 私たちは!?」
「多分ウチはミサイルを打ち落とせって事になるでしょうね……。只、一発打ちもらせば万人単位で犠牲が出る。
近所で爆発すれば巻き添えを食うし、MAの護衛には例のGタイプが付くだろうし」
むぅ。と唸ったままあごに指を当ててモニカは固まった。秘密兵器があるそうだが、
核ミサイルに対しては果たして有効打になるのか。プラント市民は逃げる場所などそれこそ何処にも無いのだ。
「次はプラント本国だ? 一気に方をつけるつもりか? あの男」
「早く済めばそれに限った事は無いかと」
「それはそうだがな……。かき回しておく必要がある。我が方のGは出せるのか?」
「生体CPU回復まであと30分下さい」
「サファイア、大丈夫か?」
パイロットスーツのまま呆けたようにMSデッキの床に座るサファイアの肩に手を置くコンゴウ。
「光ったの、前が見えなくなるくらい…」
「大丈夫だ、見たくらいじゃ死なない。それにアレが光れば俺たちが殺す数が減る」
「ホントに?」
「あぁ、だから運んでるメビウスは絶対に守らなきゃいけないんだ、いいな?」
プラントに核を打つと言う事はサーシャの故郷を撃つという事だ。
あの時は本気でプラントの中を二人で歩いてみたいと思っていたが、
生き延びるためには夢を犠牲にする事もやむを得まい。
そして二度までも大事なものを壊した自分は、ついに未来永劫サーシャと親しく話す機会を無くすのだ。
今度会えばその時こそ彼女に撃たれるだろう。
生きる事とはいったいなんだろう。何のために生きるのか。何故サーシャの事ばかり頭をよぎるのか。
胸の疼きは今までに無いくらいだ。胸に手を当ててみる。疼きが止まるわけでは無いが、
彼は意味を知りたかった。なぜ胸がうずくのか。こんなところに古傷なぞ勿論彼にはなかった。
「機体に行け! 30分後に作戦開始だ!」
69 :
弐国:2007/05/13(日) 23:20:27 ID:???
第7話 業火(2/6)
「たった数日ですぐ来るものですか?」
「ミサイルが出来上がればすぐ来るさ。工業製品ってのは一度量産が開始されれば、後は材料さえあればいくらでも作れる」
「グリーン25、マーク22ブラボー、距離1500に連合の大規模艦隊を確認!」
「ほれ、おいでなすった。行くぞお嬢!」
「はいっダン! あっ、でも核ミサイル相手に何をすれば…」
「とにかく叩き落すんだ! 理屈を捏ねてる暇は無えっ。来い!」
「MSは無視! 狙いはMAとミサイルのみ、二人とも! 良いわね?!」
エレベーターからダンが手を突き出して了解のサインを送ると扉が閉まる。
「全艦にコンディションレッド発令! 目標、核ミサイル搭載型メビウスとミサイル本体!」
モンロー隊の展開状況を眼にして司令室からモニカに直接無線を繋ぐガスコイン。
『さっきの座標は頭にはいっているな? 絶対にそこに味方のMSを近づけるなよ?』
「状況によってはわかりません、その座標に何があるんですか?」
『ジェネシスの現状取り得る射線だ。頼むぞ、状況的にいきなり撃つ可能性もある』
立体航宙図にはヤキン付近から一本太い棒が延びている。
『エライさんにケンカを売っても構わんが必要以上に命を危険にさらすな。最終的に俺が困る』
本気で困った顔の3つ上の上司に少々むっとするモニカ。両方の意味で言わんとする事はわかるが、
片方はこんな時に言うべき事でもなかろう。今まで何も言わなかったくせに。
彼女としては決して不快だとは言う訳ではなかったのだが、どんな顔をしたものかわからない。
「……一応聞いておきます」
頼む。そういってスクリーンから顔は消えた。モニカは金髪が乱れるのも構わず帽子をやや深く被りなおす。
「隊長っ! インディゴ15、マーク32チャーリー、所属不明の…いえ、フリーダムとジャスティスです!
距離一気に詰まります。巡航ミサイルとほぼ同じスピードって、どんなんだ?」
「大きさのデータもあわないです! なんでですか!?」
「っ! 撃ってくるまで、いや、撃ってきても気にするな! ミサイルに集中! 主砲、ミサイル、対空砲火!
全てミサイルの対応! 計算上MSは40%以上打ちもらすわよ!」
フリーダムなど気にしてどうするというのか。狙われた時点で既に逃げようが無いのはエターナル強奪時点でわかりきっている。
気にすればそれだけ対応が遅れる。ならば気にするだけ、無駄だ。モニターを睨むモニカの顔が引き締まる。
爆光で見えなくなるモニターからデータの画面に目を移すガスコイン。
ミーティア装備のフリーダムとジャスティスは、その能力をミサイル撃墜に全て振り向けている。
とりあえずモンロー隊が襲われる事は無さそうだ。勿論他のザフト部隊もミサイル撃墜を一義においている。
Gタイプやダガーの高性能タイプに『仕事』の邪魔はされてはいるが、まだプラントに届いたミサイルは無い。
「ラクス・クライン…。敵では無いという意味では味方なのだろうが、何がしたいんだ……」
行動を共にしているとは言え、アークエンジェルやクサナギの艦載MSまでもがミサイルの排除に当たっている。
敵味方の線引きは何処ですればよいのか。国防委員なぞに決めさせてはいけないのではないか。
そして当たりこそしていないが核ミサイルはプラントに向けて放たれた。
ならばジェネシスのトリガーを引く大義名分はザラ議長が手にしてしまった事になる。
ガスコインは壇上で戦況を見つめる彼の人を振り返って見上げる。
70 :
弐国:2007/05/13(日) 23:22:54 ID:???
第7話 業火(3/6)
「かなり遅れていますがよろしいので?」
「ミサイルの後、ゴミ掃除をするつもりだったのだ。ストライクダガーよりはマシだと思ってな。
この状況ではいずれ一度引くしかあるまいが」
「アレを前に出したくないと?」
「そうだな、強化は良いがますます不安定に成っている。今のところは良いが味方に当てるようでは問題があるからな、
そろそろ試作品を前線に出し続けるのも……どうしたかっ!?」
言葉はオペレーターの叫びにかき消される。
「グリーン、ゼロセンターからアルファに巨大な構造物出現! PS装甲と思われるものの展開を目視で確認!
形状から戦闘要塞の類と思われます!」
「何!? 何故今まで気がつかなかったかっ!」
「ミラージュコロイドかそれに類するものを展開していたようです。構造物は形状から巨大なレーザー砲の
ようなものと思われますが詳細は不明。レーザー砲とすればかなりの直径が……え?
ち…中心部から前方にかけて超ド級エネルギー反応! ゲージ振り切れます! 計測不能!」
「レーザーだとして、推測される射線はどこか!」
「友軍主力艦隊と推測されます、当艦隊も一部射線にかかります! 回避をっ!!」
「艦隊全艦全速回避! 予測射線からの回避を全てに最優先、回避運動各艦に任せる!
大至急予測射線より回避せよ!」
光の奔流が宇宙の闇を直進する。光に飲み込まれたものは一気に形を無くし、
外縁に掠ったものも徐々にその形をゆがめ、爆発する。
ほんの一瞬、その空域をよぎっていった光の筒が消えるとそこにあったはずの連合の大艦隊の姿も一緒に無くなっていた。
ザラ議長の演説がザフト所属機の中に響き渡る。
『勇敢なるザフト軍兵士の諸君。傲慢なるナチュラル共の暴挙を、これ以上許してはならない』
「敵主力は今の一撃で約40%減。当方は現状クルーガー機以下、全機健在ですっ。……隊長?」
「凄いものね……。ガスコイン氏の話ではまだ出力に余裕があると言ってたけど」
『プラントに向かって放たれた核、これはもはや戦争ではない!虐殺だ!』
『ジェネシスも凄いがあいつらなんなんだ? ミサイル、ほぼあいつらが落したようなもんだぞ』
「両方すご過ぎですよ。私達、やっぱり要らないんじゃ無いですか…?」
「新たなる未来、創世の光は我等と共にある。この光と共に今日という日を、我等……」
「…なんて威力だ、地球に向けたりしたら大変な事になるな。抑止兵器を使ってしまった以上、
2射目以降をどう使うかだが……。モンロー隊とジョーダン隊、ヘインズ隊と連合の残存艦艇の位置を再確認しろ!」
71 :
弐国:2007/05/13(日) 23:25:10 ID:???
第7話 業火(4/6)
ジェネシスの直撃を免れたアガメムノン級のブリッジ。オペレーターと通信士が混乱する情報を整理している。
「閣下。詳細は不明ですが、やはりガンマ線レーザーかそれに類する物だと言う見解が有力です。」
「最大出力で地球へ向けて発射した場合、シミュレーション上ほぼ壊滅との事であります」
「プラントも地上に自国領があるし、親プラント国もある。いかにパトリック・ザラとてそこまでの
うつけモノでは無いと思うがな。それに地球が壊滅すればプラントとて食料の確保が出来まい」
ジェネシスの砲撃からかなりの時間が経過した。戦力の40%が消失した連合の艦隊は、
だが未だに艦隊の立て直しを図れないで居た。
「旗艦ワシントン、並びにクルップ、グラントは情報精査の結果、やはり巻き込まれた模様」
「……実質の旗艦はもはや理事殿の座上艦、ドミニオンか。救援活動はどうなっているか?」
「近隣の艦艇に対してはほぼ終了ですが、Cラインより遠方については手が回りません」
「構わん、既に何時間たったと思うか? 生きていてももう間に合わん、救援活動は打ち切る。
救助した怪我人についてはランチで後送、非常用脱出艇も全機使って構わん、急げ」
「プトレマイオス基地より増援艦隊の先遣隊、発進を確認」
「閣下! 司令部より第7、第8艦隊残存全艦艇に発令、月よりの増援を待って作戦は継続!
残存艦艇はドミニオンを目標に集結せよとの事です」
「この状況を目の当たりにして引かぬか、たいしたタマだな……。アイヒマン中尉?」
「はっ! 全機発艦準備は完了して居ります」
パイロットスーツに身を固めたアイヒマンが答える。
「あれらも連れて行け。次の事を考える必要は無い。壊して構わんし帰還の必要も無い、
最大強度で攻撃のみを命令しろ。お前の小隊とGならば数は問題にならんだろう。
本隊とは逆をついて揺さぶりをかける。もはや侵攻を邪魔させるわけにはいかん、
ザフト左翼の注意を出来る限り引け。オペはデカブツの監視を継続、他の艦とも連携して詳細に監視しろ。
射線とエネルギー反応に特に注意せよ!……通信士、ドミニオンのアズラエル氏とは回線を開けるか?」
「ほぼ全軍動員のヤキン防衛網とPS装甲。ミサイルも全て落され、それでもまだ来ると思うか?」
イアハートのブリッジ。ほぼ全員が携帯食のチューブを手にして仕事をしている。
「多分来るわね。撤退しない以上むしろムキになって来るわよ。手持ちの核はまだあるってことでしょ?」
「それをジェネシスに、ですか?」
「いいえ、あたしならプラントに直接。……ねぇ? さっき月に動きがあるって言ったわね?」
チューブを放り出して慌てて端末を触るオペレーター。
「えと、…プトレマイオスクレーターです。連合の増援艦隊、すでに発進開始してます」
「まだやろうってのか、もういい加減…」
やっとの事でチューブを取り戻して口にくわえたオペレーターは突如チューブを吹き出す
「ぶっ…! レッド3、マーク13ブラボーに例のG2機と高性能タイプダガー、確認。距離320。
ライブラリと照合、合致。3機ともパナマの時の機体です。そのほか同座標にストライクダガー4機を確認!
全機急速に本艦宙域へ向けて接近中!」
全てを聞き終わる前にチューブを投げ出して、サーシャとダンはエレベーターへ流れて行く。
「コンディションレッド発令! 全MSは準備出来次第発進! 近隣各隊にも注意を!」
72 :
弐国:2007/05/13(日) 23:28:37 ID:???
第7話 業火(5/6)
あまり数を多く引っ張れなかったか…多少いらだつ。
『MSは違いますが、ナスカ級の熱紋からパナマの時の部隊のようであります』
「ならば意趣返しだな。利子をたっぷりつけてやる…全機、邪魔なMS以外落す必要は無い。
出来る限り引きずり出すんだ。混乱させてピースメーカー隊の出る時間が稼げればそれで良い。
道はドミニオンのGが勝手に開く! フォビドゥン、カラミティは電池が切れるまで好きに暴れろ!」
『相変わらずなんて機動だ! お嬢、大砲は俺が行く! シュペル、トゥーリー、着いてこい!』
「フォビドゥン……鎌は私1機で抑えます! ダンの隊以外は高性能タイプを囲んで下さい!
アレがおそらく隊長機です、仕事させないで! ノーマルは他の隊に任せて無視して下さい!」
『了解。悪いな、お嬢。足止めだけで良い。大砲を落としたら俺が援護に回る! 持ちこたえろよ!』
カラミティに3機のゲイツが肉薄する。無照準、目測で砲を撃つが全てかわされる。
ブゥンとコクピットまで鈍い音を響かせゲイツのシールドから爪の様なビームサーベルが伸びる。
一度に3方向から殺到するゲイツの爪を、鈍重に見える青の機体は簡単にいなしてゲイツの1機に的を絞る。
全ての火器が火を噴く。なにも考えて居ない様に見えて各々微妙に照準とタイミングを変えた火線は
ゲイツの機動可能領域を奪った。3本の光が胸と腹を貫き、火球になってカラミティを照らす。
一瞬ゲイツ2機の動きが鈍ったのを見逃さず近い方の機体に一気に近づく。
慌ててシールドを構えるゲイツをあざ笑うかのように、右手の死刑台の名を持つプラズマサボット・バズーカが
シールドごとゲイツを打ち抜き、更に両肩のビーム砲が残ったパーツを本体からむしり取っていく。
そのままナスカ級に向かおうとすると最後の1機が行く手を阻む。
「たった30秒でゲイツ2機を落すだと…? やってくれるじゃねぇか、だが!」
ゲイツは無造作に距離を詰めるとライフルを一発撃ってそのまま後退する。
次の瞬間きりもみで足元に回るとクローを起動させて一気に襲い掛かる。
すんでのところでかわしたカラミティは肩のビームを連射するがジグザグの回避行動を取るゲイツには当たらない。
「見たか、モンローウォーク! 隊長サマとの付き合いはお前より長いんだぜ、お嬢!」
『中尉、例のビーム砲台に変化! 高エネルギー反応!』
「射線は何処か!?」
ビームをかわしながら部下の通信に答えるアイヒマン。迫ってきたシグーをこともなくビームサーベルで切り伏せる。
『現空域と我が艦隊は大丈夫であります。射線の先は見た限り何も無いようにも思われますが』
「威嚇で撃つものでもないだろうが……。まさか!」
光の奔流がまたしても宇宙(そら)を染めながら伸びていく。
そのまま月の表面にまで到達すると出撃を開始した増援艦隊を消し飛ばし、月に叩き付け、
クレーター内部に設置された基地全てを一瞬で塵芥へと帰した。
光が消え去ったあと、動くものはゆっくりと堕ちてくるたくさんの破片と舞い上がった塵のみ。
人が何らかの営みを行っていた痕跡など、クレーターの中には何も残っていなかった。
73 :
弐国:2007/05/13(日) 23:30:46 ID:???
第7話 業火(6/6)
「なんだ、赤いヤツ! …くそっ、何でかわせるんだ!!」
フレスベルグもニーズヘグもフォビドゥンの繰り出す攻撃は全て赤いゲイツ改にかわされる。
ゲイツ改からの攻撃も全てはじいてかわし続けるが、ザフトの部隊とはそもそもの数が違いすぎる。
ゲイツ改にかかわり過ぎればジリ貧なのは目に見えている。だが引き離そうとして離れず攻撃は全てかわされ、
他の機体からの攻撃もある。コンゴウは徐々にあせり始めていた。
「ふざけるな!」
フレスベルグはジンとシグーを巻き込むがゲイツ改にはまたもかわされ、
エクツァーンもあっさり射線を見切られジンを一機屠っただけに終わる。
ビームサーベルを手に迫るゲイツ改。ニーズヘグは邪魔なジン・ハイマニューバを二つに切ったがゲイツ改は見失った。
下だ! と思った瞬間ビームが来る。すんでの所で弾くと既にサーベルを構えたゲイツ改が目の前にいる。
「しまっ……がっ!」
右の可動シールドを根元から切り飛ばされる。初めての本格的な損傷。俺のフォビドゥンに!
頭に血が上る。操作が微妙にずれる。出力が安定しなくなっているのはバッテリー切れが近いのか。
薬も切れかかっているのに気付く。徐々に頭痛がしてきている。
「まずい…うっ! 赤い…MSだと、それは…さー、しゃ? 誰、だ…。それ」
フォビドゥンの動きが鈍ったのは良いがこちらもバッテリーは危険領域だ。
【モンローウォーク】はエネルギー消費量が大きい。冷静にエネルギー残を見ながら思う。
動きが鈍った以上、今逃がすわけには行かない。
可動不能に追い込めば、隊長は思い上がりだと言うだろうが『保護』が可能かもしれないからだ。
再び会えれば私に全て従うと彼は約束したのだから。
宇宙(そら)は戦う為だけの場所では無い。雑草さえも拒絶するそこは、
工夫次第では生活圏にする事さえも許容する寛容さもあるのだ。
彼にはどうしてもそれを伝えたい。そう、宇宙(そら)に浮かぶ巨大な砂時計、私の家だってそこにあるのだ。
エネルギー残は残り5分を切っている。空の増槽タンクをパージ。
PS装甲を切れば少し残時間は伸びるはずだが、【赤いMS】は私である事の彼への証明だから切れない。
灰色では彼は気付けない。他が冷静な分、そこは多少感情的に過ぎるかも知れないが、いずれ切った所でたかが1分だ。
こちらが先に止まる訳には行かないが、向こうの消耗具合は……?
「逃げる…?」
ボアズの近隣に浮いていた浮きドックのような用途の元資源衛星。
もはや使うあての無い小さな衛星はヤキンの近所へと流れてきていた。その中へ入り込むフォビドゥンとそれを追うゲイツ改。
「なっ!」
衛星に入り込んですぐ、フォビドゥンはニーズヘグを構えて待ち伏せをしていた。
まんまと引っかかるとリフターを半分切り取られるゲイツ改。リフターをパージして全速で奥へ逃げる。
パージされたリフターを更に切り裂いて道を開くと攻防逆転、
ゲイツ改を追うフォビドゥン。ゲイツ改が開けて行ったエアロックがしまる前に無理やり滑り込む。
ごく僅かの重力を感じるコンゴウの目の前には、ほの暗い工場地帯のような光景が広がっていた。
次回予告
巨大な災禍の前には、少女達へと降りかかる不幸は取るに足らない事なのか。
宇宙(そら)に咲いては散る命の花は、悲しみの叫びさえも飲み込み、更に激しく輝く。
第8話『慟哭(前編)』
74 :
弐国:2007/05/13(日) 23:32:52 ID:???
今回分以上です。ではまた
75 :
週間新人スレ:2007/05/14(月) 00:24:52 ID:???
今週号目次
トップエリートの証、赤い服。その証を我が物にせんために、今日も血の涙を流す若者達が居た!
実録!プラントザフト軍
>>4,6
【巻頭特集】SS系全スレを震撼させた、あのカケラシリーズ最新作が満を持して新人スレに登場!!
リソウノカケラ 〜予告偏〜
>>12 焦土と化して行くオーブ。オーブ軍人トダカはそこで一人の少年、シン・アスカを救出する・・・。
生きる為の情熱としての復讐
>>16-17,41-42
大西洋連邦との同盟締結を決定したオーブ。窓辺のカガリが捨てさろうとするものとは・・・?
In the World after she left
>>21-28 慰霊碑の前、花達に思いをはせる『暗い瞳をした花嫁』は運命のように『箱庭の人形』と出会う・・・。
リソウノカケラ
>>30,48
プラントの平和を日夜守り続けるザフト軍!そこは(例え女性でも)漢の世界だった!!
続・実録!プラントザフト軍
>>40,60-61
ザフトの辣腕司令、ディアッカ・エルスマン。援護すら期待できない彼がオーブ軍に対して打つ次の一手とは・・・!?
機動戦史ガンダムSEED
>>49-55 戦場に飛び交う怒号。地上の兵士達が塹壕から見上げる空には、『大天使』が舞う・・・。
読みきり短編
>>63 ボアズ陥落!核ミサイルとジェネシスが宇宙(そら)を染める中、再び敵として相まみえる少女と少年は・・・。
彼の草原、彼女の宇宙(そら)
>>68-73 各単行本も好評公開中
詳しくは
ttp://pksp.jp/10sig1co/ までアクセス!お気に入りを一気読み!!
読者の声も感想、批評問わず大々的に募集中!
キミのたった一行が職人達の踏み出す次なる一歩への、その背中を押すのだ!!
編集後記:リロードして良かった・・・。皆さんも書き込みの前にリロードしましょう(汗)。
>>実録
ああもうどこからどう突っ込んで良いものか分からなくなったので、とにかくGJ。
アスランの私的制裁に笑いました。流石ザフトレッドだけのことはある。
>>読みきり
ひょっとしたら、自爆と変換できずに自と爆睡を変換して、睡の字を消すはずが
爆の字を消してしまったんでしょうか? 私の辞書では自爆は変換出来てもばくすいが
変換できなかったのですが……。
内容としては今の時点では全く面白くなるかどうかの予想が出来ませんので、
続きを楽しみにさせていただくということでお待ちしております。
>>弐国
とうとうクライマックスですね。これから誰がどうなっていくのか、あえて予想は為ません。
ただ投下された作品を読もうと思います。GJ。続きをお待ちしております。
遠い幼い日の思い出。
私がまだあどけない少女だった頃、戦争が始まった。
TVは海の向こう、宇宙の彼方での生々しい戦争の傷痕を伝えていた。
ブラウン管の中では戦没者の遺族が慟哭し、時には怒りを露にしながらプラントを、コーディネーターを糾弾し、格好つけた政治家は全てのコーディネーターを打ち倒すまでは戦争は終わらないとコメントをしていた。
人はこんなにも残酷になれるのか、と幼心に漠然とした恐怖を感じたが兄が守ってくれると言ってくれたので脅える事は無かった。
何日か過ぎたある日、TVが私の住んでいる街が戦場になるという事をを告げた。
私は簡単に手荷物をまとめて父に買って貰ったばかりの大切な携帯電話を持ち、家族と避難を始めたが、時既に遅く街は戦場に化していた。
家族皆と走って逃げたが、幼い私はどうしても遅くて皆の足手まといとなった。しかし兄は私の事を気遣い手を引いてくれた。
ふとした弾みで私は携帯電話を崖したに落としてしまい、私は愚かにも立ち止まりむずがってしまった。
それを見かねた兄が携帯電話を取りに行ってくれた。
──そして、間近での閃光、爆音。私の運命を砕く一撃。
私は激しい衝撃で吹き飛ばされて意識を手放してしまった。
意識を取り戻すと空の青さが目に染みる。ロボットが飛び交い綺麗な軌跡を描いている。 視線を周囲に戻すと煉獄の炎が柱となってそびえている。その中には二つの影が踊っている。確認は出来ないけれど確信は出来た。
──あれは父と母だ。両親は私を炎の中に手招きをしているかの様に動いている。
しかし私は逃げる事しか出来なかった。鼻孔を擽る焦げ臭い匂い、爆ぜる様な音、地獄のような風景……全てのものに嫌悪感を抱き私はそれを振り払う様に逃げた。
暫く走ると私は吐気を堪えきれずに吐いた。込み上げてくる不快感と溢れ出てくる涙で汚れながら私は再び空を見上げた。
果てしない程に青い空は私の心を癒した。不快感も晴れていく。逃げる事も悲しむ事もなかった。
多分、私の心と運命が砕かれてしまったからだろう。私は魅入られてしまったかの様に空を見つめていた。
──砕かれてしまった欠片を集める事もせずに。
赤く染まって行く空、黄昏る私。
空を眺めるのに飽きると、私は空腹を覚えたので自宅へと戻ることにした。
途中、助けを求める声が聞こえたが、私は耳を塞ぎ無視をした。目を閉じて何も見ないようにした。私は目の前の惨状に耐えることが出来なかったのだ。
時が過ぎた今でも時として夢に見る。死体の山、赤い血の河、空を焦がす炎と太陽を覆う煙。忘れる事の出来ない悪夢だ。
家、正確に言えば家があった場所は瓦礫の山。戻る所も帰る所もなくなってしまったのだ。
私は瓦礫の山を掘り、絆を見付ける事にした。
道具などなく、小さな手でゆっくりと掘った。爪が割れて血が滲むのにかまわず、掘った。
そして、家族との絆である写真を見付けた。しわくちゃであり所々破れていたが、私は満足だった。
当時のみすぼらしい私とは違って写真の中の私は家族に囲まれて嬉しそうにはにかんでいた。
その写真を見て私は泣いた。二度と戻れない幸せな過去。家族を失った悲しみが酸の様に私を侵して行った。
泣き疲れて呆けた様に空を見上る私はただ座っていた。すると──
「君、行く当てはあるのかい?」
一人の男性が声を掛けてきた。私は黙ったまま首を左右に振った。行く当ては天国しかないのだから無いのと同じだ。
男性は私の無言の返事に顔を綻ばせて私に暖かい食事と寝床を与えてくれると言った。
男性の言葉は酷く胡散臭かったが、私は男性の言葉に頷いた。
世界の裏と表。光と影の住人。
男性が私を連れてきた所は、古ぼけた宿屋みたいな建物だった。
宿屋とは違う所は男女の矯声が響いて安酒と煙草の臭いが充満している事。
なんのことはない。売春宿につれて来られただけの話だ。
男性は自分の事をオーナーと呼ぶよう私に言い、まずは雑用を覚えろと私に告げ、早く客をとれる様になれと付け加えた。
私が戸惑いながら口を金魚の様にパクパクとしていると、下着姿の妖艶な女性達に取り囲まれた。彼女達は口々に私に哀れみの言葉を掛けてくる。──可哀想に──と。
私は生きているだけで幸せ。焼かれもせずに生きているのが嬉しい。ただ、家族を失った事が悲しいと答えると、彼女達は私を抱き締めてくれた。
嘘偽りのない暖かさが私を包みこんだ。
砕かれた何かがジグソーパズルのピースのように一つはまった様な感覚。
私は微笑み、一人一人にキスをして暖かさのお返しをした。
砕かれた運命は綺麗に繕う事は出来ないが、ツギハギだらけになら繕う事は出来るのだ。
私は此処で一つ一つ繕っていこうと心に決めた。
たとえ身を切り売りする様な職業であっても心が暖かければ必ず救われる──。
私はそう信じている。
悲しい人、せめて安らかに。
1週間程過ぎた時、店に場違いな身なりの良い男が現れた。
「この店にはコーディネーターはいるかい?」
お道化た仕草で店の中を見回しつつ、軽薄な雰囲気を振り撒く。しかし、瞳は暗く沈み笑ってはいない。
女性達の中にはコーディネーターもいるはずなのだが、誰一人名乗りあげる者はいない。
私はそんな彼女達を訝かしく思いつつ手を挙げた。
「マユはねぇ、コーディネーターなんだよ」
男は下卑た笑みを浮かべ、私の体を舐め回す様に見つめた。多分値踏みをしたのだろう。
「幼女は趣味ではないんですけどねぇ……まあ、仕方ありませんね。君にしますよ?」
男は顎に手を寄せ、仄かに笑みを歪めつつ、私に近付いてきた。男の言葉は嘘だ。趣味でなければ私を選ぶはずはないのだ。
オーナーは溜め息を吐き、男に相場よりも遥かに高い値段を告げた。
男は財布を取り出し、財布ごとオーナーに投げ渡した。
「少し暴利じゃないですかね?おつりは後で貰いますよ。……部屋はどこです?」
「そりゃあ、その子は初物だからね。これでも足りないぐらいでさぁ。……部屋は二階の右の突き当たりだ。女の子が案内するよ。ごゆっくり」
オーナーはずっしりとした重さの財布に顔を綻ばせて答えた。
「……初物ね。仕込みが足りないのであれば、後で返金してもらおうかな。」
私は男の手を握り締め、手を引きながら部屋に案内した。
男の手は熱帯びていて大きかった。
そして私の手は冷たく、小さく、僅かに震えていた。
漠然とした不安が私に影を落とすが決して怖くは無かった。
彼の手が温かったから。
部屋に入ると私はぎこちない動きでベッドの上にチョコンと座った。
彼は上着を脱ぎネクタイを緩めて私の横に座り、私の名前を尋ねた。
「お嬢ちゃん、名前は?」
「マユ……アスカ」
「僕の事は知ってる?」
私は無言のまま首を横に振った。
そこからの記憶は曖昧になっている。
覚えている事は痛みと彼の表情。笑っているような泣いているような、不思議な表情。 ぼやけた記憶が鮮明になった時、彼は私の膝に顔を埋めて泣いていた。
私が子供をあやすように彼の頭を優しく撫でると、彼は彼の話をしてくれた。
自分がブルーコスモスの盟主であるという事。
子供の頃にコーディネーターにいじめられた事。
コーディネーターが憎いのだけれど、本当はコーディネーターになりたかったという事。
私には何故か彼の悲しみが理解できた。多分、彼も運命を砕かれた一人なのだろう。
彼が引き起こした戦争で私は家族を失ったのだが、彼を恨む事はない
悪いのは彼だけでなく、世の中が悪いのだと思い始めたから。
変わらない世界は人の運命を砕く。変われない世界は人の心を砕く。
永遠のようななまどろんだ時間は過ぎ、時計は別れの時間を知らせる。
彼は着替をすませて私に軽くキスをしてくれた。
そして、彼が戦場に赴くことを私に告げて手を差し伸ばした。
「一緒に来てもらえたら嬉しいんだけど?」私を誘う彼の瞳の色は憑き物が落ちたように明るかった。私はその瞳の色にあの日の空を思い出した。。
私が拒否をすると彼は悲しそうな顔をしたが、
「マユが待ってるから、戦争が終わったら迎えに来てね」
と笑みを向けると、彼は顔を綻ばせた。
そして、私は彼を見送った。
暫く経ったある日、店の女性達がテレビをを見て歓声を挙げて戦争の終結を喜んでいた。店は休みとなり皆が楽しそうに酒盛を始めていた。
しかし私は一人空を眺めていた。
夜空は暗く、星が瞬いている。
彼──ムルタ・アズラエルが死んで皆が喜んでいる。
私だけは、本心を見せてくれた彼の死を悲しみ涙を流そう。それが彼に対するせめてもの弔辞だ。
誰か一人くらい彼の死を悲しまないと、彼が可哀想過ぎる。
もしかしたら彼に惹かれていたのかも知れない。
少し砕かれた運命を繕えた様な気がした。
涙混じりで空を見上げると流れ星を見付けた。
でも、願い事は分からなかった。
今日はここまで。元々他スレで投下した物ですがリライトしたものを投下。
申し訳ないけれどしっかりしなさいと種屍は暫くお休みしてカケラをいくつか投下しようと思います。
それではまた今度。
>>82 GJ!
楽しみにして増す
>>83 例え該当スレがあったとしても、ここは新人さんや追い出されたりして
書き場の無い職人さん達が投下できるスレのはずだけど?
ある意味でフリースペースとなってるスレに投下された話に対して
無理やり誘導するのはいかがな物かと思う
>>82 乙です
アズラエルの死を悲しむマユがいいなぁ…今後も楽しみにしてます
>>84 すいません、
>>83はマユスレ住人でも何でもない
ただのキチガイ誘導厨、言うなれば荒らしなんでスルーしてやってください
86 :
84:2007/05/15(火) 00:23:51 ID:???
>>85 ふざけるなよ、嘘吐きのマユスレ住人が!!
自分のスレの住人が暴れたのに、他所のやつらのせいにするのか!?
恥って物がないのか!
とっととスレを終わらせて反省しろ!
マユスレは本当にあれだなあ
ク、クマー?
くまくま
カケラシリーズが今のタイミングで増殖してるのはなんで?
他意は無いのだが聞いてみたい
>>91 高畑さんのサイトの「箱庭系のススメ」を読んだ奴が触発されたんじゃないか?
実録さんは作風の幅を広げる為にチャレンジしてるらしい。
>>92 外部だからスレ違いになるかも知れないけど、アレは短編を書くのに結構役に立つよね。
>>74 毎回読みやすくなるね。
お話はGJ!だと思うよ
展開の予想は俺もしないでおくよww
>>83 あえて今ウンメイノカケラ。期待してるぞ
>>93 サイトのヒントだけでも教えてクレクレ
1/
「彼は最高のモビルスーツパイロットでした……」
つなぎではなくザフトの礼服を着る、整備員にとっては珍しい事だった。
空の棺を前に弔辞を読み上げる艦長の声を聞きながら、ヨウランは真新しい
礼装特有の馴染めない感触に姿勢を正す。
ショーン=マクドナルドの事は良く知らない。
――でも、一パイロットの葬式にしては凄い顔ぶれだよな。
適々乗り合わせていたというだけの間柄ではあったが、プラントの議長と
オーブの代表が列席するなどネビュラ勲章を貰ったパイロットでも難しい。
身を呈して艦を守ったショーンには、後に勲章が与えられると説明がある。
小難しい名前の勲章が持つ意匠を思い出しながら、自分がそれを軍服の胸に
付けている様子を思い浮かべて見る。
名誉は自分に似合わない。
ザフトに居るのは給料の問題だ。五年此処で働けば、ノウェンベル市にいる
四番目の弟がアカデミーに行ける、ただそれだけの事だ。保護者が居なければ
コーディネーター理想の国プラントであっても暮らし難い事がある。
「――礼!」
艦長の声が広い格納庫に反響し、揃い立つクルーが一斉に敬礼を行った。
礼儀に従い直立するヨウランは、隣から聞こえてくる低い嗚咽を聞かなかった事にした。
情けの積もりだったのだろうか、と後で思い返しても分からない。
同僚のデイルですら泣いてはいないのに、ヴィーノは何故泣いているのだろうか?
ヴィーノは笑っているべきだと思う。人が身を犠牲にして守ってくれたのだから、
感謝して幸せに暮らすべきだ。人死にが悲しいのならいっそザフトを抜けて、だ。
号令に合わせて、二機のザクがビーム突撃銃を構え、陸戦隊が銃を掲げる。
神を信じていない、魂魄の存在も疑っている。人が精神と呼ぶものは、
脳髄の中を駆け巡る電気信号が量子効果を起こした乱れだと、簡単に考えている。
幾ら荘厳に厳粛に弔われようとも其処には魂はない。無いものを弔っているのは、
残された人間が罪悪感を感じないための自己満足だ。
弔辞を受けるべき肉体すら、空の棺には見当たらなかった。死んだ後も忘れていないと
ポーズをとって、死んだ後も忘れて欲しくないと全力で叫んでいるのだろう。
白々しい儀式に参加しながら、ヨウランは生まれ故郷の風景を思い出す。
草原の緑と水をたたえる青の色合いが美しかった景色を見る事はもう出来ない。
しかし故郷の光景は天地に住まう殆どのナチュラルとコーディネーターが知っていた。
ユニウス7は今も冬、氷と真空に包まれている筈だ。
2/
――アーモリー・ワン襲撃から八十時間
ボギーワンとの戦闘でかなりの損傷を負ったミネルバは、
小惑星の影に船体を横たえたまま補給艦の到着を待っていた。
幸いにして基部フレームは無事で、ユニット化された艤装と装甲を交換し、
損傷したエンジンを復興させれば修復は完了する。航行能力を大きく減らした
ミネルバの為に、アーモリー・ワンの上層部は補給艦の派遣を直様受諾した。
出港から僅か十時間程度で補給を求めるというのは、ザフト始まって以来のことである。
「襲撃を察知できなかった情報部の怠慢が響いたというものです」
艦長タリアに責任は無いと語るアーサーは言葉の端に、『情報部が襲撃を察知していながら
それを伝えなかった』という可能性を匂わせている。
「もうじきNJの電波撹乱を通して通信が繋がる頃でしょうが、何を言われますかな」
アーサーがそういうが早いか、メイリンが通信回線を繋げる。
「艦長、補給艦モーガウルです。映像をモニターに出します」
タリアの返事を待つことも無く、艦橋正面のメインモニターに黒髪の男性が映る。
人のよさげなアジア系だ。シンが髪を短く揃えて齢を重ねればこうなるのではないか、
と思われる顔立ちには、不自然さの欠片も無く満面の笑顔が浮かんでいた。
「お久しぶりですね、グラディス艦長。モーガウルのレイト=カンザキです」
迷子の新人をお迎えにきましたと、余計な挨拶も嫌味にならない。
彼がシーサーペント級輸送艦を改造した補給艦モーガウルの艦長である。
「お久しぶり……と言いたい所ですが、最後に話してから四日と経っていませんわ。
進水式の打ち合わせでご一緒したでしょう?」
タリアもまた笑って応じている。
「まるで三ヶ月も掛かっていたように感じますがね……」
柔和な笑顔に軍人の表情が垣間見える。
「あと1時間もすれば女神をお迎えに上がりますので、しばらくお待ちください」
「カンザキ艦長、アーモリー・ワンの様子はどうです?」
「はい、プラント自体の被害は其処まで大きくはありませんでした。兵士の被害者は
多数……なれど市民に大きな被害はありません。四番ポートで火事が起こって、
ナスカ級が二隻ほどレアになりましたがね。総括すれば負け戦でした」
「……そうですか。ところでカンザキ艦長。もしよろしければ、ミネルバの修理中に
こちらの食堂へ来られませんか? ミネルバのコックは一流ですわよ」
「はは。ミネルバのクルーは"人材刈り"のグラディス艦長が直接集めたのが
半数を占めるそうですが……いいですなあ。是非時間を作ってご一緒しましょう」
「どんな料理がお好みでしたかしら?」
「私は魚料理が好きなのですがね、特に活け造りの刺身が良いと思うのですが……
空では中々たべれませんでね。前の戦争で海に下りたときには釣りを覚えましたよ」
「地球産の魚は寄生虫に注意が必要ですわね」
「ええ、然もそれが二匹も居たときにはね。ぞっとしたものです」
宇宙で魚は手に入りづらい。それが作戦行動中の戦艦ともなれば尚更で、
二人の会話は挨拶に過ぎなかった。
3/
カンザキの笑顔を最後までモニターに残像させたまま通信は途切れた。
「艦長……」
「ええ、アーサー」
其処までの通信に言葉とは違った意図を感じた者が、艦橋の中でただ二人居た。
「プラン21においてコンディションイエロウ発令。モビルスーツ隊発進用意!」
「え……どういうことですか?」
聞き慣れない単語を手元の画面で参照したメイリンが疑問の声を挙げる。
外部の兵装を一切起動せずにモビルスーツ戦力のみを展開するプランだ。
「文句を言わずに急いで、メイリン」
微かな苛立ちを滲ませたタリアに圧されて、メイリンは訳の分からないまま
艦内放送で戦闘体勢への移行を告げる。
頭上に疑問符を浮かべたままのメイリンに縋るような目で見つめられて、
ミネルバ副長のアーサーはため息を一つ、そして答えた。
「君の仕事は質問する事では無いし、私は先生じゃないんだけどね。まあいい。
アーモリー・ワンの四番ポートは現在閉鎖中で、作業用モビルスーツの一台も
置いていないんだよ」
「そしてカンザキ艦長はザフトでは有名な……魚嫌いよ。特に鯖、アレルギーらしいわ。
どうやらモーガウルは腹に爆弾を抱えてしまったようね」
其処まで説明されてはメイリンにも状況が飲み込める。世間話を装って情報を送った
モーガウル艦長の背中には、撃鉄を起こした銃が突きつけてあったというわけだ。
とにかく補給艦モーガウルは後一時間のうちにミネルバに接近する。
「ボギーワンゆかりの敵でしょうか?」
「海賊か傭兵の類か……タイミングが良すぎるわね。かといって損傷しているミネルバに
奇襲をかけるでもなく、先にモーガウルを制している。確かに回りくどいわ」
「考えられる可能性としては、ボギーワンの勢力に依頼された傭兵というところでしょうかな。
報酬としてミネルバそのものを約束されたと」
そしてミネルバに接近するモーガウルを見て欲が出た。モビルスーツを出して補給艦を
制圧し、ミネルバを捉えるのに利用しようと考えた。アーサーの推測をタリアは遮り言う。
「仮定を元に推測しないの。後は敵を追い払うなり何なり為てから考えましょう。
モーガウルを落す事もミネルバが落される事もならないわ。そして今のミネルバには
海賊の攻撃でも致命傷になりうる……モビルスーツ戦力で対応するわよ。外の火器は
起動しなくても良いわ、チェン」
「了解です」火器管制官は、砲術ブロックに送ろうとしていたコードを途中で切った。
そんなわけで……と、タリアは副長を呼ぶ。
「艦長……モーガウルの腹に収まっているのは――」
「先刻の会話の流れからすると、モビルスーツが二機ね。侵入した賊の数は不明。
アーサー、貴方に仕事を一つあげるわ……モビルスーツを操縦出来そうなクルーを
呼んで来て、一人で良いから」
「……は?」
4/
政治家というのはとても忙しい。国家を代表する立場ともなれば尚更だ。
時期によってはそれこそ秒刻みのスケジュールを送らねばならないはずが、
場違いなところにたまたま居合わせた為ほかにすることが無く、仕方無しに
会談の続きをやっているという二人が居る。
「アスハ代表、そちらの提出した帰還プログラムには私も目を通したのですが、
この案は彼ら"元"オーブ難民にとっての救済策といえるのですかな?」
「ええ、議長。確かにプラントにはある程度の負担を強いる結果になるでしょう。
しかしそれはあくまでも一時的なもので、損失の補填はオーブから――」
――かなしいけどこれって暇、なのよね。
そしてオーブ側の監視兼議長の護衛として会談の場に同席するザフトレッドが
二人居た。会談の場であっても見えそうで見えないミニスカートを手放さない赤服
ルナマリア=ホークは、隣のレイを見遣ってその不動ぶりに嘆息する。十分前に見た
時と寸とも変わらない姿勢は、静止画を見ているような気分にさせる。
のらりくらりと話を逸らすデュランダルを相手にオーブのアスハ代表は我慢強く
話を続けていた。しかし政治の世界に余り興味の無いルナマリアにしてみれば、
二人の話し合いと言う光景はあまりにも見栄えのしないものであった。
七回目の欠伸を噛み殺したルナマリアは反対側に立ちレイと同じく姿勢を崩さない
人影と目が合ってしまい、赤面して顔を背けた。アスハ代表の随員アレックス=ディノだ。
ミネルバの医務室で覚醒したアレックスは、アスハ代表の見舞いを受けたその足で
あてがわれた士官室に向かいった。そして一時間後には完璧なスーツ姿を整えて
代表と議長との話し合いの場に現れたと言う。
ルナマリアが噂に聞いた話ではアレックスとアスハ代表は医務室で二、三時間程
二人きりであったそうだが、即席の会議場に現れたアレックスは一言遅参を謝り、
アスハ代表は振り返ることも無く一言労っただけだったそうだ。
CE73年時点でモビルスーツ操縦の経験があるコーディネーターなど限られている。
黒髪の青年は前の大戦でモビルスーツを使って戦ったのだろうと思うと、今再び
政界での戦争をやり直そうとしているそのタフさにルナマリアは軽い畏敬の念を覚えた。
命の恩人でもある。
オーブ、プラントの首脳が話し合う様を見守る昏い色の瞳に興味がある。後二十分、
そうすれば会談は一応の"時間切れ"を見せて、僅かな時間の空白が生まれる。
そうしたら話しかけてみよう。思えばお礼がまだだった。
と、ルナマリアが思考をまとめようとした辺りで、ミネルバ全艦に向けて
耳によく馴染んだ声での放送が響いた。
「――コンディションイエロウ!? モーガウルに何かあったの?」
「失礼します、議長。ルナマリア、副長から通信だ……お前も聞け」
「わかったわ。はい…………成る程、それはミネルバクルーには居そうにないですね」
通信機を受け取り、副長のたわごとを聞き流していたルナマリアであったが、
ルナマリアには副長の求める人材を探すのにさしたる労力を必要と為なかった。
「……ん?」
ルナマリアに見つめられたアレックス=ディノが、話の流れを把握できずに眉をひそめた。
5/5
開放されたザクのコックピットに吸い込まれていく影は、寸前にザフト式の敬礼を
シンとデイルに送ってきた。反射的に敬礼を返してシンは、二号機コクピットの淵に
手をかけ体を固定したままデイルに話しかけた。
「で……なんであの人がザクに……?」
「なんでも艦長が直談判した結果だそうだ」
操縦席でコントロールスティックを小刻みに動かすデイルは、舌打ちを一つ洩らして
コンソールを手元に寄せた。
「フィードバックの感度が俺の好みじゃない。マッドの仕事じゃないな……ヨウランめ」
「部外者をザクに乗せるんですか?」
「部外者をゲイツに乗せるのか、ショーンの機体に? ……すまん、言い過ぎた」
デイルの言葉にはっとなったシンは、ゲイツRの調整を続けた。
「向こうのザクはミネルバに張り付く砲台が役目だ。火器のコントロールも艦橋側から
行う。あの男は殆ど乗るだけだ。……ヴィーノ、スラスターの反応を5%上げてくれ」
ゲイツRの足元、鬼気迫る表情で整備を続けているのはヴィーノだ、プログラムは苦手な
筈が、黙々とゲイツRのプログラムを書き換えて行くその動きには無駄が無い。
「良い感じだ、ヴィーノ。シン、今回の作戦内容と注意事項をもう一度言え」
公的権限の序列によって、緑服のデイルがザフトレッドのシンにこんな口調をする。
「作戦目標は付近に潜伏しているはずの敵母艦の索敵、及び無力化です。補給艦モーガウルの
接近までにミネルバを発進します。使用する機体は俺がゲイツR一号機、デイルが二号機。
状況によっては敵艦の撃沈も許可されています」
「ああ、そして注意事項は?」
「敵に発見されない事。モーガウルに隠れているモビルスーツにも、敵艦にも」
「それ以上に大切な事があるだろう?」
「……全員無事に帰還することです」
そうだ、と短く言い残したデイルは二号機のハッチを閉ざし、ゲイツRの火を入れた。
「ヴィーノ、シンも離れろ。俺たちは先発だ。一号機を調整したらモーガウルが
小惑星の影に居る内にミネルバを離れるぞ」
「――はい!」
「了解、三分で終わらる」
身じろぎするゲイツRの装甲を蹴り、シンとヴィーノは一号機へと向かった。
SEED「+」氏乙です。
こういう、作戦が始まるのってどきどきしますね。
第二話 綺麗事の裏に潜むもの 1-1
トダカは仕事を終え自室へと戻った。
部屋の中に甘い香りが漂っている。シンの匂いだ。シンはトダカのベッドの中で安らかな寝顔を浮かべている。トダカはシンの邪魔にならないようベッドに腰掛けた。
この寝顔からは先程の激情は想像出来ず、トダカはクスリと笑った。
――まさか、カガリ様に牙を向けるとはな。
トダカはシンの手を引きクサナギへと降り立った。既に上官の許可を得て、シンを軍医の助手として現地徴用する手続きを取っていた。
上官は結論はカガリ様の判断次第で決まると言っていたが特に問題は無いように見えた。
医務室へ向かう道すがら、トダカはシンの置かれた状況を説明した。シンはしっかりと返事をしつつ強くトダカの手を握ってきた。トダカはシンの存在を包み込む様に優しく握り返す。シンに振り返ると瞳を紅く輝かせ微笑んでいた。
医務室に着きトダカは軍医に経緯を説明した。軍医は頷きながらシンに視線を走らせる。シンは興味深げに辺りを見回していた。
トダカはシンに声を掛け軍医に挨拶をさせた。軍医と握手するシンを見届けトダカは医務室を後にしようとした。
その時、扉が開いた。
カガリだ。キサカを連れだって医務室を訪れたのだ。
憔悴しているようにも見えたが、カガリは笑顔を向けシンに話を掛けようとしていた。
その時運命が動いたとはこの時点のトダカには知る術は無かった。
1-2
シンとカガリは年齢も近い。トダカはカガリが話を聞きシンに興味を持ったのだと感じていた。
――だがしかし。
シンの表情からは笑顔が消えて感情が無くなって行くのがトダカにはっきりと見えた。
カガリが挨拶をする。だがシンは鋭い視線でカガリを睨み付けた。
「流石、綺麗事はアスハのお家芸だな!」
シンの怒号が部屋に響く。唇はわなわなと震えており、瞳は深く悲しみに満ち溢れていた。
「シン!何と云う事を言うのだ!」
トダカはシンの傍らへと向かいシンの頭を下げさせようとした。しかし、シンは強情にも頭を下げようとはしなかった。
「――構わない。確かにアスハは綺麗事の家系かも知れないからな。」
カガリはトダカとキサカを制しシンへと一歩近付いた。
「国を失ってまで綺麗事を貫くのは愚かな事だろうな、きっと。だが、綺麗事――理想を失ってまで私は生き長らえようと思わない。」
一言一言を噛み締めるようにカガリはシンへと語り掛ける。何物にも支配されない深く済んだ声だった。
「ご家族を失った悲しみは充分に理解できる。私も父を失ったからな。」
カガリはシンに何かを手渡した。刃先がキラリと輝く。華奢なナイフではあるが使い方次第で人が殺せる。
「そのナイフで私を貫くが良い。お前がアスハを、オーブの理想を否定したいのならば。さあ、早く」
シンの躯がガクガクと震えているのが判る。しかし、トダカにはシンの心境もカガリの真意も解らなかった。
投下終了です。
自分の得意技を使って書けないので難しい……
>>情熱
シンの匂いが甘いというのにふいてしまいました。一レスにまとめられる様におもいます。そして得意技とは一体なんなのでしょうか。
>>95-99 45氏投下乙!次回からはワクテカな展開になりそうですね。毎回楽しみにして待ってます!
>>102-103 得意技?ぜひ使ってみてください。見てみたいですw
》SEED『†』
暗号の符丁がカッコイイ。大人な感じ
あと普通の会話はもう少し平易な感じでも良いのでは
あなたの味ではあるのだけれど
》情熱
むしろ書き手の逡巡が伝わってくる気が・・・w
穿ちすぎですかw
>>105,106
この方の得意技っつったらあなた・・・
――ザフト遠征軍・エルスマン隊・旗艦『ガルバーニ2世』艦橋
ザフト遠征軍・前衛部隊は、既に拠点衛星基地ミカサからの撤退準備が万全に整っていた。
確かにこの拠点を失う事は、地球侵攻作戦の足掛りともいうべき、前線基地を放棄するのに等しい。
これで地球侵攻計画の全面的な後退を意味するのだが、ディアッカ自身、もはやその事に拘ってはいなかった。
これが、もしキラやイザーク、アスラン等の頭の固い連中ならば、自身の誇りとラクスの機嫌を損なわない為に、
あくまで死守をして無駄に兵士を死なせながらも、ラクスからの援軍を信じて戦い抜くであろう。
だが、そのように自身を悲劇の英雄に見立てたロマンチシズムに浸るほど、ディアッカは酔狂ではなかった。
若き用兵家として、プラントの下級兵士から信望を集めている、ディアッカ・エルスマンとラクシズ上級指揮官達との間には、
確執が隙間どころか、クジラが腹這いになるほどの幅があったし、更に彼とプラントの頂点に立つラクス・クラインとの考え方の違いには、
月から地球まで届くほどの距離があった。
理想と現実の区別がつかない妄想の為に、兵士達に死を強要するほど、ディアッカは酔狂ではない。
その為ディアッカ自身、単なる軍人として以上にもの事が見えてしまうのだ。大抵そのような輩は、幸福と友人となることはできない。
彼は完全に戦略を切替え、この宙域に対して全面的な放棄と撤退を決意していた。
ここを死守する事はラクシズにとって、戦略の上では意味があるのだが、それは自分達、前衛部隊にとって全滅を意味する。
そのようにラクスの為の自殺的英雄行為などという悪趣味は、自分達には全くないのだ。
「隊長!!偵察艦艇より緊急連絡!!敵影確認!オーブ軍です!!」
艦橋でオペレーターの緊張した報告がもたらされる。予め想定されていたとしても、やはり艦橋に緊張が走る。
だが撤退の準備はほぼ完璧で、後は、殿としてこの旗艦が最後となって基地を出発する予定だけなのだ。
艦橋で悠々と腕を組んで佇んでいたディアッカは、その報告に大して驚いた素振りも見せず、鷹揚にバートに向って頷いた。
「来たか。予定より少々早いが、まぁよかろう。バート、――例の準備は?」
「はい、無人艦艇システムのデータ入力、既に完了しました」
最後となった拠点衛星基地ミカサにおいて、撤退にあたりディアッカは幾つかの手を打っていた。
オーブ軍が、ポラリス基地再奪取に当たっての小細工同様に、時間稼ぎの為に基地の自爆を設定し、
無人艦艇を要所に配置して、それを囮にこの宙域における、自分の部隊の残存兵力のズムーズな撤退を援護させる。
この程度の小細工などサイ・アーガイルにすぐに見抜かれるだろうが、だからこそ奴は見逃せないだろう。
要は時間稼ぎに過ぎない。だがその時間こそが、今の彼には金の砂粒より貴重だったのだ。
副官のバート・ハイムから、撤退準備全ての作業が完了したことを確認すると、ディアッカはバートに向って手を差し出す。
「上出来だ。――マイクを」
「……どうぞ」
恭しく、マイクを差し出したディアッカの副官であるバート・ハイムの心境は複雑である。自身の上官が行っている行動は、
総司令部からの意向を無視した独断専行の類のものである。これを実行するば上官の立場は、著しく悪くなるのだ。
だがここに踏み止まっていても、ラクス様の為の名誉の戦死という、自分らにとっては何ら実りの無い玉砕戦法しか残っていないのだ。
「……うむ」
ディアッカは、一つ頷くと一軍の指揮官としてその重々しさに相応しい声量の声で全軍に演説を始めた。
無論、事前の草稿無し映像無しのアテレコでの演説である。自身の容儀が些か軽めに見られる為にディアッカ自身が、
映像を流すのを好まず、自身の音声による演説による軍指揮の鼓舞の方を好んだ。
「……軍団指揮官ディアッカ・エルスマンから前衛部隊全軍の兵士諸君に告げる!
