警告。
以下の文章は非常に危険です。
生半可な気持ちでは読まないでください。
僕が通っている大学から車で20分くらいのところにあるお堂。
昔のなんとかいう僧侶を祀ったそのお堂は、
地元では有名な心霊スポットでした。
今月のはじめ。大学の同じ研究室の女の子2人がそのお堂へ行ったことが
ないと言うので、僕が連れてってやることになりました。
季節はずれの肝試しということです。
深夜の森の奥。そのお堂は不気味なたたずまいで僕らを迎えましたが、
僕は何度も来たことがあり、これまで特に何が起きたということも
なかったので、怖がる女の子をわざとおどかしたりしてました。
僕は女の子たちがあまりに怖がるのが面白くて、つい調子に乗って
祀られている僧侶の像を叩いたり、お札をはがして破ったりしてしまいました。
なぜあんなことをしてしまったのか。今となっては後悔するばかりです。
そのあと、僕のまわりで恐ろしい出来事が続いたのです。
週末をはさんで、翌週の月曜日に研究室へ行った僕は、
教授から2人が死んだことを告げられました。
2人とはもちろん一緒にお堂へ行った友人のことです。
ひとりは、週末土曜日に研究室であやまって硫酸を浴び、
命に別状はなかったのですが、その夜、病院の屋上から飛び降りたそうです。
顔がひどく焼けただれたのを苦にしたのではないかということでした。
もうひとりは、月曜日の未明に、交通事故にあったとのこと。
僕はすぐにあのお堂でのことを思い出し、次は僕だと恐ろしくなりました。
しかし次は僕ではなかったのです。
翌日、研究室の友人からの電話で、教授が亡くなったことを知りました。
教授は前々から重度の糖尿病を患っていたのですが、
友人の話では、死因は糖尿病ではないらしいとのことでした。
この時点で僕は、自分に何が起きているのかを把握すべきでした。
さらに翌日。水曜日。今度はサークルの友人からの電話があり、
同じサークルの同級生が死んだということを聞きました。
前日僕はそいつにメールを送っていて、返事が返ってこないなぁと
思ってた矢先の知らせでした。
その日夕方のことです。道を歩いてると、
「ハンカチ落としましたよ」と女の人に声をかけられました。
その人が手にしていたのは確かに僕のハンカチでした。
いつの間にか落としてしまっていたようです。
僕にハンカチを手渡すと、その人は足早に交差点に向かって
走っていきました。僕は何か嫌な予感がしました。
「あ、ちょっと待って」
声をかける間もなく、その女性が乗用車にはねられるのを見ました。
瞬く間に炎が広がり、その女性の体が消し炭のように真っ黒になるまで
大した時間はかかりませんでした。
そのおぞましい光景を見ながら、僕の脳裏にある確信が浮かびました。
「あのお堂の呪いだ。僕に関わった人はみんな死ぬんだ」
なぜか確信が僕にはありました。
僕は半ばパニック状態になり、すぐにアパートに戻りました。
鍵をかけてふとんにもぐり、自分が確信した「事実」を反芻しました。
そしてその「事実」のあまりの恐ろしさに体が震えました。
「もう誰とも会ってはならない。誰とも話せない」
あの日以降に、僕と話をした人がみんな死んでいるんです。
いや、話どころではありません。僕がメールを送っただけの友人も死にました。
彼からメールが返ってきたわけではなく、僕の一方的なメールなのに。
返事を返す前に彼は死にました。
そういえば週末に行った近所のコンビニ。
いつも週末の夕方にいる、名前も知らないかわいいバイトの娘。
土曜日に行ったときにはいたのに、日曜日にはいませんでした。
単なる偶然でしょうか。でもそれを他の店員に尋ねることはもうできません。
月曜日に、正門の詰め所にいるいつもの守衛さんに珍しく挨拶しましたが、
翌日、見慣れない人がそこにいました。
そんなことを思い出している時に電話が鳴りました。
だけどもう出るわけにはいきません。
教授のことで電話してきた研究室の友人も、サークルの同級生のことで
電話してきた友人も、おそらくもう死んでいることでしょう。
あるいは、そのことを伝える電話かもしれません。
いずれにせよもう出るわけにはいきません。
それからもう一週間、いや十日でしょうか。
僕はアパートから一歩も外へ出ていません。
何回か電話が鳴ったし、チャイムも鳴りましたが、
もちろん出ませんでした。
なぜあんなことをしてしまったのか。
今はそればかり考えています。
僕は、いつだったかあのお堂へ行った時に
一緒に行った友達から聞かされた話を思い出しました。
あのお堂に祀られている僧は、幕府の反逆者として捕らえられ、
地下牢に5年間も幽閉されていたらしいです。
誰に会うことも許されず。誰に会うこともなく。
孤独ってなんて恐ろしいものなんでしょう。
僕は誰かに相談することすらできないのです。
これから僕はどうなってしまうんでしょうか。
それを考えると頭がおかしくなりそうです。
ところで。
前に書いたように、僕が一方的にメールを送っただけの友人ですら死にました。
ということはこの書き込みはどうでしょう。
この書き込みを読んでいる人もおそらく同じことでしょう。
これを読んだ人は数日のうちに死にます。
さすがにひどい話だと思って、冒頭に読まないように警告を書いて
おきましたが、あれを読んで、どれだけの人が読むのをやめたでしょうね。
おまえらみんな死ぬよ。間違いなく。
今日死なないなら明日。明日死ななかったら明後日だな。
おまえら死にたい? 死にたくないよなあ。
死にたくないなら・・・・
誰か助けてください・・・・・
8 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/05/21 19:29
わーい新スレ一本目だ。
ところで僕、前スレの<a href="../test/read.cgi/occult/1042654400/751" target="_blank">
>>751</a>書いたものなんですけど、
<a href="../test/read.cgi/occult/1042654400/751" target="_blank">
>>751</a>はいわゆるたて読みってやつです。
けっこう苦労して一行の文字数そろってるバージョン作ったのに
誰にも気付いてもらえなくてさみしかったよー。
というわけで(どういうわけだ?)
次のお題は「人形」「星」「針」でお願いします。
「人形」「星」「針」
「絶命しました」
白衣の男が事務的につぶやいた。
それを合図に2人の男達が不機嫌そうな表情で、魂を失ったばかりの肉塊を運び出す。
「だけど死刑執行の立ち会いは何回やっても気持ちのいいものじゃないな」
刑務官の秋山がため息まじりに愚痴をこぼす。
「まったくだ。だけど人間死んじまっちゃお終いだな」
蝋人形のようになった遺体を見て、もう一人の大村という刑務官が言葉を返す。
遺体を霊安室に運び入れると、秋山はトイレに行くと言って出ていってしまい、大村は独り遺体とともに残された。
そして、大村は遺体に向かって語りかける。
「だけどバカだよなぁ、おまえさんも。あの事件の真犯人は俺なのに。まぁ、俺の代わりに死刑になってくれて感謝してるけどな」
大村が語り終わった瞬間、遺体がガバッと上半身を起こし、大村につかみかかってきた。
「お、おまえが犯人だったのかぁぁぁ」
「ひ、ひぇぇぇ、い、生き返ったぁぁぁ・・・」
大村は突然の恐怖に思わず腰を抜かしてしまった。必死で逃げようと出口に向かうが、まるで太い針をさされたようで下半身に力が入らない。やっとのことで扉にたどり着きノブを握ろうとしたとき、不意に向こう側から扉が開いた。
そこには大村を見下ろす顔なじみの刑事をはじめ、死刑の執行に立ち会った関係者が顔をそろえて立っていた。
「大村清一、強盗殺人の容疑で緊急逮捕する」
両手にワッパをかけられ、呆然とする大村に得意満面の笑みを浮かべながら刑事が冷たく言い放つ。
「検察の若き星といわれる霧山検事の入れ知恵でおまえを罠にかけたんだよ。おまえの話もしっかり録音させてもらったからな。残念だったな大村」
ありゃりゃ〜、怪談でも何でもないなぁ(w
ミステリータッチの怪談にしようと思ったんだけど、やっぱり書くのは難しいです…( ̄〜 ̄;)
お題だすの忘れてた…
次のお題は「連休」「マラソン」「ココア」です。
「連休」「マラソン」「ココア」
週末僕は市民マラソン大会に運営ボランティアとして参加した。
初冬にしては暖かい連休初日とあって人出も多かった。
市民マラソンとは言ってもけっこう本格的で、各ランナーが
個別に用意したドリンクを置く給水所も設置されていた。
僕はそのなかの第一給水所でドリンクなどの準備をする係だった。
ふと見ると、いろいろなボトルが置かれている机の端に
なぜかカップにはいったココアがちょこんと置かれていた。
マラソンの給水にココア?しかも白い湯気がたっているホットココアだ。
僕はどんな人がそれをとっていくのだろうと気になった。
次々とランナーが通り過ぎるが、なかなかそのココアの主は現れない。
やがて最後のランナーが通ったらしく、給水所を撤去するように
言われた。僕は係の人にココアについて訊いてみた。
「ああ、ココア?片付けるの忘れてた。それ、このマラソンに毎年
出てる人のなんだけど、実は今日会場に向かってる途中で交通事故に
あって亡くなったらしいんだ。ココアが大好物の人でね、
この大会の名物ランナーだったんだよ」
そんなことがあったのか。一体どんな人だったんだろう。
「ま、とんかくもうここは全部片付けちゃっていいから」
僕はなんとなく片付ける気にはなれなかった。
「で、でも、その人がココア取りにくるかもしれません。
後でちゃんと片付けますから、今はこのままにしといてください」
僕が頼み込むと、係の人もしぶしぶ納得してくれた。
しかし当然だが、その人が現れることはなかった。
その夜、僕のところに宅配便が届いた。
差出人欄には何も書いてない。運送屋の人も「あれ?こんなこと
あるはずないのになあ」と不思議がっていた。
箱をあけると、中にはぎっしりココアパックが詰まっていた。
あの人だ、と思った。きっとあの人なりの感謝の気持ちなんだろう。
不思議と怖いとは思わなかった。
僕はさっそくココアを飲んでみることにした。
あの人の分も、と思って、カップを二つ用意してココアを注ぐ。
もう一つのカップのココアは減ることはなかったが、
僕にはあの人が近くにいるような確信があった。
突然、部屋のパソコンにスイッチがはいり、ワープロが立ち上がった。
驚く僕にはおかまいなしに、カタカタカタと次々に画面に文字が
打ち出されていった。画面にはこう書かれていた。
「もったいないことすんな」
■次のお題は「懸賞」「足首」「遊園地」で。
「懸賞」「足首」「遊園地」
30年前、アフリカのとある国での出来事。仮にその国をX国としておこう。
遊園地で子供相手に懸賞賭博をしていた男がいた。仮にその男をYとしておこう。
Yは警察に捕まり、裁判で死刑判決を受けた。
しかし、死刑判決を下したその裁判官(仮にZとしておこう)も殺された。しかも国家によって合法的に。
Yが処刑の前、最後に食べたいものを聞かれ、
「俺を死刑にしたZの脳味噌が食べたい」と願い出た。
この希望は聞き届けられ、Zは即日料理されてYに振る舞われたそうな。
満足したYは、何ら思い残すことなく断頭台の露と消えていったということだ。
なんでも、X国では国家に反動的な裁判官にこの手を事件を担当させるらしいが。
だが、1年後、X国は死刑制度を廃止し、代わりに両足首を切断する刑を新設した。
聞いたところによると、こんどは国王自身が死刑囚の最後の晩餐になってしまったからだとか・・・
調子に乗ってまた書いてみました。短すぎて内容がちょっと分かりにくいかも。
次のお題は「カップ麺」「徹夜」「思い出」です。
期末試験のために徹夜で勉強していたときのことです。
夜食のカップ麺を食べ終わると強烈な眠気が襲ってきた。
明日は苦手な数学のテストがある。眠るわけにはいかなかった。
しかし、睡魔には勝てずついウトウトとしてしまった。
「ううっ、くるしい」
目を開けると、知らない女がコブシを俺の口の中にねじ込んでいる。
ぐりぐりぐりっと喉の奥に押し込んできた。
「た、助けて」
と声にならない言葉を発したとき、突然その女が消えた。
すっかり目が覚めて、睡魔はどっかに吹っ飛んだ。
おかげで、その後の勉強がはかどり何とか翌日の試験を乗り切ることが出来た。
だけど、あの女は何者だったんでしょう。まさかこの世の者じゃないのでは。
だけどそのおかげで寝過ごすことなく勉強することができた。
高校時代のちょっぴり不思議な思い出です。
次のお題は「刺身」「うどん」「布団」でおながいします。
病気で自宅療養中の友人Yを、俺とHは見舞いに訪ねた。
Yの母親に案内され彼の部屋に行くと、ぼっこりと盛り上がった布団が俺たちを出迎えてくれた。
言うまでも無く、布団の中に居るのはYである。
「あぁお前らか。悪いなこんな格好でさ」
Yの声は心なしかしゃがれている様に聞こえた。Yが罹っている病気とは、風邪の一種なのだろうか。
間も無く、Yの母親がトレイに刺身とうどんを乗せて部屋に入ってきた。
と、おもむろにYの布団をめくり、トレイごと布団の中に放り込んだ。
え?と呆気に取られたのだが、さらに驚いたことに、Yがそれらをむしゃむしゃと布団を被ったまま貪る音が聞こえてきたのである。
おいおい、いくらなんでも行儀悪すぎないかお前?
突っ込もうと思ったその時、丁度Yの飼猫が部屋に入り込み、Yの布団の前を通りかかった。
一瞬だった。
布団の中からウロコだらけの腕が伸び、猫を鷲掴みにして布団の中へ引きずり込んだのは。
半狂乱の猫の鳴き声(というか悲鳴だな)が部屋中に響き渡ったがやがてそれも収まり、
程なくしてペチャ、グチャリ、パキリ、と肉と骨を砕き裂く音が聞こえ出していた。
俺とHはそっと立ち上がりYの家から立ち去り、その後あいつとは顔を合わせていない。
■「油彩」「才能」「脳髄」でよろしく。
「油彩」「才能」「脳髄」
都心にある小さな画廊で、男が等身大の絵に見入っている。
その絵は若い女を描いた油彩画だが、まるで呼吸をしているようにリアルで繊細なタッチで描かれていた。
それは名もない画家の作品であった。
その美しさは男の脳髄を直接刺激し、作者の才能に対する嫉妬心を揺り動かした。
それからというもの、男は時間を作りだしては足繁くその画廊に通いつめるようになった。
作品の値段はそれほど高くはない。男は銀行預金を解約してその絵を買い取ってしまった。
ある夜、男は女のあまりの美しさに、思わずキスをした。
すると、女が絵画からぬけ出しやさしく男を抱擁する。
そして二人は朝まで愛し合った。
次の日、小さな画廊に等身大の男の絵があった。そしてそれに見入る女がひとり・・・
次のお題は「資料」「料理」「理性」です。
「資料」「料理」「理性」
わたしは理性的なつもりだ。
しかし、皆が言うには感覚的な人間らしい。
思うのだが、例えば料理を作る時に醤油を目分量でどぶどぶと注ぐという行為、これ
を(経験による)理性的な行為と解釈するか、感覚的な行為と取るかの違いではなか
ろうか。
まぁ…この文章が理性に基づいたものなのか、それとも感覚的な―要は幻覚―なの
かは上記を踏まえた読者の判断に委ねる事にしよう。
その日、わたしはほぼ完徹状態で三日近く働きずくめだった。作業がひと段落し(し
かし、仕事自体は山と積もっている)仮眠のため休憩室に向かった。
(このような状態であったのもまた幻覚説を強く否定出来ない要因である)
すると、休憩室に向かう途中にある資料室のドアが半開きになっているのに気づいた。
なにげなく中を覗いてみると…さまざまな資料が輪になって空を舞っていた。
「えっ」と思わず声が漏れた。途端に資料らはびくんと空で停止し、一瞬後ばさばさば
さと床に落ちて散乱した。
わたしは叩きつけるようにドアを閉め休憩室に飛び込み毛布を頭からかぶった。
疲労とは恐ろしくもこんな時にはありがたいもので、交代で仮眠に来た同僚に揺り起
こされて目が醒めた。
モカを一気飲みしながらさっきの出来事を考えた。結論は「夢」だった。
わたしは多少マシになったものの相変わらず重たい身体をひきずって休憩室を出た。
そして、「夢」という結論を証明するために資料室のドアを開けた。
残念ながら資料は床に散乱したままであった。
開発室に駆け戻り、人気にほっとした。
後日、資料室を片付けた人から、それらがすべて去年事故死(とは言え今回のわた
し同様の悲惨な勤務の帰りで実質過労死だとわたしは思う)した人物が関わっていた
ものであったと聞いた。
わたしはあの日が旧盆であった事を知り、なんとなく納得したのであった。
えらい時期外れですが、「資料の盆踊り」というフレーズが頭に飛び込んでしまった
ので(笑)
最初の部分はお題の無理矢理消費というのもありますが、それ以上に地口する
照れ隠しだったり。
次のお題は、「源流」「氏名」「蛍光」でお願いします。
新スレからの感想(1/2)
>>2-7,
>>8 「自分の不幸」を「みんなの不幸」にする話ですな。
勿論、本人の言うような少しでも助かる方法の究明の可能性を高める意味も
あるんでしょうけど、それ以上に自分だけ死ぬぐらいならみんなで死ぬ方がマシだ
的発想もあるのでしょう。
前スレの751には気づかず申し訳ない(笑)
その内容も意図的に絡めたのならば、ちょっと面白い試みかなと思います。
>>9 昔の探偵小説風味。
現代だと、「いや、そんな捜査いかんやろ」だし(笑)
んー、例えば、どんでん返し後にもう一回どんでん返しで怪談要素を入れる等すると
面白いんじゃないかなー、と愚考。
>>12-13 これ良い(笑)
ええ話やと思ったら、幽霊にツッコミ入れられるてー。
21 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/05/21 19:43
新スレからの感想(2/2)
>>14 死刑前の最後の晩餐、ってのは聞きますが、ここまで無理してそれを叶える国、
ってのも素敵(笑)
反国王派の陰謀とかあったんじゃないかとちと邪推。
>>15 え、ええ話、なんかな(笑)
女の外見の描写があると、イメージが膨らんで良かったのでないかと。
>>16 なにやら、楳図か日野日出志のワンシーンみたいですな。
母親が持って来た訳わからん取り合わせの飯もYの状態を想像させてくれます。
匂わせる程度の後日談を足したら良いような蛇足なような。
>>17 美しい話です。
その後も色々想像出来てナイス。
願わくば、この事は女の罠(自分が絵から出るために男を誘惑した)ではありません
ように。
>>前スレの772
誰しもが持っているトラウマ。他人からみれば何でもないことでも、本人にとってはリセットしてしまいたい思い出がありますな。僕なんかも小学生のころに…(長くなるので省略)
>>2 なかなかユニークな祟り方ですな(無関係な人間にとっては理不尽この上ないけど)。まぁ僕だったら、死んで欲しい大嫌いなヤシに連絡取りまくったりして(w
>>12 顔も名前も分からない幽霊との温かい心の交流、ほのぼのとした内容がイイ!最後のツッコミは幽霊のココアに対する思いの表れかな?しかしマラソンのスペシャルドリンクがホットココアとは…
>>15 夢とも現実とも区別がつかない狭間での不思議な体験、僕もそのような体験をしたことがあります。ただ、そんな体験をした後でもフツーに勉強できる主人公の図太さの方がコワーです(w
>>16 最初一読したときは、(゚д゚)ハァー?っていう印象だった。しかし、もう一度読み返してその情景を想像すると結構怖い。オチ云々よりも情景描写によるインパクトで読み手を怖がらせる作品かな。だけど、Yは一体どんな病気だったのだろう。
>>18 死霊の盆踊りにひっかけて資料の盆踊りですか…(´Д`;)
怪現象について、「わたし」本人はなんとか理屈をつけて、理性的な判断をしたと思っているようだ。
しかし、疲労による幻覚と単なる偶然とが重なったと結論づけることも可能。これが、冒頭の、理性的か感覚的かは判断する者の解釈によって分かれる、という導入部分とマッチしていて見事。ほんのりと怖い作品に仕上がっています。
>>22 22の作品は自分でも割と気に入っています。
女が意図的に男を誘惑するのではなく、男の方が絵の中の女に恋をしてしまうという設定です。
正直に白状しますと、この作品は83さんの前スレにあった746の作品(「刻之巡」が出てきた作品)に強い影響を受けて書きました。あの作品がかなり印象に残ったものですから。
それにしても作品を書くのは楽しいですね。
いくつかネタも浮かんでいますが、週明けから学部試験の勉強をしなければいけないので、当分ココに来れないのが残念です。
創作と分かっててもコワイ…
すいませんレス数合わせで下げます(以下レス番号編集しないでいいように)
すいませんレス数合わせで下げます
申し訳ありませんがコピペ終わるまで少々お待ち頂けませんか>カキコ
勝手言ってすみません
.
29
30
31
32
夕闇に無数の蛍。その幻想的な雰囲気に私は思わず息を飲んだ。
民宿のおばあさんが教えてくれた通りに源流をさかのぼって1時間。
「蛍光の滝」には私が想像していた以上の美しい光景があった。
人里離れた山奥へ一人旅に行くと言うと、会社の同僚達にはいつも
「25のOLが行く所じゃないよ。もっといい場所いっぱいあるでしょー」
と笑われた。「ふん。彼女たちにもこの光景見せてあげたいわ」
「ここはもう少し遅くなってからの方がキレイなんだけどなー」
背後から突然聞こえた声に驚き振り返ると、カメラを2、3台肩からさげた、
いかにもカメラマンといった風情の男性が立っていた。
「お姉さんもここの蛍見に来たの?」
「あ、はい。私自然が大好きで。でもここ夜の方がキレイなんですか?
残念だな。私もう帰らないといけないんです」
「だったらさ、僕がこれから撮る蛍の写真、君のところへ送ったげるよ」
「いえそんな、申し訳ないですから」
「君さえ良ければ構わないよ。ここに君の住所と氏名と書いてくれる?
あ、その、最近変な事件とか多いから、住所とか書きづらいかもしんないけど、
あの、ほんとに写真送るだけだからさ」
男性の柔和な表情と話しぶり。彼が悪い人だとは全く思わなかった。
私は男性の親切に甘えることにして、住所と名前を書いて男性に渡した。
「じゃあよろしくお願いします。写真楽しみに待ってます」
「また、でなすったか。いつ以来かの」
民宿に戻って、蛍光の滝で会った男性のことを話すと、
民宿のおばあさんは懐かしそうに笑いながら、そう言った。
おばあさんの話によると、数年前に滝へ蛍の写真を撮りに行った男性が、
足を滑らせて谷に落下して死亡したのだそうだ。
「あの人は、本当に自然が好きな人の前にしか姿を見せんのだよ。
あんたがそういう人間だって、彼には分かったんじゃろ。
何も怖がることはないし、心配することもないよ」
おばあさんに言われるまでもなく、私は怖いとはちっとも思わなかった。
「わたしもおんなじじゃよ。あんたが本当に自然が好きだって分かったから
あの滝への行き方を教えたんじゃ。最近の若者はなってないのもたくさん
いるからな。安心できる人にしかあの場所は教えん」
そう言っておばあさんは、少し誇らしげに笑った。
私はお礼を言って、民宿を後にした。
町へ向かうバスに乗り込むと、運転手さんに話しかけられた。
「あそこの民宿に泊まったんでしょう?蛍は見ました?」
「あ、はい。すごくキレイで感動しました」
「なるほど、思った通りの娘だ。あのばあさんもきっと喜んでいるでしょう」
初老の運転手は、満足げに笑った後、こう続けた。
「あの民宿のばあさんはね、ほんとに自然と、それから自然を愛する人が
好きでね。亡くなった後もああして、あの民宿でそんな人に出会えるのを
楽しみに待っているんですよ」
「え?亡くなったあとって・・・・?」
「ええ、実はあのばあさん10年以上前に亡くなっているんですよ。
でも心配しないでください。あの人はあなたに危害を加えようとか
そんなつもりは全くありませんから。ただあなたのような人と話が
したかっただけなんですよ」
にわかに信じがたい話だったが、やはり怖いとは思わなかった。
「あなたの自然を愛する気持ちが、あなたとばあさんをひきよせたんで
しょうね。わたしもここ10年で何人かそういう人を乗せましたよ。
唯一の民宿が閉められて、山里への唯一の交通機関だったこの路線バスも
廃線になったんですがね、ばあさんの客を運ぶときだけ復活するってわけです」
「え?」私は運転手の膝から下が透けていることに気付いた。
「大丈夫ですよ。こんな足でもブレーキは踏めますから。安全運転安全運転。
なんせあなたは2年ぶりの大切なお客さんですからね」
後日届いた蛍光の滝の写真には、満点の星空と、それと競うかのように
舞い踊る数多の蛍の光が写っていた。
私はその美しい写真を眺めながら、また来年行ってみようと心に決めた。
■次は「操り人形」「コンタクトレンズ」「いたずら電話」で。
あご
hoshu
まるむし
てけつ
「操り人形」「コンタクトレンズ」「いたずら電話」(1/2)
そもそもの初めは、彼が催眠術をかじり始めた事でした。
最初は、「まぶたが重たくなって、だんだん…だんだん下がってきます」とか「右腕が
上がります」とかそんなものでした。
あんまり彼が一所懸命なので、わたしは苦笑を堪えつつ、調子を合わせたりしていま
した。
振り返るとそれが間違いの元だったのでしょう。
わたしが調子を合わせているのに気づかず気を良くした彼は、徐々に難しい事をさせ
ようと色々実験していました。
わたしは、その内容の難しさを適当に判断して、全然駄目だったり、後少しだったの
に…といった感じや、大成功!を演出していました。
ある日の事でした。彼は催眠術中に「あなたは、コンタクトレンズを外します」と命令し
ました。わたしは、あまりにも難しいと考えられるその要求(だって、目を開けるのです
よ?)を、目を開けた時点で術が解けてやはり無理でした、とするつもりでした。
さぁ、軽く痙攣気味に右手を上げていき、左眼の方に近づけ、そして、目を開ける…と
ころが、わたしはそのままコンタクトを外してしまったのです。
そうするつもりはまったくありませんでした。いつの間にか、無意識に外してしまった、
としか言いようがありません。
「やったー。すごいすごい。催眠術中に目を開けてそのまま術を維持できたぞっ」
彼は大喜びでした。わたしはその声で我に返って呆然としていたのです。
「あ、大騒ぎしたから術解けちゃったか…。香、こりゃ俺凄いよ。テレビとか出られちゃ
うかも知れないぜー」
「操り人形」「コンタクトレンズ」「いたずら電話」(2/2)
自宅に帰ったわたしは、次からはもう絶対に術にかかった演技などしないようにする
事に決めました。なにか、怖くなったのです。
その夜中に電話が鳴り響きました。いつまでもいつまでも鳴り続けます。わたしは不
愉快な気持ちでしたが、しかたなく受話器を取り上げました。
「お前はもう、お前はもう、お前はもう、お前はもう…」
いたずら電話です。甲高い声で延々と繰り返されているのです。怒りを覚えましたがう
っかりこちらから話して女だとわかると相手が調子にのる恐れがあります。怒鳴りつ
けたい気持ちを抑えて、切ろうとした瞬間。
「お前はもう操り人形なんだよ。そら、電話を切る」
ガチャンッ。
この時、わたしは自分の意志で電話を切ったのでしょうか?それとも、命令されたか
ら?
彼女の話を聞き終えて、僕たちの間には一寸異様な風な雰囲気が流れました。
彼女は、上のような内容の事をほとんど棒読みに近い感じの極めて聞き取り難い口
調で語ったのです。視線はまっすぐ前のどこか遥か遠くを見つめているようでした。
佯狂(狂ったふり)をしているうちに、本当に気が触れた話を聞いた事があります。
また、近しい人物の吃音を真似ていたら、自身もどもりになって治らなくなってしまっ
た話も聞いた事があります。
彼女は続けて言いました。
「だから、操り人形になるのが嫌だったから、彼を、彼から命令されないようにと思っ
て、それで、起きているうちだと、『やめろ』と言われたらやめてしまうから、寝ている
時にと…そう、思ったのです」
結局、彼女は精神病院に収容される事に決まりました。
聞くところによると…大人しくなんでも言った通りにする従順な患者であるそうです。
あー、難しいお題だ(と思う)から意気揚々と手をつけたんだけれど…時間が
ありませんでしたっ(言い訳)
なんか、久し振りに2レスに分けなきゃならない長さになっちゃったしねぇ。
お題も中盤くらいで出し切っちゃって、どうも構成が拙いね。
なんか、チャレンジングスピリッツをバリバリ刺激されたお題だったんだけどなぁ。
申し訳ない。
次のお題は、「ときめき」「ロックンロール」「ドリル」でお願いします。
>>33-35 ええ話やぁあ。
繰り返しネタでええ話に持ってくのは割に珍しいと思うので(勘違いかも)、
なかなか面白い効果出てると思います。
「ええ話やと思わせて…」なのかな、とあらぬ期待(笑)が何度か頭を掠めて
最後にやっぱりええ話でほっとしました。
>14(前スレの763)さん(なんと呼べば…(笑))
25がそういう設定でなにやら安堵(笑)
書くのは楽しいですよね。
絵は最低限の絵心を人生のどこかでゲットしてないと自分でも満足出来ないもの
しか描けませんが、文章は最低限の文心(?)をゲットしてる率が高いですから。
ROMってる人がいたら、チャレンジをお薦め〜。
なに、わたし程度でも書けてるんだし(昔はもっとヘボヘボだったんだよなぁ(笑))
しばらく来られないのは残念ですけど、書いたり保守ったり(笑)しながら、復活
お待ちしてますです。
「Love is Rock'n'roll」 作詞・作曲:Jade-Matsu
俺は街を歩いてた 野良犬のように ブラブラと
すれ違った女の子 俺の好みのタイプ
ガラにも無くときめき 後を追いかけてみたら
チンピラまがいの男が 彼女の肩を抱いた
※Oh Yeah! Love is Rock'n'roll
Oh Yeah! Love is Rock'n'roll
一人肩で風切っても 寒いだけだぜLonely Man!
2人は喫茶店の中 浮かない顔した女の子
なんかイヤイヤ思ってても 別れられないって感じ?
助けなきゃならねぇだろ? それがニッポン男児たるもの
憤りのテーブルの上 コーヒーがこぼれた
※くりかえし
家は調べてあるさ 待ってろよ助けに行くから
この日の為に買っておいた 新品のドリル
これであの男の 脳天に風穴を開けろ!
迷うことなんてないだろ? これが解決策だぜ
※くりかえし×2
──────────────────────
24日未明、山梨県の山中で男女2人の遺体が発見されました。
遺体は愛知県に住む佐久間勇夫さん(25)と菊井一恵さん(23)で
共に頭部にドリルの様な物で穴を開けられた形跡が見つかっており、
警察は殺人および死体遺棄事件として捜査を進めています。
あ、お題は「ときめき」「ロックンロール(Rock'n'roll)」「ドリル」でしたよ。
……この歌詞何だよ、何十年前のロックだよ。
■「絶体絶命」「犬の肉」「ハサミ」でよろしく。
保守
トンネルを抜けるとそこは雪国マイタケだった。
昭夫は車窓から見える、あたり一面のキノコの歓迎に目を細めた。
無人駅に降り立った昭夫は、感極まったのであろうか思わず熱いものを股から流した。
そして、思い出したようにボストンバッグをまさぐる。
取り出したのは昨日死んだステファニーだ。ステファニーとは昭夫と八年間暮らしてきた犬の名前である。
昭夫はハサミを取り出し、犬の肉を刻みはじめた。勿論食べるためにだ。
じょり、じょり、じょり、じょり、じょり、じょりっ
思ったより血は出なかった。が、やはり血の匂いは辺りに漂う。
その匂いを嗅ぎつけたピランカが集まってきた。
奴等は血に飢えている。
連中はステファニーを食い尽くしたが、物足りないのか今度は昭夫に牙を向けた。
『絶体絶命』
この四文字が昭夫の頭をよぎる。
にちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ、じゅるるるるる
昭夫の体内に侵入し同化してしまうまで、そんなに長い時間はかからなかった。
「イヒヒヒヒ、イヒヒヒヒ、フフフフフ、グヘヘヘッ」
昭夫は再び汽車に乗り込み、夜の街へと消えていった。
次のお題は「100円ショップ」「回転寿司」「スポーツジム」で
ho
shu
「100円ショップ」「回転寿司」「スポーツジム」
「お、これ、なんか、ださかっこいいじゃん」
100円ショップで見かけた猫だか犬だかわかんないよな変なマスコットついたキーホル
ダー。ポップ系のかわいらしさを演出しようとして失敗したんだろうけど、妙に僕の琴
線に触れまくり。バッグの横につける。うん、ださかっこいい。
晩飯は回転寿司にする事にした。変な時間だからろくなものが回ってない。
(縁側でも注文しようかな…。あー、でも、僕、こゆとこで注文するの苦手なんだよなぁ)
ぽろっとバッグからキーホルダーが落ちる。マスコットが立った状態で止まる。
「はいっ。縁側入りまーす」
お?ラッキー。
偶然だと思ったんだけど、それから何度か試すとこいつを落とすと必ず良い事がある。
競馬でラストの直線でやってみたら見事万馬券ゲット。すごい。
今日は週二回通ってるスポーツジムの日。ここでやったらどうなるんだろ…。
あれ?逆さで止まった?
「昨晩8時、××市○○区のスポーツジムで、会社員外場駒地さん(22)が機械に挟ま
れるという事故がありました。外場さんは病院に運ばれましたが、一時間後に死亡し
ました。警察は機材の管理に問題があったのではないかと捜査中です。続いて…
「っていうニュースあったね。あのスポーツジム、俺も通っててね。ちょっと怖いよな」
「まぁ、来留輪さんの時じゃなくて良かったじゃないですか。やぁな死に方ですよね。…
…んー、なんか、第二エンジンの出力が悪いですね。まぁ、ほかのエンジンは問題な
いようですから、福岡空港まで大丈夫ですね」
なんとなく嫌な気分。俺はこの気分を振り切るために、少し前に買った変なマスコット
のついた幸運のキーホルダーを落としてみた…。
また、お題の早使いを…。
どうもペース配分が巧くいかないやね。
次のお題は、「飲み放題」「キャンセル」「プチトマト」でお願いします。
『おまんこ』
この四文字が昭夫の頭をよぎる。
44以降の感想
>>44 わはは、80年代にありげなださ歌詞が素敵(笑)
まぁ、「ふられ気分でRock'n' Roll」が頭にあっての「ロックロール」だったので
ある意味正解(笑)
>>48 なにやら不思議雰囲気ですな。
ビランカってマタンゴみたいなものか知らん(あるいは冒頭のキノコは関係なし
なのかな)
後、なぜかオーケンの「ステーシー」も彷彿したのは、多分「ステファニー」って
単語のせい。
ほしゅ
パーンッ!パンパンパーンッ!惨劇の始まりを告げる轟音が鳴り響いた。
続けざま聞こえてきたのは恐怖におびえる悲鳴と苦痛にゆがんだうめき声。
店の一角で人が血を吐き血を流し倒れている。その向こうには銃のような
ものを構えた男が見えた。しかも今度はこちらへ銃を向けている。
近くにいた店員さんの頭がプチトマトのように弾け飛び散った。
僕は身をかがめる瞬間、隣に座っていた黒田のTシャツが赤く染まるのを見た。
テーブルの隙間から垣間見た光景はまさに地獄絵図だった。
血しぶきが壁や天井に飛び散り、人はなすすべもなく倒れるだけ。
なんでこんなことが起きてるんだろう?!僕らはただ合コンをしてただけ
なのに。いつものこの居酒屋で二千円飲み放題の安上がりなコンパ。
急に集めた割にはかわいい娘がそろっててみんなはしゃいでたのに。
壁の日めくりカレンダーの日付は2月7日。なんで合コンをこの日に
設定してしまったんだろう。なんでこんなことに・・・・。
気がつくと銃声が止んでいた。僕は恐る恐る顔をあげてみる。
僕の目の前に銃口があった。直後僕の頭が吹き飛んだ気がした。
・・・とそこで僕はベッドから飛び起きた。3日前と全く同じ夢。
これはいよいよ予知夢に間違いないと思った。僕は黒田に電話する。
「黒田、悪い。オレ今日の合コンキャンセルするわ」
「何言ってんだよ。おまえが言い出しっぺじゃんかよ。しかもおととい
になって急に合コンやろうって言い出して、おまえが店決めて日にちも
7日に勝手に決めちゃって、オレら予定合わせるの大変だったんだぜー」
「ほんと悪い。でもけっこうかわいい娘そろってるからさー」
「マジで?仕方ねえなあ。じゃオレ達だけで楽しんでくるよ。じゃあな」
「・・・ああ、じゃあな黒田」
■次のお題は「汚れ」「床」「注射」で。
「汚れ」「床」「注射」
君には汚れている所なんて一つも無いさ・・・そうだろう?
むしろ、汚れているのは僕の方さ・・・
床に出来た人型の染み・・・僕はそれに頬擦りをしつつ注射器を腕に刺した・・・
そう・・・汚れているのは僕なんだから・・・
久しぶりに覗いてみたら、無茶苦茶レベル高くなってますねここ。
皆様大変読み応えがありました。
では次の御題 「アルミ缶」「体感温度」「クレーム」でお願いします。
「飲み放題」「キャンセル」「プチトマト」
達雄は途方に暮れていた。
年末まで仕事に追われ、帰省のための切符が手に入らなかった。
いつもなら帰省をあきらめて赴任先の大阪で寝正月を決め込むところだった。
しかし、今日の夕方に母危篤の連絡を受け、どうしても帰らないわけにはいかなかった。
母子家庭で育った達雄の記憶にあるのは、いつも汗まみれで懸命に働く母の姿だった。
贅沢を惜しんで学費を出してくれた母の期待に応え、達雄も大学で必死に勉強に励み、在学中に司法試験に合格した。
検事となった達雄から毎月送られてくる仕送りで、達雄の母も生活に余裕が生まれ、家の近くに畑を借りては野良仕事に精を出していた。
そんな母から送られてくるプチトマトを達雄は毎年楽しみにしていた。甘酸っぱくてコクのある味は、そこら辺のスーパーなんかでは味わえない美味しさだった。
達雄はとりあえず伊丹空港に向かったが、年末のこの時期のことである。途方もないキャンセル待ちの行列の長さに圧倒され、トボトボと空港を後にした。
達雄の故郷は北海道だ。鉄道や船を利用すると明日中にはまず帰れない。
達雄は、いつの間にかどこかの路地裏をさまよい歩いていた。ふと横を見ると、古い小料理屋が目の前にあった。
夕食がまだだった達雄は急に空腹を感じ、その店で腹ごしらえすることにした。
そこはカウンター席だけの小さな造りだが、小綺麗で明るい感じだった。
「いらっしゃいませ」
と、母とちょうど同じ年頃のおかみが出迎えてくれた。
「はじめての方ですわね。」
「こんなところに、こんな店があったんやね」
「ええ、以後ご贔屓にして下さいね」
不思議なことに、この店で出される料理は母の手料理と全く同じ味だった。
肉じゃが、ひじき、出汁巻き玉子、小芋の煮付け・・・どれもみな懐かしい想い出の味だ。
聞くと、奇遇なことにおかみも北海道の出身らしい。達雄とおかみは意気投合し、遠いふる里の話で会話が弾んだ。
「だけど嬉しいこともあるものね。きょうのお客さんは特別に飲み放題よ」
と、おかみは達雄に熱燗を進める。達雄も言葉に甘えてついつい杯が進んだ。
酔いにまかせて、達雄は母が危篤であること、切符が取れないことをおかみに愚痴っていた。
するとおかみは奥から一枚の紙切れを取り出してきて、
「明日の朝一番の札幌行きの航空券やの。良かったら使って下さいな」
と、人懐っこい笑顔をほころばせながら達雄の前に置いた。
「わたしも明日帰る予定だったんやけど、北海道には遠い親戚だけで別に家族もおらんしね。だったらお客さんに使ってもらった方がええと思って。だから遠慮せずに使って下さいね」
達雄は涙を流しながら何度も何度も頭を下げては礼を言った。そして航空券の代金を払おうとしたが、おかみは頑として受け取らなかった。
翌日、札幌に降り立った達雄はタクシーで母が緊急入院していた病院へと向かった。途中の信号待ちが何とも煩わしかった。やっと病院に着く。
母はまだ生きていた。
だが、もはや元気な頃の面影はなかった。達雄が、すっかり痩せてしまった母の手を握りしめ一言二言ことばを交わすと、母は満足そうに頷きながら安らかに天国へと旅立っていった。
生涯、苦労しか知らない母だった。
慌ただしく葬儀を済ませ大阪に戻った達雄は、あの小料理屋へ改めてお礼に訪れた。
しかし、店の中に入ると埃が積もっていて、まるでもう何ヶ月も使われていないような有様だった。
気配を感じて振り向くと、入り口からこちらを覗いている人物と目があった。近所のラーメン屋のオヤジらしい。
「こんなとこで何しとんの」
と非難めいた口調で達雄に話しかけてきた。
「あの、この店のおかみさんに会いに来たのですが」
するとオヤジは急に表情を曇らせて達雄にことばを返した。
「ここのおかみは3ヶ月前に亡くなったんや。交通事故でな」
達雄はオヤジの言葉が信じられず呆然としていたが、ふと、椅子の上にうっすらと埃をかぶった一枚の写真に目をとめた。
そこには達雄の母といっしょに写っているおかみの姿があった。裏を返すと、『故郷にて親友と二人で』と書かれてあった。
そして、達雄が写真からカウンターの上に目を移すと、いつ現れたのか新鮮な赤々としたプチトマトが一つ転がっていた。
古いお題でスンマセン
「アルミ缶」「体感温度」「クレーム」
暖かくなってきたとはいえ、夕方陽が落ちてからはまだまだ寒い。
しかも今日は風が強いせいで、体感温度は真冬並だろう。
歩きながら少しでも暖をとろうと思って、自販機で温かい飲み物を買う。
初めから飲むつもりはない。アルミ缶を手にとって、何気なく眺めていると、
私はあることに気付いた。「賞味期限020830」もうとっくに過ぎてる。
馬鹿にしてるのか。私は腹が立った。馬鹿にされるのは嫌いだ。
家に戻ってから、缶に書かれていた電話番号にクレームの電話をいれる。
「そのまま気付かずに飲んでたらどうしてくれんだよ」
「商品をお送りくだされば、新しい商品に交換させていただきます。
もちろん送料はこちらで負担いたしますので」
「なんだ交換してくれんのかよ。それ先に言ってくれてればな。
・・・でも・・・まあいいや。送んのめんどくさいし」
なんだ交換してくれるのか。別に交換して欲しかったわけではないが、
交換してくれると知っていれば、あれで人を殴ったりはしなかったのに。
帰り道すれ違いざまに私のことを笑った奴に腹が立ち、つい殴った。
さすがの私も血がべっとりついて不自然にへこんだアルミ缶を
送るわけにはいかない。
■次のお題は「ダイエット」「髪の毛」「土星」でどうぞ。
ほ
「ダイエット」「髪の毛」「土星」
自慢じゃないが俺は目が良い。そして見た事に関する記憶も良いようだ。
例えば、ツレに話すと法螺扱いされるのだが、良く晴れた夜に空を見て土星を見る事
が出来るし、その輪っかもぼんやりとだが見える。
職場の同僚の女性がダイエットをしていると、じわじわと痩せていくのがわかると同時
に肌が少しずつ荒れていくのも見えてしまう。見てあまり気持ち良いものでもない。
久し振りに涼子の家に行った。
飯を食ってしばらくいちゃいちゃして、ベッドに入った。事の最中に指に触るものがあ
る。髪の毛…見覚えがある…そう…一度会った事がある涼子の元カレのもの…古い
ものじゃない。ごく最近、昨日…ひょっとして今日…
「どうしたの?」
不審そうな顔。なんの後ろめたさも出ていない。
気づくと涼子の首を絞めていた。力一杯。
「やめろぉっ」
ガンッと頭に衝撃が走った。自然絞めていた力が抜けて、涼子が俺の身体の下から
もがき出るのを感じた。
「篤!?なんでここにいるの?」
心底納得出来ないという涼子の声。篤を見る。手に鎌を持っている。そうか、あれで
俺を…道理で周り中血の海な訳だ。あいつのシャツの前にこの部屋のカーペットの毛
玉が見える。ああ…ベッドの下に潜んでたんだ。
こうなる前にもっと色々見ていれば変化に気づいたのかも知れない。
後悔も意識ともに薄れていく。もう目をあけていられない。声だけが聞こえる。
「なぁ?助けてやったんだから…」
「い、いやっ。離してー」
なんか、わたしの書いた人物って、すぐかっとなって見境なくすな(笑)
次のお題は、「納豆」「仕込み杖」「パステルカラー」でお願いします。
54以降の感想
>>55 やらしい人物だなぁ(笑)
予知夢によって回避行動を取った事によって意外な事態に、って流れだと
面白いんじゃないかなぁと考えたり。
>>56 おや、六さんおしさしぶり。
詩、ですかな。
生憎と詩情を持たない人なので、超短編として読むと、注射器の中身が気になる次第。
素直に読むと自殺用の毒薬のような、ひょっとして麻薬類のような。
>>58-59 おお、こちらもおかえりさんです。
ええ話や〜。
ちぃと主人公の行動に不自然さを覚えないでもないけれど、全体の結構は
整ってるかと思います。
>>60 クレームしたら交換してくれる事も知らず腹癒せにやり過ぎな八つ当たりをする
けれど、さすがにやばい状態の缶を送れないなぁ、と常識を持った非常識人な
主人公のギャップが良い味です。
バイトの給料は全部パチンコで消えた。次の給料日までまだ3週間もあるってのに。
こうなったら……そこら辺歩いてるジジババでも襲って金巻き上げちまおうか。
年金暮らしの上、碌に金も使わないだろうから、たんまり持ってることだろうさ。
そうと決まれば早速……とおっと、いきなり標的出現。いい感じのヨボヨボっぷりのジジイだ。
着流しにパステルカラーのスニーカーつう組み合わせが何だが変なんだが、ま、そんなことはどうでもいいか。
「おう、お小遣いくれや」
ありきたりの台詞だなぁ……でも金は置いてくだろうさ。何てったって、今サバイバルナイフを突きつけてるんだからな。
……けどこのジジイ、俺をじっと見たまんま動きやしねぇ。おいおい、マジで力ずくで奪っちまうぞ。
ん?杖を持ち替えたぞ。何する気……て、あぁ〜!!
