【勝手に】仮面ライダー龍騎EPSODEFONAL【補完】

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110(SP)シザース誕生
「お姉ちゃん!お姉ちゃん・・・。なんで?どうして?」
姉の遺体にすがって少女は泣きじゃくった。
少女の傍らに立つ須藤の耳に悲痛な叫びがいつまでも残った。
「酷いよ、お姉ちゃんを返して!返してよお!!」

煙草をくわえたまま火も付けず、疲れきった声で警視庁捜査一課の長は浅倉威の新たな凶行について報告をまとめた。
ざわざわとため息混じりの私語を漏らす刑事達。
「あいつは怪物だ・・・」
「何かやらかすたび残虐さを増してるな。ありゃ異常だ。うちの若いもんが何人も再起不能にされた。須藤が無事にあいつを捕まえられたのも、今思えば奇跡みたいなものだったし」
「でもな。何度捕まえても逃げ出すし、脱走するたび被害者は倍に増える。そのたびこっちが非難されるときた。文句あるなら直接浅倉本人に言えっての。こちとらいい迷惑だよ」
「できるならよ、こっそり撃ち殺したい所だぜ。なあ?」
茶の缶を両手に抱えたまま眉を上げる須藤。
「たとえそれがどんな相手でも、殺して良い事などありません。犯罪者を捕まえ司法の裁きを受けさせるのが私達の役目ですから」
「冗談判んないかねえ、マサやん。バカ真面目なのもほどほどにな?」
「須藤さん、あんた甘いよ。世の中にゃ生きる価値の無い奴も居るんだよ」
そういうものですかと返す須藤に笑いかけるおやっさんが、署の中で見る最後の姿になった。
111(SP)シザース誕生:02/10/13 04:17 ID:pF58SB4c
張り込み中の須藤の目の前に、血まみれの鉄パイプを振りまわす男の姿があった。「あ・・・浅倉?!」
浅倉の足元に転がる赤に染まったおやっさんを見て、須藤の中で何かが弾けた。

「ははは。いいぞ。こんな所で出会うとはな。俺に手錠を掛けやがった、あの糞野郎に!」
いきなり浅倉に飛びかかられ、パイプの攻撃は避けたものの蹴りを受け須藤はよろめきかけた。
すかさずパイプを打ち下ろそうとする浅倉に向かい、銃を抜くとためらわず浅倉の眉間に狙いを定める須藤。
ひとつも怯えることなく笑いながら浅倉は睨み返してきた。
邪悪な視線が須藤を正面から捕らえた。
静かな怒りが心の底になければ、浅倉の邪悪な眼差しに気圧され銃を奪われていただろう。
(できるならよ、こっそり撃ち殺したい所だぜ。なあ?)
頭を振り須藤は銃を遠くに投げ捨てると、一瞬視線が逸れた浅倉の腹に拳を思いきり打ち込んだ。
防御がガラ空きになった顎にもう一発。
姿勢が崩れかけた所に更に手刀が決まり、緩んだ浅倉の手が凶器を取り落とす。
肩を掴み膝で蹴りをいれあげるうち、浅倉の動きが鈍くなった。

浅倉が落とした鉄パイプを拾い上げると、このまま滅多打ちにしたい衝動を抑え、後ろ手に手錠を掛けた。
おやっさんの様子を調べまだ息があるのを確かめ、安堵しながら携帯で連絡を入れた。
救急車を待ちながら血の気の引いたおやっさんに止血のハンカチを巻いている須藤に耳障りな音が入ってきた。
浅倉の笑い声だった。
唇から血を流し浅倉はゲラゲラ笑い続けた。
「いいな・・・最高だ。もっとわくわくさせろよ?」
「残念ですがあなたと遊ぶ暇などありません。あなたは逮捕されました。今度こそ監獄でその罪を償いなさい」
「つまらないな、お前。俺と遊ばないなら消えろ・・・」
自らのポケットを噛み裂く浅倉。懐から何か落ちると瞬時に浅倉の姿が変った。
112(SP)シザース誕生:02/10/13 04:18 ID:pF58SB4c
あっと思うまもなく須藤は巨大な蛇に襲われていた。
世界が反転し、見知ったはずの全ての物が左右逆になった場所に引きずり込まれた。
紫色の異形の姿に変った浅倉は手錠を引き千切ると、須藤の胸倉を掴み勢い良く殴り飛ばした。
圧倒的な力の差の前に須藤は成す術も無かった。
ぐったりと転がる須藤を前に浅倉が合図を送ると蛇が大きく口を開けた。

突如爆音が響き蛇は素早く跳ね逃げた。蛇が避けた地面に大きく穴が開いていた。
大砲の様な物を抱えた緑色の怪人物が現れると、須藤を無視し浅倉を攻撃し始めた。
そのまま二人とも争いながら遠くへと走り去った。

よろめきながら起き上がろうとして須藤は驚愕した。
腕が砂の様に消えて行く!

混乱している須藤めがけ、捻じ曲がったカンガルーのような奇妙な生き物が飛びかかってきた。
最初の攻撃を転がり避ける須藤の目に、握ったままこの世界に持ち込んでいた鉄パイプが映った。
とっさに鉄パイプを掴むと牙を受け止め、肉を食いちぎられる事は免れた。
襲いかかる牙から細い鉄の棒だけで身を護るのは容易ではなかったが、辛うじて致命傷を避け、砂の様に少しづつ消えながらも須藤は抵抗を続けた。
化け物にむざむざ食われるぐらいならこのまま消えた方がましだと思ったその時、いつの間にか須藤のすぐ隣に見知らぬ男が立っていた。
男は怪物を見ても恐れず、眉ひとつ動かさずに須藤の様子を眺めていた。
「消すには惜しい、お前はいい目をしている・・・。お前の中には、不屈の闘志と血を求める欲望が潜んでいる・・・」
男が片手を振ると怯えた様に怪物は逃げ出した。
113(SP)シザース誕生:02/10/13 04:22 ID:pF58SB4c
男に短く礼を言った後、矢継ぎ早に須藤は質問を始めた。
「あなたはあれが何か判りますか?浅倉は・・・あの人達は一体何なんですか?ここはどこなんですか?」
「死ぬべきお前が知る必要など無い・・・。もっともライダーになる気があれば別だが・・・」
「死ぬ?私が?」
「お前にはもう時間が無い・・・。ライダーにならない限り、ミラーワールドで生存する事は不可能だからな・・・。浅倉はライダーだ・・・。あそこに居るのは浅倉の『仮面ライダー王蛇』と北岡の『仮面ライダーゾルダ』・・・」
「ライダーとは何です?あの異形の姿の事ですか?」
「そうだ・・・。モンスターと契約しその能力を手にした者には大いなる力への道を得られる・・・。それが『仮面ライダー』だ・・・」

宣言された死への恐怖よりも、さっき浅倉に示された超人的なパワーへの素直な驚嘆と、泣き崩れる少女の涙、浅倉への怒りが須藤の心を占めた。
王蛇と五分五分で戦うゾルダを指差して須藤は尋ねた。
「『仮面ライダー』になれば、あの人みたいに戦えるのですか?」
「ああそうだ・・・。だが、一度ライダーになればもう後戻りは出来ない・・・。お前は普通の人間ではいられなくなる・・・。
ライダー同士で殺し合い、死ぬまで怪物と戦い続ける事になるだろう・・・。ライダーになれば、お前に安息の時は無くなる・・・。
このまま死を受け入れたほうがましだったと思うぐらい過酷な日々がお前を待ちうける・・・。それでも良いならライダーになるがいい・・・」
須藤は異形同士が戦う様を見つめた。刃物と銃弾、毒蛇の牙と鋼鉄の腕がぶつかり合う様は通常の人間なら畏怖させるのに充分だった。
「いいでしょう。何もかも受け入れます。私をライダーにして下さい」

血の匂いに引かれたのか、甲羅を持つ怪物が鋏を振りかざしながら走り寄ってきた。
勢い良く差し出された鋏が眼球に刺さる寸前、須藤は契約のカードを怪物の前にかざした。
金色の光に身を包まれ、徐々に身体が硬い殻に覆われていくのを感じながら須藤は立ちあがった。
異質な冷たい金属の感触が左腕に走った時、自分はもう元に戻れないと実感しかすかに涙を流した。
114(SP)シザース誕生:02/10/13 04:23 ID:pF58SB4c
ゾルダは王蛇に圧倒されていた。
至近距離からの拳と蹴りの乱舞を受け、ガクっと膝を落としたまま固まってしまった。
『ファイナルベント』
王蛇の身体が紫の弾丸となって動きが取れないゾルダをめがけ放たれた。

『ストライクベント』
シザースピンチを構えた須藤が真横から王蛇を突き飛ばす
脇からの攻撃にもろくも姿勢を崩し地に倒れる王蛇。

「浅倉!観念しなさい。あなたはもう逃げられません」
「誰だお前?いい所で邪魔をするな。お前から先に死ぬか?」
「私は警視庁捜査一課の須藤雅史!浅倉威、あなたを逮捕します」
「須藤?はぁ?さっきの刑事か・・・。お前もライダーだったのか。お前なんかがライダーになっても・・・」
ベノサーベルで斬りかかる王蛇。
「この俺に勝てると思うのかぁ!」
『ガードベント』
須藤の取り出したシェルディフェンスが、刃の直撃から身を護る。
しかし、APの差から完全にはその身を護れず、須藤は後ろに突き飛ばされた。
115(SP)シザース誕生:02/10/13 04:24 ID:pF58SB4c
ベノサーベルを振りまわす王蛇の猛攻を大鋏と盾でギリギリで防ぐ須藤。防戦一方で攻撃を仕掛ける隙が無かった。
更に悪い事に、生身で殴られた傷と、怪物に噛まれた傷がじくじくと痛み出した。
盾を取り落としそうになった須藤の隙を狙い、王蛇はベノサーベルを須藤の肩に突き刺した。
苦痛の声をあげる須藤に「終わりだ」と告げ、ベノサーベルに全体重を掛け始める王蛇。

ふいに散発的にパラパラと撃ち込まれる弾丸。「北岡!邪魔だ!俺をイライラさせるな!」
須藤はそのわずかな間を見逃さなかった。
シザースピンチでベノサーベルを挟み込み、王蛇に蹴りを入れその身を弾き飛ばした。
肩に刺さる刃を抜き捨てた反動で大鋏を王蛇に叩きつけた。

だが、まるで痛みを意に介さない様に動きを鈍らせる事無く王蛇は殴りかかってきた。
鋏を難なく避けつつ繰り出される王蛇の攻撃。
刀を失っても王蛇の蹴りと拳は盾を揺るがすほどの威力があった。
「どうした?ふらふらじゃないか?俺を捕まえるんじゃなかったのか?あん?」
「ええ、そうです。あなたはもう私の手の内にありますよ」
そう言うと須藤は、浅倉が須藤の動きに慣れた鋏でなく、盾を王蛇に叩き付けた。

『ファイナルベント』
次の瞬間、須藤の身体が宙に舞った。
シザースアタックが、既に大技のカードを使い防御の余裕の無くなっていた王蛇を直撃した。
116(SP)シザース誕生:02/10/13 04:38 ID:pF58SB4c
意識を失った浅倉の身体は砂状になって消え始めた。
(須藤さん、あんた甘いよ。世の中にゃ生きる価値の無い奴も居るんだよ)
須藤は浅倉に向かって手を伸ばすとその喉を掴んだ。

泣きながら須藤の胸をこぶしで叩く少女の姿を思い出す。
(警察なんてあてにならないよ!私が自分で!この手で!お姉ちゃんの仇を取る!)
あなたがその手を血に染める必要はありません。
この男には、人生を引き換えにするほどの価値は無いですから・・・。
我知らず喉を掴む須藤の腕に力が掛かっていった・・・。

浅倉を引きずる須藤にゾルダが声を掛けてきた。
「何をしてるんだよ。とどめを刺んじゃなかったの?」
「殺しはしません。この男は連れて帰って逮捕します。それが私の望みですから」
「ふーん。あんた、ライダーになったばっかりなんだね?」
浅倉をライドシューターに押し込める須藤の後頭部をバイザーの銃口が捉えた。
「・・・甘いよ!」

振り向かず浅倉の肩に右手を置いたまま、ぶんと左腕を一振りする須藤。
衝撃がバイザーの蓋を閉ざし、予め差し込まれていたカードの名を読み上げた。

『アドベント』

瞬時に現れたボルキャンサーがマグナバイザーを叩き落とした。
ゾルダがひるむ隙にライドシューターは現実世界へと帰還していった・・・。
117(SP)シザース誕生:02/10/13 04:39 ID:pF58SB4c
立ち去るパトカーの音を聞きながら病院のベンチに腰を降ろしたままで須藤は風に当たっていた。
満身創痍で疲れていたが、心地よい満足感にもう少し浸っていたかった。
「これで良かったのですね・・・。もうこれであの娘も涙を流さずに済むでしょう・・・」

背後からかすかな笑い声が聞こえた。
「綺麗事を言えるのも今のうちだけだ・・・。すべてのライダーは己の欲望を充たす為に互いに戦い殺し合う・・・。いずれお前もそうなるだろう・・・」
「そんな事はありません。ひとがひとを殺す事など認めるわけにいきません。あなたがそう主張するなら、私がそうでないという証拠になります」
「証拠?」
「少なくとも私は浅倉と戦う為に変身する・・・犯罪から誰かを守る為だけに変身しますから」

怪物の放つ金属音に引き寄せられ、話の途中で一礼すると須藤は鏡の中に踏み込んだ。
従順なしもべとなったボルキャンサーが須藤を出迎え、一緒になって怪物の追撃を始めた。
怪物を捉え、双の刃で切り裂き重い鋏で叩き潰すうちに、奇妙な高揚感が須藤の身体の芯から湧き上がってきた。
望みは叶った。だがこの虚しさは何だろう?
もっと戦いたい。戦う相手が欲しい。歯ごたえのある強い相手が・・・。

「お前はすぐに染まる・・・お前の本性は、お前が最も厭う浅倉と同じだからだ・・・」
怪物の血で汚れた鋏を目の前にかざし、陶酔する須藤の姿。
その様子を見ながら男は満足げな忍び笑いを浮かべた。
118(SP)シザース誕生・完:02/10/13 04:43 ID:pF58SB4c
SP版解禁記念。
スペシャル須藤はもともと正義感強い奴だったらしいんでその補完。
浅倉よそ見し過ぎ(笑

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・・・どうして私は・・・あの時の気持ちを忘れてしまった・・・のか・・・。
致命傷を負い、爆炎と共に消えて行く中で須藤は思った。

もっと早く思い出せば良かった・・・
城戸さん・・・
私はあなたと一緒に戦うべきだったのかも・・・しれませんね・・・
あなたなら出来るかもしれない・・・どうかその望み・・・叶えてください・・・。
さようなら・・・
コア・ミラーを・・・壊せる事を・・・祈っています・・・。
119名無しより愛をこめて:02/10/13 04:58 ID:pF58SB4c
>>106期待してるよ。
120名無しより愛をこめて:02/10/13 05:00 ID:pF58SB4c
>>84-91
面白かった。
影響受けて須藤編を書いたよ。
121名無しより愛をこめて:02/10/13 15:20 ID:B/ZOaPEg
>>105(1)
>SS好きなので、色々な形の龍騎(+α)のSSが読めるのって楽しみです。

>>106
ベルデ話よろしくです。
禿同です。スレ立てから保守まで、ありがとうございます。

>>120
91ですが、どうもです。面白かったですね、シザース誕生編。
今週は本編で浅倉の出番がなかったので、こちらで楽しめました。
ニュータイプSPにあった「北岡と須藤が手を回した」って
こういうことだったのか・・
122121:02/10/13 15:33 ID:B/ZOaPEg
失礼しました・・・
105、106へのレスを付け間違えてました。
正しくは下の通りです。スマソ。

>>105(1)
>SS好きなので、色々な形の龍騎(+α)のSSが読めるのって楽しみです。
禿同です。スレ立てから保守まで、ありがとうございます。

>>106
ベルデ話よろしくです。
123名無しより愛をこめて:02/10/14 10:42 ID:/RFZ+JwV
***仮面ライダー龍騎 最終回***
真司と優衣に迫る王蛇。その時 「待ちな! オレが相手だ!」
生きていたガイ! 爆炎に紛れて脱出していたのだ!
「決着はついてねぇ!」 王蛇に戦いを挑む。
しかし、ガイは以前の戦いで、両腕が使えなくなっていた。
余裕の勝利を確信する王蛇。敢えてメタルゲラスのみを召喚。ファイナルベントを発動!
かつての契約者に対して突進してゆくメタルゲラス。
カードを装填する事もできず、ただ立ち尽くすガイ。諦念の表情を浮かべる。
しかし、ガイの直前で、メタルゲラスは軌道を変えてしまう。
「使えねぇなァ、おい!」 メタルゲラスを蹴り倒す王蛇。
エビルダイバーを召喚。すぐさまファイナルベントを発動。
ガイに迫るエビルダイバー!
その時、ガイの前にメタルゲラスが立ちふさがる!
衝突。そして爆発。
呆然とする両者。
王蛇、涙を流しながら「こ・・・これが、愛か!」
そこへ、神崎士郎が登場。
  そうだ・・・愛だ!
   私は、ミラーモンスター達が、愛を忘れてしまったことに深い悲しみを覚えた。
  彼らに愛を思い出させるために、ありとあらゆる手を尽くした・・・ しかし、
  荒み始めてしまった彼等を、元に戻すことはできなかった。
  そこで、一計を案じた。むしろ逆に、戦わせるのだ!
  その過程で、愛を思い出せばいい!
  犠牲はあった。しかし、彼等は、見事に愛を取り戻したのだ!
「成程な。この戦いには、そんな深い意味があったのか!」感動する王蛇。
「神崎士郎・・・ お前は、そこまで奴等の事を」ガイも感動。
「俺にも、愛とは何かが分かったような気がするぜ」
そう言って王蛇は、ベノスネイカーを召喚、ファイナルベントを発動!
爆発するガイ!
神崎士郎「戦いは戦いだから」
真司「そんな!」
優衣「まぁ、そんなものでしょうね」
124名無しより愛をこめて:02/10/14 19:17 ID:yFWJuHpI
>>110-118
須藤がシザーズになった真の動機は「美穂たん萌え〜」ですか(笑)

>>123
もはや補完じゃないと思うけどワロタ
125120:02/10/16 02:59 ID:RruVyuEZ
>>121
どうもありがとう。
セリフもシーンもパロなんでちょい照れる。
もっと真面目に書くか徹底してパロれば良かったかな。

>>123
(笑
小話もSSだしね。

>>124
(笑
そういう解釈もありかも。
126名無しより愛をこめて:02/10/17 19:22 ID:wc+rDSje
保守
127名無しより愛をこめて:02/10/17 22:04 ID:tbaw41Ah
うう・・・
128名無しより愛をこめて:02/10/17 22:05 ID:tbaw41Ah
うううううっ
129名無しより愛をこめて:02/10/17 22:06 ID:uUkTwKsq
うおおおっ
130名無しより愛をこめて:02/10/17 22:06 ID:uUkTwKsq
うんこ
131名無しより愛をこめて:02/10/19 00:41 ID:d7UNeedp
ソングコレクションに入ってないキャラの歌も
補完しれ。
132最後の願い(1):02/10/20 03:32 ID:HknyDnYl
黒い龍と赤い龍が正面から激突した。

片腕で顔を覆って爆風を避ける蓮。
黒いコートの裾があおられ、狂ったようにはためく。

やがて、視界に渦巻く煙が薄れ始めた。
だが崩れた壁の向こうには何も見えなかった。
ニ体の龍も、黒いライダーも、そして赤いライダーも。


龍騎の姿のまま、全身の激痛で意識を取り戻した真司。
「・・・どこだよ、ここ」

夜明けの数時間前のような、かすかな明るさと静寂、
それに自分の横たわる地面以外は何もない。
だが静寂は瞬時に破られた。

空気を震わせる、聞き慣れた咆哮と聞き鳴れない咆哮。
「ドラグレッダー!」
見上げた龍騎の眼に、炎を吐いて攻撃し合う二匹の龍が映った。

互いに食らいつき、爪を突きたてるたびに
赤と黒の長い体が流れるようにうねり、
蒼い光を帯びた黒い炎と紅く輝く炎が薄暗い空を照らし出す。
死闘とは思えないほど美しい光景だった。
133最後の願い(2):02/10/20 03:34 ID:HknyDnYl
だが、ドラグレッダーが劣勢なのは明らかだった。
次第に攻撃よりも、身をくねらせてドラグブラッカーの
牙と爪をかわす方が多くなっていく。
「・・・!」契約モンスターの危機をどうすることもできず、
地に伏したまま龍騎が拳を握り締めた時。

いきなり左肩をつかまれ、乱暴に起こされた。
次の瞬間、重い衝撃と共に身体が宙を飛んだ。

前にもある。この一撃に吹っ飛ばされたことが。
自分と同じ姿、同じ武器を持ち、自分より強いライダー、リュウガの一撃に。

再度地に投げ出され、激痛に耐えて懸命に身体を起こそうとする
龍騎の目の前に、黒い自分の姿が近づいてくる。

それを見て、龍騎は思い出した。
ファイナルベントで激突する寸前、黒い炎を背負って自分に迫るリュウガが
バイザーにカードを入れるような動きを見せたことを。

「エンクローズベント」。
ミラーワールドと現実の境に別の結界を作りだし、
相手と自分を送りこむことのできるカード。
リュウガはそれを使ったのだ。もちろん龍騎には知る由もないことだったが。
134最後の願い(3):02/10/20 03:37 ID:HknyDnYl
そして・・・

