1 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :
03/09/23 12:34
2 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/09/23 12:35
このスレなくすのは惜しいと思ったので立てました。 第参部の最後に出ていたお題は、「高速」「台風」「惨劇」です。 せっかく立てたからみなさんどんどん書いてー。
( ゚∀゚ )/
4
5 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/09/23 23:31
創作系はどこもさほど盛り上がってないからなあ・・・ と言いつつも、期待age!
6 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/09/23 23:36
(゜д゜) ポカーン
7 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/09/23 23:38
8 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/09/24 00:51
やっと立ったか・・・ スレ立ってから一定の時間内にある程度のレスがつかないとdat落ちするよう なので、作品投稿が無くてもこまめに保守しましょう。
「高速」「台風」「惨劇」 この道を通るのは久しぶりだな・・・ 10年前新聞では死の惨劇と言われた一家3人惨殺事件。 その主犯の俺、そして相棒のE、10年前もそうだった・・・3人を殺して この高速道路を通って逃げようとしてた時だったな・・・ 俺と相棒は台風13号が迫る中、殺人を犯して逃げる途中だった。 動機は借金、俺と相棒は同じ会社に勤務している。 殺害した一家の主B、上司でもあるこいつから俺とBは多額の借金を抱え込んでいた。 返済を迫られるが、返さない自分とE、あと三日以内に返さないと会社の 金を使った事をバラすと言う。あせった俺達はその日の夜に計画を実行した。 寝ているところを金槌で何度も何度も繰り返しなぐった。 ──原型をとどめなくなるまで・・・そして俺達は高速道路を通って逃げた。 「これで、何の証拠も残らないな・・・」俺は静かに語りかけた。 「ああ・・・借金のことを知っているのはあいつと俺とお前だけさ・・・」 うまくいった。完璧だ。家に着いたら寝よう。明日からまた元の生活だ。 その時であった。誰もいない高速道路、深夜3時、俺達の隣を一台の車が横切った。 「・・・・あれBの車じゃなかったか?」Eは震えながら答えた。 「ま・・・まさか同系の車なんていくらでも・・・」すると突風で車が浮き上がった。 「なななな!」しかし前の車は浮く気配はなくドッシリと地面に吸い付くように走っていた。 突風がやみ、車が元に戻ると横の車は俺達にピッタリくっついていた。 冗談じゃねぇ・・・全速力で振り切った。雨が降る中まっすぐの道をひたすら走った。 「いないか?」「ああ・・・いない」Eは後ろを念入りに確かめ言った。 「よかったよか・・・」俺は目を疑った。前には振り切ったはずの車があるではないか。 すると、急にハンドルが言う事を聞かなくなった。「うお・・・」 ドアが勝手に開き、Eは固いコンクリートの上に振り落とされた。即死だろう。頭が割れていた。 私はもう何処を走っているかもわからなくなり、気がつくと家にいた。
それから10年、もうこの道を走る事も無いだろうと来てみた訳だ。 「なんだったんだろうな・・・」ラジオでは台風23号接近を伝えていた。 私はハイウェイを飛ばして走った。誰もいない高速道路・・・「時効までもうすぐさ・・・あと5年・・・」 ブロロロロロ・・・車が私の横に並んでいた。
11 :
俺の背後 ◆9meKVQUouQ :03/09/24 01:46
あ、題忘れてました。 「学校」「テレビ」「花火」 重複してたらスマソ
すいません。ちょっと通りますよ。 ビュオオォォォ―――――…… 私の霊体は愚者には見えないんですよ。
13 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/09/24 19:31
14 :
DATSUNS :03/09/24 19:33
あの台風がすべての原因だった。 最初はただの台風だと皆は思っていた。 まあ、その地区の人間のとっては大きな災害だったのだろう。しかしこの数日でまさか これほどの人間を狂わせるとは・・・ その台風は例年に比べめずらしく広範囲に置ける災害をもたらした。実際、数日間にわたって 日本を苦しめた。ようやく去ったかと思うとそれを置き土産として残していった。 台風は私の住むこの場所へは近づくことも無く、ただ「他人事」でしかない出来事だった。 テレビに映るその映像は何度も見てきた。 目の前で起きた悲惨な災害。誰を責めることもできずただ救いの手を待つ人々。 「かわいそう」だとか「ひどいな」とかどれも所詮他人事。周りの人間にはたてまえの情しか みえなかった。 復旧のめどがついたある日、それは起きた。 あれは悲惨だった。何気なくテレビを見ていると、被災地の復旧の様子を番組が取り上げていた。 朝の人気番組だったため皆が見ていたという。 復旧され立ち直った建物を説明しながら歩くレポーター。突然複数の男女が襲いかかったのだ。 慌てたカメラマンやスタッフは番組を忘れ止めに入った。その場においてあったカメラには一 部始終が・・・レンズには飛び散った血・・・・ しばらくお待ちくださいのテロップとともにCMへと切り替わった。 CM明け、番組司会者からは 「先ほどの映像は一体なんだったのでしょう?・・・」 困惑の表情。司会者の目線はカメラからはずれ、 「ただいま情報が入りました。とりあえず皆無事ということで皆さんご安心ください。それでは 次の話題です。」 何事も無かったかのように番組は進んでいった。
15 :
DATSUNS :03/09/24 19:36
その日は朝の話題で持ちきりだった。 誰もそれが始まりの合図だとは知る由もせずに・・・ それから毎日のように復旧された都市で起こる惨劇を報道した。すごい速度で蔓延する奇怪な出 来事。新手の宗教がらみだとか、宇宙からの素敵な贈り物だとかいう輩もいた。 国民を困惑させたが実際は違った。 あの台風の日感染したらしい。潜伏期間は長く、発症までには個人差があるらしい。 早い人で一ヶ月、遅くても三ヶ月で起きる。あの番組で国中に広まったが実際は情報操作によっ て国が隠してきた事実だった。国民の混乱を防ぐための政府の対策だった、が広がりつつあった 事実防ぎきれなかったのだ。襲った来た人間は施設から脱走した人間だったらしい。 原因は不明で唯一解かることは台風が持ち込んだということ。 マスコミによって人々が知りえた情報によると、そのウイルスは動植物には影響が無く人にのみ 影響を与え、症状は脳を高速に活発させ一旦停止させる。その後再度復帰した脳に残る感情は 殺意のみ。今の医学では細かく調べるのは難しく、よって治療方法も見つからないままだそうだ。 細菌の感染方法もわからない手の付けられないものだという。 マスコミがつけた名前は 「tragedy」
16 :
DATSUNS :03/09/24 19:37
その名のとおりだった。惨劇は蔓延した。もう他人事で済まされない。事実、親しかったほと んどの人間は感染した。母は感染して手に負えなくなり、父は感染による人格破壊を恐れ母を つれて自殺した。 治療法が無い混乱を唯一現時点で止める方法は、殺すしかない。 甘い情など切り捨てて殺す。 最愛の人を殺した後発狂する人。感染せずに殺しをただ楽しむ人。悲しみのあまり自らを殺す人。 もうこの国には殺意と悲しみしか残ってはいなかった。 ほら徐々に私にも。しかし私は人を殺すことに躊躇などしない。 一体どちらなのだろう。 意思か・・・症状か・・・ どちらにしろ私は 病んでいる。
17 :
DATSUNS :03/09/24 20:54
すいません 最初ので作っちゃいました 駄作っぽいです
18 :
DATSUNS :03/09/24 21:08
夏休み 前の日遅くまで起きていた私は夕方目が覚めた。 「やべっ、補習忘れてた・・・どうっすかなぁ・・・」 目が覚めた私はとりあえず居間へと降りていった。 とりあえずテレビをつけようとリモコン探していたとき、 「雄二!!雄二!!いないの!?雄二!!」 母が玄関から大声で私を呼びながら入ってきた。 「うるせぇなぁ・・・なんだよ?」 母は目に涙を浮かべてこう言った。 「あんた学校は?よかったぁ・・・無事で・・・」 何を言ってるのか理解はできなかった。 「何言ってんだよ!?」 そういうと私はテレビをつけた。 テレビには燃え盛る炎に包まれた建物が。臨時速報らしい。 見覚えがあるその建物は私が通う学校だった。 夕方だったせいかまるで花火のように・・・ 涙を流しながら話す母を横に私は 見とれてしまった。
19 :
DATSUNS :03/09/24 21:11
次の題は 「夢」「自分」「明日」 で
>>19 夢を見た
真黒な空間にいた
上も、下も、右も、左も何もわからない
ただただ真黒な空間
私は何をするでもなくその場に立っている
立っていると思うのだが、寝ているようにも感じる
とにかく真黒な世界だった
ふと、背後が気になった
振り返るとそこに人がいた
---自分だった
「明日・・・。」
その自分はひと言つぶやいた
そして、私は目を覚ました
寝室は暗かったが、真黒ではなかった
ベッドに横たわっている、上には天井が見える
私はまだ眠たかったので、もう一度寝た
次の日、いつものように起き、顔を洗い、朝食を食べた
歯を磨き、髭をそり、鞄を持って家を出た
バス停に到着し腕時計を見る
そして、バスの走ってくる音が聞こえたので振り向くと
---目の前にバスがあった
その日、私は交通事故で死んだ
次のお題
「歌」「運」「癖」
でお願いします
>9-10 車が実体のあるものなのか、そうでないのか。運転席にB(の幽霊)が乗っていたのか、 いないのか。あるいは他の誰かが乗っていたのか、そんなの想像すると面白いね。 Bの乗っていた車がナイト2000だったと考えると辻褄が合う気もする。 >14-16 未知のウイルスは怖い。こいつらマジで人類滅ぼしかねんもん。 解明されてないだけで、人間の行動を支配しているウイルスもいるかもしれんし。 僕があの娘に惹かれるのももしかしたらウイルスのせいなのかもしれない……。 >18 最初、最後のとこ「私」が涙する母親の顔に見とれてるんだと読んでしまったよ。 変わった終わり方にするんだなーって思ってた。ごめん。 >20 もう一人の自分は、「私」を助けようとして夢に現れた……ように思えないのは、 真黒とかの描写のせいもあるけど、やっぱり人間にとってもう一人の自分てのは 不吉な存在だってことなんだろうか。本能的な不安というか。少なくとも僕は怖い。
歌には作り手の心がこめられている。 愛や希望、そして悲しみや苦しみ。 だから歌は、人の人生においてその人の 運勢を左右するほどの力を持つ。 もちろんそれが良い方向にのみ向くとは限らない。 すべての歌が人を幸せにするために存在する訳では無いからだ。 時としてそれは恐ろしい程のマイナスな何かがが隠されている事もある。 例えばこういう話がある。 ある日お母さんは1歳半になる息子に妙な癖を見つけました。 ふいに、誰もいない所に手を振るのです。 日に日にその癖が目立つ様になり、お母さんは気味が悪いのでこれを辞めさせようとしました。 しかし治るどころか、ますますその子の癖は酷くなっていきます。 そしてその日、息子は夜中に大声で泣きだしました。 お母さんは息子が夜泣きするなど、ここしばらく無かったので不思議に思いながらも 隣で寝ている息子の様子を伺いました。 すると息子は手足をばたつかせ、ワンワン泣いています。 怖い夢でも見たのだろうと、母親は息子を抱きよせ、 いつも寝るときに聞かせている子守唄を歌いました。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・君も・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちゃんも・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・遊び・・・・・・・・・・・して・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・遊びましょ」 すると息子はしばらくすると、電池が切れたように静かになりました。 安心したお母さんもそのまま寝てしまいます。 次の日の朝、お母さんは息子が冷たくなっている事に気がつきました。 息子はすでに死んでいました。 静かな寝顔でした。 お母さんは結局最後まで気がつきませんでした。 あの歌。 毎日息子に聞かせていたあの子守唄の本当の意味を。 「いっしょに、あそびましょ」の本当の意味を・・。 次は、「先生」 「はさみ」 「足りない」 でお願いします。
>22-23 静かな寝顔ってとこがなんかせつないな。こういう系もけっこう好き。 肝心の子守唄が点々だらけなのがちょっと残念だけど。
25 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/09/26 02:12
ハサミが嫌いだ。 小さい頃、私はそれを持って遊んでいたらしい。 親がいない隙を見てどうも持ち出したらしいのだが、やはり子供だ。 使い方を知らない私はただ持って走り回っていたらしい。 そのとき転んでしまい。片目に突き刺さってしまった。 それ以来私は左側が見えないまま今日まで過ごしてきた。 今日、私は退院する。三ヶ月ほど前に胃のほうに痛みを感じた私は検査のため 人間ドックへ来たが詳しく検査する必要があるということで入院する羽目に。 実際、小さい頃から身体の丈夫な私にとって入院とはまさに未体験ゾーン。 病気への怖さより、入院=手術のいう安易な発想の恐怖があった。 現実はやはり優しくなかった。検査の結果、急な手術を要すると言われ長時間に わたる手術を余儀なくされた。 術後は回復も著しく、早いとこ現状からから出て行きたかった私は看護士の 言葉を素直に受けようやく退院というありがたい日に至った。 病室から出る私を担当医が呼び止めた。 「木下さん、退院おめでとう。本当に回復が早くて正直驚いているよ。」 「先生のおかげですよ!!もうここには来たくないですけどね。でも、 また何かありましたらよろしくお願いします。」 「何事も無いのが一番だ。それに退院するというのに次の病気を気にしち ゃ駄目だろ?」 「そうですよね!!でも、本当にありがとうございました!!」 「木下さん身体には気をつけて。それでは。」 そういうと先生は去っていった。
26 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/09/26 02:14
退院して数週間後、私はまた胃に痛みを感じ病院に行った。 再度検査を受けた私にとても嫌な現実が言い渡された。 前の手術で胃に残していたらしい。 担当医もそれが足りないということで探していたらしいが、 手術した患者が複数いたため不明のままにしておいたのだという。 だからハサミは嫌いなのだ
27 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/09/26 02:16
次は「本」「心」「ウソ」でお願いします
28 :
DATSUNS :03/09/26 02:20
>25 26 27 名無しなってしまいました・・・涙
「本」「心」「ウソ」 友人Mはとにかく人を騙すのが好きである。 性格というか、ウソをすぐつきたがるのである。 クラスの人はまたMか、などともう慣れた感じである。 私はそんな事は気にしていなかった。Mなんかとはなんら関係も 無いし話しかけられたことも無い。疎遠な関係にあった訳だ。 そんなMが急死した。私の心は別に揺らぐことなく、ただ葬式に行っただけであった。 Mの机の上には花が添えられ、その日は俺と友達のDが特別に掃除当番として残る事になった。 面倒くさい、や、Mが死んだからってなんで俺らが、など、愚痴を撒き散らしていた。 その時、DがMの机の中から何かを見つけた。何かは封筒で、中に紙切れが一枚 入っていた。 [災難] と、書かれていた。 私は何のことかわからなかった。Mは心が変わり者なので、そんな奇怪な行動を起こしていても 仕様が無い、と思っていたのだった。
30 :
俺の背後 ◆9meKVQUouQ :03/09/27 01:46
次の日、俺は遅刻をしてしまった。昨日夜遅くまで本を読みふけっていたためだ。 ドアを勢いよく開け、遅れましたと言おうとした。「おくれまし・・・・」 それどころではなかった。クラスの雰囲気が異様に重い。しかも皆悲しい顔をしている。 原因はすぐにわかった。「花が増えている・・・」 そう、私の友人Dが昨日帰るときに車に跳ねられ、昨夜亡くなったそうだ。 私は肩の力が抜けるのを感じた。床に座り込んだ。「なんで・・・昨日はあんなに・・・」 私は席の近いCとYに「なんでDが・・・」や「Mが死んでもいいけどDがなぜ・・・」 などと昨日と同じく愚痴っていた。このまま何も起こるな。ただ、それを祈っていた。 しかし、悲劇はこれだけですまなかった。さらにその次の日、俺と話したCとYが 謎の変死を遂げたと言う。「・・・・・・もしかして・・・」私はさすがに焦った。 今までの3人の死、全てMと関連している。私は途中でトイレに行くと言って葬式を抜け出した。 学校まで走り、Mの机を覗いた。まだあの災難と書かれた封筒は入ったままだった。 もしかして・・・これのせい? 馬鹿な・・・ありえない・・・ 私はその封筒を破り捨てて川に捨てた。「捨てちゃったの?」 私は震えながら後ろを振り向いた。Mがそこに立っていた。 「せっかく、全部ウソですませてあげようとしたのに」 次の題は「寝台列車」「トンネル」「夜食」で
>25-26 現実に自分の身に起きたらって怖さはあるけど、もっとオカルト要素が 絡んでたら、僕らももっとはさみが怖くなったかも。 >29-30 そりゃないよM。「今やろうと思ってたのにお母さんに言われたせいで、 勉強する気なくなった」みたいなこと言われても……。
32 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/09/27 17:47
新顔さんたちの投稿で活気が出てきましたね。 あとは、常連4人衆(前スレ83、ぼっこし屋、寸善尺魔、右目からエスプレッソ)の投稿もおながいします!
>32 実は昨日書いたんだけど、書き上げてからリロードしたら、新しい作品が 書き込まれてたんで、どうしようか迷った挙げ句、書き込まなかったんだよね。 でもやっぱりせっかく書いたんで、それ貼っときます。ホントは新しく出された お題のを書いた方がいいんだろうけど。
34 :
「本」「心」「ウソ」1/1 :03/09/28 02:52
もう15年も前になりますが、小学校5年生の時、私はとんでもない 過ちを犯してしまいました。今でも後悔しています。あの日あんなウソを ついたりしなければと…………。 当時、私は貴文くんという子と仲が良くて、いつも一緒に遊んでいました。 ある日、貴文くんの家に遊びに行った時、貴文くんが気に入っているという 本を私に貸してくれました。それは子供向けの、挿し絵のついた冒険小説 でしたが、内容は非常に面白く、借りて帰ったその日から私は毎日毎日 その本を読んでいました。 数日後、貴文くんが本を返してと言ってきたのですが、私はあまりにその本が 気に入り、貴文くんに返すのが嫌になってしまいました。なぜ同じ本を買って もらえばいいとか子供心に考えなかったのか今となっては不思議ですが、 その時の私はとにかく本を貴文くんに返したくなかったのです。そこで私は とっさに、本は橋から△△川に投げて捨てたとウソをついてしまったのです。 貴文くんは怒ったような泣いたような顔をして、彼の家の方へ走って行って しまいました。私は悪いことをしたと思いながらも、これで本をずっと読んで いられると嬉しい気持ちも少しありました。 翌日、△△川の川岸で貴文くんが死んでいるのが発見されました。 前日夜から行方不明の貴文くんの捜索が行われ、その日朝に△△川で遺体が 見つかったということでした。貴文くんはあのあと△△川へ本を探しに 行って溺れたのです。先生が、貴文くんを見かけた人は申し出るようにと 言いましたが、私は怖くなって誰にも言えませんでした。その時の私は 貴文くんに申し訳なく思う気持ちよりも、自分のことの方が大事だったのかも しれません。 くだらないウソをついて友達の命を奪ってしまった報いを私は受けました。 きっと貴文くんが私のことを怒ったんだと思います。貴文くんの葬儀から 三日後、私は交通事故に遭い、両目の視力を失いました。 結果的には貴文くんの命を奪ってまで手に入れたあの本――それを読むことも 私には二度とできなくなりました。それから15年。光のない生活は不自由 ですが、それでも生きている分だけ貴文くんよりは幸せなのかもしれません。
「寝台列車」「トンネル」「夜食」〈1〉 陽一は寝台列車の旅が好きだった。 彼は月に一回の地方への出張も、必ず寝台列車で行くことに決めていた。前夜、仕事が終わるとその足で駅に向かいブルートレインに乗り込む。 そして、缶ビール片手に好きなミステリ小説を読みながら車中でゆったりと過ごすのは、彼にとってまさに至福のひとときだった。 寝台列車は、眠っている間に自分を旅先へと運んでくれ、目覚めれば目的地に着いている。早起きして、眠い目を擦りながら慌ただしく新幹線に乗り込む必要もない。 その寝台列車も、一昔前は狭いベッドに蚕棚と罵られ、すこぶる評判が悪かったが、最近はゆったりとしたベッドに、トイレ・シャワー付の豪華個室を伴った列車も増発され、ひところの趣とは随分と異なるようだ。 そんな陽一が、プライベートで北海道に旅行することになった。もちろん、寝台列車で。 前日にもかかわらず、運良く北○星3号のロイヤル個室の切符が手に入った。 おそらく、偶然にキャンセルでも出たのだろう。以前に何度もこの部屋の切符の入手を試みたものの果たせなかった。それほど、この切符は手に入りにくい。陽一の顔がほころんだのは言わずもがなというところか。 この列車の旅で陽一が最も楽しみにしていたのは、青函トンネルを通ることであった。 青函トンネル――二十四年の歳月と多数の犠牲者を出しながら難工事の末に開通した、全長五十三キロ余りにおよぶ世界最長の海底トンネルである。 そして深夜、彼が乗った北○星3号は青函トンネルに突入した。 陽一が夜食にと買った冷えたシュウマイを頬ばりながらぼんやりと車窓を眺めていると、列車は竜飛海底駅にさしかかった。そこはトンネル内にある緊急時避難用の駅である。 その駅を通過するときに陽一は不可解な光景を目にした。仄暗い駅のホームに、遺影を掲げた数十人の喪服姿の人々が深々とお辞儀をしながらこの列車を見送っているのである。 (こんな夜中にいったい何だろう……)
「寝台列車」「トンネル」「夜食」〈2〉 しばらくすると、こんどは吉岡海底駅にさしかかった。ここも、竜飛海底駅と同じく緊急時避難用の駅である。もうここは北海道だ。 陽一は睡魔に耐えながらぼんやりと車窓をうかがっていたが、吉岡海底駅を通過するとき、彼の眠気を一瞬にして吹き飛ばすような光景を目の当たりにしたのである。 それは、泥にまみれた工事人夫たちの姿であった。 腕が拉ぎ取られた者、顔の半分が削り取られた者、足がちぎれた者、腹から内蔵が飛び出ている者などが、ホーム上にずらりと並んでこの列車を見送っているのである。その様子はまるでスローモーションを見るようように陽一には映った。 そして、彼は顔が半分削り取られた男と目が合った。その男は残ったもうひとつの眼から、泪とも血ともつかないような雫を垂らし、上目遣いで陽一を凝視していたが、ニヤリと薄笑いを浮かべると、すーっと姿を消した。 「う、うわぁーっ!」 陽一は思わず悲鳴をあげた。 さっきの竜飛海底駅といい、今の吉岡海底駅といい、何かがおかしい。いや、よく考えるとこの列車自体が変だった。思い起こせば、この列車に乗ってからまだ他の誰にもあっていない。 車掌の車内検札もなかったし、車内放送だって一度も聞いていない……。 まさか、この列車には自分のほかに誰も乗っていないのではないか……そんな不安感に陽一は苛まれた。 彼はいたたまれなくなって個室を飛び出すと、別の車両に向かって歩き出した。 開放型のB寝台車両のベッドはすべてカーテンが閉まっていたが、寝息やいびきなども聞こえず、人のいる気配はまったく感じられない。ただ、レールから響く車輪の規則的なリズムだけが聞こえていた。 陽一は車掌室の扉をノックした。 「あのう、すいません」 返事はなかった。彼は思いきって扉を開いたが、車掌室はもむけの空だった。 陽一は列車の端から端まで歩いてみたが、車掌にも他の乗客にも合うことはなかった。いくらシーズンオフとはいえ、こんなことがあるのだろうか、しかも車掌までいないなんて……。
「寝台列車」「トンネル」「夜食」〈3〉 そのうち、またおかしなことに陽一は気づいた。吉岡海底駅を通過してからかれこれ一時間以上経つのに、まだトンネルを抜けていないのである。吉岡海底駅は北海道の下にある。だから、ものの数十分でトンネルを抜けるはずなのに。 もしや自分一人が出口のない異空間のトンネルに彷徨い込んだのではないか! 陽一は絶望的な思いにうちひしがれた。と同時に、彼は竜飛海底駅で見た遺影を思い出した。 (そうだ。あ、あれは……) そしてそのとき、車内は激しい振動に見舞われ、車内の灯りも消えた。そして、陽一の意識も闇の中へと消えていった。 それから五分後、満員の乗客を乗せた北○星3号が、何事もなかったように吉岡海底駅を通過していった。ひとつのロイヤル個室だけを空室のままにして……。 それ以後、陽一の行方は杳として知れなかった。 (了)
38 :
寸善尺魔 ◆Rb2BYpTc1w :03/09/28 08:11
リクエスト? にお答えして投稿させてもらいました(笑)。 きちんと推敲していないので、文章が変かもしれませんがお許しを……。 次のお題は「斧」「琴」「菊」でよろしく。
>>14-15 こういうパニックホラー系はなかなか面白いね。
新種のウイルスが台風によってばらまかれて蔓延する……これとよく似たネタを実は僕も考えていました。
僕の場合は、ウイルスではなく、空気中の酸素が突然変異して人を襲うってやつですけど。
まあ、少々長文になったのと、
>>14-15 さんとネタが似ていたので没にしましたが。
>>34 右目さん、どうもご無沙汰です。
「私」が事故にあったのは単なる偶然というよりも、貴文の意志が働いていたのでしょうね。
その報いが「私」の命ではなく視力だったという点で、この作品のセンスの良さを感じました。
>>38 昔、武士が国取りの戦をしている頃
その村は城から遠く、山の中にあるという地理的な条件から
戦とは無関係の平和な村だったそうです
村の人は畑や田を作ったり、山に入って獣を獲ったりして暮らしていました
ある日、村の若者である伊作と新造は薪に使う木を切りに山へ入りました
1日斧を振りつづけて、気が付けばもう夕暮れ
二人は集めた薪を背中に背負い山を下り始めました
と、山の中腹あたりで目の前に菊がいっぱい咲いている菊畑を見つけました
今までこの山にこんな菊畑があるとは二人とも知りませんでした
菊の美しさにしばし見とれていると、菊畑の中から琴の音が聞こえてきます
菊畑の中に目をやると女の人の頭の先が見えました
おそらく菊畑の中で座り、琴を弾いているのでしょう
しかし、もう日は落ちかけており辺りはだいぶ暗くなっています
伊作は早く山を下りようと急かしますが、新造はもう少し聞いていようとねばります
そこで、伊作は先に山を下りると言って先に菊畑を発つことにしました
早く下りてこいよと新造に一声かけてから、伊作は山を下りました
---しかし、その夜新造は山を下りてきませんでした
次の日、伊作は山に入って新造を捜しました しかし、どこを探しても新造は見つかりません 1日中山を探しましたが結局新造は見つかりませんでした 日も暮れて、伊作は山を下りることにしました と、山の中腹辺りに差し掛かった頃、昨日みつけた菊畑に出ました そして、そこには新造の背負っていた薪と斧が置いてありました 伊作は薪と斧の落ちているところに駆けよりました すると、菊畑の中から琴の音が聞こえてきます それは昨日と同じ音色でした 菊畑の中をうかがうと、やはり女の人の頭の先だけが見えました 伊作は菊畑の外から、昨日私と一緒にいた男を知らないかと尋ねました しかし、女はこちらに振り向きもせず琴を弾きつづけています 何度尋ねようと、こちらに気付く様子もありません やがて日は完全に落ち、あたりは真っ暗になってしまいました しかし、それでも菊畑の女は琴を弾きつづけています そのうち伊作はなんとなく恐ろしくなってきて一目散に山を下りてしまいました 以後、新造が村に帰ることは無かったと言います また、どれだけ山を探しても伊作の見た菊畑は見つからなかったそうです
このスレはコテハンの方が多いようなので 私もコテハンにさせて頂きました 以後、また書くことがあればよろしくお願いします 次のお題 「ひとつだけ」「不安定」「簡単」 で、お願いします
43 :
DATSUNS :03/09/29 00:12
文章自体作るのが初めてなのですか皆さんに感想と意見をいただけるのがとても面白いDEATH。 よければ、「作り話専用 〜マジで怖い話〜」の私のレスにも意見をいただけるとありがたいDEATH。 これからも書いていきたいと思うのでご指導ご鞭撻よろしくお願いし鱒。
44 :
俺の背後 ◆9meKVQUouQ :03/09/29 00:59
「ひとつだけ」「不安定」「簡単」 簡単な問題だった。 中学校教師の私は期末テストに向け、問題を作成していた。 中間テストの生徒達の出来があまりに悪いため、今回は難易度を大分下げたつもりだ。 私は問題用紙と解答用紙を配った。それから生徒達のカンニングを見張る事45分間。 キーンコーンカーンコーン 「鉛筆、シャーペンを机に置いて、後ろから集めろ」 後ろから生徒達が集めていく。答案は机に積み上げられていった。 しかし、1つだけ遅れている列があった。 「おい、どうした。早くしろ」 すると、「先生、Kが後1問と言って、やめないんです」 生徒Kは実に優秀な生徒だ。順位も常に上位に食い込んでくる。 「先生、お願いです。あと最後の1問なんです」Kは必死に書き込もうとしていた。 「往生際が悪いぞK」私は半ば強引に答案を引っ張ろうとした。「お願いです!先生あとひとつだけ・・・」 「おい、いつまでやる気だよ」「馬鹿だなー皆、Kは完璧主義者だぜ、100点じゃなきゃ気がすまないんだよ」 クラス中から野次る声が聞こえた。 「規則は規則だ」私はそういい、答案を上に載せた。 私は家に戻った。答案を自分の机の上に載せ、赤のペンで丸をつけ始めた。 「やはり簡単すぎたか・・・平均点も高いな、」 Kの採点をし始めた。シャッ シャッ シャッ 丸が枠を埋めていく。「どれ・・・あいつは何ができなかったんだ?」 それは実に簡単なサービス問題であった。そこだけ不自然に空欄になっていた。 「おかしい・・・Kのレベルならこれぐらい・・・」 私は気にはなっていたが、ど忘れと思い、気にもしていなかった。
45 :
俺の背後 ◆9meKVQUouQ :03/09/29 01:00
次の日、答案を返却した。 クラス中からは歓喜と喜びの声が聞こえてくる。「今回は実にやさしい問題だ」 Kはなぜかその日休んでいた。風邪でもひいたのだろう。 職員室に戻った私は担任として、全員の合計点に目を通した。 ありえない点数が1人だけいた。Kである。不安定すぎる。合計点数が低すぎる。 いい科目は私が担当してしている教科だけだ。 Kは昔から私が担当している科目だけは常に100点を取り続けていた。 私は休んだKが急に気になり、雨が降る中、家へ向かった。 Kは死んだと言う。母親から事実を聞かされた。テストの日は朝から体調が悪く 帰ってきたときには病状は悪化、病院に行くが手遅れだったそうだ。 母親からこんな話も聞かされた。 「Kは先生の中で一番あなたが良いと思う先生だったそうです。 一番信頼できる先生だったんでしょう・・・」 私は話を聞き続けた。 「最後にKが言った言葉は確か・・・ 最後までやらして欲しかった でした・・・」 私は深くお辞儀をして、家を出た。雨が降る中、私の心の中に言葉はエコーしていた。 ひとつだけ・・・ 半ば無理やりに作っちまったぁ・・・ 次回は 「飲料水」「キャンプ」「悪夢」で
46 :
DATSUNS :03/09/29 01:04
あなたは私にウソをついたわ。 私だけを見ていてくれるって言ってたじゃない。 付き合い始めた頃もほかの子には見向きもしないって約束してくれたじゃな い?私はその約束だけで今日まで子育てや家事、お義父さんの事も頑張って きたわ。確かに未熟なところはあったかもしれない・・・でも、良くやって るってお義姉さんだって言ってくれたわ。私自身、本当は嫌だったのよ。結 婚前から寝たきりだったお父さんの介護・・・前の奥さんとの間の子供たち ・・初めての結婚だからって家族はとても反対したけどあなたが好きだから こそ決意したんじゃない。なのにあなたは家の事は見向きもしない。すべて を私にまかせっきり。それに年甲斐も無く若い女に手を出して・・・私の立 場はどうなるのよ?夫婦間の不安定は他人には良く見抜かれるものよ。 近所の方からも微笑を交えた哀れみの態度。それにも耐えてきたのよ・・・ この辛さがあなたにはわかる?? でも・・・あなたを束縛する唯一の方法考えたの・・・簡単なことなの・・・ どうしたの?なんだか震えてるわよ?・・・ふふっ・・効いてきたみたいね。 高かったんだから・・・効いてくれなきゃ困るわよ。本当、インターネットっ て何でも手に入るのね。大丈夫心配しないで、ちゃんと研いでおいたから。 だって初めてなのよ?人がどのくらい切れるのか解からないからしっかり研い でおかなきゃね。そんなに悲しい顔しないで。ちゃんと子供たちにも美味しく 食べて貰うからね。 心配しないで、あなたが私についてきたウソはすぐに気付いたけど 私はそんなミスしないわ。あなたが足りなかったのはあなた自身どこかに 罪悪感があったから。私はこれが愛だから微塵も感じない。 ・・・もう聞こえてないようね・・・じゃ始めましょうか。 愛しているわ・・・あなた・・・
47 :
DATSUNS :03/09/29 01:07
四分遅れた・・・(涙)
1分1秒争う世界なのさネットとは(w
49 :
DATSUNS :03/09/29 01:15
しかも文章削りすぎて「ひとつだけ」抜けちゃった・・・ 駄作や
50 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/09/29 02:17
DATSUNSさん、別に以前のお題について書かれたものでもいいのですよ。 必ず新しいお題について書かなければならない、というようなルールは無いようですから。 古いお題でなければOKだと思います。 作品を書き上げたら、前のお題でも躊躇せずにどんどん貼っちゃってください。
>35-37 最後んとこ何とも言えない味わいがあって気に入りました。 >それから五分後、満員の乗客を乗せた北○星3号が、何事もなかったように >吉岡海底駅を通過していった。ひとつのロイヤル個室だけを空室のままにして……。 >40-41 そういえば時代ものってあんまりなかったね。 お題と内容が時代ものの雰囲気にマッチしてていい感じです。 >42 前のスレまでは名無しの方たくさんいたよ。 個人的にはコテハンはそのうちその人の色が分かってくるから面白いけど、 名無しの方が書きやすいだろうし、名無しの方の投稿も大歓迎ですよ。
>44-45 前半の雰囲気がやたら好きだ。なんか引き込まれたよ。 なぜか「先生、Kが後1問と言って、やめないんです」のセリフに オカルトを感じた。 >46 作者の意図とは違ってるかもしれないけど、不思議と怖さは感じなかった。 妻の悲しみ(悦び?)と夫の恐怖、どちらに感情移入してもただひたすら 辛い感じがしました。僕のなかではせつない系。
友人三人と一緒に、俺はキャンプ場に来ていた。 夕飯に作ったのはカレー。子供っぽいと言われようとも、俺はキャンプで食うカレーが何より好きなのだ。 野菜を刻み、鍋でじっくり炒める。玉ねぎがキツネ色に変じてきた。そろそろ煮込みの頃合だ。 「なあ、水持ってきてくれよ」 鍋の内容物をしゃもじでかき混ぜながら、俺は背後にいる友人に声を掛けた。 「ほらよ」 友人が渡したペットボトルを見て俺は眼を剥いた。容器の中は真っ赤な液体で満たされていた。 「なっ、おい何だよこ………」 振り向きざま、俺は声を失った。そこには首筋をぱっくりと鋭利な刃物の様な物で掻き切られた友人が 傷口から鮮血を噴水のように撒き散らしながら立ち尽くしていたからだ。 「お、おい! 大変だ!」 叫びながら俺は周囲を見回した。 そこには地獄絵図が展開されていた。キャンプ場に来ていたもの全員が 目の前の友人と同様に血にまみれた姿に変貌していたのだ。 ある者は地面にうつ伏せに転がり、またある者は夢遊病者の如くうろうろと歩き回っていた。 俺は絶叫する間も無く、気が遠のくのを感じていた。 目が覚めた。反射的に俺は跳ね起き、辺りを見回した。 薄暗いテントの中で、俺は寝袋に包まって眠っていた。ほっと息をつく。 「夢か………」 全身汗まみれになっており、酷い喉の渇きを覚えた。 枕元を探り、水筒に伸ばしかけた手が止まった。何をやっているんだ。この中に水などありはしないのに。 俺は友人三人と登山に来ていた。が、メンバーの一人が怪我をしたのと天候が荒れたためにビバーグすることになったのだが 一向に天候は回復せず、俺達はテントに中に閉じ込められることとなったのだ。 食料は底を付き、やがて飲料水も尽きた。 飢えと渇き。二匹の悪魔は数日間にわたって俺を、いや俺達を苦しめ続けた。そしてある日ついに…… 「やれやれ、悪夢は終わらず、か………」 鮮血にまみれ、ところどころ肉をかじれらた、かつて友人達だった物体を眺めながら俺は呟き、 まだ固まりきっていない血だまりを俺はすすり始めた。
遅ればせながら、新スレおめでとう&おひさ。 久々に書いたもんだから、随分粗い文章になったけど勘弁ね。 やっぱ1レスで収めるのってめんどいね。 ■「血」「最悪」「見つけた」でよろしく。
うふふageうふふ
「…っ」 跳ね起きた。なにか、なにかひどい悪夢を見ていた気がする。まったく思い出せない のだけれど。背中から尻にかけてじっとりと汗が気持ち悪い。 最近、悪い夢を見る事が多い。そして、いつもほとんど内容を覚えていない。ただ、部 分部分の印象がうっすら残っている。圧迫感…焦燥感…追われている…逃げても逃 げても…ありがちな悪夢なのかも知れない。 ざっとシャワーを浴びて、インスタントコーヒーを淹れる。朝はいつもコーヒーだけだ。 ひと口すする。ずきっと頭が痛む。これも最近よくある。不摂生のせいなのだろうか。 ふたを開け放したままの救急箱から頭痛薬を取ってコーヒーで流し込む。 次の日から、取水制限が行われた。ここらでは何年か一ぐらいである事だ。しばらく 雨が降らないとローカルニュースで「深刻な水不足」というのが必ず流れる。水源が 乏しいせいだ。 ポリタンクに入れてもらった水を飲料水や洗面用にちびちび工夫しながら使う。個人 的には少しキャンプみたいな気分で嫌いではない。長引くとうんざりだが。 結局、取水制限は一週間で解除された。思い返すとこの一週間悪夢にも頭痛にも遭 わなかった事に気づいた。少し生活リズムが変わったせいだろうか。 なにかマンションに騒がしい気配が広がる。どうしたのか。気になって玄関のドアを開 けると何人か寄り合ってひそひそ話をしているのが何組か目についた。小走りで階段 を上下している人達も見える。 「どうしたんですか?」 「あ、泊さん。いえね、今日、取水制限解除じゃないですか。それで、屋上の集合タン クをチェックしてたら、中から…なにか、人の…ねぇ?それで大騒ぎなんですよ」 うっと口を押さえ、慌てて部屋に戻ってトイレに駆け込んだ。こんな事を案外とあっけ らかんと喋れる人が不思議だ。 その後、集合タンクから発見されたのは、このマンションの住人で、借金に苦しんでい た事がわかった。自殺か事故かあるいはそれ以外か、それは現時点では不明、と。 妙に納得した。あの悪夢も頭痛も二度とない。
あー、まぁ、おそおそなんだけど…こう、「ありがち?」とか思ってひねろうとしたんだ けど、ねぇ。 また、ひねれなかったのよ(笑) ま、折角なんで、顔出し代わりという事でひとつ。 ROMはしてたんだけどねぇ(笑) 後、わたし大阪人なんで、取水制限食らった事ないんで、そこらへんの描写リアリティ ないと思うけど、ご容赦。 って訳で当然現在のお題は、ぼっこし屋さんの出された 「血」「最悪」「見つけた」 なので、念の為。
>>56 お懐かしゅうございます。
これで、やっと常連4人衆が勢揃いしました。
このスレの益々の発展をお祈りいたします。
>53 楽しい夢から厳しい現実ってのも辛いけど、悪夢が覚めてなお悪夢のような現実 ってのもクルね。それにしても一貫して1レスにおさめて書けるのはすげー。 >56 確かにありがちっぽい話だけど、じわじわ怖い。もし取水制限が一週間で 解除されていなかったら………。83さん、ホントにお久しぶり。
>>54 「最悪だ・・・。」
手紙に書かれた文章はそのひと言から始まっていた
何が最悪なのか、私は文章の続きへと目を移す
「とんでもない失敗をしてしまった・・・。もう、おしまいだ。」
慌てて書いたのであろう、字はひどく歪んでいる
「しかし、私には責任がある。だからこの手紙を残しておく。
この手紙を見つけた人は、事実を公にして欲しい。
この国の、いや人類の未来にかかわる危機なのだ。」
---人類の未来にかかわる危機?
「私は化学者だ。
私はこの実験室でとある生物兵器の開発をしていた。
この兵器はもちろん戦時使用を前提として開発されていた。
しかし、私は兵器開発のために化学の道を志したのではない。
ようやく・・・今さらながらではあるが、ようやく私は気付いたのだ。
そして、私はこの化学兵器にある細工を施した。
これで兵器は無効化、全く無害化されるはずだった。
・・・しかし、私の考えは浅はかだった。
その細工が最強最悪の兵器を生み出してしまった。」
頭痛がする
---化学兵器?最強最悪?
頭の中で何かぼんやりと声が聞こえるような気がする。
「本来、この兵器は人の脳細胞を破壊する効果をもつはずだった。 動植物に損害を与えることなく、敵兵だけを標的とする兵器。 極めて革命的な兵器になるはずだった。 だが、動植物に危害を与えないからとしても、やはり兵器は兵器である。 その矛先には破壊しか無いのだ。 そこで私はその兵器の効果を時限性に改良する事に成功した。 つまり、例えこの兵器による効果が人体に現れても 一定時間によりその病状は回復するということだ。 この兵器はある種睡眠薬にも等しくなった、誰も血を流す事は無い。」 読んでいる内に、ますます頭痛はひどくなってきた。 ---兵器、時限式 何かを思い出しそうではあるが、あと少しというところで出てこない 「しかし、この兵器は最悪だ。 早く処理をしてしまわなければいけない。 その矢先、事故が起こってしまった・・・。 もうこの実験室は汚染されてしまった。 いや、もしかしたらこの建物全体が汚染されてしまったかもしれない。 もう、外に出ることもできない我々にはできることは無い・・・。 この手紙を読んでいると言う事はおそらく助けがきたと言う事なのだろう。 どうか、早くこの兵器を処理してほしい。 どうか、・・・・・・。」
そこで文章は終わっていた。 頭痛が少しずつやわらいできた。 ---事故、汚染、助け 事故、私は後ろを振り向く はめ殺しになっているガラス窓枠 その向こう側で、ボンベのようなものから緑色の気体が勢いよく噴き出している 頭痛が消える ・・・そうだ、事故が起こった 私はこの実験室である化学兵器を開発していた ある日、この実験室で開発していた化学兵器が漏れたのだ・・・ この化学兵器は人の脳細胞を破壊し、記憶を・・・ 記憶を・・・ ・・・ ・・・・・・・ 私は、手紙を手にしている 慌てて書いたような、歪んだ時で文章が書いてある 「最悪だ・・・。」 手紙に書かれた文章はそのひと言から始まっている
次のお題 「とろける」「新しい」「出口」 で、お願いします
何時しか降り積もった暗い腐葉土の中で、ゆっくりととろける私の体。 "私"は膝を抱えてその傍らに座り、キチキチという幽かな音を聴いている。 小さな蟲や微生物が犇きあい、私であった物を食む、その音だ。 新しい世界なんて、期待していた訳ではない。ただ、終わらせたかっただけだ。 どうなってもいいと思っていた。 ……でも、あそこだけは。嗚呼、嫌だ嫌だ嫌だ。 直ぐ其処に、私が逃げてきた出口がぽっかりと空いている。嫌な空気が吹いてくる。 その空気に触れただけで、私はもう耐えられない。 体が震える。いや、体はもう無いのだ。ガタガタと、震えているのは、"私"だ。 寒い。どうする事も出来ず、ただ震えている。辛い。涙と嗚咽。寂しい。嫌だ。 嫌だ嫌だ嫌だ嫌、嫌、嫌、嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌……。 足音。 凝っと、耳を澄ます。 明るい男女の笑い声。 あぁ、嗚呼……! ぞろり、と体を動かした。 寂しい、寂しぃ、寂シぃ……。 ゆっくりと這う私の後ろから、あの出口を通って何か途方も無く嫌な物達が、湧き出し付いて来る気配を感じた。
次は、キリン、跳び箱、修正液、で。
>60-62 記憶喪失って誰でも一度は経験してみたいよね(そうでもない?)。 この主人公は懐疑とか絶望とか恐怖とかを繰り返し味わうのか、キツイ……。 >64 私が逃げてきた出口も、明るい男女の笑い声も、何か途方も無く嫌な物達も、 全てさっぱり分からんのが不気味。そういう作品だろうけど。 こういう抽象系、自分はあんまり書いたことないな。てゆうか書けない。
67 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/10/04 23:10
| | | | ノノ |\ノ |○ <燃焼系〜 燃焼系〜 |/ | | |
誰か作品書いて〜
>>65 ある日、男の子は思った
「跳び箱が4段もなければ僕にだって跳べるはずなのに---」
男の子は跳び箱に修正液をふりかけた
跳び箱は3段になり、男の子は跳び箱を跳ぶ事が出来た
ある日、女の子は思った
「キリンの首があんなに長くなければ頭をなでられるのに---」
女の子はキリンに修正液をふりかけた
キリンの首は短くなり、女の子はキリンの頭をなでる事が出来た
ある日、私は思った
「なんて退屈な人生なんだ---」
私は自分に修正液をふりかけた
---そして、私はいなくなった
次のお題 「ルール」「真っ白」「仲間外れ」 で、お願いします
ルール」「真っ白」「仲間外れ」 今日は晴天だった。待ちに待ったキャンプが始まる。私はそれだけで満足だった。 夏休みを利用しての1泊2日、会社の同僚等と行くキャンプ、俺と同僚3人の計4人、 真っ白なセンターラインを真っ直ぐ進み、キャンプ場へ進んだ。会話もはずんだ。 看板の指示通りキャンプ場へと進んだ。 「やっぱ空気がうまいな」私は腕を高く上げ、叫んだ。緑の綺麗な芝生、広がる広大な森、 ロケーションにはバッチリだ。その日は空いていて、私達の他に、2.3組のキャンパー しかいなかった。 夜、全員で肉、野菜を購入し焼肉を食した。私は同僚の棚田と炊事場へ皿を洗いに行った。 ザバザバ・・・ 隣の客は野菜や何でも排水溝につまらせていた。「ルールを守れよ・・・」 その客に私は話し掛けた。「キャンプ場にはモラルってものがあるでしょうが」しかし、 その男は私の話をさも聞いていないかのように、無視してその場を立ち去った。 「なんて男だ・・・」 その後、私は自販機で飲み物を買おうとした。ガコン、手を伸ばして飲み物を取ろうとした時、 横から今度は違う男に体当たりされた。私はのけぞった。「あ、危ないじゃないか!」 しかし、またも無視された。「全く・・・ルールを守らん奴が多いな・・・ここは」まるで私達が仲間はずれに されているみたいだった・・・
疲れていたため、その日は同僚と共に早く寝た。 次の朝、私は目が早くさめたため、家での癖で、新聞を読みにセンターハウスへ行った。 その中で[○○キャンプ場近くで事故、4人死亡]と書かれている記事があった。 「おいおい・・・俺達のキャンプ場の目の前かよ。怖いな・・・」 荷物を車に積み込み、棚田と共に話した。「いやーたまには自然の中で暮らす物もいいもんだねー」 「森林浴みたいでいいッスよねー」車を走らせ、家の近くのコンビニで下ろされた。 「じゃ、明日の会社でまた、」道具をしょって家へ歩いた。 すると・・・家の前に私の父と母や親戚がいるではないか。「なんだ?皆黒い服を着て・・・」 中を覗くと、私の写真が置いてあり、全員が黒い服で座っていた。 「そうだった、俺は死んでたんだ」私は一言そう言った。 次は「黒板」「窓ガラスの破片」「会議」
↑↑ 今見てきた・・・激しくツマンネ
>69 難しそうなお題だと思ってたけど、うまく絡ませてるなあ。 王道の怪談もいいけど、こういうのも好きです。 >71-72 てっきりまわりの人の方が幽霊ってオチだと思って読んでたので、 最後ちょっと「おっ」て思った。 個人的には最後のセリフは「そうだった」より「そうか」の方がしっくりくる。 >73 最初と最後の方だけちょっと読んだけど、ああいう簡潔な文章いいね。 お題あるとなかなか難しいけど、見習いたいとおもた。
これにて閉鎖します。 ちなみに、私の父の弟二人が早稲田大学卒、もう一人が兵庫教育大学大学院修士課程修了 という、どこにでもありそうな、けど、ちょっと特殊な家庭で育ちました。・・・。まだ50代です。 彼らの代の頃は羽振りがよかったので、目白に住んでいたんだってさ。 一応、僕の母方の従兄弟は慶應義塾大学に受かってました。 そのハイブリッドが私ってわけ。でもこの通りなのさ・・・。しくしく。 でもね、その後追跡して身近で見てるから、何とも思わない。それに、SFCの同世代になると もう私達と一緒に国立の人も混ざってやってることって結局、声優アイドルを追っかけて遊び 回ってただけだもんね。だから勉強は自分で結局やるものなんだよん。不況で色々みんな足 場を崩して私も大変よ。あ〜あ・・・。天罰かもね♪ 私は後妻がリストラされてしまったから自分の保有株を投げ売りしながら食ってたの。やけにも なりますってば。一部上場企業の株式を泣きながら投げ飛ばしてったんだからさ。日本社会 の縮図と不況直撃がストレスになって、そのライフイベントで疲れちゃったんだ・・・。 でも、実は後妻は異母弟に車を2台買っていたことがわかって、やはり後妻なるものは信用なら んということになったってわけ。 でも、いい勉強になったからね・・・。疲れてます。くたくたなの・・・。音楽はせめてものセラピー なの。実相は辛い。ギャオー。 では、またね。 追伸:書籍はなるべく購入して手許に置くこと。書籍を粗末に扱ってはいけない・・・等々の教 え(?)は守ってる。・・・逆に書籍や芸術には金に糸目をつけないとかそんな性格もあります けど。モーツァルトならイングリット・ヘブラーの生演奏を聴きに行ったりね。
「黒板」「窓ガラスの破片」「会議」1/1 ある町の小学校で教師をしている友人に聞いた話。 職員会議をしているさなか、いきなり一人の若い教師が立ち上がり、奇声を あげながら窓へ飛び込んだ。中庭に転げ落ちたその教師は窓ガラスの破片 にまみれながら狂ったように笑っていたそうだ。 それを見た古参の教師が「10年ぶりか……」と青白い顔でつぶやいた。 翌日学校にある全ての黒板におふだが貼られていたそうだ。 ■なかなかうまくいかないな。オチなしスマン。 次は「美容室」「鏡」「時計」でどうぞ。
「黒板」「窓ガラスの破片」「会議」〈1〉 内戦の続く情勢不安なX国の外務公務員として派遣されていた晃は、このところ 毎晩のように不思議な夢に悩まされていた。 その日も、いつもの夢にうなされていた晃は、自分の叫び声で目を覚ました。ふ と、枕もとの時計に目をやると、いつもより三十分ほど寝坊している。まずい、今 日はY市で政府関係者と重要な会議がある日なのに……。 急いで洗面を済ませスーツに着替えると、晃は自宅を飛び出した。そしてY行き の急行列車に駆け乗ったとき、彼は奇妙な違和感を覚えた。 デジャビュ……? しばらく列車に揺られていると、鼓膜が裂けようかと思うほどの大きな破裂音が して、激しい振動とともに晃が乗った車両が傾きはじめた。列車は、黒板に爪を立 てて擦ったような不快な音を響かせてやっと止まった。割れた窓ガラスの破片が、 バラバラと彼に降りかかってくる。 晃は思い出した。これは彼がいつも見る夢と同じシーンだった。 (正夢だったのか……)
「黒板」「窓ガラスの破片」「会議」〈2〉 晃は、転覆車両の中で数人いた乗客の下敷きになっていた。息のない者や虫の息 の者がほとんどだった。晃は這い出そうとして体を動かしたとき、右の腕に激痛を 感じた。骨折したらしい。利き腕ではない左手一本で、這い出すのにずいぶんと時 間がかかってしまった。 ようやく窓際までたどり着いて周りの景色をうかがうと、列車は百八十度回転し、 反対の軌道に乗り上げる形で止まっていた。どうやら晃の乗っていた列車は爆破さ れたようだ。反政府軍のゲリラによる仕業だろうか。 そのとき、汽笛が遠くから聞こえてきた。反対方向から列車がやって来るのが見 える。このままでは反対軌道に乗り上げたこの列車と衝突してしまう。 早く飛び降りなければ……。 しかし、ここら一帯は反政府軍の棲息地域だった。彼らに見つかればまず殺され る。残された道は左側に向かって進むことだが、そこには政府軍が対反乱軍対策と して施された地雷が延々約二キロにわたって埋められていた。どちらに行こうとも、 死の危険がつきまとう。 (ああ、俺はこの国で死んでしまうのか!) 晃は暗澹たる思いに暮れた。だが、日本には妻と小さな娘がいる。ここで死ぬわ けにはいかなかった。
「黒板」「窓ガラスの破片」「会議」〈3〉 今日見た夢のことを、晃はふと思いついた。 いつもは、車両が傾き窓ガラスの破片が降りかかってきたシーンで目が覚めてい た。ところが、今日見た夢は、どうもそうではなさそうだ。もしかすると、今日は 自分が死んだシーンまでを夢に見ていたのかもしれない。そして、死の瞬間に夢の 中であげた絶叫で目が覚めたのではないか。いつもより三十分も寝過ごしていた理 由もそれで納得できる。 つまり、それが正夢だとしたら、夢の中で向かった反対側に行けば助かるかもし れない。 (右か……それとも左か……思い出せ、思い出すんだ……続きを思い出せ) 晃はおぼろげな夢の記憶を懸命にたどった。しかし、右手の激痛と焦りから、な かなか思い出せない。 列車は目前に迫っていた。 ぴぃーっ! 汽笛が鳴り響く。まるで晃に早く飛び降りろと催促しているかのように。 そして晃は意を決して飛び降りた……。
「黒板」「窓ガラスの破片」「会議」〈4〉 「あなた、金木犀の香る季節になりましたよ」 妻が優しく語りかける。 「あなたがX国の領事館に植えた金木犀の木もすっかり大きく育っているそうよ」 すっかり白髪になってしまった夫の頭を愛おしげに撫でながら、妻がささやく。 「絵里子も来年は成人式ね。この間なんか、この家にボーイフレンドを連れてきた のよ」 妻は傍らに眠る夫にささやき続けた。もう二度と目覚めることのないであろう夫に。 あれから、晃はまたあの不思議な夢を見続けていた。そして、これからもずっと……。 (了)
うわっ、遅れた……。 没にしようか迷ったんだけど、スレ埋めるために一応貼っときます。
78の一行目でいきなり推敲ミスだわ……「情勢不安」は「政情不安」の間違いです。
>>56 マンションの給水タンクの中で、死体が発見されたって事件。
これって、関東の方で実際にありましたよね。
マンションで暮らしている人は、ミネラルウォーター買って飲んだ方がいいですよ。
>>60 忘却と再生の無限ループが続くのだろうか……
最近、この手の系統の作品が自分のツボにはまるようだ。おもしろい。
>>64 難しい。でも不気味な雰囲気は伝わってきます。
逃げてきた出口=霊道かなと思ったんですが、主語が"私"じゃなくて私になってい
るので、ちがうようですね。
今更ながら自分の読解力の無さに閉口してしまいました。
84 :
「美容室」「鏡」「時計」 ◆cBCRASH/NU :03/10/08 01:37
昨日、街中をぷらぷら歩き周り、美容室の前を通りかかった時の話。 客がさ、洗髪してもらってるのよ。気持ち良さそうにさ。 でも、「あれ? 何かおかしいな?」と思って。 おかしいのよ。髪を洗ってる美容師はちゃんと見えてるのに、そのすぐ前に設置されつ鏡には 美容師の姿が映ってないわけだ。壁に掛けられた時計は、はっきりと映ってるのにね。 で、その美容師(?)は洗髪が済むとどこかに行っちゃって、そのまま戻ってこなかったのよ。 もっとも、すぐ後で別の美容師がついたんだけどね。 慌てただろうなあその美容師。何てったって、いつの間にか洗髪が終わってるんだからさ。 ん、まあそんな話だ。 ■「松」「竹」「巧い」でよろしく。
85 :
「松」「竹」「巧い」 :03/10/08 03:41
おじいさんが竹を切ると中からかぐや姫が出てきました…この話、俺は小さい頃 いつも不思議だった。竹を切るまで、かぐや姫は竹の中で座ってたってことか? そうでなきゃじいさんが竹を切ったのと同時にかぐや姫もまっぷたつだ。かぐや姫は 竹の中で、誰かに切ってもらうのをかたときも立たず座ったままで待っていたのか? おふくろはこの話をするととても嫌な顔をした。子供のくせにいちいちつまらない ことを…とでも言いたげな。しかし、子供というものは、本来自分の心のままに不思議 がったり怖がったりするものだ。おふくろはまったくそこらへんがわかってなかった。 だからあの男が出刃をキッチンから持ち出してきた時も腰がすくんでしまったんだ。 俺は違った。刃物なんか怖くない。夜中にひとりきりだとわかると、いつも俺はあの キラキラ光る、大きくて立派な出刃で、朝、おふくろが帰ってくる気配がするまで、 暗闇でままごとをしていたんだ。 母親が毎週連れてくるあの男も震えすぎて、結局首をしめておふくろを殺した。本当は メッタ刺しにしたかったろうに。赤ら顔でみっともないったらありゃしなかった。 庭の松の下におふくろを埋めるのだって、男のやり方はまったく巧くなかった。土を ダラダラダラダラかきだしたあげく、掘った穴はおふくろには狭すぎた。出刃があるのに 使おうともせず、わざわざ穴のほうをまたダラダラ広げる始末だ。俺は縛られた後ろ手で 出刃を拾い、縄を切ると男の後ろに近づき、出刃を振り下ろした。狭い穴だが、二人でも 全然問題は無かった。 そのとき俺ははじめて、かぐや姫もはじめはこんなふうに、バラバラに竹の中に入って たんじゃないかと思いついたんだ。人間と違って神秘的な存在だし、魂さえあれば 後から元の姿になるぐらい朝飯まえじゃないか、そんなふうに思ったんだ。 それにひきかえこいつらは人間だし、ましてふたりぶんだし、もう無理だろうがね。
キーワード指定忘れてました。 「秋風」「プレステ」「芸能人」でどうぞ。
「秋風」「プレステ」「芸能人」〈1〉 親愛なる友彦君へ 私が明美と暮らしはじめて、かれこれ五年になる。 明美は生まれながらにして言葉が話せなかった。 私は六年前に交通事故で失明し、芸能人としての地位を失った。 明美は私の目になり、私は明美の口となった。 私たちは互いに足りないところを補い合い、深い愛情で結ばれていた。 しかし、その幸福も長くは続かなかった。 今年も暑い夏が終わり、爽やかな秋風が稲穂をゆらしはじめたころ、 明美が病に倒れ、あっけなく息を引き取ってしまった。 まるで我が身の一部を引き裂かれるような、悲嘆の思いをどうか察してくれたまえ。 明美がいない人生なんて私には考えられない。 私は至上の愛を失い、そして生きる望みも失った。
「秋風」「プレステ」「芸能人」〈2〉 私は死を決意した。 ただ、せめてそのまえに明美とひとつになりたかったのだ。 私は明美を斬り刻み、生のままその肉を口いっぱいに頬ばり、咀嚼した。 彼女の腕、足、胴体、はらわたを夢中になって嚥下した。 それはまさに明美の味がした、匂いがした。 明美が胃の中におさまったとき、かつてない幸福感と恍惚感が私を満たした。 ついに明美とひとつになったのだ! しかし、明美の綺麗な顔だけはさすがに傷つけることはできなかった。 彼女の頭部は、桐の箱に納めてこの庭の片隅に埋めた。 さて、少し語りすぎたようだな。私らしくもない。 そろそろ逝くとしよう。 私の亡骸は、明美の隣りにでも葬ってくれないだろうか。 ああ、それから、押入の中に新品のプレイステーションが入れてある。 失明する直前に貰ったものだが、私にはもう必要ない。 もしよかったら君の息子にでもあげてくれたまえ。 ではさようなら。 平成15年10月18日 祐次 友彦が庭を見渡すと、その片隅に墓標らしき小さな石の塊が、つつましげに置か れてあるのが目に入った。墓標には、目の不自由な祐次が手探りで彫ったとおぼし き文字が刻まれてあった。 愛する盲導犬・明美 ここに眠る (了)
次のお題は「枡(ます)」「漏斗(じょうご)」「秤(はかり)」でよろしく
私が生まれ育った村には、門外不出の秘伝の地酒が存在する。名は「鬼ノ涕(なみだ)」という。 この酒は、毎年秋に行われる村祭りの時期に「酒矢倉衆」と呼ばれる連中によって作られる。 だが、醸造法はおろか、村のどこで作られているのかさえ、村の長老と酒矢倉衆を除いて誰も知らないのである。 この「鬼ノ涕」は、村祭りの締めに村の若衆に振舞まわれるのが慣わしとなっている。 車座に居並んだ若衆に、古木から削り出して作られた枡が手渡され、 そこに「鬼ノ涕」を注ぎ、回し飲みするのだ。 さてこの回し飲みの席だが、一つだけ奇妙な事が起こる。 毎年一人に対してだけ、注がれた「鬼ノ涕」が真っ赤に変色するのである。 飲むのを畏れ、あるいは躊躇っていると、あたかも漏斗に注ぎ込まれるかのごとく 枡の中の酒が跡形も無く消え去ってしまうのだ。 この時、赤く変じた「鬼ノ涕」を飲み干してしまうと、その者は山の中で鬼に出会うとされている。 私の父も若い時分に赤色の酒を飲んでしまったばっかりに、山中で恐ろしい目にあったと聞く。 それを立証するかのごとく、父の背中には、大型の肉食獣にでも襲われたような三本の爪跡が残っていた。 よって、この「鬼ノ涕」の回し飲みは、若衆にとっては一種の度胸試しの意味合いも持っていた。 飲まなければ臆病者、飲めば勇敢なりと称えられる、といった訳である。 さて、私も昔、この席に参加したことがあるが、流石に赤く変化した「鬼ノ涕」を飲み干す事が出来なかった。 臆病者、とからかわれてもいい。度胸と命。秤にかければどちらが重いかは贅言を要しないだろう。 ■「坊や」「雨戸」「人気者」でよろしく。
「坊や」「雨戸」「人気者」1/1 「うふふ、坊やきっと学校でも人気者なのね」 友人と電車に乗っている時、背後で女の人が話す声が聞こえた。 「坊や一人? どこから来たの?」 「あらあら、あんまり走りまわったら危ないわよ」 「あら雨が降ってきたみたい。坊やのおうちちゃんと雨戸閉めてあるかしら?」 何気なく後ろを振り返ってぞっとした。女の人は、何もない空間に向かって 話しかけていた。坊や(?)の姿はどこにも見えない。 おいおい危ない人かよ。急にナイフで襲いかかってきたりしねーだろうな。 「おい、さっきから後ろでしゃべってる女の人、なんかひとりで ぶつぶつしゃべってんだぜ。見てみろよ」友人にそっと耳打ちする。 後ろを振り返った友人が、狐につままれたような顔をしてこちらに向き直る。 「あ? 何言ってんの? 女の人なんかいねーじゃん」 友人が危ない人を見るような目で俺のことを見ていた。 ■次のお題は「マンホール」「宝くじ」「魚の骨」で。
>>91 「マンホール」「宝くじ」「魚の骨」
1本の欠けもない魚の骨を大事にしていると幸運を呼ぶらしい
男は3度続けて宝くじで1億円を当てたという
だが、気をつけなければいけない
その大事にしている魚の骨が1本でも欠けていると不幸を呼ぶらしい
男はマンホールに落ちて死んだという
次のお題 「どこか」「鳥」「鍵」 で、お願いします
>78-81 うまくいったと思いきやって感じですかね。でもずっと眠り続ける晃が ちょっと幸せそうに感じたり。でも見る夢があれじゃやっぱりやだな。 >84 洗髪だけして消える美容師の霊(?)。想像するとちょっと面白い。 生前洗髪に命かけてたか、一切やらせてもらえなかった美容師かも。 >85 冒頭のぼやきでギアッチョ思い出した(分からない人スマン)。赤ら顔で震えて とか、わざわざ穴の方をだらだらとか、描写がリアルで怖い。 >87-88 ナイスオチ。それでも気持ち悪い話には違いないのに、爽やかな読後感だ(笑)。 >90 なんか変に臨場感というか迫力あるのがいい感じ。儀式の様子が目に浮かぶ。 >92 いや見事だなー。微妙に難しいかもって思いながら出したお題だったのに。 実際にありそうなおまじないってとこもいいね。
「どこか」「鳥」「鍵」 霊の存在など信じていなかった。昔からそうだった。俺は根拠の無い話は 嫌いだった。 朝の日差しで俺は目を覚ました。今日も親は先に出かけてしまっている。 俺は鍵をかけて、学校へ向かった。平凡な1日、黒板に書かれた事を写すだけ、 窓の外には鳥が電線に止まっている。退屈していた。 「今日も特に何も無しか・・・」俺はつぶやいた。するとMが急に俺の机の上に寄りかかった。 「今日、皆で肝試しをするんだけど、そんなに暇ならお前も来いよ」 家に帰っても、ゲームをするぐらいなら、友人と遊んでやるか。俺はMの誘いに乗った。 総勢男子6名、夜9時に近所の墓地でやるらしい。どこかの墓に御札が置いてあるから それを取ってくる。単純な作業だ。「そんじゃ早速、行こうか」先ほど、くじ引きで決めた順番に 進んでいく。墓地は結構広いので、時間がかかる、俺は4番目だ。 懐中電灯を手に取り、1番目のKが最初に行った。続いて10分立ってから、Oが行った。 そして、Oが行ってから15分ぐらいして、Kが戻ってきた。 手にはしっかりと御札が握られていた。「結構、怖いよ。マジビビッた」 暗闇は人の恐怖心を倍増させると言うが、俺はあまりなったことが無い。 3番目のHが行って10分後、俺は暗闇の奥底へと進んでいった。
コツコツ・・・暗闇に響く足音、足元を照らす懐中電灯、俺はお札を探した。 一つ一つゆっくりと墓を見ていくが、見つからない。 「厄介なところに隠しやがるな・・・どこだよ」 墓地の奥まで突き進んだ私はHを見つけた。 「追いついちまったな、H御札見つけた?」俺はそういうが返事が返ってこない。 Hは一つの方向を指差していた。そして俺に小声で 「出た・・・出た・・・」とだけ言っていた。「何が出たんだ!?」 私はその指差す方向へ駆け出した。懐中電灯で辺りを照らしたが何も無い。 「本当に・・・出たんだよ・・・霊が・・・」Hはそういい続けていた。 「ありえないから、この世に霊なんて」私はそう言い落ち着かせた。 そしてHと一緒にお札をとれず、戻ってきた。 帰りはその話で持ちきりだった。皆は、やっぱりいた、や、どんなだった?と 聞いていた。「そんな霊、出るはず無いのに・・・」私はそう思っていた。 そして、家に着いた。親はまだ帰っていない、その証拠に車庫が開きっぱなしだ。 俺は鍵を開けようとした、が、なんと、開いている。 「っかしいなぁ・・・閉めたはずなんだけど・・・」俺はそのまま自分の部屋に入り電灯を 付けた。すると明かりの中でテレビの画面に血文字が映し出された。 「いるよ」と一文字残して、 次は「洗濯機」「ベランダ」「インターホン」で
97 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/10/11 17:02
ベランダで洗濯物を干してるとインターホンがなった。 この前通販である物を買ってたばかりだったのできっとそれだろう。 案の定、宅急便のお兄さんが覗き穴越しに見えた。 ドアを開けるとそこには誰もおらず、小包だけが置いてあった。 意味が分からなかったが小包は私宛てであり、やはり送り元は通販会社であったため持って中に入った。 「そうだ洗濯物」とベランダに出ると、壁につっこんだらしく運転席がくしゃくしゃになった宅急便のトラックが見えた。 注文した物は持ってると幸せになるペンダントだったがその日のうちにすてた
つぎのおだいは「桃太郎」「煙草」「花畑」で
「桃太郎」「煙草」「花畑」 私の中にある最初の記憶はお父さんの事だ。 お父さんはよく寝る前に私に絵本を読んでくれた。 私は父の話す「桃太郎」が大好きだった。そんなお父さんが大好きだった。 お父さんはよく煙草を吸っていた。 私は父の吸う煙草が嫌いだった。そんなお父さんが大嫌いだった。 だけど お父さんは死んでしまった。私の目の前でトラックに跳ねられたのだ 私は、静かに横たわるお父さんの傍らにまだ火の消えていない煙草が落ちていたことを鮮明に覚えている。 そんな事を思い出していた。 今、私の目の前にはお父さんがいる。今、私は彼岸の花畑に立っている。
怖くねえ… 次は「カエル」「自販機」「七福神」で。
101 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/10/11 18:13
「カエル」「自販機」「七福神」 それは真夜中、丑三つ時のことでした。 急に腹を空かせた私は、明かり一つ無い商店街に足を運んだ。 ふと、薄明かりのする 自販機 に目がいった。 初めて見る自販機だった。 そこに陳列されているのはゲテモノと呼ばれているモノばかりだった。 「トカゲの照り焼き」「サソリの唐揚げ」「蜘蛛の丸焼き」 特に目を引いたのは「カエルのもも肉の刺身」だった。 珍しモノ好きの私は、空腹にまかせて、カエルを購入し、早速、部屋に戻り、食した。 数十分後、激しい腹痛に見舞われた。明らかに食中毒だ。下は垂れ流しの状態。 昔から七福神を信仰していた私はわらをもすがる気持ちで祈った。 しかし、トイレでは下痢が続き、トイレットペーパーにはいつまでも便がついてきた。 それもそのはずである。「七福神」だけに拭く(福)が付く。 お後がよろしいようで…
次のお題は「宵待草」「脳下垂体」「タウンページ」
「宵待草」「脳下垂体」「タウンページ」 秋も近づくある夏の日曜の夕暮れ、僕は河川敷を歩いていた。 タウンページを開いて何か見つけても、そこまで行く気になれず、かといって休日に何もしないのもどうかと思い、散歩をしていたのだ。 空にはちぎれ雲が流れ、夏の夕日は眩しく水面はきらきらと光っていた。 ふと、足下に目をやるとそこに月見草が生えていた。昔、祖母が好きだった花だ。 夕方に咲き、朝方に萎むことから「宵待草」とも云うらしい。すべて祖母から教えてもらったことだ。 それがあまりに夕日に映えて綺麗だったので僕は月見草をむしり、家に持って帰ることにした。
その夜のことだった。僕は不思議な香りで目を覚ました。 ふと、枕元に目をやるとそこに和服姿の美しい女性が座っていた。空の花瓶を見てこの女性は月見草なのだと僕は何故か冷静にそう思った。 「私をあの河原へ帰してください」そう女性は言った。「あそこには自分の夫もいる」とも言っていた。 聞こえなかった。聞こえないふりをした。僕はこの美しいモノを手放したくなかったのだ。 僕は女性を無言で陵辱した。脳下垂体から性腺刺激ホルモンは出ていなかっただろう。僕は無感情だった。ただ、手放したくなかったのだ。 朝、宵待草は枯れていた。しかし、僕を恨むような、蔑むような視線はいつまでも消えなかった。 虚しさだけが僕の心に残って、秋の匂いがした。少し寒い朝は夏の終わりを告げていた。
次は「連続通り魔」「高速スピン」「脱力感」でおながいします。
106 :
一龍斉聖水 :03/10/11 20:11
「連続通り魔」「高速スピン」「脱力感」 アンニュイ夏の日の午後、クーラーも効かないアパートの一室、 窓を全開にし、うだるような夏の暑さに脱力感を感じ、 付けっぱなしのテレビの音を横になりながら、何気なく聞いていた。 「臨時ニュースです。台東区○○町二丁目で連続通り魔事件があり、 通りがかりの女子高生を含む5人が重軽傷を負いました」 オレはむくっと上半身をお越し、自分の近所で起きている事件を珍しげに凝視した。 「…その内の三里鈴加さん(18)は、首を切断され死亡。 容疑者は三里さんの首を持ったまま逃走中と思われます。 目撃によりますと、容疑者と思われる男性は、 年齢30〜35歳位、身長…」
107 :
一龍斉聖水 :03/10/11 20:12
他人事と思っていたのにこんなことが近所であろうとは、 「まあ、オレには関係ねぇか」 独りごちて、ごろっと横になったまま、いつの間にか眠ってしまった。 どのくらい眠ったのだろう、“ドシッ”という鈍い音で目が覚めた。 何だろうと思いつつも、眠気が覚めず、近くにあった枕を引き寄せ、再び眠りに墜ちた。 また、どのくらい寝ただろう。今度は、寝返った時に顔にくっつく異様な感じで目が覚めた。 外はすっかり夕闇迫る真っ暗な空間。 はっと思い、パッと跳ね起き、電気を点け、おそるおそる枕とおぼしき物体を見た。 それは、あの女の生首だった。鮮血に染まった生首が私の顔を睨んでいた。 枕と思って、頭に敷いていたオレって… 脳が高速スピンをしながら崩れていった。
108 :
一龍斉聖水 :03/10/11 20:13
次の方「新興宗教」「穴」「ダイヤモンド」
…気がつくと男は狭くくらい穴をすべり落ちていた。 どれぐらい落ちたかわからない。どこから落ちたのかわからない。何も思い出せない。 そして急にあたりが明るくなった。水の音。 男は産湯の、洗面器のふちを見た。 男は貧しい家で、暴力をふるう父親と精神を病んだ母親に貧しい家で育てられた。 悲惨な幼年時代、青春を過ごし、成人し家出した。男はボロボロの自分の人生を呪い、 呪うのに疲れると何ものかに問うた。なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのか。 なぜ自分の人生はこんなにみじめなのか。しかし、新興宗教に入信し、霊感商法の仕事に つくと、男はだんだんその幸福になれるダイヤモンドを売る仕事に生きがいを覚え始めた。 みな俺の売ったダイヤモンドで幸福になる。男は、生まれてはじめて自分がなにかの 役に立てていると思い、幸せだった。 しかし、団体内での造反の動きから、真実を知らされた男はショックを受けた。 あれほど信じていたのに。男は、教祖に詰め寄った。 「俺はお前の秘密を知った。このダイヤモンドはにせものだ!霊力などない。 もっともな理屈を並べても証拠はこのビデオにバッチリ写っている。観念しろ!」 「…それがあなたの真実ですか?あなたのような人たちがいるから、インチキで ひとをだます悪い新興宗教がはびこるのです。」 「なんだと!同じ穴のムジナがなにを言うか。」 「わたしは同じ穴のムジナではない。あなたは、何かにすがらなくては生きていけない 弱い人間なのに、なぜそのささえを自分から壊すような真似をしたのです? おとなしく加護をうけていればよかったのだ。」 「…黙れ!だまされていても、幸せならそれでいいというのか!?」 「お前が望んだことではないのかな?すがった時点で、疑うことは許されまい。 さあ、もうお別れです。わたしがそこらの生臭教祖とは違う証拠をみせましょう。 神を疑った罰をうけなさい。」 …気がつくと男は狭くくらい穴をすべり落ちていた。 どれぐらい落ちたかわからない。どこから落ちたのかわからない。何も思い出せない。 そして急にあたりが明るくなった。水の音。 男は産湯の、洗面器のふちを見た。
次は「ペットボトル」「オリンピック」「ピンクチラシ」で。
>>94 実は、ギアッチョ大当たりです…。驚きました。
(冷静に読んだらバレバレかな…)
「ペットボトル」「オリンピック」「ピンクチラシ」 今日も朝が来た。不快だ。俺は鳴り続ける目覚まし時計を蹴り飛ばした。 いつものようにドアの郵便受けに新聞を取りにいく。またピンクチラシが挟まってやがる。 そんな金、俺にはねえよ。新聞を広げる。紙面はオリンピックの記事が溢れている。 もうそんな時期か…今回はアテネだったっけか? 円テーブルの上の飲みかけのペットボトルを手に取り、喉に流し込む。ああ、不味い。 もう生きてんのも面倒くせえ。尿意。ああ、小便しよ。汚いドアノブを掴み、開ける。 そこには男がぶら下がってた。首吊って死んでる。なんで俺の部屋で? あー、そうだ。俺、昨日死んだんだ。 ま、どーでもいいか…
次は「鮫肌」「博打」「松尾芭蕉」で。
>>95-96 心霊体験でよくこういう話あるけど、実際自分の身に起きたら、怖いよなー。
おしっこちびるな確実に。でも前にも書いたけど、一度は体験してみたい。
>>97 これイイ! かなり好きだ。「洗濯機」がないのはうっかりミス?