老人は、血の海に倒れこんだままピクリとも動かなくなった若者を見下ろしながら満足そうに呟いた。
「これでまた社会のダニが一匹減った」
鋭い刃のついた仕込み杖を握ったまま。
■「病棟」「ハシゴ」「コンセント」でよろしく。
hosyu
ほ
「病棟」「ハシゴ」「コンセント」
私の名は吉沢聡。二十代半ばの会社員。これは私の叔父である大石勝俊を、入院中
の混合病棟の一室に見舞ったときの話です。
「……それで叔父さん。叔父さんが刑事になったきっかけは何だったの」
と、私は以前から一度尋ねてみたかったことを聞いてみた。
すると、ドライヤーで洗髪後の髪を乾かしていた叔父の手が急に止まり、暗い表情
を私にむけた。
「わしが刑事になろうと思ったのは、ある事件のせいなんだが……そのことはあま
り話したくないから今まで封印してきたんだよ。まあ、わしもこの年だしそろそろ
誰かに話してもいいか……」
と、ドライヤーのコンセントを抜いて叔父はぽつりぽつりと私に語りはじめた。
それは、今から五十年ほど前、叔父が十歳ぐらいのとき、岡山県と兵庫県の県境に
ある故郷のH村で実際に起こった出来事だった。
――H村の奥には「あやしの森」と呼ばれる森がある。その鬱蒼と繁る森の中には
祠が建っていて、そこは、魔風郎とかいう妖怪やら何やら得体の知れないものが潜
んでおり、見つかったが最後、生きては戻れない。だから子供は絶対に入ってはい
けないと大人たちから言い聞かされていた。
勝俊が父から聞いたところによると、その祠は以前に事件があったらしく、それ以
来かんぬきが扉の内側から掛けられていて、外部からは開かないということだ。た
だし、祠の屋根に穴が空けられていて、そこから出入りできるらしいが。
当時、勝俊には、栄作、勇三、初枝という三人の幼なじみがいた。
そこで、勝俊たちはその祠に行って事の真相を確かめようということになった。
さて、四人の冒険は、夏休みも終わりに近づいた夜に実行された。深夜、こっそり
と家を抜け出して、祠で一晩をすごし明け方に家に戻るという計画だった。
まず、大柄でガキ大将の栄作が家からハシゴを持ち出してきた。小柄で華奢な勇三
はロウソクを、男勝りで活発な女の子の初枝は食料を、計画立案者の勝俊は用心の
ために手斧を家から持参してきた。
そして、四人はそろって森の奥深くに歩を進めていった。
歩くこと一時間あまり、問題の祠は姿を現した。
それは、だいたい五、六メートル四方の立派な祠だった。
栄作が近づいて扉を開けようとしたが、やはりかんぬきが内側から掛かっていてび
くともしない。四人が裏にまわり屋根を見上げると、はたして人がひとり入れるぐ
らいの穴がぽっかり空いていた。
そこで、ハシゴをかけてまず屋根に登り、それからそのハシゴを屋根の穴から祠の
内側におろして中に入ることにした。
さて、祠の中に入った四人だが、そこはどうということもなく、古ぼけた小さな鳥
居だか神棚だかそのようなものがポツンと置いてあるだけで、何の変哲もない造り
だった。もちろん、魔風郎などどこにもいない。
一気に興ざめた四人組だったが、その後、ロウソクを真ん中に置いて車座となり、
初枝の持参した食料でささやかな宴を催すことになった。
しかし、十歳の子供のことである。夜も更けてくると睡魔には勝てず、ひとり、ふ
たりと寝息を立てはじめ、そのうち宴はお開きとなった。
いつの間にか眠りに落ちた勝俊だったが、翌朝、目覚めとともに信じられない光景
を目の当たりにする。
勝俊が扉の方に目をやると、そこには、頭に斧を突き刺さされ、白目をむいている
栄作がいた。栄作は扉を背にして足を投げ出すようにして事切れていた。一面は血
の海で、鉄の臭いがあたりを支配している。
勝俊は茫然としてその場に立ち尽くした。そして背後から初枝の叫び声。その声で
目を覚ました勇三が栄作の変わり果てた姿を見て失禁している。誰が見ても栄作が
死んでいることは明らかだった。
だが、栄作をそのままにしておくことはできない。栄作は大柄で重かった。何とか
三人で栄作を運び、床に寝かせることができた。
が、栄作が背にしていた扉の部分を見て三人は凍りついた。
そこには、
「ここでみたことをだれにもはなすな」
と、血文字で書かれていたのだ。
「うわぁ、やっぱり魔風郎の仕業だぁ」
と、勇三は泣き叫ぶと、扉のかんぬきを外し、逃げ出していった。
勝俊や初枝も我を忘れてちりじりになって逃げ出した。
勝俊はどうやって自宅にたどり着いたのかもわからないまま、気がつけば、自分の
寝床でぶるぶると震えていた。
そしてやっと冷静さを取り戻すと、手斧を祠に残してきたことに気がついた。手斧
は栄作の頭に突き立てられたままだ。これはまずい。放っておいたら自分たちがあ
の祠に行ったことがばれてしまう。いや、最悪の場合、勝俊自身が栄作殺しの犯人
にされてしまう。何とか取り戻さなくては。もはや勝俊は自分の保身のことしか頭
になかった。
昼間なら大丈夫と思い、勝俊は昼食後あの祠へひとりでいってみた。しかし、そこ
には栄作の死体はおろか、手斧やハシゴまでが跡形もなく消えてなくなっていた。
その後、夜になっても帰らない栄作を捜すために、村の青年団が中心となって捜索
隊が組織されたが、ついに栄作の死体は発見されなかった。勝俊たち三人も、祠で
のことは誰にも話さなかったので、結局、神隠しということで処理された――
「……と、まあこんなような事件だったんだが。もちろん、わしは魔風郎なんて信
じとらん。人間の手で栄作は殺されたんじゃ」
と叔父は断言した。
「そんな事件があったんですか。それで、その事件を解決するために刑事になろう
としたんですね。それで、その事件は解決したんですか」
と私が問いかけると、叔父は言葉なく首を横に振った。
「扉にはかんぬきが掛かっていたし、ハシゴも祠の中から立てかけられていたんだ
から、外部から侵入することは不可能なはずなんだが……しかし、犯人は何らかの
方法で侵入したんだよ。だけど、そのトリックが全くわからんかった。そのうち、
わしは県警の本部に異動になり、他の事件に追われてすっかりこの事件から遠ざかっ
てしまった。わしがあんな計画さえ立てなけりゃ栄作も殺されることはなかったの
に」
と、叔父は無念そうにつぶやく。
「いわゆる、密室の殺人ってやつですね。それは」
その時である。
「ちょっといいですか?」
と突然声をかけられ、私たちはギョッとして声の主に目を向けた。その人物は、叔
父と同じ病室で入院している二十代後半ぐらいの患者で西原誠という男だった。ミ
ステリ作家の卵を自称しているらしい。
「僕もお仲間に入れてもらえませんか」
と西原が声をかけてきた。
叔父は他人には立ち入ってもらいたくなかったようだが、露骨に嫌な顔をすること
もできず、
「どうぞ」
と、一言だけ言って口をつぐんだ。
「先程からお話を伺っていたんですが、祠には外部の者が侵入できなかったこと、
被害者の栄作さんの他に三人の人物がいたこと、これは間違いのない事実なんです
ね」
と、西原は確認するかのように叔父に尋ねる。
そして、叔父はただうなずく。
「だとすると、それは密室の殺人でも何でもないですよね。被害者のほかに三人も
人がいたんだから」
「まってくださいよ、もしやあなたはほかの三人の中に犯人がいるとでもいうので
すか」
と、私が非難めいた口調を西原にむけた。
「そうとしか考えられませんねえ」
と、西原は冷静に言葉を返す。
「だって、十歳の子供ですよ。そんなことができるわけないじゃないか」
と、私はむきになって言葉を投げ返した。
「いや、子供というものは時には大人よりも残酷になれる。大人と違って理性とい
うタガが弱い」
私はまた言い返そうとしたが、叔父がそれをさえぎった。
「いやその通りなんだよ聡君。あの状況を冷静にみつめれば、三人の中に犯人がい
ると考えるのが道理に合っている。わしが外部からの侵入のトリックがどうしても
わからず、頭を悩ましているときにパッと思い浮かんだのはそのことだったんだよ」
と、叔父は力無くつぶやいた。
幼なじみが幼なじみを殺す。これは叔父にとって耐え難いことに違いない。だから、
今までこの事件の話を封印してきたのだろう。
そして叔父は話を続ける。
「そこで、栄作の死体を持ち去った者が犯人だと目星をつけて考えてみたんだが、
小柄で華奢で気の弱い勇三が、大柄で重い栄作の死体を運んで処分できるとは到底
思えなかった。初枝にしても同じだ。男勝りの性格とはいえ、所詮は十歳の女の子
だ。栄作を担ぐことなんてできないだろうし、あんな残酷な殺しはできないはずだ。もちろん、わしだって、ひとりでは栄作を担ぐのは無理じゃ。
それにだ。三人とも返り血を浴びていなかった。あれだけの出血だ。犯人なら返り
血を浴びていて当然なんだが……しかしそうすると、この事件の犯人が存在しなく
なるんだよ」
「不思議な事件ですね」
「ああ、不思議な事件だ」
と、私と叔父は思案に暮れた。
すると、西原が冷徹に言い放った。
「犯人が分かりましたよ」
「ほんとうですか」
私は半信半疑で西原を見つめた。
「ええ。犯人は大石さん、あなたですよ。すべての状況があなたが犯人であること
を物語っています」
叔父が反論しようとするのを手でさえぎって、西原が話を続ける。
「まあ、聞いて下さい。祠に戻ったのは大石さん、あなただけで他のふたりは戻ら
なかったんですよね。だとすると、あなたが祠に戻った時点で、栄作さんの死体が
消えていたというあなたの話の信憑性がまず問題となります。僕は、祠に戻った時
点ではまだ栄作の死体が放置されていて、大石さんがその死体を処分したんだと思っ
ているのですが」
「ばかなことをいうな。わしがひとりでどうやって栄作を担いで処分できたという
んじゃ」
「何も、大石さんがひとりで処分したなんていってませんよ。正確に言えば、あな
たのお父さんが栄作さんの死体を処分したのでしょうな」
「ば、ばかも休み休み言え。どうしてわしのおやじがそんなことをするんじゃ!」
「その当時、大石さんのお父さんは村長選挙に立候補しようとしていたんですよ。
そんな大事なときに自分の倅の不始末が発覚したら、すべてが台無しになってしま
いますからね。だいたい、あんな惨たらしい死体が転がっているところへ、子供が
ひとりで戻ろうとする方が不自然でしょう」
「ど、ど、どうして、そんなことを知っているんじゃ、おまえさんは」
叔父は明らかに動揺していた。
「ふふふ、僕は何でも知っていますよ」
と、西原は意味不明な言葉を投げ返す。
確かに、あんな惨い事件が起きた場所に十歳の子供がひとりで戻るというのは不自
然なことだ、と私も思った。
「そ、それじゃ、わしが返り血を浴びていなかったのを、どう説明するんじゃ」
「計画立案者の大石さんは、実はあの祠へ何回も下見に訪れていたんじゃないんで
すか。もちろんその計画というのは、魔風郎伝説にかこつけた栄作さん殺害の計画
ですがね、ふふふ。それで、予め祠の内部に盾になるようなもの、例えばムシロの
ようなものをどこか隠しておいたんでしょう。祠の内部はロウソク一本でかなり薄
暗かったことでしょうから、隠そうと思えばどこにでも隠せますよ。そして、死体
とともに処分した。内部からかんぬきが掛かっていることも、屋根に穴が空いてい
ることも、下見の時に発見したんでしょうよ」
「ど、ど、どうしてわしが下見に来たことを知っているんじゃ、おまえは」
「ふふふ、僕は何でも知っていますよ」
と、西原はまたも意味不明な言葉を投げ返す。
「ど、ど、動機はなんじゃ。わしが栄作を殺そうとした動機はどう説明するんじゃ!」
「大石さん。あなたは初枝さんに恋をしていた。ところが初枝さんは栄作さんと相
思相愛の仲。しかも、あなたは何においても栄作さんにはかなわなかった。勉強も
スポーツも。そんな栄作さんをあなたは憎かったんじゃないんですか」
「ど、ど、どうしてそんなことまで知っているんじゃ。お、お前はいったい何者な
んじゃ」
叔父は動揺に声を震わせながらも西原に食い下がる。
「ふふふ、僕は何でも知ってますよ」
「ち、ちがう。わしはやってないぞ。確かに下見にはいったし、祠に戻るときもお
やじについてきてもらった。ああ、おまえさんの言うとおり栄作が憎かったさ。で
も、俺は殺してない、やってないんじゃ」
と、叔父は救いを求めるように私に向かって無実を訴えた。しかし、西原の言うと
おり状況は叔父にとって不利だった。私も叔父が真犯人ではないかと思い始めたそ
のとき……
「ふふふ、ははは、あははは」
と、西原が不気味に笑い出した。
「なーんてね。今のは冗談ですよ。大石さんは犯人じゃありません。なぜなら、犯
人は僕だからです」
と、西原はにやにやしながら私に話しかけた。
私は耳を疑った。
「そんなばかなことはないでしょう。事件が起きたのは五十年も前のことですよ。
あなたはまだ生まれていなかったでしょ。人をどこまでばかにすれば気が済むんで
すか」
「確かに、人間ならあり得ないでしょうね。人間ならね……」
と、今度は真剣な表情で語りかける。
「人間ならって……もしかしたら、おまえは」
「そう、そのもしかってやつですよ。ふふふ、俺こそは魔風郎。お前たち四人があ
の祠に来たときも、ずっとそばにいたんだよ。気づかなかったのかい」
と言うや否や、西原は正体を現した。
身体中、獣のような体毛につつまれ、目は血走り、口は裂け、鼻は高くツンと尖っ
ていて、異様に背が高い。
「ふふふ、そらおまえの探していた物を返してやるよ」
と、魔風郎は叔父の脳天に向かって手斧を振り下ろした。
叔父の額はザクロのように裂け、水道管が破裂したように血しぶきが噴き出し、私
の体に振りそそぐ。病室内は一面血の海だ。
私は茫然自失となりただただ立ち尽くすしかなかった。
そして、一陣のつむじ風が舞い起こったかと思うと、
「だから、だれにもはなすなっていっただろう」
という言葉を残して、魔風郎はその風とともに忽然と姿を消した。
うわぁー。長くなってしまった(w
次のお題は「テレビ」「陸上競技」「宅配便」です。
「テレビ」「陸上競技」「宅配便」
届いた宅配便の箱を開け、中からテレビを取り出す。部屋のテレビが
壊れて困っていたときに、ネットオークションでやたら安くテレビを
購入できたのはラッキーだった。さっそく設置して電源を入れてみる。
映し出されたのは、何か陸上競技の中継らしい。種目は槍投げだ。
次の瞬間。選手が投擲(とうてき)した槍が、審判員の頭に突き刺さり、
それを貫通した。倒れた審判員の体は細かく痙攣している。
頭を貫かれて助かるはずはない。私はいたたまれなくなってテレビを消した。
やがて気持ちも落ち着き、先ほどの事故の顛末についても知りたいと思い
テレビをつけた。午後のニュースはその事故の話題で持ちきりのようだった。
突然、画面に映っていたニュースキャスターが血を吐いて倒れた。
人が駆け寄り、スタジオが騒然となる。画面が切り替わり、別の画像を
映し出す直前、「駄目だ。死んでる」というスタッフらしき男の人の
叫び声が聞こえた。私はまたテレビを消した。
(まさか、私がテレビをつけると誰かが死ぬ・・・?)
そんなはずはないと思いたくても、一度浮かんだ疑念はなかなか消せない。
私は再びテレビをつける気にはなれなかった。
偶然に違いない。そうであることにこしたことはないのだ。
数日後、私はそれを確かめるようとテレビのスイッチを再び入れた。
画面に映し出されたのは・・・・私だった。
少し前に道を歩いていた時に、テレビ局にインタビューを求められたことを
思い出した。と同時に私は、テレビに駆け寄って電源を切ろうとしたが、
あまりに慌ててしまい足がもつれ、もんどりうって床に倒れこんだ。
倒れた時にテーブルに打ちつけた頭から生温かい液体が流れ出るのを感じた。
体が動かない。意識が朦朧(もうろう)とするなか、私はテレビから流れる
私自身の声を聞いた。
「超常現象?自分の身に起これば否が応でも信じるんですけどねぇ・・・」
●次のお題は「泣き虫」「下り坂」「半透明」で。
子供の頃の友達にいわゆる「見える子」がいた。
私がその街に引っ越してきた時に隣りの家に泣き虫のその子が住んでいた。
年が近かったこともあって、私達はすぐに仲良くなってよく一緒に遊んだのだが
あるときその子が変なことを言ったのだ。
私はその子の言うことが初めは理解できなかったが
やがてどうやらこの子にはなにかが見えているのだ、と理解した。
理解するのと同時にその子に対してそれまで以上に興味を抱き、私達はよりいっそう仲良しになった。
その子にはあまり友達がいないようで、それは多分何かが見える為だったのだけど、
自分が皆に疎まれる理由の「見える」ということに私が興味を示したのが嬉しかったらしい。
何かがそこにいる、と言う時その子はいつも堪らなく怖いといった風に泣いていた。
どういうものが見えるのかと聞いてみたことがある。
「からだがすこし透明なひと」というのが多く見えるらしく
それは半透明で他の人に見えない以外は自分たちと変わらないと言っていた。
ならば何故泣くほどに怖がるのか、と聞くと理由は分からないがとにかく恐ろしいと。
あるとき隣りの町にサーカスがやってきたので一緒に見に行こうと誘われた。
私の親の都合がつかなかったのでその子のお母さんと三人で出かけた。
長い下り坂の先にサーカスのテントが見えて歩くのももどかしく思えたのを覚えている。
坂の中ほどでそれまで私と共に意気揚々と歩いていたその子が突然立ち止まり泣き出した。
母親にすがりつき電柱を凝視している。
私はすぐに察したが友達は今までに無いほど怖がってしまって口もきけないようだった。
お母さんはその子の頭をやさしく撫でてから歩き出した。手を繋いで。
サーカスは想像以上に素晴らしく、席に着くまで泣きつづけていた友達もけろりとして夢中で観ていた。
帰りは来た時と違う道を通り、友達は疲れたのか電車の中で眠ってしまった。
お母さんは窓の外をまっすぐに見ていたが私の視線に気がつき
「お爺さんがいたのよ、あまり良くない感じの」
と言って綺麗な顔で笑った。
次のお題は「煙草」「湯呑み」「カレンダー」でお願いします
感想
>>34 いいっすねー、この作品。「怖さ」という要素が物足りないにしても、それを補っ
て余りあるきれいな作品です。
>>41 操り人形になるのが嫌だったから、彼が眠ってる間に殺してしまった、ってことか
な。だとしたら、次は精神病院の職員が危ないね。
>>44 歌詞に影響を受けた者の仕業かぁーー。
女まで殺すなよ!(w
>>48 ♪きのこのこのこ元気の子〜、美味しいマイタケホクト〜(w
ピランカって何?
>>51 そのキーホルダーはハイリスク・ハイリターンなまじないみたいなものかな(ちゅ
ーか、リスクが大きすぎるけど)。失うものを何も持たない人間にとっては、試す
価値ありか。
>>55 最近起こった事件(スナックで一般市民が巻き添えを食らったあの事件)をモチー
フにして書かれた作品でしょうか。夢のことを話してもきっと黒田君には信じても
らえなかっただろうから、仕方ないね。
感想続き
>>56 ウ〜ン、何度も繰り返して読んではみたのですが……
内容がよくわかりませんでした( ̄〜 ̄;)・・・
読み手側の自由な想像に委ねるという趣旨?
>>60 間抜けな主人公にワロタ。
赤塚不二夫の漫画に出てきそうな感じ。
>>62 例の都市伝説が頭に浮かびました。
結局、主人公にはひとの心を見る視力はなかったということですか……
>>64 たくましい爺さんだなぁ〜(w
高齢化社会が進むと、本当にこんな年寄りが現れるかも。
>>78 うわぁ〜、怖い作品だ!
久々にゾクッときました。『世にも不思議な物語』なんかにでてきそうで、カナ〜リ気
に入ってます。
>>79 「見える子」の話はかなりオーソドックスなものだけど、その子が今までに無いほ
ど怖がってしまったということと、あまり良くない感じのお爺さんがいた、という
ことの関係がよくわかりませんでした(読解力不足でスマソ)。
「煙草」「湯呑み」「カレンダー」
ふと壁のカレンダーが目に入り、僕はあるおかしなことに気付いた。
赤いペンで丸がついている日付があるのだ。2月17日。今日だ。
いったい何の印だろうか。自分でつけた覚えはない。
そもそも僕はカレンダーに丸をつけたりする習慣は元々ない。
現に2月の他の日も、2月の隣に並記されている1月も真っ白のままだ。
何かよほど大事な日なのだろうか。しかし全く思い当たらない。
湯呑みに注いだコーヒーを飲みながら、しばらく考えてみる。
この湯呑みは、こないだ街で見かけて、あまりのデザインのかわいらしさに
つい買ってしまったものだ。この踊ってるネコのイラストがめちゃめちゃ
かわい・・・・・違う。なんだこの湯呑みは?!
僕が手にしていた湯呑みは、僕が全く見覚えのないものであった。
台所のどこを探しても、確かに買ったはずのネコの湯呑みは見つからなかった。
何かおかしい。僕は気を落ち着かせようと煙草に火をつけた。
煙草の箱をテーブルに置こうとしていた手が、煙を肺に吸い込んだと同時に
止まった。・・・違う。僕は慌てて銘柄を見た。マイルドセブンだ。
僕はエバーグリーンしか吸わない。マイルドセブンなんて吸ったこともない。
やっぱり何かおかしい。一体どうなっているんだろう。
考える間もなく、僕は自分の体が勝手に動き出しているのに気付いた。
まるで操られるように、玄関を出、駅へ歩き、駅から電車に乗る。
僕は自分の体を全く制御できない。一体何が起こっているんだ?!
しかし足どりは確かだ。どこか目的地へ着実に向かっている実感があった。
やがて見えてきたのは古いお寺だった。僕―僕と言って良いのかは
分からないが―は何の躊躇もなくお寺の中へ入っていく。
寺の中から袈裟を身にまとった僧侶が出てきて、僕を見て言った。
「お待ちしてました。さっそく始めましょうか」
僕はさっぱり何のことか分からない。相変わらず僕は、僕の身体は、
僕の意志に関係なく、今度は寺の本堂へと歩みを進める。
正座した僕に対峙した先ほどの僧侶が何やらお経のようなものを唱え始める。
その直後「キェェーーーー」という僧侶のひときわ大きな雄叫びと同時に
僕は意識が遠のくのを感じた。
「もう大丈夫ですよ」
「どうもありがとうございました」
「もうおかしなことも起こらないでしょう」
「ええ。変なネコの湯呑みがいつの間にか家にあったり、なんか聞いたことない
銘柄の煙草があったり、ホント困ってたんです」
「憑りついていた霊は祓いました。もう安心ですよ」
■次のお題は「舌」「なわとび」「旅行」で。
「舌」「なわとび」「旅行」
口からだらしなく舌を垂らし、首になわとびの紐をくくりつけて括れている『俺』がいた。
そんな『俺』を下から見上げている俺がいる。もう後戻りはできない。
後悔?
そりゃあるさ。でも悲しんでくれる者は誰もいないからね。
さて、お迎えが来たようだ。
俺が逝くのはどっちだろう。
これから行き先のわからない旅行がはじまる。
次のお題は「途中下車」「ハンバーガー」「希望」です。
ちと余裕ないので64以降の感想だけ
>>64 爺さんかっちょえー(笑)
好みとしては、馬鹿がなに起こったかわからない居合の方が好きだったけど。
>>67-77 なげーよ。
嘘、嘘、本格物か変格物かどっちやぁとわくわくしました。
昔は、こういうのも探偵小説として発表出来て素敵だなぁ、と。
>>78 おお、ナイス皮肉落ち。
偶然といえば偶然、主人公の勇み足自爆といえばそうもいえるけれど。
唐突ではなく始まりの「なにか」があった方が良かったような、いらないような。
>>79 見える子なだけじゃなくて、見える家系なのかよっ、という事でしょうか。
14さん指摘のように、ちと落ち弱い気もしますが、雰囲気好みです。
>>80 ああ、その後は考えてなかったす(笑)
言われてみれば確かに、突発的に職員に危害を加える危険ありですな。
>>82-83 「ああ、幽霊は自分だったのね」ネタですな。
巧く演出してると思います。
>>84 あっさりめですな。まぁ、あの世とやらに行くとも限らない訳ですが。
糞馬鹿(ry
ほしゅ
参った。本当に参った。会社がぶっ潰れた。
いや、そんな感触は前々からあったんだよね、正直。プロジェクトがまともに進まない。
ちゃんと企画してるのに、なぜか足止めを食らう。社長が疲れた顔で始終電話に張り
ついてぺこぺこしてるかと思えば、いかにも真っ当でない雰囲気の男が来客して、そ
れが帰った後やけにほっとしてたり。要は金策に四苦八苦してたんだろう。
いざ潰れちまうと、すっきりしたような、このご時世再就職出来るのか、複雑な気分。
いや、それよりなにより、遅れがちだった給料の最後の四ヶ月分が踏み倒されたの
がきつい。車のローンの支払いだってあるのに。
…まったく、なんのために毎日毎日(サービス)残業して、昼もハンバーガー突っ込ん
でしゃかりきになってたのやら。
とぅるるる…とぅるるる…。脱力感から家でぼやーっとしている中、電話がかかった。
「はい」
「あ、吉井か?俺。木本」
「おー、久し振りだなぁ。どうしたよ?」
「突然なんだけどさ。俺、今度独立して会社作るんだけどさ。吉井、良かったら手伝っ
てくれんかな?」
「…マジで?」
「冗談ではこんな事言わんよ」
「実は、今まで勤めてた会社潰れてさ…」
「あ、そうなんだ。不謹慎だけど、丁度良いタイミングの途中下車な訳だな。来いよ。
頼む」
「途中下車」か。そう言われると、さっきまでの放り出されたような気分が消えた。そう
か、途中下車しただけだ。そんで、これから木本線に乗り換える。そっか…。
目覚まし時計のベルで目が醒めた。朝の7時。
「希望に飢えてんのかね」
自嘲気味に呟いて、今にもぶっ潰れそうな会社に向かう支度を始める。
独立したものの、不景気に負けて夜逃げした木本はどうしてんのかな。
山奥で男がひとり息絶えた。
糞ダ(ry
あ。
「角」は、ボルテスのハイネルじゃーん。
リヒテルは翼か。
いやはや、勘違い、恥ずかし。
ま、ともかくお題はそのままという事で。
これはごく一部の好事家達の間で囁かれている噂です。
彼らは古今の奇譚を蒐集し語り合うことに大きな歓びを見出していて
怪談、怪異譚から都市伝説といわれる類の物まで、
そのもととなる話、そこから派生した細部の異なる同様の物語の多くを知識として蓄えています。
そんな彼らが今注目している、今までに聞いたこともどこかで目にしたこともない
全く新しい奇妙な噂。
それは一風変わったトレーラーの話です。
彼らの談によればそれは白ナンバーを付けた大型のもので、キャビンはフルスモークであるといいます。
フロントガラスまでも全面にフィルムを貼られたそのトレーラーのサイドにはビール瓶の絵が
大きく描かれていてそのビール瓶は上部が斜めに切り落とされているそうです。
その切り口の滑らかなつやさえも執拗に描きこまれ、それを見た者に言い知れぬ違和感を与えるそうです。
そして次が肝要なのですがそのトレーラーの中には
片眉を剃り落とし、空手着を着込んだ屈強な男達が立錐の余地も無いほどに詰め込まれているというのです。
男達は終始無言でしわぶきひとつ立てず黙々ととろろ芋をすり、それを啜る音だけが響いているといいます。
このトレーラーを目撃した人の話を最後にご紹介します。
その人が深夜仕事から帰宅する途中、このトレーラーが前を走行していたそうです。
会社名も無ければ緑ナンバーでもないトラックは珍しいので覚えていたと語ってくれました。
数十分ほど後に続いて走り、やがてトレーラーは側道に消えたそうです。
その翌朝その人が取っている新聞の地方版に小さな記事がありました。
トレーラーが消えた側道の先にある牧場で数頭の牛が殺された事を伝える物でした。
牛達は角を切り取られ、どうやら人間の手によって撲殺されていること
現場には複数の人のものと思われる血痕が残されていて
その量からみて重傷を負った人間が数人いるらしいこと
しかし近隣の病院には該当するような患者がいないこと等が書かれていました。
この奇妙なトレーラーがどういった素性のものなのか、目的は何なのか、好事家達は熱心に語り合っています。
次のお題は「後悔」「老獪」「数回」でお願いします
「トレーラー」「空手」「角」
昌弘は私の小学校時代からの親友である。
といっても、お互い通っていた学校は違っていて、昌弘とは都内の空手道場で知り
合った仲だ。昇段するのも同時だったし、良きライバルでもあった。
将棋でいえば、昌弘が飛車なら私は角のような存在だった。
三十路を越えても昌弘とのつき合いは続いた。
そんなあいつがあっけなく逝ってしまった。信号無視の車に跳ねられて。いくら頑
強な肉体をもつ昌弘でも、トレーラーでは相手が悪すぎた。
それから数年が過ぎ、私も四十の大台に乗った。
結婚してすぐに生まれた長女も、今年中学校に入学する。
だが、私は会社から突然リストラを宣告されてしまった。この平成不況の中、再就
職のめどは全く立たず、あっという間に蓄えも底をついた。このままでは一家が路
頭に迷うことは目に見えている。
とうとう私は自殺を決意した。
私が死ねば、保険金が妻に降りる。それで、妻と娘は当分の間生活できるだろう。
今の私にできることは、これぐらいしかない。
ある日、林の中で首を吊ろうとしたが、枝が折れて失敗した。新たに何回も試みた
が全て同じ結果に。最後にはロープが切れ、首つりはあきらめた。
別の日、今度は車に飛び込もうと思い、大きな市道に立っていたが、その日にかぎっ
て車は全然通らない。
あきらめかけた時、一台の大型トレーラーがやってきた。
(よし、あれに飛び込もう。これでこの世ともおさらばだ)
私はいきおい良くそのトレーラーの前に立ちはだかった。
人間、死ぬときは今までの人生が走馬燈のように蘇るというが、私の頭に巡ったの
はそうではなかった。
葬儀で泣き崩れる妻子の姿。
言葉なくうなだれている、年老いた私の両親……
そして、彼らのそばに懐かしい顔をみつけた。昌弘だ。
昌弘は残念そうな表情を私にむけると、
『死ぬな、生きろ』と叫んだ。
その瞬間、トレーラーは私の前からスーっと姿を消した。
「後悔」「老獪」「数回」
「いい加減吐いたらどうだ。あんたがやったんだろう?」
「ちょっと刑事さん、わたしは何もやってませんよ」
「オレの目はごまかせんぞ。あれだけ手際の良い盗みができる奴はそうはいない」
「刑事さん、わたしはもう年ですよ。とっくに引退して・・・」
「引退? ふん。確かにあんた年はとった。しかしまだ目は生きてるぞ。腕も
まだまだ衰えていないようだ。オレには分かる」
「ま、刑事さんがそう思うのは勝手ですがね」
「ふん。今に見てろよ。後で後悔しても知らんぞ!」
「刑事さん、後で後悔してもって、先に後悔する人なんかいないですよ」
「はぐらかしやがってこのタヌキじじいが。またオレがぶちこんでやるからな」
「タヌキ? ま、確かに仲間内ではわたしのことを老獪だと言う奴もいますけどね、
わたしに言わせれば『老壊』ですよ。もうすっかり」
「何の仲間内だ? 囲碁や将棋じゃないだろう」
「またまた刑事さんおっかない顔して。だったら何の仲間だって言うんです?」
「とぼけやがって。ところであんた犯行現場に数回下見に行ってるな。
近所の人があんたらしき人を何回か見かけたと証言してるぞ」
「数回下見に行ってるって。数回って何回です、刑事さん? 辞書によれば数回
とは『二〜三あるいは五〜六の少ない数を漠然と示す』と書かれていますけどね、
ということは四回ではないってことですかね?」
「屁理屈を言いやがって。今捜査記録を見てやる。えーと確かこれに・・・」
「刑事さん、それはただの大学ノートでしょう。さっきまで中は真っ白でしたよ」
「そ、そうだったな。ええい何回かはどうでもいいんだ!」
「ところで刑事さん、さっきからそっちの机で何か書いてる人は何です?」
「あの人は記録係だよ。あんたの言ったことを全部書き留めているんだ。
あんたもまったく知らない顔というわけじゃないだろう」
「いいえ、刑事さん。あんな人は見たこともありませんな」
ぼけて身内の顔も分からなくなった祖父(元国語教師)と、祖父の妄想に付き合って
刑事役を演じる父と、その傍らで病状をもらさず記録する母の姿を、
僕は痛々しい思いで見つめることしかできなかった。
前スレ83さんの
>>88以上に怪談でもなんでもなくてスマソ。
ま、ぼけはある意味オカルトのようなものだとも思いますが・・・。
次のお題は「地図」「蠅(はえ)」「とりえ」でどうぞ。
期待sage
必要とされなくなったモノがどうなってしまうのか
物心ついた時からずっと考え続けていた
幸いにしてぼくは、きみから必要とされていたね
ぼくもきみを、必要としていたんだ
きみが動かなくなって
みんなが君を連れ去ろうとした時も
ぼくには君が必要だったんだ
きみもぼくが必要だったろう?
きみの居場所の地図を書いたよ
誰かがきみを必要とした時、そっと渡すんだ
毎日きみの絵を描こう
ぼくにはそれしかとりえがないから
ぼくにはきみが必要なんだ
きみから生まれた小さな虫が
やがて蠅になって
そしてきみを必要とする
ぼくはきみが必要なんだ
きみもぼくが必要だろう?
オイこそが 100げとー
>>99 次のお題が提示されていない場合「前のお題を継続」を意味します。
これは意欲的かつ挑戦的な試みでもあります
このスレ2ちゃんねるのオンデマンド出版で出してみたいね。
私のとりえは地図がなくてもどこへでもいける事と蠅を食べれる事です。
>>「飴」「珈琲」「ライター」
『話の聞けない男地図の読めない女』なんて本があったが、私は地図に強い。
といっても、空間認識力が普通の女の脳に比べてどうこう、というのじゃなく、
それは私のとりえ、というか変な癖なのだ。
子供の頃、小学校の先生で、黒板に綺麗な日本地図の輪郭を書くのが得意な先生が居て
私はそれがなんだかカッコよく見えて真似をしたのが始まりだった。
日本地図と世界地図、そして都道府県や外国の輪郭も描けるようになり、
それを利用してパズルを作ったりも出来るようになった。
自分でも気持ち悪いと思うがどんどんのめりこんでいき、
ついに関東圏の町なら形も道路の位置関係も細かく把握してしまった。
私の部屋の本棚には全国各地の地図が並んでいる。
その私の前に今、蝿が居る。
普段なら手で適当に払って追い出すところだが、この蝿はどうも変なのだ。
さっきから机の上を歩き回り、妙な図形を書いている。
妙なというか、そいつが一週した時点で私はそれがどこか町の輪郭だとわかった。いや、思った。
偶然にしても程がある。地図であるはずがない。
そう思いながらも私は蝿を凝視しながら、どこの町だか思い出そうとしていた。
関東は完全に覚えたから、次に覚えようとしている東北の方だろうか?
しかしどうしてもどこだか思い出せず、少し悔しがりながらも私は本棚から東北方面の
地図を一気に数冊引きずり出して調べ始めた。
ない。東北ではないのだろうか?
関東でも忘れてしまったところがあるのかもしれないと思い直し、今度は関東圏の地図達を
引きずり出した。そしてパラパラとつまむように調べていく。
あるページから紙が落ちた。
・・・ここだ。
軽い驚きとともに私は手を止めた。
そこは私の生まれ育った町だった。私が一番最初に地図を描けるようになった町。
何故忘れていたのか。そう思いながら落ちた紙を拾うと、それは昔の私の描いたその町の地図だった。
先ほどの蝿が飛んで来て、その地図にとまった。
その地点を見ると、何故か心臓が震えた。先ほどと同じ感覚。思い出せない何か。
地図の中の一区画の真ん中ににとまっている蝿が飛び立ち、窓から出て行った。
知っているのに。何かがあったはずなのに思い出せない。
頭の中を響き渡る蝿の羽音が何かを刺激する。
私は・・・そこに行ってみる事にした。
小学校の終わりごろに引っ越してからは一度も来た事のない土地である。
かつて住んでいた家も今はない。父母が生きていれば3人で来ても良かったかも。
そう思いながら、私は子供の頃私が描いた地図を片手にその場所へ向かっていった。
あの蝿が示した場所はおおきな林だった。
林の中へは人の踏み広げた小道があるが、林の敷地は針金で囲まれている。
蝿がとまった地点はこの奥だ。私は針金の隙間から体を入れ進んでいく。
林の中は暗くひんやりとして、嫌な匂いがした。動物の糞だろうか。
そこら中を蝿が飛び回っている。ぶんぶんと煩い羽音が私の足を急がせる。
・・・早く確認して帰ろう。きっと何もないのだろうけれど。
きっと昔その辺りで遊んだ事を思い出す程度でしかないのだろうけど。
ある地点で私は足をとめた。蝿がぶんぶんと飛び回っている。
そこにはあの先生が居た。私が居た。
私が綺麗に描いた地図を見せると楽しそうに笑った先生。
先生の家に沢山の地図があるから見せてあげるよと言い、
近道をするといって私の手をひきながら林に入る先生。
頭から血を流して倒れている全裸の先生。
少しずつ少しずつ腐って蝿と蛆に食われていく先生。
股間の痛みを思い出すたびにそこへ行き、やせていく先生を見て笑っていた私・・・。
蝿が私の腕にとまった。私は悲鳴を上げてそれを振り払ったが。払ったそばから他の蝿がとまる。
私は逃げようとして転んでしまう。倒れた私に蝿がたかる。全身を蝿に覆い尽くされ私は気を失う。
翌朝目を覚ました私は家に帰り皮膚が破れて血がにじむまで体を洗い続けた。
3ヵ月後私は妊娠していた。
乗り遅れたけど書き込ませてもらいました
私はとにかく退屈している。
毎日同じ事を繰り返しているだけだ。家と職場を行ったり来たり。
就業後偶に同僚と酒を飲む、まれに上司とも。
それすらもすこし長い目で見れば一定のパターンに組み込まれた決まり事のひとつに思える。
まっすぐに帰宅した日もいくらか酔って帰った日も、酩酊してどうにか帰った日すらも私はパソコンに向かう。
何か特別な作業をするわけではない。
だらだらとお気に入りに登録してあるサイトを見て回るだけだ。
いつのことだったか、その時もやはり退屈していた私に新しい刺激と感動を与えてくれていたであろう
それらのサイトも今の私には最早なにものももたらしはしない。
決まり事のひとつに堕しているのだ。
今夜も私はとある掲示板を閲覧していた。
世の中には私と同様に退屈している人間が多いのだろう、掲示板は盛況である。
書きこまれた様々な意見をつらつらと読み流しつつ煙草に火を付けた瞬間、ひどくむせた。
胸に嫌な感じが広がり、肺がきりきりと痛む。山盛りに吸殻の盛られた灰皿が目の端に入る。
咳き込みながらそういえば最近煙草を喫いすぎているな、と思った。
火を付けたばかりの煙草を揉み消し席を立った。いつだか同僚が旅行の土産にとくれた海外の珍しい飴が戸棚に
しまったままになっているのを思い出したからだ。
私はすこしだけわくわくした。普段の日常と違うイレギュラーな出来事、それが過ぎた煙草の代用に飴玉を舐める
というちっとも締らない行為であっても、やはりそれは私にとっていくらか特別な出来事なのだ。
いびつな形と華やかでない色のそれは、まるで砂糖を溶かして固めただけといわんばかりの強烈な甘さと相まって
私に郷愁を感じさせた。その懐かしさが錯覚である事は間違いなかったが、それでも何だか嬉しくなった。
下らない掲示板を閲覧するという行為さえも楽しく思えてくる。
私は久しぶりに熱中していた。
こんな飴ひとつで楽しくなるなんて我ながら単純な人間だ、口の中で飴玉を転がしつつ苦笑する。
痛っ。
舌に痛みが走り血の味が広がる。飴玉の縁で切りでもしたのだろうか、手の平に吐き出し眺めてみる。
初めの半分ほどの大きさに痩せたそれをよく見分する。…針?
針が出ている。なんだこれは。何故飴の中に針が入っているんだ。私は一転、嫌な気分になった。
同僚の顔を思い出す。奴はどこの土産だと言ってこれを寄越したのだったか。よく覚えていないがどこか南の島
へ恋人と出かけたのだと言っていた気がする。さほど開発の進んでいない、それ故に素晴らしい土地だったと。
素朴でのどかな田舎の島か、結構なことだ。だが食品の管理までのどかにする事はないじゃないか。
怒りのせいで血の巡りが良くなり舌が余計に痛む。
この忌々しい飴玉め。吐き出したそれを厳重にティッシュペーパーに包み、手を付けたばかりだがもう口にする
気にもならないので飴の袋に入れくしゃくしゃに握り潰して台所のゴミ箱に放りこむ。
ちょっとだけせいせいした気持ちになった私はそのまま湯を沸かし珈琲を淹れた。
部屋に戻る途中、実に忌々しい事だがそれでもやっぱりいつもと違う状況をすこし楽しく思った。
それほどまでに退屈していたのだ。
くすくすと笑いながら椅子に座った瞬間、視界がぐらりと歪んだ。
パソコンのディスプレイの輪郭がぐにゃぐにゃと動く。表示された文字が大きさを変えながら画面内を動き回る。
何事だ。これは一体何事が起こっているんだ。
やがて文字達は画面からぽとぽとと机の上に落ちてきて少し震えた後動きを止めた。
珈琲を一口飲み、深呼吸して視線を机から外す。見たくなかったのだ。
本棚が目に入る。ああ、なんてことだ。背表紙から次々と文字が剥がれて床に落ちていく。
床はどんどんと文字が積もって真黒になっている。フローリングの木目が見えないほどだ。
た、煙草。とにかく煙草。震える指で一本つまみ出し咥え、ひ、火、と手を伸ばした時ライターがするりと逃げた。
あ、これ幻覚だ。
唐突に気がついた。
机の上を逃げまわるライターを追いながら考える。
南の島の、珍しい飴の、不可解な針に塗ってあったに違いないぞ。
なにか、精神におかしな影響を与える珍しい薬が塗ってあったに違いないぞ。
なんの為になんの目的でしたかはわからないが、素朴でのどかな田舎者のたくらみに違いないぞ。
そうとわかれば慌てる事は無い。数時間かもしかしたら今夜一晩耐えて明日同僚を問い詰めてやろう。
そうとも私は退屈していたんだ。幻覚でひとつ暇つぶしをしてやろう。いい経験さ。
やっとライターを捕まえて一服する。
ふむ、煙草がうまい。感覚が鋭敏になっているな。こうしてまともな精神状態で幻覚を体験するのも面白いものだ。
そうそうこんな状況はないぞ。精々楽しむとするか、この精神の小旅行を。
私は今度こそ心からわくわくした。
ただ問題なのは、床に降り積もった文字を拾い集めて並べ直して、また本の背表紙に貼りつけなければならない事だ。
だってそうしないと本の題名が永遠にわからなくなってしまうからな。
次の休みにでもやるとしよう。一日掛かったって構わない。いい刺激さ、私は退屈しているのだから。
次のお題は「ケース」「スピーカー」「廊下」でお願いします
感想
>>82-83 や、やられたぁーー(w
憑いた方と憑かれた方が逆だったのね……
>>88 今どき、自分の周りなんかでも、普通に起こりそうなことでちょっとコワー。
>>95-96 おもしろい。
叔父さん、ボケてる割にはセリフが洒落ていてナイス!
「ケース」「スピーカー」「廊下」
僕が通っていた高校にはいわゆる七不思議というものがありました。
その中のひとつ、「スピーカーから聞こえる声」と呼ばれていた怪現象。
卒業して数年経った今でも僕は、あの日僕の目の前で起きた事を、そして
あのスピーカーから聞こえた悲しい叫び声を忘れることができません。
あれは僕が2年生の時でした。美術部だった僕はその日、県の絵画コンクールに
出品する作品を仕上げるために、一人放課後遅くまでイーゼルに向かっていました。
すでに外は暗くなっていて、校内にはほとんど生徒は残っていませんでした。
突然、校内放送用のスピーカーからザ・・ザザァ・・・とノイズが聞こえてきました。
その直後、「やめて、やめて、お願いですから・・・」という女性の声。
「人間は爪を剥がされたくらいじゃ死にはしない」
くぐもった男の声が女性の声をさえぎって静かに語りかける。
「いや、や・・・」
「ぎゃぁぁー・・・痛っいっ・・・な、なんでこんなことぉ・・・・」
女性の悲鳴がひときわ大きく響き、僕は思わず耳をふさぎました。
声は間違いなく、黒板の上に設置されたスピーカーから聞こえているようでした。
「スピーカーから聞こえる声」についての噂は僕も聞いたことがありました。
実際にその声を聞いたという生徒もいましたし、その内容も話には聞いていたので、
僕にはすぐに「これ」が噂の怪現象であると分かりました。
オカルト好きの友達によると、この学校があった土地には研究所があって、
気の狂った科学者が、人体実験を繰り返していたらしいということです。
当時の被験者の残留思念が、何らかの要因で時を越え、いくつかの偶然が重なること
により、スピーカーから再生されるのだと彼は得意げに話していました。
この学校で初めてこの現象が起きたのが四年前。それ以来スピーカーを取り替えても、
お祓いをしても、この声は、数週間、または数ヶ月に一度、何の前ぶれもなく
突然聞こえてくるらしいのです。
僕はスピーカーから聞こえる声に気をとられつつ、制作を続けました。
本当ならすぐに帰りたいところでしたが、コンクールの締切りが迫っていたことと、
何より、実際にこの声を聞いた生徒によると、この現象はいつも五分から十分程度で
突然回線が切れたように聞こえなくなるのだと聞いていたからでした。
声は時に鮮明に、時にノイズ交じりに聞こえました。
「誰だって人間の体の構造には興味があるだろう? ふむ、なるほど。爪の内側は
こんなふうになっているのか。人間は爪を剥がされるとこんな反応をするんだな」
男が語る声の向こう側では、女性の嗚咽が絶えず聞こえていました。
時々その嗚咽が悲鳴に変わるのは、おそらく爪を剥がされた瞬間だろうと思いました。
「今度は、爪が剥がれるところをゆっくり観察してみよう」
「いや・・・いっ・・・ぐっ・・・やめて」
「おお、おお、剥がれてく剥がれてく・・・」
「・・・いっそ一気に剥がして・・・お願い・・・」
ふと時計を見ると、すでに声が聞こえ始めてから三十分が経っていました。
なんだよ、話が違うじゃないか。やっぱりすぐに帰ればよかった。
もう制作どころではありません。
僕は耳をふさいで、声が止むのをひたすら待つしかありませんでした。
いつまで止む気配のない声。僕は一刻も早く学校から立ち去りたいと思いました。
後片付けしてる間も、女性の絶望にうちひしがれた嗚咽と絶叫が聞こえていました。
「お願いです・・・もうやめて・・・も、守谷先生お願い・・・」
守谷先生?!突然聞こえたその名前に、僕は思わずスピーカーを見上げました。
「守谷先生? 化学の?」
実験の時だけでなく、授業の時も両手に白い手袋をしていることから、
「白てぶくろ」とあだ名がつけられている先生。うちのクラスの化学も担当している。
まさか、スピーカーから聞こえるこの男の声。くぐもっていて聞き取りづらいが、
言われてみると確かに守谷先生の声に聞こえる。
「じゃあ、スピーカーから聞こえるこのやりとりは?・・・」
「斎藤ぉ」
突然、背後から僕の名前を呼ぶ声が聞こえ、僕は思わず振り向きました。
いつからいたのか美術室のドアのところに、守谷先生がもたれかかっていました。
「斎藤・・・斎藤ぉ・・・」
先生がこの世のものとは思えないうつろな表情でつぶやきました。
「この声が聞こえるといつもそうだ・・・」
先生はトレードマークの白手袋をはずしながら、よろめくように近づいてきました。
手袋をはずした両手は、包帯でぐるぐる巻きにされていて、その指先は、血がにじみ、
どす黒く変色していました。
「この声が聞こえるといつも、勝手に爪が剥がれていくんだぁ・・・」
「斎藤ぉ、この声を止めてくれぇぇ・・・」
先生は爪が剥がれてぼろぼろになった自分の両手を哀れむように見つめながら、
何かに怯えるように声にならない悲鳴をあげつづけました。
「こんなに長く声が続いたことはなかった・・・。次は硫酸なんだよ斎藤ぉ・・・」
先生がそう言うと同時に、スピーカーの向こうでは先生の冷静極まる声が言いました。
「硫酸をかけると人間の顔はどうなるんだろうな」
「やだぁばぁーー。やめで・・・」
スピーカーの女性の声と、僕の目の前にいる先生の声が重なり、その瞬間、先生の
顔から白い蒸気のようなものがたち上がり、見る見るうちに顔が焼けただれていきました。
「あづいぃ斎藤ぉ、とめてぐれー」先生は叫びながら美術室を飛び出し、
廊下へ出たところで、意識を失い倒れました。
数日後。
僕は事件の当事者(?)ということで、警察の人からいろいろな話を聞くことができました。
守谷先生は、意識が戻らないまま、二日後に亡くなったそうです。
うわ言で「俺が悪かった。もう許してくれ」
「何度埋めても燃やしても、いつの間にかまた準備室に戻ってくるんだ」
などと繰り返し言っていたということです。
学校の化学準備室を警察が捜索したところ、「彼女」の剥がされた爪や、
取り出された内臓、顔面が硫酸でただれた頭部などが入った標本ケースが見つかりました。
「彼女」の身元も判明しました。守谷先生が前にいた学校の生徒で、六年前に突然失踪。
その後全く行方が分からなくなっていた女の子でした。
怪現象が始まった四年前というのは、守谷先生がうちの学校に赴任してきた年でした。
きっとあの子が先生を追いかけてやってきたのでしょう。
守谷先生がうちの学校の化学準備室で再びあの子に会った時には、いったいどれほど
驚き、そして怯えたことでしょう。それでも先生がしたことを考えるならば
当然の仕打ちであると思います。
その後スピーカーから彼女の声が聞こえることはありませんでした。
あれから数年が経ちました。
あの子はあの後家族の元に帰って、きっと今も心穏やかに眠っているのだと思います。
あの悲痛な声を思い出す度に、そうあって欲しいと願わずにはいられません。
■力不足で文章うまくまとまりませんでした。長いよっ!
次はもっと短めの、お題を活かしたものを書きたい。
次のお題は「いびき」「メモ」「深海」でお願いします。
「一体何なんだろうな?」
深海調査船のクルー達は、今しがた引き上げてきた金属製の箱を囲んで頭を突き合わせていた。
全体に豪華な彫金装飾が施されたこの箱。海中にあったにも拘らず、その表面には腐食がまったく見られない。箱の全体に鎖が巻かれ、人力で開ける事は叶わなそうだ。
クルーの一人が耳を箱に近づけてみると、低いいびきのような音が聴こえてきた。中に何か入っているのは明白だった。
「どうします、先生?」
同乗していた学者に意見を求めるクルー達に、学者は箱の開封を命じた。
持ち込まれていたバーナーで鎖を焼き切ってみる。程なく鎖は切断され、上蓋が取り除かれた。
数日後。海中調査隊からの連絡が無いために、停泊予定地へと赴いた調査団の代表達は、現地で顔を見合わせていた。
船上には、誰一人として──同乗の学者も含めて、乗組員がいなかったからである。
残されていたのは、夥しい量の血痕と、開け放たれた金属製の箱、そして一枚のメモ用紙である。
そこには、殴り書きのような字でこう記されていた。
「やつが目を覚ましてから3日。地下に隠れ篭っている私には、何人が生き残っているのか知る術は無い。
今日も上の階から激しい物音と悲鳴とが聞こえてきた。生き残っていたクルーが、やつにやられたに違いない。
我々は、禁断の存在を封印の眠りから起こし、この世に解き放ってしまった。取り返しのつかないことになった。
やつは」
その先は、べったりと付着した血のせいで、読み取ることは出来なかった。
■「ペット」「百科事典」「ウォッカ」でよろしく。
ageついでに感想。
>>105-107 これ、なんか怖くてイイ。
当時起こったことを詳細に描写してないのがうまい。
その場所へ行って当時のことを思い出すだけでも十分だけど
その先のオチがさらに怖くてナイス。
>>98 背景に哀しみとか愛とか狂気とかいろいろなものが
想像できてイイ。何気に怖いよ。
ほしゅ
爺さんが死んだ。遺言状に書いてた、とかで俺は爺さんの本棚を貰った。
さほど大きな本棚って訳じゃないんだが、狭い我が家にはちょっと厳しい。
しかし、俺は爺さんの本棚が好きだった。糞真面目ななんたら全集とかの間にひょこ
っと洒落た本が混ざってる。筋金入りの頑固者のように見えて案外遊び心のある爺さ
んの性格が出てる。
そんな訳で本棚が届いた日。俺は本棚に別口になっていた本を並べていた。結構ど
う並んでたか覚えてるもんだ。ちょっとしたパズルみたいな気分で鼻歌混じりに作業
に熱中していると、13巻+別冊2巻な箱入り百科事典が出て来た。
「こんなのあったっけ?」
スペース自体は、それを入れるくらいはある。しかし、その選択が妙に全体にそぐわ
ない。爺さんが本当に百科事典が欲しいならこれは選ばないんじゃないかなぁ、と。
まぁ、感覚的なもんで、具体的になにがどう、とかはわからないんだけど。
なんとなく一冊を箱から抜いて開くと…中がくり抜かれて春画が入っていた。
「爺さんも好きだな…確かにこれはそのまま本棚とかに並べるには恥ずかしいよな」
別の一冊を開いた。同様にくり抜かれて、小瓶に入ったウォッカが出て来た。爺さん
は晩年医者に酒を止められていたから、好きなウォッカをこうして隠して時々飲んで
たんだろう。
ほかの巻もそんな感じで、さながら爺さんの趣味を凝集したようになっていた。こう
やって隠しておく、って行為そのものも推理小説か時代小説みたいな気分で楽しんでい
たんじゃないかと思う。
(爺さんらしいや)
苦笑しながら、最後に残った一冊を開くと…息を飲んだ。
昔、俺が幼い頃、親の諸々の都合で爺さんの家に一年ばかり住んでいた。その頃、
爺さんの家では、コロという名の柴犬をペットというか番犬というかともかく飼っていた。
ある日、ふいとコロは行方をくらました。俺は随分と泣いた覚えがある。
そのくり抜きに入っていたのは、コロの無惨な死体の写真だった。何枚か入っている。
内臓を引きずり出している写真や、タイマーで撮ったのか、笑いながらコロの頭を踏
んづけている爺さん自身の写真すらもあった。
俺は呆然として呟いた。
「なるほど。これが類は友を呼ぶか。だから爺さん、本棚を俺にくれたのかな」
あ、保守な人とかぶった(笑)
なーんか落ちがしっくり来ないなぁ。
そこまでは割とさらっと筋浮かんだんだけど、「ペット」で苦戦しちまったのが敗因か。
次のお題は、「天体観測」「たんぽぽ」「おっぱい」でお願いします。
90以降の感想(1/2)
>>92 空手バカかっちょいー。
しかし、空手バカ軍団は確かに怖い(笑)
>>93-94 「つの」じゃなくて「かく」かぁ。
工夫してもらえてちょっと嬉しかったり。
トレーラーごと幽霊(?)っては、なかなか面白。
>>95-96 ええ話(?)やぁ〜。
数回に四回は含まない?ってのは、どっかで見たような…。
最後のやり取りが哀しくて良いです。
>>98 なにかすっきりと状況がわかりきらないところが、ぼやーっと怖くてナイス。
こゆの書ける人羨ましいです。
>>104 シンプルやねぇ(笑)
まぁ、どちらも不可能な特技じゃないね(食べたくないけど(笑))
いや、待てよ、蝿だって種類と育成方法を吟味すれば美味しくいただけそうな
気も…、と中国人的発想。
90以降の感想(2/2)
>>105-107 非科学的ザ・フライ、って感じですな(元から科学的かはアレだけど)
そう考えると、なにが産まれるのやら…という意味合いでもなかなか怖いかも。
>>109-111 破滅に至るのかと思いきや、ファンタジーとはっ。素敵です。
ハッピーエンドな気がするのは危険思想でしょうか?(笑)
>>113-116 幽霊が場所に憑くか、人に憑くか、はなかなか難しいけれど、そらそんなもの
赴任先に持ってったら憑いて来るわなぁ、と。
もう少し主人公自身への危機を煽っても良かったかも。
>>117 「レリック」を彷彿。
怪物(?)の容姿を想像するような描写や、その後の惨事を匂わしたら、落ちが
もっと生きたのではないかと愚考する次第。
>前スレ83氏
ほしゅは私です
ぎりぎり前で良かったと胸を撫で下ろしましたw
いつもながら乙っす
【感想】
>>98 作中の『ぼく』は、ひょっとして人間じゃないのかな、なーんてつい深読みしてし
まいました。
>>105-107 おぞましい雰囲気が醸し出されていてgood! あれこれ想像しながら読める点もいい。
>>109-111 何とも不思議な作品ですな。わけのわからん国(?)の食い物は確かに怖いね。
>>113-116 怖えぇぇぇーー。オカルトとスプラッタの融合物ですか。まぁ、守谷先生は自業自
得なんだろうけど、同じことが何の落ち度もない主人公にもふりかかる、という理
不尽なストーリーの方がもっと怖かったりして。
>>117 おもしろい。昔に観た『続・人食いアメーバの恐怖』っていう映画(ビデオ)を思
い出しました。
>>121 爺さんの趣味の幅広さというかギャップの大きさがプチコワーです(w
ぽしゅ
期待sage
「天体観測」「たんぽぽ」「おっぱい」
自分の赤ん坊が怖いなんて人いるのだろうか。
私は自分の赤ん坊が怖い。
あの子は生まれたときからどこかおかしかった。
看護婦さんに抱かれた我が子と初めて対面したとき、私はギョッとした。
あの子は笑っていたのだ。
その顔に浮かんだ表情は赤ん坊のそれとはとても思えなかった。
変に大人びた、いやらしい笑み。
なんて不気味な赤ん坊・・・そう思った。
女の子だった。星子(せいこ)と名付けた。
天体観測が唯一の趣味である夫の、たっての希望だった。
「そろそろおっぱいの時間かなー」赤ん坊を抱きながら夫が笑う。
夫にとってはそれはかわいらしい初めての子供なのだ。
私は胸をはだけて赤ん坊の口に乳首をあてがう。
あの子は授乳の間じゅうずっと上目づかいで、私のことを見ていた。
まるで私を嘲笑うかのような表情で。
私は耐えきれずに視線をそらした。
夫が三人で散歩に行こうと言いだした。
公園で風に吹かれて四散するたんぽぽの綿毛を見ながら、
自分はいつまで耐えられるだろうかと思った。
あの綿毛が新しい生命を芽吹く季節まで、私はこの赤ん坊の首を絞めずに
いられるだろうか。
夫に抱かれた赤ん坊が、私の心を見透かしたように笑った。
ニヤリとゆがんだ口元が夫には見えない。
■次は「ファックス」「地下鉄」「右目」で。
パソコンの電源を落とし、時計を見る。午後11時30分。
終電ギリギリってとこだ。ロッカーからコートを出し、羽織る。
退院してまだ2週間しか経っていないってのに、こんな時間まで残業。人使いの荒い会社だ。
ポットの電源を切り、照明のスイッチに手を掛ける・・・
ピ――――キュロキュロキュロ・・・
ん?こんな時間にファックスか・・。宛先を見る。自分宛だった。読んでいる時間はなさそうだ。
あとで読むことにして、ロール紙を破り取りカバンへ。照明を落とし、ドアを閉めて鍵を掛ける。
ビルの外へでると地下鉄の入り口に向かい足を速めた。
下りの階段で転びそうになった。まだ体が慣れていないようだ。
なんとか終電には間に合った。ドアが閉まり、発車。今日はやけに人が少ない。
シートに座ると、カバンからさっきのファックスを取り出した。
発信者の名前がなく、発信元履歴もなぜかプリントされていない。首を捻りながら読み始める。
病院のカルテのようだ。難解な病名が書かれている。
長期に渡る意識不明状態?いわゆる植物人間のことか・・・・
細かい字が読みにくい。眩暈に襲われ目を閉じた。やっぱり、まだ調子が悪いようだ。
目を開けると、車内がやけにガランとしている。見渡す限り乗客は私一人だ。
いくら終電とはいえ、これはおかしいのではないか?