「なんでだよ!」
必死で痺れた腕を動かしてソードベントのカードを引き抜き、
ドラグバイザーに入れた龍騎が狼狽の声をあげた。
あの乾いた声が響かない。

結界の中で、他のライダーのカードはすべて無効になる。

倒れたままの龍騎のすぐそばまで来たリュウガが
自分のデッキからカードを引き抜き、黒いバイザーに入れた。
「ソードベント」
濁った声が嘲るように響いた時。

「こっちだよ、あんたの相手は」
この場にいるはずのない、女の声がした。

明らかに動揺して振り返ったリュウガの視線を追い、龍騎は見た。
薄明を背にして浮かび上がる、仮面ライダーファムの姿を。
違う。
ファムと同じシルエットだが、身体の色は闇と同じだ。
リュウガのように。

「美穂!」
龍騎がそう叫んだ時、黒い女ライダーは
構えていた細身の剣の基部にカードを差しこんだ。
「アドベント」
冷たく無機質な女の声が響いた。
135最後の願い(4):02/10/20 03:39 ID:HknyDnYl
異世界の地面が水面のように飛沫をあげて割れ、
漆黒の翼をはばたかせて巨大な鳥が姿をあらわした。
眼と、嘴だけが赤い光を放っている。
「黒鳥・・・」
龍騎がつぶやく。嫌な予感に苛まれ始めていた。
あれは本当に自分の知っているファム、いや美穂なのか・・・

出現したばかりの鳥は、そのままリュウガめがけて
猛スピードで滑空していく。
不気味なほど甲高い鳴き声が響き渡った。

技をかけた相手以外のライダーが現れ、
自分以外には使えないはずのカードでモンスターを呼び出す。
ありえないことの連続で余裕を失ったリュウガには、
地面に転がって黒鳥の鋭い翼の先端をかわすのが精一杯だった。

追い討ちをかけるように、黒いファムが新たなカードを引き抜く。
「ソードベント」
再び女の声が告げ、黒鳥が長い武器を脚に掴んで飛んできた。

異変に気づいたドラグブラッカーが闘いを中断し、
身をくねらせて鳥を追いながら黒い炎を吐く。

間一髪でそれをかわし、主人に向かって武器を落とすと、
黒鳥は反転して黒龍の頭の上に飛び出した。
次々と襲う炎を巧みに避け、鋼の翼を龍の顔面に打ち下ろし、
眼をねらって赤い嘴を突き出す。

両端に赤く光る刃のついた黒い薙刀を身体の前にかざし、
リュウガにゆっくりと近づく黒ファム。
そのリュウガも既に立ちあがり、反った黒い刃を持つ剣を構えていた。
136最後の願い(5):02/10/20 03:41 ID:HknyDnYl
ライダー同士とモンスター同士の激しい戦いが続く結界を
外から見守る、二つの存在があった。

「お兄ちゃん・・・あの人は今、真司君のために戦ってるんだよね。
お兄ちゃんの約束した願いをかなえるためでも、
私の命を継ぎ足すためでもなく」
「・・・そうだな」
「よかった。私の力をあげて」

**************

サイレンの遠吠えが虚ろに響き渡るビルの谷間。
砕け散った鏡張りの壁面に映る、奇怪な飛行機じみた怪物の群れ。
降下してくる怪物に次々と間引かれながら、
ビルの前の道路を逃げていく無数の人々。
そして誰にも気づかれずビルの植え込みに横たわる、息絶えた娘。

亡骸の上の割れ残ったガラス窓に、二つの影が映り込んだ。
長身の男と、小柄な娘だった。
淋しげだが、幸せそうにみえないこともなかった。
すべてが終わり、やっと一緒になれた今・・・。
今度こそ、鏡の世界だけの住人になったのかもしれない。

窓の下を見つめながら、小柄な娘が言った。
「・・・お兄ちゃん。私、この人に力をあげたい。しばらくの間だけでも。
真司君を助けに行かせてあげたいの」
何もかも知っている口調だった。
亡骸が誰なのか、ここに横たわるまでに何を願って生き、
誰と出会い、どんなことをしたのか、そのすべてを。
そして、真司が今どんな状態に陥っているかということも。
137最後の願い(6):02/10/20 03:44 ID:HknyDnYl
「お前が望むなら、それもいいだろう。今のお前にはその力がある」
長身の男が答えた。声に少し哀しげな響きがあった。
「・・・うん」
娘が微笑むと、長い年月の間ずっと沈鬱だった
男の表情が少しやわらいだ。

破片となったガラス窓の表面が水のように揺らぐ。
一枚の黒い羽根がその中心から浮かびあがり、
空中を漂い落ち、亡骸の胸の上にとまった。

霧島美穂の眼が、ゆっくりと開いた。
同時に、傍に転がっていた白いカードデッキの表面が
黒く染まり始める。

身体を起こして立ちあがり、デッキを拾い上げる美穂。
ためらうことなく一枚のカードを抜き、割れ残った窓にかざす。
赤い月を背景に飛ぶ黒い鳥の横に、「NOIRWING」と書かれたカードだった。

ガラスの向こうで、巨大な白鳥が喜びの鳴き声をあげた。
大きく広げたその翼も体も、黒く染まりつつある。
「行こう、ブラン・・・ううん、ノワール」
そう呟くと美穂は、ガラスに向かって黒いデッキを突き出した。
138最後の願い(7):02/10/20 03:47 ID:HknyDnYl
薙刀を縦横に揮ってリュウガに切り込んでは、
反身の剣の強烈な斬撃を弾き返す黒ファム。
澄んだ金属音が響くたびに、二人の黒いライダーは火花を浴びた。

「なぜ・・・・俺の結界の在処が分かった。なぜ侵入できた」
激しく切り結びながら、リュウガが初めて言葉を発した。
苦しそうに。
「・・・・今のあたしは、あんたと似た存在だからだよ」
黒い刃を薙ぎ払いながら、淡々と答える黒ファム。

相手を追い詰めつつあるのは、明らかに黒ファムの方だった。
とても、一方的にリュウガに痛めつけられていた白ファムと
同じ人間が変身した姿とは思えない。

「やめろ!もう、ライダーにはならないって約束しただろ、俺と!」
ふらつきながらも立ちあがった龍騎が叫んだ。
「やめてくれ、おまえが本当に美穂なら・・・俺がおまえを守るから」

その台詞があまりにも遅すぎたものであることを、まだ龍騎は知らない。
だが、黒ファムは振り向いた。新たなカードをデッキから抜きながら。

美穂の勝気で、少し淋しそうな笑顔が見えたような気がした。

「ほんとに、あたしがいなきゃだめなんだから」
「ファイナルベント」

間違えようのない美穂の声と、冷たい女の声が重なった。
139最後の願い(8):02/10/20 03:48 ID:HknyDnYl
翼を最大限に広げて地に降り立つと、
暗黒鳥ノワールウイングは高々と首を天に伸ばした。
挑戦的な鳴き声が大気を切り裂くのと同時に、
いくつもの紅い稲妻が黒鳥をドーム状に取り巻いて閃く。

次の瞬間、鳥を中心に無数の黒い羽根が超高速で発射された。
そのまま真上に向かってたちまちひとつに収束し、
一本の巨大な矢となって突き進んでいく。黒い龍に向かって。

長くうねる胴体を、鋼の羽根がまたたく間に埋め尽くしていく。

無数の羽根に貫かれた苦しみに耐えかねて
空中をのたうち回っていた暗黒龍ドラグブラッカーは、
ついに断末魔の咆哮をあげて爆発、四散した。

「真司、今だ!」
黒ファムが龍騎に向かって叫ぶ。
契約モンスターが消滅し、リュウガがブランク体となった今なら、
龍騎にもカードが使えるはずだ。
それを理解するより先に、龍騎の手はデッキに伸びていた。
「ファイナルベント」
今度は乾いた声が響く。
黒龍との闘いから解放されて上空を舞っていたドラグレッダーが、
咆哮とともに降りてくる。

「はあああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」
崩れかけた実験室でリュウガと闘った時以上に凄絶な雄叫びを上げ、
龍騎が跳躍した。
ブランク体となったリュウガに、今度こそドラゴンライダーキックが命中した。
140最後の願い(9):02/10/20 03:51 ID:HknyDnYl
もう一人の自分が爆発するのを、呆けたように見つめる龍騎。
その周りの地面や空気が、かげろうのように揺らいでいる。
エンクローズベントが無効になり、リュウガの結界が崩壊をはじめたのだ。
「・・・美穂!」
一番大切なことを思いだし、龍騎は夢中で周囲を見まわした。
だが、どこにも誰の姿も見えない。かげろうばかりが立ちこめている。
「美穂!どこだよっ!!」
絶望に声をつまらせる龍騎に、突然探していた娘の声が聞こえた。

「お別れみたいだよ、真司。 仇を討ってくれてありがとう。
一緒にいたいけど、あたしは戻れないんだ。
だから、あたしの分までがんばって、世界を守ってよ。
じゃあね。
あたしを守るって言ってくれたの、すごく嬉しかった」

衝撃と疑問に襲われる間もなく、
龍騎はかげろうの向こうに三つの人影が現れるのを見た。
人間の姿に戻った美穂。
神崎士郎。
そして、優衣。

それを見た瞬間、龍騎 -- 真司はすべてを悟った。
・・・優衣の力が、そうさせたのかもしれない。
美穂がもうこの世にいないこと。
神崎士郎の「消滅」とともに、ミラーワールドと現実の境目もなくなったこと。
知った瞬間、意識が急に遠のいた。
141最後の願い(10):02/10/20 03:53 ID:HknyDnYl
「・・・お前は、城戸なのか?」

蓮の声で、真司は我に返った。
瓦礫の山に座りこみ、涙を流していた。
涙を流す以外、何もする気になれなかった。

不意に、街中にこだまする不吉なサイレン音が耳に入ってきた。
後ろを向き、壁に大きく口を開けた穴の向こうを見る。
街の空の上を、無数のモンスターが埋め尽くしていた。

「だから、あたしの分までがんばって、世界を守ってよ」
美穂の最後の言葉が耳の中でよみがえった。

テーブルに伏した優衣の死に顔も、そう言っているように見える。

やりきれない思いは胸に食い込んだままだったが、涙は止まった。
不安そうに見つめる蓮を見上げ、真司は立ちあがった。
142-141:02/10/20 04:00 ID:HknyDnYl
84-90を書いてた者です。
以前霧島美穂嫌スレで「ノワールウイングと契約した美穂云々」
と書きこんだことがあり、その後自分でも「黒いブランウイングと黒いファム」
がどういうのか見たくなって、上のような補完話を書いてみました。

タイトルは、ソングコレクションの5番目から取りました。

また長くなってしまったので、読んでくださった方いたら
ありがとうございます。
143132-141:02/10/20 04:03 ID:HknyDnYl
142の正しいタイトルは、「132−141」でした。スマソ。
144132-141:02/10/20 04:48 ID:+Hh+6ngZ
もうひとつ書き忘れてました。
137の最後の方は、34さんの書くほのぼの美穂たん&ブラン
の影響が入ってます(あのシリーズ好きです)。失礼しました。
145名無しより愛をこめて:02/10/20 22:46 ID:2jdfouNQ
>>132-141

美穂&ブランが好きなので面白く読ませてもらいました

鏡の中の裏人格じゃなくて、こういう形の「もう一人の自分」って話もいいですね
146132-141:02/10/21 00:00 ID:FLUOdZp4
>>145
ありがとございます。美穂&ブランは、魅力のあるキャラなのに
悲劇色が濃くて出番が短いので、「もう一人」を作りやすいのかも
しれませんね。もっと違う運命を考えてあげたくなって…
147名無しより愛をこめて:02/10/21 02:43 ID:EeyN/CmI
保守
148名無しより愛をこめて:02/10/23 14:48 ID:K3xy+hbO
うおおおお
149名無しより愛をこめて:02/10/23 14:48 ID:K3xy+hbO
うっ
150名無しより愛をこめて:02/10/23 14:49 ID:5uhtyZpd
うんこ
151名無しより愛をこめて:02/10/23 14:49 ID:5uhtyZpd
ぶりぶり
152名無しより愛をこめて:02/10/24 06:52 ID:ybz3ULMW
あけ
153名無しより愛をこめて:02/10/26 07:08 ID:mKg/GqeC
保守
154名無しより愛をこめて:02/10/29 02:25 ID:wRrvA7H5

龍騎サバイブとナイトサバイブを倒した王蛇。
唐突に現れるオーディン。
「お前が、私と戦う権利を得た」
宣言する。
「そう急ぐことはない」
と言いながら、インスタント焼きそばを差し出す王蛇。
「お前も喰うか? 今から湯を入れるぜ」
「インスタント焼きそばは、『焼きそば』と名乗る割に、焼いていない」
「だったら、どうする?」
きびすを返すオーディン。
「ついて来い」

神崎邸。
焼きそばを作っている神崎士郎。
椅子に座って待っている浅倉威。
神崎は、出来上がった焼きそばを朝倉の前に出した。
黙って喰う浅倉。
突然、浅倉の目から大粒の涙が。
「こ、これだ。これが喰いたかった・・・」
イライラの原因は、焼きそばだったのだ。
焼いていない焼きそばを食うたび、少しずつイライラが溜まっていた。
しかし今、焼いてある焼きそばを食うことで、すべてのイライラが無くなったのだ!

−完−
156名無しより愛をこめて:02/10/31 10:24 ID:XDmN/bZk
ワラタ
親切だな神崎
157名無しより愛をこめて:02/11/01 04:32 ID:/ZJvXrHJ
>>155
スポンサーに焼きそばを・・・

158名無しより愛をこめて:02/11/01 23:53 ID:3GgBSHsN
>>155
またコントSSだ(笑)
ちゃんと落ちがあるのが良いですね。

>>いままでのSSの作者様

プロジェクトXスレで「番外編・駅伝大会」が始まってます。
ここでの美穂や真司やリュウガのやりとりが気に入ったので
話の展開にこの雰囲気を使わせてもらって良いですか?
159名無しより愛をこめて:02/11/03 16:42 ID:M+UIicOg

160名無しより愛をこめて:02/11/05 02:36 ID:rHRjlzKb
>>131
>ソングコレクションに入ってないキャラの歌も
>補完しれ。
遅レスですみませんが、ライアの歌を考えてみました。(つたなさ御免)

●Warrior's Vision

眼を閉じても 開いていても見えてくる 
通り過ぎる人々の 行き着く先
破滅の予兆を感じても
贈れるものは 虚しい言葉の連なり

戦える 迷いさえ希望に変えて
恐れることのなかった 君がいたから
踏み出そう どんなに暗い明日が見えても
誰もが持っている 自分では知らなくても
変われる力を


復讐でも 野望でもなく願ってる 
非情な運命の環を 断つことだけ
ひとりの叫びが響いても
答えるものは 鏡の荒野の風鳴り

戦える この命力に変えて
同じ願いに生きてる 君がいるから
旅立とう 見えたものも変わると信じて
見えなかった場所へ 君が連れていくだろう 
僕たちすべてを
161名無しより愛をこめて:02/11/05 17:31 ID:rcDqEnN7

162名無しさん@お腹いっぱい:02/11/07 02:30 ID:JQ8bfib5
誰か蓮と優衣の出会い編をお願い。
どう言ういきさつでコンビを組んだ経緯とか希望。

蓮って士郎より優衣の保護者ぽっいとかが格好良いと思う。
他力本願でスマン。
163158:02/11/09 00:27 ID:zCtJY+1o
無事終わりました。
できれば美穂が水面のブランに愚痴りながら
パンを投げるシーンを入れたかったです。
164名無しさん@お腹いっぱい:02/11/09 13:07 ID:ZQELrulc
age
165名無しより愛をこめて:02/11/12 02:24 ID:dXT3Dbwt
age
166名無しさん@より愛をこめて:02/11/13 08:22 ID:bN1nJck3
    
167名無しより愛をこめて:02/11/16 02:30 ID:CFK41rn9
あげ
168名無しより愛をこめて:02/11/18 13:59 ID:ZXPmOGc9
age

169名無しより愛をこめて:02/11/20 14:15 ID:tbR/2e+r
保守
170名無しより愛をこめて:02/11/21 09:49 ID:aNcCS81x
171名無しより愛をこめて:02/11/22 06:28 ID:gRVWHWbo
ネタ無しに無駄保守するなら
落としちまえ。
戦いで傷つき、フラフラになりながら鏡から出てくるゾルダ。
「先生!」駆け寄る吾郎。倒れこみながらゾルダの変身が解ける。
キーン音。
現れる神崎士郎。
「決着がつきそうだな」
北岡と吾郎はカードデッキを使って、ミラーワールドを見た。
龍騎とオーディンの相撃ち。
この瞬間、全てのライダーは倒れ、北岡だけが残ったのだ。
「生き残ったものの勝ち抜け、それがルールだ。望みは永遠の命だったな。では、さっそく・・・」
「いや、待ってくれ。望みは変えてもいいだろう?」
北岡は、ライダーたちの死に様を思い出した。

王蛇のファイナルベントから龍騎をかばい、代わりに倒されるナイト。
ナイト「城戸、お前は、お前のやるべき事をやれ」
龍騎とのファイナルベント同士の打ち合いで倒れる王蛇。
王蛇「戦いながら死ぬ。そういうのもいいな。イライラしないで済む」
オーディンが黒幕だと知って特攻する龍騎。
龍騎「お前だけは! お前だけは命をかけても倒す!」

「あいつらの死に様は、見事だったよ。満足してるんだろうな」
「先生! まだ生きましょうよ! 永遠の命を手に入れれば・・・」
「良く死ぬ事は、良く生きた証拠、だな。俺は精一杯生きた。吾郎ちゃんの腕の中で死ねれば、本望だよ」
「そんな・・・! ホモだなんて」
北岡は神崎に向かって言った。
「こいつを、何とかしてくれ」
「そんな望みでいいのか」
173名無しより愛をこめて:02/11/23 01:35 ID:prh+Gp4T
一応、162で要望のあった蓮と優衣の出会い編を書いて見ました。
完成してから上げようと思ってましたが、
ずいぶん長くなってしまったので、とりあえず最初の4回をこれからupします。
(出来はなんともいえません(汗)スマソ)
174名無しより愛をこめて:02/11/23 01:54 ID:prh+Gp4T
>>172

先生の最後から2番目の台詞が好きです。
オチもいいけど(w
175出会い (1):02/11/23 01:58 ID:prh+Gp4T
キィイイイン・・・  キィイイイイイイ・・・

まただ。
子供のころから、子守り歌のように聞かされてきたあの音。
聞きたくないのに。
しかも最近では、もっと悪いことが起こり始めてる。
あいつらは、人を襲いはじめた。
あの音を響かせてこちらの世界をうかがうだけでなく・・・
今度はどこに?

そう思って優衣があたりを見まわした時。
子供の悲鳴が響いた。続いて、女性の悲鳴も。
「沙織ーー!」

悲鳴の聞こえた方へ走り、ビルの角を曲がると、人だかりにぶつかった。
「娘が・・・いきなりあの中へ引きずり込まれて・・・」
人の輪の真中にいる女性が半狂乱で指差す先に、
駅ビルのショーウィンドウがあった。
周囲の人々は明らかにとまどっている。
ウィンドウの中に見えるのは数体のマネキンだけだ。
そうでなくとも、母親の口走ったようなことが現実にあり得るはずはなかった。

だが優衣には見えた。
鹿のような角のある怪物が子供を抱えて、
ウィンドウに映った街の風景の中を走っていくのが。
176名無しより愛をこめて:02/11/23 01:58 ID:RuBUbCcp
>171-172
いやー、憧れるなー。叱りながらもそっとSSを書いて添える心意気、ホント凄い!
…こんな誉め方じゃ、誉めてる様に聞こえない罠(汗)

>173
期待してます。
自分も出合い編を書いていましたが、
ギャグっぽくなっちゃってUPを迷ってます。
177出会い (2):02/11/23 02:00 ID:prh+Gp4T
どうすることもできない。
見えるだけ。人の命がむざむざと奪われていくのが。
いつまでこんなことが続くんだろう。
もう、たくさん・・・・・・
絶望感に捕らわれ、路上に立ちすくむ優衣。

「変身!」

その耳に、聞き慣れない言葉が飛び込んできた。
顔を上げると、人だかりから少し離れたところで
奇妙な行動を取る若い男が見えた。
一方の腕を上げ、胸の前を横切るようにかざしている。

次の瞬間、若い男はもういなかった。
入れ代わりに現れた、ブルーブラックの身体。兜を思わせる銀のマスク。
あれは−−いったい?

