ピカチュウの人生Part3<小説リレー・進化>

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1名無しさん、君に決めた!
全世界のポケモンの支配を企むピカチュウを主人公とした小説を書くスレのPart3。

※本編自体は既にシンオウ編で完結しています。続編のカントー編等はパラレルワールドという扱いになっています。
※怖いお兄さんに絡まれないように、続きを書く前に前スレ・前々スレ・議論スレ・保管サイトをしっかり読み、
  流れとキャラの性格と口調をしっかり掴んでおきましょう。
※シンオウ編は必見
※小ネタ歓迎!絵も歓迎!
※荒らしはスルーが基本。神が降臨するまでまたーり行きましょう


前スレ
ピカチュウの人生2<小説リレー・進化>
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1168594628/l50

前々スレ
ピカチュウの人生<小説リレー・進化>
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1163338618/l50

関連スレ
ピカチュウの人生議論スレ
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/poke/1165628880/l50

まとめwiki
http://www21.atwiki.jp/pikatyuunozinsei/

保管サイト
http://park.geocities.jp/pokepoke0830/pikatyulife.html
2名無しさん、君に決めた!:2007/08/09(木) 00:04:31 ID:???
前スレ直前の流れ
976 名前: 名無しさん、君に決めた! [sage] 投稿日: 2007/08/07(火) 03:24:19 ID:???
 軽く礼を言った後、アブソルの背を降りた。後ろでも何かを少し乱暴に下ろす音と、うわっ、という声が聞こえた気がするが、気にしないでおく。
 カイリキーは既にさっさと階段を上がりきり、入り口の前で仁王立ちをしている。俺達が遅い、などと文句を垂らしながら苛々した様子で待っていた。
 ミミロップと言い、このカイリキーと言い、これだから雌という奴は――……? 出かかった思考が違和感に遮られて止まる。そういえばあの筋肉の権化の方は雄であったな。すっかり態度や立ち振舞いに馴れて洗脳されそうになっていた。
 とにかく、こいつらは小さな事やよくわからないことで一々機嫌を悪くするため扱いに困る。と、つくづく思ったのだ。
 ――いや、そういえば我が部下に扱いやすい者など一人として居ないな。カイリキーに付いて部屋の入り口をくぐりながら、気付きたくなかったことに気付いてしまった。歩きながら小さなため息が漏れる。恐らく俺の顔面は苦い笑いでいっぱいになっていることだろう。
「それじゃあ、開けるわょぉん」
 カイリキーはそう言い、どこから何時の間に持ち出してきたのか木製の脚立の上に乗り、ガラスの天窓をひょいと押し開けた。そして奥を何やらごそごそと手で探った後、太い蔓で編まれた縄ばしごを引っ張って下ろす。
「さ、どうぞぉん」
 促され、はしごに歩み寄り段の部分では無く、横の部分を掴んだ。段から段までの距離が俺には長く、普通には登れないのだ。一本の綱を登るようにやっていくしかないだろう。
「ちょっと待ってください」
 登ろうとしていた俺をロゼリアが止める。
「あのですね、縄ばしごでは僕やアブソルさんが登れないと思うんですが」
 それもそうだ。両手が薔薇になっているロゼリアは勿論のこと、アブソルの前足も、とても縄を不自由なく掴める構造はしていない。
3名無しさん、君に決めた!:2007/08/09(木) 00:05:39 ID:KLMJzN1Y
977 名前: 名無しさん、君に決めた! [sage] 投稿日: 2007/08/07(火) 03:27:02 ID:???
 さて、どうするか。アブソルは右前足を上げ、自分の手のひら――肉球を恨めしく見つめている。
「仕方ないわねぇん――」
 カイリキーは鼻で息をふん、と飛ばした。
「その子達二人は、縛るか何とかして蔓に引っ掛かってなさぁい。あたしが上から引っ張り上げてあげるわぁん」
 見せびらかすようにカイリキーは腕の一本をぐいと曲げ、岩山みたいな力瘤を作ってみせた。
「それはありがたい。」

 カイリキーの助力で難なく全員、外へ上がれた。真昼の強い日差しが上から照りつけている。
 周りは岩肌に囲まれ、緑は枯れかけているような雑草だけが辛うじて数本生えていた。正に岩山といった風景だ。一本、何とか通れそうな道のようなものが、岩山の斜面や崖に沿って曲がりくねりながら先に伸びているのが見える。
「あたしはもうこれでいいかしらぁん」
 顔の汗を拭いながら、カイリキーは足を投げ出して座っている。
「うむ、ご苦労であった。イワヤマトンネルの管理はお前に任せたぞ。他のポケモン達と共に一帯を治めよ」
「ええ、わかったわぁん。大船に乗ったつもりでいなさぁい」
 どん、とカイリキーは右腕の二本で胸を叩いた。
 こうして俺達はイワヤマトンネルを後にし――。
「ちょっと待ってぇん」
 カイリキーに不意に呼び止められ、俺は振り向く。ちゅっ、と唇を尖らせ、カイリキーは投げキッスをよこす。
 ……心底げんなりしながら俺達はイワヤマトンネルを後にすることになった。なんと幸先の悪いスタートか。目指すはおつきみ山。
4名無しさん、君に決めた!:2007/08/09(木) 00:07:17 ID:???
テンプレ、以上
何か不足があれば追加の方をよろしく
5名無しさん、君に決めた!:2007/08/09(木) 00:09:42 ID:???
>>1

前スレ埋めないとな
6名無しさん、君に決めた!:2007/08/09(木) 00:12:09 ID:???
>>1乙!
さぁ、前スレ埋めるか
7名無しさん、君に決めた!:2007/08/09(木) 00:21:14 ID:???
人生と言うより鼠生
8名無しさん、君に決めた!:2007/08/09(木) 00:28:27 ID:???
明日にでもまた続き書くよ
それまでに前スレ消費しないとな

ポケ板って即死回避は必要ないよね?
9名無しさん、君に決めた!:2007/08/09(木) 01:43:10 ID:???
とりあえず前スレが埋まるまで保守
10名無しさん、君に決めた!:2007/08/09(木) 09:33:10 ID:???
ピカチュウって人だったのか
11名無しさん、君に決めた!:2007/08/09(木) 18:53:41 ID:???
保守
12名無しさん、君に決めた!:2007/08/10(金) 03:49:59 ID:???
前スレ>>1000
3スレ目もまたーり行きましょう
13名無しさん、君に決めた!:2007/08/10(金) 13:03:58 ID:???
前スレ埋め立て乙!
さて、今日の深夜にでも続き書くかな
14名無しさん、君に決めた!:2007/08/10(金) 14:32:12 ID:???
http://game11.2ch.net/test/read.html/poke/1186585164/
これで専ブラ使わなくても見れる
15名無しさん、君に決めた!:2007/08/10(金) 19:50:36 ID:???
諸事情で今夜は無理になっちまったんだぜorz
明日まで待ってくれるとうれしいです…
16名無しさん、君に決めた!:2007/08/11(土) 23:46:50 ID:???
待 ち ま す た
17名無しさん、君に決めた!:2007/08/12(日) 00:02:56 ID:???
す い ま せ ん
議論が白熱していたので一応自重してたお
今から書くので3〜4時ごろになるかと思われますorz
18名無しさん、君に決めた!:2007/08/12(日) 00:21:53 ID:???
本編?
19名無しさん、君に決めた!:2007/08/12(日) 00:43:54 ID:???
YESYESYES
20名無しさん、君に決めた!:2007/08/12(日) 03:21:29 ID:???
 気を取り直し、ごつごつした山道を俺達は歩いていく。――ロゼリアが一番ダメージが深刻そうだ。トラウマとして刻まれた様々な忌まわしき記憶が溢れだしたのか、肩を少し落としげっそりしている。
 しかし本当に荒れた地形だ。ポケモンですら少し苦労しながら進まなければならぬほどなのだ、人間が来ないと言い切れるのも頷ける。ミミロップがよじ登ろうと掴んだ岩が崩れて落ちかけたり、自らも転げ落ちそうになりながらそう思った。
 これならば下の道を無理矢理、強行突破すれば良かったのではないかと少し後悔する。
 必死に踏ん張り登る横を、のろまー、とけらけらわらいながらムウマージがふよふよと俺達を軽く追い越す。今はあの浮ついた体が非常に羨ましい。手と足の力を抜けば今すぐにでもなれそうだが、やはり遠慮しておく。
 数回の起伏を突破し、何度目かの上り坂を少しずつ上がるにつれ、道の両側の岩しか見えなかった景色が徐々にあけてきた。

「ふう、とりあえずここで少し休憩するか」
 ようやく坂を上りきると景色はすっかりとあけ、北を見れば大海原。南を見れば遠くにポケモンタワーらしきものとヤマブキシティの街並み。
 そして西を見ればこれから目指そうとしているおつきみ山――? 少し上の部分が削れ、山が小さくなってしまっているような――。
「うわあ! すごい!」
 アブソルの感嘆の声がすぐ背後から急に上がる。その声で先程まで抱いていた疑問が吹き飛んでしまった。
 きょろきょろぐるぐると、すべてを目に焼き付けるようにアブソルは一面の景色を見回す。あまり動き回ると危ないですよー、というロゼリアの注意も聞かず、そわそわと忙しなく動き回っている。
 ふ、と軽い笑いとともに息が漏れた。お前自身が創った世界だろうに。だが――確かにそれなりの眺めだ。今まで深く意識して景色など見たことは無かったな。
「どうだ、俺と共に来て良かっただろう?」
 きゃっきゃとはしゃぐ背中に声をかける。アブソルは振り返り、満面の笑みで、うん! と答えた。
21名無しさん、君に決めた!:2007/08/12(日) 03:24:28 ID:???
 さて、疲れも少しは取れた。そろそろ出発するとするか。
 そう告げると、ミミロップ達はまだ休みたい、まだ見たいと次々に不平をならべる。ムウマージはいつも通りひとり、マイペースに漂っている。
 ここまで来れば恐らくもう少しだろう。そう言い、並べ積まれた不平不満を無理矢理突き崩す。うるさくブーイングしながらもぞろぞろとミミロップ達はついてきた。
 そろそろ空に薄く赤色が交じりだしている。暗くなる前に山道を抜けなければな。

 ほとんど崖のようだった山道を踏破し、ハナダシティ北東の小さな森にたどり着く頃には、空は赤色が大部分を占めていた。
 町には、名残惜しく友人との遊びを終えたであろう人間の子どもや、一日の業務を完了した大人達などの帰路につく群れが行き交い、非常に人目が多い。あれが人間! と興味深そうに町に出ていこうとするアブソルを叱咤する。
 さすがにあの人の流れに入っていく気にはなれない。ましてや図体のでかいのが一行に加わったのだ。俺達は無理をせず夕闇に紛れて進むために、紅が藍に支配されるまで少し森の中に潜んでいることにした。

 程なくして空は藍染され、辺りはすっかりうす暗くなった。
 人通りも随分と少なくなり、これならば街灯や建物の明かりを避けるように注意していけば、そうそう見つかることはないだろう。
 表立った通りを極力避け、縫うように光と光の間を慎重に進み、何事もなく――とは言えないが――ハナダシティを通り抜けた。アブソルが人間の家の窓を無防備に覗きこんだ時など、どうなることかと思ったが。
 そしてたどり着くは四番道路。おつきみ山は目と鼻の先なのだが――我が道は、すべてが楽に滞りなく進むことはないと、改めて思い知らされることになる。
 地中から突如伝わる震動。震動はどんどんと近づいてくるように大きくなり、目の前が突然隆起した。
 弾けるようにその地の瘤から飛び出してきたものは、鋭い刺で覆われた背中、指先に太く尖った爪を持つ四肢――サンドパン。
「イヤッハー! なーんか怪しい奴を発見、発見! この先は通さねーぞってのォッ!」
 有無を言わせず、飛び出た勢いのままこちらに爪を振り上げ襲いくる。
22名無しさん、君に決めた!:2007/08/12(日) 04:32:37 ID:???
GJ
GJGJGJGJ
23名無しさん、君に決めた!:2007/08/12(日) 18:31:01 ID:???
書いていいのかな(´・ω・`)
24名無しさん、君に決めた!:2007/08/12(日) 21:28:18 ID:???
どうぞどうぞ。というかお願いします
25名無しさん、君に決めた!:2007/08/12(日) 23:48:10 ID:???
明日にでも本編の続き書きたいんだぜ
26名無しさん、君に決めた!:2007/08/13(月) 14:25:53 ID:???
じゃあ書いてみようかな(´・ω・`)
27名無しさん、君に決めた!:2007/08/13(月) 19:10:16 ID:???
投下しますよ〜
まあ、面白くなかったらスルー推奨ってことで。


「ハッハー! てめぇらも俺様の餌食にしてやるッ」

とサンドパンは今にも襲い掛かかってきそうだ。両手の爪がそれを物語っている。

「ピカチュウさん、僕に任せて下さい。」
「そうだな、行ってこい。」と、俺はロゼリアを見送ると他の手下たちと近くの叢で闘いを見守ってやることにした。

相性の面では有利だ。素早さではほぼ互角といったところ。

攻撃はサンドパンが先に仕掛けてきた。しかし、ロゼリアは甘い香りで牽制しつつ、紙一重で鎌による攻撃を回避していく。

だが、それはサンドパンにとっても周知のことだったようだ。

次の瞬間、サンドパンの狂喜に満ちたような雄叫びがこだました。

「くらぇぇぇッ!」

サンドパンの爪による猛攻が命中し、ロゼリアの身体を切り裂いた!
……ように見えた。

だが、ロゼリアのように見えた物体は、身代わりだったようだ。
そして、後方からのくさぶえによって、サンドパンは眠らされ、危なげなくロゼリアのメガドレインが決まった。

「………終わりましたけど、これ どうします?」

まあ、起きるまでまつか。手下は大いに越したことはないし。 ところで、ロゼリアはいつみがわりなんて覚えたんだ?ときいてみた。

すると、
28名無しさん、君に決めた!:2007/08/13(月) 19:28:28 ID:???
すると?
29名無しさん、君に決めた!:2007/08/13(月) 19:42:58 ID:???
なんだかなぁ
30名無しさん、君に決めた!:2007/08/13(月) 21:21:20 ID:???
新しい職人が増えてくれたのはうれしいんだけどなぁ
口調は間違ってないし
3127:2007/08/13(月) 21:56:52 ID:???
駄文スマソ(´・ω・)`
今続き書いている。

文才ないのかな………
そうでないと信じて書いてます。ノシ
32名無しさん、君に決めた!:2007/08/13(月) 22:12:42 ID:???
ピカチュウの主戦法の身代わりをロゼリアにまでほいほい使わせたのはまずかったな
33名無しさん、君に決めた!:2007/08/13(月) 22:13:17 ID:???
数分後には、サンドパンが無事に目覚めて漸くまともに話せるかと思えた………が

「ハッ!ヒィィイイ ………離れろ 離れてくれ…… はn(ry」
「で??どうなの?」
「うわあぁぁぁぁぁぁ
やめてくださいよぉ」
「僕たちはなにもしませんよ。穏便に話しを聞いてもらいたいだけなんですよ。」
「お前ぇはボクというものをここんなに痛め付けておいていった体なんのつもりなん………」
「まぁ、落ち着いて話しを聞け」
そしてピカチュウはy(ry

「そうなのか……世界制服っ!!!」
「うわわぁこんな野蛮

な奴らの手下なんて無理に決まっているだろ?
どうせボクみたいな被害者が(ry


俺達はおつきみやまに向かうことにした。お月見山の坑内は岩石等の鉱物がゴロゴロして、イワヤマトンネルほどではないが少なからず暗闇につつまれていた。
とはいえ、俺にとっては十分過ぎるほどの月明かりが差し込んでいて、手下たちになにかあってもすぐに異常を察知出来た。
ずっとこのような空間が続くとおもいきや、開けた広場のような場所に出た。
よく見ると、広場の西側に杭で囲まれた場所でピッピたちが舞のような事をしていた。
34名無しさん、君に決めた!:2007/08/13(月) 22:15:58 ID:???
「何をしているのかしら。」
「わーい踊りだ踊りだ〜」
「おや、何やら中心に岩石らしき物体がありますね。」
「ムウマージ、 見てくる〜」


「まるで何かを象徴としている儀式か何かのようですね。ピカチュウさんは何か知っていますか?」
「楽しみ〜」
「俺はこの辺りには来ていなかったからよくわからないな……。」
「そうですか……」
「ねぇピカチュウ
なんかお腹空かない?」
「そういえば朝食べてから何も食べていないな。」
「こんなの落ちてたよ〜。」
アブソルが何か拾ってきたようだ。なにやら光沢を帯びたような石を拾ってきた。これについては以前に聞いたことがある。
月の石だ。



35名無しさん、君に決めた!:2007/08/13(月) 22:18:03 ID:???
>>32
誤爆気味スマソ(´・ω・`)
36名無しさん、君に決めた!:2007/08/13(月) 22:25:14 ID:???
ちょ、前々からはっていたっぽかったお月見山の伏線が台無しに…
それに前にもピカチュウ達はここに来てるんだぜ?
37名無しさん、君に決めた!:2007/08/13(月) 22:32:41 ID:???
ムウマージはかんじをはなさないよ
んー、乙。乙だけど、張っちゃった伏線のこともあるし、>>27の後から続けてもいい?
38名無しさん、君に決めた!:2007/08/13(月) 22:41:28 ID:???
いいんじゃね?
ロゼリアの身代わりの件は
お株を奪われたピカチュウの新戦術フラグってことでいける
いけるぞ!
39名無しさん、君に決めた!:2007/08/13(月) 22:42:17 ID:???
本人もスルー推奨言うてるしいいんじゃね
めげずに頑張ってほしい
だが、小ネタとかでも無いかぎりこれ→「(ry」使うの止めれ
40名無しさん、君に決めた!:2007/08/13(月) 22:45:27 ID:???
おk、また3〜4時ごろに>>27から続き書くよ
41名無しさん、君に決めた!:2007/08/14(火) 04:35:34 ID:???
 自分に似せた人形に、ロゼリアがふーっと息を吹き掛ける。すると千切れかけた人形は綿ほうしと葉っぱに戻り、風にくるくると舞って消えていった。
 綿ほうしが消えていくのを見届けた後、ロゼリアは俺の方を振り向きにこりと笑ってみせる。
「誰かさんの真似、ですよ。即席でしたがね。やってみると案外単純で簡単なものですねー相手を変わり身で撹乱する戦い方って」
 そして表情、声色一つ変えずにそう言ってのけた。悪意が無さそうに爽やかに笑ってはいるが、俺に対して向けられている嫌味はひしひしと伝わってくる。本来ならばこの態度に憤慨している所なのだが――言い返せない。
 強靱な肉体や甲殻を持つ者達とは違い、俺の体は非常に小さく脆い。その為、決して相手の攻撃をまともに受けるわけにはいかない俺にとって、敵の目を欺き、虚を突く身代わりという戦法は基本であり有効な立ち回りなのだ。
 だが、その仕組みは人形などを使った簡単で単純なものだというのは事実。一度見破られてしまえばもうその戦闘において効力は薄まってしまう。
 見抜かれてしまうような自体は今まで無かったのだが――これは“たまたま”運が良かったにすぎない。このままではまずいであろうな。何か、新たな何らかの手段、戦法を考えなければなるまい。

「あのー……ごめんなさい、僕少し言いすぎましたかね?」
 難しい顔をして黙り込んでいたであろう俺の顔を、少し申し訳なさそうにロゼリアがうかがう。
「いや、欠点を改めて見なおせた。感謝する」
 俺の言葉にロゼリアは怪訝そうに首を傾げる。気にするな、と加えておいた。
 そうこうしている内に、サンドパンがうめき声を上げて体をぴくりと揺らす。む、目覚めるか――。
42名無しさん、君に決めた!:2007/08/14(火) 04:37:31 ID:???
 目を開けた途端、サンドパンは飛び上がるように起き上がり、こちらにまた身構える。
 しかし、すぐに力なくがくりと片手と膝を地についてしまった。息を荒くしながら、サンドパンはこちらを睨み上げる。
「ぐぐー……くっそ! お前は、一体何だってんだよォッ!」
 それは有無を言う暇もなくいきなり襲撃されたこちらがそっくりそのまま返したい言葉だ。そう言いたい気持ちをぐっとこらえ、目の前で悔しそうに喚く針鼠に名を名乗り、目的を告げた。

「なっにィッ! それじゃあお前らが――」
 飛び跳ねそうなほど驚愕するサンドパン。
「そうだよ」
 サンドパンに答えるように、上の方から何者かの声が聞こえる。このじめっとした、茸でも生えてきそうな陰気な喋り方は――。
 俺達が高台を一斉に見上げると、大きな赤い茸が茶色の甲殻に包まれた手足を動かしながら、こちらに向かって高台を下りてきていた。ある程度の高さまで下りるると、一気に飛び降りて俺達とサンドパンの間に降り立った。
「久しぶり。ピカチュウ――様。三年前とまったく変わってなくて驚いたよ。僕はこの通り変わったのに」
 多少見た目は違ってしまっているが、間違いない。こいつはパラス――三年前に、手下にしたあのパラスだ。
「あっちゃー……またやっちまった?」
 深く反省する風もなく頭をぽりぽりと掻くサンドパンをパラス――進化を遂げた現在はパラセクト――は横目で見、大きくため息を吐いた後にこちらに目を戻した。
「ごめん、こいつ馬鹿だから……。ご一行様の特徴はちゃんと伝えておいたんだけどね……」
43名無しさん、君に決めた!:2007/08/14(火) 04:39:29 ID:???
 その後、俺達はおつきみ山に向かう足で、色々とパラセクトに話を聞かせてもらった。当然、俺のフォローを挟みながらだが。
 まだ必死のフォローをしなければならない機会が数回あると思うと気が重くなる……。

 三年前に俺達が急に姿を消した後、しばらくはニャースやダンバルと共にディグダの穴で途方に暮れていたそうだ。だが、このままでは埒があかないと話し合い、分担してそれぞれの地域を治めようとした。
 ニャースはヤマブキシティ近辺、ダンバルはこれまた突然いなくなった一匹のディグダの代わりにディグダの穴を、そしてパラセクトはおつきみ山。
 比較的パラセクトは首尾よく手下達を増やし、おつきみ山を掌握できたそうだ。シルフビルの一件以降、何故だか“ツキ”が良くなり、的確に物事を運べるようになったのだという。
 そういえば、一つ思い出した。イワヤマトンネルのポケモン達が言っていたおつきみ山の異変――それをパラセクトに尋ねる。
 しばらくの沈黙の後、パラセクトは実際に見てみればわかるとだけ言い、歩を早めた。
 おつきみ山に何が起こったというのか――。
44名無しさん、君に決めた!:2007/08/14(火) 04:42:50 ID:???
 パラセクトに続き、おつきみ山の入り口をくぐる。
「何だか――前に来たときよりこの洞窟、随分と小さくなってない?」
 最初にその異変を口にしたのはミミロップだった。
 そうなのだ。あれだけ広かったおつきみ山の洞窟は随分と狭くなり――そして所々に人間用であろう道案内の貼り紙が貼られている。
「……どういうことだ?」
 パラセクトはぴたりと歩を止め、悔しそうに地面に爪をたて、えぐる。
「人間――さ。ことの発端は小さな落盤――」

 俺達がいなくなってから一年目頃、おつきみ山で小規模な落盤が発生したらしい。おつきみ山へ観光に来ていた人間がそれに巻き込まれ、命までは落とさなかったがそれなりの怪我を負ったらしい。
 元々、このおつきみ山は観光地としても人間達に有名であったところだ。それがいけなかった。
 観光地としての顔も持つ山が落盤するようでは危険だ、このような事が起こらぬように整備を。観光地としては広すぎる、遭難者が出ぬよう規模の縮小を。観光地なのだから少しくらい山を削ってでも土産物屋を――。
 どんどんと人間達の加える手はエスカレートしていき――今に至るそうだ。
「住みかを勝手に作り替えられちゃたまらないから、僕達もそれなりに工事を邪魔したり抵抗したんだけどね……。無駄だった」
 様々な出会いにより、少しだけ和らいでいた俺の人間に対しての怒りが再燃し始める。
「でも、不思議なんだ。数件建てられる予定らしかった土産物屋を一件だけたてて、人間達は工事を止めてしまった。そればかりか少しずつ元の環境に戻そうとしてくれているんだ。
 最初は僕達の抵抗の賜物だと思ったんだけど、実際はポケモンリーグの監視が強まり、ポケモン達の住む場所を好き勝手にいじくれなくなったからだってさ。三年前に就任し、今もずっとその座を守っている若いチャンピオンの強い意向なんだって」
 人間というやつはこれだからわからない。時折、このような情を我らに向ける者がいる。わからない――。
45名無しさん、君に決めた!:2007/08/14(火) 06:27:17 ID:???
……嫉妬しますた。
スマソ
46名無しさん、君に決めた!:2007/08/14(火) 10:10:56 ID:???
GJGJGJGJ!
47名無しさん、君に決めた!:2007/08/14(火) 17:14:37 ID:???
(´;ω;`)ブワッ …ウマー(°Д°)
GJ GJ
48名無しさん、君に決めた!:2007/08/14(火) 18:23:05 ID:???
明日にでも続き書くよ
49名無しさん、君に決めた!:2007/08/14(火) 20:03:06 ID:???
>>48を待ちながら小ネタ投下


ハクタイの森、洋館

「……遅い」
 食堂の一番奥に席にいらただしい様子でドカリと座り込むドンカラス
夏の暑さが余計にをイライラつのらせていた
 いま目の前には縦長のテーブルを中心にズラリと席が用意されている
が、その席を埋める者達は一向に現れない
「揃いも揃って会議に遅れるたぁ、いい度胸じゃねぇか…」
 いつもなら相槌を打つエンペルトも今はいない
ドンカラスの愚痴だけが虚しく食堂に響いていた

数分後
―――ガチャリ
 ドアノブを回す音と共に、落胆した様子のエンぺルトが姿を現した
「他の奴らはどうしたでやんすか?」
「それがだな…」
 一瞬の沈黙、大きなため息をつき言葉を続ける
「…来れないそうだ」
「・・・・・」
 気まずい空気
「…ど、どういうことでぇ?」
 怒りに任せて怒鳴り散らしたいところをグッと抑え、静かに問いかける


50名無しさん、君に決めた!:2007/08/14(火) 20:04:37 ID:???
「七武海の奴らは?」
「新しい配下との顔合わせのためにカントーに向かった」
「ユキノオー達は?」
「創立何十周年記念とかなんとかで南の島へ」
「チャーレムは?」
「武者修行で詳しい位置がわからん」
「ゴルバットは?」
「『コンテストが呼んでいる』とだけ言って何処かへ飛んでいった」
「ゴローンは?」
「お盆で故郷帰り」
「……クアァ」

 ガックリと肩を落とし、もう話す気力も失せてしまったようだ
「そう気を落とすな、ドン。」
「もうダメでさぁ…こんな事じゃボスに合わせる顔が―――ん?」

 ガチャリ
再びドアノブを回す音
「誰でぇ?」
 黒い体に赤いトサカ―――
開かれたドアの後ろから出てきたのはマニューラだった
51名無しさん、君に決めた!:2007/08/14(火) 20:05:39 ID:???
「オオオオォォッ!」
 ドンカラスが息を吹き返したように飛び上り、マニューラのそばに着地する
「よく来たじゃねえか糞n…いや、本当によくきやした」
「ひゃは〜」
 いつもとは違い、今日はやけに態度が良い
「他の奴らはちょっとこれねぇが……って、おめぇの顔ってそんな単純でやんしたか?」
「ひゃは〜」
「・・・・・」

「ドンカラス様〜」
 突然、窓から突っ込むようにヤミカラスが突っ込んできた
「なんでぇ、なんでぇ、そんなに急いでどうしたんでぇ?」
「じ、実はマニューラ達が勝手にフローゼル一隊を使ってバカンスへ行ってしまいまして…あれ?マニューラさん帰って来たんですか?」

「あ、ひゃ、にゅ〜ん」
 あっという間にマニューラの姿は紫色の軟体へと姿を変え
唖然としたまま動けないドンカラスを尻目にそそくさと部屋を飛び出して行った

「け、結局糞ネコも…クハ、クハハハハハ……」
「ドンカラス様ッ!気をお確かに!」

「やれやれ……ん?」

 高笑いを続けるドンカラスからこぼれおちたメモがエンペルトの目に入った
そのメモの一番上には大きく「夏の旅行計画」と書かれていたそうだ

続かない
52名無しさん、君に決めた!:2007/08/14(火) 20:09:43 ID:???
×突然、窓から突っ込むようにヤミカラスが突っ込んできた
○突然、窓からヤミカラスが飛び込んできた

orz
53名無しさん、君に決めた!:2007/08/14(火) 20:58:04 ID:???
ちょwwwwドンカワイソスwwwwwww
54名無しさん、君に決めた!:2007/08/15(水) 10:58:45 ID:???
ちょwwww
この前のメタモンかよwwww
55名無しさん、君に決めた!:2007/08/16(木) 02:47:31 ID:???
 外はすっかり夜の帳がおろされ、星々と月が輝いていた。俺達はパラセクトに導かれ、切り開かれた頂上の広場へと足を踏み入れたのだ。
 件の山道の疲れもあり、出発は日のある時の方が良いだろうということで、おつきみ山内にて夜を明かすことにした。また頭のできが悪い部下に俺達が攻撃されぬよう、パラセクトが今夜中に周辺地域を見回っている者達に伝令しておきたいと言いだしたのもあった。
 確かに支配下にあるはずの地域で、本来であれば手下である者に襲われていたのでは笑い話にもならない。実際にそのようなことが起こったのだから救えない。上に立つ者というのは本当に苦労するのだ。その下の足場が不出来であればあるほど。
 その話を聞き、そんな事を考えていた時、不意にパラセクトと目が合った事を思い出す。互いに何か同じものが伝わった気がした。
「あれが例の土産物屋さ……。この時間はもう誰もいないから平気だね」
 パラセクトが指差した先にはこじんまりとした小屋が建っていた。店主が消し忘れたのか今だ明かりが灯っているが、確かに人影も誰かがいる気配も無い。
「あれを見せるためだけにここに連れてきたのか?」
 寝床へ案内する前に見せたいものがあると言われ、パラセクトについてきたのだが土産物屋など見せられたところで何も感慨はない。
「違う違う。本当に見せたいのはこっちの方だよ……」
 石で造られた柵に囲まれた庭のような所の前へパラセクトは向かっていく。首を傾げて俺はその後に続いていった。
「崩された環境が徐々に戻ってきてるって言ったよね。もう一つここへ戻り始めたのが……彼らさ――」
56名無しさん、君に決めた!:2007/08/16(木) 02:49:32 ID:???
 庭へきらきらと光る星が二つゆっくりと降りてきた。いや――よく見ると星ではない。それは桃色の不思議な生き物。くるりと巻いた前髪と尻尾、背中に付いた小さな羽根。丸っこい体型のそのポケモンは――ピッピ。
 星屑のような光達を体に纏い、庭の中央に置かれた、真ん中が窪んだ岩の周りをくるくると星々と共に踊るように巡る。
「おつきみ山に人間の手が加わってからめっきり姿を消してしまったんだけど、環境が少しずつ戻ってきてからまた彼らも現われるようになったんだ。どうだい、中々のものだろ?」
 確かにこれは一見の価値ありだ。その幻想的な光景に声も出さずに見入ってしまう。ミミロップ達も同様。
 ピッピ達が岩を一周するごとに岩の窪みに柔らかな光が注がれる。その光景はまるで空に浮かぶ月から光の雫が降ってきているようだ。
 何周かした後、窪みは光でたっぷりと満たされ、一瞬、強く光り輝いた。
 ――光が収まるとピッピ達はいつの間にか姿を消しており、真ん中に淡く光を放つ石がはめ込まれた岩だけが残されていた。

「残念ながら、彼らと話したことはないのさ……。あの踊りを見せられるとどうも最後まで魅入られてね。そしてこの通り影も形もなくなるのさ」
 その気持ち、わからなくもない。どこかぼうっとした気分のまま、パラセクトについておつきみ山の洞窟内に戻り、俺達は用意されたそれぞれの寝床へと通された――。
57名無しさん、君に決めた!:2007/08/16(木) 08:05:19 ID:???
GJ!
58名無しさん、君に決めた!:2007/08/17(金) 12:10:33 ID:???
また明日書けたら書きたいんですぜ
59名無しさん、君に決めた!:2007/08/17(金) 17:50:05 ID:???
最近更新ペースが早くて嬉しいな
60名無しさん、君に決めた!:2007/08/19(日) 00:32:16 ID:???
まだかー
61名無しさん、君に決めた!:2007/08/19(日) 00:50:26 ID:???
3〜4時のいつもの時間かと
62名無しさん、君に決めた!:2007/08/19(日) 03:49:57 ID:???
 朝を迎え、俺はミミロップ達を集め今後の指針を話した。パラセクト達の手で洞窟内ながら巧妙に隠し掘られていた横穴内のため、人間に横穴が見つからぬよう慎重に声を潜めてだ。
 トキワの森方面に向かいたい。――ディグダの穴に最短距離で向かうためとは言ったが、本心はあの焼けてしまった森が三年たった今どうなっているのかを確かめたかったのだ。
 パラセクトも加えて話し合った結果、あまり人通りがない朝方の今のうちにおつきみ山を出、三番道路を抜けてしまったほうが良いだろうという事だった。
 それならば今すぐここを発たない理由は無い。各自、部屋に戻り、急いで荷物をまとめ始める。とは言っても俺のマントとムウマージの道具袋くらいしか荷物は無いわけだが。
 マントの裾に付いた砂鉄や塵を払い落とし、止め具を両肩にしっかりぱちんと付けて羽織った。織り込まれた電気玉の欠片の影響もあるのかもしれないが、やはり自らの紋章――ドンカラスが勝手にデザインしたものだが――を背負うと気が引き締まるのを感じる。

 三番道路側の出口へと全員集まり、パラセクトにおつきみ山の管理を改めて任せ、別れを告げた。
 洞窟の外へ一歩踏み出す。早朝ということもあり、言われたとおり人間の影も気配も今のところ感じない。朝の清々しい空気と柔らかな日差しだけがそこにはあった。
「ちょっと待って――」
 いざ出発と言う時に後ろから声をかけられ、振り返った。パラセクトが息を切らせながら洞窟からがしゃがしゃと出てくる。
「ふぅー……忘れるところだった、これを渡しとくよ。ピッピ達が残していく不思議な石さ。役に立つかはよくわからないけど……手ぶらで旅立たせるのも悪いからさ」
 手渡されたのは淡い光を放つ不思議な石――昨日の踊りの最後に残されていったものと同じ石だ。岩を割って取り出したのだろうか。
 パラセクトに礼を言い、俺達はおつきみ山を後にした。焼けたトキワの森は三年の歳月を経て、どのような姿になっているだろう――。
63名無しさん、君に決めた!:2007/08/19(日) 07:23:26 ID:???
GJ!!
64名無しさん、君に決めた!:2007/08/20(月) 20:12:43 ID:???
ほっしゅ
65名無しさん、君に決めた!:2007/08/21(火) 12:39:38 ID:???
明日、書けたら書きたいんだぜ
66名無しさん、君に決めた!:2007/08/23(木) 01:21:35 ID:???
ごめんなさい、今日はダメでした…orz
67名無しさん、君に決めた!:2007/08/23(木) 18:18:25 ID:???
OKOK。無問題
それぞれのペースでまたーり行こうぜ
68名無しさん、君に決めた!:2007/08/23(木) 22:30:22 ID:???
今から書き始めるぜ
投下は1〜2時頃になるかもだぜ
69名無しさん、君に決めた!:2007/08/23(木) 22:35:40 ID:???
wktk
70名無しさん、君に決めた!:2007/08/24(金) 01:14:32 ID:???
 朝の道路をそよ風とともに進んでいく。
 三番道路もおつきみ山のすそ野を這う山道ではあるが、九番道路とは違い身を隠せるくらいの木々は有り、ごつごつした起伏もあまりなく道はなだらかだ。
 人間も早朝ジョギングが日課なのであろう者が一人通っただけ。身を隠すのはわけない。この辺りはパラセクトの支配下でもあり、野性のポケモン達に不意に襲われることもないだろう。これ以上ない程の平穏無事な旅路が約束されていた。
 いつもこうならばいいのだがな。そんな風に思いながら、どこかゆったりとした気分で歩いていたそんな時――。
 突如、耳から耳へと衝撃が突き抜ける。朝の静寂をつんざく爆音。たまらず耳を押さえ込み、俺達はしゃがみ込む。
 数秒鳴り響いた後その音は収まり、恐る恐る耳から手を離し立ち上がった。
「まだ耳が痛い……何だったの?」
 耳の付け根辺りを擦りながらミミロップも起きる。
「わからん……。あちらの木々の奥から発せられていた気がするが」
 騒音の元凶を確かめるため、発生源と思われる木立の奥へと向かう。
 平穏と思われた旅はまたいとも簡単に崩されてしまった。なぜ我が道はこうも受難続きなのだろうか。面倒事が行列を作り今か今かと待ち構えているかのようだ。
71名無しさん、君に決めた!:2007/08/24(金) 01:16:50 ID:???
 草むらをかき分け木々の奥へと分け入って行くと、木の間隔が広まって草の背も低い場所へと出た。
 その広場の真ん中に、小さな三角耳の生えたボールのように丸い桃色のポケモンがこちら側に背を向け、ちょこんと立っている。
 奴が騒音の原因だろうか。
「おい、そこのお前。ここで何をしている」
 息を吸い込んでいるのか少しずつ膨らみだしたそのポケモンに俺は声をかける。
 いきなり声をかけられて驚いたのか、そのポケモンはびくりとしてためていた息を吐き出し縮まった。そしてこちらにくるりと振り替える。
 大きな丸い二つの目でこちらの姿をじろじろと見つめた後、小さな口を開いた。
「あー、驚いたぁ! 何ですかぁあなた達はぁ。わたしの邪魔をしないでほしいですぅ」
 頬をぷうっと膨らませ、大きな瞳でこちらにずいと詰め寄る。
「先程の騒音の原因はお前か?」
「騒音だなんてひどいですぅ。このプリンちゃんのプリティソングを何だと思ってるんですかぁ!」
 プリンと名乗ったポケモンは頬をさらに膨らませ俺を睨む。
「あれが……歌?」
 驚愕している俺とミミロップ達を見て、プリンはますます膨らんでいく。しかし突然ぷしゅると音を立てて縮み、目を潤ませて悲しそうにその場に座り込んだ。
「わたしだってわかってますぅ。自分が音痴だってぇ……。だからこっそり練習しようと思ったんですぅ、憧れのプクリンさんみたいになりたいからぁ」
 あの破壊的な音の衝撃波は既に音痴という範疇を超越している気がするが、それは口には出さないでおいた。
 さて、どうするか。この辺りの平和のためにもこのようなことは止めさせなければだが――。
72名無しさん、君に決めた!:2007/08/24(金) 22:02:37 ID:???
ほしゅ
73名無しさん、君に決めた!:2007/08/26(日) 00:27:30 ID:???
保守
74名無しさん、君に決めた!:2007/08/26(日) 22:45:38 ID:???
保守
75名無しさん、君に決めた!:2007/08/27(月) 13:57:20 ID:???
いつもの時間に書けたら書くよ
月の石はここで使っちゃうのかな?
76名無しさん、君に決めた!:2007/08/27(月) 18:00:06 ID:???
光の石じゃなくて?
77名無しさん、君に決めた!:2007/08/27(月) 19:11:26 ID:???
パラセクトに渡されたのは月の石だと思うが
78名無しさん、君に決めた!:2007/08/27(月) 20:52:00 ID:???
そうじゃなくて誰に使うのさ。プリン?
クリスマスにミミロップがロゼリアにあげたやつが忘れ去られてる気がしてさ
79名無しさん、君に決めた!:2007/08/27(月) 22:25:20 ID:???
プリンのことかと>月の石
このまま持っていても特に使い道無いしな。

光の石は何かしら山場で使われるんだろう。グレン島前までには何か用意しないとな。
80名無しさん、君に決めた!:2007/08/28(火) 05:42:00 ID:???
「とにかく、だ。そのようなことは止めてもらわねば困る」
 事を無闇に荒げる気はない。ここは出来るだけ柔らかに言い聞かせ、止めさせるとしよう。
 パラセクトからこの辺りのポケモンには俺達のことがしっかり伝わっているはず。すんなりと受け入れるだろう――。
「嫌ですぅ。何で止めなきゃならないんですかぁ?」
 悩む間も無き即答。予想から外れた対応に、出そうとしていた言葉が詰まる。
「……我が直々の命令が聞けんだと? あのようなはた迷惑な騒音を鳴らされては――」
「あんたなんて知らないですぅ。それに騒音って何のことですかぁ!」
「なにぃ? お前のあの下手くそな――」
「下手くそってひどいですぅ! プリンちゃんのビューティフルソングですぅ」
 プリンは目をつり上げ、またぶわっと体を膨らませた。
 ぐぐと自分の拳に力がこもるのを感じる。だが我慢だ、我慢。この程度のことで平静をうしなうわけにはいかん。
「ビューティフルでもなんでもいいが、とにかく雑音まがいの――」
「雑音って何ですかぁ!」
「だから、聞くに堪えないお前の歌――」
「失礼すぎますぅ! プリンちゃんのゴージャスソングになんて言い草ですかぁ!」
 噛み合わないやり取り、傲慢なこの態度。
 俺の中で何かが切れる音が聞こえた気がした――我慢の限界というやつだ!
81名無しさん、君に決めた!:2007/08/28(火) 05:43:39 ID:???
「ちょ、ちょっと! 落ち着いてください、ピカチュウさん!」
 目の前の騒音風船に、電気をこめた拳で成敗しよううと飛び掛かろうとしていた俺を、ロゼリアが押さえて邪魔をする。
「は・な・せぇっ!」
「ミ、ミミロップさん、ピカチュウさんを止めるの手伝って下さいぃ!」

          ・

「――では、プクリンのようになれさえすれば、お前は練習を止めるのだな?」
 ミミロップに両腕で捕らえられ宙ぶらりんな姿勢のまま俺はプリンに云う。
「そうですぅ。やっとわかってくれましたぁ。まったく、わからずやの鼠ですぅ」
「この――ッ!」
「まあまあ……」
 修正をくわえてやろうと掴み掛かろうとする手足は虚しく空を掻く。
 先程からこんな調子でずっと続いていた話も、プリンは憧れのプクリンという存在に何とか近付くことができれば練習は止めるということで、ようやくまとまった。
 後はその方法だ。
「そうですね、せっかく練習していたんですし歌の方を何とかしませんか」
 そうロゼリアが云い出し始まったレッスンであったが――。
82名無しさん、君に決めた!:2007/08/28(火) 05:46:02 ID:???
「ダメです、まるで成長していません……。いい加減、耳が耐えられなくなってきました」
 ロゼリアのレッスンは自身の草笛を用いたそれなりに形となったものであった。だが、プリンの好き勝手に暴れ回っている不協和音達を更生させるには至らず、音感や音程達が帰ってくることはなかった。
 その後も、美しい毛並みを維持する美容への道、歪んだ性の悪さを正す精神論、楽しい散歩、おやつのじかん、他にも様々な講義を――よくわからないものまで混じっていた気がするが――試したがあまり成果は上がらなかった。

「全然、プクリンさんに近付けている気がしませんよぉ! ダメダメじゃないですかぁ。役に立たない奴らですぅ」
 これだけ何とかしようと奔走する俺達に、感謝の欠けらも無さそうにむくれ面を向けるプリン。
「ええい、まだ何が足りないというのだ! 戦闘の経験か? ならば今すぐにでも電撃を――」
「プクリンさんはそんな野蛮なことをしませんよぅ! まったくぅ。いいですかぁ、私がプクリンさんに近づくのに一番大事なのは、月の石っていう珍しい石なんですよぉ。あんたにはとてもじゃないけど手に入らないと思いますけどぉ」
「……まさか、これのことか?」
 おつきみ山でパラセクトに手渡された石を取り出し、プリンに見せる。
「あああぁっ! それですぅぅぅ!」
 プリンは元から丸い目を更に丸くする。そして、俺の手から引ったくるように石を奪い取った。
 プリンの手の中で月の石は輝きだし、それに共鳴するようにプリンの体も不思議な光に包まれる。
 ――めでたくはないがプリンがプクリンへと進化を遂げた。丸かった体は少し縦に伸びて楕円状になり、三角だった耳も兎のように長く伸びている。
83名無しさん、君に決めた!:2007/08/28(火) 05:53:35 ID:???
「これで満足か?」
 最早、怒る気力もない。全員、げんなりとしている。
「はい、一応ありがとうございますぅ。おかげでプクリンになれましたぁ」
「では、約束どおり騒音を喚き散らすのは止めよ」
「はいはい、わかってますよぉ。それに騒音じゃなくて、プクリンちゃんのゴージャスプリティソングですぅ!」
 もうこいつとかかわり合いになりたくはない。早くこの場を離れ――。
「あ、そうだぁ、この辺に住んでるならあんた達もこれを見ておいたほうがいいですよぉ。パラセクトさんに云われた従わないといけない奴らだそうですぅ」
 そう云い手渡されたのは、黄色、茶色、緑色、黒色、白色、計五匹のよくわからない不恰好な生き物の絵が書かれた木の板だ。
「……この絵を書いたのは誰だ?」
「サンドパンらしいですぅ」
「そうか……」

         ・

「おっ! ピカチュウさんじゃないか。今丁度、ここらの奴に伝え終えたところで――あれ? 何か皆さん怒ってらっしゃる? ……ねぇねぇ? 何か言ってくだ――」
 怒りの矛先はすべてサンドパンへ。

 その後、俺達は無事に三番道路を抜けた。
 おつきみ山在住の部下に負傷者一名。
84名無しさん、君に決めた!:2007/08/28(火) 08:51:10 ID:???
GJwwwwサンドパンwwwwwww
85名無しさん、君に決めた!:2007/08/29(水) 10:26:20 ID:???
ほしゅ
86名無しさん、君に決めた!:2007/08/29(水) 23:02:45 ID:???
明日にでもまた書きたいぜ
87名無しさん、君に決めた!:2007/08/31(金) 04:19:15 ID:???
 日の位置からしてそろそろ人間達も活発に動き始める時刻だ。
 トキワの森はニビシティの南。おつきみ山を目指す者などで人通りの多いと思われるニビシティの南東を避け、北側から回り込むように南西に抜けることにした。
 それにしても――ここは三年経ってもあまり変わらぬ町並みだ。おつきみ山の変化を見て、どうなっていることかと思っていたが。相変わらず大きな建物は少なく、ヤマブキシティのようにびっしり所狭しと軒を連ねてはいない。
 まあ、その方が人間が比較的少ないということで俺達にとっては都合がいいのだが。

 ニビシティ北の林の中を進んでいると、不意にマントの裾をくいと引っ張られる。なんだ、という言葉と共に肩越しに振り返ると、アブソルが興味深そうに前足でニビシティの方を指し示す。
「あれ、なぁに?」
 示された方角を見やると、十メートルくらい離れた先に青いビニールシートがかけられた大きな建物が見える。あの辺りは確か博物館か何かがあったはず。周りに資材のような物が置かれていることから、改装工事か何かをしているのだろうか。
「人間が自分の巣を作り替えているのだ。危ないから近寄るんじゃないぞ」
 アブソルはふーん、と答えた後、再び博物館の方を前足で示した。
「でも既にあの子、近寄ってるけど……」
 その先ではムウマージが、工事現場の脇に乱雑に積まれたがらくたの山らしき物を何やらごそごそやっていた。
「何をやっている! 早く戻ってこい」
 俺がそう叫ぶとムウマージはこちらを向き、いつもの気の抜けた返事をして道具袋を隠し持ったスカートの辺りをごそごそしながら戻ってくる。
 どうやらまた何かくだらない物を拾ってきたらしい。ムウマージのおかげで道具袋の中はいつもがらくたばかりだ。ビーダマにおはじき、手の取れかけたような人形、他にも様々ながらくたが沢山。有益な物は本当に少ない。
「きらきらつるつるしてて、うすいちゃいろでとうめいな、いしみたいなのひろったー。まんなかにちっちゃいむしがはいってるんだよー」
 ほくほく顔でムウマージは戦利品を語る。だが、どうせいつものように大した物ではないだろう。
 さあ、早くニビシティを抜け、トキワの森へ向かうとしよう。
88名無しさん、君に決めた!:2007/08/31(金) 07:07:17 ID:???
GJ!
89名無しさん、君に決めた!:2007/08/31(金) 07:09:04 ID:???
GJ!!
90名無しさん、君に決めた!:2007/08/31(金) 21:58:43 ID:???

突然ですが、次の八単語の中から、ひとつを自由に選んでみて下さい。

消費税、収穫、葬式、アルミ、筆、お箸、数珠、半紙

選びましたか?
では今度は、その単語と関係あると思うものを、次の八単語から選んで下さい。

体育館、一円玉、グラタン、米、牛乳パック、墨汁、砂漠、喪服

はい、ありがとう御座居ます。選んだそれを強くイメージしてから、次に進みましょう。
そのものの特徴を、次の八つの中から選んで下さい。

赤い、長い、小さい、明るい、広い、黒い、鋭い、速い

それでは最後に、その特徴に当てはまるものを次の八つの中から選んで下さい。

シマウマ、錦鯉、ヒマワリ、アリ、イルカ、柴犬、モミの木、カマキリ

選びましたか?
この仕組みを「魔術師の選択」といいます。
他にもやり方は色々あるららしいのですが、偶然や不思議な力による現象に見えても、実は仕組まれた出来事ということが世の中には沢山あるのです。


あなたが選んだものはアリですね?

91名無しさん、君に決めた!:2007/08/31(金) 23:35:55 ID:???


体育館(消防の頃の書き初め)
92名無しさん、君に決めた!:2007/08/31(金) 23:37:47 ID:???


体育館(消防の頃の書き初め大会)

速い(クラスにバスケで滅茶苦茶速いやつがいた)

イルカ(泳ぐの速い)
93名無しさん、君に決めた!:2007/09/01(土) 00:28:05 ID:???
さて、明日にでもまた続き書こうかな
94名無しさん、君に決めた!:2007/09/02(日) 00:53:28 ID:???
ごめんなさい、事情により今日はダメでしたorz
明日の深夜3〜4頃になります……
95名無しさん、君に決めた!:2007/09/02(日) 23:47:25 ID:???
丸1日で結構落ちるな
96名無しさん、君に決めた!:2007/09/03(月) 04:45:11 ID:???
 町を外れ、この藪の先――ここを抜ければすぐにトキワの森がある。
 焼けた森が頭をよぎる。変わり果てたあの姿が。ぶすぶすと何かが燃える音と焦げた臭いの記憶が――この草をあと一掻きでトキワの森は目の前だというのに、まるで鉄の扉のように立ちふさがる。
 所詮、トキワの森など、故郷など、最も長く過ごした場所というだけでしかない。それだけだ。何ら愛着など無いはず。
 ……だが、駄目だ。いくら自らに言い訳をしようと、やはりあのような惨状はもう見たくはない。今、トキワの森がどうなっているのか――まだあの無残に焼かれたままなのか――確かめるのは躊躇する。
 草をつかんだまま動かせないままでいる俺の手の横に、すっと背後からのばされた茶色の手が添えられる。
「なーにやってんのよ。しっかりしなさい。あ、もしかして怖いの?」
 怖い? 俺が怖がるだと? ……ふん、何を馬鹿な!
 添えられた手を撥ね除け、草を強く握りなおす。
「ふん、少し考え事をしていただけだ。俺が恐れるわけなかろう。さっさと行くぞ!」
「そうそう、それでいいの。私達がいるんだから大丈夫、大丈夫。どーんと構えてなさい」
 ぽん、と背中を叩かれ、ぴり、と弱い電気で返した。
 一気に草のカーテンをこじ開けた先は――。
 緑だ。まだ弱々しくはあるが、そこは緑でおおわれていた。
 昔に比べ随分と規模は小さくなってしまったが……青々とした若い木達が集い、活気のようなものが満ちている。
97名無しさん、君に決めた!:2007/09/03(月) 04:47:18 ID:???

「この森ってたしか焼けたはずじゃあ……。不思議ですねえ」
 ロゼリアはぽかんとして木々を見渡す。
 確かにたった三年でここまで自然に治癒するものだろうか。記憶がどう改変されているか定かではないが、少なくともあの時から三年経っているという自覚は無いはずのミミロップ達は余計異常に思うであろう。
 深く考える暇もなく、何か大きな物体が空を切るような高い音を耳がとらえる。
 それは空から。見上げると青い空に黒い点が一つ。音と共に点は徐々に大きくなり、それが青く光る鉄のような物体であることがわかった。
 ミミロップ達はまた何かの襲撃かと騒ぐ。いや――あれは恐らく……少々、大きくなってはいるが――。
 物体は木の背より少し高い高度で一気に速度を緩め、ふわふわと俺達の前へ降りてきた。
 円盤のような部位と、四本の腕のような部位だけで形成された無機質な青く輝く鋼の体。飛行時に頭上に折り畳んだ腕を脚のように展開し、重量感ある音と共に地上へ着いた。
 がしゃがしゃと機械的な動きで、全体的に蜘蛛か蟹のようなフォルムをしたその物体はこちらに顔と思われるものを向ける。顔面にはバツ字にクロスした銀色の鉄がはめ込まれ、そのバツ字を挟んで左右二つある暗い空洞には赤い目が輝く。
 キュイン、とカメラがズームするような音を立てて俺達を赤い目で数秒見回した後、体の下部を開いた。どうやら口のようだ。
「――ぴかちゅう及ビソノ従者ト確認。フウム、驚イタ。めいんかめらニヨル分析ヲ行イ、過去ノでーたト照合シタガ、殆ド変ワッテイナイトハ」
98名無しさん、君に決めた!:2007/09/03(月) 07:14:21 ID:???
テラGJ!
99名無しさん、君に決めた!:2007/09/03(月) 17:56:57 ID:???
元メタングキター
GJ
100名無しさん、君に決めた!:2007/09/04(火) 12:27:05 ID:???
明日にでもまた続きを書きたいです
101名無しさん、君に決めた!:2007/09/04(火) 18:31:57 ID:???
お願いします。
102名無しさん、君に決めた!:2007/09/06(木) 03:45:14 ID:???
 かつてのメタングはメタグロスへと進化を遂げており、パラセクトの言っていた通りディグタの穴とその周辺を管理していた。
 メタグロスにディグダの穴へと案内され、互いに積もる話を――と言ってもこちらが用意しなければならないのは、適当なフォローを交えた作り話なのだが――をする事となった。
 脚を畳んで浮遊し先を進むメタグロスの背を追いながら、ディグダの穴の内部を見回してみたが、三年前と特に変わった様子はない。メタグロスによる機械的な管理の賜物であろうか。
 以前に俺達が一応の拠点として利用していた横穴へ通された。
 ここも三年の歳月が経っているのが信じられないほど変化が無かった。ただ部屋の隅に何かの機材と工具が増えているだけだ。メタグロスが自らを整備するためのものなのだろう。

      ・

 一通りの話を聞いたが、殆んどはパラセクトの話と同内容であった。三年前に俺達がシルフビルから姿を消した後、ディグダの穴を任された、と。
 トキワの森の再生について俺は尋ねてみた。たった三年で自然にあそこまで回復するなど、まずありえない話だ。
「ウム。コノ記録ハ、約二年ト数カ月程前ノモノダ――」
103名無しさん、君に決めた!:2007/09/06(木) 03:47:17 ID:???

 メタグロスがディグダの穴周辺の管理に着任した時は、まだトキワの森は焼き払われた無残な姿のままであった。
 人間達にも森を復興させる意志がある者はいたようだが、訪れる人員は少なく中々作業は進んではいなかったそうだ。恐らくその人間達の管理者が資金を出し渋っていたのではないかとメタグロスは云う。
 それが二年程前、突如として変わった。
 今まで、被害の規模に比べ明らかに足りない人数が数日に一度復興作業に訪れるくらいであったのが、ある日から急に十二分な数に膨れ上がり、それも毎日のように訪れるようになったという。
 作業はあっという間に進み、現在も植林が続けられているらしい。トキワの森が昔の姿を取り戻すのもそう遠くはなさそうだ。
 急に復興にあたる人員が増えたのは、ポケモンリーグによる多大な援助が行われたからだという。
 三年前にチャンピオンの座に就き、現在もその座を守っている者の意向という噂だそうだ。リーグという組織の中でもかなり上の立場に上り詰めているらしい。
 また例のチャンピオンか……。一体、どのような者なのだろう。人間だというのに何故ここまで――。
104名無しさん、君に決めた!:2007/09/06(木) 07:48:40 ID:???
GJ!
105名無しさん、君に決めた!:2007/09/07(金) 19:41:20 ID:???
明日、続き書けたら書きたいんだぜ
106紫水晶:2007/09/08(土) 16:40:41 ID:CkiXTM6a
おもしろいですね!!
まとめたところでこの小説を見ましたが、とてもリレー小説とは思えないほど面白いです!!
これからちょくちょく顔を出すかもしれませんがよろしくお願いします。
私は、ムウマージが好きです!
107名無しさん、君に決めた!:2007/09/08(土) 17:33:32 ID:???
>>106
コテは死ね
あとsageろ
108名無しさん、君に決めた!:2007/09/08(土) 21:50:36 ID:???
>>106二度と来るな
109名無しさん、君に決めた!:2007/09/08(土) 23:02:02 ID:???
お前ら言いすぎですよ
>>106
スレを上げないようにメール欄に半角小文字でsagdと入れる
固定ハンドルネームは嫌われる風潮があるため、名前欄は未入力のままにする
できないorよくわからない場合は周りの空気を荒れさせないために書き込まないほうが無難です
半年間は何も書き込まず、見ているだけのROMに撤しましょう
110名無しさん、君に決めた!:2007/09/08(土) 23:09:34 ID:???
>>109
>スレを上げないようにメール欄に半角小文字でsagdと入れる
さりげに間違えてるぞw

正しくは「sage」(メール欄に半角小文字)
111名無しさん、君に決めた!:2007/09/09(日) 02:21:12 ID:???
ごめん、今日はちょっと無理だた
明日のいつもの時間になります…orz
112名無しさん、君に決めた!:2007/09/10(月) 04:43:00 ID:???
「コレカラノ予定ハドウスルノダ。ココデ休息シテ行クカ?」
 まだ日も高い。進める内に進んでおきたい。
「いや、今はいらん。すぐに発つ」
 これからニャースの様子を見に行く。そうメタグロスに伝えると、俺達はクチバシティ側の出入口へと案内された。
 ニャースが現在いる場所は、今の時間帯ならばクチバシティの北――六番道路を少し東に外れた森の辺りだそうだ。
「恐ラク、ドウセマタ木ノ上デ昼寝デモシテイルコトダロウ」
 メタグロスはため息のようなノイズを混じらせ、そう呟いた。

      ・


「それでは任せたぞ」
「ウム、了解シタ」
 メタグロスに今まで通り一帯の管理を任せ、俺達は別れを告げる。
「ム、少シ待テ」
 出口へ向かおうとしていた俺達を、メタグロスは唐突に呼び止めた。
 振り向くと、ムウマージがずっと持って眺めている透明な薄茶色の石を、メタグロスは興味深そうに見つめている。
 メタグロスの視線に気付き、ムウマージはさっと背の方に石を隠した。
「これムウマージのだもーん。あげないよー」
 ぷいっと顔をそらし、ムウマージはメタグロスから遠ざかる。
「欲シテイルワケデハナイ。ソレハ琥珀デハナイカ? 気ニナルコトガアル。少シノ間、ジックリ見セテホシイダケナノダガ」
 そう云い、メタグロスはこちらにちらりと目配せする。
113名無しさん、君に決めた!:2007/09/10(月) 04:46:10 ID:???
「ムウマージ、見せてやれ」
 ムウマージは不満そうな声を上げながら渋々メタグロスに石を渡す。
 渡された石をメタグロスは銀色の爪先で慎重に掴み、赤い目で穴が開きそうなほど見つめはじめた。キュインキュインと絶え間なくズーム音のようなものをたてている。
「ウム、コレハ琥珀ニ間違イナイナ。気ニナッテイタノハコノ中央ニ入ッテイル、コノ吸血性ノ小サナ昆虫。ドウヤラ何ラカノ生物ノ血液ガ未消化ノママ固マッタヨウダ。分析カラ導キダシタ年代カラシテ古代生物ノモノデアルコトハ間違イナイ」
 もういいぞ、とメタグロスは琥珀をムウマージに差し出す。飛び付くようにムウマージは琥珀を奪い返し、道具袋の中にごそごそと隠した。
「グレン島ニハ化石ナドカラ古代生物ヲ復元サセル研究ヲ行ッテイル施設ガアルト聞ク。ソノ琥珀カラモ何カヲ蘇ラセルコトガデキルカモシレンナ」
 グレン島か。あのような小さな虫に残された血液から生き物を復元できるなど、どうにも信じられん怪しい話だが……。一応、覚えておくとしよう。
 どうやって人間の目を盗んで復元をするのか、果たしてその時までにムウマージは琥珀に飽きているのか――色々と問題はあるがそれはその時に考えるか。
 とりあえず今はニャースが先だ。
114名無しさん、君に決めた!:2007/09/10(月) 06:10:48 ID:???
GJ!!
115名無しさん、君に決めた!:2007/09/11(火) 17:56:25 ID:???
明日また書けたら書きたいんだぜ
116名無しさん、君に決めた!:2007/09/13(木) 04:08:56 ID:???
 ディグダの穴を抜けると、そこはクチバシティの東の外れ。潮の匂いが鼻をくすぐる。
 クチバシティはカントー地方の海の玄関といえる大きな港町だ。町は活気に溢れ、別の地方から訪れた外来の者達やこれから旅立つであろう人間達で常に賑わっている。
 当然、そんな町中をこんな昼下がりから俺達が通るわけには行かない。クチバシティ東の十一番道路を経由し、そこから北西へ抜けて目的地であるクチバシティの北――六番道路方面に向かうとしよう。
 海見たかったな、としゅんとするアブソルをなだめながらクチバシティを後にした。

 この東にのびる十一番道路という道は、非常に不可解な造りをしている。舗装された道はぐねぐねと迷路のように数本のび、その交錯する道の合間に草むらが点々と存在しているのだ。
 どうせならば真っすぐに舗装すれば良かろうに。人間は何を考えてこんな訳のわからない道にしたのだろうか。相当頭や性格がねじ曲がった者が設計を担当したに違いない。
 東の先、十二番道路に今は用は無い。この辺りは修業に励むトレーナーも多いと聞く。長居は無用、早く北西に抜けて六番道路を目指すとしよう。
 しかし、六番道路東の森辺りという大まかな情報で、はたしてニャースを見つけられるのだろうか……。今更ながら気付く。
 ニャースが確実に戻ってくる拠点がわかればいいのだが、住みかはヤマブキ周辺を気まぐれに転々としているようで、メタグロスもはっきりとした位置はわからないようであった。
 うーむ、こんなことミミロップ達には言えんな……。どうするか――。
117名無しさん、君に決めた!:2007/09/13(木) 07:15:14 ID:???
神キタコレ
118名無しさん、君に決めた!:2007/09/13(木) 07:21:19 ID:???
GJ!
119名無しさん、君に決めた!:2007/09/14(金) 13:22:06 ID:???
明日続き書けたらかきたいんだぜ
120名無しさん、君に決めた!:2007/09/16(日) 01:32:35 ID:???
ごめんなさい、今日は駄目でしたorz
明日になります…
121名無しさん、君に決めた!:2007/09/16(日) 14:05:53 ID:???
保守
122名無しさん、君に決めた!:2007/09/17(月) 03:26:12 ID:???
 道なき道をひたすら北西を目指し進んでいく。この辺りには人間が滅多に来ないため安心はできるのだが、俺の顔をちくちくと的確に突くに丁度いい高さの雑草たちが非常に欝陶しい。
 そろそろ六番道路辺りには来れただろうか。これまでの道程でそれらしき姿を見かけることは無かった。見かけたといえばせいぜいオニスズメやポッポ等が頭上を飛び去ったくらいだ。
 ニャースの位置情報は今いるこの辺りだろうという不確かなもの。当てもなくあちらこちらを探り歩むが一向に見つかる気配は無い。木々の葉の合間から覗く空は少しずつ赤みを増している。
 ねぇ、と俺の背にミミロップの声がかかった。
「ちゃんと居場所はわかってるのよね? まさか適当に進んでるんじゃないでしょうね」
 はっきり言って図星である。痛い所を突かれ何も答えられず、振り返りもせずに俺は黙ってどんどん進む。
 きっと図星だったのよあれ、また深く考えもせずに突き進んだんですね、まぬけー、もしかして迷子なの? ――顔には雑草、背中には雑音がちくちくと刺さる。
 なんだか出発の時は自信満々で格好つけてたわよね、実際は何の根拠もなかったんですね、まぬけー、もしかして本当に迷子なの? ――うぐぐ……我慢の限界だ!
 目の前の雑草を思いきり払いのけ、大きく息を吸いながら振り返る。
「ええい、うるさい! 静かにし――」
 ――ふぎゃあッ!
 俺の怒鳴り声に反応するように、すぐ横の樹上から驚きが混じった叫び声が上がる。そして何かがその樹から落下し、どさりと音を立てた。
123名無しさん、君に決めた!:2007/09/17(月) 08:32:50 ID:???
GJ!
124名無しさん、君に決めた!:2007/09/18(火) 02:25:48 ID:???
GJJJJJ!!
125名無しさん、君に決めた!:2007/09/18(火) 17:58:34 ID:???
明日また書けたら書きたいんだぜ
126名無しさん、君に決めた!:2007/09/20(木) 03:42:42 ID:???
 樹の上から突然落下してきた“それ”は、前足で頭をさすりながら体をゆっくりと起こした。しなやかさの中に強靱さを秘めたその体躯は敏捷な肉食獣を思わせる。
「いたた……ビックリしたニャー。突然大声出さないでほしいのニャ」
 ぶつぶつと文句を言いながらこちらに体を向け、呆気に取られている俺達を縦に細長い瞳の目でじとりと一睨みした。
 この展開は前にも覚えがある。とぼけた様子、樹の上で眠る癖――姿形は少々変わってはいるが間違いないだろう、あのニャースだ。
 あの頭でっかちだった体がよくもまあここまで変わるものだ。額には小判の代わりに宝石のようなものが一つ輝いている。
「久しいな、ニャース」
「んー? あんたら何て知らないのニャー。それにボクはペルシアンだニャー。あー、落っこちてぶつけたところが痛い痛いのニャー」
 素知らぬ風にニャース――ペルシアンはぺろぺろと前足で顔を洗い、白い毛並みを整え始めた。先っぽがくるりと巻いた長い尾を馬鹿にしたようにふらふら振っている。
 どうやら三年前と同じように“あれ”を食らいたいようだ。
「それならば仕方がない、我が電撃を用いたショック療法にて思い出させてくれよう」
 電流がほとばしる音を聞き、ペルシアンはびくりとしてこちらに向き直った。
「じょ、冗談だニャ。久しぶりだニャー、ピカチュウサマ。ボクの所に来ようとしてたのは知ってたニャ。何だか随分とうろうろ迷ってたみたいだニャー?」
 ……? 何故、俺達が迷っていたことまで知っている。
127名無しさん、君に決めた!:2007/09/20(木) 07:16:10 ID:???
GJ!
128名無しさん、君に決めた!:2007/09/21(金) 12:23:12 ID:???
明日また書けたら書きたいです
129名無しさん、君に決めた!:2007/09/23(日) 03:22:44 ID:???
「……ずっと見ていたのか?」
「その通り。ボクの目達がばっちりとニャー」
 そう含みを持たせように言い、ペルシアンは左の口端をにやっと上げた。
 どういうことであろうか。道中にずっとつけられているような気配は感じなかった。
 それに、低木や背の低い雑草しかない平原ならともかく、背の高い木々や草が鬱蒼と生い茂る見通しの悪い森の中で遠くの様子を伺うなど不可能なはず。
 俺達が来ようとしていた事を事前に知っていた風なのも不可解だ。俺達が六番道路に向かおうとしていたのを知っているのはメタグロスだけのはず。
 俺達がディグダの穴を出た後ペルシアンがたまたま訪れ、話を聞いて先回りしていたとは考えにくい。
「気付かなかったかニャー? ボクの目達はずっとあんたらを見てたんだけどニャー」
 考え込む俺を見、ペルシアンは得意げににやにやと笑む。
 見かけたものなど精々、小型の鳥ポケモン達が俺達の頭上を数回ほど飛び去っていったくらい……――!
「その感じだと何となくわかったかニャー? そろそろ一斉報告の時間だニャ……。紹介するニャ――」
 そう言うとペルシアンは深く息を吸い、地に四肢をしっかりと構え、思いきり大きな鳴き声を上げた。
 ガサガサと森の木の葉達がここを包囲するかのように一斉にさざめき始め、無数に重なった羽音がそこら中から集まってくる。
 木の葉と羽音の大合唱が収まる頃には、森中を埋め尽くしているのではないかと思ってしまうほどに、木という木の枝という枝に鳥ポケモン達がずらりと並んでいた。
「これがボクの――カントー一番の情報通、ペルシアンの目達だニャー」
130名無しさん、君に決めた!:2007/09/23(日) 03:28:04 ID:???
×様子を伺うなど
○様子を窺うなど

やっちまったorz
131名無しさん、君に決めた!:2007/09/23(日) 04:56:09 ID:???
GJ!!
ニャース..もとい、ペルシアンSUGEEE!
132名無しさん、君に決めた!:2007/09/23(日) 12:57:55 ID:???
GJ!
133名無しさん、君に決めた!:2007/09/24(月) 17:17:51 ID:???
明日また続き書けたら書きたいんだぜ
134名無しさん、君に決めた!:2007/09/25(火) 17:58:33 ID:???
できればニャースはニャースのままでいて欲しかった・・・

そんな事よりGJ!!
135名無しさん、君に決めた!:2007/09/26(水) 01:48:26 ID:???
ごめんなさい、今日は駄目でした…明日になります
136名無しさん、君に決めた!:2007/09/26(水) 18:21:32 ID:???
浮上
ピカチュウは総ての御利用が計画的だよね
138名無しさん、君に決めた!:2007/09/27(木) 04:10:04 ID:???
 その数に圧倒され、俺もミミロップ達も唖然呆然とし木々を見回す。
 ポッポにオニスズメにピジョン、色々な種類の鳥ポケモン達が、枝の上から俺達を見ている。
 こちらを指――もとい羽先で指して小声でクスクス笑い合っている者達や、鋭い猛禽の爪をギラつかせながら俺やロゼリアを見つめて舌なめずりしている輩など、態度も様々だ。
「あんたらへのオモテナシはちょっと待ってほしいニャー。先に鳥達の報告を聞かせてもらうのニャ」
 ゴホン、とペルシアンは咳払いをする。鳥達は静まり一斉にペルシアンへと目を向けた。
「既に知ってる奴もいると思うけど、このヒトらが例のピカチュウサマたちニャー。鳥頭には厳しいと思うけどちゃんと覚えておいたほうがいいニャ。じゃ、いつもの始めるニャー」
 ペルシアンがそう言うと、鳥達はいっぺんに口を開き、ぴーぴーと騒ぎだした。一つ一つが何かの報告のようだが、無数に重なり合いとてもじゃないが聞き取れたものではない。
 目を閉じ、縁の部分だけ黒い耳をぴくぴくと忙しなく動かしながら、ペルシアンはそれを聞き入る。このような状態でちゃんと認識できているのだろうか?

