【小説】ZOMBIE ゾンビ その26【創作】

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11 読者
このスレは、ゾンビ好きな人がゾンビをネタにした小説をupするスレです。

◆前スレ
【小説】ZOMBIE ゾンビ その25【創作】
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1245167906/

◇過去ログ
(1)【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】
http://curry.2ch.net/occult/kako/1030/10304/1030468085.html
http://www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako1.html (ミラー)
(2)【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】 その2
http://curry.2ch.net/occult/kako/1034/10343/1034309472.html
http://www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako2.html (ミラー)
(3)【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】 その3
http://hobby2.2ch.net/test/read.cgi/occult/1036704369/
http://www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako3.html (ミラー)
(4)【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】 その4
http://hobby2.2ch.net/test/read.cgi/occult/1047896148/
http://www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako4.html (ミラー)
(5)【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】 その5
http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/occult/1052060297/
http://www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako5.html (ミラー)
(6)【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】 その5.5
http://makimo.to/2ch/hobby3_occult/1053/1053501319.html
http://www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako6.html (ミラー)
21 読者:2009/10/20(火) 08:10:19 ID:HLQaxQRi0
(7)zombi ゾンビその6
http://hobby3.2ch.net/test/read.cgi/occult/1054460858/
http://ime.st/www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako7.html (ミラー)
(8)zombie ゾンビその7
http://hobby4.2ch.net/test/read.cgi/occult/1055955467/
http://ime.st/www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako7a.html (ミラー)
(9)ZOMBIE ホームセンター攻防編 八日目
http://hobby4.2ch.net/test/read.cgi/occult/1062185351/
http://ime.st/www.geocities.jp/dokidokiyunyun/kako8.html (ミラー)
(10)zombie ゾンビその9
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1083297464/
http://ime.st/ruku.qp.tc/dat2ch/0501/22/1083297464.html (ミラー)
(11)【かゆ】ゾンビの世界で戦う小説【うま】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1100529954/
http://ime.st/ruku.qp.tc/dat2ch/0503/19/1100529954.html(ミラー)
(12)【小説】ZOMBIE ゾンビ その11【創作】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1108381059/
(13)【小説】ZOMBIE ゾンビ その12【創作】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1113141723/
(14)【小説】ZOMBIE ゾンビ その13【創作】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1117637335/
(15)【小説】ZOMBIE ゾンビ その14【創作】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1124753567/
31 読者:2009/10/20(火) 08:12:40 ID:HLQaxQRi0
【小説】ZOMBIE ゾンビ その22【創作】
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/occult/1211430743/
【小説】ZOMBIE ゾンビ その23【創作】
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/occult/1221059476/
【小説】ZOMBIE ゾンビ その24【創作】
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1226074508/

○作品保管庫
【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】
http://ime.st/www.geocities.jp/dokidokiyunyun/
○避難所/雑談所
【小説】zombie ゾンビ【創作】分室
http://ime.st/jbbs.livedoor.jp/movie/5375/
○2ちゃんねる オカルト板 ゾンビ小説スレ保管庫
http://ime.st/zombiesurvival.fc2web.com/
○感想・雑談スレ
【感想】ZOMBIE ゾンビ小説別館【雑談】
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1253705232/
41 読者:2009/10/20(火) 08:15:10 ID:HLQaxQRi0
【スレのお約束】

1 基本的にsage進行でお願いします。
2 作品投稿のage・sageは、作者の判断にお任せします。
3 作品には感想をお願いします。感想についての批判は作者・読者ともに控えましょう。
  「感想・意見・批評」と「誹謗中傷」は異なります。
  よけいな争いごとを持ち込まぬよう、表現にはくれぐれも気をつけましょう。
4 あまりに長い感想や作品についての雑談のようなものは、感想スレでおながいします。
5 煽り・荒らしは放置、反応なしでお願いします。

【マナー。その他】

1 連続投稿数は5〜10レスを目安にしましょう。
2 作品投稿は間隔に気をつけてください。場合に応じて間隔をあけましょう。
  投稿前と投稿後に宣言すると、スレの流れがスムーズになります。
3 自分の意見に返事を期待する作者は、トリップを付けたほうがいいでしょう。
4 と言いますか、作者の偽者を防止する為にもトリップ推奨です。
5 個人攻撃、的外れな批難の類は流したほうが無難です。
6 496KBで警告メッセージが出力されます。
  512KBでスレッドが終了なので、950からか450KBを過ぎた時点で新スレッドへの
  移行を話し合いしましょう。
51 読者:2009/10/20(火) 08:17:23 ID:HLQaxQRi0
スレ立て完了!
特に>>4について、不備があれば今のうちにドゾー。
次のスレ立て時に活かされるでつ。
61 読者:2009/10/20(火) 08:47:42 ID:HLQaxQRi0
貼れてないテンプレがありました、サーセン。orz

【小説】ZOMBIE ゾンビ その15【創作】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1129125869/
【小説】ZOMBIE ゾンビ その16【創作】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1137418562/
【小説】ZOMBIE ゾンビ その17【創作】
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1149172575/
【小説】ZOMBIE ゾンビ その18【創作】
http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/occult/1162726951/
【小説】ZOMBIE ゾンビ そのX【創作】
http://hobby9.2ch.net/test/read.cgi/occult/1171025209/
【小説】ZOMBIE ゾンビ その20【創作】
http://www.hobby10.2ch.net/test/read.cgi/occult/1185269625/
【小説】ZOMBIE ゾンビ その21【創作】
http://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/occult/1196923264/
7本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 21:42:03 ID:tEbXEYPR0
スレ立てるときはちゃんとしようぜ?
立てたいのは分かるけど。

>>6
8本当にあった怖い名無し:2009/10/20(火) 21:45:14 ID:looadU9p0
\   / .::::::::::::::::::::::::;;:;;::,ッ、::::::   )  く   ホ  す
  \ l  ,ッィrj,rf'"'"'"    lミ::::::: く   れ  モ  ま
     Y           ,!ミ::::::: ヽ  な  以  な
`ヽ、  |           くミ:::::::: ノ   い  外  い
     |、__  ャー--_ニゞ `i::::,rく   か  は
``''ー- ゝ、'l   ゙̄´彑,ヾ   }::;! ,ヘ.)  !  帰
      ゙ソ   """"´`     〉 L_      っ
      /          i  ,  /|    て    r
≡=- 〈´ ,,.._        i  't-'゙ | ,へ     ,r┘
,、yx=''" `ー{゙ _, -、    ;  l   レ'  ヽr、⌒ヽ'
        ゙、`--─゙      /!         `、
  _,,、-     ゙、 ー''    / ;           `、
-''"_,,、-''"    ゙、    /;;' ,'  /         、\
-''"    /   `ー─''ぐ;;;;' ,'  ノ      
   //    /     ヾ_、=ニ゙
9セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/20(火) 21:54:40 ID:pkG6CZKpP
スレ立て乙!

さっそくゾンビ官渡投下させていただきます。
他スレへの移住または別スレ立ては、一区切りついてから検討します。
10セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/20(火) 21:55:53 ID:pkG6CZKpP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(155)

逢紀は張郃の言った意味が分からなかった。
「逆だと?」
逢紀が聞き返すと、張郃は気まずそうに答えた。
「これは我々武将の考えだが・・・いくら自分の大切な剣でも、命の瀬戸際で切れない剣を優先するのかって話だ。」
張郃はそれ以上言わなかったが、逢紀には何となく分かってしまった。
そして、ひどく気分を害した。
張郃の言葉から導き出される仮定は、逢紀にとって相当都合が悪いものだったのだから。
「殿が捨てたかったのが、私・・・ですと?
聞き捨てならぬ!!」
「いや、私はただ仮定を述べただけで・・・。」
張郃は慌ててなだめようとしたが、逢紀はすっかり頭に血が上ってしまった。
逢紀はつかつかと歩き出して部屋の出口まで行くと、くるりと振り返って言った。
「今から、私が実際に殿に聞いてきます!!
張郃殿、もし違っていたらただじゃあおきませんからね!!」
張郃が止めるのも聞かず、逢紀は袁紹の部屋の方へ歩き去ってしまった。これが最悪の事態を招く事になるなど、張郃の頭では考えが及ばなかった。

逢紀が袁紹の部屋に入ろうとした時、袁紹は曹操と仲良くおしゃべりの最中だった。
ちょうど脱出の話が終わり、逢紀の事を話し始めたところだった。
扉に手をかけた逢紀の耳に、袁紹の声が飛び込んできた。
「・・・逢紀は連れて行きたくない。
あやつは一瞬とはいえ、わしを裏切ったのだ。」
「!?」
逢紀ははたと手を止めた。
部屋の中から、憎しみと嫌悪に満ちた袁紹の声が流れてくる。雲行きが怪しいのは感じた、しかし聞かずにはいられなかった。
逢紀は扉を開けるのを止め、耳をそば立てた。
11セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/20(火) 21:57:00 ID:pkG6CZKpP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(156)

まさしく、禁じられた冥府への扉だった。
袁紹は本人が聞いているとも知らず、逢紀への負の感情をぶちまけた。自分はもう逢紀を許せない、信じられないとはっきり口に出していた。
しかも、それに曹操が同意した。
「おれもあいつは好かん。
できれば、捨てていきたいところだ。」
その言葉を聞いた瞬間、逢紀は天地がひっくり返ったような衝撃を受けた。
逢紀の感覚では、自分は誰よりも早く曹操の臣下として振る舞い始めたのだから、曹操に気に入られるのは当然なのだ。曹操と敵対していた袁紹をいち早く捨て、すぐさま曹操に尻尾を振って見せたのに、捨てられるなんて・・・。
思わずへたり込んでしまった逢紀の耳に、なおも残酷な事実が流れ込んでくる。
袁紹は逢紀を真っ先に捨てるつもりで、切れ味の鈍った剣を持つよう仕向けた事。沮授が生きていたら、逢紀はそこで袁紹自身の手で殺されていた事。
しかも、その意見にも曹操は同意したのだ。
何もかもが、有り得ないような惨事だった。
逢紀は目をカッと開いて天井を見つめ、歯が割れてしまいそうなほど噛み締めた。
心の中に湧き上がるのはひたすら袁紹と曹操への憎しみ、恨み、怒り・・・郭図と審配へのひがみ、嫉妬、そねみ・・・自らを省みる感情など、一片もなかった。
逢紀も許攸と同じで、自分の考えを疑わず、それ以外を想定しない男だった。
それゆえに、曹操が義理を欠く人物や媚を売る人物を嫌い、敵であっても忠義を貫く人物に惚れるという事に気付けなかった。
世の中、おだてて媚びれば気に入ってくれるとは限らないのだ。
これは間違いなく、逢紀自身の卑屈さと判断違いが招いた事態だ。
しかし、逢紀はそれを認められず、他の人間に全ての罪を押し付けた。
(見ていろ、今に貴様らに地獄を味わわせてやるぞ!!)
理不尽な怒りをたぎらせながら、逢紀は体を引きずるように部屋に戻った。
12セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/20(火) 21:58:33 ID:pkG6CZKpP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(157)

逢紀が部屋に戻った時、待っていたのは高覧一人だった。
張郃は郭図の様子を見に行ってしまって、いなかった。
逢紀は、さも慌てた様子で高覧に声をかけた。
「たたた大変です高覧殿、殿と曹操様が私を殺そうとしているのです!!」
それを聞くと、高覧は案の定、目を丸くした。
「どうしてまた?」
そこで逢紀は、さも悔しそうに高覧に訴えた。
「郭図と審配が、私に反逆の罪をなすりつけて、君主二人がそれに耳を傾けてしまったのです。私があの二人をそそのかして反逆を企んだと、そういう事になってしまったのですよ!
しかも、郭図は反逆者としてあなたの名も挙げています。
このままでは、私たちの命は・・・。」
なんと逢紀は、郭図と審配の陰謀で自分と高覧の命が危ないと吹き込んだのだ。
高覧は元来単純な男だし、郭図に裏切り者呼ばわりされて弩で撃たれた事もあって、いとも簡単に逢紀の言う事を信じてしまった。
そこで逢紀は、高覧に二人で脱出しようと持ちかけた。
「かくなる上は、二人でここを脱出し、河北を奪ってしまおうではありませんか。
ゾンビは単純な生物です、自分たちが脱出する門の近くに生きた動物を落として気を引けば、我ら数十騎が駆け抜ける事はできましょう。
そのうえ門を開いたままにすれば、ゾンビは城内になだれ込んで、私たちを追ってくる者は少ないはず。この城の全員を生贄にして、私たちは生きられる。」
「うむ、それは良い考えだ!」
高覧はあっさり賛成してしまった。
逢紀はさらに、郭図の様子を見に行った張郃は奴らと通じていると吹き込み、高覧の怒りをあおった。逢紀は己の誤りを指摘した張郃をも逆恨みしたのだ。
その夜、高覧は眠っている張郃を縛り上げた。
張郃の頭がはっきりした時はすでに遅く、抵抗できない状態だった。
逢紀は張郃に事のいきさつを殴りつけるように話し、さんざん八つ当たりしたうえで、張郃をベッドの下に転がして行ってしまった。
13セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/20(火) 21:59:56 ID:pkG6CZKpP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(158)

しかし、二人の脱出が成功したかというと、そうでもなかった。
二人は門から少し離れたところに豚や犬を落としてゾンビの気を引き、確かにそれで一時的に門をたたく音は止んだ。
「よし今だ、出るぞ!」
成功を確信した二人は、ためらわずに門を開いた。
しかし、そこには相変わらずゾンビが隙間なくひしめいていた。
数十万のゾンビが厚く城を囲んでいるのだから、その程度で包囲が解ける訳がないのだ。完全な読み違いだ。
夜闇のせいで先が見えなかったため、逢紀と高覧は密集したゾンビの中に突っ込み、あえなく食われてしまった。そんな奴らをのうのうと生かすほど、天は甘くなかったのである。
その時最後尾にいた兵が恐れをなして城内の者に助けを求めたため、城内の者は素早くゾンビの侵入を察知できた訳だ。

「・・・という訳でございます。
曹仁殿が見つけてくれなければ、私も食われるところでした。」
話し終えるころには、張郃はすでに鎧を直し終えていた。
曹操はその話を聞いて、どこが悪かったか考えを巡らせていた。
まず曹操の失敗は、袁紹と私的な話をする時に人払いをしておかなかった事だ。逢紀自身にあの会話を聞かれたのは、痛恨のミスだ。
それから袁紹の失敗は、逢紀を捨てる準備をしておいて、状況が変わってもそれを修正しなかった事だ。袁紹が汚れた剣をきちんと回収していれば、逢紀が気付くことはなかった。
それがこんな大事につながろうとは・・・。
悔しがる曹操を現実に戻すように、後ろから太い声が響いた。
「おーい、徐晃を連れて引き揚げてきたぞ!
ついでにしょーもねえ文官も、一緒に拾ってきてやった!」
夏侯淵の声だ。
徐晃と夏侯淵が引き揚げてきて、しかも途中で郭図たちを拾って連れてきたというのだ。これで脱出に必要な人材はそろった。
ここからが正念場だ。曹操は脱出に向けて、頭を切り替えた。
14たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/21(水) 21:46:08 ID:ptj6hJSm0
今晩は!
そしてスレ立て乙かれ様です!

新スレなので、あらすじ貼りますね
あと、ゾンビハンター6の(1)〜(3)も貼り直します
15たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/21(水) 21:46:25 ID:ptj6hJSm0
「ゾンビハンター これまでのあらすじ」
1〜5

ーー ゾンビによって破壊された死の街。
全身を黒いレーシングスーツに身を包んだアザミは、驚異的な身体能力で3000体ものゾンビを駆逐していく。 鋼鉄の槍を振るい、素手でゾンビの頭蓋を砕く。

アザミは、ノブアキという男と行動を共にしていた。アザミは、ノブアキの首筋に犬歯を突き立て、血をすする。アザミがゾンビを狩り、ノブアキがバックアップするという奇妙な関係があった。
一介のサラリーマンであったノブアキは、通勤中の地下鉄でゾンビ発生の現場に居合わせる。
機転によって切り抜けたノブアキだったが、地上に出たノブアキを待っていたのは人々の不信の目だった。目の前でゾンビに、襲われていく人々。

それから半年後、アザミとノブアキはバイクで東北を目指していた。
今までのように、ゾンビを狩り始めるアザミ。
ちょっとしたミスで、ゾンビに捕まる。アザミは逃げるために、躊躇なく自らの右足を切り落とした。

ノブアキに助け出されたアザミは、かつての自分を回想する。
ーー 幕末の江戸。貧乏旗本の娘である阿左美(アザミ)は、戦死した許婚の供養のため京都にいく。
阿左美(アザミ)には、人に言えない夢想があった。
ーー荒涼とした死の世界。この世の終わりを、自分の目でみて見たい。
幕府軍が敗走した京都の鳥羽伏見で、夕暮れのなか一人立ち尽くす阿左美(アザミ)。
不意に背後からフランス人将校らしい男から、声をかけられる。
自分の夢想を語った阿左美(アザミ)に、男は「自分ならこの世の終わりを見せることが出来る」という。
そして、男は阿左美(アザミ)の首に牙を突き立てるのであった...
16たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/21(水) 21:47:19 ID:ptj6hJSm0
「ゾンビハンター 6」
(1)

ノブアキとアザミは、郊外の水質試験場の跡地にいた。
ゾンビの発生以前に遺棄されたものらしく、コンクリートの壁に切られた窓には、サッシすらはまっていない。
ノブアキは煙草に火をつけ、ゆっくりと紫煙を吐き出した。これからの行動を必死に考えていた。アザミの戦闘力を期待できない状況で、どうやって生き残るか... そればかり考えていた。

ーー 夜明けまでに、日光を遮断できる場所を探す。
その場所のゾンビを掃討する。
そこを拠点にして周辺のゾンビを殲滅する。
北に移動する。

これだけのことを、ノブアキ一人でこなさなければならない。
ーー 不可能だ。
と言うのが、ノブアキの結論だった。

「ん....」
アザミが薄く目を開けた。
「アザミ... 」
ノブアキは、何か言おうとして口をつぐんだ。何と声をかければいいのか分からない。
「...長い夢を見てたわ。あたしが...」
「血が止まらないんだ」
ノブアキは、アザミを遮って言った。なるべく感情を抑えたつもりだった。
17たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/21(水) 21:48:02 ID:ptj6hJSm0
(2)

アザミは開きかけた唇を閉じると、薄く力なく微笑んだ。
「......そうなの」
「圧迫包帯も止血剤も使った!でも止まらないんだ!俺はっ... 俺が...」
握り締められたノブアキの両拳が白くなっている。
「いいのよ、気にしないで。自分で切ったんだから」
アザミの声は、子供を諭すように優しい。
「どうすれば治る?」
「さぁ..? あたしもこれは初めてだから... ただ...」
「ただ?」
「あたしの本質は血なの。体はただの入れ物。ちょっとぐらいの傷なら治るのよ」
アザミの言葉は何気なかったが、ノブアキの直感が何かを知らせた。
18たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/21(水) 21:48:45 ID:ptj6hJSm0
(3)

「アザミ。今まで一番ひどかったケガは?」
「火傷かな?曇りの日なら大丈夫かと思って、昼間に外に出たの。皮がベロベロになったけど、いっぱい飲んだら一週間くらいで治ったかな」
「わかった、ありがとう。少し休め」

ノブアキはバイクに戻ると、装備を確認した。

上下二連式の猟銃、一艇。
警察官用5連発拳銃、二丁。
手榴弾、二個。
縁を研いだシャベル。
鉈。
弾薬は装弾してある分だけだ。

サイドカーをばらす。出来るだけ軽くしたかった。バイクのタンクからガソリンを抜いた。リザーブだけでも50kmくらいは走れるだろう。
食用油や牛乳などの瓶の中身を捨てる。ガソリンを半分入れ、砂や洗剤などを半分入れた。
大きさはまちまちだが、8本ほど出来た。

安心できる量でないことは、元より承知していた。持ちきれないほどの、銃器があっても無事に帰れる保障はない。

ーー 考えること、勇気をもつこと...それがオレの剣だ

ゾンビが地上に溢れだしてから、半年。ノブアキの中で何かが変わろうとしていた。
19たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/21(水) 21:50:48 ID:ptj6hJSm0
あらすじ見ると、ロクな話じゃないな...on
z

まぁ気を取り直して...
続き〜
20たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/21(水) 21:51:03 ID:ptj6hJSm0
(4)

「ホントだって! 信じてよね」
ジュンはリスのようなくりくりとした目を輝かせながら、ヒキタの手を引っ張った。
インターチェンジの側にある大型のショッピングセンターの中の生き残りだ。
屋上のパーキングに登る。スロープで地上と繋がっているので、コンテナや資材を使って封鎖してある。
「ほらっ!」
ジュンが指差す方向に双眼鏡を向ける。
ーー いるっ! 確かに「生きている」人間が!
双眼鏡の中には、確かに疾走するバイクの姿があった。薄暗くてはっきりとは確認できないが、サイドカーを付けたバイクのようだった。

「ね?ほら、だから言ったでしょ?」
「わかったから! ちょっと静かにしてくれないか?」
ヒキタは双眼鏡の倍率を下げ、広い範囲を見渡した。
ーー ...やばいぞ。そっちは...
ヒキタの目には大勢のゾンビの群れが映っていた。

「もう... ちょっとはわたしのこと褒めてくれたっていいんじゃないのかなぁ〜」
ジュンは、ゆるいパーマがかかった長い髪の毛先をいじりながら言った。
「ジュンちゃん。下にいってコモダさんを呼びなさい。出来るね?」
「はぁーい」
ジュンは答えてから気づいた。
ーー センセイ口調で言われると反射的に返事しちゃうわたしって...
21本当にあった怖い名無し:2009/10/21(水) 21:51:16 ID:8V6pbCi00
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           O 。
                 , ─ヽ
________    /,/\ヾ\   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_   __((´∀`\ )< というお話だったのサ
|_|__|__|__ /ノへゝ/'''  )ヽ  \_________
||__|        | | \´-`) / 丿/
|_|_| 从.从从  | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\  /   ::::::::::::ゝ/||
────────(~〜ヽ::::::::::::|/        = 完 =
22たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/21(水) 21:51:54 ID:ptj6hJSm0
(5)

ヒキタは42歳になる。東京から発生したゾンビが東北に雪崩れのように押し寄せてくるまでは、高校で数学を教えていた。
初めは、テロ。そして、伝染病と報道された。学校も閉鎖になり、自宅待機を命じられた。
報道を見ていた住民の反応は二種類だった。

報道の通りに自宅で立てこもる者。
県外に脱出しようとする者。

「北海道の自衛隊は強いので、北海道に逃げれば大丈夫」ーーー そんな噂も、人から人に伝わるたびに、大袈裟にかつ信憑性を帯びて語られた。

ヒキタは二つのグループのどちらでもなかった。
律儀に学校の連絡網で、各家庭の安否を確認し、必要であれば援助を申し出た。
ただヒキタも自分の家族には逃げて欲しかった。父には北海道に逃げるようにと、ありったけの物資を積んだ軽トラックと、現金を300万円ほど渡した。もっとも、この事態に現金が役に立つかどうかは、わからなかったが...
妻と子供達にも避難を勧めたが、一緒に残るといって聞かなかった。

「ここには知り合いや、お世話になった人もいる。介護を必要とする人もだ。
避難といえば聞こえはいいが、見捨てることは出来んよ」
ヒキタの父は言った。
「じゃあせめて、ナオコと子供達だけでも...」
ヒキタは食い下がった。
「頑固な舅と一緒じゃナオコさんが可哀相だ。...だか、いよいよというときは、尻をまくって逃げの一手だな」
そういってヒキタの父は、カラカラと笑った。
ヒキタが中学生のときに母が他界してから、男手一つで育ててもらった。厳しかったが、同時に優しい父親でもあった。
父が依然として頼もしく思った。それが嬉しくて、ヒキタはつられて笑った。

ヒキタが父のしゃがれた笑いを聞いたのは、それが最後になった。
誰も本当の事態を把握していなかった。その後訪れたのは、まさに悪夢だった。
23たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/21(水) 21:52:41 ID:ptj6hJSm0
(6)

その日、自衛隊によって封鎖された道路には、見物の人だかりが出来るほどだった。
テレビで見た映像には現実感が無く、人々は何と無く好奇心で集まっていたのかも知れない。
また、普段目にすることのない、オリーブ色の迷彩服と無骨な銃器...自衛隊の装備と精悍な隊員たちの横顔が、安心感を与えていた。

ヒキタは今でも鮮明に思い出せる。
高速道路の彼方から、陽炎をまとわり付けながら、ぽつりぽつりと黒い人影が見えてきたことを。
点が線になり、やがて道路いっぱいの死者の行進を見た。
そして、甲高い絶叫と共に、蟻の大群のように押し寄せてくる死者の群れ。
凄まじい俊足。昔見たモノクロームの映画に出てくるゾンビような、緩慢な動きなどない。

自衛隊の威嚇射撃など通用するはずもない。
恐慌をきたした見物人。
隊員の怒号が飛び交う。
絶え間ない射撃音。
それはまさしく、人類が何千年と積み上げてきた文明が、為す術も無く崩れていく光景だった。
ーー もう、駄目だ。
ヒキタが思ったとき、将棋倒しになった見物人の中から小柄な女性が這い出してきた。
自分の生徒だったら説教するほどの悪態をつきながら。
彼女がジュンだった。

ジュンのアルバイトしていた、アイスクリーム屋が入っているショッピングセンターに逃げ込み、立てこもった。
そうするしかなかった。
24たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/10/21(水) 21:53:45 ID:ptj6hJSm0
今夜はこれまでにしとうございます
続きは週末にでも
25本当にあった怖い名無し:2009/10/22(木) 17:51:03 ID:u49qAlXg0
どなたか18〜 みれる保管庫しりませんかー
26セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/23(金) 20:51:11 ID:KxnByfiJP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(159)

于禁と李典は袁紹の姿を認めるや否や、郭図の背中を押して袁紹の方に走らせた。
「あ、ちょっと・・・殿!?」
バランスを崩して郭図が倒れこむ先には、袁紹が涙を浮かべて両手を広げて待っていた。
郭図はためらいながらも足を止めず、袁紹の腕の中に飛び込んだ。
その瞬間、袁紹は郭図をきつく抱きしめた。
「何をしているのだ、こんなに心配させおって!!
わしがおまえをどれだけ大切に思っておるか、おまえには分からぬのか!?」
大切な君主にはっきりとそう言ってもらえて、郭図は歓喜に身を震わせた。もう迷う事はない、郭図が進む道はこの君主のそばにしかないのだ。
「ああ、申し訳ありません・・・これからは何があろうと、あなたを信じて参ります!」
袁紹が郭図を放すと、今度は審配が郭図に抱きついた。
「なあ、私たちは友達だろう?
だったら私を置いていくなよ、二人で力を合わせて進めばいいだろ!!」
否定はしなかった。
今この瞬間に、郭図は心の底から審配を友と認めたのだから。
「そうですね、みんなで河北に帰りましょう。」
郭図はその細腕に力をこめて、弩に矢をつがえた。

曹操が北玄関の扉を開くと、すでに建物の両側からきたゾンビがだいぶ近くに迫っていた。
さすがに許褚はよく耐えているが、夏侯惇の方はだいぶ押されて兵も半減している。
「二人とも、もう良い!
皆で一団となって北門へ向かうぞ!」
曹操の号令一下、生存者約百人は一斉に北門に走った。後ろを固めている李典が振り返ると、出てきた北玄関はあっという間にゾンビに埋め尽くされ、建物の他の入り口や窓からもゾンビがあふれてきた。
その中には、知った顔もぽつぽつ混じっている。
そうとも、地獄はここからだ・・・李典は武者震いして前を向き直した。
27セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/23(金) 20:52:12 ID:KxnByfiJP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(160)

城内は、阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。
曹操と共に建物から脱出できなかった者は、一人残らず悲惨な運命をたどった。
怖気づいて地震の時のように机の下に隠れてしまった者は、扉を破って入ってきたゾンビに引きずり出されて食われた。
どこに隠れても、手の届く範囲であればゾンビはやって来て獲物を貪った。
運良く堅固な場所に立てこもった者も、脱出の術はなく死を待つばかりとなった。
地獄はすでに、城内の市街地にも広がっていた。
大通りを走る曹操たちの前に、大勢の民とそれを追うゾンビの大群が現れた。民はもうすっかり我を失い、泣き叫び、逃げ惑っている。
「ええい、突っ切れ!!
邪魔する者は民でも殺せ、どうせ助からぬ!」
それを聞くや否や、曹仁が前方を塞ぐ民に大薙刀をふるった。
助けを求めてきた民の首が飛び、同時に民につかみかかっていたゾンビの頭が、白い眼球とともにぱっくり上下に分かれた。
頭の上半分が後ろにずり落ち、頭蓋骨の傘から土色になった脳みそがどろりと垂れる。
切り口の肉の色といったら、黄色、青、黒などおよそ人とは思えない色が調和などおざなりに混じり合って、目にするだけで自分まで腐りそうな嫌悪感が走る。
「ぐぶうっ!?」
突然、荀攸の口から黄色い胃液が吹き出した。
足がもつれて転びそうになる荀攸を、夏侯惇が素早く支える。
蒼白な顔でみぞおちを押さえる荀攸をはげますように、審配が言った。
「大丈夫だ、苦しくてもこの程度じゃ死なない。
それに、すぐに何も出てこなくなる。」
経験したから言える事だ。
審配も一昨日、初めてゾンビを見た時は胃が空になるまで吐いた。戦に慣れていない文官なら、誰でも一度は通る道だ。
審配と郭図はすでに経験しているため、今日はゾンビを見ても割と落ち着いている。
荀攸は声を出せずに無言でうなずき、顔をくしゃくしゃにして唾を吐き出した。
28セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/23(金) 20:53:43 ID:KxnByfiJP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(161)

南北に走る大通りと東西に走る大通りの十字路に来た時、曹洪が叫んだ。
「あ、兄上!
西門が開いています!!」
市街地の向こうに見える西門から、ぞくぞくとゾンビが流れ込んできている。
周りが市街地で人が多いためゾンビはそちらに気をとられているのか、入ってきた数の割にまだそれほど広がってはいない。
(北門から入った奴だけにしては数が多いと思ったが・・・そういう事か!)
西門付近には、民のものと思しき荷物が散乱していた。
おそらく、北門からのゾンビ流入を知った民が恐れをなして逃げようとし、西門に押し寄せて内から破ってしまったのだろう。
曹操はもう一つ曹洪にたずねた。
「東門はどうなっている?」
「民が、すごい勢いで集まっています。
きっと、あちらも長くは持たないでしょう!」
思った通りだ。
西門からもゾンビが流れ込んだため、今度は東門を破ろうとしている。
もう少し時が経てば、東門からも西門と同じようにゾンビがなだれ込むだろう。そうなる事は火を見るより明らかなのに、恐怖に踊らされる民の何と無知なことか。
曹操はあきれかえった。
「・・・が、今はその方が良い。
我らとて、北門を内側から開けるのだ。
そのためには、北門の外にいる奴らが少しでも減ってくれた方が良い。
あのように西門と東門が開いておれば、より多くのゾンビが城内に入るであろう。その分、外にいるゾンビの数が少なくなる。」
確認するようにつぶやいて、曹操は北門をにらみつけた。
北門にも民はいるが、東門よりずっと少ない。
袁紹の陣に近い方が危険だと思い込んでいるのだろう。
その民の愚かな思い込みが自分に味方してくれた・・・曹操は少しだけ口角を上げ、薄笑いを浮かべていた。
29本当にあった怖い名無し:2009/10/23(金) 23:43:07 ID:TPy2XAku0
セイレーンだのタンクだの、お前ら才能ないわ
恥をさらして何やってんだか(失笑
文盲のアホ読者にチヤホヤされてやがんのwww
30本当にあった怖い名無し:2009/10/23(金) 23:43:39 ID:boslDfDc0
ここまで駄作のみ
31本当にあった怖い名無し:2009/10/23(金) 23:47:33 ID:Oh2AlpoH0
emptyさんはマダー?
32本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 00:13:30 ID:tXoIwSXh0
>>29
やだ・・・この人才能あるの?・・・かっこいい・・・
33本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 00:17:52 ID:fAF4OXh4O
あげとくか
34本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 00:59:47 ID:A8MR71m80
で、具体的にどの辺が「才能ない」の。
厨に多いんだよね「自分の都合の良い結果」だけ述べて、理由や理論は一切ない奴。

同人系の厨報告スレを見て回って気づいた報告されている奴に共通する特徴な。
35本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 05:15:11 ID:sOZabGLA0
>>34
構うな構うな
頭のテッペンか内側にキノコでも生えてんだろ
36本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 06:34:47 ID:fAF4OXh4O
起きた
またあげときます
37本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 09:44:32 ID:LUsJvRoJ0
つまんねえ馬鹿小説www
38本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 11:31:43 ID:yp5yjeIT0
低レベルな小説書いてる3人くらいですげー馴れ合ってるwww

      小w説w家wきwどwりwww
39本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 13:11:16 ID:fAF4OXh4O
一応あげとこうかな^^
40本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 13:42:32 ID:tXoIwSXh0
>>39
ここはsage進行だカス
何回も上げんな死ね

41本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 15:21:33 ID:cEQb2MPS0
晒しAGE
42本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 15:23:40 ID:KrlTdaTp0
セイレーンの惨獄死まじつまんねえわ
チラ裏以下の駄文をいちいち書き込むんじゃねえよ
状況も間違った事ばっかりでマジで萎えるわ
改変2次するなら頭使って書けやボケカス
43本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 17:28:52 ID:fAF4OXh4O
みんなに読んで欲しいから
      あげちゃう
44本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 19:45:05 ID:eaakwIYu0
低レベル作者もどきを曝しあげ
45本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 19:49:01 ID:fAF4OXh4O
天ぷら食べました^^
46新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/24(土) 22:41:50 ID:+aCyy54t0
ゾンビと横須賀(35)

薪の爆ぜる音が心地良く響く。
かなり遠くからでも、ドン・キホーテの屋上から、一筋の煙が立ち昇っているのが確認できただろう。

元は椅子だったらしい薪が、バーベキュー用のグリルの中で煌煌と燃え盛っている。網の上では人数分の魚が音を立てていた。
網の上には数匹の魚が並べられ、自警団員達の手にはワインの注がれた紙コップと、チョコ菓子が握られていた。

振舞われたそれは、多少の苦味があった。
恐らく、保存状態が良くないためなのだろうが、酒を飲めなくなって五年も経つ自警団員達にとっては、甘美な誘いだ。
口に入れた瞬間に葡萄の豊かな香りが広がり、まろやかな甘み、わずかな苦味が舌の上に広がる。

溶けてパッケージと癒着したチョコ菓子は酸味が強い。普通に袋を破ると、食べれる部分のほとんどは袋にくっついてしまう。

だが、甘い。
甘いのだ。

世界が崩壊して、普段の生活でもっとも縁遠くなる味。
それは、甘みだ。

しょっぱい、苦い、酸っぱい。
自然界に数多とある味わい。
しかし、この人工的な、しつこいくらいの甘さを自然に感じることは、この崩壊した世界では絶対に不可能だ。

幸福。

それは抗い難い、麻薬のような力を秘めている。
自警団員は我先にとワインを味わい、チョコ菓子を咀嚼する。
チョコ菓子を一息にむさぼってしまうと、急に物足りなさを感じて茶色く染まった袋を眺める。
47新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/24(土) 22:43:26 ID:+aCyy54t0
ゾンビと横須賀(36)

やがて、誰かが袋に顔をうずめた。
袋に癒着したチョコ菓子を、丁寧に、丁寧に舐め取る。犬のように、下卑た行為。
だが、誰もそれを非難しない。どころか、一人、また一人とチョコ菓子の袋に顔をうずめる。
全員がプライドを捨てるまで、一分とかからなかった。

「せめて、ちゃんと噛んでくださいね」

苦笑混じりに言うのは、要救助者の尾畑健吾だ。
背は博康と同じぐらいだから、170後半、というところだろう。だが、病的に肉の落ちた肉体は、風が吹けば枯れ木のようにへし折れそうだ。

「あ、ええ、すいません」

チョコ菓子の最後の一欠けらを嚥下し、博康はやや顔をあからめた。
食べている間は夢中になってしまったが、改めて考えると、あまりの意地汚さに自分で自分が嫌になる。

だが、それほどに魅惑的だったのだ。
それは他の自警団も同様で、皆、いまさらながらに自分の所業に恥じ入っている。

「いやいや。謝らなくても。むしろ、私が全部食べてしまっていたので、皆さんに差し上げるのが一本だけになってしまって申し訳ないです」

尾畑は5年間をこのドン・キホーテで過ごしたという。
最初の数日は要救助者が十数人いたのだが、食料が乏しくなりはじめ、立てこもる際に怪我をしていた尾畑にわずかの食料を残して全員出て行ったらしい。
結局、尾畑は怪我が癒える迄、わずかの食料と、手をつけられていなかった倉庫の菓子類で凌ぎ、それ以後は海で取れる魚や、細々と栽培した野菜などを主食としていたという。

事件が起きるまで、尾畑がボーイスカウトのグループリーダーという仕事に就いていて、サバイバルに多少知識があったのも幸いした。
48新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/24(土) 22:45:48 ID:+aCyy54t0
ゾンビと横須賀(37)

「でも、どうしていまさらなんです?」

博康が気になっていたことを単刀直入に口に出す。
気になっていることは早めに解決しないと気がすまない性質だ。

しかし、確かにそれは全員の思っていることだった。
昼から今まで、自警団員総出でドン・キホーテの中を見て回った。少なくとも一夜を過ごすのだから、中の様子が分からないことには万が一に対処できない。

だが、そんな心配など杞憂でしかないほど、ドン・キホーテは堅牢な要塞化されていた。
出入り口はすべて鉄板や板で完全に塞がれ、自警団員の体当たりにも悲鳴一つあげない。唯一もろい場所といえば、店の裏手に面する倉庫の大型シャッターだが、それも外からダンプを駐車することで完全に塞がれている。
ダンプは車輪止めで固定されているし、言うことは何もない。

食料と水の問題がないとなれば、ゾンビが空でも飛んでこない限り、半永久的に立てこもることが可能だろう。

「失礼とは思いますけど、ここは完璧です。食料も豊富に手に入り、住環境も良い。ゾンビの脅威もない。
 誤解を恐れず言えば、横須賀基地の人間より、よほど人間らしい生活をしています。
 ここを出るなら、もっと早く出れたでしょうし。どうして、今なんですか?」

ほんの少しだけ、声に力を込めた。
言外に、何か企んでいるのか、と匂わせる。

こんな荒廃した世界に一人で5年も生活していたのだ。尾畑が破滅論者だとしても不思議ではない。
尾畑の答え如何によっては、横須賀基地に連れて帰るわけにはいかない。
そのあたりの微妙な判断まで、この救助任務には含まれている。
49新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/24(土) 22:47:47 ID:+aCyy54t0
ゾンビと横須賀(38)

ほんのわずか、張り詰めた空気に気がついたのか、尾畑は小さく笑って頭を掻いた。

「簡単なことですよ」

尾畑がひょい、とジーンズをたくし上げ、右足を露にする。
足首に薄汚れた包帯が見えた。

「一週間くらい前にひねっちゃいまして。しばらく動けなかったんです。
 まあ、すぐ治ったんですけど、このまま一人でいたら、もし動けないような怪我をした時に大変だ、ってことに今更ながら気づきましてね。
 返事が来るとは思ってなかったんですが、のろしを上げたり、無線を使ってみたり、誰かと合流できないか、と思いまして」

納得していただけました?と目で聞きながら、尾畑はぱん、と手を打った。

「さて、そんなことより魚が焼けました。
 塩は自家製ですが、胡椒はS&Bの正規品ですよ。特別な日に使おうと思って取っておいた、最後の一瓶です」

貴重な調味料が惜しげもなく使われる。
わずかに引っかかる所がないでもなかったが、目の前のご馳走を前にして、そんな疑念はどこかに吹っ飛んでしまう。
博康と自警団員は、差し出されるまま、香ばしい魚に舌鼓を打った。

ただし、ほんの少し。
ほんの少しだけ、博康の心には刺さるものが残った。

だが、それも嚥下する魚の、胡椒の利いた味わいの中に埋没していく。
そして、夜は深け始めた。
50新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/24(土) 22:52:02 ID:+aCyy54t0
皆さんこんばんは&お久しぶりです&1乙。
荒れてますが、そんなことは一切スルーで投下してみました。
駄文は分かりきってることですので、追求されても困るっていうか。

とりあえず、久しぶりなのでゾンビを出すかどうか迷ったのですが。。。
話の流れ上、いきなりゾンビを出すのは微妙なので辞めました。
変わりに、書きたかった食料事情と、人間のどうしようもない欲求を書いてみました。
実際、こういう状況なら、菓子のために人殺しがあっても不思議じゃないと思いますし。

さて、少し読みやすくしてみようと工夫してみました。
どうでしょう。読みにくかったら、次回から普通に戻します。
忌憚のないご意見お待ちしてます。あ、感想もです。ではでは、次回は来週半ばに^^ノ
51本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 23:11:15 ID:Xad+P8jwO
>>42
お前偉いな
ちゃんと読んでるみたいだな
俺一ヶ月くらい前から読むの辞めたぞ
もう他の新しい作者に期待してログ保存しかしてないぜ
52本当にあった怖い名無し:2009/10/24(土) 23:36:42 ID:fAF4OXh4O
あげようかな
53本当にあった怖い名無し:2009/10/25(日) 01:16:37 ID:a9T07XcKO
私も荒らしをしたことがあります。楽しいんですよね…バカにするのが。振り返ってみれば、ただ自分が浅ましいだけでしかありませんでした。あとになって振り返ると恥ずかしいから、自分の悪意を少しずつでも抑えられるようにした方がいいですよ。
私が恥ずかしいと思ったのは、たとえばいざ、自分が小説を書こうとしても、自分が荒らしをしたスレの中の小説の足元にも及ばないと気がついた時です。

荒らしをする人間で文才ある人は、まずいないと思います。書き手の皆さん、私が言えたことではないが、正真正銘の幼稚さも自覚できない、皮肉ではなく、かわいそうな子どもである荒らしなど無視してください。
54本当にあった怖い名無し:2009/10/25(日) 04:58:22 ID:RQXHQX5l0
つまんね

ハイ次
55本当にあった怖い名無し:2009/10/25(日) 06:32:07 ID:a9T07XcKO
>>54

坊や、つまらないだろう?
ここは大人が来るところだよ?坊やみたいな子どもが来るところじゃないよ?

大人になってから来なさい。
56本当にあった怖い名無し:2009/10/25(日) 19:21:46 ID:ibz1tEHq0
投下スピードが遅すぎ
やるきねえならスレに書き込むなよ糞が
やる気のねえ作者はさっさと消えてしまえや
57ロメロ ◆AB5fTSvpY6 :2009/10/25(日) 20:30:46 ID:sqkmCoXc0
Station of the dead  (1)
終電間際、ほろ酔いの私は猛烈な便意に襲われて駅の便所へかけこんだ。
普段なら紙があるか確認するんだが、 酔いも手伝ってか
入るなり下ろしたズボンにチップする勢いで排便した。
ふう、危ないところであった。と一息ついてから、初めて紙がないことに気が付いた。
たいていこういう時は前の人が使い残したティッシュが有って事なきを得るのだが
この時は運悪くそれも無かった。 所持品の確認をしてみる。
ボールペン、フロッピー、はさみ、スティックのり、万札が2枚、小銭・・・
だめだ。ケツは拭けそうに無い。
私はケツを出したまま考えた。
万札で拭くのも勿体無い。
そうだ、スティックのりで便を拭き取り、汚れた部分をはさみで切り取ってはどうか。
・・・いやだめだ、デリケートな菊門にのりをくっつけたまま帰ったらかぶれてしまいそうだし
そもそもあんな棒状の物で拭き取れるのか?
私はスティックのりのキャップを外し、手の甲で感触を確かめてみた。
これはマズイ。さもすれば女の舌が這っているかのような感触だ。
こんな物を菊門に使用したら余計な紙が必要になってしまう。
とりあえず彼とはいい友達になれそうだ。
さらにケツを出したまま考えた。
58ロメロ ◆AB5fTSvpY6 :2009/10/25(日) 20:32:11 ID:sqkmCoXc0
Station of the dead  (2)

もうケツを出したまま10分近くが経過している。
このままケツが乾燥するのを待つというのはどうか。
一瞬考えたが、あと5分もすれば終電だ。
朝帰りをしようものなら女房に何を言われるかわかったもんじゃない。
まさか「ケツを乾燥させてた」とは思うまい。
私は個室の中をケツ丸出しで散策してみた。
そしてゴミ箱の中に空のティッシュ袋、なぜかナプキンを発見した。
ナプキンの布部分で拭けるかもしれない。
が、しかし。経血が付いていないとはいえ、使用した痕跡がある。
しかも男便所にだ。私の脳裏には変態オヤジが鼻息荒く装着している姿が浮かんでいる。
・・・だめだ。ナプキンは却下だ。あとはティッシュの空袋しかない。
しかしこれは薄いビニール製で出来ており
少なくともケツを拭く為に作られたものではないので、便を拭き取るにはいささか頼りない。
59ロメロ ◆AB5fTSvpY6 :2009/10/25(日) 20:33:13 ID:sqkmCoXc0
Station of the dead  (3)

私はケツを出したまま今年度上半期ベスト3にランクインする勢いで熟考した。
ふと、仕事でタイに滞在していた時の事を思い出した。
タイでは日本のような便所はなく、道端の草陰で用を足すのが普通なのだ。
草陰といっても顔は往来から丸見えであるから
道を歩いているとうら若き女性が用を足しているのがわかってしまうというスカトロ大国なのだ。
なので、大便中に知り合いなどが通った時などは日本人の私には非常に気まずかった。
こちらはケツ丸出しで排便中なのに、「サワディ(こんにちわ)」などと
笑顔で挨拶されてもちょっと困るものがある。
話しがそれたが、タイではケツを拭くときに紙などは使わず
予めバケツに水をもって用を足し、終わったら指で拭いて
その指を水で洗うとい方法が用いられている。
一見指に大便が付着するのが不潔のように感じるが、慣れてしまえば
天然のウォシュレットのような物で、非常に清潔である。
予断だが、入国して1週間くらいの時に
林の中で用を足していたら20歳位の可愛い女性がいきなり近づいて来て、泡を食った事がある。
向こうは親切にもバケツを 持って来てくれたのだが、こっちにしたら生き恥である。
ウンコしてんだから来るなよな。
60ロメロ ◆AB5fTSvpY6 :2009/10/25(日) 20:34:19 ID:sqkmCoXc0
Station of the dead  (4)

さて、本題に入ろう。不幸中の幸いで、終電間際は人が少ない。
当然便所も然り。私がケツ丸出しになってからは人が入ってきた気配は無い。
帰国間際に滞在した村の村長さんに「お前はタイ語さえ喋れば誰も日本人とは思うまい」
とまで言われた私だ。 (実は今でも家でたまに「天然ウォシュレット」を使っている)
手洗いまでこのまま行って事を済まし、 ズボンを穿くのに20秒とかかるまい。
よし決行だ!私は意を決して個室から出陣した。
頭の中では、私の決意の表情のアップ、そしてスローモーションで立ち上がり
今まさに戦場に向かい歩み始める 映画の主人公の勇姿が浮かんでいた。
(実際はズボン押さえながら丸出しのケツを突き出してアヒルのように歩く中年男なのだが)
61ロメロ ◆AB5fTSvpY6 :2009/10/25(日) 20:35:17 ID:sqkmCoXc0
Station of the dead  (5)

何とか洗面台まで辿り着き、ズボンの片方の裾から右足を抜き
洗面台の上に乗せるという公共の場にあるまじき体勢になった。
角度によっては便所の外から少し見えてしまうのだが、背に腹は変えられない。
目の前の鏡には焦燥と不安が入り混じった なんともいえない顔をした中年男の
あられもない姿が映っている。一物が洗面台にくっついて冷たい。挫けそうだ。
なんとか魂を奮い立たせてまず一拭き。よし、いい感じだ。あと2回もすれば完璧だろう。
十分終電に間に合う。嗚呼、手が震える。菊門を変に刺激しないように落ち着いてさらに一拭き。
あと1回だ。やっと家に帰れる。その時。
ケツの事しか頭になかった私の耳に不穏な音が聞こえた。あれは・・・バケツ!?
そう。その地下鉄の駅は利用者も少ない為、終電前に清掃員が最後のチェックに来たのだ。
これはまずい。 こんな姿を見られたら末代までの恥。
どんな親しい友人や、女房にさえ見せた事ないのに。
「しかたない、あと1回は諦めよう。早急にズボンをはいて作戦終了だ。
まだ少し気持ち悪いけどこんな姿を他人に見られるよりは
どんなにましだろう。(この間0.1秒)」ベストコンディションであれば
疾風の如き素早さでズボンをはき、 何食わぬ顔をして便所から出るのに5秒もあれば十分だ。
しかし焦りからか足が引っかかり、うまくズボンがはけない。やばい!
62ロメロ ◆AB5fTSvpY6 :2009/10/25(日) 20:36:58 ID:sqkmCoXc0
Station of the dead  (6)

切羽詰まった私は何を思ったか出来る限りドスの利いた声色で
「なめてんのかてめえ!」「どうしてくれんだコラ!」 などと叫んでいた。
あたかも便所内は極道と絡まれている一般人の修羅場であるという事を清掃員にアピールしたのだ。
これで少しでも便所に入ってくるのを躊躇してくれば儲けものである。
相変わらずケツは出ていたが、精一杯の演技をしながらズボンをはいた。
この作戦は功を奏し、案の定バケツの音は便所の外で止まった。ナイスヘタレ!

演技する事に気持ちよくなって来た頃、またバケツの音が聞こえてきたが
ズボンをはくだけなら十分な時間稼ぎが出来た。
私はベルトを下に垂らし、右の靴と靴下を手に持ったまま悠然と戦場を後にした。
清掃員のおじさんは怪訝な顔をしていたが、 もう関係ないもんね。
電車の中で靴下をはく時に周囲の視線が痛かったが、仕方がない。
この飼いならされた羊達は 戦場の厳しさを知らんのだ。
振り返って見ると、ものの15分位の出来事なのだが
普段何事にも動じないキャラで通っている私が大量の汗をかき、
精神は疲弊しきっていて、まるで2日徹夜で仕事をしたかのような疲労感に襲われていた。
63ロメロ ◆AB5fTSvpY6 :2009/10/25(日) 20:38:54 ID:sqkmCoXc0
今日はここまでです。初めて投稿したので緊張しました。
また来週投稿します。まだゾンビがでてこないorz
64本当にあった怖い名無し:2009/10/26(月) 18:56:41 ID:f9j/xnRo0
>>63
ユーモラスな文体とゾンビ(まだ出てないけど)のミスマッチに
期待感が高まります。
来週を楽しみにしてますね。
65本当にあった怖い名無し:2009/10/26(月) 19:20:42 ID:UyZyjtYE0
>>64
いや、ただの荒らしだろ
66セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/26(月) 20:54:50 ID:ABayS1/sP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(162)

北門に着くと、曹操は民が障害物を壊すのを温かい目で見守った。
民が障害物を取り除いて門を開けられるようにすると、曹操は突如として声を張り上げた。
「そこまでだ!
まだ門を開けてはならぬ!!」
とたんに、民は驚いて振り向いた。
民の中から、初老の男が出てきて、目を白黒させて訴える。
「そ、そんな、あんまりでございます・・・この門を開かずしてどこに逃げろと言われるのですか?
わ、私たちに死ねというのですか・・・!」
曹操は体に力をこめ、威厳ある声で答えた。
「まだ待てと申すのだ。
東と西からできるだけ多くの死者を入れ、城外の死者が少なくなったところで門を開く。
その方が、生きるにより良かろう。」
それを聞くと、民は互いに顔を見合わせ、すごすごと北門の前からどいた。
しかし、数人どかない者がいた。
見れば、二人の幼い子供を連れた壮年の男だ。男は子供たちをかばうように、門の前に陣取って、必死の形相で曹操をにらみつけていた。
「どうした、どかぬか!」
曹操が一歩前に踏み出すと、男は体を震わせて声をあげた。
「も、門が開いたら、おらが一番先に逃げるだ!
おらも娘たちも、今までまじめに生きてきた、何も悪い事はしてねえ!!
それなのに、何で今までさんざん人殺してきたお侍のせいで、娘たちを危険な目に遭わせなきゃならねえだ!?罰が当たって死ぬのは、おまえらだけで十分だ!!」
壮年の男はじりじりと後ずさり、門のつかえ木に手をかけた。
近付けばすぐにでも門を開ける、そう言わんばかりだ。
この手の民は始末が悪い。民に限らず、こういう状況で善悪とか因果とかを持ち出す者は極めてたちが悪い。こういう状況では今までにしてきた事など関係なく、生きるのに最善を尽くした者が生き残る・・・それが分かっていないからだ。
曹操が近付こうとすると、壮年の男はがくがくと震えながら門のつかえ木を持ち上げようとした。
67セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/26(月) 20:56:41 ID:ABayS1/sP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(163)

次の瞬間、男の手のすぐそばに何かが刺さった。
「うわぁ!?」
男は飛び上がって驚いた。
「そこまでだ、それ以上門に手を出せば娘もろともハリネズミだぞ!」
刺さったのは、弩の矢だった。
男の前で仁王立ちになる袁紹の後ろには、斉射準備を整えた弩隊が整然と並んでいた。二十人程の弩兵が、男と娘たちに狙いを定めている。
「おまえが門を開けるより、我が軍の弩の方が速いぞ。
我らと共に脱出を試みるか、ここで楽に死ぬか選ぶが良い!」
「ひーっ!!」
男は真っ青になって、へなへなとその場に座り込んだ。
曹操は配下の兵に男を監視するよう指示すると、袁紹にお礼を言った。
「よくやってくれた、感謝するぞ。」
すると、袁紹は頼もしい笑みを浮かべて答えた。
「友の窮地を見捨てぬのは当然の事、必ず共に脱出するのだ。
もし脱出に成功したら、わしはこの弩を一丁おまえにやろう。元はおまえを含めて敵を倒すためのものだが、死体と戦うにも心強いぞ。」
曹操と袁紹は、手を取り合って笑った。
そのほがらかな光景に、周りで見ている者の心も少しだけほぐれた。
それを邪魔するように、市街地から民の絶叫が届く。東門が開いたのだろう。
西側の市街地から聞こえる悲鳴がしぼんでいき、家々の間からよたよたと死者が現れる。それと反比例して、東側の市街地で悲鳴と怒号が飛び交う。
どこかで失火があったのか、ゾンビを燃やそうとしたのか、遠くで火の手が上がった。
城門から人形のモノがなだれ込み、街は混沌として煙に包まれていく・・・それは遠目に見れば、普通に城が陥落する時と同じだった。
そう、これは戦なのだ。生者と死者の戦なのだ。
68セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/26(月) 20:57:57 ID:ABayS1/sP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(164)

死者の群が、だいぶ迫ってきた。
眼前の大通りを埋め尽くし、家々の間をぬって、のろのろと近付いてくる。
海辺の集落を飲み込む津波のように、全てを死で塗りつぶそうとやって来る。
70万の兵・・・もし迫ってくるのが生者であったとしても、城内に侵入を許したら曹操はこうなっていたであろう。
曹操は改めて、袁紹の勢力の強大さを思い知った。
だが、それは今の曹操にとって心の支えでもある。
袁紹の持つ豊かな領土は、生者にとって堅固な城となるはずだ。
そこにたどり着ければ、の話だが。
(そろそろ潮時か・・・。)
曹操は門にはりついている曹洪に声をかけた。
「どうだ、門はたたかれているか?」
「いいえ、振動はありません!」
曹操はごくりと唾を飲んだ。
どうやら、門のすぐ側にはゾンビはいないようだ。しかし果たして、自分たちが走りぬけられるだけの空間があるかどうか・・・ちょっと先にゾンビがひしめいていれば終わりだ。
だが・・・どちらにせよ城内に逃げ道はないのだ。
曹操は意を決して、全軍に声をかけた。
「これより、城門を開いて脱出する。
外がどうなっているかは分からぬが、我々は脱出せねばならぬ。
外にゾンビが多い事はおれも想定している、しかし何としても打ち破って包囲を抜けるのだ!皆、気を引き締めよ!」
それを聞くと、兵士たちは武器を構えて門の前に集まった。
袁紹が曹操の隣に並び、自軍の将たちに指示を出した。
「郭図と審配は張郃の側を離れるな。弩隊は門が開いたらすぐに前進し、近くにゾンビがいれば倒せ。一発射た後は、矢をつがえて武将の後ろに下がれ。」
「夏侯惇は荀攸を守れ。夏侯淵、徐晃、許褚は前方の敵を斬り進め。右は于禁、左は曹仁が守れ。李典は後方を頼む。曹洪はおれの側を離れるな。」
曹操が指示を出し終えると、二人の君主は声をそろえて号令をかけた。
「開門!!」
生存への扉が今、開かれた。
69セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/26(月) 20:59:35 ID:ABayS1/sP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(165)

ギイギイと重い音を立てて、官渡城最後の門が開く。
東西に向かって歩いていたゾンビたちが、一斉に北門の方を向いた。
それでも、曹操たちの眼前には、ゾンビがまばらになった広場ができていた。
「撃て!!」
袁紹の号令で、弩隊が素早く前進し、近くにいるゾンビに矢を射掛けた。たちまち十数体のゾンビが倒れ、ゾンビがさらにまばらになる。
「突っ込め!!」
曹操の号令で、夏侯淵、徐晃、許褚が数十人の兵士とともに突撃する。
両手を伸ばして歩み寄るゾンビの大口に、槍が吸い込まれていく。
徐晃の振り回す大まさかりはゾンビの手足をもぎ、不自由な身になったゾンビは兵士がとどめを刺していく。
「よし行くぞ、皆続け!」
曹操自身も愛用の名剣を抜き放ち、屍の積み重なる道に踏み出した。
そのころになると、北門周辺にいたゾンビたちが曹操たちに気付き、そちらに向きを変えて歩き出した。
城壁付近には、確かにゾンビは少なかった。
しかし、城壁から離れたところには、城内に入る流れに乗り遅れたゾンビがまだぞろぞろと群れていた。それらがゆっくりと集まり、徐々に、しかし確実に包囲の輪を締めていく。
いくらも行かないうちに、脱出する一行の周りに死体の壁ができた。
先頭の猛将たちは奮闘しているが、ゾンビは次々と押し寄せる。
「くそ、きりがない!これ程力を振るっているのに・・・。」
徐晃の顔が苦しそうに歪む。
徐晃の大まさかりは重くて威力が高い分、使い手の疲労も激しい。
いつもの戦なら、派手な戦いぶりで敵兵が逃げ出すので徐晃は自分のペースで戦えるのだが・・・恐怖を感じないゾンビ相手にそれは通用しないのだ。
このままでは、囲みを抜ける前に消耗してやられる・・・曹操の額にじわりと脂汗が浮かんだ。
70セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/26(月) 21:12:01 ID:ABayS1/sP
脱出行開始です。
再びゾンビものらしくなってきました。

軍別に、登場人物の生死を整理しておきます。
袁紹軍:生存 袁紹(君主)、郭図(文官)、審配(文官)、張郃(武将)
    死亡 逢紀(文官)、高覧(武将)、許攸(文官)、沮授(文官)
曹操軍:生存 曹操(君主)、曹洪(武将)、曹仁(武将)、徐晃(武将)
       夏侯惇(武将)、夏侯淵(武将)、許褚(武将)
       李典(武将)、于禁(武将)、荀攸(文官)
    死亡 楊修(文官)、郭嘉(文官)

文官の死亡率が異様に高いです。
ゾンビに侵入された状況では武将の有利は動かし難いので。
71本当にあった怖い名無し:2009/10/27(火) 00:55:19 ID:dHbUtcb40
>セイレーン様
GJ!
さて生き残れるのか……
でも、どの道三国志の時代に人類滅亡は免れそうにもないな……

>新人さん
ひょっとして、要救助者が実は理性を持ったゾンビですか〜?
ところで、理性を残しても食人はするんですか。

>ロメロさん
ハリー! ハリー! ハリー!
早くゾンビを出すんだ。

自分も続きを書きたいな……
72sage:2009/10/28(水) 13:24:46 ID:6UEK9R2Q0
ほす
73本当にあった怖い名無し:2009/10/28(水) 19:26:06 ID:k0xldcew0
誰か保管庫つくってくれー 
お願いしますー
74新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/29(木) 00:12:38 ID:aFqMPPDe0
ゾンビと横須賀(39)

ほんの少し肌寒さを感じる夜陰の中で、博康はけたたましい音に目を覚ました。
目を覚ましたのは、博康だけではない。
ドン・キホーテの中に待機している自警団員全員が、一瞬で飛び起きている。

すかさずジェラルミン盾と特殊警棒を探るのは、訓練された自警団員ならではだろう。
博康もその例にもれず、枕元に立て掛けていた特殊警棒を掴み、一息に立ち上がる。頭は常に覚醒しきっていた。
戦闘職についている人間にとって、大切な資質はいくつもある。その中の一つが、目覚めの良さだ。
もちろん、朝に弱い自警団員がいないわけではない。
だが、何かが起こった時、即応できない自警団員はいない。即応できること。それが自分の身を守り、仲間の身を守り、引いては横須賀基地を守る。

「皆さん、大変ですっ」

慌てた様子で駆け込んできたのは、要救助者の尾畑だ。
屋上へ通じる階段を指差しながら、わあわあと意味の分からないことを叫んでいる。相当に混乱しているらしく、喋るのももどかしいとばかりに屋上へと駆けていった。
着いてこい、ということだろう。
少なくとも、何かが起こっていることは間違いない。

「行くよ」

博康達が階段を二段飛ばしに登ると、踊り場で積み上げられた椅子が崩れていた。さきほどの騒音は、尾畑がこれにつまづいたものらしい。
邪魔な椅子を蹴散らして、屋上へと出る。

「どうしたの」

気の抜ける台詞だが、声には緊張を纏っている。

「落ち、おち、おち、おち」

呂律が回っていない。
75新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/29(木) 00:15:43 ID:aFqMPPDe0
ゾンビと横須賀(40)

「落ち着いて」

言われて、すぐに落ち着けるのなら苦労はないだろう。
尾畑も落ち着こうと必死だが、それ以上に何かを伝えなければいけないという焦燥感に駆られているらしく、なかなか落ち着くことができない。

「仕方ない。ごめんね、尾畑さん。歯、食いしばって」
言うや、一閃。
鞭のようにスナップの効いた平手が、尾畑の頬で弾けた。

「うわ、痛い」
自警団員の一言は、間が抜けていたとしか言いようがない。
いまは痛いというよりも驚いたほうが大きいらしく、盛大に転んだ尾畑は、真っ赤に腫れた頬を押さえて目を白黒させている。

「落ち着いた? じゃあ、何があったか簡潔によろしく。こっちも命かかってるんで」
「あ、そうなんですっ。大変なんですっ。新庄さんが落ちてしまって・・・」

最後まで聞く必要はない。
屋上の縁に駆け寄る。
いた。
倉庫前に停車されたダンプの荷台に、自警団員の新庄が横たわっている。

「大丈夫っ?」

声をかけると、弱々しくだが手が振り替えされた。生きてる。意識もある。だが、動くことは難しいようだ。

「どうしてあんなところに」
疑問は当然だ。
だが、そんなことよりもまずなんとかして助け出すことが先決だろう。
ダンプの上にゾンビが上がれないのであれば、特に助ける必要はない。あと5、6時間で朝日が昇る。それまでそこにいればいいだけの話だ。
だが、ダンプの荷台に積載された土砂がこぼれだし、ゾンビがそこから登ろうともがいている。
76新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/29(木) 00:17:19 ID:aFqMPPDe0
ゾンビと横須賀(41)

いまは多少の段差でつまづいているようだが、いずれゾンビの上をゾンビが這ってくるだろう。そうなれば、多少の段差などないも同然だ。
ゾンビが新庄の元にたどり着くのは時間の問題だ。少なくとも、5、6時間などと悠長なことは言っていられない。
とにかく、行動あるのみ。

「向井、大芝、橋本、降りて。橋本と大芝でゾンビの対処。向井は応急処置と、引っ張りあげられないか確認」

名指しされた3人が、はいよ、と軽く返事をしてロープと武器を取りに店内に戻る。

「よし、残りは一緒に来て倉庫で待機ね。屋上への吊り上げが無理なら、シャッター一旦空けて中に引き込むよ」
その結果どうなるのか、この場にいる全員が理解していた。
ダンプはかなりの大きさで、シャッターを塞いでいる。しかし、それでもシャッターのほうが1mほど大きいのだ。
ダンプはシャッターの右よりに止められているため、シャッターを開ければ、ダンプの届かない左側からゾンビが大挙してなだれ込んでくることになる。
それを押し返し、さらに外に出てダンプの上から怪我人を含む4人の人間が退避する時間を稼ぐ。

圧倒的な人員不足。
下手を打てば全滅の可能性さえある。

「そ、そんなことできるわけが・・・」
尾畑の気弱な声。
だが、全員がそれを一笑に付した。

「さ、いきましょうや。新庄が待ってますからね」
通り過ぎざまに博康の肩を小突き、自警団員達は笑いながら倉庫へ向かった。

「さて、行きましょうか」
気軽に告げる博康に、尾畑は異様な物でも見るように顔を歪める。
77新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/29(木) 00:20:13 ID:aFqMPPDe0
ゾンビと横須賀(42)

「危険・・・ですよ?」
「知ってますよ。でも、仲間は見捨てない。それが自警団ってやつなんで。良い部下でしょ?」

博康は盾を担ぎなおし、尾畑を促して倉庫へ向かった。
道中、新庄が落ちた理由を尾畑に簡潔に聞く。
新庄は見回り要員で、屋上で周囲の様子を監視する任務についていた。特に何か起きるわけでもなく、眼下で蠢くゾンビを眺めるだけの、退屈な仕事だ。
そこで、差し入れに水を持ってきた尾畑に、ワインをねだったらしい。結果、酔っ払って足を踏み外し、転落。
馬鹿丸出しだ。同じ自警団員としてはずかしい。

「あとで説教かな」

博康はため息とともに一人ごちながら、倉庫につながる扉をくぐった。

「どんな感じ?」
先に待機している3人に聞く。
シャッターの横にうず高く積み上げられた荷物に這い登った中年の自警団員が、窓を覗いている。

「さっき、向井が降下。ゾンビどもはまだ荷台には辿りついてないみたいだな。あとは特に・・・あ、大芝降下。よろけて、落ちち・・・立て直した。アホめ」
苦笑の混じった声。
危険を前にしても、余計な力は入っていない。気負いもない。ただ、仲間を助ける。その信念だけがその場を占める思いだ。

「橋本降下」
しばらく、時間が経過する。
尾畑は落ち着かないようで、きょろきょろとあたりを見回していた。
落ち着かせてやりたいところだが、事態が収集するまで、結局本当のところで落ち着くことはできはしないだろう。
78新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/29(木) 00:22:27 ID:aFqMPPDe0
ゾンビと横須賀(43)

博康は事態の推移を見守ることを優先した。
それから数分して、事態は急変する。

「向井から報告。吊り上げ不能。意識あり、ただし自立は不可能。命令を待つ」
距離は近いのだが、ゾンビのうめき声でうまく聞き取れないらしく、向井も中年の自警団員も盛大に怒鳴りあっての意思疎通だ。

「よし、じゃあシャッター開けよう。向井達は新庄を連れてなるべく早く中へ入らせて。で、こっちからはゾンビ達を押しのけてスペース作るよ」
「了解」

再び中年の自警団員が窓の外に怒鳴るのを見届けて、博康はくるり、と尾畑を振り返った。

「尾畑さんは扉のとこまで下がってて下さいね。やばかったら言いますから、扉閉めて逃げて。こっちのことはこっちで面倒みます」
いいですね、と目に力を込めると、尾畑は勢いよく首肯して扉のところまで下がった。

「大槌用意」
6班の中では一番若年の自警団員が、博康の声に反応してリュックを下ろした。同時に、背中のホルダーに挿していた鉄の棒を引き抜く。
ひとまず鉄棒は脇に置き、リュックから取り出したのは、直径10cm、高さ20cmほどの円柱状の丸太だ。
丸太の両端は鋭く尖り、真ん中には四角い穴が貫通している。

丸太の穴を鉄棒にあてがい、上から勢いよく拳を打ち下ろして鉄棒を丸太の中に埋める。
数度繰り返すと、丸太の穴は完全にふさがり、穴から5cmほど鉄棒の先が見えるほどになった。
79新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/29(木) 00:24:02 ID:aFqMPPDe0
ゾンビと横須賀(43)

博康は事態の推移を見守ることを優先した。
それから数分して、事態は急変する。

「向井から報告。吊り上げ不能。意識あり、ただし自立は不可能。命令を待つ」
距離は近いのだが、ゾンビのうめき声でうまく聞き取れないらしく、向井も中年の自警団員も盛大に怒鳴りあっての意思疎通だ。

「よし、じゃあシャッター開けよう。向井達は新庄を連れてなるべく早く中へ入らせて。で、こっちからはゾンビ達を押しのけてスペース作るよ」
「了解」

再び中年の自警団員が窓の外に怒鳴るのを見届けて、博康はくるり、と尾畑を振り返った。

「尾畑さんは扉のとこまで下がってて下さいね。やばかったら言いますから、扉閉めて逃げて。こっちのことはこっちで面倒みます」
いいですね、と目に力を込めると、尾畑は勢いよく首肯して扉のところまで下がった。

「大槌用意」
6班の中では一番若年の自警団員が、博康の声に反応してリュックを下ろした。同時に、背中のホルダーに挿していた鉄の棒を引き抜く。
ひとまず鉄棒は脇に置き、リュックから取り出したのは、直径10cm、高さ20cmほどの円柱状の丸太だ。
丸太の両端は鋭く尖り、真ん中には四角い穴が貫通している。

丸太の穴を鉄棒にあてがい、上から勢いよく拳を打ち下ろして鉄棒を丸太の中に埋める。
数度繰り返すと、丸太の穴は完全にふさがり、穴から5cmほど鉄棒の先が見えるほどになった。
80新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/29(木) 00:25:17 ID:aFqMPPDe0
ゾンビと横須賀(44)