これより我が部隊は、当衛星拠点基地『ミカサ』を放棄!すみやかに撤退を開始し、後方の第4軍と合流する!」
よく響き渡る声で艦橋全部は勿論のこと、マイクを通じて前衛部隊の全艦隊にディアッカの言葉が響き渡る。
その内容が彼ら兵士達の脳裏に浸透するタイミングを計って、ディアッカは演説を続けた。
「なお、この行動は総司令部の決定ではない――。宙域放棄と撤退は大本営の意向を無視した行動である!
だが……当宙域における本部隊の軍事行動の全責任は――私にある!」
バートは固く目を閉じた。彼の上官の意思が痛いほど理解できる。
上官が演説し宣誓した内容は、総司令部の意向を無視し、尚且つ敗戦の罪を全て自分にして、全ての責任を背負うつもりなのだと。
これは、ディアッカとその下の部下の責任を取らせようとする、総司令部の陰気な手段を防ぐ意味でも、
今、この場に措いて公式に明言をして意図的に演出している。そして、この事を公式記録として残し、
前衛部隊の兵士達の責任を何とか回避させようとするものだった。
これによって前衛部隊の兵士達は、総司令部からの処罰が免れるであろう。
「この撤退によって、諸君らの今までの英雄的奮戦が汚されるものではないことを、私の名誉に賭けて、ここに誓っておきたい――!」
ディアッカ自身のこれまでの功績と名誉は、これで地に落ちるであろう。
一旦、占拠した衛星基地を放棄する事は、ラクシズの軍内では不名誉な事であるからだ。
建前上、常勝の軍団を気取っている,元・三隻同盟を主力としたラクシズにとって、
それは常勝不敗の神話に泥を塗ることになるからである。
しかも、その動機が、かつては自分達に取って単なる下っ端であった、取るに足らない人物(ラクシズの上層部の連中はそう認識している)が、
率いる軍団によってならば尚更である。
サイ・アーガイルが只者ではない事を理解している人物は、プラントでは僅かなのであった。
その数少ない人間の一人である、ディアッカ自身が只者ではないはずなのだが、世の中はそう上手くいかないもので、
彼の力量を正当に評価していたのは、当のサイ・アーガイルを始め、敵対しているオーブ軍であったのいう事実は、皮肉としか云い様が無いであろう。
両雄は、統一戦役の時の僅かなの一時期、共闘していた時に互いの力量を知ったのである。
力量を知っているからこそ、互いに慎重を極めた戦術を展開し、極力被害を減らす戦いに終始していたのであった。
オーブ側の将帥がサイでは無く、ロンド等の他の将帥であったならば、ディアッカとしても、つけこむ隙や油断を誘って、
敵側に罠を仕掛ける事も容易であったに違いない。現に彼の策略と戦術によってオーブ側は、第2艦隊を壊滅させられ、
コロニー要塞ヘリオポリスUは陥落、破壊され、第3艦隊も壊滅寸前にまで追いやられたのだ。
だが、オーブはサイ・アーガイルを総司令官として据え、大部隊の機動戦力を整えると、電光石火の如く攻め寄せ、
こちらの唯一の弱点である補給線の長さを見据えたように、拠点をあっという間に攻め落としてしまったのだ。
現に増援や補給はろくにされず、進軍を命じられていたのだ。
サイ・アーガイルの将帥としての才能を承知のディアッカだが、もう一つ特質することがある。
彼を抜擢したカガリ・ユラ・アスハの決断力である。
第一線から引いて既に5年以上経っている人物を、再び登用するなど、並大抵の度量ではないと思う。
少し前のサイ・アーガイル自身は政権闘争に敗北し、何ら影響力も持たない一般市民としての立場であり
彼を登用することに、政治的なメリットは全くない。
サイもディアッカ同様に、オーブ社会において相当のバッシングを受けているが方向性がやや異なる。
ディアッカ・エルスマンは用兵家として、下級兵士達から人望を集めている。
ラクシズ上層部の連中に煙たがられてはいるが、その才能の故に彼を使わざるを得ないのだ。
サイ・アーガイルは、恩知らずの人非人として、オーブの氏族社会では信じられないほど評判の悪い人物である。
だが、彼は代表首長であるカガリから全面的な信頼を受けている。下士官からは一応は、相応の尊敬を得てはいるが、
尉官将官からは嫌われ抜かれている。
ディアッカとサイの決定的な違いは、やはりトップの差であろう。
カガリ・ユラ・アスハもラクスやキラ達三隻同盟としていた十数年前は、国際社会の中では『無能』の烙印を押されていたのだ。
オーブ国内の井の中の蛙の状態だったのが、三隻同盟つまりラクシズから離れた此処十数年の間に、その今の名声は確立されたと言っていいだろう。
その十数年間に彼女の補佐をしていたのが、サイ・アーガイルと現在、名宰相と誉れ高い女傑ロンド・ミナ・サハクであった。
オーブを一つのオーケストラとして見るならば、カガリ・ユラ・アスハ自身は凡庸な奏者であろう。
だが、彼女自身が指揮者となって、優秀な弾き手を見抜く目が一流であるのは、サイ・アーガイルの抜擢を見てから道理である。
サイ・アーガイルが一度でも敗北すれば、彼女のオーブにおける地位は大きく揺るぎ、地に落ちるであろう。
それを承知の上でサイ・アーガイルを将軍にとして登用するとは。
身内贔屓の人事しかできないラクス・クラインとは、比べものならない大人物に成長したのではないだろうか。
以前のカガリであったのならば、身内による藩閥よって固めた親藩政治しかできなかったであろう。
だが、現実に彼女は貴賎や血筋を問わず、能力のある人物ならば、どのような素性の者でも抜擢し登用するリベラルな政治を行っている。
オーブ政府内では、もはや氏族中心の悪しき旧弊は、一掃され若々しい息吹で満たされているのだ。
ならば、ラクスを頂点としたピラミッド形式の旧弊体制を強いているプラントでは、勝ち目はないのではないだろうか?
やはり、どんなに優秀な音楽の名器の使い手も指揮者が無能ならば、存在していないも同様であるのだろう。
「……我が部隊の兵士諸君!共に生き延びて、明日への再戦を帰し、この屈辱を耐えようではないか!
……この宙域での健闘に心から感謝する。……以上だ!!」
我ながら自分で言っていても寒々しい内容の演説だと理解しながらも、ディアッカは士気の低下を防ぐべく、
撤退前の演説を行わざる得なかった。実際、生きている限り敗北ではないと彼は考えているのだ。
艦橋の周囲では、兵士達のすすり泣く声が響く。無理もないことだろう。
先鋒として先陣切って、多数の犠牲を払いながらも大功を立てた。
だが結局のところ占領地を放棄して退却をしなければならないのだ。
この戦いを出世の糸口としている兵士達とっては大きな打撃であろう。
艦橋で泣いていた一人の若い士官がディアッカに対して、こぼれる涙を拭いながらも訴えて来た。
「うっ……た、隊長」
「おいおい、そんな顔をするな」
ディアッカは、その若い士官の顔を見ながら、かつて共に戦った良き先輩を思い出していた
恐らくまだ10代半ばであろう、その金髪の士官は泣きながら総司令部に対する遣る瀬無い不満をディアッカにぶつけて来た。
「……し、しかし、口惜しいのであります。この状況は、隊長の報告を無視して、
いたずらに前衛部隊を突出させた総司令部に責任があるはずです!!」
若い士官は、総司令部に、ラクスと彼女の取り巻きを弾劾していた。この若い士官はの兄は、前大戦で戦死し、
その戦死の原因がラクス・クラインの愛人であるキラ・ヤマトを討とうとした『愚行』の為に、亡くなった後も貶められる有様だった。
兄は二つ名を持つ優秀なエースパイロットだった。兄自身は士官学校の出ではないために、
トップガンの証である『赤服』を纏っていなかったがその実力は自他とも認める素晴らしいものだったという。
兄は父を早く亡くし子供の頃、病弱でろくに表に出れなかった自分の治療費の為に軍隊に入っていたのだ。
尊敬する兄が戦死し、母も心労の為に亡くなり、一人になった所をディアッカが保護者となってくれたお蔭で、自分は、何とか今まで生きてこられた。
彼は、亡き兄の友人と言う関係で自分を今まで育ててくれたディアッカに恩と敬愛の念を抱いていた。
だが、メサイア戦役の後に、その尊敬していた兄を殺したキラ・ヤマトは、何とぬけぬけとプラントへ――!
しかも、ラクス・クラインと共に現れて大きな顔をしているのだ。
兄の名誉を地に落として……。今まで散々、同胞を殺してきておきながら厚顔無恥も甚だしい!!
これに自分は激怒し、キラ・ヤマトの暗殺を何度も度試みようとしたが、その都度ディアッカに窘められてきたのだった。
その尊敬するディアッカが言うからこそ、今まで我慢してきたが、だが上官が罪に問われるというのだ。
しかも、ラクスやキラの無能な総司令部によって。
「何故です!!何故、”ザフト宇宙艦隊の至宝”とまで謳われた隊長が、どうして、一人で泥を被らねばならないのですか……!
……隊長が自分同様、第三市民階級だからでありますか!?」
「何を言い出すつもりだ?」
「ですが……!」
――メサイア戦役後、ラクス・クラインとキラ・ヤマトの指揮の下で、無理な出兵を重ねてきたプラントは、疲弊の極みにあった。
太陽系外側の辺境宙域や、地球圏を遥かに離れた周辺鎮圧等は、それなりに上手くいっていたのだが、
地球圏の地上から、果ては太陽系中心部の地球連合が支配する宙域に手を出すに至っては、戦いは泥沼の様相を見せていた。
言わば”戦局は疲弊していた”と言うやつである。
無駄な出兵とその失敗によって、結局はプラントに逃げ帰るしか手が無かったラクシズの連中に対して、
プラントの一部の反ラクシズ派は、ここぞとばかりに彼らを攻め立てたが、プラントを支配しているクライン派は、ラクス・クラインを批判する事を断じて許さなかった。
ラクス在ってこそのプラントであり、それに従わずに逆らう者は、『平和の歌姫』に対する冒涜であり、正義に対する『悪』だと決め付ける有様だった。
これを契機にプラントは、ラクス・クラインを頂点とするピラミッド形式の社会体制を新たに構築してゆく事になる。
ラクシズのいつもの手で、プラント最高評議会は『ターミナル』と呼ばれるラクス・クラインの私兵集団によって議会は占領され、
『平和』の名の下に永遠に解散される事となった。
そしてラクス・クラインは改めて、プラント政府機関の頂点として立ち、終生最高執政官『天の女神』として就任する。
もはや、プラントでは、法律的に彼女を罰することは不可能となったのだ。
更に、その下の機構は彼女の愛人であるキラ・ヤマトを頂点としたラクシズのシンパによって重要ポストは占められる有様となった。
そして、プラントの社会復興と生産性向上を謳い文句として社会秩序構成法が施行される。
これは、プラントだけではなく、人類社会全体の平和と安定を担う為に、プラントの人間は常に先頭に立つべきであるという、まことに御立派な高説であるが、
要するに、プラントの物資生産と軍事物資の促進の為に、プラント市民の大半をラクスへの盲従を利用しての合理的な生産に従事させる計画であった。
それは、結局のところ、平和には自分たちが最高の軍事力を持っていなければならないという、いつものラクシズの妄想であった。
その為、プラントの市民階級は、三つに分けられ、それぞれ生産に従事する事となった。
そして、プラントの住人達は一部を除き、何の疑問も持たずに、”ラクス様の仰ることならば”と意気揚揚と従う事になったのだ。
「――気にするな。こういうシチュエーションには慣れている」
ディアッカは、数年前まで、保護者として後援してきた若い士官を見ながら、その若気を好ましく思っていた。
だが軍人である以上、自分達が所属する軍の規律には従わねばならないのだ。もうあの頃の三隻同盟の頃のラクス一派とは違うのだ。
彼はディアッカのその煮え切らない態度に苛立ちを感じていた。そしてそれをぶちまける為に敵対するオーブ軍の内情と比較する。
「……オーブ軍では、しかるべき試験を通れば、平民出身の将士でも、軍の中枢に入れる道が開かれていると聞きます」
「……」
「事実、今我々を攻め寄せんとしている敵将サイ・アーガイルは、外国移民出身の出ということ……。
……我々の故郷、プラントの常識でいえば、最下層階級の出身です」
「……隊長のような御方の意見を汲み上げられない今のプラントに……この先、本当に輝かしい未来が待っているのでありましょうか?!」
彼は以前からの不満をぶちまける様に堂々とラクスをこの場で批判したのだった。艦橋周りの士官達もギョッとした表情で彼を見ていた。
バートもハラハラしながらその様子を黙って伺っていた。この艦橋にはいないが、もしラクスの狂信者達に聞かれたら、この若者も隊長も只ではすまないだろう。
その若い士官の肩に手を置きながら、ディアッカこう呟いた。
「……隣の芝は、いつだって青いんだ――」
ハッと彼がディアッカの顔を見上げると、尊敬する上官は、ほろ苦い表情で自分の顔を見つめていた。
そして、こう静かな口調で淡々と続ける。それは、ディアッカ自身が自分で自分に言い聞かせるかのようだった。
「人は人、国は国――」
「……」
「我々は、己の属する組織の中で全力を尽くせばいい……」
「……隊長」
言い終わるとディアッカは、表情と声を一変させながら、艦橋全部に響き渡る大声で明るく言い放った。
「――まったく、お前の泣き言のお陰で、撤退前の貴重な時間を消費したぞ!ほら、顔を上げろ!
オーブ軍はもう眼前だ。ただちに撤退を開始する!」
「はっ!」
>>続く
戦史さん
>>GJ!内容は面白いんですけど、台詞前後の改行は必要ないと思いますよ。
>>情熱さん
耽美的なのが気にかかります。シンの行動がやっぱりアレなんですね。カガリの対応が面白かったです。
>>高畑さん
某スレを見ましたが、お気を落とさないで下さい。
ウンメイノカケラのリライトは微妙なニュアンスが変えてあって面白かったです。マユとアズラエルとの絡みは盲点だったです。
普通じゃ考えつきませんよ。ムルタの更正はさせてないけど救済はしている所にホロリときました。
ワガママですけどSSじゃないかもしれませんが箱庭系のススメを読んでみたいです。
戦記氏乙です。
なんというか、ラクシズに痔。これまさしく、豚に真珠…。
もういっそのこと痔の艦隊はオーブにぼう…、いやそれじゃ独裁者と同じだよな。
痔が良い人で漢過ぎて泣けてくる(´;ω;`)
訂正、戦記と戦史間違った…orz
戦史氏スミマセン…
119 :
3-214:2007/05/18(金) 00:28:55 ID:???
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜
第4話 「蒼穹 −やくそく−」(後編)
(1/9)
◇ ◇ ◇
カガリが地球連合軍の撤退報告を受けたのを見計らったように、ウナトとユウナが連れ立って
発令所に戻ってきた。
「とんでもないことをしてくださいましたな、姫」
開口一番、これ以上ないくらい苦い顔でウナトが言う。
「これは、大西洋連邦との同盟の大きな支障となりますな」
ユウナはウナトの背後から「そうだ、そうだ」とでも言うように頷いている。
ふと、カガリは子供の頃に見たいじめっ子を思い出した。その子は自分が反撃されるとすぐに
母親に泣いて訴えていた。そして、母親がとんできてカガリたちにガミガミと言うのを、後ろから
薄ら笑いを浮かべていた。
今のユウナの顔がその子供と重なる。
カガリは背中に広がった寒気に身震いしつつも、それを気づかせない態度で静かに口を開いた。
「ウナト、取引をしよう」
「取引ですと?」
「そうだ。連邦との同盟の白紙撤回をしてほしい」
「な、なにを馬鹿なっ!?」
「ユウナ」
叫ぶように割り込んできたユウナをウナトは一言で制した。ユウナは不満気にそれでも黙り込む。
「それで、姫の条件は?」
カガリの視線が一瞬自身の左手に移ったのをユウナは見逃さなかった。まったく忌々しい。
あんな男、プラントと一緒に吹き飛べば良かったのだ。そうだ、帰りのシャトルが戦闘に巻き
込まれて爆破されでもすればいい。
そんなことを考えていたユウナは、カガリの言葉に耳を疑った。
120 :
3-214:2007/05/18(金) 00:30:41 ID:???
(2/9)
「条件は、私とユウナとの結婚」
「カガリィッ」
喜色たっぷりに喜びを表すユウナとは対照的に、ウナトは冷めた表情でカガリを見返す。
「カガリ様とユウナとの結婚はとうの昔から決まっていた事。取引の材料にするには、あまりにも
小さすぎますな」
ウナトは、やれやれ何を言い出すかと思えば、というように鼻で笑う。
しかし、そのウナトもカガリの次の言葉に驚きを隠せなかった。
「加えて、その後実権をユウナに譲り渡して私は引退。以降は隠居して表には出ない。
そんなところでどうだ?」
(何を考えておるのだ、小娘が……?)
ウナトは本心を表情に出さぬよう留意しながら考えた。もちろん実権は欲しい。その為の準備も
密かに進んでいる。しかし、それが今、目の前にポイと投げられたのだ。飛びつきたいが、それが
毒餌であったら目も当てられない。
「姫のお申し出は私共には大変魅力的ではございますが、しかし姫、この度の連邦との同盟締結は、
首長会で合議して決定された事。それを私共の都合だけで破棄するなどできる筈がないことくらい、
姫様にもご理解いただけると愚考いたしますが?」
カガリとの結婚など、数年後には必ず実現できる。しかし、この時期に連邦との同盟を結ばな
ければ、これまでの苦労も水の泡になる。
ウナトは横目で息子の顔を伺った。ユウナはすがる様な目つきでウナトを見ていた。
(情けない顔をしおって!)
最近は人前に出しても恥ずかしくない態度を取れるようにはなってきたが、いざという時、
親を頼るようではまだまだだ、と心中で嘆息する。
「そうか、なら仕方ない。今の話はなかったことにしよう」
対して、カガリはウナトが拍子抜けするほどあっさりと前言を撤回した。ユウナの顔が泣き出す
寸前の子供のように歪む。
「姫様にもご理解いただ」
「このような重大事を私たちだけで決定してしまっては、国民も納得できないだろう。広く国民に
知らしめて審判を委ねよう」
「何ですと!?」
121 :
3-214:2007/05/18(金) 00:32:22 ID:???
(3/9)
カガリはウナトの驚愕などまったく無視して話を続ける。
「私には、二年前国を焼いた大西洋連邦と同盟を結ぶことなどとても納得できない。しかも
その理由がユニウスセブン落下の責任をプラントに取らせる為などと言うのでは、な」
「しかし姫、実際プラントを落下させたのは」
「そうだ。テロ行為を行ったのはMSジンはザフトの機体でパイロットはコーディネイターだ。
だが、それがどうした? それとも何か、テロリストの出身国は滅ぼせ、という持論でもあるのか、
ウナト?」
「そのようなことはありませんが、しかし」
「私はこの目でユニウスの落下を見た。そのユニウス破砕に最も尽力したのがどこだかも
知っている。
私は私の見た事、知った事、総てを国民に話す。もちろん、お前たちもお前たちの考えを
話せばいい。
その上で国民自身に判断してほしい。それで国民が連邦との同盟締結を望むのならば、私は
もう何も言わない」
「…………」
ウナトには国民審判なぞとんでもないことだった。
カガリの、いやアスハへの国民の支持は圧倒的だ。他の首長たちが束になっても敵うものでは
ない。だからこそウナトはオーブ再建の際にカガリを代表首長に推し、自分は宰相の座で甘んじた
のだ。
このオーブという国はナチュラル・コーディネイターを区別せず受け入れてきた稀有な国だ。
先の大戦の折、その大半がプラントへと脱出したが、戦後戻ってきた者も少なくはない。
またモルゲンレーテ社のエリカ・シモンズのように、自身がコーディネイターであることを
隠す者ももちろんいるが、そうでないものも多い。
国家が差別しないとなると、声高にコーディネイター排斥を訴える者も自然と少なくなる。
今更、プラントおよびコーディネイター憎しと叫んでも、それを受け入れるだけの土壌が
オーブにはない。
第一オーブが戦渦に巻き込まれたのは、たった二年前のことだ。偽りだろうとこの平和を壊し
たくない者の方が圧倒的に多い筈だ。
122 :
3-214:2007/05/18(金) 00:35:18 ID:???
(4/9)
「姫、それでは我が国良くても他国は納得いたしませんぞ。以前にも申し上げましたが、我が国の
被害は他国に比べれば微細です。その我が国が」
「それなのだが、ウナト。一度聞いてみたかったのだが」
「……なんでございますか?」
「多くの被災国がプラントからの救援で成り立っているのだろう? そのプラントと戦うことに
なったら、それらの国はどうなる? まさかプラントも自国に銃を向ける国に救援物資を送るほど
甘くはないだろうし、そんな余裕もなくなるだろう?」
「そ、それは……」
ウナトは自身がカガリのペースに完全に巻き込まれてしまっていることに気づいた。
彼は虫を噛み潰したような顔で考え込んだ。が、ほんの十秒ほどで大きな溜め息と共にカガリに
対して一歩引くことを決断した。
「わかりました。姫、いや失礼、代表がそこまでおっしゃるのでしたら、大西洋連邦との同盟を
撤回いたしましょう。ただし、取引に応じたわけではございません。代表と愚息の結婚は、亡き
ウズミ様もお認めのこと。取引の材料になどなりえません。あくまでも国民(くにたみ)を想う
代表のお心を慮っての事とご理解ください」
「ありがとう、ウナト」
「父上ぇ!?」
カガリがほっとしたように息をついた。そのカガリとは逆にユウナは一オクターブ高い声で叫ぶ。
「なんという声を出すのだ、ユウナ。代表の前で。お前はこの方の夫になるのだぞ、そのような
ことでどうする?」
カガリの頬からさっと血の気が引いた。それを見てウナトは内心で溜飲を下げる。
これは対等な立場の取引ではない。こちらに一つ借りを作ったのだぞ、とウナトは言外に
告げたのだ。
「代表も未成年でいらっしゃいますし息子もまだ未熟であります故、結婚など先の話と思って
おりましたが。ウズミ様もさぞ喜ばれることでありましょう。結婚式の日取りなどは吉日を
選んでお知らせ申し上げます。それでは失礼致します」
ウナトはユウナを促し、発令所を出た。
123 :
3-214:2007/05/18(金) 00:37:15 ID:???
(5/9)
◇ ◇ ◇
足早に廊下を歩くウナトにユウナが並ぶ。
「父上、カガリとの結婚を決めたのは良かったですが、同盟の白紙撤回などジブリール氏が
黙っていませんよ?」
「誰かに聞かれたらどうする、ユウナ」
ウナトが誡めると、ユウナは慌てて周囲を確認した。
「今はこれで良い。カガリと結婚してお前が実権を握れば同盟などどうとでもなる。それより
下手に国民審判にされてみろ、その方がマズいではないか」
「何故です? 国民の総意など無視すればよろしいではありませんか?」
「馬鹿者。そんなことをしてクーデターでも起こされたらどうする!」
「こちらには軍隊があります」
胸を張って自身ありげに答える息子にウナトは舌打ちを返したくなった。
「その軍人の半数はこの二年で入隊した者だ。いざとなれば国民の方につく可能性は高い。
第一、そうなればその旗頭になるのはあの小娘だ。そうなればクーデターを起こしたのはこちら、
ということにもなりかねん」
「そ、それは……!!」
「わかったら、お前は早急に結婚式を執り行なえるよう準備しろ! 根回しは私がする」
ユウナが首肯する。
「よいか、あのザフトの若造がプラントから戻ったらどんな邪魔をされるかわからん。だから
その前に式を挙げてしまうのだ。だからと言って手は抜くな。現代表と次期代表の挙式なのだ。
目いっぱい盛大にな」
「はい、父上」
ユウナが頷くと、親子は示し合わせたかのように唇の端をあげた。
それから二時間後、カガリとユウナの結婚が公式に発表された。わずか三日後という挙式にも、
閣議に参加する者で異を唱えるものは誰もいなかった。
124 :
3-214:2007/05/18(金) 00:38:54 ID:???
(6/9)
◇ ◇ ◇
「はぁ〜。生きてるって実感〜」
冷たいドリンクを殆ど一息に飲み干したルナマリアが、ソファへ深く沈んだ。
シンもまた、他に誰もいないのを良いことに別のソファへ身体を投げ出した。
パイロットスーツを脱いでシャワーを浴びた後、デッキへ行こうと部屋を出たところを
ルナマリアに捕まったのだ。
だが、デッキでの用は別にたいしたものではないので後回しでも問題無い。しばらくリラックス
するのも良いだろう、と思い切り羽を伸ばす。
と、そこへ、
「やっぱりここにいた〜。お姉ちゃん、シン、お疲れ様っ!」
と、メイリンがやって来た。
「あんたもオフなの?」
「ううん、一時間ずつ順番に休憩ってだけ。まだ油断できないし」
そう言いながらメイリンはルナマリアの隣に腰を下ろす。
「それにしても、六隻撃沈ってすごすぎる。ね、お姉ちゃん」
「ホントよね。あたし、最初に通信聞いたとき、耳を疑っちゃったもん」
二人に感心されたシンは大いに照れた。
シンも一応士官学校成績上位者の証である赤服なのだから、それなりに誇れるだけの技術は
持っているし、褒められたことも幾度となくある。
ただし彼の場合、日頃の態度や筆記成績が悪すぎるので、褒められた後には必ずといって
いいほど「しかし……」と繋がってしまう。
こうまで手放しで褒め称えられたことなど何時ぶりだろうか?
「勲章もらえるかもよ、シン」
メイリンの言葉にシンは目を丸くする。
「勲章? 俺が?」
「うん。ブリッジで副長が『これは勲章ものですよ』って大騒ぎしてたもん。けど、副長の
言う事だから、話半分くらいに聞いておいた方がいいかも」
125 :
3-214:2007/05/18(金) 00:40:43 ID:???
(7/9)
普段ブリッジで艦長と副長の遣り取りを直接耳にしているメイリンは手厳しい。アーサーとて
それなりの実力があるからこその黒服なのだが、そうは見えないのは、大きすぎるリアクションと
タリアが剛の者過ぎる為なのだろう。
「勲章ねぇ……」
そう言われてもシンにはまったくピンと来ない。もちろん憧れたことがことがないとは
言わないが、そんなのはもっとずっと先の話だと思っていた。なんせ自分はまだアカデミーを
卒業したばかりなのだから。
それにルナマリアはもちろん、レイも他人の功績を妬んだりすることはないのは十分に
承知しているが、受勲ともなれば話は別かもしれない。
第一シンが思う存分戦えたのも、レイやルナマリアが艦を守ってくれると信じていたからだ。
それなのに、自分ひとりが賞賛されるのはおかしい、とも思う。
(って、もらえるって決まったわけじゃないんだし)
内心で自分自身にツッコミをいれて、シンは苦笑した。
「ね、そう言えばオーブの動きって変じゃなかった?」
「何言ってんだよ、ルナ。オーブはもう地球軍の仲間なの。俺たちは裏切られたんだ。そんなの
戦闘前からわかってたじゃないか」
オーブはとうとうお飾りの「理念」すら捨ててしまった。まもなく大西洋連邦と条約を結び、
プラントの敵性国家となるのだ。
それならそれでいい。オーブが──あの女が俺の前に立ちはだかるのなら、今度こそ俺はそれを
叩き潰すだけだ。
しかしルナマリアは首を横に振った。
「それは分かってるけど、あたしの言ってるのは、その後のことよ」
「?」
シンはルナマリアの言っていることが分からなかった。
ミネルバのことでシンが覚えているのは、地球・オーブ両艦隊から多数のミサイルが迫っていた
ところまでだ。
その後インパルスが巨大なMAに襲われて以降は、自分自身の行動ははっきりと覚えているが、
その間のミネルバのことはまったく意識していなかったのだ。
メイリンに換装の指示を送れば即座に対応してくれていたし、救援要請もなかったので、
ミネルバは無事だと思っていたからだ。
126 :
3-214:2007/05/18(金) 00:42:12 ID:???
(8/9)
ルナマリアの疑問に答えをくれたのはメイリンだった。
「お姉ちゃん、正解。なんかね、途中からオーブが援護してくれてたみたいなの」
「援護ぉ〜?」
シンには思いっきり疑わしい。
「だってね……」
と、メイリンが事の経緯を説明した。
「……メイリンの言う通りだとしたら、確かに援護してくれたっぽいわよね、シン?」
とルナマリアが同意を求めたが、
「まさか、そんな筈絶対にないっ!」
シンは一言(いちごん)で否定する。
シンにはとても信じられる話ではなかった。あの国は自分を裏切った、もう自分の敵なのだ。
「あの女が言ってたじゃないか。オーブは連邦と同盟を結ぶって。俺たちプラントの敵になるんだ。
ルナだって聞いただろ?」
「だから、それは分かってるんだけど……ねぇ?」
ルナマリアは今度はメイリンに同意を求めた。メイリンは頷いて姉に賛意を示す。
シンにはルナマリア達の態度が歯痒かった。オーブ出身のシンがオーブを敵と認識しているのに、
プラント出身の彼女らがどうしてそれを分かってくれないのだろう?
ふと、シンは数日前にルナマリアが語った事を思い出し、気づく。
(そうか。ルナやメイリンにとってオーブは敵じゃなかったんだ……)
「じゃあさ、シンは今のメイリンの話、どう思うの?」
「それは……」
シンは少しだけ冷静さを取り戻した。
ルナマリアがオーブを信じたがるのとは逆に、自分はオーブを信じようとしていないだけ
なのだろうか?
もしもこれがオーブではなく他国だとしたら? 自分もまたルナマリア達と同じように彼の国が
援護してくれたのだと感じたのではないだろうか?
「うん、まあ……確かに、援護してくれたのかな……とか思わなくはないけど……」
極めて消極的に賛意を示してはみたが、それでもシンにはそれを信じることは出来なかった。
シンは怖がっていたのかもしれない。祖国を信じてまた裏切られることが。
127 :
3-214:2007/05/18(金) 00:44:10 ID:???
(9/9)
「そうだ。あれだよ、いわゆる『現場の判断』ってヤツだよ。オーブの馬鹿政府の行状を見るに
見かねた軍の人が助けてくれたんだよ。その……『良心の呵責』みたいな」
「そう……なのかな?」
ルナマリアには、シンの言葉のほうが信じがたいものだった。
軍人にとって、上官の命令は絶対である。どんなに理不尽に思えても、それには従わなくては
ならない。士官学校で徹底的に叩き込まれたことだ。
(んー、シンは教官にも逆らってばっかりだったからなぁ。シンにはそういうのもアリ、
なのかも……)
と、変な納得をしてしまうルナマリアだった。
◇ ◇ ◇
シンはデッキに上がってミネルバのやって来た方向を見た。
少し前──レクルームに行くまでは、ここに上がったら決別の儀式をしようと思っていた。
自分を裏切り続ける虚像の祖国など捨ててやる。そのための自分なりのけじめをつける
つもりだった。
しかし、その気持ちが今はもう消えてしまっている。
シンは艦の航跡を辿って、もう一度目を凝らした。だが晴れ渡った空と水平線が見えるだけで、
島はもうその影すらない。
ルナマリアやメイリンには強がりを言ってみたが、シンは自分の心の底に残ったかすかな希望を
感じていた。
万が一にも無いだろうが、ひょっとしてひょっとすると、あの金髪の女がミネルバを守ろうと
してくれたのかもしれない。
シンの前に身を投げ出して「キラ・ヤマト」を庇ったように。
128 :
3-214:2007/05/18(金) 00:48:13 ID:???
前回はタイトルの入れ忘れ失礼しました。
>編集長様
タイトルの World と after の間に、「,」を追加していただきますよう、
お願いいたします。
>>戦史
ディアッカとサイの立場の対比が効いていて良いです。
上司に恵まれない人は応援してしまいますね、たとえ敵でも。
>>情熱
殿、此処は殿中でござる! ですから得意技は少し封印した方が……
何でシンはトダカのベッドでねてるんでしょうか、"先ほどの激情"って少し誤解して
しまったではありませんか。
トダカが自分の主君に向かって無礼を働いたシンをほほえましく眺めているのも
なんだか怪しいです。若しくは妖しいです。
>>214
最後のシーンは決別の儀式をしようと思ってデッキに上がったところで
艦の航跡をたどった先にもうオーブが見えないことに気付き、レクルームでの
事を思い出して気持ちがしぼんで行く、という形にしてはどうでしょうか?
シンとカガリが少しずつ成長していて先が楽しみです。
皆さん投下乙でした。
》戦史
『ラクシズ』の設定が力業で無しに理解できる様に作ってあるあたり以外と。
そしてディアッカが漢、ですな
》In the World, after she left
再構成、と言うか本編補完の方向性、GJと思う
文章も読みやすくなってるし
『彼女』の居ない影響がまだ見えないね
投下されている職人さんにGJしつつ、職人さんが少しずつ増えてますので今一度…
まとめなのですが、1レスが2000文字を超える作品に関してはこちらで分割させてもらっています。
(サイト小説機能1ページあたりの文字数制限が2000文字のため)
例えば5分割投下の3番目が2000文字を超えている場合、3-1 3-2 とさせてもらっています。
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『†』氏話数合わせすいません。ありがとうございます。
編集長毎回GJです!単行本て表現使わせてもらっていますw
保守
6/
「上手い……モビルスーツの操縦に相当慣れているわね」
タリアの賛辞にメイリンは肯くしかなかった。微かな振動と共に左舷甲板に降り立ち、
手足を使ってシートを被る。一連の動きは素人目に見ても滑らかそのものだった。
機械の塊を神経が通っているかのように動いてみせる。
自分がOSの開発者であれば、涙を流すか諸手を挙げて降参する事だろう。
甲板で姿勢を安定させ、関節をロック。降着姿勢のザクから若い男の声で通信が入る。
『こちらアレックス=ディノ、ミネルバ艦橋へ。火器のコントロールを渡します』
「メイリン、接続をお願い」
「了解しました。……副長、四番コントロールです。トリガーを」
「アイハブ……全火器のコントロール握ります。事態に変化あるまでは凍結。
状況によってはアレックス殿にコントロールを返してもよろしいですか?」
「許可するわ」
ザフトで頑に守り続けられている規程の一つに"トリガーは人間が引く"という項がある。
宇宙構造体を破壊しうるエネルギーは、AIに扱わせてはならないという原則が元だ。
「シートの下に非常用のバッテリーとライフルも伏せてありますよ」
格納庫からコードがザクまで延びていて、敵がジャミングを仕掛けてこようとも安定した
データリンクを渡すことが出来る。リンクからの情報を処理するのがメイリンの仕事だ。
「必要になったら使ってくださいね」
『助かるが……不吉じゃないか? これの出番が在るというのは』
「ザク、ゲイツR、順次発進します。シークエンスの管理は第二艦橋アビーです」
『……これが無視というものか、初めてされたよ……成る程』
小さく"ショックだ"と呟いているのがメイリンには丸聞こえだった。
オペレイターの耳を侮っているアレックスに、クスリと笑って返事する。
「大丈夫ですよ? ザフトにいじめはありません」
『ああ、そんな事を俺も信じていたな……五秒前までは』
真面目そうな人なのにからかうと面白かった。癖になりそうだ。
両舷カタパルトからザクとゲイツR、色とりどりのMS四機が飛び出してきた。
赤、白、緑、そして青。AMBACによって機体をひねりながら反転機動をかけて艦橋上空を
翻ったシンの一号機は、カラーリングをフォースインパルス仕様に変更している。
二号機に追随する一号機の機動はメイリンの目にも無駄と修正が多く感じたが、リンクを通して
操縦の様子を観察したメイリンは、それがシンの肩慣らしだと知る。細かく応答を確かめていた。
ゲイツが描く複雑な螺旋を見送ると、後発のザクがゆっくりと小惑星から舞い上がった。
「もう、こっちに一言も無しだなんて……そんなに緊張する事も無いじゃない」
「気にしないほうが良いわメイリン。パイロット連中はああ見えて繊細よ。
特にシン、デイル。彼らは好きにさせた方が良い仕事をするタイプね、保証するわ」
「そんな人と付き合ったことがおありで、艦長?」
タリアが機械の速さでアーサーの方を向くと、気弱な副長は眼を見開いて怯えた。
艦長が果たしてどんな顔をしていたのか、知りたいような知りたくは無いような。
しかしメイリンはタリアが小さく呟いた声を拾っていた。アーサーは読唇しただろう
その一言は"減棒"。副長のはセクハラですがそれはパワハラです、艦長。
7/
「――ところで」
デュランダル議長に話しかけられて、メイリンの心拍が跳ね上がった。エライヒトに
気安く話しかけられるのは、それはそれで困るものだ。逆よりは良いのかもしれないが。
「私はシーサーペント級を見た事が無いのだがね、どんな艦か教えて頂けないかな?」
「メイリン、三番のスクリーンに映像を出して」
右舷側に、長大な海蛇状の輸送艦と、大きさを対比させるためのミネルバが映し出される。
「シーサーペント級輸送艦モーガウル、スネイクボーン級の改造です」
細かい性能諸元は端に追いやり、メイリンは簡単な説明を始める。
前々から感じていた事だが、艦長は人使いが非常に荒らく、そして上手い。
戦闘になるとその傾向が顕著になるということも分かった。各部署が有機的に連携できるだけの
土台を作った上で、実務は完全に丸投げしてくるので油断がならない。
「ほう……大きいな、大きい。全長はミネルバよりある位かね?」
初めて輸送艦の大きさを知るものはみなそう言う。実のところ戦艦よりも遥かに大きく、
巨大空母と比較できるほどの船体がある。
「これでも未だ小さいほうです。モーガウルの本体は艦首居住ブロックと艦尾エンジンブロック、
そして輸送コンテナを内包する竜骨部分だけです。本当の大きさは本艦の四分の一……」
モーガウルから腹に抱えたコンテナが取り外され、まさに蛇の骨というシルエットが露になる。
シーサーペント級のモデルが徐々に縮まって寸胴の輸送艦が一隻出来上がった。
「……この程度の大きさになります」
宇宙船は資源とデブリ対策の許す限り巨大化できる。加速度が必要無ければ、太陽の恵みが
イオンエンジンを吹かし続けるのに十分なエネルギーを与え続けてくれるからだ。
「今回はデブリベルトのミネルバに物資を届けに来ただけなので、物資を積んだ
コンテナブロックを幾つか収納しているだけです。これが火星系への物資運搬ともなれば……」
端末を操作すると、画面に映されたモーガウルの竜骨が伸びた。コンテナが一つ、
また一つとはめ込まれていく。最終的にはミネルバ格納庫ほどもあるコンテナが二十、
艦首と艦尾に挟みこまれてモーガウルの全長がキロ単位に達する。
「今回の作戦では艦首すぐ後ろのコンテナに敵が隠れているものと思われます」
艦長が締めた。
「全機配置に着きました」
「さて、何とか準備は間に合ったわね」
ミネルバの火は落したまま、モビルスーツ全機の発進を確認したタリアは作戦開始を宣言する。
帽子のつばに手をあて位置を正す癖は、思考を切り替え戦闘に備えるグラディス流のジンクスらしい。
「私の可愛い坊やたち、モーガウルを丁重にもてなしなさい」
「「「イエス、マム!」」」
歯車の噛み合う実感。艦橋が一個の思考機械として機能を始めた。
8/
操縦席から見える光景は、現実のものとは違って色とりどりに見えている。
観測装置が得た情報を機体のプログラムが補正して表示しているためで、
本当なら目には見えないはずのレーザーが検知される事で赤く表示されたり、
実体弾が飛んでいるはずのレールガンがピンク色の軌跡で示されたりする。
シンは最も簡略化された表示モードで二号機の単純化された型枠を追いかけていた。
ポリゴンの密度は百年前の家庭用ゲームほどしかない。
視点はコックピットに合わせてある。近くのデブリは殆ど大きさしか分からない程度に
荒く表示し、近づいてきた構造体にも色をつけていない。
コンピュータの補正を受けた画面の中途半端なリアルさを嫌っているからだ。
もし炎の色が映ってしまったら何を思い出してしまうのか、それが恐かった。
出撃してからずっと、胸のどこかにつかえたものがある。引っかかりの場所を探る内に、
シンは片手で妹の形見を握り締めていたことに気付いて手を離す。
一人で思考に沈んでしまうのは会話していない所為だと、シンは通信回線を開いた。
開いて……何も語ることが出来ずに沈黙する。
『……どうした?』
音声だけの回線を開いたまま言葉を送ってこないシンへ、デイルの低い声が語りかけてきた。
「いえ……」
滑稽さに笑う事も出来ない。赤服が緑服に通信を繋ぎ、それでいて語ることも無いという。
『弱気の虫でも出てきたか?』
「そんなのじゃ……そうかも、しれません」
この際、弱気を笑われようとも自分の思考をはっきりさせたいと思った。
「これからどうなるのか考えてたかも知れないですし、考えてなかったのかも……」
『脳みそをすっきりさせていないと死ぬぞ? といって人工知能のようじゃ生きてる意味が
湧かないだろうがな。俺としてはどうなるかより、どうするかを考えた方が良い』
「どうするか……ですか?」
『俺はこの騒ぎが終わったらザフトを抜けるつもりさ。火種が大きくなる前にな。
ショーンがいないザフトに残したものは、そう多くないんだ』
シンにとっても意外な事に、デイルの言葉に大して驚きも為なかった。
ああ、そうなのだろうなと、漠然とした実感が浮かんでくるだけだ。
「ザフトを抜けて、何をしたいんです?」
感じた疑問はそれだけだ。
9/
シンが今までに会ったMSパイロットには二通りあった。パイロットスーツが似合わない者と、
パイロットスーツしか似合わない者だ。
シンにとってデイルは明らかに後者だった。
『そうだな……折角モビルスーツが動かせるんだ。東亜重工にでも雇ってもらうさ』
小惑星をプラントに改造する巨大企業だが、其処の制服を纏う姿が想像できない。
「ちょっと黒い感じがしますよね、東亜重工。少し感じが悪い会社です」
『引きとめようとしないのは良いことだ、シン』
「やる気の無い奴が軍にいても意味が無いですから。無理矢理何かをしてると、
時間をかければ何とかなるってわけじゃなくて、そのうち何処かに無理が出ます」
『オーブは他の国に干渉しないことを無理矢理だとは思っていなかったようだぞ?』
「……何が言いたいんです?」
『それはこっちの台詞だ。俺に何を言わせたいんだシン? 何を話題にしたかった?
オーブの客について何かあるんだと思っていたぞ。アスハに含むところがあるようだしな』
「それも……関係あるかも知れません」
自分の口からこんな言葉が出てきた事は、ゲイツRに残った気配が関係したかもしれなかった。
インパルスに乗っていたなら、デイルにこうも容易くオーブの話題に触れさせ無かっただろう。
「俺は一週間前、こんな事になるとは思っていませんでした」
ヨウランと街を歩いていて女の子とぶつかり、その後"ラッキースケベ"とからかわれた。
その時は式典のわずらわしさしか考える事はなかったのだ。
『当たり前だ、俺もだ』
「それがアーモリー・ワンとこの宙域で戦闘があって……」
一号機に乗っていた男が死んだ。
死体すら残さず、モビルスーツのコクピットに空白を残し。
その事を口には出さない、出せずにシンは続ける。
「そしてこの戦闘です。無関係とは思えない。ミネルバを狙ってきてる」
『まあ、そうだろうな。俺たちはボギーワンを追った事で、この事件の中心に居る事は間違いない』
「ユニウス7って言葉を思い出すんですよ。戦争の気配がするんです」
二年前に世界は焼けた。そう言い表わせる程の、全地球圏を巻き込んだ戦争だった。
二千万人のコーディネーターが百億人のナチュラルに戦争を仕掛け、地球の半分が
焼き尽くされる寸前まで戦火が拡がった。
かなり強引な方法で、表面の火は収まった。しかし手をかざせば世界に残った熱を感じる。
少しの風が吹けば、別の火種が飛び込めば、焔は再び巻き上がり残った世界を焼くだろう。
『名目上、俺たちが此処に居るのはそうならない為なんだがな』
シンの態度へか、今の状況へか――些か諦めが混じった声でデイルは続けた。
10/10
『お前が乗っているインパルスやセカンドシリーズが狙われたのは確実だ。
そして力ずくでボギーワンを追いかけ、力任せに逃げられた』
音声通信でデイルの顔が見えない。
『アスハのお姫様は、それぐらいなら最初から力を持たなければ良いと言っていたな。
そしてお前はそれが奇麗事だと叫んだ』
「奇麗事ですよ、戦争には関わらないと言っておいて結局オノロゴは焼け野原です」
『それはウズミの話だろう?』
シンの言葉をデイルは一言で切った。
『今居るのはその娘だ。もしかしたら父親とは少し考えが違うかも知れんぞ?』
「そんな事分からないですよ、俺は直接話を聞いたわけじゃないですから」
『なら……直接聞いたらどうだ』
デイルの言葉には、子供の戯言に飽きた大人が応えに飽いて言う突き放す感じは無い。
アスハに直接真意を訂せと、本気でそう言っていた。
「そんなこと……」
出来るわけが無い、そう言い返そうとしてシンは言葉に詰まる。
出来るのだ。アスハはミネルバに居る。そしてアスハの部下がザクに乗っている。
アレックス=ディノにアスハへ繋いで貰えば、シンは彼女と直接話が出来る。
安全上の問題からアスハや議長がモーガウルに乗る訳には行かなくなったから、
迎えの船が来るまでは十分に時間があるだろう。
『この辺りで良いだろう。目玉を出すから死角を塞げ、シン』
二機のゲイツはコロニーの残骸がポツリと浮かぶ、開けた宙域に着いた。
デイルが二号機のバックパックからひし形のセンサーユニットを放出すると、
シンは統合されたセンサー群の僅かな死角に一号機のレーダードームを向けた。
近接リンクを二号機と繋ぎ、バッシブセンサーが得た観測内容を処理して行く。
二号機との通信はデイルから切られていた。状況がどう動いて行くかではなく、
シン自身がどう動かすか。それを考えろという事なのだろう。
迷えば死ぬというならば、此処で迷っている暇は無い。根回しは苦手だが、
戦闘後にアレックスが生きていれば、結局言いそびれているルナマリアの礼も含めて
話してみようと思う。
それでも、と。
ゲイツRの画面上を流れて行く無機質な観測データを前に、シンに一抹の不安が残る。
アスハへの怒りは二年の間に凝り固まり、澱となって意識の奥底まで堆積している。
それを越えて自分は本当に対話など出来るだろうか。
知らぬ間に握り締めていた携帯電話の感触は、何も答えてはくれなかった。
『†』氏GJ!
あなたの書くキャラクターはみんな大好きです。
具体的にどこがと言えない自分が恨めしいorz
とりあえずホーク姉妹萌え。ショーンとデイル燃え。
シンの内面描写もスキ、イイ性格してるレイとのコンビ
もおもしろかった。
PPはアウルとステラの性格が逆だともっと…ゲフン
続きを楽しみにしてます。
「†」氏GJ!
アレックスとメイリンのやりとりにワロタと言うか和んだと言うか、†氏の書くこういうシーンが大好きです。
タリアとアーサーもいいコンビだしw
「早く診せて! もうファントムペインっていうのは痛みを感じないの、まったく馬鹿なんだから」
「問題ない」
「あるわよ!」
ナイフで右腕を刺されたスウェンを甲斐甲斐しく治療するフレイ。
その光景をシャムスが少々羨ましそうに眺めている。たしかにフレイさんは美人だからその気持ち
は良く分かる。
あれで棘さえなければなあ、なんて本人には言えません。
ミューディーさんはフレイのグゥルに乗せ、ミューディのスローターダガーの残骸と、
敵のケルベロスバクゥハウンドの残骸をドミニオンに運び込むことになった。
またスウェンさん曰く、
「受領書にサインをもらわなければ仕事が終わらない」
ということなので、彼らもドミニオン事務所まで来るそうだ。
積荷を襲われ破損させてしまうという惨事について、アクタイオンドイツ支社と交渉せねばならない。
大変面倒な事になってしまった。
しかし、アクタイオン社員が全滅し全ての機体を奪われているという、最初に思い描いたシナリオに
比べれば随分と奇跡的なハッピーエンドだ。
フレイは右腕の手当てとミューディー氏の搬入。
シンは残骸回収を行いながら、こちらへ飛行中のナタルさんと連絡をとっていた。
『状況は分かった。……シン、再襲撃の可能性はありえるか?』
『!───それは』
どうだろうか、もしも相手が計画的犯行で移動拠点を持っていた場合、バッテリーを交換しての
再出撃は十分可能だ。しかしそうするぐらいなら最初から逃げたりはしないだろう。
『再襲撃の可能性は薄いと思います、あの撤退の手際を見る限りは。
その気があるなら粘ったでしょうし』
『ふむ、………戦力を増強しての攻撃ならありうるか?』
『う〜ん』
『ちょっと、シン聞いてるの!
手当ても終わったし、ミューディーさんもグゥルに運んだわよ、次どうするの!』
『そこまでの戦力を持ち出して、破壊したり奪取する価値がこのダガータイプにあるとは
思えないんですよ、……あ〜〜ちょっと待ってくださいね』
外部音声でスウェンにたずねる。
「スウェンさん! 最初からあのバクゥ部隊は破壊を目的としていたんですか?」
「いや、最初は捕獲する気だったと思う。そうでなければ俺たちが乗り込む暇などなかった」
『ナタルさん、証拠隠滅とか諜報活動の一環である可能性は薄いです、多分単なる盗賊ですよ。
ということはもう盗賊共も危険を冒したりはしないと思います』
『………しかし、ケルベロスバクゥハウンドだぞ。盗賊が調達できるものか?』
『あっそうか、あれ、すごいマイナーな機体だ』
完全陸用、戦闘にしか使えないバクゥは、ある程度運用力のある組織や団体じゃないと
使ったりはしない……
しかもバクゥハウンドだとユニウス条約以後だ。ジャンク屋だってほとんど卸していない機種である。
『もしかすると……いや、まさか』
その先はシンとしては言い辛い名称だった。嘘だと思いたい。
しかしナタルはシンが言い淀んだその答えを、やすやすと暴いてしまった。
『先ほどの敵はZAFT、そう考えたな。
だが決め付けるのは早いぞ、ユニウス落としの犯人は入手の難しいジンHMを使っていた。
賊が入手困難な機種を使っているからといって、決してZAFT正規軍と決まった訳ではない』
『………………』
胴切りにされたバクゥから遺体を発見できれば良かったのだが、腕が良すぎたせいで
見事にコクピットブロックは蒸発していた。手がかりは皆無だ。
『シン! 私を無視するなんていい度胸ね!帰ったら覚えてなさい!』
何故だかフレイさんが怒っている、相変わらず短気な人だな。
今は構っている余裕なんかないっていうのに───────フレイさんが怒っている!!!???
まずい、殺される。
『違いますって、考え事してたんですよ! とりあえずスローターダガーを一機乗せます。
用意してください』
「スウェンさん! バッテリー残量の少ないダガーをグゥルに固定してください。
無理させるの悪いんですけど」
「いや時間も惜しい、的確な判断だ」
平然とした顔でスローターダガーに乗り込むスウェンさん、あの人痛くないのか?
『ナタルさん、人命を優先してダガーを棄てて行くという選択肢をとるべきでしょうか?
それとも、もう来ない可能性に賭けて、みんな持って帰りましょうか?
仮に戦うとしても、荷運びの運転手さんをこれ以上戦わせるわけにもいきませんし、
もしもZAFTが集団で向かってきた場合、勝てる保証ありませんよ』
『そうだな………』
ナタルはリスクとリターンを脳内で天秤にかけ、
『シャムス氏を君のダガーLで運んで、その後私のグゥルに乗ってもらう。
残りの残骸やダガーは破棄する方針で行こう。後発の傭兵団が回収できればベターだ』
リスクを恐れる、人命を優先した決断をした。
『ちょっと待った! 勝手に決めるな、俺たちの仕事が果たせなくなる』
結論にむかうはずが、傍観していた黒人眼鏡のシャムス氏が横槍をいれた。
『俺達はダガー三機をそっちに引き渡すまでが仕事なんだ。これは譲れねえ。
何よりコーディネイターなんぞにやられっ放しなんて見過ごせるか、荷物は絶対に全部届ける!』
啖呵を切る元ファントムペイン、さてどうしたものか。
『そう言ってもらえるのは当社としても助かるが、御社の社員をみすみす死なせたとあっては、
これからの取引に支障が生じる。自重していただきたい』
シャムス氏は押し黙った、すると今度はスローターダガーに乗り込んでいたスウェンの回線が開いた。
『その要望は受理できない。俺達の受けた任務は三機のダガーを何でも屋ドミニオンに運ぶ事だ。
俺達は最期まで命令を果たす。そしてファントムペインの人間は命を惜しみはしない。
俺達は、ファントムだからだ』
淡々と語るスウェン。表情こそ硬いものの、その瞳の中には譲れぬ想いが渦巻いている。
『はっ、利き腕の傷ついたパイロットなんか邪魔なだけだ、お前はミューディーについてろ』
『お前の方が心配だ』
『どういう意味だよ! そんなに信用ないのかよ、俺は』
『………トレーラーを俺が運転する。そうすれば一機は臨戦状態でいられる』
『無視かよ!』
この二人、漫才みたいで面白い。
レイがもう少しぼけてくれたらこんな風になったのかもなあ。
『分かった。その申し出を受け入れよう。敵が再攻撃してくると決まったわけではないしな』
『それじゃ私はミューディーさんを連れてベルリンに戻るわね。皆、ドミニオンで会いましょ』
ダガーと病人を積んだグゥルは、緊急発進でベルリン目指し吹雪の中へ消えていった。
『よし、トレーラーの内一台を破棄。もう一台に残骸を全て載せろ、スウェン氏にはそのトレーラー
を運転してもらう。残る一台にダガーLとシャムス氏の乗るスローターダガーを配置し、
そのトレーラーはシン、君が運転しろ。
シャムス氏にはダガーLから盾とライフルを受け取って、トレーラーの上から警戒と射撃を
お願いしたい。
シンはスローターダガーから余っているビームサーベルを借り、エールストライクの機動性を
使って敵を撹乱しろ。
シンは遠距離射撃よりも乱戦の方が得意のはずだな』
『ナタルさん説明途中なんですけど、敵が現れた場合シャムスさんはすぐ応戦できますが、
俺は一旦車を止めてダガーLに乗り込むって事ですか?』
『スウェン氏が乗るトレーラーと君が乗るトレーラーを牽引しておけばいい。
そうすれば停車する必要はない。では説明を続けるぞ。
君達で敵をひきつけられれば、残骸しか乗っていないトレーラーは標的から外れたまま戦域を
離脱できるかもしれない。
そうなれば………酷い言い草だが、君達が全滅してもトレーラー1台、ダガー2機、そして
二人分の人命で済む』
ということはトレーラーのスピードを落とさずに機体に乗り込めるってことか、それなら危険率も
ぐっと……あれ。
『………ちょっと待ってくださいよ………それは敵を発見したらギアをニュートラルにしてから、
時速百キロ以上の車外に這い出して機体に乗れって言ってるんですか!』
『その通りだが………わざわざトレーラーを止めてから機体に乗り込みたいか?
