1 :
本当にあった怖い名無し:
【スレのお約束】
1 基本的にsage進行でお願いします。
2 作品投稿のage・sageは、作者の判断にお任せします。
3 作品には感想をお願いします。感想についての批判は作者・読者ともに控えましょう。
「感想・意見・批評」と「誹謗中傷」は異なります。
よけいな争いごとを持ち込まぬよう、表現にはくれぐれも気をつけましょう。
4 煽り・荒らしは放置、反応なしでお願いします。
【マナー。その他】
1 連続投稿数は5〜10レスを目安にしましょう。
2 作品投稿は間隔に気をつけてください。場合に応じて間隔をあけましょう。
投稿前と投稿後に宣言すると、スレの流れがスムーズになります。
3 自分の意見に返事を期待する作者は、トリップを付けたほうがいいでしょう。
4 個人攻撃、的外れな批難の類は流したほうが無難です。
5 496KBで警告メッセージが出力されます。
512KBでスレッドが終了なので、950からか450KBを過ぎた時点で新スレッドへの
移行を話し合いしましょう。
埋まっちゃってたみたいだったので新スレ立てました。
みんなで仲良くゾンビ小説を楽しみましょう〜
作者の皆様、引き続きすばらしい作品を期待しております
6 :
本当にあった怖い名無し:2008/05/22(木) 17:16:44 ID:yiP2Y+Tf0
保守上げ
即死回避&投下します。
―●●中学校 A棟入口
「どうか…ハァハァ…逃げ切ったみたいだな…」
俺は通路の真ん中にへたりと座り込んだ。
(くそ…まさか追われるとは…もしかして俺はあの時ヘリを呼ばないほうが…)
確かに、あの時ヘリを呼ばなければゾンビには見つからなかっただろう。
しかし、それでは自分で助かる道を断つことになる。
そして今、それを呼んだおかげでゾンビには追われたが、ヘリは気づいてくれた。
たぶん助かるだろう…今にここに来て救助される…
その期待を胸に持ち、あのヘリの人たちが来るのを待った。
―●●中学校 B棟屋上
「風は無し!降下できます!」
「よし!降下だ!」
仲間が次々と屋上に降下する。
次は俺の番か…
「…よし。」
自分に気合を入れて、降下した。
―A棟1階 職員室
「誰か居ますかー…」
声は返ってこない。
誰も居ないのか、それとももう…
ガタンッ!
「わぁぁっ!」
「ヴぁぁぁあっぁあぁ…」
ゾンビだっ!包丁包丁…って、無い!
「ヴぁ…」
慌ててるうちにドンドン近づいてくる。
しかしここは職員室。机なんかがいっぱいあるから上手く使えば…
俺はおもむろに近くにあったものを投げる!
コピー紙(未開封)を投げてみたが、重くてゾンビの手前で落ちてしまった…
(何で包丁が無いんだよ!さっきは持っていたのに…)
「糞野郎がッ!死にやがれッ!」
近くにあったキャスター椅子を思い切り投げる!
ガシャーン!
大きな音を立ててゾンビに当たる!
「ヴ…ヴァァァ…」
糞っ!まだ倒れないのか!
だがかなりのダメージだ!
もう1発!食らえっ!
B棟3階 生徒会室
銃を構えながら部屋全体に警戒しながら入る…
(誰も居ないか…しかし…生活感がある部屋だ…中学校の1室とは思えない)
確かに、『中学校の1室』としてはちょっと…
部屋を見ると、真ん中に机がUの時型に置いてあり、その上にPCが置いてある。
(Uの横に2台ずつ、Uの下には置いてない。何でだよ)
そして机の開いている側に机が置いてある。
三角錐に「委員長」と書いてある。
そして、周りには冷蔵庫や、ポットに湯のみ(5つある。5人だけでいいのか?)、
そしてスチールラックらしき物にCDプレイヤーが置いてある(今時MD再生するところが無いとは…)。
その他、服が壁に掛けてある。
俺はそのひとつに腰掛け、PCを起動させた。
カリカリカリ…
小さな起動音を立て、起動していく。
「おっ、XPじゃないか。」
完全に起動したことを確認して、ネットに接続する…
.__
2ch |検索|
. ̄ ̄
「接続できたぜ…」
画面には2chのトップが表示されている。
中に入り、オカルト板をチェックする…
と思ったが、アクセスできない。
「あれっ?何で?」
この男は気づいていない。
もうすでに、2chはトップ以外アクセス不能になっているのを…
続きます
10 :
本当にあった怖い名無し:2008/05/23(金) 05:08:50 ID:qZQTxmn90
>>1 乙です〜
>前スレ最後のエビ天さん
お疲れさまです、どきどきしながら読ませていただいています
みんながハッピーエンド迎えられるといいな・・
英語ですけど、「理解した」は I got it! 、「ついてこい」は Follow me とかが自然な感じはします
でも気にしないでどうぞ続けてくださいませ
12 :
本当にあった怖い名無し:2008/05/23(金) 23:48:42 ID:ktUqfHt10
ほ
投下します。
A棟1階-2階 踊り場
「…」
俺は特にしゃべることもなく、ボーっとしていた。
(やっと…俺はゾンビを倒したのか…まあ、当たり前っちゃあ当たり前だが)
そういえば、救助はまだなのか?
これじゃ安心して休憩できない…
とりあえず俺は上に行くことにした。
B棟3階 倉庫部屋
ガシャン!
とりあえず俺はドアの窓を叩き割らせてもらった(鍵がかかってたから)。
そして割れたところから手を突っ込み、鍵を開ける。
…カチャリ。
…開いた。
前の部屋のように注意しながら入る…
中にはどう見ても今頃使わないようなストーブ、
古いPC、何か鉄の太いアルミパイプ(たぶんストーブの煙を外に出すためだろう)、
それに古い教科書などが置いてある。
…何か臭うな。生臭い、すごく不快になる匂いだ。
俺が部屋を出ようとした瞬間、
「グアァァァァ!」
ものすごい大きな声が後ろから響く。
「なっ!何だこいつは・・・」
俺の前に立っているゾンビ、それは…
今まで見たゾンビより大きいヤツだった。
バイオハザードなら中ボス級だな…
「グオォォッ!!」
そいつは叫びながら俺に襲いかかった!
「うおぁっ!」
何とか避けた…が体勢を崩してしまった。
「くそっ!死ね!」
俺は頭を狙い連射した…があまりダメージは無いようだ。
「ウガァァッ!」
そいつがもう一発を俺に食らわせようと、手を振り上げる。
(糞っ!もう終わりか…)
俺が死を覚悟したその瞬間、
何かを壊すような音が響く!
「ウグッ…グアァ…」
あいつの手が…天井に刺さっている!
「今のうちに逃げる!」
俺は立ち上がり、走って逃げだす。
そして、階段を降りると同時に手榴弾をお見舞いする。
ドガァン!
俺が階段を2段飛ばしで下りている途中に爆音が響く。
(あれで倒れてくれればいいんだが…)
A棟2階 教室
(どうやら、ここら辺にはゾンビは居ないようだな。)
俺が安心し、一息吐こうとしたとき、
ドガァン…
爆発音!?
何で爆発音が…?
どうやら、B棟かららしい…
でも、何でB棟から?
爆発物が中学校にあるか?
そんなものが有るわけない。
じゃあ何で?
もしかして、誰か居るのか?
とりあえず、B棟に行ってみるか。
B棟1階 廊下
「ふう…ここまで逃げれば良いだろ」
とりあえず俺は乱れた息を元に戻し…
ている暇は無い様だ。
ゾンビが多い。
目で見るだけでも5体は居る。
「とりあえず、まとめて吹き飛べ!」
俺は手榴弾を投げつけた!
「グァァァ!」
前に居るゾンビがまとめて吹き飛ぶ。
「ヴァァァァ…」
しかし、後ろからまだまだ来る!
(もう1回吹き飛ばして…ってあれ?)
もう手榴弾が無い!
「ならこれでも食らえ!」
俺は小銃で撃ちまくった。
「グエェ!」
「グオォ…」
どんどんゾンビが倒れていく。
だがまだまだ来る。
カチカチッ!
しまった!弾切れか!
だがリロードしてる暇がない!
「ここは…逃げるか!」
とりあえず俺は逃げ出した。
A棟-B棟2階 渡り廊下
「誰も居ないか…」
その時、
ドガァン!
また爆発音。そして、
ダダダダダダダダ…
そして発砲音。
「誰か居るのか…」
だが、これでは近づけば間違えて撃たれるかも知れない。
でも、こんな音がするってことは、誰か居るんだ!
「よし…行こう!」
だが、不意に音が止まった。
「??」
音が止んだ今、行くチャンスだ。
C棟1階 図書室
「今度こそ良いだろ…」
部屋の鍵を掛け、リロードする。
そして、椅子を集め簡単なベットみたいなものにする…
ちょっと硬いけど。
そしてそれに寝転がり、しばし休憩することにした。
続きます
投下します
B棟1階 廊下前
「これは何だ…」
俺の目の前に広がっているのは、
すごい量のゾンビが倒れていた。
壁や天井にもゾンビの欠片何かが付いている。
「すごい…でもここは避けて通ろう…」
とりあえず俺は上に行くことにした。
C棟1階 図書室
「…」
この男は状況が状況なのに熟睡している。
B棟2階 廊下
「ここら辺でもまだ臭いがするぜ…オエッ」
俺は軽く吐きそうになるが、何とか持ちこたえる。
(それにしても、何だ?この胸騒ぎ…)
ドガァン!ガラガラ…
「うわぁっ!」
何かが上から来やがった!
「ヴゥゥゥ…」
こいつは何だ?
俺の体を1回りも2回りも大きいぞ。
しかも顔がなぜか焼けている。
「うわぁぁっ!」
俺は踵を返し渡り廊下に急いだ。
「ウガァッ!」
しかし奴も追いかけてくる!
A棟-B棟2階 渡り廊下
「糞っ!追いかけてくるなよっ!」
そんなことを言っても奴が止まるわけない。
ミシッ…
何かが軋む音がしたのは気のせいだろうか?
もしかして…
「グァァァッ!」
奴が追いついてきた!
ミシミシッ…
今度ははっきり聞こえた。
軋んでいる。
『ここ』が。
そう思った瞬間、
バキィッ!
「ウガァァ!」
渡り廊下が奴ごと崩れ、落ちて行った。
「…」
俺は唖然としていた。
(おいおい…こんなで崩れるなんて耐震偽装してんじゃねーの?)
まあ、これで暫くは追いかけて来れないだろ。
俺は一先ず安心したのと、ビックリしたので座り込んだ。
C棟1階 図書室
バキッ…ガラガラ…
「!!」
俺は大きな音を感じ、飛び起きた。
「何だ?」
何かが崩れる…くそ、寝起きだから良く分からない。
(音のあった方向…どっちだ?)
確か、B棟とか言う方だったな…
「行ってみるか」
とりあえず俺は図書室から出ることにした。
A棟3階 視聴覚室前
「くそ、開かないな。」
どうやら鍵がかかってるようだ。
仕方ない…
ガラスをたたき割ろうとする。
ガシャン!
「痛っ!痛ってぇな…」
割れたには割れたが、少し引っ掻き傷が出来たようだ。
血が滲んでいる。
くそー…
中庭
「…何だこりゃ」
俺が見たものは、
見事に半分ぐらいが崩れている渡り廊下とそれに埋まっている、さっきの中ボス。
ここに来てるってことは、あれで倒れてなかったのか。
まったく、タフなものだ。
続きます
続きです。
こいつのタフさには感心するぜ…
だがこの状態ならしばらく動けないだろう。
こいつはとりあえず放置することにした。
まあ、今動かれたら、俺も死ぬかも知れないからちょうどいいけど。
それにしても、暗いな。雨でも降るんじゃないか?
A棟 視聴覚室内
「ふう、ここに居れば安全だろう。」
一応ドアには鍵をかけて、ドア周辺には机なんかを積み上げている。
これなら『普通』のゾンビなら入って来れないだろう。
さっきみたいな奴が来たら防ぎきれないだろうが…
「まぁ、これで安心して休める。」
よっぽど疲れてたんだな、俺。
すぐに眠たくなり、そして――
眠気に身を任せた。
A棟1階 職員室前
「ん?足跡…か?」
確かに廊下には足跡がある。
その足跡はは…職員室に入っていった。
「中に誰か居るのか?」
まあ、足跡があるなら、人が居るんだろう。
とりあえず、入るか。
A棟1階 職員室
「…うわっ!」
足元にはぐちゃぐちゃになっているゾンビが。
ここに居る人がやったのか?
「おーい!誰か居るか?」
…返事は返ってこない。
もう何処かへ行ったか、それともこのゾンビが…
まあ、ここを出るか。もう誰も居なさそうだ。
とりあえず外に出た。
A棟3階 視聴覚室
「…あー、いくら疲れてても熟睡は出来ないな。」
俺は5、6分ぐらい寝て、すぐに起きた。
…もしかしてこれは夢じゃないのか?
夢じゃなければ映画とか?
撮影に勝手に入って怒られたりして…
…こんなことを考えても仕方が無い。
これは現実だ。
夢や映画なんかじゃない。
俺は何を考えてるんだ。
こんなこと考えたって何も変わらない。
「まあ、そんなことよりまず自分の命だな。」
とりあえず俺は、準備室らしき部屋に入った。
(言葉でいえば、前に黒板があり、その右側に扉がある。)
A棟2階 廊下
「足跡が続いてる・・・」
そしてその足跡は渡り廊下に行き、
崩れたところに向かっている。
そして、向こうの道にもあるらしいが、良く見えない。
「これじゃあ渡れない…たってあっちには用はないからな」
そういえば皆はどうしたんだろう。
とりあえず通信してみることにした。
”こちら、特使班 高山。そちらはどうだ”
”ザー…こちらD棟2階に居ます。こちらはゾンビが多く、やっと5人がかりで1階のゾンビを殲滅しました。
ですがまだ2階からゾンビが…うわっ!何だあいつは、でかいっ!グァァァッ!”
その通信を最後に、無線は切れてしまった…
(くそ…倒れたか…)
間違いがありました
×D棟2階→D棟1階
です。すいませんでした
A棟3階 視聴覚室準備室
「特に何もないな…」
確かに、中には聴力検査に使うようなやつに、
よく分からないヘッドホン(多分聞き取りテストにでも使うんだろう。)、
それに旧式のでかいテレビ何かが置いてある。
…あれは何だ?
何か有るのに物が邪魔で向こうに行けない。
仕方ない、上に乗ろう。
机何かの上を慎重に歩く。
「! これは・・・」
そこにあったのは…
テレビに接続されたままのゲーム。
空のペットボトル。
雑誌。
「こりゃあ、不良の溜まり場か。」
そして隅にあったもの…
木刀。
「!? 何で木刀が…まあいいや。貰って行こう。」
とりあえず木刀を握り、準備室を出ようとする…
ガシャーン!
机に乗った瞬間、バランスを崩し、転倒する。
そのショックで、俺は気絶してしまった。
A棟3階 廊下
「…」
仲間が死んだ…
間接的に見たわけじゃないが、そのショックは大きい。
(人の死って…こんなショックなんだな…)
昔、父さんと母さんが亡くなった時よりショックは少し小さいが、
やはりショックなのは変わりない。
「うぅ…」
―高山、元気ねーぞ、大丈夫か?
―大丈夫だ。心配してくれてありがとう。
ふいにあいつとの何気ない会話がよみがえる。
それは俺の悲しみを増幅させる結果となる。
「…」
(あいつの仇を取る…絶対…)
そして立ち上がろうとして、目についたのは…
―奇妙な部屋だった。
それは、ガラスが割れ、ガラスの向こうには何か物がある。
誰か居るんだろうか?
とりあえず行ってみることにした。
続きます
次は、こちらで良いんですよね〜?
29 :
本当にあった怖い名無し:2008/05/25(日) 22:54:55 ID:dsl6yJaN0
あげ〜
それでは投稿を…
学生がこんな時間に起きてていいものやら。
今回も挑戦してみました。
一応「根」は残してみました。イメージ湧けば続き書ける様に
それでは〜。
古き良き日本家屋。
その縁側に座り、ただ何となく夜空に浮かぶ月や星を眺める。
俺の知る中でもかなり上位に入る、至福の時間だ。
それでもって傍らには、麦茶なんかが入ったコップがあったりして。
空には雲ひとつなく、夜空を埋め尽くすのではないかという数の星々を眺めることが出来て――夏の夜に浮かぶ月は、綺麗な円。
耳が広うものは、時折木々が風に揺らされる音と、蛙の声だけ。この蛙は、何だろう。聞いたことの無い泣き声だ。
これは、かなり良い環境ではないだろうか。
俺が理想とする環境だ。
――しかし、それでも問題はある。それも、そうとう大きく、重要な。
それは何かというと、
「ここ…どこ…?」
どうしてこんな場所にいるのかわからない、という現状だ。
状況を整理したい。
俺は自分の氏名、年齢、住所、電話番号、家族構成、昨日の日付、その他諸々を覚えている。
電話番号がわかれるのだから電話をかければよいのだが、あいにくとこの家屋には電話というものが存在しなかった。
ポケットに入っていた携帯電話は、バッテリーが切れていて使えない。
財布はあるのだから、公衆電話があればかけてみよう。
――話を戻そう。
昨日が火曜日だったから、今日は水曜日。
普段なら、学校へ行っているはずだ。実際、学校の制服を着用している。鞄は無いけど。
携帯のバッテリーが切れているのは、何度も電話がかかっていたせいだろう。
突然居なくなったら、連絡をとろうとするのが普通だ。
もしかしたら、捜索願なんか出されているかも。
こんな場所に電波が届くかは知らないけど…多分、届くだろう。
いやそもそも、場所がおかしい。
俺は、自分含めた家族四人と都会に住んでいる。しかし、今目の前に広がるのは田舎。というか、この家屋は山の中腹に建っていたりする。
視界を埋め尽くさんばかりの木々と、その向こうに見える河川やら原っぱやら。おかしい、道路とか街頭が見えない。
これはどう見ても、
「県外…だよな」
しかもそうとう遠く。
自分の住んでいる都道府県には、こんな地域は存在しない。というか、存在してはならないと思う。
一応周囲の都道府県にも行ったことはある。それでも、こんな景色が見れる場所は無かったはずだ。
「もしかして、外国…とかね」
笑えない冗談だ。
傍らのコップを口へと運ぶ。
ず、という低音と共に、麦茶が喉へ流れ込んだ。ぬるい。
冷蔵庫を見つけた時は、小躍りしてしまった。直後、電源が入っていないのを見て、かなり落胆したんだけど。そりゃもう、一気に疲れが帰る位。
電源が入っていない冷蔵庫の中には、温くなっていた麦茶だけ。いやまあ、水分があったことは幸運なんだけどね。
そう思い返していた時。ことん、と音がした。続いて、がたん、と少し大きな音が響き渡った。うん、この家屋はかなり広い。あと、何も無い。
それに続いて、畳を踏みしめる音と畳に引きずる音。
ぺた、ざー、ぺた、ざー…と少し遠く――玄関のあたりからこちらへ近づいてくる。
これは多分、この家屋の持ち主だと思う。もしかしたら、ここはどこか聞けるかもしれない。外国語だったら………英語が通じると信じたい。
上半身だけで振り返る。とっくに切れているらしい蛍光灯の下、こちらへ向けて、誰かが歩いてくるのが見えた。
何かを引きずっている。きっと、脚が不自由なんだろう。
しかしまぁ、そんな安穏とした考えと雰囲気は、その人物が月明かりに照らされた時、吹き飛んでしまった。
いやはや…どこから突っ込んでよいのか。
まず、顔にしよう。顔。人の印象を決める。重要な部分。
それが見事に、ざっくりと割れている。まるでざくろみたいだ。…あ、横に刺さっているのは錐か何かかな?
次は胴体。農作業用の服、だと思う。だと思う、というのは、服が汚れきって、元が何であったかなんてのは判断し辛いからだ。でもってその汚れが黒ずんでいる。あの汚れ方は、まるで真正面から液体を浴びたみたいだ。…あれは泥であると信じたい。心の底から。
次は脚。人間というのは、左足が前後ひっくり返っても平気な生物ではないと思う。ちょうど、膝関節からぐるっ、と逆向き。あれは絶対平気じゃない。というかかなり痛いと思う。
最後は、右腕にぶら下がっているもの。どっどっどっ、と排気を続ける大型のチェーンソー。わーい、万が一殺されても一撃死だね。
ああ、左足が裏返ってるから引きずってるんだな、なんて冷静に考えている俺が恨めしい。
そんな感じで観察なんかしている間に、その…えと、何だろう。人間…じゃないよね。
えと、その『化物』はこっちに迫ってきていた。
ここらでそろそろ、恐怖心を感じてもいいと思う。観察するのも限度だし。
「うわぁああああああああああああああああ!?」
俺自身を奮い立たせるために悲鳴をあげてみる。予想通り、身体が動いてくれた。
後は本能に従い、駆け抜けるのみ。
目の前に広がる森は、絶好の隠れ場所だ。不規則に乱立する木々は、化物が追ってくるのを妨げてくれる。視界が悪くなるのは、仕方ないだろう。
ある程度走ったところで、止まってみる。追ってこなければ万々歳。追ってきたら…逃げるのみだ。
あっちはまともに走れない上に、あんな大荷物を持っている。そう簡単には、と思ったところで。
俺へと向けて、何かが追ってくるのが見えた。低い、チェーンソーの爆音を引き連れて。
そんな様子に、
「嘘…だろ?」
そんな呟きが漏れる。
いやだってまぁ、さっきの様子から考えると、まともに追って来れるはずないのだ。
それなのに視覚が伝えるのは、ぶるぉおおおおんっ、と唸るチェーンソーを引き連れて、俺と同じ位の速さで追ってくる化け物。今度眼科に行くことにする。逃げれたら。
ああ、あの細い木が通行を妨げてくれる、と思ったのも束の間。
ぶるぉおおおおおんっ!
細い木は、振り回されたチェーンソー様が噛み砕いてくださいました。さらば細い木。君の事は忘れない……………………………………………生きてたら。
「うわぁああああああああああああああっ!?」
ぶるぉおおおおおおおおおおおんっ!
なんともはや、またもや走り出すことに。ただし今度は、後ろで振り回されているチェーンソー様が、位置関係を伝え続けていてくれる。
その音を察するに、位置関係は全く広がっていない。
いやむしろ、木の根や湿った落ち葉なんかに脚をとられている分、じりじりと縮められている。
万事休す。今の俺には、ただ走って逃げ回るしかない。三十六計何とやらだ。
というか、あんな化物があんなチェーンソーを持っているのは、卑怯だと思う。こっちは何も持っていないのに。
「ああああああああああああああああああっ!」
ぶるぉおおおおおおおおおおおおんっ!!
じりじりとチェーンソーの唸り声が近づいてくる。
ダメだねこりゃ。
気を抜いたのかもしれない。そう思った途端、都合よく出ていた木の根に足をひっかけて、派手に転んでしまった。一回転したと思う。
ぶるぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!!!
起き上がろうとした矢先、すぐ前の葉っぱを切り刻んで、チェーンソーが飛び出してきた。あと、ついでに化け物も引きずって。
化け物がチェーンソーを使うというより、化け物がチェーンソーに使われているという感じだ。
……というかあのチェーンソー、電源とか大丈夫なのだろうか。
余計なことを考えた時にはもう、そのチェーンソーwith化け物が、低く、まるで獣が走るよう地を這って迫ってきていた。もう距離が無い=逃げられない。
チェーンソーが、高く高く――天を突くかのように掲げられる。
ああ、もうダメだ。短かったな俺の人生。
最期に思い浮かんだのは、素っ気無い、味気ないフレーズ。
次の瞬間、振り上げられたチェーンソーが、目の前の獲物へと凶悪な牙を、
毎度乱文失礼しました。
投下します。
A棟3階 視聴覚室準備室
「…」
まだ気絶している…
A棟3階 視聴覚室前
ガチャガチャ…
糞、開かないぞ…
しかもこんなに物が在ったんじゃ中に手を入れて開けるのも…
「誰か居ますかー!いたら返事してくださーい!安心してくださーい!」
返事がない。信用されてないのか(それだったら悲しいな)
「大丈夫です!俺、いや僕は自衛隊の高山と言う物です!出て来て下さい!」
またもや返事が無い。
誰も居ないか、この状況に絶望して自殺を…
返事が無いなら誰も居ないだろう。
俺はこの部屋の前を立ち去った。
A棟3階 視聴覚室前 (高山との距離 9m)
「誰か…か…いた…事…てく…心し…」
声が…聞こえる…
でも…体が動かない…
痛い…体中を打ったようだ…
骨…折れてるかも…
「大丈…で…俺…自衛…の…山…言う…です…」
何…?何山だ…?
何て名前だ…?
あ…足音が…
遠ざかっていく…
待って…くれ…
ここに…居るのに…
声が出ない…
ここに…居るのに…
気づいて…くれ…
駄目だ、もう足音が聞こえない。
俺は、そのショックでまた気を失った…
A棟 屋上
風が吹いている。
だが、あまり爽やかではない。
ゾンビの腐臭と、それに混じる血の臭い。
そして、支給品の双眼鏡(とは言え、そこら辺に有るものじゃない。)
「うーん…ここより街の方が酷い。」
確かに、街の方からの腐臭の方が多い気がするし、
街からは薄く煙が上がっている所もある。
「火事になるぜ、あれじゃ。でも消火も出来なさそうだな」
とりあえず此処にはもう用は無い。
「今度は…あそこに行ってみるか。」
俺が見ている方向…それは…
体育館だった。
ポツリ。
ポツポツポツ…
「あっ!とうとう降り出したか。」
ザ―――ッ…
(雨か…これで火が消えればいいんだが…)
A棟3階 視聴覚室
「うー…痛ってぇ…」
やっと意識が回復し、視聴覚室の方に移動した俺。
どうやら、骨折何かはしてないようだ。
ひとまず安心した…
コツ…コツ…
足音だ!さっきの人だろうか?
とりあえず助けを呼ばない手はない!
「おーい!助けてくれーっ!」
A棟3階 廊下
「おーい!助けてくれーっ!」
声だっ!今確かに声がした!
「誰か居るんですか?どこに居るんです?」
耳を澄ます…
「ここだ!」
確かにはっきり聞こえた。
その声は…
『視聴覚室』と書いてある部屋だ。
俺は駆け足で部屋の前に行き、ドアノブを回す。
…開かない。
「今、物を退ける。」
この声は!さっきの…
―おーい!助けてくれーっ!
あの声の人か!
「ヴゥゥゥ…」
今の声でゾンビが寄って来やがった!
「くそっ!消えろ!」
俺はまた銃をゾンビに向け、乱射した。
ダダダダダダ…
グチャッ、ベチャッと嫌な音を立て、ゾンビが穴だらけになる。
素早く弾を込め、また撃つ。
「早く入って!」
後ろから声が響く。
部屋のドアが開いてくる。
俺は素早く部屋に飛び込み、鍵をかける…
ここからは二人になりますが、一人だけ書きます。
A棟3階 視聴覚室
「ふう、助かった…」
まさに自衛隊!って服に身を包んでいる人が言った。
「大丈夫?」
俺が聞くと、
「ああ、大丈夫です。」
そう答えるが、どう見ても大丈夫ではない。
顔色が悪い。
まあ、いくら自衛隊員とはいえ、精神的にも参るだろう。
続きます
40 :
本当にあった怖い名無し:2008/05/27(火) 09:17:57 ID:aY6xoq2N0
age
A棟2-3階 踊り場
「武器は持ってる?」
「あ…?持ってないよ、そんなの」
さっきの1件があり、ちょっと(と言うかかなり)仲が良くなり、
普通に会話が出来るようになった。
「じゃあ、これ」
俺に手渡されたもの、それは――
黒く光る、拳銃だった。
たぶん、自衛隊が携行する9_拳銃だろう。
しかし、こんなおっかない物…
「はいこれ、弾」
また手渡されたものは確かに弾だ。
俺はそれを2つずつポケットに入れ、残りはバッグに…
入れようとしたが、無い。
(そうか!さっき逃げる時に落としたのかも)
まあ無い物は仕方がない。
あとの弾もポケットに詰めた。
まあ、カートリッジ4,5個だからそんなに荷物にもならないだろう。
「じゃあ、どこに行く?」
俺は迷ったが、1つの答えを出した。
「この学校を、出よう」
「出る?」
俺は間抜けな声で聞き返した。
「何で出るんだ?って顔してるな。説明するよ…」
まあ、説明するのは当然だろうな…
「2つの理由がある。
1つ目はここに長居してももう何も無いってことだ。
この学校には、役立つものは無い。武器庫じゃ無い。」
それには俺も同意できる。
「2つ目は、ここがもう崩壊しそうだからだよ。」
「崩壊しそうだって?」
俺はまた間抜けな声で聞き返した。
「ああ。さっきから校舎を壊しまくりだろ。」
確かに…
B棟3階での中ボス級の奴の戦闘。
それで使用した手榴弾(倒せなかったが)。
B棟1階の手榴弾の使用。
渡り廊下の崩壊。
そしてさっきの銃の乱射。
崩壊しそうな要因は幾らでもある。
「ここに長居するのは危険だ。だからここを出る。」
「うーん…だがどうやって出るんだ?」
普通に歩いていける距離はたかが知れている。
でも乗り物ったって…
「…お前ヘリは運転できるのか?」
「あ?やって出来ないことは無いと思うが」
もしかしてヘリに乗って行くってんじゃ無いだろうな。
だが俺の心の内を見透かしたようにやつは言った。
「ヘリに乗って行こう。利用しない手は無い。」
コイツ…自分が何を言っているか分かっているのか?
そんな簡単に行く訳が無い。映画じゃ無いんだし。
まあ、いい案だと思うが。
「ヘリは何処に止めてある?」
まさか本当にやるつもりか!
「び、B棟屋上だ…」
「よし!行くぞ!」
やっぱり行くのかよ…
とりあえず俺は付いて行く事にした。
中庭
「はぁ…はぁ…」
「ふぅ…」
流石にゾンビを倒しながらの移動は面倒だな。
それにしても、さっきの奴はまだ気絶してるのか。
「早く行こう。」
「ああ…」
心なしか高山が嫌そうな返事をする。
気のせいだろう。
B棟4階 屋上入口前
「本当にここであるの?」
「ああ。ここに停めてたんだ」
とにかく行って見ればわかる。
B棟 屋上
「よし、乗り込むぞ」
機体が濡れている。雨でも降ったのか。
高山は俺に呼びかける。
「ああ。」
軽く返事をし、乗り込む。
…中は意外と広かった。
「よし、行くぞ。ちゃんと掴まっとけ。」
そう言うと、だんだん機体が浮き上がる…
しかし、本当に出来たんだな。
「休んでいいか?」
俺は高山に聞く。
「ああ…良いぞ。」
こっちを振り向かずに言う。
「じゃあ、休むことにするわ。」
俺は、とりあえず毛布何かを集め、床に寝る。
そして、今度こそ安心して眠った…
ヘリコプター内 高山視点
「よし、乗り込むぞ」
俺は奴に声をかけた。
「ああ。」
返事を返し、乗り込む。
「よし、行くぞ。ちゃんと掴まっとけ。」
俺は奴に注意を促した。
そして俺は、前に教えられたとおりにやってみた。
…おっ!浮いてきた浮いてきた!
何とか成功したようだな。
そのとき、
「休んでいいか?」
奴が声をかけた。
「ああ…良いぞ。」
俺は答えた。
「じゃあ、休むことにするわ。」
後ろから、何かを取る音や、何かを敷く音が聞こえた後、静かになった。
「…よっぽど疲れたんだな。」
俺も休みたいが、操縦があるからな…
続きます
遅ればせながら
>>1乙!
次スレが立ってるのに気づいたのが24日だったorz
なんでみんな次スレの話に乗ってくれないんだろうと思ってたら書き込めなかったのね
501KBって書いてあったのに
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
第十一話投下(9レスのつもり)
第十一話──『奈落』
side-A
『生存者の皆様は迅速に中庭に〜』
先ほどから若干の英語訛りが感じられる声がラウドスピーカーを通して病院の周囲に響き渡っていた。
服を着替えた後、シェリーを探し彷徨っていた私は本館三階にいた。窓から見上げた空には大きなヘリコプターが飛んでいる。
「じ……え…ぃ……」
声を出そうとしてやめる。やはりちゃんと発音の練習をしないと無理なようだった。時間が経てば普通に喋れるかと思っていたのに。
ううん、それよりも今は状況を把握しないと。
異常な事態だとは思っていたけど、まさか自衛隊が出てくるなんて予想もしていなかった。
出動するにしても早すぎる気がしないでもない。政治のことはよく分からないし、そう思う前提も全て私の推測に過ぎないのだけど。
いや、でも現実にこうやって来ているわけだから素直にこの幸運に感謝しなきゃ。
あれだけ大きな音量なら、この病院のどの病棟にいてもきっと聞こえないことはないと思う。
五分という待機時間が短すぎる気はするものの、わざわざゾンビのうろつく町中を自力で脱出する選択肢を選ぶ猛者はいないはずだ。
ここから中庭まで……走れば五分以内に着けると思う。
シェリーとパパはきっとそこにいる。
行こう。
灼熱地獄の影響が尾を引いているのかまだ体は辛いけど、泣き言なんて言ってられない。全身に鞭打ち私は中庭に向けて走り出した。
side-B
おれたちのいる第五病棟の丁度真正面。化け物は第二病棟二階のガラスをぶち破って中庭に降り立ったようだった。
今まで発していた人間の名残りのある叫び声から獣に近づいた遠吠え的な咆哮を上げる。その姿を見たおれは思わず目を見開いた。
「……なんだありゃあ……!?」
おれが最後に見たときは人間がただ大きくなったみたいな、でかくもちゃんと人の形を保っていたのに。
今のアレは──例えるならゴリラが一番近いだろうか。
上半身が異常に肥大化し、前傾姿勢になっていた。腕の太さも人間の胴すら超えているように見える。おまけに目玉も復活していた。
見たこともないような巨大な爪が両手に生え、あんなもので引っかかれれば一溜まりもないのは間違いない。
突然降って湧いた化け物にグラサンの両脇にいた隊員たちが動揺の声をあげる。
しかし本人だけは微動だにせず、驚いた様子もないように見えた。
ここからじゃ聞こえないが何か話しているようで、化け物が奴らに狙いを定めて走り出すのとほぼ同時に、三人は一斉に銃口を向けた。
アサルトライフル二挺から発射された銃弾の雨あられが正面から突っ込む化け物を蜂の巣にしていく。
その上グラサンの大口径が鬼のような命中率でヒットし、弾が当たるたびに化け物は勢いを削がれ、走る速度が鈍っていった。
そして──わずか数十秒足らずの攻防、否、一方的な火力の前に化け物は道半ばでその場に伏すこととなった。
苦しそうな咆哮を上げ、体細胞がぐちゃぐちゃになった化け物は痙攣しながら動かなくなる。
「やりやがった……」
圧倒的だった。相打ちになれば上出来だと思っていたが、まるで赤子の手をひねるようだった。
窓の前でおれと同じくその光景に見入っていた親父さんは、ふと振り向く。目が合った。その瞬間、凄い形相で睨み口だけを動かす。
きっと早く行けと言いたかったんだろう。声を出さなかったのは、みすみすグラサンにおれの存在を知らせることになるからに違いない。
我に返ったおれはほとほと自分の愚かさを呪いながら急いで少女の体を背負──
『ハリーの背後の病室に隠れている者に告ぐ。今すぐそこにあるモノ≠持って出てこい』
side-A
第一病棟二階から第二病棟へと移った私は息を切らしながらも足だけは緩めることをせず、廊下を一直線に駆け抜けていた。
超人のはずなのに普通の人よりも足が遅い……体の負担さえなければきっと羽が生えたように軽く走れると思うのに。
思うようにいかない現実に焦りつつ、私は窓から外を見る。既に中庭の様子は目視できるくらいだった。
先ほどのヘリコプターが植木を押し倒して着陸していて、人の姿も数人見える。けれど見る限りあの中に金髪はいないようだった。
嫌な想像が脳裏をよぎる。パパもシェリーも、もう……。
だが最低な結末を思い浮かべた自分にハッとなり、私は立ち止まって前かがみになりながら息を整え、両頬を叩いた。
シェリーもパパも絶対に生きている。もしも待機時間が過ぎても二人が来ないときは自分で院内をくまなく探せば良いんだ。
自分自身に言い聞かせるように一度頷き、私はまた走り出──……そうとして足を止める。
何か、火薬…みたいな臭いがするのに気がついた。ふとすれば気づかなくても不思議ではない程度だけど……確実に臭う。
道草を食っている余裕なんてないはずなのに、直感というのか──私はどうしてもその正体を確かめなくちゃいけない気がした。
鼻をくんくんと働かせて臭いの元をたど──
「う、ううううううぅぅぅぅ」
突然呻き声が聞こえ、私はビクッと身構えた。
声はこの先……第三病棟方面から聞こえた。男性のようでかなり野太く、大怪我でもしているのかとても苦しそうな感じだった。
ゾンビ……かもしれない。けど、普通の人の可能性もある。ゾンビに襲われて助けを求めているのだとしたら。
こんな格好をしてるとはいえ私に何ができるわけでもないけど……でも同じ生存者なら助けないと。
私は覚悟を決め、その人の元へと向かった。
苦悶の声は未だ断続的に聞こえてくる。が、段々大きく絶叫のように変わっていた。いけない、叫ぶほど苦しいのかもしれない。
負担に耐え、私は走る速度を上げて第二、第三病棟の渡り廊下へと着いた。
発声源を見る。
励ます意味でも声をかけてあげたかったな……なんて悠長な考えは一瞬で虚空の彼方へと吹き飛んだ。
元より声は出ないけれど、それでも絶句してしまう。目の前のそれがなんなのか見当すらつかず、ただ呆然と見るしかなかった。
それは、血しぶきを上げながら叫んでいた。何かの生物であるのは間違いないと思う、胴体、頭部、片足が見受けられる。
でも……第一印象は肉塊だった。
肌の色は人間とも動物とも違う濃い茶褐色。その全身がぼこぼこぐちゅぐちゅと不気味にうねり、脈打つ。
どういう生き物なのか、もう死にかけているところなのか……様々な疑問が一気にひしめき合い、結局私の頭の中は真っ白だった。
ただ、とてつもない生理的嫌悪感が背筋をものすごい勢いで駆け抜ける。
私が放心して立ち止まっていた時間は、ほんの数十秒のはずだった。
しかしそれは致命的な判断速度だった。むしろこれを見てコンマ何秒で逃げ出せていたとしても、きっと同じだったに違いない。
合図は叫び声と右腕だった。
固まる私を尻目に目の前の肉塊は一層大きな叫びを上げる。
それに呼応して皮膚の一部が盛り上がり、そこを突き破って丸太のような腕が生えてきた。指先には恐竜の牙のような巨大な爪。
目に見えて明らかな凶器の出現に、ようやく私の頭に殺されるかもしれないという恐怖心が芽生える。
その途端、私は踵を返していた。
背後から低くも甲高い断末魔のような叫び声が響いてくる。思わず振り向いた私の目に、五体満足な肉塊──怪物の姿が映った。
超人だからなんだというの。いくら人間を超越したからといって、あんな生粋の怪物に敵うはずがなかった。
私は一度死んで、生き返って。人間を超えて。強くなった気になっていた。一人でも十分にシェリーを守れる気でいた。だけど……
人間の本能なのか、十数歩走ったところで私はまたも後ろを振り返る。
追ってきているのか、距離は取れているのか、足の速さにどれくらい違いがあるのか、逃げ切れる可能性はあるのか。
──……背後には、もうその太い腕が届きそうなほどに迫った怪物の姿があった。
私は大きく振りかぶられた腕に視線を移す。
次の瞬間、弾丸のような速度で体を引き裂かれた私は真横にあったナースセンター受付からガラスを突き破って奥まで吹き飛んだ。
side-B
「はは……ははは……」
へらへらと笑ってしまう。不謹慎だが、笑わずにはいられない状況だった。
なんだよ、ウェスカーって奴は超人になって透視能力でも身についたってのか……? なんでおれがここにいることが分かるんだよ!?
『繰り返す。下手な事は考えずにブツを持って出てこい。カウントダウン終了までに出てこなければ、即刻ハリーを撃ち殺す』
ハリーてのはきっと親父さんのことだろう。
別におれの身内じゃないし、撃ち殺されようがおれ自身が逃げる分には何の問題もない。
だけど、少女にとっては親父さんはかけがえのない存在だ。
姉さんを殺して親父さんまで犠牲にしたとなれば……ここで親父さんを見捨てて少女を助けても、きっと絶望にしかならないだろう。
『十。九。八。七──』
クソッ、どうすりゃ良いどうすりゃ良いどうすりゃ良い……!?
今ここで素直に少女を連れて行っても助かるとは到底思えない。その場で撃ち殺されるか、下手すりゃ連れてかれて拷問されるか。
逃げるにしても親父さんは表だ。アサルトライフル装備の側近二人に加えてグラサンの腕前からして致命傷はまぬがれない。
仮にこの場は上手く逃げ出せたとしても、こっちは少女というハンデをおぶって移動しなきゃならない。
向こうはプロだし、機動力とか装備とか、その他諸々を考慮してもおれたちが逃げ切れるのに有利な状況が一つもなかった。
篭城は自滅にしかならないし、院外に出たら動く人間がいない町中では上空からヘリの捜索ですぐに見つかってしまうに違いない。
万事休す、なのか? もうおれたちには殺される選択肢以外残ってないのか。だが諦めかけたそのとき、おれはあることに気づいた。
ブツ……モノ……。確か奴ら、そう言ってた。
お荷物と化した少女を皮肉ったのかもしれない。でも、違う気もする。この状況でおれ自身がそう思いたいだけなのかもしれないが。
どうせ殺される未来しか用意されてないなら……一か八かの可能性に賭けてみよう。何か、何かそれっぽいものはないか……あっ!
カウントダウンが終わりかけ、おれは慌てて少女の首に下がっていたペンダントを取って窓の前に立った。
「こ、これがブツだ!」
side-A
痛い、痛い、痛い……。
引き裂かれた鋭い痛み、そして全身を殴打した鈍い痛み。体中全てが痛みで覆われ、心が折れてしまいそう……気が狂いそうだった。
なんで私ばかりこんな目に遭わないといけないの……もう痛いのは嫌だ。傷つくのは嫌だ。いっそのこと楽になってしまいたかった。
このまま痛みに耐えていれば死ねるのかな。
「げほッ、げほッ……!」
内臓のどこかが破裂でもしたのか、口からは咳と一緒に血が出ていた。
視線を移せば、千切れてさえいないものの、左腕の肉が三本の引っかき傷によって鋭く抉られ、骨すら露出していた。
醜い、な。ウイルスのせいで人間ですらなくなって……体液まみれからやっと抜け出せたと思ったら今度はこんな大怪我して……。
「うぅ、うううぅぅぅ……」
普通に学校に通って、普通に青春して、普通に大人になって、普通に結婚して子供を生んで、普通におばあちゃんになって……。
そんな人生で良かった。高望みなんてしてないから。人並みで月並みな一生を送れれば、それで満足だったんだよ。
なのに、なんでこんなことになっちゃったんだろう。
ずっと過ごしてきた町もゾンビタウンになった。特に好きってわけじゃなかったけど、馴染みが深くてそこにいるのが当たり前だった。
何もかも、失ってからその大切さに気づく。私にはもう何もない。何も。何も……
──本当に?
大切なもの。今まさに失われようとしているもの。ずっと守ってきたもの。私の、私の大切な。
普通に学校に通うこともできず、普通に青春することもできず、結婚どころかおばあちゃんどころか普通に大人になることすらできない。
私の今感じている絶望感は、あの子が常に感じていたこと。先のない未来に幾度涙を流しただろう。
でもこんな状況にあってあの子の未来は開けたんだ。あの子の病気を治す物。私しか在処を知らない。私しか……あの子を救えない。
シェリー……!!
可愛い妹の未来は私に全て掛かっている。
今まで何寝ぼけたことを思っていたんだろう。死ねない……こんなところで無様に醜く死んでる場合じゃない。私はまだ──生きられる。
side-B
そもそもおれは奴らの言っているブツ≠ニいう物がまったく分からなかった。
親父さんの日記にウイルスとかがたびたび出てきていたから、そのウイルスが入ったカプセルとかのことじゃないかと思ってみたが。
見当違いのものだったらおれも親父さんも即撃ち殺されるだろう。
恐怖に全身がガタガタと震え、ペンダントを向こうにも見えるよう頭上にかざしている間、ハッタリが気取られないよう願いまくっていた。
顎に指を当てておれの方を凝視していたグラサンは、部下に何事かを伝える。
『良いだろう。それを持ってこっちに来い』
「は……」
ハッタリが、通用……した。
今まで賭け事っぽいイベントでまともに勝った試しがなかったおれは、それだけで腰が抜けてしまいそうだった。
でも変な挙動を取れば見抜かれてしまうかもしれない。その強迫観念のみでおれの足は支えられていた。ゆっくり一歩一歩歩み出す。
窓枠を乗り越え、こけてしまわないよう注意しながら震える足で歩んでいく。そして親父さんの隣辺りまで来たとき、
「Wait」
呼び止められた。おれは驚いて顔を向ける。親父さんはおれの方を見ず、大声を出してグラサンたちに何かを言っているようだった。
部下から拡声機のマイクを奪い、グラサンも冷静に返答する。親父さんはそれに必死に食い下がっているように見えた。
やがてグラサンはせせら嗤うように何かを言う。それとほぼ同時にマイクを部下に返した。
『小僧、そのロケットをハリーに渡せ。渡したらお前はそこでじっとしていろ。少しでも妙な真似をしようとしたら撃ち殺す』
「……な、わ、分かったよ……」
顔を横向けると、親父さんは申し訳なさそうな顔で片手を差し出した。
言葉が通じないと思うと何も言えず、おれは無言でペンダントを渡す。その際、親父さんは手品師のような手際の良さで中を開けた。
そしてその瞬間目を見開き、すぐにフタを閉じる。
おれも見た。中には赤い色の液体が詰まった小さな試験管? みたいなのが入っていたのを。
親父さんは何事もなかったかのような顔をしてゆっくりとグラサンたちの方へ歩き出す。だがそのとき──巨大な遠吠えが響き渡った。
side-A
火薬の臭いがする。さっきの臭いはどうやらここ、ナースステーションから漂ってきているようだった。
苦痛に歯を食いしばりながらも私はよろよろと立ち上がる。全身打撲に左腕超裂傷、おまけに恐らく内臓破裂。
普通の人なら治療をしなければとても助かるようなものじゃない。立ち上がるのだって無理だと思う。こういうときだけ超人、か。
「はぁ、はぁ……ゲホッ」
左腕を押さえながら私は臭いの元を探す。
超人になったことで嗅覚まで犬並みになったのか、臭気を辿ることで苦労することなくそれ≠見つけることができた。
それは……──一見すれば包装紙で包んである石鹸でも入ってそうな四角い箱だった。
でも、その上にはデジタル時計のようなものがついていて、何本かの銅線がごちゃごちゃと繋がれていた。
こういうの……テレビドラマとかで見たことがある。えと、なんだっけ……刑事物とかでよくあるよね。ああ、そうだ、これって……
──爆弾!?
