【ますます】メフィスト学園4期目です!【絶好調】

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1積木
濃いキャラクタばかりが集るメフィスト学園。
ここはそんな彼らの日常(?)を描くスレである。

公式HPも開設し、運動会・文化祭を経てまだまだ盛り上がる学園生活。
今は雪山のスキー合宿で事件の真っ只中!
そこに文三とメフィストがある限り!
名無しのPTA役員たちがいる限り!
メフィスト学園は終わらない!!

前スレ・関連スレは>>2
生徒一覧は>>3

詳しいキャラ紹介、過去の思い出については
公式HP(>>2)をご覧下さいませ。
2積木:03/01/14 20:34
前スレ
メフィスト学園・開校です!
http://book.2ch.net/test/read.cgi/mystery/999959666(html化待ち)
http://mystery.adam.ne.jp/mephisto/999959666.html (別所でウプされたもの)
メフィスト学園・2年生です!
http://book.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1032164105(html化待ち)
【まだまだ】メフィスト学園3期目です!【2年生】
http://book.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1038403799/l50

公式HP・私立メフィスト学園
http://finito-web.com/mephisto/index.html

関連スレ
メフィスト賞と講談社ノベルスの愉快な仲間達6
http://book.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1038530075/l50
3積木:03/01/14 20:35
メフィスト学園 生徒一覧 *実年齢は関係なく学籍番号が若いほど先輩。
01:森博嗣   [すべてがFになる]
02:清涼院流水 [コズミック]  
03:蘇部健一  [六枚のとんかつ]
04:乾くるみ  [Jの神話]
05:浦賀和宏  [記憶の果て]
06:積木鏡介  [歪んだ創世記]
07:新堂冬樹  [血塗られた神話]
08:浅暮三文  [ダブ(エ)ストン街道]
09:高田崇史  [QED 百人一首の呪]
10:中島望   [Kの流儀 フルコンタクト・ゲーム]
11:高里椎奈  [銀の檻を溶かして]
12:霧舎巧   [ドッペルゲンガー宮]
13:殊能将之  [ハサミ男]
14:古処誠二  [UNKNOWN アンノン]
15:氷川透   [真っ黒な夜明け]
16:黒田研二  [ウェディング・ドレス]
17:古泉迦十  [火蛾]
18:石崎幸二  [日曜日の沈黙]
19:舞城王太郎 [煙か土か食い物]
20:秋月涼介  [月長石の魔犬]
21:佐藤友哉  [フリッカー式]
22:津村巧   [DOOMSDAY―審判の夜―]
23:西尾維新  [クビキリサイクル]
24:北山猛邦  [『クロック城』殺人事件]
25:日明恩   [それでも警官は微笑う]
26:石黒耀   [死都日本]
27:生垣真太郎 [フレームアウト]
4名無しのオプ:03/01/14 20:40
生年表は?
73年に生垣くわえればOKなり
5名無しのオプ:03/01/14 20:42
キャラクタ紹介

【森博嗣】
・委員長。だが他の生徒には放任主義。
・一人称は「森」。
・(笑)を多様。
・沈着冷静。
・模型などの自分の趣味以外のことにはわりと無関心。


【清涼院流水】
・超越した力や事件など何でもアリのトラブルメーカー。
・赤地に白の水玉のシャツ。長い黒髪。眼鏡。
・流水大説。
・彩紋家事件はずっと未定。
・「セーリョーイン!」「リュースイ!」が基本。もしくは半角カタカナの短いセンテンス。
・↑でもきちんとしゃべれないわけではなく、必要があれば通常会話も可。
・西尾維新の推薦文を書き、西尾本人からも「御大」と呼ばれる。
・京大仲間の生垣真太郎とのかかわりは如何に。
6積木:03/01/14 20:44
参考:メフィスト賞作家の生誕年

1954年 石黒
1955年 積木
1957年 森
1958年 高田
1959年 浅暮
1961年 蘇部
1963年 乾・霧舎・石崎
1964年 殊能
1966年 新堂
1968年 中島
1969年 黒田
1970年 古処
1971年 秋月
1973年 舞城・生垣
1974年 清涼院
1975年 古泉
1976年 高里
1978年 浦賀
1979年 北山
197X年(なんじゃそりゃ) 津村
1980年 佐藤
1981年 西尾
不明 氷川・日明
7名無しのオプ:03/01/14 20:44
【蘇部健一】
・とんかつ。
・デビュー以来、笠井先生にはゴミ呼ばわりされる。
・ピュアで天然ボケ。
・いじめられることもあるが、今ではわりと皆に愛されている。
・殊能を慕う。今や学園中が認める仲。
・舞城に殊能との仲を嫉妬され三角関係がいまだ続く。


【乾くるみ】
・1963年生まれ同士の、石崎・霧舎との微妙トリオにより出番が増えてきた。
・ツッコミ役。特に石崎とのコンビが息が合う。


【浦賀和宏】
・好物は人肉?
・最近の学園スレでは殺人鬼ネタ以外に出番がない。
8名無しのオプ:03/01/14 20:44
【積木鏡介】
・影の薄いキャラその1。
・超越能力で遠隔地の状況をキャッチできる。
・たまにメタパワーを発揮。前スレでは密かに蘇部を救う。
・特技は人を呪うことらしい。
・デビュー作がいまだに文庫落ちしない。


【高田崇史】
・歴史とパズルと薬草マニア。
・マッドサイエンティストでアヤシイ薬を開発。
・行事関係の役員をよくやる。


【中島望】
・格闘技マニア。空手家。
・新堂との不良コンビでなぜか学園の平和を守る自警団として活躍。
9名無しのオプ:03/01/14 20:45
【高里椎奈】
・少女漫画風の作風が801扱いされ、801の女王様として大活躍。
・生徒同士の友情やからみに多大なる関心をよせ、妄想でつっ走る。
・霧舎との仲はそれなりっぽいが、自分よりも801妄想を優先。
・ある意味、影の主役。
・眼鏡っ娘の文学少女風という設定。


【霧舎巧】
・パンチラ。霧舎学園でお空の向こうへ。
・石崎・乾と微妙トリオ(同じ1963年生)としてよくつるむ。
・高里の気を惹くために石崎に猛アタック。


【殊能将之】
・物腰スマートな優等生。
・趣味は料理。
・蘇部と仲良し。ポジティブシンキングで蘇部を全肯定。
10名無しのオプ:03/01/14 20:46
【新堂冬樹】
・闇金融でヤクザな親分。
・中島との暴力コンビは学園の平和と生徒の安全を守る。


【浅暮三文】
・初の特待生(ハードカヴァーでデビュー)。
・しかしデビュー作は絶版で文庫落ちか再版を待たれながらはや幾年。
・のんべえオヤジ。
・鼻が利くらしいが、利きすぎて他人の心を読んでしまう。
・釣りチャンピオン。


【古処誠二】
・元自衛隊。銃器取り扱いを趣味とする。
・「古処だ。」「ヨロスク」
・登山界のベッカム。紳士。燻し銀。
・津村と古処隊を結成。部下(津村)の良き理解者。
11名無しのオプ:03/01/14 20:46
【氷川透】
・性別不詳、年齢不詳の覆面作家。後期クイーン問題に悩む日々。
・真面目だが普通すぎて普段はそれほど目立たない。
・本格ミステリな事件が起きれば石崎との探偵コンビで活躍?
・日明との仲はどうなるか?