あとは、鉄棒の両端を紐できつく結び、丸太も同様にがんじがらめにする。
元々ある程度抜けにくい。紐でこれだけがんじがらめにすれば、丸太はそう簡単に鉄棒から抜けることはない。

自警団の名物、ゾンビとの直接対決時のみ使用される破砕大槌である。
材料が簡単に手に入り、時間さえあれば容易に作ることが可能。取り回しも簡単で、解体すれば持ち運びにも便利。
さらに、威力が絶大とくる。

シャッターが手動で開けられ、怒号が響き渡る中を、博康は勢いよく駆け抜ける。
自警団員3人が、盾でゾンビを打ち返す後ろから、
「しゃがめ!」
開口一番、駆け寄る勢いのままに大槌を振り抜く。
威力重視のぶん回しだ。重さと慣性に引っ張られ、体が流れる。体勢が崩れた。

立て直すまで、2秒。
だが、その間に襲われることを心配する必要はない。博康の一撃で空いた空間に、3人の盾が入り込む。

ちぎれ飛んだ頭、割れた頭蓋、薄汚れた眼球、黒く濁った血潮。それらを弾き飛ばしながら、3人の盾が振るわれる。
ここが根性の据えどころだ。

「向井、降りろ!」
絶叫が、開戦を宣言した。
81新人さん ◆H4mwWEe7mA :2009/10/29(木) 00:26:59 ID:aFqMPPDe0
投下完了。
いつもより長めなのは、戦闘シーンで盛り上がったからです。
筆が進んで、時間オーバー。
次は早めにあげます。投下は週末予定ですー
感想等あればよろしくお願いしますノ
ではでは。
82セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/29(木) 21:42:23 ID:v51ZTBhkP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(166)

「徐晃、下がれ!
夏侯惇、前へ出よ!」
疲れ気味の徐晃を一旦下がらせて、曹操は周りを見回した。
曹操たちは今、北門の前に掘ってある空堀に差し掛かっていた。
この空堀は一時的に水を流し込んだ事があったため、底は今でも少しぬかるんでいて、ますます体力を奪われる。
しかし疲れを知らないゾンビたちは、少し速度を落としたものの止まる事無く迫りくる。
その時、曹操のすぐ側で兵士が悲鳴を上げた。
「うひゃああ!?」
ゾンビに噛まれたのではない。
曹操が見ると、その兵士は下半身が土に埋まっている。
「だ、誰か助けて!お、落ちるって・・・落ち・・・ぎゃあああ・・・!」
兵士がもがくたびに体が地面に沈んでいき、ついに兵士の体が目の前から消え、少し遅れてボチャンと水音がした。
後には、地面に真っ暗な穴がぽかりと口を開けていた。
曹操は一瞬、あっけにとられた。
「落とし穴だと、誰がこんな・・・まさか、奴らに知能が!?」
慌てる曹操の方をたたいて、袁紹が突っ込んだ。
「いや、それはない。
そもそもこれはわしが掘った穴だ、官渡城を落とすためにな。」
そう言われて、曹操ははっと思い出した。
曹操と袁紹の戦いは、知略を尽くした戦いだった。
袁紹は地下から官渡城に侵入するためにモグラ作戦と称して、自陣から官渡城に向けて地下道を掘り進めた。曹操はそれに対抗するため、官渡城の北側にだけ水堀を作って地下道に水を流し込んだ。
その時の水堀が、今の空堀なのだ。
「そういう事か!」
曹操は目の前に開いた漆黒の穴に、一筋の希望を見出した。
83セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/29(木) 21:43:16 ID:v51ZTBhkP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(167)

「全軍、無理に進むな。しばしこの場を維持せよ!」
すぐさま進軍を止めて、曹操は袁紹にたずねた。
「この地下道はどこにつながっている?
分岐はしているか?出口は塞いであるのか?」
袁紹はちょっと考えて答えた。
「この地下道は我が陣の中央、本陣付近につながっておる。
分岐のない一本道だから、途中で方向を失わなければ迷う事はないであろう。
出口は・・・穴の口に板を乗せて塞いである。人が乗っても大丈夫なくらいの板だが、破れぬ事もないだろう。」
曹操は、今度は穴の中に向かって呼びかけた。
「おい、生きているなら返事をせよ!
そこは通れそうか?」
すると、穴の中からくぐもった声が返ってきた。
「大丈夫です、水はありますが腰くらいの深さです。」
それを聞くや否や、曹操は顔を上げて叫んだ。
「徐晃、曹洪!荀攸を連れて急ぎこの穴に入れ!」
一瞬の判断だった。
このままここにいても、死者の群に飲み込まれるだけだ。
ここではないどこかへつながる道があるなら、迷わず進むべきだ。たとえその先がゾンビの発生源であっても、これだけのゾンビがここに来ているという事は、発生源にいるゾンビはかなり少ないと思ってよい。
今の袁紹の陣は、少なくともここより安全なはずだ。
徐晃が素早く穴に滑り込み、後から入る荀攸を受け止める。
続いて張郃が入り、郭図と審配もそれに続いた。弩兵たちも次々と穴に吸い込まれていく。
主な将と噛まれていない兵が続き、曹操と袁紹も退却して、後は夏侯惇と曹仁を残すのみとなった。夏侯惇は穴に足を突っ込みながら、一心不乱に戦い続ける曹仁に声をかけた。
「何をしている曹仁、おまえも早く来い!」
それを聞くと、曹仁は無言で腕を上げて見せた。
84セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/10/29(木) 21:44:20 ID:v51ZTBhkP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(168)

曹仁の左腕は、一部着物が破れて肌がむき出しになっていた。
そのむき出した肌には、肉をえぐり取られた傷が鎮座していた。
夏侯惇は驚愕した。
「そ、曹仁・・・おまえ、噛まれたのか・・・!?」
曹仁は振り返らずに腕を下げ、また槍を振るい始めた。
「情けない限りだ・・・少し油断してしまった。
こうなった以上、わしはもうついて行く事はできぬ。せめて少しでも長く、この穴をゾンビから守ろう。噛まれた兵とともに、最後まで盾となってみせる。
夏侯惇、殿を頼んだぞ!」
声の最後に、少しだけ涙が混じった。
夏侯惇はただ曹仁の冥福を祈り、暗闇に身を躍らせた。
背後で大きな水音を確認すると、曹仁は最期の力を槍にこめ、死者の軍団に名乗りを上げた。
「曹子孝が相手になるぞ!
成仏したい奴から、かかって来い!!」

地下道の中に降り立つと、夏侯惇は前方に向かって声を張り上げた。
「おーい、急いで進め!
曹仁の犠牲を無駄にするな!!」
「犠牲だと!?」
前方で夏侯惇の声を聞いて、曹操は思わず足を止めた。
曹仁は曹操の一族であり、曹操軍の中でも名の通った猛将である。その曹仁がこんな所で生存の道から外れてしまうとは・・・。
後ろから、夏侯惇の涙をこらえた声が聞こえる。
「曹仁は奴らに噛まれて、今は最期の力でこの穴を守っている!
皆、とにかく前に進むんだ!曹仁の分まで生き延びろ!!」
それを聞いて、曹操はまた足を動かして歩き出した。
暗闇の中で、ざぶざぶと騒がしい水音に混じって、しくしくとすすり泣く声が聞こえる。
誰もが曹仁の死を悼んだ。そして、死を前にしても殿を守る事を忘れぬ忠誠に、尊敬と感謝があふれて止まらなかった。
85本当にあった怖い名無し:2009/10/29(木) 22:33:22 ID:WgDUBBAwO
シエン?
86empty ◆M21AkfQGck :2009/10/31(土) 01:48:05 ID:OALmjadL0
とりあえずギリギリ今月…といった感じです。
やっと展開が進んできます。
なんというか、文が進むに従って読み難くなりますねごめんなさい。
次はもっと早く投稿できる予定…です。


いくら夏とはいえ、真夜中になれば暗くもなる。
せいぜい七時が明るさの限度だと思っていたりするが、詳しくは知らない。
「―――何も見えん」
ロビーから二階にあるラウンジへ上り、そこから街の方をぼーっと眺めているのだけど、星と月の明かりだけではただただ重苦しい暗闇が見えるだけだった。
街からかなり距離があるということもあり、道端に明かりの類は全くと言っていいほど見当たらない。
アレが寄ってくるのを防ぐためにも、この施設の電源は落としていた。
何かしら明かりがあるのは、スタッフ専用の控え室、つまりは外に光が漏れ出さない場所だけ。それに、売店にあった安物の懐中電灯だけでは満足な明かりとは言えない。
光源が無くとも冷房はついているため、施設の中はやや肌寒い。
ふと、壁にかけてある時計を見た。
硝子から入ってくる月明かりのおかげで、暗闇に慣れた目には十分すぎる程に明るい。
二十四時二十分。
―――おや。

3rd day
87empty ◆M21AkfQGck :2009/10/31(土) 01:49:03 ID:OALmjadL0

気がつけば、三日目を迎えていた。
視線を暗い街へと戻し、先程まで考えていたことを反芻する。
―――街に明かりが見えないということは、アレは光を格別に必要とはしない
それだけで、ただの人間にとっては厄介だ。
月明かりや星明りだけでも行動できるとなると、何かしら光を必要とし、夜目であったとしても注意力散漫になるこちらにとっては脅威となる。
相対するのが一体程度ならまだしも、街中ではとんでもない数とまみえることになるだろうし。
郊外であるこの施設の付近には一体も姿が見えないことから、街中で群れて生活しているのだと思う。
恐らくは――きちんと意味を理解しているのかはわからないが――言語を操る程の知能があるのだから、まだ生存者が居そうな場所を虱潰しに探し回っているのだろう。
生存者の中には、ゾンビ映画にのようにバリケードを築いて篭城している人も居るに違いない。
それらを潰すのにしばらく時間がかかるはずだ。
その間に、その人達が喰われない間に逃げ出す。それが、今後の行動指針。
「つまり、見知らぬ誰かを囮にして逃げるわけだ」
これは映画じゃない。紛れもない現実だ。それが、いくらオカルトに塗れているといっても。
そして、自分達は映画の主人公のように何か特別な技や幸運があるわけでも、対等に渡り合える頭脳や武器があるわけでもない。
物語のように、生存者はできるだけ助けて脱出、というわけにはいかないのだ。
もしかしたら、三人が全員助からないかもしれないというのに。
「…考えてて虚しい」
声が微かに反響する。
誰も居ないだだっ広い場所というのは、どうにも好きになれない。
かつては大勢の人が出入りしていたはずの場所に誰も居ないというのは、どこかしら虚ろな空気が満ちている気がする。
その空気が、どうにも好きになれない。必然的に、廃墟は好きになれない。
「寝ないと、明日倒れるな…」
夜は更けてゆく。
88empty ◆M21AkfQGck :2009/10/31(土) 01:50:33 ID:OALmjadL0
「おはよう、二人とも。今日の行動予定を言うわ。
 まずは、足、移動手段の入手。幾らなんでも徒歩で移動する気は無いわよね?」
当然だ。
沈黙を以って肯定する。横でマッサージ機に座っている友人は半分寝ているので返事をしないだけだが。
「で、次は武器。いざとなった場合を考えて何かしら手に入れておいたほうがいい。
 そして、こっちの方が重要。デジカメ等の撮影機器の入手。携帯だと画面範囲が小さい上にバッテリーが長持ちしないと思うしね。
 武器に関してはこれを探すときに入手したらいいと思うの。何か言うことはある?」
「撮影機器に関しては、候補がありますよ。
昨日考えていたんですけど――」

昨日、ここに来る前に友人と行こうとしていた量販店のことを報告したことで、大まかな移動ルートが決まった。
まずはこの施設を出てから昨日来た方法と同じ方法で移動、アレが活動を開始していなければそのまま街中を突破し、開始していればできるだけ迂回して移動。
迂回路は住宅街の庭先や屋根の上、というのが恐ろしい。もしかしなくても発見される確率が高まってしまう。
だがしかし、こうでもしないと量販店へ行く道は存在しない。住宅街の真ん中にあるようなものだからだ。
移動に関しては他にも、双眼鏡を用いるというのもある。
売店にあるような簡素なものであるが、無いよりは良い。
武器に関してはとりあえず槍を引き続き用いるということで方針は決定した。
この時点で、三時。普段ならば眠いはずなのに、精神は何故か高揚していた。

住宅街に到達するまではこれといって変わったことはないため、割愛しようと思う。
ただ、普段歩くのとは違い多大な緊張感を強いられたというだけ。
その道中、女の人と友人とは面識が無いことが判明した。
友人の携帯からかけたのは間違いなく友人の女友達の携帯で、それを受け取ったのが女の
相手は速く動く上に知能を持ち、集団で効率よく行動するから、というのが理由であるが。人、というだけらしい。
肝心の女友達とやらは逃げたのか喰われてしまったのか定かではない。恐らくは後者だと思うが。
この――敢えてこういう表現を用いようと思う――災害は、初期段階での生存者の数が絶望的、というのが共通した見解だった。
89empty ◆M21AkfQGck :2009/10/31(土) 01:52:33 ID:OALmjadL0
青いフレームの、あきらかに児童向けとわかる双眼鏡を目に押し当てる。
案の上倍率はあまり良くないが、それでも肉眼よりはよく見える。
まだ薄暗い住宅街と、その間を縫うように走る道路。
その、然程広くない道路に、影が点在していた。
影の数は八、動いていたり動いていなかったりと個体差は激しい。
動いていないものはただ突っ立っているだけだが、動いているものは周囲を見回しながら道路を進んでいる。明らかに警戒しているとわかる素振りだ。
「八…、厳しいかな」
「厳しいどころじゃないでしょ。まず間違いなく全滅ね」
「でも、初日は五体くらいに追い回されてましたよ自分達」
「幸運でしょ、まだ獲物がたくさんいたから希薄にならざるをえなかったわけだし」
「まぁ、そりゃそうですけどね…」
じっと動いている影の一つを見つめる。
影はある程度こちらに向かって歩き、ある程度すると反対側へと向かって歩くという往復を繰り返していた。
動いている影の数は三、どれかに見つかればアウト。
「全部の道路で…?」
「いや、それはないでしょ、そんなことしてたら幾らいても足りないし。
 多分主要な道路と住宅街の端に重点的に配置してるんだと思うよ」
「外から来るものよりも内側から出るものを警戒してるわけね」
「でも、昨日来たときはあの道路を通ってきたんですけど」
「交代制か、或いは時間帯か…もしくは今日からか」
とすると、意外と生存者は多いのかもしれない。
少なくとも警戒しているほどなのだから。
「なにはともあれ、これであっちに何も居なかった理由が説明できるわ。
 みーんなこっちに回しちゃったのよ」
「最初はただただ闇雲に追いかけてただけなのに…、こう柔軟に組織だって対応されるとやり辛いなぁ…」
「足と武器は諦めて、今のうちに移動しません?」
規模の大きい町や集落を回避して移動すれば、何とか出られるかもしれない。
檻のように内に入ったものを出さない構造なのだから、檻にさえ近づかなければ幾らでも手段はあるはずだ。
「そりゃ、今はこうしているけどいつまでも続けない保障は無いでしょ。
 こういう対応を見せたんだから、この包囲網を広げるくらいのことはやりかねないわ」
90empty ◆M21AkfQGck :2009/10/31(土) 01:55:32 ID:OALmjadL0
「じゃあやっぱり入るしか?」
「車でも見つけてふっ飛ばしながら進めばいいじゃん。どうせ殺人罪とかには問われないし…」
物騒すぎる。
だが、それくらいしか方法が無い。
施設の駐車場にあった車が使えれば良かったのだが、すべからく車の鍵が見つからなかったり明らかに壊れていたりしたのだから仕方ないというものだ。無い袖は振れぬ。
問題はどうやってこの檻の中に入るか、だが…。
ここまで厳重に見張られていては、庭先も屋根も使えそうに無い。そもそも屋根に上れたとして下りることができないのでは自ら捕まえてくれと出て行くようなものだ。
動いている個体を出し抜かなければまず動けない。動いてない個体は寝ているのか起きているのかはわからないが、周囲の物音で起きないほど熟睡しては居ないだろうし、そもそも立っているので寝ているという発想そのものが非現実的だ。
或いは、定点カメラのようなもので、異常を見つけたら知らせるのかもしれないが。
―――考えろ。
自分を叱咤する。
「考えろ…」
それは独り言に近かった。
だが、聞いていたらしく、
「うーん、考えてみた結果…。下手に知恵があると簡単な罠ほど嵌り易いって言うし…。ちょっと試してみたいことがあるんだけど」
女の人の台詞に、思わず双眼鏡から目を離して振り向いた。
反対側で、友人が目を丸くしている。自分の顔も同じようになっているに違いない。
彼女は僅かに笑い、
「いい? 動いてるヤツから目を逸らさないでね」
91empty ◆M21AkfQGck :2009/10/31(土) 02:01:22 ID:OALmjadL0
――カン、カン、カンカラカラカラ…
アスファルトで金属製の何かが跳ねるような音がした。
閑静な住宅街の中、それはかなり大きく響き渡る。
その音にびくりと反応した影が三つ、音のした方向に素早く振り向く。
サラリーマン、学生、作業員といったまちまちな格好をした影が三つ、音源へと駆ける。
それを追い、ただ立ち尽くしていた影が五つ、進み始める。
それらが背を向ける道路を、三つの影が横切っていった。

「ね、簡単な罠に引っ掛かったでしょ」
女の人が、満面の笑みで言った。
まだ落ち着かない心臓のあたりを押さえ、深呼吸をする。
今日も晴れるらしく、雲ひとつない空が見える。星の輝きが弱まっていることから、日の出はもうすぐなのだと知れた。
「確かに、簡単すぎますね…」
手前の家の影に移動し、そこから死角へ向けて空き缶を投げただけ。
それだけで、道路を警邏していた全てのアレらが注意を逸らされたのだ。
その隙に、隠れていた家の庭先から数建先の庭先へ移動し、道路を横切って向かいの家の庭へ侵入、そこから更に庭を伝って適当な民家まで移動し、塀の影に隠れているわけで。
最初の家の影へ見つからないように移動するのにかなり苦労したものの、そこから先はかなり楽だったように思う。ただ走ってただけだし。
視線を家へと移す。
「…とりあえず、この中で――」
休もう、と言おうとしたはずなのだが、言葉が出てこなかった。
家の窓から、顔がこちらを見つめていた。
目が合った瞬間、全身に鳥肌が立ち、脂汗が吹き出てくるのを感じた。


ではまた近いうちに。
92本当にあった怖い名無し:2009/11/01(日) 15:38:01 ID:TSxWpZpEO
近いうちってのはなー。

一週間くらいの事なんだぜ?





嘘です。 半年でも待ってます。
93セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/01(日) 19:50:06 ID:kibyfERkP
おお、ついにきましたか!
こっちは、一区切りの目処が見えてきました。
94セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/01(日) 19:51:07 ID:kibyfERkP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(169)

曹操たちは、光の届かぬ地下道を進んだ。
真っ暗な中、先頭を進む徐晃が時々口笛を吹いて方向を知らせる。
皆一言もしゃべる事もなく、ざぶざぶと水音だけを響かせて進む。
途中で荀攸が疲れ果ててしまったため、夏侯淵が背負った。
「も、申し訳ない・・・こんな時に・・・。」
弱弱しい声で謝罪する荀攸に、夏侯淵は優しく答えた。
「そんな言い方するな、おまえの資本は体じゃないんだ。
その点、おれたちはクソ力しかないからな・・・おまえの仕事を手伝えるのも力仕事だけだ。曹仁だって、死ぬ前に思う存分力を振るうしかなかったんだ。
だからおれも、できる事をする・・・それだけだ!」
ひたすら水の抵抗に逆らって進む中、袁紹軍の文官二人もだいぶ息が乱れてきた。
しかし、袁紹軍にはもう武将が一人しかいない。
張郃がどうしようか迷っていると、弩隊の隊長が言った。
「郭図様と審配様は、我ら弩隊が交代で背負いましょう。
張郃様は前線で命を張って戦われるお方です、このような所で体力を浪費してはなりませぬ。我ら弩兵は、弩を持つ力が残っていればよろしい。」
暗闇の中で、声と手だけを頼りに、弩兵が郭図と審配のもとへたどり着き、背負い上げる。
目に何も見えないせいで聴覚と触覚だけが異様に鋭くなっているせいか・・・弩兵の体から伝わってくる熱が、郭図の心に強く響いた。
そこに人がいて守ってくれる安心感・・・今までの頑なな心では感じるべくもなかった。
様々な想いを孕んで、闇は続いていった。
途中から、歩くに従って水が浅くなり、そのうち足元が濡れているだけになった。
先頭を歩いていた徐晃の足が、何かぶよぶよと柔らかいものを捕らえた。構わず踏み潰すと、暗闇の中に鼻をつく腐臭が広がった。
「まさか・・・!?」
全軍に、じわりと恐怖が広がった。
戦場にはよくある臭い、だが今はすぐさま死を連想させる不吉極まりないものになっていた。
95セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/01(日) 19:51:53 ID:kibyfERkP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(170)

(ゾンビがいるのでは!?)
誰の心にも、そういう考えが芽生えた。
足元に水がないせいで、この先に動いているものがいても分からないかもしれない。
徐晃は恐る恐る、足元の腐臭を放つものに剣を当て、斬ってみた。
その手ごたえは・・・先ほど斬りまくったゾンビにそっくりだった。
「う、うわぁ!し、死体が・・・!!」
徐晃は思わず叫んでしまった。
とたんに、袁紹がそれを遮って叫ぶ。
「落ち着け、感染していないただの水死体だ!
だいたい、わしが掘らせたこの地下道に水を流し込んだのはおまえたちであろうが。その時もここでは我が軍の兵士たちが作業をしていたのだ。
これ程長い地下道なのだぞ、逃げ切れずにここで溺れ死んだ者たちだ!」
袁紹の声は、どこか曹操への当てつけのようだった。
地下道の水没で無駄死にさせてしまった兵を思い出して、怒りがこみ上げてきたのかもしれない。
曹操は一応、袁紹に謝罪した。
「許せ、戦場でのことだ。
しかし・・・感染していないなら気にすることはないな、教えてくれて感謝する。」
「ふん、まあ過ぎた事は仕方ない。」
袁紹は機嫌を直したようだ。
さすがにこの状況で大人気ないと気付いたのだろう。
曹操はほっと胸を撫で下ろして、また進んだ。
しかし、大変なのはそれからだった。
足元には水死体がごろごろ転がっているため、誰もかれも足を出せば踏みつけてしまう。しかも真っ暗で視界がきかないため、避けることもできない。
足をとられて転ぼうものなら、崩れかけた死体にもろに手を突っ込んでしまう。
死体を踏み破れば、鼻が曲がりそうなほど死臭が広がる。
そんな訳で行き止まりにたどり着くころには、全員鼻がばかになっていた。
96セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/01(日) 19:53:12 ID:kibyfERkP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(171)

「殿、行き止まりです。」
徐晃が言った。
「よし、全軍止まれ。
徐晃、上を突いてみろ。」
曹操の命令に従って、徐晃は大まさかりの先についた槍で、真っ暗な天井を渾身の力で突き上げた。
ガッと固いものに刺さる音がし、徐晃が槍を抜くと頭上に光の点ができあがった。
穴を塞ぐ板に開いた小さな穴から、白い光がさあっと差し込んでくる。
それだけで、光の中に浮かび上がる皆の顔が笑顔になった。
とうとう、穴の出口に達したのだ。
「どうだ、壊せそうか?」
「少し時間はかかるでしょうが、壊すのに問題はありませぬ。」
徐晃は近くにいた兵たちを下がらせると、一人大まさかりを振り始めた。
ガンガンと頭に響く音がして、パラパラと木くずが落ちてくる。板が思ったよりぶ厚かったらしく、なかなか破れない。
かすかな光の中で、徐晃の額に汗が光った。
いかに豪傑といえど、これだけ大まさかりを振り続けるのはきついだろう。
だが夏侯淵が言ったように、今はできる人ができる事をやるしかないのだ。
落ちてくる木片が大きくなってきた。板がしなるのに合わせて光の穴が動き、光がサーチライトのように走り回る。
「ふんはあっ!!!」
徐晃のかけ声とともに、ついに大まさかりが板を破った。
差し込んだばかりの光の中、徐晃はさらに大まさかりを振り続ける。板に大きなひびが入り、次の一振りで大きな木片が落ちてくる。
まばゆい光が闇を追い払い、生存の道が大きく開いていく。
白い光を受けて道を開く徐晃の姿は、とても力強く、美しかった。
曹操たちはついに、冥府からの出口に立ったのだ。
97本当にあった怖い名無し:2009/11/01(日) 19:56:07 ID:8IbwWqRo0
         ヽ、        /  思 佳
  務 今 そ   !        !   い き
  め 宵 な   !       |   つ こ
  よ. の た   |      !,  い と
     伽     ノ      l′ た
     を     ゙!  ___ 丶
          ,,ノ' ´    ` ' /=ミ
         /           彡ll'''´
        }          彡lll
       ノ|L_ ! ___ {彡lノ
'- 、.....、r‐''´  }f'tr'i  ''^'tォー` }j/i',|
     ヽ    l.| ´ |    ̄  vijソ.!
         丶 └、     Fイ l′
     /    ',''゙ ,,、二''‐ ,イ ケ|
   , ,/.       ヽ `''"´,/ !  ^|ー、
  / /      _,,」、'....ィ'       '|. \、__
. /./  ,. ‐'''"´    ! /   ,  _」__ヾ',
.,'.,'  /´   └ 、_ ノi   ノ  (、_  ``ヾ!
98empty ◆M21AkfQGck :2009/11/03(火) 02:43:45 ID:HJEh8LG60
>>92
ならばその通りにやってやろーではあーりませんかァ!

セイレーンさんも一区切りということで…。しかし凄いですね、171回…。自分はそこまで続けれません。
99本当にあった怖い名無し:2009/11/03(火) 06:54:25 ID:BePjZJhK0
セイレーンのは長すぎる
新しくここにくる人でセイレーンの小説なんて読みづらいし長すぎるしで読む奴なんかいないよ
100本当にあった怖い名無し:2009/11/04(水) 04:54:26 ID:gvFVc7DeO
私は読んでますが何か?
しかもwktkしながら。

ただ今より腐要素が強くなると、ちょっと……。
最終回とかで本気を出されたら引くwwなので今のうちにカキコ。

つか、100ゲトは良いけど規制がマンドクセ。
101本当にあった怖い名無し:2009/11/04(水) 07:35:23 ID:pIzuK+r80
身内のかばいあいwww
102本当にあった怖い名無し:2009/11/04(水) 13:50:04 ID:VTIetOBYO
雑談に行け!
103本当にあった怖い名無し:2009/11/05(木) 07:29:42 ID:78lXk8gUO
まとめが有れば解決すんだがね
104本当にあった怖い名無し:2009/11/06(金) 00:40:27 ID:KMqro0Ml0
>99
× 新しくここにくる人で
○ 真に偉大なる99様にとって

× 読む奴なんかいないよ
○ 世界のスタンダードたる俺が読まないんだから、きっと誰も読まないに違いない
105本当にあった怖い名無し:2009/11/06(金) 07:42:30 ID:k+sBUYpT0
>>104
お前暗号解くの好きだろ
106セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/06(金) 22:50:56 ID:nULjy4z5P
ゾンビの腐臭は強くなるが、腐要素はこれ以上上げることはないから大丈夫。
私もそれくらいは自覚して書いています。
107セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/06(金) 22:52:23 ID:nULjy4z5P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(172)

地下道の出口を塞ぐ板が破れ、人が通れる大きさの穴が開いた。
徐晃は壁に大まさかりを立てかけ、それを足がかりに勢いよく白日の下に駆け上がった。
そして素早く剣を抜いて辺りを見回す。
「大丈夫です、今のところゾンビは見えません。」
それを聞いて、まず夏侯淵と許褚が同じように地上に出てくる。
そこには、死者の姿はなかった。
生きている者の姿も、自分たち以外にはなかった。
周りには板で塞いだ地下道の出口がいくつもあり、作業用の鍬やすきが散乱している。それでゾンビに抵抗したのか、刃先に血糊がついているものもある。
ふと見ると、出口を塞ぐ板が外れて暗黒をのぞかせている地下道が目についた。
誰かがゾンビから逃れようと飛び込んだのだろう。
という事は、この出口が開いた穴の中には、ゾンビがうろついている可能性が高い。自分たちがもしこんな穴に逃げ込んでしまったら・・・考えるだけで悪寒がした。
その付近には、地下道を作るために掘り出した土で作った土嚢が置かれていた。
許褚と夏侯淵はその土嚢を出てきた穴に運び、他の者が出るための足場を作った。
しばらくして、曹操たち一行は全員が地下道から出た。
于禁は太陽に向かってぐーんと背伸びをしてつぶやいた。
「ふうー・・・まさか生きてここまで来られるとは!」
それは、全員の思いだった。
城を出てあれだけ多くの死者に囲まれて、生き延びられる確率がどれほどあっただろう。偶然袁紹の掘った地下道に入らなければ、おそらく全員が餌食になっていたはずだ。
だが、天は曹操たちを助けた。
曹操は感慨深げに天を見上げて言った。
「一つの危機は去った、しかし、まだ生還が約束された訳ではない。
この陣を抜け、感染が及んでいない地にたどり着くまでは、油断してはならぬ!」
曹操は袁紹の手を取り、強い視線とともに言った。
「ここを抜け、おれはひとまず洛陽に、おまえは河北に帰るのだ。
陣の案内を頼むぞ!」
「承知した!」
袁紹も手を強く握り返し、うなずいた。
108セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/06(金) 22:53:25 ID:nULjy4z5P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(173)

曹操たちは今度は袁紹を先頭に、袁紹の陣を進んでいった。
ふと、袁紹が足を止めた。
「どうした?」
袁紹は無言で視線を少し遠くに移した。
視線の先には、普通のテントより立派な幕舎が張られていた。
その中には、上品な机が置かれており、高級そうな磁器の酒壺が置かれていた。豪華な赤い敷物の上に、首のない死体が倒れ伏している。
「わしが一昨日までいた場所だ。
・・・ここにもう一度戻ってくる事になるとは。」
倒れている死体は、袁紹が初めて遭遇し、半狂乱で斬り捨てたゾンビだった。
袁紹の逃避行は、ここから始まったのだ。
「一周して終わり・・・だったら良かったのだが。」
袁紹は自嘲気味につぶやいた。
袁紹が許攸を怒鳴りつけ、それでいて何もせずに野放しにしたのも、この陣で起こった事だ。思えば、悪夢の本当の始まりはそこだった。
袁紹がその時短気を起こして、周りの将の言う事に耳を貸さず許攸の首をはねていたら、今の状況はどれほどましだっただろう。
あの時、この惨劇を防ぐ方法が目の前にあったのに・・・。
あの時、それを行使できたのは、他ならぬ袁紹だけだったのに・・・。
袁紹は自責の念に駆られ、唇を噛み締めた。
「過ぎた事を悔やんでも仕方ない。
それに、誰もこうなる事を知らなかったのだ。意図して防ぐは不可能であった。」
後ろから曹操が声をかけると、袁紹の肩が少しだけ落ちた。
「行こう。」
袁紹は幕舎から目をそらし、歩き始めた。
今やるべき事は後悔ではない、行動だ。
袁紹は人の消えた自陣を、西へ西へと歩いていった。
109セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/06(金) 22:54:17 ID:nULjy4z5P
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(174)

どのくらい歩いただろうか、行く手に木材が崩れているのが見えた。
その下敷きになって、動けないゾンビがもがいている。
「・・・うむ、さすがにゼロという訳にはいかぬか。」
「何らかの原因で動けない者は、当然そこにとどまるさ。
動かぬ者もいるかもしれぬ。」
張郃が用心深く近寄り、槍でとどめを刺した。
それからも、ソンビはぽつぽつと現れた。ぼーっと立っていて気がつくと向かってくる者、両足をもがれて這いずってくる者・・・油断さえしなければ、簡単に倒せる者ばかりだ。
ただ、這いずる奴に気付かず噛まれた者が出たため、足元に注意するよう促した。
進むにつれ、崩れかけの障害物が目につくようになった。
木材や食糧の袋が積まれていて通れない場所もあったため、取り除けそうならどかし、そうでないなら迂回した。
「これは・・・どかせそうか?」
袁紹の目の前で、また道が塞がっていた。
小屋が木箱と木材に埋もれており、それが道まではみ出している。
中には、荷車らしきものも混じっている。
「できれば迂回したい・・・が、どかせぬ事もない。
それに・・・城を出てから歩きづめだ、小休止をとらねばもたぬぞ。」
曹操はそう答えて、ちらりと後ろを振り返った。
武将たちはともかく、兵士たちはもうだいぶくたびれている。それに何より、曹操と袁紹本人もそろそろ膝が笑いかけていた。
いつも馬で移動する君主にとって、これだけの距離を歩き続けるのは想像を超える負担だ。
「うむ、分かった・・・これをどかしつつ、小休止だな。」
袁紹は素直に応じ、木材の上に腰を下ろした。
兵士たちもめいめい腰を下ろし、足を休めた。
それは、うららかな一時だった。
110本当にあった怖い名無し:2009/11/07(土) 06:57:19 ID:0WSk2JG70
            , '´  ̄ ̄ ` 、
          i r-ー-┬-‐、i    そう思ってると
           | |,,_   _,{|    突然袁紹は僕の見ている目の前で
          N| "゚'` {"゚`lリ    ツナギのマジックテープを
             ト.i   ,__''_  !     はがしはじめたのだ・・・!
          /i/ l\ ー .イ|、
    ,.、-  ̄/  | l   ̄ / | |` ┬-、
    /  ヽ. /    ト-` 、ノ- |  l  l  ヽ.
  /    ∨     |;;l   |! |;|   `> |  i
  /     |`二^> |;;l   | |;;| <__,|  | バリバリ
_|      |.|-<  ヾ;;,,.... i /;; ,イ____!/ \
  .|     {.|  ` - 、 ,.---ァ^! |    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l
__{   ___|└―ー/  ̄´ |ヽ |___ノ____________|
  }/ -= ヽ__ - 'ヽ   -‐ ,r'゙   l                  |
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_______l       -ヾ ̄  l/         l|       |___|
111本当にあった怖い名無し:2009/11/07(土) 23:32:55 ID:FT+P54bP0
>セイレーンさま
GJ!
当然、もう一騒動ありますよね?
それとも世界滅亡オチか。
楽しみに待っております。
112本当にあった怖い名無し:2009/11/08(日) 06:13:23 ID:+5Fu96EM0
>セイレーンさま

世界滅亡オチでも心理描写は一言二言ですか?
113セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/10(火) 22:27:21 ID:GL6rAl0RP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(175)

腰を下ろして少し経つと、兵士が君主や武将たちに水をくんできた。
「すぐ近くに井戸があったんですよ!」
「ほう、それは良かったな。」
袁紹と曹操はとりあえず城からの脱出を祝って、水で乾杯した。
飲まず食わずで歩き続けた体に、冷たく清らかな水がしみ込んでいく。それだけで疲れがとれた気がして、袁紹は思わず顔をほころばせた。
武将たちもうまそうに水を飲み干し、また作業を始めた。
「よし、力がわいてきたぞ!」
「では徐晃様、次はこの木をお願いします。」
徐晃はここでもまた、精力的に大まさかりを振るっている。
その姿を見るうちに、袁紹の目に涙がこみ上げてきた。
「どうした、袁紹?」
曹操が声をかけると、袁紹はわっと泣き出してしまった。
「わしの部下は・・・わしらはおまえの部下の世話になってばかりではないか!
わしの下にはもはや、青二才の張郃しか武将がおらぬ。それに引き換えおまえの軍は、一族にも部下にもあれほどの武勇が・・・。
道を開く大まさかりも・・・わしだって、顔良と文醜が生きておればなあ!!」
曹操はぎくりとした。
袁紹がこんな気持ちになった地雷が、今度ははっきりと分かる。
大まさかりを振るう、徐晃の姿だ。
かつて袁紹の側にいて、曹操との戦いで失われてしまった顔良・・・彼もまた、大まさかりを振るう豪傑だった。袁紹は徐晃の姿を見るうちに、顔良と重ねてしまったのだろう。
もう一人の文醜は槍と弓の名手だったが、これは夏侯淵か許褚が重なるかもしれない。
だが、その二人はもうこの世からいなくなってしまった。
だから袁紹はもう、彼らに守ってもらえない。
曹操軍のよく似た武将に守ってもらうしかない。
それが悔しくて泣いているのだ。
114セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/10(火) 22:28:49 ID:GL6rAl0RP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(176)

泣きじゃくる袁紹を前に、曹操はどうなぐさめていいか分からなかった。
ここから脱出して自分の拠点に戻った時、曹操と袁紹の側には誰がいるだろうか。
曹操の側には、今行動を共にしている武将以外にも、武に長けた者が多くいる。しかし袁紹の側には、文官は多くいても武将は少なく、しかも中堅の将の多くはこの官渡で失われてしまった。
(誰か、一人か二人、我が軍の武将を貸してやるべきか?)
曹操は思った。
そんな曹操の気持ちを察したのか、徐晃がやって来て袁紹の前にひざまずいた。
「袁紹殿、拙者は顔良殿ではありませぬ。
しかし、今ここで顔良殿の代わりにあなたを守る事はでき申す。」
袁紹が泣き止み、少しだけ顔を上げた。
徐晃は頼もしい笑みを浮かべ、袁紹の手を取った。
「顔良殿は、強いお方でした。
同じ大まさかりを使う者として、拙者もいつかあのように強くなりたいと・・・。白馬の戦いで矛を交えた時、その思いはもっと強くなりました。
もし拙者が顔良殿の役目を引き継げるなら、大歓迎でござる!」
曹操は心の中で、なるほどと手を打った。
徐晃は一度、顔良に一騎打ちを挑み、敵わぬとみて逃げ帰ってきた事がある。純粋に強さを求める徐晃はその時、同じ大まさかり使いとして顔良に憧れを抱いたのだろう。
もっともすぐ後、顔良は曹操の客将となっていた関羽に一刀のもとに葬られてしまったのだが・・・。
それでも徐晃は顔良に憧れ、その役目を引き継ぐ事を嫌がらぬようだった。
これなら、袁紹の守護を任せるのに支障はない。
しかし曹操が声をかけようとすると、若い声で横槍を入れてくる者がいた。
「お待ちください、武将なしとは言い過ぎであろう!
殿の守りは、この張郃がいたします!
わざわざ徐晃殿が二君に使えることはありますまい。」
張郃だ。
ここにいる袁紹軍で唯一の武将張郃が、顔を赤らめてむきになって反論してきたのだ。
先程から青二才と言われたり名の通った武将に入れてもらえなかったりした事が、曹操不満なようだ。
こうしてむきになる所が見るからに青二才だ・・・曹操は心の中で失笑した。
115セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/10(火) 22:30:42 ID:GL6rAl0RP
誤植訂正 ゾンビ官渡(176)
曹操不満→相当不満
116セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/10(火) 22:32:06 ID:GL6rAl0RP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(177)

徐晃にくってかかる張郃を見ながら、曹操は考えた。
戦力面では、徐晃を袁紹に預けた方がいい事は確かだ。
武に長けた者が少ないということは、ゾンビと戦う力が低いと言い換えてもよい。袁紹の領土を安全に保つためには、武将を増やす方がいいに決まっている。
しかし、それが内紛の元になるなら話は別だ。
許攸や逢紀がそうであったように、袁紹軍には自分が低く見られているとみるや君主を見限って害をなす者が多いのかもしれない。
張郃がそうでない保障はないのだ。
いや、張郃がそうでなくても、河北にそういう者がいたら終わりだ。
ただでさえ、急に敵国の将が乗り込んでいい顔をする者はいないのに。
この判断は慎重になるべきだ。
曹操は身にしみてそれを感じていた。

武将たちの騒ぎを、文官たちは少し離れたところから見ていた。
「あーあ、悔しいですねえ・・・私たちは人材としてかやの外ですか?
まあ、戦いで自分が役に立たないのはよく知ってますけど。」
郭図が自嘲気味につぶやく。
荀攸も恥ずかしそうに首を振って言った。
「いやはや・・・助けられてばかりで何とも歯がゆいばかりじゃ。
人間が相手ならば、わしでも陽動や説得で役に立てるものを・・・話の分からぬ死体相手では、力のない者はどうしようもないわい。」
文官たちがこの状況で戦力になれないのは、誰の目にも明らかだ。
文官が力を振るえるのは安全な場所に帰ってから、城内で善後策を練る時だ。
審配が苛立ったようにつぶやく。
「全く、早く働ける場所に帰りたいもんだ。
一体どこの兵だよ、こんなに道を塞ぎまくった奴は!」
審配は腹立たしい目で、陣にたなびく旗印を見上げた。
そこには、ここの大将だった者の姓が「逢」と記されていた。
「逢紀の陣ですか・・・。」
嫌な響きの名をつぶやきながら、郭図は何となく嫌な予感を覚えた。
117たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/11/10(火) 23:46:01 ID:6VcAzgOL0
こんばんわ!
激務&規制でお休みしておりました
改めてよろしくお願いします
3つほど投下しますー
118たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/11/10(火) 23:46:16 ID:6VcAzgOL0
(7)

「ん〜 見えないね」
テープで補強されたメガネをかけ直しながら、コモダが言った。
生き残りの中で一番歳上の金物屋のコモダは、何と無くリーダーのような存在になっていた。冷静な意見を押し付けるでもなく、じっくりと腰を据えて説得するタイプだった。皆もそれとなく、コモダの意見を聞くようになった。
実際、説得する時間なら持て余すほどあった。

三人の視界の端に、旋光が走った。
少し遅れて、地響きのような音が届く。何らかの爆発のようだ。三人は顔を見合わせる。
皆一様にぽかんとした顔をしている。
ジュンが叫んだ。
「助けなきゃっ!!」

コモダが初めて興奮を見せていた。
篭城戦は神経戦でもある。生き残りのなかに日々つのる不満、不安。爆発しそうな雰囲気を抑えるだけのリーダーだった。
救出の見込みのない幽閉のような状態で、正常な判断力を持っておれるほど、人の神経は鈍くない。

「あたしはね。助けに行くべきだと思うんですわ」
コモダが何度目かの言葉を繰り返した。
しかし反応は今ひとつだ。
コモダを含めて、30人がいる。意見がまとまる訳がない。
食糧の配分。見張りのローテーション。バリケードの補修作業。
人間という生き物は、規制がないと自堕落になるように出来ているらしい。
ーーどうせ助かるわけ無い...
そんな厭世感が蔓延していた。
日々ぼんやりと過ごす人々を励まし、なだめ、不安を煽り、希望を与えた。

今回の説得は、いままでとは違う。
命の危険がある方針だ。
119たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/11/10(火) 23:46:57 ID:6VcAzgOL0
(8)

「私が行きますよ。犠牲は少ないほうがいい」
ヒキタは精一杯冷静さを装って言った。
「わたしも行くから」
ジュンが言った。
「車からは降りないけどね」
ヒキタはジュンを見た。口がぽかんと開いている。
(何をバカな事を...)
と言いかけて、ヒキタは口をつぐんだ。
ジュンもまた、家族がゾンビに襲われている。彼女の気持ちも、自分と同じかもしれない、とヒキタは思ったからだ。

(自分だけおめおめと生き残ってしまった...)
家族が死んでいるのに自分だけ生き残っていることが、ヒキタを苦めていた。自分を責めていた。

他愛も無い過去の記憶が、夢の風景として現れたこともあった。
娘が熱を出し、病院を探し回ったこと。
妻とデートした場所を車で、通りがかったこと。
正月の福袋を並んで買ったこと。
ほんの些細な、普段なら記憶に残らないような出来事が、実は欠けがいのない幸せだったと気付いた。
そしてもう、二度と訪れない平和な日々を無為に過ごしてしまったことの責任を感じていた。
(死んでお詫びしたい...)
そんな気持ちが日々もたげてくるのを、どうしても抑えることが出来なかった。
今回の救出作戦で、ヒキタは死ぬつもりだ。だが、最後の足掻きをしたかった。
ただ、それだけだった。
120たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/11/10(火) 23:49:09 ID:6VcAzgOL0
(9)

ノブアキはJR盛岡駅に向かっていた。右手に見える雫石川が、月明かりを静かに水面にたたえていた。
サイドカーを外した分、バイクはノブアキの荷重に的確に反応する。
国道にはゾンビはそれほど多くない。アザミが倒れた場所にある高周波発生機のおかげだろう。ノブアキは軽いスラロームで、ゾンビの間をすり抜ける。
駅前のロータリーで少しスピードを落として、辺りを伺う。観光シーズンにはたくさんのタクシーが停まってたはずだ。
今は閑散としている。
ーー 駅ビルは駄目だな
ノブアキは断定した。駅は、乗客、駅員、店舗従業員など人の出入が激しい。それだけ守るべき入り口も多くなる。
ノブアキの作戦は非情なものだ。
ーー生き残りのいる建物内に、ゾンビを誘い込む。
その隙にアザミの右足を回収し、ノブアキの体力の続く限りアザミに血を与える。出来れば生き残りを確保し、アザミの回復の効率をあげる...
冷静に考えてそれ以外の方策は思いつかなかった。以後、良心の呵責にさいなまれるのは承知していた。
(何考えてんだ、オレは。)
苛立ちを打ち消すように、アクセルをあおる。
(アイツは、ヒトの血を吸うバケモノじゃないか。オレは一体、どっちの味方なんだ?)
バイクの車体を倒し過ぎた。マフラーが地面と火花を散らす。
(アザミ...)
ーー破壊の化身。殺戮のワルキューレ。
(長生きしてるくせに、世間知らずで... オレが居なきゃ...)
ーー純真で無垢な殺意で命を奪う、ただ生きるために。切ないほどの孤独。アザミ以外の全てが、蜉蝣[かげろう]のように儚く、脆い。
アザミと出会う前の日々は、本当の意味で生きていると言えたのか...
血を吸われる瞬間の恍惚。生と死の狭間でしか感じられない奇妙な感覚...
生への執着をより強く感じつつ、それでいて苦痛から解放されるような甘美な死への誘惑。山の頂きから、生死を睥睨する。それはある意味、神の視点かも知れなかった。
何もかも吸い付くされても、ノブアキは自分が無になるとは思えなかった。
ーーーアザミの胎内に帰るんだ...
愛、という言葉では言い表せない
魂の結びつきを感じていた。
「畜生っ!」
ノブアキはうめく様に叫んだ。
噛み締めた唇から、血が一筋流れた。
121たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/11/10(火) 23:50:42 ID:6VcAzgOL0
(10)

園芸用のクワ、出刃包丁を角材に固定した槍、鉈、バット...
ヒキタとジュンの持つ武器は、その程度だった。
もとより、生きて戻るつもりのないヒキタには、どうでもいいことだった。
搬入口にある4tトラックの座席で、ミラーを調整しつつジュンに声をかける。
「ジュンちゃんは免許持ってるよね。運転代わってもらおうかな」
ジュンの沈黙と強い視線を感じて、ヒキタは向き直った。ジュンが睨んでいる。
「せんせーさぁ、死ぬつもりなんでしょ」
低く呟いた。
「いや...」
(そんなつもりはない)と続ける言葉を遮られた。
「嘘つかないでよね。家族死んだのは辛いと思うよ... でもせんせーだけじゃないんだからね。
わたしイヤだよ。もう誰も死んで欲しくない。誰も見捨てたくない...」
ジュンは強い眼差しで、真っすぐヒキタを見た。
「死なせないから!だから頑張ってよ!」

(あぁ...)
ヒキタは自分が勘違いをしていた事に気付いた。
(この子は強い。僕よりも)
ヒキタは、今までの教師生活で時折生徒が見せる芯の強さに胸を打たれる事があった。
無理を承知でひとつのことに打ち込み、涙を流しながら悔しがり、何かを得て成長していく...
そんな生徒たちの勇気を知っていた。ジュンの瞳は、それと同じだった。
(お父さん、ナオコ...僕は戦うよ。この子を守るよ)
ヒキタの胸に熱いものがこみ上げた。その想いを留めるように、胸に手を置いた。
「ジュンちゃん、ごめんね。僕精いっぱいやるよ。天国の嫁さんにカッコ悪いとこみせられないから」
ヒキタは、力をこめて言った。
「うんっ!約束だからね」
ヒキタとジュンは、固い握手をした。
ーー何とかなるかも知れない
ヒキタの心に微かな希望があった。
122たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/11/10(火) 23:51:37 ID:6VcAzgOL0
キリがいいとこまでうpしました
それではまた〜
123empty ◆M21AkfQGck :2009/11/11(水) 01:38:54 ID:fNgKNYb20
近いうち、だと信じています。


やけにゆっくりと時間が進んでいた。
体が勝手に胸いっぱいに空気を吸い込み、そして、
「――――う」
「しっ!」
叫ぼうとしたところで後から口を塞がれる。
行動を抑えられた、ということだけが強く焼きつき、手を振り回して暴れようとしたところでやっと頭が冷静になった。
「よく見て。あれ、人間だよ」
確かに、もう一度じっくりと眺めてみれば、それは間違いなく人間の形をしていた。
階段の途中なのか、一階にしては高く二階にしては中途半端な位置についている窓に頭だけが押し付けられている。
見開かれた双眸はこちらを見つめているように感じるが、遥か無限遠を見つめていた。
口は半開きで、端から赤い、血のようにも見える何かを垂らしていた。
「死体…?」
「だろうね」
口を塞いでいた友人の手を払い、よく観察する。
じっと見つめているにも関わらず、一切瞬きしない。
窓に押し付けられたその肌は、どこか白っぽく見えた。

「死体に見えるね。いやしかし、初めて見る死体かぁ…。こんな事態になってるのに、死体は一つも見当たらなかったから逆に新鮮」
女の人が、階段途中の出窓にもたれかかっている死体を眺める。
万が一、を考えてまずは触れずに判断しているらしい。
―――死体、か
かつての、平穏な世界ならまず見ることは無かった物体。
その世界ならば見た瞬間に息が止まり、そして悲鳴を上げるだろうそれを見ても、何も感じることは無かった。
たった三日間とはいえ異常なことを経験し、常時緊張下に置かれている神経では目の前のものを上手く咀嚼できないらしい。
―――だいぶ麻痺してるな
現状では、アレらを目にすること以外では何も感じないに違いない。
よくよく考えてみれば、ここ三日はまともに食事や休養をとっていないにも関わらず、体は全く悲鳴を上げていなかった。
或いは、体に蓄積されている脂肪などを消費しているのかもしれないが。
124empty ◆M21AkfQGck :2009/11/11(水) 01:40:11 ID:fNgKNYb20
「うーん、死体…にしては冷たくないし…、死後硬直も起きてない…。どう思う?」
「この死体が数時間以内に出来上がったのなら可能性はあるんじゃない?」
「だとしたらこの家も危険…いや、玄関は開いてたしもう出て行ったのかも。結構物音を立ててるけど何も出てこないし」
「ならまだ近くに…いや、鍵をかけるっていう習慣があるわけないか。この家の住人がアレになったとして、この人にも感染させようとして殺しちゃった、とか?」
「感染…やっぱしっくり来ないわね、これ。ゾンビみたい、っていう理由で使ってるけど本当に感染して増えるのかわからないわけだし」
「そもそもどうやって増えてるのかはわからないわけだけど…うん? これは…歯型?」
「うわ、本当。首筋、二の腕、腹…。食いちぎられてないのが幸いってところかしら。血が止まってるところや血の流れた跡からして出血するほどの力、か…」
「もう少し強く噛まれてたら持ってかれてたね。死因はショック死かな。これといった外傷は無いし。血も、すぐに止まったみたいだし…」
「幸運か…。アレにも噛み跡があるのなら、間違いなく典型的な方法で感染ってワケね」
「もしくは、あえて肉を食いちぎらない、っていうのも考えれるけど。知能があるんだから、致命傷を負わせたら感染する前に死ぬ可能性もあるってのは理解できるだろうし」
「食欲ではなく、繁殖を優先してるってこと?」
「そう考えれても不思議じゃないってわけ。…ん、あれ、今脈が…」
「え、まさか。……………うわ、本当。かなり遅いけど、ちゃんと脈が…」
「じゃあこれ、死体…というか死んでないんじゃ」
「仮眠、というより仮死状態? なんて幸運なのよ」
意識がどこかにトリップしている間に、友人と女の人は死体にぺたぺた触って何か話し込んでいた。
あまりに真剣な様子に、話しかけるのをためらってしまう。
125empty ◆M21AkfQGck :2009/11/11(水) 01:40:52 ID:fNgKNYb20
何となくその場に居づらいので、一階で食料を漁ることにした。
女の人が一度休憩しようと押し入ったこの家は、特に目立った点は無かった。
アレに入られているだろうにも関わらず、全く荒れて無い。
まだ食料などを目当てとする生存者やそういった集団が発足していないのか、或いはそういう人達が居ないのか…。
後者なら有難いにこしたことはない。いつだって、人間の天敵は人間だ。
冷蔵庫や戸棚を漁り、缶詰や清涼飲料水、保存食を集めて回りながらあちこちを確かめる。
二階はまだわからないが、一階は本当に手をつけられていない。
いや、死体があったことを考えれば、二階は少なからず荒れているだろう。
一階の荒れている部分と言えば、入った時に即席バリケードを作るために荒らした玄関くらいだ。
玄関の鍵が運の悪いことに壊れていたために作ったのだが――いや、運が良かった、というべきだろうか。鍵が壊れていなければ入れなかったのだし。
ナップザックに詰めれるだけ食料を詰めつつ、蛇口を捻る。
これまた運の良いことに、水道は生きていた。
色からして、まだ飲めることは間違いない。
今日はここに泊まってもいいかもしれない。

「何してんの」
一階で発見した諸々を引きずりながら二階へ上ると、二人が一番奥の部屋であちこちをひっくり返していた。
部屋の内装はシンプルで、無駄が無い。
ベッドと小机、横倒しになった椅子と本棚しかないところを見ると、無駄がなさすぎるかもしれないが。
パイプで作られたベッドは何故か汚れていて、黄色や赤い染みがあちこちについている。
また、ベッドの四隅に外されたベルトや切られたビニールロープがあるのがやたら気になる。
まるで、というか間違いなくベッドに誰かを拘束しておくためのものだ。
脇に置かれた小机には水差しと皿が一枚。別に問題はないはずなのに、やたらシュールに見えた。
126empty ◆M21AkfQGck :2009/11/11(水) 01:43:21 ID:fNgKNYb20
或いは、更に腐った肉のようなものがこびりついているせいかもしれないけど。
「…いや、この家の住人が、あの日の前からアレを匿っていたらしい。そこのベッドに――」
友人が、ベッドを顎で指した。
「――そこのベッドにくくりつけて、毎日『餌をやっていた』そうだよ」
「…はぁ?」
――あの日の前から?
アレはあの日に集団発生したんじゃないのか?
色々な疑問を浮かべて突っ立っていると、友人がこちらの足元に薄っぺらいノートを投げ出してきた。
ぱらぱらと捲ってみるが、ただの日記のようだった。裏表紙に血がついているのが気になるといえば気になる。
「死体が持ってたんだよ。ズボンに挟まれてた」
心を読んだかのように友人が応えてくれる。もしやテレパスでもあるのか。
「で、これと部屋を散らかしてるのとは関係が?」
女の人がクローゼットを開けて中に詰まれていた紙束をばっさばっさとひっくり返す。
何だろう、この光景は。
別の意味で世界観が壊れそうなので、どこか静かな場所でゆっくりと日記を読もうと廊下に出る。
階段まで来ると、きちんと戸を閉めてきたおかげか、部屋をひっくり返す音は殆ど聞こえなかった。
と、目の前で何かが動いているのに気づく。
どこかに旅行している意識を無理矢理引き戻して目の前、階段の踊り場、詳しく言えば出窓付近を見つめる。
ゆらゆらと、どこか頼りなさげに体を揺らして、死体が起き上がろうとしていた。
手足の関節がかくかくと動いている。何となく、素人が動かしているマリオネットを思いだした。
どこをどうすればどこが動くのか、どのように動かせばいいのかがわかっていない動き。
127empty ◆M21AkfQGck :2009/11/11(水) 01:45:46 ID:fNgKNYb20
死体は、かくかくと不自然に関節を折り曲げながら、ゆらゆらと立ち上がろうとしていた。
その指先が無駄に動き這い回っているのが見える。完全に無駄で、それぞれの指が関連性もなく独立して動いている。かなり怖い。
こちらからは後姿しか見えない。
それでも、その姿がゆっくりと変わっているのは認識できた。
人の形が、少しずつ崩れてゆく。
何も考えず、ぼーっと見つめていれば、それはまだ人の形に見えるかもしれない。
見ようとしなければ、人の形に見えるかもしれない。
だが、こうして注視している今、ゆっくりと、人からアレへ崩れていく過程がわかった。
喉の奥から、酸っぱい何かがこみあげてくる。
死体は、死体だったものは、今や完全に直立していた。


ありがちな、目の前で〜というくだり。近親者ではないのが残念なところ。
次は殆ど日記の内容で終わっちゃう予定です。
ゾンビの設定で費やししちゃうかな…。

それではまた今度。
128たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/11/11(水) 20:22:54 ID:LbxGGvG10
こんばんわー
ちょこっとうpします
よろしくお願いします
129たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/11/11(水) 20:23:04 ID:LbxGGvG10
(11)

ヒキタとジュンを乗せたトラックが出発してからほんの数分後、ノブアキのバイクがショッピングセンターに到着した。

二階建ての大規模な建物だ。屋上の駐車場がスロープで地上につながっているが、厳重に封鎖されているようだ。
ノブアキが目をつけたのは建物の裏手にある、搬入用のシャッターだった。そこは、ヒキタとジュンのトラックが出て行った場所だったが、もちろんノブアキは知る由も無い。
ただ、強固で大きなシャッターは安心感を与え、バリケードを築く心理が働かない場合が多いことを知っていただけだ。

ノブアキは今から自分がしようとしていることを、そしてそれが引き起こす結果について思いを巡らせた。覚悟は出来ていた。
ノブアキは、ポータブルオーディオとマイクを組み合わせた機械のスイッチを入れた。闇夜をつんざくようなハウリング音が鳴り響く。
釣り用のテグスを手榴弾のピンに結びつけ、シャッターに固定する。もう一方を歩道の立木に結びつける。ゾンビが走り抜ければ手榴弾のピンが抜け、爆発がシャッターを破壊するはずだ。
ーーノブアキはバイクに跨り、ためらいを断ち切るようにキックペダルを踏み込んだ。
130たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/11/11(水) 20:23:47 ID:LbxGGvG10

(12)

(何かがおかしい...)
ヒキタが気付いた時、一体のゾンビがトラックに真正面から激突して弾き飛ばされた。ドンとくぐもった振動が、ハンドルを通して伝わってきた。
反射的にブレーキを踏み込む。一拍遅れてゾンビが地面に叩きつけられた。
ぐちゃっ、と音が聞こえたような気がした。
関節の壊れた人形のようになったゾンビが、でたらめに手足を蠢かしている。
「見て!」
助手席のジュンが、前方を指差す。
ハイビームにしたヘッドライトの光の中に、無数の足が浮かび上がる。
ヒキタは慌ててギアをローに叩き込む。アクセルをベタ踏みしながらクラッチを繋ぐ。
ガリッと異音を発したトラックのエンジンが停止する。
(しまった!)
「ちょっと、せんせー!!」
ジュンが悲鳴に近い声で叫ぶ。
「エンストした!」
ヒキタの声もつられて上ずった。
「いいから、早く!」
ジュンが急かす。ヒキタの肩をバンバンと叩いている。
「エンジンがかからない!」
「あーもう!代わって!」
ジュンがヒキタを押しのけるように跨ってくる。
ゾンビの驚異的な俊足は、100m程の距離も10秒台で駆け抜ける。
ヘッドライトに照らされたゾンビの顔が、視界いっぱいに広がる。
白濁した目、変色した血液で黒く染まった歯、ちぎれた服から覗く赤黒い肉...
ーー狂気。ゾンビは本能で動いているのではない。人の形した狂気そのものだ。
(駄目かっ!)
ヒキタは死を覚悟した。ただの死ではない。自分もあの狂気に取り付かれて、生者を求めて彷徨うのだ。家族への想いも、人間らしさも、全てが消えて無くなってしまう。それが何より恐ろしかった。
固く目を閉じて、ジュンを抱き寄せた。
131たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/11/11(水) 20:24:37 ID:LbxGGvG10
(13)

「あれ!?」
ジュンが頓狂な声をあげる。
ヒキタが薄く目を開けた。ゾンビどもがトラックを通り過ぎて行く。まるでただの障害物のように、トラックの両側を駆け抜けて行く。トラックに激突して倒れ、後続のゾンビに踏みつけられたゾンビも、立ち上がって通り過ぎて行く。
「なんでぇー!?」
「しっ!静かに!」
ヒキタがジュンの口を手で覆う。
時折、激突するゾンビのせいで車体が揺れた。

数分後、二人の視界には無機質なアスファルトのみが、ヘッドライトに照らし出されていた。
「...なんだか分からないが、助かったみたいだ」
ヒキタが安堵したしように呟いた。
「...みたいだね」
ジュンも極度の緊張からしゃがれた声で呟いた。
ヒキタは、自分の太ともが生暖かい液体で濡れているのにようやく気付いた。ジュンの失禁だった。
「え!マジで?」
ジュンも気付いて、慌てふためく。
「いや、いいんだ。気にしないで」
「気にするって!ちょー恥ずかしいよー」
ジュンが顔を赤くしてむくれた。その様子にヒキタが吹き出す。
「いやだって!しょうがないでしょっ!でも、ごめん!」
狭い車内で二人の笑い声が重なった。
132たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/11/11(水) 20:49:59 ID:LbxGGvG10
スカトロジーですいません
ほんではまたー
133本当にあった怖い名無し:2009/11/12(木) 01:12:25 ID:O404fTH80
マイケルの母は実は生きていて悪い人

リンカーンとマイケルは実の兄弟ではない

プリズンブレイク
134本当にあった怖い名無し:2009/11/12(木) 09:19:03 ID:hR6YlmdZO
>>129
最悪だなノブアキ
他人を巻き込むようなクズはさっさと死ねば良いのに
135本当にあった怖い名無し:2009/11/15(日) 19:50:55 ID:uySqRXCiO
テスト
136セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/15(日) 20:46:40 ID:+OowtnMlP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(178)

障害物の撤去は着々と進んでいた。
木材や食糧袋を取り除き、道を塞いでいる荷車を小屋の前からどかす。
その時、一人の兵士が言った。
「おい、今何かドンッて音しなかったか?」
すぐに別の兵士が答える。
「どっかで木材が崩れたか何かだろ。
殿、道ができました!」
それを聞くと、曹操と袁紹は待ってましたとばかりに立ち上がった。だいぶ長いこと休めたおかげで、回復は十分だ。
「よし、前進だ。
日が落ちる前にこの陣を抜け・・・。」
曹操の言葉が終わる前に、今度ははっきりと音が聞こえた。
曹操は思わず口をつぐみ、身構えた。
何かを木の壁にぶつけるような音・・・もう誰も作業をしていないはずなのに。静かにしていると、またドンドンと連続で聞こえてくる。
数人の兵士が槍をとって小屋に駆け寄る。
「小屋の中に何かいるようでございます、どうなさいますか?」
曹操は首を横に振って答えた。
「相手にするな、おそらくゾンビだろう。
小屋から出られぬなら、無視して先に進んだ方が良い。」
それを聞くと、兵士たちは一礼して曹操のもとへ戻ろうとした。
しかし、次の瞬間、後ろから聞こえたメリメリという音に足がすくんでしまった。
恐る恐る振り返ると、小屋の壁が内からのすさまじい力でこちらに盛り上がっている。ドスドスと音がするたびに、木の壁がきしんで割れ目ができていく。
「こ、これは・・・普通のゾンビではないぞ!」
普通のゾンビは数で押して壁を破ることはあっても、一点にこんな力をかける事はないはずだ。
曹操たちは武器をとって身構えた。
小屋の中から、ひときわ大きな破砕音が聞こえた。
137セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/15(日) 20:47:28 ID:+OowtnMlP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(179)

小屋の壁が破れて、穴から白い目がのぞく。
穴が小さいのでまだ全体は見えないが、明らかに人の目の高さではない。
「弩隊、前へ!」
袁紹はとっさに指令を下した。
逃げてくる曹操軍の槍兵と入れ替わりに、弩兵の全員が小屋に狙いを定める。
「人間のゾンビではないぞ、皆心してかかれ!!」
袁紹は自らも弩を構えながら叫んだ。
その直後、小屋の壁が派手に破れて大きなものがのそのそと出てくる。
厚くたくましい筋肉がついた肩、肉がこびりついたひずめ、頭には凶悪なまでに太く立派な角が生えていた。体中をあちこち食い破られた、醜悪な牛のゾンビだ。
しかも、牛が出てきた穴から、白い目をした馬の顔がいくつものぞいている。
「左右に退避、後ろの穴を狙え!!」
隊長の号令で弩隊が左右に分かれたところに、牛が土ぼこりをあげて突っ込んだ。
牛とすれ違うように、弩隊の放った矢が小屋に開いた穴に撃ち込まれる。先を争って首を突き出して身動きが取れなくなっていた死馬の頭を、矢が貫く。
いや、まだ倒れた死馬を踏み越えて別の死馬が姿を現す。
「させるか!!」
穴につまったところを、袁紹が狙いを違えずに頭を射抜く。
「退避!」
弩隊と袁紹が小屋から離れるのに合わせて、牛がずるりと木材の山から出てくる。
明らかに、力の強い荷運び用の牛だ。
井戸の近くにあったこの小屋は、牛馬の小屋だったのだ。おそらくゾンビ発生の初期に、ここの兵がゾンビの処理に困って小屋に閉じ込めたのだろう。そして牛馬の様子がおかしくなると、慌てふためいて小屋の周りに障害物を作ったのだ。
それを曹操たちが取り去ったものだから・・・。
(くそっこんな所で・・・!)
曹操はぎりっと唇を噛んだ。
曹操の頭上では、逢紀の旗が死へと手招きするように揺れていた。
138セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/15(日) 20:48:26 ID:+OowtnMlP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(180)

曹操軍の豪傑たちがそれぞれ武器をとり、死んだ牛と対峙する。
「来やがれ、倒してやるぜ!」
曹操と袁紹は、近くに積み上がっていた木箱の上に這い上がった。
ふと後ろを振り返ると、文官たちが手を取り合って走ってくる。
曹操は荀攸を引き上げるべく、手を伸ばした。
少し離れたところでは、牛が突進の狙いを定めるようにひずめで土を蹴っていた。
「もらったあ!」
横から張郃が槍を構えて、牛の頭めがけて突進した。
その瞬間、牛も突進を始めた。
張郃の槍は牛の腹にぶすりと深く突き刺さった。張郃がやばいと思って槍を引き抜く間もなく、牛はスピードを上げていく。
「うわわわ!?」
突進する牛に刺さった槍に、張郃は引き倒され、引きずられてしまった。
「ち、張郃殿、危な・・・わあっ!?」
攻撃のために大まさかりを振り始めていた徐晃の足に、張郃の体が激突する。
徐晃は避けられずにとっさに大まさかりを捨て、張郃ともつれ合って転がった。
その瞬間、張郃の手から槍が離れた。牛は張郃という重しを取り除かれ、ますます勢いをつけて走っていく。
張郃がいたため攻撃を断念した武将たちは、牛の行く先を見て青くなった。
そこでは、文官たちが君主の手を借りて木箱の上に上がろうとしていた。
袁紹が審配の手を引っ張り、郭図が審配のお尻を押し上げている。荀攸は曹操に引っ張ってもらっているが、後ろから押す人がいないのと荀攸自身の消耗が激しいため難航している。
突進してくる牛に気付いて、郭図が目を丸くした。
「審配、これで最後ですよ!」
郭図は審配のお尻を殴りつけて、自分は後ろに飛びのいた。
審配の体がぐっと上に引き上げられ、袁紹の腕の中に倒れこむ。
曹操も慌てて荀攸を引き上げようとしたが、荀攸の体力はもう限界だった。荀攸の手が力を失い、曹操の手からずるりと滑る。
「荀攸!!」
次の瞬間、荀攸の体が木の葉のように宙を舞った。
139セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/15(日) 20:49:20 ID:+OowtnMlP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(181)

一瞬、曹操と荀攸の指が触れ合った。
しかし荀攸の指は曹操の指をかすっただけで、また離れていった。
虚しいほどの晴天の下、空に舞う荀攸の体がゆっくりとのけぞる。
荀攸の顔が苦痛に歪み、角でえぐられた横っ腹から血塗れた腸があふれ出す。その血が雨のように降り注ぎ、曹操の顔にぽたぽたとかかる。
程なくして荀攸の体は地面にたたきつけられ、腸がぶちまけられて広がる。
「じ、荀・・・攸・・・!」
曹操は信じられないまま、横たわる荀攸を見ていた。
荀攸の体はぴくりとも動かない。
落ちる時に首を折ったのか、首があらぬ方向に曲がっている。
間違いなく、即死だ。
武将たちもあまりの衝撃に、思わず口をポカンと開けて立ち尽くしてしまった。ここまで一緒に逃げて来られたのに、それが一瞬で刈り取られてしまったのだ。
夏侯淵が、拳を握り締めて叫んだ。
「畜生―!!!」
心の底から悔やむ声が、陣に響き渡った。
その瞬間、それを嘲うかのような笑い声が聞こえた気がした。
(ひょーっひょっひょっひょ!!)
「逢紀!?」
袁紹がはっと周りを見回すと、逢紀の旗が突風に吹かれてビョービョーと鳴っていた。
不快な音を立てる旗の下、どこからかゾンビが集まってきた。曹操たちが障害物を取り除いたせいで、閉じ込められていたゾンビたちが開放されてしまったのだ。
あるいは、逢紀の怨念が呼び寄せたのか。
牛は再び突進の姿勢をとり、土を蹴っている。
曹操たちはここに来て再び、冥府への道に足を突っ込んでしまった。
逢紀が旗の声を借りて、狂ったように笑う。
どうせ死んだなら道連れにしてやる、自分の価値を認めてくれなかった者は皆殺しにしてやる、と。私怨に任せて全員の命を刈り取ろうというのだ。
牛の白く濁った目が、郭図に狙いを定めた。
140セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/15(日) 20:57:56 ID:+OowtnMlP
ゾンビ官渡補足:張郃と徐晃について
この二人は、後に曹魏の五将軍に含まれるくらい名将です。
素質は確かです。