>>99 確かに怖くないけど好きだ。最後の彼岸てのはやっぱり季節の彼岸のこと?
もひとつの彼岸の方でも何となくいい雰囲気の話なのは変わらないけど。
>>101 お後よろしいか(笑)。でもこういう自販機、あったらあったでそこそこ売れそう。
>>103-104 これもイイ! 男はかくも愚かなものだと、ちょと身につまされる感じもする。
>>106-107 嫌だー。一生トラウマものだ。それにしてもなぜ犯人はそんなとこに……。
>>109 すごい教祖だなー。最初の4行見るに、この男は前も同じような人生送って、
新興宗教に入信して、教祖に罰を与えられたのか。なんかやるせない。
>>111 ホントにこいつはもうどーでもいいんだろうなあ。なんで時期はずれの
オリンピックの話なんかいれるんだろうってしばらく考えてた。アホだ。
「どこか」「鳥」「鍵」 彼らは生命の営みにとって不可欠な存在だった その彼らが我々に牙を向けた 神の逆鱗に触れたのか 傍若無人な人類に対する報復なのか 大空を飛翔する罪もなき鳥たちよ 愚かな我々を許せ 大海を渡る罪もなき魚たちよ 愚かな我々を許せ 未来への鍵を見つけることはついにできなかった 希望の扉は永遠に閉ざされた 累々と屍を重ねるであろうこの大地の いつかどこかで宿る新たな生命たちよ 願わくば愚かな過ちの繰り返えされることがなからんことを 古いお題で申し訳ない。 リモホがアク禁くらって、しばらく投稿できなかったので
もういっちょ、古いのを…… 「洗濯機」「ベランダ」「インターホン」 義男は浮かれていた。 十八年ぶりの歓喜の渦。多くの無軌道な若者たちで押し合いへし合いの戎橋。身動きさえ困難な橋上から、細菌とヘドロの巣窟である道頓堀川へ飛び込んだ。 別に深い意味なんて無い。ただ目立ちたくてやっただけだった。だが、興奮と歓喜が、やがて後悔と恐怖へ変わるのに、それほど多くの時間はかからなかった。 次の朝、悪臭を漂わせながら自宅にたどり着き、シャワーを浴びる。その間、洗濯機がヘドロで汚れた着衣を洗っていた。 ガタン、ガタン、ガタン…… 洗濯機から奇妙な音がする。まるで石の塊が、洗濯槽の中でぶつかっているような音だ。いま洗っているのは、ヘドロにまみれたシャツとジーンズだけなのに。 (このあいだ買ったばかりだっていうのに、もうガタがきやがったか……) とりあえずベランダに洗濯物を干そうと思い、洗濯機の蓋を開けようとしたときだった。 玄関のインターホンが鳴る。 (誰だ? こんな朝っぱらに) 「はい、どなた?」「…………」「どちらさん?」「…………」 訪問者の返事はない。 義男が覗き穴から、相手を確認しようとすると、突然、玄関のドアが開いた。 (しまった、ロックしていなかった) そこに現れたのは、ヘドロにまみれ、汚臭とも悪臭とも判別できない、不愉快な臭いを放つ首のない大男だった。 「く……び……か……え……せ……」 義男はその場で卒倒してしまった。 数日後、道頓堀川から首無しの死体が発見された。それ以後、戎橋から飛び込む者はいなくなったという。だが、義男の部屋には、今日もあの妖しい音が響いていた。 ガタン、ガタン、ガタン…… (了)
「鮫肌」「博打」「松尾芭蕉」 1/1 アパートに戻って、急いでテレビをつける。お目当ての超常現象スペシャルは すでに始まっていて、怪しげな霊媒師が松尾芭蕉の霊を降霊している所だった。 「松尾さんは忍者だったという説がありますが、本当なんですか?」 「いやわしは忍者ではない。ただの俳人じゃ」 ゲストのタレントの質問に、霊媒役の女性がうめきながら答える。 くだらねえ。超常現象に興味はあるが、イタコとか降霊とかはどうも好かん。 今のうちにと、冷蔵庫の中にあったものを適当に炒めてビールも用意する。 続いて始まったのは、透視の実験。なんでもいいから絵を書いてくれと言われて、 超能力懐疑派の大学教授が「鮫肌」と書いた。絵と言ってるのにいじわるな奴だ。 超能力者は紙に魚のような絵を書いた。教授がしたり顔で眺めている。 進行役のタレントが「鮫」という字があったので、そのイメージが伝わった のかもしれませんとアホらしいフォローをしている。大笑いだ。 目隠しをとった超能力者もやっちまったって顔してたじゃねえか。 この超能力者、予知もできるらしいが、だったらギャンブルも博打も負けなし じゃねえか。ははん、うらやましいこって(笑)。 次は未解決事件の超能力捜査か。これも見つかった試しねえしよー。 先月起きた小学生の失踪事件について、超能力者がもっともらしい透視をする。 「少女は残念ながら亡くなっています。近くに病院のような建物と広い公園が ある雑木林のようなところに埋められています」 おいおい見当はずれもいいとこだ。少女の遺体は今うちの冷蔵庫の中だ。 だいぶ少なくなってきたけどな。ま、死んでるってのは当たってるか(笑)。 ほれ見ろ、いつも部屋の隅で恨めしそうな目で俺のこと睨んでる女の子が 今は悲しそうな顔でテレビ見てるじゃねえか。 ■最後分かりにくいかな。少女の霊がってことです。 次は「相談」「ダビング」「青」でどうぞ。
118 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/10/15 13:34
次は「相談」「ダビング」「青」2/1 大学の一つ上の先輩から電話があった「ちょっと相談にのってほしいのよ」 同じサークルの中でも人気のある、密かに憧れていた美人の先輩からの頼み事を断るはずもない。 待ち合わせの喫茶店に現れた先輩は、まるで青空を切り取ったような さわやかな青のTシャツで、思わずふくよかな胸元に行った視線をそらす。 「相談ってなんですか?」 アイスコーヒーのグラスについた水滴をきれいに整えられた爪でたどりながら 言いにくそうに先輩は口を開いた。 「溝口君がね、最近ストーカーみたいにあたしのこと着け回すのよ」 溝口は同じサークルの一年生。 生真面目そうな奴で同じサークルとはいえあまり会話したことは無かった。 「大学はもちろん、最近は家の周りをうろうろしてることもあるの。 彼に相談しようと思ったんだけど彼ってすぐ手を出すほうだから。一応穏便にすませたいのよ 田奈君、彼がいないときは出来るだけあたしの側にいてくれないかな?」 サークルの中で俺が『安全な奴』というイメージが出来あがっているのはわかっていた。 べろんべろんになった女の子を送っても今まで手を出したことはない。 「俺で出来ることなら協力しますよ。今日はこの後は?」 「真っ直ぐ家に帰るだけよ」 「じゃあ送ります、どこで溝口が待ち構えてるかわかりませんからね」 憧れの人のナイトになった気分で僕は席から立ちあがった。
119 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/10/15 14:22
「相談」「ダビング」「青」3/2 それから一週間、僕にとっては幸せなようで苦痛な日々だった。 先輩の側にいられるのはとても嬉しかったが、一緒にいればいるほど欲望はつのる。 抱きしめようと思えば抱きしめることの出来る所に先輩がいるのに、僕にはそれが出来ない。 それに溝口の存在もやはり不気味だった。 先輩の言うように奴はどこにでも現れた。大学の構内、電車の中、先輩の家の周囲。 背中に禍禍しい恨めしそうな視線を感じると必ずそこには奴がいるのだ。 そして1週間目の朝。 先輩を迎えに行くために先輩が一人暮らししているアパートへと向かった。 アパートの前にはあたりまえのように溝口が佇んでいた。 堪忍袋の尾が切れた。今日こそこいつに文句を言ってやる。 先輩は穏便にと言ったが迷惑していることくらいははっきり言った方がいい。 「お前さ、いいかげん先輩に付きまとうのはやめろよ」「・・・・・・」 何も言わずに上目使いにこちらを見る。その目は正気を失っているようにも見え 一瞬ひるんだがここでやめるわけにはいかない。 「先輩には彼氏だっているんだ、お前が付きまとったら迷惑だってくらいわかるだろう」 上目使いのまま奴はにやっと笑った。 「あんただって一緒だろ。本当は先輩を自分のものにしたいんだろう?」 自分の心を見透かされ、二の句が告げなくなった。 「これ、やるよ」 溝口は鞄から一本のビデオテープを取り出した。 「一人でゆっくり楽しみな」 それだけ言うと奴はゆっくと道を引き返して行った。
120 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/10/15 14:24
「相談」「ダビング」「青」3/3 その夜、うさんくさいとは思いながらそのビデオを見ることにした。 盗撮ビデオなのか視点はどこかの家のバスルームのシャワーの吹き出し口のように思えた。 誰かがシャワーを浴びにきた。間違いなく女性でほぼアップだが中々プロポーションがいいのはわかる。 十分ほどして視点がかわる。今度は女性の部屋のようだ。 ベッドサイドのライトの付け根に仕込んだカメラらしい。 一組の男女がもつれ合っている。どこかで見た二人。 (先輩と先輩の彼氏じゃないか!) 二人は見られてる事もしらずに痴態の限りをつくしていた。 恥ずかしげも無く男の物をほおばり、思いきり足を広げて自分の唾液の付いた物を受け入れている。 僕は体中の血が熱くなるのを感じていた。怒りではない、性的な興奮から。 そして溝口が僕にこのビデオを渡した理由も悟った。 暫く後の朝。 「先輩、おはようございます」 「おはよう、いつも悪いわね」 「いいんですよ、最近は部屋でコーヒーまでごちそうになってるんですから」 ボディーガードとなってから先輩はすっかり僕に気を許していた。 近頃はこうしてこうして部屋にあがり、コーヒーや食事もご馳走になっている。 「さてと、準備OKですかね?あ、トイレ借りてからでいいですか?」 「どうぞ〜」 歌うような先輩の声を聞きながらトイレに入る。そして素早く溝口から受け取った小型カメラを仕込む。 一仕事終え、先輩を大学へ送ってから僕は携帯を取り出した。 「溝口か?俺だ。ばっちりカメラ仕込んでおいたぜ。それとこの前の分、ちゃんとダビングしておいてくれよ?」 電話の向こうの声に頷くと電話を切った。 自分の物にならないと思っていた先輩は、今、確実に僕のものになりつつある。 お目汚し失礼でした。ながすぎで3/3になっちゃた 次は「テレビ」「襖」「繁華街」でお願いします
テレビ」「襖」「繁華街」 これは僕と妻が結婚20年目の記念にと熱海へ二泊三日の旅行に行ったときの話だ。 初日は、初めての熱海旅行ということで繁華街やら観光スポットやらを回って歩いたのだが、久しぶりに歩いたせいか二日目に外を歩く気力は僕には無かった。 しかし、妻は買い物をすると言い張り、結局僕は一人留守番ということになったのだった。 することもないのでしばらくテレビを見ていたのだが、すぐに飽きてしまった。 景色でも見ながら一服しようと思い、立ち上がったとき僕は気付いた。 視 線。 それは僕の後ろからだった。恐怖を押し殺し、思いきって振り返った。誰もいない。 気のせい。そう思った。しかし、襖の隙間、ほんの数センチの隙間のそれと目が合った。 見ていた。何かがそこで。…動けない。その時だった。 「○○○○○」 それは言った。その言葉を聞いて、僕は気を失った。 僕たちは予定を一日早め、帰ることにした。妻は反対したが、僕は此処に居てはいけないような気がした。確かに聞いたあの言葉を思い出してはいけないような気がしたのだ。
次は「かかと」「釈迦」「ボーリング」で。
123 :
中腹永逝銃弾 :03/10/18 01:40
(*´Д`)ふふふ ふふふふ ふふふ・・・
124 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/10/19 23:39
「かかと」「釈迦」「ボーリング」2/1 かかとの取れたハイヒールを片手に友紀子はしょんぼりしていた。 彼氏の孝雄とボーリングを楽しんで帰ろうとしたときに階段で転んで取れてしまったのだ。 孝雄は今友紀子のために靴を買いに行っている。 ボーリング場の椅子に腰掛けながら友紀子は鞄から本を取り出した。 瀬戸内寂聴の「釈迦」現代っ子の友紀子にしては珍しい一冊だ。 外は雨。雨垂れの音に耳を傾けながら静かに彼の帰りを待った。 「おまたせ」 息せき切って孝雄が現れた。手には紙の袋を下げている。 「ありがとう、いくらだった?」 「いや、それがさあ…」 孝雄の説明によるとボーリング場を出て靴屋を捜していると一件の古道具屋があった。 表の棚には靴も並んでおり、そこでこの靴が目に止まった。見たところ汚れも無く傷みも無い。 金額を聞こうと店に入る。薄暗く陰気な店。 「靴ですか?」 いきなり声をかけられてぎょっとした。長い髪の店主とおぼしき女性が立っていた。 「ええ、表の靴ですけど…いくらですか?」 「あの靴ねえ、依託なんですけど預かった方と連絡が取れなくなっちゃって。持っていっていいですよ」 孝雄は商売っけの無さに飽きれたが 恐らく心細い気持ちでまっている友紀子を思うと急ぎたく、ありがたく貰うことにした。 「そうなんだ…ラッキーだけどいいのかなあ」 呟きながら友紀子は袋から靴を取り出して驚いた。シンプルだがものすごく高級そうな赤いハイヒール。 「本当にもらっちゃっていいのかしら?」 そう言いながらも早速はいてみる。大きいかと思ったがいざ履いてみると足にぴったりだった。 「すごーい、あたし専用の靴みたいにぴったりよ」 嬉しそうな友紀子に孝雄も満足して二人はデートの続きを始めた。
125 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/10/19 23:42
「かかと」「釈迦」「ボーリング」2/2 日も落ち、時計が10時を指す頃、名残惜しい気持ちを引きずりながら二人は駅で別れた。 友紀子は改札を抜け、線路沿いの道を歩き出す。 雨の上がった歩道にコツコツとハイヒールの足音が響く、この辺りはこの時間になると人影は少ない。 赤いライトが点滅し、カンカンと機械音が響く。この踏みきりを渡ればもう友紀子の家はすぐだ。 (今日は楽しかったなあ…)今日の出来事を反芻しながら踏み切りの脇に立ち、電車の通り過ぎるのを待った。 突然足が、足だけが前へと進み出した。『え?!』 足が体を引っ張るようにして遮断機の中へと進む。 意に反して踏みきりの只中に踊り出た友紀子の前に巨大な電車の明かりが目の前に迫ってきた。 翌朝、足首から下の無くなった友紀子の無残な遺体が発見された。 そしてその足首と履いていたはずのハイヒールだけは見つからなかった。 血の色をしたハイヒールには十分にご注意を… 次は「住宅展示場」「海外出張」「預金通帳」で
>>115 なんかこういうの読むと、ホント地球どうなっちゃうんだろうと改めて思うね。
この作品みたいなことになりませんように。
>>116 洗濯機の中で異物がカタカタ言ってる音って得体が知れなくて怖いよね。
それが首だった日にゃ……想像するだけで鬱だ。
>>118-120 カメラをすでに仕込めてる溝口のストーキング能力の高さが怖いなあ。
でもカメラでトイレ覗くより、触れなくても近くにいた方がずっと良さそうな
気がしないでもないけど、迷うとこだな。てか田奈は結局両得か。ちぇ。
>>121 何て言ったのか激しく気になる。隙間の向こうの「それ」の正体も。
>>123 (*´Д`)ふふふの方っていつも同じ人なのかな? ageサンクス。
>>124-125 見つからなかったハイヒールは何事もなかったようにまた古道具屋に
おいてありそう。こういうの読むと、次赤いハイヒール履いてる人見たら、
目の前で死んでしまいやしないかと考えてしまいそうです。
>>右目さん 毎回感想を書いてくださって、ありがとうございます。 感謝!!
>>127 もはや感想でも何でもないレスばかりですけどね。
83さんや寸善尺魔さんのようないい感じの感想レス書けない。
作者の方、とんちんかんなこと書いてても勘弁してください。
ついでに新しい作品書きました↓
バスを降り、家に向かって歩いてる時、近所の住宅展示場にさしかかろうと したあたりで、一人の中年の男性が俺に話しかけてきた。 「あの、すいません、いきなり見知らぬ人にこんなこと言うのはなんなんですが、 どうしてもタクシー代が必要なんです。財布を落としてしまったようで。 急いで向かわないといけないところがあって、お願いです」 普段ならそんな見ず知らずの人の頼み事無視するところだが、男性が哀れな ほど慌てて真っ青な顔をしていたのと、何よりその日俺は会社で、念願だった 海外出張を任されることに決まり、気分が浮かれていたこともあって、 男性にお金を貸してあげることにした。 ちょうど帰りにおろしたお金が預金通帳の間にはさんだままだったので、 その中から一万円を取り出し、男性に差し出した。 男性は何度も何度も頭を下げて、必ず返しますからと繰り返した。 俺は男性と名刺を交換し、帰路についた。
しかしそれから数日が経っても、男性からの音沙汰は全くなかった。 まさか寸借詐欺だとは思わないが、やはり返すのが面倒くさくなったのか。 男性はあれほど感謝してたのにと多少腹は立ったが、まあ仕方ないと 半分諦めていた。 名刺の連絡先へ電話することも考えないことはなかったが、出張を前に 残務整理が忙しく、面倒なことに構っている暇はなかった。
そんなある日、受付から「川西さんという方が見えてますが」と内線が入った。 あの名刺にあった名前である。やはり返しに来てくれたのか。 俺は男性の誠意を疑ったことを恥じながら、ロビーへ向かった。 しかしそこにいたのはあの時の男性ではなく、見知らぬ女性だった。 「どうも川西と申します。あの失礼ですが、渡辺卓夫さんでしょうか……」 女性の手には俺の名刺が握られていた。 「ああ、はい」 「あの、渡辺さん、川西にお金貸してくださった渡辺さんなんですよね」 「ああ、そうです。恐縮です、わざわざ返しに来ていただ……」 「実は主人、交通事故で死にまして……」 「え?」
女性は俺がお金を貸した川西さんの奥さんだった。 あの日あのあと、川西さんは乗ったタクシーが交通事故に巻き込まれ、 亡くなったのだそうだ。 奥さんはその事故を伝える新聞記事も見せてくれた。 「それで、私も信じられない話なんですが、今朝、夢に主人がでてきまして、 あなた様にお金を借りたことと、そのお金を返しに行って欲しいということを 言われまして……。で、主人の遺品を調べたところ、主人の言ったとおり、 あなた様の名刺が出てきたもんで……」 当の奥さんも半信半疑といった感じ。俺がお金を貸したことが本当だと 分かって当惑している様子だった。 「夢に現れた主人は、あなた様の親切に本当に感謝しておりました。でも……」 奥さんはいきなりカバンからナイフを取り出し、俺の胸に突き立てた。 「でも私は……」 薄れゆく意識の中で俺が最後に聞いた奥さんの言葉……。 「あなたがお金を貸さなければ、あの人は死なずにすんだのに……」 ■次のお題は「海」「光」「指」でどうぞ
「海」「光」「指」 闇い海の底で私は産まれた。音もなく無限に拡がる海の底で独り、産まれた。 産まれてからしばらくの間は光を求め、彷徨っていた。 見つかるはずもなかった。此処に光など無い。私は光を求めた。 指に絡まる藻屑を振り払いながら、私は上へと進んだ。そこに光があると信じて。 どれだけの時が流れただろう、私の躰は朽ちつつあった。それでも私は光を求めた。 海面に出た。長い、とても永い時間、私が探した光はそこには無かった。此処に光など無い。 あるのは死の闇だ。暗い死の闇だ。人が、様々な生物が蟲のように殺されていく。 昏い空の下で私は死んだ。愛もなく無限に繰り返される殺戮の中で独り、死んだ。 愚かな人間たちを嘲笑いながら。
次は「時限爆弾」、「ホモサピエンス」、「菊の花」です。
ホモサピエンス、霊長類ヒト科 俗称---人間 彼らは地球上で最も高い知能を持ち、高等な感情を有する生物である しかし、それ故に『死』を何よりも恐れ、何よりも厭う 彼らは太古の昔より、『死』に対する思索を繰り返し行ってきた やがて彼らは宗教を産み、神を作り出した 彼らは神に祈り、神にその一生を捧げてきた なぜなら、神とは『死』を超えた存在であるからだ 彼らの一部は聖書に書かれた神の言葉を口にした 彼らの一部は死後の世界を絵にしたためた 彼らの一部は太陽を不死の象徴として自らの名とした 彼らの一部は菊の花を不老長寿の花として一族の証とした しかし、神は彼らを助ける事は無かった なぜなら、神とは彼ら人間が作り出したものなのだから やがて、彼らは神を忘れ自ら『死』と向き合う 彼らはその手に科学という力を持っていた 科学は彼ら人間に欲しいまま全てを与えてきた 科学は何よりも強い力を彼らに与えた 科学は何よりも快適な生活を彼らに与えた 科学は何よりも楽しい娯楽を彼らに与えた 科学は何よりも大きな希望を彼らに与えた しかし、科学も彼らを『死』から救う事は出来ないだろう なぜなら、科学も彼ら人間が作り出したものなのだから やがて、彼らはそのことに気付くのだろうか 神も、科学も、そして人間も全ては仕掛けられた時限爆弾にすぎない ただ、その仕掛けられた時を彼らには知ることができないのだ 今も、その瞬間に向け時限爆弾の針は時を刻みつづける・・・
次のお題 「吊り橋」「平気」「知らない」 で、お願いします -追記- 私の拙い文章に感想を書いてくださる方々 毎度ありがとうございます 少々怪談とはズレたような文章ばかりで申しわけないです 今回のも見直してみればなんか怪談とは違うような・・・ 怖い文章・怪談が書けるよう、このスレで勉強させて頂いています また、このスレを見るたびに 皆、それぞれに考えて書いているなぁ と、感心と驚きと恐怖と喜びを感じています では、長々と失礼いたしました
[吊り橋」「平気」「知らない」 10月16日 崖に落ちてしまった。運良く、岩壁の出っ張った所に落ちたのだが、この高さでは登ることは出来ないだろう。 僕は高山植物の研究サンプルを採取するために此処、ペルーに来たのだ。 今思えば、あの吊り橋を渡ったのがいけなかった。人里離れたこの山のことだ。何十年も放置され、ロープが腐っていたのだろう。 幸い、此処には小さな洞窟のようなものもある。 救助が来るまで気をしっかり持つために僕は日記を書くことにした。 10月17日 缶詰などもまだ残っているし、此処には食料になる植物もたくさん生えている。 水も無くなったら、雨水をろ過して飲めばいい。大丈夫。平気だ。生きていけるぞ。 10月18日 順調だ。体の調子も良い。知らない土地にここまで適応できるとは。
10月19日 以前、体に異常はない。しかし、本当に私は生きていけるのか。いや、大丈夫だ。私は生きるぞ。 10月20日 正直つらくなってきた。食料も水もある、しかし此処には人間がいない。 誰か、誰か話し相手が欲しい。 10月21日 何故だか体が食物や水を受け付けない。体に力が入らなくなってきた。 何かの病気にかかってしまったのだろうか。私はもう駄目なのか。
10月22日 体がだるい。何を食べても吐いてしまう。しかし、食べなければ死んでしまう。苦しい。 10月23日 苦しい いやだ.死にたくない私は、まだ死にたくない痛い.日本に妻も子供もいる。死にたくない. 10月24日
次は「オオカバマダラ」「凱旋門」「へまむし入道」です。
「吊り橋」「平気」「知らない」1/1 「やだあ、この吊り橋なんかボロそうじゃん。怖いよ」 「怖がりだな、平気だって。一緒に渡れば怖くないよ。さあほら」 「でもなんか怖い。だってこの辺て自殺の名所なんでしょ?」 「ここが? 知らないよ、そんなの。聞いたことないぜ」 「ロープが切れて吊り橋ごと落っこちたりしないよね?」 「するわけないって。ほら手つないでてやるから一緒に行くよ。せーの」 通報でかけつけた警察官が、谷底に転落した男女の遺体を発見した。 男女の様子を遠くから見ていた通報者は警察に事情を話した。 「二人して手さつないで、なーんもないとこへ足踏み出して落ちてっただ。 ありゃあ間違いなく自殺だろうて……」 ■前のお題だけど、ネタ思いついたんで。
ho!
143 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/10/27 23:42
[吊り橋」「平気」「知らない」3/1 「閑静な物件をお探しなのですね」 不動産屋の言葉に私は大きく頷いて見せた。 都会での暮らしにほとほと疲れ、会社を辞めると共に引越しを考えていた。 「多少不便なところでも構いません。静かで安い借家はありませんかね」 人付合いの苦手な私はマンションのような共同住宅には向かない、贅沢でも一戸建てが希望だ。 不動産屋の提示したいくつかの物件の中に一つ心を引くものがあった。 格安の家賃、周りは山、釣りが趣味の私には裏手に川が流れているのも気に入った。 「この物件が見てみたいのですが」 不動産屋は進めておきながら一瞬戸惑いの表情を見せた。 「かなり田舎で買い物も車で30分はかかりますよ?」 「平気です、お願いします」 不動産屋はそこまでいうのならと立ちあがり、駐車場へと私を促した。 主用道路を左に行くと一気に道が細くなった。最初のうちには密集していた民家もまばらになる。 「こちらです」 まったく人影のない山の中に小さな一戸建てがぽつんと立っていた。 世捨て人のような生活を思い描いていた私にはぴったりだ。 内部もさして傷んではいない。一度外を回って外壁の確認をすると即決した。
144 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/10/27 23:44
[吊り橋」「平気」「知らない」3/2 引っ越しをして三日後、やっと室内の荷物も落ちつき、楽しみにしていた釣りに出ることにした。 家の脇にある小道を行くと川に繋がっており、その先は地元の人がまれに山へ行くときに使われている。 15分も歩くと川へと出た。ささやかな吊り橋がかかっており、その脇から沢へと降りれた。 ふと橋のたもとに目が行く。明らかに誰かが飾った花が置いてある。 (こんな小さな川で事故にあったひとでもいるのか)あまり気にせず沢へと向かった。 その夜、釣った川魚をつまみに久しぶりにくつろいだ気持ちで一人杯を重ね、布団へと入った。 秋だというのに寝苦しく、周りに人のいない気安さから窓を空け網戸だけにしていた。 外からの風も生暖かく、何度も寝返りをうつうちにやっとうとうとしかけた頃、一際生暖かな風が首筋をなぜた。 寝ぼけ眼がするすると音もなく網戸が開くのに気が付いた。 泥棒か?!と思って立ちあがろうとするがなぜか体が動かない。 白い影がゆっくりと自分へ向かってくる。風に流されてしまいそうな儚い影。 恐怖にすくみ上がった私の枕もとにその白いものが静かに立った。 髪の長い妙齢の女性。もちろん生きてはいない、薄い唇が何かを語り出した。 「わたし、の、目しらない…?」 その言葉と同時に両手が前へ垂れ下がっていた髪の毛を掻き分けた。 そこには両目がなく、どす黒い血がこびりついた窪みがあるだけだった。
145 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/10/27 23:45
[吊り橋」「平気」「知らない」3/3 気を失ったらしい私が目を覚ましたのはもう昼近い日差しの中だった。 昨夜の恐怖が甦り、一番の近所であるこの家の大家の家へと車を飛ばした。 大家曰く、以前事故で両目を失った女性が将来を悲観してあの吊り橋から身を躍らせたらしい。 今自分の住んでいる家は彼女とその夫が住んでいたそうだ。言いにくそうに大家は話を続けた。 「ここだけの話だけどねえ…自殺じゃなくて旦那が突き落としたって噂があんのよ。 元々乱暴な旦那さんでねえ、目の事故だって旦那のせいだったらしいわよ」 大家の奥さんは噂好きらしく、尋ねもしないのにそこまで話し出した。 「まあそんないわく付きの家だ、あんたが嫌だって言うならでてってもらってもいい、敷金もお返ししますよ」 申し訳なさそうに大家が言うのを聞きながら、なぜか恐怖感は消え、彼女に対する哀悼の念が生まれた。 あれから二年たったが私は変わらずこの家に住んでいる。 そして彼女も私の家へとたまにやってきている。 ただ今は昔のようなおどろおどろしい姿ではなく、生前の彼女そのままの愛くるしい姿だ。 生者と死者の差はあるが僕らは静かな幸せな生活を手に入れた。
146 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/10/27 23:47
「オオカバマダラ」「凱旋門」「へまむし入道」2/1「うん…そうよねえ…うん…わかるわ」 電話の向こうでは女友達が彼氏の愚痴をうんざりするほど延々と続けていた。 私にしても彼氏との待ち合わせの時間が迫っているし、チャンスを見つけて切ろうと思っている。 正直なところ話は半分くらいしか聞いていない。 手慰みに手近なメモにへまむし入道やらへのへのもへじの落書きをしている。 「ごめんね、そろそろ時間だから。今度ゆっくり呑みにでも行きましょうよ」 電話を切ると早速待ち合わせの喫茶店に向かった。 和也とはもう三年の付合いになる。優しい男ではないが離れることはできない。 今年は二人で海外旅行に行こうという計画を立てており、今日はその打ち合わせもかねていた。 「で、旅行だけど、北アメリカに決めちゃっていい?」 特に行きたい場所の無かった和也に比べ、私にはどうしても行きたい場所があった。 「それだけどさあ、フランスにしよーぜ?」 「なんで?和也行きたい場所無いっていってたじゃない」 「なんかさーフランスの方がかっこいいじゃん?凱旋門とか見てみたくねえ?」 和也の思いつきで計画を変えてしまうのは今に始まった事ではない。 海に行くつもりだったのにいきなり遊園地に連れて行かれたときはほとほと飽きれたが。 「ねえ、あたしがカナダでオオカバマダラを見たいって言ったときいいっていってくれたじゃない」 「やっぱ蝶よかパリの方がいいじゃんよ。な?決まりな?」 今回は飽きれるのを通り越して怒りを感じた。この男は自分の決めたことは決して曲げない。私が嫌だといっても。 「わかったわ、じゃあ今度パンフレットとか集めておくわね」 本当は鞄の中にカナダのパンフレットやガイドがすでに入っていたがそれは出せずに終った。
147 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/10/27 23:48
「オオカバマダラ」「凱旋門」「へまむし入道」2/2 その夜、失意にくれる私のところにまた女友達から電話がきた。 「…もしもし?」 電話の向こうでは彼女が泣いているのがわかる。またケンカでもしたのだろうか。 「あたし…あたしね、彼のこと殺しちゃったの…」 驚いて受話器を落としそうになった。鼻をすすりながらゆっくりと彼女はしゃべった。 曰く、同棲していた彼氏はずっと浮気をしていた。何度怒っても泣いても相手とは別れてくれず、自分とも別れる気は無い。 追い詰められた彼女はとうとう彼氏の食事にある毒を盛った。しかしそれは毒であって毒ではない。 具体的な方法を聞いて驚いた。そんなことで人が殺せるとは思っても見なかった。 ばれる事はないが彼氏を殺したのは事実だと泣きじゃくる。 「ね、落ちついて?ばれないならそのままにすればいいのよ」 思い返せば彼女は彼氏に酷い目にばかり合わされていた。私のように。 彼女が彼氏と付合ったのにはそれでも愛があった。しかし私と和也の間にはそれはなかった。 無理やり犯され、それ以来隷属するように付合いが始まったのだ。 「いいのかな…若い彼が衰弱して死んだなんて疑われちゃうよ」 「大丈夫よ、これはあたしたち二人の秘密にしましょう、そのかわり…」 「なあに?」 脅されるのかと電話の向こうで彼女が身構えるのがわかった。 「それ、私にもわけてちょうだい?」
148 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/10/27 23:52
連続失礼しました 次は「高麗人参」「革靴」「返信用封筒」
「高麗人参」「革靴」「返信用封筒」〈1〉 ああ、今日も喰いっぱくれた……。 忠志は、忌々しそうに星空を仰ぎながら、公園のベンチに腰掛けていた。もうこ れで三日間、何も口にしていなかった。平成大不況のあおりを受け、日の出の勢い だった忠志のレストラン事業も、傾きを見せ始めたかと思っているうちに、急激に のっぴきならない状況に追い込まれ、そしてすべてを失った。今やしがない住所不 定のダンボール生活者である。 つい先程から冷たい感覚を足元に覚え、忠志が目を向けると、破れた靴のつま先 から親指が覗いていた。上物の外国製の革靴なのだが、とうとうガタが来たらしい。 これから厳しい冬を迎えるというのに……。あまりの情けなさに、忠志の口から思 わずため息がついて出る。 忠志が顔を上げると、いつの間にか初老の男が隣りに座っていた。オートクチュー ルでオーダーしたとおぼしき洋服を身に纏った、人生の勝ち組といった感じの紳士 だ。 「ずいぶんとお疲れのようですな」 その紳士が静かに声をかけてきた。人と話すのは何ヶ月ぶりだろうか。空腹を紛 らわそうと、忠志は現在の境遇や、それに至った経緯などを夢中になって喋ってい た。 「そうですか。それはお気の毒ですな」 と、ひとこと言うと、鞄を指さしながら、 「ここに三千万ほどあります。これをあなたにお貸ししよう。これで再起を図って みてはどうかね?」 と、思いもかけない言葉を忠志は耳にした。
「高麗人参」「革靴」「返信用封筒」〈2〉 「どうして僕に?」 「実を言うと、私もあなたと似たような経験をしたことがあるんですよ。だから、 あなたが他人に思えなくてねぇ」 そういえば、どことなく容姿も自分に似ているようだ。もしかしたら、生き別れ た父親だろうか……? だが、すんでのところで、そのことを口にするのは思いと どまった。それを聞くのが怖かったからだ。 「あくまでお貸しするだけですよ。二十年後の今日、この時間に私はここでお待ち しています。金はそのときにお返し頂ければ結構です。いや、利息などは要りませ んから。もし、あなたが再起に失敗して行き詰まったときは、事の次第をしたため て、この返信用封筒で郵送してくれればよろしい。そのときには、私は二度とあな たの前には現れませんから」 それから、忠志はその三千万円を元手にして新たな事業を始めることにした。 世は、平成の不況から徐々に立ち直りを見せ、再び好景気が訪れようとしていた。 忠志は必死になって働いた。高麗人参を粉末に加工して、高麗人参茶を売り出した。 日本人向けに味を整え、安価で飲みやすい製品にすると、おりからの健康ブームに 乗って一気に大ヒット商品となり、業績は鰻登りになった。その他にも、高麗人参 を使った新たな健康食品を次々と生み出した忠志は、瞬く間に時代の寵児となり、 彼の会社も一部上場企業にまで登りつめた。 そして、あっという間に二十年の歳月が流れた……。 忠志はあの公園に向かっていた。約束を果たすために。鞄の中にはあの紳士に返 す三千万円が入っている。一時も早く彼に会いたかった。立派になった自分の姿を 見てもらいたかった。そして、彼にぜひ尋ねたかった……あなたは私の父なのです か、と。 公園に着くと、しきりに足元を気にしている様子の尾羽打ち枯らした中年男が、 一人ぽつんとベンチに腰掛けていた。忠志はようやくすべてを悟った。そして、そ の男の隣に腰をおろし、静かに声をかけた。 「ずいぶんとお疲れのようですな」 (おしまい)
151 :
寸善尺魔 ◆Rb2BYpTc1w :03/10/31 13:38
次のお題は「検非違使」「国際通貨基金」「さぬきうどん」で *検非違使……平安初期から置かれ、京中の非法・非違を検察し、追捕・訴訟・行 刑をつかさどった職。令外(リヨウゲ)の官の一。今の裁判官と警察官とを兼ね、権限 は強大であった。後に、国郡や伊勢神宮・鹿島神宮などにも置かれた。
>>133 これも人間への警鐘モノかな。「私」ってのはどんなものを想像したら、
作者のイメージに近くなるんだろか。いろんなの想像してみたよ。
>>135 確かに怪談ではないだろうけど、なんか深くてカッコイイ。
>その仕掛けられた時を彼らには知ることができないのだ
たとえ破滅の時を知ったとしても愚かな人類には止めることはできないだろうね。
>>137-139 ラストがちょとストレートすぎて残念。日記が進んでく単調な構成だったんで、
最後のオチはどうなるんだろうって期待感がいっそう増しちゃった分ね。
えらそうでスマン。
>>143-145 なんとなくすっきりしないのは、旦那のその後が書かれていないせい?
なんか天罰くらってるのか、女性はそれとも旦那のこと恨んでないのかな。
>>146-147 旅行話がちょっと浮いてる気がするけど、お題消化のためで仕方ないか。
関係ないけど、
>>147 冒頭の「失意」を最初「尿意」と読んでしまったことを
ここに記しておきます。
>>149-150 このあとどうなるのか異状に気になる。いやオチは理解してる(と思う)けど、
なんつーか時空(?)のねじれ具合がすげーもどかしい。
>>152 >ラストがちょとストレートすぎて残念。
>えらそうでスマン
いえいえ、勉強になります。ラスト悩んだんですが、結局安直なモノを選んでしまいました。
もうちょっと練れば良かったですね。
>>152 この後の展開ですか……
パターンT.未来の忠志が過去の忠志に金銭貸与→過去の忠志が再起に成功→20年後、過去の忠志に金銭貸与(ループ)
パターンU.未来の忠志が過去の忠志に金銭貸与→過去の忠志が再起に失敗→『私は二度とあなたの前には現れませんから』(連鎖遮断)
ていう感じですかね。
読み返すと、視点が途中で三人称→一人称→三人称になってしまっている……
相変わらず推敲が甘い・゚・(ノД`)・゚・
■久しぶりに感想を書いてみました。
>>129-132 何の落ち度もなく善良で愛すべき人間が、ある日突然、災厄に巻き込まれて理不尽
にも命を落とす。非常に怖ろしいことです。実際、自分の身にも起こりうることな
ので、その恐怖感は一層現実的で、ある意味心霊現象より怖い。
主人公の善意からでた行為が、災いに転じて自分の身にはね返ってくる。いったい
何の因果だろうねぇ。夫の死を「俺」の責任と思い込んで、刺してしまう奥さんの
パラノイア的な狂気も怖ろしい。この殺伐とした世の中で、絶対にあり得ないと断
言できないところに、この作品の怖さを感じました。
だけど、この御主人も草葉の陰で、さぞや後悔されていることでしょうな。
>>133 擬人化された「私」の幻想的なイメージと文章の美しさとが相俟って、なんともい
えない幽玄美を醸し出しています。
希望の「光」を追い求めることは生きとし生ける物の生来的な権利なんだけど、平
等に「光」があてられるわけではない。しかし、死は平等に訪れる。これは万物共
通の摂理だ。
最大公約数的に「生きる」ということの意味を考えたとき、それはいつか訪れる死
へのモラトリアムなのか……な〜んて、ちょっぴり思ってみたりして。
>>135 「死」というものを真剣に考え、恐れるのは人間だけだろうね。もちろん、他の動
物も死を恐れるのだろうけど、それは本能によるものであって、思考によって死を
恐れるのは人間だけだろう。
有史以来、人類はその叡智によって豊かな暮らしを育んできたけど、快適性や利便
性を追求することが、やがては「時限爆弾」によって壊滅的ダメージを招くであろ
うことは人類も気づいている。だけど、今となってはもはや手遅れだ。なぜなら、
後戻りするには失うものがあまりにも大きいから。
結局、死を恐れるのは人間だけだが、自ら死を選択するのも人間だけなんだね。
>>137-139 こういうストーリー設定は割と好み。日記に記録するというかたちで話を進めてい
るのもいい。
淡々と進行していく話だけに、ラストのオチでひとひねりを加えるとかなり映える
と思うんだけど。
>>141 その吊り橋は、自殺者の悲しみと妬みが作り出した幻影なのか。あるいは、その幻
によって不条理な死に見舞われた者の怨念が織りなす新たな冥界への誘いなのか……。
いや、きっとその両方なのだろう。
自殺の名所といわれるところで、実際これ似た現象が起こったという話も。
>>143-145 都会でのしがらみに疲れはて、社会との関わりを拒絶した男。夫のせいで視力を失
い、挙げ句の果てに自ら死を選んだ薄幸な女。この二人がようやく手に入れた、さ
さやかな安住の地。こういう場所を見つけられた二人は、私たちよりある意味幸せ
なのかもしれない。
>ただ今は昔のようなおどろおどろしい姿ではなく、生前の彼女そのままの愛くるしい姿だ
この一文で救われる思いがした。
万事塞翁が馬じゃないが、こういったハッピーエンド? もたまにはいいね。
>>146-147 かなり難しいお題なのに上手くまとめているなぁ、と感心しきり。実は私もこのお
題に挑戦したのですが、上手く繋がらなくて断念しました。
愚考ながら、「私」の彼氏と「女友達」の彼氏とを同一人物に設定し、「その日を
境にして、和也も私の前から忽然と姿を消した……」というオチで締めるパターン
も有りかなと思った次第。
>>154 自分が自分に……っていうループだってことは理解しながら、何か釈然と
しなかったんですけど、自分が混乱してた理由分かりました。
作中で時間をさかのぼる要素の説明が書かれてなかったためのようです。
二十年の歳月が流れてって描写があるけど、実際はどこかで時間をさかのぼらない
とこのループは成立しないわけで、その説明がなかったために(そこがこの話の
不可思議さの肝なんだろうけど)、額面通り二十年後だと受け取って、あれなんか
おかしい、普通のループ物とこれと何が違うんだろって感じでこんがらがってました。
ま、何言ってるか意味不明かもしんないけど、そんな感じで自分的には原因が
はっきりしてすっきりしました。
158 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/11/03 02:15
感想ありがとうございます
>>152 [吊り橋」「平気」「知らない」
目が見えなかった彼女は旦那に殺されたことをわかってないのでしょう
だから目を捜して犯人を捜したかったんじゃないですかね
「オオカバマダラ」「凱旋門」「へまむし入道」
凱旋門自体は喫茶店の名前にしちゃってもよかったんですけどね
海外旅行みたいな大きな事も身勝手に決めてしまうという理由付けにしてみました
>>156 [吊り橋」「平気」「知らない」
悲しくない怪談もいいかなと思って作りました
意匠をくみとっていただけてよかったです
「オオカバマダラ」「凱旋門」「へまむし入道」
正直悩んだお題でした。その落ちもおもしろいですね
でもそうするといまいち怪談っぽくはなくなっちゃうような?
やたら書きづらいお題を出す人が増えたな・・・ このスレを終わらせたいのか
>>159 けっこう同意。もう少し簡単な(汎用性のある)お題の方がいいと思う。
どう消化しようか悩むのが楽しいっていう難しさならいいんだけど、
ただ難しい言葉並べるだけってのはちょっとね。
でも、お題の受け取り方は人それぞれだし、そんなこと言ってる僕自身が出した
お題についても他の人がどう思ってるかは分からんし、難しいとこだけど。
「検非違使」「国際通貨基金」「さぬきうどん」1/1 友達四人と深夜の高校の体育館に忍び込んで肝試しをした。 一人ずつ2階の3-Aの教室へ行って、黒板に何か書いてくるという簡単なルール。 ジャンケンで順番を決めた。まず最初にAが行くことになった。 俺と残り二人はライターの火をつけて、階段の方へ向かうAを見送った。 Aの背中は瞬く間に暗闇にとけ込んで見えなくなった。 10分もしないうちに、Aが戻ってきた。次はBの番。Aがちゃんと教室まで行き 何か書いたかどうか確認して、自分も何か書いてくる。 Bが戻ってきた。「なんだよA、検非違使って。意味不明すぎて笑ったよ」 「いや、こないだ習ったばっかで、なんか頭に残ってたから」 3番目は俺の番だった。別にお化けが仕込んであるわけではないが、 深夜の真っ暗な廊下は歩くだけで怖かった。 3-Aの教室のドアを開ける。黒板には「検非違使」「国際通貨基金」の文字。 なんでとっさに思いつくのがIMFなんだよ。Bのセンスにも笑った。 俺もなんか面白いこと書こうと思ったが、なかなか思いつかず 「さぬきうどん」と適当に書いた。我ながらセンスねーなーとか思ったが、 あんまり遅いとビビってたんじゃないかってバカにされると思って妥協した。 俺が体育館に戻って、次は最後Cの番。Cが階段へ消えていった。 それきりCは戻ってこなかった。 ■次は「電話帳」「卒業アルバム」「電気」でどうぞ。
1行目、書き間違い。 友達四人と→友達と四人で ですね。スマン。
敢えて書きにくそうな御題を出し、敢えて受けて立つのが御題スレの醍醐味だと思うんだけど。 で、うまくこなした人に惜しみ無い喝采を送る、と。 ……ま、個人的見解ですが。
>>163 うん。その意見もその通りだと思う。さっきのレスと矛盾するようだけど。
まあ、結局お題出す人の勝手というか趣向なんだから、お題の出し方にまで
ケチつけるのはあんまり良くなかったかな。一応コテハンだし。
>>161 すまんが、落ちがわからん。
なぜCは戻らなかったんだ?
>>165 スマン。特にオチはありません。そういう唐突な終わり方もいいかなって思って。
>>165 お題が3つしかないのに4人でそんな事したから、かな
文章の中に度々「笑い」と言う言葉が出てくるように
ブラックユーモア的なおもしろ怖さ
こちらの世界のルールが彼らにはわからない
そんな不条理感が漂ってきて、おもしろいと思います
>>167 >お題が3つしかないのに4人でそんな事したから
すごい発想。その説面白い!