爆発したら大きな建物も一瞬で壊れて、人が近くにいたら絶対死ぬ……一般人には現実味のない、テレビの中のもの…のはずで。
なんで……なんでこんなものがこんなところにあるのッ……!?
だってここ普通の病院だし、シェリーがずっとお世話になってるし、今まで爆発なんてしてないしッ……!
わ、分かんない解んない判んない……!! こ、これが爆発したら、わ、私も、シェリーもパパも……みんなみんな死、死んじゃう……。
ゾンビだとか怪物だとか言ってる場合じゃない……早く、早くここから逃げないと!
「っ……!」
焦って動こうとしたからか、全身に激痛が走る。
これ……時計が表示されていないからまだ機能していないと思うんだけど……私のこの傷じゃ、逃げきれないかもしれない。
そうだ。爆弾なんだから水につければ爆発しなくなるかも。
私はなんとか使える片手で爆弾を抱きかかえ、体を引きずるようにしてナースステーションから出た。
適当な病室に入ろうと廊下を歩き始めたとき、一部の窓ガラスが割れていることに気づく。
そのときようやく自衛隊がいたことを思い出し、諦めながら外を覗くと……ヘリの側にいた人たちが先ほどの怪物に引き裂かれていた。
side-B
敵も味方も含め、中庭にいた全員は一斉に死んだはずの化け物に目を向けた。
その瞬間、きっと全員が絶句したと思う。
いつの間にか化け物の体はさっきよりも肥大化し、おまけに手が四本になっていた。肌の色もどす黒い灰色になっている。
胸元がイソギンシャクのようにざっくりと割れ、大きな口みたいになったそれがガバリと開いた。
そこからおぞましい地を這うかのような大絶叫が発せられる。
標的はグラサンたちのようだった。化け物の足が重い音を立てて地を蹴り、砲弾のような速度で奴らに迫っていく。
おれはただそれを呆然と見ているだけだったが、親父さんはその間にも行動を起こしていた。
慌ててアサルトライフルを掃射する隊員二人。だがさっきまでと違い、化け物の体は銃弾を全て弾き返していた。まるで鋼だ。
化け物は一気に距離を縮め、そのまま逃げようとした隊員に凶悪な体当たりをかました。
全身の骨がぐちゃぐちゃになったのか四肢頭部が変な形に折れ曲がったそいつは、何十メートルも吹っ飛ばされて壁に激突した。
そして一息吐く間もなく、化け物は振り返り様にグラサンに向かって横薙ぎを繰り出す。
思わず腕でガードしたグラサンだったが、もちろんそんなので防げるはずもなく、腕が折れて思いきり吹っ飛ばされた。
わずか十数秒の虐殺。残っているのは一人だった。
グラサンさえもやられ、完全に戦意喪失したその隊員は銃口を向けたまま、しかし撃つことも逃げることもできずに立ち尽くす。
だが化け物は容赦という言葉を知らなかった。四本の腕を一斉に振り上げ、そして──隊員の体をバラバラに切り刻んだ。
圧倒的だった。さっきとはまるで形勢が逆転していた。
これで助かる──そんな平和ボケな考えが頭に浮かぶが、化け物が振り向きおれたちを視界に捉えた瞬間に消え去った。
次にやられるのは……
おれがそこまで考え、同時に化け物がこっちに狙いを定めて走り出そうとしたときだった。急に化け物の体が真横に吹っ飛ばされる。
巨体が退き、そこに立っていたのは……黒いコートを着たハゲ男だった。呆然としていると、突然グラサンの大きな笑い声が聞こえた。
「────、──Tartaros!!」
第十一話終了
今回は二人の視点が入り乱れて少々状況が理解しにくいかもしれない
ちなみにside-A、side-BというのはアリスのAとボーイのB
親父の名前はアリス、シェリーときているのでハリーにしてみた
そう、元ネタはサイレントヒル。娘二人の名前が似てるのは偶然だけども>アレッサ、シェリル
いやーしかし、病院の構成をおぼろげにしか考えていなかったから具体的に描き出すのに一苦労してしまった
いざ描いてみたら状況を全て合致させるのが難しくて(汗
以下は病院の簡単な平面図と十一話終了時のキャラの位置状況。小説らしく想像で補完するぜ!という方はノンクリックヒアー
http://up.mugitya.com/img/Lv.1_up60644.jpg >>10 そうやって指摘してもらえると助かるよ。何分英語はまったく勉強してなかったもんだから(汗
今後の参考にさせて頂きます。応援ありがとう。エンディングについては期待通りの展開になるかわからないけど、お楽しみに!
>>emptyさん
まだちょっと読点が多いかな。まったくないのも問題ありだが、
読む側は読点がなくても大体文節ごとに自分で区切りをつけて読む(と思う)から、そこそこ繋げても大丈夫だと思う
今度書くときは読点により注意してみるといいかも
それにしても、かなり文章力が上がっていて驚いた。状況の想像もしやすかったし、ギャグの要素も良くて吹き出してしまったよw
次回にも期待!
投下します
…が何か自信無くなってきた。
●●街 ビル屋上
何処だ?ここは…まったく、いくら毛布を敷いていても、床が鉄じゃ駄目だな。基本的に床は…
…って床の事に文句を付けている場合じゃない。だが、本当に床が固くてよく眠れないよ。まったく。
まあ、文句を言っても仕方ないだろうな。硬さが変わるわけじゃ無し…
「起きたのか?まったく、良く眠ってるな。こんな状況でよく眠れるな。」
嫌味かコラ。嫌味じゃなくてもそう聞こえるぞ、第一眠いから仕方ないでしょうが。
「こっちは燃料が切れて困ってたって言うのに…」
知るか。こっちは寝てたんだよ。分かる訳無いだろ。
そんな怒りを俺は表面に出さずに、質問した。
「…で?どうすんだよ。燃料でも取りに行くのか?」
「それしか無いだろ。」
まあ、そうするしか無いけどさ。だが俺は、その話をあまり聞かずに他の事を考えていた。
「…予備…はある訳無いよな。」
「あったらとっくに使ってる。…てな訳でどっちが行く?」
は?
こいつは何を言っているんだ。俺は拳銃1丁だけだぞ?それで行けってのかよ。
「どうする?」
どうするもこうするも無いだろ。俺が行けると思ってんのか、こいつ。
まあ、俺が行くことになれば、奴の装備を借りて行くが。
「…やっぱりアレだよな。一般人に行かせるのは良くない…だが…
やっぱり俺が行く。お前はここで待っていてくれ。」
やっぱりこうなるのか。まあ当然と言えば当然だが。
「じゃあ、行ってくる。ここで待ってろよ。どこかに行くんじゃないぞ」
分かってるよ。子供じゃねーんだからな…馬鹿にするなよ。
「ああ。―ちゃんと、帰ってこいよ。ここに。待ってるから。」
高山は、振り向かずに手をあげて返事した。
●●街 ビル内 8階
コツ…コツ…コツ…
俺の足音が響きわたる…まったく人がいないビルってこんな寂しい物なのか?
俺の足音だけが響く…
「少し、ロック系の音楽でも聴ければなぁ…寂しいや。」
しかし、暗いな…まったく。ビル全体の電気が落ちてんのか?暗くて危ねぇ。
フロアの方は薄暗く、視界が確保できない。あっちに行くのは危険だろうな。
今のライトじゃ5,6m先を照らすのが精いっぱいだからな。それに時間が時間だしな。
近くにあった時計を照らす。時計は5時を指している。早く言ってこないと暗くなるな。
俺は急ぎ足で下に向かった…
●●街 ビル内 1階
そんなことを考えてるうちに、1階に着いた。まったく、いくら下りだからって結構疲れるんだぞ。
それに帰りは荷物があるんだぞ…気が遠くなりそうだ。まったく…
まあ、早く行かなきゃな。急ぐぜ。
●●街 ビル前
「よーし、行くか。」
俺はとりあえず向こうに見える(コンビニの向こう)ガソリンスタンド行った。
しかし、普通のレギュラーでいいんだろうか?それともハイオク?
●●街 ビル屋上 ヘリ内
…特に何も無いのに待ってるってのは暇なもんだな。はぁ…
―冷たい風が頬を撫でる。何か気持ちいいなぁ。涼しー。
ん?待てよ、冷えてきた、てことはもうそろそろ夜になるな…
「帰って来てくれよー。高山…」
何か心細くなっちゃったよ、もう…腹も減るし。何か食べ物も持って来てくれればいいんだが。
●●街 GS内 従業員室
「…何も無いな。ここに何かあると思ったんだがな。」
まあ、燃料は汲めたからいいか。何か役に立つ物があるか探しに来たわけじゃ無いか良いけど。
よし、帰りはコンビニに寄って食糧調達するか。腹減ったし。
●●街 コンビニ内
ガサガサ…
手当たり次第に棚にある物を詰め込む。詰め込む、詰め込む。
「これでいいか。これくらいあれば困らんだろう。飲み物もこれだけあればいいだろ」
ビニール袋には、おにぎりが棚に置いてあった分全部詰め込んであり、これだけでも食べるのに困らない。
もう一つの袋には、お弁当が、4、5つある。(この袋は結構大きめ)
それに、保冷用の袋にペットボトル(2L×5)が…
「よし、行くか。」
続きます
ゾ
61 :
本当にあった怖い名無し:2008/05/31(土) 21:32:51 ID:vC4DfxpY0
age
ン
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
第十二話投下(9レスのつもり)
第十二話──『勝者と敗者』
side-A
「〈ククク、面白い。よもや六年前の旧ウイルスの出来損ないがここまでやってくれるとは。──良いだろう、お前には元部下として名誉をくれてやるッ! こいつの戦闘データを収集するというな、タルタロス!!〉」
窓の外の光景を呆然と眺めていた私の眼下では興奮気味に英語で喋る男性の声が響いていた。
そしてその声に反応するように、ヘリコプターの側にいた黒い外套に身を包んだスキンヘッドの男性が大きめの声で言う。
「〈了解したマスター。速やかに標的を抹消する〉」
機械音声のような抑揚のない声だった。
タルタロスと呼ばれた男性は壁際に吹き飛ばされた怪物の方へ体を方向転換すると、ゆっくりとした足取りで歩き出す。
自信満々だけど……正直、私にはあの人が怪物に勝てるとは少しも思わなかった。
怪物の体格はもはやワゴン車くらいの大きさだった。それに丸太のような腕が四本、その全てに恐竜の牙のような鋭い爪がある。
対してあの人の体格は身長は良くて二メートル前後、筋肉だってコートの上から見ても良く鍛えたボディビルダーくらいしかなさそうだ。
人間の中ならずば抜けているのだろうけど、絶対に常軌を逸した怪物に対抗できるスペックじゃなかった。
また先ほどの人たちみたいに無惨に殺されてしまうんじゃないか──でも下にいる人の自信も気になり、目が離せない。
怪物はと言えば、まだ襲いかかる気配は見せず、猫が威嚇をするときみたいに唸り声を上げながら体勢を低く低く落としていた。
きっと戦闘は一瞬で始まる。それはその場にいた誰もが無意識的に理解していたと思う。
必要以上に緊張感が長続きし、だからこそ焦れてしまった私はそれをした。結果的にそれが後の展開で有利に働いた幸運だった。
本当に何気ない無意識の行動。視線を怪物たちから離し、見渡せる範囲の状況を把握しようと目線だけで中庭を一巡する。
そして私は気づいた。
怪物たちの他に誰かいるのは知っていたけど、流し見程度しかしていなかったため、それが誰か判ったときは心臓が止まりそうだった。
この第二病棟の正面に位置する第五病棟付近には──ずっと探し求めていたパパがいた。
side-B
黒コートのハゲ男は化け物に向けて悠々と歩みを進めていく。
動物的な威嚇行動を取っている化け物に比べてその姿はまるで隙だらけのような気がしたが、どこか弱者対強者の図を彷彿とさせた。
だが、あんなガタイの良いだけの男が化け物に敵うとは到底思えない。何か……とっておきの武器でも持っているのか。
「!」
そんなことを思っていた刹那、化け物が動いた。何の予備動作もなく地を蹴り砕き、矢のような速度でハゲに突っ込んでいく。
だが、それに対しハゲの取った行動は攻撃でも防御でもなく──ただ変なポーズをしただけだった。
例えるならそれは、危害を加えられそうになった人間が反射的に防御しようとして両腕を前にかざしたときのような情けない格好。
グラサンの自信満々そうな語気から強いのかと思っていたが、まさか反射的な防御をするので精一杯だったのか。
漫画ならそうはいかないお約束。そんなことすら忘れ、一瞬後のハゲの末路を思い描いていたおれの目に、その光景が焼きついた。
どずん、という重く腹に響くような衝撃音。それと同時にハゲは数センチ動いただけで化け物の体当たりを難なく食い止めていた。
ありえない。受け止めること自体凄いことだが、信じられないのはそんな瑣末なことじゃなかった。
化け物は四本の腕全てを駆使して襲い掛かったにも関わらず、ハゲはそれを腕二本のみで防ぎ切っていたのだ。
左手で化け物の右上手の手首を掴み、同時に腕の角度を調節して右下手すらも押さえている。
右腕ではなんと、指の間に爪を全て挟んで止め、肘で左下手の攻撃を防いでいた。
心なしか悔しそうに聞こえる唸り声を上げていた化け物は攻撃を全て受け止められたと悟るや、胸部の口をガバリと開く。
だが。
そのときには既に化け物の体は宙に浮いていた。
ほぼ垂直に突き上げられた脚。ハゲのキックが化け物の口を強烈に蹴り上げていた。
銃弾さえ跳ね返す甲皮もさすがに口内までは及んでいなかったようで、胸の口の中に足を突き刺された化け物は大量に吐血する。
しかしハゲの攻撃は終わっておらず、そのまま化け物を踵落としで地に叩きつけると、大きく足を振り上げ──その頭部を踏み砕いた。
なんでこう次から次へと圧倒的な力を持った奴が出てくるんだ……? 現実はインフレの酷い少年戦闘漫画じゃねえっつうんだよ。
化け物は確かにアサルトライフルの銃弾を弾いていた。その強度は頭にだってあったはずだ。
それなのにハゲは化け物の顔を易々と──ではないのかもしれないが──ダンプに轢き殺されたカエルの如くペチャンコにしていた。
しかもそれだけでは飽き足らず、踏み抜いた地面(舗装されたコンクリ)すら粉々に砕いてしまっていて衝撃の凄まじさを物語っていた。
ハゲはつまらなそうに「フン」と鼻を鳴らすと、足を引き抜いて仕事を完遂したと言わんばかりに即座に背を向ける。
その側にはいつの間にかグラサンが来ていた。
グラサンはおれたちの方に歩きながら一度軽くハゲの胸を小突き、何かを言う。
そして奴が数歩歩いた瞬間、化け物の巨大な遠吠えが周囲に響き渡り──ハゲは背中から四本の腕で胴体を串刺しにされていた。
頭を潰しても生きてんのか……!?
グラサンは動揺した様子もなくニヤリと笑う。まるでこうなることを知っていたかのように。
視線を移せば、串刺しにされていたハゲは死ぬ様子も痛がる様子もなく、英語で何かを呟くと冷静にコートをちぎった。
そして苦しそうな呻き声を出した後、両手を一度クロスさせ、それを思いきり広げる。その手から巨大な爪と剣のようなものを生やして。
こうして化け物とハゲの第二ラウンドが始まった。おれと親父さんにとってはもうそれを見ている状況ではなくなっていたが。
戦いを始めた化け物たちをバックに、おれたちの目の前に来たグラサンは余裕の笑みを見せる。
おれはただ呆然として見入っていて愚かにも逃げ忘れていただけだが、親父さんが逃げなかったのは何か理由があるような気がした。
グラサンは親父さんに何か言いながら残る左手を突き出す。きっとそのペンダントをよこせ、とでも言ってるんだろう。
おれは……気づかれていないことを祈りつつ、タイミングを見計らっていた。
親父さんはグラサンへと近寄っていき、そしてペンダントを渡そうとして──突然懐からルガーを抜いてグラサンの顔へ向けて撃った。
おれはその瞬間に第四病棟へと向けて走り出す。
おれの手にはハンカチで包まれた小さな試験管と新品の注射器が握られていた。
さっきの化け物共の戦いのどさくさの最中で、おれやグラサンがそっちに気を取られている間に親父さんに渡されたものだった。
最初はおれにグラサンへ渡せと言ってるのかと思った。でも、それなら親父さんがペンダントを持っているのはおかしい。
そう考えたとき、ようやくおれはその意図を理解した。
今のペンダントは空だ。それをグラサンに渡せばどうなるか。ならばきっと、自分がグラサンを押さえるからその間に逃げろ、と。
だからおれは逃げた。第五病棟ではなく第四病棟に。
おれの当面のミッションは妨害されることなく少女に注射を打つこと。
グラサンに少女の存在は知られていない。それを活かし、ひとまずどこかに身を隠してグラサンをやり過ごした後、少女の元へ向かう。
ない頭を絞って必死に考えた策だった。
親父さんが手ぶらだと知れば、おれを追いかけるのに気を取られ、銃を持たない状態では殺している暇はないだろうことも計算済みだ。
おれは振り返らない。
もしも計算違いで親父さんが殺されたとしても。もうグラサンが背後に迫っていたのだとしても。
ただただ無心でひたすらに足を動かし地を駆けた。
建物に入れば後はどうにでもなる。五十メートルもないんだ、十秒あれば良い。もう後半分、ああ、でももう少しがもどかしいッ……!
二十メートル……十五メートル……十メ、
「disappointed」
視界が霞むほど全速力で駆けていた。だから驚く余裕も目の前に迫った物を認識する余裕も、当然それを回避する余裕もなかった。
突然顔面に何かがぶつかり、訳も分からないまま走る方向とは正反対に吹っ飛ばされる。
そして全身を地面に打ちつけ衝撃が収まった途端、顔に信じられない激痛が走り、おれは情けない呻き声を上げながらのたうち回った。
「うぅああぁいぎぃぃっ……!」
なんだこれ、もはや痛いなんてもんじゃない、顔の骨が折れてるかもしれなかった。……いや、首が折れなかっただけマシなのか。
感情が高ぶっているわけでもないのに涙が止まらず、痛みに歯を食いしばるのに精一杯で動いたり考えたりする余裕すらなかった。
だから目の前に足が近づいてきても気づくことはなく。首を鷲掴みにされてようやくおれはグラサンにやられたのだということを悟った。
「がっ、い、あああぁぁ……!」
顔の痛みだけでお腹いっぱいだっていうのに呼吸をさせるつもりもないくらいの圧迫感が首をしめつけ、体が宙に浮く。
苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しいッ!!
全体重の負荷が首に掛かるというとんでもない苦痛。声もまともに出ず、息すらもできない。意識は今にもブラックアウトしそうだった。
パニックの最中で、霞んだおれの目にはニヤリと笑いを浮かべるグラサンの姿が映る。
初めて人間の笑いが怖いと思った。グラサンの存在自体が死と同義であるかのように一挙一動に気が狂いそうなほどの恐怖を感じる。
もう抵抗しないから、言うことはなんでも聞くから止めてください、と声を大にして言いたかった。
しかし声らしい声はやはり出ず、言ったとしても相手には言葉が通じない。今のおれはもはや失禁していてもおかしくないレベルだった。
「────」
グラサンが何かを喋っている。でも英語なんて全然分からない。
それ以前に、もう脳に酸素と血が行ってなくて……抵抗する力も思考力も体中から抜け落ち、何もかもがおぼろげになり始めていた。
そのとき、軽い発砲音と弾が金属に当たるような音が聞こえる。
失いかけた意識の中で見た光景は、親父さんの撃った弾をグラサンが折れた片腕で弾き返したところだった。
はは……本当に人間じゃねえやこいつ。……もう、目の前が暗い……周りの音が聞こえない……痛みもなくて、少し気持ち良い……。
そしてくらやみのなかでおれのいしきは、
「あああああぁぁぁぁぁ!」
side-A
こんな絶望的な状況で心の中ではどこか諦めていたのかもしれない。
だからパパの姿を目にしたときは嬉しくて痛みさえ忘れてしまっていた。爆弾を抱えたまま出来うる限りの全速力で階段を下りていく。
そして、第二病棟一階の扉から外に出た私は目の前の光景を見た。
中庭では怪物二匹が死闘を繰り広げていた。さっき私を切り裂いた怪物に、どこから湧いたのか人型に近い怪物が襲い掛かっている。
優勢なのは人型に近い方だった。というより、ほぼ一方的にいたぶっていると言った方が良いかもしれない。
怪物は腕を全て切られ(きっと人型の剣みたいな爪で切られたんだろう)、体中から生えた触手で何とか応戦している状況である。
人型は遊んでいるのか知らないけど、とどめを刺そうと思えば刺せるように見えるのに、わざとじわじわと削っていっている感じだった。
暫し怪物たちのやり取りに目を奪われていた私は、ハッとなってパパの方を見る。
「……!」
さっき見たときとはまるで状況が一変していた。
左腕が捻じ曲がったパパは地面に倒れており、視線の先では黒服の人が見知らぬ青年の首を締め上げていた。
「〈黄色猿の小僧ではこの程度か。素質があればタイラントの素体にでも使ってやろうかと思っていたが……見込み違いだったようだ〉」
結構遠いはずなのに黒服の人の声が聞こえる。
どうやらあの人はさっき私が二階にいるときに下で喋っていた人らしい。まさかパパの敵だったなんて……。
そういえば自衛隊はどこ行ったの……? パパたちが襲われてるのにどこにも隊員らしき人がいない。もしかしてみんな怪物に……?
状況がまったく呑み込めずに呆然としていると、ふいにパパが黒い人に向けて拳銃を撃った。
けれど黒い人は片手でその銃弾を弾いてしまう。
「〈ウイルスを手に入れるのが目的なんだろう……!? ならば少年を殺す必要は無いはずだ……!〉」
「〈ふん、どうやら日本にい過ぎて感覚が麻痺したらしいな。邪魔な芽は摘んでおくに限る。そんな事すら忘れたか〉」
「〈くッ……!〉」
「〈……いや、遠回しな命乞いだったか。汲み取れなくて済まなかったな。今になってようやくウイルスよりも我が身が可愛くなったか?〉」
「…………」
「〈まあ安心しろ。何もしなくてもこの小僧はもうじき死ぬ。そしてお前も殺す。そこで小僧が死ぬところを見ているが良い〉」
こ、殺すって……!? やだ、せっかく見つけたのにパパが殺されるなんて嫌だ……!
その前に、あの青年が殺されるところも見たくない。他人でも自分の前で人が殺されるのは耐えられなかった。
だから私は──言葉は話せなくても、声が出る今叫ぶことは出来るから。注意を逸らそうと思って無我夢中で叫んでいた。
中庭にいた全員がこっちを向く。
その中には怪物もいたが、戦うのに忙しかったのかすぐに視線を戻す。私に注目しているのは黒服の人とパパだけになった。
パパが信じられないものでも見るかのような目で私を見る。口がパクパクと動いていた。
黒服の人も私に目を向けていたけど、青年を離そうとはしなかった。どうにかならないかと焦り考え、私は持っていた物に気づく。
私は必死に爆弾を頭上に掲げ、また抱える。言葉が話せない上に片手では、これくらいのアピールしか出来なかった。
それがパパや黒服の人に伝わったかは分からない。でも黒服の人はそれを見た瞬間、青年を投げ捨てサングラスを上げ直した。
「げぇがはッゲホゴホッがぁッ……か、ぁ……」
壁に叩きつけられた青年は凄い咳をする。良かった、生きてるみたい。
「〈これまた面倒な事になったものだ。あれはお前の娘か、ハリー?〉」
「〈そ、そんな事よりもあの爆弾はなんだウェスカー!? なんでアリスがあんな物を持ってるッ!? お前まさかこの病院を……!〉」
「〈流石の私でもアレの爆発に巻き込まれれば死んでしまうな。タルタロスならば生き残るだろうが……それでは意味がない〉」
「〈質問に答えろウェスカー!〉」
「〈……フ。新ウイルスによる実験体共は証拠を隠滅する必要もないが、それ以外は塵も残すわけにはいかなくてね〉」
「〈なッ……!〉」
「〈G≠フ生命力は凄まじい。ここでタルタロスが殺しても細胞が残っているだけで安心は出来ないのだよ。悪く思わないでくれ〉」
パパは悔しそうな顔で歯軋りをする。
「〈まあ、元はと言えばお前が私の部下を誘惑さえしなければ爆破せずとも済んだのだ。自業自得だと思え〉」
「〈く……〉」
パパの反論がなくなると、ウェスカーという人は腕時計に目を向け、そして怪物に向かって叫んだ。
「〈そろそろ時間だタルタロス。遊んでいないでそいつを始末しろ〉」
「〈了解したマスター〉」
怪物対怪物の勝負はもはや人型が圧倒的だった。もう一匹の怪物は四肢と頭をもがれ、私が最初に見た肉塊よりも酷かった。
人型は右腕の剣を振り上げると、ピクピクして抵抗の意思さえ見せなくなった怪物に容赦なく振り下ろす。
怪物の胴体はあっさりと四等分に切断され、そしてついに痙攣さえもしなくなり……体細胞がドロドロと溶け始める。
「〈どうだった、G生物は?〉」
「〈兵器としては使い物にならない。個の生物として見ても完全に失敗作だと判断する。よって取るに足らない存在だ〉」
「〈フ、そうか。やはり天才の傑作も時の流れには勝てはしない、か〉」
黒い外套の人と同じ名前で呼ばれた怪物は私やパパには目もくれずにヘリコプターに乗り込んでいく。
そしてウェスカーという人も……と思われたが、何かを思い出したかのようにくるりと振り返ると、パパに近寄っていった。
「〈な、なんだ……? まさか私を殺していくつもりか……!?〉」
「〈いや。忘れ物を思い出してね〉」
「〈な、何を、言っている……?〉」
「〈白を切るつもりか? お前の下らん小細工など私が見抜けていないとでも思っていたのか〉」
「……!」
「〈小僧に持たせたのが本物だろうと偽物だろうと関係ないのだよ。要するに両方奪って行けば良いのだからな。そうだろうハリー?〉」
パパは今までに見せたことのないくらい絶望的な表情をしていた。
「〈頼むッ!! これだけは、これだけは勘弁してくれッ……! これはウイルスなんかじゃないんだ。た、ただのワクチンなんだよ……!〉」
「〈ほう〉」
「〈これがないと、娘が、娘が死んでしまうんだ……だから、頼む、この通りだ……!〉」
パパは土下座する。外人にそんなのが通用するとは思えないのに。
案の定ウェスカーという人も首を傾げたが、体勢から懇願の表現だろうと察したのか、
「〈お前は今ここで殺されるのと、それを奪われるの──どちらが良い?〉」
そんな意地の悪い質問をした。
「〈…………私は、私は今ここで死んでも構わない。だからこれだけはどうか……見逃してほしい〉」
「〈……解った。良いだろう〉」
そう言うと、ウェスカーという人は安心しきった表情で顔を上げたパパに歩み寄り──その顔を蹴り上げた。
吹っ飛んで倒れたパパの首を踏みつけると、その間に懐や上着のポケットに手を入れ、小さなビンを取り出す。そしてまたパパを蹴る。
ゴロゴロと転がって倒れたパパは、ウェスカーという人の持っている物を見て情けない声を上げた。
「〈そ、それはッ……! 話が、話が違うッ……!!〉」
「〈お前の命は特別に助けてやろう。感謝するんだな〉」
そしてヘリコプターへと乗り込んでいく。プロペラが回転を始め、飛び立っていくヘリからラウドスピーカーでまた声が聞こえ、
『〈一分のつもりだったが約束は守らねばな。──五分だ。その間に好きに生き延びるが良い〉』
あざ笑うような不快な高笑いと共に自衛隊の物のはずだった大型ヘリコプターは空の彼方へと消えていった。爆弾のカウントを残して。
第十二話終了
主人公側が物凄く情けないことになってるなぁ。男も親父もヘタレすぎる
しかし現実的な展開として圧倒的な力の差のある化け物を目の前にしたら
創作物のように格好良く、かつ絶望的な状況から起死回生は難しそうな気がするし
創作なんだから別に良いじゃん、と自分でも思うが
妙なところでリアリティを求める性格の結果、俺の物語はこういう展開になった
読んでいる側からすれば主人公組みが雑魚過ぎてイライラにしかならないかもしれないけど(汗
一応次でこの物語はラストになると思う
少し早いけど、読んでくれた皆々様、感想をくれた、応援してくれた方々には最大級の感謝の気持ちを込めて、ありがとう!
拙過ぎる物語だったけど、暇つぶし程度にでもなっていれば嬉しいな
そんな暇つぶしだなんて…
俺なんかじゃ到底書けませんよ、その話…
いや、それで暇つぶしなら自分のは何なのでしょうか…
つくづく存在意義について考えさせられます
今まで使っていたユーザーが突如機能停止状態に陥ってしまいました
…修理かな……
小説はメモリースティックに避難してありますので、新たなユーザーで書こうと思います
今書こうと思っているのは、新しい短編と、前回の続き…
前回の続きは前回と同じノリなので受け付けない方がいるかもです
なんせ、ゾンビものに笑いですので…
こうなった原因は、課題におわれて徹夜、そのままのノリとテンションで書いたからです
ま、期待しないで待っててください…
それと、評価どもです
まだ読点が多いですか〜
少し配置を考えてみますね
文章力が上がってました?
…短編ばっか書いてた甲斐がありました
文章力が向上し、かつ安定したら…書きかけのアレを最初からやりなおしたいと思います
ゾ
ン
ビ
大
好
物
食べちゃった
なんだろう。次回でラストと言っておきながら23レス分も出来上がってしまった
こんなの一気に投下できないよな…。とりあえず前中後編のように三つに分けて投稿しようかな
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
最終話前編投下(8レスのつもり)
最終話──『live to happiness』
持っていた爆弾に『300』という数字が表示され、そして減り始めた。
私は慌ててパパたちの方を見る。
第五病棟の壁に叩きつけられて咽込んでいた青年は地面に両手をついており、パパは這いつくばった格好で頭を垂れていた。
何を勘違いしてるか知らないけど早くここから脱出しないといけない。
もう邪魔にしかならない爆弾を足元に置いた私は急いでパパたちの方へと駆け出した。
そのとき気づく。先ほどまでは確かに重傷で痛みも凄かったのに、今は痛みも少し和らぎ、なんとか走れるくらいまで回復していた。
もう、本格的に人間じゃないんだな……。
普段ならそんな感傷に浸るところだけど今は一秒でも惜しい。よろよろと走りながらパパたちの方を目指し──そのとき声が聞こえた。
それはパパの声だった。
「〈ぅ……く……〉」
かすれ声。シェリーのワクチンがなくなって心がへし折られてしまったのか。
ううん、違った。むしろまったくの逆だった。
「〈く……ク、ククク、フフフ、アーッハッハッハッハ! やった、やったぞ! この勝負、私の勝ちだウェスカーッ!!〉」
狂ったように笑い転げ、パパは叫び声を上げる。
私は走りながらパパはやはり凄いと再認識させられていた。ひとしきり笑い終えたところに私もパパのいる場所に辿り着く。
「〈あぁ、アリス……私の愛しいアリス……よく、よく生き残ってくれたね……〉」
パパは私の体を抱きしめ、涙を流す。私もその体を抱きしめ返し、涙を流した。──けど、そんな場合じゃないとすぐに我に返る。
(早くここから逃げないと! シェリーはどこにいるの!?)
「〈ああ、心配しなくても後ろの病室にいる。五分と言っていたな。大丈夫だ。車に乗れば間に合うだろう〉」
「〈それに早く家に帰ってシェリーにワクチンを打ってあげなきゃいけないからね〉」
「?」
ああ。パパもやはりそこまでは気づいてなかったのか。
私たちが何故こんなに余裕でいられるのかはもうお分かりだろう。あのウェスカーという人が持っていったのはワクチンじゃなかった。
パパの研究室から適当に持ってきた薬品。青年が取られたのもパパが持っていた別のウイルスか薬品だったに違いない。
何故なら本物のワクチンは──今私が持っているのだから。
当初はシェリーにワクチンを打ったら置手紙を残して私一人でパパを探しにくるはずだった。
でも病院にはパパを狙っている連中もいるかもしれない。そしてその目的はウイルス。
私の容姿を見ればパパの娘だと信じてくれるだろうし、パパが娘のペンダントにウイルスを隠していた、とでも騙せるかもしれない。
上手くいけばそれでパパを追うのも見逃してくれるかもしれない、と考えて仕込んでいたものだったのだ。
けれど現実には、私が手間取っていたせいでシェリーはワクチンを打つ前に起きて外へ。
パパを探しに行くと言えば自分も行くと言って聞かないだろうし……ということで開き直って一緒に病院に来たというわけである。
なんで合流してすぐにワクチンを打たなかったのか──それは、シェリーがいないのに動揺して注射器を地下に忘れてしまったからだ。
ロケットを必死に探していたのは、小さい頃に生きているママと家族四人で撮った大切な写真が入っていたからだった。
(パパ、ワクチンならここにあるよ)
院内で借りたナース服のポケットのボタンを開けて、私は中に入っていたワクチンのビンを出してみせる。
強化ガラスとか防弾ガラスみたいな素材で出来ているのか、化け物に襲われて吹っ飛んだ衝撃でも割れていないのが救いだった。
「〈アリス、お前っ……!〉」
とても驚いた表情で私を見、パパはワクチンを受け取って頭を撫でてくれる。
「〈打つなら早い方が良い。よし、迅速に打って素早く脱出するぞ!〉」
私は力強く頷く。パパは踵を返して病室へと向かった。私も同様に。ふと青年を見れば、壁に手をついて立ち上がっているところだった。
「〈大丈夫か? 待っていろ〉」
パパは一言一言をきちんと丁寧に発音して青年に声をかけた。そしてすぐに窓を飛び越え病室の中に入っていく。
青年はまだ辛いらしく、呻き声のような返事をするだけだった。頭を強く振ったりしながら、なんとか立っているのが精一杯に見える。
私は青年の横で一度立ち止まり、しかし意思を伝える手段を持たないことを悟って、窓を乗り越えてシェリーの元へ歩み寄った。
シェリーは……酷い有り様だった。
寒いのか体を限界まで丸め、ガタガタと震えている。服は汗でびしょびしょに濡れていて過呼吸じゃないかと思うほど早く息をしていた。
一部の肌はカビのような色に変色しており、右肩が少し盛り上がっている。パパはその右肩の部分を露出させた。
その瞬間、私は絶句する。
右肩に──先ほどのタルタロスに殺された怪物と同じような大きな眼球があった。色のおかしい血走った瞳がパパと私を順に捉える。
こんな、こんな……。
とてもじゃないけど痛々しすぎて見ていられなかった。恐怖と嫌悪と同情。それらが私を一斉に襲い、全身が震えて止まらない。
目を逸らして唇を噛み締める。
片腕がねじれて使い物にならないというのに、パパはテキパキと懐から取り出した新品の注射器でビンからワクチンを吸い出した。
それを冷静にシェリーの首元へと注射する。
眼球が睨むがパパは少しも動じなかった。全てを注射し終えると、パパは何事もなかったかのように肩の服を元に戻し、立ち上がった。
「〈さあ、アリス! 逃げるぞ!〉」
私は不安げに頷く。
「〈何、ワクチンが全身へ回ればあの程度のモノ半日で殺せるさ。大きな傷のようにはなるが、時が立てばかさぶたの様に剥がれ落ちる〉」
私は相づちを打つように頷くことしかできなかった。
「〈少年! 来い!〉」
窓から室内を覗いた青年は息が荒いものの、動作は普通に行えるまでに回復していた。
室内に入ると、パパのジェスチャーによる指示でシェリーを背負う。この二人は今までずっとこうやって意思疎通を図ってきたんだろうか。
病室から出、すぐ近くの扉から外に出る私たち。
しかしそのとき──人の雄たけびのようなものが背後から響いてきた。それも一人じゃない。男女問わずいくつもの声が重なって。
「〈しまったッ! クソG≠゚生きていたか……!〉」
「なんだよ……!? さっきの化け物まだ生きてたのかよ……!!」
パパと青年が叫ぶ。お互いに言葉は通じていないはずだから叫び声だけで分かったらしい。
私が不安げな顔でパパを見ると、
「〈あの場には死体が四つほど散乱していた。生き残っていたG細胞がそれらに取り付いてまた形を成したんだろう〉」
と説明してくれた。
あんな怪物が今度は四体も……!? 爆弾のタイムリミットも迫ってるし、相手になんかしてる暇はない。
「〈逃げるぞ! 走れ走れ!〉」
パパも青年も私も。みんながみんな満身創痍で辛い中、それでも体に鞭打って路地のようになった病棟間の隙間を走り抜ける。
そして角を曲がり、光が差すその先の駐車場にパパの車が見えた。最後の直線、私たちはスピードを上げて走る。
だが同時に背後からも追跡者が追いかけてくる声と音が聞こえてきていた。
ちらりと後ろを振り向けば──人型とか動物型なんてマシだったんだな。ダンプほどに肥大したスライムのような怪物の塊がいた。
四体が互いに溶け合ったのか、所々に人だったと思わせる部分が場所なんて関係なく露出している。
あんなのに捕まったら一緒に取り込まれてしまう。
私たちは一目散に車へと辿り着く。
パパが素早くロックを外して運転席へと入り込む。青年も後ろのドアを開けてまずシェリーを中に座らせようと悪戦苦闘する。
私は一人中には入らずにその様子と怪物を交互に振り返っていた。
意識を失った人間一人を扱うのは想像以上に難しい。乱暴に扱おうとしていない分、その優しさに余計時間がかかる。
だめだ。だめだだめだ。このままじゃ車を発進させる前に襲われるか、発進しても道を塞がれてアウトだ。それじゃ誰も助からない!
私はドアを開けることなく車を離れた。
「〈アリスッ!?〉」
パパが私の名を呼ぶ。でも私は止まらない。振り返らない。私は──本館の出入り口付近に見える消火器の元へと走っていた。
その間に大きな声で、無我夢中で叫ぶ。
イントネーションも発音の仕方も分かってる。だから言えるはずなんだ。かすれていても、伝わらなくても、これだけは言っておかないと。
「〈バ…イグ…ぇ…おい゛が…げるか、らッ……!! ぁあら、さぎに…行っでぇッ……!!〉」
「〈アリスっ……〉」
私は人間離れした速度で消火器の元へ走ると、素早くホースをぶっちぎった。こんな状況で時間もなくて、一々解除なんてしてられない。
爆発するように白煙が周囲に撒き散らされ、思わずそれを思い切り吸い込んでしまって盛大に咽込む。
肺が潰れそうな苦しみの中、それでも私は最後の力を振り絞って腕の中で暴れるそれを怪物のいた方向へと投げつけた。
白煙の範囲を広めながら消火器はグチャという音を立てた。
「〈パ、ぁ……!! は……ぅ、にぇ……!!〉」
声が出ない。単に喉の問題じゃなく消火器の煙のせいで声が出なかった。胸が潰れそうだ。息が出来ない。そのくせ咳だけは出続ける。
喘息の末期患者のように死んでしまいそうなくらい咳き込み、その場に膝をつく。
そうしている間にエンジンを二、三度吹かす音が聞こえ、キュルルルルというタイヤのこすれる音が響いてくる。
パパが車を発進させたんだ。
捕まることはなかったのか車の駆動音が安定した走行を保障していた。パパの古型の車は音がうるさく、それがこっちへと向かってくる。
私は咳き込みながら弱く笑った。
これでもう怪物に捕まることはない。パパたちが無事に私の横を通過できれば、後は足止めするから。
ごめんなさい。パパ、シェリー……そしてママ。
みんなを守って死ぬ……なんて格好良さげでいて自己満足な最期で。向こうでママは……褒めてくれるかな。それとも怒る、かな……?
でも私、パパやシェリーを死なせたくないから。許してね。
そして──パパの車は私の横を通過していった。
咽ながら、笑いながら……私は涙を零す。
もしかしたら置いていけないと止まってくれるかもしれないと思っていたりした。そしたら反発するけど、凄く嬉しいだろうなぁ、って。
でも……自分の発言には責任、持たなくちゃね。足止めするよ、私。
まだ胸は苦しいけど、踏ん張って立ち上がる。
白煙の向こうには大きな影が見えていた。
ドロドロとした正体不明の気味の悪い怪物。ただ殺されるだけならどんなに楽なことだろう。でもあれに取り込まれる……んだね、私。
怖かった。
格好良く犠牲になろうなんて思ってはみたものの、実際に死と対面し、先に待つ得体の知れない死に方に失禁しそうなくらいだった。
膝がガクガクと震えて立っていられなくなりそう。最期くらい映画みたいに堂々とさせてくれれば良いのに……神様はいじわるだった。
せめて怖さが薄れるようにと目を瞑り、思い切り身を抱──
「バッカ野郎おおおぉぉぉ!!」
「……っ!?」
ふと前方の白煙の中から人が現れ、次の瞬間には思い切り手を引っ張られていた。
白煙の中から現れたのは──青年だった。
なんで!? なんでこの人がここにいるの!? だってパパと一緒に車で……なんでなんで……!?
混乱してわけが分からない。頭の中がぐちゃぐちゃで真っ白でまともに思考が出来なかった。その間にも青年は私を引っ張り続ける。
「あからさまな死にフラグ立ててんじゃねえよッ……! 死んでまで犠牲になろうなんて思うんじゃねえ!!」
「な゛……ん、で……」
「自分で考えろバカ野郎!」
青年はそう怒鳴ると、本館出入り口付近に停めてあったパパの原付バイクの元に着いた。
「これか!? バイクってのはこれで良いんだろ!?」
背後で怪物のもう声にすらなっていない汽笛のような遠吠えと接近音が響く中で、私は青年の迫力に押されながらコクコクと頷いた。
青年はキーが差しっぱなしなのを素早く確認すると、急いでまたがりエンジンをかける。
そして強引に私を後ろに乗せて、また強引に自分の胴に手を回させた。
「絶対しがみついてろ!! 妙なこと考えず手をひゃな…へ、は、離さないことだけ考えろ!!」
矢継ぎ早な早口で肝心なところを噛みながらそう言うと、青年は何の躊躇もなくアクセルを全開に捻った。
オートマな原付なだけあって初速は十分、二人乗りだから車体が浮き上がってのウィリー転倒をすることもなく、バイクは走り出した。
けれど背後からは怪物スライムが追ってくる。
「クソッ!」
青年の考えていることは分かる。きっと病院の爆発に巻き込ませたいんだろう。
あんなのが生き続けていたらいつかはやられてしまう。
青年は腰の辺りをゴソゴソやると、次の瞬間にはその手に拳銃を持っていた。それはパパが先ほど持っていたのと同じ物だった。
青年はミラーを見ながら拳銃を持った手を後ろに向ける。それは背中を掻くような感じで手を逆さまにした構え方だった。
こんな状態で撃っても当たるなんて思えない。
敵は大きいと言っても動く的、こちらも動いている、おまけにありえない構え方。当たる確率はほぼゼロだと素人の私でも分かった。
「当たれえぇッ!!」
青年は叫びながら引き金を引いた。
乾いた破裂音が二回ほど鳴り響く。しかしその次はなかった。反動で手が肩に当たり、その衝撃で銃を落としてしまったからである。
「つうぅっ! クッソ!」
振り返る。
怪物に当たった様子はなかった。ちょっと当たってないじゃない! 格好つけたって映画じゃないんだから当たるはずないでしょ!