起動前で止まっている無人の機体など、格好の的だぞ』
『うっ、いや、でも』
なんて恐ろしいミッションだ、ガルナハンのローエングリン攻略よりある意味アクロバットだ。
『シン! 何のためにコーディネイターなのよ、金がかかってるんだから人より働きなさいよ!』
鬼のような、というより鬼そのものの罵声が聞こえてくる。通信を開きっぱなしのフレイさんだ。
さっきの事でかなり怒ってるな、これは。
『いい、貴方は頑丈に出来てるんだから、ナチュラルより過酷な仕事をするのは当たり前なの。
そのために調整されたんだから、ナチュラルに代わって相応の働きをしなさい!』
『さ、差別だ』
『区別よ! やめて欲しいわね、仕事もしないくせにナチュラル並の待遇を求めるなんて、
そんなの許せないじゃない?』
なんで疑問系で同意を求めてくるんですかフレイさん。
そもそもナタルさんが言い出したんだから、酷いのはナタルさんなのか。
『別にコーディネイターは運転席でブルっててもいいんだぜ。俺が全部片付けてやるよ』
カチンとくる。こいつに負けっぱなしのままで終わらせていいのかシン?
いや落ち着けシン、戦う前に転落死する可能性の方が大きいぞ。
『用意ができた。行こう』
問答無用のスウェンさん。既に牽引ロープを結び、先頭車両に乗り込んでいた。
『もう準備が終わってる!? 拒否権ないのかよ!?』
『シン、辛い選択を強いられている君に、人生の先輩として一つ教えておこう』
重々しくナタルが口を開いた。
『人はな、上司を選ぶことが出来ないんだ』
遠い眼をするナタルさん。
その瞳に映るのはアズラエル社長か、はたまたその前のアークエンジェルの艦長か。
『それは……そうですけど』アスランを思い出す俺。
『そうだなあ』誰かを思い出しているシャムス。
『……………』トレーラーにはモニターが付属していないので顔が分からないスウェン。
しばし悩む、だけど───そこまで言われたら覚悟を決めるしかないじゃないか!
そうさシン・アスカの人生はいつだって理不尽の連続だった、今更この程度なんだっていうんだ!
『ナタルさん、俺やります。必ずやり遂げてみせます』
『すまないシン。帰ったらオルガを殴っていいぞ』
『はい!』
つづく、久しぶりに投下でした。
再襲撃があるのかないのか、まだ決めてなかったりして。
>>何でも屋
お久しぶりのGJ。
戦闘の専門家達らしい判断と仕事人らしい価値観が入り混じっていて、
彼等一人ひとりの台詞を追うのが楽しかったです。
最後のナタルさんの台詞に笑った。オルガなら殴っても良いのかシン。
あのウンメイノカケラが装いも新たに新人スレに登場!砕かれてしまった少女の運命は・・・。
ウンメイノカケラ
>>77-81 【特集・読者の声】カケラシリーズについて大反響を一挙に。歯に衣着せぬ賛否両論!
投下された二つのカケラ 〜投下先についての考察、他多数〜
>>83-93 戦闘の傷も癒えぬミネルバに新たな奸計が迫る! それを見抜いた敏腕艦長タリアの対抗策とは!?
SEED『†』
>>95-99,133-137
クサナギの中、シンはココロの傷を抱えたままアスハの当主、カガリと対峙する。そしてシンの放つ言葉は・・・!
生きる為の情熱としての復讐
>>102-103 生きている限り敗北ではない!撤退を宣言するするディアッカ。一方部下達は撤退命令に納得がいかず・・・。
機動戦史ガンダムSEED
>>108-115 同盟を撤回させる事に成功するカガリ。但しそれは自身の運命を売り渡す行為だった。そのころミネルバのシンは・・・。
In the World, after she left
>>119-127 職人の道しるべ。読者の知的欲求を満たす泉。それはまとめサイト。
>>131 襲撃を乗り切ったシン達何でも屋ドミニオンの面々と元ファントムペインの3人。後始末もそれぞれの流儀がある様で・・・。
何でも屋ドミニオン
>>140-143 各単行本も好評公開中
詳しくは
ttp://pksp.jp/10sig1co/ までアクセス!単行本編集長への魂の 乙 も忘れるな!!
読者の声も鋭い感想、批評問わずまだまだ募集中!
キミのたった一行が職人達の新たな挑戦のエネルギーになる!!
>>140-143 何でも屋さんGJ!!待ってました!
何でも屋さん独特な文章て言うかセリフ回し?て言うのか、それが楽しみでかなわん。
>>144さんと同じくセリフを追うのがすごく楽しいです!
しかし相変わらずフレイが恐いw
続き楽しみに待ってますよ!
編集長GJ!!
あんた大好きだ!つーか愛してるw
吐く息が白く染まる。
パイロットスーツ越しにも伝わる冷気は、しかし俺の腕の中で眠る彼女よりは暖かく感じてしまい、それが悲しかった。
雪が降りしきる中、俺は一歩一歩進んでいく。
このまま永遠に彼女とこうしていたいと思えたが、それはできない相談だ。
俺と違って、彼女には優しくて暖かい世界が似合っている。
「だから……さよなら、ステラ」
インパルスの掌まで辿り着くと、俺はステラをゆっくりと湖面へと解放した。
この湖の先に、せめてステラの幸せがあることを願って。
「大丈夫。ステラを殺したあいつは俺が討つから」
ゆっくりと湖に消えていくステラに、俺は仇を討つという誓いを捧げた。
今の俺はどんな表情をしているのだろう。
涙はもう枯れてしまった。
胸の中で渦巻く何かを、俺は久しぶりに感じていた。
ここ最近薄れていた憎しみが、強く燃え上がり始めた。
「フリーダムは、俺が討つ!」
ステラの姿が見えなくなったのを確認してから、俺はコクピットへと戻ろうと踵を返した。
だが、聞こえてしまった。
「何だ?」
音がした方を振り返ると、そこにありえない物があった。
「なっ!?」
湖面から伸びるのはステラの腕。
それが緩慢な動作で、まるで這い上がろうと足掻くかのように動いている様は正直不気味だった。
「っ!まさか」
違う、不気味なんかじゃない。
ステラはきっと助けを求めているのかもしれない。
湖の中で奇跡的に息を吹き返していたとしたら。
「ステラ!」
俺は慌ててインパルスの掌まで戻ると、急いでステラの腕を掴もうとしたが、俺が掴むよりも先にステラの手が俺の腕を強く掴んだ。
「うわ、ステラ?」
俺はステラを引き上げようとするが、ステラはまるで俺を引きずりこもうとするかの如く、俺の腕を引っ張り続ける。
「……」
湖面のすぐ近くに見ることができるステラの唇は何かを呟いているみたいだった。
「よく聞こえないよ、ステラ。何を言ってえわ!?」
突然強くなった力に、俺はなす術もなく湖へと引きずりこまれてしまった。
少し水を飲んでしまったらしく、すぐに苦しくなってくるがなんとか我慢できる範囲だ。
今は自分のことよりステラを助けないといけない。
だがどんどん深く沈んでいっているらしく、すぐに太陽の光も届かないようになってしまった。
ああ、ステラの姿が見えない。
気が付けば一人になっていた。
それもそうだろう、こんな暗く冷たい場所はステラに似合わない。
だんだん意識が薄れていく。
できることなら、俺もステラと同じ世界で生きたかったなぁ。
「って、ちょっと待てぇぇぇ!!」
叫びと共に、俺は勢い良く布団を吹き飛ばして起き上がった。
「はあ、はあ、夢かよ……」
まったくもってなんて夢だよ、俺死んでいたぞ。
時計を確認するまでもなく、現在は夜中の真っ只中だ。
「はあ、モビルスーツも出てたよな。連ザのやりすぎかな」
それに見知らぬ女の子を湖に沈めていたな、俺。
夢の中だとどんなにありえない状況も普通だと思えるのだから不思議だ。
明日からは新学期だし寝直したいところだが、どうにも眼が冴えてしまった。
「少し水でも飲んでくるか」
俺は部屋を出ると、一回の台所へと向かうことにした。
「?」
長くない廊下を歩いていると、不意に可笑しな映像が脳裏に浮かび始めた。
燃え盛るオーブ。死んでしまった家族。変な格好をした学友達。金髪の綺麗な女の子。
そして、憎くて憎くて堪らないフリーダム。
次々に浮かんでは消えていく映像は、どれもこれも記憶にないのに何故か引っ掛かるものばかりだ。
「ふう、俺疲れてるのかな」
今夜はどうにも調子が悪い。
蛇口を捻り勢い良く水を出す。
コップ一杯の水を手に、俺はリビングのソファーに腰を下ろす。
テレビを点ければどれもこれもつまらないものばかりだった。
なんとも微妙な深夜枠のバラエティー、親父のためのワイドショー、今まさに濡れ場を爆進する洋画、女の子が光線を撃つアニメ。
「はあ、うわぁ、すごいなこれは」
最後のアニメは特にひどかった。
どういう経緯かは分からないが、金色の杖と白い服を着た女性が、膝をついて呆然とする女の子に追い討ちをかけオーバーキルしていた。
「キラさんはこういうのが好きなのかな」
チャンネルはそのままに、エンディングまで流し見る。
「ふーん、意外と良い歌だな」
「ふーん、意外とこういうのが好きなんだね」
俺の言葉を真似るかのように発された言葉に、俺は慌てて振り返る。
そこにはだぼだぼのパジャマを着たマユがいた。
「お兄ちゃんもこういうの好きなんだね」
とても冷たい眼だ。
テレビでは今何人もの魔法使いの服を着た女の子達が映っている。
俺は冷静にテレビを消すと、頬を引き攣らせながら笑顔を作る。
「いや、たまたまテレビを点けたらこのチャンネルだっただけで」
「別に言い訳しなくてもいいのに。お兄ちゃんがこういうの好きでも、私は気にしないよ?」
何だかマユの視線に憐れみが混ざっている気がする。
そりゃあキラさんやアーサー先生と同じ趣味じゃ、あの二人を知る人間の反応はこんなものだろう。
「もう、明日は学校なんだからね?早く寝なきゃだめだよ、お兄ちゃん」
マユは子を諭すようにそう言うと、自分の寝室へと戻って行ってしまった。
「はあ」
まったく、この誤解をどう解くか。
ただでさえ多い悩みの種がまた一つ増えたということに、俺は深いため息を吐いた。
前にも似たようなの書いていたんですが、時間が空きすぎて話忘れちゃったので新しく書きます。
多分、続きます。
お待ちかねの何でも屋さんへGJ
キャラの書き分けが上手いですね。
新人スレの隠れた名職人、編集長へGJ!
纏めて読み返す時にとても便利です。煽り文句もすばらしい。
そして仕事の早い単行本編集長へ魂の『乙』!
新人スレっぽく何でも屋さんに一言。
……や――は二個か四個、つまり偶数ずつ使った方が良いでしょう。
それから「!」と「?」は一つずつ使って、空白を入れる事を忘れずに。
先頭車両、スウェンの運転するトレーラーの荷台には、2機分の残骸が無理やり載せられ、
シートをかけられている。
後方車両、シンが運転するトレーラーの荷台には、狭いスペースにダガーが2機、片膝をついて
待機している。
どちらのトレーラーもモビルスーツ1機分の重量を過積載しているため、さっぱりスピードが
乗らない。
後方車両は牽引ロープで結ばれ、接近しながら走る。そのためシンから見える景色は至極つまらない
ものである。つまりは緑色のシートが見えるだけ。
代わり映えのしない光景を傍目にシンは考えた。
どうせ有事には引っ張ってもらうのだ、だったら最初からダガーLに乗り込んでおいていたって
いいじゃないかと。
『なんて思うんですけど、どうでしょうかナタルさん?』
『往生際が悪いぞシン・アスカ。もしその案を採用するとして、先頭のトレーラーは
モビルスーツ4機と、トレーラー2台分を移動させる馬力を引きずり出さねばならん。
電気自動車にそこまで求めるのは酷だとは思わないか?
それに、急ぐ理由もある。
後発の傭兵団と合流さえできれば、敵も襲ってはくるまい』
『……そうですね』
もうシン・アスカにできるのは敵が襲ってこないように祈ることだけか。
『シン、そろそろ私のグゥルが君達の上空を通り過ぎる。
私はそのまま後方を飛行し索敵を行う。シャムス氏はトレーラーへの挟撃に備えて欲しい』
『了解したぜ』
ナチュラルの女性相手だと威勢良く答えてくれるシャムスさん、それに比べて俺への扱いは何なんだ。
「俺ってコーディネイターで得したことあったかな?」
誰に聞かせるでもない独り言は、狭い車内に篭って消えた。
思い返しても小さい頃から嫉妬を受けてきた。プラントではオーブ生まれのコーディに向けられる
視線は冷淡だった。プラント人として親友や戦友はできたが、今では地球に独りぼっちだ。
偏執的な能力主義のプラントでは有り余る地位を賜ったが、結局何が残っただろう……
むしろナチュラルとして生まれたとしたら、その自分は今の自分より幸せに生きられたのでは
ないだろうか?
ため息を漏らしながら何気なく空を見上げると、灰色に塗り替えられたグゥルが一瞬視界を掠めた。
本当ならあのグゥルにオルガ先輩が乗っているはずだったのに、あの先輩達はいったい何なんだ……
ますます暗い気持ちになり、ため息を重ねるシンであった。
油断なく左右へ銃を振りつつ、警戒を怠らないシャムス。運転してから一言も喋らないスウェン。
グゥルを駆り、吹雪の中索敵を続けるナタル。気落ちしながらも命がけのスタントに備え、イメージ
トレーニングに余念のないシン。張り詰めた空気を共有する四者。
そんな彼らの元へ、凶報が、ノイズと共にやってきた。
『─ン、聞──るか、──ャマーだ! ─くに陸──艦がある、────ぞ、数は……
バクゥタイ──機だ!』
『ナタルさん、ナタルさん! 何ですっ! くそっ本当に来たっていうのかよ』
電波妨害、すなわちNジャマーを使った襲撃ということは、近くに戦艦があり、組織だった敵が
攻めてくるということ。
シミュレーション通りギアをニュートラルへ、途端に速度を落とし始める後方のトレーラー。
引き摺られる形で先頭のトレーラーも失速する。
『来たな宇宙の化け物ども! 地球は地球人の物だって教えてやる』
盾を構え、ライフルの照準を白い闇に向けるシャムス。
『シャムス、無駄弾には気をつけろ』
『スウェン、俺を誰だと思ってるんだ』
『……バッテリー切れのシャムス・コーザ』
『ふざけんな!』
『おかしい、俺の記憶が確かならばDSSD襲撃で──』
『黙れ酸欠馬鹿!』
彼らなりの緊張のほぐし方なのだろう、残念ながらシンにはそれを聞いている余裕はない。
何故ならば、彼は窓から吹雪を纏う強風に飛び出し、スタントマン無しのスーパーアクションを
敢行中だからである。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
声も出せないほどの酷寒と風の中、トレーラーの外壁を伝い、ダガーLの元へ急ぐ。
手がかじかむ、鼓膜が破れそう、風で押される、足が滑る、凍る、寒い、急げ、死ぬ、死ねるか!
ネガティブな思考が脳内を埋め尽くす。ついでにダガーLと自分に命綱を括り付けておかなかった、
迂闊で残念な自分を呪う。
こんな目に遭うのも先輩達のせいだ。こうなったら自分で殴るだけじゃ足りない、フレイさんに
委託してしまおう、きっとトラウマになるほど苛めてくれるに違いない、ざまあみろ。
あらかじめ降ろしていた昇降用のワイヤーを掴み、金属環へ足を引っ掛ける。もう少し、もう少しだ。
キュルキュルと巻き上げられるワイヤーにしがみ付いていると、スローターダガーへ渡した盾が
フラッシュするのが分かった、敵のビームを弾いたのだ。
どうやら自分が乗り込む前に交戦距離に入ってしまったらしい。
もしもシャムスがいなかったら今頃ダガーLと一緒にお陀仏だった、そう思うと背筋を冷たいものが
駆け巡る。
ようやくワイヤーがコクピットまで巻き上げられると、逃げるようにダガーLのコクピットに
飛び込み、戦闘ステータスで立ち上げる。まずエアコンを全開、次に機体のチェック、
オールグリーン。次にエールストライカーパックを一瞬吹かす、問題なし。
次はスローターダガーから借りたサーベルの通電をチェック、流石は連合製同士、互換性は完璧だ。
トーデスシュレッケン、残弾よろし。いざという時の切り札、虎の子のスティレットを確認。
モビルスーツ出撃準備、オールOK。
さあ反撃開始だぞ、ダガーL。
左手のレバーを押し込むと、力強くダガーLは立ち上がった。
『シン・アスカ、行けます!』
つづく
>>魁☆オーブ学園
始まりがベタな夢オチで安心したというか何というか。
テンプレートなエピソードを連ねて全体のストーリーを形作っていく型の
SSだと感じました。なんとなく次が読めそうな気もしますが次に期待です。
それぞれのエピソードがどれだけベタでも、全体の骨子にオリジナルがあれば
良いと思いますので。
>>何でも屋
シンがフォンドゥヴァオウだったり迂闊で残念だったりするコメディタッチの割に、
全体の設定や状況はかなりシリアスなのが中々上手いところだと思います。
能力があっても好きな人と一緒に居られるわけじゃないし、幸せが保証されている
わけでもない。コーディネーターが一面に持つ悲劇性を上手く表したシンだと感じました。
》魁
シンの頭の中に浮かんだ憎くてたまらないフリーダムをどうするつもりなのか期待
以前と設定変わった?
》何でも屋
相変わらずにキャラが壊れ方も含めて全員たってるのが良いな。そしてシンで落とす、とw
今回はそのシンの独白もGJと思う
初めてのSSなんでよろしく・・・
プロローグは明日ぐらいに投下する予定
話はオーブ開放戦で始まります。
じゃあ先に設定を・・・
主人公は17歳でオーブ軍の三尉、第15MS小隊の隊員でハーフコーディ。機体はM1です。
ヘリオポリスに住んでいましたが崩壊する2年前に軍に入隊して本国へ降りました。
ライバルはザフト軍、ブラックホール隊というパトリック・ザラ直属の部隊の隊長。機体色は黒です。でも登場自体はザラの死亡後です。
ヒロインは主人公の幼馴染。ヘリオポリスに住んでいましたが、崩壊して、オーブに降りて軍に入隊って言う設定。
設定を先に出すって事は自分の筆力のなさを晒す事だって
覚えておくといいよ
最初に設定を載せるのはなぁ
先の展開が読みやすくなってつまらなくなるから俺はやらないな
設定を曝すのなら物語の中で小出しにしていけ
後は勝手に読者が脳内で設定を作ってくれる
迷いなく決断をした――それがあの結果だった。
目の前で起きたことがもまだ信じられない。自分の見たモノが嘘ではないか、と頭の片隅はまだ考えている。
だけど、俺の五感はしっかりとその光景を捉えていた。
聴覚のほうはひどい耳鳴りがする――聞きたいのは自分の名を呼ぶ声。
嗅覚からは肉が焼け焦げる臭いを嗅いでいた――感じたいのは家族の暖かい香り。
味覚は転んだときに口に含んでしまった土砂の苦い味がした――父さんが毎日飲む苦いコーヒーを思い出した。
視覚はもう動かない二つの焦げすぎた肉塊と誰かの肘下からズタズタに千切れた手が――そこで目を閉じたくなった。
触覚はその千切れた手を俺が震える手で握っていることを伝えてくれた――毎日握ってあげた妹の手、だけどもう握り返してくれなかった。
人はこうなると何も答えてくれないし、何も反応してくれない――シン・アスカはそれを初めて知った。
気づけば薄暗いどこかで、膝を抱えて座っていた。
……周りを見渡すと、四方はまったく飾り気のない鉄板で覆われた大部屋である。そこに俺と同じように床に座り込んだたくさんの人たちがいた。
みんなの顔は俯いてて見えないけど、肌に感じる空気が表情の代わりになった――悲しくて、寂しくて、そして恐ろしいんだ、みんな。
そして俺はふと気がつく――自分の隣に誰かいる。
妹の暖かい匂いでもない、母さんのような柔らかさでもない。似ているのは父さん…よりもずっと固い感触がした。
隣を振り向くと、その人はまったく見慣れない姿をしたおじさんだった。
今、私は大型輸送船の船倉をそのまま流用した大部屋に集められた、オーブ本国から避難・保護した自国民の巡回と監視に付いている。
本来なら輸送船のコントロールセンターで各所に配置された部下の指揮に付くべきなのだが、自分に任された部下の数はほんの四十名程度
だ――船内の各所状況確認をするには到底数が足りないわけであり、自身が動くのも止む無しであった。
部下二名を連れて、仮設船室をすばやく見回る。行く船室先々で避難民から生活物資の要望や質問が飛び交う。
可能なら全てに答えてやりたい、だが時間と物理両面から不可能だ。私達は悪く言えば話半分だけ聞き取ってとにかく曖昧な答えだけを
返して、彼らの精神的安寧を最優先で図る。
もしも何かの拍子で避難民達が暴動を起こした場合――民と国を守ることが最大の義務であるべき軍人が自国民に銃を向けるという
最悪の決断をしなければならないからだ。
おおよそ二時間かけて船内を駆けずり回った甲斐もあり今のところ避難民に危険な兆候は見られない。
最大の懸念の一つだった、コーディネーターとナチュラル間の諍いもしくは暴力沙汰も発生していない。幸か不幸か、自国に
侵攻してきた敵がナチュラルを主体とする地球連合だったからだ。これがコーディネーターによって構成されているZAFTなら
間違いなく状況は異なるものだっただろう。その最悪の想像図を頭に思い浮かべる気には到底ならなかった。
避難船団の各艦の状況を音声通信で受け取った私は、今のところ想定を超える問題が発生していないことでようやく胸中に
溜め込んだ緊張を解く。次に自発的呼吸を数回繰り返す。
すると余裕が出たのか自分に宛がわれた任務以外のことに思いをはせる。
まずは本国の戦況だが――想像するまでもないだろう。
(誰がどう見ても負け戦だ)
考えるまでも無いことだ。
外聞でこそ、オーブはその優れた技術を使って生み出されたMSであるM−1"アストレイ"を多数擁し、それを操るのは精強と呼ばれるオーブ兵――と聞こえは良い。
確かにMSを独自開発したことは驚嘆であるし、戦乱が続く地球上に於いて温存を続けられたオーブ兵の質は最良といえるだろう。
実際は片や国土防衛計画に根本から咬み合わない未完兵器であり、教育プログラムのカリキュラムさえもまだ手探りの未熟兵だけで
構成されたMS部隊だ。
連合に劣ることはないだろう。だがそれだけだ。大国の集まりである連合に抵抗する小国のオーブなど、薄氷にしか過ぎない。
連合という巨象はたしかにある程度の被害は受けるだろう。だが決してそれが致命傷になることはない。巨象が薄氷を踏み砕けくことは
当たり前なのだ。
この道理を覆す可能性は……あるにはある。だがそれはオーブの最高責任者本人が有無も言わずに切り捨てさせた。
ならば道理はただ一つだ――オーブは負ける、完膚なきまでに。その未来は――
そこまで考えて私は眩暈を感じる。そして先を考える役目は間違っても自分で無いことに心中で苦笑した。
思考の先を他に切り替える。切り替え先はすぐに見つかる――それは自分のプライベートだ。
(お前、それにスズリ…無事に避難出来たのか?)
妻と娘の安否の確認をしたいという欲望が鎌首を上げたのだが、軍人としての鉄の節制心が容赦無く鎌首を切り捨てた。
生憎と私は精神的にはそんなに追い詰められていないようだ。
軍人としては最良と思うが良人、そして人の親としては疑問を抱くことに再び苦笑する。
――家族、そこから閃くものがあった。
(あの少年はどうしたのだろうな)
輸送船への最後の避難者になった少年のことを思い出す。
(恐らく…家族なのだろうな)
少年の痛々しい叫び声、そして世の絶望全てを見てしまったようなあの表情を忘れることは絶対に出来ない。
人は家族を失うとあそこまで壊れてしまうのか――自分が戦死した時のことを考えると少年の姿はまったく他人事ではなかった。
家族にそのような悲しい姿にはなって欲しくはない――それを願うには自分の職業は間違いにも程があることは判っている。
それでも願わずにはいられなかった。
気付けば足を仮設船室のある階層へと運んでいた。
副官の二尉に連絡役を頼むと、私は船室の一つ一つを丹念に見渡した。
船に乗せてからは彼のことを適当な誘導員へと任せきりだったため、どの船室に配置されているのかはまったく検討が付かない。
ならば任せた誘導員を呼び出せばいいのだが、生憎とその事には気付き損ね、気付いたのは少年を見つけてからだ。
一見すれば船内の巡回に見える私の行動は六つ目の仮設船室で終了した。
船室の手前側の壁に両膝を抱えて座り込むフードの付いた白い上着の少年――間違いない。
私は彼のそばにゆっくりと近寄る。途中で幾人かの避難民にぶつからない様に遠回りをして、数秒――彼の横に私は立った。
膝を抱える両腕の内側に頭を押し込んでいる彼はまだ私に気付かない。
そしてここに来て私は彼に会ってどうするのかという根本的な疑問を浮かび、それに悩んだ。
「助かってよかった」と言えばいいのか?いや、良くない。
もしそれで家族を失ったことを思い出せば精神錯乱を引き起こしかねない。それが他の避難民に感染、そしてパニックを引き起こすのは容易く予想が出来た。
船内の今の静寂――これに少し衝撃を与えれば容易く崩れることは誰が見ても明らかだった。
今は急激な状況の変化に流されることで精神的空白を起こしているからこそ静かになっているだけだ。
ここで不要な接触を起こして彼に変化をもたらすのは危険である。
触らぬ少年に祟りなし――ここに私が足を運んだのはただの気まぐれで済ますに限る。
決断をしたのなら実行するのは早いに限る。
足早に離れようと判断したとき、私は少年と無意識に視線を交わしていたことに気付く……彼は色の無い表情を私に向けていた。
「俺は…シン・アスカ――今年で14歳で、父さんと母さんと、妹がいる」
俺は自分が一体"何なのか"を確認したかった。自分が何を無くした――けどそれは一体何なのかがわからない。
だからまず自分の今までを思い出すことにした。隣のおじさんにも聞かせたのはたぶん俺のことを知っている人だから、
きっと俺が知りたいことを教えてくれると思った。
だって父さんが教えてくれた、わからないことは大人にぜひ聞きなさいって。
「父さんと母さんは貿易会社で働いてる。"しゃない結婚"だって言ってた。だから昼間は家にいなくてさ、午後のおやつによく外国の
お菓子とか置いてた。なんでもサンプルだってさ」
「……」
「一度、賞味期限が切れてるサンプル持ってきてさ、それを食べ過ぎちゃったマユがお腹を壊したときなんて大変だったんだ。
そうそう、俺はそれあんまり好きじゃなかったから一つも食べてなくてさ、だからマユに『お兄ちゃん、痛んでるの知っててマユに
食べさせたでしょ!』だなんて言い掛かりつけさせられたんだ。そんなわけないのに…だってそうだとしたらマユに食べさせるもんか」
「そそっかしい妹なんだな」
「うん。だけど世界で一番可愛い妹なんだ。ところでおじさん、名前は?」
「……トダカだ、この船の船長をしている」
「じゃあトダカさんって呼ぶね…ねえトダカさん、俺なんか忘れ物したんだけど一体何忘れたんだろう?」
「……何も忘れ物はしていないよ。シン」
「そっか…今日はね、実は遠くに出かけることになってたんだけど――どこに行くのかは父さんも母さんも教えてくれなかった。
で、まず港に行くことにしたんだ。そしたら空が変な光を放ちはじめたんだ。父さんはもう始まったのかって言ってた。
それで普段なら使わない山道を使うことにしたんだ…そこを使うとさ、港に行くのに一番の近道なんだ。林に囲まれた山道を走ってたらさ…なんでだろう、ここから先が良く思い出せないや」
「シン、そこから先は言わなくてもいい。君達は無事に港に辿り着けたんだ」
「…そっか…だけど、何かがすごく記憶に残ってる――そう、蒼い翼をもったロボットがこっちを見下ろして…」
「シン!どうしたい?」
「え?」
俺は考えることを止めておじさんが何を言ってるのか聞きなおす。
「シン、君はどこに行きたい?」
「……オーブに帰りたい」
まずはそう思った――帰れば家族が待っている。
「オーブは戦争が起きていてみんなが帰ることは今は出来ないんだ」
「せん…そう?」
「そうだ、戦争だ。シンが詳しく知る必要はない。そういうことが起きていて"今は"帰れない。それだけのことなんだ」
「うん、わかった」
「シン、君が行けるところは三つある」
「三つ…」
トダカのおじさんは腰を低くすると、視線を俺の高さに合わせてくれた
「一つ、まずは他のみんなと一緒に他の国に渡ってそこで保護を受ける。時間が経てばオーブに帰ることが出来る」
(その時、オーブの国名が変わっている事は間違いないことだろうがな、とトダカは考えた)
「二つ、他の国に渡るところは同じだ。だがそこからプラントに行って保護を受けるという道がある」
「プラントって、あの宇宙に浮いている砂時計みたいなコロニー?」
「そうだ。プラントは君のようなオーブの避難民の受け入れを表明している。もしコーディネーターならそこに引っ越すということも出来る」
「ナチュラルだったらどうなるの?」
「そこまではおじさんも知らないな」
(もちろん嘘ではある。コーディネーターなら移住はむしろ推奨されるであろう。だがナチュラルなら一時保護後、他のコロニーや
月面都市への移動を強制されるの間違いない。シンがいずれなのかなのかまだ知らぬ以上、曖昧な返答は危険であるとトダカは考えた)
「それで…最後は?」
「…シン、おじさんと一緒に来るか?」
シン・アスカを引き取る、その選択肢は本来なら有り得ないものである。
トダカは偽善者ではない。自分の目の届くところにいた、という理由だけで一人の孤児引き取るようなことはしない。
これは運命なのでは――非理論的だがトダカはそう考えた。
運命に理屈は無い。港で最後に拾い上げたこと、自分がタイミングを外してシンと話をしてしまったこと、家族を失うことがどういうこと
なのかを思い知らされたこと、それらを含めて運命を感じたのだ。
逆らう気は不思議と沸かなかった。
該当のスレがないのでここに投下してみました。
題名どおり有り得た運命の一つ、ということで創作意欲に従って書いてみました。アドバイス、よろしくお願いします。
ありだと思うよ?
だが、オーブ軍に入れるかどうかと考えたら微妙のライン
オーブとザフトの成人観念は違う事から、何歳以上から軍に入れるかと言うラインも違う筈
軍なしでほのぼのと行きたくても2年後にゃアレだかんね
時間軸をずらしたりするのも手
戦争は八年後とかね
オーブの立ち回り方次第では種死での本土決戦は避けられるかも。
トダカさんが苦労しそうだけど。
戦場に向かったトダカさんを待つシンなんてのが頭に浮かんだ。
個人的にはハッピーエンドというかあまり人死にが出ない展開を希望したいね。
>>155 久々の新人さんかな?
楽しみにして待ってるよ!
もしトダカが三隻同盟に合流するのなら、状況が状況だし、
MSの操縦に適正があると認められたら臨時パイロットとして
徴用されるかもしれんね。
まあ連れて行くとは思えんが。
>>CE大戦秘話
よろしく。それではまず投下する前に、貴方のSSが設定を知らない人が読んでも
内容がわかるものなのかどうか、読者の気持ちになって読んでみてください。
板が板ですから、SEED内の単語を説明する必要は在りませんが、オリキャラを
登場させる時は文章の量を掛けて印象づける必要がありますので。
読んでいる人からすれば、パンフを買わなければ内容が理解できないような映画は
最初から見る気を失くすわけです。
書く方からすれば、設定になっているところをどんな形でも良いので文章として
少しずつ肉付けしていけば、それだけでSSになりますしssを書く練習にもなります。
>>もしも――残ったら
投下乙です。
家族を失ったシンの不安定な狂気と、トダカの仕事に対する責任感、使命感、
其処に見え隠れする優しさは良く描写されていたと思います。
改善すべき点を上げるならば、一行の長さをもう少し短くして揃える事と、
視点の移動を気にすることだと思います
特に視点を1レスの中で動かしたり、あまり移動が多いとゲームで言う3D酔いの
様なものを感じてしまいます。
次に、物語直接は関係の無い描写のところです。此処は飛ばして構いません。
最初に爆撃を受けて吹き飛ばされたシンが五感で惨劇の現場を捉えるシーンです。
聴覚味覚嗅覚視覚触覚という言葉を使わずに書いた方がすっきりします。
長文で感想失礼しました。
すんません編集長。仕事が忙しいんで一ヶ月程投下を休みます。
>>155 新人さん大歓迎ですよ! 気軽に投下して下さい。
>>169 実録さん一ヶ月後にパワーアップしての復活お待ちしています。
》秘話
レスが付いて出にくくなっちまったか?それでも投下しに来るのが職人だぜ!
設定の扱い云々については
>>168氏に同意
弐国氏あたりも文章が説明くさい、なんて前に言ってたくらいでさ
オリキャラの場合は自分の中でどれだけキャラが固まるかが勝負、だと思うぞ。がんばれ
俺、書いたこと無いけど
》もしも
トダカがちょっといい人過ぎな気はするが、まぁ見え方は人それぞれだろうし
個人的にはシンが必要以上に子供っぽ過ぎるのが気になった
主役はシン、で良いんだよね?
>>秘話
オリキャラについては簡単な説明しかしないで読者の疑問は光の速さでおいていくという手法もある。とりあえず投下を待つ。
機動戦士ガンダムSEED 〜CE大戦秘話〜
コズミック・イラ71年6月15日
オーブ付近に配置していた地球連合軍はオーブに対して、攻撃を開始した。
目的はオーブのマスドライバー施設、ザフトに全てのマスドライバーを失っていた連合は中立国のオーブの施設を欲していた。
「オーブ解放作戦」の始まりであった。
その数分前・・・
「死なないといいね、私達。」
「そうだな。」
基地内廊下で二人の少年と少女がいた。少年の名はマコト・ラム、少女の名はリィータ・アーシェン。彼らは幼馴染であり、普通に会話するのは当たり
前だが、今回は違う。彼らにとって、これは最後の会話になるかもしれない。兵士である彼らはもうすぐ戦闘に入る事になる。マコトはパイロットとして、
リィータは整備兵として。
「・・・・・・・・・・・・・・結局ここも戦争になるんだね。」
「・・・・・・・・・」
「想像しなかったよ。戦争でも、中立国にいたから全然平気だと思った。でもあの時、ヘリオポリスから脱出して、崩壊して、“これが戦争なんだよ”って
思い知らされた。」
リィータは数ヶ月前を思い出す。ごく普通の民間人だったリィータは故郷のコロニー、ヘリオポリスがザフトの侵攻によって崩壊した。彼女はうまく避難して
本国に救出されたが、あの時の恐怖を忘れられなかった。これがきっかけでオーブ軍に入隊。父親も軍人であるため、歓迎したらしい。彼女の幼馴染
であるマコトはすでに15の時に地球に降り、軍に入隊していて、ヘリオポリスの崩壊を知ったときはすでに当時開発中だったM1アストレイのパイロットと
してモルゲンレーテにいた。
「ここでの戦闘、絶対勝たなければならない。俺達の居場所を無くす気はないからな。」
マコトは笑顔で答えるが、その笑みは長く続かなかった。
基地内に敵襲のアラームが鳴りはじめ、同時に外の砲撃が始まった。
「俺は行く!生きろよリィータ!死ぬなよ!」
そう言い、自分の機体があるMSデッキへ向かう。
リィータは離れていくマコトの背中をだた見ているだけだった。
デッキに着いたマコトは周りを見渡す。
「隊長たちは・・・・・・・・発進準備に入っている!急がないと・・・・」
そう言い、自分のM1アストレイに乗り込み、起動スイッチを押す。
そこに一人の男性が通信してくる。
「ラム三尉、遅いぞ!俺達は先に出る。」
「隊長、すいません。すぐに追いつきます・・・・」
隊長は通信を切り、付いてくる他の2機と共に出口を通る。
「本国を守るぞ!15隊、隊長のウィリアム・フルズだ、出るぞ!」
「15隊、アキラ・ワカタ、出る!」
「ラム!早くしろ!15隊、ジャスティン・スミス、行くぜ!」
最後に残っていたマコトも発進準備にかかる・・・・・
「遅れをとってしまった・・・・・・・15隊、マコト・ラム、発進します!」
1話へ続く・・
プロローグ終了。なんか自分下手だなって思ってしまう。
>>175 弐国氏の素晴らしいSSを読んで参考にすればもっと良い文章が書けると思いますよ。取り合えず三点リーダーの使い方を覚えて「〜。」という句点の使い方を改めるべきです。
>>175 初SS初投下乙です。
最初から上手く書ける人はあまり居ないと思いますよ。
改行がすごい事になってますが、携帯からの投下ですかね?
>>大戦秘話
初投下乙です。
まだプロローグの段階で、シナリオ的に評価する事はできないので簡単なところから。
行頭一字空けは個人の好みなのでする必要は無いかもしれません。
台詞の最後に「○○。」と句読点がついて終わる事はありません。
疑問符「?」と感嘆符「!」を使った後には、地の文と台詞とを問わずその後に一文字開けます。
ただし「――――! 」とはしません。
それから……や――についてですが、三点リーダー「…」にしてもダッシュ「―」にしても、
これで一つの記号です。偶数個繋げて使います。「・」を三つ並べても本当は代用出来ません。
あまり使い過ぎるとssが希薄になってしまいますので注意。
ここまでは作法の問題です。次行きます。
改行のしすぎもssが薄っぺらくなる原因ですので注意です。シナリオの間を表すために改行を
使いたい、など演出として改行するのであれば最低百行は普通に書いてください。
目安としては会話文と地の文で一塊を作って一行空けます。一行は五十文字以下がよいでしょう。
視点移動に関しては次回の感想で。ネットのいたるところに「小説の書き方」を教えてあるサイトが
在りますので、其処も参考に為てみてくださいな。
それでは次回の投下お待ちしております。
弐国氏降臨期待age
>>174 先ずは投下乙
改行とかお作法は前の人達の言うのを参考に
あと軍隊口調は独特だから本を読むとかビデオを見るしかないのだけれど
戦史氏や『†』氏あたりの言い回しを借りてきても良いかも知れない
最初は模倣から始まるのも悪くはない
182 :
弐国:2007/05/24(木) 23:51:08 ID:???
彼の草原、彼女の宇宙(そら)
第8話 慟哭(前編)(1/6)
イアハート直近、船の形の全体が見えないほどの近さで【大砲】を必死で食い止める頭の白い
ゲイツ。此処まで【大砲】1機にザフト側の被害は、撃墜だけでもMSが12機、ナスカ級が2隻。
カワグチも先ほどどてっぱらに直撃を喰らって煙を吹いているし、スコットももうあまり長くはもたなそうだ。
イアハートへの直撃をさせないように牽制し続けているコクピットのダンは、だが、あまり焦りは
感じていなかった。徐々に【大砲】の動きが緩慢になりつつあるのを感じていたからだ。
「あれだけ派手にやれば燃料も集中も切れる。お前さんは俺の獲物だ!」
あいての動きが鈍くなったのを好機とみて、ダンのゲイツは距離を詰める。接近戦に持ち込めれば
今なら動きは互角だ。近接武器はたいしたものが無いのは確認済みである。ならばビームクローを
叩き込む余地はある! これ以上は好きにさせねぇぜ!
至近距離であっても、手持ちの武装を気にせず撃ってくるのを見て、力押しだけの相手に押され
ていたとは、と腹を立てるダン。
「エネルギー残量とか射程とか、少しは考えろ! 馬鹿!」
叫びながらビームクローを起動させる。その一瞬を逃さず右肩のビーム砲【シュラーク】がゲイツ
を真正面に捕らえる。が、ダンは全く臆せず微妙に軸をずらしながら突進していく、右足が吹き飛ば
されたが気にせずきりもみのまま進行方向を調整すると、一気に真正面に突っ込む。カラミティが
シールドでゲイツを打ち付ようとするが軌道が乱れたために先読みに失敗、空振りする。シールド
の砲撃も鋭利な先端部分もかわしながら、ダンはビームクローをカラミティの胸に突き刺していく。
カラミティのコクピット内、サファイアは光がモニターを突き破って迫ってくるのを見た。
その光の中には湖を囲む花畑があって、湖はそよ風が波紋を刻むと更に輝いた。
そして居なくなってしまった兄弟たちが湖のほとりに座り、笑って彼女に手招きをしていた。
あれだけ酷かった頭痛も吐き気も耳鳴りも、薬の後味の悪さも、意味のわからない不安感も消えた。
静かな光に包まれた暖かな世界、またみんなで、ここで。
だから彼女は光に逆らわずに、素直に飲み込まれた。
『コンゴウも早く来れば良いのに。』
彼女の意識はそこで途切れた。
ビームクローをオフにするゲイツ。カラミティのコクピットから光が引っ込んでいくように見える。
ぽっかりとメインモニターやや上に穴の開いたカラミティのコクピット。
サファイアのややあどけなさの残る顔はヘルメットごとコクピットから消え去り、小さな体のみが
シートの上に残されていた……。
カラミティのツインアイから光が消え、右手の手放したバズーカは徐々に遠ざかって行く。
183 :
弐国:2007/05/24(木) 23:53:24 ID:???
第8話 慟哭(前編)(2/6)
「ふぃー。やったか……。イアハート、大砲は落としたぜ、お嬢は何処にいる?」
ゲイツがカラミティから離れようとした瞬間、カラミティの胸の真正面にゲイツが流れた。
コックピットの中、頭を失ったサファイアの体はタイミングを計ったようにトリガーを引く。
ゲイツの胸から腹にかけて【スキュラ】が機体をえぐる。ゲイツは条件反射のようにカラミティ
の胸から腹にかけてビームクローを引きずる。カラミティのコクピットは一瞬にして蒸発し、
サファイアの体は光の中へと見えなくなる。
こぼれる部品やケーブルの束が連合とザフトの機体を結び付けていく。
絡み合ったまま動かない2機を火花と煙が徐々に激しく彩っていった。
気が付くとコクピットの右半分から虚空が見えていた。寒さを感じていることに違和感を持つダン。
目の前にふわふわ浮かぶ赤い玉は徐々に数が増える。そしてそれらは彼が気付かぬ間に無くなって
しまった右足の付け根から発生しているのに気付く。わき腹からも赤い玉は沸いているようだ。
「ハハ、寒いはずだ。腹に、穴が…開いてやがる……」
全く、俺サマとしたことがドジを踏んだもんだ……。こんな所で年貢の納め時か。
サーシャにコールしようとして無線のパネルがそもそも無くなっているのに気付く。
「お嬢、お前は優秀で、何より美人だ、死ぬんじゃ…ねぇぞ…。い、生き、生きて、自分の幸せを、
ちゃんと考えろよ……?」
モニターは死んだがコクピットに開いた穴からイアハートのブリッジが見える。
「隊長、ホント、アタマ良くてさ、たのし、かった…よ。俺が死んじ、まったら…おま、えさんを
気にしてくれるかわりもん…ぐ、はっ、ガスコインだけだぜ、絶対、に、逃がすなよ……。
けど、どうせ死ぬなら、…。いちどくらい、お願いしたかったぜ、
なんて…聞こえたら、ゴフっ営倉行きだな、こりゃ…ハハ、ハ。無線が、ぶっ壊れてて…よか」
ダンが最後の冗談を言い終わる前にまずゲイツに火が回る。
爆光の中にダンの姿が霞んで消えると、カラミティの胸に刻まれた傷からも火が吹き出す。
やがて2機は全体が爆発し2つの爆発は一つの大きな火球になってイアハートのブリッジを
明るく照らし出し、高速艦ナスカ級の特異なシルエットを虚空に浮かび上がらせた。
184 :
弐国:2007/05/24(木) 23:56:20 ID:???
第8話 慟哭(前編)(3/6)
「クルーガー機、ロスト、目視でも確認…っ! 大砲と相打ちになったようですっ! 隊長!」
「っ! ダン……! 残ったMSを艦の直援に戻せ! サーシャは何処にいるかわかる!?」
「うぅ……、隊長っ!」
オペレーターの一人が涙目になってこちらを見ている。彼女が当初MS管制官として彼から
みっちりと仕事を仕込まれたことを思い出す。
「何をしている! 敵MS隊の位置の確認急げ! 落とされたいの!?」
友人の死に意味も無く叫びだしそうな喉から、かろうじて隊長の威厳を感じさせる言葉を
搾り出すのに成功する。
隊長としては扱ってくれなかったが、だからむしろ良い相談相手だった。特務隊直属部隊に
【左遷】される前から、服の色が白になる前からの友人だった。彼だけは落ちないのだと、
必ず帰ってくるのだとどこかで思っていた。
ガスコインに粉を蒔けとけしかけ、黙って愚痴を聞いてくれる口さがない友人はもう、居ない。
「カワグチ、航行不能! 退艦命令でました! スコットも長く持ちませんっ!」
「ニコラボロフ機、現在ロスト中! ですが、おそらく構造物の陰にいるものと思われます。
現在我が隊のMS残機数は、ニコラボロフ機を入れて5!」
ともかく今は。ダンはあたしの人間性についてはいつもボロクソに言ったが、唯一隊長としての
能力だけは認めてくれていた。だからこそ無茶な作戦にもぼやきはしたが、文句も言わずに
付き合ってくれたのだ。だからこそ、今はあなたの事は戦死者の数字として受け止める。
友人のダンの死ではなくて。モンロー隊戦死者1として。
「艦長! 僚艦からの乗員移送作業急いで! プントとカシアスのゲイツは周囲警戒!
何も近づけるな! 敵MSの位置はどうなっているか! マリィ、しっかりして!」
このブリッジで白い服を着ている限り、あたしはカミソリモンローで居続けなくてはならないのだ。
でも彼はきっとそんな言い訳はしなくてもわかってくれているだろう。そもそも。
『隊長なんてのは見た目のほうが大事なんだ。シャンとしてるだけでみんな言うこと聞くんだよ』
と当初、同じ部隊に配属になった単なる問題児だったあたしに言い続け、最終的に艦隊司令の
カミソリモンローに仕立て上げたのも、そして出世街道であるテストパイロットの口を蹴ってまで、
危険を承知で、最前線部隊のあたしの部隊へ自ら移動願いを出したのも彼だ。
問題行動は確かに多い彼ではあったが、世間が言うように左遷されたわけではない。
だから。悲しむのも、叫ぶのも、後に回して指揮を取るならば。彼なら、むしろ褒めてくれるだろう。
モニカは立ち上がって精一杯背筋を伸ばすと、最大限の威厳を持ってブリッジを見渡す。
冷たい奴と思われるくらいでちょうど良い。今は。
「ゲイツ改シグナル確認! 浮きドック223e内部に微弱ですが反応あり。……鎌も同位置に確認!
サーシャはまだ鎌とやり合ってるようです、エネルギーが間もなくですが…」
「鎌を足止め出来てる以上放っておいて良し。緊急着艦の用意はさせておいて。
それよりカワグチからの移乗はどうなってるの! 急がせて!」
その時は私が…か。サーシャの瞳が脳裏に蘇る。本当に落せる?
少しでも情けをかければきっとやられる。ダンが知って居ればこの状況ならばサーシャは鎌には
絶対に当てないだろう。けれどあたしは許可した。
カミソリモンローの判断に間違いは無いのだ、と思いたい。が、間違って居たとしても、もう援護は回せない。
いくら虚勢を張ってみても、ダンに続いて、妹分のサーシャまで失えば、きっとあたしは潰れる。
185 :
弐国:2007/05/24(木) 23:58:55 ID:???
第8話 慟哭(前編)(4/6)
残り180秒。現在の機動を続ければそれで止まる。PS装甲のスイッチに手を伸ばして、
切るのをやめる。これは私である事の証明だ。赤いMS。コンゴウに対して私はコレでしか
証明出来ない。だから切れないし、切らない。ただ、本当に気付いてくれるのか。
廃棄されたがらんどうのドックの中、ニーズヘグをギリギリでかわしながら思う。
壁のパイプは紙の様に切れて何かを吹き出す。まさに【教科書どおりのランダム】だからこそ
捻じ曲がるビームもかわせているが、体力も集中力も燃料も、もう持たない。
そのビームがまた壁に穴を開ける
『その時は…襲ってくるなら落します! 私の手で!!』
何事にも動じないサーシャの理想とも言うべき彼女の隊長、白い服の後姿が脳裏に浮かぶ。
『保護しようなんて思い上がっちゃダメよ?』
思い上がりですか!? ザフトレッドは単なる称号ではないですっ! ご存じでしょう!?
とその後姿に叫ぶがそもそもそれも思い上がりだと言うだろうか?
脳裏に浮かぶその女性の後ろ姿は何も語らない。
すんでのところでレールガンをかわす。奥で何かがはじけ飛ぶ。牽制の機関砲が来るのを
シールドで受け止めると、再度襲い掛かるニーズヘグを見切って止め、押しやる。
やはり手加減など通じる相手ではない。やると言うなら一撃必殺、落せるのは私しか居ない。
隙がだいぶ大きくなってきた今なら、行ける。エネルギー残を確認する。あと32秒。
目いっぱい後退するとシールドを横に投げ捨てライフルを左手に持ち替える。
フォビドゥンがニーズヘグを構えるのを確認すると、覚悟を決めてビームサーベルのスイッチを入れる。
「わかんないのね、私が……。ならば……。せめて、あんたは私がこの手で……!」
「うぅ、赤い機体…。サーシャが乗ってるのか……。それならどうして撃墜しちゃイケナイ?
誰の命令だ! ふざけるなっ! アイヒマンは電池が切れるまで、ぐっ…暴れろと、うぐっ」
機体の出力はますます安定を欠き頭痛も徐々に激しくなってくる。
モニターが歪んでいるのか視界が歪んでいるのかもはや良くわからない。
注意の表示があちこちに出ているが内容などとっくに読み取れなくなっている。
彼の手足の延長である以上、読む必要など彼には無いのではあるが。
薬もエネルギーも間もなく底をつくがそれまで暴れるのが命令である。
そして頭痛がしようが視界がゆがもうが命令には従わなければならないし、そこには理由など無かった。
「赤いから何だってぇんだぁぁあっ! あ、あいつだけは落す!……生意気なぁっ!!」
186 :
弐国:2007/05/25(金) 00:01:53 ID:???
第8話 慟哭(前編)(5/6)
「Gの反応、2機とも消えました」
「以外に持たなかったな。まぁそんなところだろう、サザーランドのドゥーリットル、動きはどうか?」
「間もなくピースメーカー隊が出るようです」
「何? まだ艦隊の建て直しも出来ん内に……。早過ぎる。ドミニオンはどうなっているか?」
G を使い潰したのは失敗だったか。今度こそ、青き清浄なる世界のために宇宙(そら)の化け物ども
を退治せねばならんのだが、我が理事殿は焦っているようだな。何故だ?
確かに支援隊の約半数がやられたようだが、艦隊の再編が終了すれば完全に圧倒出来る
この状況下で何故焦る必要がある。その辺の分別は出来る男だと思っていたが。例の砲台か?