ただ、彼らは大器晩成らしく、赤壁の戦いより後でもかなり負けています。
張郃など名将になったのは曹操が死んでからで、
赤壁の後でも3万の兵を失って一人サバイバルで味方のもとに戻ったりと、
なかなか激しい負け戦果を出しています。

官渡は赤壁のさらに前ですから・・・二人ともまだ若くて未熟です。
徐晃はまだ青みが残る果実、張郃は青すぎてかじっても酸味と渋みしかないくらい青いです。
でもとりあえず、サバイバル力は高いです。
141本当にあった怖い名無し:2009/11/16(月) 00:36:39 ID:B/JVQXIK0
はいまた心理描写中学生レベルのオナニー小説きました。

〜〜〜した。
〜〜〜した。
〜〜〜した。

という表現多すぎ。

あと
「官渡は赤壁のさらに前ですから・・・二人ともまだ若くて未熟です。
徐晃はまだ青みが残る果実、張?は青すぎてかじっても酸味と渋みしかないくらい青いです。 」

とかホモ大好き腐女子臭がプンプンしてきもいです^^
142本当にあった怖い名無し:2009/11/16(月) 18:17:35 ID:Zu0dgDgN0
>>141
向こうの板から追っかけてきた腐れ女子が何を言ってるんだかw
お前も似たようなもんだ
143本当にあった怖い名無し:2009/11/17(火) 13:00:33 ID:kS4GB6Q50
>>142
似ているなんて、失礼な事を言ってはいけない。
こいつは書く事すら出来ないのだから、ここには完全に不要なゴミだ
目立つ人を安全なところから粗探ししたりするのは、小学生低学年でも出来るw

144本当にあった怖い名無し:2009/11/18(水) 11:03:19 ID:OXNgSDCSO
続きまだー保守
145本当にあった怖い名無し:2009/11/18(水) 22:28:20 ID:DRdJJRfp0
ヽ/l l ニ|ニ           . 、 、_,ィシ'"::::::::::`'`ヾリ
  (   ( ̄   ̄)        . _ゞ、`:::::::::::::::::::::::::::::::ノム≦、、  / ̄ ̄ ̄ ̄\/ ̄ ̄
    ̄    ̄          、`三=-、、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ミ、 /  興      君
 ,.、-──-- 、.,_     ,、   ._彡::::::::, -―-- 、;;_,. -‐ ミミ:::::::::ミ |   味         :
          ``''--イ ,),、 彡::::::::::'    _ ‐ -- ‐ _   ヾ::::::::ミ.|   が   ゲ     :
              ヾー'゙ | '彳::::::::j     `  ̄ ´     ',::::::::ミ.|   あ  イ
       ノ l  ハ  l ヾ トイ .'ノ,:::::f  '´ ̄`ヽ  ィ'" ̄`' !::::::、` 〉   る  に
    _,,.ノ _ノ / ノ ノ ノノ!_丿  シ,::::{   ィ'tテヽ : : ィ'tテヽ t:::::シ |  .の     |\__
      ノ ,、ィ'-=z=F [_    ..〈fヾ!  ` ̄''" : :` ` ̄´  }リ^!. |   か    |
   -‐''゙_ノ ,ノ  '゙ (ソ   ヽ    .{じ{!     r :. .: 、      ij'゙ノ |   ね    .|
  、 ィッ>f「  _,,二-   ヽ   .ゝヘ     `^.:.:^´    fT  |   ?     |
   `〒T〔!|       r ,_ノ    '小   .:.:,._‐_‐_、:.:..   ルi.  >_____/`ヽ、
     ゙、ヽ`!  l   _ _」    //´ ト、 :. 'ヾ'三'シ` .:.:./!  / l l      ,、 ''⌒゙ヽ、
     `ト.、!  lj  (__l、   /  |   ゙ヾ`:.. `"´  ..:/゙_、-゙ /,l l       /
     l ゙ト、     t'゙    |   |  | |、\:._:_:_:_.:/ "´ .// l l       /
   ,ィ、化ァ ',\       l    〉  |   | | ゙、 //∧    / /  l l     l
146本当にあった怖い名無し:2009/11/20(金) 00:12:54 ID:k52ALKXg0
みんな、アイアムヒーローって見てる?
147本当にあった怖い名無し:2009/11/20(金) 09:43:22 ID:YKJ4NJPj0
>>146
見てるよ。今度は基地で武器の補給が出来そうだな
148本当にあった怖い名無し:2009/11/20(金) 20:07:24 ID:uNLpLyy70
    /:::::::::::::::::::::::人:::::::::::::::::::::::::\
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149セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/21(土) 21:19:50 ID:ElnqvbqbP
ついに名前をあきらめたか・・・。
まあ攻撃には匿名の方が都合いいわな、普通に考えて。
150セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/21(土) 21:21:02 ID:ElnqvbqbP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(182)

「ブオオオォーッ!!!」
地の底から響くような泣き声と共に、牛が郭図に突進する。
「危ない!!」
許褚が槍を手にして走った。
すんでのところで郭図のえり首をつかんで投げ飛ばし、自分も牛の肩に激突して吹っ飛ぶ。
しかし、さすがに許褚は曹操軍一といわれる武勇の持ち主である。素早く受身をとって起き上がり、牛と向き合った。
「す、すごい・・・。」
そのころようやく起き上がった張郃は、許褚の勇ましさに目を見張った。
同じく起き上がって大まさかりを拾いながら、徐晃も言う。
「あの方は我々と比べても、段違いに強いお方だ。
私もいつかは、あのようになりたいものだ!」
そう言いながら大まさかりを振りかざし、近寄ってきたゾンビの首をはねる。
「張郃殿、我々は人の死体を減らそう!
牛を倒す邪魔はできぬ。」
「・・・そうだな、了解!」
張郃はためらいながらもうなずき、ゾンビに向かっていった。
あまり認めたくない事だが、荀攸の死が張郃の下手な攻撃のせいでないとは言い切れない。張郃が手柄を焦らなければ、許褚や夏侯淵がうまく牛を倒していたかもしれない。
現に今牛の腹に刺さっている張郃の槍は、牛を攻撃しようとする者にとって相当邪魔だ。
(くそっ・・・これじゃあまるで、本当に青二才じゃないか!)
剣でゾンビを斬りながら、張郃はぎりっと唇を噛んだ。
許褚が牛と対峙している間に、于禁と李典が郭図のもとへ走る。
そして両側から郭図を支えて袁紹のところへ連れて行き、ぐっと抱き上げて素早く木箱の上に避難させてやった。
兵士たちも牛から離れ、個々にゾンビと戦い始める。
袁紹も木箱の上で弩に矢をつがえ、近寄ってくるゾンビの狙撃を始めた。
こんな所で死ぬものか、皆がそう思って己を奮い立たせていた。
151セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/21(土) 21:22:05 ID:ElnqvbqbP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(183)

「来い!」
許褚は槍を捨て、牛の前で大きく身構えた。
牛は口から涎をこぼし、巨体を揺らして許褚に突進した。
ずん、と地面が揺れ、許褚と牛がぶつかり合う。
「ふおおおぉ・・・!!」
許褚は牛の角をがっしりとつかみ、己の力で牛の突進を止めていた。常人の力では、とてもまねできない技だ。
牛は体に力をこめて許褚に噛み付こうとするが、角をつかまれて頭を動かせない。
ふいに、牛の体ががくりとバランスを崩した。
見れば、ちょうど肩の関節を貫くように矢が突き刺さっている。
「よしよし、このままこっち側の関節全部壊してやるか?」
射たのは、弓の名手でもある夏侯淵だ。許褚が牛を押さえている間に、夏侯淵が肩、尻、首と続けざまに矢を撃ち込んで関節を破壊していく。
「ボオゥ!!」
さすがに牛も気付いたのか、体を大きく振って抵抗した。
痛みを感じぬ牛の全力の抵抗に、さすがの許褚も手がゆるんだ。
このままでは崩される・・・そう感じた許褚は素早く手を放して身を引いた。ついでに剣を抜きながら、牛の横顔を蹴りつけて挑発する。
牛が許褚の足を食おうと身を乗り出した瞬間、許褚はくるりと牛の側面に回り、腹から突き出している張郃の槍の柄を切り落とした。これでもう、攻撃の邪魔にはならない。
あれ程の力を持ちながら、今のは軽業師のような芸当だ。
牛にも負けぬ豪力と電光石火の速さを兼ね備えた男・・・それが許褚なのだ。
「よくやった許褚!」
まだ言葉を失ったままの曹操に代わって、袁紹が声援を送る。
この調子なら、牛はそのうちかたがつきそうだ。
袁紹が弩を構えて見回すと、集まってきたゾンビも大半は倒されて動かぬ死体に戻っていた。新たに歩いてくるゾンビはほとんどいない。閉じ込められていた分だけなので、元から大した数ではなかったのだ。
どうやら、生き残れそうだ・・・袁紹はホッとして額の汗をぬぐった。
152セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/21(土) 21:23:14 ID:ElnqvbqbP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(184)

武将たちに声援を送りながら自らも戦う袁紹の隣で、曹操は一人打ちひしがれていた。
(荀攸・・・が・・・!)
曹操は荀攸に手を差し出したまま、動けなかった。
ついさっきまで、目を開ければそこに荀攸がいて、曹操に手を伸ばしてくれたのに。今の今まで、二人の指先は触れ合って温もりを伝え合っていたのに。
最後に指と指がぶつかり合った感覚が、まだじんじんと体中に響いている。
じんじんと頭の中まで痺れて、何も考えられない。
にじんだ視界の奥に、地面を真っ赤な血で染めて、人型のモノが横たわっている。壊れた人形のように首をあさっての方向に向けて、もう動かない。
もう手を伸ばして指先に触れてくることもない。
その感覚は、まだこんなに体に残っているのに。
曹操の頭の中で、何もかも覆い隠そうと砂嵐が渦を巻いていた。
喉がカラカラに渇いて、涙すら出なかった。
曹操の体を動かす何もかもが働きを止めてしまったように、曹操は動けなかった。荀攸の仇をとる事はおろか、叫ぶ気力さえ湧かなかった。

固まったまま目を見開き、息も絶え絶えになっている曹操を、袁紹はなす術もなく見つめていた。
自分も沮授の死体に遭遇した時、おそらくこうなっていた。
ゆえに、動けない気持ちは痛いほど分かる。
(敵を全て排除してから、どうにかするしかないな・・・。)
袁紹はそう思いながら弩に矢をつがえ、再び立ち上がって周りを見回した。横道から、またよたよたと近寄ってくるゾンビが見える。
「安らかに眠れ!」
弩の矢が狙いを違えずにその頭を貫き、ゾンビがばたりと倒れる。
袁紹はまだ遠くから来る敵がいないか、周囲に視線を巡らせた。
あまり遠くを見ていたせいで、動かない馬を押しのけて小屋から出てきた死馬には、まるで気付かなかった。
153本当にあった怖い名無し:2009/11/22(日) 01:18:13 ID:nPeoYqnq0
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       _,,-‐''´´     .,!゙'-,,,,,_、   _,,,-‐''"` .l゙
    ,,-'''"         ″   `゙゙゙゙"゙^      "
ついさっきまで、目を開ければそこに荀攸がいて、曹操に手を伸ばしてくれたのに。今の今まで、二人の指先は触れ合って温もりを伝え合っていたのに
154本当にあった怖い名無し:2009/11/22(日) 01:26:23 ID:nPeoYqnq0
    ┏━┓    ┏━━━━━┓    ┏━┓    ┏━━━━━┓┏━┓  ┏━┓
┏━┛  ┗━┓┃          ┃┏━┛  ┗━┓┃          ┃┃  ┃  ┃  ┃
┃          ┃┗━┓  ┏━┛┗━┓  ┏━┛┗━━━┓  ┃┃  ┃  ┃  ┃
┗━┓  ┏━┛┏━┛  ┗━┓┏━┛  ┗━┓        ┃  ┃┃  ┃  ┃  ┃
┏┓┃  ┃┏┓┃          ┃┗━┓  ┏━┛        ┃  ┃┃  ┃  ┃  ┃
┃┃┃  ┃┃┃┗━┓  ┏━┛┏━┛  ┗━┓        ┃  ┃┗━┛  ┃  ┃
┃┃┃  ┃┃┃    ┃  ┗━┓┃   ━ ┏━┛    ┏━┛  ┃    ┏━┛  ┃
┗┛┗━┛┗┛    ┗━━━┛┗━━━┛        ┗━━━┛    ┗━━━┛
155本当にあった怖い名無し:2009/11/23(月) 01:47:32 ID:1lCvMOoV0
>ゾンビ・オブ・ザ・官渡
乙であります。
今後の展開が待ち遠しいです。
ぶっちゃけ、ここまで来たら人類滅亡エンドしかなさそうではありますが。

自分も書いてみたいが、こうも叩きが多いと二の足を踏む。
 ゾンビの大群と食い止めて呑みこまれる勇敢な漢。
 かつて負け戦を経験し、ゾンビから一般市民を逃がすために殿をつとめる退役軍人。
 暗黒街の大物と警官が手を組み、ゾンビの群れに立ち向かう。
ネタはあるんだが、リアルの忙しさとここの空気を読むとどうも投下しにくいな。
156本当にあった怖い名無し:2009/11/23(月) 13:22:46 ID:Bs5QDlsx0
>自分も書いてみたいが、こうも叩きが多いと二の足を踏む。

他人の評価はアテにせず、ただ文章を投下するスクリプトと化せばよろしい。
叩き煽りも、好意的な感想も全スルー。
ただひたすら作品を作り上げるマシーンにね。

基本的にコミュニケーションをとろうと思ってはいけない。
僕(私)書く火と。あなた読む人。
それだけと割り切ればいい。

そしてそういう人が、評価されるってもんだ。
…ただし面白ければ、だけどね。
157セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/23(月) 17:02:03 ID:5h1HBtsSP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(185)

徐晃と張郃は進行方向の、于禁と李典は来た方向の敵を一心に掃討していた。
兵士たちもだいたいそれに従っている。
許褚と夏侯淵、夏侯惇は牛の相手をしていた。
死馬は同族の亡骸を押しのけ、人が少なくなった広場にぬうっと姿を現した。死馬の目の先には、木箱の上で立っている袁紹の姿があった。
死馬は少しひずめで土を蹴ると、一直線に突進を開始した。
「うん?」
ひずめの音に気付いて夏侯惇が振り向いた時には、もう遅かった。
夏侯惇は馬のすぐ横にいたのだが、左目がないために死馬が視界に入らなかったのだ。
「し、しまった!!」
夏侯惇は慌てて槍を投げたが、当たらなかった。
死馬はぐんぐんスピードを上げていき、君主と文官たちがいる木箱の山にすさまじい勢いで体当たりを仕掛けた。
不安定に積み上げられた木箱が揺れ、一部が壊れてぐらりと傾く。
「うわっ!?」
立っていた袁紹はいきなり足元をすくわれて、大きくよろめいた。
「殿!!」
倒れていく袁紹の手を郭図と審配がつかみ、二人分の体重でどうにか引き戻す。
袁紹は、それで良かった。
曹操は突然の衝撃に、動けぬまま木箱と一緒に崩れ落ちていった。
誰も曹操の手をつかんで引き戻す者はいない。曹操自身の心にも、その身を助けるだけの力は残っていなかった。
真紅のマントをなびかせて、曹操が落ちていく。
袁紹は叫んだが、両手をつかまれていたので助けることはできなかった。
遠くで、曹洪の叫び声が聞こえる。
視界の隅で、曹洪が必死の形相で走り出すのが見えた。
しかし、目の前で曹操が落ちていくのは、ゆっくりと鮮明に見えるのに恐ろしく速かった。
曹操の体が地面にたたきつけられ、わずかにはね返る。死馬がそれを待っていたように、馬ではなく別の生き物に見えるくらい大口を開けた。
袁紹の中で、何かが切れた。
158セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/23(月) 17:02:59 ID:5h1HBtsSP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(186)

「ああっ!?」
郭図と審配は、そろって後ろに倒れた。
必死で握っていた君主の手が、恐ろしい力で振り解かれたのだ。

曹操は体中の痛みを感じながら、ぼんやりと死馬の口が迫ってくるのを見ていた。
頭のどこかが逃げろと叫んでいるが、それも空っぽの心に虚しくこだまするばかりだ。そもそも、逃げろという意味すらよく分からない。
血と膿が混じったようなひどい臭いも、ふしぎに嫌と感じなかった。
あれに噛まれたら痛いのだろうか、死ぬのだろうか、そうしたら自分はどうなるのだろうか・・・それに何の意味があるのだろうか。
曹仁が死んで、荀攸が死んで、この世界すらこれから死んでいくというのに・・・。
むしろ今自分が生きている事が、不自然ではないのか。
かすかに笑っているような呆けた顔で、曹操は死馬の口をのぞいた。
その瞬間、白銀の筋が視界を遮った。
「はぁ、はぁ・・・はぁ・・・!!」
袁紹の手に握られた剣が、曹操の目の前に刺さっている。
曹操を食おうとする死馬の鼻先に、ぶすりと刃がめりこむ。
死馬はそれでも構わずに頭の骨で剣を押すが、袁紹も曹操の上におおいかぶさるように、剣に体重をかけて押し返した。
「ブルルル・・・!」
死馬は苛立ったように、首を左右に振り始めた。
袁紹もそれに合わせる様に、体を左右に振って剣を支える。
自由にならぬもどかしさに、死馬はますます強く首を左右に動かす。死馬が筋肉を震わせて首を振りかぶろうとした時、袁紹は突如として剣を引き抜いた。
「それっ!」
拘束を解かれた死馬の首はすさまじい勢いで曹操の目の前を通り過ぎ、横にあった木箱に激突した。
そのスキをついて、袁紹は曹操の腕をつかんで走り出していた。
159セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/23(月) 17:04:24 ID:5h1HBtsSP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(187)

曹操は、自分の身に何が起こっているのか分からなかった。
片方の腕がやたらと引っ張られて痛い。
兜ががんがんと地面に当たり、首ががくがくする。兜ごしの衝撃ががんがんと頭に響き、頭の中の真っ白な霧を晴らしていく。
ようやく聞こえるようになった耳に、幼馴染の声が流れてくる。
「ふん、不様だな曹操・・・。」
その声は、腕に伝わってくる熱のその先からだった。
「おまえでも、こんな弱さを持ち合わせていたか!
おれは少し、おまえを買いかぶり過ぎていたようだな。」
少し鼻にかけたような、力強く高慢な声・・・曹操はこんな口調でしゃべる奴を知っていた。それは、自分・・・自分に叱られているようだ。
うっすらと目を開けると、木材にもたれるように座らされ、正面に幼馴染の顔が見える。
燃える炎のように強く輝く瞳、どこか人を小ばかにしたような笑みを浮かべた口元・・・これも自分に似ている。
しかし自分はここにいる、ならばこれは、誰なのか。
それでも曹操には一人だけ、思い当たる人物がいた。

「兄上!」
半泣きで走ってきた曹洪は、振り向いた袁紹の顔を見てぎょっとした。
生きる力があふれる鋭い眼差し、自信に満ち、苦戦を楽しむような笑み・・・。
「あ、兄上・・・?」
本当の曹操は、袁紹の足元でひどく怯えた目をしてうなだれている。
曹洪は一瞬、曹操と袁紹が入れ替わったような感覚に襲われた。今まで弟としてずっと曹操の側にいたのに、それでも分からなくなるくらい二人は逆になっていた。
「曹洪よ、このふがいない兄はおまえに任せるぞ。」
袁紹はそう言って曹操の真紅のマントをはぎ取り、剣を抜いて曹洪とすれ違った。
「こんな奴に任せてはおけぬ、このおれが戦いというものを教えてやろう!」
袁紹は見せ付けるような華麗な足取りで、挑発するように死馬の前に躍り出た。
160セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/23(月) 17:05:48 ID:5h1HBtsSP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(188)

袁紹のように弱気になって座り込む曹操と、曹操のように生きる力をみなぎらせて死馬と対峙する袁紹・・・周りの将兵たちは、かたずを飲んで見守っていた。
ゾンビはもうほとんど片付いている。
しかしこの戦いには、誰も割って入ることはできなかった。
「な、何・・・あれ・・・?」
李典が震える声でつぶやく。
于禁も李典も、袁紹のこんなに強く輝く姿は見たことがなかった。
「た、魂が入れ替わったのでござろうか・・・?」
徐晃が狐につままれたような顔でつぶやく。
袁紹のここまで高揚した顔は、徐晃も張郃も見たことがなかった。
あっけにとられている将兵たちに、夏侯惇が言う。
「いや、あれは元々袁紹の中にあったものだ。
まだおれたちが悪ガキ仲間だったころ、袁紹はあんな顔をしていた。最近はめっきり見なくなったが、まさかまだ残っていたとは・・・。」
幼い頃から一緒に遊んでいた夏侯惇には分かる。
これが袁紹の昔の・・・いや、素の顔だ。
曹操や夏侯惇たちと組んで、不良仲間としていたずらやけんかに精を出していた頃の顔・・・名門袁家を継ぐために貴族教育をたたきこまれた結果、消えてしまった顔だ。
「袁紹は、元々曹操と同じものを持っていたのだ・・・。」
そう言う夏侯惇の顔は、昔を懐かしむようだった。

袁紹は死馬の前に立ち、曹操のマントをひらひらと揺らしてみせた。
死馬の目の前で、刺激的な真紅がちらちら揺れる。
それに誘われるように、死馬が袁紹に突進した。
袁紹は剣を大きく構えたまま、微動だにせずそれを見ていた。
迫ってくる死馬の顔に、かつて見た名も知らぬ少年の顔が重なった。曹操とつるんでけんかを繰り返していたあの頃、その感覚が袁紹の体によみがえった。
161本当にあった怖い名無し:2009/11/23(月) 19:54:43 ID:9w9kav8r0
曹操とつるんでけんかを繰り返していたあの頃、その感覚が袁紹の体によみがえった。
               / ̄ ̄\
             /   _ノ  \
             |    ( /)(\)  アッー!アッー!
             |  /// (__人__)   こんなのってないだろ 
     ____   .|      `ー´ノ   常識的に考えて…     
   /⌒  ⌒\   |         }
  /( ●)  (●)\ ヽ        }
/::::::⌒(__人__)_,, -ー ヽ     ノ   ← 袁紹
|     |r┬-|/   |〔|"`"ー'Y彡!、
\      `ー/     //  -    `i
   K   /  /y //        }
   ヽ ーv  /{ //  ,、   /、 }
    |  / ー/ {//゚ヽ-'チヽ_,゚/ |  |
    \/  } レ/ _ _ ,,イ |  {
      |  /`y/ ヽ ,,__ /_ ! {  |
      |  〈 r'">、 ト     ヽ {  /
     / /`''ラく ,`ッ、_ ,,,;;;,   `{-、|_
     /,、 j /  \  ニC,"      ""''-
    〈〈l,j'/     ヽ、ミ三}__
     ` /      /    ヽ、_
162本当にあった怖い名無し:2009/11/24(火) 18:25:14 ID:20JwL2Uf0
    ┏━┓    ┏━━━━━┓    ┏━┓    ┏━━━━━┓┏━┓  ┏━┓
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163本当にあった怖い名無し:2009/11/24(火) 19:24:13 ID:lH694Bb+0
>>155
一言も発さずにひたすら作品だけ投稿してた人も過去には居る
たまに便乗して荒らし臭いのも沸いてたが、そういうのはNGID登録すればokだし
164本当にあった怖い名無し:2009/11/26(木) 00:22:50 ID:7m+/0M8/0
おい、たんく
いつになったら続き投下なんだ
大学生との逃亡の先が知りたいぞ
wktkしてんだからお願いします
165本当にあった怖い名無し:2009/11/26(木) 15:32:23 ID:Zf+etFipO
久しぶりに。





袁招カコイイ!
166本当にあった怖い名無し:2009/11/27(金) 03:21:18 ID:hiGIRUC90
つまんないしセイレーンとenptyもう書かなくていいよ
167本当にあった怖い名無し:2009/11/27(金) 04:01:17 ID:9Pw7GUV20
落ちそうだぞ。
作者の人達もたまには落ちそうな時は上げてください。
くだらない煽りはみんなスルーしてると思うんでその辺は気にしなくていいと思う。
168本当にあった怖い名無し:2009/11/27(金) 04:03:19 ID:fE/ExKqF0
ageんな蛆虫
169本当にあった怖い名無し:2009/11/27(金) 17:58:39 ID:TISjLbKr0
>>168
ageの本当の使い方も知らんミジンコは黙ってろw
170本当にあった怖い名無し:2009/11/27(金) 20:55:07 ID:ZYKzeFgy0
まあゴミ文章でも上げてカキコめば落ち帽子くらいの役には立つかもナ
171本当にあった怖い名無し:2009/11/27(金) 20:57:15 ID:dCZgGyQW0
>>167
VIPじゃないんだから上げなくても落ちないよ
定期的に保守で書き込みしとけばいいんだよ
そうゆうことでageんなカス
172本当にあった怖い名無し:2009/11/28(土) 04:44:36 ID:FVQhMKNQ0
しかし何故こんなに荒れるのかね
173本当にあった怖い名無し:2009/11/28(土) 17:27:25 ID:OEz1aLe9O
セイレーンがいるからじゃないの?
174本当にあった怖い名無し:2009/11/28(土) 19:14:07 ID:YxGttq8G0
雑談スレがあるのにこっちで議論してるお前ら全員がアホだからだよ!
スレチだから雑談スレでやれ!ドアホ!
175本当にあった怖い名無し:2009/11/28(土) 19:45:37 ID:CORD3iWl0
>>174
はいはい、君はえらいえらい
176本当にあった怖い名無し:2009/11/28(土) 20:14:55 ID:kBT0PxJUO
セイレーンこっちのスレでもあっちのスレでも文句言われすぎワラタ
177本当にあった怖い名無し:2009/11/28(土) 23:08:25 ID:6dHSiEan0
>>174
いままで雑談スレなぞ必要無かったこれからもいらない
雑談も議論も荒らしもすべて保守扱いの過疎スレだった頃からに比べたら少しだけ人が増えただけ

なんら変わらないこのスレのための雑談スレ不要説をでっち上げる!
異論反論は認める
178empty ◆M21AkfQGck :2009/11/29(日) 02:39:48 ID:OjNCpEBm0
お久しぶりです。18日ぶりって久しぶりの範疇…?


――べちゃ
顔に降って来た何かを摘む。
温かくも冷たくもなく、ぬるっとしていて、柔らかい。
鉄の臭いがしていた。
――まさか、ね?
ゆっくりと、懐中電灯を上に向ける。
光の中に、空中に生える大量の棒が浮かび上がった。
それは突如として宙に在るように見えたが、よくよく見れば先端から天井へと線が伸びている。
一番近いイメージは、天井から吊るされた人参。
「何だ、これ?」
友人が同じように人参を照らす。
二つの方向から明かりを受けたことで、人参の正体が判別できた。
人。
人が、逆さまに吊るされている。
こちらから見れば、地へ向けて万歳をしているように見えた。どうやら、ワイヤーか何かを脚に巻きつけて吊るしているらしい。
後についてきていた3人が、ゆっくりと天井を照らす。
それは、天井を埋め尽くすように等間隔で吊るされていた。
よく見れば、死体は欠けているものが多い。
大半は腕だが、中には腹や太股、頭自体もある。
顔に振ってきたのは、そうした死体から剥離した肉片――。
「げ、ぇ! 死体置き場かよ、ここは!」
後に居た三人のうちの右、榊と名乗った中年男性が口元を押さえて蹲る。
懐中電灯が床をコロコロと転がり、あちこちにある黒ずんだ染みや肉片を次々と照らす。
中央、黒木さんが煙草を咥え、火を着けながら呟く。
「違うな…、倉庫だろう。食糧倉庫。見てみな」
黒木さんの懐中電灯が照らした死体には、明らかな歯型が残っていた。
179empty ◆M21AkfQGck :2009/11/29(日) 02:40:59 ID:OjNCpEBm0
少し前に食べたらしく、生乾きの血が光っている。
「なんてこった…。捕まったら、こうなるのかよ」
左、ジュンと名乗った学生が呆然と呟く。
直後、ジュンの上に何かが降って来た。
悲鳴を上げて倒れたジュンの上には、アレがいた。
顔に噛み付いている。
ジュンの顔がぐちゃぐちゃになり、判別できなくなった頃。
ようやく、事態の重さに気がついた。
友人、黒木さんと顔を見合わせ、走る。目標は、先に見えた出口。
走りながら上を照らすと、鉄筋の上を走るアレが見えた。落下に対する恐怖が無いのだろう、狭い足場にも関わらずこちらと変わらない速さだ。
「待っ、待ってくれっ!」
後から、口周りと胸元を汚した榊が追いかけてくる。
その後から、アレも追いかけてくる。
180empty ◆M21AkfQGck :2009/11/29(日) 02:42:55 ID:OjNCpEBm0
すいません、投稿するの間違えました。
続けて読んだら意味がわからないはずです。時系列かなり先ですから。


ごぼっ、と音がした。
死体だったものは、ごぼごぼと異様な音を立てていた。
そう知覚した時には、びちゃ、と床に何か赤黒いものが落ちていた。
それが出てきた時だろうか、死体だったものがたっている目の前の壁が、赤黒い飛沫でべったりと汚れている。
どこか鉄臭い臭いが立ち込めた。
―――血?
赤黒くて液体で鉄臭い。
この条件に当てはまるものはそれしかない。
死体だったものは、血の塊を吐いた後にがくがくと痙攣し、再び倒れた。
そのまま微動だにしない。
―――死んだ?
本当に死んでいるかわからない。
だから、どう対応していいかわからない。
もし動くのなら起こすことは自分の危機に繋がるし、動かないとしてもそれが今後未来永劫動かないとも限らない。
死者は動かない、という定義そのものが崩れ去ってしまっているのだから。
―――とりあえず、あいつらに…
181empty ◆M21AkfQGck :2009/11/29(日) 02:43:44 ID:OjNCpEBm0
そのまま、死体――だと思う――を見つめながら、じわじわと後退する。
死体が階段で見えなくなった頃、ようやく背中が固いものにぶつかった。
大して長くない廊下の奥、日が当たらないために常に影になるだろう扉を後ろ手に探り、取っ手らしき出っ張りを掴む。
それを捻って勢いよく扉を開き、部屋の内側に素早く体をねじ込ませる。
階段が死角になったのは一瞬だけ。
映画でよくあるような、後を向いている間に〜という展開を考慮してのことだが、杞憂だったらしい。
だからといって次もやらないというわけでもないけど。
「…どしたの?」
かなり驚いたらしく、友人も女の人も手を止めてこちらを見つめている。
とりあえず一度ゆっくりと深呼吸し、唇を舐めてから口を開いた。
「死体が、動いた」
「生き返ったの?」
こくこくと首肯する。
「で、それが今そこに?」
こくこくと首肯する。
「で、それが今そこに?」
友人が荷物から取っ手を延長した柳刃包丁を取り出す。
手ごろな棒をガムテープとセロハンテープで無理矢理に取り付けただけのものだが、それでも槍よりは扱いやすい――らしい。
「いや、生き返った、けど、また、死んだ。血、を、吐いてた」
興奮しているのに、落ち着いて喋ろうとして、こんな口調になった。
「また死んだ?」
女の人が眉を寄せる。
ふとここで、絶望的なことが頭に浮かんだ。
―――死んでまた生き返るのなら、殺せないかもしれない。

日付は無い。
記録自体、ノートの途中から唐突に始まっている。
それまではただの日記のようだった。ただ、日付がまばらなために、この記録がいつ書かれたものか推測は難しい。
普通にノートを進める形で書いていたのなら、晩春〜初夏に始まったことになる。

「1日目」
182empty ◆M21AkfQGck :2009/11/29(日) 02:47:00 ID:OjNCpEBm0
月日ではなくそういう風に記されている。

「彼女が帰ってきた。
 どう表現すればいいかわからないが、おかしい。
 しきりに家から出ないようにと言ってくる。
 いや、最もおかしいと感じる理由は、それではない。
 包帯を巻いていることもおかしいし、やけについてくることもおかしい。
 しかし、やはり1番の点は」

彼――暫定的に――は、何をおかしいと思ったのか。
それが今ならはっきりと共感できる。
文字に出来ないために書いてないのだろうが、あえて文字にするとしたら――理解と認識のズレ、といったところだろう。

「2日目。
 家にある刃物、鈍器に使えそうなものが全て消えた。
 間違いなく彼女だろう。
 そのことを問いただした結果、彼女は、『崩れた』。
 この表現が適切だと思う。
183empty ◆M21AkfQGck :2009/11/29(日) 02:47:50 ID:OjNCpEBm0
 この表現が適切だと思う。
 彼女を彼女と思いたいのに、そう認識できない。壊れてしまっている。
 理解しているはずなのに。
 いや、書いていて意味がわからなくなってきた」

彼に倣い、今後はあの状態を『崩れた』と表現することにする。
弟は武器に使えそうなものを隠しはしなかったが、やたらと家から出したがっていなかった。
これから察するに、まだ初期の段階だったということか。

「3日目。
 彼女が始終張り付いてくる。
 崩れてしまっている彼女は、徐々に認識が変わっている。今は辛うじて人ではある。
 そう、かろうじて、だ」

人から徐々に崩れて行き、最後にはアレになる。
――いや、まだ最後、と決まったわけではない。
たかが三日だ。

「4日目。
 襲われた。
 ふとした瞬間に寝てしまったことが原因だ。
 何もされてはいない。だが、彼女は既に人というモノからも外れてしまっている。
 既に会話も通じない。いや、通じているのかもしれない。単に聞きたくないだけだ、あの声を。いや、もしかしたら声までも崩れたのかもしれない。
184empty ◆M21AkfQGck :2009/11/29(日) 02:49:09 ID:OjNCpEBm0
 抑えつけることができないため、何とかベッドに拘束した」

「5日目。
 不思議なことに、彼女は抵抗しない。
 昨日の、最初の数分は暴れていたが、今は何もしない。ただ天井を見つめているだけだ。
 何も食べようとしない。なので、無理矢理口を開いて押し込んだ」

ここで、日付はいきなり飛ぶ。
記録するに値しない、ということか。

「12日目。
 やけに人が訪ねてくる。
 だが、それらは全て崩れる手前の人や崩れた人だ。
 彼女を助けにきたのだろうか。
 居留守を使うが、意味は無かった」

何故、どうして仲間の危機を察知することができたのだろう。
人の可聴域ではない音で会話でもしているのか。
いや、人にそんな音が出せるとは思えない。

「13日目。
185empty ◆M21AkfQGck :2009/11/29(日) 02:49:59 ID:OjNCpEBm0
 家を囲まれた。
 脱出の機はとうに逃した。
 家の窓にバリケードをしたおかげで、家中が暗い。
 武器に使えるものがないおかげで、心細い。テレビもラジオも放送をしていない。
 家を囲んでいる連中に対する何の障害も無く、また、車も通らないことから、どうやら世界は終わりを迎えているらしい」

13日目…。これは、自分達にとって初日だろう。

「14日目。
 まるで」

ここで終わっている。
拘束具と思しきものが千切れたりしているのだから、襲われたのだろう。

ノートを閉じた。
クーラーの使えない狭い部屋は、蒸し暑い。
窓が開いているものの、住宅街であるせいか風が殆ど入ってこない。
暑さを忘れたいと思って日記を読んだのだが、足しにもならなかった。
死体が本当に動かないのか確かめようがないため、この部屋から動けない。
窓から出ようかと考えたが、既に日が昇り、かなり明るくなっていたために躊躇せざるをえなかった。
本日も晴天。
そのせいで、かなり体力を奪われる。
外に出て動き回れば、とてつもなく体力を使うだろう。
それで夜に全員が熟睡してしまっては、あまりに無警戒すぎる。
プールに行く時に強行軍をできたのは、無謀さとプールという目的地、涼めるとわかっている施設があったからだ。今はどちらも欠けている。
186empty ◆M21AkfQGck :2009/11/29(日) 02:53:03 ID:OjNCpEBm0
「あつ…」
友人がぽつ、と呟いた。
そのせいでより暑く感じる――ということはないが、再認識させられてしまう。
下着が張り付くほど汗が出ているために水分補給が欠かせないが、積まれている飲み物は全て生ぬるい。進んで飲みたくは無かった。
三人が三人、身に帯びているのはパンツだけという格好ではあるが、もはや羞恥心とか性欲とかそういう状況ではない。
目の前にシャツが投げられようと、頭にブラが引っ掛かろうと、本当に何も思わなかった。元々性欲が無いということもあるだろうが。
ただひたすら、夕方になるのを待つしかなかった。夕方が待ち遠しい。
不思議と、蚊の餌食にならなかった。


ではまた次回。
今度は間違えないようにします。
187セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/29(日) 11:49:09 ID:7Xl1kVJKP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(189)

ぶつかる寸前に、袁紹が動いた。
「そらっ!」
体を滑るように横に動かしながら、死馬の顔面に真紅のマントを投げつける。
死馬は顔面をマントに突っ込み、視界を遮られたまま走った。
すれ違う瞬間、袁紹はマントの端を再びつかみ、身をかがめて剣を横に構えた。横一文字の刃がハードルのように死馬の足に当たり、切り裂く。
灰毛の下から赤黒い肉、さらに白い骨が露出する…が、骨を断つには至らなかった。
「ちっ浅いか!」
袁紹はマントを死馬の顔からはぎ取り、すぐさま体勢を立て直した。
すぐ後ろで、死馬がすさまじい音を立てて木材の山にぶつかる。
死馬は少しの間動かなくなったが、また恨めしげに顔を上げた。
その時の死馬の顔ときたら、もう…何度も木箱や木材にぶつかったせいで、鼻先が無残につぶされて歯の生えた肉塊のようになっている。しかも口が横だけでなく、さっき袁紹が縦に刃を入れたため十字に開いている。
牛にとどめを刺してかけつけた許褚と夏侯淵も、さすがにぞっとした。
しかし袁紹は臆する事なく、死馬の目の前で再びマントをちらつかせた。
脳が腐った死馬は性懲りもなく、袁紹に再び突進した。
袁紹がニッと口角を上げた。
「今度は外さぬぞ!」
さっきよりずっとなめらかな動きで、袁紹はマントを投げつつ、横に踏み出してしゃがみこむ。死馬の前に、冷徹な光を放つハードルができる。
赤いマントに視界を奪われた死馬が、袁紹のすぐ横に迫る。
「せええい!!!」
勇ましい掛け声とともに、袁紹は剣に力をこめた。
バキィっと派手な音とともに、死馬の前片足が切断された。
188セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/29(日) 11:50:05 ID:7Xl1kVJKP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(190)

「ぐうっ!?」
片足とはいえ馬がぶつかった衝撃に、袁紹は弾かれてわずかに後ずさった。
しかし、ハードルは崩さない。
少し遅れて、前足よりずっと太い後ろ足が剣にくいこむ。
バキィッ…と、折れたのは剣の方だった。
細身の刃が死馬の足に食い込んだまま、途中から二つに折れてしまった。
「私の剣がああ!!」
審配が叫んだ。
そう、袁紹が使っていたのは途中で交換した審配の剣である。それなりに上物とはいえ、文官の護身用の軽くて細い剣では、馬の後ろ足を斬るには役不足なのだ。
袁紹が横に転げるのと同時に、前足を失った死馬がつんのめるように倒れた。
「よくやった、後はおれに任せろ。」
曹洪の背後で、曹操が愛用の名剣を抜いて立ち上がった。
その顔には、いつもの不適な笑みが戻っている。
しーんと静かにしている皆の前で、曹操はつかつかと死馬に歩み寄り、大きく剣を振りかぶって頭をかち割った。
そのとたん、将兵たちの間から大歓声が上がった。
「ワァーッ!!」
「やったぞ!!」
手を取り合って喜ぶ将兵たちの輪の中、曹操は袁紹の手をとった。
「おれは少しおまえを甘く見ていたようだ、見事であったぞ。
おまえにあのような強い部分が、まだ残っていたとは!」
袁紹のつり上がっていた目が、いつもの少し不安げな瞳に戻る。
袁紹は目尻に涙を浮かべて、曹操の両手をぎゅっと握った。
「当たり前だ、わしは、ずっとおまえと過ごしてきたのだぞ…ずっと、いろいろなものをおまえと分かち合ってきたのだぞ。
そのおまえが、ここで死ぬと思ったら…助けられてばかりでは…。」
それ以上は、言葉にならなかった。
曹操は肩を震わせて息を整える袁紹の背を、そっと撫でてやった。
「曹操様、万歳!!袁紹様、万歳!!」
両軍の歓声が、邪気を払うように陣に響いた。
それに気圧されたのか風が止んでしまい、逢紀の旗はしょんぼりと垂れて動かなかった。
189セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/29(日) 11:50:51 ID:7Xl1kVJKP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(191)

曹操と袁紹は荀攸をその場に葬り、すぐまた進み始めた。
悪夢の始まりである陣を抜けて、ひたすら西へ歩いた。
やがて街道に出て、夜がきても励まし合って歩き続けて、空が白む頃やっと一行は洛陽付近の関門に到着した。
そこにはすでに、首を切られた死体が数体倒れていた。
「突然腐った兵が歩いてきて、守備兵に噛み付いたのでございます!
一体、何が起こっているのでしょうか!?」
そこの守将は目を白黒させて言った。
曹操はすぐにそれが伝染病であると説明し、噛まれた兵の首をはねさせた。幸い元のゾンビの数が少なかったので、その関の兵士を三割減らすだけで済んだ。
そうしている間に、夏侯惇たちがその関門にいる馬という馬を集めてきた。
「全部持って行け、袁紹!
兵が全員乗れないなら、車もつけてやるから!」
幸い、十数頭いた馬は無事だった。
曹操は自らの手で黄河の渡し場を通るための告文を書き、袁紹に手渡した。
「これで河北に帰り、すぐさま黄河を封鎖せよ。
おれが感染していない人材とともに逃げて行くまでは、誰も入れるでないぞ。
おれは感染していない人材とともに、できれば帝を連れて、「曹」の旗と「帥」の旗を同時に立てて黄河を渡る。入れていいのは、それだけだ。」
袁紹も曹操の瞳をのぞきこんで、念を押すように言い返した。
「待っておる、だから、必ず生き延びるのだぞ。」
昔と同じように強い絆で結び合って、信じあって一度抱きしめあい、二人は別れた。
文官二人も、ここまで連れてきてくれた曹操軍の武将たちに心からお礼を言った。郭図は李典の手を取り、にっこり笑ってささやいた。
「あなたには、大切なものをいただきました。
河北に来たら歓迎します。だから必ず、また会いましょう。」
「はい、こちらこそよろしく。」
李典はほわっと温かくなった胸を抱いて、去っていく郭図の後姿を見送っていた。
190セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/29(日) 11:51:40 ID:7Xl1kVJKP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(192)

袁紹軍が去っていく。
しかし一人、曹操軍のもとに残っている者がいた。
袁紹軍唯一の武将、張郃だ。
「お願いです曹操様、私を召抱えてください!」
張郃はすがるように言う。
「私は必ず、曹操様のお役に立ってみせます!
袁紹様は私のことを青二才と言って馬鹿にします、でもあなたは才ある者を大切にすると聞きました。
だから私は…。」
「甘ったれるんじゃない!!」
張郃の馬鹿げた申し出を遮って、許褚が張郃を怒鳴りつけた。
驚いて黙った張郃を、許褚は厳しく叱り付けた。
「自分を買いかぶるんじゃない!!
才は実績を出すためにあるものだ、実績のないうちから才におごるでない!
そうして手柄を焦るから、皆の足を引っ張るはめになるのだ。
では聞くが、おまえは顔良や文醜に並ぶような手柄を今まで立ててきたのか?袁紹が信頼するような戦功を重ねてきたのか?」
張郃は、答えられなかった。
確かに自分はまだ若く、大した手柄を立てていない。
許褚の言うことは、間違っていない。それに、自分の誤った一撃で荀攸を死に追いやってしまった事は、認めたくないが真実だ。
しょんぼりと肩を落とした張郃を、許褚は力強く激励した。
「おまえに才はあると思う、だからこれから実績を作れ。
我らが行くまで、袁紹を無事守り抜いて見せろ!
袁紹に言われた青二才という言葉を、自力で覆してみせろ!顔良と文醜に劣らぬ名将だと、袁紹の口から言わせてみよ!!」
それを聞いて、張郃は目からうろこが落ちた思いだった。
張郃はしゃんと背筋を伸ばして、許褚に深く頭を下げた。
「ご指導、ありがとうございました!」
張郃は慌てて馬に飛び乗り、袁紹を追いかけていった。曹操たちはそんな張郃の姿を、ほほえましげに見送っていた。
191セイレーン ◆B/kjYNqf0w :2009/11/29(日) 12:26:28 ID:7Xl1kVJKP
ゾンビ・オブ・ザ・官渡(エピローグ)

黄河を渡る船の上で、袁紹はうとうととまどろんでいた。
河北から河南に来る時は70万の大軍だったのに、今はたったの二十人だ。
こうして船に揺られていると、ここ数日で起こった恐ろしい事が全て夢だったのではないかとも思えてくる。
しかし、夢ではない証拠に、その手には曹操の書いた告文がしっかりと握られていた。
張郃はそんな君主の体に、薄布団をかけてささやいた。
「今は安心してお休みください。
守りは、この張郃がいたします。」

水上の風に吹かれながら、郭図と審配は並んで甲板に座っていた。
ふと、郭図がささやいた。
「河北に帰ったら、義兄弟の契りを結んでくれませんか?」
「え!?」
思わず審配のほおが緩んだ。
今までの郭図は審配に協力こそすれ、あまりそちらから積極的に付き合おうとはしてくれなかった。しかしこの数日間で確実に、郭図は変わった。
郭図はためらいがちに差し出された審配の手を、優しく包んで微笑んだ。
「これからも、よろしくお願いしますよ…。
二人で一緒に、殿とこの国を守ってゆきましょう。」

夜のとばりが下りた中原の大地に人家の明かりが灯る。
それに向かって、飢えた死体はよたよたと歩いていく。
家の中にいる者は、まだ何も知らない。ここ数日でこの世界に何が起こったか…大多数の者はまだ、知るよしもなかった。
それでも死体は歩き続ける。
静かに、音もなく、死の世界を広げにやってくる。
かすかな腐臭を乗せて、風が中華の大地を流れていく。
それは世界の終わりの、静かなる幕開けだった。
192本当にあった怖い名無し:2009/11/29(日) 14:40:17 ID:wq1HRWiz0
                     l   /  .r―――┐l
.       ,、r‐''''''''''''''''ー 、      l  /   /      | |
      ,r'         `' 、   ,ゝ、',,,,,,,,_/       | |
     /             ヽ, '     / ゙゙゙゙̄'''''''''''''''''ヽ
.    / ,             ヽ    / zェ:、、,_   _,,、」,
   ,,'  ;    ,、、,_  ニニ  ,、」、   /.          |
   l.  :;;;i    ´ .._`ー   ‐''"....|   / ヾニ・=   .i=・ コ
   l:,;'"`'、,    .ニ=ミ..  ヾ= 〈  /         l   |  ふと、郭図がささやいた。
.   ';i l :::i;;,, ::' "......::'''ン  .., .:::'''"゙, ./      ィ   ,l  .! 「河北に帰ったら、義兄弟の契りを結んでくれませんか?」
    l;゙、',.::l;;;i ///// r   ヽ./// l,/,..     r'`ニニヽ,  .l'、 「え!?」思わず審配のほおが緩んだ。
    l;;;;`‐;;;;;ヽ   . './'ー'''ー‐' ',  l;;;,,,ヽ  ,イ;;f'゙---ヾゝ;/‐t、
. ,、rイ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ  ,r";;二二二,ヽ, !;;;;:'.;;;`‐、';:;:;:;`;;;;';;;';";;/   ヽ、_
'    ;;;;;;;;;;;;;;;;;' ,rニン"i、_,-、/  `ノ;;;;;`-、:、;;:;:;:;:;;;;;;;;;;;;;;;ン      \
      '';;;;;;;;;;;;;;'     二  ,イ  '''   ``'‐.、ーァ'7"        |
       '''''''''  , ‐---,ェr'".         ``'‐.、         |
            `''''''''"",ノ             ヽ         |
            `'---‐'"               \       |
              ヽ                  ヽ      |
193本当にあった怖い名無し:2009/11/29(日) 14:42:23 ID:wq1HRWiz0
                        ', ;l: ll kr'´ ィイィ彳彳彳彳
                         ヾ州ィイイィ彳彳彡彡彡
               _ __      ,′        ``ヾミミミ
            ,. '´;:.:.:.:.::::::::.:.:.``ヽ  ,′     -‐ミミヽ/ミミミミミ
         ,. '´..:.:.:,. -─‐‐- 、;;;:;:.:ヽ〈           ,′ミミミミヽ
         / .:.:.:.:.:.く        ``ヾ「ヽヽヾミニ二二ミヽ `ヾミミミ
       ./ .:.:.:.:::::::::::::〉  ∠二二ニ彡' V/ T TTにニニニニニニニニニ====
       / .:.:.:.:::::::::::::::/     -='ぐ  /   l ||¨´ ̄``       . :;
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    i .:.:.::::::::::::::::::::::',         ,;;;'ハミミミヽヽ        .,.:; .; :.;:.
      ',.:.:.:.:/´ ̄`ヽ;;;',        .;;;'  ``ヾミヽ j!     ,. ′.;: .;:. :
     ',.:.:.:ヽ い( ミj!              )ミミj 、 、 ', ., 、:, 、 .; :.
      ',;;;:;:;:入    _       ..:;.;:.:;..:`Y ミj!  、 、 ', ., 、:, 、
      ';;;:;:.:  `フ´  _ノ    . ;: .;: .; :. ;:. ;:.`Y´  、 、 ', ., 、:, ,. '´ 「これからも、よろしくお願いしますよ…。
       Lノ´ ̄  , ィ´  .:; .:; . ;:. ;:. ;: .;: .; :. ;:. ;} 、 、 ', ., 、:,,.: '´ 二人で一緒に、殿とこの国を守ってゆきましょう。」
      ノノ   ____\ ;.: .;: . :;. :;. :;. :; .;: .;: .;人 _; :; :; ィ´`ヾ
   ,.  '´         ̄ ̄``¨¨ー',:;;,,:,;:,;,. '´ /;;;;;;;;;;;;;;;/   ',
194本当にあった怖い名無し:2009/11/29(日) 14:44:04 ID:wq1HRWiz0
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195本当にあった怖い名無し:2009/11/29(日) 15:56:49 ID:oIBjOYBLO
セイレーンさん、長きにわたりお疲れさまでした。

大変面白く読ませていただきました。



って、まだ続きあるんですよね?
196本当にあった怖い名無し:2009/11/29(日) 16:54:03 ID:ioQEmuIY0
>>192-194
他所から来た腐れ女子の私怨うぜぇ
197本当にあった怖い名無し:2009/11/30(月) 00:12:28 ID:LDuvSRNX0
細い剣で役不足ならカッターで十分だろ
力不足と役不足は反義語だぞ
198本当にあった怖い名無し:2009/12/01(火) 10:47:25 ID:cwORFvVt0
こんな荒しと揚げ足取りばっかじゃ誰も書きたくねえわ
199本当にあった怖い名無し:2009/12/01(火) 12:48:41 ID:Du4j+skm0
頼んでないし
200本当にあった怖い名無し:2009/12/01(火) 18:15:34 ID:vE6KfdBGO
>>196
他所から来た腐れ腐女子はお前だろ
他所から来たって繰り返してるけど自分で心当たりがあるから言ってんだろ羊水腐ってるオバサンwww
201(゚Д゚)<チェスター・コパーポットだ!ゴルァ ◆71Enoq4oZY :2009/12/01(火) 18:40:05 ID:F7gurk2gO
狂犬病ウィルスの改良版(生物兵器)の症状がゾンビに近いらしい。
202本当にあった怖い名無し:2009/12/01(火) 19:47:12 ID:cd5e4wQ50
>>201
それ大石英司の小説がネタ元だろう
203本当にあった怖い名無し:2009/12/01(火) 20:09:08 ID:XuYk4edw0
ふっ、ゾンビになったら、腐っても動き回れなくちゃ、ニセモンだぜ!
28日+5週間後に、餓死して活動停止なんざ、ゾンビじゃねえ!

やっぱりゾンビといったら、どう見ても致命傷な傷を負っていても
腸を引きずり、顔半分が食い散らかされ、目玉がぶら下がってようが
平然と動けなくちゃ、いけねえ。

頭を撃ちぬかれるor全身が粉々になるor火葬になる以外で
活動停止するなんてのは、まだまだ甘ちゃんよお。

ゾンビ修行をもう一回やり直して、出直して来いってんだ!
204本当にあった怖い名無し:2009/12/01(火) 23:16:01 ID:H2eWjt8H0
>203
ハァ?
ゾンビといったら、ヴードゥーの呪術師によって起き上った死体だ。
食欲なんてあるわけないし、呪術師の命令には絶対服従の臭くて不気味なだけの安全な労働力だろう?

そんな常識も知らん奴は、ゾンビ修行をもう一回やり直して、出直して来いってんだ!
205本当にあった怖い名無し:2009/12/02(水) 00:47:48 ID:xE+4kgsG0
キョンシーみたいだな
206本当にあった怖い名無し:2009/12/02(水) 02:09:17 ID:K/U8+j7F0
>>204
おおっ、済まぬ済まぬ。
まさか本家本元を出されるとは思わなかったぜw
怪しげなゾンビパウダーで、仮死状態から蘇った唯の障害者という噂もあるがな…

やっぱフィクションのゾンビにしようぜw
207本当にあった怖い名無し:2009/12/02(水) 17:16:24 ID:aUnwqOlfO
はあ?召喚したら代わりに戦ってくれる幼女28人殺しのおっぱいが大きいナイフ女が本当のゾンビだろ!
208(゚Д゚)<チェスター・コパーポットだ!ゴルァ ◆71Enoq4oZY :2009/12/02(水) 17:22:02 ID:B2DZXor/O
>>202うんにゃ、開発済みの生物兵器
209本当にあった怖い名無し:2009/12/02(水) 22:03:53 ID:MQn6/WRDO
うふふ。
210たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/02(水) 22:47:00 ID:7+yJLtZw0
こんばんわー
どうもご無沙汰しております
ちょっとバタバタしておりました
ゾンビハンターの続き投下したいとおもいます
それではお目汚しをばー
211たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/02(水) 22:47:25 ID:7+yJLtZw0
ゾンビハンター7
(1)

「...あのぅ、コモダさん。何か変な音が聞こえるんですよ...」
スーパーの惣菜部門で働いていた主婦のミドリカワが、コモダのもとにやって来て言った。
普段、黙々と仕事をしてきたからなのか、生まれつきなのか分からないが、ミドリカワはもごもごと独り言のように喋る。今回もコモダの側に来るのだが、自分の手元を見ながら喋るのだから、コモダは何度か聞き直さなければならなかった。
「変な音ってあんた、どんなんだかですか?」
「何かきーんと耳鳴りみたいな... 気のせいかと思ったんですけどぅ...」
後半の台詞は、コモダの推測だった。
(あんたの声のほうが、気のせいみたいだよ)
そう言いたい気持ちを堪えて、コモダは言った。
「どこから聞こえるのか、わかりますかね?」
「さぁ... 最初は耳鳴りかと思ったんですけども...」
(それはもう聞いたよ)
コモダは心の中で呟いてから、ため息混じりに言った。
「ほんじゃ屋上に出てみて、ちょっと見てみましょうかね」
それを聞くと、ミドリカワは電気に触れたように後ずさって叫んだ。
「いやいやいやいや!ご勘弁!ご勘弁!」
コモダは軽く舌打ちしながら、眉を寄せた。
ミドリカワはゾンビが押し寄せてからも暇さえあれば、自分の職場だった調理場にこもっている。
エプロンとゴム長を身につけて、何をするでもなく、ぼやーっと天井を眺めている。変化を嫌い、現実を受け入れられないタイプの人間なのだろう。もちろん、コモダも最初からあてになどしてなどいない。
「あんた、大きな声だせるんじゃないの」
ちょっとした嫌味言って、コモダは上着を羽織った。
ミドリカワが何か言っていたが、聞こえなかった。
212たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/02(水) 22:48:08 ID:7+yJLtZw0
(2)

ノブアキはショッピングセンターを見下ろすマンションのベランダにいた。
ポータブルオーディオから流れるハウリングが、切なげな悲鳴のように聞こえている。
じきにゾンビの大群が押し寄せてくるだろうことをノブアキは知ってる。
ショッピングセンターにどれだけの人間が生き残っているのかは分からないが、惨たらしい惨劇が繰り広げられるはずだ。

ーー別に、初めてって訳じゃない...
ノブアキは、無意識にタバコを探すようにポケットをまさぐった。
ーーどの道、立てこもったところで助けがくるわけじゃない...
立てこもった人間たちが、最終的に陥る精神状態とその結果をノブアキは嫌という程見てきた。
ーー皆、狂ってる... 奴らも、人間も...
もしかしたら、こんな事態になる前から世の中はおかしかったのかも知れない...ノブアキはそう思った。食う者と食われる者、漫然とただ抜け殻のように生きる...
ーー前の俺と何が違うんだ...
ノブアキは、短くなったタバコを指で弾いた。
アスファルトに落ちたタバコが、ぱっと花火のように火の粉を散らした。
半年程前のことが、遥か昔の記憶のようだ。かと言って、薄れることはない。何度も何度も、繰り返し見る悪夢のようだった。
213たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/02(水) 22:48:51 ID:7+yJLtZw0
(3)

「あのー! 何か助けてもらったみたいで、すいません!」
大学生が大声で叫ぶ。
「いや、いいよ」
曖昧に答える。
ーー死にたくなければ、付いて来いか...
なんのプランがある訳ではない。
なんであんなことを言ったんだろう、とノブアキは思った。
「あ、ガスないんで、どっか入ってもらっていいすか?」
「いや、いけるところまで行ったほうがいい」
ノブアキは答えた。
一刻も早く、かつ遠くに移動したかった。
ーー安全な場所、といっても...
思い当たるふしはない。
バイクは通りをノロノロと進んでいる。ひどい渋滞で、すり抜けようとするバイクがやたら多かった。
「なんか、凄ぇことになっちゃってんじゃないっすか? 」
ノブアキは答えに詰まった。もしかしたら、都内全域で『奴ら』が現れたのかもしれない、という嫌な想像が頭をかすめたからだ。
ーーどうにかして都内を出なければ...
方法を考える時間はなかった。目の前に物々しい装甲車と、ジェラルミンやポリカーボネートの盾を持った機動隊が検問を築いていた。
「んだよこれー。これだから渋滞すんだってー」
大学生が苛立ちながら不平を漏らした。
ーーまずいな...
ノブアキの頬が微かに痙攣した。
「降りろ」
ノブアキは鋭く、低く言った。
「え!?」
「いいから降りろ。俺たちはノーヘルニケツだぞ。こんな所で捕まってたまるか」
そりゃそうっすね、と大学生は明るく笑った。
214たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/02(水) 22:49:56 ID:7+yJLtZw0
(4)

「弱ったな。外堀通りから首都高5号線に出たかったんだけどな...」
「それで?」
「とにかく首都圏を出たい。出来るだけ早く」
「つか、どうしてですか?」
ーーえ!?
ノブアキはぽかんとした顔で相手を見た。
「なんか暴動みたいになったけど... てっきり家に帰るだけだと思ったんで」
ーーなるほどな...
ノブアキは、失望と共に軽い疲労を感じて、こめかみを揉むように押さえた。
ーーなにも解ってないんだな...
バス待ちの人々や、信号待ちの車の人々と一緒なんだな、とノブアキは思った。
あれだけの事態を目の当たりにしても、己の理解の範囲に囚われている。なんとか自分の知識で説明が出来ることにしたい... 人の性ともいうものだろうか。
そういう意味では、ノブアキは違った。
解らないものは解らないままでいい... とにかく生き延びる。直感ともいうべき何かが、ノブアキにそう命じていた。
215たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/02(水) 22:52:00 ID:7+yJLtZw0
(5)

「いいか? これは暴動なんかじゃない。『奴ら』は人を襲うんだ。襲って...喰うんだ...」
ノブアキの脳裏に、満員の地下鉄での惨劇の光景が蘇った。
「襲われた人は、『奴ら』の仲間になる。同じように人を喰う。俺は通勤電車の中で見たんだ。大手町駅も、淡路町駅も地獄だぞ」
大学生の顔色が憮然としたものから、徐々に変化していく。
「地下鉄でな、喉を喰い千切られた女が周りの人間に噛み付いた... すげぇ量の血だったよ。死んだって不思議じゃないくらいの量だった。...なのに、立ち上がったんだ」
ヒトの血液の量は5リットル... ノブアキは何かで読んだ記憶がある。だが、ノブアキの感覚ではそれよりも多かったような気がしていた。
「それってまるで... ゾンビじゃないですか...」
大学生が血の気のない顔で呟いた。
ーーゾンビか...
ノブアキは、子供のころに見た安いっぽいメイクのB級映画を思い出した。
ノロノロと歩き回る死体に、呆気無く人類が駆逐されて行く... 妙な閉塞感を感じさせる映画だったように記憶していた。しかし、この事態は...
「いや。あんなもんじゃない。足だって力だってハンパじゃない。まともにやり合って勝てる相手じゃない」
ノブアキはきっぱりと言った。自分が地下鉄のトンネルで駅員のゾンビと格闘して生き残ったのは、単なる幸運の賜物でしかなかった、ということを痛感していた。
「木造アパートなんかじゃ『奴ら』を防げない。どっか頑丈なビルとか... そんなんじゃないとな」
大学生がぱっと顔を上げて、半ば悲鳴のように叫ぶ。
「じゃあお巡りさんに事情説明して、助けてもらいましょうよ!」
言い終わると同時に駆け出そうそする大学生の腕を、ノブアキは掴んだ。
「バカかお前はっ! 御茶ノ水から、数百メートルしか来てないんだ! ここにも『奴ら』が押し寄せる! こんな検問なんて速攻で終わりだよ!」

216たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/02(水) 22:54:03 ID:7+yJLtZw0
(6)

ーー速攻で終わる...
ノブアキは自分で言った言葉が、あるいは真実かも知れないことに気付いて、愕然とせざるを得なかった。
ノブアキも心の何処かで思っていたのだ。
警察なり自衛隊なり、誰かに守ってもらえるんじゃないか、と。また元の退屈で平穏な暮らしに戻れるんじゃないか、と。
だが、それは淡い幻想だと告げる何かが、ノブアキの口を借りて真実を突きつけた。
ーー無理だ...
警察に、いや誰かに助けて貰おうなんて甘い。言い換えれば、誰も誰かを守ることなど不可能なのだ。あの怒涛のように押し寄せる狂気の前では。

二人が沈黙したのは数秒だったが、その何十倍もの時間に感じられた。

「あのぉ...」
ふいに大学生が口を開く。
「5号線から川越街道でませんか?」
ノブアキは先を促すように頷いた。
「いや、自分のバイト先なんですけどね。川越街道沿いのドンキなんすよ。
まだ開店前で閉まってますが、9時半ごろになれば早番開けてくれるんで。そこに立て篭もっちゃえばって思ったんすよね」
「いや、ダメだ」
ノブアキは言下に否定した。
出入り口が多く、守るには適していない... ノブアキは自分の考えを述べた。
217たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/02(水) 22:54:54 ID:7+yJLtZw0
(7)

「いや、ダイジョブっすよ」
深夜少ない従業員で閉店作業がやりやすい様に、また万引き防止の警報器設置コストの関係で、各フロアに出入口は一つ、という事だった。
店内を迷路のようにして、客足をいろいろな商品に誘導するというコンセプトのためにも、出入口は少ないほうがいい、ということらしい。
「あとは、従業員出入口と、エレベーターですけど、あれは簡単にロックできるんで無問題ですよ」
ーーなる程、いいかもしれない。
取り合えず篭城だ、ノブアキは思った。
あれだけの騒動になっているのだ。もしかしたら米軍も出動するかも知れない。助けを待つにしても、それまで生き残る必要がある。

「いいと思うな。そうしよう」
何にせよ、落ち着いて生き残る術を考えなければならない。今までのような、運に頼るようでは命が幾つあっても足りない。
「うす! そんじゃ自分のカノジョも呼んでいいすか?」
「いや、別にかまわないけど」
とりあえずでも方針が決まったからか、ノブアキの態度にピリピリとした緊張が弱まっていた。
二つ返事で許した。許すべきではなかったことにノブアキが気付くのは、後のことになる。

「あざーす。 あ、自分ホッタ マサキです」
マサキは、ぺこりと頭を下げた。
「サカモト ノブアキだ」
二人は固く握手を交わした。
218たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/02(水) 22:56:42 ID:7+yJLtZw0
ふぅ
とりあえず以上になります

ちょっと量多かったですね、さーせん
ちょくちょくうpを心がけます
そいではまたー
219たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/02(水) 23:03:06 ID:7+yJLtZw0
>>164
遅くなりまして、ほんとすいません
これからもおつき合いください
220本当にあった怖い名無し:2009/12/03(木) 14:38:45 ID:Tu0blDA5O
たんくって太ってるからたんくなのー?
221本当にあった怖い名無し:2009/12/03(木) 20:05:59 ID:2TJ85eKX0
ーじゃなくて、―(ダッシュ)使ったほうがいいすよ
222たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/03(木) 20:35:12 ID:4eNikd2t0
>>221

あ、すいません
iPodなんで区別つかなくて
申し訳ありません


じゃなくて
-
でいいですか?
223本当にあった怖い名無し:2009/12/04(金) 03:27:52 ID:75TkRG320
>>222
――おそらくは、←な感じにした方が良いという意見かと。
「だっしゅ」で変換したら出まするお。

で、こっちに書き込んだついでといっては何ですが……
投下、乙です。wktkがkskしてきますた。
224本当にあった怖い名無し:2009/12/04(金) 17:20:04 ID:grDPcI5f0
パウ北池袋のドンキは1Fの入り口2つあるぞ
225本当にあった怖い名無し:2009/12/04(金) 22:41:36 ID:rIvoOXC5O
>>218
木造でダメなら、シャッターなんてあっと言う間に破られるぞ。
店舗に高価な防犯シャッターなんて付けないからな。
226本当にあった怖い名無し:2009/12/04(金) 23:48:44 ID:VO6qPhd20
たんくがちょっと調べるのを怠ったためにリアリティがどんどん失われてゆく…
227本当にあった怖い名無し:2009/12/05(土) 03:49:45 ID:2mVRiKEz0
>>224の追記
ドンキがテナントとして入ってる建物自体の客用の1F入り口は3つ(駐車場含めず)で
ドンキ自体の1F入り口は、正面入ってすぐ右に1つと、正面横のチャリンコ売り場に1つ
因みに、建物内の1F入り口はコンビニの入店口より粗末だからドンキ1Fの封鎖は不可能

ついでに、
>深夜少ない従業員で閉店作業がやりやすい様に
さっき行ってきたが普通に営業中だった

パウきたいけぶくろ店
【営業時間】24時間営業 【定休日】なし
http://www.donki.com/c/shop/shop.php?lang=&shopid=63
228本当にあった怖い名無し:2009/12/05(土) 03:56:36 ID:e1rswtwd0
>>225
実際はともかく、イメージで木造はダメって思ったんでね?
ホラー映画とか木造の壁を壊して手が出てくるし、それだけ主人公はパニクっていた……と。
丈夫な建物のほうが良いだろうというのは確実だし?
ただ、登場人物が最初から設定を知っているような言動にならないよう気をつけるが吉。

あと、入り口の数なんて「各店舗、少なくとも作中の店舗では違う」でおk。
火災時の安全を考えると「店舗の構造としてどうよ?」って思ったけど気にしませんとも!
229本当にあった怖い名無し:2009/12/05(土) 04:06:51 ID:ttlkizjC0
実際は築年数とかでも大分変わってきそうだけどな。
アパートの何がまずいって、一階部分の庭の方に面した大きなサッシ窓の方面だな。
普段から雨戸を閉めてる部屋なら問題が少ないが、閉めてなければかなり危ない。

最近のなら割れにくい針金入りの分厚い窓にしているかもしれないが、窓を直接ぶったたかれる
音や姿は、アパートの狭い部屋では精神的に耐え切れんだろう。
230本当にあった怖い名無し:2009/12/05(土) 06:10:33 ID:aExQFQVg0
みんな落ち着くんだ
篭城が成功したとは書いてない
しかも回想シーンだし、話の流れから篭城失敗だと思うんだ
ドンキに篭城ってとこだけ抜き出して向いてないとかどうこう言う前に落ち着け
231本当にあった怖い名無し:2009/12/05(土) 12:34:21 ID:twog3D4Z0
なんで乾燥スレに書かんのよ?
232本当にあった怖い名無し:2009/12/05(土) 15:54:54 ID:6eWs6ST+0
こっちに流れができたから。
233たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/05(土) 20:36:54 ID:wx0WYAfh0
こんばんはー
いや何だかいろいろすいません
お恥ずかしいかぎりです
寛大寛容勘弁のお心でおつき合いいただければ...
よろしくお願いしますー
234たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/05(土) 20:37:07 ID:wx0WYAfh0
(8)

検問、とは名ばかりで実際のところ封鎖に近いものだった。金網のついたバスが道路を横断するように停められている。機動隊は険しい表情で並び立ち、制服の警官がドライバーと話しをしていた。
――本部との照会が取れた車両のみ通過できます
制服の警官の声が風に運ばれて、ノブアキの耳に届いた。
ノブアキは自分が考えていた、予感が現実味を帯びているように感じた。ノブアキがゾンビと遭遇するもっと前から、何処か知らない場所で被害が拡大していたのだろうか。どちらにせよ確かめる手段は無い。
二人は、徒歩で検問を抜けようと歩き出した。

「あ、すいません。ここ通れないんですよ」
若い制服の警官が警棒で行く手を遮った。
「何でっすか!?」
マサキが怒気をはらんだ口調で言う。
「順番にお伺いしますんで、列に並んでください。順番なんで」
「列って?」
警官が警棒で指し示す方向には、数珠つなぎになった車の列が渋滞している。
「あ、身分証明証出しておいてください。免許証とか」
「マヂで何いってんの!」
マサキの苛立ちと焦りが、抑えられなくなっている。
――まずいな...
ノブアキは無言でマサキの腕を掴む。いくぞ、と言うように強く引く。
「ゾンビ来るんすよ、ゾンビ! マジでヤバいんすよ!」
「バカ! ほら行くぞ!」
ノブアキはマサキを羽交い締めにする様に、両肩を掴んだ。
「死んじゃうよ喰われちゃうよマジヤバいんすよ!わかってくださいよ!」
舌を噛みながら、裏返った声でまくし立てる。マサキの動揺が危険な状態になっていた。
235たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/05(土) 20:38:12 ID:wx0WYAfh0
(9)

「どうしたぁー?」
ずんぐりとした体格の年かさの制服の警官がやって来て怒鳴った。普段から大声を出している人間特有の、しゃがれただみ声が威圧感を与える。
「おいなに、どうしたのー」
目が針のように細い。耳が潰れている。柔道経験者だろう。

「なにお兄さん、朝からご機嫌だねー。ずいぶん飲んだんじゃないのー、ねぇ」
口調は親しげだが、細い目は瞬きをしていない。
「職務中にわずらわせて、申し訳ありません。私、サカモトと申します」
ノブアキはなるべく丁寧に頭を下げた。
――下手に出た方がいい
という判断だった。

「JR御茶ノ水付近で、悪質なデモ隊に巻き込まれました。前向きに善処して頂きたいのですが、携帯電話も壊されてしまって、出来れば巡査部長さんに私の会社に連絡をして頂いて、安否だけでもお伝え頂ければ、と思うんですが...」
そういってノブアキはさり気なく名刺を差し出した。
「申し遅れました。サカモトです」
最初に名乗っている。名刺を差し出すタイミングを計っただけだ。
善良な市民が本当に困っちゃってるんですよ、という表情で話しながら、ここで初めて軽く微笑む。もう大丈夫ですよね安心ですよね、というやや媚びた笑みだ。

俺は部長じゃないよ、といいつつ目の細い警官が名刺を受け取る。
「この代表って番号でいいの?」
と言いながら携帯電話を取出している。
「(何やってんすか! ノブアキさん)」
マサキが小声で尋ねる。
「(時間稼ぎだ。いいから見てろ)」
ノブアキは待っていた。一か八かの賭けだった。
236たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/05(土) 20:41:25 ID:wx0WYAfh0
今夜はこれで...