そう思った矢先、車内の照明が点滅し始めた。
思わず立ち上がろうとして、またもや眩暈に襲われた。目を閉じて、しゃがみ込む。
脳裏に映像が浮かび上がってきた。白い天井。覗き込む中年女。疲れ切った表情・・・
再び目を開ける。車内は真っ暗だった。音が消えている。どうやら停車しているようだ。
事故か?それにしても、周囲に人の気配が全く無い。
と、正面の座席に誰かが座っているのが判った。
暗くて良く見えないが、小柄な人のようだ。白い服を着ている。
徐々に目が暗闇に慣れてきた。長い髪が前に垂れ、顔が見えない。何か呟いているようだ。
「・・・・にた・・ない・・・・し・・くな・・」
服の裾から覗く腕が異様に細く白い。その手がゆっくりと持ち上げられた。戦慄が走る。
「しにたくない・・しにたくない・・・しにたくない!」
またもや眩暈。目の前の女の像がぼやける。いや別の映像がカブって、二重写しになっている。
白い天井。カーテン。疲れ切った女の顔。
暗い車内にそれらの光景が重なる。どうやら右目が別の映像を見せているようだ。
白い天井は病室のようだった。視界の隅に点滴や、チューブが見える。
左目は、白い女が、ゆっくりとシートから立ち上がろうとしているのを見ていた。
「・・えせ・・か・・せ」
またもや何事か呟いている。
「かえ・・せ・・か・・え・・せ」
右目の映像。男の顔が現れた。白衣を着ている。医者か?中年女に何事か話しかけている。
女が頷くと、医者は傍らの装置に手を伸ばす・・・
やめろ・・やめろ・・・それは ・・・
男の手がスイッチに触れる。右目の視界が揺らぐ。
やめろ。やめてくれ・・・
別のスイッチに触れる。視野が暗くなってきた。
いやだ・・・しんでしまう・・・しにたくない・・しにたくない・・・死にたくない!
左目は、白い女が立ち上がり、こっちへ近づいてくるのを捉えていた。
痩せ衰えた躰。異様に白い皮膚。腕を上げてふらつきながら向かってくる。
さっきから同じ言葉を繰り返しながら・・・
「かえ・・せ・・かえせ・・返せ・・」
女の手が、もはや何も見えなくなった右目に延びる・・・
「返せ・・返せっ!」
「何であんな所に居たんでしょうね?」
「知らねーよ。俺はちゃんと点検したんだ。その時はあんな男居なかったんだって。」
「じゃあ、車庫に忍び込んだんですかね?」
「地下鉄の車庫に忍び込んでどーするってんだ?浮浪者じゃあるまいし。」
「違うんですか?」
「ああ、サラリーマンらしいぜ。ま、イカレちまってたみたいだけどな。」
「イカレてた?」
「ああ、自分の右目、くり抜いちまったんだと。せっかく移植してもらったってのによ・・・」
おわり
■次のお題は「青い」「歯医者」「夢」でお願いします
ほしゅsage
誰か書いてよぉぅ
夢の中で私は歯医者だった。歯医者は嫌いだ。
真っ青な部屋の中大きく開いた患者の口を覗き込む。
突如として全てが面倒になり私は手にしたドリルで患者の口を
めったやたらと掻き回す。患者はしばらく暴れるがやがて静かに
なりかつては口だった穴から時折ごぼりと気泡交じりの血を吐くだけになる。
私は部屋を眺め淡い青い色と鮮烈な赤のコントラストに目を細める・・・。
「あなた、時間よ。起きて」
妻の声で目を覚ました。うたた寝をしていたようだ。
「・・・いやな夢を見たよ。歯医者はもういやだ」
「何言ってるの。もう行かないと予約の時間に間に合わないわよ」
「もうそんな時間か」
「お待たせしちゃ悪いでしょ」
私はわざとゆっくりと服を着てのろのろと支度した。せめてもの反抗だ。
「急ぎなさいよ。予約があるんだから」
「ああ」
私は白衣を身に付け、治療室へのドアを開けた。
淡いブルーの壁。青空を模した青い天井。
私は口を開けて座っている患者の傍らへ進み、ドリルを手に取った。
「さあ、続きを始めましょうか」
■次は「リサイクル」「高速道路」「缶ビール」でお願いします。
↑夏厨(前スレ1)です。
sage忘れです。お騒がせしました。
めでたついでにsageほしゅ
交通事故に遭ってから、どうも精神状態がおかしい。
退院初日にどうでもいい事で腹が立ち、冷蔵庫の扉を陥没するほど蹴ってしまったし、
この間なんて家族でドライブに行ったのだけれども、幼いわが子に訳も無く殺意を覚えて
高速道路を走っている最中だっていうのに窓から落とそうとしたり(これは妻が慌てて止めてくれた)……
どういうことなのだろう?これも事故の後遺症の一種なのだろうか?
酒でもあおっていなければ、やってられない。だから今日もこうして飲んでいるのだが。
あれ?おかしい……な?
まだ……缶ビール一本しか……飲んでいないのに……
やたら…………眠い………ぞ……………。
「それで、我々を呼んだわけですな」
「ほう、缶ビールの中に睡眠薬……適切な行動ですねぇ」
「あのぅ、もしかして失敗した、とか……」
「調べてみるまでは、断言しかねますがね。その可能性は高そうですな」
「やっぱり、無理だったんでしょうか?」
「まぁ、まだこの死者蘇生術の分野は、理論的にも技術的にも発展途上ですからねぇ。
しばらくの間、研究目的の意味もかねて、ご主人の体はお預かりします」
「はい、お願いします」
「まあなんですな。人間という物体は、そう簡単にリサイクルができない、といったところでしょうな」
■「コンクリート」「爪」「ブレーカー」でよろしく。
「リサイクル」「高速道路」「缶ビール」
高速道路で車を飛ばしながら改めて思った。
これからはやっぱ、リサイクルの時代だよね。
オレもさ缶ビール飲んだらちゃんと空き缶資源ゴミの日に出してるよ。
でもさ、もっとリサイクルできるものがあるんじゃないかと思う時あるよ。
それはズバリ人間の体、正確に言えば遺体だけどね。
脳死体からの臓器移植とか、医学部への献体とか今もやってるけど、
もっと利用できるんじゃないかなーって思うよ。
ただ焼いちゃうだけじゃやっぱりもったいないよね。
例えば、死んだ直後の遺体から手とか足とか切断して、
他の手足が不自由だったりする人に移植したりさ、
ある分野の研究の第一人者が死んでも、その脳を取り出して、
その人がもっていた知識を共有できたらけっこう便利じゃん。
オレこう見えても環境のこととか地球の未来とかけっこう考えてるからさ。
でも思ってたり、口先だけでリサイクル重要って言ってても仕方ないよね。
実践がともなわなくちゃ何にもならないよ。
オレひとりだと小さな一歩でも、やがてそれが大きな一歩となって、
ひいては地球を救うことになるかもしれないしね。
おっと料金所だ。980円か。
オレは財布から千円札を取り出した。
死んだ妻の皮で作った財布はなかなか使いやすい。
■うっ、先越されてた。
人間をリサイクルってのも微妙にかぶってるし・・・。
次のお題はもちろん
>>140の「コンクリート」「爪」「ブレーカー」で。
「コンクリート」「爪」「ブレーカー」
嫌な日だった。
朝から激しい雨が降り続き一向に止む気配がない。
折角新しいマンション(とは言っても相当古いが)に
引っ越してきたのにここ数日イヤな天気ばかりで苛立っていた。
窓を開けると雨音と雷音がコンクリートの壁に響いてイヤな気分を助長させる。
いや・・・気分を害しているのは何も天気の所為だけではない。
このマンションに越してから毎日のように見るあの女の事もある。
その女がこのマンションの住人で無い事は初めから解っていた。
彼女を見るのは、決まって私の部屋のバスルームだからだ。
白いワンピースに腰まで届く黒髪。
前髪を降ろしていて、顔はまともに見た事がなかった。
だが、恐らく陰気な顔をしているのであろう。考えるまでも無い。
時計を見ると午後10時を指していた。
明日も仕事だ。朝も早い。
さっさと風呂に入って明日に備えるとしよう。新聞記者という仕事も楽ではない。
窓を閉め、バスルームに向かう。
あの女の事を思い出さずにはいられないが、今までだって似た様な経験はしてきた。
別に害がなければ恐怖も薄らいでゆくものだ。
幽霊だとか霊魂だとかを今更信じないわけにはいかないが、
だからといって無闇に怖がることも無い。
鏡には私の疲れた顔が映っていた。
そして肩越しには、今日もあの女。
前髪で顔は見えないが、毎晩毎晩御苦労なことだ。
バスルームの戸を開け、中に入る。
今日は特別疲れていたせいか湯船に浸かっているとつい、うたた寝をしてしまいそうだ。
フー、と息を付き湯船の枠に足を放り出して天井を見る。
・・・・・・天井に傷がついている。何かの爪痕のような傷。
一本、二本・・・・・・合計15本あった。
それは5本おきに間隔を空けて付けられている。5本の爪痕が3束。
「・・・・・?」
職業柄、事件現場の痕跡などには目ざとい私だが、私生活となるとまったくもって大雑把な
人間の為、不動産屋に紹介された時は気にもしなかった。
だが気付いてしまった以上、好奇心がそそられる。
「何か意味があるのか・・・・?3束・・・・5・・・15・・・・
200”3”年・・・”5”月・・・”15”日?・・・・今日の日付か・・・?」
ブンッ・・。
途端にルーム内が暗闇に包まれた。
「落雷でマンションのブレーカーが落ちたか。これだからオンボロマンションは。」
のんびり風呂に浸かっている場合でもない。
取り敢えず手探りで部屋に戻ろう。
私が湯船から出ようとした瞬間、
バスルームの戸が物凄い勢いで開く音がし、誰かが私の眼前まで進んできた。
あの女だ。
前髪の隙間から無表情な、それと同時に恐怖を感じさせる顔が見えた。
薄っすらと青白く光るその女は私の首を締め上げると顔を歪めて笑った。
苦しさに私がもがくとさらに声を立てて笑う。
ケタケタケタケタと楽しそうに。
暫く後、私の意識は途絶えた。
ー翌日ー
「管理人さん、またあの部屋で死人がでたんですって?」
「そうなのよ、まだ若い人だったのに・・・。」
「それよりも又、同じ月よね。」
「ええ、何であの部屋に入る人はみんな5月に死ぬのかしら」
「怖いわねえ、何とかしてよ管理人さあん。で?それより死体は?」
「また一緒よ、バスルームで首吊って死んでたわ。バスタオル首に巻き付けて。」
「やだわあ、前回と一緒じゃない。使ったものまで!」
「全く、最初に入居したカップルの女性が自殺して以来、ずーとこうなんだから。」
「やだ、怖ぁい・・・ひょっとして幽霊でもいるんじゃないの?」
「そうかもねえ・・・、それよりもバスルームの天井の傷よ。
酷く掻き毟ったみたいね。合計20本もの爪痕がついてるのよ。いい迷惑だわ。」
長文&駄話スマソ
計算では後3回程で幽霊は出なくなる筈でつ・・・。
じゃあお次は「デパート」「列車」「ピエロ」で。
「デパート」「列車」「ピエロ」
深夜十二時。
「さて、そろそろ見回りの時間だな」
警備員の原田は懐中電灯を手に警備員詰め所から出た。
深夜のデパートは当然真っ暗だ。
原田が三階へ上がると、フロアの一角の灯りがついているのが見えた。
消し忘れではない。原田がそこだけ消灯しなかったのだ。
灯りがついているのはおもちゃ売り場だ。
列車の模型がジージーと音を立てて走り回り、ぬいぐるみが宙を舞う。
ビニールのボールが弾み、おもちゃのピアノが軽快なメロディーを奏でる。
ここには子供たちの幽霊が住みついているらしいのだ。
見える人には見えるらしいが、霊感が全く無い原田には
子供たちの姿は見えないし、声も聞こえない。
「みんな楽しんでるかい?」
原田がそう声をかけると、動き回っていたおもちゃの動きが一斉に止まった。
「あ、いいんだよ、そのまま遊んでて。子供は遊ぶのが仕事みたいな
もんだからね」
またおもちゃが動き出すが、なんとなく遠慮しているような動きだ。
「みんな、遊んだ後はちゃんと元の場所に戻しておくんだよ」
宙に浮いたピエロ人形の首が縦に折れた。
「本当は昼間明るい時に遊ばしてやりたいんだけど、そういうわけにも
いかないんだよ。ごめんな」
今度は人形の首が横に数回振られた。
「それじゃ、また朝にくるから」
原田はおもちゃ売り場を離れて、巡回の仕事を続けた。
巡回を終えて詰め所にもどった原田は机の上に紙片があるのに気付いた。
「いつもありがとう おじさん」
そのたどたどしい字が原田の頬をゆるませた。
■次は「虹」「戦争」「イクラ」で。
「リサイクル」「高速道路」「缶ビール」
いやぁ〜、今のお若い方は御存知ですかね?…リサイクル。
今じゃあ、コンサート…とか、ライブ、とか何とかいうらしい
ですがね、うちの田舎じゃあ、今でもリサイタル、とかリサイクル
、なんて言ってますよ、ええ…。
でね、リサイクルの打ち上げが終わってね、関係者のTさんと夜の
高速をでぇぇぇぇぇーーーー…っと、走ってましたよ、ええ。
横ではそのTさんが、あそこの油揚げはこうやったらうまいとか
あーでもな〜こーでもない〜、言ってましたよ。
あたし、疲れてたもんだから「へーへー」って窓の外見てましたよ。
したら、前に標識がありました。
「あー、珍しいなぁ〜」って思いましたよ、あたし。
当時あんまりなかったですからねぇ〜。
………(以下断念)
保守。
テレビをつけると気が滅入る。
どこを見ても同じ内容が流れているからだ。
つい先日始まった戦争のニュース。
そんなものにはまったく興味がわかない。面白くもない。悲惨だとも思わない。
只ひたすらに無関心。どうでもいい。
今日も僕は虹板にいる。
とても心地よい。増加し続ける閲覧者に対応する為の板の細分化。
それがもたらしたのは板の趣旨に特化した書きこみの強制だ。
どんなにタイムリーで社会的関心の高い話題だって「板違い」の一言で片付く。
だから下らない議論や感想を述べる者はいない。
皆が只一つの目的、エロ絵だけを追求している。
実に心地よい。
なかばまどろむような心地で、それでいてどこか興奮を感じながら新しく立ったスレッドを開く。
「…『イクラちゃんのエロ画像きぼんぬ』?」
僕はくすくす笑いながらキーボードを叩いた。
「クソスレ逝ってよし…と」
ああ、とても気分が安らぐよ。
この時間がずっと続けばいいのに。
HO!
>>146が好評のようで嬉しいです。
でも次のお題がなかなか出ないね。
僕が出したお題扱いづらかったのかな・・・。
ちょっとだけションボリ(´・ω・`)
20日ぶりに来ました!
自宅のPCが突然あぼーんして、しばらく来れませんでした・・・
これから、また投稿していきたいです。ヨロシク。
お帰りなさーい!
(*^^)旦 ソチャデスガ…
「虹」「戦争」「イクラ」
今年の正月、春樹は2年ぶりに海外赴任からもどってきた。そして、日本でしか
食べることのできない、好物のイクラを酒の肴にしながら、正月に届いた年賀状を
整理していた。職場の同僚や古い友人、親戚などから今年もずいぶんたくさんきた。
恋人からはパソコンで作成したと思われる、虹を描いた鮮やかな年賀状が届いていた。
その中に年賀状ではない、淡い白黒の文字で印刷されたはがきが一枚だけ混じっ
ていた。
『喪中につき、年末年始のご挨拶をご遠慮申し上げます』
と書いてある。
「はて、誰からのものだろう?」
思わずそうつぶやいたとき、後ろに人の気配を感じた。振り返ってみると、いつ
の間には入ってきたのか、そこには親友の吉伸が立っていた。
「あっ、君は……」
春樹はわが目を疑った。なぜなら、吉伸は、去年の春に交通事故で死んだはずだっ
たからだ。
「き、君は……逝ったんじゃなかったのか?」
春樹はかろうじて声を出すと、
「そうだが何か?」
吉伸は、平然とした顔で言ってのけた。
「なんで、死んだはずのヤシがここにいるんだ?」
「もちろん、あぼーんして幽霊になったからさ」
吉伸は、当たり前のことをいう口調で答えた。
「ユーレイだなんて、んなアフォな……」
「だから俺が言っただろーが。はやく日本に戻らないと戦争が始まるからってな」
吉伸が厳しい目をして言った。
「いったい……なんのことでつか?」
「おめぇは何にもわかってないんだな……ワラ」
吉伸は、やれやれといった表情をうかべると、腕をのばして春樹の手元を指さし
た。春樹は、吉伸が指さしたところを見た。そこにはさっきまで見ていた年賀状が
置いてあったが、よく見るとそれはみんな去年のものばかりだった。
(すると、これは……)
春樹は、あの欠礼状をもう一度みた。その差出人は、春樹の父親の名前になっていた!
「おめぇは去年の3月に、イラクを攻撃したアメリカ軍の誤爆の巻き添えを食って
あぼーんしたんだよ。だから、幽霊同士こうやって会えるんじゃないか」
吉伸はそう言うと、笑みを浮かべながらすーっと消えた。と、同時にあたりが急
に暗くなり、霊界の暗闇が春樹に迫ってきた……
次のお題は「入学」「夜桜」「社交辞令」で。
【感想】
>>130 普通じゃないのが実は母親の方で自分の狂気に気づいていない、というのがこの話
のツボということ?それともまた深読みしすぎかな。
>>131-133 いいなぁ、この作品。文体もめっちゃ好み。この人の書いた長編作品を一度読んで
みたい。
>>136 おもしろいけど、この手のオチは最後の一文または一行まで隠しておく方がベター
だったかも。それだけに残念。
>>140 “人間のリサイクル”というのがなかなかおもしろい発想だと思う。
>>141 あはは、140さんとかぶっちゃいましたね。
>>142-145 なるほど200“6”年・・・“5”月・・・“30”日でおわりか・・・こりゃうまいっ!パチパチパチ!!
>>146 ふぁんたじぃやね。ほのぼのしてますねぇ。
レス乞食が大活躍しているスレはここですか?
そういう事は好きもののガキにでも言ってもらおうか。
「○○気象台は今日、桜の開花宣言を行いました。これは平年より……」
カーラジオから流れたニュースを聞いて私は、車を大学前公園へと走らせた。
もうそんな季節か。あれからもう何年たったのだろう。
大学に入学したばかりのころ、私はサークルの新入生歓迎のコンパで一人の女性と知り合った。なかなかの美人で、私は一目ぼれしてしまった。
別れ際にお互いの携帯電話の番号を交換し、今度どこかに遊びに行こうか、と私のほうから誘ってみた。
「う〜ん、いいよ。今度、ね」
そう言って彼女は軽く笑っていた。
公園は満開の桜で桃色に染まっていた。
車を入り口に停め、私は薄闇に包まれた公園を散策し始めた。
思えば、あの時の彼女の返事は社交辞令だったのだろう。誘えど誘えど決まって彼女の返答は「その日ちょっと都合悪いから」であったのだから。
けれど、当時奥手だった私はそういった事に気付くはずも無く、しつこく彼女に電話をかけ続けた。
やがて彼女が番号を変えたのだろう、電話もつながらなくなり、しまいには彼女がサークルを辞めてしまったため、完全に彼女との接点を失ってしまった。
私の足は迷うことなく一本の桜へと向かっていた。
彼女のことが諦めきれなかった私は、彼女に関する情報を集め、そしてついに彼女があるファーストフード店でアルバイトをしていることを突き止めた。
私は待った。彼女が通りかかるであろう、大学前公園の入り口で。
そして、彼女はやって来た。私は彼女に声を掛けた。
「おお、咲いてる咲いてる」
他の桜と比べると、明らかに色鮮やかにお目当ての桜は満開の花を咲かせていた。
「さて、今年もそろそろ……」
呟きながら私は、通りから一番遠い場所に設置されたベンチに腰を下ろし、肩越しに再び桜を見上げた。。
宵闇はさらに濃く周囲を覆っており、時限タイマーで点灯した公園の照明が、夜桜の彩をより一層鮮やかに引き立たせていた。
「桜の樹の下には屍体が埋まっている……か。なるほど、梶井基次郎は間違っていないね」
あの時、私を見るなり逃げ出そうとした彼女は、あの桜の木の下で永い眠りについている。
その後、人を殺める快楽に目覚めた私の牙にかかった女たちと一緒に。
■「目薬」「ビターチョコレート」「壁掛時計」でよろしく。
眠い。壁掛時計に目をやると3時40分だった。午後のこの時間はいつも眠気に襲われる。
首を回すとパキパキと軽い音がした。右手で肩を揉む。ずいぶんと凝っているようだった。
机の上に置かれた書類に視線を戻した。研究費の予算配分に関する会議資料。退屈な仕事だが、
今日中に目を通しておかねばならない。
ため息をついてマグカップを持ち上げると、コーヒーが無くなっているのに気が付いた。
「おおい、小泉さん。コーヒーを入れてくれないか?」
「は〜い。」
末席に座っていた小泉早苗が、スッと立ち上がった。
早苗は、この春から研究室に入った学生だ。授業の成績は優秀だし研究態度も熱心。論理的な
思考は少し苦手なようだが、時にキレの良い思考の跳躍を見せる。総じて言えば優秀な研究生
と言えた。そして何より美人だった。
早苗がこちらに歩み寄り、机の上のマグを取り上げた。私は書類に目を通すふりを装いながら、
彼女の方を覗き見ていた。
理知的な表情。凛とした頬の線。意志の強さと女性らしさを兼ね備えた瞳。白魚のような指が
マグの取っ手に絡みつく光景には清楚な色香すら感じる。
「ブラックで良いですか?」
鈴が鳴るような上品な声と口調が耳に心地よい。最近の若い娘はお茶汲みなどを頼むと良い顔
をしないが、早苗は文句の一つも言わずにこうした雑用をこなしてくれる。彼女のそういった
態度や佇まいには、最近の若い女性からは失われて久しい慎み深さというものが感じられた。
「どうぞ・・・」
湯気の上がるマグカップが机の上に置かれた。
「ありがとう。」
私はコーヒーを啜りながら、自分の席に戻る早苗の後ろ姿を眺めた。均整のとれたスタイルだ。
足を踏み出すたびに微かに揺れる尻がそそられる。セクシーと言っても良い。ああ、こんな娘
と男女の関係になれたら・・・待てよ、教官という立場を利用すれば・・・
そこで、傍目に不自然とも思える時間、早苗の方を見つめている自分に気が付いた。
慌てて書類に目を落とす。妄想を振り払うようにコーヒーをもう一口啜った。しかし、なかな
か思考が切り替わらず、頭脳が回転しない。
机の引き出しからビターチョコレートを一粒取り出して口に放り込んだ。糖分の力を借りて脳
を活性化しようというわけだ。一種の暗示のようなものだが、意外に効き目がある。私はよう
やく、目の前の資料に集中することが出来た
しばらくは仕事に没頭していた。気が付くと外は薄暗くなっており、研究室に居るのは私と早
苗の二人だけになっていた。壁時計を見ると、時刻は6時10分を過ぎている。細かい文字を
追っていたせいか、酷く目が疲れていた。引き出しを開け、目薬を取り出そうとした。
無い。奥の方を探ってみたが見つからなかったので、別の引き出しを開ける。しかし、どこに
も見あたらなかった。確か、今日の昼休みにはあったのに・・・
「どうかしたんですか?先生。」
早苗が声を掛けてきた。
「いや、目薬を探しているんだが、見つからなくてね・・・」
カバンの中をガサゴソと探しながらそう答えた。
「もしよかったら、私のをお使いになりますか?」
「え?・・あ・・そ・そりゃ助かるが・・・」
急にどぎまぎして、しどろもどろな口調になった。
なぜだ?私は自問した。早苗が目薬を貸してくれると申し出たからといって、それがどうした
と言うんだ?いやしかし、彼女の使った目薬を自分の目に差すという事は、いわば間接・・・
何を考えてるんだ、私は?
「先生が使っている目薬って、****のでしたよね?」
「ああ、そうだった・・かな?」
しかし、いくら担当教官とはいっても、他人の目薬の銘柄までチェックしているものなのか?
これは、もしかすると脈があるのかもしれないな・・・
「じゃあ、たぶん私のと同じだと思います。」
そう言って早苗は自分のカバンから目薬を出して見せてくれた。確かに私のものと同じ種類の
目薬だ。偶然なのか?まぁそうに決まっているが、しかし、これをきっかけに何とか・・・
「どうぞ、使って下さい。」
ニッコリと笑って早苗が目薬を差しだした。私は微かに汗ばんだ手でそれを受け取った。
心中の動揺を悟られたくなくて、すぐにキャップを捻り、メガネを外して目の上に掲げる。
近視の私ですらピントが合わない程の至近距離に、差し口がボンヤリと見えた。先端では、薬
液が気持ちと共振するかのように震えている。私は、薬液が落下する際の冷たい衝撃に備えて
息を詰めた・・・
「あれ?コレ減ってるじゃん。」
「あ、それね。今朝早苗ちゃんがスポイドで小瓶に移してたわよ、5ccくらい。」
「えー!じゃあ何でノートに記入してねーんだよ。」
「・・ホントだ。早苗ちゃん惚けてたのかなぁ。」
「ったく、管理責任問われるんだから、気を付けて欲しいよな。硫酸とか使う時はさ・・・」
■次は「フロッピー」「カラス」「夏」でお願いします
166 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/05/21 21:21
「フロッピー」「カラス」「夏」
「君がこの手紙を読む頃には、僕はもうこの世にはいないだろう」
友人のTから届いた手紙はこんな書き出しで始まっていた。
確かにTはこのところずっと落ち込んでいたし、
好きだった女の子にふられたという話も聞いてはいたが、
私はこの時点ではTのイタズラに違いないとそう思っていた。
「君に頼みたいことがあるんだ」
私はTの手紙に従って、指定された場所へ行ってみた。
そこにTはいた。
野原に立つ木の幹に自らの体をくくりつけたのだろうか、
立ったままの姿勢ですでに死んでいるTがいた。
無数のカラスがTの体にたかっていた。
Tはいい奴だったのに、今はその体をカラスについばまれている。
私が近づいてもカラスどもはTの体をついばむのをやめようとしない。
辺りに悪臭がただよう。夏の陽射しは容赦なくTの体を腐敗させ、
もはやそれは正視に耐えない状態になっていた。
手紙に書いてあった通り、Tの正面にはビデオカメラがセットされており、
変わりゆくTの様子を克明に録画していた。
ビデオを持ち帰った私は、録画されていた映像をフロッピーに保存すると、
Tの指示通り、それをTをふった女の子のもとへ送りつけた。
■次は「しこり」「けじめ」「めまい」で。
「しこり」「けじめ」「めまい」
あと一日。あと二十四時間で自由の身だ。やっと開放される。
妹をもてあそび、自殺に追いやったあいつが許せなかった。気がつけばあいつを
絞め殺していた。その瞬間から俺の逃亡生活がはじまった。あれから十五年が過ぎ
ようとしている。全国に指名手配されたが、顔を変え、名前を変え、住む場所も転々
として何とかしのいできた。パトカーのサイレンが聞こえては怯え、夜中に人の話
し声が聞こえては怯える……そんな生活とももうすぐ終わりだ。明日、時効が成立
する。
そして、ついに時効が成立した!
もう、これで堂々と生きてゆける。コソコソ隠れる必要もない。十五年間そのま
まにしてあった住民票も現住所に移した。だが、なにかいやな感じがする。いいし
れぬしこりのような不安感。
(とっくに時効は成立している……何の問題もない)
俺はそう自分に言い聞かせた。
しかし次の日、その不安感は見事に的中した。
早朝、玄関のドアを激しく叩く音。扉を開けると数人の屈強な男たちが侵入して
きた。
「吉岡健太、殺人容疑で逮捕する」
(なぜだ……時効が成立したんじゃないのか?)
取調室で刑事が静かに口を開いた。
「なぁ吉岡、時効は成立していないんだよ。刑事訴訟法の二百五十五条一項を読ん
でみな」
と、その刑事は俺に六法をひらいて見せた。
そこには、『犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効な起訴状
の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかった場合には、時効は、その国外
にいる期間又は逃げ隠れている期間その進行を停止する』と書かれてあった。法律
などズブの素人である俺には何のことかサッパリわからなかった。すると、それを
察した刑事が解説してくれた。
「おまえの場合は被疑者の名前もわかっていたし、有罪に持ち込めるだけの証拠も
そろっていた。わからなかったのは、おまえの所在だけだった。要するに、起訴に
は持ち込めるが、起訴状の送達ができなかっただけなんだ。だからとりあえず、居
所不明のままおまえを起訴したんだ。この場合、おまえが逃亡している間は時効は
進行しないんだよ。それで、おまえが住民票を動かすのを今か今かと根気よく待っ
ていたというわけさ」
刑事は続ける。
「いや、実をいうとだな、これは法律の専門家である霧山検事の入れ知恵なんだが
な。まぁ、おまえも十五年間苦労したとは思うが、人ひとり殺したんだからここは
人生のけじめとしてだな、しばらく臭い飯でもを食ってこいや……それから……」
その刑事はまだ何かしゃべっていたが、俺は激しいめまいを感じその場で気を失っ
てしまった。
次のお題は「甲子園」「ふりかけ」「うなぎ」で
めまいは偶然ではない。
あなたはけじめをつけなくてはならない。
心のしこりはもっと大きくなるだろう。
じゃあ私は今度こそ死のう.
「・・・・そんなことがあってからそれ以来、甲子園の売店にうなぎ味のふりかけ
は絶対においちゃいけないことになってるんだってさ、そういう話」
「うわっすっげー怖えぇ」
「それマジ話なん? マジ怖いんだけど」
「どくどくと脈打つ青い手ってのが怖すぎる」
「てゆうかなんか膝ががくがく震えてるんだけど・・・マジ怖い」
「裏返った猫てのも怖いよー」
「しかも悲しそうに鳴いてんでしょ。うわぁ」
「甲子園怖すぎ。オレ行ったことあるんだよなぁ。もう行けねーよ」
「何何?何の話してんのみんな?」
「超怖い甲子園の話。西岡、吉田にもしてやれよ」
「オレもう聞きたくねぇ。怖すぎるよ」
「じゃ話すぞ吉田。びびんなよ。もう十年も前の話だけど、甲子園の売店に
四十歳くらいのおばさんの店員がいたんだ。目がやたら大きくて、しかもいつも
血走ったような目をしていて・・・でも何より異常だったのは、そのおばさん
いつもマスクと手袋をしていたんだ。普通のマスクならまあ問題ないんだが、
手術の時に医者がつけるようなあの大きな青いマスクだったんだよ。しかも
手袋も手術用のあの薄いぴっちりしたタイプのやつ。分かるだろ、肘くらいまで
あるやつね。そんな格好してるもんだから、当然不気味がる客も多かったんだ。
で、ある日売店に十歳くらいの男の子が父親と一緒にやってきたんだ。その親子は
九州だかから来てて、甲子園は初めてだったらしい。この初めてだったってのが
のちにこの親子の運命に重要にかかわってくるんだけどね。その男の子が
その不気味な売店のおばさんに言ったんだ。『ふりかけありますか?』って。
するとおばさんは、い・・・・・・」
「おい西岡?」
「そろそろ時間らしい・・・」
「おい、西お・・か・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・」
数時間後、その部屋には七輪の上で静かに燃え続ける練炭と、五人の男女の
遺体だけがあった。
次のお題は「死神」「瞬間移動」「結婚」でお願いします。
気がつくと私は教会の説教壇の前に立っていた。純白のウェディングドレスを身にまとって。
隣を見ると、一郎さんがスーツ姿で私の傍らで直立不動の体勢をとっていた。
その横顔をしげしげと見る。思えば私がこの精悍な顔に一目惚れしたのが始まりなのだった。
神父の説教が一通り済み、いよいよ宣誓となった。
「猪川美智子さん、あなたは一郎さんを夫とし、生涯変わらぬ愛を貫き通すことを父の前に誓いますか?」
私は、ちらりと一郎さんを見やり、それから一呼吸おいて口を開いた。
「はい、誓いま」
言いかけたところで、まるで瞬間移動でもしたかのように、私は闇の中に独り居た。先程までの教会も一郎さんも私の周りから消えうせていた。
「これで、満足でしたか?」
背後から静かなバリトンが響いた。振り返ると、そこにはつい先刻私の前に現れたばかりの黒服で痩せぎすの男が、右手を胸に当てた格好で立っていた。
「え、これだけなの?だってまだ……」
言いかけた私を、男が遮った。
「我々も忙しい身なんですよ。貴女一人に、それほど多くの時間を割くことも叶わないのが実情でして。
けど、少しはいい気分になったでしょう?
一応、死の間際には、その方の思い出の中でも一番良かったものを見せるのが決まりでしてね。
まあもっとも、それほど長くお見せできないのは貴女もお分かりの通りですけれど」
その通りだった。私が先程まで見たのは遠い昔、幸福の絶頂にあった結婚式の当日の追憶……。
肩を落とす私の眼前で、男は巨大な鎌を振り上げながら、先程から変わらぬ静かな口調で言葉を続けた。
「まぁ、我々死神からの餞別といったところですな。黄泉の旅路への、ね。長い間お疲れ様でした」
■「ガス」「空き缶」「パワーショベル」でよろしく。
平成10年5月小雨の降る午後、新田高志(32才)は、ビルを解体した跡地で地面
を掘っていた。パワーショベルで掘った穴に入り、パイプをスコップで掘り出していく。
すぐ側にガス管が埋まっているので、詰めの部分はどうしても手作業に頼らざるを得な
い。先週、県内の道路工事中に漏れたガスに引火する事故があったばかりだったので、新
田は慎重に作業を進めていった。
コツン。
スコップの先が固くて小さいものに触れた。スコップの先でつついて掘り出してみると、
コーヒーの空き缶だった。中に土や泥でも詰まっているような手応え。まだ新しい。埋め
られたばかりのようだ。
新田は不思議に思った。ここの地面は自分が掘り出すまで固く締まっていたはずだ。最
近掘り返された様子ではない。地面に放り出すと、チャポンと音がして、中から茶色い液
体が漏れだした。ひどい臭いが穴の中に漂う。新田は思わず鼻をつまんだ。
なおも掘り進むと、また空き缶が出てきた。今度はスポーツドリンクの缶。スコップで
掬い上げ、さっきのコーヒー缶の横に置いた。これも新しい。やはり泥のようなものが詰
まっているのか、臭い汁が流れ出ている。新田は顔をしかめながら地面にスコップを突き
立てた。
またもや空き缶。地面を一掻きする度に、シュースの類の缶がゴロゴロと出てきた。ど
れもひどい悪臭を放っている。気持ちが悪くなった新田は、一旦穴の外に出るとパワーシ
ョベルで空き缶を掬い、穴の外に出した。缶の一つが潰れ中身が地面にこぼれる。
ボトリ
人間の目玉と耳が、雨に濡れた地面にこぼれ落ちた。
新田の通報により、警察がやって来て現場を調べた。結果、250個余りの缶の中に大
人一人分の人体が細切れになって入っている事が判明した。ただ、判ったのはそれだけで、
後には多くのクエスチョンが残された。特に以下の謎については、現在に至るまで合理的
な説明がなされていない。
「缶の口よりも明らかに大きい肉片を、どうやって缶の中に入れたのか?」
■つぎは「ノート」「雨」「コンセント」でお願いします。
下がり過ぎ あげ
ん?なんかレス番がおかしい???
「ノート」「雨」「コンセント」
雅弘が机に忘れたノートを取りに中学校へ戻ってくると、教室にぽつんと一人
由美子が残っていて、自分の席で何かしていた。
突然教室のドアが開き、由美子も驚いているようだった。
由美子は整った顔だちをしていたが、どこか影がある女の子だった。
他の女子からもなんとなく浮いていて、普段は一人でいることが多かった。
実際、雅弘もそれまでほとんど話したことはなかった。
「どうしたん?帰らんの?」雅弘は思わず声をかけた。
「うん、雨降ってるから。私傘持って来んかったから」由美子が外を見ながら答えた。
外はものすごい雨だった。傘をさしていた雅弘の服もびしょ濡れになるほどの。
「あのさ、よかったら傘入っていかん?確か大島さんちって公園の方だったよね。
うちもそっちの方だし、よかったら家まで送るよ」
「え、いいん?」由美子が聞き返してきた。
「もうすぐ暗くなるし、もう帰ろ」
「ありがとう、横山くん」由美子が笑った。
雅弘は初めて由美子が笑っているところを見るような気がした。
二人は学校を出て、一本の傘にはいって歩き始めた。
雅弘は女の子と二人で帰ることに照れくささを感じていたが、ほとんど話したことが
なかった割には由美子との会話も弾んでほっとしていた。
もともとかわいいと思っていた由美子である。話してみると案外気さくなことが
分かって、雅弘はなんだか嬉しかった。
「実は私、死のうと思ってん」
突然由美子がつぶやいた。
雅弘は一瞬体がこわばった。
「何?なんで?」
「だって、生きてても楽しいことないし。私クラスでもみんなから浮いてるし。
横山くんも知ってるでしょ」
「それは、うん・・・でもさそんなの気にしなくていいじゃん」
「私ちょっと前に学校休んだときあったでしょ。あんとき死ねるかなって思って、
家のコンセント舐めてみたん。ビリビリしびれたけど、全然死ねんかった」
雅弘はなんと言葉を返してよいか分からなかった。
「でもさ、何も死ぬことないじゃん。ほら今の友達とうまくいってなくても、
オレらもうすぐ卒業でしょ。高校で新しい友達できるよ」
「さっき横山くん入ってきたとき、私、遺書書いててん。もう決めてん。今日死ぬ」
雅弘が何を言っても由美子は聞く耳をもとうとしない。
「ねぇ大島さん、ちょっと公園寄っていかない?ゆっくり話ししようよ、ね」
ちょうど公園が見えてきたところだった。辺りは暗くなってきていたが、
今日死ぬと言う由美子をこのまま帰らせるわけにもいかなかった。
雨は以前として強く降っていた。
傘をたたんで屋根の下に入り、木製のテーブルについた。
雅弘が口を開く。
「ねぇ大島さん、やっぱり考え直そ」
「もう決めたんよ」
由美子の頑なな態度はとりつくしまもない。
「生きてても楽しいことないって言ってたけどさ、これからきっと楽しいこと
見つかるって」
雅弘がそう言うと、由美子はしばらく押し黙ったあと、
「今日楽しかった」とぽつりとつぶやいた。
「私、実は横山くんのこと好きだったんよ。ずっと前から」
「え?」
「だから今日楽しかった。いい思い出ができた」
「何言ってん、思い出だなんて」雅弘は声を荒げた。
「いいから、もうほっといて」由美子もひときわ大きな声をあげる。
「今日楽しかったんならさ、これからもいろいろ話しようよ」
「もう決めてん。私のことなんも知らなんくせに、もう帰って」
「これから楽しいこときっとあるって」
「・・・・・・・」
「ねぇ大島さ・・・」
雅弘は由美子がカバンからナイフを取り出すのを見た。
「もうほっといてって」
由美子が悲鳴に近い叫び声をあげる。
由美子が振りかざしたナイフが雅弘の胸に突き立てられた。
雅弘はもんどりうって倒れた。
「あ・・・・」
我にかえった由美子は思わずその場に立ちすくんだ。
辺りはもうすっかり暗くなっていた。
由美子は、雅弘の傍らに歩み寄ると、雅弘の胸からナイフをひき抜いた。
自殺用に買っておいたそのナイフを握り直した由美子は、再び雅弘の体に振り下ろした。
何度も何度も振り下ろした。
なぜそうしたのか分からない。自然にそうした。
由美子の頬に涙がつたっても、由美子は雅弘を切り刻むことをやめなかった。
頭部から雅弘の脳しょうが飛び散る。
ぐちゃぐちゃになった腹部から雅弘の腸がはみ出た。
雅弘の体から流れ出るあらゆる体液が、雨に混じってひろがっていった。
「きっと楽しいこと見つかるって」
由美子は雅弘の言葉を思い出していた。
思わず口元がゆるんだ。
「楽しいこと見つけた」
■次は「ドッペルゲンガー」「ティッシュ配り」「ピアノ」で。
ほ
■「ドッペルゲンガー」「ティッシュ配り」「ピアノ」
ドッペルゲンガーをご存知ですか?
自分とよく似た、人の姿をした人ではないもの。
自分の姿をしたドッペルゲンガーを見てしまうと、その人は近いうちにに死んでしまうそうです・・・。
その日、私はティッシュ配りのバイトを終えて自分の部屋に戻った。
疲れのせいか体を動かすのもだるく、すぐ布団に入って目をつぶる。
そのまま、深い眠りへと沈んでいった。
ポロン、ポロン
遠くの方で何かの音が聞こえる、ピアノの音のようだ。
ポロン、ポロン
しかし、どうにも音が狂っているようだ。
調律されていないピアノの音はひどく気持ちが悪い。
ポロン、ポロン
気持ちが悪い、気持ちが悪い、この音は気持ちが悪い
ポロン、ポロン
やめてくれ、気持ちが悪い
ポロン、ポロン、
「やめろよ!」
汗をびっしょりとかいて私は目を覚ました。
何もない部屋を見渡す、そこに当然ピアノはない。
夢であったようだ。
時計を見ると、もう既に午前10時過ぎ。
服だけ着替えると、そのまま部屋を飛び出す。
駅までは歩いて10分、電車で目的地までは15分。
今日のバイトは11時から。
少し急ぎ気味に道を歩く。
夏の暑い日差しの中、セミの声がうるさい。
ポロン、ポロン
セミの声に混じってどこからかピアノの音が聞こえてくる。
ポロン、ポロン
調律のされていない狂ったピアノの音。
ポロン、ポロン
気持ちが悪い
ポロン、ポロン
気持ちが悪い、気持ちが悪い
ポロン、ポロン
右の方に目をやると、ピアノを弾いている少女の姿が見えた。
ポロン、ポロン
・・・うるさい
少女は楽しそうにピアノを弾いていた。
夏休みなのだろう、一日中ピアノを弾いていられる喜びでいっぱいの顔だ。
でも、なんで音が狂っていることに気が付かないのだろうか。
部屋の窓に手をかける、鍵はかかっていないようだ。
ポロン、ポロン
なんで、気が付かないのだろうか・・・。
少女はピアノを弾くのに夢中だった。
私は音もなく部屋の中へと侵入する。
クーラーの良く効いた部屋はひんやりと涼しい。
外の暑さと比べたら寒いほどだった。
ポロン、ポロン
少女は夢中で狂った音を奏でている。
私は少女の首に手をかけると、少し力をこめた。
ポロン、ポロン、ポロン、ポロン
少女はピアノを弾くことを辞めようとしない。
その音はさらにひどく狂ったように思える。
・・・ひどく気持ちが悪い。
私は力いっぱい少女の首をしめた
やがて音は消えた。
ゴトンという音がして少女が床に転がった。
腕時計を見る、針は10時30分を示していた。
急がなければ間に合わない。
慌てて振り返り窓から外に出ようとしたとき、窓の隣に会った鏡台に気がつく。
中に写っている男の姿をみる。
無精ひげに脂ぎった醜い顔、焦ったその目はひどく落ち窪んでいる。
そして床には生気のない少女の体が横たわっている。
窓から這い出る、その場から逃げるように走る。
気持ちが悪い、気持ちが悪い。
ポロン、ポロン
狂ったピアノの音が聞こえる。
ポロン、ポロン
気持ちが悪い気持ちが悪い。
私はその音から逃げるようにただ走った。
だが、その音は決して離れていこうとはしない。
ポロン、ポロン
やめろやめろやめろ
ポロン、ポロン、ポロン、ポロン
走って走って走って走ったその先に
クラクションを鳴らしつづける大きなトラックの姿が見えた・・・。
>>191 ■次は「メガネ」「預金通帳」「洗濯物」で、よろしくお願いします。
「メガネ」「預金通帳」「洗濯物」
最近、ベランダに干してある洗濯物が頻繁に消える。
言っておくけど、消えるのは男物の下着だからね。女の子のかわいい下着
が盗まれるのなら、まぁよくあることだ。だけど誰が好きこのんで男物のト
ランクスなんかを盗んでいくのだろう。まぁ、これはこれで気味の悪いこと
で、下着泥棒にあった女性の気持ちが初めてわかったよ。物自体はそんなに
高いものではなかったが、預金通帳の残高が四桁の貧乏学生の俺にとっては
結構痛い損害だ。警察に相談しようかと思ったけど、格好悪くて言えやしな
い。
それで友達からビデオカメラを借りてきてベランダに設置しておいた。案
の定、犯人の姿が映っていたね。だけどあいつが犯人だったなんて意外とい
えば意外だが、考えようによっちゃ納得できる。
ビデオに映っていたのは、同じサークルに所属している北村っていうオカ
マ野郎だ。だから、オナベの俺の下着がおメガネにかなったってわけか。
次のお題は「リング」「らせん」「ループ」で
カツ……カツ……カツ……
私はマンションのらせん階段を昇っている。目指すは13階の私の住む部屋。
何だってまあ、こんな疲れた日に限ってエレベーターが故障してんのよ………。
しかもこのらせん階段も、昇りづらいったらありゃしない。
CDウォークマンから流れるR&Bがなければ、恐らくは一層憂鬱な気分になってたんだろうけど。
へこたれそうになりながらも6階まで来た。あと半分ちょい。って、はぁ長いなあ……。
ん?あれ?プレイヤー故障しちゃったかなぁ?
なあんかさっきから同じ箇所ばっかりループしちゃってるんだけど。
プレイヤーを取り出して……あ、らら、シルバーのリングが抜けちゃったよ。
あああ、踊り場まで落ちちゃった。彼からもらった大事なリングだから、拾わな
がっ。
え、転び、あ痛いたい、あ、落ち、手すりにぶつか、ばきん、あ、手すりが外れ、リング、CD、死、あ、きょ
聴き手を失ったCDプレイヤーは、相変わらず同じ箇所をリピートし続けていた。
"She'll fall and die She'll fall and die She'll fall and die………"
■「飴」「後」「腫れ」でよろしく
「飴」「後」「腫れ」
春山はいい。
新緑の季節、気温も暑くもなく寒くもなく、山歩きをするには丁度いい
季節だ。歩き始めて2時間。頂上まではあと1時間くらいのはずだ。
少し休憩をしよう。俺は水を少し飲み、飴を口に入れた。ほどよい甘さが
疲れをいやしてくれる。とその時俺の後ろで音がした。
「カタン」何かが倒れる音だ。音のした方向を見ると、1人木に寄りか
かり休んでいる。
「こんにちは」1人で山を歩いている俺は、その人に話しかけてみたかった。
しかし動かない。寝ているのか?確かに日の当たるその場所はうたた寝をする
には丁度いい。
その人の横にはストックが倒れている。さっきの音はこれだったのか?
とその時、その人物は瞬きをした。起きたのか? 俺は近づいた。
近くまでくると、また瞬きをした。それにしてもずいぶん腫れぼったい
目をしているなぁ・・・その人の顔をよく見ると、その人物の目、いや
かつて目ののあった場所には無数の蛆が湧き、蠢いていたのだ。
■「日本」「東京」「富士」でお願いいたします。
「そろそろ開店です!」
10時55分。今日も握り職人の合図で板が廻り始める。
俺はお決まりの穴あきフンドシ一丁でベルトコンベアにまたがった。
そう、回転ウンコ寿司で寿司ネタのウンコをひるのが俺の仕事である。
店のネタ振り職人は俺を含めて5人。
十人十色式に言えば、十人十糞のこの世界。
それぞれに違った味、風情をもった寿司ネタを振ることが求められている。
暖簾をくぐって一番奥、花板を任されているのが、現在名実ともに日本一の俺だ。
他の4人はライバルであり、互いにしのぎを削ることで最高のウンコ寿司を提供している。
ウンコ寿司通が通いつめるこの「金鮨」で、花板の座を守るのは容易ではない。
個性重視のこの世界にあっても、お客の評判を無視することはできないのだ。
香り、歯ごたえ、喉越し。この3点において、俺のウンコは仲間のそれに大きく水をあけてきた。
先週、あいつがやって来るまでは……。
最大のライバル、新入りの片岡が俺のすぐ後ろにつけ、コンベアにまたがる。
新入りと言っても、東京は築地の有名店「富士」で次期花板と目されていた男だ。俺も自然と力が入る。
11時、開店。行列の客が雪崩込んできた。
握り職人のあつらえた寿司めしが、コンベアの上を踊り出す。
少しでも活きのいいネタを食してもらうため、俺達は流れてくるしゃりに直接ひる。
その数秒後には、お客の口にホヤホヤの黄金が運ばれていく。
「らっしゃい! 喜んで!」勢いよく白フンドシをまくり上げる。
さあて本日一発目。ヨイショーッ! おっ。色、香りとも最高の仕上がりだ。
オレのウンコ寿司が片岡のほうへ流れていく。どうだ見ろ。これがNo.1の仕事だ。
早く自分もひりたいと、黒フンドシの片岡がフライング気味にウンコをぶら下げ始めた。
ちょうどそこへ2つ目の皿が近づく。片岡、あっさりとネタ振り成功。
なにをっ! 俺も慌てて3つ目の皿へ投下。ストライーク!
すかさず片岡も4つ目の皿を確保。今日はやけに意地を張ってきやがる。
やはり片岡がこの店の花板を狙っているという噂は本当なのか!?
普段なら自然な便意に任せるところを、力みが入る。何とか5皿目をキープ!
このままでは他のウンコ職人の出る幕がないが、そんなの知ったこっちゃない。
オレはここを、この「金鮨」の花板の座を絶対に失いたくないのだ!
「ヨイショーッ! 喜んで!」
片岡をふり返った。と、奴も顔を上げる。目が合った。
瞬間、気のせいだろうか、片岡の目が微笑んだように見えた。
片岡……不思議な奴。突然目の前に現れ、俺をここまで本気にさせた。
ある意味、ウンコ職人としての俺をさらに飛躍させるために、
奴はこの店にやって来たのかもしれない。
「こらーっ! そこの二人!」
店の奥から、仁王のような形相の男が飛び出してきた。
「何やってんだ! 勝手に人の店あがり込んで。ウチは食いもん屋だ。そんなとこにまたが……うわっ。ウ、ウンコしてやがる。おい、110番! 110番に電話しろ!」
「おい、110番に電話しろ!」
俺と片岡は、一目散に「金鮨」を飛び出した。
そうか! そうだったのか……俺は走りながら考えた。
ふり返ったときの、あの片岡の微笑み。奴だ。奴だ。
俺が「金鮨」のネタ振り職人であるという記憶も、
片岡が「富士」という店からやって来たという情報も、
すべてインプラントされたものだったのだ。
ウンコ寿司は片岡の妄想の産物であり、形而上の世界でしかない。
俺は片岡の脳味噌という便器の中でウンコをさせられていたのか。クソッ!
「初めにシモ有りきではなく、必然性のある使い方がされているネタを見てみたい」
片岡の呪文のような言葉……その意味が今ようやくわかった。
開店直後の1、3、5皿目。俺は自分で寿司ネタを振っているつもりで、
奴があらかじめ書いておいた脚本通りに「ネタ振り」させられていたのだ……。
俺は足を止めた。もう「金鮨」からはほど遠い。追っ手もいないようだ。
片岡、いや片岡と名乗った男とは店を出たところではぐれた。
もう二度と会うこともないだろう。
会ったところで、俺は片岡の顔を覚えていない。
そうだ、こいつももう必要ない。
俺は人気のない路地に入り、フンドシの紐を緩めた。
ウンコに踊らされるなんて……ふいに自分を笑ってやりたくなって、俺は叫んだ。
「ビバ! ウンコ寿司!」
フンドシを放り上げる。
白いフンドシが、空一面に広がって、二度、三度と胴上げのように舞う。
俺は思い出した。片岡のフンドシが黒だったことを。
〜おわり〜
「スみまセん、Mt.富士へは、どうイクのでSHOW?」
バス停で仲間とダベリながらバスを待ってると、突然奇妙なイントネーションで話しかけられた。
振り返ると、黒い服に身を包んだ男が立っていた。帽子を深くかぶっているので顔も分からない。
目を白黒させながらも、仲間内で一番几帳面なA美が説明を始める。
「まず東京まで出て、そこから――」
「ふむふむ……」
メモ帳に言われたことを書き留めている男を、俺はうさんくさい目で見ていた。
あからさまに怪しい格好だ。大体今は夏だっていうのに。
そもそもここは北海道だっていうのに、なんで富士山?