だがアレとて一斉射で全ての艦隊を吹き飛ばすわけには行かぬだろうし、地球に害をなせば
プラントとて無事には済まない。何があの男を焦らせていると言うのだ。
「ドゥーリットルに敵の攻撃が集中しつつあります! ドミニオンが援護に回っていますが、
こちらにはアークエンジェルが付いています! Gは3機とも健在の様ですが詳細不明!」
不沈艦と呼ばれるアークエンジェルの、その二番艦ドミニオン。コストの面から量産できないだけで
各艦隊が欲しがる高性能艦。艦長も経験こそ足りないが優秀ではある。めったな事では沈むまいとは
思っているが、アラスカもオーブも潜り抜け再び宇宙へあがってきた元祖不沈艦が相手では分が悪い。
だが、もはや引くわけには行くまい。
ここまで大規模な作戦が失敗となれば建て直しにはどれだけかかるか分からないし、アズラエル
が何を考えているかなど分かろう筈も無い。
だが核魚雷をむざむざ使わずに落とされるのは連合として損失が大きいし、あの男を失うとなれば
ブルーコスモス全体にとってはリスクが高すぎる。何故前線になど出して寄越したのか。
いずれにしろピースメーカー隊をプラントまで侵攻させるのが先決だろうし、おのずとアズラエルを
守る事にもなる、か。此処まで追い込まれてしまっては正規採用型とは言え生体CPUさえ、
もはや不安要素になる。現状彼の護衛は、その生体CPU搭載型の3機のみだったな。
「アイヒマンの部隊以外のダガーとメビウスの2/3をドゥーリットルとドミニオンの援護に回せ」
「宜しいのでありますか? 艦隊の直縁が居なくなりますが」
「今、あの2隻が落ちれば全体の指揮系統が崩壊する! 幸いここは最前線と言うわけではないし、
ピースメーカーの事もある。敵には今、ここにきている余裕は無い」
余剰艦載機も無く、弾薬、燃料の残りも僅か。本格的な艦隊活動はもう出来ない。
状況が悪すぎてこの艦隊を直接回せないのは残念至極だ。アズラエルに恩を売る絶好の機会だと言うのに。
「アイヒマンには状況を見て戻るように伝えよ!」
187 :
弐国:2007/05/25(金) 00:04:14 ID:???
第8話 慟哭(前編)(6/6)
ニーズヘグを振り上げて突っ込んでくるフォビドゥン。
「見えた!」
サーシャは叫ぶとビームライフルを撃つ。ゲシュマイディッヒ・パンツァーに弾かれるが、
それこそが彼女に見えた戦略である。ほんのごく僅か、それの可動が遅くなったのにさっき気付いたのだ。
その僅かな隙に機体を沈ませて、鎌をかわすとビームサーベルを一閃する。
「貰った!」
完全にコクピットブロックを中心にフォビドゥンを上下に両断したはずだった。
だがビームサーベルは何とかフォビドゥンの胸の装甲に溝を刻むとと見る見る短くなって消える。
フェイズシフトダウンの表示。無防備でフォビドゥンに対して後ろ向きで、
ただの短い棒と化した刃の部分の無いサーベルを握る灰色のゲイツ改。
「嘘でしょ、ヤバ…」
そのまま全速離脱、だがすぐに壁に阻まれる。振り返るとそのままフォビドゥンが
鎌を振り上げて真正面に居た。苦し紛れに機関砲を連射するゲイツ改。
予期しない攻撃はシールドを無くしたフォビドゥンの右腕に着弾。
被害こそ無いがほんの一瞬、圧倒的優位のフォビドゥンをひるませる。
「っ! いけるっ!」
残存エネルギーをかき集めて無理やりビームサーベルを起動する。
残り時間のカウントダウンが見えなくなるくらいに早くなる。突っ込むゲイツ改。
だが、この捨て身の一太刀をバランスを崩しながらもフォビドゥンは右腕と引き換えにかわした。
ゲイツ改は即座に振り返り上段からサーベルを振り下ろし……。
「このぉ! ……え?」
コクピットに響く電子音。動かなくなったゲイツ改の正面。
モニターには左の腕一本で巨大な首狩鎌を持ち、今まさにゲイツ改を狩らんとするフォビドゥンが
エンプティの表示とともに大写しになっていた。
次回予告
その手から大切なものがこぼれるのを止める術など無く、少女の叫びは虚空へと消える。
真紅の機体は怒りと悲しみに背中を押され、命の光に照らされて宇宙(そら)を切裂く。
最終話『慟哭(後編)』
188 :
弐国:2007/05/25(金) 00:05:18 ID:???
今回分以上です。ではまた
GJ!手に汗を握りました。やはり弐国氏は新シャア髄一の筆力がありますね。とても素晴らしかったです。
文章の視点が一定じゃない?のが読む側としては気になるかな。
内容は面白いケドネ。
ああ、地の文とキャラ視点の文章が連続してると混乱する
改行するなり記号で分けるなりするといいかも。
内容はやっぱり良いけどね。
>>182-187 視点と地の文については上で指摘されているから言わん。
戦闘に疾走感がなく間延びしている感じがするな。そこら辺を改善すべきだな。
あとは体言止めを使うならもっと効果的に使うべき。
更なる精進ん期待する。
>>弐国
投下乙です。GJでした。
視点変更についてはかなり読みやすくなっていると思いました。
本編との絡みも中々上手かったです。
ダンとサファイアの死に関しては、もう少し二人の描写が欲しかった
というところですが。その分サーシャとコンゴウの戦いが感慨深いですね。
重ねてGJでした。
194 :
3-214:2007/05/26(土) 00:48:28 ID:???
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜
第5話 「海 −じゆう−」(前編)
(1/6)
真紅の絨毯が敷かれた階段の上にカガリが姿を見せた瞬間、階段下のフロアに集まっていた
人々のざわめきがぴたりと止んだ。
純白のドレスに身を包みマーナに手をとられて俯きがちに階段を下りるカガリは、普段の──
よく言えば行動的、悪く言えば粗野な彼女と同一人物とはとても思えない。
数秒置いて、今度は感嘆の声でフロアが満たされた。
その中には彼女を揶揄する声も混ざっていたが、そのどちらもがカガリの耳には入っていなかった。
◇ ◇ ◇
リムジンの中から集まった群衆に作り笑顔で手を振りながら、カガリは人々の笑顔に少しだけ
勇気付けられていた。
こんなに無力な自分なのに、皆が幸せを願ってくれる。
自分に返せるのは、この笑顔を守ること。
だからいい。これでいい。
そう思ううちにも、その目は無意識にその中に一人を探していた。
その中にその人はいない。それはわかっていたが、それでも探さずにはいられなかった。
心の中ではずっとその人の名を呼び続けていた。
そんなカガリの心を見透かしたように、片手でグラスを回しつつユウナが言った。
「そうそう、アレックス君のことだけど」
「え!?」
それまでユウナが何を言おうとも心ここにあらずという風だったカガリが、ユウナに真っ直に
向き直った。
(アレックスの名を出したとたん、これか!)
ユウナは腹立たしく思ったが、これだけ人目があるので手は出せない。
195 :
3-214:2007/05/26(土) 00:49:25 ID:???
(2/6)
その代わりにユウナは声に多少の嘲りを込める。運転席とは防音ガラスで仕切られて余程の
大声を出さない限り、会話を聞かれることはない。
「君も人妻になるのだから、護衛も女性に替えなくてはいけないね。大丈夫、アレックス君には
僕がちゃんと別の仕事を見つけてあげるから。なんにも心配することはないんだよ」
「…………」
カガリには何も言えなかった。反論したって聞いてもらえる筈もないし、もし聞いてもらえた
としてもアスランにあわせる顔などないのだから。
無言のカガリに苛立ちながら、ユウナは更に言葉を続ける。
「それと父上とも相談したんだけど。君の引退だけどね、やっぱり君の妊娠・出産を契機に、
っていうのが一番自然だろう? 君もそのつもりでいてくれよ」
ウナトと相談したなど口からでまかせだった。カガリの困惑した顔がみたいがために、
たった今、考え付いたことだ。
しかし、ユウナは自分の目論見が外れてしまったことに気づいた。それでも悔し紛れの発言を
止めようとはしない。
「産まれた子供が男の子だったら、アレックス君を護衛につけてもいいね。未来の代表首長の
ために働けるんだ、彼もイヤとは言わないだろう」
何が楽しいのか、そう言って笑うユウナの声は、すでにカガリには聞こえていなかった。
196 :
3-214:2007/05/26(土) 00:51:19 ID:???
(3/6)
◇ ◇ ◇
リムジンを降りたカガリは、ユウナと並んで最上段の祭壇に向かい階段を上り始めた。
何となくカガリは子供の頃を思い出していた。
ウズミが存命の頃、ここで行われた結婚式に代表首長の娘として何度か列席したことがあった。
初めて見た花嫁はとても綺麗で、幼いカガリも憧れた。
それまで将来の夢といったら、パイロットだの正義のヒーローだのと言っていたカガリが、
初めて夢見た女の子らしい夢だった。
「カガリも大きくなったらお嫁さんやりたい! 父様、父様がお婿さんをやってね!」
カガリがそう言った時の父の泣き笑いのような顔は、何故だか今でも鮮明に覚えていた。
「父様のお嫁さんは母様だから、カガリのお婿さんにはなれないな」
「じゃあ、カガリはお嫁さんになれないの?」
しょんぼりと肩を落とすカガリを抱き上げてウズミは言った。
「いいや。お前が一番大好きになった人が、お前を一番好きだと言ってくれたなら、その人と
一緒に祭壇にあがるんだよ」
「カガリの一番は、父様と母様! それにマーナとホムラおじちゃまと……」
数えながら指を折っていた両手が握りこぶしになってしまってもまだまだ足りないらしく、
カガリは小さな眉根を寄せる。
「そうか、カガリには大好きな人が沢山いるんだね」
「うん!」
ウズミの問いに、カガリは笑顔になって答えた。
するとウズミはふっと真顔に変わり、カガリは少し緊張する。
これは父が何か大事な話をする時の顔だからだ。正直に言うと、父の話の全部を理解できない
ことも多かったが。
「お前はまだまだ沢山の人と出会うだろう。怒ったり泣いたりする事も沢山あるだろう。
でもカガリ、その度に必ず笑いなさい。そうすればお前の人生は笑顔が一番多くなる。笑顔が
多ければ、幸せになれる。
そして、たった一人の人を見つけなさい」
「一人だけ?」
「そうだ。一人だけだよ、カガリ」
197 :
3-214:2007/05/26(土) 00:52:43 ID:???
(4/6)
そう言っていた父だったのに、何故ユウナと婚約することになったのか、カガリは聞かされて
いない。
だが、「将来、互いが合意するならば婚約破棄も可能だ」とは教えられていた。
しかし今、カガリは自らの意志でこの場に立つことを選んでしまった。
ほんの数日前には、別の男性(ひと)とここに立つことを夢見たというのに。
「今日、ここに婚儀を報告し……」
階段を上がりきり、神官の誓いの言葉が始まっても、カガリの心は別にあった。
これは、裏切りだ。
彼だけでなく、父やユウナや、こうしてカガリを祝ってくれる全ての人たちに対する。
カガリは呼び続ける。ただ一人の人の名を。
もう二度と会うことのできない人の名を。
「はい」
突然隣から聞こえた声で、カガリは我に返った。
顔を上げると神官と目があった。いつの間にか誓いの言葉も終わり、後はカガリが「はい」と
一言言いさえすれば式は終わり、というところになっていた。
慌ててカガリも返事をしようとした。だが、出来なかった。
『互いに誓いし心に偽りはないか?』
神官はそう問うている筈だ。
しかし、カガリの心はユウナにはない。そしてユウナの心もカガリにはない。それはこの数日
セイラン家で過ごしただけでわかっていた。
それでもカガリには「はい」と返事をすることしか許されないのだ。
しかし、出来ない。
口を開き、たった一言を発する。それだけのことがどうしても出来なかった。
その代わりのように目に涙が浮かぶ。
ユウナの訝しげな視線を感じた。
と、その時。
198 :
3-214:2007/05/26(土) 00:54:02 ID:???
(5/6)
急に背後が騒がしくなった。式のために並べられたMSのアストレイも動いている。
振り返ったカガリの瞳に、大きな影が映った。その白い機体に日光が当たりそれ自体が光を
発しているかのように輝く、翼を広げた鋼鉄の天使。
それが今、目の前に降りようとしていた。
「……フリーダム?」
カガリはそのMSの名を呟いた。
周りを見ると参列者は我先にと逃げ出し、ユウナはカガリの背後に小さく隠れるようにしている。
カガリには不思議でならなかった。どうして皆、怖がっているのだろう? あれは、オーブを
救おうとしてくれた機体なのに。
ふと、気づいた。
あれを操縦しているのは誰だろう?
フリーダムのパイロットはキラだ。それはよく分かっている。
でも、今のキラにあれを操縦できるとはとても思えない。
じゃあ、誰が?
カガリの胸に一人の名が浮かぶ。
ずっとずっと呼び続けていた人の名が。
フリーダムがその両腕をカガリに向かって伸ばしてきた。
とうとうユウナがカガリの後ろから逃げ出す。
そのユウナに押されたように、カガリが数歩前に出た。
いや、カガリ自身が動いたのかもしれない。
しかし、カガリは立ち止まった。
それ以上前に出ることは出来ない。してはいけない。理性がそれを押し止める。
かと言って、彼の差し出す手を振り払ってうこともできない。感情がそれを押し止める。
その狭間で、カガリは身動きが出来なくなっていた。
フリーダムの腕が更にカガリに近づき──気が付くとカガリはその手の中に掴まれていた。
身動きできないほどがっちりと掴まれているわけではないが、その指から抜け出せるほど緩くも
ない。
カガリの両足が地面から離れた。そのままコックピットへ近づいてゆく。
足元では警護の兵が銃を構え、それを隊長らしき人物が止めている。
199 :
3-214:2007/05/26(土) 00:55:22 ID:???
(6/6)
誰かが「テロリスト」と叫ぶのが聞こえたが、それがこのMSのパイロットの事を指している
のだとカガリが気づくのに数秒かかった。
気づいても尚、カガリにはこのパイロットがテロリストであるとは思えなかった。
もし、本物のテロリストだとして、カガリの命が狙いなのだとしたら、その目的はとうに
果たされている筈だ。
目的がカガリの拉致だとしても、ただのテロリストならカガリをコックピットに入れる筈がない。
そう考えているうちにコックピットのハッチが開いた。
オーブの軍服を着たパイロットが立ち上がって、カガリに手を差し出す。だが、その顔は
カガリの場所からではよく見えない。
差し出された手に掴まろうと身を乗り出したカガリは、ドレスの裾につまづいてコックピットへ
転がり込んだ。
その動きに当然パイロットも巻き込まれ、カガリを抱きしめる形になったまま、シートに
勢いよく座り込む。
「いったぁ……」
頭の上で聞こえた声に、カガリは慌てて顔を上げた。
200 :
3-214:2007/05/26(土) 01:05:44 ID:???
すみません。今回も本編と離れてません。
>編集長様 & まとめサイト管理人様
今まで同一人物だとばかり思っていたのですが、もしかして別人だったでしょうか?
だとしたら、失礼な言動があったかと思います。
申し訳ありませんでした。
>まとめサイト管理人様
前回の 4章(後編) 4/9 10行目にて脱字を発見してしまいました。
お手数ですが、修正をお願いいたします。
×:彼は虫を噛み潰したような顔で
○:彼は苦虫を噛み潰したような顔で
“Crime Time Blues”
C.E.76年。混迷を極めたナチュラルとコーディネーター間の戦争は地球連合の足並みが揃わないこともあり、ラクス・クライン率いるナチュラル・コーディネーター融和派の勝利に終わった。
してラクス・クラインはオーブの元首カガリ・ユラ・アスハと共に地球連合の解体、再編を行い地球圏を統一する事に成功。
その統一国家の名を地球圏共和連邦と言う。
同時に軍需産業を裏から牛耳っていたロゴスを根絶させた。
表向きは平和となった様に見えたが、残り火はくすぶっていた。
──C.E.85年──
ラクス・クラインにまつろわぬ者は不安な日々を送っていた。見つかれば収容所に送られ思想教育が待っている。
則ちそれは人としての感情を失いただの生ける屍になる事を意味しているのだ。
反ラクス・クライン派は少数ではあるが、散発的なテロを起こしゲリラ戦術を取って細やかな抵抗をしている。
暗がりの部屋にて二人の男が密談をしている。
「これで本当にアスラン・ザラを殺す事が出来るのか?」
ユーリ・アマルフィは瞬きをしつつシン・アスカを見つめるが、その口調は歯切れが悪い。
「ええ。あの人は恥というものをを知っている人間ですから。もし駄目であれば自分が動きますよ」
シンはユーリを真っ直ぐに見据えながら静かにはっきりとした口調で告げる。
「しかし君が動くと言うのは少し危険では無いか?ラクス派の手は我々が考えている以上に長く、万能だ」
ユーリはシンの自信に満ちた口調に懐疑的である。たった一枚の絵でアスラン・ザラを排除出来ると言うのはあまりにも胡散臭く信じがたい。それにシンはラクス派を甘く見過ぎいる。
「大丈夫ですよ。議長は自分を疑っていませんよ。今日、踏み絵をしましたから」
シンは乾いた笑みを浮かべて視線をユーリから外し何処か遠くを見つめる。
「……踏み絵?」
ユーリは疑問の言葉を吐く。時代がかった事はラクス・クラインの好みではあるが、踏み絵とは些か前時代過ぎる。
「ヨウラン・ケント、ヴィーノ・デュプレの二人を議長の前で処断しました。……自分は試されたんでしょうね。あの女は俺の一挙一動を舐めるように見ていましたよ」
「君の親友をか?なんて悪趣味な……。自分の手を汚さずに君に親友殺しの悪名を着せるとは……」
ユーリは嫌悪の言葉を吐き捨てると厳かに十字を切る。
「いつから信仰を?」
「息子が死んでからだよ。人は悲しみに囚われると何かにすがりたくなるものだ。まあ、人が産み出した妄想であってもラクス・クラインにすがるよりはマシだ」
シンは目を細めてユーリを見つめる。心なしかその表情は暗い。
「お気をつけて。議長は思想・宗教統制も視野に入れています。神や仏を信じるならば自分を信じろという事なんでしょうね」
ユーリは肩をすくめて頭を振る。その瞳の光は鈍く重い。
「なんとも即物的で嫌な時代だ。人が何を信じようが自由であるはずなのに……。まさに神をも恐れぬ行為だな。
シン、君も気を付けろ。体の疲れならば休めば取れるが心の疲れは簡単には取れない。心の疲れは揺らぎを産み油断を作り出す」
シンは仄かに笑みを浮かべ頭を垂れる。
「お気遣いありがとうございます。……絵の手配の方は頼みます。自分はそろそろ戻らないと怪しまれるので……それでは」
シンはゆったりとした足取りで立ち去ろうとし、ユーリはその背中に声をかける。
「それは任せて貰おう。息子の墓を改修するのに誰にも文句は言わさんよ。……君を虎口に戻す様で心苦しいが。……死ぬなよ?」
シンの姿がドアの向こうに消えるとユーリは天井を仰ぎ簡息して言葉を紡いだ。
「息子の怨み……晴らした所で別の若者の心身を擦り減らしてしまうのか。主よ、愚かな我々にどうか御加護を……」
──to be continued──
>>194 内容は面白いと思いますが弐国氏を見習えはもっと良くなると思います。
>>202 変なヘイトSSを書くのを止めて、弐国氏を見習えば良いと思います。
どうでも良いけど次はGod save the Queenかな?
いや、Born to Loseだろ。
違うな。Know Your Rightだね。
>>草原
先ずは投下乙。全滅エンドか、もしかして・・・
戦闘シーンに確かにスピード感を感じないがいい意味で粘着な状況描写があんたの味でもある
いっそ戦闘シーン自体、心理描写メインで書いてみてはどうか
>>彼女
投下乙、一回ごとに確実に読みやすくなるな。かなり推敲に時間かけてる?
本編をなぞる展開である以上、必要なシーン以外は縮めてもいいんでは?
それが元で間延びして見えるともったいない。
>>アナーキィ
文章のリズムが気持ちいい
台詞回しは響き重視でかまわないと思うけど
必要以上に時代がかったりしないようにな
職人諸氏投下乙。俺の感想は俺の我儘に過ぎんぞ。
>>In the World, after she left
内容は悪くない。しかし本編をなぞっているだけだからもう少しオリジナリティを入れるべきだったな。ユウナやカガリの内面の描写が欲しい所だ。
設定としてラクスがいなくなっているのだからその辺をもっと生かすべきだ。これからその設定が生きてくるのかも知れんが。
文章力が上がって来ているのは好感触。更なる精進を期待する。
>>anarchy in the C.E.
前に他スレで投下していたSSとは違った印象を受けた。試行錯誤をしていりのかも知れんが。
内容は悪くない。ただキャラについて説明不足なのはいなめない。狙ってやっているのだろうが、説明があるのとないのでは天地程違う。
ブラックで切味の良いリズミカルな文章は好みだ。更なる精進に期待する。
“Public Image Unlimited”
潮風が頬を撫でて磯の香りを運ぶ。久しぶりにこの地を──戦友達の墓を──訪れたアスランは太陽に手をかざしつつ空を見上げる。プラントでは見られない空の色だ。目に染みるように青い。
ザフトを離れ仏門に入ったイザーク──今は威作入道と名乗っている──に勧められ戦友達の墓参りに来たアスランは嘗ての日々に思いをはせる。
昔は若かった……と独りごちるアスランの髪には白髪が混じっている。終戦から今まで安らぎがなかった。オーブにてカガリを補佐しなれない政治の仕事に忙殺されたからである。
しかし威作入道とは恐れ入る。
昔は自分の事をハゲと陰口を叩いていたクセに今じゃ自分が髪なしではないか、しかも線香を友人価格と言いつつ暴利で売りつけるとはとんだ生臭坊主だ。
アスランは込み上げてくる笑いを押させる事が出来ずに喉を鳴らす。
不意に見慣れぬ石碑に気が付く。まだ新しくつい最近建てられたものなのだろう。
石碑を良く見てみようと石碑に歩みよる。
「……こ、これは……」
石碑にはフレスコ画が描かれていた。勇敢に戦う三人の男──多分ニコルとラスティとミゲル──と共に無様に土下座して命乞いをする男の姿がこと細やかに描かれている。
「私は……私は……」
全身を小刻に震えさせて青ざめる。まさかとは思うが人は自分の事を裏切り者と見ていたのだろうか。嘗ての自分の行為の罪深さが豪雨のように降り注ぐ。
そう言えばキラやラクス、カガリですら最近よそよそしいような感じがした。彼等も内心では自分の事を裏切り者と嘲っているのか……?
熱いものがこみ上げてくる。吐き出したものはドス黒い血だ。両手を赤く染めてひざまづく。血の色で視界が赤くノイズがかる。
それはアスランに過去に犯した罪の記憶を呼び起こさせる。
「私は道化だ!愚かなるピエロだ!」
錯乱したアスランは石碑に頭を打ち付ける。血を飛び散らせながら二度三度と続けると、崩れ落ちて二度と動く事は無かった。
アスラン・ザラは恥を知るが故にその輝かしい経歴、そして親殺しと裏切りと云う背信に彩られた生涯を閉じた。
ただ、穏やかな光とそよ風のみが彼の死を悼むかのように彼の骸を包み込んでいた。
──to be continued──
>>207 >>210のSSのタイトルがパンクの曲名のパロディだからちょっとそれに乗っただけなんだぜ?
どうコメントしたら良いのかわからん
元ネタは三国志の于禁?
>>212 コメント不能なら無理してするな。
>>213 凸には一寸もったいないが于禁だろうな。凸をこう殺したのは氏が初めてだろう。
>>anarchy in the C.E.
タイトル、サブタイにふさわしい向こう見ずでキレた内容が好感触。ヘイトなのかも知れんがそのまま妥協せずに突っ走ってくれ。とりあえず凸の最後には笑わせて貰った。
つーか結構趣味が渋いな。タイトルとサブタイのネーミングセンスに脱帽。
誤字脱字が多少あるので気を付けろ。
更なる精進に期待する。
PILはともかくピストルズも知らないのか
ゆとりは怖いな
>>210 ヘイト臭が酷いです。
弐国氏のSSを見習ってみては如何?
何でもゆとりのせいに出来るって便利だな
皆ギスギスしているね。
弐国氏の素敵なSSを読んで落ち着こうよ。
>>215 ゆとりが知ってる方が怖い。
>>216 方向性が違うのに見習えるものか。お前が言ってる事はTOY DOLLZにジャニスを見習えと言ってるようなものだ。
>>anarchy in the C.E.
どんな内容だろうが小ネタを挟んでくるその姿はまさにedたんだ。ブラックな魅力満載でとてもイイ!
>>216 弐国氏を見習ったら氏のソリッドな切味が錆び付いちまうよ。
>>219 >>220 弐国氏アンチの嵐にマジレスすんなよ
不自然なマンセーなんて常套手段じゃないかw
まあ1stリアルタイム視聴組ですらピストルズ・ムーヴメントをリアルで体験してる
人間なんてほとんどいないだろうw
>>222 実際の所、皆無だろ。いたら見てみたいもんだ。
しかし次の展開よりもサブタイが気になってしまう。ダムドあたりか?
兄貴や姉貴がいると洋楽を消防くらいから早く聴く傾向もあるから皆無とは言い切れないが
しかし今回の投下はヘイトと言うより純度100%のネタなのかもな。
――第4機動艦隊旗艦『クサナギW』艦橋――
ディアッカ・エルスマンが全面撤退の決断を下してから数時間後のミカサ方面の同宙域
では、第4艦隊旗艦クサナギWの指揮艦橋で、敵の無人艦艇の排除と無人衛星機と
機雷源の排除に対して分艦隊指揮官に指令を出していた総司令官のサイ・アーガイルは、
向かって右側に立っている司令付き副官から、朗報とも言うべき、最後の拠点衛星基地の
奪還の報告を聞いている場面であった。
「司令!基地に上陸した揚陸部隊からの連絡です。基地に設置されていた、全ての時限
爆弾の処理に成功。基地内に敵影なし。拠点衛星基地ミカサの奪回に成功したそうです!」
「フン!……敵前衛部隊の主力は撤退したか。上手くいけばこの一戦だけで、ラクシズ
全体に回復不可能の大ダメージを与えてやれるかと踏んでいたんだがな……。
はは、やはり、そう都合よくは行かんか」
鼻で嘲笑ってはいたのだが、実際に彼はディアッカ・エルスマンの鮮やかな撤退行動に
深く感心していた。その撤退はサイの目から見ても、追撃を許さぬ完璧な体勢であり、
追撃する隙も無く、それは、見事な逃げっぷりだったのだ。
見事に肩透かしを喰わされ、いなされたと思う。サイ自身の認識ではラクシズの軍団は
地球圏や中央宙域では力持ちだけの、田舎軍団に過ぎないとみていたのだ。
だが、さすがに太陽系の辺境宙域で名立たる実戦を積み重ねてきた軍隊だけのことはある。
それにつけても……さすがは、ディアッカ・エルスマン。かつて自分達と共に戦った男だけ
のことはあるというべきなのだろうか――。
「――まったく!ラクシズの田舎軍団にゃ、もったいないくらいの逸材だ。こいつが前面に
立ち塞がって来る限り、余程覚悟しとかなきゃならんか……」
「あの司令……?」
「……こいつは下手をしたら、長い戦いになっちまうかも――」
サイ・アーガイルが、しきりに敵司令官を感心しているすぐ側で、お付きの副官は何度も
自分の直属の司令官を呼ぶという徒労の行為を取っている最中であった。
次第に腹が立ってきた彼女は、自分の上官の右耳を指で思いっきり抓り上げ、
その耳元で、大声を上げるのだった。
「あのぉ……。司令ぇぇ!」
「いてててぇぇっ!!んだよ?!」
赤く腫れ上がった右耳を抑えながら、サイは自分の副官でもある、この小娘の上官を
上官と思わぬ態度の越権行為に対して抗議の声を上げようとしたのだが……。
「――こちらは先程からお呼びしてるんです……!司令の独り言が終わるまで
待てませんでしたので要修正をしたまでの事です。――司令、先程からホワイト・ヒルの
サハク首席補佐官からAAA(トリプルエー)クラスの緊急コールが入っているんですけど……!」
「――はて、緊急コール?どういうこったね……?」
腫れた右耳を抑えながら、サイ・アーガイルは首を傾げていた。この時期に緊急コール?
どういうことなのだろうか?まさかこの時期にラクス側との講和が成立する事は、先ずは
不可能な事であろうに。一応、小娘君にお尋ねしてみると
「さぁ?下っ端でぺーぺーの私には何とも。――では回線をリンクしますね?」
「……うむ」
と、素敵な回答が戻って来た。どうやら自分で直接、問い質すより外はない。とサイは、
判断するのだった。副官は、見事に素っ気無くサイの疑問をかわしてくれた。
何よりAAA(トリプルエー)級の国家機密に該当する緊急コールという事で、取り合えず
腹に据えかえるこの小娘の対応は、この際後回しにしておいたサイだったが、この時機に
緊急コールとは正直、不穏当過ぎる。本国で何かが由々しき事態が発生したのだろうか?
しかも現首席補佐官であるロンド・ミナ・サハク閣下直々のお話となると、良い事など
あろうはずがないのだ。
回線がリンクされ、通信モニターはかなり鮮明に映る。これはこの宙域を開放した事によって
オーブの本国からの直接のリンク通信網が確保できた事は表わすものである。
ニュートロン・ジャマー・キャンセラーの発展によって、戦争の仕様が再び様変わりしたが、
敵への妨害工作の一環としての通信妨害は、どのような時代を経えようとも、人間が存在する限り
行われるものなのだ。古来より敵が占拠している戦域を挟んでの味方への通信は並大抵の事ではない。
そして現在、オーブ軍がラクス軍から拠点衛星基地の三箇所の奪還に成功したことによって、
通信同様に前線から本国の補給ルートの確保も容易となった訳でもある。
モニターの中央には、ロンド・ミナ・サハクが、相変わらずの愛想の欠片のない冷徹な表情で、
こちら側を見つめ返して来る。その第一声も相変わらずの愛想の無さだった。
『……取り合えず。ラクス軍の前衛部隊の撃退には成功したようだな』
「――主力は物の見事に、取り逃がしたよ」
サイ・アーガイルもロンド・ミナの愛想のない態度に慣れ切っている為に挨拶も抜きに
素っ気なく、こちらもそう答えた。互いに顔を見ながら、祝杯を上げる趣味もない。
それに、これは聞く者によっては、幾つもの意味がある。敵前衛部隊が侮れない実力を
有していること。約三倍に近い戦力を以て攻寄せたにもかかわらず、全面撤退に成功したこと。
敵主力を叩くことが出来なかった事によって、サイが当初に考案していた短期戦による
ラクス側との講和計画はご破算となり、戦いが長期戦に移行する恐れがあることなどetc……。
ロンド・ミナもその事は先刻から承知しており、彼女自身、現状でサイ・アーガイルが下した
采配以上の事ができるとは思っていなかった。
彼女の方針としても政治とは、ベストではなくベターこそが最上なのだ。悪しき完全主義の人間は、
現在のオーブ上層部には存在しない。
『――作戦当初の目的は完全に達したのだ。まず問題はあるまいよ。これで緒戦の大敗によって、
オーブ全域に広がりつつあったラクシズに対する敗戦ムード……これは完全に払拭された』
「――マスコミ対策は?」
続けてサイ・アーガイルは、国内外の世論調整はどのような段階まで実施しているのかを
ロンドに問い質してみた。この戦いで最も優先すべき事は、国内の人心の動揺の収拾だからである。
彼が前線に出されたのは、ロンド・ミナによってこの事も計算され尽され、加算されているのだ。
まことに、ロンド・ミナは骨の髄まで政治家なのであった。
『この戦勝の報せは、新聞、TV、パーソナル・リンク網によって地球圏全域に同時に配信
される予定になっている。”帰ってきた英雄、オーブの危機を救う”……大衆が喜びそうな見出しだな』
「さすがは、抜け目のないことで。そんなことだろうと、思ってはいたよ」
サイ・アーガイルは、感心する振りをしてわざわざ拍手の真似までしてみた。
下手をしたら嫌味に見られるだろう。彼は人に媚びないこの性格の為に誤解を受けやすいのだが、
生憎と嫌いな連中に好かれる趣味も持っていない為に、進んで誤解を解くような真似はしないのだ。
『――貴公ならば、きっとわかってくれるだろうと、思っていたぞ。政治の事にまで
気が回る軍隊の指揮官は貴重だからな。稀少の価値がある』
こちらも、極めて有能な人材で有り、サイ同様に嫌いな連中に好かれたくないし、無能な輩は
更に嫌うという性格の、極めて扱い難い種類の人間である。
しかも面の厚さはサイの十数倍は、あるのかもしれない。彼のその程度の挑発など、
安いもので嫌味にもならないのだ。
「……もっとも、火事場見物の大衆やマスコミなど、移ろい易い連中の思考など気分次第で
どうにでもなるしな。だが、そんなことで代表府の政治方針が変わるわけでもあるまい?」
『――やはり、貴公の本質は軍人ではなく、政治家のそれだな』
「それは、俺を誉めているのかい?」
それを聞いたロンド・ミナの眼光が一瞬、鋭くなるが、次の瞬間、またいつもの冷徹な
光を宿した瞳に戻った。対するサイ・アーガイルは、飄々とした態度でロンドの眼光を受け流している。
『――事実を言ったまでの事だ」
「……そいつは、どうも」
『――我々は案外、気が合うのかも知れぬぞ、サイ・アーガイル』
「フッ――。冗談はやめてくれよ。俺はあんたが大嫌いなはずなんだぜ?
知っていたかい、首席補佐官殿?」
『冗談の通じぬ男だな、サイ・アーガイルよ』
「お、おい……アンタに言われたかぁないぞ。……で、なんの用かな?わざわざ、
お世辞にもなってない奨励を言うために、緊急コールを入れてきたわけじゃあるまいな?」
いい加減、冗談を交えた腹の探り合いに飽きたサイは、本題に入ろうとした。反対にロンドの方はと言えば、
特に感情の高ぶりを見せずに、淡々と日常の業務報告をするかのような態度で話を続ける。
『――無論だ。由々しき事態が発生したのだ。辺境巡察機動艦隊を含めた、地球連合強国の
雄国のひとつユーラシア連邦の辺境宙域の戦力に、不穏な動きがみられる』
そしてロンド・ミナは、ちっとも慌てた様子も無く、とんでもない事をサイに言い始めた。
「はい?……なんだね、そりゃ?」
思わぬ事態にサイは、愕然とする。以前にも確かにユーラシ連邦の方面に不穏な動きがある事をロンドからの
報告でを聞かされていたが、こうも直ぐに事態が悪化するとは彼自身は想像していなかったのだ。
『――詳細はまだ分からぬ。が、しかし、ユーラシア連邦の辺境守備機動艦隊が即時戦闘に移行しうる
レベル3の緊急警戒体勢に入ったのは、まず間違いはないのだ』
「いつもみたいに、周辺宙域に対する軍事的デモンストレーション……ただの示威行動じゃないのか?」
ある程度、希望的観測を交えながらもサイは確認の意味を含めて、問いただしてみる。が、
正直、自分の読みが甘かったと痛感している。久しぶりの戦場暮らしだ。娑婆に長いこといた
所為で勘が鈍った事は否めない。ユーラシア連邦の機動巡航艦隊がこれほど素早く動くとは。
ユーラシア方面内で軽視できぬ戦略家が存在し、この事態に対してをユーラシア政府上層部の
欲を刺激したに違いない。そう、サイ・アーガイルは推察した。出なくてはこれほどの素早い
軍事的行動を起こせる筈がないだろうか?これを機にユーラシア連邦は自領宙域に隣接している
辺境の中立宙域であるオーブ領に侵攻する可能性が出てきたのだ。
『……かもしれぬ。それにまだ一刻を争う事態というわけではない。だが、只でさえオーブは
10年前の『メサイア戦役の騒乱』の当時、ラクスの傀儡国となっていた一件の事実を見ても
わかるように、我が国は先方の地球連合強国からは、常に睨まれているのだ。
その事は、貴公も十二分に承知しているであろう?』
「……まぁな」
メサイア戦役時、の最後の攻防で何を血迷ったのか、ラクス・クラインの指揮の下で
オーブ軍と強制的に一部の地球連合の軍を支配下に置いたラクシズは、プラントの
支配下の月基地に攻め寄せたのだ。俺がそれを知った時に驚愕の余り、持っていた大切な
写真立てを落としてしまった程だ。
当時、ラクス・クラインは何の権限も持たない、只の武装テロ組織の首領に過ぎず、
しかも、アスハ代表が当たり前のように、そのラクスの下にいたキラやアスラン等という
訳の分からん連中に正式なオーブ軍の地位を与えるという、妄想ともいうべきことを
平然と行っていたのである。
ラクシズの連中は、デュランダル前プラント議長の指揮による、アルザッヘル基地の攻撃は
プラントに取って正当な自衛手段であって、国際上何ら問題の無い事であったにも関わらず、
何の大義名分も経ずに、奴等お得意の妄想で決めつけ、奴等の基準で危険という名目だけで、
デュランダル前議長以下を抹殺したのだった。
以前とはいえ、自分がこんな狂人連中とつるんでたかと思うと、こちらも赤顔の至りなのだ。
そして当時、只の民間人の一人であった俺は、後から事の顛末を知り、嘲笑ったものだった。
ブルーコスモスが行ったレクイエムによる、プラント攻撃を無視していた癖に今度は
何の根拠も無い『運命計画』に対しての危険性を決め付けにして、正義面か?と。 ]
確かに、混乱した地球圏の収集に対してベストではないのかもしれないが、ベターの方策の
一つではなかったか?と実際こんなものは人々が自主的に行わなければ何の意味も無いし、
事実、統制された社会構築など不可能なのだ。
ラクシズの連中が、大昔のコミック・カルチャーのように人類が遺伝子基準で統制される危険性を
考えていたのならば、笑止千万である。
デュランダル前議長は、要は適性検査の大きく世界規模で”ハローワーク”の構築を提案しただけに
過ぎなかったのだから。
お蔭で、戦後オーブは、ラクシズの傀儡国家としての認識を押付けられていたが、此処十数年で
漸くそのレッテルが払拭された矢先の事であったのだ。正直、えらい苦労をさせられたものだった。
『地球連合強国。――用心に用心を重ねて、なお、さらに用心を重ねるべき、相手であるべきだろう。
従って我が国の方針としては、地球連合強国のユーラシア方面の警戒には、相当数の兵力を割かねばなるまい』
「……ま、まさか。おっ……おい!!俺の艦隊から戦力をぶっこ抜くつもりじゃあるまいな?」
『さすがだな。貴公ならば、この国家存亡の危難の現状を即座に理解し、わかってくれると思っていたぞ』
その言葉に、サイ・アーガイルは一瞬、自分の耳を疑ってしまった。そしてその意味が脳裏に
浸透すると共に、遂に大声を上げる始末に陥ったのだった。
この強かな男を愕然とさせる事は、ロンド・ミナが仲良くラクスと一緒にダンスをするほどに
困難な事である。ロンドは、そのサイの理解力に対して賛美の言葉で褒め称えたおいた。
しかし、そのロンドの無表情同様に、全く心は篭ってはいないのだが。
「ちょ……ちょっと待て!――ラクシズとの戦いが全て終わったわけじゃないんだぞ!
通常編成の1個艦隊だけでラクシズの全軍とまともに渡り合えるかっ!!」
これはもはや、戦略上無理であり、戦術上では無謀とも言えるべき行為であるのだ。
彼自身は、新生オーブを建設に関わった中核の人間として、国家には愛着があるのだが、
それにしてもみすみす、必要の無い危険に自らを投じるほどの酔狂人でもないのだ。
『しかし、ユーラシアのこの不穏な動きを無視するわけにもいくまい。――貴公がもし
私の立場ならば、このような状況の場合、いったいどうするのだ?』
とロンドは、改めてサイ・アーガイルに対して問い質した。お前ならばこのような場合に、
どのように判断するのだ?と。この僅かな遣り取りの間にサイ・アーガイルの頭脳は、
フル回転していた。そしてその結果……
「……ちっ!」
サイはその短い舌打ちを了承の返事とした。ロンドの判断を是としたのだ。
『そういうことだ。ならばそちらに付与した戦力を後方に撤退させるぞ。……よいな?』
「……その件は了解した。おい……代表は、今回のこの一件をなんて言っているんだ?」
『アスハ代表は、”貴公ならば出来る”と仰っておられる。我々は、貴公の力量に絶対の
信頼を置いているのだ。今こそ、貴公のその天才を我々に再び見せてくれ――』
嘘臭せぇ――。代表がそんな事を言うわけがないだろう!と心中でサイは罵詈雑言を吐いた。
カガリがそのような事を言う筈がない、だがサイにとっても、どう客観的に考えてもロンドの
その意見を取らざる得ない事は明白であった。こいつはなんとも……
「……いやはや。なんとも。……泣けるね」
と思わず口に出すしかなかった。
そのように、愚痴をこぼすが、サイの脳裏には別の思案が渦巻いていた。
話を聞けば、政戦略上この判断は正しい。だが、問題はこのやり方である。これはロンドらしからぬ
乱暴な方法なのだ。ロンドはこのコズミック・イラ世界で屈指の政戦略家である。
多少自惚れかもしれないが、サイ自身はそのように彼女を評価している。
でなくて、自分の後釜として招聘したりしないだろう。そのロンドが常道を無視してこのような乱暴な
やり方で戦力を緊急に終結させようとしているのは余程、事態が切迫しているのではないか……?
全面的に地球連合強国間と衝突しなければならない事態へと突入するのだろうか?
サイの背筋に戦慄が駆け抜ける。
10年……言葉だけで言うならば短く、人の人生においては長い期間になるのだが、国家としての
期間から見れば正直、短すぎるのだ。サイ・アーガイルが骨子を組み立てた計画に則り、
ここ10数年の間にオーブは、国家改革の推進を続けてきたが、改革はどこも中途の状況なのだ。
サイは20年を基準に軍備拡張計画を中心とした太陽系内未開発宙域を質として、
内政整備の建設を計画していたのだが、その基本方針は対外勢力に於けるオーブの外圧を
跳ね除ける為の力を蓄えることだった。仮想敵として常に地球連合強国を視野に入れていた。
そして、サイが政界から引退してからは、ロンド達がその事業を引き継ぎ順調に発展させていった。
そこを今になってラクシズの奇襲によって躓く形となったのだ。
正直言って、現在のオーブが地球連合強国と正面から激突し、勝利する可能性など
万に一つもないのだ。暗い未来の先行きを予測し、サイ自身は、暗澹たる気持ちになる。
――だが、どうする?ウズミ前代表のような轍は踏むわけにはいかないのだ。
――もはやラクシズとの低俗な抗争に構っている暇は無いのかもしれない。
『ではな。おって指示を送る。頼むぞ、サイ・アーガイル』
「ああ……」
”――拠点衛星基地ミカサをオーブ軍に奪還したことを契機に、ディアッカ・エルスマン
率いるラクス軍の前衛部隊は撤退をしていった。その撤退は、オーブ軍第4機動艦隊の
追撃を許さないもので、サイ・アーガイルは敵主力に対して決定的な打撃を与えることは
できなかった。
が、オーブ軍の戦略目標は緒戦の大敗北で失った、失地の奪還でありその意味で、
サイ・アーガイルの目的は達したといえた。
この一連の戦闘を機に、戦争の流れが変わり、オーブ軍は一気にプラントのラクス軍に
対して反撃に出る事になった。
プラント方面の状況はとりあえず落ち着きを見せたものの、後方では、地球連合強国の
一つである大国ユーラシア連邦が不気味な動きを見せていた。
首席補佐官のロンド・ミナ・サハクは、主力艦隊の一部を地球連合強国方面に向けること
を決断し、プラント方面の戦力は削減される事になった。
そしてそれが、新たな戦いを呼び込むこととなるのである”
『C・E80年代』戦史評論より
>>続く
“Baby Talk”
プラントの議長執務室においてラクス・クラインは国防委員長キラ・ヤマトと少し遅めの昼食をとっていた。
一見質素な物に見えるが、選び抜かれた最高の食材を使ったそれはプラントの庶民では手の届かない物だ。しかし、質素に見えるために庶民の感情を逆撫ですることはない、
ラクス派の巨頭、アンドリュー・バルドフェルドの腹心であるマーティン・ダコスタの発案によるそれは二人のの味覚を楽しませている。もっとも、彼等の話している話題は殺伐としているものではあるが。
「この前の事なんだけど……ラクス、シンに気を付けた方が良いかも知れないね」
キラはきんぴらごぼうをつまみながら厳かに切り出す。
「なぜなのです?彼は不埒な輩を二人、私の目の前で粛清したではありませんか」
ラクスは梅干しを口に含むと眉をしかめ口をすぼめる。
「粛清の仕方に問題があるのさ。彼は一思いに、苦しまないようにやったけど……本来ならラクスに背いた事をその身と心に刻み混む為に苦しませなければならない。違うかい?」
ラクスは梅干しの種を散り紙に吐き出して包み込む。
「確かに。私に従わぬ人々には苦しんだ末の最後が似合っていますものね。……わかりました。シン・アスカには首輪をつけておきましょう」
その時、ラクスの言葉を遮るかのようにドアがけたたましく開く。入ってきたのはラクス付きの政務官である。彼は額に汗を浮かばせて息を切らしている。
キラはその突如とした登場に睨み付けて腹立たしげに言葉を投げ付ける。
「今は食事中だぞ?君はラクスに食事をとらせずに餓死させるつもりか?それとも消化不良を起こさせるつもりなのか。返答次第では……」
キラは振り向き指で喉を弾いた。政務官はその言葉と仕草に悲鳴を上げて後退る。
「キラ……そんなに脅す事はありませんわ。私の食事を邪魔するのですもの、重大な報告に決まっていますわ。……そうでしょう?」ラクスは仄かな微笑みを浮かべながら穏やかな口調で話しかける。しかし、その瞳は暗く輝いて笑ってはいない。
政務官は生唾を飲み干し冷や汗と脂汗を流しながら抑揚のない無機質な口調で報告をする。
「オーブからの知らせなのですが……アスラン・ザラ氏がお亡くなりになりました」
「アスランが死んだだって?事実誤認は縛り首だよ?」
キラは乾いた笑いを浮かべる。
「オーブ元首官邸からの報告ですので、間違えは無いかと……」
キラはその言葉を聞くとすっくと立ち上がり箸を落とす。
「う……嘘だ!嘘だ!アスランがそう簡単に死ぬものか!アイツは殺したって死なない奴なんだぞ!」
キラは膝から崩れ落ち床を叩いて慟哭する。友を失った悲痛な叫びが執務室に響きわたった。その声はただただ哀しい。
「キラ、お気を確かに。自分を強くお持ちになって……」
ラクスはキラの頭を抱き抱えるように撫でる。キラの涙がラクスの服を濡らしていく。
「……午後の予定は全てキャンセルしますわ。私達は直ぐにオーブに飛びます。……よろしいですね?」
「しかし、議会はヤマを向かえています。議長ご不在だとエザリア派を止められません」
エザリア派は旧ザラ派を中心としたエザリア・ジュールが率いる派閥だ。国民人気は低いが議会ではラクス派に次ぐ勢力をもっている。目下の所のラクスの目の上のたんこぶである。
「バルドフェルドさんとダコスタさんに任せますわ。あの二人なら大丈夫です」
政務官は恭しく頭を垂れてその場を辞した。その表情は暗い。天井を見上げて議会の動向を憂い嘆息する。
バルドフェルドはラクスに忠誠を誓っているのだがダコスタはラクスに忠誠を誓ってはいない。彼はバルドフェルドに忠誠を誓っているのだ。この差は大きい。
──to be continued──
何故ヘイトをするのでしょうか。貴方の感性に疑問を抱いてしまいます。弐国氏のSSを良く読んで自分の才能の無さを自覚してから出直す事をお薦め致します。
>>3-214 原作の中身をなぞるだけではなく、その一人が一瞬に感じる心情を詳細に描写する、
若しくは本編とは大きく構成を変えて見るなどの冒険を為てみても良いかと思います。
かなり文章そのものが読みやすくなってきて、内容が頭に入りやすくなっていただけに、
展開の練り方が残念でした。
>>anarchy
パロディの元ネタを知らないので笑って良いのか何なのか……
その文体で大真面目にアスランを憤死させる切れたパロディぶりをを評価したいところです。
きんぴらごぼうと梅干食べてる二人に笑った。
>>戦史
戦闘に勝利するだけではなく戦争に勝ち続けなければならない、政治家の領分にも
足を踏み入れなければならないサイの苦労がしのばれます。
サイとロンドの掛け合いと言うか、仲が悪い事になっている二人の会話が上手いと
思いました。意外と気が合いますねこの二人。
そして段々影が薄くなりつつある小娘君。そろそろ空気キャラ脱出の為に名前を公開
するべきだと思いますが、焦らされるのが面白くなってきた感も為ます。
それでは皆さん投下乙でした。続きをお待ちしております。
>>anarchy
于禁なアスランかよ……。戦に負けて敵に降った于禁と我欲で裏切ったアスランを同格に扱うのは如何なものか。せめて袁術あたりにして欲しかった。
しかし文章に勢いがあったから逆に感心してしまった。
とにかくGJ!
なんでも良いがanarchyのアスラン憤死の元ネタはギャグではないぞ。
11/
アーモリー・ワン出発まで新品だったオペレイター席が随分と古くなったように感じて、
メイリンは思わず其処に収まる自分の姿勢を正した。それは自分の発する、或いは艦橋中に
広がる戦闘と戦争の匂いだ。備品の一つ一つにまで染み込んで来た戦場の空気を感じている
という事なのだが、メイリンは物が"使い込まれる"という感覚が理解できていなかった。
予感がしたのは、通信回線が開かれる直前だ。素早く指を走らせ、操作。
コールが鳴るよりも早く回線を開く事に成功する。勿論艦長にも気付かれていない。
『私よ――メイリン、聞こえる?』
事態の間隙を見極めたように、姉が秘匿回線を繋いできた。
「聞こえるわよおねえちゃん。っていうか作戦中にいきなり話しかけないで。
混乱するし規則違反だよ?」
作戦中の勝手な通信は、情報に偏りと乱れを生むために忌避される。
『ゴメンゴメン。……でもさ、シンとかアレックスさんとか何か言ってた?』
この姉は非常時に何を気にしているのか。
ボギーワンとの戦闘後はシャワー室で泣いてた癖に。
『それは言わないでよ。私も落ち込むことがあるのよ? たまには』
「え……私口に出してた?」
『分かるわよ、十何年も付き合ってるメイリンのお姉ちゃんだもの……』
矢張りこの姉、通信機越しでも油断が出来ない。
「二人は何も言わずに行っちゃったけど、アレックスさんは結構面白い人だったよ。
からかった時の反応がなかなか……いじられる才能があるみたい」
『アンタ非常時に他の国のパイロット向こうに回して何やってんのよ?』
「仕事よ? むしろそれって私の台詞」
『……この娘はいけしゃあしゃあと……天国のお父さんに申し訳ないと思わない?』
「天国には居ないわよ! ノウェンベルにいるお父さんは知ってるけど」
姉よ、幾ら影が薄いとは言え父を勝手にお星様に為るな。
『そういえばそうだった。しばらく見てないけどどんな顔だったかしら?』
それは酷いんじゃない? と言いかけたメイリンであったが、
よくよく思い返してみれば自分も思い出せない。
「ひげ……生えてたっけ?」
『眼鏡かけてたかしら?』
コーディネーターの記憶力もまことに怪しい物であった。
「いまいち印象の薄いお父さんの事はともかく、他に何の用だったの?
まさか本当にアレックスさんの様子が聞きたかっただけ?」
『……』
「さぼりなの?」
『大丈夫よ? ザフトレッドにサボりはありません』
「ああ、私もそんなことを信じていたなあ……五秒前までは」
どこかで聞いたような戯言が戦闘前に必要だったのだろう。
何時見ても自身に満ち満ちているように"見える"姉には。
……シャワー室で泣いてたくせに。
12/
第二艦橋オペレイター、数字とコードでジョークの言えるアビー=ウィンザーいわく、
『ゲイツの索敵情報ってね、コンパクトな数字で壮大な宇宙の広さと真空を表現していて、
見てるだけで気持ちが良くなるの。アレは美しさの極みいいえむしろ――』
らしいが、シンは生憎とデジタルな情緒を理解しなかった。
地球育ちとプラント生まれの差だろうか?