 数分程で鳥達の声は止み、ペルシアンはゆっくりと目を開けた。
「ふむふむ、ご苦労さんだニャ。そっちは特に現状変わらずのようだニャ。そこはそのまま様子を見ておくニャ。……お前ら、そんな細目顔のナンパ失敗の様子なんていちいち毎回報告しなくていいのニャー。そっちは――」
 てきぱきとペルシアンは鳥達に一つずつ指示を出していく。
 信じられんが、どうやらあの複雑に混じった言葉の波一つ一つをちゃんと聞き取り、理解しているようだ。
139名無しさん、君に決めた!:2007/09/27(木) 07:06:56 ID:???
聖徳太子キタコレ
140名無しさん、君に決めた!:2007/09/28(金) 14:09:59 ID:???
明日書けたら書くぜ
141名無しさん、君に決めた!:2007/09/29(土) 19:05:03 ID:6P78vJ5Z
ほしゅ
142名無しさん、君に決めた!:2007/09/29(土) 22:43:28 ID:???
とりあえず保守
143名無しさん、君に決めた!:2007/09/29(土) 23:28:31 ID:???
ほしゅ
144名無しさん、君に決めた!:2007/09/30(日) 03:34:25 ID:???
ごめん、今日はダメでした…
145名無しさん、君に決めた!:2007/10/01(月) 04:53:16 ID:???
「じゃ、解散ニャー」
 ペルシアンの一声で鳥達は四方八方に散っていく。
「よく利く耳だ。いつもあのような調子なのか」
「まあニャ。ちょっとしたコツは有るけど――」
 コツ? ――俺がそう聞き返す前にペルシアンの六本ひげがぴくりと何かに反応したように動く。
 その直後に横の草むらが小さく揺れ、ペルシアンはそこに向かって勢い良く飛び掛かった。
 ぢゅっ、と揺れた草むらから短い悲鳴が響く。ペルシアンは何かをくわえたままこちらに振り向き、それを地へと叩きつけて前足で押さえ付けた。
 足の下で必死にもがいているのはコラッタ。長い前歯が目立つ紫色の小さなネズミポケモンだ。
「時々、こういうボクの所に集まる情報を狙ってタダで盗み聞きしようとする“鼠”がいるのニャー。今回は文字通りのネズミだったニャ……」
 ピュィーッ、と長く高い音でペルシアンは口笛を鳴らした。一分もしない内に大きな羽音とともにピジョンが現れ、ペルシアンはコラッタをくわえて高く宙に放り出す。
 ピジョンは滑空しながら投げ渡されたコラッタを両足でしっかりと捕らえ、ペルシアンの上空を一礼するように旋回した後、飛びさっていった。
「給料って奴ニャ。あの後にコラッタがどうなるかは考えない方がいいニャー。自然界はキビシーのニャ」
 ……その方が良さそうだ。
146名無しさん、君に決めた!:2007/10/01(月) 04:55:36 ID:???
「そうそう、コツの話だったニャー。ああいう鼠がたまに居るから、盗み聞きされても分かりにくいようにこっちも工夫してるのニャ――」
 ペルシアンの語った絡繰りはこうだ。
 鳥達はいつも十数羽で構成された四つの決まったグループで行動させている。集めた鳥達の情報をまとめ、ペルシアンに伝えるのはそのグループの一羽だけ。後は全員でわざと一斉にデタラメを適当に言わせているそうだ。
 グループ中の決められた数羽でそのまとめ役は日替わり。ちょっとした暗号で明日の担当を伝えているため、ペルシアン達にしかその役が誰かはわからない。
 コツはその決まった四羽だけに集中して耳を向けていればいいのだという。それでも相当難しいと思うのだが。
「ま、コツを教えてもフツーの耳では難しいと思うニャ。こんなことができるようになったのも、三年前のあの時から何故だか何しても調子がいいおかげかニャー」
 そういえば、パラセクトもそのような事を言っていたと思い出す。
 現ペルシアン達が三年前にシルフビルに来ていたことは俺は直接見ていないためわからなかったが、そこで一体こいつらの身に何があったのか――真っ先に浮かんだのはミロカロスの顔だった。
 三年前にこいつらを何かに利用したのだな――今となってはどういう風に使われたのか知る由もないが。“ツキ”が良くなったのは何らかの干渉の残留物、副作用と云った所か。
 こいつらも気の毒に――。散々に利用された身としては同情を禁じ得ない。
147名無しさん、君に決めた!:2007/10/01(月) 07:18:08 ID:???
GJ!!
148名無しさん、君に決めた!:2007/10/02(火) 17:02:28 ID:???
明日また書けたら書きたいです…
149名無しさん、君に決めた!:2007/10/03(水) 19:44:06 ID:???
GJ!! できればストーリーの展開をもっと早くして欲しいな。



贅沢言ってすいませんでした。どうかおゆるしください。
150名無しさん、君に決めた!:2007/10/04(木) 05:40:36 ID:???
 さて、ペルシアンとの間に交わされた俺達が消えた後の三年間の話であるが、先の二匹と同様なものであった。
 カントー中の情報に精通している分、誤魔化すのは更に難しかったとだけ付け加えておく。だが、それもこいつで最後だ。心持ちが軽くなった分、積もる疲労も少ない。

「これから、あんたらはどうするんだニャー?」
 指針としていたカントー勢の安否の確認はできた。ディグダのみわからないが、所在がペルシアンにさえわからないというのだから諦める他無い。
 きっと恐れをなして逃げ出したんだ、とペルシアンは言う。真偽の程はわからぬが、知った顔とはいえ所詮はディグダの穴に大勢いる内の一匹だ。冷たいようだが代わりがいくらでも居る者にかまけている暇は無い。
 様々な事があったが、今まで通りの勢力を広ぐ旅へとこれでようやく戻れるというわけだ。
 これからのとりあえずの目的地はどうするか決めておかねばなるまい。そこでムウマージの拾った琥珀の事を思い出す。
「古代生物を蘇らせる研究を行っているという施設をお前は知っているか?」
「とーぜんだニャ。グレン島にあるポケモン研究所のことだニャー? そんな海の向こうにわざわざ用があるのかニャ」
「ああ、そうだ。何か方法は無いか」
151名無しさん、君に決めた!:2007/10/04(木) 05:42:30 ID:???
「んー……鳥に送らせる事ができれば一番良いんだろうけど、それはちょっとニャー……」
 そう云い、ペルシアンは顔を曇らせ渋る。
「何か問題があるのか?」
「前にあの辺りに送り込んだ鳥達が、行方不明になったんだニャ。生き残りの話によるとグレン島からの帰り、双子島近くを通りかかっていた頃だったらしいニャー――」
 ――その時、鳥達は突然の猛吹雪に襲われたそうだ。季節は夏への差し掛かり。有りうる筈の無い天候。
 逃げる間もなく、襲いくる白く冷酷な氷雪の嵐に飲まれ、仲間達は次々と凍てつき墜ちていく。
 唯一の生き残りであるポッポは、リーダーであったピジョットが自らが凍てついていく中で最後に振り絞った力で吹雪の外へと吹き飛ばされ、難を逃れたという。
「ってわけでそれ以来、あっち方面には誰も行きたがらないし、行かせて無いのニャー。だから空から行くのは諦めて――」
「待ってくれないか、ペルシアン」
 樹上より突然、何者かの声がかかる。俺達が一斉に見上げると、そこには先程コラッタを連れていった筈のピジョンがいつの間にか枝に止まっていた。
「……こいつがその生き残りのポッポだった奴ニャ。――何のようだニャ?」
「何か気になるところがあって戻ってみれば――これが運命って奴だな。悪いとは思ったが話を聞かせてもらった。そいつらの空輸、この俺が引き受ける」
152名無しさん、君に決めた!:2007/10/04(木) 07:08:57 ID:???
乙!
153名無しさん、君に決めた!:2007/10/04(木) 07:10:54 ID:???
GJ!
いよいよグレンか
154名無しさん、君に決めた!:2007/10/05(金) 12:50:13 ID:???
明日続き書けたら書きたいぜ
155名無しさん、君に決めた!:2007/10/07(日) 06:22:53 ID:???
 これは願ってもない話だが――。
「でもどうするんだニャ。お前だけで運ぶのは無理だと思うけどニャー。図体がでかくて重そうなのが二匹も居るしニャ」
 ペルシアンはミミロップとアブソルの方を横目で見ながら尾で指した。むっとした表情を浮かべるミミロップと、申し訳なさそうに少し顔を俯かせるアブソル。
「……何とか仲間を説得してみるつもりだ」
「ほーお、はたして何羽集まってくれるのかニャー? あの辺は誰も行きたがらないのはお前も知っているはずだニャ。良くて三、四羽、とてもじゃないけど全員運ぶのは無理ニャ」
 やれやれといった仕草で尾と前足をペルシアンはひらひらさせる。
 ぐ、と言葉を詰まらせ、ピジョンは觜をもごもごさせた。
 見ていられんな。仕方ない、助け船を出せねばなるまい。
「俺とムウマージならば自力で飛行可能だ。ロゼリアくらいならば我らで運べよう」
 どうやって――と口を開きかけるペルシアンに、俺は頬袋から風船を取り出し膨らませて見せた。
 ムウマージの方は説明不要であろう。今も椅子に寄り掛かるような姿勢で暇そうに宙をたゆたっている。
 むむ、と今度はペルシアンが言葉を無くし、口をつぐんだ。
「助かった、これなら少数でも何とかなりそうだ」
156名無しさん、君に決めた!:2007/10/07(日) 06:28:29 ID:???
「あーもう、勝手にするニャー。また謎の吹雪に襲われてもボクは知らないのニャー」
 ペルシアンはそう言い捨てて俺達に背を向け、ぶつくさ呟きながらどこぞへと去っていった。
「……いいのか?」
「ああ。……ところでピカチュウ。俺の翼を貸す代わりに一つ頼みがある」
「頼み?」
 そう聞き返すとピジョンはこくりと頷く。そして声を潜めながら切り出した。
「グレン島に行く前に双子島に寄らせてほしい」
 双子島に何を、と言い切る前に、しっとピジョンが羽先でジェスチャーする。
「もうちょっと声を落としてくれ。ペルシアンには聞かれたくないんだ。あいつはああ見えて意外と仲間思いだ。もし知られたら、俺を縛り付けてでも止めようとする」
「……それで、理由は」
「ああ、例の吹雪の話は聞いたな? もう一年以上前になるか。あの時、俺は見たんだ。吹雪の中、大きな鳥の影のようなものが双子島へと降りていくのを」
 ピジョンは顔を歪め、觜を強く噛み合わせた。
「吹雪の隙間に、ちらりと奴の姿を見た。青白く輝く羽、その姿は綺麗だった。おぞましい程に。直感したよ。この吹雪は奴が起こしているものだとな。
 その直後に奴の足爪に掴まれた氷塊と化した仲間に気付き、それは確信に変わった。
 俺は奴に復讐をしたい。俺を逃がしてくれたピジョットさんと仲間達のためにも。そして――……いや、それが理由だ」
 やはり無賃乗降とはいかぬようだ。
「いいだろう」
「感謝する。今はもう飛ぶには暗い。俺も仲間を説得しなきゃならん。俺の巣がある木に寝床に丁度良い“うろ”がある。今日はそこに泊まるといい。明日の朝、出発しよう」
157名無しさん、君に決めた!:2007/10/07(日) 07:21:33 ID:???
GJ!!
158名無しさん、君に決めた!:2007/10/07(日) 14:34:04 ID:???
テラGJ!
159名無しさん、君に決めた!:2007/10/08(月) 13:47:02 ID:???
また明日、続き書けたら書きたいんだぜ
160名無しさん、君に決めた!:2007/10/10(水) 01:48:05 ID:???
今日はダメだったんだぜ…
明日になりますorz
161名無しさん、君に決めた!:2007/10/10(水) 19:29:46 ID:???
保守
162名無しさん、君に決めた!:2007/10/11(木) 05:54:26 ID:???


「――起きてくれ、朝だ」
 外より目覚めを促す声が響く。
 頭の辺りを雑にさすりながら、ゆっくり上体を起こした。ぽっかりと開いた丸窓のような入り口から差し込む光は弱く、薄暗さを感じさせる。
「早めに出発したいんだ。準備を急いでくれ」
 羽音と共にピジョンは入り口から顔を覗かせる。眠い頭から何とかひねり出そうとした俺の返事を聞かぬまま、ピジョンは顔を引っ込めて早すぎるモーニングコールの次の犠牲者がいると思われる場所へと向かっていった。
 朝に出発するとは言っていたが、まさかまだ日も思うように昇らぬ内に起こされるとは。鳥の朝は早いということだろうか。
 余所から響いてくる短い觜から飛ぶよく通る声を聞きながら、敷き布団にしていたマントを気だるく拾い上げた。
 汚れを払い落としてからそれを着込んだ後、入り口から顔を出して外の様子を窺うと、それぞれの“うろ”から眠そうにぞろぞろと這い出して木のもとへと下りていく影が見える。俺も追うようにして木を下りた。
「これで全員集まったな」
 木の下で待っていたピジョンは俺と目を擦りながらぶつくさ文句をもらすミミロップ達を見回す。後ろには数羽のポッポを引き連れていた。
「ああ。……集まった鳥はそれだけなのか?」
 俺がそう言うと、ピジョンは申し訳なさそうに赤い羽毛の生えた頭をさっと撫でる。
「ああ、すまない。ペルシアンの言っていたとおり、多くは集めることはできなかった。それでも何とか八羽が協力してくれた。ぎりぎりだが、何とかしてみせる」
163名無しさん、君に決めた!:2007/10/11(木) 05:57:04 ID:???
「では、出発しよう」
 ミミロップとアブソルは、用意された蔓や木などで編まれた簡素ながら頑丈そうな二つの籠へそれぞれ乗り込む。
 籠からは束ねられた蔓が数本のび、その先に括られている太い木の棒をポッポ達が足でしっかり掴んでいる。
 ミミロップの籠はポッポ四羽が担当し、アブソルの方は残りの四羽にピジョンが加わる。アブソルの方が重いと判断されたようだが――実際のところは不明だ。ポッポの無事を祈るとしよう。
 ポッポ達が一斉に羽ばたくと籠はゆっくりとだが持ち上がり、高度を上げていく。
 ムウマージは自分の道具袋の中に無理矢理ロゼリアを押し込み、そのまま袋口を閉じた。
 むーむーと声を上げながらもごもごと動く袋を、けらけら笑いながらムウマージは上下左右に揺さぶる。……こちらも無事を祈っておこう。
 道具袋をしまい込み、ムウマージはふわりと飛んでいった。
 俺も風船の束を結んであるベルトを体に取り付け、重りを切り離す。徐々に体が宙へ浮かび上がっていく。
 いざ、双子島へ。
164名無しさん、君に決めた!:2007/10/11(木) 07:16:00 ID:???
GJ!
165名無しさん、君に決めた!:2007/10/12(金) 16:26:40 ID:???
また明日書けたら書きたいです
166名無しさん、君に決めた!:2007/10/14(日) 05:55:53 ID:???
 ある程度の高さまで上昇した後、風船の空気とオールである尾の振り加減を調節しながら高度を保つ――のだが。
 単独の飛行は随分と久しぶりだ。うまく勘が戻ってこず、上下に大きく揺さぶられながら必死にピジョン達についていく。
 余裕綽々でムウマージがぐるぐる飛び回り、気楽にミミロップとアブソルが空の旅を満喫する横で、俺は墜落してしまわぬようやっとの思いをしている。

 やっとコツを取り戻し始め、セキチクシティ上空に差し掛かった頃、辺りは大分明るくなっていた。
 朝焼けに染まる空と、それを反射し黄金に輝く海面。その光景にミミロップ達は目を奪われ、それぞれ感嘆の声を上げている。
 まったく呑気なものだ。これから先、双子島に何が待ち構えているのかわからぬというのに。

 しばらく海上を進むと、先の方に島の影が見えてきた。島には形のよく似た小さな岩山が二つ並んでいる。
「あれが双子島だ。昔は二つの島だったらしいが、地殻の変動か何かで一つになったんだそうだ。島までもうすぐだ、頑張ってくれ」
167名無しさん、君に決めた!:2007/10/14(日) 05:58:53 ID:???
 ようやく島上空にたどり着き、少しずつ風船の空気を抜いてゆっくりと地に降り立つ。
 すっかりへばり果たポッポ達はよろよろと籠を下ろしす。息を切らしながら倒れこむポッポ達に、申し訳なさそうに礼を言いながらミミロップとアブソルは籠から下りた。
 ミミロップを運んでいた鳥達の方が明らかに疲労が激しいように見えるのは、ピジョンの助力の差だけなのだろうか。疲労の度合いを見るとピジョンがあちら側にいたとしても――いや、考えるのはやめよう。
 色んながらくたと共に振り出されてぐったり倒れているロゼリアの脇で、ムウマージはロゼリアを気にも留めず落としたがらくたをせっせと拾っている。気の毒に。
 手の取れかけたぬいぐるみが僕をずっと睨んで――などと呻いている。トラウマがまた一つ増えたか。

      ・

 島を探索していると、岩山にぽっかりと開いた洞窟をピジョンが見つけ、俺達はその前へと呼び寄せられた。
 ひんやりとした空気が洞窟から漏れている。
「この中が怪しいと思わないか。この冷気、あの鳥が身を隠すのにぴったりじゃあないか。……探索してみよう」
 疲弊しているポッポ達は外で休ませ、俺達はその洞窟を探索することにした。
 入り口をくぐった瞬間、ぞくりと全身の毛が逆立つ。これは洞窟内部の気温の低さのせいだけではない。
 ――この洞窟、何かが居る。ピジョンの予想は恐らく当たりだ。
168名無しさん、君に決めた!:2007/10/14(日) 17:06:25 ID:???
GJ!
169名無しさん、君に決めた!:2007/10/14(日) 19:36:39 ID:???
GJすぐる
170名無しさん、君に決めた!:2007/10/15(月) 12:45:13 ID:???
明日続き書けたら書きたいぜ
171名無しさん、君に決めた!:2007/10/17(水) 02:06:37 ID:???
ごめんなさい、今日はダメでした…
明日になりますorz
172名無しさん、君に決めた!:2007/10/17(水) 20:13:28 ID:???
GJ!! 書いてる人も、たまには休んでじっくりアイデアをねってくれよな。
173名無しさん、君に決めた!:2007/10/18(木) 06:14:57 ID:???
 吐く息は白く濁り、足の裏からは冷ややかな感覚が伝わってくる。
「うう、寒い、寒い。ねえ、ピカチュウ。抱っこしてもいい?」
「断じて断る」
 ちぇっ、とミミロップは長い耳で自らの体を包んだ。
 この気温……マントがある俺や、耳であの通りのミミロップと厚い毛並みのアブソル、霊体であるムウマージは比較的大丈夫そうだが、心配なのはロゼリアだ。
 外での待機を勧める俺に、ロゼリアは平気だと返す。とても平気には見えないのだが本人がそう言うのだ。無理だけはするなとロゼリアには伝えた。
「いつ何が起こるかわからない。全員、離れないように行こう」
 ピジョンのいう通りになるべく離れぬよう、洞窟を進む。
 広い洞窟の内部は地から天井、そこらに転がっている岩までもすべて氷に覆われ、外からの光で淡く煌めいている。
 音まで凍り付いてしまったかのように、洞窟内は静まり返っていた。俺達の足音だけが静けさに響き渡る。
 奥へと行くたびに冷気は少しずつ強まっていくが、ピジョンの探し求める化け物鳥どころか一匹もポケモンの姿を見かけない。凍った岩ばかりがその数を増していく。
 やれやれ、と、凍り付いた岩の一つに何気なく手をかける。ぐらりと簡単に岩は倒れ、転がった。
「――ッ!」
 反射的に手を戻し、飛びのく。洞窟内に混じりあった悲鳴が反響した。
 凍った岩だと思っていたそれは、ポケモンの姿をしていた。平たい嘴のような突起と全体的にずんぐりとした造形からして、これは元々はコダックであったのだろう。
 ――縄張りは近そうだ。
174凶暴獰猛闇黒暗闇サトシ君:2007/10/18(木) 13:46:42 ID:???
ピカチュウの人生エターナルファンタジー永遠の幻想クライマックスファイナルラストエンドエンディングストーリーシリーズステーズ
175名無しさん、君に決めた!:2007/10/19(金) 15:41:12 ID:???
    <^~ヽ 
   ゞ~):::::_ヾフ 
-=二::´*・w・)ニ=- 保守
     <..::::>
     ノo○、 
   ヾノ::l..::::::iゝ
   `~〜~´
176名無しさん、君に決めた!:2007/10/20(土) 15:38:42 ID:???
明日、書けたら書くよ
177名無しさん、君に決めた!:2007/10/22(月) 05:58:57 ID:???
 時はピカチュウ達がグレン島へと旅立つ数日前。
 場はハナダシティ近郊の洞窟。元より怪物が住んでいるだとか、組織のアジトになっているだとか、とかく黒い噂が絶えない場所である。
 事実、通常では考えられぬ程凶暴化した強力なポケモン達が住み着いており、グレン島のポケモン研究所より派遣された調査隊が命からがら逃げ帰ってきた過去を持つ。
 命を軽んじている者や事情を知らぬ者が入り込まぬよう、そして内部に住み着く凶暴なポケモン達が外に出ぬよう、入り口も封鎖を施され、開かずの洞窟と化したはずだった。
 人為的な力で壊された施錠。留め具を無くした鉄扉が虚しくキィキィと音を立て揺れている。
 人間にとってポケモンにとっても絶大な脅威は、洞窟の奥深くで目覚めさせられようとしていた。

「脳波、心搏、正常だ。記憶の初期化も完了している。赤ん坊のように真っ白――とはいかないがね」
 培養液で満たされた大きなカプセルからは何本ものコードが伸び、周りを囲む機械に繋がっている。
 研究員風の男が機械の前で忙しなく指を動かし、作業をしている。
「後は洗脳ってやつをするだけか」
 カプセル内に浮かぶのは長い紫の尾を持つ、背の高い生物。体中にプロテクターのような物を付けられ、胎児のような格好で身動き一つせずにいる。
 そして黒い服を着た二人の男がその様子を見ていた。二人とも服の胸の辺りにアルファベットで大きくRと書かれている。
178名無しさん、君に決めた!:2007/10/22(月) 06:00:12 ID:???

「しかしツイているぜ。まさかこいつがちゃんと保存されてる状態で見つかるとはな。解散した時のゴタゴタで処分されてると思ってたが、なあ?」
 黒服の一人、目の釣り上がった男がカプセルにぽんと手を置いて振り向き、研究員風の男に声をかける。
「ああ。暴走を起こしかけた一件から凍結され、それからどうなったかはわからなかったが……まさか失敗作の廃棄場代わりにしていたここに、専用のカプセルごと紛れ込んでいるとは」
「しかし一度暴走しかけた奴なんて大丈夫なのかぁ?」
 もう一人の黒服、腕組みをしながらカプセルを眺めていた小太りの男が不安げに尋ねる。
 研究員風の男はポケットからごそごそと何かの極小さなチップを取出し、小太りの男に渡して見せた。
「これから洗脳処理もしっかり施す。そして仕上げにこのポケモンの頭にもそれを埋め込むんだ。道中で失敗作共に俺達が襲われる事はなかっただろう?
 あいつらの頭にもそのチップが埋め込まれている。特定の信号を発している相手を襲わなくするんだ。お前達にも発信機を持たせておいたはずだ」
 むう、とうなった後、小太りの男はどこか不信を感じながらも黙った。
「へっ、こいつさえ操れりゃ何でも自由自在だ。かつての栄光を取り戻せばサカキ様も戻ってきて下さるはずだ」
 釣り目の男はもう一度カプセルをぽんと叩き、愛しげに撫で回した。
 ――ビーッ!
 突如、アラーム音が鳴り響く。驚いたように研究員は機械の一つに飛び付き、目を見開いた。
「バカなッ! 拒否反応だと? まずい、目覚めるぞ」
179名無しさん、君に決めた!:2007/10/22(月) 06:02:28 ID:???

「な、冗談だろ?」
「ダメだ、間に合わない。銃を構えておけ!」
 怯えた様子で男達が銃を用意する中、カプセルが煙を吹きながらゆっくりと開いていく。床が漏れだす培養液に濡れる。
 身に繋がれたコードを引きちぎりながら、そのポケモンは目覚めた。拘束具のプロテクターを剥ぎ取って握り潰し、そのポケモンは白い表皮をあらわにした。
 ――お前たちは……何だ。
 男達の頭に直接声が響く。
「ひ、ひいいッ!」
 恐怖に駆られ、黒服の男達がトリガーに指をかける。
「バカが! 早まるんじゃあないッ!」
 研究員風の男の制止を聞かず、白いポケモンに向けて黒服達は発砲する。しかし、白いポケモンが左手を掲げると弾丸は手前で固定されたようにピタリと止まった。
 ――敵、か。
 白いポケモンが左手を振るうと、固定されていた弾丸が勢い良く飛び、黒服達を撃ち抜いた。
 腰を抜かし後退る研究員風の男にじりじりと白いポケモンは歩み寄っていく。
 ――敵は……殺さなければならない。
「ひ……」
 断末魔の叫びが、洞窟内に木霊した。
180名無しさん、君に決めた!:2007/10/22(月) 06:15:55 ID:???

 ――私は、何だ?
 自問しながら、白いポケモンは辺りを見回す。
 ――わからない。
 不意に自分の出てきたカプセルがポケモンの目に留まる。
 カプセルにはMewtwoと刻印されたプレートが、上部に取り付けられていた。
 ――ミュウツー……私の名前か? 私は何故ここにいる? わからない。
 ふらふらと探り歩く内に、ミュウツーは男達の物だったと思われるメモ帳を見つけ、拾い上げる。
 ――蘇らせるための機材を盗みだした……場所はグレン……島のポケモン屋敷――?
 突然、ミュウツーは頭を押さえ込み苦しみだす。
 ――何故か聞き覚えがある。何か、私に関わる何かが?
「……行ってみよう」

 脅威は解き放たれた――。
181名無しさん、君に決めた!:2007/10/22(月) 08:34:27 ID:???
GJ!
182名無しさん、君に決めた!:2007/10/23(火) 17:16:16 ID:???
また明日書けたら書きたいです
183名無しさん、君に決めた!:2007/10/25(木) 05:20:11 ID:???
 凍り付いた大気中の水分が、粉塵のようにもうもうと噴き出している一帯を見つける。
 顔中の毛にまとわりつく氷の粒を払い落としながら近寄ると、白い冷気の煙を噴き出しているのは地に開いた大きな穴だとわかった。
 穴の傍らに、薄く透き通った氷細工のような羽が一枚落ちている。恐らく例の鳥から抜け落ちた物だろう。
 この奥に奴はいるのだろうか。穴を覗き込んでみても、立ちこめる氷の粉塵に阻まれ、どれだけ深いのかはわからない。
 飛べるといえど、ピジョンとムウマージだけで行かせるのも危険だ。穴のすぐ底に潜んでいるかもわからない。まずは石ころでも落としてみようと思いつく。
 足元の適当な氷の塊を拾い上げ、それを落とそうとした時、穴の奥から何かの鳴き声が聞こえた。
 落とす手を止め、穴に意識を集中させる。微かに聞こえる翼をはためかせるような音。徐々にそれは大きくなり、風とそれを巻き起こしている翼の躍動が、はっきり耳に伝わってくる。
「――来る。全員、穴から離れろ!」
 再び甲高く透き通った鳴き声が響いた瞬間、穴から風雪の嵐が巻き起こった。吹き飛ばされそうになるのを必死に地を踏張り、マントで冷気から身を守りながら耐える。
 吹雪が吹き出した時、同時に大きな影が飛び出すのがちらりと見えた。――奴はどこに行った?
 頭上で悠々と羽ばたく音が聞こえる。マントの隙間から見上げると、大きな鳥の影が長い尾羽を揺らしこちらを見下ろしていた。
184名無しさん、君に決めた!:2007/10/25(木) 07:08:57 ID:???
GJ!
185名無しさん、君に決めた!:2007/10/25(木) 12:51:22 ID:???
GJ!
186名無しさん、君に決めた!:2007/10/26(金) 18:28:31 ID:???
明日書けたら書きたいです
187名無しさん、君に決めた!:2007/10/28(日) 02:06:05 ID:???
ごめんなさい、今日はダメでした…
明日になりますorz
188名無しさん、君に決めた!:2007/10/29(月) 06:09:49 ID:???
 嵐は段々と収まり、氷雪の合間にその姿が徐々に見えてくる。
 体を包んでいるのは青白い羽。おぞましささえ感じさせるほど、それは綺麗に輝いていた。
「間違いない、奴だ。あの時の――!」
 ピジョンは体をぶるぶると震わせる。その表情は憎しみに満ちているが、沸き立ってくる恐怖を必死に押さえ込んでいるようにも見えた。

 青白い鳥は高度をゆっくりと下げ、こちらに降りてこようとしている。羽ばたくたびに、胸部を覆っている汚れ一つ無い新雪のように純白の羽毛が冷風にざわめき、長い尾羽は光を乱反射させて棚引く。
 圧倒される荘厳で冷徹な美しさ。対面して感じる押し潰されそうな圧迫感は神々のそれとよく似ていた。
 先程から第六感が警鐘を鳴らし続けている。関わるのは確実に避け、戦うなどもってのほかの相手だと告げていた。
 そんな事、云われなくともわかっている。だが、しかし、こちらは復讐を遂げようとする者の付き添いとして連れてこられたのだ。逃げたくとも逃げられよう筈もない。
 そして逃がすつもりもあちらには無さそうだ。菱形の水晶を三つ連ねたような鶏冠の下で、狂気を宿した緋色の瞳をぎらぎらとさせている。
 青白い鳥は地から一メートル程の所で羽ばたきながら、俺に顔を向けて小さな嘴を開く。
 嘴の前で白い光が収束するのが見え、咄嗟に身をその場から横にずらした瞬間、光の帯が尾先をかすった。冷たさなど超えた鋭い痛み。尾が燃えるように熱く感じる。
 体を捩り見てみると、先をかすっただけだというのに、俺の尾は全体の三分の一ぐらいまでを凍り付かされていた。直撃していれば体の芯まで氷塊と化していたことだろう。
189名無しさん、君に決めた!:2007/10/29(月) 07:13:53 ID:???
GJ!
190名無しさん、君に決めた!:2007/10/29(月) 22:36:17 ID:???
GJ
191名無しさん、君に決めた!:2007/10/30(火) 20:07:18 ID:???
また明日書けたら書きたいんだぜ
192名無しさん、君に決めた!:2007/11/01(木) 04:41:23 ID:???
「ピジョットさん、今に敵をとります……!」
 ピジョンが大きく翼を広げて空を強く叩くと、俺達の背後から風が強く吹き流れ始めた。
 羽ばたきながら地を数回蹴ってピジョンはその風に乗り、天井すれすれまで一気に舞い上がる。
 俺もそれに乗じて攻撃に移ろうとするが、右後ろ足が急に地に固定されたように浮かず、態勢を崩してしまった。
 何事かと下半身を見ると、先程光線を受けた尾の凍結部がじわじわと広がり始めており、左後ろ足まで侵食が進もうとしている。
 擦っただけでこの始末とは……まるでたちの悪い毒のようだ。放っておけばこれが全身に回るのだろうか。
 嘲笑うかのように、青白い鳥はろくに動けない俺にじっくりと狙いを定めながら第二射の準備を始める。
「――ッ! ピカチュウ!」
「来るな!」
 駆け寄ってこようとするミミロップ達に気付き、俺は大声で止めた。
 虫けらを見下ろすようにしている緋色の目を、睨み返しながら電流をスパークさせて挑発し、注意をひたすら俺だけに引き付ける。
 幸いにも、攻撃を一度かわされかけたのが余程気に入らなかったのか完全に俺に集中し、強襲しようと急降下するピジョンに奴は気付いていないのだ。
 距離は後、三……二……一……――ッ!
 ガキン、と堅いものがぶつかり合うような音が洞窟内に響く。
「ぐッ……!」
 寸でのところで、喉を掻っ斬ろうとしていたピジョンの足爪は阻まれていた。空気中の水分が壁のように凍り、その主を守ったのだ。
 白く凍てついた怒りの吐息を嘴の端から漏らしながら、氷の凶鳥はピジョンを睨み上げる。
 舌打ちしながら足爪を氷から抜き、再び宙へピジョンは羽ばたき上がった。甲高く透き通った鳴き声を上げて、青白い鳥もそれを追う。
193名無しさん、君に決めた!:2007/11/01(木) 18:22:03 ID:???
GJ
194名無しさん、君に決めた!:2007/11/02(金) 15:41:56 ID:???
GJ!
明日までに続き書くぜ
195名無しさん、君に決めた!:2007/11/02(金) 18:13:35 ID:???
えっ。1人じゃなかったのか!
196名無しさん、君に決めた!:2007/11/03(土) 01:12:26 ID:???
1人じゃないって、マジか
数人でこの文体が矛盾なく続いてるのはすごい
197名無しさん、君に決めた!:2007/11/04(日) 00:08:34 ID:???
>>194はどうしたー?
明日にでも続き書きたいんだが
198名無しさん、君に決めた!:2007/11/04(日) 02:48:17 ID:???
久々に書いたら全然進まなくて泣いた


奴に痛手を負わせるチャンスを逃した今、小柄な体を活かし小刻みに旋回し、追跡を振り切ろうとピジョンが翼をしならせる。
が、あの巨体からは想像できないほど滑らかに青白い鳥は羽ばたき、まるで狩りを楽しむように少しずつ距離を少しずつ詰めていった。
ピジョンが凍てつく風に飲み込まれるのも時間の問題だろう。
援護しようにもこの距離では電撃は届かない。
まずこの忌まわしき氷を始末しなければ―――

振り向くと既にミミロップ達がこちらに向かって駆け出している。
―――どうやら皆考えていることは一緒のようだ。
 「私の出番ってことね。」
最近目立った活躍が無かったからだろうか、どこかしら嬉しそうに声を弾ませている。
 「そうだ、わかっているな?」
 「もちろんよ、私のほっかほかの毛皮でピカチュウを包んで…」
 「・・・・・」
 「じょ、冗談よ、冗談。」
と言いつつも、こちらに向かって伸ばしていた手を素早く引っ込めたところを見ると半分本気だったようだ。
まったく、状況が読めているのかいないのか―――。
肩を大きく2、3度回し、ミミロップの拳を炎が包み込んだ。
 「行くわよっ!」
ガツンッ
燃え盛る拳が凍結した俺の背中を捉え、大きな衝撃が走る。
右足の踏ん張りだけでは足りず前につんのめってしまったが、同時に温かさが広がり左足に感覚が戻ってきた。
 「大丈夫だった?」
 「うむ、問題ない。さっさとあの怪鳥を地面に引きずりおろすぞ。」
 「「おーーー!」」

―――それにしてもさっきから何か焦げ臭いのは気のせいだろうか?
何となく皆の顔が引きつっている気もするが。
199名無しさん、君に決めた!:2007/11/04(日) 18:57:13 ID:???
GJ!
俺も明日続き書けたら書くぜ
200名無しさん、君に決めた!:2007/11/06(火) 02:46:46 ID:???
ごめんなさい、今日はダメでしたorz
明日になります…

980超えてたからか議論スレがあっという間に落ちたな
201名無しさん、君に決めた!:2007/11/07(水) 06:29:41 ID:???
「ピュイッ――!」
 上空から短い叫び声が響く。反射的に見上げると、ピジョンが右翼の先を凍り付かせ、回転しながら墜落してこようとしていた。
 さらなる追い撃ちをかけるつもりか、青白い鳥も急降下を始める。
「ピジョン!」
 させまいと俺達が放つ攻撃も軽々とかわし、更に降下速度を上げて距離を縮めていく。
 しかし、どういうつもりか青白い鳥は落ち行くピジョンを追い抜いた。そしてピジョンではなく俺に狙いを定め、白い光を収束させる。
 駄目だ、これでは回避も間に合わん。直撃か――。そのな時、あの鳥がピジョンの攻撃を防いだ方法が脳裏をかすめる。氷の壁……壁――!
 無意識に出した左手に電力を集中させると、電気が盾のように丸く展開した。
 青白い鳥は慌てるように翼を広げて降下を止め、放たれた白い光線は、その広がった電流の壁により分散しながら逸れ、ひんやりとした感覚だけが体に伝わる。
「ピカチュウ、それは……?」
「咄嗟の思い付きだ。とにかくこれで奴の攻撃は防げそうだ。全員、俺の後ろに隠れろ。奴が降りてきた所を一気に叩くぞ」
 ミミロップ達は一斉に俺の後ろに回り、攻撃に備える。ピジョンの方は何とか翼の氷が剥がれ、地面すれすれのところで体勢を立て直していた。
 しばらく様子を見ていた青白い鳥は、おもむろに大きく一鳴きした後、再び降下を始める。
「さあ、何度でも撃ってくるがいい! 何度でも防いでやる」
 奴は自分の前に尖った氷塊を形成しながら氷を身に纏い、自らを礫――最早そんな次元ではない、巨大な氷の馬上槍のようにしてこちらへと突っ込んでくる。あれではこの壁でも防ぎようがない。
「に、逃げろ!」
「え?」
「……さすがにあれは無理だ。見ろ」
「ええーっ?」
 半ば絶叫に近い声を上げながらミミロップ達は散開し逃げ出す。俺も落下してくるであろう地点から離れようと必死に走った。
 なんという無茶苦茶な奴だ――!
202名無しさん、君に決めた!:2007/11/07(水) 06:42:13 ID:???
八行目辺り
× 青白い鳥は慌てるように翼を広げて降下を止め、放たれた白い光線は、その広がった電流の壁により分散しながら逸れ、ひんやりとした感覚だけが体に伝わる。
○ 青白い鳥は慌てたように翼を広げて降下を止め、放たれた白い光線はその広がった電流の壁により分散した。ひんやりとする程度の冷気だけが体にかかる。

やっちまったorz
投下前に直したつもりなのにメモ帳からコピペミス…
203名無しさん、君に決めた!:2007/11/08(木) 02:11:06 ID:???
GJ!

場つなぎに小ネタ投下


とある辺境の島…

「―――本当に此処なのですか?」
 キョロキョロとあたりを見回すユクシー
 その疑いの瞳が少し前を行くアグノムの背中にチクチクとささる

「しっつこいな〜!パルキアが言ってたんだから間違いn…イタッ!」
 ゴツンと何か固い物をぶつけた音、鼻を打ったのかその場にうずくまるアグノム
と、同時に辺りの景色がユラユラと波打った
 その見えない何かにそっとユクシーが手を置き、意識を集中する―――
 不意にその波は渦へと変わり、アグノムが鼻をさすりながら顔をあげた時には既に直径1mほどの穴が
まるでそこだけ空間を切り取ったようにポッカリと浮かんでいた

「どうやら此処の様ですね、疑ってすいませんでした。」
「へへ〜ん、じゃあ後でモモンの実一個ね!」
ユクシーの返事を待たずにアグノムが我先にとその穴へ飛びこむ―――
204名無しさん、君に決めた!:2007/11/08(木) 02:14:28 ID:???
「へぇ〜、牢獄って聞いたからもっと暗い感じかと思ってたけど…」
 そこには見渡す限り白い空間が広がっていた
 目に入る色といえば白い空に浮かぶ大きな三日月の黄色と―――
「あそこに誰かいますね。」
 ユクシーが指差した先の色鮮やかな点だけであった


「やっほー、君がクレセリア?」
 突然の来訪者、しかもやけに軽い口調に不意を突かれたようだ
 驚きの表情を浮かべていたが、すぐに気を取り直し
「はい、、、あなた達は?ここに入って来れたところを見ると、ただのポケモンでは無いようですが…」
「オイラはアグノム。で、こっちはユクシー。よろしくっ!」
「そうでしたか、あなた達のことはパルキアから聞いています。
―――それで、わざわざここにいらっしゃった用件は?」


つづくよ

205名無しさん、君に決めた!:2007/11/08(木) 16:53:07 ID:E2M1X8Mi
age
206名無しさん、君に決めた!:2007/11/08(木) 20:17:06 ID:???
>>203-204
GJ!

また明日、続き書けたら書きたいんだぜ
207名無しさん、君に決めた!:2007/11/09(金) 14:51:38 ID:???
議論スレ落ちてないか?
208名無しさん、君に決めた!:2007/11/10(土) 02:32:07 ID:???
>>207
落ちとるな
誰か建てられれば頼む
209名無しさん、君に決めた!:2007/11/10(土) 02:32:37 ID:???
ごめんなさい、事情により続きの投下は明日になりますorz

そして議論スレの次スレ立てるのが無理だったのも謝っておく…
誰か議論スレの次スレよろしく
210名無しさん、君に決めた!:2007/11/10(土) 04:17:11 ID:???
ピカチュウの人生議論スレ2
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/poke/1194635713/

立ててきた
211名無しさん、君に決めた!:2007/11/10(土) 04:32:41 ID:???
>>210
       、ー、
     ('ヽ_/')<
  )\(゚д゚*) >> 乙
   ):⊂( ノ:::\
   `〜゙uu〜〜´
212名無しさん、君に決めた!:2007/11/10(土) 08:16:51 ID:???
213名無しさん、君に決めた!:2007/11/11(日) 07:25:36 ID:???
 巨大な氷の槍は洞窟を大きく揺るがし、厚く凍り付いた床を穿つ。激突の衝撃により槍は砕け、その破片は榴弾のように飛散し、俺達を襲った。
 直撃させる必要など無い、奴はこれを計算していたというのか。
 重傷までには至らないが皆そこかしこに傷を負い、距離が離れていたため難を逃れたピジョンと、マントにより多少は威力を軽減できた俺以外は戦える状態では無さそうだ。

 爆心地に残る鳥の形をした氷塊が、小さな音を立てながらゆっくりと表面に細かいひびを入れていく。
 ミミロップ達に、急いで安全な所まで退避するように言い、俺は充電しながら今にも動きだしそうな氷塊目がけ駆け出した。
 奴が執拗に狙っているのは俺だ、引き付けてミミロップ達が逃げるまでの時間を稼がなければならない。
 ひびは全体に広がり、脱皮するように青白い鳥が氷の殻を破って飛び出した。牽制に俺が放った電撃を氷の壁で易々と防ぎ、空へと舞い上がる。
 滑空しこちらに向かってくる奴に、すれ違いざまに直接攻撃を叩き込んでやろうと、跳躍し尾を振り上げた。だが、青白い鳥はあらぬ方向に飛び、尾は虚しく空をきる。
 反撃を予期しすぐさま電磁の壁を張るが、青白い鳥は俺の横を抜けそのまま飛びさっていく。その向かう先には、アブソルに助けられながら逃げようとしているミミロップの姿があった。
 ――あの時、無防備になっていたピジョンを無視してまで俺を執拗に狙ったと思っていた光線……俺のすぐ後ろにはミミロップがいた。
 もっと早く気付くべきだった、標的はあの時から俺ではない。奴の狙いはミミロップだ!
 既に奴はミミロップとアブソルのすぐ後ろにまで迫っている。風をきる音に二匹は振り返り、迫り来る青白い鳥を茫然と見上げた。
 全てを凍てつかせる無情な白い光が、奴に集うのが見える。
214名無しさん、君に決めた!:2007/11/11(日) 08:31:23 ID:???
GJ!
215名無しさん、君に決めた!:2007/11/11(日) 11:18:25 ID:???
GJでございます
216名無しさん、君に決めた!:2007/11/12(月) 14:56:52 ID:???
明日また続き書けたら書きたいんだぜ
217名無しさん、君に決めた!:2007/11/14(水) 07:15:42 ID:???
 俺の電撃、ピジョンの突撃、どちらも既に一手遅い。電力の補填、距離が届かない……!
 青白い鳥の怪光が遂に放たれようとした時、腕輪が急に燃え上がるように熱くなって感じ――。
「ギュアアァァァ――ッ!」
 次の瞬間、青白い鳥の体を業火が包んでいた。金切り声を上げて青白い鳥は逃れるようにミミロップ達から離れ、身を炎に焼かれながら地をのたうち回る。
 ミミロップは拳に炎を灯しながら、何が起こったかわからないと云う風にぽかんとしていた。アブソルもどこかぼんやりと立ち尽くしている。
「え? ええ? 私はまだ何も……」
 一瞬、間をおいた後、ロゼリアが歓声を上げる。
「す、すごいです! 今の炎はミミロップさんですよね?」
「う、うーん……?」
 ……何が起こったのかはわからないが、今は奴へのとどめが先だ。
 体の炎が消え、青白い鳥は白い煙を上げながら起き上がった。その姿は見る影もなく、焼けて溶けかけている。しかし、それも再生を始めようとしているのだ。
「畳み掛けるぞ、ピジョン」
「ああ……!」
 青白い鳥は翼の回復をほとんど終え、今にも飛び立とうとしていた。何とも凄まじい生命力だ。
 だが、もう遅い。間合いも充電も十分ッ――!
 頭部を狙ったピジョンの翼による一撃が、青白い鳥の再生しかけていた額の鶏冠を砕く。青白い鳥は大きく仰け反り、形成しようとしていた氷の壁はばらばらと崩れ落ちる。
 その隙を逃さず、右の拳に体中の電気を込めながら俺は奴の懐に潜り込んだ。そして大きく右拳を振りかぶり、白い胸部を思いきり打ち抜く。稲妻が奴の体を走り、雷鳴と共に電流の束が体内を焼き貫いて飛び出した。
 断末魔の叫びのように突風が青白い鳥を中心に吹き荒れ始め、巻き上げられた雪や氷が俺達の視界を遮る。
 風が収まると青白い鳥の姿は既に無く、透明な羽が一枚、その場に残っているだけだった。
218名無しさん、君に決めた!:2007/11/14(水) 12:43:10 ID:???
GJ!!
219名無しさん、君に決めた!:2007/11/15(木) 07:08:35 ID:???
ペタGJ!
220名無しさん、君に決めた!:2007/11/15(木) 15:58:09 ID:???
明日続き書けたら書きたいです
221名無しさん、君に決めた!:2007/11/17(土) 01:09:23 ID:???
ごめんなさい、今日はダメでした
明日になりますorz
222名無しさん、君に決めた!:2007/11/18(日) 06:44:17 ID:???
「仕留めた……のか?」
「……わからん。だが、手応えはあった。生きていたとしても当分は再起不能であろう」
 ふぅ、と息を静かに吐き出し、ピジョンは荒れる息を整えた。
 少し遅れて、ミミロップ達が勝利に沸き立つ。
「少なくとも一矢を報いれた……か。勝ったんだな、俺は過去に――」
 歓声上がる中、ピジョンは立ち尽くし顔を片翼で覆い込んだ。その声はどこかくぐもっている。
 本来であれば、ここはしばらくそっとしておくところなのであろうが――ここは少し冷えるどころのレベルではない。うかうかとしていれば氷像の一つと化してしまう。
 俺は声をかけようとするが、その前にピジョンは自分の顔をさっと拭い払った。飛んだ少量の水滴が宙で凍りきらきらと消える。
「ありがとう、あなた達の協力に深く感謝する」
 俺の方を振り向き、ピジョンは深々と頭を下げた。顔を上げるとその表情は、ずっと背負わせられていた重荷を下すことがやっと許された、と穏やかに語っている。
「……うむ。それではここを出るとするか」
「ああ。だが少し待ってくれ。その前に――」
 何か思い立ったのかピジョンは振り向く。その先を見ると、戦利品とばかりにムウマージが青白い鳥の残した透明な羽を拾い上げ、自分の袋にしまい込もうとしていた。
「……先を超されていたか。すまないがその羽、俺に譲ってくれないか? 空っぽの仲間達の下へ、それだけでも供えたいんだ」
 そう声をかけられ、ムウマージは悩み始める。しばらく考えた後、快く――とはお世辞にも言えないが――了承し、ふよふよと近寄ってきた。
「すまないな、ありが――いつッ!」
 透明の羽を渡すと同時に、ムウマージはピジョンの羽を一枚引っ込抜いた。そして即座に抜いた羽をしまい込み、けらけら笑いながらムウマージは逃げさる。
「とーかこうかんだよー。ちょっとつりあわないけど、おまけー!」
 タダとはいかないか、とピジョンは苦笑いを浮かべ呟いた。
 さあ、早くこんな冷えきった洞窟とはおさらばと行こう。

 ――それにしても、あの時の炎……あれは一体なんだったのだろうか。
 今は腕輪には何も変化はない。気のせいだったのだろうか?
 燃えるように熱くなったと感じたのも、そしてあの時、アブソルの口からちらりと小さな炎が漏れたような気がしたのも――。
223名無しさん、君に決めた!:2007/11/18(日) 08:01:04 ID:???
GJ!
224名無しさん、君に決めた!:2007/11/18(日) 09:50:56 ID:???
超GJ!
225名無しさん、君に決めた!:2007/11/19(月) 16:44:00 ID:???
明日続き書けたら書きたいんだぜ
226名無しさん、君に決めた!:2007/11/21(水) 02:57:47 ID:???
ごめんなさい、今日はダメでしたorz
明日になります
227名無しさん、君に決めた!:2007/11/22(木) 05:54:25 ID:???
 そろそろ洞窟の出口が見えてきた。
 ようやくこの天然の冷凍庫から解放される。そう安堵の息を吐きかけた時、ある違和感に気付く。
 出口の脇に、不自然な出っ張りが出来ている。外から差し込む光に邪魔され、はっきりとした姿はわからないが、丸い耳のような突起がその影には確認できた。
 洞窟内を覗き込んでいると思われるその影は、少なくとも外に待たせているポッポ達のものではない。
 では何者か。双子島の原住民だろうか。何にせよその正体がわかるまで慎重に行動した方が良いだろう。

 忍び寄るには大人数は不利だ。奥に全員待機させ、俺は一匹、岩や氷柱の陰に隠れながら出口へと近寄っていく。
 ある程度の距離まで近付いて岩陰から覗き込むと、影はそろりと出口脇から四本足で姿を現し、洞窟内に入ってこようとしていた。
 俺は岩陰に身を戻して隠れる。侵入者は人間ではないのは確かのようだ。
 足音が徐々に大きくなりこちらの方へと近付いてくる。存在が気付かれたか?
 息を殺し、身構える。しかし、足音は俺が隠れる岩の横を通り過ぎていってしまった。そしてそのまま洞窟の奥に向かおうとしているその者の正体は――。
「――ペルシアン?」
「フギャーッ!」
 俺が背後から声をかけると、ペルシアンは叫び声を上げ毛並みを立たせて飛び上がる。
 ペルシアンは滑るようにこちらに振り向き、爪を伸ばして臨戦の体勢をとった。だが、すぐに俺に気付いたのか、ぴたりと動きを止めて構えを解く。
「ピカチュウ……かニャー? びっくりしたニャ、毎度毎度驚かせないでほしいニャー」
 驚かされたのはこちらも同じなのだが。
 とにかく敵では無かった事に安心した。後は何故ペルシアンがここにいるのかという疑問だけだ。
 とりあえず、すべては外を出てからにしよう。早く洞窟を出たい。
228名無しさん、君に決めた!:2007/11/22(木) 06:46:03 ID:???
GJ!!
229名無しさん、君に決めた!:2007/11/22(木) 18:21:11 ID:???
GJ!
230名無しさん、君に決めた!:2007/11/23(金) 17:14:20 ID:???
明日また書けたら書きたいんだぜ
231名無しさん、君に決めた!:2007/11/25(日) 07:30:31 ID:???
 奥に待たせていたミミロップ達を呼び寄せ、俺達はペルシアンに続いて洞窟を出た。
 陽光が暖かい。外へ一歩踏み出すと空気はがらりと変わって感じられ、凍えた体が程よく解れていく気がした。
 洞窟の前には大荷物二匹をここまで運んだポッポ八羽の他に、長い嘴と細い体型の鳥――オニドリルとその進化前であるオニスズメ数羽が加わり、待っている。
 傍らに置かれた吊り籠から、ペルシアンを乗せてきた者達だということが容易に想像できた。
「うぅー、寒かったニャー……」
「さて、何故お前がここにいる? 聞かせてもらおうか」
 毛並みを逆立たせて身震いするペルシアンに、俺は問い掛ける。
「その前に、こっちが先にあんたらが何でこんな場所にいたのか聞きたいところだニャー」
 じろりとペルシアンはピジョンの方へ目をやった。気圧され弁解の言葉も浮かばないのか、ピジョンは困り果ててペルシアンから目を逸らす。
「……まあ、それは後でゆーっくりと聞かせてもらうニャ。
 ボクの方は、あんたらがちゃんとグレンに着けるかちょっぴり気になってニャー。ついでにそこのアホがどうなったのかもニャ。あんなに早く出発されるとは思わなかったからちょっと寝ぼ――」
 ゴホン、と咳払いし、何か言い掛けたのをペルシアンは中断した。
「何でもないニャ。とにかく、グレンまで様子を見に行こうとしてたのニャー。
 そしたらどこか見覚えのあるポッポ共がこの島にいるのを空から見つけてニャー。降りてみれば案の定ってヤツだニャ」
 昨日あんな事言っといて実は心配だったのよ、何でこう素直になれないんでしょうね、だれかさんみたいー、とミミロップ達がくすくすと話す。
 それが耳に入ったのかペルシアンはばつが悪そうに口をもごもごさせる。
「ふふん、変な勘違いするんじゃないニャー。次はあんたらの番、とその前に――」
 オニスズメに目を向け、ペルシアンは何やら合図を出す。
232名無しさん、君に決めた!:2007/11/25(日) 07:32:15 ID:???
 オニスズメは吊り籠から二羽がかりで大きな袋を引っ張り出し、こちらへ運んできた。
 ペルシアンはオニスズメに軽く礼を言うと、その袋を開けごそごそ探り始める。
「ボクは義理堅いのニャー。フツーなら恩やら義理やらそんなもの三日で忘れるとこだけど、今回は運良く覚えてたニャ。
 言っときながらゴタゴタでオモテナシできなかったからニャ。ま、こんなもんで勘弁するニャー」
 そう言って取り出したのは、色とりどりの木の実、様々な薬類、そしてポケモン用の道具だ。
 よくぞここまで集めたものだ。俺達が感心していると、得意げな表情をペルシアンは浮かべた。
「入手ルートは考えない方がいいニャ。あんたらの想像どおりにろくでもない方法だニャー。戸締まりや鞄の大事さを忘れるマヌケな人間はボクらを潤すのニャ。
 そろそろお腹が減る時間だニャ。ボクもお腹が減ったニャ。それ食べながらでいいから、何があったか話せニャ。」
「うむ――」

      ・

 ぶーっ、と俺の顔に、飲みかけだったであろう水が吹き出される。
 咳き込みながらペルシアンはよろよろと木の実の一つを掴む。
「このバカタレーッ!」
 そしてそう叫びながら強くピジョンに投げつけた。
 木の実が頭に直撃し、ピジョンは目に星を散らしながら倒れこむ。
「信ッじられないニャッ! 聞かせてもらった話とボクの個人的に調べていた情報を合わせたら、それ、やっぱりどう考えても伝説の鳥、フリーザーじゃないかニャ!」
 倒れたピジョンをペルシアンは両前足で掴み上げ、がくがくと揺する。
233名無しさん、君に決めた!:2007/11/25(日) 07:35:02 ID:???
「何考えてんだニャー? 鳥頭どころかノーミソ空っぽなのかニャ? お前、吹雪のことだけで、そんな鳥を見た事なんてボクには一言も言わなかったニャー!」
「俺は一羽……逃がされ……ずっと後悔……巻き込みたくなか……」
「お前一羽で何ができるってのニャ! 結局メーワクかけてるんじゃないかニャー!
 ボクだって鳥達をやられて黙っているつもりは無い、犯人がいるならいつかオトシマエつけてやるつもりで吹雪の事をずっと調べてたんだニャ。
 この辺りのどこかを根城にしている氷の怪鳥がいることまで突き止めていたけど、アホが一羽で暴走しないよう黙っていたのに全部無意味だったってことかニャー!」
 ペルシアンが再びピジョンを強く振ると、その翼からひらひらと透明の羽が落ちる。
「俺は……仇……過去……勝った……」
 それを見て、ペルシアンは無言でピジョンを乱暴に地に落とした。
 そして深いため息を吐いた後、くるりと背を向け、オニドリル達に合図を出す。
 少し戸惑いながらもオニドリル達は配置につき、吊り籠の用意をした。
「ボクはそろそろ帰ってお昼寝の時間ニャ。もうアホには構ってられないのニャ」
 ひょいと籠に飛び乗ると、出発の合図らしい口笛を鳴らす。オニドリル達は一斉に羽ばたき、籠はふわりと持ち上がった。
「……だからグレン島の情報、しっかりとその小さい鳥頭に詰め込んでてくるニャ! 忘れたらタダじゃおかないニャー」
 ピジョンは倒れたままふらふらと片翼を持ち上げ、“了解”のサインを作ってみせた。
 オニドリル達は一気に高度を上げ、ペルシアンを乗せた籠を吊し飛びさっていった。

 ――呆然と見ているしか無かった。
 とりあえず、早速貰った薬達を活用させられることになりそうだ。
234名無しさん、君に決めた!:2007/11/25(日) 10:40:54 ID:???
おぉ、ありがたやありがたや
235名無しさん、君に決めた!:2007/11/26(月) 07:09:44 ID:???
GJだぜ!
236名無しさん、君に決めた!:2007/11/26(月) 12:56:50 ID:???
また明日書けたら書きたいんだぜ
237名無しさん、君に決めた!:2007/11/28(水) 05:54:41 ID:???
 食事も終え、各々が出発に向けて準備を始めている。
 余った木の実をマントの裏地のポケットに詰めながら俺は何となく考えていた。帰る場所があるというのはいいものだ――介抱の途中、ピジョンはそう呟いた。
 俺にはあるだろうか。少なくとも前の自分には無かった。いや、そんなくだらないものは考えることも必要とすることもなかっただろう。だが――。
 おっと。ぼんやりとしていたせいか、木の実を一つ滑り落としてしまう。木の実はころころと洞窟の方へ転がっていった。軽く舌打ちし、それを追っていく。
 木の実は洞窟の入り口を転がり落ちてくぐり、さらに奥地へと行こうとしていたところで俺の手により取り押さえられた。
 やれやれ、と木の実を拾い上げた瞬間、不意に脳天に冷たい水滴が当たる。上を見ると凍り付いていた天井が、あちこちから雫を垂らしていた。
 氷が溶け始めているのか。だが、いくら元凶が去ったとしても、あれだけ分厚く凍り付いていたものがこんなにも早く溶けだすものだろうか。地の奥底から少し熱が伝わって来ているような気さえする――?
「何やってんのよ、ピカチュウ。みんな支度終わってるんだけどー」
「さっさと準備しろとか行ってたのはピカチュウさんでしたよねー」
 納得のいく答えが出る前に、浮かんでくる疑念は外からの呼び声に止められた。
「おいてっちゃうよー。それでもいーけどー、キャハハ」
「ダメだと思うけど……」
 木の実をしまい込み、俺はその呼び声に小煩そうにして応える。
 ふん、何時もながら騒々しい奴らだ。これではどこにも行けそうにないではないか。
 ――帰ろう。あくまでも仕方がなく、だ。
238名無しさん、君に決めた!:2007/11/28(水) 07:17:55 ID:???
GJ!
239名無しさん、君に決めた!:2007/11/29(木) 07:32:03 ID:???
GJ!
240名無しさん、君に決めた!:2007/11/29(木) 13:25:44 ID:???
明日続き書けたら書きたいです
241鈍足トリデプス ◆HOQTRh4M66 :2007/11/30(金) 18:53:49 ID:Wygq40NG
最下層上げ
242名無しさん、君に決めた!:2007/12/01(土) 07:04:49 ID:???
 天候も荒れることなく空の旅は順調に進み、日が落ちきる前にグレン島上空へと辿り着く事ができた。
 島の中央には堂々と大きな山が聳え、その身に夕日を受けて燃えるような赤銅色にてらてらと輝いている。
「ここがグレン島。そしてあの大きな山がグレン火山だ」
 そこでまた双子島から恒例になりつつあるピジョンのガイドが始まる。
 そしてまた恒例になりつつある、ふーん、と適当に相槌を打つミミロップとムウマージ、もごもご呻く袋、そんな周りの中で他一倍真剣に聞き入るアブソルの姿があった。
 どうでもいいのだが地理の説明をしている時の方が、ピジョンは普段に比べ生き生きとして見えるのは気のせいであろうか。

 それにしても大きな火山だ。何ともいえない胸騒ぎ、一抹の不安というものを抱いてしまう。
「火山と言っても随分と前から活動を休止しているという話だ。現に島には巣作りしてから何年も経っていそうな人間達の巣――グレンタウンがあるだろう?」
 俺の心中を見透かしたかのようにピジョンはそう説明する。
 本当にただの取り越し苦労であればいいのだが――。

 人気の無さそうな海岸を探して俺達は降り立ち、崖下のちょっとした洞窟に吊り籠を隠し身を潜めた。
 本来の目的である化石の復活を果たすため、その方法を話し合う。
 ピジョンの記憶が正しければ、研究所の大体の位置は空から眺めたこともあり掴んでいる。
 このまま待っていれば直に日は落ちる。夜陰に乗じて研究所に忍び込んで――と何時もならば行くところなのだが、それには問題があった。
243名無しさん、君に決めた!:2007/12/01(土) 07:08:00 ID:???
「研究所と言うだけあるのだからそれなりの設備とセキュリティというものがあるんだ。夜中は完全に鍵がされているだろう。
 人間の巣には隙間なんて無いし、ガラスを割ったりドアを蹴破ったりすればたちまち警報がなる。
 前に故意ではないんだがうっかりガラスを割ってしまったことがあってな。……大変な目にあった。
 人間の作る機械というのは、実に厄介な代物だということだな」
「それにもし仮にうまく忍び込むことができたとしても、僕達だけで化石を復元させるような大掛かりな機械が使えるんでしょうか?」
 確かにピジョンとロゼリアの言う通りだ。
 だが、あんな凍える思いまでしてここまで来たのだ。その程度のことでむざむざ引き下がって手ぶらで帰るわけには行かない。
「ならば鍵がかけられていない時間帯に忍び込んでやればいい」
「と言いますと? 今から行けば下手をすると忍び込んだが最後、知らない内に外から鍵を掛けられて朝まで閉じ込められるかも知れませんよ。
 昼の時間帯なんて言うまでもなく無理ですね。それに機械の操作はどうするんですか?」
 俺の言葉にロゼリアの苦言が返る。
「黙って最後まで聞け。狙うは人間の少ない早朝だ。まさか群れをなしてぞろぞろと早朝から現われたりはしないだろう。そこで最初の一人が錠を開けた所を狙う。
 機械は我らが操作することはない。常日頃奴らは化石の復元を行っているのだろう?
 ならばその研究材料のなかに琥珀を紛れ込ませておけば後は勝手に人間共がやる。ついでに他の化石から蘇った者達も奪い取ってやろうではないか」
「うーん……随分と賭けになる部分が多いですねえ。その最初の一人に見つかった場合は?」
「早朝にぐっすりと居眠りを始めた輩が一人くらい居ても何ら違和感は無いとは思わないかロゼリア。
 それとも人間にはカゴやラムの実を齧りながら持ち歩く習慣や習性でもあるのか?」
 ロゼリアは苦笑を浮かべた後、なるほど、と答えた。
「間違って毒の方をやっちゃうかもしれませんねー」
「くく、無力化できるならそちらでも構わんがな。こういう事はなるべく穏便に済ませた方がいいだろう。
 今日はここで夜を過ごす。決行は早朝。道案内と見張りはピジョン、潜入は俺とロゼリアが行う。他の者はここで待機だ」
244名無しさん、君に決めた!:2007/12/01(土) 07:13:20 ID:???
GJ!
245名無しさん、君に決めた!:2007/12/02(日) 02:04:14 ID:???
「ドンカラスー!また友「死ねええぇぇぇ!!」
「グフッ・・・ウボァー」
246名無しさん、君に決めた!:2007/12/02(日) 14:13:27 ID:???
また明日書けたら書きたいんだぜ
247名無しさん、君に決めた!:2007/12/04(火) 07:18:36 ID:???
 奇妙な者に出会った。
 眼光は鋭く、相当な力を持っていることが本能で伝わった。
 だが、その一方で、どこか頼りなげなものを内包している。何と言えばいいのだろうか。
 そう、例えるならば帆の無い帆船のような――風を捉えられずただ波間を漂うことしかできない、
不完全で不安定なものが感じられたのが印象に残っている。