「OK、OK、サンキュー、さんきゅ〜。Well、日本は久しブリなもんデねぇ、HAHAHAHA」
一通り話が終わると、男は手を振りながら走り去ってしまった。俺の視線から逃げるように。
「なんだったんだ? あれ」
「さぁ……」
みんな首を傾げるばかりだった。
その夜、謎の光球が南に向かって飛んでいくのを、多くの人が目撃したという。
まさか……ね。
■前の人が指定してないので、「檻」「花火」「葡萄」をあげておきます。
……幼い頃からスポーツに熱中してきた人間なら体のどこかが壊れているものさ。
僕の場合、それは腰だった。
医者によれば、腰骨が変形していて手術でも治せないのだそうだ。
ただ、リハビリを続けていけば痛みはとれて、普通に運動できるという。
それからの腰痛との戦いの日々は試合に出ている時より辛かったね。
そして、とうとう僕はそいつを克服した。
現役復帰の条件として、球団側からの指示に従い、僕は人間ドックに入った。
そこで今度は胃に影が見つかった。
病院に渡された痛み止め薬が胃を荒らし、そこに腫瘍ができたんだ。
アメリカ人の医者は胃カメラの写真を見せ、僕に「癌だ」と告知した。
写真には、幾つもの瘤が重なった葡萄のような肉片が写っていた。
人間の体はどこかひとつが悪くなると、芋づる式に不健康になる。
病院は不健康の連鎖を生み出す矛盾と悪意に満ちた漆黒の檻のようだ。
大怪獣のアダ名をつけられた僕の体は、癌までもが怪獣だったんだね。
圧倒的な力で暴れ続けるそいつは、もう誰にも止められないんだそうだ。
幼い頃から野球をやってきた。
甲子園に行き、プロになり、メジャーに入り、
初めてニューヨークで打ったホームランには自分でも出来過ぎだと思った。
バックスクリーンから高らかに打ち上げられた花火、
僕の人生に後悔はない。
ただ、父さん母さんは、なぜ僕が結婚しないのか、悩んでいたね。
その秘密は、フフフ、お墓まで持って行くとするよ。
それでは、不本意ながら先立つ不幸をお許し下さい。
平成1×年 4月13日金曜日 不肖の息子 秀喜より
次のお題は、
「水上バス」「ワイン」「ワンピース」
で、お願いします。
Y駅に向かう水上バスが、暗い海面に明かりを落としながら去ってゆく。
時間的に、これが最終便なのだろう。あたりはすっかり夜の風情だ。
俺は遠くなるその船の明かりを、係留されている船の甲板から見送った。
下の事務所へ行けば誰かいるのだが、甲板に居る俺にはまるで一人船に残されたような感覚に囚われる。
戦前は豪華客船とし活躍したこの船は、今は観光船としてこの港に係留され、もう大海原を駆けめぐることは
なくなっていた。
俺の仕事は警備員。今日も大勢の観光客でにぎわったこの船も営業は終わり、今は俺一人が甲板で寂しく見回り
をしているだけだ。勤続20年と言えば聞こえは良いが、客の居ない時間を中心に、毎日毎日漫然と見回りをしている
のに、いい加減嫌気は差している。
そして、甲板後方に設けられた飲食店の所まで来たところで、俺の足は止まった。きれいに片づけられたカウンター、
丸テーブル……そして一番端のテーブルに白いものが見えたからだ。それは白いワンピースを着た女のようだ
った。顔はよく見えない。手には赤いワインの入ったグラスを持っている。
「どう、したのですか?」
少し近づいて声をかけたが、問う声が少し震えた。どう考えても、今、この場所に人の居るのは不自然だった。
「……っ!」
更に近づいたてその女の風体が判った俺は、思わず叫びそうになった。白いワンピースに見えたのは、看護婦の
白衣であり、赤いワインの入ったグラスに
見えたのは、血液の入った輸血用の瓶であったからだ。 思わず逃げ腰になった、そのタイミングを狙ったかのように女が振り向いた。
「こんばんわ」
白い肌をした、夜目にも美女と判るその女は静かに声をかけてきた。
「こんな…ところで何を……」
当然の問いを、必死で俺はした。
「いつもご苦労様」
しかし、彼女は微笑をしたまま、それには答えなかった。
「あなたもわたしも、そしてこの船も同じ…」
まるで歌うようにその女は言う。
「この場所に繋ぎとめられて」
風があるのに、彼女の黒髪は靡こうともしない。
「漫然と朽ちてゆく」
そうして、彼女は笑った。
「そう思いませんか、山下さん」
そう言って、彼女は消えた。何かの仕掛けのようにかき消すように。
俺は、この船が戦時は徴用されて病院船になっていたこと、従業員の間で何度か怪談話の噂が出ていたこと、そして制服の
名札を外していることを、ぼんやりと何も無い空間を見続けながら思い出していた。
■次のお題は「バス」「オアシス」「サービス」で。
この不景気の中、うちのような小さな旅行代理店が生き残っていくためには、
多少の倫理的問題は無視してでも、斬新な起死回生の企画が必要だった。
「心霊スポットツアーへようこそ!」
客の大半は若者だが、我が社では久しぶりの大ヒットツアーとなった。
こんな時代、若者には思いっきり感情をあらわにできる心のオアシスが必要なのだろう。
その上、現場の地主の了解さえ取れれば、こんなに安上がりで美味しい企画はない。
企画立案兼ツアーコンダクターの私としては笑いが止まらなかった
安いばかりが取り柄の温泉宿を出て、夕暮れの山道をバスが走る。
車中では怪談話で盛り上がり、客のテンションが最高潮に達した頃、現場に到着した。
「えー皆様、ここは先ほどお話しました通り、十数年前大量殺人が行なわれ、
現在では廃墟となっている、まさにあの集落でございます。
お客様には被害に遭われた可哀想な霊達にお手を合わせて頂ければと……」
幽霊などいるわけがないのに、私は偽善的な口上をスラスラと述べた。
集合時間が近付き、客達が次々に戻ってくる。
頬を紅潮させて笑う者、青ざめた顔のもの、より親密になったカップル、反応も上々だ。
現場には日本人形や血の手形、子供の靴などを仕込み、そうしたサービスにも隙はなかった。
全員がバスに乗りこみ、点呼を取る。
あれ、3人多い?
確認すると最後部座席に見知らぬ親子連れが座っている。
身なりは血と泥で汚れ、こちらを見つめる目が尋常ではない。
すると、急に子供が立ちあがり、ヨロヨロと通路をこちらに歩いてくる。
「仕込みだろ?」「ウソッ、いやー」乗客の声が遠くに聞こえる。
こちらに向かって血と泥にまみれた子供がヨロヨロと……
私の目の前に…… 後悔が私の胸に…… 死者が私の胸に……
私の中で何かが壊れた。
次のお題は「マグロ」「目玉」「小さな子供」で。
「マグロ」「目玉」「小さな子供」
知ってる?マグロで一番美味しいのは目玉のところなんだってこと。
大トロ、中トロばかりがもてはやされるけど、通は目玉よ、目玉。
家の嫁さんもそれを知っていて、マグロ料理の時は俺に目玉を丸ごと出してくれる。
どれ……今日の目玉はみそ汁にしたのか。
椀の中の目玉を箸で突き刺し持ち上げてみる。
なんだこりゃ、何かついてるぞ。手に足に……なんだか小さな子供みたいな……
――おいおい、こりゃ鬼太郎のオヤジじゃねーか!
次は「仮面舞踏会」「手毬唄」「女王蜂」でどうぞ
「なぁ、仮面舞踏会だ、って言わなかったか?」
タキシードを着こみ、目を覆う仮面を付けた俺は、呆れたような声で正面の女に声をかけた。
「うん、仮面舞踏会」
「これは、仮装舞踏会、というんだっ」
「違わない、違わない、大して違わないよ」
「じゃあこの針はなんだ?」
そういうと俺は女の尻に付いた大きな針の作り物を引っ張る。
その姿はまるで女王蜂といった様子だ。
「やん、えっちっ」
嬉しそうに頬を赤らめる。その反応に俺はどっと力が抜けた。
どうもこの女は変わっている。初めて会った時もそうだった。
一人公園にたたずみ、座敷童の格好で手毬唄を唄っていたのだ。
もっと年相応の格好をふさわしい場所でしろ、と助言はしたが、その結果がこれとは……
「ね、そろそろ中に入ろ?」
俺の手を引き、会場の中に引きずり込もうとする。
「俺は仮装なんてしてないぞ?」
「大丈夫、大丈夫。あなたなら大丈夫。
その格好で仮面をつければ、十分仮装だよ」
そういうと女は俺の鋭くとがった犬歯に指先で触れた。
「これは作り物じゃないっ」
「平気、平気、普通の人にはそれは分からないし、分かった人は……お友達♪」
まったく……吸血鬼相手にこういう態度とは……。
まぁいい。これも時代の流れだ。怪物が畏れられるのも昔の話……か。
そう自分を納得させると俺は、その怪しいパーティ会場に足を踏み入れた。
■次のお題は「雪」「琴」「栞」で。
ホラーでも何でもない上に馬鹿みたいに短いものが増えてきたな。
お約束の喧嘩をしないように。
雪の降る夜だった。金玉もすっかり縮んでいる。
こんな日はさっさと帰ってカップラーメンでもすすって暖を取るべきだ。
俺のアジトに帰ると、隣の部屋から琴の音色が聞こえてくる。
またあのクソ野郎、巧くもない琴を俺に聴かせやがって。
今日こそ殴り込みに行くことにケテーイ。
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
「毎日毎日うるさいぞ!」
中から出てきたのはやせ細った髪の長い、幽霊のような男だった。
「・・・・そちらの方がうるさいですよ。毎日毎日琴を鳴らして」
「ハァー?貴様が弾いてるんじゃないの?」
「貴方が弾いてるんじゃなかったんですか?」
鸚鵡返しに問われた。
これには俺も絶句、じゃあ誰が鳴らしてるんだと小一時間こいつを
問いつめたかったがやめ、とりあえず事情を説明した。
「不思議なことがあるもんですねぇ」
幽霊のような男は口だけ笑って言った。
俺の部屋は203、こいつの部屋は205。
まさか幻の204号室が・・・?
つづける。誰かが。
いや、俺212じゃないし。
前スレ1の「読んだ人が面白いとかシネとか言う」ってのはしちゃいけなくなったのか?
批評ならもっとちゃんとしろという向きもあろうが、
14(前スレ763)って奴の文なんてわけわかんないぞ。批評のしようも無い。
なんか雰囲気悪くなっちゃたねこのスレ。マターリしてたのに残念。
じゃーどれがおもしろかった?
どれがおもしろくなかった?
私は
>>206が好き
レトロなショートショートっぽい雰囲気が肌に合う。
好きなもの
14(前スレ763)の長い奴は面白いものばかりだと思う。
他には
>>33 >>105 >>113 >>121 嫌いなもの
短過ぎる物とかやる気の覗えないもの(14(前スレ763)のも含む)
書きにくいお題があるのは解るけど手抜きでそのお題を流されちゃうのはちょっと・・・。
もうすこし待ってりゃ誰かがいいもの書くかもしれないんだし。
と、始めの方からちょくちょく書いてる俺の最近の感想。
なんか自分の投稿が原因で雰囲気が悪くなったみたいで申し訳ないです。
>>209 僕の投稿に対する批判は大いに結構です。気兼ねなくなさって下さい。
だけど、僕は手抜きの作品を投稿したことは一度もありません。これだけは断言
します。そうでないと、お題を出した人に対して失礼に当たりますから。短い作
品はアッサリしすぎているので手を抜いているように感じるんでしょうかねぇ……。
僕は、文章を書くとついつい長くなってしまうので、逆に短い作品の方が愛着が
あります。与えられたお題が少ない文章で収まったときなどは、長編を完成させ
たときよりも達成感があります。だから、最近はお題をいかに短くまとめるか、
ということを前提として書いています。
>>207の作品も手を抜いたわけではないです。自分なりにキチンと推敲して投稿
したつもりなんですが。まぁ、文章を書く力量やセンスに欠けているということ
は自分でも認識しております。
でもオカルトと非オカルトの境界線も漠然としているよね。
必ずしも霊的なものが含まれている必要はないと思うよ
長けりゃ良いってもんでもない、短くても秀作はたくさんある。
つーか、むしろ駄作は長編の方に多いし、>207だって別にわけわかんなくはないぞ。
投稿したこともない人間が言うのも何だが、俺は長いのは読んでて飽きる、つーか疲れる。所詮シロウトが書いた文章なんだし。
誰も新作を投稿しないのと、中途作品の
>>212の内容が結構おもしろいので、その
続きを書いてみます。
雪がしんしんと降る夜。身も心もすっかり凍えきっていた。
こんな日は、早く帰って熱いラーメンでもすするにかぎる。
大急ぎでアパートに戻ると、今夜も隣から琴の音色が聞こえてきた。
(今日という今日は文句を言ってやる……)
――ドンドンドンドン
「毎日毎日うるさいぞ!」
中から出てきたのはやせ細った髪の長い、幽霊のような男だった。
「お宅の方がうるさいですよ。毎晩毎晩琴なんか弾いて……」
と、その幽霊男は意外な言葉を返してきた。
男は別に空とぼけているようでもなさそうだった。
俺は思わず絶句した。
(じゃあ、いったい誰が鳴らしてるんだ……?)
とりあえず事情を説明すると、
「不思議なことがあるもんですねぇ」
と男は口元に薄笑いを浮かべながら言った。
俺の部屋は二百三号室こいつの部屋は二百五号室。
まさか幻の二百四号室が……そんなわけないよなぁ。
それからしばらくして俺は引っ越した。
数日後、管理人から郵便物が届いているとの知らせを受け、そのアパートを再び
訪れたときのこと。
管理人と雑談していると、話題が真夜中の琴の話におよんだ。
「そういやここにいた時、毎晩毎晩琴を弾くやつがいてまいりましたよ」
「ふーん、そんなひとがいたかなぁ」
「それが不思議でしてね、てっきり隣の二百五号室のやつが弾いてるもんだと思っ
ていたんですがね……」
「ちょっとまって、あなたの隣は二百四号室ですよ」
と管理人がまじめな顔で答える。
俺は管理人の言葉が信じられなくて、駆け足で二階に上って確認した。
すると、確かに二百四号室は存在していた。
後からついてきた管理人が息を切らしながら言う。
「でも、あなたが居たときは隣の部屋は空室だったはずなんだけどな」
「いや、確かにいましたよ。細身で髪の長い男性が……」
「それ、吉崎さんのことかな? でも、その人はあなたがここに越して来る前に
亡くなってますよ。二百四号室で首を吊ってね。それ以後誰も入居してないんで
すよ」
ということは、俺の見た男は……。
俺の体はぶるぶると震えだし、どうにも止まらなかった。
薄笑いを浮かべた男の顔が脳裏をよぎる。
この恐怖は、忘れることのできないこころの栞として死ぬまで俺につきまとうに違いない。
お題は引き続き「雪」「琴」「栞」で
オイこそが 226事件げとー
∧_∧ (ry
∧_ (ry
ドンファンで鳴らした俺もそろそろ年貢の納め時らしい。
大財閥のご令嬢との婚約が決まったのだ。それも向こうの一目ぼれ。
こんな機会は人生でこれ一度きりだろう。
そう考えると・・・やはり思い出は徹底的に処分していくべきだ。
とりあえず部屋を引き払う。家具も書類も衣服も、お気に入りの琴さえも、
とにかく何もかもぐるぐる巻きにして焼却場に投げ込んだ。
手伝い連中の報酬が結構かかったが、どうせ大金持ちになれるんだ。問題ない。
さてと、次は女の家だ。証拠を残しとくのはとてもまずい。
久しぶりのお泊りだったので女は大変喜んでいた。少し胸が痛む。
しかし仕方ない事だ。
そう自分に言い聞かせて俺は深夜に行動を開始した。
まず、貢いでもらったものや俺が持ち込んだものを処分。
次に写真などの記念ものを切り裂いた。手紙、はがき、マフラーetc。
ああ、この栞も手にかけなければいけないのか・・・。
重苦しい気分が俺を包む。しかしここでやめるわけにはいかない。
全ての作業を終えて、おれはそっと家を抜け出した。
念のために家中
(といってもワンルームマンションだが)の指紋をふき取った後に。
俺は、ここまですれば証拠は残るまい、という奇妙な安心感を抱えつつ
夜行列車に乗り込むため、駅へと駆け出した。
そうして今、俺はホームで列車を待っている。
あと3分。輝かしい未来が口を開けてまっているのだ。
と、長針が触れる。あと2分。若干の罪悪感が胸を掠める。
しかし、圧倒的な希望の前ではかすんでしまっている。・・・あと1分。
その瞬間、突然何か冷たいものが俺の肩に触れた。
雪だった。
異様なほど真っ白な。
どうして今?しかも何故ここが?これは何かの天罰なのか?
疑問の山で、俺の頭はパンクしそうだ。
ガタンガタン。
かろうじて列車が近づいてくるのが分かった。
俺は無意識のうちにその恨みがましい様な雪を力いっぱい振り払った。
・・・どうしてこんな事になってしまったのだろう。
俺に振り払われ、よろめいた雪はそのまま列車にひかれ
その異様に真っ白な肌と血のコントラストを描いた。
そうして
俺は警察に連行され、計3人の女の殺害をもって裁かれる事となった。
わかりづらかったかな?
批評感想まってます。
では次のお題は「神秘学」「蝋燭」「羊」です。
うん、よく分からん。
3人て誰と誰と誰?
とりあえず「雪」は確定だろ
だから、雪、琴、栞の3人だろ。よくあるパターン。
あ、なるほど分かった。
「雪」どころか・・・・ってことですね。
よくできてると思います。
僕に読解力がもちっとあって、初見でネタが分かってたら
すんごい感心してたと思う。
作品じゃなくて僕のせい。ちともったいなかったな。
ところで、皆忘れてるor知らないとは思うが
このスレの総集サイト全然更新されてないなあ。
(サイト自体は残っている)
ニバスさんはどこに行っちゃったんだろうか?
のぼってんじゃねぇーよ! 降りろっ!!
「神秘学」「蝋燭」「羊」
そこはどこか古い建物の地下道のようだった。
両側の壁に無数の蝋燭が等間隔に灯されてはいるが、辺りはとにかく暗い。
通路が弧を描いているらしく、数メートル先はまるで暗闇に浸食されたように
何も見えない。
蝋燭の炎が揺れる度に、壁や天井のうす汚れたしみが不気味に動いて見えた。
ぼんやりした蝋燭の炎がいっそう私の不安を煽る。
どうしてこんなところにいるのか、記憶がはっきりしない。
まるで見覚えがない場所だ。迷いこんだにしてもおかしい。
これは夢に違いないと思った。
最近神秘学に関する本を読みあさっていたから、こんなおかしな夢を見たのだろう。
とにかく私は歩き始めた。これが夢であることを願いながら。
歩いても歩いても同じ光景が続いた。
目を凝らして前を見ても闇に飲み込まれる通路が見えるだけ。
それは後ろを振り返っても同じだった。
まるで前からも後ろからも闇が迫ってきているかのような錯覚に襲われ、
閉塞感や恐怖感に押しつぶされそうになる。
私は歩き続けた。どこかに出口があるはずなのだ。
私はふと遠くで羊の鳴き声のようなものが聞こえているのに気付いた。
メエェ、メエェ・・・・・。
かすかだが、確かに聞こえる。
メエェ、メエェ・・・・・。
どこか悲しげな鳴き声に聞こえるのは私の今の精神状態のせいだろうか。
私はさらに歩いた。
メエェ、メエェ・・・・・。
羊の鳴き声はずっと遠くで聞こえている。
鳴き声は近づいてくるようであり、遠ざかっていくようでもあった。
ふと私は足を止めた。
見覚えのある壁のしみが視界に飛び込んできたのだ。
最初にここはどこだろうと辺りを見回したときに確かに見たしみの模様だ。
どうやらこの通路は環状になっていて、それをひとまわりしてしまったようだ。
私は不安になった。
果たして今自分が歩いたこの通路のどこかに出口のようなものはあっただろうか。
メエェ、メエェ・・・・・。
羊の鳴き声はずっと止むことなく続いている。
私はポケットのハンカチを目印代わりに床に置き、また歩き始めた。
どこかに出口はないかと目を凝らしながら歩いた。
しばらく歩くと前方にハンカチが見えた。もちろん私が置いたものだ。
やはりこの通路は輪っかのようにつながっているのだ。
私はハンカチを横目に見ながらさらに歩いた。
メエェ、メエェ・・・・・。
羊は鳴くのを止めない。
私は床をはって進んだ。壁を叩いて進んだ。
どこかに出口があるはずなのだ。
私は何度も何度もハンカチの横を通り過ぎた。
この始まりも終わりもない不気味な通路を何周もした。
しかし出口は見つからない。
気が狂いそうだった。
羊は鳴くのを止めない。
メエェ、メエェ・・・・・。
羊は鳴くのを止めない。
さらに歩く。出口は見つからない。
ついに私は絶望感に打ちひしがれてその場に座り込んだ。
羊は鳴くのを止めない
壁にもたれて天井を見上げながら思った。
なぜ私はこんな暗く寂しいところにいるのだろう。
メエェ、メエェ・・・・・。
羊は鳴くのを止めない。
悲しげな鳴き声は何かを暗示しているようにも思えた。
メエェ、メエェ・・・・・。
私はなんとなく分かってきた。
ここには出口はないのだ。
私はもうここから出ることはないのだ。
メエェ、メエェ・・・・・。
この鳴き声が消えて、ここが静寂の世界になったら私はどうなるのだろうか。
右を見ても左を見ても漆黒の闇。出口は見えない。
メエェ、メエェ・・・・・。
羊の鳴き声・・・・。
出口はない・・・・。
メエェ、メエェ・・・・・。
涙があふれて、私の頬を流れ落ちた。
出口・・・。
「いわゆる植物状態です。おそらくこのまま目を覚ますことはないでしょう。
おそらく、一生このまま眠りの世界で・・・」
「そんな・・・」
「事故で頭を強打したのが原因です」
「先生。涙が。うちの子苦しんでるんじゃ?」
「いえ、これはただの生理現象です。息子さんは今はもう何も感じることはありません」
■久しぶりに書いてみました。
次のお題は「霧」「新築」「日記」でお願いします。
私がまだ中学生だった頃。
それまで私は両親と小さなアパートに住んでいたが、念願叶い夢のマイホームを手に入れた。新築の木の香りが私を
浮かれさせる。今までは狭いアパート暮らしで友達を連れて来ることもままならなかったのだ。
二階にはふたつ部屋があり、私には手前の部屋があてがわれた。もうひとつの部屋は自然と物置部屋になっていった。
引っ越しから一ヵ月程経った頃のことである。以前友達からもらった本が、ないのだ。まだ引っ越しの荷物の中に違いなかった。私は奥のその部屋に入った。
ちょうど夕暮れ時で窓からは西日が射し込んでいた。最初の頃から変わってるな、と思っていたのだがその部屋は洋間なのに何故か襖の押し入れがあった。
そんなことを考えている場合ではないと、私は数ある荷物を探し始めた。しかしなかなか見つからない。
暗くなってきたので電気を付けようと顔を上げると、押し入れの襖がわずかに開いていることに気がついた。
さっきは閉まっていた筈なのに…と思いながら、何かに引き寄せられるように押し入れの前へと進んでいった。
私は襖に手をかけ、サラッと一気に開けた。どこにでもある普通の押し入れ、中には何もない…。
おや?と思った。本が一冊置いてあるのだ。私は一瞬自分が探していたものだと思い込み、その本を手に取った。
しかしそれは私の探していた本ではなかった。薄汚れた表紙はかろうじて“日記”と記されていた。
父か母のだろうと思いながら私はそれを持って部屋を出た。
一階に降りたが両親の姿はない。私はリビングのソファに腰かけると、興味から本を開いた。
5月2日
今日ベランダでお布団を干した。ただそれだけなのに下の階の横山さんが怒ってきた。埃が落ちるとかなんとか言うので、仕方なくお布団をしまった。
あーあ、こんなアパートに引っ越すんじゃなかった。早く一戸建てのお家が欲しいなぁ。
5月19日
今日も夫の帰りが遅い。いつも残業だとか付き合いだとか言うけれど、たまには私の話も聞いて欲しい。
6月4日
お隣の桜井さんに回覧板を持っていくと、こんなことを言っていた。駅前のジュエリーショップで私の夫を見たと言うのだ。そういえばもうすぐ結婚記念日。私は密かに期待していた。
6月22日
夫の浮気は確定した。昨日、私は夫の後を付けたのだ。夫はあるアパートに入って行った。このアパート同様古い造りであった。
夫が二階の部屋のインターホンを押すと中からは若い女が出てきて夫に飛び付いたのだ!なんということか!しかもその女、腹が大きい…。まさか、まさか夫の…?
6月24日、私は離婚を切り出された…。しかし私は応じる気はない。あんな女に取られてなるものか!私と正反対な性格、明るくて話が豊富で…あぁ…昨夜夫に殴られた頬が痛い。歯も折れてしまった…ひどい。私は夫に殺されるかも…。
日記のその後はもう何も書かれてなかった。この後、この人はどうなったのだろう…?
すると父が帰ってきた。父はにこやかないつもの笑顔でただいまと言った。しかし私が手に持っている日記を見て、みるみる顔を強ばらせていった。
そして凄まじい勢いで日記を奪った。見たこともない恐ろしい顔の父。もしかして…日記を書いた人の夫って…?まさか…?
私は恐くなり家を飛び出した。父が殺したのだ、その人を…。絶対にそうだ。家の外はひどい霧だった。霧の中私は夢中になって走った。
あっ!!
私は車に跳ねられ、宙を飛んだ。地面に叩きつけられた私は動けなかった。その後のことは覚えていない。
気が付くと私は病院のベッドの上だった。父と母が私を見下ろしている。母は他の人から父を奪ったのだ…私はその時の子なのだ。そう思いながら涙を流した。
母はやさしく私に話す。
「今まで黙っていたけどあなたは私が生んだ子じゃないの…」
えっ…?意外な母の言葉だった。「あなたを生んですぐに彼女は死んだわ。」父が続けて言う。「私が悪かったんだ。」
あの日記を書いたのは…母だったのだ…。
∧_∧(ry
父はかつて浮気をしていた。母には子供ができず、他の女の人を妊娠させたのだ。それが私。
父は母との離婚を決意。だが私を生んだその人は力つき死んだ。母は子供を引き取り父とやり直すことにしたのだった。
その後私はしばらく入院したがたいした怪我ではなくすぐに退院できた。ただ…私はすっきりしない気持ちをかかえていた。
あれから月日がたち、私は大学を出て数年の後、結婚した。両親はその後離婚した。
私を育てるためにこの夫婦は演技をしていたのだ。母はよくしてくれた、けれど…。
長文&駄文スマソ。最後収拾つかず。申し訳ない。
お題は何でしょうか?
力尽きました?
248さん、次のお題は?
「あら?」響子はダイニングに落ちていた紙切れをつまみ上げた。
長さ3センチ、幅1センチほどの小さな紙切れ。6桁の数字がプリントされている。
何だろう?響子には身に覚えがない。引っ越しの荷物に紛れ込んでいたのだろうか?
しかし、ここは毎日出入りしている場所だ。なぜ今頃になってこんなものが・・・
3秒ほどその紙切れを眺めて頭を巡らせていた響子だったが、
それ以上は深く考えることもなくポケットに仕舞った。
きっとスリッパにでも貼り付いていたのだろう。難しい事は後回しで良い。
自他共に認める感情派の響子らしい問題処理法ではあった。
結局、響子が紙切れの数字の意味に気付いたのは夜。
夫である貴史のノートPCを覗いている最中のことだった。
あるファイルのパスワード。昨夜から気になっていた。早速試してみる。
うまくいった。開いてみると、どうやら日記のようだ。
響子は多少の後ろめたさを感じながら貴史の日記を読み始めた。
*月*日
美沙と食事。その後ホテルへ。小遣いとして3万円渡す。
*月*日
美沙に妻と別れろと迫られた。ここのところ会う度にこの話になる。私は妻と別れるつ
もりは無い。そう言うと美沙は、自分との関係を妻にばらすと脅した。それは困る。それ
だけは何としても避けなければ・・・
*月*日
美沙が家まで押し掛けると言って聞かず、やむを得ず殺してしまった。死体は近くの空
き地に埋めた。霧にまぎれての重労働。かなり深く掘ったので夜明け近くまで掛かったが、
幸い人には見られなかった。しかし、何時発覚するか知れたものでは無い。車の中で思案
するうちに、空き地の隅に立っている「売地」と書かれた看板が目に留まり、それで思い
ついた。この土地を買って家を建ててしまえばばれる事は無いはずだ・・・
だから・・・響子は思い出す。だから、あんなに急いでいたのね・・・
優柔不断だった貴史がいきなり家を新築しよう言い出した時、響子は本当に驚いた。
最初は冗談かと思ったほどだ。しかし、響子がそう言うと今度は怒り出した。
今にして思えば、貴史も必死だったのだろう。そう思うと何だか・・・
その時、背後に人の気配を感じた。
「あら、今日は早いのね。」響子は椅子180度回してドアの方を向いた。
戸口に髪の長い女が立っていた。青白い顔。虚ろな目でこっちを睨んでいる。
響子は約1分の間、女の眼差しを真正面から受け止めた。
「・・・これ、あなたでしょ。」響子は紙切れを2本の指で摘みひらひらと振った。
「あなたが教えてくれたって訳ね。」女は身動きもせず、恨めしげな視線を送るばかり。
「まったく、少しは口を利いてくれても良さそうなもんじゃない? まぁいいけど・・」
響子はゆっくりとした動作で立ち上がり、部屋の隅に置いてある布団袋の方に近づいた。
「ちょっと、タイミングが遅かったってことね。でも、結果オーライじゃない?」
布団袋のジッパーを開ける。中から現れた青白い腕が湿った音を立てて床に落ちた。
「・・・せっかくだから、貴方の隣に埋めてあげるわ。」
響子は貴史の顔をもう一度覗き込むと、女の方に向き直り上品な微笑みを浮かべた。
■前の方がお題を出してないようなので書いてみました。
次は「足首」「骨」「泥」でお願いします。
「足首」「骨」「泥」
私の高校時代の友人M子は、見た目も性格もごく普通の子でしたが、
ただひとつだけ変わっていたところがありました。
M子は泥が怖いと言って、決して泥に近づこうとしなかったのです。
M子はあまり話したがりませんでしたが、幼い時に何かあったようで、
とにかく泥には近づきたくないというのです。
泥が汚いなら分かります。でもM子は泥が怖いと深刻そうな顔で言うのです。
私や友人達は、そんなM子の話を笑いながら聞いていました。
ある雨の日、私とM子、それから友人数人で下校しているときのことです。
いつも通り抜けている公園にさしかかった時、M子が地面がぬかるんでるから
今日は公園を通りたくないと言い出しました。
「大丈夫だって。泥が何が怖いの」
誰が言い出したのか今となっては思い出せませんが、誰かがそう言ったのを
きっかけに、私たちはM子の手をとって、無理やりM子を公園の中へとひっぱりました。
「やめて、ホントやめて、お願いだから」
「大丈夫だって。みんないつも普通に通ってるもん」
「離して。お願いだから、離してよ」
そんなふうにM子が過剰に怯え、嫌がる様子を見て、私たちはつい悪のりしてしまい、
思いっきり力を入れると、M子をぬかるんだ地面につき飛ばしてしまいました。
「ごめん、M子・・・」
私たちは我に返り、M子を起こしてあげようと手を伸ばしました。
次の瞬間。ぬかるんだ泥の中から、白い骸骨のような手が伸びて、
M子の体をつかみました。
私たちが見ている前でM子はその手によって泥の中へ引きずりこまれていきます。
友人達が逃げ出すのを見て、私も怖くなって逃げ出そうとしました。
「お願い、助けてっ」
M子が必死に手を伸ばし、私の足首をつかみました。
私は恐怖のあまり、とっさにその手を振り払ってしまいました。
なぜあんなことをしてしまったのか今となっては後悔するばかりです。
走って公園から逃げようとする私の背後から、M子の声が聞こえました。
「次はおまえの番だからな。次はおまえの・・・」
私は耳をふさぎながら走り続けました。
それ以来、私も泥が怖くなりました。
泥に近づくことも恐ろしくてとてもできません。
今は泥という字を見るだけで嫌な気持ちになります。
なぜ「泥」という字は、さんずいに「尼」と書くのでしょう。
私は泥が怖いです。
■次は「トイレ」「空」「氷」でお願いします。
「霧」「新築」「日記」<プロローグ>
――少女は刺しつづけた……肉の塊と化した男を。
肉塊から吹き出した臓物と生暖かい体液が部屋中を赤く染めている。
部屋の南側にベランダ。窓にはオーロラのようなレースのカーテン。少女漫
画と小学生用の学習参考書とが半々につまった本棚。学習机の上には書きか
けの日記。ベッドに横たわるテディベア。
あらゆるものが朱に染まり、白を基調としていた部屋の面影はない。
そして少女は刺しつづける。
血糊がべっとりと付着した果物ナイフを逆手に持ち、頭上に振りかざしては
振り下ろす。
ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ……。
その光景を、テディベアが微笑みながら見つめていた――
「霧」「新築」「日記」<1>
(誰かが見ている……)
重利は、最近になって自分に注がれる強い視線を感じていた。
身の危険こそ感じないものの、行動の一部始終を監視されているような嫌な
感覚だ。重利にはこのような感覚は以前からあったのだが、それほど強く感
じたことはなかった。あの新築の家に越してくるまでは。
重利は名門私立高校に通う一年生で、父親とふたり暮しだった。
重利の父は、国立大医学部の教授で田崎誠一郎という結構有名な精神科医で
もある。
どういうわけか、ふたりは外見、性格ともまるで正反対のようだ。父親とち
がって重利の方は背もスラリと高い。性格も、学究肌で寡黙な父親とは異な
り、活発で明るくクラスのリーダー的存在だ。おそらく重利は亡くなった母
親の方に似たのかもしれない。
だが、重利はそんな父親を尊敬していたし、父親の方も重利を頼もしく思っ
ていたのだろう、お互いの仲はすこぶる良かった。
ふたりは重利の高校進学と同時に新築の一戸建てに越してきた。お互いの通
勤通学に便利だからだ。
「霧」「新築」「日記」<2>
新しく重利の部屋となったのは、南に面した明るく清潔な六畳の洋間だった。
はじめは広々と感じた部屋も、机やベッド、本棚などを入れると案外狭く感
じるものだが、それ以上に何か得体の知れない視線をこのとき重利は感じ取っ
ていた。
(誰かが見ている……)
この感覚は日ごとに増幅してきた。
最近、大学で父親の研究を手伝っている助手たちが、頻繁に訪れるようになっ
た。違和感はそのせいかとも思ったが、どうもそうでもなさそうだった。明
らかに、この部屋が原因だと重利は思った。
ある日、重利が部屋にはいると一冊の少女漫画が本棚の隅に置かれていた。
(なんだろう、これ……)
父親に尋ねてみたが「知らない」という。少女漫画など読まない重利がこん
なものを自分で買うわけもなく、誰かが持ち込んだにちがいない。出入りし
ている助手たちを疑ってみたが、そんなことをする理由がわからない。結局、
その漫画は一頁も読まれないまま机の引き出しの奥で眠ることとなった。
「霧」「新築」「日記」<3>
次の日、学校から帰宅すると今度はベッドの上にテディベアが置かれていた。
(またか。いったい誰が……)
海外では男性でもテディベアの愛好家は多いらしいが、重利にはそんな趣味
は全くなかったし、そんなことは父親も知っているはずだ。
ただ、きのうの今日である。さすがに重利も薄気味悪くなってきた。きっと
父か助手たちのいたずらに違いないのだろうが、問いつめるのも面倒に思い
そのままにしておいた。
その夜、重利は不思議な夢を見た。
白い部屋……
少女漫画……
テディベア……
書きかけの日記……
血まみれの少女……
はらわたの飛び出た屍……
そして、少女が自分に向かって顔を向けようとするところで目が覚めた。
それから数日のあいだ、その少女は何度も夢の中に出てきた。
しかし、なぜか少女の顔は霧がかかったように白くぼやけていた。
(この部屋には絶対何かある……)
重利はそう確信した。
「霧」「新築」「日記」<4>
それから数日後、今度は机の上に古い日記帳が置かれていた。
それは、あの夢の中に出てきた日記帳と同じ物だった。
重利は恐る恐るその日記を開いてみた。
そこには、ひらがなばかりの幼い文章がつづられていた
――×月×日(火)
今日もあいつが部屋にはいってきた。
わたしはひっしでていこうしたけど、ベッドにおしたおされた。
――×月○日(木)
ああ、もういや。
あんなやつ、わたしのおとうさんじゃない!
けだもの! 死んでしまえばいいんだ!
――×月△日(日)
もう死んでしまいたい。
毎日毎日がじごくです。おねがい、だれかたすけて。
あいつは明日もくるだろう。そのときは、
ここで、その日記は終わっていた。
次の頁をめくると、液体の渇いたような跡がどす黒くこびり付いていた。
鼻を近づけて嗅いでみると、微かに鉄のさびた匂いがする。
(これは血痕だ……)
なにか曰くありげな日記に違いない。
誰が書いたのだろうと思い、重利は日記帳の奥付を見た。
そこには「中川重利」と記されてあった。
「霧」「新築」「日記」<5>
(中川重利……ナカガワエリ……ナ・カ・ガ・ワ・エ・リ……)
重利は頭の中で何度もくり返してその名前を唱えた。
ナカガワエリ……懐かしい響きだった。
そして、あの夢が重利の脳裡をよぎる。
白い部屋……
少女漫画……
テディベア……
書きかけの日記……
血まみれの少女……
はらわたの飛び出た屍……
そして、少女がゆっくりとこちらを向いた。
今度はハッキリと少女の顔が見えた。その顔は……
私だ!
夢の中で見た少女は私自身だったのだ。
「霧」「新築」「日記」<6>
誠一郎の書斎。
六畳ほどの空間に所狭しと乱雑に山積みされた専門書や論文。その隙間にい
るふたりの男がマホガニー製の机に置かれたモニターを食い入るように見つ
めていた。
そして、助手の北沢亮がうわずり気味に叫んだ。
「先生、被験者の様子が変です!」
先生とはもちろん重利の父親である田崎誠一郎のことである。
モニターには重利の姿が映し出されていた。
「あの日記を見て基本人格が覚醒してしまったらしい」
と、沈痛の面持ちで誠一郎はつぶやいた。
基本人格とは、出生して最初に持つ本来の人格、つまりオリジナル人格のこ
とである。
重利は解離性同一性障害、いわゆる多重人格者であった。
十歳のころ、実父から虐待を受けていた重利は、思いあまって父親を殺して
しまった。それがきっかけで、内気でおとなしい控えめな生来の人格が潜在
化し、正反対である活発で明るい性格に人格交代がなされた。以後その人格
が重利の身体を継続的管理的に支配する人格、すなわち主人格として顕在化
するようになった。このような人格は、オリジナル人格に対してホスト人格
とよばれる。
つまり、精神または身体に極限的状況が生じた場合、その記憶を封印するた
めにオリジナル人格とは正反対の人格がホスト人格として現れ、顕在化して
くる場合がある。重利の場合はまさにこのケースであった。
誠一郎は人格交代を遮断する新薬の研究をするために、身寄りの無かった重
利を引き取って養子にし、試験薬の投与を繰り返しては観察を続けてきたの
である。
「霧」「新築」「日記」<7>
研究は最終段階にさしかかっていた。
重利の人格状態も安定し、あとは当時と同じ状況を再現して、なお人格交代
を起こさなければ研究は一応の成功をみる。
そこで、誠一郎は段階的に殺害現場の状況を再現していくことにした。
少女漫画とテディベアを見ても被験者である重利の人格状態に変化はなかった。
しかし、あの日記が冬眠していたオリジナル人格をついに目覚めさせてしまっ
た。
モニターに映し出された被験者に、もはや明るく活動的だった田崎重利の面
影はない。それは、十歳の段階で記憶と思考が停止している中川重利そのも
のであった。
そして、中川重利はモニターの中で、ナイフを振り下ろすような仕草を延々
と繰り返す。
ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ……。
その光景を、テディベアが微笑みながら見つめていた。
― 了 ―
うわー、えらい遅れてしまった……(´Д`;)
それに長すぎだー
これでも推敲段階で半分の長さに削ったんだが。
短くしたことで内容がわかりにくくなったのではと心配している次第。
医学的にはツッコミどころ満載だと思われますが、まぁ、素人のたわいのな
いフィクションですので御容赦のほど……
>>266-273 叙述トリックですね。
うまいです。ひっかかりました。
そして感心しました。
「トイレ」「空」「氷」 1/2
私と彼女が初めて出会ったのは、夏休み最中の、学校の女子トイレの中だった。
その日ちょうど部活動のため登校していた私は、どうにもやる気が起きず、人のいない所で
時間を潰そうと、普段行かないような遠くのトイレまで足を運んでみた。そこに彼女はいた
のだ。
同じ学校の生徒だと思うのだが、顔に見覚えはなかった。それはもちろん私自身が人の顔を
覚えないせいでもあるのだろうが、この暑いのに冬服を着込み、しかも汗一つかかずに流し
の前に佇んでいるところなどは、不審なことこの上ない。髪の感じや服の着こなし方なども
妙に古めかしく、まるで幽霊でも出たかのようだったが、あいにく私はそういった存在は信
じていなかった。
彼女は私の視線に気づいたのか、ふとこちらを振り返り、はにかむような笑みを浮かべた。
もともと小柄だということもあってか、その形が無性に可愛らしく、女同士だというのに、
私は一発で彼女にまいってしまった。
それから部活で登校するたびに、私は部室を抜け出して、トイレで彼女と会った。あらかじ
め約束しなくとも、そこに行けば必ずいるのだから便利なものである。確かに奇妙な子では
あったが、別段詮索する気も起きず、私達は互いに名乗りもせぬまま、ただくだらない世間
話にうつつを抜かしていた。
「お盆が終わる日には帰らないといけないの」
ある昼下がりのこと、コンビニで買ってきたかき氷を二人で食べていると、彼女が小さな声
で言った。幽霊など信じてない私は、ただ残念そうに相槌を打っただけだった。
「トイレ」「空」「氷」 2/2
やがて世間は盆休みに入った。当然ながら部活も休みである。学校が閉まっていては、
さすがに彼女も来てないだろうから、結局私は家でだらだらと時を過ごすしかなかった。
ちょうどお盆の最終日になり、私は近くの河原で花火大会があることを知った。家族は
行く気満々だったが、物事に飽きやすい体質である私は、長時間似たようなものを見せ
られるだけのあのイベントが好きではなく、やはり家にひとり残り、無意味に畳の上に
転がっていた。
そして、ふと彼女の顔が頭に浮かんだ。
行ってみよう、と思った。
夜の校舎に忍び込むなどというのは初めての体験だったが、その気になってみると意外
と簡単なものだった。私は適当な窓から中に飛び込み、トイレへ向かって走った。なぜ
急いでいるのかは自分でも分からなかったが、ただ、絶え間なく響いてくる花火の音が、
無性に私の心を掻き立てているのは確かだった。
トイレの扉を開けると、彼女はそこにいた。あの日と同じように、はにかんだ笑みを浮
かべながら。
私達は屋上に上がることにした。夜空を見るにはちょうどよかった。階段を上り、夏の
夜特有の無風の空気の中に進み出る。
空は光っていた。
彼女は視界一杯に咲き誇る大輪の華に目を輝かせ、私もまたそんな彼女の表情を微笑ま
しく思いながら、降り注ぐ光を前に立ち続けた。花火の時間が苦にならないのは、これ
が初めてだった。
そして最後の輝きが終わったとき、彼女は私の隣から姿を消していた。
「ありがとう」―― そんな文字の書かれた小さな折り紙が一枚、彼女の立っていた場所
に落ちていた。
翌日部活のために登校してきた私は、昨夜校舎の屋上から飛び降りた生徒がいたという
ことを知った。
幽霊は、やはりいなかったのだ。
久々に書いたらダラダラになってしまいました。
次のお題は「金棒」「団扇」「皿」でお願いします。
「金棒」「団扇」「皿」
それで奥さんが朝掃除機かけようとしたら、旦那が居間にどんと座ってるわけ。
団扇であおぎながら大リーグの中継見てんの。
さすがにビールは飲んでなかったけど、スナック菓子を皿に出してさ、
ポロポロ床に落としながら食べてんの。
奥さんが掃除機かけるからちょっとどいてっていくら言っても、
旦那は全然動こうとしないの。
そのうち奥さんも頭に来て、掃除機のスイッチ入れてさ、
鬼に金棒、奥さんに掃除機って感じで、旦那のこと攻撃し始めたの。
掃除機の先端のとこはずしてさ、筒の先のとこで旦那の背中とかおしりとか
すぽすぽ吸ってんの。
そのうち旦那もさ、仕方ねえなあって感じでのろのろ動き出したの。
でも奥さんもさちょっと調子にのってて、旦那が嫌がるのを面白がって、
隣の部屋へ行こうとする旦那のあとについて、すぽすぽ攻撃し続けてたの。
で、うるさいなあって感じで旦那が振り返ったのと、奥さんがすぽすぽ攻撃の
標的を背中から頭に変えようとしたのがたまたま同時になっちゃったんだよね。
掃除機の筒の先がちょうど振り返った旦那の右目んとこにいっちゃって、
しゅごごごとか音立てて、旦那の右目が掃除機に吸い込まれちゃったの。
奥さんは当然青ざめたけど、旦那は意外にも痛がりもせず平然としてんの。
で、感心したように言ったんだ。
「へえ、掃除機の中ってこんなふうになってんのか」
■「金棒」の使い方がかなり無理あるな。ごめん。
次は「電車」「地震」「歌声」でお願いします。
「電車」「地震」「歌声」
数年前に良く一緒に遊んでたコがいるんですけど、
僕が六本木の、今は無き某ハコでレギュラー持ってた時に
特にそのコがすごい盛り上がってくれて、
こんだけアガる子も珍しいなと思って話し掛けたのがきっかけだったんだけど。
純粋に音楽と酒が好きなコで、全然クスリとかに縁の無いコだったんで、
すごく好感を持って、クラブ以外でも一緒にメシ食ったり映画見に行ったりしてたのね。
で、そのコが冬期休暇もらって実家に帰省してから、
テレビとかで、地震で電車が横転しただのというニュースが流れたのを境に
連絡が取れなくなって、そのコが亡くなったのを知ったのが1ヵ月後でした。
一昨年ぐらい前にNEWKっていう神戸のクラブで回すオファーがあって
折角の関西遠征ってことで、数年前に回してたような懐かしい路線で選曲したのね。
関西では僕は知られてるほうじゃなかったけど、壁が少し湿るくらいの大入りだった。
そのイベントのスタッフが記録用にデジカムで録ってくれてて、
東京に帰ってから、VHSにダビングしたやつを送ってもらったのね。
僕のプレイしてたときに、一番前のほうにどっかで見たコがいて
そのコが客のテンションを引っ張って盛り上げてくれてたみたい。
strike"inspiration"とか回してた時も、そのコの歌声が入ってた。
Because you give me an inspirational love
You're my inspiration
あのコ、来てたんなら声かけてくれれば良かったのに。
話したいこと、感謝したいことがいっぱいあったのに。
で、今度のゴールデンウィークは予定を空けて、新幹線のチケットを予約しました。
あの夜も、僕に色んなinspirationをくれたから、あのコに"ありがとう"を言いに。
神戸の御影霊園にいるって聞いたから。
長っ、しかもダラダラ(汗
次は「素麺」「寝起き」「メンソール」で。
俺は一人で流し素麺を食べに来ていた。
が、いつまで経っても麺のかけらすら流れて来やしない。
「くぉら、いつまで客待たせる気だー!」
間仕切りの戸板に向かって俺が怒声を上げるや否や、くぐもった悲鳴とも嗚咽ともつかない声が
戸板の向こう側から漏れてきた。
と、見る見るうちに目の前を流れる水に朱が混ざり始め、程なくして真っ赤に染まりきった水の上を
マニキュアが施された細い指が切断面を露にして流れてきた。
箸と麺つゆの入った器を投げ捨てると、俺は一目散に逃げ出した。
「……て夢を見たんだけどさ」
寝起き一発目で、俺は隣で一緒に寝ていた彼女に夢の一部始終を話して聞かせた。
「ふぅん」
彼女は気の無い返事で、けだるそうにメンソールのタバコを咥え、火を点けた。
タバコを持つ彼女の手は、包帯でぐるぐる巻きになっていた。
昨夜一緒に寝たときには、確かしていなかったはずなのだが。
「あれ、その手、どうした?」
「え、あ、うん、ちょっと、ね……」
さっと素早く背中に隠したその手には、薬指が付いていなかった、ように見えたのは
俺の気のせいだろうか。
■「山羊」「杭」「姉さん」でよろしく。
「山羊」「杭」「姉さん」1/1
姉と一緒に田舎道を歩いていると、ある農家の庭先に山羊がいた。
山羊の首をくくったひもが近くの杭に結ばれている。
「山羊だ。かわいい」
大の動物好きの姉は喜んで近づいていった。
人になれているのか山羊も甘えるような仕草で姉に顔を寄せてきた。
「かわいい。ねえねえ、山羊ってやっぱ紙食べるのかな」
そう言いながら、姉はもっていたカバンをあさり始めた。
「そうだ。これ食べるかな」
姉は白い封筒のようなものを取り出した。
「姉さん、よしなよ。人んちの山羊だよ」
「これね、今日私がもらったラブレターなの」
僕にではない。姉は山羊に向かって話しかけている。
「お付き合いできませんって、前にちゃんとお断りしたのに、その人また
ラブレターくれたの。はっきり言って私その人に興味ないんだ」
姉が封筒を差し出すと、山羊はそれをくわえて口の中に入れた。
「あーホントに食べた。やっぱ食べるんだー。かわいい」
口をもぐもぐ動かす山羊を見て、姉は子供のようにはしゃいだ。
突然、山羊が耳をつんざくような悲鳴をあげて、暴れだした。
山羊が狂ったように飛び跳ね、その度に山羊の首にひもがくいこんだ。
やがて倒れて動かなくなった山羊の口からはカミソリの刃がのぞいていた。
声を聞きつけて家から出てきた農家の人に、僕は事情を説明した。
姉は立ち尽くして、涙を浮かべながら「ごめんなさい。ごめんなさい」と繰り返した。
それは農家の人にというよりは山羊に向けられた言葉だと思った。
その夜姉はカミソリを飲み込んで自殺した。
■なんかせつないな。
次のお題は「接着剤」「魚」「ケータイ」で。
「接着剤」「魚」「ケータイ」
ネット関係の知り合いで、絵に描いたようなIT成金社長がいて、
オーストラリアの別荘に行って、トローリングやろうぜって話になった。
俺はトローリングなんかするのは初めてで、もちろんぜんぜん形になってない。
真似事って感じ。でもそいつは何度も打ち合わせと称して来てやってるらしく、
結構サマになってた。
しかしその日はあいにくカジキなんて一匹も釣れない。地元の船長が、じゃあ
タイガーシャークでも釣るかってんで挑戦してみて、そこそこの大物が掛かった。
デッキに引き上げて棍棒で頭をバコバコ潰して、ようやくおとなしくなった。
写真撮ってから、船長が手際よくさばいている脇で、そいつと今日はフカヒレだ!
とはしゃいでいると、船長が妙な顔で、胃袋の中から取り出したものがある。
ケータイ。うげぇこいつ人食いザメかよとびびったが、このサイズだとけっこう
ある話だそうだ。気味悪いんでそれ以上胃袋の中は漁らずに、ケータイと一緒に
海に投げ入れた。
ただ、後になってイヤ〜な想像をしてしまった。船から捨てたあのケータイだが、
たしかドコモのやつだった。不幸な犠牲者は日本人?
そしてもっとイヤだったのは、あのケータイがしっかりと、犠牲者の手に握られた
ままだったことだ。手首から先だけ、それもかなり消化されてて男か女かは
わからなかったが、妙なのはケータイがしっかりと握られていたことだ。
まるで、何かの罰で、接着剤でもつけて握らされたみたいに。
次のお題「換気扇」「手紙」「上司」でお願いします。
>>280 後半の意味がいまいち分からないんだけど、前半が怖いからいいや。
流しそうめん食べてて、流れる水が見る見る赤く染まってく・・・
久々にゾクッときたシチュエーションです。
>>283 サメのおなかからケータイがでてくるってのもかなり怖いんだけど、
もうちょっとひねればもっと怖いストーリーができそう。
てゆうか書くの速すぎ。僕の出すお題知ってたかのよう。マジ感心です。
冷静に見ると「魚」がはいってないんだけど、大目に見たい(笑)。
友人から来た手紙を読んでいると、既に夜の10時を過ぎていた。
明日から出張で2週間ほど北京に行くことになっていたので、忘れないうちにと
私は取り急ぎ返事をしたためて、ポストに投函するために家を出た。
春とはいえ、まだ夜は冷え込む。白い息を吐きながらコンビニへと向かう途中、
とあるマンションの5階のベランダに人影が立っているのを目にした。
よく目を凝らすと、会社の上司のS課長だった。そういえばS課長ってこの近くに住んでいたんだっけ。
S課長は私の姿を認めたようで、こちらに手を振った。私も会釈しながら手を振り返すと、再び歩を進めた。
道すがら考える。S課長は会社でも指折りのヘビースモーカーだ。
ひょっとすると家ではその愛煙ぶりを疎まれているのかもしれない。
台所の換気扇の下で吸うことすら許されず、ベランダで蛍族、てところなのだろうか。
あの厳しいS課長が、家ではねえ……と私は一人にやつきながらコンビニへと入っていった。
朝、出勤すると、何だかオフィスが騒々しい。
同僚に何かあったのか、と訊くと、何とS課長が殺害された、というではないか。
何でも浮気が奥さんにばれ、口論の末にナイフで心臓を一突きされたのだという。
当然ながら、即死だったらしい。
ベランダに立っていたあの直後に殺されたのか……と、後味の悪さを感じていると、
同僚がこんなを言った。
「8時頃だってよ、殺されたの。俺その時間会社で仕事してたよ。まさかその時に……」
その後に同僚が何を言っていたのかはよく憶えていない。
気がつくと私は、北京に向かう飛行機の座席に呆然としながら座っていた。
■「アーサー」「用事」「45分」でよろしく。
あ、前のお題消し忘れてた……。
まぁ、こんなのもたまにはいいじゃない。
もちろん
>>285は「換気扇」「手紙」「上司」だす。
>>284 >後半の意味がいまいち分からないんだけど(後略)
うん。俺も分からん。
解釈は各個人お好きなように、てことで。
「アーサー」「用事」「45分」 1/1
ちょっとした用事をすませてから部屋に戻り、読みかけだった「アーサー王伝説」
の続きを読もうとした時、本の中に紙片がはさんであるのに気付いた。
図書館で借りてもう数日この本を読んでいるが、こんな紙片には気付かなかった。
その紙片には奇妙なことが書いてあった。
―この呪われた本に命を捧げた者たち―
前川一郎はガードレールに突っ込んで死んだ。
加藤春子はフライパンの柄が目に突き刺さって死んだ。
長谷川正市は妻に首を絞められて死んだ。
東信二はくも膜下出血で45分間苦しんでから死んだ。
中倉みどりは落石が顔面に直撃して死んだ。
曽根一は高層ビルから落下して死んだ。
・
・
・
そんな死亡リストが列挙されていた。
質の悪いいたずらをする人もいるもんだと気分が悪くなった。
が、リストの一番下の名前を見て僕は青ざめた。
僕の名前が書いてあったのだ。
中山太郎は部屋に出たゴキブリにびびって死んだ。
なんで僕だけこんな変な死に方なんだろうと思った。
ゴキブリごときでそんな驚くもんかと自分を励ました。
その瞬間、部屋の本棚のところからカサカサとゴキブリが這い出た。
僕は思ったよりびっくりした。
■早書きは難しいねやっぱ。
次は「バット」「アンケート」「ネックレス」で。
「バット」「アンケート」「ネックレス」1/2
街を歩いていると、よくキャッチセールスに会ってしまう、ぱっと見、お人よしの俺。
その若い女が話しかけてきたのも、今から思うとキャッチだったんだと思う。
いつもはきつく断るが、その日はちょうど暇だったし、相手は名刺を出して、一見
まじめそうな、ファッションに関するアンケートって事だったので、つい答えてしまった。
「ネックレスとか装身具をしている女性をどう思いますか?」
「その人に似合っていればいいと思いますよ」
終わった後で、ファッション発表会の案内を送るからと言われ、つい油断して
自分の住所氏名、メアドに携帯番号まで書いてしまった。気づいても後の祭り。
次の金曜の夜、その女から携帯に電話が入った。
「明日何やってるの?」おいおい逆ナンか?
