国立国際医療センター(東京都新宿区)は、鳥インフルエンザ(H5N1型)で世界最多の
死者を出しているベトナムの病院に医師を送り、インターネットを使った電子共同診療を
実施することを決めた。感染者を診たことのある医師が日本にほとんどいない現状を考慮し、
国内での患者発生をにらんだ対策を急ぐ。
国際医療センターは特定感染症指定医療機関で、政府の新型インフルエンザ対策行動計画
によると、日本で患者が発生した場合、同センターに優先的に運び込まれる。
ベトナム側で共同診療にあたるのは同国最大の国立バクマイ病院(ハノイ)。鳥インフルエンザ
患者を専門に診る熱帯病研究所の病棟を備える。同国で03年末から死亡した42人のうち、この
病棟では9人が亡くなった。
共同診療は13日から始まる。ベトナムからネットで送った患者の肺細胞画像などをもとに
テレビ会議する形で進められ、適切な治療方法についても検討し合う。ネット上で同じ画像を見ながら
診断するのは国際的にも珍しいという。
11月9日に接続テストを実施した。トラン・クイ院長は「日本へ多くの情報を送り、協力を仰ぎたい」と
期待を表明。日本側責任者の工藤宏一郎医師は「日本で感染者が出たときに即応できる集団を作る
必要がある。症例を実際に見られることが大きい」と話した。日本には先端技術はあるものの感染を
警戒する医療関係者も少なくないという。
国際医療センターは共同診療の開始に先立ち、数週間単位で日本人医師を1人ずつバクマイ病院に
派遣し、診療現場に立ち会わせる。
1人目となる呼吸器科の加藤康幸医師(36)は「どうしたら患者の症状は良くなるのか。医師は診察時、
何に注意せねばならないのか。最前線の経験から学ぶことは多いと思う」と話す。
http://www.asahi.com/life/update/1202/001.html