さらに次の瞬間。
それは、自分の正面にあるウィンドウの中へ大股に踏み込んでいった。
正確には、ウィンドウの表面の中へ。
泣き叫ぶ母親に注意を向けている街の人々は、気づかない。

鏡の中に怪物の棲む世界があると知らなかったら、
優衣にもとうてい信じられなかったろう。
そう。モンスターの世界。そこに入っていけるということは−−まさか。
あいつも、モンスター?
急に不安になり、男の消えたウィンドウに駆け寄ってのぞき込む。
今度こそ、信じられない光景が目に飛び込んできた。
178出会い (3):02/11/23 02:03 ID:prh+Gp4T
二つの黒い影が矢のように交差する。
そのたびに長剣と巨大な枝角がぶつかり合い、激しく火花が散る。
子供を脇に抱えたモンスターと、変身した男が戦っていた。

ひづめに似た足が続けざまに放つ蹴りをかわし、
地面を転がりながら、男が長剣の根元に何かを差し込む。・・・カード?
「ソードベント」
無機的な声と共に、ウィンドウの上から−−優衣には見えない空から、
槍状の武器が飛んできた。
それを受け止めるや否や、目にもとまらない速さで
モンスターの顔に向かって突き出す男。

だが槍は鈍い音と共に、頑丈な角に絡め取られた。
一瞬よろめいたが踏みこたえ、頭部を大きく振るモンスター。
槍も、それを構えた男も、空中に思いきりはねとばされた。

落ちてくる男に狙いをつけ、モンスターが再び頭を突き上げる。
空中で身体をひねり、男は間一髪で串刺しを免れた。
それでも、いくつもの鋭い角の先が身体をかすめていく。

男の身体が地に叩きつけられた。
うめきながらもすぐに立ち上がろうとするが、できない。

だが槍の一撃は無駄にならなかった。
よろめいた時、鹿の化け物は子供を放していたのだ。
気を失ったまま道路に横たわる女の子。
179出会い (4):02/11/23 02:05 ID:prh+Gp4T
お願い。早く立って、あの子を助けて・・・
焦りながらも、優衣には男を見守ることしかできない。
その時。
何を感じたのか、鏡の中で倒れた男が不意に顔を上げ、
こちら側にいる優衣を見た。
マスクの奥に青く光る目が現れ、優衣の視線とぶつかる。
(見えるのか、おまえには?)
言葉も口の動きもなくても、男がそういいたいのは明らかだった。

モンスターが甲高い奇声を上げ、宙に飛んだ。
倒れた男に全体重をかけてひづめを突き立て、とどめをさすつもりだ。
だが、男の手はすでに新しいカードを引き出していた。
うつ伏せのまま、もう一方の手に握った剣の柄に差し込む。
「アドベント」
鋭い鳴き声と共に、黒い疾風がモンスターを襲った。
巨大なコウモリの翼に薙ぎ払われ、地上に叩き落とされる怪物。

やっと仮面の男が立ち上がった。
足をひきずりながら女の子のそばへ行き、抱え上げると、
優衣の方に向き直って思いきり跳躍した。
「!」
思わず両手を顔の前に出し、眼を閉じる優衣。
すぐ横に、どさりと音をたてて何か落ちてきた。
目を開ける。

黒のレザージャケットを着た男が横たわっていた。
蒼白な顔も、女の子を抱えた両腕も、血まみれだった。
180176:02/11/23 02:10 ID:RuBUbCcp
SSの途中なのに割り込んでしまうとは…
どうもすいませんでした(TT)
181173:02/11/23 02:15 ID:prh+Gp4T
>>176
どうもです。ギャグ編も、ぜひお願いします。
182173:02/11/23 02:21 ID:prh+Gp4T
>>180
いえいえ、お気になさらず。番号も振ってあるし、大丈夫ですよ。
183176:02/11/23 02:26 ID:RuBUbCcp
>173
ストレートに格好良い出だしですね
これからの展開が楽しみです

ギャグっぽいヤツ < 完成度7割くらいなのであまり期待しないで下さい(恥
朝頃にでも直してUPしておきます
184176:02/11/23 14:06 ID:RuBUbCcp
読み返したら死ぬほど寒かったのでやっぱりやめます

出会った最初は、2人とも喧嘩ばかりして
すぐ鏡を割ったり通行人にボディアタックをかまして蓮に迷惑掛ける優衣と
延々ジュース代もファミレスの代金も踏み倒して戦闘に行き優衣に迷惑を掛ける蓮
それでもいつしか互いに信頼(?)が生まれる…って内容でした

代わりに、「公式の写真が格好良くなった記念」で書きかけてたこっちを
怯える娘を前にして、俺はまだためらってた。

早く走り出せ。悲鳴を上げて背を向けろ。
お前が動けば俺は覚悟を決められる。

スラッシュダガーの一振りで、全て終わらせる事ができる。
放り投げ、砕けてしまえば、後は全て片がつく。

だから…そんな目で俺を見るな。
怯えた猫のような目で、俺を見るな!

煮立った頭に、今までの出来事がぐるぐるとよぎる。
なぜこんな事になったんだろう?
俺は平凡に生きていたはずなのに。

……なぜ俺は、人殺しになろうとしてるんだろう?
今でも時々思い出す。…江島ゼミの飲み会の出来事。

女の子達は、小川の付けてる古臭い3連リングの話で盛り上がってた。
「今時、これは無いよねー。お姉さんのお下がりかな?」
「はずしなよぉ。ダサ。なんか恵理に似合ってないもん」

小川はちょっと笑いながら、リングを愛しそうに右手で包んだ。
「だってね。蓮が一生懸命買ってくれたんだよ。だからこれって…私には宝物なんだ」
「うーん、ごちそうさま。大事にしてくれるなら秋山君も贈り甲斐があるよねー」

秋山…小川の男はヤクザっぽい遊び人で、とてもあの子に相応しくなかった。
迎えに来たと言って無意味に大学に立ち寄っては、いらない喧嘩を回りに吹掛ける。
追い返そうとしてあいつと衝突したのは一度や二度じゃなかった。

だが、小川は、秋山が来ると嬉しそうに帰り支度をはじめ、
秋山も彼女にだけは自然で優しい笑みを見せていた。
…それはいつも、俺を不愉快にさせた。

「神崎先輩、来ないのかな?」
「先輩、ちょっと素敵なんだけど。笑ったら絶対可愛いのにね」
「酔わせてさー。へろへろにくだけた所、見てみたいなー(笑)」
神崎が親睦の輪に混ざる訳が無いだろう。

「あいつは薄気味悪い変人だし、金も持って無さそうだ」
「仲村君、ひどーい(笑)」


…それが俺が覚えてる、みんなの最後の笑顔だった…。
あの日。
401号室に戻ろうとすると、悲鳴と怒声がわきあがっていた。
ぷつっと声が途絶えた部屋には…倒れている小川。
その側に…神崎と、小川の付合ってる男…秋山。
真上には…蝙蝠に似た怪物が居た!

怪物は幻覚だったように消え、滅茶苦茶になった部屋を見て動揺する俺に神崎は、
「この事を誰にも口外しなければ生き延びられる、何もかも忘れろ」と横柄に言い渡した。
いったい何が起きたのかさっぱり判らず、それから何日も怪物の影に震えた。

実験器具の大半は壊れ使い物にならなくなり、小川は入院し、神崎は失踪した。
江島先生は事故の責任を取って辞職してしまい、江島ゼミは解散した。
みんな将来への希望を失い次々と退学して消えて行った。
いや…本当に文字通り消えた奴も何人も居たんだ。

気が付くと、俺と小川以外みんな行方不明になっていた。
連絡も無しにどこかへ引っ越しただけだと思いたかった。

だが…小川の事と、神崎の態度とあの怪物の様子を考えると、
最悪の事態が浮かんでくる。

次は俺の番か?俺なのか?
怯えながら、沈黙を守るから許してくれ見逃してくれと毎日闇に向かって祈った。

ある日ふと思った。
待て。何で俺が神崎に許しを乞わなきゃいけないんだ!
悪いのはあいつの方なのに、なぜこの俺が頭を下げなきゃいけない。
自分で自分にムカ腹を立てた。立て続けた。
神崎に睨まれる危険を覚悟で、小川の見舞いに行った。
予想より重い小川の容態と病状に心底打ちのめされる。
…小川の人生は神崎に終わらされていた。

もう2度と起きあがる事もできず、回復の希望も無いまま
いつ命が尽きるかも判らない状態だった。

実験の時の生真面目な態度も、成果が上がった時の目の輝きも、時々見せる憂いも…
笑う時は思いっきり笑う小川の姿はもう永遠に見る事ができない…。
壁にもたれるようにしゃがみこみ、俺は人知れず嗚咽した。

そこへ秋山がやって来て、俺には気付かず小川の病室へ入って行った。
「あのひとは熱心に通って小川さんの介護をしているんですよ。
 あんなに大事にされて恵理さんは幸せですね」と、看護婦が羨ましそうに呟いた。

こっそり病室の様子を覗う。
またいつもの様に、遠くから見る事しかできない俺。
秋山は小川に語り掛け、髪を撫でて、手を握り締めて涙をこぼした。
声は聞こえなくても秋山の思いは伝わる。かすかに小川の顔が穏やかになった気がした。

二人の間に俺が入る余地はどこにも無かった…。
贈るはずの花束は、ゴミ箱に投げ捨てて帰った。
-----------------------------------------------------------
その日から、恐怖は完全に怒りに取って代っていた。
小川の為にも、消えたみんなの為にも、何も出来ない自分にイラついた。
神崎が目の前に現れたら、今度は怯える事無く対峙しようと誓った。

たとえ怪物が現れても、どうなろうとも、
あいつを一度ぶちのめさないと気が済まなかった。

何ヶ月もそんな気分を抱いたまま吹っ切れずにいたある日、神崎の妹が大学を訪ねてきた…。
神崎優衣は真剣な顔で「兄について教えて下さい」と俺にすがった。

ふざけた事を言うな!お前のせいじゃないのか?何もかも。
教えてもらいたいのはこっちの方だ!あの日のあれは、何だったんだ?!
小川が犠牲になったのは何故なんだ!
お前のせいだとハッキリ神崎が言っていたじゃないか!

だが、神崎の妹は何も知らなかった。
お兄ちゃんに会いたい、何をやってるのか知りたい、
手掛かりになる事があったら教えて下さいと、ただそれだけを繰り返した。
こんなに慕われてる妹にまで迷惑をかけて、何やってるんだ神崎。

神崎の妹の、大きな瞳でひたと見据える姿は何かを連想させた。
ああそうだ、猫だ。慣れない家の隅に不安そうに丸まる子猫の様だな。ふとそう思った。

猫は…。…。…。
逃げる様に俺は神崎優衣の前から離れた。
-----------------------------------------------------------
…江島先生の無残な姿が発見されたのは、そのすぐあとだった。
401号室への階段前で、うずくまるように倒れて亡くなっていた…。
栄養失調と疲労からくる心不全が原因だった。

「恰幅の良かったあのひとは浮浪者の様にみすぼらしくなって、
 汚れてボロボロの服の下にはあちこちにアザや傷ができていました。
 人に言えない苦労をしてたんですね」と、先生の奥さんは静かに語った。

葬式には先生の家族と俺以外ほとんど誰も出なかった。
学生にも慕われ将来を有望視されていた先生が
なんでこんなみじめな最後を迎えなきゃいけないんだ?

憂鬱な気分の最中にまた神崎優衣から電話が入った。怒声を上げて携帯を切る。
やってから、もう少し優しく言っても良かったんじゃないかと後悔する。…いつもそうだった。
それから何度となく電話が掛かってきた。神崎優衣はいつも半分泣いていた。

「手掛かりはあなたしかないんです、どうか切らないで下さい…。
 お兄ちゃんが悪い事をしたなら謝ります、私が償える事なら何でもします…」
か細い声が震えているのが手に取るように判る。
あんたが謝る必要は無い、俺にはもう関わるなと言ってそのたび即座に電話を切る。

神崎の妹を怖がらせたり泣かせたりするつもりは無かった。
どうしても冷たい態度で接してしまう自分に腹を立て、それ以上に神崎に腹が立った。

電話の向こうで泣いてる娘の姿を想像すると、
夜中に窓辺で鳴いてる子猫を思い出して眠れなくなった。
安心させればいいと判ってる。望む物を与え、優しく声をかけ、手を差し伸べればいいと…。
…誰が、神崎の身内なんかに!布団を被って無理にでも眠ろうと空しい努力を続けた。

結局、猫の悲しむ声に圧されて、知ってる事全てと資料をまとめて彼女に渡した。
神崎優衣は一瞬驚いた様になって、それから顔を輝かせた。
その姿を見て思う。不安そうな顔や睨み付ける顔をやめて笑えば可愛くなるのに勿体無い…。
思わず髪を撫でそうになる衝動を押さえ、こっれきりにしてくれと言い残し立ち去る。
さ迷う子猫の声は消えた気がした。

神崎。相手はお前の妹だから別に構わないだろう?俺は他人に口外したわけじゃない…。

…いつの間にか見えない神崎に言い訳してる自分に気付く。
畜生。恐怖が戻ってきてる!
俺は神崎と戦うんじゃなかったのか?恐れるな…。恐れるな…。恐れるな…。

後ろから肩をぽんと叩かれる。
「仲村創君…でしたね?江島研究室の実験について話があります」

沈黙を破った事を他の人間に見抜かれた!
ザワっと全身に寒気が走った。
香川先生はおおよそのことを知っていた。
俺は今まで溜め込んでいた思いと一緒に、覚えてる事全てを話した。

俺の協力で香川先生の下で急速に進む解析と再構築。神崎の研究のあらましが判ってきた。

ミラーワールドの存在について、その異世界に棲む擬似生命体について、ライダーについて…。
虚像の実体化…。虚の空間への侵入方法…。異形への変身…。

やがて…。

神崎の呼び出した怪物は毎日人知れず人間を襲い食らってる事…。
消えたみんなは、ほぼ間違い無く神崎の手で始末され
江島先生も神崎に殺されたと知った。

壁を拳で殴り続ける俺には、香川先生が止める声も耳に入らなかった。
神崎!よくもこんな酷い真似を…。お前は人間じゃない!
この人殺し!みんなを…小川を返せ!

…小川だけは、俺を嫌がらなかった。
俺の欠点は気が短い所だと自分でも判ってる。
ある程度なら、誰とでも適当に仲良くできる自信はあった。
だが、俺がキレて怒鳴り散らす所を見た奴はみんな引いて去ってしまった。

実験の失敗続きに腹を立て壁を蹴り上げる俺に、ねぎらいの言葉と共に茶を出してきた小川。
「ううん。これぐらいなら怖くないですよ。蓮が喧嘩してる所見てて、慣れてるから」
「…。嫌な慣れだな。そんな大馬鹿野郎とは別れた方が良くないか?」
「うーん。あのひとお馬鹿さんだけどいいひとだし。先輩が心配しなくても大丈夫ですよ」
にっこりと笑う小川を見てると、怒りも徐々に吹き飛んでいった。
その時から、小川は…俺の心に…。

小川…。先生…。みんな…。
この仇は俺が取る!必ず…。
俺は、研究室仲間の東條悟を気に入らなかったが、香川先生は奴を推していた。
「東條君は…彼は、他の人には無い秀いでた才能を持っているんですよ」
あれがか?頭は良いかもしれないが、賢い奴だと思わない。
いつも上目遣いに人を見て、口を開けば不愉快な物の言い方しかできない男だ。

あいつを見てると昔飼ってた猫を思い出す。
まだ年寄りでもないのにいつも怠惰に寝転んでて、長い白い毛がモップの塊に見えた。
目の前を通り過ぎても尻尾をパタパタ振るだけでゴキブリも鼠も滅多に獲る事がなかった。

足を出すと面倒臭そうに前足でつかまってきて、
ひきずられて部屋中をぐるぐる回るのがなぜかお気に入りの変わったヤツだった。
しつこくそれで遊んでくれと要求する割に、飽きるといきなり爪を立て、
イタタと叫ぶ俺の身体をわざわざ駆け上がってからどこかへ行った。

何を考えてるか全然判らなかった。
可愛がってたつもりだが、おとなしそうに見えて気性の荒い所を多少持て余していた。
そして…。…。

もう猫はこりごりだ。2度と係わり合いたくない。

なのに奴は不必要に俺に絡み、日々俺を苛立たせる。
今日も猫男は菓子をガリガリ噛み砕きながら無神経な言葉を掛けて来た。

「仲村君って、神崎君の事を随分ライバル視してるけど、
 神崎君は君なんか相手にしてなかったんじゃないかな。
 君って結局、研究の深い事は何も知らないし、居ても居なくても同じだから」

その場で拳をお見舞いした。散らばったビスケットを前に無言で睨み付ける東條の胸倉を掴み
2度と下らない口をきくなと言い渡してから、研究室を後にする。

東條が小さく何か叫び、奇妙な気配に振り向くと
そこには銀色と青に覆われた、猫を思わせる異形が立っていた。
「どういうつもりだ東條!」俺はそいつに掴みかかる。
香川先生が止めに入らなかったら、あいつは間違いなく俺を…。

東條はライダーだった。
欲望と引き換えに神崎にいいように操られる駒の一人かと思うと
ますます奴にムカつき許せなくなってきたが、
その思いは香川先生の前では飲み込んでおいた。

「しかし…。仮面ライダーを初めて見たのに、
 怖じずに殴りかかろうとする人が居たとは…。驚きですよ」
どうやら香川先生は俺を見直した様だった。

この件もあって、俺は自分から望んでオルタナティブの被験者になった。
変身すると身体中に力が溢れ、スラッシュダガーの一撃でモンスターはあっけなく散った。
気分は最高に良かった。これでもう神崎の魔手を恐れずに済むし
些細な数でも神崎の配下を倒す事で、誰かを救えると思うと我知らず高揚した。

だが、香川先生は自分の成果を少しも喜ばず、憂鬱そうに鏡を見つめ溜息をついた。
「オルタナティブは根本的な解決にはなりません。
 たとえ私達が地道にモンスターを倒していったとしても
 ミラーワールドを潰さない限り、犠牲は増え続ける一方でしょう。
 確実に全てを終わらせる方法がありますが…君達にとっては精神的な負担が大きい。
 これは…私自らの手で成そうと思っています」

「どうすれば良いんですか?まさか神崎のゲームの勝者になるとかじゃ…。
 いや、たとえそれがどんな事でも俺はやり遂げますよ。教えて下さい」

香川先生は少しだけ笑った。
「あなたは信頼するに値すると思います。だから、心して聞いてください」
香川先生の声はいつもと違う暗い影を帯びていた。

「ミラーワールドを閉じる方法はただ一つ。…神崎士郎の妹、神崎優衣を殺す事です」
……そして今、目の前の神崎優衣に対し、俺は刃物を持って向い合ってる。

どうしてこんな事になったんだろう。
傷付けるつもりなんか無かった相手を、手に掛ける後味の悪さを反芻する。
あの時も…猫の時も…。
いきなり飛びかかってきたこいつが悪い…そう思おうとした。

…あの時…じゃれる延長で噛み付いてきた猫を、痛みから反射的に放り投げた。
タンスの角に嫌な音を立ててぶつかり、妙な声を上げて動かなくなった身体を抱き上げると
猫は猫をやめていて、目を見開いたまま…くたっと柔らかな肉の塊になっていた。

幾ら揺すっても、背中を撫でても、肉球をさすっても、呼吸は戻らず
ぐにゃぐにゃになった身体はどんどん冷えていった。

俺は泣いた。
それからもう2度と猫は飼わない事にした。

…あの時も、別に傷付けるつもりはなかった…。
だが、もうここまで来ては…後戻りはできない。
放り投げさえすれば、あとは壊れて終わるだけだ。

一生懸命思い込もうとする…。
こいつは化け物だ。女の子なんかじゃない。怯える猫でもない。
人間に見えるけど、怪物と関わりのある異形だ。
こいつを倒せば世界は救われる。もう人々が怪物に襲われる事も無くなる。

英雄になるなんて関係無い。
神崎の目論見が崩れる事が、神崎の夢が消える事が、神崎を嘆き哀しませる事が、
俺には一番大事な事なんだよ!

お前に恨みは無い、でも…許せ!
結局その場は、脇から城戸に割り込まれて神崎優衣の暗殺は失敗に終わった。
腹も立ったが、内心ほっとしていた。

相変わらず城戸の馬鹿野郎は、真顔でミラーワールドの閉ざし方を聞きに来る。
知ったからといって、お前に出来るわけがないだろう!
おまけに東條の馬鹿野郎も、城戸にベラベラ秘密を喋ってしまった。
計画を知った他のライダーも一緒になって妨害してきたらどうするんだ!

特に秋山は、あの性格なら有無を言わさず真っ先に襲撃してくるはずだ…。
今の俺なら秋山を倒す事は簡単だった。激突すれば多分、秋山は生きてはいないだろう。
…秋山が死ねば、小川は怪物に食い殺される。
だからこそ、秋山を刺激する事は避けたかったのに…。

懲りずに城戸は何度も邪魔してきた上に、俺と東條を間違えやがった…。
怒り倍増で奴と斬り結ぶ。
何も知らずにヒーロー気取りでいい気になるな!お前が守ろうとする者が全ての原因なんだ!
秋山が勝利したからと言って小川が元に戻る保証は無い。
ライダーなんかくたばっちまえ!ミラーワールドなんか滅びてしまえ!
神崎と、その妹の世界は、消えてしまえばいいんだ!

「一つを犠牲にするのは勇気でもなんでも無い」城戸はこう言い放ち、俺を殴り飛ばす

黙れ!黙れ黙れ黙れっ!
そんな事は…最初から決まってる!一つよりも十だ!十よりも百だ!
たった一人の命で世界が救えるなら誰でもそれを選ぶ!なぜ判らない!なぜ邪魔をする!

ふらふらになった俺の頭に、城戸の思いつめた声や扉の前で懇願する姿が駆け巡る。
「優衣ちゃんに手を出すな!」そう叫びながら蹴りかかって来た、今さっきの城戸も…。
お前も秋山と同じだ。世界よりも女を守ろうとするお前にはミラーワールドは閉ざせないよ…。

だが…。もしも…。
小川と引き換えに世界が救えると言われたら、俺は彼女を犠牲にできるだろうか?
城戸は真摯な態度で俺に告げる「俺は大きな犠牲も一つの犠牲も出さない!
 綺麗事かもしれないけど、今はそれしかない」

油断したのか余裕を見せてるつもりなのか、武器を置いたまま帰りかけた城戸を
アクセルベントでめった斬りにする。
背中を見せたお前が悪いんだ!そう思い、全ての怒りをダガーに集中させる。
迷う暇は無い。あの娘さえ消えれば全てが終わる。
怪物も、ライダーも、神崎の亡霊も、余計な何もかも消えるんだ!

この甘ちゃんが!俺を、迷わせるなっ!