作品の最後にそういうのを匂わせる文章とかいれたら面白かったかもなあ。
169 :
「電話帳」「卒業アルバム」「電気」 ◆cBCRASH/NU :03/11/05 23:58
「恥ずかしいから……電気、消して」 裕子の要望に俺は素直に応じ、ベッドサイドのスタンドのスイッチを捻った。 真っ暗闇の中、俺は手探りで裕子の衣類を剥ぎ取り始めた。 俺と裕子は高校のクラスメイトで、今日街中で偶然再会した。 最初は誰だか分からず、名前を告げられて正直驚いた。 俺の記憶の中の裕子は少し、いやかなり太めで、腫れぼったい顔のうえに目つきが悪く、 卒業アルバムに載っている写真などまるで指名手配犯かと見紛う容貌であったのだ。 それがどうだ。目の前にいるのは、モデルはだしの美貌の持ち主ではないか。 二の句が継げずに唖然としていると、裕子は少し首を傾げながら 「忘れちゃってた? あー、そういえば、高校の頃あんまり話とかしなかったもんね」 いや、そういう問題じゃない。昔の裕子を知っている者であれば、十人が十人とも俺と同じ反応を見せることだろう。 「ねえ今ヒマ? よかったらさ、これから遊びに行かない?」 まあ特に予定も無いし、ちょっと遊ぶのもいいかな。 そう考える前に、俺は首を縦に振っていた。 街中をぶらつき、カフェスタンドで他愛も無い話に花を咲かせ、行きつけのキッチンバーで夕食をとった。 酒を飲みながら会話を楽しみ、やがて店を出ると自然と足はホテル街へと向かっていた。裕子は拒否しなかった。 そして冒頭のシーンへと移るわけだが。 しかし、こう暗くてはやり難い。ボタンを探る手先も覚束ない程だ。 それでもどうにかしてブラウスを脱がし、裕子の身体に這わせようとした指先が固いものに触れた。 「ん?」 付いていたジッパーを引き下ろすと、中から何やら柔らかい物が溢れ出した。 「あ、だめ……」 裕子の声を聞く前に、俺の手はその柔らかいものを掴んでいた。電話帳ほどの厚さの、これは一体……。 「まだ顔だけなの。お腹の方は、とりあえずコルセットで誤魔化してるの」 いやはや、女とは恐ろしい。ぶよぶよした分厚い腹の肉を掴みながら、俺はしみじみ思った。 ■何だこりゃ。「胃」「のし」「課長」でよろしく。
>>167 善解しすぎ。
単にお題を消化しただけの作文。
課長が胃ガンでくたばりやがった。うひょー 俺はもう、うれしくうれしくて。うひょー 香典は、金銀の豪華な水引がついたのし袋に入れてくれてやったぜ。うひょー 次の日、課長はふつうに会社に出勤していた。 そして俺を見ると一言こう言った。 「ふふふ、君の気持ちはよーくわかりました。ふふふ、ふふふ・・・」 狂言だったのかよ。あひゃー 次は「ドーピング」「クラリネット」「羽毛布団」で
「ドーピング」「クラリネット」「羽毛布団」 今日も疲れた。OLも楽じゃない。親に束縛されるのが嫌で、半ば家出のような勢いで東京に出てきたのが 1ヶ月前のことだ。ベットに身体を投げ出す。 初めての給料で買った羽毛布団だ。ふかふかして気持ちがいい。 普通、初給料で買うものと云ったらブランドのバッグやら洋服やらなんだろうけど、寝ている時間が私にとって唯一安らげるときなのだ。 あーあ、明日も仕事だ。憂鬱… 騒がしい音で目を覚める。窓の外に目をやると、ヴァイオリンやクラリネット、チェロ、トロンボーン、シンバル。 外では様々な楽器が奏でられていた。けど、こんなひどい演奏は聞いたことがない。てんで滅茶苦茶だ。意味が分からない。 騒音に苛つきながら、テレビを付ける。画面の隅を見ればまだ5時にもなっていない。 100m男子の選手がドーピングによって失格になったことを伝えるニュースが流れている。 完全に目が覚めてしまった。体中が痛い。騒音が頭に響く。今日は会社を休もうかな… …妙な気配を感じて振り返る。 全身真っ黒の男がそこにいた。右手には果物ナイフ。男が右手を振り上げた。 嫌だ…、殺されるッ… これが夢であることを願って、私は強く目をつぶった。 騒がしい音で目を覚める。窓の外に目をやると、ヴァイオリンやクラリネット、チェロ、トロンボーン、シンバル。 外では様々な楽器が奏でられていた。けど、こんなひどい演奏は聞いたことがない。てんで滅茶苦茶だ。意味が分からない。 騒音に苛つきながら、テレビを付ける。画面の隅を見ればまだ5時にもなっていない。 100m男子の選手がドーピングによって失格になったことを伝えるニュースが流れている。 完全に目が覚めてしまった。体中が痛い。騒音が頭に響く。今日は会社を休もうかな… …妙な気配を感じて振り返る。
次は「蟷螂」「大往生」「FBI」で。
>>157 いえ、額面通り二十年が経過しているんですよ。だけど、忠志にとってその公園は、
限定的な時空世界、つまり、中年の忠志にとっては現在と二十年後との時空の連続
体、初老の忠志にとっては現在と二十年前との時空の連続体、を形成しているとい
う設定です。なので、忠志が時間を遡る必要はないのです。
「二十年後の今日、この時間に私はここでお待ちしています」と、初老の忠志が再
会の日時と場所を細かく指定しているのが、この話の肝だったりするわけです。
>>173 「蟷螂」「大往生」「FBI」
「蟷螂ってよ、SEXしたあとメスに食われっちまうって知ってるか?」
銃の手入れをしながら、おもむろにケビンが言う
「なんだよ急に。」
「こないだディスカバリーチャンネルでやってたんだよ。」
ディスカバリーチャンネルというのはドキュメンタリー番組ばかりを集めたTVチャンネルである
ガラの悪そうな風貌に似合わず、ケビンはドキュメンタリー番組に目がない
「なんかマヌケだよなぁ。チェリー捨てたら人生にもおさらばってか?」
ガハハ、とケビンは下品に笑った
「虫の気持ちなんて知るかよ。」
オレは無愛想に答える
「やっぱ惚れた女に食われるってのは気持ちいいのかねぇ?」
ケビンはニヤニヤとした笑みをオレに向ける
「オレはベッドの上で心安らかに死にたいね。」
銃の整備を終え、オレは立ち上がる
「・・・FBI捜査官に大往生なんてあるもんかよ。」
ケビンは言った
「やっぱ死ぬときゃ派手にいかねぇとな。」
そう言ってケビンは再び豪快に笑った
バン
ケビンがその場に倒れる
床に血溜まりが広がっていく
「・・・・・・。」
銃弾が脳天を一撃、即死である
ケビンは笑顔のまま死んでいた
「・・・なんだよ、十分大往生じゃねーか。」
オレは銃を懐にしまうと、ケビンを置いて部屋を後にした
次のお題 「ちょっとぐらい」「生涯」「弱さ」 で、お願いします
「ちょっとぐらい」「生涯」「弱さ」 ちょっとぐらいならバレない。そんな軽い気持ちだった。 もう三日食べてなかった。悪いことだって分かってたんだ。あんなのは泥棒のすることだ。 昨日経験したことを俺は生涯忘れないだろう。盗みなんて馬鹿な真似、もう絶対しない。 「ちょっとだけ」なんて思ったから。そういう弱さがあったから。あんな目にあったんだ。 もう、供え物を盗んだりなんかしない。絶対に。
次のお題は「バク転」「血だらけ」「アルタイル」で。
ほほ
180 :
中腹永逝銃弾 :03/11/12 01:59
(*´Д`)ふふふ ふふふふ ふふふ・・・
>>169 柔らかい物が溢れ出した時には何が起こるんだろうと思たよ。
裕子さん、そんな状態ならホテルは拒否しないと。電気だけじゃ……。
>>171 今時、ちょっとスキ見せるとリストラ対象になったりするからなあ。
これもあり得ない話じゃないかも。いやあり得ないか。
課長さん、ふふふ、ふふふってこの後が楽しみで仕方ないんですね。
>>172 どれが夢でどれが現実? 全てが夢のようで、夢と現実の狭間のようで、
断末魔の妄想のようでもあり、やっぱり全部夢のような……。
全部夢だったらいつか目が覚めた時どっと疲れてそうだ。
>>175 辞書調べたら、大往生って安らかに死ぬことって意味なんだね。
天寿を全うするみたいな意味だと思ってたから、最初これ大往生じゃないだろ
とか思ってしまいました。死体だけ見たら、ケビンて究極のMだ……。
>>177 何があったんだよぅ?!
>>178 「バク転」「血だらけ」「アルタイル」
「アルタイルって・・・どの星だっけか。」
夜空を見上げ、私はつぶやく
単身赴任で一人この寂れた村にやってきてからというもの、空を見上げる事が多くなった
以前住んでいた街では、空を見上げる事に意味なんてなかった
濁った空、クモの巣のように張り巡らされた電線、そびえ立つビル
空を見上げても憂鬱な気分にしかならなかった
だが、ここは空気も綺麗で星もよく見える
気持ちのいい空だ
「あの3つのうちの1つ・・・だよな。」
アルタイルと呼ばれる星は夏の大三角と称される、3ツ星の一角を担う星である
小学校の理科の時間に教わった記憶がある
「こうやってクラスの皆と夜空を見上げたっけ・・・。」
理科を教えてくれた先生は星が大好きな人だった
たまにクラスの生徒を集めては、夜空を黒板に課外授業を開いていたものだ
小さな頃の記憶が蘇る
懐かしさに思わずため息が出る
「・・・あいつ、どうしてっかなー。」
あいつの名前は・・・そう、ケンジだったか・・・
ケンジはいつも赤いシャツを着ていた、運動が得意でバク転なんてお手のものだった
だが、ケンジは勉強が苦手だった
特に理科
植物の観察や実験の薬品の調合など、正確さを要求されるチマチマした作業が大嫌いだった
「そういや、あの日も先生の目を盗んで校舎に忍び込んだな・・・」
星を観察する夜の課外授業
あの日も確か・・・、夏の大三角の話だったか
先生は天の川がどうの、織姫と彦星がどうのと空を見上げながら楽しそうに話をしていた
その隙を見計らい、私とケンジは校舎の中へ忍び込んだのだ
・・・暗い校舎は少し怖かった 私はそんなに勇気がある人間ではない 性格も明るい方ではなかったし、運動も苦手だった、ただ勉強だけはよく出来た ケンジとは正反対の性格だった ケンジが夜の校舎を探検しよう、と言ったからついてきただけなのだ 私という人間は決して自分からそんなことをしようとは言わない 私はケンジのあとについて、おそるおそる暗い廊下を歩く 月明かりが差し込む廊下はまだマシだった だが、渡り廊下を渡った先、北側の旧校舎は月明かりのほとんど届かない暗い廊下ばかりだった 校舎全体が墨のように黒く、夏だというのに身震いのする寒さがあった 私は足を止め、もう帰ろうとケンジに言った しかし、ケンジは足を止めない、どんどんと先へ行ってしまう 先生が探しに来る・・・、そろそろ戻らないと 私はケンジに言った それでもケンジは足を止めることなく先へ、ただ先へと進む ・・・あとについて行くしかなかった 月明かりがあるとは言え、やはり暗い廊下を独りで帰るのは怖かった 小走りでケンジのところまで行き、そのままぴったりとケンジの後ろを歩いた 旧校舎は木造校舎である 一歩足を踏み出すごとに床がミシミシと音を立てる 廊下には二人の足音だけが響く 私はできるだけ窓や教室の扉、天井には目を向けないで歩く ケンジの背中だけをじっと見て歩く 自分の後ろから誰かが自分を見ているような気がする だが、決して振り向きはしない ただひたすらにケンジの真っ赤なシャツだけを見て歩く と、ケンジが足を止める
なぁ・・・ ケンジが私に呼びかける 今、向こうに誰かいなかったか・・・ 恐怖で私は身を硬くする 夜の校舎に、この暗い旧校舎に人がいるはずがない いや、確かにいた・・・ ケンジは歩き出す 帰ろう、もう帰ろう、私はケンジに言う だが、ケンジは私の方に振り向きもせず歩く 階段のところでケンジは足を止めた 確かに下の方に下りていったんだ・・・ ケンジは階段を覗き込む なぁ、帰ろう・・・頼むから帰ろう・・・ 私は震える手でケンジの赤いシャツを掴み懇願する お前なぁ・・・ ---その時、廊下の奥で何か物音がした 腕に力が入る、身を硬くして目を閉じる 夜の校舎に人がいるはずはない、いるはずがないんだ もしかしたら聞き間違いかもしれない、風が窓ガラスを揺らした音かもしれない でも、確かにその音は聞こえた 私は怖くて、ただ怖くてじっと目をつぶっていた 帰ろう、帰ろう、ケンジ頼むからもう帰ろう・・・ だが、ケンジは返事をしない 俺はもう独りでも帰るからな、ケンジっ・・・帰るからなっ・・・ それでもケンジは返事をしない おい、ケンジっ・・・ ---目を開けると、そこにケンジはいなかった・・・
目の焦点が合わない、どこを見ているのかわからない、何を見ているのかもわからない ケンジがいない わたしは、呆然としたまま階段へと目をやる ケンジがいた 階段の踊り場にケンジはいた 真っ赤なシャツを着て床に寝そべっていた 少し不恰好な姿で寝そべっていた 血だらけのシャツを着たケンジがそこにいた 「・・・・・・。」 私は寒気を覚え、立ち上がる ・・・もう、空を見上げるのはよそう 特に夜空なんか見上げても、憂鬱な気分になるだけだ・・・
次のお題 「声」「ワイン」 「地上」 で、お願いします
「声」「ワイン」「地上」 2099年、世紀末のクリスマス、私はワイングラスを片手に一人、ディナーを楽しんでいた。 おそらくこれが最後の食事になることだろう。 人類はすべてを自らが創りだした道具に任せることで生きることをやめたのだ。 何もせずにただ存在しているモノを果たして「生きている」と言えるのだろうか。 否、人類はここで消えるべきだ。人類はこの星の様々なものを犠牲に発展を繰り返してきた。 この食事を食べ終わり、このワインをすべて飲んだら、私は人類の終末へと出かけるのだ。 このエリアで最も天に近き場所で、私は愚かな生物に終わりを告げよう。 地上からすべての声が消え去り、地球は再生へと向かうのだ。 私はサンタクロース。そして、かつてノストラダムスと呼ばれた者だ。 最高のプレゼントをお前達に捧げよう。我がアンゴルモアはすべてを食い尽くすのだ。 最後のワインが私の躰に浸みていく。ああ、なんと私は幸福なのだろうか。 さあ、出かけるとしよう。外は寒いだろうからコートを羽織らなければ。
次は「野良猫」「合い鍵」「泥」で。
先日、不思議なことを体験したので、書いてみたいと思います。 あれは月の綺麗な夜でした。 ほら、雨の降った後って、やけに空が澄んでる事ってあるじゃないですか。 だからかな、月の明かりを妙に透き通った感じだった事を覚えてます。 そんな夜道を家に帰ってきて、ドアを開けようとしたら……鍵がないんです。 どこかに忘れてきたか落としてきたのか……それとも家の中に忘れたのか。 とにかくないものは仕方ないんで、急いで庭に回りました。 合い鍵を植木鉢の下に置いてあるんで、それを使おうと思ったんです。 ギョッとしました。 庭の真ん中で二つ光る物があったんです。 一瞬腰が引けたんですが直後に、にゃあ、という鳴き声が聞こえてきました。 猫だったんです。二つの目に、月明かりが反射してたんですね。 ほっとしました。 私は猫を飼ってませんから、野良猫が入り込んだのかな、と思ったんです。 でも……。 野良猫なんて珍しいな、と思って近づこうとして……気がついてしまいました。 足跡がないんです。 さっきの雨で、庭は一面泥の海。歩いて来たら、足跡が残るはずです。 でも野良猫がいるのはその泥の中。飛び降りるような木もないし、屋根は高いです。 えっ……っと思っていると、不意に野良猫が鳴いたんです。 もの凄く低く、不気味な声で。そして口が開いて牙が光って―― あとはわかりません。急いで逃げ出しちゃって、覚えてないんです。 その日は近くの友達の家に泊まって、次の日家に帰ってみました。 庭の泥には、野良猫がいたはずの足跡すらありませんでした。 あの猫って、なんだったんでしょう?
次は、「炒飯」「掛け軸」「ロケット花火」で。
ねむれない…
ここに書き込んでいる人で、プロ目指している人いる?
>>192 もしこのスレに書いてる(た)人が、物書きとして名前が知れたときには、
なんらかの形でカミングアウトして欲しいね。応援するよー。
「炒飯」「掛け軸」「ロケット花火」1/3 「健太、起きなさい!もう9時よ!」 母さんの怒鳴り声で僕は目を覚ました。 「なんだよ、今日は日曜なんだから学校は休みだろ…」 「何言ってるの!今日は10時から多摩川に行くんでしょ!」 そうだった。僕は母さんに勧められ(ほぼ強制的に)、町内会のボランティア活動で河原の清掃をすることになっていたのだ。 「わかってるよ。飯食ったらすぐに行くって。」 「はいはい、お昼は炒飯にするから終わったらすぐ帰ってくるのよ。」 僕は服を着替えると、起きたばかりでまだ食欲のない身体に、牛乳で無理矢理トーストを流し込んだ。 「いってらっしゃい、車に気を付けるのよ。」 「やめてよ。ガキじゃないんだから…」 乱暴にドアを開ける。休日の、しかも朝早く(?)に外出するのは正直ダルかった。
2/3 僕が河原に着くとそこにはもうたくさんの人が集まっていた。知った顔も幾らかいるようだ。 「はーい、それではみなさん集まってくださーい。」 係がメガホンで声を掛けている。みんなに釣られて僕も一番端の列に並んだ。 「えー、それではこれからグループ分けをしたいと思います。私が立っている所から右側がA班。左側がB班です。A班は河原のゴミを、B班は橋の近くのゴミを片づけてください。」 僕はB班だった。不運なことに知っている人が誰もいない。僕は一人でゴミを探すことにした。 やはり、橋の下は見えにくい所だけあって、ゴミが多い。ボロボロになったエロ本やら夏に遊んだのだろうロケット花火やらがそこかしこに捨ててある。 あー、最悪だ。寒いし、ダルいし、こんなとこ来なきゃよかったよ… 「ん?あれ何だ?」 巻物のようなモノがあった。近くに駆け寄ってみると、ボロボロでもないし、捨てるようなモノには見えない。 何が書いてあるのだろう。おそるおそる開いてみる。 それは昔の美人画のようだった。紅葉の木の下で白い着物を着た綺麗な女の人がこちらを見て立っている。 なんだか不思議な感じのする絵だ。 もしかしたら、価値のあるモノかも知れない。僕はこれを持って帰ることにした。
3/3 「ただいまー」 「おかえり、早かったのね。まだ炒飯できてないわよ。」 「いいよ、そんなに腹減ってないし。それより見てよこれ。」 僕はさっき拾った掛け軸を開いてみせた。 「何よ、その絵。なんか不気味ねー。」 「え、綺麗じゃん。」 「だって、その女の人、生きてるみたいだもの。」 「変なこと言うなよ。あ、炒飯できたら呼んでね。」 僕は掛け軸を持って階段を駆け上った。 自分の部屋に入り、ベットに寝っ転がる。そして、もう一度掛け軸を開いた。 「え?」 「健太ー、炒飯できたわよー。健太ー!」 「健太寝てるの?」 「健太?」 部屋に健太の姿はない。 ただそこには紅葉の木が描かれた掛け軸が一枚、風になびいているだけだった。
長文スマソ。 次は「平安京」「蝋燭」「雲雀」でお願いします。
198 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/11/14 22:50
「なぁ、『鳴くよウグイス平安京』って語呂があるだろ?」 そんな出だしからヤツの話は始まった。 最初は百本、灯されていた蝋燭も残り一本。 百物語のクライマックスにしてはあまりに突拍子もない出だしに、みな息を潜め聞き入っている。 「なんでウグイスなのか。雲雀じゃまずかったのか。知ってるヤツはいるか?」 問いかけに、みな首を横に振る。 あんなものは年号を覚えるだけの語呂合わせじゃなかったのか。 「実はこの語呂には、すごい秘密が隠されてるんだ」 蝋燭の加減だろうか。薄暗い明かりに浮かぶヤツの顔が、奇妙に歪んで見える。 「それは平安時代の事、平安京に住むとある――」 ヤツが口を開き、数語も話さないうちに―― 突然何の前触れも無く、蝋燭が消えた。 「わっ! なんだ突然――ガァっ!」 不意に息の詰まるような叫び声が聞こえたかと思うと、何かが床に倒れる音が響く。 慌てて誰かが部屋の明かりをつけると――ヤツは床に倒れていた。 苦しみの形相で中空を睨み、すでに事切れている。 突然の出来事にみなが声も出せずに立ちすくんでいると、不意に鳥の鳴き声が辺りに響いた。 ――雲雀の鳴き声が。
次は、「講堂」「恋愛小説」「天丼」でお願いします。
>>192 とりあえず、来年の日本ホラー大賞(角川)目指して、長編を執筆中。
時間が無く、このスレにはなかなか書き込めないのが残念です。
hosyu
>>201 ここも含め、オカ板の創作スレに投稿されている作品は、なかなか侮れないと思う。
他の投稿サイト(「作家でごはん」とか「またり文庫」)等に出品されているホラーよりは、よっぽどレベルが高い。
あとは、文章力を磨くことと、長編を書き上げるスタミナ(実はこれで挫折する人は結構多い)をつけること。
ガンガレ!!
>>201 補足
それから、基本的な文章作法はきちんと守ること。
たとえば、三点リーダーは「・・・」じゃなく「……」にするとか、
段落の最初は、一マス空けるとか、「?」や「!」の後は一マス空けるとか。
Web上の文章とは違う決まり事があるので、きちんと守ること。
これが出来ていないと、いくら内容がよくても、一次選考で落とされてしまうから。
こんなことは、たぶん分かっているとは思うんだけど、老婆心から。
連続カキコ失礼しました。
192です。 やっぱりプロ志望の人っているんだね。 瀬名秀明、貴志祐介、坂東眞砂子、岩井志麻子・・・みんな日本ホラー大賞から出た作家だ。 201さん、厳しい道のりだろうけど頑張ってほしい。
206 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/11/18 12:14
「講堂」「恋愛小説」「天丼」1/2 雄太は始めて入る大学の広さにびっくりしていた。 兄の大学が学園祭だと聞いて一緒に行きたいとだだをこねたが許可されず、 こっそり一人で来たのだ。 『にいちゃんを驚かせてやるぞ』 初めて一人きりでバスと電車を乗り継いで来たことに不安はあったが、それ以上に 大人みたいだと誇らしい気持ちの方が大きかった。 構内はお祭り騒ぎで雄太のように一人きりの小学生はいない. 雄太はまず兄を捜そうと校舎の周りを一回りすることにした。 小学校と違って遊び道具のまったくない中庭を抜け、小さな庭園にたどり着く。 人気の無いそこには一組のカップルがいた。 『にいちゃんのことを知ってるか聞いてみよう』 その二人の方へ進もうとした途端、二人はそっと抱き合い、唇を重ねた。 雄太は読んだことがなかったがそれはまるで恋愛小説の中に出てくるような、 美し口付けだった。舞い散る木の葉が二人を静かに外界から遮断する。 雄太は慌ててその場から走り去った。見てはいけないものを見てしまったような罪悪感を感じていた。 悪いことをしたわけでは無いが、ちょうど目の前にあった講堂へと隠れるように走りこむ。 『びっくりしたなあ』 恥ずかしさと慌てて走ったせいで火照る頬を両手で覆いながら改めて回りを見渡した。 「うわあ!」 小学校の体育館など比べ物にならないほどの広さの講堂。天井もすいこまれそうに高い。 『大学ってなんでもかんでもでっかいんだなあ』 そんなことに感心しながら雄太はまた兄を探し始めた。
207 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/11/18 12:16
「講堂」「恋愛小説」「天丼」2/2 どれくらいの時間が経っただろう。 雄太は広い構内をぐるぐると回っていた。中々兄は見つからず、心細さが胸に広がる。 おなかも空いたが財布の中には帰りの交通費しかない。 たくさんいるお兄さんやお姉さんたちはとっても楽しそうなのに自分は不安でたまらない。 自分と同じ年頃の子がおいしそうにたこ焼きやソフトクリームを食べているのをみると泣きそうになった。 歩くことに疲れ、芝生のすみっこに座り込んで必死に目で兄を探す。 「坊や、どうしたの?」 恰幅のいい中年男性が声をかけてきた。 「…にいちゃんを捜してるんだけど」 「そうか、じゃあおじさんとおいで」 分厚い手のひらが差し出される。安心して付いて行こうと思ったが、心の中で何かがそれを引きとめた。 『ひとさらいだったら、どうしよう』 そんな雄太の不安を余所に男は雄太の手をつかむと歩き出した。 歩幅が大きくて雄太は小走りのようになる。男の手の大きさが安心感よりも不安をかきたてた。 「ぼく…ぼく、いいです、離してください」 小さな雄太の声はお祭りの喧騒にかき消された。 不安ははちきれそうに広がる。このまま連れ去られて殺されるかもしれない。 もう大好きなにいちゃんや両親に会えなくなってしまうかもしれない。 「う…うあああん、ええええん」 とうとう雄太は堪えきれずに泣き出した。慌てたように男は雄太をなだめだす。 何事かと周りに人だかりができてきた。 「…雄太?!」 あきれた顔をして自分を見下ろしている兄の姿があった。 その姿をみて雄太の泣き声はさらに大きくなった。 「にいちゃん!にいちゃん!ばかやろーどこにいたんだよお!」 今までの不安を吐き出すように雄太は兄にしがみついて泣き続けた。
208 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/11/18 12:19
怪談じゃないじゃんって言われそうですね 私は一応プロですけどまったくジャンルの違うもの書いてます 次のお題は「真珠」「笛」「犬」で
えーと……怪談云々の前に、『天井』じゃなくて『天丼』なんですけど。
プロが一行目から誤字?(w
211 :
女王蜂 ◆us.AzknWwQ :03/11/18 17:36
Σ(゚д゚lll)ガーン
やってもーたって感じですが…どうしましょ
↑は無視してもらって「講堂」「恋愛小説」「天丼」でどなたかにもう一回お願いしましょうか
もちろん次に指定したお題は無視で
>>210 だってネットは誰も校正してくんないんだもん(。´Д⊂)
てか誤字じゃなくて見間違いですが
210氏が指摘してるのは、「始めて入る」は「初めて入る」の誤変換だろう、ということでは。
212が正解。失礼しましたね
>>203-205 ありがとうございます。
来年初投稿ですが、長編と短編の両方で挑戦する予定です。
では……
「講堂」「恋愛小説」「天丼」 講堂での文化祭の閉会式、ここでわたしはヒロインになるはずだった。 生徒会長でありわたしの片思いの相手であるAが最後に舞台に立ち挨拶をする。 その挨拶の最後に彼は全校生徒の前でわたしに愛の告白をするはずだったのだ。 そしてわたしはその場にいる全員の視線の下、彼の愛を受け入れるはずだった。 それなのに彼はどうでもいいような下品なジョークをまじえた挨拶を披露しただけで さっさと舞台を降りてしまった。舞台を降りた先で生徒会副会長のBが親しげにAに なにか耳打ちをしているが見えた。二人はだらしない顔で笑っていた。 わたしは呆然としながら考えた。 わたしが毎晩毎晩読みふけっていたあの恋愛小説は何だったのか。 片思いのヒロインは最後に幸せになるのではないのか。 全てウソだったとでも言うのか。 わたしは彼を許さないことに決めた。 その日の深夜わたしはBの家に行き庭からBの部屋へ忍び込んだ。 寝息を立てているBの全身をロープで縛り彼女をわたしの部屋へ運び込んだ。 暴れる彼女を押さえつけながらその指を全て切り取った。 翌日わたしは学生食堂でAの隣に席を取った。 案の定Aは好物の天丼を食べていた。 わたしはハンカチに包んだBの指の天ぷらをこっそりと取り出した。 (了)
次のお題は
>>208 で出ている「真珠」「笛」「犬」でお願いします。
「これがストーカーの最後のプレゼントだそうですよ…」 若い男はそう言ってコートを着た中年オトコに片方だけの真珠のイヤリングを渡した。 「目撃者の話だと被害者が血の海の中に倒れていて、あの男が泣きながらその横に 立っていたそうです。あっ、壁に向かって誰かを叱ってたとかいう証言もありましたね。 まぁ、どうせプレゼントを拒否されて思わず殺してしまったんでしょう。」 「泣きながらねぇ…」 OLの女性がストーカーによって殺された事件。しかし唯の事件ではなかった。 死体は大型の猛獣によって首を喰い千切られており、身体にも大きな引っ掻き傷があった。 その現場を目撃したアパート住人はその場にいたのはOLとストーカーの男だけであり、 猛獣なんていなかったと証言している。 鑑識の話では、こんな大きな引っ掻き傷をつけることが出来るのはライオンぐらいだそうだ。 もちろんそんなものが今でも街中を逃げ回っているはずが無い。 「そのストーカー男もなかなかハードな環境で育ったみたいですよ。小学生2年の時両親が離婚、 母親に引き取られたんですがその母親も病気で死亡。父親は行方知れず。施設では 常に誰もいない空間に向かって話しかけていたそうです。空想の友達しか作れなかったんでしょう。 それで………トクさん?聞いてます?」 「ああ、聞いてるよ。」 「それでですね、二年前に偶然OLと出会いそれ以来ストーキング行為を続けていたと…」 「にしても好きな女の喉下に噛み付くとは随分な恋愛観だな。最近の若い奴はみんなそうなのか?」 「ですからあの傷は人間には無理だって言ってるでしょう?何か凶器でも使ったんですよ、 男の口元が血で汚れてたわけでもないですし。」 トクさんと呼ばれた男は窓を開け、コートのポケットからタバコを出し火をつけた。 「しっかし動物臭いなこの部屋は、娘夫婦が犬を飼ってるんだけどな、あの家と同じにおいがする。」 「被害者のOLが動物を飼ってた形跡は無いですよ。…あっ、もしかしてストーカー男は狼男とか!」
「はぁ……お前とのコンビはこれで終わりだな。」 「そんな、冗談じゃないですか。…あー、そういえば犯人の男を取調べした時あいつが出した笛、 あれやっぱり犬笛だそうですよ。えーっと、ほらこれ。」 若い男はトクさんに銀色の小さい笛を渡した。 「おい、これ証拠品じゃないのか?」 「これを使って猛獣を操ったんじゃないのか?っていう意見が出ましてね、鑑識の奴らが気合入れて レプリカを作ったんですよ。でもサーカスや動物園の動物相手じゃ全く役に立たなかったみたいです。」 「犬笛なんだから犬じゃなきゃダメなんじゃないのか?」 「警察犬でもダメでしたよ、なんか相性とかがあるんじゃないんですか。」 トクさんは何の気なしに小さな銀色の笛を吹いてみた。 「これ音が鳴らないぞ?」 「トクさん、犬笛ってのはn」 その時、トクさんの目の前で全く予期していない事が起こった。 若い男の右肩から腹にかけての場所のスーツが切り裂かれ、真っ赤な血が流れ出したのだ。 「うっうわぁぁぁぁぁ!!!!??、イテェェェ!!!!トットクさん助け」 助けてと言い切る暇も無く男の喉が引き裂かれた。いや噛み切られたのだ。 血の海の中に倒れるさっきまで相棒だった人間を見ながら、トクさんは何が起こったのか 懸命に考えていた。 (何かが、何かがいるんだ。姿は見えないが何かでっかい動物が…) トクさんは気が付いたかのように右手に持ったさっき自分が吹いたばかりの銀色の小さい笛を見た。 しかし、頭の中の考えをまとめる暇も無くトクさんの喉は何者かによって噛み切られた… 留置所のなかの一つの部屋。 OLのストーカーだった男がそこにいた。その男は涙を流しながらただひたすら謝り続けていた。 「僕が、僕がちゃんとしつけをしていれば………。ゴメン、ごめんよぉぉ……。」
次のお題は 「モップ」 「DVD」 「新幹線」 でお願いします。
ho-
ほしゅ
>>182-185 夜の校舎でいろんな意味での拠り所(ケンジ)が突然いなくなった時の
「私」のパニックぶりをもうちょっと書いても良かったかも。
それまでも十分怖いというかドキドキしたけど。
>>187 2099年になっても冬に外歩く時にコートは欠かせないのだろうかw
>>189 謎が謎のまま終わるとことかも実話ぽくてイイ。猫は好きだけど、
猫ってやっぱりどこか不気味なイメージあるなあ。夜の猫は不気味で怖い。
>>194-196 着物の女性もいなくなってるとこが、謎めいててイイね。
掛け軸に健太も一緒に描かれてたりするとちょっと笑えますが。
>>199 怖い! 誰にも話しちゃいけない禁忌の話だったぽい。
話の触りも興味引くし、奇妙に歪んで見えるのも、雲雀が鳴くのも怖い。
>>206-207 男が実は霊だったみたいな安易なオカルト的展開よりもいいかも。
大人には分からない子供ならではの恐怖ってのは面白いテーマですね。
>>215 >彼を許さないことに決めた。ってBの方がよほどひどい目にあってる……。
愛の告白どうこうってのもただの妄想? たまにいますねそういう怖い人。
>>217-218 小さい頃からちゃんとしつけとけば、かわいい生き物なんだけどねえ。
世界のどっかにホントにいるかも透明の生物。ロマンだなあ(?)。
「モップ」「DVD」「新幹線」1/1 ちょっとした社用で郊外の小さな駅を利用したときのこと。 俺は駅前で買った映画DVDの雑誌を読みながら電車が来るのを待っていた。 中年の駅員がホームの床をモップで拭いていた。 「もうすぐ新幹線が通過しますよ。危ないですから気をつけてください」 駅員が俺に近づいてきて言った。 「わたしのようになりたくなかったら……」 駅員はそれだけ言うと掃除を続けた。 その駅が数年前から無人駅だと知ったのは翌日のことだ。 ■次のお題は「会話」「立ち読み」「冷たい」で。
いつものようにいつものコンビニでいつもの雑誌を立ち読みしていると、店員が小さな声で会話を始めた。 「……交差点で………が突っ込んで……」 「…救急車の……死……」 外の雨の音と店内の意味もなく明るい放送の音に消されてよくは聞こえないが、どうやら昨日の事故の話をしているらしい。 そうだ。あれは酷かった。居眠り運転のトラックが横断歩道を歩いていた人々に突っ込んで… 待てよ。ニュースでは確かこのコンビニの… 彼のシフトは… 冷たい汗が俺の背中を伝った。 いつの間にか店員の会話は途切れていた。俺は振り向けなかった。
なんだか、落ちのない不思議な話で終わっているものが多いね。 これって、最近の流行なの?
このタイプのショート・ショート、亡くなった星新一さんがよく書いてたなぁ。 まぁ星さんのは必ず何かしらのオチがあったけど。 最近の流行っていうかちょっと古い感じがするね。90年代って感じ。
229 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/11/26 00:27
じゃあ次のお題は 「星」「新しい」「一つ」で。
>>227 いいえ、あなたのことを言ったのではありません。
誤解を与えたのなら、ごめんなさい。
スマソ。
せっかくなんで次のお題は
>>229 でお願いします。
馬鹿馬鹿しいと笑われそうだが、僕は筒状のものを覗くのが怖い。 いや、別に、なにか存在し得ないものが見えそうで、とかそういった事ではない。 覗いている時に、僕の頭なり、その筒状のものの向こう側なりを、どんっと力一杯叩 かれれば、僕は結構な怪我をするだろう。そんな想像が頭にちらついて怖いのだ。 現実にはそんな事はまずないだろう。空が落ちてくるよりはありそうだが。 が、起こる起こらない、ではなく、想像してしまうともう駄目なのだ。恐らく、先端恐怖 症の人も、そんな感じではないだろうか、と考える。 「こういうの怖いの知ってるけど、ホントに凄い眺めだから、覗いてみない?なんにも 起こらないように、わたし見張ってて上げるから」 今日、彼女の家に遊びに行くと、丁度、なんたら流星群とやらが大接近してるとかな んとかで、天体好きの彼女は大はしゃぎだった。なるほど、彼女の指す方を見るとな にかあまり普段夜空に見かけないような、ぼやーっとした光点の塊らしきものが見え る。そして、望遠鏡で見るともっともっと凄い感動的な光景だから、と言うのだ。 「…なんとか覗いてみる。無理だったら、ごめんな」 「うん、無理だったら、途中でやめて良いから」 望遠鏡を恐る恐る覗き込む。目を近づけると、鼓動が早くなるのを感じる。パニック が冷たく頭を駆ける。それを無理に押さえ込む。鼓動に反し寒気が身体を下っていく。 「うわぁあ」 思わず声を上げた。彼女の言葉は誇張ではなかった。この世のものとも思えない美 しく荘厳な景色が、テレビなんかで見るのとは桁違いの迫力で眼前に広がっていた。 パニックも寒気も消し飛んだ。鼓動だけはまだ早い。けれど、それは今は感激のため だ。(彼女がそばにいる時なら、またこういうのも良いなぁ)とぼんやり思った。 新しい経験が価値観を、恐怖感を、変える事もあるようだ。 「どうですか?」 「うーん。女性の方は即死だね。男性は…命は取り留めると思うけど、失明しているし、 恐らく重い脳障害が残るだろうね」 「流星群から逸れたたった一つの隕石が屋根をぶち破って、その破片でこんな目に 遭うなんて、世の中には、不謹慎な言い方ですけど、ツいてない人がいるもんですね」
またもお久〜(汗) うごぉ、名前欄にお題入れるつもりが忘れてた。 「星」「新しい」「一つ」なので念の為。 いやぁ、「お、これ、面白いお題じゃん」とは何度も思ったんだけど、気合出なくて ついついつい。 歳かねい。 そして、またも苦しい内容(こう、面白味的にも、現実味的にも) 歳かねい。 なんでも歳のせいにしちゃいけません。 ZZガンダムをちょっとだけ意識してるのは内緒(これはホントに歳だな(笑)) 因みに、わたし自身主人公と同じ理由で筒物を覗くのは少し苦手だったり。 次のお題は、「エルフ」「指輪」「粥」でお願いします。
ほしゅ
「エルフ」「指輪」「粥」 『天から人、落ちし事』 〈以下口語訳〉 慶長五年、飛騨の山奥で猟師が獲物を追っていると、空からゆっくりと何かが落ちてきた。 それを見た猟師が近づいてみるとそこには異形の者が倒れていた。 異形の者は髪の毛が黄金色、皮膚は白く西洋人のようであったが、耳が兎のように長かったという。 服装も見たことのない物であったという。異形の者は酷く弱っていた。 猟師が家に連れて帰り、休ませるとしばらくして目を覚ました。 粥を食べさせると、とても美味そうに食べた。 猟師の「お前は何という生き物だ」と聞くと、異形の者は「衣琉夫(エルフ)だ」と答えた。 「衣琉夫とは何だ」と聞くと、「羅飛遊汰に住む生き物だ」と答え、 「羅飛遊汰とはどんな所だ」と聞くと「空に浮かぶ島だ」と答えたという。 猟師は、人の言葉を理解できるのだから賢い生き物なのだろうと思った。 衣琉夫は少し休むと、「これはお礼の品だ。大切にして欲しい」と言って猟師に指輪を渡し、空へと帰った。 羅飛遊汰とはどのような場所なのだろうか。それは空を飛ぶ鳥にしか分からないのだろう。
次は「RPG」「最高裁」「モグラ」です。
ho-
むう・・・
「RPG」「最高裁」「モグラ」1/1 三鷹に住む親戚のおじさん(最高裁判所の職員なので、私は最高裁の おじさんと呼んでいた)は霊感が強かった。 おしさんはよく私に「隙間には気を付けなさい」と言っていた。 「物と物の間の真っ暗な隙間にはいろんな物がいるから」よくそう言っていた。 あの時、おじさんのその言葉をなぜ思い出さなかったのか。私は思う。 友達のアパートから帰る途中、駅へ向かうために公園を通り抜けた。 砂場のそばに、何やらモグラの穴のようなくぼみがあった。 私はなんとなくその穴が気になった。おじさんの言葉は思い出さなかった。 身をかがめて穴の中をのぞこうとした時、どこからか視線を感じた。 周囲を見渡してみるが、誰もいない。 気のせいかと思って穴に視線を戻すと、穴の中からこちらをじっと 見ている青白い顔と目があった。 私は思わず悲鳴をあげて飛び上がった。 恐る恐る再び穴に目をやると、すでに顔はなくなっていた。 なぜ穴をのぞいてしまったのか。 私がRPGの主人公だったらリセットボタンを押して、あの行動を なかったことにして欲しい。 その日以来、私は四六時中そいつの視線を感じるようになった。 すこし開いたカーテンの隙間。ブロック塀の亀裂。 視線を感じて目をやると、隙間の暗闇からあの顔が私を見ている。 そしておそらく今も。あの青白い顔が私のことを見ている。 さっきからエアコンの方が気になって仕方がない。 怖い。顔を上げて確かめるのが怖い。きっとその顔はエアコンの 送風口からじっと私のことを見つめているのだ。 ■次のお題は「チャット」「数字」「無言」で。
「チャット」「数字」「無言」1/2 最近私はチャットにハマっている。最初はタイピングも遅かったが、 今ではブラインドタッチもそこそこ出来るようになった。 馴れ合いと言われてしまえばそれまでだが知らない人たちと会話するのは面白い。 お気に入りのチャットルームには毎日通っている。 で、今夜も寝る間を惜しんでチャットにふけっているってわけだ。 けど、明日は平日だということもあって、みんなもう落ちてしまった。 ヒマだなー。私ももう落ちようかな… 「60ljw@さんが入室しました」 お、誰か来た。初めての人かな。見たことない名前…60ljw@?なんて読むんだろ。 おっと、あいさつあいさつ。 「mika:こんばんわ60ljw@さん、初めまして」 「60ljw@:11 30」 何?この数字。暗号…かな。 「mika:え、と 何ですかこの数字?」 無言。もう5分経つが返事がない。 荒らし…?この時間に、まったくヒマな人もいるものだ(私が言えたことではないが)。 「mika:あのー、荒らしなら出て行って下さい」 「60ljw@:5 48」 数字が減ってる…のかな?もー、全然意味分かんないよ。 ふと、キーボードに目をやる。 あ。
2/2 そっか。そうだったんだ。私もパソコンを始めたころはローマ字打ちが出来なかった。 この人、カナ打ちなんだ。けど、キーボードはローマ字設定になってるんだよ。私って天才かも。 てことは「60ljw@」は… え?何コレ…?もしかして、この人… 急いで、時計を見る。 カチ カチ カチ カチ なーんて、やっぱただの荒らしだよね。 カタ え、何?地震? ちょっと 大きくない? すご、揺れ 揺れてる やだ、 何で? ただの荒らしじゃ なかったの? あ、タンスが 死ぬ 「60ljw@: 0 」
>>240 &ALL
「RPG」「最高裁」「モグラ」
作りにくいお題で、すみませんでした。
次は「公衆電話」「紫色の」「コール」でおながいします。
「公衆電話」「紫色の」「コール」〈1〉 おい八兵衛、いかがいたしたのじゃ? 「いてててて、御隠居さま、急に差し込みが……」 「だから言わんこっちゃない。昨晩、旅籠で六杯もおかわりするからだ」 と、助さんも呆れ顔である。 「はち、大丈夫か?」 道ばたにへたり込んでいる八兵衛を、格さんが心配そうにのぞき込む。 「格さんや、印籠の薬を八兵衛に飲ませてあげなさい」 「しかし御隠居さま、これは媚薬にございますれば、腹痛には不適当かと」 「おお、そうじゃったな。いたしかたない……では助さん、公衆電話で救急籠を呼んであげなさい」 「御隠居さま、それならば、これをお使いくだされ」 風の鬼若が懐から取り出したのは、次世代携帯電話である。 「なんじゃ、そなた。また新しい機種に変えたのか?」 「御意。これは動画も撮れる最新の機種でござります。忍びにとって、もはや欠かせぬアイテムにござります」 すると、俺たちにも見せろと、助さんと格さん。 「こりゃ便利だな。よし、記念撮影だ。鬼若、我々を写してくれ」と助さん。 「心得ました。では写しますよ……ああ、皆さん、そんなに固くならなくてもよろしゅうござります。動いていても写りますので」 一同が緊張の面持ちで記念撮影をしている傍ら、八兵衛がひとりウンウンと苦しそうに唸っている。それに気づいた助さんは、 「おっと、はちを忘れていた。だけど便利な世の中になったもんだなぁ。これがあれば、お娟の入浴シーンもばっちし録画できるというものだ、ふふふ……」 と、感心しながら助さんは、一一九番をプッシュ。 「あっ、もしもし、救急籠お願いします。連れの者が腹痛を起こしまして。 は……? 場所ですか……えーとですねぇ……中山道の馬籠宿から一里ほど北にいってですねぇ……大きな松の木のそばの、首無し地蔵のある所なんですが……。 えっ……その木は五寸釘の刺さった藁人形がたくさん打ち据えられている松かって? そうです、そうです。じゃあ、よろしくー」
「公衆電話」「紫色の」「コール」〈2〉 しばらくすると、遠くの方から、ピーポーピーポーと声がして、二人の人足が、口でサイレンを鳴らしながら、駆け足で籠を担いできた。籠には「救急御用」と書かれた赤い提灯がぶら下がっている。 「おい、しっかりしろよ、はち。救急籠が来たぞ」 と、格さんが、あぶら汗をたらたら流して苦しんでいる八兵衛を励ました。 人足が言うには、八兵衛を三里ほど先にある養生所に運ぶとのこと。しかし、八兵衛の顔には紫色の斑点が浮き出ていて、尋常の様子ではなさそうだ。はたして間に合うのだろうか。 そのときである。行く手で「うおぉー」という、掛声とも怒声ともつかぬ叫び声が上がり、しばらく進むと、老若男女が街道を塞ぐように群を成して蠢いていた。 群衆は、ひとりの男の名をコールしている。 『雷電ボンバイエ! 雷電ボンバイエ!』 そこに、一人の大男が颯爽と現れた。それは史上最強の力士、アントニオ雷電、その人であった。どうやら、どさ回りをしているらしい。 「元気ですかぁーーーーっ! 元気があれば、何でもできる」 と、雷電はいつもの決まり文句をかます。 「いくぞぉーーーー! いち、にぃ、さん、だぁーーーーーーっ!」 『雷電ボンバイエ! 雷電ボンバイエ!』 もはや群衆は、熱病に冒されたようにオール躁状態である。 「おお、あれはアントニオ雷電ではないか。こんなところで雷電に会えるとは……長生きはするものじゃな、助さん、格さん」 思わぬところで有名人に出会って、御老公も感慨深げである。 「そうじゃ。雷電のビンタで八兵衛の病を治してもったらどうじゃ?」 「御隠居さま、それは些か無謀かと……」 「なーに、大丈夫じゃよ、格さん。病は気からというではないか。雷電のビンタで、気合いを入れ直してもらえば、八兵衛もすっかりよくなろうというもの。それ!」
246 :
寸善尺魔 ◆Rb2BYpTc1w :03/12/05 11:22
「公衆電話」「紫色の」「コール」〈3〉 いやがる八兵衛を、助さんと格さんが無理やり土俵の上に引きずり出す。そして、羽子板のような雷電の張り手が八兵衛の左頬に炸裂した! その夜、うっかり八兵衛は、静かに息を引き取った。死因は脳挫傷であった。 糞の役にも立たない男であったが、いなくなるとやはり寂しいものである。 鬼若が、気を紛らわすために、前日に撮影した動画を再生していると、そのモニターの中には、まるで写真のように動かない、御老公と、助さん、格さん、それに疾風のお娟とアキが写っていた。 そして、彼らのそばに……生前のままの人懐こい笑顔で愛嬌を振りまく八兵衛がいた。 いやぁ、最近ちょっと壊れ気味でして……まぁ、その……正直すまん。 お題は継続で。
ナンセンスホラー? サムライメックを思い出した
サムライメック、懐かしい・・・ って、ほとんどの香具師は知らんだろうな。
249 :
中腹永逝銃弾 :03/12/09 05:52
(*´Д`)ふふふ ふふふふ ふふふ・・・
「公衆電話」「紫色の」「コール」〈1〉 「ねぇ、知ってる? 幻の公衆電話のこと」 「何だよそれ……」 「あたしたちの学校で噂になってるんだけど、紫色の公衆電話があって、その電話でね……」 「その電話で……何だよ?」 「死んだ人とお話ができるんだって」 「ははは、おまえ短大生にもなって、そんなくだらん噂話を信じてるのかよ」 現実主義者の昭利は、端(はな)から取りあおうとしない。 「あたし、どうしてもその電話で話したい人がいるんだ。それでね……これから一緒にその公衆電話を探して欲しいの。ねっ……お願い」 智恵は僅かに首を傾(かし)げ、拝むように両手を合わせながらせがんだ。智恵のほうも心得たもので、こうするとたいていの頼みごとは、昭利が引き受け入れてくれることをわかっているようだ。 昭利も、馬鹿馬鹿しい頼みだと思いながら、女に惚れた男の弱みなのか、ついつい聞き入れてしまう。 半時間後、二人は昭利の運転する中古のパジェロで、国道○○号線を南下していた。そして、N県に入る手前で左折すると、みるみるうちに山の奥深くへと入り込んでいった。 「確かこの辺だって友だちが言ってたんだけどなぁ……」 と、智恵は落ちつきのない様子で、キョロキョロと車外の風景に目を向けている。するとそこに、「○○隧道」と表示された狭いトンネルが現れ、その入口の手前に、古い電話ボックスがぽつんと置かれてあるのを昭利が見つけた。 「もしかしたら、あれじゃないか?」 昭利が電話ボックスの近くでパジェロを停める。 智恵がボックスの扉を開けると、紫色の公衆電話がそこにあった。
「公衆電話」「紫色の」「コール」〈2〉 紫の電話機には次のような注意書きがしてあった。 『通話料は無料。1人1回限り3分間のみ通話可能。通話方法はダイヤルを1回転させるのみ』 ダイヤルはボタン式ではなく、回転式の古めかしい形式のものだった。智恵は震える手でダイヤルを一回転させてみた。すると、受話器から数回のコール音がして相手が出た。 「もしもし……」 「もしもし……えっ!」 聞き覚えのある声が受話器の向こう側から聞こえてきた。声がかなり近い。智恵がボックスの外に目を向けると、昭利が携帯電話を握りながら、驚いた様子で智恵を見ていた。 「もしもし、昭利なの?」 「ああ、俺だけど……なんだよ、ふざけてんのか?」 昭利が、憮然とした表情で智恵を睨んでいる。 「ごめん。ダイヤルを回したら勝手に昭利とつながったみたい」 「おいおい、俺はまだ生きてるぞ!」 昭利が通話を切ろうとすると、 「ちょっとまって昭利。いい機会だから言うね」 と、智恵があらたまった様子で話してきた。 「いい? 一度しか言わないからね。ちゃんと聞いてよ。……あたし昭利のことが好き」 「…………」 「なーんてね」 「バカヤロウ、大人をからかうな!」
「公衆電話」「紫色の」「コール」〈3〉 翌朝、昭利は電話のコールで起こされた。 「はい、もしもし」 「あっ、昭利さん? 通子だけど」 智恵の友人の通子からだった。 「ああ、どうしたんだよ。こんな朝っぱらから」 「昭利さん……智恵が死んじゃった……」 思いもかけない通子の言葉に、昭利の眠気はいっぺんに吹き飛んだ。 「悪い冗談はよせよ」 「こんなこと冗談で言えるわけないでしょ。智恵はね、きのう昭利さんに会いに行く途中で事故にあったのよ。時間に遅れそうだからって、それで赤信号を横断していたら車に……」 そこまで言うのが精一杯だったのか、あとは通子のすすり泣く声が受話器の向こうから聞こえてくるだけだった。 (死んだ人と話ができるって……死んだ人っていうのは智恵のことだったのか。面と向かっては言えない言葉を、電話で俺に伝えたかったんだな) すぐさま、昭利はパジェロに乗り込み、例の場所へ、あの電話ボックスのあった場所へ向かった。あの紫色の公衆電話なら、もう一度智恵と話ができるかも知れない。昭利は車をひたすら走らせた。 昭利は智恵に言い忘れたことがあった。一人一回限りの最後の通話で、ぜひ伝えたい言葉があった。 「俺も智恵が好きだ」と。 (了)
253 :
寸善尺魔 ◆Rb2BYpTc1w :03/12/09 14:05
>>244-246 があまりにも酷すぎたので、もう一度同じお題で書いてみました。
■次のお題は「銭湯」「マヨネーズ」「週刊誌」で
「銭湯」「マヨネーズ」「週刊誌」 「ピンポーン」 玄関のチャイムを鳴らす。 「開いてるぞ」 ここは、嶋田のアパート。嶋田は中学時代の俺の友人で、二ヶ月程前、俺のアパートの近所に越してきた。 まあ、俺も嶋田も浪人中の一人暮らしをしているわけだが、あいつにはあるのに俺にはないものがある。 それは「風呂」だ。俺のアパートには風呂がない。近所に銭湯でもあればいいのだが、いかんせん遠い。 そんなわけで、一週間に3回、嶋田の家に風呂を借りに来ているのだ。 「早く入れよ、寒いだろ」 それが俺を労う言葉なのか、寒いから早くドアを閉めろと急かす言葉なのか俺には分からなかったが、まあ、ともかくドアを閉めた。 「風呂、もう沸いてるから」 「ああ、いつも悪いな」 小さなテーブルに目をやると、食いかけのカップ焼きそばと中身がほとんどないマヨネーズのチューブが置かれていた。 床には週刊誌やら参考書やらが無造作に散らばっている。 「相変わらず汚い部屋だな」 「お前に言われたくねえよ」 「そりゃどーも」 脱衣所のドアを開け、トレーナーを脱ぐ。 風呂の蓋に手を掛けたときだった。 「やっぱ今日は帰ってくれないか」嶋田が静かに言った。 「ん…何で?」 「今日、彼女が来んだよ」 「お前、彼女いるのかよ。聞いてねーぞ」 「…とにかく帰ってくれ」 「ん、そうか、じゃあ明日でいいや」 態度が悪い嶋田に少し腹が立ったが、仕方なく俺は帰ることにした。 翌日、嶋田の遺体が浴槽から発見された。 死後2日は経過していたという。
255 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/12/10 21:20
>>255 うわぁ、ゴメソ
次のお題は「シデムシ」「寝袋」「恨み」で。
すみませんでした…
「シデムシ」「寝袋」「恨み」〈1〉 夕陽は、すでに山の稜線の彼方にその姿を隠し、辺りはすっかり夕闇の仄暗さに包まれていました。 野鳥の観察に訪れていた私は、ツグミやマミジロ、アカハラといった冬鳥を追って、つい山中深く入りすぎてしまい、麓への道をすっかり見失ってしまったのです。携帯電話などという文明の利器を持たない私にとって、このような場合は、連絡手段にも事欠く始末でした。 山中をしばらく彷徨ううちに、陽はとっぷりと暮れてしまい、遠くのほうから、獣の咆哮であろうか、まるで物の怪の嘆きのような不気味な声が、ときおり私の耳に届いてきます。こんな山の中で一夜を明かすのかと思うと、私の気分は益々滅入っていきました。 一時間ほども歩いたでしょうか。 急に視界が開け、月明かりに照らされた茅葺きの集落が私の前に現れました。 助かった……。 と、思ったのも束の間、私は異様な空気を感じとっていました。三十戸ほどあるこの集落の、どの家にも灯りがともっていないのです。生活臭がないというか、まるで人の気配が感じられません。 一番手前にある家を覗くと、障子はずたずたに破け、埃にまみれた床は抜け落ち、どす黒く腐った畳には、キノコのようなものが一面にびっしりと生え、不愉快な臭いを周囲にまき散らしています。茅葺きの屋根は朽ちて、見上げると星空がのぞいていました。 荒れるにまかした、そんな雰囲気です。他の家も似たり寄ったりの有様で、まさにゴーストタウンといった様相を呈していました。 集落のはずれにさしかかるあたりに、この村一番の大きな家がありました。 この建物だけはほかと違い、何とはなしに人の息吹が感じられたのです。引き戸を開けると、そこは土間になっており、右手に竈(かまど)があり、左は板の間になっていて、真ん中に囲炉裏がしつらえてありました。 「ごめんください……どなたかいらっしいませんかー」 留守なのでしょうか、返事がありません。 初冬を迎えたこの時期、夜も更けると山中ではめっきりと冷え込んできます。寝袋すら用意していなかったので、とにかく雨露を凌げる場所を確保しないと、明日には凍えてしまうかもしれません。
「シデムシ」「寝袋」「恨み」〈2〉 寒さにこらえきれなくなった私は、板の間へ上がり炉端に腰を下ろしました。そばにあった焚き付けの藁に火をつけ、炉に火を移すと、ぱちぱちと音がして、灰の中の木炭がぼうっと赤白く輝きました。 私は、囲炉裏に手をかざし暖をとると、ようやく一息つくことができたのです。すると、 きちきちきち……。 と、櫛の目を擦り合わせたような音が聞こえてきました。あらためて周りを見渡したが何もいません。ただ、太い和蝋燭が刺さった燭台が二つ、部屋の片隅に置かれているだけでした。どうやら、電気は通じていないようです。 両方の蝋燭に灯をともすと、その意外な明るさが、心細い私の心を少しだけ勇気づけてくれました。 そのうち、ぐつぐつという音がして、いい香りが漂ってきました。自在鉤に吊された鉄鍋の中で何かが煮えているようです。蓋を開けると、白米に青菜を混ぜた粥が、丁度食べ頃といった感じで焚けています。 それを見た途端、私のお腹がギュルゥと鳴り、空腹であったことを思い出したのでした。 「道に迷われたのですか……」 突然、背後から鈴の音のような声がし、私は驚いて、思わず鍋蓋を床に落としてしまいました。 立っていたのは、作務衣を身にまとった、三十過ぎぐらいの背の高い痩せた男でした。痩せているといっても、決して華奢というわけではなく、どちらかというと、無駄な贅肉のない鋼(はがね)のような体つきという感じです。 彫りが深く、端整な顔立ちで、つんと尖った高い鼻は、まるでその男の意志の強さを象徴しているかのようでした。 「あっ、どうもすいません。声をかけたのですが、お返事が無くて勝手に上がり込んでしまいました」 私は、他人の家に無断で上がり込んだ非礼を詫びました。ですが、その男は別段非難するそぶりもなく、炉端に腰を下ろすと、 「お腹が空いているんじゃありませんか? 何もありませんが、粥でよかったら召し上がってください」 と、木杓で椀の中に粥をよそってくれました。椀から立ちのぼる白い湯気が、食欲を刺激します。私はむさぼるように椀の中の粥を胃袋に流し込みました。青菜に塩味だけの質素な粥なのですが、冷えた体には何よりのご馳走でした。
「シデムシ」「寝袋」「恨み」〈3〉 粥を食べ終わると、湯飲みにお茶をついで私の前に置いてくれました。そして、ぽつりぽつりと話しはじめたのです。 「しかし、こんな所に若い女性が訪れるのも珍しい」 「野鳥の観察をしていたら道に迷ってしまって」 「この村には鳥はおろか、生き物はほとんど寄りつきません。今では人もいなくなってしまった」 「ここにお一人でお住まいですか?」 「ええ。もうこの村には私ひとりしか住んでいないのです」 「それはさぞお寂しいことでしょう」 「寂しくても、私はここにいなければならないんです」 「ほかの住人は?」 私の言葉に男は眉をひそめ、しばらく沈黙していましたが、意を決したようにその言葉を口にしたのです。 「埋葬蟲(しでむし)……なんです」 「シデムシ……?」 「私の一族は埋葬蟲の生まれ変わりなんです」 「埋葬蟲って、動物の死体なんかに群がる、あの埋葬蟲ですか?」 「ええ。我々の一族は、この村で死人が出たとき、死体を処理し、葬礼し、埋葬し、墓を守る、ということを代々続けてきました。 普段、我々はほとんど仕事らしいことをしないのですが、いざ死人が出ると一族総出で葬礼にあたる。それがまるで、死体に群がる埋葬蟲のようだと、村では忌み嫌われてきました。ですから、めでたい祝事の席や祭りなんかには、我々一族は参加できませんでした」 男は正座していた足を崩し、胡座に組み直しながら話を続けます。 「この村にはね、風土病がときおり流行するんですよ。昨日まで元気だった人が、翌朝、口や鼻、耳から血を流して死んでいる。原因不明の病気です。一旦流行すると、一つの家から何人も、そしてこの村から何人も死人が出て、それが毎日続くんです。 我々も葬礼を生業(なりわい)にしてるのでね、死人が出るとその分我々一族の生活は潤うわけです。だから、流行の度に、我が一族の財産は増えていきました」 そして男はお茶で口をうるおすと、また話を続けるのでした。 「だけど、村の者にしちゃおもしろくない。普段はぶらぶらしてるくせに、人の不幸で大きくなりやがって、てな具合で妬まれ益々忌み嫌われる。 そしていつしか、『あの一族は埋葬蟲の子孫だ』という噂がまことしやかに吹聴されて、それがやがてこの村の言い伝えになって残っていったのです」
「シデムシ」「寝袋」「恨み」〈4〉 「そんなの、ひどい。安らかに成仏できるのは、あなた達のおかげなのに」 「このような閉鎖的な村ではね、言い伝えや因習が一つの真理として人を支配するんです」 と、諦観したように男が話したところで、私たちの間にまた沈黙が訪れました。私は緊張をほぐそうと、男が入れてくれたお茶をひとくち、口に含みました。お茶はすっかり冷めていました。そして男は、何かを思い出すように宙を見上げながら、また話しはじめたのです。 「あの年はこれまでにない酷い流行だった。村の者がばたばたと死んでいきましたよ。このような凶事は誰かのせいにしたがるのが世の常でしょう。その矛先が、常日頃から忌み嫌われている我々一族に向けられたのも、まあ至極当然ではあったのです。 ある者が、こう言ったらしい。『あの一族が村人を病気にするよう呪いをかけた』と。この狭い村のことです。この噂は一晩で村中を駆け抜けました。妬みが恨みに変わるのも一瞬だった。 ある夜、村の男たち数人が我々一族を襲撃したのです。私の祖父母や両親、兄や姉は、鎌や斧、鉈でずたずたに切り刻まれて殺されました。そして、我々一族の財産や先祖伝来の家宝まで略奪していったのです」 私は、あまりにも禍々しい話の内容に、背筋が寒くなるのを禁じえませんでした。 「話はそれで済んじゃいないんです。襲撃にかかわった男たちは数日の後に、皆その風土病に罹って亡くなってしまったのですが、その死体には、びっしりと埋葬蟲が群がり、蠢いていたということです。まるで一族の無念を晴らすかのように……。 その後、その男たちの家族も、野良作業中の事故で半身不随になったり、精神に異常をきたしたり、奇形児が生まれたりと、不幸なことが続きました。これは我々一族の祟りではないかとささやかれるようになったのです。 そして村人たちは逃げるように、一軒、また一軒とこの村を離れていき、今では私ひとりがここに残っているのです」 「あなたはどうしてこの村から出ないのですか?」 「私は一族最後の者です。先祖の墓を守らなければならない。しかし、それも今日までだ……」
「シデムシ」「寝袋」「恨み」〈5〉 きちきちきち……また、あの音が聞こえてきました。 風もないのに、蝋燭の火先(ほさき)がゆれています。 男は、話し終わるとしばらくの間放心していたようですが、私のほうに向き直りこう言いました。 「私は長い間、あなたをずっと待っていたのです。あなたは決して道に迷ったのではなく、導かれてここに来たのです」 鳶色の瞳に魅入られた私は、かつてない胸の鼓動を覚えました。私の求めていた人もこの男ではないかと思えてきたのです。男は私を強く抱きしめました。仄かな灯りの中で、私たちはもつれるように重なり合いました。 次の朝、私は廃屋の中で目を醒ましました。 あの男はもういませんでした。足元に書き置きがあり、そこには、『私の役目は終わりました。私は土に還ります』としたためられてありました。それ以降、あの男は二度と私の前に現れることはありませんでした。 それから三ヶ月後、私は医師から妊娠を告げられたのです。堕すことは考えませんでした。そのようなことをすれば、絶対に失ってはいけない物を失ってしまう気がしたからです。 妊娠五ヶ月に入り、お腹の赤ちゃんが胎動しはじめました。私は思いました。この子が生まれたら、あの村で暮らそうと。誇りある一族の後継者として、この子を育んでいこうと。 そして、今日もお腹の中からあの音が聞こえてくるのです。 きちきちきち…… (了)
262 :
寸善尺魔 ◆Rb2BYpTc1w :03/12/13 11:32
注)埋葬蟲(死出虫・埋葬虫・シデムシ)のきちきちきち……という鳴き声は、私の創作です。 最後は少し駆け足だったかなぁ……もうちっとじっくりと書きたかったんだが、それだともっと長くなりそうなんで。 ■次のお題は「掏摸(すり・スリいずれの表記でも可)」「善戦」「創業」で
「掏摸」「善戦」「創業」〈1〉 平成不況。その煽りを受けて私はこんなにも落ちぶれてしまったのだ。 曾祖父、祖父、父と三代で築き上げてきた創業百二十年にもなる老舗の和菓子屋も私の代で終わってしまった。 京都で五本の指に入るとまで云われた店は、父の代から働いてくれていた職人達の善戦も虚しく、潰れてしまった。 あれほど元気だった父も店が潰れるという知らせを聞いてから病床に臥せてしまっている。 医者が言うに、もう長くはないそうだ。 私の責任だ。私がもっとしっかりしていれば。 後悔の念が幾度も私を襲った。何度死のうと思ったことか。 だが、死ねなかった。臆病なのだ。家族を、病床の父を、口実にして逃げていたのだ。 今だってそうだ。不況のせいにして後ろばかり見ている。もう、あの頃は戻ってこないと云うのに。 父から受け継いだ和菓子作りの腕も、いまでは犯罪の道具でしかない。 今、私は掏摸(すり)を生業として生きている。父や家族には新しい仕事を見つけたと嘘をついた。 そう、逃げたのだ。私は失うことを恐れて逃げているのだ。
〈2〉 前から、幸せそうな親子が歩いてきた。絶好のカモだ。 父親も母親も子供に気をとられている。 そっと手を伸ばす。 ほら、簡単に盗れた。 親子はどんどん遠ざかっていく。財布を盗まれたことになんか気が付きやしない。 罪悪感はない。こうしなければ、生きていけないのだ。 相も変わらず汚い男だ、私は。子供の頃からそうだった。 人の物は力ずくにでも取るし、弱い者いじめなんかしょっちゅうだった。 大人の前では良い顔をするのだ。簡単に騙される父のことを私は莫迦にしていたのだろう。 本当に嫌な餓鬼だったと今でも思う。あの頃は、親の権力を利用して好きかってしていた。 それが今ではこのざまだ。笑ってしまう。 なんて腐りきった人生だろうか。実際、私は何のために生きているのだろう。 ああ、そうか、死ねないだけだ。死にたくないから生きているのだ。なんだ。莫迦か、私は。
〈3〉 前から男が歩いてきた。顔は、何故だろうか、見えない。 そんなことはどうでも良いのだ。 財布を腰からぶら下げている。取ってくれと言っているようなものだ。 そっと手を伸ばす。 やはり、簡単に取ることができた。 中身を確認する。 なんだ、金など無いじゃないか。ん、よく見れば何か入っている。何だろう、これは。 これは。 幼い頃の記憶。誕生日だ。あの日、父は、私が何日も前から所望していた「誰も持っていない物」をくれたのだ。 しかし、私はそれを父の目の前で屑籠に捨てた。 こんなガラクタはいらないと言った。誰も持っていない物だなんて、嘘じゃないか。そう言った。 父はそれでも私を怒らなかった。それどころか、笑っていたのだ。私はそんな父が嫌いだった。怒ればいいだろう。笑うな。 それが今、此処にあるのだ。 不器用に彩色された木彫りの蝶々。 不器用な父が、私のために一生懸命、寝ないで作った物だったのだと、十年程前に母から聞かされたことを思い出した。 何故、これが此処に。 慌てて、振り返る。 「父さん!」 振り向く人々の中にあの男は居なかった。 私は、今、父は死んだのだと悟った。 本当に、父は莫迦だ。私に、こんな物を持ってきて。私は父が嫌いだったのに。私は父の作った蝶々を捨てたのに。なのに、どうして笑っているのだ。 笑うな。 畜生。私は莫迦だ。何をこんな所で立ち止まっているのだ。 私は、生きているじゃないか。 生きる。私は、生きるぞ。終わってたまるか。 夕暮れの雑踏の中、私は一人、泣いていた。
次は「赤々と」「屋根の上に」「悲しくなった」でお願いします。
「屋根の上にねえ、変なおじちゃんがいるの」 四歳になる娘が突然そんな事を言い出した。 「でね、見てるの。窓から。ぶら下がってるの」 つられて私は窓の外を見やったが、そこにはただ赤々と燃える夕焼け空が広がっているだけであった。 「おじちゃんて、どんなおじちゃん?」 「んーとね、黒い服着てるの。で、顔がこーんなに長くて、おひげが生えてるの」 「じゃあ、おじちゃんは屋根の上で何かしてるの?」 「ううん、座ってるだけ」 どうにも要領を得ない。変質者だろうか。しかし、今のところ我が家に実害は無い。 警察に相談しようにも、娘以外にその姿を見たものは、家族の中に存在しない。 風貌や行動などを説明する事すら出来やしない。 「そのおじちゃん、たまにいるの?」 「ううん、毎日いるの。今も屋根の上にいるよ」 私はサンダルを突っかけ庭に飛び出し、屋根を見上げた。誰もいなかった。 「ほら。こっち見てるでしょ?」 言葉を返せなかった。何も無い空間を指差している娘。精神に何らかの異常を来たし 幻覚を見てるとでもいうのだろうか。 娘のこれからを憂うと同時に、悲しくなった。まさか自分の子供がこんな状態になるとは。 「うん、そうだな」 適当に話をあわせるのが精一杯であった。 それから数ヵ月後の今、ふと思う。 娘は当時、確かに屋根の上の怪人物を目撃していたのでは、と。 それは、「限られた人間にのみ見ることが出来る存在」ではなかったのか、と。 「お迎え、てやつだったのかなあ……」 無邪気に笑う娘の遺影を眺めながら、私はぽつりと呟いた。 ■「5行でオチが読める文章」のお手本ですな。 「真っ赤」「尾花」「都会」でよろしく。
「真っ赤」「尾花」「都会」 少し、街に出てみた。夜の9時。別に用はなかったのだけれど、なんだか人の多い場所に行ってみたくなったのだ。 きょろきょろしながら都会を散策する。ショーウィンドーにはコートやブーツが並び、どこの店頭もクリスマスセールをしている。 もうすっかり12月だ。イルミネーションが眩しい。 そのとき。ふ、と秋風の匂いがした。 横に目をやると、ビルの狭間。その狭い空間に尾花が茂っていた。 今は12月。尾花は秋に咲くのではなかっただろうか。 目を凝らす。尾花の茂りの、その隙間。真っ赤な夕日が覗いた。 腕時計に目をやる。陽はとっくに沈んでいるはずなのだが。 また目をやると、ビルの狭間。その狭い空間には尾花も夕日もなく、ただ仄暗い夜があるだけだった。 もう、すっかり冬だ。
次は「アロワナ」「眠り」「満月」で。
ほ
し
ちょっと間が空いてたまっちゃったけど、せっかくだから感想書いときます。
>>225 最後の行はいい感じでけっこう好きなんだけど、コンビニの…とか
彼のシフトは…のとこが説明不足で話の内容が分かりづらかった気が。
>>233 自分も筒状のもの覗くのなんか怖い。人が覗いてるの見るだけでもハラハラする。
そのくせ、覗いてる人の頭叩いてみたい衝動に駆られる。みんなもそうだよね?
