○趣味の部屋『塔矢愛好会』Part44●

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947名無し草:03/10/19 01:22
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■●おまえら男ならヒカルたんハァハァだよな?Part46○
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 〔新設!ハァハァものをどんどんうpしる!〕
948名無し草:03/10/19 01:23
>945
あぶねー!テンプラ重複して貼るところだった。
乙!
949名無し草:03/10/19 01:26
>944
ヤスロとこたつん中くんず解れず(*´Д`*)ハァハァ
親父がいねえからってよ〜!ヽ(`Д´)ノうらやますぃ(*´Д`*)ハァハァ
950名無し草:03/10/19 01:30
とりあえず立ててくるで。
アキラたん(;´Д`)ハァハァ
951名無し草:03/10/19 01:33
(23)
入口に先端があてがわれ、今にも…、というところで緒方が口を開いた。
「聞いておくが、本当に、いいんだな?」
アキラは大きく頷いた。
「本当に、後悔しないな?」
「しない…から、はやく……」
繰り返される質問を封じようと、アキラが懸命に言葉を搾り出して
緒方を急かすと、緒方は黙って一気に奥まで突き入れた。

「あああぁ――――――っ!」
思わず溢れた大きな声にアキラは自ら驚いて、慌てて口元を押さえた。
自分の中に確かに存在する、奥深くまで埋められた緒方の感触に
全身を苛む熱が、際限なくポンプアップされているが
緒方は動こうとせず、アキラの尻を掴んだままだ。
嫌われたか、と不安が生まれ始めたころになって、
ようやく緒方はゆっくり腰を引き始めた。
「…んんっ……」
中全体を目一杯使って擦られる感触が、
しかもゆっくりと引き出されるのが堪えられないくらい好くて
挿れたばかりなのにもう弾けてしまいそうで
アキラは飛びそうな意識を懸命に繋ぎ止めていた。
日帰り&一泊の近郊旅行コンボで、もう体力が残ってない…
がそのお陰で丁度このタイミングで投下できて、正直ラッキーだな。
954名無し草:03/10/19 02:12

   ┌─────――――┐
   │Bar. チチャーイやまねこ│
   └─────――――┘
お待たせしました! 開店致します!!

   日 凸  ▽ ∇ U
    ≡≡≡≡≡≡≡  /|||||"||ヽ  イラッシャイマセ!!
     U ∩ [] %..   |(゚▽゚*)||
   _________(つ)Uと)_
   ―――――――――――――

      ━┳━   ━┳━
      ̄ ┻  ̄ ̄ ̄┻ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
955名無し草:03/10/19 21:12
     \パトヤシロ Barノソトデマッテルンダヨ!!/
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           /|||||"||ヽ
           |(゚ー゚*)||
    ワンワン!  と   つ
  ヽヽヽイ,,   / i   ノ
 ∠从从シ  /  し"ヽ)
  (.*´O`.)/
  ,==´、
  ( U U,
  (^_)_)
956戻り花火 ◆pGG800glzo :03/10/19 21:55
(13)
社が東京にやって来たのは7月の末だった。
「よっ。進藤、元気やったか」
3ヶ月前と同じように駅で待ち合わせをして、アキラの家へ向かった。

「進藤たちはもうガッコ行ってへんのやな。ホンマ羨ましいわー。オレなんか一昨日まで
中間テストやったんやで」
「中間テスト!うわっ、思い出したくねェ〜。夢に見ちゃうぜ」
北斗杯を目前に控えていた前回とは状況が違うせいか、道すがら社はよく喋った。
ヒカルも、アキラと社の関係がはっきりしないことに少し不安はあったものの、
顔を合わせてしまえばさすがにかつて密度の濃い数日間を共にした者同士で、話が弾んだ。
――にしてもコイツ今日、ほんとよく喋るよなぁ。
電話で何度か話した時は、ここまで饒舌ではなかった気がする。
久しぶりに顔を合わせるとやはり違うということなのか、それとも。
「それでな、どうなったか知りたいと思うやろ?したらな、吉川師匠が渋ーい顔して言うてん――」
「着いた。降りるぜ」
「あ?ああ、もう着いたんか・・・」
ホームに降りてから、あれだけ饒舌だった社がすっかりおとなしくなってしまった。
何か考え込むような顔で懐かしそうに辺りの風景を見回している。
「社?階段こっちだぜ。・・・なんか珍しいもんでもある?」
「ン、いや、そういうわけやあらへんのやけどな。何や、またココに来れたんやなぁと思うと
感慨深いのと・・・塔矢・・・」
ヒカルの全身がビクリと竦んだ。
電車に乗っている間あれだけ喋ったのに、社の口からアキラの名を聞くのはこれが今日初めてだった。
957戻り花火 ◆pGG800glzo :03/10/19 21:55
(14)
「塔矢が何?」
嫌な予感に胸を高鳴らせながらヒカルは聞いた。
口を結んで風景を見渡す社の横顔が、急に大人びた自分の知らない顔に映る。
「あ――いや、この駅・・・塔矢がいつも、使おてる駅なんやなぁ思て・・・」
――なんだよ、それ。
ヒカルの視線に気づいたのか、社が慌ててフォローした。
「あ、つまりやな、塔矢ってあんまり普通の人間っぽくない言うか、電車に普通に乗ってる
とことか想像しづらいやん。せやから、アイツも普通にキップ買って手摺り掴まって、
乗り越してもーたら自動改札機でピコーンピコーン足止め食らうんかと思おたら、何やその・・・」
続く言葉を探して眉根を寄せ空を仰ぐ社に、ヒカルは助け舟を出した。
「・・・あー、確かに塔矢って、あんま親しくないうちはそんな感じあるかもな。
物食ってるとこも想像出来ないっていうか」
「せやろ」
社がホッとしたように笑顔になる。
その笑顔を見ていたら、急に今まで味わったことのない意地の悪い気持ちが込み上げてきた。
「――でも、塔矢と社ってもうそんな親しくないって間柄でもないだろ。
ずっと連絡取ってたんだろ?オレの知らない所でさ」
言い放つとヒカルは社の顔も見ずにさっさと階段を下り始めた。
棘のある言葉に社は一瞬呆気に取られていたようだったが、すぐに後を追ってくる気配がした。