【黒田研二】
・タンバリンマニア。
・モー娘ヲタ。メロン記念日。
・自称セクシー美青年。でも現実は……
・スキー1級。


【古泉迦十】
・アッラー。
・瞑想。
・第2作目はいつですか。
12名無しのオプ:03/01/14 20:47
【石崎幸二】
・会社員。
・掛け合い漫才(基本的にボケ役)。オヤジギャグ。ネタが古い。
・扱いやすいキャラのためか前スレより出番急増。
・乾・霧舎と微妙トリオ(同じ1963年生)
・乾につっこまれ役として好かれ、霧舎に(高里の気を惹くためのダミーとして)狙われ、
北山に慕われ(偶然助けてしまった)、氷川とは本格の探偵コンビと、最近ではモテモテ。


【舞城王太郎】
・表面の破壊衝動の隙間からさびしさとか愛とか人情が見え隠れする。
・福井県民として、同郷の殊能に親しみを感じている。
・殊能と蘇部の仲よしぶりに嫉妬。
・佐藤とライバル関係(現在は一方的に勝者だが)
13名無しのオプ:03/01/14 20:49
【秋月涼介】
・影の薄いキャラその2。
・なんとか目立とうと頑張るが不幸になること多し。
・アクセサリー作りと迷宮うんちくが趣味。


【佐藤友哉】
・愛称はユヤタン。
・若くしてデビューするが、売れないことに悩む。
・重版童貞と呼ばれていたがクリテロで重版。最近は純文学で修行中?
・自虐気味。でも最近ちょいと前向き。
・妹をこよなく愛する。お嬢様が好き。
・白倉由美の信者。旦那の大塚にはシモベ扱い。
・打倒!舞城王太郎。


【津村巧】
・津山じゃないよ津村だよ。
・銃器関係の縁で古処隊に入隊。隊長(古処)を慕う
・SF者。
14名無しのオプ:03/01/14 20:54
【西尾維新】
・愛称いーちゃん。戯言使い。最年少。
・清涼院を御大と呼びリスペクト?する。JDCシリーズの新刊を刊行予定。
・イラストレーターの竹嬢といい感じ。
・ユヤタンや北山(同世代の売れてない組)に嫉妬されがち。


【北山猛邦】
・女装趣味を匂わせつつも、まだその手のネタは出てこない。
・物理トリック重視。ファンタジー者。
・前スレで石崎に救われ頼りにする。


【日明恩】
・特待生(ハードカバー)。
・美人秘書。 (大学病院外科教授秘書らしい)
・年増?
・存在感で高里に完敗だが、美人秘書の美貌でランクの高い男を狙う。
15名無しのオプ:03/01/14 20:55
【石黒耀】
・これまた特待生(ハードカバー)
・最年長。
・火山オタク。

【生垣真太郎】
・2003年最初の新入生。
・京大卒。73年生まれで清涼院の1つ上?
・NY帰りの帰国子女。
・カッコイイ系として登場したが、著者近影で微妙に。
・キャラはまだ固まっていない。
・英単語を会話のはしばしにいれる?
16名無しのオプ:03/01/14 20:56
その他の主要登場人物

【竹(TAKE)】
・西尾維新のイラストレーター。学園では特別研修生扱い。
・西尾とほんわかカップル。
・キャラは玖渚友。

【太田克史】
・通称「J」。学園スタッフ(編集者)
・学園の行事の企画立案者。
・舞城、西尾、佐藤、霧舎学園を担当している。
17名無しのオプ:03/01/14 20:57
教師陣

京極夏彦 :皆から尊敬される。
大塚英志 :ユヤタン絡みで登場。メディアミックスで儲けような人。
綾辻行人 :遅筆。禿げネタ。
法月倫太郎:若手。フォロー役。
島田荘司 :一部の人から大尊敬。黒田と「モー娘。」を語り合う。
笠井潔  :雪の山荘をもつ。蘇部と浅からぬ因縁。

ほかにも講談社ノベルス関係の作家が出てきたり。
18:03/01/14 21:09
>前スレ969
もしや950でしたか!?
一向にスレの立つ気配がなかったので立ててしまいました。
キャラ紹介の改訂をしていたとは…本当に申し訳ない!
(しかも生誕年表でキャラ紹介の邪魔までしている)

平に平に、謝らせて頂きます。申し訳有りませんでした。
19名無しのオプ:03/01/14 21:19
950じゃないですが、キャラ紹介はあった方がいいと思ったんで、自分で用意してみますた。
気にしないでいいと思いますよ。
スレ立て乙です>1さん
20名無しのオプ:03/01/14 22:13
1さんもキャラ紹介した方も乙!

前スレの本格風味、すごいっす。
続き楽しみですな。
21名無しのオプ:03/01/14 22:17
1&キャラ紹介、おつカレー。
スキー合宿のあらすじも必要かもしれないね。
22名無しのオプ:03/01/14 22:30
1さんもキャラ紹介された方も職人さんも乙っす
もう最近はこのスレ読むことが日課になってますわ
最高なり!
23名無しのオプ:03/01/15 00:01
乙ですー。
前スレ最後では職人さんのやりとりまで!
現在、メフィスト学園の面々はスキー合宿に来ている。
教師の一人である笠井の別荘に招待されたのである。
この別荘は推理作家のものらしく(?)密室上等な造りで少し傾いている。
(ちなみに、森・清涼院・西尾・竹・生垣は居残りコタツ組である)