ただ俺はまったくその女に興味がなかったので、非常に気味悪く、迷惑な話だった。
「いや別に何の用事もないけど…というか、俺の予定はあなたに関係ないでしょう?」
はっきり言ってやったつもりだが、彼女はしばらく黙ったあと、こう言った。
「私は野球を見に行くつもり。じゃあね」
「バット」「アンケート」「ネックレス」2/2
土曜日。夕方、彼女と会って一緒にご飯を食べ、夜、一人でマンションに戻った。
俺は恥ずかしながら、がたがた震えてしまった。玄関のドアがボコボコにされている。
破壊活動に使ったと思われるバットが転がっている。これがいわゆる押し掛け厨ってやつか?
でもなんでオートロック式のマンションの俺の部屋のドアにこんなことができる?
管理人常駐の、ちょっと高いマンションなんだぞ?
大体、こんなボコボコにしたら近所の人が何事かって出てくるもんだろう?
まったく訳が分からなかった。
週明け、修理代を請求しようと、いやいやながらその女の勤め先に電話をしてみた。
「○○ですか?○○は先月退社しております」
「んなこと言ってもこないだアンケートって言ってあんたの会社の名刺出してるんだよ!
責任取れ責任」
「しかし…」電話の相手先が言った「それはありえません。実は○○は先月事故で…
■先ほど「接着剤」「魚」「ケータイ」を書いたものです。
確かにもっと怖くなりそうですね。精進します。お次は、
「ティッシュ」「高速道路」「メガホン」でどうでしょう?
でも僕はもう寝ます。おやすみなさい
「ティッシュ」「高速道路」「メガホン」sono1
せっかくのゴールデンウィークだというのに、
貯め撮りしたビデオを見るぐらいしかすることがない俺。
ソファーの背にもたれながら、一週間分の大リーグ中継録画をボンヤリと眺めていた。
サイドテーブルの上には、値上げ前に買いだめしておいた発泡酒の空缶の山。
いきなりだ。深夜だというのに、戸外で甲高い女の声が響いた。
俺はビックリして手にした発泡酒の缶を滑らせ、膝の上に液体をぶちまけた。
慌ててティッシュケースを取りあげたが、中身はすぐ空になってしまった。
女の声も気になったが、ここは高層マンションの12階。
どうせ階下で痴話言下の真っ最中なんだろう。気にしないことにした。
それよりも濡らしてしまったズボンとカーペットの染みが不愉快だった。
先週発泡酒と一緒に買いだめた5箱セットのヤツが物置に収納してある。
包装を解き、その中の一つを取り出す。一枚目のティッシュを引き抜く。
「へ・・・?」なんだこりゃ?
「ティッシュ」「高速道路」「メガホン」sono2
黒いティッシュペーパー・・・
売り出しのまとめ買いだったのに、随分凝ったメーカーだな・・・
しかしこんな変わった商品、かえって不人気の売れ残りになるんだろう・・・
売り場には他にも「黒い綿棒(汚れを見えやすくする?)」などの新製品もあったので
さして気にはならなかった。
さっそくティッシュを膝にあてがい水分を吸い出そうとしたのだが?????
黒い色が溶け出しズボンを却って汚してしまった。
なんだってんだ!?いくら安いからってこんな欠陥商品販売しやがって。
俺はすかさずティッシュの箱に印刷されているメーカーの名前を確認した。
「▼◇製紙・・・!?!?!?」
脳裏に、昨日見たばかりのおぼろげなニュース映像が甦る。
絶句した俺は、汚れた膝をあらためて凝視した。
黒じゃないピンク色じゃないか・・・
俺は慌てて先ほど見終わっていた一週間前のビデオを引っ張り出し、
野球中継の終了後惰性で録画されていたニュースの該当箇所を探した。
>>264-265 どうして泥の中から骸骨が出てきたんでしょうか? オチは? これじゃ単なる「不思議なお話」です。それと、『なぜ「泥」という字は、さんずいに「尼」と書くのでしょう。』という記述に何か意味があるの? わけがわかりませんが・・・
>>266-273 オチは比較的しっかりしてるし中味も面白いと思う。だけどこれ怪談? どう見てもサスペンス物だと思うのですが。あと、重利はどうしても「しげとし」としか読めません。これを「えり」と読ませるのは無理があるのでは。
>>275-276 結局、その彼女は幽霊じゃないのですね・・・。じゃ彼女が冬服を着ていたのはなぜ? それが後のストーリーにどう繋がっていくんでしょうか? 「お盆が終わる日には帰らないといけないの」っていう表現も、彼女が人間だとするなら少し変ですね。
>>278 一体なんでしょうこれは? 作者はこれを怪談として真面目に書いたのでしょうか。お笑いのネタとしか思えません。
>>279 クラブをよく知らない者にとっては情景が把握しづらいのでは。実話ならすごくいい話だろうけど、創作怪談としては「ふ〜ん、だから何?」って感じで終わってしまう。
>>280 女の指がないことになぜ今まで気がつかなかったんでしょう? 夢とオチ(オチと言えるか疑問ですが)がどう繋がっているのでしょうか・・・。情景描写に頼りすぎ。もう少しプロットに配慮した方がいいと思います。
>>282 最初に思ったのは「そんなことぐらいで自殺するかフツー?」ということでした。しかもカミソリを飲むっていう奇妙な方法で(つーか、カミソリ飲んで自殺できるのか? 痛いだけなのでは)。何か特別な理由で自殺したのなら、伏線ぐらいはっておくべきだと思います。
>>283 これも情景描写だけなら結構怖いのですが、オチがないので創作物として見た場合「ふ〜ん、それで?」っていう感想しか浮びません。
この手の話は「これは実際にあったことだが・・・」とハッタリをかまして話す場合に怖さを発揮すると思います。オチを工夫すればいい作品になったと思われただけに残念。
>>285 あららら、これも不思議なものを目撃したってだけのお話ですね。情景描写すら全く怖くないです。
>>287 出だしで「これは傑作か!」と思ったんですが・・・もう少しプロットを練って話を膨らませればいい作品になったと思われるのに。もったいない・・・
>>288-289 あ〜、これも不思議なお話で終わってる。途中までは面白かったのになぁ・・・。
総体的な感想としては、「オチが弱いかな」って感じです。
伏線なしに唐突にオチ(オチといえないものもある)つけてるし。
怪談というのは、無さそうなことをさも有りそうに錯覚させて怖がらすものです。はじめっから「こんなのあり得ね〜」って感じる作品(<a href="../test/read.cgi/occult/1042654400/278" target="_blank">
>>278</a>など)は怖くもなんともないです。
あと、「訳の分かんないところがオカルト」っていう反論はなし。そんなのは単なる誤魔化しですから。
ずいぶん生意気なことを書いてしまいましたが許して下さい。
こんなこと書くと「お前が書けや、ゴルァ!」っていうレスが返ってきそうですが・・・まあ、今度挑戦してみます。普段は文芸創作板にいるので少し厳しい感想になってしまいました。
「ティッシュ」「高速道路」「メガホン」sono3
「■○高速道路でトラック謎の横転」
4月20日零時
▼◇製紙契約ドライバー××の運転する大型トラック、
■○高速道路下り▲▲付近で横転、ドライバー××は即死
積荷の一部が行方不明・・・
ニュースを確認した後、思わず自分の筋違いな連想を笑ってしまった。
「積荷の一部が行方知れず」という箇所が気になってしまい
記憶の片隅に引っかかっていた事故だったのだが
この件と「黒いティッシュペーパー」の因果はどうにも結びつけようがない。
気を取り直して、大リーグ中継の続きに集中することにしよう。
ビールのツマミを調達するために台所に立つことにした。
サラミソーセージを切っている最中に指を傷つけてしまいあわててタオルを探した。
しかし男の一人住まい、洗濯不精で清潔なタオルが見つからず仕舞。
しょうがなく、洗った指の水分を拭うために例の黒いティッシュを使用した。
まさか衛生上問題のある染料を使用しているはずはないだろう。
戸外から聞こえてくる痴話喧嘩は相変わらず断続的に続いているようだ。
皿にならべたツマミが用意できると、俺は新しい缶のプルタブを引き起こした。
すると野球中継の途中、九回表、字幕のニュース速報が俺の目に飛び込んできた。
「ティッシュ」「高速道路」「メガホン」sono4
「▼◇製紙●●工場、パルプ原料の製造ラインで変死体発見」
まったく、問題ありすぎの会社だな・・・不良製品といい、横転事故といい・・・
録画テープの中の速報では当然リアルタイムではないわけで、
ニュースの鮮度なども気の抜けた発泡酒みたいなものである。
しかしま〜変死体発見くらいで速報か〜?とか訝しがりながら、追加のテロップを待つ。
野球中継の画面は外野席にパンされ、観客の声援が一層大きくなっていく。
なんといっても九回表一死満塁。一塁側スタンド席は黒のメガホンがで埋めつくされている。
「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」
「か〜え〜せっ」!?!?!?!?
まったく可笑しな応援だな?あれ・・・これ大リーグ中継じゃなかったか・・・なんで日本語???
頭が混乱している俺。それに女の声だよ!?酒に酔い過ぎたか?
と、突然、画面がスタジオのニュースに切り替わった。キャスターが原稿を読みあげる。
「野球中継の途中に失礼いたします。
今朝、▼◇製紙●●工場で発見された変死体に関しまして続報です。」
「ティッシュ」「高速道路」「メガホン」sono5
戸外の痴話喧嘩が一層激しくなっていることに気づき、俺はテレビの音声を大きくした。
「今朝、▼◇製紙●●工場、パルプ原料の製造ラインで発見された変死体につきまして、
パルプ溶液タンクの定期洗浄作業中----複数人の人間の歯と微量の髪の毛が発見され---
警察の調べによりますと----死体は△△病院に入院中の----26歳の女性他15人前後と推定----
大量殺人とみて----500人体制の----捜査本部が編成されました
なお----今回の速報つきましては----いち早く----みなさまにお伝えしなければならないことがございます。」
集中して聞こうとしている俺の耳には、クレッシェンドしていく戸外の痴話喧嘩の喧騒が鬱陶しかった。
「被害者の一人の女性は----HIV感染で入院しておりました。
そして----被害者たちの血液および肉片は----「4月20日」出荷分の----▼◇製紙の一部製品に混入----
製品は5箱組のボックステッシュ「∞∞∞∞」----首都圏出荷数は500セット----
商品の大部分は----先週4月20日未明におこりました----■○高速道路下り線トラック横転事故の際----」
俺の頭は大混乱に陥り、思考が停止していた。
「傷口への使用は絶対に控えて---------------------二次感染の恐れがございます----くれぐれも----」
「ティッシュ」「高速道路」「メガホン」sono6
「また----該当製品は----見かけ上でも通常製品とは異なり----うっすらとした黒色を呈する----」
なにがうっすらだ・・・俺のは真っ黒じゃね〜かよ!
血の気が引き、酔いが急速に醒めていく。
ティッシュの箱をつかみ上げ、箱をばらして中身の汚染物をぶちまけた。
テッシュのとは明らかに異質な5mmくらいの繊維の破片。
その中に一本だけ、20cm以上の長い繊維。毛根・・・
急に込み上げてきた激しい嘔吐感に耐え切れず、俺は窓を開けベランダに飛び出した。
「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」
「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」
「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」
「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」
「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」
「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」「か〜え〜せっ」
怒号のような重低音に包み込まれ、30本近い腕の束が、俺を漆黒の闇に引きずり込む。
さっきからの声はお前達だったんだね・・・
「俺がいったい何をしたっていうんだ」という不条理に憤りながらも、
近づいてくる地面との距離を冷静に測っている俺がそこにいた。
=THE END=
次のお題は「口笛」「消防署」「タイムカプセル」でよろしくお願いね!
>>292-293さん
感想書くのはいいけど、KANAIKAさんの作品の間にはさまなくても。
いや、一気に投稿しないKANAIKAさんも悪いんだが。
KANAIKAさん、次からはメモ帳とかで全文書いてからコピペしてください。
投稿するタイミング逸しちゃったけど、せっかく書いたから
書き込ませてもらいます。
「ティッシュ」「高速道路」「メガホン」です
「ティッシュ」「高速道路」「メガホン」 1/4
これは私が撮影助手としてある映画に参加した時の話です。
その映画は巨匠として知られるK監督の集大成的な作品ということもあり、
K監督はもちろん、キャストも私たちスタッフも気合いが入っていました。
撮影は順調に進み、その撮影最終日のことです。この日は、前日天候の関係で
撮影を断念したラストのワンシーンの撮影を残すのみとなっていました。
そのシーンはヒロインが浜辺にたたずみ、中空を見あげるというものでした。
私たちが撮影の準備をしていた時、突然現場が慌ただしくなりました。
話をきくと、ヒロインを演じる女優M美さんがこの撮影場所に向かう途中、
高速道路で事故にまきこまれ即死したというのです。
M美さんはK監督がオーディションで見出し、これまで監督の作品で使い続け、
映画女優として育て上げてきた女優さんでした。
撮影現場はさきほどの喧噪が嘘のように静まり返っていました。
K監督は押し黙ったままです。もっともかわいがってきたM美さんを失った
監督の悲しみや喪失感は察するにあまりあるものでした。
「・・・そういうわけで、この映画はもう終わりだ。みんなご苦労様・・・。
今日はM美の冥福を祈ってやってくれ。・・・・撤収だ・・・」
K監督がこれまでに聞いたことがないくらい弱々しい声でそう言ったときでした。
スタッフの背後から「遅れてすみませんでしたー」という明るい声が聞こえました。
振り返るとそこには、衣装に着替えながら走ってくるM美さんがいました。
みんな狐につままれたように唖然としています。
「どうしたんですか、みなさん? なんかお化けでも見るような顔して」
スタッフが事情を説明すると、M美さんは笑いをこらえきれない様子で、
「やだぁ、あの電話いたずらですよー。高速が渋滞で全然進まなくて
遅れちゃいそうだったから、冗談のつもりで。ごめんなさーい」
スタッフのみんなが一斉に吹き出しました。
私も最初現場に現れたM美さんを見たときは、彼女が化けて出たのかと
思いましたが、こんな明るいお化けなんているはずありません。
K監督はなんともいえない複雑な表情をしながら「よし、撮影始めるぞ」と
スタッフに向かって言いました。
撮影準備が整い、監督が「よしラストシーン、アクション」と声を張り上げました。
M美さんが微笑みを浮かべながら空を見上げています。
私はその美しさに目を奪われていました。
その時、監督が静かに「・・・カット・・・」と撮影を止めました。
私を含め数人のスタッフが監督のもとにかけよりました。
監督が指さしたカメラモニターには、信じられないものが映っていました。
それは全身血まみれで黒く焼けただれたM美さんの姿でした。
右腕は無惨にちぎれとび、後頭部は脳が露出していました。
私は顔を上げ、浜辺の方をを見やりました。
M美さんは先ほどと変わらない美しいたたずまいでそこにいます。
メイクさんがM美さんの顔にティッシュをあててメイクを直していました。
私たちは全てを悟りました。やはり事故は起きていたのです。
M美さんは死んでもなお、映画を完成させたいと、完成させなくてはと思って、
この撮影現場に現れたのでしょう。
私は胸が締め付けられる思いで、M美さんのことを見つめていました。
その時、K監督がやおら立ち上がり、M美さんの元へ歩み寄りました。
「せっかく来てくれたんだがM美、今のおまえじゃ駄目だ」
「そうですか、やっぱり」
M美さんは悔しさと哀しさをかみしめるようにうつむいて言いました。
「監督、ごめんなさい・・・」
K監督はいいんだ、とばかりに首を横に振りました。
「いや、おまえはよくやったよ。よく来てくれた。おまえのために映画、
完成させてやりたかったけどな」
K監督の目から涙がこぼれ落ちました。
「やだ、監督、泣かないでくださいよ」
そう言って笑うM美さんの頬にも涙がつたっていました。
「涙ふいてください」
そう言いながらM美さんが差し出したハンカチは血で真っ赤に染まっていました。
「ごめんなさい、こんなハンカチしかなくて・・・」
「いや、これでいいよ」監督はハンカチを握りしめました。
「私そろそろ行かないと。監督、お世話になりました」
「ああ・・・。それじゃあ・・・」
気がつくとM美さんの姿は消えていました。
監督はしばらくその場に立ち尽くしたままでした。
結局この映画はお蔵入りとなり、それ以来K監督がメガホンをとることは
二度とありませんでした。
>>292-293 >>264-265については、
あなたが疑問に思ったことについては、作品の中で
ちゃんと(匂わす程度だけど)説明したつもりだったんですけど。
ほんとにわけわからんの?
他のみなさんも同じように感じたんだろうか?
だとしたらちょっとショック。自分の文章力のなさを嘆くしかない。
いや、匂わすだけでやめとくってことも大事だぞ、うん(自分に言い聞かせた)。
>>278 はい、真面目に書きました。
笑いのネタっていえばその通りですけど、お笑いサイドの怪談が
あってもいいでしょ?
怪談ていうか都市伝説みたいなものととらえてくれれば。
耳の糸ひっぱったら停電みたいな感じの。だめ?
>>282 >最初に思ったのは「そんなことぐらいで自殺するかフツー?」ということでした。
じゃあ「そんなことでかよっ」ってつっこんでそれで終わりで良いと思います。
そうじゃなかったら、あなたのいう「そんなことぐらい」で自殺するに至った
お姉さんの心情を慮ってやってください。
カミソリ飲んで自殺できるのか?ってつっこみは野暮だと思うけど。
>>292-293 >>287 うん、これは早書きに挑戦しようと思って書いたから、作品の出来については
自分でもどうだろうって思う。最後何を言いたいかよく分からんし。
他の今朝書いてた人に比べると、いまいち。だからお題を無駄に消費しちゃって
お題を出してくれた人に対してもちと申し訳なく思ってます。
>怪談というのは、無さそうなことをさも有りそうに錯覚させて怖がらすものです。
って書いてあるけど(この定義自体どうかと思うが)、確かにここ創作怪談スレ
だけど、一般にいう怪談だけを扱ってるわけではないので、もうすこし広い視野
と心で作品見てやってください。
それから是非今度投稿してみてください。ひねくれた言い方あえてすれば、
そこまで言うあなたがどんな作品書くのか非常に興味がありますよ。
お題埋もれちゃったから書いときます。
次のお題は
>>297の「口笛」「消防署」「タイムカプセル」です。
>>292-293 反論……というわけでもないのですが、「怪談」という枠にとらわれずに、
「幻想譚」といった感じで広く受け止められてはいかがでしょうか。
実際このスレを最初から見ていると、必ずしも怖さを出すことが条件では
ないように思います。不思議な話やブラックユーモアがあってもいいと
思いますし、その辺は投稿して下さる方々の個々の持ち味なのではないかと。
>>293 感想有難うございます 自分はこのスレに書くのは初めての黄金廚なのですが、
自分が怖いと思うのはオチがなくて、いろいろ想像させるオープンエンドなものなん
ですよね。「ほら、あなたの後ろにも…」とかで結ばれると萎えちゃう。
(萎えさせずにそこまでの恐怖感を演出する力量がないと言われればそれまでですがw)
>>283はヤクザの手か?と思わせて、実はストーカーにやられた新婚旅行中の女の手だったとか、
>>288-289は会社への電話を切った後、ゴミ箱に突っ込んであったバットが大きな音を立てて
ゴミ箱から外に落ちたとか、ちょっと考えもしたんですが止めてしまいました。
精進します。ちなみに
>>288までは私の実話だったりします(wマジであほな事した〜
>>303 >あなたが疑問に思ったことについては、作品の中で
>ちゃんと(匂わす程度だけど)説明したつもりだったんですけど。
ひょっとして、さんずい=水、尼=雨のことでしょうか? だけど、「だからそれが何?」っていう感じです。そもそも、そういう一文を入れる必然性があるのかっていう疑問だったんですけど。
>あなたのいう「そんなことぐらい」で自殺するに至った
>お姉さんの心情を慮ってやってください。
>>とても282の文章からはお姉さんの(自殺に至るほどの)心情をくむことなど私にはできませんでした。あまりにも情報が少なすぎます(というか、動機が弱すぎる)。そこまで読者に行間を読むことを要求するのは酷なのでは。
オカルト板の住人が書いた文章に対して、それほどムキになって感想を述べる必要もなかったかなと反省しています。まあ、何でもありの不思議系話でいいのなら、たしかに私の指摘は野暮でしたね。
ただ、いい作品にするためにはアイデアだけではダメです。それと同じかそれ以上に構成(もちろん文章力も)が重要です。それによって独創的な着想が駄作にも傑作にもなりうるのです。
私がここにいるとスレの雰囲気が悪くなりそうので、もう消えようと思います。
「作品を投稿せずに逃げるのか」と言われそうですが、現在新人賞に応募するための長編作品を執筆中ですので残念ながら時間がありません。
機会があれば皆様もぜひ創作文芸板にお越し下さい。作家を目指している住人が大勢います。そこで文章作法や構成力などを磨くともっといい作品が書けると思いますよ(駄スレも結構多いですが)。
それでは・・・
>>274 ありがとうございます。
見事に引っかかってくれましたか……(笑。
そう言ってもらえると書いた甲斐があったってもんです。
>>281 ご、ごめんよう……(´Д`;)
短いの書いたら不評だったもんで、つい長くなっちゃった。
>>292-293 僕はマンセーな感想よりも、こういった辛口のそれも本格的に文章を書いて
いる人の感想の方が嬉しかったりします。
創作怪談は、はじめからフィクションだと認識している読み手を怖がらせよ
うするんだから、確かに文章力と構成はネタ以上に重要だと思います。その
意味で実話で怖がらせるよりもよっぽど難しいのでしょうね。
>>307 もう消えた人にレスしても仕方ないのは分かってるんだけど、
他の人に誤解されても困るんで、あえて書きますけど、
>ひょっとして、さんずい=水、尼=雨のことでしょうか?
いえ、全然違います。僕の筆力不足は認めたうえで、これについては
分かる人だけ分かってくれればいいです。
他人の感想なんてものは、自分の書いた物をそういうふうに捉える人もいるんだってことぐらいに軽く考えた方がいい。
このスレはお遊びみたいなものなんだし、あまり敷居を高くしないで誰でも自由に書ける雰囲気が大事。
それと、ちょっとした提案なんだけど、
自分が出したお題について投稿されたら、その人に一言二言感想を書くってのはどう?
なんか書きっぱなしなのも寂しいと思うんだけど。
>あまり敷居を高くしないで誰でも自由に書ける雰囲気が大事
>自分が出したお題について投稿されたら、その人に一言二言感想を書くってのはどう?
私は賛成です!
>>右目からエスプレッソ さん
アドバイスありがとうございます。
全構成を考える前に見切り発車してしまいました。
次の機会には、全部いっぺんに書いてみます。
288-289「バット」「アンケート」「ネックレス」
短時間(30分)で書き上げたスピードは、カッコイイと思いました。
一つの試みとして面白いと思いました。ストーリーの破綻もないと思います。
ただ、「登場人物が実は死んでいた」という落ちは普通過ぎるぁも?
もうひとつ「バット」を恐怖アイテムに選択したのであれば、
「殴る・破壊する」以外の使い道が考えだせたらもっと怖くなったかも・・・
>>311 書きっぱなしが寂しいというか、書いた人に申し訳ないってのは同意。
以前は前スレ83さんとか14さんとか全部の作品にレスしてくれてた人が
いたから、ありがたく思ってたよ。
でもお題出した人が感想書くって決まりはつくらなくてもいいと思う。
みんな積極的に感想も書いていこうよ程度でいいんじゃない。
「――つまり、……」
トムは一旦喋るのを止め、テーブルのグラスを口に運んだ。
唇を湿した後、軽く咳払いをして勝ち誇ったように言い放つ。
「つまりジェリー、君は幽霊など居ないという事を認めるんだね?」
しかし、対峙するジェリーは穏やかに首を振った。
「いや、そうじゃないんだトム。どう言えばいいか……そう、タイムカプセルだ」
「タイムカプセル?」
「そう、幽霊ってのは、タイムカプセルみたいなものなんだよ」
トムは大げさに両手を広げ、口笛を吹いた。
「何を言ってるのか、さっぱり判らん」
「つまりね、地面に埋められた記憶と言うか……その記憶が……」
「O.K.ジェリー」
片手を上げてジェリーを制したトムは、馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「ジェリー、君が言いたいのは『残留思念』って奴だろう?黴の生えた仮説だよ。科学的に、そのような作用を及ぼす物質やエネルギーは存在しない」
「トム、君は何も判ってないよ」
ジェリーは哀れむような表情で首を振る。
「いいかい、トム。僕は『タイムカプセル』だと言ったろう。それは、科学的に存在するかどうかって話じゃないんだ。埋めた事を知っている人にとって、それは存在するだろう。でも、それを知らない人にとって、タイムカプセルは存在しないのと同じなんだ」
「いや、それは昔からある禅僧の――」
その事件が有ったのは、もう10年以上昔の事だ。ガス漏れによる爆発事故。
連絡を請け消防署から駆けつけた隊員が見たのは、骨組みだけ残して吹き飛んだ家屋の残骸だけであった。
当時、現場には二人の人間が居たらしい。家族から捜索願が出されたが、遺体は回収出来なかった。
今は空き地となっているその場所では、夜な夜な仲良く議論する二人の姿が目撃されている。
連休なんで初挑戦。
次はラッコ、すかいらーく、ピカソ、で。
ではさっそく(でもないか)感想を。
>>290 商品の大部分がトラック横転事故の際うんぬんという部分が
よく分かりませんでした。これは主人公におこった出来事とは
あんまり関係なかったのかな?
>>314 ありがちなオチだと思うけど(ゴメン)、二人の会話というか主張の
内容をもっと工夫すれば、もっとオチが生きたかもと思いました。
>>313 うん、決まりというんじゃなくて、エチケットとしてそうするのが望ましいかな・・・ぐらいの意味で書いたんだけど。そういえば、最近83さん来ないですね
ある日。
「リョウコさん、昨日、学校で美術館に行ったんだ。ピカソ展ってやってて変な絵ばっ
かりだったんだ。僕、ああいう絵はわかんないや。だから、作文でもそう書いたら、ニ
ュートンのやつ、『わからないのは恥ずかしい事じゃないよ、泊君。でも、感想文なん
だから、わからないなりに君の感じた事を書いて欲しかったな』だって。そして、クラス
のやつらのにやにや笑い!あれは…あれは嫌だよ」
ある日。
「リョウコさん、今日、家族でドライブに行ったんだ。パパとママは清美とばかり話すん
だ。だけど、僕が喋るとそれまで弾んでた会話が途端に滞るんだ。だから、僕は黙っ
て外を見てた。なのに、思い出したように、『浩之はどう思う?』とか訊いてくるんだ。し
かたなく返事をするとまた会話が止まる。そうなるのわかってるのに。だったら最初か
ら話しかけて来なきゃ良いのに。それですかいらーくに入ったんだ。僕は喉が渇いて
たんだ、すごく、すごく。だから何杯もジュースを飲んだ。そうしたらママが『そんなに何
杯も飲むと後でトイレに行きたくなるわよ』って。僕はちっちゃい子供?しかも、清美も
その尻馬に乗って『ドリンクバーだからってそんなに飲んじゃ恥ずかしいじゃない』って!
なにか!?僕が卑しいとでも言いたいの?そう言いかけたんだけど、清美の不快そうな
顔を見てたら頭にかーっと血が昇って、言葉が口から出なくなったんだ」
ある日。
「リョウコさん、さようなら。きっと、もう二度と会えないね。これ、お別れのプレゼント。
汚いから恥ずかしいんだけど…」
どぶんっ。彼が水槽に向かって物を投げ込むのは警備員に見られていた。彼は乱暴
に警備員に捕まれた。彼は抵抗しなかった。
警備員は彼に自宅の電話番号を訊き、そこにかけた。出ない。
「出ないなぁ…」
「だって、うち、今『ゲルニカ』だもの」
「?」
かつーん、かつーん、かつーん…普段にない異音が水槽の方から響いてくる。
「リョウコさん、気に入ってくれたんだ…」
水槽の外にある柵、汚れた看板。
「ラッコ(猟虎) 哺乳綱食肉目鼬科…」
あはは、言われて出たみたいで恥ずかしいのだけれど。
ちゅーか、仕事でへたってたのさ〜。
で、久々に書いたんだけど…書いてみると実にこうありきたりな「暴走する少年」
物で実にお恥ずかしい。
しかも、構成も「…行った」「…行った」になっちゃってるし。
充電とか出来てねー、って感じで。
感想とかまた後で少しずつつけていく予定です(流石にいっぺんにすると、何連続
レスになるかわかんないし)
次のお題は「頭文字」「湾岸」「深夜」でお願いします。
>>商品の大部分がトラック横転事故の際うんぬん・・・
{「4月20日」の事故で積荷(ティッシュ)の部が行方不明}
={これも「か〜え〜せっ」のやつらの仕業}
といつもりだったんですが、描写がいい加減で伝えることができなかったみたいですね。
感想ありがとうございました。
318 :前スレ83「ラッコ」「すかいらーく」「ピカソ」
狐に摘まれたような後読感です。不思議な感覚でした。
三度読んでみて「リョウコ」の意味がやっと分かりました。
ワタクシ勘が鈍いようでございます。
全てにレスするのはもうとても無理なので、最近の作品についての感想を……
* 順番は新しい作品から遡っています。
>>318 前スレ83さん
おや、ご無沙汰です。
あいかわらず不思議な雰囲気を醸し出してますね。
具体的な描写を省き、「だって、うち、今『ゲルニカ』だもの」の一文で
「暴走する少年」の狂気を表現したくだりはうまいなぁと思います。
>>314 さん
会話文の終わりから4行目、タイムカプセル云々のくだりがおもしろかった。
それを生かしたオチにすればもっといい作品になったのではと思います。初
めての投稿ということなので、次作に期待です。
>>299-302 右目からエスプレッソ さん
右目さんの作品にしてはまともで綺麗な終わりかたかな(笑)。
別バージョンとして、M美の変わり果てた姿を見たK監督が「こうなったら
ホラー映画に変更だ、コノヤロウ!」てなパターンはいかがでしょうか?
いやラストまで撮影済だから無理か……
>>290-297 KANAIKAさん
ネタはおもしろいし不条理系のオチもよかった。
ただ、
>>316にもあるとおり、主人公と横転事故との関係がよくわかりませ
んでした。
主人公の買ったティッシュ=横転事故で行方不明となっていた積荷の一部か
とも思いましたが、それだと入手経路がやや不自然かとも……
>>288-289 怖い話好きさん
「実は生きている人間がいちばん怖い」オチかなと思いきや、オーソドック
スな幽霊オチでしたか。ただ、幽霊が主人公自身に直接取りつくんじゃなく、
物に対する物理攻撃に出ているのってのはおもしろいと思う。
>>287 右目からエスプレッソさん
この作品は、早書きせずにじっくりと腰を据えて長編にした方が良かったか
もです。
ネタ的にいろんな展開が期待できそうだし。
まぁでも最後は右目さんらしい終わりかたかな……?
>>285 ぼっこし屋さん
ふだんの作風とは全然ちがう何か王道的なネタですね。
まぁ確かにこういうネタもたまにはいいかも?
>>283 さん
こういう情景はけっこう萌えです。ただ
>>293にもあるようにオチを工夫す
ると、その描写がもっと生きてきたのではと思います。霊的な要素を入れる
とかね。「僕の死体を見つけてくれてありがとう……」てな具合に。いや、
あくまでも僕の愚考ですが。
それから、寸善尺魔=14(前スレ763)です。HN変更しました。
>>320 もしかしてトラックの運転手が大量殺人犯なのかなとか思ったりもしましたが、
そっか運転手も主人公同様不条理にも呪い(?)に巻き込まれたんですね。納得。
僕は常々思ってるよ。心霊スポットとかで恐ろしい体験する人とかいるじゃん。
興味本位で肝試しとかそういう連中を霊が呪うのはいいんだけどさ、ただ通り
かかっただけの人とか、前の住人が自殺した部屋に新しく入ってきただけの人が
怖い思いするのはちょっと違うだろうって。霊もそういう人にあたるなよ。
いつ自分が変なことに巻き込まれるか分からなくて不安じゃん。下手すりゃ
死んじゃうしさー。いや、なんか訴えたいことがあって出てくるっていう霊が
いるのは分かるけどさ、僕怖いだけじゃん。ほんと勘弁して欲しいよ。
(KANAIKAさんの作品にケチつけてるわけじゃなく現実の話ね)
>>318 これ、すごく面白い。かなり気に入りました。
主人公が語るエピソードも何かに向かってるぽくていい。
残念なのは、主人公が水槽に投げ入れた物が最初読んだ時には何だか
分からなかった(二回目読んでて気付いた。ま、具体的に何であるかは
読者の想像に任されてると思うけど)。というか正確に言えば、投げ入れた
物はそれほど重要なものとも思えずにスルーしてました。
前段階のヒント(ゲルニカとか)で気づけなかった(アホな)僕としては、
「普段にない異音」を響かせていた物について、もうちょっとだけ描写して
欲しかったかなと思います(何から何まで説明したら興ざめかもですが)。
>>323 >霊もそういう人にあたるなよ。
それは、怖い目にあった人がその原因を幽霊だと考えるからです。
昔は狐や狸の仕業になってました。
…というツッコミをオカ板でやるのは無粋?
正直、俺はよくわからんかった・゚・(ノД`)・゚・>318
一般的な知識じゃない場合は文中でさりげなく説明入れといて欲スィ・・・
もうちっとわかりやすい文章で、最後にちゃんと種明かししてくれてる作品の方がいい。
作者側はもうちょっと読んでくれる人のことを配慮して書いた方がいいんでないかい?
そうでないと単なる自己満足になってしまうよ。
詳しく描写されると萎えるっていう人もいるけど、純文学じゃないんだから一読了承できる作品の方がいい。
ある蒸し暑い深夜、俺達は肝試しに出かけた。俺と俺の彼女、友人のケンジとその彼女の計四人でだ。
場所は、湾岸道路から少し離れたところに佇む廃病院。
病室の窓から、外を見下ろす複数の人影を見たとか、手術室に看護婦の霊が立っていたとかそんな噂が絶えない、地元でも指折りのミステリースポットだ。
俺達は、男女一組で二手に分かれ、中を探ることにした。俺と彼女は上の階を、ケンジたちは地下の方へと向かった。
中はこれまでの闖入者たちによって荒らされており、壁はあちこち大穴が開いていた。
2階を一通り見て回り、3階に上る階段の踊り場の壁に、赤いペンキで書きなぐられた文を発見した。
「J.R.参上」
J.R.……何かの頭文字だろうか?
とその時、階下から絹を裂くようなけたたましい悲鳴が響いてきた。俺と彼女は顔を見合わせた。
ケンジたちに何かあったのかも知れない。身を寄せ合いながら、俺達はケンジたちを探すべく階下へと降りた。
上の階よりもさらに荒らし尽くされた1階の床には、様々な物が転がっていた。
スプリングが飛び出したソファ、錆びた書類棚、パイプが折れ曲がったベッド、上半身だけのマネキン……。
マネキン?奇妙な感じがした。病院に、何故マネキン………?しかもこのマネキン、服を着せられいる。
おかしい。普通、マネキンは裸の状態で棄てられているだろうに……。
嫌な感じがしつつも、懐中電灯の灯りを「マネキン」に向けた刹那、暗闇の奥から原付のエンジンのような音が鳴り響いた。
彼女が背後で息を呑み、直後悲鳴がほとばしった。
エンジンをつけっ放しの車のカーラジオから、こんなニュースが流れていた。
「○○刑務所から昨日脱獄した、連続切り裂き殺人犯の三戸部剛蔵死刑囚はいまだ捕まっておらず……」
■「ジョーカー」「カッター」「漬物」でよろしく。
>>328 :「頭文字」「湾岸」「深夜」 ◆cBCRASH/NU
「深夜の病院」「肝試し」とくれば、
読者は当然「幽霊」の登場を期待しながら読み進めていくものですが、
「連続切り裂き殺人犯」のオチにもってったのは技巧的ですね。
参考になります。
ただ、「J.R.参上」の謎が・・・
私の教養の低さの暴露になってしまいお恥ずかしいのですが、
種明かしお願いいたします。
>>右目からエスプレッソさん
不条理な霊のお話をされた最後に、
「現実の話ね・・・」とおっしゃってるところがブルブルガクガクです
「西洋にも姥捨ての歴史があったってのは、初耳だよ・・・」
ババ抜きをやりながら、剛蔵はこのゲームの由来を解説してくれた。
「そうなんだ。年に一回の収穫祭のイベントで、
このゲームの敗者が村の最長老の命を絶つ役を命じられるんだ」
「どんな処分の仕方をするんだい?」と俺。
「食糧難の回避っていう意味のある行事だったんだ。
だから老人の死肉は無駄に捨てたりはされない」
「食べるの?」
今日は何故か負けが込んでいる。
連続して甘んじた罰ゲームのせいで、何故かゲップが止まらない。
「そうだよ。この行事の詳細をまだ知らされていない未成年者のみ
食べることができる。重要なタンパク源だったらしい。
ていうか、事実を知っている大人たちは、とても口にできないよ」
「まさか、丸焼きとかじゃないよな?」うわっ、ジョーカーが回ってきた。
「もちろん。保存食にする。漬物みたいなものかな。
各臓物ごとをカッターで切り分け、スモーク処理する。
その後、塩で漬け込むから二百年以上前のモノも現存するらしい」
「へー、それで今回のババ抜きの罰ゲームも、
その西洋の伝統ってやらに倣って、このやけに塩っからくて異臭のする
ビーフジャーキーって訳か?金払ってまで食うもんじゃね〜よな。
だけど前回のブルーチーズと比べればまだ許容範囲内だよ」
「ま〜事実を知らされていない飢えた子供たちにとってはな・・・」
=THE END=
次のお題は「火星」「電池」「成人式」でよろしくお願いね!
うごぉ、やっぱし、前から以降の感想つけるのえら手間〜(でも、大体書けた)
(ただ、予想通り長過ぎ。まぁ、ちょぼちょぼ出す事にします)
318がほどほど好評で、ほどほど不評な感じで、ほっと胸を撫で下ろしたり。
なに投げ込んだのか実は(ってか皆さんの予想通り?)ちゃんと考えてないんです
が、多分、家族の遺体の一部か装飾品かそんなとこかと。
まぁ、ラッコが本能のままそういうの打ち合わせてたら随分不気味だろうなぁ、
ってイメージから逆順でストーリー作ったもので。
省略は、別に「省略の美学」とか気取ってる訳じゃなくて、単にめんど臭がり
だから、詳細に書くのが面倒になっちまうもので。
そういう意味で
>>327は耳が痛い訳ですが、まぁ…多分治んないなぁ、と。
とりあえず、
>>328 「J.R」は無関係、もしくは"Jack the Ripper"かなぁ、と推測したのですが如何?
>>330 「んん?結局、怖い話聞いてそれに関連したビーフジャーキー食うから気持ち
悪いなぁ、ってだけの話?
と思うと、本文二行目の人名に目がいく。
むむむ、主人公もそう思ってたけど、実は主人公も「事実を知らされていない
飢えた子供」という事なのかっ。
だとすると、なかなか面白い絡め方だなぁ、と。
「頭文字」「湾岸」「深夜」<scene1-1>
兵庫県と岡山県の県境に、オカルトマニアの間では結構有名な心霊スポット
がある。
神戸湾岸沿いの国道から西に向かい赤穂市のあたりで県道に出てしばらく北
上し、山沿いに入って岡山県に抜ける峠のトンネルがそれである。ここで男
女複数の幽霊を目撃した者がいるとの噂がネット上に流れていた。
そこはSトンネルと呼ばれているが、もちろんこれは通称である。生き埋め
になった工事人夫の名前からつけられたとか、付近に出没する暴走族グルー
プの頭文字をとってつけられとか、まことしやかに言われている。しかし、
本当のところは誰も知らない。また、そんなことは俺にとってはどうでも良
いことだ。
そんな心霊スポット巡りにはまっている連れがひとりいる。
そいつは、今夜一緒に巡礼するはずだった相手が急に来られなくなったので、
俺についてきて欲しいと抜かしやがった。
(まったく、いい年しやがって……)
俺はオカルトマニアでもないし心霊スポットにも興味はない。ましてや心霊
現象など一切信じない人間だ。
だからそんなことに付き合うのはまっぴらだった。だが暇をもて余していた
こともあって、晩飯をおごるという条件でいってやることにした。
「頭文字」「湾岸」「深夜」<scene1-2>
深夜、連れの運転する車でくだんのトンネルに向かった。
トンネルの入り口手前で車を止め例のトンネルを一瞥する。一見して何の変
哲もないトンネルだった。
「なんや、全然たいしたことないやん」
連れの隆弘が誰に言うともなく口を開いた。だが、微かな語尾の震えから虚
勢を張っていることは明らかだ。
まぁ俺にとっては、こういうところで暴走族に遭遇してからまれる方がよっ
ぽど恐ろしい。早々に用を済ませて引き返すが吉だ。
隆弘がトンネルの中に車を進めた。
内部は小型自動車がかろうじてすれ違うことができる程度の幅員しかない。
コンクリートの隙間から雨水のしみ出た跡がいたるところにあり、それが人
間の顔に見えなくもない。
また、壁面に点在する蛍光灯がところどころ切れていて、あたりはかなり薄
暗い。ムード満点である……。
「頭文字」「湾岸」「深夜」<scene1-3>
トンネルの中程に来たところで隆弘が車を止めた。
エンジンを切らないのはいざというときに急発進できるようにするためだろう。
「おい、降りてみようや」
と、俺は隆弘に誘いをかけた。
「お、俺はええわ。おまえひとりで行ってこいや」
と、肩までかかる長い髪をかき分けながら隆弘が言う。
(なんだよ、急に怖じ気づきやがって)
「ほな、俺ひとりで歩いてくるわ」
俺は懐中電灯片手に車を降りた。
そして、岡山県側につづいている出口へと足ばやに歩いた。
狭いトンネル内に自分の足音だけが寂しく響く。
五、六分でトンネルを抜けた。ここはもう岡山県だ。
何も起こらない。
(当たり前だ、何も起こるわけない。噂なんて所詮こんなもんだ……)
「頭文字」「湾岸」「深夜」<scene1-4>
俺はまたトンネルに入り、連れの待つ車にひき返すことにした。
歩きはじめてしばらくすると、左後方から覗かれているような視線を感じた。
急に肩も凝ってきた。
ハッとして振り返る。
何もいない。
(ははは……いるわけないよな。俺もどうかしてる)
そうこうするうち、隆弘の車が見えてきた。
ハンドルを握りしめている隆弘の姿も視界にはいってきた。
隆弘も俺の姿を認めたのだろう、右手をあげて俺に応えようとした。
が、俺の方を見て隆弘は右手をあげたまま固まってしまった。
「おい、どうしたんや隆弘。ドアをあけてくれや」
隆弘は顔面真っ青でぶるぶる震えている。
「おい、冗談はやめろ隆弘!」
と、怒鳴ったとき、隆弘が俺に向かって叫んだ。
「今だ忠志、はやく車に乗れ!」
「頭文字」「湾岸」「深夜」<scene1-5>
隆弘がロックを解除し助手席のドアをあけた。
俺が助手席に腰を下ろしドアを閉めたと同時に隆弘がギアをバックに入れ急
発進させた。
隆弘は相当焦っていたのか、途中で車のボディーを何度も壁にこすりつけな
がら……。
隆弘は何かに怯えているようだし、俺は俺でさっきの隆弘の運転に腹を立て
ていたので、
帰りの車内ではお互いむっつりとしながらひとことも口をきかなかった。
そして、俺は自分のアパートの前で車を降り、
「ほんなら、またな」
と、ひとことだけ言って別れた。
隆弘は無言でうなづくとアクセルを踏み込んだ。
(あれ、後部座席に誰かいたような……まぁ、いいか)
「頭文字」「湾岸」「深夜」<scene2-1>
(ああ暇だ。相棒の貴子があの男にくっついて行ってからひとりぼっちだか
らなぁ)
英一は大きく背伸びをしながらあくびをした。
そこへひとりの男がこちらに歩いてくるのが見えた。
「こんばんわ」
と、英一はあいさつをした。
しかし、向こうは知ってか知らないでかダンマリを決め込み目の前を通り過
ぎていった。
(他人のねぐらにやってきて、あるじを無視するとは礼儀知らずなやつだ。
ははん、こいつ冷やかしにきたな)
最近こういうやつがやたらと多い。こういう輩には罰を与える必要がある。
しばらくすると、さっきの男がまたこちらに歩いてきた。
その男が目の前を通り過ぎようとした瞬間、英一はその男の背中に飛び乗った。
(いやー、楽ちん楽ちん……)
だが、男は英一をおぶっていることに全く気づいていない様子である。
(おいおい、えらい鈍感な野郎だなこりゃ)
英一は背後から男のほっぺをつねったりしたが、ときおりこちらを振り向く
ぐらいで全く意に介していないようだ。
「頭文字」「湾岸」「深夜」<scene2-2>
そして、男はアイドリング中の車の前で歩みをとめた。
車内にもうひとりいるようだ。髪の長い男だった。
(おやおや、お連れさんかい)
英一が中を覗きこんだとき、車内の男と目線が合った。
この長髪の男はなにやら変なポーズをとりながら英一の方を見て固まってい
るようだ。それに真っ青な顔をして震えている。
(ああ、こいつは見えるらしいな)
英一は男の背中から降りた。
その瞬間、長髪の男が叫んだ。
「今だ忠志、はやく車に乗れ!」
男が乗り込むと、車は急発進した。
「頭文字」「湾岸」「深夜」<scene2-3>
英一はもう少しで置いてけぼりを食らうところだったが、何とか飛び乗るこ
とに成功した。
久しぶりの外出である。外の風景も以前とはだいぶ変っていた。
途中で助手席の男が車を降りた。あの鈍感な方の男である。
これで車内はあの長髪の男とふたりきりだ。
(憑くのならやっぱり見えるやつの方がいいからな……)
英一はしばらく長髪男のところで御厄介になるつもりのようだ。
―― 了 ――
* 作中に出てきた心霊スポットは実在しません。念のため。
ありゃ、また遅れた……長くてゴメンね。
うわ、
>>328さんとネタがかぶってしまったよ。鬱……
「火星」「電池」「成人式」0/7
上司が細木和子の占いに凝っていて、人の誕生日を聞きだしては、
勝手に「お前は木星人+だ」「お前は火星人−だ」と診断する。
それだけならまだよかったけど、最近はその占いにはまり過ぎて、
「この日に結ぶとこの契約は破滅する。別の日にしろ」とか、
「火星人−のお前は今後1年は悪い運だからこの仕事は任せられない」とか、
奇行奇癖が目立つようになってきた。こないだなんか成人式が終わった
ばかりのバイトを捕まえて「電池はマンガン以外使用禁止。アルカリとか
ニッケルは体に悪い」とか言ってる始末。でもみんな見てみぬふりしてる。
それは上司が社長のご子息だから。そのうち白い服でも着出すんじゃないかと
戦々恐々として過ごしています。あ〜連休明け出社するのがツライ…
閑話休題。以下長文スマソ。
「火星」「電池」「成人式」1/7
私の妹に起こったちょっと怖い話です。
私の妹は九紫火星の生まれで、本来なら感受性が強いはずなのだけど、
本人はいたってのんきな性格で、私たち姉妹はボケボケコンビだと言われていました。
そんな妹も来春は成人式、という晩秋のある日、お振袖を見立てに、一緒に顔なじみの
呉服屋に行ったのです。でもあまり気に入ったものがなかったんです。
反物を買って、一から作ってもらうのは結構高いし、私の家は金銭的に余裕があるわけでもないんです。
私の時にはお振袖を作らなかったくらいですし。
色々悩んでいたところ、呉服屋のご主人から「もしサイズが合うなら」と中古品を勧められました。
なんでも、質流れの品で結構良い物があるというのです。こわごわ試着してみると、これが測った
かのようなぴったりサイズ。ありがたく頂いて、得した気分で帰りました。
「火星」「電池」「成人式」2/7
妹は花嫁修業の一環で、祖母から着付けを習っていたため、持って帰った振袖を早速着て、
家族にお披露目することにしました。祖父のお仏壇のある和室で妹が着替え終わるのを、
ふすまの向こう側の居間で父母と祖母と弟が待っている状態です。私は妹の着付けを手伝いに
一緒に仏間の方にいました。夕方で、西日が障子を赤く照らしていました。
そのときふと、仏間の灯明の明かりが切れていることに気づきました。本当はろうそくを灯すの
ですが、普段は危ないし、電池式ので代用しているのです。ちいさい懐中電灯みたいなものです。
「あれお爺ちゃんの電気が切れてるよ」そう言って妹のそばからお仏壇に近づこうとしたとたん、
何かにつまずいて、妹がまさに羽織ろうとしていたお振袖の袖を掴んでしまいました。ビリッ!