 その者に出会ったのは夕暮れの海岸だった。
 俺はミミロップ達との賭け――人間もよくやる、硬貨を投げ裏か表かを当てるものだ――に負け、
腹立たしくも食料の調達役を押し付けられ、島中を苛立ちながら駆けずり回っていた。
 十分な量を集め、そろそろ洞窟に戻ろうとしていた時だ。波打ち際に佇む背の高い影を見つけたのだ。
それが人間のものでは無い事は、尖った耳と長い尾のようなものを見てすぐにわかった。
 関係ない、といつものように放っておけば良いのだが、俺は何となくその様子が気になり
海岸に降り立って波打ち際に向かったのだ。

 その者は立ち尽くすように海の方を見ていた。近寄って見ると背丈は俺の五倍、
二メートルはあっただろうか。体格は全体的にほっそりとしてはいるが、無駄な肉の無い強靱な
肉体であることが判る。体毛は確認できず、つるりとした白い皮膚が日に赤く照らされていた。

 その背から三メートルくらいまでに近付き、声をかけてみようと口を開き掛けた時、
抱えていた木の実の一つが急に半分に裂け、砂浜に落ちた。

 ――何者だ。
 浮くように隙無く振り返り、俺の頭に直接声を響かせてその者はそう語り掛けてきたのだ。
 テレパシー、念力、所謂エスパータイプのポケモンだったのだろう。それもかなり高度で強力な
248名無しさん、君に決めた!:2007/12/04(火) 07:35:19 ID:???
書いていた続きを間違えて消してしまった…
復旧は今は間に合いそうにないから明日のこれくらいにまた投下したいですorz
249名無しさん、君に決めた!:2007/12/04(火) 15:53:24 ID:???
GJ!
250名無しさん、君に決めた!:2007/12/04(火) 21:52:45 ID:QbK4LDga
 
251名無しさん、君に決めた!:2007/12/05(水) 08:42:49 ID:???
 ――敵か?
 突然見えない手か何かに絞め上げられたように俺の体は動けなくなり、再び頭に声が響く。
 向けられた殺気はひどく無機質に感じられた。どこか空っぽで、悪意も憎悪も何も無いのだ。
単純で純粋な殺意。その異質さは不気味であった。

 敵意は無い、と声は出せないが思考で伝えると、見えない力はあっさりと振りほどかれ、
スイッチが切り替わったかのように向けられていた殺気も消え去る。そして何も言わず俺に背を向けた。
 ただの危ない輩だ、これ以上関わり合いにはならないのが最良の判断であろう。
 だが、だというのに、好奇心だとでも言うのだろうか、それが俺の中で勝ってしまう。

「我が名はピカチュウ。お前はここで何をしている? この辺りに住むポケモンでもあるまい」
 そう問うと、先程とは態度を一変させ、興味深そうにこちらに振り向いた。
「私はポケモン……というのか? お前は私が何者なのか知っているのか?」
 そして縋るように俺の体を強く掴み、問いを返してくる。
 予想だにしなかった突飛な反応に、少し戸惑いながら答えた。
「人間や普通の動物でなければそれしかあるまい。お前が何者なのかまでは判らんが」
 そうか――そう一言だけ呟き、落胆したように俺から手を放した。

 また厄介な拾い物をしてしまったと後悔する。
 しかし、ここまで首を突っ込んでしまった以上、後には引けなかった。
252名無しさん、君に決めた!:2007/12/05(水) 08:45:33 ID:???
 その者には記憶が無かった。
 深く頭の中に刻みこまれているのは敵は抹殺しなければならないという観念と、その方法。
他に憶えているのはあまりに断片的で繋がらないような情報ばかり。
 その中で、一つだけ強く何かを感じ惹き付けられる情報があったのだという。
 それはグレン島のポケモン屋敷という場所の事。自分が何者かが知りたいがため、
それだけを頼りにこの島へ来たと言うのだ。

 屋敷について何か知らないかと聞かれ、ピジョンならば知っているかもしれないと、
俺はその者を洞窟に連れ帰ることにした。

 洞窟に戻り、俺は全員に事情を説明する。
 ピジョンからそれらしき屋敷の事を聞き出し終え、去ろうとしていた背をミミロップ達が呼び止める。
 その……記憶が無いなんてあんたも大変ね。こんな事くらいしかできなくて申し訳ないのですが……。
これあげるー。諦めずに頑張ってね。
そうミミロップ達に手渡された食料を、その者は困惑の表情を浮かべながらも受け取った。
「お前の名前を聞いていなかったな。聞かせてもらえないだろうか?」
「ミュウツー。それが私の名前のようだ。……感謝する。お前たちの事は忘れない」
253名無しさん、君に決めた!:2007/12/05(水) 18:35:44 ID:???
GJ!!
254名無しさん、君に決めた!:2007/12/05(水) 19:58:23 ID:???
アドベンチャーツクレールでポケダン探検隊もの作ってみた。
暇つぶしに。
http://avg-maker.com/485303.html(♂用)
http://avg-maker.com/485306.html(♀用)
255名無しさん、君に決めた!:2007/12/06(木) 13:03:48 ID:???
宣伝ウザ
よそでやれ
256名無しさん、君に決めた!:2007/12/06(木) 15:03:05 ID:???
明日、本編の続き書けたら書きたいんだぜ
257名無しさん、君に決めた!:2007/12/06(木) 19:00:03 ID:???
毎度乙
258名無しさん、君に決めた!:2007/12/07(金) 09:45:55 ID:???
頑張れ頑張れー
259名無しさん、君に決めた!:2007/12/08(土) 06:34:00 ID:???
 まだ日も昇らぬ内に、俺とロゼリア、そしてピジョンは洞窟を発った。
 当然のごとく町中はひっそりと静まり返り、人一人通ってはいない。何ら苦労すること無く、
俺達は町の南西に位置するポケモン研究所の前にたどり着くことができた。

 正面の自動の機械仕掛けであろうガラスの扉はしっかりと閉じられている。ガラス越しに見える内部は薄暗く、
出口へ走るような格好をしている簡略化された人間の絵が描かれた四角い電灯だけが、淡く光っていた。
 周りを探っても、窓から裏口まで至る所がしっかりと施錠され、やはり潜り込めそうな隙間は無い。
 幸いなことに、まだ中に人間のいる気配は無かった。残業している研究員がいたら少々厄介な事に
なっていたが、そんな奇特な輩は一人もいないようだ。随分とまあ、やる気のある研究所で助かった。
 さて、計画通りにいくといいが。

       ・

 ピジョンに手を貸してもらい、俺達は屋上に潜んで人間を待ち構えた。
 日が昇り辺りが少しづつ明るくなり始めた頃、研究所へ近づく人影を見つける。
 白衣を着ているわけではないが、一目見て明らかに研究員といった風貌の痩せた男だ。
 俺が目で合図を出すと、ロゼリアは小さく頷いた。
 男は研究所の裏口に回り込むと、ポケットをごそごそと探り鍵の束を取り出す。
そしてその一つを鍵穴に差し込んで回し、ドアを開けた瞬間、その頭上に花粉が降り注いだ。
 男はそれを吸い込み、くしゃみの勢いで前のめりになったかと思うと、そのまま昏倒してしまった。
 屋上から俺達は素早く降り立ち、倒れた男を研究所の中に三匹がかりで引きずり込んだ。
 ドアを閉め、起こさぬよう男をそっと適当な壁に寄り掛からせ、ポケットから鍵の束を盗みとる。
 さあ、潜入開始だ――。
260名無しさん、君に決めた!:2007/12/08(土) 08:24:57 ID:???
GJGJ!!!
261名無しさん、君に決めた!:2007/12/09(日) 00:32:09 ID:???
乙!
262名無しさん、君に決めた!:2007/12/09(日) 05:27:58 ID:???
dat落ちしろ糞スレ
263名無しさん、君に決めた!:2007/12/09(日) 06:29:01 ID:???
誤爆乙
264名無しさん、君に決めた!:2007/12/09(日) 07:34:41 ID:???
どこと間違えたんだ
265名無しさん、君に決めた!:2007/12/09(日) 07:55:03 ID:???
スルースルー
266名無しさん、君に決めた!:2007/12/09(日) 20:12:54 ID:???
さて、明日にでもまた続き書きたいんだぜ
267名無しさん、君に決めた!:2007/12/11(火) 05:02:15 ID:???
「では、俺は屋上で見張りをしている。何かあればすぐに鳴いて知らせよう。うまくやれよ。」
「うむ」
 器用に鍵をくわえて裏口ドアに錠を掛けると、ピジョンは一足先に傍の窓の内鍵を外し開け外に出た。
 手筈通り俺は窓を閉め直し、再び内鍵を掛ける。これでもうしばらくは誰も入って来れんはず。
 しかし、それもあの男が目覚めるまでの間だけだ。いつ目覚めるかわからん、手早くやらねば。

 裏口から先はすぐ右へ直角に折れて続いていた。
 角を抜けた先、真直ぐに伸びる廊下には、小さな窓と扉が廊下を挟んで対面するように
一定の間隔で五組並んでいる。廊下の先は広まっており、外からも見えた受け付けのようなものが見えた。
ここからは確認できないが、すぐ脇にはガラス戸の正面玄関があることだろう。
 扉は全部で五つ、すべての部屋を見て回るのは時間的に少々厳しい。鍵が有っても、俺とロゼリアの背丈では
開けるに相当難儀するだろうということは容易に想像できた。
 だが、何の手掛かりも無い以上、片端から手当たり次第に開けていくしか術は無い。
まずは定石であろう一番手前の扉からだ。

「待ってください、そこは物置のようです」
 一番手前のドアの前で俺が立ち止まろうとした時、ロゼリアから声がかかる。
 何故分かるのか疑問に感じながら振り向くと、ロゼリアはドアの上方を指し示した。
「あのプレートにそう書いてありますよ」
 俺には読めんが、確かにドアの上に貼りつけてある小さな板には人間の文字で何やら書いてあるようだ。
「でかした。人間の文字が理解できたとは、思わぬ助けだ」
「え? それもあって僕を連れてきたんじゃあ無いんですか……?」
 まさか忘れていたとは言えまい。
「……計算の内だ」
「怪しいなあ」
 疑いの眼差しを、さっさと行くぞと強引に突っぱね、俺は次の扉へと向かった。
268名無しさん、君に決めた!:2007/12/11(火) 06:33:28 ID:???
GJ!
269名無しさん、君に決めた!:2007/12/12(水) 16:56:52 ID:???
明日続きを書けたら書きたいです
270名無しさん、君に決めた!:2007/12/14(金) 07:42:33 ID:???
「ここは、えーと――実験室とありますね。例の装置があるのはここじゃないでしょうか」
 物置の隣は所長室であった。それらを経て、俺達はようやくそれらしき扉の前へとたどり着く。
「ああ。では手伝え。開けようにも鍵穴に手が届かん」
 俺とロゼリアの二匹分で丁度良く届きそうな位置に鍵穴はあった。
 ロゼリアの力では恐らく俺の体重は支えきれん、それに頭に生えている刺が危険だ。
――ということで、仕方なく俺が台となりロゼリアを支える羽目になった。
 それにしても、立場上部下である者に踏まれるのは予想以上に何とも屈辱的で堪え難い状況だ。
このような事になるのならば、多少危険は増えようがもう一匹誰かを連れてくるべきであった。
「開きました」
 後悔の念に駆られているうちに、頭上からカチリという音と声が降り掛かる。
「じゃあ、下りま――うわっ!」
 扉が開きかけたと同時に、腹いせに俺はロゼリアを振り落とすように下ろしてやった。いい気味である。

 実験室内にはパソコンと呼ばれる機械が備え付けられた机や、分厚い本が詰まった背の高い本棚が幾つも配置され、
奥にはわけの分からない大きな機械が数台置かれている。
「化石の復活を行う部屋は、どうやらここで間違いなさそうですね」
 そして機械達から伸びるコードを一身に集める円柱状のカプセルが部屋の奥隅にあった。
 カプセルの手前の机によじ登ってみると、木枠に入れられた石ころが並んでいた。
渦巻き貝や甲羅が彫刻されたような造形からして、これは実験用の化石に違いない。
 ここに琥珀を紛れ込ませておけば後は人間共の出番だ。俺達はどこかに身を潜め、
頃合いを見計らって奪い去ればいい。
「勿論、順序よく最後尾に並ぶつもりはありませんよね?」
「当然だ。結局は全て奪ってやるにしても、幾多の苦難を乗り越えてわざわざ持ってきた琥珀だ。
何が蘇るのか他の化石よりも先に見たいものではないか」
「わかってらっしゃる」
 他の化石を押しのけ、琥珀を列の先頭に置いた。そして最も若い実施日時が書かれた紙を琥珀へと張り替える。
 後はどこに身を隠すか――何気なく見上げた天井に通風口を見つけた。
位置的に本棚に上がれば格子を外して潜り込めそうだ。
 廊下の方から何者かの足音が響いてくる。急がなければ。
271名無しさん、君に決めた!:2007/12/14(金) 13:09:50 ID:???
GJ!
272名無しさん、君に決めた!:2007/12/15(土) 20:19:31 ID:???
明日にでも続き書きたいんだぜ
273名無しさん、君に決めた!:2007/12/15(土) 23:09:08 ID:???
がんばれー
次回もwktk
274名無しさん、君に決めた!:2007/12/17(月) 08:17:02 ID:???
ごめんなさい、事情により投下は明日になりそうですorz
275名無しさん、君に決めた!:2007/12/18(火) 05:34:46 ID:???
 扉を開け入ってきたのは侵入の際に眠らせたあの男だった。男はびくびくと隅々を見回して室内を探っている。
 荒らされた形跡も侵入者の影も確認できなかったのか、しばらくして男はほっと胸を撫で下ろすように
ため息を吐いた。
 実際に侵入者は上に二匹居るのだが、まさかこんな狭い通風口内に忍び込める者が来るとは、
見た目からしてうだつが上がらなそうなあの男でなくとも思うまい。
 俺が予め下に落としておいた鍵の束に気付き、男はそれを拾い上げた。何故ここに落ちてるのかと首を傾げながらも
それ以上詮索しようとはせず、昨日飲み過ぎたかなー、などと呟きながら男は部屋を出ていった。
他の場所の解錠に向かったのだろう。あの間抜けぶりならば、鍵の束から二本程減っている事にもきっと
すぐには気付きはしない。気付いても自分がどこかで落としたと勝手に思い込む事だろう。
 平和ぼけというのは実に恐ろしいものだ。これでは十歳位のポケモントレーナーを志す人間の子供に
家に不法侵入された挙げ句、机に何気なく置いていた物を勝手に持っていかれたとしても文句は言えない。

 少し待てば他の研究員もその内にやってきて実験が開始される筈だ。焦る必要はない、
こちらは裏口と窓の鍵を確保している。いつでもどちらからも臨機応変に逃げ出せるのだ。
 それに切り札もある。

       ・

 程なくして研究員達が集まり、実験は開始された。
 格子の隙間から俺達は事の運びをじっと見守った。のだが――。
276名無しさん、君に決めた!:2007/12/18(火) 05:37:08 ID:???
「予想を遥かに超えて時間がかかりそうですね……。下手をすればまだ半日、いや、一日はかかるかも……」
「……うむ」
 実験が始まってからもう数時間は経った筈だ。だが、今だにカプセル内の琥珀は元の楕円形を留めている。
 白く眩しい光がじわじわじわじわと琥珀の表面を覆おうとしてはいるのだが、今の今まで待ってようやく
全体の五分の一まで包んだ程度というのが現状だ。
「どうします? さすがにここで夜を明かすのはちょっと……。
外で待つピジョンさんも一日中僕達が出てこなかったら、何かあったのかと気が気じゃないでしょうし」
 確かにこの狭く少し黴臭い通風口の中で、これから更に一日近く缶詰になっているなど耐えられない。
 ピジョンがミミロップ達を呼びに行き全員で誤認救助に来られては大騒ぎになってしまう。
 どうするべきかと思案していた時、研究所内にチャイムの音が響き渡った。その音を聞き、研究員達は
途端に気が抜けたように気だるく背を伸ばしてみたり、欠伸をしたりしながら散り散りに実験室を出ていく。
「……昼休みというところですかね」
「一旦退くならば今が好機か」
「僕達も休憩と行きましょうか。そういえば朝から何も食べてないんですよね」「うむ」

 ――この時、俺は気付くべきだった。
 町外れの廃墟と化した屋敷で着々と脅威は育っていた。次々と積み上がる書物。
自らの出生、クローン、人間、ポケモン――様々な事を学び、知るたびにそれは歪んでいった。
 すぐにでも止めるべきだったのだ――。
277名無しさん、君に決めた!:2007/12/18(火) 07:25:43 ID:???
GJ!
278名無しさん、君に決めた!:2007/12/18(火) 09:59:41 ID:???
GJ!

>これでは十歳位のポケモントレーナーを志す人間の子供に
>家に不法侵入された挙げ句、机に何気なく置いていた物を勝手に持っていかれたとしても文句は言えない。

↑ちょwwww
279名無しさん、君に決めた!:2007/12/19(水) 15:42:45 ID:???
明日また続き書けたら書きたいです
280名無しさん、君に決めた!:2007/12/21(金) 07:08:10 ID:???
 実験室の窓から無事脱し、俺は口笛でピジョンへと合図を出す。
 直ぐ様、羽音を立ててピジョンは屋上から舞い降りてきた。
「無事だったか! 少し出てくるのが遅いもんで心配していたが。それで、どうなった?」
「ああ――」

          ・

「ふうむ、なるほどな」
 俺達は研究所の屋上へと上がり、ピジョンに状況を伝えた。
 どうにも落ち着かん。物事をいつまでも待たされるのは性分ではない。
だが、今は待つより他はない。俺達に手が出せる事はこれ以上無いのだ。
 消化不良の感と苛立ちを覚えていると、ピジョンが何か思いついたように両手もとい両羽を打った。
「そうだ、どうせ今日はもう何もできることが無いのならば温泉で長旅の疲れをとるなんてどうだろうか。
あれは中々にいいものだぞ」
 名案が浮かんだのかと期待してしまいそうになった矢先に飛び出たのは、予想の的を大きく外した
実に下らない提案であった。
 普段ならば即刻すっぱりと切り捨てる案であるがするべきことが無いのも事実。
「……温泉だと?」
「ああ。火山あるところに温泉あり、だ。ピジョットさん達が生きていた頃に行ったことがある。
人間が登れないようなところに丁度沸いていてな。ポケモンだけの秘湯というやつだ」
 そこでグレン島に生息するポケモンにも会えるかもしれん。火山があるこの島には炎の力を持つ
ポケモンが必ずいるはず。
 我が配下には炎の力を行使できる者が少ない。うまく取り込めば戦力の大幅な増強に繋がることだろう。
「いいだろう。案内するがいい」
「よし、では早速洞窟に待つ奴らも呼びに行こう」
 それに昨日芯まで冷やされた体を芯まで暖めるのもいいかもしれない。
 自らの体調を常に万全に整えるのもまた覇道を歩む者には重要なことだ。
 ――そのようにでも思わないとやっていられなかった。
281名無しさん、君に決めた!:2007/12/21(金) 07:16:25 ID:???
GJ!!
282名無しさん、君に決めた!:2007/12/21(金) 07:18:40 ID:???
GJ!
283名無しさん、君に決めた!:2007/12/21(金) 09:49:40 ID:???
乙!
284名無しさん、君に決めた!:2007/12/21(金) 23:56:41 ID:???
そろそろ上げときますか
285名無しさん、君に決めた!:2007/12/22(土) 05:31:01 ID:???
また明日書けたら書きたいです
286名無しさん、君に決めた!:2007/12/24(月) 07:51:53 ID:???
 ピジョンの案内で辿り着いたのは町から大分外れた、火山寄りにある高い崖の上であった。
突き出た岩が丁度屋根のように覆い被さり、これなら下からも上空からも一見しただけではわからない。
 確かに人間には見つかるまい。だが、それと同時に鳥でもなければこんな所には来れん。
 炎ポケモンが居るかもしれないという俺の期待の一つは、脆くも崩れ去ったということだ。
飛べる炎ポケモンなど伝説上の鳥や、野性では極々珍しいリザードンぐらいであったはず。
虫のごとく壁や天井に爪を食い込ませはい回る不気味な炎ポケモンなど、見たことも聞いたことも無い。

 火山に近付き始めた辺りからも仄かに漂っていたが、この少し濁った温泉が上げている湯気からは
より強くそれを感じる。耐えきれない程では無いが、その匂いは温泉というものを生まれて初めて
直に見て体験する俺が近づくのを十分に躊躇させた。
「何なのだ、この匂いは?」
「硫黄と言うらしい。別にお湯が腐っているわけじゃあない、安心して入っていいぞ。
いらないのなら、一番風呂は俺がいただこう」
 そう言うとピジョンはお湯目がけ駆け出し、ザブンと音を立て飛び込んだ。顔に跳ねたお湯を羽で
払うと、いかにも極楽といった風に顔を緩ませ息を吐いた。
 むう……。何故かはわからんが、一番に入るのを取られたら損をした気分にさせられた。
 こうしてはいられない。今は二番手に甘んじてやる。が、それ以下になることは己が許さん。
 湯に駆け出そうとマントを脱ぎ捨てると、不意にロゼリアと目が合った。

 ――この目、俺と同じく狙っている。飢えた者の目だ。
「ここは俺に譲るべきだとは思わないか、ロゼリア?」
「思いませんねえ。勝負は男の世界。上下関係なんて紙屑以下の価値しか有りませんよ」

 権力による圧力は効かない。こうなれば実力で奪い取ってやるしかあるまい。
何があろうと冷静につとめるようにしている俺でさえも熱くさせる何かが、あれにはある。
 そして、進化してから一段と小賢しくなってきているこいつに、威厳と実力差というものを見せ付けてやる。
 帝王はこのピカチュウだッ! 依然変わりなくッ!
287名無しさん、君に決めた!:2007/12/24(月) 07:54:01 ID:???
 早撃ちによる決闘のような緊張した空気がロゼリアとの間に流れる中、最初に行動を起こしたのは俺だった。
 電光石火の速さでロゼリアの目の前に回り込み、その眼前で両手のひらを合わせ打ち電気をスパークさせる。
 うまく怯んだのを確認し俺は素早く方向転換し、湯に駆け出した。
「ひ、卑怯ですよッ!」
「ふん、何とでも言うがいい。最終的に勝てばよかろ――」
 言葉の途中で右足に何かが絡まり、姿勢を崩して俺は盛大に体を地に打ち付けた。
 右足を見ると草が鎖のようにいつの間にか結ばれていた。草一本生えていないこの場所で
このような偶然は起こりえない。犯人は分かり切っている。
「卑怯な!」
「その言葉、そのままお返ししますッ!」
 草を解き起き上がった時点で、スタートでの差は無くなっている。
ぶつかるように競り合い、湯に飛び込もうと足を踏み切ったのはほぼ同時――。

 湯に全身が沈み込んでしまい、俺は手足を必死にかいて浮上し、息を整えながら岩の湯槽の縁に掴まった。
 横で同じようにしてロゼリアが上がってくる。

「俺の勝ちだ。所詮貴様などその程度にすぎん」
「いえ、僕の勝ちです。支配者の座は僕に譲った方がいいんじゃないですか?」
 俺達が言い争う中、後ろから何かが水中から飛び出すような音がした。争いを中断し、二匹で振り向く。
「せんすい、にじゅうびょうー」
「すごいなあ、ボクは十秒もお湯の中に顔をつけてられないや」
 俺はロゼリアと顔を見合わせる。既に二番手どころか三、四番手だった。
何が起こったのかはよくわかる。くだらない小競り合いをしている内に入られていた。それだけだ。

 もう二度とくだらないことで熱くはなるまい……。
そう心の中で誓い、疲れ果てた俺とロゼリアはぶくぶくと湯に沈んでいった。
288名無しさん、君に決めた!:2007/12/24(月) 08:34:28 ID:???
GJ!
ヒードランwww
289名無しさん、君に決めた!:2007/12/25(火) 01:42:03 ID:???
クリスマスの夜、シンオウ地方
降り積もる雪の中―――ダークライは混乱の中にいた。

何故、俺はこんな所にいるのか。
何故、こんな趣味の悪い真っ赤な服を着ているのか―――

茫然と立ち尽くしているうちに、少しずつ意識がはっきりしてくる。
必死に頭の中を整理し、記憶の糸を手繰り寄せる。


力を奪われ、俺は負のエネルギーの無いあの忌々しき空間の中で長い間耐えていた。
ろくに動くこともできず、ただただ変わらない真っ白な地平線を眺めていた。
そんな時―――奴らがやって来た。
今思えば、神の手先である奴ら警戒を怠るべきではなかった。
しかし、長期間の幽閉が俺の判断を鈍らせたのだ。

 『やあ (´・ω・`)』
 『…なんだ貴様は』
 『オイラはアグノム。こっちはユクシー。パルキアに言われて君に会いに来たんだ。』
 『・・・・・』
 『まぁ、そんな怖い顔しないで。君を自由にしに来たんだからさ。』
 『―――!? 』
 『といっても、まず今までの罪を償わなければいけないんだけどね。でも今君は、きっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。』
 『詳しく聞かせてもらおうか―――』
290名無しさん、君に決めた!:2007/12/25(火) 01:43:22 ID:???
『―――つまり、今日中に108匹のポケモンにクリスマスプレゼントとやらを配れと?』
『そういうこと。ただし、必ず手渡しすること。他のポケモンを傷つけないこと。どう?やってみる?』
『…いいだろう』

―――ここで記憶が途切れている。
途中、ポカン!と大きな音がしたようなしなかったような

そうこうしているうちに一時間も時を無駄にしてしまった。
早くこの巨大な袋を空にしなくては

右腕に力を集中し、グイと袋を持ち上げるように右腕を上げる。
が、ビクともしない。まだ力が回復していないのか?仕方ないので肩でしょうことにした。

さて、まず何所に向かおうか


――――――――――――――
クリスマスなので小ネタを
今日中にまた書く
108匹全部書けるわけないからネタあったら投下してくれ
291名無しさん、君に決めた!:2007/12/25(火) 07:16:06 ID:???
GJ!
292名無しさん、君に決めた!:2007/12/25(火) 08:26:57 ID:???
GJ!!
293名無しさん、君に決めた!:2007/12/25(火) 14:41:14 ID:???
まさにナイトメアクリスマス
294名無しさん、君に決めた!:2007/12/25(火) 17:50:18 ID:???
森の洋館前の茂み、
この服装のおかげだろうか、すんなりとプレゼントを受け取ってくれる奴も多い
特に子供は簡単だ、差し出すだけで目が輝き迷うことなく飛びついてくる
しかし一通りこの島を廻ったにもかかわらず、俺が知っている―――神の記憶にあったあの鼠の手下どもの姿を全く見ない
恐らく―――あの大きな屋敷に集まっているはずだ

袋の中に残っているプレゼントは半分ほど、しかし既に日は暮れ、一日が終わろうとしている
今のやり方では、今日中に配り終えることはできないだろう
―――多少癪に障るが、奴らにプレゼントを配り、一気に終わらせるしかあるまい
大きく息を吐き、ダークライが袋をしょいあげる
295名無しさん、君に決めた!:2007/12/25(火) 17:51:37 ID:???
同刻、隣の茂み、
「ケケッ、去年のようなヘマはしないぜ」
「流石、ゲンガーさま!」
懲りずに今年もやって来たゲンガー
だが今年のゲンガーは一味違う、去年の失敗を踏まえ「気合い球」を会得した
スゴイぞー!カッコいいぞー!
「ところでオヤビン、後ろにいる気球みたいなやつはなんです?」
「ぷわわー」
「ケケケ、こいつはフワライドといってだな、壁抜けもできれば爆発もできるんだぜ。
こいつと一緒に屋敷に忍び込み、パーティをメチャクチャにしてやるぜ!行くぞ!ゴースト共!」
「「「アイアイサー!」」」
296名無しさん、君に決めた!:2007/12/25(火) 17:56:11 ID:???
ガツンッ

「―――ッ!」「ウゲッ!」
不意に、俺の肩に何かがぶつかり、バランスを崩す
なんだ、このゴースト共は―――ん、俺にぶつかって来たこいつは…
「貴様、ピカチュウの手下か?」
「ケケケ、なーに言ってんだ。俺はアイツ等のパーティを邪魔しに来たんだぜ。お前こそ誰だ?」
「・・・・・」
「オヤビン、知らないんですか?この赤い服、大きな袋にプレゼント、どう見てもサンタじゃないですか」
「ウゲッ!本当か!?」
―――どうやら、あの鼠とは敵対関係にあるようだ。パーティを邪魔され、プレゼントを配りきれないという事態は避けなければならない
「貴様ら、今日は帰れ。そうすれば見逃してやる」
「ケッ、いくらサンタの言うことだろーと、それには従えないぜ。」

仕方ない、少し痛い目に合わせてやろう

297名無しさん、君に決めた!:2007/12/25(火) 18:17:31 ID:???
GJ!!
298名無しさん、君に決めた!:2007/12/26(水) 00:46:45 ID:???
「ケケケ、なかなかやるじゃねーか」
「・・・・・」
迂闊だった―――記憶が途切れている内に何か細工をされたらしい
ほとんどの技が使えない、というよりもむしろ思い出せないという方が適当だろうか
チッ、技さえ使えればこんな奴ら―――

バタンッ

「さっきから騒がしいと思ったら、、、喧嘩ならあっしらも混ぜなっ!」「ヒャハー!」
「キィキィ!!」「七武海として黙っているわけにはいかないな!」「ケッケッケッ!」
「ウゲゲッーー!」

昨日からずっと飲んでいるのかこいつ等…完全に出来上がっている
まあ、そんなことはどうでもいい。今の内にッ!

「おい、そこの狸。」
「おっ?」
「助けてくれた礼、と言ってはなんだが、これを受け取ってくれ」
「もしかしてサンタさんかお!ありがとうだお、クリスマス終ってるけどうれしいお!」
「なん…だと?」
「もうそろそろ1時になる所だお、まずいお!アニメの再放送が始まるお!」
「ちょっ、待て…」
クリスマスが終わった―――ということは―――つまり―――
「ぐおおおおおっっ!!」

夜明け、屋敷の前には暴れ疲れて眠りこけているドンカラス達、
ふるぼっこにされたゲンガーとゴースト共、
そしてぼろぼろになった赤い服とたくさんのプレゼントが転がっていた

現実は非情ぷわ(・×・`)

299名無しさん、君に決めた!:2007/12/26(水) 06:59:31 ID:???
GJwwww
300名無しさん、君に決めた!:2007/12/26(水) 07:33:39 ID:???
乙&GJ!


さて、明日にでも本編を書けたら進めたいんだぜ
301名無しさん、君に決めた!:2007/12/28(金) 08:00:39 ID:???
間に合わんかったorz
投下は今日の夜か深夜になりそうです…
302スルー推奨:2007/12/28(金) 20:25:28 ID:???
ほし
303名無しさん、君に決めた!:2007/12/29(土) 06:22:43 ID:???
 体が芯まで暖まり、良い具合にほぐれたのを感じる。
 確かに温泉というのは良いものだな。いつか旅を終えた時、多少他より条件が悪くとも
温泉が湧く土地を優先し永住の地として選んでしまってもいいくらいだ。
 賑やかすぎる入浴を終え、崖の際辺りに腰掛けて火照る体を涼ませながらそのように思っていた。

 ――いつか旅を終えた時、か。遠い先の話だ。
 全世界。果てしなき道だ。先を案ずるだけで目が霞む程の。
 生涯のすべてをかけて挑むことになるのかも知れん。旅路の途中に骨を埋める事になる可能性すらあるだろう。
……上等である。望むところだ。

 ふぁさり、と不意に背中の方から布の感触が体を覆う。
「ずっと風に当たってると、湯冷めして体に悪いわよ」
 振り向くと、手間かけさせないでよね、とミミロップが笑んだ。
「ああ、すまんな」
 ふと思う。こいつらにはどの程度の覚悟があるのだろうか。
ただ自覚なく成り行きで今まで俺に流されてきただけではないのか、と。
 その時は――。
「――お前に問おう。我が覇道、立ち止まることなく命尽くまで歩み続ける覚悟はあるか」
「え! もしかして、それプロポーズ?」
 がくりと落ちそうになる肩と、沸き起こる頭痛を俺は堪える。
「……お前の耳は一体どういう構造をしているのだ。真面目な話をしている。
 もう旅の同行の無理強いはしない。お前達が求めるならばいつでも自由を――」
 ミミロップはつまらなそうに息をつき、呆れたと言いたげな様子で手をひらひらさせた。
「何を今更……。そんなこと言ったらロゼリアちゃん達も怒るわよ。――答え、聞かなきゃわかんない?」
 ……愚問だったか。湯の熱で俺はどうかしていたようだ。

「ふん、平穏に生きる道へと戻れる最後の機会を与えてやったと言うのに。愚かな奴だ」
「だから責任とって、早く私をお嫁にしなさい」
「知らん、お前の自己責任だ」
「ちぇっ」
304名無しさん、君に決めた!:2007/12/29(土) 06:24:20 ID:???

 海岸洞窟への帰路、俺は昨日出会ったあの者――確か名前はミュウツーと言ったか――の事を何気なく思い出す。
 無事に屋敷にたどり着けただろうか。
そして、失った記憶への手掛かりを見つけることはできたのだろうか。
 あの者に出会った時、どうにも放っておくことはできなかった。程度は違えど、その苦しさを俺は知っている。
 様子を見に行ってみるか。
 そう思い立ち、俺はピジョンに屋敷まで案内するよう話す。

 もしも何も手掛かりを見つけることが出来ず、途方に暮れているようなら――共に歩む道を与えてみよう。
 もう一匹くらい厄介な旅の同行者が増えてもいいだろう。


 ――もっと早く行っていれば、少しは違う結果へと導けたのかもしれない。
 だが、遅かった。
305名無しさん、君に決めた!:2007/12/29(土) 10:54:00 ID:???
GJ!
306名無しさん、君に決めた!:2007/12/29(土) 13:07:28 ID:???
GJJJ!!
307名無しさん、君に決めた!:2007/12/29(土) 22:24:15 ID:???
テラGJ!!期待!!
308名無しさん、君に決めた!:2007/12/30(日) 12:55:08 ID:???
また明日続き書けたら書きたいんだぜ
309名無しさん、君に決めた!:2007/12/31(月) 00:44:55 ID:???
年末年始なのに乙
310名無しさん、君に決めた!:2008/01/01(火) 02:51:11 ID:???
明けましておめでとう、職人の皆さんには今年も期待してます!
311名無しさん、君に決めた!:2008/01/01(火) 08:33:35 ID:???
新年一発目の投下は少し遅れそう何だぜ…orz
いつまの時間帯までには何とか投下したいです…
312名無しさん、君に決めた!:2008/01/02(水) 16:06:41 ID:???
 その屋敷はグレンタウン北西の端にひっそりと存在していた。
 屋敷の前に降り立つと、まだ昼過ぎ間だというのにこの場だけがどこか薄暗くなっているように感じる。
 長年手入れがされていないのかその敷地は荒れ果て、伸びきった雑木や雑草が身を隠すカーテンのように
屋敷の周りを覆っており、その有様はまるで町からその存在を厭われ隔絶されているかのようだ。
 洋風の外壁は煤け、幾つもある窓には埃や汚れが厚く積もり、屋敷全体が大きな暗雲を思わせた。

「薄気味の悪い所だ」
 このような場所にあの者はどのような関わりがあるというのだろう。
 廃墟と化した建物は、シンオウの洋館からも言えるようにポケモンの絶好の住みかだ。
この屋敷にはミュウツーの仲間が住み着いているのだろうか。
 だが、何かがシンオウの洋館とは違う。それは見た目のせいだけではない。屋敷全体を纏う空気が
嫌悪を呼び起こすのだ。
 普通ではない【何か】がこの屋敷にはある。そう感じさせる原因はわからず、うまく説明はできんが――。

「なに? もしかして怖くなった?」
 俺が呟き漏らした一言を耳ざとくも拾い上げたのか、ミミロップがからかうように尋ねてきた。
「ふん、そんなわけないだろう」
「……あの、こんな所に立ち止まってないで、暗くならない内に早く探索を済ませんか」
 下らない問答の横から冷静にロゼリアが意見する。だが、見るとその顔は少し引きつり、
明らかにいつもより青い。それに気付き、ムウマージがにやにやと笑みだした。
「あー、ロゼリアこわいんだー」
「ち、違いますよ!」
「どーだかねー、キャハハ」
 放っておけば暗くなるまでこのいたちごっこが続きそうだ。
「うるさい、黙れ。さっさと入るぞ!」
「は、はーい」
「ぼわーん……」
 やれやれ、緊張感が台無しだ……。
 はて、前にも似たようなやり取りがあったような気がするが。
313名無しさん、君に決めた!:2008/01/02(水) 17:17:26 ID:???
GJ!
314名無しさん、君に決めた!:2008/01/03(木) 11:38:26 ID:???
明日にでも続き書けたら書きたいんだぜ
315名無しさん、君に決めた!:2008/01/04(金) 18:30:21 ID:???
保守age
316名無しさん、君に決めた!:2008/01/05(土) 08:09:54 ID:???
 観音開きの玄関に施錠をしていたと思われる錆付いた鎖は、ばらばらにちぎられ、
人間の言葉が書かれた板――ロゼリアによると【立ち入り禁止】と書かれているらしい――と共に無残に
散らばっていた。ひしゃげたドアノブはその役目を果せなくなり、支えを無くした一対の扉は
ふらふらと交互に風に揺れている。
 軽く右の扉を押してみると、ぎぃ、と耳に障る金切り声のような音を立てて俺達の侵入を許した。

 黴や埃の混じった疎ましい臭いが鼻につく。
 内部は所々ひびが走り、崩れた壁や天井の破片と埃がそこら中に小山を成していた。
 歩むたびに細かい埃や塵が舞い、毛並みにこびり付いて癪にさわる。それにより吐き出される
ミミロップ達の文句もまた、募る苛立ちに拍車をかける。

 ああ、まったくもって不愉快だ。外観は同じようでもここに比べたら森の洋館は瓦礫に足を妨げられたり、
軽く扇いだだけで埃や埃の濃霧が飛び交わない分、最上の豪邸といえよう。
 そういえば、ドンカラスは洋館をわざと汚らしい外観のままにしていると言っていたような気がする。
人間が近づきがたい雰囲気を作り出すのに一役買っているのだと。
ドンカラス達が住み着く前はそれこそベトベターでもなければ住みたがらないであろう惨状で
あったらしいが、現在は自称綺麗好きであるドンカラスの命令で屋敷の美観――いかに恐ろしく、
不気味な見た目であるか――を損ねすぎない程度に掃除をさせているらしい。

 それが目的だとしても、この屋敷は少々やりすぎではないのか。汚れに無頓着な者もポケモンの中には
居るだろうが、少なくとも俺はそのような者とは相容れん。

 少し奥の方まで踏み込んでみたが、まだあの者の姿や気配は無い。それどころか誰一匹として見かけてはいない。
鼠の一匹や二――む。ポケモンの一匹や二匹くらいはそろそろ見かけてもいい頃だとは思うのだが。
317名無しさん、君に決めた!:2008/01/05(土) 08:13:00 ID:???
 一階にはいないのかもしれない。そう考え、玄関から入りすぐの所に二階への階段があったことを
奥に歩みながら思い出していた時、朽ちゆく屋敷の中で今だ堅牢に一室を塞ぐシャッターを俺は見つけた。 ただの防火扉というものであろうか。だが、そうだとしたら開閉の操作パネルが近くにはどこにも見当たらない。
これでは運悪く逃げ遅れれば最後、閉じ込められてしまい逃げられないではないか。

 シャッターの先にあの者がいる可能性は低いが、とりあえず確認だけはしたほうがいいだろう。
 しかし、シャッターを力付くで開けるのは不可能に近いと判断し、まだ調べていなかった部屋に
向かい何か手段は無いかと足を踏み入れた。
 部屋に置かれていたのは半ば朽ち果てた椅子と机。そして――。

 この屋敷とあの者は間違いなく深い関わりがある。
 年月を経て埃を厚く被ってはいるが、二メートル近い巨躯を持つ実寸大の像――あの者、
ミュウツーによく似た像――がそれを物語っていた。
 入る前から薄々と感じていた事だが、やはりこの屋敷は何かが変だ。普通に住居として
使われていたのでは無いように思う。
318名無しさん、君に決めた!:2008/01/05(土) 08:24:11 ID:???
GJ!
319名無しさん、君に決めた!:2008/01/06(日) 16:43:21 ID:???
明日書けたら書きたいです
320名無しさん、君に決めた!:2008/01/08(火) 07:21:28 ID:???
 何かあの者について書かれているのではないか。
 台座に積もる埃と汚れを払い調べてみると、期待していたような記述は無かったが
代わりに台座の一部分に小さな四角い切れ目があるのを見つけた。
 軽く指先でつつくように押してみると僅かに奥へとずれる。秘密のスイッチというものか。
罠の可能性も一瞬疑ったが、そうであればここまで巧妙に偽装はしないだろうとそのまま指先に力を込めた。
 数センチ押し込んでカチリと音を鳴らした瞬間、像の目が敵意を示したがごとく赤に輝く。
 ――やはり罠か!
 瞬時に飛び退いて身構えるが、遠くからぎちぎちと錆びた鉄同士が擦れ合うような音が響いてきただけで、
それ以上は何も起こらなかった。
 ……背後からくすくすと数匹の混じった笑い声が聞こえてくる。俺は大きく咳払いし、
きまりの悪さを抱えながら部屋を出た。
 恐らく閉じられていたシャッターが既に開いていることだろう。
 まったく、シャッターの開閉スイッチごときに趣味の悪い仕掛けを……。やはり人間はろくなものではない。

              ・

 先程のシャッターは確かに開かれていた。
 しかし、その先の部屋はまた新たなシャッターに阻まれ、並んで二つある行き先はどちらも固く閉ざされている。
室内を探しても当然のように開く手段は無い。装置が古びているため動作不良を起こしているのかと、
像の在った部屋に再び戻り、スイッチを入れ直しては往復することを念のため数回繰り返しても、
状況は変わらなかった。右と左、二枚のシャッターは並んで口を閉ざし続けている。
 これ以上為す術はないと一階に見切りをつけ、二階の探索へ向かおうとした時、ロゼリアが俺を呼び止めた。
321名無しさん、君に決めた!:2008/01/08(火) 07:23:56 ID:???
「あれをよく見てください」
 ロゼリアが指す方向――シャッターの上の辺り――を見てみると、錆付いた周りと比べて
縦線状に真っ直ぐ錆が剥がれている部分が確認できる。極最近に何回も擦れて出来たような擦り傷だ。
「こんな傷、最初にこのシャッターを見たとき付いていましたっけ」
「いや、そのような覚えはない。……何が言いたい」
「この二枚のシャッター、最初は開いてたんじゃないですか? つまり一枚目、入り口の
シャッターが開くと同時に、この二枚のシャッターは閉まるんだと思うんです」
「ふむ。だが、先にミュウツーがこの屋敷に来ているはず。何らかの手段を見つけてこのシャッターを開け、
その時から既に傷がついていたのではないか? 俺達が今まで傷を見落としていただけかもしれん」
「確かにあの傷だけではそうともとらえられますが……次はあれを」
 次にロゼリアが指したのは右のシャッターの下、隅。色合いからして、元は剥がれてそこら中に
散乱している四角い床タイルの一枚だったようだ。シャッターに挟まれでもしたのか
ばらばらに砕かれている。左のシャッターの隅にも同じ物があった。
「像のある部屋にまた戻る前に、シャッターにあれを立て掛けておいたんです。屋内ですから強風なんて吹きませんし、
地震なんて起きましたか? ちょっとやそっとじゃ倒れません。寄り掛かっていたものが動いたりしない限りは」
「……なるほど。では誰かにスイッチを押しに行かせればいいのだな」
「そういうことです」
 さて、どうするか。
322名無しさん、君に決めた!:2008/01/08(火) 18:21:32 ID:???
GJ!!
323名無しさん、君に決めた!:2008/01/09(水) 15:40:32 ID:???
明日にでも進められたら進めたいです
324名無しさん、君に決めた!:2008/01/11(金) 03:58:45 ID:???
ごめんなさい、間に合いませんでしたorz
明日までにはなんとか投下したいです…
325名無しさん、君に決めた!:2008/01/12(土) 08:12:38 ID:???
 単独で行動させるのは避けたいところだ。さらなる異常性を未だ内に秘めていそうなこの屋敷に、
隙を見せてはならない。暗闇に潜んだ何かが、いつ牙を剥いて喉元に喰らいかかってきてもおかしくはない、
そのような思いが拭いきれなかった。
「それならば俺が行ってこよう」
 そう最初に名乗りを上げたのはピジョンであった。
「これだけ穴だらけの壁や天井だ。シャッターの向こう側に抜ける道も他にあるかもしれない。
その場合、飛べる俺のほうが都合がいいだろう。穴を降りた先は八方塞がり――なんて可能性もあるしな。
それにペルシアンへの土産話ももっと増やさなきゃあならん。独自に少し調査もしたい」
 確かに適任ではある。反対する理由はない。
「ではムウマージを共に行かせよう。気紛れ故に役に立つかはわからんが、邪魔にはなるまい。
何が起こるかわからん。なるべく単独行動をさせたくはないのだ。こちらとしても直属ではない
借りられてきた立場の部下を、物言わぬ姿で返すのはあまりいい気分ではないのでな」
「ありがたい話だ。心遣いに感謝させてもらう」

「あの……」
 恐る恐るといった様子でアブソルが声を出す。
「ボクもついていっちゃダメかな? 色々な場所の話をピジョンさんからもっと聞きたいし……」
 そう言えばここに来る迄の間も、何やら話をしてもらっていたようだった。だが、時と場合というものがある。
「駄目だ。飛べぬお前ではピジョンの探索の足手まといとなろう」
「いや、俺は構わんぞ。二人がかりで運べばなんとかなる。それに俺の話をこんなにも真剣に
聞いてくれるなんて嬉しくてな。探索にも張り合いが出るというものだ」
「いっしょにいこー」
 じろりと視線が一斉にこちらへ集まる。
 ……俺は至極まともな理由で却下したつもりだ。しかし、このままではまた不当に
世紀の大悪党のような扱いを受けそうだ。
「……好きにするがいい」
「わぁい、ありがとう。じゃあ行ってくるね」
326名無しさん、君に決めた!:2008/01/12(土) 08:14:50 ID:???
 ピジョン達の背を見送り、俺とミミロップ、ロゼリアは閉ざされたシャッターの前へと向かった。
「まったく、ロゼリアちゃんもムウマージちゃん達についていけばよかったのにー。私達に気をつかいなさいよね」
「え! そういうことだったんですか?」
「断じて違う。勝手な戯言だ。耳を傾けるだけ時間の無駄だぞ、ロゼリア」
「冗談です。わかっていますよ」
 ちぇっ、と軽く舌打ちし、ミミロップは足元に転がっていたタイルの破片を蹴飛ばした。

 くだらないやり取りから程なくして、前後のシャッターがぎちぎちと音を立て動き始める。
どうやら無事にスイッチを操作できたようだ。
 ゆっくりとシャッターは駆動し、数十センチ程度にまで開いた時、右のシャッターの隙間から
何かの影が滑り出てきた。そして、運悪くその正面にいたミミロップへとその影は牙を剥き素早く飛び掛かる。
 だが、俺が反応し電撃を放つ前に、襲撃者の牙は目標に到達することはなく、ミミロップの
健脚により蹴り飛ばされた。
 その勢いのまま襲撃者は壁に叩きつけられ、鈍い音を立てて床へと落ちる。
「いきなり何、こいつ!」
 襲撃者――毛色が全体的に少し白っぽいラッタ――はぴくりとも体を動かさずに地面に転がっている。
「やりすぎた……? 結構やばい場所に蹴りを入れちゃったかも……」
「……仕方あるまい、正当な防衛だ。確かペルシアンに貰った道具の中に元気の塊が――」
 ラッタに駆け寄り、マントの左内ポケットを探ろうと体を捩った瞬間、俺の右頬に鋭い痛みが走った。
 先程まで瀕死で倒れていたはずのラッタは立ち上がり、俺の頬を浅く裂いた前歯を
厭わしい笑い声のようにぎちぎちと擦り鳴らしていた。
327名無しさん、君に決めた!:2008/01/12(土) 11:27:36 ID:???
GJ!
328名無しさん、君に決めた!:2008/01/13(日) 13:07:49 ID:???
また明日にでも進められたら進めたいぜ
329名無しさん、君に決めた!:2008/01/14(月) 17:59:03 ID:???
先ほどの傷など何でも無かったかの様にラッタは俺へと襲い掛かってくる。
だが、黙ってやられてやる程俺は親切ではない。
例え親切だったとしても願い下げだ。
右頬の傷は運よく電気袋から外れており、電気をためるのに支障はきたさない。

「不意打ちで俺に傷をつけるとはいい度胸だ。」

死んだ振りをしているのかもしれない、と疑わなかった俺のミスなのかもしれないが。
俺は向けられた前歯にアイアンテールを叩き付けた。

「ギャアアアアアア!!!」

痛みで叫び声をあげるラッタに、10まんボルトでとどめを刺す。
念のため、アイアンテールでなぎ倒すと黒焦げになったラッタは地に伏せ、動かなくなった。

「ちょっと、やりすぎじゃない?」
「そうですよ。」

……確かに、少しやりすぎたか?
しかしまあ、これで暫くは目を覚まさないだろう。
330名無しさん、君に決めた!:2008/01/14(月) 18:02:47 ID:???
「ふん、そのうち目を覚ますだろう。」

そう言い、あのラッタが出てきたシャッターの先に視線をやる。

あのラッタは何故ここにいたのだろうか?
人間の作った建造物に住みついているポケモンもいる――ドンカラス達もそうだった――のだから、
このラッタもここに住み着いていたポケモンの一匹である可能性もあるか。



油断すべきではなかった。

いや、あそこまでやっておいて、俺の頭に油断の字は無かった。
断じて、俺は油断などしていなかった。

だが。

「あ………。」

ロゼリアの驚愕のあまり掠れた声。背中に走る激痛。
めりめり、と嫌な音を立て、俺の背中に突き立てられた何か。
ミミロップが攻撃した主を蹴り飛ばしたおかげで、激痛から解放された。

いつでも攻撃出来る様、頬袋に電気をためながら振り向いた、俺の目に飛び込んできたものは。


先程の不快な笑い声を上げ、立ち上がった白いラッタの姿だった。
331名無しさん、君に決めた!:2008/01/14(月) 18:57:41 ID:???
先を越されたか
GJ

だが投下前に一言欲しかったぜorz
332名無しさん、君に決めた!:2008/01/14(月) 19:16:12 ID:???
>>331
スマソ……次から気をつけるor2
333名無しさん、君に決めた!:2008/01/15(火) 01:08:48 ID:???
どんまいどんまい

明日の深夜に書けたら書きたいと今のうちに宣言しておくぜ
334名無しさん、君に決めた!:2008/01/15(火) 22:31:25 ID:???
宣言て…
リレー小説なんだからさ
335名無しさん、君に決めた!:2008/01/15(火) 23:07:20 ID:???
まーまー
リレーなのにこのクオリティが維持できてるのも、別スレまで建ててしっかり管理してるからなんだし。
336名無しさん、君に決めた!:2008/01/16(水) 07:05:27 ID:???
 背中の重苦しい痛み。額に嫌な汗が滲む。
喉に詰まり荒らぐ息。目の前のありえない事象が一層それを助長した。
常軌を逸した耐久性。この先がどうなっているか想像もできない封を解かれた魔窟――開かれたシャッターの奥――から現われた新手では断じてない。
焦げた毛先がそれを証明している。だが、それも元の色をじわじわと取り戻しつつあった。

「僕達は悪い夢でも見ているのでしょうか……」
 痛みと、鋭く張られた意識がそれを否定する。
「なんなの、なんだっていうの! まるでゾンビ……」
 仮にゴーストがとり憑き、ラッタを操っているのだとしても、肉体の異様な再生能力の説明がつかない。
ラッタにそのような能力が備わっているとは聞いたことがない。
深い眠りに身を任せ全身の傷を癒す技法も有るには有るが、瞬時に数回できるような代物ではない筈だ。
それ以前に、再生は完全に目覚めた状態で今、目の前で起きている。

 ぎちぎちと前歯で威嚇しながら、ラッタは狂気めいた高ぶりに見開いた目で、こちらを値踏みするように見回す。
精神の高揚に同調するがごとく、白が毛並みから他の色を加速度的に奪っていき、侵食が末端にまで達する。
同時、放たれた電撃と葉の刃を跳躍してかわし、同じ鼠とは思えぬ大型の肉食獣のような咆哮を上げながら手負いの俺に向かい駆け出した。
その猛進の速度たるや凄まじく、殴りかかったミミロップを突き飛ばし、身に受ける電撃や突き刺さる針など最早ものともしない。

 回避――も間に合わんか。
正面からの衝撃を覚悟し電磁の壁を展開した時、直前でびくりと体を硬直させラッタが動きを止めた。
「今度はなに……?」
 がくがくと身が震えだし、後退りし狂乱の声を上げながらラッタは自らの顔を掻き毟り始める。
掻き毟ってできた傷はその都度塞がっていくが、代償のようにびしびしと体に亀裂が走っていく。
苦しみ藻掻き、半ば転がるようにして、ラッタは茫然としている俺達の横を擦り抜け、開け放たれたシャッターの奥へと――屋敷の地下へと続く階段を駆け降りていった。
337名無しさん、君に決めた!:2008/01/16(水) 15:22:48 ID:???
GJ!
338名無しさん、君に決めた!:2008/01/17(木) 19:39:39 ID:???
書けそうなら明日続き書きたいです
339名無しさん、君に決めた!:2008/01/19(土) 10:48:15 ID:???
「逃げ……た?」
 何が起こったのかわからないが、どうやら退けることはできたようだ。だが、これは偶然により起こっ
た、辛勝と言わざるをえないだろう。奴が逃げる前に起こした異変。あれが無ければ今頃どうなっていた
かわからない。
 張り詰めていた緊張の糸が緩み膝の力が抜ける。無理矢理に押さえ込んでいた痛みと疲労が一気に背に
のしかかり、俺を地に押さえ付けた。マントの背部が何か液体に濡れ、毛並みに張り付いている感じがあ
ることに気付く。冷たく、寒い。何故か痛みを感じなくなってきた――。
周りから二つ、俺の名を呼ぶ声と駆け寄ってくる足音が響く。
「ピカチュウ……」
 褐色の腕にゆっくり抱き上げられ、片膝を付きつつも上体を起こした。
「……ああ……無事か、お前達?」
「大丈夫、僕達は少し引っ掻かれた程度です。それよりあまり動かないで。ちょっと背中を見せてください」
 そう言い、ロゼリアは俺のマントを外す。
「これは……なんという――」
 ロゼリアが息をのむ音が聞こえた。そんなにひどいというのか――。
340名無しさん、君に決めた!:2008/01/19(土) 10:49:36 ID:???
「相変わらず頑丈な布です。そしてあなたの悪運の強さも折り紙付きですね。――これを」
「む?」
 ロゼリアが見せたのは無残に穴が開き、中身が漏れだしている回復の薬の容器だ。どんな荒れた地にも
我らを求め入り込む忌まわしきポケモントレーナー用の道具であり、少々のことでは決して割れないよう
に考えられ作られている。
「裏地の両側面に背部……無駄に収納スペースが多くて便利なマントですね。最早、歩く道具袋ですよ。
うわ、よく見たら端っこの方にドンカラスさんの名前が刺繍されてる――おっと、失礼しました。
 それに偶然当たらなければ、いくらマントの上からだったとはいえ生きてはいなかったでしょうね。
背中、ひどい痣になってました。それだけです。その薬臭いびしょ濡れのマントを羽織っておけばすぐに
それも消えるでしょう」
 ……あれだけ重く感じていた体が軽がると持ち上がった。
「う、うむ」

                       ・

「それにしてもあのラッタ、明らかに異常でした」
「ああ」
 凶暴性、あの尋常じゃない力、そして何よりあの変貌……普通のラッタにはあり得ない。まるで――。
 脳裏に実におぞましい、ある考えが浮かんだが、必死に振り払った。
 ピジョン達は無事だろうか。だが、確認するすべは無い。退路は鋼鉄の壁に断たれ、左のシャッターの
先は瓦礫に埋もれていた。
 進むべきは一つしか残されていない。鬼と蛇が足並みをそろえて出てくることが分かり切っていたとしても。
341名無しさん、君に決めた!:2008/01/19(土) 22:20:07 ID:???
GJ!
342名無しさん、君に決めた!:2008/01/20(日) 02:35:47 ID:???
毎度乙
343名無しさん、君に決めた!:2008/01/20(日) 22:17:18 ID:???
明日書けたら書きたいです
344名無しさん、君に決めた!:2008/01/22(火) 07:43:46 ID:???
 一段一段、足を踏み下ろす度に、闇が触手となって身に絡み深淵へと引きずり込まれていくような嫌な
感覚が強まっていく。切れかけた電灯が一瞬点いてはすぐに消え、階段全体が雷鳴轟く不吉な暗雲を思わ
せた。

 下り終えると、道はすぐ右に折れていた。想像していたよりもずっと広く地下は広がっているようだ。
洋風の内装であった一階とそれ程変わらない造りをしているのだが、どこか病院か研究所に似た雰囲気を
漂わせていた。黴と埃の臭いは消え、何か薬品の臭いが地下に下りてから強く空気に混じり始めている。
一階程荒れてはおらず、そこが逆にこの場だけが力と意思めいたものを持って時の流れに逆らっているか
のようで不気味であった。
 俺達を狙い潜む者の可能性に備え慎重に角を曲がり抜けた先には、今度は左へと折れ続く通路と、地上
と同じ様相で頑強に閉ざされているシャッターの姿があった。
またしてもスイッチが見当たらないが、恐らくこれもどこか離れた場所に開閉の仕掛けがあることだろう。

                  ・

 案の定、それはあった。左の角を曲がった先、通路すぐ左脇の部屋で一階に設置されていたものと同じ
石像は見つかった。
 研究日誌と名が付いた、おぞましい薄汚れた書物と共に――。

345名無しさん、君に決めた!:2008/01/23(水) 07:14:52 ID:???
GJGJ!!
346名無しさん、君に決めた!:2008/01/23(水) 14:25:57 ID:???
このスレいつ来てもクオリティ高いな、GJ!
347名無しさん、君に決めた!:2008/01/23(水) 18:52:53 ID:???
書けたら明日続きを書きたいです
348名無しさん、君に決めた!:2008/01/25(金) 06:29:21 ID:???
ごめんなさい、間に合いませんでしたorz
深夜までには何とか投下したいです
349名無しさん、君に決めた!:2008/01/26(土) 07:19:50 ID:???
 書物の状態はすこぶる悪く、ロゼリアが開いたページを覗いてみても満足に内容を読み取れるようなも
のだとはとても思えなかった。所々がかすれ、虫に食われたような穴が開いているのだ。
 だが、そのような状態にあっても、ページが捲られる度に書物はロゼリアの眉間に嫌悪や怒りが入り交
じった皺を確実に刻んでいった。
「……内容をお聞きになりたいですか? 夕食の喉の通りを気にするならばあまりお薦めしませんが」
 書物に目を止めたままロゼリアは云う。
「構わん。話せ」
「状態が悪く読めない部分が多々あるので、内容は飛び飛びになると初めにお伝えしておきます。では――」

  ※年※月※日
  ――を用いた――の実験を行う。
  被験体に身体能力の向上、そして自己再生能力が目に見えて現れた。
  観察を続け問題が発生しなければ実験結果を――に報告し――
  ※年※月※日
  被験体に異常な凶暴性が見られる。同ケージ内の他個体を――
  実験は失敗。再生能力のため――による処分は困難と判断。凍結し、廃棄する。
  今回の失敗は――
  ※年※月※日
  改良を重ねるが、付加による被験体の――は避けられない。
  弱い個体では遺伝子がもたらす力に耐えきれず、心身共に破壊されてしまう。
  薬品の継続投与により多少は抑えられるが、強い肉体的ストレスを受けると、すぐに発作的な崩壊が
始まる。
  まず色素が原因不明の変質を起こし、全身が白く――
  ※年※月※日
  新たな実験体が――よりもたらされる。
  非常に貴重な物のため、繁殖または複製し実験に用いることとする。
  ※年※月※日
  素晴らしい成果を上げている。
  親は――たが子は無事に実験に耐え、完全に適合している。
  更に調整を行い――
350名無しさん、君に決めた!:2008/01/26(土) 07:22:25 ID:???
「ひどい……」
「……もういい、やめろ。十二分に今日の夕飯が不味くなった」
 あの時、振り払ったおぞましい考えは、間違ってはいなかった。
 人間の手によるポケモンへの非道な実験――。少しずつ不本意ながら自分の中に芽生えようとしていた
人間への想いが、また躙り潰されようとしていた。
「自分の中で人間を憎みきれない所が有ったつもりですが……少々考えを改める機会をいただきました。
でも――」
「うむ――」
 ロゼリアは俺がいる方向に右花を向け、鋭い針を放った。
「とりあえず今一番に考えるべきは自分の身ですかね」
「ああ、その通りだな」
 避けるまでもなく射出された針は俺の横を過ぎ去り、背後から短い叫びが上がる。同時に俺も体を捻っ
て遠心力を加え、背後に尾を思い切り振るった。
 確かな尾の応え。ボールのように跳ねて体を打ち付けながら、小さな影が地を転がっていく。
「やだ、気付かなかった」
「この方の他に、あと何匹哀れな被験体がここにいるんでしょうね。ちゃんと後始末はしてほしいもので
すよ」
「いつ起き上がるかわからん。急ぎこの場を去るぞ」
 石像の仕掛けを手早く操作し、入り口付近で胴に針をうけて倒れている白いコラッタを残し俺達は部屋
を出た。
351名無しさん、君に決めた!:2008/01/26(土) 08:01:52 ID:???
GJ!!
352名無しさん、君に決めた!:2008/01/26(土) 18:27:13 ID:???
職人GJ!
でも屋敷のポケモン可哀相だ…
353名無しさん、君に決めた!:2008/01/27(日) 14:48:39 ID:???
age
354名無しさん、君に決めた!:2008/01/27(日) 20:52:27 ID:???
明日にでも続き書けたら書きたいです
355名無しさん、君に決めた!:2008/01/29(火) 04:10:25 ID:???
age
356名無しさん、君に決めた!:2008/01/29(火) 08:23:30 ID:???
 閉ざされていたシャッターの先は、再び長い通路となっていた。通路の向こうには部屋らしき区切られ
た空間と、また左へと続く角がある。
 この屋敷の本性を知り、目的は探索から脱出へと変わった。しかし、未だ光明は見出だせない。行く手
を阻んできた数々のシャッター仕掛けは外からの侵入者を防ぐ為だけではなく、内の逃亡者に備えられて
いた物だとすれば、脱出口が存在する可能性はゼロに等しいのではないか。
 だが、ピジョン達と連絡する手段は無く、救助は期待できない。そして、安全にとどまれる場所など存
在しない。
 進むしかなかった。藻掻けば藻掻くほど身に絡む蜘蛛の巣の上だとしても。
 冷徹な人工の照明だけが、化け物潜む牢獄を弱々しく途切れながらも照らしている。

「お気付きですか」
 暗澹とした道に並んで足音を立てる中、ロゼリアが目だけをこちらへよこし、そう口を開いた。
「ああ。三匹――いや、四匹といったところか」
 部屋を出てからというもの、俺達の後をつける幾つかの気配を感じている。先の二匹のようにすぐに襲
い掛かってこないことを訝しく思いながらも、へたに迎え撃ってもすぐに再生され、こちらが疲弊するだ
けだと注意だけは払いつつもずっと無視していた。
「もっと居るわ。五、六匹――」
「……もっともっと最悪ですよ。前、見えてますか」
 前方の曲がり角から三匹、小型の犬型ポケモン――ガーディが姿を現す。本来は赤い筈の毛並みは所々
白くなっている。眼に正気の色は無く、こちらの姿を確認するやいなや先頭の一匹が狂喜じみた遠吠えを
上げた。じわじわと付かず離れず迫っていた背後からの足音が、それを合図に駆け足へと代わり、瞬く間
にガーディの群れが俺達を取り囲んだ。
「全部で九匹……降参の旗でも上げる?」
「こいつらの捕虜収容所は恐らく胃の中だ。それでもいいのならば好きにしろ」
 最悪の状況だ。
357名無しさん、君に決めた!:2008/01/29(火) 17:05:30 ID:???
GJ!!
358名無しさん、君に決めた!:2008/01/30(水) 21:27:28 ID:???
明日、書けたら書きたいです
359名無しさん、君に決めた!:2008/02/01(金) 08:15:46 ID:???
 だらだらと涎を滴らせ、狂犬達は包囲の輪をゆっくりと確実に狭めてくる。こちらが隙を見せればすぐ
にでもあの汚れた牙と爪とで飛び掛かってくることだろう。
 この場をどう切り抜けるべきか。数、そして耐久力の面においても分が悪い。
 策が浮かぶ前に、視界の右端で赤い閃光がちらついた。直後、吹き付けられた紅蓮の炎を電流の防御壁
で逸らし、凌ぐ。凄まじい熱気が壁越しにもじりじりと伝わった。
 襲い来る牙をいなし、電撃込めた拳で下顎を捉え殴り抜ける。感電しながら吹き飛ぶ一匹の横から間髪
入れず飛び掛かかってくるもう一匹を、ロゼリアが長く伸ばした毒針を細剣のごとく扱って突き、防いだ。
「一日にそう何回も針は撃ち出せないので咄嗟の節約です。……あまりいい感触ではありませんね」
 ロゼリアが針を引き抜くと同時にガーディは崩れるように地に伏し、動かなくなった。
 重い殴打音と共にまた一匹が宙を舞い、床を弾み転がる。
「三匹目ッ! あんた達なんかにやられるもんですか」
 自らの右足をぱんぱんと手で数回払った後、ミミロップはファイティングポーズをとり直した。

