鉱工業生産から住宅、国内支出に至る一連の経済指標が11日に発表されたあと、中国人民銀行(中央
銀行)は12日夕、預金準備率を0.5ポイント引き下げて18日に実施すると発表した。
この引き下げは銀行の貸し出しを拡大させようとするものだが、銀行は既に十分な資金を持っているようで、
2月後半に5.4%の高水準にあったインターバンクレートは11日には3.2%にまで低下した。ゴールドマン・サックスの
アナリスト、ソン・ユ氏は、預金準備率が20%に引き下げられたのは、金融を緩和するとの政府のシグナルとして
使われたのであって、経済自体に大きく影響するものではないと話した。
11日に発表された各種統計は、中国経済が今年第2四半期(4〜6月)に引き続き勢いを失っており、同国
指導部や市場アナリストが予想するようには回復しない可能性のあることを示した。
中国は西欧では、自動車のアクセルペダルを踏むように容易に景気を押し上げられると広範に見られている。
同国政府は絶対的であるため、国民や議会と相談する必要もない。その債務は比較的少なく、追加の支出も
可能だ。同国は2008、09年の世界的なリセッションも、多額の貸し出しと支出によって乗り切ることができた。
しかし、北京にはその作戦能力を狭める制約がある。莫大な支出計画は住宅市場バブルを悪化させ、地方
政府の債務を徐々に膨らませており、指導部はまた新たな景気刺激策を取ることに慎重になった。世界的に
中央銀行が好む方法である金利引き下げは、中国の中銀がこの1年間抑えようとしているインフレを悪化させる
恐れがあり問題だ。
もう一つの抑制作用がある。薄熙来氏の政治局からの失脚をめぐる混乱で既に円滑さが損なわれた10年に
1度の指導部交代だ。アナリストは、指導部交代が円滑に行われれば、景気刺激の可能性も高まるが、
ライバルの派閥を大胆な措置に同意させるのも難しくなるかもしれないと述べている。
ブルッキングス研究所の中国専門家、エスワー・プラサド氏は「信用の急激な拡大は最も効果的な刺激策
だろうが、これは金融制度改革と同国経済のリバランシングを後退させるため、中国の政策立案者は難しい
問題に直面している」と指摘した。同氏は「財政面での刺激を注意深く行えば短期、長期のいずれの目標も
達成できる可能性は高いが、経済の不透明感が消費者と経済界の信頼感を圧迫すれば、その効果も
限られたものになるかもしれない」と語った。
中国の今年第1四半期(1〜3月)の国内総生産(GDP)伸び率は前年同期比8.1%で、09年春以来の
低水準だった。エコノミストは今第2四半期に上向くと見ていたが、今ではその公算も小さく、一部では予想が
下方修正されている。UBSのエコノミスト、ワン・タオ氏は第2四半期のGDP伸び率予想を4月の各種統計が
発表される前の8.4%から8%に引き下げた。
中国の債務が少ないということは、同政府が景気支援のために支出を増やしたり減税をしたりする余地が
あることを意味する。国際通貨基金(IMF)によると、同国の債務の対GDP比率は25%で、米国の102%に
比べて著しく低い。温家宝首相が最近、11年末時点で10兆7000億人民元(135兆円)、対GDP比22%と
指摘した地方政府の債務を考慮しても、中国の公的財政は比較的健全なようだ。4月の消費者物価が
前月比0.1%下落したように、インフレ率が鈍化していることも刺激策を取れる余地があることを意味している。
バンク・オブ・アメリカのエコノミスト、リュー・ティン氏は、同国政府は社会福祉にもっと支出を増やして、低所得層
向け住宅やインフラの建設のスピードアップができそうだと述べた。ただ、公的支出を増やすことは簡単ではない。
地方政府が野心的な目標を達成できないことから、政府は低所得層向け住宅建設計画を縮小している。
これを反転させれば、中国の拡大する痛みに最も迅速に対処できるかもしれない。しかし、それは政府にとって
厄介なUターンになるだろう。温家宝首相ら指導部は住宅市場バブルに針を刺すことを重要政策としている。
不動産価格はこれまでのところ高値からほんの少ししか下落しておらず、住宅価格に値ごろ感を持たせる問題は
まだ解決されていない。
THE WALL STREET JOURNAL: 2012年 5月 14日 11:25
http://jp.wsj.com/Economy/Global-Economy/node_441958?mod=WSJWhatsNews 関連スレ
【中国経済】中国が追加金融緩和 預金準備率0・5%下げ[05/12]
http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1336829762/