「…お姉ちゃん?!」そうです。私は着てもいないお振袖を破いてしまったのです。
「火星」「電池」「成人式」3/7
騒ぎを聞いて母と祖母がやって来ました。幸い布地が破れたわけではなかったので、なんとか
縫い直せそうです。その場でチクチクやってようやく直りました。気を取り直してもう一度
着ようとすると、こんどは妹が自分で踏みつけてしまい、裾の裏地が外れてしまいました。
「あんた何よろけてるのよ〜」母も呆れ顔です。妹は不思議そうな顔をしています。
「何だろう、足がもつれたよ〜」それでまた縫い直そうか、ということになったのですが…
外れた裏地の中から、何かはみ出ているのです。和紙です。着物の仕付け用に和紙を挟んで
縫ってあるのかとも思いましたが、その和紙に何か書いてあるようなのです。草書体なので
あまりはっきりとは読めませんでしたが、「呪」という漢字だけははっきり読めました。
「火星」「電池」「成人式」4/7
大騒ぎになりました。祖母が呉服屋の主人に電話して問いただすと、30分もせずに主人自身が
飛んできて、大変申し訳ない、これは別に、いわくがある商品ではないはずだが、縁起も悪いし
交換する、ついては反物から至急作るので後日また反物を選びに来て欲しい、ということで返品
回収となりました。妹も大変気に入っていたお振袖だったので残念がっていましたが、気味悪さ
もあり、また祖母が強硬に返品を主張したこともあり、そういうことになりました。
数日後、約束した日に行くと、主人はおらず、代わりに主人の息子さん(若旦那)が反物を選んで
くれました。今回は祖母も一緒に行ったので、約束しておいて失礼じゃないか、主人はどこに
行ったんだと祖母が問い詰めると、最初は口ごもっていた若旦那でしたが、ついに折れて、
絶対に漏らさないことを条件に、一部始終を話してくれました。
「火星」「電池」「成人式」5/7
「父ですが、昨日から体調が悪くて、例の振袖を持って、今お祓いに行ってるんです…。
あの後、例の振袖についてもう一度良く調べたら、とんでもないことが分かりましてね…。
あの振袖の前の持ち主ですがね、自己破産したらしいんですよ。
それであの振袖も、借金のかたに銀行が回収したのが流れ流れてきたんです。
ただ、その女は最後までこの振袖だけは!って抵抗してたみたいで、
まあそんなのは通らないんで無理やり回収したらしいんですね。
そしたらその女、ちょっとおかしくなっちゃって、
翌朝その銀行に刃物持って押し掛けて、口で包丁をくわえてですね、両手の手首をこう、
一度にすぱっと切って、流れる真っ赤な血で両手が振袖みたいになってですね、
そりゃもう大騒ぎだったそうなんですよ。
幸い一命は取りとめたんですが、いまだに措置入院されてるそうです」
「火星」「電池」「成人式」6/7
「で、そんな話を呉服屋協会の人に聞いてからですね、父の具合がおかしくなって。
あんなもの扱っちゃいけないよ、来るよ、って言われたのを真に受けちゃったらしいんです。
なんでも生霊は、生きている分恨みの念も強いそうで…あと、こういう話は、あまり話すと
良くないじゃないですか、そっちへも飛び火するから…実際、僕も今なんか体調あんまり
良くないんですよ。なので最初に、絶対に漏らさないでくださいねって言ったんですけど…
そうそうあの和紙ですけど、あれはその女が書いたってわけでもないらしいんですよ。それは
それで結構怖い話なんですけどね…」
「火星」「電池」「成人式」7/7
呉服屋からの帰り道、祖母は、お爺ちゃんが教えてくれたんだ、ありがたいありがたいと
何度も言いました。私はコンビニで電池を買いました。祖父の仏壇の灯明を点けるためです。
帰宅して仏間に行くと、消えていたはずの灯明が点いていました。電池が切れていたわけ
ではなかったのです。
そういえばあの時は西日が差して真っ赤になっていて、灯明が点いてるかどうかなんて
わからなかったはず。ああこれはやっぱり祖父が危険を感じて知らせてくれたのかと、
改めて手を合わせました。
もし生霊がやってきても、守ってね、おじいちゃん。
>348 ■「コップ」「藤の花」「傘」でお願いします。
>>329 いや、現実の話といっても僕自身がそういう体験したという意味ではないですよ。
僕怖いだけじゃんてのも、たとえそういうことがあっても、という仮定の話です。
僕自身は全く霊感とかなくて、そういうおっかない体験をしたことも
残念ながら(?)ありません、念のため(←なんのためだよ)。
>>332 とりつく側の視点の話ってのは面白いと思った。
どっちがかわいい娘にとりつくか争ったりとか、霊同士でやってるかもしんないなあ。
>>341 0/7は怖い話好きさんの実体験だったのね。怪談始まってんのかと思ったよ。
おじいちゃんが守ってくれたんだ系の話はほろっときて好きなので、そっちよりの
描写がもっと多かった方が僕は好みだったかも。
「コップ」「藤の花」「傘」 1/2
「日曜日午後2時、校舎裏の藤の花のところで待ってます。 1-A 山室智子」
「山室さん、て君?」
「あ、先輩来てくれたんですね。嬉しい」
「どうしたの傘もささないで?けっこう雨降ってるよ」
「傘は昨日ぺしゃんこになっちゃって。それに私にはもう必要ないですから」
「いや必よ・・・」
「それより先輩、私と一緒に死んでください」
「は?何言ってんの?」
「いや一緒にってちょっと違うかな。実は私昨日交通事故で死んじゃったんです。
でもやっぱり未練とか残ってたせいかな、なんか魂がこっちに残っちゃってて。
だから、ほんとは今日先輩に告白するつもりだったんだけど、先輩、私と一緒に
死んでください」
「山室さんだっけ、君何言ってんの? だって君生きて・・・」
「だから魂だけなんですって。私の体は今病院の霊安室にありますよ。ほら、
校門の少し先の電柱のとこに、コップに花が供ええられてたあったでしょう
あそこです、私が死んだの」
「ね、先輩、一緒に死んでくれますよね」
「死ぬわけないだろ。そりゃ君のこと気の毒には思うけどさ、今日初め・・・」
「先輩、私のこと嫌いですか?」
「いや、だから好きとか嫌いとか以前に、今日会ったば・・・」
「他に好きな人いるんですか? 誰ですか? 同じクラスの人?」
「そんなの関係ないだろ。第一、君何言ってるか自ぶ・・・」
「好きな人いるんですね。だから私と一緒に死んでくれないんですね」
「好きな人いてもいなくても、一緒に死ねるわけないだろ」
「誰ですか? 先輩の好きな人って?」
「うるせえな、佐々木美幸だよ、2-Bの。悪いかよ」
「先輩、佐々木美幸のことなんか忘れて、私と一緒に死にましょうよ」
「しつこいな、死ぬわけないだろ。もう帰るよ。君には悪いけどさ、一緒には
死ねない。悪かったね。じゃあ、帰るから」
―翌日。僕は佐々木美幸が死んだことを知った。自分の部屋で首を吊ったらしい。
佐々木美幸が自殺するような娘じゃないことは僕がいちばんよく知っている。
一年の時、毎日のように僕をいじめてた性悪女の佐々木美幸。
きっとあの山室とかいう子が連れてったんだろう。せいせいした。
なんとなく、こうなるような気はしていたんだ。いや、そうじゃなくても、
ほんとに好きな女の子の名前なんて、恥ずかしくて言えやしないけどね。
■毒を以て毒を制すというお話でした。
次は「先生」「落とし物」「デブ」で。
>>332-339 scene1のすべてがscene2の伏線になっているんですね。
上手いと思います。
落ち激しくねぇ。age
「先生」「落とし物」「デブ」<1>
大勢のスタッフに囲まれて、今日の主役の男がしなびた温泉街のとある旅館にやっ
てきた。
その男とは、アンチオカルトで有名な城南大学の高槻教授である。
高槻教授は、心霊番組などで歯に衣着せぬ物言いで、超常現象を真っ向から否定す
る論客だ。
今日は旅番組のレポーター役として、名所旧跡をめぐったのち、この老舗旅館でラ
ストの撮影に入るところだった。
高槻教授は「桔梗の間」という、この旅館ではまずまず上等の部屋に通された。
露天風呂、豪華な夕食と無事にロケも終わり、スタッフが撤収した後、旅館の女将
が教授のところへ挨拶にやってきた。
この女将、話し好きでついつい長居したまではよかったが、あろうことか彼に向かっ
て幽霊話までしでかす始末。
「先生、実は出るんですよこの部屋」
「何が出るんですか」
「幽霊ですよ、女の。片目が潰れていて、もう一方の目から血を流してるんです。
それで手には鎌を持っていてね、その幽霊を見たら最後、首をはねられてしまうん
ですって……」
「先生」「落とし物」「デブ」<2>
午前深夜、高槻教授は不気味な声で目を覚ました。
うめき声のようにもすすり泣きのようにも聞こえる、不思議な女の声。
彼はゆっくりとまぶたを開いた。
すると枕元で、片目から血を滴らせ鎌を手にした女が彼を見下ろしていた。
「うわぁー!」
彼は声ともならない叫び声をあげながら、布団を頭からかぶってデブっちょの体を
ブルブルと震えさせた。日頃の言動からは想像もできないような醜態だった。
向かいの「楓の間」で、その光景の一部始終をモニターで見ている連中がいた。い
つも高槻教授に煮え湯を飲まされてきた超常現象肯定派の人間や、番組のスタッフ
たちである。
「なんだ、あいつもホントは怖いんじゃないか。あははは」
と心霊漫画で有名な、つじのがじろうが大声で笑う。
「いや愉快、こりゃうける。この企画は大成功だな」
と、どっきり番組のディレクターも満面の笑みを浮かべた。
「先生」「落とし物」「デブ」<3>
そのときである。
「じゃ、これから高槻センセーを脅かしてきますねぇー」
と幽霊の姿に扮した若い女が、のーてんきな調子で「楓の間」にやってきた。
部屋にいた連中が彼女のほうへ振り返った。
「あれ、君はもう先生を脅かしてきたんじゃなかったのか?」
「ええー、何言ってるんですかぁー。変なこといわないで下さいよぉ」
と相変わらずのーてんきな女。
「じゃあ、モニターに写っていた女はいったい誰だ……?」
つじのがじろうがボソッとつぶやいた。
彼らは再びモニターに目をやった。しかしもうその時、女の姿はモニターから消え
ていた。
そして急に室内の明かりが落ちた。
庭に面した縁側のガラスのむこうに、ひとりの女が恨めしそうに片目から血を滴ら
しながらこちらを睨んでいる姿が、月明かりに照らされて写っていた。
「ほ、本物が出たぁー!」
部屋にいた連中は蜘蛛の子を散らすように一斉に飛び出していった。
「先生」「落とし物」「デブ」<4>
(そろそろ終わったころだな……)
高槻教授は、かぶっていた布団から姿を現した。
「逆どっきりだとも知らずに、間抜けな連中だ」
寝床から起き出して「楓の間」へ勝利の宣言をしに行こうとしたとき、畳のうえに
何かが落ちているのに彼は気がついた。
それは鎌だった。
「幽霊サンの落とし物か。肝心な小道具を忘れて行っちゃ駄目じゃないか、まった
く」
その時、背後で何かが動く気配がした。
彼が振り返ると、そこには片目が潰れ、もう一方の目から血を滴らした女が……。
翌朝、無惨に首をちょん切られた高槻教授の遺体が「桔梗の間」で発見された。
― 了 ―
次のお題は「貸しボート」「びっくり箱」「夜光虫」で
「貸しボート」「びっくり箱」「夜光虫」 1/2
もう3、4年くらい前になるんだけど、出会い系サイトで知り合った女の子の話です。
今度会おうってことになって、待ち合わせしたんだけど、思ってたより
かわいい感じの娘で、超ラッキーとか思ってました。
でもその娘、なんかわけわからん木の箱持ってきたんだよね。野球のボールが
はいるくらいの小さいやつ、両手で抱えてんの。
んで俺気になって「それ、何?」って聞いたんだけど、その娘は
「別になんでもないんです」とか言うだけで教えてくんないの。
ま、俺もそれほど気にしてなかったし、それ以上聞きませんでした。
で、俺はその辺でテキトーにごはんでも食べてとか思ってたんだけど、
その娘が近くにある湖行きたいとかいうから、俺の車で湖行ったわけ。
貸しボートの上でいろいろ話したり、湖畔のレストランで昼めし食べた。
そのあと、その娘が水族館行きたいって言ったんで、海の近くの水族館へ行った。
で水族館ひととおりまわったあと、日も落ちて暗くなったんだけど、せっかく
海の近くまで来たからってことで海見に行ったわけ。
その頃、ちょうど夜光虫が見れる季節で、俺らが行った時も、浜辺に打ち寄せる
波が夜光虫できれいに光ってたんだよね。
その娘が「何これ、きれー」とか言ってるから、俺が「これ夜光虫っていうんだよ」
って教えてやったら、その娘「夜光虫って言うんですってー」とか言うわけ。
なんか奇妙な言い方だなーって思ってその娘の方見たら、彼女、例の木の箱に
向かって話しかけてた。
そん時のその娘の表情が笑ってるんだけど、どことなく変な感じで
なんか背筋がゾクッとしたのを覚えてる。
で、俺が「ねえ、その箱何なの?」ってまた聞いたら、
そしたら彼女、「いいよ。開けてみても」とか言うわけ。
もしかしたら、びっくり箱かもとか思って開けたんだけど違った。
箱の中には、小さなビンがひとつ入ってて、暗くてビンの中身がよく見えな
かったから、手にとってよく見てみたら、何か腐った肉片みたいのが入ってました。
ビンに貼ってあったラベルには「かおる」とだけ書いてありました。
俺が「何これ?」と聞くと、その娘は「かおるだよ」って言いました。
で、誰に話すともなく独り言のように話し始めました。
「こないだ堕ろした私の子供。無理やり私の子宮からかきだされたの。
私は産みたかったのに。あまりにかわいそうだったから特別にもらってきたの。
私なぜか小さい頃からかおるって名前に憧れてて、子供が産まれたら
男の子でも女の子でも、かおるって名前にしようって決めてたんだよ」
彼女は愛おしそうにビンの中の肉片を見つめてました。微笑んでいるのに
無表情というか、心ここにあらずって感じの奇妙な表情で。
「水子っていうんでしょ、こういうの。だから水と関係あるところに
連れていってやりたかったの。その方が供養になりそうだったから」
帰りの車の中、俺はほとんどしゃべりませんでした。でも彼女はずっと
ビンの中の肉片に向かって話しかけてました。
「楽しかったね、かおる。また今度来ようね」
俺はその娘とは二度と会いませんでした。
>359 ■次は「隔離」「白装束」「万引き」で
「隔離」「白装束」「万引き」1/3
今からもう30年近く前、僕が幼稚園に上がる前の、初夏のことです。
当時体の弱かった僕は、ひどい下痢をして、親に連れられて小児科を受診しました。
埼玉県大宮のメディカルセンターという結構大きな病院でした。僕を診察した医師は、
母と何か話をした後、僕を見て「じゃあちょっと病院にお泊りしていこうね」
後から分かったことですが、僕は赤痢の疑いありということで、即刻その病院の伝染病棟に
隔離入院されることになったのです。
隔離は楽しい経験でした。昼寝の時間、眠くない僕は、付き添いで寝ている母を起こさない
ようにそっとベッドを抜け出ると、ナースステーションまで病院の長い廊下を歩いて行きました。
ナースステーションの看護婦さんは、僕が出歩いているのを見ると、慌てて、困った顔をして、
「○○ちゃんいい子にしてお昼寝してね。はいこれあげるから」とエルビー(乳酸菌飲料)を
1本僕にくれたのです。僕の中で「ナースステーション訪問→ドリンクゲット→ウマー」という
思考回路が形成されていきました。味をしめた僕は何度も白昼の隔離突破を繰り返しました。
「隔離」「白装束」「万引き」2/3
しかし、あまりに度が過ぎたのか、ある日ついに看護婦さんは、僕に何もくれずに追い返した
のです。初夏の午後の日差しは結構暑く、僕は下痢もあってとても喉が渇いていたのに、です。
長い廊下を歩いて戻る途中、あまりにも喉が渇いてしまった僕は、万引きしてしまいました。
本当はいけない事だと知っていたのに、誰もいないのをいいことに、売店の冷蔵庫から、
コーヒー牛乳を取り出し、売店の陰で、ふたを開けて飲んでしまいました。
とってもおいしいコーヒー牛乳でしたが、飲み終わってから、この壜をどこに隠そうかと
幼児なりに考え込んでしまいました。その時でした。「ぼうや、だめだよ」
入院患者さんなのか、白装束を着たお爺さんが、僕の一部始終を後ろから見ていたのです。
僕はびっくりするやら、情けないやら、恥ずかしいやらで涙が出てしまいました。
「隔離」「白装束」「万引き」3/3
するとそのお爺さんは、何も言わずにコーヒー牛乳をもう1本取り出すと、2本分のお金を
冷蔵庫の上に置いて、「ぼうやはいけない事をしたってわかってるな?もうしないよな」
そう言うと、僕の隣にしゃがんでコーヒー牛乳を飲み出しました。飲み終わると、
「ぼうやの分はご馳走してあげたから、もう泣かないでお部屋に戻りなさい」そう言って、
お爺さんは僕の涙を皺だらけの指で拭い、僕の手をとって部屋まで送ってくれました。
大学のとき、コーヒーミルク・クレイジーという歌が流行って、ふと思い出してこの話を
母にすると「でもあそこは小児隔離病棟だし、そんなお爺さんが真昼間にいるわけないわよ、
何か幻でもみたんじゃないの」と言われました。でも確かに僕はその日、コーヒー牛乳を
飲んだのです。暑い夏を予感させる初夏の出来事でした。
最近オカ板に出入りしていて、ふと気になって思い返してみると、あの白装束もどこか、
ちょっと違っていたような気がします。入院患者の服というよりも、死に装束のような…
■「墓地」「立て札」「駐車違反」はどうでしょうか?
「隔離」「白装束」「万引き」
「な、なにぃ! 白装束の集団が長野に現れただとぉ!」
近松源太郎は、窓ガラスが割れんばかりのテノールで雄叫びをあげた。
「しかも三浦和義が万引きでとっ捕まったそうですぜ」
配下の東洋銀治が、不愉快そうにつけ足した。
「SARSの死者が400人を越えたというのに、個人情報保護法案が衆議院を通過してしまったぞ!」
日之出正吉も苦虫を噛み潰したような顔で語った。
「こうなったら、柏崎の原発が再稼働する前にタマちゃんを捕獲するんだ、それしか手はない」
と近松。
「しかし近松の旦那、サスケがマスクを脱いでいないのに、なぜミセス炭疸菌がアメ公に拘束されたんです?」
東洋銀治は近松に疑問を呈した。
「それはイチローが2割台しか打ってないからだ。ただし、くれぐれもカレーにじゃがいもは入れるなよ」
精神科の隔離病棟で彼等は延々と支離滅裂な議論を続けた。
スマン、なかったことにしてくれ。
>>363 いや、おもしろい。
こんな時間に読んでると、あまりにもバカらしくて笑う
>>363 あ、僕と似た名前の人が。
いや面白かったですよ、これ。僕のも含めて長いのが続いてたから、
こういう小品もいい。
・・・と書いてる間に、先越されてた。
ふと立ち寄った中古車センターである車を勧められた。走行距離とコンデ
ィションを考えると格安の物件。念のため整備士の友人に看てもらったと
ころ、「事故車ではないだろう」という事だったので購入を決めた。
納車の日。前日に契約した月極駐車場に車を止めた。墓地の隣の草地。
「車上荒らし頻発!」と書かれた立て札は、スプレーで落書きされまくっ
ている。それでも駐車スペースは殆どが埋まっていた。リモコンでロック
し、イモビライザーをスイッチをONにした。
翌日、車で出かけようとすると後部ドアのカギが開いているのに気付いた。
慌てて確認したが、何も盗られた形跡はない。しかし不用心には違いない。
戻ってからは入念にロックの状態を確認して車を離れた。
数日後、駐車場へ行くと男が三人と警察官が二人居た。車上荒らしが現れ
たらしい。「やられた!」と思ったが、不思議なことに私の車だけが車内
を荒らされていなかった。他の車は小銭や消臭剤まで盗られていたのに。
「ドアに手も触れてないようですね。」
警官も首を傾げるばかりだった。
簡単な職務質問に答えた後、私は妻と車で買い物に出かけた。駐車場が見
つからず路上に車を停めたのだが、駐車違反で切符を切られるのが嫌だっ
たので私は車に残ることにした。窓を閉めエアコンを掛けっぱなしにして
いるのだが、初夏の日差しはそれを上回るペースで車内の気温を上げる。
私はラジオを聞きながらウツラウツラと船を漕ぎ始めた。
微睡みの中、子供の泣き声が聞こえてくる。外の音かラジオの声だろう。
そう思ってなおも目を閉じていると、不意に首筋のあたりに何かが触れた。
熱っぽい手の感触。一瞬で覚醒し、バックミラーを見る。
白目を剥いた赤ら顔の幼児の顔が見えた。
妻に体を揺すぶられて目が覚めた。
「どうしたの?うなされてたけど。」
「・・・いや、嫌な夢を見たんだ。」
私は頭を振りながらそう答えた。
「窓を開けっ放しで寝るからよ。エアコン掛けてれば良かったのに。」
「え?」
車内を見回すと、前後左右の窓が全開になっていた
その日の夕方、中古車センターへ寄って店長を問いつめた。若い店長は、
今日の出来事を聞くとサッと顔色が変わり、すぐに事情を話し始めた。
「昨年の夏にね、この車の中で幼児が熱死したんですよ・・・」
母親は子供を車内に置き去りにしてパチンコをしていたらしい。
「まぁ良く聞く話なんですけどね。あ、車は置いてって下さい。ホントす
みませんでした。」
私と妻は店長の車で家まで送ってもらった。
部屋に戻るってしばらくすると、警察から電話があった。車上荒らしの犯
人が自首して来た、と言う。
「・・・言葉が良く分からないんですけど、何かパニクってるんですよね。
しまいには泣き出す始末で。」
電話口の声は微かに震えていた。それを聞いて私は思う。
犯人は駐車場で何を見たのだろう?
■次は「蛍光灯」「紙コップ」「足」でお願いします。
「はい、じゃあこの紙コップの中に尿を入れてきて下さい」
つっけんどんな対応の看護婦に紙コップを渡され、僕はトイレへ向かった。
やれやれ、最近の若い子は、口の利き方も他人との接し方もなってないなぁ。まぁ、僕が愚痴ったところでどうなるわけではないが。
心中で嘆きながら便器へ向かい、紙コップに尿を注ぎ込む。
トイレは薄汚い上に、蛍光灯が切れかけているのだろう、ちかちかと目の前が明滅して、居心地が悪いったらありゃしない。
溜息をつきながら作業に没頭しかけた僕の耳に、何やら虫の羽音にも似た声らしき音が入ってきた。どうも、背後の個室から聞こえてくるらしい。
首をねじり、そちらを見ようとした。と、連れて身体も動いてしまい、尿が足にかかりそうになり、思わず僕は足を上げてしまった。
その拍子に、持っていた紙コップが手から滑り落ち、タイル地の床に黄色い水溜りが出来てしまった。
「あっちゃぁ〜、やっちまった……」
呆然としていた僕の眼前で、それは唐突に起きた。
個室のドアが勢いよく開いたかと思うと、尋常でなく長い首の男が、ゴキブリよろしくカサカサと這い出してきて、床にぶちまけられた尿をこれまた常人離れした長い舌でぴちゃぴちゃと音を立てながら舐め始めたのだ。
唖然とする僕に構わず、男は綺麗に尿を舐め取ると、僕に顔を向けてニヤリと歪んだ笑顔を見せた。
男はまるで、猿とアリクイの合いの子のような、珍妙かつ醜悪な容姿だった。
と、男は出現した時と同じくらい俊敏な動きで、個室の中へと引き戻り、ばたんと内側からドアを閉めた。
トイレに静寂が戻った。
暫く魂が抜けたように僕は立ち尽くしていたが、我に返ると、震える足でぎこちなくトイレを後にしたのだった。
受付に戻りかけ、それでも少し気になって、ちらっと僕は背後を振り返った。
が、そこには先程までいた筈のトイレの入り口は無く、ただ薄汚れた乳白色のモルタルの壁があるだけであった。
■「スコッチ」「腕時計」「シャワー」でよろしく。
作品の長さ云々で色々と意見があったみたいだけど、
俺はこのスレに関しては1レスで話を収めてみようかと思うのです。
話を短くまとめる練習も兼ねて。
て、前にも言った気がするな、同じこと。
>>329 種明かし、すかあ。
え、と。「J.R.」については
>>331をご覧になってくださいな。
てわけで、
>>331 ご明察です。正解の景品としてマゲ……
いや、なんでもないっす。
>>358-359 何か、昔友人から聞いた悪夢を思い出した。
イッちゃってる人間のイッちゃってる行動って、下手な怪談よかよっぽど怖いなぁ。
「蛍光灯」「紙コップ」「足」
「ファイナルアンサぁ〜?」
ロマンスグレーの司会者が俺に問うた。
うーん、答がサッパリわからん。
問題はあと二問。ライフラインは残り一つ。
ライフラインは最後の問題に取っておきたかった。しかし、ここで間違えると元も子もない。
すでに五百万は獲得している。だが、ここで間違えてしまうと……。
「すいません、ライフラインを使います」
「ほぉ、ライフラインですか。いいですよ」
と司会者。
苦渋の選択だった。
残っていたライフラインはフィフティ・フィフティだ。
「さあ、それではコンピュータが答を半分に絞ります。せーのー、ドン!」
♪ちゃららぁ〜ん
ひとを小馬鹿にしたような音楽が流れたあと、答がふたつに絞られた。
A.蛍光灯 B.前立腺肥大
わ、わからん……
ここで降りるか、それとも五十パーセントの確率に賭けるか。
こういうとき、今まで俺はずっと逃げてきた。
大怪我はしなかったが大成功もなかった。
ここで変らなきゃ、俺はずっと今のままだ。冴えない人生で終わっちまう。
ここで変らなきゃ……
虎穴に入らずんば虎児を得ず……だ。
俺は決断した。
「Bの前立腺肥大でお願いします」
「ファイナルアンサぁ〜?」
司会者は決まり文句をくり返した。
「ふ、ファイナルアンサぁーーーっ!」
「それでは、もう五百万には戻れません」
と俺の目の前で小切手をちぎる司会者。
そして、おもむろにスタジオの照明が暗くなり、うなり声のような音楽が流れる。
♪じゃああぁーーーーーーーーーーーーーーん!
司会者が俺を凝視する。
ちくしょう、じらしやがって……
俺は視線をそらし、紙コップの水を口に含んだ。
「ざ〜んねん!」
司会者がいかにも愉快そうに言った。
そして、意地の悪そうな薄笑いを浮かべると、手元のボタンを押した。
ばたーーん!
けたたましい音とともに足もとのおとし蓋が開き、俺は闇の中に吸い込まれた。
「ああぁァーーーー!」
やっぱり止めときゃよかった……
結局、これが俺の人生だったんだな……
そういや、君子危うきに近寄らず、ていうことわざもあったな……
俺は落ちてゆく……落ちてゆく……
その先には、腹を空かせたガリバーが大口を開いて俺を待ちかまえていた。
「スコッチ」「腕時計」「シャワー」
ある腕時計にまつわる話です。
アンティークの腕時計で、結構いいモノだって言ってました。その持ち主だった友人は、
仕事の後、出張先のホテルに戻り、シャワーを浴びるためその時計を外しました。
でシャワーを浴び終わって出てくると、腕時計が止まっていたんです。
自動巻きなので、なぜ止まったのか分からず、困ったなぁと思いつつも、明日も朝一で
打ち合わせがあるので、早々に床に就いたそうです。
深夜、なにか嫌な感じがしてふと目を覚ますと、部屋の入口付近に誰かいるような気配。
彼女は霊感のある人なので、すぐに人間ではない何かだろうなと分かったそうです。
それは何かを探しているような感じで、寝ている彼女のそばまでやってきました。
どうやら右手のない、女の霊のようでした。彼女は心の中でお経を唱え、目をつぶって
早く去れ、早く去れと念じたそうです。しばらくしてその気配が消えました。
部屋の明かりを点けて、冷蔵庫からスコッチウイスキーを取り出して飲みながら、
あれは何を探していたんだろうかと考えていた彼女は、ふと枕元を見て凍ってしまいました。
彼女の腕時計に、血の痕がべっとりついていたのです。
しかも、先ほどまで確かに止まっていたはずの腕時計が、今度は狂ったようなスピードで
時を刻んでいるのです。まるで激しく揺さぶられて壊れてしまったかのように。
それからしばらくして彼女は体調不良で会社を辞めてしまいました。
精神科に通っていると言っていましたが、今はどうなっているか分かりません。
■「林道」「老婆」「カップラーメン」はどうでしょうか?
「じゃあ、ジャンケンで負けた奴が、山下りて酒とカップラーメン買出しな」
夜のキャンプ場にて。
酒も尽きかけ、おまけに友人の一人が唐突に「カップラーメン食いたい」なんて言うもんだから、
急遽深夜のジャンケン大会開催となったわけだが。
よりによって、そんな時に一発で負けるかね俺。
まぁ酔い覚ましにもなるしいいか、とポジティブに現状を捉え、千鳥足で山を下りたわけだ。
が、駐車場まで来てふと気付く。コンビニ、ここからまだまだ距離あるじゃん。歩いて行ったら朝になっちまうよ。
途方にくれていると、東屋に薄っすら灯りがともっているのが目に入った。はて、何じゃらほい?俺は近づいたみた。
ランタンを梁に吊り下げ、老婆がいる。その目の前には、食品やら飲料やらが所狭しと並べられている。行商のようだ。
と、商品の群れの中にしっかりとカップラーメンと缶ビールも陳列されており、俺は即座に購入しようとすると、何と代金は要らないらしい。
不思議に思いつつも、俺は品物に次々に手を伸ばす。
やった、コンビニまで繰り出す手間が省けた上に、タダで目的の品が手に入った。
足取りも軽く、俺は嬉々として僅かに勾配が付いた暗い林道を駆け上がった。
が、キャンプ場には誰もいなかった。脅かそうとしてるのか?とも考えたが、探せど待てど、誰一人として姿を現さない。
どうなってるんだ?と、折りたたみチェアーに腰掛けたところで、地面に書かれた文字に気付いた。
棒切れで書かれたのだろう、たどたどしい線で、こう書いてあった。
「成人4人 確かに領収しました」
■「竿竹」「ちり紙」「焼き芋」でよろしく。
「竿竹」「ちり紙」「焼き芋」
ある土曜の夕暮れのことです。私が2階の自分の部屋で本を読んでいると、
物売りの声が遠くから聞こえてきました。
「た〜けや〜竿竹〜、20年前のお値段です。20年に一度の大安売り…」
うるさいなぁと思いつつも、まあすぐ通り過ぎるだろうと思っていたら、
その車は何を思ったのか、私の家の周りをゆっくり周回し始めました。
そのうち、さらに1台、今度は別の車がやって来ました。
「毎度お馴染み、ちり紙交換です。古新聞・古雑誌・段ボールなど…」
そしてその車も家の周りを周回し始めました。2台の車の声が混ざって聞こえてきます。
何やってんだか、これじゃ何にも売れないだろう、お互いに張り合ってるのかな、等と
考えていると、さらに!もう1台やって来ました。
「焼〜き芋〜、石焼き〜芋〜、焼きたて〜…」
そして、この車も家の周りを周回し始めたのです…。
さすがに頭にきて、部屋の窓から顔を出して文句を言おうとして、
私は固まってしまいました。
トラックの運転手が3人とも、車の窓から首を不自然なくらい長く突き出して、私の部屋を
見上げていたのです。いや、ただ見上げているのではなくて、生気のない、なにかぞっとする
ような目つきで、恨めしげにこの私を見つめているのです。
目が合う前から、この私がここにいるのを知っているのです。
形容しがたい寒気に襲われて、私は開けようとしていた窓を閉め、カーテンを引き、
ヘッドホンをつけて音楽を最大音量で流しました。窓の外にいるものを忘れようとしました。
どれくらい経った頃でしょう、母が私の肩を叩き、夕食の時間を告げに来ました。
「下で何回呼んでもこないから来てみれば、ヘッドホンつけてたの。どうりでね」
「だって変な物売りの車が、右翼みたいに何台も来てたから…」
「何言ってるの?そんな車1台も来てないわよ。今日は静かな日ねって話してたくらいよ」
そういえばあの時、3台の車の声が混ざって、聞こえてきたのは、思い返してみるとどこか
お経のような声でした。それ以来物売りの声を聞くと、今でもちょっと背筋が寒くなります。
■「神社」「霧」「風呂桶」はどうでしょうか?
「神社」「霧」「風呂桶」その1
怪談じゃないけど、霊の話をひとつ。
ぼくの母方の実家は、古くは神社だか陰明だかの家系だったらしく、
今でもその血を引く女達には霊感があるらしい。
その関係で、母は霊相談や占いを頼まれれば趣味程度にやっていたし、
姉も友達から霊能者と呼ばれていた。
でも、男であるぼくには特に霊感もなく、普通の人間に過ぎないんだけど、
やはり、その方面の知識には自然と詳しくはなっていた。
姉が言うには、霊というのは実に不思議な存在で、
例えば霊の憑いた人を前から見ると、霊は肩の上に浮かんでるように見えるのに
その人を横から見ると、霊は後ろを歩いてるように見える、というふうに、
3次元的にあり得ない存在なのだそうだ。
また、家族で山の温泉に行った時には、姉は霧に怯えていた。
山の木々から生まれるマイナスイオンが木霊を生み、
それが拡散するか雲になって空へ昇って行けば良いが、
霧となって立ち込めると人や獣を惑わすという。
そんな霧のため、宿から離れた名物の露天風呂にも行くなと言う姉に対して、
探険好きな少年時代のぼくは内湯の風呂桶に沈みながら、
「霧で人や獣が迷うのは、単に視界が悪いからだろう」
なんて愚痴を言ってたものだった。
「神社」「霧」「風呂桶」その2
そんな姉ももう結婚して、この連休には一人娘を連れて里帰りしていた。
小さい頃の姉に似た姪の加奈子はぼくには大変なついていて可愛いのだが、
3歳にしてすでにおねだり上手で、先が思いやられる。
そして、嵐のように賑やかな姉家族が帰った、その晩のことだった。
夜中に喉が乾いて台所へ行くと、
電気の消えた居間から人の気配がする。
見ると、まず、暗い中から白い小さな2本の足が歩いてきて、
近付くにつれ、次第に腹、上半身、そして、全身が姿を現した。
加奈子だった。
加奈子は「デヘヘ」と体をくねらせて笑い崩れると、一瞬後にストンと消えた。
残身か、おやすみの挨拶に来てくれたのか、
まったく先が思いやられる。
怖くなくてすみません。
次のお題は「山小屋」「登山道」「青空」、山モノでお願いします。
126以降の感想
>>130 育児疲れによるノイローゼなのか、ひょっとして本当に異形の赤ん坊なのか。
前者の気がするんだけど、案外後者のローズマリー的展開も。
と思ってたら後者系だったのねー(
>>166)
>>131-133 ファックスが謎いですな。
呪いのパゥワーでファックス送信なのか知らん。
霊現象で電話かけられるんなら、確かにファックスも出来そう。
移植ものはブルーになる話が多いですな(たまにええ話もあるけど)
>>136 あははは。
生徒と先生にいじめられるから学校に行きたくないって赤ちゃん言葉で母親に
訴える校長、ってジョークを思い出した。
んな事言ってもいざ現場に行くと普段通り真面目に振舞うのが人間ですな。
>>140 SF風に実験的に人体いじると絶対に失敗するお約束ですね。
>>141 焼いて灰にするのは勿体ない、は同意かな。
いや、再利用しようとは言わないけどね(笑)
自然を利用するだけしたんだから、最後に身ひとつくらい自然に帰しても
ええんでないかと。
>>142-145 実は主人公は「正解」を知ったんじゃなくて、「現象」に「解釈」を与えたから
その「解釈」に基づいて死んだのだと考えると、異なった「解釈」をする人物が
入居する事で続く可能性はあるのかも。
例えば、"7"日"5"月20"35"年、とか。
後、7本指の男が入居して計算狂わす可能性も(笑)
332以降の感想(1/2)
>>332-339 幽霊屋敷を録音しながら探索して、「なんだなんにも起きないじゃん」って、後で
テープを聴いてみると…、って話を幽霊視点を絡めてって感じですな。
これ、もっと情景を人間視点と幽霊視点を対応させて、scene#もそれに一致
させた方が奇麗な気がします。
>>341-348 おー、0番も込みで実話怪談系で良い感じですな(0番はリアリティ溢れまくりなんで
これすらも創作ならちょっと感動しちゃうかも(笑))
最後までいっても謎のまま残る「呪」の和紙がええ味です。
これの存在で、不幸を撒き散らす不気味な振袖、ってイメージが出てます。
ところで、不幸の留袖の話って聞きませんな(笑)
>>350-351 ひでー(笑)
しかし、「あの娘も死んだんだから、これで、私と一緒に死ねますよね。さぁ、
死にましょう」となりそう。
主人公の話の腰折られまくりなとこがちょっと笑いのツボでした。
>>354-357 もじり人名ににやりにやりしまくり(笑)
二転三転、なかなか好きな展開です。ちと、最後駆け足感ありますが。
>>358-359 サイコさんとの遭遇ですな。
流石に美人でも、もう会いたくないですよね、そりゃ。
ないと思うけど、下手したらありえるかもなぁ、ぐらいのバランスが良いです。
色々サイコさんに想像をめぐらすと面白いです。
>>360-362 うわー、これめっちゃ好みです。
実話系で心霊ちょっといい話で、こちらこそ(゚д゚)ウマー
「エルビー(乳酸菌飲料)」とかの表現が、文章界のへたうまって感じで好きです。
332以降の感想(2/2)
>>363 まぁ(笑)ナイスファイト、っつー事で。
ところで、カレーにじゃがいも入れなくても良いけど、人参は入れてネ。
>>366-368 丁寧な描写が好感度高し。
最後で、警察官の声が震えてるところから、「言葉が良くわからない」と言いつつ
いやーんな話を犯人から聞かされたのかなぁ、と憶測。
>>369 尿垂らしに至る描写が変に細かいのが、言い訳っぽくてにやっとしたり。
結局全てが怪奇現象だったのか、それとも主人公の白昼夢とかなのか、悪夢的
雰囲気が良いです。
>>371-372 勢い勝負ですな(笑)
最後、なぜガリバー?(笑)すると、ここはリリパット?
>>374 この話を誰から聞いた(設定になっている)のかが微妙に興味深かったり。
そこらへん込みで、都市伝説的な感じがナイス。
>>375 たっかいカップラーメンと缶ビール(笑)
てか、地面に書かれちゃ領収証としてどうよ(笑)
>>376 竿竹スレとかありましたな(笑)
確かに、あの手のアナウンス(?)には、妙に不気味な感じがありますな。
>>377-378 「すわっ、怪奇現象か?」と思わせて、微笑ましい展開が良いです(やっぱ、
怪奇現象だけど(笑))
先も、まぁ、悪戯好きの姪に悩まされるんだろうな、となかなか微笑ましいです。
唐突に思い立って、軽い気持ちで来た近所の山。突然の豪雨。ろくな雨具なんか持っ
てない。大した山じゃないとたかをくくってたのは失敗だったようだ。数分でびしょ濡れ
になって体温ががんがん下がっていくのを感じる。
「まっじぃ、せめて雨風だけでも凌げる場所探さんとマジヤバいって」
一時間ほどうろうろした挙句、お話のようだけど山小屋を見つけた。
喜び勇んで飛び込むと先客がいた。誰かさんと違ってちゃんとした登山姿の男。ぎょっ
とした表情でこちらを振り向かれる。そりゃそうだ。
「…あ、すみません。外あれでしょ?うろうろしてたら道わかんなくなっちゃって…あの
…その暖炉当たらせてもらって良いです?」
「ああ…良いですよ。どうぞ…痛てて…」
「どうしました?」
「いや、ここ来る時に慌てて道踏み外しちゃって。死ぬかと思いましたよ」
なるほど、正面から見ると顔と左腕をかなり派手に擦りむいているのに気づいた。その
せいか男の顔色はやけに青褪めて見える。
しかし、会話はそれで途切れた。男は時折妙に神経質にこちらをちらちら見る。外は
ごうごうと風の唸る音。ばらばらと雨の叩きつける音。ぎしぎしと山小屋の軋む音。
しかたなくそこに泊まった。次の朝はやっぱりお話のような青空。
「それじゃ、わたしは用事あるんでこっち行きますけど、降りるだけならそっちの登山
道に沿って行った方が早いんで、ここで別れましょう」
男に道を教えてもらい下り始める。元々そう高い山な訳でもなく、昼過ぎに家に帰る事
が出来た。やれやれと腰をおろし、なんとなくテレビをつける。
「昨日、○○市で一家三人を惨殺した疑いで指名手配中の木曽貴仁容疑者(34)が、
今日11時同市の×山で県境を越えようとしているところを発見、逮捕されました」
犯人がパトカーに乗せられるところが映される。顔こそジャンパーをかけて隠されて
いるものの…あの服装、あの怪我…山中で出会ったあの男に間違いない。
「次のニュースです。先ほどの○○市×山ですが、その登山道で行き倒れている男
性をちょうど付近を巡回中の警官が発見しました。所持品などから○○市の大学生・
滑川山臣さんと見られています。滑川さんは普段着に近い軽装のため、登山中に大
雨に遭い、低体温症を陥ったのではないかと専門家は見ています」
え?
うーむ、好調に進んでるんで、感想に苦戦(笑)
ま、好調なのは、実にええ事です。
で、山モノリクエストだったんで、お題を捻らず山モノにしたら、微妙な感じに…。
ご、ごめんよ。
ケチらずに2レスで書くべきだったかなぁ、と少しだけ後悔。
ニュース的表現は相変わらず苦手で、不自然じゃないかとびくびくです。
次のお題は、「牛」「豚」「鶏」でお願いします。
>>380 「これ、もっと情景を人間視点と幽霊視点を対応させて、scene#もそれに一致
させた方が奇麗な気がします。」
というか、ミスリードさせるように、<scene2-1>の部分はわざとぼかして
書いたんですが。
いまいち意図が伝わらなかったかな。
「牛」「豚」「鶏」1/2
私は畜産学科の学生です。肉牛と豚、それに地鶏を生産する農家に、援農の一環で泊り込んだ時の
ことを書きます。見るからに農家っぽい陽気な親父さんと、美人の奥さん、それに中学生の息子の
3人でやっている「3ちゃん」農家でした。牛小屋掃除を手伝いましたが、その牛小屋が変な構造で、
長い小屋のどん詰まりに、鍵の掛かった小部屋があったのです。親父さんは、そこ掃除しないでいいよ
農機具入れてあるだけの物置だからと言っていましたが、私は、その扉の上に貼ってあった何かの御札
に目が行ってしまいました。物置の入口に御札。火事よけのおまじないでしょうか?
夜半ふと目が覚め、母屋から離れた便所に行こうと外に出ると、数百メートル離れた牛小屋で何か
気配がします。熊でも来ていたらいけないと、そっと近付いて覗くと、その家の厨房が嫌がる子牛を
抱え込み、激しく腰を動かしていました。幸い彼は行為に夢中で、私が覗いた事には気づいていない
様子です。苦笑いしながら忍び足で部屋に戻ろうとして、牛小屋の角を曲がった、その時でした。
親父さんがいきなり私の肩を掴みました。彼は、私がここに来ているのが、あらかじめわかっていた
かのように、角の暗がりに立っていました。その目は虚ろでした。
「牛」「豚」「鶏」2/2
彼は何も言わずに、その頑強な手で私の肩を強く掴んだまま、私を牛小屋のどん詰まりまで押して
行き、南京錠を開けると、私を小部屋の中へと押し込みました。暗がりに慣れてくると、中の様子が
ボンヤリ見えてきます。空っぽの、窓のない部屋の中央に、黒っぽい塊がうずくまっています。
子牛です。なんだ、ここは病気の子牛の隔離部屋だったのか…。
(この時点ではまだ、私はその家の主の虚ろな目の意味にまったく気がつきませんでした。小部屋
の中で、あれは見なかったことにしてくれとか、そういう話をするために連れてこられたんだと思って
いました。とんだ勘違いでした)
「…なんだ」ぽつりと彼は言いました。「はい?」よく聞き取れなかった私は聞き返しました。
「…だから、業なんだよ」かれはそういうと、寝ている牛を撫ぜました。牛はビクッと身震いし、
目を覚ますと、のっそりと、その頭をこちらに向けました。
美人の奥さんそっくりの顔でした。私はヒッと短く悲鳴を上げ、後ずさりしようとしましたが、
肩をがっちり掴まれて身動きが取れません。
「このくだんはあれの姉なんだ。あれはもうじき死ぬとこの娘が告げた。それであいつは、毎晩
狂ったようにやりまくっているんだよ…さ、怯えないで撫ぜてやってくれ。俺のかわいい娘だ」
くだんの目は、目だけは牛のままで、黒目ばかりのその目がじっと私を見つめていました。
■「ガラス」「葉書」「蜘蛛」はどうでしょうか?
>>386の終わりから3行目の「このくだん」ってなに? 激しく意味がわからないんだが。
最後の行にもあるよね。推敲ミス?
>>384 ふむぅ、なるほど。
その意図でいくのならば、もうちっとぼかしを強くして、scene1-x→scene2-xって
いう時系列のように(あるいは他の表現も考えられるけど)誤読性を高めた方が
良いかなぁ。
scene2-1の時点で既に異様な行動が描かれているんで、そういうつもりで
読んじゃったかな。
>>385-386 おー、くだんネタですか。
どういう血縁関係になってるのかわかりそうでわからない配置がすげぇ
忌まわしくて良い感じです(ヤな言い回しだね(笑))
389のリンク先のように「拠って件の如し」って言い回しから、「『件』ってなんだよ」
「にんべんに牛…(((;゜Д゜)))ガクガクブルブル」って流れかな。
単なる洒落な気もするけど(笑)
小松左京のくだんが出る作品でも、更に洒落を重ねられてますな。
「『鬼』ってなんだ?」「『鬼門』ちゅうしなぁ…?」「『鬼門』ったら『丑寅』の方角よな」
「『牛』…『虎』…」
で、「鬼 ≒ 幽霊」なのに、角生やして虎皮ぱんちゅデザイン誕生、とか、あるいは
石燕が描いた妖怪も洒落の塊、とか、妖怪系の洒落ネタ大好き(笑)
(件・くだん)=「以前に述べたところの、例の」という意味だとばかり思ってた
から、全然意味がわからんかったよ。
そうか、「くだん」っちゅう妖怪がいたのか。そういえば、どこかで聞いたような
気も・・・小松左京は読まんが。オカルト板では常識的知識のようですな。こちらこ
そ失礼しますた。
その葉書には送り主の名前が無かった。裏面には拙い筆跡が並んでいる。
「この手紙を見たら、その日のうちに5人に同じ文面で手紙を出して下さい。
さもないと、悪霊があなたを殺しに行きます。」
使い古された文言。今時は中学生でもこれよりはマシな文章を書く。
時計を見ると23時5分。今日という日は、あと1時間も残されていない。
仕事が長引いたせいだが、この悪霊とやらにはそんな事情は通用しないのだろう。
ため息を一つ放って、デスクの引き出しから葉書とペンを取りだした。
近所のポストに葉書を放り込む。部屋に戻った頃には心身共に疲れ切っていた。
ネクタイを緩めソファーへ。まずは一服。マルボロをくわえジッポーで火を点けた。
先端から立ち上る紫煙。それが風もないのにゆらりと揺れ、わずかに渦を巻く。
コンコン・・窓ガラスを叩く音。反射的に時計を見る。0時ジャスト。
「おいおい、マジかよ・・・」
窓をすり抜けて誰かが入って来たかのように、カーテンがフワリとふくらむ。
室内に重苦しい気配が充満した。冷や汗が額を流れ落ち、鼻先から滴り落ちる。
不意に明かりが消えた。直後、暗闇に白い人影が浮かび上がる。
「ちょ・・ちょっと待てよ。手紙はちゃんと出したじゃないか!」
青白い皮膚。あり得ない角度に曲がった頭部からは、ぞろりと黒髪。
その隙間から覗く温泉卵のように白くブヨブヨの眼球がこっちを睨む。
「うゎ・・く・・来るな・・来るなぁ!」
そいつは、ソファーで取り乱しブルブルと震える私に向かって手を伸ばした。
赤い傷口のような口がパックリと開き、小さく尖った歯がビッシリと覗く・・・
「上手く考えたもんだ。ヒト食い野郎、必死だな。」
ヒトを食う霊。こいつらは、霊の存在を信じている人間を好む。
理由は単純。そっちの方が美味いからだ。
だから、不幸の手紙で餌を選り分ける。
手紙を出す人間=不幸の手紙を信じる人間=霊の存在を信じている人間。
こいつらは手紙を「出した」人間のところを訪れる。
美味い餌を求めて。
不幸の手紙という網を張り、引っかかった人間を補食する蜘蛛のような霊ども。
蜘蛛の網=不幸の手紙は、餌となる人間の手によって際限なく拡がってゆく・・・
「ただし、それはこっちにとっても好都合だってこと・・・」
蜘蛛にも天敵がいるように、霊を餌にしている奴もいる。
そいつは蜘蛛の網を逆利用して霊を呼び寄せ、人に擬態して霊を欺く。
まんまと現れた餌の前で恐怖の表情を装い、最後の瞬間に牙を剥くのだ。
「弱肉強食ってのは世の常だ。あの世でもそいつは同じ。ま、悪く思うなよ。」
私はマルボロに火を点け、食後の一服をゆっくりと味わった。
次は「解剖」「冷蔵庫」「ガス」でお願いします。
146以降の感想(1/3)
>>146 ええ話やぁ。
だけど、いつか原田さんがいなくなった時、あるいはデパートの経営が
行き詰まった時、そんな悲劇の訪れを予想しちゃうのはひねくれてるのかなぁ。
>>147 地口大好きっ子としては、横文字使えてねーっておっちゃん(だと思う)の
間違った横文字使用によるお題利用は非常にツボです(笑)
>>149 ひきこもり小説として、ちょっと面白い。
唯、これはこれだけじゃなくて、ある程度の長さの中のひとつの段落だけを
抜いてきたような感覚になる。
どっかで独立でスレ立てて連載するなりすると形になるのかも。
>>156-157 なんで2ch語でトークなのよ(笑)
おな題だけに149に引っ張られたかと邪推(違ったらご無礼)
>>161 その後連続快楽殺人者になった、ってのは、具体的に書かない描写でで読者に
憶測させる方が良いかと。
>>162-165 ホントに単なるドジだったのか、ってのがすげぇ気になったり。
天然を装った悪意では?と。
主人公にセクハラ気質感じるしね。
そこらへん計算尽くなら巧いなぁ。
>>167 お題的にしょうがないけど、流石に1.44MBでは動画は厳しいかと(笑)
いや、トピック的に連続画像ならどうにかなるかな。
なんかそんな日本絵あったような(人体の死後の様相の連画)
146以降の感想(2/3)
>>168-169 裏技的探偵小説ですな。
こゆ路線好きです。
野球漫画でいうと(なぜ)、「キャットルーキー」の二部とか「ワンナウツ」みたいな。
>>173 不謹慎ゲームならぬ、不謹慎怪談ですな(笑)
>>177 「それほど長く…お分かりの通り」って事は、そっからは仕合わせ短かったんだろう
なぁ、と。
すると、最後の「長い間お疲れ様でした」も妙に切ない。
>>178 卵の中に細切れ死体を…って怪談もありますな。
なんか久し振りの実話調怪談だった気も。
>>181-184 奇麗事言いな雅弘を殺す、って事で妙に由美子に感情移入出来ますな。
…あれ、ひょっとして、わたしヤバい?
>>186-191 結局鏡台は実在したのかなぁ。
うむむ、「そして床には…」も鏡台の向こうの描写なのか次第か。
それとも、そういうわかりやすい解釈でドッペルゲンガーに繋げちゃ駄目なのかな。
>>192 なんか理窟がおかしい気が(笑)
まぁ、寸善尺魔さんの好きそうな叙述トリック系だなぁ、と。
146以降の感想(3/3)
>>193 不気味な偶然の一致物とでも言うか。
全体に不気味な雰囲気があるんだけど、理性的に見ると唯の偶然の重なり。
なにか超自然な現象が具体的に起こってる訳じゃないんだけど、やっぱり
不気味さを感じる。巧いなぁ。
ところで、その曲は実在すか?