「見付けた――!」
画面を流れる記号の羅列に飽きた頃、待ちかねた表示が浮かぶ。三角と矩形。
赤い三角は砲戦能力、矩形は格納庫を示し、繋げて戦闘母艦を表す。センサーを集約。
速度と位置、六つのベクトルが画面の情報野に追加された。詳細な外形が映される。
「……まるでハリセンボンだな」緊張を紛らわせる為に、そんな感想を洩らす。
『ん……何だそれは?』有線越しにデイルが聞いていた。
「地球の魚ですよ。腹を膨らませて針を出すんです。食べた事は無いですけど、
あのアンテナが張り出した感じと格納庫のバランスが似てます」
物の形を生き物に例えようとするのは地球育ちの癖だと、ヨウランに言われた事が在る。
居住区に不釣合いな大きさの格納庫と豆鉄砲のようなビーム砲台がついたその船は、
ジャンク屋がよく使うようなちっぽけな改造戦艦だ。この貧相な"海賊船"では、
本物の戦争用メカニズムであるミネルバと殴りあいを演じようとは思わないだろう。
例え相手が座礁していようとも、だ。
『ふん、最善の状況は"艦長の勘違い"だったが。本当に敵が居たか……』
もし勘違いだったらMSまで発進させたミネルバはどうするというのだろうか。
「その場合、ルナとレイはザク二機で無実の輸送艦を囲むんですよ?」
『そんなもの、ザクが空砲一発撃って"サプライズ!"で終わりだ。
カンザキ艦長はきっと笑って許してくれるだろうよ』
「ええ……それはザクがまだビームライフルを構えてますからね」
正解だ、と。冗談にもならない口調でデイルは言った。
艦長が本当にやりかねないので止めて下さいと、危うくその言葉を飲み込む。
壁に耳アビー障子にメイリン。オペレイター連中の耳は侮れない。
「それはデブリの向こうにおいといて近づきましょう。向こうはこっちに気付いてない」
『ああ……だがちと様子が変だぞ。危険なものの気配がする』
ベテランの勘が違和感を覚えているのか、デイルはゲイツを動かそうとしない。
「……?」
宇宙のカオス以上に危険な存在が居るとは思えなかったが、百戦錬磨の直感は時として
量子コンピュータの予想を上回る。知らずの内に、スティックを握る手が汗ばんでいた。
『俺の思い過ごしかもしれんが警戒するに越した事は無い。近くにMSが隠れていないか
チェックを怠るなよ?』
13/
「省エネルギー推進モードに移行。プラズマ生成密度、限界値の1%で維持」
『ステルス限界にきたら慣性航行に切り替えるぞ。軌道はコンピュータに任せろ』
高い比推力、静粛性と引き換えのゆっくりとした加速でデブリ側から接近する。
既に機体はダミーシートに覆われていて、光学反応は只のデブリと変わりない。
敵が事前に周辺のデブリ全てをチェックしていない限りは接近を気付かれる心配は無かった。
「ミラージュコロイドは……まさか海賊が持ってやしませんよね?」
『あれは人手と金が掛かる装備だからな……まさかとは思うが』
無意味とは知りながらもコクピットの中で息を潜めるのは、気配一つ洩らしてはならない
という緊張感故だったが、時間が掛かれば当然集中の切れる一瞬も在る。
接近に従いセンサーの精度が上がり、シンは敵艦の正確な向きを知る事が出来た。
「……海賊にしても下手な動きだな。デブリの海にそっぽを向いて浮かんでる」
『ああ、この不用心さはどうやら素人か……こちらを舐めているか、だ』
敵がいなければ、障害物の多い方に艦橋を向けて"潜る"のがセオリーだと習った。
逆に何も無い開けた方角へセンサー群を向けてしまうことを"浮かぶ"と言う。
「そう見せかけた囮――油断させているって事は?」
疑問は何でも口に為るほうだ。そしてデイルも割り切っているのか新人の戯言と
気って捨てるような事はしない。
『……無いな。お互いに敵にステルスが前提、索敵が最重要だ。
こいつらは水の中に顔を入れられ無い臆病で、足を引かれて溺れる役なだけだろうさ。
俺たちはカナヅチを溺死させる"ジョーズ"役だな』
デイルが"ジョーズ"を知っているのは、少し驚きだった。
ゲイツのガンカメラが敵艦の動きを捉える。
「――! 発進シークエンス? 格納庫が開いていきます」
『早いな、後二十分、モーガウルがミネルバに接近するのは早いと踏んでいたが……
持久戦を捨てた? 早目に勝負をつける腹か。NJは――?』
「効いてます」シンは即答した。
ミネルバがモーガウルに向かって打ち出しているビーコンが見えない。レーダーの眼は
濃密なデブリとNJの電波障害によって塞がれ、通信を送る事は出来なかった――敵も味方も。
『MSを出させる訳にはいかん……ビームはモーガウルにバレる可能性がある。
狙撃は習ったな? レールガンで通信アンテナを狙え。俺はビーム砲塔と機関を潰す』
「了解、格納庫の入り口は俺が塞ぎます」
何気にシンの方が高い難易度なのは、服の色が関係していると思った。
射撃モード起動。ヘルメット内側に映された電子照星の中に海賊船のアンテナ基部を収める。
母艦を狙う不届きな獣の牙を抜き、喉を潰し、手足を縛る。攻撃が成功すれば、ミネルバ側は
デブリの影から現れる海賊を気にすることなく、モーガウル腹中の敵のみを相手に出来るのだ。
トリガーに指を掛け呼吸を整えた。大きく息を吐くとバイザーが白く曇る。
スーツの空調機構が作動、白い靄が消えるまでを、シンは眺めていた。
14/14
『任せたぞ、三つ数えて飛び掛る。――いち、――にい』
その時、デイルの合図を待つシンの耳に甲高いアラームが聞こえる。
「――! デイル、高エネルギー反応!?」
攻撃、気付かれた? 伏兵? 回避。旋回機動、AMBAC。
混乱しながらも飛来するビームを回避する為ペダルへ力を込めたシンは、
モニター上を赤い軌跡――ビーム砲の光条が『海賊船へ』伸びるのを見た。
宇宙を切り裂く高速の荷電粒子はコンマ秒の内に敵艦を捕らえ、食い破り――
――爆散させる。
『不味い……回避――!』
デイルの警告に反応する間もあればこそ、極超音速で破片が迫った。
ゲイツにPS装甲は無い。喰らえば一撃で戦闘不能に陥る破片の渦を
全開機動で回避した二機は、機体に纏わり付くダミーシートを引き千切った。
破片が機体を叩く振動が不吉な死神のノックとしてコクピットに反響する。
AMBAC。直撃コースの破片。マニュピレイターのシールドをかざして弾いた。
『シン、損害は――!?』
「か、軽いです……一体何処から砲撃が? ミネルバまで観測されましたよ?」
二号機の戦術判断機構は高エネルギーのビーム砲撃と判断し、爆発のエネルギーは
モーガウルに観測されるに十分だと通告してきた。
そんな事は直に分かる。シンが聞きたいことは砲撃が何処から来たか、だ。
役立たずな戦術知能を拳で沈黙させる。
『破片の向こうだ、いきなり出てきたあのカニがやりやがった――!』
「カニ……?」
宇宙にカニとはどういう冗談だと、羽鯨の存在も忘れてシン憤りを感じる。
カニは無いだろうカニは……と海賊船が崩壊した宙域に視線を向けた瞬間。
「……いえ、アレはどっちかって言うとヤシガニでしょ」
シンは素っ頓狂な台詞を口走っていた。
それは余りに巨大なカニであった。
全長にしてゲイツRの三倍近い、戦術知能は八倍近い重量を持つと予測している。
扁平な甲殻類を思わせるそのフォルムは、丁寧な事に巨大なクローを備えていた。
そして――
「ミラージュコロイド装備かよ、最近のヤシガニはザクより贅沢だなおい!」
虚空の闇を装う幻影の衣――否、甲羅を脱ぎ捨てて現れた"ヤシガニ"へ向けて虚勢を貼る。
それが届いたのか、ゲームのような画面で唯一精細に表示された"ヤシガニ"に睨まれた。
灰色装甲の"ヤシガニ"と眼が合ってしまう。
「こっちを……見んじゃねえ!」
即座に飛んできたビーム砲を躱しながら、シンは自分が貧乏くじを引いたと確信した。
>>†氏
投下乙です。疾走感がある戦闘描写が良いです。弐国氏を見習えばもっと良くなると思います。
初心者なんだけど、SSを書いて投下しようと思っているんけどシナリオ形式と言うのはありなのかな。
シナリオ形式はちょっと……
練習スレか向上スレで勉強して来た方が良いと思うな。
>>248 初心者ならば弐国氏のSSを読んで勉強すると良いですね。
>>248 弐国氏が投下しているスレにシナリオ形式で投下するのは
弐国氏を侮辱する行為だと思いませんか?
添い遂げの次はこっちかよ。
期限切れの産業廃棄物が。
荒らしはスルー。
それが基本。
皆さんにもご協力お願いします。
俺は本が好きだ。空想の世界で俺は何にでもなれるからな。
例えば世界を救う勇者、どんな難事件でも解決する名探偵、超能力者とか色々だ。この前は魔王にもなった。……流石にスールとかなんかにはなれなかったけどよ。
本を読んでいると自分が自分でなくなるような感覚がする。ハッキリと言えば現実から逃避したいだけなんだろうが。
オルガ・サブナック……それが俺の名前だ。
ブーステッドマンだから長くは生きる事が出来ねえ。クスリを切らしたら地獄の苦しみを味あわなきゃならねえ。生きる為には戦い続けなきゃならねえ。ないない尽しだ。
だけど俺なんかはまだマシな方だ。シャニやクロトには同情しちまう。
あいつらは強化が過ぎてイカレ過ぎてる。どちらかと言えば関わりたくねえ。でも、あいつらは俺の仲間だ。少しでも関わってやりたいと思う。
矛盾しているってのは解る。でもなんにもねえ俺たちにしか解らない絆ってのがある。俺はそいつを守りたい。
俺たちの事なんて誰の記憶にも残らないだろう。記録には残るかも知れねえが、薄っぺらい紙切れに残っても嬉しくはない。
俺はあいつらより少しでも長く生きて少しでも長く覚えていてやるんだ。なんにも意味はないけど、この思いは重い。
……?スクランブルがかかりやがった。まだ本は読み掛けだけど、しおりを挟んで閉じる。
二人に声を書けて準備をする。シャニはいつものように隠鬱な面構えでクロトはやかましい。こいつら、なにも考えてねえんだろうな。でも、何も考えてない方が幸せなのかも知れない。考えると悩むだけだ。悩めば悩む程思考の迷宮で迷子になるだけだ。
部屋を出る前に読み掛けの本を一瞥する。本の表紙に描かれているのは十字架だ。大洪水が起きたり海が割れたりとファンタジーとしては三文レベルだが、意外と楽しめた。続きは……読めるかどうかわからない。
どっとはらい
初心者だけど書いてみました。他の作者さんのSSを参考にしてみたり色々と試行錯誤してみたけれどどうでしょうか。
まだ長編をかける程の能力がないので1、2レスくらいの少ない分量の短編を投下してみようと思います。
>>248 このスレは新人歓迎、好きな内容でSSを書く事ができます。
>>248 基本的に此処はノンジャンルなのでシナリオ形式でもスレ違いではありませんが、
シナリオ形式で評価を得るためには普通の形式よりも遥かに手間を掛けなければ
なら無いということも言っておきます。
まあとりあえず投下待ちです。
>>255 GJ
相当荒削りではありますが、とても光るものがあると思いました。もしかしたら他の
二人も同じような事を考えながら一緒に戦っているのではないか、とも想像できますね。
世界最大のベストセラーを三文ファンタジーとして読んでいる辺りに、何気ない皮肉が
込められていたと感じました。
続きの短編を楽しみに待たせていただきます。
『残り7!』
蹴倒したバクゥのコクピットへサーベルを突っ込み、振り向きざまにサーベルを投擲、
遠距離武器がないと油断していた敵の頭部に突き刺さると誘爆を引き起こす、これで残りは7機。
『6だろ』
ちらつくレーダーを確認すると反応が減っていた。シャムスの正確無比な狙撃は確実に敵の数を減ら
していく。
実のところ最初に駆けつけたときの醜態のせいで、さっぱり期待をしていなかったのだが、
ビームライフルを渡すと、嘘のように見事な狙撃を見せた。
これくらいの援護射撃をしてくれる味方がいてくれたのなら、あの戦争がどれほど楽だったか……
「逃げるなら今のうちだ!」
今なら効果ありと睨んで、外部音声で脅しをかける。
瞬く間に味方を磨り潰された三つ首の番犬たちは、あきらかに動きを鈍らせた。
その隙を逃すシンではない。新たなサーベルをエールストライカーから抜き放ちつつ、
空へと舞い上がる。次なる獲物を狙いを定め、再び急降下を開始した。
当初、襲い掛かってきた敵は数で容易く潰せると考えていたようだが、踏んだ場数が物を言った。
シンはウィンダム30機がかりによる、四方八方、360度からのオールレンジ攻撃を潜り抜けた
経験がある。故に地上という平面から狙われたところで恐れるほどの事はなかった。
確かにナチュラルだったあの軍勢よりも、個々の腕は良い。
しかしコーディネイターらしく、連携は見事にとれていなかった。あのウィンダム達とどっこいか。
おまけに相性も良い。ケルベロスバクゥハウンドは格闘戦に優れ、陸上兵器、すなわち時代遅れの
リニアガンダンクやストライクダガーを相手取るならば無敵だった。
だが、コズミックイラのMSの進歩に従い、飛べる兵器など珍しくなくなっていた。
つまり二線級のエールダガー風情でさえ、空中から思う存分狙い撃ちできるということだ。
あいにく今回はライフルが無いが、CIWSが牽制用として十二分に活用できた。
戦闘中の切迫する思考の中で、シンは相手の指揮官に呆れた。
これだけ統一した兵装を整えられるくせに、バクゥハウンドにはウィザードシステムが扱える
というのに、わざわざ全ての機体をケルベロスウィザードで出した指揮官に、心底あきれ返った。
相手には敵の出方によって兵装を変えるという思考すらないのだ。
ミサイルもなく、仰角もとりづらい備え付けのビーム兵器で必死に応戦する兵が哀れだった。
とはいえザフト時代、僚機がウィザードの変更をしていたかと問われると、謎だ。
ルナはなぜあんなにガナーに固執したのだろうか? ……確かに弾幕は厚くなっていたが……。
頭は考え事をしていても体は正確に操作を行い、またしても一機のバクゥを切断した。
このままいけば無傷の勝利、バクゥのジャンクで経常利益もアップ、ナタルさんの機嫌もアップだ。
敵は蹴散らされていく味方の姿に勝機を見失い、逃げ腰になっている。
その敗北思考に畳み掛けるべく、ダガーLは地面を這うように飛行して次なる敵を追い詰めた。
『うお、こいつ強いぞ!』
『シャムス!?』
後方、少々離れた位置に陣取り、こっちを援護してくれていたシャムスさんのエマージェンシー。
持ち前の機動力を生かし、すぐさま取って返したダガーLのメインカメラが写したものは、
腕をライフルごともぎ取られ、盾一枚で敵を捌いているスローターダガーだった。
『来るな、コーディネイターの助けなんぞ』
『腕をとられる前に言ってください。情けない』
『てめぇ、言わせておけば、ちいぃ!』
タックルを受けて転がるスローターダガー、敵の止めを転がることで何とか回避する。
シンは牽制としてCIWS4門を起動させながら、シャムスが先ほどまで使っていたライフルを
回収して敵に向けた。
────これで蜂の巣にしてやる!
意気込みに答えるように、二射目でパシュと情けない効果音と共にエネルギー切れを起こした。
「なんて使えない。あの異名、嘘じゃなかったのか、くそっ!」
無力化したスローターダガーには興味を示さず、こちらに一直線に向かってくるバクゥ。
先ほどからCIWSを雨の如く打ち込んでいるが、一向に気にした様子も無い。
バクゥの堅牢な装甲を信頼した突撃、無論メインカメラにあたるようなヘマはしない。
このパイロット、強い。機体を知り尽くし、ダガーLの戦闘力も良く知っている。
直感だが、さっきの襲撃で自分の必殺を回避したのも恐らくコイツ。
貫通しないと分かっていても、弾雨をものともしない胆力。
こいつは、エースだ!
「調子に乗るな!」
使えないライフルを敵に投げつけ、その隙に二刀流に戻る。
ソードインパルス時代を思い出しつつ、こっちからも敵に突貫する。
瞬時に狭まる両者の距離、互いに一撃必殺を狙い、ダガーLは高速で滑空し、三つ首の番犬は背部
ブースターを使い空を跳ぶ。
──交差──
両者着地、被害はこちらは左足を付け根から食いとられ、バランスを崩して尻餅をつく、
敵はバックパックをスライスされてビームキャノンを無力化されていた。
痛み分けとなったが、敵はすぐにこっちに向けて再突撃をしてくる。対応が間に合わない!
過剰な本数のビームファングで俺を殺しに来る。
「殺られて────たまるかー!」
視界と思考がクリアになっていく懐かしい感触。
全身の隅々まで意識がいきわたり、機体の指一本まで血が通っているような全能感。
さっきより鮮明に捉えられる敵機を睨みつける。
敵はこっちが再び飛び始める前に片をつける算段だろう。両手にサーベルを持つダガーに勇敢
に突っ込んで来る。
敵の格闘能力はこちらを上回っている、地上の肉弾戦では不利、────なら!
こっちに飛びかかる寸前のバクゥに、両手のサーベルを殺意を込めて投げつける。
一本目は予期していたのか楽に躱わされる。しかし二本目は想定外なのかまともに喰らい、
左の頭が吹き飛びよろめく、そこに素早く抜いたスティレットを敵の足下に投げつけた。
爆発で吹っ飛ぶバクゥ、こっちに残っている武装はスティレットが一つと効かないCIWSだけ。
だがそれで十分。最後のスティレットを握り締め、飛び掛る。
体制を崩したバクゥにはもはや躱わす能力はない。後は機体の何処でも良い、どこかへスティレット
を叩きつければ終わる。万全を期するためスティレットは投げるのではなく、腕を犠牲にしてでも
直接打ち込む。これでゲームセットのはず。
「忘れてた? 私も赤なのよ」
「えっ?」
────忘我。
一瞬の躊躇いを逃さず、敵は一目散に逃げていく。
代わりに残っていたバクゥの反応が現れ始めた、シン・アスカを無力化してから回りの仲間に
後を任せたのか。
『使え、コーディネイター!』
シャムスが最後のサーベルを投げてよこす。
『いいか、俺は盾でひたすら防御しながら敵をひきつける、後はお前が片付けろ。
足がとれてもエールなら戦闘可能だろ』
『あ、ああ。了解……』
『その心配は要らんぞ、援軍だ!』
『ナタルさん!?』
レーダーを見直すと、大きな反応とMS大の反応が複数、青く点滅している。
ベルリンから派遣された後詰の傭兵団が到着したのだ。
敵のレーダーにも映ったのか、バクゥの集団も撤退していった。
『どうやら、生き残ったみたいだな、コーディネイター』
『シン・アスカです』
『…………お前さ、躊躇っただろ』
『昔の、相棒の声だったんです』
『……ふん』
ぼろぼろで武装もほぼ使い尽くしたものの、ナチュラルとコーディ、二人のパイロットは辛くも
生命を繋げた。今回も生き延びたのだ。
『休んでいる暇は無いぞシン。
ダガーに記録されたデータからバクゥの残骸を確保する、時間が勝負だ!』
戦闘後の余韻に浸る間も許されず、ドミニオン従業員は回収作業に移るのであった。
続く。
他スレに投下していた作品を此方に投下しても大丈夫ですか?
今投下をしているスレは投下出来る雰囲気では無くなってしまったので……
良かったら返答お願いします。
>>263 此処はどんなSSでも大丈夫ですよ。投下をお待ちしています。
> SEED『†』
ザムザザー!ザムザザー!
>>254 オルガ、よくあんな説教くさいもの我慢して読めたなw
夢を見た。夢の中で俺は知らない奴らと馬鹿騒ぎをしていた。懐かしい様な気がしたが、俺はそいつらの面を覚えていない。
夢の中でははっきりと覚えていたが、目が覚めたら綺麗さっぱり忘却の彼方だ。知らない誰かの事なんてどうでも良い事なんだろうが凄く気になる。
魚の小骨が喉に引っ掛かった様な感じ……違う、クシャミをしようとしたら途中で止まった様な感じか?いや、そんなくだらない喩えなんてどうでもいい。
引っ掛かるのは奴らの顔に慨視感を覚えた事だ。覚えが無いのに懐かしいなんてオカルトじみてる。とんだナンセンス……まるで大昔の三文小説みたいだ。
実は俺は伝説の勇者の生まれ変わりで使命に目覚めて蘇った大魔王と戦う為に旅に出るってか?馬鹿馬鹿しい。くだらなさ過ぎて吐気がする。
俺はファントム・ペインでコーディネーター共を血祭りにする為に作り出された存在だ。無茶な後天的な強化の為に未来は無い。心の中で毒づく。
No Future For Me! L.A.M.F.!
誰に向けての罵倒なのか分からない。多分俺以外の全てに対してだろう。
好きでエクステンデットになった訳じゃないがなっちまったものは仕方ない。精々派手に暴れてウサを晴らすだけだ。
「スティング、準備はOKか?」
オペレーターの急かす様な声が聞こえる。腹の中で俺に指図するんじゃねえって毒を吐きながらMSを起動させていく。
「こちらスティング! いつでも良いぜ! 俺も相棒も早く戦いたくてうずうずしてる!」
次第に心地良い緊張感が俺を包みこみ、体の血が熱帯びてくる。精神が、体が戦いを欲している。
これじゃまるで根っからの戦闘狂だ。まったくもって報われない。報われるもなにも俺は棺桶に片足を突っ込んでいるんだ。なにもかもがどうって事はない。
「発進準備OK!スティング、思う存分暴れてこい!」
言われなくても。あいつらの分まで暴れて来てやる。俺は一人じゃねえ。あいつらの命を背負ってんだ。
……そうだ、あいつらだ。アウルとステラだ。良かった……どうにか思い出せた。死ぬ前に思い出せて良かった。
ネオがいない今、俺だけでも覚えていてやらないとあいつらが可哀想過ぎる。ただ、問題は俺がいつまで覚えていられるかだ。戦いが始まればすぐに忘れちまうだろう。
「行くぜ相棒……地獄まで付き合って貰うぜ! スティング・オークレー、出るぞ!」
どっとはらい
>>265 聖書そのものは別に説教くさくないぞ
それを教義に基づいた解釈して説教くさい講釈をするのが神父や牧師の仕事だ
「汝殺すべからず」と命令した神が大量虐殺をしたり大量虐殺を命じたりするギャグ小説ですね。
1/2
あれから季節は幾つ巡っただろう。
彼がプラントへと旅立った時は肩に掛かる位だった私の髪は、気が付けば腰まで伸びていた。
私の周囲の環境も変わった。妹が産まれ、すぐ下の弟は戦場に散った。
私自身も飛び級でカレッジに入学し慌ただしい毎日を送っている。
少し前までは空を見上げる度に彼の事を思い出していた筈なのに、今では彼と過ごした日々は夢のように思えてしまう。
「大人になるってこういう事なのかしら?」
光陰矢の如し。過ぎて行く日々に置き去りにされている気がして、私は密かに溜め息を吐いてしまった。
「あら、急にそんな事をいうなんてどうしたの?」
昼下がりのカフェテラスで私は親友のミホと他愛の無いお喋りをしている。
ミホは法学部で私は医学部。お互いの進む道は離れてしまったが、暇を見付けるとこうやって会っている。
「何となく言ってみただけよ。他意は無いわ。それよりお茶を楽しみましょ。この全粒粉パンは秀逸だわよ。手作りね、これは」
私は彼女に怪訝そうに見つめられうやむやに言葉を濁した。
「そうね。ここって学生街の割にサラダの盛りが悪いくない? 値段相応だとは思うけれど」
ミホはサラダに視線を落とした。シンプルなサラダディッシュにこじんまりとサラダが盛られている。
「ちょっとバルサミコの香りがきついわね。何が何でもバルサミコを使えば良いと思ったら大間違いなのに」
「確かにそうかな。でもね、カズちゃん。このトマトは美味しそうよ」
ミホは手慣れた手付きでトマトを口に運ぶ。ミホは最近ダイエットに精を出していて野菜中心の食生活を送っている。
「私的にはティー・オレがメニューに無いのは不満だわ。そのかわり中国茶が充実しているわね。今度来たら凍頂烏龍を注文しようかしらね」
私達は〆に店定めを始めた。
ミホは日常使いには最適で男の子とお茶をするには微妙と評した。
私はトータルで見たら比較的に安価で味も悪くない点から時間潰しに最適だとコメントした。
私はティーカップに視線を落とした。ゆらゆらと揺れる私が映っている。
――カズミ・アマダ。貴女は幸せ?
私は紅茶を飲み干し席を立った。
「じゃ、私は行くわね。そろそろ行かないと次の講義に間に合わないわ」
ミホはまだ時間があるらしく読書をしていくそうだ。そういえば彼女の鞄の中から文庫本が覗いていた。
私は笑顔でミホに別れを告げた。
2/2
いつの時代も理系の女の子は重宝される。医学部となれば尚更だ。
私は医学の道を志す事を14歳の夏に決めた。
あの頃は色々あった。戦争があり、避難所生活を余儀なくされた。
連合占領下の教育政策で二番目の弟が登校拒否をし、私は弟を守るために大人社会に闘いを挑んだ。
戦争が終わった事もあり、結果はドロー。
そうそう、片想いの彼との別れがあった。
今では余り思い返す事もなくなったけれど、でも忘れられないでいる。
――矛盾しているわね、私。
考え事を止めて抗議に集中する。
決めたんだから、あの時に。傷付いた人々を救う力が欲しいって。
教室には教授の声だけが響いていた。
「俺達これから飲みに行くんだけれど、アマダさんもどうかな?」
講義が終わり教室を後にしようとした時に男の子達から声を掛けられた。
小綺麗な恰好の彼等はたまにこうやって私を誘ってくる。
「飲みにですか? 誘ってくれるのは嬉しいけれど、私は未成年ですよ?」
カレッジに通っているとは言え、私はまだまだ大人に成りきれない。
「今度は食事の時に誘って下さいね。じゃ、また明日」
小さく会釈をし男の子達に別れを告げた。
丁重に断りを入れるのは難しい。たまには応じないとお高く留まっているだなんて言われ兼ねない。
応じるって言っても専らランチ。彼等の言葉に甘えて奢って貰ったりしている。
浮いたランチ代はミホとのお茶に当てがわれるのだ。
さて、今日は隣に住んでいた彼の家族の月命日だ。
彼の家族は彼の目の前で亡くなった。彼は悲しみを振り払う様にプラントへと旅立った。
彼とは手紙を交していたが、いつからか手紙は来なくなった。確か、あれは彼がザフトに入隊した時だ。
父と母は軍人にはなかなか手紙を書く暇は無いからと慰めてくれた。
待ちくたびれた訳じゃないと思いたい。今でも待っている。ただ、日々の生活が忙しいだけだ。
空は雲一つなく晴れている。空の蒼さに誘われて、私は慰霊碑に行こうと思い立った。
私は行き着けの花屋でカサブランカの花を一輪買い求めた。
甘い香りが鼻をくすぐる。私のお気に入りの花だ。
その花を手に日が暮れる前に慰霊碑に着くよう急いで向かった。何かに導かれるように――
まずは作者諸氏投下乙。俺の感想は一人よがりなのであまり参考にしないように。
>>exploration
荒っぽい文章だがそれが逆にキャラクターに合っているな。オルガとスティングの読書についての考えが対比となっていて面白い。
ブーステッドマンとエクステンデッドの悲哀が上手く書けてると思うぞ。
更なる精進を希望する。
一つ聞きたいんだがタイトルはNIGHTRUTHから取ったのか?だとしたら凄いな。
>>名も無き花
これは種を蒔く人サーガと呼べば良いのか?本音を言えば種を蒔く人を完結させて欲しいところだがこれは俺の我儘。日常描写と言うよりはスケッチするような丁寧な描写は流石。
しかし単調であるのは否定出来ないのでお仲間のed氏の様に新たな道を模索して欲しいところ。
更なる精進を希望する。
何でも屋、まさかその伏線がそう繋がってくるとは思わなかったぜ。GJ!
>>269-270 弐国氏を見習って描写力を付けたら良いと思います。
そうすれば貴方の筆力も上達しますよ。
>>exploration
文章が乱雑なのが目に付きました。弐国氏の作品を見習ったらいかがでしょうか。
キャラクターの掘り下げて行く短編みたいなのですが、マユを出すのには気を付けて下さい。マユスレから誘導されてしまいます。
>>名も無き花
単調な内容に引っ掛かりました。弐国氏の作品を読んで参考にすればもっと良い作品を書けると思います。
>>268 マジレスすると殺人戒の対象は同じ信者のみ
神が皆殺しにしたり、殺せと命じたのは異教徒
別に矛盾はしない、思いっきり独善的なだけだw
>>名も無き花
弐国氏に比べると描写が雑に思います。
弐国氏のSSを読んで描写の真髄を味わうべきだと思います。
>>237 一つ言っておく
ダコスタの名前はマーチンであってマーティンではない
にくに、って誰?
「いいか。今回の演習は一度に多数の敵を相手に戦う訓練だが、俺達の今までの演習を活
かせば難しくは無い筈だ」
演習当日、ハンガーに向かう通路でレイは語る。
「ギルの、議長の期待に応える為にも、俺達はトップの成績で通過しなくてはならない。
戦法は先に打ち合わせた通りだ。わかっているな?」
鋭い視線は気合十分。拳を固く握り締め靴音高らかに獅子奮闘の活躍を胸に誓う。
「Q、現在のモビルスーツで主流のエネルギー機関は何か? 次の中から選べ。
1、NJC搭載核融動力
2、蒸気機関
3、バッテリー駆動
4、実はよく分かっていない」
しかしそんな話などどこ吹く風。パイロットスーツに身を包み背中を丸くしテキスト片
手にブツブツと呟くシンに、さすがのレイもギョッとした。
「なんて難しい問題なんだ……! 俺が見たどんな問題より答えに悩む。
1の核なんて物騒な代物に乗る奴なんているもんか。撃墜されるたびに地球が汚染され
るじゃないか。
2は地球に優しい動力だな。あ、でもどうやってお湯沸かすのか分からないや。
3は無いな。今時電池駆動なんて、旧世紀の玩具じゃあるまいし。ハハハ、思いもよら
ない。
となると、4が俄然説得力を持つな。何しろ今の俺の気分を代弁してくれるのが気に入
った! よし、よ――」
目の下に厚いクマを作ったシンが一際明るく答えを言う前にレイの左足がシンの背中に
炸裂する。前も後ろも見ていなかったシンはうつ伏せに倒れ、磨かれた床に肌を擦り付け
嫌な音を立てながら鉄製の柵まで飛ばされた。
「危なかったなシン。今お前の後頭部を致死性の毒を持つウスバオオスズメバチが狙って
いたが、もう大丈夫だ。お前の危険は俺が始末した。時間が無い。すぐに出撃だ!」
シンに文句を言う間を与えずレイは先にハンガーへと向かう。静かだった辺りにざわめ
きが浸食し、通路に響いた靴音が耳に届かなくなる頃には喧噪の渦がレイを取り巻く。
(いよいよここまで昇ってきましたよ……ギル!)
顔を上げ共に新たなる高みを目指した家族へ想いを募らせる。新しい世界への入口に、
今ようやく差しかかっている。その想いはレイをして心を熱くさせた。
「レイ! 致死性のウスバオオスズメバチとやらはどこ行ったんだよ!」
「つまらない事に気を取られるな、シン。俺達は今、やるべき事があるだろう?」
ぴりりとした雰囲気をぶち壊したシンに眉を動かす事も無く、レイは平静を装いそう語
った。
<…続く>
弐国がうんたらって嵐かなんかなの?
281 :
257:2007/05/28(月) 01:54:10 ID:???
私の感想も主観的なものなので注意してください。投下が多くて嬉しい悲鳴を上げています。
>>248 >>255 >>266 気付かずに失礼しました。わざわざ台本形式に為る必要はない程の文章力が在ると思います。
短編を書くのに必要な瞬発力と集中力、そして勢いがありますね。死に際のスティング、その
凶暴な優しさに心うたれます。
改善点とししては改行のタイミングでしょう。お手元にエディタがあれば、五十文字が入る程度に
横幅を広げて、エディタの勝手な改行が入らないように調整してみてください。
紙媒体の時は気にならないような単語の切れが、PCの画面上ではストレスになったりしますので。
>>何でも屋
投下乙、GJでした。
白熱する戦闘、シャムスのコーディネーターへ向けた不信感と、それでも協力し合おうという
仕事へのプライド。更にはシンにとって懐かしくも悲しい声。短い中に見所が沢山ありました。
改善点としては台詞回しですかね。戦闘中とはいえ、今までとは少し違った違和感がありました。
もう少し推敲されてみてはどうかと思います。
>>名もなき花散る頃
文章力は十分。作者さんの過去の作品に対する評価も込めて良いのでしたら、相変わらずのクオリティ
だといっておきます。物語としては種も種死も殆ど関わって無いじゃん、というのが正直な所。
其処の隔たりは分量で埋めて行くべきかと思います。
精細な日常描写は流石の一言だと思いました。が、確かにこの内容はこのスレ以外に新シャアでの
投下場所を見つけにくいかと思います。それだけ難しいテーマを書こうとしているのか、とも思います。
ノンジャンル、新人及び投下先の無い人も自由な内容で投下してよいスレなので、あまり深いところは
気にせず続きをゆっくり書いてください。
>>P.L.U.S.
徹夜で壊れかけたシンのコメディな思考経路と、見得に走るレイとのコンビにに笑った。
分量は短いながらも、大舞台直前の楽屋裏的なワンシーンとしては良い出来かなと思います。
この後に必ずあるだろう戦闘シーンにも注目ですが、前に指摘されていたようにワンパターンに
陥りそうだと感じたならばいっそ視点を変えて描写の仕方を変えて見るのも良いかと思います。
職人の皆さん投下乙でした。
そして先に言っておきます。編集長とまとめ管理人仕事乙。貴方たちが居なければ
このスレのカオスは更に深まると思いますので。
>>280 嵐だよ。
「ほめ殺し」って知ってるかい?
>>282 褒め殺しという表現は正しいようで微妙に違うな
弐国氏へのウザいマンセー続けることでコイツが本当に弐国氏信者と思い込んだ頭のあんまりよくない子
を弐国氏自体のアンチに誘導しようとしてるんだろうから
>>279 PLUS氏GJ!前回も面白かったけど今回は声にだしてワロタよww
漫才見てるみたいで面白かったです!
Exploration氏に箱庭系を書いて欲しいなぁ。狂暴な優しさと悲しさが引き立つんじゃないかと思う。
1読者の我儘だけどね。
>>まとめ管理人さん
自分の拙い作品をまとめに載せて頂きありがとうございます。
誠に申し訳ないのですがサブタイトルを入れて頂けないでしょうか。
>>254(まとめだとExploration of Personality 1)→“the book”
>>266(まとめだとExploration of Personality 2)→“recollect”
でお願いします。
>>285 箱庭系とはなんでしょうか。ググっても出てこないので分かりませんでした。どなたか教えていただけないでしょうか。
287 :
3-214:2007/05/28(月) 21:23:06 ID:???
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜
第5話 「海 −じゆう−」(後編)
(1/12)
◇ ◇ ◇
「キラ……?」
パイロットの顔を間近で見ても、カガリには信じられなかった。
このMS──フリーダムは確かにキラの機体だ。しかし、彼はまだMSの操縦ができる状態では
なかったのだ。──少なくとも一週間前までは。
ハッチが閉じると、コックピットの中はカガリのドレスで埋め尽くされた。
「うわあ。すごいね、このドレス」
その状況を考えない物言いに、カガリははっとなった。
確かにキラだ。このパイロットはキラなのだ。
「お前っ!?」
それだけしか言葉が出ない。
何をどう言ったらいいのかわからなかった。
キラが──ヤキン戦前のままの、ヤキンでの傷もラクスを喪った傷も何もなかったようなキラが
ここにいる。
そんな場合でないのはわかっているのに、カガリの胸を熱いものが満たしてゆく。
「掴まっててよ」
キラはカガリを膝に乗せたまま、フリーダムを浮上させた。
メインモニターに青い海が映る。それはキラキラととても眩しくて──。
288 :
3-214:2007/05/28(月) 21:27:31 ID:???
(2/12)
◇ ◇ ◇
アークエンジェルが海中を静かに進みオーブから遠ざかってゆく中、
「一体どういう事なんだっ!?」
ブリッジの扉が開くと同時に、カガリは中にいる人物たちに怒鳴りつけた。
何もかもが腹立たしい。
突然連れ出されたことも、ずるずると長いドレスの裳裾も、歩きにくいヒールの靴も、
フリーダムから降りた時の整備員たちの物珍しげな視線も、こんなにイライラするのにヴェールを
外すことさえできないことも、ユウナの一見優しげな嫌味も!!
怒鳴りつけた後でカガリはブリッジを見渡し、そこにいるメンバーを確認する。
マリューにバルトフェルド、ノイマンにチャンドラーニ世。
共に戦った、しかしもう二度と会えないと思っていた懐かしい仲間たちの変わらない顔に、
カガリは安堵し嬉しくて、腹が立つ。
「よぉ、お帰り」
「お疲れ様、キラ君、カガリさん」
対してマリューやバルトフェルドは至って普段と変わらない。内心では二人共カガリの反応が
予想通りすぎて笑い出しそうになっていたのだが。
「それにしても化けたなぁ、これは」
「ええ、本当に。ドレスでモニターが見えなくなりそうでした」
バルトフェルドの言葉に、ドレスの裾を踏まないように避けてブリッジへ入ってきたキラが
賛同した。
「カガリ、ドレス挟むよ」
必要以上に長いドレスの裾は廊下にはみ出ており、扉が閉じてしまえば目も当てられないことに
なるだろう。
カガリは慌ててドレスを引っ張った。キラが手伝ったこともあり、危うく惨事は免れる。
「で、間に合ったの? キラ君」
「ドレスは無事ですよ」
「そうじゃなくて、式の方だよ」
「ああ、それなら大丈夫だったと思うんですけど……」
三人の視線がカガリに集中した。
289 :
3-214:2007/05/28(月) 21:29:20 ID:???
(3/12)
「式は……」
答えかけてからカガリは気づいた。式はどこまで進んでいたんだっけ? その後の出来事と
怒りのためにすっかり頭から抜け落ちている。
(確か最後の返事はしてない……よな? その後誓いのキスをして式が終わるわけだから、
式は終わっていない……よな、多分)
だが、たとえ式は終わっていなくとも、ユウナとの結婚は発表されている。式の終了に
何の意味があるのだろうか?
と考えたカガリの背筋が凍りつく。
(キス!? 私がユウナと!?)
と、ふと、車の中で聞き流したユウナの言葉を思い出した。
『やっぱり君の妊娠・出産を契機に……』
(妊娠・出産っ!!)
カガリはあまりのショックにヴェールを毟り取りそうになった。が、布の感触に我に返り、
その手を止めた。
カガリには許されないのだ。どんなにイヤでも、それを選んだのはカガリ自身なのだから。
「着替えの服は用意してあるわよ」
カガリの動きを勘違いしたのかそう言ったマリューに、思わず食って掛かる。暢気に話している
場合ではない。
「こんな馬鹿なマネをしてっ! あなた方まで何故っ!?」
カガリの脳裏に、警護兵が発した「テロリスト」という単語が浮かんだ。
これは傍から見れば紛れもなくテロ行為、それも国家元首の拉致という第一級のものだ。
彼らがカガリのかつての仲間であったとしても、「それがどうした」と言われてしまうほどの。
「と、とにかく、どこでもいいから私を解放しろ。後は何とか誤魔化すから。
私が戻らなくちゃ、オーブは、オーブの理念は失われてしまうっ!」
カガリは必死で叫んだ。
カガリが戻らなければ、約束を守らなければ、同盟締結の調印は明日にでも行われてしまうやも
しれない。
290 :
3-214:2007/05/28(月) 21:30:37 ID:???
(4/12)
『他国を侵略さず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介しない』
というオーブの理念。それを汚すことはしたくない。
『誰が死ぬことになるのかちゃんと考えたのかよっ!』
というシンの──国を焼かれたオーブ国民の言葉。もう誰にもそんな思いをさせたくない。
『カガリも頑張れ』
そう言ってくれた彼の期待に少しでも応えたかった。
だから考えた。闘わない方法を。闘わずとも国を焼かずにすむ方法を。
自分はとても無力で、「アスハの娘」というだけの存在で、だから首長会の誰も自分の言葉に耳を傾けてなどくれなかった。
それでもユウナとの結婚を引き換えにしてでも、たった一つでもいいから自分で歯車を回したかったのに。
しかし、マリューは微笑んだ。
「多分それは大丈夫よ」
「……え?」
カガリにはわからなかった。何が大丈夫だと言うのだろう?
「おっ、そろそろ時間じゃないか」
バルトフェルドは時計を見ると、通信端末を操作した。
メインモニターに映像が入る。
それは、カガリには見慣れた場所、オーブ政府の記者会見場だった。
そしてそこに立つのはカガリが、そして亡きウズミが最も信頼した男。
「キサカ……?」
「ぴったりだったな」
バルトフェルドが満足そうに呟く。
キサカの言葉が始まった。
『本日、かねてより婚約関係にあった我がオーブ連合首長国代表首長カガリ・ユラ・アスハと
首長会メンバーであるウナト・エマ・セイランの令息ユウナ・ロマ・セイランとの婚姻の儀が
ハウメア神殿で執り行なわれました。
しかし、その最中に所属不明のMSが乱入、代表首長が拉致される事態が発生いたしました』
「所属不明? キサカまで何を……」
そう言いかけてカガリは唐突に思い出した。
フリーダムはヤキン戦で破壊され、その残骸はプラントに回収された筈だ。それが何故オーブに
あり、キラが乗っている?
291 :
3-214:2007/05/28(月) 21:33:22 ID:???
(5/12)
カガリはその答えを得ぬまま、映像に意識を戻す。
『現在、全軍をあげて鋭意捜査中ではありますが、残念ながらなんら進展のない状態であります。
また、これまでのところ犯人からの要求も一切なく、代表の安否が気遣われております。
これに伴い首長会では暫定定期措置として、代表の婚約者であるユウナ・ロマ・セイランを
代表代行と承認いたしました』
マリューがキサカの言葉を聞きとがめた。
「婚約者? 夫じゃなくて?」
「よしっ! 間に合った!!」
バルトフェルトがガッツポーズと共に歓喜の声を上げ、誰のものか口笛まで聞こえた。
キサカの言葉は続く。
『さて、ここに一枚の原稿があります。これには婚姻の儀終了後の記者会見でアスハ代表が
発表することになっていた事項が記されております』
映像の中からざわめきが聞こえた。カガリもまた呼吸をするのも忘れてモニターを凝視する。
『オーブ連合首長国は、世界安全保障条約機構への参加を撤回いたします』
キサカは、静かに、しかし力強く言い切った。そしてカガリのサインが入った原稿を皆に
見えるようにこちらに向ける。
映像の中のざわめきがどよめきに変わった。
そこにいる者の誰もが忘れていない、忘れる筈がない。二年前オーブが選んだ道の先に待って
いたものを。
それなのに、オーブはまた同じ道を進もうと言うのだろうか?
かつてオーブと同じ道を選びオーブと同じ命運を辿ったスカンジナビア王国や赤道連合は、
もうすでに同盟締結を済ませている。
そうしなければ、国を待っているのは同じ命運──国を焼くことだと知っているからだ。
なのに何故、オーブはその流れに逆らおうというのだろう。
誰かが怒声を発する寸前で、キサカは再び口を開いた。
『オーブは大西洋連邦に味方はいたしません』
周囲のどよめきを無視してキサカは発言を続けた。
『ですがそれは、プラントに味方して地球軍と闘うということでもありません』
会場のどよめきが潮が引くように静かになってゆく。
『オーブは闘うよりも先に、ユニウスセブン落下による被災国への救済・支援、それを最優先
事項として行動することを、ここに宣言いたします』
292 :
3-214:2007/05/28(月) 21:35:04 ID:???
(6/12)
カガリの頬を涙が伝い落ちた。
キサカが語った言葉は、カガリの願いだった。ユウナとの結婚が決まり、セイラン家へ入る
までのわずかな時間にキサカにだけ伝えたカガリの望みだった。
同盟の破棄だけで精一杯だったから、叶うことのない望みだと思っていた。なのに。
「うん、我ながらいい出来だ」
バルトフェルドの声に、カガリは振り返る。
自慢げに頷いていた彼はカガリの視線に気づくと、親指でモニターを指し示した。
「あれだよ、あれ」
バルトフェルドの言う「あれ」が何のことがわからないままカガリはもう一度視線を映像に
戻し、ふと気づく。
「あのサイン……!?」
キサカの持っている書類に書かれたサインは確かにカガリのものに相違ない。しかしカガリは
あんな書類は見たことがない。
「そ。あれ、僕が書いたの。巧いもんだろう?」
と胸を張るバルトフェルドにカガリは唖然とする。
「だってあれ、バレたらお前、大問題だぞっ!?」
「大丈夫だって。練習に使った紙は全部焼き捨てたし、どこからどう見ても本物だってキサカ氏の
お墨付きだし」
「キサカもグル……?」
バルトフェルドのしれっとした答えを聞いたカガリは、ドレスが汚れるのも構わず、その場に
へなへなと崩れ落ちた。
「大丈夫、カガリ?」
キラが中腰でカガリの顔を覗き込むと、カガリがのろのろと顔を上げた。
「キラァ!!」
「うわっ!」
いきなりカガリがキラの首にしがみつくように抱きつき、バランスを崩したキラはそのまま
倒れこむ。
「痛いよ、カガリ。今日二度目だよ……」
床にぶつけた後頭部をさすりつつ目を開けると、押し倒すような形になって自分を見つめている
カガリの顔と予想以上に開いたドレスの胸元が目に入り、キラは思わず頬を染めて目を逸らした。
視線はそのままでカガリの両肩を掴み、自分の身体も一緒に起こす。
二人は向かい合ったままぺたんと床に座り込んだ。
カガリはその間も、キラの顔に穴を空けたいのだろうかと思ってしまうほど、じっと見つめた
ままだ。
293 :
3-214:2007/05/28(月) 21:38:06 ID:???
(7/12)
「えーと……カガリ?」
声をかけると金茶の瞳に涙が溢れ出してきて、キラは咄嗟に身構える。
「キラァ」
予想に違わず胸元に飛び込んできたカガリを、今度はちゃんと受け止めた。
「キラ、キラァ……」
カガリはキラの名だけを何度も何度も繰り返す。
キラはそんなカガリの言葉に出来ない思いを汲み取って、彼女の髪をなでながらそっと抱きしめ
続けた。
ややあって、
「お前っ、ホン、トに、キラ、だよな?」
「え?」
しゃくりあげながら途切れ途切れに訊ねるカガリの質問の意味が、最初は何の事だかわからず
目を瞬かせる。
が、やがてそれに思い至った。
キラは子供を慰めるように、カガリの背中をトントンと叩く。
「うん、僕だよ。ごめんね、カガリ。ずっと心配させて」
カガリはキラの腕の中で、何度も頷いている。
「僕、もう大丈夫だから。もう逃げないから」
聞こえてくる声の中に優しいだけではないものを感じて、カガリは顔を上げた。
「クルーゼからもフレイからも……ラクスからも。もう逃げないから」
キラが発した最後の少女の名に、カガリの肩が小さく震えた。その瞳に怯えのような不安げな
色が浮かぶ。
「ホントに大丈夫だから」
そう微笑むと、カガリの目からまた大粒の涙がこぼれた。
ふと気づくと、マリューとバルトフェルドが温かい眼差しで彼らを見つめていた。
いや、バルトフェルドはニヤニヤという形容の方が近いだろう。
キラはカガリに手を貸しながら自分も立ち上がった。
294 :
3-214:2007/05/28(月) 21:39:51 ID:???
(8/12)
「さあ、カガリも立って。これからのこと、相談しなくちゃ」
「行く当てはあるのか?」
立ち上がったカガリのドレスは薄汚れてしまっている。キラはそれを軽く手ではたきながら
答えた。
「うん。考えてるところはあるよ」
「そうか。なら良かった」
カガリが微笑んだ。やっと見られた大事な少女の笑顔が嬉しい。
「うん。だからカガリも一緒に」
「私はオーブに戻る」
キラの言葉を遮って、カガリがきっぱりと言った。
「え?」
キラだけでなく、ブリッジ中の全員の視線がカガリに集まる。
「私はウナトと約束したんだ。ユウナと結婚するって。だからオーブに帰らなくちゃ」
「でも、カガリさん、それじゃあ……」
慌ててマリューが取り成そうとするが、カガリの意思は固かった。
「私を助けようとしてくれてありがとう。でも、約束は守らなくちゃ。そうだろう?」
そう静かに語るカガリの言葉の中に決意と少しのあきらめを感じ取ったキラは、彼女に
問いかけた。
「カガリは、ユウナさんが好きなの?」
「そんなことあるわけないだろっ。ない……けど……。でも……」
カガリの笑顔に翳りが混ざり、泣き笑いのようになる。
「僕は、カガリの唯一の肉親として、カガリには本当に好きな人と幸せになって欲しい」
カガリははっと顔を上げた。カガリの胸に父の言葉が思い浮かぶ。
「それにね──」
キラはカガリを軽く抱き寄せて、その頬を自分の肩に寄せた。
今から語ろうとすることは自分でも少々アレなので、とてもカガリの顔を見て話せそうには
なかったのだ。
295 :
3-214:2007/05/28(月) 21:41:20 ID:???
(9/12)
「──それに、もしそれがアスランなら──アスランが僕の義理のおと、いや兄になるのは
ちょっと複雑な気もするけど──すごく嬉しいよ」
と、ヒューと高い口笛が聞こえてキラは顔を上げた。
軽く眉をしかめて隣に立つ男を睨んでいるマリューの横で、もはや完全ににやにや笑いに
なっているバルトフェルドと目が合って慌ててカガリを離す。
今度はカガリと目が合って慌てかけたが、彼女の顔は暗く翳っていた。
「……ごめん、キラ。それは無理」
「カガリ?」
キラは俯きがちに呟いたカガリの顔を覗き込んだ。
「だって、私は他の人と結婚したんだから……。アスランにあわせる顔がないし、アスランだって
私を許さないだろ、きっと」
「大丈夫だよ、カガリ」
キラは彼にしては珍しく力を込めてカガリの肩を掴んだ。
「アスランならきっと、うん、絶対に判ってくれるって。だって、カガリがどんなに頑張っているか
一番良く知っているのはアスランだろ?」
そう言いながらキラはポケットから出したものをカガリの手のひらに乗せた。
そこに乗せられた愛しく懐かしい光にカガリは目を瞠る。
「こういうの自分でも暗い考えだなって思うけど……僕とラクスの分まで、カガリとアスランには
幸せになってほしい、って思うのはダメかなぁ?」
そう言いながら、キラの手は無意識に自身の胸元に触れていた。
「ラクスを殺した僕の言う台詞じゃないけど、ね」
キラの言葉にカガリが気色ばみ、キラの腕を掴んだ。
「キラ、だからそれは、違うって!」
しかしキラは薄く微笑んでそれを否定した。
「違うよ、カガリ。あれはやっぱり僕の所為なんだ」
ふいにキラは息苦しさを感じた。まるで胸に大きな塊があるような感覚。
目の前が暗くなる。気を抜けば容易に意識を手放せそうだ。
──楽になれるよ。
自分の中から声が聞こえた。
(それもいいかもしれない)
そう思ったその時。
296 :
3-214:2007/05/28(月) 21:43:06 ID:???
(10/12)
「キラっ!!」
自分の名を呼ぶ声と腕の痛みでキラは我に返った。
今にも泣き出しそうな顔のカガリと目があった。腕の痛みはカガリが強く握ったものらしい。
「うん、ごめん。もう大丈夫だよ」
急に眩しくなった視界に瞬きをして目を慣れさせながら、キラは応えた。
「キラ、お前……」
「ホントに大丈夫だから。今は僕のことより、カガリのことだよ」
カガリはしばらくキラの顔を見つめていたが、その視線を手の中の指輪に移した。
それもまたじっと見つめた後、今度は目を閉じる。
そのまま考え込んでいたカガリだったが、やがて上げた面に晴れた色はない。
「やっぱり私はここにはいられない」
カガリは静かに決意を表した。
「オーブの国家元首は、なかなか頑固だねぇ」
バルトフェルドは呆れたような口調でそう言うと、何故かマリューから二歩ほど離れた。
「仕方ないなぁ」
溜め息をつきながらこちらを向いたバルトフェルドの手には何時の間にか銃が握られ、
その銃口は真っ直ぐにカガリに向けられている。
「大人しく言う事を聞いてくれたんだったら、こういう事、しなくても良かったんだけどねぇ」
「バルトフェルドさんっ!?」
信頼を寄せている人物の不可思議な行動に困惑しながらも、キラは咄嗟にカガリを背中に庇う。
ふと、彼と初めて会った日のことを思い出した。
あの日も今日と同じように銃を向けられ、ドレス姿のカガリを背中に庇った。
あの時彼にキラ達をその場で撃とうという意思はなかった。だが今は? 彼は一体?
バルトフェルドの指が引鉄に掛かり、キラは身構える。
連投支援
どした?
職人さん、寝ちゃったのかな?
お風呂タイム?
連投規制かモナー
302 :
3-214:2007/05/28(月) 22:10:30 ID:???
携帯からです
突然ネットがつながらなくなりました。
復旧次第続きを投下します。
弐国氏投下期待age
>>302 そうだったのかー
お待ちしておりますぞ!
なんだか良く分からんがここまでの感想を書いておく。職人氏割り込みすまん。
>>In the World, after she left
話自体は悪くない。面白い部類に入る。
構成に少し難があるように思える。文章を上手く取捨選択すればスッキリするのではないか。
俺の好みだが()でキャラの思考・内面を書くならば地の文で書いた方が深みが出ると思う。()でそれをやると薄っぺらいように思える。
氏も文章を書くことに慣れてきたようなので少し辛口でやらせて貰った。
更なる精進を希望する。
306 :
3-214:2007/05/28(月) 22:25:14 ID:???
復旧しました。続きいきます。
(11/12)
キラ、いや、その背後のカガリにしっかりと狙いをつけた彼はにやりと哂うと──突然銃を
下ろした。
「さて、これで既成事実には十分だろう」
「……はぁ?」
ぽかんとする一同の視線を浴びつつ、バルトフェルドは銃を上着の中へ銃をしまった。
「だからね、これで『凶悪なテロリストに脅されて拉致されることになった代表の図』ができた
ってことだよ」
「な、お前、ふざけるなよっ!」
思わず怒鳴りつけたカガリにバルトフェルドは笑みを向けた。彼が隻眼でなければ、ウィンクでも
していたかもしれない。
「驚かせて悪かったね。でも、真面目な話、今、君がオーブに戻るのはマズいんだ」
台詞の後半からバルトフェルドが本当に真剣な表情に変わったのを見て、キラも姿勢を正す。
「これはあまり聞かせたくなかったんだがね……」
と言いながら彼は、胸ポケットから小さな機械を取り出した。
「……それは?」
「一昨日、式の詳細を探っていた部下から届けられたんだがねぇ……」
バルトフェルドが親指だけで表面のボタンをいくつか押すと、機械から音が聞こえ始めた。
どうやら小型のレコーダーのようなものらしい。
音は最初ノイズだけで何も判別できなかった。が、時折高音が混ざるのでこれを録音した者が
調節しているのがわかる。
やがてそれはハッキリと人の声に変わった。だがまだノイズが酷く、言っている事はまったく
判別できない。
しかし、ほんの一音ずつしか聞き取れないその声でも、キラにある人物を思い浮かばせた。
「……ウナト?」
カガリがキラの思っていた人物と同じ名を漏らす。
バルトフェルドが人差し指を口の前に立てて無言で静かにするように告げると、カガリは
慌てて口を押さえた。
そのうちに調節が上手くいったらしく音声は明瞭さを増してゆき、ノイズは混ざるが単語は
聞き取れる程度になった。
307 :
3-214:2007/05/28(月) 22:27:33 ID:???