途中、笠井と依然から確執のあった蘇部がテロルを企てるが、
佐藤・積木・殊能・舞城らの行動で阻止され、浅暮の説得により、お咎めも無しとなった。

そのころ、雪山に入っていた学園自警団である新堂・中島は
洞穴で半裸になっていた古泉(本人曰くアッラーとの交信中)と
木の上で凍っていた北山を救助する。

北山の話では、黒田とともに目立つために古処隊へ入隊したもののはぐれ、
しかも何故か同じく山を徘徊していた浦賀と遭遇し、逃げてきたのだという。
黒田は依然行方不明。

救助された北山から山荘にいた面々に、雪山に浦賀が来ていることがもたらされる。

しかし高田・乾は北山が来た場面は窓から見ていたが浦賀の話は聞けず、
当初の(高田の)目的通り、薬草採取に出かけてしまう。
尚、このとき二人はサングラスをかけていて黒い長髪の雪だるまと遭遇したのだが、
関わり合いにならないため、完全無視した。

また、このとき古処は無事雪山を制覇。
休火山噴火の可能性を調査しに来ていた石黒が、その登頂の証(旗と銅板)を見つける。
※すいません、上の居残り組に積木が抜けていました。

浦賀目撃の一報に顔色が悪くなる一同の中、一人石崎はこんなことを言う。

石崎「ヴラド・ツェペシュという名前を聞いたことが無いか?」
氷川「ヴラドというと、ドラキュラのモデルになった?」
石崎「ああ、《串刺し公》ヴラド。その生涯で数万人を虐殺したという人物だ。最後はそれらしく、兵に串刺しにされて死んだらしいがな。……ともかく」
 石崎は酒を飲み干し、さらに言葉を継いだ。
石崎「その子孫はルーマニアからシベリアへと追われた。寒さと飢えの中で、時には仲間の肉を喰らいながら、彼らは旅を続けた。遠い極東の、小さな島国へと辿り着くまで……」
日明「まさか、浦賀君が……」
石崎「そう……この雪が、奴に眠る一族の記憶を呼び覚ます……奴こそはヴラドの末裔、食人鬼《ヴラガ・ツェペシュ》だ……!」

本当はこの後「なーんちゃって」と続いたのだが、
その話と浦賀のあまりのリアルさに北山は錯乱、日明は気を失い、氷川は思考に耽り、津村は救助に行こうとし、
一時場は騒然となる。

丁度その頃、いまだ雪山サバイバル真っ最中だった黒田は浦賀と遭遇する。
浦賀はその顔に笑みを浮かべ、その手にはお馴染み肉包丁を持っていた。
黒田は死に物狂いで逃げ出す。

一方山荘では、石崎に端を発した「串刺し公」騒ぎがようやく落ち着き、
酒盛りを再開しようとしたのだが(尚、このとき日明は気絶のため、津村は古処隊救助のため、各自室へいた)
ここで笠井先生の絶叫が響いたのである。

これが、≪串刺し公≫事件の幕開けであった…
<第1の事件>
[被害者]  笠井
[凶器]   ボウガンの矢
[現場]   笠井の書斎
[現場詳細]
この事件の少し前、蘇部がこの書斎にてテロルを起こそうとしたのだが、
その際、それを阻止するために舞城が窓を割っていた。ボウガンの矢はここから飛び込んできた。
幸いにも矢は外れ、笠井は無傷だった。

[現場検証]
窓の外にボウガンと糸が落ちていた。
ボウガンは笠井邸に最初から飾ってあった物である。
27スキー合宿あらすじ4:03/01/15 00:56
[人物詳細]
石崎・氷川が笠井の悲鳴に最初に駆けつける。
続いて殊能・蘇部・佐藤・舞城が駆けつける。
北山がボウガンを見て「串刺し公ヴラガ」と口にし、
ここで初めて殊能・蘇部・佐藤・舞城は「串刺し公」について知ることになる。

騒ぎのほぼ同時刻、窓の外に「黒ずくめ」で「何か大きな物を抱えている」人物を目撃。
津村は騒ぎに少し遅れて駆けつけたの頭には白い雪が積もっていた。
(本人は丁度雪山へ向かうために外へ出たのだと証言)

事件発生時、殊能と蘇部、霧舎と高里はそれぞれ一緒に居たと証言しているが、
お互いに庇い合っている可能性もあり、完全にアリバイの成立している者はいなかった。

[??]
氷川が現場検証をしようとした直前、地下室から轟音が響いた。
(以降特に言及なし。霧舎と高里の花火デート説が出たが…)

[結果]
笠井は先程自分を狙った蘇部、頭に雪を積もらせていた津村を疑い、
監禁命令を出すことになる。
28ツッコミ:03/01/15 01:36
黒田は無事に麓までたどり着いたのでは?
第1の事件後、笠井以外の全員が食堂に集まり居残り組の差し入れ(餅。砂糖醤油つき)を食べ、
今後のについて話をする。

石崎・氷川が探偵役をやることになるのだが、ここで舞城が二人の「アシスト」を宣言。
笠井邸内の凶器となり得るものを全て破壊してやると言い出し、一人食堂を出ていく。
ここでまた清涼院が食堂の廊下にいたのだが(居残り組じゃんけん罰ゲームのため)、
舞城は無視した挙げ句踏みつけていった。
それを追いかけるように数人が続けてまた清涼院を踏み、以後彼は機嫌を損ねっぱなしである。

一方その頃、薬草採取をしていた高田・乾は作業の途中で黒い革手袋を発見する。
それは、寝るときもトイレのときも風呂ですら外さないという、京極先生の手袋だった。

監禁命令の出た蘇部と津村は、地下のワインセラーに軟禁されることになる。
石崎は監視役に高里を指名するが(一番死にそうにないから)、結局霧舎がその任につく。
秋月は密かに監視役に立候補しようとしていたようだ。

日明は一緒にこの合宿に来た津村が監禁されることに一瞬心を痛めるが、
笠井の若い頃の写真をみてときめく。
ついでに京極の魅力についてもときめき、どちらを選べばいいのかなどと妄想し始める。
丁度そこへ、京極手袋を持った高田・乾が帰ってくる。

その頃、雪山サバイバル黒田は辛くも浦賀から逃げ切り麓まで辿り着くが、
体力が底を突き、雪まみれになっていた。
絶望する黒田の前に下山してきた古処が現れる。安堵する黒田。
しかし、古処は「同士の面影のある雪だるまだ」とクールにのたまい、みかんをお供えし、立ち去った。
アシストを宣言した舞城は、順調に邸内のもの(旧日本軍の竹槍のオブジェ、大時計の長針と短針など)を破壊していく。
そしてこの山荘内で最も「串刺し」に似合うものとして、スキーのストックに目をつけた。
舞城はそのままスキー用品置き場へ向かうも、その部屋へ続く廊下で倒れた北山を発見したのである!