声が出るなら叫んでいたと思う。
いや、それよりそんなことをしている間にもうすぐ敷地内から出てしまう。万事休すか──そう思ったとき、青年の手で何かが光った。
パイナップルだった。
なんでそんな物持ってるの……!? 私は心の中だけで叫ぶしかない。
青年は気が狂ったかのように「ク、ひひひ」なんて怖い笑い声を上げてポケットの中からそのパイナップル──もとい手榴弾を出した。
「口ぃ!」
そう言って青年は私の顔の前に手榴弾を持ってくる。一瞬ギョッとなって顔を引いてしまう。けど言いたいことは瞬時に理解した。
私は口で思い切り手榴弾の、缶ジュースで言うならプルトップみたいなのを引き抜いた。
「喰らいやがれええぇぇぇええぇぇ!」
ぽいっ、と後ろに手榴弾を投げた青年は吼えるように叫ぶ。
そして一、二拍の間があり、次の瞬間、背後で大きな打ち上げ花火くらいの振動を起こす爆発音が轟いた。
後ろを振り向く。爆発に目が眩んだのかダメージを食らったのか、怪物はその足(あるのか)を止めて汽笛声を上げていた。
やった! と思っていると、その直後にもう一個手榴弾らしき物が怪物に飛んでいってこつんと当たる。
「おれの自作のだ。味を見てくれベイビー!」
完全に映画の主人公に浸りきっているらしい青年は自分に陶酔した感じでクールに言う。
そして背後で先ほどのに比べるとおもちゃ程度に、ぼんっ、という音が聞こえた。規模的に言うならスプレー缶が爆発した程度だろうか。
思わず私は吹き出してしまう。
「う、わ、笑わないでくれよぉ!」
なんて青年が恥ずかしそうに言った瞬間。
それは起こった。
先の手榴弾二つなんてまさに比べ物にならなかった。
鼓膜が破れそうな音域の轟音が耳を襲い、一秒も待たずに耳の奥がキーンという耳鳴りで何も聞こえなくなる。
背後から電車にでも衝突されたかのような衝撃波が全身を容赦なく殴打し、バイクごと浮いた私たちは紙くずのように吹っ飛ばされた。
病院が爆発したのだ。
最終話前編終了
続きは数時間おきに投下したほうがいいのか、一日空けたほうがいいのかどっちがいいんだろう
>>74 >>75 いや、ネタというか物語の面白みでって意味
文章で多少は誤魔化されてるのかもしれないけど
きっと「面白ぇ!」ってほどの話じゃないと思うし
文章なんてのは書き続けていれば
相当才能のない人以外は絶対に並レベルにまでは上達するから、落ち込むようなことはないよ
それよりも大事なのがネタ。文章が並以下でもネタさえ超絶ならフォローできるしな
そういうのを養うのも努力は必要だけど、本当に才能とかセンスによるところが大きいからキツイ(汗
追伸でemptyさんへ
ゾンビ物に笑いってけっこうマッチすると思うよ
ホラーでシリアスだからこそ、そういうのは逆に引き立つと思うし、笑える物語を考える人も少なくないと思う
俺の話はシリアス一辺倒だったから、笑いもあった方が砂漠にオアシスにもなると思うし
どういう話を書かれるかはご自身にお任せするけどね
お願いですから全部投下してください泣
めちゃ気になるぅっ
ご要望にお応えして以降は一気に載っけることにします
biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜
最終話後編投下(15レスのつもり)
最初は息が出来なかった。全身を余すことなく蝕む強烈な痛み。
耳はキーンと鳴り続けていて周囲の音がまったく聞こえない。鼓膜が破れているのかもしれない。
しばらくの間は動くことが出来ず、ただ息をして命を繋ぐことだけに集中していた。
その内に段々と痛みも和らぎ、耳も聞こえるようになってくる。超人だから、なんてもう思わなかった。そんな比較は虚しいだけだ。
「は、ぁ……」
痛みに耐えながら片手を地面について体を起こす。
片目を開けて周囲を見回すと、周りには病院の建物の残骸だと思われる瓦礫が至るところに散乱していた。
遠くに病院の跡だと思われる黒煙が上がっている場所も発見する。敷居を出て少し走ったところだったから相当飛ばされたらしい。
あ……そ、そういえば青年は!?
私でさえこれだけダメージを受けているんだから青年は運が悪ければ……いや、運が悪くなくても死んでしまっているかもしれない。
慌てて周囲を探しても青年の姿はどこにも見つからなかった。声を出せないのが痛い。
おまけにバイクもなくなってるし……もっと遠くに飛ばされたか、あるいは私とはまったく別の方向に飛ばされたんだろうか。
そんなことを思ったいると、ふいに咳き込むような声が聞こえてきた。ハッとなって道を進み角を曲がると、そこには川が流れていた。
よろよろと駆け寄ってみれば、川に落ちた青年が傾斜の酷い壁に寄りかかって激しく咽ていた。
なんて幸運だろう。川に落ちていなければ今頃死んでいたかもしれない。
でも私の今の状態では助けることも声をかけることも出来なかった。
仕方なく存在を知らせるために金網をガシャガシャと揺らす。青年はこちらに気づき、苦しそうにしながらも腕を上げて親指を立てた。
「〈アリスー!〉」
遠くからパパが私を呼ぶ声が聞こえてくる。
きっと車で走りながら私たちのことを探してるんだろう。パパもシェリーも生きてるんだ。私たちみんな……一人残らず助かったんだね。
良かった。
しばらく追いかけっこをした末に私はパパの車と合流することが出来た。
戻ってくると青年も自力で川から這い上がり金網を越えているところだった。怪物の姿もどこにもない。みんな死にそうだけど生きてる。
後はシェリーが無事目覚めてくれれば最高のエンドロールになりそうだ。
パパは娘二人が無事生きていることに酷く感激していたようで、しきりに私を抱きしめていた。
シェリーも起きたらきっとヒゲジョリ地獄が待ってるだろう。青年とも、パパの車内にあったメモ帳に字を書くことで会話が成立していた。
「本当に、本当にすいませんでした」
しばらくの会話の折、突然青年がそう言って私に向かって土下座する。
意味が分からずオロオロする私は、青年の続く言葉でその意味を理解した。
「君を殺してしまったのは……おれです。痛い思いを、辛い思いをさせてしまって……本当にごめんなさい」
「…………」
私は言葉が見つからなかった。
私自身に青年に殺されたという自覚はない。扉を開けたら突然喉に何か刺さって、倒れて……すぐ意識がなくなってしまったから。
確かに殺されたせいでウイルスが活性して地獄のような思いをしたし、人間じゃなくなってしまったけれど。
それを青年のせいだと結びつけることに私はどうしても実感が湧かなかった。
覚えていれば、許すことも出来ると思う。
でもこの場合、私が許すと言ったところで青年は本当に許されたことになるのか私には分からなかった。
そりゃ青年にとっては殺してしまった私の口から許すと言われれば許されたことになるんだろうけど。それはそれでしっくりこなくて。
ずっと土下座し続ける青年に、答えを出せず黙りこくる私。そのまましばらく時が流れるかと思われたそのとき、その声は聞こえた。
「わたしは……許すよ」
みんな一斉に車の方を振り返る。後部座席の窓を開けてそこから疲れた様子で顔を出していたのは……まぎれもなくシェリーだった。
「〈シェリー! 目を覚ましたか!〉」
パパの踊るような口調にシェリーは辛そうにだけど笑って「うん」と答える。
土下座の格好のまま顔だけを上げていた青年はシェリーを見て呟く。
「おまえ……。嬉しい、けど、姉ちゃん自身が許してくれなきゃ、やっぱ駄目なんだ……」
「アリスはきっと許そうとしていないんじゃなくて、迷ってるだけなんだと思う」
「迷う……?」
「アリスはあんたが自分を殺したってわかる前に死んじゃったから。あんたに殺されたって言われてもパッとこないんだよ」
「な、そんなこと言われても殺したのは間違いなくおれだし……! 姉ちゃんに謝って許してもらう必要はあるはずだ……!」
「まあ、そうなんだけど」
「まだまだ許せないっていうんだったら、どんな償いでもする。働いて慰謝料だって払うし……!」
「ほら、そういうところがね、勘違いなんだよ」
「え……?」
シェリーの思わぬ冷めた一言に青年は呆けた声を上げた。
「自己満足。最初に言ったでしょ。償いってのはけっきょく全部あんたの自己満足なんだよ。あんたはそれを今アリスに強制してるの」
「そんな、こと……」
「アリスが殺された自覚がなくて許せないなら、あんたは一生付きまとうわけ? 許せ許せって。許さなきゃ金払うぞって」
「…………」
「アリス本人に自覚がなくて許せないなら……大切な家族を目の前で殺されたわたしが許すしかないじゃない」
「……!」
「アリスがあんたに殺されたときの記憶がわたしにはがある。いわばアリスの欠落した自覚を持ってるのがわたしってわけ」
そしてシェリーは言った。
「だからアリスの代わりにわたしがあんたを許してあげるって言ってんの」
傍から聞いていたら二人の会話はわけが分からなかった。でも本人同士では理解し合っているのか、青年は黙り込む。
「ごめんねアリス。わたしの推測だけで勝手に話進めちゃって。でも……当たってたでしょ?」
(シェリーには敵わないな)
「ほら、アリスからもお墨つきが出たよ。あんたの罪は許されました。はい、これにてあんたの自己満足しゅうりょーってことで」
その言葉に青年が口を開いたとき、
「分かったよ。ありが」
「本当に感謝してるよ。アリスを殺したこと真剣に悩んで悔やんで償おうとして。わたしを守ってくれて。最後までアリスも守ってくれた」
全員が一斉に目を見開く。
「今までずっといじわるばっか言っちゃって……ごめんね。すごくうれしかったよ。──ありがとう」
シェリーが今までに見たことのない、大人びた笑顔でそう言った瞬間。
青年は本当に許されたと自覚したに違いない。大粒の涙が頬を流れ、そして涙腺が決壊した彼は抑えようとしながらも大声で泣いた。
きっと人を殺したことにずっと重責を感じていたんだね。怖くて、どうしていいか分からなくて。
私も生きてることだし、ようやく彼は今救われたんだ。
「アリス」
「ん?」
青年が泣いている最中、シェリーが私を呼ぶ。振り向いた瞬間、窓ごしにだけど体をギュッと抱きしめられていた。
「生きててよかった……。わたし、わたし……アリスが死んだときは、ほんとどうしていいかわからなかったんだよ……?
怖くて、悲しくて、もう二度とアリスが目を開けないのかと思うと、喋らないのかと思うと……心が張り裂けそうだった……。あったかい。本当に生きてるんだねアリス。……アリス……アリスぅ……」
シェリーは私の胸に顔を埋めながら声さえあまり上げないものの、青年に負けず劣らずの量の涙を流していた。
私は……生きてて良かった。青年の言葉の意味がようやく理解できた。傷ついて、死んで守っても。守った人たちは笑ってくれないって。
泣き合い、色々なことへの感傷に浸っていた私たちはしばらくその場に留まっていた。
三十分、もしかしたら一時間くらいそこにいたかもしれない。
青年も泣き止み、シェリーと私も泣き止み、体調も最悪から段々と回復してきた頃。──その声の重奏は響いてきた。
低い低い唸り声。今日聞いたばかりなのに懐かしさすら感じる人間の声。でも死んでいる者たちの声。
「ゾンビか!?」
青年が叫ぶ。
振り向けば、道の向こうから三、四体のゾンビの群れがこちらに迫ってきているのが見えた。
せっかくみんな助かって良いエンディングへ行こうとしてたのに、なんでこんなときになってゾンビが出てくるの!?
パパが懐に手を入れるけど、拳銃は青年に渡して失くされてしまったことを思い出して「〈クソッ!〉」と叫ぶ。
青年も装備はなく、もちろんか弱い私とシェリーにも武器なんてあるわけがない。
「〈車に乗り込め! 逃げるぞ!〉」
「え? なに……?」
「車に乗れだって! 早く!」
英語が分からず呆然としていた青年にシェリーが怒鳴り、慌てて彼も後部座席に乗り込む。
私も助手席に乗り込み、パパがエンジンを掛けて車を発進させ──ようとしたその瞬間、ゾンビの群れに変化が起きた。
「〈なんだ……?〉」
目の前をカクカクいびつな動きで歩いてきていたゾンビたちが、ふと糸を切ったかのように崩れ、倒れ込んでしまったのだ。
意味が分からず呆けてしまう私たちだったが、しばらくしてパパだけは合点がいったかのように声を上げた。
「〈どういうことなのパパ……?〉」
「〈いや、このウイルスをばら撒いた奴が言っていた事を思い出してね。恐らくはアポトーシスと同義。プログラム細胞死という訳だ〉」
「〈ぷろぐらむ細胞死……?〉」
「〈要するに細胞を自滅させるプログラムをウイルスに仕込んでおいたんだろう。そうする事で任意にウイルスを破壊する事が出来る〉」
「〈新ウイルスの実験だと言っていたからね。恐らくこれ以外にも何か試していた筈だ。ゾンビがこの辺りにいないのも、どこかに導くプログラムが成されていたのかもしれない。稀に残っているゾンビはプログラムの機能不全というところか〉」
パパは色々納得したように呟いて頷いたりしている。
私たちにはよく分からないけど、こんな悲惨な状況を作り出していても科学者にとってはただの実験に過ぎないということなのか……。
「〈さて。これで完全にゾンビやG≠フ脅威は去った訳だな〉」
「〈ほんと? じゃあもう殺される心配とかもないの……!?〉」
「〈ああ〉」
嬉しそうにはしゃぐシェリーと私。青年はその様子を微笑みながら見ていたが、次の瞬間──その顔が凍りついた。私たちも同様に。
「〈この最後の仕上げが完了したら、ね〉」
先ほどの物よりも二回りほど小さくて可愛らしい拳銃。懐から出したそれを青年の頭に向けて、パパは優しい声音で言った。
青年は絶句し、動きを止める。浮かれていた私とシェリーは突然水をぶっかけられたように何が起こったか分からず呆然と固まった。
なんで? なんでパパが青年に銃を突きつけてるの?
え、だって青年はずっとシェリーを守ってくれたし、シェリーも私も許したし、なのになんで……?
「〈ぱ、パパッ……!? なんでこいつに銃向けてるの……!? 変な冗談止めてよっ……!!〉」
シェリーが悲鳴のような声を上げる。でもパパは冷静に穏やかな優しい口調でシェリーに言った。
「〈少年に、殺されたくなければ今すぐ車を降りるように言ってくれないかな〉」
「〈だからなんでッ!! なんでなのぉッ!?〉」
パパは言った。
「〈彼にはウイルスが感染している〉」
「〈もちろん決め付ける事は出来ない。が、法律的にもT-ウイルスの抗体となる薬品を病院で扱っているとは考えにくい。抑制剤の原料ならば分からなくもないが。だからほぼ百パーセントに近い確率で、彼は感染している〉」
「〈でも、でもっ……そのウイルスはさっきあぽとーしすとかいうので死んじゃったんでしょ!?〉」
「〈抑制作用で活性していないとなれば、そのプログラムもまた起動していないと考えられる。だからアポトーシスが起きるのは彼が発症したずっと後だ〉」
「そんな……そんなっ……!」
パパとシェリーの口論が続いていたとき、ふいに青年が口を開く。
「な、なあ……。なんでおれ、親父さんにデリンジャー突きつけられてんだ……? 怖いから早くどかすよう言ってくれよ、あ、あはは……」
きっと青年も嘘や冗談でこんなことをしていないことくらい分かってるはずだ。
それでも英語での二人の口論が白熱すればするほど、青年の心へ得体の知れない恐怖心を植えつけるんだろう。
「〈パパウイルス研究してたんでしょ……!? だったら治す薬だって持ってるんでしょ……!? ないの!? でもなくたって作れるよね……!?〉」
「〈もちろん作れる。だが、ウイルス発症の遅効性というのは即効性よりも性質が悪い。いつ発症して周囲の人間に襲い掛かるか分からないんだ。だから……お前たちを危険に晒さない為にだ。解ってくれ〉」
「〈わかんないッ! わかんないよぉッ! だってこいつわたしやシェリーを助けてくれたんだよ!? 自分が死ぬかもしれないのに、それでも逃げずに助けてくれたんだよ!? なのに見捨てるなんてできるわけないよ……!!〉」
私も……シェリーに同意だ。
(パパ。私もシェリーと同じ気持ちだよ。お願い。私を殺しちゃったんだとしても事故のようなものだったし……やっと助かってこんな仕打ちじゃあ……あまりにも可哀相だよ……)
パパは私も加わったからか、ここで初めて辛そうな顔をする。
「〈くッ……だが、だが娘の安全を第一に考えるのが父親の役目であり義務なんだッ……! いつゾンビになるかも判らないような男を大事な娘の側に置いておくなんて私には、私には出来ないッ……! 悪く思わないでくれ!〉」
その瞬間、時が止まったようにスローモーションになった気がした。銃弾が柔肌を食い破って肉に食い込み、血しぶきが舞った────
──二年後。
新しい家は前よりも広くて綺麗で機能が充実していた。
具体的に言えば洗濯機が乾燥機能つきだったり、台所周りが最先端技術? のおかげで以前よりスマートで料理も楽だったりして。
でも私は前の馴染みの深い家の方が狭くて思い出があって好きだった。
この家はまだ何もかも真新しすぎる。住み始めて一年くらしか経ってないから当たり前なんだけどね。
しかし、この家では前の家にいたときにはありえなかった素晴らしい思い出も詰まってる。シェリーと過ごしてきた数々の思い出が。
あの事件以来シェリーの病気は完治して家族三人でまた一緒に暮らせている。
普通の姉妹関係になってしまったからか、以前よりも仲が良いかと言われればそうでもないけど、それでも仲は悪くはない方だ。
今日だってほら、来客があるからシェリーと一緒に家事を……
「ア〜リスぅ〜……まだそっち終わんないのぉ? もう、なんでわたしのほうが早く終わってんのさぁ」
「んー? あはは、ごめんごめん。ちょっと色々思い出しててねー」
「気楽なもんだねぇ、ったく。にしても風呂掃除にトイレ掃除って……客が来るだけでなんでそこまでしなくちゃいけないんだろ」
「なあに? シェリーは自分ので汚れたトイレやお風呂、見せたいの?」
「そ、それは、やだけどさぁ……!」
「だったら文句言わないの」
「ちぇー」
悪態を吐いてぶーたれるシェリーに私は苦笑する。
二年前ならこれも純粋に可愛いと思えたんだろうけど、この投げやり感にはいつもちょっと苦労させられていたりした。
そうだ、二年前と言えば私の声はもう完璧でしょう? 練習を積み重ねてようやく半年くらい前から普通に喋れるようになったのだ。
ただ、目が通常の人間の瞳孔とはかけ離れた構造になってしまったために外出するときは特注のコンタクトをしないといけないけど。
喋れることに比べたらどうってことない障害だ。
「そういえばパパはなんて言ってた? 早く帰れるって?」
「うん。今日は特別な日だからいつもより早く帰るって。いっつも帰ってくるのほとんど定時なのにね」
「あはは、それはまあ、家族と時間を持つのは良いことじゃない」
「まあねー」
言いながら椅子に腰掛けてテーブルの上にぐたぁっと寝そべるシェリー。洗い終わったお皿を何気なく眺め、「あっ」と声を上げる。
「これまだちょっと汚いよ。はい洗い直しー」
「えぇ? もうっ……」
ぷちっとくるけど仕方ないと思い直し、また泡立った水の中に戻す。
「にしても、本当に来んのーあいつ?」
「そりゃー来るよ。なにあんた、ショウゴ君が来るの本当は嬉しいんじゃないの?」
「えー。うれしくはないよぉ。だってあいつオタクだし銃マニアだし無神経だし」
「じゃあ私がもらっちゃおっかな? 私を殺した責任──取ってもらうからね、とか言いながら」
「っていうかねアリス。べつにわたしとあいつ付き合ってるわけじゃないんだよ? 学校が同じだし、先輩後輩だからしょうがなく……」
「まあ、吊り橋効果って長続きしないって言うからね。良いんじゃないの、先輩後輩っていう青春的な関係でも」
「はあ、なんだかなー」
そんな話をしている内に食器を洗うのも終わり、シェリーにお皿を棚に戻してもらう。
文句を言いながらもシェリーはちゃんと綺麗にお皿を戻し終え、私も洗い場を一通り綺麗にしてから一息吐くと、「よし」と席を立った。
「じゃあ夕飯の買い物行こっか」
「特別な日だってーのに惣菜もんで済ませようとするアリスの根性もすごいよね」
「良いのー。見栄えを良くするなら買ったのを盛り付けるのが一番なんだから。それにお寿司とかなら自分で作るより美味しくて簡単だし」
「えっ? 寿司買うの? やったぁ! んじゃ早く行こ行こー!」
「……まったく現金なんだから」
「お、重い……いくらなんでも買いすぎじゃないの……?」
「え? 大の男が二人もいるんだからこれくらいはいるんじゃない? というかそんなに重いかなぁ?」
「アリスは良いさぁー! 五十キロの荷物でも難なく持ち上げれるくらいの人なんだからぁー! わたしは十キロでもガクガクなのぉ!」
そんな会話をしながら帰りの道中を楽しく歩いていく。シェリーが楽しいかどうかは別として。
家に帰る頃にはシェリーは本当に宣言通りガクガクになっていた。これはこれで面白いかもしれない。
「ひぃーひぃー……くっそ、もうアリスと食料品の買い出しなんてぜったい行かない……!」
「あはは、お疲れさまー」
リビングに大の字になってぶつぶつ言っているシェリーを笑いながら私は袋から出したお寿司や惣菜を台所やテーブルに置いていく。
時計を見ればもうそろそろ五時になるところだった。パパ遅いな。もうすぐ定時になるっていうのに……
と、思った瞬間、噂をすればなんとやらで玄関の扉が開く音と共にパパの声が聞こえてきた。
「ただいまー」
「あ、おかえりなさーい」
「おかえりぃー……」
ネクタイを緩めながらリビングに入ってきたパパはシェリーの様子を見て苦笑いする。
「なにか、つ…つかれることでも、あったのかい?」
「それが聞いてよぉ! アリスがさぁ!」
パパに愚痴をこぼすシェリー。そんな二人を見ながら私はまた二年前との違いに思いを馳せる。
日本語がまったく話せないことほど障害はないと悟ったパパは日本語を習い始め、今では簡単な会話なら出来るようになっていた。
シェリーの愚痴に相づちを打ちつつも、料理を並べる私にもパパは声をかけてくれる。
「おいしそうだね。あー……と、とくべつな日なのに、家事を全部やらせて、ごめん」
「ううん、別にいいよ。それよりも汗掻いたでしょー? 先にお風呂入ってきてね」
「ああ。そうするよ」
「えーっ? 風呂さっき掃除したばっかなのにぃー!」
文句を言うシェリーを諭し、パパをお風呂場へ向かわせる。
パパの替えの下着と服を取りに和室に行き、私はピタリと足を止めた。視線の先にはママの仏壇。前の家から持ってきた物だった。
目を瞑って手を合わせる。
前の家のあった町は今もまだ閉鎖中だった。
なにせほとんどの住人がゾンビになってゴーストタウン化してしまったのだから仕方ないと言えば仕方ない。
それに日本での公式発表では未知のウイルスによる大量死亡ということになっている。私たちも一年ほど病院で念入りに検査された。
あの町の閉鎖が解かれるのはいつなんだろう。解かれたところで人はまた住むようになるんだろうか。
なんにしても、きっと私たちはもうあの町には戻らないと思う。だから、ママもこっちに持ってきた。
悲しいと言えば悲しい。生まれは違うけど育ったのはあの町だ。知り合いも友達も沢山いた。みんなゾンビになって死んでしまったけど。
でも、残酷かもしれないけど私は大勢の人の死よりも一人の大切な身内の生を喜んだ。
だから、新しい環境でこうやってうまくやって行けているのは何よりだと思っている。前向きに生きて……シェリーを幸せにしてあげたい。
ママ……そちらに行くそのときまで……どうか私たちのこと、見守っていてください。
「アリスぅー? なにやってんの−?」
「あ、今行くー」
パパもお風呂から上がり、料理も出来上がった。後は来賓を待つのみだ。
「もうすぐ来ると思うんだけど」
約束の時間は六時。今は六時の五分前。
個人的には約束の五分前くらいに来てくれた方が好きだけど、早く来すぎても迷惑になる場合もあるから配慮してるのかもしれない。
そうして時計の長針が六時をまさに指し示そうとする頃にチャイムの音は響いた。
「うわ、丁度に来やがった。なんか知んないけどちょっと引くわ……」
「そういうこと言わないの」
玄関に迎えに行き、「はーい」と扉を開ける。
外には──スーツに身を包んだあのときの青年、ことショウゴ君がいた。私の後ろで見ていたシェリーが吹き出す声が聞こえる。
私は、笑いこそしなかったもののガッチガチにスーツを着込んできたショウゴ君に顔を引きつらせずにはいられなかった。
「い、いらっしゃいー」
「あ、こ、今宵はお招き頂きまして誠にありがとうござ──」
「く、くっくっく、あーっははははは! ちょ、もう限界っ! せんぱーい、なんすかそのスーツはぁ! やば、お腹攣りそうー……っ!」
「んなっ! こういう招待は正装で来るのが常識ってもんだろ!? ねえお姉さん!」
「……あ、えー……それほど上流な家庭でもパーティーでもないから、普段着でも良かったかなー? なんて思ってます」
「そ、そんなぁ……!」
ご丁寧に紙に包まれた花束を持っていたショウゴ君はガックリとうなだれる。木の葉が一枚ひゅるりらと落ちるさまが物悲しかった。
そのとき、シェリーと一緒に来ていたパパが場を繕うように言う。
「ま、まあまあ。ショウゴ君ようこそ。えーあー……あっ、ゆっくりしていってね!」
「なんか違う気もするけど、まあ固くならずにいつもどおりでどうぞ」
「はい……。とりあえずこれ、手ぶらじゃなんだと思って買ってきた鈴蘭。妹さんが好きだって聞いてたからさ、良かったらどうぞ」
「わあ、ありがとうございます。ほらシェリー、スズランだって」
と後ろを向くと、シェリーが赤くなっていた。なにゆえ?
「あれ、わたしいつスズラン好きだって言ったっけ……」
「は? いや、いつだったか忘れたけど世間話してるときに聞いた記憶あってさ。ちゃんと覚えてたんだぞー?」
「ふ、ふん! う、うれしくなんかないんだからね!」
私の手からスズランの花束を奪い取ると、シェリーは家の奥に走っていってしまった。ぽかんとする私たち一同。
「なんだあのツンデレの典型的なセリフは。あいつもそっちの道に入ったのかな」
「さあ……」
ツンデレという言葉も、そっちの道というのがどっちの道なのかも私には分からなかったが、とりあえず適当に相づちを打っておいた。
そして場所は飛んでリビング。
ショウゴ君は平静を装って戻ってきたシェリーに向かって「普段着も良いな」なんて台詞を言って、また奥に走らせたりしていた。
さりげなく口説き落とそうとしてるのか、この人は。
そんなこんなの食事の前のやり取りがあってそれぞれ席についた私たちは、各々にジュースの入ったグラスを持つ。
「では、一年前は色々あって出来なかったけど、あの事件から丁度二年経ちます生き残って良かったね会を開きたいと思います」
「もっとネーミングどうにかならなかったの……?」
「いいじゃん別に、今即興で考えた名前なんだから」
シェリーの小言を流して私は咳払いをし、改めて口を開く。
「あの事件のときは色々あったけど、今こうして四人で食事が出来ることを幸せに思います。きっと一人でも欠けていたら今日のこの日はなかったんじゃないかと思います。だからみんなに……ありがとう。ではかんぱーい!」
『かんぱーい!』
それぞれのグラスを合わせ、小気味の良い音と共に食事会は始まった。
話の内容は事件とは関係なく、主に近況、世間話。ショウゴ君とシェリーは同じ学校だから共通の話題だったりいじり合いもしていたり。
パパはお酒がダメだからジュースでショウゴ君に絡んでいたりもした。私とショウゴ君は久しぶりに会うから積もる話も消化して。
本当に楽しいひと時だった。きっとあの事件が起きた当時には考えられなかったことだろう。
あのときショウゴ君を殺そうとしたパパの銃弾を、私は身を挺して受けた。
その覚悟に負けてパパはすぐに家に帰ってT-ウイルスの抗体を作り、ショウゴ君に注射することで彼は発症を免れ、現在に至っている。
当時はあの事件で得られたものなど、シェリーの完治の他に何もないと思っていた。
でも今は違う。
あの事件があったからこそ得られたものがきっと沢山あったと思える。それは自覚できることから、できないことまで本当に色々。
いつかはまた忘れてしまう日が来るかもしれない。でも今はまだ感じていられる。
守りたい物は自分が犠牲になって守っても意味はないということ。本当に何かを守りたいなら同時に自らも守ることが大切だということ。
他にも色々。
こんな当たり前のような日常も、崩れてしまうときはあっけなく一瞬だ。だからこそ当たり前を幸せなんだと噛み締めていられる。
シェリーがいてパパがいてショウゴ君がいる、この日々の幸せを……きっと私は忘れてしまうだろう。だから今の内に充分に感じていよう。
幸せであると。
「あー! ちょっと先輩、それわたしの狙ってたお寿司ー!」
「自分の皿に食いきれないくらいあるくせに何言ってんだ。それに早いもん勝ちだっての」
「くっそぉ! ならこっちの肉はもらったぁ!」
「ってそれ私が大事に取っといたやつじゃんー!」
「早いもん勝ちだもんねー!」
「こらこら二人とも。私のをあげるから喧嘩は──って、そんなに取っていいとは言ってないぞ!?」
『遠慮なくいただきました』
「娘たちが酷すぎるとは思わんかね……ショウゴ君……」
「いや、今の女の子ってこんなもんすよ」
「あはははは! 男連中ヘタレすぎー」
「なにおうっ!」
その楽しげな笑い声は夜遅くまで家の中に響いていた。
FIN
これにて『biohazard unknown 〜Live to Sacrifice〜』は全話終了となります
これだけ短い話を完結させるのにもけっこう時間がかかってしまいました
何はともあれ、最後まで読んでくださった皆様には多大なる感謝を。誠にありがとうございました
後半は集中力が切れて文章的にも失速がちで申し訳ないです
それでも大筋で、考えていた物語の構成はほぼ消化できたと思います
補足として
本主人公はアリス。サブ主人公はシェリー。男は繋ぎです
ゾンビ物やホラー物は大抵誰か死んでしまうので
自分は主要キャラは最初から全員生き残らせる予定で、終わりかたもハッピーエンドにするつもりでした
ていうかゾンビ物というよりキャラ同士の絡み合いが重点になってしまった感が(汗
以前すごくお世話になっていたところでも世界観を脇にしちゃってたからなぁ。クセなのかも
個人的には読んで頂けただけでも充分、
時間を割く価値はまあどっちかっていうとあったかなという感想程度でもかなり嬉しく思います
面白かったとか言われたら万々歳!
皆さん、お付き合い本当にありがとうございました
少し前に言っていた次回作の件はまだ全然煮詰まっていないので
(というか書けるレベルまでシナリオを昇華させられるかも疑問)、書くにしても充電時間をもらうことになります
もしかしたら書かない(書けない)可能性も大いにありますが、書く場合はまたよろしくお願いしますね
それと自分の口調についてですが、他所で長年使っていた丁寧語のクセがどうしても出てきてしまうので
以降はですます口調で書かせてもらいます。2chだからって無理して敬語使ってなかったなんておかしな話ですね(汗
ではでは、口調も自分なりにしっくりきたところでこれにて失礼します
感想、疑問等何かあれば気軽にレスしてください
エビ天さんお疲れ様でした!
めちゃくちゃおもしろかったです
次の投下が待てず何度のぞいたことか…www
次回作も期待してます!ありがとうございました
えー、久々ですが投下します
●●街 ビル屋上
「…」
特に言うことも無いな…ひとりで何か喋るのもアレだし…(まあ、俺以外居ないからいいけど)
まあ、今は高山を待つのみだな。あー寒。早よ帰ってこいや…
●●街 ビル1階 裏口
「…」
特に喋ることが無い…と思ったら大間違い。裏から入れば電気室のようなものに近いぞ!
電気付けられるな、これで明るくなるし、他の機器も使えるだろ。
ビル1階 電気室
ガチャン!カチッ…
何かの機械が動く音がするな…電気行ったか。これでいいだろ。他も見に行けるぜ…
続きます
あらすじ…
やっとビルに帰り着いた高山。
裏口から侵入し、電気をつけるが…
ビル2階 廊下
ここも、電気が付いたようだな。蛍光灯が光っている。今まで弱い光を見ていたからか?
目に染みるような…まあ慣れるでしょ。気にしない気にしない。男は細かいことは…
とか何とか言ってるうちにオフィスみたいなところに来たな。PCや壁に血が付いているのが生々しいな。
血が付いてないPCを探して、起動させる。
――点いた。点いたには点いたが…
続きます
お疲れ様でした〜
面白かったです(え〜と、アレはネタかなぁ?)
ハッピーエンド…自分にはとうてい創れないですね
自分はバッドエンドに偏る傾向があるので
ちなみに、自分は普段からこんな口調です。一人称も「自分」です
ん〜と、疑問というか。
爆風で吹っ飛ばされて生存しているのなら、Gの破片とか一部が吹っ飛ばされて、無事なのではないでしょーか?
というもの。全部が全部燃えた…りしたら、流石に生き残れないのではないかと。距離的に
いやま、自分は物理ではなく生物なのでよくわからないのですが…。質問自体が間違っていたらすいません
んでもって続き。
ふと思いついたアイデアに持っていくまでの、繋ぎとして書いてみました
なんで凄くつまんねーと思います
ギャグ良いんならこれしても良いかー、と書いたものです。なので比重が偏りすぎです。マイガッ!
次回から、「ゾンビもの」らしくは(多少なりとも)なりますので…
ちなみに文体ですが、前回とはまた別物になってしまいました
やっぱアレか。徹夜しないとダメですね。あのテンション出すには
というわけで次回は徹夜して書いたのになります
一応、題名は考えています。ですがまぁ、ここまでが序章という考えなので…
次回から地味に題名なんぞを
パラパラと辞書めくってて見つけたものです。こりゃ相応しいわ、と思って
それでは、駄文の後に続く乱文をどうぞ
「凄く…冷たいです……」
そんなフレーズを言ってしまったくらい、寝そべっていた地面は冷え切っていた。
視界に直射日光をさえぎってくれている木々が広がる。その隙間から零れた光が、柔らかく足元を温めてくれていた。
「……あれ、俺っていつから詩人に?」
いやどっちかというと作家? まぁ、どうでもいい。
つまりはアレか。頭寒足熱ということか。余計なお世話だコノヤロー。
「で、結局逃げ切れたのかー。我ながらすげぇよ俺」
昨日の記憶を回想する。
突如として見知らぬ土地から始まり、突如として現れたチェーンソーを構えた『化物』に追われ、すっ転んで目の前にチェーンソー。
そこで、ぷっつんと途切れている。多分、無我夢中で逃げたんだろうが――その部分を一番知りたい。
というか、アレって夢だったんじゃね?
「夢だとしたら、この状況はおかしいよなぁ…。俺って夢遊病だっけ?」
そもそもこんな場所知らないし。
「よっこらせ、とな」
足を垂直に上げ、それを振り下ろした反動で起き上がろうとして――失敗した。よくよく考えたら、そんな芸当できるわきゃなかった。体育の成績は下の中だし。
仕方なく普通に起き上がる。体を見下ろすと、制服はものの見事に泥まみれだった。
民家についたら、先にシャワーを借りたい。てか借りる。
いやま、この森から抜け出せたらの話だけどね。
「腹減った……」
腹の虫が鳴った。よくよく考えれば、麦茶以来口にしていない。また選択肢が増えてしまった。シャワー浴びながら……無理だよなぁ。
「歩くか…」
まずは、この場所から抜け出さなきゃ話にならない。空想だけならいつでもできる。
今更だけど、随分と歩きにくい道だった。多分獣道。
「あれ?」
木々の隙間から、光が漏れ出ている。そして、その向こうに木は見えない。
これは、もしや――ゴールか?
ひゃっほー。すげぇ。運が良い。良すぎる。今日の天気は槍だね。
体現できるほど元気も無かったので、心の中だけで踊りまわりながら突き進む。そして、割と長くて曲がりくねった獣道を突っ切ると、そこには――。
――森を抜けると、そこは道路だった。しかも左右何も無ぇ。
家一軒も見えない。ただ、向こうに延々と道路が続いている。山越えてる。
「………マイガッ!」
さもありなん。その一言を残して、俺はほどよく温められたアスファルトに突っ伏してしまった。
――諸君。しばらくその状態から動けないので、ここでは割愛することにする。いやま、心の中を描写してもいいんだけど、怨嗟ばっかだし。
ここはしばらく、別のことでも考えていてほしい。え〜と、この物語はどんな方向に進むのかとか。
――ところで、“諸君”って誰?
時間が一気に経過した気がするのは、やはり気のせいだろう。
棒のようになってしまった足を引きずって、やっとこさ街に入ったのは。日が傾き、街中が橙色に染め上がったときだった。
「ああ…そうだ、眼科に行かないと」
すっかり忘れていた。あの細い木とか。そのうち記念碑でも庭に作ってやろう。ぶっ倒れなければ。
軒を眺める。書かれてるのは日本語。ああ、文字ってすばらしい。ここは間違いなく日本だ。決してどこぞの魔法世界とかじゃない。
ここで、ふと気づいた。
それにしても、誰も居ない。色々とビルがあったり店があったりするから、人通りがぱったり無くなるなんて無いと思うんだけど。
……や、アレかな? 誰も人が居なくなる時間帯とか。ジャストでそんな時間に入ったのか? だとしたらタイミング良すぎ。俺を呪うよ。全力で。
いやいやいや、今って昼過ぎ越えて夕方だろ? だったら、当然誰か居るって。何、街全体でかくれんぼでもしてるの? 何その壮大なかくれんぼ。参加したいよ。
「れ?」
おかしいな。よくよく見れば、店という店が、汚れていたりガラスが割れたりしている。
普通直すと思うんだけど。客来なくなるし。
これじゃあまるで、
「災害跡…いや、略奪とか殺戮とか…。むしろ戦争?」
え〜っと、俺の記憶では日本には日本国憲法という素晴らしいものがあって、そのおかげで戦争はしないはずなんだけど。というか警察とか自衛隊とか居てもおかしくないぞこの惨劇。
そのうち誰かが「嘘だっ!」とか言い出しても驚かない位の惨劇ぶり。
何があったんだ?
足を止めて、じ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜…っと周囲を観察する。
よっくよく見れば。陰と重なっていてわかりにくいけど、固まった血のようなものがあちこちに張り付いていた。特にガラス。
ある店なんぞは、内側からべたべたと、幾つもの手形が張り付いている。今の流行りか? って思えるくらい。むしろそう思いたいよ。
とりあえず。とりあえず、手近なビルに入ることにした。自動ドアフルオープンで一番入りやすかったし。犯罪ってものをまるで考えていないね。
薄暗いロビーには、倒れた自動販売機だけが転がっていた。俺の記憶ではいつも光を放っているそれが、全く光を発していない。明らかに電力が通ってなかった。ブレーカーが落とされているのだと思う。
ロビーに掲げられているはずの掲示を探す――が、見つかったのは床に落ちて粉々になったもの。おかげで、何が書かれているのかさっぱりわからない。
もうどうにでもなれ。
そう思って、階段へと足を踏み入れた。自動販売機ですら電気が入っていないのだから、エレベーターなんぞは開かないだろうし。
この時は完全に気を抜いていた。だって、山を越えて、更に街に着くまで歩き通しだったわけだし。そりゃ、気も抜けるよ。
――まぁとにかく。
足を踏み入れた瞬間、勢い良く走ってきた何かにぶつかられて。俺は、盛大にひっくり返ってしまった。頭の痛みと共に。
>>110 読みやすく面白かったです
長編お疲れ様でした。
ほ
ゾ
ン
ビ
ン
グ〜♪
久々に投下。
第三章という事にしてます。
酒屋を出て市街地を進む。
人通りの多い場所はやはり荒れていた。
特に駅よりも北側のほうが顕著だった。
「駅南と比べると荒れてるな」 西田は車を走らせながら周囲を伺っている。
暴徒の姿も散見するようになってきた。
しかし道路が通行出来なくなるほどでない。
「街を抜けるのにどれぐらいかかるの?」 森が不安そうに問い掛ける。
「そうだな。 なにもなければ30分もあれば市街地は抜けられると思う。
まばらだけど奴らが目に付くからあんまスピードだせないんだ」
西田は慎重に車を進めていた。
(´Д`)ハァ…
オフィス街を抜け住宅街に入った。
放置車両が目立つ。
路地裏も車で塞がっているのが目立つ。
なかには奴らの仲間入りした者が車両内部に残されていたりもした。
「知能はかなり低下しているようだな。
ドアを開ける事すら出来ないみたいだ」
放置車両と距離を取りながら慎重に進める。
「そうだな。 特に足の遅い奴はその傾向が強いな」 なぜそうなるのかは分からない。
走れるタイプとそうでないのがいるのは間違いない。
住宅地で追われた時も二種類いた。
足の遅いのは獲物にまっしぐらだが、速いのは動きがまるで違う。
ホームセンターでのあのおっちゃんも全く違ってた。
「住宅地で追われた時も二手に分かれて回り込まれそうになったりしたからな。 侮れんよ」 西田は険しい表情だ。
「挙げ句にその筋の人達に追われるなんて最悪だよな」 (´Д`)ハァ…
「いくらなんでもここまで追いかけてくる事ないんじゃない?」 森さんはオレ達の顔を交互に見ながら問い掛けてきた。
「うん… そうであればいいんだけどね。 その筋の人って執拗だって言うでしょ」
実際奴らの仲間入りしてもオレ達の後を追いかけてきたのもいたしな…
「もうすぐ河川敷だ。 河を渡れば住宅地も終わりだ。 あとは農村部だから抜けるのは容易いだろ」
やっと危険な住宅地から抜けられるのか…
ゆっくりしたいよ… (´Д`)ハァ…
「そこの坂を登れば堤防にでる。 少し北上すれば橋があるから渡れば実家まで一直線だ」
西田は少し速度を上げた。
勢いよく堤防を上る。
そこにはとんでもない光景が広がっていた。
やつらだ…
おびただしい数のやつらが河川敷に集まっていた。
いや、集まった時は普通の人間だったのだろう。
避難所受付と大きく書かれたテントが張ってあった。
「な! なんてこった!」 エンジン音を聞きつけたやつらがのそのそと堤防を上がろうとしていた。
西田は一気に加速した。
対岸へ渡る橋は見えている。 あと少しだ。
その時、車体が大きく横に揺れた。
「おいおい!西田、大丈夫か!?」
「すまん… 轍にタイヤを取られた」 ん? 西田?
「くそ! 掴まってろよ! 揺れるぞ!」 西田は道幅をいっぱいに使ってやつらを交わす。
それでも避けきれないやつがボディに接触する。
その度に車体は大きく揺れる。
大型SUVでなければ止められていただろう。
西田は目一杯アクセルを踏み込む。
「一気に抜けるぞ!」 やつらの少ない部分を目掛けて突っ込む。
やっと橋に差し掛かった。
対岸にはやつらの姿はない。
一級河川の橋を駆け抜ける。
なんとか逃げ切れそうだ。
タイヤを激しく鳴かせながら橋に進入した。
橋の上には奴らの姿はない。
西田は少しアクセルを緩め後ろを確認した。
のそのそと追いかけてくる。
「くっ… このまま奴らがこっちに来たら被害が拡大するかもしれん…」
確かにそうだ…
橋を渡った先は被害が少ないかもしれない。
そこにオレ達がやつらを誘導して被害を拡大させる訳にはいかない。
どうする…
「西田、どうする? このままじゃまずいよな」
「あぁ、まずい… でも止める手だてもない…」
どうしたんだ? いつもの西田らしくないな…
「放っておくか?」 逃げるのが先決、そう考えてるのか?
「… 川本、灯油を道に撒いて火を放て。 多少は止められるかもしれん…」
橋を渡りきったところで車を止めた。
急いで屋根上から灯油缶を下ろす。
オレは車から20mほど離れたところに端から端まで灯油を撒いた。
奴らはすぐそこまで迫っている。
100円ライターの簡易バーナーで点火。
すぐさま5m離れ、同じように灯油を撒き点火。
ここで灯油が切れた。
思った通り、奴らは火を嫌うようだ。
炎から先に進んで来ようとしない。
なんとか時間稼ぎは出来そうだ。
今の内に此所を離れれば奴らも追ってこないだろう。
「ちょ! 西田くん!」 なんだ!?
「どうしたの! 渡辺さ… ぉ! おい! なんだよお前! しっかりしろよ!」
西田はハンドルにしがみついたままガタガタと震えていた。
「ちょ… お前… すげぇ熱じゃないか! いつからだ!」
オレは慌てて西田を運転席から下ろし後部座席に放り込んだ。
「く! 火が消えちまう!」 オレは慣れない西田の車に乗り込んだ。
慌てて車を発進させる。
堤防を下り住宅街に入った。
「西田! 大丈夫か!」 西田に呼びかけた。
「ぉ、ぉぅ…」 全然大丈夫じゃないなこりゃ。
とにかく休ませられるところを探さなきゃ…
「森さん、渡辺さんどこかいいところないかな? 西田を休ませられそうなところ」
「うる覚えだけど… この先に工場があったと思う…」
「よっしゃぁぁ!! とりあえずそこに向かおう! 西田を休ませてやらないと!」
慣れない車に戸惑いながらオレ達は工場に向かった。
しばらく進むと電子部品製造工場の看板があった。
門は開いたままだ。 守衛の姿もない。
速度を落とし、一度通り過ぎる。
「中に入らないの?」 森さんが問い掛けてきた。
「いきなり入って奴らや変な連中に鉢合わせはまずいでしょ。 ちょっと様子見してからね」
そう言って何度かUターンして駐車場内部の様子を伺う。
一般車両は入っていないようだ。
「大丈夫かな?」 オレはそろりと駐車場内に進入した。
表から見えない位置に車を駐めた。 下りずに周囲を警戒する。 大丈夫か…
「渡辺さん、援護頼みます」 オレはそう言ってライフルを用意し車外へ出た。
従業員用の入口に取り付く。
当然鍵は開いていない。
作業ポーチからハンマーとガムテープを取りだしガラスを破ろうとしたとき、
セキュリティのシールが目に入った。
「くっ! 南無三!」 手早くガムテープを貼りハンマーを振り下ろす。
がしゃ!
どうやらセキュリティは作動していないらしい。
腕を突っ込み、鍵を開けた。 無事侵入成功だ。
入ってすぐのところにタイムカードが並んでいた。
今日はここまで(=゚ω゚)ノジャ、マタ!!
遅レスで申し訳ないです(汗
>>111 面白かったと言ってもらえるだけでも嬉しいのに
めちゃくちゃと前につくほど楽しんでもらえて本当に作者冥利に尽きるというものです
次回作も書けるよう頑張りますね。ありがとうございました!