 三匹が一気にやられ、少し怯んだのか攻撃は一時的に止み、残った六匹は低く威嚇の唸りを上げながら
様子をうかがっている。
 包囲網に若干の隙間ができた。訪れたこの一時の好機、逃せば終わりだ。床の三匹はもうほとんどの再
生を終え、起き上がろうとしている。
 通路奥の方角に俺は強く電撃を撃ち込んだ。避けられはしたが衝撃で粉塵が上がり、緩んでいた包囲に
遂に穴が開く。
「駆け抜けるぞ。遅れるな!」
360名無しさん、君に決めた!:2008/02/01(金) 13:05:17 ID:???
どうみてもバイオハザードです、本当に(ry
361名無しさん、君に決めた!:2008/02/01(金) 17:05:28 ID:???
GJGJ
362名無しさん、君に決めた!:2008/02/01(金) 21:33:58 ID:???
な、なんなんだよこの神小説は・・・
リレーとは思えないぜ・・・
GJGJGJGJ!
363名無しさん、君に決めた!:2008/02/01(金) 22:31:44 ID:???
はいはい、GJGJ。
満足でちゅか〜

ーーーーー糸冬ーーーーー
364名無しさん、君に決めた!:2008/02/01(金) 22:47:38 ID:???
>>362
とりあえず、ageるな
365名無しさん、君に決めた!:2008/02/03(日) 11:02:24 ID:???
明日書けたら書きたいんだぜ
366名無しさん、君に決めた!:2008/02/05(火) 21:32:19 ID:???
 囲みを突破し俺達は駆け出した。後方から響くガーディ達の吠え声。
あるとも知れぬ活路を求め左に続く角を折れる。

 通路の右側に並ぶ閉ざされた部屋々々、突き当たりには鎧戸――人間が一人通れそうな大きな裂け目が真中に開いている。
追ってくる無数の足跡がもう角を曲がりきった。開くかもわからない部屋を一々調べる余裕はなく、鋼鉄製のシャッターにどうやればあんな裂け目ができるのか考えている暇もない。
目指すべきはあの裂け目の奥。迎え撃つにしても、足止めを仕掛けるにしても、幅のある通路よりは幾分かましであろう。

 裂け目の中に飛び込んだ先は広い部屋だった。中央に大きな机がぽつんと置かれている。他の敵の姿はない。
今駆けてきた通路の方を一斉に振り返り、構える。しかし、ガーディ達は鎧戸の数メートル手前で歩を止めた。こちらを睨んで唸り声を上げてはいるが、
その場をうろうろするばかりでそれ以上進んでこようとはしない。

「何なの?」
「さあな」
 理由はわからんが、今のうちにやるべきことはやってしまった方がいいだろう。
指示を出し、三匹がかりで――殆どミミロップの力だが――机をシャッターの前まで運び、裂け目を塞いだ。
「気休めですね」
「無いよりはいいだろう」

 改めて部屋を見回すと、床に色が違う箇所が所々あることに気付く。元々は何か置かれていたのだろうか。
そして、更に奥の部屋へと続く扉が一つ――。

「何だか、嫌な感じ……」
 半開きになっている隙間からも異様な気配を感じる。

367名無しさん、君に決めた!:2008/02/06(水) 00:43:41 ID:???
GJ
368名無しさん、君に決めた!:2008/02/07(木) 20:44:15 ID:???
書けたら明日にでも書きたいです
369名無しさん、君に決めた!:2008/02/07(木) 22:46:16 ID:???
お願いします
370名無しさん、君に決めた!:2008/02/07(木) 22:48:36 ID:1EGzmeth

371名無しさん、君に決めた!:2008/02/09(土) 08:41:41 ID:???
 隙間に手を入れ、ゆっくりと力を込め扉を開いていく。そうそう不意を打たれてばかりはいられない。
ミミロップとロゼリアを横に待機させ、俺は扉を背に部屋を覗き込んだ。
 書斎か資料室と言ったところだろうか。部屋の壁は棚となっており、床にはそこに収まっていたであろ
う無数の本が散らばり、積みあがっていた。そして部屋の奥の机に腰掛けているのは白い――。

「――ミュウツー!」
 思わず身を乗り出し、声を上げてしまう。次々と俺の背越しにミミロップ達が覗き込んでくるのを、背
にかかる加重で感じた。
 手にした本に覆い隠され、ミュウツーの表情は読み取れない。ぱらり、とページを一枚ほど読み進める
仕草を見せた後、姿勢を変えず
「お前達か」
とだけ言葉を発した。
「無事だったのだな。お前があの後どうしているのか気になり、様子を見にきたのだ」
 声をかけながら俺は少しずつ部屋の奥へ、ミュウツーのもとへと歩んでいく。
「それで……自分自身の手がかりは見つかったのか? いや、それよりもこの屋敷は危険だ。正気を失っ
た者達に我らも襲われた。まずは共に脱出を――」
 俺の言葉の途中で、ミュウツーは本を閉じて傍らに置いた。そして顔を片手で覆い、くつくつと堪える
ように笑いながら口を開く。
「自分自身の手がかり……だと? 私が何者なのかだと?」
 堪えていた笑いは荒れる川が決壊するがごとく溢れ出て、狂気じみた笑い声へと変わった。
「笑わせる! 私は何者でも無い。最初から何者でも無かった。人工的に造られた忌まわしき生命。哀れ
な実験動物でしかなかったのだッ!」

372名無しさん、君に決めた!:2008/02/09(土) 13:18:41 ID:???
GJ!
373名無しさん、君に決めた!:2008/02/09(土) 16:58:21 ID:???
GJ
374名無しさん、君に決めた!:2008/02/10(日) 16:18:18 ID:???
明日書けたら続き書きたいです
375名無しさん、君に決めた!:2008/02/12(火) 10:30:24 ID:???
 それは、つまり。
「あなたは例の遺伝子実験の被験――」
 言い掛けた言葉を、ロゼリアは自らの口を花で塞ぎ押し込んだ。
「あれを読んだか。そうだ。ミュウ――オリジナルを元に優れた遺伝子を選別、付加、調整され、誕生した体。
創造者の手にも負えぬ遺伝子の落とし子。それが私、ミュウツー」
 出会った時から普通の者でないということはわかっていた。多少の後ろ暗い過去がある事くらいは覚悟していたつもりだ。
だが、あまりに陰惨たる事実にかけるべき言葉は見つからず、喉の奥に詰まるばかりだった。
「正気を失った者達に襲われたと言っていたな。その者達を解き放ったのは私だ。
この地下で培養漕ごと凍結されていたものを見つけたのでな」
「……何が目的だ。俺達はそのおかげで何度も生命の危機にさらされたのだぞ」
「より優秀な者の選別だ。蟲毒というものを知っているか。飢えた蟲共を狭い壺や箱に閉じ込めて共食いをさせると、
生き残った一匹は強い魔力を得るのだという。人間の考えそうなくだらん呪いだ。
無論、魔力を得るなどと信じてはいない。だが、選別の方法としては簡潔かつ合理的だと感じた。
 強き者が必要なのだ。大した力も持たぬというのに、自分達を生物の頂点と思い込みふんぞり返っている愚者共を引き摺り降ろすために。
この世に繁栄するべきは、小賢しさだけで蔓延してきた奴らではない。
選びぬかれた真の強者だけだ。
 奴ら――人間は自分達がまるで神にでもなったかのように我らを扱っている。
しかし、それももうすぐ終わりだ。私が終わらせてやろう。
これは攻撃、不当な侵略などではない。反撃――逆襲だ!
 共に来いお前達。生き残り私のもとへとたどり着いたお前達にはその資格がある」
376名無しさん、君に決めた!:2008/02/12(火) 16:41:54 ID:???
本当にこの小説、それぞれ違う人が書いてるのかよ?
GJ!
377名無しさん、君に決めた!:2008/02/12(火) 19:01:06 ID:???
GJの一言
378名無しさん、君に決めた!:2008/02/13(水) 22:24:39 ID:???
明日にでも書けたら書きたいです
379名無しさん、君に決めた!:2008/02/13(水) 23:44:55 ID:???
お願いします
380名無しさん、君に決めた!:2008/02/15(金) 13:24:49 ID:???
すみません、ちょっと遅れそうです…
夜か深夜までには何とか投下したいです
381名無しさん、君に決めた!:2008/02/15(金) 19:27:33 ID:???
 確かに人間共の振る舞いは目に余る。
「その話に乗った場合、他の我が部下達はどうなる」
 より根が深いのはミュウツーの方であろうが、その考えはよく似ていた。
「生命は保障しよう」
 シンオウのギンガ団、カントーのロケット団――数々の非道な行いをまざまざと見せ付けられてきた。
 だが――。
「断る」
 頭に過ったのは同じ人間でありながら、それらと戦ったあの者達の顔。普通であれば自身に及ぶ危険を
恐れて見て見ぬふりをするであろうに、あの者達は立ち向かった。
「このような陰気臭い地下に籠もっていては、この世が推し量れるものか。
 そのような黴臭い本だけでは人間の全ては学べん」
 名声のためでも、自分のためでもない。我らポケモンのために、だ。
「お前のやろうとしていることは我らポケモンのためではない。只の独り善がりな復讐だ」
 人間に懐柔されたわけでは決してない。
 借りは返す。それだけだ。
「構わんな。お前達」
「私はピカチュウについていくだけ。それにマシな人間も中にはいるのよねー」
「同じく。僕もまだそれほど人間に絶望してはいません」
 思いは一つか。

 そして何より――。
「俺はピカチュウ。いずれ全世界を掌握し、帝王となるものだ。
 帝王は誰かの下になど就かん。頂点は常に一つ!」
「あちゃー……」
「それは同意しかねます」

382名無しさん、君に決めた!:2008/02/15(金) 23:17:09 ID:???
GJ!
383名無しさん、君に決めた!:2008/02/16(土) 06:57:02 ID:???
GJ!
384名無しさん、君に決めた!:2008/02/17(日) 15:45:17 ID:???
明日書けたら書きたいんだぜ
385名無しさん、君に決めた!:2008/02/17(日) 21:21:25 ID:???
了解です。お願いします。
386名無しさん、君に決めた!:2008/02/19(火) 10:26:14 ID:???
 びしりと叩きつけてやった拒絶の返答に逆上されることも覚悟した。
 だが、ミュウツーはそれとはまったくの逆、鼻の先であしらうように薄く冷笑じみた表情を見せる。
「言ってくれる」
「何度でも言ってやる。答えは、断固として拒否。お前のあまりに過ぎた思想には賛同できん」
 場に緊迫した空気が流れる。

「益々お前達が気に入った」
 一触即発の沈黙を先に破ったのはミュウツーだった。
「いいだろう。お前達には借りもある。この場は見逃す」
 そう言うと、ミュウツーは深く目を閉じ、両手を俺達の方へ向ける。
それと同時に体が奇妙な浮遊感に包まれ自由が利かなくなった。
 両隣から短い悲鳴が上がる。
「何よこれー! うえ、酔いそう……」
「念動力……ですか。強力な……」
 ミミロップとロゼリアも俺と同じ状態に陥っているようだ。
「――何をするつもりだ」
「この場は見逃す、と言った。屋敷の外にお前達を送り返す。次に出会う時、再びお前達に問おう。
拒み、私の前に障害として立ち塞がるのならば……敵は全力を持って排除しなければならない」
「俺の答えは変わらんぞ……!」
 体を覆う浮遊感はなお一層強まり、視界にちらちらとモザイク模様のようなものが混じりはじめる。
「最後に忠告しておく。外に着きしだい、島から一刻も早く脱出することだ。直にこの島は滅びる」
 散らばったモザイク模様は光の帯と共にうねり、徐々に感覚は遠退いていき――。

387名無しさん、君に決めた!:2008/02/19(火) 16:50:48 ID:???
GJGJ!
388名無しさん、君に決めた!:2008/02/19(火) 18:46:40 ID:???
JGJG!・・・あれ?
GJGJ!
389名無しさん、君に決めた!:2008/02/20(水) 04:31:08 ID:???
GJ!
390名無しさん、君に決めた!:2008/02/20(水) 13:19:08 ID:???
明日にでも書けたら書きたいです
391名無しさん、君に決めた!:2008/02/20(水) 17:10:42 ID:???
お願いします。
392名無しさん、君に決めた!:2008/02/20(水) 18:26:34 ID:???
書いてもいいですか?
393名無しさん、君に決めた!:2008/02/20(水) 18:44:48 ID:???
むしろ書け
394名無しさん、君に決めた!:2008/02/21(木) 00:47:54 ID:???
初投稿します。
内容はサイドストーリーか小ネタ物です。
つまらなかったらスルーでお願いします。
395名無しさん、君に決めた!:2008/02/21(木) 00:53:55 ID:???
ピカチュウ達が屋敷にいる頃グレンの船乗り場では一人の今時風の青い髪の女が船から降りた。旅行用の大きなボストンバッグを一つ持ち、傍らには彼女のポケモン、プラスルがいる。
「プラスルここが、グレン島よ。ほら、向こうに大きな火山があるでしょ」女は火山を指差した。
「こういう所には良い温泉があるのよ。そして温泉に入って日頃の疲れを取るのよ。」
「プラップラッ」
プラスルは首を縦に振り相槌した。
「はぁ、ようやく休みがとれた。最近仕事ばっかりで疲れまくりよ。その上給料は安いし、出来の悪い部下の面倒ばかり、しかもその部下は口ばっかりで…」女は口を閉じた。
「ぐちばっかりこぼしても、何も面白くないわ!プラスル行くわよ、まずは昼食の時間からずれてるけど遅目の昼ご飯を食べに行くわよ!」女は言った。
「プラー」
プラスルは喜んだ。
彼女達は、昼ご飯を食べるために船場から温泉街へと向かった。
396名無しさん、君に決めた!:2008/02/21(木) 00:59:40 ID:???
そして女とプラスルは温泉街にやってきた。
温泉街は商店や飲食店が並び、人々の活気で溢れていた。
「プラスル何食べようか? ポケモンと一緒に食べれる店はどこかな?」
女は、ポケットから細かく畳んだ、観光マップを取り出した。 「う〜んと、そうね、この距離だとここがいいかな。」
彼女は1人地図を見ながら、ぶつぶつ独り言を言っている。

「コラァー、ボケェェェー、店の商品食ってんじゃねぇ!!」
突然の男の叫び声で女とプラスルはびびった。周りにいた観光客もびびった。
女は声のした方を見てみる。10メートルぐらい離れた、商店の店先からだ。
そこには店先に出してあるお土産の食べ物を、なんとなく目に異様な狂気を感じる白いコラッタが男の店主の叫びも無視して、一心不乱に食べている。よほど腹が減っているのだろうか。
その時店主が物凄い勢いで店の奥からやってきて、ほうきでコラッタを吹っ飛ばした。
店主は顔が般若のような形相で怒りに満ちていた。
体格は恰幅がよく、般若の形相とあいまってまるで鬼のようだった。
397名無しさん、君に決めた!:2008/02/21(木) 01:02:05 ID:???
「はっ、色違いコラッタめ!いくら色違いが珍しいポケモンだからって許すわけにはいかねぇな!」
店主は怒りながら叫んだ。
「この泥棒鼠め、とっとどっか行きやがれ、しっしっ!」
店主が ほうきで追い払っている。
しかし、コラッラは 口から白い前歯をむき出して威嚇している。「グゥゥウー。」
白いコラッタから何か異様な感じがする。
ただ腹が減っているだけだろうなのか?

「ほぅ、泥棒鼠のクセに態度がでけなぁ、ならキツイお仕置きをしてやる。」
店主はそう言うとポケットからモンスターボールを取り出し、投げた。
その中からゴローンが現れた!
「いけゴローン!泥棒鼠を退治しろ!」
店主は勢い良く命令した。
「ゴローン!」ゴローンはコラッタめがげて体当たりした。
しかしコラッタは素早くかわした。
「さすがは、泥棒鼠だ、動くのが速い!だがなっ!ゴローン地震だっ!」
ゴローンは地震を繰り出した。地面が揺れコラッタは身動き出来ない。
「今だゴローン!のしかかり!」
ゴローンはコラッタの上に勢い良くのしかかった!
コラッタは悲鳴を上げた。
ゴローンはコラッタから降りると。
コラッタはコンクリートの地面に半分埋まりながら、戦闘不能になっていた。
398名無しさん、君に決めた!:2008/02/21(木) 01:04:29 ID:???
「へっ、泥棒する奴はこうなるんだぜ。」 店主は戦闘不能になったコラッタに言い放った。

女とプラスルは周りの観光客と一緒にこの光景を見ていた。
「これって、あれだろ、最近ポケモン達が店先に置いてある、商品を荒らすって奴だろ。」
「あぁ、そうだな、テレビのワイドショーで見たことあるぜ」
周りの誰かが言った。「白いコラッタなんて珍しい俺ゲットしちゃおうかなw」
「あなた、駄目よ人様が倒したポケモンを横取りしちゃヒキョーよ、あだ名がフジキ君になるわよw」
周りの観光客や野次馬が口々に喋る。
「プラスル行こうか、私たちの出る幕では無さそうだしね。さぁ、お昼を食べに行きましょ。」
女はプラスルにそう言い、立ち去ろうとしたとき。
「おい、見ろよコラッタが光だした!」
女はその声を聞き コラッタの方を向くと。コラッタは光ながら体力を回復していく。
「自己再生!!」
(野生のコラッタが自己再生なんてするの!?。)
女は思った。

「なんなんだお前は!」
店主は驚きながら叫んだ。
「ゴローン徹底的にやるんだ!」
ゴローンは再び白いコラッタに攻撃を開始した。
399名無しさん、君に決めた!:2008/02/21(木) 01:40:32 ID:???
ゴローンは数々の攻撃を繰り出し戦闘不能に追い込むがコラッタは自己再生ですぐ蘇る。
「なんなんだよ、お前は!」

店主は冷や汗をかきながら恐怖に満ちてきた。
ゴローンもばててきた。
ここから、白いコラッタの猛攻撃が始まった。
コラッタはゴローンに体当たりをしようと走りだした。
「ゴローンにはそんな攻撃きかないぜっ…」店主は弱々しくそう言いきったが…。
体当たりを食らったゴローンは吹っ飛んだ。「ばかな…」
店主の顔からは先ほどの怒りがどこかへさっていき 顔は青ざめていく。
コラッタは倒れたゴローンにのしかかりゴローンに噛みついていく、そしてゴローンの身体の岩を コラッタの前歯が噛み砕いたり、ひきちぎる。
ゴローンは痛みに耐えれず悲鳴を叫ぶ。
周りの野次馬も目をそらすもの悲鳴をあげる等の反応を示す。
「このままでは…ゴローンが…。」
店主は泣きそうになった。
「ゴローン!大爆発だ!最後の賭けだ、それで決めるぞ」
ゴローンは最後の力を振り絞り大爆発した。辺りは爆風に巻き込まれた。
(やったか!この直撃ならコラッタは!)
爆風が晴れてきた。そして、そこには戦闘不能になったコラッタが自己再生して生きていた!
「に…逃げろー!」
野次馬の誰かが叫んだ。
400名無しさん、君に決めた!:2008/02/21(木) 02:00:14 ID:???
「まずいわね、プラスル用意して。」
プラスルはホッペに電気をためる。
そして女は鞄から赤い何か道具を取り出した。
「ハァハァハァ」
白いコラッタは店主の方をみながら、「ハァハァ」言っている。
そして前歯を剥き出しにしヨダレを垂れ流している。
まるでこれは、野生の飢えた動物が数日、何週間ぶりに獲物に出会えたような顔をしている。
店主の体は、丸々とゴムまりのように肥え太って、脂肪をたくさん蓄えている。
コラッタの目は、血走りながら、店主をじっと睨み付ける。
「まてよ、俺なんか旨く無いぞ!」
店主は、悲鳴に近い声で叫ぶ。
コラッタは奇声を上げながら店主にむかって飛び付こうと飛んだ!店主は目を閉じた。

その時、10万ボルトがコラッタに当たった。
コラッタは地に落とされた。
「プラスル、良いわよ!」
女が叫んだ。
「せっかくの休日なのに、これじゃ台無しよ、でもこのまま、この白いコラッタを野放しにするわけにはいかない!」
女の右手に持っている道具のアンテナが伸びる!
「ポケモンレンジャー、ミッションを開始する!」
女は、叫んだ!!
401名無しさん、君に決めた!:2008/02/21(木) 02:02:52 ID:???
季節ネタのレンジャーネタです。
一応サイドストーリか小ネタです。
つまらなければ スルーでお願いします。
402名無しさん、君に決めた!:2008/02/21(木) 18:11:11 ID:???
403名無しさん、君に決めた!:2008/02/21(木) 22:33:03 ID:???

もうすぐ噴火するってのに大丈夫か?
404名無しさん、君に決めた!:2008/02/22(金) 00:34:10 ID:???
滅びるとは、ミュウツーがグレン島を破壊するではなく、火山が噴火して街を破壊ですか?
405名無しさん、君に決めた!:2008/02/22(金) 00:42:04 ID:???
両方のつもりで今書いてたよ
406名無しさん、君に決めた!:2008/02/22(金) 08:53:07 ID:???
ごめんなさい、間に合いませんでした
投下は今日の夜か深夜に……
407名無しさん、君に決めた!:2008/02/22(金) 10:02:22 ID:???
両方ですね、わかりました。
408名無しさん、君に決めた!:2008/02/22(金) 11:22:59 ID:???
>>406

> ごめんなさい、間に合いませんでした
> 投下は今日の夜か深夜に……

大丈夫です
409名無しさん、君に決めた!:2008/02/22(金) 17:19:31 ID:???
「ミッション開始」
レンジャーは赤い機械、キャプチャ・スライターから コマのようなものキャプチャ―ディスクを取り出し、それを投げた。そしてレンジャーはキャプチャ・スライターを円を描くように動かした。
そうするとキャプチャ―ディスクが白いコラッタの回りを白い光のラインを描きながら回りだした。
白いコラッタは驚き、光のラインから出ようとするが、ディスクもコラッタの周りを回りながら動く。
コラッタは困ったように立ち止まった。
「よし、いいわよ。そのまま、そのまま。」
レンジャーはキャプチャ・スライターを回しながらそう言った。
しかし、コラッタはキャプチャ―ディスクにでんこうせっかをした。
ディスクがはじかれ、コラッタの回りを描いていた光のラインが消えた。「油断したか、もう少しだったのに!」
レンジャーの顔に悔しさが漂う。
コラッタがレンジャー目掛けてでんこうせっかを仕掛ける。
しかし、女は間一髪で避けてみせた。
「プラスル!白いコラッタに電磁波!」
プラスルは白いコラッタに電磁波を放つ。
電磁波は白いコラッタに直撃し、コラッタは麻痺した。
レンジャーはこの瞬間を逃さないと思い、キャプチャ・スライターを回しだした。
白いコラッタの回りをディスクが何重に回りだした。
次の瞬間コラッタは光に包まれた。
410名無しさん、君に決めた!:2008/02/22(金) 17:27:48 ID:???
「キャプチャー成功」
レンジャーは叫んだ。
白いコラッタから光がはれるとコラッタは大人しくなった。
後ろで尻餅ついて倒れている店主は言った。
「これがポケモンレンジャーの力か…。」
「そうこれがキャプチャ・スライターの力。凶暴なポケモンも大人しくさせる力があるのよ。
よし、これでミッション完了よ。」
レンジャーは微笑んだ。「キャー」
どこからか悲鳴があがる。
「なんなの!?」
レンジャーは驚きながら耳をすました。
「あちこちで、白いコラッタが暴れてるぞ!!」
(この白く狂気に満ちたコラッタがまだ他にもたくさんいるのか!?どういうことなの!?)
レンジャーは衝撃と疑問を感じた。
「一体、この島はどうなってるの!?」
411名無しさん、君に決めた!:2008/02/22(金) 21:04:14 ID:???
412名無しさん、君に決めた!:2008/02/22(金) 21:06:09 ID:???
 ――ミュウツー!
 浮遊感から解放されたとともにもたらされる宙に放り出されたかのような感覚。自らが置かれた状況を
認識する間もなく背に鈍い衝撃が走る。
 目の前に広がるは、所々を枝や葉の形をした黒い影で乱雑に切り取られた、赤く染まりかけている空……?
投げ出された手足に伝わる雑草と土のような触れ心地とマント越しから背に伝わる湿り気。ここは――外!
 思考を妨げるぼんやりとした濃霧のような感覚を左右に頭を振るって吹き飛ばし、飛び起きた。
 ミミロップとロゼリアは探す迄もなく俺の傍に倒れていた。怠そうに唸りながら二匹とも起き上がろう
としている。とりあえず無事なようだ。
 俺達が飛ばされた場所は雑木林と化している屋敷の敷地内だった。すぐ先に屋敷の玄関が見える。
 周りの木々から数羽の小さな羽音がこちらへと飛来する。外で待たせていたポッポ達だ。ピジョン達の姿はない。
聞くと、まだ俺達以外に誰も戻っていないという。まだあの中に居るというのか。まさか身に何か……。
だとすればぐずぐずしてはいられない。救出に向かわなければ。
 ポッポ達はその場に待たせ、俺はミミロップとロゼリアを連れて屋敷のもとへと急いだ。しかし、開け放
たれていたはずの扉は隙間なく閉ざされ、ミミロップの力で押しても引いても、果ては蹴りつけようがび
くともしない。
ロゼリアの毒針も、俺の電撃をも効果をなさない。見えない壁のような力に全て阻まれてしまうのだ。
「いたた……。鉄みたい」
「あの方の力なのでしょうか。この障壁の頑強さ、そして三人を同時に同じ場所へ転送できる程の制御力。
嘘だと疑いたくなるほど強力な念動力です……」
 ミュウツーの言葉――直にこの島は滅びる――が頭を過る。一体何をするつもりだ。何を企んでいる。
 何もできず焦燥感だけが募っていく中、後方からどさりと大きめのものが地に落ちたような音が響く。
振り向くと先程まで何も居なかった空間に、倒れる三つの影――。

「ムウマージ! アブソル! ピジョン! 無事だったか!」
413名無しさん、君に決めた!:2008/02/22(金) 21:08:11 ID:???

 グレン火山上空に浮かぶ白き影。夕闇に支配された空のような深い紫色の瞳に憎悪を湛え、島を見下ろす。

 全ての生命に死をもたらす地獄の業火を中心に孕んでいる忌まわしき地。私はこの島で生まれ落ちた。
ならば私はその地獄の業火より生まれし悪魔となろう。どのような非道な行いをしようと、罪の意識に心揺らぐことはない。
 島の胎動を感じる。地の奥底でうねり、暴れている。ごく最近まで何者かの力で抑えられていたかのようなあまりに急激な変化だ。
 だが、丁度いい。

 ミュウツーは深く目を閉じ、全神経を念動力の放出に集中させる。ミュウツーを中心にびりびりと大気が振るえだし、
徐々に広がる念力の振動は火山の奥深くにまで浸透していった。

 滅びるがいい、忌まわしき地。我が記憶とともに。
「これは新しい私の生誕、そして逆襲の始まりを告げる祝砲となろう!」

 ドクン――島全体が震える。悪魔の誕生に恐れているようにも、王の光臨に歓喜しているようにも、それは見えた。
414名無しさん、君に決めた!:2008/02/22(金) 21:58:28 ID:???
415名無しさん、君に決めた!:2008/02/22(金) 23:04:00 ID:???
私はフィオレ地方のリングタウンでポケモンレンジャーとして働いている。
私がグレン島に来た理由は、ただ温泉で日頃の疲れを癒しに来ただけだった。
ここは温泉の観光地として有名でフィオレ地方でも知られている。温泉街は人とポケモンで賑わい、島は綺麗な海で囲まれ、火山から見下ろした風景は特に美しい。温泉はポケモントレーナーやポケモン達が日頃のバトルでたまった疲れを癒していた。
これがグレン島の本来の姿だったのだが…。
突如町には狂気に満ちた白いコラッタが出現した。
白いコラッタの戦闘能力は野生の普通のコラッタよりも強いと思われる。しかし強いと言えども野生のコラッタより強い程度である。しかし、白いコラッタは戦闘不能になっても蘇る。
普通コラッタには自己再生能力などない。
今の私には理由などわからない。
今温泉街は白いコラッタにより、悲鳴に満ち、怪我人の続出や町の破壊をしている。
白いコラッタに挑んだ勇気あるポケモントレーナーとポケモン達は白いコラッタに挑むも驚異的な再生能力の前には打つ手もなく、ことごとくやられていく。
そのためトレーナーとポケモンの負傷者が後を絶たない。
そして温泉街は癒しの場ではなく戦場と成り果てていた…。
温泉街の崩壊も時間の問題だった。
416名無しさん、君に決めた!:2008/02/23(土) 00:04:01 ID:???
>>415

>しかし強いと言えども野生のコラッタより強い程度である。しかし、白いコラッタは戦闘不能になっても蘇る。

>白いコラッタに挑んだ勇気あるポケモントレーナーとポケモン達は白いコラッタに挑むも


↑ここらへんみたいに同じ言葉を連続して使うのは止めた方が良いと思うぞ
417名無しさん、君に決めた!:2008/02/23(土) 01:03:35 ID:???
崩壊寸前の温泉街を一人の女が必死で走っている。
周囲には不気味なポケモンの鳴き声や悲鳴が響く。
だが人気は感じられない。
商店の者達や観光客はもうここから逃げたのであろうか。
商店は荒らされ、道には車などが乗り捨てられている。
電柱に衝突してフロント部分がペシャコンになった車が炎上している。
何かを避けようとしたのだろうか?
商店からは火の気が有るらしく黒い煙があがっている。
火事になるのも時間の問題だろう。
道路には建物の破片やガラス、お土産品が散乱している。
女は一人こけそうになりながらも注意して必死に走る。
何故なら彼女の後ろには白いコラッタが三匹追いかけてくる。
彼女はコラッタ達から逃げ切ろうとするがコラッタ達が素早すぎて逃げ切れない。
彼女は注意して走っていたが長時間の逃走に疲れとうとう注意を切らし足を瓦礫にとられてしまった。
女はこけてしまった。しかし素早く両手と両膝をつき、立ち上がり走ろうとした瞬間、白いコラッタの一匹が 彼女に飛びついた。
飛びついだコラッタは彼女の左足の後ろの太もも部分に噛みついた。女に激痛が走った。彼女の今までの人生の中で感じた事の無いほどの痛みだ。
418名無しさん、君に決めた!:2008/02/23(土) 01:11:22 ID:???
すまない。同じ内容の文を繰り返し使わないように注意します。
419名無しさん、君に決めた!:2008/02/23(土) 14:08:02 ID:???
レンジャー編は本編からズレ過ぎているので打ち切りにします。
すみません。
420名無しさん、君に決めた!:2008/02/23(土) 18:26:21 ID:???
明日、本編書けたら書きたいです
421名無しさん、君に決めた!:2008/02/25(月) 10:28:09 ID:???
 ピジョン達の話では、屋敷のポケモンに襲われて戦闘中、目の前に突然何者かが現れ、確認する間も
なく気が付けば外に倒れていたそうだ。
 これもミュウツーの仕業だろう。借りはこれで返したということか。
 幸い三匹に大きな怪我はなく、ピジョンが翼に少々の爛れたような傷を負っている程度であった。
「ベトベターに不意を打たれてな。なあに、大したことはない」
「ごめんなさい、ボクを庇ったせいで……」
 傷の理由をピジョンが話す横で、悲痛な面持ちでアブソルが顔を俯かせる。
「気にするなと言っただろう。大人としてかわいい子に怪我をさせるわけにはいかないからな」
 そう言ってピジョンは笑み、翼でアブソルの肩を軽くぽんぽんと叩いた。
「俺からも礼を言う」
「ああ。で、そっちは何があった?」

               ・

 地下で起こった事のすべてを俺はピジョンに話した。
 襲い掛かってきた者達の事、見つけた日誌の内容。ミュウツーとの対峙。話を進めるごとに各々の表情
に怒りや憎しみ、沈痛なものが浮かんでいった。
「ミュウツーの島が直に滅ぶという言葉、不気味だな」
「うむ……だが屋敷には入れず、こちらから打てる手立てが無い今、忠告に従わざるをえないように思う。
何が起こるかわからん、いつでもミミロップ達を運んでの飛行は可能か?」
「そうだな……。そんなに深い傷じゃあない。治療し、少し休めば――」
 その時、地が突如として唸り声を上げ揺らぎだす。
「な、なにぃ?」
「地震だ!」

 グレン島崩壊のカウントダウンは始まった。

422名無しさん、君に決めた!:2008/02/25(月) 12:24:40 ID:???
GJ!
423名無しさん、君に決めた!:2008/02/26(火) 17:47:53 ID:???
明日かけたら書きたいです
424名無しさん、君に決めた!:2008/02/28(木) 09:26:48 ID:???
 揺れは収まることなく激しさを増していく。周りの木々が揺さ振られ、がさがさと不安を煽る音を立てる。
「ちょ、どうしよう!」
「ゆれてるのー?」
「落ち着け、ただの地震ならばそのうちに収まる」
 恐慌をきたしかけているミミロップ達とポッポ達を、俺とピジョンは落ち着かせるように努めながら、
籠を隠させておいた場所へと急ぐ。番を任せているポッポ達の方は無事だろうか。
 横で地を駆けていたピジョンが不意に歩を止め、宙の一点を見上げた。それに伴って俺達も止まる。
「どうした?」
 視線の先には、木々の合間から覗くグレン火山の頂。黄昏に染まる空に煙を上げている。
「まさか、あれが奴の言っていた滅び……」
 そう呟くと、ピジョンは何かを覚悟したような表情をし、走りだした。
「急げ! あの火山がもし爆発するとなれば、ここら辺一帯が、いや、島中が高熱のガスと砕け散った
岩石の波に一瞬で飲まれるかもしれん。そして湯水のように溶岩が火口からあふれ出て残る全てを焼き尽く
しながら覆っていき――」
「ひえぇ!」
 ピジョンの解説にミミロップ達は悲鳴を上げ、揺れなど最早ものともせずに駆け出した。
ポッポ達も必死に羽ばたきを早める。


 隠し場所に辿り着くと、籠は有るがそこに見張りにおいた三羽の姿はなかった。
「あいつら、先に逃げたのか?」
「……いや」
 籠の影を見て俺は否定する。
 散らばった茶色の羽。深い傷を負ったポッポが一羽、籠の傍らに倒れていた。まだ息はある。
「何があった」
 俺はポッポをそっと抱え上げ、尋ねた。横からロゼリアが回復薬をポッポの傷口に吹き付ける。
「すみません、おかしなコラッタに襲われて……」
「他の二羽は?」
 ポッポは黙って首を横に振るう。
「……わかった。もう休むがいい」
「何ということだ……これではポッポの数が足りない。五羽ではとてもじゃないが島の外まで運んで逃げるのは無理だ」
425名無しさん、君に決めた!:2008/02/28(木) 18:23:02 ID:???
GJ!
426名無しさん、君に決めた!:2008/02/29(金) 16:50:54 ID:???
明日書けたら書きたいんだぜ
427名無しさん、君に決めた!:2008/03/02(日) 12:09:02 ID:???
 刻々と崩壊へ向かう震える大地に立ち尽くし、誰一匹として口を開くものはいない。
 現状、運ぶことができるのはミミロップかアブソルのどちらか一匹。だが、どちらを助け、片方を見捨て
るかなど誰も選ぶ事はできなかった。
 地の震動音に遠く空から響く雷鳴似た音が加わる。音が響いてくる方角を見上げると、噴き出る煙の量
が一層増している火山が目に入った。
 最早、一刻の猶予も残されていない。しかし――俺には選べん。他の手段も見出だすことができない。
 絶望が立ち込め俺達を包み込もうとした時、一陣の風が吹き抜ける。
 上空を高い声で鳴きながら低空で旋回する大きな影。鳥ではない。コウモリのような翼、二本角の生えて
いるトカゲに似た頭部、風に揺れる長い尾――それは翼竜。
 研究所の通風口内で復元を待ちわびる中、盗み聞いた研究員達の話を思い出す。
琥珀の中に残っていた遺伝子は古代の翼竜プテラのものであると。
「奴を呼び止めろ! お前を甦らせてやったのは我らだと!」

                       ・

「するってえと何かい。おれっちは石ころになっちまってて、それをおめぇさん達が助けてくれたってのかい」
 ポッポ数羽がかりで何とか飛び回るプテラを呼び止めることができた。
 怪しむように降りてきたプテラに俺達は必死に説明した。
「にわかにゃ信じらんねえ話だが、よござんしょ。おれっちも白亜っ子の端くれでい。困ってる奴ぁ放っておけねえってもんだ」
 そして、どうにか協力をこぎつけることができた。
 俺達はピジョンの指示の下、手早く脱出の準備を始める。
 ムウマージがロゼリアを道具袋に詰め込み空に浮かび上がっていく。プテラはたった一匹でミミロップ
を乗せた籠を任されたが何とか持ち上げ、上昇していった。続いてポッポ五羽がアブソルを籠に乗せ飛ぶ。
 俺は傷ついたポッポを任された。ミミロル――現ミミロップを運んだ時に比べれば軽いものだと快諾する。
 風船とベルトを取り付け、ポッポを蔓で抱くように胴に固定し、徐々に浮かび上がっていこうとした時、違和感に気付く。
ピジョンがいつまでも飛び立とうとしないのだ。
428名無しさん、君に決めた!:2008/03/02(日) 12:18:03 ID:???
「何をしている。噴火までもう時間は無いのだろう」
「悪いが、俺はここでお別れだ」
 ピジョンは申し訳なさそうに右の翼で頭の赤い飾り羽をさっと撫で、言った。
「何の冗談だ。つまらんことはやめろ」
「傷を負った翼が痺れてな。飛べないんだ」
 苦笑し、ピジョンは体を捻り左の翼の爛れた傷を見せる。
「な……! 何故そこまで状態が悪いと言わなかった」
「あの子に責任を感じさせたくなかった。そして言えばお人好しのあなた達のことだ。また誰を助けるか悩んでしまっただろう?」
「この馬鹿者がッ! 意地でも俺はお前を助ける。そしてたっぷりと説教してくれるわ」
 俺はピジョンの右の翼をしっかりと掴み、必死に浮かび上がろうとする。しかし、その体は持ち上がる気配すらない。
「無駄だ。ペルシアンには命令を達せずすまないと伝えておいてくれ。あなた達を恨むようなことはしないはずだ」
 握る手を無理矢理振り払うと、ピジョンは右の翼を大きく羽ばたかせた。
「悔いはない。俺は仲間達の下へ直接この羽を持っていくとするよ。
 短い間だったが、あなた達と旅ができて楽しかった。……じゃあ、な」
 巻き起こされた風に風船がとらわれ、俺の体が上空高くへと飛ばされた瞬間、鼓膜が破れそうな程の爆発音が轟いた。
 揺れる大気、降り注ぐ火と灰の雨。火山から下る高温ガスと砕けたマグマの死の波は島中に一瞬で広がり、
ピジョンの姿と、その名を呼ぶ俺の叫び声をかき消した。

 かくしてグレン島は滅び、二羽の死力を尽くし未知の敵から籠を守った勇敢なる部下と、一羽の大事な仲間を俺は失った。
 だが、これはミュウツー、そして“自分”達との戦いのほんの幕開けでしかなかったのだ。
429名無しさん、君に決めた!:2008/03/02(日) 12:18:16 ID:???
GJ!
430名無しさん、君に決めた!:2008/03/03(月) 10:53:31 ID:???
GJJJJJJJ!!
431名無しさん、君に決めた!:2008/03/03(月) 18:56:58 ID:???
書けたら明日にでも書きたいです
432名無しさん、君に決めた!:2008/03/05(水) 09:25:44 ID:???
 失意に暮れる空に、アブソルの嗚咽と鎮魂歌のような低くうねる風の音だけが響く。
 グレン島で起こった事、そしてピジョンとポッポの悲報を伝えるため、俺達はペルシアンのもとへ戻ることにした。
 眼下の島は炎獄と化し、近づくことすらかなわない。島中を赤熱の舌が這い回り、すべてを舐め取っていく。
それが海面にまで達すると、境界線を侵され怒り狂ったかのように海が爆発的な水蒸気を上げ激しく荒れ始めた。
 どうすることもできない自然の猛威。なされるがままに圧倒され、翻弄されるしかない。
無力感に苛まれる中、俺は立ち上る水蒸気の合間に、争う二匹の巨獣の姿を垣間見たような気がした。


 六番道路の外れに辿り着くと、すぐにペルシアンが現れ俺達を出迎えた。
 見回してもピジョンの姿がないことを聞いてくるペルシアンに、俺はピジョンの最期を話す。
 ペルシアンは言葉では平気な風を装っていたが、ふらふらと力なく木に寄り掛かり、今日はもう休み
詳しい話はまた明日に聞かせてほしいと言い残して、森の奥へと去っていった。
 俺達は主を亡くした木のうろを借り、やりきれなさに眠れない夜を過ごすこととなった。
朝になっても、もうあの短い嘴から発するよく通る声が起こしに来ることはないのだ。

433名無しさん、君に決めた!:2008/03/05(水) 15:43:53 ID:???
GJ!
434名無しさん、君に決めた!:2008/03/06(木) 16:39:18 ID:???
明日書けたら書きたいです
435名無しさん、君に決めた!:2008/03/08(土) 01:28:39 ID:???
すいません、今日はダメでした……
明日の深夜か明け方くらいまでには投下したいですorz
436名無しさん、君に決めた!:2008/03/09(日) 08:45:58 ID:???
漏れら極悪非道の
ageブラザーズ!
今日もネタもないのに
ageてやるからな!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 age   age
   age
  ∧_∧ ∧_∧
 (・∀・∩)(∩・∀・)
 (つ  ノ (  ⊂)
  ( ヽノ ヽ/ )
  し(_)  (_)J
437名無しさん、君に決めた!:2008/03/09(日) 09:01:42 ID:???
 翌朝、使いのオニスズメに呼び出され、俺達はペルシアンのもとへと向かった。
 ペルシアンは前回訪れた時と同じ木の下、鳥達の集合場所に座って待っていた。目の下に隈が出来ており、
少しやつれて見える。
 俺達を連れてきた事をオニスズメが報告すると、ペルシアンはオニスズメを下がらせこちらへ向き直った。
「ぐっすり眠れたかニャー? ……まあ、あんたらのその様子だと聞く迄もないかニャ」
 精一杯そうに軽口を叩いた後、ペルシアンは真剣な表情へと戻る。
「それじゃあ、じっくり漏れなく聞かせてもらうかニャ。噴火する前、グレン島で何があったのかを全部ニャー」
 言われた通り、俺達は島での出来事を包み隠さず話す。ピジョンがアブソルを庇った為に怪我を負い、
それが最期へと繋がった事も――。
 聞いている間、怒りか悲しみかにペルシアンの肩は震え、足元の地面は立てられた爪で深く抉れていった。
 話し終えると、涙を必死に堪え謝るアブソルのもとへ、ペルシアンは詰め寄るように近づいていく。
 目の前でペルシアンの前足が振り上げられ、アブソルは目をぐっと閉じた。
438名無しさん、君に決めた!:2008/03/09(日) 09:03:14 ID:???
 ――これはさすがにまずいか。
 しかし、俺が割って入ろうとする前に、ペルシアンの右前足はアブソルの頬にぺたりと力なくつき、ごしごしとさすった。
「うざったいからいつまでもめそめそしてるんじゃないニャ。別に恨んじゃいないニャー。
あんたらを恨むなんておカド違いってことくらいボクにもわかってるニャー。憎むべき相手は別ニャ」
 前足を離すとペルシアンは深くため息を吐いた。
「また空っぽの墓を作らなきゃいけないのニャ。よりにもよってあいつの、あの大バカのもニャー……」
 そう言って俯いたペルシアンにムウマージが寄っていき、くいくいと尻尾を引っ張る。
「何ニャー?」
「これあげる」
 ムウマージが取り出して見せたのは一枚の茶色い羽。たしかムウマージが双子島で……。
「これは、この羽は……!」
「ピジョンのだよー」
 羽を受け取ったペルシアンは一瞬だけ瞳を潤ませた後、我に返ったように大げさに鼻を啜り、目から雫を拭いさった。
「……ありがとニャ。少しは気分的にマシになったニャ。
――こんなことになった原因はそのミュウツーというポケモン、奴に大きくあるニャ。オトシマエは絶対につけさせてやるニャ。
死んだ二羽はいいヤツらだったニャ。ピジョンは昔からのクサレ縁だったニャ。
今から我がペルシアンの目達は全力でミュウツーの捜索に当たるニャ。そして情報はあんたらにもタダで教える、それでいいかニャ?」
「ああ、頼む」
439名無しさん、君に決めた!:2008/03/10(月) 16:50:49 ID:???
保守
440名無しさん、君に決めた!:2008/03/11(火) 18:22:09 ID:???
明日進められたら進めたいです
441名無しさん、君に決めた!:2008/03/13(木) 11:13:45 ID:???
 二人の男が、机を挟んで深刻な顔をし向かい合っている。
「それで、島の被害の程は?」
 立派な椅子に腰掛けた茶髪の男は青年と呼ばれるようになってまだ間もないといった風だが、
その目は自信に満ち、ある種の威厳のようなものがある。
「壊滅だよ。島の九割が溶岩や火山灰に覆われて、復興の目処も立たないな」
 書類の束を片手に持ち向かいに立つのはそれよりも年が上と思われる逆立った赤髪の青年。
マントを羽織った独特の服装から、ドラゴンタイプのポケモンを主に扱うトレーナー、ドラゴン使いだということがわかる。
「死傷者は?」
「偶々居合わせたレンジャーの迅速な手配で、運良く軽傷者だけで死者は出ていないそうだ」
「勲章ものだね。良かった」
 茶髪の青年はほっと胸を撫で下ろした。しかし、またすぐに難しい顔へと戻る。
「それにしても、最近は不可解な事が多すぎるよ。数日前にハナダの洞窟近辺をうろつく、
ロケット団の残党らしき怪しい三人組を見たという証言。その同時期くらいから目撃されるようになった正体不明のポケモン。
そして今回の兆候無しの異常な突然の噴火。こうも立て続けだと関連性を疑ってしまうな」
「どうも、そう見て間違いないかもしれないな」
「と言うと?」
442名無しさん、君に決めた!:2008/03/13(木) 11:15:21 ID:???
 赤髪の青年は書類の束から一枚を抜き出した。
「例のポケモンの目撃された場所を点として順に線で結んでいくと、ハナダの洞窟の辺りからグレン島まで繋がるんだよ。
そして噴火後にその線はハナダまでまた折り返している」
「……確かに何かありそうだね。もしもそのポケモンが火山を噴火させるほど強力で危険なポケモンなら、何とか対策しなきゃいけない」
「ハナダに調査員を派遣するか?」
「いや、僕が直接行ってくるよ。セキエイ高原の景色も見飽きたし、挑戦者の相手ばかりするのも退屈だからね」
 そう答えると茶髪の青年は椅子を立ち上がり、かけてあった赤いジャケットと鍔付きの赤い帽子を手に取った。
「やれやれ。とんでもないチャンピオンだ。君のことだ。どうせ止めても聞かないんだろうな。
わかった、俺の方で許可を取っておこう。だがくれぐれも気を付けてくれよ。レッド君」
「わかってるよ、ワタルさん」

※ ※ ※

「遂に目撃情報が入ったニャー。ハナダの北西にある洞窟に、それらしきポケモンが入っていくのを見たと!」
443名無しさん、君に決めた!:2008/03/13(木) 12:50:42 ID:???
展開早いな、GJ!!
444名無しさん、君に決めた!:2008/03/13(木) 17:29:07 ID:???
GJ!
445名無しさん、君に決めた!:2008/03/14(金) 17:25:20 ID:???
明日書けたら書きたいです
446名無しさん、君に決めた!:2008/03/16(日) 11:45:34 ID:???
 じめじめとした厭な空気が、鬱蒼と生い茂る木々と草むらの間に瘴気のように立ちこめ、毛にまとわりついてくる。
 ハナダシティから川を隔て北西に位置する小高い丘の麓に、洞窟は口を開けて待ち構えていた。
 人の手により入り口が封鎖されていたようだが、既に鉄の扉は蝶番が壊れたのか外れており、その役目を果していない。

 奴は、ミュウツーは恐らくこの洞窟の奥にいる。そうペルシアンの一報が入ったのは、
鳥達が情報の収集を始めてから二日程経った後だ。
 すぐに話し合い、俺とミミロップ、ロゼリア、ムウマージ、アブソルの計五匹で調査に向かうことにした。
 ペルシアンも調査へ行くことを望んだが、俺達の身に何かがあった時の為に待機しているよう説得したのだ。
 アブソルにも残るように言ったのだが、頑なに聞かず、仕方なく連れてくることになった。

「んじゃあ俺っちらはここらで待ってりゃあいいんだな」
 プテラはペルシアンの部隊に身を置くことを自ら決め、ピジョンの後任を任される事となった。
 ミミロップとアブソルの空輸を他の鳥達と共に引き受けてもらい、俺達は空から洞窟の前まで辿り着いたのだ。
「せいぜい気ぃ付けておくんなせぇよ」
「ああ。ご苦労だった」
 プテラに礼を言い、俺達は入り口の方へと歩んでいく。
 ここから先、一瞬でも気を緩めることはできない。
ミュウツーを止める。力付くでも、あの圧倒的な力と戦うことになろうと。

 ふと、入り口付近の土に靴の跡が残っていることに気付く。くっきりとして真新しく、つい先程できたかのようだ。
 ――まさか人間が来ているのか? ……厄介な事になった。

447名無しさん、君に決めた!:2008/03/17(月) 07:05:55 ID:???
GJ!
448名無しさん、君に決めた!:2008/03/18(火) 11:08:17 ID:???
明日書けたら書きたいんだぜ
449名無しさん、君に決めた!:2008/03/20(木) 12:09:56 ID:???
 ペルシアンから話を聞く以前にも、ハナダ北西の洞窟には狂暴な化け物が住むという噂を風の便りに聞いたことがある。
この洞窟に入った姿を最後に行方をくらませた者も数多く、人間はおろか一帯に住むポケモンでさえ、
まともな精神の者は洞窟付近にあまり近づこうとはしないのだという。
 いつ頃か人間の手により封鎖が施され、洞窟は開かずの魔窟と化した。
その内部に今、俺達はいる。
 洞窟内はひやりと寒く、奥からは水が流れるような音が響いてくる。
ハナダ川の支流でも通っているのだろうか。
 岩陰や頭上、前後にも常に気を配り、襲来に備えながら進む。ミュウツーのこともあるが、
人間の存在にも注意を払わなければならない。
 俺達と同じく、ミュウツーを追ってきたかのような時機での人間の出現。偶然とは思えない。
ミュウツーを知っている。そして、奴を造った実験の関係者の可能性がある。
 ミュウツーがこの洞窟を訪れたことも偶々ではないのではないか。深い関わりがある地だとすれば、
そこに付随してくるのは――あの屋敷で見たもの。この洞窟に住むという狂暴な化け物の話と嫌に繋がる。

「行け! エーフィ!」
 緩やかな曲がり角に差し掛かろうとした時、人間らしき声が道の先より響く。 咄嗟に全員を角の手前で止め、俺は壁を背で這うようにして覗き込んだ。
 道の先では人間が繰り出したと思われる薄桃色の猫に似たポケモンが、一匹のゴーリキーと対峙している。
だが肝心の人間の姿は岩の影になって見えない。
450名無しさん、君に決めた!:2008/03/20(木) 13:02:06 ID:???
GJGJ
451名無しさん、君に決めた!:2008/03/21(金) 11:56:52 ID:???
明日書けたら書きたいです
452名無しさん、君に決めた!:2008/03/23(日) 12:20:34 ID:???
 やはり悪い予感は当たっていた。
 ゴーリキーの常軌を逸した、狂気に蝕まれた目。体の末端は色素が抜け落ちたかのように白い。
 化け物の正体は奴――いや、奴ら、か。他にもまだ大勢、この洞窟には失敗作達が巣食っていることだろう。
 対するエーフィと呼ばれたポケモンは臆することなく座ったままゴーリキーと睨み合い、人間の指示を待っている。
 さて、加勢すべきか否か。まだ岩影にいる人間が、俺達にとって無害かどうかは判別できない。
「ここは少し様子を見るか」
「そうですね」
 俺達は高みの見物を決め込むことにした。どちらにせよ、奥に行くにはあの空間を避けては通れない。
どの程度やれるのか手並みを拝見させてもらおう。あわよくば漁夫の利を得ることもできるかもしれん。

 暫らくの睨み合いが続いた後、痺れを切らしたゴーリキーが筋肉で盛り上がった剛碗を振り上げ、
雄叫びを上げながらエーフィに向かっていく。
 見たところエーフィはエスパー。相性上はゴーリキーに有利だ。
だが、あの猛進を止めるのは相当難儀するだろう。
失敗作とはいえ、奴らの頑強さは屋敷で嫌というほど味わった。
453名無しさん、君に決めた!:2008/03/23(日) 12:23:09 ID:???
「オーケー。エーフィ、ぎりぎりまで引き付けるんだ」
 接近させるだと?
 近距離ではあのゴーリキーには明らかに分が悪い。遠距離から仕留めるのが定石だと思うのだが。
 エーフィは人間の指示に反することなく小さく返事し、慌てる様子も見せず立ち上がる。
「今だ!」
 ゴーリキーが間近にまで迫りその碗が振り下ろされた瞬間、エーフィは飛び上がって拳をかわした。
そのままゴーリキーの頭上を飛び越えると、無防備な背中を踏むように蹴りつけエーフィは更に高く跳躍する。
 なんと。
 背後からもミミロップ達の驚嘆の声が上がる。
「エーフィ、サイコキネシス! 投げ飛ばせ!」
 間を置かず飛ぶ指示に、エーフィは空中で額の宝石と目を輝かせ、
前のめりに体勢を崩され抵抗できないゴーリキーを容易く念動力で捕らえた。
そしてエーフィが宙返りするように体を一回転させると、大きな人型の体は回転に合わせて浮き上がり、
エーフィの見えない大きな背中に背負われて投げられたかのように、奥へ勢い良く吹き飛ばされていった。
 数秒後、豪快な着水音が響く。どうやら川に落とされたようだ。
流されていっているのか、怒りに満ちた咆哮もどんどん遠退いていく。
 何という無茶な……。だが、巧い。
相当の経験を積み、完璧な意思の疎通ができていなければ、トレーナーの指示越しにあんな真似はできん。
 ここまでポケモンと心を通わせているとは、悪い人間ではない――のか?
454名無しさん、君に決めた!:2008/03/23(日) 23:54:43 ID:???
GJ!
455名無しさん、君に決めた!:2008/03/24(月) 11:11:28 ID:???
明日にでも書けたら書きたいです
456名無しさん、君に決めた!:2008/03/25(火) 13:41:31 ID:+KIhc3SG
保守
457名無しさん、君に決めた!:2008/03/26(水) 12:49:33 ID:???
 岩影から人間の手が伸び、エーフィの頭を優しく撫でる。
エーフィは、すました風を装っているが、嬉しそうに小さく喉を鳴らした。
「うん、よくやった。ありがとう。戻れ、エーフィ」
 そして人間は礼を言い、モンスターボールにエーフィを戻した。

 やはりポケモンを実験材料にするような輩には思えない。だが、それならば何故この洞窟にやってきたのか。
 ただ命を捨てに来たようにも、興味本位で洞窟探険に乗り出した無知な愚か者とも違うように感じる。
今まで拾えた数少ない情報だけでは、幾ら頭の中で組み合わせ並べようと答えが出ることはなかった。
 そうこうとしている内に、姿の確認もできぬまま人間がその場から離れていく足音が響く。
「どうします?」
「少し、奴の後をつけるぞ」
 ロゼリアにそう答え、俺は曲がり角の先に歩を進める。
 もう少し見極める必要があるな。
わけもわからぬまま放置し、ミュウツーと対峙している時に横から割り込まれては目も当てられない。
 相手は思った以上に強力な使い手だ。慎重すぎる程でちょうどいい。

 道の先に背後からではあるが、人間の全身を確認することができた。
 俺達は適当な物陰に身を隠し、様子を見る。
 人間は川の手前で止まり、腰のモンスターボールのホルダーに手をかけて何かを繰り出そうとしていた。
 赤い帽子に袖の短い同色のジャケット。少なくとも研究者には見えない。
 あの格好、どこかで見覚えがある。確か――三年という時の流れ、かなり成長してはいるが、あれは――。
 と、その時、俺達の頭上を越え人間に向かって滑空していく影が一つ。
大きな翼と、全身の半分以上をしめているような大きすぎる口が特徴の異形のコウモリ――ゴルバット。シンオウの者とは別個体だ。
 その接近に赤い服の人間はまだ気付いていない。
458名無しさん、君に決めた!:2008/03/26(水) 13:39:15 ID:???
GJ!
459名無しさん、君に決めた!:2008/03/27(木) 14:35:33 ID:???
明日書けたら書きたいんだぜ
460名無しさん、君に決めた!:2008/03/29(土) 05:47:50 ID:???
ごめんなさい間に合いませんでしたorz
今日の深夜までにはなんとか投下したいです……
461名無しさん、君に決めた!:2008/03/30(日) 08:09:10 ID:???
 ゴルバットとの距離、約二メートル。異変に気付いた赤服の人間は即座に振り向き、
繰り出したカメックスに指示を出そうとするが、既に目前にまでゴルバットは迫っていた。
 牙がその身に突き立てられようとした刹那、襲撃者の右翼に放たれた電気の帯がかする。
翼先を焼かれたゴルバットは堪らず金切り声を上げながら、赤服の体をとんぼ返りするように逸れ、
羽音を立てて天井近くまで舞い上がった。
 赤服は呆気に取られたようにゴルバットと電撃の元――俺の方を交互に見やる。
 ……思わず飛び出てしまった。手に残るピリピリとした感触が軽率な行動を戒める。
 上空から降り注ぐ羽音と耳障りな鳴き声。はっとして、赤服は表情を戻す。
「カメックス、冷凍ビームだ!」
 赤服の命令にカメックスは四つんばいになり、背甲に携えた二対の砲搭を構えた。
 ――やはり助けぬ方が良かったか。人間になど期待するべきではなかった。
 舌打ちし、俺は遮蔽物となりそうな岩陰に身を戻そうとしたが、砲搭は俺を通り過ぎ上空へと向けられる。
 砲口の数センチ先に青白い輪が一瞬輝いたかと思った瞬間、真っ直ぐに光の線が伸び、ゴルバットを貫く。
叫び声を上げる間もなく、たちまちゴルバットの体は凍てつき、氷塊と化したそれは川へと落下し流されていった。
 それを見届けると、赤服はゆっくりとこちらに目を向ける。
 俺は体勢を低く構え、頬に蓄まった電気をバチバチと鳴らし威嚇した。岩陰からミミロップ達も飛び出し、俺に加わる。
 カメックスも砲搭をこちらへ向け、低く唸る。
「ちょっと、待った待った」
 一触即発の状況。慌てて赤服はカメックスと俺達の間に入り、手で制した。
「こいつらは敵じゃないよ、カメックス」
 カメックスは腑に落ちなさそうな顔で構えをとき、立ち上がった。そしてふんと鼻息を飛ばし、苛立たしげにそっぽを向く。
 赤服は宥めるようにカメックスの甲羅を軽く叩いた後、俺達に向き直りまじまじと見回し始めた。
「うん、間違いないな。ワタルさんみたいな変なマントのピカチュウ、ウサギみたいな子、
この辺には滅多にいないはずのロゼリア、ムウマが進化したみたいな子。この組み合わせ、よく覚えている。
あの時の子達だよね? そのアブソルは新しい友達かい?」
462名無しさん、君に決めた!:2008/03/30(日) 12:13:03 ID:???
GJ!
463名無しさん、君に決めた!:2008/03/31(月) 19:16:17 ID:???
明日書けたら書きたいです
464名無しさん、君に決めた!:2008/04/02(水) 10:12:48 ID:???
 赤服はしゃがんで俺達に目線を合わせると、そう微笑みかけてきた。
「何だかまた君達に助けられたみたいだね。ありがとう。
それにしても随分と久しぶりだな、君達を見たのは。シルフビルでの事件以来かな」
 にこやかに赤服は俺達に話し続ける。
 過去の世界で共にロケット団と戦ったあの人間の子供。
自身に及ぶ危険など顧みずポケモン達のために戦った人間の一人であり、
ミュウツーに反発する事を俺に決意させた要因の一つだ。
 それが三年近い月日を経て成長した姿で、再び俺達の前に姿を現した。
「……確かレッドとかいう人でしたっけ。僕達と一緒に戦った」
 ロゼリアが声を潜めて言う。
「ああ、そのようだ」
 神共の手によりどのような記憶の改竄が行われたのかわからんが、互いにその存在は覚えているようだ。
 思わぬ再会に何か感慨深いものを感じてしまいそうになりながらも、ふと我に返る。
 まだ油断はならない。こいつが一体何の目的で現われたのかまだわからないからだ。
「君達はここに住んでいるのかい? ――って、そんなわけないか。他のポケモン達みたいに狂暴化していないしな。
この洞窟は危険だ。それも正体不明のポケモンが、新しく住み着き始めたらしい今はいつも以上にね。
助けられた僕が言うのも難だけど、迷い込んだのなら早めに抜け出したほうがいいよ」
 正体不明のポケモン――まさか人間達もミュウツーの存在を嗅ぎ付けているのか。
 奴の存在は公に広く出回るような情報とは思えない。だが、研究の関係者にしては知っている情報が漠然としている。
「さてと、そろそろ調査を再開しないとな。例のポケモンも、君達みたいにおとなしい子だったらいいんだけど、
そうはいかないだろうな。もし危険な奴なら、悲しいけど倒さなきゃならない。……じゃあ、君達も気を付けて」
 そう言って、レッドは腰を上げた。そしてカメックスに波乗りの指示を出す。
「野性のポケモンに同じ言葉が通じる友達みたいに話し掛けてくるなんて、
相変わらず変わった人。でも、どうやら目的は私達と似ているようね」
「うむ……」
 協力して進むべきか否か――。
465名無しさん、君に決めた!:2008/04/02(水) 12:24:40 ID:???
GJ!
466名無しさん、君に決めた!:2008/04/02(水) 12:42:51 ID:???
GJ!
467名無しさん、君に決めた!:2008/04/03(木) 18:22:25 ID:???
明日にでも続き書けたら書きたいです
468名無しさん、君に決めた!:2008/04/05(土) 10:00:11 ID:???
 敵は強力だ、戦力は多いに越したことはない。道中は少しでも全体の体力を温存し、
後に控えている避けられぬであろうミュウツーとの戦いに備えなければならない。
 あまり多くの人数を連れ立つと敵の目に留まり余計な戦闘を招くことになりかねんが、
こいつは一人で――ホルダーには六つのモンスターボールが取り付けられている――六匹分。
所詮、人間なため本体自体は軟弱で役に立たないとしても、その指揮の下に動くポケモン達は大きな戦力となる。
見たところエーフィ、そしてカメックス共によく鍛練されており、トレーナーとしての腕前もそれなりに認められるものだ。
 目的はほぼ同一。敵の敵は味方。大いに利用、もとい協力させてもらおう。
「あの者と共に行くぞ」
「それがいいでしょうね」
 ミミロップが賛同する。「置いていかれては元も子もない。急ぐぞ」

 カメックスに跨がり岸を離れていくレッドの背に向かって一足先に俺は駆け出し、背負っているバッグに飛び付いた。
「うわ!」
 突然の衝撃にレッドは声を上げ、体を軽くよろめかせた。主の異変にカメックスはひどく驚き、大きく揺れる。
その拍子にバッグが開いて幾つか道具が零れ、川に落ちる音がした。
 激しい揺れに耐えつつ、飛び付いてきたものを掴もうと迫るレッドの手を避けながら、
俺は体をよじ登って渡り、レッドの目の前に顔を覗かせた。
「な、何で――っと、僕は大丈夫、大丈夫だ! 落ち着くんだ、カメックス!」
 俺を確認し、慌ててレッドは暴れるカメックスの甲羅を踵で叩き、叫んだ。
 カメックスは徐々に平静さを取り戻し、暴れるのを止めた。
 ふう、とレッドは安堵の息を吐き、荒れる息を整える。
「君かぁ……。まったく、驚かせないでくれよ」

469名無しさん、君に決めた!:2008/04/05(土) 23:42:32 ID:???
GJ!
470名無しさん、君に決めた!:2008/04/06(日) 17:14:08 ID:???
明日書けたら書きたいんだぜ
471名無しさん、君に決めた!:2008/04/08(火) 11:59:49 ID:???
ごめんなさい、ちょっと遅れそうですorz
投下は深夜に……
472名無しさん、君に決めた!:2008/04/09(水) 02:45:35 ID:???
 レッドは首を傾げ俺を見つめた。
「何のつもりだい? 突然、意味もなくじゃれついてくる子には見えないけど。
道に迷ったようにも見えないし――もしかして、また僕に協力してくれるとか?」
 俺は首を縦に小さく振ってみせる。そしてレッドのジャッケットの裾を片手でくいくいと引っ張りながら、
ミミロップ達の待つ川岸をもう片方の手で指し示した。
 くす、とレッドは笑う。
「そうか……危険な事にわざわざ自分から首を突っ込むなんて、相変わらず変わった子達だなあ」
 それは前々からお前がやっていることだろうに。
「ふん、お前に言われたくはない」
 自分のことを棚に上げた発言に、思わず悪態が口をついて出てしまう。
だが、人間に我らの言葉など通じはしない。気にすることもないだろう。
「はは、まったくだよね。――それじゃあ君の仲間を迎えに行こうか、小さなヒーロー。
カメックス、元の岸に一旦戻ってくれ」
 ヒーローなど冗談ではない。最終的な目標はその真逆だ。
 ――今、何かが変ではなかったか。
 違和感に、ふと気付く。……いや、まさかな。