ちなみにこの頃、容疑者として軟禁された蘇部・津村、そして監視役の霧舎は、しりとりをして遊んでいた。
危機感とか緊張感はまったくない様子である。(舞城が見たら殴りそうである)
<第2の事件>
[被害者]  北山
[凶器]   つらら
[現場]   スキー用品置き場へ続く廊下
[現場詳細]
舞城発見時、北山は気を失っていた。そばに口の開いたポットが落ち、水たまりが出来ていた。
北山の脇腹はぐっしょりと水に濡れ、トレーナーには引き裂かれたような穴が空いていた。
北山自身は無傷。

[現場検証]
廊下はスキー用品置き場でどん詰まりで、置き場の鍵は閉まっていた。
つららを入れていたと思われるポットは個人の部屋に常備してあった。(空き部屋のもの?)
わざわざポットに入れてこなくても、廊下の窓にはつららがあった。
尚、窓を開けると吹雪のため、雪がすぐに吹き込んでくる。

発見時、水たまりは乾いていなかったが、北山の髪は特に濡れていなかった。
[人物詳細]
まず、舞城が北山を発見する。
石崎・氷川は舞城が物を破壊する音を聞きながら推理をしていたのだが、
その音が突如止まったため、その場所へ駆けつけた。

蘇部・津村・霧舎は地下ワインセラーでしりとりをしていた。

2階の自室にいた高里はシャワーを浴びようとしてお湯蛇口をひねるが、水が出てきて悲鳴を上げる。
これに石崎・氷川・舞城が駆けつけるがすぐに追い出される。

その他の人物には完全なアリバイはない。
(広間の暖炉では高田・乾・浅暮・殊能の会話場面があった)

北山は黒い布を被った人間がつららを振りかざしたと証言。
浦賀だ、と言っているが、錯乱気味である。

[結果]
「それらしい」凶器として「つらら」の存在を教えられ、舞城は破壊を中止。

以降、石崎・氷川の探偵コンビの推理は続く。
果たして事件の真相は!?≪串刺し公≫の凶行は続くのか!?
そして今も雪山を徘徊しているであろう浦賀は!?
その全てはこれから明かされる…!
こんなところでしょうか。
過去ログをざっと見て本筋に関係ありそうな部分は大体抜き出しているつもりなのですが…
抜けたりしていたらすいません。>職人の方々

尚、このあらすじは3期目スレ950くらいの時点でまとめています。
次スレ用に書いていたのですが、
途中でスレをチェックしたところ、どうもそれ以降また事件が進展しているようで…
迷いましたが、とりあえず950までのあらすじを書き込むことにします。
追加または修正があれば、28さんのように、随時ツッコミを入れてやって下さい。

改行規制がもどかしかったです…やっと終わった。
それでは、寝ます。

4スレ目も、楽しく行きましょう!
34名無しのオプ:03/01/15 02:43
こんな夜中に……乙です!
35名無しのオプ:03/01/15 04:07
すげええ。テンプレが長いよう。
学園のHPを参照、じゃダメだったのかなあとか思ったんですが。
36名無しのオプ:03/01/15 04:32
↑誤爆でつか?嵐でつか?
どっちにしろ気まずいね。
37名無しのオプ:03/01/15 06:42
人物紹介は「HP参照」でも良かったと思う。
こんだけテンプレ長いと、スレ立てのたびに幾ら何でも大変すぎやしないか。
38名無しのオプ:03/01/15 07:27
キャラ紹介に「歴史」のようなものを感じてちょびっと感動してしまったのだが。
あれをいらないとおっしゃるか。
39名無しのオプ:03/01/15 07:55
4期目スレのここまで、ヴラガの好きなYMOの曲を聴きながら熟読したので、盛り上がった。
40名無しのオプ:03/01/15 09:35
「不要だ」といってるのではなくて、
あれはよくできたいいものだけど、
別のところでみられるようになってるんだから、
ここにまでも貼らなくても大丈夫でしょう。
ということだと思うが。
41名無しのオプ:03/01/15 10:15
テンプレだけで17、あらすじ含めると更に倍
「この量は色々な意味で厳しいだろ」という話
誰も内容はけなしていない

メリットとデメリットを挙げてみる(他にあったらフォローヨロスク)
HP参照にするメリット
鯖に優しい
スレ立ての際手間がかからん

HP参照にするデメリット
公式HPが消滅した場合、探し出すのが難しくなるやも
参照するのに若干手間がかかる

俺的にはHP参照でいいとは思う
42名無しのオプ:03/01/15 10:18
>>36 35は誤爆でも嵐でもねえ!

こういう話をしている時点ですでに40。
ちょっとテンプレ多いかなーと。
前スレから繋げるためのダイジェストは必要だろうけどね。
1000レスに限られているわけだし。
43名無しのオプ:03/01/15 11:02
キャラ紹介、テンプレ云々は別にしてネタとして面白かったので個人的にはよし。
ネタ作るときにも役に立つし。

つーか、キャラ紹介なんてたかだか10レスくらいのもんじゃん。
別に「なくてはならない」ってほどのもんでもないし、
「なしにすべき」って目くじら立てるほどのもんでもないっしょ。
スレ移行のときに、欲しいなと思った人がいたら、
新しく手を入れたのを作って書き込めばいいだけの話かと。
むしろ、こうやって是非について議論する方が無駄を通り越して有害ですらあるかと。
この手のリレー系の企画は“べき論”始めると速攻で腐ることが多いので。

つーか、個人的にはあんまHPに依存したくないって気分もある。
なんか内輪化&閉塞化が進行しそうな気がするんで。
や、もちろんHPの管理人の方には感謝しておりますです。
あくまで過度の依存は良くないって話ね。負担もかけるだろうし。
前スレと同じものを貼るだけなら人物紹介を学園HPに譲るのもいいと思いますけど
今回のは最近の展開をふまえた改訂版なんでお許しを

あらすじまとめ役さん、乙です。
45名無しのオプ:03/01/15 11:22
前スレ埋まっちゃった……大丈夫かなあ……
46名無しのオプ:03/01/15 14:04
皆さん乙です。
ホントにありがと。
47名無しのオプ:03/01/15 14:16
↑誤爆でつか?嵐でつか?
どっちにしろ気まずいね。
48名無しのオプ:03/01/15 14:23
乙一。
そろそろ始めようや。
49積木:03/01/15 17:37
よし、まかせろ。
では、諸君。スキー合宿編、再開だ!
50名無しのオプ:03/01/15 19:20
ええと、前スレの何番からリロード?
秋月待ちw
51名無しのオプ:03/01/15 21:13
新堂・中島のメフィスト学園自警団は、未だ雪山で古処・黒田の捜索活動を続けていた。
二人とも、まさか山荘で事件が起こっているとは夢にも思っていない。