今日マンガ喫茶にいってPCでスレ見たら、ーーって相当醜かったですね
ホントにすいませんでした

――にしてみました

ご意見引き続きお願いします
それでは
237本当にあった怖い名無し:2009/12/07(月) 23:43:03 ID:GrdvqiK80
          ____
       / \  /\  キリッ
.     / (ー)  (ー)\
    /   ⌒(__人__)⌒ \
    |      |r┬-|    |
     \     `ー'´   /
    ノ            \
  /´               ヽ
 |    l              \
 ヽ    -一''''''"~~``'ー--、   -一'''''''ー-、.
  ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒))
238たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/08(火) 21:09:49 ID:Uo+99wDA0
こんばんはー
今夜は二話投下です
239たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/08(火) 21:10:40 ID:Uo+99wDA0
(10)

パァァァァァー...
押しっぱなしのクラクションが聞こえて来る。
――来たな...
「来た来た!デモ隊来た! お巡りさん!」
ノブアキは叫びながら走り出す。渋滞の最後尾からクラクションの音に混じって悲鳴が聞こえて来る。
警官の制止を振り切って、路地に走る。
「マサキ! 来てるか!?」
「うすっ! つかどこいくんっすか!?」
「いいから走れ!」
裏路地には、居酒屋などの飲食店や、開店前のブティックが軒を連ねている。出来れば車を調達して、なんとか封鎖を抜けたかった。
ノブアキは、走りながら左右の店舗を見た。
嫌な予感がした。歩道にブティックのマネキンが倒れていたからだ。
ただ、止まりたくなかった。もう自分のすぐ後ろに、あの狂気を帯びた目が迫っている気持ちが拭えなかった。
――痛っ!!
突然、ノブアキの足の裏に鋭い痛みが走った。片足を上げて、出来損ないのスキップのようによろめいてしまう。
「ちょっと待った! 何か踏んじまったみたいだ」
裸足のノブアキの足の裏に、5cmくらいのガラスの破片が刺さっている。
「お、うおー。 ちょーいたそー。ガラスっぽいっすね」
――畜生...
ノブアキの奥歯が、ぎりっと音を立てた。
地面を見渡すと、割れたショーウィンドウのガラスの破片が散乱している。
生きるか死ぬかの瀬戸際を経験したノブアキが、ガラスの破片ごときに臆していた。
突き刺さった破片を引き抜くと、どぷりと血液が流れ出す。途端に心臓の鼓動に合わせて、ズキンズキンと痛みが駆け上ってくる。
――血を見ると、気合が萎えるんだな...
血が止まらなかったらどうしよう、何で靴を脱いでしまったんだろう、などと場違いな思考が湧き上がってくる。
ふと今来た道をふりかえる。
小太りの人影が差し掛かるのが見えた。
ノブアキは見覚えのある髪型を見て、全身の毛が逆立った。
その人影は、「海人」と書かれたTシャツを着ていた。
240たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/08(火) 21:11:31 ID:Uo+99wDA0
11)

バス停での出来事が、ノブアキの頭によみがえる。
――( おいっ! お前いい加減にしろよ!)
白髪混じりの長髪を束ねた、小肥りのヒゲの中年男。ドスの効いた声で怒鳴られながら、こずかれた...

「マサキ!!」
甲高い女性の悲鳴のような声で叫んでしまう。
マサキは「海人」に背を向けている。「海人」がふっとこちらを見る。白い目が、見開かれている。
ノブアキは意味不明の叫び声を上げながら、弾かれたように立ち上がる。ガラスの破片など気にしている余裕はなかった。無心で走り出す。グサグサと足の裏に破片の突き刺さる感覚はあるが、痛みなど感じない。

ヒギャアアァー!
声帯が引き裂かれそうな声だけが聞こえる。声...と言うよりも、もっと不快な音だ。黒板を爪で引っかいた時のような、生理的な嫌悪感を呼び起こす「音」だ。

「待って!まってまってまって...!」
マサキの声が聞こえる。振り返る余裕もない。
「うわあぁぁぁぁぁっ!」
ノブアキは全速力で大通りに飛び出す。
241たんく ◆cKuSCdGrdM :2009/12/08(火) 21:12:49 ID:Uo+99wDA0
中途半端なところですいません
それではまたー
242本当にあった怖い名無し:2009/12/10(木) 15:29:58 ID:GQvb0ZniO
真っ直ぐに細く頼りなく伸びた農道を、黒く静かな行列が進む。
誰に号令をかけられているわけでもないのに、行列の足並みは奇妙なほど揃っている。

「ユキよ、くらみごにだけはなっちゃいがん。
くらみごになれば、生きて地獄を味わう事になるんど。
村ん連中は神ん子じゃ誉れモンじゃと騒ぐども、そっけな話は擬いも擬いじゃ。
みな胸ん中では、ウチん子がしらみごにならんで澄んだとホッとしちょらあが。」

遠くを往く行列を土壁に出来た穴から見たユキは、小さい頃に祖母から聞いた話を思い出していた。
行列の先頭を歩くのは、学校の隣にある寺の坊主だ。
先の丸まった長い槍を両手で持ち、それをまるで太陽を突き落とす様に激しく上下させている。

「どうせ生こうが逝こうが地獄じゃで。」

ユキはポツリと吐いて視線を手元に戻し、捕えた鼠を殺す仕事を続けた。
唯一の話し相手であり、唯一の肉親でもあった祖母が死んで二年。
牛や豚でも住みたがろうとしない小さな汚い小屋の中で、孤独と空腹だけが大きくなる。
ユキは黙々と藁打ち槌を鼠に振るい続けた。
一つ、二つ、、、三つ目はまるで憎き誰かに振るうかの様な激しさ。
その三つ目の衝撃を合図にしたかの様に、遠くで行列がピタリと止まった。
先頭の坊主の影が、持っていた長い槍をポイッと投げる。
「あははははははははは!」
長い槍の先端から、ハッキリと若い女の笑い声が寒村に響く。
それは遠く離れたユキの小屋まで届いた。
金属音の様な笑い声を聞いたユキは、要らぬ四つ目を鼠に打ち据えた。
243本当にあった怖い名無し:2009/12/10(木) 18:20:55 ID:bLN/HX810
 ヽ | | | |/
 三 す 三    /\___/\
 三 ま 三  / / ,、 \ :: \
 三 ぬ 三.  | (●), 、(●)、 |    ヽ | | | |/
 /| | | |ヽ . |  | |ノ(、_, )ヽ| | : |    三 す 三
        |  | |〃-==‐ヽ| | .:::|    三 ま 三
        \ | | `ニニ´. | |::/    三 ぬ 三
        /`ー‐--‐‐―´´\    /| | | |ヽ
244本当にあった怖い名無し:2009/12/11(金) 14:19:21 ID:/y7TqYnV0
(Y・∀・)Y<許してつかあさい
245本当にあった怖い名無し:2009/12/11(金) 20:29:27 ID:jO0C1Ifm0
   ウワァァ!!
    (>'A`)>
    ( ヘヘ
246本当にあった怖い名無し:2009/12/11(金) 23:45:15 ID:WVzWFxrUO
247本当にあった怖い名無し:2009/12/12(土) 19:29:24 ID:dXkRgHog0
248本当にあった怖い名無し:2009/12/12(土) 19:56:52 ID:B3gvj2gl0
249本当にあった怖い名無し:2009/12/12(土) 21:47:26 ID:NrpwZYVn0
セイレーンがいないとスレがいい意味でも悪い意味でも盛り上がらないことに気付いた
おしい人を亡くしたよな
250本当にあった怖い名無し:2009/12/12(土) 22:37:37 ID:aAbvSTph0
無駄に上げずに
深く潜行しながら保守でそのうちに誰か来るさ
文句や自分の要望ばかり書く新参カスが去った頃が投下するのがベストじゃないかな
今年は保守のみでいいかも
251本当にあった怖い名無し:2009/12/13(日) 01:29:15 ID:l75/+6+C0
>>249
ああいうのは荒れてるって言うんだよ
あまりいい傾向じゃない
252本当にあった怖い名無し:2009/12/14(月) 06:30:16 ID:DIHoyV5vO
こういうゾンビ物で個人の創作サイトってないのかな
253本当にあった怖い名無し:2009/12/15(火) 17:30:35 ID:oFNx3KN40
254本当にあった怖い名無し:2009/12/16(水) 00:13:34 ID:268zYjdv0
255本当にあった怖い名無し:2009/12/16(水) 00:16:49 ID:268zYjdv0
ちゃ
256本当にあった怖い名無し:2009/12/16(水) 00:34:44 ID:268zYjdv0
って
257本当にあった怖い名無し:2009/12/17(木) 08:05:24 ID:jJQ4bF8/O
258本当にあった怖い名無し:2009/12/17(木) 09:33:14 ID:arlVyKC70
259本当にあった怖い名無し:2009/12/18(金) 01:34:54 ID:Txw4vzFG0
>>252
東京くだん、でググると色んな意味で過去のゾンビ小説スレを騒がせた人物のhp出てくる
ぶっちゃけ嫌な奴だったが文章力は凄かった
260本当にあった怖い名無し:2009/12/20(日) 11:29:42 ID:YPdlY/Q8O
261本当にあった怖い名無し:2009/12/22(火) 06:18:50 ID:tStDZAgKO
262本当にあった怖い名無し:2009/12/22(火) 10:15:26 ID:+4eNfZyFO
263本当にあった怖い名無し:2009/12/23(水) 07:09:21 ID:WdsPSvKPO
264プリニーっす:2009/12/23(水) 15:10:29 ID:8mgw3xdmP
このスレ過疎時と過密時の差がすごいッスね。
ロメロさんは続き書かないんスか?
265本当にあった怖い名無し:2009/12/24(木) 15:43:31 ID:bycN3d7WO
266本当にあった怖い名無し:2009/12/24(木) 17:57:57 ID:7rGQ6L8GO
267本当にあった怖い名無し:2009/12/25(金) 14:15:22 ID:YMIuJ5Be0
268本当にあった怖い名無し:2009/12/25(金) 19:23:28 ID:jTxcUyosO
サナトリウムさんて、過去スレのどこで作品書いてます?
269本当にあった怖い名無し:2009/12/29(火) 11:02:23 ID:L/tQUer30
270本当にあった怖い名無し:2009/12/29(火) 15:54:35 ID:D1JMMaCRO
おあえ…何ここ?
何このスレ?
何ここ?何このスレ?何ここ?何このスレ?何ここ?なにこのスレ?な にここ? なにこ のスレ?
なにここ?なにこのスレ?

のスレ?なにこ?なにこのレス?
ナニコノすれ
あああ!!窓に!!窓に!!
ナアァァあ亞ああア亜Aあああアアア唖ああAaああ阿aああああアぁぁア亜

なねかのスれどえなてらの?

なぁあ…何こののスレ?
何こここんな?何このスレ?何このスノレ!?にここ?どうなてるの?んが ぐぐ
なにに ここ? のレ?あ
このズレ?なに こ?はな にこのレ?
おのの
?なにここなにこコこ?なにこ のスレ?なにこ?なにこのレス?
絶対に許さないんやなw
悲劇なんやなw
ナアァァあ亞ああア亜Aあああアアア唖ああAaああ阿aああああアぁぁア亜

なねかのスれはわあわらさ

どえなってらのかなまだいぬっとれな
名〇仝

になこ こ


ん…
271本当にあった怖い名無し:2009/12/29(火) 16:44:17 ID:ABL7vTlZ0
ほらな、携帯だろ?
272本当にあった怖い名無し:2009/12/29(火) 21:00:52 ID:L/tQUer30
ageんなカス
273本当にあった怖い名無し:2009/12/29(火) 23:19:29 ID:D1JMMaCRO
>>271
>>272
おあえ…何これ?
何このレス?
何これ?何このレス?何これ?何このレス?何これ?なにこのレス?な にこれ? なににこれ?なにこのレス?

のレス?なにこ?なにこのレス?
ナニコノれす
あああ!!窓に!!窓に!!
ナアァァあ亞ああア亜Aあああアアア唖ああAaああ阿aああああアぁぁア亜

>>271
なぁあ…何こののれス?
何こここんな?何このレス?何このノレス!?にここ?どうなてるの?んが ぐぐ
こ? のレ?あ このレズ?なに こ?はな にこレ>>272?
おのの
どうなってるの?なにここ?なにこここ?なにこ のレス?なにこ?なにこのスレ?
絶対に許さないんやなw
悲劇なんやなw
GYAaああ阿aあAあ唖あ吾あアaぁぁア亜!!

なねかのスれはわあわらさ

どえなってらのかなまだいぬっとれな
名〇仝

になこ こ


ん…ぽぎィ

>>272ほモ
274本当にあった怖い名無し:2009/12/29(火) 23:29:30 ID:D1JMMaCRO
のうみそ
275本当にあった怖い名無し:2009/12/30(水) 06:39:04 ID:PSHgjc2l0
>>273
別にあげてもいいや
あとは保守頼む 今日から旅行だし
276本当にあった怖い名無し:2009/12/30(水) 17:43:57 ID:kq1BrO0u0
ほらな、携帯だろ
277本当にあった怖い名無し:2009/12/30(水) 21:30:36 ID:p75tt/v2O
>>276
おあえ…何これ?
何このレス?
何これ?何このレス?H何これ?何このレス?何これ?なにこのレス?な にこれ? なににこれO?なにこのレス?

のレス?なにこ?なにこのレス?
ナニコノれす
あああ!!窓に!!窓に!!
ナアァァあ亞ああア亜Aあああアアア唖あーあAaああ阿aああああアぁぁアー亜

>>276
なぁあ…何こののれス?
何こここれらふな?何このレス?何このノレス!?にここ?どうなてる日ふ?んが ぐぐ
こ? のレ?あ このレズ?なに こ?はな にUこレ>>276?
おのの
どうなってるの?なにここ?なにこがのだこ?なにこ のレス?なにこ?なにこのスレ?
絶対に許さないんやなw
悲劇なんやなw
GYAaああ阿aあAあ唖あ吾あアaぁぁア亜!!

なねかのスれはわあわらさ

どえなってらのかなまだいぬっとれな
:)

になこ こ


ん…ぽぎィ

>>276ぼらヤだでL
278本当にあった怖い名無し:2009/12/30(水) 21:41:52 ID:p75tt/v2O
ほらな、携帯だろ
279本当にあった怖い名無し:2009/12/30(水) 21:47:31 ID:PBY3NA7dO
ほらな、携帯だろ
280本当にあった怖い名無し:2010/01/01(金) 02:17:40 ID:mpOZ8Qdl0
おあえ…何ここ?
何このスレ?
何ここ?何このスレ?何ここ?何このスレ?何ここ?なにこのスレ?な にここ? なにこ のスレ?
なにここ?なにこのスレ?

のスレ?なにこ?なにこのレス?
ナニコノすれ
あああ!!窓に!!窓に!!
ナアァァあ亞ああア亜Aあああアアア唖ああAaああ阿aああああアぁぁア亜

なねかのスれどえなてらの?
名 1えwd1
なぁあ…何こののスレ?
何こここんな?何このスレ?何このスノレ!?にふぁsくぁここ?どうなてるの?んが ぐぐ
なにに ここ? のレ?あ このズレ?なに こ?はな にこのレ?
おのの
?なにここなにこコこ?なにこ のスレ?なにこ?なにこのレス?
絶対に許さないんやなw 悲劇なんやなw sqsdしゅあ牛qw89
ナアァァあ亞ああア亜AあああアあAAAAA蛙唖あAAAアア唖ああAaああ阿aああああアぁぁア亜

なねかのスれはわあわらさ
sだぽぽぽぽおっぽ
どえなってらのかなまだいぬっとれな
名〇仝

になこ こ


ん… poぎっぎッ

281 【末吉】   【1904円】 :2010/01/01(金) 11:20:28 ID:bWi00uuG0
Dieキチなら、近々小説がうpされる……といいな。
282プリニーっす:2010/01/01(金) 15:19:38 ID:UC3rnGEfP
そうッスね。
今年もいい作品に期待ッス!
283本当にあった怖い名無し:2010/01/05(火) 18:02:15 ID:OZXrd8BA0
284本当にあった怖い名無し:2010/01/07(木) 15:22:45 ID:XG5McZTa0

285本当にあった怖い名無し:2010/01/07(木) 23:13:14 ID:Ytz4EUFo0
286本当にあった怖い名無し:2010/01/08(金) 08:22:10 ID:bceR9NdP0
287本当にあった怖い名無し:2010/01/08(金) 18:08:58 ID:W6dz488+O
288本当にあった怖い名無し:2010/01/11(月) 00:05:52 ID:5sjwri2y0
289本当にあった怖い名無し:2010/01/11(月) 01:36:07 ID:DTFON99Z0
290本当にあった怖い名無し:2010/01/11(月) 06:14:55 ID:0LOPzpXM0
291プリニーっす:2010/01/12(火) 12:57:37 ID:1k5CYbGjP
駄作でも書いて人を集めた方がいいのか
良作の自信がなければやめた方がいいのか
…難しいとこッスね。
292本当にあった怖い名無し:2010/01/12(火) 19:00:16 ID:khUd9zsC0
駄作でもいいじゃない。タダなんだもの。
つか、なまじ良作の自信があると詰めが甘くなったり、批判に弱くなったりするかと。
気楽に投下 → 批判orマンセー → ( ´_ゝ`)フーン。参考にするわw
くらいが丁度いいかも試練。

でもコレだけは言える。
「完結しない作品に価値は無い」
面倒なら「俺たちの戦いは……」的な終わりでも良いと思う。続きを楽しみに待っている人には区切りがつくし。
でも、それすらしないのであれば釣りでしかないのではなかろうか?
293本当にあった怖い名無し:2010/01/13(水) 20:39:35 ID:AZnWPQfw0
書いてるうちに叩かれて、継続する気が失せる事がよくある。
294本当にあった怖い名無し:2010/01/13(水) 21:38:52 ID:aG4QmLju0
まあ目的がない限り、文章を投下するだけのマシーンにはなれんからな。
ましてや2ch、暇つぶしとコミュニケーション目的が多いだろうから、強烈な批判ばかりに
さらされると、「じゃ、もういいわ」ってなるだろうなw

ま、書くのも自由、やめるのも自由。
タダだし、目的ある人以外には、暇つぶしの意味合いが大きいんだろうから、別に読む人間の
ことを考える義理もないさ。

タダなんだからw
295本当にあった怖い名無し:2010/01/14(木) 03:30:53 ID:SmPQSg/10
ままさ またこ
296本当にあった怖い名無し:2010/01/15(金) 06:46:11 ID:nDLJVzJj0
定期保守
297今々…:2010/01/19(火) 14:20:38 ID:RTHHq8m20
こっそり投下…

自衛官日誌



戦闘開始から7時間、部隊が半壊、ちりぢりになった。敵が多い、多すぎる。
支給された実弾じゃまったく足りない。なんとか73式小型トラックで逃げてきたが、
本隊は無事だろうか。仲間は無事だろうか?

戦闘開始から1日がたった。クソッ!放置車両が多すぎる!どこも行き止まりだ!
徒歩で移動しようかとも考えたが、武器弾薬が積まれた車両を放棄するわけにはいかない。
…隊との合流を諦めて基地に戻るべきか?無線が無いのが痛い。

戦闘開始から2日。基地に戻ることにしたが……放置車両とゾンビで道が無い。
まずい、とても一人では突破できない。
近くの3階建てオフィスビルに避難することにする。

…判断を誤った。避難してすぐに囲まれてしまった。トラックに戻れない。
さっきまでいなかったのにいつの間に?ガンガンと扉を殴りつけてくる。
入って来れないようだが、気が滅入る……

ビル内に奴等は居なかった。よかった、残り少ない弾を使わずにすんだ。
おまけに住人の物と思われる食料と水を発見した。あいつらが発生してから一番いいニュースだ。
しばらく休もう、ここは安全そうだ……
298今々…:2010/01/19(火) 14:21:47 ID:RTHHq8m20


篭城開始から2日。奴等は1階に侵入しようと扉を叩き続けている。
防火扉だから素手では破れないはずだが、念の為机とロッカーでバリケードを作っておいた。
これでより安全だろう。…尤も、防火扉を破られれば時間稼ぎにしかならないが……
やらないよりマシだと信じておこう。

篭城開始から3日たった。仲間は無事だろうか?最後に見たのは奴等に団子のように張り付かれた
車両で走る姿だったが……無事だと信じたい。

篭城開始から5日。最悪だ。仲間の輸送ヘリが頭上を飛び去った。10機以上いた。北に向かって
行ったようだ。行き先は北海道か?政府は鎮圧を諦めたのか?仲間は?…わからない。

ただ一つはっきりしたことがある。救助は来ない。
ヘリはこちらに気付かなかった様だが、気付いても救助は望めなかっただろう。
避難が決まったのなら限界ギリギリまで荷を乗せてるはずだ。もしかしたら、いや、確実に政府の
高官が乗ってるだろう。

そんな状態で救出活動などするはずがない。ましてこんな異常事態の真っ最中では。


本当に最悪だ。助けはこない。絶対に。

そしてこのままいけば食料と水はあと2日が限界だろう。俺は一か八かの賭けにでることにする。
誰でもいい、このノートを読んでるなら家族か仲間に渡してくれ。



こっそり投下終了。
299本当にあった怖い名無し:2010/01/20(水) 19:33:23 ID:OI7eu7aJ0
つまんねえ
300プリニーっす:2010/01/20(水) 20:46:48 ID:47f6wYKYP
投下してくれる人がいたのがまず嬉しいッス。
自分もがんばって書いてみるッスよ!
301プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/01/20(水) 20:49:28 ID:47f6wYKYP
デッド・サンライズ

(1)
環境問題とは、人が暮らす事によって起こった環境の有害な変化、すなわち人災である。
ならば、我々に降りかかったこの災いも、環境問題といえるのだろうか…。

太陽の光は、いつも我々に降り注ぐ。
太古の時代からずっと、我々人類は太陽の恵みを受けて暮らしてきた。
しかし最近、その太陽光が人体に害を与えているという。
紫外線だ。
人類は暮らしを豊かにするため、空気を冷やすための理想の物質、フロンガスを発明した。
フロンガスは爆発もせず毒性も低かったので、人類はそれを大量に使った。エアコン、冷蔵庫、工場で使う冷媒…それらは、それなしでは生きていけなくなるほど便利な道具だった。
しかし、フロンガスには一つ欠点があった。
太古の昔からずっと人類を紫外線から守ってきた、オゾン層を壊すのだ。
人類がそれに気付いた時には、すでにオゾン層はだいぶ薄くなっていた。
太陽光は積極的に浴びるべきものから、浴びすぎてはいけないものになった。
環境の有害な変化だ。
これが発端だった。

人類はせめてこれ以上進行させてはいけないと、オゾン層を破壊しない代わりの物質を探し始めた。
代替フロンである。
しかし、これは温暖化を進行させる作用が強烈だった。
それこそ、二酸化炭素の数百倍も、数千倍も。
それでも人類は代替フロンを選択した。温暖化よりもオゾン層が薄くなる方が人類に…特に先進国の白人にとっては大問題だったからだ。
そして代替フロンが温暖化を起こすことをひた隠しにして、二酸化炭素を減らそうと叫んだ。
バカな話だ、代替フロンを少し控えれば二酸化炭素を何百倍も減らした事にできるのに。
温暖化は、今なお進行している。
むろん科学者たちも、手をこまねいて見ている訳ではなかった。
302プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/01/20(水) 20:50:55 ID:47f6wYKYP
(2)
ある日、世界を超新星のような明るいニュースが走った。
「夢の新冷媒を発見!
オゾン層破壊も温暖化も起こさず、毒性もほとんどない!!」
フロンと代替フロンの両方の欠点を持たない、第三の冷媒が発明されたのだ。
「この物質はギリシャ神話に出てくる神の食物の名をとって、アンブロシアと命名されました!」
テレビの中で、キャスターが満面の笑みを浮かべる。
キャスターがマイクを向けると、開発者が得意げに胸を張って紹介を始めた。
「この物質は聞いてのとおり、オゾン層破壊も温暖化も起こしません。
つまり、いくら使っても環境に害がないという意味です。
今までの冷媒はいわば、使うたびに地球の命を削っているようなものでした。しかし、これを使うことで我々は地球を少しでも不死に近づけられる訳です。
よって、不死をもたらす神々の食物、アンブロシアと名付けました。」
紹介が終わると、またキャスターがマイクを持って黄色い声ではしゃぐ。
テレビを見ていたマイケルは、ずいぶん虫のいい話だなと思った。
それを察したのか、同僚のケリーが軽い調子で言った。
「おいおい、おれたちが作った物質じゃないか。
もっと嬉しそうな顔しろよ!」
そうとも、アンブロシアは自分が勤めるオリンポス社で開発したものだ。マイケルはそれを開発した研究者ではないが、アンブロシアの事は耳にたこができるほど聞かされていた。
安全性が高い事、通常の燃料ガスより簡単な設備で扱える事…等々。
実用化が決まった時のケリーの表情は、今でも目に浮かぶようだ。
「しかし…少々実用化が早すぎやしないか?」
マイケルが指摘すると、ケリーはふと笑みを絶やして目を閉じた。
「仕方ないさ、実用化を早くするように上から圧力がかかったんだ。
世界は環境問題に苦しみ続けている、少しでも早く世に出すべきだってな…。その方が確実に利益は大きくなる、安全性の長期リサーチは手間も金も半端なくかかるから。」
マイケルにもそれは分かる。
しかし、マイケルはどうにもすっきりしない気分だった。
303プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/01/20(水) 20:52:14 ID:47f6wYKYP
(3)
浮かない顔のマイケルに、ケリーは明るく言った。
「まあ、そんなに心配する事はないさ。
アンブロシアはフロンガスと同じで、空気中に放出されると地表にとどまらずに成層圏まで上っていく性質がある。
多少何かあっても、おれらの暮らしている場所にとどまらなきゃ問題ない。」
正直、心の底から同意はできない意見だ。
しかしケリーも、納得できない自分に言い聞かせているのかもしれない。
研究者とは、研究を支持してくれる者がいてこその身分だ。後ろ盾がなくなれば生活していけなくなる事は皆分かっている。
だから、上が急げと言えば逆らう事はできなかっただろう。
マイケルもケリーも今はただ、何も起こらないことを祈るだけだった。

研究者たちの心中とは裏腹に、アンブロシアの普及はすさまじい速さで進んだ。
新製品のエアコンや冷蔵庫は、漏れなくアンブロシアを使用したものとなった。
その買い替えに伴う古い家電の大量廃棄が、むしろ環境テロだと騒がれもした。
しかしその声は、温暖化対策の名のもとにかき消された。
アンブロシアの安全性の高さに油断したのか、かなりの量の漏出事故が何件も起こった。しかし近隣住民の被害はほぼ無かった。
その事故は、アンブロシアの人気をかえって押し上げた。
オリンポス社はあっという間に世界有数のブランドにのし上がり、マイケルたち他の研究室の職員も給料がはね上がった。
おかげでマイケルは景色のいい場所に別荘を買うことができた。
しかも社名のブランド効果で、今まで全く縁がなかった女が寄ってくるようになった。
美人の妻をめとり、子も生まれて、それはそれは幸せになった。
マイケルにとっては、夢のような毎日だった。
そこまでの幸せを手にすれば、さすがのマイケルもアンブロシアに感謝せずにいられなかった。
304プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/01/20(水) 20:54:20 ID:47f6wYKYP
続くッス
次は土日辺りに投下できるといいッス。
305本当にあった怖い名無し:2010/01/20(水) 20:57:41 ID:OI7eu7aJ0
プリニーさんの作品は面白いッス。
最高。
続きが楽しみ!早く続きお願いします。
306本当にあった怖い名無し:2010/01/20(水) 23:30:37 ID:OI7eu7aJ0
デッド・サンライズ最高!
続きが見たいです。
307本当にあった怖い名無し:2010/01/22(金) 11:29:59 ID:g8bd45/I0
>>306
ばればれな自演は荒れるからやめろ
308プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/01/24(日) 12:55:56 ID:gq1cn6n/P
続きを投下するッス!
309プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/01/24(日) 12:57:57 ID:gq1cn6n/P
デッド・サンライズ

(4)
しかし、皮膚ガンや白内障は減らなかった。
むしろひどい日焼けの患者が増えて、皮膚科の病院は大にぎわいになった。
マイケルの美しい妻も、庭に出ると次の日は化粧ののりが悪くなると言って、家に閉じこもっているようになった。
しかし幼い娘は、そうはいかなかった。
幼い子供は家の中でじっとしてなどいられないものだ。
保育園でできた友達と夕方になるまで外で遊びまわって、くたくたに疲れて帰って来る。そんな日は必ず、夜になって風呂に入ると、肌が熱をもって妙にたるんでいた。
そのうえ、あまり食欲がなくなってうつらうつらしていた。
次の日には良くなるのであまり気にしていなかったが、最近はうとうとしている時間が長くなってきたような気がする。
マイケルはあまり外で遊ばないようにと注意したが、幼い娘は聞かなかった。
そしてある日、炎天下で帽子もかぶらずに遊び歩いて、救急車で運ばれたのだ。
病院で娘の姿を見て、マイケルは絶句した。
日光に当たった娘の肌は無残にただれて、黄色い滲出液にまみれていたのだ。
「ああ、何てこと!!」
妻はその場で卒倒した。
無理もない、大事な一人娘の容姿がこんなになってしまったのだから。
「頼む、娘を助けてくれ!」
マイケルも思わず医師の手を握った。
しかし、医師はうんざりしたようにマイケルの手を払った。
「そうおっしゃいますがね…私どもにも原因がよく分からんのですよ」
マイケルは耳を疑った。
「日焼けじゃないのか!?」
「日焼けだとは思いますがね…これは普通の日焼けじゃない。
娘さんの肌は、壊死を起こしています。つまり組織が死んでいるのです。特別に日光に弱い方なら話は別ですが、普通の人が一日でこうなる事は今までにない事です。
何らかの原因で、光線過敏症を起こしていると考えるのが妥当でしょう。
薬を飲んだとか食べ物が変わったとか、何か心当たりは?」
310プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/01/24(日) 12:59:13 ID:gq1cn6n/P
(5)
逆に質問されて、マイケルは言葉につまってしまった。
医師の言っていることは正しい。
確かに一日外で遊んだくらいでは、普通あんなにはならないだろう。
「分かりません」
マイケルは消え入りそうな声で答えた。
自分がきっかけに気付けなかったのに、初めて娘を診る医師に原因がすぐ分かる訳がない。マイケルは科学者として、自責の念すら覚えた。
医師はそんなマイケルを慰めるように言った。
「原因は分かりませんが、医師として最善は尽くしますよ。
それにね、原因が分かる日も遠くはないでしょう。
実は、娘さんのような患者が最近多いんですよ。世界中のいろいろな地域から、同じような症例が報告されています。世界中の多くの医師が、この病の原因を突き止めようとしているのです。
ですから、原因が分かるまで、どうかご辛抱ください」
マイケルは何も言い返せず、病院を後にした。

家に帰って妻をベッドに寝かせると、マイケルは一人自室にこもった。
医師から言われた言葉には、気にかかる部分がいくつもあった。
(娘さんのような患者が最近多い…?
世界中のいろいろな地域から、同じような症例が報告されている…?)
マイケルは医学が専門ではないが、それでも科学者の立場からは分かる。世界中で特定の疾患が同時に増えるということは、環境の変化によるものではないのか。
思えば、ここ最近よく原因不明の光線過敏症の記事を新聞で目にしていた。
ただ、今の幸せを楽しむ事に夢中で関心を持たなかっただけだ。
(調べなければ…!!)
マイケルはすぐさまパソコンを立ち上げ、インターネットで情報を集め始めた。
そうすると…出るわ出るわ、全世界から普通ではない日焼けの報告が上がっていた。何とかしてくれと助けを求める訴えには、患者の画像が添えられているものもあった。
目をそむけたくなるような悲惨な姿…しかし、目をそらすことはできなかった。
娘にそっくりな症状だ…。
そしてその下には、アンブロシアとの関連を疑う一文があった。
311プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/01/24(日) 13:00:57 ID:gq1cn6n/P
(6)
(まさか、アンブロシアが…!!)
マイケルは眩暈を覚えるほどショックを受けた。
考えてみれば、この異常な日焼けはアンブロシアの使用が始まってからの事だ。
なぜ気付かなかったのか…それを考えてマイケルは気付いた。インターネットにはアンブロシアとの関連を疑う一文があったが、新聞やテレビの報道には一切なかった。
これでは、関心をもって調べなければ気付かないはずだ。
マイケルは嫌な予感を覚えた。
まさか、すでに情報統制が行われているのでは…?
「ケリーに連絡を!」
マイケルはすぐさま電話をとった。

アンブロシアに非常に近い位置にあって、マイケルとは腹を割って話し合える友人のケリー…彼と連絡がついたのは、翌日の夕刻だった。
「悪い、仕事が忙しくてな」
マイケルは耳を疑った。
アンブロシアで多大な利益を出してから、オリンポス社の研究者たちには莫大な給与と余るほどの休日が与えられたはずだ。
そのケリーが、忙しいとは…。
「やはり、アンブロシアで何かあったな?」
マイケルが問い詰めると、ケリーはややあって重い口を開いた。
「今から話す事、外部の人間には絶対に漏らすなよ。
漏らしたら命の保障はないぞ」
やっぱりか…マイケルは腹立たしさを覚えながらも、聞き耳を立てた。
ケリーが言うには、アンブロシアと異常な日焼けの関連は数年前から指摘されていたらしい。だがオリンポス社が全力で握りつぶしてきたので、公にはされなかった。
しかし最近、悠長に様子見という訳にもいかなくなってきたという。
「おまえは知らないと思うが、今世界ではもっと大変なことが起こっている。
食人病の発生だ」
312プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/01/24(日) 13:02:36 ID:gq1cn6n/P
実は、自分は情報統制モノを書いて見たかったッス。
うまくいくかは別として、とりあえずやってみるッス!
313本当にあった怖い名無し:2010/01/24(日) 17:24:04 ID:khWxjqhx0
                                    ,r‐-,-'''"'''"'''''''i、
          、                          j゚,,'liiiiiiiiiillll!llliiii,、ヽ
            ,l゙゙,コr、、                     |iiliillllllllllllllllllllllllli: .゙,,ッ、_
     _,,,-・7,,"彡iッ゙'i、                  ,,,-',llllllllllllllllllllllllllllll‐ .゙lllllll八,
  ⊂ニニニ-=l'it,,9′  .\、                  /: : 'lllllllllllllllllllllllllllliiiii、 ``: : ..)
          ヽ,,λ : : :   `ヽ、                l′ ,,,iiilllllllllllllllllllllllll!!l゙″  : ,,,-″
        `゙'''''''''i、,;:    `'-,_               ",lillllllllllllllllllllllllllll゙゙,,,,,,,,,w-'l,_,,,,,,,,,,,,,,,、
             \:: : :   `゙\           ゙゙゙゙゙!!!!!llllllllllll!!l゙゙゙゙゙llll`i、'lllllliiiillllllllillll゚'l,,,,_、
              \::::;;;;: : ,. ゙'y,,_        _,,,__、゙l: '!゙゙゙`丶 .゙У| : `゙゙!llllii,,,,,″llllllllii,,,
               `'、、;;;;;;;;:,,/`':l八¬‐.ー''''"',ご,,, : ;;`゙'''ヘ, ー..,,,,lll゙,,i,'|.,,、 : ゙'i、゙゙!lll!ll,,゙llllll゙゙゙"
                `-,.,/;.,,ie.,.li,、 : ;,,,,,,lliii,iilllll!liillllli,,,iiiiiiiiii,,sナ゙゙゙゙゙゙゙゙l!i,《;ヽ : `'''''゙llllll゙l!!lllllii,,,
                  ‘'-,;゙゙,,,;;`llll′.,lllll!liillllllllllli;゙lllllllll゙,,lll,,ll!l″   .'゙l,l";l゙:     .゙''illi、゙゚゙゙llllli
                   `ll,,,,llliill,i、 ,il!!liilllllllllllllllliillllllll,illlllllll″    : :゙゙ll′:    : .,l゙゙.,,、 : ゙゚ll
                    : '゙゙ll!l゙;”:.,,,,lllllllllllllllllllllllllllllllllllllll!゙′      : : ;;;;;;;: : ,: .ll,,ll゙゚,r  .,,llii,
314本当にあった怖い名無し:2010/01/24(日) 22:27:56 ID:nhgES8zD0
>>312
頑張れ 応援はする
変な自演だけはやめろよ
315本当にあった怖い名無し:2010/01/25(月) 06:10:20 ID:HmkyR0k/O
気になるところで終わりやがって…!
期待してるぜ
316本当にあった怖い名無し:2010/01/25(月) 09:23:42 ID:epRk8+ZC0
自演っぽい書き込みがあったので躊躇してたけど、wktkと言わざるを得ない。
317本当にあった怖い名無し:2010/01/25(月) 10:52:41 ID:M+FNoXQf0
>>312
面白かったよ
あと、携帯とPCはすぐ区別付くから気をつけてね
318本当にあった怖い名無し:2010/01/25(月) 12:13:39 ID:epRk8+ZC0
てゆーか、あの賞賛の仕方は本人でも他人でも荒れる原因になりかねないかと。
区別がつかなければ良いってことでもない希ガス。
319本当にあった怖い名無し:2010/01/26(火) 00:51:37 ID:i6945ZSp0
自演に見せかけて荒らしが使う古典的手法だろ
320本当にあった怖い名無し:2010/01/26(火) 09:20:12 ID:BWibwBNL0
ID解析できない人はそう思うだろうね^^;
321プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/01/26(火) 21:27:22 ID:IcvCwmGmP
じ、実は…305、306辺りのはオイラじゃないッス…
とりあえずほめられて喜んでたッスけど…あ、荒らしの恐れありッスか!?

とりあえず次の投下はまた土日ッス。
322本当にあった怖い名無し:2010/01/26(火) 22:37:53 ID:DLQs/IWo0
>>321
特に気になさらず投下を続けてください。
323本当にあった怖い名無し:2010/01/26(火) 22:42:42 ID:EFKMj8fB0
>>319

ヒント:時間
324本当にあった怖い名無し:2010/01/28(木) 10:22:56 ID:GAqlvcK1O
ふと目を開くと、隣で寝ていた夫英一の顔が真緑になっているのが、カーテンの隙間から差し込む月明かりに照らされた。

妻の紀美子は、顔を英一にむけたままかたまってしまった。

紀美子の嗅覚がなんともいえない甘いどろどろとすえた臭いをとらえる。

紀美子が英一の向こうにある低いタンスの上の目覚まし時計に目を向けて時間を確認すると、デジタル式の文字盤は0:50を表示していた。

混乱する頭で紀美子は何度も時計と英一を交互に目で追った。

そうしているうちに、暗闇に目が慣れ、隣で眠る夫に起きている変化は
緑の肌だけではなく、骨ばった頬やおちくぼんだ瞼、むき出しの歯などだとはっきりととらえることができた。
次第に恐怖が迫り、紀美子は嫌な汗を滲ませた。

ゾンビだ。起きたらどうしよう。


紀美子は今まで一度もゾンビを信じたことなんてなかったが、それでもこれはゾンビだと思わずにはいられなかった。

紀美子は意を決してベッドから抜け出た。そして息子高次の部屋へ…。


紀美子はただ、一人ではいられなかった。5才になる息子を頼って子供部屋の扉を開いた。

そこに居たのはすやすやと寝息を立てる…

緑の肌をした息子であった。
「きゃああああああ」
325本当にあった怖い名無し:2010/01/28(木) 10:43:00 ID:GAqlvcK1O
「おい紀美子…しっかりしろ!」
「う…うん?」

紀美子は英一の腕の中で目を覚ました。
「あ…あなた…?」

「お母さん大丈夫?」しゃがみこみ紀美子を抱える英一の後ろから高次が顔を出した。
紀美子は昨晩の恐怖を思いだした。
昨晩、夫と息子がゾンビに…

あれは夢だったのだろうか?
「高次の部屋の前でお前が倒れていたんだ。どうしたんだ?」

「私は…」

紀美子はぼう…と天井を眺めた。

「おい、紀美子…まだ具合が悪いのか?疲れているんじゃないのか?今日はゆっくり休んだ方がいい…」
「お母さん…」

しばらく二人の心配そうな顔をみつめて紀美子はあれは夢だったんだと思うことにした。
「ううん!母さん大丈夫よ。さ、ご飯つくるわね!!」

そうよ、これでいいのよ。と紀美子は起き上がり、台所へ向かった。
それからの紀美子はいつも通り、いやいつも以上にてきぱきと料理の支度をし、夫のネクタイをしめ、息子の忘れ物をチェックして完璧に二人を送り出した。
忙しい間は没頭していられる…紀美子はそれを知ってか知らずかそうして家事に没頭することで昨晩のことを忘れようとしていたのかもしれない。

「さて…今日は…念
326本当にあった怖い名無し:2010/01/28(木) 11:02:40 ID:GAqlvcK1O
「さて、今日は念入りに部屋の掃除でもしようかな。」
紀美子はまず台所の水垢を念入りに落とした。

普段から紀美子は割りと掃除好きな方であったが改めて掃除をすると汚れは結構残っているもので、ぷうんと嫌な生ゴミの匂いなんかはするものだ。

紀美子はそれらをゴシゴシと落として言った。

次にトイレ、ここも紀美子は普段から気をつけていたのでそんなに汚れてはいなかった。 「あら…あの人ったらこんなとこに…」

丁度便座に座った状態から手を伸ばして届く位置に棚がつけてあり。そこにはトイレットペーパーがおいてある。
普段はトイレットペーパーだけなのだが今日はその上に一枚、名刺が置かれていた。

紀美子はそれを手にとり、あとでなくさない場所にしまっておこうとポケットに入れた。
きっと夫の取り引き先かだれかの名刺だろう。トイレもなくしにくい場所ではあるが、なんだか名刺の主が気の毒だ。
紀美子が壁掛け時計を見ると午前11時…お昼にはまだ少し早い。

ベッドのシーツを取り換えて丁度というころかな…と思った紀美子は寝室に向かった。

しかし寝室の前まで来て足がすくむ…昨晩の…光景。
紀美子はしかし、ええいと扉を開けて
327本当にあった怖い名無し:2010/01/28(木) 11:33:53 ID:GAqlvcK1O
次に高次の部屋、高次が小学校に入る際、一人で寝る!といいだしたために与えた小さな部屋には小さなベッドが置いてある。
それから物置になりつつある勉強机。本棚。散らばるマンガ。
幼い高次のしかし全てを象徴するような部屋。
紀美子は先ほどの安堵から今度はすんなりと高次の布団のシーツを取り換え、散らばるマンガをかためておき、机の上もそれなりに片付けておいた。

高次にやらせるのが一番ではあるが、きっとほっておけばいつまでもやらないだろうと紀美子は思うのである。
紀美子はそんなやんちゃな我が子を垣間見て、安心していた。
昨日のアレは悪い夢なんだと。

さて…お昼はなににしようかなと、洗濯機にシーツを放り込みながら紀美子は考えた。

そうだ、買い物に行って、今日は高次の好きなハンバーグにしよう。
昼は自分一人だし、惣菜で簡単に済ませてしまおう。
紀美子は出かける支度のため、携帯を探した。紀美子はあまり携帯を使わない。
出かけるときに持つくらいの物で、だからいざという時にどこにあるか分からなくなってしまうことがある。
「あれ〜おかしいわねえ…たしかこのへん…」
その時、着信が鳴った。そのおかげで携帯が台所の棚の上にあることがわかった。
「あ!あった!…でも誰かしらサキ…?あ!紗季!…もしもし紗季!久しぶりー」
「ああ…紀美子…久しぶり…あのね、今日これからご飯食べない?」
「え、どうしたの急に…元気ない?」
「ちょっと話しがしたいなって…だめ?」
「ううん!行く、行くよ!」
328アラバマソング♯アラバマ:2010/01/28(木) 11:50:08 ID:GAqlvcK1O
昼ドラみたいな雰囲気のゾンビ小説が書きたくて投稿しました。

今後続きを書くときはこのトリで書かせて頂きます。

よろしくお願いします。
329 ◆uZvpG9vyxwJb :2010/01/28(木) 11:53:38 ID:GAqlvcK1O
あれ!トリってどうやってつけるんでしょう。ごめんなさいスレ汚し

こうかな…?
330本当にあった怖い名無し:2010/01/28(木) 15:02:17 ID:G1pm4FyNO
たんくさんの続きが読みたい(´・ω・`)
331本当にあった怖い名無し:2010/01/30(土) 01:34:56 ID:UyPB3wGn0
>>330
忘れろ 奴もこのスレを忘れたんだから
332プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/01/30(土) 19:37:06 ID:QrQ8rkySP
投下ッス!

デッド・サンライズ

(7)
「食人病…?」
あまりにショッキングな言葉に、マイケルは思わず受話器を落としそうになった。
人を食う病気…そんなものが発生しているというのか。
「おい、それはどういう事だ!?
それと日焼けと、どういう関係があるんだ!?」
マイケルは我を忘れて、受話器の向こうのケリーに詰め寄った。
食人病がどういうものかは聞いていないが、ろくでもない事は名前から分かる。しかもそれが異常な日焼けと関係しているということは…今にも我が身に降りかかろうとしているではないか。
ケリーはそんなマイケルをなだめ、たしなめるように言った。
「いいか、よく聞け。
ここからは、我が社の機密に値する事だ。
ここから先を聞きたいなら、妻にも他言しないと誓って欲しい。そして、おれはおまえにそれを話した事を会社に報告しなければならない。
万が一情報が漏れた時は…どうなるか分かるな?」
マイケルは息をのんだ。
情報統制を行うということは、全力で情報が外に漏れるのを防ぐ事である。
そのためには情報を共有する者を全て把握し、漏らした者はおそらく…消されるのだろう。
それに情報を持つ者をできるだけ少なくするということは、情報を持つ者に仕事が集中するという事でもある。
ケリーは妻子あるマイケルを心配しているのだ。
しかし…マイケルも関わらない訳にはいかない。
愛する娘が苦しんでいるのだ。
アンブロシアと異常な日焼けの真実に近付き、娘を救う道はここにしかない。
ならば、進むしかない。
マイケルは心を決めて答えた。
「…教えてくれ。
おれは娘のために、解決に力を貸したい」
受話器の向こうで、ため息が聞こえた。
333プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/01/30(土) 19:38:10 ID:QrQ8rkySP
(8)
ケリーの口から語られたのは、遠い地で起こっている恐ろしい事実だった。
マイケルたちがいる先進国では、人々は屋内で仕事をし、外に出る時もちゃんと服を着ている。
しかし世界にはまだ、裸に近い格好で昼間ずっと外にいなければならない人々がいる。
アフリカやアジアの一部、発展途上国だ。
考えれば、異常な日焼けの影響を真っ先に受けるのは彼らだ。
アンブロシアが市場に出され、大規模な漏出が何件も起こった後、まずアフリカの一部で異変は始まった。
具体的に言えば、農業や牧畜を営む、サバンナの辺りが発端である。
他国の者が見向きもしないその土地で、誰にも気付かれる事無く人々は倒れ始めた。
まず初めは一日中外で畑を耕す男たちが、肌がぼろぼろにただれ、やがて意識がもうろうとして物も食べなくなっていった。
次は夫の代わりに外で働かざるを得なくなった女子供が…誰も手を差し伸べる者はなかった。
いや、一部の善意団体が患者を医者に診せたが、良くはならなかった。
しかも、手を差し伸べた者たちのほとんどは、生きて帰れなかった。
餓死したと思われていた住民たちが、彼らの目の前でゆらりと起き上がり、彼らに群がって…食い殺してしまったからだ。
数少ない生き残った者の証言によれば、彼らは肌がただれを通り越して腐乱し、息もしていなければ心臓も動いていなかった。
これではまるで…。

「ゾンビじゃないか!」
マイケルの言葉に、ケリーは受話器の向こうでうなずいた。
「ああ…しかし、その呼び方は世の中に出すには馬鹿らしすぎる。
一笑されて終わりだ。
それに、死人は動かないってのが世の常識だろ、奴らは動くから世間的には生きてるんだ。それで一応病気ってことで、食人病と名づけられた」
マイケルは、背筋に冷水を浴びせられた思いだった。
ケリーの話によれば、異常な日焼けは食人病の予兆ととれる。
そうだとしたらこれから自分たちは、娘はどうなってしまうのか。
334プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/01/30(土) 19:38:57 ID:QrQ8rkySP
(9)
受話器の向こうで、ケリーが続ける。
「にしても、会社も初めは良心的に原因を突き止めようとしてたんだよ。
それをどっかの空気読めない医者がアンブロシアと関連づけたりするから…まあ今となっては、それが真実である可能性がかなり高い訳だが…。
しかし今は会社を責めて、裁判とか起こしてる場合じゃないだろ。
市民の感情だってそうだ…そんな事してる場合じゃないのに、暴動だの業務妨害だのしてきやがる!
そういう事するから、ますます助からないんだよ…生き残るためには、結局こうするしかないんだ!」
ケリーがまくしたてるのを、マイケルは黙って聞いていた。
言っていることは分かる、しかしそれでは情報を持たない者は何もできないではないか。
現に自分だって、娘があんなに苦しむのを見ながら何もできなくて…世の中にはそういう人が山ほどいるのではないか。
マイケルは心の中に重苦しい塊を抱えたまま、電話を切った。

マイケルはふらふらと夢遊病のような足取りで寝室に戻った。
寝室では、妻がベッドに突っ伏して泣いていた。
そして、マイケルが入ってきたのに気付くやいなや、ばっと飛び起きてしがみついてきた。
「ねえあなた、娘はどうなっているの!?
助かるわよね?きっと良くなるわよね!?」
妻はいつもあんなにきれいにしていた髪を振り乱し、目を真っ赤に泣き腫らしていた。
こんな痛々しい姿は初めてだった。
必死にすがりつく妻の姿に、さっき聞いた真実がマイケルの喉元までせり上がってきた。真実を知る事で、少しでも妻の気持ちが安らぐのなら…。
しかし…ケリーの言ったことが気にかかる。
真実を知った一般人の反応は、時として状況を悪化させる。
妻はどうなのだろうか。
マイケルは妻をあやすように背中を撫でながら、できるだけ落ち着いた口調でささやいた。
「ああ、きっと良くなるよ…世界中の医師が、同じ病気と戦ってくれているんだ。
それに、苦しんでいるのはうちの娘だけじゃない」
当たり障りのない事を口にして、マイケルはごくりと唾を飲んだ。
335プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/01/30(土) 19:40:45 ID:QrQ8rkySP
(10)
今まで、マイケルは妻を試そうとした事などなかった。
が、ここは試さねばならない。
マイケルはあくまでさり気なく、妻の耳元で言った。
「なあ…もし娘の病気が、誰かが作り出したものだったらどうする?」
そのとたん、妻の手に恐ろしいほど力がこもった。
妻がぱっと顔を上げてマイケルを見上げる…普段の美しい顔からは想像もできない、怒りに狂った修羅の顔だ。
鬼のようにかぁっと歯をむいた口から、低く濁った声が響いた。
「決まってるわよ、そんな奴らは同じ苦しみを味わわせて、この世の地獄に落としてやるわ!」
耳にしたとたん、背筋がざわつくような、禍々しい声だった。
妻の心の中で、空想の犯人にどんな拷問が行われているか、嫌でも想像がつく。
(…やめよう、真実は漏らしてはいけないな。)
マイケルは即座に喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
真実を知れば、妻はすぐさまマイケルを憎み、離婚だの裁判だのそういう事になるだろう。いや、そうなる前に夫婦そろって消されるのがオチだ。
そうなってしまったら、もう娘を助ける者は誰もいなくなってしまう。
我が社の対応は正しい、自分はそれに従うべきだ。
マイケルは心の底からそれを痛感した。

それから数日で、マイケルの生活は一変した。
マイケルは仕事関係のファイルを妻が開けないように、特定の手順でないと開けないように設定した。
そしてマイケルの手元には、幾重にもセキュリティがかかった専用の携帯電話が送られてきた。
アンブロシアと食人病関係の情報が、毎日メールで送られてくる。
まとめ読みしたこれまでの重要連絡の中に、こんなものがあった。
<食人病蔓延に対する備えについて
現在、食人病の集団発生はアフリカ及びアジアの一部、オーストラリアの一部先住民に限局されているが、アメリカ国内でも重症の日焼け患者は多数発生しており集団発生の恐れは十分ある。
万が一に備え、家に閉じこもるための物資と、車で脱出するためのガソリンは蓄えておくこと。>
マイケルは苦笑いして、さっきまで読んでいた新聞に目を向けた。
そこには、<病院でけんか、患者二人噛み殺す>と衝撃的な記事が載っていた。
「まさか、な…」
336本当にあった怖い名無し:2010/01/30(土) 22:09:12 ID:UyPB3wGn0
あまりレスはしないけど見ているよ

337empty ◆M21AkfQGck :2010/02/05(金) 16:07:43 ID:QSb6rMpK0
規制解除かテスト
338empty ◆M21AkfQGck :2010/02/05(金) 16:10:42 ID:QSb6rMpK0
長かった…
無事に書き込めるようなので、近日中に続きを…っても、自分自身すらどこまで投下したか覚えてないんですが
続きよりも前にリハビリ兼ねて短いのを1つやるかもしれませんが
339本当にあった怖い名無し:2010/02/05(金) 20:43:31 ID:YgrHmWES0
            :('ω` ): 
            :ノヽV ):
           | :< < ::
340本当にあった怖い名無し:2010/02/06(土) 17:11:14 ID:+/yGGoRj0
あげとこう
341プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/02/07(日) 21:20:13 ID:Ru9zssqBP
おお、emptyさんが戻ってきたッス!
楽しみに待ってるッス。

ちなみに自分はこの次はちょっと期間が開くかもしれないッス。
342プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/02/07(日) 21:21:24 ID:Ru9zssqBP
デッド・サンライズ

(11)
少し経つと、マイケルにも研究所に出勤するよう命令が届いた。
いつもの職場ではない、ケリーが勤めているアンブロシア関係の研究所だ。
マイケルの家はそこから遠かったため、マイケル一家は引越しを余儀なくされた。
それに伴い、マイケルは娘をオリンポス社が所有する大病院に移すことにした。今の小さな病院より、施設も技術もうんと優れている。
それに、もしもの事があっても、事情を知っている医師なら適切に対処してくれるはずだ。
小さな病院の医師も、それに賛成してくれた。
「いやあ、正直助かりますよ。
実は最近、娘さんと同じように入院を要する患者さんが多くて、ベッドが足りなくなっていたのですよ。
それに、ちょっと手のかかる患者さんも多くてね…」
そう言う医師の手には、包帯が巻かれていた。
何があったかは、できるだけ考えないようにした。
娘はたんかに乗って、車まで運ばれた。
肌はところどころ崩れて、包帯だらけになっている。目は真っ赤に充血し、しかし恐ろしいほど大きく開いて妻の方を見ていた。
マイケルは嫌な予感を覚えながら、妻の側に寄り添った。
そんなマイケルの心などいざ知らず、妻はそっと娘の額の汗を拭こうとした。
その瞬間、娘が突然大口を開けてベッドから身を乗り出したのだ。
「危ない!!」
マイケルは反射的に妻の体を娘から引き剥がした。
なおも身を乗り出そうとする娘を、看護士たちが慌てて取り押さえる。
「だめよ、大人しくしないとけがを…っああ!」
看護士の悲鳴が上がり、一人が顔を歪めて手を振り上げる。
その手からは、血がほとばしっていた。
マイケルには、今目の前で起こっていることが何なのか分かってしまった。しかし、口に出して助言する事はできなかった。
ただご迷惑をおかけしますと看護士たちに謝り、妻に付き添って車に乗り込んだ。
343プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/02/07(日) 21:22:39 ID:Ru9zssqBP
(12)
車の中で、妻はいぶかしそうな目でマイケルを見ていた。
マイケルは極力目を合わせないようにしてきたが、それはかえって妻の疑心をあおったようだ。
黙ったままのマイケルをにらんで、妻がついに口を開いた。
「ねえ、あなたは何で私を引き離したの?」
これは鋭い質問だ。
娘が人の手を噛もうとするなど、常識では考えられない。
つまり、娘の病気が何なのかを知っていなければさっきの行動は有り得ないものだ。ただ美しいだけでなく、賢い女を選んだのが裏目になったようだ。
しかし、マイケルも頭脳にかけては自信がある。
こんな所で自分と妻の命を捨てる訳にはいかない。
マイケルは少しすまなさそうな顔を作って、できるだけ穏やかな口調で答えた。
「ああ、さっきのが気に障ったなら謝るよ。
でも、あれは娘を感染から守るためなんだ。
娘の肌を見てみろ、あれじゃ皮膚についた細菌が体の中に入るのを防げないんだ。それに、こんなに弱っていてはちょっとした感染が命取りだ。
なあ、人の手にはいつもたくさんの細菌がいるんだよ。
おまえだって、自分から移った菌で娘が苦しむのは嫌だろう?」
それを聞くと、妻ははっと気付いたように目を丸くした。
「そう、だったの…じゃあ、危ないのは娘の方だったのね。
私ったら、何て不用心なことを…!」
妻は、マイケルの話を信じてくれたようだ。
マイケルが家族を大切に思っているように、妻も娘をとても大切に思っているのだ。それだけは疑いようのない事実だ。
だからこそ、妻を危険にさらす訳にはいかない。
マイケルは妻の手にちゅっとキスをして、たっぷりの愛情で包んでやった。
娘が食人病にかかってしまったなら、なおさら…。
このうえ妻までも失う訳にはいかなかった。
344プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/02/07(日) 21:24:28 ID:Ru9zssqBP
(13)
突然、車がブレーキをかけて止まった。
「すみません、ちょっと渋滞で…」
運転手が苦々しい顔で、カーナビのボタンを押し始めた。
ほどなくして、この近辺の道路網がモニターに映し出される。
それを見たとたん、マイケルは憎らしげに顔を歪めた。
「な、何だこれは…!?」
モニターに映し出された道路網は、血栓だらけの血管の様に、そこらじゅうが渋滞の赤で塗りつぶされていた。
そして、その脇には人身事故という文字が乱舞している。
今まで、見たことがないような数だ。
これでは先に進むどころか、迂回路を見つけることさえ容易ではない。
「ちょっと、これじゃ娘はどうなるの!?」
妻がヒステリックに叫んだ。
「娘は重体なのよ、このまま何時間も道路に缶詰めにされたら死んでしまうわ!
早く病院に運ばないと!!」
後半は確かな事だが、前半は少し違うとマイケルは思った。
ケリーに聞いた話によれば、娘はすでに死んでいるかもしれない。それに有効な治療法が見つかっていないのだから、遅かれ早かれ同じことだ。
運転手たちも会社の人間である以上、それは知っている可能性が高い。
しかし予想に反して、運転手はすんなりとうなずいて携帯電話を取り出した。
「そうですね、少し時間がかかりますが、本社に電話してヘリを呼びましょう。
このままでは、いつになるか見当もつきません」
運転手と看護士たちは少しの間携帯電話で話していたが、すぐににっこりと微笑んだ。
「一番近い支社からヘリが来るそうです。
すぐに乗り込めるように、荷物をまとめてくださいね」
マイケルは内心ほっとした。
妻の言うことが間違っていても、それを否定してはならない。どうすれば秘密を守れるかは、この社員たちも分かっているのだろう。
それに、患者をあまり長く外に出しておきたくないのも一つの理由だと思った。
345empty ◆M21AkfQGck :2010/02/08(月) 00:37:19 ID:UspWJVQr0
リハビリに


部屋には、窓から陽光が差し込んでいる
陽光は、部屋の中心に置かれている檻と、その前で椅子に座っている男を照らし出していた


世の中はなんて不公平なのだろうか
心の底からそう思うのは、何度目になるかわからない
そして毎日毎日そんなことを思わせるのは、目の前に鎮座する檻だ
大型動物用に作られたそれは、子供ならば楽々と入れることができる
もっとも、今入れられているのは大人なのだが…、行動も頭の中身も幼児にすら劣るであろうし、問題はないだろう
本当はこんなところに閉じ込めず、目の前で話したり、笑顔を見たり、そして時には睦言を囁きたいのだけど
檻の中には、一人の成人女性が入れられている
身に纏っている服はボロボロで、原型をとどめていない。辛うじて下着で引っかかっているという状態だ
その下着ですら、もうほどなくして意味を成さなくなるだろうが
そのような格好をしている女性の体はあちこちに傷がつき、骨が浮き出るほどに痩せ、片腕は肘から先が存在していない
また、ただひたすらにこちらを見つめ、ただひたすらに檻に噛み付いていた。日夜そうしているおかげで、彼女の歯は奥歯くらいしか残っていない

彼女がこうなってしまったのは、世の中に「生きた死体」が存在してしまったからだ
彼女は何らかの原因によって、生きながらにして「生きた死体」へと変貌していった
その途中で何度も殺してくれと懇願されたが、とてもそんなことはできなかった。そのことは今は悔やまれるようでもあり、安堵しているようでもある
346empty ◆M21AkfQGck :2010/02/08(月) 00:39:16 ID:UspWJVQr0
何にせよ、「生きた死体」となった彼女は知能が無くなり、ただひたすら肉を、生きた獲物を求めて徘徊するようになった
最後の理性か――或いは彼女の思いが残っていたのか、襲いかかってはこなかったが
そんな状態の彼女を捕獲し、害が及ばないように管理しているというわけだ
何故か、捕獲してこの檻に入れたその時から、こちらのことも獲物と見るようになってしまったのだけど
実際、彼女に新鮮な肉を与えようとして、幾度か噛み付かれている
肉を持ってかれていないことが幸いとしか言い様がない

古い映画に出てくる「生きた死体」はすべからく人を食い、食われた人は「生きた死体」の仲間入りをする
どうやらこの設定は現実には通じないらしく、「生きた死体」にならない人は噛まれようが食われようがその結果死のうが、何の変化も生じなかった
「生きた死体」になる人は、噛まれれば確実に、そして噛まれなくてもいつかは「生きた死体」となる
この差が何なのかは、未だに不明のままだ
もっとも、世界の人々の大半が「生きた死体」の仲間入りをしたことを考えると、そんな研究をしている珍妙な人物が残っているとは思えない

「生きた死体」が出没し、近くを闊歩するようになってからは彼女と共にこの部屋でずっと篭城していたのだが――篭城14日目に、彼女は「生きた死体」になった
実質10日目からその予兆はあった
例えば、やけに肉を食らうようになったり、外に出たがったり――
347empty ◆M21AkfQGck :2010/02/08(月) 00:40:21 ID:UspWJVQr0
これは、さっきも考えた気がする
どうやら相当参っているらしい

「生きた死体」にならない人はならない、ということが判明したのは何でもない、実験したからだ
例えば
彼女の片腕を食べてみたり
彼女の血液を自身に注射してみたり
彼女に噛ませてみたり
彼女と交わってみたり――
そして、それが自分以外にも存在することは、街を行けばわかった
数人、人間に遭遇したからだ。もっとも、彼らとは争い合いになり、その結果殺してしまったのだが。彼らには彼女の糧となってもらった
そして、争わなかった人々の中にも、彼女と同じように変化していく人がいた
これが、「生きた死体」になる人はどうあがこうといつかは仲間入りするという根拠だ

もしかしたら、これもさっき考えたかもしれない
さっきから、ひたすら同じことを考え続け、そしてどの考えもまとまっていない気がする
頭の中がごちゃごちゃしている
何にせよ、まともな休養を摂る必要がありそうだった
押し寄せる疲労感と睡魔に身を任せ、ゆっくりと目を閉じる
まともに寝てないせいか、眠りに落ちる一瞬前に、吐き気が押し寄せてきた


部屋には、窓から陽光が差し込んでいる
陽光は、部屋の中心に置かれている檻と、その前で椅子に座っている動く死体を照らし出していた


その前で椅子に座っている男を照らし出していた

その前で椅子に座っている動かない男を照らし出していた

でした。ミスったなぁ…
348本当にあった怖い名無し:2010/02/09(火) 01:41:21 ID:ZCws8vGI0
最後に訂正するなら書き直せば?
本文とそれ以外のものを混ぜられると読んでて気持ち悪い
349empty ◆M21AkfQGck :2010/02/09(火) 02:34:49 ID:hQ+4Qp1h0
投稿してから気づいたもので
面目ないです
350本当にあった怖い名無し:2010/02/10(水) 00:55:02 ID:ka9cIepN0
投稿したいと思いつつ・・・
読み耽る日々です。
351本当にあった怖い名無し:2010/02/18(木) 02:05:46 ID:jM9TJM6H0
ゾンビ〜><
352本当にあった怖い名無し:2010/02/19(金) 21:58:54 ID:z92i7bZOO
かゆうま〜
353プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/02/20(土) 17:32:13 ID:Vy4cj84cP
こ、今週は忙しかったッス!
来週からはまた週末に投下できると思うッス
354プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/02/20(土) 17:33:39 ID:Vy4cj84cP
デッド・サンライズ

(14)
結局、マイケルたちがオリンポス社の施設に着いたのは半日後だった。
そこは遠いうえに不便なところだったが、迎えにきたヘリが思いのほか大きくて速かったので、意外と早く着いた。
病院の前にヘリが着くなり、娘はたんかで運ばれていった。
マイケルは宛がわれたマンションの一室で妻を休ませると、すぐさまケリーのもとに向かった。
ケリーは忙しかったが、それでもマイケルと二人でカフェテリアに来てくれた。
お互い、話したいことが山ほどあった。

「無事にここまで来られて良かった」
開口一番、ケリーはそう言った。
マイケルはしんきくさい顔のまま、うなずいた。
「ああ、途中で渋滞に遭ったよ。
今日は交通事故の警報でも出した方がいい日だった」
それを聞くと、ケリーの疲れ気味な顔色がますます悪くなった。
ケリーは頭を抱え、しぼり出すように話し始めた。
「実はね、おれもそろそろおまえに真実を知らせて、ここに招こうかと思っていたんだ。
君の思うように、すでにこのアメリカ国内にも食人病が蔓延しつつある。移動は、できるうちにしておいた方がいい」
マイケルも考えなかった訳ではない。
今日のこの交通事故もほとんどは、食人病に関係しているのだ。
家族が患者を遠い大病院に連れて行こうとして、車内で襲われれば当然、運転を誤って事故を起こすだろう。
病院に行く金のないドライバーが異常な日焼けを起こし、意識が混濁してもなお働こうとして車を運転すれば事故になる。
それに、これは考えたくないが…患者が人を襲うために道路に飛び出したら…。
その全てが、カーナビで見た程度の頻度で起こっているのだ。
「君が、自分から知りたがってくれて良かった。
おれが言うまで待っていたら、間に合わなかったかもしれん」
ケリーはそう言って、深く頭を垂れた。
355プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/02/20(土) 17:34:41 ID:Vy4cj84cP
(15)
マイケルはケリーを腹立たしく思ったが、口には出さなかった。
ケリーもまた、悩んでいたのだ。
ケリーは独身生活を謳歌している節があり、家族はいない。しかしその分、マイケルたち妻子ある者のために仕事を引き受けてくれたりもした。
今回の件についても、ケリーは数年前から、アンブロシアと異常な日焼けの関連が指摘された時から調査に加わっていたのだ。
独身ゆえの身軽さだ。
マイケルが家族に構っている間、ケリーはずっと食人病について調べていた。
そしてそれは、ある程度の成果をあげた。
マイケルはその成果について、聞きに来たのだ。