城戸にとどめを刺そうとする俺の背から、馴染みのある抑揚の無い声が響いた。
『ファイナルベント』
咆哮と…。素早く襲いかかる影…。骨が砕けるような衝撃と…。突き刺さる鋭い爪…。

今度は…放り投げられるのは俺自身だった。


東條のデストクローで貫かれ断末魔の悲鳴を上げながら
スーツと身体が冷気で粉々に砕けてく俺の耳に、
かすかに…笑い声が…獲物を弄る楽しそうな声が…聞こえた気がした。

…本当に猫のような奴だなお前…。
猫の悪い所を真似してどうするんだよ…。


激痛の中でのたうちながら、もう終わりだと悟る。これが死ぬっていう事なんだな…。
粒子になって消えて行く俺を、いつの間にか城戸は半泣きで支えている。
ははっ…。
たった今、お前を殺そうとした俺をか?…ったく、お前は人が良過ぎるよ。
…。なあ城戸…。
お前ともっと早く出会ってれば…。俺は…。
なんだか…悪い夢を見てたような気がする。
怪物もミラーワールドもデッキも神崎も
みんな夢で見た幻なんだ…そうに決まってる。
これは全部夢だ。
目が醒めたらきっと…。俺の側に小川が居て…。足元で猫が遊んでて…。…。

…ああ。そうか…。
今更判っても遅いけど…。
一つの犠牲で多くを助けるものが英雄だなんて…幻想だったんですよ、香川先生…。
俺はまだ死にたくなかった…。
それで世界が救われるとしても、「犠牲」になんて誰もなりたくないんだ。
神崎の妹も…誰も…。他に道は無いとしても…。

いや…道は…。別な方法も…探せばあったかもしれない…。
英雄になる事にこだわりさえしなければ…。
あるいは…。

…なんだっけ?…意識が朦朧としていく…。
そうだ…確か江島先生とみんなと、パァっと楽しく飲みに行くんだった。
みんなが手を振って俺を呼んでる。もう行かなくちゃ…。
でも、小川だけは来るなよな?
お前にはまだ帰る所があるんだから…。

-----------------------------------------------------------
…俺は英雄なんかじゃない。
たとえ犠牲にするのが自分自身でも、
誰かを犠牲にする者が英雄なわけがない…。

なにもかも消えて行く中で、俺は最後の声を振り絞る。

城戸…。お前は間違って…ない。
東條…。お前は間違って…いる。
198名無しより愛をこめて:02/11/23 16:48 ID:RuBUbCcp
某スレの影響で、東條がたべっこどうぶつを持ってますが…(汗
後半は暗黒版プロXになっちゃってる気も…。

ここに出てきた猫は実際にうちに居た猫のモップがモデルです。
数ヶ月預かった後、また飼い主に引き取られて行きました。

なんで引き回しが好きだったのか判りませんが、
ですちゃんのガリガリ((C)プロX)を見てると
猫と人が逆だけどモップを思い出して笑ってしまいました。
199名無しより愛をこめて:02/11/23 21:15 ID:8LYDwmX8
>>198
…………泣いた。仲村ぁ…………。
200名無しより愛をこめて:02/11/24 00:00 ID:fDBuy49N
>>199
どうもです。これで少しは仲村が浮かばれてくれるといいなあ。
201名無しより愛をこめて:02/11/24 01:16 ID:WrC0oybd
>185-197
こう考えると仲村の死は惜しい
仲村は最後の所以外は全編怒りまくってるのな
202名無しより愛をこめて:02/11/24 03:30 ID:Fphw53qo
>>198
ありがとうございました。いいもの読ませていただきました。
203名無しより愛をこめて:02/11/24 04:21 ID:bPZ3Jif+
>>198
目頭が熱くなりました。いいものをありがとうございました。
204名無しより愛をこめて:02/11/24 09:23 ID:DytveOrN
傷付け合う意味など 無いと信じながら
胸に抱く矛盾を 消せずにいたよ

何を犠牲にしても 構わないと誓う
愛する者全てを 守るためなら
205名無しさん@より愛をこめて:02/11/24 21:09 ID:C0ldgx2y
175,177,178
続き禿げしく希望!!

>198
中村くん編、良かったです。
206198:02/11/24 23:59 ID:WrC0oybd
>201,202,203,205
感想どうもありがとうございました。
仲村は最初観た時、まさかこの人がライダーになるなんて思ってませんでした。
良い意味で化けましたね。

今、教授の最後(泣)で頭がいっぱいいっぱいです。
207198:02/11/25 11:54 ID:Dv1QQwiI
>>206
今気付いた。自分にまでレスしてどうするんだよ(汗

『>202,203,205
 感想どうもありがとうございました』

206は正確にはこれで。
208175:02/11/25 23:25 ID:87TZjI4x
>>198
とても面白かったです。仲村君の最後の台詞がたまりません。
蓮のケンカに慣れてるせいで、仲村がキレても驚かない恵里も最高(w

>>205
どもです。これからまたいくつかupします
209出会い (1) :02/11/25 23:30 ID:87TZjI4x
海辺で屈託なく笑う女の顔が、目の前から遠のいていく。
同時に、灼けつくような痛みが全身に戻ってくる。
「う・・・・・」

「気がついた?」
清潔なシーツの感触。ドライフラワーの、さっぱりした匂い。
ランプの柔らかな明かりに照らされた室内。

あの子はどうした。
そう思っただけのつもりが、自分でも気づかず口に出していたらしい。
答えが返ってきた。さっきと同じ女の声で。
「だいじょうぶ。沙織ちゃんていうんだけど、無事にお母さんのところへ
帰ったよ。お母さん、泣いて喜んでた。でも、あたしに何度もお礼言うから
困っちゃった。見当違いなのにね」

そうだ。おまえはいったい・・・
男のかすんでいた目がようやく、ベッドに横たわる自分の脇に立つ人影を
はっきりと捉えた。
白地に緑の花柄を散らしたエプロンの似合う、小柄で清楚な娘だった。
210209は出会い(5)です:02/11/25 23:34 ID:87TZjI4x
175です。いきなりボケてすみませぬ。
211出会い(6):02/11/25 23:36 ID:87TZjI4x
「助けてもらったようだが・・・・ここは、君の家なのか?」
「そう。さっきまでお医者さんが来てて、今帰ったとこ。
傷はそんなに深くないけど、今晩と明日はあまり動かない方がいいって」
男は天井に目を向けると、大きく溜息をついた。
「そうか。ずいぶん面倒をかけてしまったらしいな。すまない」
「いいよ、気にしないで」
そう言ってから、わざと人の悪そうな笑みを浮かべる娘。
「ただし診察代は、下のお店で働いて返してね」
「何?」
「といっても、変な店じゃないから安心して。小さな喫茶店なんだ」
天井を見たまま少し考えた後、男は素っ気ない調子で言った。
「わかった。別に変な店でも俺はかまわんがな」
「え?」
「あまり褒められない仕事と喧嘩なら、多少は慣れてる」
またケンカしたんでしょ?−−からかうような、それでも
やはり心配そうな女の声が、耳の底でよみがえる。
「やだ、そんなあぶない人だなんて知らないで連れてきちゃった。
そういえば何か近寄りがたそうな感じだったな、気を失ってる時も」
「悪かったな。無愛想は生まれつきだ」
言葉とは裏腹に、娘の軽口に男の口元がほころびかける。
が、次の言葉で一気に凍りついた。
「あたし、優衣。苗字は神崎」
212出会い(7):02/11/25 23:39 ID:87TZjI4x
「…もしかして傷、痛いの?」
沈黙した男を見て、優衣が聞く。
「いや。同じ名前の知り合いがいてな」
「神崎っていう人?」
「ああ」
今度は優衣が沈黙した。
「どうかしたか?」

その神崎って・・・  ばかみたい、あたし。何考えてるんだろう。
そんなに都合よく、お兄ちゃんを知ってる人と会えるはずないじゃない。
「なんでもない」

男も余計な考えを振り払い、笑ってみせた。
神崎。それほど珍しい名前じゃない。偶然だろう。
・・・鏡の世界が見えることだって、そうに決まってる。

「そうか。俺は秋山 蓮だ。
それより、見えるのか。鏡の中のやつらが」
「・・・うん。子供の頃から、ずっと」
再び沈黙。そして、再び蓮が尋ねる。妙にぎこちなく。

「驚いたな。子供の頃からとは・・・怖かったんじゃないのか」
「ちょっとはね。でも、あたしのこと信じて味方してくれたから、
平気だった−−お兄ちゃんが」


「おれを殺すか、戦い続けるか。好きな方を選べ」
あの時の陰鬱な声が、蓮の頭の中で反響した。
213出会い (8):02/11/25 23:42 ID:87TZjI4x
やはり偶然ではなかったのか。
それでも蓮は、最後の望みにすがった。
頼む。違うと言ってくれ。
言わなければ、俺はお前に何をするかわからない。
「兄さんの名前・・・・神崎、士郎か?」
「やっぱりお兄ちゃんのこと知ってるのね!」

優衣がそう叫んだ途端に跳ね起き、ベッドから飛び降りる蓮。
息を呑み、反射的に飛びのく優衣。

一気に階段を駆け降り、外に飛び出すと、
蓮は夜の街を黒い風のように走りはじめた。
身体中の傷口が開き始め、加速する鼓動にあわせて脈打ちはじめる。
激しい痛みが襲ってきたはずだが、感じなかった。
214出会い (9):02/11/25 23:48 ID:87TZjI4x
遅い午後の陽光が窓から射し込み、白い壁を金色に染めている。
がらんとした店内のカウンターで、ポットとティーカップを前に座る優衣。
どちらの中身も、とっくに冷めていた。

あの人が出ていってから、2日がたつ。
傷の具合が悪くなったりしていないだろうか。そうなら、私のせいだ。
でもどうしても確かめたかった。あの人がお兄ちゃんを知っているかどうかを。
鏡の中のモンスター。神崎という名前。
その両方を知っていて、お兄ちゃんと無関係のはずがない。
いくら偶然だと否定してもその思いを抑え切れなかった。
そして、その予感は間違っていなかった。

あの人は、お兄ちゃんが今どこにいるか知ってるんだろうか。
それにお兄ちゃんとあの人が会ったとき、何があったんだろう。
…もしお兄ちゃんが何かひどいことをしたのなら、
妹の私のこともよく思わない、どころか憎んだっておかしくないはずだ。

でも、そんな風には思いたくない。
私をいつも守ってくれたお兄ちゃんが、別の誰かを苦しめるなんて。
でもそれなら何故あの人はあんな風に出ていったのか。
私が神崎士郎の妹だと知った途端……

悶々とした思いを、窓の外に近づいてきたバイクの音が破った。
直後、ガラスを嵌め込んだ白い扉が勢いよく開く。

「優衣。この間モンスターに襲われた子の住んでいる所はわかるか?」
黒のレザーに身を包んだ秋山蓮が、そう呼びかけた。
ずっと前から知り合いのように。
215175:02/11/26 00:20 ID:RFvoqS0X
(10)から先は、ラストが完成してからupしにきます。

新しいSSを作った方がいたら、先にupしてください。
216198:02/11/26 02:53 ID:JB/2SCLM
>>209-214
やっと2人が名乗り合い、これからも波乱の展開になりそうですね。
続きを楽しみにしています。

>>208
どうもです。仲村は自分のやろうとしていた事に最後まで迷いがあって
あのセリフになったと思ってます。
217名無しより愛をこめて:02/11/26 20:20 ID:NoPdfzY/
ミラーワールドと現実世界との境界は消え、モンスターが街に溢れ返る。
真司と蓮は、人々を守る為に変身し、契約モンスターに跨り、モンスターの大群に向かっていく。
絶望的な戦いだということは、二人とも分かっていた。
しかし、それでも二人は生きる為に戦う。
ドラグランザーの火球が焼き払い、龍騎がシュートベントで群れを撃ち抜く。
ダークレイダーの竜巻が吹き飛ばし、ナイトは接近する個体を斬り払っていく。
モンスターの群体心理が二人を群れの脅威と認識して、最優先襲撃対象として群がる。
龍騎はモンスターが街の人々から離れていくのを横目で確認しつつ、新たな群れに向けてメテオバレットを放つ。
密集したモンスターがダース単位で蒸発していくが、一方で次々と個体が集結してくる。
「城戸!」
ナイトの声に振り返ると同時に、背後に迫っていたモンスターが縦一線に両断された。
「うおっ?」
「背中に気をつけるんだな!」
驚きの声を上げる龍騎だったが、次の瞬間にはナイトの上方から降下していた個体を打ち抜いていた。
「蓮、お前もな!」
連携しつつモンスターと戦う二人だったが、無限の如く湧き出てくる相手に対し、次第に疲弊していった。
一瞬の隙をつかれ、攻撃を受けたナイトがダークレイダーの背から叩き落とされる。
「蓮!」
叫んだ直後、龍騎もまたドラグランザーの背から落とされ、地表に叩きつけられた。
体がコンクリートにめり込み、もがく二人の周囲に続々とモンスターが群がってくる。
湧き上がる黒い絶望が、心と視界を染め上げる。
218名無しより愛をこめて:02/11/26 20:21 ID:NoPdfzY/
「くっ…」
龍騎の口から諦めの言葉が出ようとした刹那、力強い雄叫びが空間を引き裂いた。
「ライダーーーッきりもみシュー−ートッ!」
龍騎とナイトを取り囲んでいた群れの一角が高空へと舞い上がり、更に群れの全体が竜巻に巻き込まれるかのように
空へと弾き飛ばされていく。
空中で掻き回されるモンスターの群れは、互いに衝突し合い、猛スピードと自らの質量によって潰されていく。
次々と上空で起こる爆発。
突然の出来事に呆然となる龍騎とナイト。
そこへ、一つの人影がゆっくりと歩み寄ってくる。
異形の姿、しかしそれは、モンスターなどではなく、むしろ…。
「あ、あんたは…」
龍騎の問いかけに対し、その者は穏やかな声で答えた。
「仮面ライダー…」

「ラ…ライダー…」

自分達に近い姿をした異形の者の返答に、龍騎の視界が再び曇る。
ライダー同士の忌々しい戦いの記憶が、心に蘇ってくる

先刻のダメージからどうにか立ち直ったナイトもまた、同じ思いを胸に、口を開く。
「まだ俺達以外にもライダーがいたとはな…。お前も…戦う、つもりか」
二人とは対照的に、仮面ライダーと名乗った男は、さも当然のことのように応えた。
「ああ、当然だ。人々を脅かす存在と戦うのは、“俺達“仮面ライダーの使命だからな」
219名無しより愛をこめて:02/11/26 20:22 ID:NoPdfzY/
男の言葉に、二人は驚愕した。
「ど、どういう事だよ!俺達…仮面ライダーは戦って、殺しあうのが宿命じゃ…!」
「なるほど…そういう事か」
驚きを隠せない龍騎に対して、ナイトは冷静に事態を理解し、語りだした。
「ガキの頃、聞いたことがある。人間を襲う怪人共をバイクで薙ぎ払う、髑髏の仮面をつけたライダーの話をな…。実際に見たと言う奴もいたが、ホラだとタカをくくっていたんだが…」
ナイトの話に触発されたのか、龍騎もせきをきったかのように話し始めた。
「俺も聞いたことある…!確か悪の組織に改造されたんだとかいう…えっと、ショッカ−だったか、ゴルゴムだったか…。あ、ゴルゴムは実際にいたしなあ…」
一人言のように話し続ける龍騎を尻目に、ナイトは“仮面ライダー“に視線を向けていた。
「あんたは、俺達とは別のライダーってことか…」
「君達の事情は良く知らんが、そういう事なのだろう」
「それにあんた、さっき“俺達“と言ったな。つまり…」
「そうだ」

そこまで言って、“仮面ライダー“は空を仰いだ。
「今も世界のどこかで、俺の仲間は…仮面ライダー達は戦っている」
そして、再び龍騎とナイトに向き直る。
「俺や…君達のようにな」

際限なく増え続けるモンスターは、再び龍騎達に迫っていた。
身構える、三人のライダー。
「俺はあんたみたいに聖人君子でも、ヒーローでもない」
「俺だってそうさ。ただ、大切なものを守りたいから戦う」
ナイトの言葉、“仮面ライダー“の答え。
「俺も…守りたいから戦う!今はそれだけで良い!」
「そうだ!」
龍騎の言葉、“仮面ライダー“の答え。
それを最後に、三人はモンスターの大群に向かけて突っ込んでいった。
220名無しより愛をこめて:02/11/26 20:24 ID:NoPdfzY/
三人のライダーが力を合わせても、何一つ状況は変わらないでいた。
倒しても倒してもそれを上回る形で、どこからかモンスターが排出されてくるのだ。それでも、諦めはしない。
「くっ、こいつら…一体どこから…」
モンスターの群れを、また一つ焼き払う龍騎。
続いて、今まさにモンスターが這い出ようとする鏡を狙うが、一瞬、鏡の向こうに見慣れない空間があることに気付く。
「あれは…?」
『あれはコアミラー…』
「!?」
龍騎とナイトの思考に、あるはずのない声が響いた。それは、女性の…つい先刻に死んだはずの、神崎由衣の声だった。
「由衣ちゃん!?」
「由衣!?」
鏡の中に、神崎由衣の姿があった。
『コアミラーはミラーワールドの中枢核。私の思いを形に…モンスターを生み出す源なの…。あれを壊せば、ミラーワールドは消える…』
話しながらも、鏡の中の由衣の姿は次第に消えていく。
由衣の名を叫び、鏡に接近しようとする龍騎とナイトだが、モンスターに阻まれる。
『私はミラーワールドに残った、神崎由衣の虚像。でも、その存在ももう消える…』
完全に消滅する、由衣の姿。
『真司くん…蓮…お願い…ミラーワールドを閉じて…もう、誰も悲ませないで…』
その言葉を最後に、声は消えた。
立ち止まる、龍騎とナイト。
「蓮…」
龍騎が声をかけるが、ナイトは微動だにしない。
ミラーワールドを消せば、モンスターは二度と現れないだろう。また、同時にそれは、蓮や真司がライダーとしての力を失うことを意味する。ライダーでなければ、蓮の願いは叶えられない。
だが…。
一人、モンスターの群がる鏡に向けて歩き出す龍騎。
しかし、ナイトがそれを追い越していった。
擦れ違い様、ナイトの呟きが聞こえた。
「行くぞ…」
「…おう!」
走り出す、二人。
221名無しより愛をこめて:02/11/26 20:25 ID:NoPdfzY/
モンスターと戦いながら、鏡に向かっていく二人と鏡の向こうの空間を見比べて、
“仮面ライダー“はその意図を読み取った。
鏡への血路を開くべく、“仮面ライダー“は愛機の名を叫んだ。
「来ォい、サイクロン!」
彼方から、モンスターの群れを引き裂き、白いマシンが“仮面ライダー“の下へと駆け抜けてくる。
「トォ!」
サイクロンと呼ばれたマシンに飛び乗り、“仮面ライダー“がナイトと龍騎を追い越して、
鏡を守るモンスター達を吹き飛ばしていく。
鏡の中から、巨大なクモのモンスターが現れ、サイクロンの進路を阻むが、構わずに突っ込む。
「サイクロンクラァァァァシュッ!」
サイクロンとモンスターは正面衝突を起こし、大爆発が起こる。モンスターの破片と共に宙を舞いながら、“仮面ライダー“は叫ぶ。
「行けェ!」
サイクロンの跡を追うように、龍騎とナイトが駆ける。
『ファイナルベント』
各々のバイザーにカードを装填。舞い降りる契約モンスターがバイクへと変型し、龍騎とナイトはそれに跨り、
鏡の奥へと、その更に奥のコアミラーへと突っ込んでいく。

戦い、傷つけあう意味などないと信じていた。それでも、戦う矛盾に苦しみながら。
仮面ライダー龍騎

何を犠牲にしても構わないと誓った。それでも、誰かを傷つけてしまう事に苦しんでいた。
仮面ライダーナイト

もう、誰かが悲しむのは嫌だ。これ以上、自分と同じ人間が増えるは嫌だ。
だから今、戦いを終わらせる!