>>194 結構好みかも。
なんつーか、授業が暇ぁな時に社会科あたりの先生が「学生の時の体験談」って
感じで語りそうな妙な親近感。
>>195-198 なんじゃこりゃー(笑)
ありえない仕事の風景を真面目に描写してるのは案外好きだなぁ。
子供の洟を麦藁で吸い上げる、って仕事を大真面目に回顧してる話を思い出したり。
> 「初めにシモ有りきではなく、必然性のある使い方がされているネタを見てみたい」
メタ?(笑)
>>199 うわー、快活なMIBだー(笑)
下手に親切にしたA美の安否が気遣われます(笑)
>>200 なんだかなぁ(苦笑)
> 病院は不健康の連鎖を生み出す矛盾と悪意に満ちた漆黒の檻のようだ。
これ、どっかで聞いたようなフレーズだなぁ。
ま、確かに人間病院に行くと不健康になる傾向にある。
>>204-205 輝かしい時代を終えてしまったものたちの哀しさが出ていて好みです。
もうちょっとだけ心象を描いても良かったのかも知れませんが、蛇足かも
知れませんね。
「解剖」「冷蔵庫」「ガス」
最近はなかなか授業で解剖ってやつぁやらないんだろうね。下手したらPTAとかから
すごい突き上げ食らいそうだし。僕が小中学生の頃も当然普通にはやらなかったん
だけど、小学校で必修クラブに科学取ったやつだけ鮒の解剖したんだよね。なにぶん
大分前の事だから、しっかりは覚えてないんだけど、なにかで麻酔かけたのかな。心
臓はまだ動いてた記憶がある。
気づくと、僕は台の上に縛り付けられていた。よほどしっかり固定されているんだろう。
ほとんど身じろぐ事も出来ない。ほんの僅かに動かせる頭を上げて足の方に目をや
る。腹が縦一文字に大きく切り開かれている。僕は大きな吐息とともに頭を戻し、目
を閉じる。痛くもなんともない。局所麻酔をかけられているのだろうか。突然、頬に生
暖かい感触を覚える。びくっとして目を開く。
「これが君の心臓だよ」
囁く声。心臓はなぜかびくんっびくんっと脈動している。だけど、心臓を摘出されたの
なら、僕はなぜ意識があるのだろう。そう考えると遅まきながら意識が遠のいて…
コンッコンッ
「大丈夫ですか?」
「え?あ、ああ…ああ、大丈夫です。すみません」
「随分うなされてましたよ」
「はぁ、ちょっと悪い夢を見て」
山道でガス欠したので、JAFを呼んだのだが、うたた寝していたようだ。JAFの人に寝
顔を見られたのかと思うとえらくばつが悪い。
明け方近くなって、家に帰って来られた。僕はまっすぐ冷蔵庫に向かい、扉を開ける。
「お前が見せたのかい?あのヤな夢」
そこには、いくつかの肉片がタッパーに詰められて鎮座している。
この間釣って、自分で捌いたチヌな訳だけど。
頭の部分は実話なんですが。
家に帰って来た時点で、猟奇殺人に走ってると勘違いしてもらえてたらこれ幸い。
そう甘くないかなぁ。
次のお題は、「カクテル」「聖書」「ケーキ」でお願いします。
>>392-393 チェーンを利用して繁殖するチェーン。
なかなか面白い発想ですな。
後半ちょいと説明的な気もしないでもないですけど、しかたないでしょうね。
>>392-393 霊の存在を信じている人間の方が美味いってのは
なかなか面白い発想だと思った。
確かになんとなく、そっちの方が美味いような気がする、ような気がする。
>>397 チヌなんて魚知らなかったせいで(普通の人は普通に知ってる魚なのか?)、
釣って捌いたって書いてあるから魚なんだろうなーって思ったことは思ったけど、
「ああ、猟奇殺人オチなのね」から「うわーだまされたーっ」ってなる時の
ショック度みたいのが薄れてしまったよ(表現分かりづらくてスマン)。
「カクテル」「聖書」「ケーキ」1/2
「カクテル、もう一杯ください」
「お客さん、飲み過ぎじゃないですか?」
「ええ、いいんです。もうどうでも」
「ハッピバースデー、お客様」
「何ですか、いきなり? 何です、そのケーキ?」
「今日、お客様の誕生日ですよ」
「誕生日・・・。そういえば今日。ええ僕の誕生日です」
「自分の誕生日も忘れるなんて、よほどの悲しみだったんでしょうね」
「まあね、確かにこんなに悲しく、寂しい気持ちになったのは初めてですよ。
・・・いや待った、なんで僕が悲しんでるって知ってるんです? いやそれより
なんで僕の誕生日知ってるんですか? 今日初めて入った、ふらりと立ち寄った
だけの店なのに。なんで?」
「あの方は分かってましたよ。あなたが今日この店に立ち寄ることを」
「は? 誰、あの方って? 分かってたって? そんな馬鹿な」
「あの方はあなたのことをずいぶん心配しておられました」
「僕のことを心配してる? そんな人もういないよ・・・」
「あの方は私に聖書の話をしてくださいました。『死は決して
全ての終わりでも永遠の別れでもない』と」
「だから誰です、あの人って? 馬鹿馬鹿しい」
「カクテル」「聖書」「ケーキ」2/2
「あなたの周りにもいたでしょう、聖書を好んで読んでいた人が」
「・・・え?・・・まさか・・・」
「そうです。あなたの奥さんですよ。先日亡くなった」
「そんな・・・そんな馬鹿な話」
「ここはそういう店なんです。死者からのメッセージをお届けするんですよ」
「そんな・・・美咲・・・」
「さあ、元気を出してください。奥様もそれを望んでいらっしゃいます」
「・・・ええ、・・・そうですね。分かりました。もう大丈夫です」
「よかった。きっと奥様も喜んでらっしゃいますよ」
「ええ。そうですね」
「それからもうひとつ奥様から伝言が」
「はい」
「『なんであんな写真、遺影に使ったのよ!? 最低だわ!!』だそうです」
「・・・・そうですか・・・」
■ああっ、最後に悪いクセが・・・。ま、僕らしくていいと思います。
次は「立ち読み」「氷」「答え」で。
>>399 むむぅ、チヌはマイナーだったのか…
釣りしないわたし知ってんだから大丈夫だろ、って早合点しちまったかなぁ。
無難に鯵とかにしとけば良かったかなぁ。
まぁ、それはそれとして、読み直すとちと今回荒かったというか、荒すぎたなぁ、
と反省(普段から荒いからね(笑))
もうちっと、あざとくない程度に緊迫感ある書き方にするべきだったかな、と。
>>400-401 ひゃほー(笑)
こゆの好き好き(笑)
ええ話と思いきや、「それは置いといて…」とばかりに。
こう…免許の写真並にいけてない写真だったんだろうなぁ、それほど怒るからには。
「・・・・そうですか・・・」の時の表情見てぇ。
しかたがないから妄想するさ、イメージファイト。
科白だけの掛け合いがシンプルでぴったしです。
《復旧後追記》
かぎろひさん、ご苦労様でした。
datでは、393までしか残っていないようなので、手持ちのログで404まで補完して
おきました。
チヌぐらい知ってるだろ、普通は(w
>>402 >>403 そうなのか、有名な魚なのね。
そう言われても不思議な感じがするくらい、ほんと名前すら聞いたことも
なかったもんで。無知でごめんなさい。
>>前スレ83様
補完有難うございます!
本当は*.datをそのままUPしてくれる復旧屋さんの降臨を待つべきなのでしょうが、
何分他のスレがどんどん立てられてしまっており、次善の策として別スレ番号にて立て直しを
させて頂きました。これからも怖い話をお願い致します。
かぎろひさん、お疲れさまでした。
おかげ様でこれ以上ない形でこのスレ復活できました。
ほんと頭さがります。感謝。
>>404 関東ではクロダイ、関西ではチヌだったような
408 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/05/22 05:09
>>407
当たり
激遅レス
7は独りで氏ね!!
かぎろひさん、ありがとう!
かぎろひさん。お疲れさまです。
また怪談書かせてもらいます。
412 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/05/22 11:03
hage
救世主(メシア)に敬礼!
414 :
怖い話好き ◆6EMa.ZlvQM :03/05/23 04:57
「立ち読み」「氷」「答え」
猛暑の同人誌即売会で、僕は某大手サークルの新刊見本誌を立ち読みしていました。
突然「氷をください」と声を掛けられ、びっくりして振り返ると、アニメキャラ?のコスプレをした
けっこう可愛い女の子が立っていました。僕はこのサークルの関係者と間違われたのだと
思い、「いや僕はお客なんで」と答えてその場を去ろうとしました。すると彼女は、僕の腕を
つかみ、「違うんです。氷が欲しいんです。お願いです。氷をください」となおも言います。
僕はわけが分からないのと、もしかしてこれはちょっと頭の不自由な人なのではないかという
恐怖とで動けなくなってしまいました。まあ彼女に一目ぼれしたってのもあるんですが(笑)
それで、「氷?氷ねぇ…じゃあ売店にでも行ってみようか?」と彼女に話しかけると、彼女は
こくりと頷きました。彼女に腕をとられたまま、ふたりして外、売店を覗いてみました。
すると運良くロックアイスが売ってましたので、彼女に「これでいい?」と訊ねたところ、
彼女は首を横に振ります。「それじゃ…ちょっと足りないかな。もっとたくさん必要なんです」
「たくさんて言ってもねぇ…」すると彼女は、「私、心当たりがあるんです。この近くに…」
数分後、僕たちは人気のない冷凍倉庫の中に立っていました。外の猛暑とは全くの別世界、
零下30度の世界がそこにはありました。でもなぜ彼女はこんな倉庫に出入りできるんだろう…
「ねえちょっともう限界だよ、僕、外で待ってるから…」
「駄目〜一緒にいるの〜」彼女は甘えた声を出していましたが、その口元は妖艶に微笑んでいました。
「そんなこと言っても!」しかし僕の足は動きません。この寒さで凍り付いてしまったかのように。
なぜ彼女は寒くないんだ?なぜこんなに嬉しそうなんだ?何故?何故?
薄れゆく意識の中で、僕はその答えを知りました。
彼女はコスプレで白装束を着ていたのではなかったのです。
■「鯖」「四時」「財布」はどうでしょうか?
鯖djのに直して頂き有難うございました。精進します。
「鯖」「四時」「財布」1/1
四時か、遅いな。やっぱり彼女は時間通りには来ない。
ぎりぎりどころじゃない、いつも必ず遅れる。
もちろん僕は怒ったりはしない。
僕はひょんなことから知り合った彼女のことを愛してるからだ。
のっさりとした動作で彼女は現れた。これもいつものことだ。
ちゃんと彼女の手を握って、僕らはいつもの場所へ歩き出す。
彼女は一言も発しない。これもいつものこと。
ほどなくして、河原に着いた。僕らはさっそく辺りを探し始める。
いろんな魚が川を泳いでる。一匹が僕たちの足元にやってきた。
「はて、これは何て魚だろう? 鯖かな(笑)」と僕一流のギャグ。
もろすべり。彼女は無反応で川を漁り続けてる。
彼女てば、いつもそうだ。いつも僕が一人ではしゃいでる。
はっきり言えば、少し寂しいけど、でも僕は彼女のことが好きだから問題ない。
そんな時、僕はうっかり財布を川に落としてしまった。
僕はひょいと財布を拾い上げた。足元に落ちたのに、彼女は拾ってもくれない。
それとも気が付かなかったのかな。魚がはねただけだと思ったのかも。
どんなに川を漁っても、捜し物は一向に見つかる気配すらない。
しょんぼり肩を落とす彼女を見かねて、僕はせめてもと声をかける。
「まだ諦めることないよ。きっと見つかるって。僕が見つけてみせるから。
頑張ろう。ね、もう少し」僕は彼女の肩を抱いて励ました。
ちょうどその時、僕らの足元にバレーボール大の丸い物体が流れ着いた。
「あ! やっと見つけた」足元に流れ着いた彼女の頭部がそう言って笑った。
■3列目はスレの救世主に敬意をこめて。
次は「自転車」「ポケット」「庭」でよろしく。
「自転車」「ポケット」「庭」前編
うるさい。
さっきから一体なんなんだ。
ずっと庭のほうから聞こえる音。
カリカリ、と金属同士が触れ合うかのような音が1時間以上も続いている。
しかし苛立ちを抑えきれずに庭に出ていってもそこには何も無いのだ。
そこにあるのはいつもとまったく同じ風景。
物干し。いくつかのプランター。去年から使われていない犬小屋。通勤に使っている自転車。
それだけだ。
舌打ちをして部屋の中へと引き返す。
すると再びその奇妙な音が鳴り始めるのだ。
気にしないことにしよう。
…そう心に決めても苛立ちは募るばかり。
やがてそれを抑えきれなくなって再び庭へと出てしまうのだった。
そんなことを2度、3度と繰り返していくうちにふと気がつくことがあった。
自転車の位置が変わっている。
…変わっているといってもほんの十数センチというレベルだ。
気のせいだといわれれば納得してしまうかもしれない。
だが、せっかくの休日に多少なりとも邪魔をされピリピリとしていたためか
その些細なことも目に付いてしまっていた。
音はこれと関係があるのだろうか。
そう考え自転車へと近づいていく。
すると突然、前輪のすぐ脇にあった茂みがかすかに動いたではないか。
何かがいる。
「自転車」「ポケット」「庭」 後編
それが危険な生き物ならば厄介かもしれない。
そう思ってポケットをまさぐると、ボールペンが一本はいっている。
素手で茂みをいじるよりは安全かもしれない。
深くは考えずにそのボールペンの先を茂みの中へと突き入れた。
ばき。
いやな音がした。
ボールペンをゆっくり引き抜くと、茂みの中に隠れた部分が
そこから鋭い何かできられたかのようにそっくり無くなっていた。
得体の知れない恐ろしい何かがいる。
そう考えると頭の中は恐怖でいっぱいになった。
少し早いが寝よう。寝てしまおう。寝ればこいつもどこかに行ってしまうに違いない。
脱兎のように部屋に戻ると、家中の鍵をしっかりと閉め、布団の中にもぐりこんだ。
次の日。目を覚ましてしばらくは恐怖に慄いていたものの、あの音がしないことに胸をなでおろした。
会社に行こう。誰でもいい、誰かに話せばきっとあれが他愛も無いものだったことがわかるだろう。
手早く仕度をすませ、家の外に出る。
勇気を振り絞り、自転車のハンドルをつかんでぐいっと自分のほうへ引っ張り寄せた。
ほら、何も無い。
…という台詞は喉の奥に飲み込まれてしまう。
茂みから現れた前輪のスポークの一本一本に。
プラスチックの破片がびっしりとはりついていた。
今もその自転車は彼の自宅の隅に置かれているそうだ。
初書きこみで初投稿。
しかも拙すぎる文章で申し訳無いです。
話もありがちだし…。
でもつい参加したくなってしまいました…。
お許し下さい。
お題は「中指」「湿布」「酒瓶」でお願いします。
>>416-417 いや文章が拙いなんてことないですよ。てかむしろ文体けっこう好み。
読みやすくてイイ。
前半の謎が謎呼ぶ(?)展開はなんか不安感が煽られてよかったけど、
後半、というかオチの意味がよく分からなかった。
結局どういう話だったんだろ?
・・・とか書きつつも、オチが分かってないのは僕だけかもしれないと、
チヌの件以来、感想書くのもちょっとためらう。
206以降の感想(1/2)
>>206 この不景気、絶対にありえない企画だとは言い切れないですもんね。
好み的には、ツアコンには怪奇現象は切って捨てて欲しかったかなぁ。
>>207 人間の目玉かと思ったら幽霊の目玉かYO!(笑)
この手の一発ギャグみたいなのもあってこそ。
>>208 女は人間なんですよね?
イメージ的には、カプコンのヴァンパイアで宜しいのでしょうか?(笑)
怖がられない怪物ものは、好きだなぁ。
>>224-225 あー、わたしも212の続き書こうと試みたんですよねぇ。
ただ、浮かんだアイデア上、俺の部屋が205、男の部屋が203じゃないとどうにも
まとまらなかったから断念(ひ弱)
こーゆー即興のお遊び(?)もたまにはやらないとね。
>>229-232 最後の描写で「雪」が人間である事がわかるので、逆戻りして「ああ、『琴』と『栞』も
人間か」とわかる構成ですね。
いっそ、「雪」への描写も避けて殺したのが3人である事も伏せると、難解ながら
わかる人的にはニヤリ度が高かったかも(その時はわたしも理解出来ない公算
高いけど(笑))
>>242-245 羊の鳴き声が謎いかなぁ。
でも、意識がないと言われてる人間に意識があれば、ってのは、早過ぎた埋葬的な
恐怖感がありますな。
>>248-256 確かにエスプレッソさんの言うように謎の番号振り(笑)
最後がご自分でも言われるようにぐじゃっちゃったのが残念。
巧くまとめるとなかなか面白かったんじゃないかなぁと推測。
206以降の感想(2/2)
>>261-263 結局、似た者夫婦とでもいうか…(笑)
殺す前にわかれば仲良く犯罪に走れたかも知れないのに(おい)
>>264-265 これ、実際には「白い骸骨のような手が」云々の怪奇現象なんて起こってない、
って解釈で良いのかな。
とりあえず、そう解釈して、なかなか面白いように思いましたが。
後、細かい事なんですが、「泥」という字を見るだけで嫌な気持ちになるのなら、
文章中「ドロ」等で書いた方がそれらしいかも。
>>266-273 確かに、「重利」を「エリ」は苦しいかなぁ。
個人的趣味では、最終的に結局「重利」が本来男か女か読者にわからない終わり方
だと面白かったかと。
>>275-276 不器用なふたりが交流して、少しだけ変化があったけれど、世界的には結局
同じ最後が来てしまう。
ただ、「ありがとう」という言葉が残されたか残されなかったか、それだけしか
客観的世界には影響はなかった。
良いなぁ。
>>278 日常、実にありそうな風景から、非日常へのジャンプ。
中から掃除機を見るのは確かに新鮮な経験っぽい(笑))
>>279 おお、専門分野(?)系の人がそっちの知識とかで書いた文章は違った雰囲気が
するねぇ。
なんか、初めてのベトナム料理、というか(笑)
僕の兄が、昔は快活な体育会系だった、と言っても信じてもらえないかも知れない。
今の兄は自分の部屋に引き篭もり、身なりなど一切構わない生活をしているからだ。
兄は大学卒業前、就職も早々に決まり、週に何日か叔父の工場でバイトをしていた。
かなりきつかったようだが、結構なバイト代を出してくれたので、週末を派手に遊べる
のに惹かれたらしい。
だが、来月から就職先の研修も始まろうという矢先だった。兄は工場の機械に挟ま
れて右手の中指を失った。
それからは下り坂としか言いようがない。退院後会社には出たが、仕事の事はまるで
わからず、また怪我の事で敬遠もされたようで、いたたまれず間もなく退職した。
彼女もいたのだが、怪我の事が原因か、はたまたその事を彼女が嫌がっていると考
えた兄の言動が原因か、とにかく彼女の方から離れていってしまったらしい。実際、
別れる寸前の彼女への嫉妬や執着ぶりは以前の兄からは考えられないものだった
ので、後者のウェイトも大きいのかも知れない。
それから、兄は徐々に外出もしなくなり、気づけばこうなっていた。
兄は自分の切断された中指をホルマリン漬けにして部屋に置いている。普通は病院
で処分されるのだろうが、拝み倒してそうしてもらったのだ。院長が父と懇意であった
お陰でもあるのだろう。
「こういうのを置いておくと、彼のために却って良くないと思うんだけどねぇ」
時折兄の部屋を垣間見た時に、兄がその瓶をさも愛おしそうにさすっていたりするの
に出くわしたりすると、院長の言葉が今更心を刺す。しかし、言い訳かも知れないが
当時の半狂乱な兄をなだめる術がそれ以外になかったのも事実なのだ。
出張の帰りの新幹線で、僕はずっとこんなような事を考えていた。時間が空くといつも
そうだ。多分、父や母もそうなのだろうと思う。叔父は…事件以前はよくうちに遊びに
来たりもしていたのだが、今は工場もたたみ、郷里の方に越していったらしい。僕た
ちの前で泣きながら土下座した叔父の姿を思い出すと堪らない気持ちになる。
ちょうど夕食時に家に帰ると、びっくりした。兄が食卓についているのだ。しかもきちん
と身奇麗にして。何年ぶりの事だろう。しかも、ぽつぽつとだが、まともな会話も出来
る。父も母も涙ぐみながら兄にビールを勧めたりした。グラスを持った右手はなぜか
人差し指から薬指にかけて湿布でぐるぐる巻きにしてあった。
「兄さん、どうしたの?」
訊いてから、しまった、と思った。なにもこんな時に手の事に触れなくても、と。しかし、
兄は気にする風もなく、
「いや…ちょっとドアで挟んで…まぁ、面倒だから、ぐるぐると、さ」
ここで会話を打ち切ったら、逆に右手の事を意識してるのがまるわかりなので、びくび
くしながら、「ひどいのかい?」と更に訊いた。
「いや…それほどでもないんじゃないかな…すぐに治ると思う」
食事が終わると、兄は自分の部屋に戻った。僕と両親は期待と不安がない混ぜにな
った表情で見送った。今日だけなのか?それとも…?
次の日、日曜日。朝食の席にも兄はいた。
「今日は…ひさしぶりにちょっと…散歩でもして来ようかな…」
父と母は呆然としている。人間嬉しい事が重なり過ぎるとそうなるのだと思う。
朝食後、兄は支度をすると言って、部屋に戻った。
ガシャーンッ
突然、兄の部屋からなにかが砕けるような大きな音がした。
僕たちは慌てて兄の部屋に向かった。ノックをしても呼んでも返事がない。ノブをまわ
す。錠はかかっていなかった。恐る恐るドアを開ける。ぷーんと刺激臭が鼻を突く。部
屋の真ん中には顔をひき歪め息絶えている兄がいた。そばに「あの」瓶が砕け散って
いた。しかし、「中指」は見当たらない――後でわかった事だが、それが兄の気管に
詰まって窒息させていたのだ――
ふと、僕は本棚の脇にあるもうひとつの瓶に気づいた。それは、どこかから拾って来
た酒瓶だろうか。中には指が四本泳いでいた。びくっと再び兄の方に視線を戻した。
こぼれたホルマリンがフローリングを流れ、ぐずぐずになった湿布はばらりとほどけた。
人差し指と薬指の間には暗紫色のごつごつした指がミシン糸で縫いつけられていた。
今回は構想段階で1レスに収めらんないの見えてたんで、素直に2レス。
また異常心理ものです。
一応怪奇現象も絡んでるけど。
うーん、性格描写とか嘘臭い気もしまくり。
>>414 幽霊なのかと思ったけど、今、頭を「出張雪女」という言葉が…。
「出張ヘルス」みたいなもんか(違う)
最近の不景気で雪女も営業大変でキャッチしたりするのかも(営業…)
>>415 あ、わたしも今回その手のリスペクトな事しようとしててすっかり忘れてた…。
まぁ、わたしがやったら異常にわかり難い仕掛けになるの必定なのでやらない方が
良かったかも(説明しても、「んー?」みたいな)
内容の方はちょっとアレーあたりを彷彿とする不条理良い話。
実はこういうのも好き(笑)
>>416-417 付喪神みたいなもんなのかしら。
でも、すっきりしゃっきりとは解決しない話と読んだ方が良いのかな。
落ちもヴィジュアル的に不気味で巧いなぁ。
すきっとした読み易くてわかり易い文章(無論良い意味で)やと思いますよ。
つ訳で、これからもがんがん書いて下さい(笑)
>>419 いや、あれはわたしの配慮の足りなさ、という事で、ひとつ(しかも方言だったかっ)
ちゅか、今朝、「××では、Aとも読めるし、Bとも読めるし、どっちよ?」って指摘
される夢見たよ(笑)
次のお題は、「ラベンダー」「セーラー服」「二代目」でお願いします。
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
>右目からエスプレッソさん
最後の落ちのわかりづらさは
文章力というか表現力の足りなさのいたすところです・・・。
ボールペンがプラスチックでできてて、
そのプラスチックがスポークに貼り付いてた。
つまり自転車は…と、そういう話です…。
>前スレ83さん
雰囲気をしっかりと感じさせる文章はさすがの一言です。
見習わなくては…。これに懲りずまた書かせていただきたいと思います。
ちなみに自分の話はそういう解釈でばっちりです。
自転車に驚いた主人公がそのまま自転車を放置して終わり、という…。
427 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/05/27 20:33
ageとく
前スレ83さん、感想ありがとう。
「重利=えり」はやはり苦しいですか……
中学時代に重利という女子生徒がいたし、ATOKでも変換できたからそんなにアン
フェアじゃないと思ったんだけどな。「英利」にした方が良かったか……
それから、
>>168-169だけど、これ某ミステリ作家の小説で同じネタを扱った作品
が存在していた。
僕が投稿したものは、大学の先輩で現在弁護士をしている人から聞いた話を元ネタ
にして書いたもので、別にパクッたわけじゃないんだけど(チョット言訳がましいか)。
ただ、これについては法解釈論上の疑義もあるようです。公訴時効の制度趣旨に悖
るという理由からです。判例(過去の判決の実例)もまだ出ていないので、実務上
もこのような裏技的措置が取られるのかどうかは定かではありません。
>426
いや、その状況は判るんだけど、それが何を意味しているのかが判らない
鈍くて申し訳ないのですが、気になるので解説希望
>>429 ひらたく言っちゃうと自転車が生きて(?)て
ボールペンの先がなくなったのは自転車の前輪が
すりおろしたから、ということです。
>430
判りました
レス、ありがとうございました
432 :
「ラベンダー」「セーラー服」「二代目」 ◆cBCRASH/NU :03/05/28 21:33
「……でね、その地下の妖怪に顔をメチャクチャにされたから、
二代目の校長だけ写真じゃなくて肖像画なんだって」
「えぇ〜、妖怪って何だよそりゃって感じじゃない?七不思議ってそんなもんなのぉ?」
「あ、それとね、こんなのもあるんだよ。これね、実際に起きた事件なんだって。
チョーかわいい女の子がこの高校にいたらしいんだけどさ、
なんかね、いっつも化粧とかして香水もつけててさ、フェロモン全開って感じだったんだってさ。
で、その子コクられてさ、その相手ってのが暗くていっつもいじめられてるよーな奴だったんだって。
んでね、その女の子、そいつを振っただけじゃなくてさんざんバカにしちゃったらさ、
その相手の男の子、逆上しちゃって、持ってたナイフで切りつけてきたんだって。
逃げるじゃん、当然。
で、逃げ込んだ先が更衣室で、カギ掛けて閉じ篭ったんだけど、
結局見付かっちゃってさ……
全身ザクザクに切り刻まれて、死んじゃったんだってさ。
その更衣室がどこかは訊かなかったんだけどさ、
そこのロッカーを開けると血まみれのセーラー服が吊り下がってて、
その時に後ろを振り向くと……」
「ちょっと待て!普通更衣室で着替えてる最中に、そんな話するかぁ?」
「あはは、ゴメンゴメン。
でもまあ、ホントに『実際に起きた事件』かどうかも判らないし、いいじゃん」
「いいじゃん、て………ん?あんた今、香水つけてる?」
「ううん。何で?」
「なんかさ……さっきから、ラベンダーの匂いがするんだけど」
■「納豆」「牛丼」「キリマンジャロ」でよろしく。
「納豆」「牛丼」「キリマンジャロ」1/1
「牛丼と納豆、それからキリマンジャロ」俺がそう注文すると、
店員が「あの、それはお一人で食べられるんですよね?」と言った。
店員の訝しげな表情を見て、この人は見える人なんだとすぐに分かった。
俺には見えないが、子供の霊が二人、いつも俺についてきてるらしいのだ。
この店員にはその子たちが普通の人間に見えるから、一人分しか注文
しない俺をおかしな奴だと思っているのだ。
時々、この子たちが見える人がいる。
そもそも俺には見えもしないし、感じもしない存在、それが二人の女の子だと
分かったのもそういった人たちの言動からだ。
公園のベンチに座っていたら、通りがかったお年寄りに
「二人ともかわいいお嬢ちゃんですね」と話しかけられた。
バスを降りようとした時、運転手に呼び止められたこともあった。
いちいち説明するのも面倒で、その時は子供二人分の料金を払った。
見える人は皆、その子たちが普通の人間に見えるらしい。霊だと気付く人はいない。
「ああ、この子たちはさっき昼ごはん食べたので、僕の分だけで」
俺がそう言うと、店員も納得して伝票に注文を走り書いた。
「あ、でもやっぱり飲み物くらい注文しようか、すいませんオレンジジュースを
ふたつください」
俺もつくづくお人好しだと思うが、なんとなく自分だけ飯を食うのは気がひけた。
「・・・ふたつでよろしいですね? かしこまりました」
しばらくして、さっきの店員がオレンジジュースをもってやってきた。
しかしトレイなぜかにはオレンジジュースが三つのっている。
俺の表情を察してか、店員が申し訳なさそうに口を開いた。
「さしでがましいかと思いましたが、ふたつではケンカになるといけないので。
もちろん一杯はサービスです。どうぞ」
どうやらまた一人増えたらしい。ま、別にいいか。行儀良くしてるんだぞ。
■お題の使い方が芸がなくてごめんなさい。
次は「遮断機」「停電」「ちくわ」で。
434 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/05/30 08:42
大した作品書いてなくても、書き込んだ後に誤字見つかるとへこむね。
ちゃんと推敲したつもりだったのに・・・。
ついでだから感想を。
>>422-423 怖ーっ。経緯とか性格がちゃんと描写されてることで怖さ倍増。
僕の好みとしては、怪奇要素なしで異常心理のみの方が良かった。
兄の異常行動だけで十分怖い。
>>432 何気ない日常から、恐怖の非日常へ足を踏み入れる一歩手前。
ホラーだとある意味いちばんドキドキする場面ですな。
お題が三つとも意味をもってつながっててうまいと思いました。
僕も書こうとしたけど書ききれなかったお題なんでなおさら。
誰じゃ?
おやおや、これはこれは……。
ふむ。ふむ。
ほう、ほう、道に迷って……ほう、ほう。それは難儀でしたな。
ささ、入りなされ。足元に気を付けての。
……ははぁ、暗いですか。そうですのぅ、もうすぐ日も沈みましょう。
停電?わはは、停電も何も。電気は来ておらんのです。
暗闇も心地よいものです。なに、直に慣れましょう。
いや、しかし、このような山中にお客人など、何年ぶりの事じゃろう。
さ、そこに座りなされ……あぁ、楽にして下されよ。
何?こんな山の中に独りで住んでいるのかと?
わはは。まさか、の……。
しかし貴方も物好きな方じゃな。何故こんな何も無い処に?
ふむ……廃線巡り。はは。ほんに物好きな方じゃ。
はぁ、えぇ、えぇ。在りましたよ。昔はこの集落にも列車が来よりました。
なんせ、この辺りは木しか有りませんからな。木材を運ぶ為の列車です。
何?ちくわ?
ちくわ線?
はぁ。はぁ、成る程。
この集落の名と始発駅の名を取って…あはは。それで竹輪線。
いや、儂らはそんな名は知りませんでした。何しろ列車と言えば、アレしか走っとらんのじゃから。
あぁ、表のアレを見なすったか。
アレはなぁ……まぁ……え?
……そうです。仰る通り、慰霊碑ですわい。
あぁ、そうじゃろう。大層な数です。
それだけ沢山、死んだと言う事じゃな。
……はぁ……本当に物好きな方ですなぁ。
列車の事故ですわい。ほれ、先程の。そう、ちくわ線。
いや、脱線では有りません。人が轢かれたのです。
はい。何度も何度も、事故があったのです。
遮断機?いや、当時そんな物は有りゃせんですよ。それにほれ、こんな山ん中じゃもの。
そう、最初に轢かれたのは、独り身の爺でした。
遺骸は、まぁ無縁仏と言うんですか。無事に……無事にっちゅうのも変な話じゃが……葬られました。
しかしのぅ。無縁仏と言うのは、寂しいんですなぁ。
その爺がのぅ、呼ぶんですわ。
それからですよ。次々と事故が起こり始めたのは。
はい。そうですなぁ、自殺も有りましたよ。沢山。
そうです、皆轢かれて……いや、廃線になってからも自殺はよう有りましたが。
首吊り、薬、焼死……割腹自殺も有りましたぞ。わはは。
何?死んだ場所ですか?
それはホレ、貴方の座っとる……そう、そこですわい。わは。
おや、ご気分が優れませんか?何、直ぐ楽になりましょう。
聴こえますろう?周りの慰霊碑が、寂しぃ、寂しぃと、呼んでおりますろう?
ほれ、貴方の尻の下に有る朽ちた線路が、カタンコトンと揺れているでは有りませんか。
次の御題
ジャガー バッコス 皿うどん
でどうぞ。
<プロローグ>
次の瞬間、中里誠司はとっさに横の電柱に飛びついていた。理屈ではないほとんど本能的な行動だった。それと同時に道の真ん中を、パーンと空気の乾いたような音が走った。
銃声!
電柱のかげに身を隠して第二の銃撃を凌ごうとした誠司には、ものを考える余裕などあるはずがないのに、いくつかの妄想に似た考えが頭をよぎった。
ついに敵は血迷いだした……昨日の車での襲撃といい、今日のこの強襲といい、まったく正気の沙汰とは思えない……。
自分は絶えず見張られている。夜となく昼となく、公私にわたって。
この調子では自分はいつ殺されても不思議ではないという考えが、生々しい実感となって誠司の心にまとわりついた。
ちょうどその時、一台の自動車が前方から通り過ぎようとしていた。撃たれたのは背後からだから、相手がまだ路上に佇んでいるとすれば、この車のヘッドライトをまともに浴びることになるはずだ。
車をやり過ごした誠司は、そのすぐ後ろへ飛び出し、道を横切って向かいの路地へかけ込んだ。息を切らして走りながら車の進行方向を凝視するも、人影らしきものは見あたらなかった。辺りはもとの静謐を取り戻しつつあった。
敵はおそらく、こういうことにかけてはかなり手慣れた人間なのかもしれない。最初の一撃で目的を果たせなかったと知るや、深追いせずに一旦身を引くだけの繊細さを持ち合わせているのだろうと、誠司は路地裏を歩きながら考えをめぐらせていた。
しかし、敵の正体が判然としない現在(いま)、誠司にとって状況は著しく不利である。しかも、事態がかなり切迫していると敵は感じているだろうから、躍起になって今日のような不意打ちを仕掛けてくることは想像に難くない。
昼夜を問わず、公私を問わず、常に正体不明の敵の襲撃に備えなければならない。もはや精神的な疲弊は限界に近づきつつあった。誠司は暗澹たる思いで途方に暮れた。
<1>
この日、誠司が家をあけていたのは、まさに僥倖というほかはなかったろう。
彼は、原田昭子に会うために奈良まで出かけていたのだった。原田昭子とは誠司の命の恩人である原田伸吾の未亡人である。夫の伸吾は冤罪の汚名を着せられたまま、三年前に獄中で亡くなっていた。
このまえは突然の邂逅にゆっくりと話もできなかったし、十分なこともしてやれなかった。そこで懐があたたかくなったいま、あらためて訪ねてみる気になったのだった。
近鉄西大寺駅から歩くこと二十分あまり、かなりくたびれた木造のアパートが昭子たち母子の住まいだった。
「誠ちゃん……ほんまによう来てくれた……」
信じられないというような表情で、彼の顔を仰いでいた昭子はたちまち涙ぐんでしまった。ろくな家財道具もない、茶色く日焼けした畳の六畳間を見渡し、茶箪笥の上にある位牌に気がついたときには、誠司も胸を締めつけられる思いだった。
昭子はぽつりぽつりと、これまでの経緯(いきさつ)を打ち明けた。誠司も自分が原田の無実を信じていること、そのために、裏から探りを入れていることなどを話して、彼女を励ました。
「あんたがそんなことまで……」
昭子は声をつまらせ、ただ泣きつづけるばかりだった。時間のたったわりには涙と沈黙にさえぎられて、言いたいことの半分も話せなかった。
夕方になると、子供が学校から帰ってきたので、話はいよいよやりにくくなった。それに、中学一年になる男の子の顔に原田伸吾の面影を見いだしたときには、誠司も正直なところ、いたたまれない気持ちになったのだった。
「どうせ競馬で儲けたあぶく銭だから」と言って、十万円の入った封筒を昭子に押しつけると、誠司は夜の勤めに出る彼女といっしょにアパートを出た。
ちょうどそのとき、誠司の携帯電話から着信音が鳴り響いた。受話口から聞こえてきたのは、誠司の妻である美智恵の取り乱した声だった。
「お、俊坊じゃねぇか。いらっしゃい」
ドアをくぐると、店内の喧騒をかき消すほど野太いマスターの声が出迎えてくれた。
ここはバー「バッコス」。ギリシャ神話の酒神からとった名前である。
「いつものヤツだろ、ホレよ」
カウンター席に座る前に、マスターがショートグラスに入ったカクテルを出した。
俺がマスターにねだって作ってもらった、俺専用のカクテルである。
それには手を付けず、俺はぼんやりとカウンターの上に鎮座している
ジャガーのブロンズ像を眺めていた。
ガラス玉の眼は、店内の薄暗いダウンライトの光を受けて淡褐色に染まっていた。
「元気ねぇじゃねえか、俊坊。ほれ、これでも食って元気出せや」
声と同時に、眼前に山と盛られた皿うどんが置かれた。
それにも手を付けずに、俺は相変わらず半ば放心状態のままで、
ゆるゆると視線を店内に泳がせた。
テーブル席もほぼ満員状態で、時折上がる喚声が店内の温度を少しだけ上げていた。
ありえない。こんなのって、ありえない。
すると、背後から胴間声が。
「ほれ、いい加減眼覚ませ。俺達が出来る事は、そろそろ終わりだ」
「何してるのかね、こんな所で?」
掛けられた声の方を振り向くと、パトロールの途中と思われる警官が
いぶかしげな表情で俺の顔を覗き込んでいた。
「ほら、ここは立ち入り禁止なんだよ。危険だから、早く出なさい」
言われるままに、俺はぼろぼろのスツールから立ち上がり、振り返った。
そこには、昨夜の火事で骨組みだけを残して焼失した店の残骸があるだけであった。
初めて酒を飲んだこの店。辛い事があったり一人寂しい夜に、フラッと訪れたこの店。
マスターと話し込んで朝まで居た事もあったこの店。俺が気に入っていた、この店……。
胸の奥からこみ上げるものがあり、俺は顔を伏せながら足早にその場を去った。
黒く煤けたジャガーの像が、冷ややかに俺を見つめていた。
■「動画」「援助」「ビール瓶」でよろしく。
なんか咄嗟に「心霊動画」→「横浜援交」→「田中」→「モルツ」が浮かんだ(w
444(σ゚д゚)σゲッツ!
「動画」「援助」「ビール瓶」1/2
すべての始まりは、「ネットですごい動画見つけたからうちに見に来なよ」
と美保に誘われたことでした。
大学の授業が終わった後、私は美保のアパートへ行きました。
いつものようにくだらない話をしていると、あっという間に夜になりました。
「実は、さっき言った動画って、怖いやつなんだー」と美保が言いました。
彼女はオカルト系のサイトでその動画を見つけたと言っていました。
私はそういうのは苦手だから見るのは嫌だと言ったんですが、美保はどうしても
見せたいからと言って聞きませんでした。
さっそく美保はネットに接続して、その動画を私に見せました。
モニターに映し出されたのは、どこかの街角の映像でした。
別に何を撮っているわけでない、ただ道行く人の流れが映っていました。
映像はかなり古いのか、ノイズも多く、不気味な雰囲気が漂っていました。
画面の外から、「恵まれない子供たちに援助の手を」という声が聞こえ、
カメラがそちらの方向にパンすると、街頭で募金箱を手に募金を呼びかける
ボランティアの女の人が映しだされました。
しばらくカメラはその女の人を映していましたが、すると画面の奥から
ビール瓶をもった男の人が現れ、のそりのそりと手前へと歩いてきました。
突然、その男の人はもっていたビール瓶で募金の女の人を殴りつけました。
男は馬乗りになり、女の人の顔面をビール瓶で何度も打ちつけています。
カメラはズームして、女の人の顔がぐちゃぐちゃにつぶれるのを映しています。
「何これ?! 本物?」
「ね、すごいよね。これ作り物にしちゃ出来すぎだよ。絶対本物だよ」
私はモニターに映る凄惨な光景から目を離すことができませんでした。
「動画」「援助」「ビール瓶」2/2
「ナンデ、ワタシダケ、コンナメニ・・・・・」
いきなり女の人の声が私の頭にはっきりと響きました。
「ノロワレロ、ミンナノロワレロ・・・・・」
私は奇妙な感覚にとらわれ、女の人の恨みと憎しみの感情が手にとるように
私の意識に伝わってきました。
女の人はこの映像に呪いをこめました。この映像を見たものはみんな死ぬ。
死にたくなければ、誰か他の人の顔面を自分と同じようにぐちゃぐちゃに
すればいい、と。
「ミンナ、ワタシトオナジニナレバイイ・・・・・」
「聞こえた? 私も聞いたわ。私まだ死にたくないの」
美保の声で私は我に返りました。
隣に座っていたはずの美保はいつの間にか私の背後に立っていました。
美保は「ごめん」と言いながら、もっていたバットを私に振り下ろしました。
■次は「ラブレター」「バイク」「水泡」で。
ほー
448 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/06/03 21:12
・
450 :
神出鬼没の評価人:03/06/06 05:56
451 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/06/06 06:27
2ちゃんねる2ってなに?
隔週金曜日の夕方、私のところに一通の手紙が届く。差出人の名は直江晋也。
封を切るまでもなく、たわいもない内容とぶっきらぼうな口調が心に浮かんでくる。
私にとってこの瞬間は、全てを凌駕する、生きることと等価な一瞬だ。
昨秋、放課後に直江を呼び出した私は手紙を手渡した。生まれて初めて書いたラブレター。
直江はその場では手紙を読まずに、ポケットに突っ込んでサッカー部の練習に向かった。
「後で読むわ・・」
彼のそんなぶっきらぼうなところが好きだった。
その日の夕方、学校からの帰り道、彼はバイクにはねられて死んだ。
4日後の金曜日、最初の手紙が届いた。
私の手紙の事には一言も触れず、学校での出来事やサッカーのことなんかが、
やっぱりぶっきらぼうな口調で綴られていた。
ただ、手紙の最後に『俺もお前のことは・・・』とあった。
枯れたと思っていた涙がポロポロとこぼれた。
怖いなどとは思わなかった。
ただ、私に言葉を伝えてくれた直江を、この世の誰よりも好きだと思った。
隔週金曜日の風呂上がり、私は机に向かって手紙をしたためる。
たわいもないことを稚拙な文章で、小一時間とかからず書き上げる。
一度だけ、書いた手紙を、名前はそのままで自分の住所宛に出したことがある。
手紙は配達されることなく、2週間後の金曜日には直江からの返事が届いた。
14日前に出した手紙の事が、いつにも増してぶっきらぼうな口調で書かれていた。
その日の風呂上がり、私は手紙の中で謝った。
それっきり、私は直江を試すような事はしていない。
453 :
「ラブレター」「バイク」「水泡」2/2:03/06/06 20:26
今日も私は手紙を書く。たわいもないことを、稚拙な文章で、精一杯何気なく。
自分のしていることに意味がない事ぐらいは分かる。
しかし、今の私には必要なことなのだと、そう自分に言い聞かせてもいる。
水泡のように儚く、ともすれば消えそうになる命。
それをつなぎ止めているのは、この意味のない行為なのだと、私は信じている。
だから、今日も私は手紙を綴る。この世の誰よりも大切な人に。
次は「町」「田」「蔵」でおねがいします。
鯖落ちから初めての書き込みです。
仕事の合間に書いたので、ろくに推敲もしていません。
少し長くなってしまい、一回で書き込めなかったのが痛い。
今読み直してみると、もっと削ぎ落とせたのにな、と思います。
>>445-446 相変わらず安定した上手さですね。
話の構造としてはありがちだと思うのですが
動画の描写が生々しくて、ただならぬ雰囲気。
hoshu
ほほ
425以降の感想など(1/2)
>>428 まぁ、人名使っての叙述トリックってどこまでありかは判断難しいですな。
結局、男だろうが女だろうがどんな名前だって(よほど反社会的とか人名に
使えない文字使ってでもない限り)つけられる訳ですから。
裏技の方は、(類似も含めて)否定するような判例がない限りは、(出来るかも
知れない)裏技としてありだと思います。
勿論、肯定する判例があればよりベストでしょうけど、それでいながらあまり
知られていない裏技的なものを見つけるのは至難なんでしょうね。
>>432 おお、二代目の校長の肖像だけ写真じゃなくて絵な理由、ってのはすげぇ七不思議
とかの雰囲気出た題材ですな。
>>433 何気にええ話ですな。
どんどん増えそうで少し心配だけど(笑)
こうやって寂しい幽霊の拠り所みたいになってる人とかもいるのかも、とか考えると
ちょっとほんわか。
どうでも良い話
やぁ、「納豆」「牛丼」「キリマンジャロ」で、オレンジの看板。だけど名前は吉田屋。
とかやろうとしたんだけど、佐賀を馬鹿にした話になって怒りを買いそうだったので
やめました(笑)
425以降の感想など(2/2)
>>435 どもす。
そこらへんどうするか確かにちと悩んだんだけど、脳内設定に突き動かされて
超常入れ。
でも、確かに両方盛っちゃったのは欲張りだったかも。
>>436-437 滅びるまで変死が続く、って情景は怖いですなぁ。
ただ、「そこ」ってのが結局どこなのか微妙に気になったり。
最初の爺さんが死んだとこに霊が集まって、迷い人に家を幻視させたのかなぁ、
とも思うのだけど、違う気もするし。
>>442 店と店の記憶、マスターが、常連さんを慰めるために化けて出た。
ええ話〜。
実はマスター自身は火事に巻き込まれてなかったりすると(つまり化けて出た
マスターすらも「店の記憶」)わたしの好みにジャストフィットだったりするんだけど
(まぁ、そういう読み方も出来ますわな)
>>445-446 うわー、博愛精神で働いている(であろう)ボランティアの人間の断末魔の呪い、
ってまた随分とブラックですなぁ。
そこがすごい好き(笑)
>>452-453 ほんの少しだけ、主人公の狂気によるのではないか、と考えてしまう、ひねくれ精神。
昨今ありがちに電子メールではなく、古典的に手紙であるところが好感度高し。
「町田蔵?知らないなぁ」
「うーん、確かにちょっとマイナーだけどさ。ネットとかだとちょっと有名なんだぜ?」
「ネット、ってあれか?2ちゃん」
「そそ、オカ板ってあってさ」
「ふーん。で、えーと、なんだっけ?十六人殺しだっけ?」
「そう。そもそも、ある日どっかからふらりと流れて来た女でさ。空家の蔵に住み込ん
で、しばらくは村人に恵んでもらったりお供え物パクったりして食いつないでたんだとさ。
ところが数ヶ月後の深夜、突然、『あたしはこんなところにいる人間じゃないんだー』っ
て叫びながら村人を惨殺してまわったんだけど、事態に気づいた村人が発砲した猟
銃が頭部に命中して敢えなく頓死、だとよ」
「なーんか『作り』くせーよなー。騙されてんじゃねーの?俺、そこそこそういうの詳しい
方だと思うけど、今までそんな話聞いた事ねーもん」
「ほら、丁度時期的にさ。例の三十人殺しの直後でさ。公にしちまうと更なる模倣犯を
生むんじゃないかと危惧して当局が緘口令を敷いたんだって」
「うわー、ますます嘘くせーじゃねーか。当時だってそうそう緘口令とかにゃならなかっ
た、って聞いた事あんぞ?」
「ま、でもだ。これ見ろよ。その村の周辺地図、及びアクセスガイドだぜー?」
「ほほう」
「しかも、すでに現地に行って来た人もいてさ。その人言うには、確かに墓地の一角
に16基の墓が固まって並んでて、全部没年月日が一緒」
「おおう」
という事で、俺と言い出しっぺの久保、そしてこの手の話好き仲間の倉田も加えて三
人で現地に向かった。
しかし、寂れてはいるもののまだ住民はいる。下手に動き回れば不審者だ。だから、
夜まで身を潜める事になる訳だ。ところがこの村の外部との足は昼前と夕方、最寄
の町からの一日ふた往復切りのバスのみ。つまり、一旦夜までこの村にいれば、次
の昼前まで完全に拘束されちまう事になる。ガセだった日にゃえらい目だ。
警戒されれないように昼前のバスで来たんだが、これでまた適当な頃合まで時間を
潰すのに難儀する羽目になった。別に珍しい寺社仏閣の類がある訳でもなけりゃ、田
舎の風景を楽しむにも、そこらへん廃田だらけじゃ気分は滅入るばかりだ。
しょうがなくぶらぶらしてると、久保が突然、「あっ、ここ……」と言って立ち止まった。
「んだよー」
「ここ、ここ。ほら、例の女が住みついた、って蔵」
「ほーん。知らん間に目的地のひとつに到着かよ」
「どうするよ?」
時計を見た。午後一時半。随分時間潰ししてた気がするのに全然時間が経たない。
結局、こそこそ辺りを見回して人気がないのを確認してそっと蔵に近づいた。蔵の扉
を駄目元で押してみる。ぎぃぃと錆びついた音をたてて辛うじて動く。
「おいおい、いくらなんでも不用心だな」
入ると、ほこりと蜘蛛の巣、カビのオンパレード。なるほど用心もなにもない。しかし、
廃棄されたのか元からなかったのか、件の殺人者の生活の跡もまるで見られない状
況の一階きりの蔵を真っ昼間の陽光の下眺めてもまるっきり感慨とかがない。
こうなればついでとばかりそのまま墓場にも行った。なるほど同じ日付の入った墓の
一群はあったが、これまた昼日中に見ても、どうにも盛り上がらない。
「んー。やっぱ、夜まで我慢するべきだったかね?」
「だなぁ……」
「なぁ、久保。なんて名前だっけ。その殺人鬼」
「忘れんなよー。倉田真知だよ」
「そっか。とりあえず、夕方のバスで帰らないか?久保も町田も良いよな?」
この三人で今でも色々怪奇スポット巡りしてるんだけど、その初期の頃の失敗談。
461 :
前スレ83:03/06/11 21:48
やふー。
大苦戦。
お題見た瞬間に「町田蔵」って人名が浮かんだまではそう悪くなかったと思うのだ
けれど(そうか?)、なんかまとまらず、二三日推敲しながら寝かして悪足掻き。
でも、どうしても化けないんで、ギブして恥を晒しまする。
次のお題は、「かっぱ」(字・意味ご随意に)「水虫」「結婚」と6月らしく(嘘吐け)
お願いします。
町田町蔵?
>>462 おわ、そんなアーチストが存在するとはっ。
ますますはじぃ〜。
いやはや。
8月。有給を使いきり、お盆前に退職した。私は休暇を使って、母方の実家がある
はずの九州のとある田舎へ来た。一人旅などは、2年前に妻と同棲して以来初めて
かもしれない。
ここには小学2年生の時まで住んでいたのだが、大阪へ転校してからは、祖母の
葬式の時にも帰らなかった。もう20年近く経つはずだ。今その家に住んでいるの
は顔も覚えていない親戚で、尋ねる予定も無い。遠くから覗いて、懐かしむぐら
いはしてもバチはあたらないだろう。
田んぼが並ぶ農地の東には用水路がまだあった。菊水川に注ぐ小さな用水路で、
今日も夏休みの子供たちが2・3人、タモや釣竿をもってエビガニかフナでもとっ
ているようだ。20年前は土盛りの土手だった用水路はコンクリで固められていたが、
子供の無邪気さは今も変わらないようだ。夏の白昼の日差しを乱反射させる水面に、
しばし自分の子供時代を映していた。
「水虫とってんだな」その声で我に返ると、隣で欄干から私と同じように子供を
見ているおじいさんがいた。
思い出した。
皺が増え、頭髪がつるりとなくなっているが、小学校の私の先生だ。「オ〜、ぼ
うずら、うら盆に水に入ると河童にひっぱられるぞ!」授業中に何度もされた戦
争の話はまだ覚えている。川沿いの河童神社の話も先生から聞いた。浦島太郎のよ
うに、河童の国に引っ張られるといつまでも子供のままなんだとか。成長しない子
供は、いつしか河童になって、また次の子供を引っ張るんだとか。河童が一人子供
をひっぱれば河童が一人の子供にもどって、家に帰れるとか。河童神社があるここ
ら辺の子供は、大なり小なり河童を盾にあれこれと叱られたものだ。
声をあげている先生を横から見れば、歯も少なくなっているようだった。子供たち
は負けじと「水には入ってないよ-----ぅ」と声をあげる。
私は、ふと少年時代に水難事故にあった同級生を思い出していた。
用水路の土手は、当時は文字通りの土盛りだった。お盆の台風で増水した川淵に、
虫がゾロゾロと這い出して来たのを仲間と見に行った時――――――――。
―――――――――屍体はついぞ上がらなかったはずだ。
“河童に引っ張られた”無邪気な子供は口々に噂していた。
先生は20年近く前の生徒の顔を覚えているだろうかと思い、怪訝な顔をされる事を予想して私は声をかけた。
「おひさしぶりです、新森先生。」
「おお、ひさしぶりだねぇ。」予想を裏切られた。怪訝な顔など微塵も見せずに微笑み返してくる先生。
教師根性と言うべきか、私の顔を覚えていたことに驚いた。私は例の事故の後に、
すぐに引っ越したわけだが、どうやら先生もその後すぐに退職したと聞いている。私た
ちが最後のクラスなわけだ。事故のことと言い、印象に強く残ったクラスであることには違いない。
しかし、新森先生の記憶が明確なのはそれが理由ではないようだった。
先生は「奥さんは元気かね?」と私に問いかけた。
他愛も無い日常会話だが、私は“ええ”と答えつつ、なぜ、先生は私に妻がいる
ことを知っているのだろうかと疑問が湧いた。
「村瀬君が、2年前に神社で結婚式を挙げて以来だからね」
私は同棲中の妻と、まだ藉は入れてない。結婚式も挙げていない。それに・・・
「先生、村瀬は・・・」
「ん?」
―――――――――20年前の八月、台風の翌日に行方不明になった子供の名前だった。
次のお題は 「ガラス窓」 「テレビ」 「水の流れる音」 です〜♪
(ハフー。ムズかし。初投稿でしたっ)
466 :
あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/06/13 00:59
>466
ふたつとも、「入れ替わった」って話です
>>467 ごめん。もうちょっと具体的に教えて。
荒らすつもりは毛頭ないんだけど、ホントに意味がよく分からんの。
読み手の解釈に任せるのもいいけど、作者がどう考えてたかある程度知りたい。
>>468氏
「腑に落ちない話」にしたかったのです〜。読後の消化不良感とかも含めて。
理解難なトコは拙者の文章力不足です。スマんス。
>>467氏
解説ありがとうございます。
(あらためて459-460のオチが解かりました、私。(^_^;) )
草々
>作者がどう考えてたか
これは、作者さんじゃないので言及しません。
ただ、筋としては
前者
町田と倉田が入れ替わってます。
この部分がキモで、曰く有り気な前振りは読者の推理を避ける為のダミーかと。
後者
浅く読めば、単純に村瀬が河童と入れ替わってます。
しかし踏み込んで読むと、主人公も入れ替わってるような…。
……確かに、作者さんの意図が知りたくなってきた(w
さらに、「河童にひかれた子はずっと子供のまま」とか、魅力的な話も出てるし。
これ、もっと練り込んで書けば、かなりレベルの高い話になるのでは?>作者さん
ありゃ、もう作者さんの見解が出てたのか…。
レスしてくれた人サンキウ。
>>464-465の方がいまいちよく分からん。
「町田蔵」が「倉田真知」に変わったのと
登場人物に町田と倉田がいるのはどう関係があるんだろう。
ま、もっかい読んでみます。
>>266-273について賛否両論あるみたいだが、叙述トリック云々よりも筋の部分が実はおもしろい。
内容はオカルトというよりも、サスペンスホラーに近いが、霊が出てくるありきたりな怪談よりよっぽど怖い。それでいて、霊の存在を匂わす部分もあってなかなか心憎い。そういった点が俺が評価した理由。
ただ、所々おかしな表現も見受けられるので、もう少し推敲をキチンとした方がいいと思う。
>>436-437は独特の雰囲気がいい。
まあ、筋自体はよくある話だが、爺さんの朴訥とした語り口調がかえって怖さを引き立てている。
白々しい情景描写にたよった作品とか、やたら解釈の難しい作品よりも、こういった文章の方が怪談としては味わい深いものを感じる。
とくに最後の一行はかなりいけてる。
あと、爺さんの身なりや顔かたちなどの描写があればもっとよかったのではないか。
>473
評価ありがとう。
でも、最後のキメ台詞で「有りませんか」って……やってもた(鬱)
475 :
左目からカプチーノ:03/06/13 04:37
「ガラス窓」 「テレビ」 「水の流れる音」
「番組の途中ですが、臨時ニュースを申し上げます……」
中学生日記を観ていたら、突然飛び込んできた無粋な画面。
「ったく、良いところなのによぅ」
その時、部屋のガラス窓に激しく水の流れる音が……。
「こりゃ、いい雨だわい。いっちょやるか!」
と、俺は服を脱いで全裸になり、弱酸性ビオレと洗面器とタオルを持って庭に出た。
これでシャワー代が節約できる。
だが、雨に打たれた俺の体に異変が起きた。
俺の体が溶けだしたのだ!