――なんでオレ、こんなことしてんだろ。
大阪から数時間かけて自分たちに会いにやって来た社に対して申し訳ないと思った。
――違うんだ、社が塔矢を好きになったってそれは別にいいんだ。塔矢に憧れる奴なんか
他にいくらでもいるけど、それを怖いと思ったことはねェ。だからオレが怖いのは、
社が塔矢を好きになることじゃなくて――
改札口まで来て、一際目立つ凛とした姿にヒカルは足を止めた。
「進藤。あれ・・・一人?」
「塔矢――なんでここに」
958戻り花火 ◆pGG800glzo :03/10/19 21:56
(15)
「進藤、待ってやー。キップどっかに仕舞ってもーてん」
階段のほうから聞こえてきた声にアキラが顔を上げる。
アキラは心なしか首を伸ばし、瞬きもせずにその大きな目で階段から下りてくる人の流れの中を
落ち着きなく探した。
ヒカルは言葉を失ってそのアキラの顔を見守るしかなかった。
「お、あったわ、へへ。こういうのは入れとく場所決めとかなアカンな。・・・って、」
ヒカルより数歩手前で、社が足を止めた。
アキラが少し照れ臭そうに、きゅっと唇を引き結び微笑む。
「久しぶりだね。・・・社」
「・・・来てたんか。元気そうや。・・・良かった」
社もまた少し照れ臭そうに、顔を綻ばせた。
アキラはちらりと駅の時計に目をやって言った。
「キミたち二人にしておいたら、着くのが何時になるかわからないからね。
念のため迎えに来たんだよ。・・・ところで二人とも、早く出て来たら」
ヒカルと社がはっと顔を見合わせる。
二人とも改札口の手前で立ち止まったままだったのだ。

背を向けさっさと歩き出そうとしたアキラの真っ直ぐな背中を追って、夢遊病のように
切符も通さず改札口を出ようとしたヒカルはピコーンピコーンという派手な音と共に
遮断扉に足止めされた。
「うぁっ」
「うぉっ」
重なった声に振り向くと隣の自動改札機で社が同じように切符を手にしたまま足止めされて
固まっている。
ヒカルと目が合うと、社は屈託なくニカッと笑った。
どんな顔を返せばいいかヒカルが迷っているうちに、アキラが大きな溜め息をついて
またスタスタ歩き出そうとした。
「あっおい、塔矢!溜め息とかついてんじゃねェよ、たまにはこーいうことだってあるだろっ!」
「待ってや、塔矢ー!おーい、塔矢さーん!」
両肘を突き出し耳を指で塞いで足早に立ち去ろうとするアキラを、二人は慌てて追いかけた。
(24)
(まさか、またアキラを抱くことになるとは――)
挿入前の念押しは、アキラへの意思確認というよりは
緒方自身への再確認の意味が強かった。
確かに、手を離れた後のアキラに興味を持ったし、
また一時はその妖艶さに危険を感じ、踏みとどまったのも事実だ。
他人のものに手は出さない主義だという言葉もまた真実だが、
これだけ懸命に、縋るように求められて、
それでもアキラを突き放すことは、やはり緒方にはできなかった。

若いヒカルと比べられたくなかったし
久しぶりのアキラをじっくり味わいたいという理由で
最初から飛ばすのは止めておいたが、そのゆっくりした動作の中で
アキラの身体が少し強張っていることに気づいた。
「アキラ、どうかしたか…?」
動きを止めて声をかけた。よく見ると、シーツを握りしめた手が
力が入りすぎているのか、妙な白さだ。
「はぁっ………い、た……んん…」
(25)
「ん?痛いのか?」
「…ん…………」
行為が久しぶりで辛いのだろうか。確かに中はひどくきつい。
緒方はアキラを宥めてやろうと何度も背中に口付けた。
脇腹から胸へとそっと撫で上げ、
胸の先端を指の腹で優しく捏ね回すと、背中が強張った。
感じているのかと暫く続けたが、どうも様子が違う。
強張りはだんだんと酷くなり、唸り声まで漏れている。
(これは……、一度イかせてしまった方が良いだろうか?)
緒方はアキラの前に手を伸ばしたが、触れるかどうかのうちに
アキラはかなり悲痛な声で大きく叫んだ。
「アキラ、大丈夫か?どこが痛い?」
緒方は力を入れずに、そっとアキラを扱き始めた。
「……ぅぅ………お…きく、なりす…ぎ……て………ぅ……」
(――大きくなり過ぎて?それで中が痛いのか…?)
「じゃぁ、一回抜くぞ?少しだけ我慢して――」
「ちが……!ぅぅ………」
「ん?どうした?」
「…ボク………大きく…な、すぎて……いた、い………」
(26)
(そうか、そっちか………!)
緒方はぎゅっとアキラを握り締め、アキラは短く悲鳴を上げ
そのまま少し手を動かすと、叫びとも喘ぎともつかない声を
上げながら、緒方の手の中に精を放った。
吐き出されたそれは片手には余る程の量で、
指の隙間から次々と零れ落としながら、
緒方は何とかティッシュを手繰り寄せて拭った。
本当は飲み干すつもりでいたが、溜めたままの手を鼻先に持ってくると
随分溜まっていたのだろう、すえた濃い匂いがして
口にする気にはなれなかった。
アキラは自分で処理していないのだろうか?と下世話な心配が
一瞬、緒方の脳裏をよぎった。

アキラは弛緩して、緒方が腰に廻した手だけがアキラを支えていた。
ゆっくりと緒方が動くと、しばらくは大人しくしていたアキラは
喘ぎ始め、少しずつ嬌声が漏れ、だんだん大きくなった。
窘めようとアキラを呼ぶと、アキラは何度も緒方を呼んだ。
結局アキラは嬌声を抑えようとはせず、
途切れず呼ばれることに悪い気もしなかった緒方は
そのままアキラに呼ばれ続けていたが
それと同時に、他人のものになってしまったアキラを感じた。
962 ◆LagunafJHY :03/10/21 02:47
夜が明けたら夏休みも終わりだ。
アキラたんと、どっか行きたかったなぁ……(´・ω・`)
(27)
遅い来る強烈な熱と、鈍く、しかし確実に存在する痛みと
その痛みが増幅されて弾けた、白い爆発の後のことは
アキラにとっては現実感がなくて、夢の中のようだった。
緒方はアキラの名を呼んでくれ、アキラが呼んだら返す言葉があり、
アキラが望めばそれに従った。