「「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」」
二人の声が重なり合い、コアミラーは粉々に砕け散る。
全てのモンスターが、鏡という鏡全てが、割れて消えていく。
長い悪夢が、消えていく…。
222名無しより愛をこめて:02/11/26 20:26 ID:NoPdfzY/
戦いが終わり、平穏が訪れた世界で、三人の男が立ち並んでいた。
城戸真司、秋山蓮、本郷猛。
「秋山君、君の恋人だが、なんとかなるかも知れない」
「世話に…なるな…」
あの戦いのあと、真司と蓮はライダーの力を失ったが、“仮面ライダー“本郷猛の助力により、
蓮の願いは叶いつつある。
「それでは、俺は先に失礼するよ」
本郷はバイクに乗り、その場を去っていった。
蓮もまた、無言で立ち去ろうとするが、真司はそれを呼び止めた。
「蓮」
真司に背を向けたまま、蓮は立ち止まる。
「蓮…またな」
暫くして、蓮は小さく呟いた。
「ああ…」
それぞれ反対の方向へ、真司と蓮は歩いていく。
別々の道、同じ明日へと。
223名無しより愛をこめて:02/11/27 13:04 ID:KfqcnM6s
>>217-222
そっか。昭和ライダーも一緒に戦うって手もあったんだ。
ストレートな話でそれぞれが格好いいです。
人類絶滅も防げて、MWが消えても絶望で終わらせないのが良いですね。
224名無しより愛をこめて:02/11/29 22:52 ID:wAR6Z5Av
>217-222
作画:村枝賢一 で読みますた。
225175:02/11/30 01:29 ID:Wbq4Elaj
蓮と優衣の出会い編の完成のめどがついたので、
保守も兼ねて残り(10)〜(16)をupします。
たぶん最後は(23)になります。
226出会い (10):02/11/30 01:32 ID:Wbq4Elaj
「秋山さん…」
「蓮でいい」
「……本当はあたし、蓮が戦ってるところを見たときから分かってた。
この人、絶対お兄ちゃんのこと知ってるって」
バイクの後部に乗ってからずっと黙っていた優衣が、蓮の肩越しに言う。
「俺も同じだ。ミラーワールドが見えると分かった時点で直感した。
おまえが神崎士郎に関係のある人間だとな」
前方を見つめたまま、メット越しに蓮が答える。相変わらず素っ気ない口調で。
無言に戻った二人を乗せて、街を疾走する黒いバイク。

向かう先は、あの日優衣と蓮が居合せた駅前のビル街だった。
沙織という少女の母は優衣に感謝しながら、こう言っていたのだ。
「家からほんの目と鼻の先の所で、こんな目に会うなんて…」

流れ去る風景を見つめながら、花鶏での会話を思い出す優衣。
「あの子はまだモンスターに狙われてる」
「沙織ちゃんが?」
「モンスターは、一度狙った人間をあきらめない」
「そんな…!」
「あの子を見張っていて、襲われたところを叩くしかない。時間はもうあまりないが」
「…わかった。私も行く」
そう言ってから、はっとする。
「まだ治ってないんでしょ、傷。大丈夫なの?」
「もう平気だ。行くぞ」
それだけ言って背中を向ける蓮。
…………
「蓮。教えてくれない。お兄ちゃんがどこにいるか、知ってるの?」
何回目かの信号待ちでバイクが止まると、
優衣は一番聞きたかったことをついに口に出した。我慢できずに。
227出会い (11):02/11/30 01:34 ID:Wbq4Elaj
蓮が口を開きかけたその時。
・・・キィイイイイイイ・・・
耳を貫き通すように、モンスターの接近音が響き始めた。
「急ぐぞ。つかまってろ」
信号が変わるのを待たず、バイクを急発進させる蓮。
目の前で車が次々と急ブレーキをかけ、ドライバーたちから罵声が上がる。
振り落とされまいと、必死で蓮の胴にしがみつく優衣。
正直、目をつぶっていたかったが、そうはいかなかった。
左右の建物の窓、ガラスの壁、ドア。周囲を走る車やバイクのボディ。
その他にも無数に存在する、あらゆる種類の鏡面。
そのどれにモンスターが潜んでいるかわからない。そして、
モンスターが見えるのは自分だけなのだ。バイクを操るのに忙しい蓮以外には。
しっかり目を開けていなければ。

カーブを曲がると、そこはもう駅前だった。ビルの群れが迫ってくる。
駅前ロータリーの内側にある、小さな広場の脇を通り過ぎようとした時。
突然優衣が叫んだ。
「蓮、あそこ!」
広場の中心にある、球形のオブジェ。
その磨き上げられた銀色の表面に、あの鹿モンスターが映っていた。
オブジェの前のベンチに座った、買物帰りらしい親子連れの背中を
紅くぎらつく目でじっと見据えている――沙織と、その母親を。
「降ろして!」
そう言うと同時に、まだ走行中のバイクから飛び降りようとする優衣。
「ばか、死にたいのか!」
蓮の怒声と共に急停止するバイク。タイヤが悲鳴をあげ、衝撃が襲う。
どちらも意に介さず、バイクから降りた優衣は対向車線を横切って駆け出した。
再び車の急ブレーキ、ドライバーの罵詈雑言。やはり優衣の耳には届かなかった。
「優衣、よせ!危険だ!」
蓮の声も、遠くで聞こえたような気がしただけだった。
228出会い (12):02/11/30 01:38 ID:Wbq4Elaj
「逃げて!」
優衣がそう叫ぶと同時に、オブジェの中から鹿モンスターが躍り出た。
ひづめの生えた手を伸ばし、沙織をぐいと捕らえる。
だがそこへ、一直線に走ってきた優衣の身体が突き当たった。
一瞬ひるむ化け物から少女の身体を奪い返し、オブジェから飛びすさる。
「早く、向こうへ!」
そう促されて我に返った母親が、泣き出した沙織を抱いて逃げ出す。
それを見届けるとモンスターに向き直り、紅い眼を真っ直ぐに見据える優衣。
獲物を横取りされた怪物の喉から、不気味な唸り声が漏れる。
次の瞬間、黒い風が怪物に2度目の体当たりを食らわせた。
短い奇声を発し、今度はオブジェの表面に飛び込んで消えるモンスター。
「大丈夫か」
振り返り、優衣の姿を確認する蓮。
「ずいぶん無茶をするもんだな。肝を冷やしたぞ」
「ふふ、蓮がすぐ来てくれるって分かってたからできたのかもね」
ふざけるな。お前だってモンスターの怖さは知ってるだろう。
そう声を荒げかけたが、優衣の、軽薄な口調とはそぐわない
思いつめた表情に気づいて蓮は黙った。
「…もういやだったの。人がモンスターに襲われるのをただ見ているのが。
とにかく黙ってみている以外のことがしたかった。
でも、ごめんね。私のせいで蓮まであぶない目に合わせて」

「その度胸は見上げたものだが、あまり無茶な真似はするな。
おかげで子供は助かったがな。――モンスターは俺が倒す。
お前は何も心配しなくていい」
そう答えると、蓮は再び優衣に背を向けた。
レザーのポケットから何かを取り出し、オブジェに向かって突き出す。
「変身!」
229出会い (13):02/11/30 01:41 ID:Wbq4Elaj
「ガードベント」
舞い降りたダークウイングの翼が黒いドレープと化し、ナイトの全身を包んだ。
直後、枝角を低く構えて突進する鹿モンスターの身体がぶつかってくる。
だがひとたまりもなくはね飛ばされたのはモンスターの方だった。
宙を飛んで仰向けに地面に叩き付けられ、必死で起きようともがく。
再びコウモリとなってモンスターの上を何度もかすめ飛び、
それを阻むダークウイング。
「トリックベント」
間髪を入れず、カードをバイザーに差し込むナイト。
ブルーブラックの姿がたちまち4体に増え、展開してモンスターを取り囲んだ。
「ソードベント」
「ソードベント」
「ソードベント」
「ソードベント」
4つのウイングランサーが一斉に下向きに構えられ、
1点を目指して同時に振り下ろされた。
まだ立ちあがれないモンスターの、大樹のような枝角の根元に。
本物のライダーは1体だけだ。3体までは幻影にすぎない。
にもかかわらず、絶叫しながら手足を蹴り上げるモンスターの頭部は
4本の槍で地に縫い留められたように微動だにしなかった。
「ファイナルベント」
「はっ!」
モンスターを囲むライダーのうち1体が気合とともに地を蹴り、
ウイングランサーをかざして頭上高く跳躍した。
同時に飛来し、その背に取りついたダークウイングが再び姿を変える。
下から風を受けた漆黒のマントが、流れるように舞い上がった。

空の隅に黒い点が現れ、螺旋を描いて成長しながら降下しはじめる。
一瞬後、高速で旋廻する黒い竜巻となってモンスターを真上から直撃した。
蒼白い閃光が走り、続いて轟音と火柱が湧き上がった。
230出会い (14):02/11/30 01:45 ID:Wbq4Elaj
炎の中から上昇していく光の球を、巨大なコウモリが素早くさらっていく。
オブジェ越しにそれを見つめていた優衣が、突然悲鳴のような声を上げる。
「蓮!」
目の前のオブジェの表面がゆらめき、人間の姿に戻った蓮が倒れ込んできた。
初めて会った日と同じように。
やはり意識を失って、そしてあの日より数段蒼白な顔で。
********************
心配そうに覗き込む女の顔が見えた。恵里だ。
違った。優衣だった。
「気がついた?」
どこかで似たようなことがあったと思いながら、頭を動かそうとした。
だが少し動かしただけで全身に激痛が走り、うめき声がもれる。
「動いちゃだめ。今度は絶対安静だからね」
優衣があわてたように、少し厳しい調子で言う。
やはり、傷が癒えない状態での飛翔斬がこたえたか。
あのモンスターを1度で仕留めていれば、こんな目に会うこともなかったろう。
まだまだ未熟だな、俺は。
「ここは…聖中央病院か?」
目覚めた時、優衣の背後に白いカーテンが見えたので、自分が
病院へ運ばれたことは分かっていた。気になるのは、どこの病院かということだ。
「ううん。山手第一病院だけど」
「そうか…」
よかった。恵里のいる所ではなかった。
安心した途端身体中の力がどっと抜け、また眠りに引き込まれていく。
――俺は、聖中央病院のたいていの看護婦に顔を覚えられている。
あそこに入院すれば、ずっと意識不明のまま別棟に入院している
患者と俺の関係を、優衣が看護婦を通じて知るのは時間の問題だ。
そして、何故彼女が入院することになったかも。それだけは避けたかった。
兄のしたことはおろか居場所さえ知らない優衣が、自分が犯したのでもない
罪の意識に苛まれることだけは。
231出会い (15):02/11/30 01:47 ID:Wbq4Elaj
皮肉なものだ。
あの日いつものように聖中央病院に行き、眠り続ける恵里を見舞った帰り。
気がつくと、よく恵里と行った海岸へ向かってバイクを走らせていた。
だがビル街を通り抜けようとした時、モンスターの近づく音がした。
やむを得ずバイクを降り、変身してミラーワールドに入った。
そしてモンスターと闘っているさなか、優衣が現れた。
無意識に恵里の面影を追っているうちに、
恵里をあんな目に合わせた男の妹にぶつかってしまったというわけだ。

優衣が神崎士郎と関わりがある人間だということは、
鏡越しに初めて目を合わせた時から直感していた。優衣に言ったとおり。
そして優衣の姓を聞いた瞬間、直感は確信に変わった。
だが、真実を知りたくはなかった。
神崎士郎の肉親と分かったら、あの男への怒りと憎しみを
優衣に向けたい衝動を抑え切れなくなるかもしれない。
傷ついた自分を連れ帰って手当してくれた人間を、
あの男の妹というだけで憎み、危害を加えてしまうかもしれない。
そして、恵里を目覚めさせる唯一の道を自ら閉ざしてしまう。
それが怖かった。
なのに、優衣の言葉がついに確信を真実に変えた。
「やっぱりお兄ちゃんのこと知ってるのね!」

だから俺は優衣の家を飛び出した。
できるだけ早く、神崎士郎の妹から離れたかった。
憎しみが理性を圧倒しないうちに。
232出会い (16):02/11/30 01:49 ID:Wbq4Elaj
だが事実はその逆だった。
俺が飛び出したのは、優衣への憎しみが抑えきれなくなるのを
恐れたからじゃない。憎むことができなかったからだ。

優衣には、恵里と同じ雰囲気があった。
背負い切れない寂しさと哀しみに潰されそうになりながら、
それでも必死で背負い続ける人間の持つ雰囲気かもしれない。
俺には、自分のその気持ちが許せなかった。
あろうことか、恵里を不毛の眠りに追いやった神崎士郎の妹に
恵里と同じ雰囲気を見出す――恵里に対する冒涜以外の何だというのだ。
だからいたたまれなくなって飛び出した。

そして、自分のねぐらにも帰らず、恵里のいる病院の外で夜を明かした。
また戻ってきた傷の痛みによる幻聴なのか、
優衣のあの言葉が繰り返し耳に響くのを感じながら。
……やっぱりお兄ちゃんのこと知ってるのね……

そう言った優衣の眼を見た時に、もう分かっていた。
優衣にとっての神崎士郎は、俺にとっての恵里、
恵里にとっての俺と限りなく近い人間だということが。
この世でよりどころにできるのは、お互いの存在しかない――その意味で。

空が白みはじめたとき、俺の答えは出ていた。
優衣を憎むことはできない。たとえ神崎士郎の妹だろうと。
俺が優衣を守らなければ。恵里と同じように。
233名無しより愛をこめて:02/11/30 09:53 ID:v+x1zRog
age
234名無しより愛をこめて:02/11/30 09:57 ID:uIlca6z0
エヴァ?
235名無しより愛をこめて:02/11/30 22:57 ID:mwxclghp
>>226-232
蓮が優衣に対してどう振舞うのか気になってましたが
自分達の立場と重ねて自身の感情を昇華させましたか。

続きが待ち遠しいです。
236175:02/12/01 02:07 ID:lZEknaw6
蓮と優衣の出会い編が完成したので、次からupします。
237出会い (17) :02/12/01 02:09 ID:lZEknaw6
数日後、花鶏。
聞き覚えのあるバイクの音に続いて店に入ってきた男を見て、
カウンターの向こうで洗い物をしていた優衣が驚いたように声を上げる。
「蓮!今日が退院って、どうして教えてくれなかったの?」
「悪いな。医者はもう少し入ってろと言ったが、いいかげん病院暮らしも飽きた」
言いながら、誰もいないテーブルの間を通ってカウンターのそばまで来る蓮。
「・・・しかしこの店の様子を見ると、働いて医者代を返そうにも
売り上げが出せるかどうか心配だな」
一瞬とまどったが、自分が前に言ったことを思い出して吹き出す優衣。
「ああ、あれ?冗談に決まってるでしょ。ここ、あたしのおばさんが
オーナーやってるんだけど、今外国へ行ってて留守なの。だから、お休み中。
おばさんが帰ってくるまでは時々掃除をしたり、自分でお茶を飲んだりするだけ。
たまたま私が下にいる時に来てくれたお客さんには、お茶を出すこともあるけどね」
「なるほど。いずれにしても、二度も助けてもらった礼はしなければな」
「何いってるの。そんなのいいってば」
「ずいぶんとお人よしだな。店ひとつ預かってるのに、いいのかそんなことで?
俺ならここでの医者代、タクシー代、迷惑代、見舞いの行き帰りの交通費、
それにあといくつか名目をつけて、合わせていくら請求するか…」
「蓮って……もしかして、性格悪い?」
「ああ。言ったろう、褒められない仕事なら慣れてる」
「それに、ケチでしょ?」
「ああ」
「ふうん。そうなんだ。じゃあ…」
優衣の眼がいたずらな子供のようにきらめいた。最近では珍しいことに。
238出会い (18):02/12/01 02:12 ID:lZEknaw6
「来週からお店開けるから、レジやってくれない?お客さんに紅茶1杯5万円の
レシート出して、断ったら裏へ連れてってちょっと説得して…」
「面白そうだな。だが、残念ながら俺もそこまであこぎな真似はしたことがない。
性格の悪さならお前の方が上なんじゃないか?」
「なんでそうなるの?蓮が今そういうやり方教えてくれたようなもんじゃない」
「ま、確かに短期間で稼ぐ方法としては悪くない。やるか?ただし店に手入れが
入りそうになったら、売り上げ持ってさっさと1人で逃げさせてもらうがな」
「ほら、やっぱり蓮の方がずーーっと性格悪いよ。
――でも」
くだらないやりとりを楽しんでいる風だった優衣が真顔になり、蓮を見上げる。
「もしお礼しなきゃって思うなら、お願い。お兄ちゃんのことを教えて。
蓮が知ってることを、何もかも」
「……兄さんとは、いつから会ってないんだ?」
「去年の夏からずっと」
唐突に優衣の目から涙があふれ出した。
「一日だって忘れたことなんかない。何にもわからないなんて気が狂いそうだよ。
蓮とお兄ちゃんの間に何があったのかはわからないけど、
もう蓮に聞くより他にどうしようもないの。お願い!」

言ってから、涙を見せたことを恥じるように、わざと水道の水を盛大に出して
また洗い物を始める優衣。
その姿をしばらく見つめてから、蓮は言った。
「分かった。これから話す。もともと今日はそのつもりで来た。
……すまないが、俺にも紅茶を淹れてくれないか?」
239出会い (19):02/12/01 02:15 ID:lZEknaw6
カウンターに載ったティーカップから立ち上る細い湯気。
カップの脇に重ね置かれた何枚かのカードの表面には、
コウモリに似た怪物や槍のような武器の絵、それに
「FINAL VENT」「SWORD VENT」等の文字や数字が見える。
さらにその隣りにある、手のひらに収まるほどの黒い板。
中央にきらめく金色の紋章は、やはりコウモリに似ていた。

カウンターに向かい、次第に衰えていく紅茶の湯気を見つめる蓮。
その視線がカウンターの隅にあるガラスのフォトスタンドに移る。
優衣の笑顔が3枚並んでいた。どの写真でも、背の高い男と一緒に映っている。
蓮が殺したいほど憎んだ男と。

窓辺に立って外を見る優衣の後姿を、夕陽がオレンジ色に縁取っている。
蓮が話し終わってからずっと、そこに立ったままだ。

お兄ちゃん。いったい、何をしようとしているの?何のために?
蓮から話を聞けば、すべてがわかるだろうと思ってた。
だけど違った。前よりもっと、ずっとお兄ちゃんのことが分からなくなった。
蓮が見せてくれたカードとカードデッキ。
ミラーワールドに入れる、蓮も含めて13人のライダー。
モンスターと契約して手に入れる力。
その全てをお兄ちゃんが作り、仕組んだなんて、まだ信じられない。
「おれはいつも、お前を守るためだけに生きている」
最後に会った時そう言ったお兄ちゃんと、本当に同じ人なんだろうか。
蓮が会った神崎士郎という名前の男は…
240出会い (20):02/12/01 02:18 ID:lZEknaw6
蓮から聞いたことが、優衣の中で繰り返しよみがえる。

「ライダーになれば、モンスターと戦って倒すことができる。
だが俺はモンスターを狩るためにライダーになるわけじゃない。
モンスターを倒すのは、戦いの経験値を上げて強くなるためだ」
「強くなって、どうするの」
「他のライダーと戦って倒せ。そうして最後に勝ち残った者が、
ファイナルドアを開けて願いを叶えることができる――神崎士郎はそう言った」
「お兄ちゃんが……どうしてそんなことを」
「悪いが、俺にもわからない」
「それなら、何故蓮はお兄ちゃんからカードデッキを受け取ったの?
一度ライダーになったらもう戦いから降りられないって知ってて。
それに、いくら傷ついてもあんな風に倒れるまで戦い続けるなんて
何かよっぽどの理由がなければできないよね?
蓮は、何のために闘っているの…何のために勝ち残る必要があるの?」
カウンターのティーカップを取り上げた蓮の胸元で、
チェーンに通した三連のリングが微かにきらめいた。
「いずれ話す機会もあるだろう。
……この間のモンスターも、本当は一度で片付けるべきだった。
だが、俺の力が足りないせいでできなかった。
もっとモンスターを倒して、実力をつける必要がある。
他のライダーに出会う前にな」
241出会い (21):02/12/01 02:23 ID:lZEknaw6
お兄ちゃんが、ミラーワールドでのライダーバトルを仕組んでいる。
結局わかったのはそれだけ。
何のためにそんなことをするのか、どこにいて、いつ帰ってきてくれるのか、
肝心なことは相変わらず闇の中のまま。
だけど私はもう黙って待ってなんかいない。
お兄ちゃんに会って何もかも確かめるまでは、どんなことでもしよう。
それに、お兄ちゃんの考えていることが何であろうと、
これ以上モンスターが人間を襲って餌にするのを眺めていたくはない。
絶対に…

長い沈黙の後、優衣が口を開いた。窓辺に立ったまま。
「蓮。お願い、っていうか、提案があるの」
カウンターの方からこちらを見る蓮に、優衣は一息に言った。
「言ったよね。もっとモンスターを倒して実力をつける必要があるって。
それなら、これから蓮がモンスターと戦うときは、
あたしも連れて行ってくれない?
そうすればこの間みたいに、蓮がバイク運転しててもあたしがモンスターを
見つけられる。それにあたしが街に出たとき、モンスターに気づいたら蓮にすぐ
知らせるから。1人より、2人で気をつけてる方がモンスターに出会う機会も
多くなるし、街の人を助けられる確率も増えるでしょ?
あたしは、1人でも多くの人をモンスターから助けたい。
それに、お兄ちゃんを探したい。
蓮が強いライダーになる手伝いをすれば、モンスターから人を守ることになるし、
きっとお兄ちゃんにも近づけるっていう気がする。
…勝手なことばかり言ってごめんね。でも、考えてみてくれない?」
242出会い (22):02/12/01 02:29 ID:lZEknaw6
しばらく黙っていたが、やがて優衣ではなく、
優衣と神崎士郎の写真を見つめながら答える蓮。
「性格が悪くて、おまけにケチ。俺は、お前の言ったとおりの人間だ。
皮肉でも冗談でもない。そんな奴に今みたいな申し出をすれば、
お前の損になるのは目に見えている。モンスターをおびきよせるための
囮にされてもいいのか?ここでぼったくりでもやらせておいた方が
まだリスクが少ないだろうな」
「それじゃあたしがおばさんに殺されちゃうから、だめ。それに」
優衣が窓辺を離れ、カウンターの方にやってきた。
「蓮なら信用しても大丈夫って思えるから」
「救い様のない甘ちゃんだな、お前も」
「だって最初に会った時、蓮はモンスターを倒すより沙織ちゃんを助ける方を
選んだじゃない。本当に、経験値を上げて強くなって望みを叶えるためだけに
戦っているなら、どうしてそうしたの?」
「悪いが、この話は終わりだ。世話になったな」
苛立たしげに言い、蓮はカウンターを立った。そのままドアの方に向かう。

日が完全に落ち、花鶏の外はすっかり暗くなっていた。
黒いバイクに跨り、メットを着けようとする蓮の後ろから走ってきた優衣が、
小さな紙切れをレザーのポケットに押し込む。
「考えてみて」
蓮をまっすぐ見て息を切らしながらそれだけ言い、背を向けて引き返していく。
排気音が一瞬住宅街に響き渡り、すぐに小さくなっていった。
243出会い (23):02/12/01 02:35 ID:lZEknaw6
だが、今度も蓮は、2日後に花鶏に帰ってきた。
優衣の携帯の着信音として。

「断り続ければ、法外な額の医者代その他を
請求されそうだからな。俺が勧めたとおり」
街中で、右手に持ったくしゃくしゃのカードを見ながら携帯に話す蓮。
客が持ち帰れるように、花鶏のレジ脇に置いてあったものだ。
「TEA 花鶏」のロゴの下に、優衣の携帯番号が走り書きされていた。

「そういうの、自分の物差しで他人を計るっていうんだよ」
軽口を叩きながら、花鶏のカウンターで携帯を耳に当てる優衣の顔に
微笑みが広がっていく。花が開くように。
「接近音がしたら、すぐ知らせろ。できるだけ急いでおまえのいる所へ行く」
「わかった――ありがとう、蓮」
「言っておくが、二度とバイクから飛び降りるなよ」
ことさら素っ気ない声とともに、通話が途切れた。

END
244名無しより愛をこめて:02/12/01 02:42 ID:McQF9+Gv
エ、ええスレや(涙)
245175:02/12/01 03:42 ID:Jg1e3uXy
>>216>>235

ラストまで楽しめたかどうかわかりませんが、
読んでくださってありがとうございました。

蓮が優衣に対して単なる同情心や打算以上の気持ちを持っている
ことは本編を見ていると感じ取れるのですが、
そこに至るまでの経緯を描き出そうとするのは難しかったです。
(無謀だったかも)