 岸に着きカメックスから降りると、レッドは俺達とカメックスを交互に見比べた。
「さて、どうしようかな。全員をカメックス一匹には乗せられないよね。そっちの二匹は結構大きいし」
 ひとしきり悩んだ後、レッドはモンスターボールを取り出す。
 気付いた俺達は一斉にレッドから後ずさり、離れた。
「違う、違う。捕まえるつもりじゃあないよ。これ中身入ってるから。信用ないなあ。出てこい、お前達!」
 もう一つボールを取り出し、レッドは同時に放り投げた。
 ボールの中から現われたのは、一対の立派な翼を背に生やした赤い竜と、
でっぷりとした体系の黒い大きなポケモンの二匹――リザードンとカビゴンだ。
473名無しさん、君に決めた!:2008/04/09(水) 07:07:04 ID:???
GJ!
474名無しさん、君に決めた!:2008/04/10(木) 17:11:59 ID:???
明日書けたら書きたいです
475名無しさん、君に決めた!:2008/04/12(土) 09:05:12 ID:???
「俺の背の上はどうだい、スウィートハニー?」
 レッドの指示でカビゴンにアブソルとロゼリア、そしてリザードンに俺とミミロップが乗り込み、
カメックスとカビゴンで水上、ムウマージとリザードンで空中の二手に分かれ進むこととなった。
 それはいい、だが問題は――。
「ふう、本来ならこんな陰欝な洞窟の中じゃなくて、雄大な大空をエスコートしたいところなんだがね。
そして余計なおまけがついていなければもっといい」
 足元の、俺を余計なおまけ扱いしているこの小煩い羽トカゲだ。
「それはいいわね。でも、私はピカチュウが一緒じゃなきゃ乗らないわ」
「つれないな、お嬢さん。だが障害が多いほど俺は燃える質なんだ。あなたほど美しいとあれば殊更に」
 主人の手を少し離れたと同時に二つの意味で羽を伸ばし、この調子でミミロップにちょっかいを出し続けている。
「もう……。ピカチュウ、なんとか言ってよー」
 そして、その間中、ミミロップは助け船を求めてか、俺のマントの裾をくいくいと引っ張っている。
 大きな溜め息が一つ、自然に漏れだす。煩わしい板挟みに苛立ちの限界が近づいていた。
「場を弁えよ、リザードン」
「おや? 妬いているのか、おチビさん。生憎、俺はあんたの手下じゃないんでね。命令に従う必要も、気も、微塵もない」
 バチバチと俺の頬が鳴る。ありったけの電流が忌まわしい羽トカゲに向けて放出されそうになるのを、
体を震わせながら必死に堪えた。叩き落としてくれようにも場所が場所だ。
「ああ、ハニー……俺の愛は死ぬまで燃え尽きることはない。我が尻尾の先に灯る炎のように――うわチッ!」
 突然、ジュッという水が一瞬で蒸発したような音とともに、リザードンが体を少し仰け反らせ悲鳴を上げた。
「ぅるっせーんだよォ! クソッタレの色惚け野郎が。トカゲがウサギに発情してるんじゃねえ!」
 下の方――水上から、いかつく乱暴な声が響く。覗き込むと、カメックスがこちらに顔と砲塔を向けていた。
 リザードンは尻尾の先の炎が消えていないのを恐る恐るといった様子で確認した後、首を下に向けカメックスを睨み返す。
「ちっ、相変わらずデリカシーのない鈍亀だ。愛に種族など関係ないんだよ!」
476名無しさん、君に決めた!:2008/04/12(土) 23:33:30 ID:???
GJ!
477名無しさん、君に決めた!:2008/04/12(土) 23:36:46 ID:???
GJ
リザードン自重ww
478名無しさん、君に決めた!:2008/04/13(日) 16:33:35 ID:???
明日書けたら書きたいんだぜ
479名無しさん、君に決めた!:2008/04/13(日) 18:55:29 ID:???
漏れら極悪非道のageブラザーズ!
今日もネタもないのにageてやるからな!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ∧_∧   ∧_∧    age
 (・∀・∩)(∩・∀・)    age
 (つ  丿 (   ⊂) age
  ( ヽノ   ヽ/  )   age
  し(_)   (_)J
480名無しさん、君に決めた!:2008/04/14(月) 17:24:18 ID:???
GJ!
481名無しさん、君に決めた!:2008/04/14(月) 22:54:27 ID:VdD+qcBF
大変残念な報告があります。 日本終了のお知らせです。

自民党・公明党などが、言論を統制したり国民を弾圧する、いくつもの悪法を成立させようとしています。
いずれの法案も、名前と実態が違う、対象となるものの定義が曖昧、実効性が乏しく危険性ばかりが大きい、といった問題を抱えています。
政府は元よりマスコミもほとんど報じないため、国民の多くが法案の実態を知らないままに可決されようとしています。

人権擁護法案(人権施策推進法):北朝鮮や中国を批判したり、政治・社会・宗教などに疑問を呈する事が「差別」として取り締まられる可能性がある。
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1207979532/
新児童ポルノ法案:児童ポルノの定義を「18歳未満に見える場合」とし、単純所持違法化を皮切りに、いずれは漫画・アニメ・ゲームも規制。
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1208048349/
青少年ネット規制法案:未成年者に有害な情報を見させないためと称してネットを検閲し、ネットに関わる者全てに多大な負担を強いる
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1207878699/
482名無しさん、君に決めた!:2008/04/15(火) 08:42:42 ID:???
「がぁーッ、何が愛だ! おめえみてえな色惚けトカゲが言うと数百倍、いや、数千倍気色わりぃんだよ!」
 カメックスはレッドの制止も聞かず再びリザードンへ照準を合わせ、砲塔から勢い良く水を噴射する。
リザードンは体を傾け、軽々と二本の水流の合間を縫うようにかわしていく。
 急に体を傾けられ、俺はバランスを崩してリザードンの背を転げ体が宙に放られた。
「しま――ッ!」
 がしりと腕を褐色の手に掴まれ、引き寄せられる。間一髪のところで俺はミミロップに抱えられ、難を逃れた。
「大丈夫?」
「ああ、すまんな」
 放水が止むと、馬鹿にするようにリザードンはカメックスの上空で旋回を始める。
「ははは! 鈍亀め。不意を突かれなきゃそんなトロくさい水鉄砲が二度も当たるか。それに前から何度も言っているが、
俺は今はもうトカゲじゃなくて竜だ。至高にして孤高なる、高みの存在。トカゲや愚鈍な亀のような爬虫類とは違うんだよ爬虫類とは」
「あー! うるせえ、うるせえ! トカゲはトカゲだろうが。わけわっかんねえこと言いやがって。
オーキドのジジイんとこに居た時から、おめえだけは気に食わねえ。これからもずっとそうだと言い切れるぜえ!」
「奇遇だな、俺だってそうさ。それが何の間違いか肩を並べて共に戦うことになるなんて……嫌で嫌で嫌で嫌でしょうがない」
 二匹の言い争いは止むことなく延々と続き、激しさを増していく。
甲羅の上でレッドは片手で自分の後ろ頭をがさがさと掻き撫で、深く息を吐いた。
「二匹とも、いい加減にしないか!」
 主人の一喝に二匹はびくりと反応する。そして互いに口惜しそうに睨み合った後、顔を背けた。
「まったく……どうしていまだに仲良くできないのかな、お前達は。これじゃあグリーンに顔向けできないよ」
483名無しさん、君に決めた!:2008/04/15(火) 18:17:33 ID:???
GJ!
484名無しさん、君に決めた!:2008/04/16(水) 19:16:28 ID:???
明日続きかけたら書きたいです
485名無しさん、君に決めた!:2008/04/18(金) 06:59:03 ID:???
「あ、そっか。思い出した」
 ミミロップがぽつりと呟く。
「なんだ?」
「え? いや、あのカメックス、前にもどこかで見たことあるなぁって思ってたんだけど、ツンツン逆立った髪型した
グリーンって名前のヤな人間が連れてた奴と同じ奴よね。ほら、シルフビルで戦った。あ、ピカチュウは見てないか」
 名前までは知らないが、ツンツン頭の人間の事は覚えている。
確かカメールを連れていたような覚えがあるが、あの時点で既にカメックスに進化していたのか。
「そうさ、ハニー。あの鈍亀はそのグリーンが連れてた奴だよ。
君の美しさはあの時から変わらないね。まさにダイヤモンド、いや、パール――宝石のような永遠の輝きさ」
 首を少しこちらに向け、リザードンが答える。余計な口説き文句を付け足して。
 欝陶しさここに極まれり。ここが地上であれば即座に電撃の餌食にしてやるものを。
「はいはい……。そういえばあんたも居たわね、リザードン。
でも、何であのレッドって人が今はあのカメックスを連れてるの? ポケモン交換し合うような仲良しにはとても見えなかったけど」
 確かにそうだ。あの時、グリーンはレッドの前に立ちふさがり、敵対しているようだった。
ダークライの影響下にあったとはいえ、屍のような目をしていたロケット団員達に比べ、自己を保っていたように思える。
 リザードンはぽりぽりと首筋を掻いた。
「まあ、あの二人には色々とすれ違いがあってね。あの後も何度か衝突していたけど、最終的には和解したのさ。
リーグでレッドがグリーンに勝ってチャンピオンになった時、オーキドのジイさんに諭されたのが一番効いたんだろうな。
あの鈍亀は和解の証にグリーンの奴から贈られたそうだ。俺にとっては迷惑な話だよ」
486名無しさん、君に決めた!:2008/04/18(金) 07:00:32 ID:???
「待て。今、なんと言った。グリーンに勝ってチャンピオンになっただと?」
「なんだい、生意気なおチビさん。折角、俺とハニーが話しているところなのに割り込んでこないでくれたまえよ。
まあいい、隠す必要などない。そうさ。俺のマスター、レッドは今やポケモントレーナーの頂点!
泣く子も黙り、憧れるポケモンリーグのチャンピオンだ。
そして俺はそのポケモン。惚れなおしたかい、ハニー?」
「一度もあんたになんて惚れてないんだけど」
「つれないね。だが、それがいい」

 なんと……! では、カントー各地で何度も耳にした、我らポケモンのために尽力しているというチャンピオンは、
あの者――レッドだったというのか。
 あの真直ぐにポケモンを想う心は時の流れに捻曲がることなく、むしろ更に力強く成長していたのだ。
これ程……これ程――何と表せばいいのだろう、言葉が見つからない込み上げる熱い感情の渦に俺は飲み込まれる。
 奴には守るだけの価値がある。人間としてではない、レッドという個の存在としてその価値を見いだした。
決して飼い馴らされたわけではない。対等の立場として、受けた恩に報いる。それだけだ。
 すべてを終わらせた後、洞窟の外へレッドを無事に送り帰す。それが俺にできる精一杯の返礼。
その後も共に歩むことはできない。俺にも目指す道がある。

                    ・

「みんな、上がるに丁度よさそうな場所がある。そろそろ降りる準備をしてくれ」

487名無しさん、君に決めた!:2008/04/18(金) 07:04:00 ID:???
GJ!
488名無しさん、君に決めた!:2008/04/18(金) 18:51:03 ID:O7/r/Mez
皆さんこの小説を小説帳に書きたいんですけど良いですか???
489名無しさん、君に決めた!:2008/04/19(土) 03:29:24 ID:???
>>488
保管したいってことなら既に保管サイトもWikiもありますよ>>1

自分が書いたかのように偽って、自分のブログやサイトに丸写しするつもりなら駄目絶対
490名無しさん、君に決めた!:2008/04/19(土) 17:51:10 ID:???
明日にでも続きを書けたら書きたいです
491名無しさん、君に決めた!:2008/04/19(土) 23:16:51 ID:R/ZJuia1
パソコンのブログじゃなくてノートに書き留めようと思ってるんですが
いいですか???
492名無しさん、君に決めた!:2008/04/19(土) 23:24:59 ID:???
>>491
三年くらい2ちゃんねるを読んでから考えるといいよ
書き込んじゃ駄目
493名無しさん、君に決めた!:2008/04/20(日) 10:17:22 ID:jJwiPPW5
なにに書き込んじゃだめなんですか
494名無しさん、君に決めた!:2008/04/20(日) 14:32:16 ID:???
頭悪いみたいだから取り敢えず病院行ってこい
話はそれから
495名無しさん、君に決めた!:2008/04/20(日) 16:49:33 ID:???
>>493
スレを上げないようにメール欄に半角小文字でsageと入れる
できないorよくわからない場合は周りの空気を荒れさせないために、
ここにも他のスレにも2ch自体に何も書き込まないほうが無難です

半年間は何も書き込まず、空気を読めるようになるまで
見ているだけのROMに撤しましょう

>>494
煽るな

↓以下、スルー
496名無しさん、君に決めた!:2008/04/20(日) 20:11:56 ID:jJwiPPW5
わかった
497名無しさん、君に決めた!:2008/04/20(日) 20:21:15 ID:???
>>496
嘘つけ。わかってないのがバレバレだぞ
498名無しさん、君に決めた!:2008/04/21(月) 12:10:42 ID:???
ごめんなさい、間に合いませんでしたorz
投下は深夜になります……
499名無しさん、君に決めた!:2008/04/21(月) 18:13:23 ID:ZkbICcey
思ったんですけど書いたとしても
ピカチュウの人生のところから移したって
書けば良いんじゃないですか??
500名無しさん、君に決めた!:2008/04/21(月) 20:09:38 ID:???
>>499
散々言われてるのに>>495を理解できてない時点でもう何も許可しない
いい加減諦めて迷惑だから二度と書き込まないでくれ
501名無しさん、君に決めた!:2008/04/22(火) 00:25:23 ID:???
>>500
お前ももう書き込むな
502名無しさん、君に決めた!:2008/04/22(火) 04:51:48 ID:???
 岩壁に丁度よく階段のように削れ低くなった箇所を見つけ、
レッドはそこから陸に上がるようカメックス達に指示を出す。
 俺達とムウマージは先に上へ行っているよう言われ、一足先に岩壁の上へと降り立った。
「ハニー……君と離れるのは非常に名残惜しいよ。何ならずっと乗っていてくれても俺は一向にかまわないんだが。
ああ、生意気なおチビさんの方はもう俺の背に用はないだろう。さっさと降りてくれ」
 ぴくぴくと口端が引きつるのを感じる。
「言われなくてもそのつもりだ」
 何があってもこいつだけは助ける必要は無いな。そう心に決め、蹴るように背を飛び降りた。
「自分で歩けるから私も降りるわ」
 ほぼ同時に背後から素っ気ない断りと着地音が響く。
「それは残念」
 ふん、いい気味だ。同時によくわからない安心感のようなものも覚える。


 洞窟は依然として広い奥行きを見せる。
すぐ先に、更に上の層に続くというのか梯子が備え付けられていた。
ここから見ても所々を錆付かせているのがわかり、年期を感じさせる代物だ。
「やあ、待たせたね」
 声に振り替えると、レッド達が石の段を登り終えこちらに向かってきていた。
アブソルとロゼリアも続いて姿を見せる。どうやらカメックスとカビゴンはボールの中に戻されたようだ。
「梯子か。まだ上の階があるようだね」
 うーん、と小さく唸りながらレッドは考え込む仕草を見せる。
「二、三年前にもグレン島の調査団がこの洞窟に来て逃げ帰ったらしいけど、あの梯子はもっと古そうだよね。
凶暴化したポケモン達。そして数日前に洞窟の辺りで目撃されたっていうロケット団らしき奴ら――
この洞窟、何だか益々きな臭くなってきたぞ」
 ロケット団……?
 奴らは三年前に壊滅したのではないのか。他でもないレッドと俺達の手で首謀者を倒したはず。
 この一件、奴らが関わっているというのか。
503名無しさん、君に決めた!:2008/04/22(火) 07:04:47 ID:???
GJ!
504名無しさん、君に決めた!:2008/04/23(水) 17:23:01 ID:???
明日書けたら書きたいんだぜ
505名無しさん、君に決めた!:2008/04/25(金) 11:07:17 ID:???
「――とりあえずどんどん奥へ行ってみるしかないか。前に進まない事には何もわからないし始まらない」
 レッドはバッグの肩掛けを強く握り締め、気を入れるように背負い直した。
「僕が先に上の様子を見てくるよ。君達は後に続いてくれ。
そっちのアブソルとロゼリアは梯子を使うのは辛そうだね。リザードン、頼めるかい?」
 グガァ、とどこかやる気の無い返事をリザードンは返す。
渋々といった様子で身を少し屈め、背中をアブソルとロゼリアに差し出した。
 乗り込んでくるロゼリアを不機嫌そうにリザードンは睨んでいたが、
アブソルの時はまじまじと見つめた後に態度を一転させ、愛想良く背に迎えた。
 ふむ、神々しい何かに無意識が気付いたか?
「んー、数年後に期待というところかな」
 リザードンの呟きに思わず体の力が抜け、ずるりとよろけそうになってしまう。
 ……知らないということは、恐ろしいものだ。
 この不埒な羽トカゲに天罰がくだったところで、俺は一向に構わないのだが。むしろ大歓迎と言えよう。

  ※ ※ ※

 上の階は、天井まで届きそうな巨岩が無数に並び、行く手を阻んでいた。
 砕こうにも岩は非常に硬いものばかりで、カビゴンやリザードンの力をもってしても、
表面が抉れるだけで岩自体はびくともしない。
 壊しながら進むことは諦め、通路のように並ぶ岩と岩の間をおとなしく進むことを俺達は余儀なくされていた。
「まずは大まかな地形を知りたいな」
 そう言ってレッドが霊体であるムウマージに周辺の探査を頼んでから、十数分が経とうとしていた。
この時点――いや、ムウマージに頼んだ時点で嫌な予感はしていたと言うべきか。
 ようやく通路の先からムウマージがこちらに向かって飛んでくる――勢い良く転がる二つの巨岩を後ろに引きつれて。
「ごめーん、てきにみつかっちゃってたみたいー」
「ば、馬鹿者がぁッ!」
 転がる岩の正体は恐らくゴローン。最高速で転がる奴らに正面から挑むなど愚の骨頂。
加えて、今にも爆発しそうに赤く膨れ始めている。
 俺達は奴らを避けきれそうな空間を目指し、一目散に逃げ出した。
506名無しさん、君に決めた!:2008/04/25(金) 18:51:24 ID:???
GJ!
507名無しさん、君に決めた!:2008/04/26(土) 20:58:32 ID:???
明日書けたら書きたいです
508名無しさん、君に決めた!:2008/04/28(月) 13:27:51 ID:???
ごめんなさい、ちょっと遅れそうですorz
深夜にはなんとか投下したいです
509名無しさん、君に決めた!:2008/04/29(火) 02:53:25 ID:???
 ゴローン達の速度は速く、どんどんと距離を縮めてくる。
「少しでも足止めを」
 走りながら、横でロゼリアが両花から毒々しい色をした撒き菱をばら撒いていく。
 菱を表面に食い込ませたゴローン達は転がるバランスを崩し速度を落としたが、
すぐにそれらは抜け落ち、再び回転数を増し勢いをつけ始めた。赤い点滅と膨張の感覚も短くなってきている。
 曲がり角に差し掛かると、レッドはホルダーからボールを一つ外した。
「追い付かれたらお仕舞いだ。だけど、カーブの近くに来れば奴らもスピードを緩めざるをえないはずさ」
 道を曲がりきり、レッドが先の方へ先程外したボールを放り投げる。中から飛び出したのは、
背中に大きな花を生やしている蛙のような大柄のポケモン――フシギバナだ。
「フシギバナ、こっちに向かって特訓した例のアレを思い切り放り投げろ! みんな、すぐに伏せてくれ」
 フシギバナは一瞬、戸惑う素振りを見せたが、花の中心から巨大な種子をこちらへ向けて射出した。
 レッドは片手で帽子を押さえながら、飛び込むように地面に伏せる。ただならぬ様子にすぐに俺達も続いた。
 種は煙を吹きながら俺達の頭上を越えていく。顔を上げ、行方を目で追うと、種はそのまま角に向かって飛んでいった。
ほぼ同時に、角からゴローン達が手足でブレーキをかけながら滑るようにして姿を現す。
 種は奴らの足元にからからと音を立てて虚しく転がり落ちた。吹き出していた煙も止み、何も起こらない。
 ……何だ? 失敗なのか?
 ゴローンの一匹が嘲笑うようにそれを踏み潰しかけた瞬間、種が息を吹き返したかのように大きく輝いた。
 危険を感じ、俺は頭を抱え込み地に顔を戻す。立て続けに響く三つの爆発音。
衝撃にマントが捲り上がり、激しく煽られる。地面にしがみ付き、吹き飛ばされぬよう耐えた。

 ――パラパラと砂利が降り注ぐ。立ちこめる砂煙に咳き込みながら、俺はゆっくり身を起こした。
 同じようにして、他の者達も起き上がってくる。
「げほ、ごほ――良かった、みんな無事のようだね」
 ゴローン達は跡形もなく吹き飛び、居たはずの場所は浅く地が抉れていた。
爆発で角にあった岩の一つが崩れ、その先にも岩の道が続いている。
「大変だったけど、結果オーライってところかな。おかげで近道ができそうだ」
510名無しさん、君に決めた!:2008/04/29(火) 08:35:53 ID:???
GJ!
511名無しさん、君に決めた!:2008/04/29(火) 11:12:23 ID:???
GJ!


赤い点滅と膨張の感覚も短くなってきている。

赤い点滅と膨張の間隔も短くなってきている。

じゃね?
512名無しさん、君に決めた!:2008/04/29(火) 19:09:31 ID:???
変換ミスったorz

>>511正解
513名無しさん、君に決めた!:2008/04/30(水) 18:14:43 ID:???
明日書けたら書きたいんだぜ
514名無しさん、君に決めた!:2008/05/02(金) 09:14:01 ID:???
 まったく、無茶をしてくれる。何が結果オーライだ。
 体についた砂埃を払いながら俺はレッドを睨み付ける。
 非難の視線を浴び、レッドは頬を人差し指でぽりぽり掻きながら苦笑いを浮かべた。
「あはは……君の自慢のマントを汚してしまったのは謝るよ。ごめんごめん、ちょっとさっきのは危なかった」
 はあ、とため息が漏れる。あまり悪びれていない様子の軽い態度に、何だか怒る気も失せてしまった。
元はと言えばムウマージの不手際だ。あまり強くも言えん。
「さあ、気を取り直していこう! こっちでいいのかな? わかった所まででいいから案内してもらえるかな」
 道の先を指差してレッドはムウマージに振り向く。こくりと頷き、ムウマージは先導を始めた。
「じゃあ、皆であの子についていこう。はぐれないようにね。フシギバナは最後尾の警護を頼むよ。
リザードンは最前列、あの子の横だ。爆発音を聞き付けた新手がいつ現れるかもわからない。気を引き締めて行かないとね」
 俺はフシギバナと共に最後尾につくことにした。
 レッドとアブソルは列の中央に置かれ、その右横をロゼリアが、左横をミミロップが固めるような隊列となって進んでいく。

 しばらく迷路のような道をぐねぐねと折れ曲がりながら進んできたが、幸いまだ敵に襲われる気配は無い。
「お前の主人はいつも先程のような無茶をしているのか?」
 間を持て余し、俺は横のフシギバナに声をかけた。
 いきなり声をかけられたためか、フシギバナはびくりと体を揺らす。同時に背の花が揺れ、がさりと音を立てた。
「……どうした? そこまで驚くこともあるまい」
 びくびくとした目でフシギバナは俺を見つめる。
「ぼ、僕を食べたって美味しくないよ。そんなに睨まないでよ」
「……別に獲って食うつもりは無い。目付きが悪いのは元々だ」
 こいつも何だか一癖ありそうだ。奴の手持ちには丁度良い性格をしたまともな者は居ないのか……?
515名無しさん、君に決めた!:2008/05/02(金) 18:24:55 ID:???
GJ!
516名無しさん、君に決めた!:2008/05/03(土) 18:06:33 ID:???
明日にでも続き書けたら書きたいです
517名無しさん、君に決めた!:2008/05/05(月) 12:57:42 ID:???
ごめんなさい、間に合いませんでしたorz
深夜か明け方くらいまでには投下したいです
518名無しさん、君に決めた!:2008/05/06(火) 04:06:04 ID:???
「本当かい? 野性のポケモンは怖い奴ばかりだからなあ」
「本当だと言っているだろう。そんな小心でよくチャンピオンのポケモンが勤まるものだな」
 体格に似付かわしくない小心翼翼とした態度に苛立ち、つい語気を荒げてしまう。
「うわわ、怒らないでよ。信じるから」
 こういう手合いは苦手だ。扱いに困る。話し掛けてしまったことをほとほと後悔した。
「お前はいつ頃、奴の配下に加わったのだ? 三年前には見かけなかったが」
 脅かさないよう、慎重に言葉と口調を選んで俺は話す。
「……うん、僕がレッド君のところに来たのは二年前くらいのことさ。ヒトカゲとゼニガメと僕――
今はリザードンとカメックス、その時の僕はフシギダネだね。僕と二匹は三匹ともオーキド爺ちゃんの研究所出身なんだけど、
レッド君とグリーン君の旅に僕達の中から誰か二匹がパートナーとして同行することになったんだ」
「ふむ。見るからに臆病そうなお前はどちらにも選ばれなかったのだな」
「むむ……まあ、その通りだよ。結局パートナーに選ばれなかった僕は、その後もしばらく研究所で過ごしてたんだけど、
二匹が急に居なくなって寂しかったなあ。みんな兄弟みたいに仲が良かったんだから」
「ヘイ、フッシー。あんな鈍亀と兄弟だなんて冗談でもやめてくれ。前進の鱗が逆立ちしそうな気分だ」
 前にも聞こえていたらしく、肩越しに長い首をこちらに向け、リザードンは言い捨てる。
そして不機嫌そうに鼻をフンと鳴らし、前を向き直った。
「昔はあの二匹も仲良かったのになあ……」
 フシギバナは苦笑いを浮かべ、少し悲しそうに呟いた。
「それで、一匹になった後はどうなったのだ?」
「うん、そんな僕をオーキドの爺ちゃんが見兼ねて、仕事も忙しくて自分も中々構ってあげられないからって、
僕はリーフちゃんに預けられることになったんだ」
「リーフちゃん?」
「グリーン君と同じく、レッド君の幼なじみだよ。マサラに住んでた女の子なんだ。
楽しかったなあ。僕のことたくさん可愛がってくれたし」
519名無しさん、君に決めた!:2008/05/06(火) 04:07:29 ID:???
「では、なぜ今はそのリーフの下に居ないのだ? 捨てられたわけではあるまい」
「うん……二年くらい前のある日、リーフちゃんがどこか遠い国に行かなくちゃならなくなったんだ。
事情で僕は一緒に連れていく事はできないらしくて、預かり手を探しててね。
チャンピオンになら、リーフちゃんも安心して託すことができるって事で、レッド君に預けられたんだ。
最初はどうなることかと思ってたけど今は結構レッド君のところも気に入ってるよ。時々、怖いけど」
「なる程な」
 出身が同じ他の二匹に比べ臆病な性格は、リーフという人間に過保護に育てられたせいなのだろう。
 温室育ちというやつか。

      ・

 迷路の終わりらしき降り梯子を見つけ、俺達はほっとしながら歩み寄っていく。
「――だろ。どうなって――」
 下の階より人間らしき声が聞こえてくる。
 しっ、とレッドが人差し指を縦にして唇につけ、俺達を止める。ぴたりと歩を止め、俺達はそれに従った。
「信じられねえ……。天罰か……そりゃ団員として悪事ばかりしてきたが……」
 今度はしっかりと人間の声が聞こえた。
 俺達は梯子が通された穴に忍び寄り、そっと下を覗き込む。
「悪い夢だよ……な。誰か、誰でもいい、助けてくれえ……」
 しかし下に人間の姿はどこにもなく、代わりに一匹の黒い子犬のようなポケモンが水溜まりを覗き込んで震えていた。
声を発するスピーカーらしき物も見当たらない。
「なんでポケモンになっちまってるんだよオォォッ!」
 ――何だって……?
 ぱらり、と不意に穴の端が少し欠け落ち、地で破片が砕けて音を立ててしまう。
「だ、誰だ!」
 怯えるように人間の言葉で叫び、黒い子犬は吊り上がった目でこちらを睨み上げた。
520名無しさん、君に決めた!:2008/05/06(火) 04:27:59 ID:???
×「ヘイ、フッシー。あんな鈍亀と兄弟だなんて冗談でもやめてくれ。”前進”の鱗が逆立ちしそうな気分だ」
○「ヘイ、フッシー。あんな鈍亀と兄弟だなんて冗談でもやめてくれ。”全身”の鱗が逆立ちしそうな気分だ」

ごめんなさい、誤字ですorz
521名無しさん、君に決めた!:2008/05/07(水) 02:04:44 ID:???
GJ!
522名無しさん、君に決めた!:2008/05/08(木) 14:29:06 ID:???
明日書けたら書きたいです
523名無しさん、君に決めた!:2008/05/11(日) 00:37:33 ID:???
 見つかったか。
 舌打ちし、俺は穴を飛び降りる。ミミロップ達も続いて降り立ってきた。
 俺達の姿を見ると、黒い犬は更に恐怖に顔を歪め、声にならない声を上げながら後退りを始める。
「お前達は……く、来るんじゃねえ化け物! 俺のそばに近寄るなああーッ!」
「落ち着け。通じるか? 俺達は他の凶暴化した奴らとは違う」
 黒い犬は耳をぴくりとさせ、動きを止めた。
「……人間の言葉じゃねえ。なのに何を言っているか理解できる……」
 人の言葉を話すポケモン――厳しい訓練により人間の言葉を身につけた者もいると噂に聞いたことはある。
だが、この黒い犬は自分が元々はポケモンではないかのような言動をしている。
 異様な光景ではあるが、前にもこのような者を見た覚えがあった。確か何といったか――。
「よっと」
 軽い掛け声と共に、すたりと軽快に降り立つ音が響く。ようやくレッドが降りてきたようだ。
「うん、僕達は君に危害を加える気はない」
 なだめるようにレッドは言った。
「人間だ! 助かった!」
 黒い犬は俺達を押し退け、飛び付くようにレッドに寄っていく。
「おい、アンタ! 信じてくれ、俺は人間なんだ!」
「ああ、信じるよ。前にも機械のせいで同じような状態になった人を一度見たことがあるから。マサキさんっていうんだけど」
 そうだ、マサキだ。ということはレッドも奴の家に行ったことがあるのだろうか。
 マサキは遺伝子配合装置とやらでポケモンと融合したと言っていた。
その装置を開発したのはロケット団――グレン島で行われていた遺伝子の研究、生み出された恐ろしいポケモン――
俺の頭の中で様々なものが結び付いていき、一つの形をなそうとしていた。
 全ての元凶はロケット団。奴らとの因縁は未だ深く牙を食い込ませ、毒を流し続けていた。
524名無しさん、君に決めた!:2008/05/12(月) 18:09:52 ID:???
ほしゅ
525名無しさん、君に決めた!:2008/05/13(火) 21:34:47 ID:???
明日にでも書けたら書きたいんだぜ
526名無しさん、君に決めた!:2008/05/15(木) 14:03:28 ID:???
「機械で――ってことはまさかあの野郎、俺を……!」
 黒い犬は何か思い当たったような顔をし、唸り声混じりに呟いた。
「どうかしたかい?」
 訝しげにレッドは尋ねる。
「いや、何でもねえよ。それよりもアンタらは何者なんだ? こんな危険な洞窟に来るなんてよ」
 黒い犬は表情を取り繕い、誤魔化すようにして聞き返した。
「調査でね。ちゃんと許可も得ている。その質問は、君にも答えてもらいたいところだよ。もう大分落ち着いたみたいだし、
こんな危険な洞窟にいるまっとうな理由をね。君がそうなる前の前後に何があったのかも聞かせてもらいたいな」
 レッドの表情は穏やかだが、鍔下の目は射ぬくように黒い犬を見つめている。
 焦りの色が一瞬、黒い犬の顔に浮かんだ気がした。

「噂の洞窟がどんなものか気になってな。肝を試すつもりで入り口辺りまで来てみたんだ。
そしたら突然背後から何者かに襲われ、俺は気を失った」
 暫しの間の後、黒い犬は答えた。
「何者か?」
「そうだ。それはポケモンだったかもしれねえし、人間かもしれねえ」
 黒い犬は探るような目をレッドに向け話す。
「ふうん……目覚めた時の状況は?」
「気付いたら俺はおかしなガラスケースに入れられて、ヤバそうな奴らに囲まれててな。ケースが開けられた隙をついて命からがら逃げ出して来たらこのザマだ。
ああ、俺を囲んでた奴らも人間かポケモンのどっちだったか思い出せねえなあ。何せ必死だったからな。
そういやアンタ、どっかで見た顔だな。有名人かい?」
「一応、リーグのチャンピオンをね」
「そうか、アンタが……。あー、思い出した。俺が襲われたのはポケモンだったぜ。俺をこんな目にあわせたのもあいつに違いない。白くてでかい奴だった。
あんな危険な奴を野放しにしてちゃマズいよなあ。チャンピオンくらいの腕前があれば退治できるかもしれねえが」
 急に態度を一変させ、黒い犬は話しだす。勝ち誇って笑んでいるようにそれは見えた。
527名無しさん、君に決めた!:2008/05/16(金) 18:32:14 ID:???
保守
528名無しさん、君に決めた!:2008/05/18(日) 17:05:45 ID:???
明日書けたら書きたいです
529名無しさん、君に決めた!:2008/05/20(火) 10:10:36 ID:???
「そのつもりさ。じゃあその場所まで案内してくれないか。君を元に戻すには機械が必要だろうし、
僕達といるほうが一人よりまだ安全だろうしね。それと、君の名前は?」
「ああ、いいぜ。名前は……あー、このポケモンは何ていうんだ?」
 黒い犬は右前足を上げ、骨製の輪が巻かれたような足首をぶらぶらさせる。
「黒い毛並みと、髑髏の飾りを額にくっつけている犬のような見た目からして、デルビルってポケモンだと思うけど」
「じゃ、とりあえずその名で呼んでくれりゃいいぜ」
「何か名前を言えない理由でも?」
「思い出せねえだけさ。仕方ねえだろ? ま、しっかり護衛を頼んだぜ、チャンピオンさんよ。
俺みたいな民間人が巻き込まれてんだからな」
 嫌味ったらしく口の片端を吊り上げ、デルビルはレッドの脛辺りをぽんと叩いた。
 ――随分と都合の良い記憶喪失だ。
 その横柄さと、時折垣間見せる怪しい素振りに、苛立ちと不信感が募っていく。
「わかってるよ。じゃあ早速で悪いけど先導していってもらえないかな。リザードン、横について護衛してやってくれ」
「おう。こっちだ」
 リザードンを連れてデルビルは奥へ歩んでいく。
 これでいいのか、と俺はレッドを見上げた。と、丁度レッドと目が合った。
 小さくレッドは笑う。
「君は勘が良さそうだ。あいつの行動を見張ってくれないかな。不審な動きを見せたら教えてほしいんだけど」
 しゃがんでレッドが囁く。俺は無言で頷いた。

「何をもたもたやってんだ。早くしてくれねえか」
 苛立たしげにデルビルがこちらを振り替えり、急き立てる。
「待たせてすまない、すぐに行くよ。ちょっと靴紐が緩んでね。しっかり縛り直したから大丈夫さ。しっかりとね」
530名無しさん、君に決めた!:2008/05/21(水) 08:26:28 ID:???
漏れら極悪非道のageブラザーズ!
今日もネタもないのにageてやるからな!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ∧_∧   ∧_∧    age
 (・∀・∩)(∩・∀・)    age
 (つ  丿 (   ⊂) age
  ( ヽノ   ヽ/  )   age
  し(_)   (_)J
531名無しさん、君に決めた!:2008/05/22(木) 20:36:09 ID:???
明日書けたら書きたいっす
532名無しさん、君に決めた!:2008/05/24(土) 22:45:27 ID:???
 吹き出された紅蓮の炎が意志を持ったように渦を巻き、レアコイルを呑み込む。
銀色をした三つの球体で構成された無機質な体は、不快な電子音の断末魔を上げて三角隊形を崩し、
遠心力で散り散りに吹き飛ばされていった。
「よくやった、リザードン。ピカチュウ君もナイスアシストだったよ」
 凶暴化したポケモン達の数度の襲撃をレッドと協力して退けながら、俺達は進み続けた。
俺はデルビルのやや後ろの位置につき常に監視も怠らなかったが、まだ不審な動きは見せない。

「さっきからジロジロ睨みやがって。何のつもりだ、このネズ公」
 視線に気付いたのか俺の方に振り向き、デルビルは声を荒げる。
 何気なく装い見張っていたつもりだが。こういう輩は変に視線に敏感で面倒だ。
「偶然だ。睨んだつもりもない。お前の姿など拝んだところで何の得もないだろう」
 興味がないように振る舞い、俺は言い放った。
「いっぱしの生意気な口聞きやがる。畜生のくせによ」
「我等とて心はあるのだ。お前が今までどのような態度でポケモンに接してきたか知らぬが、少しは思い知ったか」
 ぐ、と言葉を呑み込み、ばつが悪そうにデルビルは顔を背けた。
「ケッ、こんな姿もすぐにおさらばだ。てめえらの言葉がわかることも無くなる。――そろそろ目的地だぜ」

 洞窟の先に、場に不釣り合いな機械と円柱状の大きなカプセルの群れが並んでいる。
機械は様々な色のランプをチカチカと忙しなく輝かせ、透明なカプセルには不気味な薄緑の液体が満たされていた。
液に浮かんでいる物体の正体はここからでは分からない。
533名無しさん、君に決めた!:2008/05/25(日) 02:31:09 ID:???
GJ
ついにご対面か
534名無しさん、君に決めた!:2008/05/25(日) 20:07:09 ID:???
GJ!
535名無しさん、君に決めた!:2008/05/26(月) 19:10:58 ID:???
明日書けたら書きたいです
536名無しさん、君に決めた!:2008/05/28(水) 23:15:44 ID:???
 次に相まみえた時、奴は再び問うと言っていた。服従か死か――無論、どちらも選ぶつもりはない。
 強大な敵はすぐそこに潜んでいることだろう。今まで以上に気を引き締め俺は歩んでいく。
「それ以上大事な研究機材に近づくんじゃあない」
 自分以外の全てを見下しているような、高圧的な声が空間に反響する。それはデルビルとはまた違う人間の声だった。
「誰だ!」
 レッドが声を上げ、辺りを見回す。と、音も無く一瞬の内に、俺達の前に人影が現われた。
「騒がしかったのはお前たちの仕業だな。どうやってここを嗅ぎつけたのやら」
 人間の言葉を話し、人型をしてはいるが、人間と姿は大きく異なっていた。
狐に似た大きな頭部を持ち、それを支える身体は不釣り合いにか細い。ユンゲラーの進化形、フーディンだ。
「この声、間違いねえな! あいつは俺の仲間だ」
 そう叫び、デルビルがフーディンに駆け寄っていく。
「お前も奴のせいでポケモンにされちまったのか。安心しろ。こいつらにあの化け物は始末させ、すぐに元に戻れるぜ」
 ふん、とフーディンは鼻を鳴らす。
「元に戻る? 何を馬鹿な。折角、授けて頂いた素晴らしい力を手放すものかよ」
「お前、何を言ってんだ……?」
 困惑するデルビルに構わず、フーディンは両手に銀色のスプーンを構え、鋭い目で俺達を見回す。
そして、俺に目を止めると「ほう」と呟き、スプーンを下ろした。
「これはこれは。大事な客人方だったか。あの御方の予知で、本物のお前達が近いうちに来るとは聞いていた」
 フーディンは眉間に皺を寄せ、念じる。
「――ミュウツー様、お目覚めください。件のお客様がお見えです」
 脳内に直接フーディンの声が響き渡った。奥のカプセルの一つが、大量の蒸気を上げながらゆっくりと開いていく。
 俺の喉がごくりと鳴った。
537名無しさん、君に決めた!:2008/05/30(金) 04:47:02 ID:???
保守
538名無しさん、君に決めた!:2008/05/30(金) 19:42:50 ID:???
明日にでも書けたら書きたいんだぜ
539名無しさん、君に決めた!:2008/06/01(日) 13:31:04 ID:???
「あの二人、仲間割れしているのか……? さて、一体何が起きてるんだ」
 戸惑いながらもレッドは油断なく身構える。

 開ききったカプセルから、大きな異形の人影がゆっくりと一歩を踏み出した。
立ちこめていた蒸気が強風が吹き抜けたかのように掻き消え、影はその正体を晒す。
「待っていた。お前達との再開を」
 感情の読めない声で言い、ミュウツーは浮遊したまま宙をゆるやかに滑るようにしてこちらへと向かってくる。

 俺は冷静に構えるように努めた。しかし、手のひらや額にじわりと冷たい汗が滲むのを感じる。びりびりと空気が震えてる気さえする。
 奴に突き付けてやる答えは簡単だ。断る、と一言いってやればいい。だが、その後にあの強大な超能力に
立ち向かい、打ち勝たなければならないのだ。例えレッドがついていようとも簡単ではないだろう。
あの元人間の二匹もどうでるかわからない。

「白い皮膚、長い尾――目撃情報と一致するな。確かに今まで見たこともないような奴だ。
見た感じエスパータイプのポケモンだとは思うけど……すごく強いな、きっと」
 いつになく緊迫した調子でレッドが話す。

 俺達の数メートル手前でふわりと姿勢をかえ、ミュウツーは地に降り立つ。そしてゆっくりと口を開いた。
「再び問おう。私と共に来い、お前達。力ある者達の世界を創り上げるために」
 その声は、絶対的かつ冷酷に洞窟に轟いた。そこに拒否する権利など既に微塵も存在してはいなかった。
 だが、決して屈伏するわけにはいかない。喉の底から声を必死に引っ張り上げた。
「断る。俺の答えは変わりはしない! お前の凶行は必ず食い止める」
540名無しさん、君に決めた!:2008/06/02(月) 04:59:05 ID:???
GJ!
541名無しさん、君に決めた!:2008/06/02(月) 15:30:08 ID:???
GJ
今夜にでも書きたいんだぜ
542名無しさん、君に決めた!:2008/06/02(月) 20:16:03 ID:???
もどりの洞窟奥地―――

薄暗い祭壇の頂上、無数の影がせわしなく地を這いずり回る。
が、その中心に立つキュウコン―――もといギラティナは毛の一本も動かさず、重たい静寂が周囲を支配していた。

「―――来たか。」
不意に影が硬直し、キュウコンが片目を吊り上げる。
数秒後、それまでそこにあった静寂をぶち壊すように、ふてぶてしい足音が一つ―――

「ケッ、まさかまたお前に呼び出されるとは思っても見なかったぜ。しばらく見ないうちに随分小さくなっちまったじゃねーか。
先に言っとくがもうお前にこき使われる気はさらさらないぜ!」
「そーだそーだ!」
「オヤビンカッコイイ!!」
今のギラティナに以前ほどの威厳を感じないからであろうか、ゲンガーとゴースト達が今まで言えなかった文句を口々にぶちまける。
対してキュウコンは再び目を閉じ、影に意識を集中し始めた

数分後

「―――我の役目は知っているな?」
文句の嵐が収まって来たのを見計らい、キュウコンが口を開いた。
「あん?何をいまさら。」
怪訝そうな顔をするゲンガーに構わず、キュウコンが続ける
「我は主に創られてた時から、新しく生まれくる者に魂を与え、老い死にゆく者の魂をあの世に導いてきた。
すべての魂は我の下に置かれ、その気になれば生死を自在に操ることもできたのだ。」

「できた・・・ということは、今はもうできないのですかな?ヒヒヒヒ」
突如背後から声が響き、ギョッと飛びのいたゲンガーの後ろからのっそりとサマヨールが前に進み出た。
「ゲゲッ、いつからそこにいやがったんだ!」
「みなさん、ヒヒッお久しぶりです。」
543名無しさん、君に決めた!:2008/06/02(月) 20:20:58 ID:???
「それで―――、なぜ今は生死を自在に操ることが出来なくなったのですかな?ヒヒヒ」
「うむ、数年前、禁忌である神の真似事を成功させた者があらわれた。いや、正確には完璧な肉体と精神だけを作りだした。
生命の営みに逆らった生命の創造―――我にはその作りだされた者の魂が何所から来たのか、そもそも魂を持っているかどうかさえもわからないのだ。
そして今、その作りだされた者が足りないものを求めるかのように、禁忌を犯しさらなる生命を作りだした。
この魂の愚弄ともいえる行為がこの生死の調和を乱し、我の力も狂い出してしまったのだ。」

一気に話し終えるとキュウコンは大きく息を吐いた
「で、俺たちに何をさせたいんだ?そんなに大事なことなら自分で止めに行けばいいじゃねーか。」
すかさずゲンガーが喰ってかかる
「そのつもりだ、だがこの器では奴を止めることはできない。
かといって、これ以上生命を作りだされるわけにはいかない。」
「つまり、私たちに時間稼ぎをしろということですね。ヒヒヒ」
察したサマヨールが感情の読み取れない表情でほくそ笑んだ
「あぁそうだ、欲を言えば生命を生み出す装置を破壊してきてほしい。」
「ケッ、そんなめんでぇことはごめんだね。他を当たってくれ。」
踵を返し、部屋を出て行こうとするゲンガー

「―――そんな時間はない。すでにピカチュウ達が作りだされた者共と対峙している。
貴様らが行かねば、装置の破壊どころか無事帰っては来られないだろう。」
ピカチュウ、その言葉を聞きゲンガーの足がピタリと止まった。
「それでも断るというなら、強要はしない。さっさとここから―――」
「わかったよ行けばいいんだろ行けば。ケッ!
勘違いするな、ピカチュウはこの俺が倒す。そのために行くだけだ。行くぞ、ゴースト共!サマヨール!」
「「「アイアイサー!」」」

我も急がねば―――早く新しき器を―――
544名無しさん、君に決めた!:2008/06/02(月) 21:57:05 ID:???
GJ

明日、続きを書けたら書きたいっす
545名無しさん、君に決めた!:2008/06/03(火) 03:03:46 ID:???
>>642-643
ゲンガーがベジータだwwww
GJ
546名無しさん、君に決めた!:2008/06/03(火) 10:01:55 ID:???
GJ!
547名無しさん、君に決めた!:2008/06/04(水) 11:53:27 ID:???
 額に滲んでいた汗が玉になって伝い落ち、地で小さな音を立てて弾けた。
「それでいい」
 だが、ミュウツーは激昂することもなく、ただ静かに呟いた。穏やかな、満足した笑みを浮かべたようにさえ見えた。
「ならば止めてみるがいい」
 目を深く閉じてミュウツーは集中すると、抑えていたのであろう力を一気に放出させた。
爆風のごとき力の波がそれを中心に広がる。俺は地を掴んで吹き飛ばされてしまわないように堪えた。

「さあ、早く私を完膚なきまでに打ち倒し、お前達が正しいと証明してみせろ」
 両手から紫の煙のようなオーラを立ち上らせ、ミュウツーは俺達を見下ろす。
 やるしかない。
 俺は電気を束状に集中させ、ミュウツーに向けて放った。だが、ミュウツーは避ける素振りさえ見せず、片手で電流を逸らす。
続いて飛来する鋭い針をその身に届く前に見えない力でへし折り、渦巻く黒い球体を紫のオーラをぶつけて相殺し、
拳に炎を纏わせ飛び掛かるミミロップを尾で軽々と弾き飛ばした。
「この程度だというのか? やはり、今のお前達では私を倒すことなどできはしないのか?」
 落胆した様子でミュウツーは言う。
548名無しさん、君に決めた!:2008/06/04(水) 11:55:13 ID:???
「これはどうにも、話し合いでなんとかなる状況でも相手でもないな。僕達も戦うぞ、リザードン」
「言われなくてもとっくにそのつもりだ! よくもハニーを!」
 リザードンは怒りに猛り、ミュウツーに激しい炎を吹き付ける。

 途中、炎は大の字を描くように燃え広がり、ミュウツーに向かっていく。
 ミュウツーは素早く反応を見せ、球形に収束させたオーラを炎に放った。二つの技はぶつかり合い大きな爆発を起こす。
飛び散った炎は天井や床を焦がし、その内の一つがミュウツーの右頬を焼いた。
「中々の炎だ。もし直撃していれば私とて危なかったかもしれない。それに……ふむ、興味がわいた」
 火傷を手の甲で拭いながら、ミュウツーはレッド達を見やる。手をどけると、火傷は跡もなく綺麗に消えていた。

「リザードンも結構本気で攻撃したと思うんだけど……これは参ったね。やっぱり一筋縄じゃいかないか」
 苦くレッドは笑む。

「私はこの人間を確かめたい。フーディン、完成した四匹を出せ。私の邪魔をさせぬようオリジナル達の相手をさせろ」
「かしこまりました」
549名無しさん、君に決めた!:2008/06/05(木) 02:43:37 ID:???
GJ!
550名無しさん、君に決めた!:2008/06/05(木) 17:39:12 ID:???
明日書けたら続き書きたいんだぜ
551名無しさん、君に決めた!:2008/06/07(土) 11:10:37 ID:???
 レッドが狙われている。援護せねば。
 レッドに気を取られているミュウツーへ不意打ちをかけようと、俺が駆け出した瞬間、目の前に閃光が走る。
轟音と共に足元から電流が伝わり、体表を痺れと痛みが駆け巡った。

「ふん、外してしまったか」
 どこか聞き覚えのある、偉そうな声が響く。
「駄目な奴。あの程度も当てられないわけ?」
 それに続く突然のミミロップの言葉に、俺は振り向いた。
「お前、何を言っている?」
 ミミロップは慌てて首を横に振る。
「私は何も言ってない――」
「そうよ。言ったのは、わ・た・し」
 二重になって聞こえる、同じ声。片方は上からだ。
 見上げると、岩に開いた窪みに、大小四つの影が並んでこちらを見下ろしていた。
「ちぇっ、バレちゃった」
 一斉に飛び降り、影達は俺達の前へと降り立つ。
 その姿は――。
552名無しさん、君に決めた!:2008/06/07(土) 11:11:49 ID:???
「な……ッ!」
「う、そ……」
 あまりの驚愕に、俺達はまともに声が発する事ができない。
「おどろいてるー? きゃははー」
「お初にお目にかかります、オリジナル。ふむ、僕程に美しくはありませんね」
 それは、ピカチュウ、ミミロップ、ロゼリア、ムウマージの四匹――俺達に限りなくよく似ていた。
「何なんですか、あなた達は……」

 くく、と四匹は笑う。
「俺は」
「私は」
「僕は」
「ムウマージは」
 そして、それぞれが俺達を指した。
「お前」
「あんた」
「あなた」
「ムウマージ」
553名無しさん、君に決めた!:2008/06/08(日) 07:14:43 ID:???
GJ!
554名無しさん、君に決めた!:2008/06/08(日) 20:49:31 ID:???
明日書けたら書きたいっす
555名無しさん、君に決めた!:2008/06/10(火) 12:35:36 ID:???
ごめんなさい、間に合いませんでしたorz
深夜までには何とか投下したいです
556名無しさん、君に決めた!:2008/06/11(水) 06:12:48 ID:???
 鏡から抜け出てきたかのように、それは一挙一動から俺達そのものだった。
 唯一、異なる点は、四匹の体に不思議な痣のようなものがあることくらいだ。
頬や額、あるいは脇腹など、各々が違う位置に、独特の紋様が描かれている。
 また悪夢を見せられているのだろうか。いや、それは有り得ないだろう。
ここまで現実と錯覚させるような悪夢は、ダークライにしか造りえない。
奴は神々の監視の下で厳重に投獄されているはずである。
 悪夢であったほうが幾らかましだと思うほどに、それは信じがたく、異様な光景だった。
「まさか。僕は騙されませんよ。どうせメタモンか何かが僕達に化けているだけでしょう」
 ロゼリアの言葉で、俺は我に返る。
 そうだ。メタモンならば、俺達そっくりに化けることも可能かもしれないと、自らに言い聞かせた。
だが、それは、そうであって欲しいという願望でしかなかった。
 ミミロップによく似た“それ”は、大きく嘲笑う。
「バーカ、あんな下等な軟体生物共と化けたものと私を一緒にしないでくれる? 
私とこいつらは、ミュウツー様があんた達を元にして造った、れっきとした実物」
 願望は、脆くも崩れ去っった。衝撃と、それが意味するおぞましさに、吐き気が込み上げてくる。
「つまり、僕達のコピーを造り出したということか。なんて恐ろしいことを……!」
 嫌悪感に身を震わせ、ロゼリアは言う。
 コピーであるミミロップは顔をしかめた。
「コピー? それはちょっと聞き捨てならないわ。私は、あんた達と違って、
ミュウツー様による改良と調整を受けている。つまり――」
 一瞬の内にコピーミミロップは本物のミミロップに詰め寄り、蹴りつけた。
「つ……ッ!」
ミミロップは咄嗟に腕で防いだが、その威力に大きく後ろへ吹き飛ばされる。
「すべてにおいてあんた達より優れているってこと! もう用済みなのよ、あんた達は。あははははははは!」
「ミミロップ!」
 吹き飛ばされていった方へ振り向こうとした瞬間、俺の体に強い電流が走った。
「他の物にかまけている暇など与えんぞ、オリジナル」
557名無しさん、君に決めた!:2008/06/11(水) 18:25:12 ID:???
GJ!
558名無しさん、君に決めた!:2008/06/12(木) 19:02:54 ID:???
書けたら明日にでも書きたいです
559名無しさん、君に決めた!:2008/06/14(土) 12:52:10 ID:???
 続け様に放たれる電撃を、いまだ痺れの収まらない身で俺は地を転がるようにして回避した。
直前までいた場所へ場所へと、青白い閃光が次々と炸裂音と共に地で弾け、焦げ跡を残していった。
 追撃の手が緩んだ一瞬を見計い、尾の力で地を叩くようにして飛び起きて、攻撃が来る方角へ反撃を放った。
 黄色い影は大きく上に跳躍し、俺の放った電流を飛び越える。そして、その勢いで、こちらへと向かってきた。
凄まじい電流が右手で暴れ狂い、ばちばちと唸り声を上げている。
 回避する余裕は無く、俺も同じように右拳に電流を集中させ、突き上げた。
拳同士がぶつかり合い、雷鳴が轟く。視界が青白く染まる。
 次の瞬間、俺の体は宙に大きく投げ出されていた。岩壁がすぐそこまで迫っている。
叩きつけられてしまう寸前に、岩を蹴って空中で体勢をかえ、何とか無事に着地した。
 右手が燃え上がるように熱い。目をやると、手の先が軽く焼け爛れていた。
「実に非力」
 声がした方を俺は睨む。
 睨んだ先には、腕を組み堂々と構えるピカチュウ――俺のコピー――の姿があった。
足元の岩が、ぷすぷすと煙を上げている。
「筋力、体力、電力、瞬発力、反応力――すべてが非力ッ! 俺よりも下だ」
 コピーは腕を解き、俺に見下した目を向け、そう続ける。あれだけのぶつかり合いだったにもかかわらず、
そして俺にも多少の痛手があったというのに、奴の右手は傷一つ無い。
 歴然たる力の差。無意識に舌打ちが漏れた。
「何故、お前達はミュウツーに従う。造ってもらった恩義だとでも言うのか?」
 俺がそう問うと、コピーは一瞬の間の後、くつくつと堪えきれない様子で笑いだした。
「恩義? ふん、間の抜けたことを言うな。他の奴らはそれもあるかもしれん。が、俺は違う」
 再び、奴は充電を始める。
「そんなくだらんもの、俺は微塵も感じてはいない。走狗としてミュウツーに従うのは、少しの間だけだ。
やがてミュウツーは世界を掴むであろう。俺は更に力を蓄え、いずれは奴を超えてみせる。
そして俺が横から世界を奪い取ってやるのだ。絶頂にいるミュウツーを叩き落としてな。
……だが、俺と、他のコピー共にも、共通する思いは一つだけある。それはお前達が邪魔だということだ、オリジナルッ!」
560名無しさん、君に決めた!:2008/06/15(日) 00:56:01 ID:???
GJ!
561名無しさん、君に決めた!:2008/06/15(日) 20:28:29 ID:???
明日にでも書けたら書きたいっす
562名無しさん、君に決めた!:2008/06/17(火) 17:02:05 ID:???
ごめんなさい、少し遅れていますorz
深夜までには何とか投下します…
563名無しさん、君に決めた!:2008/06/17(火) 22:59:34 ID:???
 コピーは蓄めた電気を開放し、全身へ纏わせる。
「お前にも、この程度できるであろう? 来い。正面から正々堂々と、完全に叩きのめしてやる」
 こんな奴に負けるわけにはいかない。ましてや自分の偽物などに。

「望むところだ」
 同じように俺は電流を身の隅々にまで這わせる。あまりの出力の高さによる激しい負荷と、
我が身さえ焼く痛みも構わず、敵を倒す事だけをただ考えていた。

「打ち砕いてやろう、オリジナル。身も、心も、完璧にだ!」
「負けるものか、偽物め。お前の存在を、許してはおけん!」
 己自身を一筋の雷と化し、俺と奴は互いを目がけ駆け出した。

     ・

 洞窟内に立て続けに響く轟音。
 その方向、ぶつかり合う二匹のピカチュウを、ロゼリアは冷ややかに見やる。
「嫌ですね。暑苦しい。もう少しスマートに戦えないものなのでしょうか。ねえ、オリジナル?」
 そう言い、ロゼリアが視線を戻した先には、もう一匹のロゼリアが油断なく身構え、
自分のコピーであるそのロゼリアを睨み付けていた。

「おや、そんな怖い顔をしないでくださいよ」
「うるさい、化け物。僕と同じ格好、同じ声で話さないでください……!」
 ロゼリアは両手の花をコピーロゼリアに向け、花の中心へ光を集中させていく。
 小さなため息をつき、コピーは呆れる仕草を見せた。
「無駄なことは止めた方がいい。ばかすかと遠距離で技を撃ち合ったところで、僕達の相性上、
互いに大して効果がありませんよ。的も小さいため、無駄弾も増える一方。それでは美しくない」
 ロゼリアは黙って両手を下ろす。集まっていた光は四散し、消えていった。
「では、どうしろと?」
 コピーロゼリアは得意げにほほ笑み、葉っぱを一枚、上に放り投げた。そして両花から鋭く長い針を伸ばすと、
宙を舞う葉をその切っ先で軽やかに数回撫で付ける。たちまち葉は空中分解し、ぱらぱらと乾いた音を立てて地に降り落ちた。
「これで急所を一突き。お得意ですか?」
「……受けて立ちましょう」
564名無しさん、君に決めた!:2008/06/19(木) 07:16:25 ID:???
保守
565名無しさん、君に決めた!:2008/06/19(木) 19:56:46 ID:???
さて、明日にでも書けたら書きたいんだぜ
「グッド」
 コピーロゼリアは心の中でほくそ笑む。着実にロゼリアはコピーロゼリアのペースに呑まれようとしていた。
「さあ、どこからでもかかってくるといい。何一つ、小細工無しでお相手しましょう。
あなたは気にせず卑怯な手をいくらでも、遠慮などせず、ご自由にどうぞ、オリジナル。
それでも僕の足元にも及ばないでしょうから、フフフ」
 コピーロゼリアは嫌味たらしく笑い、刺突剣を構えた貴族のごとく気取った仕草で、針先をロゼリアへ向けた。
 コピー達には絶対的な自信があった。自分達はあらゆる面において、元になった者達より勝っている。
どのような手段で戦おうと、負けるなど有り得はしない事だと確信していた。
それが、そのように造られたコピー達の、ただ一つの存在理由でもあった。
「あまり見くびると痛い目を見ますよ……!」
 両手の花から剣針を伸ばし、ロゼリアは真直ぐに突きかかっていく。ピカチュウと同様、既に敵の術中に
完全にはまってしまっていた。ピカチュウとロゼリアは普段であれば、すぐに頭に血を上らせて
しまうような直情的な性質では無い。それはロゼリアの方が更に顕著だった。だが、自分自身と
相対するという異常極まる事態に動転し、二匹は自分を見失っていた。
 向かってくる針先を、コピーロゼリアは両手の剣針を交差させるように構えて受けとめ、押さえ込んだ。
そして、そのまま捻るようにして、ロゼリアの右手の針を中程からへし折った。
 ロゼリアは動揺しながらも、残った左手の剣針で間髪入れずに斬りかかる。しかし、今度は片手の
剣針だけで滑らせるように受け流され、よろけてしまう。
 その隙にコピーロゼリアは、ロゼリアの喉元に切っ先を突き付けた。
「一本です、よ。あっけないですねえ」
 ロゼリアの頬を冷たい汗が伝う。だが、コピーロゼリアはそのままとどめを刺すことなく、
ロゼリアを突き飛ばして転ばせ、距離をとった。
「まだまだこれからですよ。まだ針は残っていますよね? 早く立ち上がり、新しく伸ばせ。
完全に心をへし折ってから、ゆっくりとどめを刺して差し上げます」
GJ!
GJ!
明日書けたら書きたいです
すいません、遅れそうですorz
深夜までには何とか投下します
漏れら極悪非道のageブラザーズ!
今日もネタもないのにageてやるからな!
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ∧_∧   ∧_∧    age
 (・∀・∩)(∩・∀・)    age
 (つ  丿 (   ⊂) age
  ( ヽノ   ヽ/  )   age
  し(_)   (_)J
なにこのキモいスレwwwwwwwwwwwwwwwww
小学生よりひどいwwwwwwwwwwwwwwwww
>>572
ここはポケモン板だぜ?
こんな駄文で喜ぶ奴もいるんだな。
読んでないけど。
>>574
ケータイ小説(笑)が大人気の今の時代ですから。
保守
唇を噛み締めて立ち上がり、ロゼリアは折れた針を抜き捨てた。
からからと音を立てて転がる針を蹴って退けると、新たな剣針を伸ばして構え、再びコピーロゼリアに向かっていく。

「そう、それでいい。せめて長く楽しもうではありませんか」
刃が交り、絡み合い、乾いた音が幾度も響いた。
ロゼリアは両手の剣針で斬撃や刺突を次々と繰り出し、コピーロゼリアは後退しながら防戦につとめた。

一見して、それはロゼリアが優勢に見える光景だった。
しかし、徐々にロゼリアの息が上がっていく中で、コピーロゼリアは余裕の表情を浮かべ、左手だけで軽がると攻撃を捌いている。

痺れを切らしたロゼリアが両手で同時に斬り掛かった瞬間、コピーロゼリアは体を反らしてかわす。
虚しく空を切るロゼリアの剣針を、コピーロゼリアは左手で弾き上げ、流れるような動きでロゼリアの胴を右手で斬り付けた。

「くっ!」
顔をしかめロゼリアは後ろへ退く。
葉っぱの前掛けの左横端に浅い切れ込みが入り、ぱらりと小さく欠け落ちた。

「これであなたは二回死にました。僕が手加減していなければね」
保守
さて、明日にでも書けたら書きたいです
580名無しさん、君に決めた!:2008/06/30(月) 23:25:37 ID:???
別に書かなくていいです
581名無しさん、君に決めた!:2008/07/01(火) 00:59:58 ID:???
スルースルー
582名無しさん、君に決めた!:2008/07/01(火) 14:05:04 ID:rKXDIbrO
才能無いからもう書かなくていいですよ^^
583名無しさん、君に決めた!:2008/07/01(火) 18:38:28 ID:moPdOkwl
sage
だったらあなたがかけばいいじゃないんですか???
584名無しさん、君に決めた!:2008/07/01(火) 19:28:21 ID:???
>>583
相手をしても無駄なので、黙ってスルー(無視)をしておいてください
続きは避難所へ
585名無しさん、君に決めた!:2008/07/01(火) 22:03:48 ID:???
sagewwwww
586名無しさん、君に決めた!:2008/07/02(水) 14:28:16 ID:zKugCT/F
腐女子スレ死ね
587名無しさん、君に決めた!:2008/07/02(水) 18:55:44 ID:???
>>583
こういうちっちゃい子も多いんだろな
588名無しさん、君に決めた!:2008/07/02(水) 19:18:18 ID:???
ちっちゃい子が荒らしてるんだろ
589名無しさん、君に決めた!:2008/07/02(水) 19:36:55 ID:???
だろうな
他の小説スレにも沸いてるが誰にも相手にされてなくてワロタ
590名無しさん、君に決めた!:2008/07/02(水) 20:09:41 ID:???
要するにちっちゃい子とちっちゃい子が争ってるんですね
591名無しさん、君に決めた!:2008/07/02(水) 20:31:02 ID:???
ちっちゃい子が一人or二人で暴れてスレを荒らしまわってる
が正解

黙ってスルー
592名無しさん、君に決めた!:2008/07/02(水) 22:51:12 ID:???
>>587-594
こういういちいち反応する奴がいなくなればいいんだがな
593名無しさん、君に決めた!:2008/07/03(木) 01:07:46 ID:???
無理だな。ちっちゃい子しかいないし。
594名無しさん、君に決めた!:2008/07/03(木) 01:25:43 ID:???
>>593
まさにお前みたいなな
595名無しさん、君に決めた!:2008/07/03(木) 11:45:50 ID:???
>>594
さらにお前もな
596名無しさん、君に決めた!:2008/07/03(木) 12:03:52 ID:???
>>595
実はお前もなんだけどな
597名無しさん、君に決めた!:2008/07/03(木) 15:06:13 ID:???
>>596
マジレスするとお前も
598名無しさん、君に決めた!:2008/07/03(木) 15:11:58 ID:???
一人でくだらない事するのはやめようぜ
599名無しさん、君に決めた!:2008/07/03(木) 16:45:10 ID:???
これだからPARTスレは
600名無しさん、君に決めた!:2008/07/04(金) 00:58:09 ID:???
クソスレあげ!
601名無しさん、君に決めた!:2008/07/04(金) 10:34:21 ID:???
どーしたんでちゅか?早く続きは書かないんでちゅか作者様(笑)
602名無しさん、君に決めた!:2008/07/07(月) 01:03:32 ID:???
まったりした流れが…orz
603名無しさん、君に決めた!:2008/07/07(月) 01:44:27 ID:???
>>602
議論スレから避難所へおこしください
604名無しさん、君に決めた!:2008/07/07(月) 08:27:36 ID:???
お断りします
605名無しさん、君に決めた!:2008/07/07(月) 12:04:24 ID:???
      ハ,,ハ
     ( ゚ω゚ )  お断りします
    /    \
  ((⊂  )   ノ\つ))
     (_⌒ヽ
      ヽ ヘ }
 ε≡Ξ ノノ `J
606名無しさん、君に決めた!:2008/07/07(月) 12:59:14 ID:???
保守
607名無しさん、君に決めた!:2008/07/07(月) 19:12:51 ID:???
不定期age
608名無しさん、君に決めた!:2008/07/10(木) 16:50:18 ID:???
保守
609死ねばーか:2008/07/15(火) 20:34:15 ID:5shww9D+
糞スレ晒し上げ
610名無しさん、君に決めた!:2008/07/16(水) 13:56:38 ID:???
>>609
通報した
611名無しさん、君に決めた!:2008/07/21(月) 08:55:04 ID:???
保守
612名無しさん、君に決めた!:2008/07/21(月) 14:51:56 ID:???
しなくていいです
613名無しさん、君に決めた!:2008/07/23(水) 12:02:44 ID:???
保守
614名無しさん、君に決めた!:2008/07/23(水) 19:17:07 ID:???
しなくていいです
615名無しさん、君に決めた!:2008/07/25(金) 08:55:27 ID:???
保守
616名無しさん、君に決めた!:2008/07/27(日) 07:57:02 ID:???
保守
617名無しさん、君に決めた!:2008/07/28(月) 01:20:17 ID:???
なにこの保守スレ
618名無しさん、君に決めた!:2008/07/28(月) 01:35:01 ID:???
何のために上げてんだ
落としとけよ
619名無しさん、君に決めた!:2008/07/28(月) 02:00:30 ID:???
糞スレ上げ
620名無しさん、君に決めた!:2008/07/31(木) 15:12:21 ID:???
「大丈夫か?」
吹き飛ばされたミミロップに駆け寄りつつ、俺はあたりを見回した。
ロゼリアもどうやら苦戦しているようだ。アブソルとムウマージの姿はここから確認できない。
俺とミミロップのコピーは―――余裕からだろうか、こちらが動き出すのを待っているようだ。
「くやしいけど、あっちの方が一枚も二枚も上手みたい。可愛さなら絶対負けてないと思うんだけどなー」
冗談を飛ばすも苦痛の表情は隠し切れていない。
やはり奴らの身体はこちらよりも強固に構成されているようだ。認めたくはないが
「ミミロップ、耳を貸せ。」
「えっ、こんな時に愛の告白?」
「・・・・・」
「そ、そんな怖い顔しなくてもいいじゃない!」



「これほどの力を持つとは―――素晴らしい…っ!」
目の前に広がる光景にさも満足したようにフーディンが恍惚の笑みを浮かべる。
「こいつらを大量生産された暁には…グヘッ!」
まるで見えない拳でアッパーカットを喰らったようにのけぞり、倒れるフーディン。
その影からゆっくりとサマヨールが這い出してくる
「ヒヒッ、着きましたよ。」
「どーやら、アイツ等にはまだ気付かれていないみたいだな。」
サマヨールに続いてゲンガー、さらにゴースト達が次々と飛び出した。

幸運にも、ミュウツー達のいる場所からちょうど岩の影になって見えない所に出たようだ。
目の前には何やら複雑そうな機械、その横にズラリと並ぶたくさんのカプセル―――
中は不気味な液体で満たされおり、そのいくつかには既にポケモンらしき影がゆらめいている。
621名無しさん、君に決めた!:2008/07/31(木) 15:13:47 ID:???
「暗くて良く見えねえな『だーれだ?』ってか。」
一番前にあるカプセルを覗きこみながらゲンガーが唸った。
「その方が都合がいいですよ。今から機械ごとすべて壊さなければいけないんですからねぇ、ヒヒ」
「ケッ、いくらこいつらが偽物だって言われてもあまりいい気はしねぇな・・・ゴースト共!」
「「「アイアイサー!」」」
ゲンガーの掛け声と共に次々とビリリダマが設置されていく
「オヤビン、準備完了しました!」
「よし、爆―――」

バリンッ

不意に一つのカプセルが何かが飛び出し、何匹かのビリリダマをなぎ払った。
「ゲゲッ!なんだ今のは?」
「オヤビーン、今のでビリリダマが気絶しちゃいましたー」
「ゲゲゲゲッ!さ、さっさと叩き起せ!」

「ピュイッ――!」
カプセルから飛び出した何かが旋回し、再びビリリダマに照準を合わせた。
「邪魔するんじゃねーよ!」
ゲンガーが放った電撃をサラリとかわしたかと思うと、さらに旋回しゲンガー達から離れていった。
「ケッ、どうやら俺様に恐れをなして逃げ出したようだな。」
「違うっすよ!マズイっすよ!オヤビン!今の奴俺たちのことバラすつもりですよ!」
622名無しさん、君に決めた!:2008/07/31(木) 16:12:52 ID:???
GJ!
623名無しさん、君に決めた!:2008/08/01(金) 19:22:52 ID:???
駄作乙!
624名無しさん、君に決めた!:2008/08/01(金) 21:24:49 ID:???
>>620-621
GJ!
625名無しさん、君に決めた!:2008/08/01(金) 22:59:46 ID:???
続き来た!
待ってたよ
626名無しさん、君に決めた!:2008/08/02(土) 11:36:18 ID:???
もういらないだろこのスレ
627名無しさん、君に決めた!:2008/08/03(日) 15:25:37 ID:???
明日明後日あたり続き書くぜ
628名無しさん、君に決めた!:2008/08/03(日) 20:58:23 ID:???
神キタ
629名無しさん、君に決めた!:2008/08/06(水) 01:01:48 ID:???
スマン投下は明日の夜になりそうだ
630名無しさん、君に決めた!:2008/08/07(木) 00:37:33 ID:???
「もうわかっているはずだオリジナル。俺たちの間には覆しようのない差があることにな―――
何ならそちらの子ウサギも一緒にかかってくるがいい。」
「ちょっと、でしゃばるんじゃないわよ!私のオリジナルは私がけりをつける、邪魔しないで!」
どうやら、奴らはお互いをあまり信用していないらしい。
ミミロップもコピーに間に流れる不穏な空気に気づいた様だ。
「ふーん…最初見たときは本当にそっくりだと思ったけど、けっこう違うとこあるのね。」
「当ったり前じゃない、言ったでしょ?私たちは勝つために造られたの。
あんた達と違って、わたし達の間にはチームプレーなんていう都合のいい言い訳は存在しないわ。」
「さて、おしゃべりはここまでだ。」
そう言うや否や、奴らは己のオリジナルに止めを刺そうと駆け出した。
「ど、どうする?」
指示を求めるミミロップの顔から不安がにじみ出ている。
「とにかく倒れるな。俺が奴を片付けるまではな。」
「う、うん…早くしてよねっ!」
お互いがお互いを奮い立たせ、俺たちは迫りくるコピーを迎え撃つ―――


射程圏内に入ると同時に、無言のまま奴の電撃が走る。もう遊ぶ気は無くなったらしい。
さっきはああ言ったものの、やはり俺に残された手は少ない。
必死に攻撃をかわしつつ腕輪に意識を集中する、カイリキーの時と同じ桃色の光が輝き始めた。
―――まだだ、この程度の光では足りない…
電撃が頬をかすめ、徐々に奴の電撃が俺の体を捉え始める。
―――まだ…もう少し…
「いつまでそうやって逃げ続けているつもりだ?」
少しイラついたように言葉をこぼし、奴はさらに攻撃の手を強めた。
―――今だ!
631名無しさん、君に決めた!:2008/08/07(木) 00:40:17 ID:???
低く唸るような音と共に、十分に大きくなった桃色の光球を打ち出す。
が、期待とは裏腹に光球は奴まで届かず、途中で停止したかと思うと、一気に膨張し俺もろともあたり一面を飲み込んだ。
同時に、ズッシリと何かにのしかかられる様な、強く大地に引き込まれるような感覚に襲われた。足が上がらない
光でほとんど目を開けられないが辛うじて奴の姿を確認できる。
―――奴にも同じことが起こっているようだ、悪態をつきこちらから目をそらしている。
…この機会を逃すわけにはいかない
右腕に目一杯電流を集め、巨大な球体をはじき出す。
「―――ッ!」
反応が遅れ、避けきれないと気づいた奴の顔から始めて余裕が消え去る。が、すぐにその顔は電撃の嵐と巻き立つ土煙の中に飲み込まれ…見えなくなった。

光が薄れ、少しずつ体が軽くなるのを感じる。
準備に時間がかかった割には随分と短い時間だった。
まあ、、うまくいったことに変わりはない。流石に今のを受けて無事でいられるはずは―――

「―――俺としたことが、オリジナルに不覚を取るとはな」
!!
土煙が徐々に消え、奴の―――電流の壁に覆われ、傷ひとつない姿があらわになった。
「フン、何を驚いている。お前にできて俺にできないことがあるとでも思っていたのか?
今のは少々予想外ではあったがな…てっきりその腕輪は持ち主の力を引き出すだけだと思っていたが…まあいい、お前を倒してからゆっくり調べるとしよう。」
632名無しさん、君に決めた!:2008/08/07(木) 01:43:39 ID:???
GJ!