求めれば応じる、確かなぬくもり。甘い囁き。
「此処に在る事」のしあわせ―――
アキラは夢に見た幸せを、やっと感じていた。


「おがたさん、だいすき……」
脳裏に浮かんだその言葉は、声にはならずに零れ落ちた。
(28)
「おっかしいなー。やっぱ嫌われたかなー?」
深夜のアルバイトの休憩時間。
ヒカルは口をとがらせ、携帯を握りしめていた。
アキラから最後に電話が来たのは、1週間以上も前のことだ。
半端でない疲労から、アキラの声を聞きながら眠ってしまった。
既に2度、やってしまって、二度とも電話でイヤというほど叱られた。
流石に三度目はマズイだろうと思って、気を付けてはいたのに
アキラの声は低く優しくて、やっぱり眠りに誘われてしまった。
一旦電話を切ったアキラからかかって来た、その着信音で目が覚め
前のように怒鳴られるかと思って恐る恐る受けたら
アキラは、疲れているのに長々とごめん、と謝って、
もうこちらからは電話しないから、風邪を引かないよう
早く着替えてベッドで寝るようにと言うと
おやすみ、と電話を切ってしまった。
拍子抜けしたものの、本当に疲れていたヒカルはそのまま眠った。
(29)
以降、毎日のようにあったアキラからの電話は一度もない。
メールは、2〜3日して一回だけ来た。
無理をしないように、時間が出来たら何時でもいいから
電話が欲しい、という内容が、とても簡潔な文章で書かれていて
すごくよそよそしい印象を受けた。
その上、電話が一切ないのは、流石に少し気になる。
バイト中に電話を使うと、あとで色々と冷やかされるのだが、
もうそれを気にしてもいられない。
それにいつもなら、この時間でもすぐ電話を取るのだが……

「進藤君、そろそろ時間だよォー」
ヒカルははっと顔を上げた。
「あっ、はーい!今行きまーす!」
慌てて電話を切って、携帯を置きに戻った。
結局、アキラと話すことはおろか、
留守電にメッセージを残すことさえ出来なかった。
(30)
アキラが目を覚ますと、隣に緒方の場所はあったものの、姿はなかった。
ベッドを降りて、脱いであったバスローブを羽織って
リビングへ向かうと、コーヒーの香りが濃く漏れ漂っていた。
「あぁ、おはよう、アキラ君」
キッチンにいる緒方が先に声をかけてきた。
「あ、おは……」
声が思うように出ず、渇いた喉でせき込んだ。
「声が嗄れたか…まぁ、仕方ないか。それより、着替えてきなさい」
緒方の指した先、ソファの上に、昨晩洗濯機に放り込んでおいた服が
きちんとアイロンまで掛けられて、畳まれていた。
それを持って一旦寝室に向かい、着替えて戻ると
テーブルの上にはフレンチトーストが出されていた。
その他に、水と牛乳とグレープフルーツジュースと、
コンビニのサラダを茹でただけであろう温野菜も添えられている。
この部屋に調理器具があることはもちろんだが、
ここで朝食が出されることにも、またそのメニューにも驚いた。
(31)
子供の頃、一時ハマったフレンチトーストと温野菜の組合せ。
一緒にいることが多かった緒方に、作ってとねだったが
料理の経験のない緒方はそれが出来ず、結局母に教わって作っていた。
台所に立つエプロン姿の緒方は、慣れない作業に懸命だった所為か
隣に立つ母と比べると酷く不格好だった。
その後入門した芦原が、自宅の台所で慣れた手つきで
料理をするようになるまで、男性が台所に立つのは
あまり格好良くない事なんだと、アキラは固く信じていた。

「どうしたんですか?緒方さん、ここで朝ご飯なんて
 今まで一度も作ったこと、なかったじゃありませんか」
「――食事が済んだら家まで送ろう。
 それから……、塩で良かったんだよな?」
アキラの問い掛けには答えないまま、緒方は
手にしたコーヒーカップで、テーブルの上のソルトミルを指した。
――確かに、おやつで食べるときは砂糖だったし
朝食の時は塩を振って食べていた。
「はい……それじゃあ、いただきます」
マイブームが去って以来、食べていなかったフレンチトーストは
子供の頃と変わらない、懐かしい味だった。
968 ◆LagunafJHY :03/10/22 22:38
今後の展開と季節との兼ね合いで、急いでるんだけど
気ばかり急いて進まない・・・
ヤマネコ大量消費申し訳ない>他の職人の皆様
969名無し草:03/10/23 16:22

 /|||||"||ヽ  /|||||"||ヽ  /|||||"||ヽ ./|||||"||ヽ 
 ||(*゚▽゚)|  ||(*゚ー゚)|  ||(*゚∀゚)|  ||(*゚O゚.)|
 (つ┳━┳(つ┳━┳(つ┳━┳(つ┳━┳
  i  ノ    i   ノ    i   ノ   i   ノ
  し"J    し"J     し"J    し"J
(6)
ものの五分とかからなかった。
喧騒がやむ頃には、七、八人の不良青年たちはすっかり畳まれて路地裏に伸びていた。
「フーッ・・・あまり手間かけさすんじゃねェ。ガキのうちから悪さしてんじゃねェよ。
悪いのは大人だけで十分だ」
森下はパンパンと両手をはたいた。
青年たちをのすのはさほど苦労しなかったが、少し息が上がっている。
――昔はこれくらい動いてもどうってことなかったんだがな。オレも年だな。
心の中で苦笑いしながら、壁際にへたり込んでいるアキラを見た。
「怪我ぁ無ェか。その・・・何もされてねェか」
アキラは言葉も失った様子でコクンと頷いた。
「ならいい。まず服を着ねェとな。ああ、いい。オレが取ってやるから座ってな」