>>236 たまに宇宙人と暮らしたとかいう人いるけど、ああいうのはどうなんだろうなあ。
粥で衣琉夫死んじゃったとか、指輪が実はとかなんかオチがあった方が
個人的には良かったかな。
>>241-242 自分だったらカナ打ちなのにも気付かず、訳分からんまま死にそう……。
>>244-246 こういうのはバカらしい内容(失礼)を真面目に書くから面白いんだよなあ。
あんまりこういうの書く人いないから寸善さんまた是非。
>>250-252 これすげー好きだ! 大別すればありがちなオチってことになるんだろうけど、
意表つかれたし、気恥ずかしくなるような終わり方もイイ!
>>254 これ遺体が「浴槽から」発見されたってのが話の肝なんだけど、最初読んだ
時は気付かなかった。でも嶋田の思いやり(かね?)てのは面白い発想ですね。
>>257-261 言われて見れば、駆け足だったような気も。それにしてもおなかから聞こえる
きちきちを愛おしそうに聞いてるぽい様子がちょっと怖い。
>>263-265 いい話だー。この主人公はもう大丈夫だな。蠢さんいろんなの書きますね。
>>267 女の子も両親もいい人そうで、なんかせつなくなりました。
>>268 なんでそんなものが見えたのかよく分からんけど、なんか
ノスタルジック(?)な雰囲気が良い味だしてます。
右目さん、いつも感想ありがとうございます。
>>244-246 が好評(?)だったのは意外でした。てっきり叩かれるかなぁと思っていましたので。
>>250-252 では、昭利と智恵の性格を、セリフを通してうまく表現できたかな、と自分でも思っています。でも、ラストのセリフはちょっと臭かったですね(笑)。
>>257-261 は、いちおう伝奇ものです。元々が横溝ファンの私にとって、ホラーで一番好きなジャンルといえは、それは伝奇小説だったりします。だけど、いざ書くとなると難しい。やはり民俗学の素養が必要なのでしょうかね。
エスプレッソさん毎度丁寧なコメントありがとうございます
(せっかくなので俺も、この場を借りて感謝の言葉を)。
>>236 は「江戸の見聞録」みたいな感じで書きたかったんで、衣琉夫のその後とかは省いてみました。
>>241-242 ではインターネットは人間の手で創られたモノであるのに人はそれを完全に把握できていない。
そういった普段は見ることのないネットの未知の部分を覗いた、というのを書いてみました。
>>254 は
嶋田は自分を見つけてほしかったけれど、友達である「俺」に発見させるのは忍びなかったのでしょうね
(って、書いたの俺だろ)。
>>263-265 は
こういうのも書いてみたいな、と思って。様々な噺を書くことで自分の文章能力を鍛えていきたいです。
>>268 は
どうでもいい「謎」を書いてみました。日常の狭間に不思議は潜んでいるのです、みたいな。
>>寸善尺魔さん
尺魔さんの書く文章、結構好きです。
シデムシの噺はすごく良い感じでした。
俺も横溝正史の小説読んでみようかな…
「アロワナ」「眠り」「満月」1/1 満月の翌日は眠りから覚めるのが怖い。 家で決まって変なことが起きるから。 昨夜は満月だった。 今朝起きて恐る恐る部屋を見渡す。 机の上に置いてあったはずのアロワナの置き物が 本棚の上に移動していた。 少し怖いと思ったけど、今回はこのくらいで済んでよかった。 前の満月の時は母親が一晩でミイラになってたから。 ■なんか短いと手抜きぽく見えるのがちょっとあれだけど。 次のお題は「耳」「空」「鉄板」でどうぞ。
よくある話 =猫の怨念話= 「昔、昔、古い山寺に猫がおんねん・・・・」 =犬の因縁話= 「昔、昔、古い山寺に犬がいんねん・・・・」
「耳」「空」「鉄板」1/1 耳鳴りがするのだ。耳の奥から鋭く細い音が響く。幼い頃からそうだった。 私は耳鳴りがとても怖かった。今でも怖くなることがある。 私の耳鳴りは「予兆」だ。 休日くらい外に出よう、そう思った。久しぶりに駅の方まで出かけてみようか。 いい、天気だ。この暖かさが冬を忘れさせてくれる。 堅く冷たいコンクリートの上をゆっくりと歩く。右を向けば工事中のビル、左を向けば排ガスを撒き散らす車の群れ。 この町もすっかり変わってしまった。 ふ、と立ち止まる。耳鳴り。耳鳴りがする。あの音が奥の方で高く響く。鋭く細く体中を駆け巡る。 嫌だ。怖い。もう人が死ぬのは見たくない。 …朦朧とする意識の中で私は青い空を見た。 やっと、意識が戻ってきた。時計を見る。一分も経っていない。けれど、とても長かった。とても痛かった。 向こうの方に救急車が止まっている。野次馬も多い。人が死んだのだ。 工事中のビルの上から鉄板が落ちてきたのだ。潰れてしまったのだ。今、見たから分かる。 「死」を見るのは辛い。耳鳴りは教えてくれるのだ、死を。耳鳴りは見せてくれるのだ、命の最後を。 とても、疲れた。もう、家に帰ろう。家にいれば聞かなくて済む。籠もっていれば見なくて済むのだ。 幼い頃からそうだった。私は耳鳴りが怖い。
次は「街」「夜」「正体」でおながいします。
ほ
「街」「夜」「正体」 あれは、私が小学五年生の頃だったでしょうか、当時通っていた学校で、ある噂が広まっていました。それは、「母親を驚かそうとして冷蔵庫の中に隠れていた子供が、中から開けることができずに、窒息死した」という怖い噂でした。 冷蔵庫は、中からは開けられないのだろうか……? 私は半信半疑でした。 そこで、たまたま雑木林の中に不法投棄されている冷蔵庫を見つけた私と友人の直樹は、それで事の真相を確かめようということになったのです。 ジャンケンで私が勝って、直樹が冷蔵庫の中に入ることになりました。もし、直樹が開けられないときは、私が外から開けてやる、という取り決めでした。直樹が中に入って数秒たちましたが、扉が開く気配がありません。そのうち、中からドンドンドンと叩く音が聞こえて、 「開けてぇー、早く開けてぇー!」 と、直樹の泣き叫ぶ声が聞こえてきました。私は、扉を開けようと、とってを思いっきり引っぱったのですが、びくともしません。何度も何度も、力の限り引っぱりましたが、扉は開きませんでした。 「開けてぇー、早く開けてぇー!」 と、直樹は必死に助けを求めてきました。しかし、私は急に恐ろしくなり、彼をそのままにして家に帰ってしまったのです。 夜になって、直樹の母親から電話がかかってきました。直樹がまだ帰宅しないが、行き先を知らないかと。私は、「知らない」と嘘をついてしまいました。 数日後、私はあの雑木林に行ってみましたが、冷蔵庫はもうありませんでした。そして、直樹も二度と帰ってはきませんでした。それからしばらくして、私たち一家は、父の転勤で東京に引っ越していったのです。
282 :
寸善尺魔 ◆Rb2BYpTc1w :03/12/23 06:02
その後、私は東京の大学を卒業し、東京で就職しました。その間、あの日の出来事のことなど、すっかり忘れていたのですが、今年、単身赴任で十数年ぶりにこの街を訪れることになり、あの嫌な思い出が脳裡をかすめました。 例の雑木林は宅地になっていましたが、こともあろうか、その雑木林跡に会社の寮が建っていたのです。私は嫌な予感がしましたが、仕事で来ている以上、入寮を断ることもできませんでした。 そして、あれは入寮して二日目の夜のことでした。あの声が、聞き覚えのある、あの声が冷蔵庫の中から聞こえてきたのです。私には、冷蔵庫を開けて声の正体を見極めることなど、怖ろしくてとても出来ませんでした。 それ以来、今も夜中になると、部屋の冷蔵庫から聞こえてくるのです……。 「開けてぇー、早く開けてぇー!」 ■次は「配送」「試金石」「募金」で >>蠢さん 横溝作品、ぜひ読んでみてください。映画やドラマなどよりも原作のほうが断然面白いです。 未読なら、八つ墓村あたりをお薦めします。
ものすごい形相したおばあさんが、四つんばいになって追いかけてきた。
>>281 「新耳袋」にこんな感じの話あったような。
ラストは本家よりもオカルトって感じ。
つーか、開けてあげてください>>「私」
>未読なら、八つ墓村あたりをお薦めします
はい、受験が無事終わったら読んでみようと思います。
ほー
>>284 獄門島や本陣殺人事件などもなかなかおもしろいかと
hoshu
289 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/12/29 02:17
な〜んか停滞してるねぇ・・・・ 新人作家を募る意味も兼ねてageてみるか・・・・
「じゃあ、確かに渡してくれ」 強面の男は俺に麻袋詰めの荷物を手渡した。 俺の仕事は配送屋。とはいっても、まっとうな配送屋ではない。法に触れるような、一般の業者には依頼できないような代物を専門に扱う、裏社会の配送屋なのである。 今回の依頼主は、この界隈で最大勢力を誇るギャング団。しくじれば今後仕事が回ってこない可能性も十分ありうる。逆に成功すれば順風満帆な未来が約束される。いわば、この仕事が試金石、というわけである。 荷物は片手で持てるほどの大きさだったので、搬送手段に自転車を選んだ。自動車や単車では、万が一の場合足が付く可能性がある。使う必要が無いなら、無理に使うことも無い。 麻袋を詰めたナップサックを背負い、愛用のBMWで送り先へ向かう。 繁華街を抜け、大通りの歩道を颯爽と駆け抜ける。人通りの多い経路を敢えて選んでみた。 こそこそと裏道を利用するのは、かえって怪しまれるからだ。 「ねえ、まだ?」 突如背後から聞こえた声に驚いてしまい、バランスを崩して俺は派手に転倒した。その先にいた募金箱を持った女性が咄嗟に飛びのいてくれたお陰で、誰も巻き込まずに済んだ。 痛む足を押さえながら、先程の声に思いを巡らせる。やや低めの中年がかった女の声。どこから聞こえてきた? 「ちゃんと運転しなさいよ。怪我したらどうするの」 まただ。女のひそひそ声は、俺の背中から微かにだが確かに聞こえてくる。 背中のサップサックが、ごそごそと蠢く。あの麻袋、大きさはサッカーボール程度だった。その位の大きさで、声を発する物体。それって、まさか……。 無我夢中で目的地へ直行した。厭だ。まさかそんな。早いとこ、こいつを引き渡したい。 先方に半ば押し付けるようにして荷物を渡す。相手は袋の口から中を覗きこみ、満足そうな笑みを浮かべて頷いた。 「あー、ところでな運び屋の兄ちゃん」 帰り際に呼び止められた。 「この中身、何なのか確かめたか?」 慌てて俺が首を振ると、相手は再び満足そうに頷いた。 「賢明だ。過ぎた好奇心は己の身を滅ぼす。よく覚えときな」 最後の言葉を脳裏で反芻しながら、俺は来た道を引き返した。本当のところ、あの袋の中身は何だったのか。 だが、それは考えないように努めた。託された荷物を運ぶ。生き残るには、それだけでいいだろ?
ぎりぎり収まって一安心。 ■「暴行」「暴落」「暴君」でよろしく。
「暴行」「暴落」「暴君」〈1〉 天正八年、十年間にも及ぶ石山本願寺との抗争に終止符をうった織田信長は、その二年後、ついに本格的な毛利攻めに着手した。そして五月、毛利方の防衛拠点である備中高松城は、秀吉軍の水攻めに曝され、陥落までいよいよ秒読みの段階に入ろうとしていた。 かつて信長を窮地に陥れた浅井、朝倉も今はなく、越後の上杉も、謙信亡きあと跡目争いが勃発し、国力は著しく疲弊していた。跡を継いだ景勝は、国内をまとめるのに汲々としており、とても天下に覇をとなえる力など持ち合わせてはいなかったのである。 武田にいたっては、長篠の合戦で歴史的大敗を喫した後、まるで青天井だった株価が大暴落するかのごとく、坂道をころころと転げ落ちていき、つい二ヶ月ほど前、天目山において織田徳川の連合軍に滅ぼされたばかりであった。 残るは関東の北条であるが、氏康の跡を継いだ氏政は、凡庸でとても天下を統一できるような器ではない。しかも、国内での人材不足も影響してか、関東にどっかりと根を下ろしたまま、上洛はおろか版図を拡大しようとする気配すらうかがえなかった。 このような情勢の中、信長の天下布武は目前かに思えたのであったが……。 ――天正十年五月、安土城。 「筑前殿の中国攻めの首尾も上々と聞き及んでおりまするが」 森蘭丸が、杯に酒をつぎながら信長の顔色を窺った。 「ふん! 猿め、直々儂に出陣を要請してきおったわ。最後に花を持たせようという魂胆らしいが、いつもながら心憎い奴じゃ。儂は家康殿をここで饗応した後、一旦本能寺に入る。その方も伴をいたせ」 「御意」 と、そのとき、見知らぬ男が音も立てず、信長の前に突然現れた。赤ら顔のまるで海坊主のような男である。袈裟を被っているところからすると、どうやら僧侶のようだ。 「おのれ曲者!」 蘭丸とその弟の坊丸、力丸がいきり立つ。 「あいや待たれぃ! それがしは怪しい者では御座らん」 その男は、大地も裂けようかという大声で一喝すると、影のようにスルスルと信長に躙り寄った。
293 :
寸善尺魔 ◆Rb2BYpTc1w :03/12/30 12:07
「暴行」「暴落」「暴君」〈2〉 ――天正十年六月二日、本能寺。 妙に蒸し暑い日であった。風もなく澱んだ空気が京の都を支配していたその夜、桔梗の旗印を掲げた一万三千の兵が、突如本能寺を取り囲んだ。 惟任日向守光秀謀叛! 丹波波多野家侵攻の際、八上城で人質になっていた光秀の母親を信長は見殺しにした。それに加えて、家康接待の際に信長から受けた屈辱的な暴言と暴行は、誇り高い光秀をついに逆上させた。 「許すまいぞ暴君信長!」 各地に激震が走った。しかし、事前に光秀の謀叛の企てを知悉していた信長は、各地の遠征軍へ速やかに伝令を送り、兵を呼び戻していた。 北陸からは、前田又左衛門利家、関東からは滝川左近一益、四国からは丹羽越前守長秀が。信長の嫡男で二条城主の左近衛権中将信忠には京都奉行の村井長門守貞勝と筒井順慶の軍が合流した。中国からも羽柴筑前守秀吉が攻城軍の半分を率いて馳せ参じてきた。 そして、本能寺に信長の影武者を送り込む一方、乱波を放って偽の情報を流し、光秀を罠に誘い込んだのである。 本能寺へ切り込んだ光秀は異変を察知したが、時すでに遅かった。辺り一帯は信長軍に包囲され、一寸の隙もなかった。万事休す……鬨の声が起こると同時に本能寺から火の手が上がった。そしてそれは、光秀の謀反の企てが破れた瞬間でもあった。 (それにしても、あの坊主の助言のおかげで命拾いしたわい) 信長は、このあいだ安土城に現れた、あの海坊主のような怪僧の姿を思い出していた。 (あやつ、四百二十年後の未来からやって来た儂の子孫とか申しておったな……確かムドウと名乗っておったが……) 「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり……」 真っ赤に燃えさかる本能寺を目の当たりにして、信長は心の中で敦盛を舞っていた。それはまるで光秀への手向けのごとく……。 次のお題は「雪景色」「ライフスタイル」「趣味」で
「雪景色」「ライフスタイル」「趣味」 1/2 澄みきった青空を見上げ、大きく伸びをする。 なんて清々しいのだろうか。空気が美味しい。東京の汚れた空気なんて比べ物にならないとつくづく思う。 僕はこの休みを利用し、大学の友人達を連れて、このスキー場にやってきたのだ。 世間は年末だなんだで忙しいようだが、僕には関係ない。 好きなときに好きなことをする、それが僕のライフスタイルなのだ。 ゲレンデを勢いよく滑り降りる。風を切る感覚が気持ちいい。 高校生まで北国で育った僕にとって、スキーは趣味であり特技である。 こうやって雪の上にいるときにこそ、僕は普段の生活から解放されるのだ。 「おーい、健司。俺たち、先に戻ってるぞ」 友人達が声を掛けている。 「ああ、先行っててくれ。僕はもう少し滑ってから戻るよ」 僕たちはスキー場の中にあるコテージを前もって予約しておいたのだ。 コテージに戻っていく友人をよそに僕は、もう一滑りしようとリフトに乗った。 ゲレンデの中腹当たりで、右頬にふと、冷たいものが触れた。雪が降ってきたのだ。 雪をかきながら滑り降りる。もう少し向こうの方に行ってみようか。ルートを変更し、進んでいく。 滑ることに夢中だった僕はこのとき、自分が正しいルートから外れていることに気付いていなかったのだ。
2/2 僕は、徐々に雪が強くなってきたことに気が付いた。 しかし、僕は止まらなかった。 長い間雪から離れて暮らしていた僕は、この程度の雪であれば問題ないと高をくくっていたのだ。 そして僕が、自分が正しいルートにいないことに気付いたときにはもう、雪景色は激しい吹雪と化していたのだった。 いきなり何かに躓いて転倒した。その弾みで、しっかりとはまっていたはずの両足のスキー板もどこかにいってしまった。 吹雪のせいで目の前も見えない状況の中、僕は藁にもすがる思いで手を伸ばした。 その右手が何かを掴んだ。スキー板だろうか。その姿さえもこの雪の中では見えないのだ。 必死に掴んだ、それを杖の代わりにし、僕は立ち上がり、歩き始めた。 どれだけの時間歩いただろうか、もうダメだと思ったそのとき、霞んだ視界の中にうっすらと灯りが映った。 それは、絶望の中に見た一筋の希望だった。意識が朦朧としながらも、渾身の力を振り絞り僕は走った。 友人がいるはずのコテージの前にたどり着き、力無く扉を叩く。 ゆっくり扉が開いた。友人たちが顔を出す。 「健司!お前今まで何してたんだよ!」 「おい、大丈夫か!?」 友人たちは僕に、心配そうに声を掛ける。懐かしい顔を見て、声を聞いて僕は安心した。 「ああ、大丈夫だよ。ちょっと迷っちゃって…」 友人の問いに力無く答える。 笑顔に力がないものの、ちゃんと喋ることが出来る僕を見て、友人たちもようやく安心したようだ。 「そうか、良かった。早く中に…」 そのとき、安心した友人たちの顔が一瞬のうちに青ざめた。 「お、おい。それ、お前が手に持ってるの…」 杖の代わりにしていた「それ」が、何なのか今、ようやく僕は知ったのだ。 僕がスキー板だと思っていた「それ」は、色褪せ、薄汚れた一枚の卒塔婆だった。
次は「神社」「見えない」「鳥居?」でお願いします。
年明け保守
「神社」「見えない」「鳥居?」(1/2) 今年は、なんか珍しく元日から初詣に行こう!って思ったのよ。普段はそうだね…10 日前後ぐらいんなってから、やっとこさ「まぁ、一応行くべ」ってなるんだけど。で、まぁ、 てくてくと一番近い神社に行ったのさ。近くまで来て、なんか嫌な予感はしたのよ、屋 台とか出ててえらい盛況っぽいの。んで、前まで来てヤんなったね。鬼混み。自慢じ ゃないけど、待つ、っての嫌いでね。まして、この状況どう見ても、がらんがらんって鳴 らせるまで数時間覚悟。いやぁ、そこそこデカい神社だとは思ってたけど、初詣でこん なに動員する神社だとは知らなかったね、恥ずかしながら。 「無理でぇー」と脱出して、第二候補を考えようとして、はたと困ったね。普段神社がど うのお寺がどうのとか考えないから、まったく浮かばないの。そりゃあね、割と近い有 名どこはいくつか知ってるよ、さすがにね。でも、そんな有名どこじゃ、普通に考えてさ っきの神社より混んでる事はあれ空いてるだなんて思えない。どうしたもんかなぁ、と ふらふら当てもなく歩いてたのよ。で、なんとなーく路次から路次にジグザグ歩いてて、 なにか鳴り物の音にそっち見たらぽつねんとちっさい神社があった訳。ものは試しと 境内覗いてみたら、十何人かでなんか儀式みたいなのしてるのよ。そしたら、向こう でもこっちに気づいて、ひとり駆け寄って来るのさ。 「ちょうど良いところに来られました。新年の儀式を執り行っていたのですが、実はひ とり欠員が出て困っておったのです。よろしかったら参加して頂けないでしょうか?き っとご利益てきめんで御座いますよ」 「えー」と思ったんだけど、「なに、難しい事は御座いません。その時その時で、どうす れば良いのか説明致しますし」ってんで、これも経験だな、と考えて引き受けたのさ。
「神社」「見えない」「鳥居?」(2/2) 儀式の内容はね、ええっと「包丁初め」だっけ?包丁と長い箸使って直接触らないで 魚さばいてく神事あるじゃない?あれみたいな感じだった。ただ、面白いのは、まな板 の上に魚どころかなにもないの。でも、見えないものがまるであるかのようにさばいて いく(フリをする)の。結構デカいもの想定みたいだったね。で、ひとしきりさばき終わ ったら、鍋にそれをひと切れずつ丁寧に入れて、しばらく煮るの。パントマイムショー みたいで、結構面白かったね。で、出来た汁ものが神前に供えられた後、参加者で 残りを食べるんだけど、事前になにか煮てあるのかね?えらく濃厚な肉味でかなり旨 かったね、意外にも。 欠員の代わり、ってのでドキドキしたんだけど、実際はほとんど傍観者みたいな感じ でほとんどやる事らしいのなかったのはほっとしたね。 その後は、なんか無礼講ムードで、酒飲みながらしばらく雑談して、ほろ酔い気分で 失礼させてもらったよ。いやぁ、楽しかったね。 出る時になって、気づいたんだけど、いわゆる「鳥居」ってのがないんだよね、そこ。 なんか棒杭みたいなのに注連縄して無造作に二本ぶっ立ててあったけど。「これが鳥 居?」って思った。なんか全体的に変わった雰囲気の神社だったね。 で、家帰ってから、年末ジャンボの当選番号調べてみたらさ。3等100万円当選だもん。 なんか、「おいおい、いきなしご利益かよー」ってビビッったね。いや、偶然なんだろう けどさ。 あ、だからさ、これから、焼肉食いに行かん?いや、さっきの神社での雑談の時に神 主さんが教えてくれた店なんだけど(儀式中はさすがに怖いぐらい真剣だったけど、 根は気さくな人みたい)ちょっと高いけど、すげぇ旨いのよ。なんでかホルモン系とか サイドメニューみたいなのなくて、ひたすら、肉、飯、酒、って感じなんだけど、その肉 がとにかくやたら旨い。特に上ハラミとか絶品。 いやぁ、小金持ちだからと調子に乗ってここんとこ通いづめなんだ。
いやぁ、新年から保守連続もなんだと思ったので、不出来ながら投稿、ちゅ事で (言い訳臭い) 今回、あまりひねらずにお題使っちまったなぁ。 次のお題は、まだまだお正月気分ー、って事で、「年賀状」「餅」「くわい」で お願いしまする。
>>300 いやいや、面白かったです。
作りにくいお題ですみませんでした。
>見えないものがまるであるかのようにさばいていく(フリをする)の。結構デカいもの想定みたいだったね。
想像するとキモイですね。
さばかれてたデカいものってなんだったんでしょうか?
人ですかね?(ガクブル
で、煮られていた物はなんだったんでしょうか?
人ですかね?(ガクブル
それにしても、こういった儀式的なものって全容を知らないと気味が悪いですよね。
日本にもまだ、誰にも知られずに行われている儀式があるのかもしれませんね。
ho-
hoo
「年賀状」「餅」「くわい」1/2 そう、それは今を遡ること数日前、元日の朝のことだった。 俺は家族と一緒におせちや雑煮を食べていた。 そのとき、バイクが止まる音が聞こえた。 「忠、年賀状じゃないか?取ってきてくれ」 親父が言った。いつものことだった。 朝、新聞を取ってくるのは俺の役目だったのだ(別にわざわざ決めたわけじゃないが)。 年賀状を取りにいくのに俺が抜擢されるのは当然のことだった。 「めんどくせえな…」 雑煮を食っていた俺はしぶしぶ重い腰を上げた。 玄関に行き、サンダルを履く。ドアを開けた。 ここまではいつもの朝と変わらなかった。 口の中いっぱいの餅を噛みながら、外に出た。 と、目の前に、くわい頭の黒装束の男が立っていた。 それがあんまり突然だったもんだから、驚いた俺は餅を喉に詰まらせて、死んでしまった。 で、今、俺の葬式をしているのだ。俺の前に俺が横たわっているというのはなんだか不思議な感じがする。 なんだか死んだような気がしない。むしろ、生きてたときよりも体も軽いし、気分がいい。 …親父、お袋、姉貴、孝(俺の弟だ)、正月早々葬式なんかさせて悪いな。 おい、なんで泣くんだよ。やめろよ。 「未練があるのは分かるが、そろそろ行くぞ。」
2/2 振り向くとそこに、くわい頭の着物の男、黒守(くろす)が立っていた。 俺が死んだ後すぐ、黒守は自らの名を名乗り、俺の担当の「死神」だということを告げたのだ。 「死神もそんなに暇じゃねえんだ。家族と別れたくない気持ちは分かるが、そろそろ時間だ。この後、色々と手続きもあるしな。」 「ああ、大丈夫。もう行くよ。」 黒守は無言で頷き、歩き始めた。 俺もそれを追いかけるように歩き始めた。 振り返る。 遠ざかる家族の姿を見て、ようやく俺は、自分は死んだのだと確信した。 もう振り返るのはやめよう。俺が未練をもつことは、自分の死によって家族を縛り付けるのと一緒なのだ。 再び歩き始めたその刹那、俺の枕元に飾られた菊の花が閑かに揺れるのを感じた。
もう正月終わっちゃいましたねw 肝心な噺の内容はと云うと、グダグダ。日々精進していきたいと思います。 それはそうと、次のお題は 「夢」「前足」「コタツ」 でお願いします。
307 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/01/08 23:35
あげ
>>306 「夢」 「前足」 「コタツ」
これはね、先日私が見た夢の話なんですけどね
私は部屋の中に居ましてね、横を向くと大きな窓があったんです
確か雪が降ってたように思います
そうそう、ですから寒いと思ったんでしょうね
部屋の真ん中に置いてあったコタツに入ったわけです
いや、その部屋にはコタツ以外の家具は無かったような気がしますね
変……ですよね、はは
まぁ、そこは夢の話ですから
で、コタツに入ると私の足に何かが当たるんですよ
細くて、フサフサと毛が生えていて、当たるとツツーっと奥に引っ込むんです
これは猫だなと思いましたよ
ええ、猫の前足
猫はコタツで丸くなると歌にもありますでしょう
ですからね、私は少し身構えたわけです
え、何故かって
それはあなた、しっぽでも踏んづけてごらんなさいな
噛まれるや引っ掻かれるやで大変でしょう
そのままゆっくりと反対側へ足をずらしますとね、また私の足に当たるものがあるんですよ
細くて、フサフサと毛が生えていて、これも当たるとツツーっと奥に引っ込む
おや、2匹居るのかなーって思いましてね
これじゃぁ右にも左にも逃げることができませんよ
仕方ないから私はそのまま足を動かさずにじっとしてましたね
でね、しばらくぼーっとしてたんです いや、外の雪をみてたんでしょうかね、その辺のことはよく覚えてないです しばらくすると何か私の足に当たるものがあるんです ええ、細くて、フサフサと毛が生えているやつですよ 私はね、ああ猫も慣れてきたのかななんて思ってたんですよ でもね、おやって思ったんです 最初右のほうに猫がいて、反対によけたら左にも猫がいたんですよね つまり、2匹いたわけです でもそのとき足に感じた感覚は2匹じゃなかったんです これはどう考えても3匹いるぞ、という感覚ですね ああもう1匹いたのかな、なんて思ったその時ですよ ざわざわざわざわーって足のつま先から太股まで感覚が走ったんです 驚きましたね ええ、猫なんかじゃないんです もう私の足のまわりをびっしりと埋め尽くされている感じっていうんですかね それが一気にきたわけですよ もう動けないですよね そりゃ怖かったですよ 助けてくれ、助けてくれって思ったそのときですよ ふっと目が覚めるんですよね、ええそこでやっと夢だってわかったんです でね、私は大急ぎで布団から出て電気をつけたんです もちろん足は何ともなってませんでしたよ おそるおそる布団の中も調べましたけどね、何もありませんでした ええ、夢ですからね ようやくほっと一息ですよ でもね、その日から私コタツに入れないんですよ なんかね、怖くて……
次のお題 「昨年」「健康」「アンケート」 で、お願いします
>>278 そのままずっと家にこもりっきりになればいいのに。そうすればあと一回
耳鳴り聞くだけで済むよ。自分が死ぬ時に……。
>>281-282 これイイね。オーソドックスだけど怖い。寮の部屋の冷蔵庫開けたら
すんごい怖いことが起きそう。
>>290 怖いけど、運転とか怪我の心配してくれるなんていい「中身」じゃないか。
しゃべってる内容がもっと得体の知れないことだったらさらに謎めいて
良かったかも。いや逆にこっちの方が怖いか。
>>292-293 よくこんなの書けるなあ。元から戦国好き?
それにしてもムドウにこんな能力があったとは。霊能力ないくせに。
>>294-295 これは卒塔婆のおかげで助かったぽい? その逆も面白そう。遭難して
ひどい目に遭って最後に自分がスキーだと思ってたものの正体に気付く……。
>>298-299 全てがおっかない方向(うまい言葉が浮かばない)でつながってるのか、
全然つながってないのかギリギリの線なのがいい感じ。
>>304-305 死神のせいで死んだってのがなんとも……。突然死の場合は一週間くらい前に
あんた死ぬよって報せてほしいよね。突然死じゃなくなっちゃうけど。
>>308-309 今、まさに今コタツの中で何かが蠢いていても、僕らは気付かないわけで、
そんな夢見たら、ほんとコタツ怖くて仕方ないよなあ。
でも、ネコでいっぱいのコタツには足つっこんでみたい。
お題の意味有るのかな・・・・未消化と言うか名詞を使ってるだけというか ・・・・・
>>313 いつも自分が書いた作品投稿するとき、同じこと思ってるよ。
でもお題の使い方多少は妥協しないと作品なんか書けない気もするし
(
>>161 みたいなのはやりすぎだけど)、何よりお題は作品書く(思いつく)
きっかけになってると思うから、そういう点では意味はあるけどね。
まあ、もちろんうまく消化されてるに越したことはないんだけど、
実際こんなもんじゃないかなあって気もしてる。
「昨年」「健康」「アンケート」1/1 昨年の夏休み、俺は街頭でアンケートをとるバイトをしていた。 街ゆく若い女の人にいつものように声をかける。 「すいません、今健康についてのアンケートお願いしてるんですけどー」 よく見たらその女の人、足が透けてた。 幽霊に健康について訊くなんて、あの人、気を悪くしてないだろか。 ■次は「遊園地」「売り切れ」「双子」で。
「遊園地」「売り切れ」「双子」 俺がここに来てからどれだけの時間が経ったのだろう。ここでは、何の心配事も悩み事もなく毎日が愉しい。働く必要もなく、食う物にも困らないし、欲しい物はなんでも手に入る。寝たいときに寝て、起きたいときに起きる。まさに極楽とはよく言ったもんだ。 生前、死ぬのがあんなに怖かったのに、いざ逝ってみると、こんなに素晴らしいところだったとはねぇ。世知辛い人間界と比べりゃ、ここはまさにパラダイス、いや大人の遊園地みたいなもんか。 あの世には天国と地獄があるって聞いていたが、実のところ、死んだ者は皆ここにやってくる。未練を残して幽霊となった者を除いては。 だけど、俺はもうすぐ人間界に戻らなきゃならないんだとよ。前世で犯罪者だった俺は、ここで過ごせる時間はかなり短いんだそうだ。つまり、生前に善行を積んだ人ほど長くここに居られるってわけだ。 ある日、俺は下界送還省の人選局に呼び出された。いよいよ生まれ変わる時がきたらしい。 「君は明日、人間界に送還されるので、そのつもりで」 と、髪を七三に分けた神経質そうな男が無表情で言った。どうも役所の役人ってのは、あの世もこの世もいっしょで、無愛想と相場が決まっているらしい。 「あのう、グッドラックチケットは戴けるんでしょうか?」 「悪いが売り切れだ」 七三男は視線も合わさずに即答した。 グッドラックチケットというのは、人間界で幸運に恵まれるためのお守りのようなものだ。人間界で成功した者のほとんどはグッドラックチケットの所有者である。ただ、あまり入荷することはなく、手に入りにくい希少価値の高い代物なのだ。 「すみませんねぇ。私が先に戴いちまったんです」 と、そばにいたもう一人の男が、申し訳なさそうに俺に声をかけてきた。俺は今の今まで、その男の存在に気づかなかった。そのぐらい影の薄い男だった。小柄で華奢で見るからに貧相な男だ。きっとこいつも人間界に送還されるのだろう。 「君たちは一緒に送還されることになっている」 七三男がポツリと一言。 一緒ってことは……俺とこいつは双子で生まれ変わるってわけか? まてよ、双子の場合、一方が幸運でもう一方は不幸ってことはよくある話だよな。てことは……、チケットを持っているこいつが幸運だとしたら、持っていない俺は……。
317 :
寸善尺魔 ◆Rb2BYpTc1w :04/01/10 09:51
■次は「災い」「凶」「呪い」で このスレに初めて書かせてもらってから、もうすぐ一年か……。 時の流れははやい。
「災い」「凶」「呪い」1/2 夕暮れの中、足下の枯れ葉が風に吹かれ、カサカサと音を立てた。 金に困った俺は、町はずれの神社に忍び込んだのだ。 いくら切羽詰まった状態とはいえ強盗をするような勇気は俺にはないし、空き巣狙いなんて器用な真似ができるはずがなかった。 そんなときに見つけたのが、この神社だった。神社になら、この時期たくさんの賽銭があるだろうし、町はずれにあるということもあってか人影もなかった。 境内は狭く、すぐに本堂の前に着いた。しかし、おかしい。肝心の賽銭箱がないのだ。 そうか、本堂の中に仕舞ってあるんだな。 扉に手を掛ける。 本堂の扉は簡単に開いた。周りを気にしながら、本堂に足を踏み入れる。 中はしーんと静まりかえっていた。なんだか不気味だ。外とは全く雰囲気が違う。 辺りを見回すが、賽銭箱は見当たらない。ふと、奥の方に桐の箱が見えた。 値打ち物かもしれない。急いで箱に駆け寄る。 蓋は、赤い紐できつく縛られているように見えたが、手を触れると紐は容易にほどけた。 箱を開ける。 中には、 中に入っていたのは得体の知れない不気味な生き物だった。それはなんだか鳥の雛のような、しかし、それとはあきらかに違う奇妙な物体。 生き物は凶や大凶の神籤の中で、うねうねと蠢いていた。 なんだか、とても気分が悪い。まるで、身体がこの生物を拒んでいるようだ。 「その箱は開けては為らぬ物なのじゃ!災いじゃ!災いが起きるぞ!」
2/2 さっきまで、ひとけのなかったはずの本堂の入り口に一人の老婆が立っていた。 「死ぬぞぉ!死ぬ!お前はオミカリサマの呪いで死ぬのじゃ!」 老婆は楽しそうに笑っていた。 その言葉が何を意味するものであるか気付いた俺は、老婆を押しのけ、外へ飛び出した。 先ほどまでは閑かだった境内が、ざわざわと唸っている。烏がせわしなく飛び交っている。 「うひゃ、うひゃひゃひゃひゃひゃ!あひゃ、死ぬぞ!お前は、あひゃひゃひゃ、死ぬ!」 老婆の笑い声が境内に響く。 尋常じゃない。やばい、死ぬ。なんで?い、嫌だ。死にたくない…っ! 俺は、ただ、無我夢中に走った。鳥居をくぐり抜ける。 脳裏にあの生き物の姿が甦った。 老婆の笑い声に重なるように、クラクションが響く。 ドッ 鈍い音と共に俺の身体は宙に浮いた。 頭から地面に叩きつけられる。 「お、俺のせいじゃねえぞ!こ、こいつが勝手に飛び出してきやがったんだ!!」 声が聞こえた。 それだけだった。
次は「滝壺」「寒さ」「川のぬし」で。
>>311 冷蔵庫の話は、某都市伝説の、その後半部分をオカルトチックにアレンジしたものです。
信長の話は、こんな話もたまには良いかなって感じで書いてみました。まあ、戦国好きっていうか、日本史全般が好きです。あと、古代中国史も。中学高校の時は、司馬遼太郎とか吉川英治、山岡荘八なんかむさぶるように読んでました。
■たまには感想でも。といっても全部にコメントするのは大変なので、いつも感想をいただいている右目さんの作品と、私の出題したものについて書かれた作品についてのみですが。
>>240 「そいつ」は、誰かが穴を覗くのを、息を潜めてじっと待っていたんだろうか。覗いた人間に取り付くつもりで……。「私」を見つめる、「そいつ」の意図の判然としないところが、またなんとも不気味。
「そいつ」の正体を最後まで明かさなかったのも気味悪さを増幅させてgood。
>>254 嶋田は、願望と友情との狭間で揺れ動いていたってわけか。
だけど、明日も誰かに発見されなかったらどうしたんだろう嶋田は。そしてその次の日も……。
>>263-265 木彫りの蝶々が、将来、息子を立ち直らせるためのたったひとつの(誰も持っていない)贈り物になることを、お父さんは分かっていたんだろうな、きっと。親の心子知らずってやつか。
だけど、自分も最近こんな話は書いていないなぁ。今度書いてみようかね。
自分自身、「良い話」はすごく好きなんだけど、いざ書くとなると、理不尽な結末にしたくなるんだよなぁ、これが。
>>276 話とはあまり関係ないけど、満月が人間に異常行動を起こさせるという説はあるようです。なんでも、満月の潮の満ち引きが、体内の水分になんらかの影響を及ぼすとか。事実、犯罪の発生率も満月の日が一番高いらしい。
ところで、母親が一晩でミイラになったのは、引き潮の影響が大きすぎたからとか?
>>290 ブツの中身が激しく気になる。もしかして、生首……?
「ちゃんと運転しなさいよ。怪我したらどうするの」っていうのは、生首が自分自身の身を心配して言ったセリフかな。そうだとしたら結構イケてるかも。
どんなお題でも1レスに収める点はさすが。
>>294-295 また妙なところに迷い込んだもんだな。
スキー場近くの墓場? 何か曰くのある場所のようですが……。
>>315 えらいアッサリした話やなぁ。
本来驚かす側の幽霊が、健康についてのアンケートをお願いされて逆に驚いている、という構図を想像するとニヤリとしてしまうね。幽霊に気を使う「俺」も、何かいいやつだな。
だけど最近、右目さんの作品は短めのが多いですね。意識的に短くまとめようとしているのかな。
>>319-320 箱の中の奇妙な物体は、その神社の御神体?
神社なんかにある御神体は、普通見てはいけない物らしいね。神は御利益だけでなく祟りをもたらすこともあるけど、神社で神を祀るのは、そうした神の祟りを鎮めるのが本来の目的だし。
だから、人間の分際で御神体を軽々しく見たり扱ったりするのは、神の怒りに触れるということらしい。
そういう点からすると、良くできた面白い話だと思う。途中の「あひゃひゃひゃ、死ぬ!」には笑ったけど。
ho
ほ。
326 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/01/16 21:33
hoshu
誰か書いてくれage。
「ここからもうちょっと山奥に行ったところにある滝壺になあ、川のぬしが潜んでるんだわ」 夏の休暇を利用して川釣りに興じていたら、現地で出会った釣り人にそう教えられた。 話によれば、川のぬしは体長2メートルはあろうかという巨大イワナ。いや、いくらなんでもその大きさはないでしょう、と私が言うと 「いや、俺は確かに見たんだ、滝壺の辺りを悠々と泳ぐ魚影を。居るのさ、確かに。それとも吊り上げる自信が無いてか」 そこまで言われて退散したのでは男が廃る。いや、正直言えば、私は川のぬしに興味津々だったのだが。 支度を手早く済ませ、私は山奥へと踏み入った。釣り上げて見せようじゃいか。手の中のカーボンロッドが頼もしい。 獣道を進むことおよそ一時間。ついに私は、教えられた滝壺へ到着した。滝口から落ちる水の音が、耳を聾さんばかりの大音声となって木々の間に木霊していた。 岩場に腰を下ろし釣り糸を垂らす。水飛沫で濡れたのに加え、木立に陽射しが遮られていたために季節外れの寒さに震える羽目になった。それでも私は、辛抱しながら獲物が掛かるのを待っていた。 二時間後。竿に強い手応えがあった。諦めかけていただけに、歓喜の念は大きい。 糸が切れないようにだましだまし私は竿を左右に振り、頃合を見て引き上げに掛かった。 獲物は抵抗する気配もなく、おとなしく水の中から姿を現した。 赤いチェック柄。白いTシャツ。黒いベルト。青いジーンズ。 私が釣り上げたのは、ふやけきって膨らみ、あちこちを魚につつかれボロボロにされた土左衛門だった。 驚きながら、それでも私は既視感に襲われていた。この溺死体に見覚えがある。 死後数日は経っているであろうその死体は、紛れもなく先程会ったばかりの釣り人であった。 ■「幾ら」「枡」「波」でよろしく。
「幾ら」「枡」「波」〈1〉 玄関扉を開けると、母が立っていた。またか……陽一は眉をひそめた。 「陽一、元気にしょったかいね」 「ああ」 「これ持ってきましたよってん、食べなはれ」 母が、風呂敷の中からタッパを取り出して、陽一に手渡した。蓋から透けて見えたのは、どうやら里芋の煮っころがしのようだ。 「いらんで、こんな年寄りくさいもん」 と、無造作にキッチンのテーブルの上にタッパを放り投げた。 陽一は以前、枡職人をしている父と母と三人で暮らしていた。陽一の家は、豊臣秀吉が量制の統一をはかって京枡を制定して以来四百年余り、代々枡造りを生業としてきた家系である。 だから父も、一人息子の陽一が当然枡造りを継ぐものだと決めてかかっていた。だが、陽一は、そんな陰気くさい職人暮しは嫌だと、大学を卒業するとさっさと大阪の大企業に就職してしまった。 それからというもの、家族の間には波風が立ちはじめ、父と陽一の間に諍いごとが絶えず起きた。そして、居たたまれなくなった陽一は、ある日家を飛び出し、大阪に移り住んだのだった。 それ以来五年間、一度も京都の実家には帰っていない。が、こうして時々母がやってきては、しつこく陽一を説得してゆく。そのたびに陽一はうんざりした。 「もう家には戻らへんさかい」 陽一は、機先を征するように言った。 「こんなにお願いしてもあきまへんか」 「あかん、あかん。おかんも、もう来んといてくれ。それに、こんなしょうむない芋なんか持って来んなや。どうせやったら、ピザかなんか持って来てくれたらええのに。ほんま気の利かん……」 「そうまで言うんやったらもう来まへん。くれぐれも体には気をつけるんえ、陽一」 ガックリと肩を落とした母の顔は、今まで見たことも無いような悲しそうな表情を浮かべていた。 (言いすぎたかな……) 陽一は少し後悔した。
「幾ら」「枡」「波」〈2〉 母が帰って行ってから、五分ぐらいしたころに電話が鳴った。 「もしもし、陽一か……」 懐かしい声が受話器の向こう側から聞こえてきた。五年ぶりに聞く父の声だ。 「ああ、そうやけど」 陽一は、わざとつっけんどんに言葉を返した。 「静子が危篤なんや。すぐ戻ってこい」 陽一は耳を疑った。母は今の今までここに居たではないか。さては、自分を呼び戻そうという魂胆か。 「そんなあほな。しょうむない嘘つくなや。冗談のつもりか、おやじ」 「何言うとんのや。こんな冗談言えるわけがないやろ。ええか陽一、○○病院の三○二号室じゃ。すぐに戻って来いよ」 慌ただしく電話は切れた。差し迫っていた父の声を聞く限りでは、どうやら本当のようだ。それに、真面目一徹の父が、こんな質の悪い冗談を言えるわけもなかった。陽一は、取るものもとりあえず、京都へ向かった。 病室に入ると、背中を向けて座っている父がいた。ベッドの上には、顔に白い布を被された母が横たわっていた。遅かったか。 「たった今、逝きよった……」 父はそれだけ言うと、うつむいたまま二度と口を開こうとしなかった。父の背中が微かに震えていた。陽一が子供の頃、あんなに大きくて逞しく見えた父の後ろ姿は、今はとても小さく、弱々しく思えた。 葬儀を済ませ大阪に戻った陽一は、キッチンテーブルの上に乱暴に投げ出されてあったタッパにふと目が止まった。あの日、母が持ってきた里芋だ。それを見ると、この部屋にはまだ母がいるように陽一には思えた。 蓋を開けると、醤油と柚の香りが漂う。ひとつを摘んで口にほおばると、懐かしい味がした。もう二度と味わえないお袋の味。ふたつ、みっつと続けて口に入れる。もう幾らも残っていない最後の味を、ひとつ、ひとつ大切に噛みしめた。 そのうち、堰を切ったように熱いものがこみ上げてきた。とめども流れる悔恨の涙が、陽一の頬をつたい落ちる。そのひと粒が口にはいると、里芋の味が少しだけ塩辛くなった。
■次は「予感」「バーゲン」「凍える」で
hoo
「こんな吹雪く夜は、婆さんと出逢った時の事を思い出すのぉ」 その年は、なかなかスキーに行けなかったのだが、やっとまとまった休みが取れたの で、郷里の爺ちゃんのうちに行った…途端に大吹雪。スキーどこじゃない。まったくツ いてない。 それで爺ちゃんちに二人きり。何度も聞いたような話を繰り返されている。もっともそ れもそう嫌いじゃないけど。しかし、爺ちゃんと婆ちゃんの馴初め、こりゃまだ聞いた 事がない。ぐっと一膝乗り出した。 「そん頃はあれじゃあ。こげな山奥、スキー場だのなんだのあらせんけ、そりゃ冬とも なったら山ん中に閉じ込められて、ひっそりと暮らしとったもんじゃ。 食いもんにはいつも困っちょった。じゃけ、天気ええ日ゃ猟銃持って狐だの兎だの狩 ってたもんじゃ。今じゃ出来んけどな。 そん日は、家出る時なん嫌な予感がしたもんじゃ。やけによぉ晴れてての。じゃっどし ばらく猟に出てもなんも獲れん日が続いてて、このままじゃ飢え死にじゃ、ちゅう按配 じゃったけ、それでも猟に出たんじゃ。 ところが、山ぁ一つ越えたぐらいで突然吹雪いてきょっての。『嫌な予感ちゃ当たるも んじゃ』と。どうしょもないけ、雪風しのげる場所探しとるとの。風の間に間に叫び声が 聞こえるんじゃ。最初は風の音の悪戯じゃ思うちょったけど、どうしても叫び声―それ も女の―にしか聞こえん。こりゃ大変じゃ、と辺りを探してるとの。ふらふら歩いとる女 に出くわしたんじゃ。それが婆さんじゃ」 風がガタガタと戸を鳴らす。一際大きくひゅぅぉおと逆巻く音も聞こえる。なにか…なに かが近づいて来るような、そんな気配を感じた。 「そんでの、婆さん抱えてわしの方も凍えるような思いで命からがら家の方目指したん じゃ。女があげな吹雪ん中一晩越せるとは思えんかったけ。そんでじゃ…えーと、そう、 そん時にじゃ…」 隙間風がどこからか迷い込んで、囲炉裏の火を揺らす。ばさっと大きく雪が軒から落 ちる音がした。爺ちゃんはちらっと土間の方に目をやった。 「……えーと、なんじゃったけ…ああ、信坊にも見せたかったの。そん時のわしの格 好ええとこ。崖と崖の間を縫うように滑ったもんじゃ。今で言うたら高速バーゲンかの?」 くすっと笑い声が聞こえた気がした。気配は遠ざかっていく… そんな冬の思い出。
えー、またもやのインチキ方言、ご寛恕を。 てか、なんか判り難いような。 地方的にかんじきじゃなくて竹だか木だかの長めの板履いてると思っておくんなまし。 そういうのは作中で描けよ、と。 まぁ、良いさ。 久し振りに落ちに困ったざこば師匠風で書けたし(勿論、最初に「高速…」が 浮かんだ訳だけれど) なんか、微妙に長過ぎだったから、あちこち少しずつ削っては整形し直したんで、 変になってるとこありそでヤだなぁ。 次のお題は、「旧暦」「オンライン」「市場」でお願いします。
>>335 >またもやのインチキ方言、ご寛恕を。
いえいえ、なかなかいい雰囲気でしたよ。
むしろ、自分の書いた
>>330-331 の京都弁の方がインチキ臭いです(ちなみに私は奈良出身)。
高速バーゲンかぁ……訛言葉にして消化したんでしょうけど、流れからも無理はないし、むしろ工夫してもらったんだなぁ、ていう感じで出題した甲斐がありました。
>微妙に長過ぎだったから、あちこち少しずつ削っては整形し直したんで
うーん、自分としては、別に長くても全然構わないんですが……。
自分は雰囲気のある話が好きなもんで、どちらかというと、情景描写と人物造詣のキッチリした、長い作品の方が好きです。
もちろん、きちんとオチがついているのは大前提ですけど。
なんか、エラそうに書いてしまいましたね。気に障ったらゴメン。
忙しくて書けない状態なので感想だけでも。
>>329 「川のぬし」は嘘だったのか…
まあ、それだけ見つけてほしかったんでしょうね。
>>254 の嶋田とは違うタイプの人だw
寒い感じがすごく伝わってきて良かったです。
>>330-331 親は大切にせんといかんよー!
「親孝行したいときに親は亡し」です。
後悔も先には立たんのです。
ホント、親は大切にしないといけないな、と思いました。
>>334-335 婆さんは雪女ですか…?