中島「くそ…いないな。もしかしてもう下山してるんじゃないのか?」
新堂「確かに、古処に関しては心配はいらんだろうがな。問題は黒田だ。
   あの時の悲鳴が北山でないのだとすると、他はもう黒田しか考えられん。つまり、だ」
中島「浦賀の奴に会っちまった可能性が高いってことか…ちょっと作戦を練ろう」
言いながら二人は少しだけ吹雪がしのげる洞穴に入ることにする。先程古泉がいた洞穴である。

壁に寄りかかりながら、魔法瓶からコーヒーを注ぐ。
一度山荘に北山と古泉を連れて行ったとき、出かけに日明が持たせてくれたのだ。
何だかんだ言って、彼女の秘書技能は抜け目がない。

中島「一回山荘に戻ってみるか?このまま闇雲に探してもラチがあかない。
   もしかしたら、黒田の奴も本当に下山して、山荘にいるかもしれないぞ」
新堂「そうだな…もう少し探してみてから、一回報告を兼ねて戻るか」
中島「ったく…浦賀も何やってんだろうな。
   他の山に行きゃいいのに、何だって笠井の別荘があるこの山に入ってんだよ」

元々彼らは、“メフィスト学園の生徒の安全”を守るのが役目だと認識している。
つまり、学園以外の人間が浦賀に喰われようが舞城に半殺しにされようが津山化した津村に撃たれようが、
それは自分たちの守備範囲外だ。ある種、不思議な身内意識。

中島「まさか自分も合宿に参加したかった、ってわけじゃないだろうな」
新堂「さあな。まあ、どちらにせよ、今のあいつはスイッチが入ってるみたいだが」
52名無しのオプ:03/01/15 21:15
浦賀の“スイッチ”、他の誰かは“ハンティング・モード”と呼んでいたか。
日頃でも浦賀の“スイッチ”は半押し状態だが、完全にオンになると手がつけられない。
その運動能力はもはや野生の獣だと、新堂は認識している。
津村の場合は銃器を取り上げれば元に戻るが、浦賀の場合はそうはいかないのが厄介だ。

中島「もし、黒田が…いや、古処も含めてだ、誰かが浦賀の犠牲になっていたら、どうする?」
難しい顔で中島が問う。
新堂「決まってるだろう。浦賀を殴る」
平然と、新堂は返す。
新堂「殴って殴って殴って、それで学園へ引きずって帰る。それが俺たちの役目だ」

そう言って彼は、今度はモロに悪人に見える笑顔を浮かべ、くつくつと笑った。
新堂「こういうときに限って清涼院の奴がいないのは何故だろうな。
   また分裂でもしてくれりゃあ、それを浦賀にくれてやるのに」
中島「あー…そうだな。だったら浦賀も一旦は落ち着くだろうな」
それまでしかめ面をしていた中島も笑う。

学園の平和を守る役目を自認している自警団だが、清涼院に関してはどうも認識が違うらしい。
53名無しのオプ:03/01/15 21:16
そこで中島は思い出したように、少し恐る恐ると言った感じで新堂に問うた。
中島「そういや、お前この間のはどうしたんだ?」
新堂「何だ?この間?」
中島「ほら、クリスマスで当たったろ、奴の」
新堂「ああ…あれか」
合点がいったように頷く新堂。

新堂「あれはな、上手いことに昨日…」
その時。

洞穴に居た二人の目の前を、一瞬何かが横切っていった。遅れて地面の雪が舞う。
いや、外は吹雪だ。さっきからひっきりなしに風が吹き荒れ雪が舞っている。
ただその中で特に強く風が吹いただけにも見える、一瞬の光景。

それでも二人には見えた。経験と、雑談していながらも研ぎ澄まされた感覚とが、それを捕らえたのだ。

新堂「浦賀…!」

やっぱりスイッチが入ってやがる、と新堂は呟いた。
中島「おい、奴が駆けて行った方向って、山荘の方向じゃないか?」
新堂「戻るぞ」

言うが早いか、自警団は吹雪の中へ飛び出した。
54名無しのオプ:03/01/16 00:25
>前スレ968より

石崎「やはり、俺の推理は当たっていたのか……」
秋月「ふふふ、そうさ……僕は菊池先生の手先……そしてこの事件を操る、《串刺し公》その人なのだあああ!」

 高笑いする秋月。愕然とする石崎。そして。

石崎「って、んなわけねーだろっ!」

 パコッ

 石崎に殴られ、秋月はあっさりと倒れた。
 
石崎「ったく、出番の無い奴はこれだからな。ちょっとしたボケにも食いついてきやがる」
氷川「背表紙とポップで、あそこまで引っ張れれば立派ですよ。さて、事件の検証を続けましょうか」

 秋月を放置したまま、二人は話を続けた。
5554:03/01/16 00:26

すまん、965-966、968。
こんな続け方しか考えつかんかった……。
しかし石崎読んで解ったんですが、この引っ張りが彼の持ち味なんですねえ……。
56名無しのオプ:03/01/16 00:46
氷川「ところで、ボウガンの事件はどうです?」
石崎「いろいろ考えたさ。まず、笠井先生狂言説。自ら矢を壁に打ち込み、ボウガンとロープを外に投げ捨てて、悲鳴を上げれば完了だ」
氷川「動機は蘇部君を退学に追いやるためですか……それなら、確かに矢は当たりませんね」
石崎「確かに筋は通ってる。だが生徒への私怨でそんなトリックを弄したとしたら、笠井潔の名が泣く」
氷川「同感です。それに蘇部君だけでなく津村君も軟禁しろと言ったんでしょう? 関係がない津村君を巻き込む必要はない」
石崎「待て待て、自分への容疑を避けるためかも知れんぞ。なにしろ、笠井潔だからな」
氷川「一つ、気になることがあるんです」
石崎「というと?」
氷川「石崎さんはどう思います? あのボウガンの矢、犯人は当てたかったのか、当てたくなかったのか」
57名無しのオプ:03/01/16 00:53
石崎「それはそうと、浦賀くんの姿をはっきり見た人はいる?」
氷川「こういうネタって、大体は犯人が作り出した幻ですしね」
浅暮「積木ボンバイエ、積木ボンバイエ」
石崎「うわ、いきなり。脅かさないでよ、浅暮くん」
浅暮「積木くんから、その疑問に答える電波が届いたぞ」
氷川「……もう彼はなんでもありですね。で、なんですか?」
浅暮「『浦賀は確認されている。彼は――セイリョーインッ! セイリョーインッ!――』電波が切れました」
石崎「電波が切れたっていうか、電波になりましたって感じだな」
氷川「これで『黒田くんが浦賀に襲われたと嘘を吐いた』ケースもなしと」
石崎「まぁ、北山くんが犯人になるのは、秋月くんと同じだからいただけないね」
秋月「ひ、酷い」
氷川「(無視)さて、石崎さん。ボウガンの矢の話に戻しましょうか」
58名無しのオプ:03/01/16 01:10
>57 
自分が続きを書いてるうちにきっちり仕事を(笑)