そこら中に散らばったアキラの衣服を拾い集める。
薄汚れた街の中で浮いていた真っ白いシャツはボタンが飛んでしまっていた。
――あーあー。明子さんが丁寧にアイロン掛けたもんだろうによ。
しゃがみ込んだまま森下が黙ってパンパンと埃を払っていると、背後に人の立つ
気配がした。
ハッとして振り向くと、そこには懲りない不良青年ではなく――
アキラが立っていた。
(7)
ドクンと心臓が大きく一つ脈打った。
路地の両側の壁が尽きる細い隙間から、青い夜空に満月が浮かんでいるのが見える。
アキラはその満月を背に立っていた。
物言いたげな黒い瞳。
靴下のみを身に着けたその身体はすんなりと伸びやかで透けるように色が白く、
まだ少年とも少女ともつかないような中性的な趣を漂わせている。
それでいて形のよい臍の下方にある薄い茂みからはこの少年が確かに「男」である印が
なかなか天晴れな存在感を主張している。
その全てに思わず見入っていた自分に気づき、森下は慌てて顔を逸らした。
「ホラよ。・・・早く着な」
そちらを見ないようにしながら取りあえず拾い集めた分だけを差し出したが、
アキラは何故か受け取ろうとしない。
「ん?どうした」
振り向いた森下と目が合うと、アキラは大きな黒い瞳でじっと森下の顔を見つめ、
言葉を探すふうに何度か唇を小さく開いては閉じていたが、やがてキチンと背筋を
伸ばすと深々と頭を下げて言った。
「ありがとうございました。・・・森下先生」
「オレぁ構わねェがよ、・・・行洋や明子さんが知ったら肝を潰すだろう。
だが、まぁ説教は後だな。とにかく服を着ちまいな。これと・・・ああ、あれもそうか?」
アキラの手に無理やり衣服を押し付けてから腰を上げ、数メートル先に放置されていた
ズボンらしき物体を拾いに行く。
妙に、体の奥がざわざわする。
さっさとアキラに服を着せてしまわねばと森下は思った。
(8)
ズボンと靴は見つかったが、下穿きが見当たらない。もしかしたらアキラのいるほうに
落ちているのかもしれない。
「おい、塔矢――」
振り向いた森下は思わず声を止めた。

満月を背に、アキラは白いランニングに頭と両腕を通している最中だった。
両肘を頭の上に突き出して、顔は白い布地に隠されて、逸らされた滑らかな胸部に
花びらのような薄い色の乳首がバランスよく配置されている。
胸から下はまだ靴下一枚で僅かに脚を開いている、そのあまりに無防備な姿に
ドクンとまた一つ森下の心臓が大きく鳴った。
「え・・・あ、スミマセン。何でしょうか?」
アキラがランニングからすぽんと頭を抜いて手を離すと、白い布地がすとんと落ちて
華奢な腰骨の辺りまでを覆った。
「あ、あぁ。下穿きがこっちにはねェみてえなんだが、そっちに落ちてねェか?」
「え、そうですか。えーっと・・・?」
アキラはくるりと背を向け、右手の指で髪を耳に掛ける仕草をしながら
左手を太腿に沿わせてゆっくりと膝まで下ろしていった。
――おいおいおいおいおいおいおいおいっ!!
左手が下に下りていくのと同時に腰が屈まるので、必然的に尻がこちらに向かって
突き出されることになる。
男同士なのだから別にいいと言えばいいのだが、アキラの中性的な体つきと
白過ぎる小さな尻が森下を訳もなくどぎまぎさせた。
「・・・あっ」
尻を突き出したまま首を回して辺りを探していたアキラが声を上げた。
(9)
「あーあー、これは・・・」
「・・・・・・」
森下にのされて失神している不良の一人のポケットから、明らかにそれと分かる
白い物体が覗いていた。
スルリと引っ張り出して両手で広げてみたその物体は自身のそれに比べると
驚くほど小さくて、さっき見たアキラの華奢な腰骨と小さな尻を思い出した。
「ま、見つかって良かった。ホラよ」
渡そうとすると何故かアキラはまた手を引っ込めて受け取ろうとしない。
「すみません。ボク、それ何となく・・・穿きたくないです・・・」
確かにアキラを襲ったこの男がこの物体を持ち帰ってどうするつもりだったのかと
考えると、第三者の森下でさえ気持ちが悪くなってくる。
穿きたくないというアキラの心情も分かる気がした。
「ま、穿かなくてもいいからよ。一応持って帰んな。ホラ」
「いえ、結構です」
首を振るとアキラはさっさと元いた場所まで戻り、残りの衣服を身に着け始めた。
「そう言ったってなぁ・・・」
森下は頭を掻いた。まさかここに放置していくわけにもいかないだろう。
少し迷った後、森下はアキラの白いブリーフを小さく畳んで自分のポケットに入れた。
(32)
食事が済むと、アキラが断るのも聞かず
緒方はアキラを車で家まで送った。
途中いくつかの話題は出たが、差し障りのないありきたりの話で
何も聞かれないことが、アキラには逆にありがたかった。
自宅が近くなった所で緒方に礼を言うと、緒方からは
もう二度と部屋には入れない、と、固い口調で告げられた。

門の前ぴったりに着けられた車から降りても、
緒方の車はすぐには発車せず、アキラが玄関をくぐり
鍵をかけてやっと、エンジン音が彼方に消えていった。

きちんとアイロンまでかけられた服。小さいころ好きだった朝食。
入れられても自分には出されなかったコーヒー。
刺激物を母が酷く嫌っていた、という理由で
中学に上がって初めて、碁会所でコーヒーを口にした。
そして寸分違わず門の前に着けられた車―――
もう、アキラは十分に気づいていた。
今朝の緒方に、自分は幼い子供として扱われたのだ。
本当は、そんなに子供なんかじゃない。結構うまくやっていけている。
そう思っていても、それを妨げる存在が確実にあるのも分かっていた。
(33)
アキラは靴を脱ぎ、自室へと向かう。
そう、ヒカルと一緒に居る時間が増えるにしたがって、
自分はどんどん子供になっていく。
――時計は今なお、巻き戻され続けている。
椅子の上に鞄を置き、中の携帯を探った。
携帯は、いつヒカルからのメールや電話があってもいいように
家の中でも、常に持ち歩いていた。
そして、探り当てて取りだした携帯には着信が4件。
(―――進藤!?)
慌てて携帯を開くと、着信は午前3時過ぎ、メッセージはなかった。
曜日から言っても、また着信の時間から言っても
多分間違いなく、アルバイトの休憩時間にかけてきたのだろう。
アキラは慌てて電話をしようとして、さらに慌てて思いとどまった。
まだ午前中だから、ヒカルはきっと寝ているだろう。
今日は確か、森下先生の研究会があるはずだから
午後になったらメールしておけば、帰りにでも読んでくれるだろうか。
アキラは今日の陽が落ちるのが、楽しみで仕方なくなって
あまりに浮いた気持ちを落ち着けようと、碁盤の前に座った。
976名無し草:03/10/24 18:34
|
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977名無し草:03/10/24 23:16
(10)
「さてと。とにかく、これに懲りたらもう日が落ちてからこんな所を中学生が一人で
ほっつき歩くんじゃねえぞ。これからタクシー拾ってやるから、真っ直ぐ帰れよ」
健康のためになるべく歩くよう心がけているせいもあって、自分では普段タクシーなど
滅多に使うことはなかった。が、ボタンの飛んだシャツや汚れたズボンを身に着けた
アキラをこのまま人目に晒される電車に乗せて帰らせるのは気が引けた。
家に帰ればアキラの有様を見て行洋や細君は驚くだろうが、結果的には何事も
なかったのだし、事情を聞いた行洋にアキラがきつく説教されて終わりだろう。
森下自身がアキラに説教することも考えたが、さっきアキラの裸体を見てしまってから
どうも調子がおかしい。頭の中がふわふわして、妙な気持ちだ。
他人の子供を説教するなど考えてみれば面倒臭いし、何か入り組んだ事情でもあるなら
なおのこと、アキラはこのまま帰して父親である行洋の口から注意させたほうが
よいのだと森下は自分に言い訳した。