奥様は魔女みたいですね(違
>なんか、微妙に長過ぎだったから、あちこち少しずつ削っては整形し直したんで、
>変になってるとこありそでヤだなぁ。
いえいえ、変なところはなかったですよ。
それに俺も、長いから嫌だというのはないです。
寸善尺魔さんの仰るような、内容がきっちりとしている作品は好きなので。
「高速バーゲン」が分からない俺は逝っていいのでしょうか。
どもです。 >寸善尺魔さん 方言系はむずいっすよね。 雰囲気作りのために使うけど、「これ、ネイティブの人とか噴飯もんかなぁ」とか 思うと怖い怖い。 怖い話書こうってのに、書く方が怖くなってる場合じゃない。 >蠢さん そうそう、ばっさまは雪女(笑) 「あぁん、じっさま、そりゃ言っちゃなんねぇだよぉ」と、風とか使って必死に爺ちゃんの 気を逸らすの巻。 なんとか成功して、核心部に触れない路線に持ってったら、「高速バーゲン」発言で 「もう、じっさまったら、相変わらずなんだからっ♥」ってな感じで。 ラヴラヴです、ラヴ。 高速バーゲンは、高速ボーゲンを爺ちゃんが天然で間違えた、って事で、ひとつ。 高速ボーゲン自体、普通な用語か謎いのでちと躊躇ったんですが。 きっちり減速した曲がり易いボーゲンじゃなくて、速く滑るためのボーゲン、ですかね。 どうも、ちゃんとした描写、下手です。 描写しようとすると、それ以上に無駄が増えて、異常にだらだらした文になっちゃう。 で、まぁ、それぐらいなら、という、実に志の低い理由での1レス縛りだったり、 わたしの場合。
ageとくね。
hoo
ほ
ほお
344 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/02/04 00:41
・
■「旧暦」「オンライン」「市場」 1/2 オンライン掲示板などで流行っている噂話を一つ。 ある男が、奇妙な夢を見ました。 周囲がほとんど見えない霧の中で、男は列に並んでいました。 立ち並ぶ人々はみな身じろぎ一つせず、列を外れることもなくただじっと立っていました。 やがて一人分、列が進んだところで男は目を覚ましました。 男は夢のことをすぐに忘れ、およそ一月後の晩、男はまた同じ夢を見ました。 以来、およそ一月ごとに男は列に並ぶ夢を見続けました。 夢を見るたび、男は一歩ずつ前へと進んでいきました。 数ヶ月後、相変わらず夢の中で列に並んでいた男は、前方の視界ぎりぎりの地点に並んでいた男性が 何者かに手を引かれて霧の中へ消えてゆくのを見ました。 あれが最前列か、男はそう思いながら目を覚ましました。 次の月、新たに最前列に立った女性が霧の中へ消えてゆきました。 次の月、男は姿のない声を聞きました。 人ごみの中のざわめきのような無数の声が、最前列の老人に浴びせられていました。 やがて声は収まり、老人はとぼとぼと霧の中へ消えていきました。 次の月、男の前には残り3人がいました。 最前列の若者の背中は、よく見るとかすかに震えていました。 声は収まり、若者はわめきちらしながら霧の中へ消えていきました。
■「旧暦」「オンライン」「市場」 2/2 次の月、男は声の内容を聞きました。 最前列の少年に向けられる声は、何人もの人々が何かの数字を言い合っている声でした。 それは、まるで市場の競りのようでした。 次の月、男の眼前の中年男性は、ぶつぶつと不平をつぶやきながら、霧の中へと姿を消しました。 翌日、男はテレビで夢で見た中年男性が自殺したことを知りました。 気になって調べてみると、少年も、若者も、みな夢を見た日に亡くなっていることがわかりました。 そして、夢を見た日がすべて旧暦の一日に当たることを知りました。 次の旧暦一日、夢のことが恐ろしくなった男は眠れぬ晩を過ごしました。 そして、男は無事に朝を迎えました。恐怖をなんとかやり過ごし、男は心を撫で下ろしました。 翌月、男は帰らぬ人となりました。 旧暦の毎月一日は、鬼の市が立つそうです。 そして、この話を聞いた人は、同じ夢を見ることになります。 「売られた」人がどうなってしまうのかは、誰にもわかりません。 助かる方法は一つだけあります。 男が一月だけ恐怖を回避できた理由、それがわかった人は「売られる」ことはありません。 あなたにはわかるでしょうか?
流れが止まっていたので、僭越ながら初投稿させていただきました。 ■次は「携帯」「マスク」「コーヒー」でお願いします
>>345-346 さん乙。
こういうの読むと普通(?)の自殺とか交通事故とかも、
実は背景になんかあるんじゃないかと不思議な気分になります。
それとこの話を聞いた人は〜系の話って創作でもちょと怖いよね。
一瞬、スレが落ちる様子かと思たよ。 鬼の姿を視認できないのが、逆に恐怖心を煽りますね。眠らなければやり過ごせるのかな…?
>>348 右目さんから感想をもらうのが目的の一つでした。
ありがとうございます。
>>349 私もこのスレが好きなので(第一部からROMしてました)
このまま落としたくないな、と思ってました。
これからはぼちぼちカキコみたいと思います
351 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/02/08 00:11
受験生や大学生は、いま試験で忙しいからね。 もうすぐしたら、常連さんたちも戻ってくるよ。 それまで気長に待つのでつ・・・・
「携帯」「マスク」「コーヒー」1/2 さっきさ、ちょっと喉渇いたからコーヒーでも買おうと思って出かけたんだよ。 ほら、うちのすぐ近くに自販機あるだろ。で、薄暗い路地を歩いているとさ、 前の方からマスクした女の人がこっち向かって歩いて来んの。 深夜だし、人気(ひとけ)もないし、なんかマスクしてるし、女の人とはいえ なんかちょっと怖くてさ、俺すれ違う瞬間身構えたんだよ。 でも何事もなくすれ違ってさ、ホッと胸をなで下ろした瞬間、 いきなり背後からそのマスクの女の人が俺に話しかけてきたの。 「ねえ。私キレイ?」 おいおいどっかで聞いたことある話だなって思ったけど、けっこうビビって 何も言えないでいると、その女の人マスクに手をかけて、マスクはずしながら、 「これでもキレイ?」って。 おいおい俺まだ何にも言ってないのに、アドリブきかねえ奴だなとかちょっと 思ったんだけど、そのマスクの下は、案の定口が耳まで裂けててさ、 死ぬほど恐ろしい顔してんの。俺心臓止まるほどビビっちゃったよ。 でもキレイじゃないなんて言ったらどうにかされちゃうとか思ってさ、俺必死に 笑顔取り繕いながら、「は、はい、すごくキレイです」とか適当に言ったの。 そしたらその女の人すこしだけ笑って、いや、俺にはなんとなく笑ったように 見えたんだけど、そのまま歩いて闇に消えていったんだよ。
「携帯」「マスク」「コーヒー」2/2 でもそれで終わりじゃなかったんだよ。助かったーっと思ってさ、もうなんか コーヒーとかどうでもよくなって俺すぐにアパートに引き返したんだけどさ、 部屋のノブのとこにさ白いマスクがかかってんの。一瞬マジビビったって。 そしたらいきなりポケットに入れといた携帯が鳴りだしてさ、俺ビクーッって たぶん10センチくらい浮いたね。しかもそれ俺の家の電話番号からなの。 マジありえないって。で、恐る恐る電話にでると、女の人の声で 「けっこうキレイにしてるのね……」とか言ってんの。 おいおいすでにあがりこんでるよー。なんだよもうマジ勘弁してって感じでさ、 俺自分の部屋に入ることもできねえの。だって怖すぎるよ。何されるか分かん ねえし。俺今部屋の前でマジ震えてる。だからさ、頼むから一晩だけ泊めてよ。 いや、マジなんだって。口裂けてんだぜ、超怖いって。マジで。ね? 泊めて? 違うって。何かするとかそういう問題じゃないんだって。マジ超怖えーの。 いるんだって。ほんと何もしないから。今日だけ泊めて? ね? 部屋に 口裂け……ねえ由美ちゃん聞いてる? マジで……頼む今日だけだって………。 ■2レスも使って書く内容でもなかったかもなあ……。 次のお題は「上の階」「中の人」「上の空」でよろしく。
「上の階」「中の人」「上の空」1/2 「ねえ、聞いてるの!?一昨日から上で変な音がするのよ。 このマンションって、今、上の階には誰も住んでないはずでしょ!?」 ヒステリー気味に話しかける妻の声を、俺は半ば上の空で聞いていた。 「空耳だろ。お前、最近家事やら子育てで忙しいだろ?疲れてるんだよ。」 タバコの火を消しながら、投げやりに答える。 「ちょっと!真面目に聞いてよ!」 妻が机を叩く。幼児用ベットで寝ていた子供が勢いよく泣き出した。 「あなたは家にいる時間が少ないから良いけど、私は怖いの!」 「管理人に相談すりゃ、いいことだろ」 「したわよ!けど、全然取り合ってくれないのよ!」 挙げ句、妻は泣き出してしまった。超常現象など全く信じない妻が、この怖がり方は異常だ。 「分かったよ。見に行くから、ちょっと付いてこい」
2/2 問題の部屋の前に立った。 「よし、入るぞ。」 ドアノブに手を掛け、引くと扉は思ったよりも容易く開いた。 部屋の中は思ったよりも整然としており(当然のことなのだが)、人が住んでいる気配は全くなかった。 「お前はここで待ってろ。」 妻を玄関で待たせ、俺は奥へと進んだ。 短い廊下を左へ曲がり、玄関からは見えない部屋へと足を踏み入れる。 ここはやばい! 直感的に、そう思った。見た目は入ってすぐの居間と変わらない整然とした部屋。 けれど、全く違う。そこには「気配」があった。 たくさんの生き物が無理矢理に詰め込まれているように感じた。 それと同時に、入居者の居ない部屋の鍵が開いているはずもないと云うことにも気付いた。 全身に鳥肌が立った。 気持ち悪い。早くここから出たい。逃げ出したい。 しかし、そんな思いとは裏腹に俺の右足は前へと踏み出した。 部屋の隅にある押し入れに目が往く。そこに「何か」があると感じた。 押し入れの前に立つと、自然に手が前に出た。 襖を開くと、そこには「中の人」が居た。たくさん。 吐きそうになって、急いで襖を閉める。 「ねえ!何かあった!?」 玄関から妻の声がする。 「ああ、大丈夫だ。何にもないよ。お前の空耳だ。」 その日から、妻が怪音に悩まされることはなくなった。 ただ、今も。上から俺を呼ぶ声が聞こえる。
やべっ。違うとこで使ってるコテで書いちゃった… えーと、次は「我」「蛾」「餓」でお願いします…
ho
<またり文庫>に、日本ホラー大賞の一次落ちの作品が投稿されてるけど、読んだ?
>>358 読んだ。けど、はっきり言ってコーラック。そら、一次審査落ちでもしょうがない罠とオモタ。
文章自体は特におかしな所はなかったけど、 いかんせんストーリーがありきたりかな。 単なる基地外女のスプラッタ物だろ? ストーリー自体あって無いような感じ。
いや、文章もダメダメだろ
362 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/02/14 23:16
このところ書き込みがないので、 投稿サイトで最近晒されたホラー作品の紹介でもしておきますよ <作家でごはん> 祓師(T著) 自動販売機(ねこ著) 死人の霧(怜人著) <またり文庫> 人喰いの夜(K著)
ほ
>>316 グッドラックチケットを手に入れたのは別に普通の奴でもよかったと思うけど、
小柄で華奢で見るからに貧相な男にしちゃうとこがいやらしいね(いい意味で)。
>>319-320 >その言葉が何を意味するものであるか気付いた俺は
なんで気付いたんだろ? それに気付いちゃうとこが怖いとこでもあるけど。
>>329 僕もお題見て真っ先にイワナが頭に浮かびました。そのあと話作れなかったけど。
シンプルなオチが好きです。自分で思いつかなかったかなあこのオチとか
思いました。
>>330-331 葬儀を終えて帰ってから里芋を食べたら、里芋が腐っててお腹壊した。
……そんな別のオチが浮かんで、なんか自分が嫌になりました。
こういういい話系は好きだけど、ちょっとだけ物足りない感じもします。
ひねくれてんのかな?……僕もそういう話いくつか書いてるけど。
>>334 武勇伝を嬉しそうに語るじいちゃんの様子が目に浮かびますね。それと慣れない
かっこつけ言葉使おうとして間違っちゃうじいちゃんの得意げな表情も。
最後の行がなんか哀愁(?)があっていいですね。
>>345-346 ですます体だとより怪談ぽいよね。読みやすくてよかったです。また是非。
スレが落ちる様子かと思ったって感想はワロタ。
>>354-355 最後の2行がなんか謎めいててけっこう好きだ。
■「我」「蛾」「餓」 1/2 小学校時代、僕は父の仕事の都合で転校を繰り返していた。 行く先々の学校で僕に出来る友人は、不思議で変なやつらばかりだった。 今日はそんな友人たちの一人の話をしようと思う。 K崎は、4年生のころ僕が住んでいたマンションと同じ並びの一軒屋に住んでいた。 妹同士が友人になったことをきっかけに、僕とK崎は仲良くなった。 そのころの僕は、放課後はK崎と近所の公園や河川敷で遊び、 6時になったらK崎の家で一緒にTVアニメを見て、 7時すぎに自宅へ帰るのを日課にしていた。 僕が転校してくるまで、K崎には特に親しい友達はいなかったようだった。 K崎は昆虫集めを趣味にしていた。彼の部屋には、透明の箱に詰められた虫の標本がたくさんあった。 中でも、彼のお気に入りは蝶だった。 翅の四方をピンで留められ動けなくなった蝶を、彼はうっとりとした顔で僕に見せてくれた。 「蝶は、止まる時は翅を閉じるんだぜ。蛾は翅を開いたままで止まるんだけどね。閉じた翅を、壊さないように開くのが楽しいんだ」 そう言いながら、彼は蝶の触角を優しく撫でていた。 彼の餓えた心は、小さな虫たちの儚い命によって満たされていた。
■「我」「蛾」「餓」 2/2 あるとき、K崎が大怪我をした。 放課後、二人で一緒に遊んでいるときだった。見たことの無い大きな白い蝶がひらひらと飛んでいた。 鼻息を鳴らし、K崎は蝶を追いかけ始めた。僕は、K崎の後を追った。 僕はK崎を、K崎は蝶を。追いかけっこはすぐに終わった。 車道に飛び出したK崎のところに、とつぜん車が飛び込んできたのである。 K崎は、だん、と地面に転がった。 僕は大慌てでK崎のもとへ駆け寄った。 K崎の着ていたシャツのボタンは全てはじけ飛んでいた。 開かれたシャツをだらしなく広げ、彼は冷たい地面に横たわっていた。 先ほどまで彼が追いかけていた蝶が、ひらひらと彼の頭に舞い降りた。 幸い、K崎は命に別条はなかった。彼の入院先を訪れたところ、彼は事故直前の記憶があいまいになっていた。 蝶を見つけたところまでは覚えていたものの、我に返ったときには眼前に車のバンパーが迫っていたらしい。 K崎が退院する前に僕は引っ越してしまったため、そのあと彼がどうなったかはわからない。 ただ、蝶集めはさすがにやめただろうな、と今でも思う。
オカルト……になってない……かな? ■次は「腕」「痛」「スリ」でお願いします
保
ほ
ho
372 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/02/25 13:13
赤スリしたら腕が痛くなった
赤スリって、黒サギみたいなもんで、スリからスリの得物をスリ取っちゃうスリとか そんなんだろうか。
ho
375 :
「腕」「痛」「スリ」 ◆cBCRASH/NU :04/02/27 23:40
満員電車の中、突然岩石で出来ているような逞しい手が、私の肩に食い込む。 「痛い。何なんですか」 「スリの現行犯だ。今俺はしっかりと見たんだぞ」 振り返った先には、手と同様に巌のような中年男の顔があった。口ぶりから察するに、どうやら私服警官らしい。 「スリだなんて、誤解です。私は何もやってませんよ」 「言い逃れする気か。さっきも言ったが、この眼で見たんだぞ、目の前の男性の尻ポケットから財布を抜き取るのをな」 私たちのやり取りに、他の乗客たちの視線が集中する。目の前に立っていた男性は、私服警官の言葉にはっとなり、慌てて尻の辺りを手で探っている。 「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。スリなんて出来ませんよ。右手はこの通り、ずっと吊革を掴んでいたんですよ」 「何言ってやがる。左手が空いてるだろう、この……」 私の左肩をひねり上げた警官が言葉を詰まらせた。私の左肩の先には、本来あるはずの左腕が無いからだ。 「事故で切断したんですよ。わけあって、義手もつけずにずっとこのままなんですけどね」 「あ、と………」 しどろもどろになる警官。誤認であっても決して謝ってはいけないというルールが警察にはあるため、謝罪には至らなかったが、 さぞかしばつが悪かろう。深いしわの刻まれた額には汗が玉となって張り付いていた。 目的の駅で降り、物陰に身を滑り込ませると、私は左肩をぽんぽんと二回叩いた。 肩の切断面から茶褐色の触手がずるりと這い出し、ジャケットの袖口から表情の無い顔を覗かせた。私の相棒である。 いつからこいつが私の身体を間借りしているのかは判然としない。気が付いたら、喪われた左腕の替わりにこいつが肩口から生えていたのである。 最初は当惑し、どう扱ってよいものかと途方に暮れたが、共同生活を送るにつれ、こいつが私の意志のままに行動する事や、望めば肩の切断面から体内に隠れることも出来る事がわかった。 「何なんだろうな、お前は。左腕を失くした私を憐れんだ神の贈り物なのか、それとも悪魔の手先なのか……」 呟き、やがて私は小さく笑んだ。どちらでもいい。分かっている事は、こいつが私にとって非常に有益であることだけだ。 相棒が咥えていた戦利品──厚手の革財布が、私の右掌の中にぽとりと落ちた。 ■「逃げ」「サクラ」「進撃」でよろしく。
ほ
ho
378 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/03/04 01:16
保守age
あまりにも下がってたので、僕もちょうど上げようかと思ってたところでした。 ……とどうでもいいレスしてみました。 最近あんまり書いてくれる人がいませんね(´・ω・`)
■「逃げ」「サクラ」「進撃」 俺は桜が嫌いだ。 あの春の日、花見客で賑わう桜の名所に俺達はいた。 酒で気が緩んでるヤツラのバッグを置引きする。 成功率の高い簡単な仕事だ。 いつものように待合せの木を決め俺たちは仕事を開始した。 一つ違ったのは、その木が他の桜と違い花が咲いてなかった事だ。 仕事は美味くいった。 待合せの木につき、俺たちは金目のものをバッグから取り出す作業にかかった。 一人が木によりかかっていれば、酔っ払いと介抱する人にしか見えない。 ブツの割には現金が少ない……。いつのまにか俺はナイフを握っていた。 真っ赤な血が桜の幹にかかった。 ・・・・・・アリガトウ コレデサケル 生暖かい風が吹き、木の根が動いた。 やばい。俺は走って逃げた。 逃げながら俺の目に移ったものは狂おしいほどに満開の花を咲かせた桜だった。 俺はサクラが嫌いだ。 ……進撃カイシイ〜。アイツの何時もの掛け声が頭なの中で聞こえる。 さあ、仕事だ! (END) 初めて書きましたが難しいです_| ̄|○保守に戻ります。 次は「携帯」「時計」「通帳」で…
hoshu
通帳記入のためにATMの列に並んでいると 尻ポケットの中でヴー ヴーと断続的なバイブが 私の半眠りを妨げた。 また出会い系広告だろうとメールを開く。 ***@***.ne.jp [件名] 完了 [本文] 14:30 速やかに右手の白のバンで 広告ではなかったが、間違いメールか何かだろう。 消去した後も携帯を手持ち無沙汰に弄びながら 列の先頭の番に来て、記入を済ませた頃には 携帯の時計は二時半を示していた。 休憩時間が終わるので足早に銀行の自動ドアを抜けたと同時に 熱風に突き飛ばされ、窓硝子の破片が降りかかって来る。 白いバンが急発信していくのを目の端に捕らえ、 今助かってもいつか名前も知らない奴に殺されるのかしらと思いながら 視界が暗くなっていくのを感じた。
携帯から即興で書いてみました@東横線。 あまりスリラーぽくないですが・・・ 次のお題は「DJ」「眠気」「渋谷」で。
ho
お題「DJ」「眠気」「渋谷」(1/2) 「熱い、ヤバい、間違いない、イエー!!!」 イベントのときの主催者の叫び声、ガンガンと煩い音楽がまだ耳に残っている。 「ワンフロア貸切だよ!!女の子は呑み放題!!」 「俺らスタッフが全部サービスするからさぁ、おいでよ!!」 会場で二人連れに声をかけられた私はドギマギしながら その後場所を変えて開かれることになった二次会に参加することにした。 地方から上京してきたばかりの私には、渋谷の街は輝いてみえた。 「そんなー。もう飲めませんよー。」 「ダメだよー。罰ゲームだよ、全部ちゃんと飲まなきゃ!」 「それ、イッキ!イッキ!!」 都会の生活というのは、なんとまあせわしないものか。 それにしても、この男の子達。似たような格好をして、 同じような笑い話をして、実態が無いような、薄っぺらな、なんとも不思議な人達。 「あれ?どこいくの?」 席をたとうとすると声をかけてくる人がいた。確かイベントでDJをしていた人ではなかったか。 「ちょっと飲みすぎちゃったみたいだから、トイレ。」 私は愛想笑いをすると店の奥へと向かった。
お題「DJ」「眠気」「渋谷」(2/2) 非常口の前を通りかかると鉄の扉が少し開いており、 そこから数人の男性の笑い声とかすかなうめき声が聞こえてくる。 不審に思って覗いてみると、そこでは考えられないようなことが行われていた。 きっと私のようにガンガン飲まされたのだろう。朦朧としている一人の女の子のまわりに 数名の男が群がっている。順番ができあがっているようだ。 彼らは彼女をこすったり、ゆさぶったり、こねまわしたり・・・・それはひどいものだった。 と、私の背後で息を呑む声がする。 ゆっくりと振り返ると、そこにはさっき私に声をかけてきた男がいた。 どうやら後をついてきていたみたいだ。 私を見て真っ青な顔をしてガタガタと震えている。 ああ、そうか。 私は今まで上手に隠していた尻尾が出てきてしまっているのに気づいた。 調子にのって呑み過ぎたか。ついつい本性をあらわしてしまった。 鱗に覆われた自慢の尻尾だ。三町(約327m)までなら問題なく届く。 どんなに逃げても逃がしゃしないよ。 悲鳴を出す暇も与えず私はそいつを軽く絞め殺すと、ゆっくりと非常口のドアを開けた。 今、地方には餌になる若い男が少ない。 思い切って越後の地を後にしてきたのは正解だったようだ。 大学サークルだか何かしらないけれども、 どうせこいつらがいなくなったとしても、困る人はいなさそうだ。 それにしてもバカな連中。 私は二股に分かれた長い舌を耳まで裂けた口から出して、チロチロと笑った。 うわばみを酔い潰そうとするなんて。 次のお題は 「軟膏」「路上」「検索」でお願いします。
すいません。この一文が抜けていました。 (2/2)の5行目と6行目の間 襲ってくる眠気と戦いながら、身を捩じらせて抵抗する女の子 が入ります。コピペミスです。申し訳ありませんでした。
388 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/03/11 02:24
age
ほ
hou
ho
392 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/03/19 15:08
し
393 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/03/19 17:43
とある小学校に、運動神経抜群な少年がいました。 彼はいつも2組で、運動会では白組でしたが、彼のおかげで 白組は毎回優勝でした。 彼は、運動会が大好きで、いつも楽しみにしていました。 しかし6年生の運動会で、白組は負けてしまいました。 応援団長だった彼は、もの凄いショックを受けてしまいました。 彼は何も食べなくなり、何にも興味を持たなくなり、 最後には死んでしまいました。 1年後、また運動会がやって来ました。 また赤組が勝ったのですが、赤組の応援団長の女の子が死んでしまうという 事件がありました。 それから、赤組が優勝すると、必ず赤組の応援団長が死んでしまうのです。 学校はただの嫌がらせだと思ったのですが、実はあの男の子の亡霊のしわざ なのです。 初めてなんで。ヘタでごめんなさい
>>393 ええっと……。
スレの趣旨を理解してる?
「提示されたキーワードを3つとも使って怪談を作るスレ」なんだけど。
ho
hou
ho
ほ
hoo
hosyu
401 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/03 03:08
ho
ho
火傷をしてしまった。病院に行くほどではなさそうだが、 とてもひりひりするので救急箱から軟膏をだそうと さがすが、入っていない。 しかたなく家から一番近い薬局へ行くことにした。 だが、「一番近い薬局」は家から歩いて40分。 夕方だったこともあり、自転車で行くことに。 家に帰る頃にはすでに暗くなり、人通りの少ない道には誰もいない。 路上には先日ふった雨でせいで水溜りが点々とできている。 しまった! 思った頃にはすでに私の服は 泥まみれになり自転車は横でたおれていた。 気味の悪い暗いみちからはやく抜け出したいがため、 スピードをだして急カーブを曲がったためバランスを失った 私は横転して自転車ごところんでしまったのだ。 だが、なにかがおかしい。 顔面が焼けるように痛い!!!・・・? 手に異様な物が触れた。「べチャッ」「ズルッ」 反面だけ濡れた、奇妙な感覚。・・・・・・・・・ 私は、「「「自分の顔面をにぎっていた」」」 痛みに耐えながらなんとか病院に救急車をたのんだ。 けがは顔だったが痛みの激しさでとても家まではいけそうも無かった。 そのとき、耳元で声がしたのを今でも鮮明に覚えている。 「グ グ グ・・・」 奇妙な音ではあったが、私にはそうとれた。 『こいつ、嘲っている。』恐怖とともに、わたしは失神した。 怪我がなおったいま、私はこうしてパソコンの前に座り 検索している。あのみちで、一体「何」が起こったのか あの路上には「何」が「いた」のかを。 次のお題。「いじめ」 「呪い」 「携帯電話」
405 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/09 03:39 ID:7PfOwg7y
これは、顔面の皮がベロリと剥けていたという事ですね?目はみえているような感じでかいてありますからきっとそうでしょう?皮膚だけベロリ。
406 :
いじめ・呪い・携帯電話 :04/04/09 12:49 ID:f8wTYYr8
ある日、チェーンメールが着た。 「またかよ」。 いつものことでなんら気にも止めていなかった。 携帯電話を持ってから、幾度となく繰り返されてきたこと。 昔の友人だったり、全く知らないアドレスからだったり、 毎日顔を見てる同級生からだったりで、 「何時間以内に、何人に回して・・・・」っていう部分は ことごとく無視してきた。 そして翌日、早朝のニュースで度肝を抜かれた。 同じクラスの奴が死んでいた。 原因は不明。 学校から帰った後、自室の布団の中で冷たくなっていたそうだ。 そう仲がよかったわけではないが、 同じクラスだったし、級長という立場の俺は、葬式に行った。 もちろんそいつの親は茫然自失で、言葉は掛けられなかった。 葬式の帰り際、亡くなった奴の親戚という人から、そいつの携帯を見せられた。 履歴を見たら俺のアドレスがあった。 昨日のチェーンメールはそいつからだった。 俺は奴のアドレスは知らないし、俺のアドレスも教えた覚えはない。 不思議な感覚を覚えた。
407 :
いじめ・呪い・携帯電話 (続き) :04/04/09 12:50 ID:f8wTYYr8
家に戻ってから、昨日のチェーンメールを改めて開いた。 「呪いのメールです。 48時間以内にあなたが憎んでる奴に送りなさい。 あなたの思いは遂げられるでしょう」。 なんってこった。あいつに呪われてた? たしかに、俺たちのクラスはあいつをハブってた。 いじめてたわけではないが なんというか、居ても居なくてもどっちでもいいかっという、 その存在をないもとして扱ってたのが事実だ。 しかし、なぜ俺が死なずに奴が死んだ? 奴のメール画面を思い出してみた。 奴はちゃんと48時間以内に送信していた。 それを止めたのは俺だ。混乱していた。 自分のメール画面を眺めていた。 あと、8分で48時間が過ぎる。 送信ボタンを押すべきか。 そしたら俺はどうなるんだ。 待てよ・・・あいつの望みってなんだったんだ。 俺が死ぬことじゃなかったのか? あいつ自身が消えることなのか? じゃ、なんで俺にあのメールを送ったんだ。 後1分で48時間が過ぎる。 アドレスを入れて、送信ボタンを眺めてる。 さあ、後30秒だ。
>>405 そうです。説明しようとしたんですが、
横着物の私、一回のレスで済ませたくて
縮めたらこんな説明不足に・・・スマソでした。
409 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/09 14:44 ID:f8wTYYr8
406・407初投稿したものです。 慌てて次のお題忘れてました。 「鍵」「土足」「海」でお願いします。
410 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/09 17:46 ID:MaXOGbs6
彼女は呼び鈴も鳴らさずにいきなり鍵を開け、 土足のまま部屋に入ってきた。 「な、七海、おまえいきなりなんだよ!」 「やっぱりね、こんな事だろうと思ったわ。」 俺は別の女とベッドの中にいた。 「な、何でわかったん?」 「携帯電話を盗み見てたのよ!何よこの女!呪ってやる!」 ベッドの中の女に掴みかかろうとする七海をはがいじめにしながら 俺は「浮気なんてするもんじゃないな・・・」と後悔した。 おわり。
彼女は呼び鈴も鳴らさずにいきなり鍵を開け、 土足のまま部屋に入ってきた。 「な、七海、おまえいきなりなんだよ!」 「やっぱりね、こんな事だろうと思ったわ。」 俺は別の女とベッドの中にいた。 「な、何でわかったん?」 「透視能力を使ったのよ!何よこの女!呪ってやる!」 ベッドの中の女に掴みかかろうとする七海をはがいじめにしながら 俺は「超能力者と付き合うもんじゃないな・・・」と後悔した。 おわり。
次は「海」「膿」「生み」で。
413 :
410 :04/04/09 17:51 ID:MaXOGbs6
オカルト要素なしですな。 まあ、女は怖いと言うことで。 ついでに前のお題も入れてみました。 次のお題 「ビデオ」「自衛隊」「3人組」
414 :
410 :04/04/09 17:53 ID:MaXOGbs6
>>414 ゴメン。オカルト入れてみたかった。
本人がお題を出してくれたようなので、次の噺はそっちで。
416 :
410 :04/04/09 17:57 ID:MaXOGbs6
>>415 ・・・・ホントハちょっと面白かった・・・・・
ずいぶん空いちゃいましたが感想を。
>>366-367 オカルトじゃないけど、どことなくオカルトチックだね〜。
1/2の後半だけ読むともっととんでもないこと起こりそう。
そんな雰囲気がイイです。
>>375 「相棒」が触ったものの感触が自分にフィードバックされればなあ。
もちろん痴か(ry ……予定調和な連想でゴメンナサイ。
>>380 さすがに「進撃」の使い方は苦しい?(笑)
死体が埋まってるどころか、生き血を啜って花を咲かせる桜ですか。
今お花見シーズンだけど、一本だけ花が咲いてない桜の木を見つけても、
下手に近付かない方がいいかもしれません………とか言ってみる。
>>382 東横線かあ、たぶん乗ったことないなあ(←どうでもいい)。
なんか死神からのメールぽいと思った。「送信先間違えてますよ」とか
返信したら助かりそうな気がちょっとした(笑)。
>>385-386 正体がうわばみってことでオチがきいてますね。
しっぽが出てるって、タヌキやキツネだったらかわいかったのに。
でもなして新潟? 新潟のうわばみはおとなしいよ……とか言ってみる。
>>404 これイイね!。自分の顔面握ってるって表現が怖い〜。
「検索」の使い方がナイスだと思った。終わり方がかなり好き。
>>406-407 うーん、ちょっと難しいな? 主人公もよく分かってないからいいのかな?
そのうえであと30秒で、送信するのか送信しないのか、誰に送るのか
何を望むのかって、そういうサスペンスは面白いね。
>>410 オカルトじゃな〜い(笑)。やたらあっさりしてるし、内容とスレタイとの
ギャップにちょっとワラタ。
>>411 うん。面白かった。
>>415 の「オカルト入れてみたかった。」ってレスも
「むしゃくしゃしてやった」を連想してなんか笑ったよ。
右目さん!ほめてくださって(?)
ありがとうございます〜!じつはこれ、
>>408 でかいたように「文章が長すぎ」やら
「改行いれすぎ」がいっぱいでて説明不足に・・
でも、駄作も多いかとおもいますがこれからは
ほめたいただいた記念として「404」で
書きコしていきたいとおもいます!(なんかエラ―みたい・・)
421 :
410 :04/04/09 23:43 ID:MaXOGbs6
次からはオカルトをちゃんと書きますw 短い文でキーワードを6個入れられる話を思いついちゃったんで 書き込んじゃいました。
俺たちはビデオを見ていた。学校の資料室見つけたものだ。 見つけたいきさつを話そう。 「なぁ、こんなんで俺たちレポート完成すんのかよ?」 これは気の弱い友人Bだ。 俺:「うっせえな・・完成させるためにやってんだよ!」 B:「・・・・・?」 俺:「どうした?」 B:「これ見てみろよ」 Bの手には一本のビデオが握られていた。 ラベルにはこうあった。 俺:「「後輩へ 絶対に見ないでください」・・・・?」 仮に俺をAとしよう。 B:「A、みてみたいよな?とくに「見るな」って書いてあるとさ」 俺:「ああ・・・」その後、Bの質問にこう答えてしまった俺は 深く後悔するともしらずに好奇心にまかせて返事をしていた。 せいぜいAVかなにかだろう、位にしか考えずに・・・・・ そうして今、最悪の状況に陥っている。
423 :
404 :04/04/10 03:05 ID:QkKmZmv2
ビデオをプレーヤーに入れる。 一瞬、『自衛隊か?』 ともおもったが違った。戦争の風景が映っていた。 しかしナゼこんなむかしのことが?そう考えているうちに、 画面が変わりショッキングな映像が映り始めた。『 拷 問 』だ。 つるし上げられた日本兵が3人組で映っている。そこは旧校舎のような所。 始めは痛めつけるだけだった。 が、 しばらくたつと・・・・ 一人がナイフを取り出し、日本兵の足をそれで切りはじめた! 「ぎりっ」 「あぁぁぁぁぁあああ゛!!!」 「ググッ・・」 「ギッ」 「ガチッ」「ひぃぁぁぁあぁがァ゛」!やがて足に大きなえぐれ跡ができると、 そのなかに木の棒を突っ込み始めた。そして・・「ぐちゃ」「ず るッ!」 傷口をその棒でかきまわす。・・・・・・ そんなことをえんえんと26分ほどみせつけられた俺たちは 呆然としていた。Bなどは途中で吐いていた。目の前のビデオに うつっているのは・・・目玉をくりぬかれているもの、 脳味噌がはみでているもの・・気味の悪い死体となった3人組だった。 Bは日に日に痩せ衰えていき、一週間後には学校にこなくなっていた。
424 :
404 :04/04/10 03:38 ID:QkKmZmv2
一方俺もアレを見てから調子が悪かったが、無理矢理学校へは行き、 友人と話したりしているうちにだんだんと回復していった。 俺は、レポート提出を提出しろと先生に叱られ資料室へいった。 するとそこには、登校していないはずのAがいた。 Aの眼は完全におかしくなっていた。焦点が合っておらず、口からは 涎がたれていた。にやにやわらってこっちをみていた。 俺は背中に悪寒が走った。Aは縄を持っていた。ナイフ、そして定規。 何をしようとしているのか、一瞬にして理解できた。 俺は本来霊などという存在は信じないたちだ。 だが、脳裏に深くしまわれていた校長の言葉が蘇った。 「わが校は、戦時に破壊され立て直されてから現在に至る、伝統ある学校です」 あの映像とこの校舎が重なった。 「ぎゃぁああああぃやぁあああぁ!!!」 恐ろしい俺の悲鳴に気がつき教職員たちがやってきた。 あのとき先生達がやってこなかったら、この経験を語る事も無かっただろう。 PS:長くなりましてどうも申し訳ありませんでした。読むのに疲れ、 恐怖を感じるどころではないかもしれません。 お目汚しをしてしまい失礼いたしました。 噺の最初の一行目、「で」がぬけてる・・・ &怖くてビデオは処分できなくて、代代続くおはなしなんです。
425 :
404 :04/04/10 03:45 ID:QkKmZmv2
ほんと長々と申しわけありません、ごめんなさい。 次のお題わすれました・・ばかですね・・えっと、 「伝説」「精神病棟」「怒り」 でお願いします。
426 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/11 18:50 ID:3Cu8HG7I
おage。
427 :
「伝説」「精神病棟」「怒り」 :04/04/11 21:23 ID:KqQMTaei
カツーン、カツーン。 今日も検診の時間がやってきた。 ドクターの靴音が病棟の廊下にこだましている。 「今井さん、検診ですよ。」 ドアが開く前から言うことは判っている。 毎日毎日、同じことの繰り返し。 「今日はどうですか。ご飯全部食べましたか。」 私は何も答えない。ドクターもそれを分かっている。 感情がないわけではない。思考も正常だと自分では思う。 しかしそれを表に表すことが出来ない。 怒りも悲しみも笑いも、一切の感情表現を奪われてしまった。 目の前のドクターによって。 以前の私は命に満ち溢れていた。 目に映るもの、手に触れるもの、すべてが輝いていた。 何をやっても楽しかった。 彼女たちを殺した事も後悔なんかしていない。 何をやっても楽しかっただけなんだ。
428 :
「伝説」「精神病棟」「怒り」 :04/04/11 21:24 ID:KqQMTaei
警察に捕まったときも、留置所ですごした時間も、 この精神病棟に入れられた時も、 ただただ楽しくてみんなに挨拶していたんだ。 「こんにちは。」「いい服着てるね。」 なぜかみんなは眉間にしわを寄せるだけで 返事はしてくれなかったけど。 ドクターに初めて会った時、彼は何かを一生懸命説明してくれたっけ。 今からする手術。前頭葉の手術。 もう行われなくなって久しい、伝説の手術。 私はどうだって良かった。 だって楽しかったんだもの。 それから私は自分の意思では全く動けなくなった。 声を出す事も出来ない。 ベッドから下りる事も出来ない。 ただドクターに言われた事をするだけ。 もう何年になるだろうか。 ドクターに奪われた、私の、人生。
429 :
「伝説」「精神病棟」「怒り」 :04/04/11 21:25 ID:KqQMTaei
その朝は違っていた。 今日は妙に楽しい。 「お・・おは・・」 声が出る。もう一度言ってみる。 「おはよう。」 ためしにベッドから下りてみる。 窓の所まで行く。鉄格子のはまった小さい窓。 外には誰も見えない。 自分の両手を見つめる。思ったとおりに動く。 もうすぐまた検診の時間だ。 今日もいつものようにベッドの上でドクターを迎えよう。 きっとまたいつもと同じ事を聞かれるだろう。 「今井さん今日はどうですか。」 今日の私はいつもと違うぞ。 私は両手を見つめながら、また以前のように、すごく、楽しくなってきた。
430 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/11 21:27 ID:KqQMTaei
長くなっちゃった。 次のお題は 「腕時計」「風邪薬」「ひとめぼれ」 でお願いします。
431 :
腕時計・風邪薬・ひとめぼれ@ :04/04/12 11:28 ID:0ZN1RPDM
4時3分の電車に乗る彼女の後姿を、今日も少し離れて目で追う俺。 かれこれ何ヶ月同じ事をしてるんだろう。 1度、改札で定期券を入れそこなった彼女の手と それに気付かずに余所見をしながら改札に突っ込んだ俺の手が触れたことがあった。 「すいません」 「あ、いや・・・」 たったそれだけの接点だ。 しかし、俺にとってはひとめぼれの瞬間だった。 どこの学校だろう?それもわからない。見覚えある制服なんだけどな。 しかし、毎日この時間、この電車に乗る。 きっと近くの高校なんだろうな。 今日は朝からかったるい。 保健室で風邪薬をもらって飲んだ。 昔の俺なら、とっとと早退してるところだが、 どうしても4時3分の電車に乗って帰りたい。 腕時計を眺めながら、机に突っ伏した。「あと1時間・・・」
432 :
腕時計・風邪薬・ひとめぼれA :04/04/12 11:29 ID:0ZN1RPDM
やっと終業のチャイムが鳴って、ふらつきながら駅に向かう。 彼女の姿が見えた、追いかけながら階段を上がると、 なぜか、彼女が振り返って俺を見た。 熱のせいか、目が合ったせいか、急に心臓が高鳴って 俺はそのまま彼女を追って、ホームから線路に転落した。 直後、轟音と警笛が鳴り響いていた。 1週間後、俺は病院にいた。 そこには、両親と校長と顔面蒼白の養護教諭の姿があった。 いや、顔面蒼白かどうかは定かでない。 俺の視界は真っ黒だったから。しいて言えば声が蒼白だった。 耳から入る会話を整理してみた。 養護教諭が俺に渡した風邪薬の製造年月日遥か昔のものだったらしい。 どこから出てきたのか、30年も前の日付だったとか。 それで駅で俺飛んじまったのか?学校側が責任を感じてるらしいな。 30年前?なんで今ごろそんなもんが出てきてんだ? 30年前っていや〜、親父もお袋もまだ高校生だったころだろ。 あ、そう言えば俺がこの学校に合格したとき、お袋が高校生のころの写真見たことあったな。 今のとはぜんぜん違う制服だよなって、親子3人して同じ高校に行くんだなって言ってさ。 あの彼女の制服、お袋のと同じだったぜ。 どうりでどこの学校かわかんなかったはずだわ。 昔、あの駅で友達が電車に飛び込んで自殺したって、 親父酔った時に言ってたっけ。 長い間保健室登校してた子だったって。 長くなってすいません。 超初心者でした。次のお題「リモコン」「手帳」「シャワー」
このスレをまとめたいんですけど、イイでしょうか。 皆さんレベルの高い怪談ばかりなので、このままログに埋もれちゃうのはもったいないと思うんです。
434 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/12 22:09 ID:uu9JFe5a
>>433 がんがれ。
俺ならいいぞ。
くれぐれもカレ・・・ごほんごほん。
435 :
太朗 ◆3QeQud0Iwg :04/04/13 01:19 ID:ltysfxHr
ありがとうございます。んじゃ、お言葉に甘えて早速まとめはじめてみますね。 あと、心配は無用です…と
436 :
太朗 ◆3QeQud0Iwg :04/04/13 01:20 ID:ltysfxHr
ありがとうございます。んじゃ、お言葉に甘えて早速まとめはじめてみますね。 あと、心配は無用です…と
437 :
太朗 ◆3QeQud0Iwg :04/04/13 01:22 ID:ltysfxHr
携帯から書いたら連投(-o-;)スイマセン
438 :
404 :04/04/13 02:18 ID:kRc/wFcn
は・・・恥ずかしすぎる・・
>>424 のAとは、
まえにかいてあったBの事です・・・・・(悲)
太朗s:こんな低レベルな私の作品も
まとめてくださいますか?
ならばうれしいかぎりなのですが・・・
私の二つめの作品は明らかに駄作です・・・・
一つ目は割ときちんとできたんですが・・・
439 :
427-429 :04/04/13 02:40 ID:bO7hdonW
太朗ちゃんがんばって。
440 :
詭弁太郎 :04/04/13 05:29 ID:OSqZbRIa
>>432 「リモコン」「手帳」「シャワー」
机の引出しをあさっていると、小さな手帳を見つけた。
少し埃のかぶった黒い皮製の表紙、それ程厚さもなく片手に収まる程度の大きさである。
「──?」
私はその手帳に見覚えがなかった。
そもそも、私は手帳を使うような人間ではない。
これといった予定の立つ生活をしているわけでもないし、メモを取るといった行為は苦手としている。
いぶかしく思いながらも、私は手帳の黒い表紙をめくる。
「リモコンの効きが悪い──リモコン用の電池、シャワーの出が悪い──シャワーノズル……」
そこには几帳面な文字でリストのように文章が記されていた。
そして、その文章の右隣には赤いボールペンで丸印が付けられていた。
「買い物リスト──かな?」
ページの上から下まで短い文章と共に日用品や食料品の名前がびっしりと書き込まれている。
そしてその全てに赤い丸印が付けられていた。
パラパラとページをめくっていると、最後のページに1行だけ赤丸のついていない文章があった。
「この手帳を見た──おまえ」
背後に何かの気配を感じた私は思わず振り返った。
「おまえ──いらない」
441 :
詭弁太郎 :04/04/13 05:31 ID:OSqZbRIa
しばらく忙しくて書き込めませんでしたが、リハビリ程度に…… 次のお題 「錠」 「音」 「夜」 でお願いします
442 :
404 :04/04/13 18:08 ID:kRc/wFcn
この話は、あらかじめカーテンを閉めてから読んで欲しい。 「はぁ〜つかれた!!」 OL業をしている私は、OLの中でもやり手として通っている。 そのせいか長年つとめているお局OLと影でのいさかいが絶えない。 やり手として通っているせいで、仕事をよく頼まれるのでとても疲れる。 それなのに嫌がらせで毎日肉体的にも精神的にもつかれがたまり、 唯一の楽しみが「音楽を聴きながら寝る事」という状態。 今日も何時ものように風呂に入るのもそこそこにベッドに入る。 季節は夏。とても暑いが私は少し節約しようと思っているので 夜はクーラーをつけずに窓を開けて網戸をして寝る。 ――――――ゴトッ――――・・・・・ガタンッ!!―――・・・ ・・・・・?『ガタン?』・・・ その夜私は音で目を覚ました。だが、今になって思うとなぜ よくホラー映画にでてくる自ら危険に飛び込む主人公のように 愚かしい行動を取ったのか・・・・『そのまま寝ていればよかったのに』。 そして、いつもは疲れきってぐっすり寝ているはずなのに、 なぜこのときだけこんな他愛も無い音で目を覚ましたのか。 『あれ・・・?網戸があいてる?』 網戸が開いている。そしてキッチンの方から聞こえてくる『音』 寝ぼけた頭が一気に冴え渡った。
443 :
404 :04/04/13 18:38 ID:kRc/wFcn
錠はかけたはずだ。寝るときはチェーンロックも欠かさない。 私の部屋は4階建てのアパートで、私はその3階に住んでいる。 そのため容易には侵入できないはずだ・・・! 私は何を思ったか枕もとに在った護身用のひ弱なカッターを手にとると 「音」のするほうへ行った。 そこには、いないはずのものがいた。 泥棒だ。だが、ベテランの者ならそんな古い手法は使わずに、私の留守中に 狙うだろう。案の定おどろいたのか、玄関のドアをあけて一目散に にげていった。 あのあとからは、節約などということはせずにクーラーをつけて 寝るようになった。ラジカセもつけて。 泥棒に入られて約一ヶ月がたとうというころだった。 私はまた目を覚ました。しかも、まだラジカセをつけて 5分も経っていない所で、だ。 音楽が消えていた。つけてまだ全然時間は経っていないというのに。 嫌な予感がした。そのため、私は『寝てしまおう』と思い、 タオルケットをかぶった。すると、またラジカセが点いた。 しかし、流れる「音」は明らかに私がいれたCDとは違う音だ。
444 :
404 :04/04/13 19:16 ID:kRc/wFcn
―――ガッーーズルッ――ズ・ズ・ズ―――・・・・ そのとき、恐怖に震える私の耳にきこえてきたのは、 「「「「「がちゃり」」」」」」 という私が寝ている寝室の窓の錠が開く音だった―――・・・ 「キ・・・キ・・キイッ・・・」 続いて窓も少しずつ開き始めた――――――――――!! ついに窓は完全に開いた。(と、タオルケットをかぶった私は思った) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!! タオルケットを何者かの「手」がつかんだ。 タオルケットをものすごい力で引き剥がそうとしている!! 私は必死でタオルケットにしがみつき、せめてもの努力として 「それ」をみないよう格闘しているうち、(私からすると)幸運なことに 失神することができた。 だが、あのときカーテンをしめていたら気付かれずにすんだかもしれない。
太朗さん仕事早いですね。お疲れ様です。 前から太朗さんのまとめサイト見てたけど、 三題噺スレは僕が初めてお話書いたスレで、思い入れもあるので なんか嬉しいです。 ところで404さんお題がでてないですよ?
乙です。
449 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/15 02:23 ID:mo6Tzmmf
次のお題が出ない事には続かないので 勝手ながらもう一度 「錠」 「音」 「夜」 で話を書いてそのあと私が次のお題を出します。
450 :
「錠」「音」「夜」 :04/04/15 02:25 ID:mo6Tzmmf
バッグから鍵を取り出し、錠前に差し込んで回す。 ドアが開かない。 もう一度、今度は逆に回してみる。 ゆっくりとドアを引いて見ると今度はどうやら開いた。 アパートでの女の一人暮らしで戸締りには気をつけている。 玄関の鍵を掛けずに出かけてしまう事などありえない。 一瞬で頭から血の気が引いた。 「空き巣・・・か?」 ドアを少し開けたまま、室内の物音に耳を澄ます。 何も聞こえない。電気もついてなく、闇夜のように真っ暗なままだった。 恐る恐る中に入り、電気のスイッチに手を伸ばす。 部屋を煌々と照らす明かりとともに 安堵が心に広がった。 荒らされた様子もなく、出かけた時のままだ。 持っていた大きな鞄をテーブルの上に置くと 念のためにトイレ、浴室内を見回し、 タンスや棚の中も調べたが、何も変わっている所はなかった。 「鍵、閉め忘れたのかしら・・。」 自分に納得させるようにつぶやいた後、 緊張のせいか、のどが渇いていることに気づいた。おなかも少しすいている。 冷蔵庫を開けて中を覗き込む。 「空き巣じゃなくて良かったわ。これが見つかったら大変だもの。」 私はなおも独り言をつぶやく。 「後は頭と両手だけね。あと二回捨ててくれば終わるわ。」
451 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/15 02:28 ID:mo6Tzmmf
次のお題は 「鉛筆」「夜食」「大統領選挙」 でお願いします。
創作系のスレは人来ないねぇ・・・ おもしろい話あると思うんだけど。
ほ
454 :
詭弁太郎 :04/04/20 02:11 ID:MwBDHkAS
>>451 「鉛筆」「夜食」「大統領選挙」
暗い部屋、机の上に置かれた電気スタンドだけが眩しい光を放っている。
しんとした静寂の中、鉛筆の走る音が狭い部屋に響く。
私は明日が提出期限のレポートを書いていた。
「……ふう」
レポートはあと結論の部分だけを残すのみとなった。
徹夜になるかと思っていたが、どうやら少しは眠れそうだ。
軽くのびをして机の上の時計を見る、針は午前2時過ぎを指していた。
「腹減ったな、なんか作るかな」
休憩をかねて、私は夜食を作ることにした。
たいしたものを作るわけではない、夜食といえばカップラーメンである。
台所へ行き、やかんの乗ったコンロに火をつける。
やかんには常に水が入っているようにしている、これは一人暮らしの知恵だ。
部屋に戻るとテレビのリモコンを手にとりスイッチを入れる。
「……」
もうこの時間になるとたいした番組はやっておらず、CMか固定カメラの映像しか映らない。
椅子に座ったまま適当にチャンネルを回していると、ニュース番組をやっているのを見つけた。
舞台のようなところに人が立っており、何かスピーチをしている映像が流れている。
それは某国の大統領選挙のニュースだった。
『今回の大統領選挙で当選した……』
ニュースキャスターの声が映像にかぶさる。
私はこのニュースに興味があるわけでもなくただぼーっと見ているだけである。
キャスターの言葉もよく頭に入ってこない。
そのうち、台所の方でやかんがピーッという音を鳴らす。
コンロの火を止めようと椅子から立ち上がったとき、テレビ画面の上の方に文字が出てきた。
ニュース速報である。
私は椅子から立ち上がった姿勢のままテレビの画面をじっと見る。
『残念ながら、大統領は死亡してしまいました』
ほんの3,4秒ほどそのニュース速報は画面に映っていたが、そのうち消えてしまった。
455 :
詭弁太郎 :04/04/20 02:13 ID:MwBDHkAS
私は眉をひそめる。 まだ、テレビでは大統領選挙のニュースが流れている。 キャスターも今のニュース速報に触れようともせず次の原稿を読み上げる。 『続いては特集です、最近若者の間で……』 私はもう一度ニュース速報が流れるのを待つが、もうニュース速報が流れることは無かった。 「……なんだったんだ、今のは」 テレビはニュース番組の特集も終わり、今はカレーのCMが流れている。 台所ではやかんが今も音を鳴らしつづけていた。 ──2週間後、テレビや新聞ではあるニュースで一色となっていた。 『某国大統領、当選二週間の短い命』 当選したばかりの某国大統領が急逝したのである。
456 :
詭弁太郎 :04/04/20 02:16 ID:MwBDHkAS
次のお題 「あこがれ」 「数字」 「影」 でお願いします
457 :
404 :04/04/22 01:04 ID:f2aESYR7
>>447 &
>>449 ごめんなさいです・・・とっても
ドジで有名なんですよ。またやっちゃいました・・
AとBのちがいなど、
恥ずかしすぎて気が動転してました。(激しく小心者)
それで軽くトラウマってなかなかこの
スレッドにもう一度来る勇気がでずにいまして・・・
とってもすみませんでした・・・
ho
>>404 キニシナイ!
ワシも書きこんだが読み返すと誤字脱字が一杯ある
>>422-424 憑き物系の話でよくあるけど、自分がよく知ってる人が、なんかおかしなこと
になるってのは想像するだけで怖い。そんな体験したくねえ〜。
その後Bがどうなっちゃったか気になりました。
>>427-429 これイイ! ドクターのこと恨んでるのか、それすら達観してるのかも
よく分からん主人公のつかみどころのなさがいいね。語り口調の文体も好き。
>>431-432 ノスタルジック(?)な雰囲気がいいね〜。
急に昔の風邪薬が出てきたのと、その子が彼の前に現れたのと、
彼が倒れたのと、その子と両親が友達だったことが、全部関係あるような
ないようなところがいい(何言ってるか分かりづらいけど)。
>>440 シンプルで面白かった。もうリハビリは充分みたいですよ?
>>442-444 実際霊体験してるような人にとっては「それ」としか表現できないような
ものに襲われることもあるんだろうな。怖いよ「それ」。
読み終わってみれば泥棒の話はいらないような気もした。
>>450 男だけど同じ経験して血の気が引いたことある。部屋に死体置いてあった
わけじゃないけど(当たり前だ)。頭を最後まで残しておくってのは
どうなんだろ(笑)。最後に頭捨てるときになったら確実に何かしゃべるね。
>>454-455 『残念ながら、大統領は死亡してしまいました』←この一行につきるね。
この文体。怖いよ。
「あこがれ」「数字」「影」1/4 あこがれていた先輩が死んでから京子は明らかに変わってしまった。 いつも明るかった京子が、暗くうつむいていることが多くなった。 笑顔の絶えなかった京子が、今は口がいびつに歪んだ精気のない笑みしか見せない。 ある日、京子の腕に奇妙なミミズ腫れのような傷があることに気付いた。 4……2……8……。一見数字のように見える。 「これが出れば第一段階終了なの」京子はうつむいたまま静かに笑った。 「第一段階?」私には訳が分からなかった。 数日後。京子の腕に新しい傷が浮かんでいた。 9……2……5……。京子は悦びと悲しみが入り交じったような奇妙な 表情で腕のその傷をやさしくさすっていた。
「あこがれ」「数字」「影」2/4 「だいぶ濃くなってきたみたいね」 京子と二人で下校していたある日、いきなり京子がそうつぶやいた。 何のことだか分からなかった。京子の腕の傷のことかと思ったが、 傷は以前と何も変わっていないように見えた。 最近京子は笑顔を見せることが増えた。 しかしその笑顔は以前の魅力にあふれた京子の笑顔とは明らかに 違っていた。どこか奇異で禍禍しい笑顔。心配よりも恐怖を感じた。 京子の腕に新しい傷があるのに気付いたのはその数日後のことだった。 7……1……4……。京子は悦びをかみしめるように傷をさすっていた
「あこがれ」「数字」「影」3/4 ある日私はふと足元に伸びる自分の影を見て奇妙な違和感を覚えた。 影が黒いのだ。自分の影がやたら黒く感じた。 「影ってこんなに黒かったっけ……?」 それはとても奇妙な感覚だった。 影が今にもはち切れんばかりに膨張しようとしているようにも見えた。 不意に京子の言葉を思い出した。 「だいぶ濃くなってきたみたいだね」……。 ゾクッとするような悪寒が走り、私はその場に立ちすくんだ。 見つめれば見つめるほど自分の影がどんどん濃くなっていくような気がした。 けれど私は自分の影から目を離すことができなかった。
「あこがれ」「数字」「影」4/4 「ねえ、なんなのこれ? 京子の腕の傷も。ねえ京子あんた何やってんの?」 翌日、私は京子に影のことや腕の傷のことを問いただした。 「ねえ、先輩の誕生日っていつだか知ってる?」 「何言ってんの京子? そんなの今関係な……」 「先輩にもう一度会うためには捧げる命が必要だったの」 「先輩?……4・2・8……4月28日? 先輩の誕生日……?」 「ホントごめんね……。でも誰でも良かったんだ。あはは」 9・2・5……9月25日は私の誕生日だ。 7・1・4……7月14日……今日だ。 昨日よりもずっと濃くなった自分の影にふと目がいった。 影が広がる。視界がぼやける。黒く染まる。 「最終段階だ」 京子の声ではなかった。聞いたことのない声。 しかし私にはそれが悪魔の声だと確信できた。 私は黒い影に吸い込まれるように倒れ込んだ。 黒が私の体を包み込んだ。 その後私がどうなったのかは、知らない……。 ……………………。…………。
久しぶりに書いてみた。 あなたは自分の影が人より濃いと感じたことはありませんか……。 とか言って。 次のお題は「底」「ポケット」「空気」で。
466 :
「底」「ポケット」「空気」 :04/04/24 18:50 ID:K7l4vYUo
またかよ。また泣きついて来たよ。 そんなに毎日毎日同じ事繰り返して バカじゃねーのか? もういい加減にしろよ。めんどくせーんだよ。 おい!、勝手にポケットに手突っ込んでんじゃねーよ。 こないだ底まで整理したばっかりなんだから 荒らすんじゃねーよ。 しょーがねーな。なんか出してやっかな。 全く世話の焼ける奴だ。 お前のお守りはもうたくさんなんだよ。 お、いい物があった。 これ使えそうだな。 出力最大にして、逆向きに暴発するようにしとくか。 うまくいきゃ自分で死んでくれるだろ。 なに期待した目で見てんだよ。お前は邪魔なんだよ。 ほらほら今出してやっからな。 タラララッタラ〜〜〜〜ン。 「空気砲〜〜。」
467 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/24 18:55 ID:K7l4vYUo
次のお題は 「植木鉢」「ダイニング」「CD」 でお願いします。
「底」「ポケット」「空気」 「宇宙の底がどこにあるか知っていますか?」 駅前を歩いていると、広場の真ん中に立っていた男に突然声を掛けられた。 「あなたは宇宙の底がどこにあるか知っていますか?」 「はい?」 急いでいた私は少しトゲがある言い方で返した。 「宇宙の底です。空気も水も生物も。全ての存在は超自然の中の空間なのです。個の存在はまた空間でもあるのです。」 新手の新興宗教か、ただの狂人か。どちらにしろ興味はなかった。 「急いでるんで…」 「みんな忘れてるんですよ。どこにだって宇宙の底は存在していることを。」 私は、熱弁を振るう男を無視して歩き出した。 「あなたもですか?みんな本当は知っているはずなのに。あなたも忘れてしまったんですか?」 男は話し続ける。 「私は忘れない!誰かが忘れてしまったら、その存在はなくなってしまう!」 男は涙を流していた。誰にも理解されない悲しさを、誰にも認めてもらえない悔しさを嘆くかのように。 しばらく離れてから振り向くと、男は呆然として座り込んでいた。 「ただの狂人だよ…」 自分を納得させるように私は呟く。 手を突っ込んだポケットが、なんだかいつもより深く感じた。
ゴメン、リロード忘れてた。
ho~
「植木鉢」「ダイニング」「CD」 「いらっしゃ〜〜〜い!」 幼馴染みの親友、希美がやって来た。 「香奈恵の部屋いつ来ても綺麗だよね〜。これハーブ?いい匂いだね。」 希美はそう言って、さも当たり前の様に部屋にあがり、リビングをぐるりと歩き回った。 「へぇ〜今度はガーデニングに嵌ってるの?凄い数の植木鉢だね〜。」 希美は私の部屋のモノを一つ一ついつも通りに物色し始めた。 「うん、今ハーブに嵌ってるの。そんなわけで、今日は私のハーブ料理ご馳走しちゃうよ。 がんばって作ったの、美味しいんだから…。全部食べてね〜。」 「どれどれ、その力作とやらを見せて貰いましょうか〜。」 希美はダイニングにつかつかと入ってきて、テーブルに着いた。 そして、バックをゴソゴソとやって、一枚のCDを取り出した。 「そうそう香奈恵。このCDかけて〜。このCD胎教に良いんだってぇ〜。」 無造作に私に差し出した。 私はそれを受け取り、CDの音楽をかけた。 バイオリンの良い音色が、部屋に流れる。 「やっぱり、香奈恵の部屋がいちばん落ち着くわ〜。 気分が良いわ、女王様な気分ね〜〜。 あ、お茶出してくれる?私、喉乾いちゃった。」 希美は、自分の指のマニキュアを気にしながら、深いため息をつく。 「あ、気が利かなくってごめん、今煎れるね。 そうそう!プレゼントがあるの、タンジーとワームウッドのサシェなの。お手製。 タンスに入れておくと、下着がとってもいい匂いになるよ。 あと、ラベンダーのボディローションだよ。いい香りでしょ?ストレスに良いって。」 希美は「ふ〜ん」とそれを受けとり、 ペシャペシャと、ローションを手の甲に付けてみる。 「悪くないわね〜。」
(続きです) 「ラベンダーの香りが良いでしょ?今度、リース作ってあげるね。」 ところが、希美は興味なさそうに返事をした。 「あんたって、昔からこういう乙女ちチックな事好きだよね。 でもさぁ!そんなんだから、いつまで経っても結婚できないんだよ〜。 聞いたよ、付き合っていた彼に振られたんだって?マヌケ〜。 その歳で、男に逃げられるのってつらくない。いい加減焦ったら? その歳で独りってのは惨めだよ〜、ホント。 もうちょっと、現実的に生きたら?私みたいにさぁ〜」 「希美は、やる事が過激すぎだよ…、今回の結婚だって出来ちゃった婚なんでしょ?」 「そうよ、今妊娠3ヶ月よ。それのどこが悪いの?。」 「まるで、赤ちゃんをダシに結婚するみたいじゃない…。」 「そうよ!これでやっと結婚にこぎ着けたわ〜。 男に『責任とれ!』と脅迫してやったわ!ま、男なんてそんなもん。 香奈恵も私の真似してみなさいよ、すぐ男が出来るわよ〜。 まぁ、香奈恵に で き た ら の話だけどねっ。」 「はい…、バーベインとアンジェリカブレンドのハーブティよ、どうそ。」 香奈恵は、後は黙って食事の用意をし始めた。 「あんたの部屋良いわね〜、至れり尽くせりでさぁ。またちょくちょく来て良い?」 「ええ、いつでも。」 ダイニングのテーブルの上には香奈恵の作った料理が並んだ。 ヘンルーダの食前酒、 ハッカとハーブのサラダ、 鶏肉のタイム香草焼き、 自家製ソーセージ、 幾種のハーブを練り込んだパン…。 希美と香奈恵はそれら全てを平らげた。
(続きです) 食事の後は香奈恵のオリジナルブレンド・ハーブ・ティと 自家製ハーブシードのクッキーを一緒に食べた。 ハーブの良い香りとバイオリンの音色が心地よく二人を包んだ、 話は弾む、希美ののろけ話に始まって、学生時代の話で盛り上がった。 時が緩やかに流れる休日の午後だった。 希美が帰っていった後、香奈恵は希美がCDを忘れていった事に気が付いた。 「あ、CDを返さなきゃ…。」 あわてて玄関に向かおうとしたが、希美はその足を止めた。 「返す必要無い…か、もう必要無いんだから…。」 香奈恵の口から、くっくっく…という含み笑いがもれた。 「だって、希美ったら、私の恋人を取ったんだもん。 私の事を馬鹿にするために、ワザと私の恋人を取ったんだもん。 これ見よがしに、寝取ったんだもん。 ワザと妊娠して、無理矢理結婚しようとしたんだもん。 そして、私の料理を全部食べたんだもん。」 香奈恵は、本棚からハーブの本を取りだして、確かめる様にあるページを読んだ。 『 妊 婦 に は 絶 対 与 え て は い け な い ハ ー ブ ※流産の危険あり!』 そして、植木のハーブの一つを撫でた。 「もうこの胎教のCDは希美には必要ない物だもん…。」
良スレだなぁと思って読んでいましたが、 今回のお題に触発されて、思わず書いちゃいました。 新参者で何かしくじってたらスミマセン。 次のお題は 「雨」「はしご」「アジサイ」 あたりでお願いします。
とりっぷ・・・てすとはしたんですが
出来てるでしょうか?