石崎「じゃ、戻ってと。当たるとは思ってなかったんじゃないか? プロテスタントの犯罪にしても、確率が低すぎる」
氷川「プロバビリティーです。でも一方で、あのロープと時限装置を利用した場合、笠井先生を傷つける可能性が多少は残ってしまうのではないでしょうか?」
石崎「そんな確率はほとんどないと、俺は思うけどな。論理派氷川としては気になるというわけか」
氷川「まあ、そうですね。確実に外すには、自分の腕で狙うしかない」
石崎「とすると……津村か?」
氷川「ええ、そして、古処」
石崎「おいおい、そりゃないだろ。クローズドサークルの原則に反する」
氷川「高田君と乾君が戻ってきてるのに、クローズドもないでしょう。それに……」

またもや新たな悲鳴が、山荘に響いた。
59名無しのオプ:03/01/16 01:44
実は出番が多いんじゃないか、と思い始めた積木鏡介だ。
私の地道な草の根運動が実を結んだと思うと非常に正直次第だ。
さて、私からの提案なのだが、
『連続投稿をする場合は《sage 続きます》』
とメール欄に入れるというのはどうだろうか。
ネタが明後日の方向に進むのは、このスレッドの楽しみ方の一つだと思うのだが、
職人が書いてくれている以上、書きたいものは書かせてやりたいと思わなくもない。
実際、「続き書きたいが、書き込み中だったりしたらマズー」と思った経験がしばしあるのでな。
しかし、これが決まったと仮定してみよう。
職人さんが『続きます』を入れ忘れたせいで
「続きますって書いてないから、先書いて問題なし」
と颯爽と書いた結果、続きが重複するケースもありえる、
逆に『続きます』を消し忘れて、放置プレイというケースもあるだろう。
どちらにしても、問題はある。故に、これは個人的な意見でしかない。
多くの積木(ROM)はどう思うだろうか。
60積木:03/01/16 02:42
上の積木へ
文体が男一匹なのは漏れの気のせいか?
もしや古処がメタ属性ゲット?????

「続きます」は職人さんの間できめていただければよいか、と。
61積木さん:03/01/16 03:02
>59の積木
>実際、「続き書きたいが、書き込み中だったりしたらマズー」と思った経験がしばしあるのでな。

その経験は私もしたことがある。のでその案には賛成したいところだが、後述の問題も気になる処だ。
第一メール欄を一々チェックせねばならないというのもまた面倒だろう。
こういったトラブルの酷いときは「過去ログみろ」「ルール読まずに書き込むな」等と我々積木の自問自答、挙句自虐が起きてしまいネタが続かなくなるという困ったことになる可能性も有りうる。

とりあえずぱっと思いついたのがAA系スレのようなやりかただ。つまり名前欄に「〜1/3」「〜2/5」など、今カキコしてるネタが全体のネタのうちのどの位置にあるのかということをハッキリと書いておくというのはどうだろうか。
こうすればわかりやすいし、後からきた人間もこのやり方を見て自然と学びやすいだろうと思うのだが。どうだろうか。


とはいえ、>>56-58のような素晴らしいネタの混ざり合いがあるのも見逃せないところなので、「絶対にこのやり方が良い」とは言いがたいな。
他の積木の意見はどうだ?
62名無しのオプ:03/01/16 03:32
意見を出した積木鏡介だ。
古処くんと似た文体になったのはノリでしかない。
それと、積木(ROM)と書いたのはうっかり間違いだ。
ROMじゃなくて、みんなの意見だな。本当にスマン。
>>61の案だが、私は賛成だ。
よくよく考えてみたら、メール欄に書くのは判りづらい。
うん、こっちの意見の方が自然だろう。
元々この意見を出したのは、そのものズバリ>>57を書いたときに思ったのだ。
小ネタは思いた。書いた。リロード。続きがアップされている。
さて、どうするか。リロード。まだアップされず。困った。
展開が進むとこのネタは使いづらい。よし、邪魔にならないように手を入れよう。
訂正。リロード。問題ないはずだ。アップ。問題なかった――云々。
故に、私は意見を出してみたというわけだ。
実際、どうなんだろうか。ある意味、適当でいいんじゃないかとも思わなくもない。
こんな時間だ。起きている私もどうかしている。
積木たちの意見を聞いてみたい。どうだろう。
63名無しのオプ:03/01/16 11:15
63 :名無しのオプ :03/01/16 11:15

63 :名無しのオプ :03/01/16 11:15

適当でいい。書き込む人間がやりたいようにやればよろしいかと。
どうしても割り込まれたくないネタの場合は、それが判るようにしとけばいい。
そんだけの話。

つーか、話の流れをぶった切って議論をぶちあげるのはマジ勘弁。
この企画が2ちゃんでなされている以上は、多少の混沌は面白みのうちと割り切ろうYO!