>>234
もしかして、エヴァンゲリオンに似てるとこあります?
エヴァは本当に全然見てないので、ちょと気になる・・・
246名無しより愛をこめて:02/12/01 04:11 ID:McQF9+Gv
>>209>>217

いい話なので、きちんと読むのが楽しみを壊すようで
怖いです。
247名無しより愛をこめて:02/12/01 11:33 ID:McQF9+Gv
平成ライダーに昭和ライダーが出る話を考えよう!
http://tv.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1033545802/l50

このスレもエエ感じですよ。
248名無しより愛をこめて:02/12/01 21:43 ID:B/oPDmIF
平成ー昭和スレのリンクで来てみました。
ここにはウチのリンクがあるんですね。(w
読ませてもらいましたが面白です。作者さん達、ガンバレ!!
249名無しより愛をこめて:02/12/04 01:35 ID:hVd9JzBn
>>247,>>248

行って見ました>平成昭和スレ
色々な人が色んな話を書いてて楽しかったです。おやっさんスレといい、
ライダーSSスレって結構あるんですね。
250名無しより愛をこめて:02/12/04 20:27 ID:yn2qQyHu
防止してみせます!
251175:02/12/05 01:51 ID:+KiAlV8K
連続ですみません&まだ1回分ですが、
ageついでにもうひとつ話を持ってきたので、次にupします。
(もちろん、新しいSSを書いた方がいたら先にupお願いします)

>>217-222
戦う目的や外見などなど、違いの強調されることが多い
昭和ライダーと「龍騎」ライダーなのに、
何の違和感もなく共闘している所がすごいです。面白かったです・・
252Swan Song (1):02/12/05 02:14 ID:+KiAlV8K
昼下がりの公園。
「コイン占い」と書いた小さな看板を出して座る青年の前に、
髪の長い娘が立った。
「今度の仕事の首尾、占ってみてよ」

凝ったデザインのリングをはめた指が数度コインを弾き、宙に飛ばす。
「仕事は成功する」
「やったー、ありがと。ま、楽勝だとは思ってたけどね。はいお金」
「待て」
「へ?」
「昨日占ったら、今日、女が二人俺を訪れると出た。
お前がその一人目だ」
娘の顔に、たちまち警戒の色が浮かぶ。
何こいつ。占いとか言って、女たらしこもうとしてるだけじゃないの?
ま、あたしのこの美貌とスタイルがいけないんだけどね。
「へえー、つまり今日は客が二人しか来ないって出たの?
悪いこといわないから商売替えした方がいいよ。
ちっとばかし顔がいいからって、適当なこと言って女喜ばせて
金取ろうなんて、さいってー」
「それはお前にも言えるな」
青年がおかしそうに目を細めた。
「一人目の女は結婚詐欺師。俺の占いは当たる」
「・・・・・・」
「ちなみに、二人目は俺の知っている女だ」

ほんとに、こいつ何物?なんであたしの「仕事」知ってるわけ?
人の心を見透かすような眼をした男は虫が好かない。商売柄。
男は愛嬌だよ、愛嬌。変なのに関わりあって時間と金無駄にしちゃったな。
そう思って、娘がそそくさと踵を返そうとしたとき。
「探したよ」
美人だが目のきつい女が、占い師の前に立った。
253名無しより愛をこめて:02/12/05 15:06 ID:Y1Ljh9+G
>>251
>>217->>222
自分は面白いというより、1号が龍騎を励ます所に感動しました。
(これで優衣を助けたら自分的には文句なしのハッピーエンド
だったんですが・・。)
254名無しより愛をこめて:02/12/05 19:30 ID:r3aQfgrJ
>>252
おぉ、夢の競演ですな・・。
どっちも好きなんで続きが楽しみでつ。
255名無しより愛をこめて:02/12/06 00:00 ID:PgZEBnip
>>237-243
完結編、余韻が良い感じです。

>>252
これもまた面白そうですね。
二人目の女性って…誰だろう?
256Swan Song (2):02/12/06 01:18 ID:UU2/lB51
うわ、すごい脚線美。170cm超えてるし、モデル?女優?
胸はあたしの方が勝ってるけど。
で、これが二人目。知り合いでこんな険悪な態度ってことは、
だまして捨てた女か。こんなにあっさり見つけられるようじゃ、
この男もまだまだあたしの足元に及ばないね。
せいぜいがんばって切り抜けてよ。
勝手にそう決めつけ、今度こそ足早に去りかけた娘が
凍りついたように立ち止まった。
今来た女が、ある名前を口にしたからだ。

「手塚海之だよね・・・
あんた、あの夜浅倉に手をやられた人と一緒にいただろ。
神崎士郎から聞いたよ、あの人の代わりに親友のあんたが
ライダーになったって」

青年が、女の顔を見ずに答える。
「神崎からということは、お前もライダーになったらしいな。
お前も雄一も、あの夜浅倉に身体と希望を破壊された。
追い詰められた人間の前に現れ、餌をちらつかせて
戦いに引き込む−−神崎士郎にとっては理想的な標的だ。
そして雄一は死に、お前はカードデッキを受け取った。
お前の望みは・・・浅倉に砕かれた脚の骨の完治か」
「そこまで分かるんなら、話は早い。私と戦いな」
「断る」
「親友を生き返らせたいと思わないの?」
「俺があいつを生き返らせるためにお前や他のライダーを殺しても、
あいつは喜ばない。
あいつは、自分の望みのために他人を殺すのを最後まで拒んだ。
そして、神崎の刺客に殺された。
だから俺はあいつの代わりにライダーになった。戦いを止めるためにな」
257175:02/12/06 01:40 ID:UU2/lB51
>>253
映像なら、1号が龍騎とナイトの肩にがしっと手を・・・
(それじゃ1号というより警視総監か)

>>254
どうもです。楽しんでもらえるようにがんばります。

>>255
どうもです。237-243はまとめ方に悩みましたが、
読んでもらって嬉しいです。
「二人目」は、今のところ256のような感じです・・・
258Swan Song (3) :02/12/08 05:17 ID:ZkqbwX23
「ピアニストだったよね、あんたの親友・・・
あの人の気持ちなら、たぶんあたしの方が良く分かるよ。
もう一度鍵盤を自由に触れたらって、どんなに思っただろうね。
だけどあの人が生きていて、手を取り戻すために
ライダーになってたとしても、やっぱりあたしは戦いを挑んでたろうよ。
もう一度踊るためなら。だからあんたも戦いな」
「虚しいとは思わないのか。大切なものを奪われた者同士が、
命の奪い合いをするなんて」
「ごちゃごちゃ言ってないで、戦ってやりなよ!」

いきなり怒鳴った髪の長い娘を驚いて見つめる青年。そして、女も。

「このひともあんたの友達も、浅倉威の被害者なんだろ・・・
あたしのお姉ちゃんも、あいつに殺されたんだよ。
なんだかよくわからないけど、戦って浅倉から奪われたものが
取り戻せるんならさっさと戦ってやればいいだろ。
あんただって悟ったようなこと言ってないで、戦って友達を生き返らせろよ!」

沈黙する青年。蒼白になり、娘を見つめる女。
「浅倉が人も殺してるとは聞いてたけど・・・あんたの姉さんだったなんて」

その時。耳を刺すような甲高い音が響き始めた。
肩で息をしながら、涙を流して青年を睨みつける娘には聞こえない。
だが青年と女には聞こえた。
そして同時に叫んだ。娘に向かって。
「そこを離れろ!」

だが遅かった。
長い緑の尾が娘を絡め取り、あっという間に引き込んだ。
背後にある、ステンレス製の案内板の表面に。
259Swan Song (4) :02/12/09 01:50 ID:1vPRVaD/
周囲の風景が銀色に輝き、ものすごい速さで流れていく。
そして突然放り出された。元の場所へ。
違う。元の場所にそっくりだけど、何かがおかしい。
傍らにある案内板を見て、違和感の理由が分かった。
表面の文字がみんな逆になっている。鏡に映したみたいに。
なんなのよ、ここ・・・どうしてあたし、こんなところに来たのよ?
そう思った時、頭上で不気味な音がした。シャーッと。

案内板の脇に立つ樹にメタリックな緑色の大蛇が絡みつき、
こっちを見下ろしている。
そうだ。こいつに引っ張り込まれたんだ。逃げなきゃ。
でも身体が動かなかった。魅入られたらしい。
大蛇の紅い目と、紅くひらめく舌が近づいてくる。

空気が鋭く鳴った。直後にバチバチという音。
大蛇の下顎に赤紫色の紐のようなものが巻きついていた。
そこから青白い火花が飛び散るたびに、緑色の胴体がのたうつ。
「逃げろ!」
我にかえって立ち上がり、聞き覚えのある声の主を見た。
でも、記憶にある姿じゃなかった。
装甲に覆われた赤紫の身体に、文様のようなスリットの入った仮面。
「彼女を連れて、現実へ戻れ!」
手にした鞭を引き寄せ、大蛇の動きをさらに封じながら、そいつがまた言った。
やっぱりあの占い師の声で。今度はあたしの背後に向かって。
「こっちだよ」
あの女の声がして、左腕を引き寄せられた。
左を向いて見た姿も、さっきの女じゃなかった。
白い身体に白いマント。手に下げた細い剣。
そして、翼を広げた鳥の形のマスク。
こいつら、いったい何者・・・
260Swan Song (5) :02/12/09 23:24 ID:57QF2zwE
「あれが元の場所だ。つかまってな」
娘にそう言い、案内板に映る風景に向かってファムが跳躍しようとした時。
2人の身体を黒い尾が弾き飛ばし、石畳に叩きつけた。
「・・・!」
肩の激痛をこらえてすぐに立ち上がり、
アドベントのカードを抜こうとデッキに手を伸ばすファム。
だが、新たに現れた巨大な黒蛇の動きの方が速かった。
ふた抱えほどもある金属質の黒い胴が
あっという間にライダーと気を失った娘を取り巻き、
そのままじわじわと締め上げていく。
まずい。あたしはまだもつけど、この娘はじきに窒息する。
早くブランウイングを呼んで空から攻撃させないと。
焦りもむなしく、痺れた指先からレイピアが落ちる。
腰のカードデッキも蛇の胴に押さえ付けられたままだ。
だがその時。
「アドベント」
声と同時に三角形の何かが上空に現れ、
風を灼くようなスピードで黒蛇に突っ込んでいった。
エビルウィップで必死に緑蛇を押さえ込んでいたライアが、
蛇の力の弱まる一瞬の隙を突いてバイザーにカードを
差し込んだのだ。自分のモンスターを喚ぶために。

エビルダイバーのヒレ先が黒蛇の胴をかすめ過ぎる。
胴の真中に閉じ込められたファムには、一瞬紅い線が見えただけだったが。
次の瞬間拘束が解け、娘とともに石畳に投げ出される。
娘が息をしているのを確かめ、顔を上げたファムは見た。
黒蛇がかっと口を開け、狂ったように頭を振り立てるのを。
巨大な胴が半ば切断され、見事な切り口を晒しているのも。
261Swan Song (6) :02/12/11 01:10 ID:7B8Za0Ev
「ファイナルベント」
空中で長い尾を閃かせて反転し、
エイ型モンスターが再び高速下降を始める。主人の背中めがけて。
自分の真後ろで両ヒレが風を切り裂く音を聞いた瞬間、
ライアは跳躍した。そのままエビルダイバーの背に降り立ち、
前方に向かって身構える。標的は緑の蛇。
細長い尾を振り上げ、ライダーを叩き落そうとする蛇モンスター。
だがエビルダイバーのスピードにはかなわなかった。
振り下ろされる尾をすり抜け、ライアとエイが一体となって蛇を直撃した。

爆炎から飛び出したエビルダイバーの背からライアが飛び降り、
黒蛇とファムの方へ向かう。
「早くそいつにとどめを刺せ。時間が・・・」
「ソードベント」
ファムがバイザーにカードを差し込んだ。
大きな白い鳥の姿が空に現れ、澄んだ鳴き声が響く。
きらめきながら落ちてきたウイングスラッシャーを左手で受け止め、
大きく振りかぶるファム。黒い大蛇ではなく、ライアめがけて。
「ばかな真似はやめろ!」
金色の切っ先を避わして飛び下がり、ライアが叫ぶ。
「ライダ―同士戦っている場合じゃない。ここはミラーワールドの蛇の巣だ!
それにあの娘を早く戻さないと、死ぬぞ!」
「その前にあんたを倒すんだよ!」
言葉同様容赦のない薙刀の一撃が、今度はライアの右肩に命中した。
続いて左肩、胸と、一分の隙もない攻撃が続く。
止むを得ない。この女の動きを封じて、あの娘を一刻も早く現実へ返そう。
後退を続けていたライアが意を決し、コピーベントのカードを引き抜く。
だがその時、娘の絶叫が響いた。
振り向いたライアと、さすがに斬撃を止めたファムの目に、
十数匹の蛇に取り囲まれて恐慌状態に陥った娘の姿が映った。
262252:02/12/11 22:39 ID:RrGAjwRV
Swan Song(7)以降は週末にupします。スマソ。

263名無しより愛をこめて:02/12/12 20:46 ID:akaC146r
>>252,256,258-261
流れを邪魔しそうで感想を控えてましたが
ハーフタイムに入ったようなのでまとめて。

ifの「初代」ネタだったんですね。
初代の人は美穂に負けず劣らず勝気な娘さんでいい感じです。

迫るピンチと、美穂の時間切れの危機を
ライアとファムがどうやって切り抜けていくか
続きを楽しみにしています。
264Swan Song (7):02/12/15 04:22 ID:3x3XYn4T
気がついて周りを見たら、大蛇の群れに取り囲まれてた。
どっちを向いても、悪意に満ちた眼と脅すように閃く舌しか見えない。
その中から、オレンジ色の奴がこっちへのたくってきた。
自分の悲鳴が聞こえる。でも、今度も身体が動かない。
いやだ。お姉ちゃん、助けて・・・

あたしにできるのは、目を閉じることだけだった。
閉じる直前、何か紫色のものが見えたような気がした。

空から蛇の群れを襲わせるべく、それぞれのモンスターを
もう一度呼び出そうとデッキに手を伸ばした時。
ライアとファムも見た。
娘と橙色の蛇の間に躍り出た、もう一匹の巨大な蛇を。
扁平な頭部を持つ、凶々しい紫色の蛇だった。

行く手に現れた紫の蛇を見た途端、動きを止める橙色の蛇。
そのまま頭をめぐらし、元来た方へ這っていこうとする。
おびえてでもいるように−−他の仲間を出しぬいて、
娘に飛びかかろうとする貪欲さを見せたばかりなのに。
だが紫の蛇は許さなかった。
ひと飛びで相手に追いつくと、喉元にがぶりと噛みついた。
同族の喉元に。そのままがっちり牙を食い込ませ、
苦し紛れにうねくりまわる長い胴を上下左右に振り回す。
まるで自分の力を楽しんでいるように。
橙の蛇身が、ついに紫の顎からぐったりと垂れ下がった。
それを食らうでもなく、明らかに飽きた様子で地に放り出すと、
好戦的に舌を閃かせながら周囲の同族をねめつける。
「次はどいつだ」−−黄色くぎらつく眼がそう言っていた。
265Swan Song (8):02/12/15 04:29 ID:3x3XYn4T
大半の蛇たちが、新参の紫の蛇を恐れているのは明らかだった。
だが逃げ出そうとするものもいない。逃げればどうなるかは、
橙色の蛇の最期が示したばかりだ。
蛇が蛇に睨まれ、すくみ上がる。そんな異様な光景が続く。
焦れたように鎌首をもたげ、紫の蛇がシャアッと鋭く音を立てる。
その瞬間、四匹の蛇が飛び出した。紫の蛇の前、後、そして左右から。

だが見事な連携も通用しなかった。
牙を剥き出し、毒液を吐いて右の敵に浴びせると同時に
鋭く尖った金色の毒尾を振るい、背後の敵の目に突きたてる。
そして正面の敵が自分の首に牙を突きたてるのも構わず、
頭部に生えた8枚の刃を逆立てて左の敵の首を切断する。
紫の蛇はそのすべてを一瞬でやってのけ、同族三匹を屠ったのだ。
毒を浴びた蛇の頭部も、尾で目を突き刺された蛇の頭部も、
まだ蠢いている胴体の先で溶けてなくなっている。

そして最後に、噛みつかれたのを逆手にとって
頭からいきなり地に倒れ込み、正面の敵を引きずり倒した。
間髪を入れず相手に自分の胴体を巻きつけ、一気に締め上げる。
紫の蛇の背にある鋭い隆起が、正面の敵の胴をバラバラに切り裂いた。

動きの俊敏さ。毒の強さ。身に備わった刃や剣の鋭さ。
何にもまして、闘争心の凄まじさ。
どれを取っても紫の蛇にかなう蛇モンスターはいなかった。

ライアもファムも、そして娘も、逃げることを忘れて
蛇たちの凄惨な戦いを見つめていた。
紫の蛇の魔力に絡め取られたかのように。
見つめながら、三人とも同じものを思い浮かべていた。
できるなら二度と思い出したくないものを。
266252:02/12/15 05:07 ID:kl6jPhoj
話があまり進展してなくてすみませんが、2話upします。

>>263
ご配慮&読んでくれてありがとうございます。初代龍騎がいるなら、
初代ファムがいてもいいかなと思って書き始めました。
(最近の他スレでは百合絵さんが2代目みたいですが…)
267Swan Song (9) :02/12/16 01:58 ID:WWV8mf+l
目の前で次々と同族を殺していく紫の蛇。
その黄色い眼の光を見た三人が、三人とも思った。
あの男の眼に似ている。
自分たちと自分たちの大切な人間から、何もかも奪った男。
奪う前も奪った後も、何の後ろめたさも持たない男の眼に・・・
悪夢のような光景が三人の脳裏に再現され始める。

姉を殺した男が手錠をかけられ、連行されていく。警官に囲まれて。
あの男が手の届く所にいる今しか、チャンスはない。
下手に法の裁きを受けて軽い刑罰で済まされるくらいなら、
あたしが今あいつにお姉ちゃんの命の代償を払わせてやる。あいつの命で。
だが、娘の構えた刃物が男の心臓に届くことはなかった。
男のぎらつく眼が警官に取り押さえられた娘を見つめ、
すぐ興味を失ったように逸らされた。
殺せ。あいつを殺さないなら、あたしを殺せ。
喚きながら暴れる娘と男の距離が、たちまち離れていった。

降りしきる雪の向こうから野獣のような叫びが聞こえる。
そう女が思った時、右脚に息が止まるほどの衝撃と激痛が走った。
突然目の前に現れた蓬髪の男が、
手にした棒のようなものを思いきり脚に振り下ろしたのだ。

白く冷たい路面に崩れ落ちながら、ファムになる前の女は見た。

その何十秒か後、ライアになる前の青年も見た。
雪の上にうずくまる友に駆け寄って傷の深さが尋常でないと知り、
怒りに駆られて、通行人に取り押さえられた加害者を見上げた時に。
あのぎらぎらと光る双眸を。
凶暴な力への渇望と、自分を苛立たせるものすべてに対する
憎しみに満ちた眼を・・・
268252:02/12/16 02:10 ID:WWV8mf+l
9回目をupしました。
10回目から先はまた週末になると思いますので、
新しいSSを作った方がいたら、先にupお願いします。
269名無しより愛をこめて:02/12/16 19:24 ID:GiL0EQA+
>>175
優衣が優しく描かれていて、いい感じです!
270名無しより愛をこめて:02/12/16 19:24 ID:GiL0EQA+
ついでに防止!
271名無しより愛をこめて:02/12/17 21:05 ID:lyDI4fQd
 良スレあげ
272名無しより愛をこめて:02/12/17 21:06 ID:lyDI4fQd
 良スレあげます
273名無しより愛をこめて:02/12/18 21:01 ID:aJzHYO4e
ええと、激しくスレ違いで申し訳無いですが
同じSSスレのよしみで告知させてください。

平成ライダーに昭和ライダーが出る話を考えよう!
のスレが容量オーバーで書きこめません。
同スレの>>1さんか有志の方、お早く新スレを立ててください。
楽しみにしてる一読者としてお願いしたしますわ。
274THE OTHER WORLD:02/12/18 22:01 ID:tti4QOcQ
すみません。お借りします。
平成ー昭和スレの次スレ
http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1040214437/l50

どうもすみませんでした。このスレは自分も見させて頂いています。
続編を楽しみにしてますので、お互いにがんばりましょう。
スレ汚し、申し訳無いです。
275名無しより愛をこめて:02/12/18 22:07 ID:wQY2yR25
>クウガの一般層は信者になった。

これじゃ、あんまりだろう。
それでもクウガが好きなオレの見解は、

・クウガの満たされない一部の人間がクウガ信者となった
 (映画がなかったとか、なんでアギトばっかとか)。
 一般層は、すんなりアギトに移った。

・アギトも信者はいる、アンチもいる。
 人気を得たんだから当たり前。
 一般層は、やっぱり龍騎に移った。

・ファイズの出来次第では、龍騎も忘れられていく運命。

あくまで、オレの見解ね。
276名無しより愛をこめて:02/12/18 22:24 ID:gmbYF4UT
↑誤爆?
277名無しより愛をこめて:02/12/20 01:13 ID:QT9ON2vL
良スレあげ。
278名無しより愛をこめて:02/12/23 02:17 ID:X4Sd/SjQ
良スレあげ。
279252:02/12/23 05:10 ID:byCm0wIv
>>269
ありがとうございます。なるべく優衣の心を丁寧に
書こうとしたので、嬉しいです。

>>273, 274
新スレおめでとうございます。私も見せてもらいましたが、
もう充実したSSがたくさんupされてるので驚きました。
これからもがんばってください>ライターさん方
(私も、ネタがあればまた・・・)