俺も明日か明後日あたりに書くぜ
633名無しさん、君に決めた!:2008/08/07(木) 07:00:47 ID:???
GJGJGJ!!
634名無しさん、君に決めた!:2008/08/10(日) 00:41:14 ID:???
ごめんなさい、投下は明日の深夜になります
635名無しさん、君に決めた!:2008/08/11(月) 05:21:35 ID:???
澄んだ二つの歌声が重なり合い、歌い手である二匹のムウマージを包み込む。
その陰鬱で物悲しい旋律が一つ音を外すたび、一節が終わるたび、ムウマージから紫色をし
た靄のようなものが吹き出し、少しずつ体が薄れていく。

傍から見れば遊んでいるようにしか見えないが、それは壮絶な戦いだった。
二匹が歌う歌には聞いた物の心に直接打撃を与え、戦意どころか生きる気力さえも奪い去っ
てしまう呪いが籠められている。実体のある真っ当な生物でさえ聞き続ければ生命活動が弱
まり瀕死の状態にまで陥る可能性がある強力な物だ。
はっきりとした実体を持たない、精神的な物だけで存在を辛うじて維持している者達――い
わゆる幽体、ゴーストポケモン――にとっては格別の効果があった。

一音々々に乗った呪詛が研ぎ澄まされたナイフのように二匹の精神を抉り、存在を削り合う。
戦況は明らかに本物のムウマージが不利であった。コピーの方にはほぼ変化が無いが、
本物の体は殆ど半透明になり、歌声も段々と弱弱しく掠れがちになってきている。

実力の差もあった。だが、本物のムウマージがコピーに押されている一番の原因は他にある。
コピーが他の者達への被害をお構い無しに高らかに歌い上げる中、本物のムウマージは自分の
呪いが広がりすぎぬよう配慮し、コピーが発する攻撃を一身に集め、仲間を守りながら戦っていた。

「なに、あいつ等。のんきに歌なんて歌っちゃてさ。うざったいったらありゃしない」
コピーのミミロップは二匹の様子を見やると、ふん、と鼻で嘲った。
636名無しさん、君に決めた!:2008/08/11(月) 06:36:32 ID:???
GJ!
637名無しさん、君に決めた!:2008/08/11(月) 17:58:34 ID:???
その時空から大きな光が!

どかーんぼかーんちゅどーん

世界は滅亡した。
終わり
638名無しさん、君に決めた!:2008/08/11(月) 18:50:30 ID:???
>>637
感動した
639名無しさん、君に決めた!:2008/08/12(火) 01:55:47 ID:???
>>635
GJ!!
640名無しさん、君に決めた!:2008/08/12(火) 02:18:05 ID:???
>>637
ついでにGJ!!
641名無しさん、君に決めた!:2008/08/12(火) 11:31:10 ID:???
>>637
そのじくうから

と読んでしまった
642名無しさん、君に決めた!:2008/08/12(火) 12:58:25 ID:???
ついに完結したのか…
乙!
643名無しさん、君に決めた!:2008/08/12(火) 13:01:25 ID:???
自演乙
644名無しさん、君に決めた!:2008/08/12(火) 14:12:46 ID:???
自演乙
645名無しさん、君に決めた!:2008/08/12(火) 20:46:55 ID:???
自演乙
646名無しさん、君に決めた!:2008/08/12(火) 21:30:19 ID:???
自演乙
647名無しさん、君に決めた!:2008/08/15(金) 16:43:07 ID:???
保守
648名無しさん、君に決めた!:2008/08/15(金) 23:41:36 ID:???
しなくていいです
649名無しさん、君に決めた!:2008/08/18(月) 00:38:55 ID:???
保守
650名無しさん、君に決めた!:2008/08/18(月) 02:07:28 ID:???
止めて下さい
651名無しさん、君に決めた!:2008/08/19(火) 23:59:49 ID:???
保守
652名無しさん、君に決めた!:2008/08/20(水) 00:10:04 ID:???
やめてええええ
653ポケ大好き:2008/08/20(水) 13:28:19 ID:uyYwfU0d
と、その時本物のミミロップが、コピーに雷パンチ!
攻撃が、炸裂した!
コピーが少しよろけたが、すぐ体勢を立て直した。
「不意打ちとは、ひきょうなことするわね。」
                                                      
654名無しさん、君に決めた!:2008/08/20(水) 18:27:22 ID:???
>>653
は?なに言ってんの?
雷パンチじゃなくて冷凍パンチだろ?
バカなの?しぬの?
せめてミミロップの特徴とか把握してから書くべきだと思うよ
これだから素人は困る
もうお前ら素人は書き込まなくていいよ
俺ぐらいの古参にならないとこういうスレの流れを
つかむのは難しいからな
655名無しさん、君に決めた!:2008/08/20(水) 19:42:42 ID:???
>>653
656名無しさん、君に決めた!:2008/08/20(水) 21:34:34 ID:???
自演乙
657ポケ大好き:2008/08/21(木) 07:49:21 ID:X6XRKZNF
よけーなこと書くひまがあったらつづき書け
しかも小説リレーだから書いてもいいでしょ
658福田総理:2008/08/21(木) 08:16:24 ID:yRDSfVR1
657
うるせーだまれつーかおわたんたろ
659ポケ大好き:2008/08/21(木) 09:25:10 ID:X6XRKZNF
ちゅーとはんぱだべ
660ポケ大好き:2008/08/21(木) 09:26:20 ID:X6XRKZNF
ちゅーとはんぱだべ
661ポケ大好き:2008/08/21(木) 09:27:12 ID:X6XRKZNF
ちゅーとはんぱだべ
662名無しさん、君に決めた!:2008/08/21(木) 14:45:42 ID:7pZj3eD1
              /:::}        _
               /ー1     /:::}
            /  |   /` ‐/
            レ'          イ    ノ 大変なことが
            /          l   <_
            l \    ノ    l     i 起きてしまい
            j ● .   ●     l    ノ ましたッッ
            {) 、_,、__,  , - 、   {   ⌒\   __/
            \. ヽ ノ  ゝ_ノ/       |  /: シ骨
 ノ\__,,,=イ     ): ::::::::::::::::::::ヘ、::::|  /:::)
/       /    i^(  :::::::::::::::::::::::::ヘi/::::::::ハ   禾耆
 信じ難い (    /^ー-、:::::::::::::::::::::::::::::::::ト--ハ イ、
 ことが   \  ノ  /i'^\::::::::::::::::::::::::|   / .i |   ナよ
 起きて    /  / / イ  'i:::::::::::::::::::::::::t  ハ j /
 しまいまし ( /  ,,,ノ i,  'iミ、:::::::::::::::::i い j /   |,ま
 たッッッ   Y   /:::::::::'i,  'i,ミ):::::::::::::::ハ j' /
         >/ハ::::::ノ   Yハ::::::::::::ノ |, ノi   . と”
ー、_  /ナヽ(/./゙ ⌒(  ,(___ノ_:::,rイ. j゙  ,i゙     .
   `v'゙ /゙ .i'~  i゙  y ⌒'j/ i 7  | ノ  |     :
663名無しさん、君に決めた!:2008/08/21(木) 15:52:32 ID:???
せっかく>>637がきれいに終わらせてくれたのに…
664ポケ大好き:2008/08/21(木) 17:24:09 ID:X6XRKZNF
つづき つづき [@o@]
べつに、きれいじゃないでしょ
 
665ポケ大好き:2008/08/21(木) 18:50:57 ID:X6XRKZNF
「そんなこと言う暇があったらたたかったら」
コピーは、言った
「たたかってあげてもいいけどあなたが、負けるだけよ」
2匹は、戦闘態勢になった
666名無しさん、君に決めた!:2008/08/21(木) 19:52:28 ID:???
カンカンカンカン!
しかしここで試合終了のゴングが!
彼らの戦いは今終わったのだ

終了
667名無しさん、君に決めた!:2008/08/21(木) 23:05:41 ID:???
そんなゴングは鳴らなかった!
そして何故か時間は巻き戻り>>635から起こった事は全て消えてなくなってしまった…
668名無しさん、君に決めた!:2008/08/21(木) 23:21:05 ID:???
その時空から大きな光が!

どかーんぼかーんちゅどーん

世界は滅亡した。
終わり
669ポケ大好き:2008/08/22(金) 09:59:37 ID:tNtAA59s
2匹は、ほとんどごかくだったが
わずかにコピーが、勝っていた。
670ポケ大好き:2008/08/22(金) 10:30:42 ID:tNtAA59s
ミミロップは、あることを思った。
そういえば、あの痣きずひとつついてないわ。
もしかしたら、そこが弱点なのかもしれない。
痣に向かって炎のパンチくらわす。

671名無しさん、君に決めた!:2008/08/22(金) 16:59:39 ID:???
でも効かなかった!
だから負けた!
つまり死んだのであったのであった!
終わり!
672ポケ大好き:2008/08/22(金) 18:01:48 ID:tNtAA59s
思ったとうりだった。
673ポケ大好き:2008/08/22(金) 18:15:00 ID:tNtAA59s
コピーは、地面に倒れ戦闘不能になった。
674名無しさん、君に決めた!:2008/08/22(金) 18:19:30 ID:7TYB8FAL
そしてピカチュウはいきることに絶望した
675名無しさん、君に決めた!:2008/08/22(金) 18:25:50 ID:???
というのは全て幻想の話。
>>668から起こった事は全て偽りである。

時間は>>635へと再び戻る…
676名無しさん、君に決めた!:2008/08/22(金) 18:26:14 ID:???
だがピカチュウは死滅してはいなかった
677ポケ大好き:2008/08/22(金) 19:50:27 ID:tNtAA59s
それを見たピカチュウは、そこを、狙った。

678名無しさん、君に決めた!:2008/08/22(金) 20:11:43 ID:???
「おそいぞ本物」
「なんだと偽物」
バキッ「ぐえ」
「まだまだだな本物」
「ちくしょう」
「これでもくらえ偽物」
「なんだと」
びゅーんバキ
「ぐわあ」

「なかなかやるじゃないか本物」
「お前もな偽物」

ガシッ

ここに新たな友情が生まれた
679ポケ大好き:2008/08/23(土) 09:33:30 ID:b/pP6Mg9
しかし、コピーは、そこをかばうように戦った。
そのときコピーピカチュウの痣に誰かの攻撃が直撃した。
「一緒にかかってくるがいいって言ったじゃない」
攻撃したのは、ミミロップだった。
680ポケ大好き:2008/08/23(土) 09:38:47 ID:b/pP6Mg9
「余計な事を俺一人でもたおせたぞ」
「危なかったくせに」
681名無しさん、君に決めた!:2008/08/26(火) 04:36:57 ID:???
保守
682名無しさん、君に決めた!:2008/08/27(水) 00:35:47 ID:???
はたして保守する必要はあるのだろうか
683名無しさん、君に決めた!:2008/08/29(金) 01:59:35 ID:???
保守
684名無しさん、君に決めた!:2008/08/29(金) 02:11:17 ID:???
しなくていいです
685名無しさん、君に決めた!:2008/08/30(土) 18:55:38 ID:???
保守
686名無しさん、君に決めた!:2008/09/02(火) 03:52:00 ID:???
保守
687名無しさん、君に決めた!:2008/09/03(水) 17:48:02 ID:???
保守
688名無しさん、君に決めた!:2008/09/04(木) 12:21:42 ID:???
保守
689名無しさん、君に決めた!:2008/09/05(金) 01:40:45 ID:???
保守
690名無しさん、君に決めた!:2008/09/05(金) 20:30:19 ID:???
糞スレage
691名無しさん、君に決めた!:2008/09/05(金) 23:54:01 ID:???
保守
692名無しさん、君に決めた!:2008/09/06(土) 02:57:33 ID:???
保守
693名無しさん、君に決めた!:2008/09/06(土) 21:40:50 ID:???
スーパー語りタイム始まるよー\(^o^)/


「―――思い出した。いでんしポケモン…ミュウツー」
レッドがこぼした自分の名前を聞き、ミュウツーの動きがピタリと止まった。
「私を知っているのか?」
「うん、僕はその…君を造りだしたロケット団とは長い付き合いでね、むかし君の文献を読んだことがある。」
レッドが慎重に言葉を選びながら続ける。
「確かに彼らのやったことが許せないのはわかるけど、もうロケット団は解散してしまったんだ。受けるべき罰を受けてね。
だから…もうこんなことはやめて僕と一緒に来ないか?人間だってそんな悪い奴ばかりじゃないよ。」

「悪い奴らばかりじゃない…か…」
ミュウツーの口元がかすかに緩んだ。
だらりと腕を下ろし、口を開くと同時にレッドの心に直接語りかけた。

「生命とは何か目的を持ってこの世に産み落とされるという。
たとえどんなに小さなものであってもだ。必ずその者の支えとなり、生きる道しるべとなる。
だが造られた生命である私には…お前にならわかるとでもいうのか?私生まれてきた意味―――目的を。」

『私は何故ここにいるのか?』

「・・・・・」
「ククッ、答えられるはずがあるまい。私にはそんなもの存在しないのだからな。
―――それでも私を止めるというのなら、力で示してみろ。」
再び戦いの構えに入るミュウツー、それに応じてリザードンも体勢を低くし唸り声を上げる。

694名無しさん、君に決めた!:2008/09/06(土) 21:43:27 ID:???
「戻れ、リザードン」
どこか悲しげな掛け声と共に、リザードンにボールを向ける。
一瞬、意味がわからないという素振りを見せたが、すぐにやれやれとでも言う様にボールに収まった。
「ほぅ、どういうつもりだ?」
「見ての通りだ、もう仲間の力は借りない。君は僕自身が止めてみせる。」
言うや否や、一直線にレッドが駆け出す。
「フッ、ハハハハ!面白い冗談だ。その貧弱な体でどうやって私を止めるというのだ?」
突き出したミュウツーの右腕から無数の光弾が放たれた。

「待って―――!」
突如、二人の間に白い塊が飛び出し、黒き鎌で光弾を弾き飛ばした。
「む、お前は―――そうか、お前のコピーだけは何故かうまくいかなかったのだったな…
お前にも多少興味をそそられるが―――邪魔をするな、小僧!」
「いやだっ!」
前傾姿勢のまま、アブソルは動こうとしない。
「目的が無いからって、そんなの絶対間違ってるよっ!
ピカチュウが言ってた、外の世界には素晴らしいものがいっぱいあるって。
難しいことはボクにはよくわからないけど…でも、復讐なんかにせっかく貰った命を使っちゃったら勿体ないよっ!」
赤い瞳からは今にも涙がこぼれそうだが、その燃えるような眼差しはミュウツーから離れない。

「―――言ったはずだ、私を止めたければ力で示せとな。」
表情を変えず、ミュウツーが一人と一匹に狙いを定めた。
695名無しさん、君に決めた!:2008/09/06(土) 22:54:47 ID:???
GJ!
696名無しさん、君に決めた!:2008/09/07(日) 00:24:49 ID:???
GJ!!
697名無しさん、君に決めた!:2008/09/07(日) 00:43:10 ID:???
「ならば力を示そうじゃないか。」

「ガシッ!ボカッ!」ミュウツーは死んだ
698名無しさん、君に決めた!:2008/09/07(日) 01:26:23 ID:???
GJ!
699名無しさん、君に決めた!:2008/09/07(日) 11:00:21 ID:???
自演乙
700名無しさん、君に決めた!:2008/09/07(日) 16:00:41 ID:???
自演乙
701名無しさん、君に決めた!:2008/09/07(日) 21:34:24 ID:???
自演乙
702名無しさん、君に決めた!:2008/09/08(月) 04:27:23 ID:???
保守
703名無しさん、君に決めた!:2008/09/10(水) 05:03:39 ID:???
保守
704名無しさん、君に決めた!:2008/09/12(金) 04:08:52 ID:???
保守
705名無しさん、君に決めた!:2008/09/12(金) 12:29:38 ID:???
保守
706名無しさん、君に決めた!:2008/09/14(日) 04:22:30 ID:???
保守
707名無しさん、君に決めた!:2008/09/16(火) 04:27:35 ID:???
保守
708暗黒の支配者:2008/09/16(火) 22:40:36 ID:???
保守
709漆黒の殲滅者:2008/09/17(水) 02:19:18 ID:???
保守
710名無し:2008/09/17(水) 05:53:55 ID:???
>>392
ごめんなさい。
訂正させていただきます。

>>391訂正
再依頼 削除対象アドレス:
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/poke/1186585164/571-575
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/poke/1186585164/580-619
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/poke/1186585164/637-652
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/poke/1186585164/654-664
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/poke/1186585164/697-701

削除対象アドレス:
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/poke/1186585164/708-709

削除理由・詳細・その他:
4. 投稿目的による削除対象(レス・発言)
5. 掲示板・スレッドの趣旨とは違う投稿(レス・発言)
6. 連続投稿・重複(連続投稿・コピー&ペースト
711名無しさん、君に決めた!:2008/09/17(水) 05:57:31 ID:???
誤爆スマンorz
712名無しさん、君に決めた!:2008/09/19(金) 05:33:54 ID:???
保守
713名無しさん、君に決めた!:2008/09/22(月) 04:28:51 ID:???
保守
714名無しさん、君に決めた!:2008/09/24(水) 04:42:01 ID:???
保守
715名無しさん、君に決めた!:2008/09/26(金) 04:10:51 ID:???
保守
716名無しさん、君に決めた!:2008/09/29(月) 04:23:44 ID:???
保守
717名無しさん、君に決めた!:2008/09/29(月) 21:19:26 ID:???
明日明後日あたり続き書くぜ
718名無しさん、君に決めた!:2008/09/30(火) 20:34:41 ID:???
アブソルの叫ぶ声
レッド、アブソル、そして今にも光弾を放とうとするミュウツーの姿が目に入った。
危ない―――だが、駆けつけようとする俺の行く手を電撃が遮る。
「ほぅ、まだ仲間の心配をする余裕が残っていたのか。」
忌まわしいコピーの顔には既に余裕が戻り、皮肉を込めた笑みが浮かんでいる。
「チィッ!」
くそっ、間に合わん―――

―――ピュイッ
甲高い泣き声が洞窟中に響きわたり、皆の注意が上に集まる。
土色の翼、それとは対照的な極彩色の尾羽とトサカ―――
だが高度を下げるにつれ、本来あるはずのないまだら模様がはっきりと目に映った。
「ほぅ、自らの意思で這い出てきたか。」
予想はできたことだ…が、その事実を受け入れられるかどうかは別の話だ。

「お前が…俺を…生み出した…のか?」
初めて言葉を話すかのように、いや、実際今生まれたのだから当然かもしれない。
まだ緑色の液体がしたたる身体から途切れ途切れに言葉を吐き出す。
「そうだ、私がお前を造りだしたのだ。―――記憶が混乱しているようだな。」
もう話さなくていいとでも言うようにピジョンの頭にポンと手を置くミュウツー
おそらくテレパシーで頭の中を読み取っているのだろう。

「―――フン、他にもネズミが潜り込んでおったか。」
頭から手を離したかと思うと、手探りで物を探すかのように腕を左右に動かし、何かを掴み引っ張りあげる。
と同時に岩の陰から一匹の黒い影が飛び出した。むしろ、引きずり出されたというべきか。
「ゲゲッ!な、何だ?」
「オヤビーン、そっち行っちゃ駄目ですよー」

どこかで聞いたような声だ。
719名無しさん、君に決めた!:2008/09/30(火) 20:37:56 ID:???
GJ!
720名無しさん、君に決めた!:2008/09/30(火) 23:12:32 ID:???
自演乙
721名無しさん、君に決めた!:2008/10/01(水) 06:30:16 ID:???
>>718
GJ!
722名無しさん、君に決めた!:2008/10/01(水) 10:43:15 ID:???
乙!
723名無しさん、君に決めた!:2008/10/05(日) 03:40:29 ID:???
保守
724名無しさん、君に決めた!:2008/10/05(日) 08:39:07 ID:???
GJ!
725名無しさん、君に決めた!:2008/10/08(水) 03:42:01 ID:???
保守
726名無しさん、君に決めた!:2008/10/09(木) 21:16:44 ID:???
このスレ必要あんの?
727名無しさん、君に決めた!:2008/10/10(金) 04:15:39 ID:???
保守
728名無しさん、君に決めた!:2008/10/14(火) 03:12:30 ID:???
保守
729名無しさん、君に決めた!:2008/10/16(木) 11:16:51 ID:???
明日明後日あたり続き書くぜ
730名無しさん、君に決めた!:2008/10/18(土) 00:36:35 ID:???
いやっほぅぃ
731名無しさん、君に決めた!:2008/10/18(土) 23:18:18 ID:???
スマン、明日になりそうだぜ
いろいろ詰めたら結構長くなりそうだぜ
732名無しさん、君に決めた!:2008/10/19(日) 23:36:17 ID:???
「クソッ!おろせー!」
あれは、シンオウにいたゲンガー―――短い手足をじたばたさせいるが、無駄な足掻きのようだ。
「やめておけ、程度のビリリダマ程度の爆発では装置を破壊するに至らん。
無論、やすやすと爆発させるつもりは毛頭ないがな。」

ミュウツーが空いている手を上げ、叫ぶ
「目覚めよ!我が野望の元に!」
次々とガラスの砕ける音と雄たけびが鳴り響く。
―――おそらく十数匹…いや、それ以上か?

「やめろぉぉっ!」
黒い影が岩陰から飛び出し、その牙がミュウツーの腕に食い込んだ。
「これ以上その機械をお前みたいな出来損ないに使わせるのは我慢ならねぇ!」
―――デルビルだ、何かわめいているがよく聞こえない。口汚く罵っている事は確かだが
「フン、自分のその姿を見てからものを言うんだな。」

一瞬、俺のクローンがデルビルに気をとられた。
隙を逃さず値に電撃を打ち込み、同時にアブソルたちの元へ駆け寄る。
「怪我は無いか?」
「うん…。」
確かに目立った傷はないようだが、何か様子がおかしい。

既に先ほどの雄たけびの主であるクローン達の姿が確認できるところまで来ている。
―――これ以上ここにとどまるのは危険だ。
「ここはいったん引くぞ。流石にあの数では多勢に無勢だ。」
「待って…なんかぼく…変…」

突然、腕輪が高い金属音と共に輝き始める。
それに呼応するかのようにアブソルの体も
―――ッ!
733名無しさん、君に決めた!:2008/10/19(日) 23:37:27 ID:???
これ以上とでも入りきらないとでも言うように一気に桃色の光があふれ出す。
―――さっき俺が出したものと同じ光だ。だがこれは…さっきのとは比べ物にならない
光は洞窟一面に広がり、ミュウツーを除くすべてを大地に跪かせた。
止めようと腕輪に念じてみるが一向に収まる気配を見せない。

何とか光を押さえ込もうと考えをめぐらせているうち、今度は桃色の光の間に今度は青い光が漏れ出た。
今まで使ったことない色だ。…青…水…イヤな予感しかしない。

ズドドドド…

すべてを飲み込まんと四方からこちらに向けて津波が押し寄せてくる。
飛び上がろうにも足が地面から離れず、生憎サーフボードの代わりになるものも見当たらない。
俺は衝撃に備えて身を固めた。
734名無しさん、君に決めた!:2008/10/19(日) 23:39:37 ID:???
波に飲まれ息ができない、が同時に体が軽くなるのを感じる。
空気を求め、上を目指して地面を蹴り上げた。

―――既に先ほどまでの光は嘘のように消えている。
すぐ横にレッドが気を失ったアブソルを抱えながら浮かび上がってきた。
これが光の暴走が収まった理由か…覚えておこう

「もうっ!何なのよこれ!」
ミミロップが流されるようにこちらに向かって泳いできた。
その上をムウマージがフラフラとついて来る。
「あのムウマージきらい〜」

「出てこい、カメックス!君たちも掴まって。」
「ぉいおい、何があったっていうんだ?」
カメックスが驚くのも無理はない、こっちが聞きたいくらいだ。
「説明している時間は無さそうだね。上を見て。」

ミュウツー、クローン達が水面からすこし上に浮かんでいた。
こちらを見下ろすミュウツーの顔には怒り、それ以上に驚きの表情が表れている。
「今のは…いったい…?遺伝子から見て奴らにこれほどのことをなせるはずがない…ではあの人間か…?しかし…」
何かをブツブツと呟いている。どうやら目はこちらを向いているが俺たちのことは見えていないようだ。
後ろに立つクローンたちも俺たちの以外はピクリとも動かない。
「ざまぁ見やがれ!機械もぶっ壊れちまったし、これでお前の計画もおじゃんだな!」
デルビルも無事だったようだ。―――あれは人間でいう平泳ぎというやつか。

デルビルの声が聞こえたのか、ミュウツーの呟きが止まった。
「―――結論が出た、真相を確かめるのはリスクが高い。よって貴様たちにはここで消えてもらう。
あの機械の構造は既に頭に入っている。多少計画が遅れることは認めざるを得ないが、場所を変え再び同胞を増やすとしよう。
それでは…さらばだ。」
735名無しさん、君に決めた!:2008/10/19(日) 23:41:25 ID:???
一斉にクローン達が、ミュウツー自身を先頭にこちらに向かって飛び出す。
こちらはカメックスから離れないようにするので精一杯だというのに―――

「みんな、もう一度頑張ってくれ!」
いつの間にかレッドはカメックスの上に立ち、他のポケモンたちも繰り出していた。リザードン、エーフィ、ピカチュウ、カビゴン(フシギバナは出すスペースが無いようだ)
さらにリュックから七つ目のボールを取り出す。
「出ておいで、ラプラス。彼らをつれてここから出るんだ。」
ラプラスは一度だけ頷き、こちらを向いた。
「さぁ、背中に掴まって、息を大きく吸い込んで…」
「待て、その人間を置いては行けん。それに部下のロゼリアの姿も見えない。」
「レッドさんなら大丈夫です。もう時間がありません、そちらの子もこのままじゃ危険ですよ。」
たしかに、アブソルの体調は見る見るうちに悪くなっている、しかし―――
「もしそのロゼリアさんが溺れているのであれば出口のほうに流されているはずです、急いで!」
しぶしぶラプラスの背中に捕まり息を大きく吸い込んだ。
「行きますよ、3…2…1…それっ!」

最後に振り返ったとき、レッドと目があった。
口を開き俺に何かを言った―――が、声が届く前に水が耳を塞ぎ―――静寂が訪れた
736名無しさん、君に決めた!:2008/10/19(日) 23:54:40 ID:Y2dyFoVJ
hosillyu
737名無しさん、君に決めた!:2008/10/20(月) 07:56:00 ID:???
GJ!
738名無しさん、君に決めた!:2008/10/20(月) 12:49:37 ID:???
激しくGJ!
739名無しさん、君に決めた!:2008/10/21(火) 03:54:06 ID:???
明日か明後日にでも続き書くよ
740名無しさん、君に決めた!:2008/10/23(木) 10:41:14 ID:???
 水面が遠ざかり、暗い水底へと沈んでゆく。耳には、ごうごうと重苦しく不快な水の音だけが響いていた。
 嘲笑うコピーの顔が闇に浮かぶ。いくら振り払おうとしても、脳裏に焼き付いたそれは離れなかった。
あのまま戦っていたとしても、俺はミュウツーはおろか、己のコピーすら倒すことはできなかっただろう。
 今はもはや、レッド達の無事を祈ることしかできない。口に歯が深く食い込み、水流に撫でられるたびにしみた。
 その時、突如として暗闇を閃光が照らす。直後、衝撃波が水中を駆け抜けた。
岩同士がぶつかるような鈍く濁った音が立て続けに響き始め、びりびりとした震動が伝わる。
 ラプラスが泳ぐ速度を早めたのを感じ、アブソルを支える手と、しがみ付く手により強く力を込めた。
強い流れに全身を包まれ、まともに目を開ける事すらままならない。握力に限界が訪れ、
投げ出される事を覚悟した時、目蓋の裏に小さく淡い光が映る。光はどんどん強まり、視界全体を覆った。
――その一瞬、笑顔で別れの手を振るレッドを光の中に見たような気がした――。
 大きな水音と共に顔が水面を割るのを感じ、反射的に息を継ぐ。今にも尽きかけそうな力を振り絞って
ラプラスの背をはい上がり、切れぎれの息で喉から声をひねり出す。
「無事――か、お前達」
 呼び掛けに、幾つかの声が弱々しく答えた。あの場から逃がされた者は、何とか全員、外へと流れ着けたようだ。
 ここは、ハナダシティの西方、四番道路辺りを流れる川だろうか。前方にお月見山の麓が見える。
 とにかく、今は陸へ。アブソルの容態が芳しくない。ラプラスを川岸に急がせた。
 岸へ泳ぎ始めると、大きな影が飛び立ち、こちらへと向かってくるのが見えた。
そして、俺達の頭上まで来ると、旋回を始める。威嚇するラプラスをなだめ、俺は灰色の影を見上げた。
「良かった、皆さんも無事でしたか」
 プテラの背から顔を覗かせて俺達の姿を確認すると、ロゼリアは安堵の息をついた。
741名無しさん、君に決めた!:2008/10/23(木) 14:07:57 ID:???
GJ!
742名無しさん、君に決めた!:2008/10/23(木) 23:48:34 ID:???
>>740
GJ!
743名無しさん、君に決めた!:2008/10/24(金) 09:13:43 ID:???
おっつ!
744名無しさん、君に決めた!:2008/10/25(土) 07:29:30 ID:???
明日か明後日にでも続き書くよ
745名無しさん、君に決めた!:2008/10/27(月) 23:57:00 ID:???
明け方までには投下するよ

議論スレ、うっかりしていたらdat落ちしてしまったな
746名無しさん、君に決めた!:2008/10/28(火) 00:47:09 ID:???
今は流れゆっくりだし、ここで議論しちゃえばいいんじゃね?
747名無しさん、君に決めた!:2008/10/28(火) 01:02:44 ID:???
ネタバレは勘弁
避難所もうまく活用してくれ
748名無しさん、君に決めた!:2008/10/28(火) 03:23:29 ID:???
 岸へと着くと、急いでアブソルを陸に上げ、少しでも暖を取らせるために俺はマントを脱いでかけてやった。
 あの大水でロゼリアは外へと押し流された後、溺れかけているところを運良くプテラに発見され、事無きを得たそうだ。
 その後の顛末を、アブソルの様子を見させながらロゼリアに話して聞かせた。
「そうですか……」
 そう一言だけ呟くとロゼリアは顔を俯かせて押し黙り、無言のまま看病を続けた。
 押し潰されそうな沈黙が、俺達を包み込む。皆、一様に無念の表情を浮かべ、口を開くものはいない。
 川の方から沈黙を破る大きな水音が立つ。戻ってくるラプラスの姿が見え、僅かな希望を胸に俺は駆け寄っていった。
 しかし、その背に望む姿は無かった。ラプラスは力なく首を横に振る。
「入り口は崩れてきた岩で完全に塞れていました。内部の様子を窺い知ることもできません」
 ラプラスの言葉に落胆し、俺はその場にふらふらと座り込んだ。
 俺はまた大事なものを失ってしまったのだろうか。

     ※

 崩れ落ちた岩の下から、土埃や蒸気とは明らかに異なる、紫色の霧が吹き出す。
「ったく、冗談じゃねえ!」
 不気味な霧は苛立たしげな声を上げると、徐々に密集していき、ゲンガーの姿となった。
「あんなのに関わってたら怨念と未練が幾つあっても足りねえっての。あっという間に成仏しちまうぜ」
 同じように続々と岩の下からゲンガーの子分達が抜け出し、苛立つ親分の周りに集った。
「どーするんすか、この後」
「もう知るかよ。さっさと、こんな所からはオサラバして、あんな奴らと関わらないで済むような場所へ高飛びだ」
 そう言ってずかずかと足で地を踏み鳴らすかのように低空を浮遊していくゲンガーの後ろを、
へーい、と気だるく返事をし、ゴースト達はついていった。
 と、その時、女がすすり泣くような声が、不気味に響く。ゲンガーは面倒臭そうに懐の辺りを探る。
「こんな時に誰だ」
 そして禍々しい気を放つ石ころを取り出すと、顔の横にあてた。
「失恋の末に自殺した女の恨み声っすか。渋い着メロっすねオヤビン」
「ケケッ、だろ? ――はーい、もしもし、俺、ゲンちゃん。お話したけりゃロストタワーにお供えを振込……ゲゲェーッ!」
749名無しさん、君に決めた!:2008/10/28(火) 03:25:38 ID:???
 石を媒介にした交信が始まると、ゲンガーは紫色の顔を青くして叫び声を上げた。
「何でお前がこの周波数知ってんだ! もう、こりごりだ。お前の頼みなんて聞かねえし、そっちにも戻らねえ、あばよ!」
 交信を切ろうとした瞬間、石から無数の黒い影が延び、先っぽの赤く鋭い刺をゲンガーに突き付けた。
「いつの間にこんなもん仕込みやがって……! わかった、わかりました!」
 答えを聞くと影の触手は石の中へとゆっくり引っ込んでいき、ゲンガーは深く息を吐いた。
「ど、どうしたんで?」
「見てりゃ大体わかんだろ、ギラティナの野郎の新しい命令だ! ネズミが連れてた白いガキを連れてこいだとよ!」

     ※

「駄目です、衰弱していくばかりで、熱が下がりません」
 ロゼリアも手を尽くしたが、アブソルの容態は回復せず、衰弱していくばかりだった。
 アブソルにもうほとんど意識は無く、苦しそうに弱々しい呼吸をするだけだ。
「我々の力では、もはやどうしようもないのかも知れません……」
「一つ手は有るぜ」
 不意に背後から声が上がる。振り向いた先には、ゲンガーとその取り巻き達の姿があった。
750名無しさん、君に決めた!:2008/10/28(火) 07:12:54 ID:???
GJ!
751名無しさん、君に決めた!:2008/10/28(火) 10:40:05 ID:???
( ;∀;)イイハナシダナー
おっつー!
752名無しさん、君に決めた!:2008/10/28(火) 12:09:28 ID:???
ゲンちゃんww
GJ!
753名無しさん、君に決めた!:2008/10/30(木) 05:13:10 ID:???
明日か明後日に続き書くよ
754名無しさん、君に決めた!:2008/11/01(土) 08:30:02 ID:???
 ニタニタとした嫌味な笑い顔で、ゲンガーは俺達を見渡す。
 一つ手がある、確かに奴は言った。だが、信用できる筈もない。
 何の目的があってわざわざシンオウから俺達の前に姿を現したのかはわからないが、今まで見てきた奴ら
の行ないと性格からして、ろくでもない理由だとは簡単に想像できる。次にあの大きく裂けた口が開かれた途端、
たちまち悪質な冗談が飛び出し、飛び切り不快な気分にさせられるに違いなかった。
 当然、今はそのようなものが許容できる心の状態ではない。その瞬間、ありったけの電撃をたたき込んでやろう。
 電気をスパークさせながら、俺はゲンガーを睨み上げる。
「言ってみろ。最期の言葉が三流の冗談でいいのなら」
 一瞬の間を置いた後、ゲンガー達は顔を見合わせて吹き出すように笑い出した。
 奴の足元近くを狙って思い切り電撃を放つ。短く悲鳴を上げ、ゲンガーは大げさに跳ね飛んだ。
ゴースト達はぎょっとした表情を浮かべ、笑うのを止める。
「あたた……わかった、わかった。待てって、今回ばかりは俺様も冗談言ってる余裕はねえのよ」
 ふう、と腹の辺りを痛そうにさすりながら一つ息を吐いて、ゲンガーは話しだす。その間、無言で俺は睨み続けた。
「そう怖い顔すんなっての。最後まで聞け。何だか知らないが、俺達の元締めがその白いガキに用があるん
 だとよ。見たところそのガキが弱ってるのは肉体的なもんが原因じゃねえなあ。魂、霊的なもんだ。お前
 らなんかじゃ治すのは無理。人間に診せてもどうしようもねえよ。だが、俺達の元締めはそういうもんの専門家だ。
 そのガキはくれぐれも死ぬ前に連れてくるよう仰せ付かってる。何とかしてくれるつもりなんだろうぜ。」
 真剣な様子で、自らが命の危機に瀕しているかのような焦りさえ見せてゲンガーは訴えかけてくる。
嘘や冗談を言っているようには見えない。
 アブソルの今にも途切れそうな吐息が聞こえる。アブソルまで失うわけにはいかない――。

「すぐに会わせられるのか?」
 俺の言葉に、ゲンガーは心底助かったというような表情を見せる。
「おうよ。特別なルートでシンオウまで、ちょちょいのちょいちょいちょいよ、ケケケッ」
755名無しさん、君に決めた!:2008/11/01(土) 09:05:26 ID:???
GJ!
756名無しさん、君に決めた!:2008/11/01(土) 21:43:14 ID:???
GJ!
さて明日明後日にでも続き書きたいんだが
意見を求めたいので避難所に来てくれ
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11567/
757名無しさん、君に決めた!:2008/11/04(火) 00:50:14 ID:???
「さぁ皆さん、入り口はこちらですよ・・・ヒヒヒ」
 サマヨールの横には人間の大人がスッポリと落ちてしまいそうな穴が口をあけている。
近づくと吸い込まれてしまいそうだ・・・中は真っ暗で何も見えない。
「これが特別なルートというやつか?」
「えぇ、ここを通ればギラティナ様のもとまでは目と鼻の先です。」

「流石におれっちにその穴はは小さすぎらぁ。」
 プテラは翼をたたみ、体を細めてみるがどう見ても入れそうに無い。
「では、ペルシアンに俺たちのことを伝えてくれないか?場所はポッポに聞けばわかるはずだ。」
「・・・よござんしょ。しかしこんなもの、おれっちの時代には無かったなぁ。」
 よっぽど中が気になるのか、もう一度だけその穴を覗き、さびしげに飛び立っていった。

「私はここに残ります。まだ見落としていることがあるかもしれないので。」
「そうか・・・頼んだ。」
 ラプラスの目を見ていると罪悪感を感じずにはいられず、それしか言えなかった。

「さぁて、出発する前にいくつか注意事項を聞いてもらうぜ。」
 こっちの気持ちを知ってか知らずか、相変わらずの調子でゲンガーが話し始める。
「さっさと話せ。時間が無いのはお前もわかっているはずだ。」
「そう急かすなって、あっちで面倒起こされちゃたまんねぇからな。」
 ゲンガーが口の中から古く黄ばんだ紙を取り出した。
そしてそこに書かれた無数の黒い点の中のひとつを指差す。
「そこの穴はここに繋がってる。で、目的地はこれだ。いくらお前たちでも迷うことはねぇだろ。」
 ―――確かにゲンガーの指差す二つの点はくっつきそうなほど近い。
周りに他の紛らわしい点も無く出口を間違えることは無いだろう。
758名無しさん、君に決めた!:2008/11/04(火) 00:51:21 ID:???
「問題はこのルートは生てる奴向けに作られてねぇ、生身のお前らにはちょっとばかしキツイ空間だってことだ。
とりあえず何にも触らず、出来るだけ息もするな。運が悪けりゃコロリと逝っちまうぞ。
まぁ、俺たちと同窓になりたいなら話は別だがな。ケケッ」
 こいつのニヤついた顔を見ていると俺たちを怖がらせようと嘘をついているように思えてくる。
が、わざわざ確かめるために命を賭ける気にはならない。

「アブソルは私が運びましょう。ヒヒ、一番安全ですからね。」
「うむ、では・・・行くぞ!」
 ゲンガーを先頭に俺たちは暗い闇の中に飛び込んだ。
759名無しさん、君に決めた!:2008/11/04(火) 02:26:42 ID:???
GJ!
760名無しさん、君に決めた!:2008/11/04(火) 07:37:03 ID:???
GJ!
761名無しさん、君に決めた!:2008/11/04(火) 09:01:50 ID:???
o(>_<)o otu-!
762名無しさん、君に決めた!:2008/11/04(火) 09:15:44 ID:???
明日か明後日にでも続き書くよ
763名無しさん、君に決めた!:2008/11/06(木) 23:39:37 ID:???
ごめん、ちょっと遅れそうだ
明日中には投下するよ
764名無しさん、君に決めた!:2008/11/07(金) 22:37:03 ID:???
 生暖かい漆黒が全身を包み、皮膚の上で粘つきながら脈打つ。
それはまるで大きな蛇か何かにゆっくりと飲み込まれていっているかのようだった。
 奇妙な懐かしさと安らぎに支配され、滲んで消えかけようとしていた意識に、急に強烈なイメージが流れ込んでくる。
迫る刃、鋭い牙の並んだ大きく開かれた口、身を包む業火。幾つもの、様々な死の直前のような映像が脳内にフラッシュバックする。

 ――死にたくない、俺はまだ死ねない!
 声にならない絶叫を上げると共に闇から体が解放され、枯れ枝の山に背から落ちたのを感じた。
 先程のイメージに吐き気を覚えながら、ゆっくりと目を開けると、骨と化したポケモンの頭が鼻先にまで迫って俺の顔を覗き込んでいた。
心臓が跳ね上がり、再び大声を上げそうになる俺を見て、頭蓋骨はカタカタと笑うように顎を鳴らす。

「びっくりした?」
 聞き覚えのある、気の抜けた声。頭蓋骨を脱ぎ捨て、ムウマージが顔を現した。
 怒る気力も無く、俺は安堵と呆れの深いため息を吐いた。
「生きたまま成仏しかけた気分はどうだい?」
 笑い混じりのゲンガーの声が聞こえる。
「荒療治だが、深い生への執着が無いと、ここではやっていけねえ。そいつがいて良かったな」
 にこり、とムウマージは無言で微笑む。

「そんなことより、さっさとそこから降りてきな。急いでんだからよ。そんなにその悪趣味なベッドが気にいったってんなら、
後で幾らでもロストタワーから掘り起こしてきてやるっての」
 何を言っているのかと、上体を起こして下を見る。そして、その意味を理解した。俺が落ちたのは、枯れ枝の山などでは無い。
 半ば転げ落ちるようにして、俺は骨の山を駆け降りた。
765名無しさん、君に決めた!:2008/11/08(土) 08:35:48 ID:???
GJ!
766名無しさん、君に決めた!:2008/11/09(日) 00:09:10 ID:???
GJ!
明日明後日あたり続き書くぜ
767名無しさん、君に決めた!:2008/11/09(日) 00:11:26 ID:???
おつー!
768名無しさん、君に決めた!:2008/11/11(火) 07:23:18 ID:???
まだかー
769名無しさん、君に決めた!:2008/11/11(火) 15:47:39 ID:???
(ピカチュウ大丈夫?なんか顔色悪いけど。)
 手で口を塞ぎ、わずかに聞こえるほどの小さな声でミミロップが心配そうに俺に声をかける。
―――どうやら気を失っていたのは俺だけのようだ。
「ああ、問題ない。いったい俺の身に何があ・・・」
「おーっと、さっきの話を忘れたのか?おしゃべりはそこまでだ。
それを知りたきゃしっかりと俺に付いてくることだな。ケケッ」
そういうや否や、ゲンガーは飛び跳ねるように彼方に見える一点の白い光に向かってへ走り出した。
 あそこが出口だと思って間違いないだろう。
「はやくいこー」
 俺は無言で頷き、ゲンガー達の後を追って走り出した。



 数百メートル進んだところで、自分の体の異変を無視できなくなった。
体が重い―――出来るだけ息をしないようにしているせいもあるだろうが、それだけではない。
後ろに続くミミロップ、ロゼリアにも俺と同じ症状が出ているようだ。
 一方、先頭を行くゲンガー、ムウマージ、一番後ろを行くサマヨールとゴースト達は特に変化はない。
むしろ、いつもより生き生きしているように見える。こいつらには似合わない表現だが
「さぁーて、そろそろ答えを知りたくてウズウズしてきただろ?」
 ゲンガーが軽快にステップを踏みながら、こちらに振り向いた。
が、速度はまったく落ちない。そのまま後ろ向きに走り続けている。
「たぶんお前の疑問の答えは全部一瞬で出るぜ。上を見てみな。」
770名無しさん、君に決めた!:2008/11/11(火) 15:51:46 ID:???
 ゲンガーの指差す方向を見ると、真っ黒い空と宙に浮かぶ瓦礫の間に何かが見えた。
緋色の体に、6本の黒い翼、そして頭から黄金色の外殻が胴体まで伸び、顔と胸部を覆っている。
俺の記憶とは大分ズレがあるが・・・その姿にはギラティナを彷彿させる多くの共通点があった。
「―――わかったか?アイツがこの空間の元締めだ。
まぁ、普段ここにはアイツしかいねぇから当然っちゃ当然だな。
もし、子供が自分だけの部屋をもらったらどうすると思う?
お気に入りの人形を置いたり、ポスターを貼ったり、できるだけ居心地がいい部屋を作ろうとするだろ?
アイツの場合も同じ、ここは同族以外お断りのギラティナちゃんのお部屋なのさ。」

 なるほど、これで俺たちの体調の変化の理由がはっきりした。だが・・・
「ならば、なぜあそこにいるギラティナはこっちに来ない。
アイツがアブソルを連れて来るようお前に言ったんじゃないのか?」
 我慢できず、俺はその疑問を口に出した。
「そう事態は単純じゃねぇのさ。確かにアイツはギラティナだが俺たちの元締めとは別物だ。
ま、これ以上のことは直接本人にでも聞いてくれ。」
 話は終わりだというように、ゲンガーは再びクルリと向きを変え足を速めた。

―――――――
>>764あたりでシンオウ編だかプラチナ編だか区切りいれたほうがいいんだろうか?
771名無しさん、君に決めた!:2008/11/11(火) 16:28:14 ID:???
GJ!
明日か明後日にでも続き書く

シンオウ帰還編でいんじゃね
772名無しさん、君に決めた!:2008/11/12(水) 07:16:18 ID:???
GJ!
773名無しさん、君に決めた!:2008/11/14(金) 01:22:05 ID:???
遅れてごめんなさい、今日中には何とか投下します
774名無しさん、君に決めた!:2008/11/14(金) 23:42:35 ID:???
 見たこともないようなとても背の高い不気味な植物の森を抜けると、前方に渦巻く闇が見えた。
先を行くゲンガーがそれを指差し、あれが出口だと告げる。
 ようやくこの不条理な空間から出ることができる。普通では考えられないような出来事がここでは起きた。
先程までは確かにそこに存在していた岩や植物が俺達が近づくと跡形もなく消え去り、逆に何もなかったは
ずの場所に突然、音もなくそれらの物が現れて道を塞いだりもした。壁に飛び付けばたちまちそこが歩くべ
き地となり、今まで歩いていた足場が壁となった。ばらばらの向きで浮かぶ島々。逆向きに流れる滝。
もはや自分の居る場所が上なのか下なのかもわからない。いや、初めから上も下も無いのかもしれない。
時間の流れ、そして空間の在り方が俺達の世界の常識とは全く異なっている。まさに掟破りの世界。
 出口の目の前まで来ると、すぐに後に続くように言い残し、ゴースト達は一足先に飛び込んでいった。
取り込まれかけたことを思い出して少し足が竦んだが、ためらっている暇は無い。
意を決し、渦の中心を目がけて地を踏み切った。再び生暖かい闇が全身を包み込む。
死の安らぎに支配されぬよう、意識をしっかりと持つように努めた――。

 気が付くと、俺達は深い霧の立ちこめる石造りの部屋に立っていた。
じめじめとして黴臭く、そこは古い墓の中を思わせた。
「よくぞ戻った。命輝く者には難儀な道であったろう」
 部屋の中央に聳える台座の上から、重々しい荘厳な声が響く。見上げると、人間の背丈の数倍はありそう
な影が、赤く輝く二つの目で俺達を見下ろしていた。
「話をするには少々この状態ではしづらかろうな」
 その言葉で一瞬で霧が晴れていき、巨大な影が正体を現す。それは先程までの影と比べると随分と小さい、
白銀の毛並みをした狐のようなポケモンだった。
 狐はゆっくりと立ち上がり、おごそかに台座から降りてくる。一段一段を踏みしめるたびに、九つある尾
が揺らめいて妖艶に輝いた。
 目の前に座ると、狐は俺に目を向ける。その赤い瞳に向き合っただけで自分のすべてが見透かされた気分
になり、体中の血が凍り付いたかのように動かなくなった。
「さて、何から話すべきか。だが、その前に――」
775名無しさん、君に決めた!:2008/11/14(金) 23:47:39 ID:???
 狐は俺の後ろの者達を見渡して、再び俺に目を戻した。意図を理解し、俺はミミロップ達に下がるように言う。
続けて狐が、ゲンガー達に、ミミロップ達を適当な空いている部屋に通すよう命じた。
 文句を喚き散らして動こうとしないゴースト達を、狐は欝陶しげに見つめて尾の一本をざわつかせてみせる。
途端にゴースト達は竦み上がり、ミミロップ達を連れてすごすごと出ていった。
「ようやく落ち着いて話せる」
 ただならぬ気配と、伝わってくる底知れない力に、この狐が神族――ギラティナの化身であることはすぐにわかった。
「アブソルは?」
 一拍の間を置いた後、ギラティナは口を開く。
「結論から言えば、治療は可能だ」
 ギラティナの答えに俺は胸をなでおろす。だが、まだ言葉には続きがあった。
「ただし、条件がある」
 怪訝に思い俺はその条件を聞き返す。
「白金の宝玉が必要なのだ。それが無くば我が力を自在に行使することは無理だ。衰弱は止められても完治
させることはできないということだ。ここへ来る途中、我が神体は見たか?」
 道中で見た龍の姿を思い出し、俺は頷いた。
「あの世界と、普段お前達が生きるべき世界は表裏一体。どちらかの世界に何らかの欠損が生じれば、すぐ
に片方の世界が傷を埋めて均整を保っている。均整が崩れれば互いの崩壊を招くのだ。ここは二つ世界の狭間。
私は傾きを計り、時に正す言わば天秤のような役割をしている。多少の自己修復能力はあるため私が直接
手を下すことは極稀ではあったが、今は状況が変わっている。お前が見たものは私の神体に間違いはない。
私自身――魂とでも言おうか――が離れた後も、自律し、半機械的に世界の管理を行なっている。主神無き
不安定な情勢の中、何とか繕ってはいたが遂に大きなほころびが生じたのだ。本来ならば転生の時ではない
幾つかの魂が隙間から漏れ出し、お前達の世界に生まれ落ちた。我が神体は怒りに狂い、もはや私だけが持
つ力では抑えが効かぬ。魂の無い神体は理性無き獣と同じ。その内に漏れだした魂を求めてお前達の世界へ
と抜け出し、大きな騒動を巻き起こすことだろう」
 あまりに不吉な話に顔が引きつり、俺は言葉を失った。
776名無しさん、君に決めた!:2008/11/14(金) 23:50:00 ID:???
「しかし、止める手立てはある。アルセウスが私を蘇らせた時、力を三つに分けた。魂、神体、宝玉。
すべてが揃わねば、個々として大きな力はあれど、絶対的な力を行使することはできんのだ。そこで、お前
にはこの内の一つ、白金の宝玉の封印を解き、我が下に持ってきてもらいたいのだ。私はこの場を離れるこ
とはできんし、奔放なゴーストどもを当てにはできんのでな。白金の宝玉が戻ればすぐに神体を制御して
ほころびを修復し、世界は再び安定しよう」
 世界の命運が再び俺にかけられるというのか――半ば嫌気が差したが、いずれ征服する世界を崩壊させる
わけにはいかない。そして、アブソルを助けなければ。仕方なく俺は首を縦に振る。
それを見てギラティナは満足気に極うっすらと微笑んだ
「よろしい。だが、これはお前単独でやってもらう。
宝玉が封印された地に送り込むのは今の力では一匹が精一杯なのでな」
777名無しさん、君に決めた!:2008/11/15(土) 03:06:16 ID:???
GJ!!
778名無しさん、君に決めた!:2008/11/17(月) 00:58:11 ID:???
明日か明後日にでも続き書くよ
779名無しさん、君に決めた!:2008/11/17(月) 14:58:37 ID:???
age
780名無しさん、君に決めた!:2008/11/19(水) 23:06:41 ID:???
 単独行動か――。
 久しく無かった事態に若干の戸惑いを感じる。
「どうした? よもや、徒党を組んで馴れ合わねば何もできないなどと言うのではあるまいな」
 見透かされたかのようなギラティナの言葉に、俺の心は強く反発した。
「まさか。そんなはずがあるまい。俺だけで十分だ」
 調子を強めてギラティナに反論する。
 あいつらなどいなくても一匹でやってみせる。プライドがくだらない戸惑いを跳ね退けた。
「それでいい。孤独の中で本当の力は養われるのだ。命輝く者も、命失った者も――。
さて、すぐにでも発ってもらう。準備はよいか」

 急かすようにギラティナは言う。だが、やはりミミロップ達の事が気掛かりではあった。
「出発する前に、部下に話をしておきたいのだが」
「あまり猶予はない。お前の事は私の方から伝えておこう」
 それならいいと、俺は引き下がる。無理に押し通すような事でもないだろう。
 ギラティナから延びる不釣り合いなほど大きな影の上に乗るよう促され、それに従った。

「では、始めよう。先に言っておくが、もしも送った先でお前の身に危険が迫ったとしても、援護は期待するな。
私にできる事は、魂を通じてお前を言葉で導く事と、お前が宝玉を手にした時、ここへ還す事だけ。
だが、その前にお前に授けるものがある。受け取れ」
 俺の足元で影が伸び上がり、俺の背丈程の十字架のような形で宙に固定される。少しずつ表面の影が血のように
流れ落ちていくにつれ、それは実体と化していった。
781名無しさん、君に決めた!:2008/11/19(水) 23:09:19 ID:???
「すべてのものに魂は宿る。草木、時には物にさえ。それは、かつて数多のポケモンを葬った狩人の剣に宿っていた魂だ。
狩人は自分の行いを悔い改め、その証として剣を折って捧げた。だが、持ち主も身も失った今もなお、剣の怨念は消えず、新たな獲物を求めている」

 碌でもない話を聞いて我に返り、無意識に柄に伸ばそうとしていた手に気付いて、止める。
「待て、そんな厄介そうなものが何の役に立つ。そもそも俺は剣など扱えんぞ。人間でもあるまいし不可能だ」
「物を敵に投げ付けるくらいの知能はお前にもあるだろう。使い方を誤らない限り危害を受ける事はない。
もしも、あちらで強大な障害に出くわした時、その剣を呼び出し、思い切り投げ付けろ。殺すことはできなくとも、
しばらくの間は動きを止めることくらいはできるだろう。使えるのは一度きり。賢く使え」

 半信半疑ながら、そして強大な障害という嫌な言葉を聞きながらも、俺は恐る恐る剣の柄を掴んだ。
すると、たちまち剣は再び影となり俺の腕輪へと吸い込まれる。
 ギラティナはそれを見届けると、すべての尾を地に突きたてた。
そして、体の奥底を震え上がらせるような咆哮が上がったと思った瞬間、影が大きな顎となって俺を飲み込んだ。

「さあ、行け。決して失敗は許されない。お前が正しい選択をできると期待しているぞ――」
782名無しさん、君に決めた!:2008/11/20(木) 01:19:08 ID:???
GJ!
なんだかんだで単独行動は久々だな
783名無しさん、君に決めた!:2008/11/23(日) 02:07:32 ID:???
明日か明後日に続き書くよ
784名無しさん、君に決めた!:2008/11/25(火) 23:35:21 ID:???
遅れてすまん
2時か遅くても3時頃までには投下する
785名無しさん、君に決めた!:2008/11/26(水) 03:12:20 ID:???

      ※

「遅い……遅いったら遅い。二匹っきりで何を話してんだろ……」
 小石を手の平で転がしながら苛立たしくミミロップはぼやく。客間と呼ぶには抵抗のある小汚い石室に
追いやられてから随分と時間が経っていた。ゴースト達はミミロップ達をこの部屋へ押し込めるとさっさと
どこかへと姿をくらましてしまい、かびの嫌な臭いだけが客をもてなしていた。
「その台詞は聞き飽きましたよ……」
 ため息をつき、ロゼリアは呟く。しかし、直後に凄まじい剣幕でミミロップに睨み付けられ、黙り込んだ。
「蛇女の時といい、私達をのけ者にしてさー。何なの、まったく……」
「そういえば、あの蛇のご婦人といい、ピカチュウさんが二匹きりで話すのはお綺麗な方々ばかりですよね」
 再び睨まれ、ロゼリアはあわてて目を逸らす。
「もしかして年上好みなのかなー……。私には見向きもしてくれないし」
「それ以前に性格が問題ですよ、きっと」
 そう言い捨てて、そそくさとロゼリアは逃げていった。が、あっという間に捕らえられ、降参の悲鳴を上げる。
ムウマージはそんなやり取りをけらけらと笑いながら眺めていた。

「騒々しい――」
 不意に入り口の方から声がして、ミミロップ達は振り向く。九尾の狐――キュウコンは気だるげに入り口
をくぐると、足音も無くミミロップ達の傍へと歩んでいく。
「……ゴースト共は行ったか。何のもてなしもせず長らく待たせたことは詫びよう」
 部屋を見渡してから、平淡な調子でキュウコンは言う。
「それより、アブソルちゃんはどうなの? そしてピカチュウはどこ?」
「……あまり芳しくない。治療にはとある特殊な薬草が必要でな。お前達の主はその薬草を求め、長い旅に出た」
 詰め寄るミミロップに、キュウコンは少し間をおいて答えた。
「ちょっと待ってよ! 私達、置いてかれたってこと? ピカチュウは何て言ってたの?」
「特に何も聞いてはいない」
 信じられない。行き先を聞こう。すぐにでもみんなで追おう。ミミロップ達は顔を見合わせて、ざわめく。
「……思うに、お前達は足手纏いと判断されたのではないか?」
 キュウコンは少し眉間にしわを寄せて言った。
786名無しさん、君に決めた!:2008/11/26(水) 03:16:09 ID:???
「それ、どういう意味?」
 聞き捨てならないと食って掛かるミミロップに、キュウコンは冷笑を向ける。
「聞けばお前達は己の同一存在ごときに随分とてこずり、散々な負け方をしたそうではないか。
それなのに、お前達は自分を高めようとするでもなく、ただ連れ立って馴れ合おうとするばかり。
足手纏い以外の何者でもない。呆れられても無理は無かろうよ」
 返す言葉に詰まり、ミミロップは怒りで顔を真っ赤にしながら押し黙る。
「お前達が選べる道は二つ。ここで無駄な時をただ過ごすか。ここから出ていき、どこへなりと行くか。
前者はできる限りやめてもらいたい。無駄に潰される程、穀に余裕は無いのだ」
「頼まれなくたってこんな所、すぐに出ていってやるわ!」
 我慢していた怒りを火山のごとく爆発させ、ミミロップはキュウコンの脇を通り抜けて、床を踏み鳴らしながら部屋を出ていく。
ロゼリアとムウマージも慌ててそれに続いた。
「それはありがたい。そのまま真っすぐ進めば、すぐに外へと出られる。
霧が晴れるまで、決して後ろは振り返らぬことだ。命が惜しくばな」


 ミミロップ達が外へ出ると、目の前には周囲を岩壁に囲まれた霧深い湖が広がっていた。
岸を進んで行くと、やがて登れそうな箇所を見つけミミロップ達は岸壁を乗り越える。
 その先には鬱蒼とした森が行く手を阻んだが、ミミロップはふつふつと沸き立つ怒りを糧に、
臆することなく先にうっすらと見える明かりを目指して進んでいった。
 森を進むにつれて霧は晴れていき、ミミロップ達は目指していた明かりが人工の物――トバリシティの街並だと気付く。
 完全に霧が晴れた後、ミミロップは何気なく後ろを振り返ってみる。
すると、今まで確かに歩んできたはずの森は無く、高い崖が立ち塞がっていた。
787名無しさん、君に決めた!:2008/11/26(水) 17:08:42 ID:???
GJ!
まってたぜ
788名無しさん、君に決めた!:2008/11/26(水) 20:19:07 ID:???
GJ!
明日明後日あたり続き書くぜ
789名無しさん、君に決めた!:2008/11/29(土) 04:24:33 ID:???
ハクタイの館―――

 ドンドンドンドン
「開けてくれ〜七武海エレキブル一行のお帰りだ〜」
 カチリと鍵が開き、中からエンペルトが顔を出す。
「ご苦労だったポ・・・な。疲れているところ悪いがドンに報告を頼む。」
「おうよ!」

「それで―――どうだったやんすか?カントーの様子は。」
「おおむね順調といったところだ。既に相当の範囲でボスに賛同する声が広がっている。
中には三年以上の付き合いだと言いはる奴もいたぞ。それほどボスを慕っているという事だろう。」
 任務も成功に終わり、上機嫌でテーブルに出されたオボンの実にかじりつくエレキブル。
「それからもうひとつ、どうやらボスの側近がひとり増えたらしい。
話によれば、ボスはそいつに普通以上の気を使っている様に見える、とのことだ。」
「ほぅ、ボスも隅に置けないでやんすねぇ。
きっとミミロップの姐さんからそいつに乗り換える気で・・・」

 ガツンッ!ガツガツンッ!突然ドンカラスの後頭部を衝撃が襲う!
「あぎゃぎゃぎゃっ!…だ、誰でぇ!」
「…ッ!」
「げぇーーっ!?あ、姐さん!?ということはボスも・・・ありゃ?」
790名無しさん、君に決めた!:2008/11/29(土) 04:26:45 ID:???
「―――と、いうわけなの。」
「なるほどなるほど・・・姐さん、そりゃあうまく出し抜かれましたな。」
 ドンカラスの一言にミミロップがあっけに取られる。
「えっ、どゆこと?」
「よくある話でさぁ、二人の仲に嫉妬した女性がそれを引き裂こうと策略を巡らす・・・
つまりそのキュウコンが言ったことはボスを独り占めする為の口実だったに違いねぇ!」
(昨日やってたドラマのまんまだお・・・)
 あまりに突拍子のない意見に皆のため息がこぼれる。
だがミミロップだけは衝撃を受けたように立ち尽くした。
「まあ、一理ありますね。理由はどうあれ、僕たちがいては何か不都合な事があったのかもしれません。」
 すかさずロゼリアがフォローを入れる。が、
「そ、そうだったのね・・・早く戻らないとっ!」
 ミミロップにはロゼリアの声などまったく耳に入っていない。
今にも部屋を飛び出していってしまいそうだ。
「しかし、どうやってあそこまで行くつもりですか?霧が深い上におおまかな道筋もわかりません。」

「そういうことならあっしにいい考えが」
待ってましたとばかりにドンカラスがいそいそと後ろの棚から分厚いファイルを取り出した。
「ボスがいつ帰ってきてもいいようにこの島周辺の情報は全部まとめてここに記録しているんでさぁ。
えっと確か・・・あった、ここから西へ行ったところにあるこうてつじまに助けになりそうな奴がいますぜ。
なんでも波動とやらを感じ取って物を認識できるとか。」
「確かにそれなら霧の中でも迷わず辿り着けそうね。その話、もっと詳しく聞かせて!」
流石のドンカラスもミミロップの勢いにタジタジである。
「こ、この情報はチャーレムからのもんなんで、これ以上のことはあいつに聞いてくだせぇ。
今はたぶん裏庭で瞑想してるはずですぜ。」
「わかったわ、ありがとうっ!」
誰かが止める間もなく、次の瞬間にはミミロップは部屋を飛び出していた。

「・・・ひとりで行ってしまいましたね。」
791名無しさん、君に決めた!:2008/11/29(土) 07:01:40 ID:???
GJ
明日か明後日にでも書けたら続き書く
792名無しさん、君に決めた!:2008/11/29(土) 17:02:55 ID:???
GJ!
793名無しさん、君に決めた!:2008/12/02(火) 00:19:19 ID:???
明け方か、遅くても今日中には投下するよ
794名無しさん、君に決めた!:2008/12/02(火) 07:30:05 ID:???
 ミミロップの心中は穏やかではなかった。洋館に着いてからも、キュウコンの言葉が頭を巡っていた。
ひどく辛辣ではあったが、言っていたことはそれほど間違ってはいない。それがまた苛立ちに拍車をかけた。
 今はロゼリア達と馴れ合ってばかりじゃいけない。強くなってあの忌々しい狐と、黙って自分を置いていったピカチュウを見返してやる。
固く決心して、ミミロップは洋館の扉を蹴り開けて勢いよく外へ駆けていった。
ドンカラスのくだらない冗談など真に受けてはいないが、一人で飛び出ていく口実にするには丁度良かった。
 裏庭へ出ると、ミミロップはすぐにチャーレムの姿を見つけることができた。チャーレムは平たい岩の
上で座禅を組み、身動き一つせずに深く目を閉じていた。一見すると眠っているように見えるが、感覚を根
のごとく周囲に張り巡らし、意識を研ぎ澄ませている。
「何用か?」
 歩み寄る存在に気付き、チャーレムは目を開けた。
「ちょっとあんたに頼みたいんだけど」
 ミミロップはチャーレムに事情を話す。

「――なる程。各地を放浪している波動の達人、その名はルカリオ。彼が今、鋼鉄島に滞在しているのは確かだ。だが弟子は滅多にとらんと聞くぞ」
「それは大丈夫よ、きっと」
 名を聞いた時のミミロップの既に知っていたかのような態度と、その妙な自信をチャーレムは怪訝に思う。
だが、断る理由も無いし、ごねられるのも面倒だった。
「まあいい。格闘家の端くれとして彼とは一度、手合せしてみたかったところだ。案内しよう」
 噂に名高い波動の使い手の技を一目見ておきたいとも思い、チャーレムはミミロップを島まで連れていくことに決める。
「ありがと。でも島なんでしょ。泳いでいける距離なの?」
「水上の足はある。おぬしらがカントーに行ってる間、ドン達は何もしていなかったわけじゃあないぞ」
 チャーレムは岩から降り、洋館とは反対方向へとどんどん歩いていく。
首を傾げながらもミミロップはその後をついていった。
795名無しさん、君に決めた!:2008/12/02(火) 07:33:33 ID:???