-----------------------------------------------------------------------------------

積木「……割り切ろうYO!、っと」カタカタ
森 「森にはMicrosoftのように、無理矢理フォーマットを統一しようとするのは美しくないと思えますね(笑)」
西尾「まあ積木先輩みたいな人がいるおかげで一定の秩序が保たれてるのかもしれませんね。しょせん戯言ですけど」
竹 「うにー、難しくてよくわかんない」
生垣「そんなことよりボクのキャラを確定させて欲しいね」
積木「……ってあなたたち、何で僕のメタに自然に参加してるんですか……?」
西尾「すべからく世界に存在するものに操られざるものはなしってことですか。ねえ、御大」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

清涼院「セイリョーインッッッッ!!!!!???gb4vg[c!#d!?.@!0+?pw!s?a=!ie?rz!lz?c'!%(,:Z`???????」

竹 「うにー、流水ちゃんが変だよ」
森 「清涼院君の場合は『変』なことが『普通』なので『変』とは言えないですね。これって戯言かな?(笑)」
積木「……西尾君、森君になんかセリフ取られてるよ……?」
西尾「まあ、全てが戯言ってことですね、きっと」
64名無しのオプ:03/01/16 15:37
暖炉のある居間では、まだ解凍中の古泉と、
薬草摘みから帰ってきた高田と乾が体を暖めていた。
日明がついつい秘書体質で彼らのお世話している。
ホットミルクを高田たちに渡そうとしたそのとき、
邸のどこからか悲鳴が聴こえた。

日明「ああもういやっ! また事件が起きたのね?」
乾 「うわあちっ!!(ホットミルクをかけられた)」
高田「日明さん、落ち着いて。あなたもメフィスト学園の生徒でしょう。
   ここは冷静に状況を確認しましょう。みんなはそれぞれどこに?」
日明「はっ。あの人は今、一人だわ! 今度こそ潔さんが危ない!」
乾 「もしもしお姉さん。潔さんとはまさか……」
日明「あなたたちがあの手袋を持ってきたときに、私気づいてしまったの。
   これは私を巡る愛の謀殺事件だって。あの人は私を追ってきたの。
   そして邪魔な潔さんを殺すつもりなのよ。ああ、なんて強烈な愛」
高田「となると北山君は?」
日明「勿論、彼も私を愛していたということになるわね。私は罪な女だわ」
乾 「うわあ。被害にあわないよう気をつけなくっちゃ」
高田「もしあの悲鳴が高里さんだったらどう解釈するのかが楽しみだな」

二人の囁き合いも耳に入らず、日明は古泉を踏み越えて走っていった。
日明「こうしてはいられない。潔さんの無事を確かめなくっちゃ!」
65名無しのオプ:03/01/16 16:40
一方、殊能は一人でキッチンに立っていた。
そこへ廊下を行ったり来たりしていた舞城が、まるで偶然のような顔をして入ってきた。
この機会に殊能の手料理を頼めないだろうか……そんなささやかな希望を胸に。

舞城「お、おう。殊能やないか。一人で何してるん?」
殊能「ああ、監禁されている蘇部君に差し入れを持ってこうと思って」
舞城の顔がひきつるのにも気づかず、殊能はにこにこと続ける。
殊能「きっとデリケートな蘇部君は疑われて心を痛めていると思うんだ。
   僕に出来ることは料理くらいだし、お雑炊で温まってもらいたいんだ」
舞城「ほう……ほんなら俺が手伝ってやるよ」
ちょっと意外に思ったものの、笠井の襲撃事件のときに協力して蘇部を止めてくれた
ことを思い出し、殊能は疑いもなく了承した。
そのとき、邸中に悲鳴が響き渡った。
殊能がびっくりして目を離した隙に、舞城が鍋に隠し味をしていたことはまだ誰も知らない……。
66名無しのオプ:03/01/16 18:16
「ふぅ……」

しばらく前から割り当てられた部屋に引きこもった佐藤は、壁に向かって何度目かの溜息をついた。
この陰鬱な気分の原因は判っている。

学園屈指のひねくれ者として知られ、妬みや嫉みで凝り固まった存在と思われがちな佐藤。
だが、そんな彼にも唯一、絶対の尊敬を向けるクラスメイトが存在した。
佐藤がメフィスト学園を目指すきっかけとなった、彼にとって唯一の純粋な憧憬の対象。

「浦賀先輩……あなたが犯人なんですか?」

それを否定する材料はない。
浦賀が何らかの目的を持ってこの雪の山荘の周辺を徘徊しているのは間違いないらしいし、
狂気に囚われた浦賀が、殺人すら辞さない人格となるのは疑いようのない事実だ。
が、それを理解しつつも信じたくない、そんな感情に佐藤は囚われていた。

周りには隠し続けているが、佐藤は浦賀を尊敬していた。
浦賀の持つ無機質でクールな残酷さ、そしてそれと背反するかのような溢れんばかりの鬱屈したエネルギー。
そんな浦賀を羨望し、浦賀のようになるために彼はメフィスト学園に入学したのだ。
67名無しのオプ:03/01/16 18:16
だが、浦賀はそんな彼に厳しかった。いや、相手にさえしてもらえなかった。
浦賀の気を引き、浦賀のようになるために、佐藤は出来うる限りのことをしてきた。
浦賀のことを調べ尽くし、そのこだわるテーマのようなものを徹底的に模倣した。
ただひたすら、浦賀のようになるために。
浦賀に賞賛されるとまではいかなくとも、せめて罵倒くらいはして貰えるように。

デビュー作では浦賀から『近親相姦』というテーマをパクった。
が、浦賀はそんな佐藤に一瞥も与えなかった。
(もっとも、何故か怒り狂って逆上した舞城に小一時間ほど殴られたが)
そして第二作では浦賀から『カニバリズム』というテーマをパクった。
それでも浦賀は全くの無反応であった。
(もっとも、何故か珍しく真剣な表情の古処に小一時間ほど説教されたが)

「そして……」

そこまで考えて、不意に佐藤は理解した。いや、理解できたような気がした。
浦賀が狂気に囚われ、殺人鬼と化して雪の山荘周辺に現れた理由が。

「浦賀先輩が最も執着しているテーマ……それは本格の否定、そして、名探偵の否定だ……」

思えば、このスキー合宿には、古き良き本格の雰囲気を思わせる要素が多すぎた。
雪で閉ざされた山荘、学生たちの合宿、そして探偵役……。

探偵役?

