http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/%82%8A-2006/05/0605j0520-00004.htm ★〈拉致問題を問う〜対話と圧力〜C〉 解決志向する者と阻む者 〔2006.5.20〕
★初めに憎悪、蔑視ありき
■日本の政府とマスコミの関係者が拉致問題を語るとき必ず持ち出す言葉がある。「誠意」だ。
折に触れ、彼らはいっせいに「北朝鮮は誠意を示せ」と合唱する。北朝鮮の誠意とは何か。もし
くは、日本の誠意とは何か。■このじつにあやふやな言葉が拉致問題の絡みで頻繁に使われ
始めたのは2004年からだ。同年12月8日、細田博之官房長官(当時)が横田めぐみさんのも
のだとされる骨のDNA鑑定結果を発表した。それは横田さんのものではないとの結論が得られ
たという。としたら、この結論を出すに至った経緯、つまり鑑定プロセスを公開すべきだが日本政
府はそのきわめて簡単な手続きをなぜかかたくなに拒み続けている。あまつさえ、取材をすれば
するほど鮮明になるのは「横田さんのものではない」との結論を出した者がまったく不明というま
ことに奇怪な光景である。■さらに、DNA鑑定にたずさわった帝京大学の吉井富夫講師を官房
長官発表からほどなく警視庁科学捜査研究所の法医科長に「天上がり」させて囲い込む妙な芝
居さえ演じ、ようするに日本政府(警察)と吉井氏が裏取り引きをしたとの疑惑さえまといつかせ
ているのだ。■そうした一連の流れは交渉相手もさることながら拉致被害者および家族とともに、
日本国民をも激しく愚弄するものだと言わざるをえないのだが、いずれにしろ、とすれば「誠意が
ない」のは誰か。まず「誠意」を欠落させてしまっているのは誰か。■この問いは次の問いを引き
出す。何のためにそんなふるまいに出るのか。答えはひとつしかない。02年9月17日の日朝
平壌宣言の損壊である。■同宣言以降、日本の政権内部とともに外務省や警察庁などの政府
機関において拉致問題の解決を志向する者≠ニ拉致問題の解決を阻む者≠フせめぎ合い
がしだいにし烈化した。この帰結点のひとつが横田さんの骨とされるもののDNA鑑定の「結論」
だった。つまり拉致問題の解決を阻む者≠ェ勝利したわけだが、では、拉致問題の解決を
阻む者≠ェ好んで口にしている言葉は何か。「誠意」である。■誠意を欠落させた者の弄ぶ「誠
意」ほど醜悪なものはない。とにかく、彼らは「誠意」の連呼により何かを期待しているのだ。彼
らを観察する。と、すぐ目に付くのは米国に対するおもねりの姿勢である。■戦後60年余りが過
ぎてもなお日本が米国に従属している構図は周知の事実だが、それをまざまざと教えてくれる
のは、1960年6月、日米安全保障条約といっしょに締結した日米地位協定(日本国と米合衆
国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合
衆国軍隊の地位に関する協定)である。■この条文に添って正確に言おう。日本は明白に米国
の植民地なのだ。近年では、たとえば毎年末に米国政府が日本政府に突きつける、国政のあ
らゆる場面に関する実行すべき指導書(要望書)があり、ちなみに法務省はいま入国管理や検
察情報管理の新システムを導入し関連情報をそっくり米国に提供しようとしている(同整備の一
環として今国会で改正入管難民法が成立)。加えるに、必ずやこれからの日本の残虐きわまり
ない桎梏となるであろう日米安全保障協議委員会(2+2)合意が生まれたりしているが、視点
を拉致問題のほうへ戻そう、ようするにそうした環境下で展開されている「(拉致事件解決は)国
家の意思」(次期首相といわれる政府高官のひとりの発言)とは、もしくは彼らが常に拉致問題
とセットで北朝鮮を指さし高唱する「国家主権」や「愛国」とはいったい何なのか。■また、拉
致≠ノかかわる運動を取材していて愕然とせざるをえないのは、この運動の指導層がとてつも
なく主観的な愛国にまみれきり、いまでは平然と運動の根幹であるはずの拉致問題解決を、口
とは裏腹、しきりに背後へ放り投げているような格好である。■たとえば、北朝鮮に拉致された
日本人を救出するための全国協議会(救う会全国協議会)の佐藤勝巳会長は「北朝鮮に対抗
するため日本は核武装すべきだ」と公言し、自身の主宰する月刊誌『現代コリア』などを使いしき
りに「(日本および日本国民は)戦争を恐れてはならない、核ミサイルを持て」と煽動する。
■(つづく)