      ・

「ふーん。感じも良いし、確かに便利な水上アッシーくん達だったわ」
 岸で見送るフローゼルとブイゼル達を見て、ミミロップは呟く。
「今日は態度が特別良いだけだ」
 あの海賊共が愛想よく見送りまでするなんて、おぬしの他にはマニューラが乗った時ぐらいだ、とチャーレムは語る。
 組織に組み込まれてから時も経ち、海賊達もそれなりの立場を得ていた。ドンカラスやエレキブルなど
組織の有力者には海賊達は無愛想ながらもしっかりと従うが、それ以外に対しては随分と態度は荒っぽくなっていた。
もはやビッパなど一匹で海賊達を呼び付けたが最後、ホエルオーの体を洗うモップ代わりにされる。

「それにしても……。これ、登るわけ」
 鋼鉄島の中心に高く聳える武骨な山を見上げ、ミミロップは呆然とした。
「ああ。ルカリオ殿は頂上で鍛練に励んでいるそうだ。この島は人間もよく修行に訪れる場所。
人目につかないようにするには多少の不便も仕方あるまい。これも彼に課された修行の内だと思うのだな」
 そう言うと、出っ張りやへこみにうまく手足を引っ掛けながらチャーレムは黙々と岩を登り始める。
大きくうなだれた後、仕方なくミミロップも続いた。
 ――でも思い出すなあ、色々と。私のこと覚えてるかな。

      ・

 息も絶え絶え、頂上まで最後の一踏張りをやっとの思いでミミロップは登りきる。
自分と同じ道程を辿ったはずなのに悠然としているチャーレムを、
化け物でも見るかのようにミミロップは地にへばりつきながら見つめた。
「信じらんない。普通もう動けないって。水、水ないの」
「なっとらんな。記憶が正しければ、この先に泉が湧いていたはず。ほら、あれだ」
 チャーレムが指し示した先にある水面を見た途端、ミミロップは跳ね起きる。
そして半ば転びかけながらも驚くべき速度で駆け寄っていき、泉に頭を突っ込むようにしてそのまま全部飲み
干してしまうのではないかと思う程の勢いで水を飲み始めた。
「十分に元気ではないか……」
 呆れ返るチャーレムを尻目にミミロップは水から顔を上げて満足気に息を吐く。
「ンまあーい! これだけ水が美味しく感じるなんて、すごく久しぶり。さすがに感涙する程じゃあ無いけどね」
796名無しさん、君に決めた!:2008/12/02(火) 07:36:04 ID:???
 付きあいきれないと、チャーレムはミミロップを置いてさっさと先に、ルカリオが仮住まいとしているら
しい洞穴の方へと向かった。置いていくなと文句をたれながら、ミミロップはチャーレムを追う。
 洞穴はそこそこ広く、湿気もそれ程ではない上、近場に先程の泉もあり、確かに巣穴には絶好の環境だと感じられた。
程なくして二匹は、瞑想に耽る一匹のポケモンを見つける。人型ではあるがその頭部は犬か狐に似ていて、
黒い覆面をしているかのような模様がある。そして、全身が短めの毛並みに覆われていた。
毛の色は部位によって大きく異なり、大体は青色だが、手の先や膝から下は黒く、胴はクリーム色をしている。
 二匹の接近を察知したのかポケモンは両目を開き、無言のまま不思議な力強さに満ちた赤い瞳を二匹に向けた。
 チャーレムは両手の平を合わせ、深々と礼をする。その横で、ミミロップは拳法のような構えをとって、深く静かに息を吸う。
「お初にお目にかかる、ルカリオ殿。我が名はチャーレム。そしてこの者は――」
 チャーレムが話し終わらぬ内に、ミミロップは拳を燃え上がらせ、気合いの声を上げながらルカリオに向かっていった。
 ルカリオは即座に戦闘態勢に入る。その構えは、先程のミミロップものとよく似ていた。
右手に群青色のオーラのようなものを纏わせると、それを輪状に変化させ、向かってくるミミロップに放つ。
水の波紋のように宙を伝わっていくそのオーラに触れた瞬間、ミミロップの炎は消えさった。
そして、それとほぼ同時にルカリオは間合いを詰め、炎を纏った脚でミミロップを蹴り飛ばす。
だが、大分加減されていたのか、ミミロップはすぐさま受け身を取って、起き上がった。
「いたた……。いやー、さすがの強さですね。あははー、あのー、そのー、お久しぶりです、師匠。私のこと覚えてます?」
 ルカリオは深く目を閉じ、迷惑そうに小さく鼻でため息を吐く。
「この波導の色、その振る舞い――姿は大分変わってはいるが間違いない。覚えているぞ。
熱心にしつこく付き纏ってきた割りには、すぐに音を上げて逃げ出したお前が、今更何をしにきたのだ」
 二匹のやり取りを、チャーレムは呆気に取られてただただ見ていることしかできなかった。そして、ふと、
ルカリオの雰囲気がどことなくピカチュウに似ていることに気付く。
797名無しさん、君に決めた!:2008/12/02(火) 09:01:24 ID:???
GJ!
798名無しさん、君に決めた!:2008/12/02(火) 14:19:26 ID:???
GJ!
799名無しさん、君に決めた!:2008/12/02(火) 16:01:37 ID:???
GJ!
800ID制変更議論中、詳しくは自治スレまで:2008/12/04(木) 01:21:02 ID:???
明日か明後日にでも書けたら書くよ
801ID制変更議論中、詳しくは自治スレまで:2008/12/07(日) 00:19:41 ID:???
「保守か。」
「そうだ。」
「……………。」
「……………。」
802ID制変更議論中、詳しくは自治スレまで:2008/12/07(日) 01:13:20 ID:???
 痛いところを突かれ、ミミロップは苦笑いを浮かべて言葉を一瞬詰まらせたが、ここまで来て引き下がることはできなかった。
「また色々教わりたいかなー、なんて」
「断る」
 すげなく一蹴され、ミミロップは無理矢理作っている笑顔を引きつらせる。

「また教えてほしいだと? どれだけ面の皮が厚ければそのような台詞が吐けるのだ。一瞬の気の迷いで、
お前を弟子になどしてしまったことを今でも深く後悔している。お前を傍に置いてからというもの、
ろくな事が無かった。大体、あの時も――」
 今までやりどころがなく溜まっていた欝憤を噴出させるようにルカリオは説教を続けたが、
急に鼻をぴくりとさせて黙り込み、ある一点に目を向けた。
視線の先、ミミロップの手にはどこから取り出したのか銀紙に包まれた板状の物体が握られている。

「気付きましたー? とろける程に甘ーいあれですよ、あれ。師匠、確か甘いの大好きでしたよね」
 銀紙の端を少し剥がしてみせ、悪戯っぽくミミロップは笑う。手に握られていた物の正体はチョコレートだ。
 ルカリオは酒に縋りつくアルコール中毒者のようにチョコレートに手を伸ばし掛けたが、
はっと手を戻して垂れかけていた涎を拭い、己の頬を叩いた。
「……それがどうした」
803ID制変更議論中、詳しくは自治スレまで:2008/12/07(日) 01:15:42 ID:???
 平然を装うルカリオを、意地悪げににやつきながらミミロップは見つめた。
「その様子だと、随分ご無沙汰って感じですね。本当は師匠のお土産に持ってきたんですけど、
教えてくれないなら必要なさそうかな。私も今は甘いもの控えてるし……処分しちゃおっかなー」
 そう言って、ミミロップは片方の手に炎を灯す。そして、じりじりとチョコレートへと火を近付けていった。

「一度溶けてからまた固まったチョコってあんまり美味しくないんですよねー」
「おのれ、卑怯な真似を……」
 炎が近づくにつれて少しずつチョコレートは溶け始め、地に滴った。同時にルカリオの頬にも冷や汗が伝う。
 一滴、二滴、三滴――。

「えぇい、わかった! また面倒をみてやる。だからそれ以上溶かすのをやめて、それを渡せ!」
 堪らずにルカリオは声を上げる。勝ち誇ったようにミミロップは微笑んだ。
「きゃー、さっすが師匠! ありがとございまーす!」
 嬉しそうに飛び付こうとしてくるミミロップを避け、チョコレートを奪い取ると、ルカリオはそっぽを向いた。
804ID制変更議論中、詳しくは自治スレまで:2008/12/07(日) 12:51:58 ID:???
GJ!
805ID制変更議論中、詳しくは自治スレまで:2008/12/09(火) 01:13:28 ID:???
明日か明後日にでも続き書くぜ
806名無しさん、君に決めた!:2008/12/11(木) 23:41:19 ID:???
明け方か遅くても明日中には投下する
807名無しさん、君に決めた!:2008/12/12(金) 08:46:39 ID:???

 ※

 本が乱雑に積まれた部屋で一人、ロゼリアは溜め息をつく。その手に持った本の内容がつまらないわけでも、
あてがわれた部屋に不満があるわけではない。一見、狭くも見えるがロゼリアの小さな体格からすれば広さとしては申し分ないし、
むしろ本の山に囲まれる事は人間の文字をあまりに難しすぎるものでなければ理解でき、
文化や習慣に少なからず興味があるロゼリアにとって至福の状態であったろう。それが普通の心持ちの時であったなら。
 ミミロップが洋館を出ていってから数日、ずっともやもやした気分でロゼリアは過ごしていた。
食事をしている時も、エンペルトに文字を教えている時も、ドンカラスやビッパに映画やアニメの鑑賞会に無理矢理付き合わされている間も、
頭にはずっとハナダでの敗北やキュウコンの言葉が巡っている。
 このままのんべんだらりとしていていいのか。負けたままで、馬鹿にされたままでいいのか。――いいはずがない!
ロゼリアの心が奮い立つ。本を勢い良く閉じ、強い意志を胸にロゼリアはドンカラスの部屋へと向かった。

 ・

「それで、得物を使った戦い方を習いたい、と?」
 片眉を吊り上げてドンカラスはロゼリアを見やった。はい、と力強くロゼリアは頷く。
 ドンカラスはロゼリアの頭の先からつま先まで眺めて首を傾げた。
どこからどう見ても、自分が少し力を入れれば簡単に折れてしまいそうなほどにロゼリアの手足は貧弱に見える。
とてもそのような戦い方に向いているようには思えなかった。
「言っちゃあ悪いが向き不向きってのがポケモンにもありやすぜ。
そもそもおめえさんにゃ刃にできそうな鋭い爪も翼も、ヒレだって無いんじゃあねえですか?」
 ドンカラスの言葉に、ロゼリアは花の中から毒のトゲを伸ばしてみせた。
「自覚はしています。ですが、向いてないからといって逃げたくない。自分自身に負けたくないんです」
 混じり気の無い真剣な眼差しをロゼリアはドンカラスに向ける。しばらくの間、睨み合いのような状態が
続いたが、ついにはドンカラスは根負けした。
808名無しさん、君に決めた!:2008/12/12(金) 08:48:18 ID:???
「……本気のようで。わかりやしたよ。といっても、教えられるような奴がいたっけなあ。あっしも少しゃ心得はあるんだが空戦専門でして。
ザングールだかザンネックだったかは忘れたが、そいつは最近とんと見かけねえしな」
 ふーむ、と唸りながらドンカラスは思考を巡らす。一瞬、何か思いついたかのような素振りを見せたが、
すぐに浮かんだ考えを否定するようにドンカラスは首を軽く横に振るう。ロゼリアはそれを見逃しはしなかった。
「いるんですね、思い当たる方が」
「いやいや、違うんでさあ。あー、今、思いついた奴ぁちょいと問題があるっていうか、問題の塊っていうか……。
もうちょっと考えさせてくだせえ。頭をうんと捻ればもっとマシな奴が思いつくかも――」
 ドンカラスがそう言い掛けた時、玄関の方からドアを乱暴に蹴り付ける大きな音が響き、部屋がみしりと揺れる。
「最悪のタイミングで当人が来やがった……」
 苦々しくドンカラスは呟いた。

 ・

「はあ? こいつにオレの戦い方教えろって?」
 素っ頓狂な声を上げるマニューラに、ドンカラスは静かに頷く。
マニューラはちらりとロゼリアを見て小さく吹き出すように笑った。
「何の冗談だよ。モヤシがそのまま歩いてるような奴にできるわけねーだろ。
大体、オレがンなメンドクセーことタダで引き受けると思うのか?」
「おめえもそんな体格のいいがっしりした体付きじゃねえだろうが。その細っこい体で何倍も大きくて力の
強い獲物を狩る技と方法……おめえもちっちぇえ頃に少しは親父さんから習ってんだろ。一子相伝の暗殺拳じゃあるめえし、
ケチケチせずに教えてやりやがれってんだ。そうだな、今貯まってるおめえのツケを清算してやる。それで手をうちな」
 湧き起こる苛立ちを堪え、ドンカラスは交渉を始める。
「ツケの清算に加えてオレン十二のオボン八、だ」
「てめえ、どれだけウチでタダ飯食いやがったと……! オレン九、オボン五、これ以上は出せねえな」
「オレン十、オボン六。同盟をあちこちで結びやがったせいで狩れる対象が減ってこっちも飯が足りねえんだよ」
 負けじとマニューラも食い下がる。今にも怒りが爆発しそうな顔でドンカラスはぎりぎりとくちばしを噛み鳴らす。
その脇でおろおろとしながらロゼリアは二匹のやり取りを見守った。
809名無しさん、君に決めた!:2008/12/12(金) 08:50:18 ID:???
「――ああ、クソッタレ! 持っていきやがれ糞ネコがあ! その代わりくれぐれも大怪我させんじゃねえぞ」
「ヒャハ! いいぜ、せいぜい死なねー程度にかわいがってやる」
 木の実とロゼリアを袋に詰め、マニューラは帰っていく。
そのパンパンの袋を背負った後ろ姿を腹立たしく見送った後、ドンカラスは玄関を閉めた。
 部屋へと戻ろうとした時、洋館を気ままに漂うムウマージの姿がドンカラスの目に入る。
「おめえさんはお二方みてえに何かどこかに行きたい、強くなりたい、とか無いんですかい?」
 ドンカラスの言葉にムウマージはただ首を傾げる。聞いてもわからないか、とドンカラスは決まりが悪そうに自分の頭をばさばさと掻いた。
「んー、まあいいや。何かビデオでも見ますかい? ここの娯楽はそれくらいしかねえもんで」
「スプラッターえいががいいー!」
「どうせならもっと気分が晴れ晴れとするものにしてくれやしませんかね……」
810名無しさん、君に決めた!:2008/12/12(金) 12:59:34 ID:???
GJ!
811名無しさん、君に決めた!:2008/12/12(金) 13:21:12 ID:???
スプラッターwww
流石ゴーストだwww
GJ
812名無しさん、君に決めた!:2008/12/14(日) 02:16:51 ID:???
明日か明後日にでも続き書くぜ
813名無しさん、君に決めた!:2008/12/16(火) 23:56:15 ID:???
ごめん、ちょっと遅れそうだ
何とか明日中には投下する
814名無しさん、君に決めた!:2008/12/17(水) 10:44:28 ID:???
 長い間、袋の中で木の実と共に乱暴に揺さ振られた後、目的地に着いたのかようやく揺れが収り、ロゼリアは安堵する。
しかし、それも束の間、急に体の向きが逆さまになり、ゆさゆさと振り落とされて背中をしたたかに地面に打ち付けた。
背をさすりながら起き上がろうとするロゼリアに、更に追討ちするかのごとく木の実が雪崩のように降り注いで覆い被さる。
「出て来いテメーら! これが今日の戦利品だ」
 マニューラがそう叫ぶと幾つもの声と足音が集まってくるのを、ロゼリアは木の実の山に埋まりながら感じた。
「あら、しみったれの鳥公にしちゃ随分と気前がよかったわね。どんな手を使ったわけ?」
 その中の雌のものらしき声がマニューラに尋ねる。
「へっ、交渉の腕だよ、腕。メンドクセー条件が付いちまったけどな。しめてオレン十日分にオボン六日分。
一度に持ちきれなかったから、誰かまたあのボロ屋敷に取りに行きな。ボンクラが渋ーい顔して歓迎してくれるだろうぜ。
ま、そりゃさておき、とりあえず今あるのを分けて持ってけ。喧嘩すんじゃねーぞ」
 周りの声が尚一層騒がしくなり、ロゼリアの身にのしかかる重量はどんどんと軽くなっていった。
やっと自力で抜け出せそうだと思った矢先、不意に首根っ子の辺りを尖った爪に捕まれ、ロゼリアは引っ張り出される。
 木の実の山から外へ出た瞬間、ヒヤリとした空気がロゼリアの全身を包み込む。そこはキッサキのニューラ達の巣穴。
815名無しさん、君に決めた!:2008/12/17(水) 10:46:08 ID:???
 ロゼリアを掴み上げたニューラ――赤い方の耳の長さからして雄だろう――は怪訝な顔をしてロゼリアを見つめている。
「こ、こんにちは……」
 どうしていいのかもわからず、とりあえずロゼリアは手に吊り下げられながらも挨拶を試みた。
「おい、マニューラ。見るからに不味そうだがこれも食えんのか?」
 そうニューラにロゼリアを突き付けられ、マニューラは今やっとその存在を思い出したかのような顔をする。
「おーおー、そうだった。そいつの面倒見んのが条件ってやつなのさ。人質みてーなもんだから食うなよな。腹壊すぜ。
つーか前にも確かここに来たの見ただろーが。あのネズミちゃんと一緒によ」
「へーぇ。覚えてねえっつの」
 興味を無くしたのかニューラはロゼリアを放り投げ、木の実を抱えて自分の住みかへと帰っていく。
マニューラはうまく宙でロゼリアをキャッチし、傍らへと置いた。
「ほとんど全員居るようだし丁度いいや。オメーの事を他のニューラ共にも言っとかないとな。
オレが見てないところで知らずに料理されちまわねーようによ、ヒャハハ。――テメーら、注目!」
 号令をかけると、一斉にニューラ達はマニューラの方へ目を向けた。天井に吊されているレアコイルもじっと見下ろす。
「いいか、このおチビちゃんの顔をよーく覚えとけ。こいつは今日からしばらくウチで面倒見ることになっちまった大事な大事なお客サマだ。
腹が減りに減って、まかり間違って美味そうに見えたとしても、獲って食うんじゃねーぜ。……オメーからも何か言いな」
 ほれ、と背中を押され、ロゼリアは前に進み出る。ぎらぎらと光るニューラ達の鋭い目に内心びくつきながら、ロゼリアは口を開いた。
「どうも、皆さん。今日からお世話になるロゼリアと申します。どうかお手柔かに――」
「挨拶はもういいから何かやって見せろよ」
 壁を伝う螺旋状通路の階上に居るニューラの一匹が発した突飛すぎる申し出に、真意を測りかねてロゼリアは首をひねった。
「マニューラがわざわざつれてきたヤツだ。芸の一つや二つ絶対あるっつーの。なあ?」
 呼応して他のニューラ達も囃し立て始める。困り果てたロゼリアは助け船を求めてマニューラの顔を見やった。
816名無しさん、君に決めた!:2008/12/17(水) 10:48:09 ID:???
「いいんじゃねーの? ビシッと決めて顔覚えてもらいなよ。見ててやっから」
 縋ったワラにも突き放され、ロゼリアは途方に暮れる。その間もニューラ達は早くやれと急き立てた。
「……わかりました」
 ひとしきり悩んだ後、ロゼリアは心を決める。ニューラ達は途端に静まり返り、その様子を見守った。
ロゼリアは小さな葉っぱを一枚取出すと口元へとそっと当て、息を吹き込んだ。優しい旋律が紡がれ、洞窟内を流れる。
 しかし、肝心のニューラ達の反応は悪く、最初は黙って聞いていたが徐々に退屈そうな顔になっていき、
遂には野次を飛ばし始める。天井のレアコイルまでブーイングらしき電子音を鳴らした。
退くにも退けず頑張ってロゼリアも続けたが、見兼ねたマニューラは礫まで飛んでこない内にとロゼリアを退かした。
「その程度じゃなまっちょろいんだよ。オレ達相手にやるならもっとはめ外しな。オメーら、久しぶりにアレやんぞ!」
 待ってましたとばかりにニューラ達は歓声を上げる。数匹のニューラが無数に開いた巣穴の一つに入り、
中からガラクタを持ち出してくる。所々が錆付いた壊れかけのギター二本と、ヤカンや鍋を組み合わせたようなドラムらしき物体だ。
その内、ギターの一本を投げ渡されマニューラはそれを受け取った。
「レアコイル、カモン!」「ビビビ!」
 鎖を外して勢い良くレアコイルが降りてくると、マニューラはギターから伸びる線をレアコイルに差し込む。
爪で弦を引っ掻き始めるとと金切り声のごとき凶悪な音が響き、レアコイルがそれを更に増幅させてロゼリアの耳をつんざいた。
続いて一匹のニューラが棒切れでヤカンと鍋のドラムを乱暴に叩き始め、
更にもう一匹は地味ながら狂暴な低音を掻き鳴らしてロゼリアの耳を着実に攻めていく。
正に不協和音の集大成。たまらず地面に突っ伏し耳を塞ぐロゼリアをよそに、ニューラ達は熱狂し騒ぎだす。
「万雷の拍手をおくれ世の中のボケどもーってか! ヒャッハァーッ!」
 こんな所で果たして自分はうまくやっていけるのだろうか――ロゼリアの心は初日から深い不安に苛まれた。
817名無しさん、君に決めた!:2008/12/17(水) 10:50:32 ID:???

――

 繰り返される残虐な行いの数々。吹き出す血潮に弾ける目玉――そんな映画のワンシーンを、
まるでバラエティ番組を見ているかのようにけらけら笑いながら、お菓子をつまみつつムウマージは見入っている。
その横で、ドンカラスは食べ物に手を付ける気にならず半ばげっそりとして、画面とムウマージの半々を末恐ろしく感じながら眺めていた。
 最近太り気味のドンには良いダイエットだ、と一緒に見ているエンペルトは皮肉めいて言う。
「ねーねー。がめんのおくになにかいるよー?」
 何度目かわからないムウマージの言葉に、ドンカラスは深くため息を吐く。
「あっしゃもう驚き疲れやしたよ……。今度は何だ。ホッケーマスクの怪人か? それとも鋭い爪したオッサンですかい?」
「こんどはそうじゃなくってさー。じっさいのテレビのなかー?」
「分けの分からねえ怖い事言わねえでくだせえよ……」
「むー!」
 真剣に相手をしてくれないドンカラスにムウマージはむくれたが、
すぐにまた画面で盆踊りしている死霊達に夢中になり、テレビ自体に感じた違和感は忘れてしまった。
818名無しさん、君に決めた!:2008/12/17(水) 16:23:41 ID:???
GJ!
819名無しさん、君に決めた!:2008/12/19(金) 02:14:01 ID:???
そろそろピカチュウの方も進めないとな
明日にでも続き書くぜ
820名無しさん、君に決めた!:2008/12/21(日) 01:29:53 ID:???
明け方くらいまでには投下するよ
821名無しさん、君に決めた!:2008/12/21(日) 06:23:13 ID:???
 影に飲み込まれ視界が覆われたと思った次の瞬間には、まったく異なる場所に俺は佇んでいた。
墓の内部のようだったギラティナの棲み処とは打って変わり、静謐で澱み気の無い空気や磨き上げられた
乳白色の壁面と床板は神殿を思わせる。だが、その過ぎた潔癖さは、また違った気味の悪さがあった。

『意識はあるか』
 頭の中に直接ギラティナの声が語り掛けてくる。俺は心の中で頷いて返した。
『問題ないようだな。では早急に封印の解呪に向かってもらう』
 有無を言わせずギラティナは促す。だが、それに取り掛かる前に解消しておきたい疑問が幾つかあった。
ここがどういった場所なのか。ギラティナが支配する領域ではないということは容易く想像できる。
そして、懸念する強大な障害とは何なのか――ギラティナへ尋ねた。

『時が来れば話そう。だが、その前にお前にはやるべき事があるはず。そこから出口は見えるな?』
 はぐらかされたようで腑に落ちない思いはしながらも、光が差し込む出口らしきものを見つけ答える。
『外に出るとすぐに巨大な建造物が遥か遠方に臨めるはず。目指すべき地はそこだ。
道中、危険が迫った時、すぐに影に身を隠せ。影は我が力。お前の存在を完全に覆い隠すだろう』
 ギラティナに対し言い様のない疑念を少しずつ抱き始めつつも、今は従うしかなかった。
822名無しさん、君に決めた!:2008/12/21(日) 08:47:12 ID:???
GJ!
823名無しさん、君に決めた!:2008/12/22(月) 13:22:29 ID:???
GJ!
824名無しさん、君に決めた!:2008/12/23(火) 01:27:38 ID:???
明日か明後日にでも続き書くよ
825名無しさん、君に決めた!:2008/12/25(木) 10:11:45 ID:???

826名無しさん、君に決めた!:2008/12/26(金) 00:08:45 ID:???
明け方ぐらいに投下するぜ
827名無しさん、君に決めた!:2008/12/26(金) 05:23:51 ID:???
『剣はあくまで最終手段と思え。できうる限り他の方法で切り抜けよ。
失敗したその時は死以上の苦痛がもたらされることだろう。ゆめゆめ忘れることなかれ』
 暗闇に慣れた目を光から守りながら門をくぐり、外へと歩み出る。眩しさに顔を歪めながらゆっくりと手をどけ、
徐々に目を慣らしていった。そこに広がる景色は、自分達の世界とあまり変わりが無い。
高原のようで、大地には短い草が生い茂り、先程の建物内と同じ乳白色をした柱や石で組まれた簡素な
ゲートのようなものがあちらこちらに点在している。
それは想像していたものより随分と平和的な光景に俺の目には映った。どこに恐れるような危険があるというのだろうか。
 話に聞いた通りに遥か遠くの切り立った高台の上にに霞む巨大な神殿らしきものを見つけ、
目的地と進路を見定める。長い旅路となりそうだ。
 ちらちらと青空の向こうで反射するように輝く無数の光達が目に入り、見上げる。
時折、魚が泳ぐかのように移動しているようにも見えるが、一体何だろうか――。
『相も変わらず……。趣味の悪い世界だとは思わぬか?』
 ギラティナの領域も、他のことをとやかく言えるような世界では無いだろうと思ったが、伝わってしまわぬように努めた。
『直に真の姿が分かる。さあ、行け』
 急き立てられ、俺は再び歩を進め始めた。その時、空の光の一つがこちらの動きに僅かに反応を見せた気がし、
注意深く見なおすが、何も変化はないように思える。気のせいだったのだろうか。
828名無しさん、君に決めた!:2008/12/26(金) 05:25:10 ID:???

 ・

 歩けど歩けど、一向に神殿にたどり着ける気配はない。もう数時間は歩き続けただろうか。
目に見える神殿の全体像は徐々に大きくなっているため、着実に近づいて行っているのは間違いないのだろうが……。
幸い、不思議と腹は減らないため食料の心配は今のところ無いが、疲れは精神的なものを含めて否めない。
少し休憩しようとそびえ立つ柱の一本の傍に座り、一息をついた。ギラティナも黙認しているのか何も言わない。
 それにしても、不思議な材質の美しい柱だ。道中でも同じものを何度も見て気になってはいたが、まじまじと眺め新たな特異性に気付く。
乳白色だけでなく、時に極淡い桃色も帯びた奥行きがある輝きはまるで真珠――。魅入られたようになり、ふらふらと柱に手を触れた。
『たわけが! それに触れるでない!』
 ギラティナの声が頭の中で大きく響き、俺はびくりとして手を柱から離した。
柱はびりびりと振動し、周りの柱が音叉のように反響しだす。
『遅かったようだ。何度も、近寄るたびに柱には決して触れぬように忠告はしていたはずだが、
届いていなかったとは既に心が捕われていたか。奴らが来る。すぐにその場を離れて物影に身を隠せ』
 振動の波は空気を伝わって広がっていく。上空で点のごとく輝いていた光達が散らばり、その一つがぐんぐんとこちらに迫ってくる。
その正体は桃色の鱗をした細長い体系の巨大な魚だ。口先はダーツの矢のように鋭く尖っている。
 ――魚? 魚が、魚が宙を泳いでいる!
『決して手は出すな、奴らからは逃げることに徹しろ! 下手に危害を加えれば、さらなる“大物”を呼ばれかねん』
829名無しさん、君に決めた!:2008/12/26(金) 13:49:26 ID:???
GJ!
830名無しさん、君に決めた!:2008/12/28(日) 07:20:24 ID:???
明日にでも続き書くぜ
831名無しさん、君に決めた!:2008/12/30(火) 01:35:36 ID:???
 異様な状況ではあるが、驚き竦んでばかりはいられない。言われた通りに物影を探し周辺を見渡す。
『サクラビスか。あまり目も頭も良い方ではないが、油断はするな。
そうさな、あの場所に丁度良い場所があるではないか。行け』
 言葉と共に即座に頭の中に暗い祠のようなもののイメージとその位置が浮かび、そこに向かって俺は一目散に駆け出した。
柱の間を縫うようにして走りぬけ、少し開けた所に出る。祠まで後もう少しと言うところで、
背後から少し籠もったような甲高い泣き声が発せられる。
駆けながら振り向くと、先程のサクラビスが十メートル後方にまで迫り、今にも渦巻く水流をこちらに放とうとしていた。

『あれに捕まるでないぞ。抵抗できなくなった獲物に鋭い口を突き刺し、ゆっくりと生き血を啜るのが奴らの嗜みと聞く』
 他人事のような言い回しに苛立ちを覚えながらも、何とか祠までたどり着き、滑り込むようにして中に入り込む。
その瞬間、竜巻のごとく渦巻く水流が外を過ぎ去った。巻き込まれていれば血を吸われる迄もなく窒息死していたのではないかと、ぞっとする。
 俺の姿を見失ったのかサクラビスは祠の上空辺りをぐるぐると見回り始めた。
そして、とうとう入り口を見つけたのかこちらへと向かってくる。
これはまずいと真っ暗な祠の奥に進もうとするが、すぐに何か固い感触のものにぶつかり、尻餅をついてしまう。
恐る恐る見上げると、幾つもの大きな丸い目がぼんやりと輝いていた。
『ふーむ、先客が居たか。無礼を詫びても、そやつは許しはしまい』
832名無しさん、君に決めた!:2008/12/30(火) 01:37:23 ID:???
 外からはサクラビスが迫り、中にはさらなる敵――退路は完全に断たれた。光は尚一層輝き、内部を照らす。
奥に潜んでいたものは大きな顎をした蛇のような怪魚だった。幾つもの目だと思っていた光は体の模様だ。

『なあに、案ずるな。そのままじっとしていろ』
 ――何を考えている、このままおとなしく丸呑みにされろというのか? 冗談じゃあない。
 大きな顎を開き、怪魚はこちらを振り向く。こちらに牙を剥いて襲ってきた瞬間に、言い付けなど無視して電撃を見舞ってやろう。
しかし、怪魚は俺の姿などまったく見えていないかのように横を過ぎ去り、外のサクラビスに飛び掛かった。
俺が呆気にとられている中、二匹は激しく争いながら祠から遠退いていく。

『ハンテールの弱々しい光ごときで、我が加護はかき消せんよ』
 気付くと、俺の体にはいつの間にか色濃い影が外套のように纏わりついていた。
833名無しさん、君に決めた!:2008/12/30(火) 09:34:05 ID:???
GJ!
つか読者俺だけか?
834名無しさん、君に決めた!:2008/12/30(火) 09:56:34 ID:???
俺もいるよ
835名無しさん、君に決めた!:2008/12/30(火) 12:46:40 ID:???
俺もいるぜ
836名無しさん、君に決めた!:2008/12/30(火) 20:33:51 ID:???
俺もだ、普段はROM専だがいつも応援してます
837名無しさん、君に決めた!:2009/01/01(木) 02:27:36 ID:???
今年も書き手の内の一人として頑張るぜ
明日か明後日にでも続き書くよ
838名無しさん、君に決めた!:2009/01/01(木) 04:54:30 ID:???
明けましておめでとう
今年も書き手さんは頑張って、応援してます
839ピカチュウの運勢→ 【末吉】 :2009/01/01(木) 07:28:18 ID:???
あけおめ!
議論スレでネタ出すぐらいしかした事ないが、出来たら俺も書いてみようかな
840名無しさん、君に決めた!:2009/01/04(日) 00:20:30 ID:???
明け方か遅くても今日中には投下するぜ
841名無しさん、君に決めた!:2009/01/04(日) 03:14:38 ID:???
 安全を注意深く確認し、ゆっくりと祠から歩み出る。
外の光を浴びると、たちまち影の外套はかさぶたみたいにぼろぼろ体から剥がれ落ちて溶けてしまった。
粘液状になった切れ端達は意思を持っているかのように一つに集うと、そそくさと暗がりへと逃げ帰っていく。
『陽光を逆に侵食する程の力は今は出せん。この先、そうそう都合良く物影が見つかるとも限らん、先程のような失態はおかすなよ』

 平和的な世界などではないということは十分わかった。狂暴な魚が空飛ぶ異形の世界だ。
一体、どうなっているのか。ただの幻覚とも思えない。
『左様、幻覚などではない、あの魚共は確かに存在する。お前にとっては陸であっても、奴らにとっては水の中だ。
この世界は、幾つもの空間を重ねて、無理矢理一つの平面に仕立てているのだよ。一枚捲ればまったく別の環境だ』
 幾つもの空間が一つに? さっぱり意味が分からない。
『……言葉だけでは理解できぬだろうな。興味があるならば、戯れに実際に体験してみるがいい。
幾つか意図的に境界が薄くしてある地点がある。あの門をくぐってみろ』
 石組みのゲートの一つをくぐってみるように促され、怪訝に思いながらも近場にあるものに向かった。

 ゲートを潜り抜けた瞬間、砂塵が顔を吹き付け、足裏にサラサラとした砂の感覚が伝わる。
驚愕して辺りを見回すと、緑溢れる高原は、乾いた砂が吹き荒れる不毛の地に一変していた。
だが、神殿や柱等の建造物の位置関係は変わってはいない。
衣装を変えるかのように、景色だけが全くの別物と化している。
『垣間見て、少しは理解したか? ろくな世界ではない。一見して、どのような種族とも同じ地に住める理想郷に見えるかもしれん。
だが、実際は明確な住み分けができず、小競り合いが絶えないのだ。魚と鳥が空で争うなど何とも悪趣味だろう』
842名無しさん、君に決めた!:2009/01/04(日) 08:17:36 ID:???
GJ!
843名無しさん、君に決めた!:2009/01/04(日) 10:00:56 ID:???
GJ!
844名無しさん、君に決めた!:2009/01/04(日) 12:52:08 ID:???
GJ!
845名無しさん、君に決めた!:2009/01/06(火) 01:46:44 ID:???
明日か明後日に続き書くよ
846名無しさん、君に決めた!:2009/01/09(金) 00:38:41 ID:???
ごめん、ちょっと遅れそうだ
今日中には何とか投下する
847名無しさん、君に決めた!:2009/01/09(金) 17:31:23 ID:???

 ※

 平たい石の上で座禅を組み、ミミロップは深く目を閉じる。
だが、その集中力はすぐに途切れて煩悩まみれの妄想に耽り、つい口元が緩む。
「喝ッ!」
 その一声と共にビー玉程の気弾が放たれ、ミミロップの額でバチンと音を立てて弾けた。
「いたーッ!?」
 いささか大げさな声を上げてミミロップは額を押さえ、恨めしげに低く唸ってルカリオを見やる。
「ええい、そこまで痛がる程に強くやってはいないわ!
 まったく成長がみられない。本当にやる気はあるのか、やる気は! ……うう、頭が痛い」
 ルカリオの指導を受け始めてから数日経った。しかし、ミミロップに進歩は見られず、
寧ろ昔教えていた頃に比べて更に退化した腑抜けた態度にルカリオは随分と頭と胃を痛めていた。
 手合せの後もルカリオの希望でミミロップの監視役として残ったチャーレムも、呆れた顔でその様子を見守っている。

「ありますってー! それに、昔はできなかったこんなこともできるようになったじゃないですか。ほら、ぴゅー」
 頭を抱えるルカリオに、ミミロップは指先から水鉄砲のように弱々しい青い波動を出してみせる。
ルカリオは苛立たしげに片手でそれを振り払った。
「そんな小火も消せないような水の波動でなんになる!」
 再び喝を入れられ、ミミロップは大きく仰け反って倒れた。
そして泣きじゃくりながら――当然ながら泣き真似だが――起き上がる。
「だってこれ昔から退屈で苦手なんですもん。もっとズババーッと派手で楽に強くなる方法ないんですかー」
「無い。そんな方法があれば自分でやっているわ、愚か者めが。鈍りきって基礎の基礎まで満足に出来なくなっているお前が悪い。
波導は言わば気、心の力。清流のごとく心身を澄ませ、地道に鍛練を積むものだと何度も言っているだろう。
さあ、やり直せ! お前のような不肖の弟子を世に出しては、自分だけにでなく先祖の顔にまで泥を塗ることになる」
「ひーん……」
 ピカチュウの道のりと同じように、こちらも長く険しい――。
848名無しさん、君に決めた!:2009/01/10(土) 11:53:08 ID:???
GJ!
849名無しさん、君に決めた!:2009/01/10(土) 12:26:45 ID:???
GJ!
850名無しさん、君に決めた!:2009/01/12(月) 04:06:15 ID:???
明日か明後日にでも続き書くよ
851名無しさん、君に決めた!:2009/01/15(木) 00:17:34 ID:???
明け方くらいには投下するぜ
852名無しさん、君に決めた!:2009/01/15(木) 06:27:40 ID:???


 これが砂漠というものか。今まで生きてきて話には聞いたことがあっても直接経験した事の無い景色に感嘆を覚え、
半ば呆然となりながら暫し海岸とはまた違った砂の感触を楽しみながら歩んだ。
 アブソルもこのような気持ちで旅をしていたはず――早く助けてやらねばな。
 我に返り、気を引き締めなおす。とにかく、こんななれない環境を長距離歩くのは難儀すぎる。
早々に高原に戻りたいところだ。元来た方向へ向かおうと踵を返すと、
ゲートを挟んで遠方から数匹の魚がこちらへ迫っていることに気付く。
幸い、まだこちらには気付いていないようだ。だがゲートまで戻っていては見つかってしまうだろう。
しばらくはこのまま進むしかない。余計な好奇心が仇となってしまった。

 乾ききった細かい砂地を歩き続けるのは想像以上に体力を奪っていく。
そして定期的に風に乗って目と口に襲い来る砂が集中力を鈍らせ、気力を奪った。
 何度目かも分からない砂嵐の襲撃から目を守りながら進んでいると、急に片足が砂に沈み込んだ。
そのまま両足を取られてしまい、ずるずると下へと体が滑っていく。
見れば俺はすり鉢状となった深い窪みに滑り落ちていっている様で、止まろうと藻掻いても掴む所が無く、
むしろ藻掻けば藻掻く程に砂は流れ落ちて底へ底へと運ばれていく。
 ――これは、非常に嫌な予感がする。アリアドスというポケモンが獲物を捕らえる際に張る糸の罠は、
かかったが最期、獲物が抵抗すればする程にその身に糸が絡まり、窮地に陥れるのだと聞いたことがある。これもその類ではなかろうか。
 その時、底の砂が蠢き、何かが姿を現した。それはギザギザの亀裂が入った、大きな卵のような丸い物体だ。
その物体は表面に開いた目らしき黒い穴の奥で光る十字の瞳で滑り落ちてくる俺を確認すると、
嬉しそうに大きく亀裂を開き、ガチガチと噛み鳴らし始めた。
嫌な予感は的中していた――!
853名無しさん、君に決めた!:2009/01/15(木) 07:07:10 ID:???
GJ!
854名無しさん、君に決めた!:2009/01/17(土) 07:34:51 ID:???
明日か明後日に続き書くぜ
855名無しさん、君に決めた!:2009/01/20(火) 01:24:53 ID:???

 ※

 逃れようとする足に巨大な口に並ぶ鋭い牙が食い込む。
苦痛の悲鳴を上げる間もなく、そのまま瞬く間に体は下へと引きずり込まれていった。
「たべられたー! キャハハ」
 テレビだけが灯る暗い部屋で一匹、ムウマージは無邪気に笑う。
 ドンカラスはヤミカラス達を連れ立って夜の見回りに出掛け、エンペルトは自室へと帰ってしまったが、
ムウマージは飽きる事なく映画を見続けていた。傍らには山のように見終わったビデオが積まれている。
 映画も終盤、主人公らしき人間が巨大鮫の口内にボンベを押し込み、ライフルで狙いを定めた。
銃口が火を吹いた次の瞬間、ボンベが爆発し、鮫は木っ端微塵に吹き飛ぶ。
「あーあ、やられちゃった」
 退屈そうにムウマージはビデオを止め、次のビデオを探すが、好みに合うものが見つからない。
もう既に洋館にあるすべてのホラー映画は見終わってしまい、
残るのは任侠物や録画されたロボットアニメなどあまり興味の無いものばかりだった。
 ちぇ、と舌打ちしてムウマージはテレビの電源を落とす。しかし、スイッチは切れているにもかかわらず、
画面にはぼんやりと顔のようなものが映りこんで消えなかった。
ムウマージは首を傾げて電源のONとOFFを繰り返すが、いつまでもそれは消えようとしない。
 そこでムウマージは前にも感じていた違和感を思い出した。――やっぱりテレビの中に何かいる。
 波長を霊のそれに合わせ、ムウマージはテレビに顔を突っ込むと、狭い空間の隅でうとうとと眠る、
橙色をした小さなゴーストポケモンの姿を見つけた。
「きみ……だーれ?」

 この時、用をたしに目覚めたついでに様子を見に来たエンペルトは開けかけたドアの隙間からその一部始終を見ていたが、
部屋に入ることなくエンペルトはそのままそっとドアを閉めた。きっと自分は寝呆けているのだろう。
目をこすりながらエンペルトは自室へと帰った。
 これから洋館で巻き起こる数々の騒動の前触れとも知らず――。
856名無しさん、君に決めた!:2009/01/20(火) 03:08:40 ID:???
GJ!
857名無しさん、君に決めた!:2009/01/20(火) 11:06:50 ID:???
GJ!
858名無しさん、君に決めた!:2009/01/20(火) 18:42:30 ID:???
次週、「ロトム vs ムウマージ」
どちらが勝っても……洋館に未来はない!
859名無しさん、君に決めた!:2009/01/22(木) 02:59:40 ID:???
明日か明後日にでも続き書くぜ
860名無しさん、君に決めた!:2009/01/25(日) 00:17:40 ID:???
明け方くらいには投下するよ
861名無しさん、君に決めた!:2009/01/25(日) 05:58:33 ID:???

 藻掻くのをやめたところで少しずつ滑り落ちていくことには変わらず、
あのトラバサミのような顎に挟まれるまでの間が少し引き伸ばされるだけにすぎない。
『ナックラーの熱烈な歓迎を受けているようだな。親愛なる友としてでは無いのは言わずもがな、か』
「言っている場合か! この状況をどう切り抜ければいい!?」
『騒ぐな。砂の流れが早まるぞ。まだ奴に察知されたくはないが……こうなっては止むをえん。攻撃を許可する』
 今更な攻撃の許可がおりたはいいが、ろくに身動きも取れず圧倒的に不利な状況ということには変わらない。
底は徐々に、確実に迫っている。
 覚悟を決め、俺はナックラーへと電撃を放った。しかし、確実に直撃していたにも関わらず、
ナックラーは少し驚いたような素振りを見せただけで、ほとんど効いた様子は無い。
電流のほとんどは奴には伝わらず、地面へと散ってしまったようだ。
 中々滑り落ちてこない上に獲物の思わぬ反撃を受けて腹を立てたのか、
ナックラーは短い前足で砂を叩いて揺らしはじめ、流れ落ちる速度が早まってしまった。
 更に追い打ちをかけるように状況は悪化していく。聞き覚えのある甲高い声――
ここで足止めをされているうちに追い付いてきた、サクラビスの一匹が、上空からすぐそこにまで迫ってきていた。
 絶体絶命だ。サクラビスを電撃で撃退できたとしても、ナックラーには為す術がない。
『好機が来たというのに何を遊んでいる。お前の腕輪は何の為に付いているのだ』
 俺が引き出せる腕輪の力でどうにかできる状況とは思えない。奴らの頭に間抜けな花でも咲かせろとでもいうのか。
『我が力で補助をする。簡単なイメージでいい。草、蔓だ。魚に向けて放て』
 ええい、ままよと俺は腕輪に意識を集中させ、言われた通りに蔓をイメージしながら大きな力へ心の手を伸ばした。
腕輪は透き通った高い音を立て緑色に輝き、光から数本の太い蔓が伸びてサクラビスの胴へと巻き付く。
『蔓を引け! 決して離すなよ』
 ぐい、と力を込めて蔓を引いてやると、サクラビスはそれに条件反射的に抵抗して逃れようと逆方向へ泳ぎだす。
蔓を掴んだまま砂地を滑るように俺の体は引っ張られ、
逃すまいと食らい付いてきたナックラーの顎を寸での所でかわし、とうとう砂地獄から脱することができた。
862名無しさん、君に決めた!:2009/01/25(日) 08:41:42 ID:???
GJ!
863名無しさん、君に決めた!:2009/01/25(日) 17:21:12 ID:???
GJ!
864名無しさん、君に決めた!:2009/01/27(火) 02:23:25 ID:???
明日か明後日にでも続き書くよ
865名無しさん、君に決めた!:2009/01/29(木) 23:56:37 ID:???
ごめん、ちょっと遅れそうだ
明け方か遅くても明日中には投下する
866名無しさん、君に決めた!:2009/01/30(金) 08:07:47 ID:???
 ナックラーから逃れた後もサクラビスは絡んだ蔓を振り払おうと暴れるように泳ぎ続ける。
砂地を乱暴に引きずられ、時に叩きつけられながらも俺は蔓を離さなかった。
 この好機を逃すわけにはいかない。何とか動きを捕らえられている内に仕留めなければ。
身を隠せる場所が見当たらない今、逃してしまえば鳥以上に縦横無尽に宙を泳ぐ敵から逃げ切るのは難しく、
真っ向から相手にせざるを得ない。そうなれば苦戦は必至だ。
もたもた戦っている間に他の魚達も集まってきて袋叩きにされかねない。

 だが、こんな引きずられている状況では中々電撃の狙いは定まらん。もう少し距離を寄せることができれば――。
その時、俺の思いに呼応するように蔓が縮まり、引きずられていた体が少しだけ浮いたことに気付く。
蔓の伸縮程度なら今の俺でも操れるようだ。そうと分かればやることは一つ。
 思い切り縮め、と心の中で命じた途端、俺の体は勢い良く浮き上がり、サクラビスへと引き寄せられていく。
しかし、あまりに念じが強すぎたのか勢いがつきすぎ、蔓はゴム紐のようにしなって俺はサクラビスより高く跳ね上がる。
 叫び声を上げてしまいそうになるのを堪え、放り出されてしまわぬよう躍起になっている内に、
遂にサクラビスの背に取り付くことができた。サクラビスは振り落とそうと金切り声を上げて暴れるが、
奴の胴に巻き付いている蔓にしっかりと俺は身を固定し、
うるさくがなり立てる細長い口を轡のように縛り付けてそれを手綱代わりに掴んだ。
 もはやどんなに暴れられようとも振り落とされる気はしない。後は煮るなり焼くなりだ。
867名無しさん、君に決めた!:2009/01/30(金) 13:14:16 ID:???
GJ!
868名無しさん、君に決めた!:2009/02/01(日) 02:03:10 ID:???
明日か明後日にでも続き書くぜ
869名無しさん、君に決めた!:2009/02/04(水) 00:00:34 ID:???
明け方くらいに投下するよ
870名無しさん、君に決めた!:2009/02/04(水) 07:32:47 ID:???

 ※

 身を包む冷たい空気に震えながら、ロゼリアは洞窟の一室の隅に縮こまっていた。
スボミーであった時と比べて寒さに多少は強くなったとはいえ、
キッサキの外気よりは幾らかましだという程度のニューラ達の巣窟で寝起きをするには辛いものがある。
 強情を張らず、もう少し後先を考えればよかった。ふつふつと後悔の念がロゼリアの心に浮かぶ。
 体の芯まで凍えきりそうになっていた時、どさりと部屋の入り口の方で何か重い物を雑に落とす音が響く。
ロゼリアが見上げてみると、一匹の雄ニューラがしかめ面をして立っていた。
巣穴に来た時ロゼリアに一番ちょっかいを出してきたニューラだ。
 用件を尋ねる前に、ニューラは引き摺ってきた袋をぶつけるようにニューラはロゼリアに渡す。
「お荷物の荷物だってよ。木の実取りに行ったらついでに持たされて余計重かったっつの。あの糞カラスめ」
 やっとの思いで袋の下から這い出し、ロゼリアは袋を確認した。
中身は数冊の本とヤチェの実、そしてまだスボミーだった時にキッサキに行く際、
使っていたカプセル温室が入っている。少し小さいが、まだ何とか使うことができそうだ。
ドンカラスの気遣いにロゼリアは深く感激するばかりだった。
 部屋を出ていこうとするニューラに礼を言おうとロゼリアは顔を上げると、
ニューラが小脇に輝く石を抱えていることに気付く。それは前にロゼリアがミミロップから貰った石にとてもよく似ていた。
「それ、僕のものじゃあないですか……?」
 恐る恐るロゼリアは尋ねる。
「あん? これはそこらで拾ったんだっつーの。欲しけりゃ力付くで取ってみやがれ」
 ニューラは爪を長く伸ばして振り返り、声を荒げて凄む。その態度であれは自分の物だった石だとロゼリアは確信した。
しかし、ニューラの鋭い目付きと爪に体は竦み、動くことも言い返す事すらもできない。
そんなロゼリアの様子を見てニューラは小馬鹿にするように鼻を鳴らし、悠々と部屋を後にする。
 一匹になると、ロゼリアはふらふらと隅に寄り掛かり、しゃがみこんだ。
堪えようと幾ら口を噛み締めても、自分の腑甲斐なさ、悔しさに頬を伝うものが止まらなかった。
871名無しさん、君に決めた!:2009/02/04(水) 07:35:24 ID:???
 それから数時間が経った後、ロゼリアの様子を見にマニューラが部屋を訪れた。
入り口の脇の岩をコンコンとノックし、返事もない内にマニューラは普段どおりの陽気さで中へと入る。
「よぉー、元気にしてるか?」
「はい……大丈夫です」
 返事も弱く、うつむいたままでいるロゼリアを訝り、マニューラは近寄って顔を覗き込む。
「どーした? ホームシックにはまだ早いぜ、ヒャハハ」
 ロゼリアは慌てて顔を拭う。そして、勇気を振り絞って、マニューラに話すことにした。
「――あの野郎、新入りいびりなんてダッセーことやってやがんのか」
 経緯を聞き、マニューラは苛立たしげに低く唸る。
「うちの馬鹿が悪かったな。オメーの石は取り返してきてやる。ただこういうのは問題があってなー……」
 何かを言い掛けたがそれを止め、マニューラは誤魔化すように自分の後ろ頭を軽く掻く。
「何ですか?」
「んー、オレが取り返してキツく言ってやっても、オメーがなめられたまんまなのは変わんねー。
またオレが見てねぇ所で同じような事をされちまうんじゃねーかってな」
 確かに馬鹿にされたままでは、マニューラの言う通りまた同じ事が繰り返されるだろう。
 ――自分は強くなるためにここに来たのだ。あんな下っぱのニューラに負けていてはとても強くなんてなれない。
「……わかりました、自分の手で石は必ず取り返してみせます」
 ロゼリアは真っ向から戦う決意をする。自らの手で石を取り返し、あのニューラを見返してやるのだ、と。
「本気か? ……へー、頑張りなよ。ま、今日の所はゆっくり休むといいぜ、じゃーな」
 そっけない素振りでマニューラは部屋を出ていく。だが、心の内ではロゼリアに感心を覚えていた。
 ――少しは根性がある。適当にあしらってその内に帰すつもりだったが、少しくらいなら真面目に見てやってもいいかもな。
872名無しさん、君に決めた!:2009/02/04(水) 08:36:51 ID:???
GJ!
873名無しさん、君に決めた!:2009/02/06(金) 02:43:03 ID:???
明日明後日にでも続き書く
874名無しさん、君に決めた!:2009/02/08(日) 10:02:55 ID:???


 羽でグラスを器用に摘み、くちばしの端からちびちびとドンカラスはどこからかくすねた安ワインを流し入れる。
だが自室で一羽、それも心配の種だけが肴では酒も不味く感じられ、あまり進みはしなかった。
 ここ最近、洋館で立て続けに起こる様々な現象が部下達から知らされ、ドンカラスの頭を悩ませている。
 その一つが、洋館に住む者達の大勢が寝るたびにうなされる悪夢。それだけならまだしも、決まって全員が同じ内容の悪夢を見ており、
更には悪夢で見た怪物を現実の洋館でも見たなどという話さえ飛び交っている。
 そして、暴走する電化製品。洋館に元から有るものは人間が置き去りにしたまま長年ろくな手入れもされておらず、
他もゴミ捨て場から拾ってきたものが大半のためいつ壊れたとしても不思議ではないのだが、その壊れ方が明らかに普通ではなかった。
電子レンジを使おうとすれば突然炎を吹き出して料理ごと温められ、冷蔵庫は開けた途端に部屋中を凍り付かせるのだと言う。

 今日何度目かもわからないノックが部屋に響く。うんざりした顔でドンカラスはため息をもらした。
「ったく、鍵をかける暇もありゃしねえ。開いてるってんだ! 今度は何でえ?」
 ソファに座ったまま怒鳴りつけると、ゆっくりと扉は開かれた。
 扉が開かれた先に立っていたのは、全身に葉っぱが毛の代わりに張り付いた雪男のような物体だった。
部屋へと入り込むと、ぺた、ぺた、と水掻きのような湿った足音を立てながら、
腕を前に突き出し藻掻くようにしてふらふらとドンカラスに近寄ってくる。
 その見慣れぬ不気味な風貌に、ドンカラスは息をのみ身構えた。化け物を見たという部下達の話が脳裏をよぎる。
「やいやい、何者でえ! それ以上近付いたらぶっ飛ばしてやらあ!」
「ち、ちょっと待って。僕だポチャ。この葉っぱを取ってほしい」
 聞き覚えのある声で葉っぱの怪物は話す。葉っぱのせいでくぐもってはいるが、それは間違いなくエンペルトだった。
「おめえか……驚かせやがって」
875名無しさん、君に決めた!:2009/02/08(日) 10:05:48 ID:???

「――ふー、助かったポ……ゴホン、よ」
 剥がし終えた葉っぱの上に座り込み、エンペルトは安堵の息をついた。

「何やってんでえおめえは。ミノムッチにでもなりたかったんですかい」
「そんなわけないだろ。物置で芝刈り機に襲われたんだ。捜し物をしていて邪魔だったからどかそうとしたら、
いきなり芝刈り機が動きだしてすごい勢いで葉っぱを吹き付けられてこのざまだよ」
「今度は芝刈り機だってえ?」
「……ドン、やっぱり最近の洋館は変だ。ヤミカラス達の言う通り何かが住み着いたのかもしれない」

 初めは部下達から聞いていた話も半信半疑だったドンカラスも、
こんな冗談を言うとは思えないエンペルトまで被害にあったことで信じざるをえなかった。
「ううむ……ちょいと調べてみやすかね」
876名無しさん、君に決めた!:2009/02/08(日) 11:30:54 ID:???
GJ!
ロトム急に暴れ出したなwww
877:2009/02/09(月) 00:20:20 ID:5vB8xuck
ミノムッチw

つーかムーマージあれからどうなった!?
878名無しさん、君に決めた!:2009/02/11(水) 02:42:42 ID:???
明日か明後日にでも続き書くぜ
879名無しさん、君に決めた!:2009/02/14(土) 00:24:31 ID:???
ごめん、ちょっと遅れるorz
遅くても今日中には投下するぜ
880名無しさん、君に決めた!:2009/02/14(土) 07:37:40 ID:???
 早速、洋館内の調査に取り掛かろうとドンカラスはヤミカラス達を呼び付ける。
しかし、いくら待っても、何度ドンカラスが呼ぼうとも、一向にヤミカラス達は集まらない。
 結局、ドンカラスの目の前に揃ったのはたったの二羽だけだった。

「……他の奴らはどうしたんでぇ」
「その、怪異が収まるまで――あー、じゃなくて、暖かくなるまでしばらく別の地方に渡る、と」
 ドンカラスに睨まれ、縮こまりながらヤミカラスの片方が答える。
「逃げやがったな、あの野郎共……」
「じゃあ、俺達もここらで失礼をば」
 わなわなと怒りに震えるドンカラスを横目にヤミカラスはそそくさと逃げていく。
 だが、即座に二羽とも首根っ子を掴まれ、捕まえられてしまった。

「あっしらは渡り鳥じゃなくて留鳥だ。面倒な渡りをする必要はねぇよなあ、んん?
 それにワルはくだらない超常現象なんて信じねぇし、恐れねぇ。そうだろう、おい?」
 意地悪く笑いドンカラスはヤミカラスを睨め付ける。二羽はただ乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

「さぁさ、お供も増えたことだし、行きやすぜ。エンペルト」
「でも、正体のわからないものを相手にどうするんだ?」
「この世にただ不可思議なものなんてありゃしねえ。必ず種はあるし元凶はいるもんでさあ。
それを虱潰しに捜し出してとっちめりゃあっという間に解決だ」
 廊下を進みながら、ドンカラスは話し続ける。
「こんな悪質な嫌がらせをする奴で考えられるのは、一番に浮かぶのはマニューラでぇ。
奴なら忍者みてぇな身のこなしで消えるように物陰に潜めるし、手先が器用で小ずるい細工も大の得意だ」
 部屋の一つの前に辿り着くとドンカラスは立ち止まり、勢い良く扉を開ける。
そこはエンペルトが芝刈り機に襲われたという倉庫だ。
四羽がかりで部屋中を探してみても既にそれらしきものは無く、めぼしいものは見つかりはしなかった。

「何も居ないな。芝刈り機も見つからない。ドン、犯人はマニューラとは違うんじゃあないかな。
芝刈り機は結構大きくて重そうだったし、すぐにここから運びだして隠すのはいくらマニューラでも難しいと思う。
それに今はロゼリアの面倒を見てるんだろう?」
881名無しさん、君に決めた!:2009/02/14(土) 07:39:30 ID:???

「うむむ、かもしれねぇな。――そういや、おめえ、芝刈り機に襲われた時はここに何を探しに来てたんでぇ」
「新しいビデオがないか探しに来てたんだ。マージが退屈そうにしていたからさ」
「ん? そうだ、マージさんは今どこで何してる」
「そういえばここの所見かけないね」
 それを聞き、ドンカラスの顔が見る見る青ざめていく。
「不味いぞ。洋館はこんな状態で、しかもマージさんまで行方知らずなんて
ボスが帰ってきたら何を言われるか……一刻も早く見つけねえと!」

 その時、部屋の外でドスン、と大きな物音が響く。ドンカラス達は身動きを止め、口を閉ざした。
「……おい、おめぇちょっと様子見て来い」
 数時間にも感じるような数分の不気味な程の静寂の後、ドンカラスはヤミカラスの一羽に命じる。
当然、ヤミカラスは嫌がったが、無言の圧力を受けてしぶしぶ様子を見に部屋を出ていった。
 直後、悲鳴とそれを掻き消すように大量の水を吹き出すような音が廊下から響く。
 聞き付けたドンカラス達が一斉に部屋を飛び出すと、廊下は天井までびしょ濡れになっており、
ヤミカラスは壁ぎわでぐったりとして倒れていた。
駆け寄ってみるとヤミカラスにまだ息はあり、うわごとのように“洗濯機が”と繰り返し呟いている。

「ちぃっ、のびちまってるな。洗濯機がどうしたってんでぇ」
「ドン様……あ、あれ」
 ヤミカラスのもう一羽が廊下の向こう側を羽で指し示し、顔面蒼白でガクガクと震えだす。
882名無しさん、君に決めた!:2009/02/14(土) 07:41:47 ID:???

ドンカラスとエンペルトは指された方を見てみるが、その先には既に何も居ない。
「何だ? 誰もいないじゃねぇですかい」
「嘘なんかじゃない、確かにいたんだ! 夢でも見た、皮のマスクを被って刃物を持った怪人だ!
俺もうこんな館嫌だ! 一足先にさいなら、ドン様、どうかご無事でー!」
 ドンカラスの脇を擦り抜け、止める暇もなくあっという間にヤミカラスは逃げていってしまった。
「あ、おい! ……クソッタレ」

 そんなやり取りを面白可笑しく覗き見る二つの影があった。
片方は濃い紫色の影で、もう片方は橙色をした小さな影だ。
「きゃはは、こわがってるこわがってるー。さすがだねー、きみのちからー」
「いやいや、あんたの悪夢と変装もなかなかのもんだよ。ホントあんたには感謝してもしきれないや。
うぷぷ、あの前々からいけすかなかったカラスが困ってる姿……歌でも歌いたいような実にスガスガしい気分!」

 ドンカラス達の知らないところで更なる危機が洋館へと迫る。
 人間の少女二人組が、恐る恐ると言った様子で洋館へとやって来ようとしていた。
「そんな後ろに隠れないでくださいよ、ナタネさん」
「あ、あたしはヒカリちゃんの背後を守ってあげてるの! 別に隠れてるってわけじゃないわ」
「もう……」
883名無しさん、君に決めた!:2009/02/14(土) 07:58:24 ID:???
GJ!
884名無しさん、君に決めた!:2009/02/14(土) 09:04:50 ID:???
GJ!
マージもグルかよwww
885名無しさん、君に決めた!:2009/02/14(土) 11:02:25 ID:???
( ;∀;)イイハナシダナー
886名無しさん、君に決めた!:2009/02/14(土) 12:02:46 ID:???
ロトムクソワロタww

GJ
887名無しさん、君に決めた!:2009/02/16(月) 01:23:29 ID:???
明日か明後日にでも続き書くよ
888名無しさん、君に決めた!:2009/02/19(木) 00:02:30 ID:???
明け方くらいに投下するぜ
889名無しさん、君に決めた!:2009/02/19(木) 05:56:21 ID:???

「腰抜けのヤミカラス共め、帰ってきたらタダじゃおかねえ」
 苛々とした様子でドンカラスは壁を蹴りつけ舌を打つ。
その横でエンペルトは何か心に引っ掛かるものを感じ、頭をめぐらせていた。
「なあ、ドン。さっき、ヤミカラスは皮のマスクを被った怪人がどうとか言っていたよな?」
「それがどうかしたってのか? そんなもん出任せの逃げ出す口実に決まってまさあ」
「そんな怪物を何か他でも見たような気がするんだ。夢の中でじゃあない。
他のヤミカラス達が見たという怪物の話も、よくよく思い出せばそうだ」
「おいおい、おめえさんまで何言ってやがんでえ。
洋館でまともに動けるのはもうあっしらだけなんだ。もっとしっかりしてくだせえよ、ったく」
「だけど――」
「まだ近くに廊下中をずぶ濡れにしやがったド阿呆がいるはずだ。早くこてんぱんにのしてやらねえと気がすみませんや」
 エンペルトの話をろくに聞く態度も見せず、ドンカラスはさっさと先に行ってしまう。
腑に落ちない思いをしながらも、エンペルトはその後に続いていった。

 次に二羽が調べに向かったのは、ビデオを見るのに使っていたテレビが置かれている部屋だ。
 大量のビデオとそのパッケージが散らかっている以外には特に何も無く、
灰色の砂嵐を映すテレビがむなしくザーザーと音を立てていた。
890名無しさん、君に決めた!:2009/02/19(木) 05:58:26 ID:???