(12/12)
『……ですな。結婚……すませて、実権……こち……思いのままで……』
そしてそれは、ついに決定的な一言となった。
『すこ……予定より遅れま……必ず、同盟には参加しますよ。ええ……違いなく。我々も
……合地球軍の一員とし……ディネイター共と戦いま……』
やがて音声は途切れ、ブリッジ内が静寂に包まれる。
「そんな、まさか……」
と声を漏らしたのはマリューだった。カガリは顔面を蒼白にして立ち尽くすのみだ。
「電話……か何かですか? 相手の声が聞こえませんが?」
「ああ、多分な。屋敷の盗聴中に偶然拾ったもんなんで、相手の特定なんかはさっぱりだがな」
チャンドラ二世の問い掛けに、バルトフェルドは肩をすくめて答えた。
「もう一度、聞かせてくれ……」
カガリが弱々しく呟いた。バルトフェルドは黙って再操作する。
ブリッジにウナトの声が流れる。
それが終わると、
「もう一度……」
カガリが呟き、バルトフェルドは指示に従う。
それが三回繰り返された。
「もう」
「カガリ」
四度目の声をキラが止めた。
のろのろとキラの顔に視線を合わせたカガリの、大きく見開いた瞳が潤む。
「だって、キラ。約束したんだ。私はウナトと……」
キラは再びカガリを抱き寄せた。今はただそうすることしかできない。
「つまり……ウナト氏は最初から同盟締結を破棄するつもりはなかった……ということかしら?」
「さて、な。三日前にはそのつもりだったのかもしれんし、この会話も相手へのフェイクで
本心じゃないのかもしれん」
キラの腕の中でカガリが振り返った。その瞳に縋るような色が浮かぶ。
「だけど、フェイクだっていう確証もない?」
「そうだ。だから、キサカ氏に協力を頼み打てる手は打った。
ああして国家元首の意思を公に表明しちまえば、そう簡単にそれに反する真似もできまい。
多少の時間稼ぎにはなる。
だが、それもお前がセイラン家へ入ったらお終いだ。セイランに全てを託す。そういう『約束』
だったんだろう?」
その言葉にカガリが肩を落としてうな垂れた。
「それじゃあ、人質のお嬢さんは凶悪な誘拐犯の命令に大人しく従ってくれたまえ」
バルトフェルドのふざけた物言いにもカガリは苦笑すら見せず、ただ小さく頷いた。
全体の感想は
>>305の通り。色々な事情があるのかも知れんが投下はスムーズにして貰えると有り難い。まあ、一読者の我儘と思って聞き流してくれ。
309 :
3-214:2007/05/28(月) 22:33:17 ID:???
沢山の連投解除支援、誠にありがとうございました。
家の者が誤って電話線を抜いてしまったようです。orz
>305様
いつもご意見・ご感想をありがとうございます。
一人でも多くの方に面白いな、と思っていただけるものが書けるよう
これからも精進・努力する所存です。
よろしくお願いいたします。
>>Exploration
サブタイトルについてはメール欄に書いておくとほぼ確実に反映してくれますよ。
このスレのまとめ管理人は仕事が早くて細かいので定評が在る影の名職人です。
ただし巫山戯すぎるとまとめサイトでの名前を『むっつりスケベ』とかにされるので
注意。アレは笑った。
箱庭系というのは新シャア板の一部で通用しているssの一ジャンル名。
多分此処の造語なのでググっても出てこないでしょう。上の方に在るss
『ウンメイノカケラ』が、箱庭系の代表作が一つとされている筈です。
ジャンルの特徴としては、登場人物の行動がマクロな世界に波及せず、
あくまでその人を中心としたミクロな世界、時として本人の心情のみに帰ってくる処。
これを薦められたというのは、心情の描写力が認められたという事だと思います。
>>In the World,after she left
トラブルを越えての投下乙です。
シナリオは中々面白いですし、キラや虎が自分の立場も在る程度把握しながら
動いている描写を入れるのは良いと思いました。
気になったのは神視点になっているところでしょうか。それでも描写に破綻が無いように
書けていると思いますが、カガリの心情を()で表している以上、カガリ視点での心理描写に
特化した方が深みが出たかと思います。
新連載特大号 目次(1/2)
インパルスの手のひら、ステラを湖へと静かに押し出すシン。だが湖面から伸びた腕はシンをつかみ・・・。
魁☆オーブ学園!
>>147-148 ドミニオンの面々と元PPの3人。彼らに再度賊が迫り、ザフトと連合の元特務隊はついに共闘を!
何でも屋ドミニオン
>>151-152,259-262
トダカは戦乱のオーブの中、一人の少年シン・アスカを助ける。彼の扱いに悩み逡巡するトダカ。
もしもシンがオーブに残ったら
>>158-161 連合がオーブ解放作戦を開始した戦場で、若者達は自らの生きる標を探して行く・・・。
CE大戦秘話
>>173-174 連載開始記念 主要キャラクター等基本設定
>>155 ヤキンドゥーエは最終局面! 【彼】を傷つけることを躊躇するサーシャにフォビドゥンは襲いかかる!!
彼の草原、彼女の宇宙(そら)
>>182-187 自らの意に染まぬまま結婚式の祭壇へとあがるカガリ。彼女に手を差しのばすは鋼鉄の羽の天使・・・。
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜
>>194-199,287-296,306-307
時はC.E.85。地球圏共和連邦の元、平和に見える世界。だが戦乱の残り火は密かに燻り続けた・・・。
anarchy in the C.E
>>201-202,210,237-238
新連載特大号 目次(2/2)
ディアッカの撤退により取りあえずの勝利をつかむサイ。その彼へロンド・ミナが更なる事態混迷を伝える。
機動戦史ガンダムSEED
>>226-235 隠密行動を取るシン達は『敵』の本体を発見する。そして隠密行動の静寂を破った新たな敵とは!?
SEED『†』
>>243-246 戦闘の為だけに『作られた』強化人間達。彼らの思いは誰にも語られることは無く・・・。
Exploration of Personality
>>254,266
彼と過ごした日々は夢?昼下がりのカフェテラスで親友と他愛の無いお喋りをしている私は、幸せ・・・?
名も無き花散る頃
>>269-270 各単行本も好評公開中
詳しくは
ttp://pksp.jp/10sig1co/ までアクセス!単行本編集長への乙も随時受け付け中!!
読者の声も素直な感想、鋭い批評どちらもますます募集中!
職人達の新たなインスピレーションの鍵を開くのはキミのたった一行だ!!
※お知らせ
◆JOaW6wYxoc先生の作品は、取材旅行の為約1ヶ月程度休載します。
ますますパワーアップした先生の活躍にご期待下さい。
諸般の事情により今回は2レスに跨ることとなりました。
駄レスでのスレ消費にご理解を頂きます様お願い致します。
そして文章量や能力の関係上ネタ振り全てに答えるとも限りません。
こちらも予めご了承を願います。つーか急に振られてびっくりしました。
編集後記:こんなモンを作るのに3時間もかかるとは思わなかった・・・
編集長乙。
このスレは職人諸氏、まとめ管理人氏、編集長の御尽力で成り立っていると思う。
俺は一読者に過ぎないけれど皆様方にありがとうと言いたい。
つーかそろそろ十大付録とかついて来そうだ。
別冊付録
遂に演習当日。珍しく気合いのはいるレイとテストが気になるシン。
P.L.U.S. SS
>>279 申し訳ない。原稿落としてしまった・・・編集失格orz
他意はないのでお許しを
>>313 >つーかそろそろ十大付録とかついて来そうだ。
早速付けることになりました・・・
意外な展開に笑った。編集長いつも乙です。
編集長GJ!
投下ラッシュで週刊新人スレの発売少し遅れるかな? と思ってたけど流石です!
編集後記でふいたww
上手いとは思うけど、弐国氏の作品を手放しで褒めるのは、なぜなのか気になる。
ここだけでなく、ほかのスレでも褒めちぎっているけど
他のスレなら、文法がおかしいとか句読点の使い方がヘタだとか
妙な上から目線で、説教する輩が沸いて出るのに……褒め殺し??
>>317 >>280,282-283
つまり基地外だと、そう言うこと
>他のスレなら、文法がおかしいとか・・・
ちなみに弐国氏に関しては毎回文章に指摘をされてるし
毎回指摘部分を一生懸命直した跡が伺える
ただの新人だと思うんだが。粘着される意味がわからん
荒らしに反応するくらいなら感想を書こうぜ?
>>Exploration of Personality
読み直していて今気付いた。
>No Future For Me! L.A.M.F.!
氏もパンクが好きなんだな。ジョニー・サンダースとは恐れ入った。
氏の筆力、個性に箱庭系は向いているとは思うが、自分の好きな物を書いてくれ。
GJ 虎がカコイイ
“roads to new temple”
「観自在菩薩……」
イザーク・ジュール改め威作入道の読経が斎場に響いている。場内にいる人間は全て悲痛な声を上げて泣いている。
アスランはヤキン・ドゥーエにて父親を殺めた為に天外孤独の身ではあったのだが、かねてより親交の深かったカガリ・ユラ・アスハが喪主となり盛大な葬儀が営まれている。
キラは溢れ出る涙を拭い参列者を目で追う。旧クルーゼ隊、ミネルヴァ隊の人間が主である。
オーブや旧地球連合からのの人間は少なくカガリの縁者と政府関係者、そして元アークエンジェルの人間のみくらいか。
懐かしく様々な感傷が沸き起こってくるが今はそれに浸っているような気分にはなれない。
竹馬の友が死んだのだ。しかも変死体として見付かったのだ。全てを究明させて、もし他殺であるのならば極刑……三族誅殺にでもしなければ気が済まない。
「……キラ。久し振りだな」
疲れ果てた表情を浮かべたカガリが歩み寄ってくる。その足取りはひどく重いものだ。
ご愁傷さま、と声を掛けて世間話がてらに世間話をしていると、カガリの口から信じがたい言葉か発せられた。
オーブは民主制を取り入れ共和国となると言うのだ。
「カガリ、気は確か?君が治めるからこそオーブは、地球は平和なのに……」
キラの言葉は嘘だ。キラやラクスが望むのはオーブをカガリが治め、それを遠隔操作する事だ。オーブが民主制を取り入れてしまえばカガリは権力者の座から引きずり下ろされてしまうだろう。
オーブとプラントがあって初めて地球圏共和連邦が成り立つ。オーブをコントロール出来なければ唇滅んで歯寒し。世界が砕け散ってしまうのだ。
「もう決めた事だ。友人としての言葉として受け取っておく。これ以上の言葉は不要だ」カガリはキラの目を真っ直ぐに見つめてくる。
キラは心の中で馬鹿めと毒づきながらカガリの元を離れる。
政治音痴もここに至ればお笑い草だ。民主制と言うのは数の暴力。力があれば勝てる様に出来ているのだ。カガリは国民人気はあっても利権を産み出す事はない。だから力が無い。
利権は力を産み出す。結局の所政治は利権を追い求めるゲームに過ぎないと言うことをキラやラクスはエザリア・ジュールから叩き込まれた。
ラクスは議長であり政権を握っているが権力はは無い。プラントの実権はエザリアジュールが握っているのだ。
キラはラクスが議長に就任した時の事を思い出す。
エザリアが後押しをしてくれたのでお礼として苦心して作り出した多額の現金を謝礼としてわたしたのだが、エザリアはその三倍の現金を議長就任の祝いとして送ってきた。
力の差を見せ付けられて惨めな思いをした。しかも謝礼を銀行の帯封の付いたピン札で渡した為に、裏金の扱い方を知らない政治音痴のお公家さんと嫌味を言われた。
ラクスが軍縮を訴えたので、嘗てラクスを指示していたコネクションはラクスを見限りエザリアを支持するようになった。
全てはキラやラクスが無知であるが為の失策なのだ。その代償としてラクスは議長と云う名の御輿となってしまった。
その状況を打破しようとして長い月日を費やし、幾らかの力を得たがエザリアの権勢は衰えてはいない。
キラが忌々しそうに舌打ちをすると、花輪が並んでいるのが見えた。
様々な人物から送られている。キラやラクスは勿論の事、ムウやノイマン、サイの名前まである。エザリアの名を見つけた時は酷く嫌な気分になったがどこかで聞いたような名を見つけた時、その不快感は消え失せた。
「……ブルーノ・アズラエル……?」
「色即是空、空即是色……」
キラの考えを知ってか知らずかイザークはまだ読経を続けていた。
──to be continued──
》アナーキィ
先ずは投下乙
改行をしよう。読みずらいし、わざととも思えないのであえて指摘
それとあくまで個人的感想として
今回分は表現しづらいが「チクチク感」というか粘着度が足らない気がする
ヘイトな感じが全面に出過ぎ、かな? それもちょっと違うな……
>>>>anarchy in the C.E.
投下乙。
改行については上で述べられている通り。携帯から投下しているのかも知れんがな。
まあ、環境によって変わるから好きにした方が良い。
内容については構成に難あり。葬式でいきなり政治の話題になるのはぶっ飛びすぎだ。
しかしそれが良い意味でのカオスを産み出しているのはいなめない。
今回は冒険しすぎだと思う。もう少し丁寧に書いて貰いたい所だ。
全体的に言えば笑ってしまった。普通ならばヘイトと叩きたくなるのだが般若心経でヘイトが薄まりギャグとなっていると感じた。
サブタイのセンスは相変わらず脱帽。判る奴は少ないと思うが俺は感心した。
ブルーノ・アズラエルがいかに関わってくるのか期待。
更なる精進を希望する。
追加
新シャアで利権政治を書いたというアティテュードは物凄く評価する。
アティテュードってwwww
姿勢でいいやんww
329 :
新人:2007/05/29(火) 23:37:43 ID:???
せめて、夢の中だけは
第1話 求める心と変わる想い
──足りないと言うのか。
──まだ足りないと言うのか。
──まだ俺に、苦しめと言うのか。
力を求め、血が滲むような思いをしてこれまでやって来た。
破壊の力を、守護の力を、純粋な力を求めこれまでやって来た。
それでも足らないと言うのか。苦しめと言うのか。まだ世界は俺から奪いたいと言うのか。
世界は、お前は、俺を弱者と罵るか。俺を無様と罵るのか。
弱者でいいだろうが。
無様でいいだろうが。
泣くよりも、悲しむよりも、マシだろうが。
弱者でも、無様でも、泣くよりも悲しむよりもマシだろうが。例え何を言われようと、何をされようと。
俺は力を求める。倒す為の力を。護るための力を。純粋無垢なる力を。
俺は俺から大切なものを奪ったお前を赦さない。例え現在(いま)は足りなくとも、いつかお前を倒す力は満ちる。そしてその力で護ろう。せめて現在(いま)を生きるものたちを。
現在(いま)は駄目でも、現在(いま)は弱くとも。未来(あす)には少し強くなる。そうやって力を求め続けるだろう。
弱者め。無様な。そうやってお前は罵るだろう。弱くて何が悪い。無様で何が悪い。
弱くて、無様な俺にお前は負けるんだからな──!
「シン……最近変だよねぇ……?」
ミネルバの食堂で愚痴にもとれない呟きを漏らしたのはルナマリア。
そして本来それに応えるものは、いない。アスランは艦のクルーとは距離を置いているし、レイは何かの作業に取り組んでいて室外に出てはいない。メイリンは現在オペレーターの仕事に就いていて会話など無理がある。ヨウランとヴィーノは整備に着きっきり。
で、シンはというと、ベルリンの一件以来ずっと室外に出て来やしない。
出て来ても食堂で食事を採るだけ。まぁ本来そのための食堂なのだが会っても会話は無いし、話しかけても不機嫌そうに返事したり時には無視など。
何があったかは知らない。しかし彼は、ゆっくりと、確実に、壊れていってるようにも思える。
求め過ぎている。自分の体の限界を解っていない。そう、まるで──
「まるで……何かにとりつかれたみたいだな」
その気持ちが言葉になりかけて、落ち着いた声が遮った。。
振り向けばそこには見慣れた姿が在った。アスランだ。
「あいつは見失っているよ。あいつは一人じゃないのに一人で何かに取り組もうとする。その気になれば二人でも三人でも取り組めるのにな」
「一人……で?」
「ああ、言葉にし辛いが……ルナマリア。言えるほど俺は親しくないが……シンのことを見限らないでやって欲しい」
まるで過去の自分を見て、苦しんでいりように私には見えた。そして自分の様にはならないで欲しい、と願っているようにも見えた。
いいや、それ以外にも。苦しみながら、自分の様にはならないで欲しいと願いながら、″助けて″そう言ってるように見えた。
「俺には……無理だからな……」
アスランはそう言って立ち去った。
私には彼──アスラン・ザラが哀れに思えた。今までの憧れや何もかもの感情が変わっていく感覚。血の気が引いた。私は一体なにを考えているのだろう。
私はこんなんじゃない。嫌嫌嫌嫌嫌。私は否定する。否定する。否定する。
それでも──
私の彼に対する考えや気持ちは変わらなかった。深く根付けられてしまった。
それと対照的に私の、シンに対する気持ちは──ゆっくりと変わり始めていた。同情に似たものへと──
331 :
新人:2007/05/29(火) 23:50:35 ID:???
続く
こんな感じでよろしいのでしょうか……?
投下乙、とりあえず1人称か3人称かどちらか片方にした方がいいと思う。
》せめて、
投下乙
人称がぶれて見えるのでハッキリ書き分けた方が良い
もう一回だけ推敲の回数を増やしたらどうだろうか
自分の世界は持ってそうに見えるからあとは文字にするだけ
あと改行もしないと読みづらい
そんなことで読んでもらえなかったらもったいない
>>新人
投下乙。新人とは思えないクオリティに驚いた。
内容は面白い。シンのモノローグが良い味を出している。
視点については上で述べられている通り。視点を移動をするなら固定した方が面白い。
後は()でルビを振らなくても良いのではないか?
意図的にやっているのだと思うがTWO-MIXを思い出してしまい笑ってしまったのは俺の感性の問題。
全体的に言えば上手くまとめられていて一定以上の水準を超えていると思う。
このスレへの投下を回避する職人が多い中、あえてこのスレに投下したアティテュードに拍手。
更なる精進を希望する。
※アティテュードとは態度とか姿勢という意味。俺はこの言葉が好きなので使わせて貰う。
Altitudeと空目した。
目標に達するにはどれだけ高度取ればいいのかと…
>>anarchy
何故弐国氏が投下なさっているスレに薄汚い低俗なヘイトSSを投下するんですか?ヘイトSSならヘイトスレに投下して下さい。非常に不愉快です。はっきり言って最低ですね、あなたは。
>>334 俺はアティテュードよりもマッティテュードの方が好きだw
338 :
感想:2007/05/30(水) 16:53:29 ID:???
>>anarchy
政治の中身に一歩踏み込んだのはよいと思いましたが、むしろこの場合キラの心情が
場にそぐわない物になっていました。
短編のまとめ方として考えたなら、政治的な考察は葬式が終わった次の回に持ち越し、
カガリの言葉を聞いたキラが心中で一言"夢想家め"と言うだけにすれば締まったかと。
>>新人
改行、視点は上でも言われているので省略。
感想を言いますと、最初の独白を上手く纏めてあるので掴みは充分、と言った感じです。
地べたを這いながらも力を求めるシンの姿勢がよく出ていると思いました。
お二方とも投下乙。続きを楽しみに待っています。
>>336 同感です。
弐国氏の素晴らしいSSが下劣で下品なヘイトSSで汚された気がしますよね。
弐国氏が可哀想です。
>>336 339
お前等このスレのテンプレ読めないのか?
それとも意図的に無視しているのかな?
“名も無き種割れる頃”
「さようなら、edさん。二度と会うことは無いだろうけど……。また会えたら良いね」
種蒔きさんは私に高畑さんの遺書と遺品を手渡すと仄かな笑みを浮かべた。
「また……必ず会いましょう?私と貴女、なんだか似てる様な気がする」
私は出来る限りの精一杯の笑みを返して種蒔きさんの小指に小指を絡めて指切りげんまんをした。
種蒔きさんと慰霊碑で別れてからの記憶がない。何故か私は名も無き兵士達の墓に来ていた。
名前通り戦場で命を散らせた兵士達が悠久の眠りに就く墓所だ。
私はその名前が大嫌いだ。ここに眠る人達にはそれぞれに名前があり、その名前の数だけの人生があると思っているからだ。
死者を一くくりにし無個性化してしまうこの場所は、今の私の心に追い討ちを掛けるように静寂に包まれていた。
私は大きな大きな石碑の前でしゃがみ込んだ。
「ねえ、メスト。そっちに高畑さんが行ったんだって。あんた、高畑さんに会えたかな?あんたは高畑さんに憧れて兵隊さんになったんだもんね。色々と話をしているのかな?」
私は弟に語り掛ける。けれど答えは聞こえやしない。弟の遺体は今もクレタ沖――タケミカヅチと共にある。
「高畑さんは小父さんや小母さんや新人ちゃんに会えたかな?高畑さんは幸せになれたのかな――幸せだったのかな?ねえ、ねえ、答えてよ、メスト!」
私の涙が地面を濡らす。それは滲んで広がって行った。
洋服が汚れるのを構わずに膝を突く私の姿はさぞかし無様だろう。
けれど、私は声を上げていなければ哀しみに囚われてしまいそうで、怖かった。
「やだよ、シン君。私、高畑さんに言いたい事沢山あるんだよ、やだよ、嫌ぁ……」
泣けば雨上がりの虹の様に心が透き通るなんて嘘だ。
泣いても高畑さんは戻って来ない。私の気持ちは永遠に高畑さんに伝える事が出来なくなってしまった。
あの時explorationの言う通り告白していれば良かった。恥ずかしくても強がらずに自分の気持ちに素直になれば良かった。
けれどどんなに願っても時計の針は戻る事は無い。幾ら悲しんでも残酷に針は未来を刻むのだ。
空はさっきまで晴れていた筈なのに、今では私の心みたいに厚い雲が太陽を覆い隠している。
一粒、二粒。
雨粒が空から降りてくる。きっと空も哀しいのだろう。だけれども雨は私の心を冷たく濡らす事しかしない。
>>342 失せろカス。貴様のアティテュードは気に入らん。
他の職人さんの投下待ち
>In the world
本編と9割方同じなのに,微小なずれが面白い
このずれがこの先大きくなっていくのだろうか
未登場の人物の動向も含めて楽しみだ
本編では軍服に着替えていたカガリがドレスのままなのはGJ
たしかにその方がカガリらしい
細かい描写(ドレスをはさむシーンとか)は個人的には好みだが
多用すると間延びするので注意が必要
>anarchy
サブタイに意味があるようだがそちらの知識がないのが個人的に残念
(やめろ,と言ってるわけではないので誤解のないよう)
エザリアにやられっぱなしのラクスが年相応っぽくてGJ
>新人
自分の感じたことはすべて言われているので今回は割愛させていただく
続きを期待している
ウンメイの続きまだかな…
高畑さんはスレが荒れ気味だから投下を遠慮してるんじゃないかな。高畑さんもマユスレの痛い子から粘着されてるし。
このスレって新人スレですよね。なんで新人じゃない職人さんも投下しているんですか?本当の新人職人さんが投下出来ずに困っていますよ?
心当たりのある職人さんは今すぐ他スレに移動するべきじゃないですか?
>>349 もっともな意見だとは思わんでもないが、もうそんな意見はここじゃ通らないようだぞ。
スレタイは新人でもテンプレには新人のしの字も書いてないし。
なんでも新シャア板じゃ長編を書いてちゃんと完結させない限りずーっと新人扱いなんだとさ。だから問題ないんだと……わかった?
ほんの20レス前も読んでないの?
新人が投下してるじゃん
>>349 このスレにいる新人では無い職人てだあれ?
ウンメイノカケラとか名も無き花散る頃とかanarchy in the C.E.とか実録とか戦史とか何でも屋とか†とか弐国とか学園とか。
>>354 何故弐国氏の名前を一番最初に挙げないのですか?
確かに弐国氏は新人離れした描写力や表現力の持ち主ですからベテランと間違われても仕方ないですが。
結局スレタイを変更しろって言いたいために自演してんの?
>>355 ちゃんと耽美スレの保守しとけよ、落ちるぞ?
関係無い話だがexploration氏はedたんを意識してるのかな。そんな気がする。
>>353 ノ 俺。 覗いたりアドバイスは書くが、SSを書いてはいないがなw
せめて、夢の中だけは
第2話 気付けば、側には
姉は最近変だ。正確に言えば二日前の夜、部屋で会った時から変だ。
どう変なのかと言うと、解らない。ただ、変なのだ。
前はシンが最近連れないだの、アスランさんが会ってくれないだので喚いていたのだが──
それが無いのだ。むしろシンやアスランさんの事を口にすると一瞬悲しそうにしたり。
私はそれはそれでウルサくないし困らないからいいけど……なんか調子狂っちゃう。
「はあ……私、何考えてんだろ……」
私一人しかいないこの部屋で、思わずため息を吐く。
お姉ちゃんはいつもどっかいっちゃってるし、シンやレイとも遭遇する回数は少なくなるし。ヨウランやヴィーノは整備で忙しいし。
アスランさんは私達のこと避けてるし。
ベルリンでの一件以来、みんなで話すことも少なくなった。
暇を持て余している。虚しさを感じている。いや、もっと大きな何かを私は感じているのかもしれない。
ふと、アカデミー卒業記念に私とお姉ちゃん、シンとレイとヴィーノ、ヨウランと一緒に撮った写真が収められている写真立てを見る。
懐かしい。あの頃は馬鹿みたいにはしゃいだなぁ……。
何故だろう。その写真を見ると切なくなる。
そう、大きな何か。
もっと漠然とした何かとは──ぽっかり穴が開いたのような──負の感情。確実に私を締め付ける感情だ。
「……寂しい、のかな?」
私の呟きに答える者はいない。答えなんて、誰も知らない。でもこれだけは解る。
何かが崩れようとしている。大切な何かが音を立てて崩れようとしている。
でも、それが何なのかは解らない。崩れたらどうなるのかも──現在の私には解らない。
識りたくも、ない──
扉をノックする音。一拍置いて落ち着いた声が聴こえてきた。
砲を放てば最小限の動作でそれを凌ぎ、剣先を向ければ腕は一瞬の間に切り落とされる。
遠距離戦ではあの異常な機動性に敵う訳がない。接近戦ではあの異常な反応力に敵う訳がない。中距離戦など話にならない。
認めよう。お前は強い。お前は恐い。お前は凄い。だが、甘い。コックピットに攻撃を加えないことじゃない。
お前は人を甘く見ている。自分に敵う訳がないと。あの唐突に停止してハイマットフルバーストを繰り出す様など驕りそのもの。
認めよう。俺は弱い。俺は無力。俺は無様。現在は、な。
撃墜の文字が画面に表示される。リトライを選択。既に数十回も繰り返している。
人の可能性が無限大なのは人が空を飛ぶようになってから解り切っていること。
人は努力すれば空を飛べる。人は努力すれば宇宙にも行ける。人は努力すれば何だって出来るんだ。
俺は努力するだろう。俺は強くなるだろう。
ターゲットの癖はある程度解ってきた。初めてヒット。まだだ。閃光は肩部を掠っただけだ。
お前の自由という名の破壊の翼を俺の衝動という名の破壊の刃がお前を貫くだろう。
俺は自分の事を正義だとは思っちゃいない。俺はしがない──人間だ。復讐を決意した人間だ。
お前は人の身でありながら人を嘲笑う。人を無様と罵る。人を無力と罵る。
ならば、お前は何だ? 人を辞めて何になるつもりだ? 人を辞めてまで──何を成したい?
ターゲットに迫る。ビームサーベルをシールドで弾かれ″意図的に手放した″ビームサーベルが宙を舞った。
殆ど間を空けず振り下ろされるターゲットのビームサーベル。避けることは出来ない。
姿勢制御には後ほんの数瞬を要し、それは間に合わず──
──果たして、ターゲットは首付け根から脇腹にかけて切り裂かれ、地へと落下を開始する。
機械相手に数十回の敗北を重ねて、やっと一勝。一勝。まだ一勝だ。足りない。まだ──
シミュレーションを再開しようとして、
「シン。居る?」
ルナの声が聴こえた。……だけど俺は、やらなくちゃ。
そう思い返事しようとして、
「シン。聞いて。あなた、無理してない?」
耳を疑った。まさかルナにそう言われるとは。
考えてみる。頭が痛い。視界も集中していなければぼやける。何より疲労が眠気を手助けしたせいで眠い。
ルナ、元気無いのかな。声に覇気が感じられないし。そう言えばレイは何処だろう。何時もは俺の作業を見ているのに。
「ん……無理なんかしてないよ……眠いし、もう寝るとこだけど?」
「……シン。あなたは一人じゃないのよ。あなたにはみんながいる。私やレイ、メイリンやヨウランとヴィーノだって。アスランも……」
最初、どういう意味か解りかねた。
だけど、曖昧に答えておく。
「ああ、分かってる」
「ならいいや! シン。たまにはみんなで食堂行こうね! お休み!」
何時もの明るい声。何時ものルナだ。なんだか久々に聴いたな……
「ああ、じゃ、お休み」
遠のくルナの足音を聴きながら、寝床に入ってさっきの言葉の意味を考えていた。
しばらくすると別の足音が聴こえてくる。一定のリズムで近付くそれは優雅な紳士を連想させる。
扉が開いて足音の主、レイが入ってきた。
「シン。起きているか」
何時ものレイの声。
「ん……起きてるよ」
実は半分寝てたりした。
「そうか。聞いてくれ。考えたが、俺も対フリーダムのシミュレーションに協力しよう」
「ええ!?」
いきなり何を言い出すんですか彼は。全然レイらしくないぞ。
拳と拳を交えたかつての宿敵が
「仕方がない。一時協力する!」
って言って協力して敵を倒すみたいなもんだぞ。
「ヨウランとヴィーノもインパルスの整備と調整を大急ぎでしてくれるそうだ。メイリンもお前の指示通りに動けるよう訓練すると言ってる」
「あ、ああ」
「もうそろそろ消灯時間だ。俺は寝る。お前も寝ろ」
いや。お前に起こされたようなもんなんだが。
とりあえずああ、お休み、と返事はしておいた。
何だかレイと話すのも久し振りだな。ヨウランとヴィーノとメイリンなんか数日顔も合わせてない気がする。
………………そっか。
ルナの言葉の意味がやっと分かった。ヨウランとヴィーノとメイリンなんか数日顔も合わせてない気がする。
………………そっか。
やっとルナの言った意味が分かった。
俺には頼れる整備士がいる。通信士がいる。心強い同僚がいる。
一人で何やってんだか。息詰まったらレイにアドバイスを貰えば良いじゃないか。
機体を通して微調整をしたくなったらヨウランとヴィーノに頼めば良い。
実戦の感覚を味わいたければメイリンに協力して貰えば良い。
気分転換にルナと下らない会話したり。
俺って莫迦だなあ。一人で、一人で……
視界がぼやける。眠いからだ。目を閉じる。何かが目から零れ落ちても気にしない。
泣いてなんかない。明日から忙しいんだ。さっさと寝よう!
続く
改行に関してはこれぐらいですか?
>新人
改行については自分の環境では問題ないが,推奨は40〜45文字前後なので
もう少し短めの方が適当
話は上手いと思う
各キャラに感情移入がしやすいので面白く感じた
気になったのは時折単語の二重化があるところ
>お前の(略)の翼を俺の(略)刃がお前を貫くだろう。
文頭とダブるので最後の「お前を」は不要
>何より疲労が眠気を手助けしたせいで眠い。
何より疲労が眠気を手助けしている。 くらいが適当か
>………………そっか。ルナの言葉の(略)
コピペミスか? 同じ行が2回ある
続きを期待している
ご指摘感謝です。
ルナの〜は携帯故の、コピペミスです。申し訳ありません。
改行の方、理解しました。
>>360-362 ちょっと嫌な雰囲気の中、投下してくれてありがとう。
>ルナの言葉の意味がやっと分かった。
>やっとルナの言った意味が分かった。
次回投下時で構いませんのでどちらを削除すれば良いか教えて下さい。
投下乙。
内容は悪くないのだが、視点移動に難あり。唐突過ぎるので移動の前に描写を入れるなりワンクッションを置くべき。視点を統一するのも一つの手だ。
メイリンとシンのモノローグは上手くまとめてありとても良かった。
これからも頑張って欲しい。
更なる精進を希望する。
鳥付き発言にて失礼致します。
高畑こと◆YqJJJk6AAwがもう二度とSSを書く事が出来なくなってしまったと言う事を友人代表として住人の皆様に御報告させて頂きます。
誠に申し訳ありませんでした。
きっと弐国氏のSSを読んで自分の筆力の無さに絶望したのでしょうね。
お疲れさまでした。
再度の鳥付き
>>367 書く気がないではなく、書く事が出来ないてなんで?
再度の鳥付き発言失礼致します。
>>369 絶筆宣言ではありません。彼は申し訳二度とSSを書くことは出来なくなったと言うことです。彼は生きていれば書き続けたでしょう。
彼の遺作となってしまったウンメイノカケラは最終話以外は校正段階の物が私の手元にありますので、私が彼の遺志を引き継ぎ責任を持って完成させようと思います。
えっ…お亡くなりになったのですか…?
なんだよそれ信じないから
……今確認取った。ホント。ここで書くのはなんだけど……。御冥福をお祈りします。やべぇ、涙が出てきた。さよならなんて言えねえよ……。
私信で使ってごめん。今地元離れてっからここでしか言えないよ。
このスレを覗くのは初めてですが、今は静かに故人のご冥福をお祈り致します
高畑氏の御冥福をお祈りするとともに、ぜひ◆26fvVAiDE氏にウンメイを完成させて頂きたく思います。
謹んで哀悼の意を表させていただきます。
“mourning”
「シャニッ!」
光が弾けたのがモニター越しに見えた。通信を繋いでも砂嵐のようなノイズしか
聞こえない。
──馬鹿が。無茶しやがって……。
アイツは馬鹿でどうしようもない奴だけど悪い奴じゃなかった。
悪いとすれば音楽の趣味だ。ヘビメタだかなんだか知らねえがヘッドホン越しにシャカシャカ聞こえる音には激しくムカついた。
クロトのゲームがピコピコ五月蝿いのも同じだ。あいつらの趣味はやかましい。
いや、そんな事は関係無い。シャニは死んじまったんだ。
哀しみやらは無いし涙も出て来ない。ただ、もの凄くムカつく……ウザい。
「クロト……聞こえるか!?」
呼び掛けても返事は無い。ただ、いつもの様に雄叫びを上げているのが解る。
ああ、アイツはやっぱり馬鹿だ。回りが全然見えちゃいねえ。雑魚相手に暴れてるだけだ。
──こっちは変な奴らを相手してて手一杯なんだよ。艦を守らねえと終わりなんだよ!
腹の中で毒吐きながら変な奴らを相手する。
「オラオラッ!いい加減に落ちろよ!」
変な奴らは小刻に動いて俺の攻撃を次々に避わしやがる。凄え気に入らねえ。
あんなデカい図体であんなに速いなんて詐偽だ。有り得ねえ。
みるみる間にエネルギーが減っていく。やべえ、ガス欠になっちまう。
そう思った瞬間、俺は光に包まれた。暖かくて懐かしい感じがする。音も聞えねえ。眩しい光でなんにも見えない。
俺、何をやってたんだっけ?全然覚えてない。そうだ、読みかけの本をよまねえと。
ラッパが鳴ったらどうなるのか知りてえんだよ。
駄目だ。頭の中が真っ白になってく。もう、全部がどうでもよくなってく。
終わりになんて意味はない。終わり自体が既に終わっているんだからな。
違う!俺は本を読みたいんだ。まだまだ読み足りない。もっともっと読みたい。
否、本を読みたいんじゃない。俺は本になりたいんだ。
いろんな事を見てしって覚えて、そんな記憶が詰まった本になりたい。
でも、もう駄目だ。光が俺を押し潰しやがる。
どっとはらい
高畑氏に対する弔意としてSSを投下しました。
自分は初心者でありまだまだ未熟者ではありますが、SSを書くと言うことが今の自分に出来る精一杯の哀悼の意です。
高畑氏、今までお疲れ様でした。氏のSSに感銘を受けた一人として御冥福をお祈りします。
1話 《初戦》
「なんて数だ!うようよいやがる……。」
迫ってくる連合軍に弱音を吐いてしまうアキラ
オーブの大地は今ストライクダガーの大部隊、空上は戦闘機、スピアヘッドの飛行部隊。地球連合軍がどれだけ巨大な組織なのかを、アキラは思い知られた。
「アキラ!前を見ろ!!!」
スミスに再び現実へ戻されるアキラ、目の前にはサーベルを抜いたダガーが突撃してくる
「野郎………!近づく前に!」
アキラは敵にライフルを撃ち、敵機は撃墜した。
「今度は左、2機!」
その瞬間、後方から援護のビーム射撃が1機のダガーに直撃、残った1機をアキラが撃ち倒す。
「ラム三尉か!」
「はい、遅くなってすいません、遅れた分頑張ります」
援護はうまく合流したマコト・ラム三尉からだった。
これで全員そろった第15MS隊にウィリアムは命令を下す
「M1隊とアークエンジェル隊は前にでた、俺達はその右方を守る。俺について来い!」
「「「了解!」」」
目的地へ移動する中、空中では翼をもったMSが3機の連合軍MSと対峙していた……
激戦が続く中、15隊はMSだけでなく、空からの戦闘機の攻撃にも注意していた。
PS装甲を持たないM1にとって、どんな攻撃にも敏感である。防御よりも避けるというコンセプトを持つアストレイはミサイル一つで簡単にやられる。
ウィリアムは近づく戦闘機をイーゲルシュテルンで追い払い、なんとしても敵の空中援護を減らそうとしていた。
彼を撃墜しようと接近する戦闘機もシールドを使って叩き落としていった
「隊長やりますなぁ、俺もがんばりますか………」
軍では優秀なスナイパーであるアキラはMSに乗ってもその射撃能力は劣らない。
遠方から近づいてくる機体を次々と撃ち落していく。
スミスとマコトも防衛エリアへ侵入した敵を押し返していた
「おらおらぁ!このジャスティン・スミス様が相手だぁ!俺を倒すまで、オーブは落とせんぞ!」
派手に動き始めるスミスは敵の注意を引き付ける。スミスの気をとらえた敵はマコトの接近に気づかず、何が起こったかわからないまま撃墜される。
現在の戦局はほぼ互角……互角のはずであったが、
オーブ近外の海に待機していた連合艦隊の旗艦から撤退の信号弾を空に向けて撃っていた
全敵部隊もそれに応じて撤退を行い始めた……。
「撤退した……?」
「へっ……連合も大した事ないな」
スミスは勝ち誇ったように言い出す。
それを聞いたウィリアムが口を開く。
「それは違うぞ、スミス……どうやら我が軍のエースが敵軍のエースを追い払ってくれたようだな。」
ウィリアムは空を見上げる、そこには赤い機体と白い機体が敵の撤退を
「しかし、今の戦いで俺達はボロボロだ、大半の防衛システムが麻痺状態、味方機も大半が戦闘不能。次に攻めて来た時はもう……」
―――その通りだ―――
「!」
「アーシェン二佐!?という事は、本部は無事ですか?」
―――ああ、しかしこちらの損害は大きい、通信システムも限界だ。我々は次の戦闘に備えて体制を立て直す―――
―――そのためにも15隊には任務を与える。フルズ一尉、プライベート通信に移せ―――
「はっ、通信移します……」
ウィリアムの機体は動きを止め、アーシェンとの通信n入る。約5分も続く沈黙でマコト達は動じない機体を、黙って見ているだけだった。
「……よし、トモヒサ・アーシェン二佐直々の命令だ…………本隊はこれよりエリアの警戒及び、防衛態勢に入る」
いやな予感がしたのか、スミスは頭にある疑問を聞いてみた
「作戦の期間は?」
「今、軍は連合との会談を要求している。なんとか休戦に持ち込むまでか、それとも再び攻めてくるまでか………」
「それじゃいつまで終わるかわからねぇぞ!徹夜かもしれねぇ」
「だから無駄な体力は使うな。最初は俺とラム三尉がやる。2時間おきに交代だ、その間に休め」
「ちっ…「「了解」」」
これによって、15隊は休む事はできなかった。しかし機体の補給はなんとか受け取った………
夜空の星を見上げていたマコトはこれまでの事を思い出す。今日は彼にとっての初めての実戦………。
今回は生き残れたが次はこうはいかないかもしれない。また連合が攻めてきた時はどうなるのだろうか?
不安を胸に抱きつつ、次の日を迎えるのであった…………
職人諸氏投下乙。
>>Exploration of Personality
戦闘の描写が解り難いが、オルガのモノローグでの心理描写メインで上手くまとめられていている。
内容はちょっと無理があると思う。しいて言えば本にこだわり過ぎているように思える。
全体的に言えばこじんまりしすぎているのはいなめない。狙ってやっているのかも知れないが。
更なる精進を希望する。
>>CE大戦秘話
内容は悪くない。全体的に上手くまとめられていていると思う。
難点を上げれば地の文で三点リーダーを使いすぎている。無くてもいいんじゃないか?
戦闘描写も上手く出来ているが、もう少し疾走感が欲しいところ。
更なる精進を希望する。
高畑氏の友人である職人の方々にお悔やみ申し上げると共に、御冥福をお祈りする。
氏については評価するべき所も批判するべき所もあるが、2/14の悲劇を乗り越え
精力的に執筆をし、カテゴライズ不可能な活躍をされて来たことに対し最大限の
賛辞をささげたい。
氏の作品の続きを読めないのは非常に残念であり、惜しい人物を亡くしてしまったと思う。
自分はあまりGJとつけた事もなく今更ながら遅いのかも知れないけれど、新シャアにて新しい風巻き起こした氏の業績を讃え、万感の意を込めてGJと言いたい。
皆乙!!
皆、GJです!
そして……
なんということでしょうか。
今また一人、先人であり目標であった方が去ってしまった。
合掌
》Exploration
リズムで読ませる文章は好き
後半、本へのこだわりを見せる一方でリズムが悪くなったのは残念
》CE大戦秘話
地の文が少々説明くさい気がする
あと個人的には前にも書いたが台詞があまり軍人臭くないのが気になる
シナリオがどう動くかは今後に期待
高畑氏に何があったのかは知らないし、正直好きなジャンルでもなかったが
SS書きの端くれとして、同胞の死に際し謹んでご冥福をお祈り申し上げる
ジャンルwww
ジャンル名【高畑さん】
幅広い芸風。突如現れて読者を光りの速さで置き去りにするのが特徴。
「今は○○に集中したいから続きはまたいつか」などと言いつつあちこちのスレに出没し続きを書かない。
大好きな高畑さんに最後まで置き去りにされた…
とまぁ、しんみりしてても仕方ない。以後職人さんの投下ラッシュが始まる↓
15/
「後方でエネルギー反応……艦船級構造体の爆発によるものと推測されます!」
「なんですって!」
メイリンの報告が入るなり、ゆっくりと近づいているモーガウルからも
新たな動きが伝えられる。長大な船体から飛び出る燐光、それはモビルスーツの
噴出すプラズマジェットの奔流だ。
「デイルがついていながらザフトレッドがなんという体たらく……。
――レイとルナマリアで迎撃、ミネルバは未だ動けないわ、アーサー!」
「――は、はい!」
副長が席につき、ミネルバの統轄に加わる。
「こちらの動きが察知されたかね、グラディス艦長?」
「はい、どうやら敵艦を爆砕してしまったようです。モーガウルにも?」
「観測されてます」当然というメイリンの口調。
「……これで敵がMSを全て出して来れば却って対応が簡単なのですが」
「モーガウルからのMS反応を確認、一機のみです。到達まで五十秒!」
バートの報告にタリアは唇を噛む。モーガウルの腹中に残った一機、その能力に
よってはモーガウルを新たなデブリの海に沈めた上で、ミネルバを無力化する事も
出来るだろう。
「バート、モーガウルは――?」
「進路そのまま、加速20。本艦に接近しつつあります」
「ルナマリアとレイに通達。その場に隠れておきなさい。良い? 相手はこちらが
MSを出したとは考えていない可能性があるわ。敵を限界までひきつけます」
「その後は――?」
不安げな副長に、タリアは沈鬱にして決意を秘めた眼差しを向けた。
「アーサー、連絡を。アレックス氏に以下の事を伝えて――」
16/
『このカニの記録を取る、三十秒経ったらミネルバに送れ。暗号化は要らん!』
「――どうしてすぐやらないんですか!?」
『艦長が色気を出したらコトだ。俺はジャスティスを捕まえろと言われた事が在る!』
然もゲイツ二機で、だそうだ。
『あんな真似は二度と御免だ。いや、報告は矢張り要らん……来るぞ!』
比較対象の無い宇宙を動く"ヤシガニ"は、シンの目にはいかにも鈍重に見えた。
「蟹だの亀だの、甲羅は踏む為にあるんだよ――!」
上へ――"ヤシガニ"の機先を制するように加速接近、背部甲羅に着地すると一号機を
スラスターで押し付けて脚部を固定する。大きく、鈍い――しかしそれはシンの錯覚だ。
大きさのスケールが違う"ヤシガニ"はその実ゲイツRに匹敵する加速で動いていた。
"ヤシガニ"がその巨体を大きく、振る。
「……――!」
80t近いゲイツの重量とそれを加速させるスラスター出力を歯牙にも掛けられずに
跳ね飛ばされたシンは、拡大表示された"ヤシガニ"がその爪を突き出している様を見た。
「間に……合え――!」
背筋を駆け巡る危機感と共に海賊船の最後が思い出された。吹き上がる汗のじめつく
感触をまざまざと感じながら最大加速コードで離脱……ビームの励起には溜めが要る、
そしてゲイツRのスラスターがプラズマを生成するのにも――加えてビームは亜光速、
対してゲイツの加速はたかだか10G。
果たして、ビーム粒子が形作る大蛇の牙を辛くも回避する殊に成功する。
「まだまだァ――」
再び背後に回りこもうとしたシンの目に迫り来るカニの真正面。クローから間断無く
放たれるビームの嵐。武装を格納し高機動モードへ、加減速を乱雑に繰り返し、ジグザグな
軌道で回り込む様に回避。ビームチャージの合間に距離を詰めようと加速したシンに、
時間差を置いて実体弾が雨あられと降った。
『シン……ビームだ、離れろ!』デイルの警告。
背中にちりちりと収束する熱量を感じる。直感に任せてデブリの後ろへ、高熱高速の
粒子流をやり過ごす。しかし"ヤシガニ"はビームを細く、励起時間を長く再設定して
――静かだったデブリの海がビームになぎ払われた。
砲撃がデブリを焦熱の中に喰らいつくし、潜む場所から飛び出た一号機の装甲を
至近弾が焼いた。直撃、胴体への致命打だけは避けているものの、攻撃サイクルと
間合いを読みきれない未熟さが徐々に損傷を増やしつつある。
17/
『足を止めるな、死ぬぞ!』レールガンで牽制しながらデイルが声を張り上げる。
「そんな事……言ったっ――!」応えるシンはGに息が詰まり、語尾が掠れた。
回避しようにも巨大なクローは一号機に狙いを定め、ビームで進路を塞いでくる。
相対速度を合わせられてしまえば、MSの機動性も一秒に精々数十メートル変化する程度の
代物でしかない。距離を詰められ、ビームの檻に捉えられたシンの判断と操縦に乱れが
生まれてきた。
『動き過ぎ……乱数回避に頼るな、相手のコンピュータに読まれるぞ!』
相手は巨大、人型でない分機構は単純。余ったCPUは戦況判断に投入してくる。
『落ち着け、砲の大きさを見ろ……推力が在っても反応は悪い』
デイルはあえて静かに声を掛けてくる……つまりそれほどシンに余裕が無い。
"ヤシガニ"の動きに対応している二号機に比べて一号機は動きが明らかに悪かった。
大振りな動きを繰り返す一号機に狙いを定めてきたらしい"ヤシガニ"の火線が徐々に
シン――一号機へと集中してくる。慣れないパイロットシートへと体を押し付けられる
シンは必死の形相でスティックを動かすが、インパルスのような敏捷性と凶暴な加速力を
持たないゲイツRは如何にも動きが鈍く感じた。
前面モニターの左側は既に砂嵐に包まれている。其処にデイルからの通信――
"SOUND ONLY"の表示の向こうから焦燥に満ちた声が聞こえてくる。
『ミネルバは――』戦闘が始まっているか、という事だ。
「まだビーム光は無いです……それよりもコイツでしょう!?」
返事の間にも"ヤシガニ"から降り注ぐビームの嵐を回避、回避、回避。
ビーム砲は、巨大さによって反応が悪い。しかし射程は相当。射角も広い。
中距離に実体砲、接近すればCIWSの嵐が、密着してもクローがある。
『このまま攻め合いは割に合わん』
「でもバッテリーが……」
『こっちが行動不能になる方が早い。このカニが俺たちを無視する、という選択肢に
気がつく前に仕留めるぞ』
そうなのだ、この巨大なMAを阻止しながら撃破する能力が、今のミネルバには無い。
今"ヤシガニ"がたった二機のMSにこだわりを見せているこの瞬間が唯一のチャンスであった。
損傷によって動きが悪くなるか、攻撃に対応して回避が良くなるか。ゲイツに慣れぬ
シンの技量は五分の分水嶺に立っている。"ヤシガニ"の砲撃の度一号機に増えて行く損害状況を
見たのだろう。デイルは切羽詰った声を張り上げてきた。
『俺が間合いを詰める。援護しろぉ!』
18/
反転、突撃する二号機。速度ベクトル――緋色の矢印が"ヤシガニ"に延びて行く。
カニに負けてはザフトの恥と突貫するデイルから"ヤシガニ"の目を逸らすべく、
シンはMAの死角に入りながら両腰のレールガンを撃ち放した。
――喰らえ、当たれ、落ちろ!
巨大なものを打ち倒す……コーディネイトされた人類であろうとも、進化の途上で刻まれた
狩猟への渇望は拭えない。トリガーの度、一撃毎に操縦席を揺らす特有の連射リズムが意識の
奥底、本能に眠る攻撃性を刺激し、ヘルメットの中にアドレナリンの匂いが満ちた。
レールガンの軌道は次第に"ヤシガニ"に向かい、そしてついにその巨体を捉える。
「――弾かれた!」
二撃三撃を送り込むよりも早く二号機が"ヤシガニ"に迫った。
――デイルに当たる。二号機が照星に入った瞬間にトリガーの指が緩む。
しかしこれは宇宙の話だ。近づいて見えた敵機と僚機だが、隔たりはその実キロ単位あった。
連携の骨子は二本。敵の対応力を削ぎ、味方への攻撃を逸らす。それが失われた。
「しま――」
後悔の余裕も再射撃の暇も無い。掩護の途切れは"ヤシガニ"に十分だった。
交錯するゲイツとMA、激突の結果は"ヤシガニ"の背にデイルのシールドクローが
残した引っかき傷と、ビームに吹き飛ばされた二号機の右脚だった。
"ヤシガニ"と二号機互いの部品が新たなデブリとなって虚空に漂う。
デイルの身を案ずるシンに怒声がとんだ。
『馬鹿野郎――! お前のヘタレたションベン弾にカマを掘られる俺かっ!
二号機に当てる積もりで援護しろショーン!』
「……!」
それは焦りがもたらしたミスなのか。強敵を前にした緊張の中で、デイルは背後の
シンより最も信頼した男の名を呼んだ。
ザフトレッドのシンよりも、今この瞬間に生きてゲイツRを駆るシンよりも、
既に魂が宇宙に溶け去った男の方が信頼できる。
そういうことなのだ。
――情けねえ!
感じた不甲斐なさをどうするか? シンが信頼する戦友ならば、二人ともそれを
決意に昇華しろと言うだろう。操縦席に残った誰かの気配までもが、それを望んでいる
気がした。
シンはモニターの二号機と"ヤシガニ"を睨み、叫ぶ。
「デイル――もう一度援護する。今度はそっちが死角に入って! レールガン、
連射間隔は0.4で固定、カニのツラから七つで詰める!」
『よし――任せたぞ、シン!』
19/
任せたぞ。そういって真っ直ぐにこちらを向かってくる声。そうだ、自分がレイに
言う時の口調だ。突撃屋のシンと射撃下手のルナマリアを援護するのは並み大抵の
苦労ではないだろう。彼らは母艦を守って居る。カニに食われている場合ではない。
それからこの機体――ゲイツRだ。省エネルギーのためか知らないが、戦闘出力時
だろうとプラズマの生成密度を絞ってある。お陰でAT車のように操作から加速まで
一拍空く。民生用ならかまわない仕様だろうが戦闘では失われた敏捷性は致命的だ。
気に喰わない。だからこそ、乗りこなしてやる。
『――GO!』
互いに弾かれあうように、反対方向へ加速する二機のゲイツ。
「こっちに……来い!」
一号機はあえて"ヤシガニ"の真正面、射撃可能領域に深く入り込んだ。
レールガンと機体の操作、両方を同時に意識する。扁平な胴体から伸びた巨大な
クローの先からひしひしと殺気を感じる。それが凝縮する寸前にペダルを踏み込み、
一拍置いて感じる加速感と共に凶暴な火線を回避。引き絞ったトリガーが針状の
対装甲貫通弾をレールガンから吐き出させる。
電磁力の弓で加速された数キログラムの弾体はビームの航跡を遡るように
"ヤシガニ"の装甲に届く。結果など確かめずに第二弾。
初弾は丸みを帯びた装甲に弾かれた。次弾はデイルが残した傷に潜り込み、
表面装甲を吹き飛ばす。灰色の下から現れたのは、黒い金属光沢を放つ二次装甲だ。
「TPS装甲――!?」
『――道理で硬いわけだ、だがネタが分かれば恐くはない!』
一号機、二号機共に全力加速、そしてシンが六秒弱の間に打ち込んだ針の数は14、
そのうち一ダースは着弾し――
『そこで俺が詰める……と。貰った――!』
――死角から至近距離に潜り込んだ二号機が、腹にシールドクロウを見舞った。
ゲイツRの突撃力を存分に生かした攻撃は"ヤシガニ"の腹を深々と切り裂き、
背後に構築されていたスクラムドスラスターユニットの大半を抉る。
と、動きを止めた二号機に向けて"ヤシガニ"のクローが横薙ぎに振るわれた。
シールドで逸らすも二号機の右脚が引き千切られる。
その一部始終を、シンは見ていた。何処から?