だが、帰れと言われた途端アキラは俯いてしまった。
「どうした」
「・・・あの・・・帰らなきゃいけませんか・・・?」
真っ直ぐに切り揃えられた前髪の下から、僅かに眉根を寄せたアキラが黒い瞳で
上目遣いに森下を見上げる。
今まで見たことのない、塔矢アキラの哀願するような頼りない表情に
多少焦りを覚えながら森下は言った。
「そろそろ明子さんが美味い夕メシ作って待ってんだろう?帰ったらいいじゃねェか。
まさかこんなことのあった後で、まだ外をフラフラしようってんじゃねェだろうな」
「・・・・・・」
アキラがゆっくりゆっくりと項垂れて、その表情が見えなくなった。
(11)
「おい」
「ごめんなさい・・・」
艶やかな黒髪の向こうから、ポツッと一粒光るものが落ちた。
森下はうろたえた。これは、自分が泣かせたということになるのだろうか。
「おい、・・・別に怒ったわけじゃねェぞ。ただ、おまえの親父やお母さんを安心させる
ためにも、早く帰ったほうが――」
「森下先生にせっかく助けていただいたのに、こんなことを言うべきじゃないって
わかってます。・・・でも・・・ボクはまだ、ここに来た目的を果たしていない。
・・・帰れません」
森下は仰天した。
「おいおい、そりゃあどういうこった?おまえみたいなお坊ちゃんが、こんな所に
何の用があるってんだ。知らずに言ってるんだろうが、この辺りは――」

言いかけて森下は口を噤んだ。
もしかしたら――そうではなく。
知っているのか?
この辺りがどういう場所なのか、何を求めて人々が集まる場所なのか承知の上で
アキラはここを訪れ、あの薄汚れた街角に立っていたのだろうか。
さっきの不良青年にしても、まさか相手があんな人数で無理やり事に及ぶとは
思っていなかったから自分に助けを求めたまでで、もし相手が最初に声を掛けた
二人だけで和やかにアキラをホテルにでも連れ込んでいたなら――
突然、アキラが先ほど見た靴下だけの格好で金を握らされ、二人の青年に犯されて
淫らに喘いでいる光景が生々しく目の裏に浮かび、森下は思わず首を横に打ち振った。
――馬鹿な。何を考えているんだ!?オレは。
(12)
「ともかくだ。何か事情があるんだろうが、通りがかった大人の義務として
オレはおまえをこのままここに放ったらかしとくわけにはいかん。おまえが嫌だと
言うなら、引きずってでも家まで送っていくだけだ!」
「あ・・・!嫌っ!」
森下がアキラを捕まえようと大きな手を伸ばすと、アキラはそれを振り払い
首を縮めてその場にしゃがみ込んでしまった。
「おい!?」
森下が見ると、アキラは身を守るように縮こまってカタカタと小さく震えている。
殴ろうとしたわけでもないのに何故こんな反応を示されねばならないのかと一瞬心外に
思ったが、そう言えばアキラは今さっき男に襲われたばかりだったと思い出した。
まだ、恐怖心が癒えていないのかもしれない。
そうだとしたら可哀相なことをしたと思った。

「・・・すまなかった。怯えさせるような真似しちまってよ。だがよ、このまま一人で
ここに残ったら、もっと怖い目に遭うかもしれないんだぜ?さっきだって、オレが
居合わせなかったら自分がどういう目に遭ってたか、分からないほどガキじゃねェだろう」
「それは・・・分かってます。でも・・・」
「帰る気はねェ。力づくで連れ帰るのも無理。・・・か。行洋ん家に連絡して迎えに来て
もらうってのは――」
アキラが顔を上げ、涙に濡れた黒い瞳を見開いて泣きそうな顔で首を振る。
森下は溜め息をついた。
「オレに、どうしろって言うんだ」
「ごめんなさい・・・」
「まあ、いいさ。・・・そこまで強情張るからには、何か事情があんだろう」
森下は満月を見上げた。
家路を急ぐ最中にとんだ厄介事に出くわしてしまったものだが、ここでアキラに
会ったのも何かの縁だったのかもしれない。
(13)
「とりあえず――メシでも食いに行くか」
森下がポツリと呟いた。
「え?」
「メシだよ。・・・おまえだってそろそろ腹減ってくる時間だろう?腹が減ると、
人間ロクなことは考えなくなるもんだ。逆にたらふく食って腹が一杯だと、
脳味噌から胃袋に血が集まって細かいことはどーでもよくなっちまう。
だから煮詰まった時は美味いもん食って気分を入れ替えるのが一番だ。
オレが奢ってやるから。行くぞ」
「でも・・・森下先生、ご自宅に帰られる途中だったんじゃ」
「ああ。だがまぁ、家は消えてなくなるわけじゃねェからな。とりあえずこっちの
用事のほうが大事だろ。・・・何か悩み事があってそれを親には話せないってェんなら、
オレに話してみたっていいじゃねェか。オレだって一応おまえが生まれた時から
知ってるんだし、オレで出来ることなら力になってやるからよ」