>>114 emptyさん
ありがとうございます
他作品ネタが二つほど入ってますので、恐らくemptyさんが気づいたアレというのはネタでしょうね(笑
実は僕としてもただのハッピーエンドというのはあまり書かない主義です
どっちつかずというか、デッドやバッドの上に成り立つハッピーエンド…みたいなのが好きだったりします
疑問についてはご指摘のとおりです
手榴弾による足止めで敷地内に留まっていたとはいえ、爆発の輪から少し外れたところにいたGは
爆発した直後には生きていたでしょう。ただ、そこから先は僕自身も明確に設定は考えていません
ダメージを負った状態で栄養が見つからないまま死んでしまったのか
運よく新ウイルスの機能不全でさまよっていたゾンビにありついて生き延びたのか
どちらだったしても、病院爆発以降、アリスたちとGが再び接触することがなかったことだけは確かです
投げっぱなしでご都合的な回答になってしまったかもしれませんが、納得してもらえればうれしいです(汗
それと作品の感想をば。
笑いとしては若干前よりもパワーダウンしてる感がありました。ご自身の言うように繋ぎだからかな?
それに徹夜のテンションで書くと凄いものが書けたりしますからね(笑
文章的には徹夜とは関係なくやはり上達していると思います。推敲して煮詰めればもっと良くなると思いますし
どういうゾンビもの展開になっていくのが楽しみです
余談ですが、何故かこの話の主人公が『あまつき』という漫画(アニメ)の主人公で脳内再生されていたりします
>>118 最後まで読みやすいと言ってもらえると本当に自信がつきます
自分としては短い話だったかな、と思っていましたが、それでも苦労したので労いの言葉サンクスです!
[28週後]続編としてはあまり面白くない…
金掛けてるのに勿体ない…
28週後…は
いろんな意味で目が痛くなる映画だったなあ…
recはどうなんだろう?
作者さん方、非常に楽しませてもらっております。
ゾ
ン
ブ
ロ
|
チ
元々ペースが遅いですが、期末があるので更に遅くなるやもしれません…
というわけでしばらく留守になるかもです
そうなれば来月まで現れませんので…
無
「ゾンビ自衛隊」観た。
いや、これかなりの佳作。俳優・スタッフの熱意がひしひしと伝わってくる。
いかにもB級なふいんきだったから全く期待してなかったけど思わぬ期待外れ。
ただしこれメイキングのことね。本編はあくまでもメイキング作るためのついで。
まあメイキングだけ観れば本編は早送りでおk。
143 :
本当にあった怖い名無し:2008/06/22(日) 20:38:04 ID:fS4abnoU0
__
ト-!
_,」-L. _
r‐r┐,. ´ ヽ_┌r┐
`└L′・ ・ '.」┘′
{ rー──‐┐ }
,ゝ└──‐ ┘,.イ
rく,ゝ'` ーr─┬ヘ.ム
. `´ │ │ `┘
`'⌒
ゾ
ウ
ガ
コ
ン
ド
ム
R
E
153 :
投げっぱ:2008/06/28(土) 14:13:55 ID:cehIyGPzO
[PM 9:32]
《番組の途中ですが緊急ニュースをお伝えします》
ドラマ視聴率低迷と囁かれている中、奇跡の高視聴率を上げていた連ドラを断ち切り、画面はデスクに座る一人の女性アナウンサーを映し出す
ヒマな人、誰か続き書いて下さい
追記
1レス交代で小説書きませんか?
___
/ \
/ \ , , /\
/ (●) (●) \ 「日本人女性の55%は、出会ったその日に男と寝る。」
| (__人__) |
\ ` ⌒ ´ ,/
. /⌒〜" ̄, ̄ ̄〆⌒,ニつ
| ,___゙___、rヾイソ⊃
| `l ̄
. | 毎日 |
では毎日新聞の女性社員の55%は出会ったその日に男と寝るのですね?
\____ ______________________/
\/
/ ̄ ̄\
/ \ ____
|:::::: | / \
. |::::::::::: | / ⌒ ⌒ \
|::::::: 読者 |/ (●) (●) \ 「名誉毀損です。訴えます。」
. |:::::::::::::: } | (__人__) |
. ヽ:::::::::::::: } \ ` ⌒´ _/
ヽ:::::::::: ノ | \
/:::::::::::: く | | 毎日 | |
-―――――|:::::::::::::::: \-―┴┴―――――┴┴――
ワロタ
>>153 「なんだよ、また西成で暴動かよ」
最初、誰もがそう思った。
しかし、直後にテレビの映像を見た誰もが自分の目を疑った。
続きどなたかよろしく
,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,,
_____ ,,,;;;;;;;;'' '';;;;;;,,,
ヽl/::::::::::::::::::::::::::`.:.、 ______;;;;;;''''" ''';;;;;;;;,,,
. /::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::ヽ / _ノ_ノ:^) ''';;;;;;;;;,,,
/:::::::::::::// ヽ`y / _ノ_ノ_ノ /) ''';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
|::::::::::::/ / ̄`ヽ/ ̄ヽ| / ノ ノノ//
|(6\|.─| \|/ || ___ / ______ ノ
. V ヽ.__ノっ.__ノ| _.. r(" `ー" 、 ノ
ヽ. ____) | _. - '"´ "-、 ゙ ノ
ヽi、 / ‐ ' " _.. `ー''"ー'"
r|、` '' ー--'´ ァ' "´ __ '"´ -" ̄ "- ̄ヽ
/ ----,,, ,,_.- ' " /" _ ----ヽゞ;;;,, ,,,,:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
/ '''''─ " (___-" ヾ ヽヽヽヽ'';;;;;,,,. ,,,;;;;‐″
│ _..ヾ ヽヽヽヽ '';;;;,. .,;;;;;;'
│ ,,,-‐ '"´ ヾ__)__)__)_) ''';;;;;; ,,.,;;;;‐'''
│ "─r'--,,,,,--'''''''' ヾ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;''"
のび太だ、のび太が戦っている。しかも強い。
相手は誰だかわからないけど、かめはめ波まで撃ってる。
こんなのありえない!死体が起き上がって歩き回るくらいにありえない!!
さあ、どうつなぐww
,/,i´ / `゙゙''''''―-------------‐''"` | .ヾl
,l゙ l゙ / ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,、 ,,,----―ヽ .| │゙l
/ /` │ ミ ゙=,,,,_,,、.,ゝ .,r'i、 .| ―‐'".,,,-" | l ヽ
l゙ ,i´ | ゙゙'ー-,,,,,,,,-" / \ `''-,-'"゙` .| ゙l、ヽ
/,i´ | ,/ `'、、 | |、 \
l゙,l゙ | ,/ .'i゙l, ,i´ │ ヽ
,l,i´ |,,,_,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,_ .,i´ ,,,、 .,,,,, ミ,'i、,,,,_,,__ __ ./│ .゙l `'i、
,|l゙ `/.゙l ,i´゙'' `r-イ ゙i、 ` ̄  ̄ ゙̄l .,! ゙l │
| | .| l゙ | ゙l ゙‐ |.,レ ゙l、 .l゙
゙l ヽ │ __ _,,,,,_、 | ,/`,/`
`-,,,、 `=゙l ./.--''"`` `゙''ー- ゙l i、 .l゙ .,,//`
`゙''-,、 ゙l゙l, ` `''''''゙''''''"゙` " ,l゙ .,,/,i´
\ ゙l,'i、 │ ,,-ニ'"
`-、 | ヽ ,/` ,// .,/゙
のび太の戦いを見つめる謎の男
「こ、、これは、、、」
よく見たらその仮面の男はブラウン管に映りこんだ俺の顔だった。
「ど、どうして、、、、」
「なんで今頃ブラウン管なんだ、、、」
いや、その疑問は今は置いておいて、俺はいったい何者なんだ?
何故のび太が戦っているんだ?ドラえもんはどこにいったんだ。
そこで頭に激痛を覚えた。
「な〜に馬鹿なこと言ってるのよ!」
堪え難い激痛の中、俺は歯を食いしばり声のする方を振り返る
そこには………
「マ、ママ?!……なんでママが…ここに?………痛っ!……」
限界を越え床に倒れ込む俺。消え行く視界の先には砕けた大根を片手に微笑むママが映っていた………
続く
「あらあら〜またこんなコスプレしちゃって〜」
「どうも記憶に混乱があるようだな。ずっと観察していたが電源の切れたTVを
一心不乱に見つめていたと思ったら暴れだしそうになってたよ。
いったい何をみていたんやら、、、」
「やっぱり死体を生き返らせるなんて無理だったのよ」
「いや、物理的には上手くいっているよ。問題は生前の記憶さ。こいつは自分のことを
シャア・アズナブルだと思い込んでいる」
そんな夢を見た
完
○○○
○* ・ω・ ○ でか杉・・ ヾ(´∀`)ノ□
○○○ ( )
.c(,_uuノ < <
「ついに夢オチにしちまったぜww」
男が言った。何やら青年の頭に電極を刺してコンピューターで意識、思考を読み取っているらしい。
「よっぽどシャアの世界に埋没していたいのね、、、」
青年がママと認識していた女性が言った。
「つまり、だ。こいつの頭の中に渦巻いているクソの役にも立たないマンガデータを戦闘法や戦術理論、
サバイバルの情報に書き換えてやればとてつもない戦闘マシーンになるぞ」
「偉大なる量産試作品ってところね」
「リョ、リョウサンシサク?オレハガンダムナノカ、、、」
先日、孫がビデオを見ているととんでもない言葉に耳を疑いました。
「オッス オラ 極右」
主人公は異星人との紛争を暴力によって解決しようとするものでとても、
子どもには見せられる内容ではありません。
また主人公がピンチになると金髪で青い目に変身します。
(元々の主人公は黒髪で黒い目をしています)
時代遅れの脱亜入欧的表現に笑ってしまいましたが、
こういう所から同じアジアの同胞への差別が始まるのかと思うと薄ら寒い気がします。
そして、最後の必殺技は、全ての人々から元気を少しかけてもらい巨大なエネルギーにするというものなのですが、
その表現が更に恐ろしい全ての人々が両手を天に上げる、そう万歳なのです。
万歳をした人から力を奪い取り、敵を撃つという図式は戦中の構図そのものでその衝撃にへたりこんでしまいました。
このような番組を見て育つ子どもの将来が非常に心配です。
この国はいったい何処に進んでいくのでしょうか。
56歳主婦
お久しぶりです
試験があと少し…
というわけで来週にはまた投稿できるかな?
>>154 おお、それはなかなか面白そうですね…
ではでは(何のために顔を覗かせたんだろう…)
暴徒とされている人々は素人目にも致命傷と判る程の傷を負いながらも、
ある者は這いずり、ある者は人を「構成していた」ハズの肉片をぶら下げながら
警察の封鎖線に向かって蠢いていた...。
オカ板最下層まで落ちてきてたので、支援してみました。続きは誰ぞ...(´・∞・)
どうせ続かないんだからやめとけ
ゾ
>>157 テレビを見た途端携帯が鳴った
『テレビを見たか?』
「今見てる、始まったな?」
『状況Zだ、たった今発動された。フォルダを解凍し指示通り
に行動せよ』
「復唱しますか?」
『いらん。幸運を祈る』
>>172 他のchもこの西成暴動の中継が入り、現在東の阿倍野区・北に隣接する浪速区にも混乱が拡がっていると、
暴徒達に負けない位青ざめた顔のニュースキャスターが速報を読み上げる。
報道ヘリは西の大正区から火災が複数ヶ所から上がっている映像に切り替わっていた...。
177 :
本当にあった怖い名無し:2008/07/05(土) 14:04:41 ID:bRKoaGps0
期末から解放されました…
>>175 携帯電話のフレームを握り、ぐっ、と力を込める。
ばきゃりと簡単に圧し折れた携帯電話の中――剥き出しの基盤やら何やらに混じって、透明な防護膜に包まれたSDカードが転がり落ちてきた。
防護膜を破り、乱暴にノートパソコン――かなり小型のモデルで、持ち運びしても荷物にならないのが利点だ――に押し込む。
聞き慣れた起動音と共に、見慣れたウィンドウ――パスワード画面が表示された。
キーに注意しながら、かたかたと無意味な記号の列をひたすらに打ち込む。このパスワードはひたすらに長い。何せ、桁が数十もあるのだから。
かたり。薬指がEnterキーを押し込む。
耳をつんざく警告音と共に、幾つかのファイルがデスクトップへと移され――SDカードのフォーマット画面が現れて、消えた。
マウスを右手に握り締め、『p.Z(s.B)』とどこかの方程式のようなファイルをクリック。
やはり耳をつんざく警告音と共に表れるのは――地図。道路と思しき部分に様々な色のラインが入り組んでしまっているせいで、傍目には街の形すら判別できないものだ。
だが、今はこのごちゃごちゃとしたラインこそが重要なのだ。
流石にその全てを覚えきれるわけではないので、ノートパソコンを手早くザックへと押し込む。
それから何かを考えあぐねた挙句――マジックで壁に大きく書きなぐり、傍らの鍵を引っつかんで部屋を出た。
うわぁ我ながら意味不明。
誰か続きよろしくです。
>>176 早朝から何か外がサイレンやら何やらで騒がしいと思ったら...。
TVに映ってる西成はここからいくらも離れていない。
ひょっとしてこちらにも暴動が拡大してヤバイ事に...なんて、まさかね。
TVでは到着したばかりの機動隊による放水で暴徒の群れを弾き飛ばしている場面が映ってた。
ま、せっかくの休みだしコンビニに寄って、それからネカフェにでもいきますかね。
そこで2ちゃんでも見ればどこかの勇者が現地写真をうpしてるかもしれないし。あ、ニコ動なら動画とかあるかも。
そんな事をうっすらと考えながら、玄関の扉を開けた...。
このスレも終わったな……
こんな奴らが居座ってたら作家さん達も書かなくなるだろう……
そう思ってベッドに俺は身を横たえた。
今さらそんな小説を書いてて何が楽しいのか。
家から一歩でも外に出てみればいいのに。
連中の駄文よりはるかに面白い事態が待っているのに。
さて、食料も尽きかけてきた。どうやって手に入れよう。
外には死体がわんさか。車を出したところで身動きできないだろう。
いや、待てよ。
この期に及んでゾンビ小説などに逃避してる奴ら、こいつら一体どうやって生き延びてるんだろう?
俺はパソコンデスクに向かった。
そして書き込む。
1 名前:本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2008/07/06(日)03:51:05 ID:kAK/f+L00
お前らどうやって生き延びてんのよ?
2 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2008/07/06(日) 03:52:44 ID:lvWkK96YO
なにはさておき2ゲット
3 名前:本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2008/07/06(日) 08:54:42 ID:ktUqfHt10
いや、俺もう死んでるかくぁw瀬drftgyふじこlp;@:「」
4 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2008/07/06(日) 04:00:07 ID:mGEik+qmO
ヒント:コンビニ篭城
だめだ、こいつら本当に役にたたねえ!! orz
気を取り直してTVをつける。
暴動?もう三日目だよ。まだ初日の映像かよ、、、
やっぱり同じニュースの繰り返し。
たぶん、放送局もすでに全滅していて機械的に過去ニュースを繰り返してるんだろうな、、、
ニュースで首相官邸からの映像が流れていた。
相変わらず野党が自衛隊の出動に反対していることが言われている。
家の中の食料は暴動発生初期から買いだめしておいたが
生きている人に会う機会がなくなってきている。
避難場所に行こうとしても無駄だった。暴動発生2日目で壊滅したらしい。
俺はこれからどうしよう・・・
>>179 外へ出ると、丁度お隣の御一家が車に荷物を積んでいる所にでくわした。
いつもの様にあいさつすると以外とも驚きとも言う様な顔で“避難しないのですか?“と言われた。
なんでも朝方、区の広報車が町内を回って”自主的な避難を”と呼び掛けていたのだそうだ。
いくら大規模な暴動とはいえ、住人を避難させるってどうなってるんだ?。
まわりの家をざっと見回すと三軒向かいのお宅では洗濯物を干している奥さんがいた。
目の前を自転車に乗ったおばさんがのたのたと横切っていく。
どう見てもいつもの光景だ。避難しなければ...なんて空気ではない。
そういえばお隣りさんは前に住んで居た所が地震でダメになって引越してきたんだっけ。
きっと防犯とか防災意識が高いんだろうな。
そんな事を考えながらお隣りさんに微妙な笑顔で会釈し、コンビニへと歩きはじめた。
>>187 コンビニまでそう時間はかからない。
せいぜい歩いて2分だ。
その間にも、いつもと何にも変わりの無い光景ばかりが目に入る。
どの家も避難する素振りなど見せず、ただただ平凡かつ平和なものばかり。
そんな景色を眺めながら歩いていると、気がつけばコンビニに到着していた。
ドアを押し開けようとして…開かないことに気がつく。
見れば店内は真っ暗で、ドアには内側から張り紙がしてある。
どうやら、このコンビニの店長も防災意識が高いらしい。
押し入って盗むわけにもいかないので、諦めてネカフェへ向かうことにした。
スレタイ嫁や!
ここはリレー小説書くスレじゃねー!
書きたいならガチでゾンビが発生したら?のスレに行けや!
荒らし共が!!
もう三日、それともまだ三日か・・・
まだライフラインは生きてるがそれもいつまでもつか。
三日前、テレビで暴動のニュースを見た翌朝、日本中で暴動が起きた。
自然発生的な異常な暴動で、暴徒が見境なく人を襲ってるように見えた。
警察はそれを予期していたように暴徒に向かって無警告で発砲したが、奇妙な事に
暴徒は倒れず警官隊に襲い掛かった。
俺はその間に巻き込まれた只の朝帰りし損ねたサラリーマンだ。
警察対暴徒の争いを直に見た、見てしまった。
暴徒は人間じゃない、体中ボロボロで内臓引きずりながら撃たれても倒れない人間なんて居るものか!
あれじゃあ、どう見たって映画の・・・!
お願いだからリレー小説は止めてください
>>188 それにしてもさっきのコンビニ。「西成地区における暴動と物流事情の混乱により・・・」って書いてあったなぁ。
やっぱり少し影響あるみたいだな。そんな事を考えながら行きつけのネカフェへ入店するが、その際店員に
”今日は17:00で閉店します”と声をかけられる。なんだここにも影響がでているのか...。
いつもならえっちぃ画像を漁るのだけど、今日はニュースサイトから巡回するか。どれどれ...え〜っと、
大手サイトでの暴動の扱いは隅っこにちょっとだけか。...マントヒヒがアイスで納涼...うまそうだ。
ん〜やっぱり2chかな。どれ...
なんだこれ.....
ニュース速報 ラウンジ 警察 運輸・交通 自衛隊 オカルト 生物 心理学 軍事 無線 鉄道総合 心と宗教 ニュー速VIP まちBBS大阪 etc
ざっと流し見した板のほとんどに「西成暴動」「ゾンビ」「避難案内」「コンビニ篭城」のスレが立っている。
なんだよこれ.....。とくに西成に住んでいるらしき人の書込みは
>>186 事態がかなり逼迫している事を知らせていた。
それにどうやら首相官邸から何かしらの発表が行われた様だ。さっきニュースサイト見た時はそんな記事は無かったが?。
一体なにがどうなってるんだ。妙な不安感を抱えながら様々な板をサイトを巡っていった。
暴動が起きて5日だ・・・
ようやく首相官邸から発表があった。
「わが国では今、大規模な暴動が発生しております。この被害を最小限に防ぐために
非常事態宣言を発令いたします。なお自衛隊の出動も決まり、暴動の起こっている各地域の派遣も始めております。」
畜生、遅すぎるんだよ・・・こうなることは予想はしていたがもう誰にもこの事態はとめられない。
俺のいるマンションはまだ大丈夫だがいつやつらが入ってくるかわからない。
周辺の警察や自衛隊駐屯地は壊滅状態で助けが来る気配すらない・・・
どうしようこれから・・・
みんながてんでバラバラに好き勝手書いてるだけ、小説以上にパニック状態だなw
>>192 自分の知っているサイト等を片っ端から回ってみたが、あえて暴動の記事を小さく扱っているのか?。と思える程極端な差があった。
「報道規制」の文字が頭に浮かんだが、今はマスコミの在り方を考えるよりもまず何が西成で起っているかを知りたかった。
検索サイトで「西成暴動」を検索すると、どうやら西成在住の人が撮影したものらしい動画があった。
ttp//jp.youtube.com/watch?v=8_gwsDi_Qw4
そこには暴徒から逃惑う人々や、家に篭り家族を守ろうと幼い子供までが抵抗する姿が映し出されていた...。
...あれってやっぱり、ゾンビって奴だよな...。そんなアホな...でも出掛けに見たTVには臓物ぶら下げた暴徒が映っていたな...。
もしあれが本当にゾンビなら機動隊の放水程度じゃ役に立たないぞ...。!そういえば首相官邸から何か発表があったんだよな!。
ネカフェのモニターをTVに切替えるとついさっき行われた会見が放送されていた。
”・・・自衛隊の災害出動を指示しました(防衛出動じゃないのかよ)”
”・・・全国の消防・救急も応援に入り、ケガ人を近隣県の病院に搬送し・・・(これって...まずくないか?)”
”・・・暴徒は一様に錯乱状態にあり、何らかの感染症の可能性・・・”
”・・・国立感染症研究所並びにアメリカ疾病予防管理センターからスタッフが・・・”
ネカフェでカチカチしてる場合じゃないんじゃないかこれ。一度ウチに戻ろう。
清算を済ませ表に出ると、丁度自衛隊のトラックが目の前を西成へ向かって走り去っていった...。
俺は自衛官だ。今回の政府による災害派遣の部隊としてトラックに乗って移動中だ。
まあ俺が自衛官になったのは安定した職業だからである。それに自衛隊は災害派遣などほとんどが国内活動だけという理由もあった。
なぜか今回は災害地域?へ移動する前に所属している分隊長から「銃火器の携帯を忘れるな」と言われたので銃を持っている。
移動開始5分前に友人から「俺達の行く場所、暴動が起きているらしいぜ」と教えてもらったがいまいちわからない。
なんで暴動が起きてる場所に行かなきゃ行けないんだよ。畜生、ケガなんかしたくないぞ。
ましてや実弾装填済みの銃を持って駐屯地の外に出るなんてよっぽどのことがない限りないよな。今まで一度もそんなことなかったぞ。
おっと、こうしているうちに着いたみたいだな。
な・・なんだありゃ・・・うそだろおい・・そんな・・・そんなことってあるのかよ!
こんな状態じゃ、作家さん達は作品書いてくれないだろうなぁ……
お気に入りから削除しよう……
ゾンビかぁ、よし、田舎の爺ちゃんとこ行こう。
あそこならゾンビもいないだろうし米もあるし
爺ちゃん猟銃もってるし。
暴動から1週間、既に街の至るところで暴動が起きていた。
そして皆は暴徒のことを『ゾンビ』と呼び始めていた。
僕は街の安アパートから田舎の祖父の所に避難しようとしていた。
暴動発生初日に買い込んで部屋に溜め込んでいた食べ物は全部食べつくしてしまい、
また、今日になって停電になったからだ。
問題は田舎の祖父の家まで直線でも50km以上あり、僕は車を持ってないことだった。
>>197 まあ誰も応援するどころか読んですらいないだろうし
そのうち飽きて収まるだろうから、それまで気長に待とうぜ
それに、しつこく書いてるのは携帯とPCで自演してる奴だけっぽいし
他のは便乗の煽りみたいなモンだろうな
>>199のようなネタすら投入出来ない構って君は放置でおk
>>200 どう見ても構ってクンはお前らなんだがw
投げっぱなしの駄文リレーに便乗してワケ分からん文字の羅列のっけることしか出来ず、自分一人じゃ作品一つまともに書けないくせに
それと俺は普段ROM専だし、作品の書く書かないなんて強制されることじゃないから
作家と並行して読者ありきのスレだってこと忘れない方が良いよ、構ってクン
ニュースを見てたら
暴動があって
それが「動く死体」らしくて
うちの近所にも及んできて
逃げて戦って逃げて仲間が増えて死んで逃げてまた戦って
生き延びられた
完
>>202さんお疲れです。
まあ、なんだかんだで終わったんでいいじゃないですか。
作家さんたち頑張ってください。
>>200 詩ね^−^
>>202 リレー完結GJ
ちゃんとした作家さん達が帰ってきてくれることを願うよ。。。
悪ノリした分際で言えるこよではないのですが、投稿ってもうしても良いのでしょうか?
荒らす意図はないんだけどなぁ
「保守」の書込みで埋まるよりはいろんな人の書込みの切れ端を”tips”として再利用したりされたりしよう...と思ったんだ。
>>195 自衛隊の車列を見送り早足で歩き出す。辺りの様子はいつもと変わらないが遠くから救急車のサイレンの音が切れ間なく響いてきていた。
ウチの近くまで戻ると、何度か見たことのある地元のおまわりさんが交通整理をしていて何やらドライバーと揉めている。
聞き耳をたてながら通りすぎると”自衛隊と消防による救助活動を円滑に行う為、この先の大和川から北は通行止めです”と説明している様だ。
何事も無くウチに着きTVを点け、繰返しに映るヘリからの西成映像を見ながらぼんやりと考える。
...もしあれが映画やゲームに出てくるゾンビと同じなら、じきにこの辺りも...。
そういえばさっきの会見中継で「ケガ人を近隣県の病院に搬送し・・・」って言ってたな。もし齧られるだけでああなるのなら、この暴動は他県に飛び火していくんじゃないか...。
TVでは西成区・阿倍野区・浪速区に住んでいる人に向けての避難情報が流れていた。
”・・・西成区にお住まいの方は以下の場所へ避難して下さい。梅南中学校・千本小学校・津守小学校・・・」
”・・・現在、南海本線・阪堺電軌阪堺線・南海高野線は運転を見合わせています。・・・”
”・・・大和川より北、新淀川より南は救助活動を優先させる為、一般車両の通行はできません。・・・」
”・・・医師の数が不足している為、一般病院での治療が難しくなっております。治療効率を上げる為、
「暴徒により怪我を負わされた方」は以下の救急施設へお越し下さい。大阪市立大病院・南大阪病院・串田病院・・・”
なんだか加速度的に騒ぎが大きくなってきている。いずれにしても避難する準備はしておいた方がよさそうだ。
わずかな着替えやらお宝画像の詰まった外付けHDDをバックに詰めながら、どうしたものかと考える。
引っ越してきたばかりで土地勘もないのに、いざ逃げろとなってもどこに逃げればいいんだろ...。電車も止まってるみたいだし...。
窓から外を眺めると授業も半ドンになったのか、近所の小学生たちが集団下校している姿が見えた...。
だからそこまで書きたいなら自分ひとりで完結させろよ。
そのつもりらしいけど変に他人が紛れ込むと読んでるほうがややこしくなるからさ。
あと書くならコテつけてな。
リレーはこうなるからなぁ。
兎にも角にもはじめた以上終わらせてね!
みんな短気だな
過去スレまとめでも見て落ち着こうぜ
たまに読み返すのも面白いよ
そもそも連携も何もあったモンじゃない名無しの集まりでリレー小説なんて出来るワケないじゃん
みんなが好き勝手に書きたいこと書き殴って終わりだってなんで分かんないんだろ
収拾もつかなくなるしさぁ
>>206 書くなら一人で書け
誰か一人でもまともなモン投稿してたら保守だけで十分だろ
お前が最初に投げっぱした奴なら謝ってリレーの流れ切って、コテつけて書けよ
書けないんなら最初から中途半端なモン投稿すんな
>>205 遠慮なんてすることないよ
まともな作家の作品ならいつでもみんな待ち望んでるだろうし
書き忘れた
>>206 書くなら三点リーダくらいまともに使えるようになれ
>>213 じゃあ先生まず三点リーダーの正しい使い方と、正しくない用法をした場所を指摘ヨロ。
>>206 俺は人類最強になるためにはどうすればよいのか考えた
人類最強なのだからどんなこともできる
手始めに全裸で姉の部屋にアンゲロ、アンゲロとつぶやきながら飛び込む
タンスをこじ開けブラジャーを腰に巻きパンティーを頭にかぶる
姉が呆然としながら見てくるが人類最強なので気にしない
姉のベッドに潜りこみ「幸せだから!幸せだから!」と絶叫
姉は無言で部屋から立ち去る
だがまだ最強には不十分
次は妹の部屋にムッシュムッシュと叫びながら飛び込む
妹は着がえをしている最中だったが人類最強なので無視
半裸で逆立ちをしながら
「俺に充電しろ!!俺に充電しろ!!」と絶叫
妹は大泣きで退散
確実に人類最強に近づく
開脚後転でトイレに飛び込み便座を外し首に掛ける
ゾンビの真似をしながら母の部屋に突撃
タンスを開けると一枚の写真発見
死んだ親父が俺を抱いている写真発見
俺は泣いた
完
>>212じゃないが、
三点リーダの後ろに基本的には「。」は使わない。
使い方はまぁ、個人差はあるけれど……
三点リーダは省略、沈黙、余韻をイメージさせる場合に使います。
正しくない使い方は。や、の代わりに使うこと。
あと、改行をちゃんとする。
作品のおもしろいかつまらないかは、基本的には読みやすさ>ストーリー=キャラ構成&世界観です。
一概には言えませんが……
たかがリレー小説に目くじらたててる奴らは落ち着け
誰もが書き込めるんだから、こーゆー事も多々あるだろう。嫌ならスルーすればいいだけじゃないか……
まあ最初に駄文を投下した俺が言うのもなんだけどさw
リレー小説を放置しておくと際限なく駄文を投稿した挙げ句グダグダで終了するの目に見えてる。
しかも、長期間続いた挙げ句、その間に作者さん達も離れていくんだよ!
過疎化させたくねーんだよ!
つまり、今のスレの雰囲気に退いてる作者さんたちが悪いとw
>>220 一番悪いのは最初に駄文を書いた
>>218であり、それに便乗して文章能力も書く意志も半端極まりないクズ文章を書いた
>>220が悪い、作家さんは悪くない!
>>218 とりあえず死ね
荒れる原因になるってことすら予想出来ない上に開き直るとは生粋の馬鹿だな
しかも何その他人事みたいな言い回し
第三者が擁護で書くようなこと自分で書いちゃってるよこいつ
救いようがないな
しかし
>>218といい
>>220といい、なんでこういうクズって盗っ人猛々しいっつーか厚かましくて愚かなんだろ
>>221 >>222 言いたい事はわかるが、正直お前さん達のヒステリックさにも引いたぜオレ。
これなら駄文でもリレーでもいいからゾンビに関係ある書込みの方がいいかも。
>>223 過去ログ見てみろ。
7月2日からリレー小説のせいで作家さん達は作品の投稿を止めてるだよ!
何故だと思う?
無秩序なリレー小説に自分の作品が紛れて読みにくくなるの知ってるからだよ!
リレー小説を止めればそれを拒否する人も出てこなくて平和だったんだ。
確かに否定議論にてスレが荒れるのは、俺の罪だろう?
だが、原罪
>>218にあることを知れ!
>>224 うん。だから言いたい事はわかるってw。おちつけよ。
むしろ誰の罪で原罪がどうとか言う芝居がかった言い方が引っ掛かるよね。
と思っていても書かないのが大人な対応なんだろなw
どっちうざいから帰れ。
目障りだ。
こうやって僅かに生き残ったスレ生存者も些細な事件をきっかけに仲間割れして
いつしか過疎化ゾンビに飲まれて消えてゆくのね
1 2年前はおやじさんとかの長期連投者がいて、通勤電車男みたくマメに感想するやつもいて安定感あったのになぁ。
昔の人誰か帰って来ないかなぁ?
とりあえず落ち着け
229 :
冷やし飴:2008/07/12(土) 01:42:42 ID:W6LiKuHY0
車を降りてみると……そこは別世界だった……』
よし、今日はここまで。手帳を閉じると後ろに人が立っていた。
「食料の配給、貰ってきましたよ。一緒に食べましょうか」
「ああ、田宮さん、どうもありがとう」
田宮さんは街が死んでしまって以来の仲間である。
街がゾンビだらけになってしまったあの日、たまたまネットカフェに居合わせた人達の中に彼はいた。
みんなで力をあわせスーパーを略奪したり、ゾンビと戦ったり、凶暴な人間たちとも戦った。
仲間を失ったり新たな仲間が加わったりしてこの避難所にたどり着いたのが一ヶ月前。
田宮さんには3回は命を救われたし、俺も同じくらい彼を助けたりもしている。
見た目は冴えない中年サラリーマンだがいざという時は爆発的な行動力を持つ人である。
「そういえば今日は僕らが見回りパトロールの当番ですよ。メシ喰ったらすぐ行かないと」
「嫌だなあ、喰った後にゾンビ見るの。もっと早く言ってくださいよ」
「メシ喰う前に見るの、もっと嫌でしょw」
「……」
小学校が避難所になっていた。200名くらいの住民やこの地域に居合わせた人、逃げ込んできた人たちが
助け合い生き延びている。避難民がゾンビ化して全滅した避難所も多いらしいが幸いここは無事。
それでも避難所の周囲はゾンビだらけなのでバリケードで防いでいるがそのチェックは欠かせない。
特に今日担当の学校北側は見通しが悪いため塀の上を歩かなければならない。一歩踏み外したらアウト。
230 :
冷やし飴:2008/07/12(土) 01:43:17 ID:W6LiKuHY0
「じゃ、行きますか」
「はい、はい」
「よっこいしょーいち、、、足元、気をつけてね」
「そういえばさっき、手帳に何か書いていましたね。日記でもつけてるんですか?」
「え?いや、まあ…」
「毎日、暇があると手帳に何か書いてるでしょ。今まで聞いたことなかったけど教えてよ」
「実はね、小説みたいなもん書いてるんですよ。ゾンビを題材に。いや、恥ずかしいなあww」
「ふ〜ん、そうなんだ。僕もゾンビものって好きでね。ロメロは全部ビデオ持ってたしショーンは最高だね」
「田宮さんってそんな人だったんだ、知らなかったですよ」
「そうだよ、2ちゃんのゾンビスレでも常連だったし、自分でちょっと書いてみたりもね」
「へ〜あのスレ、僕も見てましたよ。まさかリアルで体験するとは思ってませんでしたが」
「本当だね。騒ぎが起こる直前もね、ちょっと2ちゃんで論争してたんだ」
「?」(あれ?)
「リレー小説って楽しいと思うんだ。でも変な厨房がやたらと絡んでき…」
「お前が
>>218かよ!!」
振り返った田宮さんを俺は突き飛ばしていた。
田宮さんは塀の下のゾンビの群れに落ちていった。
完
別に悪気はないからね、気に障ったらごめん
>>230 あからさまだなぁwww
まぁどんな内容だろうが作品は作品だね。乙でした
陽も余り射さないうっそうとした森の中の遊歩道
ガサガサと草や木々を掻き分け 何者かが茂みを走る音が響いた
山菜や茸を採りに来ていた人達はウサギか他の人が歩いているのだろうと思い
気にもとめずにまた採集を続ける
それが今までの日常を変えてしまう序章などと誰が想像できただろう
「それじゃあ私はあっちを見てくるから」
登山帽をかぶり 手に籠を持った中年の女性が夫に声を掛け茂みの奥に茸を探しに向かった
女性は下に目線を下げ 木の根元に生えている茸を探す
茸に熱中するあまり 前方に気を配らず 前に何かあることに気がつかない
その時女性はドンと何かにぶつかってしまった
柔らかさからすると木ではない
恐らく 他人にぶつかったと思ったのだろう
女性は一言 謝罪をすると上に目線を上げた
視線の先には確かに人が映ったが、本能的な恐怖を感じさせる姿だった
衣服はボロボロに裂け 皮膚からは血が流れ
目は充血し赤く染まっていた
「ウォ…オオ…」
「ひぃ…いや…止めて…」
男は唸りを上げ 一歩一歩女性に近づくが 彼女は腰が抜けたのか
後ろに少しずつ後退する他なかった
そして女性に覆い被さり牙を剥く
必死に抵抗を試みるも力では敵わず
女性の首筋はあっさりと男に噛みつかれる
「ぎゃああああああ!!!!」
男は鼻息を荒くし 鮮血と肉にむしゃぶりついた
周りの草や土は首筋から飛び散った血液で赤く染まる
「ハア…ウゥ…」
男の顔は血で真っ赤に化粧をされたかのようだった。 そして絶命した女性の亡骸を残し
森のどこかへと唸り声を上げながら走り去った。
しばらくして無残にも首筋を食い散らかされ絶命したはずの女性の目がゆっくりと開く
その目は充血し赤く染まっていた。
リハビリに投稿。
次回から続き書きます。
――struggle
何故こうなるのかどうしてこうなってしまったのか。
時としてそう叫びたくなる時がある。
そして、その「時として」がまさに今だった。
ひたすらに目の前の道を走り抜ける。いや、それは正確に表せば屋根であった。
駅の前に広がるバス停の待合所、その屋根だ。
どこかの芸術家気取りがデザインしたらしく――それぞれの屋根が曲がりくねって、連結したり交差したりしている。
駅の屋上から見れば、それは立体的に展開された迷路のようにも見えることだろう。
普段ならば金の無駄だの何だのと何の感慨も湧かない目つきで眺めているところだが、今となってはこの構造にありがたみを感じないわけにはいかなかった。
その理由が、背後と足元に広がっている。
足元には、自身の動きに合わせるようにして揺れ動く――死肉の海。
それは耐えなく虚ろな目で逃げ回る者を追い回し、両手で届くはずの無い獲物へと掴み掛る。
背後には、全速力で追い回してくるモノ。人間の抜け殻がナニカ別のものに憑かれ、朽ち果てるまで使役されるだけのモノ。
例えこの抜け殻を壊したところで、解決しないのは目に見えている。どうせ抜け殻から飛び出し、一番近い位置にいる物体――自身に喰らいつくだけなのだから。
だからこそ、逃げ回る。どれだけ辛くても、走るのをやめない。まだ人間でいたいから。足元の存在には――ましてや背後の抜け殻には、なりたくはないから。
そして、そのために新たな屋根に跳び移る。
そのまま、荒い息を整えようと深呼吸を繰り返す。ただし、目は迫ってきていた抜け殻を見据えたまま。
抜け殻は、ただの穴と化した目でこちらを見つめている。これが走ることを知ってはいても、跳ぶことや登ることを知らないのは何故か。そんなものは――それこそ神しかわからないだろう。
「っぷぁ!」
叫び声と共に、汗で張り付いていた下着を脱ぎ捨てる。胸も臍もその下も丸見えになる形だが――そんなことを気にしている場合ではない。
左右を見て、どちらからも抜け殻がきていないことを確認するものの――。
半ば、気がつきはしている。ただ、意識してしまうと――もう動けなくなってしまうからこそ、していないだけで。
この迷路に、出口など無いということに。
4月9日(月)
今日は娘の入学式だった。
真新しいピカピカのランドセルが目にも眩しい。
入学式で、もう友達を作っているなんて愛娘の成長には驚かされてばかりだ!
う〜ん、やっぱり同年代の子供達の中でもうちの娘が群を抜いてかわいいな!
(パラパラとページを捲っていく。)
6月25日(月)
今日は娘の授業参観だ!
娘は必死に手を挙げていたのに先生は何処を見て居るんだ!?
娘の健闘も虚しく授業参観の終了を告げる鐘・・・・
まったく、日本の教育体制はどうなっとるんだ!?
(さらにページを捲る速度が上がる。
そして、あるページで手を止まった。)
2月11日(祝)
せっかくの祝日に緊急の呼び出しを受けた。
何を焦っているのかろくに説明も無いまま、とにかく来いと言うのだ。ただごとでは有るまい。
おおかたさっきから流れている暴動の件でだろう。
日本の各地で同時多発的に発生した事から推測すると、組織的な関与が疑われる。テロの可能性も含めて危険な現場になるだろう・・・・
妻と娘に戸締まりと外出を控えるようには言ってあるが・・・
警察勤めとは因果な商売だ・・・・
2月26日(火)
やっと、我が家に辿り着いたと言うのに・・・・
なんなんだ。この惨状は・・・・
窓は破られ家具もズタズタになっている。
おそらく奴等だ・・・・俺は何をやっているんだ・・・・!
クソクソクソクソ!!チキショウ!!クッソォォォ・・・・・
何のために警察官になったんだ!
自分の家族も守れず・・・・何が警察だ・・・・
3月13日(木)
どうやら・・・俺もここまでらしい・・・・
あれから運良くホームセンターに入れて貰い、立て籠もることに成功したが・・・・
何故か奴等は続々と集まってきやがった!
仲間達は一縷の望みを掛けて脱出した。
しかし、俺はここに残った。
仲間の脱出にはおとりとなる人間が必要だったからだ。
仲間は脱出に成功したがついにはバリケードが保たなくなった・・・
ドアの向こうは奴等で一杯だ。ドアが悲鳴を上げて今に奴等がなだれ込んで来るだろう・・・
もう少しだけ保ってくれ・・・・・
せめて、自分の死に際ぐらい自分で決めたい。
夏子・・・春海・・・すぐにそっちに行くから・・・・
守れなくてごめんな?次は・・・・
ふぅ・・・・・
誰もいない一室で男は日記をそっと閉じた。
日記をそっと床に横たわる白骨遺体の側に置くと目を閉じると短くだが黙祷を捧げた。
「隊長。これは一体?」
男は壊れた入り口に立つ部下にふりむくと「なんでもない。ここと元警備室だったんだろう・・・・電気の供給も止まったままだ。ただ・・・・」
「ただ?」
珍しく口籠もる男に部下が怪訝に聞き返す。
「いや、ただ、悲しい男の遺体が有っただけだ・・・」
部下はその言葉にまだ腑に落ちない様子だったが、男が手を振ると警備室から出て行った。
男も後を追って出て行こうとしたが、何かを思いついたかのように振り向く。「・・・・あんた・・・家族に会えたかい?」
その言葉は虚しく警備室という名の墓所に響くのみだった・・・・
初めて投稿します。投下速度は遅いかも入れませんが最後まで仕上げますのでよろしくおねがいします!
よろしく
楽しませてもらいますね。
昔、ゾンビごっことか言うスレで、ゾンビ役として勝手にプレーをしていたモノですが・・・。
一度スカウトされていた事を思い出し、ここに来ました。
名前は「ソ゚ンビ」Death...
「ソ」と「ゾ」の間の発音、といえばもうお分かりですよねw
短編で良ければ投稿しますけど・・・
需要があれば、声を掛けて下さいねww
ノシ
240 :
ソ゚ンビ ◆tgWZ5s5Lo6 :2008/07/13(日) 22:47:52 ID:ywLHlMkVO
agぅEeeeうの、ぅわずぅうぇ・・・たぁ゙ あ・・・
へ ン jぃ むぁ゙だあ かあ ?
>>240 短編投下乙!!
でも残念ながら俺の国語力じゃ何書いてあるのかわからん、、、
242 :
ソ゚ンビ ◆tgWZ5s5Lo6 :2008/07/14(月) 20:35:07 ID:Ekhlnp0hO
>>241 (;`∀´)=○)Д゚)ノ゙ まだ投稿しとらんわいww
「返事まだぁ」って聞いたんだよ・・・ orz
>>242 ∵・( ゚д゚) パーン ☆━=y(`Д´*)
書きたきゃ書け!
人の反応見てからしか書けん奴は半端な奴ばかりだから書くな!
>>244 あなたの言葉を聞いて作品を投下する勇気が湧きました!
では投下します!
リレー小説【屍の上のゾニョ】第一章 (全十二章)
ゾンビさんよ、ここは小説を投稿する、読む、感想や批評を書く、場であって馴れ合う所じゃない
クソリレー小説なんて無責任なモンはお断りだが、普通に書く分には誰の許可も必要ない
書きたければ書けよ
ただし返事なんて期待するな。感想は来たら運がいいくらいの心構えじゃないとへこむだけ
ちっとも反応がないからって自演したり火病ったりするのだけは勘弁してくれよ
【エピローグ1】
・・・ 僕は真暗な洋服ダンスの中で、泣くのをがまんして、声を出さない様にしている。
体がふるえて、洋服ダンスが「ガタガタ」音を立ててゆれているのが自分でもハッキリと分かるんだ・・・。
でも・・・ でもこわいょ・・・
カギを掛けた部屋のドアを、外側から「ガシガシ」と引っかく音が聞こえる。
その音は途切れることなく、僕をこわがらせるんだ・・・
うねり声は興奮した様に、「ハッ ハ・・・ ハゥウ!! ウギュァゥウウ!!」ってずっと聞こえてくる・・・。
時折「ドォン! ドォォン!!」って、体当たりしながら・・・。
こわいよぅ・・・ もう、あの可愛かった「イギ-」じゃないんだ・・・。
いつもなら僕のほっぺや鼻先を、ペロペロとなめる可愛い口も、今では僕を食べようとしてるんだ・・・。
ボストン・テリアの小さな犬・・・ 大好きだったイギ-・・・
「イギ-・・・ イギ-・・・ イギ・・・」
「ドォォォン! ドォォォンンン!!」
「!?」
妹のユキが、僕の居場所を見付けたみたいだ!!・・・。
僕は頭を抱えてこうつぶやく・・・
「さっきはバットで殴ってゴメンね、ユキ。
だって、だってぇ・・・ ユキが僕に噛み付くからぁ!!」
【エピローグ2】
・・・ 自然と涙が溢れ出し、堪え切れずに嗚咽をあげるショウ。
ショウはともすれば薄れて行く意識の中で、シッカリと「生」を見つめている。
細く頼りない、針金一本程度の気力を振り絞って!! ・・・
「ユキ・・・止めてよ、ユキィ もう止めてよぉ・・・」
数時間後・・・
扉が開き、洋服箪笥の中から、ユラユラとその少年は歩き出す・・・。
ショウ:「あうぅぅ ・・・ ゆぅ ぎ、 あっじ、あっ じぃぃい!!」
ショウは今、誰の意志とも知れぬ、抗い切れない、見えない力に突き動かされている・・・。
ショウは最早、ショウであってショウでないのだ。
あの愛らしい笑顔を振り撒くショウはいない・・・・ショウはいないのだ。
・・・ しかしそこには、変わり果てたショウらしき「何か」がいる・・・
眼は落ち窪み、虚ろな白濁した眼球には、無数の青黒い血管が力無く走っている・・・
恐らく少年とは思えないその顔色は、青白く光沢のない鬱々とした表情を、更に際立たせる。
左側の頬には、ユキに喰いちぎられた痕跡を、痛々しく見せ付けている・・・。
ポッカリと開いたその喰い跡には、嫌らしい程に健康な、犬歯と臼歯を血色に染めて覗かせている・・・
頬から滴る、透明な糸を引く体液が・・・
赤黒く、赤黒い、そのどす黒い血液が・・・
その体液と血液とのコントラストが・・・
「生」への執念をも上回る、凄惨たる「死」を如実に物語っている・・・。
既に笑う事も泣く事も、叙情の欠片すら持ち得ない本能に支配されている「何か」がいる・・・。
僅かばかりの「知性だけ」を残して・・・
ショウはユキを伴い、階下へと消えて行く・・・。
眼前には・・・ ショウが殺した(?)兄と母・・・ そして数人の屍が転がっている・・・
ショウはその物言わぬ骸を踏み越え、眼前に零れる白い光の中へと消えて行く・・・ユキを伴い・・・ 本能の赴くままに・・・ お前達・・・ 人間を・・・
「ぐぎゃぁぁあ るぅぅう!!」
【プロローグ1】
僕とユキは、歌番組を見ている。
時折画面に流れる「ニュース速報」っていうのに、ウンザリしながら。
僕達の好きなアイドル「AIiiiiN」の「奇声・・・」が流れると、速報もその白い文字を画面に幾度となく浮かび上がらせ始めた。
「何より君を詰(なじ)って アイ-ンの形をして・・・」♪
僕の好きなサビの部分と、あの強烈なシャウトが炸裂する瞬間に備えて、ユキと二人でポーズを決めようとしたその時・・・
「緊急事態をお知らせします・・・只今、政府高官は全国各地で起きている、何等かの抗議デモに対し、次のように発表・・・」
ユキ:「何でぇ、いい所だったのにぃ!!」
というふて腐れた声に被せるように、お母さんが
母:「お兄ちゃんとお父さん、遅いね・・・ 大丈夫かなぁ・・・」
と僕達に話し掛けてきた。
ユキ:「だぁいじょうぶだ・・・」
という口を手で押さえながら、僕はお母さんを安心させるために
ショウ:「もう直ぐ帰って来るよ。大丈夫w」
と言った。
すると間もなくお父さんが汗を額に一杯浮かべながら茶の間に走り込んで来て
「みんないるのか? ジュンイチは何処だ? まだ外にいるのか!」
と、怒ったみたいに僕達に聞いて来た。
母:「まだだけど・・・ どうしたの!? ジュンだってもう、」
父:「何を言っているんだ!? 外は奴らが一杯いるんだぞ!! ニュースは! テレビを見ていないのか!!」
と、お母さんを怒鳴り付けた。
お父さんとお母さんは、何かを言い合っている。
僕とユキは、居難くなってフト窓の外に目を向けた。外から女の人の悲鳴が聞こえた様な気がしたから・・・
暗い通路を軍靴独特の足音が響く。
二人に会話はと言う会話はなくピリピリとした空気さえ、漂っていた。
別に二人の仲が悪いわけではない。
何かに怯えるように絶えず周囲を気にしながら進んでいく。
「よお!」
不意に掛けられる声に二人はビクッと身を震わせると腰に溜めたアサルトライフルを構える!