"ヤシガニ"の背後、ビームサーベルを今しも振り下ろさんという至近からだ。
20/
「俺だって接近戦が得意なんだよ……掩護よりもなぁ――!」
"ヤシガニ"の注意が腹部の二号機に集中した瞬間を狙い、眼と鼻の先まで接近した
ゲイツR一号機はクローの一撃を掻い潜った。中距離から近距離へと詰め寄る切り替えの
速さこそが自分の得意だという自負を掛け、ペダルを踏み込む。
「がら空きだ――!」凶悪な笑みを浮かべてスティックを振るう。
腹部、装甲が剥がれ内部機構の覗く其処へ向けてビームサーベルを叩きつけた。
強電磁界にトラップされたプラズマジェットが"ヤシガニ"の装甲に触れて均衡を崩され、
接触した部分から高熱の電離気体が流れ込んでいく。そして放熱、溶解。
各所から火を噴きながら"ヤシガニ"の動きが一瞬、止まった。
『今だ、火力を集中しろ――!』
デイルの号令。突撃銃とレールガンを構えた二号機に追随してシンは一号機に
射撃体勢を整えさせた。
打ち込むコードは唯一つ――"全弾発射"。
ゲイツRの最大火力が、回避行動の取れない"ヤシガニ"へ向けて殺到した。
「無力化……出来たのか?」バッテリー残量も心もとない一号機の中で、シンが呟く。
『どうやらそのようだな』同じく手足を半分失った二号機から、デイルが応えた。
「それにしても……堅いな」
シンの面前には、扁平な形の所々を欠いた半死半生のMAが在る。
火花を吹き断末魔の"ヤシガニ"は、それでもある程度の原形を留めたまま、
なによりもコクピットが潰れていないという呆れる程の耐久力を示していた。
『……パイロットを引きずり出す』
二号機を追うシンは、焼け焦げた灰色の装甲に赤い光点が灯るのを見た。
直径はたかだか十センチ。コーディネーターの視力を存分に生かしてやっと
発見出来る程度の光点だろう。虚空の何処かから"ヤシガニ"へ向けて放たれた、
どう見ても装甲に穴を開ける事は出来ないそれは――
――レーザー照準?
浮かび上がる疑問と共にアラート。
「ガンマ線反応……511keV――!」
それは電子と陽電子が対消滅を起こした証拠だ、つまり――
『陽電子砲だ……退けえ!』
「なんだってえ――!」
21/21
ペダルを踏み抜く。空白時間――もどかしい――直後に体を打ち抜く加速G。
画面が白く染まる。
モニターを焼いたのは、"ヤシガニ"の残骸へ向けて迸り炸裂した閃光だ。
ディラック方程式に導かれる負エネルギー解――反物質たる陽電子を受け入れて
破壊の運命を免れる物体は存在しない。
残ったマニュピレイターとシールドで撒き散らされたガンマ線と破片を防御しながら、
シンは機体へと襲い来る宙間衝撃波に只管耐えた。
「ここまでやって……守るほどの機密かよ――!?」
無限に思われた時間は、実は数秒にしか過ぎなかったのだろう。
不意に耳奧の残響に気付いたとき、シンはそれが静寂ゆえの耳鳴りだと分かった。
ハッチを手動でようやく開く。真空に漏れ行く空気と共に緊張も薄れる。外部の安全を
確認したとき、"ヤシガニ"の一部だと確認できる物体は最早無かった。
――部品の回収は不可能。
周囲に敵影なく、"ヤシガニ"をこの宙域から消し飛ばした戦艦の陰も形も無い。
「結局……何だったんだ?」
『分からん。何かのテストに来たのは確実だがな』
二号機が一号機に接触して装甲越しに通信回線が繋がった。アンテナは全滅している。
焦げた装甲裏から予備部品を引き出す動きも淀みないパイロットスーツ姿のデイルが
手振りで『帰ろう』と伝えてきた。
「帰る……帰る、か」息をつきながらミネルバの無事を心配した。
『信号は確認できるな、どうやら、向こうも無事らしい』
手早くセンサーを再起動させたデイルの確認に、何故かシンは"褒められた"と感じた。
星の数より飯の数を地で行くデイル=ホッパーは、面倒見の良かったショーンの死後、
新米の赤服達を育てる役を自分に課して居るのかも知れない。
「……これが頑張った甲斐って物ですかね?」
デイルは答えなかった。
「……デイル?」
『俺は少し疲れたぞ……年の所為かな。宇宙が少しごちゃごちゃして見える』
シンの目には、何時もと同じ真空が広がっているだけだった。太陽はぎらついて機体表面に
鮮やかな隅を落し、星は目に痛いほどの数が輝いている。小さな地球は一個で、そこに国境は
見えなかったし、ましてや住んで居る人間の区別などつかなかった。
宇宙育ちの目には、真空の天気も変わるのだろう、そう思うとたった二人で孤独を感じた。
『シン……』黙っていると、デイルから声を掛けてきた。返事をする。
『インパルス柄のゲイツは矢張り似合わんと思っていたが、ソレは中々洒落て居るな』
光に焼かれて塗装が黒焦げの一号機と、装甲のあちこちが剥がれ落ちた二号機を見比べて、
ダサいトリコロールのゲイツを黒塗りに飾る事が出来たのが"頑張った甲斐"というものだろうかと、
シンは笑った。
†氏GJ!
戦闘シーンが相変わらず凄い!
デイルの思わず発した「ショーン」にグッときた。
>>†
投下乙。相変わらず高いクオリティで楽しめた。疾走感と臨場感のある戦闘描写は流石の一言。
これからも活躍してくれる事を希望する。
目次
読経の響く親友の葬儀会場。キラとカガリ、姉弟の会話。キラは袂を分かつ断を下す。
anarchy in the C.E.
>>323-324 ミネルバの中、シンをただ見つめる事しかできないルナマリア。彼女が気づいたコトとは・・・。
せめて、夢の中だけは
>>329-330,360-362
戦闘の為だけに作られた強化人間。彼は死の間際に何を思うのか・・・。
Exploration of Personality
>>379 遂に戦端は開かれ連合の圧倒的な攻撃にさらされるオーブ。第15MS隊は死力を尽くして戦う。
CE大戦秘話
>>381-382 「ヤシガニ」対ゲイツR! 見た目を裏切るヤシガニの圧倒的な機動性に振り回されるシンとデイルは・・・!
SEED『†』
>>390-396 各単行本も好評公開中
詳しくは
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読者の声も素直な感想、鋭い批評どちらもますます募集中!
キミのたった一行が、職人達の新たなエネルギーになる!!
お知らせ
※一部作品については、当方の編集方針に合わない為目次掲載を見送りました。
あしからずご了承下さい。
【訃報】
◆YqJJJk6AAw氏がご逝去された旨ご連絡を頂きました。
生前の氏の業績を讃え、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
編集後記:ネタとして取り上げるのもどうかと思いましたが
生前の氏ならば喜んでいただけるものと思い、あえて訃報の欄を作りました。
氏の文章は一回投下分のテーマが纏まっているので煽り文も作りやすかったです。
ここに改めて氏への哀悼の意を表すと共に、ご冥福をお祈り申し上げます。
週刊新人スレに掲載されるには、完結しないとダメですよか
掲載の基準を教えて頂きたいのですが
>>400 普通に投下すれば編集長が載せてくれるよ
今回の目次に載せてない作品は、読めば理解できるかと。
そうですか、ありがとうございます
今他スレでSSを投下させてもらってるんですが、もし完結したとき、このスレ内でまた投下する‥そして掲載してもらう
というのはだめでしょうか?もう他スレで始めてしまいまして
そいつぁちょっと常道に反するかな
読者がいるなら特に、マルチしないのが義理かと
編集長すごいなww週刊新人スレに載せて貰いたいから投下したいてw
>>402 他スレで完結させて新人スレで同じ作品投下はどうかと思うよ?
今の投下先の住人も面白くないと思うしさ。
それかウンメイみたくリライトしたものを投下すればいいんじゃないかな?
そっか、週刊新人スレに掲載されたかったなあ‥‥
最近このスレ知ったんですorz
理由は、ああやってまとめてくれる人のいるスレを私知らないから‥だから週刊新人スレに掲載されたいと思ったんです
しかもこのスレの雰囲気的も良いなって思って
>>402,404
正直リライトでもどうだろう。カケラはあくまで住人との アレ があっての新人スレだし
該当投下スレはある訳だろ?現状
つーことでさ、リライトなんて言わずに 該当投下スレのない新作 の連載を
ココで始めるならばいいのではないか?
>>406 むしろ盛り上げたいスレで自分が編集長をやってみるのも手だろうな
隔週刊でも投下頻度の兼ね合いが取れてれば問題はないだろうと思う
一応断った方が良いんだろうか・・・
編集長GJです。一つ一つのssを良く読み込んである事が伝わって来ます。
そして職人の皆さん投下乙でした。
>>402 此処はノンジャンルのスレながら、やっぱりある程度のルールはあるので其処に注意。
一レスニレスの短編でも編集長は載せてくれるでしょうから、多少の冒険も含めて
チャレンジしてみてはどうでしょうか?
他スレに投下した奴でも良いんじゃないかな。マルチになるんだろうけど元スレにまとめがなかったりしたら作者さんも作品をまとめに載せて貰って残したいだろうし。
>>編集長乙。いつも楽しみにしてます。
不謹慎かも知れないけど高畑さんも喜んでいると思いますよ。
>>402 マユスレ関係の人は嫌。そうでなければ大歓迎。
皆さんレスありがとうございます。
ちなみにマユスレとは関係ありません。
私には編集したり、ましてHPを作る技術もないので自身でまとめるのは正直きついです‥が、マルチの意味が理解できました。マナー尊守することにします。
1〜2レスの短編でも掲載して頂けるのなら、これからはそのつもりでこのスレに投下させてもらいます。
一人一人にアンカー打ってレスすべきですが、携帯なので許してください。皆さんアドバイスありがとうございました。
なるほど、編集長とは【まとめサイトの中の人】のことだったのねww
こないだ誰かも間違ってたな
まぁ、だからと言ってマナーを無視して良い事にならないのはあんたの言う通り
短編、期待してるよ
413 :
新人:2007/06/05(火) 21:39:22 ID:???
せめて、夢の中だけは
第3話 サディストとクールは紙一重
起きたら見事なまでに頭が痛かった。
恐らくシミュレーションのし過ぎだろうか。疲れが取れてない。
だるぅ、と思いながら身を起こすとレイが既に目覚めていた。何やら時節、
『ほぅ……』とか『これは予想外だ』などと口にしているや。手で弄っているのは俺のパソコン。
なんかあったかな。ソッチ系には興味がないから入れてないはずだが……
「起きたかシン。毎度の事ながらお前には感心させられる」
パソコンから目を離さずレイが声を掛けた。辛うじてシミュレーションの結果を閲覧しているのが分かる。
「例えばこの際の反応速度。フリーダムに迫るものがある」
「あー、ども」
「ビームサーベルの原理を生かして勝利も掴み取っているのは、誇って良いだろう」
すっげー買い被られてる気がする。
もとよりあれは無意識的な物でして、なんと言うか。
そんな俺を気にも留めずレイは立ち上がり、
「着替えろ。インパルスの調整はあらかた終わっているからシミュレーションはインパルス内部で行う」
言われて、未だ寝間着姿だったことに気がつく。
レイは一度俺の方を向いてから出て行ってしまった。
インパルスと言うからには格納庫だろうか。
俺は着馴れた制服に着替え、寝間着を乱暴に畳んでベッドに放り込む。
軽く身だしなみチェック。OK。未だ響き頭痛を無理矢理無視して部屋を出た。
「では、生き残ったカオスの生体CPUは徹底的に薬物投与と改造を施す方針で構いませんね」
闇の中に爛々と輝く光に照らされながら、男は光の奥に向かって確認した。
それは映像であり、幻想であり、実体を持たない。
それは沈黙を保ったままだ。電子音が鳴り響く。肯定と取ったのか男は続ける。
「生体CPUスティング・オークレーを新型の機体、アンチカオスへ」
それは初めて身を動かした。それは幾つかの提案を告げ、再び動きを止めて黙り込む。
「はい、デストロイには適正の合うものから訓練と薬物投与を徹底させます」
それは沈黙を以て肯定した。光が唐突に消える。男も黙って室外へと歩き出す。資料──
『カオスへの連合技術の投与、ニュートロンジャマーの搭載、武装・機動性・装甲等の強化に関する報告書』
を手に持って。
レイより数分遅れて格納庫に着くと何やら整備陣が怒声混じりで言い争っていた。
レイはインパルスの足下に居たが表情は冴えない。まさかインパルスが直んないとかじゃ……
焦る気持ちを抑えつけて俺は急いだ。
「いようレイ。みんなどうしたんだ?」
レイはこちらに気付いて壊れている白いザクファントムの方を指差した。
まるで眠っている白い鬼みたいだなと想いふけていると、
「ザクファントムの整備を急がせるようアスランが掛け合ったらしい。整備陣は不眠不休だと言うのに」
……マジですか? パーツや人員も足らないってのに?
整備陣の苦労も知らないで、身勝手な野郎だ。自然と手に力が籠もる。
しかしレイは構わず幾分顔を歪めて続けた。
「重要なのはフリーダムのせいで負傷した整備員の代わりをこちらに差し向けるよう指示したらしい。グウル一機とバビ一機と共に、な」
「……はぁ?」
どれだけ現場の指揮系統を滅茶苦茶にすりゃ気が済むんだ。
本来こういうのはよく話し合って指揮系統の確認の後に送られてくるもんであって、しかもバビとグウルだぁ?
微調整とかどれだけやると思ってんだ! まったく、いつかアフリカの民族衣装を着させてやる。
なんて考えてたら、耳につんざく音声。
議長が演説をするらしい。長いからいつも式典の類は寝ちゃうんだよなぁ……
「シミュレーションは後だ。ギルの演説姿を見たい。急げ!」
「ふぇ? ちょ、まっうげぇぷ!」
無理矢理首根っこ掴まれて連行された。
「レイっ首絞まる絞まっっ絞ま、る絞まっ……」
頭痛が酷くなった気がした。
妹との記憶や両親との記憶が駆け抜けるように流れていく。今までの全部が一瞬で、無慈悲にも。
父さん、母さん、マユ、祖父、祖母、顔も知らない曾祖父や曾祖母が笑って手招きしてる──
俺が逝くのが先か、議長の姿が映る画面がある区画に着くのが先か。神のみぞ識るとはまさにこのこと。
あ、ゴメン。逝くのが先。ぐふ。
なんとか生きてた俺、お疲れ様! 間に合ったさ。不味かった。鬱。
なんてどうでもいい。議長は今何を言った? 戦争を終わらすために、ロゴスを討つと?
例えどれだけ難しかろうと、討つと?
世界はどうなるのか。
寒気がする。
素晴らしい。議長、あんた凄いよ。動かなきゃ何も変わらない。ベルリンの一件を利用して、こうも。
立派だよ。変えようとする意志が無い人よりも、ずっと。
レイが冷静に、しかしやや興奮を交えて言った。
「議長は覚悟を決めたのだな。フリーダムに勝つと覚悟を決めたお前のように」
総ては、そういいことだった。要は覚悟を決めたのだ。
議長は策を駆使して、駆使して駆使して駆使して駆使して駆使して駆使して──────
議長は勝つだろう。
例え法的にどうであろうと、どんな噂がついて回ろうと、流れは議長についた。
今回の件で連合──ロゴス支持派は消滅していきサクラ等も根も葉もないことで世論を煽るだろう。
そして市民は議長を、プラントを支持するだろう。ザフトの勝利と共に。
そして、議長の遥か先の闇で閉ざされた未来を見るかのような瞳に籠もる目的は達成されるだろう。
俺とて自らの直感の鋭さには気がついている。議長は何かを成そうとしている。何かは解らない。
しかし、一兵士の俺達には関係ないさ。
「ああ、レイ。往くぞ」
「ああ、往こう」
レイは力強く頷き歩き出す。俺もその後に続きながら──
「今は未だ、早い。しかし見事なものだ」
痛々しげな、悲しげな、苦しげな、どこか醒めた囁きを聴いた気がした。
ミネルバの艦内、比較的人の集まる場所で私はため息をついた。
シンにはああ言った。進歩した。私偉い、でも、ね。
シンが家族を失くしたのは識っている。今更なんなのさ。 どの道シンに会わせる顔がない。会ったらこの『同情』という感情を抑えつけられないから。
それではシンを傷つけてしまう。私は仲間なのに、シンを哀れに、憐れに思ってしまう。
声だけ聴くのと顔を見て話すのでは訳が違うのだ……軽く鬱だわ。
……食堂行こ。食べてるときだけは幸せだ。食べることは人間にとって本能的に欲するもの。
ええそうよ。怠ってはならない。これは大事だ。善は急げ。
悩んでても最近の昼ドラみたいにご都合主義的な展開はやってこないのだ。大体最近の昼ドラはねぇ……
「そ・ん・な、くーだらーないこと考えててーも〜わったっしの心は泥水もっよーう!」
堪えきれず歌ってみた。非番の整備士達の視線が痛い。
なおタイトルは、
「私の心は泥水模様」
歌い手作詞作曲ルナマリア。慰安ライブの計画も進みつつある。
…………主に脳内で。
ちなみに数十分前に流れた議長の言葉はまるっきり聴いていなかったりする。罪作りな女ね、私。
気付けば既に食堂前。なにやら騒がしい。
私の大事な大事な大事な聖なる一時を冒すとは何事!
私は駆け出して──愕然とした。視線の先には何杯もの空の器を量産するレイと──シンがいた。
俺は今、現在、かつてないほどの驚異と、圧倒的なまでに巨大な敵と闘っていた。
減らせど減らせど沸いて出てくる奴らを前に、俺は初めて自分の行いを『無駄』だと思った。
──このスペシャル定食五人前を目の前に、俺の自尊心とか誇りとか色んなもんが音を立てて崩れていった。
……事は数十分前に遡る。
『シン、シミュレーションをやるのは良いが、少しふらついていないか?』
『んにゃ? いやまあ……』
昨日に引き続きまたもや意外な言葉。まさかそこまで見透かされていたとは。ううむ。恐るべし。
レイは気にした俺の曖昧な答えをさして怪訝に思う素振りを見せず続ける。
レイのいつものすまし顔が……音を立ててニヤリと含みのある笑みを浮かべた……気がする。
『そうか。なら食堂に行こう。力を身に付けるには──』
レイはかぶりを振った。
なんか様になってて怖いぞ。それ。
『一杯運動して、一杯食べなければな』
なんか親しみのある言葉だなぁ。自分が似たようなことを誰かに言った気がする。
『気にするな。俺は気にしない』
『心読むなっ!』
『気にするな。ご都合主義に乗っ取ったまでだ』
すたすたときびすを返し食堂へと向かうレイ。
『ま、いっか』
結局俺は納得できないながらもレイの後を追う事にした。
以上。こんな感じ。んで、目の前に広がるのは、
『オススメ! 夏の甘酸っぱい一時を込めた定食だと思いながら食べるとイケる定食』
の三倍の量のスペシャル定食。二人前食った過去の俺お疲れ様。その努力は報われないけど。
「も、う……無理……がくっ」
「シン!」
いきなり耳元で怒鳴り声。
珍しくレイが怒っていた。しかし、その、なんだ。なんつーか。
「シン、食べ物を粗末に扱うつもりか? 物は良く考えて言え!」
「あー。レイ。少しいいか?」
「……なんだ?」
正に言葉通り不思議にそうにして首を傾げるレイ。言ってることは至極真面目だ。しかしだ。しかし、だ。
「そういう真面目な台詞は友達をビデオカメラに収めて笑いをかみ殺しながら言うもんじゃねえッッ!」
「ふむ。俺は気に──」
「お前が気にしなくても俺が気にするんだよこの冷静沈着クールガイを装った超サディスト野郎ッッ!」
「気にするな。早くしないと時間制限が切れて皿洗い三時間だぞ」
「そうやって友の身を案じるなら手伝え!」
「それでは面白くない」
「とうっとう本性曝しやがったなこのサディストの化身!」 なんて傍目から見たら至極下らない──俺にとっては現在のプラント経済よりも重大な──言い争いを繰り広げていると、
「あんた達何やってんの?」
ルナの呆れ返った声が間に割って入った。
下らないことで言い争うシンとレイを見て、自分のことが莫迦莫迦しく思えてきた。
今までの下らない考えや気持ちとか悩みとか思いとかその他色々なものが吹っ飛んだ。
こいつらは私が思い詰めてる時に……!
「シン、退きなさい! 私が食べて上げるわ!」
「はぁ? 無理だよルナ、俺でも二人前で無理だったんだぞ!」
「シン、私を誰だと思ってるわけ? 私も赤なのよ?」
私は狼狽えるシンに不敵に微笑んでみせた。
続く
>>365 前者でお願いします。すいませんわざわざ(汗
“Please,please pl(r)ay the piano”
息子が死んでから一年程ほどが過ぎただろうか。心の傷が癒されぬまま、ただ漠然と
月日を過ごしてしまった。
悲しみは雪の様に降り積もって私の心を凍てつかせてしまい、機械のようになにも
考えずに日常を送っている。
言ってみれば生ける屍だ。虚ろな陽炎のように漂い生きているだけだ。
そんなある日、私の元に一通の手紙が届いた。差し出し人はアイマン夫人だ。
彼女は息子と同じ隊に配属されたミゲル・アイマンの母親であり、私と同じくして
戦争にて息子を失っている。
内容といえば、ただ会合があるので来て欲しい、としか書かれていなかった。
私は些か不審に思ったが、同病相憐れむ、という言葉が頭に浮かんだので
その会合とやらに行ってみる事にした。
「ようこそ、アマルフィーさん。よく御越し下さいました」
アイマン夫人は私を見付けると小走りで近寄ってくる。その顔には私とは違い生気がありありと浮かんでいる。
「いえ、此方こそ御誘い頂きありがとうございます」
私は恭しく会釈をして、この会合は何をする集まりなのか尋ねた。
夫人の答えは、戦没者の遺族会というものだった。
人数はそれほど多くはないが、皆は私のように悲しみに明け暮れるのではなく戦争で
散っていった命の為に何が出来るのか、
何をするべきか真摯に考えている。
私はその精力的な集まりに圧倒され、その日は挨拶をするだけでその場を辞した。
私は帰宅すると、ニコルの遺品の整理をした。全ての物に思い出が詰まっていて、
悲しみの為に涙が溢れ出してきた。
しかし私は流れる涙をそのままに、生前のニコルを想いながら整理をする。
ふと、ノートを広げたら其処にはおたまじゃくしが踊っていた。楽譜だろうか。
その譜面は何度も校正された後があり、何かの写しではなくニコルの
作曲した物であるという事が判った。
私はこの楽譜を遺族会に贈呈しようと思い、次の会合に持っていった。
皆は私の寄付品に喜び、著名なピアニストを呼んでコンサートを企画した。
ホールに響くビアノソナタは繊細な硝子細工のように煌めき、壊れそうな儚さを
伝える。
目を閉じれば其処にニコルがいて私に微笑みかけているように思える。
どうか、どうかピアノに演奏と祈りを。それはニコルの思いだろうか、私の思いだろうか。
どっとはらい
改行が酷い事になってますね。すみません。次は頑張ります。
改行以外も酷いから、次はがんばってくれ。
>>せめて夢の中だけは
クールと紙一重なサディストのレイ、脳内アイドルのルナマリアと、キャラクタの性格が
良い感じです。
改善点としては、視点の変更に難有りです。一レスの間で視点を変えるのはなるべく
避けた方が良いことと、視点を変えたときには誰の視点にはいって描写しているのかを
明確にする一行を入れる事に注意してみて下さい。
もう一つ。一個一個の場面はそれぞれ独立しては面白いともいえるのですが、全体で
通して見るとレイの行動、その一貫性に疑問を持って仕舞います。平たく言うとレイのノリが
場面で違いすぎるのが気になりました。そういったギャップを演出として使いならば、
ぎりぎりまで"クールで実は仲間思い"なレイを只管描写しておいて落すのが必要だと思います。
もう少し構成に気を使えばより読み易く面白くなると思います。
(読み飛ばし推奨)個人的には、今回の投下分を二つの短編に分けてはどうかと思います。
前半をシン、レイ編にして新型カオスのくだりを最初に持ってくる。
後半をルナマリア編にして、疲労した整備陣、搬入されたバビやグゥルを描写、最後に
ルナマリアを食堂で合流させて締め。
無理矢理一連の中で描写しようとするよりは視点も書く時もすっきりすると思います。
>>Exploration
一レス、四十行以下という短さの割に場面の転換が激しすぎて駆け足な感じがします。
ニコル父の一人称で、場面が五つありますね。
1、ニコルを失った父の心情、独白。
2、手紙――会合への招待状を受け取る。
3、遺族会
4、遺品の整理
5、ピアノコンサート
此処で多分問題なのは、貴方がこのssを書くのに費やした時間と、読者がこの作品を
読むのに必要な時間とは大きく異なるという点だと思います。
作者殿は書きながらニコル父の心情を考えていたので、四十行程度の間で精神的な
変化についていけたのでしょうが、読む分には二分あれば読み終わりますので、
息子を失って悲しみに沈む父親が立ち直っていく過程が余りにも希薄に感じられてしまいます。
1,2は具体的描写を出して一つに纏めるしかないとしても、場面の3,4,5はそれぞれで
一つの短編ssに出来るくらいニコル父にとっては重要なシーンだと思います。
その辺りを踏まえて、もう少し濃ゆい短編を書いてみてください。投下乙でした。
職人諸氏投下乙。
感想については上に書かれている事と重複している部分もあるのでそれ以外に感じた事を。
>>新人
生き生きとしたキャラクターが書かれていて良い。キャラ立てが上手く出来ていると思う。更なる精進を希望する。
>>Exploration
所々にある詩的な表現に思考錯誤の後が見て取れる。そのアティテュードは称賛する。
アダルティな感じ文章とサブタイのセンスはわりと好みだ。
正直に言えばもっと長い文量で読みたかった。
更なる精進を希望する。
》せめて
投下乙
視点移動は個人的にはあまり気にならないが
読んでる方にもそれとわかるようにハッキリ書き分ける努力は必要だろうな
基本的に上手いのだけど台詞の言い回しで損しないようにな?
前回までと作風変わった?
》Exploration
投下乙
上の人達とほぼ同じ感想
やはりシーンを絞った方が文章のリズムが良くなるのでは?
考え抜いて厳選した文章が残ってる気配はするけどな
サブタイトルの音のダブルニーミングがカッコイイ
編集長大人気だな
あの煽り文はキッチリ投下されたものを読まなきゃ書けない
やはりどんな形であれ読んで貰えるのは嬉しいものな
425 :
弐国:2007/06/06(水) 23:46:13 ID:???
彼の草原、彼女の宇宙(そら)
最終話 慟哭(後編)(1/5)
「わっ私は……っ! 」
モニターに大写しになるフォビドゥンは左手一本で構えたニーズヘグを今にも振り下ろす構えだ。
やはり私は思い上がっていたのか……。目を見開くサーシャ。
だが絶好の好機を捨て、フォビドゥンは動きを止めた。ハッチが開くとよろけながらパイロットが下に落ちていく。
慌ててコクピットから飛び出すと青いパイロットスーツを追うサーシャの赤いスーツ。
弱い重力に引かれてゆっくりと地面に落ちるコンゴウ。空気はある! 瞬時に成分チェックを済ませたサーシャは
コンゴウのバイザーをあける。そのまっすぐな目は真っ赤に充血し、頬は腫上り、口元には血も滲む。
「コンゴウ、あんたいったい何を…」
「約束……、おまえの言う事はもう聞けそうに無いな…カラダもアタマも、もうだめだ。ただ、アレがおまえだって
最期に、気付けた…。それは、良かった」
目の前にいるのに目はまるで焦点が会っていない。急性麻薬中毒患者のようだ。きっと過度の投薬で戦い
を強制されたのだろう。そっと首に手を回すと頭を起こす。
「もう大丈夫だから、妹、サファイアも回収してあげるから。だから一緒に行こう。約束でしょ?」
サーシャの目に溜まった涙は弱い重力のもと、目の下で丸くなると視界をぼやかして行く。
アカデミーで全ての教科が優秀であったが故に赤い制服を拝領した少女には判ってしまった。
彼には応急処置など、もはや必要が無い……。
「今、始めて…わかったんだ、オレ、オレは、おまえの事が……」
そう言うとペンダントをポケットから取り出す。彼には似つかわしくない、華奢な鎖のペンダント。
いかにも無理やり腕を上げるとサーシャに渡そうと腕を彷徨わせる。彼女は包むように腕を捕まえる。
「だから預ける…。やるわけじゃ、ないぞ。オレに似合いの…場所に、捨てて、くれ」
コンゴウのヘルメットを脱がすと自分もヘルメットを放り出して抱きしめる。
どうして良いか彼女にはわからなかったから。そして目の前の少年の命の火が消えようとするこの時に、
自分には何もできない事だけは良くわかったから。
パイロットスーツが、グローブの感触がもどかしかった。何故直接抱きしめる事が出来ないのか。
ゆっくりと落ちていく二つのヘルメット。
不意にコンゴウの眼に生気が戻るとサーシャを抱き返す。驚くサーシャの眼を鋭いだけでなく
優しさの篭った眼差しで見つめかえす。
「俺は、馬鹿だから…なんて言えば、良いか、やっと……分か、た。……サーシャ、好きだ。会えて、よか…た。
最期、に……」
ゆるい重力の中でも、腕にかかる重みが急に増えたのがわかる。
「…え? ちょっと、コンゴウ?」
既に息の無いコンゴウは、初めてサーシャに笑みを見せていた。少年の楽しげな年齢相応の顔。
そう、こんな顔で頭をかいて私にカフェで詫びる筈だったのだ。と思うサーシャの耳元。
『だからゴメンって。あの時は戦争だったし、お互い敵同士だったろ…?もう勘弁してくれよ。アハハ……』
彼女には少し背が伸びて普通の青年になった、彼の声が聞こえた気がした。
「コンゴウ……、ねぇ、返事してよ。告白したばっかりじゃない。あんた、まだわたしの返事、聞いてないじゃない……。
一緒に散歩するんでしょ!? ねぇ、コンゴウ! ねぇってば、返事してよおぉ!!」
彼女の悲痛な叫びは誰も居ないドックにこだまする。
426 :
弐国:2007/06/06(水) 23:48:41 ID:???
最終話 慟哭(後編)(2/5)
ザフトのドックである以上MSの充電プラグを探す事は難しい事ではなかった。
そしてほの暗い明かりがある以上電力はいまだ生きている。鮮やかな赤い色を取り戻すゲイツ改。
推進剤の補給装置も見つけた。双方満タンまであと3分。
貰った訳じゃないからね、勘違いしないでね? 無くしたら大変だもの。
と言いながらペンダントを首にかけると襟を整えてヘルメットを被るサーシャ。
コクピットに収まると発進準備を始める。
遡る事10分前。コンゴウを背負ったサーシャは動力ブロックに居た。
休憩用のベンチにそっと彼の体を横たえると改めて涙が沸いて来た。状況を確認した限り
此処はもう長くない。さっきの戦闘で空気の流失が激しくなったのに起因して、
冷却が上手く行かなくなっていた。あと20分もすれば此処は火の海になる。
そんなところにコンゴウを置いて行きたくは無かったが、ザフトだろうが連合だろうが彼の素性を知ってしまえば、
きっとサンプルとして扱われる。あんなに生を渇望していた彼が、死してまで実験材料になると言うのは、
彼女には想像するだに耐えられない事だった。
生に執着する事、それ自体が洗脳の成果だったのかも知れないがそうは思いたくなかった。
もしそうならば、彼が存在した意味自体が無くなってしまうし、それではあまりにもむごすぎる。
機体の方は既にコクピットから煙が上がっているのを見た。きっとコンゴウの生体反応をモニター
していたのだろう。ザフトとしてはマズイのだろうがコンゴウの手足の延長のようなものだ。
アレも誰かに渡す様な事はしたくなかった。データを壊す手間は省けた。と思う。
「ごめんね、ホントにごめんね。あんたにしてあげられる事が、何も無いの……。ごめんね」
空気の流出の度合いに比例して強くなった風は彼女の黒い艶のある髪を後ろへ流す。
気にせず彼の口元の血を拭うとそっとキスをする。
唇に直接伝わる冷たい感触にとめどなく頬を伝う涙。涙はサーシャの頬を離れると丸い球になってゆっくりと、
本当にゆっくりと風に流されながら彼の頬へと落ちていく。
壁の監視モニターは【急減圧発生・気密服着用】の文字が点滅を繰り返していた。
目標はあのアガメムノン級。コンゴウの分とあいつの分、キッチリ落し前はつけさせてもらう。
コクピットの中ヘルメットのバイザーを閉める。
イアハートも気にはなるが、モンロー隊長がいる以上あの船は落ちない。誰が何を言おうとウチの隊長は優秀だ。
直縁にはダンも居るはずだし、ならば何も気にする事は無い。自分の成すべき事をするだけだ。
鎌と大砲を落せ。命令がそうだった以上その母艦を落す事も命令には含まれるだろう。ウチの部隊は臨機応変!
隊長は物足りなく思っているだろうが私だってモンロー隊の隊員だ!
胸元、ペンダントの辺りに軽く手を触れると、不意に友人達より胸が薄い事に悩んでいたのを思い出す。
今だって『大きさ』はさして変わらないはずだが、此処までそんなことは考えている暇は全く無かった。
コーディネーターも完璧じゃないな、私の場合は特に外見に限らずいろいろ……。
けれど、私が隊長みたいにグラマーになったら変だろうか。少なくとも、まぁダンは喜ぶだろうな。
コンゴウに聞いたら『知らねぇよ!』とか言って赤くなって横を向くのだろうか。
それはそれで面白そうだから一度聞いてみたかったな……。
一瞬微笑むと真顔になってモニターを睨むサーシャ。
バイザーの奥、切れ長の瞳にはコンゴウのそれを写したかのような尖った光。
「サーシャ・ニコラボロフ! ゲイツ改、行きまーすっ!!」
誰も居ないドックに叫ぶとケーブルを引きちぎり真っ赤なMSは最大出力で飛び出していく。
その直後、少年の体を動力ブロックに抱いたまま、小さな元資源衛星は火を噴き崩れていった。
427 :
弐国:2007/06/06(水) 23:52:02 ID:???
最終話 慟哭(後編)(3/5)
見つけた! 護衛についていた数機のメビウスは一撃で屠ってアガメムノン級のブリッジを目指す真紅のMS。
対空防御の自動砲塔が唸りを上げるが【モンローウォーク】の免許皆伝者であるサーシャには当たらない。
数発掠ったがそれらは全てPS装甲が吸収する。
甲板に向けてレールガンを連射する。ひしゃげて火を噴く甲板、ねじくれながら爆発する砲塔。
見る見るブリッジが迫る。
ゲイツ改はブリッジ前で一度静止すると主を無くして佇んでいたフォビドゥンから取り上げてきた、
巨大な首狩鎌を両手で握る。
使い辛いがただ一撃出来ればそれで良い。
一瞬の後ブリッジは縦に切り裂かれていた。
鎌をブリッジに突き刺すと、メインエンジンに向けてライフルを連射する。
ゲイツ改が離れると同時に艦体は二つに折れ曲がり、捩れる様にして爆発した。光の中薄れていくニーズヘグの影。
彼女の戦いはその時点で終わり、今の彼女個人には戦う理由が無くなった。
息をひとつ吐くと何も考えられなくなる。
呆けたアタマを無視して体は警報に機敏に反応、機体に回避行動を取らせる。
105ダガーの放ったビームライフルの弾道は、だから機体を掠めただけで被害は及ぼさなかった。
レーダーには105ダガーとストライクダガー3機接近を知らせる文字列が並ぶ。
「あの高性能タイプ! まだ生きてたの!?」
そしてそれはコンゴウ達を監視していた機体でもある。頭は一気にクリアーになる。
まだ終わってない!
「ニコラボロフ機、信号を再度キャッチ、……ステイタス満充電ってどうなってるんでしょう?」
「だから、彼女は『放し飼い』にしとけば良い仕事をするのよ。鎌は落としたみたいね?」
「はい、そのようです。鎌の反応は消えました。現状今度は例の高性能タイプと交戦中の模様」
どうやら彼女は本当にやり遂げてしまったらしい。しかもまだ戦闘続行の意思がある。
キレたのでなければ軍人の鑑だ。自分の判断が彼女を追い込んでしまったのでなければ良いが。
「それよりミサイルの状況は?」
「核ミサイルを積んだMAが間もなく……捉まえました!総数現状7ですが、まだ増えそうです」
「インディゴ25、マーク2アルファ、距離700にエターナル以下の艦艇を確認。MS、出ます!」
「現状、友軍機として認識しておいて。マリィ、エターナル以下の三隻から目を離さないでね?
彼らは状況が変われば敵になりうる」
フリーダムとジャスティスのみに頼るわけには行かない。ザフトはプラントを守るための組織だし、
自分はそこで隊長をしているのだ。この期に及んでダンに嫌味を言われるわけには行かない。
「艦長、頭を敵艦隊真っ正面に! 各砲座開け、目標は核ミサイルのみ! 敵のMS、MAは無視!」
「回頭とりかじ15、ピッチ角+5。増速5%! 全砲座開け! 1番から3番はアンチビーム爆雷装填!」
「艦長、用意は良い!? 最後の火消し役の名にかけて、ウチの前は1発も通すんじゃないわよ!」
ダンの名前を思い出し、涙腺が緩みそうになるのを必死でこらえる。
『特にお前さんは美人だ。多少強引な命令の方が男どもは喜んで言うこと聞くぜ?俺以外はな。ハハハ……』
ダン! 少し黙ってて! 聞こえた声を頭を振って振り払い、涙腺を再度締めなおす。
『後で』、とはさっきも言った。これ以上邪魔するといい加減ホンキで怒るわよ? 自分で言った事じゃない!
『やれやれおっかねぇな、せっかくの美人さんだ、コワイ顔しなさんなよ。デッキにいるぜ?』
モニカには、右手をヒラヒラさせながらエレベーターに向かう親友の姿が見えた気がした。
428 :
弐国:2007/06/06(水) 23:54:37 ID:???
最終話 慟哭(後編)(4/5)
「残り138秒? マズい、いい加減かわしきれない…」
母艦を落とされたダガーの高性能タイプは鬼神の如く迫ってくる。ビームライフルはノーマルダガー2機
を戦闘不能にした時点で捨てた。何とか最後のノーマルダガーをレールガンで仕留めたが高性能タイプは
今だ健在、更に機動性があがったかの如くライフルを撃ちかけ、サーベルで切り付けて来る。
めいっぱいの機動が出来ないのはリフターと増槽タンクを捨ててしまったから。そもそも本体のみ
ではPS装甲OFFでも15分弱しか持たないし、アガメムノン級撃沈でかなりの容量を減じてしまった。
もうサーベルも使う時のみ起動するしかない。ニーズヘグを捨てるのではなかった、と思ってみても
後の祭り。この状況下で、あの高性能タイプが攻めて来るのは、だからかなり苦しい。
既にシールドは形は残っているが効果は期待出来ず、PS装甲もないよりマシだと思えばスイッチは
切れない。かなり流されたのでイアハートにも帰れない。ヤキンならば届くだろうが、逃がしてはくれないだろう。
ライフルの直撃が来る。かわしきれずにシールドで受けると、シールドは3つに割れた。
サーベルを受ける手段を失ったので左のマニュピレーターを犠牲にして正確にコクピットを狙ってきた攻撃をそらす。
牽制の機関砲を受けPS装甲が機体を守るが、その分一足飛びに稼働残時間が減っていく。
フェイズシフトダウンの表示。次はかわしきれない…!
旱魃を入れずに次の行動に移る高性能タイプ。ならばと玉砕覚悟でサーベル起動のタイミングを探る。
一瞬でも起動出来ればコクピットを…。だが完全に読まれた。いったん距離を置くと再びライフルを
構える高性能タイプ。最大出力で回避、かわしたのは良いが残時間の表示は07sec。
多少は座標をズラしたつもりだが高性能タイプは意に介さずサーベルを構えて突っ込んでくる。
多分次は、無いだろう。万事休す、やはり赤い服は返上しておけば良かった……。
「コンゴウ、ごめん。ペンダント、捨てにいけないよ……」
サーベルを構えて突進してくる105ダガーの写るモニターに友軍機接近の表示が出る。。
次の瞬間、いっせいに5方向からのビームが殺到すると105ダガーは何も出来ずに爆散する。
【友軍機】の無線からは一種狂気を連想させるような笑い声が響く。
429 :
弐国:2007/06/06(水) 23:56:59 ID:???
最終話 慟哭(後編)(5/5)
「な、なにが…」
モニターには【ZGMF−X13A プロヴィデンス】の表示。
更には直近に【ZGMF−X10A フリーダム】の表示もある。どうやらこの2機は交戦中であるらしい。
「邪魔になるから、だから回避の【ついで】に落としていったと言うの……?」
既に生命維持装置の駆動以外、何の身動きすらも取れなくなってしまった自分とのあまりの
レベルの違いに唖然とするしかない。どうやらパイロットはクルーゼ隊長のようだがモニターに写る
2機の攻防は何をしているのか、速過ぎてまるで見えない。サブデータ画面も既に死んだ。
ノイズ交じりの無線をゲイツ改が拾う。
『……人が数多持つ予言の日だ!』
私がなりたかったのは、こうだったのだろうか。他を全て圧倒するほどの力。まさにエースパイロット。
ドラグーンシステムを自在に操り、かのフリーダムをも圧倒するプロヴィデンス。
『そんなことっ!』
押されているフリーダム、そのパイロットはかなり若い声だ。
『それだけの業、重ねてきたのは誰だ!? 君とて、その一つだろうが!!』
確かに戦況をいたずらに混乱させザフトに不利益を被らせた一因は彼にあるだろう。
だがクルーゼ隊長が何について言っているのか定かでは無いが、それは【業】と呼ぶべきものであろうか。
果たして【業】を重ねたのはあのパイロットだけなのか。プラントは、ザフトは、モンロー隊は。私は……。
『それでも……っ! 守りたい世界があるんだ!!』
フリーダムとプロヴィデンスはほぼ相打ちに見えた。やはり私は、この戦場には要らなかった
のかも知れない。まばゆく発光するジェネシスを見やりながら思う。
何も出来ずに多くのものを失うばかりで、結局大切なものは何一つ守れなかったではないか。
ヘルメットを脱ぐと横に押しやり、胸元からペンダントを取り出して眺める。
ジェネシスやプロヴィデンスがどうなったかは直後にモニターが死んだのでもうわからない。
間もなくジェネシスに巻き込まれるのかもしれないが、だからどうしたというのだ。
メインモニターには生命維持装置可動良好の表示のみが控えめに出ている。
『宙域のザフト全軍、ならびに地球軍に告げます。現在プラントは…国家との停戦協…準備を
始めていま……臨時最高評議会は現宙域に於ける全ての戦闘行為の停止を地球軍に申し…す……』
アイリーン・カナーバの声?ならばザラ議長は失脚したのか…。
まぁ私にはもはやどうでも良い話だ。モニターが全て死んだ中、非常灯に照らされたペンダントを
顔の前にかざすと話しかける。
「それでも守りたい世界、か。ねぇ、コンゴウ。あんたは守りたい? このふざけた世界をさ…?」
少なくともフリーダムのパイロットは、強いのは腕ばかりではなかったと彼女は思う。
彼の本当に思うところ等知りようがない。無線で聞こえたことが全て、それはそうなのだが。
しかし彼は、世界の混乱は人間その物のせいだと言われても、それでもこの世界を守りたいと言い切った。
今のサーシャにはその覚悟など持て様はずが無く、自然に涙がこぼれるのを止める事はもう出来なかった。
『私は泣いてばかりだ』そう思うと嗚咽とともにますます涙はあふれた。
いつしか嗚咽は悲痛な叫びに変わったが、一人きりのコクピットでは誰も気づいてくれるものさえなかった。
その灰色の固まりはパイロットの心情を知ってか知らずか、崩壊していくジェネシスからの光を浴び
ただ虚空に漂っていた。
430 :
弐国:2007/06/06(水) 23:59:52 ID:???
エピローグ〜それぞれの場所〜(1/3)
ジープは何もない荒野を埃を盛大に巻き上げて走る。自然公園とは名ばかりの、荒野以外には森が少し
あるだけのただの広い土地。ブレイク・ザ・ワールド事件の前は原生林だったらしいが見る影もない。
未だ被害調査のための調査隊が常駐するその公園内、赤いスーツを着込んだ調査隊とも研究者とも見えない
その女性の、サングラス越しの切れ長の目は少しも近づかない目的地の崖の下をみていた。雑誌の写真が
正しければそこが彼女の半年にわたる旅の終着点になるはずである。
ヤキン付近で救出されて3週間後。プラントの住宅街に立つ赤い礼装軍服の少女。
訪問先の彼女は3つ年下だった。そして彼の遺品を渡した直後から何の遠慮も会釈も無しに、
頭から詰(なじ)られた。赤い軍服の少女は泣きも怒りも言い訳もしないで30分、彼女が泣き崩れて
声が出なくなるまで、ただ目の前に立って彼女の敵役を務めた。肩を抱いて彼女をリビングまで送ると、
誰も居ない玄関に敬礼をしてその家を辞する。その間、一言も発しなかったし表情も無かった。
門を出たところで涙が溢れると、家についても、シャワーを浴びてもその涙は止まらなかった。
表情を取り戻すには更に1週間を要した。
ヤキンドゥーエ戦役後、サーシャは軍服を返す事はしないで襟飾りにフェイスバッジを付ける事になった
モニカ率いるモンロー隊に留まった。そしてダンを失った部隊を見事に統率すると最前線部隊のエースとして
テロリストを切伏せ、幾多のMSを火球に変えてメサイヤ戦まで生き延びた。
ペンダントの約束は心に引っ掛ったが、成すべき事がある以上、彼には待ってもらう事にした。
『彼女』の当面の学費と生活費、全額を匿名で前払いしたサーシャには、お金が必要だったのだ。
モンロー隊にいる以上、平時であっても危険手当だけは間違いなくついたし、落とされても保険が借金の穴を
埋めてくれるだろうと考えた。だからと言って『仕事』に手を抜く事は無く、肩にモンロー隊の【M】が二つ
重なったマークをつける真紅と黒の専用機ゲイツR、後にグフ・イグナイテッドになったそれは彼女の特異な
機動もあいまって【戦場の踊り娘】の通り名をもらうまでになっていた。
だが、メサイヤ攻防戦でまるで次元の違う戦いを再度見た時点で、彼女の戦意は完全に喪失した。
借金がほぼ終わったのも戦意喪失の理由の一つではあったのだが、双方とも誰にも口にはしなかった。
【イクサバノオドリコ】の名前とグフをおまけにつけてMS隊隊長の席は赤い服を着る後輩に譲った。
ただ、彼が男性で有る以上その通り名を引き継いだのかどうかは知らないし、知ろうとも思わなかった。
結局、処分は無しになったがフェイスでありながらエターナルの援護に参加した責任を取る形でモニカが
フェイスのバッジを返して隊長の職を辞するのと時を同じくしてサーシャはザフトを退役した。
白い軍服を拝領する話は出来る限り丁寧に断った。誰かが推挙してくれなければ、落ちこぼれの自分に
そんな話が出ない事は良くわかっていたし、誰が押してくれたのか教えられなくとも名前さえわかっていたから。
その後アカデミーの教官として着任したモニカは、たった半年で今度はドラゴンモニカの二つ名を
プラント中に轟かせている。どうやら斬り付けるだけでは収まらずに火まで吐くようになったらしい。
仕事が変わろうが結婚しようが何かが変わるわけも無く、最近では彼女の専らの『ケンカ仲間』は政治家
になったそうだ。自分に相当な自信が有るのか、やはりダンがよく言っていたように本当は馬鹿なのか。
ガスコインの顔をしかめる様子が女性の脳裏に浮かぶ。せっかく部下ではなくなったのに、わざわざ自ら
一生胃を痛める選択をしたかつての上司。司令は苦労が好きなのだろう。
しかし、誰から何を言われようとモニカは自らの生徒たちにはウケが良いのだそうだ。
モンロー隊の隊員達もそう言えば口では何を言っても皆、彼女が好きだった。
そう思うと埃を巻き上げるジープの中、赤のスーツを着た女性の口元に笑みが浮かぶ。
431 :
弐国:2007/06/07(木) 00:02:23 ID:???
エピローグ〜それぞれの場所〜(2/3)
空港から専用のヘリに乗り換え、更にジープに1時間揺られてここまで来た。
真紅のスーツの大人びた顔になったサーシャ。帰りのジープの予約はしなかった。後で呼べば良いし、
時間に拘束されるのがイヤだったからだ。崖の前には透明度が高いとは言えないが小さな湖、
そして皆がてんでバラバラに自己主張するが如く湖のほとりで花を咲かせる雑草たち。
『野菜は一人では生きられない。俺たちは雑草だったんだ、昔はな。今は野菜以下だ…』
どうしても生き延びたかった少年の決して大きくはない背中を思い出す。
後ろにクルマが止まる音がしたので振り返る。
調査隊のスタッフジャンパーを着た人の良さそうな男性が近づいてくる。
「帰りのクルマの予約をしなかったと聞いたのでちょっと気になってね。最近は来る人も増えたんだが、
それでも調査や研究以外で一人で、と言うのは珍しいんだ。悪いけど、はっきり言わしてもらえば
女性がスーツでここに来た時点で自殺を疑わなきゃいけない立場なんだよ、我々はね。
特に此処はずいぶん変わったが、そもそもは底なし沼でさ。落ちたらまずあがらない」
『隊長』と『中佐』の文字を首から下げたIDプレートに見つける。連合調査隊の隊長?
「こんな景色の好きな友人が昔、居たんです。だから彼のかわりに見ておこうと思いまして。
それに私、彼の分も生きなくてはいけませんからそんなことは……」
「きみの目を見て安心したよ、失礼をお詫びしよう、すまなかった。そういう事なら存分に見て行ってくれ、
どうせ他には何も無い。」
そういや昔、俺の部下にもこんな景色が好きな連中が居たが、何が良かったんだろうな。
とサーシャに話すでもなく口にしたあと、「これは失礼」と言って苦笑いをする中佐を見てサーシャの顔もほころぶ。
「ただこの時期は夜の冷え込みがキツイ。その格好では夜は無理だぞ? 今から予約しても迎えは
日暮れの後だな……。あとで私のクルマを迎えに寄越そうか。日暮れすこし前ぐらいになるな。
それでもたっぷり2時間はあるがそれでいいかね? ……シャミー=ポーレス!?」
彼が声をかけると乗ってきたらしいクルマの運転席から、浅黒い丸い顔に大きな眼の女の子が
人好きのする笑顔で彼女に微笑む。運転手にしては若い気がするなと思う。
中佐達が行ってしまうと静寂の中、揺れる雑草の葉音だけがサーシャに話しかけていた。
432 :
弐国:2007/06/07(木) 00:05:22 ID:???
エピローグ〜それぞれの場所〜(3/3)
小さなダイヤのついたペンダント。湖のほとりで首から外して、もうどれくらいこうしているだろう。
右手を握り締めてしゃがみこんだまま、動けない。戦場を駆け抜けた私の守り神。
そしてコンゴウが本当に生きていた唯一の証。
けれど、もう良いだろう。私までもが彼をこれ以上拘束する必要は無い。
そして彼もまた、こういった形で私を縛りたいとは思わないはずだ。
彼を自由にするためにここまできたのだ。そう思うと握り締めた手をゆっくり開く。思い切って掌を傾ける。
とぷん。と音を立ててゆっくりと、光を跳ね返しながら沈んで行くペンダント。掌には鎖の跡。
「半年かけてこの場所を探したのよ? 気に入った?」
世界中探したんだ、あんたに似合いの場所でしょ?
雑草が生い茂り、湖のさざなみが静かにゆれる自然の中。
風の拭きぬけ、雑草達が凛として生きている場所。人は居なくとも寂しくない場所。
彼女の事は最後まで良くわからなかったが、多分一緒にいる筈のサファイアも満足してくれるだろうと思う。
ごめんね。沈んで行くペンダントに話しかける。私はまだあんたのところには行かない。最前線で3年、
それでも死ななかった。それはあんたの分も生きろって事でしょ?
勝手な思い込みだとしても私はもう、そう決めたから。だから当分行かない。
ペンダントは最後に一度きらめくと視界から消える。
立ち上がると半年間一緒に歩いてきた真紅のスーツの埃を払う。この服も、もう必要無い。
これから先は私が散歩している事を彼に主張しなくても良いのだから。
コンゴウ、またね? 間違いなくあんたは生きていたよ。生きてる限り絶対忘れないから。
呟いて腰を伸ばす。
大きな太陽が沈もうとしているところだ。さっきの中佐が言ったとおり肌寒くなってきた。
振り返ると砂埃が迫ってくる。さっきの眼の大きな可愛い娘が迎えに来てくれたのだろう。
もう一度湖を囲む「彼の草原」を見やる。草たちは優しくささやき、湖は真っ赤の夕日を素直に映して優しく光っている。
空には一つ目の星が光り始める。プラントでは見る事の出来ない風景。
一番星。旅の途中に仲良くなった子供が、そう言うのだと教えてくれたっけ。
明日の朝になったら、宇宙(そら)へ帰ろう。私に何が出来るかはわからないけれど、私に似合いの場所は
きっと、あそこだ。
=完=
433 :
弐国:2007/06/07(木) 00:07:40 ID:???