>>270-272, 276-278
保守どうもです。252からの話が完成したのでupしにきました。
280Swan Song (10) :02/12/23 05:13 ID:byCm0wIv
たった今4匹の仲間を屠った蛇と、親友から手を奪った男。
2つの兇暴な姿が、ライアの目の前でひとつに重なる。
・・・だがそれだけでは終わらなかった。
もうひとつの映像が浮かび上がり、蛇と男に重なったのだ。

投げやりにも見える足取りで、こちらへ歩いてくる姿。
平たい頭部。紫色の身体。左手に下げた、金色に輝く反身の剣。
何かに似ている−−あの蛇の尾だ。
まさか。
「何ぼさっとしてるんだよ!」
冷たい予感に麻痺しかけたライアの意識を、ファムの声と衝撃が解き放った。
直後、今までいた位置の石畳が毒液を浴びて溶け崩れる。
仲間をいたぶるのにも飽きた紫の蛇が急に標的を変え、
ライダーと生身の人間めがけて襲いかかってきたのだ。
その隙に逃げ出したのか、あれだけいた他の蛇たちは一匹も見当たらない。
ライアを突き飛ばして救ったファムがカードを引き抜く。
「アドベント」
再び毒液を吐こうと身構える蛇の真上から、白鳥が翼をたたんで急降下する。
だが鋭い嘴が蛇の眼を抉り出す直前、金色の尾が稲妻のように閃いた。
毒尾で長い首を打ち据えられ、悲鳴を上げる白鳥。それでも何とか翼を広げ、
間髪を入れず迫ってきた蛇の牙をかいくぐって舞い上がる。
だがよろめくように羽ばたく姿は、再び飛びかかれそうには見えなかった。
「ソードベント」
「早く、あの子を現実に!」
カードをバイザーに入れ、ファムがライアに叫ぶ。
「やめろ・・・おまえ一人ではあいつに勝てない、俺たちと一緒に逃げろ!」
「早く!」
幅広い鎌首を流れるように上下させて攻撃の隙をうかがう蛇を
ウイングスラッシャーで牽制しながら、ファムが苛立ってまた叫んだ。
「お前だろ、早くしないとあの子が死ぬっていったのは!」
281Swan Song (11):02/12/23 05:17 ID:byCm0wIv
ファムの言葉にはっとして娘の方を見るライア。
度を越した恐怖のあまり、虚ろな目で座り込んでいた。
腕や肩から煙のように立ち上る無数の粒子を見つめたまま。
まずい。身体と外界の区別がなくなってきている。もう一刻の猶予もない。
心を決め、娘に駆け寄って抱き上げた。
そのまま掲示板に向かい、勢いをつけて走り出す。
その姿を、8枚の刃をつけた鎌首が追った。
ファムの横をすりぬけ、稲妻のような速さで。
細長い口が裂けんばかりに開かれ、牙から毒液が流れ落ちた。
ライアがエビルダイバーを呼ぶ余裕も、
毒に侵されたブランウイングが再度攻撃する余裕もなかった。
背中に殺気を感じ、ミラーワールドの出口に達するまでに
必ず追いつかれると確信したライアが走るのをやめた。
抱きかかえた娘に覆い被さるようにひざまずき、生身の皮膚の露出を防ぐ。
それが精一杯だった。
ライダーの背中を狙って、コブラモンスターの喉から
硫黄のような色と匂いの毒が迸った。
「ガードベント」
声に続いて、異様に澄んだ音がうねるように響き渡る。
ごく薄い金属片同士がぶつかりあった時のように。
同時に、シャアアアアアアアッという凄惨な怒りのみなぎる音。
娘を固く抱きしめてうずくまっていたライアが頭を上げて振り返り、見た。
地に転がる、ドロドロに溶けた白い盾。
金色の薙刀を身体の前で構えた白いライダー。
ライダーを瞬時にこの場に運んだ時のまま、風をはらんで広がる白いマント。
そして側頭部の刃のひとつを切り飛ばされ、憤怒にのたうち回る紫の蛇。
次の瞬間ライアは絶叫した。
「霧島ああーーーーーーーーーーーーっ!」
やられたと見せかけ、隙をうかがっていた蛇の牙が深々と突き立てられていた。
誰が見ることも不可能な速さで。ファムの首元に。
282Swan Song (12):02/12/23 05:20 ID:byCm0wIv
喝采。照明の熱。
ステージに落ちる、自分の濃い影と飛び散る汗の粒。
そんな映像や感覚が次々と女の前に浮かんでは消える。
そして最後に、知り合ったばかりの娘の顔が現れた。泣いている。
「死ぬんじゃないよ…しっかりしてよ、ねえ。
また踊りたいんでしょ、あんた?」
ファムから人間の姿に戻った女が微かに微笑む。
自分の運命を変えたな、おまえ。
娘の隣の青年が、心の中でそうつぶやく。
憔悴し切った顔に、突き刺さるような哀しみを浮かべて。
ファムが牙の一撃を浴びた直後にエビルダイバーを喚び出して
紫の蛇の頭を空中から集中攻撃させ、その間にたった一人で
娘と倒れたファムを抱え、ミラーワールドの外に脱出させたのだ。
ライア――手塚海之には分かっていた。
女は今日倒される運命にはなかった。
自分と娘を救うために紫の蛇の前に飛んだ時、運命を変えていたのだ。
自らの意志で。
女がまた笑みを浮かべた。手塚の心を読み取ったかのように。
血の気を失っていく唇が動く。
「これでよかったのかもね・・・
あんたの言ったとおり、大切なものを奪われた者同士が命を奪い合うなんて、
やっぱり虚しすぎるのかもしれないしさ。
あたしは、結局ライダーに向いてなかったのかも。
……でも」
言いながら、半ば感覚を失った手につかんでいたものを差し出す。
娘に向かって。
「あたしはもう踊れないけど、あんたなら望みをかなえられるかもしれない。
本当に姉さんを生きかえらせたいのなら、あんたにチャンスをあげるよ。
その代わり、覚悟しておきな。後戻りはできないから」
それが最後の言葉だった。
283Swan Song (13):02/12/23 05:36 ID:byCm0wIv
受け取った白い板を握りしめて胸に押しつけ、声を殺して泣く娘。
その後で黙祷を捧げるように佇む青年。
そして、望みをかなえることなく息絶えながら、
奇妙に安らかな表情で横たわる女。

まだ日は高いのに誰もいない公園に、澄んだ哀しげな声が響き渡っていく。
女の高音部の歌声に似ていないこともなかった。
目を閉じた手塚にも、そして娘にも分かった。
それが掲示板ばかりか、公園の周りを囲むビルの窓や
電話ボックス等、あらゆる鏡面の中から聞こえてくることが。
主人を失った白鳥の嘆く声だということが。

長い時間の後、とうとう手塚が沈黙を破った。
「彼女……霧島美穂は、将来を期待されるダンサーだった。まだ無名だったが。
俺の親友の雄一が、才能はあるが無名のピアニストだったのと同じように。
あとはお前も聞いたとおりだ。
ある冬の夜、二人とも浅倉の犠牲になり、生きる望みを断たれた。
そして神崎士郎という男が霧島と雄一の前に現れ、カードデッキを渡した。
お前が今持っているのと同じものだ」
「これで、このひとと同じ白いのに変身して、あんたみたいなのと戦って
勝ち残れば、望みがかなうんだよね」
霧島美穂の死に顔を見つめたまま、娘が妙に平板な口調で言う。
「ああ。だがそれは神崎の口約束にすぎない」
「でも可能性はあるんだろ」
「聞いたろう、霧島が言ったことを!」
感情を抑え切れず、声を荒げる手塚。
「一度ライダーになったら、後戻りはできない。
それに、勝ち残るためには他のライダーを殺さなければならない。
自分もいつ殺されるかわからない。
そんな修羅の世界に足を踏み入れたいと、本気で思うのか!」
284Swan Song (14):02/12/23 05:44 ID:byCm0wIv
「ああ。それしか方法がないんならね」
「霧島は、自分と同じ苦しみを背負った雄一とさえ戦うと言った。
だが結局は非情になり切れなかった。
だからこそ俺やお前は、こうしてここにいられる。
雄一は人を殺すことを拒み通して、死の運命を受け入れた。
お前は非情になれるのか。お前の望み…姉さんを生き返らせるために
本当に誰かを殺せる気か?」
「間違えないで。霧島美穂は、あたしだよ!」
思いがけない言葉に虚を突かれる手塚。
その言葉の意味を悟った瞬間、表情が苦悩に歪む。
「どうしても受け継ぐ気か……ファムのカードデッキを」
着ていた長いコートを脱ぎ、霧島美穂だった女にそっと被せると、
霧島美穂は手塚に向き直った。右手に白鳥の紋章の付いたデッキをつかんで。
「今はその気になれないけど、あんたとも戦うよ、今度会ったら」
「よせ。戦えば間違いなく破滅するぞ!」
「あんたは友達を助けられなかったけど、あたしは絶対お姉ちゃんを
生きかえらせる。最初の霧島美穂のためにも。じゃあね」
霧島美穂という名の火に油を注ぐだけだと知りながら、
手塚は叫ばずにいられなかった。去っていく後姿に向かって。
「あの紫の蛇――あいつはいずれ、浅倉威と契約する。
戦っているときに見えた。奴がライダーになれば、俺やお前に
勝ち目はない。わかるか。あの蛇たった1匹にさえ、
俺たちレベルのライダーでは歯が立たなかったんだぞ!
俺の占いは……………当たる」
最後の言葉には、血の出るような苦悶と怨念がこめられていた。
自分の力に対する怨念が。
「上等じゃない」
振り向かず、歩く速さをゆるめず、美穂が叫び返した。長い髪が風に舞う。
「これで、仇を取ってあげられる。あたしのお姉ちゃん2人の仇を」
285252:02/12/23 06:48 ID:bIG1y3oo
「Swan Song」がやっと完成したので up しました。
読んでくださった方々、ありがとうございます。

266で書いたように「初代ファムがいてもいいかな」というのと
「ライアも好きだから出そうかな」という気持ちで書き始めましたが、
結局ずいぶんサツバツとした話になってしまいました(汗)
(2人の共通点である、浅倉との因縁を強調したので
ある意味当然なのかもしれませんが)

しかし、今日(もう昨日)のテレビのベノは凶悪だった…
浅倉復活に期待します。

他の方のSSも、upよろしくお願いします。
286名無しより愛をこめて:02/12/23 14:28 ID:d0gOMOas
Swan Songさん、おつかれさまです。
楽しませて頂きました。次回作も期待してますよ。(w
287名無しより愛をこめて:02/12/23 22:51 ID:GGflR82w
( ゚Д゚)ポカーン
288252:02/12/23 22:56 ID:lx9+XSsL
>>286
ありがとうございます、楽しんで頂けたら本当に嬉しいです・・・
今後のテレビ本編の展開も盛り上がりそうなので、
また何かネタができたら書いてみたいと思ってます。
289名無しより愛をこめて:02/12/27 02:25 ID:uNR4z6Z5

290名無しより愛をこめて:02/12/27 14:28 ID:W0waHNsd
良スレあげます。
291名無しより愛をこめて:02/12/29 11:02 ID:iE+qVwOc
新作まだ?
292名無しより愛をこめて:03/01/01 14:38 ID:WPq8xOBL
保守
293名無しさん:03/01/02 23:48 ID:gaiMyZ1K
       / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
Λ_Λ  | 君さぁ こんなスレッド立てるから          |
( ´∀`)< 厨房って言われちゃうんだよ             |
( ΛΛ つ >―――――――――――――――――――‐<
 ( ゚Д゚) < おまえのことを必要としてる奴なんて         |
 /つつ  | いないんだからさっさと回線切って首吊れ     |
       \____________________/

(-_-) ハヤクシンデネ… (-_-) ハヤクシンデネ… (-_-) ハヤクシンデネ…
(∩∩) (∩∩) (∩∩)

(-_-) ハヤクシンデネ… (-_-) ハヤクシンデネ… (-_-) ハヤクシンデネ…
(∩∩) (∩∩) (∩∩)

(-_-) ハヤクシンデネ… (-_-) ハヤクシンデネ… (-_-) ハヤクシンデネ…
(∩∩) (∩∩) (∩∩)
294秋山蓮のお見舞い日記:03/01/02 23:49 ID:0pdn3m9D
恵理が事故に遭ってから、見舞い状が1回届いたきりで、誰一人病院に来なかった。
同じ学校の奴らは恵理の事を心配しないのか?薄情な連中に怒りを覚える。

今日も病院に行く。エレベーターが開いた時、白い布を被せられた台車が目の前に現れた。
一瞬ドキっとした後、泣きながら台車に付き添う男とすれ違う。
男が亡骸に向かって繰り返し呟く「なぜ…」とか「愛してたのに…」とかの言葉に、
いつの間にか男の姿を自分と置き換えて、息を苦しくしてる事に気付き、喝を入れる。
恵理は絶対に、死なない!死なせない!俺が助ける!…恵理を死なせたりするものか!

それでも恵理を前にして今の出来事を思い返すうち、知らずに涙がこぼれてきた。
世界中を敵に回しても、他のライダーを手に掛けてでもお前を救う。そう誓った筈なのに…。

帰りがけのロビーで、醒めるような赤が目に付いた。ごみ箱の上に綺麗な花束が置いてある。
『大好きだよ。早く元気になると信じて僕は君の帰りを待っているから』
この言葉が署名無しに添えてあった。退院を願う花束とカードが、ここにあるという事は…。

ああ、そうか。さっきの悲運な見舞い客を思い、俺の胸も熱くなった。
届かなかった誰かの「思い」が、そこに朱く残ってる様な気がした…。


店に飾れと言って渡しても、優衣は素直には喜ばなかった。
「ねえ、蓮?ホントに買ったの?どこかで拾ったんじゃないの?この花」
「あーもー。俺がそんなケチくさい事するか!」
…いや、当たってるけど。

「なんかこのアレンジおかしいよ?何本か抜いちゃった?」
「だから、そんなケチくさい事しないって!」
…いや、当たってるけど。

一番鮮やかなバラを恵理の枕元に飾った。祈りを込めたカードには俺の名を添えて。
誰かは知らない。でもその祈りの力…、叶わなかった願いの力…、俺に貸してくれ。
誰かが祈り願った思いの上に、俺の思いを上乗せして祈る。届け俺の「思い」。恵理に届け。
295294:03/01/02 23:50 ID:0pdn3m9D

なんだか、シリアスなのかコントなのか判らなくなりましたが…

>>189を見ててなんとなく浮かんだ光景です。

蓮なら平気で、

使えそうな物は「もったいない」と拾って帰りそうな気がしたので(汗)

あと、贈りたかった相手には一応届いたという話だったり(報われてないけど)


**************

「Swan Song」感想。

たとえその身が力尽きたとしても

「名前」と「力」と「意思」を受け継ぐ少女が居る

…というシチュエーションは燃えますね。

(ちょっぴり、TV版の麻宮サキ襲名を思い出してしまいましたが(汗))

浅倉という共通の憎しみで繋がったライアとファムと言う設定が

また新鮮な視点を与えてくれて面白かったです。

戦闘シーンもメリハリがあって良かったですよ。
296294:03/01/03 11:51 ID:LvVMSZMH
あれ?レス番号間違えました。
295は、>189でなくて>>188です(焦)
297252:03/01/04 04:16 ID:N3Oj4VSs
>>294, >>295

>あと、贈りたかった相手には一応届いたという話だったり(報われてないけど)

仲村くん・・・不憫や(泣)
そういえば、本編で仲村オルタナティブが優衣を狙って
活動し始めた頃と、恵里が目覚めた頃は重なるんでしたっけ。
「お見舞い日記」と185-の「オマエハ…マチガ…」を読むと、
仲村君が意識の戻った恵里を一目でも見られれば
よかったのにと思えてきます。

>「なんかこのアレンジおかしいよ?何本か抜いちゃった?」

その後「このままじゃ飾れないからドライフラワーにするね」
と言って、花鶏の天井から花束を逆さに吊るす優衣・・・
で、優衣に資料を渡すために花鶏へ来たときに
それを見て「どっかで見たような気がするが、気のせいか」
と思う仲村君・・・
などと妄想してしまいますた。スマソ

>誰かは知らない。でもその祈りの力…、叶わなかった願いの力…、俺に貸してくれ。

恵里が目覚めたのは、この時の蓮&仲村の祈りのおかげでしょうか。
298252:03/01/04 04:26 ID:N3Oj4VSs
>>295
感想ありがとうございます。嬉しいです。

スケバン刑事ですか、懐かしや「少女鉄仮面伝説」
(実際の番組は見てませんでしたが、斎藤由貴・
南野陽子と襲名したのは知ってました)

「Swan Song」は、
ファムの契約モンスター→白鳥→「白鳥の湖」→
もし霧島美穂の職業がバレリーナだったら?
という、どうしようもなく安直な発想が元になってます(恥)

でも元の霧島美穂をバレリーナにしたら
まんまロビーナちゃんだし、それに初代龍騎のような
存在をファムにも作りたいと思ったのもあって、
ご指摘の通り初代からデッキと共に名前と意志を
受け継いだ少女の話にしました。
(実際に書いてみると初代ファムのキャラクターには
クラシックバレエよりフラメンコ等の方が似合いそうなので(w、
バレリーナでなくダンサーに変えました)

>浅倉という共通の憎しみで繋がったライアとファムと言う設定が

>また新鮮な視点を与えてくれて面白かったです。

>戦闘シーンもメリハリがあって良かったですよ。

ありがとうございます。
ライアもファムも各々の契約モンスターも好きな上に、
この二人が会って話したり戦ったりしたらどうなるかが
自分でもすごく興味あったので、
面白いと思っていただけたなら本当によかったです・・・
299名無しより愛をこめて:03/01/06 09:25 ID:mP46KYkt
保守
300名無しより愛をこめて:03/01/06 13:36 ID:ZqpUDvmH
良スレあげ。
301山崎渉:03/01/08 21:34 ID:ABaujfWf
(^^)
302名無しより愛をこめて:03/01/10 04:11 ID:QJGn6Zoo
age
303名無しより愛をこめて:03/01/10 06:30 ID:ATzXVGdJ
>>1
エプソードフォナル
304名無しより愛をこめて:03/01/12 23:20 ID:ZTslRSiQ
良スレあげ
305名無しより愛をこめて:03/01/14 00:59 ID:SS0xfmPS
 良スレあげ
306砕けた鏡(1):03/01/14 03:01 ID:bQOfCkb+
また戻ってこられた。
正直、今度こそ二度と帰れないかもしれないと思っていた。
だから素直に嬉しい。
この大きな窓の前に座っていられるという、それだけのことが。

ただ、ひとつ足りないものがあった。
事務机のそばに置いてあった大きな姿見だ。
ゴロちゃんに聞くと、気まずそうに目を伏せて言った。
「すいません、先生・・・俺が掃除中にうっかりよろけて
ぶつかったら粉々に割れちゃって」
だいたい予想通りの答えだった。やれやれ。
ゴロちゃんが嘘つくの下手だって分かってるのに、
悪いこと聞いちゃったかな。
まあいい。
これでどっかの陰鬱な顔の男がいきなりあの鏡に映って、
「誰それが死んだ」だの「遅すぎたということのないようにしろ」
だの言っていく心配がなくなった。
夜、せっかくここでくつろいでるときにあれをやられた時は、
心底うんざりしたものだ。

もっとも、「見舞い」に来た秋山の言うことを信じるなら、
どのみちあの男はもうここへは現れないだろう。多分。
脱落者とみなした者のところへは。
いいよ。バトルの主催者はあいつなんだ。好きにするがいい。
こっちももう、戦いには飽き飽きしてたところだ。
・・・やっぱり、あいつのバカをうつされたのかな。
最強クラスのモンスターと契約したくせに、
戦いに勝ち抜こうとするどころか止めようとしてるあのバカ。
騙したりアゴで使ってやったりしたこともあったけど、
あいつの術中にはまったのは実は俺の方でした、ってことか。
307306:03/01/14 03:15 ID:SjTMLgL6
TV先週と先々週の補完を書いて見ました。
話の性格上、最終回の放映までには完成させないとまずいので(鬱)
なんとかがんばります…出来はともかく

P.S.
28さんの劇場版北岡エピローグと似てしまってすみません
(↑先生の「じゃあねマグナギガ」の台詞が好きです)
+
ageてくださった方々どうもです
308砕けた鏡(2):03/01/15 01:33 ID:srbxe/1I
何かが白大理石の床に当たって硬い音をたてた。
「−−すいません」
目を上げると、緑のカードデッキを拾おうと
あわてて身をかがめるゴロちゃんがいた。
俺の上着をソファから取り上げたとき、滑り落ちたらしい。
「ああ、いいよいいよ・・・」

よく考えれば結構いい線いってたじゃない、俺の人生。
少し短いかもしれないけど。
ありあまるほどの金。抜群の容姿。
やり手の弁護士という結構な社会的地位。
それにもちろんゴロちゃんがいてくれた。
あとは、令子さんを落としさえすれば・・・
そう思って机の前に行き、携帯を取り出す。
でもすぐ落とした。手に力が入らない。
参ったな・・・ゴロちゃん、顔そむけちゃったよ。

ともかく、明日の約束は取りつけた。
通話中、渋る令子さんの声に島田とめぐみらしい声が
割って入り、しばらく会話が途切れた後、OKの返事が来た。
あいつら、令子さんに余計なこと言ってなきゃいいが。
ま、ゴロちゃんがよく言って聞かせてあるみたいだから
大丈夫だろうけど。

警察から連絡が入ったのは、そのすぐ後だった。
「浅倉威の潜伏先が判明。明朝突入。
抵抗著しい場合は射殺もやむなし」
309砕けた鏡(3):03/01/15 01:41 ID:srbxe/1I
これでもう思い残すことはなくなった。
貴重な日々を安らかな気持ちで過ごせる。
特に明日は、令子さんと一緒に。
・・・目をぎらつかせたあいつがいきなり現れやしないかと
気を揉むこともなく。

俺とゴロちゃんをさんざん悩ませた野獣は明日の朝、
無数の銃弾を浴びて無駄な一生を終える。
まさに因果応報ってやつだ。
今夜はよく眠れるだろう。そう思って床についた。