銃を向けられた先に男は戯けたように手を上にあげると静かに二人に近づいていく。
二人の持つアサルトライフルのアタッチメントマグライトの光の中に男が姿を現した。
『真田隊長!』
二人がハモりながら男・・・真田の名を口にすると大仰な溜息を吐くと銃を腰貯めに戻した。
「はぁーーー!勘弁してくださいよ・・・・一瞬、ゾンビが出たと思って射殺するとこですよ!?」
真田はすまんすまんと笑いながら無造作に二人に近づいていく。
「ここから先はクリアだ。特にこれと言って何もない。下はどうだ?」
その言葉に二人は首を横に振って答える。
「生存者はありません。食料品は有る程度・・・・と言っても3日と持たないでしょうけど・・・・」
そうか、と言うと二人の間を通り抜け、地下の食料品売り場に向かう。
「それにしてもここにいたゾンビ共何処に行ったんでしょう?」
「下にもいなかったのか?」
「ゾンビのゾの字もありませんよ。」
真田はふと行き先を変え、ホームセンターの敷地が見える休憩所らしい所に向かう。
(まさか・・・・?)
休憩所には採光様の大きな窓から敷地内・・・・巨大な駐車場を見回す。
駐車場にはチラホラとゾンビ共が身体を揺らしながら建物を目指して歩いてきていた。しかし、その速度は非常に遅く人間の歩く程度も無いだろう。
「集まってきてますね?」
部下の二人が沈黙に耐えきれず、声を掛ける。
真田は口に人差し指を当てて、窓の外から視線を外さない。
日は傾き、確実に夜に近づきつつ有ることを示している。
ゾンビ達はノロノロと建物に近づき・・・・ある一点を境に方向を変えた!
方向を変えたゾンビ達は元来た道を戻ってゆく。
あるゾンビはその場で立ち止まってユラユラするだけになった。
そんな、不思議な光景に、真田だけが顔を青ざめる!
「なんだ?ありゃ?」
首を傾げる部下の言葉を背中に、突如、真田が走り出した!
「お前等、急げ!スグにここから出るぞ!!」
真田の様相に慌てて走って付いてくる。
「ど・・・どうしたんですか!?」
「ここはヤバイ!ゾンビ共はここに居なかったワケじゃない!奴等はここから追い出されたんだ!」
真田達は急ぎ地下・・・・食料品売り場に続く階段を駆け下りてゆく!
(階段を下りて扉を開ければ・・・)
ドアを開くと底には上と同じように荒らされた食料品売り場が姿を現した。
入り口の壊れた自動ドアの所にはダンボールに詰められた食料品を運ぶ二人の姿があった。
「加山!斉藤!無事だったか・・・・急いでここを出るぞ!」
加山、斉藤と呼ばれた二人は血相を変えて飛んできた隊長、真田達の様子に目を白黒させている。
片方、加山と呼ばれた若い男は「どうしたんっすか?」っと呑気に聞き返してくる。
斉藤も年相応に禿げ上がった頭の汗をタオルで拭うだけだ。
「説明は後だ!急げ!」
真田のただならぬ様子に、斉藤は壁に立て掛けておいたアサルトライフルを手に取り立ち上がった。
加山の方はというと・・・・
「急いで運びましょうか!」と積まれているダンボールを手に取り運びだそうとしていた。
「馬鹿!食料なんかどうでもいい!」
真田の怒鳴り声にビクッとしてダンボールを取り落とす。
ガチャ・・・・ジャリ!
ダンボールが落ちた音とは明らかに違う音がどこからか響いてきた。
「走れぇぇぇぇぇ!」
そのかけ声と共に全員階段へ続く扉に走り出す。
グガァァァァァァァァヴォォォ・・・・・
非常階段と書かれた扉をくぐり、階段を駆け上がってゆく、真田は全員に先に行け!と言うと銃を構え立ち止まった。
みんなが行った後、アサルトライフルを隙無く食料品売り場に続くドアに構える。
マグライトの光に照らされて非常階段のドアがゆっくりと開いてゆき、その異形の者が姿を現した。
今日はここまでです。
投下が遅くて申し訳ない・・・・
ゾ
ン
>>256 面白かったけどクスクス可笑しいって感じだから
爆笑したいなら別なの見た方がいいぜ
>>257 トンクス
あの人たちが見れてクスクス出来るならいいか
保守
えらく過疎ってんな
これなら駄文でもリレーでもいいから書かせりゃ良かったのに
リレーならないほうがマシ。
せめて共通フォーマットの世界を作ってそれぞれが勝手に作品進めるってのならいいかも。
いちいち前フリ書かなくて済むしw
ガンダムのOVAみたいなもんだ。
時代背景
ゾンビが発生した理由
どういうゾンビまでが存在するか
人々はどういう生活してるか、自衛隊とか何やってるか
でもどうせみんな勝手に世界を変えてくだろうし、新生物を作り出しそうだし無理だろうねww
ゾ
連載候補が3,4人くらいいたはずだけど続かないね
まあこーいうのって単発だと気軽だけど、定期的に投稿するとなるとプレッシャーがけた違いだろうからな。反応もあんまないし
根気よくがんばってもらいたいけどね
反応したらしたで荒れることもあるからな
粛々と出来上がったのを貼っていってもらいたいぜ
大して面白くもないから別に貼らなくてもいーよ
て
る
み
ん
ほ
も
べ
顔真っ赤にしてリレーはダメっつってたやつらは
この閑散とした状況を打開する為に何かするべきだと思うの
ゾ
マ
>>273 とりあえずリレー小説でも書けばいいんじゃね?
リレー小説書いてみると良いよ
ただまともに連載できずに便乗でしか書けない奴の書いた物が面白い訳ないけどね
リレーじゃ設定も伏線もストーリーもないに等しいから一つの話としてもつまらないだろうし
ま、過疎を嘆くならやってみたら。俺もスレがどうなるか興味あるし
ただ無法地帯になったりしたらきっと今より酷くなるだろうから責任取れる人が始めてね
>>278 なに他人事みたいに言ってるんだw
お前が多くの住民を追いだした結果がこれだ。
お前が責任を取るべきだろう。
>>280 日本語でおk
リレーが始まった頃は、まだ書き込みもあったろう。
つか、リレー自体、スレの趣旨に反していない。
>4 煽り・荒らしは放置、反応なしでお願いします。
今まで、こに則り完全スルーしてきたが、
>>278には腹が立って、思わずレスしてしまった。
以後スルーする。スマソ
>リレーじゃ設定も伏線もストーリーもないに等しいから一つの話としてもつまらないだろうし
それを、上手くつじつま合わせて、伏線に仕立て上げて回収したり
ストーリーを構築していく「まとめ」が一人いるだけで、リレー小説は神になる
ただ、「まとめ」やる人が一人以上出てこない事が多く
他の書き手は「まとめ」の奴に全部押し付けようとするから
その一人の労力がとんでもなく大変なんだけどね(実経験)
まとめをやれる人間が複数集まったリレーは本当、神が光臨するよ
>>282 つか、昔の傑作には、複数の作家さんのリレーもあったし、
交差する話もあったんだがな。
つか自由に書いて欲しいわ。
下手とか、自分で謙遜する作家さんもいるけど、
俺みたいにゾンビ物に飢えてる人間からすれば、みんなメチャクチャありがたいよ。
>>283 それは、そうだろうけど
他の作者さんが気を遣っちゃってるわけだから
もし次リレーするときは
後何レスで締めろみたいな制限かけるべきだと思うよ
俺もリレー小説というジャンルには苦い経験も多いし、
適当に書き散らしてまとめる力のない人間には参加して欲しくないと思うね
>>278の意見は、確かにその通りではあるんだが、
まとめをやった経験のない、あるいはその能力の無い人間の視点からの言葉でしかない
まとめさせる気も無いだろってくらいに好き勝手引っ掻き回す馬鹿に参加されるくらいなら、
>せめて共通フォーマットの世界を作ってそれぞれが勝手に作品進めるってのならいいかも。(
>>261)
に同意
あとまあ、俺もゾンビの設定とかだけは大分前から考えてるんだけどね
登場人物とかストーリーとかがなかなかまとまらないんで
スレは読む側中心だったけど…そろそろ習作にでも何か書いて見るべきかな
>>284-285と
>>278 なんか、おまいらだけがこのスレに残ってる理由がわかった気がするわ。
リレー小説が、破天荒でとりとめのない話になったら誰か困るんだ?
例えば、本当に下手で読みにくい作家さんがいたとして、
それに文句言うのか?
言うんだろうなw
普通は読まないで、スルーするだけなんだが。
このスレは、ゾンビの群れに囲まれたショッピングモールのようだな。
他の奴らは、みんなお前らに嫌気がさして出て行ってしまったよ。
キモすぎる。
なんかごめん…
荒れたら嫌だと思って色々言ってきたけど
まともな作家さんたちを追い出してたのも俺だったんだな
普通の掲示板とかで他の人たちのリレー小説見て、荒れたり揉め事起こしてないパターンって見たことなくてさ…
2chだからリレー小説なんてやったら凄い荒れて大変なことになるんじゃないかと思って
多少荒れてもきついこと言ってリレー小説止めさせれば作家さんたちが戻ってくると思ってたけど…結局過疎るだけだし、やけになってたところもあったんだと思う
本当にごめん…リレー小説でもちゃんとした作品だってことは理解したよ
もう頭ごなしに文句とかつけないから作家さんたちには帰ってきてもらいたいな
>>287 別に一人で書くなら別に良いんだよ、
ただ何のルールも決めずにリレーするならVIPとかでやってほしいと思ってるだけ
>>287 そうなって困るかどうかと言うより、
そうなった結果に対して「だからリレーは〜」とか言い出す人が出るからだろうね
もちろんそれは、リレーでない他の連載でもあれこれ言いがかり付ける人がでるから
結局スルーすべきなんだろうけど
他の板で二次創作のリレーがあったときに、まともに原作尊重する人もいれば、
原作レイプ同然のひどいの書いたり、何の脈絡もなく全滅ネタ書くヤツもいてカオスになっていたな。
パトロワブームの頃だからキャラの殺し合いして、それはまあ良しとされたけど、死んだ方のファンがきれて荒らしたり。
最終的にスレ住人が投下されたリレーを読んで、続きとしてアリにするか、無かったことにするか決めるようになったけど。
>>206 この人のリレーが実はリアルっぽくて気になってたので書ちゃうよ?
・・・とにかく家を出て避難(その必要性は感じてはいないが)しよう。とは言ってもアテもない。
さっき見たニュースでは西成・阿倍野・浪速は危険らしいし。
どうしようかと考えていると携帯で何やら大声で会話している人がいる
「・・・え〜マジかよ!?、人撃ってんの!?。ありえねぇだろwww」
何か物騒な内容が聞こえてきた。ニュースで流れていた「暴徒によりケガをした人」への治療施設案内やさっきの自衛隊のトラック
>>196 が頭をよぎる。
とにかくここを離れよう。荷物を担ぎ直し歩きだした・・・
うん
こ
292
裕子の電話が鳴った。裕子のママからだ。
「えっ? いま? 吉祥寺のマクドナルドだよ。うん…うん…
えっ嘘でしょ。そんなのって…まさか。テレビで? え」
携帯を耳に当てたまま私を見つめる
裕子は笑っているのか泣いてるのか分からないような
不思議な顔をしている。
なにかとんでもないことが身に起こったような
そんな顔。たとえば親しい人が自殺したとかナイフで
刺されたとか、そんな顔。裕子は私が緊張を解こうと微笑むと
顔が崩れた。裕子は携帯から口を離して私に言う。
「絵里。あのさあ…信じられないかもしれないけど…でも…ありえない…」
最後は独り言のようにつぶやいて自問自答してるよう。
黙り込んで店内に目を巡らす。サラリーマン、女子高生
男の子。いつもと変わらないマクドナルド。
(ねえ! はっきり言ってよ! 何なのよ。気になるじゃない)
裕子の手が口元を覆いそしてまた腕を下ろす。
私は心の中に薄暗い雲がわいていくのを感じる。
いつもそこにあったのに気づかなかった危険。
それが噴出した時、ああやっぱりと思うけど目をそらして
普段は気づかないことにしている。
そんなものがやってきたのだと直感的に感じる。
「大阪でね…」
そこまで言って裕子は笑い出した。
私は胸の中の不安を押し殺して裕子の目をじっと見る。
落ち着きなさい。だいじょうぶだから落ちつきなさい。
店内の喧騒がやけに大きく耳に聞こえて日常の
バランスが少しずつ狂っていってるような気がする。
(気のせい、気のせいよ、だいじょぶなんだから。
絵里、落ち着いて。気のせい裕子は冗談を言うような子
つまんない冗談を言う)
「ゾンビが現れて人が死んでるって。大阪で」
「おおい!ゾンビが現れたぞ!」
その大きな声を出したブレザーを着た男の子の声で
マクドナルドの中は一気に静まり返った。
みんなが振り返ったさきにいるその男の子は
ちょっとハンサムで女の子にもてそうな顔をしている。
きちがい? 変質者? 危ないことをするんだろうか?
まるでジャニーズ系でそんな風には見えないけど
誰が切れてもおかしくない時代だ。
静まり返った店内の小さくかかるBGM。どこかで聞いたjpop。
男の子がまた声を上げた。
「携帯のニュースに接続しろ!」
297 :
本当にあった怖い名無し:2008/08/05(火) 07:46:49 ID:W7BSFSpE0
がんばりまそう
いい感じじゃん。
おもしろい。
俺も武器を巧みに使うヒーローが出てくる話より
こういう等身大の話の方が好きだな。
>>292 ここから北、大和川は通行止めだしとりあえず南に向おう。
途中で交番とかあればこのあたりの人がどこに避難してるかもわかるだろうし、ほかにも避難を始めた人がいたら声をかけてもいい。
そう考えながら南海高野線沿いをしばらく歩くと「堺東駅」が見えてきた。平日だというのにかなり駅前は混雑しているが、
これは列車が止まっている為の様だ。駅員が拡声器でどなっている。
「報道でありました様に現在、南海高野線は運行を見合わせております。大阪狭山市方面行きの方は臨時バスをご利用下さい。」
その臨時バス乗り場もかなりの混雑だったが、避難所への直通バスも出ているらしい。しかたない、乗車の列に加わりしばらく待とう。
その間携帯でニュースを見てみる。自分の周りの人達もみんな俯いて携帯画面を見つめる姿は異様な光景だ。まわりの話し声も耳に入ってくる。
「暴徒は実はゾンビで、自衛隊は既に一部の病院や市街地で戦闘を始めている
>>196」「他県でも暴動が起こったらしい」etc
携帯サイトでもトップニュースとして取り上げ始め
>>296、それを見た人(自分もだけど)は様々な反応だが、列を出る人はいない。
目の前にいるならともかく、混雑しているとはいえ駅前の銀行もコンビニもラーメン屋も普通に営業してる。ニュースと間接的な状況だけが
危険を知らせている。ほんとにどうなってるんだろ?。
バスが来た。
浅香山駅方面から。
バスの側面は血の手形がびっしり付いていた...
296
「ワンゼグの方が早いぞ!」誰かが叫んだ。私たち店内にいた裕子、私
男子学生四人組、サラリーマン、おばちゃんなどで
ワンセグ搭載の二台の携帯の周りに集まると円になってテーブルに置かれた
小さな窓を眺めた。何千色もの海が小さな窓で踊っている。
「”・・・西成区にお住まいの方は以下の場所へ避難して下さい。梅南中学校・千本小学校・津守小学校・・・」
誰もが息を潜めて画面を眺めている。「嘘だろ?」「ゾンビってどれだよ」「映画だよ。どっきりかな?」
それを言った男子学生に仲間が小さな声で「馬鹿」と言った。
やがてカメラが変わりビルの火事の現場が映し出された。
暗黒の煙のように青空に向かって立ち上る煙の周りには
消防士も救急車の姿も見えない。そのことが不安にさせる。
どこでも同じようなことが起こりすぎていて手が回らないんだ。
と絵里は思った。車道を画面の奥へと逃げていく人の手には
大きなバックが握られていた。
(あれはあの人の全財産なのかもしれない。)
不安定にカメラの撮る位置を探して揺れている画面が静止すると
歩道には死んでいるのか生きているのかうつ伏せで寝ている
若い女の人がいるが誰も助けようとしないで通り過ぎていく。
男子学生の誰かが「マジかよ。死んでるのか?」と誰にともなく言う。
車道には停止したままの車を縫うように逃げていく人が寝ている女の人のほうに
目を向ける人はいるが、何を急いでいるのか助けようとまではしなかった。
(何で? なぜ誰も助けないの?)
絵里はふと危険を感じて後ろを振り返った。
絵里は振り向く瞬間、きっとそこにゾンビがいて私は
この場で食われてしまうのだと思った。
強烈な痛みとともに死がやってきて16歳で人生を終えるのだと
絵里は確信したが、そこには一階のレジへの階段があるだけで
誰も上がってくる様子は無かった。レジのお姉さんの注文を聞いてる
声がする。いつもと同じ光景だ。東京にはまだゾンビは現れてないんだろうか?
絵里は再び小さな窓を眺めながら考える。
これがもし映画やどっきりだとしたら? 絵里は今日がエイプリルフールかどうか
考えようとしたが考えるまでも無かった。今日は七月の中旬で
期末試験の最中だった。さっきまでコーラを飲みながら
(もちろんダイエットコーク)今日のテストを広げて
日ごろの勉強しないのを後悔し、自分の将来を悲観しながらも
でもだいじょうぶよという、楽観的な性格の自分を発見し
明日の試験はがんばろうと
口だけは絵里と約束したばかりだった。
(勉強をがんばるので殺さないでください!)
絵里はそうつぶやくと安心した。
302 :
本当にあった怖い名無し:2008/08/06(水) 00:02:30 ID:qsgT1Raa0
>>261 >せめて共通フォーマットの世界を作ってそれぞれが勝手に作品進めるってのならいいかも。
>いちいち前フリ書かなくて済むしw
>ガンダムのOVAみたいなもんだ。
自分のストーリーは自分で書くよ。ちょっとずつ繋がっていくのが
いいかもしれない。
>時代背景
>ゾンビが発生した理由
>どういうゾンビまでが存在するか
>人々はどういう生活してるか、自衛隊とか何やってるか
季節だけは七月の中旬にしちゃいました。ごめん。
あとは誰か決めてください。
吉祥寺の駅に向かっていると駅前に大きな人だかりが出来ていた。
(ゾンビのニュースをみんなで見てるんだ)
絵里はそう思った。裕子はさっきの男子学生四人組のヒロシ君という子が
かっこ良かったと言っている。私は和也君という子がかっこいいと思ったが
こんな時に男のことを言うなんてどうかしてる。彼氏作りたいっていうのは
分かるけど、そんな場合じゃないと思う。ゾンビが何か、大阪で何が起こってるか
まだ詳しくは分からないけど、そんなに男の子が大事?
…はあ、でも本音を言えば私もそうかもしれない。
クラスにはセックスをしたって言う子がいた。噂では
援助交際だとか年上の彼氏とかいろいろ聞いた。
その子はクラスで汚いものでも扱うようにみんなに避けられていた。
机の中にナマゴミが詰まっていて、「←お前」っていう張り紙があった。
その子の友達が怒って、やったであろうクラスメートに
土下座させようとしていた。
「謝りなさいよ」「本当のことだろうが! きもいんだよ」
道具を使ってやったらしい、写真を撮られたらしい。うわさうわさ。
そんなうわさはどこにでもあったし、日本中に溢れている。ネットを通じて
痛い目にあった女の子が沢山いたのを知っている。
それでも好奇心はあった。セックスってどんなものだろう?
中学生の時、好きだったケンジ君。彼は今、どうしてるだろう?
吉祥寺は少なくともまだ、みんな落ち着いて行動していた。
時計を見る。13時20分。空は青く暑かった。今年も暑い夏になるだろう。
去年の今頃は中学生で高校受験のために勉強をしていた。
塾に行って苦手な英語の勉強に欠伸をかみ殺していた。
(あのころは勉強したのよねえ? 自分でも信じられないぐらい
数学が良かったから合格できたようなもの、もし駄目だったら
私はどうなってたんだろ? ニート? まさか)
「絵里。これからどうする? お母さんは帰ってこいって
言ってるけど?」
裕子の声に現実に引き戻される。私はどうしよう?
帰ってもパパは会社だしママもパート、弟は小学校だろう。
家族は大丈夫なんだろうか? 電話しなきゃ。
考えることが多すぎて、何をしたらいいのか分からない。
これはたぶん現実なのね。受け入れなきゃ。
大阪でいっぱい人が死んでいる。ゾンビとか言うの。
ゾンビは人を食べて食べられた人もまたゾンビになる。
でもほんとなの? それって映画でしょ?。現実にはありえない。
絶対絶対ありえない。でも…
私が信じようと信じまいと世界は、新しい形に向かって
動くのね。
吉祥寺、女子高生が主役、、、思い出すなあ、、、
306 :
本当にあった怖い名無し:2008/08/06(水) 01:09:10 ID:qsgT1Raa0
その大きな激突する音が聞こえた瞬間、ついに始まったのだと思った。
駅前の交差点を猛スピードで突っ込んできた車がタクシーと正面衝突した。
地響きのような音が響き渡り、ガラスの音が
それに加わった。そして別の場所で女性の叫び声がした。
絵里が振り向くと両手を前に伸ばした人間とは思えない肌の色をした
化け物が、叫んだ女の人に襲いかかろうとしている。
まるで白昼レイプが始まったようだ。絵里は思う。
いやそれよりももっと酷いこと。そう思った瞬間、絵里は駆け出していた。
駆け出しながらも、心のどこかは(あんた自殺するつもり?
やめなさいよ! 逃げなさい! 馬鹿、馬鹿、)でも絵里はその声が
遠くで聞こえてるような気がして気にも留めなかった。
助けなくちゃ。さっきワンゼグで見た女の人。
火事の現場で倒れてた人。あの人はどうなっただろう?
すぐにスタジオに切り替わって女の人の安否は分からなかったけど
あんなのは沢山。絵里はそんな胸に残っているつかえを
消そうとするかのごとくゾンビと女の人に向かって走り始めた。
(武器は? 武器になるもの!) 絵里の手には皮のかばんしかない。
(これじゃ駄目)絵里が足の速度を緩めた時、今まで聞いたことの無い
映画とは違う乾いた絶望の死ぬことを悟った女の叫びが耳について
そして消えていった。
駅前で死んだ女の肉をアスファルトの上で座っておいしそうに食べているゾンビのもとに
クラクションが鳴り響いて野次馬の間から車が現れた。
野次馬が怪訝そうな顔で見ている。
ゾンビも食べるのをやめ車を見つめる。その目がいかにも
人間らしくて絵里は気持ち悪くなった。おしゃれな服を着た…そう
たぶん若い男の人だろう。30歳になったかならないか。
口の周りは血で汚れていて服も血で赤く染まっている。
絵里は本当に信じられなかった。これが現実なの?
本当に? 本当に現実なの? 涙さえも出なかった。
昨日までの平穏な生活はどこへ消えてしまったのだろう?
ゾンビの前には死んだ女の人。さっきまで生きていた。
なんで? 信じられない? なぜ…
車は加速するとゾンビをひき殺した、車が跳ね上がり
そして沈んだ。バックで立ち上がりかけたゾンビをもう一度ひくと
車は狂ったように何度も前進、後退を繰り返し静止した時
絵里は自分が泣いているのに気づいた。
もう何もかも終わるのね。そう思うのが精一杯だった。
絵里が途方にくれている後ろから裕子とさっきの男子学生が
近づいてきた。
「これ君のだろ?」
男の子の手には絵里の携帯が握られていた。
「さっき、マックで落としたんじゃない?
悪いけど中見ちゃった。電話かけたらこの子にかかったんで」
裕子がうなずき笑った。絵里には何も考える力が無かった。
無表情のまま、ありがとうと力なくお礼をいい携帯を受け取る。
「君、女の人のこと助けようとしたんだろ?
すごいよ。あんなこと誰にも出来ない」
絵里は自分がほめられているような気がしたが言葉には
何の意味も無かった。すごい? それがどうしたっていうの?
世界はもう終わるのよ? それがどうしたっていうの?
これから何十人、何千人っていう人が死ぬのよ。
でも、そんなことを男の子に言っても意味が無いことだった。
誰が悪い? ゾンビを野放しにした警察? 科学者?
絵里には何も分からなかった。
裕子と和也君と私でビルの屋上に逃げようとしたけど
同じように考えた人がいっぱいいてゾンビより身の危険を感じたので
どこかのマンションに逃げ込もうとした時、エレベーターから降りてきた
ゾンビに裕子が襲われた。ゾンビはその恐ろしいほどのゆっくりとした
動きとは思えないほどの力強さで裕子の腕を取ると噛み付いた。
和也君が逃げようと私の腕をひっぱる。私は自分がどうしたらいいのか
わからず、その場に立ち尽くしていると新たなゾンビがやってきた。
トイレに逃げ込んで何時間かしたとき、和也君が私の胸を触ろうとした。
悲しくて怖くてどうしたらいいか分からず、拒否していたら和也君は
舌打ちしてトイレを出て行ってしまった。私は、名の知らぬ吉祥寺の
マンションの空き部屋のトイレで今後のことを考える。
時刻は19時を過ぎた。電話はつながらず、家族の安否も分からなかった。
暑くてのぞが乾いて、制服を脱ぎたかったが和也君が怖かった。
あの時、和也君に触らせてあげればよかったのだろうか?
私は思う。和也君のことは嫌いじゃない。ただ怖かった。
何をされるのか分からなかった。マンションはしんとしている。
もう出て行っても大丈夫だろうか?
私は無意識に自分の胸を触り乳首が勃起しているのを
手でさする。ママ、パパ…弟はどうしただろう?
みんな生きているかしら? やがて睡魔がやってきた。
おわり
おわり
>>305 前に投稿させてもらいました。でも僕じゃなさそう。
僕の話は一応、終わりです。
>>299の続きは読者として読ませてもらいますノシ
>>310 もう何年も前にね。
ゾンビの街になった吉祥寺から井の頭線で逃げる場面があって
命がけで乗客を守った駅員たちに感動して泣いたっけww
1
「――――分隊長、分隊長!!」
はっ、と俺は重たい頭――ヘルメットは滅茶苦茶重い――を振り起こした。
……どうやら、うつらうつらしている内に意識が飛んでいたようだ。
目の前には、漆黒の闇がのっぺりと存在している。 が、その闇も現代の暗視装置の前ではグロテスクな光景を遮る事は出来ない。
「寝たいのは陸曹だけじゃないんですから。」
判ってる、判ってる、と口を尖らせる今田士長をなだめる。
正直、寝たい。 壕の中でずっと突っ立っての夜間見張りは結構辛い。
それが、数日前死闘を繰り広げていたとなれば、益々辛い。
「確認したい事がある、今日は何日だ?」
「自分ももう忘れました。 ですが最後のイワンの突撃は1週間前です。」
「もう1週間も経ったのか……。」
1週間、緊迫の時間が流れ、今も流れている。
出来ればあの惨状を思い出したくない。
俺等普通科は壕を掘って、突撃してくる敵歩兵をブローニングで吹き飛ばし、機甲科が取りこぼした敵車両に軽MATを喰らわせてやった。
相手が迫撃砲を撃ちかけてくれば、こちらは当たらないでくれ、と祈りながら、同時に迫撃砲射手に当たれと射撃を行った。
滅茶苦茶な乱戦で、迫撃砲によってか、ウチの小隊の4個分隊の内、2個分隊が壕ごと吹っ飛んだ。 運と祈りが足りなかったんだろう。
またたまに撃ち落される事覚悟で爆装した敵戦闘機がボカボカと爆弾を落としてきて、鼓膜にダメージを与えてくる。
そんなこんなで音と振動の海の中、俺達の五感は徹底的に破壊された。
「……今考えると、結構イワンは無理に突撃してきたな。
焦っているのか、余裕があるのか……。」
「余裕がありまくり何でしょ、分隊長。
糧食貰いに行く時聞きましたけどね、稚内から凄まじい量の戦車が揚がってるらしいっす。」
突然話に割って入ったのは、若い山中一士だった。 若さ故か、随分と生意気である。
「物量があれば、力押し出来ますから……貧乏自衛隊とは違いますね。」
今田士長が言葉を継いだ。
しかしだとすれば、腑に落ちないところがある。
2
それほどの物量があるのならば……
毎日の様に攻勢を掛けてきてもおかしく無い筈だ。
毎日来る朝刊の様に、矢継ぎ早に機甲師団を繰り出せば、流石にこっちは疲れる。
または、こっちがお出ましした方が良いんじゃないのか?
陸上戦力ではイワン達が勝ってるとしても、北海道上空の(沖はともかく)制空権を握ってるのはこっちだ。
爆装した戦闘機が適当に打撃を加えて、空いた穴ん中に機甲部隊が突っ込むだけで、敵は瓦解するかもしれない。
…………いやー、高卒の分隊長如きがそんな事を考えてもしょうがないか。
ローテーション通りに見張りの順番が進めば……
「士長、明日の夜も俺等が当番だったな。」
「勿論他の部隊も見張りしてますけどね。」
それだったら、すぐにでも露助に攻めて来て貰いたい。 そうすりゃローテーションも崩れ……
「――――……分隊長!!」
「何だ!!」
声は、川内一士の声で我に返った。
と、いうよりも今まで話に夢中でサボっていた見張りに目を戻した。
……川内、マジメに見張りやってたん
「――――――なんだ、ありゃ?!」
いやぁ……素晴らしいものを弾痕だらけの荒野に見たね。
「一列横隊?! いや、幾つもの横隊ですよ!!」
今田士長が叫んだ。
俺の目の前には……廃墟と化した市街地から抜け出、弾痕だらけの荒野を歩く、人の横隊。 見た感じ、武装はしていない様だ。
「……山中一士!」
「はい!」
「すぐに第一分隊……つまりあれだ、小隊長とあと中隊本部に知らせろ。」
残念ながら、通信機は支給はされていたのだが、この前の戦闘で滅茶苦茶にぶっ壊れた。 だからわざわざ伝令を出すしかない。
「何と知らせるんですか?」
「よく判らん。 いや、こう言え。
『横隊接近。 非戦闘員か、戦闘員か不明。 武装は目視出来ず。』」
「了解しました!!」
山中一士は壕を出、第一分隊の壕の方に走っていく。 …………あいつしっかり伝えられるかな?
「……どうかしたんスか?」
「攻めて来ましたか?!」
突然、俺の隣に現れたのは、黒沢一士と、大森一士だ。
この野郎どもは今頃騒ぎ出すとは、寝ていやがったんだな。
俺は――自分の事を棚に上げているのは忘れて――このだらしない2人を無視した。
「おい、川内! ブローニングに弾込めろ。 銃口向けてやれ。」
「え、良いんですか? 相手は非戦闘員かもしれませんよ。」
「戦闘員だったら? 手榴弾持ってるかもしれんぞ。」
「しかし、戦闘員でもあんな、伏せもしないで歩いてきますかね?」
「…………こないよなー。」
今田士長の言葉に、すぐに持論を翻した。 同時に自分に突っ込む。
だが、一応川内にはブローニングを用意させておく。
一分間に500発を吐き出すこの化物重機関銃があれば、取りあえずは安全だろう。
「投降するんじゃないスか?」
大森一士が、そう呟いた。
「その線が濃厚だが…………果たして自分から投降しに、しかも夜間に……なぁ。」
どうも引っかかる。
「脱走兵とか?」
…………少なくとも、あんなに一度に脱走兵は来ないだろう。
もう一回、俺は横隊に目を凝らす。 ――――……数百はくだらないぞ。 千数百……?……うーん……。
「取りあえず、川内はブローニングな。 で、黒沢、大森は小銃構えとけ。 フルオートだ。」
攻撃許可が出るかは判らないが、取りあえず構えとくだけ、構えておくと良い。
3
突然、後方が騒がしくなった。
いや、機甲科の戦車なんかは動いちゃいない。
活発に動きはじめたのは、FVや96、高機、トラックだ。
俺等は最前線の塹壕に伏す分隊だから、よく判る。
「どうしたんでしょうかね?」
今田士長が呟く。
その数分後、山中一士が帰ってきた。
「何だ、遅いじゃないか……」
次の瞬間、周りの奴等は敬礼していた。
山中一士の後ろから現れたのは、どっかで見た事がある人だった。 立派なひげを生やしている。
…………小隊長? と思い、取りあえず部下に見習って、敬礼した。
「いきなりの訪問で驚くと思うが、君達の分隊にお願いしたい事がある。 分隊長は来て欲しい。」
「……はい。 自分が分隊長であります。」
…………随分と偉容がある人だ。 自然と心根が叩き直される。
小隊長とは大違いだ。 中隊長かもしれないな。
「今回、君達の分隊には接近しつつある横隊と接触を図って貰いたいのだ。」
「……あの横隊が非戦闘員、或いは投降目的の戦闘員とは限らないと思われますが…………。」
流石に、『……と思われ、我々の分隊に被害が及ぶ可能性が……』等とは言えない。
「しかしその様な正体分からぬ横隊をこれ以上接近させるのは……軍団自体に危険を及ぼす可能性がある。」
「は、はぁ……。」
人柱になれと仰るんですか。
「大丈夫だ。 89式装甲戦闘車と96式装輪装甲車が護衛に付く。
いざとなれば35mm機関砲と重機関銃が退路を作ってくれる。」
「…………分かりました。 我々分隊は、これより接触を図ります。」
いざとなれば、というかいざとなったときには、多分、俺等分隊は全滅しているだろう。
そしてFVと96はその報復に、あの横隊をなぎ倒す事になるんだろうよ。
だが、これ以上上官に逆らう勇気は俺には無い!
4
「何で俺達分隊が……」
例の上官が去ってから、俺は呟いた。
部下達は身支度を整えている。
誰かがしなきゃいけないのだが、わざわざ徒歩の俺達があの妙な横隊に接近せにゃならんのだ。
機甲科の人間が車上から…………いや、これ以上は言うまい。
上官の言う事に逆らう事は……ご法度だ。 軍隊では無い、自衛隊とはいえ……。
「いや、自分感激しましたよ!!」
「この任務にか?」
今田士長の言葉に、俺は切り返す。
「……初めて師団長と会いました。」
「あのおっさん、師団長だったのか。」
俺はどおりで偉容が違う訳だ、と納得した。
…………? 師団長?
今田士長に 師団長って言ったか? と聞くのに時間は掛からなかった。
……………………
こうして、俺達分隊は歩き出した。
まさに普通科分隊。 歩兵。 あの師団長は俺達を高機にも乗せない。 くそったれ。
それに随伴して、少し後ろを装甲車数両が付いて来る。
仕方なしに俺達は、暗視装置で横隊に変な動きが無いか、確認しつつ、一歩一歩着実に奴等に向かっている訳だ。
近づいていく内になぞの横隊について分かった事がいくつかある。
まず横隊の人間は、ふらふらと上半身をゆらゆらさせながら、歩いている。
まるで負傷している様である。 が、負傷しているのに、確実に確実に歩を進める。 誰も倒れたりしない。
やはり武器は何も持っていない。 だが、まるで闇を切り裂く様に、手を前に伸ばしている。
「……相手は幽霊かぁ?」
黒沢一士はそう呟き、分隊員達を笑わせた。
…………うーん…………幽霊が存在するのならば、あれは幽霊だとしか思えないが。
「負傷している……?」
これは川内一士。
「それだと…………横隊の構成員全員が負傷している様に見えるが?」
俺は率直に感想を述べた。
横隊は、まるでフラフラと右に、左に、上半身が揺れている。 まるで、1つの生き物の様だ。
確実に、距離は狭くなってきている。 あと数分もすれば、奴等の正体が確かめられるだろう。
ここで撃ち止め。
疲れた。 特に添削はしていない。
メモ帳とかに書けばいいのだろうが、面倒臭い。
>>142 本編は見たよ。
『おなかの中に赤ちゃんが……』
『これは人間だろう』
『この演習に参加する前の記憶が無いの』
『助けてくれたらヤらせてあげるからぁ……』
『貴方は局地戦用に開発されたサイヴァー自衛官の第一号なんです!』
『欲しがりません勝つまではぁ↑』
見てない人、見た方が良い。
>>299 バス待ちの人達は血塗れの車体を前にただ呆然としていた。あまりにも現実離れした光景に頭も体もついてこない。
運転手が転がる様にバスから飛び出し、近くにいた誘導役の区職員に大声でがなりたて始めた。西成から逃げてきた人から聞いて、
そして自分がついさっき体験したと言う。興奮しているのかうまくしゃべれていないが大体内容はこんな感じだった。
「まだかなりの数の人が西成に取り残されている」「自衛隊が救助に来たと思ったら暴徒も避難者もお構いなしに撃ち殺している」
「大和川にかかる橋の検問所が封鎖され入る事も出る事もできなくなったが、暴徒から(自衛隊からも)逃げてきた人達が車で強引に突破している」
「ここからすぐ北の国道12号線に暴徒が現れた。ケガ人かと思って声をかけたらいきなり囓られたので慌てて逃げてきた」
「バスの周りを囲まれた。逃げる時何人か轢いてしまったが、意識があるのかこっちに向かって這ってきた」
運転手は話終えるとすぐバスに乗り込み周囲を見回しながら叫んだ。「ボーっと突っ立ってねえでとっとと逃げろ!!」
その声に重なる様にあちこちから悲鳴が上がりだす。ラーメン屋の脇道から。銀行の裏道から。
目の前の薄暗い小道からおばさんが駆け出してきた。その後ろにはケガ人なのかよろめきながらこちらへやってくる人影がある。
そして明るい場所へ姿を晒した時、自分の中の日常が壊れていくのを感じながら思った。
暴徒なんかじゃない。ゾンビだ。
エピソード 熊谷
女はそのゾンビが若い女を襲い血が溢れアスファルトを
ぬめぬめと光らせているのを見た時、うれしくてたまらなかった。
若い女は美人だった。たぶんハンサムで性格のいい彼氏もいて
週末にはデートをしてそのあとホテルで充実したセックスをするのだ。
悩みなど――そう人生の悩みなど
ちょっとしたアクセサリーのように、それがあることで
彼女自身の美しさが際立つのではないかと、いうような
ほどの悩みしか知らないのだろう。
憎かった。女は若い女が憎かった。きれいな顔が
その綺麗な服を買う事が出来る生活が若い女の幸せな人生が憎かった。
だからテレビの前でその名の知らぬ若い女がゾンビに食われて
小学生のころ理科室で見た人体模型を思わせる
腸であろうものをゾンビが手にしたとき口を開き
興奮し、ほとんど開放感ともいえるほどの喜びを味わった。
「ははははは!!!!!! いひいひひひひっひひっひ!!」
女は異常だった。あるいは正常だった。この熊谷の田舎の
一軒家で年老いた父と母との暮らしの中で、ゾンビが大阪を
崩壊させていく過程を見ながら抑えていたものが溢れ始めていた。
「死ね死ね死ね。苦しんで死ね。もっと苦しめ。
お前のその人生が綺麗な手が足が無くなるのを知りなさい。
ゾンビが手に持っているものを知りなさい。
それは、おまえ自身の腸だ。昨日食べたフランス料理が
彼氏と行ったフランス料理が消化される、腸なのだよ。
ああ…あの肉はおいしかったかい? 前菜は? スープは
何だった? お前は素敵な彼氏の前に座り、微笑んで
フォークを口に運んでいた。幸せを感じていた。
幸せ! そうお前は幸せだった。昨日の夜は間違いなく!
この後のセックスのことを考えて、股は濡れたかい?
そんなこと考えるほど穢れてはいない? ああそう。
それならそれでいい身も心も綺麗というわけだね。
でもね、あんたの上にのっかている生き物。
それが何か分かる? それはゾンビだよ。
ゾンビなんていうものが、この世にいるなんて知らなかったろう!
でもいるんだよ! 私は知っていた知っていた知っていた
私はゾンビが存在することを知っていた。
それはね人間の心の中にいたんだよ。
幸せなお前は知らないだろうけどゾンビは心の中にいる。
闇の中で息を潜め待っていたのさ。私はね、その息遣いを
真夜中に聞いたよ。冬の寒い日にね私は真夜中まで起きていた。
眠れなくて、雲が夜空を覆い、月も見えない夜さ。
私は起きて台所に行くと牛乳を飲んだ。白い雫が寝巻きに線を作った。
顎には白いひげが生えたよ。
それからね、私は庭に出ると夜空を見上げた。
東京のように明るくは無い、熊谷の田舎なんてね
ましてや月が出ていない夜なんて真っ暗さ。
私は裸足のまま道路に出た。何かに呼ばれてるような気がしてね。
ずっと昔から私のことを呼んでいたんだよ。遠くから。
私が生まれるずっと前から。私は冷たい冷たい凍っているかのような
アスファルトを踏みしめ、そのほうへいった。
足は冷たく感覚が無くなっていくのが分かる。私は自分が死ぬのだと思ったよ。
これで最後だ。でもね私は怖くなかった。なぜならそれ、私を呼んでいる者は
私の親しい者だからだよ。だから死んでもいいと思った。
こんな人生終わらせたかった。冬はね畑がグランドに見える。
何も無くてね。その角に電柱が立っていた。私を待っているものがその下にいる。
そうゾンビだよ。
女は正気に返るとテレビを消した。
胸がむかむかした。泣きたかった。死にたかった。
自殺したいほど絶望していたがまだ死ぬわけには行かない。
女は倉庫に行ってストーブ用の灯油タンクをあるだけ集め
ペットボトルや蓋のあるビンなど使えそうなものを集められるだけ
集めると車のトランクに押し込んだ。運転席に座りキーを差し込むと
涙が溢れた。
――生まれ変わったら。平凡でも良い。人並みの人生を
送らせてください。神様。
女はガソリンスタンドに行きタンクやペットボトルに詰め
ゾンビと戦うつもりだった。この闘争心がいつまでも
消えないでいてくれれば良い。女は思う。無くなったとたん
私は今までのような負け犬になってしまうだろう。
――素敵な男性と手をつないでデートをしたかった。
女がガソリンスタンドに行こうとエンジンをかけたのを見た人がいたなら
なんと美しい女だろうと思っただろう。それは狂気と正気の間で
揺れる炎だった。青く揺れ燃え続けていた。
おわり
325 :
ken ◆r7Y88Tobf2 :2008/08/07(木) 00:48:01 ID:jp1836XF0
>>295-297>>300-304>>306-310>>321-324 みなさまお久しぶりです。以前投稿してまして
名無しでリレーに参加させてもらおうと思いましたが
名乗らせていただきました。
>>298 ありがとうございます。
その後の展開などはどうでしょう?
性の表現は、ここで以前かなりきついことを書いて
KYっぽいな感じだったのですが?
>>311 過去ログ見ました。なかなか小説以外の部分も盛り上がったみたいでw
私は自分自身の書いたものを読むと、ちょっと変わってるなあと思うんです。
>>298さんのご指摘のように、あまり自衛隊などは出てこないし
退屈な人もいるのかな? って思ってます。でも自分の書きたいのは
こういうものなので、楽しんでいただけるとうれしいです。
性的なことも書きたいわけでは無いんです。でも避けて通れないって言うか
僕たちの日常でも一日に一回はセックスとか彼女とか、たぶん考えるわけで…
たぶん女の人もロムってるだろうし…それは無い?