「あ、あれえぇぇぇ〜」
「――この雨は危険です。皆さん、くれぐれも体に当てないようにお気をつけください」
テレビの画面から、興奮しながら危険を訴えるアナウンサーの声が虚しく流れていた。
「ガラス窓」「テレビ」「水の流れる音」1/2
その日は強い雨が降っていた。
夕方のテレビのニュースショーが各地の大雨の状況を伝えている。
「○△川でキャンプ中の男女十数人が濁流にのまれて行方不明」
○△川といえば、真一が大学の仲間とキャンプに行ったところだ。
まさか。私は体が震えた。
その時、部屋の電話が鳴った。思わず体が強ばる。
悪い報せでないことを祈りながら受話器をとった。
「もしもし俺、真一だけど」受話器から聞き覚えのある声が聞こえた。
「真一? 大丈夫だったの?」
「あ、もしかしたらニュース見た? だったらちょうどいいや。心配してると
思ってさ」
彼の明るい声を聞いて、私は安堵したが、彼の声の後ろで、何やら水が流れる
ような音がずっと聞こえてるのが気になった。
「ねえ真一、今どこからかけてるの? なんか水の流れる音聞こえない?」
「智子、聞こえるんだ、この音。だったらますますちょうどいいや。説明する
手間が省けるよ。実は俺、死んじゃったんだ。○△川の濁流に流されて」
「え? 真一冗談はやめてよ」
「冗談じゃないんだ。俺も仲間達もみんな死んだ。どうしようもなかったんだ。
そのうち俺達の遺体も発見されてニュースでもやると思う。聞こえる水の音は
氾濫した○△川の音だ。地縛霊ってやつかな、俺達もうここから動くこともでき
ないんだ。けど俺、智子にどうしてもお別れが言いたくてさ」
にわかには信じられない話。いつもの真一のイタズラであって欲しいと思った。
だけど真一はこんな悪趣味なイタズラをする人ではない。
「真一・・・そんな・・・」
「ガラス窓」「テレビ」「水の流れる音」2/2
「もっと智子といろいろ話ししたかったけど、もうできなくなっちゃったな。
智子のことホントに好きだったよ。今までありがと」
「真一・・・」涙があふれた。言いたいことはたくさんあるのに、言葉が出ない。
「泣いてるのか、智子」
「・・・・・」
「わ、悪かった智子、冗談だよ、冗談。窓の方見てみろよ」
私は受話器をもったまま、反対側の壁にある窓を振り返った。
窓ガラスの向こうに真一がいた。ずぶ濡れで、ケータイをもって立っていた。
「真一」
真一は窓を静かに開けて笑いながら言った。
「ごめん。キャンプは天気予報見て中止したんだ。ちょっと智子のこと驚かせて
やろうと思ったんだけど、ちょっと悪趣味だったかな。安心してよ。俺は元気だから。
これからも元気にやってくからさ」
「とにかく、入りなよ。ずぶ濡れだよ」
「ああ・・・うん、分かった。今いくよ」
とにかく嬉しかった私は、真一の表情が寂しげに曇っていたことに気をとめなかった。
受話器をおいて、真一を迎えるために玄関に向かおうと立ち上がったとき、
私はある、決定的なことに気付いた。
私が住んでいるこの部屋はマンションの二階だった。
二階の窓の外に真一が立っているはずがないのだ。
私は目の前が真っ暗になり、その場にしゃがみこんだ。
その時、玄関からコトッと音が聞こえた。
私は震える足を精一杯動かして、玄関に向かった。
ポストにはさまっていた紙には「ごめん。じゃあね」と書いてあった。
最期までイタズラ好きだった真一の、あの無邪気な笑顔をもう一度見たいと思った。
しまった。お題コピぺしそこねた。
■ありがちなアイデアでも、見せ方によって良い作品になると思うんだけどね。
僕では無理でした。
次のお題は「髑髏」「蟷螂」「蝙蝠」(表記は平仮名とかでもいいです)で。
「ガラス窓」「テレビ」「水の流れる音」3/2
「いやあ、うまくいったな真一」
手紙を入れる役をやった斉藤が笑いながら言った。
真一は満足げにハシゴを片付けていた。
「大成功だよ。智子がキャンプの事故のニュース見ててくれたからさ、
バッチリ信じたよ。ナイス運だな」
「でもさ、マジ俺たちキャンプ中止にしてよかったよなー。天気予報もたまには
あたるもんだ。キャンプしてたらシャレになんなかったぜ」
「ナイス運だったな」
「そればっかだな(笑)。それより彼女、ほんとに悲しそうだったぞ。
なんか玄関とこで泣いてたみたいだし。早く電話してやれよ、かわいそうに」
「うん、そうだな。まあ、ちょっとやりすぎだったかもなー」
「やりすぎどころじゃねーって」
「大丈夫だよ、俺のイタズラには慣れてるから」
「早く電話して、安心させてやれって」
「分かってるって。でもまずハシゴ片付けないと。ほらおまえも持てって」
ドサッッ。
真一たちの背後で大きな音がした。
振り返った真一が見たものは、智子だった。
どうやら屋上から飛び降りたらしい、地面に打ち付けられてボロボロの人形の
ように横たわる智子。
真一がかけよると、智子は
「ま・・た一緒に・・・いろ・・いろ話せるね」そうつぶやいて笑った。
480 :
左目からカプチーノ:03/06/13 23:45
「髑髏」「蟷螂」「蝙蝠」
昔々のことじゃった。
ある山奥の村に、たいそう悪戯好きな童がいたそうな。
ある日、その童は村のあんちゃんたちをからかおうと思い、「髑髏のお化けが出たぁ〜」と大声で、でたらめを吹いて回ったんじゃと。
すわ、一大事とばかりに、あんちゃんたちはおのおの鍬や鎌を持って表に出てみたんじゃが、辺りには猫の子一匹見あたらねぇ。騙されたと知ったあんちゃんたちはかんかんになって怒ったそうな。
またある日、今度は「蝙蝠男が出たぁ〜」と騒ぎ立てたんじゃと。
またもや騙されたあんちゃんたちは、もうこの童の言うことを誰も信じなくなったそうな。
そして運命の日。またその童が「蟷螂男が出たぁ〜」と騒いで回ったんじゃと。
蟷螂男が現れたのは本当のことだったんじゃが、その童の言葉に耳を貸す者はいなんだ。
結局、その童ひとりだけが助かって、村の者全員が蟷螂男に食い殺されちまったんじゃと。
次は「競馬」「競輪」「競艇」で
481 :
怖い話好き ◆6EMa.ZlvQM :03/06/14 18:19
「競馬」「競輪」「競艇」
会社の先輩はギャンブル好きで、競馬・競輪・競艇となんでもやるのだけど、
パチンコだけはやらない。
なぜかって?昔とても嫌な思いをしたそうだ。
その日彼は、戸田ボート→大宮競輪→浦和競馬と流して、最後に国道17号沿いの
パチンコ屋に入って打っていた。
そこで隣に座っていた20代後半のヤンママっぽい美女から、タバコの火を貸して欲しい、
と頼まれて、それでなんとはなく話をするようになったそうだ。
そのうち、その女がフィーバーして、ドル箱が何個も積み上げられ、大変な状態になった。
先輩はすげぇなぁと思いつつ内心羨ましかった。するとその女が「ご祝儀であげるから、
代わりにちょっとあたしの車を見て来てくれないかしら?」と言ったんだって。
鍵渡されて、赤のホンダシビックで、駐車場の真ん中辺に停めてあるんだけど、中に
携帯を入れたままだったんで、それを取って来て欲しい、とのこと。
何かこの後予定があったんだけど、大当たりが出ているのでちょっと帰れない、という
連絡でもしたかったらしいんだな。
で先輩が行くと、その車はすぐ見つかったんで、助手席のポーチの中から携帯を取り出して、
ふと後ろの席に目をやると、赤ん坊が毛布に包まれてすやすや寝ていたんだって。
うわー放置DQN母かよ!と思ったんだけど、春先でそんな暑い日でもなかったし、
異常もなかったから、そのまま寝かしておいたんだって。
戻って、女に携帯を渡して、「赤ちゃん、すやすや寝てたよ」って言ったら、
その女ニコッとして、
「あの子ね、寝たっきりなの。もう3年前からずっと」
そう言うと、動じもせずにまた打ち始めたんだって。先輩さすがに気味が悪くなって
席を立って帰りしな、もう一度あの車の中を覗くと、赤ん坊どころか、赤ん坊を
包んでいた毛布すらなかったそうだよ。
■「雑草」「一軒家」「排水溝」でお願いします
>>476-477 お題の「ガラス窓」を「窓ガラス」と書いちゃいました。
書く直前まで間違えないように、とか思ってたのに。ごめん。
>>480 シンプルに淡々と書いてるけど、かなり後味悪いね。
元ネタ狼少年とは逆の結末だけど、もうひとひねり欲しかったかも。
>>481 赤ん坊が幽霊になった理由はやっぱりパチンコなのか、
と想像すると怖いね。
帰りしなに赤ん坊が見えなくなっていた理由として、
「先輩はそれ以来パチンコをやらなくなったそうです。・・・という先輩の
話を聞きながら、僕はあることに気付きました。先輩の肩のところに赤ん坊の
ような顔が・・・」ってのはどうでしょう。
今から7-8年前のことです。
私たちが中学生だった時に、学校の帰りに友達4人ぐらいと「エンジェル先生」をやった時の話です。「エンジェル先生」は多分コックリさんと同じだと思うんですけど、右上を切った紙に文字を書いて、緑(か青)のペンでやりました。
場所は、友達の家の隣の空き家(一軒家)です。何軒か同じ家が並んでいるところでした。学校帰りに塾まで時間つぶしに、こっそりと入ってたりしたのです。
で、G子の時に、(忘れてしまったんですけど)何か変なメッセージが出て、一緒にいた男子のAが「それって兎を殺せって事だよ」と言って、私たちを怖がらせたのです。
それからしばらくすると、G子が道端の雑草とか花をパクパク食べるようになってしまったのです。言葉もヘンな事を言うようになりました。
絶対に何かある!と思って、Aと私だけでエンジェル先生をしたら、“GENINWADOB”って出たので、(原因はドブ)だと思って、家の外に出て、A君に排水溝をフタのコンクリートの板をどけてもらったんです。
ゴミとか落ち葉で、完全に詰まってて、それらと一緒に、ちぎって捨てたはずのエンジェル先生に使った紙が、今までの分全部(ぐらい?)大量に出てきました。
すごく不気味だったけど、二人でシャベルで掘り出して、川に捨てました。
ネズミの骨のようなモノに混じって、大きなヘビの抜け殻とかもあって、凄く不気味でした。
その後すぐぐらいに、弟から小学校の兎が(犬に?)殺されてたって言う話を聞きました。
しばらくしてG子は元に戻ったようだったけど、私たちとは話をしなくなってたし、すぐ卒業で別の高校だったので、私もAもその後どうなったかは知りません。
兎を殺したのはG子じゃないとしても、兎が死んだから呪いが解けたのか、紙を捨てたからなのかは解かりません。
次の題は「大きな本」「遮断機」「携帯電話」です。
>>113-116で通っていた高校の七不思議を書いた者です。
今回は別の七不思議、「大きな本」について話したいと思います。
この話は、
>>113-116にも登場したオカルト好きの友人(名前は秋本として
おきましょう)が僕に聞かせてくれた話です。
ある日秋本が、所属しているバスケ部の部室へ行くと、ひとつ上の風見という
先輩がひどく深刻な顔で座っていたそうです。
秋本が声をかけると、先輩は誰に話すともなくぶつぶつつぶやき始めました。
「図書室で変な本を見つけたんだ・・・」
「やたら大きな本だった・・・」
「先輩から聞いたことがある、きっとあの本のことだ・・・」
「俺は死ぬのか・・・」
「実際に死んだ奴の名前もあった・・・」
「なんで開いてしまったんだろう・・・」
「俺は線路で・・・」
先輩は動揺していて話も全く要領を得ません。
その当時の秋本は、オカルトなどには興味はなく、七不思議についてもほとんど
知りませんでした。風間先輩が話した内容、それから秋本が別の先輩や卒業生から
聞いた話を総合すると、「大きな本」は次のような話でした。
図書室で、見慣れない、百科事典ほどの大きさの本を時々見かける。
普段はどこにあるのか誰も知らない。隅々まで探しても見つからないのに、
気が付くと、本棚の上にあったりする。
本の内容は、エベレストを制覇した登山家の回顧録とも、社会学の入門書
とも噂されるが、はっきりしたことは分からない。
奇妙なのはそのあとがきだ。
不気味な死亡者リストが列挙されているのだ。
・前川一郎はガードレールに突っ込んで死んだ。
・加藤春子はフライパンの柄が目に突き刺さって死んだ。
・長谷川正市は妻に首を絞められて死んだ。
・東信二はくも膜下出血で45分間苦しんでから死んだ。
・中倉みどりは落石が顔面に直撃して死んだ。
・曽根一は高層ビルから落下して死んだ。
リストの最後には、読んでいる本人の名前が記されていて、
その人はリスト通りに死を迎える。
本は死者の無念と共にその大きさを増していく。
数日後秋本は、いくぶん落ちついた風間先輩から詳しい話を聞くことができました。
先輩は図書室に見たこともない本があるのを見つけ、手にとって開いててみたそうです。
「噂程度には聞いてたけど、全然信じてなかったし、まさかあれがその本だとは
思いもしなかったんだ」
内容はアーサー王伝説について書かれてあったような気がするということでした。
そしてあとがきの一番最後には、
「風間和志は線路で電車にはねられて死んだ。」
と先輩の名前が書いてあったそうです。
先輩は毎日怯えていました。絶対に踏切には近づかない。電車にも乗らない。
周りの仲間達がそんな本があるはずない、何かの見間違いだといくら言っても、
先輩は聞こうとしません。
実際秋本も図書室中を探したんですが、それらしき本は見つからなかったということです。
しかしその後、数週間何も起きなかったこともあって、風間先輩も少しずつ
元気を取り戻してきているように見えました。
そんなある日。
その日、秋本は部活中から、風間先輩の様子がいつもと少し違って見えました。
どこか上の空というか、ぼーっとしているのです。
部活が終わって家に帰り着いても、秋本はずっと先輩のことが気にかかって
仕方ありませんでした。
気のせいならそれに越したことはないと、秋本は先輩の携帯電話に電話しました。
トゥルルルルル、トゥルルルルル・・・。
先輩はなかなか出ません。秋本はよもやと血の気が引く思いがしました。
「・・・もしもし・・・」
受話器から先輩の声が聞こえ、秋本は胸をなで下ろしました。
「あっ先輩、秋本です。なんか先輩のことが気に・・・」
「気が付いたら遮断機くぐってた。ケータイが鳴ったおかげで我に返った。
おまえが電話してくれなかったら死んでたな・・・」
先輩が恐怖に怯える声で話す後ろで、踏切の警報機の音が聞こえていたそうです。
その後は何も起こらないまま、数ヶ月後に風間先輩は卒業していきました。
その後先輩がどうなったのか、秋本も知らないそうです。
無事に暮らしているのか、それともリスト通りに・・・。
「大きな本」についても今はどうなったのか分かりません。
まだ学校の図書室の片隅で眠っているのか、それとも、誰かが持ち出して
この世のどこかにまぎれこんでいるのか・・・。
追記。
「大きな本」について、当時こんな話も聞きました。
この本は以前はもっと大きかったというのです。
もしかしたら人が死ぬごとに少しずつ小さくなっていくのかもしれません。
僕が学校を卒業してから数年が経っています。
今頃は普通の本と同じくらいの大きさになって、
そう、今あなたの手元に・・・・・。
ごめんな、陳腐で。
■お題にひっぱられて、恥ずかしげもなく
>>287の焼き直し。
次は「毎日」「宝石」「人殺し」でお願いします。
489 :
厨房 ◆muK9uZOxew :03/06/17 17:52
ナガイ
>>489 ごめん。
ちなみに先輩の名前が途中から変わっているのは、
両親が離婚して母方の姓を名乗ることになったからです。
・・・ごめん。ちゃんと推敲しろよバカバカッ!
491 :
厨房 ◆muK9uZOxew :03/06/17 18:02
491<<なんかこのスレで久しぶりにいい人にあった
様な気がする
492 :
厨房 ◆muK9uZOxew :03/06/17 18:03
、、、、って俺ジャン!!
ごめん490のこと
>>484-488 なかなか面白い。
死者の怨念のなせる業か、それとも著者の呪いか、はたまた何か曰くのある本なのか!
話をもう少し膨らませて長編作品にリライトしてみると、謎が謎を呼ぶ展開が期待できてかなりの傑作になりそうだ。
たとえば……
1.災難を自分(または恋人)に降りかかるように設定する。そして、主人公がその災いから逃れようと謎を解くために奔走する。
2.過去の死因は一見まとまりがなさそうだが、実は統一されたパターンが存在していて、それが謎を解くヒントになったりする。
3.妖しげな著者も登場する(しかし謎の言葉を残して惨死)
とか……。
あまり長くなるとここでは無理だろうから、「オカルトな作品募集」スレの方に投稿されてはいかがか。
あと難をいえば、リーダーに頼りすぎという点。とくに冒頭の会話部分。余韻を持たせようとする狙いだろうが、多用しすぎると逆効果になる。それから、リーダーは中黒ではなく、「三点リーダー」と呼ばれる記号を二文字重ねて「……」と表記するのが基本。
ちょっと細かいようだが気になったので。
>484-488
長いがサクサク読めた。よく出来てると思います。
ただ、2/4と追記で、本の大きさに関する記述に矛盾があるのは勿体無いかも。
>>483 ドブさらったら今までエンジェル先生に使った紙が全部つまってたってのが
すごくおぞましい感じで怖かった。
なんだかよく分からん話はあんまり好きじゃないんだけど、これは良かった。
>>494 感想&アドバイスありがとう。評価してくれて嬉しかったです。
プロット案見てると確かに面白そうだけど、でもプロットしっかり練って
長編書くなんて芸当は僕には無理っぽいです。書いても恐ろしく期待はずれな
出来になりそうだし。
「・・・」はこだわって使ってるんです。中黒だと2個とか5個とかニュアンス
によって自由に使えるし。「…」の方がスマートなのは分かってるんだけど。
でも今度気が向いたら使ってみようかな……。
>>495 うん。でも分かりづらかったかもしんないけど、2/4のはあくまで生徒たちの
話を総合した、「七不思議として語り継がれている内容」ということで書きました。
大きな本があって、それを読むと人が死んでって話が元々あって、それが
「本は人が死ぬごとに大きくなるんだって」って誰かが言い出して、いつの間にか
そういう風に伝わっちゃってたんだけど、実際のところはその逆でってことです。
一応矛盾してないつもりでした。
hoho
「鍵」「蝉時雨」「花火」
500 :
「毎日」「宝石」「人殺し」:03/06/24 03:51
仕事帰りの深夜の街角で、スーツを着たサラリーマン風の中年男が電柱の側でうずくまっていた。
「う、うげえぇーーっ、ぶほぉううぅ、おええぇうえぇーー」
見たところ、酒を飲み過ぎて嘔吐しているようだ。
吐瀉物独特の臭気が私の気分滅入らせる。
そのまま通り過ぎようと思ったが、あまりに苦しそうに吐いているので、気になってその男に声を掛けた。
「あのう、大丈夫ですか?」
男の目は、白内障のように白く濁っていた。
男はそのまま崩れるように倒れ、動かなくなった。
嘔吐物をみると、回虫のような細長い虫が無数に蠢いている。
ただ事ではないと思ったので、携帯で救急車を呼ぼうとしたその時、その男が私の右腕をつかんだ。
男の濁った目が宝石のように輝きだしたかと思うと、眼球がバチッと破裂した。
そして真っ赤に染まった窪みから、触手のような物がスルスルと伸びてきて、たちまち私を搦めると、もう一本の触手が私の口の中に侵入してきた……。
「うわぁーーーーーーーーーー」
自分の声で目が覚めた。
気がつくとベッドの上だった。
なんだ、夢だったのか。
変死体発見のニュースはそれから毎日のように報道されるようになった。
死体の側には必ず嘔吐した跡が残されていて、眼球が破裂しているということだ。
そして、人間だけではなく、犬、猫などのペットはもちろん、牧場で飼われている馬や牛にまで被害は及んでいた。そしてその原因はいまだもって不明ということだった。
単なる人殺しの犯行ではなさそうだ。もし夢で見たことが現実に起こっているとしたら……。
私は思わず身震いした。
急に背中がゾクゾクッとして思わずくしゃみをした。
すると、私の口から何かが飛び出して湯飲みの中に落ちた。
みると、白い糸状の虫が、緑色の液体の中でクネクネと身をくねらせていた。
次は「カレーライス」「堆積」「効能」で
僕は、いわゆるベッドタウンに生まれ育った。田舎の良さも都会の良さもない、さえない町だ。
地元の名士などという、ただおだてられて生きてきただけの田舎者が市政を取り仕切ってきたおかげで、
無計画な宅地造成によるゴーストタウンが広大な雑木林に隔てられて点在している。
事件の噂は後を絶たない。
中学2年の春に転校してきたKは、そんなゴーストタウンの一つ、C団地に暮らしていた。
そこは第二次ベビーブームの頃に造成されたという、この町でも最も古い団地だ。
既に殆どの住人が子育てを終え、そこを離れていた。そこには小学校も中学校もあるのだが、
生徒数の激減に伴って廃校となり、巨大な廃虚になっていた。
だからKは通学のために自転車を20分もこがねばならなかった。
Kは中古の一軒家に住んでいた。父親はすでになく、母親と妹の3人で暮らしていた。
母親は明るい人で、女手一つでマイホームを手に入れたことが誇らしいようだったが、
KはC団地に暮らしていることを恥じていたようだ。
中学3年になると、Kの妹も中学生になった。かなりの美少女で、またたく間に有名になった。
よく3人で遊んでいたにもかかわらず、僕はどうもその手のことに無頓着で、
ああ、そういえばそうかも、てなものだった。とはいえ、あの子と知り合いだというだけで
羨ましがる男は絶えず、気分は良かった。
夏になるとクラスの男子から肝試しの企画がもちあがった。場所はKの住むC団地。
廃校になった中学校の屋上に忍び込み、そこでキャンプをするというものだった。
目当てはKの妹。Kは嫌がったが、押し切られた。参加者は僕とKを含めた男子8名と、
同じクラスの女子5名、それからKの妹の14名。Kの妹は、Kと僕が参加するなら、と承諾した。
そして決行。時刻は午後4時。
校舎は予想以上に荒れていた。どれほどのあいだ放置されていたのかはわからないが、
吹き込んだ砂があちこちに堆積し、湿度と相まって饐えた臭いをさせている。侵入者が絶えないのか、
生ゴミのような異臭もする。僕らは屋上へ急いだ。
屋上は思いのほか爽やかだった。すこし風が冷たい。夕立ちを予感させる。
僕らはただちに夕食の準備に取りかかった。メニューはキャンプの定番・カレーライスだ。
男子が飯盒炊爨、女子はカレーを担当した。
雷が鳴る。やはり来たか。踊り場に移して準備を続ける。ほどなく土砂降りの雨になり、
夕日も遮られる。まだ日没には早いはずだが、暗い。
準備ができ、配膳を始める。男子たっての希望で、Kの妹がご飯をよそる。
カレーはなぜか僕がやることになった。ひとり、ふたりと配っていくうちに、鍋の底に違和感を覚えた。
なにか塊が入っている。ただ、感触が軟らかかったので、大量に入れたひき肉が固まっているのだろうと、
さほど気にとめなかった。
食事が終わると、怪談話が始まった。かつてこの校舎のトイレで首を吊った生徒がいたとか、
その生徒はレイプされた女の子だった、とか。冷静に聞けば明らかに
作り話とわかるものであったが、その時は怖かった。とくにKの妹はKの腕にしがみついて放さなかった。
どうやら苦手らしい。男どもは調子に乗って、ありふれた怪談にありふれた尾ひれをつけていく。
ちなみにKも苦手らしく、僕の手を握りしめていた。
足音!
一瞬誰もが口をつぐんだ。目を見合わせつつ、耳をそばだてた。Kの妹は震えている。
話声が聞こえ始めた。カップルのようだ。一同ニヤッとして息を吐く。
脅かすか。それおもろい。どうする?どうやる?ヤりはじめるまで待つか?
いや、いくらなんでもここではヤんないだろ。回りこんで、やつらが入ってきた扉閉めるか。
それいい!で、どうする。たぶん来た道逃げるよな。んで?ばたばた足音させっか。よし、それでいこう。
誰が扉閉めに行く?んじゃ俺らいくわ。名乗り出たのはKの妹にもっとも萌えているSだった。
「俺ら」?「ら」?
Sの言う「ら」は僕だった。なぜ?なぜなんだS!拒めばチキンの烙印。心配そうに見上げるKの妹。
ああ、後には退けない。
カップルが入ってきたのはおそらく東の端。この校舎は東西両端に階段がある。我々がいるのは、
中央の3階から屋上へ上る階段。
今にして思えば、なぜ我々はカップルの位置を1階東寄りと特定できたのか。なぜ、誰もがそう思ったのか。
あのどしゃぶりの雨の中、階下の足音など聞こえるはずがない!
僕とSは3階を移動し、東側の階段を降りた。静かだ。Sも僕もまだ、
扉を強く閉めればカップルが慌てふためいて走ってくるものと思い込んでいた。
バタン!
何も起こらない。僕らは身を潜めたまま耳をそばだてる。何も聞こえてこない。
聞こえなかったのか?だったら直接脅かすまでだ。忍び足で西へと歩を進める。
時々足を止めて教室の中に目を凝らすが、誰もいないようだ。
「うわあっ!」
Sが転んだ。しりもちをついたまま後ずさる。
「踏んだ!踏んだ!軟らかいもの・・・!」
思わず懐中電灯を点ける。足!上履きに白い靴下!女生徒の足だ!
「うぎゃあっ!」
僕らは一目散に走り出した。そして階段を駆け上がる。
バタバタバタバタッ!
無数の足音。後ろから追ってくる。
「ふぁああああああっ!」
泣いていた。僕らは泣いていた。そしてみんなの待つ踊り場へ。
「いない・・・」
僕らは震えながら身を寄せあって座った。
しばらくして、がやがやと話声が聞こえてきた。一瞬おののくが、
聞き覚えのある声であることに気づく。
ああ、そうか。みんなは足音を立てるために西側の階段を降りていたのか。
僕らの声を聞いて足音を立てたのか・・・。
しかし、カップルはいなかった。女生徒のものらしき足が転がっていた。
みんなにそのことを話すが、信じてくれない。
確かに、カップルがいなかったかどうかはハッキリ確かめたわけではない。
しかし・・・あの足は・・・。
見間違いだよ。これが一応の結論だった。
みんなを脅かすために嘘を言っているのではないことはわかってもらえたようだったが、
K以外の男子は笑い飛ばすのみ。女子は、どちらかというと、信じたくなかったのだろう。
重い沈黙が占める。笑い飛ばしたはずの男子も黙っている。雨が小降りになってきた。
「トイレに行きたい・・・」
Kの妹が小さい声で言った。お兄ちゃん、ついてきて。Kは僕を見る。
僕はもう動きたくなかったが、しかたがない。トイレは各階東西両端にある。
1学年10クラスあった頃の校舎だ。各階10教室、トイレがとてつもなく遠く感じる。
これ、持っとけよ。Kが妹にお護りをわたす。バーチャンからもらったやつだ。お前持っとけ。
悪霊退散の効能があるから。Kの妹は小さく頷くと個室に入った。
Kが個室の扉の前で待ち、僕は廊下との境に立った。洗面の鏡を見ないようつとめる。
しかしどこを見ても闇が目に入る。怖い。
Kの妹が個室から出てきた。水が流れないと言う。しょうがないよね、と歩き出す。
K、Kの妹、僕の順で手をつないで歩いていく。背後の闇が迫ってくるかのように思える。
Kの妹の手から震えが伝わる。これがただの肝試しならばからかうこともできようが、
申し訳ない気持ちで一杯になる。もう何も起こらないでくれ。
夏休みが明ければ、笑い話にもなろう。僕とSが笑い者でいい。
もう誰にも、何も見せないでくれ。
踊り場に戻る頃には、雨は止んでいた。みんなが僕らを見る。
「アッ」
息を殺すような声を出す。みんなの視線は僕らの背後。振り返ると、
天窓から入った月明かりが壁に当たっている。なんだよおどかすなよ。
ちがうちがう。みんなは無言で首を振る。何?何なの?
天窓からヒョイと覗き込むような影が映ったという。いや、それ、俺らだろ?
ほら・・・。
「届かない」
跳ねても見たが、月明かりを遮ることはできなかった。もちろん、壁に寄ればできる。
でも、そんなところは歩いていない。
「・・・・」
雨も止んだし、屋上に出てみるか?言い出したのは男子のA。僕もKもSも賛同はしなかった。
もちろん女子も。行くか。Aが残りの男子を連れて屋上に出る。大丈夫だよ。Aが言う。
僕も踊り場よりは屋上の方が、まだ居心地がいいような気がした。ホラ、星も出てるぜ。
思わずみんな天窓を見る。星が見える。
屋上に出ると、扉から最も離れた角に円くなって座った。誰ともなく手をつなぎ、輪になった。
・・・・じゃあ、Kから好きな子の名前言え。なんで俺から?Kは僕を見る。みんなが僕を見る。
・・・いない。ふざけんな。そんなこというならお前が言えよ、A!
ん・・・中山美穂。ふざけんな!んだとコノヤロー!俺がミポリンと結婚したらどうする!
ないない。だからどうするってんだよ!そしたらお前のしょんべん飲んでやるよ。きたないな〜。
じゃあ、女子言え!え〜。
「くすくすくす」
か細い笑い声が聞こえてきた。方向はわからない。耳の奥がくすぐられたような感じだ。
思わずみんな天窓を見る。誰もいない。あたりを見回す。Kの妹が震えている。一点を見つめている。
みんなもそれに気づき、Kの妹の視線を追う。
「アッ」
壁に人の影が映っている。
「さっきの子だ」
Aが言う。さっきの子?天窓から覗いた子だ。お前、見えるのか!?
セーラー服、夏服のセーラー服。白に緑の・・・。みんなを見る。みんなは首を振る。
見えているのはAだけなのか?
わたしも・・・。Kの妹が言う。お前も見えるのか!?Kが問う。頷く妹。足が・・・ない・・よ?
足!?どっちの!?ひだ・・り。Sを見る。頷くS。あれは左だった・・・。
「どうしたの?みんななんで話やめちゃうの?」
「ギャッ」
Kの妹が声を上げる。ふりむくと失神している。Kが支える。どうした。何があった。
「右手も・・・ない」
Aが言う。僕もみんなも目を見開いて歯をガチガチいわせている。
僕は、それならば右手もこの校舎のどこかにあるのではないかと思った。Sを見たら目が合った。
Sも同じことを考えていたようだ。
「違う・・・そんなんじゃない・・・」
「アッ」
消えた。
なぜか恐怖心は削がれていた。それはみんなも同じようだった。
うつろな目をコンクリートの床に投げかけたまま、穏やかな顔をしていた。
・・・じゃあ、女子、言え。Aが言った。え〜・・・。ほら、じゃあ、E!
えっ!驚くE。僕らも驚いた。男子はみな、AがEを好きなのは知っていたからだ。
すげーなアイツ。誰もが思った。・・・A。おおっ!男子は思わず声を上げる。
女子たちも悟る。え?え?Eは困惑の笑みを浮かべている。キース!キース!
コールがかかる。ふたりは照れながらもキスをした。おお!ホントにやるとは。
で、Aはミポリンと結婚できなかったらどうするんだったっけ?なんにもねぇよ!
真っ赤な顔のA。じゃあ〜、次は〜、ハイ!Eはちょうど目を覚ましたKの妹を指した。
キョトンとしている。となりで顔を赤らめるK。なぜお前が?うるせーな!
目の前で聞きたくねーんだよ!あ〜シスコン。女はすぐにこういうことを言い出す。
わかるわかる、自分の名前言われなくても言われてもショックだもんな〜。男も悪ノリする。
K、いいかげん気づけ。彼女はもう大人なんだ。初潮も済んでるんだ。スベる僕。
・・・ハイ!で、あんたは誰が好きなの?イヤ、だからいねーんだって、ホント。
・・・・・・あんた、もういいよ。
かくしてただのキャンプになった。でも、みんな見えていた。
貯水タンクに腰掛けて笑いをこらえている彼女を。
キスコールの時に音を出さないように手拍子していた彼女を。
そして、その彼女には、ちゃんと両手両足そろっていたことを。
翌朝鍋を見て驚いた。僕らの食べたカレーは、見事にワインレッドだった。
ああ、昨日の夜鍋に入っていた異物は、彼女の右手だったのか。
しかし、あんたの悪戯はシャレになんないっスよ。
以上。長くてスマン。暇だったんよ。読んでくれた人サンキュ。
次は「ホッチキス」「排水溝」「嘘」で。
また「排水溝」かよ!
「ホッチキス」「排水溝」「嘘」1/1
あれは私の娘が幼稚園の年長だった時のことです。
娘が見慣れないフランス人形を持っていたので、それどうしたのと訊くと、
「外の下水のとこで拾ったの」と言うのです。
確かに家のすぐ脇の通りには排水溝がありましたが、その人形は
捨てられていたとはとても思えないほどキレイなものでした。
もしかしたらお友達の人形を勝手に持ってきてしまったのかもしれない、と
そう思った私は、本当のことを言うように娘に言いました。
たまたま茶だんすの上のペン立てにホッチキスが入っているのが見えたので、
「嘘をつくと、ホッチキスで口を留められちゃうのよ」と言いましたが、
やはり娘は本当に排水溝のところに落ちていたとしか言いません。
娘の表情は嘘を言っているようには見えなかったので、
私は落とし物として警察に届けた方がいいのかしら、と思いながらも
その時はそのままにしていました。
それからしばらくして夕方頃のこと、私が居間で洗濯物をたたんでいると、
和室の方から娘の悲鳴が聞こえました。
慌てて和室へ行くと、娘が倒れていて、畳には血がついていました。
娘を抱き起こした私は、ショックのあまり気を失いそうになりました。
娘の口が3ヶ所ホッチキスで留められていたのです。
半ばパニック状態の私が次に見たものは、娘の傍らにあった
さきほどのフランス人形でした。私はゾッとしました。
人形は血の付いたホッチキスを両手で抱えるような格好で座っていて、
冷たいビー玉のような眼で私をじっと見つめていたのです。
■お題は継続で。
>>501-509 所々、会話の部分が地の文で書かれていて読みにくい。誰に対して誰が話しているのかも分かりづらい。
狙いがあって、わざとそういう文体にしたのなら話は別だが(そうだとしても、もう少し書きようがあると思う)。
>>507の文を少し手直ししてみた……
「雨も止んだし、屋上に出てみるか?」
言い出したのは男子のA。僕もKもSも賛同はしなかった。もちろん女子も。
「行くか」Aが残りの男子を連れて屋上に出る。
「大丈夫だよ」とAが言った。
僕も踊り場よりは屋上の方が、まだ居心地がいいような気がした。
「ホラ、星も出てるぜ」
Aの言葉に思わずみんな天窓を見る。星が見える。
屋上に出ると、扉から最も離れた角に円くなって座った。誰ともなく手をつなぎ、輪になった。
「……じゃあ、Kから好きな子の名前言え」と僕が口火を切ると、「なんで俺から?」とKは僕を見て不満そうに一言。みんなが僕を見る。
「……いない」とK。
すると、「ふざけんな」とAがKに詰め寄った。
「そんなこというならお前が言えよ、A!」
と、今度はKが逆襲。
「ん……中山美穂」とA。 ……以下省略。
余談だが、中山美穂って既に結婚してるんじゃなかったか?
これは手直しとかいう問題とは違うような
手直しというよりリライトに近いね。
たしかに
>>513の方がわかりやすいが。
別にリライトしたつもりは無いんだけどね。
元の文章は殆どいじってないし。悪気があってやったんじゃないので。
つーか、ここsage進行なん?
リライトとか以前に、ちゃんと読めてないし。513。
464以降の感想など(1/2)
>>464 多重入れ替わりした話のようにも読めるし、しかし、そう読むと辻褄が合わない気も
するし、不思議感覚な話ですな。
>>466等
んー、最初は倉田が仲間にいて、蔵とかを探索してるうちに倉田と町田が
入れ替わって、倉田は過去の殺人鬼、町田が現在の「俺」の仲間になってしまった、
と。
更に「あたしはこんなところにいる人間じゃないんだ」発言で、実は入れ替わりは
今回に限らず既に少なくとも一回は起こっている、てな感じで。
まぁ、実際この作品(459-460)は、内容的に捻りきれず駄作だよな、とは思ってます。
>>475 し、シンプルやぁ(笑)
一瞬、476以降と繋がってるのかと勘違い(笑)
失礼をば>両目からコーヒーさんたち(<いや、そんなくくり方も失礼だろ)
>>476-477,479
二段落ちと思わせて三段落ちですか。
間に、次のお題とか挟んで、読む方的に息を継いだとこで捻るのは巧いなぁ。
>>480 なんか、仮面ライダーの怪人っぽいラインナップだなぁ(笑)
>>481 DQNは一生DQNで、自分の犯した過失を反省する事もないのか、という非常に
しょんぼりな話ですなぁ。
464以降の感想など(2/2)
>>483 いくつかの事象の因果関係がすっきりしないとこが、色々深読みしたくなりますな。
「エンジェル先生」とひと括りだけど、「兎を殺せ」と言った霊と「原因はドブ」と言った
霊は別々で、どちらかが悪霊でどちらかは(比較的)善良な霊だったのか、だったの
かなぁ、とか。
>>484-488 個人的予想では、先輩は卒業後あっさり死んでるんだろうなぁ、って気がしたり。
長谷川正市は287丸写しながら、教師という解釈で良いんだよね?
長編化すると、理由というか縁起というかを導入する率が高くなっちまうんだろう
なぁ、と考えると、これをアイデアの発端にした別作品になっちゃうだろうね。
リーダは(出版とか考えないなら)趣味で良いんじゃないかなぁ、と。
わたしが概ね重ねないで使うのは、出来るだけ短くするための姑息さだったり。
>>500 寄生のされ方とかで、共生状態になって、変身出来るようになるのかとか考えたり
(漫画読みすぎ)
寄生された事による異常行動とかの描写があると面白いかも。
>>501-509 いや、ホントに洒落にならんし(笑)>右手入りカレー
甘酸っぱ表現はかなり良いと思うす。
地の文会話は、更に長くならないように、と考えたんじゃないかなぁ、と憶測。
>>512 一行目を捻り気味に読んで、その後娘さんは回復したと思いたいなぁ。
実は、娘さんの良心の呵責によって惹き起こされた自傷行為だったりして、とか
無理めな読み方してみたり。
「なぁ、これ、使っても針がなくならないホッチキスだ、って言ったら信じるか?」
昼休み、同僚の木元がやけに憂鬱そうな顔で話しかけてきた。
「はぁ?なんのネタ?」
「いやな、ほら、見ててくれよ」
言って手近にストックしてあるミスプリントを一枚取って、かっかっかっとホッチキスを
留め始めた。十個…二十個……しまいにほとんど紙一面に針がある状態になっても
まだ出る。どんなに針を目一杯詰めた状態でもこれは無理だろう。俺は内心の動揺
を抑えつつ、「ふぅん…どんなタネなんだい?」
「いや…あのさ。最初はそう、タネがあったんだよ、女の子をビックリさせる余興って
いうか。ほら、針入れるとこ接着してあるだろ?で、いかにも補充出来ませんって感じ
にしといて、後でこっそり接着取って針入れて接着し直してたんだよ。ところが、昨日、
会議資料を突然大量に作る羽目になって困ってる女の子たち手伝っただろ?あの
時なんも考えないでこのホッチキス手に取って作業したんだけどさ。終わってから気
づいたんだよ。無茶苦茶大量に留めたはずなのに、いっぺんも針入れてない事に。
そしたらなんだか怖くなっちまってさぁ…」
「どうも、よくわからん話だなぁ。嘘から出た誠、っていうか。うーん、でも、確かに変だ
よな。今使った分だけでも明らかに多すぎるし…ぐだぐだ考えてもしょうがねぇか、一
寸開けてみようぜ」
気味が悪いからやりたくない、という木元からそのホッチキスを受け取り接着部に剥
離剤を塗る。ところが取れない。しかたなく力づくでこじ開けようとする。やけに固い。
意地になって力を入れる。ピシッと妙に響く音がしてひびがいった。
途端にゾクッと悪寒が走った。はっと木元の顔を見る。彼の顔も真っ青になっている。
恥ずかしい話だが、怖くなってどうにも開けられなくなった俺は、会社がひけた後、そ
のホッチキスを持って車で適当に遠くまで来て、人気のないところで窓を開けて投げ
捨てた。捨てられたホッチキスはアスファルトにガチッガチッと跳ねて排水溝に落ち込
んだ。パキッ…ガササーッガササー…、あり得ない音がいつまでも響く。俺はアク
セルを踏み込んでその場から逃げた。
次の日、経理の人間からホッチキスの針が一カートン行方不明だが知らないか?と
訊かれた俺は「知らない」と即答した。
また、捻りきれませんでした(汗)
えー。
超怖の使ってもなくならない修正液の話のパクリだよね(汗)
気を取り直して(自分で言うな)、次のお題は、「抱き枕」「コードレス」「花瓶」で
お願いします。
522 :
神出鬼没の評価人:03/06/29 02:27
>>517 >リライトとか以前に、ちゃんと読めてないし。513。
どこらへんが? 後学のために御高説を拝聴したいですな。
もしかして、書いた御本人ですか?
>>519 >長編化すると、理由というか縁起というかを導入する率が高くなっちまうんだろう
なぁ
読者側にとっては、その理由というか縁起が一番知りたいわけで……。
逆に作者にとっては一番書きたくない部分かと(ストーリーテラーとしての力量が試される部分だから)。
相互に無関係と思われるような謎がいくつか呈示され、どのようなプロセスを経てそれらの謎が解き明かされるのか、読者はワクワクしながら頁をめくる。そして、それらの謎が一本の線に繋がったとき、一挙に大団円を迎える……そしてそこには意外な結末が。
こういった構成に堪えるほどの魅力的なストーリー性が、
>>484-488の作品にはあると思う。
なんか怒ってるみたいですね…。
まず、群像劇ですから、一人の登場人物には一貫した役割が与えられるものだと思うのです。
この短さ(このスレの主旨や、三題噺ということを考えると長過ぎますが)を考えればなお
さらです。
これを前提に考えます。
・Aが「じゃあ好きな子の名前を言え」というようなことを言うくだりが他にもあることか
ら、そういうことを言い出しがちな人物として描かれていると考えるのが妥当。沈黙をや
ぶり場を和ませることを率先してする人物と言ってもいいかもしれない。気分を変えるた
めに屋上へと導いたのもAですからね。
・Kは「僕」を頼りがちな人物として描かれている。Kが「僕」を見たのはこのため。「み
んなが僕を見る」のも、頼りがちなK・庇いがちな「僕」の構図にコンセンサスがあるか
ら。場を和まそうとしたAの意図をくんで、Kがだめでも「僕」が応えるだろうという期
待の表れでしょう。このように解釈した方が、「みんなが僕を見る」の部分がスムーズに
理解されると思います。
・「僕」は恋愛に疎い人物として描かれている。したがって、「いない」と答えたのは「僕」
だと考えるのが妥当。また、「僕」が終わりの方で「(好きな子は)いない」と答え、
「もういいよ、あんた」と言われていることから、ここで「いない」と答えたのも「僕」
と考えられる。そう考えた方が「もういいよ」の「もう」が明確に理解される。
リライトされた部分に関してはこのくらいで十分かな。どうでしょう。
解釈の妥当性は、よりよく理解されることを根拠とします。このことを念頭に、比較検討
なさってみて下さいな。
「書いた御本人」の言い分も聞いてみたい気もしますが、テキスト論的には意味がないか
な。本人がどのように書いたつもりだったかより、解釈の妥当性を優先させるものですし
ね。
あと、ついでに言うと、この話は中山美穂が中学生に人気のあった頃に中学時代を送った
「僕」の回想録というかたちを採っているので、現在中山美穂が既婚か未婚かは関係ない
かと。
辻仁成と結婚したんだったっけ?
最後に、この作者が、セリフを地の文に埋める文体を採ったことに関する考察を。
リライトされた部分においては、わかりにくさばかりが目立ってしまっていますが、カッ
プルを脅かす相談をしているくだりなどは、ガキどもが頬つきあわせて相談している雰囲
気がよく出ているように思います。「」を使わず、発言者の明記を最小限にすることによ
って臨場感を出そうとしたのではないかと思います。特にこの部分はどれが誰の発言かと
いうことは問題になりませんしね。
あとは、「」に囲われたセリフを際立たせるという効果もあるように思います。作者が意
図してこの文体を採ったことは明らかで(その是非はともかく)、その意味を理解せずに
(僕も自信はないですが)リライトするのはいかがなものか、と思ったのです。
しかも、「もっと書きようがある」と言うのならば、文体を変えずに、わかりやすくかつ
面白く書かねばならなかったのではないかと思いますね。
長文失礼しました。522さん、いかがでしょう。
526 :
神出鬼没の評価人:03/06/29 09:16
>>517 なるほど。あなたの仰ることはもっともで、説得力があります。
どうやら自分の読みが浅すぎたようです。穴があったら入りたい心境です。
作品を書かれた方には失礼なことをしてしまいました。深くお詫びいたします。
私には人の作品を評価する資格がないことを思い知らされました。
以後、ROMに徹することとにします。
いや、それは寂しいです。それは僕の本意ではありません。これからも発言
なさって下さい。
実際、このようなスレにこれほど読み手に負担を強いる作品を発表するのは
いかがなものか、と僕も思いました。しかし、読みにくいのを承知で書いて
いるようでしたし(冒頭の部分などはかなり良いと思うし、かなり書ける人
物かと)、がんばって読んでみたところ、きちんと読み解けるように書かれ
ていることもわかりました。きっと頑張って書いたんだろうなと思えました。
ちなみに僕は国文科で近代文学を専攻していた者です。ま、セミプロみた
いなものなので、お気になさらず。
なるほど文章っていろいろ奥深いんだなーとマジ感心してしまった。
良くも悪くも(良いのか?)平淡な文章しか書けない僕にとっては、
物議を醸す文章(とそれを書ける人)がやたらうらやましかったり。
>神出鬼没の評価人さん
是非また批評・感想書き込んでください。
で、たまにでいいから僕の作品ほめて。
>83さん
娘の自傷行為ってのは、僕も念頭にありました。
当初はもっと自傷寄りの描写だったんだけど、思い直して改変して、
最終的には若干人形有利の描写に。
それでも娘の自傷行為が頭をよぎった人はけっこういると思ってるんですけど、
どうでしょう。
関係ないけど、アンティークの西洋人形って、質悪いやつは包丁もって
追っかけてきたりするけどさ、普通のやつでも絶対まばたきぐらいは
やってるよね。正直あんまり家には置きたくないです。
私ずぼらなんで、受話器をよくなくしてたんですよ、部屋で。でもほらコードレス電話って、
本体だけでなく受話器の方も鳴るでしょ?だから携帯から掛けてみればすぐに見つかるんです。
探そうと思えばね。だから、受話器がなくなってても、気にはしませんでした。だって携帯が
ありますもん。だから、探すのは電話が掛かってきた時くらいでしたね。
で、その日も受話器は行方不明のままだったんですよ。まず本体の着信音が鳴って、それを
遮るように受話器も鳴り始めて。あ、電話だ、といつものように探し始めましたよ。でもね、
見つからないんです。いつもは留守電になるまでには見つかるんですけどね。おかしいなぁ、
とは思いましたけど、だいたい友達は、自宅につながらなければ携帯に掛けてきますからね、
そのままにしてたんです。そしたら、また自宅の方が鳴ったんです。しょうがないから、また
探し始めましたよ。でもやっぱり見つからない。今度も見つからないまま留守電になっちゃっ
て。メッセージ入れてくれれば携帯で掛けなおすのになぁ、て思ってたんですけど、すぐに向
こうは切っちゃって。メッセージを入れないなら携帯にかけろよ、て思ったんですけど、まぁ
いいや、とそのままにしました。ハハ、ずぼらすぎますね、私。
で、また鳴ったんです。今度も自宅の方。なんかもうムカついちゃって、ほら、五月蝿いん
ですよ、プルルルって音にピピピピって音が重なって。しかもちゃんと重ならないんです。受
話器は遅れて鳴り始めるし、なんか周期も違うらしくて。無視できないんですよ、不規則な騒
音て。で、ともかく見つけようと思ったんです。そしたら……。今度は留守電にメッセージが
入ったんですよ!「……花瓶……」て。ぼそっと。低くてくぐもった声でしたね。気持ち悪い
でしょ?それからはもう必死ですよ。必死で探しました。でも見つからない。携帯から何度も
掛けて、何度も留守電になって。座ってたソファの辺りから聞こえてたんです。でも、ない。
すっかりがっちゃがらになって。疲れて。少し離れてソファを眺めてたんですよ。携帯片手に
ね。で、また留守電になって。もうなんだかめんどくさくて、切らずにぼんやりしてたんです
よ。そしたらまた、「……花瓶……」て!おかしいでしょ?だって自分が携帯で掛けてて、手
に持ってる。なのに……!もうすっかり怖くなっちゃって、でも、不思議ですね、ホントに怖
い時って、体に力入んないんですよ。気力もない。ただぼーっとじーっとしてました。
しばらくして、いや、どのくらい経ったのか、たいして経ってないのか、
わからないんですけども、また電話が鳴ったんです。もちろん自宅の方。
もう怖くて怖くて。抱き枕かかえて耳塞ぎました。もう体も震え出しちゃ
って。歯もガチガチ鳴るし。そしたら、これまでにない音量で受話器が鳴
ったんです。心臓が止まるかと思いました。でも、同時に、抱き枕の中に
受話器があるって直感しました。もう必死。また必死。抱き枕割いて割い
て。綿つかんで出しつかんで出し。で、出てきましたよ、受話器。でも、
どうしたらいいのかわからない。まだ鳴ってる。でも、出るのは怖い。か
といって……。あ!と思いましたよ。なんで留守電解除しておかなかった
んだ!て。で、もう留守電に切り替わっちゃってたんですけど、急いで本
体の方へ行って、解除したんです。そしたら、通話になっちゃって。
うわぁって思わず切って。
もう息切れてました。握りしめた受話器をぼんやり見てました。で、あ
ることに気づいたんです。受話器が違うんです。もともとのとは。うちの
電話は水色っぽいやつなんですけど、濃い灰色なんです。大きくて、いか
にも古いんです。思わず放り出しましたよ。
もう、ひとりではいられない、この部屋にはいられない、て思って、携
帯から友達に掛けたんです。近くに住んでる友達に。そしたら……うちの
電話が鳴ったんです!もう転げるように玄関に走りましたよ。で、そのま
ま友達の家に行って、その日は泊めてもらいました。
翌日、おそるおそる帰ったんですよ。もう夕方になってたかな。そしたら警察の人がいて、
なんか写真とか撮ってる。見ると、私が大きな花瓶を頭に被せられて死んでるんです。そりゃ
驚きましたよ。じゃあここにいる私はなんなんだってね。で、警察の人に話しかけたんです。
振り返った警察の人も驚いてましたよ。私は少しほっとしましたけどね。ああ、自分はちゃん
と見えてるんだなって。実在してるんだなって。そしたら、「あ!」て、鑑識っていうんです
か?写真撮ってた人が声を上げて、見ると、花瓶だけあって、死体がなくなってたんです。
警察の人も帰って、少し落ち着いてきて、部屋を見回すと、抱き枕がないんです。でも、よ
くよく考えると、抱き枕なんて買った覚えももらった覚えもない。なんだか頭の中が気持ち悪
くて。なんて言ったらいいんだろう、頭の中にアメーバがいるみたいな…。
しばらくして、段ボールがあることに気づいたんです。警察の人が忘れたのかな、て思って
見てみると、伝票が貼ってあって、送り主は母、届け先は私なんです。さらに、その日の午前
11時に支局を出た旨記載されていたんです。てことは誰かがうちにいて、おそらく昼頃に受
け取ったことになる……。……?
すると電話が鳴ったんです。見ると、もともとの受話器がちゃんと本体に収まってるんです。
昨日あれほど探しても見つからなかったのに。それで、まだ怖かったんで、出なかったんです。
そしたら留守電になって。驚きましたよ。だって昨日解除しましたからね。そしたら、母でし
た。あわてて受話器を取って、話すと、抱き枕を送ったって言うんです。あんた寂しがりやだ
からって。特徴を聞くと、昨日あったものそのものなんです。
後日、警察から電話があって、犯人が捕まったって言うんです。その男は、気絶させた上で
花瓶で溺死させるという手口で殺人を繰り返していたらしく、うちにあった花瓶についていた
指紋もその男のものだったそうなんです。
さらには、私を泊めてくれた友達にことの顛末を話したところ、「お前うちになんか来てな
いじゃないか」と言うんです。おかしいでしょ?私もわけがわからなくって。忘れようとも思
ったんですけど、だめで。でも、とりあえず、ずぼらな生活はあらためましたよ。もう、どこ
に何があるかわからない部屋が怖くって。
次は「柘榴」「台風」「新島」でお願いします。