妄想OVAシリーズ。今回も最後までお付き合いいただいてありがとうございます。
今回の反省点。
ツンデレ美少女が主人公でボーイミーツガールのベタなお話がやりたかったんですけど、
その基本設定自体全く生きてないですね。そもそもツンデレの人が出てきません……。
また、【森の娘】を未読の人にとってはエピローグが半分以上わけわかんなくなってしまいました。
単独の【作品】である以上一番やっちゃいけないことですね。イシカワさんとコンゴウ達をもう一度合わせて
あげたかったので、強引にエピローグのスジまで変えちゃったが故ではあるのですが。
地の文での人称のぶれと視点変更の扱い、文章のスピード感については何度も指摘してもらったにも
関わらず最後まで上手くいかなかった様に思います。当初よりも読みやすくなっていれば良いのですが。
反省の原因は今回も構成力と文才の無さ加減ですね……。
ではまた。
>>弐国
投下乙。
視点のブレが少なくなったので読みやすくなっている。投下する度に技量が上がっているのが解るので素直に称賛。
内容は悪くない。もうちょっとシンプルにして欲しくもあるがこれは俺の我儘。
しいて言えばオリキャラが僅かに厨臭く感じられたが、許容範囲であると思う。
後書きがチラ裏な気もするがそれを含めて氏の個性なのだろう。
完結ご苦労様。
次回作があるならば期待する。
弐国氏GJ!とても面白かったです。本当に素晴らしいの一言に尽きます。
>>424みたいな人の挙げ足取りしかできない荒しの雑音はスルーして頑張ってください。
436 :
3‐214:2007/06/07(木) 16:04:31 ID:+NWmiz4D
荒しもいるし、自分の腕じゃ満足のいくものが書けないことが判りました
もう撤退します。
恥ずかしいのでまとめからも消して下さい
本人かどうか証拠だせ。
アスカしっかりしなさい
俺は今某高級ホテルで食事をしている。ドラマとは違って清純で可憐なカガリさん(仮名)とだ。
ドラマの収録が終わってアスランさんとレイさんの魔の手から抜け出そうとしていたらカガリさんにディナーに行かないかと誘われたんだ。
カガリさんはお種塾というアイドルグループ内のユニットNUCOの一員だ。歌は微妙だけどいい感じの微妙さで俺は大好きなんだ。
「君の瞳に乾杯……」
俺はカガリさんにグラスを掲げて微笑む。よし、決まった。昔読んだハウツー本に書いてあったように決めたぞ。間違いなくいちころな筈だ。
グラスの中身はワインだ。未成年だからいけないんだけど大丈夫だと思いたい。
グラスを傾けてワインを口に含む。うげぇ。不味い。ちょっとむせた。やっぱり気取らないでカルピスにしとけばよかったかな?
カガリさんを見ると酔ってしまったのか顔を朱色に染めている。そして、濡れた様な瞳で俺を見つめてくる。
しかし色っぽいドレスだ。目が覚めるような赤で、とても妖艶だ。胸元なんか大きく開いちゃって目のやり場に困る。
それに引き替え俺なんてコナカの吊しのイチキュッパのスーツだ。しかもネクタイやYシャツは高校時代のヤツだ。……トホホ。気付かれたらどうしよう?
「ねえ……、シンってレイさんと仲が良いみたいだけど、どうなの?」
カガリさんが穏やかな笑みを浮かべて尋ねてくる。いきなりの質問にワインが鼻から逆流してしまう。
「……レ、レイさんですか?仲が良いというよりは、あの人が俺をからかってるだけですよ。なんとも思っていないですよ」
「ホント?それなら良かった……」
はい?良かったってどういう意味ですか?期待しちゃいますよ?
未完
前に高畑から送られてきた物を投下。
構想を聞いてたから完成させてみようと思ったけど俺には無理なので未完のまま。
プロットも投下した方が良いかな?
見てみたいです。
メストさんのしっかりしなさいなんてのも読んでみたいw
未完ってwちゃんと完結させてくれ激しく気になるんだがww
未完の文字が悲しいな……
》草原
先ずは完結乙
自ら卑下するような悲惨な出来では無いと思うぞ
シナリオメーカーとしてはGJだ
前にも書いたがもう一度。文章のスピード感を気にしてるようだが
良い意味で粘着質、かつ舐めるような描写が持ち味だろうと思うんだ
薄めようとしてるようだがおまえの個性だろうし、むしろそれを意識してみたら面白いんじゃないか?
人のまねをする必要はない
次回作にも期待する
》アスカ
カガ=シンのフラグ成立?
個人的に毎回楽しみにしてただけに未完が残念だ
だが未完のままという選択は正解だと思う
>>443 前から気になってたんだけどさ、アンカーって「>>」の半角なんだよー
>>444 きっと携帯からだと思うよ。 自分の携帯からは半角不等号入力するのが難しいという当て推量だけど。
カガシンフラグ立っちゃった?と思ったけど高畑さんの性格上何か捻ったオチがあるはずなんだよな。
しかしシンの小物っぷりにふいた。空回りが憎めなくて笑える。
カガレイ百合フラグだと思う
某スレにおいて外伝として書きましたが、諸事情で日の眼を見ることが無いものです。
皆様のお目汚しかもしれませんが、載せさせてください。
ここ、オーブ本島の東端には“カガリ岬”と呼ばれる、オーブの大海原が望める岬がある。
そしてその眼下には、海から突き出した3つの岩塊…、女性の肢体の様にも見えることから、
通称“乙女眠乃岩(オトメネムリノイワ”と言う、奇岩も見える。
太陽が白々と昇ろうとしていた。今日もよく晴れそうだと、つい思う。
すがすがしい海からの涼風が、僕の先を歩く君の背なまで伸びた金の髪を揺らし、君はそれを慌てて抑える。
…あの日から延ばし始めて、やっと背にかかるくらいになった、君の髪。
朝日に照らされ髪から金の光が散り、その瞬間の君は、まるで宗教画かと思えるほど、
僕には美しく神々しく見えた。いや君は正真正銘、僕の女神なのだけどね。
「…今日はまた、えらく早起きだね。緊張してるの? 今日は記念すべき日だからね。
しかしまたなんでこんな所に僕を…?」
試しに聞いてみる。いやただ君の声を聴いて、君が本当にそこにいる事を確認したかっただけなのだが。
「…理由は無い。い…いや、ありませんわ。ただ貴方とここからの景色を見たかっただけで…」
思わず僕は吹き出しそうになる。彼女なりに言葉遣いに気を使ってるんだろうけど…(クス)
「な…なんだよっ。…じゃなくて、なによその顔わぁ」
頬を膨らませる君。…つついてみたい気になる僕は変なのだろうか?
「いや…ごめん。ただそんな君も可愛いな、と思ってね」
途端に真っ赤になる君の顔。
「んなっ…!? な…な、ななななな…っ!?」
その顔も…可愛い…と思うよ。うん。
「僕の前では無理にそんな喋り方しなくていい。前にもそう言った」
そう僕は言い、彼女の頬に手を伸ばし、頬骨をなぞる。
「で…でもやっぱり貴方には…、その、ちゃんと私を見て、欲しいから…。嫌われたくない、から…」
僕が差し出した手に自分の手を重ね、もっと頬に押し付け眼を閉じる君。
「心外だな。本当に僕がそんなことを思うと思ってるのかい?」
それならば少しばかり、いや多大にショックだな。僕は君に…こんなにも参っているのに。
「いや。私は貴方をその…信じている、から…」
「よかった」
「…?」
「その言葉だけで、僕は幸せだ。これで僕はいつでも死ねる」
「っ!? そんな不吉なこと言うなっ! 貴方が死んだら私はどうなる!? やめてくれっ。
私と共に生きるんだろっ? 貴方はそう言って私にこの指輪をくれたんじゃないかっ!
だから…そんな哀しいことは…言わないでくれ。言わないで」
僕の胸の中に飛び込んで襟元を握りしめる君。
ごめん。君を悲しませるなんて僕は酷いヤツだね。ごめん。
僕は言葉の代わりに彼女を抱きしめる。僕の思いそのままにギュッと。壊さないように、ソッと。
暖かい。この胸の中の温もり。護りたい。誰よりも今、僕はそう思っている。
この髪の匂い。甘い香り。僕の手に馴染むこの髪の感触。ずっと、ずっと離したくは無い。
彼女の薬指に光るリング。オーブでの幸せの象徴『イルカ』と、永遠に離れない愛を表す『鎖の薔薇』
この2つを彫りこんだシンプルな指輪。僕の決意の証。君に万分の1でもいい。解って欲しい僕の気持ち。
でも…。
でも僕はオーブを護ることを使命とする“星”を持つ者。『エノク・オーブ』の煌光のひとつ。
今度戦場に出て行き、生きている保証などどこにも無い。そして次回闘う相手は、たぶん君の…。
すでに“ザミエル”と“マルティエル”は彼の手で堕ちた。僕…“コカビエル”は、彼を許す気は、無い。
僕は彼が嫌いでは無い。だが彼は“ゼポン”だ。彼の放つ火は世界を狂わす。
だが冷静に判断しても彼に勝てる可能性は2割、あるか無いか。多分僕は…。
…やめよう。今は考えるのは。
「…うん、そうだった。ごめん。オーブは本当に綺麗だ(そして君も)。…座らないか?」
岬の突端で僕と君は並んで座り、優しい風に身をまかせ、凪の海をただ眺める。
僕は“幸せ”の意味を考える。彼女の横顔をそっと覗き見る。眼を閉じ、髪を風に遊ばせる君。
…答えは“君が傍にいる”、だ。だから今僕はとても幸せだ。
そんな時間を僕は今過ごしている。
麗しきこのオーブの地で。君と。…君の名が付いた、この岬で…。
…Fin…
あ、なんか恥ずかしくなってきた…〃
機会があればまたお蔵入りの話を引っ張り出したいですね。
ではまた…。
外伝だけ投下されてもわけわからん
Explorationって腐臭がキツイよな。腐女子はこのスレにはイラネ。
なかなか面白そうな伏線は見られる。
なんでカガリと同じ名前の岬があるのか?
エノク・オーブって?
つか、3年後キラってオーブの敵? なんでよ?
そもそもカガリいちゃついてる、アンタ(語り手)誰? アスランではなさそうだけど。
詳細を希望する。
>>449-450 カズイのくせによくもまぁ、そんな赤面する様なセリフを立て板に水のごとく言えたもんだな。
で、これの本編を読みたいけど何処ののスレで読めるの? ヒントください。
カズイだったんか!?
In the World, after she left を投下させていただいてる者です。
>436 は私ではありません。
念のため、今回より鳥をつけさせていただきます。
よりにもよって、鳥がトイレ… orz
>>457 大丈夫。誰も貴方だと思ってないから。
続き楽しみにしてるよトイレさんw
もうベンキマンがキーボード打ってる姿しか思い浮かばんw
>>弐国
完結乙、GJです。この長さできちんと起承転結を済ませる構成はすばらしいと思いました。
妄想OVAという事であまり奇抜なシナリオをこなしているわけではなく、然しながら文章力に
よって読ませられました。本編とのかかわり方も上手で、本当にこのままOVAのシナリオに
なっていても可笑しくないと思います。
コンゴウは死んでも、サファイアは生き残ると思っていました。予想は裏切られましたが、
期待は裏切られませんでしたよ。とても楽しめました。読後感もかなり良かったです。
最後、モンローウォーク免許皆伝まではいいとしても、「戦場の踊り子」辺りの異名はすこし
派手でしょう。エピローグにもう少し分量が欲しかったです。
コンゴウが死んだことについて、個人的には残念で、シナリオ的に当然かとも思いました。
もしも生きていてくれたら……そんな風に思えるキャラクターを作れる、しかも登場人物が殆ど
オリジナルで描写できるのは上手い事だと思います。
もし続き、外伝、続編があるのでしたら、楽しみにしています。
>>アスカしっかりしなさい
カガリさん(役名)はレイさん(役名)が好きなんだろうな、シンに確認したかっただけなんだろうな。
ハウツー本やらワインやら、シンの背伸びっぷりが笑えるやら悲しいやらでGJでした。
最後に踊る未完の二文字が只管悲しいのみです。
>>せめて、君に
いきなりの外伝で流石に訳がわかりません。別スレの方でキャラクタの性格を改変、或いは
発展させてストーリーを進めて居るのならば、オリキャラを使った短編の積もりで書かれたら
良かったかと思います。……てーかカズイ!?
>>3-214 続きを楽しみに為ております。
うーみゅ…皆ワケわかんないだろな〜、とか思って投下しましたが、やっぱコレだけでは…ねぇ?
ちなみに本編の方は、ある分岐で上記の話の方向に行かず、まったくの別の話となっております。
てか、カズイ人気高いなぁ…。誰と特定してないし、構成し直してまた書いてみようかな?
その際はこちらに投下させていただいてよろしいのでしょうか?
とりあえず何を意図して投下したのかを説明してくれ。
高畑のしっかりしなさいのプロットだけ投下した方が良いかな?皆オチを予想してるみたいだけど全然違う。
あの流れでカガシンとカガレイ以外に何があるの?それ以外のオチの予想は出来ないよ。
高畑氏を侮辱する行為になるんじゃないか?あのまま未完のままで良い。
オチだけ知りたい。
せめて夢の中だけは、様
タイトルが少し被っているのに今気づきました。
お詫び申し上げます。
オチだけ投下。
実はこれはドッキリ。
仕掛人カガリのネタばらしに流石のシンも苦笑いだけでは済まずに火病って大暴走。
モニター越しに見ていたレイもシンの「なんとも思ってない」発言に、ナイフを振り回し「君を殺して僕も死ぬ!」と大暴走。
さすが高畑氏。読者に予想をさせない展開だwww
それにしてもこの高畑さん、ノリノリであった。流石。
高畑さんはいつも読者の予想の遥か上を越えて大気圏を突抜けるな。予測不能だ。
だが以降は他にこんな未完成SSがあったとしても投下はせんほしい。
プロットでオチ説明されても正直SSとして面白くないし………
それに故人も自身のSSを未完成なままで投下されていい気はせんと思う。
震える街が読めないのが残念かな
08スレで言った方が良かったかも試練があそこは・・・
つらいな、SSの続きが読めないって言うのが
「機体ばっか強くなって、俺は……!」
地球連合軍総司令部、ヘブンズベースに俺ことスティング・オークレーはいた。
ムラサメに墜とされ傷付いた愛機、カオス──否、愛機カオスであった機体と共に。
かつてカオスと呼ばれた機体、アンチカオスを見上げながら、歯軋りした。
ムラサメ三機ごときに墜とされたという事実──
赦せねぇっ……!
命からがら生き延びて、強くなるのは愛機だけ。
俺は機体に、自らの胸の内に問う。
──何故勝てないのだ……
──何故強くならない……
──何故墜ないんだよ……
トレーニングは厳しさを増す一方なのに強くならない。
ふざけやがって。俺は機体に敵意を剥き出しにしながら近付いた。
何故勝てない……! 何故何故何故何故何故何故何故っ何故だッッ! 何でぇッ……!
アウルとステラのせいだ。勝手に死にやがって。
そう決め付けて──そこで、俺はアウルとステラが誰だか解らないことに気が付いた。
「誰だよ。アウルとステラって……」
暖かいものだったはずだ。思い出そうとする、が。
しかし朧気にしか思い出せない。曖昧な、何か。
何なんだ。自分を支配するこの感覚がなんなのかを識らない。 苦しい。苦しい。寒い。痛い。何かがおかしい。一体何なのだ……!
声にならない悲鳴が口から漏れ、怒りに身を任せてアンチカオスの装甲を拳で殴りつけた。
衝撃が腕を伝わり、波紋のように、体中へと伝染していく。
けれども思い出すは朧気で、あやふやで、曖昧な何か。忘れちゃいけない何かはあやふやなまま。
「畜生……畜生……畜生ッ!」
何度も装甲を殴りつけた。皮が裂け血が滲み出ようが関係無い。思い出せよッ!
思い出すことも出来ないのか? 俺そんなに弱かったか?
「あ? 俺が、弱い?」
頭を駆け巡る何か。久々の感覚だ。
同時に装甲を赤く染め上げた血の彩が目に入る。血の、血血血血血血血血血血──
──血? 赤? 朱? 炎?
気付けば一軒家の居間に居た。何だ。何が燃えてやがる。誰かが叫んでいる。
炎は幼い赤子を呑み込んだ。悲鳴をあげる隙もなく崩れてきた木々に押しつぶされる赤子。
別の悲鳴。中年の男が何者かに殺された。獲物はアサルトライフルか? 軍隊の装備だろうか。
女がまだ″幼い俺の体″を抱く。短い悲鳴と共に女の首から血が流れ出た。
くずおれる女の体。背中にも傷があった。誰かが俺の体を抱えて走る。
身を灼く熱さから解放される。
誰かが叫んでいる。
聞き慣れた言葉の数々。治療に関する言葉の羅列。誰を治療してるんだ?
待て、現実出て来た場所。あの燃えている一軒家。あれは、確か、確か──────
住 み 慣 れ た 俺 の 家
反転、ここは何処だ。真っ青な海だ。おや、水色の巨人が海に還っていく。あれは確か──────
同 僚 で あ り 俺 の 仲 間 の ″アウル・ニーダ″ の 乗 る 機 体
反転、銀色の世界を覆い尽くす破壊の業火。何もかもが業火に還る。おや、何かが俺に近付いてきた。
ああ、重力の法則に従い堕ちる俺の体。ああ、熱い。助けてくれよ、助けてくれよ。
おや、破壊の業火を振り撒く桁外れの巨人が倒れていく。あれは確か──────
自 分 に と っ て 妹 の よ う な 存 在 で あ る ″ステラ・ルーシェ″ の 乗る 機 体
そうか、俺は識った。識ったんだ。思い出したんだ。
「うぁ……やめ、あ、死ん、あ、うあぁぁぁぁぁ!?」
壮大な情報量が駆ける、駆ける、駆ける、駆ける。
「母さん父さんアウルステラ死んだ母さん父さんアウルステラ死んだ母さんとっととぁとぃうぁぁあぁあああ!?」
母さんが死んだ。父さんが死んだ。
アウルが死んだ。ステラが死んだ。
母さんが死んだ。父さんが死んだ。
アウルが死んだ。ステラが死んだ。
そう、両親が二人、仲間が二人、死んだ──何かが彼を追い詰める。
「うあああぁぁあぁあああ!? ひぃっ、うあ、ああああああああぁぁ!?」
そこから先のことを、俺は何も識らない。
ただ、意識を失う寸前、何かの雄叫びが聴こえた。
──『復讐』せよ、と。
──『仇を■て』、と。
──『■壊■■せ』、と。
──そ■殺■■けは、■物■■ら、と。
せめて、夢の中だけは
第四話 侵行する悪夢(やまい)
ゆりかごの中で目を醒ました。
俺は状況を確認するべく思考を走らせる。
周囲に研究員が数名居る。それに自分は右腕を負傷している。
怪訝に思いながら完全に意識を覚醒させた。
ゆりかごを覆う外壁が独りでに開く。
ずしん、と圧し掛かるように重たい何かを感じながら俺は身を起き上がらせる。
ややあって、疑問を口にした。
「おい、何だってんだ……? それにこの怪我は?」
研究員はほっと溜め息を吐いてから、俺に顔を向けて口を開いた。
「お前は訓練で負傷したんだ」
感情の灯らない声。誰かとは違う者の声。聴きなれない声。
だが、訓練で負傷? そうだった? そうだったかも知れない。そうだ。負傷したんだ。
俺はそれ以上追及せず、
「往くぞ、お前ら……ん?」
仲間に声を掛けて──
気付いた。俺は今まで単独行動をしてたきたではないか。仲間なんて呼べるものは自分にはない。
忌々しくに舌打ちをして、
「ちっ……何でもねぇ……」
訝しがる研究員達に応えた。
気分が悪い、新型でも拝みに往くか。
何かを言っている研究員達を置いて俺は部屋を出た。
スティングが立ち去ったゆりかごの設置空間にて、二人の研究員が冷や汗を拭いながら談話している。
「まさか、突然暴れるとはな。冷や汗ものだ。しかも記憶の植え付けが効かないのかと思ってしまったよ」
一人の研究員が言う。記憶の植え付け。そう、人の記憶は消すことは出来ない。
だが代わりにその記憶の存在を曖昧な、朧気な、薄いものへと変え、記憶の片隅へと追いやり、厳重な封印を施す事は出来る。
そして出来た空白に予め用意されたダミーの記憶を植え付ける。
はっきり言ってゆりかごは、現在の技術を軽く超越している。
男はこの理論を編み出した技術者に会ってみたいと思った。
しかし彼──彼女かもしれない──は既に死んでいる。
もう一方の研究員が彼の声に応えた。
「ああ、冷や汗ものだよ。そう言えば新型の薬物開発はどうだ?」
男は幾分、言葉を詰まらせながら、苦々しく口を開き、しかし、
「出来たは出来たが、身体への影響が激しすぎる。依存性が無い代わりに寿命が削られるぞ。もっともそれに見合う価値はあるがな。生体CPUを増やしてはどうだ」
その内容に反して、目は、口は、動作の一切合切は、どこかで愉悦を含んでいた。
我が子──薬物──の出来を誇りに思うかのような口調だった。
「そうか。寿命程度ならいいさ。所詮奴らは使い捨ての消耗品だからな。そう掛け合っておくよ」
対する男も、同じような態度だった。
二人の笑い声が響く。人を苛つかせる、命を命と思わない狡猾な笑い声が、延々と。
──延々、と?
否、其れは断末魔へと変わった。
「キッ、貴様は実験体八番!? どこから、あぁぁぁ!? ひいっ、はぁっ、んお……ぐぼらばぁッ!」
研究員が血飛沫をあげながら息絶える。
もう一方の研究員は腰を抜かして、怯え、脅えた。
「ひいっ、やめっ、貴様は連合に自ら強力しに、あぎゃAあぁAAああ!? 助けっ、たす、えぶぉ!」
結局、息絶えた。
誰にも気付かれることなく男達は息絶えた。
哀れみの言葉も掛けられず、罵声を浴びせられることもなく。
微塵も残らないほどに、間違い無く完膚無きまでに彼らは息絶えた。
彼らが最期に視た物。
歪な刃。
濁り無き刃。
赤く輝く刃。
血を啜る刃。
執行者は人間。
人間は大罪人。
大罪人は嗤う。
刃を掲げ、滴り落ちる血を気にせずに、嗤う。声を出さずに、音を立てずに。
大罪人は嗤う。声を出さずに、音を立てずに、刃を仕舞い、身を翻す。
大罪人は闇に紛れ、気配を消し、直ぐに室外へと消えていった。
辺りを包むのは、静寂と血の生臭さ、それだけだった。
本当に、それだけだった。
アンチカオスの調整は効率よく進み、そろそろ俺の搭乗許可が降りる頃だった。
以前とは外見がかなり違う。
膝の装甲が前面に突き出ていてそれは腹部にまで達するほどの大きさを保っていた。
さらには背面。左右に延びる灰色の翼。
鋼鉄の意志を持ち、研ぎ澄まされたナイフのような、尾のような補助スラスター。
手の甲に増設された装甲。
腰に増設されたホルスター。
後頭部に位置する、龍を連想させる攻撃的な装甲。
アンチカオスという名でありながらカオスよりも複雑な機構になっている。
果たして、あれが俺に使いこなせるものか、柄にもなく不安に思って──違うと気付いた。
使いこなさなきゃいけないんだ。アイツらの仇を取るために、取るために?
誰? 誰の仇だよ。誰が死んだ?
苛々して無理やりアンチカオスに乗り込もうと考えた時──違うと気付いた。
使いこなさなきゃいけないんだ。アイツらの仇を取るために、取るために?
誰? 誰の仇だよ。誰が死んだ?
ムシャクシャする、俺を戦わせろ……!
苛々して無理やりアンチカオスに乗り込もうと考えて──五十代後半の整備班長が大声で、
「スティング・オークレー! アンチカオスの搭乗許可が降りたぞ! 慣らすか!?」
告げた。
──ソレは兵の亡骸と共に、スティングを哀れむように、憐れむように、哀するように、愛するように見詰めていた。
ソレはあろうことか十数人が居留まる監視塔の屋上に居た。
ソレは呟いた。
「スティング・オークレー……わざわざお膳立てしてあげたんだ。期待に恥じないように頼むよ?」
二十代前半の女の声。その声は昏く、冷たく、恐ろしく、老人の声にも聴こえる。
「再び思い出しておくれ。力を蓄えておくれ。それが君をより強き領域へと導く、それが君をより高見へと導く」
楽しむ声。愉しむ声。昏い声。冷たい声。
女は軽い微笑を浮かべていた。
研究員などとは非にならないほど吐き気を催させる微笑。
「嗚呼。楽しみだなぁ。その力を使って何をするのかな? 総てを破壊し尽くすのかな? 強き者を倒すのかな? 喩えば、喩えばだよ。喩えば──」
「──スーパーコーディネーター……キラ・ヤマトとか」
女は今度こそ嗤った。
愉悦を含んだ嗤い。
悲哀を含んだ嗤い。
殺意を含んだ嗤い。
──慈愛を含んだ嗤い。
女はわらうのを止め側の亡骸へと視線を移し、
「君の服、借りていい? 登る時は君にしか見つからなかったけど、保証がないからね」
再び──わらった。
続く。
オリキャラって良いんでしょうか?ついでにオリ設定も。
追記
>>469 いえ、自分は大丈夫ですのでお構いなく。
2話 《陥落》
「うおっ………ぐあああああああああ!!」
「あいつ、味方に気を取られているから!」
傍にいた味方機の撃墜を見たウィリアムは怒りの表情を見せる
前日の戦闘と徹夜の警備、ウィリアムは相当疲れていた
それはウィリアムだけではなく、15隊全員が疲労の限界に達していた
機体は万全とはいえ、中のパイロット達はボロボロである。
6月16日……
一度は撤退した連合軍だったが、夜明けと共に再びオーブに侵攻した
敗北は悟ったオーブ軍は部隊を宇宙へ撤退する事に決定した
激しい戦闘が続いている中、
町の残骸を単独進んでいるストライクダガーがいた。
部隊とはぐれたのか、1機だけで前進している。しかしこれはあまり危険すぎる行動であり、敵にとっては都合いい事である
「今だ!」
建物の裏から突如現た、1機のM1アストレイ
左手に装備しているシールドでダガーを後ろの建物に押し倒す
シールドはうまくライフルの握っているダガーの右腕と頭部を抑えていて、反撃する事は不可能であった
ダガーは左の盾を捨て、サーベルを抜こうとした時、M1の頭部はコクピットハッチに向けていた
ダダダダダダダッ
イーゲルシュテルンを受けたストライクダガーは動きが止まり、そのまま地面に崩れ落ちた
「やったな、ラム三尉」
近くの建物の頂上からもう1機のM1、アキラ・ワカタが現れた
「敵がもっと単独行動で来たら戦いも楽になりますね」
マコトは前回の戦いを見て、連合軍の大半のパイロットはマコトより劣っていると判断した
その理由は経験の差……
ナチュラルのOSが出来上がったばかりの連合軍は自軍のMSを使用し初めてからまだ一ヶ月も経っていない
アストレイ開発当初からMSのテストパイロットとして関わっていたマコトら15隊にとって連合軍のパイロット達は素人である
しかし、素人は連合だけではなかった。
「我々をクサナギへ配置?」
―――――うむ。15隊はここで失う訳にはいかん―――――
「……しかしアーシェンニ佐、我々よりも経験の少ない新米兵は?彼らはここにいては犬死になるだけです!」
経験の少ないのはオーブも同様である。周囲に死に行く仲間や敵の悲鳴を聞いてパイロットは動揺してしまい、その隙に敵に撃墜してしまう恐れもある。
今のオーブ軍MSの半分は15隊含む少数のベテラン達が援護でなんとか保ち続けている
それも長くは持たないであろう……
ウィリアムはクサナギとマスドライバーの防衛をそんなヒヨッコ達に任せる事を拒んでいた
―――――フルズ一尉、気持ちは分かる。しかし私も命令で動いているただの一般兵に過ぎない。これは上からの決行だ―――――
「……了解しました、15隊はただちにマスドライバーへ移動します。アーシェンニ佐もクサナギに?」
―――――ふっ、いやクサナギが上がった直後に連合に降伏する用命じられた。だがこれで娘もクサナギに配置する事ができた―――――
トモヒサには17歳の同じ軍属にいる娘がいる。娘を戦死か捕虜にさせないように、自分が地上に残ると引き換えに愛娘を安全な場所へ避難させた。
トモヒサとの通信を切ったウィリアムは命令を伝える為、通信を15隊に繋いだ
「15隊、新たな命令を下す。本隊はマスドライバーへ移動し、クサナギで宇宙へ上げる事になった」
「え?」
「宇宙……ですか?」
「それって逃げるって事ですかぁ?一尉!」
マコトに続いてアキラ、スミスも気に入らない返事をした
「はぁ…」
ウィリアムはため息をし、話を続けた
「そうだ。俺達はなんとしても組織壊滅を逃れて宇宙へ逃げなければならない………しかし!俺達が船にかくまっている間、ヒョッコ達に尻を守らせるのは気にいらない!」
「同感です、一尉!」
「へっ素人に俺達を守らせておいて地上に上がれるかっての!」
部下の任意を受けたウィリアムは一息する
「アーシェン二佐にはすまないが今回だけは命令違反をする、野郎ども、俺について来い!」
「「「了解!!」」」
戦いが続く中、マスドライバーからアークエンジェルが発射される
マスドライバーの防衛中の15隊は宇宙へ飛ぶアークエンジェルに敬礼した
「まだクサナギが出てない、抜かるなよ!ん?これは……!」
ウィリアムは不明の電波をキャッチした、アキラもこれに気づき、電波の内容を読み上げる
「これは近くの港からです………民間船の護衛が必要、こちらにMSを送れ、との事です」
「まだ逃げ遅れた民間人がいたのか?」
避難警告が始まってもうすぐ一日経っていたにも関わらず、まだ避難が完了していない事にスミスは呆れた
誰を向かわせるか考えていたウィリアムは視線をマコトに向けた
「ラム三尉」
「一尉?」
「行け、民間船はお前に任せる」
「え!?自分が、ですか?」
「15隊が投降した時、お前だけが不安だからな」
「不安って……」
マコトはウィリアムの不安い気づき始めた
「お前はハーフコーディネーターだろう!」
「う!」
「多くのコーディネーター市民を持つオーブが反コーディネーターである連合に占拠したらどうなる?連合は容赦なく国内で反コーディネーター行動を起こすだろう。そうなればお前がこの戦いを生き延びてもすぐに殺される」
「一尉……俺は兵士になった以上、殺される覚悟はできてます!」
「これは命令だ!マコト・ラム三尉、ただちに港へ行き、最後の民間船を護衛しろ!」
「う……」
これではマコトはクサナギへ避難した部隊と同じ様な事をする事になる。仲間を見捨てることなどマコトにはできなかった
「………早く行けよ。こんな奴らお前無しでも十分だぜ」
「安心しろ、俺達はゴキブリ以上だからな」
「スミス二尉、ワカタ二尉…」
ここまで言われれば、残る事は無理だろうとマコトは思った
「行け!なにもたもたしている!」
「………了解しました、ラム三尉これより護衛任務に向かいます。」
「第15MS隊、護衛任務に付くマコト・ラム三尉に敬礼!」
コクピットの中で15隊は敬礼をし、マコトもそれを返し、そして森の奥へ消えてしまった
「野郎ども、派手に暴れるぞ!クサナギが出るまで死守だ!」
「「了解!!」」
そして、15隊は接近する強大な敵部隊へ突撃するのであった………
「あれだな」
港へ着いたマコトは民間船を発見。側には2隻のイージス艦。
その1隻には1機のM1がもう乗っていた
「護衛の奴だな?早く空いてる方へ乗れ!もう出発するぞ!」
M1からの通信を聞き、マコトは急いで空いているイージス艦の上に乗る。
そして3席の船が陸を離れ始める
「これで一応民間は安全だが………で皆は?」
だいぶ島から離れてもマコトの視線はマスドライバーの方向を向いていた、そして……
「あれは!」
海から見えた風景は宇宙飛ぶ青き艦、クサナギと崩れ行くオーブ誇りのマスドライバーであった……
とりあえず2話投下しました
今回は会話が多くて苦労。他の職人はすごいなぁ
>>474 貴方の仰有る事にも一理あります。ウンメイノカケラの投下を控えさせて頂きますね。
>>488 このスレにウンメイノカケラはふさわしくなかったという事ですね。
マユスレに投下しなおしたらいかがですか?
>>475 サイト閉鎖前に震える街を読めた俺は勝ち組。高畑さんのシリアスな魅力が溢れてたぞ。
せめて、大戦両氏投下乙!
感想アドバイスの上手い人達が来るまで待っててね。俺は下手くそなんで控えとくw
>>488 高畑さんはウンメイのリライトしたものをこのスレに投下する意志があったんだろ?
最終話以外あるのなら、意志を継いで最終話なしの未完作として投下した方が良いと思うけどなぁ。
まぁ、それが嫌なら世に出さず自分の家の机の引き出しにでも後生大事に閉まって置いて下さい。
カケラったって所詮他人の作品なんだから自分の手を加えて完結させるのはまずい気もするだろうし、
他人の作品を未完成のまま無理に投下しなきゃいけない理由があるわけでもなし。
スレに相応しい相応しくない以前にSSとして形にすらなってない作品はどこのスレにいっても致命的だと思うが。
>>489 まことに仰る通りです。それは作者がノリで書いたものです。
>>489 やはりナ●アに見えましたか。まったくその通りです。
実を言いますと、後半の女パートは友人とともに冗談で書いたものです。全く載せる気はありませんでした。
で、何故そんな物を載せたかというと、大変くだらない経緯が在りまして。
作者のミスです。ただのミスです。
今指摘されて間違えて投稿させてしまったことに気が付きました。
ミス。
>>489 やはりナ●アに見えましたか。まったくその通りです。
実を言いますと、後半の女パートは友人とともにまったくの冗談で書いたものです。全く載せる気はありませんでした。
で、何故そんな物を載せたかというと、大変くだらない経緯が在りまして。
作者のミスです。ただのミスです。間違えて張り付けちゃいました。
今指摘されて間違えて投稿させてしまったことに気が付きました。
ですので
>>481の後半の女パートと
>>482は視界の外に出してお読みください。
本当に、本当に申し訳ありませんでした。
ああ、間違えて三回も。申し訳ありません。
>492
自分、別スレで書いてるものですが、一行でも書いてくれると嬉しかったり。
>488
プロットを受け取ったときにそういう話はしなかったのですか?
プロット公開が個人の遺志ならば、それでも良いかと思います。
このスレへの投下でなくとも、まとめサイト様に直接メールするとかも
ありかと思います。
(ご両人には余計な手間をかけさせてしまいますが)
それなら別にメール使わんでもzipでうpロダにでもあげれば済むんじゃないか?
最終話以外の校正段階のものがあるなら、このスレに投下すればいいだけの話だろ。
……編集長判断お願いしますw
>>500 それはつまり未完成の状態のSSでもプロットだけでも、
このスレは今後そういうのをどんどん投下しても全然おkってことか?
>502
それは違うだろ
高畑氏の場合は本人にはもう完成させることはできないんだから。
>>502 そんな事は言っていない。
メールだのなんだの言ってるからスレに投下すればいいと言った。
職人諸氏投下乙。
>>新人
構成、展開共に申し分ない。高いクオリティだとは思う。
俺はデモベとやらを知らんから面白くはなかったが。
ネタがExploration氏のrecollectと被っているのが気にかかる。なるべく他の職人とネタを被らせるのはやめた方が良い。
更なる努力を期待する。
>>大戦
悪くはない。セリフの連続が疾走感を出す為の物なのか、ただの描写不足なのか判断出来なかったのは俺の読解力不足。
そろそろオリの匙加減が気になってきた。厨臭くならないように頑張れ。
更なる努力を期待する。
>>実録氏、ed氏
あえて未完のSSを投下したのは高畑氏の遺志であるのだろう。俺は文句を言えない。貴殿方には俺の知り得ない絆があるのだろう。
俺はウンメイノカケラが投下される事を希望する。
>>外野
高畑氏だって完成させる事が出来たなら完成させたかっただろう。
お二方も高畑氏の未完のSSが人目に触れることなく埋ずもらせる事が嫌だったから投下したんだろ。ウダウダ文句を言うな。嫌ならスルーしろ。
まとめの人にお願い!
まとめサイトの中に雑談所みたいなの作れませんか?
最近このスレの雑談が凄くイヤだ
アク禁直撃のため刊行が遅れます。悪しからずご承知おきの程を願います
>>506 ヒント:通常の名無しさんの3倍 をNG
…編集長ガンガレ、超ガンガレ
どちらにしてもカケラの投下は控えるって言ってるんだからこの話はこれで終了だろ。
あと
>>505落ち着け
511 :
505:2007/06/11(月) 22:00:36 ID:???
512 :
505:2007/06/11(月) 22:02:42 ID:???
ルーキーカルテットのせめて、はあそこから立ち退いて欲しいな。
自分の作品も満足に書けない新人のくせに他作品とのパロネタを作るなんて……
そんなに書きたきゃデモベスレいって書けよ。
ウンメイノカケラを投下して欲しいです。
516 :
506:2007/06/11(月) 23:10:45 ID:???
>>513 せっかく作ったんだから我儘言うな。誘導するのはお前さんの仕事だ。
「雑談イラネ」と思ってる人間が避難所作っても、
雑談してる人間が自主的に移動する気にならなければ意味がないのでは…
>>517みたいのを煽りというのだろうな。
他人にスルーしろと言いながら自分はスルーできないとはこれいかに。
皆さん投下乙です。
>>新人
エクステンデッドの孕む狂気をいろいろな技法で描写してみようとした試行錯誤の跡が
伺えます。その姿勢にはGJ。しかし上でも言われて居るようにネタの被りは残念。
後半のオリキャラ(クロス?)展開は先の構想が無いならば無用。間違えて投下してしまった
のでしたら、その後の言い訳は蛇足。作品の外で作品について語って評価が上がる事はまず
無いので注意です。
>>大戦秘話
今のところオリキャラたちの活躍について匙加減は成功していると思います。動きに奇妙な
所はあまり見当たりませんでしたし、シナリオとしてはかなり読みやすいです。
ただ幾つか。文の終わりは句点を使って区切って貰わないと、文の終わりか改行かの判断で
余計な思考を使って仕舞う事が一つ。擬音語は極力使わない方が良いのが一つ。人が通信で
話して居ることを表現するのにダッシュ「―」を五つも並べるのはやりすぎなのが一つです。
声に出して読みながらの推敲をお薦めします。
遺稿について、故人の遺志が残っていればその通りに。そうでなければ原稿を持っている方が
したい通りに為るのが良いと思います。個人的には本人の手になる部分まで投下して欲しいです。
522 :
まとめ:2007/06/12(火) 02:21:30 ID:???
>>522 はい、それでお願いします。すいません、自分の手違いでorz
このスレはクロス物の投下はおk?
>>525 クロススレにはキチンと感想をくれる人がいませんから……。それにこのスレには
編集長がいますし。
検索しても男はつらいよのスレはありませんでした。
男はつらいよてww
男はつらいよなんてイラネ
edたんとExploration氏のサブタイの意味が気になる。誰か教えてくれませんか?
「 In the World, after she left 」 〜彼女の去った世界で〜
第6話 「任務 −ふざい−」
(1/7)
アスランはひとりカーペンタリアを目指していた。
計器は目的地が近いことを示している。
デュランダル議長からセイバーを受領し大気圏降下、オーブを経由してカーペンタリアへ。
もう半日以上休みなしではじめての機体のコックピット内にいる。
しかし、その顔に浮かぶのは疲労よりも焦燥の色が濃い。
「カガリ、君に一体何が……!?」
アスランは一心不乱に愛機を駆り続ける。
今の自分に情報を与えてくれるであろう唯一の場所──カーペンタリアのミネルバを目指して。
◇ ◇ ◇
ザフトに復隊したことを、カガリやキラにどう説明したらいいだろう……?
そう考えながらオーブの領海線へ近づいたアスランを出迎えたもの。それは、二機のオーブ軍
MSムラサメであった。
『オーブ領海内に接近中の所属不明機に告ぐ。わが国は領空・領海内への許可なき艦・MS等の
侵犯を一切認めない。直ちに転進せよ』
二機は一応の警告を発したものの立ち去る気配を見せないアスランに対し、通常では考えられない
ほどの短時間で攻撃体制に移行した。
対するアスランは防戦一方だ。
いや、防戦ですらない。
たとえ相手の武装のみを狙ったとしてもこちらからの攻撃など論外なのだから。
一機のビームサーベルを避け、もう一機から放たれたミサイルを万が一にも流れ弾で相手を
傷つけることの無いよう留意してビームライフルで撃ち落とす。
自分の思い通りに反応する最新鋭の機体に感謝し、二機の攻撃をひたすらかわしながら
アスランは直接行政府を呼び出した。
「行政府! こちら市民番号二五〇〇四七四−C、アスハ家のアレックス・ディノだ。代表へ
繋いでくれ」
しかし先刻とは逆に、通常なら数秒待つだけの応答が十数秒経っても返ってこない。
しかもその間もムラサメからの攻撃は間断なく続いている。
通信異常でもあったのかと再度の呼び出しをかけようとした時、行政府からの応答が返ってきた。
『こちらはオーブ行政府。市民番号二五〇〇四七四−C、アレックス・ディノの市民登録はない』
「なにっ!?」
驚愕で一瞬注意を逸らしたところにムラサメがビームで襲い掛かる。
寸前で気づいてそれを紙一重でかわし、アスランはもう一度行政府を呼んだ。
(2/7)
「市民番号二五〇〇四七四−Cのアレックス・ディノだ。もう一度確認を頼むっ」
今度は即答があった。
『確認の必要はない。登録は既に抹消されている』
「抹消!?」
何故? と思いかけてアスランははっとした。
オーブ国民である自分がザフト所属となった。
たしかに抹消に足る理由ではある。
しかし、それで納得して引き下がるわけにはいかなかった。
「それなら少しでいい。代表と話をさせてくれ」
最悪、何とか伝言だけでも……と考えるアスランに先程とは違う声で応答が入った。
『アレックス・ディノ……貴様、カガリ様の護衛だったアレックスか!?』
「ああ、そうだ」
アスランは正直に答えた。
一市民とカガリの護衛。どちらがカガリに取り次がれる確率が高いかは言うまでもない。
が、アスランの答えに声の主は激昂した。
『貴様、何をやっていた!』
アスランは返事に詰まる。
それを説明するためにカガリと話がしたかった。
だが何と言ったらいいのか、まだ明確な答えは見つかっていない。
カガリにさえ説明のできないことを、見ず知らずの彼にどう言ったらよいのだろう?
しかし、アスランの思考は彼の次の言葉に霧散した。
『カガリ様の大事だというのに!!』
「カガリ? 行政府、カガリに何かあったのかっ!?」
アスランは国家元首を呼び捨てにしていることにさえ気づかずに叫んだ。
また数秒の間が空いた。
『アレックス・ディノ、今それを説明することはできない。また非常事態宣言発令中に、他国の
機体に乗ったオーブ国民ですらない君の入国を認めるわけにもいかない』
最初の応答者に戻ったらしく、冷静な声で告げられたその言葉を最後に通信が切られる。
「行政府、非常事態とは何だ!?」
その問い掛けも無視された。
「行政府! 頼む、教えてくれ。行政府!」
アスランが何度叫んでも、二度と返信はされなかった。
「くっ!」
アスランは一機の放ったビームをかわすと、機首をオーブ本島に向ける。
二機のムラサメを十分に引きつけておいてMAモードに変形、素早く転進し一気にムラサメの
間を通り抜け、その空域を離脱する。
レーダーで確認するとムラサメは後を追ってきていたが、やがてオーブへ引き返して行った。
(3/7)
◆ ◆ ◆
アスランがオーブに到着する数時間前。
「それでは失礼致します。何か不足の物がありましたら、お呼びください」
「ああ、ありがとう」
ユウナが応えると、政務官は一礼して部屋を出た。
政務官が遠ざかるのに十分であろう三十秒を声に出さずに数えてから、ユウナは外した
蝶ネクタイを思い切り床に叩きつけた。
ここは行政府の一室。ユウナ・ロマ・セイラン代表代行の為に急遽用意された部屋だ。
カガリが不在の今、行政府内での最重要人物はユウナ自身である。
しかし、ユウナはそれに満足はしていなかった。自分が目指している場所は、もっと上なのだ。
そして、それを手に入れるまであと少しだった。
カガリの夫となり、彼女から実権を譲り受ける。たったそれだけのこと。
そのために最も難関だと思っていた結婚も、カガリの方からの申し出であっさりと叶ってしまった。
今日の式さえ終えてしまえば、後は一月と待たずに望んだ地位を手に入れることができる筈だった
のだ。
だからカガリが何者かに拉致された時、ユウナは心のどこかで喜んでいた。彼女がいなくなれば、
その地位は今日にでも自分の物になる、と。
しかし、その目論見は外れてしまった。
ユウナはイライラした気分のまま一時間前の出来事を思い出す。
◇ ◇ ◇
──カガリが何者かに拉致された直後、臨時の閣議が招集された。
議題はカガリ捜索の総責任者かつ行政の長を代行するもの──代表代行の選出・決定である。
国家元首が拉致されるなど誰も予想だにしなかった非常事態であるが、首長会メンバーにとって
カガリは所詮飾り物の代表だ。
それは、カガリの夫となったユウナを代表代行、ひいては次期代表として承認するためだけの
出来レースにすぎない。
筈であった。
(4/7)
しかし、そこに思い掛けない所から邪魔が入った。
挙式を取り仕切った神官達である。
彼らは、カガリが十分な時間があったにも関わらず誓いの言葉を口にしなかったこと、それを
理由にカガリとユウナの婚姻は成立していない、と主張したのだ。
一方セイラン家側は、カガリとユウナの婚約はウズミが生前に決定しているものであり、今日の
挙式もカガリ自身が望んだこと等で反論、両者の意見は真っ向から対立した。
事態が膠着しかけた時、セイラン家を除いた首長会からある提案がなされた。すなわち、
・ウズミの遺志を尊び、カガリとユウナの婚約は認めること。
・宰相ウナトを後見に、ユウナを代表代行として承認すること。
ただしあくまでも暫定処置であり、その期間は最大一年とすること。
・ユウナとカガリの婚姻を未成立とし、ユウナを次期代表とはしないこと。
というものである。
非常時ということもあり十分な議論はされなかったが、両者ともそれを承諾することとなった。
いや、せざるをえなかった。
こうしてユウナは当初の予定通り、代表代行と承認された。
しかし、それはユウナやウナトが画策していたものとは大きく異なってしまった。
このままカガリの不在が続いたとしても、ユウナが次期代表として認められることはなくなって
しまったのだから。
もしカガリの死亡が確認されても次期代表の座に就くのは、現宰相であるウナトだろう。その後、
ユウナが後継となるとしても先の話だ。
しかも、正式には代表首長職が世襲制でない以上、他の首長が介入することもあり得る。
更に言えばカガリの生死が不明のままならば、次期代表の選出さえ容易ではない。最低三年は
空白期間をおかないと国民の理解を得られないだろう事は想像に難くない。
(5/7)
元来、オーブの代表首長とは他国の国家元首とは意を違える。
それは「政の長」よりも、シンボル的意味合いの方が強いのだ。
誰もシンボルに政治力など求めない。求められるのは「カリスマ性」だ。
もちろん過去の代表首長の中には政治的にも優れた傑物は幾人もいた。
しかしたとえそのような力が不足していたとしても、それは首長会がカバーする。
何よりも重要なのは「国民を一つに纏め上げる」ことだ。
だからこそ、現代表はカガリなのだ。
政治力どころか、政治を学ぶことすらしていない十代の小娘。
しかし、養女ではあるとは言え「オーブの獅子」ウズミの娘であり、アスハの末裔。
しかも先の大戦の停戦に貢献した一人。
オーブ再建の折、カガリ以外が代表首長となることは、国民感情が許さなかっただろう。
◇ ◇ ◇
ユウナはまったく治まらない苛立ちを抱えたまま窓の外に視線を転じた。その指は小刻みに
机を叩き続けている。
ほんの数時間前には自らの晴れ舞台に相応しいと思っていた蒼穹が、今は腹立たしい。
ユウナの脳裏に、目の前に降り立った白いMSの姿が浮かぶ。
あのテロリストめ。何故今日という日を選んだのだ? 明日ならばカガリなぞ喜んでくれて
やったのに。
大体、国家元首が挙式の最中に拉致されるなど聞いたことがない。
これが他国に知れたら、オーブは笑い者にされるだろう。
オーブ軍も、たった一機のMSを止められないとはなんと情けない。
それにあの時僕の命令に従わなかった、警護兵ども。あいつらが命令通りにテロリストを
撃っていればこんな事にはならなかったかもしれない。
カガリに当たる? それがどうした。
拉致されることに比べたら、傷の一つや二つ、何ほどのものだと言うのだろう。
いいや、悪いのはカガリだ。
あいつが僕と一緒に逃げていれば良かったんだ。
何よりもさっさと返事をしていれば……。
ユウナの怒りは更に広がる。
リムジンがもっと早く式場に着いていたら。
祝いの客達が長ったらしいおしゃべりをやめていたら……。
もはやそれは止まることを知らず、遂にアレックスへと辿りつく。
「そうだよ。あいつがちゃんと護衛をしてないから悪いんだ……」
声に出してしまうと、尚更それが正しいことだと思える。
(6/7)
その時ノックと共に、秘書官が入室してきた。
「ユウナ様。カガリ様の別荘に孤児は残っておりましたが、キラ・ヤマトの姿はありませんでした」
「ふうん。やはりそうか……」
秘書官の報告はユウナの想像していた通りだった。
カガリを拉致したのが「フリーダム」と「アークエンジェル」であることは、既に報告を
受けていた。
フリーダムはヤキン戦で破壊された筈だし、アークエンジェルもエターナルと共に行方不明と
なっている。
それがどうしてオーブに現れたのかはわからない。
が、フリーダムがカガリ拉致に関与しているとなると、そのパイロットとして筆頭にあげられるのは
やはりキラだ。
そこでユウナは早急にキラの所在を確認させたのだ。
元々ユウナもウナトも、オーブ再建後に突然現れたカガリの「弟」を良く思ってはいなかった。
歴史上、王妃の親族等の部外者が政に関与して上手くいった例など皆無に等しい。
キラがそうならない、という保証はどこにもないのだ。
その為、ウナトはカガリには内密にキラに厳重な監視をつけていた。
キラの主治医やカウンセラーにも国家のVIPであることを理由に、その身体・精神状態を
定期的に報告させた。
結果、彼の精神状態が政治に関与できる状態にはないと判断し、監視体制を緩めたのは二ヶ月ほど
前のことだ。
そのキラが消え、カガリがフリーダムに拉致された。
とすれば、カガリを拉致したのはキラ以外に考えられなかった。
「いや、待てよ……」
ユウナの脳裏にあるシナリオが浮かぶ。
そもそも、何故突然カガリが自分との結婚を言い出したのか。
それはもちろん、大西洋連邦との同盟締結を撤回するためだ。
そして、どうなった?
カガリは結婚式場からいなくなり、キサカにより同盟締結の撤回はなされてしまった。
しかもカガリを連れ出したのは、彼女の旧知のフリーダムとアークエンジェル。
アレックスもプラントへ行ったきり帰国しない。
これはつまり、カガリの拉致は狂言なのではないだろうか?
同盟を破棄させ、ユウナを夫と認めず、次期代表就任をも阻止し、あまつさえ結婚式場から
逃げて恥をかかせ。
自分たち親子の目論見をすべて潰しておいて男と逃避行。そういうことに違いないっ!
(7/7)
ユウナは怒りのままに机に拳を叩きつけた。部屋中にダンッと大きな音が響く。
その音に驚いた秘書官が、不機嫌な上司におどおどと声をかけた。
「あの、ユウナ様……?」
声をかけられて秘書官の存在を思い出したユウナは、軽く手を振って彼を退出させた。
ユウナは再度窓の外に視線を転じた。
苛立っているのは先ほどと変わらない。
しかし先ほどは明確でなかった苛立ちの対象が、カガリとアレックスそしてキラの三人に
絞られていた。
指はやはり小刻みに机をノックし続ける。が、ユウナの怒りと憎しみの激しさを表すかのように、
そのリズムは先刻よりも早い。
ユウナは同じ姿勢のまま考え込んでいる。
トッ、トッ、トッ、トッ…………。
室内には一定のリズムのその音だけが響き続ける。
それが唐突に止んだ。
ユウナは通信機に手を伸ばした。その唇の端が笑みの形に吊り上がる。
ユウナが呼び出したのは行政府だった。
ニ、三言葉を交わすが、相手からは希望通りの返事は返ってこない。
とうとうユウナは通信機に向かって怒声を発した。
「これは高度に政治的な判断なのだよ。いいから言われた通りにしたまえっ!」
ユウナは強引に通信を打ち切った。大きく息を吐き出すと、椅子に深く身体を沈める。
ユウナの代表代行としての初仕事。
それは──キラ・ヤマトとアレックス・ディノの市民登録の抹消であった。
3−214 改めまして、 河弥 です。(こうや ではありません。念のため)
仕事の都合で次回の投下は月末近くになると思います。
>まとめサイト管理人様
前回投下分 第五話 海 後編 4 の 1行目に誤字・脱字を見つけてしまいました。
申し訳ありませんが、修正をお願いいたします。
×:『他国を侵略さず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介しない』
○:『他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない』
>彼女
いよいよオリ展開か?
キラとアスランがオーブ人でなくなったことがどう影響するのか楽しみ
ところでハンドルは「かわや」なのか?
トイレだから厠なんだろ。
誰がうまいことい(ry
スレ立てやってみましょう。
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