まあ都合の良い解釈ですが、楽しんでいただけるとうれしいです。
そして、夜中に思い出してガクガクブルブルしていただけると
作者としてこれ以上の喜びは無いです。
326 :
ken ◆r7Y88Tobf2 :2008/08/07(木) 00:54:18 ID:jp1836XF0
>たぶん女の人もロムってるだろうし…それは無い?
これは女の人も見てると考えるから書くのではなくて
気にしてしまうということです。作者が表に出すぎると
うざいと思うので、失礼します。
見たいのは群衆パニック。
自衛隊の活躍が読みたいなら軍板にあったスレ読むし、
セックスならエロパロでやんなさいという話になるでよぅ。
とにかくゾンビに食われる哀れな群衆ですぜ。
誰か助けようとして食われ、一人だけ助かろうとして逃げた先で食われ、
昨日までの勝ち組人生が崩壊して絶望してるとこ食われ、
逃げに逃げてようやく自衛隊の駐屯地に逃げたと思ったら、かまれていた痕発見されて隔離されたり。
無法の世界になったぜきゃほー! とレイプしようとしたら女ゾンビで食われたり、
集団なら勝てるだろうと思ったらゾンビと間違われて空爆あぼーんされたり。
そんなんみてーっすよ。
>>327 HIDEEEEEEEEEE!!!!!
な、なんと言う鬼畜。
>>312-318 5
「おかしいと思いませんか?」
今田士長が聞いてくる。
そんな事分かりきった事だろうが。
「そんなの確認するまでも無いっすよ。 あいつらはきっと頭がどうかしちゃったんすよ。」
ほらみろ、山中だって言ってる。
だが…………一度に数百の人間が、あんな痴呆みたいにフラフラ歩くのだろうか?
「……いや、あの横隊の事じゃないですよ。」
そう言うと今田は脚を止めた。 釣られて、俺達も脚を止める。
「あの横隊以外に何か不思議な点があるのか?」
「………………1週間前の死闘がココで繰り広げられ……露軍がココでバタバタと倒れました。」
「そんなん、当たり前じゃないですか。 相手の放棄した車輌なんかは片付け……」
「しかし、露軍の死体は……自陣地の周りはともかく、この辺の死体は片付けてませんよ。」
黒沢の言葉を、今田は遮った。
…………そう言われれば…………敵はこの辺でバタバタと倒れた。 けれども1週間経った今、その死体は1つも転がっていない。
慌てて辺りを見回す。 無い…………首1つ無い。
「他の部隊が片付けたんじゃないんスかね?」
大森の言葉に、俺は賛同だ。 死体が勝手に動き出したりしたら、怖すぎる。
「――――――死体がどうなったか、考えても仕方が無いだろう。 とにかく、あの妙な横隊と話を付けよう。」
我等分隊はまた歩き出した。
距離にして後、横隊の接触まで2、300メートルぐらいだろうか。
嫌でもあの妙な連中と顔を合わすと思うとぞっとするね。
誰一人として、すっくと立って、真っ直ぐに歩いていない。
…………そう、誰一人歩いていない。
「――――――走ってるぅ?!」
大森が、叫んだ。 素っ頓狂な声を上げている。
……目の前の光景が信じられないね。 数百の人の群れがこっちに向かって突進してきているのだ!!
俺はついつい、暗視装置を外した。 目の前の光景が信じられん。
が、外したら外したで、数メートル先も見えなくなった。 付け直す。
「――――――……全員、小銃構えとけ!」
「ありゃ、絶対投降目的じゃありませんって!!」
黒沢が小銃を構え、しゃがみ、射撃の姿勢になる。 黒沢の後ろに川内が立った姿勢で、小銃を構えた。
俺は目の前の光景が信じられず、胸ポケットの通信機(師団長が出発の時持たせた)に電源を入れた。
「こちら分隊! 横隊急速に接近しつつあり、どうぞ。」
『こちら本部。 急速接近とはどういう事か?』
「疾走してるという事です! 横隊がこちらの静止に従わなければ…………」
『判断は任せる!! だが投降目的であろう、闇雲に走ってるだけかもしれん。』
そう言うと、無線は切れた。
判断は任せる……って、逆に言えば、発砲しても良いが、責任はお前等にあるぞって事かい!!
6
横隊は闇雲に走ってる訳じゃなくて、確固たる意思……俺達に向かって走ってる様な気がする。
どっちにしろ、この数メートル先も見えない暗闇の中を暗視装置無しで走れる訳無い。
「ロシア人って、あんな眼が良いんスかね?」
「――――……マサイ族でも無理だ。」
大森の言葉に、俺は突っ込んだ。 人間である以上、星ぐらいの光源じゃ…………。
「分隊長、発砲許可は?」
山中は特別デカイ得物を地面に置き、伏せていた。
「山中、お前どっからミニミ持って来た?」
ミニミ軽機関銃。 持ち運びが出来る、凄まじい威力の誇る機関銃。
「師団長が持たせてくれました。」
…………良い人なんだか、悪い人なんだか。
「走ってきてるからって、発砲していいんですかね?」
今田士長は、特に警戒もせずに言う。
おいおい、あれが投降目的の連中の走りかよ? 何かスゲーぞ。
そう、熱気というか、情熱に溢れてやがる。
「ありゃ32人33脚っスね。」
「うるせぇ大森。」
大森の言葉に川内が反応する。
確かに……100人101脚ぐらいじゃねぇか?
「今田、適当に止まれって言ってくれ。 俺ロシア語分からん。 止まらなかったら、撃ってやろう。」
「了解しました。 じゃぁ自分はロシア語で『止まれ』と言うので、皆さんは『stop』でお願いします。」
今田は俺等より少し前に出て、何やら叫びだした。
おいおい……露語大丈夫なのかよ? 奴等、何も反応しねぇぞ。 それどころか、益々スピードupしてるぞ。
>>320 蜘蛛の子を散らす様に、とはこの事だろう。バス待ちの人々は悲鳴を上げ他者を押退け走り出す(自分もその一人だ)。
とは言ってもどこに逃げれば良いか判断できる人などいるハズもなく右往左往するばかり。さらに悪い事に駅側
>>299 から
野次馬がこちらに向かってきたりして余計に混乱してしまっている。ゾンビのやってきた北の国道側に
>>320 走って行く人も出る始末。
状況は判らないがみんなが逃げ出したからとりあえず自分も、という人が多いせいか逃げる方向はメチャクチャだ。
もちろん自分もどこへ向かえばいいかなんて判らないが、すぐ横にいた中年のおじさんが自分の嫁さんにこんな事を言っていた。
「ここから南に仁徳天皇陵がある。併設された大仙公園は避難場所に指定されていたからそこまで走ろう!」
混乱の中少し立ち止まって周りを見回すと道路標識が見えた。 「仁徳陵↓1.2q」
後ろからは悲鳴とも怒号ともつかない叫び声が絶え間なく聞こえてくる。
今はこれに縋るしかないだろう。前を見据え走り出す前に先程まで居たバス待ちの場所を振り返る。
国道12号線側から夥しい数のゾンビがこちらへ向かってくるのが見えた。
混乱の中、足を痛めたのか逃げ出せなくなった人達が居たようで、彼等の家族か友人か、或いは善意の人が
付近にあった自転車などをゾンビに投げつけて追い払おうとしていた。またどこから来たのかその姿をTVカメラで撮影してる連中もいる。
なんとなく腹が立ったが、そちらへ足が向く事はなかった。
残虐描写とかむつかしくて書けないょ(´・ω・)
えっと…自分の出る幕は無い感じでしょうか…
一応続きっぽいのとショートショートを書いてみたのですけど…
様子を見て投稿します
どんと来い
うつろな目をした住人たちが、うなり、さまよいながら新SSの来るのをまってますぜ。
>>330 7
連中の走りは止まらない。 距離がどんどん縮まる。
相変わらず、今田士長の呼び掛けには従わず、ただひたすらに走ってくる。
「畜生! 威嚇射撃だ!!
黒沢はそのまま射撃体勢! 川内、大森やってやれ!!」
「撃っちゃって良いんスか?」
「威嚇といったろう、大森。 空に向けて発砲しろ! 今田はそのまま呼びかけ!」
…………頼むぞ、止まってくれよ。
ダダダダ、と川内と大森の小銃口が火を噴く。
特に反応は……というよりも、あの横隊、速度を増している!!
『ブブッ…………!
こちら本部、分隊、何かあったのか? 銃声がしたぞ?』
師団長が無線を繋ぎ直してきやがった。 銃声にびびったのか。
「いえ、威嚇射撃です。」
『横隊に対しての射撃は慎重に判断しろよ。』
やっぱり責任は全部俺等に転嫁しようとするんですね、師団長。
「横隊は急速接近しています。 このまま止まらない様ならば…………」
『………………判った。 発砲は自由だ。
但し、最後まで考えろよ。 無線は繋げっ放しにしとくからな。』
何とか発砲許可を得た……って感じだな。
「車長!」
俺は短く叫んだ。
それと共に、FVや96から頭を出している車長がこちらを向いた。
「師団長から発砲許可は出ました。
自分が合図したら、その大火力で横隊を吹き飛ばして下さい。」
8
…………嵐の前の静けさといえようか。
分隊員達は全員、射撃体勢を取る。
今田士長は俺達より少し前に出て、呼びかけを続けている。
取りあえず50メートルぐらいまで近づいたら…………ぶっ放す。
それ以上近づかれれば、隠している手榴弾とかにやられる恐れがある。
俺は無線を左手に、拳銃を右手に握っている。
加速に次ぐ、加速。 横隊はもう少しで、俺が勝手に定めた線に入る。
「発砲、用意!!」
『……発砲するのかね?!』
無線の向こうが騒いだような気がするが気にしない。
「…………撃」
撃て、と言った瞬間だった。
…………消えた?!
連中は、あの数百、千数百の横隊が、消えた。
「分隊長、上!」
「――――…………う……え?!」
誰かの叫び。
俺は素早く目を走らせた。
次の瞬間、全てを悟った。 横隊が、跳躍しただと?!
どさり、と付近に……前方、つまり今田士長の周辺に集中して奴等が落ちてきた。
「うわあああぁぁあぁ…………痛てえぇぇえぇえぇ!!」
いつもの様な冷静のな声とは180度違う叫びが、目の前の黒山の人だかりから聞こえる。
「今田ッ!」
黒沢、川内がフルオートで射撃を開始する。
『どうしたのかね?』
「横隊が……瞬間的に接近! 交戦!! おい、山中、どうした?!」
山中が逃げ出した。 ミニミを放置して。
止める余裕は無い。 奴等は黒沢、川内の形成した弾幕をもろともせずに歩を進めてくる。
「分隊長、弾切れです!」
「さっさと弾倉取り替えろ! 俺が援護する、下がれ! おい車長、何やってる?!」
それに答える声は無い。 おいおい、全員逃亡かよ。
『何があったのかね?』
俺は五月蝿い無線機を捨て、拳銃を構え、接近してくる奴等に向けて牽制射撃する。
距離は5メートルも無い。 だが奴等は撃たれても痛がりもしない。 ただ弾は当たっているのだろう、全身血まみれである。
「装填完了です!」
その声と共に、また強力な弾幕が形成される。
奴等が止まった隙に、俺は山中が捨てていったミニミを拾う。
小銃なんかと違って、ずっしりと重い。 だがその火力は…………
引き金を引くと同時に銃口が火を噴く。 すると奴等の先頭が後ろに転倒し、将棋倒しになった。
弾を吐き出し続けるミニミ。 余裕が生まれると同時に、俺は状況を整理する。
今田……負傷? 山中……逃亡? 大森……どっか行った。 車長…………?
俺は辺りを見回す。 FV、96共に健在だ。 だが…………
>>331 南に向かったのは正解だったかもしれない。こちらはまだ「まともな」世界だった。
血相を変えて走ってきた私達を見ても怪訝そうな顔をしてくれる人が大勢いた。ゾンビの様に虚ろな表情でない事が少し嬉しい。
もっとも私達の後ろから聞こえる悲鳴と、遠目に見える人?の群れと、何より血の臭いに気付くとその人間らしい表情も消えてしまったが。
大阪中央環状線を構成する国道310号線が見えてきた。だが近付くにしたがいその異様さに怯み思わず足が止まる。
民・官問わず車両がびっしりと駐車してある。それも全くスキマ無しに2車線分。ドライバーはどの車にも乗っていない様だが
乗り捨てたという雰囲気ではなく、窓もドアも施錠され荷物も残されてはいない。不思議に思っていると車列の向こう側から
警官が数名走ってきた。すぐ向こうに車列の切れ目があるからそっちへまわれとの事。疑問に思いこの車列は何事かと尋ねると
「バリケードみたいなモンだよ」と答えてくれた。どうやら大和川の封鎖線が破られゾンビがこちらへ向かっているのを知っている様だった。
>>338 指示された方へ向かうとやはり大勢の避難者で溢れていたが車列の切れ目が何箇所かあり、わりあいスムーズに通過していく。
ただこの入口を通過する際簡単なボディチェックが行われ、何らかのケガがあったりチェックを渋ったりすると少し離れた場所に
駐車してある自衛隊の車両内で別途チェックされる事になるらしい。幸いケガはないので問題無く大仙公園に入れたが
暴徒が迫っているとの情報が既に伝わっているらしく、避難所を引き払う準備が進められていた。
入ってきた方とは反対側、南の国道197号線沿いには各種市バス・観光バス等が並び順次避難者を乗せて出発していた。
またバス待ちか。つい先程の光景が頭をよぎるが、見回せば警官の他に自衛官の姿も(銃は持っていないが)思いのほか多く見受けられる。
これなら大丈夫だろう。一息付こうとワンセグでニュースを見てみる事にした。
・・・一部自衛隊員による発砲という情報は現在調査中であり・・・
・・・埼玉県熊谷市では若い女性がGSにてガソリンを大量に買込み暴徒と・・・
>>321〜
・・・ただ今入った情報では現在、東京都・吉祥寺付近にて暴動が発生したとの連絡が・・・
>>304〜
関東に飛び火したのか!? 実家にはかあちゃんが一人で暮らしている・・・
決めた。ウチに帰ろう。なんとしても。
お久しぶりです。
短編投下…のつもりでしたがやってみたいことがあったのでちょっと長くなります。
付き合ってくださると幸いです。
「ねぇ…、昨夜、どこに行ってた?」
「ふぇ?」
しゃこしゃこと歯を磨く音の中で、弟が唐突にそんなことを聞いてきた。
「どこって…」
言えるわけが無い。夏休みだからって――深夜まで友達と山の中でエアガンの打ち合いをしていたなんて。
「今日も行くの?」
「いや…別に考えてない――」
「そう…。じゃあ、今日はどこにも出かけないで」
「はぁ」
そう言うと、弟はあっさりと洗面所から出て行ってしまった。
何だか奇妙だ。弟らしからぬ言動もあるのだけど――何よりも、他人には無関心な弟が他人のことを聞いてくるなんて。しかも、今日は出かけないで欲しいときた。
「…またホラー映画でも見るつもりか?」
人一倍怖がりな癖に、ホラー映画が大好きという矛盾した趣味を持っている弟のことだ。どうせ、自分一人では怖いから今晩は一緒に見て欲しいのだろう。
「昼間に見ろよな」
そう呟くと、コップに入っていた水を口に流し込んだ。
「昨日、どこにいたの?」
またそれか。
「いや、ちょっと…ね」
苦笑いで切り抜けようとするものの、どこか疑わしげな目線のままだ。
弟は、息の吹きかかる距離まで迫ると、どこか乾いた声で言った。
「今晩だけは…どこにも行かないでね――絶対に」
その目を見た瞬間――どこからか、言い知れぬ恐怖が湧き上がった。
『なー、何かおかしくね?』
「そっちもか? こっちもなんだよ。何か弟が昨日どこに居たのかとか今晩は居ろとかさ」
友人が、電話越しにもはっきりとわかるほど不安そうに喋る。
『親父もお袋もさー、何か今晩は家から俺を出したくないみたいなんだよね。わざわざ玄関に荷物積んで出れなくしてるんだぜ? おまけに、窓にも荷物積んじゃってさ…』
「そっちも大変なんだな」
思わず苦笑する。
彼の部屋は一階にあるのだ。窓の外に荷物を置かれてしまうと、自分の部屋から出ることはできなくなってしまう。
『あ、そうそう! 今から、アレやりに行かね? ハウス・オブ・ザ・デッド4! 近くのゲーセンにも入ったんだよ!』
「おー、いいねー。今から? 準備するわ」
こいつも俺も、自他共に認めるガンシューティング好きだ。
そんな俺達にとって、それが入ったということがどれだけ嬉しいことか…。
「…って、どうやって出んの?」
『ふふー、こんなこともあろうかと色々準備してあるのだよー』
「それは心強い」
それを最後に、電話が切れた。まぁ…ロクなことをしない友人だ。どうせ、トンでもない方法で出てくるのだろう。
携帯電話を引っつかみ、放置してあったナップザックに財布を突っ込む。
それを抱えながら玄関まで出たとき、後から腕を掴まれた。
「っ!」
そこを中心として、視界がぐるりと半回転する。
俺の二の腕を掴んで立っていたのは、案の定弟だが――どこか奇妙だ。どこが、とは言えないが…全体的におかしい。こう、パズルの合わないピースを無理矢理押し込んでいるというか…とにかく、何かがズレている。
そんな奇妙な状態の――そういえば、この感覚は朝からうっすらとあった――弟が、口を開く。
「どこに…行くの…!」
紡がれる言葉の中に、はっきりと怒りを感じる。
その瞬間。どこか遠い所――感覚とは遠く離れた所、本能のような場所が、はっきりと拒絶を示した。
腕を掴まれているだけで、言葉を聴いているだけで、眼を合わせるだけで、恐怖が神経を這いめぐる気がする。
「答えて…!」
ぎりぎりと、腕を掴む力がどんどん強くなる。
その力が強くなるに従って、今すぐここから逃げ出したいという気持ちが大きくなってゆく。
すぅ、と息を吸い込む音。そして、
「言え!!」
その叫びを聞いてしまった瞬間、それはもう「弟」という形から崩れてしまった。
目の前に居るのは弟――なのに、弟ではない。弟というのが理解できるのに認識できない。
その様は、どこかゲシュタルト崩壊にも似ていた。
「こ、コンビニまで」
知らず知らず、口が適当な言い訳を放っていた。
「そう…」
掴まれていた二の腕が開放された。
すぅっ、と「弟」という認識が戻ってくる。まるで、何事も無かったかのように。
弟をそっと眺める。
弟は、元の奇妙な状態のまま――というわけではなく、そこから更にどこか壊れた様子でそこに居た。
弟は、にこっと笑った。
表情はあるのに、それが虚ろに感じる。表面だけの薄っぺらなもので、まるで能面のようだ。
「代わりに、行ってあげるよ」
弟の顔は、真っ赤に染まっていた。
「だから…今日はここから出ないで」
気がつけば、どこかでひぐらしが鳴いていた。
「悪いけどね…」
家の中に居ると、未だぞわりとする。
「あんな場所に居られるかっての」
どこからか、弟に見られている気がする。
「そもそも何なんだ、ありゃ」
だから、弟の言葉を無視して出かけることにした。
しゃこしゃこと自転車を漕ぎながら、考え込む。
昨日会ったときは、別に何も感じなかった。だとしたら、何かあったのは昨日の夕方以降――俺が出かけた時間より後だが…
「…そういえば」
今朝、弟は手首に包帯を巻いていた気がする。袖口からチラっとしか見えなかったし、大して気にもしなかったのだけど…アレが原因なのだろうか?
包帯と言えば。
何故、すれ違うの殆どが包帯をつけているのだろう。
首、手、腕、足。巻いている場所は様々。一見巻いてないように見えても、よくよく見ると服に隠れているだけだったりして。巻いてない人との比率は2:8くらいだ。
しかも、巻いている人は巻いてない人――例えば俺とか――をじっと凝視している。それこそ、鬼気迫る視線で。
この状況は物凄く怖い。幽霊とかそんな恐怖じゃなくて、生物的な恐怖だ。
だから俺は、しゃこしゃこと自転車をひたすらに漕ぐことにした。
その間も、背中には痛いほどの視線が突き刺さるのを感じた。
※言い訳のためにある文
え〜と…まぁ、やりたかったのは背景とかどれだけ抜いて物語が成立するのかなー、なんて…
なので場所の描写とか抜いてみました
書いててこれは本当に「ゾンビ」モノなのかなー? なんて疑問が湧きあがって来ましたが…あえて無視します
あとコレ戦いとか策略とかせずにただひたすら逃げ回るだけですので。何というか…モンスターパニックみたいな。でも戦わない。逃げるだけ
勝手にやっていくだけですので見苦しければ流してくださいね
ではまた近いうちに…多分
アウターゾーン版ゾンビみたいでおもしろいと思いますぜ。
「高橋さん、大丈夫ですか?」
同僚が声をかけてくるが返事をする気力もない。こんな事がありえるか?警察署が助けを求めるなんて。
西成署からの要請で俺達阿倍野署の下っ端が応援に駆り出されて暴徒鎮圧にあたっていたら、今度はその阿倍野署が暴徒に囲まれたので助けに来いときたもんだ。それが15分ほど前の話。
「対策本部は何て言ってました?てかあれってゾンビってヤツですよね?おれ撃っちゃいましたけど正当防衛ですよね?!」
「うるせぇ!俺は逃げてくる間に5人は轢いたぞ!。それよりな良く聞け伊藤、俺達はここで避難民を逃がす為の人柱にされるらしい」
「なんスかそれ!?この大仙公園にゃ自衛隊がいるじゃないっスか!署に帰りましょうよ?!」
「暴徒が、ってかゾンビがこっちになだれ込んでくるってよ!。それに阿倍野署と連絡が付かなくなったそうだ。
パトの無線も携帯も試したが誰も出ねぇ。状況を確認するからその間は自衛隊と協力しあえとさ!」
全くどうなってやがる。伊藤は避難民の列を見ながら盛大に溜め息を付いていた
近いうちに来ました。
割と早く展開進めようかな、と思って…。
シリアス書くのはどうにも苦手ですね。
「やはー。何か遅かったね」
友人が顔中に笑みを浮かべながら走りよってくる。
この『やはー』というのはこいつなりの挨拶だ。全く…、昔から奇妙なヤツというか何というか。
「いやいや、遠回りしてて…」
あの視線から避けるため、人通りの少ない道を選んできたのだ。そりゃあ、大きく回り道をするわけだから…遅くもなる。
「ふぅん? まぁ、こっちこっち」
細かいことを気にしないヤツで助かった。と、コイツの腰に見慣れたあるモノがあることに気がつく。
「お前な…せめてエアガンはしまえっての。何かあっても知らんぞ?」
「えー。これに収まってれば見えないでしょ?」
コツコツとホルスター――確かヤフオクで買ったやつ――を叩く。まぁ、ぱっと見ホルスターが大きすぎるせいもあってエアガンは見えないのだが――
「見つかったら、って話」
「あはは、まぁその時はその時で」
振り返り様ににぱ、と笑うとそのまますたすた歩いていってしまった。
全く、こいつは昔から…
「って、こっちでもかよ」
呻かずにはいられない。
このゲーセンは大通りに面して立てられている。それはつまり、自分達の姿を沢山の人に晒してしまうわけで――。
あちこちから――四方から、全方位から、こちらを見つめるたくさんの視線。老若男女関係なく、じっと見つめてくる。
案の上、みんな包帯を巻いていた。ぐるぐると巻かれた白い布を纏った集団が、近寄りもせず立ち去りもせず、作業を中断してまでこちらを見つめてくる。…気味が悪い。
「お、おーい! 待てって!」
「はは、遅―い」
笑い声を慌てて追いかける。
じっと見られていると、落ち着かない――というか、恐怖を感じる。徐々に恐怖に蝕まれていく気がする。
何なんだよ、一体。
「こっちこっち! 早くー!」
気がつけば、筐体に陣取ったあいつがこちらを大声で呼んでいた。全く、行動が早い。
「はいはい、だから待てって!」
目の前に出てくる大量の死体。
死体は動かない――そんな概念を軽々と打ち破って軽い動作で近づいてくる、斧を持った男のゾンビ。
その頭に狙いをつけて、
「――狙い打つぜ」
無慈悲に、容赦なくトリガーを引く。
バン、という音と共に男の顔の表面が吹き飛び、中の肉が露になる。
その――あまりにも現実離れした光景を目の当たりにしても、驚くことはなく。ただただ遠慮なく容赦なく、トリガーを引いてゆく。頭を狙って。
そしてとうとう男のゾンビは力なく地に伏し――光の粒子と共に、消え去った。ちなみにニフラムは唱えていない。
そんな、ゲーム相手にも真剣になっている俺の横では。
「ヴァーチェ、目標を破砕する」
なんて呟きながら銃身左横、やや前に取り付けられた灰色のスイッチを押した友人がいた。
目の前の画面の中で腕が飛び出し、手榴弾を投げる。狙い違わず、大量のゾンビのド真ん中に転がり――爆発。
目の前の画面で大多数のゾンビが倒れ、光の粒子と共に消えてゆく。
そしてその爆発から逃れたゾンビを、
「狙い打つぜぇ!」
と叫びながら俺は撃ち始めるのだった。
我ながら中々のコンビネーションだと思うよ。
「トランザム!」
なんて叫びながら横でカシャカシャとトリガーを引く頻度を上げる友人。ふざけながらも、的確に敵を撃ってゆく。
そして言いたかったことを言われてしまった俺はといえば、
「お前らに慈悲なんてくれてやるか」
なんて呟きながら必死に襲いくるロボットに対して連射していた。そう、相手はゾンビからロボットへと変わってしまったのだ。
ちなみにどちらも真剣になっている理由は、
「今日の俺は――容赦ねぇぞ」
相手がビームサーベルっぽい武器を持っているせいで死にまくっているからであった。
「ようお前ら…満足か? こんな世界で…。俺は…嫌だね…」
「これで00な気は済んだ?」
「うん」
つまりこれが言いたかったわけだな。
あれから結局何回かコンテニューして、挙句の果てに諦めた俺達はゲーセンから外に出ていた。いやま、ゲーセンはうるさいしね。
しかしまぁ…
「あれってさ…最後もうゾンビ関係ないよね」
「言うな。言っちゃダメだ。何か負けた気になる」
「あーうー…。ま、まぁいいや。面白かったし。面白ければジャスティスって偉い人が言ってたし」
「誰だよそんな偉い人」
「サマエル?」
「全力で謝れ」
何このコント。
いやま、いつものことなんだけどね…。こいつの人生はネタ発言のためにあるんじゃないかと時々不安になる。
背中を自動販売機に預けて、空を眺める。
しかしまぁ…
「夜、だな」
「夜、だね」
友人はトリガーガードに人差し指をひっかけて、ぷらぷらとゆらしながら答えた。よほど暇か、もしくは考え事をしている時の癖だ。
そして、口を開く。
「あのさ…」
「うん?」
真剣な口調だ。茶化すわけにもいくまい。
「最近、色々変だよね」
通行人をじっと見ながら答える。
「変、て?」
「包帯をしてる人みんな…何かおかしい」
こいつの危機管理能力は、直感…というか第六感じみたものだ。理由もわからず、ただ漠然と危機を感じているに過ぎない。だからこそ、どう応じていいかわからないのだろう。
「まぁ…そうだよなぁ」
パカ、と何の気無しに携帯電話を開く。ブーンと低くバイブが鳴った。
メールだな…。
「どういったらいいか…敵意、みたいな? でも違うんだよねぇ…。何かこう…」
メールは…58通。おいおい、異常だぞ。
何かあったのかと目を通して…
「…おい」
「うん?」
「これを見てくれ」
「え? …………うわ」
<今どこ><今どこ><今どこ><今どこ><今どこ>
<今どこ><今どこ><今どこ><今どこ><今どこ>
<今どこ><今どこ><今どこ><今どこ><今どこ>
そこに並ぶのは、同じ内容のメール。それが58通だ。
差出人は全て弟。
これはもう…猟奇的。てか着信もあったようだ。やはり尋常ではない数の。
「もしかしてさ――弟さん…包帯巻いてる?」
「あ、ああ…」
次第に空気が冷たくなってゆく。
夏場なのに、鳥肌が立つ。冷や汗が噴出すのを感じた。
俺の背中に、撫ぜられるような寒気が走る。こいつも一緒なのか、額に汗を浮かべていた。
そんな俺達をあざ笑うかのように、画面右上――時計が、19:00を指した。
※言い訳のためにある文
ネタ…入れてしまいました。どうしても指が止まらなくて…
ガンダム00になったのは何となくです
やっぱり背景とかごっそりすっぱ抜きました。
これでどこまで伝わるんだか…
よくよく見るとキャラの背格好とかどれくらい移動したのかとかどれだけ経ったのかってのも無いですね
最後の19:00が初の明確な時間でしたし
あと。エアガンあるからってそういったシーンありませんので…うん。
…これ、本当に「ゾンビ」モノなのかなぁ
「これってさ…ゾンビとか関係ないよね」
辛抱強くお付き合いくだされば嬉しいです。とても
>>339 大阪から東京までいつもなら新幹線で二時間ちょい、暗くなるまでには家に着く。だが現状では難しい。
そもそも新幹線が停車する様な主要駅の混乱はさっきまで居た
>>299の比ではないだろう。まともに機能してるとは思えない。
車は?ダメだ。免許持ってない。まだ安全な地域までタクシーか何かで行ってというのも無理がある。だいいち国道は使えない。
特定公共施設等利用法とやらの関係で国道は緊急指定車両や自衛隊しか走れないからだ。そのせいで一般道は渋滞しはじめ
やむなく車を
>>338にしてここに並んでいる人もいる位だ。どうやらおとなしく待って避難バスに乗るのが一番早くここから
脱出できる現実的な選択らしい。ところでこのバスはどこに向かうのだろう?近くの人に聞いてみると行き先がバスによって違うそうだ。
市バスはここから南西にある大阪湾に面した高砂公園臨時避難所へ
大型観光バスは南にある堺ICから阪和自動車道に乗り西名阪自動車道を経由して三重県へ
どちらにしても一気に東京へってのが無理なら避難所を経由しながらでも東へ行こう。それにまだニュースではこの大阪が暴動の中心で
近隣の県では暴動は起こってない様だし(噂では聞いたが)、まだ普通に電車なんかも動いているかも。東京では暴徒が現れた
らしいがそれは気にしてもしかたない。実家が東京なのだから(鎮圧されていなければ)一度はあの死人達の間を通る事になる、腹をくくろう。
さて、どっちに乗ったものか。
ワクテカ
海沿いはいかんだろ逃げ場ないし
陸路だな
と勝手に要望してみたり
355 :
本当にあった怖い名無し:2008/08/16(土) 07:32:23 ID:Km/ieXCRO
浮上!
アゲんなよカス
エピソード 東京都調布市
裕美子は玄関にあった血に染まり海草のように髪の毛が絡まった頭部と
内臓が引きずり出され手足がバラバラの方向に向いて
一目で死んでいると分かる幼い女の子の死体を我が娘だと
断じて認めようとはしなかった。その血の海の中に見覚えのある
ランドセルがあったとしても娘の葵だとは認めようとはしなかった。
裕美子は小学校がどのような対策をとっているか知りたかった。
ゾンビが発生したとの第一報はお昼のワイドショーのテロップだった。
そこには大阪で暴動発生、原因不明、死者多数と書いてあった気がする。
それからすぐ各局が通常の番組を中断して緊急放送になった。
ゾンビ。信じられない。現実とは思えない言葉をアナウンサーが
連呼している。
学校で葵はどんなに怖い思いをしているだろう。
外にはゾンビがいて、一瞬にしてその体にゾンビが食いついくと
いうことを知ってどんな思いをしているのだろう?
裕美子はそう思うと小学校に駆けて行きたくなったが
心のどこかで、もう遅いすべては終わったのだ。
という悪魔のような声がするのを聞いていたが
断じて聞き入れようとはしなかった。
携帯はサーバーにアクセスが集中しているため
使用を控えてくださいとアナウンサーが言っている。
裕美子が持っているソフトバンクも電話することも
メールすることも出来なかった。
――こんなことならドコモを解約するんじゃなかった
裕美子は思う。
先月だった。
夫がソフトバンクにしようと言ったのだ。私は何でも良かった。
特に携帯のキャリアを気にするほうではなかったし
メールもほとんどしなかった。流行に後れているような気がしたが
結婚していて何が流行だろう? 葵の友達のお母さんが
携帯の機種を変えたという話を聞くたびにそう思っていた。
裕美子にとって生きがいは葵であり夫だった。
流行より家族が元気でいてさえくれれば
それで良かった。おいしい料理を食べさせ、おいしいと言ってくれる。
元気良く学校に行って成長を見る。夫が給料が安いといいつつも
休日に家族で出かけることが何より裕美子にとって幸せだった。
――なんでソフトバンクにしたの!
裕美子はテーブルに座ると携帯を机において
じっとみつめた。どこからかかかって来るのではないかと
かすかな期待をしながら。
裕美子は立ち上がると自分がこのまま倒れてしまわないように
歯を食いしばって体を支えなくてはならなかった。
――葵は死んだ
あの血に染まったゴム袋のようなものは葵なんだ。
点と点が連なり意識が覚醒し絶望の予感がした。
動機が早くなる予感があったが、まだ早くなってはいない。
異常な量の汗が噴出してくる予感がしたが汗も出てなかった。
――葵は死んだ
裕美子は玄関に駆け出したい気持ちで
今まで何をやっていたのかという気持ちでいたが
体が動かなかった。
魂の抜け出たような体を動かし一歩一歩玄関に向かう。
ドアノブに手をかけた。ゾンビは怖くなかった。
ゾンビ? そんなもの葵を失ったことに比べれば
ゴキブリでさえなかった。
ドアを開け、玄関の自転車の横に横たわっている
血に染まった塊のそばに腰を下ろす。
太陽は街を容赦なく照らしセミが鳴いているのを
心のどこかで意識する。
葵の体を持ち上げると両腕に抱きしめると
腐敗した匂いが鼻から口から入り込んで涙が溢れた。
葵は完全に死んでしまったのだ。完全に。
この塊がこの血で染まった塊が葵なんだ。裕美子は理解した。
自分はどうなるんだろう? 葵をベッドに横たえると
うつろな目でかつて葵であったものを見つめる。
気が狂ったほうがましだと思った。気が狂える人間は楽だ。
裕美子は生まれて34年たってはじめて分かった。
気が狂う? 私は何も知らなかったのだ。
人生に大切なことについて。
「大丈夫か?」
裕美子はああ夢だったとかと思う。
心配そうに裕美子を眺める葵と夫がいる。
涙が溢れそうになったが泣いたらいけないと自制した。
さっきから何度泣いただろう?
「ママ?」
葵のあどけない顔に胸が張り裂けそうになり
思わず抱きしめたくなった。この子はなんてかわいいのだろう。
無垢で優しくて…裕美子は葵の頭に手をかけ大丈夫と言う。
でも何が大丈夫だろう? ニュースでは大阪で、東京で
数え切れないほどの人間が死んだと報道している。
夫も駅からの帰りにゾンビを見たといっていた。
明日、夢が現実となる可能性だって十分あるのだ。
裕美子は目を閉じると呼吸を落ち着かせる。
私たちはどうなるのか? 日本は? 世界は?
ニュースの解説者にその答えを見つけようとしたが
無理に決まっている。裕美子は立ち上がり
窓の外を見つめようとした。
おわり
何か週ペースで書き込んでいる気がしないでもないです。
というわけで今回の…。
世界が爆発した。
そう思うほど大きな音があちこちから湧き上がった。
『な…』
声が漏れた…と思う。あまりに大きい音に掻き消されてしまって、よくわからない。
ふと傍らを見ると、俺の携帯を握ったまま呆然と立ち尽くす様子が伺えた。無理も無いと思う。
国道のド真ん中で、人がわらわらと蠢いている。
目と鼻の先を誰かが勢い良く走りぬけ、更に数人が走り去っていったところで――ようやく判断力が戻ってきた。
鼓膜が破れそうなほど大きな音――それは、体のどこかを抑えながらうずくまる人達が出している悲鳴だった。
それが共鳴して、トンでも無い音響兵器と化している。
どさっ、と目の前で人が倒れた。
助けを求めるかのように――ではなく実際に、その人は助けを求めてこちらに手を伸ばしている。目がやや血走り、突如訪れた状況を理解できていないという困惑が顔に張り付いていた。
その人を取り押さえているのは、体に包帯を巻いている人達。4人がかりで腕と足を抱え込み、顔の傍に立った1人が首筋に勢い良く噛み付く。
人でできた団子の隙間から突き出ている手が、がくがくと震えて――止まった。
押さえ込んでいた5人が立ち上がる。
「逃げるよっ!」
ぐっ、と二の腕が引っ張られることに既視感を覚えながら振り向く。
そこには、状況を理解でていないながらも必死にそこから離れようとしている友達の姿。懸命にも俺を見捨てなかったらしい。
そんなことを考えている間にも、二の腕を掴んだまま走り出されてしまった。
「ちょ、待っ!」
いきなりひっぱられて足がふらついている。
でもって肩越しに顔を向けると、鬼気迫る様子で俺達を追ってくる群れ。
こりゃあ全速力で逃げないと――、
「マズいな」
「それがわかったのならさっさと走る!」
ボヤいたら叱られた。こいつってこんなキャラだったっけ?
いや、それはいいとして…。
追ってくる人達はかなり速い。それこそ直線でなら、あっさりと追いつかれてしまうだろう、って位。
だが。
ジグザグに走ったり民家の庭先に入り込んだりして逃げている間にも、その数はどんどん減ってゆく。どうやら小回りは効かないようだ。
いや、先回りされてるって可能性も…。
一度そんなことを思うと、どんどん悪い方向に考えてしまう。
これは罠なんじゃないか? 実は四方からどんどん狭められているんじゃないか?
次第にネガティブな発想が深まってゆく…。
「こっちこっち」
ぐいっ、と再び二の腕を引っ張られる感触で我に返った。無意識に追いかけていたらしい。万歳、はぐれなくて良かった。
振り返っても、追いかけてくる人は居なかった。どうやら諦めてくれたらしい。
「で、ここは?」
ぐるっと見渡しても、目に入るのは何でもない民家とその間に押し込められるように建てられている廃ビルの群れ。学習塾の看板が下がっているところもあるが…その錆びようからして、もうやっていることはないだろう。
いや…まさか、
「このビルに隠れるのか?」
「それがいいと思う。…そんな顔しない。ここは“出ない”から」
自然と顔に出ていたのだろう。
俺は幽霊が大嫌いだ。幽霊が出そうな雰囲気やそんな場所も大嫌いである。
それを知っているだろうから、いかにも“出そう”な場所に連れてこられるなどということは考えもしていなかった…。
「あぅ…」
「ほら、早く。追いつかれるって」
俺はずるずると引きずられながら、廃ビルへと踏み込んでいた。
あ゛〜〜〜〜、どうしてこんなことになっているのか…。
「しばらくじっとしてよ?」
「…そだね」
壁の角に背を預け、体育座りをする。きっと今の顔を見れば、10人中10人が『魂が抜けている』と言うに違いない。
俺は何も変なものを見ないようにと、膝に顔を押し付けた。
「さよなら常識的な世界、ようこそオカルト満載の世界。」
ひっそりと口の中だけで呟く。
神がいたとしたら、随分嫌がらせが好きなのだろう。
この言葉通りの世界になってしまうことを、俺は予想もしていなかった。
※言い訳のためにある文
開幕にして第1部終了。
突然訪れる「日常の終わり」って何か好きです。
最後あたりが納得行かない出来…ん〜、やっぱ精進必要ですね。特に表現。わかりにすぎる。
第1部が終わったので(というか今から本番なわけですが…)次はSSでも…。
自分はだらだらと無駄に続けちゃうタイプなので、コレはさくっと終わらせるつもりです。
それが終わったら中途半端に止まってるヤツの続きを…。
>>352 避難先を考えながら同時に携帯で様々なサイトをチェックしてみると、まだ安全な場所にいる人の書込みだろうか?この様な意見があった
>>354 なるほどな〜と感心していると後ろの方、自分が逃げてきた国道310号線の車バリケード側から怒声と悲鳴、さらには銃声?まで聞こえてきた。
駅前にいたゾンビが遂にここまでやってきたようだ。それにしてもさっきまで丸腰だった自衛隊の隊員がいつのまにか銃をかまえてバリケード沿いに横一列に並んでいる。
頼もしいと思う反面、疑問に感じる事もあった。
厳密に何がとは言えないが少々手際が良過ぎる気がする。有事の際の法律とはいえあっさり国道から一般車を締め出したり、災害出動のハズなのに銃を持ってきていたり。
だがそんな疑問もすぐに吹き飛んだ。指揮官らしき人が何事か叫んだ次の瞬間、並んでいた隊員達が一斉に発砲しはじめたからだ。なかには警官の姿もあった
>>346 まだバリケードの外にも避難者が大勢いたハズなのに・・・
そういえば
>>320 暴徒も避難者も自衛隊がお構いなしに撃ち殺してるって話を聞いたが、これの事か!?
出来不出来、評価は別れるだろうけど新しい試みはとてもいいことだと思うよ。wktkカチカチ
「ゾンビーノ」観た。
このスレの主流とは違ってるけどこれはこれで「あり」かな、っていうか
「クソ、この手があったか!!」って感じで結構な佳作ww
倫理的には滅茶苦茶な世界、展開だけどそもそもゾンビなんて「生き物」が
存在する前提がおかしいわけで、そういう世界では今この世界とは別な
死生観があって当然か。
結構大物、とまではいかないまでも「え、この人が」なんてくらいには
馴染みある人が出てたりしてるし、結構気合が入ったB級以上の作品。
ゾンビを愛する諸君には少なくとも「観て損はない」映画だと思います。
俺的には新丼やランドよりは上、異質だから比べようがないけど
ショーンとどっこいどっこいな価値ある一作。
(親子愛が重要なテーマになってる点ではショーンと同質かなww)
すんません・・・2週間ほど前からホームセンター攻防戦読みまくってた者ですが、投稿してもいいですか? あまり良い作品とはいえませんが・・・。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その1
「〜〜〜♪」
夕方、人通りの少ない住宅街を1人の少年が自転車で走っていた。
最近禁止となった音楽を聴きながらの自転車の運転を平然と行い、あまつさえ鼻歌まで歌っている学生服を着込んだ少年は軽やかに自転車を走らせていく。
『おい護、イヤホンを外しておけ。官憲に見つかったら面倒だろう。』
その時、突然男性と思われる人物のものらしき低い声が護と呼ばれた少年に聞こえてきた。周囲には誰も歩いていないにも関わらずだ。
護は鼻歌を止めると不機嫌そうに謎の声に返事を返した。
「別にいいだろ? この辺りはポリスメン滅多に来ねえんだし、居たらお前が教えてくれんだろ?」
護が返事を返すと、突然走行中の護の後ろに人影が浮かび上がってきた。
浮かんできた人影は、少し長めの髪を紐で結んで後ろに回し、墨色の着物を着た端整な顔立ちの男性の形を作っていく。
男性は足元が微妙に透けており、体を浮かせたまま護の後ろにぴったりと寄り添っていた。
『だからと言って決まりごとを破っていいとは限らん。』
「へいへいアッシがわるうござんした。」
護が適当に返すと、顔を不機嫌そうに歪めて『いいか護。決まりと言うのはな・・・。』という風に説教を始めてきたので、護は運転に集中することで彼の話を聞き流すことにした。
(やれやれ・・・・運転中に説教は危ないと思うんだけどな・・・。)
そんなことを思いつつ、護はペダルを力強く漕いでいった。
372さん、どうもです。では、2回目ど〜ん。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その2
俺、皆川護はいたって普通の高校生だ。ある2つのことを除いて・・・。
1つ目は、俺は右目が見えないってことだ。何か病気の所為らしいが、もう17年コレで過ごしてるんで気にしてない。
で、もう一つは・・・・。
『護、曲がり角から車だ。』
「了解。」
俺は一旦自転車を止める。すると、住宅地の曲がり角から乗用車が出てきた。
この辺りは道路だけで信号はおろか歩道すらないので曲がり角から突然猛スピードで車が突っ込んでくることがあるから危険なのだ。俺も一度事故りそうになったし。
車が俺の進行方向に曲がった後、俺も自転車を走らせた。
「いつも悪いな。」
『これくらい大したことではない。気にするな。』
俺は車のことを教えてくれた、後ろで宙に浮いている半透明の男に礼を告げた。あいつは気恥ずかしそうに顔を逸らしたけどな。
俺の2つ目の秘密・・・それは幽霊に取り付かれていることだ。俺の後ろに居る奴がそうだ。
こいつの名は黒井三郎。俺が物心ついたときには既に俺に取り付いていた。
ガキの頃、両親にこいつのことを尋ねてみたが、奇異の目で見られただけで終わった。俺を合わせて5人いる兄姉に聞いても同じだった。
だから、このことを知ってる奴は俺以外にはいない。
俺が小学校に上がる前からの付き合いだが、特に悪い奴でもない。
右目が無いことでいじめを受けていた俺を励ましてくれたり、道に迷ったときには空高く上がって進むべき道を教えてくれたりもした。
ただ、俗に言う霊力と言う奴を操れるのか、コップやスプーンなどの軽いものやドアの開け閉めなどはできるので時々いたずらをしてきたりするのが難点だ。(先日学校にて友人の頭に黒板消しを落とした。)
あとやけに古臭い口調で話し、先ほどのように説教をしてくるため少しウザかったりもするが。
『護、早く家に着くのだ。そして吾にバイオハザードの続きをやらせろ。』
「ハイハイ分かったって。もうすぐだから落ち着け。」
・・・・幽霊の癖にホラーゲームが大好きなのはいただけないが・・・。俺も好きなんだけどね。バイハー。
長年の相棒に急かされ、俺は家を目指して立ち漕ぎで走っていった。
このときはまだ俺もコイツも知らなかったんだ・・・。
俺の知ってる日常はとても壊れやすいもんだってことを・・・。
そして、それはもう始まってたってことを・・・・。
本日はこんなもんです。続きは明日にでも。んじゃ。
>>376 幽霊絡みねえ、、、
昨日ゾンビーノ観てタミー萌えな俺に言わせればこういう視点も変わってていいかもね。
っていうか「この手もあったか!!」って感じでwktk
大切に話を育てていってください。
あと投下の際はコテよろしくな。
「リメイク 1」
ゾンビ騒動が起きるでしょ。で、軍やら何やらが出ばってきて、
何とか事態を収拾したり、しなかったりするよね。
収拾できないときには、爆弾で街ごとゾンビを焼き払ったりして。
時には人類絶滅の危機に瀕したりするけど、今のところ何とか人類は生き延びてる。
そして、そんなときには人類はとても反省する。
でも、懲りない。
今日もどこかでゾンビ研究をやっていて、職員が感染したり、
ゾンビが市街地に逃げ込んでフィーバーしてたり、
手に負えなくなった街を軍が爆弾でフィーバーしてたりする。
本当はゾンビ禍を防ぐなんて簡単なんだよ。
ゾンビとそれに関するものを全部焼却処分しちゃえばいい。
でも、それができない。天然痘と同じ理屈。
まあ、ゾンビウィルスを研究してた僕が言えた台詞じゃないか。
ゾンビウィルスってのは、本当に不思議な存在だ。
もちろんゾンビ化現象も相当なファンタジーなんだけど、
ウィルス自体も結構キテる。
そこにいたる過程は長いから。ばっさり省略して結論だけ言うけど、
まあ百花繚乱だね。ゾンビウィルスはレトロウィルスの一種なんだけど、
ああ、レトロっても懐かしいやつじゃなくて、宿主にDNAを逆転写するウィルスのことね。
で、話戻すけど、ゾンビウィルスって凄い繊細な奴なのよ。
もう突然変異バリバリ。そりゃまあ、大枠ではゾンビウィルスなんだけど、
細かくみていくと、一人一ウィルスっていえるくらい突然変異が激しい。
もう感染した瞬間に突然変異してるくらいの勢いで。
だから、まあ、あれだね。ワクチンとか?ああいうの無理。
(続く)
「リメイク 2」
それから、感染経路ね。ゾンビウィルスの感染経路は接触感染、飛沫感染含めて、
どんな経路だって感染する。レセプターも確認する限りあらゆる動物にある。
で、ここからが不思議な点なんだけど、噛まれて感染しない限り、
感染しても発症しない。極端な話、ゾンビウィルスを直接注射したり、
粘膜に塗りまくったりしても全然OKなんだ。
前にも言った通り、ワクチンとか無理だから、早々に諦めて、
うちらのチームではひたすらゾンビウィルスの亜種とか研究してた。
そこですんげーのを発見したってわけ。
普通、ゾンビに噛まれたら死ぬじゃん?