だが眠りが訪れることはなかった。
代わりに目の前に繰り返し浮かんできたのは、
粉々に割れた姿見の幻影だった。

あの姿見がなくなっているのに気づいたときから、
何となく想像がついていた。
あれは、わざと叩き割られたのだ。
誰に?決まってる。
俺の入院騒ぎで誰もいないときに侵入した浅倉だ。
おそらく秋山が神崎から俺の脱落を聞いたとき、
あいつもその場にいたのだろう。
当然「北岡の脱落なぞ認められるか」ってわけで、
またもここへやって来た。
で、誰もいないので例によってイライラを爆発させた。
そんなところか。
310砕けた鏡(4):03/01/15 01:48 ID:srbxe/1I
ゴロちゃんだってすぐに、浅倉の仕業だと気づいたはずだ。
だから自分が壊したなんて嘘をついた。
俺を心配させないために。

弁護士として最初に接見したときから、あいつには手を焼いた。

「浅倉さん。すまないけどもう一度いってくれませんか?」
「・・・何をだ」
「だから理由ですよ。理由。あなたが相手を動かなくなるまで
殴り続けたのは何故なんです?」
「何度言わせる気だよ・・・」
「だからねえ、イライラしたからだなんてそんな」
「イライラしたからだよ。それだけだ・・・もう言わせるな」
「あのねえ。あんた裁判で少しでも有利になりたいとか、
そういう気持ちあるわけ?あるならもうちょっとましなこと答えてよ、
今みたいな返事じゃどうにもならないんだよ!わかるでしょ?」
ついにブチ切れた俺を瞬きもせずに見つめた後、
あいつはにたりと笑ってみせたものだ。仕切りガラス越しに。
「ほう。おれに向かってそんな口をきいた弁護士は初めてだな。
面白い、期待してるぜ。無罪にしろよ」
「・・・・・・」

正直、俺もあいつの弁護を投げようと何度思ったかわからない。
それまで何人もの弁護士が逃げ出したように。
だが自ら望んだ仕事でないとはいえ、
いや望んだ仕事でないからこそ、
逃げるなんてことは俺のプライドが許さなかった。
いいだろう。この救いようのない野良犬のために、
黒を白に変えてやろうじゃないか。この北岡秀一が。
311306:03/01/15 02:06 ID:lP25yS2B
3話分追加です。
308の最後の3行の内容は、テレ朝公式の49話あらすじから拝借しました。
(警察から北岡に浅倉包囲の連絡が入るシーンは、本編では
カットされていて、代わりに警官の「射殺やむなし」の声にかぶって
倉庫みたいなところに立つ浅倉と、眠れないでいる北岡の映像が
流れてましたね)

あと、司法関係の描写で万一ウソ書いてたらすみませぬ。
(あまり触れないようにはしてますが)
312名無しより愛をこめて:03/01/15 02:34 ID:7UOWsyb1
>306
うぉ。かっこいいな弁護士。

続きはあるのかな?
ちょっと楽しみ。
313砕けた鏡(5) :03/01/16 03:18 ID:EXs6NdZH
いくら巧みに白を上塗りしたところで、黒は黒だ。
それでもあらゆる手を使って、懲役10年という結果を出してやった。
浅倉のしてきたことを考えれば、軽すぎるといえる刑だ。

拘置所でそれを告げた俺に、あいつはまた笑ってみせた。
蛇のように瞬きもしない眼は笑っていなかったが。
「いまもイラついてる。無罪にできない役立たずにな」

「浅倉さん、悪いけどあんたとは合わないわ。
控訴するんなら他の弁護士雇ってよ」
そう言い捨てて背を向けたときほど、
せいせいした気持ちになったことはなかった。
やるだけのことはやった。野良犬がいくらイラつこうが
逆恨みしようが、もう俺には関係ない。
二度と会うことはないだろうからな。

だがそれはとんでもない間違いだった。
314306:03/01/16 03:27 ID:EXs6NdZH
>>312
読んでくれてありがとうございます。嬉しいです。

一応、先週の北岡の「やっぱり浅倉とは決着つけなきゃ」
という台詞につながるまで書きたいと思ってますが、
最終回のある日曜朝までに完成できるかどうか…
(でも何とかがんばります)
315名無しより愛をこめて:03/01/18 00:02 ID:nYqGauQ7
 新スレです、ヨロシク!
 【手を取り】ライダー共闘SSスレその3【戦え】

http://tv3.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1042661010/l50
316名無しより愛をこめて:03/01/18 00:21 ID:nYqGauQ7
 良スレあげ
317306:03/01/19 05:04 ID:h6/9Y+TA
>>315
新スレおめでとうございます。時々見せてもらってますが、
相変わらずものすごい活気ですね・・・これからも楽しみにしてますので、
みなさんがんばってください。
(この補完スレもリンクしてもらったんですね。どうもです)
318砕けた鏡(6) :03/01/19 05:06 ID:h6/9Y+TA
脱獄犯、そしてライダーになった浅倉に対して
何の恐れも抱かなかったといえば嘘になる。
俺の知らない間にライダーを2人も倒し、
その契約モンスターまで従えるようになったあいつ。
追われる身でありながら追い詰められた気配など
微塵もみせず、俺の前に何度でもふらりと現れては
戦いを挑んでくるあいつ、仮面ライダー王蛇に。

もちろん、あいつに負けてやるつもりなど更々なかった。
仮面ライダーゾルダとしても、北岡秀一としても。
正々堂々戦ってやろうなんてつもりもなかった。
腹を空かせた契約モンスターの餌を狩るのを邪魔したり、
土下座しながら鏡面のない場所に誘い込んで
警官隊に包囲させたり、バカな弁護士に少々薬を盛ったり。
我ながら手段を選ばなかった。あいつを再び牢に叩き込むか、
いっそ抹殺するためなら。

だが何度罠にはめられても、あいつは必ず抜け出してきた。
抜け出すたびにふてぶてしさを増しながら。
警官の群れも、拘束具も、眼前に迫る車も、
そして飢えた契約モンスターの攻撃さえも、
あいつを止めるどころかたじろがせることさえできなかった。

その間にも、俺の病気は止まることなく進行していった。
319砕けた鏡(7):03/01/19 05:08 ID:h6/9Y+TA
あの時、なぜ俺は浅倉にとどめを刺さなかったのだろう。
あいつとあの最低の若造、東條に
エンドオブワールドをお見舞いしてやった後に。
「気にするな」
おまえ、ケガしてるみたいだな。そう言う俺にあいつは答えた。
血を流し、壁で体を支えなければ立てないほどの
ダメージを受けているのに、心底楽しそうに笑いながら。

あいつのそんな闘争本能と生命力は俺にとって
脅威であり、やりきれない怒りの対象だったはずだ。
なんで俺じゃなく、浅倉のような野獣が
勝手気ままに延々と生きていられる。
生きていたって何の役にも立たないあいつが・・・
何度そう思ったかわからないのに。

その答えは、誰もいない401号室で暴れている
あいつを見たときに出ていたのかもしれない。
320砕けた鏡(8):03/01/19 05:11 ID:h6/9Y+TA
戦いに対する飽くなき欲望。
それだけを力の源にして生きるという運命を
負わされた人間なのだろう、浅倉は・・・否も応もなく。
俺が病魔に侵される運命を否応なく負わされたように。

そして病魔が俺の命を燃やし尽くそうとしているように、
浅倉の力の源はいずれあいつ自身を焼き尽くすだろう。
あいつが望むような終わりなき戦いと、手応えのある相手。
そんなもの、元々この世には存在しないからだ。
あいつがガキの頃も、これから先も、ずっと。
いや。
戦いへの満たされない欲望に焼き尽くされる前に、
警察に代表されるこの世の中があいつを葬るだろう。
今まで何度も試みてきたように。
秩序とは無縁な、どころか秩序を破壊せずには生きられない、
そんな人間の存在をこの世の中が許すはずはない。
・・・ライダーバトルであいつが死ななかったらの話だが。

あいつは、生まれたときから破滅を約束されていたのだ。
401号室で獣のように吼えながら鏡を砕きまくる浅倉を見て、
それがはっきりと分かった。
毒々しい蛇柄のジャケットが、あいつに絡みついて離れない
呪いそのものに見えた。
321砕けた鏡(9):03/01/19 05:15 ID:h6/9Y+TA
それ以来、浅倉と戦ったり、倒そうという気持ちは
次第に失せていった。
病気の進行が速まり、戦いに嫌気がさしてきたせいもある。
東條に呼び出され、河原で浅倉と最後に戦った時もそうだった。
お間抜けにも自分の契約モンスターの毒を浴びて
のたうちまわるあいつを見ていると、どういうわけか
無性に哀しくなった。

だが、炎上する車の中に俺とゴロちゃんを
引きずり込もうとした時は、さすがにあいつの死を願った。
もう生き返ってくるなよ。
あいつに傷を負わされたゴロちゃんと一緒に命からがら
逃げ出しながら、心底そう思った。

その後病状はさらに悪化し、また入院を余儀なくされた。
ライダーバトルからも脱落を宣告された。

もういい。殺したり殺されたりは十分だ。
これからは令子さんやゴロちゃんと一緒に楽しく過ごそう。

そう思っていた矢先、浅倉の破滅が確定した。
「抵抗著しい場合は射殺もやむなし」
322砕けた鏡(10):03/01/19 05:18 ID:h6/9Y+TA
願ってもない話のはずだった。
だが喜ぶ気にはなれなかった。
令子さんと約束した日の前夜、
安らかな眠りが訪れることもなかった。
粉々に割れた姿見の幻影が、眼の前を離れなかった。

破滅の運命にとことん逆らって、浅倉が
どこまでも生き延びるのを見てみたい−−
俺は、そう思っているのかもしれない。

今まで決して認めまいとしてきたが、
ライダーとして戦っているときのあいつからは
溢れんばかりの生命力が感じられた。
俺をたじろがせ、そしてあろうことか羨望を引き起こすのに
十分なほどの、無邪気に遊ぶ子供のような生命力が・・・
それが消えてしまうのを見たくはない。
俺にはもう得られないものだからこそ。

だから姿見を壊したのが浅倉だと直感し、あいつが
あの炎の中でも死ななかったことを知った時、
忌々しいと同時に妙にほっとした気持ちになったのだ。

まったく、我ながらどうかしてる・・・いくら病気とはいえ。
本当ならあいつを倒して永遠の命を手に入れるべきなのに、
よりによって生きて欲しいと思うなんて。
俺を狙い続けるあいつに。
323山崎渉:03/01/19 05:20 ID:FCZayUD6
(^^)
324砕けた鏡(11):03/01/19 05:27 ID:h6/9Y+TA
だが、どのみち虚しい願いだった。
俺がライダーバトルに賭けた、自分の永遠の命同様。
あいつが「著しく」抵抗しないわけがない。
おとなしく投降して刑務所に戻るのは、
あいつにとって死ぬのと同じことだ。
抵抗しようがしまいが、あいつは死ぬ運命にある。
・・・・・俺と同じように。

俺にできるのは、今、あいつと戦ってやることだけだ。
どうせ破滅するなら、俺があいつを倒してやる。
俺と同じように、理不尽な宿命を背負わされたあいつを。
警察なんぞに蜂の巣にされる前に。

「ゴロちゃん。俺、やっぱり浅倉とはちゃんと
決着つけてやんなきゃいけないと思うのよ」
翌朝、俺はそれだけ言った。

浅倉−−おまえのイライラは絶対に消えないだろうよ。
この世に生きているかぎりな。
一時でも解放されたきゃ、ライダーとして戦うほかはない。
しかも、おまえが物足りなさを感じない相手は俺しかいないときた。

つくづく救われない人間だよな、おまえも。っていうか、俺が。
おまえのイライラを消してやるために使う命の
持ち合わせなんてないのにさ・・・
でも決めたよ。とことん戦ってやろうじゃない、今日は。
おまえが俺の前で土下座したくなるまでな。
少なくともおまえを無罪にするよりは、その方が簡単だろう。

END
325306:03/01/19 05:39 ID:h6/9Y+TA
放送ぎりぎりになってしまいましたが、なんとか完成しました。
(間に合ったといえるかどうか…)

にしても、3時間くらいあとにはどうなることか。
できれば北岡にも浅倉にも死んでほしくないですが(無理っぽい)

とにかく、読んでくださった方々、ありがとうございました。
326名無しより愛をこめて:03/01/19 07:31 ID:gRjI5ZLI
「砕けた鏡」完成お疲れ様です。
本放送前にこれを読めて良かったです。

北岡先生のラストバトルへ向かう心の揺れと決意が補完されていて、
これでより納得して心安らかに先生を見送る事が出来ます。
本当にありがとう。


そして、あとわずかで
本編での「決着」が付いてしまうんですね…。
327名無しより愛をこめて:03/01/19 13:53 ID:PObpdq0C
微妙に本編とも矛盾しない出来だったね。
お疲れ。
328名無しより愛をこめて:03/01/19 14:02 ID:U4ayI05p
( ´,_ゝ`)えぷそでふぉなる
329名無しより愛をこめて:03/01/19 20:02 ID:SaFJ1eCv
>>砕けた鏡さん
北岡の心理描写が良く書けていて、とても感心しました。
本編にも無理無くつながるって感じで良いです。
次は戦いに向かう吾郎ちゃんをキボン!!
330名無しより愛をこめて:03/01/19 20:05 ID:VE/Ksko+
だめだ何度みてもスレタイで笑っちゃって‥
331306:03/01/19 23:12 ID:/qH3A7Fa
>>316
遅くなりましたが、ageありがとうございました。

>>326
こちらこそ、読んでくださってありがとうございます。
>本放送前にこれを読めて良かったです。
そういっていただけるとすごく嬉しいです。
なんとか本放送にupした甲斐がありました。

>これでより納得して心安らかに先生を見送る事が出来ます。
意外な結末でびっくりしましたが、やはり悲しかったですよね。

>>327
>微妙に本編とも矛盾しない出来だったね。
>お疲れ。
ありがとうございます。でも、実を言うと「砕けた鏡(11)」ラストは
最初、包囲現場で北岡が浅倉に直接言う形になってました(汗)
いろいろ考えて心の中の台詞に変えましたが・・・

>>329
>北岡の心理描写が良く書けていて、とても感心しました。
ありがとうございます。先週、北岡が決意するまでに
どんなことを考えたのか気になったので、なるべく詳しく
書こうとしてみました。

>>次は戦いに向かう吾郎ちゃんをキボン!!
「ゴロちゃんの顔が見えないよ」から、浅倉が接近音に
気づくまでの補完ですか・・・う〜ん難しそうですね。
332名無しより愛をこめて:03/01/22 18:41 ID:y6+QjAvK
 誰かリュウガが最後にいい奴になる小説を書いてくれないですか?
(あやつはある意味、可哀想な奴でしたからね・・・。)
333名無しより愛をこめて:03/01/22 18:50 ID:2ZuitfKo
>>332
リュウガが本心でユイの消滅を止めようとしてるなら、
それはそれでいいヤツなのだが。
334332:03/01/22 19:24 ID:y6+QjAvK
>>333
ドラゴンボールで例えるとすれば、自分的には裏真司はピッコロさん、
真司は神様といった感じなんですよ・・・・。
335名無しより愛をこめて:03/01/22 20:07 ID:LWgq5HjK
>>332
おまえが書け。
ここはそういう場所だ。
336185-197:03/01/23 23:59 ID:O4k+lyyr
すみません。
一番肝心な「恵里」さんの名前を「恵理」と書き間違ってるのに気付きました。
もし今からこれを読まれる方は、「恵里」と置き換えて読んでください(汗)。
337欠けていたもの:03/01/24 12:58 ID:MHsqGrQO
神崎士郎は俺の事を知らない。自分が最後の一人になるつもりだからな。

優衣…。
お前は俺が助ける。絶対に。

最後の一人になったら、俺の願いで優衣に命をやるから…消えてしまっちゃ駄目だぞ。
お前が居れば何も要らない、俺の全てを優衣にやるよ。

たとえ、神崎を殺す事になっても、俺は優衣を護る。
…兄貴を殺したって知ったら優衣は俺を許さないだろうな。
それでもいい。嫌われても、憎まれても、優衣さえ護れれば悔いは無いさ。
優衣の笑顔さえまた見れれば、それだけで充分だよ。

どんな事をしてでも…
どんな汚い事をしてでも…
お前を消滅させたりしない!
338欠けていたもの:03/01/24 12:59 ID:MHsqGrQO
始まりは雨の日。
俺は優衣の強い思いから、このミラーワールドに生み出された。
初めて出来た友達に会いたい一心で描いた絵に俺の「存在」が宿り、
城戸真司から引き離された魂の一部「俺」は絵と一緒に封印された。

俺は半分眠ったまま、表の俺を夢に見ながら一緒に成長してきた。
封印が解けるまで俺はこの世に居ないも同然だった。

そしてまた雨の日。
俺の宿った絵を創造主の優衣が目にした。
俺の宿った絵を俺の分身の城戸が目にした。
存在しなかった事にされた俺は、こうして解放された。


城戸が知ってる事は俺も知ってる。
このバトルに勝ち抜けば、なんでも望みが叶うんだろ?
馬鹿な奴だ。
戦いを止めようなんて勿体無いじゃないか。

俺の願いは決まってる。

優衣の命をつなぐ。
他は要らない。
339欠けていたもの:03/01/24 13:00 ID:MHsqGrQO
順調に進んでるはずだった。
邪魔な相手は倒し、実体も手に入れ、残るライダーはあと三名。
すぐに終わるはずだった。

神崎さえ最後に残せば、万が一自分が負けても優衣を救えるはずだ
…そう信じていた。

なのに…。


動かなくなった優衣の身体を前に
足がガクガクと震えた。


俺は初めて「恐怖」と「悲しみ」と「絶望」と…、
そういった諸々の負の感情を味わった。

優衣が…?優衣が?!そんなバカな!
まだ時間があったはずじゃないか!
あと一日。あと一日で、全部お前の物になってたはずなのに。
優衣が死ぬわけ無い!
こんなのウソだ!現実の見せる幻だ!

な?そうだろ?眠ってるだけだよな?
なあ?
起きてくれよ!

優衣!!
340欠けていたもの:03/01/24 13:02 ID:MHsqGrQO
優衣が死ぬわけ無いじゃないか!
だって優衣が世界の全てなんだよ。
優衣が居なくなったら、この世界にもどこにも意味なんかなくなる。
優衣の居ない場所で存在なんかしたくない。

優衣、俺を見てくれ。
俺、優衣の側にずっと一緒に居る事が出来るんだよ?
本当の体が手に入ったから。もう幻じゃないから。

優衣を抱きしめて「大丈夫だから、心配するな」って言ってやれるんだよ。
「お前の事、大好きだから」って。

…そう言えたはずなのに…。


優衣の為ならなんだってするよ。

邪魔な奴はあとちょっとだけ、秋山と北岡だけだから、
あいつらを片付けたら、そうしたら、優衣にまた笑顔が戻って…
そして…ずっと一緒に…優衣と一緒に暮らせるんだよな?
な?そうだろ?

優衣…。
341欠けていたもの:03/01/24 13:03 ID:MHsqGrQO
城戸!
なんで優衣を助けようとしない!
お前は優衣の友達じゃなかったのか?!
この裏切り者!

優衣はずっと、心の底でお前の事を待ってたんだぞ!
俺じゃなくて、お前の事を、ずっとずっと。
約束を護ってお前が雨の向こうから現れる事を。

たとえ俺が優衣を抱きしめても、俺の事をお前だと思って笑い返すんだ。
そうなってもいい、それでもいい、
城戸だと思われても優衣が笑ってくれるなら…そう思ってきたのに。

それなのに、お前は優衣にあんなに慕われているのに、
なんで優衣を見殺しにできるんだよ!
342欠けているもの:03/01/24 13:04 ID:MHsqGrQO
もういい!実体になれなくても構わない。
城戸も誰もかも皆殺しにして、俺が勝利する。

ミラーワールドがこっちの世界に繋がってる間は、
最後の一人の願いのパワーで奇跡が起こせるはず。
俺が勝てば、俺の命で優衣が救えるんだ。
絶対救ってみせる!

話す事も、触れる事も、動く事も、なんにも出来なくなっても、
この中途半端な命が無くなって優衣を見る事しか出来なくなっても、
優衣さえ無事なら構わない。
俺の命を代りに優衣に。
俺の全てを優衣にやるから。


世界中の人間を殺してでも、優衣が救えればそれでいい。
ミラーワールドとこの世界の繋がりが消える前に
全てのカタを付けてやる!

まずは城戸真司!お前からだ!
343欠けているもの・終り:03/01/24 13:06 ID:MHsqGrQO
ドラゴンライダーキック同士の壮絶なぶつかり合いに、
双方は大きなダメージを受けた。
変身も解け、通常の姿に戻る二人。

無言で互いに殴りかかる。
己自身の存在を賭けて。
魂を一つに戻すために。

傷付いてもリュウガのパワーは強大で
生身同士なら真司に勝ち目は無かった。

「記憶も感情もなくなるまで、お前の魂、粉々に砕いてやる!」
真司の全てを消し去ろうと構えるリュウガ。
…だが、リュウガの怒りよりも真司の悲しみの方が優っていた。

先に真司の拳がリュウガの胸に力いっぱい当たった。
直接触れた真司の腕を媒介にリュウガはもう一度真司と心が癒合した。
魂が解け込み、身体が粒子になって消えながら、
自分以外の人間の哀しみをリュウガは初めて理解した。

リュウガが優衣を想う様に
真司もまた美穂を想っていた事、美穂もまた真司を想っていた事を。
そして、想いを失う事がどんなに辛く切ないのかを。

…もう二度と、好きになったひとに会えない彼らの悲しみを、
心の底から理解した…。

消えて行く最後の瞬感に美穂の笑顔を思い出し
「ごめん…」と呟くリュウガ。

真司もまた、リュウガの気持ちをその時初めて理解した。
拳から伝わった最後の想いに、真司は反射的に涙を流した。