トリップやっとつけましたよ!ということで
これからトリップつき404となります
(と思います失敗さえしてなければ)。
よろしくお願いします!
>>474 sとっても素敵でした!
いえいえ、しくじってるのは私です。
2,3回書いてはいるのですが、1レスで
すませないと話の構成が上手くいかない未熟者・・・
「雨」「はしご」「アジサイ」 「今日も雨か・・・・・でも霧雨だし、買い物位はいけるか。」 庭の隅に紫の紫陽花の花が見えた。 こんな日はあのときのことを目蓋を伏せつつ思い出す。 確かあの時も紫陽花を見ていた。霧雨だった。 私が片手を失ったあの日の事を。 私にはたった一人の友達、親友がいた。 名は 「千代」 といった。 いや、確かそうだったという 程度にしか名前は記憶に残っていない。 千代とはそんな事よりももっと記憶に残るような・・・・ 出来事が「いろいろ」あったのだから。
477 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/04/28 21:32 ID:4D4kOrQG
404さん、何レスかにわたる作品を書くときは メモ帳とかに全部書いてから一気にコピペするといいですよ。 作品途中の割り込みスマン。
それは、24年前。 私がまだ5歳の頃の話。 ――17年前―――――――――― 千代はいつだってユニークな事を思いつく。この日もそうだった。 「納納実ちゃん!納納実ちゃん!!」 納納実は私の名前だ。「ナ ナ ミ」と読む。 「あそこだったら雨に濡れないでおままごとできるよ♪」 千代が指差した先は、8階建て位のビルのような建物だった。 「中でおままごとしよう!直也君も呼ぼうよ!!」 直也とはその時私が好意をもっていた男の子だ。 想いを打ち明けてあった千代なりの気遣いだったのだろう・・・・ が、道すがら千代は直也くんと話しっぱなしだった。 その建物に入ろうとした所、―――扉が開かない。 「・・・・・・・・・アッ!あそこから入れないかなぁ?」 3人とも呆然としていたなかで、千代が言った。 千代がいった所をみると、6階ほどまで長いはしごがかかっていた。 「あ、ドアが・・・・開いてる!!」 3人ともよろこんではしごにのぼった。今思えば考えなしだった。
いまだったら決して登らない。なにせ霧雨とはいえ 雨ですべりやすいし、はしごが在った場所は路地だったし、 放置されて数年経ったようなはしごなんて頼れた物じゃない。 登る順番は一番目が直也くん、二番が私、三番が千代だった。 もう高い所まで登っていた。 「これで雨に濡れないであそべるね!直也くん♪・・納納実」 『・・・何?今の「・・」って・・・その「間」。千代!』 はっきりした。いままでの蟠りがすぅっととれた。 『千代は直也くんが好きなんだ!!私を助けるふりをして、利用したんだ!!』 怒りが込み上げた。その瞬間、もう口にしていた。 「千代!あんなとこに紫陽花がさいてる!キレ―!!!」 古い手だ。 「え?」・・・・・ 『『ドンッ』』「きャァッ!!」声と音は同時だった。 『やった!』・・怒りに任せて行動した私は心の中でそう叫んだ。 ・・が、「やった」というのは早かった。 千代が、私の片腕をつかんで全体重でぶら下がっていた。 「落ちる!」 そう思ったがすぐにはおちなかった。 直也くんが、私の腕をつかんで助けてくれていた。 とはいえ、このままでは皆で落ちてしまう。冗談じゃない。そう思い切って、 私は千代を・・・物心ついた頃からの親友をたった数分の激情で 「「振り落とした」」 千代は、親友は、「ドン」という醜い音を立てて者と化した。 その直後、私も落ちたが、私はかつて親友だった 「肉の塊」の上に落下し、片腕が不随になっただけで助かった。
この事件は直也くんが私が落としたという事に気付かず 千代が誤って落ちたのだ。千代が誘った事だった。ということで 人身事故にしては(多少は責任をとらされたが)私たちはそこまで 責められなかったし、母さんが私の友達関係に支障をきたさぬよう 少し遠い所に引っ越した事もあり、割と早々に幕を閉じた。 マスコミに騒がれることも何故か無かった。 その事件の現場ももう思い出せない。 ―――――――――――――――――――― 「出かけよう。こんなことを思い出しても気分が落ち込むばかりだ。」 そう思いでかけたのがそもそも間違いだった。 いつもならば『雨が降っているから』とやめるはずだったのに。 ―――「なぁ、納納実じゃないか!?」 そう声をかけられてふりむくと、昔とは随分違うが、 たしかに面影の残る懐かしい人物。『直也くん』だ。 そのあとは懐かしい直也くんと街をあるいた。 「・・・・・・・」しばらく歩いて二人は絶句してしまった。 あの「建物」だ。もうすっかり取り壊されていると思っていた。 だが信じられない事に、廃墟と化してそのままの外観で残っていた。 それから私たちは止せばいいのにあの「はしご」のほうへ行った。 「ねぇ、おままごと、してないよ。」 後ろから確かに声がした―――・・・・が、後ろには誰もいなかった。 私は大声で泣いた。なきつづけた。「ごめん」「ごめん」と誤りながら。
>>477 s貴重なアドバイスありがとうございます!
これからは他の人と重なってしまうかも、
などとあせらずに、じっくり
作品を作りたいと思います。ありがとうございました!!
で、やっぱりスカポンで、修正です。
>>478 一行目、24年前→17年前 アフォです・・
不注意、なおってません・・ごめんなさい・・
ほかにも、どアフォな間違いなどありましたら。
お目汚しな長文をすみませんでした。
で、つぎのお題は、
「軍艦島」「助け」「骨」 で、お願いいたします。
>>466 邪悪なドラえ○んて、ある意味一番怖い(笑)。
考えてみればあの町ってオカルト現象起きまくりだよなあ。
その前にまず青い体色の奇妙なUMAが街に馴染んでる時点ですごいしー。
>>468 なんか哲学的だね。(自分にとって)意味不明なことって時にすんごいこと
言ってるように聞こえる。訳が分からない自分がすごく小っちゃく感じる
というか。僕のポケットはいつもと変わらず浅いです。
>>471-473 あ〜希美ムカつく。読み手をムカつかせる人物描写ってのも大事ですね。
癒しのイメージのあるハーブと「妊婦には絶対〜」のギャップがなんか怖い。
>>476-480 幼い頃の出来事を振り返るタイプの話ってなぜか切ないですね。
取り返しのつかないことしちゃった感がいっそう増すからですかね?
あと、オチが誤字っちゃってるのはもったいないと思った。
ho
>>483 右目さん、ナイスツッコミ!・・です。
すっごい肝ッ心な所でのヤバすぎるミス!
もう、ここの板の恥さらし、面汚しものです・・・
「間違えない」これが私の次の目標・・・う゛ッ・・
「誤った」って、間違えてどうするんだ!!!
皆さんに謝れ自分!!って感じでした・・
もう、「お目汚し」どころではすまないです・・・
目が腐っちゃいますね・・本当にすみませんでした・・
>>485 別にそんなに猛省しなくても……(笑)。
でも誤字とかタイプミスあると後でへこむよね。
直したくても直せないし。
G.W.も終わったのでageてみる。
そうですよね、2chってなおせないから あとでへこみます。 では私もG.W.終了記念age。
488 :
座布団猫 :04/05/07 04:58 ID:jkizxg7w
「軍艦島」「助け」「骨」 1/4 僕の住む町に、マニアには結構有名なプラモデル屋がある。 今はフィギュアショップとか言うらしいけど。 名前は「軍艦島」 店に通うようになってから由来を訊いたら、店長が長崎出身で、って言ってた。 そういう名前の島があるらしい。 店長が軍艦好きらしくて、ショーウィンドーには、いつも「大和」やら「榛名」やらが並べられてた。 有名だとかそんなの関係なく、小・中・高校へと通う道にあったから、 必然的にその店のショーウィンドーを毎日眺めていた。 店長は、僕が中学校の時にはもう、頭もすっかり禿げ上がった細身の爺さんで、 にこやかに笑って、いつもレジの横でなにかしらプラモデルを作ってる。 娘さんが時々店に居て、外から見ている僕と目が合うと、少し笑顔になって会釈する。 TAMIYAのアクリル赤の瓶と、面相筆を持ってレジに行ったら、店長が一心不乱になにかを磨いてた。 いつもは見たことの無い、暗い、硬い表情で。 「今度はなに作ってるの?」 声をかけると、僕がいるのに初めて気づいたみたいに体をびくっと震わせて驚き、僕を見た。 その形相は、まるで幽霊を見たような感じで、おびえてるみたいだった。 「?」 こっちこそ驚いた。そんな風に驚くと思わなかったから。
489 :
座布団猫 :04/05/07 04:59 ID:jkizxg7w
声の主が僕だとわかると、店長は半笑いでひとつため息をつくと、 何気ない風を装いながら手に持っていたものを背後の棚に置き、磨き布で覆い隠した。 「はい、660円だよ」 1000円札を渡しながら、店長の肩越しにさっきの棚を目で示して、訊いてみた。 「何磨いてたの? すごい集中してたけど」 「ん?…あぁ…まぁ…」 歯切れの悪い苦笑い。触ってほしくない部分に踏み込んでるのはわかってた。 でも、なんだかすごく気になったんだ。 しばらく迷っているみたいだったけど、店長は、唇を舌でしめらすと、 意を決したように、後ろからグレーの磨き布ごとそれをカウンターに置いた。 「なんのプラモデル?」 「本物の骨だ」 あっけにとられている僕に、すかさず店長が言った。 僕は二の句も次げず骨と表現された破片を見ていた。 5×2,5くらいの黄ばんだ細長い物体。 磨きこまれて光沢を放つそれを、僕は触れることも出来ずにただ見つめるだけだった。 触るなとは言われていないが、指先すら触れられないほど、それは不思議ときれいだった。 店長は胸ポケットからつぶれたタバコの包みを出して、慣れた手つきで火をつけた。 「昔の話だけどな…」 店長が話し始めたのは、哀しいひとの話だった
490 :
座布団猫 :04/05/07 05:00 ID:jkizxg7w
店長の両親は昔、炭鉱で働いていたそうだ。 店長が生まれたのも、その炭鉱のある島、長崎県の端島…別名「軍艦島」だった。 今となっては廃墟になっているその島も、 店長がその島にいたころは人口のけっこうある、にぎやかな島だったそうだ。 そこにある日、一組の夫婦が引っ越してくる。 夫は炭鉱で働き、妻は島にあった病院に看護婦として勤務。 働き者で優しい夫、若々しく、きれいな妻。 30も半ばの夫婦だったが、子供は居ないようだった。 人付き合いも上手で、島に来てすぐ、ずっと前から島に住んでいたようになじんだと。 夫婦は仲むつまじく、休みの日はよく二人で浜辺に居たのをみんなが知っていた。 5年後、夫が落盤事故に巻き込まれ、帰らぬ人となってから、妻の様子がおかしくなった。 事故現場に出向いては、「助けてくれと呼んでいる」とボタ山を堀り返すようになったのだ。 たしかに、落盤事故で夫の体は岩に押しつぶされ、顔すらも原型を留めておらず、 妻が対面できたのは、包帯でかろうじて形を作った変わり果てた夫の姿だったから、 死を素直に受け入れられずとも仕方ない、と、町の人々は妻を哀れみ、 しばらくすれば落ち着くだろうとそのまま静観を決めた。 しかし、女の様子は戻らなかった。 仕事にも出ず、炭鉱をさまよい、夫の名を呼びながら岩を掘り返す。 爪ははがれ、すすで体は汚れ、髪を振り乱し…。看護婦姿のりんとした美しさは消え去っていた。 何度か町の人たちが彼女を捕らえ、なんとか正気に戻そうとしたが、無駄だった。 そんな町の善意の裏で、もうひとつの意思がうごめいていた。 彼女は、人の見分けがつかなくなっていたのだ。 炭鉱で働く男たちを夫と間違えて、すがり付いて動かなかったことも多々あった。 だれがそれに気づいて、そんな企みをしたかは知らない。 彼女を炭鉱のそばで呼び、「ただいま」と言えばいいのだ。 それだけで男たちは欲望を満たし、 女は違う世界の中で偽りの幸福に包まれて眠れるのだ。
491 :
座布団猫 :04/05/07 05:05 ID:jkizxg7w
「子供だった。……好奇心が先に立った。罪悪感は彼女が抱きついてきた時にはどこかへいっていた。 しかし、そのあとは彼女の姿を見ても、目をそむけるようになったよ」 3本目のタバコを灰皿にもみ消すと、タバコの包みをまさぐり、ねじってゴミ箱へ投げた。 いつの間にかそばに来ていた娘さんが、カウンターのタバコをとって渡そうとしたが、一瞬早く店長の手がタバコを取った。 包装をはがしながら、店長は続けた。 「そのすぐあとだ。彼女の姿が見えなくなったのは。……海に落ちたか、閉鎖された横穴に入ったかと探した」 捜索隊と一緒に炭鉱の閉鎖された穴を探しに行き、女を見つけた。 彼女は落盤に巻き込まれ、胸から下がすべて岩に覆われていた。 一目見て、助からないとわかった。そしてその瞬間、涙があふれて、理解した。 「島に来た彼女を初めて見た時、一目ぼれしていたんだな。13の時だったが、初恋だった。 目の前で死に掛けている彼女を助けたかった。 自分と一緒に生きてほしいと、虫の息の彼女に向かって叫んだよ。 すると彼女は、うっすら目を開けると、切れ切れに私の名を呼んだんだ。 小さな子供に言うように、泣いちゃだめよ、って言ったんだよ」 店長は思い出したように目頭をおさえ、タバコが唇の震えを示して揺れた。 「彼女が最後に私の名を呼んでくれた。 たとえそれが、診療所に行った時の幼い私を見たものでも、それでもいい。 私はそれをよすがに、こうして生きているんだ」 僕は絵の具の入った紙袋を片手に、店を出た。 5月の夜だというのに、少し肌寒かった。 振り向くと、店のガラス越しに店長の姿が見えた。 そして、彼女の姿も。 店長が見せてくれた、セピア色の1枚の写真。 診療所と思しき建物の前で、照れくさそうに笑う白いシャツの少年と、看護婦の姿。 変わらない若さで、店長の横に立つ彼女は、今も優しげに微笑んでいた。
492 :
座布団猫 :04/05/07 05:06 ID:jkizxg7w
長文乱文失礼いたひました。 m(_ _)m
493 :
座布団猫 :04/05/07 05:14 ID:jkizxg7w
次のお題は 「扇風機」 「爪」 「水」 でいかがでしょ?
ウワォ・・なんだか激しく切ないお話・・・ ちょっとなけました・・ 私的感想ですが、心に残る少し不思議な 話だったと思いました。
>>488-491 すげーイイ!
切なくてほんのりハッピーエンドなとこがイイ!
イイ! 今度は是非、超怖い話を。
496 :
座布団猫 :04/05/07 23:22 ID:jkizxg7w
497 :
HO :04/05/08 17:21 ID:YKdqOHNq
「扇風機」 「爪」 「水」 あ〜暑い… 寝苦しさに目を覚ますと扇風機が止まっていた。 「くそっ。止めるなって言っただろう!」と声に出してから気がついた。 アイツは、もう居ないんだった…。 冷たい水でも飲むか…。 台所で冷蔵庫ドアに手をかけた時 今まで寝ていた部屋のほうで物凄い音がした。 急いで見にいくと、車が突っ込んでいた。 あのまま寝ていたら… 運転手が無事かを確認しようと部屋に入ったら 「っ痛っ」何かを踏んだ。 ガラスの破片か?足をどけてみると 猫の抜けた爪が落ちていた。 ふ…。アイツが扇風機を止めて助けてくれたんだな…。 何処かで、猫の声が聞こえた。 秋になったらマタ猫を飼おう。
498 :
497 :04/05/08 17:23 ID:YKdqOHNq
2回目のカキコミです。やっぱり難しい_| ̄|○ 次は 「マンション」「タバコ」「椅子」で
(;´Д`)ハァハァ
500 :
座布団猫 :04/05/09 01:40 ID:0MBtkRt4
>>497 すごーいですねー!
簡潔なんだけどきちんとわかる文章!
勉強になります!
どしても難しくて書けない(×_×;)
ちなみにうちの猫は一瞬の隙を見せると座椅子を奪います
ほ
ho^
「マンション」「タバコ」「椅子」1/1 夕食をとったあとタバコをふかしていると、 煙が不思議な動きをしていることに気が付いた。 向かいの椅子のところで煙が不自然に横に流れていくのだ。 まるでそこに座っている何者かが煙の流れを妨げているかのように。 このマンションには越してきたばかりだが、最初にこの部屋を見に来た 時から何か奇妙な違和感のようなものを感じないわけではなかった。 「あっ!」 ほんの一瞬だが、煙の向こうに男の人の顔が見えた気がした。 翌日、マンションの管理人さんに事情を話し、あの部屋で以前に何か あったのではないかと問いつめた。 すると管理人さんは、あからさまに不機嫌な顔をして言った。 「そんなんじゃまだ駄目だよー。もっと怖い思いしてから来てくれないと。 今話したって、全然オチが活きないじゃないの。まったく……」 管理人さんは怪談のツボを心得ている人らしい。 俺は大人しく得体の知れない何者かがいる部屋へ戻ることにした。
>>497 猫が好きだから、猫が出てくる話読むとなごむよ。
最後の一行がなんかイイね。今すぐ飼おうとしないところが。
次のお題は「姉妹」「死体」「視界」で。
>>500 >>504 感想ありがとうございます。m(_ _)m
もちろん、私も猫下僕でございます。
>>503 オチが活きない の一言がツボに嵌りました。
507 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/05/17 15:36 ID:EMJR5K8m
「え、もうおしまい?もっとしたいよぅ。あなたしかいってないじゃない。」
HOSHU
509 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/05/20 13:45 ID:dXYkDOQx
>505 >506 レスありがと。 猫下僕age。
お題難しかったかなあ(´・ω・`)
例えば此処に見分けの付かないほど 酷似している双子の姉妹がいて、 姉か妹のいずれかが他方を殺害した場合、 被害者がどちらかを当てる方法を 無二の親友たる君に教えようじゃないか。 死体を見つからないように隠すほうが姉、 他人の視界に入るように曝しておくのが妹だよ。 僕が兄にしたようにね。
513 :
512 :04/05/25 21:35 ID:UALOGAb+
怪談というよりはブラックジョークですが。 次のお題は「眼鏡」「レコード」「残業」で。
>>507 は見事だな。オカルト要素ナッシングだが。
>>512 淡々としてるけど、何気におっかないですね。
曝しちゃったのかよガクブルみたいな。
ブラックジョークは僕の好物のひとつですよ。
実話系もいいけど、こういうのもいいよね。
ほ
ho
518 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・ :04/06/01 21:46 ID:SLiupzKt
あげてみよっと
ガイシュツだツマランだだのと、金を払った客のような要求をする奴が多いオカ版で、 ここまで頑張っているスレを発見して嬉しいです。 感想だけですみませんが、応援しております。
520 :
404 ◆UcutmeDAQs :04/06/04 02:58 ID:XVGDTtp2
かきこみ久しぶりです。 やっぱし右目さんのは短い中にスパイスのように 主役を織り交ぜて、最後の文で一気に鳥肌。 面白いです! 今日はもうこんな時間なのかきませんが、 月曜位に・・・・・とおもっています。 今度は誤字らないように・・・メモ帳に。 ps:ここでは常識ですが、 すごい勢いで下がってるので、 ageときます。
期待まち保守
「眼鏡」「レコード」「残業」 1/1 川村くんは会社の同僚の間では「残業の川ちゃん」と呼ばれていた。 他の社員が嫌がる残業も、彼は喜んで引き受けていた。 「ん〜別に家に帰ってもすることないしね。うちの会社はちゃんと 手当てもつくし、俺いくらでも残業やりますよ〜!」 そんな川村くんが交通事故で急死した。 性格もよく誰からも好かれていた川村くん。 彼の葬儀にはたくさんの友人や会社の同僚が参列した。 出棺の前に、思い出の品や彼が好きだったものが柩に一緒に納められた。 彼が愛聴していたレコード。愛用の眼鏡。そして残業。 ■はいはい。オカルト要素は何ひとつありませんよ。スマン。 404さん、もし書きかけだったら前のお題でもいいから書いてくだサイ。 次のお題は「包帯」「水滴」「柱」で。
523 :
ho^ :04/06/07 19:56 ID:YU25nnac
「包帯」「水滴」「柱」 田舎で独りで住んでいる祖母の家には、大きな大黒柱がある。 いろりの煤や年付きで、黒く光っている。 そして、子供の背丈ぐらいのところには包帯が巻いてある。 ガキの頃にオレが付けた傷が原因だ。 オレは柱に傷を付けて背の丈を刻もうとした。 傷を入れた途端・・・傷の所から水滴が落ちてきた その後は覚えていない。 始めて聞いた祖母の怒鳴り声と、もう一つ優しい声が聞こえた事以外は・・・ (FIN) _| ̄|○オカルト要素なし・・・ 404さん待ってます 書かれたら御題も書いてください。
HO-
>>523 いやいや柱から水滴が落ちてくる時点で充分オカルトなんじゃ?
短いけどなんかいい感じの話だと思いました。包帯まかれた大黒柱想像すると
ちょっとおどろおどろしい感じもするけど。
526 :
ho^ :04/06/14 13:41 ID:Y9Jp2wxZ
>525 感想ありがとうございます。 おどろおどろしいですかね。真っ白な包帯を巻かれた大黒柱…
ho
お題ってないんですか?
529 :
523 :04/06/16 21:46 ID:V3nkgWKW
お題だしますね デジカメ バスタオル サンダル で
こないだ眼科で視力測ったんだけど、 「じゃあ右目から」と言われて、 ちょっとドキっとしたよ。それだけ。 誰か書いてくれage。
ほ
hosyu
533 :
404 ◆UcutmeDAQs :04/06/25 17:20 ID:0xHFVSs2
単なるいい訳ですが、PCの調子が 芳しくなくてなかなか書き込みが 出来ませんでした・・・色々といっておいて・・ すみませんでした・・迷惑をおかけしました・・ お詫びにもなりませんが、 「デジカメ」「バスタオル」「サンダル」1/4 デジカメを買った。 それは10代の頃にあこがれた物で、 丁度最近持っていたデジカメを 落として壊してしまってからというもの、 「この機会に探してみよう」 と思い色々な店に行ってみるが、 どこにいっても無く、 パソコンを使って探しても 疫病神でも憑いているのかと思う位 見つからない。 ネットオークションのページを開くが 「きっとみつからないだろうな」 と、マイナス思考で画面をスクロールする。 「・・・・・・・・・・・!」 あった。しかもコメントにはこうあった。 「一度しか使っていません。保存状態は極めて良好かと。」 即決で買った。
「デジカメ」「バスタオル」「サンダル」2/4 手にとって見ても軽量で、綺麗で滑らかなラインはまさに私の好み。 本当に買ってよかった。 大切なものだったので、 まだ妻子にも触られる事を拒んでいる。 前のデジカメを壊したのは7才の由布奈だ。 ベランダからの景色を写そうとして 盛大な音を立てて落としてくれた。勿論デジカメは粉々。 そんな事があったのにまだ手にとって間もない 大切なカメラを完膚なきまでに粉々にされたくは無い。 「・・・・・?なんだ?」 写真が一枚残っていた。前の持ち主の物だろうか。 ―――・・・見事なまでの心霊写真だった。大きな目が写っていた。 「気付きたくなかったな・・」 削除。 「・・・・あれ?」 きえない。なんでだ?なんなんだ。 このホラー映画にありがちなパターンは。
「デジカメ」「バスタオル」「サンダル」3/4 寝ぼけつつも、体が汗で気持ち悪いのでシャワーを浴びる、 朝浴びるシャワーは目が覚めてとても爽快だ。 ――――バスタオルを取って来るのを忘れていた。 脱衣所からでて裸で取ってくる訳にもいかない。 仕方が無い、妻の利奈は料理中だろうし、由布奈にとってきてもらおう。 「バスタオルとってきてー」 ―――・・今日二度目の失敗だった。 部屋にはあのデジカメがおいてあった。 「はい、タオルね」 タオルをわたし、由布奈がベランダの方へ向かう足音が聞こえる。 いそいで体を拭き、着衣をする。 「きゃあああああぁぁぁあぁあ!!!!」 と、突然悲鳴が聞こえてきた。子供の甲高い声。 ベランダにかけつけてみると、手すりに由布奈がつかまっていた。 驚いている場合ではない。助けないと落ちてしまう!! 7才児が8階から落ちれば間違いなく死んでしまう。 無我夢中で引き上げたので、あまりそこの辺りの事は覚えていない。 デジカメと、由布奈の履いていたお気に入りの サンダルが一緒に落ちていた。
「デジカメ」「バスタオル」「サンダル」4/4 でも、なぜベランダ用の椅子に乗っても脇の辺りまでしか 上がらないのに、落ちたのか。由布奈はこう応えた。 「もっと景色が撮ってみたくて、今度は机に上がったの。 そしたら『ガタンッ!!』って机が動いて・・」 たしかに机に上がると腰の辺りにまで上がる事が出来る。 だが、『ガタンッ!!』というのはなんだったのだろう。 すると、いきなり由布奈が怯え出して、 一言、こういった。 「パパ・・・・後ろのガラス戸の・・『アレ』は何なの?!」 ――――私達は、『 見 』られていた。 もう一つ、奇妙な事があった。 あのデジカメのなかみには、 どうしていままで 動いていたのか分からない位に、 中身いっぱいに、『 髪の毛 』 が詰まっていた。 何が、「保存状態は極めて良好かと」なんだ。 [おしまい]
久しぶりに書きました。 メモ帳で見直ししつつかきましたが、 誤字脱字やら、おかしい所など、いろいろと怪しいです・・ お・・・お題いきますね・・ 「留守電」「墨汁」「カロリー」で・・・お願いします。
404さん、メモ帳に書いてからってのは、
誤字脱字をなくすためというより、4レス分まとめて書いてから
一気にスレに貼るためだよ。まあこのスレは人が少ないからあれだけど、
なんか書こうと思っても、404さんの話が終わるまで書けなくなっちゃうし。
>>533-536 中古のデジカメに奇妙な写真が残ってたって導入はけっこうドキドキした。
実際あったら普通の写真でもなんか変な気持ちになりそう。
でもそれ以降なんかつめこみすぎな気が……。
ガラス戸とか髪の毛も怖いんだけど、なんか全体的に惜しい感じがしました。
「留守電」「墨汁」「カロリー」1/2 「今年中に仕事を決める!」 毛筆でしたためた誓いを壁に貼り、気合いを入れ直す。 前の職場からリストラされてから一年、なかなか次の仕事が決まらない。 今日もハローワークへ出向いたが、めぼしい仕事は見つからずじまいだった。 帰宅してすぐに、なんとかしなくてはという思いから 娘の香織の習字道具を持ち出したのだった。 習字の道具を片付けようと立ち上がると、壁際にある電話機の 留守電のマークが点滅していることに気付いた。 (もしかしたら、こないだ面接に行った会社からかもしれない) 慌てて再生ボタンを押そうとしたら、持っていた墨汁を電話機に ぶちまけてしまった。しまった。すぐにティッシュで墨汁を拭き取る。 再生ボタンを押す。 しばらく無言。そして。 「カロリーオフって……」 何のことだか分からないが、そんな風に聞こえた。 ザーザー雑音が入っていて聞こえづらい。 墨汁のせいで電話機がおかしくなってしまったらしい。 「一生ニジマス……」 女の人の声だということはかろうじて分かった。しかし何を言っているのかが いまいち分からない。 まあただのいたずら電話だろう。停止ボタンを押した。
「留守電」「墨汁」「カロリー」2/2 再び壁に貼った誓いに目をやる。 「よし、頑張らないとな」 わざと声に出して、決意を新たにする。 家族のためにも頑張らないといけないのだ。 ずっと苦労をかけてきた妻とかわいらしいばかりの娘のために まずは仕事を見つけないことにはどうしようもない。 (……そういえば、妻はどこへ行ったんだろう) いつもならもうパートから帰っている時間だ。はて? ふとさっきの留守電のメッセージのことを思い出した。 さっきの声は妻の声ではなかったか? 「カロリーオフって……、一生ニジマス……」 買い物に出かけた妻がなにかの要件で電話してきたのか? もう一度、再生ボタンを押してみた。 墨汁が乾いたせいだろうか、今度はきちんと聞き取れた。 「香織をおぶって……、一緒に死にます……」 それは間違いなく妻の声だった。 ■次は「落下」「手術室」「絵本」で。
ほ
542 :
詭弁太郎 :04/06/29 02:26 ID:enFt9GCR
>>540 「落下」「手術室」「絵本」 1/2
いつだったか、書店でチラッと立ち読みした絵本の1ページにこう書いてあった
『塔から落ちたお姫様、ベッドの上からまた落ちた』
よく意味がわからなかった
都心に近いこの救急病院では患者が途切れる合間もない
交通事故者の手当てを終え、私はほんのつかの間の休息をとっていた
「……あの絵本の題名はなんだったっけか」
ナースセンターに電話のコール音が響き、看護婦が一人私を呼びにくる
「マンション9階から落下した20歳前後の女性1名、内臓破裂で緊急回復オペが必要です。」
私は大きく息を吸って立ち上がる。
「第一手術室でオペの準備、血液の予備確認忘れるなよ」
救急車が病院に到着し、患者が手術室へと運ばれてくる
「これより、緊急開腹オペをとりおこなう」
慣れた手付きで患者の腹部にメスを入れる
マンションの9階から落下したにしては状態は良かった
(おそらくこの患者は助かるだろう)
そう思った瞬間だった
視界が大きく揺れ、大きな音と共に手術室の明かりが消えた
地震だった
私は立つこともままならず床にしりもちをついてしまった
暗闇の中、手術道具の散らばる音が響く
543 :
詭弁太郎 :04/06/29 02:28 ID:enFt9GCR
「落下」「手術室」「絵本」 2/2 やがて揺れも収まり、自家発電によって明かりも回復した 私は立ち上がり、手術室を見渡す 散乱している手術道具、そして床にはおびただしい量の赤い血液── (……血液?) 手術台の上には何もなかった 手術台の向こうには── 「……」 手術台の向こうには、内臓を床にぶちまけた患者が転がっていた 『塔から落ちたお姫様、ベッドの上からまた落ちた』 ああ、こういうことか…… 私はなんとなく、あの一文を理解できた
544 :
詭弁太郎 :04/06/29 02:29 ID:enFt9GCR
次のお題 「おもちゃ」 「夜」 「リズム」 でお願いします
「おもちゃ」 「夜」 「リズム」 時計の針がゆっくりと動いていく。 正確に時を刻むもの、速く進んでしまうもの、どうしても遅れがちになるもの。 色々な時計がそれぞれの時間を刻んでいく。 それらが一斉に止まる時がある。 人間の時間の単位でいうならば午前2時27分。 それを確かめようと思っても無駄なこと。 何故なら時計だけでなく、あなたの時間も止まっているから。
今夜もその時がきた。 「トコトントントン トコトントントン ピッピッピッピッピッピッピ」 目覚まし係のウサギの人形が、得意の太鼓でいつものリズムを奏でる。 それに促されるように、箱の中から次々に欠伸をしながらおもちゃたちが這い出てきた。 新幹線は綺麗にに整列し、その隣にはミニカー達が同じように列を作り始める。 口がきけない彼らは、人形型のおもちゃに比べるとどうしても下に見られてしまう。 だが、彼らには重要な仕事がある。 この家のおもちゃのリーダーであるテディベアはそれを十分すぎるほどに理解している。 計画を実行するには彼らのスピードが何より必要なのだから。
「点呼は終わったか?」 「はい、積み木が2〜3、現われません。 あとは、先日から行方が分からないヘリコプターも姿が見えません」 副リーダーであるレゴの消防隊士がてきぱきと答える。 「積み木か。確かベビーベッドの下にいるんじゃないかと思うんだが、 君のところのレスキュー隊を出してもらえるかな?」 「イエッサー!」 レゴのレスキュー隊員が積み木たちをベッドの下から引っ張り出し、全員が揃った。 それを見計らったところでテディベアはおもむろにソファーの上によじ登り、 勢ぞろいしたおもちゃたちの顔を眺める。 「ミスターテディ! ヘリコプターはどうしたんでしょうか!?」 おもちゃの群れの中から声があがった。 きっと、彼と最も仲が良かったマクドナルドのおまけのスヌーピーだろう。 「そのことだ。いいかな諸君、ヘリコプターはただ行方不明になっているわけじゃない」 おもちゃの群れがざわつく。 「分かるだろう、あの男の仕業だ。それ以外に考えられない」 ざわめきはさらに広がり、すすり泣きも混じり始めた。
「翼が折れてしまったヘリコプター。彼にあの男がどんな仕打ちをしたか……」 テディベアは自分の演説を殊更に演出しようとわざと声を詰まらせる。 その演出に乗せられたおもちゃたちは次々に嗚咽を漏らし始めた。 「あの男は彼を……ゴ……ゴミ箱に入れたに違いないのだ!」 おもちゃたちの目に怒りの色が広がっていくのを、テディは一段高いところから観察していた。 そろそろ頃合だろう。 テディは彼の計画を発表することにした。 「ヘリコプターだけではない。 その前に行方不明になっているF1カー。彼はタイヤが取れてしまったところに目をつけられた。 さらに前にはスヌーピー! 君の盟友であるウッドストックだった。 彼にいたっては気に入らない、というのがその理由だったようだ」 信じられない、という声がおもちゃたちの群れからあがる。 「これ以上の犠牲は避けねばならない。我々は、自らの命を守るために立ち上がらなければならないのだ!」 おもちゃの群れはテディの煽りに叫びを以って答えた。 部屋にはウォーという雄たけびがこだまする。 テディは右手を上げると手をひらひらと振ってその騒ぎを静めると、 「計画は実に簡単である。先ずは……」 と、声を低くして説明を始めた。
「しんかんせん、ないの」 「新幹線? あるじゃん……あれ、300系が無い……カアチャン! 300系知らない?」 「この間から無いんだよ。どっかで見かけなかった?」 「いや、俺も見てない。まーくん、新幹線なくなっちゃったみたいだね」 「しんかんせん……しんかんせんいーの……しんかんせん……」 「また新しいの買ってあげるから、ネ」
ある夜。 男は尿意を催して目を覚ました。 真っ暗な部屋の中ではあったが、勝手は知っている。 電気をつけようともせずにトイレへ向かおうとした。 それに気がついたテディは尻の下から円筒形の積み木を取り出すと、 音を立てないようにゆっくりと転がした。 積み木はちょうど踏み出した男の足の下に転がり込み、男はバランスを失って尻餅をつく。 そこにタイミングを計っていた行方不明になっていたはずの300系新幹線のNゲージが跳びかかった。 前縁のスカート部分は、人間の目を逃れてテレビの裏で過ごしながら少しずつ磨き上げ、 今ではカミソリのように鋭くなっている。 その“カミソリ”が男の頚動脈をいとも簡単に裂き切った。 男は何が起こったのかも分からず、自分の首筋から音を立てて流れ出る暖かい液体に触れた。 生臭さと金属臭が漂う。 「……血か?」 そう思う間も液体はとめどなく流れ続け、男の体力を奪っていく。 やがて男は血溜りの中で意識を失った。
おもちゃたちに平和が戻った。 人間たちの暮し向きは悪くなったようで、新しい仲間が増えることはごく希になった。 そのかわり、男の連れ合いは物惜しみする質で、おもちゃたちが捨てられるような事は殆ど無くなった。 テディにとって満足のいく結果だったが、最近気になることがある。 彼らの主人であるこの家の子供が、自分たちに乱暴にあたるようになった事だ。 さて、どうしたものか。 テディはそればかりを考えている。
息子に付き合ってトイストーリーばかり見てたんで、こんな話になりました。 ぱくりと言えばぱくりですね。笑ってください。 次のお題は 「お茶漬け」「トランペット」「猫(雉トラ)」 でお願いします。
553 :
座布団猫 :04/06/30 21:02 ID:FkNmUPiX
「お茶漬け」「トランペット」「猫(雉虎)」 いつだってそう。 私達のことなんかあの人は見ていない。 家族のことを放っておいて、自分は夜の蝶とやらとさんざん遊びまわる。 母さんは「芸術家っていうのはそういうものよ」と言いながら、でも哀しそうに笑う。 何が芸術家? 誰が芸術家? 場末のショーパブの仕事を昔馴染みからお情けで貰っているあの男? 元からたいした腕でもないくせに、毎日酒びたりでステージに立って、 セッションもまともに演奏できないトランペッターが? 子供のころは、あの男が金色にピカピカ光るトランペットを吹く姿にあこがれさえ抱いた。 今となっては恥ずかしさすら感じる過去。 「お母さん、私もう高校生だし、あの男が居なくても平気よ?」 あの男の居ない夕食の席で、母に切り出した。 一瞬驚いたように母は目を見開き、そして、うつむく。 「そう…よね…」 母の足元に擦り寄る猫<うり>は、その太い体を母の足に寄りかからせ、 グリーンの瞳で母と私を交互に見つめて、喉をぐるぐると鳴らした。 「お母さんとうりがいればいいよ」 うりが私のひざに乗ってきた。黒と茶の雉トラ猫で、もう14歳くらいのおばーちゃん猫だ。 母が拾ってきて、私が名づけた。いのししの子供のイメージだった。 太ももの上で器用に座り込み、絶えず喉を鳴らすその毛皮をゆっくりとなでる。 私のストレスも、母のストレスも、うりが居てくれたおかげでどれほど軽減されただろう。 私たちにその自覚があるせいか、ついうりを甘やかして育ててしまった。 太りすぎは毎回獣医さんに注意されている。
554 :
座布団猫 :04/06/30 21:03 ID:FkNmUPiX
課題を片付けに自室へこもった。 うりがぽてぽてとついて来る。 うりを部屋に招き入れると、ドアを閉め、鍵を掛けた。 壁に掛けた制服の足元のバッグに手を伸ばす。 取り出したのは課題ではなく、100円ショップで購入した小さな化粧瓶だった。 「ねえ、うり、あの男、要らないよね」 うりは、ベッドの上で毛づくろいをはじめていた。 太りすぎで体をひねっても背中はなかなか舌が届かないようだ。 瓶の中の透明な液体は、化学室掃除の時に薬品棚からくすねてきた。 化学部の部長がこっそり食中毒の菌を培養していたものだ。 どのような目的かは知らない。知る必要も無い。 ただ、電波系で知られる彼は、学校でそれを使用しようとしているのかもしれない。 …菌の名前は「ボツリヌス菌」 私は今夜あの男が帰ってきたら、あの男の使っているトランペットのマウスピースにこの液体を塗る。 あの男はまた、明日になればトランペットを吹くためにマウスピースを唇に押し当て、その唇を舌で湿らせるだろう。 潜伏期間は12時間から36時間。お腹も壊さないから、症状が進むまで発見もされにくい。 遅くても明後日には、私たちは解放される。 葬式ではしおらしく母のそばについていよう。 肩を震わせても、泣くのではなく、笑いをこらえているのだろうけれど。
555 :
ZAB :04/06/30 21:04 ID:FkNmUPiX
毛づくろいの手(舌?)を休め、うりがぴくりと耳をそばだててドアの方を向いた。 玄関のドアの音。派手に酔っているようだ。大声で夜食を要求している。 あの男が、帰ってきた。 こっそりと階下へ降りていく。 キッチンで、母が軽食の準備をしているのが音でわかる。 いつもどおり、玄関先に出しっぱなしにしてあるトランペットを、 ケースごとそっと持ち上げて、音をさせないように2階へ戻った。 洗い物用のゴム手袋をして、マスクをつける。 うりがそばに居るともしものことがあるので、うりを部屋から出した。 新聞紙を広げ、その上でケースを開く。 昔はきらきらと光っていたその楽器も、今はろくに手入れをされず、艶を失っている。 マウスピースは、布にくるまれてケースの片隅に収まっていた。 それを取り出し、布を解き、小瓶の中身を振りかける。布にもかけておいた。 ぬぐうつもりが塗りつけることになるとは、あの男も気づかないだろう。 布にもたっぷりとしみこませ、手早く元通りにしまった。 ケースをロックし、手袋を裏返しに脱ぐと、ビニール袋に小瓶ごと突っ込んだ。 新聞紙も丸めて入れて、口を縛る。これは明日庭で燃やしてしまおう。 部屋の戸を開けると、うりがそこで待っていた。 私を見上げ、声を出さずに口だけ「にゃあ」の形に開く。 まるで、よくできました、って言ってくれてるみたい。
556 :
座布団猫 :04/06/30 21:06 ID:FkNmUPiX
うりを部屋に入れ、トランペットのケースを玄関に戻した。 テレビの音が聞こえる。 生きている顔を見るのは最後になるかもしれない―― 平静を装ってキッチンへのドアを開けた。 あの男は、リビングのテレビの前に陣取って、ビールを飲んでいる。 瓶の横にはご飯茶碗と投げ捨てられたように置かれた箸。 夜中の軽食といえばビールとお茶漬け、それがあの男の定番だ。 何ヶ月ぶりかに見た男の顔は、ずいぶんと黒ずんで不健康そうだった。 毎日毎晩酒に明け暮れていれば当然のことだと思えた。 洗い物をしている母の後ろで、牛乳をグラスに注いだ。 「寝るぞ」 不意に野太いがらがら声がリビングから聞こえ、驚きと緊張で牛乳を少しこぼした。 「はい。お風呂は」 母は静かに訊いたが、「入ってきた」と背中が答えた。 どこで、なのかは聞きたくも無い。 テーブルを拭いて、リビングからあの男の使った食器を下げようとリビングへ向かう私を母は止めた。 「いいわ。私がやるから。課題終わったの?」 ゴム手袋のまま母がリビングから食器を片付ける。 「まだ。もうちょっと」 「もう遅いんだから、はやくやっちゃいなさいな」 からっぽのご飯茶碗とビールグラスを洗いながら、母は微笑んで言った。 翌日の午後、授業中に教頭が教室まで呼びに来た。 職員室の電話の向こうは、母だった。 あの男が、交通事故で死んだとの知らせだった。
557 :
座布団猫 :04/06/30 21:06 ID:FkNmUPiX
タクシーで直接警察へ行った。 すでにあの男は霊安室で白い布を掛けられていた。 母は廊下のベンチに肩を落として座っていた。 「居眠り運転のダンプカーがぶつかって、お父さんと、運転席の女性は即死ですって」 「――は?」 私の仕掛けた罠は日の目を見ることは無かったのだ。 残念だったが、結果オーライ。ちょっとホッとしたのもある。 業者もすべて手配して、自宅で一息ついたところで、笑いがこみ上げてきて、母を目の前にして大笑いしてしまった。 うりはいつもより遅くなったご飯に無心にかじりついている。 「どうしたの?一体」 笑いが止まらない。「トランペット、戻ってきたらすぐ洗わなきゃ」とやっと言葉になった。 「どうして?」 笑いすぎて出た涙をティッシュで拭きながら、「ちょっとしたいたずらを仕掛けたの」と言った。 「じゃあ、お母さんも片付けなくちゃ」 「???」 お茶を一口飲み下し、母は微笑んだ。 「毎晩のビールとお茶漬けに、ちょっとしたいたずらを仕掛けたの」 うりは、食後の洗顔を終えて「んーな」と鳴いた。 まるで、似たもの親子だよ、って言ってるみたいに。
558 :
座布団猫 :04/06/30 21:09 ID:FkNmUPiX
あああああ やっぱり長くなっちゃいました〜(ノ_\)・゜゜・. 文才ねっす。 猫への愛情だけは削れなかった… 次の御題は「うなぎ」「犬」「お風呂」で。
559 :
ho^ :04/07/01 09:50 ID:omyM0B6q
「うなぎ」「犬」「お風呂」まじめバージョン 「あら?もうそんな時期なのね。」 [土用にはうなぎ!]向かいのスーパーに貼ってあるポスターを見ながらいう 「うな重の予約を入れなきゃね。」 「え?旦那の分は頼まないわよ。何時に帰ってくるかわからないもの。 毎日夜中よ。それで、うちのお風呂24時間風呂に変えたのよ。でも何時でもお風呂に入れるのっていいわよ。」その後は何時もの自慢話だ・・・。 女は私を見せびらかすために仲間を犬カフェに呼び出したのだ。 でも、私はわかっている。本当に私を可愛がってくれているのが誰かを・・・ それから数日後、女の葬儀が行われた。 死因は、風呂での溺死。深夜帰宅した夫が発見したらしい・・・。 当日、喪主である夫に寄り添っている犬の姿が参列者の涙を誘った。 誰かが言っていた。願い事はシンプルな方が叶う と・・・
560 :
ho^ :04/07/01 09:55 ID:omyM0B6q
>>558 うりってこんなん?
/"\ / :; ヽ
| ::ヽ / ; |
.i ::ヽ / 彡 |
| ミ ::ヽ ,,,,,,,...._,,,..-‐" /,, |
| ミ ゙: : : : : : : i : : : : :: " i
( : : : : : : : : lト l ,! : : : : : ヽ
/: : : : : l i l| i ' ' __ , : : : :ヽ
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,i: / ` 、,, ;:. ` -''"_,,,.. : : :|
/,| ,, ` 、_ _, '_ . : : :|
/: :.| "" _,,, .. ! ; ` ニーi、‐-、
,i ,!-―''" _ニ', 、__,,-'^ ー、,,..-'' ヾ ヽ`ー、/::.|
|: : ' 、 -'' _// ` ,/ヽ: : |
,|: / / ` -/、_ _,,,,,... , , ' ヾ: :|
i: : : ! ヾ`ー、-、_,,,-、,,,_,,.... i
i: : | `ー|lヾ| 「|,,-‐" ヾ |
|: : i `ー'~(( )) 、 ;: ヽ
,!: : : ;: ,∩、 ヾ ,: :: i
/:: : :. ;; ,! ! .,, : : :.i、
i: : : :゙ 、  ̄ 、 ノ : : : ::.|
i: : : : :... 、 、 ._,,..: : :.i
\: : : : ... : :゙ - 、、 _,,,-ー":: : ::::_,ノ
`ー---、、___,,- `ー----―、''_'""::: ::_,,, -'"
`―'''""
562 :
座布団猫 :04/07/01 21:57 ID:kS/9zWuO
>>561 あぁぁあぁかわいいぃ〜(o_△_)oのっくだうん!