マイケルは、娘の容体についてケリーに説明した。
病の症状、期間、そして妻を噛もうとし、実際に看護士を噛んだことも…。
それを聞くと、ケリーはすまなさそうにうなだれ、一言つぶやいた。
「すまない…そこまで進んでしまったら、もう我々でも手に負えない」
マイケルは一瞬、頭の中が真っ白になった。
次の瞬間には、ケリーの胸倉をつかんで体を揺すっていた。
「おい、どういう事だ!?
おまえはこの病の対処法を発見したんじゃないのか!!」
ケリーは抵抗せず、つまり気味に告げた。
「お、おれが発見したのは…まだ人の意識があって症状が皮膚にとどまっている段階での進行を抑える手段に過ぎないんだ。
少なくとも、人として生きてないと無理だ!
おまえ、娘の脈をとったか?」
それを言われて、マイケルは無言で手を放した。
自分は今まで、娘が入院してからずっとそれを避けてきた。
娘が死ぬはずないと、心のどこかで思い込んで…しかしそれを確かめるのは怖くて…。
真実に直面することが、これ程怖いとは思わなかった。
356プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/02/20(土) 17:35:37 ID:Vy4cj84cP
(16)
気がつくと、マイケルはケリーの後をついて、病院の廊下を歩いていた。
一緒に娘の容体を見に行こうと言われて、うなずいたような気がする。
後はもう何も考えたくなくて、意識すらとぎれとぎれで。
やがて、二人の足は病室の前で止まった。
途中幾度も防火シャッターを越えた先の薄暗い病棟、いかにも頑丈そうな金属製の扉で閉ざされた部屋に、娘は運び込まれていた。
病室に入る二人の側に、銃を持った警備員が寄り添う。
マイケルはおぞましい予感に足がすくんだ。
「さあ、入るぞ」
ケリーがドアノブに手をかけ、扉を開いた。

中に電灯が灯ったとたん、マイケルは声にならない悲鳴を上げた。
そこは集中治療室などではない。
会議室のような広い部屋に多くのベッドが置かれ、それぞれのベッドに一人ずつ、すでに死んでいると思しき者たちが拘束されていた。
部屋は、腐臭に満ちていた。
皆が娘と同じように肌をぼろぼろに腐らせ、目は真っ赤に充血した上から白い絵の具を流し込んだように濁っている。
マイケルたちを見るや否や、獣のような唸り声をあげて噛み付こうともがき始めた。
娘も、その内の一人になっていた。
警備員が銃を娘の首筋に当てて、押さえつける。
それを確認すると、ケリーは娘の側に寄って白い寝巻きのボタンを外した。
娘の、どす黒く変色した胸があらわになる。
ケリーは震えているマイケルに、こちらに来るよう促した。
「さあ、娘の心臓が動いているか確かめるがいい。
おまえの役目だ」
マイケルはふらつく足で娘のベッドに寄り、恐る恐る胸に手を伸ばした。
357まこしろ ◆pAmJQGka6Q :2010/02/21(日) 03:51:30 ID:aHq6WmP20

俺はニュースを見た時に直感した。

映画だけの世界、起こることのないと思っていた「審判の日」が本当にやってきたと。

「そっちの方の様子はどう?真雪と小雪は大丈夫?」
「二人は大丈夫。東京ほどじゃないけど、外には出られないの。危ないからって。」
電話の向こうで妻がか細い声で言う。

「食べ物は?ちゃんと食べてる?」
「うん・・・ちょうど生協の配達があったばかりだから、あるにはあるけど・・・」
「食べてないんだろ?子どもたちにだけ食べさせて。オレが持っていくから大丈夫。心配しなくていいよ。」
俺は自分の部屋を見渡しながらそう言った。

「それから、空いたペットボトルに水を入れておいて。あるだけ全部ね。いつ水道がダメになるかもしれないから。」
「電気は大丈夫かな・・・?」
「わかんないな。もしかしたら止まるかも・・・。俺の部屋にキャンプ用品があるだろ?それを出しておいて。」

「オレが行くまで絶対に外に出ちゃダメだからね。大丈夫。1週間、長くて2週間もすれば収まるから。」
「気をつけてね。」
358まこしろ ◆pAmJQGka6Q :2010/02/21(日) 03:52:46 ID:aHq6WmP20

電話を切ると俺は早速、準備に取り掛かった。
幸いにして、単身赴任の一人暮らしには必須のインスタント食品が冷蔵庫には詰まっている。
今時、珍しいと思われがちだが、俺は缶詰を酒の肴にするのが好きなので、缶詰の買い置きも結構ある。
ありったけの食料を大きなバッグに詰め込んだ。

『まだ、騒ぎがここまでこないうちに食料を買い込んでおくか・・・』

途中で食料を入手することも考えて、以前に衝動買いしたショッピングバッグを持っていくことにした。

とりあえず、もって行ける食料はこの程度か。
俺は着替えを始めた。
バイク用のインナーの上下に、さらに防寒用のアンダーシャツを着込み、その上からハイネックの防寒トレーナーを着る。
ズボンはジーンズの一番厚手のもの、その上からカーゴパンツを穿いた。
膝から下をガードするプロテクター兼用のニーシンウォーマーを付け、上着はバイク用のプロテクター入りのナイロン製を着込んだ。
もちろん、靴もバイク用のハーフブーツ。プロテクター付きのグローブも用意した。
買ったものの、まったく使っていなかったシールド付のジェットヘルがここで役に立つとは思わなかった。
すぐに被るわけではないが、持って行くことにした。
359まこしろ ◆pAmJQGka6Q :2010/02/21(日) 03:54:09 ID:aHq6WmP20

次に「武器」になるものを用意する。
キャンプで使うために買ったコールドスチール製の大型マシェットと、その時、ついでに買ったサバイバルナイフ。
それをショルダーバッグに入れ、釣りに行くときに使っているヘッドライトとLEDのフラッシュライトを2個も入れた。
それから、会社の旅行に行った際にシャレで買ったお土産の木刀をクローゼットから引っ張り出した。
こんなものでも無いよりはマシだろう。
「飛び道具」も欲しいところだが、もちろんそんなモノは持っていない。
とりあえずは、これで十分と自分に言い聞かせた。

窓の外を見ると、この辺りはまだまだ「騒ぎ」が広がっていないらしく、いつもとさして変わらない様子だった。
少し車の通りが少ないくらいだろうか。
この後で食料を買い込んだとして、大き目のバッグが2つとショルダーバッグがひとつになる計算だ。

俺は「荷物」を抱えて外に出ると、駐車場の車に向かった。
リアシートに荷物を投げ入れ、エンジンをかける。

たまに夜中に買い物に行ったりするのと変わらない感じがする。妙な気分だ。
360まこしろ ◆pAmJQGka6Q :2010/02/21(日) 03:55:39 ID:aHq6WmP20

まず、向かったのは、仕事帰りに毎日のように立ち寄っている、24時間営業のドラッグストア。
これまた、いつもと変わらぬ様子で営業をしている。
顔見知りの店員と軽く挨拶をして、急いで品物を物色した。
なるべくコンパクトで、保存ができ、ある程度のカロリーを確保できるものと考えて商品をカゴに詰めていった。
少々、重量はかさむが、缶詰を数十缶。それからレトルト食品。
万が一、「篭城」が長引くことも考えて、非常食としてビスケットを棚に並んでいるものすべて。
カロリー摂取を考えて、スニッカーズをその場にあった3箱まるごと買っておいた。

「こんな時間にずいぶんと買いますね。」
店員に言われたが、ふふんと笑ってごまかした。
このあたりは平和なものだ。俺の行動が奇怪に映ったに違いない。

買い物を終えると、車に戻り、用意しておいたバッグに詰め替えた。
レトルト食品はすべて箱から出し、できるだけコンパクトに詰め込んだ。
少々、かさばるが、予想していた通りだ。なんとか一回で運べるだろう。

ここから自宅まではおよそ80km。時間にすれば1時間半ほど。
一時期、その距離を毎日、通勤していたのだが、さすがに交通費と時間がかかりすぎるので、会社近くにアパートを借りた。
家族と離れて生活するのは寂しいが、おかげで体力的にはかなり楽になった。
しかし、今ではそれを後悔している。
少しでも情報を得るために、ナビのテレビとカーラジオを付けた。
ラジオを聴くために、テレビの音声はOFFにしておいたが、どこのチャンネルも「暴動」のニュースを報じていた。

そして、俺は車を走らせた。
不安の中で過ごしているであろう家族の待つ家へ。
361まこしろ ◆pAmJQGka6Q :2010/02/22(月) 03:03:45 ID:axU1ZDSj0

ラジオでは「暴動」の経緯を説明していた。

2日前に東京で何らかの薬品が原因と見られるガスが発生するという事故が起こった。
それ自体は大きな被害もなく収束したのだが、事故の後、現場周辺の住民に異変が見られた。
ある者は体調不良を訴え、近くの病院に収容され、その一部は亡くなったとのことだった。

それからだ。「暴動」が発生したのは。

まず、病院内で「患者」が医師や看護師に襲い掛かった。
それも、何かの武器や道具を使うのではなく、噛み付いたとのことだった。
襲われた医師や看護師は別の病院に収容されたが、さらにそこでは、その「被害者」たちが別の者を襲った。
またたく間に「暴動」は広がり、警察は鎮圧のために機動隊を出動させた。それが2日前のことだ。

しかし、警察が「暴動」を抑えることはできず、都内は厳戒態勢がしかれた。
そして、「暴動」は今もまだ広がりを見せているのだった。
政府はこれに対し、騒乱罪を適用し、自衛隊に対して治安出動を命じた。
だが、「暴徒」に対する武器使用は認められず、逆に治安出動の任に就いた者が「暴徒」と化す結果となった。
362まこしろ ◆pAmJQGka6Q :2010/02/22(月) 03:11:44 ID:axU1ZDSj0

騒ぎは今日になって、次第に郊外へと広がっていっていた。
ラジオの話では、東京の下町を中心とした地区はほぼ壊滅状態。
東京につながる橋は自衛隊と警察の機動隊が封鎖していたが、その一部が「暴徒」によって突破されたらしい。

俺の単身赴任先は北関東の某県。そして、妻子のいる自宅マンションは東京近郊のベッドタウンにある。
さっき電話で話した限りでは、まだ「暴動」は自宅周辺まで広がっていないと判断してよさそうだ。
ただ、それも時間の問題だろう。
いや、本当はもう広がっているのだが、妻がその事態に気づいていないだけかもしれない。

俺は自分でも不思議なくらいに冷静に分析していた。
この先、どうなるのか…
このまま政府が何の対応もしないはずがない。
この後の展開としては、自衛隊による、武器使用を含む本格的な鎮圧行動がとられるはずだ。
そうなれば、大半の「暴徒」は抑えられるに違いない。
地方へ波及する前に押さえられれば、おそらく1週間、遅くとも2週間で決着がつくだろう。
ライフラインがすべて機能しない状態にさえならければ、その期間を無事にやり過ごすことだけを考えればいい。
長く見積もって1ヶ月。いや2ヶ月を見ておけば安心だろう。
物資は積み込んだが、量としては最大に見積もった二ヶ月は持ちはしない。
そうなれば、最後には「暴徒」の中に打って出るしかなくなるかも…
363まこしろ ◆pAmJQGka6Q :2010/02/22(月) 03:22:04 ID:axU1ZDSj0

自宅は7階建てマンションの最上階で、広さにすると30畳分ほどのルーフバルコニーがついている。
普段は洗濯物を干すのと、晴れた日の子供の遊び場だ。
もちろん、バルコニーの周りにはフェンスを張ってあり、上部まで覆う形になっている。
外側には「柵」もあるので、バルコニー側から侵入されることはまずないだろう。
今の季節であれば、バルコニー外の風通しのいい場所に食料を置いておけば、早々、腐ったりはしないはずだ。
多少の生鮮食料品はそれで持たせよう。

俺の計算では、今現在、自宅にある食料と、つい先ほど買い込んだ食糧を併せれば、大人2人、子供2人なら1ヶ月は持つ。
さすがに2ヶ月ともなると厳しくなるが…
問題は水だが、ライフラインが生きている限りは問題ないし、自宅には常に箱で買い込んでいるウーロン茶やら緑茶が3〜4箱はあるはずだ。
さっき妻に電話した際に、空いたペットボトルに水を入れておくように言ったので、それが数十本分はある。
しばらくは持つか…ただ、それもライフラインが止まっていない前提だ。

車を走らせながら、逆にライフラインが止まったときのことを考えた。
マンションの暖房はすべて電気製品に頼っている。
明かりはライトやランタンがあるのでなんとかなるが、今の季節で暖房が使えなくなるとコトだ。
物を温めたり、調理をするのは、キャンプ用に買ってあるカセットコンロがあるので大丈夫だろう。
ボンベは少々古いが、錆は出ていなかったし、大量にあるので、問題ナシとしよう。
電気が止まれば、ポンプが作動しないので、マンションの最上階の我が家には水が供給されずお手上げだ。
ペットボトルの水をうまく使っていくしかない。
364本当にあった怖い名無し:2010/02/22(月) 21:44:05 ID:gTIiriOP0
ここの小説、楽しみにしてます。
でも完結しないで終わっちゃうのが多いのよね
365本当にあった怖い名無し:2010/02/23(火) 20:12:42 ID:B5Ry4Y3L0
            , '´  ̄ ̄ ` 、
          i r-ー-┬-‐、i
           | |,,_   _,{|
          N| "゚'` {"゚`lリ     や ら な い か
             ト.i   ,__''_  !
          /i/ l\ ー .イ|、
    ,.、-  ̄/  | l   ̄ / | |` ┬-、
    /  ヽ. /    ト-` 、ノ- |  l  l  ヽ.
  /    ∨     l   |!  |   `> |  i
  /     |`二^>  l.  |  | <__,|  |
_|      |.|-<    \ i / ,イ____!/ \
  .|     {.|  ` - 、 ,.---ァ^! |    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l
__{   ___|└―ー/  ̄´ |ヽ |___ノ____________|
  }/ -= ヽ__ - 'ヽ   -‐ ,r'゙   l                  |
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366ぷれしあ:2010/02/25(木) 16:33:46 ID:3pSOB+gI0
黙示録か与太話か

1

テレビニュースで、異常事態を知らせる報道がされていた。
現代の日本で「暴動」が起きていると言う。それが結構遠くない地域だったので、
祐司は一種、心の片隅で不安なのか恐怖なのか、それとも興奮なのか、形容し難い感情が
沸き起こるのを、静かに感じていた。
ふと、そこに携帯が着信を知らせる。
テレビの報道に、自覚以上に見入っていたのか、滅多に連絡を寄越さない相手からの着信を知らせるメロディに、一瞬肩が震えた。

「・・もしもし・・・」

電話をかけてきたのは、高校の後輩だった。
半年程前に、高校時代の美術部の部活のメンバーで同窓会もどきを開いて、その時に祐司が在学していた期間も含め、10年分の部活メンバーが揃った。
そこで、知り合った後輩だ。名前は、鷹越みつる。
名前こそ日本名だが、聞いた話では日本に帰化した外国人らしい。祖父の代から日本に居ると聞いた。
見かけは、どう見ても日本人とは言い難いが、名前とのギャップと個性の強い性格でよく覚えていた。
興味を引かれ話しかけて、そこそこ仲良くなったので、電話番号を交換したのだが、みつるからは滅多に連絡は無かった。

会ったのは、半年前の同窓会もどきだけだ。そのみつるからの連絡は、今の状況と言うか、心境も手伝い、異様な雰囲気だった。

「センパイ、お久しぶりです。いま少しお時間よろしいですか?」
少し低めのアルトヴォイスを聞いて、意味なく落ち着く自分を奇妙に祐司は感じつつ、先を促した。

「どうした?」

「今から、変なことだと思われる質問をします。
でも、真面目な質問ですので、真面目に真剣に覚悟を決めて答えてください」

意味不明な言葉の出だしだった。
367ぷれしあ:2010/02/25(木) 16:39:37 ID:3pSOB+gI0
黙示録か与太話か

2

「・・・・どうした?」

「時間がありませんので、何故何の質問は答えによって後回しにさせていただきます。
センパイ・・・・。
絶望の中で苦痛を感じながら死にたいですか?それとも、絶望の中で苦痛を感じながら生きたいですか?」

「・・・・・ど、どうした?」

「答えを言ってください」

先のニュースで、まだ混乱冷め遣らぬ上の追い打ちだった。意味不明にも程が在る。「暴動」の事実と相まって、正体不明の不安感が沸き起こる。

「大切な質問です。覚悟を決めてお答えください」

祐司は、意味不明ながらも、異様な説得力をみつるの声に感じた。意識なく、搾り出すような声音をもって一言だけ口にした。

「・・・・・生きたい・・・・・・」

「分かりました。今から迎えの者を行かせます。
部屋から出ずに、二時間ほどで到着すると思いますので、お待ちください。
外出の用意をしていてください。もう家には戻らないおつもりの用意を」

そして、みつるの声は断ち切れた。不通となった携帯電話から、ツーツー・・と空寒く感じる音が聞こえて祐司に、より奇妙な世界観を感じさせた。
一体何事だ?

携帯を閉じて、再びテレビを見やる。
報道番組はCMに変わっていた。
368ぷれしあ:2010/02/25(木) 18:28:35 ID:3pSOB+gI0
黙示録か与太話か

3

祐司は自分でも説明出来無い焦燥感のままに、みつるから言われたとおりに用意を始めた。
みつるは端的な言葉だったが、家には戻らないつもりの外出の用意・・・とは・・・、と考え込んでし

まうが、本能的に思考の中に入って行動を滞らせるのは、危険だと感じていた。

だから、着替えの下着や衣服。
箪笥から引っ張り出して、旅行用に購入していたトランクやボストンバックも押入れから引っ張り出し

て、当面必要とされる身の回りの物を詰め込んだ。
一人暮らしの独身生活で、入用は然程無い生活をしていたつもりだが、大量の荷物が自分の手によって
作り出されていくのを、不思議な気持ちで見つめている自分が居た。

財布に通帳、実印に・・・・・

荷造りが終盤になって、不足ないかの確認をしていた時に、部屋のインターフォンが鳴った。
時計を見たら、みつるから電話があってからもう、二時間が過ぎようとしていた。
彼女が言っていた「迎えの者」だろうと、部屋のインターフォンの受話器を取った。

「はい」
「迎えに来た」

ぶっきらぼうな男の声が返って来た。
一瞬、固まってしまったが・・・、みつるの言っていた者だろうと玄関に向かい、ドアを開けると、
何処のビジュアル系なんだという黒尽くめの男がインターフォンの声と同じく仏頂面で佇んでいた。
369ぷれしあ:2010/02/25(木) 18:31:14 ID:3pSOB+gI0
黙示録か与太話か

4

「中江 祐司に間違いないな?」
横柄な態度の男は、やはり偉そうに祐司に言葉を投げる。圧され気味に祐司が頷くと「行くぞ」と早々

に背中を向けて歩き出そうとしたので、慌てて声を上げる。
「荷物があります!」
「ちっ・・・急げ。暇じゃないんだ」
相手の男の態度と言動に、不服はあったが、みつる同様に男は日本人らしからぬ風貌で、奇抜なV系フ

ァッションもきまっていて・・・何となく気後れを感じてしまう。
言われるままに急いで荷物をかつぎ、あるいは背負いして、外へ出た。
予想通り、祐司の荷物を見た男は、遠慮なく盛大に舌打を見舞ってくれたが、何も言い返せなかった。

迎えは車だった。映画やテレビでは見たことあるが、自分が乗車するとしては認識したことがなかった

高級車と言われる車種だった。
(リムジン?いや・・ロールスロイス?・・・鷹越って金持ちなのか・・・・)
荷物をトランクに詰め込ませてもらい、祐司はぼんやりそんな事を考えていた。
運転手が別に居て、黒のスーツを着こなしている男だったが、彼もやはり日本人ではないようだ。
日常では起こり得ない状況に見舞われて、混乱し通しではあったが、車に乗り込み移動が始まると、少

し落ち着きを取り戻せた。

「何が・・どうなっているんですか?」
「・・・・・・・・・・」

後部座席にかなり余裕を持って隣に座するV系に聞いてみたが、見事に無視をされた。
まるでそこに祐司が存在していないかのような態度だ。流石にむっとなる。
370ぷれしあ:2010/02/25(木) 18:37:40 ID:3pSOB+gI0
黙示録か与太話か

5

むっとした祐司は、少し語気を強めて再度問う。
「何が起きているんですか?もしかして、今ニュースになっている暴動と関係があるのですか?」
社会人になって、まだ5年ほどしか経っていないが、祐司は良識ある社会人として、初対面の
外国人に丁寧語で話しかける。その実は、小心者故の日本人気質だったかもしれないが・・・・。
やはりと言うか、隣の男は祐司を見もしない。
しばらく、じっと男を見ていたが、反応をする気がないと悟り、深々と居心地の良すぎるシートに
祐司は体を預けた。
それから、何となく窓からの街の風景を見たり目を閉じたりしていたが、視界がニュース報道の
あった地域に差し掛かり始めたところ、祐司はありえないものを目の当たりにした。

人が人を襲い、食べている。

流れる風景の中で、ほんの数秒目撃した現実を理解できなくて、息を飲んだ。
祐司が暮らしていた街の隣に位置するそこは、阿鼻叫喚の地獄のようだった。
「・・・ぼうどう・・・?」
白痴の様な物言いになっていることは、自覚はしていたが、仕方が無かった。思考が止まっている
のだ。どう言ったら良いか分からない。

どん!!!!

車が走っているにも拘らず、よたよたと近付いてきた喉笛を食いちぎられて、腹の穴から内臓を
はみ出させて腸を地面に引きずっている血まみれの暴徒は、スピードを緩めない祐司の乗る車に
撥ね飛ばされた。

「これは・・・なんだ?」

眩暈がするのは、無理からぬことだった。
371ぷれしあ:2010/02/25(木) 20:12:01 ID:3pSOB+gI0
黙示録か与太話か

6

『絶望の中で苦痛を感じながら死にたいですか?
それとも、絶望の中で苦痛を感じながら生きたいですか?』
みつるの電話での言葉が、ぐるぐると祐司の頭の中でまわっていた。
映画で見たことがある様な場面が、目の前で繰り広げられている。目を閉じてしまいたかったが、
出来なかった。凝視して、街を抜けるまで地獄と呼ぶに相応しい街の様子を祐司は自分に刻み込んだ。
車に向かい、助けを求める者があっても、スピードは緩まなかった。
あれはなんだ?あれはなんだ?あれは・・・あれはあれはあれはあれは・・・アレハナンダ?
呼吸が浅くなり、動悸が激しくなった。現実が現実として認識が出来無い。
はぁはぁはぁはぁ・・・。
苦しくて仕方が無い。

「許容超えたからと狂うなよ。わざわざ手間をかけて助けた人間が、現実逃避の果てに頭おかしく
なりましたじゃ、笑い話にもならん」
感情の込められていない声は、それまでずっと祐司を無視し続けていた男だった。ゆるりと祐司は
視線を隣の男に向けた。冷たい視線が自分に注がれているのを自覚して、幾分か精神が現実に戻る。
「狂ったところで、捨てるだけだがな」
「何を・・・」
言っているんだ。苦しさに喘ぎながらも、祐司は男に掴みかかった。

「訳が・・わからないんだよっ!・・せ・・つめい!・・・しろよ!!」

ぎりぎりと男を掴んだ腕に力が込められる。
もう、どうして良いのか祐司には分からなかった。泣きたいのか怒りたいのか、自分が恐怖している
のか悲しんでいるのかすらも分からない。分からない。この現実世界に何が起こって自分が置かれ
ている状況も何もかもが分からない。
372ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/02/25(木) 23:11:11 ID:3pSOB+gI0
慣れぬままに、衝動に任せて投稿してたら・・
トリっていうのを、つけたほうがいいのですね・・・。

これでいいのかな?
373ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/02/25(木) 23:25:46 ID:3pSOB+gI0
黙示録か与太話か

7

「おかけになった電話番号は、電源の届かない場所か電源を切っているためかかりません」
何度も聞いてきたアナウンスに、みつるは携帯を閉じた。重い溜息が零れる。片手に握ったままのボールペンで自作のリストの最期の欄に斜線を入れて電話番号を消した。
それは、中学と高校の親しかったり恩のあった人たちをピックアップして作成したものだったが、リストの8割・・いや、9割は斜線で電話番号が消されている。
連絡が付かなかった。
「はぁ・・・・仕方ない・・・・。仕方ない・・・」
呟いて、リストをぐしゃりと握りつぶしてゴミ箱に放り込んだ。

現状把握がまだ追いつかない。起こっている事は掴んでいる。けれど原因も規模もまだ掴みきれていない。
苛立ちが焦りと共に募るが、それを溜息で無理矢理自分の中から押し出すようにして、みつるは自室から出た。そろそろ高校の先輩を迎えに行かせた者達が戻るはずだ。
中江祐司が来れば、みつるが連絡を取り救助する者は揃う。自己満足の独りよがりだと分かりきってはいるが、ほんの僅かな人数だ。
みつるは周囲に押し通した。
最悪の事態を考えて行動を始めている周囲と自分。急展開の想定外の出来事に誰も彼もがてんやわんやの大忙しなのだ。

死者が蘇り、生者を襲い喰らう。

ほぼ、時を同じくして全世界規模で発生している。
事態の把握に人員を裂いてはいるが・・・憶測と仮説ばかりが錯綜して、実のある確証が未だ手に入らないのだ。
確証が得られなくとも、決めた事を実行しなくてはいけない。

先の段階を思考して、また溜息が零れた。
374プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/02/27(土) 19:21:38 ID:pflhhUrWP
おお、また新しいストーリーが始まったッス!

最近にぎやかで楽しみッス
自分も明日には投下するッスよwww
375本当にあった怖い名無し:2010/02/27(土) 19:45:31 ID:xcmQPxE/0
その口調どうにかならんの?
376ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/02/28(日) 03:46:57 ID:bWDX3saT0
黙示録か与太話か

8

「みぃちゃん」
迎えが戻る頃だろうと玄関ホールへ向かっていたみつるに、友人の凛子が客間から
顔を覗かせて呼び止めた。
「うん?」
「お兄ちゃんに、やっぱり連絡付かないの・・・やっぱり・・やっぱり」
泣きそうな、紙の様に白くなった顔色の凛子は俯いてしまう。そんな凛子を優しく抱きしめて、
みつるはその頭を撫でる。「大丈夫」とは言えなかった。
言った方が良いとは思うも、無責任に楽観的な言葉を言うことがどうしても、出来なかった。

「もうすぐ、高校時代の先輩が来るんだ。そうしたら、皆を集めて事の説明を把握している限り
皆にしようと思うんだ。今は余計なことは考えないで・・・と言ってもアレだろうけど・・・。
温かいお茶でも用意させるから、もう少しだけ、部屋で待っててもらえる?」
「お茶は要らない。ね・・・一緒に居ちゃ駄目?」
心の不安定な友人を一人で部屋に押し込めておくのは、これ以上は酷かも知れない。
みつるは、少し考えて笑顔を見せる。

「じゃ、一緒に居て。私もちょっと滅入ってたんだよ。リンちゃんが居てくれたら
ちゃんとできるから、ね」
凛子はその言葉に、やっと微笑んでくれた。そっと心の内で少しだけみつるは安堵する。そこへ、
使用人が、中江祐司が到着したと伝えに来た。

みつるは凛子を伴い、使用人含め三人で玄関へ向かった。
377本当にあった怖い名無し:2010/02/28(日) 03:48:35 ID:T3izeL1T0
安っぽいキャラ付けで悦に入ってる馬鹿だからしょうがない
378プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/02/28(日) 19:16:31 ID:zkdoko2RP
不快にさせたなら失礼、プリニーがかわいいのでついやってもうた

とりあえず続きを投下します
379プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/02/28(日) 19:18:29 ID:zkdoko2RP
デッド・サンライズ

(17)
胸に触れたとたん、ひんやりとした冷気が指を刺した。
ついでに、何とも心地の悪い妙な柔らかさを感じた。
指先に伝わる振動の中に、規則正しいものはなかった。
それでも信じられずに掌を全面押し当ててみたが、娘の鼓動は全く感じられなかった。ただ湿った冷たさだけが、そこにあった。
「う…うぐっ…うわあああ!!!」
マイケルはその場で泣き崩れた。
無機質な部屋に、悲痛な叫びがこだまする。
拘束されている死者たちが、ひときわ激しく騒ぎ出した。
娘もまた同じように、あの愛らしい声を発していたのと同じ口で、低く濁った唸り声をあげた。青く澄んだ空のようだった瞳が赤と白でごちゃまぜになり、どうもうな視線をマイケルに向けた。
マイケルはただ、滝のように涙を流すしかなかった。
ケリーは黙って、マイケルに肩を貸した。
暗い廊下に、マイケルの涙が点々と続いていった。

マイケルは鉛にように重い体を引きずって、自室に戻った。
ケリーはまだ何か話したそうだったが、マイケルはとにかく一人になりたかった。
そして、ベッドの上で声をあげて泣いた。
泣いて泣いて、シャツの袖もきれいなシーツもぐしゃぐしゃに濡らして、声がほとんど出なくなるまで泣き続けた。
ひたすら泣くことに夢中で、寝室のドアが開いたことにも気付かなかった。
気がつくと、誰かがマイケルの体を揺らしていた。
こんなに苦しい時に何と無神経な奴だ…マイケルはその手を乱暴に振り払い、その拍子に顔を見て、あっと声を上げた。
そこにいたのは、妻だった。
380プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/02/28(日) 19:19:54 ID:zkdoko2RP
(18)
妻は自分も泣きそうになるのを、必死でこらえていた。
そして、マイケルの顔をのぞきこんで問う。
「ねえ、娘に何かあったの…?
お願い正直に話して、娘に何かあったんでしょう!?」
涙を浮かべて詰め寄ってくる妻の姿に、マイケルは慌てた。
マイケルは一人になりたくて自室に戻ったが、自室には妻がいたのだ。あまりに気が動転していて、その事が頭からすっぽり抜け落ちていた。おそらく、泣きながら娘の名を叫んでしまったのだ。
これはまずい…何とかごまかせと、頭のどこかが叫んだ。
しかし、心は一緒に泣いてくれる妻に救いを求めた。
この悲しみは、一人で背負うにはあまりに大きすぎたのだ。
「娘が…死んだ…」
マイケルは消え入りそうな声で言った。
「え、あなた今何て…?」
「娘が死んだって言ってるんだ!!」
今度は怒鳴るように大声を発して、マイケルはまたベッドで肩を震わせた。
妻はしばらく呆然と立ち尽くしていたが、やがて隣からすすり泣きが聞こえ始めた。妻のやわらかい体が、マイケルの上におおいかぶさる。
それは少しだけ、マイケルの心を癒した。
妻が嗚咽とともに、マイケルに問う。
「どうして、こんな…ここには最新の技術も設備もあるんでしょ!?
それなのに、どうして…!」
マイケルは少しだけ余裕ができた頭で、精一杯の優しい嘘をついた。
「遅すぎたんだ…体が弱りすぎていて、ヘリで搬送する時のわずかな気圧の変化にも耐えられなかったんだ。
…友人に怒られたよ、どうしてもっと早くここに来なかったんだって。
私が…私がもっと早く決断を下して、娘の治療を最優先にしていれば…!!」
全てが嘘ではない、この自責は本物だ。
妻はマイケルを悪くないと言って慰めながら、一晩中一緒に泣いてくれた。
381プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/02/28(日) 19:21:06 ID:zkdoko2RP
(19)
次の日、娘の葬式が行われた。
娘はきれいに死化粧を施されて、棺の中で大人しくしていた。
ケリー曰く、心臓が止まっても体を動かしているのは脳と神経のせいなので、頭…つまり脳を破壊すれば患者は本当に死ぬのだという。
妻が娘の顔を見たいと言った時はどうなるかと思ったが、マイケルはほっと胸を撫で下ろした。
別れが済むと、娘の遺体はこっそりと棺から出され、焼却炉に放り込まれた。
マイケルは思わず異議を唱えかけたが、ケリーがそれを制した。
「あの娘は脳の破壊で動かなくなった、でもあの娘を蝕んでいる病気の元はまだしばらく生きているんだ。
それに、この病は弱いが感染性を有する。
感染を防ぐには、焼くしかないんだ」
感染と聞いて、マイケルは目が飛び出しそうになった。
この病は異常な日焼けの延長線上で、原因物質はアンブロシアと見当がついている。つまりこれは、中毒に近いものであるはずだ。
無機物が原因の中毒が、感染など起こすものか。
マイケルは毅然とした態度で、ケリーに言い放った。
「近いうちに、全て説明してもらうぞ!
アンブロシアがどうしてこの病を起こすのか、なぜこの病に感染性があるのか、この病の治療法は、そいつを全て話してもらう。
娘の仇だからな!」
半ば脅迫のような物言いにも全く動じず、ケリーは冷静な顔で答えた。
「いいだろう、元からそのつもりだ。
そもそも、君はこれからおれと共にこの病の治療法を探る事になるんだ。
今までに分かっている事は全て、知っておいてもらわねば困る」
マイケルはごくりと唾を飲んだ。
マイケルがここに来た目的は、情報を共有する代償にアンブロシア関係の研究に携わるため。この病とは、初めから戦うことになっていた。
だが娘を失った今、マイケルの闘志はいやがうえにも燃え上がった。
決して負ける訳にはいかない…燃える娘の体を見ながら、マイケルは固く心に誓った。
382本当にあった怖い名無し:2010/02/28(日) 23:26:32 ID:fcJCwUW20
>>378
大人ですなぁ。
何はともあれ、投下乙です。

なるほど。やはり感染するという設定はあるのですね。
では、どんなパンでミックになるのかwktkしてます。
383本当にあった怖い名無し:2010/02/28(日) 23:39:37 ID:fcJCwUW20
>>ぷれしあさん
投下乙です。
「みつる」は男と思ってたら彼女と書いてあってビックリです。
でも、続きを楽しみにしています。

>>まこしろさん
投下乙です。
過去スレで投稿していた方ですか?
準備万端ってのは、ある意味フラグ……今後の展開にwktkです。
384ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/01(月) 02:21:33 ID:Fph+QNcE0
>>383
どもです♪
個人的に、男の子の様な名前の女の子が好きなのです。
題材がネタ的に反則かなぁって気がするのですが、脳内作成してしまったので
投下いきます。
385ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/01(月) 02:24:31 ID:Fph+QNcE0
黙示録か与太話か

9

到着した祐司の様子に、みつるは迎えに行かせたケイを静かに睨みつけた。祐司は過度の
精神ストレスからだろう過呼吸の症状を見せて、ケイに引きずられるように屋敷に入ってきた。
「誠一郎を呼んで、彼を診てもらって」
使用人に言い放ち、ケイへ近付く。
「説明して」
端的に冷たく言い放たれたみつるの言葉に、ケイは表情を変えることも無くそっぽを向いた。
ケイの性格から考えて、祐司へ余計なストレスを感じさせたのは明白だったので、みつるの
ケイを見据える視線は冷たい。迎えに行くようにと要請した時に、手間を手間と思うなと
十分に言い含めていた上なので、余計に腹が立った。
しかし、玄関で雁首揃えて立っているだけでは埒が明かないと、すぐに意識を切り替える。

ケイの背後に控えていた運転手に祐司の荷物を運ぶように言いつけて、玄関ホールの床に
へたり込むようにして荒く浅い呼吸を繰り返す祐司に近付き視線を合わせるようにしてしゃがみ
声をかける。

「センパイ、ゆっくり呼吸してください。此処は安全です。すぐに医者も来ます。
おちついて、深呼吸しましょう?」

凛子もみつるに習うように、祐司の傍まで寄り「大丈夫ですか?」と控え目ながらも声をかけた。
そこへ、呼びに行かせた医者の誠一郎がやって来た。

「みつるさん。後は私が・・・・。君、彼を運んでくれ」
共に戻ってきた使用人に言いつけて、誠一郎は祐司を連れて行く。
何とも言えない重い空気に、みつるは盛大に溜息を落とした。
386ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/01(月) 02:25:43 ID:Fph+QNcE0
黙示録か与太話か

10

みつるから電話を受けた時、凛子はバイトに向かう直前だった。
何時もより早めに家を出ようとしていて、時間的に余裕があったので、電話で話しながら
最寄り駅まで歩いていくのもたまには良いかもと、電話に出たのだ。
みつるからの突然すぎる理由を聞かせてくれない質問には驚いたが、凛子にとってみつるは
必ず納得できる事情説明をしてくれる人、裏切らない。と言う信頼があったので、正直な気持ちとして
生きるという選択の答えを返した。
基本的にテレビを見ない凛子は、実は今から向かおうとしていたバイト先の会社がある地域が、
暴動によって大変な騒ぎになっている事を知らなかった。
みつるからの電話が無ければ、また出て話すと言う選択をしなければ、どうなっていたのか・・・。
凛子も祐司同様に、迎えの車の中から異常としか言いようの無い「暴動」を目撃していた。

母は数年前に亡くなっていて、父は幼い頃に出て行っている。兄が一人居るのだが・・・・・、
兄は堅気ではない仕事をしていて、現在住んでいる住所を知らない。携帯番号と、返事の来ない
メアドは知っているのだが・・・。
連絡が一向につかない。仕事で会社に引篭もっていて、忙しくて出れないのだと、凛子は何度も
自分に言い聞かせた。けれど、後から後から不安は押し寄せる。押し潰されそうになって
みつるに寄りかかるしか出来無い。

それではいけないと思うが、家族を失うかも知れない恐怖は、どうしようもなかった。
387ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/01(月) 02:27:37 ID:Fph+QNcE0
黙示録か与太話か

11

「あれって・・ゾンビ・・・だよね?」
みつるはどうして、あの質問をして自分を助けたのか。かなりの財力の垣間見える迎えの車と人員と
山の中に堂々と建つ洋館。現実が現実味を帯びない感覚の中で、より現実感のかけ離れた世界を
みつるとその周囲に感じてしまった。
みつるは、きっと自分の疑問の答えを持っている。確証の無い確信で、凛子は口を開いていた。
「アレが何なのか、仮説段階でしかいまは把握も出来ていない。今は調査中で・・・。
まぁ・・・映画やゲーム・・フィクションの名を借りるなら・・・あるいはそう言うものに
類する可能性は、あるのかもしれない」
苦笑交じりの返答に、凛子は頷いた。でも見たのだ。逃げるOL風の女性を襲い、首に噛み付いて
肉を引きちぎり、血の雨を浴びるもひるまず噛み付いて一人に群がる複数の・・・・・。
凛子の中では、暴動を起している暴徒達は、人間ではなく「ゾンビ」と決定していた。

ただ、何故それが現実に居るのかがわからない。映画やゲームの世界なら自分も良く知っている。
それに、みつるの行動や言動も、凛子は聞きたいことが、知りたいことが沢山ある。
豪奢な客間に通されて、お茶とお茶請けを出されて、待っていてくれるように言われて、その間
ずっと考えたり、兄に電話をかけたりメールしたりを繰り返していたが・・・。

もう、一人ではいられなかった。

高校時代の先輩が到着したと、みつると一緒に玄関へ向かって、その本人の様子に
彼も今の現状の何かを見たのだろうと、凛子は察した。
388ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/01(月) 02:29:17 ID:Fph+QNcE0
黙示録か与太話か

12

連絡が付いて自宅まで保護できたのが、たった二人だった。
連絡が付いた人物は、他に数件あったが、質問をとりあわなかったり、まともな返答をもらえず・・。
いくらみつるのわがままで通したとしても、本人の意思の無い強硬手段は取れない。
何より、時間がない。
タイムリミットが明確にあるわけではないが、最悪な事態を想定して動くのが、緊急事態の常套。
速やかにスムーズに行くことに越したことは無いが・・・・。
みつるは最悪人類が滅亡する危機まで想定している。
そうなれば、自分たちも滅ぶ。
一刻も早く正確な情報を得て、策を練る必要があるのだ。
生き残るために。
滅ばせない、滅びないために。

そのために、今取れる手段の道筋に、みつる自身の秘密を明かすことが含まれている。
方便でいくらでも誤魔化せるかもしれないだろうが、みつるの実直な性質ゆえ、この状況下で
それはしたくなかった。
その上の選択だった。

覚悟を決めた人間には、こちらも覚悟を持って接するのが礼儀。
それが、みつるの信条でもあった。

祐司を医者の誠一郎に任せて、次の行動はと思考を働かせた時、携帯の着信らしきメロディが
みつるの耳に届く。

凛子が慌ててジーパンのポケットから携帯を取り出し叫ぶように声を上げた。

「お兄ちゃん!?」
389ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/01(月) 03:45:34 ID:Fph+QNcE0
凛子の携帯への着信は、彼女の兄からだった。
「お兄ちゃん!!今何処に居るの!!?」
「・・・・凛子・・・無事?」
酷く重い声だったが、電話越しの兄の声に、凛子は涙を溢れさせる。
「私は大丈夫。安全な所にいるの・・。お兄ちゃんはどこ?家?無事だよね?」
「うん、大丈夫。凛子も無事でよかった・・・。兄ちゃんは、バケモノから逃げて、
地元のショッピングセンターにいる。テレビでやってる暴動って・・情報遅すぎる・・・・・」
本当に疲れ切った、重い酷い声だった。
凛子に兄は話す。一週間前から、異変を感じていて、人を襲って食べる奴らに追い詰められて
命からがら、ショッピングセンターに逃げ込んだと。そこには他からも逃げてきた人たちが居り、
何とか協力して安全確保が確立したので連絡をしたと言う。
「何人も・・・食われた・・・・。兄ちゃん・・・逃げるしか・・・できなくてさ」
見殺しにしたと、電話の向こうで兄は泣いていた。
「恋人も・・・見捨てちゃったよ・・・・」
「お兄ちゃん・・お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん・・・お兄ちゃんが生きてるなら、
無事ならそれでいいよ!!おにいちゃん・・・おにいちゃん・・・!!!」
凛子も泣いて、ただ兄を呼ぶばかり。

「リンちゃん、お兄さんなんだね?電話代わって」
凛子は涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げて、みつるを見やる。
「お兄さんの居場所を教えてもらうから、そうしたら迎えにいけるでしょ?」
「みぃちゃん・・ありがと・・・」
凛子は素直に携帯を渡した。
390ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/01(月) 03:51:06 ID:Fph+QNcE0
↑13
黙示録か与太話か

14

「凛子さんのお兄様ですか?はじめまして、私は凛子さんに親しくしていただいてる
鷹越みつると申します。凛子さんは私の自宅にて安全に保護させていただいています。
こちらはかなりの安全性を確保しております。
お兄さんも出来れば、私どもの拠点へお越しいただきたいのですが・・・・」
「・・・あ・・え?」
いきなりのみつるの言葉に、凛子の兄は付いて来れずに間抜けな声を発してしまった。

「申し訳ありません、時間があまり無いものとして話しを進めさせて頂きます。
其方の状況と現状と場所を教えてください。こちらに自力で来い等とは申しません。
お迎えに上がりますので、出来るだけ詳細を教えてください」
淡々と話す声音には、やはり不思議と説得力が宿っていると、凛子は涙を拭うのも忘れて
電話で話すみつるを見つめていた。
兄とやり取りをして、みつるは詳しく色んな事を聞いていた。

「生存者がお兄様を含めて17名なのですね?分かりました。
お兄様、最期にこの質問にお答えください。生きたいですか?」
みつるは静かに返事を待った。そして返って来た返事に「分かりました」と返事をする。
兄は何と返事をしたのだろうかと、凛子は気になった。

「では、お迎えに向かいます。今からですと日暮れが過ぎてしまいますが・・・必ず行きます。
絶対に安全な場所から出ないで下さい。其方の方々へのご説明もお願いします。
こちらに保護を求める方々は受け入れます。四時間ほどお待ちいただきます」
そうして、凛子の兄の携帯番号を聞いて、みつるは自分の携帯に登録する。
「では、近くになりましたら、こちらから連絡させていただきます。失礼します」
電話を切り、凛子へ携帯を返却した。
391本当にあった怖い名無し:2010/03/03(水) 19:57:37 ID:9Func+O00
やっと読めるようになったー。
消えちゃってたらどうしようかと思ってた。w

保守のついでに記念カキコ。
392ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/03(水) 22:49:56 ID:H4Hg1y9w0
やっとやっと、入れたぁ・・・。
ほっとしました。
393ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/03(水) 23:03:33 ID:H4Hg1y9w0
黙示録か与太話か

15

「みぃちゃん」
「リンちゃん、お兄さんが無事でよかったね。今から迎えを出すから、安心してね」
「・・・みぃちゃん・・でも、お兄ちゃん言ってた。バケモノだらけだって・・。
大丈夫?ニュースのあった場所よりも酷いって・・・」
不安と心配で、凛子はみつるにしがみつく。それを笑顔で受け入れて、凛子の背中を
ぽんぽんと優しく宥めるようにたたく。
「大丈夫だって。ケイ今動かせる車って何台?」
「・・・・・・3台」
「ふうん・・・。全員保護となっても、子供も何名か居るって話しだし、三台で十分か」
一人呟いて満は頷き、ケイへ視線をやる。
「ケイ、じゃ用意させて。私も行くから」
「「はあ!!!?」」
みつるの言葉に、ケイと凛子の声が重なった。

「みぃちゃん!?」
「リンちゃんは、待っててね。時間多く見積もって、明日の昼には戻れるんじゃないかな?」
あちらでスムーズに事が済んでも、夜中の日付が変わった時間になるだろうと、腕時計を見ながら
みつるは思考しながら凛子に告げた。
「でしゃばりが」
ケイが静かに厭味を口にするも、みつるは涼しい顔だ。

「誠一郎も連れて行く。持っていけるだけの医療品も。全員が保護を受けるのを承諾するとは
限らないしね。無理ない範囲の出来る事は、乗りかかった船だ、やるべきだろう」
表情を変えないみつるに、ケイは険しい表情を見せる。
「危機感が足りないぞ」
低く呟かれたケイの言葉に、みつるは唇の端だけ持ち上げてみせた。
「それはお前だ」
394ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/03(水) 23:05:06 ID:H4Hg1y9w0
黙示録か与太話か

16

不安と恐怖心をそのまま行動に移したように、凛子はみつるの腕にしがみついて放さない。
凛子にあてがった客間の前までつれてきたが、小さな子供のように言う事を聞かない。
「リンちゃん。大丈夫だから・・・。時間をあまりかけないようにするから・・ね?」
凛子は無言で俯き、首を横に振るばかり。埒が明かない。どうしたものかと思考をめぐらせて
小さな溜息を落とす。
「りんちゃん・・・こっちを見て」
そっと声を幾分か落として、囁くように話しかけた。
「・・・・・・」
「良い子ね。さぁ、こっちを見て」
ゆっくりと囁かれて、凛子は涙目のまま、促されて顔を上げてみつるの顔を見つめてくる。その様子に
みつるは頷いて微笑む。
「良い子・・リンちゃん。私は嘘はつかないの。必ずお兄さんをお連れして無事に帰ってくるからね。
リンちゃんはここで待っててね。連絡は入れちゃ駄目よ。こちらからはするかもしれないけれど。
さぁ、手を離して・・・ね。世話は使用人に良くする様に言ってあるから安心して。
わかった?」
優しく優しく、ゆっくりと凛子の目を見つめて囁いた。
ぽろりと見つめてくる目から零れる涙をそっと手で拭ってやる。
「ね?リンちゃん」
凛子は頷いて、するりとみつるの腕を解放した。そして大人しく自分から部屋に入っていく。
その姿を彼女に向けていた笑顔のままで見送る。
パタンと扉が閉まると、みつるの表情は消えていた。
「ごめんね・・・・」
吐息と共に呟かれたみつるの言葉は誰も聞くことは無かった。
395ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/03(水) 23:06:05 ID:H4Hg1y9w0
黙示録か与太話か

17

「誠一郎」
祐司の様子を見るのと、外出の同行を告げるので、自分の準備の前に誠一郎の仕事場へ訪れる。
「みつるさん、彼なら今は眠っています。相当ショックが大きかったのでしょうね・・・」
憂いを表情に見せて、簡単に様子を教える誠一郎の話しを暫く無言で聞いていた。
パニックを起していたので鎮静剤で眠らせたとの事。
「薬ではいつまで眠ってそう?」
「少し多目に投与しましたので、早くて明日の朝か、遅くて昼頃でしょう」
「そ・・・。誠一郎、ちょっと外出に付き合って。17人立てこもってる場所まで。
こういう状況で人間がしそうな、怪我や病気を想定した準備を余裕目に持ってね」
「・・・・あなたも行くんですか」
少し呆れたような声音に、みつるは肩を竦めるだけに止めた。
「全く・・・・状況が見えない中に飛び込むのは、どうかと思いますが」
「見えないから飛び込むんじゃないの」
「・・・・・・・・・」
今度は盛大に溜息が返って来た。
「私は今から着替えて準備をするから、誠一郎も用意を急いでね」
「本国のお兄様が心配されますよ」
痛いところを突かれて一瞬言葉に詰まるが、こほんと咳払いで自分勝手に話題を押しやる。
「ところで、誠一郎は、今回のコレをどう見る?」
「話しをすぐに変える・・・。そうですね、はじめは亜種の暴走かと思いましたが・・・
ほぼ全世界規模の同時多発と言うのが・・・反乱か、未知の事象か・・判断出来ませんね」
「私も似た様な所だけど、未知の事象と言うのは、人間の軍事研究の人為的災害とか、感染症とか
はたまた、次元移行による存在カテゴリの異変の産物とか、色々想像の範囲では考えうるんだけどね」

「あなたの好きなゲームやお話の題材にありそうですね」
誠一郎は遠慮も無く呟いた。
396empty ◆n/BGU9F4eo :2010/03/03(水) 23:47:47 ID:Fs+sZ2Dw0
おっ、新しい方が居て嬉しいです
とりあえず、この話は放り投げるつもりはありません
ゆっくりとですけども、完結までやろうと思ってます。
描写に時間をかけてるせいで遅々として進まないのが難点ですが。


「ん…」
自分の声で目が覚めた。
床が冷たい。それどころか冷房がかけられているせいで、何となく肌寒くなっていた。
やはり、夏場といえど冷房の効いた中で半袖で寝るのは良くは――、
―――あれ?
慌てて立ち上がり、周囲を見回す。
そこは、昨日まで居たはずのプール施設だった。
携帯を取り出してみるものの――電池が切れていて、日付の確認はできない。
施設の電力が生きているので時計を見ることはできるが、ここには普通にめくるタイプのカレンダーしか置いてなかった。
「どういうこと?」
確か、自分は、この施設から出てどこかの民家に潜り込んだはず…。
その道中ははっきりと覚えているし、確かに現実だった――と思う。
それとも、超リアルな夢ということか。
混乱し、一歩後ろに踏み出したところで、足の裏に違和感を覚えた。
踏んでいるものに目を移す。
それは、夢の中で手にいれたはずのノートだった。

「…確かに、私も覚えてる。てっきり夢だと思ったんだけど」
女の人がぱらぱらとノートを捲り、内容を確認している。
プールの二階ラウンジに集まった三人が三人、同じ夢を見ていたらしい。…いや、夢の中で手にいれたはずのノートがある今、それは夢か現実かも判別できない。
そもそも、今この状況こそが夢かもしれないけれど。
397empty ◆n/BGU9F4eo :2010/03/03(水) 23:49:43 ID:Fs+sZ2Dw0
「普通、夢なら夢ってわかるし…夢の中で手に入れたものは現実に持ち込めない。
 それとも、ストレスが蓄積してその区別さえつかなくなったのかな」
「その可能性は否定できないけど、夢でしか手に取ったことのないこのノートが手元にある理由がわからない」
部屋に散らばっていた包帯を集めながら、友人は己の正気を疑っていた。無理もない。
「うーん、ループしてるってこと? それこそありえない。
 …いや、こんな状態になってる今、否定はできないかしらね」
女の人がノートをこっちに放り投げた。
「いや、あんなのが闊歩しているのは、何かしらの原因があるはずですよ。
 それこそウイルスとかね。でも、時間の逆行なんてのはありえない」
「そもそもいつから世界はこんな風になったんだろうね」
半日悩んで、結論は出なかった。

重要なアイテムかはわからないけど、とりあえずとっとこう。
夕食を兼ねた方針でそう決まり、ノートは自分が持っていることになった。
友人曰く、目覚めたときにこっちの手元にあったのだから意味があるのだろう、ということらしい。
単に、最後に持ってたからっていうだけな気もする。
それはともかくとして、こんな意味のわからない現象が多発している現在、また時間の逆行――かは定かではないけど――が発生する可能性は否定できない。
またループするのなら、ゲームの攻略みたいに虱潰しにしよう。ただし、死なないように。
これが、自分の中で出した結論だ。
ループというより、コンティニューに近いのかもしれないけど。自分達を操作するプレイヤーがいるのかもしれない。悪趣味な神とか。
結局、その日は何も進まず、施設から出ることもなく一日を終えた。
―――今、何日目だったっけ。
その思いを最後に、意識は沈んでいく。そして、闇に紛れかというその時、

4th day

――――――。
何かが聞こえた気がした。
398empty ◆n/BGU9F4eo :2010/03/03(水) 23:52:28 ID:Fs+sZ2Dw0
しかし、そこで意識は途絶えた。

それは夢だった。
紛れもなく夢だった。
昨日みたいに、夢か現実か判別できない世界ではなかった。
崩れた弟が追ってくる。
手元にあるのは、白紙のノートだけ。
一軒の民家に逃げ込めば、玄関では死体が痙攣し、口から血を吐いて起き上がろうとしている。
振り返れば、崩れた弟が、
そこで夢から脱出した。
この先を知りたい気もするけれど、知りたくない気もする。
どちらにせよ、今、夢から抜けるという道を選んだのは自分だ。
意識がゆっくりと浮上するのを感じる。
すぅ、と自分の呼吸音がまず耳に届いた。
ゆっくりと目を開けると、晴れて明るい空が目に入った。
時計を見ると、朝というには遅い時間と言う気がした。

「とりあえず早朝から行動するのは危ないと思うの」
「夢の中でも、昼間になって動けませんでしたしね」
「結局、逆行したとしてもなんで逆行したんだろ」
朝食兼昼食を食べながらの会議は、三者全員が寝起きということもあって遅々として進まない。
その気怠い雰囲気は嫌いじゃないけど、こんなことを感じていられるのも今だからだろう。
「夕方にしましょ、夕方に」
ウイダーインゼリーを口に含みながらの提案に、拒否する理由は無い。
よく考えれば、夕方から夜間にかけてはここずっと動いていなかったため、あいつらが活発なのかどうかさえわからなかった。
初日の印象から勝手に活発と考えていたけれど、よく考えれば昼間の方が襲われている。
399empty ◆n/BGU9F4eo :2010/03/03(水) 23:55:23 ID:Fs+sZ2Dw0
いや、単に昼間のほうが動いているからというのもあるだろう。

「…妙に静か」
それが率直な感想だった。
空も大地も茜色に染まり、太陽ももうすぐ地平線に触れようとしている。
そんな時間に外に出たおかげで、昼間のような蒸し暑さはあまり感じなかった。
夏場の夕方というのは涼しく、そしてどこか切ない。
ひぐらしの声が加わればその切なさはより一層濃くなるけれど――ひぐらしの声どころか、カラスの声も、虫が耳元を飛ぶ羽音さえも無かった。静かすぎる。
ただただ、時折柔らかい風が肌を撫ぜてゆくだけ。
「この事態になってから人間以外の生物って見たこと無いよね」
「そういえばそうだね、なんでかな」
ずっと施設に篭っていた女の人はともかく、街中を逃げ回っていた自分達はせめて鳥の一羽くらいは目にしてもいいと思う。
「あれが夢じゃないとしたら、そろそろ群れに出くわすはず――?」
女の人が立ち止まった。
それに反応して、予め決めていた方位を警戒する。
目に入ったのは、道路に倒れているあいつらくらい――。
「…なんで?」
友人の声が微かに聞こえた。
それは自分も全く同じだ。それしか言えない。
夢と全く同じ位置にあいつらが居る。ただし、立っていない。それどころか、動いてすらいない。
みんな、道路に、地面に倒れていた。
400empty ◆n/BGU9F4eo :2010/03/03(水) 23:57:14 ID:Fs+sZ2Dw0
こうして目の前でただ立っている今も、ぴくりとすら反応しない。呼吸しているのかどうかは知らないけど、その気配も無かった。
「死んでる、とか」
そっと、あいつらの一つに近寄る。
動いているときには視界に入れるのさえ生理的な拒絶感をもたらすそれは、こうして動かない今は然程それを感じない。
崩れた認識がそのまま風化してしまった、というべきか、とてつもなく言葉にし難い奇妙な感覚だ。
「寝てるのかもしれない。できるだけ早く、静かに通りましょ」
女の人が器用にも足音を立てず走ってゆく。
それを追いながらあいつらを眺めたが、こうして普通に音を出しながら走っても、全く反応しなかった。
一度だけ振り返った時も、同じだった。


とりあえずは終了です。
これ本当にゾンビを題材にした小説なのかと疑問がより深くなる回です。
続きは早くて今月半ばです。多分末か来月頭になるでしょうが。
401本当にあった怖い名無し:2010/03/04(木) 08:49:18 ID:+SCZaNRi0
ぷれしあさん、emptyさん、投下乙です。

――以下、独り言ですw
emptyさんは小説とコメントの部分を分けたほうが良いのに……
というか進行が遅いのは良いとしても、あらすじを書くとかしないと覚えてない人が多いんじゃ……?
つかキャラの名前が無いせいでイメージが湧かないし、全体的にぼやけた感じがするし……
面倒かもしれないけど、中途半端な投下を続けるほうがMOTTAINAIと思うなぁ
402empty ◆n/BGU9F4eo :2010/03/04(木) 16:11:01 ID:jPU6fcXE0
なるほど、コメントは別に分けた方がいいですか
次回からそうします
あらすじは…うん、そのうち…
ぼやけた感じでいいんです、イメージというかキャラクターに関しては描写してませんし
描写してるのは建物と状況くらい?
403本当にあった怖い名無し:2010/03/05(金) 02:34:20 ID:drXQFz4Z0
以前も似たようなことを言われてたけど、変える気はないんじゃないか
書きたいだけで、読み手のことを考えられない人なんだろうね
別に金払って読んでるわけじゃないし構わないけど
そもそもまともに読んでないから>>401で初めて気がついた
チラ裏みたいなもんだし好きに書けばいいじゃん
404401:2010/03/06(土) 00:15:35 ID:HiLk7Gvb0
もちろん好きに書いてもらったほうが良いと思います。
読んでるだけの私が偉そうに言えることでもないし、それぞれが「こうしないとダメ」とか言ってたらキリが無いですから。
まぁそれでも、読んでみてどう感じたかを書き込んだほうが参考になるかなと思ったので、独り言として書き込んでみますた。
あと、別に指摘した点が変わらなかったり無視されたとしても、同じことを指摘する書き込みはしませんのでご安心をw
では、各作品の続きをwktkしてまする。
405empty ◆n/BGU9F4eo :2010/03/06(土) 01:48:42 ID:IHlxAEJl0
こういう書き方でやってみよう、というのが最初にあってやってるので
これが終わって次があるのなら普通に書きますよ
我乍ら何でこんな書き方してるのかと疑問に思うことがありますし、それに結構やり辛いので
やっぱ縛りなんてするもんじゃないです。なのでとっとと終わらせたいです。だからできるだけ早く終わらせます

そういうのは本当に参考になるので指摘して頂いた方がありがたいですよ
まぁ、つまんないだろうし適当に飛ばして下さいw
406まこしろ ◆pAmJQGka6Q :2010/03/07(日) 01:24:40 ID:AIqUqfeX0

あれやこれやと考えるうちに、俺はいつも自宅に帰るときに使う、川沿いの県道に出た。

時間が時間だけに当然なのかもしれないが、あまりにも車が少ないことに気がついた。
やはり、「暴動」の影響なのだろうか・・・
普段は、いくら遅い時間と言え、結構な数の車とすれ違うのだが、今日はどうしたことか、まだ一台もすれ違わない。

ものすごくイヤな予感がしてきた。
まだ「暴動」はこの地域には波及していないはず・・・なのに、この様子は・・・?

どうせ対向車がいないのならと思い、ライトをハイビームに切り替えた。
相当、遠くまで照らしてくれる。

やがて、自宅までちょうど中間くらいに位置するコンビニの近くまでやってきた。
ここまで、相変わらず一台の車ともすれ違わなかった。

どうせ通る車もいなければ、取り締まる警察の姿も見当たらないのに、俺はコンビニの前の信号で停止した。

コンビにはいつもと変わらない様子で営業しているようだった。
この辺りはまだまだ平和なようだ。

信号が青に変わり、俺はウィンカーを出して交差点を右折した。
その先はしばらく長い直線が続くので、かなり先まで見通せる。
407まこしろ ◆pAmJQGka6Q :2010/03/07(日) 01:26:07 ID:AIqUqfeX0

曲がってすぐに、俺はかなり先のほうに赤灯が点灯しているのに気がついた。
ストレートが続く場所なので、途中に違反防止のためのダミーのパトカーが停められているのは知っていた。
しかし、それに付いている赤灯は点灯しないはずだ。
ということは、この先に見えるのは本物の緊急車両ということになる。

少し気になったが、この時間にパトカーがいるのも不思議なことではない。
せいぜいスピードを出しすぎないで通り過ぎればいいだろう。
そう考えて、俺は車を走らせた。

赤灯が近づいてくる。どうやらパトカーらしい。

やがて視界にはっきりとパトカーの姿を確認した瞬間、俺は本能的に緊張した。


何か違う……!


俺は助手席に置いてあるマシェットをシースから抜き、ダッシュボードに置いた。


できるだけ早く通り過ぎよう!
体が条件反射的に動き、アクセルを踏み込んだ。

パトカーの横を通過する。

俺は視界の後方に消えていこうとするパトカーを横目で追った。

そして、視線を前に戻したとき…………
408まこしろ ◆pAmJQGka6Q :2010/03/07(日) 01:27:23 ID:AIqUqfeX0
10
しまった!ぶつかる!

俺は瞬間的にハンドルを右に切った。

目の前に人が飛び出してきたのだ!

タイヤが悲鳴を上げ、車は反対車線の縁石に向かって一直線に進んだ。

止まれ!!

俺はブレーキを思い切り踏んだ。
タイヤは完全にロック状態となり、コントロールを失った。

ゴンッと鈍い音を立てて、車は縁石にぶつかり停止した。

心臓がデスメタルバンドのドラマーよろしく、激しいツービートを刻んでいた。

幸い、飛び出してきた人を轢くことは避けられた。
車の方も、軽くヒットした程度なので、特に問題はなさそうだ。

俺はバックミラー越しに飛び出してきた「主」の姿を見た。


警察官…?まずいなあ…


ミラーに映っていたのは制服姿の人物であった。
409まこしろ ◆pAmJQGka6Q :2010/03/07(日) 01:28:32 ID:AIqUqfeX0
11
いくら飛び出してきたとは言え、相手は警察官。
臨時の検問でもやっていたのなら、公務中の警察官を轢く寸前だった俺に非がある。
何せ、一瞬ではあるが脇見運転をしていたのは確かなのだから。

何かしらの「小言」は言われるだろうと覚悟し、その「人物」がやってくるのを見守っていた。

しかし…

「警察官」の足取りはひどくゆっくりだった。
普通ならものすごい勢いで駆け寄ってきて、「降りろ!」くらいのことを言いそうなものだが・・・

ドン

俺はハッとした。
車のリアガラスを「彼」が叩いたらしい。

何で…?

俺は姿を確認しようと、後ろを振り返った。


刹那、俺の体は凍りついたように硬直した。

これまでに味わったことのない恐怖が、一瞬にして全身を包み込んだの感じた。
410本当にあった怖い名無し:2010/03/07(日) 03:15:30 ID:MhLgNEsD0
改行多すぎて読みづらい
あと単純におもしろくない
411プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/03/07(日) 16:43:16 ID:sigtYRRPP
デッド・サンライズ

(20)
少したって、いよいよマイケルがアンブロシアの研究に参入する日が来た。
アンブロシアについて今まで分かっている事を全て伝えるために、研修会が開かれる事になった。
研修会には、マイケル以外にも召集された研究者たちが集まっていた。
「あら、マイケル!
あなたもここにたどり着けたのね、ちょっと意外」
声をかけてきたのは、かつてマイケルと同じ研究室にいたエレンという女科学者だ。
若いうえにいつも華やかな格好をしているが、いかんせん遊び好きで男をとっかえひっかえしているような女なので、マイケルはあまり好きではなかった。
エレンは物珍しそうにマイケルを見ながら言った。
「あなた、家族とあのでっかい家はどうしたの?
あなたがきれいな奥さんと結婚して、別荘を建ててそこで暮らすようになったってのは聞いてたけど…まさかそれを捨てる勇気があったなんてね。
あなたは家族との日常に入り浸ってるうちに、家を最期まで離れられずに死んでんじゃないかと思ったわ」
相変わらず口の悪い女だ。
しかし…そうなりそうだったのは事実だ。
きっと娘の事がなければ、マイケルはエレンの言うとおりになっていただろう。
思えば、娘は自分の身を犠牲にして、マイケルと妻をここに導いてくれたのかもしれない。
マイケルの目に、涙がこみ上げてきた。
「ち、ちょっと、どうしたの!?
泣く事ないじゃない!」
予想だにしなかったマイケルの反応に、エレンがうろたえている。
マイケルはそっと涙を拭い、エレンの前ではっきりと宣言した。
「ああそうさ、私は君の言うとおりの日常好きな男だよ。
しかしな、その幸せな日常を、アンブロシアと食人病が奪っていったんだ!美しい妻が産んだかわいい娘もそれで死んだ!
私の大切なものを奪ったこの病を、私は決して許さないよ。
私はこの問題と徹底的に戦う、そう誓ったんだ!!」
マイケルがその言葉を終えたところで、ケリーが入ってきて研修が始まった。
412プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/03/07(日) 16:45:16 ID:sigtYRRPP
(21)
「皆、我がオリンポス社の緊急事態によく集まってくれた。
君たちがここにたどり着いてくれたこと、心から感謝する」
ケリーが形ばかりの短いあいさつを終え、資料を手に取った。
「すでに配布した資料にあるように、我が社の作り出した理想の冷媒アンブロシアは予想だにしなかった危機を引き起こした。
君たちがこの問題の性質をよく理解し、解決の力となることを望む」
マイケルもエレンも、真剣な研究者の顔になってうなずいた。
ケリーは少し水で喉を潤すと、アンブロシアと食人病について説明を始めた。

ケリー曰く、アンブロシアが食人病の原因であると断定されるには、相当な困難があったらしい。
異常な日焼けは数年前から、食人病は一年ちょっと前から発生していた。
まず異常な日焼けの段階で、アンブロシアに疑惑がかかった。
とあるゴシップ誌がアンブロシアの普及と異常な日焼けを関連付けた記事を流し、一部の疫学者たちがそれを見て騒ぎ出したのだ。
無論、最初は会社も相手にしなかった。
しかし、時間が経つにつれて異常な日焼けの患者が増え、人々の間に不安が広がり始めた。
会社はその不安を解消するため、しぶしぶアンブロシアの安全性を調べ始めた。
そこで奇妙なことが起こった。
異常な日焼けがアンブロシアで起こるかどうか調べるため、毛のないマウスをアンブロシアの有無だけが異なる二つのケージに分けて飼育する実験を行ったところ…両方に異常な日焼けがみられたのだ。
この結果は一応、アンブロシアが無実である証拠と位置づけられた。
しかし研究者たちは首をかしげた。
アンブロシアが原因でなければ、一体なぜ…?
その疑惑は、アンブロシアの普及によって解体された古い家電から放出されたフロンガスに向けられた。
ところが、その説もすぐに否定された。
フロンガスのせいで紫外線が強まったなら、まず白人に多大な被害が出るはずだ。しかし今回の異常な日焼けはむしろ、紫外線に強いはずの黒人に大きな被害が出ている。
常識では考えられない、謎だらけの事態だった。
413プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/03/07(日) 16:46:47 ID:sigtYRRPP
(22)
解決の糸口になったのは、太陽光を分析している宇宙工学のグループだった。
オリンポス社の宇宙工学グループが、太陽光の中にある波長の光が急に増えた事に気づいて、もしやと思って上層部に報告したのだ。
最初は機械の故障かと思ったが、いくら測り直しても機械を変えてもそうなるので、怖くなって報告したのだという。
その波長の光を毛のないマウスに当てると…見事、異常な日焼けを発症した。
が、その結果が世に出される事はなかった。
太陽光が原因だなどと公表したら、間違いなく世の中は混乱する。
それに、太陽光を変化させたのがアンブロシアであったら…。
嫌な予感は的中してしまった。
アンブロシアに紫外線を照射すると、例の有害な波長の光が発生したのだ。
アンブロシアは確かにオゾン層を破壊しないし、温暖化も起こさない。
ただ、放出されると成層圏の、オゾン層のさらに上まで上っていき、そこで紫外線を吸収して有害な光を出していたのだ。
そこまで分かった時にはすでに、食人病が発生していた。
死体が歩き、人を食べる…アフリカの一部ではすでに、混乱が起きていた。
オリンポス社はそれを知るや、全力で情報統制を始めた。
セキュリティ部門の兵士たちをアフリカに送る一方、アンブロシア関係の研究員に緊急召集をかけて解決策を求めた。
しかし、情報を漏らさぬように少人数に絞ったため、研究は遅々として進まなかった。
食人病の病因発見は、他の民間の医師に先取りされてしまった。
それでもオリンポス社はどうにかしてその医師を買収し、なぜ食人病の症状が起こるのかを聞きだした。
そこまで話すと、ケリーはふーっと長い息をついた。
「さて、一番重要なのはここからだ。
恐ろしい話だが、逃げる術はないと思いたまえ」
マイケルとエレンの喉がごくりと鳴った。
ケリーは単語の一つ一つをなぞるように、ぞっとするほど聞きやすい口調で言った。
「食人病の本質、それはがんの一種だ」
414プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/03/07(日) 16:48:19 ID:sigtYRRPP
(23)
とたんに、研修室内にどよめきが広がった。
「ちょっと待て、がんでそんな症状が出るなんて聞いた事がないぞ!」
「確かに生きて狂うなら説明がつくけどな、死んでも動くんだぞ!!」
反論したのは、生物学系の研究室にいた者たちだ。
だがケリーには、それも予測の範囲内だったようだ。
ケリーは淡々と彼らを黙らせ、また説明を始めた。
「おいおまえら、分かっているのか?
今、現実に死人が動いているんだぞ。
これは未だかつてない危機なんだ、今までの常識にすがって解決できる問題じゃないんだ。不可能という考えは今すぐ捨てろ」

食人病の病因が突き止められたのは、病理学的な…顕微鏡で異形の細胞を探す検査によるものだった。
患者の組織から、共通の性質を持つ異常細胞が発見されたのだ。
その細胞は、遺伝子的には人体由来のものだった。
ある種の白血球のように、アメーバのように動き回る。
酸素を必要としない、嫌気的な代謝を得意とする。
そしてそれらは分裂ではなく、他の細胞に自分の遺伝子を注入し、仲間に引き込むことで数を増やしていく。
同時に周囲の細胞を腐らせ、正常な働きを失わせる。
何より恐ろしいのは…それらの異常細胞は数が増えると神経のネットワークを利用して共同体を作り、人間の脳を乗っ取ってしまうのだ。
あたかも、別の生物が寄生しているかのように。
つまり食人病とは、死んだ人間の体をその異常細胞の共同体が操っている状態なのだ。
いわば、がんに乗っ取られた状態だ。
そしてその異常細胞を他人に送り込んで仲間を増やすために、患者は人を噛む。
肉を食うのは、中途半端に残った人間の本能によるものだ。
それがこれまでに分かった、食人病の大まかなしくみだ。
415本当にあった怖い名無し:2010/03/07(日) 21:10:58 ID:ofIVP7f3O
>>410

じゃあ、お前が書けよクズ
416まこしろ ◆pAmJQGka6Q :2010/03/08(月) 01:32:04 ID:kTejp7Io0
12
「彼」はすでに「人間」ではなかった。
そう、彼は「人間の形をした別のモノ」であった。

俺は慌てて車のドアをロックした。

「彼」は俺の車に寄りかかるようにヨロヨロと歩きながら、運転席の方へ近づいてくる。
そして、運転席のすぐ横にまでやってくると、まるで気の抜けたような加減で、サイドウィンドウを叩いた。

窓に乗せられた手の平がゆっくりと下ろされる。
窓ガラスには、べっとりと鮮血が塗りつけられていた。

ここまで広がってるんじゃないか・・・!