でも僕たちが発見したのは、感染しても、っていうか噛まれても死なない。
普通に生きてる人間のまま。あ、いや、ちょっと違うな。
厳密には噛まれたらゾンビになっちゃうんだよ。でも、普通に心臓は動いてるし、
頭脳活動も完全に感染する前と同じ状態。もちろんカニバリズムになったりもしない。
体質的にも変化なし。風邪もひけば、寝不足になったりもする。
しかも、死んだ後もいわゆるゾンビとして復活しない。死んだまま。
要は感染してないのと一緒。
一見すると、何の役にも立たないようなウィルスだよね。
ところがさ、やっぱりこれはゾンビウィルスで、発症したらゾンビなるんだよ。
ゾンビになるっていうか、なってないんだけど、ゾンビというか、あー、ややこしいな。
もったいぶらずに答えを言うとね。これに感染するとゾンビに襲われなくなるんだよ。
ほら、ゾンビはゾンビを襲わないでしょ………。
(続く)
「リメイク 3」
そのウィルスの発見で、研究所は上を下への大騒ぎになった。
ザック・スナイダー型ゾンビウィルス、正式名じゃないんだけど、
チームでは「リメイク」って通称でそのウィルスを呼んだりしてた。
まあ、色々な意味を込めて。
これでゾンビ対策が大きく前進するかと思ったんだけど、好事魔多しってやつだね。
ゾンビ研究反対を唱える過激派テロが研究所を襲撃した。
まあ、奴らの言うこともわからんではないよ。でも本末転倒でしょ。
こちらはウィルスが外に漏れないようにそれなりの設備を調えてるわけだよ。
そこを襲撃して万が一ウィルスが外に漏れたらどうするんだっての。
それにこちらの職員に死傷者が出てるわけで、どんなに正論を言っても
やっぱり奴らはテロリストだよ。
何としてもリメイクだけは守り抜かなければならなかった………んだけど、
職員の多くはテロリストに捕まって、後ろ手に縛られて一つの部屋に
すし詰めにさせられてた。
テロが襲ってきたとき、運良く同僚の一人が換気ダクトの中にいてね。
まあ、本人の名誉のために換気ダクトの中にいた理由は伏せておくけど、
とにかくそいつがリメイクを持ち出してね。で、ここからがあいつの
本当に凄いところなんだけど、テロリストに捕まってボディチェックを受けても
大丈夫なようにリメイクを飲み込みやがった!
前にも言ったようにゾンビウィルスはキャリアに噛まれないと発症しない。
同僚はリメイクを飲み込んだわけだけど、それじゃリメイクを失ったのと同じこと
だったんだ。でも、あいつは自分の腕に噛み付いて無理に発症させた。
まさか、そんな裏技があったとは!
(続く)
「リメイク 4」
あとはSWATが研究所を取り戻すまで、職員みんながテロから逃げ回ってた。もちろん
ただ逃げるだけじゃないよ。さっき言った同僚、残念ながら、最期はテロリストに
撃たれて亡くなってしまったんだけど、
ーーーリメイクは発症してもいわゆるゾンビ化しないからねーーー
亡くなる直前に別の職員に噛み付いて、リメイクを渡したんだ。
それがゾンビリレーの始まりだった。リメイクを渡された人間はとにかく走って、
走りまくってテロリストから逃げた。もう駄目だと思ったら交代選手にバトンを
渡して、でもやっぱり走った。とにかく僕たちは走りまくって、
SWATが研究所を確保した後もまだ走ってる職員さえいたよ(笑)
最初に説明したけど、ゾンビウィルスはとにかく繊細でね。感染するうちに
どんどん突然変異で性質を変えちゃうからね。ゾンビウィルスが人間をゾンビに
変えるように、ゾンビウィルス自体が宿主に影響を受けることだって十分ありえる。
もしそうだとしたら、あの環境の中、リメイクはどんな性質を宿主から受け継いだんだろうね。
(終わり)
なんかスレ盛り上がってきた
えっ! fool氏復活?
コテハン付けてみますた。では続き逝きマース。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その3
『ええい、愚劣な死人どもめ! 早々にくたばるがいい!!』
「いやお前の方がやばいぞ。あ、やられた。」
『ぬおおーーーー!!!』
只今の時刻、午後8時。
2階建ての自宅に帰り晩飯も風呂も済ませた俺はw○iのア○ブレラク○ニクルをやっていた。もっとも、リモコンを持ってはいるが、実際にプレイしてるのは俺じゃなくて三郎の奴だ。
三郎は物を動かす力の他に、俺限定だが体にとり憑いて自由に動かすことが出来るのだ。俺はこれを<憑依>と呼んでいる。
とり憑かれてる間は俺の身体能力が格段にアップするし、疲れを感じないというおまけまで付いてる。
しかしいくつか欠点もある。
第一に、俺と三郎の2人ともが憑依をする気にならないと完全にとり憑くことができないこと。どっちかが反対してると片手だけとかしか動かせない。
あと、憑依を解除した後は無茶した分だけのツケを支払わされることになる。
今みたいにリモコンを動かすだけならなにも無いが、本気を出せばドアを蹴り飛ばしたりジャンプで2階まで登れるほどの無茶をすれば流石に酷い筋肉痛に襲われてしまう。
とは言っても、俺はそのことを残念に思ったことは無い。寧ろそのくらいの反動があった方がいい。不用意に油断を生まなくて助かるしな。
(ま、何事も等価交換って奴か。)
テレビ画面を見ながら、俺はぼんやりとそんなことを考えていた。
『むうう・・・・何故だ、何故奴に勝てぬ!!』
「お前がハンドガンだけで切り抜けようとするからだ。」
俺は本日4回目のゲームオーバーの画面を見て呆れ混じりに答えた。いやネメシス第2形態をハンドガンだけとか無理でしょ。絶対地中から来る触手にボコられるのに。
しかし俺の言葉に全く聞く耳を持たない三郎は再度挑戦しようとする。
「そろそろ止めろ。見たいテレビあんだからよ。」
『くっ・・・・仕方ない・・・。』
心底悔しそうな声を漏らしながら、三郎は<憑依>を解いた。俺は完全に三郎が抜けたことを確認すると肩を軽く回して調子が万全か確かめる。
三郎はまだ悔しそうな表情のままw○iの電源を切るとチャンネルを切り替えた。
『む?・・・おい護。』
「ん? どうした・・・ってまたかよ。」
俺は何故か緊急ニュースになっていたテレビのテロップを見てげんなりとしていた。
テロップには「渋谷にて暴徒による乱闘が発生」と書かれていた。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その4
最近っつても5日ほど前からか。やけに暴徒による乱闘や暴動が多くなっていた。
しかも東京などの都心ばかりというわけでもなく、日本中の人口密度の高い場所で起きていた。
暴徒についてはテレビでは余り情報が流れていない。多分パニックを起こさないための配慮なのだろうが、幾らなんでも5日連続で既に大小含めて20件は起きている時点で「怪しい人には近づかないでください」は酷いだろう。
俺は暴徒騒ぎについて大して危機感を持っていない。まさか自分の周りで起きるわけないだろうと考えていたし、周囲の奴もそう考えていたからだ。
しかし、長年幽霊をやっている相棒は違っていた。
『何か情報が入っているかもしれん。調べてみよう。』
「オッケー。」
俺は司会者とどっかの学者が下らない意見を交わし始めたテレビから目を離すと、机に置いてあるパソコンを立ち上げた。
「今日は渋谷かぁ・・・・。段々とでかくなってってるな。」
『うむ。吾の感が当たっていたようだな。』
「はぁ・・・・・とりあえず、こっちに飛び火しないよう祈っとくか・・・。」
俺は三郎と話しつつ、目的の場所へと繋いだ。
目的の場所は2ちゃんの「暴徒について考えようスレ」。
この暴徒騒ぎが起きて10時間ほどで立ち上がったスレッドだ。最初は2,3人が常駐しているだけだったが、騒ぎが増えるにつれて段々と書き込みが増えていき、今では2つ目のスレに突入していた。
「さて、何か情報入ってっかな・・・。」
俺そう呟くとスレッドを開いた。
最新の書き込みは予想以上のことが書かれていた。
どうやら渋谷に偶然来ていた奴の中にこのスレを知ってる奴が居たらしく、現場で暴徒が騒ぎ出してからずっと実況中継をしていたようだ。
最初の方の書き込みを見ると、どうやら発端は女性のものと思われる悲鳴が聞こえてきたことらしい。
後から思うのだが、恐らくは携帯で書き込んでいるであろう彼はこのときに逃げるべきだったのだろう。そうすれば少なくとも今日一日はなにも知らずに済んだはずだ。
しかし、今そのようなことを告げる人物はおらず、また言ったとしても渋谷に居る彼は決して帰らなかったと思う。
このときは誰もなにも知らなかったからな・・・・。
書き込みを順に見ていくと、どうやら渋谷にいるハンドル名「安全第二」さんは悲鳴の上がった方へと向かっていたらしいのだが、段々と悲鳴は増えていき、終いには渋谷中から聞こえてくるようになったらしい。
「どういうことだ?」
俺は不思議に思った。まず女性の悲鳴についてだ。暴徒と言うからには街でただ暴れているだけかと思っていたのだが、これを見る限りそうではないようだ。
次に、悲鳴が段々と増えていったことだ。こういうときは一斉に行うべきではないのか? 何でこんな面倒なことを・・・。
「どう思う?」
右横で空中に寝転がっている三郎に尋ねてみた。三郎は感が鋭く、頭も俺より切れる。何かしらの答えを返してくる筈・・・。
しばらく黙って画面を覗き込んでいたが、やがて考えがまとまったのか、画面から目を離さずに俺に話しかけてきた。
『この暴徒だが・・・・多分途中からなんらかの方法で数が増えていっている。』
「・・・なんだって?」
暴徒が増えてる? んな馬鹿な・・・。
「・・・どういうことだよ。」
取りあえず話を聞いてみないとにはどうしようもない。俺は三郎に説明を求めた。
『普通集団で何かを行うなら事前に場所を限定しておく。でなければ同士討ちや暴れる場所が偏ってすぐに一網打尽にされる危険があるからだ。』
ここは分かる。幾らなんでもすぐに捕まるのは避けたいはずだ。
『次に・・・ここを見ろ。』
三郎が僅かに透けている手で指差したのは、書き込みのある一文だった。
「えっと・・・『悲鳴しか聞こえない。一体何が起こってるんだ?』・・・これがどうかしたのか?」
『気づかないのか? もし只の暴動なら、車やガラスなどが破壊されたりするだろうし、火災とて起きているかもしれん。なのに、ここには悲鳴のことしか書かれていない。』
「あ・・・!」
確かにそうだ。暴動の目的が何にしろ、そういうことは騒ぎが大きくなることが暴徒側の狙いの筈だ。ならば、火事や器物破損などを行った方が効率がいいはずなのに・・・。
「一体なんで・・・。」
『そこまでは吾にも分からぬ。続きに何か載っているのかもな。』
俺は三郎の話を聞き始めてから止めていた画面のスクロールを再会した。
「暴徒の数が増えてる・・・か。それって順番に暴れてるんじゃないのか?」
『そうかもしれんが・・・・どうも腑に落ちぬ。何か妙なモノを感じるのだ・・・。』
こいつの感はバカに出来ない。自信が幽霊なんてオカルトなものだからだろうか、随分と当たるのだ。
「・・・今回ばかりは外れて欲しいんだけど・・・。」
『吾に言うな。自分で操作できるものでは無いのだからな。』
ハァ・・・・。
俺はため息をついてから気持ちを切り替え、情報の収集に集中することにした。
「安全第二」からの書き込みは徐々に現在の時間へと近づいていた。
どうやら大通りにも暴徒が現れたらしく、「安全第二」は急いでその場に向かったらしい。
現場にもうすぐ着くとのレスが今から30分前に書き込まれたところで書き込みは止まっていた。
「結構間が開いてるな・・・。」
『十中八九暴動に巻き込まているな・・・。』
「・・・どうか無事で居て欲しいな・・・。」
俺はこれ以上有益な情報は望めそうにないと思い、パソコンを切ろうかと考えたとき、「安全第二」からの新着レスが来た。
「お、無事だったか。」
『・・・だが、この書き込みは何だ?』
三郎が怪訝そうな表情を浮かべて呟く。新しい書き込みは、どうにも本人がかなりパニックに陥っているようで支離滅裂なことしか書かれていなかった。
「なんだよあれ」とか「どうなってんだ畜生」などしか書かれていないのだ。
他の住人も「安全第二」の書き込みに困惑した様子らしく、しきりに続きを待っている。
次の書き込みは数分で書かれた。しかし、今度の書き込みはとんでもない内容だった。
「ち、畜生信じられねぇ!! 人が、人が人を食ってたんだぜ!!」
こんなものかなぁ・・・・。
続きは気が向いたら。多分今日中に一回くらい書くかも。
感想・批評・アドバイスなどあったらどうぞ遠慮なく。
392 :
本当にあった怖い名無し:2008/08/26(火) 01:15:11 ID:GYP+ZHq00
えぴそーど1
これは一体どうなっているんだ・・・・
街を見て愕然した昨日までは何もなかったのに
俺はマッケンリーただ普通の大学生しかしこれで
普通ではなくなってしまったとにかく友達の
マッコーのところに行ってみることに
しかし町中zombieだらけのみちを
簡単に行けるはずがなったあちこちで悲鳴や
銃声が聞こえている。しかし見る限り奴らは
そんなに俊敏でもないし集団でもないかぎり
なんとかかてそうだった。おれは大学で
アメフをやっていたから腕っ節にはかなりじしんがあった
清掃員の格好をしたやつがおれに向かってきたその顔は
今でも覚えている・・・・・・・
ゾンビが書いたという設定ですか、変わってて面白いですね
助けてくれ・・・・・。
後ろから「英語」や「国語」と書かれた紙を持ったゾンビが大勢迫ってくる・・・。
解答欄の部分が皆真っ白。しかもゾンビが「宿題〜。」って呟いてくる。
マジやばい・・・・orz
さて私的な叫びはこれくらいにして、続きなり。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その5
「人が人を食っている。」
この書き込みにこのスレはにわかに騒ぎ出した。
「嘘書くんじゃねーよカス」などと騒ぐ者。「何が起こったんだよ」とさらに詳しい情報を求める者。様々な反応を示していたが、皆驚いていることは共通していた。
次の書き込みには全員が知りたがっていた詳細が書かれていた。
それによると、「安全第二」は大通りの現場までたどり着いたらしいのだが、現場は警察官が封鎖しておりさらには野次馬も多く居たため直接見ることは不可能だと思ったらしい。そのまま立ち去ろうとしたとき、とんでもないことが起こった。
野次馬によって出来た人垣の向こう、現場の方で悲鳴が上がったらしい。
それを聞いて急いで現場へ目を向け、人垣の隙間から何とか現場を見ることができ、そして見たことを後悔したそうだ。
人垣の向こうの現場では警官が犯人らしき男と相対していたが、1人の警官の様子がおかしい。しきりに苦しそうな顔で左手を押さえているのだ。
どうしたのかと思いつつ、警官から暴徒らしき男へと視線を移す。
男は何をしたのだろうか、随分と血塗れだったらしい。男が着ていた作業服は所々血に染まっていて、特に口の周りにも血がこびりついていた。
そのとき、男の口がもごもごと動いた。何かを吐き出そうとしているようだ。歯でも折れているのだろうか?
男はゆっくりと口の中のものを吐き出した。
・・・それは人の指だった。
「ひ、ヒイイ!!??」「何だよアレ!?」「キャアアアア!!!!」
人ごみの先頭にいた人達は、暴徒の男は吐き出したものに悲鳴を上げていた。「安全第二」も悲鳴こそ上げていなかったが、呆然としていたそうだ。
それが普通の反応だと思う。そんな光景を見てまともに頭が働くのは少々頭のねじが緩んでいる奴だ。
「安全第二」はあることを考え、先ほどの左手を押さえていた警官の方を見た。彼の予想どおり、警官の左手は指が数本無くなっていた。
暴徒の男は警官の指を食い千切っていたのだ。
このとき、「安全第二」は現実感というものが感じられなかったそうだ。
何か、映画を見ているような感覚だったとのことだ。
しかし、次の出来事でこれは現実だということを無理やり認識させられたらしい。
ふらふらと突っ立っていただけだった暴徒の男が突然近くに居た警官に、両手を突き出すかのような格好で近づいていったのだ。
暴徒の男の歩行速度はお世辞にも速いとは言えなかったが、ゆっくりと警官へ近づいていた。
暴徒の一番近くにいた警官は同僚の指を食い千切った男に完全にびびっていたため、すぐに腰のホルスターから38口径リボルバー、S&WM37エアウェイトを抜いて構えた。
「ち、近づくな! これは警告だぞ!!」
しかし、男は自分に向けられた銃口にも反応を示さず警官に近づいていったそうだ。警官も腹を括ったのか、妙に据わっている目つきで男を見返した。
「く・・・警告無視。発砲する・・・!」
パン! という音とともに警官のM37から弾丸が発射された。
『警官が発砲するとは・・・・。』
「そんだけヤバイことになってたんだろ。」
三郎も警官からの発砲に驚いている。無理もない、日本の警察にとって拳銃とは「警告」ぐらいにしか使われない。つまりそれだけこの国は安全なのだと、態度で言っているのだ。
しかし、現実に起こったのだ。警官による、暴徒への発砲が。
「・・・何か続き読みたくなくなってきたな。」
『しかし読まなければならぬ。今更止めるのはいささか以上にダメだ。』
「分かってるよ。」
俺は険しい表情を浮かべたまま画面のスクロールを再開した。しかし、続きはさらに酷いものだった。
警官の撃った弾は暴徒の肩に直撃した。普通なら、痛みと衝撃でそれなりのリアクションをする筈だった。倒れたり痛みに声を張り上げたりと。
しかし、暴徒の男は軽くよろけただけで平然と警官の方へと歩いていくらしい。
「なっ、バカな!!」
警官の驚きの声は、続けて響いた銃声と野次馬の悲鳴にかき消された。
銃声は別のところから聞こえていた。「安全第二」が銃声がした方を向くと、何人かの警官がM37を手に止めてあるパトカーへと向かっているところだった。
彼等の前方には、おびただしい数の暴徒の群れが来ていた。
このとき、「安全第二」は新しく来た暴徒を、暴徒とは思えなかったと書いている。
暴徒は全員血の気が感じられない肌の色に、服に血がべったりとついており、一部の者を除いてほとんどがどこかに怪我をしていた。中には、腹部を抉られたのか内臓をはみ出しながら、それでも両手を前に突き出して警官達へと向かっていく。
その様子を見て、「安全第二」はある言葉を頭に思い浮かべたそうだ。
ゾンビだ・・・・と。
やっと・・・やっとゾンビが出てきました。
でも主人公が本物のゾンビと遭遇するのはまだまだ先です。
つーか気づいたらこんなに展開が遅くなってた。すんません。orz
いや、別にペース遅くもないよ。わりと特殊な登場人物設定だから仕方ないねw
>>368 自衛隊員による発砲は途切れる事なく続けられている。すぐにこちらからの視線を遮る様に
自衛隊のトラックが移動してきて直接見る事はできなくなったが、逆にそれが不安を煽る。周りの避難者もざわつき始めるが
それを見た隊員が数名こちらへやってきて何やら状況の説明してくれた。疲労と困惑を隠し切れない様子ではあったが。
・・・ここは安全ですから係員の指示に従い冷静に行動して下さい。避難先は十分な設備があり安全です・・・
・・・なぜ死体が(はっきりと言ったな)人を襲うのかは現在専門家が調査中で詳しくは・・・
事態は確実に沈静化しつつあり、他地域での暴動発生などのデマに惑わされない様に・・・
避難先が安全で事態が沈静化しつつあるのが「本当」なら朗報だ。携帯で見るニュースでは正反対の事ばかり流れていたが。
避難者の一人が彼等に問い掛ける「あんたら逃げてきた人ごと撃ってないだろうな?私の娘がまだ・・・」
自衛官の一人が避難者に答える「ご家族とはぐれたのはあなただけではないでしょう?今は辛抱して下さい」
口調こそ穏やかだったが一番肝心なとこに触れていない、しかし説明は不要だった。
暴徒に襲われながらもギリギリで公園内に逃げ込んだらしい人達が射撃を続ける自衛隊員達にこう叫んでいた
「おれたちは生きた人間だ!あんなバケモノじゃない!撃つのをやめてくれ!」
自衛官が逃げてきたその男の腕に噛み傷があるのを見ながら怒鳴り返す
「・・・見分けが付かないんですよ!ハラワタ引きずってる奴ばかりじゃなくアンタみたく噛み傷一つのヤツもいる!どうしろってんだ!」
見分けが付かない・・・思わず周りの人をジロジロ見てしまう。周りの人達も自分を見ているのが判る。
自衛隊が人を撃っていると言う事実より、すぐ横にいる人への疑心暗鬼の方が勝ってしまうのは自分だけではない様だった。
>>399 どうも。では今日はもう少しカキコするべや。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その6
『ゾンビ・・・だと?』
「嘘だろ・・・。」
ゾンビ・・・映画やゲームでちょくちょく見かける、死体が動いて生きた人間に襲い掛かってくるというやつ。さっきやってたゲームもそうだ。襲い掛かるゾンビの脳天に熱い弾丸を叩き込んで黙らせる。
しかし、現実にそんなことが起きるのだろうか。そして「安全第二」が見たのは本当にゾンビだったのだろうか。
彼(性別不明なので彼ということで)からの書き込みはここまでだった。何かあったのだろうか。
「安全第二」からの書き込みを待つ間、俺はテレビのニュースを見ることにした。
渋谷での暴動はまだ収まりがつかないらしい。県警からSATを出動するとの報告があったらしいが、もし「安全第二」の話が本当ならば、彼等もお仲間入りするのではないのだろうか・・・。
ゾンビに噛まれると、そこからウイルスか何かに感染してゾンビになる。そんなこと、今では子供でも知っている奴がいるくらいなのだから・・・。
「・・・どうやらホントにやばいみたいだな・・・。」
『ここは東京では無く愛知県の名古屋だからな・・・、どうなるかは全く分からぬ。』
「くそっ、せめて近所で発生しないよう祈るか・・・・てか祈ってばっかだな俺。」
『祈ることは別にいいが、行動も必要だぞ?』
「分かってる。」
三郎にそう返すと、俺は机の引き出しを開けてあるものを取り出した。
>>399 どうも。では今日はもう少しカキコするべや。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その6
『ゾンビ・・・だと?』
「嘘だろ・・・。」
ゾンビ・・・映画やゲームでちょくちょく見かける、死体が動いて生きた人間に襲い掛かってくるというやつ。さっきやってたゲームもそうだ。襲い掛かるゾンビの脳天に熱い弾丸を叩き込んで黙らせる。
しかし、現実にそんなことが起きるのだろうか。そして「安全第二」が見たのは本当にゾンビだったのだろうか。
彼(性別不明なので彼ということで)からの書き込みはここまでだった。何かあったのだろうか。
「安全第二」からの書き込みを待つ間、俺はテレビのニュースを見ることにした。
渋谷での暴動はまだ収まりがつかないらしい。県警からSATを出動するとの報告があったらしいが、もし「安全第二」の話が本当ならば、彼等もお仲間入りするのではないのだろうか・・・。
ゾンビに噛まれると、そこからウイルスか何かに感染してゾンビになる。そんなこと、今では子供でも知っている奴がいるくらいなのだから・・・。
「・・・どうやらホントにやばいみたいだな・・・。」
『ここは東京では無く愛知県の名古屋だからな・・・、どうなるかは全く分からぬ。』
「くそっ、せめて近所で発生しないよう祈るか・・・・てか祈ってばっかだな俺。」
『祈ることは別にいいが、行動も必要だぞ?』
「分かってる。」
三郎にそう返すと、俺は机の引き出しを開けてあるものを取り出した。
あ〜間違えてもた〜。重複してもた〜〜。
どないしよ・・・・。
>>404 そうするよ。気を取り直して続き。
引き出しに仕舞ってあった物、それは手製のボウガンだ。
暴徒が来たときに自分の身を守るため、俺は幾つか武器を用意しておいた。その一つがこのボウガンだ。
材料は学校で余っていた角材をちょろまかした。ウチの親父は今年で定年退職なのだが、仕事は機械関係のことをやっていた。おかげで作業に使う工具などの心配はせずに済んだ。
ボウガンは2日ほど徹夜することで製作できた。流石に連射はできないが威力は結構なもので、同じく角材から作成した矢(というより只の尖った木の枝)は見事に真っ直ぐに飛んで的にした木に半ばまで突き刺さっていた。
一応一つでは心許無いので再び徹夜をしてもう一つ作っておいた。
まだ武器を作る予定だが、いい武器が思い浮かばないので今の所これだけだ。
ボウガンを作った理由は、とにかく遠距離から攻撃できる武器が欲しかったからだ。
暴徒の所持している武器が分からない以上接近戦は避けたいと思ったのだ。
・・・・今更思うんだけど、こんなことしてる俺は危ないヤツかな。兄貴に黙々と矢を削り出してる所を見られたときに心底びびられたからな。
『少なくとも、準備を何もせずにいるよりはいいのではないか?』
「幽霊が心を読むな。」
俺は三郎に文句を言ってから、パソコンへと目を向けた。
パソコンには「安全第二」からの書き込みがあったが、内容はもうまともなことが書かれていなかった。
助けてくれ助けてくれもうダメだ奴らがドアの前に来て何度も叩いてくるいやだいやだ死にたくないしにたくないだれかだれかたすけたすかてたすけた・・・・・。
最早正気を保つので精一杯だったのだろうか。書き込みの後半はまともに書けていなかった。
「・・・・。」
『・・・・・。』
俺も三郎も何も言おうとは思わなかった。書き込みを見ていた住民の中には「悪質な悪戯」だと言っているヤツもいたが、俺にはとてもそう思えなかった。
「安全第二」の最後の書き込みからは、紛れも無い恐怖が感じ取れたからだ。
三郎も恐らく俺と同じなのだろう。険しい表情を崩さないまま、パソコンの画面を睨みつけている。
俺はこれ以上の情報は無いだろうと判断してパソコンをシャットダウンした。
「さて・・・どう思う?」
『・・・まだ判断材料が少ないが・・・・・ゾンビという敵も想定しておいた方がいいだろう。』
「ハァ・・・・やれやれ。」
せめて明日は平穏でありますように。俺はそんなことを思った。
今回は視点を主人公から幽霊の三郎に切り替えてみます。
え? 理由? 思いつきだけど?
『ふむ・・・・。』
私は考えていた。目の前のベッドで気持ちよさそうに眠っている護をどのように起こしてやるかを。
只今の時刻、午前8時00分。今日は平日で学校までは自転車で15分ほど。
歯磨きなどを考えればそろそろ起きなければ危険なのだが・・・・一向に起きる気配は無い。
このまま寝かせようかとも思ったが、流石に眠いからサボるというのはいかんからな。
さてと・・・今日は<騒音>でたたき起こすか。
俺は大きく息を吸い込む(呼吸をしているわけではないが)と、17年間見守ってきた寝ぼすけにありったけの大声をお見舞いしてやった。
『さっさと起きろ!!!!!!!!』
「!!??? なな何だぁ!!?? ってうお!!」
頭の中にいきなり大声が響いたので、護はベッドから飛び起きた。あ、ベッドから落ちた。しかも後頭部を強打したらしい。痛そうだ。
因みに、俺の声は元々こいつにしか聞こえない。しかも、本人に聞くと俺の声は頭の中に直接響くように聞こえるため俺が大声を出すと相当きついらしい。俺はこの起こし方を<騒音>と名づけた。
(〜〜〜〜!! 三郎! てめ<騒音>はやんなっつったろ!!)
一応家族が起きているので小声で文句を言ってきたが、涙目で頭を押さえながらではな・・・。
『仕方が無いだろう。時計を見ろ。』
「時計がどう・・・・・。」
今の時間を確かめた護の顔色が見る見る内に青ざめていく。今度は震え出したな。
「ち・・・・・遅刻だーーーーーー!!!!!!」
こうして、護の朝は始まった。騒がしいヤツだ・・・。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その7
「うおおお!!! 唸れ俺のマイチャリ!!!!」
『タイムリミットは8時40分。今は8時30分。ここからはどんなに急いでも10分以上は掛かるな。』
「言うなあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
吾が冷静に状況を分析してやったが、護は現実を振り切ろうとするかのように聞く耳をもたない。
『今更頑張ったところで無意味だぞ。寧ろ慌てすぎて事故に遭う方がまずい。』
「俺には何も聞こえーーーん!!!」
『・・・すぐそこの曲がり角から車が来るぞ。』
吾が忠告をすると、何も言わずに自転車を止める。
『・・・何も聞こえないのではなかったのか?』
「私ソンナコト言ッテナイアルヨ。」
・・・カタコトで言ったら誤魔化せると思うなよ。
吾がそんなことを思っていると、突然前方に妙な気配を感じた。
只の気配ではない。そう“妙な”気配なのだ。普通の人や犬などの気配は常日頃から感じている。なんとも思わない。
しかし、今感じた気配は感じたことのないものだった。
念のため、護に警戒を促す。
『護、前方に何かがいるぞ。』
「何か?」
『ああ。吾にも良く分からぬのだが・・・。』
「ちょ・・・お前がわかんないって・・・・おいまさか・・・・。」
護が警戒しているのは、昨日の暴徒に関する情報のためだろう。吾もそのことを考えているが、何分気配しか分からぬため、どうしようもない。
『・・・・用心しろ。気配は動いていないが、進路上にいる。このまま行けば確実に道端でぶつかり、ロマンスが始まってしまうぞ。』
「ロマンスはぜってー始まんねーだろ。」
吾の冗談に適当に返しつつ、護はそのまま気配に近づいていった。
今回は視点を主人公に戻します。
いちいち視点を変えると分かりにくいって人は言ってください。
俺は三郎からの忠告を胸に、普段使っている通学路を走る。恐らくこのまま行けば三郎が警戒しているモノに出会うだろう。
不思議と避けようなどとは思わなかった。
『護・・・。』
その時、さっきから一言も喋らず気配に集中していた三郎がいきなり声をかけてきた。
理由は既に俺の目線の先・・・30メートルほどに見えていた。
俺は黙って自転車をその場に止め、前に歩いていく。その間に、一応三郎に確認をとっておく。
「三郎・・・・アレか?」
『ああ、間違いない。先ほどの気配はヤツからだ。』
そう言うと、三郎は普段は滅多に見せない氷のような冷たい視線を、10メートルほどまで近づいたそいつへと向ける。そこには、スーツ姿の男が何をするでもなく立っていた
三郎が警戒しているそいつは、何故か「止まれ」の標識をじっと見つめていた。標識はそいつより向こうにあるため、俺は後ろ姿しか見ることができない。
しかし、俺の鼻はキツイ匂いを感じていた。くそ、何だこの匂い。
だがそんなことに構っている暇は無い。危険だが取りあえず話しかけてみないと・・・。
「三郎。念のため<憑依>しといてくれ。」
『分かった。』
三郎が俺の体に<憑依>し、万一に襲われたときにも対応できるようにすると、俺は男へ話しかけた。
「すいません・・・・そこで何やってんですか?」
男は声をかけられてようやく俺の存在に気づいたらしい。ゆっくりとこちらに振り向いた。
「・・・・え?」
『な・・・・。』
男の顔が完全にこちらに向かれるのと同時に、俺と三郎は言葉を失った。
男の顔は完全に血の気が無く、両目が無くなっていたからだ。
眼球の無くなった眼窩から涙のように血を流す男を見て、俺は2つのことを悟った。昨日の書き込みは本当だったことと・・・。
さっき感じた異臭は、腐った肉の匂いだということを・・・・。
流石にこれは困惑を隠せそうにない。まさか本当にゾンビがいるとは誰も思わないからだ。
うおおお・・・・・・。
男はうめき声のような声を出しながら、俺に掴みかかってきた。男に声をかけるため近づいていたのが仇となり、俺は男に捕まってしまった。
捕まる直前、すぐに外せるだろうとたかを括っていたが、それは大きな間違いだった。
「くっそ・・・・! 何てバカ力だ・・・!!」
男の力は予想外に強く、捕まれている両肩には激痛が走るほどの怪力をかけられている。
(何だこの怪力は!? 今の俺ならともかく、普通の人間が出せる力じゃねえ!!)
『護まずいぞ!! 噛み付いてくる!!!』
三郎の言葉どおり、ゾンビ男の口は大口を開けて俺の首筋へと近づこうとしていた。
ヤバイ、噛まれるのは危険だ!
「このクソゾンビが!!!」
俺は全力の力を解放すると、ゾンビ男の胸倉を掴んで思い切り後ろへとぶん投げた。
「オラァァァァァァ!!!」
ゾンビ男は噛み付く暇さえもらえずに、近くの家屋の壁に背中をぶつけた。
普通なら衝撃でしばらく息が出来ず、起き上がれないはずだが俺は一切警戒を怠らずに地面に崩れ落ちたゾンビ男を睨んだ。
うああああ・・・・。
案の定、ゾンビは平気で起き上がってきやがった。くそ、やっぱ映画みたいに脳を破壊しないとダメか・・・。
とは言っても・・・・今の俺はほぼ丸腰だし、<憑依>で身体能力が軒並み上がってるからある程度の無茶は出来る。けど、流石に素手で頭蓋骨潰すのは無理だ。
「どうすっかな・・・・。」
ぶっちゃけ、俺には有効な手立てが思いつかなかった。
だが、こんなときにこそ俺の相棒は活躍してくれるのだ。
『護、ベルトだ、ベルトを使え!』
三郎からの助言に、俺は武器になりそうなものが手元にあることに気づいた。
急いでズボンからベルトを外す。幸い、ズボンのウエストは大きくなく、ベルトを外しても平気だった。
おおお・・・・。
そうこうしている間に、ゾンビはいつの間にか立ち上がり、俺の方へと近づいてきていた。
走ることなくよたよたと歩いてくるゾンビに、俺は不適な笑みを見せてやった。
「これでも受け取りな!!!」
俺はベルトの先を持つと、ゾンビ向けて思い切り振り回した。
・・・正直に言おう、外した。
いやだって、ベルトなんか振り回した経験なんて俺には無いよ? それでぶっつけ本番でぶん回したら、普通外れる確率高いだろ。
本気の力で振り回したベルトのバックルが、ゾンビの頭上をかすめたときには正直焦ったな。あ、やべって思った。
『んなこと言ってる場合か!!』
「分かってるって!!」
無論、それくらいで食われるほど、俺はアホじゃなかった。
俺は外した勢いを殺さずにそのまま体を回転させ、遠心力を加えて威力をアップさせた。
そして今度こそ、ゾンビの側頭部にバックルを叩き込んでやったんだ。
鈍い音が響き、ゾンビはまたも地面に倒された。しかし、今度は弱点の脳にダメージが入ったためかもう起き上がることはなかった。
ようやく倒せたが、静かに地面へ広がっていくゾンビの血を見て、俺は彼が本当にゾンビだったのかと今更ながらに思った。
『やれやれ・・・鞄は自転車の籠に入れておいたのは正解だったな。』
「だな。・・・・にしても、ホントにゾンビだったのか・・・?」
『今更気にすることではないだろう。それに・・・・最早そんなことも言っていられなさそうな。』
「? どうかしたのか?」
俺はいつの間にか<憑依>を解いて宙に浮いていた三郎を見て、俺は尋ねる。
三郎の表情がいつに無く険しいものになっていたからだ。
『・・・先ほどそのゾンビから感じた気配だが・・・・いつの間にか、そこら中から同じ気配を感じる。』
「!? そんな・・・・嘘だろ!?」
しかし、俺の否定する声が響くのと同時に、どこからか悲鳴が聞こえてきた。
「!? おいマジかよ!」
悲鳴のした方へ目を向けるが、この辺りはアパートや一戸建てが多く立っているところだからどこから悲鳴が聞こえたのか分からなかった。
だが、その悲鳴のお陰で俺はゾンビが本物だったと確信した。
『・・・これからどうする・・・?』
「・・・正直、学校へ行くか家に戻るか迷ってる・・・。」
学校に行けばクラスメイトを助けることができるだろうけど、人が多いからゾンビに囲まれる危険がある。
家には親父がいるからなるべく早く帰りたいけど、今学校に行かないと確実にクラスメイトは誰も助けられない・・・・。
どっちに行くべきか・・・・。
ちょっとここで皆さんに聞きたいことが。
作中で書いたように、主人公は学校か自宅のどちらかに行きますが、どっちに行かせた方がいいでしょうか。
正直、作者はどちらがいいか迷ってます。
個人的には友より肉親を失う方が嫌だな・・・・
学校に向かうと既に手遅れでクラスメート全滅。家に逃げ帰るとオヤジが死んでる展開だな。
というかたどり着くことすら出来ないのも良いかも。
>>414さん
むうう・・・やはり家族を優先させますか・・・。
>>415さん
ちょ・・・両方バッドエンドはきついですよ・・・・。
あ、でもたどり着けずにどこかに立て篭もるってのは考えてました。
作品アップするのはもう少し待ってみます。あと、「こういう展開もありじゃね?」ていうのがありましたら教えてください。
参考にします。
とりあえず、同じように他人には感知出来ない憑依霊をが相棒の美少女と出会う、、、
その憑依霊は美しいツンデレ姫君で三郎がメロメロ、、、
そして食われる。
>>417 オウシット! その手があったか!
いや霊感のある少女を相棒にってネタは考えたんですが、その手もあったか・・・くそう・・・・。
>>418 食われるかぁ〜〜〜・・・。やっぱ助けた美少女に・・・・いや、幽霊のゾンビを出してそれに・・・無理か。俺では理由が作れそうに無い。orz
今日一日は見るだけに留めて、明日ぐらいに決めます。
・・・でも417さんのアイデアは魅力的ですから使わせてもらうかも・・・。
>>419 美少女はボーイッシュな、最初は主人公もイケメン男だと思ってたみたいな設定とか。
美少女に憑依してるときに齧られて、、、
憑依すると、同時に憑依先の霊力の影響を強く受けるので憑依先がゾンビ化すると
霊であっても狂ってしまう、という理屈とか。
あるいは、少女が齧られてゾンビ化してしまいそう!
幽霊の力で死亡は防げたが凶暴化はとめられない、なんとかしないと!!
知り合った少年が何やら不思議な力を持っていそうなんだが、、、
(シックス・センスの理屈で幽霊同士は互いに認知できないという設定;
三郎には何故か見えてるんだが姫君幽霊には三郎が見えてない、というご都合主義)
美少女を救うべく必死に少年にアプローチする姫幽霊の悪戦苦闘の物語。
甲斐あって三郎の力を借りて全霊力で彼女を救うが、そのために力を使い果たして
昇天してしまう姫君、という悲しい結末。
俺って天才文豪?
つか主人公&変な幽霊のコンビってなかなか使い応えのある、いい設定だねww
ふひひ、その辺はやりすぎるとゾンビ物でなくなるぜ。
なんつーか、敵役がゾンビな異能者バトル。
ゾンビなら「君は愛するものを撃てるか」
閉鎖空間に追い込まれ、ジリジリ追いつめられていく心理状態。
どー考えても絶望しかないけど僅かな希望の光をたよりに終わり無き逃避行ときたもんだ。
馴れ合いが過ぎる気がするぞ
変なのが来る前に少し自重したほうがいいと思う
そんだけ。消えます。
>>420 なるほど、いいアイデアですな。
>>421 確かにそうですね。あ〜でも、折角作った幽霊という相棒を何とか生かしたいという気持ちもありますから、そこら辺は良く考えないと・・・。
>>422 む、嵐さんとかのことですか?だとしたら少々自重すべきでしょうか。
・・・結局一日経っても決まりません。もう少し考えてみます。
いよし、決めました! 学校行かせます!!
理由は2つ。私が高校生なのと、学校に行かせたほうが色々書けるので。
・・・意見聞いた意味無い、とかの突っ込みはなしで・・・いやほんとに・・。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その8
「・・・学校に行こう。今からだとそっちの方が近い。」
俺はクラスメイトを優先することにする。
『その方がいいかもしれんな。後ろから来る連中は数が半端なく多いぞ。』
「それ先に言えよ! 今凄い無駄な時間使っちゃったよ!!」
『気にするな。それより、家族はどうするのだ? 確かお父上は足が悪くなってる筈だろう。』
「連絡入れとく。一応携帯はあるからな。」
俺は自転車の籠に入れてある鞄から携帯を掴むと、自宅へ連絡する。
何回かのコール音の後、電話口に親父が出た。どうやらまだ暴徒・・・いやゾンビは自宅まで来てないらしい。
{はい、もしもし?}
「父さんか? 護だ。」
{護か? 何でまたこんな時間に・・・さては警官に捕まったのか? だからあれほど独り言は止しとけよ・・・。}
「今はそんなことどうでもいいんだよ!・・・いいから、今すぐ一階の窓とか扉とか全部に鍵掛けてくれ。すぐにだ。あと、家族皆にいつでも逃げれる準備しとけって言っといてくれ。」
{一体どうした?}
・・・ここで本当のことを言っても信じてもらえないな・・・。
取りあえず、当たらずとも遠からずなネタでごまかすことにした。
「・・・最近暴徒が話題になってるよな? それに襲撃されたんだ。」
{な!? お前大丈夫か!?}
「何とか。つーわけで、家の中封鎖しといてくれ。しばらくしたら帰るから。あと、家族以外は誰も中に入れないでくれ。暴徒かもしれない。」
{わ、分かった。気をつけろよ。}
最後に心配そうな返事を残して、親父は電話を切った。
これで自宅は大丈夫かな・・・。兄姉の方は親父に任せたし、これ以上出来ることはないな。
「それじゃ、学校まで突っ走るか!」
『ナビは任せろ。』
俺は自転車に跨ると、全速力で学校へと向かった。
さ〜て、それでは学校編始めます。
あ、今回から適当なときにつけてたタイトルを毎回つけることにします。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その9
「おいおいマジかよ・・・。」
『これは少々酷いな・・・。オチが。』
不謹慎な事を言っている相棒をシカトして、俺はたった今到着した高校へと目を向けている。
親父に連絡を入れたあと、俺は自転車をほぼ立ちこぎオンリーで突っ走りここまでノンストップで到着できた。
まぁ、ゾンビは何体かいたけど、スルーしたよ。相手にしてたらキリが無かったし。
そして今、決死の思いでたどり着いた学校は・・・・。
『・・・校庭はゾンビの集会場になっているな。』
そう、学校は既に壊滅していた。正門の前にいるんだが、そこにも男子生徒の成れの果てがうろついている。余程食いつかれたのだろうか、正門の近くをうろついている彼の学ランはボロボロで所々に食い千切られた跡があった。
「素敵な情報ありがとう。ついでに一発殴らしてくれ。」
『幽霊だからな。無理だ。』
誰か幽霊殴る方法教えてくれ。もしくは何か苦痛を与える方法。
そんなことを考えてしまうくらい、俺の気分は最悪だった。
「くそ、もっと早く着いてりゃ・・・。」
後悔が俺を襲う。最早クラスメイトの生死は火を見るより明らかだ。何もかも手遅れの状況に、俺は気づかずに歯を噛み締めていた。
だが、こんなときに俺を支えてくれるのが三郎だった。
『今更言ったところでどうしようもないぞ。それより、来るぞ・・・。』
感情の感じられない三郎の声に、俺はハッと前を見た。
先ほどまでその辺をうろついているだけだった男子生徒のゾンビが俺の方へ近づいていたのだ。
呻き声を上げて近づいてくる彼を見て、心中に悲しみと悔しさが同時に襲ってきた。
しかし、俺もこんなところで死ぬわけにはいかない。家族を守らないと。
自転車から一旦下りて方向転換させて逃げようかと思ったが、三郎がそれを止めた。
『護。今通ってきた道からゾンビの気配が恐ろしいほど大量に感じるぞ。』
「くそ。退路は塞がれたか・・・。」
『・・・どうやら反対側からも来ている様だ。これでは挟み撃ちだな。』
「うええ!!?マジかよふざけんな!!」
このままじゃ追い詰められる! 何とか侵入だけでも防がねえと・・・。
>>427 速攻でタイトルつけるの忘れてたー!!