乗りかかった船だ。
どうせここまで関わってしまったのなら何とかアキラが家に戻る気になるまで、
そしてもう二度とアキラがあんな危ういことはしないと確認出来るまで、
とことん付き合ってやろうと森下は思った。
「森下先生に・・・相談を?」
「ああ。何だったら、朝までだって付き合ってやるからよ。ホラ、立ちな。
駅前に美味い丼物屋がある、そこに連れてってやるから」
「朝まで?」
アキラの目がキラリと光った気がした。
(14)
「あ?――あぁ」
それを聞くなりアキラはすっくと立ち上がってニッコリと微笑んだ。
「丼物屋さん、美味しそうですね!お話を聞いてたら、ボク何だかお腹が空いて
きちゃいました。森下先生が連れて行ってくださるんですか?」
――なんだなんだ、今コロッと態度変わらなかったか?コイツ。
少し面食らったが、アキラが街角に立つのを止めて移動する気になったのは
ひとまず喜ばしい。
さっきは裸を見てつい妙な気分になってしまったりもしたが、相手はまだまだ
食べ物に釣られるような子供なのだという意識が森下の心に余裕を生んだ。
「その店は味噌汁も美味いんだ。酒も飲める所だから、この時間だと仕事帰りの
サラリーマンで混んでるだろうが――まあ少し待つくらいはいいだろう」
「はい!楽しみです。あ、でもボク、こんな格好でお店に行ったら変でしょうか・・・」
アキラがしゅんと自分の体を見た。
土埃で汚れたズボンはともかく、ボタンの引きちぎれたシャツで店に入っていったら
さすがに変に思われるだろう。
森下は黙って自分の背広を脱ぎ、アキラの肩に掛けた。
「・・・これじゃ駄目か?」
アキラは一瞬驚いた顔をして、それから森下の顔を見つめ、それは嬉しそうに微笑んだ。
(15)
「・・・先生、寒くありませんか?ボクが上着を取ってしまって」
「なぁに言ってんだ。行洋と違って、そんなヤワには出来てねェよ」
「あはは。お父さんも丈夫なほうですけど、喧嘩は森下先生のほうが強そうですね。
さっきボクを助けてくださった時、先生とってもカッコ良かった・・・」
「おう、それ行洋に言ってやってくれよ」
軽口に紛らわしていたが、妙な気分だった。
森下の大きな上着を着たアキラは先ほどからずっと森下の腕に掴まり、
身を押し付けるようにして歩いている。
最初にアキラが腕に掴まってきた時少し驚いたが、目が合ったアキラがあまりに自然に
ニコッと笑いかけてきたので拒みそびれてしまった。
変に機嫌を損ねて、またここへ残るなどと言い出されるよりはよいかと思った。
だが歩くにつれアキラはどんどん体を摺り寄せてくる。
傍から見たら自分たちはどんな関係に見えるのだろう。
ふと、先刻見た若い男女のカップルが寄り添いながら歩いていった姿が頭をよぎった。
彼らが通り過ぎる時若々しい柑橘系の香水の匂いが鼻をかすめたが、今自分の腕に
縋りついているアキラからはもっと無垢で柔らかな、石鹸の甘い香りがする。
そのアキラを、自分の匂いの染み付いた中年臭い背広が包んでいる。
あのカップルは今頃どこかのホテルだろうか――

何だかまた調子が狂ってきそうで、森下は努めて前方の進路だけを見て歩いた。
時折アキラがこちらを見上げてくる視線を感じたが、気づかないふりをした。
しばらく無言で歩いていたアキラが、何を思ったか森下の逞しい肩にこつんと頭を
載せかけてきた。
そう言えばアキラの下穿きは今自分のポケットにあるから、歩くアキラの腰部は
直接ズボンの布地に擦れているのだなと、
そんな考えが取りとめもなく浮かんでくるのを浮かんだ端から打ち消しながら、
森下はアキラがビクッとするほど大きな声で
「あれだあれだ!あの店だぞぉ塔矢!」
と、先に見えてきた灯りの下の暖簾を指差した。
<おかっぱの国から2003・秋の巻>

(1)
久しぶりに我が塔矢家では親子三人が揃い、静かな秋の日を楽しんでます。
都会の木の葉が赤や黄色、そして茶色に色づいて、秋を通り越して冬がすぐ近くに
佇んでいる気配すら感じます。
今年は夏や秋が短いようですね。

今日は恒例の研究会の日ですが、少し趣向を変えて場を庭内に移すことに
なりました。
ボクの家の庭には大きな紅葉の木があり、葉が真っ赤に染まってとても綺麗です。
その木の下にゴザを敷いて、お父さんや門下生達が碁を打つのです。
深紅の紅葉のはらはらと風に舞うなかで碁を打つ・・・・・・絵になる風景だと思います。
爽やかな秋風が庭を吹きぬける中、お父さんが碁盤前に座り、研究会が始まった
ちょうどその時です。

お父さんの首のえり口に、紅葉の木から毛虫がポトリと落ちるのをボクは目撃
しましたっ!
でも真剣に門下生達と碁の検討をしているお父さんは、その事に気付いていない
ようです。いえ・・・、お父さんはわかっているようで、身体をプルプルと小刻みに
震わし、眉毛をビクビクと微妙に動かしています。
ああ、そうなんですね。
元名人という名に恥じない立ち振る舞いはしまいと思い、耐えているんですね。
お父さんがそのようにされるのなら、ボクもこの目で見たことは忘れましょう。
だけど顔中に脂汗をかき、ゴザにカリカリと爪をたてている姿・・・・・・・。
ボクは見るに耐えませんっ。

──お父さん男はツライですね・・・・・。
(2)
しばらく研究会は続くと、どこからとなく芋の焼けるイイ匂いがしてきました。
辺りを探ると、お母さんが庭の落ち葉などを集めて火をつけて芋を焼き、
「皆さん、少し手を休めてはいかが。お茶にしましょう」
などと、ノー天気な提案をしました。
「はいはいはああ〜い! そうしましょったら、そーしましょ! 」
さっそく芦原さんが、金ちゃん走りで焚き火のそばに一番乗りで行きました。
他の門下生達も席を離れるので、仕方なくボクも付き合う事にしました。
焼き芋はほど良く焼けていて、ホクホクして美味しいです。
うーん、芋は金時が最高ですねえ。

―――!
なぜかどこからともなく魚が焼ける匂いもします。気のせいでしょうか?
いえ、気のせいじゃなく確かにこの匂いは焼き魚です。

はうっ!?
いつの間にか木の枝に刺されたシシャモが焚火に当てられ、じゅ〜と香ばしい
音をたてながらイイ焼き具合になっています。
そのシシャモを手にしたのは・・・・・・あああ・・・・・・緒方さんでした。
田舎のお母さんが送ってくれたシシャモを、なんでボクの家の庭でわざわざ
焼くんですかっ!?
ったく、いいかげんにしてください!