俺は眼前にある自分の危機よりも、報道や自分の予想以上に「暴動」が広がっていることに恐怖した。この様子では自宅のある地域にも・・・

俺は我に返り、車外の「モノ」を見た。
それは確かに警察官、いや「元」警察官だった。しかし、制服を着てはいるが、右襟から肩にかけてが大きく破れ、そこから真っ赤に血で染まった肌が露出していた。

俺は車のエンジンをかけるとギアをバックに入れた。
車は「彼」を振り払うように後退する。
「彼」はそれを阻止せんと手を伸ばすが、もちろん止められるはずがない。
そして、車を目的地の方角へ向けると、俺はアクセルを踏み込んだ。
417まこしろ ◆pAmJQGka6Q :2010/03/08(月) 01:35:20 ID:kTejp7Io0
13
車は軽くホイールスピンをしながら発進した。俺はバックミラーで「彼」の様子を見ながら、車を走らせた。
後方で、「彼」は恨めしそうに車を見ているようだった。

車を発進させて、数百メートルも進んだとき、俺はふとあることを思いついた。
制服警官で、腰のホルスターはそのままだった・・・ということは拳銃を持っているはずだ・・・!
家に戻れば、とりあえずある程度の安全は確保される。
それに、嫁さんに「何でそんなモノ買うの!」と言われながらも買ってしまったクロスボウがある。矢も50本くらいあるはずだ。(嫁さんが勝手に処分していなければ…)
しかし、銃に勝る飛び道具はない。今の状況がいつまで続くかわからないなら、家族を守るために「武器」は確保したい…!
俺は考えるが早いか、ブレーキを踏むと、車を「彼」の方へ向けて方向転換した。

「彼」は諦めきれないのか、ヨロヨロとした足取りで車の後を追いかけてきていた。
ライトに映し出される姿。
確かに「人の形」をしているが、それはすでに「人」ではない。

俺は車を加速させ、「彼」に向かっていった。
正面からぶつかると、衝撃でフロントウィンドウを割ってしまうかもしれない。
トドメはマシェットで刺せばいい。
あいつの動きを止めるんだ・・・!
俺はこの後の事の運びを考えていた。我ながら恐ろしいくらいに冷静だ。

「彼」は車のほぼ真正面にいた。
俺はハンドルを少し切って、車の位置を正面からずらした。

ボゴ!

鈍い音とともに衝撃が伝わる。
ミラーを見ると、「彼」は衝突の勢いで、路肩付近まで吹き飛ばされていた。
418まこしろ ◆pAmJQGka6Q :2010/03/08(月) 01:39:43 ID:kTejp7Io0
14
もしかしたら、俺はとんでもないことをしたかも・・・

路肩に転がる「彼」の姿を見て、一瞬、そう思った。もしかしたら、「彼」は俺の考えるような存在ではなく、ただの怪我をした警察官だったのかもしれない。

その心配は無用のものであることはすぐにわかった。
いくら、正面を避けて接触したとはいえ、その衝撃はすさまじいはず。普通であれば、その場から動くことなどはできない。
ところが「彼」はゆっくりと立ち上がろうとしている。
苦しそうに立ち上がるのではなく、ただ、体の動きが鈍いがために動作がゆっくりであることは、すぐに理解できた。

俺は木刀とマシェットを手に取ると、意を決して車のドアを開け、車外へ出た。
興奮状態の火照った体に、冷えた外の空気が心地よくさえ感じた。

俺は周囲を見渡し、他に誰もいないことを確認すると、「彼」の方へゆっくりと近づいて行った。
419まこしろ ◆pAmJQGka6Q :2010/03/08(月) 01:47:06 ID:kTejp7Io0
>>383
以前にスレで書かせていただいていました。性懲りもなく、また書かせていただいています。
今回も同じような話になってしまうかもしれませんが、よろしくお付き合いください。


>>410
久しぶりなので、最近の流れがわからないところもありますので、もう少しお付き合いいただければと思います。
あまり評判がよろしくないようなら、取りやめますが・・・

>>415
どうか、あまりケンカ腰になられないでください。
私の投稿でスレが荒れてしまうようでしたら、控えますので。
すいません。
420本当にあった怖い名無し:2010/03/08(月) 02:00:16 ID:rXg8zgd30
何はともあれ乙。
421383:2010/03/08(月) 18:33:55 ID:z1f9eiox0
>>419
おお! 戻ってきてくれる作者さんがいるとは!
とりあえず投下乙でした。
しかしご存知とは思いますが、評判が良くなければor荒れるなら止めると書くのはイクナイと思います。
投下を止めさせて、他の人が楽しむのを邪魔したり、その反応を楽しもうという不届き者がいれば逆効果というものです。
なまじ良い感想を書き続けて荒らしが出ても困ると思っているので、あまり感想を書けませんが続きを楽しみにしています。
422ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/09(火) 21:56:08 ID:eGVTU1g40
黙示録か与太話か

18

室内着から、身軽な外出用の衣服に着替える。暴徒との至近距離での遭遇も想定して
知り合いが昔寄越した刃渡り40センチほどのサバイバルナイフを専用のベルトで右太ももに装備した。
そこで、ナイフの元持ち主はどうしているだろうかと思考する。
ご丁寧に装備用の道具まで寄越した相手の年齢を、当時から計算して、思考するのをやめた。
今は、既に土と同化して久しいだろうし、もしかしたら土の中から這い出しているかもしれない。
あまり、楽しくない思考をすぐに打ち消したのだ。
完全に趣味のオーダーメイドで作ったお気に入りのロングブーツを鳴らして、部屋を出た。

車で移動中に、太陽は完全に沈んでしまった。
テレビ報道や情報が致命的に遅いために、逃げ出そうとする人々が極端に少ないのか、みつる達は
高速で移動している。今は幸いだが、事の絶望感をひしひしと感じる。
「このペースですと、3時間かかることは無いでしょう」
運転手が呟いた。みつるは規則正しく流れていくオレンジの光を見やりながらそれを聞いて
小さく溜息をついた。
「日本人って・・・・」

長らく平和だった弊害がこんな形で仇になるとは・・・・。
暗鬱な気分は、暫く晴れそうになかった。
423ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/09(火) 21:59:01 ID:eGVTU1g40
黙示録か与太話か

19

切欠は何だったのだろう?地獄が始まったのは、どうしてだろう?
地獄が始まった日から、思考が灰色のようだと、義明は感じていた。妹の凛子の無事が確認できても
その色は変わらない。救助が来るといっても・・・一片の色彩も戻らない。
ただ、義務的に体は動いた。救助が来る事を皆に知らせないと。
きっと皆喜ぶ。地獄から助かると喜んでくれるだろう・・・・。そう思って、はたと・・、
義明は気付いた。自分が絶望しているのだと。希望が見出せない。けれども化け者達に殺されたくは
ない。生きながら内臓を引きずり出されて、目玉を抉られて、喉を食い破られるまで叫び続ける・・。
そんな死に方は絶対にしたくなかった。
ずっと脳裏に耳に焼きついた人々の最期の場面。恋人が襲われて助けを求めて伸ばした手を・・・・・
掴めなかった。
終わらない。地獄は終わらない・・・。
義明は灰色に染まっていく自分を感じながらも、知らせを携えて、共に逃げてきた人たちが
休憩している場所に歩みを進める。
皆疲れきっていて、眠っているかもしれないが、早く知らせるべきだと、義明は動いた。

片田舎の、廃業寸前で住民から忘れられていたかのような古びたショッピングセンターに一応の
安全と安息を得た。義明は一人で必死に逃げている時に、二家族と出会い、道行きを一緒にするように

なった。
逃げ回るうちに、他にカップルや友達同士で逃げていた人々とも出会い、共に行動するようになった。
命からがら逃げる道中で出会った皆、生存者の出会いに救われた表情を見せていた。

食糧確保と安息を求めて、ショッピングセンターへ逃げ込んだのだが、化け物たちは対処できる
ほんの僅かしか内部に居なかったことや、生存者の先客が居なくて、争いにならなかったのは、
奇跡に近い幸運だった。
424ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/09(火) 23:18:33 ID:eGVTU1g40
↑文面おかしな所、訂正し忘れていました。失礼しました。

ゾンビ難しいですね・・・。
四苦八苦してたら、ゾンビの登場が無い・・・・。

黙示録か与太話か

20

「ゾンビに食われて、ゾンビになるんだよ」
友達同士で逃げていた高校生が呟いていた。化け物たちを「ゾンビ」と呼んでいるのに、義明は
妙な印象を抱いた。鮮明に自分の中に残っている。
フィクションの名称を現実の出来事の渦中にあるモノにつけるという行為に現実感が些か薄れたのだ。
けれど、ゾンビを映画やゲームなどで知る人は、義明が化け物と思い呼ぶものをそう呼んでいた。

死は永遠ではないのか?
死者が蘇るというのは、生き返るとは違うのか?
死んで起き上がり、生者を襲い食らうのは、生き返るとは違う。蘇るとも違う。
あれは、別の何かだ。化け物だ。化け物の名前をゾンビと言うのか?
義明は答えのない、どうでもいい思考を始終繰り返しながら、逃げてきた。
このまま、どんどん人間が襲われて化け物になっていったら、人間は居なくなってしまう。
こんな終焉・・・・。
いっそ戦争で、核爆弾を落とされた方がマシな死に方が出来るものではないのか。

思考をめぐらせる度に、肉体的疲労とは違う、嫌な重みが全身を覆う。
重い腕をゆっくりと伸ばして、皆の休んでいるスタッフルームのドアを押し開いた。

その動作が、外に溢れる化け物たちの動きを髣髴とさせ、頭のどこかが悲鳴を上げたのを
義明は聞かなかったフリをした。
425プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/03/10(水) 20:24:02 ID:cqPJL31HP
今日を逃すと三連休まで投下できそうにないので、
間に合ってよかったです。
426プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/03/10(水) 20:26:09 ID:cqPJL31HP
デッド・サンライズ

(24)
ケリーが一息ついて水を口にすると、研究者の一人が手を挙げた。
「なるほど、概要は分かりました。
しかし本質ががんであれば、抗がん剤が効くのでは?」
すると、先程ケリーに叱られた生物学系の研究者たちが反論した。
「バカかおまえは、もう少し抗がん剤の事を勉強してから言え!
抗がん剤というのは、盛んに分裂する細胞を狙ってたたく薬なのだぞ。今回の異常細胞は分裂しないんだ、たたける訳がなかろう!
君も科学者なら、何でも名前で判断するのはよしたまえ」
「うむ、このことについては彼らの言うとおりだ。
治療法は別にある」
ケリーもその反論にうなずいた。
そうとも、この病は今までの常識が通じない病だ。
がんではあっても、抗がん剤で治療できる常識的ながんではない。
ケリーは資料の中から別の冊子を取り上げ、治療法について説明を始めた。

この病の治療法を見つけるのもまた、困難を極めた。
細菌やウイルスに効く薬はもちろん効果がない。
一部の医師がこの病を自己免疫疾患と誤診して、免疫を抑える薬やステロイドを用いたが、それはかえって病を急速に進行させた。
だが、人は失敗から学ぶものである。
免疫を弱める薬で悪化するなら、逆を行えばいいのだ。
そうして免疫増強剤を用いたところ…ある程度だが、異常細胞を減らすことができた。
異常細胞に唯一対抗できるのは、体内の異物を排除する人間の免疫系に他ならなかった。免疫が勝っているうちは、人は人のままでいられるのだ。
ケリーがマイケルに言った言葉も、これなら分かる。
すでに人として死を迎えてしまったら、免疫系が働かないので戦いようがないのだ。
そこが、今分かっている治療法の限界だった。
427プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/03/10(水) 20:27:16 ID:cqPJL31HP
(25)
治療法の話しが終わるころには、皆へとへとになっていた。
あまりに受け入れ難い事が多すぎる。
マイケルも覚悟はしていたが、これ程とは思わなかった。
隣にいるエレンはすでに、ポカンと口を開けて目が宙を泳いでいた。
しかし、そんな研究者たちに、ケリーはまたも衝撃的な言葉を浴びせた。
「さて、最期になるが、君たちの中に肌がただれていたりどうも頭が覚めない者はいるか?
もしいるなら、後で私のところに来たまえ。
すぐに免疫増強剤を打って治療を始めよう」
とたんに、部屋の中が爆発したように騒がしくなった。
女性の一人が、ヒステリックに叫ぶ。
「ちょっと待って、私たちがすでに感染してるっていうの!?」
「その通りだ」
ケリーがあっさり答えると、その女性は目を白黒させて首を横に振った。
「どうしてよ、私は患者に噛まれてなんかいないわ!」
「でも太陽の光を浴びただろう?」
ケリーの一言で、研修室内がしんと静まりかえった。
今の一言で分かってしまった。
食人病の原因となる異常細胞は、人体の細胞が特定の有害な光を浴びて発生するものだ。そしてその有害な光は、太陽光の届くところならどこにでも降り注いでいる。
つまり、異常細胞は太陽光を浴びた全員の体に発生しているのだ。
今はまだ免疫が勝っているせいで、顕著な症状が出ていないだけだ。
ここにいる全員が…いや、全世界の人類ほぼ全てが、すでに異常細胞にとりつかれているのだ。
さすがのマイケルも、これには吐き気を覚えた。
これでは、いつ誰がどこで発症してもおかしくないではないか。
敵はすでに、身内にも魔の手を伸ばしていたのだ。
文字通り、身の内に…。
思いっきり出鼻をくじかれた気分だった。
428プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/03/10(水) 20:28:39 ID:cqPJL31HP
(26)
「もう質問はないか?
なければ研修を終了するぞ」
ケリーが資料を片付けながら、部屋の中を見回して言う。
マイケルはすかさず手を挙げた。
「一つ教えてくれ!
我々がすでに全員病原体を持っていることは分かった。しかし、それならば脳を破壊して動かなくなった死体を焼く必要がどこにある!?
納得のいく説明を願う」
娘のことだ。
マイケルはそう信心深い訳ではないが、娘の体を灰にされて平気なほどではない。
それに世の中には、もっと信心深い人が山ほどいるのだ。
彼らでも納得できるような理由を、示してほしかった。
「いい質問だ、マイケル」
ケリーは片付けかけたマジックを再び取り出し、ホワイトボードに何かを書き始めた。黒い人形と、その周りを囲むようにして白い人形を書いていく。
「これは墓場に埋葬された死体、そして真ん中の黒いのが食人病患者の死体だ。
脳を破壊したり首を切ったりして動かなくなった患者の体内でも、異常細胞はしばらく生きている。それを他の死体と一緒に埋めるとな…」
ケリーは黒い人形から白い人形に向かって、放射状に広がる矢印を書いた。
「異常細胞はそれ自体がアメーバのように動く。
患者の死体から土に染み出した異常細胞が、他の死体を汚染していくんだ。
死体の保存状況によって、脳や神経の線維が残っていたら、異常細胞はそれを利用して死体を支配する。
つまり、どういうことかというと…」
想像したとたん、マイケルは背中に鳥肌が立った。
「墓から、別の死体が起き上がる…!」
エレンが震える声でつぶやいた。
「分かったか、これが患者の死体を埋めずに焼く理由だ。
君たちも大切な者が死んだ時、焼かれたくないからと勝手に埋めたりしないように!」
ケリーはその注意を最後に、研修を終了した。
マイケルたちはもう、グウの音も出なかった。
429本当にあった怖い名無し:2010/03/12(金) 17:11:11 ID:pXwMaFZ/0
作家の皆さん応援してます!
昔みたいに活気が出るといいなぁ
430ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/13(土) 18:19:26 ID:lsgUeBBT0
俺の兄ちゃん1 ◆調子悪く、ちょっと気分転換に・・・・◆

俺がまだチビジャリの頃の話だ。なんかさ俺はあまり覚えてないんだがゾンビが出たんだわ。
同年代の奴なら知ってるよな?てか俺らの親次世代とか、マジでその頃の話はしたがらない。
今でも原因不明らしいけど、ゾンビが溢れて人が沢山死んで。未だに行方不明者が数千人だもんな。
人災なのか天災なのかも、未だに分からない。
ま、難しい話じゃなくってさ、俺の兄貴の話しを聞いてもらおうと思ってさ。
俺より十年上の兄貴が居たんだよ。

あの頃の出来事は、俺は親父に抱えられて逃げてた記憶とかしかないんだが、6歳の頃だったか。
俺の兄ちゃんが16歳で、多分もうすぐ17歳の誕生日だったと思う。家から離れた遠くの
高校に通うってんで、一人暮らししてたんだよ。誕生日には帰って家族で祝おうって
当時、兄ちゃんの事大好きだった俺はさ、後何回寝たら兄ちゃん帰ってくる?なんて
毎日お袋とか親父に聞いてた。

でも、その直前にさ、アレが起こって。お袋は、死んだ。

家がゾンビに襲われてだな。お袋食われたんだよ。親父は俺を抱えて、まだ叫んでるお袋見捨てて
逃げたんだよ。親父はだから、あの出来事をまだ消化し切れてない。俺は感謝してるんだ。
親父の咄嗟の判断が無かったら、きっと今此処に俺は居ないだろうし。
逃げて、何処行ったのかな?なんか避難所とかあったけど、もうゾンビに襲われて
壊滅状態なのよ。
俺はお袋呼んだり兄ちゃん呼んだりして泣くだろ?親父もチビジャリ抱えて命の危険でストレスで
ギリギリ状態。兄ちゃん・・兄貴の呼び方がごっちゃだな。兄ちゃんで統一するわ。
兄ちゃんの安否もわからんしさ。親父的には泣きたいのは自分だったろうな。
お袋も死んじゃったしさ。
431ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/13(土) 18:22:04 ID:lsgUeBBT0
俺の兄ちゃん2 ◆改めて表現の難しさを感じてます・・・・。◆

俺の印象的に、なんか物陰に隠れながら移動して、もう一度家に何日かかけて戻ったと思うんだ。
物凄くおぼろげなんだよその辺は。
でも、家には帰ってきた。家の中にはゾンビは居なかった。
兄ちゃんが帰ってきてたんだよ。コレだけははっきり覚えてる。
家の中の、お袋を食った連中を兄貴が退治してた。家に帰ってきた俺たちを出迎えた兄貴の
その時の姿が、トラウマになってる。

「コレ、奴ら認識しねぇんだw」

って何処で手に入れたか知らんが、つぶらな瞳のリスのキグルミで片手バッドに、片手シャベル。
二刀流で、本来なら明るい茶色と言うか黄色と言うか、リス色なんだろうがさ
頭っから血と肉片まみれ。
家の中を片付けて、お袋を狭い庭で焼いて僅かな骨だけ拾って保管してた。
大好きだった兄ちゃん。大人になった今なら想像できるし分かる。大きなキグルミが全身血まみれで
バットもシャベルも同じで。一人暮らししているところから、歩いて家に帰ってきた。

兄ちゃん。
ああ、兄ちゃん。相当酷い状態だったと思う。
状況もだけど、兄ちゃんの心がさ。それから変わりばんこで兄ちゃんと親父がきぐるみで
食料調達に出かけたりして、事態が収拾するまで家族三人で、自宅で生きてた。
でも、兄ちゃんはちょっとずつ壊れてきてたんだな。相変わらず、優しい大好きな兄ちゃんだったよ。
でも、壊れてきててもそれを隠して、凄い苦しんでたんだろうな。
兄ちゃんさ、その精神的なストレスで本当に頭がおかしくなって、しかもガンになんちゃってさ。

生活が元通りになって、やっと普通に生きられるようになって、余裕が生まれたときに
兄ちゃん倒れてさ。そのまま緊急入院。手の施しようが無かったって。
でも兄ちゃんは、頭おかしくなって、たまに俺とか親父も分からなくなってたけど
根性はあってさ。
余命半年無いって言われてたんだよ。なのに、8年生き延びたんだよ。
さっき、荼毘に付してきた。
432ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/13(土) 18:23:38 ID:lsgUeBBT0
俺の兄ちゃん3 ◆なんちゃって物書きの癖に、スランプかも・・?◆

なんか、何が話したかったか分からなくなってしまったな。
兄貴のこと書きたかったんだよ。大好きだった。
もう最近では、完全に精神崩壊しててさガンの痛みで錯乱して、誰彼ともになく襲い掛かろうとしてた。
親父は面会をもうしなくなってた。モルヒネも効かなくなってたし・・・・。
最期はさ、誰も立ち会えなかったんだよ。死に目に会えなかった。
錯乱した兄ちゃんさ、看護師さんを襲って、腕に噛み付いたらしい。そんで暴れて暴れてして
病室の窓から落ちて死んじゃったんだよ。
自殺なのか事故死なのか・・。俺は事故死って思いたい。兄ちゃん8年も頑張ってきたんだから。
お袋がゾンビに食われて、多分ゾンビになって、帰宅した兄ちゃんが殺したんだと思う。
兄ちゃん体だけじゃなくって、心も苦しかったのだろうな。
おれ、あの頃の兄ちゃんの歳に近くなったけど、兄ちゃんみたいな事出来無いよ。

大好きだった兄ちゃん。

最後に会ったのは、三日前。
動いてたのに。もう頭がおかしくなってて、言葉とか話せなかったんだけどさ。
俺が行くと笑ってくれてたんだよ。がりがりに痩せて、がいこつみたいだったけど。
すぐに錯乱しちゃったけど・・・・。
ビルの5階から落ちて頭蓋骨骨折と脳挫傷と全身打撲でほぼ即死。損傷が激しいから
お棺が開けられることはなかったよ。

それがとても残念で成らない。最後に会った兄ちゃんは、生気がなくてもうなんだか
ゾンビのようで・・・・。怖かったから。


END
433本当にあった怖い名無し:2010/03/14(日) 18:50:43 ID:8eCb0ciu0
これは面白い!
434本当にあった怖い名無し:2010/03/15(月) 05:13:03 ID:II3LKyLy0
お前なに食ってもうまいって言うタイプだろ
435本当にあった怖い名無し:2010/03/15(月) 22:02:24 ID:cw7rypyp0
お前人が喜んでると貶したくなるタイプだろ
436本当にあった怖い名無し:2010/03/16(火) 00:20:13 ID:zqQd0ztt0
>「コレ、奴ら認識しねぇんだw」
>って何処で手に入れたか知らんが、つぶらな瞳のリスのキグルミ
神坂一のスレイヤーズ以前に、このネタってあるの?
437本当にあった怖い名無し:2010/03/16(火) 04:17:55 ID:zwtVrMob0
最後のオチさえ言わなければなー
438本当にあった怖い名無し:2010/03/16(火) 22:12:48 ID:MepUt9UGP
ほしゅ
見に来るたびDATギリギリな件
439ポメラニャ:2010/03/17(水) 11:33:42 ID:m/1rXQEu0
久々に

前スレか前々スレの552より
「進藤、ドア閉めとけ」
警官の男はゾンビの死亡を確認すると、普段よりも少し優しく聞こえる声で言いながらカウンターをまたぎ、ため息とともにイスへ腰を下ろした。
「大丈夫か?」
卓がわずかに肩を震わせている親友へ言葉をかける。
「あ、ああ、見ての通りどこも噛まれちゃいねーよ」
ドアを閉め、振り返りながら発せられた進藤の声はいつものごとく軽いものだったが、顔は若干ひきつっていた。
「卓の声がなかったら危なかったけどな」
「おお、感謝せぇよ」
軽口をたたき、軽く笑い合う。
「いい蹴りだった。お前ら何かやってるのか?」
警官の男がグロックの予備マガジンへ弾丸を詰め込みながら問う。
「はい、合気拳法です」
「合気拳法・・・じゃあ、打撃は空手式か」
卓はマイナーな武道なのに男がそれを知っていることを驚いた。男が続ける。
「役には立つと思うが、顔面へ攻撃するときは気をつけろよ、折れた歯が刺さりでもしたらもうアウトだからな」
会話しつつも目線は手の銃に注いでいた男はイスから立ち上がって、弾のこめられたマガジンを上着のポケットにつっこみ、グロックをホルスターに収めて、長物がかけられている壁へ向った。
440本当にあった怖い名無し:2010/03/18(木) 07:16:32 ID:H39cK4gJ0
んなモン誰も覚えてねーっつの
せめてあらすじくらい書けよ
441本当にあった怖い名無し:2010/03/19(金) 00:46:13 ID:yMfamcAM0
あらすじ
機会平等による個人主義国家の連合体「ニシガワ」と、結果平等的全体主義国家の連合体「ヒガシガワ」の政治的対立は高まり、その軍事的緊張感は一触即発状態だった。
おりしも、「ニシガワ」の近くの島国が「ヒガシガワ」のミサイル基地となったとき、ついに戦の幕は切って落とされた。
それは、徹底的な絶滅戦であった。
互いに、世界を構成する4力(強い力・弱い力・重力・電磁力)の一つを駆使し、その余波で文明と既存社会は崩壊した。
しかし、人類は生きていた。
バイクに跨り、髪の毛をモヒカンに狩り、水と食料を求めて、より弱い者達から略奪する存在になり下がった。
これは、そんな時代のお話である。
442本当にあった怖い名無し:2010/03/19(金) 00:50:20 ID:jHdX4V9M0
ガンダムでねーのかよ!ふざけんな!
443本当にあった怖い名無し:2010/03/19(金) 07:08:57 ID:tb2jwk320
このスレ的に、デビルガンダムならばあるいは……
444本当にあった怖い名無し:2010/03/19(金) 18:25:23 ID:nsVzb4w/0
さすが大学の春休み中盤
一気に暇持て余した変なの沸いてきたな
445本当にあった怖い名無し:2010/03/19(金) 22:40:13 ID:tb2jwk320
失礼な!
私が暇持て余して変なのは、大学の春休み中盤とは関係ないっ!
446ポメラニャ:2010/03/19(金) 22:42:46 ID:DT86Jv+S0


ゲルティナンド・鬼島は人を殺したことがある。

ゲルティナンドの父、グリゴリーは、ロシアで5本の指に入ると言われたほどの格闘家で、ゲルティナンドはその父から武術を学んだ。
サンボ、柔道、ボクシング、着衣総合格闘技、実戦護身術、
色々教わったが、最も才能を発揮したのは柔道だった。
ゲルティナンドは今でも覚えている。
初めて背負い投げを教ってから4日後、10歳の時、当時45キロだった自分が100キロを越える父を畳へと投げ落とした瞬間の高揚感、
唐突に背の父からうける重圧が0になったかのような錯覚をうけたつかのまの爽快感を。
その日彼は背負いを極めることを決意し、それから毎日技の練習を怠ることはなかった。
そして4年後。ゲルティナンドが中学2年生のとき、彼の周りで、彼と実力で並ぶことのできる学生はいなくなっていた。
その頃から彼は、道場外の武道家、格闘家にルールなしの試合、いわゆる立会いを挑むようになった。
成人、身長差20cm以上、複数、武器持ち、相手が有利な状況で様々な敵と戦ったが、ゲルティナンドが負けることはなかった。

その日ゲルティナンドは、道場帰りの成人男性に立会いを申し込んだ。
その男は地方では有名な拳法家であり、前々からゲルティナンドがマークしていた武道家だった。
両者が構えをとってから半秒後、生まれて初めてゲルティナンドは何のフェイントも、仕掛けも無い鳩尾への突きを許し、路上へ倒れこんだ。
胃の中からこみ上げてくるものを感じながらゲルティナンドの頭に他流試合ではじめての敗北という文字が浮かび、アドレナリンと天才のプライドが彼の体を一瞬のうちに支配した。
男が野太く、それでいて爽やかな声で笑いながら「もうちょい強くなったらまた相手してやるよ」
と言い残し踵を返した瞬間、ゲルティナンドは無音で立ち上がり、男に組み付いた、口から涎をたらし、目を剥きながら、さながらゾンビのように男を怪力でもって揺さぶり、
不完全な姿勢で、男の背後から渾身の裏投げをもって男の体を頭からアスファルトに投てきした時、何かが潰れる音がして、男は死んでいた。
447ポメラニャ:2010/03/19(金) 22:43:54 ID:DT86Jv+S0
ちょ>>441は別人ですので

すいません最初から書きます

続き
あれから3年後、今ゲルティナンドは、あの時と同じ感触を味わっている。
道を歩いていたらいきなり老人に組み付かれ、喉笛に食らいつかれそうになり、突き放そうと殴ったが全く効かず、急所を攻撃しても離れなかったので投げたのだ。
老人の頭はコンクリートとの接触によってひしゃげており、頭蓋骨は完全に割れていた。ひどい腐敗臭もする。
ゲルティナンドはその時理解した。この老人が人間ではないと、そして気づいた、老人と同じ臭いが自分の周りから彼を包み込むかのように接近していることを。
――――殺してもかまわないだろう。
深く考えず、恐怖も感じず、ゲルティナンドの頭はそう判断した。
そして視界の中にゆったりとした速度でボロボロの老人が入り込むと同時に全速力で近寄り、両足で何万回と繰り返してきた背負い投げのステップを踏む。
左手で袖を掴むが、引かず、全力で頭から地へ落とした。
またあの感覚。
老人たちは彼を殺そうと次々と歩み寄ってくるが、
ゲルティナンドはユカイだった。
448ポメラニャ:2010/03/21(日) 21:31:28 ID:YtgxHRLX0
こっちがメインの主人公です

高校合気拳法部に所属する少年、藤原 卓は眼前のサンドバックを一心不乱に攻めていた。
左半身で立ち、バックへワンツー、回し蹴り、スイングフックから密着、ひじ打ち、と打撃を叩き込んでいき、合気道の当て身技をたまにはさんでいく。
この鍛錬を卓は休憩をはさんですでに2時間ほど続けており、玉の汗が滝のように彼の頭を流れていた。
ここは、カシマデパート3階のスポーツジムにあるトレーニングルーム。
今日彼は合気拳法の鍛錬とストレス発散のためにここへ来ていた。後ろには同じ合気拳法部に所属する進藤 誠(しんどう まこと)が筋トレをしている。
「なぁ、そろそろ帰ろうぜ。俺腹減ったよ」
進藤が言いながらタオルで顔をぬぐう。
「ああ、そうだな」
卓はもう少し蹴りの練習をやっておきたかったが、意識すると自分も腹が減っていたことに気づき、左右の手にはめられたグローブと手袋をはずして顔と背の汗を拭いた。
2人で更衣室に入り、汗だくのシャツとタオル、グローブをカバンに入れ、新しいシャツと部のジャージを着てから廊下へ出る。
スパーツジムは大きく、更衣室から出口と受付のあるところまでそこそこ距離がある。
長い廊下を、灰色の絨毯を踏みながら2人は歩くが、他に人はみかけない。
「今日ちょっとおかしくね?ここだけじゃなくて、デパートは従業員以外ほとんど人いなかったし。俺今日はちょっと1階のドーナツ屋の姉ちゃんの顔見るのたのしみにしてたんだけど」
進藤が、長く茶色い髪をかき上げながら、拳法部1のイケメンと言われている端整な顔をしかめた。しかし顔とは対照的に声も口調も軽い。いつものことだが。
「たしかに、その従業員すら普段の3分の一くらいだったしな」
「なんか外ででかいイベントとかあったっけ?」
「なかったと思うけど・・・」
ふいに卓の言葉が途切れる。
「どした?」
進藤が聞いても答えない。前を向く卓の顔は凍りついていた。卓の視線の先をたどると。
このスポーツジムの受付カウンターに行き着いた。
両者が思わず息を飲む。
そこには中年の男がいた。手には銃―――グロック19。
449プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/03/22(月) 16:15:16 ID:FleLIzIKP
ポメラニャさん、復帰おめでとうございます!
スレが荒れ始めてからいなくなってしまって気になっていたので、
続きが読めるのは楽しみです。

自分も負けずに投下していきます。
450プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/03/22(月) 16:16:19 ID:FleLIzIKP
デッド・サンライズ

(27)
それから、マイケルたちはケリーと共に研究に打ち込んだ。
異常細胞と患者の検体は山ほどある。
手当たり次第に行われる実験に従事し、それぞれの結果について事細かに報告書を書き、夜間まで交代で働いた。
おかげで研究所からマンションの自室までは10分しかかからないのに、自室で妻と過ごす時間はずっと少なくなった。
娘を奪った病を研究していると言ったら、妻は一応納得してくれた。
が、次第に不平不満を漏らすようになった。
「ねえあなた、ここには何かのサークルはないの?
私、ひまでしょうがないのよ」
当然といえば当然のことだ。
ここはビジネスが目的の施設であって、余暇が目的ではない。
あるのは運動不足解消のためのスポーツクラブくらいで、妻が望むような華やかなカルチャー教室などある訳がない。
「ねえあなた、この部屋窓が開かないのよ。
私、たまにはお日様の光を浴びたいのに」
これも当然だ。
食人病の原因は太陽光なのだから、浴びてはいけないのだ。
さすがにこのことはマイケルも隠そうと思わず、アンブロシアとつながらない程度に事情を説明した。
それを聞いた妻は一時的に取り乱してなだめるのに手間取ったが、しばらくすると落ち着いてマイケルを応援してくれた。
「そういう事なら私も我慢するわ。
だからあなたもがんばって、お日様を元に戻してね!」
マイケルはさわやかな笑顔の下で、この上ない苦笑を浮かべていた。
応援してくれればくれるほど、真実を話すことなどできなくなっていく。
ここまで愛してくれている、それが裏返ることを思うと…。
しかしその間にも、事態は刻々と進行していた。
451プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/03/22(月) 16:17:53 ID:FleLIzIKP
(28)
オリンポス社は世界中から情報を得るため、集め得る限りの新聞を集めていた。
今やその紙面は、食人病からつながる記事で埋め尽くされていた。
<異常な日焼けで病院パンク!
軽症者はできるだけ日光に当たらないように自宅で療養を…>
こんなのはまだいい方だ。
<精神を冒す伝染病の恐れがあります。
全国で、意識がもうろうとして人を噛む病が多発しています。家の戸締りをしっかりして、不要不急の用事でみだりに外に出ないようにしてください>
これはよくできた誘導だ…と思ったら、我が社が流すように依頼したものだった。
しかし、時が経ち被害が拡大するにつれ、隠すのは難しくなる。
インターネットではすでに、ゾンビ説が主流になってしまっている。
そしてついに、この病の患者をゾンビと呼ぶメディアが現れだした。
<病などではない、これはゾンビだ!
本紙の記者によると、この病が広がり出した頃より、墓から死体が起き上がる現象が時々報告されている。
これらの死体から広がった病原体が…>
「ふーん、逆だけど確かに証明できるわねコレ」
この記事を読んだ時、エレンは興味深げにつぶやいた。
死体を動かすのは異常細胞なのだから、起き上がった死体からもそれは検出できる。
それに、ゾンビは元々墓から起き上がる死体のイメージがある。
ゾンビの先入観が少し古い世代なら、非常にうまくはまってしまう誤解答だ。
「いいわ、この記事…。
こういうふうに解釈してくれれば、アンブロシアが疑いの的から外れてくれるもの!」
上機嫌で去っていくエレンを、マイケルは呆れて見送った。
マイケルには分かる。
世の中の多くがゾンビを信じるという事は、外の事態はどれだけ進行しているか…すでに、ゾンビはごく身近な存在になりつつあるのだ。
そしてある日、会社はついに大きな決断を下した。
452プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/03/22(月) 16:19:11 ID:FleLIzIKP
(29)
その日はマイケルたち研究員だけではなく、事務員やセキュリティチームの面々を含めて、施設にいるほぼ全員が集められた。
巨大な講堂の壇上には、今までお目にかかったこともないような上役の者が立っていた。
上役は妙にあたふたとした様子で汗を拭うと、大声を張り上げて言った。
「諸君たちの努力には、心から感謝している。
しかし残念ながら、事態は我々の予想を超える速さで進行している。
もはやこのアメリカ合衆国も、引き返せぬ道を歩みつつある。
全土で食人病が発生し、死者は起き上がり人を食い散らかしている。我々は政府に死者に対応する法改正を促しているが、おそらく間に合わぬだろう。
そこで我々は、これより問題の解決より生存に全力を注ぐこととする!」
講堂のあちこちから、ため息が漏れた。
我々は、負けたのだ。
もう世界を救う事はできない、せめて自分たちだけでも生きられるだけ生き延びるのだ。
マイケルにも、こうなる予感はあった。
思えばマイケルがここに来た時点で、社会はすでに壊れ始めていた。
手をつけるのが、遅すぎたのだ。
娘の時と同じように。
そう思うと、マイケルは目頭が熱くなるのを感じた。
(ごめんよ、本当にごめんよ…!)
あれほど仇を討つを誓ったのに、結局何もできなかった自分が悔しくてならなかった。自分は父としても研究者としても、何とふがいないのだろうか。
顔を覆ったままのマイケルの耳に、上役の声が流れ込んでくる。
「これからは、物資の調達もままならなくなるだろう。
よって、何か欲しいものがあれば、数量を明確にしてとりまとめて注文するように。
そしてこれからは、許可なき外出を禁ずる。
もはや塀の外には、命の保障はない…」
それを聞いたとたん、マイケルの脳裏に妻の顔が浮かんだ。
そんな生活に、彼女は耐えられるのだろうか…。
せめて最後に一度、妻に楽しい時を過ごさせてやりたかった。
453プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/03/22(月) 16:21:50 ID:FleLIzIKP
(30)
上役の話が終わると、マイケルは真っ先に挙手して発言した。
「その最後の物資調達に、自分と妻も同行させてほしい!」
とたんに、講堂の至るところからヤジがとんだ。
「おい命知らず、死にに行く気かよ!」
「すすんで口減らしか、お?」
しかしマイケルはひるまなかった。
「聞け、この機会を逃したらもう二度と普通の買い物はできなくなるんだ。
我々は確かにアンブロシアを世に放った罪がある、だから自分が地下に閉じ込められる事は認めよう。しかし、妻には何の罪もない。
我々は我々の罪で、罪のない人間をも地下に閉じ込めてしまうのだぞ!
だからせめて、最後に一度楽しい思いをさせてやりたい!」
それを聞くと、多くの者は呆れたように笑い出した。
マイケルの提案は確かに、無謀な挑戦かもしれない。
それでもマイケルは、譲れなかった。
自分は未だに真実を明かせないまま、妻をだまし続けている。真実を明かすことで妻の愛を失うのが、怖くてたまらないのだ。
だが、せめて最後に妻の好きな買い物を思う存分させてやり、機嫌を良くしたところで打ち明ければ穏便に納得してもらえる気がした。
しかし、それはあくまでマイケルの事情だ。
他人には理解できるはずもない…と思っていたら、エレンが立ち上がった。
「どうせ行くなら、希望者をつのって行きたい人全員で行きましょ。
私もいろいろ欲しいものがあってね、どうせお金の価値がなくなるなら使い切ってやるわ!
もちろん行く人の生死は自己責任でいい。でもこれは、まだ生きているショッピングセンターがある今しかできない。大好きな酒やたばこも、これを逃すともう手に入らないかもね!」
悪魔だ、ここに悪魔がいる。
酒やたばこと聞いたとたん、何割かの目の色が変わった。
実際、人の心を動かす力は情に訴えるより欲に訴えた方が強いのだろう。エレンは本当にこうやって男を揺さぶるのがうまい。
かくしてマイケルたちは外出を許され、最後の買い物に出かけることになった。
454本当にあった怖い名無し:2010/03/22(月) 18:44:44 ID:q9lI1hhR0
投下、乙です
ショッピングセンターktkr
続きwktk          ←今ここ
455ポメラニャ:2010/03/22(月) 21:17:37 ID:tsGlpx0L0
>>449
覚えていてくれて光栄です ありがとうございます。
自分もがんばりますので盛り上げていきましょう

それだけならまだ、騒ぐほどの事じゃない。数年前から銃刀法が撤廃され、これみよがしに銃を持ち歩く輩が増えている。
しかし、男は手のモノを、自分へとよろめきながら歩いてくる、顔面を大量の血でぬらした老婆へと向けていた。トリガーに指もかかっている。
やばい、と卓が思った時進藤はすでに走り出していた。
休憩用のソファとテーブルへ大急ぎで向い、そこに置いてあった灰皿を右手で掴んでアンダースローで男へ投げる。
円形の灰皿は、回転しながら鈍い音とともに男の二の腕に命中し、銃口が右へとそれて放たれた弾丸は老婆に命中することなくジムの壁を削った。
驚いた顔の男が進藤の方を向く。
「おまえっ・・・」
しかし、何か言おうとした次の瞬間、男は血まみれの老婆に両肩を掴まれ、そのまま床に押し倒された。
「ぐっ、助けてくれ!」
男が叫ぶ。老婆は口から大量の唾液と血を垂れ流しながら口を男へと近づけていった。
噛みつこうと、している。
「おい、おっさんやばくねぇか?」
「でも助けていいのかこれ!?」
進藤と卓が男と老婆の1メートル半手前まで移動し議論する。老婆の力はよほど強いのか、男の両手は老婆の首にかかっているというのに顔面の全身は止まらない。
「早く、婆さんどけてくれぇっ!」
男のあまりにも切羽詰った声で2人の迷いは消し飛んだ。
卓が老婆を羽交い絞めにし、男から引き離そうとする、が、
「っ、すごい力だ・・・!」
老婆の体はほとんど動かなかった。進藤も急いで卓を手伝う。
ようやく自分から少し離れた老婆へ、男は倒れた姿勢から力いっぱい蹴りを放った。
衝撃を受けて老婆と一緒に卓と進藤まで床に尻餅をつく。
「何すんだおっさん!」
「いいからその婆さんから離れろ!死ぬぞ!」
456本当にあった怖い名無し:2010/03/24(水) 18:19:15 ID:ByG2cesU0
久し振りにのぞいてみた…

既にワードの上では完成してるけど
こっちで途中までしか投下してない奴があるのを思い出したw

しかし、あれからだいぶ賑わってきたな
457本当にあった怖い名無し:2010/03/25(木) 20:44:44 ID:+bmkZlY90
>>456
そういうのはいいから黙って続きを投下するんだ。
……そう言って欲しいんだろう? ああん?

ウソですお願いします。
458本当にあった怖い名無し:2010/03/26(金) 01:23:52 ID:5SjB0Yfo0
プリニーさんの小説が特におもろい
まさか外に出る展開になるとはw
459本当にあった怖い名無し:2010/03/26(金) 21:32:53 ID:bd6rsOqh0
通勤中、乗り換えのために電車を降りた瞬間ダッシュする。
周りの人たちも同じようにダッシュする。
最近、その瞬間に28日後を思い出しては一人でウケてしまう。ダッシュしながら。
460本当にあった怖い名無し:2010/03/27(土) 01:05:04 ID:ZYXwChSn0
いつもの自演ktkr
461本当にあった怖い名無し:2010/03/28(日) 01:51:40 ID:Y0d5eoI60
まさかも何も王道展開でしょうよ
462本当にあった怖い名無し:2010/03/28(日) 15:55:06 ID:F7Dort8N0
プリニーは自演歴があるから信用できない
463本当にあった怖い名無し:2010/03/28(日) 20:37:01 ID:T44suof80
下らん。
作品の善し悪しに人格は関係ない。
自演しようがしまいが面白いものは面白いし、つまらんものはつまらん。
464456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/28(日) 22:10:11 ID:xiacFfRf0
そんじゃあ
再投下してみるか…

みんな忘れてるだろうし
最初から投下するわ


まずはじめに
今回のは実験小説
 デッドライジングと同じ79人のキャラが出てくるのでわかりにくい
 主人公の主観視点だけで進む

ってことでよろ

465456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/28(日) 22:40:33 ID:xiacFfRf0
【人名】
主人公…主人公 
国松知事…?
木津孝允…行政法教授 くたびれた風貌 帝大卒
桜島栄子…首謀者
長尾明…ラグビー部主将 
朝霧進一…主人公の親友 クレー射撃部
島本洋介…サボリ屋
鷹取たつみ…医学部
夙川さくら…島本洋介の恋人
夙川英輔…さくらの父 開業医
夙川百恵…さくらの母 財閥令嬢
山科由香…夙川さくらの友達
吹田加奈子…教務 藤澤大学に6年勤務 
大住賢治…杜美津医専 地域看護方法論の先生 ベテラン
溝口鉄平…杜美津医専警備員。60歳超
立花怜子…司法書士
生瀬忠雄…弁護士
郡山貞也…夏目交通社 車掌
藤阪健吾…72歳
高槻守…烏丸県警 特殊隊員
長池勉…鳥丸第6小学校6−2
南矢代(みなみやよ)…夏目アイランドシティ高等学校3年B組
武田尾介…夏目アイランドシティ高等学校古典教師
相野宗助…通報受信センター勤務
並河大輔…藤阪の介護士
八木洋子…並河の同僚
466456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/28(日) 22:41:21 ID:xiacFfRf0
長谷智紀…陸上自衛隊
谷川貞治…徳光デパート職員
黒田庄…連続殺人犯
船戸栄子…夏目市立アイランドシティ図書館職員
大谷日丸…料理評論家
江住真紀…烏丸女子大学 英文学科在籍
星田英由…藤澤大学クレー射撃部部長
稲原純二…クレー射撃部部員
黒江来縁…籠城場所のオペレーター
守山幸助…ラグビー部 見回り部隊
石部太郎…ラグビー部 見回り部隊
志賀文義…ボクシング部 見回り部隊
堅田洋一…ボクシング部 見回り部隊
綾部たか子…出入り口監視
高津真理…出入り口監視
石原麻里子…出入り口監視
加茂三郎…主人公のゼミの先生
加古川清一郎…医学部教授
白浜浩一…医学部教授
南部(みなべ)祥太郎…医学部準教授
小泉大和…医学部助手
曽根竜夫…医学部助手
串本さなえ…医学部助手
椿春子…医学部助手
明石憲太…バスケ部主将
467456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/28(日) 22:42:07 ID:xiacFfRf0
長柄光太郎…藤澤大学院生
奈良京子…主人公のゼミ同級生
草津邦介…院生
今宮怜子…桜島の友人
矢野聖丸…アイカ交通バス運転手
竹原佳奈美…おばさん三人衆
中畑加奈子…おばさん三人衆
岡山静子…おばさん三人衆
神辺英一…サラリーマン
倉敷三郎…教師
常山いずえ…教師
瀬戸健也…町工場勤務
伊部達郎…派遣社員
林野ますみ…主婦
バラーク小浜…黒人
藤井毅…ファイナンシャルプランナー
桜井義則…ブルー 烏丸県警 ショッピングセンター前派出所勤務巡査長
塩屋清十郎…イエロー ショッピングセンター 館長
米原由紀夫…レッド 神父
岸部五郎…オレンジ 民間駐車監視員
長居英和…グリーン サッカー選手 
西宮いて子…ピンク 精神病患者
久宝寺優子…藤井の婚約者
船岡将…ゲームショップ店長
桂川弥子…上狛探偵事務所 助手
上狛月男…探偵
久米田寛…社会派コメンテイター
日根野草太…ショッピングセンター警備員
現79人 
468本当にあった怖い名無し:2010/03/28(日) 23:52:14 ID:vy6JhmaO0
ふと思ったんだが、このスレでの嫌がらせのやり方。
自分の考えたゾンビものの話の設定「だけ」を延々と書きまくる。
(下手すっと、ノート2〜3冊分になる)
でもって、本編の小説は「まだ書きかけ」と称して皆無。
469456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/29(月) 04:48:01 ID:KjmlugDm0
おれのことか?

ワード形式で完成してるけど
前回はリアルでゴダゴダであれだったが
実際、かなり面倒くさい
小説自体はこのスレのために書き下ろしたものだが
調子に乗りすぎたせいでかなり長くなってしまった
しかも、オカ板の5レス規制で一気に書き込めない…

ってことで
470本当にあった怖い名無し:2010/03/29(月) 04:53:20 ID:X2APogj+0
>>469
適当なロダにテキストファイルをうpするって手もあるぜ。

まあ無理強いはしないが。
471456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/29(月) 06:45:58 ID:KjmlugDm0
自分のHPにうpしようとおもったけど
まぁいいや
適当にタラタラうpっていくわ
文字数は58372文字…

-------------------------------------------------------

烏丸県夏目市 軌跡
  
1988年 4月 国松氏、夏目市市長に就任
1988年 8月 国松市長、アイランドシティ構想を立ち上げる
1989年 2月 烏丸大震災発生、震度7 死者7500人以上の大惨事に
1993年 3月 アイランドシティ完成
1998年 6月 夏目市、政令指定都市に認定
2007年 4月 国松氏、烏丸県知事に就任


472456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/29(月) 06:47:07 ID:KjmlugDm0
 アイランドシティは陸の孤島だ。
もともと海だった場所を埋め立ててできた人工島。
それゆえ連絡橋が一つしかないという欠点を抱えていた。
俺がいま、満員電車に揺られてるのはそういう理由があるからだ。
つまり、この橋を経由しないと出入りができないので本土からの通勤、
通学者は必ずこの電車に乗らないといけないのだ。
しかも、俺の場合は烏丸女子大学と授業の始業時間がほぼ同じため、
毎日電車は藤澤大学の学生と烏丸女子大学の学生で埋め尽くされる。
2時間目からの授業のときなどはさらに、アイランドシティに
お勤めのサラリーマンも乗り合わせるから乗車率が半端なく大きくなる。
相手が女子学生ということもあり痴漢に間違われないように毎朝神経を
すり減らさなくてはならない。
473456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/29(月) 06:48:53 ID:KjmlugDm0
もちろん『連絡橋』というだけあって、
この電車の頭上では道路も引かれしっかり車も走っていたが、
車を持ってない俺にとっては何の関係もないことだった。
そもそも自動車通学は学校で禁止されている。
アイランドシティは4つの区に分けられていて北区が空港エリア、
東区が住宅エリア、南区が商業エリア、西区が学校エリアになっている。
俺が向うのは西区にある、藤澤大学というごく平凡な大学だ。
隣接する建物には烏丸女子大学と杜美津医療専門学校がある。
大学組織としてはこの3つ、他に夏目アイランドシティ高等学校、
烏丸第5中学校、烏丸第6小学校などがある。これらの『学校』が
西区エリアに点在するわけだ。先ほど話した「アイランドシティ大橋」は
南区の商業エリアとつながっており、西区の学校エリアに行くには
電車が橋を渡った後も3駅ほど乗っていなければならない。
474本当にあった怖い名無し:2010/03/29(月) 18:52:53 ID:KjmlugDm0
夏目交通社のひくこの路線は12の駅があり、
そのうち11個がアイランドシティ内に存在する。
環状線のようにぐるっと各区域を周っている。
南区の商業エリアにある睦月駅で本土のJR夏目駅につながる線が
引いてある。つまり、虫めがねのような形でアイランドシティと本土を
結んでいるわけだだから、環状線と言っても厳密には「1周」してないので、
環状線とは呼べないのだが、利用者はそれを「環状線」とよんでいる。
475456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/29(月) 18:53:58 ID:KjmlugDm0
やっと皐月駅に着いたころには、朝いちばんだというのに
ヘトヘトになってしまった。東区住宅エリアがあるとおりこの島にも
たくさんの人が住んでるが、それ以外にも本土から島へ毎日通う人も
いるのだ。夏目市いわく、朝も夜も人口総数が変わらないということが
自慢らしい。つまり、ドーナツ化現象を起こしてないということだ。
種を明かせば夜になれば地元住人が帰って来るから人数が変わらないだけなのだが…
そもそも、夏目市はもともと都会と呼ばれるような都市ではない。
一昔前までは中核市になるのさえ困難な状態だった。
それがこれだけ人口の盛り上がりを見せたのはやはり、
国松前市長の功績と言ったところだろうか。
476456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/29(月) 18:54:43 ID:KjmlugDm0
アイランドシティが完成したことで土地としての人気があがり、
夏目市は他の都市をグングン抜いて成長し、いまや大都市の仲間入りを果たしたわけだ。
もっとも、それがあの満員電車を生んでるかと思うと夏目市民ではない
俺にとってはうんざりする材料でしかなかった。
藤澤大学自体夏目市の誘致でできたようなものだから
あまり大きなことはいえないが…。俺は藤澤大学の学生だった。
「ちょりーっす」
誰かが声をかけてきた。
477456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/29(月) 18:57:40 ID:KjmlugDm0
---------------------------------------------------------
言うの忘れてた
79人の名前からわかるとおり
このシナリオは大まかには映画のバイオハザード2と同じようなプロット
デッドライジングや絶体絶命都市の要素を含んでる

まぁ、そんだけ

---------------------------------------------------------

クレー射撃部の朝霧進一だった。中学時代からの友達で、
俺の一番の親友だと思ってる。
「やれやれ、毎日満員電車じゃ疲れるぜ。社会に出るとあれが40年も続くのか…地獄だな」
朝霧は不満を垂れる。前方に、2人の人影を発見した。鷹取たつみと島本洋介だ。
2人は大学で知り合った友達だ。後ろからかるく肩を叩いて挨拶をする。
「うぃーっす」
「よぉ」
478本当にあった怖い名無し:2010/03/29(月) 19:33:09 ID:Oaws8bpZ0
456に聞きたいんだけど、自分の文章ざーっと見てみてものすごく読みづらいとは思わない?
479456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/29(月) 19:48:10 ID:KjmlugDm0
>>478
それより、俺の話を聞いてたか?


まぁ、でも
指摘は大歓迎だ
後学のためにどの辺が読みづらかったか教えてほしい
「全体的に」って言われるとただの荒らしと変わらん…
480本当にあった怖い名無し:2010/03/29(月) 20:03:26 ID:Oaws8bpZ0
改行がないから読みづらい
つーか何でそんな上から目線なんだ?
481ポメラニャ:2010/03/29(月) 21:05:18 ID:ryY92Iqq0
>>460
いや、すいません証拠も無いのにブリニーさんの自演というのはいかがかと・・・ファンの方が純粋に楽しんで、
純粋に展開に驚いているだけかもしれませんし 
>>ブリニーさん
批判も賞賛も評判のうちですので、人気があるということですよ。レスのつかない自分よりもよっぽど良いです

>>480
書き手ってどうしても自分の小説に批判的なレスがつくと、とげとげしく対応してしまうところがあると思いますので
自分にも言えることなのですが、多少はそういう態度も許していただきたいです 


つーかすいません、こんな雰囲気が嫌ですのでなにとぞ、できるだけ穏便にお願いします
自分も配慮とかが至らないこともあると思いますが、書き手が減って、自分が消えるのも嫌です
482本当にあった怖い名無し:2010/03/29(月) 21:12:34 ID:Oaws8bpZ0
すいませんすいませんってうぜえよ
お前の話は臨場感があって好きだよ
483本当にあった怖い名無し:2010/03/29(月) 21:56:47 ID:gcWGU1/W0
>>481
だよね。
純粋にGJすると作家さんに迷惑がかかるような空気を作らないで欲しい。
というか、それが目的か。
>>456
覚えてるよー。
つか、最近このスレを見つけて過去スレからずっと見てきたから記憶に新しいし、気になってたんだ。
完結してるなら嬉しい。
ぜひよろしくお願いします。
484456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/30(火) 00:24:04 ID:dbEIlI5x0
>>480
そりゃ、金取って商売してるわけじゃないから
お前と同じ目線なだけだよ…
ほかの人が優しいからって、勘違いしないほうがいい…

まぁ、でも
指摘サンクス

改行か…
ワード形式で作ってるから
コピペする時に即興で改行し直してるんだよ
しかも、縦書きで保存してるから

ただ、前回は言ってたけど今回言い忘れたと思ったのは
映画風にするためにあえて擬音語、擬態語を多く使ったのと
あとは>>464のとおり、パンデミック物なのに
常に一人称視点にするという実験小説でもある。
しかも、登場人物は79人
物語の都合上、西区北区東区南区をうろちょろするから
正直言ってわかりにくいってのはある。
そこは勘弁してくれ

>>483
サンクス
485456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/30(火) 00:27:44 ID:dbEIlI5x0
----------------------------------------------------------------
しばらく4人でくだらない世間話をしながら大学校舎に向かって歩いてると
後ろから声をかけられた。
「ちょりーっす」
杜美津医専に通う夙川さくらだ。さくらは洋介の恋人でもあった。
と、もう一人知らない女がいた。
「あー、この子は山科由紀。同じクラスの友達なの」
「ふーん」
一通りあいさつを交わすと、島本と夙川は「それじゃあ」と
別れの言葉を述べて一緒に歩き去って行った。
「私も授業があるから」
というと、山科も同じ方向に歩き去って行った。
島本は藤澤大学の学生なのに1限目の講義をサボるつもりだろうか?
まぁ、どうでもいいか。と考え直すと俺は医学部の
鷹取と別れ朝霧と一緒に大学の校舎に入った。
朝霧も俺も法学部で1限目の授業は一緒だった。
というより、今日の授業に関しては全てのコマで一緒の授業を受講していた。
486456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/30(火) 00:29:10 ID:dbEIlI5x0
8時50分、授業が始まるまであと10分ある。
この大学の教室は大教室は主に前方に2つドアがあって、
檀上になってる教卓や黒板を挟んで左右についてる。
小教室になると左右どちらかの壁の前方と後方。
なんにしろ2つのドアが確保されているのだ。
俺と朝霧は大教室の右のドアから入って前から3番目の座席を陣取った。
「やれやれ…今日も一日が始まるな」
「たしか、次は行政法の授業だったな」
「あー、木津先生の授業か…」
とりとめのない会話をしてるとチャイムが鳴り教授が教室の中に入ってきた。
木津孝允…50を超える初老の入ったこの男は行政法一筋で30年やってきた。
気弱でくたびれた風貌だが旧帝国大学の出身で行政法の世界では
そこそこ名が通ってるらしい。
487456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/30(火) 00:30:34 ID:dbEIlI5x0
「じゃあ、授業始めるよ。先週のレジュメ出して」
488本当にあった怖い名無し:2010/03/30(火) 07:05:05 ID:KOJUhGfl0
ああうぜえ…
NGにしちまえば解決するんだが、この無価値な読みづらい文章をスクロールするのが楽しくなってきた
別に読んでないから多少適当でもいいぞ
酔狂な俺の楽しみのためだけに長文投下してくれ
489本当にあった怖い名無し:2010/03/30(火) 07:23:01 ID:KOJUhGfl0
456のレスについて目に止まった部分だけでも感想を書いてやろうか。
残念ながら、小説のつもりで書いているらしい物については読んでいないので感想を書けない。
常に一人称視点なんつうのは基本的な手法だろうよ。別にパンデミック物だろうがなんだろうが関係なくできる。
普通の物書きなら当たり前だがな。実験的手法とか大仰なこと言ってるが、言えば言うほどつまらなく見えるぞ。
登場人物が無駄に多すぎる、舞台が広すぎる。読み手が一々そんなこと覚えてると思うか?
設定考えてるお前は楽しいだろうけどね。遠足の準備が楽しいガキと同じ気もするがな。
そういうのを賢くまとめて作るのが優れた物書きだろうけど、まあ理解できないだろうね。
広くするのは誰にでもできるんだぜ?しかし狭くすることは難しい。それでいて相手に何か伝えようとすれば尚更だ。

つまり、読み飛ばされるべくして読み飛ばされてるわけだ456の書く文字の塊は。
しかし気を落とさないで欲しい。読み飛ばすのが楽しい俺のような変態もいるから。


な?こういう文章見ると読み飛ばしたくなるだろう?
俺も今すぐ読み飛ばしたくてゾクゾクしている。投下するのが楽しみだ。
490456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/30(火) 13:11:48 ID:dbEIlI5x0
スマン
俺の能力不足の面も否めんが
さすがの俺もお前の国語力、文章読解能力がないことまでは
フォローできない…
読み飛ばしてくれておk

それと、あまり参考にならないから
今後はレスしてくれなくていい

491本当にあった怖い名無し:2010/03/30(火) 13:16:16 ID:AuhDpWyP0
とりあえずお前の小説はゾンビがまったく出ないことが分かった。
で、ここは何のスレ?
492456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/30(火) 13:36:31 ID:dbEIlI5x0
----------------------------------------------------------------
 授業が始まって30分が経った頃、いきなりフラッシュが教室を包んだ。
驚いて前方の入口ドアを見るとサングラスをかけた赤い服の女が
カメラを片手に意味ありげな微笑を洩らしていた。
最初は「授業の邪魔をするな」と言わんばかりの顔をしていた教授も、
女の姿を見ると苦虫をかみつぶしたような顔をして、
あたかも何もなかったかのように授業を続けた。
「おい、あのきれいなネーチャン。誰なんだろうな」
「さぁな、院生じゃないか?」
「おい、そこ静かにしなさい」
教授に怒られ、俺と朝霧はひそひそ話をやめにした。
再び入口を見るとそこにはもう女の姿はなかった。
493456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/30(火) 13:37:13 ID:dbEIlI5x0
 キーンコーンカーンコーン
チャイムの音がやっと行政法の授業が終了したことを俺たちに告げる
「ん、じゃあ今日はここまで。次回は衆議院の優越性について
行政法の観点から見て行くからちゃんとおさらいしておくように」
朝霧が気だるそうに肩を回しながら語りかけてきた。
「ふぅー、やっと1限目が終わったな。
しかしさっきのネーチャン。なんだったんだろうな」
「まだ気にしてるのかよ。それより次はパンキョーの社会科学があるんじゃね?
急がないと席がなくなっちまうぞ?」
「それもそうだな」
494456 ◆T/kdltgIp. :2010/03/30(火) 13:38:28 ID:dbEIlI5x0
俺と朝霧は一般教養科目である「社会科学」の授業を受けるため
次の教室へと移動した。藤沢大学の教室の間取りは前述したとおりだが、
基本的に藤澤大学では大教室を使うことが多い。
教室のキャパシティの関係で授業によって使う教室は違うがどの教室も
300人は優に使える広さのところばかりだ。
現実問題として4人掛けの机に見ず知らずの4人がかけるということは
めったにないので、学校側としては受講人数の2割増しくらいの教室を
用意していることが多い。
藤澤大学は俺が所属する「法学部」のほかに
「経済学部」「文学部」「国際言語学部」「医学部」「理学部」「工学部」
「栄養学部」「看護学部」などを持っている。
少子化時代の近頃には珍しく大人数…いわゆる「マンモス大学」と
よばれている。
495本当にあった怖い名無し:2010/03/30(火) 18:25:32 ID:/mZosccF0
>>484
そりゃ、金取って商売してるわけじゃないから
お前と同じ目線なだけだよ…
ほかの人が優しいからって、勘違いしないほうがいい…

まぁ、でも
指摘サンクス


勘違いしてるのはお前だろ
「まぁ、でも」とか余計なこと言うような性格だから周りから叩かれんだよ
つまんない文描いてる割にはプライドだけは人一倍だなw
496本当にあった怖い名無し:2010/03/30(火) 19:19:55 ID:VvV4hrQF0
以前と比べてすっかり書き手が居なくなった理由が分かった気がする
497本当にあった怖い名無し:2010/03/30(火) 22:42:28 ID:ycuEFoQw0
多少の矛盾があろうが、日本語でおkだろうが、厨二病だろうが、それぞれのゾンビにかける思いを
文字でぶつける人のためにあるスレでしょう。ここは。
少なくとも私は青臭さだとか、畳めないだろっつー大風呂敷だとか、そういった素人故のアラも含めこのスレが好きです。
細かな齟齬をモノともしない力強さが好きです。

評論家を気取りたいならば、文芸系に行けばいいじゃないですか。
己の評論レベルを弁えているが故に文芸系に居場所が見いだせず、
ド素人系のスレを彷徨っては他人様に噛みついているのですか?
根拠もなく自演と騒ぎ、無駄に煽って血肉をすすり、私生活の憂さを晴らすのですか?

それとも、もしや実践的にゾンビを表現するという目的意識的に参加しているのであれば、
……それはそれでちょっとは好きになれるかもしれないことはないかもしれ
498本当にあった怖い名無し:2010/03/30(火) 22:55:37 ID:ycuEFoQw0
>>489
結構あなたの文章は好き。
以前教わったキザな教官が「スピードを出すのは誰にでもできます。ブレーキを的確に踏むセンスが重要なのです」と、
いかにもな台詞を言っていたのを思いだしました。

まぁ、私は今のところ一つも創作を投下していないため、大した発言権もないただの外野なんですけどね。
なんか、これまではゾンビってそれ程自分の中でメジャーなジャンルじゃなかったのに、
このスレ見つけてからは結構アツいアレになってきた。
今度ツタヤでゾンビDVDレンタル祭りをするんだ!
499本当にあった怖い名無し:2010/03/30(火) 23:13:17 ID:aydNtUxJ0
>>469
別に? 何か心当たりでもあるんですか?(荒らしの常とう手段)

人間は、自然界の諸法則を見て、文明の利器を作り出した。
しかし、自然界に文明の利器はない。

人間は、黒曜石の欠片が鋭い事を知って、鉄より切れ味の鋭い黒曜石のナイフを作り出した。
しかし、自然界の黒曜石は自動的にナイフになるわけではない。

人間は、>>467を読んで荒らすのに丁度良い方法に気づいた。
しかし、>>469そのものが荒らしになるわけではない。
500本当にあった怖い名無し:2010/03/30(火) 23:54:20 ID:ycuEFoQw0
>>499
言葉遊びができる人って素敵。

ちなみに、456さんの話は本当にちゃんと完結してると私は信じています。
前回投下時はちゃんと阿鼻叫喚なシーンまで行っていたわけだし。
でもこの煽りで挫けてしまったら、
498さんが
「456そのものが荒らしだった」
とか仰ることになったりするわけで、どうぞ負けないでください。
って、そんなことは別にどうでもいいっていうか、単に続きが読みたいんだけど。

他のすべての作家さんも。続きを楽しみにしています。

ちなみに、日本語でおkとか厨二病とかいうくだりは、言葉の綾です。
なんか読み返したら失礼なことを書いてしまっていた……。
申し訳ございません。
501本当にあった怖い名無し:2010/03/31(水) 00:54:06 ID:Ga5zZV4h0
謙虚じゃない態度とってるから叩かれてんだろ。
あんな上から目線じゃ読み手のこと考えて小説書けるわけもないし。
実際読みにくいし、単純につまらない。
502ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/31(水) 01:43:42 ID:czTmPR7+0
◆空気読まず、投下します◆

糞餓鬼ララバイ1

俺って人間はな・・・・。
他人を踏み潰して、殺して奪って嗤って蔑み蔑まれて、泥水啜って
恨みつらみ妬み嫉みを飯のタネにしてきた下衆だ。
今もそれは変わらねぇ。

物心付いたガキの頃からの性根がそう簡単に入れ替わりもしねぇし
心変わりも、改心もしてねぇ。
俺が落ちるのは、間違いなく地獄だ。そんな事は分かってることだ。
今更、何をしても極楽天国な浄土なんぞ望めねぇし、のぞまねぇ。
分不相応って分かってるさ。俺には死んでも亡者として目の前のぶらりと
うまそうにすら見えねぇ腐りきったもんにしか飛びつけねぇって、似あわねぇ。
ちゃんと分かってんだよ。
おれは善人じゃねぇ。
社会から抹殺されるべき悪なんだよ。いや、ゴミだ。害悪と存在が固定されるような
誰もが目に留めて忌避するような大層なもんでもねぇ。
価値も何もありゃしねぇ、ゴミで屑だ。

わかってんだろ。
分かってんだろうが!

「おじちゃん!!」

名前も知らねぇ餓鬼が、泣きながら俺に駆け寄ってきやがったから
鬱陶しいという感情のままに、蹴り飛ばしてやった。
力加減なんざする気も無い。餓鬼は勢い良くごろごろと地面を転がっていく。
馬鹿が。そもそも餓鬼は好かねぇんだよ。
泣くし喚くし言うこともきかねぇしな。
503ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/31(水) 01:47:57 ID:czTmPR7+0
2
「うわぁあ〜〜んっ!!
おじちゃん!!!」

「うるせぇ!!!とっとと失せやがれ!!!!!」

ちくしょう!
泣けば事が済むと思ってる辺りが虫唾が走るんだよ!!
泣くしかできねぇんだから、俺の前から失せろってんだ!!その声が聞こえない遠くまで!!
早く!!全力で走って遠くへ行っちまえ!!!