「やっぱりマージはいないね」
 部屋を見渡してエンペルトは言う。そして何となく足元に転がるパッケージの一つを拾い上げ、表紙を眺めた。
その瞬間、エンペルトは抱いていた疑問が解けたかのような短い声を上げる。
 ドンカラスの怪訝そうな顔に気付き、エンペルトはパッケージをドンカラスに手渡した。
「それを見てくれ」
 表紙には、不気味な皮マスクを被った男が血みどろのナイフを持っている姿が描かれている。
「ヤミカラス達が見たと言っていた怪物はみんな、僕達がマージと一緒にここで見たホラー映画に出てくる奴らに似ているんだよ」
「ビデオから化けもんが抜け出てきたとでも言いたいんですかい? くっだらねえ」
「そこまでは言っていない。だけど、ヤミカラス達はビデオを見てはいないはずなのに、
話に出る怪物の姿はここにあるホラー映画のどれかと必ず共通点がある。そんな偶然があるだろうか?
――ドン、次に怪物が出てきたらちょっと僕に考えがある。その前に食料庫に行こう。怪物はきっとシーヤの実が好きなはずさ」
891名無しさん、君に決めた!:2009/02/19(木) 07:17:53 ID:???
GJ!
892名無しさん、君に決めた!:2009/02/21(土) 04:15:57 ID:???
明日か明後日にでも続き書く
893名無しさん、君に決めた!:2009/02/24(火) 00:20:19 ID:???
遅くなってすまん、明け方くらいには投下するぜ
894名無しさん、君に決めた!:2009/02/24(火) 06:09:42 ID:???
 薄暗い森に聳える洋館へと向かう二人の少女の頭上を、不意に黒い影が羽音を立てて過ぎ去った。
「きゃあ!」
 少女の一人が大げさな悲鳴を上げ、その場に頭を抱えて蹲る。その姿をもう一人は呆れたように見つめた。

「大丈夫、ただのヤミカラスですよ。ナタネさん」
 ナタネと呼ばれた少女は恐る恐る顔を上げ辺りを確認すると、取り繕うように威勢よく立ち上がった。
「わかってる、わかってる。今のは、ただちょっと転びそうになっただけだから平気よ!
さーさー、あたしはヒカリちゃんの背中を守ってるから安心して進んでー」
 そう言うとナタネは、もう一人の少女――ヒカリの背中へ回り込んで洋館の方に体を向けさせた。
 心の中でため息をつき、ヒカリは再び歩き始める。そして、その背にナタネは背後霊のようにしがみ付いて付いて行く。
ずっとこのような調子で、二人は進んでいた。

 発端は、ハクタイの森に生息するポケモンの調査に訪れたヒカリが、
何やら困った様子で森の奥を眺めているナタネの姿を偶然見つけたことだった。
ヒカリが事情を尋ねてみると、彼女はハクタイシティの住人の要請で、森に建つ捨てられた洋館の探索に訪れたのだと語った。
895名無しさん、君に決めた!:2009/02/24(火) 06:11:29 ID:???
 元々、幽霊が出るといわくつきの館ではあったが、最近になって館からの騒音や、
館から飛び出していく沢山のヤミカラス達を見たなどの不可解な情報が相次ぎ、
ハクタイシティのジムリーダーであるナタネが派遣されたという次第だ。
 ここで会ったのも何かの縁だとナタネに協力を頼まれ、ヒカリは快く承諾した。
外見からして不気味な洋館へ行くことに抵抗はあったものの、
ジムリーダーを務める程の手練のトレーナーであるナタネと一緒であれば大丈夫だろうと踏んだのだ。

 しかし、実際はこの体たらく。ヒカリは困った人を放っては置けない自分の質を恨んだ。
確かにナタネは凄腕のトレーナーに間違いない。ただ、洋館を探索するにあたって彼女は大きな弱点を抱えていたのだ。それは――。
 二人の横で今度は草むらが、がさりと音を立てて揺れる。
「いやー! お化けー!?」
 ――大のお化け嫌い。

「ケムッソですってば……ほら。大丈夫だから行きましょ、ね」
 初めは多少の恐れがあったヒカリも、自分がしっかりしなければという責任感が
いつのまにか恐怖に打ち勝ち、ほとんど怖くは無くなっていた。
896名無しさん、君に決めた!:2009/02/24(火) 09:44:38 ID:???
GJ!
897名無しさん、君に決めた!:2009/02/26(木) 04:10:29 ID:???
明日か明後日にでも続き書くよ
898名無しさん、君に決めた!:2009/03/01(日) 02:44:45 ID:???

「こんなので本当にうまくいくんですかい?」
 食堂の机にシーヤの実を盛り付けるエンペルトに、ドンカラスは疑った目を向けた。
「たぶんね。それよりそれ、ちゃんと持っててくれよ」
 エンペルトに指示され、不服げにドンカラスは足元の投網を拾い上げる。
「よし、後は少しの間、物陰に隠れていよう。先客がいないことを一応しっかり確認してからね」

 二羽は食堂のキッチンに身を隠し、注意深く机と入り口の方を見張った。
数分後、大きな影がのっそりと入り口をくぐり、食堂に姿を現す。
それはヤミカラスが言っていた通りの姿をした、皮マスクとぼろぼろの小汚い衣服を纏った怪人だった。
化け物を信じていなかったドンカラスも、思わず息を呑んでその姿を見つめる。
 体重を感じさせないまるで滑るような動きで怪人はシーヤの実が置かれた机へと近寄っていく。
実の一つへと怪人がそっと手を伸ばした瞬間、「今だ!」とエンペルトはドンカラスに声をかける。
二羽により素早く網が投げ掛けられ、逃げる暇もなく怪人は網に捕われた。

「こいつめ! 散々、あっしの館を荒らしてくれやがって!」
「ドン、ちょっと待って!」
 エンペルトが止めるのを押し退け、ドンカラスは藻掻く怪人に飛び掛かり押さえ込みにかかる。が、
飛び乗った途端に怪人は綿の抜かれたぬいぐるみのように潰れてしまった。
ドンカラスが呆気にとられている内に、網の間から濃い紫色をした布のようなものが擦り抜け、
こっそりと逃げていこうとするのをエンペルトは見逃さなかった。
「やれやれ。マージ、お腹すいてるんだろ? イタズラは休んで、食べていきなよ」
 ぴくり、と紫色の布はエンペルトの言葉に反応を見せ、動きを止める。
「ちぇ、ばれちゃってたかー」
 諦めたように呟いて布は宙でぐるりとまとまり、一瞬の内にムウマージへと姿を変えた。
「へ……犯人はマージさん?」
 素っ頓狂な調子でドンカラスは声を漏らした。

899名無しさん、君に決めた!:2009/03/01(日) 03:01:53 ID:???
「――まったく、マージさんだからあまり強くは怒らねえが、今後はこういうイタズラは無しで頼みやすぜ」
「はいはーい」
 美味しそうに木の実を頬張るムウマージを見ながら、ドンカラスは苛立ちを極力抑えて言う。
行き場を無くしたこの怒りをどこでどう晴らそうか頭を巡らせ、苛々とした様子で食堂を出ていった。

「後、電化製品へのイタズラもだめだよ。危ないし、みんな困ってるから」
「それはマージだけじゃできないイタズラだよー」
「ん、どういことだい?」
「えーっとねー……あたらしいおともだち」
 エンペルトは首を捻る。洋館で起きた異変は、すべてムウマージの仕業だとエンペルトは思い込んでいたのだ。
 ――まだばらばらに行動をとるのは不味い!
 瞬時に判断し、エンペルトはドンカラスを呼び止めに向かった。

「んぎゃあーッ!?」
 食堂のすぐ外からドンカラスの叫び声と、屋内にもかかわらず強い風が食堂に吹き込んできた。
「遅かったポチャ……」
 息をきらせた様子でドンカラスが食堂へと駆け込んでくる。
「畜生、暴れ扇風機だ! マージぃ! あれを止めやがりなせえ!」
 その頭は、帽子型の羽毛のてっぺんだけが刈りとられ、河童のようになっていた。
「きゃはは、へんなあたまー」
 それを見てムウマージはけらけらと笑い、エンペルトも思わず吹き出しそうになるのを口を押さえて堪える。
 二匹の様子を怪訝に思ったドンカラスは、恐る恐る自分の頭を触ってみた。
そしてその意味に気付き、先程より大きな叫び声が洋館を揺るがした。
900名無しさん、君に決めた!:2009/03/01(日) 09:10:47 ID:???
GJ!
901名無しさん、君に決めた!:2009/03/01(日) 10:16:10 ID:???
( ;∀;)イイハナシダナー
902名無しさん、君に決めた!:2009/03/03(火) 06:21:48 ID:???
明日か明後日にでも続き書くよ
903名無しさん、君に決めた!:2009/03/06(金) 02:43:40 ID:???

「さあて、どう料理してやりやしょうかねぇ」
 古ぼけた扇風機を足で乱暴に掴み、ドンカラスは勝ち誇ったように見下ろしながら言い放つ。
はたから見れば気が触れて物に当たっているようにしか見えないが、ドンカラスの頭は怒りに満ちてはいてもまだ正常だった。
 爪で絞めあげられ、扇風機のモーターが唸る。
スイッチが入っていないどころか、電源コードが繋がれてさえいないというのにだ。
見るとモーターには不思議な文様が描かれた白い札が張り付けられている。
それは『清めの札』と呼ばれる、ポケモン達――特にゴーストポケモン――が嫌う札だった。
「てめぇらがこれを嫌いなのはよぉく知ってるからなぁ。
一時期ゴースト共を住まわせてやっていた時に、この辛気臭え紙っぺらにびびってるのを見たんでぇ」
 扇風機を踏み付けたまま、ドンカラスはまだ数枚ある札をちらつかせて見せる。
「んで、あのデブゴーストはあっしらを追い出して、またここに住み着くことを狙ってやがるんだろうな。
おめぇはその尖兵ってわけだ? 本隊はいつ来やがる? 規模は?」
「そんなの知らねーやい! あのデブには置いてけぼり食らって頭きてんだ。もうあんなのとは何の関係もねーや!」
 悔しげに唸るだけだったモーターが、今度は確かに声と聞き取れる音を発してみせた。
扇風機はただの扇風機ではなく、ゴーストポケモンがとり憑いているのだ。
その名はロトム。電化製品に入り込み自在に操る特殊な能力で、洋館の電化製品を暴走させた犯人である。

 ドンカラスが食堂へと逃げ込んできた後、すぐにそれを追って来たロトムであったが、
ドンカラスとエンペルトの二羽がかりで捕らえられてしまった。
逃げだそうにも中々隙はなく、そして既に捕まっている様子の共犯者であるムウマージを見捨てる事も心情的にできず、
そうこうしている内に、どこからかドンカラスが持ってきた清めの札を張られてしまい、完全に逃げ道を断たれたのだ。
904名無しさん、君に決めた!:2009/03/06(金) 02:45:54 ID:???

「……あんまりマージのおともだちをいじめないで」
 しょげた様子でムウマージは呟く。ドンカラスはすぐさまムウマージを睨み付け、
頭に巻いたスカーフを取って、平たくなってしまった帽子のてっぺんを見せ付けた。
「いじめてんじゃあねぇ、お仕置きしてんだ! あっしの自慢の頭をハスボーみてぇにしてくれた名美容師にな。
くそっ、また生え揃うのにどのくれぇかかることやら……。特にマニューラには絶対知られちゃならねぇ。
あの糞ネコに見られたが最後、死ぬまで……いや、末代まで語り継いで笑い種にしやがるにちげえねぇぜ」
 足元から微かに漏れる笑い声に気付き、ドンカラスは叩き付けるように札を更に一枚、扇風機に張りつける。
「笑っていられる立場じゃあねぇだろ」
「うわあああ、む、むず痒さが増して体中がちくちくしてきた!
もう謝るから勘弁してくれよ! 本当にゲンガーのデブとは関係ないんだ! 今回のイタズラは自分で考えたことさ」
「マージがやったこともか?」
「ああ、オイラがマージさんにやらせたんだよ!」
 はっとした顔をしてムウマージはロトムを見る。そしてムウマージはドンカラスに何かを言おうとしたが、
扇風機の首がそれを思い止まらせるように僅かに横に揺れた。
 ロトムはムウマージに恩義を感じていた。忘れさられ置き去りにされたことに気付かず、
ロトムは狭いテレビの中で仲間を待ち続けていた。しかし、いくら待っても仲間達は現れず、
それどころか洋館には見知らぬポケモン達がどんどんやってきて住み着いていく。
出るに出られない軟禁状態に陥ってしまい、不安に押し潰されてしまいそうな所で、ムウマージが現れて外へ連れ出してくれたのだ。
 今回のイタズラをはじめに思いついたのはムウマージだったが、ロトムはそれを庇っていた。
 ――ほんとうだったらマージももっとおこられなきゃいけないのに。あとでロトムにあやまらなきゃ……。
 その時、玄関から扉がゆっくり開かれる音と、どこかおどおどした声が響いてくる。
「ご、ごめんくださーい! 誰か居ますかー?」
 年若い人間の少女の声だった。
905名無しさん、君に決めた!:2009/03/06(金) 10:52:12 ID:???
GJ!ついに御法度かwww
906名無しさん、君に決めた!:2009/03/08(日) 02:17:15 ID:???
明日明後日にでも続き書くぜ
907名無しさん、君に決めた!:2009/03/11(水) 01:10:27 ID:???
ごめん、ちょっと遅れそうだ
遅くても今日中には投下するぜ
908名無しさん、君に決めた!:2009/03/11(水) 08:17:34 ID:???

 ドンカラス達は示し合わせたかのように息を潜め、ドンカラスが玄関の方をこっそりと覗き込んだ。
そこには確かに人間の少女二人の姿があった。二人とも腰のホルダーに幾つかのモンスターボールが取り付けられており、
少女達がポケモントレーナーであるということが容易に知れる。

 ドンカラスは戦慄した。それは怒り狂うケンタウロスの群れよりも、
下手をすれば更に質が悪いかもしれない外敵の訪れだった。

 ドンカラスが住み着いてから今まで、洋館に人間の侵入を許した事はほとんど無かった。
捨てられた薄汚い不気味な洋館に用がある者などいないし、極稀に物好きな人間がやってこようとしても、
大抵は洋館までたどり着く前にヤミカラス達が威嚇して追い払ってしまう。
ゲンガー達がまだ住んでいた頃に一度入り込まれたが、ゴースト達の手厚いもてなしに怯えてすぐに逃げ帰っていった。
あまり平和的ではないが、一応は双方に血の流れない方法で洋館の平穏は守られてきた。
もしも一線を越えて人間に大怪我をさせたりしてしまえば洋館は危険視され、
瞬く間に他の人間達が押し寄せてきて潰されてしまうであろうことをポケモン達は知っている。

 今、洋館にはヤミカラス達もゲンガー達もいない上、相手はポケモントレーナーだ。
幾ら少女とはいえ決して侮れない存在が、それも二人。自分とエンペルトだけでどう追い払えばいいのか――。
「なー、手伝ってやってもいいぞ」
 ドンカラスの心を見透かしたように、ロトムは潜めた声で言う。
「オイラだってゴースト、驚かせるプロだ。現にカラス共も逃げてっただろー」
 疑った目を向けるドンカラスにロトムはそう言葉を続けた。
「……本当だな?」
「信じろよー。四の五の言っていられる場合じゃないだろ」
 完全に信用することはできなかったが、今のドンカラスはわらにも縋り、猫の手でも借りたい思いだった。
扇風機に貼られた札をドンカラスが剥がすと、モーターから球根のような形をした橙色の小さなゴーストが飛び出す。
「ふー、助かった。さー、あの人間共をどうやって恐がらせてやろっかなー、ぷぷ」
909名無しさん、君に決めた!:2009/03/11(水) 13:21:26 ID:???
GJ!
910名無しさん、君に決めた!:2009/03/11(水) 18:00:21 ID:???
GJだがケンタロスじゃないか?
911名無しさん、君に決めた!:2009/03/12(木) 07:17:39 ID:???
あ、ごめんミスってたorz

×ケンタウロス
○ケンタロス

だな
912名無しさん、君に決めた!:2009/03/13(金) 02:55:46 ID:???
明日か明後日にでも続き書くよ
913名無しさん、君に決めた!:2009/03/16(月) 02:17:22 ID:???
明け方くらいに投下するぜ
914名無しさん、君に決めた!:2009/03/16(月) 06:59:19 ID:???

 洋館の目前まで辿り着いた時、さしものヒカリもその恐ろしげな外観に思わず息をのんだ。
朽ちかけた外壁はまるで魚の鱗のように爛れ、ぼんやりと光を反射する曇った窓ガラスが濁った大きな目みたいに見えた。
不用意に近づけば、あのささくれだったドアが大口を開けて、
自分達をぺろりと飲み込んでしまうんじゃあないか――そんな嫌な想像をしてしまう。
 だがヒカリは背にのしかかる頼りない重さを思い出す。
数分程前に洋館の方から響いてきた大きな鳴き声に驚いてナタネはますます竦み上がり、
もはやヒカリの背に半ば負ぶさるような形となっていた。
ここで自分まで恐がってしまったらだめだ。ヒカリは嫌な想像を振り払い、心を奮い立たせた。

「ナタネさん、着きましたよ。くっついたままだと、もしもの時にポケモンを出しにくいからもう少し離れましょ」
「う……つ、着いちゃった? じゃなかった、やっと着いたのね! 周りには何もいないよね? 例えば……お化けとか」
「大丈夫ですよ」
「そ! あ、いや、ただちょっと聞いてみただけだからね。お化けが怖いとかじゃないわ」
「はいはい、わかってます」
 ナタネはヒカリの背から顔を上げ、数歩離れる。
「さー! さっそく洋館の調査を開……開始……」
 胸を張って元気よく宣言するつもりだったナタネだが、
間近で見る洋館の姿が目に入った途端に笑顔が引きつり、言葉は尻すぼみになってしまう。
「……じゃあ、わたしが先頭で行きますね」
 ヒカリは気付かない振りをするのが優しさだと思い、そっと先んじてドアノブに手をかけた。
慎重に力を込めて押すと、ドアは軋みながらゆっくりと開いていく。
 玄関をくぐるとそこは二階への吹き抜けがある広いエントランスホールとなっていた。
薄暗い内部は確かに所々が痛んで汚れているが、何年も誰も住んでいない廃墟の割りには、
思っていたほどひどい状態では無いとヒカリは感じた。
「ご、ごめんくださーい! 誰か居ますかー?」
 もしかしたらまだ誰かがこっそり住んでいるのかもしれない。そう考え、ヒカリは念のため呼び掛けてみることにした。
しかし、洋館は不気味に静まり返るばかりで返事はない。
 諦めかけたその時、微かな物音が正面奥の部屋から聞こえた。
915名無しさん、君に決めた!:2009/03/16(月) 11:19:23 ID:???
GJ!
916名無しさん、君に決めた!:2009/03/18(水) 04:37:43 ID:???
明日明後日にでも続き書くよ
917名無しさん、君に決めた!:2009/03/21(土) 03:04:57 ID:???
ごめん、遅れそうだorz
今日中か遅くても明日の深夜までにはなんとか投下するぜ
918名無しさん、君に決めた!:2009/03/22(日) 00:22:35 ID:???
「そこに誰か居るの……?」
 正面奥の部屋に向かってヒカリは声をかけてみる。
すると、返事の代わりとばかりに再び小さな物音が立ったのをヒカリの耳が捉えた。
 何かが隠れているんだろうか。それが人間であれば、廃墟に勝手に住み着いてはいけないと注意しなければならない。
ポケモンだったならば、おとなしい子ならそっとしておいてあげればいい。
危害を加えてくるような凶暴な奴や、本当に噂どおりの化け物や幽霊だった場合は――
もしもの時を考え、ヒカリは予め自分のポケモンを護衛に出しておくことにした。
 腰のホルダーからモンスターボールを一つ取り外すと、彼女はそれを軽く放り投げる。
宙でボールは開き、その中から光と共に飛び出したのは、エンペルトを一回り小さくしたようなポケモンだった。
「危なくなったら守ってね、ポッタイシ」
 ポッタイシと呼ばれたそのポケモンは、ヒカリの呼び掛けに一鳴きして応えた。
 横でナタネも同じようにしてポケモンを繰り出す。藍色の丸い体をしていて、
両手と頭の上にボンボンのように白い綿毛を生やした、ワタッコというポケモンだ。

 とりあえずは物音がした奥の部屋を調べてみようと、ヒカリ達は向かった。
部屋の入り口脇に置かれた見知らぬモンスターをかたどった石像が、
何だか睨んでいるようで今にも動きだしそうな気がしてきて、少し怯えながらその横を通り抜けた。
919名無しさん、君に決めた!:2009/03/22(日) 00:25:18 ID:???
 そこは人が住んでいた頃は食堂として使われていた部屋のようだった。
中央には大きくて長いテーブルが鎮座し、幾つもの椅子がそれに沿って並んでいる。
テーブルの上に敷かれた、元々は純白であったろう黄ばんだテーブルクロスには、
何の物ともわからない沢山の染みが不気味な模様を描いていた。
 その染みの一つに、付いたばかりのような真新しいものがあった。
そしてそのすぐ下に木の実の食いカスが散らばっていることに気付き、
ヒカリはハンカチ越しに恐る恐る欠片の一つを拾い上げてみる。
皮の色と独特の渋い匂いから、それはシーヤの実ではないかとナタネは推測した。
 これはつい先程までここで誰かがここでシーヤの実を食べていたということになる。
何かがこの洋館に潜んでいる。それは確信へと変わった。
 ミシリ――その時、かすかに部屋の天井が軋むような音を立て、ヒカリ達は息をのんで見上げる。
そこには何も居ないはずなのに、コンッ、コンッと今度は今度は天井を直にノックするような音が続けて鳴りはじめる。
ラップ音はその後も激しさを増して部屋中を駆け巡り、ヒカリ達は恐怖のあまり目を瞑り、耳を塞いでしゃがみこむ。
 その隙に、いくつかの影が食堂を抜け出していったことにヒカリ達は気付くべきだった。
920名無しさん、君に決めた!:2009/03/23(月) 20:25:54 ID:???
最近初めから読み始めたが、結構面白いな
921名無しさん、君に決めた!:2009/03/24(火) 03:34:34 ID:???
明日か明後日にでも続き書くぜ
922名無しさん、君に決めた!:2009/03/27(金) 00:23:50 ID:???

 館と自分の頭を散々にされた欝憤は、あの人間共をこっぴどく驚かすことで晴らしてやろうとドンカラスは思い立つ。
それにはまずは色々と仕掛けの準備をしなければと、ロトムと一緒になって作戦を練り始めた。
 悪巧みするドンカラス達の横で、エンペルトはどんな人間がやって来たのか興味を持ち、玄関の方を覗き見る。
先程の人間の声がどこかで聞いたことがあるような気がしたのだ。
 一人は薄着に短い緑色のマントを羽織った、短髪の見知らぬ少女だった。
そしてもう一人の白いニット帽を被った赤いコートの少女を見た時、エンペルトは思わず声を漏らす。
「ヒカリ……ちゃん?」
 エンペルトはその顔に確かに見覚えがあった。
 まだナナカマド博士の研究所にいた頃、たまに手伝いに来ていた子だ。それなら、連れているポケモンは恐らく――。
「何やってやがんでえ。見つかるだろうが」
 ドンカラスは入り口を覗き込んだまま固まっているエンペルトに気付き、慌てて奥に引っ張り込んだ。
「あ……ああ、ごめん」
「緊急時なんだからしっかりしてくだせえよ」
 いつもと何か違った様子のエンペルトを怪訝に思いながらも、ドンカラスはロトムとの話し合いに戻る。
何を仕掛けるにもとりあえずは食堂から抜け出さなければならなかった。
気配を感付かれたのか、人間達はポッタイシとワタッコを繰り出してこちらへ向かってきている。
食堂の出入口は一つしかなく、部屋の小さな窓はドンカラスとエンペルトが通るには狭すぎた。
「オイラとマージさんで奴らの隙を作るから、その間にあんたらはここから抜け出しな」
「わかった。バレねえようにうまくやりやがりなせえよ」
 ロトムにその場を任せ、ドンカラスはエンペルトと食堂の調理場に身を潜めた。
ロトムとムウマージは空気に溶け込むように姿を消して人間達を待ち構える。

 すぐに人間達は食堂に姿を現し、回りを窺い始めた。ドンカラスにも若干の緊張が走る。
ふと横を見ると、エンペルトがどこか複雑な表情をして人間達の方、
特に赤いコートの少女が連れたポッタイシを見つめていることに気が付く。
923名無しさん、君に決めた!:2009/03/27(金) 00:26:03 ID:???
「なんだ、一目惚れでもしやしたか? 真面目な面しておめえさんも隅に置けねえな」
「ち、違うポチャ。なあ、ドン。ヒカ――いや、あの人間達のポケモン、何とかうまく連れ出せないかな?
戦力を少しでも奪うのは僕達の危険も減るし、うまく説得できれば主人達に帰ってもらえるよう仕向けられるかもしれない」
 エンペルトの話にはどこか他意があるようにも感じたが、ドンカラスは提案に乗ることにした。
「そうだな。うまく隙ができたらやってみやしょ」
 間も無くして、ロトムは体の電気を少しスパークさせて合図を出す。
透明になったままムウマージと共に壁と天井を叩き、燭台や皿を投げ飛ばし、部屋中を暴れ回りだした。
人間達はそれにひどく怯えた様子で頭を抱えてしゃがみ込む。
「行きやすぜ!」
 絶好のチャンスとみてドンカラスとエンペルトは調理場から飛び出して駆け出す。
ポッタイシとワタッコに気付かれるも、主人に知らされる前に二匹の口を塞ぎ、そのまま食堂からさらいだした。

 ドンカラスとエンペルトは二階の一室へと二匹を連れ込んだ。
「無礼な! 私を何と心得る! 離せッ!」
 エンペルトに後ろから羽交い絞めにされながら、ポッタイシはがなりたてて暴れる。
ワタッコはドンカラスに抱えられたまま、怯えて震えていた。
「危害は加えねえよ、お嬢さん方。おとなしくあっしらの話を聞いてくれりゃあな。なあ、エンペルト」
「うん、だから安心してほしいポチャ」
 エンペルトの声を聞いた途端、ポッタイシは動きをピタリと止めた。
「! お前はまさか……!」
 ポッタイシを離し、エンペルトは決まりが悪そうに口を開く。
「……久しぶりポチャ」
924名無しさん、君に決めた!:2009/03/27(金) 13:10:08 ID:???
GJ!
925名無しさん、君に決めた!:2009/03/29(日) 02:26:39 ID:???
明日か明後日に続き書くよ
926名無しさん、君に決めた!:2009/04/01(水) 06:47:32 ID:???
 エンペルトの姿を見て、ポッタイシの顔に驚きと喜びが入り混じった表情がうっすらと浮かぶ。
だがすぐに我に返ったようにエンペルトをきっと睨み付け、その頬をしたたかに羽で打った。
「……効いたポチャ」
「こんな所で何をしている! 勝手にいなくなって……どれだけ私が、どれだけ皆が心配して探し回ったと思っているのだ!」
 痛そうに頬をさするエンペルトに、さらに胸倉を掴む勢いでポッタイシは詰め寄る。
「まあま、その辺で。気の強えお嬢さんだ。あっしの所のエンペルトとどういう関係で?」
 状況を飲み込めずしばらく黙って見ていたドンカラスだったが、ここで仲裁に入り二羽を引き離す。
「おい、このおっさんはなんだ」
 ポッタイシは欝陶しげにドンカラスの羽を払い除けて言い放った。
「お、おっさん……?」
 その言葉にドンカラスはぴしりと凍り付く。何気ない一言であったが、
それは年相応以上に老けて見られることを気にしているドンカラスにとって禁句の一つだった。
「ごめん、ドン。それは僕から話すよ」

    ・

「ほーぉ、研究所で飼われてたポッチャマの群れの幼なじみねぇ」
 ポッタイシをじろりと不機嫌そうに見やってドンカラスは言う。
「なあ、くだらない事はやめて、私とヒカリとともにナナカマド殿の研究所へ帰ろう。皆、きっと暖かく迎えてくれる。
もうトレーナーに貰われていく時期は逃してしまったかもしれないが、また群れに戻ればいい。
群れの頭の固い連中は何か言ってくるかもしれないが、昔みたいに私が説得する。
こんな賊まがいの輩共にいつまでも世話になる必要はないだろう」
「悪いけど僕は帰れないポチャ」
927名無しさん、君に決めた!:2009/04/01(水) 06:49:50 ID:???

「なぜ? お前の三本角の立派さは惚れ惚れする程だ。行く行くは群れで長にだってなれるかもしれない。
何か弱みでも握られているのか?」
 ポッチャマ族には、くちばしから伸びる三本の角が最も立派な者が群れを率いるという習性がある。
ポッタイシの言う通りエンペルトの角は見事なもので、これからのさらなる成長を踏まえれば王たる風格が確かにあった。
 しかし、エンペルトはそっと首を横に振る。
「そうじゃないポチャ。僕は自分の意思でここに残りたいんだ。
群れに戻るのも一つの幸せかもしれない。けど、それは極狭い範囲のものポチャ。
ボス――ピカチュウは僕に広い世界の夢を見させてくれたポチャ。僕は狭い幸せより、広い世界を選ぶ」
 エンペルトは真っすぐに目を向け、ポッタイシに告げる。
「……ふん。馬鹿だな、お前は」
 ポッタイシは素っ気なくそう言い、そっぽを向いてみせる。そして目の辺りを分からないようにそっと拭った。
「ごめん」
「何を謝っている。お前が決めたことだ。私に謝る必要なんてないだろう馬鹿め。
分かった。お前達に一時的に協力する。ワタッコ殿もそれでいいかな?」
 部屋の隅でワタッコは静かに頷く。
「ありがとう。で、具体的に何をすればいい? ヒカリ達に怪我をさせるようなことなら許さないからな」
928名無しさん、君に決めた!:2009/04/01(水) 11:07:01 ID:???
GJ!
929名無しさん、君に決めた!:2009/04/02(木) 11:11:08 ID:???
>>927
ワタッコは「ヒカリ達」じゃなくて「ナタネ達」って言うと思う。
930名無しさん、君に決めた!:2009/04/02(木) 11:46:01 ID:???
最後の台詞はポッタイシだろ?ワタッコは頷いただけじゃ?
931名無しさん、君に決めた!:2009/04/02(木) 14:33:29 ID:???
>>930
確かにそうだな。お騒がせスマソ
932名無しさん、君に決めた!:2009/04/04(土) 02:40:46 ID:???
明日明後日にでも続き書くぜ
933名無しさん、君に決めた!:2009/04/07(火) 04:02:57 ID:???
 食堂を騒がせていた怪音は急にぴたりと止み、ヒカリとナタネはゆっくりと顔を上げた。
嵐が通り過ぎた後のように室内は静まり返っているが、
床に散らばっている割れた皿や倒れた燭台が先程の怪奇な現象が確かなものであったと物語っている。
 本当に幽霊なんだろうか。ヒカリの脳裏に不安がよぎる。
でも掃除したり、木の実を食べたりする幽霊なんて聞いたことがない。
 ふと、ヒカリは自分の横にポッタイシがいない事に気付く。ナタネのワタッコも姿が見えない。
二人はボールを確認するが、二匹が戻った形跡はなかった。
まさかさらわれてしまったのだろうか。心細さと心配にかられ、二人は自分のポケモンの名を呼ぶ。
するとすぐに返事代わりの鳴き声とともにぺたぺたと足音を立て、
ポッタイシとワタッコは少し慌てた様子で食堂へと駆け付けて来た。
 二人はホッと胸を撫で下ろす。
「もう、何をしてたの?」
 ヒカリの呼び掛けに、ポッタイシは申し訳なさそうに「くわ」と一鳴きした。 音に驚いて部屋の外に逃げていたのかな。そんなに臆病な子でも無いはずなんだけれど。ヒカリは不思議に思ったが、
何が有ったのか詳しく聞く手段も無いし、二匹とも無事に戻ってきたのだからあまり深くは気にしないことにした。
 かくして再び調査を開始しようとする二人を、ポッタイシとワタッコが呼び止める。
二匹は身振り手振りを使い、何かを訴えようとしていた。どうやら『自分達が先を行く』と言いたいようだった。
勝手にいなくなった事へのお詫びのつもりなのだろうか。何だかほほえましくなってヒカリとナタネはクス、と笑った。
「わかったわかった。先頭は任せるわ、お二人さん。今度はしっかりあたし達を守ってよー?」
 そう微笑みかけるナタネに二匹は力強く頷いた。二匹は並んで食堂を出で、二階へ続く階段の方へ歩いていく。
何の疑いも無くついてくる主人達にポッタイシとワタッコは心の中で密かに謝った。
934名無しさん、君に決めた!:2009/04/07(火) 07:16:32 ID:???
>>933
GJ!
935名無しさん、君に決めた!:2009/04/09(木) 02:25:36 ID:???
明日か明後日に続き書くよ
936名無しさん、君に決めた!:2009/04/11(土) 22:03:36 ID:???
 二匹の後に続いてヒカリとナタネは階段を上っていく。
一段一段を踏み締める度に古い木の板はぎいぎいと嫌な音で軋んだ。
 エントランスホールの二階部分はコの字型になっていて、
ヒカリ達が上って来た側と一階への吹き抜けを挟んだ向かい側に部屋と階段が左右対称に一つずつ、
そして中央奥にもう一つ入り口がある。
 まずは順当に手近な部屋から探ってみようとしていたその時、
急にポッタイシが何かに驚いたような鳴き声を上げ、歩みを止めた。
「どうしたの?」
 ヒカリに尋ねられ、ポッタイシは怯えた様子で吹き抜けを挟んだ向こう側の部屋を指し示す。
ポッタイシの素振りはどこか大げさで芝居掛かったものであったが、その違和感に気付かれることはなかった。
それ以上に異様なものが指し示された先には佇んでいたのだ。
 それは人間の老人の姿をしていた。だが生気は感じられず、存在がおぼろげで体が半透明に見えるような気さえした。
 きっと洋館内が薄暗いせいでそんな風に見えてしまっているんだろう。
ヒカリは必死に自分にそう言い聞かせ老人に声をかけてみようと試みるが、
喉が凍り付いたように言う事を聞かない。本能があの老人と関わる事を拒んでいるようだった。
 やがて老人は彼女達の存在などまったく気付いていないかのように無視して階段を音も無く下りると、
そのまま一階の食堂へと入っていってしまった。
 ぞくりとするような冷たい空気と沈黙がヒカリ達を包んだ。
「今のお爺さん……人間ですよね?」
 恐る恐るヒカリは言う。
「あ、当たり前でしょ! そうじゃなかったら何だって言うのよ」
 強がるナタネだがその顔は少し血の気が引いていた。

「……何とかうまい具合に恐がらせたようだけど、あんなの予定にあったかな?」
 主人達に悟られないように声を潜めてポッタイシはワタッコに話し掛ける。
「アドリブかなあ。化けたのはマージさんかロトムさんかわからないけれど、さすがゴーストポケモンさんですねー」
 特に疑問に思う様子は無く、朗らかにワタッコは答えた。
「ううーん……」
 ――ドンカラスの話では、最初に仕掛けてくるのはそこの部屋に入ってからのはずだけど。
 ポッタイシは妙に思いながらも、ヒカリ達の誘導を続けるほかなかった。
937名無しさん、君に決めた!:2009/04/12(日) 06:23:30 ID:???
GJ!
938名無しさん、君に決めた!:2009/04/14(火) 03:09:11 ID:???
明日明後日にでも続き書くぜ
939名無しさん、君に決めた!:2009/04/17(金) 02:26:58 ID:???
 ヒカリとナタネは老人を追って食堂へと向かった。先程の老人は浮浪者だろうか。
だがそれにしては身なりが整っていたように思った。 いくら食堂の中を探してみても老人の姿は見つからなかった。
窓は大人一人がくぐることができる大きさでは無いし、出入口は一つしかない。
確かに食堂に入っていくのを見たはずなのに。何だかますます背筋の辺りが薄ら寒くなってきて、二人は思わず身震いをする。
 食堂を出た時、二階に人影がちらついた気がした。老人はうまく自分達の隙をついて既に食堂から抜け出していたのだろうか。
老人にそんな機敏な動きができるのかは少し疑問だったが、幽霊だなんて考えたくはなかった。
再びポケモン達に先導させ、ヒカリ達は二階に向かう。

 その後も行く先々でまるで誘い込まれるようにヒカリ達を奇怪な出来事が次々と襲った。
まず最初に訪れた部屋では生きたように動く不気味で凶悪な顔をした人形だった。
凶器を振り上げ襲い掛かってくる人形から命からがら逃げおおせた先の部屋では、
触れてもいない洗濯機が勝手に動きだして大量に水をぶちまける。
それに堪らず部屋を飛び出せば、待ち構えていたホッケーマスクの大男に追われ、
逃げ込んだ別の部屋では今度は扇風機が強風を巻き起こした。
右手に鉄の爪をはめた怪人、火を吹く電子レンジ、叫び声を上げているようなマスクと黒いローブを被った死神――
手を変え品を変え、様々な怪物と現象がヒカリ達を休む暇も無く襲う。
怪物達はどれも映画か何かで見たような、それもよく見てみれば作り物とわかるようなどこか安っぽい作りの物ばかりであったが、
洋館の雰囲気と恐怖に飲まれ判断力が鈍ったヒカリ達には見破ることはできず、
半ばパニック状態になりながら逃げ惑うしかなかった。

「クハハ、ビビリ過ぎて奴らそろそろぶっ倒れるんじゃあねえですかい?」
 廊下を逃げていく少女達の背を見送りながら、全身に包帯を巻いたミイラ鳥が死神に話し掛ける。
「ちょっと悪乗りが過ぎた気もするが。もう十分に恐がらせたんじゃあないか?」
「そうだな。ハロウィンパーティもフィナーレといきやすか。締めはロトムの奴に任せやしょ」
940名無しさん、君に決めた!:2009/04/17(金) 02:35:22 ID:???
>>939
GJ!ハロウィンかいwww
941名無しさん、君に決めた!:2009/04/18(土) 17:58:35 ID:???
942名無しさん、君に決めた!:2009/04/19(日) 02:48:17 ID:???
明日か明後日にでも続き書くよ
943名無しさん、君に決めた!:2009/04/22(水) 04:00:05 ID:???
 もう何度目かもわからない怪物の追跡により、また別の一室にヒカリ達は追い込まれる。
休まる暇も無く襲撃を受け続け、ヒカリとナタネは肉体的にも精神的にも疲れ果てていた。
この部屋では今度はどの家具が襲い掛かってくるのだろうか。怯えた様子で身構えながら室内を見渡す。
 部屋の奥には大きなテレビが置かれ、傍にビデオデッキが備え付けられている。
他は床にむき出しのビデオとそのケースで散らかっているばかりだ。
特に危険そうな物も何物かが潜んでいられるような場所も見当たらない。
 ヒカリは部屋の扉を閉めて急いで鍵を掛けた。少しこの部屋に立て籠もって休もう。
そして落ち着いてみんなが無事に帰れる方法を考えよう。
そんなふうに考えていた矢先、突然消えていたはずのテレビの電源が点き、ざーざーと砂嵐を映し始めた。
 ヒカリとナタネは思わず息だけの悲鳴を上げる。たんなる誤作動ではないであろうということは
今まで散々に電化製品に襲われた事で分かり切っていた。
だけど明確な攻撃方法のある扇風機や洗濯機と違い、たかがテレビに何ができるというのだろうか。
 二人は注意深くテレビを見張る。二、三度、映像がぶれて怪しく光り、テレビ画面自体が一瞬揺れ動いたように錯覚した。
否、それは錯覚などではなく確かに画面は石の投げ込まれた水面のごとく揺れ動いていた。
揺れはどんどんと強くなって波紋の盛り上がりが大きくなっていき、徐々に顔のような形を成していった。
『タチサレ……タチサレ……』
 無機質な砂嵐の音の裏で、微かだが確かにスピーカーからそう声が響いた。
揺れは激しさを増すことを止めず、今度は手のような形が画面に浮かぶ顔の横に形成されていく。
画面の顔と手がもがく度に、ビニールを裏側から押しているかのように画面は伸びていった。
画面の奥から今にも何かが這い出してこようとしている。
944名無しさん、君に決めた!:2009/04/22(水) 04:02:08 ID:???
 ヒカリ達は悲鳴を上げる事もできずふらりと腰を抜かす。
その拍子にヒカリのショルダーバッグが開き、ごとりと固い音を立てて何かが床に落ちて開いた。
電子手帳のようなそれは、ヒカリのポケモン図鑑。
出会ったポケモンに向けるだけで自動でデータをスキャンして記録していくハイテク品だ。
だが、こんな得体の知れない幽霊が相手の状況では何の役にも立たない代物――のはずだった。
 今にも憑かれて呪い殺されるかもしれないような危機的状況にありながら、
大切なポケモン図鑑を無くして博士達に迷惑をかけるわけにはいかないという一心で、
ヒカリはポケモン図鑑を拾い上げる。ふと目に入った図鑑の画面にはいつの間にか見たことのないポケモンの姿が記録されていた。
 ヒカリは一日の記憶に頭を巡らせる。今日、ポケモン図鑑を取り出して使ったのはナタネさんに会う前に森でアゲハントに一回、
そして洋館へ来る途中でヤミカラスとケムッソを確認した時、そして今この瞬間だけ。
ロトム――こんなポケモンは洋館に来るまで記録されていなかった。
捕まえて詳しい分析にかけるまではタイプはわからないけれど、見た感じで受ける印象は電気、エスパー、またはゴースト。
ゴーストやエスパーポケモンなら、幽霊みたいなイタズラだってできるかもしれない!
 ヒカリはショルダーバッグに手を突っ込み、捕獲用のモンスターボールを探り出す。
自分の直感に一か八か賭けてみることにした。
945名無しさん、君に決めた!:2009/04/22(水) 07:15:44 ID:???
GJ!
もうロトムさらばか
946名無しさん、君に決めた!:2009/04/22(水) 21:38:48 ID:???
ロトムゥゥウウウ!!
947名無しさん、君に決めた!:2009/04/24(金) 02:04:05 ID:???
明日明後日に続き書くぜ
948名無しさん、君に決めた!:2009/04/25(土) 20:00:35 ID:???
949名無しさん、君に決めた!:2009/04/27(月) 02:58:59 ID:???
ごめん、ちょっと遅れそうだ
遅くても今日中には投下するぜ
950名無しさん、君に決めた!:2009/04/27(月) 20:14:33 ID:???
 ヒカリの手から投げ放たれたモンスターボールは、テレビにぶつかる直前に宙で開き、閃光を放つ。
這い出そうとしていた幽霊は思わぬ反撃にひどく慌てた様子でテレビに引っ込んで逃れようとしたが、
ボールの光にさながら掃除機に吸われる布切れのごとく引き寄せられしまう。
やがて数秒も経たない内に画面から橙色の小さな影が飛び出て、ボールの中に光となって吸いこまれた。
と同時に幽霊の姿は霧が散るように消え去る。
 モンスターボールはポケモンにしか反応しない。やはり今回の一件はこのポケモンの仕業だったんだ、とヒカリは確信を得る。
 ヒカリ達はまだ気を緩めずに床に転がる閉じたボールを見張った。
中で必死に抵抗しているのかまだボールはゆらゆらと揺れ動いている。
揺れが一回目。完全にロックが掛かるまで、ポケモンが抜け出してくることは大いにありうる。
二回目。ロックされるまで後少しだが、まだまだ油断はできない。
そして三回目――。

 ・

 扉に鍵を掛けられてしまい中の様子を窺う事ができずにいたドンカラスだったが、
ようやくエンペルトが倉庫から鍵を取って戻ってくる。
「おお、ご苦労さん」
「マージを呼んで扉をすり抜けて内側から開けさせた方が早かったんじゃあないか?」
「もしもまだ人間がめげやがらなかった時の最後の追撃役として待機させているから、
持ち場を離れさせるわけにゃいきやせんよ」
 ドンカラスは鍵を受け取ると器用に觜で鍵穴へと差し込んで錠を開け、音を立てぬようそっと覗ける程度の隙間を作る。
そして見えた光景は、今まさにロトムがモンスターボールに吸い込まれた瞬間だった。
951名無しさん、君に決めた!:2009/04/27(月) 20:16:39 ID:???
 苦々しい顔でドンカラスは舌打ちする。後から覗き込んだエンペルトも深刻な表情を見せた。
ロトムの入ったボールが床で揺れる。それでも二匹は決して部屋に飛び込んでロトムを助けにいこうとはしなかった。
正体がポケモンだと気付かれてしまった以上、もう人間達は仮装に怯む事はないだろう。
ポッタイシとワタッコの協力もこれ以上は望めない。
狭い室内にトレーナーが二人もいる中から、ロトムのボールを掠め取ることは不可能に近い。
ボールがロックされ、トレーナー登録をされてしまう前にロトムが抜け出して逃げ延びてくることを祈るしかなかった。
 しかし、揺れが三回目に差し掛かった時、無情にもボールはカチリと音を立てて動きを止める。
そしてすぐに人間の一人が駆け寄り、それを拾い上げた。
 ドンカラスは諦めたように扉を静かに閉めると、帽子の鍔を下げ小さくため息を吐いた。

 ・

「へー、ロトムっていうんだ。まさかこんな小さいポケモンが今回の犯人だったなんてねー」
 玄関へ向かう途中、ポケモン図鑑を見せてもらいながらナタネは感心半分、呆れ半分に呟いた。
「この子、どうしましょう。事件解決の証拠に必要ですか?」
 ロトムの入ったボールを手にヒカリは尋ねた。
「ううん、いいわ。調査に付き合ってくれたお礼として取っといて。捕まえたのはヒカリちゃんだしね。
さあ、早くこんな陰気臭い洋館からは出ましょ!」
「はい!」
 扉を開け放ち、二人とそのポケモン達は夕焼けが木々の間から滲むハクタイの森を帰っていく。
 その背をドンカラス達は洋館の窓からひっそりと見送った。
ロトム一匹の犠牲だけで洋館が救われるようならそれも止む無いと、ドンカラスが苦渋の決断を出したのだ。
「しょうがねえんだ。諦めておくんなせえ」
 後ろでぐすぐすと恨めしく泣くムウマージにドンカラスは言い聞かせる。
「ヒカリちゃんならロトムに対してぞんざいな扱いはしないと思う。だから辛いとは思うけど……ね」
 エンペルトもそう諭すが、ムウマージは泣きながら二階の奥へと飛んでいってしまった。
952名無しさん、君に決めた!:2009/04/27(月) 20:18:26 ID:???
「どうしようもねえな、こりゃ」
 ばつが悪そうにドンカラスは頭をばさばさと羽でかく。
「しばらく一匹にしておいてあげるしかないよ」
 そう言って、エンペルトは窓の外に目を戻す。その視線の先にはポッタイシ。
ちょうど彼女も洋館を名残惜しそうに振り返ったところだった。
 ――さよならポチャ。そっとエンペルトは心の中で呟いた。
「追いたきゃ追ってもいいんだぜえ、エンペルト?」
 エンペルトの様子に気付き、ドンカラスはにやにやとしながら言い放つ。
「冗談じゃあない。そんなことしても、強烈なビンタが飛んでくるだけだよ」
「クハハ、違えねえ。ま、ようやく面倒臭えことが解決したんだ。
今日はゆっくりと飲みましょうや。たまにゃお前の愚痴を聞きながらでもいいぜ」
 ぽんぽんとドンカラスはエンペルトの背を叩く。
「そうだねえ。いつも聞かされてばかりでうんざりしていた所だからちょうどいいかもな」
「お手柔らかに頼みやすぜ。さあて、まずは食堂から有りったけの酒をとってきやしょ」
 食堂に入る際、ドンカラス達は半透明の体をした老人とすれ違う。
立ち直ったムウマージがまたイタズラをしているのだろうとさして気にも止めず、
酒とツマミを抱えながら階段を上って二階の部屋に向かう途中、今度はまた半透明の幼女と廊下ですれ違った。
 ムウマージの立ち直りの早さに苦笑しつつドンカラスが部屋の扉を開けると、
部屋の隅には肩を揺らして嗚咽しているムウマージの姿があった。とても元気にイタズラをできるような状態ではない。
 ドンカラスとエンペルトは顔を見合わせる。じゃあ、先ほど見た老人と幼女はまさか本物――。
「クハ、クハハ……。なあ、エンペルト。たまにゃあ外に飲みに行くのもいいんじゃあねえかな。
トバリのエレキブルんとこ辺りに泊まり掛けで三日程。終わる頃にはさっき見たものは全部忘れて解決、解決」
「……ああ、そうだね。そうしようか、あははは」
 振り絞ったような乾いた声で二匹は笑いあった。

 霊の力の大部分は怨念や後悔、執念など言わば強い気持ちの力だ。
悲しみから立ち直った時、ムウマージの力は増している……かもしれない。
953名無しさん、君に決めた!:2009/04/27(月) 20:39:05 ID:???
GJ!
954名無しさん、君に決めた!:2009/04/28(火) 02:00:54 ID:???
GJ! なるほど、マージの強化はその線か
だが、やられるコピモン達は八つ当たりみたいなもんだよなw
955名無しさん、君に決めた!:2009/04/29(水) 03:02:21 ID:???
明日明後日にでも続き書くよ
956名無しさん、君に決めた!:2009/05/02(土) 05:19:43 ID:???

 ※

 身の丈の二倍はありそうな岩の前に構え、ルカリオは呼吸を整える。
ミミロップとチャーレムは静かにそれを見守っていた。
ゆるやかに流れるような小さく素早い動きでルカリオは両の掌を突き出し、岩へと叩きつける。
瞬間、軽く突き飛ばしただけのように見えた動作からは似付かわしくない重々しい打撃音が響く。
岩はあっという間に表面を網目状のヒビに覆われ、後は小突かれただけで簡単に崩れてしまった。
 同じように岩を砕いてみせろとルカリオはミミロップに促す。
ミミロップは快く返事をして、同じくらいの大きさをした岩の前へ進み出た。
厳しい肉体と精神の鍛練を続け、もはや大岩を砕くくらいならば造作ない
――とまではいかないものの、やろうと思えば何とかできる自信はあった。
 拳を握り締め、深く目を閉じてミミロップは集中力をじっくりと高めていく。
そして限界近くまで達した集中を爆発させるように、拳に力を込めて大きく振りかぶり、裂帛の気合いと共に岩を殴り付けた。
たちまち岩には鉄球が衝突したような亀裂が入り、砕けた。
岩を殴った方の手に痛そうにフーフーと息を吹き掛けた後、ミミロップは誇らしげにルカリオの顔を見る。
957名無しさん、君に決めた!:2009/05/02(土) 05:21:56 ID:???
 しかし、ルカリオは落胆したように鼻でため息をついた。
「ちゃんと砕いてみせましたけれど、何かお気に召しませんか?」
 当然、褒められるものだと思っていたミミロップはムッとして言う。
「“同じように”砕いてみせろ、と言ったはずだ」
 そう言うとルカリオは自分の砕いた岩を見せる。拳の当たった部分から大きく雑に砕けたミミロップの岩とは違い、
ルカリオの岩はまるで内部で爆発でも起きたかのように中心辺りまでより細かく砕かれていた。
「お前の拳の威力は認めよう。しかし、ただ岩を砕くだけならばサイホーンにもできる。
それも更に巨大な岩石であろうと容易くな。だが奴の単調で鈍重な突進は実戦ではそうそう当たるまい。
お前が今みせた拳もそうだ。誰がお前が集中している間の隙を見逃し、
それも大振りで見切りやすい拳をむざむざ食らってくれようか」
 ルカリオの言い分に返す言葉もなく、ミミロップは黙り込む。
「無駄に込めた力は気の流れを殺す。最小の動き、且つ素早く、体の中で練った勁力を衝撃として相手に打ち込む。
これが出来ねば波導の奥義の習得など不可能だ。お前のやってきた拳に炎を纏わせる拳などは初歩の初歩と知れ」
「うう……」
958名無しさん、君に決めた!:2009/05/02(土) 07:10:25 ID:???
GJ!
959名無しさん、君に決めた!:2009/05/04(月) 02:33:37 ID:???
明日か明後日にでも続き書くよ
960名無しさん、君に決めた!:2009/05/07(木) 04:23:22 ID:???
 悔しさにミミロップは思わず小さくうなる。
「すみません、ちょっと休憩をお願いします」
 感情を押し隠した調子で出し抜けにそう告げると、
ミミロップはひょいと岩場を飛び降りて湧き水のある方へと駆けていってしまった。
何を言わずルカリオは黙ってその背を見送る。
「よいのか?」
と尋ねるチャーレムに、
「ああ、構わんよ。私も少々、大人げなかったやもしれん」
そうルカリオは答えた。そしてそっと口元に苦笑を浮かべる。
「私とて波導の奥義を極められてなどいないというのにな」
 独り言のようにルカリオは呟く。
「愚弟子が戻るまで少し話でもしようか。先代に比べ、我が波導の力はまだずっと弱い。何が欠けているのかは未熟故、未だ見いだせん。
 自惚れるわけではないが、私は共に先代の下で学んだ兄弟弟子達の中でも最も才があった」
 じっとチャーレムはルカリオの話に耳を傾け、聞き役に撤していた。
 ルカリオは何気なく足元の小石を右の手で拾い上げる。
そして右手から青白いオーラがほとばしった瞬間、小石は凍てつき氷の粒となった。
「炎や電気に比べ冷気は発現が難しいといわれていた。
ゴーストや氷の体でもなければ誰しもが持つ熱は最も思い描くのは容易い。
電気ポケモンで無くとも、電気は微弱ながら大抵の生物の体内に流れている。
だが、冷気を生み出すというのは中々に想像しにくいものだ。
その冷気を兄弟の中で誰よりも早く、それも氷ポケモンではないというのに
一番初めに冷気をやってのけたのだから自他共に私の才能は認められていたよ。
 その私が習得に難儀し、正直に言えば今でもあまり得意ではないものがある。それは――」
961名無しさん、君に決めた!:2009/05/07(木) 04:25:52 ID:???

 ルカリオの右手が赤いオーラを纏う。しかしそれは燃えきれなかった炭火のようにルカリオの黒い手の中に消えてしまった。
「最も容易いはずの炎。確かにイメージは簡単に出来る。
十分に熱のエネルギーも体内に生み出せているはずだ……。
チャーレム殿、少し火をいただけないだろうか? 我が身に向かって炎のパンチを繰り出してほしい」
 チャーレムは怪訝に思った。最初にミミロップとルカリオの二匹が手合せした時、
ルカリオは巧みにブレイズキックを繰り出していたはず。それに、自分が炎のパンチを繰り出してどうなるというのか。
「相分かった。ルカリオ殿の手並みならば心配は無用であろうが、万が一のために急所は外そう」
 真意を確かめるため、チャーレムは構えるルカリオに燃える拳を振り下ろす。
火球のごとき拳が叩きつけられようとした刹那、ルカリオは素早く見切ってチャーレムの懐へ潜り込み、
そのまま掌底を腹部へ押し当てた。
掌底を受けた途端、チャーレムは自分の気を吸われて取られたような感覚に襲われる。
直後の大きな音で我に返った時には、すぐ脇の岩がルカリオの燃え上がる脚に熱されて赤々と鈍く輝いていた。
じりじりとした熱気の中でチャーレムの背をヒヤリとしたものが伝う。
「先取り――のちょっとした応用だ。火種となるものさえあれば何とか気の発火は出来る。だが自力では無理だ」
 言いながらルカリオは足を下ろし、熱を振り払った。チャーレムも額に浮き出た汗を無言で拭う。
「一体、私に何が欠けているというのか――。しかし、さすがチャーレム殿の炎のパンチだ。
我が愚弟子のものとは桁違いの力を引き出せた。流派は違えど、いや、違うからこそ素直に敬意を表する。」
「光栄だ」
「今は愚弟子の面倒に付きっきりだが、暇を見付けまた手合せ願いたいものだ。奴は本当に手間が掛かる。
だが、愚……ミミロップの力は評価しているつもりだ。
我が教えの下で奴は私が最も苦手としている炎を発現させてみせた。
奴は何か私に足りないものを持っているようだ。正直な所、その点に関してだけは嫉みに近いものすら感じている。
だから奴には余計に厳しく当たってしまうのかもしれん。未熟だ、私は」
962名無しさん、君に決めた!:2009/05/07(木) 07:58:29 ID:???
GJ!
963名無しさん、君に決めた!:2009/05/09(土) 02:22:34 ID:???
明日明後日にでも続き書くぜ
964名無しさん、君に決めた!:2009/05/12(火) 03:56:02 ID:???
 高ぶる感情を振り切るようにミミロップは水場へと走った。
弱音は存分に吐きながらも、芯の方は折れることなくルカリオの教えに食い下がってきたミミロップだったが、
少しずつ蓄積された心身の疲れ、特に精神の疲れによって小さな軋みが生じていたのだった。
 澄んだ冷たい水を両手ですくい上げると、熱を冷ますように顔をばしゃばしゃと洗う。
水を滴らせながら、ふう、とミミロップは一息をついた。
そして、昔にルカリオの下から逃げ出した際も修業がこれくらいの段階だったかなとぼんやりと思い出す。
直情型の彼女にとって、教えのように心を清流のように澄まし静めさせているというのは、ひどくやり辛いものであった。
沸き起こる感情を無理矢理押し殺している内に、自分自身というものも少しずつ削れていっているような気がしてきて嫌だった。
 昔の自分はそれに耐え切れずに逃げ出してしまったが、今の自分はどうだろうか。
進化し、ミミロルだった時とは違う顔を水面に写し、悶々と思いに耽る。
 ――この姿になったのはピカチュウ達と初めてキッサキに行った時だっけ。
ほとんど勝手に洋館を出て来ちゃったけれど、みんなどうしているかなあ。そしてピカチュウは……。
965名無しさん、君に決めた!:2009/05/12(火) 04:00:11 ID:???
 修業の妨げにならぬよう、なるべく仲間達のことは思い出さないようにしていたが、
一度考えてしまうと寂しさが溢れ返ってくる。
もう帰ってしまおうか。心細さが最高潮に達し、顔から伝い落ちた一滴の水が水面に波紋を作る。
日の光を反射し、波紋は幾つもの銀色の輪となって揺らめいた。じっとその様子を眺めていると、
ミミロップには一瞬それがざわめく九本の銀色の尾になって見えた。
『所詮、足手纏いの限界などその程度』
脳裏に涼しげな目で嘲笑う顔が浮かぶ。
 ミミロップは波紋を掻き消すように水面に両手を突っ込み、水をすくい上げてもう一度ばしゃばしゃと顔を洗い流した。
 ――きっとみんなも、あんな酷いこと言われたまま何もしないで過ごしているわけがない。
 ルカリオの所へ戻ろう。ミミロップは奮い立つ。修業に邪魔な感情は胸の奥へと強引に押し込んだ。
 戻る前に濡れた毛並みを乾かさないと。そう思い立ち、ミミロップは炎を灯そうといつものように手に気を集中させる。
しかし一向に炎は点かなかった。ミミロップは首を傾げる。
手が濡れているのがいけないんだろうかとも思ったが、
今まで多少手が濡れていても意識するまでもなく問題なく使えていたし、そんなことはまずありえない。
念のため一応、と手の水気を払ってからミミロップは何度も挑戦してみる。それでもやはり炎は出せなかった。
「なんで……?」
 愕然とし、思わず声が漏れた。当たり前にできていたことが突然できなくなってしまっていた。
966名無しさん、君に決めた!:2009/05/12(火) 07:13:14 ID:???
GJ!
967名無しさん、君に決めた!:2009/05/12(火) 20:05:38 ID:???
GJ!
968名無しさん、君に決めた!:2009/05/14(木) 01:55:18 ID:???
明日明後日にでも続き書くぜ
969名無しさん、君に決めた!:2009/05/17(日) 04:06:38 ID:???
 休憩から戻ってからというもの、ミミロップはより真剣に修業に取り組むようになっていた。
弱音も吐かず、手を抜く事もなく、課せられた鍛練を黙々とこなしていく。
突然の態度の変化をルカリオは妙に思いながらも、それを深く追究することはしなかった。
 絶え間ない努力の甲斐もあり、数週間の内にミミロップは目覚ましい進歩を遂げていた。
体の動きや技の切れは、並の格闘ポケモンと遜色ない程に成長し、
相手の放つ気を奪って逆に利用する術等も身につけた。
しかし、いくら努力しても炎はいまだ取り戻せないままだった。この事をミミロップはルカリオにも打ち明けていない。
初歩の初歩が出来なくなったなどと言えば、とうとう呆れ果てられて破門を宣告されるのではないかと恐れていた。

 ある日の昼下がり、ルカリオ達のもとに二匹の見知らぬポケモンが訪れる。
「ルカリオ様でいらっしゃいますか?」
 小柄で細身の宇宙人のような姿をしたそのポケモンの一匹が、指導に励むルカリオに恐る恐る声をかけた。
「いかにもそうだ。お前達は?」
 指導を中断し、ルカリオは二匹の方へと歩み寄る。
「ああ、失礼いたしました。私達はヤミラミ。鋼鉄島の地下で、
屑鉱石や宝石の粕を食みながらひっそりとそれは質素に暮らしております」
 濃紫色をした顔にどこか卑屈な笑顔を浮かべ、ポケモンはそう名乗った。
970名無しさん、君に決めた!:2009/05/17(日) 04:09:09 ID:???
「それで、地下に住むお前達がこんな山頂付近にまで何用かな?」
「はい。ルカリオ様の武勇は我らが潜む暗い地下深くにまで轟いております。
そんな高名なあなた様に折り入ってお願いしたいことがあって参りました。
邪魔な、乱暴な地下のぬしを討っていただきたいのです」
 岩や鋼の表皮をもつ一部のポケモンにとって土や石、鉱石は自分の体を作るために必要な栄養となる。
一見、鋼や岩の体には見えないヤミラミ達も、宝石のような両目と胸の結晶を保たせるために石が必要なのだと言う。
鉱石は貴重な栄養源だが上質なものは数が少なく、草木のように簡単には生えてこないため、それを巡る争いは絶えない。
離島である鋼鉄島に住むポケモン達は争いで共倒れしてしまわぬよう、
昔から続く暗黙の了解でもって鉱石を分け合って暮らしていた。
 しかし、最近になって突如として、ぬしであるハガネールの態度が豹変したのだとヤミラミは話す。
皆の分の鉱石まで貪り食い、ヤミラミ達にまるで暴君のように振る舞っているというのだ。

「どうかお願いします。仲間達は飢えております」
 大きな頭を地に擦り付け、ヤミラミ達は切願した。
「理不尽な暴力に苦しむ者達を救うのも我が務めだ。行こう。どうか頭を上げてくれ」
「おお……ありがとうございます!」
 ルカリオの返答にヤミラミ達は飛び上がりそうなほど喜ぶ。
ミミロップとチャーレムに話そうと背を向けたルカリオの影で、ヤミラミ達はそっと顔を見合わせる。
口から覗く鋭い歯と、宝石の目が卑しくぎらついた。
971名無しさん、君に決めた!:2009/05/17(日) 12:16:53 ID:???
GJ!
972名無しさん、君に決めた!:2009/05/18(月) 02:44:01 ID:???
ラフレシアとキレイハナの奴ってどうなったの?
973名無しさん、君に決めた!:2009/05/19(火) 01:58:17 ID:???
明日か明後日にでも続き書くよ

>>972
前にそんなSSスレがあった気がするが、
このスレと関わりは無いから今どうなっているかはわからないなあ
974名無しさん、君に決めた!:2009/05/22(金) 02:32:56 ID:???
 元は鉱山であった鋼鉄島の洞窟は、廃坑となった今でも修業に訪れるポケモントレーナーのために開放されている。
そのため、坑道内は事故が起こらないよう整備され、所々に控えめながら明かりが灯されていた。
ヤミラミ達は人目を避け、打ち捨てられてから人の手が入っていない脇道へとルカリオとチャーレムを案内した。
内部は暗く、地面も荒れているため人間が来る事はまずない。
 輝く目で暗闇を照らしながら進むヤミラミの後に続いて歩いている途中、一行は何匹かの現住ポケモンと出くわす。
イシツブテや、イワークなどその種類は様々であったが、一行を見ると皆一様に顔をひそめ、
遠巻きにひそひそと話したり、逃げるように避けていった。

「あまり歓迎されていないようだな」
 誰にと言うわけでもなくルカリオは呟いた。
「ここの連中は外の者には閉鎖的なんですよ。最近は、ぬしの件でより一層、排他的になりまして」
 ヤミラミの言葉に納得しきれなかったように、ふうん、とルカリオは小さく鼻を鳴らした。
そして不意にちらりと後ろを見やった後、また黙々とヤミラミについていく。

 その四匹を十メートル程後方からこっそりとつけるポケモンの姿があった。
お前では足手纏いになるとルカリオに言われ、外で待つように言い付けられていたはずのミミロップだ。
暗い坑道の先にぼんやりと見えるヤミラミの目の光と、一行の足音と、拙いながらも波導を頼りに、
時には地面の出っ張りにつまづきそうになりながらもミミロップは一行を追っていく。
 足手纏い。今のミミロップにとって、最も被りたくない、返上したい汚名だった。
975名無しさん、君に決めた!:2009/05/22(金) 07:27:42 ID:???
GJ!
976名無しさん、君に決めた!:2009/05/23(土) 21:05:22 ID:???
GJ

そろそろ次スレだな
977名無しさん、君に決めた!:2009/05/24(日) 22:29:17 ID:???
自スレのテンプレは避難所の議論所にあるのでいいのかな?
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11567/

明日の夜でよければスレ立てに挑戦してきてみるよ
978名無しさん、君に決めた!:2009/05/25(月) 23:51:34 ID:???
>>977はどうしたんだ?
979名無しさん、君に決めた!:2009/05/26(火) 00:28:52 ID:???
980名無しさん、君に決めた!:2009/05/26(火) 07:10:48 ID:???
>>979
981名無しさん、君に決めた!:2009/05/26(火) 07:15:04 ID:???
>>979
このスレもほぼ一年続いたんだと思うと感慨深いな。
982名無しさん、君に決めた!:2009/05/26(火) 19:02:38 ID:???
>>979

初代スレから見てる人ってどれぐらいいる?
983名無しさん、君に決めた!:2009/05/26(火) 22:24:52 ID:???
少なくともここに一人いるぜ
意外とたくさんいるんじゃないかと予想

誤字脱字でシャドーダイブしてたのはいい思い出
984名無しさん、君に決めた!:2009/05/26(火) 22:25:09 ID:???
俺は初代から
985名無しさん、君に決めた!:2009/05/27(水) 07:38:31 ID:???
俺も初代からずっといるな、ROM専だけど
986名無しさん、君に決めた!
俺も初代からだな
見始めたのはアルセウス戦だったが