右目さんの評価は毎回核心をつかれあせって ゲッソリしております(笑)。 でも、右目さんのそのままの意見を聞いて、 参考にさせて頂きつつ、少しずつ 精進したいと思います。 毎回素人丸出しな文に感想有難うございました! それにしても少し経ってから 自分の作品を見てみると、 別に髪の毛なんてありきたりな物入れなくても よかった、というか付け足し演出の所為で よけいにもったりした感じでした・・・
>>563 いや、あんまり気にしないで。ゲッソリしないで(笑)。
ただ面白いとかだけじゃつまらん(?)ので思ったこと書いてるだけだし。
言ってる僕も数はともかく質に関してはろくな作品書いてないし。
適当に聞き流す感じで。
565 :
座布団猫 :04/07/03 20:28 ID:IUwaTC8G
>>560 実は、自分でふと目に付いたものを御題にさせてもらったんですが、
ウナギイヌが離れなくて、うなぎと犬にわけたんです…( ̄▽ ̄;)
566 :
ho^ :04/07/06 10:21 ID:0I1RAjHz
書きにくいお題なんでしょうか_| ̄|○ と嘆きつつ保守 (間抜け話を2つも書くなってことか?) >565 釣られてしまいました(w
「キャンプ場」「ペットボトル」「魚」 先月二十八日、午前七時頃。S県T川の下流で男性の遺体が発見された。 見つけたのは、発見された男性と上流のキャンプ場に宿泊していた男女計3名。 朝起きると男性の姿が見えなかったため、周辺を探索していたのだという。 死後六時間から八時間は経っていると見られており、 遺体の状況から、誤って川へ転落した結果、溺死し、下流まで流された可能性が高いという。 遺体に関し、不審な点が一つ。 検死の結果、男性の胃の中から、多量のビニール袋やペットボトル、釣り針が検出された。 川に流されている最中に誤って飲み込んでしまったとは考えにくく、殺人事件の可能性もあるとしている。 又、発見された際、男性の周りに何十匹という、通常では考えられない数の川魚が泳いでいたことも、 事故に何らかの関係があると見られ、調査が続けられている。
次のお題は「熱」「風鈴」「水の音」で。
ho^
ho^
hosyu
「熱」「風鈴」「水の音」1/1 近くで水の音が聞こえる。 冷たく濡れたタオルが額に当てられて、ひんやりと気持ちいい。 「やっと熱もさがってきたみたいね……」 そうだ。僕は熱を出して寝込んでたんだった。 うっすらと目を開けると、心配そうにのぞきこむおばあちゃんの顔が見えた。 「たかちゃん大丈夫? もう大丈夫だよ」 おばあちゃんがタオルを水で濡らして取り替えてくれている。 「おばあちゃん、ありがとう……」 「早くよくなんないと。たかちゃんは元気に笑ってる方が似合うんだから」 チリンチリン。 風鈴の音で目が覚めた。 熱はすっかりひいたようで、体がずいぶん楽になっていた。 「おばあちゃんのおかげだ……あっ……!」 僕はおばあちゃんが半年前に死んだことを思い出した。 なんだかひどく切ない気持ちになって涙が出てきた。 おばあちゃん、ありがとう。 ■次は「ペットボトル」「真っ青」「石」で。
「ペットボトル 石 真っ青」 とある立ち入り禁止の池で、子供達が石投げをして遊んでいた時のこと。 子供達は、的にするために、飲み終わった ペットボトルの容器を池に投げ入れ、 次々に拾った石を、投げつけては楽しそうにはしゃいでいた。 あるものは、当たり、空のペットボトルを跳ね上げ、 あるものは近くに落ち、幾つもの波がペットボトルを揺り動かした。 異変が起こったのは、しばらくしてからだった。 近くに引っかかりそうなものも無いのに、 そこに、固定されたかのように、ペットボトルが、ピタリと動かなくなってしまったのである。 石をぶつけてみても、ゴツンと跳ね返すのみでまったく変化がない。 子供達も不思議に思っていると、ふいに、それは すーっと水面を動き出した。 後ろに扇状の波を引きながら、 真っ直ぐに、自分達がいる岸の方へとやってくる。 何だ、何だと、目をまるくする子供達のすぐ手前で、それはピタリと止まった。 しばしの子供達と、ペットボトルの睨めっこ・・。 少々の沈黙を破ったのは、ペットボトルでも子供達でも無かった。 まっ青な色をした人の手らしきものが、ニョキリと水面から突き出し、 ペットボトルを持ち上げると 子供達は、大パニック。 エイと、その手がペットボトルを岸に投げ入れたころには、 声を上げながら、その場から逃げ出していた。 その後、その子供達は、さびて、ボロボロになった立ち入り禁止の看板に、 河童の絵が描かれていたことを思い出すのであった。 次のお題は、これでヨロシコ(・∀・) 「せみ」「故障」「日課表」
ほ
ho
576 :
「せみ」「故障」「日課表」 :04/07/29 04:24 ID:j+VnQUbE
ビチッ と、厭な音を立てて茶色の薄羽が毟られた。 ミ゙ーミ゙ーミ゙ー もがく蝉の様子を暫く観察した後、翔太は一本ずつ丁寧に、その足を抜く作業に取り掛かる。 ーミ゙ーミ゙ーミ゙ やがて、ソレはただ鳴きながらモゾモゾと蠢くだけのモノになった。 ミ゙ーミ゙ーミ゙ まるで、楽器みたいだ。軽く、放り上げてみる。 ーミ゙ーミ゙ー あはははは。夢中で繰り返し放り上げる内、 ミ゙ー……ミ゙………… 声は、聞こえなくなった。 なんだ、もう故障しちゃった。予定、狂っちゃうよなー。 翔太は勉強机に向かい、夏休みの日課表を取り出す。 13時〜14時:せみとあそぶ 困ったな。この時間、どうしようか。 少し考えた後、名案が浮かんだ。 明日から、叔父さんが今年生まれたばかりの従妹を連れて遊びに来るのだ。 ”せみとあそぶ”に大きく×を付け、その横に”あかちゃんとあそぶ”と書いて、翔太はニッコリと微笑んだ。 次は、こんにゃく、シャチ、お笑い芸人、でどうぞ。
ageてみる〜。
やってしまった〜。
ho
繋ぎにプチ感想でも >539-540 「留守電」「墨汁」「カロリー」 ある意味、下手な霊現象より怖い話ですね。 前半の前向きな感じや「カロリーオフ」等の暢気な単語が、オチの台詞が持つ絶望感を引き立たせていると感じました。 >542-543 「落下」「手術室」「絵本」 マザーグースとかに見られる、こういう意味不明の童歌って怖いですね。 ラスト、ちょっと医者が淡々とし過ぎてるかも。 >545-551 「おもちゃ」 「夜」 「リズム」 途中までは素敵な絵本っぽかったのに、Nゲージが…((;゚Д゚))ガクガク 御伽噺と怖い話って、実に相性が良いんですな。 >553-557 「お茶漬け」「トランペット」「猫(雉虎)」 うりのお陰でしょうか、主人公らの生活や行動に臨場感がありました。確かな文章力を感じます。 ひとつだけ惜しいのは、ボツリヌス菌のところ。ここだけ、ちょっとリアリティに欠けちゃってるかも。 ……うぅ、感想書くの、やっぱり苦手なんで取り敢えずここまで。
ほ
まぁ僕もお笑い芸人始めて20年くらいなるんですけど、 10年目なろうか言うとこで相方が癌なったんですね。 言うても見た目とか声とか変化無かったんで 舌癌とか咽頭癌やなかったみたいやから まぁ切除して入院したら、ブランクは空くけどその間俺が頑張ったらええわ、 みたいに軽い気持ちで思てたんですけど、 見舞い行ったときに主治医と本人がなんやマジな顔してて、 本人が「なぁ、解散しとこうや」言うから アホか、なんや酷い癌みたいな事言うなや思てたら スキルスで全身に転移しつつあって手遅れや、って 何か冷静な振りしながら堪えてる、みたいな感じで言うたんですね。 今まで二人でやってた掴みのシャチホコのネタとかどうすんねん、 あんなん一人でやっても勢い無いやんか、 諦めんとがんばっていこうや、て何とか励まそうとしたんですけど、 いや、俺の病名が広まらんうちに解散しよう、 ブルーなイメージ着いたら芸人落ちるぞ、 言われて、彼なりの優しさはすごい感じたんですけど、 だけどそうやって別れを切り出されるのはすごい悲しかったですね。
それから3ヶ月ぐらい、それでも生活のためにはしゃあないからピンでやってたんですけど、 まぁイマイチで前よりも収入が落ちてたんですけど、 ある時バラエティの肝試しみたいな企画で青山墓地のロケ行った時に 上から蒟蒻の糸でつったのが落ちてきて、その時のリアクションが良かったらしくて 結構偉いP(プロデューサー)の人に「次のレギュラーやれへんか」言われて、 でも蒟蒻仕掛けてもらったおかげですから、言うても、誰も知らん、言うんですね。 携帯に相方の弟さんから訃報が入ったのはその後でしたね。 最期の言葉は「サムイのとかブルーなんはイヤやなぁ」だったそうです。 次のお題は「卵」「ニューバランス」「休憩」で。
俺はさ、止めとけ、って言ったんだよ。 そりゃ、俺らワルだったけど、流石にね。死んだ人間に供えてあるモン盗っちゃ、そりゃマズイって思うよな、普通。 馬鹿だったんだよ、赤井は。「俺、青木と靴のサイズ同じなんだよー」とか言ってさ。 あんだけ皆で止めろっつったのに、結局盗ってきてやんの。ちょっとね。引いたよ。 そうさ、ニューバランスのね、凄い高いヤツ。親御さんがね、わざわざ青木の死後に買ってきて、供えたんだよ。 青木、マラソン凄かったからさ。陸上界のホープ、アテネオリンピック金メダリストの卵、なんて言われてたから。親御さん、本当に残念だったんだろうね。 ああ、その頃、陸上部の休憩室に簡単な祭壇が作られててさ。そこに供えてあったんだ。 赤井のヤツ、夜中に窓割って忍び込んで盗ってきたらしい。「死んだヤツには勿体無い。大体、幽霊になったら足ないから履けないじゃん」とか言ってたよ。 正直、腹が立った。何に腹が立ったんだろう。今でもよく判らないんだけどさ。ほとんど、憎しみって言ってもいいような気持ち。う〜ん。よく判らねぇや。 だからさ、その後すぐに赤井が事故ったって聞いた時も、結局両足切断しなきゃならないって聞いた時も、特に可哀想だとは思わなかったよ。当然だ、って思ってた。 仲間も、皆そう思ってたんじゃないかな。今になって考えると、結構ヒドイのかも知れないけど。 ま、何にせよ、それからだよ。夜中に黙々とグランドを走る幽霊の噂が出はじめたのは。 そう。ニューバランスのシューズ履いてさ。 何も知らない連中は、なんで幽霊に足が有るんだ、なんて笑い話にしてるけどね。 青木、アテネ行きたかったんだろうな。それで、きっと練習してんだよ。手に入れた、上等のシューズと赤井の足でさ。 次は、井戸、溶鉱炉、エッフェル塔、でどうぞ。
ho
586 :
マル虫 :04/08/12 10:49 ID:sWSHlSuz
「井戸、溶鉱炉、エッフェル塔」 青山がルクセンブルグ公国旅行の土産として買ってきたのが、 なぜか『パリ』のエッフェル塔の文鎮だった。 これは明らかに空港で、(へたすると国内の空港で)適当に買ってきたのだろう。 それにしても文鎮とは、あまりにもセンスがない。 まあ青山にセンスなど求める事自体が間違っているのかもしれないが。 奴は聴いたことも無いような片田舎の出身者で、 しかも今回の旅行の目玉がルクセンブルグの巨大な溶鉱炉である。 普通はパリとかロッテルダムとかローマ辺りを旅行するだろ。 ルクセンブルグ公国なんて行きたがる人間は珍しい。 それも溶鉱炉見学なんて、小学生の社会見学でもあるまいし。 まあ青山本人の金で旅行したのだから、奴が楽しめていれば問題はない。 だが、だからといって俺に、俺が貸し出していたデジカメの現像を頼むのは、 少しばかり調子に乗りすぎな気がしないでもない。 文鎮を現像の手数料と考えても、デジカメの貸し出し費用や、 インク代などを考えれば損した気分になるではないか。 まあそれでも結局はデジカメの現像は引き受けた。 俺は面倒な仕事は早く終わらせる性質なので、さっそくデジカメの現像を行った。 デジカメ画像をPCに取り込むと、サムネイルされた小さな画像が画面にならぶ。 溶鉱炉や空港、教会や自然、古井戸、どの写真にも青山が写っていた。 たしか青山は一人で旅行にいったはずだ。 俺は青山にメールでメッセンジャーにつなぐように言った。
587 :
マル虫 :04/08/12 10:50 ID:sWSHlSuz
以下メッセンジャーでの会話 青山の発言:「やあ、どうした?」 柴田の発言:「よう、お前確か一人で旅行いったんだよな」 青山の発言:「ああ、そうだぜ」 柴田の発言:「じゃあ、どうしてお前が写真に写ってるんだ?」 青山の発言:「ああ、現地の人に撮って貰ったんだ」 柴田の発言:「おい、人に渡したりして盗まれたらどうすんだよ!俺のカメラだ!」 青山の発言:「現に盗まれていないから大丈夫だよ」 柴田の発言:「おいおい…」 青山の発言:「みんな優しそうな人ばかりだったよ、古井戸の写真あるだろ?」 柴田の発言:「ああ、一枚あるな、例によってお前が写ってる」 青山の発言:「それ写してくれたのが凄い良い人でさ」 柴田の発言:「へえぇー」 青山の発言:「メイドの人らしいんだけど、井戸のそばで皿の枚数数えてるの、 なんかの行事かと思って尋ねたら、皿一枚割っただけだって」 柴田の発言:「………」 青山の発言:「皿一枚割っただけで落ち込むなんてすげーいい人だぜ」 柴田の発言:「そうだな…」
588 :
マル虫 :04/08/12 10:53 ID:sWSHlSuz
俺は気が遠くなるような気がして、PCの電源を落とした。 ひょっとしたらルクセンブルグにも日本と似たような会談が、あるのかもしれない。 だが俺には、青山が本当にルクセンブルグにいったのか、疑問であった。 それならば青山はいったい何処に旅行に言ったのだろうか? 天然というのは怖いものである。 次の方、清掃員、サックス、外国、でよろしく
その日も俺は、山下との待ち合わせに30分近く遅刻した。 「おせーよ、タコ!」 いつもの罵声。いつものように「スマンスマン…」と曖昧に謝りつつ、山下の向かいの席に座る。 俺には、子供の頃から遅刻癖があるのだ。 「で、今日は何の用だ?」 注文を取りにきたウエイトレスにアイスコーヒーを注文した後、俺から切り出した。 山下から「会えないか」というメールが昼頃に入り、特に用件も知らされぬまま、この喫茶店で待ち合わせをしたのだ。 「ああ、それなんだけどな…」 山下は、上目遣いにこちらを見た。学生時代から変わらない、人に無理難題を頼む時の癖だ。 「俺、バンドやってるのは知ってたよな?」 「ああ。何度か聞いたよ」 「そりゃ話が早い。処で、今度の土曜の夜、空いてる?」 「あ?土曜…明後日か。ああ、一応」 「よし!決まった。土曜のライブ、お前、サックスやってくれ」 「…………ハァッ!?」 アイスコーヒーが、来た。 「頼むよ。田沼…あぁ、サックスやってる奴なんだけど、そいつが急病で倒れちゃってさ」 「んな事言ったって、お前…」 俺はアイスコーヒーにシロップを入れながら、山下を睨む。 「俺、やった事ないもの。ライブ、明後日だろ?絶対無理」 「それは大丈夫。吹いてるフリだけでいいんだよ」 「は?」 「テープを流すんだ。前に録音しといたヤツが有るから。お前は、適当に苦しそうな顔して…ほら、よく外国人がやってるみたいにさ、あんな感じで吹いてるフリしとけば、それでO.K.」 半ば呆れながら、俺は尋ねた。 「そんなんで誤魔化せるのかよ」 「大丈夫、大丈夫。どうせ、皆酔ってるしさ。判りゃしねーよ。そうじゃなきゃ、お前なんかに頼まないって」 …ムカツク。俺は一息にアイスコーヒーを飲み干すと、席を立った。 「今度、何か奢れよ。あと、ここの勘定もお前持ちな」 「恩に着るよ。コレ、サックス。それと、こっちが演目のテープと楽譜。どの辺で吹くフリするか、ちゃんと覚えとけよ」
ライブの夜、俺はまたしても遅刻した。駅からライブハウスへ向かう途中、道に迷ったのだ。 30分以上遅れて楽屋に入ると、既に山下や他のメンバーは、ステージに移動した後だった。 慌てて衣装に着替え、サックス片手にステージへと走る。 イントロのピアノソロが始まっているのが聞こえた。ソデで息を整え、目立たないようにそっと舞台に上がる。 山下をはじめ、他のメンバー達がギョッとしたような表情でこちらを見た。 「スマンスマン…」と目で謝りつつ、サックスを構える。 ピアノソロが終わると、俺の出番だ。 練習の成果を見せてやる。リズムに体を乗せ、大きく息を吸う。さぁ、ここだ! 顔を歪ませ、上体をスゥイングさせながら、奔放な音を紡ぎ出す……フリをした。
ライブは大成功だった。 特に、サックス。 フリだけの俺が、汗びっしょりになって興奮する程の、素晴らしい音だったのだ。 楽屋に戻ると、興奮冷めやらぬ俺に、山下や他のメンバーが握手を求めてきた。 「お前、すげーな!どんな練習したんだよ」 「びっくりしたよ!まるで、田沼が吹いてるみたいだった」 「完璧!」 口々に賞賛を浴びせかけられ、俺は少々くすぐったさを感じた。確かにノッてたけど、フリだけだもんな…。 「ありがとう。でも、俺もビックリしたよ。最近のスピーカーって、凄いのな。テープとは思えなかったよ」 不意に、メンバー全員が、笑顔のままで凍りついた。 な、何?マズイ事言ったのか? 暫しの沈黙の後、山下が片頬に引きつった笑いを浮かべつつ、口を開いた。 「冗談言うなよ…」 「え、…何が」 「テープだよ」 「…?」 じっと、探るような目付きで俺の顔を見る。 「本当…なのか?」 「?」 「あのさ…テープ、流れてなかったんだよ。流れる筈がないんだ」
山下の話では、テープはスーパーの袋に入った状態で、前日に楽屋に持ち込まれた。テーブルの上に乗せて置いたらしい。 処が、ソレをゴミと勘違いした清掃員が、今朝のゴミ回収に出してしまった。 代わりのテープも無く、俺も来ていない。仕方が無い、サックス抜きでやろうと決まり、皆がステージを始めた、丁度その時、俺が舞台に登場したのだ、と言う。 メンバーは皆、あの音は、俺の生の演奏だと信じ込んでいたらしい。 勿論、俺は吹いてなんかいない。フリだけだ。 じゃあ、あの音は…。 不意に、山下の携帯が鳴った。 皆、既にこの話の結末に、おぼろげな確信を抱いていた。 だから、電話に出た山下が、実に淡々とした態度で応答し、通話を切ってから一同を見渡して「田沼が死んだ」と言った時も、皆に動揺は無かった。 次のお題は、蛙、泡盛、人喰い人種、でどうぞ。
ho
今は亡き祖父の田舎での出来事である。 家の持ち物である裏山に、入り口の塞がれた岩窟があった。 生前の祖父は、妻……つまり私の祖母にすらその出入りを禁じていた。 親族のだれも重たい鉄扉の向こうに何があるかを知らなかった。 祖父と私を除いて。 おじいちゃん子であったためか、私は祖父に特別にかわいがられていた。 私にだけこっそりと「あの中では泡盛を熟成しているんだよ」と教えてくれていたのである。 もっとも、中に入れてくれたことはただの一度もなかった。 祖父の死後しばらくして、私宛に一通の手紙が送られてきた。 「**へのプレゼントだよ、受け取りなさい」 手紙には岩窟の鍵が添えられていた。 すでに成人していた私は、次の盆に帰省した際、件の岩窟へと足を踏み入れることに決めた。
真夏とは思えないほど、岩窟の中はひんやりとしていた。 この時点ですでにうすら寒いものを感じてはいたのだが、 祖父からの贈り物を受け取るため、奥へ進むことにした。 中に電気が通っていないことは祖父から聞いており、持ってきた懐中電灯を灯した。 暗闇を照らす明かりが、地面に何かを捉えた。 それが何であるかを悟り、私は息を飲んだ。 祖父と私以外、入れないはずの岩窟内に人がうつぶせに倒れていた。 ありえないはずの出来事に驚きつつも、その人物の元へ近づく。 かしゃん、と私の足が何かを踏んだ。 地面いっぱいに白いものが転がっていた。 その白いものは伏した人物の手にも握られていた。 先がとがったそれで、地面に「コドク」という文字が書かれていた。 その人物はすでに息絶えていた。 死体の周囲には無数の人骨が散乱していた。
蟲毒(こどく)というものがある。 壷などに蛙や蜘蛛などから一種類の生物を大量に入れ、密閉して地中に埋める。 食べるものが無いそれらは飢えから共喰いを始め、 最後に生き残った一匹は強い呪力を身につける。 それを使役する呪術、または生き残りそのものを蟲毒という。 閉め切られた岩窟。 大量の人骨。 蛙や蜘蛛と同じ状況になれば、人も人喰い人種となりうるのだろうか。 「孤独」と「蟲毒」。 「コドク」の文字がどちらを意味していたのかは今もわからない。 ……ああそう、祖父からの贈り物はちゃんと受け取った。 とても美味しい、よく醸成された「泡盛」だったよ、おじいちゃん? ■ここ最近盛況でイイですね、このスレ。 ■次は「寿」「涙」「静寂」で。
ho
599 :
本当にあった怖い名無し :04/08/21 06:53 ID:OZ60xp+x
ほ
一月だけだから、と言われしぶしぶ承諾した関西への出張は結局半年間に 渡るものとなった。半年振りの新幹線の中で私は百合子のことを思い出して いた。百合子は私のいる部署で人気のある女性だった。同期の中でも出世頭 と言われている私は、ただでさえ他の連中に妬まれている節があって、その 上百合子までモノにしたとあってはそれに拍車がかかると思い、お互い会社の 者にはつきあっていることを内緒にしている。 実際つきあってみると百合子は手のかかる女だった。寂しがりで、分かりやす く言えば、「仕事とあたしとどっちが大事なの?」が口癖といった手合いだ。関西 への出張を渋ったのも、彼女に何を言われるか分かったものではなかったから だ。 関西に出張するに当たり、私は彼女に『なるべく集中して仕事がしたい。その方が 早く戻れる』と告げ彼女も理解してくれた。当初は毎日一度は必ず電話をしていた が、何かにつけ『寂しい』『早く帰ってきて』の繰り返しで疎ましく思った私はほぼ 無意識に電話の回数を減らしていった。勿論そうなれば彼女の方から電話をして くるが、こちらも『今仕事中なんだ』『疲れている』ばかりで、次第に電話すること 自体が減っていった。とはいえ、私は浮気をするわけでもないし、彼女のことが 好きだという意識は変化していない。確かに仕事に関して言えば彼女は多少負担 ではあるが、実際結婚も考えていた。結婚すればいやでも毎日会うことになる。 そうすれば彼女ももう『寂しい』だの『会いたい』だの言うことはなくなるだろうと考 えていた。 東京の本社に戻ると『おかえりなさい』と皆が出迎えてくれたが、彼女が見当たら ない。つきあっていることは内緒にしてあるから、さりげなく同僚に聞いてみると、 『あぁ、彼女なら辞めたよ。寿退社ってやつだ』
驚いた。確かに私は急に姿を見せて驚かせてやろうとここしばらく連絡していない。 実際出張最後ということもあってかなりのハードスケジュールだったのだ。しかし 寿退社とはどういうことだ?相手は誰だ?ほんの何週間か連絡を取らなかっただ けで自然消滅してしまったのか??百合子が退職した時期を聞くと、ちょうど彼女 からのメールが途絶えた時期とほぼ一致した。携帯電話をチェックしてみると彼女 からの最後のメールには『今日飲み会があるんだ』とあった。結婚したとすれば 相手はその飲み会で会った男か?そうなると出会って2,3日で結婚、退職という ことになるが…。上司に聞いても、ほとんど『明日やめたい』という無茶な退職届 の出し方だったと言う。一応『退職届は辞める日から一週間前ぐらいではないと…』 と告げたそうだが『有給休暇が一週間分あるはずだからそれを使う。いずれにして も明日からは来ません』という具合だったという。もちろん結婚式への招待も何も なかったそうだ。 私は出張の報告書を自宅で書きたいなどと適当なことを言って、早退して彼女の アパートに向かった。結婚していればどこかに転居しているかもしれないという懸 念はあったが彼女はまだそこにいた。 『おい、どうしたっていうんだ!?』 『もういいの。あなたも仕事の邪魔だったでしょ?』 『そういう問題じゃないだろ?大体結婚って…誰と?』 『…飲み会で会った人…』 インターホンごしで彼女は出てこようとしない。声を荒げると 『静かにして!』 という。俺はそんなことをしたくはなかったが『ドアを開けないと騒ぎ続けてやる』と 彼女を脅した。彼女がやっとドアをわずかに開いた瞬間、俺は部屋に押し入った。
ドアに押し倒されて彼女が玄関に倒れこむ。部屋の中には異臭が漂っていた。 何かが腐ったような臭い…。部屋は私とつきあっていた頃と何も変わらない。男の 同居人がいないだろうということは一目で分かった。 『寂しかった…。飲み会なんて興味なかったけど…メールで…あなたが止めてくれ ると思って…。『飲み会ってなんだ?コンパか?』って…すぐ電話してくれるって…。 でも…『気晴らししてこい』ってメール…来たから…何よ…』 よく分からなかったが、恐らく、『飲み会がある』というメールに対して、俺がもっと 反応すると思ったのだろう。しかし俺は『気晴らしになるから行って来い』と返した。 彼女は俺に止めて欲しかったのだ…。 『…中村さんって…。優しくしてくれて…酔っ払った…。『送ってあげる』って…。 部屋についたら…変わった…』 中村…。飲み会で会った男か。そいつに送ってもらったが、部屋について彼は変 わった。涙を流しながらそれきり彼女は喋らない。しかし部屋が臭い。奥にあるク ローゼットから臭いは漏れているらしい。クローゼットを開ける。黒いものが転がり 出た。透明のビニール袋に入った、赤く黒い物体。 『な…なんだ…これ…』 『中村さん…。でも…今は優しいのよ…。彼…。毎晩、抱いて、くれるの』
難しかった…。アリガチな話になってしまった申し訳ない…。 …ってごめん…『静寂』って入れ忘れた…。すいません…。最後にクローゼット から中村さんが出た後入れるはずでした…。本当申し訳ない…。 次のお題は 『クルマ 心霊写真 民話』 でお願いします。
hosyu
605 :
ho~ :04/08/27 09:10 ID:eg+PV/hE
誰かかいてくれないかな? 浮上〜〜
全然ホラーとかじゃないけども。保守。みたいな。 小さい頃こんな民話を聞いたなあ。 子供と大人が手信号で勝負をするって話。 運勢がどうとかそういう話だったんだけれども 結局は鰻登りだった子供の運勢が尽きて大人が勝つんだったっけ。 最後はでっかいクルマに子供が飛び込んで自殺するんだけど大人が平気な顔してクルマの前に躍り出る。 でもその瞬間にクルマの窓には心霊写真が張り付いて、運転手はうまくハンドルを切って二人とも助かるんだっけ。 確か古代の遺跡から発掘された説話集に載ってたんだっけか。変な話だったなあ。 遠い未来ではこんなことになってたり・・・。次は「メンソール」「古書店」「ペットボトル」
>>606 月面でもないのに二階ぐらいの高さまで跳躍するんだっけ、その手信号の二人。
奇妙な説話集だよほんと。ていうかワロタ。
>>608 606さんじゃないけど、ジョジョの奇妙な冒険て漫画だよ。
第4部のなかのジャンケン小僧のエピソード。
>>606 読んでから漫画読むとまた違った面白さがあるかも。
>>609 ありがと!
まだ三部の途中なんだよね…
気になるなー。
611 :
ho~ :04/09/01 09:13 ID:QeLkEtEC
人いないな・・・
612 :
座布団猫 :04/09/01 13:35 ID:eb5b4X7+
保守なの…
「メンソール」「古書店」「ペットボトル」 二週間ほど前、友人が交通事故で死にました。 幼なじみで気があってよくつるんで遊んでいたんですが、 最後の最後で後腐れを残してしまったというか、 彼の恋人の女の子を寝取った形になってしまって。 彼にもまわりの仲間たちにも内緒にしてはいたんですが、彼はうすうす 気付いていたようで、僕に詰め寄ってきたこともありました。 しかし僕もその女の子も本当のことはついに言いませんでした。 そんな矢先に彼が交通事故で死にました。彼が死んだと聞いた時には ひどく動揺しました。彼に嘘をついたままでいたことが とても罪深いことに思えたのです。 きっと彼は僕らのことを恨んでいると思います。 昨日、大学の研究の参考にと古書店へ歴史の史料を探しに行ったんですが、 行く途中、彼が事故にあった交差点を通りました。 彼が大好きでいつも持ち歩いていたペットボトルのコーラが 花束と一緒に供えられていました。 今朝冷蔵庫を開けたら、買った覚えもないのに同じコーラが 冷蔵庫に入っていたんですよね。 ちなみに彼の恋人だった女の子は死にました。交通事故で。 仲間内ではさみしがった彼が一緒に連れていったんじゃないかって話も でました。女の子が死んでいるのにこんなこと書くのは不謹慎ですが、 彼がさみしがっていただけならまだいいんですが……。 さっきからメンソールの匂いがどこからともなく漂ってきています。 彼がいつも吸っていたメンソール味のタバコの匂いが。 僕もたぶん死にます……。 ■次のお題は「エレベーター」「携帯電話」「影」で。
>>613 最高だよ。ナイスすぎる。ナイスナイス。うん最高の出来だよ〜!
……え〜っと、なんていうか、びっくりするほど名前変えるの忘れた。
別コテで書いちゃいました'`,、('∀`) '`,、
615 :
座布団猫 :04/09/03 00:26 ID:uNuIg9il
>>613 うわぉ…
すごい面白い。
書こうと思ってワード開いたけど、まとまんないし怖くないしで全然できあがんなかった。
今後ともよろしくっ!
616 :
順々 :04/09/03 19:37 ID:w5jz0LST
■「エレベーター」「携帯電話」「影」 1/2 あたしの友達で、テレビ局で働いている奴がいたんです。仮に、Yさんとしておきま しょうかね。まだ随分若いんだけどなかなかいい奴なんですよ。あたしが、仕事で ね、ある超高層のビルのずっと上の方にあるレストランを取材するっていうのがあ ったんです。ちゃんとした番組ですよ。おふざけのないやつ。ちょうど夏で忙しくて、 毎年怪談のライヴなんてやるんですけど、そのぉリハーサルですか?それが終わ った後、すぐにその超高層に行かなきゃいけない。もう他のスタッフは現場に入っ て準備だ何だしてるわけです。ビルについて、『あーここだなぁ』とエレベーターに 乗ったんです。そしたら、プルルルルル、プルルルル…。携帯電話だ。なんだこの 忙しいときに誰かなぁと思って出たらYさんなんですよ。『どしたの?最近ご無沙汰 じゃない』なんて話をしましてね。そしたら、Yさん、今あたしの家に来てるって言う んだ。是非お話したいことがあるから、待ってるからよろしくって、それだけ言っ て…切れた。こりゃ何かあるなぁと思いましたよ。でもこっちも仕事だからすぐ帰る わけにもいかない。待ってるって言うから悪いなぁと思ったけどまぁ適当に帰るだ ろうなぁ、あとで電話でもしてやろうと。それでレストランで取材があって。いい雰 囲気のお店でしたよ。えぇ。
617 :
順々 :04/09/03 19:37 ID:w5jz0LST
■「エレベーター」「携帯電話」「影」 2/2 仕事が終わって、タクシーでもって帰ったんですが、いるんだ。あたしの家の玄関の 明かりに照らされて、影がね。見える。あれ〜まだ待ってたんだぁもっと急いで帰っ てくればよかったなぁと思いましたよ。慌ててトットットッと家に駆けて行ったら…いな い。影もないんです。妙〜な気分でしたよ。それで早速Yさんに電話したんですが、 出ない。その時はまぁ彼も暇じゃないしって思ったんですが…。次の日、やっぱり仕 事でね、彼の勤めてるテレビ局に行ったんですよ。気になってたんで、Yさんの上司 つかまえてね、聞いたんです。そしたらYさん、亡くなったんだそうです。ちょうど…私 に電話してきてくれた時間ですよ。。今、思い出すと、違うんですよね。違う。何が違 うって…そのビルのエレベーターの中って、よく考えたら携帯電話の電波が届かな いんですよ…。最後のお別れ言いに来てくれたんですかね。もっと早く帰ればよか ったって今でもYさんのこと思い出すと、そう思いますよ。えぇ…。 ☆次の御題は『高速道路』『うしろ』『猫』でお願いします。
618 :
はな屋敷 :04/09/03 23:10 ID:4UTrL2I+
☆『高速道路』『うしろ』『猫』 「もう少しだから、がんばれ。」 僕は、後部席に置いてある段ボール箱に向かって声を掛けた。箱の中からの返事はなく、ただ荒い息だけが 聞こえてくる。車ががたりと揺れた拍子に首輪に付けている鈴の音がチリンと鳴った。 前方に高速道路の入り口が見えてくる。僕は迷わずハンドルを切った。 料金所を通り抜け、少しでも早く目的地に着くようアクセルを踏み込む。時刻は夜中の2時。流石に車は殆ど 走っていない。 チリリと再び鈴の音が聞こえた。 「がんばれ、シロ。」 シロは一緒に暮らしていた彼女が可愛がっていた猫だ。彼女が突然姿を消してからもずっと可愛がってきた。その シロが煙草を吸うために開けていた窓から落ちてしまったのだ。運悪く自転車の駐輪場に落ちてしまったシロは上手く 着地することが出来ず、僕が慌てて見に行った時には血塗れになって倒れた自転車の上に横たわっていた。 「死ぬな。」 僕はアクセルを踏み込む。速度計は200kmを差している。速度計測器が眼の橋に見えたが無視をした。今はそんな ことに構っている場合じゃない。次のインターで降りたらすぐに24時間営業をしている獣医が有るはずだ。あと 500mという標識が見えた。 不意に背筋に冷たい物が走った。スピードの出しすぎで身体がすくんでいるのだろう、そう思ってアクセルを弛めようとする。 が、どういうわけか脚が動かない。 さっきまで聞こえていた荒い息が止まっていることに気が付いた。バックミラー越しに様子を見ようと顔を上げる。 「ひっ」 ミラーの中には運転席のうしろから髪の長い女性が顔を出していた。顔面蒼白で、頭がザクロのようにぱっくりと割れて いる。血まみれの唇が僕の耳元で囁いた。 『あたしのときはたすけてくれなかったくせに』 目の前にトラックがハザードを点滅させて止まっている。僕は、まるでスローモーションのように近付いてくるそのオレンジの光を、 ただ呆然と見ていた。 ♪次のお題は『靴』『雨』『学校』でお願いします。
「靴」「雨」「学校」 そろえられた靴があった。なぜかここにあったんだ。 ぽつぽつと雨が降ってきたのを頬に感じた。 気づけば寝ている自分が居た。おかしい。体が動かない。 しかしなぜ雨が頬に・・・?普通なら頭や肩のはずだが・・・。 頭がぼーっとしてきた風邪でもひいたのだろうか。 体が動かないのもそのせいか。気だるい。体が浮かぶような感覚だ。 気づいてしまった。雨じゃない涙だ。 突然、涙に瞳を濡らす母の顔が見えた。走馬燈のように記憶が生まれたときからの流れ込んでくる。 最後のシーンは・・・そうか。僕は学校の屋上から飛び降りて自殺したん −ブツッ− 右目さんと同じスレ見てますね。ジョジョ関係のスレですw 次は「消毒液」「かんぬき」「拡声器」で。
だいぶ時間経っちゃって今さら感たっぷりだけど感想を。
残りはおいおい。
>>542 ユーモアちっくで不思議な味わいがありますね。
冷静に考えるとけっこう後味悪い話なんだけど。
>>545-551 「トイ・ストーリー」大好きなんで、読み始めてすぐニヤリとしました。
けど映画と違っておもちゃがやること凄惨すぎ(笑)。
■「消毒液」「かんぬき」「拡声器」 その女性から通報があったのは5時間前だった。携帯電話で助けを求めるその女性は、自分が今 命の危険に晒されているということと、自分がいる場所の住所を驚くほど冷静な声で伝えてきた。 間もなく最寄の警察官がその住所を尋ねると、インターホン越しに男が対応したが、念の為中を 検めさせて欲しいという警察官の要求は適当な理由をつけて拒否された。しばらく警察官はそれと なくその家の様子を伺っていたのだが、やがて怪しい物音に気付いた。何か壁を叩くような音や、 ひっかくようなそれ。ゴボゴボという奇妙な音も聞こえてくる。また時折バシンという人の頬を張る ような音もする。警察官は今一度インターホンを押したが、スピーカーからは声がせず、家の中から 先程の男の『いつこいぞ!帰れ!』いう罵声が飛んだ。 5時間後、それは人質立て篭もり事件に発展した。様々な証言からその家の中に女性がいるらしい ことは確認された。男から要求らしいものは出ず、あるとすれば『入ってくるな』『近寄るな』ということ で、それにしても女性の無事さえ確かめられればすぐにでも許諾されることなのだが、いかんせん女 性の無事が全く不明で、拡声器を用いて男に説明を求めても、女性が中にいることは認めはするも のの、『今風呂に入っている』などとわけのわからないことを繰り返すばかり。警察は深夜を待ち、闇 に乗じて突入することを決定した。
無論、男の家のドアは全て施錠されていたが、通常の錠前やドアチェーンの他にかんぬき錠が何重 にも取り付けられていて、男の病的な偏執さが垣間見えた。玄関のドアだけで計七つのかんぬき錠 が取り付けられている。突入した警官隊に取り押さえられる際、男は激しい抵抗を見せた。一方、女 性を保護しようと家中の捜索がなされたが、彼女は異臭の漂うバスルームで長い髪を水面に漂わせ て既に死んでいた。異常だったのは、浴槽に張られていた液体は水ではなく、消毒用のアルコール、 即ち消毒液であったことだ。凄まじい消毒液の臭気に警官隊が呆気に取られている頃、警官が手錠 をかけようとした一瞬のすきをついて、男はキッチンにあった注射器を手にこう言った。『人の家に土 足で入った上に汚い病原菌を撒き散らしやがって!』彼は自らの腕に注射針を突き立て絶命した。 注射器の中身は消毒液だった。 ☆次のお題は『パソコン』『都市伝説』『毛虫』でよろしくです!
「消毒液」「かんぬき」「拡声器」1/6 私は田辺加代子といいます。39歳の主婦です。 結婚する前の旧姓は飯村といいました。なぜそんなことを今話すのかというと、 私の旧姓、飯村香代子という名前がこれからお話しする話に奇妙に関わって くるからです。それがただの偶然であるならその方がいいのですが。 話は二十数年前にさかのぼります。あれは私が中学3年生のときでした。 私にはとても仲の良い三原しずえちゃんという友達がいました。 私としずえちゃんは小学校が一緒でその時からずっと気が合って、 どこへ行くのも二人一緒という感じでした。 ある日の放課後のことです。私としずえちゃんともう一人の同級生Mちゃんと 三人で教室でいつものように他愛もないおしゃべりをしていました。 いつしか話題は自分が嫌いなものの話になっていました。 私とMちゃんが順に嫌いな物を挙げ、次はしずえちゃんの番になりました。
「消毒液」「かんぬき」「拡声器」2/6 しずえちゃんは消毒液の匂いが嫌いだと言いました。 だから病院に行くと気持ち悪くなっちゃうんだと顔をしかめながら言いました。 しずえちゃんはかんぬきが嫌いだと言いました。かんぬきで錠を かけられると、どうやっても出られなさそうな気がして怖いんだと言いました。 しずえちゃんは拡声器の声が嫌いだと言いました。 どこか禍々しい感じがして頭が痛くなるのだと言いました。 そんな話を聞いているうちに、私はあることを思いつきました。 しずえちゃんの嫌いなもので彼女を怖がらせてやろうと思ったんです。 それをあとでMちゃんに話すと、Mちゃんも乗り気になりました。 Mちゃんの家には古い蔵があったのです。その蔵の扉にはなぜか内側だけでなく 外側にもかんぬきの錠がついていました。しずえちゃんをそこへ閉じこめて やろうと私とMちゃんは計画しました。ちょっとした悪戯のつもりだったんです。
「消毒液」「かんぬき」「拡声器」3/6 数日後、私とMちゃんはしずえちゃんをMちゃんちに誘い、しずえちゃんの手を 引いて蔵のところまで連れていきました。外側のかんぬきの錠が目に 入ったのか、しずえちゃんの表情がすこしくもりました。私とMちゃんは 嫌がるしずえちゃんを強引に蔵に押し込め、外側からかんぬきをかけました。 「やめて加代ちゃん。出してよー。加代ちゃんっ!」 しずえちゃんの叫び声が聞こえました。私とMちゃんは面白がって笑って いました。私たちはさらに別のいたずらも用意していたのです。私はカバンから 消毒液の瓶を取り出し、フタを開けて蔵の明かり取りの窓のところに置きました。 それから拡声器を使って、Mちゃんと二人して蔵に向かってしずえちゃんの 名前を呼んだり、「出さないよ〜」などと言ったりしました。 蔵の中からはしずえちゃんの声がずっと聞こえていました。 「やめて加代ちゃん。やめて。ここから出して……」
「消毒液」「かんぬき」「拡声器」4/6 「加代ちゃん。加代ちゃん。出して。開けてよ加代ちゃん」 しずえちゃんの叫び声は拡声器の声より大きく聞こえるほどでした。 それでも私とMちゃんは蔵の扉を開けようとはせず、拡声器で 笑いながらしずえちゃんの悪口を言ったりしていました。 今にして思えばクラスの人気者だったしずえちゃんに対するやっかみ みたいなものがあったのかもしれません。私としずえちゃんは顔立ちは けっこう似ていて姉妹と間違えられるほどだったんですが、クラスの中では 私よりしずえちゃんの方がみんなから慕われてる感じでした。 しずえちゃんとはほんとに仲が良かったし、そんなやっかみなど感じた ことはないつもりでしたが、心の奥でそんな風な感情をもっていたのかも しれません。とにかく私は拡声器でしずえちゃんの悪口を言い続けました。 気がつくと、しずえちゃんの声が聞こえなくなっていました。
「消毒液」「かんぬき」「拡声器」5/6 辺りが静寂につつまれました。 しずえちゃんを閉じこめてからどのくらい時間が経っていたでしょうか。 おそらくほんの10分か20分くらいだったと思います。 なんてことをしてしまったんだろう。私の中に急に後悔の念が生まれました。 私は半ばパニックになりながら、Mちゃんと二人して蔵の扉を開けました。 しずえちゃんは蔵の中で口から泡を吐いて、白目をむいて倒れていました。 「しずえちゃん! しずえちゃん!」 かすかに痙攣するしずえちゃんの体を抱き起こしながら、私は 「早く救急車!」とMちゃんに怒鳴りつけるように言いました。 やがて救急車が到着して、しずえちゃんは担架に乗せられ運ばれていきました。 ――私はそれっきりしずえちゃんと会っていません。 しずえちゃんは病院に運ばれてそのまま入院したと聞きました。 しずえちゃんが学校に戻らないまま私たちは卒業を迎えました。 そのあとしずえちゃんがどうなったのか、いまだに私は知りません。 噂はいろいろ聞きました。しずえちゃんは気が狂ってしまって、 精神病院に入れられたという話も聞きました。 しずえちゃんの家族はそのうち引っ越していきました。
「消毒液」「かんぬき」「拡声器」6/6
あれから二十数年が経ちました。
最近よく思うことがあるんです。
中学2年生になる私の娘が当時のしずえちゃんにそっくりになってきたんです。
前にも話したとおり、私としずえちゃんは顔立ちは似ている方でしたが、
それにしても驚くくらい似ているんです。
顔だけではありません。
娘は消毒液の匂いを異状に嫌がるんです。
それから娘はかんぬきの錠は見るだけで怖いんだと言います。
拡声器から聞こえる声が苦手だとも言います。
ただの偶然ならいいんですが。
娘には大の仲良しの子がいるんです。
小学校の頃からいつも一緒で、ずいぶん気が合うようなのです。
その子の名前、飯村香代子というんです。
ただの偶然であるならその方がいいのですが……。
■やっと書き終えていざ貼ろうと思ったら先越されてた(つω・`)
次のお題は
>>622 の「パソコン」「都市伝説」「毛虫」です。
ほ
630 :
ho~ :04/09/09 20:36 ID:pMd9tbAr
「パソコン」「都市伝説」「毛虫」1/2 毛虫というのは忌み嫌われるが、毒々しければ毒々しいほど美しい蛾になる 案外、蛾や蝶のコレクターは多いものだ。 美しい蛾になる毛虫がネットで売買されていると聞き 私はパソコンを購入した。 家にいながら世界の珍しい蛾などが見れるが、 期待していた毛虫の販売のサイトは殆どなかった・・・ 繊細な生き物なのだからしょうがない・・・とあきらめたが ネットも面白く何時の間にか、 ライブカメラで飼育状況を公開しているサイトに 出入りしチャットもするくらいになった。 そして、そのチャット中に面白い話を聞いた。 『貴方でコノ子を育てて見ませんか?」という題のメールが 美しい毛虫の画像を添付して送られてくると・・・ で、そのメールに書いてあるアドレスにアクセスすると毛虫が届くらしいと じゃあ、どんな毛虫なんだ?という話になったが誰も知らない・・・ メールが届いたという人は知っているが連絡がつかないとか・・・ 誰も詳しいことは知らなかったので都市伝説なんだろうと チャットしているメンバーは結論を出した。
631 :
ho^ :04/09/09 20:37 ID:pMd9tbAr
「パソコン」「都市伝説」「毛虫」2/2 それから数日後、掲示板に「例のメールが来た」とサイト管理人からの書き込みがあった。 私や他のチャットをしていたメンバーは各々に「どんな毛虫?」とレスを入れたが 1日たっても2日たっても管理人からの返事の書込みはなかった。 ライブカメラは動いており時折シャクシャクと咀嚼音も聞こえる。 其の書込みから数日後、今まで見たことのない毛虫がライブカメラに写った。 ―あれだ!何で管理人は公開しない? ―あんなに美しいのに・・・ 私はパソコンの前を離れられなくなった。 蛹になり変身する姿を見たい・・・ ―ああ、どんな姿に彼女は変身するのだろう・・・ 其の想いから、ずっとライブカメラを見つめ続けた・・・ ある日、今までにない動きを彼女がした、口から糸を吐いている。 繭を作るつもりだ・・・ ただ、丁度いい所が見つからないらしい・・・ せわしなく場所を探している。 ライブカメラが不意に揺れて、派手な音を立てた。 彼女がライブカメラに触ったらしい。 カメラには、フローリングの床と人間であったであろう肉塊が映し出されていた。 其の画像も彼女の吐く糸で何時の間にか見えなくなった・・・。 さっき、私のところにもメールが来ました。<fin>
632 :
ho^ :04/09/09 20:39 ID:pMd9tbAr
次は「停電」「はちみつ」「犬」で
>>553-557 読んでるうちにどんでん返しのブラックなオチかもって思ったけど
ハッピーエンド(?)でしたね。あんな似たもの母娘やだけど(笑)。
ぽてぽてと後ろついてくるうり(*´д`)ハァハァ
>>559 わんことかにゃんこも飼い主のこと、いろいろ考えてんのかね?
この人大好きとか、こいつ使えねえなあとか、いいから死ねよとか。
そんなこと考えながら動物見ると、ちょと不思議な感じもする。する?
>>567 こういうニュースとか新聞記事ぽいネタ一度書いてみたいんだけど
いざとなったらめんどくさい。多少テレビとか新聞見て言葉の使い方とか
研究しなくちゃならんしね。内容は川を汚す人間への警告ぽいね。
そう考えて読むと、集まった何十匹の魚が不気味でおぞましいものに思えてくるよ。
>>634 猫かわいい(´∀`)
>>573 なんか光景が浮かんでくるよ。ペットボトルが動かなくなったり、
岸の方へ向かってきたり、子供とにらめっこしてるとことか。
感覚的なものだから説明しようがないけど、こういう映像が頭に
浮かんでくるような作品けっこう好きです。
>>576 これイイ! かなりブラックで。ゾクッとするような怖さがイイ。
誰か書いてage。お題は
>>632 。
637 :
退魔師 :04/09/20 00:04:54 ID:26pc9bmC
「停電」「はちみつ」「犬」 子「あ、電気が消えただよ」 父「ふんとだ。この電気ってやつぁどうも信用ならねえだ」 母「おっとう。ロウソク、ロウソク」 父「ロウソクはこの間、切れただよ」 母「まあしょうがないだ。電気さ、つくまで待つだよ」 子「でも、腹減っただよ」 母「弱っただなあ、何もないだよ」 父「オラも減っただ。母屋になにかあったんでねえべか」 母「あんた見てきてくれんね」 父「うへぇ。何も見えないだよ。ま、しょうがなかんべ」 子「オラもいくだ」 ――トテトテン 父「あ、この瓶に入っとるのは蜂蜜だんべ」 子「蜂蜜? 食いたいだ」 父「待つべ。これは子供が食べると死ぬだ。一休という子も昔死んだだ」 子「それは水飴だべ。それに死んでねえだ」 父「とにかく、痛んどるかも知んね。オラがまず毒見を・・」 子「そんならシロにさせるといいだ。シロこっちさ来う」 父「オラが信用できねか? それにシロじゃ舌が届かん」 子「この鉢に移せばよかんべ。口を合わせてこぼさん様に」 父「しょうがない。ほれ、シロ。暗いがこれさ舐めろ」 シロ「くぅんくぅん。くん? ぎゃいーんッ」 子「あ、シロが倒れただ」 父「やっぱり痛んでいただか」 子「それにしてもおっとう、どうして暗がりで蜂蜜とわかっただか」 父「そりゃあ、指さ突っ込んで舐めてみただけ・・・フゲェッ。」 エロエロエロエロ 以上『鉢満つ』というお話でした。ゴメンナサイ。
638 :
退魔師 :04/09/20 00:13:26 ID:26pc9bmC
初挑戦でした。 これでもがんばりました。 次は怖い話をお願いします。 「椅子」「冷たい」「色」で。
私の通っていた学校の美術準備室に、”呪いの椅子”と呼ばれる椅子が あった。校内の七不思議で唯一実在する代物、といえば聞こえはいいが、 ただ単に、赤い色のペンキだか油絵の具がべっとりとこびりついているだ けの普通の教室の椅子だった。 ある日、美術教師がこの椅子をモチーフ台にして水彩画を描き始めた。 椅子の上には花瓶に生けられた花が置かれていた。私達が眺めている前で、 美術教師は慣れた様子で下書きをして、そして色を塗っていった。しかし 出来上がったのは、花の絵ではなく、椅子に座る青白い顔をした、どこか 気味の悪い女性の絵だった。教師は「女性の絵の方が嬉しいだろう」と冗 談を言って、その絵はしばらく忘れられていた。 しかし、その美術教師はその一か月後に校内で自殺未遂を起こして学校 を辞めてしまった。 ここからは美術部の知人に聞いた話だ。
教師はスケッチブックを膝の上に置いて、何かを一生懸命に描いていた そうだ。でも、上半身をフラフラとさせて、なにか様子が変だったらしい。 生徒が声を掛けても返事をせず、取り憑かれたようにスケッチブックを真っ 黒に塗っていた。生徒が覗き込むと、スケッチブックは黒ではなく、どす 黒い赤い色に染められていた。実は教師は手首をざっくりと切っていて、 延々と自分の血を紙の上にこすり付けていたという。周囲にいた生徒達が 止めさせようとして教師に触れると、ひどく冷たくなっていて、既に死ん でいるのではないかと思ったそうだ。 その後、教師は一命は取り止めたが、すぐに学校を辞めてしまった。 ただ妙なことに、呪いの椅子も教師と共に消えてしまった。噂では、事 件後に教師が一度だけ学校を訪れて椅子を持ち帰ってしまったという話だ が、私は学校側が処分したのではないかと思っている。 おかしな噂はもう一つある。 美術教師が自殺未遂を起こす一か月前に描いた女性の絵が、生徒の作品 かプリントに紛れ込んでおり、卒業生の誰かの手元にあるのではないかと いう話だ。もちろん私は信じてはいないが、それでも当時の美術の授業で 使っていたカルトンはいまだに開けられずにいる。
>>638 私も初挑戦です。ベタな話になってしまいましたね。
退魔師さんの話、狂言的で最後にニヤリとしてしまう
味のある面白さがありましたよ。
次のお題は
「靴」「寝言」「埃(ほこり)」
でよろしくお願いいたします。
ふと見ればスレ立ってからちょうど1年じゃないかage。
643 :
ho~ :04/09/27 09:01:58 ID:wOSULPrm
保守
644 :
退魔師 :04/09/28 22:54:36 ID:0aevqm9z
頑張るぞと思ったものの、 「埃と靴」「靴と寝言」「寝言と埃」でプロットが出来たけど 「靴と寝言と埃」となるとダミだー。 三題話って難しいです。 なめてました。
>>644 そこまでプロットできたなら、残りの一個のお題は
作中に強引にねじこめばオッケーさ(笑)。
聞いた話である。 身分の卑しい者がある時京へと向かった。 その道中、同じく京へと向かう一人の僧と出会い、共に旅をする事になった。 さて、日が落ちて、今日はどこで雨露をしのごうかと思案に暮れていると、 男は一軒のあばら家を見つけた。 近くには他に家が見当たらないので、そこで一泊することにした。 近づいてみると、どうやら打ち捨てられた古寺らしく床一面に埃が積もっている。 僧が本尊と思しき像を磨いて、二人で祈ったあと眠りに落ちた。 夜半ごろ、男は目を覚ました。 寺の周りを歩く者が居る。 さてはここを根城にしている盗人でもいたか、と肝を冷やしたが、 何時までたっても入ってくる気配がない。
やがて男は、足音が靴の沓を履いている音であることに気付いた。 これは物の怪の類に違いないと一人震えていると、 隣で寝ていた僧が突然経文を唱えだした。 起きているのかと思ったが、どうやら寝ているらしい。 寝言で唱えているのである。 すると経文に掻き消されるように、物の怪の気配は無くなった。 やがて寝言も小さくなっていき、男は不思議な気持ちになりながらも眠った。 翌朝、僧は男に昨晩何か変わった事は無かったか、と訊いてきた。 男は昨晩の不思議な出来事を伝え、逆に何の夢を見ていたのか、と問うた。 僧が語ったところによると、 「夢の中で仏様がおいでになさったので、一心不乱に経文を唱え続けた。 しばらく唱えていると、仏様は『もう良い』とだけ仰られて消えなさった」 という。 出立前に本尊に祈りを捧げ、二人は京を目指し旅立った。 (作者註:靴の沓とは平安期に主に武官が身に着けていた半ブーツ状の履物)
うーん、偽古典を目指したんですが、ちょっと難しかったです。 次は「壁」「UFOキャッチャー」「向こう」でお願いします。
649 :
目刺 :04/10/02 16:31:26 ID:xnIrbFYW
「壁」「UFOキャッチャー」「向こう」 壁。四方全てが壁である。壁からは向こうが見えるが見えるだけだ。自由はない。 真っ暗な何かに揺られてここに放り込まれた。そもそも俺自身、どこで生まれ、何をしてたのかも覚えていないが・・・。 周りにはたくさんの仲間が居る。まあ居心地は悪くない。むしろ良い方だ。 しかし、時たま天からバケモノが降ってきて仲間を連れ去ってしまおうとする。 必死にもがけばすぐに抜け出せるのだが、1日に5〜6人の仲間はどこかへ行ったまま戻ってこない。 俺は今まで4回ほど連れ去られそうになった。しかしここに居るということは無事ということだ。 しかし悪夢は突然やってくる。 楽しく談笑する中、突然つかまれた。バケモノだ!必死にもがく俺。しかしなかなか逃げ出せない。 真っ暗な穴が見える。地獄か、地獄なのか!助けてくれ!俺はまだ死にたくないいいいいいい!! 「パパー!次はあのくまさん取ってー!」 「ははは。由美は本当にUFOキャッチャーが好きだなあ。」
650 :
目刺 :04/10/02 16:34:07 ID:xnIrbFYW
次は「飼葉」「鋏」「はらわた」で。
651 :
座布団猫 :04/10/05 04:55:53 ID:hDplPQD3
今書いてます保守
652 :
座布団猫 :04/10/05 21:29:38 ID:hDplPQD3
うわあぁぁん まとまらないです…・゚・(ノД`)・゚・
653 :
座布団猫 :04/10/06 01:21:01 ID:ohjc7RFQ
「飼葉」「鋏」「はらわた」@ 「お土産これで大丈夫かしら…」 羊羹と生どら焼きの紙袋を見下ろしながら、運転席に座る夫に訊く。 「なんだって大丈夫さ。お土産なんて要らないくらいだよ」 追い越し車線に入ってから、夫は笑いを含んだ声で答えた。 「そんなわけにいかないわよ。これから一緒に暮らすんだし、少しでもいい印象を与えたいじゃない」 「なに言ってんの。母さんに<哲也は帰ってこなくていいから唯ちゃんだけよこせ>って言われるくらいもう気に入られてるだろ」 夫は東北のある村の出身だ。酪農家をしている地主の次男坊だが、あとを継ぐことになり、帰省している最中だ。 「君は反対すると思ってたよ。会社員辞めて農家を継ぐなんて」 「あら、あなたがやる気を示すならなんだって一緒にやるわよ」 車が着いた時、義父は飼葉をほぐしていた鋤を休め、遠くから大きく手を振って見せた。 義母は勝手口から飛び出してきて「来てくれてありがとうなぁ」とうれしそうに何度も言った。 飼い猫のミケが夫の足元にまとわりついてくる。 荷物を奥の部屋へ運ぶ。先導して歩くミケの首輪の鈴が、チリチリと小気味よく鳴っている。 「ばーちゃんの部屋だったんだ、ここ。俺が幼稚園くらいの時に亡くなっちゃったけどな」 懐かしそうに柱を指す「ここに油性ペンで落書きしてしこたま怒られた」と笑った。 義母はもう夕飯の支度を済ませていて、並べるのだけ手伝った。 4人で食事をするその鴨居には、亡くなった義兄夫妻の写真が掛けられていた。
654 :
ZAB :04/10/06 01:22:39 ID:ohjc7RFQ
「飼葉」「鋏」「はらわた」A 私たちが結婚してすぐのことだから、もう1年近く経つ。 義姉が運転する車はセンターラインを越え、かなりのスピードを出したまま対向車と正面衝突した。 相手はトラックだったため、シートベルトが無意味なものとなったのだ。 義兄が結婚した際に一部改装した中に、バスルームも入っていた。 ゆったりと足が伸ばせる浅いバスタブには手すりが付けられ、浴室暖房も自動給湯も備わっている。 年老いた両親を大切にしていたのが伝わってきた。 長距離の運転で疲れていたのか、夫は髪の毛が乾く前に眠ってしまった。 目覚ましをセットして、いつもより早いが布団に入った。明日の朝は早起きして朝食の支度を手伝いたかった。 ミケが鈴の音をさせて部屋にやってきて、私の足に寄りかかる。その重みもまた心地よかった。 ――何時間経ったのだろう。しゃきん、しゃきん、という音がした。 続いてチリン、という鈴の音がして、ミケが低くうなり声を上げた。 私は背筋を貫く悪寒に目を覚ましたが、体が動かない。枕元に和服姿の女の人が立ち、私を見下ろしていた。 長い髪は乱れてくしゃくしゃで、和服は白一色。 その姿は青暗く光をまとい、落ち窪んだ眼窩でぎらぎらと光っているその目からは、憎しみしか感じられなかった。 夫を呼びたくても声が出ない。女の人は右手に糸切鋏を持ち、しゃきん、しゃきん、と刃をこすり合わせている。私を下目使いに見下ろしたまま。 私と目を合わせたまま、女の人はゆっくりと上体を前へと傾けてきた。私に覆いかぶさるように。 口元は、私を殺す喜びに大きくつり上がり、その手の鋏は相変わらず、しゃきん、しゃきんと繰り返される。 その長い髪が私の顔に掛かろうとしたとき、シャーッッ!!という声とともにミケが女の人に飛び掛り、私は恐怖に気を失った。
655 :
座布団猫 :04/10/06 01:24:22 ID:ohjc7RFQ
「飼葉」「鋏」「はらわた」B 目覚ましの音で目が覚めた。カーテンの隙間からまぶしい朝日が挿している。 だるさの残る体を起こすと、ミケが入ってきて、猫式洗顔を始めた。 「ミケ…昨夜…」 ミケはふと手を止めるとこちらを向いた。毛づくろいの途中だったからか、舌先がちょこっと出たままだ。 そのちょっと間抜けな愛らしい姿に吹き出すと、昨夜のことはすべて夢だったのだと納得できた。 着替えて顔を洗いに行った洗面所で、私は自分の顔を鏡に映して驚いた。 血色が悪く、目の下に昨日までは無かった隈がはっきりと出来ている。 夢見が悪かったせいだろう。薄く化粧をしてごまかして、台所へ行った。 「まだ寝てて良かったのに」という義母と一緒に作った食事を、義父も夫も笑顔で平らげてくれた。 夫は、両親と一緒に仕事へ出た。早速今日から跡取り教育だと父は笑った。 子供の頃は手伝っていたとはいえ、ブランクは長い。体力持つかな、と夫も笑う。 私は、農業と家事を両立していた義母の代わりに家を任されることになった。 洗濯、掃除、昼にはお弁当を届けることになっている。 洗濯機に予備洗いするものを入れて、回し始めた。その間に座布団を縁側に並べ、掃除機をかける。 知らないうちにミケが朝の見回りから帰ってきて、縁側の座布団に体を横たえ、私を見つめていた。 洗濯物を干し始めると、ミケがついてきて、洗濯籠の横にちょこんと座った。 「いつもはお義母さんがやってるのに、私がしてるのが珍しい?」 広い物干し場がシーツや服で埋めたあと、ミケに訊いてみると、ミケは首をかしげて長い尻尾をぱたりぱたりと左右に揺らした。 「これからは私がやることになったから、よろしくね」 ミケはゆっくりとまばたきをして、なーんと返事をした。
656 :
ZAB :04/10/06 01:27:27 ID:ohjc7RFQ
「飼葉」「鋏」「はらわた」C お昼ご飯は少し濃い目の味付けにしておいたのが正解だった。 予想通りみんな午前中の仕事だけで汗だくになっていたからだ。 おしぼりと食器をまた籠に詰め、夕飯のリクエストを受け付けてから家へ戻った。 途中、家庭菜園から茄子ときゅうりを収穫する。 ついて来た義母が鋏でしゃきん、ぱちん、と野菜を切り離す音を聞きながら、昨夜の夢を思い出していた。 夢のことを話してみたかったが、家をけなすようなことを聞いて、嫁をよく思う姑も居ないだろうと思い、やめておいた。 どうせ、夢。昨日は慣れない部屋だったし、疲れてたからよ… しかし、夢は続いた。夜毎女は私の枕元に立ち、鋏を手に私を見下ろす。 私を殺そうとその体を動かすとミケが飛び掛り、そこで私は気を失う…… 私は眠ることが怖くなり、布団の上でミケを抱いて朝を迎えるようになった。眠らなければ、女は現れない…… 不眠は私の体力を確実に奪っていく。顔色の悪さを化粧で隠しても、げっそりとそぎ落とされたほほの肉はごまかせない。 昼間、家事の合間に転寝をするだけでは間に合わず、義母が気づき、夫が気づき、 ごまかし続けていた私は、疲労に倒れて初めて夢のことを話した。 聞き終えた夫が「そんなのただの夢だよ」と言った時、義母がハッと義父を見た。 義父は腕組をして聞いていたが、その腕を解いてテーブルの上で指を組んだ。 「お前には話してなかったが…父さんの母親は元はお妾さんでな」 「聞いたよ、それ。今関係……」 「黙って聞きなさい。その前の奥さんの話だ。その人は流産を繰り返していて、 母が私を産んだことで離縁されたが、あの時代のことでは……きっと実家に戻ることも出来なかったんだろう。山で自殺をしたのだよ」
657 :
座布団猫 :04/10/06 01:29:41 ID:ohjc7RFQ
「飼葉」「鋏」「はらわた」D テレビでは気象予報士が、笑顔で明日も良い天気でしょうと伝えている。 「……親父に買ってもらった鋏で自らの首を刺し、息絶えた。 こっちでは実家に戻ったものと思っていたから探される事も無く、 猟に入った人が偶然見つけたときには、山の獣に食い荒らされて……」 しかし、手足もはらわたも獣に食い荒らされていた遺体は、 憤怒と苦悶の表情を浮かべた顔だけが、まったくの無傷で残っていたという。 猟師が見たものの恐ろしさから忠告に来たのを受け、父親は元妻の葬儀を取り仕切り、新しい墓を建てた。 この家の墓に入れることだけは拒否したのだ。墓の苗字も、旧姓で建てられた。 「この家を恨んでいただろうな。墓を建てることで供養したつもりになっていたが……」 「光江ちゃんも、きっと唯ちゃんと同じのみてたんよ」 突然兄嫁の名前が出てきて驚いた。聞けば事故の直前、夢見が悪くてとぼやいていたという。 「女の人の夢、としか聞いとらんけども、きっと唯ちゃんと同じもんみとったんやろう。 眠れんで疲れとったのに、免停になってた純也の代わりに運転して、それできっと……」 耐え切れなくなったように義母が目頭を押さえて仏間へ駆け込んだ。 義父は同じ考えなのか、テーブルの上をじっと見つめている。 「どうすりゃいいんだよ。このままじゃ唯が……」 しばらくの沈黙の後、義父が重く口を開いた。 「明日お寺さんに連絡して、改めてご供養あげてもらおう。それしか手はないやろう」
658 :
座布団猫 :04/10/06 01:31:39 ID:ohjc7RFQ
「飼葉」「鋏」「はらわた」E 居間に布団を4つ並べて床に就いたが、義父と夫は寝ずに朝を待つことにしたようだ。 義母は私の隣に陣取り、眼を閉じる私の頭をそうっとなでてくれていた。 ミケが今日も私の足元に丸くなる。 「なんで唯ちゃんや光江ちゃんなんやろなぁ。なんでウチにこんのやろなぁ」 つぶやくような震える声は、それでも手の温もりとともに子守唄として私を眠らせてくれた。 翌朝、お寺に連絡すると、すぐに向かうと住職は言ってくれた。 しかし一向に到着しない。しかも、いくら電話をかけてもコールするばかりでつながらなくなった。 義母は床に就いた私に付き添い、心配そうに頭をなでてくれている。 ミケも、いつもと雰囲気が違うことに気づいたのか、見回りもせず、ずっと私の足元に座っている。 牛の世話を午前中で切り上げた夫と義父は、車で住職を迎えに行ったが、そのまま引き返してきた。 「こっちへ来る途中、車で事故起こしたらしい。腰の骨折ったと。 事情話して、住職の息子さんにお札だけ貰ってきた。身に着けといてくれ」 夫は踵を返し、また義父と車で出て行った。 山向こうの隣村に、神様のお使いという祈祷師がいるというので、迎えに行くことにしたのだ。 義母が作ってくれた卵入りのおじやに口をつけたが、飲み込むのもつらいほど体が重い。 二口、三口食べたあと、また横になった。昼過ぎだというのに、空が暗くなってきた。昨夜の天気予報では、晴れだと言っていたのに…… 「哲也さんとお義父さん、大丈夫かしら…」 住職の事故の件もある、不安が大きかった。 「大丈夫や、牛乳卸してるとこがあるから、良く通ってる。心配せんでいいから、眠っとき」 お義母さんはそう言ったが、その言葉には不安がにじむ。きっと同じことを考えているのだろう。 大粒の雨が、暗い空から落ち始めてきた。
659 :
座布団猫 :04/10/06 01:34:27 ID:ohjc7RFQ
「飼葉」「鋏」「はらわた」F 結局、夜になっても戻ってこない。 何度か携帯から連絡が入ったが、この雷雨で電波が悪くなっているようで、雑音がひどく、ほとんど聞き取れなかった。 義母と私はお札を身に付け、じっと帰りを待った。 雨はまだやまない。テレビから流れる夜のニュース番組の音よりも、雨の音の方が大きくなってきたようだ。 「どうなってるんだ!? ここさっきも通ったぞ!」 哲也が苛立ちを隠せずにハンドルを叩く。ワイパーは最高速度で動いているが、 突然降りだした雨は勢いを増すばかりで視界が悪い。スピードはなかなか出せない。 しかも同じ道をぐるぐる走っているようだ。 「一本道のはずなのに……」 「邪魔されてるんですよ……すごい強い力を感じる……」 祈祷師が手にした数珠を額の前に上げ、呪文を上げ続ける。 いきなり雷が近くに落ち、轟音とともに部屋の電気とテレビが消えた。 目が暗闇に慣れる前に、ミケがシャーッと威嚇を始めた。 暗闇の中を手探りで見つけ、義母とお互いに手を握り合う。寄り添ったままミケを呼ぶ。 ミケはまだどこにいるのか良く分からないが、今も何かに向かって威嚇をしている。 しゃきん、という音に背筋がぞくりとして、振り向く。部屋の隅に、青白く女は立っていた。 声にならない悲鳴をあげると、義母が私と女の間に入り、私をかばって女を見上げた。 「なんで唯ちゃんや光江ちゃんなんや! まずウチを殺すんがスジやろう!」 どこにそんな力があったのかと思うほど強い力で、義母は私を背中にかばい続けた。 女が部屋の隅から すぅっと近寄ってくると、胸元でビリッと音がした。 女が右手に持った糸切鋏の音が、やけにはっきりと聞こえる。 「さぁ殺しぃ!」
660 :
座布団猫 :04/10/06 01:36:02 ID:ohjc7RFQ
「飼葉」「鋏」「はらわた」 女の手が義母の首に向かって伸び、私が悲鳴を上げたとき、背後から光の塊が女に向かって飛んだ。 金色の光の尾を引いて女の手に飛び掛ったのは、毛を逆立てたミケだった。 私たちの前に立ち、女に向かってなおも威嚇を続けるミケを包んだ光が、縦に長く伸び人の形を取り始めた。 「おかあさん――!?」 それは私の声ではなかった。 女は金色の光に飛び掛ったように見えた。次の瞬間二つの人影は交差し、まぶしい光を放った。 光は緩やかに落ち着きを取り戻し、人の姿はひとつしか残っていなかった。 初めて見るその女性は透き通り、光を帯びていた。その足元に、ミケがちょこんと座っている。 鋏の女は居なくなっていた。 義母と女性はしばらく見つめ合っていたが、祖母の姿はすぅっと薄れ、あとには暗闇が残った。 たんすの上から懐中電灯を取り、ろうそくを灯す。 シャツの内側に入れておいた御札は、縦に裂けていた。義母が身に着けていたものも。 ミケは座布団で香箱を組んで眠っている。時折耳がぴくぴくと揺れる。 「ばあちゃんに助けられたな」 鴨居を見上げてぽつりと義母が言った。 視線の先には、さっきまで光に包まれていた女性が、やんわりと微笑む写真が見下ろしていた。
661 :
座布団猫 :04/10/06 01:39:48 ID:ohjc7RFQ
長駄文失礼いたしました。 ちょろっとストーリーが浮かんだらぐわーっと膨らんでこんなことに・゚・(ノД`)・゚・ 削り方も分からなくて…orz ココは削った方がいいよ、とかいうご意見あれば辛口で是非。 次の御題は「寿」「ピンクグレープフルーツ」「テロリズム」で m(_ _)m
>653 めちゃくちゃ面白いよ!!!! 朝から感動した。 でも途中で名前かわってたから一瞬違う人が書いたのかと 思っちゃったよ
663 :
ho~ :04/10/06 09:28:26 ID:yGqgi8E5
>661 面白かったです。一挙に読みました。 テンポがいいから長くないですよ。
664 :
座布団猫 :04/10/08 00:34:17 ID:LhyrSdLy
感想ありがとうございます。
>>662 文章書くときは座布団猫で、自分の体験とか書いてるときはZABなんですよ〜。
ハンドル保存になっちゃってて、切り替えるの忘れてました( ̄▽ ̄;)
>>663 ありがとございます。
自分としては、他の皆さんみたいに、切り取った一部分で語り終えるようなのが目標なんですが、
どーもうまくいかない…
分割しないでカキコできるくらいのを次は目指しますっ!
>>582-583 いい話だけど、相方のことを思って蒟蒻を仕掛けちゃう霊のことを
想像するとちょと面白いです。満足げな表情で逝ったっぽい。
>>584 口語調で淡々と書いてるけど内容はけっこうエグイよね。
もっと赤井の悲劇性を押し出してもよかった気もするけど、どうだろ?
>>586-588 コミカルだけど、>青山はいったい何処に旅行に言ったのだろうか?
がちょっと怖い。いろいろ想像させられて。てか実はなんでもない、
ほんとにただの人のいいメイドさんに撮ってもらったんじゃないの?(笑)
>>589-592 前にも書いたけど、なぜかオチ見たときおおっ意外だって思ったんですよね。
改めて見るとど真ん中ストレートなんだけど。すこし不思議。このあとメンバーたちは
別に悲壮感もなく楽しい話題や思い出話で盛り上がれそうな
とこがなんかいい。
感想でageでゴメンage。
>>595-597 ミステリアスに始まって、なんかおどろおどろしい展開になって
それをどっかへ吹き飛ばしちゃうラスト。ナイス!
でもやっぱりなかの死体と無数の人骨が気になる……。
>>600-602 キャー! 優しいってどう優しいのさ!? 毎晩どう抱いてくれるのさ!?
どう抱かれてるのさ!? 怖い(つω・`)
>…ってごめん…『静寂』って入れ忘れた…。すいません…。
>最後にクローゼットから中村さんが出た後入れるはずでした…。
なんかワロタ。
>>606 ジョジョを元ネタにしたら、けっこういろんな話できそうだね〜。
今度やってみよう。パクリだって気付いても黙っといてちょ。
>>616-617 まあこういう時代だから、夢の中に見知らぬ人が出てきたと思ったら、
それが実は2ちゃんで仲良くしてるコテさんがお別れを言いに来てた、
みたいな話もありかも、とか思った。オチで、そういえば……みたいな
展開(エレベーターは電波届かないはずなのに……)ってけっこう好きだ。
>>618 やっぱバックミラーの女って猫飼ってた彼女かな?
せっかくだから、突然姿を消してしまったとか説明なしで
読む人に想像させた方がよかったかも。突然の失踪だと「わたしのときは……」
って言われても彼としてはどうしようもなかっただろうし。
>>619 死ぬ瞬間てどんな感じなんだろうねえ?
やっぱりブツッと回線が途切れるように意識がなくなるんだろうか?