全くツイてねぇ・・・・。
借金の取立てのはずが、こんな事になるとはよ・・・・。
俺も焼きが回ったもんだぜ。
取立てにやって来てみりゃ、首吊りしたシケた夫婦が赤黒い顔で舌垂らして
糞もしょんべんも垂らしながらよ、動いてんだぜ。
それ見て泣いてるしか出来ねぇ餓鬼なんざ、俺も放っとけば良いのによ。

救いようねぇな、俺ってカスはよ・・・・。

何処から沸いたのか、生ゴミ共がうめき声を上げて、どんどん集まってきやがる。
この世の終わりだと確信させるには十分な材料を持っている生ゴミ共は、分かってるのか
分かってねぇのか・・・。
おぼつかない足取りで、両手を伸ばして、俺の生きた血肉を貪ろうと、命を喰らおうと
迫ってきやがる。
酔っ払いみてぇだな。まぁ、酒飲んで上機嫌な馬鹿共の方が、まだ可愛げがあるってもんだ。
504ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/31(水) 01:52:26 ID:czTmPR7+0
3
餓鬼が鼻水たらしながら、俺を見てやがる。
生ゴミ共への恐怖に動けねぇのか、震えてやがる。ご丁寧に地面に座り込んでだ・・・。
気まぐれに餌なんざ与えるんじゃなかったぜ。
親に見離されて泣いていた餓鬼の姿を、昔の俺に重ねちまった。
ああ、そうか。

俺は今、このほんの数日の、俺自身が理解不能に陥った自分の行為の意味を知った。
餓鬼を連れ出して、ガラにもなく面倒見てたのは・・・・・。

「餓鬼よぉ・・・・こら、糞餓鬼。てめぇ男だろうが。泣いてたら食われて終いだ。
分かってんだろうが。今すぐ立ち上がって振り返らずに逃げやがれ。
俺の最初で最期の善行を無駄にすんじゃねぇぞ」

俺は懐から煙草を出した。なんて御誂え向きなんだよ。
最期の一本じゃねぇかよ。
これが最期の煙草かよ。

「お・・・おじちゃ・・・・」

「糞餓鬼よぉ、おめぇ鬱陶しいわ、めざわりだ。虫唾が走る。とっとと失せろってんだろうが!
二度とその面俺の前にさらすんじゃねぇぞ。タダじゃおかねぇからな。
俺が今から行く所に来て見やがれ、ど突き倒すだけじゃすまさねぇからな・・・」

餓鬼が酷く傷ついた顔をして、目の光が濁るのをみて、俺は腹の中でニヤついた。
大人に絶望した顔だ。信頼を裏切られた餓鬼の顔は、嫌と言うほど見覚えがある。
餓鬼は簡単でいいねぇ。
それで良いんだよ。這いずり回ってでも、大人を出し抜いて、卑怯でも意地汚くても
生き抜いて見せろ。その先に地獄が待っていようが何だろうがな・・・。
505ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/31(水) 01:54:53 ID:czTmPR7+0
4
泣きじゃくるだけの餓鬼に死に場所も生き場所もねぇんだよ。
わかったか糞餓鬼。
わかったら、行っちまえ。振り返らずに行っちまえ。
そう、そうだ。
走れ。ちんまい体を有利に働かせてよ。生ゴミ共から逃げるんだ。
迷いのなくなった走りはいいねぇ。餓鬼特有だな。裏切り者を簡単に切り捨てる。

俺もそうだったはずなんだがな、惨めな餓鬼庇っちまって、生ゴミに噛まれちまったしなぁ。
生ゴミ共は腹へって肉食ってるかと思ってたが、仲間増やすために噛んでるのかもなぁ。
何人か噛まれて死んで、生ゴミになってたしな。俺もそうなるな。

屑でカスで下衆が、生ゴミになるのかよ。
笑い話にもならねぇ。
陳腐な三文小説にも、こんなネタはなかろうな。

最期の一本だってのに、しけてやがった・・。
煙草に火がつかねぇ。
ちくしょう・・・・こんな所までケチついてんのかよ・・・。
ホントしょうがねぇなぁ・・・・。
俺って奴はよぉ・・・・・。

・・・・最初に噛まれてから、痛みがなくなってたからなぁ・・・。
腕食いちぎられても痛くねぇよ。
腹の中身引きずり出されても、何も感じねぇよ・・・。
506ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/31(水) 02:00:39 ID:czTmPR7+0
5
ただ、ねみぃな・・。
ちと寒いかも知れねぇ・・・・。
目の前でてめぇが喰われてる様子を見ることになるなんざ、想像してなかったな。

ああ・・・さむいな。
ねみぃし、さみぃし・・・。

ああ・・・寝るか。
生ゴミ共のうめき声も聞き飽きたわ。
目を閉じようと思ったが、顔の皮はがされてやんの。
瞼がねぇじゃねぇか!

まぁいいわ。
俺は寝る。
起きる事はないだろうな、当たり前じゃねぇか。

そういえばなんか忘れてるような?
何だったか・・・思い出せねぇ・・・。
眠い・・・眠いんだ・・・寒い・・・さみぃ・・・さむい・・さみしい。

「とおちゃん・・・かあちゃん・・・・」

ああ、また餓鬼が泣いてらぁ。

END

◆行き詰まり続けて、書きたい場面だけを切り取り書いてます
ゾンビ難しい・・奥が深すぎます。死人だけに生かせない・・・。
失礼いたしました。◆
507本当にあった怖い名無し:2010/03/31(水) 02:01:39 ID:dyd5lYza0
別にへりくだれとか謙虚であれとか言う気はないけどねー
ああいう感じに「俺の書くものにけちつけんな。分からないのはお前がバカだからだ」って態度取るのがどうもね
はっきり言ってチラシの裏にry
つまらないってか読む気がしない。読む前につまらなそうなのが分かるから
書き手の人間性もそうだし、読ませる気がないってのはざっと眺めただけでもそう感じる
508本当にあった怖い名無し:2010/03/31(水) 02:09:22 ID:dyd5lYza0
>>ぷれしあサン
本人的には不完全燃焼っぽいけど別にいいんじゃない?
あえてほとんどの場面をはしょってしまっても、読む人には大方のゾンビのいる世界観とかゾンビの設定的なものは持ってるだろうし
読み手に丸投げして各自で解釈、補填させてくのもありだと思うよ。想像の幅も広がるし
けっこうおもしろかった
509ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/31(水) 02:21:40 ID:czTmPR7+0
>>508
ありがとうございます。

試行錯誤しながら精進します。
感想いただけると、やはりとても嬉しいですね。
510本当にあった怖い名無し:2010/03/31(水) 06:25:29 ID:qChFVBVt0
ぷれしあさんお疲れ様です。
こういうのは普通の物語の手法として全然アリですよ。
発生のとこなんかは、特殊な状況でないのなら読者の脳内保管で十分だと思います。

てか、DQNがいいことする話は弱いなあ。
子供が生き延びていつかおじちゃんの行動を理解してくれると嬉しい。
511ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/03/31(水) 21:54:58 ID:czTmPR7+0
>>510
ありがとうございます。
元々書いてる方が、止まってしまって中々進められないのがあって
四苦八苦しています。
512本当にあった怖い名無し:2010/04/01(木) 02:11:29 ID:N0fIDusA0
皆さんの作品楽しみにしながら日々スレを覗いております
妙な評論家気取りについてはNGIDにでも突っ込んでおくとスッキリして良いです
513456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/01(木) 02:42:31 ID:hcwGi8Kp0
それだけの人数がいることもあってか校舎はかなり広く多い。
理学部と工学部は別にキャンパスを設けているからいいとして、
残りの学生はこのキャンパスで学問を学ぶため、建物によって学部が分けられている。
おもに1号館を使うのが法学部・経済学部2号館が文学部・国際言語学部3号館が
食堂・図書館になっていて4号館が医学部5号館が残りの看護学部・栄養学部という具合になってる。
もちろん、同じ大学の学生なので他学部の校舎に侵入禁止ということにはなっていないが
(一部、実験の都合上立ち入り禁止になっているところもある)基本的な住み分けはされている。
一般教養に関しては例えば、「社会科学」なら1号館「国際言語」なら2号館といった具合に割り振られるわけだ。
514456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/01(木) 02:43:56 ID:hcwGi8Kp0
食堂・図書館になっている3号館を除いてどの建物も4階建てになっている。
1階は小教室、2・3階が大教室、4階が実験室や教授の待機室などになっている。
だから、法学部である俺たちが社会科学を受けるには階を移動するだけでいいのだが、
「社会科学」の授業は単位が取りやすいと評判で受講人数がかなり多かった。
一番大きい教室を使っていても「立見席」が出るほどだ。俺が慌てているのにはそういう背景もあった。
515456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/01(木) 02:44:54 ID:hcwGi8Kp0
 俺たちは「3人分」の座席を確保した。しばらくすると、経済学部である島本がやってきた。
「やー」
「おいおい、結局1限目は休んだのか?」
「なーに、出席取らない授業だから大丈夫だって」
「やれやれ」
チャイムが鳴ると社会科学の講師が入ってきた。はげ散らかした黒縁めがねのオッサンだ。
名前は野崎俊夫。年齢は38そこそこ。
「ほら、お前ら静かにしろ。授業を始めるぞー」
授業が始まって数十分が経過して…
野崎が教卓の前で一生懸命講義を行っていたが、
朝霧はシャーペンをくるくる回して遊んでいて授業は聞いていないようだ。
島本に至っては机に伏して寝ていた。
かくいう俺も意識は社会科学とは全然関係のないほうに飛んでいってた。
516本当にあった怖い名無し:2010/04/01(木) 03:35:16 ID:TlcKNDJz0
ふと思ったんだけど、456のってゾンビ出る前にスレ埋まったりしてね
1000いかなくても容量オーバーとかあったっけ?
517456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/01(木) 03:47:04 ID:hcwGi8Kp0
大丈夫大丈夫
ゾンビ初登場自体はあと2,3回投稿後に
突然やってくるからw


しかし、1年前に書いたやつだが
いろいろとグダグダだな…
推敲しなかったのだろうか、1年前の俺…
とはいえ、今も少しリアルが忙しいので推敲できない
スマソ…
518456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/01(木) 06:18:39 ID:hcwGi8Kp0
-----------------------------------------------

そんなときだった。体調の悪そうな男が右のドアから入ってきた。
ドアは開けっ放しになっていたのでふらふらと中に迷い込んできた。そんな感じだった。
男が前の机置いてるプリント類が置かれた机にあたる。プリントがバサッと床にちらばった。その音でみんなが一斉にそちらを向く。野崎も異変に気がついたようだ。
「ちょっと、キミ、ねぇ。体調が悪いならさっさと帰ったほうが…」
いきなり男は近くにいた女に噛みつき始めた。
「ぎゅうぅおぉあああああああああああ」
女が断末魔のような悲鳴を上げた。首をかみちぎられた女はしばらく目を見開いて口をパクパクさせていたが
首の頸動脈から大量に出ている鮮血の勢いが落ち付いてくると同時に床に倒れて動かなくなった。
死んだ…ということだろうか?
519456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/01(木) 06:19:30 ID:hcwGi8Kp0
「てめぇ、なにしてんだよ!」
近くにいた男子学生が男を取り押さえる。野崎が茫然自失状態になっているので
近くにいた別の学生が携帯電話を取り出して119にかけた。
「おい、だれか、教務と医務を呼んで来い!あと救急車だ!」
怒号が飛び交う。流石に写メを撮る輩はいなかったものの
興味本位のギャラリーが女を中心に輪を作っていた。
「救急車はすぐに来るそうです…野崎先生?」
「ん…あぁ、よくやった。教務に連絡を…」
「もうしました」
学生と野崎が会話をしている。俺は混乱は収まったと思った。すると
「ぶごげよぁああああああああああああ」
今度は全く別のほうから悲鳴が上がった。
520456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/01(木) 06:20:17 ID:hcwGi8Kp0
みんな女に集中してて気づかなかったが左右のドアからさっきの男と
同じように青い顔をした奴らがフラフラと教室に入ってきていた。人数は7,8人といったところか
「おい、お前ら。なにしてやがる!」
血の気の多そうな男子学生が青い顔をした人たちに殴りかからんばかりの勢いで詰め寄った。
男子学生はラグビー部主将の長尾明だった。花園への切符をつかむのにいつもあと一歩のところで
惜敗しているラグビー部を率いているということだけあって、非常に体格はよかった。
521本当にあった怖い名無し:2010/04/01(木) 21:19:10 ID:wZOumtHg0
456氏、乙です!
青い人キター!!
522本当にあった怖い名無し:2010/04/01(木) 22:17:08 ID:Ha6pkxKhO
セイレーンさんの小説読みたいです。
523本当にあった怖い名無し:2010/04/01(木) 23:08:48 ID:Prwdt17r0
近くにいた男子学生が男を取り押さえる。野崎が茫然自失状態になっているので
近くにいた別の学生が携帯電話を取り出して119にかけた。
   ↑    
ひでえ文章だなオイwww
524本当にあった怖い名無し:2010/04/02(金) 04:23:12 ID:FgqNz8s50
男は大好きな曲を何十回と聴いてから決心した。妻と車の中でよく聴いた曲。
涙を流し、そして拭いて決心した。結局、自分がそれをするのが正しいかではない。
(俺はそれをしたいのだ)
男はうなずいた。

窓を開け春の匂いをかぐ。桜の匂い。悲しくて美しくてまた涙があふれた。
(世界は美しい)男は思う。

階段を上がり閉ざされた、釘で打ち付けられたドアの前に立つ。
中ではミナコが動き回っている音がした。
病気になってしまったミナコ。かわいそうなミナコ。最愛の人。大好きな人。
ミナコ愛してる。
僕も同じ病気になろう。もう一度愛し合おう。聞こえるかい? ミナコ。
525本当にあった怖い名無し:2010/04/02(金) 08:03:12 ID:mw/LtbCv0
>>524
イイハナシダナー
つか、せつないですな


べ、べつに456氏を無視しているわけじゃないんだからねっ!
再投下だけじゃ本物の作者さんか分からないから、新規の投下までwktkしてるだけなんだからっ!w
まぁ最初に投下されていた時とはトリが違うようですし、様子見なのです。
526456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/02(金) 14:15:44 ID:xGf3rrsI0
「てめぇら。ただじゃすまさ…」
一瞬だった。青い顔集団は長尾に群がりあちこちを噛み切り始めた。
「や…やめ」
ブジャブシャ
肉片がちぎれる嫌な音が教室内に響く。
「こいつはやべぇ」
俺は朝霧に耳打ちすると、早くこの場から逃げるように促した。
みんな同じ考えに至ったようで女子学生の「キャー」という悲鳴を皮切りに
教室内にいた人たちがいっせいに出口へと詰め寄った。青い顔集団は右のドアからやってきたので
必然的に出口は左のドアだけということになるが、ただでさえ大人数の授業なのに
一斉に出られるわけがなく、案の定出口周辺は混雑を見せた。
527456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/02(金) 14:16:28 ID:xGf3rrsI0
「落ち着いて!落ち着いて!」
野崎が意味のない叫びを続ける。
「くそ、こんなんじゃ出るに出られないぞ」
青い顔集団は次々に人に襲い掛かり教室内を血で汚していく。
カッターナイフなどで反撃する者もいたが、なぜか青い顔集団には効果がなかった。人ごみで混雑してる出口越しに声が聞こえた。
「教務です!どうかしたんですか!野崎先生!いったいどうしたんです!学生が倒れたと聞いたんですか!」
出るのも困難だが、その波に逆らって教室内に入るのはもっと困難なようだ。
528456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/02(金) 14:17:46 ID:xGf3rrsI0
我先にと逃げようとする学生たちの波で教務の人はなかなか教室の中に入ってこれない。
「医務の先生も連れてきました!救急車が来るまで応急処置を!
ちょっと、あなたたち、なにやってるの。どきなさい!なんなの?」
最後のほうは押し寄せてくる学生への批判になっていた。
「ちょっと、とおしてちょ…ぶぎょぉああああああああああ」
人波の流れが収まった。俺はなに起こったのか最初はよくわからなかったが、
あることに気がついた。青い顔集団は外から入ってきたのだ。
ということは…むしろ外に仲間が多くてもおかしくはない…
「きゃー」
出口に詰めかけていた人たちの阿鼻叫喚の叫び声が教室内に響いた。
逆流して教室内に入ってくる学生もいたが大多数は前と後ろを
敵に挟まれて身動きが取れなくなっていた。ふと左出口を見てみると人が
少ない上に青い顔集団もいない。左出口に人が詰めかけていたせいで
右出口にいた青い顔が左のほうへ移動していたのだ。
「いまのうちだ!」
俺は右出口を指差した。朝霧も俺の意図に気付いたらしく島本の肩を叩いて顎で出口を指した。
机の上を飛び越えて右出口へと向かう。
529本当にあった怖い名無し:2010/04/02(金) 20:04:05 ID:ftGvEail0
524さん、乙です。
ちょうど今の時期のお話ですね。
こんなパートナー欲しいわ…。
そんな相手なら、こうなって欲しくないけどさ…。

456さんも乙です。
青い人沸いてキタwwwwwktk
530524:2010/04/02(金) 21:14:02 ID:+PNPQvgb0
>>525>>529
ありがとう。
投稿してから気づいたけど本田美奈子を連想させますね。
書いてるときは全然、思いもしなかった。
無意識ってやつ?そういうのがないと文章も書いててつまんないけど。
531妄想ニート:2010/04/03(土) 20:42:08 ID:nMipKWAF0
超未来なSFなのにまるで現代のような背景設定です。
投下します。

ニート部隊の最期(1)

銀河系がスーパーノヴァへ、膨張と崩壊に向かう時代。
銀河辺縁の星々は、銀河の外側へむかってすさまじい勢いで膨張を続ける銀河中心部から、恐怖の通信を受けいていた。
ここ、三浦システム第3惑星「鎌倉」も例外ではなかった。
古代移民船の後、数千年にわたり孤立状態にあった鎌倉は、外星系からの通信に一度は歓喜したが、その内容が解明されるや、パニックに陥った。
「銀河中核系はすでにことごとく屍鬼の手に落ちたり。
われら屍鬼の艦隊なり。
宇宙膨張の理によりて辺縁系にむかふ。
この通信を受けるものはただちに避難すべし。
われらもとよりなんぢをくらふことを望むものにあらず。
しかれども、もしわが艦隊なんぢが星をみれば、ただちになんぢが星を滅ぼし、
しかるのちこれに上陸してなんぢらをことごとくくらふべし」
通信の内容に半信半疑であった鎌倉星府は、古代移民船「天の岩舟」に残されていた光速艦「天の鳥舟」を通信の発信源へと向かわせた。
目的地に到着した天の鳥舟は、雲霞のような屍鬼の大艦隊を映し出した直後、屍鬼突撃艦の体当たり攻撃と屍鬼兵の侵入を受けた。
天の鳥舟が送ってきた最後の映像と音声は、ぼろぼろの古代銀河帝国空間機甲兵団の軍装をまとった屍鬼兵たちに
くわれてゆく乗組員の最後と、その断末魔の悲鳴であった。
事態を把握した鎌倉星府は惑星の放棄と全住民の避難を開始した。
恒星系「三浦システム」の全資源を投入し、「天の岩舟」を模した移民船を大量に建造して、更なる深宇宙へ闘争を開始した。
屍鬼艦隊の追撃を少しでも緩めるための、「殿軍」と呼ばれる志願特攻兵士を後に残して・・・
532妄想ニート:2010/04/03(土) 20:43:51 ID:nMipKWAF0
ニート部隊の最期(2)
「なんだてめえ、なめてんのか、なんで家族に見送られるようなしあわせもんがここに来るんだっ」
殿軍の募兵士官は気色ばんだ。
「おい、てめえがおっかあか、一体全体どういうことだっ」
怒鳴られているのは募兵所の前の長い行列。その一番前にいる若者である。そのかたわらにいる、妻らしい連れ添いの若い女が言った。
「夫は少しでもお国のためにお役に立ちたいと、わたしたちを置いて一人で残ると言い張って・・・」
若者は思いつめたような顔で言う。
「はい、僕を男にしてくださいっ」
募兵士官は吐き捨てるてるように
「あほか」と言うと、拳銃をとりだし若者の右足を打ち抜いた。
「いてえーっ」叫ぶ若者。
「何をするんですかっ」わめきたてる妻。
しかし、募兵士官は苦虫を噛み潰したような顔をしたまま、更に左足を打ち抜いた。
「ぎゃあっ」
「フンッ、両足負傷、戦闘能力なし、扶養家族あるいは被扶養家族あり。志願兵適性なし」
妻がわめく。
「人殺しいーっ、訴えてやる」
募兵士官は妻の顔面を拳骨でぶんなぐって黙らせ、その夫と一緒に抱きかかえて、募兵カウンターの前に停まっていたトラックに放り込み、運転手に声をかける。
「こいつらも送り返す。まったくバカが多いぜ。もう少し待ってくれ。あと2、30人バカがいるかもしれん。」
533妄想ニート:2010/04/03(土) 20:45:59 ID:nMipKWAF0
ニート部隊の最期(3)
 鎌倉星府は非常に早い段階で、志願兵対象者を、
無職で家族のいない(或いは家族に見放された)30歳以下の若者及び80歳以上の老人、いわゆるニートに限定していた。
この若夫婦はバカかもしれないが、労働と繁殖の能力の高い、これからの亡命星府にとってきちょうな「つがい」であり、
志願兵にしてみすみす死なせるわけにはいかなかったのである。
「ひいいっー、僕も帰ります」
「僕も帰ります」
ようやく志願兵対象者規定を思い出したらしい「英雄」志願者たちは次々と志願を辞退して、つきそいらしい母親や妻、娘たちと一緒に「帰り」のトラックに自ら飛び乗った。
募兵士官は苦笑いする。
「フン、それでいいんだよ。ほい、次」
もうそれほど若くはないが、かろうじて30歳前らしい男が士官の前に進み出た。
「名前は」
「佐渡幸三」
「家族は」
「いません」
「仕事は」
「していません」
「前職は」
「営業職の会社員でしたが、ここ3年間働いていません」
「なぜ働かん」
「事故で妻子を亡くしました。人生どうでもよくなって会社も辞めて浮浪者みたいなことをしていました。」
「合格だ。お国のために死んでくれ」
「どうも・・・」
534妄想ニート:2010/04/03(土) 20:58:38 ID:nMipKWAF0
ニート部隊の最期(4)
合格になっても、佐渡には何の感慨も湧かなかった。妻子が事故死して以来、すでに生きる屍であった。志願兵よりも屍鬼兵に近いぐらいである。
佐渡はひとりごちた。
「ああ、これで早く死ねそうだ」
「それはどうかな」
募兵士官はそういって佐渡の肩を叩き、待機する合格者向けの缶コーヒーを差し出した。
「待機時間はてめえの死にざまでもイメージトレーニングしてろ。下手を打つと早く死ねるどころか、『永遠に死ねない』体にされるぞ。少しはびびれ。」
だが、そういう募兵士官の表情は、さっきの若夫婦に対するものとはうってかわって、共感と同情に満ちていた。
535妄想ニート:2010/04/03(土) 21:04:25 ID:nMipKWAF0
いつもはROMです
家のインターネットとEモバイルは書き込めないので
きょうは外から書き込んでいます
次回は来週・・・
536本当にあった怖い名無し:2010/04/03(土) 22:07:28 ID:lfsYdqka0
それは前で付けるやつって言ってもそんなにおかしくないと思うぜ
537本当にあった怖い名無し:2010/04/04(日) 07:12:16 ID:8xr24UDw0
妄想ニートさん乙です。
ジャパネスクなネーミングがいいですね。
つか、士官容赦なしw
538プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/05(月) 19:43:02 ID:9Wz6Pt8FP
年度末と年度始めが忙しくて一週とんでしまい、申し訳ありませぬ。
とりあえず投下。
539プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/05(月) 19:44:07 ID:9Wz6Pt8FP
デッド・サンライズ

(31)
数日後、マイケルは妻と共に買出しのヘリに乗り込んだ。
久々の外出ということで、妻はとびっきり美しくおめかししていた。
これ以後は出られなくなる可能性が高いと、それは話してある。
いや、だからこそこのおしゃれだろう。
「おいおい、うらやましいなあ!
こんなきれいな奥さん連れてきやがってよお!」
同僚たちの視線が痛い。
妻の華やかな格好とは対照的に、同僚の男たちは長そで長ズボンに銃や鉈を持ち、まるで戦場に行くような格好だ。
もっとも、今の外の状況を考えるとそちらが正しいのだろう。
行き先はカナダとの国境近くにある、まだ普通に機能しているショッピングセンターだ。
日光の強さの関係で、緯度が高い地域ほど食人病の蔓延は遅い。
アメリカが崩壊しつつある今も、カナダや北欧諸国はまだ社会を保っている。
それも、時間の問題ではあるが。
地球上の全ての社会が崩壊した時、お金は全く価値がなくなる。
その前に全てを使い切るというエレンの判断は全く正しいものだ。
だからマイケルは、今動かせる資産を可能なだけカナダ・ドルに替えていた。それで与え得る限りのプレゼントを妻に与え、許してもらうために。
そして、何かあっても妻を守りきれるように、拳銃を二丁と弾丸を豊富に持ってきていた。
それでも、周りの同僚には武装が足りないと笑われたが。
だが、妻はものものしい装備の同僚たちに怯えていたので、これでちょうどいいのだろう。
「よし、これで全員ね。
行きましょう!」
最後に乗り込んできたエレンの格好には、全員が目を丸くした。
四肢はそれなりに覆いながら、胸や腰などを挑発的に露出させ、頭にも体にもキンキラキンに飾りをつけ、その上からガンベルトを巻いてマシンガンを持っている。
まるで、過激な映画かゲームから抜け出たようだ。
しかし、最期の外出だと思えば納得できないこともない。
命まで最後にならない事を祈って、ヘリは大空に飛び立った。
540プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/05(月) 19:45:17 ID:9Wz6Pt8FP
(32)
「まあ、前に乗った時よりずっと高いわ!」
妻はヘリの窓から外をのぞいて、子供のようにはしゃいでいた。
久々に見る外の景色は、これくらい地面と距離を置いて見れば以前とそう変わらない。
変わったのは、正常な人間がひどく減ったことだ。
「ちょっと、あんまり窓開けないでよ。
太陽の光が入ってくるでしょ!」
エレンが不機嫌そうに言い放つ。
妻はムッとして言い返した。
「何よ、だったらあなたも人の旦那に色目を使うのをやめてちょうだい。
お日様は日陰にいれば大丈夫だけど、あなたはいるだけで大丈夫じゃないのよ!」
問題が違うだろ、と言いかけたが、マイケルはやめておいた。
不安がっている妻を、これ以上動揺させるのはまずい。
マイケルはエレンから離れて座り、妻を窓から離して隣に座らせた。そして、優しく髪を撫でながら愛してるよと言ってやった。

仲睦まじくおしゃべりを始めたマイケルと妻を、エレンは苦々しい顔で見ていた。
「ねえ、あいつら生きて帰れると思う?」
エレンが聞くと、がたいのいい警備員の男が答えた。
「何もなきゃ、だな。
危機感が足りなさすぎなんだよ、マイケルは。
どんだけ奥さんを愛してるか知らないが、あれじゃ守れるモンも守れねえ。愛ってのは命あっての価値だってのが分かってねえな。」
その答えに、エレンはうんざりしたようにため息をついた。
自分が理性的で冷静だとは思わない。
しかし、マイケルより自分の方が状況を理解している自信はある。
(やれやれ、研究してないことに関しては本当にバカなんだから…)
エレンはしょうがないなあというように、自らの装備を確かめた。
何もない可能性は非常に低い。
事が起こった時、自分を守って余裕があったらマイケルを守れるように…エレンは心配半分哀れみ半分で思っていた。
541プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/05(月) 19:55:53 ID:9Wz6Pt8FP
(33)
フライトは長かった。
あまりに長時間のフライトで、マイケルは体の節々が痛くなっていた。
マイケルも妻も途中で眠ってしまい、マイケルが起きた時には妻がマイケルの肩に頭を乗せていた。
おかげで肩は凝るし、周りからの視線は痛いし、ショッピングセンターに着く頃にはマイケルはかなりよれよれになっていた。
「よし、着いたぞ!
着陸するから、しっかりつかまれ」
ヘリが高度を下げていき、屋上のヘリポートに着陸する。
重い音がしてドアが開くと、まぶしい光とすがすがしい空気が入り込んできた。
久しぶりの、屋外の空気だ。
日の光も久しぶりだが、これはあまり喜んで浴びる訳にはいかない。
以前と同じ柔らかく温かい光…しかしこの恵みの光は、今や人間に変異を起こし、おぞましい生きた死体に変える呪いに変わってしまったのだ。
いや、空気も一時期は病毒に変わっていた事があったか…。
しかし、空気は人間が気付いて努力したおかげで、昔よりずいぶんマシになった。
日の光も、もっと気付くのが早ければ…。
当たり前の風と光を浴びることさえ、マイケルにとっては心の痛みを覚える行為になっていた。
そんなマイケルの背中に、そっと柔らかい手が触れる。
「どうしたの、あなた?」
美しい声に、はっと我に返る。
妻は久しぶりの外出に、一刻も早く買い物がしたくてウズウズしているようだった。そう、久しぶりの日常で、最後になるかもしれない日常を早く楽しみたがっているのだ。
他の同僚たちも次々と外に出て、小走りに店の入り口に向かう。
できるだけ日を浴びたくないのだろう。
マイケルもキャリーケースを持って、同僚たちの後を追う。
店の入り口で一度集合すると、同僚たちはそれぞれ自分たちが欲するものの売り場へと散っていった。
「では、これから自由時間とする。
8時間後にヘリが出るから、再びここに集合せよ!」
ヘリの運転手の声を聞きながら、マイケルは妻をエスコートして店内に踏み入れた。
これから、どんな恐ろしいできごとが待っているかも知らずに…。
542ポメラニャ:2010/04/05(月) 21:47:35 ID:q7rAaVGK0
書き手が増えると嬉しいですね

続き
男は必死の形相で怒鳴るが、その台詞でますます混乱した高校生2人は老婆を抱えたまま男の方を向き固まってしまう。
「ぃっ!」
男は仰向けで上半身を起こしていた姿勢から舌打ちと共に、前のめりになりながら起き上がりこちらに突っ込んできた。
その時ふいに不快な感触が腕をつたい落ちていき、反射的に手元を見ると、老婆がありえないほどに首を後方に回して、卓の手に噛み付こうとしていた。
腕を滑っていったものは血液の混じった老婆の唾液だ。
「うあっ・・・・」
卓の喉に悲鳴がせりあがってきた瞬間、老婆の顔面と卓の間に誰かの手が滑り込み、2人の距離を強制的に引き離した。
男だ。そして卓の視界の中で、引き剥がされた勢いで地にうつ伏せに倒れこんだ老婆の頭部が銃声と共に爆ぜた。
数秒の静寂の後男3人の乱れた呼吸音が辺りの空気を支配する。
「殺して・・・いいのかよ・・・」
進藤が視線を、異様、としかいえなかった老婆の遺体に向けたままイケメン面を驚愕色に染めて、つぶやくように言った。
「・・・その婆さんは人間じゃない、言葉通りの意味でな」
男はそう言うと、膝立ちの半端な体制から立ち上がり、銃を構えなおした。
「警察も救急も呼ばなくいい、ついて来い。俺の知る限りの今の俺たちの状況を説明してやる」
男に真摯な表情で告げられ、高校生達はうなづいた。
543本当にあった怖い名無し:2010/04/05(月) 23:11:22 ID:q/+9zbyg0
 君が好きな季節はいつだい? 俺が好きなのは何と言っても初夏。
つまり今の季節。新緑とこれからはじまる夏への期待。例えば
遠足とか、ゴルフとか釣りに行くとか、そういうのって前の日が
一番楽しかったりするじゃないか? 俺はゴルフやらないから
良くは知らないけど、そういうのって聞くよね。そういう感覚で
俺は初夏が好きなんだ。暑くもなく寒くもない。シャツ一枚で快適に
過ごせるからさ。まあ、こういうことぐだぐだ書いててもしょうがないけどさ。
ここには時間がたくさんあるし。あれからこっち、もっと時間が増えたからさ。それはみんな同じじゃないか?
あるいは逆に忙しくなったのかな?

俺はこれを書いた後、この屋上から風の強い日に投げてみようと思っている。
だから誰が読むかわからないし、誰も読まないかもしれない。木に引っかかったり
どこかの屋根の上に落ちてそのまま、泥と朽ち果てるかもしれない。
どうであれ、ともかく書いてみたいと思う。これを読む
君はどんな顔しているだろう?
俺と同じ三十代初めの人だろうか? あるいは子供だろうか?
あるいはどこかの国から救助にやって来た軍隊だろうか? 
できれば日本語が読める人であってほしいな。けど、まあいいや、結局は
自分に書いているようなものなんだから。
544本当にあった怖い名無し:2010/04/05(月) 23:16:15 ID:q/+9zbyg0
単刀直入に言うとね。俺は今いる場所は府中刑務所。そしてそのコンクリート
で出来た屋上で書いてる。俺のほかにも何人かいて遠くを眺めたりぶらぶらと散歩したりしてる。
まあ大体、みんなグランドにいるんだけどね。天気がいいからさ。
俺は半年前に覚醒剤の所持で捕まった。二回目だから実刑がついて二年、ここで
お勤めすることになった。でもあんなことになっちゃったからさ。
だから中国で初めてあのウイルスの
患者が見つかってから三ヶ月もたってないけど、屋上からはゾンビか時折、
走る自衛隊かなんだかの車両しか見えない。静かなもんだね。あそうそう
空は相変わらずだけどね。うるさいよ。なにはともあれ生身で歩いてる人なんてどこにも見えない。
でもさ、怖いって言うか人間ってすごいのはこういうのにも、もう慣れつつ
あるっていうことだよ。俺だけかもしれないけどね。
これが普通って思えて何だか人が歩いて日常生活を
送っていた昔がうまく想像できない。ちょっと大げさだけどさ。なんかそういう感じなんだ。
もしかしたらこういうのはある意味、
救いなのかもしれないね。わからないけど。
なんにでも適応してしまうんだ。まあそれは、驚いたことのひとつだな。
ある意味、ゾンビが実際に生まれたって言うことより。

545本当にあった怖い名無し:2010/04/05(月) 23:17:41 ID:q/+9zbyg0
皮肉だけどさ。俺は前は早くここを出たいって思ってた。当たり前だ。
覚醒剤をやめて普通の人間になりたいって思ってたよ。でもここで落ち着いて
薬を抜いてもいいとも思ったけどね。でも今はどう? 逆転現象が
起こっている。俺たちを外に出さないために作られた壁が俺たちを守っている。
それどころか中に入りたいって叫んでた奴もいた。皮肉なもんだよね。
「中に入れてくれ!」ってさ。それでも俺は思うんだよ。
このままで良いのかってね。もちろん食料はほとんどない。刑務所の備蓄分は
ほとんどないから外に探しにいってる。元囚人と看守
が一緒にね。実際には職員って俺たちは呼んでるけど看守は、自由にさせてくれてる。
社会が作った法や刑罰は社会が無くなったら意味が無いだろう?

 俺は思う。それでもやっぱりここを出たいってね。もしかしたら俺たち人間は
地球という監獄の囚人なのかもしれない。
それはただの言葉のあやかもしれない。
俺には良くわからない。でも外に出たい。こうなっても外に出たいって思うんだ。
でもそれは一年半後。俺がきちんと刑を終えてからだ。それは俺のルールだ。
そして叫びたい。「俺は自由だ」って。馬鹿だろう。意味が無いだろ。
きっと好きな季節だからさ。
馬鹿になりたいんだ。



終わり
546本当にあった怖い名無し:2010/04/06(火) 07:18:15 ID:1XM+LNLt0
プリニーさん
いいとこで切りますね。
恐怖の自由時間wktk

ポメラニャさん
投下乙です。

545さん
いい話だー。
手紙モノって、書いているときと読まれているときにタイムラグがあるから、いろいろ想像してしまうのがいいね。
547本当にあった怖い名無し:2010/04/06(火) 22:41:43 ID:7GcBwDHO0
>>524さん、乙です。
ちょうど今の時期のお話ですね。
こんなパートナー欲しいわ…。
そんな相手なら、こうなって欲しくないけどさ…。

456さんも乙です。
青い人沸いてキタwwwwwktk



>>妄想ニートさん乙です。
ジャパネスクなネーミングがいいですね。
つか、士官容赦なしw


>> プリニーさん
いいとこで切りますね。
恐怖の自由時間wktk

ポメラニャさん
投下乙です。

545さん
いい話だー。
手紙モノって、書いているときと読まれているときにタイムラグがあるから、いろいろ想像してしまうのがいいね。


以上どんな話でも褒める馴れ合い大好きさんでしたw
548本当にあった怖い名無し:2010/04/07(水) 00:22:36 ID:aJrS4L1c0
            ∩_ 
           〈〈〈 ヽ
          〈⊃  }
   ∩___∩  |   |
   | ノ      ヽ !   !
  /  ●   ● |  /
  |    ( _●_)  ミ/ こいつ最高にアホ
 彡、   |∪|  /
/ __  ヽノ /
(___)   /
549456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/09(金) 02:03:01 ID:vOYr38Ue0
一人の青い顔のやつがこっちに気がついて
のろのろとやってきた。が、俺たちが出口を出るほうが早かった。
教室を出ると俺たちは教室から一目散に逃げ出した。
予想通り、教室の外も青い顔集団が湧いていた。
ふと後ろを振り返ってみると眼鏡のおばさんが血まみれで
ぐったり倒れこんでいた。
吹田加奈子。教務課として6年藤澤大学に仕えていた彼女の人生は
とうに終わっているようだ。
とろとろ歩く青い顔集団を避けて俺たちは校舎の外に出た。
「くそが…あれはなんなんだ?」
島本がうんざりした調子でそうつぶやく。
「よくわからないが、ふらふらしてるし顔色も悪い。何かの病気に感染してるのは確かだな」
「それはどうかな?」
いきなり後ろから声が聞こえた。
「鷹取!無事だったか」
「あぁ、こっちの校舎もひどいもんさ。というよりおそらくこっちの校舎から被害が出たんだと思う」
「どういうこと?」
「解剖中の遺体がいきなり起きだして学生を襲い始めたらしい。もっとも俺は話を聞いただけだが…」
そういえば、鷹取がまとっている白衣にも埃などの汚れのほかに血があちこちに
付着していた。どうやら鷹取も修羅場を抜けてここへ来たらしい。
550456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/09(金) 02:03:59 ID:vOYr38Ue0
「まぁなんでもいい。それより警察だ。ことによっちゃ感染封鎖も必要だろうし…」
「だからそれがどうかと言ってる」
「なんなんだよ?説明してくれ」
「死体は起き上がらない。あれは病人じゃなくて死体が動いてるんだと思う」
「ゾンビか?お前、死体解剖しすぎて頭がおかしくなったのか」
島本が悪態をつく。朝霧がそれをなだめた
「イラつくのはわかるが落ち着け。あれがゾンビだろうと病人だろうと
俺たちが判断することじゃない。それよりも早く110番通報しないと…あれ」
朝霧が何かを見つけたようだ。
「あの横転してる白いワゴン…」
朝霧が指さした方向を見てみると確かに横転した白っぽいワゴン車が遠くに見えた。
車が横転してるなんて尋常じゃない状態だと思ったが、
ゾンビ騒ぎに比べれば可愛らしいもんだと自分を納得させた。
「あの車が何なんだ?」
「あれ、救急車じゃないか?」
「なに!」
俺は目をほぞめて右手でサンバイザーをつくる。確かに、よく見ると赤色の回転灯
がついてるように見える。
551456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/09(金) 02:05:12 ID:vOYr38Ue0
白いワゴンが横転してるだけなら事故で済むが緊急車両が横転してるとなるとそうはいかない。
俺たちはその「白い車」に走って近づいた。
はたして、そこにあったのは救急車だった。
運転席に座っている隊員は血まみれですでに死んでいるようだ。
首や腕が何者かに噛み切られているようだ。何者か?あいつらに決まってる。
しかし、救助隊員というのは一人で行動することはないと
思うのだが、もうひとりの救助隊員はどこにいったのだろうか?
「とりあえず110番だ…」
俺は携帯電話を取り出し、110番にかけた。
552456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/09(金) 02:07:02 ID:vOYr38Ue0
―はいもしもし、110番です。どうされましたか?
「事故があったみたいで救急車が横転して中で人が死んでるんです。
あと青い顔の集団が人を襲ってるようなんですが…」
―青い顔?顔にペイントしてるんですか?
「違います。体調が悪そうなってことです」
―体調が悪そうなのに人を襲ってるんですか?
「そうです。早く来てください。場所は…」
言い終わるまえに電話の向こうから深いため息が聞こえた。
―アイランドシティだろ?さっきから同じ通報ばかりだよ。コスプレ集団が暴れてるだけじゃないのかね?
「でも…!」
―いたずら電話はやめなさい。君は知らないと思うが夏目市の通報受信センターは
 アイランドシティにあるんだよ。だけど、建物の外は平穏そのものだよ。いい加減にしないといたずら電話は罪に問われるんだぞ?
「聞けよ。俺が言ってることは事実だ。みんなやられちまったんだよ!」
―はいはい、わかったわかった。じゃあ警察官を向かわせるから。何もなかったら刑事罰を覚悟しておけよ。で、場所は?
「藤澤大学だ」
―じゃ、その場で警察官の到着を待ってな
電話は切れた。警察の態度とは思えない横柄なものだ。通報受信センターの職員が警察官かどうかは知らないが…
553本当にあった怖い名無し:2010/04/09(金) 18:55:23 ID:FvtXd7q80
たしか79人のキャラが出てくるって言ってたけど

>>ふと後ろを振り返ってみると眼鏡のおばさんが血まみれで
ぐったり倒れこんでいた。
吹田加奈子。教務課として6年藤澤大学に仕えていた彼女の人生は
とうに終わっているようだ。

まさかこれで一人のキャラ終わり?w
全くキャラたってないし名前出す意味ねーじゃんw
554456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/09(金) 20:56:46 ID:vOYr38Ue0
>>553
おいおい、全キャラ
大活躍させたらそれこそわけわからんようになるよw
79人中半分くらいは一発で消えるよ
吹田に関してはのちに少しだけ出るけど
そんなに出番はない
555本当にあった怖い名無し:2010/04/09(金) 21:00:38 ID:FvtXd7q80
なら79人とか強調するとこじゃねーだろ
最初のうっとおしい人物紹介もいらねえじゃんw
556本当にあった怖い名無し:2010/04/09(金) 21:03:56 ID:7gOftcun0
確かにそうだな
557456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/09(金) 21:28:13 ID:vOYr38Ue0
俺は藤澤大学のキャンパスの前に設置されているアイランドシティ案内図へ歩き寄った。
「どうかしたのか?警察は来るって?」
朝霧が心配そうに問いかける。
「大丈夫。かなり懐疑的ではあったが一応派遣してくれるそうだよ。警察官をな…」
「何を探してるんだ?」
「通報受信センター」
「あぁ、あれなら…」
朝霧が地図上の一点を指差す。
「ここだよ」
東区の住宅エリアの中にひっそりとその建物はあった。
558456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/09(金) 21:29:17 ID:vOYr38Ue0
「どうも、この現象は町全体で起きてるらしい。
だが、東区の通報受信センターはまだ何も起こってないようだ。これからどうする?」
「どうするって警察の到着を待ったほうが…」
「これがもし本当に『バイオハザード』なら、時間がたつほど不利だ。
夏目市は政令指定都市に認定されてる。つまり人口は50万人以上だ。
まして、アイランドシティはそのシェアのかなりの人口を有している。」
「敵が増えるってわけか」
「俺たちがぼけーっと社会科学の授業を受けてる間に…な」
俺は朝霧のほうを見て行った。朝霧は釈然としない顔をしていた。
「警察官が来たにしてもこの状態を見れば何らかの手を打つだろうし、
俺たちがいても警察官に伝えられる情報はわずかだ。それよりも早く逃げたほうがいい」
「わかった…だけど…」
島本が申し訳なさそうな顔をしていった。
「杜美津医専によっていいか?」
559456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/09(金) 21:32:42 ID:vOYr38Ue0
なるほど…一同は納得した。
「わかったけど、俺たちも念のためについて行くぜ。
杜美津医専は部外者の立ち入りはどうなんだ?」
「大丈夫。あたかも学生ですって顔をしてたら堂々と校舎内まで入っていけるさ」
560本当にあった怖い名無し:2010/04/10(土) 01:52:53 ID:lgThn9gyO
456さん面白いです。
561本当にあった怖い名無し:2010/04/10(土) 11:14:58 ID:APIag9dp0
456氏は確かに面白い。
が、79人の事前紹介は無意味だ。そもそも一度に79人も書いたら覚えきれん。
マンガ雑誌の人物紹介みたいに、「連載が続いて」る状況で新規読者だの記憶が曖昧になってる人だの向けに、「初登場じゃない人物」だけ紹介すればいい。
(初登場を除外するのは、初登場時には簡単でも紹介があるから)
562456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/10(土) 17:18:14 ID:SxJp2XfN0
一応、新しいタブかウィンドウで
79人紹介を見ながら読めるようにしてる

今は全く意味なさそうだが
ここから、「生きてる人」「死んでる人」「ゾンビになった人」と
別れてくるし、生存者が多くなるとチーム分かれたりするし
なにより、書いてる俺ですらごちゃごちゃになってきたくらいだ…
実は79人紹介の部分はワード(本編)に含まれてるのではなく
俺用につくったメモを転用した奴なんだ
563456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/10(土) 17:26:05 ID:SxJp2XfN0
杜美津医専の校舎からチャイムの音が聞こえた。ちょうど昼休みに入ったようだ。
警備員の人にかるく会釈をすると俺たちは堂々と杜美津医専の建物の中に入った。
「ほー、医専ってのはこんな感じになってるのか…」
医学部の鷹取はこんな状態にもかかわらず興味津津で回りをきょろきょろしていた。
鷹取は血まみれの白衣だと流石に怪しまれるので白衣はゴミ箱に捨てた。
「さくらはいつも決まった食堂に行く。そこに行こう」
俺たちは喋りながら昼休みでにぎわう人ごみを縫うように歩いた。
「しかし、あれはなんなんだろうな…感染とかゾンビじゃなくてテロリストかも?」
「死体のテロリスト?笑える」
そういった鷹取の眼は全然笑ってなかった。
564456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/10(土) 17:27:43 ID:SxJp2XfN0
「だけど、死体がよみがえるなんてことあるか?確かに俺たちはゆとり世代とか
呼ばれてるし一番家庭用ゲームに親しんでいる世代であるのは間違いないがゲーム
と現実の区別くらいつくぜ」
「ふーむ…」
俺は青い顔集団の正体のほかにもう一つ疑問に思っていることがあった。あいつらはなぜ、
藤澤大学のキャンパスから出現したのだろう?いや、近くの別の場所から湧いてきた可能性も否めないが、
隣接する杜美津医専が無事だったことを考えるとやはり藤澤大学から湧いてきたと考えるのが自然な気がする。
565456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/10(土) 19:05:44 ID:SxJp2XfN0
食堂は2階にあった。杜美津医専は校舎としては8階建てで面積は広かったが
総合大学ではないので建物はこれ一つしかなかった。
「お、さくら〜」
食堂で夙川を見つけたようだ。
「あー。洋介?それにみんな〜何しに来たのぉ?」
相変わらずのんびりした調子で夙川は答えた。夙川は山科と一緒にシャケ定食を食べていた。
「実は大変なことが起こったんだ。一緒に来てほしい」
「えー、でも次の授業単位落とすとやばいしぃ。大住の授業サボるとヤバいんだよ」
「大住って?」
「地域看護方法論の先生だよ。大住賢治。
ベテランらしくてチョー厳しいんだ」
「そうなんだ、でもこっちはもっと大変…」
ガシャーン
誰かが食事をまき散らしたようだ。俺は単純にそう思っていた。
違った
「奴らだ!」
「くそ、あんなにノロいのにここまで来たか!」
「いくぞ!」
島本が夙川の腕をとる
「え?なになに?どーいうこと?」
山科も心配そうについてくる
566456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/10(土) 19:06:37 ID:SxJp2XfN0
「大丈夫なの?ねぇ、なんなの?」
「君も一緒に来い」
俺は山科に同行を促した。山科は何も言わずに伏し目がちについてきた。
「パニックはごめんだ…」
本当なら食堂にいるみんなに逃げるように促さないといけないのだが…。
医専というだけあって医療関係者がすぐに駆けつけてきた。
周りはざわついているがパニックというより好奇心で青い顔と倒れている人を中心
に円を描くように集まっていた。藤澤大学の時と同じだ。ということはこの後の
流れも同じはずだ。俺たちは階段の近くまで行き逃げ道を確保すると大声で
叫んだ。
「パンデミックだ!」
「みんな逃げろ!うつるぞ!」
「伝染病だ!」
山科と夙川は何が起こったのか分からず目を白黒させている。
「なんだって?」
「キャー」
食堂から大勢の悲鳴が聞こえる。あと数秒後には階段に続くこの通路はごった返して人ごみで動けなくなるだろう。
「青い顔のやつには近付くなー」
それだけ大声で最後に食堂に投げかけると急いで1階に下りて校舎の外に出た。
急いでその場を離れたかったが警備員に道をふさがれてしまった。
「あの〜、どうかしましたか?」
名札には溝口鉄平と書かれている。おそらく定年を迎えた後に警備員になったと
思われる年齢風貌だ。どう話したものか…
567本当にあった怖い名無し:2010/04/10(土) 20:31:52 ID:h2IEpvqaP
面白さもあるけど更新の早い人はいいね。
前のストーリーを忘れてしまうほど遅筆だとついて行きづらいw
568ポメラニャ:2010/04/11(日) 09:37:12 ID:xZncwNtu0
俺が一番更新遅いんかなぁ 456さんを見習ってがんばります

>>542続き
ゲルティナンドの前方に、一人の男が立ちはだかっていた。
大男だ。年の頃は30前半くらいだろう。外人のような骨格を分厚い筋肉が覆い、身長はゆうに190はある。
髪は軍人のように短く刈り込まれ、鋭い眼光と、氷のような雰囲気を持つ男。
「ゲルティナンド・鬼島だな」
暗く、静かな地下駐車場に響く男の声には、明確な怒気と殺意が秘められていた。
ゲルティナンドは否定をしない、無言によって肯定の意を示す。
「5年前、お前が殺した拳法家の、弟子だ」
男は言いながら、ゆっくりと歩をゲルティナンドへと進めた。
「この事件に乗じてお前を、殺す」
だらりと下げられていた手は言葉にこめられた殺意を具現するかのように上段の構えをとり、足は軽快なフットワークを刻む。
左半身が前に出る形で左手は開手、右手は軽く握られ顎の横あたりに添えられていた。
空手のようだ。いや、この男は拳法家の弟子といっていた。空手の闘法を取り入れた拳法だろう。
しかし、そんな男を見てもゲルティナンドは構えはおろか、表情すら変えなかった。
無表情の上の冷たい目はじっと男をただ写していた。
「いくぞ」
2人の距離は十分に縮まっていた。男の後ろ足が地を蹴り、反作用の力が男を前方へと運ぶと同時に、右の逆突きをゲルティナンドの水月へとうつ。
予備動作はなく、常人が捕らえられるはずもないその攻撃はしかしゲルティナンドのコンパクトなバックステップによって空を切った。
直後、ゲルティナンドが1歩踏み込んでボクシングのワンツーを男の顔面へと放つと、
男の後ろ手がそれを受ける。
裸拳を相当鍛えているのか、筋肉の厚い部分で受けたにも関わらず男の腕に鈍い痛みがはしった。
だが、ここで隙をつくればつけこまれる。男は前の手を顔面付近にもどし、右の前蹴りを放ち、ゲルティナンドを突き放し距離をとる。
が、ここで一気にゲルティナンドが男へ両手刈—―タックルをしかけた。男の下半身めがけ、ゲルティナンドが抱きつきにくる。
蹴りの直後で膝蹴りをうつことはかなわず、両手で男の両足をがっちりとホールドしたゲルティナンドが、すぐさま男の足に自分の足を絡め押し倒そうとする
569ポメラニャ:2010/04/11(日) 09:38:08 ID:xZncwNtu0
>>562
が、
上から、風斬り音とともに嫌な予感を感じ、動作を中断すると同時に横へと転がる。
直後半秒前までゲルティナンドがいた場所に、レンガをも砕く拳法家の肘が振り下ろされた。
ゲルティナンドはそのまましばらく転がり、男と約3メートルほどの距離を持って立ち上がると乱れた呼吸を整えた。
「あれから、柔道対策をさんざんやった。お前は今日、確実に殺す」


570456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/11(日) 19:42:32 ID:SV9Cz13k0
>>568
俺はもう出来てて
コピペしてるだけだからなぁ…
連続規制で3連続コピペまでしかできないだけ
だから相槌があったらもうちょっと早く進むけど…

まぁ、長寿スレだし
ゆっくりでおkだと思う


そういえば、上のほうで79人紹介は俺用に作ったメモって言ったけど
この先のほうである叙述トリック…ってほどじゃないが
文章トリックのネタバレも79人メモに入ってるなw
----------------------------------------------------------------
571456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/11(日) 19:43:47 ID:SV9Cz13k0
「すいません。私席をはずしていたもので…不審者が中に侵入したんですかね?
なにやら2階のほうで騒ぎになってるようですが…」
「あぁ…えーと、食中毒ですよ。あなたも早く逃げたほうがいい」
「食中毒で?」
完全に墓穴を掘った。溝口は怪しむような眼でこっちを見ている。
どうやら俺たちが2階で騒ぎを引き起こした張本人だと思ってるらしい。当たらずとも遠からずだが…
「ちょっと、そこで待ってなさい。君たち、学籍番号は?」
夙川がフォローを入れる。
「この子たちは私の友達なんです。私の学籍番号は45283900です」
「じゃあ、君たちは部外者なんだな?」
どうやら溝口の頭の中では内部犯の夙川が外部の俺たちを引き入れて騒ぎを
起こしたという構築がなされているようだった。
と、そのとき。
「ぐぉあああああああああああああ」
溝口がいきなり悲鳴を上げた。溝口の体で死角になっていたが
青い顔のやつがすぐそこまで来ていたのだ。
「くそぉ、なにするんだ!」
572456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/11(日) 19:44:57 ID:SV9Cz13k0
左腕の骨が見えるほど深く噛みえぐられた溝口は腰につけた警棒を抜いて右手に
構え、青い顔のやつの顔面に何発も振り下ろした。半狂乱状態になっていた。
「け・警備員さん!おちついて」
我に帰った警備員は驚きの声を漏らした。
「大住先生!?な…なんで?」
溝口が顔面陥没にまで追いやった青い顔のやつの正体は大住賢治だった。確かに服装はスーツを着ている。
別の組織の先生である俺や朝霧、島本と鷹取には「人が死んだ」くらいのショックしか受けなかったが直接指導を受けていた山科や夙川は大きく動揺を見せた。
「せせせせせ先生が、どどどどどうして!」
「ちがう。殺すつもりはなかったんだ。大住先生が私に噛みついてきて…」
溝口は必死に言い訳をする。後ずさりする溝口が大住の死体につまずいて倒れる。
その時、俺は真のショックを受けた。溝口の影になっていてわからなかったが
すでに2・30メートル先から「奴ら」がフラフラこちらへ近づいてくるのが見えたのだ。
「警備員さん。話は後だ!まずは逃げましょう!」
「いやだ。私は捕まらない!警察にきちんと話せば分かってくれるはずだ」
左腕に大きな負傷をしているというのに人間はここまで保身に走れるもんなんだなと感心した。
573本当にあった怖い名無し:2010/04/11(日) 21:50:38 ID:T3cQnCOU0
二番煎じ
574本当にあった怖い名無し:2010/04/11(日) 22:21:27 ID:kLSXhKGl0
>>新人さん ◆H4mwWEe7mA

続きまだかな〜。ものすごく期待してます><
また登場してください。
575本当にあった怖い名無し:2010/04/12(月) 00:27:39 ID:SIuGdNDj0
      ↑
どんな話でも褒める馴れ合い大好きさんw
576ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/04/12(月) 01:18:40 ID:+TCPiWfw0
「君へ送る子守唄」◆SF知識皆無のまま、自虐玉砕のように投下します◆

動く死体が伝染病なのか、人知の及ばぬ神の罰なのか、それとも悪魔の呪いなのか・・・。
人類の誰もが答えを出せないまま・・・・世界は混沌の極みとなり・・・・。
もう幾年も時が過ぎ去った。

治安は悪化を辿り、一時は国家崩壊の危機まで瀕したが
死体が蘇り、生きている人間を貪り喰らい、また食われた人間も死亡後蘇り
生きている人間の肉を求めて徘徊するのだが、そのサイクルが多くの者の認識に
刻み込まれた位から、徐々に対策が個人レベルから取られ始めて・・・。

数ヶ月の時間は要したが、社会機能の一部一部が機能し始めた。
それに大きく貢献したのは、通称オートドールのアンドロイド達だった。
それは、愛玩用であったり、就労用であったり、様々なタイプのアンドロイドたちが
いたのだが、彼ら(または彼女ら)の貢献のおかげで、人類は滅亡を免れたと言っても
過言ではない。

人に使われるモノだったアンドロイド達は、市場で販売・使用が始まって十数年で
人の友人たる地位を確保し始めていた。
その最たるものとして、人類がアンドロイド達に提供した権利は、墓を持つ事だった。
それは、所有するという意味ではなく、墓に入るというものだ。

人と共に生き、「死んだ」アンドロイドとして、墓に葬られる。(と言う形を取れる)

ロボット三原則と言うものが在る。
人間に逆らわない。
人間を傷つけない。
上記二項該当以外、自己を守る。
それは、絶対としてどのタイプのアンドロイドにも刻まれた掟であり信仰だった。
人に造られた彼らは本当に、人に尽くす。
それ故の、功績だったとも、多くの人が感じてはいた・・・・・・。
577ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/04/12(月) 01:20:33 ID:+TCPiWfw0
2
博仁はこれからコンベアを流れていくアンドロイドの小さなカードタイプのメモリーを
手に乗せていた。強化特殊ガラスで隔てられた溶鉱炉へ続くベルトコンベアが博仁の足のある
床より数メートル下で稼動して、動かない女性型アンドロイドをゆっくりと溶鉱炉へ運んで行く。
それを操作しているのは、博仁だ。

博仁は、人へ深く貢献したアンドロイド専門の葬儀屋なのだ。

そのアンドロイドは、動く死体となってしまった赤ん坊を抱いていた。
ベビーシッターとして就労していたのだ。メモリーを抜くまで、彼女は子守唄を歌っていた。
子守唄を歌う以外の機能は全て自閉モードになっており、抱いた赤ん坊は徘徊して被害を
広げることはなかった。
彼女が、強く守るように赤ん坊を抱いていたからだ。

メモリーを解析して分かったことは、彼女の主人である赤ん坊の両親が、不幸にも
動く死体に襲われてしまった事。その家にはベビーシッターとしての彼女しかアンドロイドが
居なかった事。絶命の間際に赤ん坊を守るようにと厳命されたこと。

彼女の抱いていた赤ん坊の成れの果てには、片腕がなかった。
両親の最期の願い虚しく、助からなかったのだ。
メモリーは、その経過も刻々と機械らしく記録している。
赤ん坊が生命活動を停止して、死亡を確認して、しかし、彼女のAIはそれを理解しつつも
赤ん坊を抱き続けた。それは死体はモノではなく、敬意を示すものだからと、彼女が学んだ
結果でもあったが・・・・・。

数時間も間をおかずに、動き出した赤ん坊に、彼女はパニックを起した。
データとしての死者が蘇る事象は当然インプットされていたが、死んだ赤ん坊は確実に
生命活動を終えた後に、鼓動なく活動している様を認識した瞬間に、彼女はパニックになった。
死んだ赤ん坊の死体への敬意。
けれども、死体が動き出した。
守るべき対象はいなくなったはずなのに、蠢いて唸る。
けれども、感知できる生命活動は・・・止まっている。
578ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/04/12(月) 01:22:47 ID:+TCPiWfw0
3
それは、まるで人間が、近しい人物が動く死体になってしまったときの様な・・・・・・・・。
その心理に酷似しているような反応でもあった。
データとして、動く死体は、噛み付く、引っ掻くなどで何故か伝染する。
そのメカニズムは未だに解明されはいないが、それは多くの事象から証明されている。
アンドロイドは、人間を絶対的に傷つけてはいけないという掟がある。
プログラムであるそれは最優先は主人。そしてその次に主人の家族。
どれも失われている状況では、無条件に人間を守るように動く。

だから、彼女は赤ん坊を強く抱いて腕から逃がさないようにした。
他の人間を守るために、自分が出来る行動を・・・・・。

動く死体の赤ん坊は、低く唸る。赤ん坊特有の声で・・・。
パニックになった彼女は、抱きこんで・・・何時の間にか子守唄を歌い始めていた。
唸る赤ん坊を、プログラム上では違うと判断できているのにも拘らず、ぐずっている時にする
行動を行っていたのだ。

パニックはどんどん大きくなる。それはプログラム上の行動が異常を起す警告まで発するほど
大きくなった時に、彼女は自らの稼動電源を子守唄のメモリーと声帯機能を生かした状態で
自閉モードに入った。
579ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/04/12(月) 01:27:14 ID:+TCPiWfw0
4
赤ん坊を抱いたまま、彼女は溶鉱炉へ消えていった。
何も残さずに、赤ん坊だった動く死体も、彼女も溶けてそして跡形もなく消えてしまうのだ。
この世界から。

動く死体が発生し始めた頃から、彼女のような行動をするアンドロイドが後を絶たない。
自らの主人だったモノを抱きかかえたまま自閉モードになって、そして死体と一緒に
溶鉱炉へ落とされる。

けれども、産業廃棄物としてではなく、人類を守った友人として、その名前を墓に慰霊碑に
人と並んで名前を刻まれる。
博仁が今日担当したアンドロイドの名前は、「マリー」だった。
ありふれた名前だ。それはベビーシッタータイプによく付けられる名前だったが・・・・。
子守唄を歌い続けたアンドロイドは、きっと博仁の中に残り続けるだろう。
彼自身がそう、何となく思考した。

「物を大切にしたら、それには魂が宿るとか言うが・・・・・」

ぽそりと呟いた彼の声は、酷く物悲しい声だった。
元主人だった動く死体を抱きしめるようにして、そのまま動きを封して自閉モードに入る
アンドロイド達は、機械の自殺と何時しか呼ばれていた・・・・。

END
580ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/04/12(月) 01:31:03 ID:+TCPiWfw0
「ご主人様と一緒」

ご主人様!
ご主人様!ご主人様!!
お下がりください!!!
危険です!!!

侵入者には生命活動がありません。
危険です!!!

戦闘機能を持たない愛玩用ドールのミミは僕の逃げる時間を稼ぐために
ゾンビ達の前に立ちはだかった。
人間とは認識されないドールだけど、障害物としてゾンビたちは退けようとする。
けれど、守備モードのドールは戦闘用でなくても、敵対象が人間ではない状況では
大いに人間ではない怪力を発揮する。
だが、生きていないゾンビたちも、動きこそ鈍いが、その力は舐めてかかれない。
現に、ミミはゾンビに押され、倒れないようにしているのがやっとのようだった。
581ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/04/12(月) 01:33:19 ID:+TCPiWfw0
2
ご主人様!
お早くお逃げください!!
救助隊への連絡は済ませました。此処への到着まで、最速で10分。最長で30分としても、
ミミだけでは、ご主人様をこの場で御守りすることが叶いません!!
お早く窓から、屋上へ!!!

避難用の梯子が覗く窓をミミは指差した。
僕は、ミミを置いて行きたくはなかった。大事な大事な僕のドール。
僕だけの可愛いドール。
色んな事を教えて、いろんな事が出来るようになって、僕だけのためだけに
言葉も行動もしてくれる、僕だけの宝物なのに!!!

僕にはミミだけなのに!!!

僕からミミを奪うなぁ!!!!
582ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/04/12(月) 01:36:21 ID:+TCPiWfw0
3
ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様・・・・ご主人様・・・・。
ミミをいつも可愛がってくれる、優しい素敵なご主人様。
お亡くなりになられたのですね。
ミミを助けようとしてくださいましたのですね。
ミミは機械だから死なないのです。
ミミは壊れても修理が出来るのです。
ミミはメモリーさえ無事であれば、ボディを替えても、ミミなのです。

でもご主人様は人間でした。
優しい素敵なミミのご主人様。
もう頭を撫でてくれないのですね。
もう、呼んではくれないのですね。
ミミって、呼んで笑って欲しいです。
それが、ご主人様の嬉しいことだって知っています。教えてくれたのはご主人様です。
ミミが嬉しいをすれば、ご主人様が嬉しいのだと、ご主人様が教えてくださいました。
ご主人様が気持ち良い事が、ミミのお仕事です。
583ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/04/12(月) 01:38:37 ID:+TCPiWfw0
4
でもご主人様は、お亡くなりになられたのですね。
でもご主人様・・・・いいえ、もう・・・ご主人様ではないのですね。
人間ではなくなってしまったのですね。
ご主人様のご遺体でもなくなってしまったのですか?
ご主人様のご遺体であれば、大事にしなくてはなりません。

ご主人様ご主人様ご主人様・・・ミミのご主人様・・・。
お亡くなりになられたのに・・・・ご遺体は動いて、ご遺体ではなくなったのでしょうか?
ミミは、ご主人様のものではなくなりました。
けれども、動くご主人様だったご遺体になってしまったはずのものが動くものですから

ミミは嬉しいをしたくなるのです。
でも、ご主人様はいないので、ご主人様は嬉しくないのです。でも動いているものは
ご主人様だったものですから、ミミは頭を撫でて欲しいのです。

でも、外へ行かれるのでしたら、ミミはお止めしなくてはなりません。
でも、名前も呼んで欲しいのです。
でも、人間を守らねばなりません。
でも、ご主人様を気持ちよくして差し上げたいのです。
でも、外に出してはいけません。
でも、笑うご主人様を見たいのです。

ミミは不良品でしたのでしょうか?
ご主人様の死亡を通報しました。
でも、ご主人様ではないものにご主人様と同じ様にして欲しいのです。
ご主人様・・・ミミと一緒にここにいましょう。

いいえ、コレはご主人様ではないのです。
ご主人様はお亡くなりになりました。
584ぷれしあ ◆zcD6axmzww :2010/04/12(月) 01:46:16 ID:+TCPiWfw0
5
いいえ、ご主人様だったものはご主人様で、でも外に行かれたら他の人間を襲います。
そうしたらいけないのです。
ご主人様が・・・・いいえご主人様ではない
ミミが・・・ミミは・・・ご主人様
ご主人様・・・ご主人様
ミミがミミは
ミミはミミは・・・・・・。

通常稼動システムに異常行動探知。
通報します。
製造番号S−T5426823354281645M
機種名BS−MMI093

対象確保。
封じ込めます。
ホールドのまま自閉モード。
解除の必要性はありません。
解除コード消滅。

「ごしゅ・・じ・・さま・・・・いっしょ・・・うれ・・し」

自閉モード確定。


END
585プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/12(月) 16:45:28 ID:ns0HHutnP
にぎやかで気がついたら置いていかれていた!