ははうっ!?
こっ、今度は緒方さんの横で芦原さんが餅を鉄串にさして焼いてます。
どこから餅を持ってきたんですかあああっ?
(3)
そこへ、お母さんは笑顔で「おかわりはいかが」と、お皿に餅をのっけて
来ました。犯人は、お母さんですか・・・・・。
お父さん、ちょっと何か一言お母さんに言ってください。
今日はあくまでも研究会の日なので、ハメを外しすぎるのはよくないと。

はううっ・・・・・・・・お父さん、一緒になってスルメイカを焚火であぶってるぅ。
ああああああ。(←涙がキラリ)

しかもその横で緒方さんが、お隣の佐藤さん家の猫のタマにシシャモを
奪われて、必死になってタマの後を追っかけています。
緒方さん・・・・・・・・。(←またまた涙がキラキラリ)
あっ、お母さん! サンマまで焼いちゃマズイでしょ!
うわあ、黒々とした煙がもくもくと沢山出てきました。
近所迷惑ですよぉ、やめてくださああ──いっ!!
―――!?
なにか家の外が賑やかです、どうしたのでしょうか?
あれれ、ボクの家のほうへ消防車が猛スピードで止まりました。
まっ、まさかね・・・と思った瞬間、勢いよく水がボク達めがけて
ぶちかまけられました!!!

近所の人が火事だと勘違いして、消防署に通報したもようです。
お父さんやお母さん。そして他の人達は地面に突っ伏して倒れています。
無論、ボクも頭から足先までずぶ濡れです。
ぶっ、ぶっ、ぶえっつくしょん!!
うう〜寒い・・・・・・・・・冬は・・・もうすぐですね・・・・。(←涙と一緒に鼻水もキラリ)


(おかっぱの国から2003・秋ノ巻   完)
987  ◆RA.QypifAg :03/10/25 23:38
久しぶりのヤマネコに、ちと緊張((;゚д゚≡゚д゚;))
食べる事大好きだから、ネタが食い物によっちゃうな。
おかっぱの国も次の冬ノ巻で終わりだ。

>968
楽園たん、書ける人はどんどん書いてくれ。おしみなく、どんどんどんな。
こっちは楽しみに待っているから。
988名無し草:03/10/26 12:49

  ∧
 || /|||||"||ヽ
 || ||(*゚ー゚)|  エイッ!!
  廿⊂  | ̄ ̄|
    (  \/
    (ノ''J
(15)
見慣れたアキラの白い肌の上に、見覚えのない斑点のような跡がたくさん付いていた。
跡は、アキラの胸の突起と同じ綺麗な薄い赤色をしたものから消えかかってうっすらと
ココアの泡のような茶色がかった染みを残すのみとなったものまで様々だったが、
それらが薄い皮膚に覆われた鎖骨の辺りから普段は衣服で見えない二の腕、胸や脇腹まで
散らばっている。
ヒカルの心臓がドクンと締め付けられた。
「これ・・・」
「え?」
アキラは切なげに目を閉じたまま、乱れた呼吸のついでに洩れたような声で問い返したが、
しばらく待ってもヒカルから何の答えも返って来ないとねだるように腰を浮かせ、
まだ一つも脱がされていない下半身の衣服のウエスト部分に手を掛けて引っ張る仕草をした。
「進藤・・・しんど・・・はやく・・・っ」
「てゆーか、ちょっと待てよ。これ、何だよ。オマエの」
「え・・・?」
薄く瞼を開けたアキラの、濡れて光る睫毛の向こうで、潤んだ黒い目が不思議そうに
揺れている。
ヒカルは人差し指を伸ばし、アキラの胸の辺りを指して触れた。
その刺激一つにもアキラの体は跳ね上がり、胸の突起が目に見えてピンと立ち上がる。
それを無視してヒカルは言った。
「オマエの体の、これだよ。これ、虫刺されとかじゃねェだろ」
「え。・・・ああ、これ?」
やっと合点がいった様子でアキラは自分の身体の上に手を遣り、ハッハッと小さく息を
乱しながら少し首を持ち上げて覗き込むようにした。
(16)
「これは、大阪に行ってきた時のだよ」
「大阪・・・てことは、・・・社の」
「うん」
アッサリ答えるとアキラはまた頭をフローリングの上に戻し、すぐに続きが再開される
のを期待するように体の力を抜き目を閉じた。
だがヒカルはそろそろと、アキラの胸の皮膚に触れていた人差し指を引っ込めた。
「・・・・・・。進藤?」
漸く異変に気づいたのかアキラが目を開けこちらを見る。
「進藤、・・・もしかしてこれ、嫌だった?」
「・・・・・・」
ヒカルは答えなかった。アキラの肌に散らばった内出血の跡から目が離せない。
顔面に痛みを感じるほど、表情が強張っていくのが自分でわかる。
恐る恐るヒカルは聞いた。
「これ・・・これさぁ、他のとこもこうなってるの」
「うん」
「見せて」

一糸纏わぬ姿になったアキラの身体の隅々に、その印は残されていた。
いつもヒカルが抱いている真っ直ぐな白い脚も、たくさんの跡でその白さを汚されていた。
脚を開かせてみないと分からない、内腿のかなり際どい部分にまで複数の跡が鮮やかに
散っているのを見てヒカルは頭が大きな槌か何かで殴られているようにガンガンしてきた。
「オマエ、こっち帰ってきたのいつだっけ」
「三日前だよ」
「こういう跡ってそんなに何日も、こんなはっきり残るもんなの。オレ何回かオマエに
つけた事あるけど、すぐ消えちゃったじゃん」
「そ・・・れは、場合によるよ」
アキラの声が、何故か動揺するように少し上擦った。
ヒカルの視線を避けるようにアキラが顔を逸らしたのを、しかしヒカルは見ていなかった。
(17)
(じゃ、社にはすげェ強く吸われたってことか・・・?)
それ以上にヒカルにショックを与えたのはその跡がアキラの身体全体に散っていることと、
その数の多さだった。
ヒカルもたまにはアキラにそうした跡を付けることはあったが、それはだいたいアキラを
背後から突く時にちょうどキスしやすい位置にある首筋か肩口の定位置と決まっていた。
今ヒカルが見ている社の跡は、愛撫の延長というより己の痕跡を残すことそのものが
目的のような念入りさで、点々とアキラの肌を侵している。
その一つ一つの跡が刻み込まれた時の状況を想像して、ヒカルはカァッと頭に血が昇る
のを感じた。