ある意味今から楽しみで仕方ないよ。ちょっと危ないこと書いた。
今出てるお題は
>>661 の
「寿」「ピンクグレープフルーツ」「テロリズム」ですよ。
「寿」「ピンクグレープフルーツ」「テロリズム」 ふた月前、窓際の席の山下さんが寿退社した 披露宴後の飲み会で初めてピンクグレープフルーツというものを食べた 美味かった 先月、山下さんの隣の席の江口くんが事故で入院した お見舞いにピンクグレープフルーツを持っていったら、彼の病室はすでにピンクグレープフルーツの山になっていた みんなピンクグレープフルーツが気に入ったらしい 今月に入って、江口くんと僕の間の席の矢野さんが海外に転勤することになった 彼が旅だった矢先、赴任先の国でPGFという組織によるテロリズムが発生した 一介の果物が引き起こした大惨事に僕らは色めきたった 以来、彼の行方は知れない 噂では来月は僕がいなくなるらしい 何処に行くかはわからないけど、まず最初に果物屋を探そうと思う ■この物語はフィクションです。実在の人物・組織・団体とは一切関係ありません ■次のお題は「悪臭」「暗闇」「変容」で
>>621-622 警官がまき散らした病原菌で汚れた自分を消毒するためにってことかな?
個人的には、もう少しそのへんをセリフとかで直接的に書いた方が
よかったような気がした。これからの時代、こういう潔癖性キチガイが
現れないとも限らないのが怖いね。いきなり消毒されんのやだよ。
>>630-631 これ、けっこう怖い〜。でも管理人の返事がないとかの描写はなくして、
いつも楽しみにライブカメラ見てたら、実はそこの管理人はすでに……って
展開の方がネットの怖さとかもあいまって、もっと怖かったかも。
これも誰かに映像化して欲しいな〜。そういえばオカ板住民で映画作るって
話は結局どうなったんだろう……?
>>637 ナイスオチ。なかなかよくできた小噺ですな。
次は怖い話を。
>>639-640 こういう終わり方、言われるようにベタかもしれないけど
けっこう怖いよね。カルトン(て何かよく分からんけど)が発する
奇妙なプレッシャーを想像するだけで、何かがしめつけられるよ。
感想ばっかでスレ伸ばしてスマン。せっかくやりかけたから
このスレくらいは全レス。読み直して新たに発見することも
けっこう多いよ〜。
>>646-647 うん。偽古典は難しいよ。と挑戦したこともないくせに言ってみる。
というか素養がなさすぎて挑戦すらできない……。
仏様が助けてくれたのかな。それとももっと深い?
>>649 お題でネタバレしてるのがなんとも残念な感じ。
でもバケモノに捕まった方がきっと天国だよね。
だって女の子と添い寝できるもん。
「悪臭」「暗闇」「変容」1/1 もう長いこと地下室の灯りはつけていない。 たまに用を足すために地下室に入るときも決して灯りはつけない。 部屋の片隅に放置されているあれを見るのが嫌だからだ。 だけど匂いは分かる。それが放つ悪臭がいまや部屋中に充満している。 あのぶんだときっと姿、形もずいぶん変容しているんだろう。 そういえば彼女は言っていた。 「あんた自分の顔見たことないの? あんたみたいのが私と釣り合うわけないでしょ」 もうそろそろ釣り合った頃かもしれない。 ■次のお題は「入院」「箱」「屋上」でお願いします。
674 :
ho~ :04/10/15 09:07:54 ID:PTOcycKy
>630-631を怖いって言って貰えた嬉しい〜〜 そっか、 『私や他のチャットをしていたメンバーは各々に「どんな毛虫?」とレスを入れたが 1日たっても2日たっても管理人からの返事の書込みはなかった。 』この部分をカットしたほうが スッキリしたんですね。参考になります。感想アリガトウです。 >673 オチが効いてます。ひたひたと怖いっす
675 :
退魔師 :04/10/17 16:41:39 ID:dm147Iol
「入院」「箱」「屋上」 1/3 ぼくが入院しているのは白い壁と白いカーテンの病室。 やさしい先生にやさしい看護婦さん。 カーテンが揺れる、静かな日々。 いつからここにいるのかもう忘れてしまった。 ぼくの隣のベッドには箱がある。 時どき先生や看護婦さんが箱の蓋を開けて、中を覗き 込む。 「さとこちゃん。調子はどう? ご飯はかたくなかった?」 「さとこちゃん。お熱はない? おしっこはまだ大丈夫?」 さとこちゃんはどんな子だろう。 隣のユキちゃんがいなくなって、かわりに来たのがさとこ ちゃんだ。 さとこちゃんはいつも箱の中。 寝る時も、ごはんの時も、おしっこもそれからたぶん うんちも。 一度だけ声を聞いた気がする。 さとこちゃんはどんな子だろう。
676 :
退魔師 :04/10/17 16:43:18 ID:dm147Iol
「入院」「箱」「屋上」 2/3 ある日、夜中に目が覚めた。 月の光がカーテン越しに侵入していて。 隣のベッドの箱の口を照らしていた。 箱の口はかすかに持ち上がっていて。 隙間から覗く目と、目が合った。 ぼくは寝ぼけた振りをして、また寝てしまった。 次の日の朝、さとこちゃんの箱が気味悪くて、ぼくは 病室の外に出た。 白い廊下をピタピタと歩き、なんとなく屋上にのぼった。 空は晴れて、青かった。 雲は高くて、白かった。 山は遠くて、緑。 街は、 街は。 ぼくはめまいがした。
677 :
退魔師 :04/10/17 16:44:45 ID:dm147Iol
「入院」「箱」「屋上」 3/3 やっぱりだめだ。 病院の外はだめだ。 ぼくには怖い。 白い壁に手をつきながら、ぼくは白い部屋に向かって 戻っていった。 その時思った。 ぼくにとっての病院が、さとこちゃんにとっての箱なの かもしれない。 ぼくが屋上にのぼるように、さとこちゃんは昨日蓋を 開けていたのかもしれない。 ぼくより勇気を振り絞っていたのかもしれない。 白い病室のベッドに戻ると、箱は静かに座っていた。 ぼくはマーカーで箱の表の文字を消し、「さやか」 と書いた。 さやかちゃんはどんな子だろう。 ぼくより、長く居てくれる子だといいんだけれど。
678 :
退魔師 :04/10/17 16:47:35 ID:dm147Iol
次のお題は「カラス」「電車」「お金」で。 よろしくどうぞ。
ho
>>653-660 心理描写とか情景描写とかたっぷりだー。僕はどちらかというと
こそぎ落とし派なんで、なかなかそういうのは書けないです。それにしても、
(´-`).。oO(座布団猫さんはほんと猫が好きなんだなあ……)
>>669 なんとなく飄々とした雰囲気の作品イイ!
>みんなピンクグレープフルーツが気に入ったらしい
なんかユーモラスでオモロイ。
>>675-677 いい意味でとらえどころがない感じ。少なくとも僕にはとらえきれん(つω・`)
どのくらいの大きさの箱なんだろ? できれば一辺30センチくらいの
小さい箱がいいな。不気味さが増すよ。箱でなくて「ぼく」の不気味さ。
ho
683 :
キタキツネツキ :04/10/25 23:51:25 ID:ju9wZrzk
「カラス」「電車」「お金」 その1 下層階級に属するタナベ君は某大手電力会社の下請け電気工事会社の労務者だった。 電力会社の正社員はスーツにネクタイ姿だが、労務者のタナベ君は年中 汚れの染み付いた作業服でいなければならない。 そして労務者のタナベ君は電線の点検だけではなく、カラスの巣の撤去もしなくてはならないのだ。 今日も電柱のてっぺんにカラスが巣を作ったという苦情の電話がかかってきた。 さっそく現場にかけつけ、電柱によじのぼる。どうやら巣の中にはヒナが三羽ほどいるらしい。 「やれやれ」 だが巣を覗きこんだタナベ君の目が輝いた。 カラスの巣の中に、編みこまれた小枝といっしょに三,四枚の一万円札を見つけたからだ。
「カラス」「電車」「お金」 その2 タナベ君は思い出した。「そういえば一週間ぐらい前に上流階級のお坊ちゃまが、インターネット株で ワンクリックで一億円も儲けてしまい、その喜びを庶民にも分け与えてやりたいといって、 三百万円ほどをビルの屋上からばらまいた事件があったなあ・・・」 そしてその内の二百万円しか回収されてなかった。そのお金をカラスが巣の材料にしてしまっていたのだ。 「うひょひょ、これで酒が飲めるよ。」 しかし喜ぶ間もなく、タナベ君はヘルメットにがつんっ!という衝撃を受けた。 いつの間に飛んできたのか、親ガラスが襲ってきたのだ。 「このヤロー!」タナベ君はベルトに装着されていたスパナを振り投げた。 スパナには2メートルほどの落下防止用のナイロンロープが括られているため、 投げても地面に落とすことはない。 カラス目がけて投げられたスパナは電柱のコンクリートにあたって、 カツンッ!と甲高い音をたてて、ぶらんとぶら下がった。 親ガラスは黒い羽を散らして、すんでのところでスパナを避けたのだ。 そして十数メートル先の立ち木の枝に止まると、じっとタナベ君をにらみつけた。 「どうせお金なんてカラスには必要ないだろうに」 ぶつくさ言いながらタナベ君は 巣をむしりとるとクルッと引っくり返した。 ぴいぴい鳴いていた三羽のヒナは数メートル下のアスファルトにピシャピシャピシャと潰れて、 三つの赤黒い染みになってしまった・・・
「カラス」「電車」「お金」 その3 さて、その日の仕事も済んで、場末の酒場の安酒でしたたかに酔ったタナベ君は、満月に見送られながら、 ふらふらと家路にと向かった。 そのときバサバサと羽ばたくものが頭の上をかすめていく。 こんな夜更けに飛んでいる鳥なんているのかと思って見ると、カラスが数メートル先のガードレールに とまっていた。 「まさか、昼間の親ガラス?」と疑問に思う間も無く、タナベ君の目は、カラスのくちばしでヒラヒラとしている ものに釘付けになった。 カラスは一万円札をくわえていたのだ。 タナベ君は腰に結わえていたロープ付きのスパナを振り回しながら「まてーっ!」とカラスを追いかけていった。 カラスは一万円札をくわえたまま金網で隔てられている線路の上に舞い降りた。 タナベ君は金網をまたいで線路の上に飛び降りると慎重にカラスににじり寄り、 頃合いを見計らって、スパナを投げつけた。 スパナは輪を描くようにしてレールにぶち当たり、火花をちらす。 カラスはさすがにたまらず、万札を放すと、金網まで飛び退いて、かあっとひと声放った。 「しめしめ」とタナベ君は一万円札を取り上げて、満月にかざした。「本物だぜ。」 ふと目を下にやると、月明かりに照らされた線路の上にさらに二、三枚の一万円札が落ちているのが見えた。 あわてて拾い集めて、「けけけ、これでまた美味い酒にありつけるってもんだ。」と笑った。
「カラス」「電車」「お金」 おわり 「いや、まだ落ちてるかもしれない。」 這いずり回るようにして探すと、枕木の隙間にまた一枚見つけた。 その時強力な明かりがタナベ君を照らした。下りの快速電車のライトだ。 快速電車は警笛を鳴らしながら凄いスピードで迫ってくる。 しかしいま退けばせっかく見つけた一万円札が風圧でどこぞに飛ばされてしまう。 タナベ君は頭の中で大慌てで計算した。「ギリギリ間に合うぜ。」 大急ぎで手を枕木と砂利の間に突っ込み、一万円札を引っ張り出すと、ひょいっと線路の脇に飛び退いた。 と、その時、タナベ君は腰をぐいっと引き戻されたのだ。 線路の上にしりもちをつくようにして倒れたタナベ君の目に最後に見えたものは ピンと張ったナイロンロープだった・・・その先に結わえられていたスパナが、 タナベ君が這いずり回っているうちにレールと枕木の間に挟まってしまっていたのだ。 タナベ君の叫び声は電車の甲高いブレーキ音に掻き消された。 親ガラスはまだ鮮血の生々しいレールの上に飛び移ると、ややアルコール臭い元タナベ君の 残骸をついばんだ。 たしかにカラスにとってお金なんて必要ないものだ。必要なのは栄養豊富な生肉なのである。 とくに母親ガラスにとっては・・・ 次の卵を産むために・・・
|ω・`)次のお題は……?
すいませーん、 お題を考えてるうちに寝ちゃって、遅刻しそうになりました・・・ 次のお題は 「ヘリコプター」 「毒ヘビ」 「運動会」 で お願いしマース。
ho
690 :
本当にあった怖い名無し :04/11/02 18:42:00 ID:ox9VsVUo
期待保守あげ
_ ∩ ( ゚∀゚)彡 新作!新作! ( ⊂彡 毒ヘビ!毒ヘビ! | | し ⌒J
692 :
ZAB :04/11/06 00:09:05 ID:ec9oUu5e
お話が浮かばないので感想。
>>669 テログループの名前がちょっとツボ
席が近寄ってきて、しかも度合いが強くなってくるのがコワ
>>673 ぶよん、とか、ずるっ、とか、どろり、とかいう感じの女が脳裏に浮かびまひた。
この「もうそろそろ釣り合った頃かもしれない」がすべてを物語ってて、
こういうのが書きたいなぁ、とおもいまつ。
そぎ落とされた限界なのに、絵が浮かぶ、っていう。
私の場合絵が先に浮かんで、それを描写してる状態なので、削るのが難しい・・・・゚・(ノД`)・゚・
>>675 すみません・・・わかんねかった。
>>681 覗いてみたけど、流れが読めず、断念。
>>683 おもしろかったー!
因果応報、というか、ハムラビ法典というか・・・
でも個人的にはカラスの味方♪
ho
694 :
sage :04/11/10 11:52:47 ID:Waz9Lw7m
黒蛇の呪いを知ってるかい? 僕はどうしてもA君を殺したくてこの呪いをつかった でも黒蛇がみつかんなくてまむしをかわりにつかったんだ 毒蛇のほうがつよそうじゃん そしたら僕らの運動会のど真ん中にヘリコプターが落ちてきた A君も死んだけど僕も死んじゃった やっぱ素人がかってに呪いをアレンジするもんじゃないなあ つぎは「クリスマス」「苔」「灰皿」で
695 :
ぬれせん :04/11/11 09:33:21 ID:oVumsWZD
「クリスマス」「苔」「灰皿」@ めぐみ「リュウジ!クリスマスケーキ買ってきたわ、お祝いしよ!」 リュウジ「めぐみ・・・来てくれたの。う、嬉しいよ」 めぐみ「ねえ、ケーキ屋さんが可愛いキャンドルをくれたのよ。灯りを消して キャンドルに火を点けようよ。ロマンチックよー」 リュウジ「キャンドル立てるのなんかないけど・・・この灰皿でいい?」 めぐみ「ムードないけどまあいいわ」 リュウジ「じゃあ点けるよ」 このキャンドルが消える前に打ち明けよう・・・。 クリスマスの夜に僕の部屋に来てくれたんだから、めぐみもきっと僕の ことを・・・。 めぐみ「ねえプレゼント持ってきたの。リュウジに」 リュウジ「えっ、ほ、本当?僕に?」 めぐみ「はい!ニシキヘビ!!」 リュウジ「ぎやああああああ!!」 めぐみ「細く長く付き合いたいな〜と思って」 リュウジ「あああああああああ・・・ありが・・・ううう」 めぐみ「冗談よ。さあこのヘビを殺して」 リュウジ「ど、どうして?」 めぐみ「私の大事なものを飲み込んじゃったのよ」 リュウジ「・・・ひょっとして僕にこのヘビを殺させるために君は来たわけ?」 めぐみ「おほほ。ねー、お・ね・が・い」
696 :
ぬれせん :04/11/11 09:34:14 ID:oVumsWZD
クリスマス」「苔」「灰皿」A 僕は仕方なくヘビの頭をバットでガンガン殴って殺した。「ヘビを殺すとたたり があるよ」という言葉が頭の中でぐるぐる回る。 めぐみ「もう死んじゃったよね。ちょっと失礼」 ああ。おぞましい。めぐみはヘビのお腹を探っている。キャンドルが消える前に 僕は幸せになるはずが。この地獄図はなんだろう。 めぐみ「あったー!」 リュウジ「何が?あれ、それ指輪じゃないか。ちょっと見せろよ」 めぐみ「やめてよ」 リュウジ「・・・T&Mって何のことかな」 めぐみ「えへへ」 リュウジ「Tってトモヒコのことじゃないのか?別れたんじゃなかったのか?」 めぐみ「それがね〜、昨夜仲直りしちゃったの〜ん。で、指輪くれたの〜ん。 でも私のペットのこのヘビがその指輪を今日飲んじゃったの〜ん」 リュウジ「お・・・お前は・・・よくも・・・よくも・・・」 僕は生まれて初めて女に向かって怒鳴った。「僕をコケにしてくれたな!!」 次は「ハンバーガー」「貯金通帳」「地震雲」で。
「ハンバーガー」「貯金通帳」「地震雲」 「なにこれ?」がぶりと食らったハンバーガー。 ソーセージかなと、思って、口から取り出してみると、爪があった。 指だった。それも、指の背に黒い毛がびっしり生えていたから、余計気持ち悪かった。 その場で、嘔吐した。 なんだか、この季節にしては、むしむしする日だった。 澄んでしかるべき空も妙に、重苦しく、雲の様子も変だった。 「あれ、地震雲じゃない?」 吐いている、私の背をさすりながら、友人が言った。 それどころじゃない。あとからあとから、嘔吐物が出る、止まらない。 どうかしている。こんなに、食べたか? 「ねえまだ?」薄情なやつ。 吐いて吐いて、吐ききって、私のうちの貯金通帳みたいに、なにもなくなった。 もう終わりだろうと思ったがどっこい、そうはいかなかった。 まだまだ嘔吐物が続いた。なにこれ、食べたものじゃないじゃない? 食道だった、続いて、胃腸が小腸が大腸が、肝臓が腎臓が、膀胱が、 そして、子宮までが口からあふれ出てきてしまってもうこれ以上 吐ききれない状態の私の背を友人は、夕焼けた空を見上げて、 「きれいね」などと、のんきにつぶやいているのだった。 次は「湿度」「喝采」「火の玉」だ。
698 :
ぬれせん :04/11/12 21:48:34 ID:FHdca+Nr
699 :
退魔師 :04/11/15 19:40:38 ID:DjTqOnSs
「湿度」「喝采」「火の玉」 1/5 夜空は少し曇っていた。けれど隙間からは小さな星が キラキラと輝いて見えた。 少し肌寒い。 タエは土手に座って、勇太の横顔を見ていた。 「もう少しだよ、タエ」 勇太は嬉しそうにいった。 「ほうき星がもう、そこまで来ている」 タエは自分の両肩を抱いた。 その様子を見て、勇太は笑った。 「大丈夫だよ。あれは先生たちがいうように、空気を 持っていったりはしない。あれは凄く遠くを飛んでいる 氷の塊で、しっぽは塵とガスが燃えているだけなんだ」 勇太はタエの肩を叩いて付け加えた。 「俺のじっさまがいってた」 タエは小さく頷いた。 勇太の祖父は日本で数少ない天文学者だった。 ほうき星が空を通るとき、地表の空気がなくなってしまう というので、タエたちが自転車のチューブで5分間息を つなぐ練習をしている時も、勇太は鼻で笑っていた。 「大丈夫。大丈夫」 タエは勇太のそばにいたかった。 勇太の目はいつも空を見ていて、タエの知らないうちに タエの知らないところへ行ってしまう気がして。
700 :
退魔師 :04/11/15 19:41:59 ID:DjTqOnSs
「湿度」「喝采」「火の玉」 2/5 「タエぇー。そんなところにおらんと、はやく来んか。 みんなもう集まってるぞぉ」 土手の下からの声に振り向くと、暗闇にくりくり坊主頭の シゲの顔が見えた。 「あたし、ここにいるよ。勇太と一緒に」 その言葉を聞いて、シゲが一瞬苦いものでも噛んだような 顔をした。 「勝手にせぇ!!」 シゲはいい捨てて、走っていった。 タエは勇太と空を見上げた。 「ああ、雲が晴れる。ほうき星が現れるぞ」 勇太の瞳が輝いて、北東の空から雲が割れていった。 「大丈夫、あれは氷で出来た火の玉なんだ。今日は湿度も 低い。くっきり見えるぞ」 勇太は一心に天を見上げていた。 タエは勇太の瞳の中に、輝く尾をひるがえしたほうき星 の姿を見た。 「タエ、見ろよ。凄いぞ。あれは遠くにあるんだ。人間が たどりつけない遥か遠くに」 タエは勇太だけを見ていた。 目をそらすと今にも、空の彼方へ行ってしまう気がして。 「俺はいつか、あそこに行くんだ」
701 :
退魔師 :04/11/15 19:42:45 ID:DjTqOnSs
「湿度」「喝采」「火の玉」 3/5 やがて時がすぎ、タエの膝が寒さで凍え始めたころ勇太 はいった。 「ああ、ほうき星が山の端へ消える。行かなきゃ」 勇太は立ち上がった。 タエは声を振り絞って叫んだ。 「行かないで」 勇太は一瞬戸惑った。 そして踵を返すと山へ向かって走り出した。 「行かないで」 タエは適わぬ思いを、噛み締めるようにもう一度叫んだ。 「行かないで」 もう一度。 勇太の姿が山の中へ見えなくなったころ、遠く町のほうで 歓声があがった。 喝采が響いてくる。 みんなが踊っている・・・ タエは土手に座り込んでいた。 もう何も見えない。 空はうす曇りで、タエには小さな星しか見えなかった。
702 :
退魔師 :04/11/15 19:44:15 ID:DjTqOnSs
「湿度」「喝采」「火の玉」 4/5 タエが泣きはらした目で俯いていると、いつのまにかシゲ が立っていた。 「タエ、来い」 黙ったままのタエの手を、シゲは強引に取った。 「いつまでも死んじまったやつのことばかり考えるな」 シゲの手は震えていた。 「タエ。勇太は死んじまったんだ。半年前のあの夜に。 あいつは、ほうき星に連れてかれちまったんだ」 タエの脳裏に、5月の悲しい出来事が走った。 ほうき星の飛んだ夜、1910年の5月19日の夜に 勇太は山に登り、崖から足を滑らせて死んだのだった。 止めるタエの声を振り切って。 あの時、勇太はほうき星を選んだのだった。 タエはそれでも、勇太が好きだった。 行かないで。何度も心に思った。 そして勇太は帰ってきた。 しかし、ほうき星の夜のようにタエを土手に誘いに来る のだった。 毎晩毎晩、雨の降らない日の夜には。目を輝かせて。 勇太はタエにしか見えず、ほうき星は勇太にしか見えない。 タエは勇太の瞳の中のほうき星と、いつまでも戦っていた。 「さあ、タエ。行こう。祭りが終わっちまう」
703 :
退魔師 :04/11/15 19:45:29 ID:DjTqOnSs
「湿度」「喝采」「火の玉」 5/5 タエはシゲの手に優しく引かれて、秋祭りの火がかすかに 揺れる闇の中へ歩いていった。 みんなが踊る、楽しげな音が夜空に響いていた。 「おばあちゃん、おばあちゃん。どうしたの早く早く」 二階のベランダから可愛らしい声が弾ける。 1986年の4月。76年間の宇宙旅行の末、ハレー彗星 が地球に帰ってきた。 夜の住宅街の屋根の下、それぞれの人々がそれぞれの望遠鏡 を覗き込んで雲が晴れるのを今か今かと待っていた。 「おばあちゃんってばー」 ついに孫娘が日本間に乗り込んできた。 「もうすぐ来ちゃうよ」 興奮して頬っぺたが桜色だ。 90歳になったタエはそんな孫娘の様子に顔を綻ばせて ニコニコしているだけだった。 「ハレー彗星見ないのー? 次に会えるのは76年後だよぉ」 「うふふ。おじいちゃんがね」 タエはにっこり笑うと、そっと写真立てを見た。 「嫉妬しちゃうから」 屋根の上をみごとなしっぽを引いて、ほうき星が駆けて いった。
704 :
退魔師 :04/11/15 19:48:21 ID:DjTqOnSs
長くなっちゃった。 わかりにくかったらごめん。 次のお題は 「船」「指きり」「りんご」で。
ho
706 :
話 :04/11/19 17:04:41 ID:/1e2Hu6e
彼はここへ来る前、船に乗ったといいます。 目が覚めるといつも通りの世界でした。 でも何かが違うのです。 一人で暮らすには広すぎるこの部屋。 何かが抜けております。思い出せない大切なモノのようです。 周りを見渡すと写真が。見知らぬ女性とともに写る自分の姿が。 そして幸せそうな表情。 彼女は一体誰でしょう? この懐かしさにも似た切なさはどこからこみ上げてくるのでしょう? 彼はたたずみながらいっそう記憶をたどるのです。 もう少しあと少しのところで、霧のような靄のようなものが隠してしまうのでした。 何か決定的のモノがあれば、もう一つ手がかりがあればこの靄も消えうせると彼は思います。 そう考えていると、玄関から誰かが帰ってきたようです。 彼のいる茶の間に老女が一人入ってきました。しかし彼女は彼に気づいていないようで 見向きもしません。見覚えのある彼女ですが、彼は声をかけることができないようです。 見覚えのある彼女、写真の女性に少し似ている。親戚かそれとも親なのでしょうか? しかし、どうしてこちらに気付いてはくれないのでしょうか?無視をしているわけでもなく ただ、気が付かない。しかし彼女がそばにいてくれるだけで足りなかったものが、抜け出ていたなにかが 埋まっていく気がします。彼女は彼にとって一体何なんでしょう?
707 :
話 :04/11/19 17:05:12 ID:/1e2Hu6e
彼はそのとき彼女に触れてみたそうです。 触れた瞬間ようやく埋まったそうです。 そして彼女の想いが伝わってきたそうです。二人に訪れた永遠の別れを思い出したのです。 彼は死んでいたそうです。そちらの世界での話しですが。 彼は病床で彼女との日々を思い出しながら 彼女の手を取り安らかに意識を失ったそうです。 彼女は喪失感と失意の日々を送り続け、何年かを過ごしたそうです。 そちらの世界とこちらの世界は多少の次元のズレにおいて構成されているそうで 幽霊だとおもわれるものはたまたま波長のあった生者どうしで必ずしも死者ではないそうです。 そちらで亡くなればこちらに移るただそれだけだそうで。 すべてはまるでメビウスの輪のような。 しかし、知る人間は少ないそうです。 すべてを知った彼の目には涙が一滴落ちてゆきます。 そして悟りました。 彼女はやがて気が付くのです。彼があの頃と変わらぬ彼がそこにいることを。 彼はつぶやきます。 もう二度とはなれることはない。また共に生きようと。幸せな日々を送ろうと。 彼は彼女の手をとり指切りをします。彼女も微力な力ながら応えます。 そして共に船へと乗り込み 彼女のそちらでの人生が終わりを迎えました。 そして彼との新しい日々が始まるのでした。
708 :
話 :04/11/19 17:06:33 ID:/1e2Hu6e
りんごがないですね すいません なんていうか今構想中の小説の気分転換に書きました 駄文 ですいません
709 :
本当にあった怖い名無し :04/11/19 23:44:16 ID:/1e2Hu6e
この板は死んでいるのでせうか?w 誰も来ないようで・・・・
>>708 お題全部いれられてない上に自分で駄文だって思ってるんだったら
投下すんなよ
そういえばオカ板、創作系のスレが幾つか死んでるなぁ。 ゾンビスレとか新鼻袋スレとか。 >708氏 スマソ、何度読んでもピンとこない…俺の苦手なポエムっぽいからか。
>>710 俺、鼻袋好きで話も書き込んだりしてたんだがもう次スレ立たんのかな〜?
714 :
座布団猫 :04/11/22 00:04:44 ID:AZgXvXhm
次の御題は?
次のお題は俺が適当に決めちゃうよ。 「映画」「傘」「ロック」でよろしく。 んで、鼻袋の新スレも立てます。 まともなスレ立てはじめてだが・・・
傘をさしながらロックな映画を見た。
718 :
ZAB :04/11/22 19:55:24 ID:AZgXvXhm
噺が浮かばないうちにずるずると時間が…
>>709 内容の良し悪しでなくて、なんていうか、
ポエムって読んでてこっぱずかしくなっちゃうのよね。
ま、気を落とさずにガムバってね!
気分転換にわたすのマンガ日本昔話でも読んでちょ
720 :
キタキツネツキのマンガ日本昔話 :04/11/22 21:38:56 ID:ouVhv89l
「船」「指きり」「りんご」 その1 いまから何十年前のことでしょうか、わたしの両親が商いをしていた頃の話です。 わたしのねえさまは、それはそれはきれいなひとでした。 そのねえさまが手代の嘉助と手を取り合って駆け落ちしてしまったんです。 ふたりは千石船にもぐりこみ、追っ手から身を隠すように、 リンゴの詰まった樽の間に隠れていたんだそうです。 ところが船は嵐に遭遇して難破してしまい、 ねえさまだけが行李にしがみついてかろうじて浜に流れ着いたところを助けられ、 家に送られてきたんです。 ねえさまは死人のような青白い顔をして床に臥せってしまいました。 そしてわたしには一言も口を開いてはくれませんでした。 そんなねえさまの世話をしてばかりいるのは気がめいるので、 わたしは気晴らしに浜へと散歩に出たのです。 そこで浜に流れ着いた大きなリンゴを三つ、見つけたのです。 それはみごとなくらい大きくて、真っ赤なリンゴでした。そう、まるで血の色のような・・・ その三つのリンゴを母さまへ見せたところ、母さまはとてもよろこんでくれました。 母さまはそれを盆にのせて、ねえさまのところへと、持っていって言いました。 「さあ、みごとなリンゴを持ってきましたよ、いま皮をむきますからね。」
721 :
キタキツネツキのマンガ日本昔話 :04/11/22 21:41:43 ID:ouVhv89l
「船」「指きり」「りんご」 その2 ところが、それまで床に臥せていたねえさまが、そのリンゴを見たとたん、 がばっと起き上がったのです。 そして、母さまの制止も聞かず、リンゴにとび付き、まるごとむさぼり食べたのです。 ばりばりばりと、音をたてて、芯ごと噛み砕き、あっという間に飲み込みました。 一個目を食べ終わると、二個目も同じように、ばりばりと噛み砕きました。 母さまとわたしは、その様を唖然と見ているだけでした。 そして三個目のリンゴにも同じように齧りついて、半分ほど噛み砕いたころでしょうか、 突然、ねえさまが齧り付くのをやめて、リンゴを睨み付けながら、 「ひいぃぃぃ!」と悲鳴をあげたのです。 ねえさまは口からリンゴの汁とよだれの混じった泡を吹きながら、失神してしまったのです。 その手から離れて、母さまとわたしの足元にごろんごろんところがってきたリンゴをみて、 わたしたちも悲鳴をあげました。 そのリンゴには芯がありませんでした。 いえ、正確に言うと、芯はあったのですが、それはリンゴの芯ではなくて、人間の小指でした。 根元から切り落とされた人間の小指が、芯のかわりにリンゴに入っていたのです。 それ以来、気を失ったねえさまは「ゆるして・・・ゆるして・・・」と つぶやくばかりで、二度と目を覚ますこともなく、花が枯れるようにして、亡くなりました。 ええ、もちろんわたしは両親からこっぴどく叱られましたよ、「妙なものを拾ってくるんじゃない」って。 初めはあんなに、いいものを見つけてきたって喜んでいたのに、現金なものですよ。
「船」「指きり」「りんご」 おわり 小指ですか? 不思議なことに、あのあとわたしたちが家人を呼んで探させたんですけど、 小指どころか食べかけのリンゴさえ、まるで煙のように、跡形もなく消えてしまっていたんですよ。 あれはいったい何だったのか・・・ きっとあれは嘉助がねえさまと指きりをかわした契りの小指だったんだと思います。 わたしが思うに、きっと嵐の海でねえさまは、 自分が助かりたいがために嘉助を突き放して行李にしがみついたんですよ。 え? わたしが意地悪ですって? そうかもしれませんねえ、いつもねえさまのことを羨んでいたから。 でも嘉助はねえさまのことを怨んでいたのか、好いていたから出てきたのか、わたしにはわかりません。 男と女の仲は善いとか悪いとかで割り切れるものじゃあ、ありません。 この歳になってもまだ男女の仲というのはよくわかりませんよ、ほんとに・・・ そうそう、あの出来事からしばらくたって、隣村の吾平が行商からの帰り道に、浜のそばを通ったら、 白装束を着たねえさまと嘉助が小船に乗っていたところに出くわしたそうです。 吾平は「おーい」と声を掛けたけれど、櫓を漕ぐ嘉助は振り向きもせず、 するすると沖へと出て行ったそうです。 あとからとっくの昔に二人は死んでいると聞かされて、吾平は三日間、熱を出して寝込んだそうですよ。 吾平は怖がりだから、あははは・・・ それにしても、あの世で連れ添う二人は幸せなのでしょうか? 男と女の仲はほんとうに、よくわかりませんねえ・・・
ごめんなさい! ついあわててあげちゃいました! ほんとは方言と昔言葉を交えて書こうとして、 断念しました。 おのれの勉強不足に気づいたからです。 岩井志麻子先生がうらやますい・・・
次のお題は DP/nhcxv さんからお借りして 「映画」「傘」「ロック」 でいいと思いますので、ヨロシク。
浜の白装束の二人の姿に、戦慄しました。
|::::::::::::::::::::::::::::::: |" ̄ ゙゙̄`∩::::::::::::::::新作まだかなあ……。 |,ノ ヽ, ヽ::::::::::::::::::::::::: |● ● i'゙ ゙゙゙̄`''、:::::::::::::::: | (_●_) ミノ ヽ ヾつ:::::::::: | ヽノ ノ● ● i:::::::::: {ヽ,__ )´(_●_) `,ミ::::::: | ヽ / ヽノ ,ノ::::::
テスト
728 :
1/5 :04/11/27 09:08:43 ID:L5xyPOxn
「映画」「傘」「ロック」 「まいったなぁ」僕は呟いた。車内にキーを残したままロックをしてしまった。 ドライブ中に道に迷い、そのうちに尿意を催してきて、 何処でもいいから用を足してしまおうとして、やらかしてしまったのだった。 なんとかウインドウをこじ開けようと悪戦苦闘したが埒があかず、 JAFを呼ぼうにも携帯電話は車内。 仕方が無く近くで電話を借りようと車を離れた。 空は重くのしかかるようで、今にも降り出してきそうなのが益々気分を暗くさせた。 曇天な上、日は傾き始め辺りは暗くなりかけているのに 木立と草むらの向こう、一軒ポツリと建つ民家に灯りが点いていない。 「もしかして廃屋なのか…」雨は降り出し始めた。僕は泣きだしたくなってきた。 まぁなんとか雨宿りくらいは出来そうだ、精一杯前向きに考えることにして 雑草に埋もれつつある道を歩き、その家へ向かった。
729 :
2/5 :04/11/27 09:09:59 ID:L5xyPOxn
庇の下に立ち煙草に火を点けて一服、少し気分も落ち着いてきて、 何の気無しに戸に手をかけると鍵はかかってない。 もしや傘があるかも、と思いついた。 傘なんて大抵玄関に置いてあるものだしな。それ以上中に入る必要はあるまい。 傘さえあれば、電話のあるところまで歩いていけるだろう。 何よりも、ここで一晩明かす事を考えるとゾッとする。 意を決して引き戸を開け、中に入ってみた。湿気がムワッとくる。黴臭い。 家の奥に広がる暗闇には目を向けないようにして、傘を探すことに専念した。 転がる子供用の小さな靴が物哀しい。 ライターの火を頼りに探したけれど、あったのは骨だけの、傘の残骸だけだった。 外は最早大降りだ。あの厚い雲では止むまで時間がかかるだろう。 「どうせここから動けないのであれば」僕は腹を決め、家の中に入っていった。
730 :
3/5 :04/11/27 09:16:20 ID:L5xyPOxn
防水シートみたいなものがないか、なんならゴミ袋でもいい。 雨合羽替わりになるだろう、そういう期待もあった。 土足で上がることに多少の抵抗を覚え、恐る恐る一歩を踏み出した後は大胆になった。 目的があれば怖さは薄れるものだ。静かに歩くとミシミシという家の軋みが心細く、 そして立ち止まると雨音の他に何か物音や話声が聞こえる気がする。 だから逆に僕はズカズカと家の中を歩いて、バシーンと障子や襖を引き開けていった。 ほとんど真っ暗な中をライターの灯りだけを頼りに手探りで散策。 板の間はまだしも畳の間は床が腐って抜け落ち、かなり荒廃していた。 雨への役に立ちそうなものは何もなかった。
731 :
4/5 :04/11/27 09:25:41 ID:L5xyPOxn
「よし二階だ!」 二階へまで上がるのは流石に躊躇していたのだが、こうなったら毒食えば皿まで。 先住民は家財道具をかなり残して去ったようだから、もしかしたらレインコートなどがあるかもしれない。 そして僕は階段を上がり、右手の部屋から見ていこうと決めた。 二階は怖い物見たさの若者によって荒らされたのだろう、廊下の壁に様々な落書きが書き殴られ、 その中に順路を示すように右に向かって矢印が書かれていたからだ。 箪笥や本棚が倒れて重なり、入室してみたものの奥へは不可能そうだった。 なんだよ何もないじゃんと空元気で強がり、ドアの横を見ると倒れた家具を避けるように矢印が。 矢印の指示通りに隣の部屋に入ると、前の部屋と同様に家具は倒れ積み重なり。 そこは子供部屋らしくおもちゃ、人形や絵本が散らばっていた。 現在はその子も大きく成長して幸せに暮らしているかもしれない。 なのに僕はその荒れきった部屋の様子に心の痛みを覚えた。 そして今度は矢印は対面の部屋を指すように書かれている。
732 :
5/5 :04/11/27 09:45:12 ID:L5xyPOxn
向かいの部屋は、今までより散らかり方はさほどでないものの、何か無惨な雰囲気がした。 窓にかかるカーテンは切り裂かれたように垂れ下がり、 僅かに差し込む薄明かりがそう見せたのかもしれない。 壁にはべたべたとポスターが貼られていた。昔の映画のポスターだ。 映画好きの青年の部屋だったんだろう。矢印を探すとドアの横に。 もう残すは一室しかないのだけれど、当前の如くその隣室に向かって矢印は伸びている。 その横に貼られたポスターには感心を覚えた。ドロンの息子が出演した少々マニアな映画だ。 手を伸ばすと、片側のピンがはずれた。 ポスターに隠されていた壁には拳大くらいの「死」の文字。 つまり、次は死ということ!? 僕はパニックを起こしてそこから飛び出た。 「きっと誰かの悪戯だ」 僕は、あれは何処かの悪趣味な者が廃屋となった後に書き込んだものだと自分に言い聞かせた。 そんな奴の思う壺に填ってはいけない、いけない、いけない。 でも引き返そうという気はしない。最後まで見届けたい。 気を取り直して、でも最後の一部屋のドアを開ける。 映画のポスターのタイトルは「Cronica De Una Muetre Anunciada」
話の詰めが足りなくて訳のわからんものになっちゃったな。スマソン 次は「蛙」「煙草」「リモコン」でよろしくお願いしまふ
>733 映画の題名が効いてます。こわっ
ho
736 :
キタキツネツキ :04/12/08 02:43:52 ID:FVwHd26D
「蛙」「煙草」「リモコン」 1/2 喫茶店で彼女と待ち合わせていると、彼女が道路を渡ってくるのが見える。 煙草をくわえて火をつけたとき、その目の前で彼女が車に轢かれて死んでしまう。 僕は胸をかきむしり、泣き喚く。 彼女を生き返らせてくれるなら、悪魔に魂を売ってもいいとつぶやくと、悪魔が現れた。 それでは魂をいただきましょうといって、僕の胸を切り開き、心臓を取り出した。 そして代わりに心臓と同じ大きさの牛ガエルを、心臓のあった場所に収めた。 彼女の潰された内臓の代わりに八メートルもある青大将を収めた。 もちろん蛇の口が下腹部に向くようにだ。 でも悪魔は神様ではないので、彼女の心までは蘇らせることはできない。 だからリモコンで彼女を動かすのだ。
「蛙」「煙草」「リモコン」 2/2 立ち上がった彼女は淡いピンクのドレスをまとい、 手を差し出して「サア、オドリマショウ」と誘う。 僕は白いタキシードを着て、彼女の片手をとり、 もう片方の手を腰にまわして、ダンスを始める。 彼女がおなかをグイと押し付けるたびに、 蛙でできた僕の心臓はビクンビクンと跳ね上がる。 悪魔にリモコンで動かされている彼女が生ける人形ならば、 悪魔に魂を売った僕も人形だ。 ふたつの人形が悪魔の奏でるアコーディオンの音に合わせて、くるくると踊る。 ふいに悪魔が僕たちをつかむと、広場の時計台文字盤の下に据え付けた。 こうしてふたつの人形は、時報が鳴るたびに踊り続けるのだ、いつまでも・・・ 「ねえ、待った?」 彼女の声で我に返る。 口にくわえた煙草はまだ半分も減らしてなかった。 「どうしたの?」 あわてて煙草をもみ消しながら、僕は答えた。 「ちょっと変な夢を見ていてね・・・」 彼女のいやに冷たい手が僕の肩をついと撫でた。 「オカシイヒトネ」 僕の心臓が蛙のようにびくんと跳ねた。
スマン>時計台文字盤の →時計台の文字盤の ネ! むりやりーなカンジで話を作っちゃいました(謝々 次のお題は「釘」「豪邸」「電柱」 でお願いします。
永井豪邸にて、ダイナミックプロのスタッフが新作の構想を練っていた。 「赤穂浪士でいこう! 『電柱でござる』って吉良が電信柱を振り回すんだよ」 真剣に話す石川賢先生。思わず吹き出してしまうとジロリと睨まれたそうだ。 終電の時間が迫る頃、ようやく打ち合わせは終わった。 辞去する際に「今日の話は他言しないように。さもないと…」と釘を刺されたのだけれど、 つい、これはいいだろう、と『電柱でござる』のギャグを飲み屋で使ってしまった。 「喋ってはいけないと言ったのに!」隣に座った女の子の顔が豪先生と賢先生に変わった、そして… 僕は気が付くと豪邸の塀に挟まれた狭く暗い路地の、 ひっそりと立つ電柱に大きな釘で縫い止められていた。 「クリスマス」「時計台」「文字盤」
740 :
本当にあった怖い名無し :04/12/14 15:52:42 ID:v6uLamhn
浮上
742 :
ho~ :04/12/17 19:19:08 ID:/9JVCLgm
寂しいところだなあ・・・ いくら無名の時計台とはいえ まがりなりにもクリスマスイブだというのに 誰もいやしない。 まあ、いいさ。 明日からはココも賑やかになるだろう。 窓から覗くと時計はモウ直ぐ12時を指す頃だ。 さあ、準備は出来てる後は仕上げだ。 メリークリスマス。これが俺の最後のプレゼントだよ。 時計は12時の鐘をならした。 女の悲鳴をかき消しながら・・・ 文字盤を血で染めながら・・・ (FIN) とりあえず書いてみました。 次は、「プレゼント」「代償」「チキン」でお願いします。 しかし、本当に人がいなくって寂しいですな・・・
743 :
本当にあった怖い名無し :04/12/19 15:32:58 ID:sNX0bpWL
age
744 :
本当にあった怖い名無し :04/12/20 02:24:18 ID:8xQYWB1/
「プレゼント」「代償」「チキン」 今日はクリスマス。 僕は彼女の家で、この日を共に過ごすことになっていた。 仕事の帰りに、後で2人で食べるクリスマスケーキとチキン それに用意していたプレゼントを持って、彼女の家に向かう途中だった。 彼女の家に向かうには、ちょっとした山道を通らなければならなかった。 外灯もなく昼間でさえどんよりと暗い道も、今日ばっかりは気にもとまらなかった。 少しクリスマスなムードを出したくなり、僕はラジオをつけることにした。 いつも聴いていた番組も今日はクリスマス特集でもちきりだ。 上機嫌で、懐かしい歌を一緒に歌ってみたり、口笛でメロディをなぞったりしていた。 あんな事が起こるなんて、こんなに幸せな僕が知るはずがなかった…。 山道も中腹に差し掛かったところで、突然ラジオの様子がおかしくなった。 ……ザッ………ザァァ……ザザ…………。 「おかしいなぁ。壊れたのかぁ?」 そういって周波数を合わせようとするが、どこの局もかからない。 ただ流れてくるのはひどいノイズだけ。「電波が悪いんだな」 そうつぶやいた僕の耳に、何かが聞こえた。 「お……お…………おし…え……てやろ…う」 僕は全身から血の気が引くのを覚えた。確かに人の声だ。 それも不気味に低く、この世のものとも思えないなんとも恐ろしい声だ。 だけどきっとどこかの局の番組なんだ。こんな時期にこんなの面白くないぞ。 そう思いチャンネルを合わせようとラジオに手を伸ばした僕はまたしても戦慄を覚えた。
745 :
本当にあった怖い名無し :04/12/20 02:25:18 ID:8xQYWB1/
ラジオの電源は何故か切れていたのだ。ではなぜ……なぜあの声が……? この事実を認めたくない。どんなに矛盾しててもいい。なにかこの恐ろしい現象が起きた理由を 必死に探していた。ハンドルを握る手は汗でびっしょりだ。そしてまたあの声が……。 「私は知っている。教えてやろう」今度はいやに鮮明に、それもまるで頭の中に聞こえるようだ。 僕は恐怖と戦いながらも震える声できいた。「い…一体何を教えてくれるっていうんだ!」 そして声は言った「一時間後に、お前の大事な人が死ぬ。このようにな」 声がそう言った後、僕の視界は真っ暗になった。と、しばらくして向こうに小さな光が見えた。 光は段々こちらに広がってゆき、やがて僕の背後まで包み込んだ。 目を凝らしてその中を見るとそこに部屋があった。彼女の部屋だ。壁の時計は午後8時を指している。 今から約一時間後…。 僕はその部屋の中を自由に歩きることができた。 しかし、物を掴もうとするとスルリと手が向こうへ通ってしまう。「まるで透明人間だな…」 こんな状況でも、意外に冷静な自分に驚いた。その時、彼女が部屋に入ってきた。 「○○!!」僕は彼女の名前を必死に叫んだ。しかし彼女には聞こえていない。 触わろうとすると、やはりすり抜けてしまう。どうしたら気付くんだ…。 彼はこの状況をなんとかしようと考えていると。突然インターフォンが鳴った。 彼女はおそらく僕が来たのだと思ったのだろう。嬉しそうに玄関へ行った。 僕がついていこうと部屋を出た瞬間、争う声、そして耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。 急いで玄関へ走ると、そこには、口や胸から血を流し、苦しそうに横たわる彼女 の姿があった。強盗に抵抗し刺されてしまったようだ。犯人の姿はもうない。 傷口からは血がドクドクと溢れ出し、顔はみるみる青ざめていった。 僕はどうにか助けようと、彼女の名を叫んだり、傷口を押さえようとしたが どれも虚しい努力だった。彼女は最後に僕の名を呼び、動かなくなった。
746 :
本当にあった怖い名無し :04/12/20 02:28:50 ID:8xQYWB1/
僕は見ていられなくなり、目をめいっぱい閉じて泣いた。 再び目を開くと、彼女の姿も、部屋も、血も何もなく。ただ車のライトに照らされた 暗い山道があった。車は路肩で停車していた。 「きっとすごい眠気に襲われて無意識にここで車を停めて眠っていたんだ」 そう自分に言い聞かせるように口に出し。急いで車を出した。時間は7時半。 家に着くのは40分後か……そう思った瞬間、さっきの出来事が急に思い出された。 きっと夢だと思っていたが、何かが頭に引っかかる。なんだか嫌な予感がした。 そして僕は先を急ぐことにした。メーターは70キロを指していた。 30分後、僕は彼女の家の前に着いた。急いで彼女に会おうとと車を出る。 と、視界に彼女の家の前を、用心深く辺りを見回し、行ったりきたりする男が見えた。 怪しいなぁ。そう思って車の陰から見ていると、男が彼女の家のインターフォンを押した。 僕はまた夢のことを思い出し、時計を見た。針は8時を指していた。 僕はただならぬものを感じ、玄関の前まで全速力で走った。彼女が扉を開けようとしたとき 男は懐から包丁を抜き出した。彼女は男の要求をきく間もなく、パニックで家の中へ逃げようとした。 閉まりかけの扉を包丁でこじ開けようとする男。しかし僕は運よく間に合い、男を扉から突き放した。 激しいもみ合いになる。買ってきたプレゼントももうグチャグチャだ。大丈夫、相手は小柄だ。 しかし次の瞬間、腹部に激痛が走った。男は悲鳴ともつかぬ声を発しながら逃げていった。 傷口からは黒い血がドクドクと流れる。目は回り、立てそうにない。遠くにサイレンの音が聞こえる。 どうやら彼女が呼んだらしい。彼女が慌てて家から飛び出してきた。傷口をふさぐ彼女の手は 血で真っ黒だ。「ゴメ…ン……プレゼ…ト………ぐちゃぐちゃ」 「そんなこといい!そんなことより生きて!また元気な姿見せてよ!!それがあたしにとっての最高のプレゼントよ!!!」 彼女の顔はもう涙でぐしゃぐしゃだった。 薄れゆく意識の中であの声を聞いた。 「おまえの命はあの夢を見せた代償としていただいた。」 こんなん書いたん初めてですぅ。なもんで駄文はお許しおぉ(;□;) 次のお題は、「井戸」「ロウソク」「なわ」おねがいしまぁす☆
|ω・`)ネタが浮かばないんです……。
俺は妻の死体を古井戸に放り込んだ。 近所には家出したとでも言っておこう。 妻が嫌いで殺したわけではない。 むしろあんな趣味の合う女はいなかった。 そう、そのSM趣味が高じたあげくの事故死だったのだ。 あくる日テレビではなわの番組を見ていると 突然、電気が落ちた。停電か。 買い置きのロウソクに火を灯す。 日夜妻とのプレイに使っていた 思い出のカメヤマロウソクだ。 ボンヤリとした薄灯りの向こうに妻の姿が現れた。 今度は貴方の番よ。 俺達は共にSでありMであり、役割を交代しながら 夜を明かしていたのだった。 気が付くと俺は金縛りにあっていた。 麻のロープで縛られたような感じ。いい感じだ。 女王様、もっと。 脳髄に突き刺さる熱い痛みに俺はエレクチオン。 あなただけ行かさない。あたしと一緒に逝って! いつの間にか俺は暗い井戸の底で月明かりを見上げていた。 凍り付くような水に体温を奪われ俺は死んだ。 妻の話では地獄の責めは究極のハードプレイらしい。 俺は楽しみでワクワクしながら三途の川を渡る。 次「右目」「空」「エスプレッソ」
ho
浮上しますあqwせdrftgyふじこlp;
751 :
本当にあった怖い名無し :05/01/03 12:08:19 ID:hRUF/xYS
としあけにつき 浮上
752 :
本当にあった怖い名無し :05/01/03 12:49:26 ID:VNSy8kpH
片目づつ空を見上げると全く違ってみえるよと彼女はエスプレッソを片手にほほえむ ぼくはそんなにロマンチストではないよと笑い返したけどさっそくやってみての言葉にさからえない 左目で空を見る ただの青空 右目で見る やっぱりただの青空 かわらないよと彼女を右目だけでみると彼女の後ろに赤ん坊が見えた やばい 彼女も俺の後ろにいるだろう女たちに気付いているのだろうか みなさんおそくなりましたがあけましておめでとうございます つぎは、お年玉、電線、フラスコで
754 :
本当にあった怖い名無し :05/01/13 18:17:37 ID:Ka2nMwZE
とりあえず保守保守 大変なお題のようで(;´Д`)
755 :
「お年玉」「電線」「フラスコ」 ◆DlMPPfvBt2 :05/01/14 00:31:51 ID:eFLu9Ygo
お蕎麦、年明け、初詣 全てを恙無く終えて床に付いたのはすでに東の空が白み始めた頃だった ベッドに横たわりふと寝返りを打つと、異様なものが目に入った いつもと同じ何の変哲もない棚の中段あたりに、見覚えの無いものがある 「フラスコ…だよな、多分」 中身の入っていないのにコルクで蓋をされたフラスコが、不自然に置かれていた 俺は科学者じゃない。 それどころか科学に興味も持ったことの無いような人間だ なぜか無性に気になる、常日頃から衝動買いをしやすい俺だったけれど 今棚に置いてあるアレは衝動的に欲しくなるような物じゃない ついさっき横になったばかりのベッドから起き上がり歩みを進める 近づいて見てみても、特に変わったことの無いただのガラスの容器 ひょいと持ち上げると小さな紙切れが落ちた きっとこのフラスコの底にでも張り付いていたんだろう 目をこすりながら拾い上げその紙切れを覗き込む 「おとしだま…?」 おとしだま…ってお年玉の事だよな? いくら新年だからって冗談がきつい イタズラにしても誰がやったのか分からないし、気味が悪い 新年早々嫌な気分にさせられた 折角今日は久々の帰省だと言うのに どうせなら金目の物でもいれて置いてくれればいいのに 他力本願な事を考えていても仕方が無い 「捨ててくるか、気持ち悪いし」 言い聞かせる様にしてフラスコを手にする 向かう先はゴミ捨て場、三が日は収集は休みだが構うほど出来た人間じゃない 俺は適当にサンダルを引っ掛けると玄関を出た
外に出ると信じられない様な光景だった 雪、吹雪、ブリザード 俺が住んでいる地域は決して温暖な方ではない しかしココまでの大吹雪と言うのが起こり得るような場所でもない 驚きと急激な寒さで、行くのを止めようとも思ったが今更だ それよりもこの得体の知れないフラスコを部屋の中においておくほうが嫌だ 「くそ、新年からおかしな事ばっかりだ」 一人で毒づいても応える相手もいない その苛立ちをぶつける相手もいない… ―――いや ここに丁度いい物があるじゃないか ドコから入り込んだのか分からない不気味なフラスコ 俺の新年をぶち壊してくれた忌まわしい物だ 薄ら笑いを浮かべながら力一杯放るべく、大きく振りかぶる 「さぁ、ピッチャー振りかぶって第一球…」 景気のいい破砕音でも聞けば気も晴れるだろう 「投げましたっ」 ガシャーン!
「あーあ…やっちゃった」 白く高い建物の屋上から見下ろしながら 私は誰へとでもなく呟いた すぐ下の私道は防護服を纏った消防隊員 そして野次馬という人間独特の不思議な精神構造をした人たちでごった返している 「この国の習慣になぞってたまにはサービスしようと思ったんだけど… やっぱり私には向いてないのかなぁ」 ゴミ捨て場にはウェルダンくらいの焼き加減になった男が一人 あー…もう一個か、一人って言うのは生きている人間の単位だっけ 跳ね回る切れた電線が当たる度に、炭に近づいていく 私の新年最初の仕事は、結局あの男の魂になってしまった 「せっかくの落し魂、気に入らなかったみたい」 とっとと回収して里帰りでもしよう 残務整理に追われる大晦日を乗り切った清清しい新年 今年の業務が始まる前に、ゆっくりと羽を伸ばすことにしよう また忙しくなりそうだ 手にはフラスコ、大晦日のあの日に死ぬはずだった男の魂が入っている 今度は素直に持って帰ろう、無駄な仕事をすることも無い 「ここの研究室の人みたい 急にふらふら出てきたと思ったら壁に実験器具を叩き付けたみたい」 「あそこの壁って、実験用の高圧電線が通ってたよな?」 「そうそう、死因は感電らしいんだけどちょっとおかしいのよ」 「おかしい?」 「感電による火傷なんかは今日出来たもので間違いないんだけど 心臓が停止していたのは確かに昨日なんだって」 初カキコです。とりあえず色々とでっち上げてみました 長文ですいません、もっとコンパクトに纏められるよう精進します 次のお題は「蜘蛛」「コンタクト」「紫陽花」でお願いします
758 :
本当にあった怖い名無し :05/01/20 09:37:40 ID:YRRNcrwB0
未だ正月ぼけが治ってないのだろうか・・・ 書き込み期待上げ
age
「蜘蛛」「コンタクト」「紫陽花」 俺コンタクトしないと何も見えない。 こないだコンタクトなしで外歩いたらけっこう怖かったよ。 木の枝から蜘蛛がぶらさがってたんだけどさ、ほんと目の前5cmくらいに 近付くまで気付かなかった。ぼやけてまわりの風景ととけこんでたの。 あとキレイな紫陽花が咲いてるなあって思って公園の植え込みんとこに 近付いてみたら顔が紫色に変色した死体だった。 その死体が俺に笑いかけたように見えたのもたぶん俺の目が悪いせい。 たぶん。 ■次のお題は「時計」「指」「音」で。
「時計」「指」「音」 いつもと変わらぬはずの日曜の昼。腕時計が止まっていたので 電池交換に持っていくが、壊れているという。 この際だし、じっくり気に入る時計を探そうと思ったので、その場を後にした。 ――――翌朝―――――――――・・・ 「――――――・・・?・・・・・!」 偶然もここまで来ると何か妙な感じがしてくる。「落ちて」いた。「時計」が。 私は、「交番に届けるんだからいいんだ」と考えつつ、 「それ」をポケットにしまった。 ―――――――――――――ふぅ・・・ 届けるんじゃなかったのか、と自問自答。だがいまさらいってももう今は夜だ。 ベッドの上で時計をじっくり眺める。『明日届けるんだ、この位・・』 という後ろめたいような考えが頭をもたげる。 「なに考えてるんだ。これぐらい全然後ろめたくもないだろう?」 と、自分自身に言い聞かせるようにつぶやいてみる。 そして、右手の指先に「スッ・・」という冷たい感触が伝わり、 「カチリ」と耳に伝わる金属音。 ―――――――そこから今までの記憶は完全に無い。 気が附くと朝になっていた。前夜の記憶は夢ではなかったのかと、 右手首を見てみるが、手首から朝日が反射する銀色の光がみえたとき、 「あぁ・・・」という、落胆とも安心ともつかない溜息が出た。 意識もはっきりしてきた。とりあえず外そう、と手をかけるが、 さっぱり外れない。今までつけてきた様々な時計の外し方を試みるが、無駄だった。 ――――――――1部、完。――――――――――― 第2部に続きますです。
「時計」「指」「音」第2部です・・・ ―――土曜―――――――――― 火、水、木、金曜と離れない時計に耐えてきて、 やっと今日、近所の時計屋に行く。が、時計屋にも正規の外し方が 分からないという。「取扱説明書はどうしました?」ときかれたので 仕方なく正直に事と次第を話したが、やっぱり外せないので 持ち主の方には申し訳ないが壊す事になってしまった。 が――――――・・気色が悪すぎる。 壊そうとするたびに手首が「ズキン!」と痛むのだ。 我慢していたがとうとう駄目だ、と感じ 叫びそうになった所で店員が先手を取って叫びだした。 そして脅えた表情で一言、「本店では対応できそうもありませんので、 大変申し訳ありませんが、他店へ御行きください・・」 家へ帰って、店員の脅えた表情が理解できた。 ・・・――――――――そう、私の手首は――――――・・ ――――――――――<完>――――――――――――――― 少々卑怯かも知れませんが、この後は皆さんのご想像にお任せします。 次のお題は「風船」「怪物」「冷蔵庫」です。 よろしくお願いします・・・ageさせていただきます。
ho
そんなことより聞いてくれよ。オカルトとはあんまり関係ないけどさ。 この前、近所の心霊スポット行ったんです。心霊スポット。 そしたらなんか人がめちゃくちゃいっぱいで歩けないんです。 で、よく見たらなんか風船とか駄菓子とかの出店が出てて、町内肝試し大会、とか書いてあるんです。 もうね、アホかと。馬鹿かと。 お前らな、町内肝試し大会如きで普段来てない心霊スポットに来てんじゃねーよ、ボケが。 なんか親子連れとかもいるし。一家4人で肝試しか。おめでてーな。 よーしパパ心霊写真撮っちゃうぞー、とか言ってるの。もう見てらんない。 お前らな、怪物のお面被って脅かしてやるからさっさと帰れと。 心霊スポットってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。 突然出てきた幽霊といつ呪い合いが始まってもおかしくない、 祟るか祟られるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。女子供は、すっこんでろ。 で、やっと空いたかと思ったら、幽霊が、うらめしや、とか言ってるんです。 そこでまたぶち切れですよ。 あのな、うらめしやなんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。 恐ろしげな顔して何が、うらめしや、だ。 お前は本当にうらめしいのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。 お前、うらめしやって言いたいだけちゃうんかと。 オカルト通の俺から言わせてもらえば今、心霊スポットでの最新流行はやっぱり、 実は自分が幽霊、これだね。 自宅の冷蔵庫から死体が出てくる。これが通の楽しみ方。 語り手ってのは大抵生きてる。それが死んでてびっくり。これ。 で、極め付けに死体発見。これ最強。 しかしこれをすると次からネタが簡単にばれるという危険も伴う、諸刃の剣。 素人にはお薦め出来ない。 まあお前らド素人は、日本昔話でも見てなさいってこった。
むしゃくしゃして書いた。今は反省している。 次のお題は「肩叩き」「エジプト」「タイムマシン」
767 :
本当にあった怖い名無し :05/02/14 09:33:07 ID:6xhNxvWI0
ほしゅ
768 :
本当にあった怖い名無し :05/02/14 11:02:16 ID:5jfWUkde0
hoshu
誰か書いてと期待age。
770 :
本当にあった怖い名無し :05/02/20 23:19:59 ID:1IrUhQc+0
你的大便是这个位的大小
ほっしゅ