ええい、気にしないでおこう!
ゴースト・アンド・ザ・デッド その10
『学校の封鎖か・・・それは吾が考えよう。今は目の前の障害をどうにかするべきだ。』
「と・・・そうだな。」
三郎から言われ、俺はゾンビの相手に集中することにした。
といっても、武器を持たない俺にできることなどほとんど無く、まずは武器を手に入れることが先決だな。
素早く自転車に乗ると、一番近くにいる男子のゾンビが熱い抱擁を求めてきた。無論、俺は男に抱きつかれて喜ぶ趣味はないため、蹴りを代わりにくれてやったよ。
ゾンビが地面に転がってる間に俺は自転車を走らせ、正門に入ってすぐにあるグラウンドへの道を曲がり、野球部の備品が置いてある場所へ自転車を向けた。
・・・入ったときの前輪の角度をミスったらしい。地面のでこぼこにより、俺の愛車は見事に滑り、俺は無様に地面に転がることになった。いってぇ!!
『何こんなところでドジをしてるんだ! 男がドジなんかしてもつまらんぞ!!』
「もう少しまともないたわりをしやがれ!!」
三郎からの酷い文句に悪態を返しつつも、俺は素早く起き上がりダッシュで野球部の備品置き場へ向かう。
余り大きくないプールの横にある備品倉庫までたどり着くと、俺は倉庫の扉に手を掛けた。
正直鍵がかかっているだろうと思っていたが、予想に反して倉庫の鍵は掛かってはおらず、不審に思いつつもそのまま扉を開けたのだが・・・。
「うおわぁ!?」
『護!?』
現実はそう甘くはなかった。倉庫の中に1体潜んでいやがったのだ。思わぬ奇襲に俺はろくな対処もできず、そのままゾンビに押し倒されてしまった。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その11
またも地面に転がる羽目になったが、今度は危険度が段違いだ。何せ、俺の体にゾンビが乗っかってて臭い息と体臭を存分に嗅がせてくるからな。
しかも、さっきみたいに<憑依>された状態ではないので、ゾンビを振りほどくこともできない。
今は噛み付こうとしてくるこいつを抑えるのが精一杯。しかも余りの怪力にゆっくりとだがゾンビのバカみてぇに開かれた大口が近づいている。
「くそ・・・・! ちったぁ力緩めろよ!」
『護!!』
三郎が叫んでいるが、あいつではこの状況はどうすることもできない。こんな状態じゃ<憑依>は危険すぎてできないし、どうすれば・・・!
俺は何か無いかと必死に目を周囲に向けるが、武器になりそうなバットは手の届く場所には無く、手の届く範囲にも大したものは無かった。
そのとき、左足に何か固いものが当たった。少し顔をずらして確認すると、硬式ボールが足に当たっていた。
! これだ! 俺は咄嗟に脚を動かしてボールを蹴り、手が届く場所まで近づける。
右手でゾンビの首を掴み少しの間だけ片手で持つようにすると、左手を硬球へと伸ばす。
右腕に掛かる圧力が段々ときつくなっていく中、俺の左手は念願の硬球を掴んだ。
硬球を落とさないようしっかりと掴むと、俺は残っていた力を全て使うつもりで右腕に力を込め、ゾンビの口がこれ以上近づかないようにした。
「手前はこれでも食ってやがれ!!!!」
そして俺は、左手の硬球をゾンビの口へ突っ込んでやった。実際には、ねじ込んだんだけどな。
硬球ってのは固い。んなこと誰でも知ってることだ。だからと言って武器には使えそうにない。そこまでの硬さはないからだ。
だから、俺は武器としては使わずにゾンビが噛み付けないようにするために使ったのだ。
硬球をねじ込まれたゾンビは突然口の中にボールなんかが入って驚いたのか、動きを止めた。
それを見逃すわけが無かった。俺は素早く両手でゾンビの肩を掴み、力を込めて横へ押しやる。
今度はゾンビがなすすべも無く地面へと倒される番だった。うーうーと呻きながら、ゾンビは口の中の硬球を何とかしようとしているらしい。しかし、手を使って取り出すということが考えつかないのか手をばたばた振り回すことしかしない。
こいつ等、知能はほとんどないのか?
しかしそんなことを確認する余裕はないらしい。
『護急げ!!段々と集まっているぞ!!!』
三郎の大声で、俺はグラウンドと校内、双方からゾンビの団体が集結してきていることに気づく。
「おもてなしはいらねえんだがな。」
冷静さを保つため、俺はあえて軽口を叩きながら備品倉庫の中に入る。
倉庫の中にはバットやグローブなどの野球器具の他に、何故か千切れた腕が無造作に落ちている。先ほどまでゾンビに齧られていたのか、損傷が激しく骨まで見えている。
俺はそれをなるべく見ないようにしつつ、使えそうなバットを2本ほど拝借するとすぐに外へと出る。
硬球を突っ込んでやったゾンビは、既に立ち上がっていて、白く濁った目を俺に向けている。
流石に何度も倒されるのはごめんなんでな。相棒とタッグマッチにさせてもらうぜ。
「三郎!」
『おう!!』
俺の呼びかけに答えた三郎は、すぐに<憑依>を行って俺の体の中へと消えていった。それと同時に、両手に持ったバットの重みを感じなくなり、体が軽くなったかのように感じる。
さてと・・・それじゃ、暴れますか!
乙!
でも必死で咄嗟だったとはいえボールをゾンビの口に押し込むのって危険で勇気がいると思う、、
野球部の倉庫ならコンダラのような野球道具らしいものを使わないとw
>>431 コンダラって何だっけ・・・? 兄貴が横で何か歌ったんだけど、全く思い出せない・・・。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その12
「オラァ!」
俺の気合の声とともに右手に持った金属バットが、風を切るような音とともにゾンビの頭頂部へと叩き込まれる。
既に1体倒していた俺には、躊躇なんて言葉は浮かばない。本気ではないがそれなりの力を込めてバットを振り下ろす。
バットはわりと簡単にゾンビ頭蓋骨を叩き割り、脳が出たりすることは無かったが流石に血が出るのは避けられなかった。といっても血流が止まっているのか大した量は流れなかったが。
因みに、銜えられていた硬球はバットで殴られた圧力により吐き出されていた。今頃取れても意味無いけどな。
ゾンビが地面に倒れていく間に、俺はそいつの横を通ってもと来た道へと引き返していた。しかし、既に自転車の近くに5・6体のゾンビがたむろしている。俺には気づいていないようだが・・・。
「さて、どうする三郎?」
俺は左手のバットで肩を叩きつつ、俺は三郎に尋ねた。
一応逃げるだけならゾンビが密集していないグラウンドから逃げられるのだが、長年の直感から三郎の意見を聞いておくべきだと思ったのだ。
『護。あそこのゾンビを抜けて正門に向かえ。』
あそこのとは多分俺の自転車に執拗に蹴りを入れている連中のことだろう。俺のチャリに恨みでもあんのか。
「理由は?」
『大量のゾンビがここに迫っていることは先ほど伝えたな? だが、今開いている門を全て閉めれば・・・。』
「侵入は食い止められるってか。なるほど。」
流石、相棒はきちんと見てるね。ここは学校を塀で囲ってあるし、門さえ閉めれば何とかなるな。
「確か・・・朝は正門と西門が開いてるはずだったな。そこを閉めればいいか。」
『ああ。一応脱出についても考えてあるから、そちらの心配はいらんぞ。』
・・・俺の考えもお見通しかよ・・・。
「やれやれ・・・そんじゃ、俺の自転車を蹴ってる不届き者を軽くぶちのめすか。」
そう言うと俺はゾンビ達へと向けて走り出した。
一気にゾンビどもとの距離を詰めたが、バットで殴っていくにはゾンビたちが密着しすぎていた。これじゃ殴ってる間に噛み付かれる!
騒思った俺は、一番手前のゾンビが俺に気づいた瞬間にジャンプでゾンビの頭上へと飛び上がる。しかも、ただジャンプするのではなくゾンビの頭を思い切り蹴り付けたのだ。
コンクリに平気でヒビを入れる俺の蹴りを食らい、蹴られたゾンビは俺の足の裏に嫌な感触を残して地面に倒される。
俺は蹴り付けた勢いを利用してそのまま一番離れているゾンビへと向かっていく。
「いよっと!」
空中で体を回転させ、両手のバットを振り回して2体のゾンビを殴りつける。踏ん張りが利かない空中での攻撃だったが、回転による遠心力で威力が上がっていたため何とかゾンビを転がすぐらいはできた。
しかし、流石にいつまでも飛んでいられるわけじゃない。そこで地面に着地してしまう。残っていたゾンビ2体が左右から、あと1体が前から襲い掛かってきた。
「甘いぜ!!」
こんなので俺は殺れんぞ! 俺はまず2本のバットを左右に思い切り突き出し、横2体の額にバットを叩き込む。
ゴシャ、とかいう音が左右からしたが、俺は完全に無視してバットを左右に突き出したまま体を屈めた。
屈んだ俺の頭上にゾンビの両手が通り過ぎると、俺はトラバサミよろしく2本のバットで頭上にあるゾンビの頭を挟み込んだ。
・・・今まで生きてきた中で一番思い出したくない音が俺の耳に飛び込んでくる。うわ、見なくて良かった。
『こ、これは酷いな・・・。』
三郎が何か言ってるようだけど、俺には聞こえない。聞こえないんだ。
頭に掛かった返り血に顔をしかめつつ、俺は立ち上がって正門の方へと向かった。
・・・自分が殺した奴らをなるべく見ないように気をつけつつ・・・。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その13
「正門には・・・よし、いねえな。」
『急げよ。正門側から来る連中との距離は大分近いぞ。』
「分かってるよ。」
俺は門に近寄るとすぐに門に手を掛け閉める。今は<憑依>で腕力が強化されているため簡単に閉めることができる。
門を閉め終わると同時に、正門前の道にはゾンビが集まり始める。その内の何体かが門を叩いたり体をぶつけたりするが、自身の腕や体を傷つけるだけにしか過ぎない。
しかし、そんなことは構わないかのように何度も門を叩き続けるゾンビ達。彼等も元は人間だったはずなのに、何でこんなことに・・・。
「・・・今はそんなこと考えるときじゃなねえな。」
俺は気を取り直すと、一旦<憑依>を解除した。これ以上の連続使用は体に負担がかかるからだ。
『次は西門か。ここからは少し離れているな。』
「チャリ取って来よう。歩きじゃきつい。」
つーわけで、チャリのところまで戻ってみたんだが・・・・。
「・・・・。」
『見事に壊れているな。』
どうやらゾンビ達の蹴りが予想以上に強力だったらしく、ブレーキペダルにチェーンなどの重要部分がいくつも壊れていた。
「俺のマイチャリが・・・。」
しかもここから歩きかよ・・・・。
『まぁ、アレだ、諦めろ。』
「他人事だなおい・・・。」
自転車を諦めた俺は、自分の足で西門へと向かうことにした。そのときに三郎とは一旦別れ、三郎には他に開いている門、脱出路、生存者の確認をしてもらうのだ。
俺はその間に門に向かった。無論ゾンビがいなかったわけではないが、連中は腕力以外は大したことはないので、バットで転がしたり避けたりして極力時間と体力を掛けないようして、無事西門までたどり着いたのだが・・・。
「ふう・・・。やっぱそう上手くはいかないよな。」
俺は西門を見てため息をつく。門の近くでは、血の滴る手足を掴んだままのゾンビが10体ほどうろついていた。
幾らなんでも10体のゾンビと喧嘩をかませるほど、俺には知恵も勇気も無い。<憑依>状態でも微妙だろう。
さらに悪いことは続く。西門は正門のように大きなスライド式の門ではなく、校内側に引いて開く門だったのだ。これじゃ鎖か何か無いと閉められない。
「どうすっかな・・・・。」
俺の手持ちは、武器のバット2本。鞄はチャリと一緒に置いてきて、ポケットには携帯と長めのハンカチ。
・・・ゾンビ相手にコレはねえだろ。せめてボウガンがありゃ大分楽になるんだが、学校になんか持ってけないからな。
確か鎖と南京錠がどっかにあった筈なんだけどな・・・。どこにあるかな・・・。
一応大事なものなんだし、職員室か? もしくは用務員室かな。どっちにしろ、校舎内に入るしかないな。
この学校は3つの校舎がある。一つは各学年の教室がある<教室棟>。西門から一番近く、俺が体を隠している建物がそうだ。
次に、職員室が一階にある<職員棟>。正門からが一番近く、職員室の他に図書室などがある。
最後に、滅多に人が近寄らない<旧校舎>。大分古いのだが、ここにしかない部屋があるため中々取り壊されない。
用務員室は職員棟の一階、職員室も同じく職員棟の一階にあるためそれほどの手間にはならないはず。ただ、建物内は狭いからなぁ。戦闘になるときついんだが・・・。
「ま、行くしかないか。」
そして、俺は職員室へと向かった。
今日はこんなもんでしょうか・・・。
そういえば、先日ゾンビに追いかけられる夢を見ました。
今まで見たことなかったんで嬉しかったですが、夢の中では走るゾンビから逃げるために全力疾走してた気がします。
夢の中ではマジで怖かった。やっぱ現実になったら嫌ですね。
乙です。
コンダラってトンボのローラーバージョンのことかな?。
アニメ巨人の星のOPの歌詞『思い込んだら』の場面に出てくるローラーを見て『重いコンダラ』と勘違いしたとこから拡がったと中学の時の先生が言ってたような。
>>437 そうなんですか? 私はもう思い出すの諦めてたんですが・・・・。
それでは続きを。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その14
校内に3つある3階建ての校舎、その内の職員棟に入った俺は真っ直ぐに職員室を目指す。
といっても、俺が入ったところから職員室まではほとんど離れておらず、簡単に職員室にたどり着いた。
因みにまだ三郎とは合流していない。何かあったのだろうか?
邪魔なため、バットを1本ベルトに挟みこみ、右手にもう1本のバットを構えつつ入り口のドアを少しだけ開けて、顔を突っ込む。前方・左右を確認して見るが、ゾンビは1体もいない。
警戒心をむき出しにして俺は中へと入っていく。
中に入って改めて確認するが、慌てて逃げたためか散乱しているプリントや逃げ遅れた先生がやられたのか床に血痕が残っているだけで、死体の1つもなかった。
俺は鎖と南京錠を見つけるため、取りあえず各教室の鍵が保管してある棚へと向かう。
棚を開くと、「工作室」や「実験室」などと書かれたタグのついた鍵はあったが、肝心の鎖と南京錠は無かった。
ただ用務員室の鍵が見つかったのでそれをポケットに入れておいた。
「ここじゃねぇのか?・・・仕方ない、用務員室に行くか。」
中々思うようにことが運ばず、やや肩を落としながら職員室を後にしようとする。
その時、部屋の掃除道具が入っているロッカーから物音が響いた。
「!?」
即座にバットを構えてそちらを向くが、ロッカーには変わったところはなかった。
空耳か?と俺が疑問に思っていると、またもロッカーから音が響く。
今度はしっかりと見ていたため、幻聴などではないと確信する。
ロッカーに足音を立てないようゆっくりと近づくと、扉に手を掛ける。そのまま開こうとしたが、どうらや鍵が掛かっているらしい。
近くに鍵がないか探しつつ、ロッカーへと声をかける。
「おい、人間か?」
俺が呼びかけると、ロッカーは勢いよく開き、中からゾンビになった女子が飛び出してくる。
「! ちぃぃ!!」
俺は咄嗟に両手でバットを持ち、ゾンビの前にかざす。バットを振るには近すぎたためだ。
ゾンビはバットに阻まれて俺に噛み付けなかったが、俺のバットを掴んでもぎ取ろうとする。
(くそ・・・!バットはくれてやるしかないが、この距離じゃ腰のバットは抜けないしな。仕方ない。)
俺はバットを放した。ゾンビは俺のバットを掴んだままこちらに向かってくる。俺はゾンビの胸倉を両手で掴みながら後ろに倒れていく。
ゾンビもこちらに向かってきていたから一緒に倒れていき、俺の背中が床に当たる寸前に、俺は脚を跳ね上げ、ゾンビを後ろに蹴り飛ばした。きちんと両手で後ろに行くのを手伝うオマケもつけてな。
俗に言う「巴投げ」の要領で、俺はゾンビを投げ飛ばしてやった。
ゾンビは教員の机に投げられ、机の上のものを巻き込みながら落下する。
俺は素早く立ち上がると、ゾンビが机の上でもだえている間に腰のバットを抜いて、ゾンビへと振り下ろす。
女子のゾンビが2度と起き上がらないよう止めを刺すと、俺は疲れで床に座り込んでしまう。
「ああくそ・・・いい加減疲れたぜ・・・。」
恐らく今殺した女子のゾンビは、誰かにロッカーに入れてもらったのだろう。救助が来るまで安全だったはずが、彼女はゾンビに噛まれていて、中でゆっくりとゾンビになっていく羽目になったのだろう。
いくらなんでもこれは酷いぜ神様・・・。
「はぁ・・・いつまで続くんだよ・・・・。」
弱音を吐きながら、しばらく動かずに三郎を待つことにした俺だった・・・。
乙
ゴースト・アンド・ザ・デッド その15
職員室の床に座り込んでいると、不意に足元に影が差す。何事かと思い顔を上に向けると、目の前にゾンビがいた。それだけなら、別段驚くことではないのだが・・・。
「な・・・!」
俺を見下ろしているゾンビは、たった今殺した女子のゾンビなのだ。
「そんな・・・今殺したはず・・・・!!」
俺が驚いていると、女子のゾンビの後ろにある外へと続くドアから何体ものゾンビが現れてくる。その全てが、俺が殺したゾンビばかりだ。
「よ・・・く・・・も・・・・。」
頭を潰されている女子のゾンビが、俺に向かって怨嗟の言葉を吐きながら俺に手を伸ばしてくる。
「こ・・ろ・・し・・た・・な・・・・。」
バットで頭を挟んでやったゾンビは俺の肩を掴んで離さない。
「ナ・・ン・・デ・・イ・・キ・・テ・・ル・・・・。」
「うあ・・・あ・・・・。」
俺は何もできない。彼等は自分が殺したのだから。彼等が自分を殺すのは当然のことなのだから・・・。
誰かが俺の喉に噛み付いている。良く見ると俺が最初に殺害した男だ。どうやら俺はこいつに食われるらしい。
生暖かいものが俺の顔にかかる。赤色のそれを見て、俺は酷く笑いたくなった。
ははは・・・世界が真っ赤だ・・・。
『・・・い!・・・きろ!・・・おい!」
「う・・・・。」
あれ・・・。三郎・・・?
『どうした? 随分とうなされてたぞ?』
「・・・なんでもない。」
どうやら寝てたらしい。夢で良かったぜ全く・・・・。
乙なんだが投稿はまとめたほうがいい希ガス
他の書き手の人が割込みを気にして遠慮してしまうかもなんて思った夏休み最後の夜
>>442 うおっマジっすか?
もしそうだったら気をつけます。すんません。
テンプレくらい読もう
久しぶりに来たら、
リレーも連載している作家さんもいい感じじゃん。
ひげ男爵さんのは新鮮だなw
ライトノベルっての読んだことないけど、こんな感じかな。
3つほど投下します。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その16
『本当に大丈夫か? 顔色が悪いぞ。』
・・・・こいつにあんまし心配掛けさせんのもな・・・。
「大丈夫だって。いいからそっちの首尾を報告してくれ。」
随分と心配してくる三郎をあしらいつつ、俺はこいつがきちんと役割を果たしてきたか確認してみる。まぁあんまり心配して無いけどね。
『・・・分かった。脱出路については問題は無い。少々確認に手間取ったが、お陰で安全は保障できる。』
「GOOD。ナイスだ。」
良いニュースだ。いざというときに脱出口があるのは色々な面で助かる。
『あと、生存者がいるぞ。』
「え、マジでか!?」
『ああ。生存者の気配がするんで調べたら、どうやら用務員室に立て篭もってる。ただ、鍵がかかってるようだ。』
「鍵ならあるぞ。俺もそこに用事があったからな。」
俺は三郎に西門の扉を閉めるために鎖と南京錠が必要なことを伝える。
『南京錠か・・・・確かに用務員室にならあるかも知れんな・・・。』
「だろ?」
『ならば急ごう。死人の気配はまだだが、猶予があるわけでもないぞ。』
「了解。」
俺は立ち上がってバットを持つと、三郎と一緒に職員室を後にする・・・・。
職員室から出ると、俺は一階の隅にある用務員室を目指す。一応廊下にはゾンビの姿は無いが、用心のために三郎に<憑依>をしてもらっている。
流石にいつまでも奇襲を受けていては持たないからだ。この状態なら、多少常識を無視した動きができるので奇襲も怖くない。
『今のところ、校舎内の入ってこようとしている死人はいないな。』
「しばらくは戦闘なしか・・・・ありがたいぜ。」
俺はいつまでも闘えるほど体力や精神力があるわけじゃないからな。何にもないならそれが一番良い。
「そういや用務員室の方は? 人数とか分からねぇのか?」
俺がそう言うと、三郎は残念そうに言葉を返してくる。
『すまぬ。どうやら室内複数名にいるためか気配が充満しているように感じてしまうのだ。』
「なんじゃそりゃ。つまりは部屋一つで一個の気配に感じちまってるわけか?」
『そんな感じだ。すまぬな。』
「いいさ。一人だけじゃないってわかりゃ充分過ぎるぜ。」
俺はなるべく明るい声を出して告げる。こいつは自分に厳しすぎるからなぁ・・・・。俺が労わってやんねーと。
『・・・そうか。』
帰ってきた返事は短かったが、長年の付き合いから調子が戻ったと判断する。
「それじゃ、とっとと生きてる人間に会おうぜ。ゾンビは見飽きた。」
『フ・・・確かにな。』
自分達以外誰も居ない廊下に足音を残しながら、俺達は用務員室へと向かう・・・。
ま、すぐに着いたんだがな。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その17
用務員室にたどり着いたので、、取りあえず鍵の確認をする。
「・・・閉まってるな。」
『そんなことをしてる暇があるなら、早く開けたらどうだ?』
「へ〜いへい。」
三郎からの冷ややかな言葉に少しむかっとしたが、俺はポケットから鍵を出して扉の鍵穴に差し込む。
「あ、そだ。お〜い、入ってますか〜?」
『・・・酷いセンスだな。』
またも出てきた三郎の冷たい言葉を無視しつつ扉をノックして部屋にいるヤツが生きているかどうか調べてみる。
すると、中から声が聞こえてきた。
「だ、誰!?」
声からして女子のようだ。耳を澄ますと他に2・3人ほどの不安そうな声も聞こえる。
取りあえず無事みたいだな・・・・。
俺は中の奴らを安心させるため、きちんと自己紹介をすることにした。
「俺は2年の皆川だ。今から中に入るけどいいか?」
しばらく中で相談しているのかヒソヒソ声が聞こえてきたが、やがて最初に話しかけてきた女子からオーケーが出る。
「・・・構わないわ。けど今ここは鍵が掛かってて、私達も出られない状態なの。」
「それなら心配無い。鍵は見つけてあるからな。じゃ、入るぞ。」
俺はそう言って鍵を開けて扉を開いた。
今日はこんなもんです。2・3日ほど残っていた夏休みの課題を片付けるので投下できないかも・・・。
>>400 ゾンビは国道沿いの車バリケードをうまく越えられないのか、自衛隊員達の的確な射撃によって足止めされているのか
こちらに侵入してくる気配はなかったが、公園内の避難者は自衛隊員の発した「見分けが付かない」「噛み傷一つのヤツも」の
発言により妙な空気が漂い始めた。避難バスを待つ人達の中には避難中にケガをしたのか足を引きずっている人や
腕に血の滲んだ包帯を巻いている人も居たが、自然とその人達に視線が集中していた。
「・・・ちょっと待ってくれ、これは逃げてくる時に転んでできた傷だ!。ここに入る時入口でチェックを
>>339 したぞ!」
だが周囲の疑惑の視線は収まらない。挙句にこんな囁きが漏れ始めた。
「・・・見分けがつかない時があんでしょ?あの人ホントは噛まれたの隠してるんじゃない?」
「・・・だよな。噛み傷一つであーなるんならヤバくね?ってか見せてみろっての」
そして遂にはケガ人との間で揉め始めてしまった。見せろ見せないの話からエスカレートし無理矢理傷を確認したり
ケガ人自体を排斥しようとさえしはじめ、それを制止しようとする人はむしろ少数派だった。誰だって(自分も)不安なんだ。
ただ実際噛まれた人だけああなるのか、ニュースで流れていた様に
>>195 何らかの感染症なのか、それとも全く未知の原因があるのかわからない為、お互いの主張に説得力がなく揉める程度で済んでいた。その時までは。
>>445さん
>>451さん
どうもありがとう!
暇が出来たので二つほど投下します。ちょっとネタが詰まってきました。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その18
扉を開けた俺に待っていたのは、先端を外されている箒による歓迎の突きだ。正直、嬉しくないな。
「よっと。」
顔めがけてそれなりの速度で繰り出された突きだったが、<憑依>状態の俺には簡単に見切ることが出来る。少し顔をずらして突きを避けると、箒を掴んで追撃を封じる。
箒にはゾンビとやりあったのか血が付着していたので、その部分を触れないように気をつけとく。
箒を捕まれて驚きの余り呆然としているのはセーラー服が随分と血で汚れている女子生徒だ。恐らく俺と話をした女子なのだろう。
「幾らなんでも殺そうとすんのは酷くねえか? 流石にびびったぜ。」
「え・・・あ・・・・ご、ごめんなさい!!」
彼女はそう叫ぶと慌てて箒を放して頭を下げてくる。この様子なら、精神がイカレてるわけじゃなさそうだ。
「ホントにごめんなさい!! 連中が来たのかと勘違いしちゃって・・・・!」
「連中? 外であーうー言ってる奴らのことか?」
「違います。・・・もしかして、遭ってませんか?」
「? 何のことだ? 説明プリーズ。」
どうやら、彼女達はゾンビ以外の敵対者に襲撃されたようだ。
俺が説明を求めると、彼女はようやく警戒を解いて中へと招いてくれる。
「あ、じゃあ中へ・・・・。」
これは厄介ごとが増えたな・・・・くそ・・・・。
俺は脳内プランに若干の変更を加えることになりそうな予感に舌打ちをしたくてたまらなかった。
中に入ると、カーペットの床に座っている2人の男女がいることに気づいた。酷く憔悴した顔つきだが、2人ともまぎれもなく生きている。
2人は俺が入ってきたことに気づき、伏せていた顔を上げる。
まず男子の方が俺に指を突きつけてくる。失礼だろ手前。
「お、おいそいつ入れてもいいのか? あいつ等の手先なんじゃ・・・。」
「大丈夫みたい。そもそも、もし連中の仲間なら1人で行動してるはずないわ。」
座っていた男子の方が警戒というよりは怯えを滲み出しながら喋るが、彼女に諭されて渋々と言った感じで黙り込む。
もう1人の女子の方は黙ったままじっと俺の見つめてくる。心なしか、その眼差しは全てを見透かされるような印象を受ける。・・・何モンだ?
いつまでも見つめてくる彼女の視線から逃げるように、俺は箒で殺そうとしてきた女子の方へ向き直る。
「あ、そういえば紹介がまだでしたね。私は1年の高宮真理です。彼は私と同じ1年の福沢力也くんで、彼女は・・・・何でか教えてくれないんです。」
名前すら話そうとしないってどんだけ警戒してんだよ・・・・。
仕方ないので本人に直接聞く事にする。
「お〜い、名前教えてほしいんだけど。」
「・・・・。」
反応なし。ちょっと悲しい。
「教えてもらえないなら、変なあだ名つけるぞ。いいのか?」
「・・・・。」
・・・今かすかに頷いたんだけど・・・。付けろってか?こんな状況でウケ狙えってのかコラ?
助けを求めて高宮へ目を向けるが、彼女も困った様子で俺を見つめてくる。止めろ見ないでくれ・・・。俺にこんな無口な奴を喋らせる力はないぞ。
『プ・・・クク・・・・。』
俺の頭の中で三郎が堪えきれない様子で笑い声を漏らす。怒鳴るべきかと思ったが、他人が居る手前なにもできない。幽霊が見えるやつがいるなら話は別だが。
「ええい彼女については後で考えよう!」
ついに俺は耐え切れなくなって俺はこの話題を一旦置いておくことにする。あと、三郎にいつか仕返しをしようと固く誓った。
>>454 乙
お前も綾波とか長門みたいなキャラに頼るのか、、
>>455 言わないでくれぇー!!
気づいたら書いてしまってたんだーー!!
消す気にもならなかったんだーー!!!
うふふ…
紫煙
みなさんの作品楽しみにしています。
投下しま〜す。
ゴースト・アンド・ザ・デッド その19
さて、とりあえず先ほどの話を聞くことにした俺は、いつでも逃げられるよう部屋に土足で上がり込みつつ床に座る。
部屋にはテレビやテーブルなどもあったが、邪魔なので片付けられてる。俺の隣に高宮が座ってから俺は話を切り出す。
「んじゃ、まずはここで何が起こったかを話してくれ。そっちから知っといた方が分かると思うし、何より俺はさっきここに来たばかりなんだ。」
「・・・分かりました。」
高宮は俺がたどり着くまでに学校で何があったかを話しはじめる。
「・・・始まりは、多分クラスメイトの5・6人ほどが保健室に行ったときからだと思います。今朝はやけに顔色が悪い人が多くて、保健室に向かう人がたくさんいたんです。」
「たくさんってどのくらい?」
「よ、よくは知らないけど、一クラスにつき5・6人は行ってたと思うよ。僕は保険委員だから気分悪いクラスメイトの付き添いをさせられて保健室まで行ったんだけど、保健室には20人ぐらい同じように体調崩してる人がいたから。」
「そんなにか!?」
今の話がホントなら、初期の時点で少なくとも70人以上はゾンビになっていたことになる。一体なんでそんなことに・・・・。
今の状況では感染経路は知りようがないが・・・・。
「それで?その後は?」
「・・・しばらくすると、どこかの教室から悲鳴が聞こえてきました。私を含めて教室にいた皆が驚いていたら、今度は隣の教室から悲鳴が上がったんです。」
『恐らく保健室に向かった者がゾンビ化したのだろうな。わざわざ教室から始まっているのは少し気になるが・・・。』
<憑依>状態のため、俺の中で三郎が冷静に情報を纏めている。こいつはこうやって集めた情報を元に作戦を考えるんだよ。
まぁ三郎の呟きは無視して、高宮の話に集中しよう。
「それで、隣のクラスの皆が慌てて逃げていくので何事かと思っていたら、廊下に血塗れの男子が立っていたんです。」
血塗れの人間・・・俺が最初に遭遇したゾンビもそうだったっけ。
「血塗れねぇ・・・・それで?」
「・・・入り口の近くにいたクラスメイトの1人が心配して近寄って、そして・・・・・。」
高宮はそこまで言い終えると一旦話のを止める。そして、僅かにだが体が震え出す。
「・・・大丈夫か?」
俺が声をかけると、高宮は微かに頷いてくれるが、震えが止まることはない。
いくらここまで生き残っているとはいえ、彼女は普通の女子高生だ。精神的にきつかったんだろう・・・。
「・・・きついなら、その辺は飛ばしてくれていい。さっき言おうとしてた連中についてだけでも充分だ。」
余りにも怯えているので、わざわざ彼女のクラスメイトがどうなったかを喋らせることは止しとこう。可哀想だ。
『女に甘いと見捨てられるのは定番だぞ。』
何か不吉なことを呟いてる相棒は無視する。
「・・・すみません。」
「いいって。仲間なんだし、これくらいの気遣いはするさ。」
なるべく明るく笑いかけてやる。こういう下らなさそうなことが、こういう状況でかなりの癒しとなるんだ。
高宮も俺につられて笑みを浮かべる。気がつくと震えも止まってるし、これなら大丈夫かな。
そのとき、高宮が俺にもたれかかってくる。突然女の子にもたれられて平静を保てるような精神は持ち合わせておりません。パニくります。
「お、おい・・・・。」
一体なにを・・・・と続けようとして、俺はあることに気づく。彼女が俺の学ランを強く握り締めてることに。
・・・まだ、大丈夫じゃなかったのか・・・。
「ご・・・ごめんなさい・・・・。少しだけ・・・・休ませてください・・・・。」
「・・・別にいいぜ。しっかり休んどけ。」
「う・・・・ううう〜〜〜・・・・・。」
俺は学ランに顔を埋めて嗚咽を漏らし始めた後輩の頭を撫でながら、家の家族が無事かどうか心配していた。
・・・俺は確か鎖とチェーンを回収して、西門を閉じるために来た筈・・・なんだが・・・。
「何でこんなことになってるんだろう・・・・。」
「・・・運命。」
「初めて喋った言葉がそれかよ。」
殴りたくなる気持ちを必死で抑えつつ、眠ってしまっている高宮を床へそっと寝かせる。
彼女は溜め込んだものを全て出すかのように泣き続け、そのまま寝てしまった。
今は頬に涙の跡を残して安らかな寝顔を浮かべている。疲れているだろうから、このままにしておこう。
『やはり相棒は』
三郎が何かほざこうとしているので、俺は思い切って呪い殺す勢いで「三郎死ね三郎死ね・・・」と念じてみる。
『・・・ぐおお!? 待て止めろよせうわあぁぁ・・・・。』
効果は抜群のようだ。よし、これで三郎をシバける。ふふふ、覚悟しろよ?
三郎は余程ダメージを受けたのか、しばらく荒い息遣いしか聞こえない。相棒が復活するまでの間に、俺は福沢に高宮から聞きそびれたことを尋ねることにした。
「なぁ福沢。」
「え!? な、何?」
突然俺に話しかけられて、随分と困惑してる。人見知りの激しいヤツだな。
ただ、一応警戒はしてないのか表情はそれほど固くないっぽい。俺はすぐに本題を切り出す。
「“連中”ってのは一体なんなんだ?」
その一言で、一気に福沢の表情が固くなる。しかも表情に怯えが混ざり始める。
福沢は少し声を震わせながら、俺に話をしてくれる。
「・・・れ、“連中”ってのは、上野先生と先生に付き従ってる連中のことだよ・・・・。」
「上野・・・・って、誰だっけ?」
俺は知らないぞそんな先生。まぁ名前知ってる先生自体少ないんだけどな・・・。
俺の疑問に答えたのは福沢・・・じゃなかった。
「上野啓一。1年の公民を担当。危険な選民思想の持ち主で、日頃から偉そうな態度をしている。生徒からの人気は無いが、一部の生徒をマインドコントロールしている可能性あり。」
抑揚の無い声で次々と上野の情報を話していく・・・・現在名前不明の彼女。てか何でそんなに知ってんだよ。ちょっと怖いよ。
「私が知ってるのはここまで・・・・。」
「いや充分だし。寧ろそんなにいらない。」
突っ込みを入れといたが、ここでだんまりをされてしまい、効果なし。都合いいなおい。
・・・いいや、これ以上絡んでもなにも喋りそうにないし。
「さ、気を取り直して、福沢、続き。」
「あ、はい。・・・・僕は最初、1人で逃げてたんだけど、後から高宮さん達と合流したんだ。それで3人でどこか安全な場所がないか探してたんだけど・・・。」
「何かトラブルがあったってわけか。」
「はい・・・。」
福沢は顔を伏せたまま頷く。
「僕らが比較的動く死体になった人が少ない旧校舎を探索してたんだけど、突然男子の襲われたんだよ。それも、ちゃんと生きてる人に。」
「・・・嘘だろ?」
「マジだよ。返り血で服は凄いことになってたけど、確かに生きている人間だったよ。」
今日はこんだけです。・・・何か最初に考えてたのからどんどん離れてく・・・。
まあいいんじゃないか、乙
ってやっぱり長門じゃねーかよ、どうせ超能力(これは別の人か)か何かもってるんだろww
紫藤先生ktkr
俺もそう思ったwww
極力そうならないようにはします。
・・・自信ネーーーー!!!
しばらくネタ考えるので書き込みできません。ちょっち待っててくれ。
naruhodo
面白い
>>450 エピソード:避難所のケガ人A
なんだよ畜生!噛まれたらバケモンになるだと!冗談じゃねぇ!!
俺はまだ人間だぞ。ちっと噛まれたっつってもバンソーコー貼っときゃわかんねえ程度だ。
こんくらいでどうなるってもんでもねーだろぉによぉ、おたおたしやがって。
・・・にしてもバスこねーなぁ・・・ちゃっちゃっと来いっての、徹夜明けでだるいんだよこっちは。なんか風邪っぺーし。
あー早く風呂入ってねてぇ・・・
入り口にトめてあるバリケードの車・・・
カギ付いてルのあったな・・・・・
471 :
本当にあった怖い名無し:2008/09/06(土) 07:53:45 ID:CBpTvb5/O
面白い
ギリギリ今週のうちに投稿…。
まぁ、週ペースってのは自分で勝手に作ったルールなんですけどね。
さて、以前に予告していた通りのSSです。
ごゆるりとお楽しみいただければ幸いです。
ぴーっ、と軽快な電子音が空間に木霊し、色が赤から緑へと移った。
その音が鳴ると同時――取っ手を押し開け、その隙間へと身体を押し込み始める。
上着が引っかかるものの、力任せに引きちぎって押し込む。背後で、脇で、ぶちぶちと布の裂ける音がした。
体を無理矢理詰め込む。その苦しさたるや、全身から空気という空気、液体という液体を搾り出そうとしているかのよう。
それを我慢して、やっと通り抜けた瞬間。勢いを殺しきれず、べちゃりと大きな音を立ててリノリウムの床に倒れ込んだ。
その後ではガラス製の扉が閉まり、がちゃり、と施錠する音が鳴って――取っ手上部にあるランプが、緑から赤へと変わる。
そして――。
ばん、ばんばんばん、ばんばんばんばんばんばんばん!
施錠直後。ガラスの扉に、幾つもの手が張り付いた。
その手は百足のように蠢き、ガラスを紅いものでべったりと汚してゆく。
手の痕は紅く、歪に捻れた形として残り、磨き上げられていたはずのガラスをどんどん染め上げている。
清潔感を誇示していたステンレス製の取っ手と鍵穴も、濁流のように流れてゆく手形によって奇抜に彩られてゆく。
やっと体を仰向けに起こした男は、その様子を見て、
「――は、はははははは、ああはははははははははははははははははは!」
哄笑か嘲笑か――恐らくはその両方だろう――嗤った。
よろよろと立ち上がり、右手に握り締めていたままのカードキーをガラスへと投げつける。
かつん、という小さな音は手形の濁流が発する音に遮られて届かず。キーはそのままひらひらと床に滑り落ちた。
「どうだッ! 入ってみろッ! お前達のような下衆共に――化け物共に入れるものならなぁッ!」
それからしばらく嗤い続け、男はぴたりと閉口した。部屋の中に、濁流が生み出す音だけが延々と響く。
唐突に――何のモーションも無しに左手首につけられているいかにも高級然とした時計を眺め、たたのボロ切れと化した上着を思い切り投げ捨てる。
上着だったものが濁流を一瞬だけ遮り、ぱさりと床に落ちたとき。ガラスの向こうでは濁流が止まっていた。
べたり。
歪みきり、指の形さえも朧げな紅のガラスに、一対の眼が張り付く。
大きく見開き、男の姿を追い続ける。
べたり、べたり。
更に二対の眼が、すぐ傍に張り付いた。
それらもやはり、部屋の中を動き続ける男――鏡を探して髪を整えている――の動きを瞬きすらせず追っていた。
べた、べたべたべたべたべたべたべた。
更に眼が張り付く。
瞳孔の開ききったそれは、とても理性のあるものとは思えない。
べたべたべたべたべたべたべたべたべたべたべた――。
今ガラスを向けば、その異様さに悲鳴をあげたことだろう。
ガラスを埋め尽くすかのように張り付き、無機質な視線を送る眼の群れ。それは、生理的な恐怖を与えるもの以外の何でもない。
だが男は、すっかりよれよれになったスーツ――元はこれも高級然としていたのだろう――を見てため息をつき、部屋の奥にある鉄製の扉へと向かっただけだった。
全ての目が、合図を合わせているかのように一斉に男を追う。
瞬きすらせず、視線を介すれば身動きができなくなるであろうそれらに気づきもしないまま、男は鉄製の扉を開き――そして愚かにも――扉を完全には閉めないまま、その奥へと消えた。
全ての瞳が、その扉へと集まる。
眼に力があるのならば間違いなく扉ごと男を吹き飛ばしている、鬼気とした――それでいて虚無に満ちた、矛盾した視線がただの鉄の扉に突き刺さって――
びたん!
そして、何の前兆も無く、眼と眼の隙間に押し込まれるようにして、指がガラスに押し付けられた。
とても人だったものとは思えないほど変形しきった指が、一切の乱れなくガラスに押し付けられる。
その指達は、先程とは違って無秩序に蠢き、流れるのではなく。
共通した、明確な意思を持って張り付いていた。
ぴしり、と何かが悲鳴を上げた。
※言い訳のためにある文
最後はぼやかしてみました。続きはご想像にお任せします。
今まで無秩序だったのに、急に秩序持って計画的に動くゾンビとか居たら――ああ、嫌ですね。でもワクワクします。
たまにゃー三人称とか使わないと急激に書き方がわからなくなるので。これを書くためだけに一週間を消費したと言っても過言では無いかも…。
ちなみに原型だとこの後も続きがあって、男は屋上に追い詰められてがぶっと。
映画版バイオハザード2の最後あたりみたいな感じに。
具体的に書くと飛び降りようとした矢先に眼鏡がずり落ちて――という。
でもこっちの方が締めが良い気がして、蛇足と思ったので排除しました。
ん〜〜、やっぱシリアスってのは苦手ですね。どうしても文章が稚拙になってしまいますし…。
パロディとか混ぜた方が進めやすいですが、それだと緊迫感が…ねぇ。それに比率間違えることもありますし。
予告としては、次から前回の続き、本番開始です。主人公達のヘタレっぷり、逃亡劇をお楽しみにしている方がいたら――幸せかなぁ。
何と言うか、自分は主人公が武器やら何やらを振り回して活躍するようなのよりもゾンビに太刀打ちできず、ひたすら逃げて追い詰められていく、ってのが好きなので。
そういうのが好きな方にはきっと相容れないでしょうね…。
それにしても髭男爵さん…ペース凄く早いですね…。とても真似は無理です。
※更に余談
「とても人だったものとは思えないほど変形しきった指が、一切の乱れなく次々にガラスへと押し付けられてゆく。」
にすべきでした…。 この流れだと読みづらいですね。
>>450 「痛っ!?ちょ、ちょっと坊や何・・・いたっ・痛てぇっての!!」
まだ小学校に上がったばかりといった少年が隣にいた青年に思い切り蹴飛ばされているのが目の端に入る。
いくらなんでもそれはないだろうと周囲の人は訝しげな視線を青年に向けると、ジーンズが裂けふとももから大量に出血しており
一目で重傷だとわかるケガを負っていた。だがその青年は傷口ではなく先程蹴り飛ばした少年を凝視していた。
あの子の母親だろうか?蹴り飛ばされ倒れた少年の元に駆け寄り抱き起こしながら青年に叫ぶ。
「ウチの子に何するんですか!この子は噛まれてない!噛まれてなんかいないんです!!」
その母親は我が子を強く抱きしめ、半狂乱気味にただ「噛まれてない!」を繰返していたが長くは続かなかった。
「・・・噛まれてない!噛まれてぃ・・・たい!?痛っ痛い!ちょっと放し・・・ぃいいいやああぁぁぁががぁぁぁっっ!!!」
ありえない角度に首を曲げ少年は母親の喉に喰らい付き、咀嚼するのももどかしいと言わんばかりに噛み裂いていく。
その凄惨な光景に思わず動きが止まる。周囲の人もまるで魅入られたかの様に動かない。先程までの喧騒もまるで無かったかの様に
静まりかえる。聞こえるのは肉を裂く鈍い音と、バリケード沿いから響く銃声だけ。
しかしそれも一瞬の出来事だった。
「殺せ!このガキ暴徒だ!いやゾンビだ!!噛まれたヤツはみんなゾンビになるぞ!!!」「逃げろ!喰われるぞ!」
「やっぱりケガ人に混じってやがるんだ!ケガしてる奴は叩き出せ!」「私は本当に転んだ・・・やめろ・・・やめてくれ!」
「自衛隊は何してる!?早く母親ごと、あの噛まれた奴ごと撃ち殺せよ!」
先程までとは比べ物にならない程の混乱、怒声。もはや老若男女関係なくケガ人に対するリンチが始まり、また母親を喰い殺した
少年にはどこから持ってきたのか、バールの様な物で激しく殴りつけられている。冷静な人は自分も含め誰も居なかった。
そこへ更に混乱の火に油を注ぐ声が響く。「ゾンビがバリケードから溢れてきたぞ!!」
一台のトラックが公園内を猛スピードで走り抜け
>>470 薄くなったバリケードから奴等が侵入して来ていた・・・・・
emptyさん乙です! 実に迫力があって良い作品だと思いますよ!
>>475さんも乙です! 人間って災害時に情報に惑わされてこういうことが起きやすいってことは知ってたんですが、凄いですね。
私は就職の関係でごたごたしてるので執筆遅れて(実はまだ一文字も書いてない)ます。
今週中に1・2回アップしようとは思ってるので、もう少し待っててください。