フローリングの上に横たわるアキラが白い指の甲でヒカルの膝に触れながら、気を遣う
ように言った。
「進藤。・・・進藤。キミの気分を害したなら、すまなかった」
「・・・・・・」
「・・・でもキミにも言ってあったよね?ボクはキミ以外にも・・・」
「ヤる相手がたくさんいるってな。知ってたよ。でも・・・でもさぁ、なんでオマエこんな
他のヤツの跡いっぱい付けたまま、平気でオレのとこ来れるんだよ。オマエ、オレが具合
悪いんじゃないかとか手合い休んだのはどうしてだとか、そーいう事はうるせェくらい
心配するくせに、なんでこういう時はちっともオレの気持ちとか、考えてくれねェん
だよ・・・オレは、オレはさ、」
――オマエのこと、好きなんだぞ。
そんな言葉が心に浮かんで驚いた。
(18)
(違う)
アキラが、自分を、好きなのだ。
アキラが自分を必要としているから、自分はアキラの側にいるのだ。
そうしてアキラが自分を追うあの熱い眼差しを感じ、アキラを抱いてその温かな肌を
感じる時だけ、ヒカルはどうしようもない寂しさから解放され、過去の悲しみを全部
肯定することができる。
抜け殻になるくらい泣いたことも、優しい友人を自分が傷つけてしまっただろうことも、
全て物事が前に進んでいくために必要なことだったのだと、
不思議な出会いの瞬間から全ての出来事は、自分が今アキラと共にあるために用意された
ことだったのだと、そう思える。

それなのに――
もう一度アキラの身体中に残る社の跡を眺め、体の奥底から理不尽な怒りが込み上げて
くるのを感じたヒカルは、まだ物欲しげにピンと尖り立っているアキラの胸の突起を
ぎゅっと抓り上げた。ここにだって、オレがさっきあんなに優しくしてやったのに――
あ、とアキラが身を竦ませる。
「し・・・しんど・・・う、やめ・・・っ!痛いよ・・・っ!」
白い手がぶるぶると震えて、懇願するようにヒカルの手に添えられる。
「オレはもう触ってないのに、男のくせに、ずっと乳首立てたまんまでさ。そんなに
エロい事が頭から離れないのかよ。こっちだってさっきからずっと、トロトロだよな」
と、アキラの股間のモノに舐めるような視線を移してやると、それだけでそこがビクンと
反応する。それが気に入らなくて、またぎりっと突起を抓り上げる。
「痛っ、痛い、痛い、進藤」
「ふーん、痛いのか。でも他のヤツの跡がいっぱい付いたオマエに優しく触ってやる
義理なんてオレにはないぜ?こんなの見せられた後でも、オレがオマエに優しくして
やるとでも思ってた?・・・冗談じゃねェ。楽になりたいなら、自分でしろよ」
手を離しヒカルが突き放すような低い声で言うと、アキラがはっと目を開いた。
993名無し草:03/10/27 01:54

≡≡≡≡≡≡≡≡      ____________
日 ▽ U ▲ □     /
≡≡≡≡≡≡≡≡  .  |    ン… アッ…ウンッ…イク…
 V ∩ []         \
 V ∩ [] 目        `y´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_________ /|||||||ヽ______
           日 ||||||||||||||
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              (__,,) 
 ━┳━   ━┳━   ━┳━   ━┳━
 ̄ ┻  ̄ ̄ ̄┻  ̄ ̄ ̄┻  ̄ ̄ ̄┻  ̄
(34)
森下の研究会が終わり、棋院前で和谷と別れたヒカルが
ポケットの携帯を取りだすと、諦めつつも期待していた
アキラからのメールがあった。
突然ぱったりと電話が来なくなったり、昨晩電話に出なかった理由を
変に勘ぐってしまったが、忙しくしている自分に気を使ううえに
昨日はたまたま疲れていて目が覚めなかっただけなのだろう。

自分でも何故こんなにアキラのことを気にかけてしまうのか
ヒカルには良く分かっていない。
ただ、自分にしか見せない、子供のような無邪気さや素直さが
心を捕らえて離さず、つい、甘やかしたくなってしまうのだ。
大体、どうしてアキラは自分にそんな姿を見せるのか、
その理由さえ全く見当がつかない。
だけどそれがアキラなりの信頼の証だという事は分かる。
ヒカルも、アキラにそんなふうに頼られて、悪い気はしなかった。

メールには、
 『昨日はごめん。時間が空いたら電話をくれないか』
とあり、ヒカルは迷わずアキラに電話をかけた。
今日のアキラは、いつものとおり1コールで電話を取った。
(35)
ヒカルからの電話は、研究会が早めに終わったとかで
アキラが考えていたより早くにあった。
しかも、今日の夕方のバイトがキャンセルになったから
今から遊びに来たいという。
心の中に溜まっていたいろんなもやもやが、
ヒカルのその一言で、一瞬にしてどこかへ霧散していった。
舞い上がりすぎて、歓迎する言葉がまともに繋がらないのと
荒れた喉で話す事に多少難儀したことで
ヒカルに心配させてしまったようで悪く思ったものの
久しぶりに持てる二人だけの時間が嬉しくて、嬉しすぎて
心がふわふわ済みきった空へと飛んでいってしまいそうだ。

電話を切ったアキラは、家中の窓を開け放して
篭った空気を入れ替えた。
そしてヒカルに対するほんの少しの後ろめたさから、軽く湯を浴びた。
996名無し草
       ⊂⊃                             ⊂⊃

                ⊂⊃
                            ⊂⊃


         ワン!! 
           ヽヽヽイ,,             パトヤシロ イソイデ!!
          ∠从从シ         /|||||"||ヽ
           (.*´O`.)         |(゚ー゚*)||
           ,==~~~~~~~~~~~~~ と   つ
         (⌒   ヽ         i   ノ
        (^_)_)∪∪         し"ヽ)
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