しかし投下。
586プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/12(月) 16:46:58 ID:ns0HHutnP
デッド・サンライズ

(34)
ショッピングセンター内は、至って普通の雰囲気だった。
もちろん買い物客は少ない。
さっき屋上からチラリと見たところ、ショッピングセンターの周りにはバリケードが築かれていた。しかし、駐車場にはそれなりに車が停まっていた。
「ここはね、アメリカからカナダに逃げる人のための中継地点なんですよ」
最初に入った店で、店員が説明してくれた。
「店の周りにあるバリケードは、もちろんゾンビを入れないためです。
外からの入り口は2箇所だけ、基本的に一箇所は入り口専用です。
実はね、ここはアメリカからカナダに通じる道の検問でもあるんですよ。ゾンビやなりかけの人を、できるだけカナダに入れないようにね」
店員はそう言って、重装備の警備員に視線を向けた。
おそらく、患者がここに入ったら彼らが手を下すのだろう。
光で虫を引きつけて焼き殺す、集蛾灯のようなものだ。
妻は商品を選ぶのに夢中で聞いていないが、マイケルは少し気分が悪くなった。
身内が発症した家族は、かつてのマイケルと同じように追い詰められているはずだ。身体的にも精神的にも、物資的にも。
それを物資をエサに集めて殺すための施設なんて…自衛のためとはいえ、心が痛む。
本当は日光を浴びた全員がゾンビになり得るので、そんなことをしても防ぐ事はできないのに。
だが、それを口に出す訳にはいかない。
そんな事をすれば、自分たちが犯人であるとばれてしまう。
自分と妻を守るために、それは許されなかった。

「ねえあなた、見て見て!
こんな大きな宝石がこんなに安いのよ!」
妻が大はしゃぎで商品を持ってきた。
その顔は、長らく見ていなかった弾けるような笑顔だった。
それを見た瞬間、マイケルは他者の事を深く考えるのをやめた。自分は妻のためにここに来たんだから、今は妻を楽しませる事だけに集中すべきだ。
店員が一瞬向けた憎らしげな視線にも、感覚を向けることはなかった。
587プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/12(月) 16:48:05 ID:ns0HHutnP
(35)
マイケルたちは買い物を楽しんだ。
この世界崩壊の危機にあって、食料品や医療品は非常に高価になっている。
しかし、オリンポス社によって衣食住を保障されているマイケルたちにはそれは必要ない。
それに、食料品の中でも酒など優先度の低い嗜好品はそれほど高くない。
衣料品も動きやすくて丈夫な服は高いが、妻が欲しがるようなひらひらして非常時に向かないような服は意外と安かった。
そして何と言っても、宝飾品は安い。
生きていくのに必要がないので、今や金は水より価値がないのだ。
妻はそれをいいことに、貴金属や宝石を思うまま買いあさった。
外に出られなければ着飾るしか楽しみはないので、無理もない。
店員もそれに応えるように、次々と見事な宝石を持ってきた。
今時こんなものを欲しがる人はいないに等しいので、この機会に売れるだけ売ってしまおうと思っているようだ。
マイケルはだんだん重くなっていくキャリーケースを引いて、妻の後について歩いた。
楽しい時間は、あっという間に過ぎていった。

「ああー買った!
少し喉が渇いたから、休憩しましょう」
数時間後、マイケルと妻は疲れてカフェテリアに入った。
飲み物と軽食を買って、マイケルは妻をテラスに誘った。
もちろん日陰の席である。
多少の日光を浴びてでも、マイケルは人の耳を避けたかった。
そう、マイケルはこれから、妻に真実を話さねばならないのだ。
娘の命を奪った食人病を起こし、太陽の光を凶悪に変えてしまったのは、マイケルが勤めるオリンポス社であることを。自分は今までそれを知っていたが、話さずに黙っていたことを。
話せば、どうなるかは分からない。
しかし、今を逃すと許してもらえそうな機会はない。
マイケルは一度深く息を吸い込み、最高に機嫌のいい妻の前に腰を下ろした。
588プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/12(月) 16:49:37 ID:ns0HHutnP
(36)
「なあ、少し話があるんだ」
妙によそよそしいマイケルの声に、妻はふと顔を上げた。
「どうしたの、あなた?」
一応聞くような素振りは見せているが、妻はすぐにでも買い物の話をしたいようだ。
だが、これほど重い話をするには、逆にこのくらい気がそれていたほうがいい。
正気の時に話したら、妻は間違いなくマイケルを責め立てる。
ずるいようだが、この方が夫婦にとっていい結果になるとマイケルは信じていた。
しかし…この期に及んでも、マイケルの頭の中では、このまま騙しきってしまえという声が強く響いていた。
だまされているからこそ、今妻は幸せでいられるのだ。
それを自分から壊すことはない、と。
マイケルは、口が鉄になった気分だった。
早く言って楽になりたい、言えるのは今しかないと思えば思うほど、言ってしまう事の恐怖も増していく。
妻の顔に、苛立ちが見えてきた。
それに急かされるように、マイケルが口を開きかけた瞬間…。
「動くな、撃つぞ!!」
物騒な声とともに、マイケルの視界に黒いものが映る。
それは、つきつけられた銃口だった。
「な、何だ!?」
マイケルが慌てて立ち上がろうとすると、後ろから強い力ではがいじめにされた。
見れば、さっき店内で見た重装備の警備員たちがマイケルと妻に銃をつきつけていた。
「何なんだ、あんたたちは!!」
マイケルの問には答えず、リーダー格の男は空に向けて派手にマシンガンを撃ち鳴らした。
「いよっしゃあーっ!
オリンポス社の社員を捕まえたぞぉー!!」

同時刻、ショッピングセンターの各所で銃撃戦が発生した。
オリンポス社の社員たちは、次々とこの店の者たちの手に落ちていった。
589本当にあった怖い名無し:2010/04/12(月) 23:39:15 ID:iUvSXkQi0
人間同士の醜い争いキターーーーッ
590本当にあった怖い名無し:2010/04/12(月) 23:45:50 ID:11Fwk8dr0
      ↑
馴れ合い大好きさんもキターーーーッ w
591本当にあった怖い名無し:2010/04/13(火) 00:15:31 ID:lwRnP7Wz0
でもプリニーの小説が一番楽しみなんだよな〜w
592本当にあった怖い名無し:2010/04/13(火) 04:47:15 ID:M27T3weE0
なんとも疲れる奥さんだなぁw
ミミくらいの健気さを見せて欲しいもんだw
ともあれ、お二方ともGJです!
593本当にあった怖い名無し:2010/04/13(火) 07:02:12 ID:GxmKEv9R0
>>590
いちいち馴れ合い馴れ合いうるせえよ死ね

って書けばいいんですか?><
594本当にあった怖い名無し:2010/04/13(火) 16:56:55 ID:P83/bSXf0
気に入ったところがあれば素直に書けば良い。
それで作者さんのモチベーションも上がる。
でも、じゃあ気に入らないところも素直に書いて良いじゃないかってのは残念な考え。
明らかに直した方が良くなるってんならともかく、個人の好みレベルの事にまで合わせられんだろ。
つかね、何でもかんでも褒めりゃ良いってもんじゃないのは分かるが、わざわざ突っかかる方が可笑しいだろうよ。

とにかく、作者さん投下ありがd。
456さんの新規分も早く読みたい…… ^q^
595本当にあった怖い名無し:2010/04/13(火) 23:06:20 ID:EKS9rcP40
>590>593
住人同士の醜い争いキターーーーッ
596本当にあった怖い名無し:2010/04/13(火) 23:21:39 ID:lPNNCLxF0
「よし、位置につけ!」
「狙いは頭だ! 外すなよ!」
「撃て−!!!」
597456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/14(水) 02:26:22 ID:HQLogFQg0
「そうじゃない!奴らがもうそこまで来てるんだ。早くしないとあんたも死ぬぞ」
「騙されないぞ。俺を殺人犯に仕立て上げるつもりだな。俺は人殺しなんかじゃない。
ここに残ってそれを証明して見せるぞぉおおおお」
もはや意地になっていた。なおも説得を続けようとする俺に鷹取がぽんと肩に手を置いた。
首を左右に振る。「もうだめだ」そういうサインらしい。
説得をあきらめると俺は「早く逃げろよ」と言い残してみんなとその場を離れた。
しばらくして
後方から悲鳴のような声が聞こえたような気がしたが
それが溝口のものだったのかは今となってはわからない。
598456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/14(水) 02:27:11 ID:HQLogFQg0
 逃げる道中に俺たちは山科と夙川に事の顛末を説明した。
「そんなことって…」
二人はショックを受けていたがそれを素直に受け入れた。
まぁ、目の前で警備員が噛まれたのだ。しかも自分を指導する先生に。信じるほかないということだろう。
「で、これからどうするの?」
夙川が聞く
「そうだな…とりあえず、アイランドシティ大橋を抜けて町を出よう。この島は
危険だ」
「じゃあさ、ちょっと東区よってからでいいかな?」
「?」
「パパやママも連れ出したいし、持ち出したいものもあるし」
なるほど、夙川はアイランドシティの住人だった。
「わかった。山科さんは?」
「わたしは、自宅は島の外だからいいよ」
「オーケー、じゃあまずは東区を目指そう」
皐月駅は通常通り「営業」していた。
「よかった、まだ電車は動いてるようだ」
「家の最寄り駅は長月駅よ」
「4駅くらいか…数十分で行けそうだな」
599456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/14(水) 02:28:05 ID:HQLogFQg0
電車に揺られ、みんな俯いたまま誰もしゃべらなかった。電車はそこそこの乗車率で、俺と朝霧は立ち、鷹取と島本、山科と夙川は座席に座っている。
すると突然、電車が急ブレーキで止まった。続いてアナウンスが流れる。
「車内急病人発生のために救護活動をしております。そのため一時電車を後退させて葉月駅に停車させていただきます。皆さんのご理解とご協力をお願いします」
チッ
俺は舌打ちをした。あとひと駅だというのになんということだ。こうしている間にもパンデミックは広がっているのかもしれない。
「落ち着けよ」
朝霧が俺を諭した。しかし、しばらくしても後退する気配が一向にない。
さすがに同じ車両に乗ってる乗客たちもざわめき始めた。
「後退するとか言ってたけどまだかしらねぇ」
「糞が、こっちは商談控えてるんだぞ。後退するなら早くしろ」
あちこちから不満の声が漏れ始めた。
「俺も医者の卵だ。何かあったのかもしれん。一応見てくるよ」
そう言って鷹取が隣の車両に連結する扉を開こうとしたその時…
勢いよく連結扉が開いてスーツが破けて血まみれになっている男が倒れこんできた。
さらに後ろから同じように血で汚れた服装をしてる人々が次々になだれ込んでくる。
『なにがあったんだ?』
もはやそうは思わなかった。奴らだ。
600456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/14(水) 02:34:03 ID:HQLogFQg0
電車が動かないところを見ると運転手は死んだか運転できない状態なのだ。
俺たちのような知識がない同じ車両の人々は血まみれの乗客に対して何があったのかと
諮問をはじめる。その内容を耳で拾っていくとつまりこういうことらしい。
1号車に乗ってたフード姿のじいさんがいきなり倒れたので乗客が運転手に通報。
通常なら車掌が見に行くのだが、1号車で起こった異変ということもあり
運転手が電車を止めて状況を確認。再度運転席に戻った運転手が後退のアナウンスをしてると、
なんとじいさんが復活。人々を襲い始めたというのだ。怖いのはここから。
襲われて死体になった人々まで他の人を襲い始めた。一瞬にして電車の中は地獄絵図と化したという。
運転手は当然死んだ。いや、もしかしたら生き返っているかも知れないが…
「そんなバカな話信じられないわよ」
キャリアウーマン風の女が笑い飛ばした。
「私は司法書士よ。ほら、そこのポスターにも乗ってるでしょ」
女は吊り広告を指差した。確かに立花怜子法律事務所という文字とその女の顔写真が載っている。
「そんな非現実的なことは信じられないわ」
「司法書士風情がいきがるなよ、俺は弁護士だ」
血まみれのリーマンは確かに天秤のバッジをつけていた。
「弁護士の生瀬忠雄だ。よーくおぼえとけ」
こんな状態で意味もない自己紹介をしだすこいつらに俺はうんざりした。やれやれ
車内で広がる現実か否かの論争に俺は加わらず、手動で電車のドアを開けるレバーを探した。
すぐ近くの座席の下についていた。
601456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/15(木) 04:55:45 ID:y4QbDLQe0
「わかったわよ!じゃあ、わたしが1号車に行ってみてくるわ。それでゾンビがいたら謝りましょう」
「ゾンビとは言ってない」
「じゃあ、死にながら歩くサーカス団の人がいたら謝罪しましょう」
「みなさん、静かにしてください!」
俺は声を張り上げた。周りがしんと静まり返る。
「どちらにしても、この場から脱出するのが先決です。
今から手動でドアを開けます。急いで隣駅まで逃げましょう」
「逃げるって。何にもないのに電車を降りるわけ?」
立花は食い下がってくる。この手の輩に俺たちが経験したことを言ってもなにも
始まらない。
「念のためです。もしかしたら危険な伝染病かもしれないし…」
「ゾンビは本当にいるんだよ!」
いきなり声を上げたのは夙川だった。
「私見てきたもん!わたし、杜美津医専って学校に通ってるんだけど、
そこの警備員のオッチャンもゾンビにやられちゃったし、この目でゾンビを見たもん!」
この女は話をややこしくする。俺は頭を抱えた。車内は再び騒然となる。
「ほら、言っただろ!奴らはこの車両にもすぐ来る!早く逃げないと」
602456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/15(木) 04:57:25 ID:y4QbDLQe0
「馬鹿ね!弁護士のくせに『往来危険罪』も知らないの?
何もないのに線路に降りたら逮捕されるわよ!」
「馬鹿が、臭い飯食うのと死ぬのだったら臭い飯のほうがましだ!」
バシュ
そんな音とともに電車内の電気が消えた。
「なによ…なんなの…駅員はどうなってるの?」
その時、遅ればせながらやっと車掌が登場した。
「みなさん。落ち着いてください。車掌の郡山貞也です。
ただいま1号車の運転手と連絡が取れない状態にあります。電気も復旧しません。
輸送指令には連絡を入れましたので救助はもうすぐきます。そのまま座席でお待ちください!」
そういうと、車掌は次の車両に移ろうとした。その時
ガシャン
窓が割れる音、「奴ら」が連結扉の窓を破って今にも入ってこようとしているのだ。
暗くて人影しか見えないがその動きはどう考えてもヤツら以外にあり得なかった。
「ちょ、お客様落ち着いて!すぐに助けはきますので!」
何も分かっていない車掌はそれを乗客だと思って必死でなだめる。
「うわぁああああああああ」
生瀬は発狂モードに入り電車のドアをドンドンと叩いた。
603456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/15(木) 04:59:02 ID:y4QbDLQe0
「ちょっと、落ち着きなさいよ。なにがあったの?車掌さん?」
そういって車掌に近づく立花の顔に生温かい液体がかかった。手でそれをなでて
凝視する。暗くてよくわからないが「黒」もしくはそれに準じた色の可能性が高いということはわかった。
立花がそれが車掌の頸動脈から噴き出した鮮血だと理解するまでにそう時間はかからなかった。
「ぷぎょああああああああああああああああ」
立花はひっくり返る。車掌は何か言いたそうに口をパクパクさせていたが
首にできた穴から空気が漏れて口からはヒューという音しか出なかった。
車掌は連結扉の窓越しに奴らに首を噛みちぎられたのだ。
車掌の肩を掴んでいた「奴ら」がそれを突き放すと車掌はどさっと倒れこんだ。
「うひょああああああああ」
生瀬は相変わらず発狂している。
「落ち着いてください生瀬さん!。ドアをあけましょう!」
俺が言い終わる前に島本がレバーを引いた。ガチャンという音がする。成功したようだ。
「よし!扉をあけるぞ」
レバーを作動させると思ったより扉はあっけなく開いた。
「ふひぃいいいいい」
狂乱状態の生瀬も扉を開き転がり込むように外に這い出る。
当たり前のことだが、降車口と地面とはだいぶ高さがある。
いつもはホームがあるから高さを揃えられているだけだが今はホームがない。
転がり落ちた生瀬はゴキっと変な音をたてて奇声を上げるのをやめた。
首から落ちて死んだようだ。俺たちは梯子を見つけて電車から降りた。
604本当にあった怖い名無し:2010/04/15(木) 15:35:57 ID:6P4iAphK0
あらためて読むと、どんどん死にますなw
まぁそれがゾンビクオリティ!
605本当にあった怖い名無し:2010/04/15(木) 18:49:25 ID:MkbDW2vI0
>>603
無様な死に方したのが約一名居るなw
606456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/15(木) 21:30:01 ID:y4QbDLQe0
「よし、走ろう!」
俺たちは長月駅ホームに向かって思いっきり走った。
比較的後ろの車両にいたので長月駅に行くには先頭車両の
横を通り抜けていかなくてはならない。
なるほど、電車の窓は血で汚れたり変な肉片が飛び散っていたり
割れたりしていた。すさまじい地獄があったことが容易に想像がつく。
少しだけ生瀬が可哀想に思えた。
幸い先頭車両からゾンビが飛び出てくることはなく長月駅に無事到着した。
607456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/15(木) 21:35:37 ID:y4QbDLQe0
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まだ出てきてないけど、死亡=ゾンビ化という設定がある
それを踏まえたうえでここまでのまとめ

主人公一行(生存)
主人公…主人公 
朝霧進一…主人公の親友 クレー射撃部
島本洋介…サボリ屋
鷹取たつみ…医学部
夙川さくら…島本洋介の恋人
山科由香…夙川さくらの友達

死亡orゾンビ化
吹田加奈子…教務 藤澤大学に6年勤務 
大住賢治…杜美津医専 地域看護方法論の先生 ベテラン
生瀬忠雄…弁護士
郡山貞也…夏目交通社 車掌

不明
国松知事…?
木津孝允…行政法教授 くたびれた風貌 帝大卒

こんなところか
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608456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/15(木) 21:37:20 ID:y4QbDLQe0
 長月駅ではオレンジの服を着た救助隊員が待ち構えていた。
「おい、君たち…今から救助に行こうと思ってたんだが…どうしたのかね?電車を降りてきたのか?」
救助隊員や駅員が驚くのも無理はない。電車が止まったからと言って乗客が勝手に電車を降りて歩いていくことなどありえないからだ。
だが、俺たちの後ろからついてきた血まみれでボロボロの人たちを見て何かがあったとすぐに察知したらしい。
「おい、なにがあったんだね?運転手とも車掌とも連絡が取れないんだが!事故でもあったのか?まさかテロか!」
救助隊員は俺の肩を揺さぶりまくし立てる。すべてを話してもいいが時間が惜しい。そう感じた俺は
「あの人に聞けばわかります」
と、必死で逃げてきた立花司法書士を指差した。
救助隊員は立花のもとに駆け寄る。
ここからでは何を言っているのか聞こえないが流石にあの女でも、
ゾンビの存在を否定はしないだろう。
いつの間にか「青い顔集団」から「ゾンビ」という言葉を使う自分に気がついたが修正する気にはなれなかった。駆けつけてきた駅員が
「さぁこちらへ、何か飲み物を…もうすぐ救急車が来るから」
といって人数分の毛布を渡してくれた。
その駅員には申し訳ないが俺たちは人目につかないようにこっそりその場を立ち去った。
609456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/15(木) 21:38:39 ID:y4QbDLQe0
駅が無事だったので東区は無事だと高をくくっていたのは間違いだった。
確かに奴らはいないが、車が横転していたり、何かの書類が風で舞ってたり、
どう考えても平常な状態ではなかった。アイランドシティ住宅街。
夙川の家はそこにある。モダン的な一軒家が立ち並ぶ通りで、
比較的裕福な層がここにはすんでいる。なるほど、夙川の父、夙川英輔は開業医。
母の夙川百恵はどこかの財閥のお嬢様だと聞く。
少し離れた所にはマンションも何棟か建っていた。
そちらも高層マンションでかなり値が張るはずだ。
そのアイランドシティ住宅街に人っ子ひとりいないのだ。
豪華な庭に設置された散水機があらぬ方向に水をかけている。
夙川の家についた。夙川がポケットから鍵を取り出す。
「俺が開けようか?」
島本が言った。みんな同じことを考えてるらしい。最悪の事態を…
「いや…私が開けるわ」
そう言うと鍵を差し込みそっと回した。ガチャ。開錠する音。ドアノブをつかむ。ゆっくり回す。
まるで何十時間もたったかのような感覚に陥りながら一つ一つゆっくり動作をこなしていく。
610本当にあった怖い名無し:2010/04/17(土) 11:56:00 ID:9B8XZSyVO
良いね秀作だね、良いスレの予感と大分下がってたのでゾンビ物好きな俺は期待ageしとく
611456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/17(土) 19:16:52 ID:pZHtdGAT0
盛り下がってますなぁ

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まるで何十時間もたったかのような感覚に陥りながら一つ一つゆっくり動作をこなしていく。
ドアをゆっくりあけて夙川が中に入り込む
「ただいま〜、パパ?ママ?」
小声でリビングに呼びかけた。
「パパ…ぱぱぁ?」
俺たちも玄関から家に上がろうとしたとき、
夙川がここからは死角になって見えないリビングルームで何かを見つけたようだ。
「パパ!」
悲鳴に近い声をあげる。夙川がリビングに駆け込み俺たちの視界から消える。
「待て!さくら!」
島本が靴も脱がずに駆けていく。俺たちもそれに続いた。だが、とき既に遅し…
夙川さくらは夙川英輔だったものに首をひねりつぶされていた。
「てめぇええええええ」
島本が角にあったゴルフクラブで夙川英輔に殴りかかる。
何発、いや何十発もクラブを叩きこんだ。
俺たちはそれを見ていることしかできなかった。
クラブがボキッと折れてやっと島本は肩で息をつきながら殴るのをやめた。
ぐちゃぐちゃになった肉片はさすがにもう蘇りようがなかった。
「…行こう、街を出るんだ」
「俺の責任だ。止めておけばよかった…こんなことになるなんて」
島本は崩れ落ちた。
「立つんだ。立ってくれ。早く行かないともっと大変なことになるぞ」
「俺はここに残る」
「な・・・に?」
「おれはここでさくらと一緒にいるよ」
「馬鹿な真似は…」
朝霧が俺の肩をポンとたたいた。首を左右に振る。
好きにさせてやれ。そういう意味だと解釈した。
612456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/17(土) 19:17:34 ID:pZHtdGAT0
「なぁに、心中するつもりじゃない。しばらくたったら俺も行くさ。
だけどもうしばらくさくらのそばに居させてくれないか?」
「…わかった。絶対に戻ってこいよ」
「あぁ、約束するよ」
約束を果たすつもりがないように俺には見えたがそれ以上の言及は避けた。
「じゃあ、俺たちは行くからな。いつでも携帯に電話してくれ」
「わかった」
俺たちは夙川邸を後にした。一つみんな口に出さなかったことがある。
あそこに夙川英輔がいるということは、母親の夙川百恵も当然いるはずだった。
ということは…?
俺はこれ以上考えないようにした。
島本がそれも承知の上で残っているということを知っていたからだ。
もしかしたら、夙川百恵はどこかで買い物中に事件に巻き込まれ、
いまもどこかで生きているかもしれない。
そう願いながら…
613本当にあった怖い名無し:2010/04/17(土) 20:13:17 ID:+wILGubJO
投下する時はコテ付ければいいの?
614本当にあった怖い名無し:2010/04/17(土) 20:21:15 ID:+wILGubJO
ごめんなさい、理解しました。
615456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/17(土) 20:54:05 ID:pZHtdGAT0
つけなくてもいけるだろうけど
成り済ましが捏造の続編を書く可能性もあるだろうし
616プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/18(日) 12:24:00 ID:Sr4aRr3GP
成りすましと一緒にされたくなかったらつけるのがおすすめ。
このスレも荒れる時はヤバイくらい荒れるから、平時から備えておく必要はあると思われる。

では続きを投下。
617プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/18(日) 12:25:26 ID:Sr4aRr3GP
デッド・サンライズ

(37)
マイケルは、動けなかった。
その代わりひたすらとぎすまされた耳に、どこかから銃声が聞こえてくる。
「ふん、どうやら抵抗する奴らもいるようだな。
さすがにこんな能天気な奴ばかりではないか」
マシンガンを持った、いかついリーダー格の男が言う。
マイケルは混乱していたが、それでも必死に状況を把握しようと聞き耳を立てた。
「そりゃそうですよ、隊長。
こんな危機意識のない奴ばかりじゃ、大企業は成り立ちませんって」
サングラスをかけた若い男が、マイケルの膝を蹴飛ばしながら言う。マイケルはさすがにムッとしたが、恐怖がそれに勝った。
なおも固まっているマイケルの耳に、今度は若い女の声が届く。
「隊長、食品棟2階が苦戦している模様です。
応援に行ってもよろしいでしょうか?」
どうやら、他にも仲間がいて、無線で連絡を取り合っているようだ。
隊長はにわかに顔を曇らせ、うなずいた。
「うむ、しかし必ず複数で行くのだ。
オリンポス社の社員どもは多くとも3、4人で行動しているはず。
これだけの数で奇襲をかけて押し返されるとなると、おそらく相当な手練れだ。
無理に突っ込んで殺されることはない、慎重にいけ。あの大企業を危険から守っていたセキュリティ部隊だとしたら、油断は禁物だぞ!」
「了解!」
すぐにその若い女と、2、3人が走り去っていった。
マイケルはそこでやっと、この暴徒の目的を理解した。
(こいつら、ただの暴徒じゃない!
私たちオリンポス社の社員を、それと分かって狙ってきている)
だが、オリンポス社の社員を狙う理由までは分からなかった。
マイケルは意を決して、隊長と呼ばれた男に声をかけた。
「おい、なぜ私たちを捕らえる?
なぜオリンポス社を狙うんだ!?」
618プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/18(日) 12:27:05 ID:Sr4aRr3GP
(38)
その瞬間、隊長の顔が憤怒の形相に変わった。
隊長は突然、乱暴にマイケルの腹を銃で殴ったのだ。
「分からん…だと?
てめえがおれたちに何をしたかは、その胸に聞いてみろ!!」
苦悶の表情を浮かべるマイケルの前で、妻が悲鳴を上げる。
妻はぼろぼろと涙を流して、それでも手を出せないまま訴えた。
「やめて、私たちが一体何をしたというの…?
分からない…本当に分からないのよ!
お金なら全部あげる、買ったものも全部置いていく、私たちは何も奪わずに立ち去るわ。だからお願い、夫を放して!」
それを聞いたとたん、若い男が憎らしげに顔を歪めた。
「このクソあま…!!」
「やめろ」
銃を振り上げた若い男を、隊長が止めた。
隊長はただ怯えて泣き叫ぶ妻を見下ろし、若い男に言った。
「どうやらこいつは、本当に分からんらしい」
その一言で、周りにいた他の店員たちも怒りや苛立ちをあらわにし始めた。
しかし、妻がいくら自分に問うても、こんなに多くの人の恨みを買った覚えなどある訳がないのだ。公正明大なオリンポス社の社員の妻として、世界を救おうと研究していた男を陰で支えていた自分に。
「何よ、何なのこれ…どうしてこんな目に遭うのよ?
結局私たちに何がしたいの?
あなたたち、私に何の恨みがあるのよ…?」
混乱して泣き叫ぶ妻を前に、マイケルは嫌な予感を覚えた。
妻に心当たりがある訳がない…しかし、マイケルにはある。
しかしこれは、社の命運をかけて守り抜いてきた秘密だ。
そんなマイケルを嘲うように、隊長が凶悪な笑みを浮かべた。
「分からんなら教えてやる、おまえらがおれたちに…世界に何をしたかをな!」
619プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/18(日) 12:28:41 ID:Sr4aRr3GP
(39)
マイケルの背中に、冷たい汗が流れた。
この兵士たちがあの秘密を知っているとは考えにくい。
しかし、もしそうであったら…そう考えたとたんに、マイケルは叫んでいた。
「やめろ、妻を巻き込むな!
これは私とおまえたちの問題だ、妻は何も悪くない!!」
とたんに、妻がいぶかしそうにマイケルの方を見た。
「あなた…」
マイケルはすぐに、己の失敗を悟った。
さっきの一言は確実に、事態を悪化させた。
マイケルは妻をこの場から離したくて言ったが、この兵士たちがそうするとは考えにくい。むしろ今のは、妻に隠し事があると教えてしまったようなものだ。
妻は、一度本気で言ったことを後で演技だったと言ってごまかせるほど馬鹿ではない。
ただ美しいだけでなく、賢い女を選んだのが裏目に出た。
「ちょっと、どういう事…あなた一体何を隠してるの?」
疑念を抱き始めた妻に、隊長がよく響く大声で告げた。
「そうか、隠し事はよくないよなぁ…おれが特別に教えてやるよ。
こいつの勤めてるオリンポス社はなあ、世界に恐ろしい病気を流しやがったんだ。
食人病だよ食人病!
オリンポス社が世界中に流しやがったアンブロシアのせいでよお、墓から死体が起き上がって、そこから人をゾンビにする病原体が広がったんだ。
こいつらはなあ、利益のために世界を滅ぼそうとしてるんだよ!」
「…何、ですって…!!?」
みるみる妻の顔色が変わっていく。
マイケルの目の前で、これまで必死に守ってきたことががらがらと崩れていった。
まさか、こんな形で秘密が明かされることになるとは…。
隊長の言ったことは全てが真実ではない。しかし、自分と妻にとって重大な事は…アンブロシアが食人病の原因だということは、動かしようのない事実だ。
(終わりだ、全部…)
マイケルは座り込んだまま、絶望の暗闇にのまれていった。
620456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/18(日) 16:23:56 ID:WLgEprWM0
ところで、本編とは関係ないけど
79人分って元ネタと言うかモチーフがある
(ない奴もいるけど)
ようは、79人自体はデッドライジングの生存者数なわけだけど
デッドライジングは一人ひとりの救出者のシナリオが孤立していたが
こっちのシナリオは最近の三谷映画みたいにオールキャストお祭り映画
みたいなノリと言える。

もしかしたら、元ネタというかイメージしてるやつを
晒したほうが物語を把握しやすいかもしれんけど
これって名誉棄損とか肖像権云々にはあたらないよな?
本人じゃなくて飽くまでモデル、イメージなわけだし
621本当にあった怖い名無し:2010/04/21(水) 00:31:16 ID:DYSRPhEL0
>>620
誰も問いかけに答えないワラタ

ノリも何もそもそもキャラの存在感があるわけでもないから意味ないのにのに、なんでそこまで79人にこだわる?
622本当にあった怖い名無し:2010/04/21(水) 03:28:16 ID:T8HHoNuZ0
もともとチラ裏レベルなんだしほっとけよ
うざいだけならともかく、名誉毀損とか肖像権とかバカじゃねえの?誰も456のクソつまんねえ駄文なんか気にしてねえよ
いつも偉そうに他人見下してるし何様のつもりなんだ
いい加減厨二病全開のクソ文章垂れ流してないでママンのお手伝いでもしてろよクズ
よまれもしないゴミ書き連ねてるだけ。当人が79人も設定作りましたボクすげーってなってるだけじゃん
623本当にあった怖い名無し:2010/04/22(木) 00:21:35 ID:kljySG6y0
個人的には456氏の文章は面白いと思うし、単なる人格攻撃になってしまうけど、

>いつも偉そうに他人見下してるし何様のつもりなんだ
>79人も設定作りましたボクすげー
これは同意ですかね
624本当にあった怖い名無し:2010/04/22(木) 01:11:55 ID:V6Br9/4V0
別にご機嫌取りをしなさいとか謙れとか低姿勢にとかを言うつもりはないんだけどね
不快にさせない、荒れない、という姿勢を少しは持ってほしいというか、持つべきなんじゃないかな
他の書き手さんだって荒れてれば投下しにくいだろうし読むほうだって荒れてるところは見たくないし
456さんの存在そのものがあれる原因になっている部分があるとすればそれは改善すべき
個人のブログでやってるのなら外野がどうこう言うことじゃないけど、現時点では間接的に荒らしを誘発してる部分はあると思うよ

読ませたいなら読んでもらえる努力を少しでもしたらどうだろう
全ての荒らしに対して寛容になれとは言わないけど、自分に全く非がないと思ってると足元すくわれるよ
口汚く罵ってる側に問題がないわけないけど、そうさせてるのは誰なのかについて原因がないってこともないでしょ?

偉そうに長々言ってごめんよ
625456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/22(木) 07:36:35 ID:OI8EppWr0
>>622
頭が悪いんだから無理して読まなくていいよ
自分の能力不足を人のせいにするな
おk?
626456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/22(木) 07:38:51 ID:OI8EppWr0
規制を食らってる間に香ばしいのが湧いてますねww

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 さっきまでは通常営業していた長月駅も今はゾンビであふれかえっていた。
ゾンビは俊敏な動きをするわけではないので、
遠目に駅がゾンビで覆われてるのを確認すると徒歩で南区のアイランドシティ大橋に向かうことにした。
しばらく歩いていると、妙な集団に出会った。
「おや、あなたたちも?」
そう話しかけてきたのは藤阪健吾という老人だった。
俺たちはそのグループに合流してお互いに自己紹介をした。
「ワシは藤阪健吾。72歳じゃよ」
「俺は高槻守 烏丸県警の特殊隊員だよ。普段は身分を明かすことはないんだが、
こんなときだし、頼りにしてくれていい」
高槻は特殊部隊服を着ており、ライフルを持っていた。何とも頼もしい男だ。
「僕は烏丸第6小学校6年2組の長池勉」
「私は夏目アイランドシティ高等学校3年B組の南矢代 『みなみ やよ』よ」
「同じく夏目アイランドシティ高等学校古典教師の武田尾介だ」
そして最後に眼鏡でスーツ姿の男が自己紹介を始めた。
「僕は相野宗助だ。そこの通報受信センターで働いている」
この声には聞き覚えがあった。さっきの電話口やつだ。俺は何も知らぬふりをして
問いかけた。
627456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/22(木) 07:39:36 ID:OI8EppWr0
「相野さん。他のお仲間はどうされたんです?」
「みんな死んだよ。いや生き返ったがね」
相野は自嘲気味にそう答えた。
「あっという間だったよ、ゾンビがセンターに入ってきてからは」
「市民からの通報で防ぐことはできなかったんですか?」
「通報?市民から通報なんてなかったよ。不意打ちのせいでやられたんだ」
こいつ、俺がした通報を隠そうとしてやがる。
「で、そっちは?どなた様かな?」
藤阪の声で我に返り俺がまとめて自己紹介をした。
「そうかい…」
高槻が言う
「あんたらもアイランドシティ大橋を目指してるんだろ。一緒に行こう。大勢のほうがいい」
その意見には賛成だった。高槻はライフルのようなものを抱えており、すこし安心感を覚えた。
628本当にあった怖い名無し:2010/04/22(木) 21:13:48 ID:V6Br9/4V0
だからそういう態度がさぁ…
煽られて煽り返してどうすんの?
自分のブログか何かと勘違いしてないかなあ…
629本当にあった怖い名無し:2010/04/22(木) 21:34:11 ID:UyWVUAEx0
設定ひけらかして悦に入るような偽物書きなんざ、相手にすんなよ。

設定は物語に込めてなんぼのもので、それ単体をひけらかすようなもんじゃないよ。
普通は要求されない限り、嬉々として設定なんか出さないものだ。
その行動自体が、未熟さのあらわれではあるけどね。

まあ俺はトリップをNGにぶち込んだよ。
うぜえから、相手にするだけ、時間の無駄。
630本当にあった怖い名無し:2010/04/22(木) 21:50:35 ID:38iRa92+0
おもしろい文章書いてるわけでもないのに
プライドだけはものすごく高いよなw

なんかこいつからは世間知らずのおぼっちゃん臭を感じるわw
631456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/22(木) 23:45:54 ID:OI8EppWr0
>>628
メル欄
無理だよ、この手の手合いは
本当は無視してもよかったんだけど
一応、スレの盛り上げにも一役買ってるし
望み通りの反応をしてあげてみた。

ただ、やはり目障りって人もいるだろうし
ほかの作者さんがスルーを推奨するなら
それに従うつもりだけど…
632456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/22(木) 23:46:52 ID:OI8EppWr0
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 南区には同じように考え避難してきた住人がたくさんいた。
商業施設エリアだった南区はあちこちの看板が破れたり折れたりして
窓ガラスの破片が散らばったりしていた。奴らこそいないが、
避難によってパニックがあったことは明白だった。
「やれやれ…アイランドシティ大橋あともうちょっとですな」
「藤阪さん大丈夫ですか?少し休んだほうが…」
藤阪は右手でそれを制して
「いえ、それには及びませんよ」
と言った。確かに現実問題として早くこの場から避難しないと、
奴らが来るのも時間の問題と言える。橋を渡ってしまえば何らかの手段があるだろう。
「じゃあ、ちゃっちゃと橋を渡って向こうで休憩しましょう」
「あれ?藤阪さんじゃないですか?」
そう言って白衣にエプロンを着た眼鏡の男がやってきた。
「おぉ、並河君かね。この人は並河大輔と言ってわしの老人ホームで介護をやってくれてるんだ」
藤阪は俺たちに並河を紹介した。
633456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/22(木) 23:48:16 ID:OI8EppWr0
「それで、並河君。きみはどうしたんだ?」
「僕も東区から逃げてきたんですが…ありゃ最悪ですよ。ゾンビです。
僕はひとり身でここにきてるから肉親がいないんですが…僕と一緒に逃げていた八木さんが…」
「そうか…八木君も」
並河はこちらを見て言った。
「あぁ、八木さんは僕の同僚でね…八木洋子っていうんだけど…ね」
どうやら特別な仲だったようだ。
「とにかく、藤阪さん。ここは危ない。早く橋のほうに行きましょう。あなた方も」
「えぇ」
後ろのほうでウィンドウガラスをを割り薄型テレビを盗んでいる火事場泥棒が歓喜の声をあげていた。
634本当にあった怖い名無し:2010/04/23(金) 00:52:42 ID:trCirdL30
>>631
この手の手合いって嵐扱いしてるけど
どこがダメとかちゃんと親切に批判の内容言ってくれてるじゃん
ちょっとでもマイナスのこと書いてあると嵐扱いにして、他人の意見聞こうとしないとこがダメなんだよ

それすらもわからないから未熟って言われる

635本当にあった怖い名無し:2010/04/23(金) 02:21:47 ID:bPiNSUW+0
もういい加減消えてくれないかなぁ…
創作するにしても、2ちゃんに居座るにしても、あまりにも打たれ弱すぎるでしょ

別スレ立ててやったり個人で発表の場を設けて誘導するのは構わないけどさ
結局、作品も投下する荒らしでしかないじゃん
636456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/23(金) 02:40:11 ID:FjzOEW1E0
なんていうか…
俺は君のママや先生じゃないんだよ?
「ゆとり」なんて言葉で片付けたくはないが…


俺は面白いからいいけど、ほかの人たちに迷惑になるから
そろそろやめたら?
バレてるよ、それ
637456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/23(金) 02:41:31 ID:FjzOEW1E0
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「もうあと少しですよ」
並河がみんなを励ます。高槻は相変わらずまわりを警戒して銃をすぐ撃てるようにかかえていた。
その時、ショッピングモールに備えつけられていた大型テレビモニターがニュースを映し出した。
『アイランドシティ感染病の続報です。
政府およびに烏丸県はアイランドシティから外に出るのに制限を設けました。
検疫テストに合格した人以外は島の外には出られません。
また、泳いで外に出るのも禁止とし、海上警察、海上保安庁、海上自衛隊が
協力し周囲の海を見張っているとのことです。
先ほどもお伝えしたとおり、島から出るにはこの橋を通過しないといけません。
検疫を受けておられない方は至急、アイランドシティ大橋まで来るようお願いします。』
638456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/23(金) 02:42:14 ID:FjzOEW1E0
そういって、アイランドシティ大橋が上空から映し出された。まるで万博か休日の遊園地かのような人ごみで橋がにぎわっている。
その先頭には自衛隊の車両や警察車両が止まっていて確かにそこから数人の人がぱらぱらと本土へ向かって通されているのが見えた。
だが、人数が多すぎてとてもさばき切れていないようだ。
「くそ…こんなのちまちま待ってたら俺たちはゾンビの晩御飯になっちまうぞ!」
鷹取が冷静につぶやく。
「今の映像を見る限り検疫所は橋の上に5か所。どういうテストかにもよるが5秒で1人くらいを本土へ通している。
ということは単純計算して…1分で12人が5か所で60人1時間で3600人…
だめだ。全然間に合わない。アイランドシティの人口のほうがはるかに多い。
それどころか、橋周辺にいる人だけでゆうに3万人は超えている。
かといって、ゾンビどもがいくらとろいからと言って3時間も4時間も
待ってくれるとは思えない。
「急ごう。割り込みしてでも検疫通らないと俺たちもゾンビになるぞ…」
639本当にあった怖い名無し:2010/04/23(金) 07:26:41 ID:mOEMGW7y0
確かにお金貰ってるわけでもないし、ここは誰の物でもないけど

他の作者さん達が投下し辛い状況をどんどん作っていくのはいかがなものかと・・・
640本当にあった怖い名無し:2010/04/23(金) 17:57:39 ID:WwkI4ryP0
>閲サイド
作品を投稿してる人間を煽ったところで得る物はない
空気に流されて便乗煽りしてる連中はよく考えれ
読む人は読んでるんだから罵倒してやめさせようとすんな
それでも気に入らないなら透明NGでスルー
>投サイド
煽り書き込みしてる奴なんて徹底無視してればいい
わざわざ荒しと同じ処に堕ちることないだろ
煽るために来てるんだから飽きればあっさり去る

というか>>4
641456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/23(金) 23:13:57 ID:FjzOEW1E0

 アイランドシティ大橋についたころ、
すでに日は落ちかけていた。拡声器で軍服姿の男が何か叫んでいる。
「みなさん。落ち着いてください。私は陸上自衛隊の長谷智紀といいます。
一人ひとり検疫を行ってますので、順番にお待ちください。我々が付いてますので!」
長谷は周りの自衛隊員よりかなり若く見えた。幹部候補生か、それとも…。
日は完全に落ちて陸上自衛隊と警察が照らすスポットライトと橋の電飾だけが頼りになった。
時計を見ると時刻は19時半になろうとしていた。
銃を持った自衛隊には逆らえない。順番抜かしを画策していた俺たちも仕方なく列に並んだ。
列に並ぶのにだいぶ出遅れたと思ったが、並んでから1時間もしないうちに俺の後ろにも長蛇の列ができた。
といっても、前のはけ具合は相変わらずなのでそれ自体は何の慰めにもなっていないのだが…。
「うごぉあああああああああああああああああああ」
遠くから悲鳴がした。人ごみが邪魔して何が起こったか見えないが、もはや見当がついていた。
642456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/23(金) 23:14:56 ID:FjzOEW1E0
「奴らだ…」
周りの人たちも同じ発想に至ったらしく、妙な悲鳴をあげて検疫所に突き進んでいった。
「うぁああああああ死にたくないぃいいいいいい」
バババババ
しかし、今度は橋の検疫所のほうから別の音がした。銃声だ。
見ると前のほうから人が逃げかえってくる。今度ははっきり見えた。
自衛隊と警察が一般市民に向かって発砲を始めたのだった。
長谷が陸上自衛隊の迷彩の施された装甲車の上に乗って
拡声器でなにか喚いた。
「みなさん。この橋は封鎖されました。伝染病の原因が
解明されるまで外に出ないようにお願いします。なお、泳いで脱出された場合、発見次第射殺します」
「ふざけんなよ。てめー、何の権限があって!」
バン
銃声の後、文句を垂れた市民は崩れ落ちた。
「みなさん、この橋は閉鎖します。早く離れてください。危険なので家から出ないように」
そう言い残すと長谷は、装甲車の上から降り俺の視界から姿を消した。
643456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/23(金) 23:16:13 ID:FjzOEW1E0
「くそ!前方はアウト、後方はゾンビが近づいてくる。
早く橋を離れよう!話はそれからだ。橋の上に留まってたら
前後挟まれてゾンビにやられるぞ!」
悲鳴にも近い声を上げながら逃げ待とう人々を押しのけて自分も前へ進もうとする。
クソ、既に橋の上にも何体かゾンビが入ってきているようだった。
「きゃあああああ」
悲鳴のほうを見てみると、南が奴らに腕を掴まれている。
助けようにも人ごみで動けない。と、南を掴んでいたゾンビの首が変な方向に折れた。
しかし、首が折れた程度では奴らは死なない。
何かの動物かのように歯をむき出して自分の首を負った奴を威嚇する。武田だ。
「南ぃ!早く逃げろ!」
「先生は!?」
「バカヤロウ。生徒を守るのは教師の役目だ、いいか、人という字はだな…」
ブシャ。言い終わる前にゾンビに首をかみちぎられたようだ。あっけない最期だっ
た。やっと南の近くまで来れた俺はゾンビが
武田の死体に夢中になってる間に呆然としている南の腕を掴んで橋の外へ
行こうとする人ごみの流れに乗った。その直後に背後から爆音がした。
橋が戦闘機に爆撃されている。橋を封鎖していた警察や
自衛隊はいつの間にかいなくなっていた。
644本当にあった怖い名無し:2010/04/24(土) 05:06:03 ID:mLkTyfbN0
>>456 ◆T/kdltgIp
面白いかつまらんかは人それぞれ。反発された程度でいちいち触るのをやめたらどうだ?
何か言う度に揉め事になる程お互い嫌ってるなら、いっその事だんまり決め込んで淡々と投下しちまえ
自分にレスされても無視、そして余計な事は一切言わない。これなら特にスレも荒れんし全員にとって有益だと思うが
相手は名無しだが投下する側はトリ変えても文体でバレる。あまりこの状態が続くとこの先不利益しか生まんよ?
645本当にあった怖い名無し:2010/04/24(土) 05:12:28 ID:gGYpvi+U0
>>1
マックス・ブルックスのゾンビ小説「ワールド・ウォー・ゼット」のレビュー

<あらすじ>

「世界ゾンビ大戦」が終結して十年。地球上に存在する全ての文明がやり直しを
余儀された時代、国連の「ゾンビ大戦後収拾委員会」報告書の作成者は
レポートの個人的な意見や感情が削除されていることに不満を抱き、
地球各地での、ゾンビ大戦前後の、さまざまな取材記録を、一冊の本として世に送り出す。

本の名は「WORLD WAR Z」。ゾンビ大戦をからくも生き延びた者たちの回想談――。
-------------------------------------------------------

シナ政府は、最初に「ゾンビ」の発生を確認したにもかかわらず、
情報統制で事態を隠ぺい。シナ軍は、「人海戦術ドクトリン」を過信し誤った対処をする、
結果、数億人規模のゾンビがシナに蔓延。地球規模の爆発的大流行へパンデミックさせる。

欧米軍ご自慢のハイテク兵器は、実は、ゾンビ退治にはまったく役に立たず、
ゾンビの大洪水に呑まれていく。

中近東では、ゾンビと化した数十万人の渡河を防ぐために、
インドがパキスタン国境の橋を爆撃したことを発端に、核戦争が起こる。

ゾンビに襲われるリスクが低い海上に、あらゆる船舶で脱出し、
あるいは、ゾンビが凍りつく寒冷地帯に自動車や徒歩で逃げた人々の大半は、
燃料不足や、食糧不足と疫病の蔓延で、バタバタと死んでいく。

日本やイギリスは、爆発的蔓延に対応できずカムチャッカやカナダに、
政府・残存国民をあげて避難し、
緊急編成の国連軍の元、態勢を立て直し、本土に再上陸し凄惨な掃討戦を繰り広げる

etc etc
646456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/24(土) 06:30:44 ID:wpMdYFAG0
>>644
君は何を言ってるんだ?
647456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/24(土) 06:54:58 ID:wpMdYFAG0
俺がボソっと言ったことに荒らしが過剰反応してるだけだよw
最初は面白かったがそろそろ飽きてきた
だから、そろそろ無視してるんだけど…^^;

このままじゃ、投下を続けられそうにないな
とりあえず、態度だけはっきりさせておくわw
648456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/24(土) 07:06:01 ID:wpMdYFAG0
なんていうか、この荒らしって…
言い方は悪いが幼稚な上に馬鹿なんですよね…

改行のところやゾンビが教室に乱入するところで
同じ文言を繰り返してしまったところの指摘はもっともだけど
79人とかいらないじゃんとか言われても…
俺も至らない点はあるが自分の能力不足を人に転嫁されても困る
ライトノベルとかばっかり読んでるから読解力がないのかもしれんが
79人中、7,8人しかまだ出てきてない段階でファビョるなよ…
そりゃ、79人も登場人物がいたらビビる。
俺も若干読むのが嫌になるけど、とりあえず、読み進めて
わけがわからんようになってから批判しろ。


また、荒らしさんにとって高圧的な文章になってしまったようですね^^;

とりあえず、スレ住人の意見もあるんで
荒らしはスルーさせていただく
何か意見があるなら荒らし行為じゃなくて
正々堂々ヨロ^^
649本当にあった怖い名無し:2010/04/24(土) 08:13:39 ID:WriHIpIn0
>>648

お前の文章のダメさを、読解力がないとか言ってごまかすなよ
お前は何でも他人のせいにするんだなw
ライトノベルなんか読まないから知らないが、万人に読ませることができるんだったら
お前の駄文より遥かにライトノベルの方が上だろ


糞文章書いてるお前自身が、自分でも混乱するとか読むのが嫌になるって言ってるが
それだと普通の読者はお前の何倍も混乱するし嫌になるぞ
その感覚わかってて書いてるのか?


で、結局ここにつきるんだがちょろっとしか出ないのに何で79人にこだわってるの?w
何回聞いても答えてくれないしw
650本当にあった怖い名無し:2010/04/24(土) 09:21:10 ID:wpMdYFAG0
>>649
頭悪いな
もう一回読み直してこい
651本当にあった怖い名無し:2010/04/24(土) 09:31:09 ID:WriHIpIn0
>>650
また答えないw
ごまかさないでちゃんと答えろよww


何でそんなに79人にこだわってるの?




652456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/24(土) 09:40:11 ID:wpMdYFAG0
>>651
お前、マジか?
大丈夫か?



>>464
653本当にあった怖い名無し:2010/04/24(土) 09:48:21 ID:WriHIpIn0
>>652
だーかーらー答えがずれてるだろw
何で「79人」にこだわるの?78人や80人じゃダメなの?って聞いてんだよw
654456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/24(土) 09:58:28 ID:wpMdYFAG0
>>653
文盲なのか…?
一応、荒らしじゃないとみなしてレス返してるんだけど
俺、間違ってないよな?

>>464内に書いてるのに、なぜ読まないの?
俺としては「人数を増やすことで登場人物があいまいになり
実験小説としては失敗だった」って言われたら返す言葉もないわけで
それを警戒していたが、斜め下をいったなw
ただ、すぐに死んだりグループ分けされてるし
今の部分までで失敗だったというほど人出てきてないけどね…
これくらいで音を挙げてたらどんどん登場人物が増えていく後半とか
爆死するだろうなw
この後、学校のシーンがあるけど自分でもうんざりするほど
一気に出てくるw


まぁ、もうすべて出来上がってる物をコピペ投下してるだけだから
生かすとしたら次回に生かすので今作品は今さら変更できないけど
655本当にあった怖い名無し:2010/04/24(土) 10:07:09 ID:WriHIpIn0
>>654
だからさー実験小説だからって言うのは答えになってないから
例えばデッドライジングが好きだから同じ79人にしましたとか自分のラッキーナンバーだからとかそういう答えが欲しいわけよ

あと実験てなんだ?79人も登場人物だしたら小説は破綻せずうまくいくのか?ってこと?
656456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/24(土) 10:19:05 ID:wpMdYFAG0
>>655
いまいち何がしたいのかわからん…
憎めない奴なんだがなぁ…

もう一回同じことを繰り返して見る
79人はデッドライジングの登場人物数
100人でも50人でもいいけど一つの目安として79人を挙げた

デッドラは79人出てるがただの救援者、つまりその人たちは駒だったわけで
ゲーム中では救助を求めているというただの記号にすぎない
まぁ、これはやった人しかわからんと思う。
だから、別にキャラわからんくてもゲームは進められる。

続く↓
657456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/24(土) 10:23:33 ID:wpMdYFAG0
デッドラは主人公が一人

言葉にしにくいけど、79人も登場人物を出すなら普通は
群像劇にする。
それを主観一本にしてどこまで書けるか?って実験よ
エゴと言うならそれでもいい。
でも、エゴだからこそ投下してるというのもある。

まぁ、こんなもんでいいか
---------------------------------------------------------------------
「はしれ!はしれ!」
悲鳴に近い怒鳴り声が飛び交う。
「うわぁ」
長池が転ぶ。助けようと手を伸ばすが慌てる人ごみに押されて長池の姿は見えなくなってしまった。橋の出口付近を離れてやっと人ごみからは解放された。肩で息をついていると地響きと大きな音がした。振り向くと橋が崩れ去る最中だった。
「アイランドシティ…大橋が…」
まだ橋の上にいる大勢の人を巻き込んでアイランドシティ大橋は崩れ落ちた。戦闘機は満足げに夜空に消えていった。その場にへたり込みそうになる。だが、まだ油断はできない。ゾンビの脅威が去ったわけではないからだ。
658456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/24(土) 10:24:17 ID:wpMdYFAG0
「おい、みんないる?はぐれた人は?」
朝霧が回りを見回していった。
「武田さんと長池くんを除くと…高槻さんと相野さんがいないな」
「そうか…まぁ、しようがない」
高槻をかなり頼りにしていたので落胆は隠せなかったが、
それよりもこれからのことを考えるほうが重要だった。
「とりあえず、まだ南区のほうはゾンビが少ない。
あの糞自衛官の話を信じるなら政府がワクチンなりなんなり
開発してくれるまで持ちこたえたら助かるってわけだ。つまり…」
「立てこもるんだな?」
「あぁ、そうだ。それに適したビルと言えば…」
659本当にあった怖い名無し:2010/04/24(土) 10:29:15 ID:WriHIpIn0
目安にしてるなら最初からそれを書けよ
464だけじゃ普通わからん

まぁ79人は目安にすらなってないから実験は失敗だなw
660本当にあった怖い名無し:2010/04/24(土) 10:39:20 ID:WriHIpIn0
あとお前の実験が失敗だったのは、単にお前に能力がないから。
お前の結果で「大勢の登場人物で主観一本はできない」ということにはならない。
ちゃんと文章書く技術がある人なら、登場人物が多くても主観一本でいけるかも知れない。
661本当にあった怖い名無し:2010/04/24(土) 10:57:28 ID:J5ZJwZAb0
それ依然に、他に投稿してた人はどこに行ったんだ
規制?
662本当にあった怖い名無し:2010/04/24(土) 12:28:10 ID:ybFwrA5DO
こんな空気だから投稿を見送ってるんだろうな…
663本当にあった怖い名無し:2010/04/24(土) 12:31:13 ID:J5ZJwZAb0
だよなー
664456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/24(土) 12:43:29 ID:wpMdYFAG0
 徳光デパートは開業して今年で123年目を迎える老舗デパートだ。
もちろん、アイランドシティにある建物が123年あるわけもなく、
本店の歴史、という意味である。当時、娯楽施設の少なかった
アイランドシティにまっさきに店舗を出店してきたのが徳光デパートだった。
9階建てで屋上はゲームセンターやミニ遊園地。
まぁ、よくあるデパートの標準的な構図と同じだ。
やはり、みんな考えることは同じらしくすでに先客が何人もいた。
「おい、てめーら。ここは満員だ。別んとこいきやがれ」
「まぁまぁ、そう言わずに…これだけ広いんですし…」
「でも、食料が…」
先客たちは輪になって相談を始めた。そして…
665456 ◆T/kdltgIp. :2010/04/24(土) 12:44:56 ID:wpMdYFAG0
「くそ、いてもいいぞ。邪魔すんじゃねーぞ」
俺は横柄な態度の男にいらだつ気力も残っていなかった。
「自己紹介をしておいたほうがいいかな。僕は谷川貞治。このデパートの中元売り場で働いている。」
そういえば、Yシャツのポケットに「徳光デパート 谷川貞治」という名札が付けられていた。
「で、さっきの彼が黒田庄。自分のことを何にも話してくれないんだよ」
黒田は手で早く次に回せと指示した。
「であっちにいるのが…」
「自己紹介くらい自分で出来ますわよ」
そういうと、上品な服を着たオバサンが続きを受け持った。
「私は船戸栄子 専業主婦ですの」
次は太った初老の男が自己紹介をする。
「俺は大谷日丸。料理の評論家をやってる」
最後は今どき風の女だ
「私は烏丸女子大学の英文学部やってるの。江住真紀。マキってよんで」
「あと2人いるんだが…デパートの見回りをしている。
いくら出入り口をふさいでも最初から中にいたらアウトだからね。あ、帰ってきたみたいだよ」
谷川が指さした方向には2人の男がいた。
「おぉ、お前ら無事だったのか!よかったな」
高槻だった。俺は再び安心感に包まれた。それだけ高槻に信頼を寄せていた。
「生きてたんですか…」
一緒にいた男は相野だった。
666ポメラニャ:2010/04/24(土) 22:56:57 ID:IYpUo/Tj0
>>456さん 物語を一度書き上げる、ということがすごいのですよ。自分とか、この度学校の部活で部長になりまして、この小説を書き上げられるかわからんです

>>569
ゲルティナンドの両手刈を封じ、合気憲法家―――山田仁は確かな手ごたえを感じていた。
相変わらず眼前で構える恩師の仇は無表情だが息の切らし方からして疲れているのは明白だ。寝技に持ち込むのに失敗した焦りもあるだろう。
一方自分は、疲れも感じない。
うん年間にも及んだ苦しい鍛錬が実を結ぶのだという喜びと、相手に対する憤怒が肉体を満たしていた。
―ーー決めてしまおう
高速のすり足で山田はゲルティナンドへと急接近する。
ゲルティナンドが急いで右のフックを繰り出すが、ここで山田は左腕で頭をかばうようにして受けつつゲルティナンドへと密着し組み付いた。
柔道のような襟と袖を持つ組み方ではなく裸体同士で組み合うレスリング的なそれだ。
ちょうどゲルティナンドの腰上あたりに山田が両腕を回してハグしている。柔道からすれば非常に悪い状態だ。
山田はそのままゲルティナンドを地から引っこ抜くようにして一気に持ち上げ、空中で回転を加えて地にたたきつけた。
レスリングの抱え投げだ。ゲルティナンドは全力で受け身を取るが、マットや畳の上とは比べるべくも無い衝撃と痛みが背と腰に走った。そしてそれらのダメージがゲルティナンドを行動不能にしている間に、
山田は彼の体をひっくり返し、自分に背を向けさせると今度は後ろから先ほどと同じように組み付いた。
667ポメラニャ:2010/04/24(土) 22:58:17 ID:IYpUo/Tj0
>>666
「お前が先生にやったことだ」
山田は静かに、背後から恩師の仇の耳元でそう呟くと、またゲルティナンドの体を中空
へと浮きあげた。
そのまま、頭から地に落ちるように全力で裏投げを放つ。
しかし、ゲルティナンドの体は後方ではなく真下へと落ち、ゲルティナンドの両腕が自分の両足の間にある山田の左足を捕らえた。
技を掛け損なったときのあの感覚が山田の肢体を走り、自らの重心の崩れを感じた瞬間、山田の視界が一転し、背が地についていた。
そして気づいた。自分の左足に絡み付いて、ひざ関節を破壊しようとしているゲルティナンドに。
「しぇい!」
気合一閃、自由な右足を振り上げて踵をゲルティナンドへと落とす、半秒前膝の靭帯が伸ばされ激痛が山田を襲った。
振り上げられた足は自由落下で地に落ちる。
仰向けに倒れている山田の左足のふくらはぎ辺りをゲルティナンドの両腕が抱え込み、彼の両腿が山田の左腿を挟んで膝に対して圧力をかけている。
膝十字固め。足関節技だ。
膝へと加えられる力は徐々に大きくなり山田の口から苦悶の声が漏れた。
―――折られる。
山田は思ったが同時に、それはチャンスであった。山田の膝を折り、ゲルティナンドが油断する一瞬、その一瞬に今日のために用意した「あれ」を使えば勝てる見込みがあった。
「こぃやぁああっ!」
山田が激昂する。来いと、もう少しでいい、力を加えて俺の膝を立てないほどに完膚なく折ってみせろと。
瞬時に痛みに対する覚悟と、「あれ」を使う準備を身の内で決める。
と、ゲルティナンドの体がふいに山田から離れた。
そのままゲルティナンドは立ち上がり、バックステップで山田からある程度はなれると
一目散に駆け出した。
一瞬の思考の停止の後、現状を理解して山田も急いで立ち上がろうとするが、膝の激痛がそれを妨げた。折れてはいないが、いためてしまっている。
「待てや!おい、待て!ああああああああ!!」
やり場を失った武人の咆哮だけが地下駐車場に響いていった。
668本当にあった怖い名無し:2010/04/24(土) 22:58:55 ID:5BKsV7uI0
つまらぬ

669本当にあった怖い名無し:2010/04/25(日) 00:55:50 ID:97Hnvann0
これは確かにつまらんな
まさにオナニー小説
670本当にあった怖い名無し:2010/04/25(日) 01:27:35 ID:OJ90WKxJO
俺は結構好きだぜ
671本当にあった怖い名無し:2010/04/25(日) 02:49:26 ID:4ngdafA90
あまり他者を文盲だとか貶めるのは感心しないな。そういうことを言うたびに自分の立場が悪くなる
それと、顔文字を使って煽るのもやめないか。幼稚に見えるし、まるで君が好んで煽っているようにも取れる

俺もラノベは読まないクチだが、ラノベを好きで読んでいる人に対して申し訳ないとか思わんのか?
「ラノベ=頭の悪いやつが読むもの」と決め付けてるようだが、どんな作品でも人は面白いと思うし感動する可能性を持ってる
それを全部否定できるほど君は偉いのか?
それほど君の書く文章はすばらしいのか?
俺にはそうは見えんよ、悪いけど

79人云々についてはポッと出て死ぬだけの人間を含めている時点で「不必要」だと俺も思うよ
半数近くは結局ただのモブでしかないし、その後の展開もほとんどないだろう
全て書き切った物を小出しに投下しているようだから、全てを知っている側には意味があるし、分かるのかもしれない
ただ、それをこちらは知らない。いくら伏線を張ろうが気付かないものは仕方ない
そして、そこまで付き合う義理もない。途中で投げるのも自由だからね。つまらないと思った時点で放り出す。当然だ
だから、君が読み手の興味をがっちり引くような物を書けずにダラダラ設定だけ貼り出しても当然そういう反応をされるだろう
書く方にとってどの程度重要かは知らんけど、書かれれば読まざるを得ない人間もいるし、逆にそうでなければ困るだろう?
ただ、人によっては「結果として読む必要がないものだった」と思われたわけだ
わざわざ79人も目を通したのに結局なんだこれは、と
そんなの当たり前だろ。100人いたら100人が理解できると考えるほうがおかしい
それに怒ってどうするんだよ。どうしてそうなるか考えなければ先に進めないだろ?

いいか?書き手の意思に沿って読者が読むんじゃないんだぞ?
他人が読んで得た感想が全てなんじゃないのか?
思惑通りに運べない未熟さを他人のせいにして、君が何か得るものがあるのか?
そういう傲慢さがこういう結果を生んでるんじゃないのか?
それが作品にまで及んでいるかどうかは思うところ人それぞれだろうから、敢えて俺は触れないが
まだ最後まで投下してないようだし、いま慌てて判断するのも早いだろうから
672本当にあった怖い名無し:2010/04/25(日) 02:56:25 ID:02dg2mUv0
>>671
長文では説得力がありません
673本当にあった怖い名無し:2010/04/25(日) 03:53:26 ID:97Hnvann0
>>672
671はいいこと言ってるよ
むしろ長文では説得力がないと言ってることの方が意味不明

>>666
「合気憲法家」と「しぇい!」だけちょっとおもしろい
あとはお前のオナニー
674本当にあった怖い名無し:2010/04/25(日) 08:43:38 ID:OJ90WKxJO
>>671
2ちゃんでここまで理路整然として紳士的な人を見るのは久しぶりかも知れない
ゾンビ映画の登場人物なら最後まで生き残るタイプだな
675ポメラニャ:2010/04/25(日) 09:15:02 ID:lgRehY830
すみません
もともと自分も格闘技に明るくない人にはすごく分かりづらいだろうし、
それの知識や興味を持たない人を楽しませるだけの技量もないと思っていました。

皆さんすみません
>>673
お前は市ね
676プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/25(日) 11:15:58 ID:j53FW2DVP
何か荒れてますが…
とりあえず書き続けると決めた以上、投下はしていきます。
677プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/25(日) 11:17:21 ID:j53FW2DVP
デッド・サンライズ

(40)
崩れた缶詰を蹴飛ばして、エレンは額の汗を拭った。
(どうにか、切り抜けたみたいね)
周りには、体中を穴だらけにした店員や警備員が10人近く横たわっている。
少し前、エレンたちは突然店の者たちの奇襲を受けた。
いや、エレンたちは襲われる前から囲まれたのに気付いて警戒していたので、奇襲が成功したとは言い難い。
しかし、とにかくエレンたちはたった4人で、店の者10人を相手に戦った。
エレンは初めから、何かあることを想定してたくましい男3人と行動していた。
それでも店の者の中には明らかに普通の店員や警備員と思えぬ腕の持ち主がいて、エレンたちは苦戦を強いられた。
最後は、エレンの女の武器で勝負がついた。
味方の一人が倒れた時、エレンは露出したビキニの胸の留め金を外した。
その瞬間、敵の多くはエレンのたわわな胸に釘付けになり、銃撃が止んだ。
そのスキをついて、エレンたちは敵を蜂の巣にして一掃した。
女の色香とは、時にそのくらい威力があるのだ。
不幸にして致命傷を負ってしまったエレンの愛人も、それを見たら笑って許してくれた。
「あーあ、本当におめえは運命の女神だなあ。
まあ、いいや…最後にいいもん見れたしな。
ついでに、このままおめえのいいもん見たまま頭をブチ抜いてくれや。でないと、そのうちおめえの胸に噛み付いちまうぜ」
「そうね、さようなら」
エレンはその男に膝枕をしたまま、口に銃を突っ込んで引き金を引いた。
非情なようだが、これはやらなければならない。
エレンたちは知っている。
今や太陽の光を浴びた者は、全員が体内に異常細胞を持っている。つまり、頭が無事なまま死ねば、誰でも食人鬼…ゾンビになり得る。
エレンは安らかに眠った愛人のために、静かに十字を切った。
678プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/25(日) 11:18:45 ID:j53FW2DVP
(41)
「さてと、これからどうする?」
エレンが一人を送り終えると、同じく愛人で仲間のマックスが言った。
「奴らはおそらくここだけじゃない、他の仲間もきっと襲われてる。
ここだって、じきに援軍が来るぞ」
「そうね、一時どこかに身を潜めた方が良さそうだわ」
エレンはそう答えて、死んだ仲間が身に着けていた弾薬をはぎ取り始めた。
少し離れたところで、もう一人の仲間であるボブが敵の死体を見下ろしてぼやいた。
「なあ、こいつらも頭をブチ抜いた方が良くないか?
死んでる奴も生きてる奴も、このまま放っといたら確実にまた起き上がるぞ。これ以上敵を増やす訳には…」
「いいわね、それ!」
とたんに、エレンの目が何かを思いついたように光った。
エレンは男二人を手招きして呼び寄せると、息がかかるくらい耳に口を寄せてささやいた。
「こいつら、このまま放置して味方を襲ってもらいましょう。
その方が、賢い敵を減らせるわ。
こいつら、たぶんゾンビは噛まれて感染するものだと思ってる。だったら、噛まれていない死体には無防備なはずよ!」
その恐怖の作戦に、男たちは思わず感嘆の息を漏らした。
エレンはゾンビを利用して、敵の力を削ごうと言っているのだ。
エレンたちもこのショッピングセンターの役割は店員から聞いている。
感染者をカナダに入れないための集蛾灯…つまり、店員たちはゾンビに噛まれて感染した者のみがゾンビになると思っているのだ。
だが、実際はゾンビになるのに噛まれたかどうかは関係ない。
それを知っているのはおそらく、オリンポス社の社員のみだ。
その点で、オリンポス社の社員は一枚上手だ。
たとえ地の利が敵にあっても、味方が分断されていても、ゾンビを発生させて知識も勝負の要素に加えればまだ勝機はある。
「やれやれ、残酷な女神さんだな」
男たちはこっそりとぼやきながら、エレンとともにその場から立ち去った。
679プリニー南へ【SP204】 ◆7I1DeyaB5I :2010/04/25(日) 11:21:19 ID:j53FW2DVP
(42)
「遅かった、みんなやられている!!」
苦戦を聞いてかけつけた店の者たちは、目の前の光景に唖然とした。
奇襲をかけた10人の味方は、皆体中穴だらけにして床に伏している。
敵の死体は、一人しか見当たらない。
「ちくしょう、まだ遠くには行ってないはずだ!」
「待って」
血気にはやって走り出そうとした男を、若い女が止めた。
「危険だわ、ここで味方の応援を待ちましょう。
隊長も言っていたけど、隊長と同じくらいの腕を持つこっちの隊長を含めて10人でも負けるような相手なのよ、私たちだけで敵う訳がない。
それに…彼らをこのままにしておけない」
若い女は悲しげに、足元の仲間たちに目を落とした。
仲間たちの多くはすでに動かない、おそらく死んでいる。
しかし、よく見ると3人ほど、まだ胸が動いている者がいる。ひどく撃たれてはいるが、急所を外れているのだ。
助かるかは分からない、しかしできることなら助けたい。
若い女は腰のポーチから包帯を取り出し、どうにか生きている者たちの手当てを始めた。
無線で連絡をとっていた男が、悔しそうに顔をしかめる。
「あいつら、この近辺の監視カメラをほとんど壊していきやがった。
おかげで、おれたちの姿が監視室から見えないんだと。
応援は一応求めてみたが、今はみんな捕まえた社員どもを一ヶ所に集めてる最中だ。手が空いたら来るらしいが、時間はかかりそうだな」
「じゃ、やっぱり待つしかないわね」
かすかに息をしている仲間に気休めのような包帯を巻きながら、若い女はため息をついた。
(やっぱり、戦いはプロに任せるべきだったのかも…)
彼女は切実にそう思っていた。
元々、彼女はこのショッピングセンターで働いていた店員である。
命を落として周りに散らばっている者も、大多数は彼女と同じだ。
だから、彼女は仲間の死が悲しくてたまらなかった。
だから、死んだと思っていた仲間が動いた時、彼女は大喜びで駆け寄ってしまったのだ。
680本当にあった怖い名無し:2010/04/25(日) 13:15:37 ID:7QR+dnS00
あのころは良かったな。
いつから読者を無視した無能者のオナニーショーになったんだか・・・
681本当にあった怖い名無し:2010/04/25(日) 20:54:11 ID:Eum+Ywmb0
>>673
>671はいいこと言ってるよ
むしろ長文では説得力がないと言ってることの方が意味不明

同意
マジレスが煙たがられるvipじゃあるまいし

>>675
>お前は市ね

おいおい、ポメラニャさんまでこういう事言っちゃうの・・・?;
682本当にあった怖い名無し:2010/04/25(日) 21:25:46 ID:tnaL80Cs0
嫌だと感じたり、つまらないと思うなら読まなければいいだけの話。
こういう風に文句付けて、作者さんのやる気を削いで、
未完成なまま放置されてしまう小説が増えるのが一番困る。
683本当にあった怖い名無し:2010/04/25(日) 21:42:49 ID:ypjzO0ZU0
>>682
読みたい奴の合間に連騰されるとウザいから、つい一言言いたくなる人もいそうだが。
まあトリップをNGにつっこめば、すっきりするんだが。
684本当にあった怖い名無し:2010/04/25(日) 22:19:09 ID:97Hnvann0
>>675
死ねってなんだよ
しぇい!こら!!
685本当にあった怖い名無し:2010/04/25(日) 23:22:35 ID:N+QQum4p0
デッド・サンライズ 楽しみにしてるからやめないでほしいわー。
686本当にあった怖い名無し:2010/04/26(月) 00:53:35 ID:OkQPD+ax0
>>671
うーん、確かに>>671の言うとおりだと俺も思う。
ただ、感想を述べるのは自由だし書き手の為にも成るかとは思うが、言い方考えた方がいいんじゃないってレスが多すぎ。
例えば>>660>>668>>669
具体的に何処がつまらないって指摘も無く、ただ単に「能力無い」「オナヌー」なんて言われたら誰だって「お前何様のつもりよ」ってカチンと来るだろ。
「つまらぬ」だけではなく、例えば「テンポが悪い」、「スポットライトを浴びる人数をもっと減らした方が良い」という風に言われりゃそりゃ
頭にくるかもしれないけどそれなりに今後の参考にはなるし。

悪態の垂れ流しなんてガキじゃあるまいし、スレ荒れるんで勘弁して欲しいな。
687本当にあった怖い名無し:2010/04/26(月) 08:01:58 ID:G5AlZ2Hk0
>>671の内容には同意というか、小説に限らず創作活動やってると誰もが一度は通らなきゃいけない道ですよね。
通り抜けられてない人もいて耳が痛いですけど(汗)
キャラ(この場合はレスの内容だけど)と口調が合ってて、長文なのに思わずひき込まれるように読んじゃった。
ホラー書くの苦手なのでこっちROM専ですけど、読むのは好きなのでいろいろ楽しみにしてます。

>>685
デッド・サンライズおもしろいですよね。久々に投下されててよかったですよ。
688本当にあった怖い名無し
>>654
いちいち言い返したり荒れるとわかっててやってるんだろ?
お前いらねえよ
消えろよ どれだけの人がローカルルール守ってここまでこのスレきたのかわからん新参マジいらねぇ
人の頭がどうのとか書く以前にお前の存在がもう邪魔だし自分のスレ立ててそこに投下してくれよ

どうしても読んで欲しいならココに書き込むな
お前のスレじゃない 書き手としてもっともいらない
スルーすればいいとかではない

と思ったけど好きにしたらいいんじゃねw書いてるうちにおっぱいどうでもよくなってきた