「まさか……浦賀先輩の真の殺害対象は……」
68名無しのオプ:03/01/16 18:17
浦賀は『名探偵』を憎んでいた。まさに殺しても飽き足りない程に。
そしてこの山荘には、古き良き名探偵を気取ったコンビが存在し、捜査と称してあちこちをうろついている。

現在、浦賀を物理的に阻止できそうな新堂&中島は雪山で捜索中。
古処も不在、舞城は逆上して単独行動中。
冷静で頼りになるなずの殊能は蘇部の問題で心ここにあらずの状態。
その蘇部は津村・霧舎らと地下室から動けない状態。
浅暮は飲んだくれているし、女二人や秋月は頼りにならない。
北山は錯乱状態、黒田は行方不明、高田&乾は薬草採取に夢中。
そして笠井は部屋に閉じこもった状態。
となると……

「石崎先輩と氷川先輩が危ない……」

そう、本格と名探偵と憎んでやまない浦賀にとって、彼らは憎悪の対象。
そんなふたりが雪の山荘の暖炉の前で名探偵ごっこ。
その情況は浦賀の『スイッチ』を入れてしまうに相応しいものではないのか。

「でも、僕に何ができるというんだ……」

浦賀に立ち向かう勇気はない。かといって、浦賀に味方する度胸もない。

「僕はあの舞城と正面から向かい合うことができたんだ、頑張れるはずだ」

そう自分に言い聞かせる佐藤。
だがいかな時間が経とうと、佐藤は部屋から出ることが出来なかった。

「まさに戯言だね……」

佐藤は絶望したときでも、佐藤だった。
69名無しのオプ:03/01/16 19:44
積木「ぐ…はなせ…こら…苦しい…」
清涼院「セーリョーイン!セーリョーイン!」
西尾「御大、積木先輩苦しがってるじゃないですか。
   それにあっちへの送信も中断したみたいですから、離れて下さい、ほらほらほら」
清涼院「セーリョーイン…!」

積木「ごほ…何するんだ…一度途切れたら、次またすぐに復旧できるわけじゃないんだぞ」
森「肝心な部分が伝えられなかったみたいですね。何て典型的な(笑)」
竹「りゅーちゃん…向こうのみんなを驚かしたいからって、なりふり構わないのは良くないんだよ…」
生垣「さっきの罰ゲームの失敗をまだ根に持ってるんだな」
70名無しのオプ:03/01/16 19:46
西尾「大丈夫かなあ…向こうの人達」
積木「山荘まで距離がかなりあったから、彼がすぐに現れることはないと思うけど…」
西尾「うーん、もしかしたら途中で進路を変更するかも…って、戯言かな」
森「浦賀君が出てくる前に、山荘の方の事件が何とかなれば良いですね。
  彼が現れたら、確実にまた一波乱あるでしょうから」
竹「そだね。ここがざっきゅんとひーちゃんの腕の見せ所だね」

生垣「ヘイ、さっきから聞いた限りだと、そんなに危険人物なのかいその彼は?
   まるでレクター博士だな」
西尾「いや、それ程じゃないですよ。確かにたまに危険だけど、いい先輩ですよ。ね、竹ちゃん」
竹「うん。かずくんは、暗くて目立たなくて何考えてるかわかんないとこもあるけど、でもいい人だよ」
森「レクター博士の四乗根という所でしょうか(笑)」
生垣「へえ、興味深い人物…なのか?」

森「まあ、こちらが焦ってもどうにもなりませんね。ワルツでも踊りますか?(笑)」
西尾「………あれ、御大は?」
竹「うに。いないね。いなくなっちゃった」
71名無しのオプ:03/01/16 20:05
>54
乙!
確かに石崎ならではだな。
72名無しのオプ:03/01/16 23:02
石崎「自意識過剰の秘書うぜえよ」
            ∧_∧
     ∧_∧  (´<_`  ) 氷川「裸体を見られた反応が可愛かった高里の方が萌えるよな」
     ( ´_ゝ`) /   ⌒i
    /   \     | |
    /    / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
  __(__ニつ/  FMV  / .| .|____
      \/____/ (u ⊃



石崎「まぁでも日明たんもハァハァなわけだが」
            ∧_∧
     ∧_∧  (´<_`  )  氷川「なんと」
     ( ´_ゝ`) /   ⌒i
    /   \     | |
    /    / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
  __(__ニつ/  FMV  / .| .|____
      \/____/ (u ⊃
73名無しのオプ:03/01/16 23:04
石崎「そういや氷川、例の宿題、終わったんだってな。おめでとう」
氷川「……どうも」
石崎「何だよ何だよ、複雑な顔しやがってさあ。
   もっと嬉しそうな顔しろよ。やることに意義があるんだぞ?」
氷川「いいじゃないですか、早く悲鳴が上がった場所へ行きましょう」
石崎「締め切り過ぎてるのが何だ!やり遂げたお前は偉いぞ!」
氷川「ああもう、行きますよ!」
石崎「何怒ってんだ?せっかく喜んでやってんのに…」


ともかく、氷川の密室本…になる予定だった話、楽しみです。
74名無しのオプ:03/01/17 00:21
>73を見ながら……
積木「……そういえば前スレで触れられてなかった舞城の書き初めは、
   『どうして○○君は宿題を出してないの?』だったそうな」
生垣「前スレ? ホワッツ」
森 「森は別のも見ましたよ。確か『きらくにね。芥川賞狙い』とか(笑)」
西尾「色んな人のコンプレックスを煽ってそうだねえ。混乱に乗じて
   舞城君を狙う人の一人や二人がいてもおかしくないかも」
75名無しのオプ:03/01/17 09:07
女性キャラは妄想逞しいところが共通点なのか。

ところで……石黒はどこ?
76名無しのオプ:03/01/17 09:56
居残り組の和みっぷりも相当だが、先生連中も鍋食ってやがるぞ。
77名無しのオプ:03/01/17 11:41
>前後しますが68&73

氷川「どうやら悲鳴は……佐藤の部屋だな?」
氷川「さっきから閉じこもったきりですね。事情聴取も、彼の部屋でやったくらいなのに」
石崎「その奴が、どうして狙われるんだ?」

 二人の声がする。闇の中で、佐藤は息をついた。
 浦賀先輩、見ていてください。僕に出来るのは、これくらいです。
 石崎と氷川が、彼の部屋のドアを開けた。
 
佐藤「み、見ました! 黒いフードの男を! 長い髪をしてました!」

 石崎は電気をつけた。
 壁にはカッターだのボールペンだの、
 佐藤の部屋にあるありとあらゆる「尖った物」が突き刺さっていた。
 何故か歯ブラシまで。 

石崎「…佐藤…」
氷川「…佐藤君…」
石崎「突っ込む気も起こらんな。行くか氷川」
氷川「ええ、そうですね」
佐藤「だから浦賀先輩は犯人じゃなくて……あ、待ってよう!」

どうして? どうしてなんだ?
これで確実に、浦賀先輩への容疑を反らせると思ったのに……

探偵は立ち去った。
石黒「第1火口、いまだ変化なし、と」
石黒は山頂にはったテントの中で観測機のデータを調べ続けていた。
予定では観測機の調整を終えたらすぐに下山するつもりだったのだが、
吹雪のため断念したのである。
現状では山に動きはない。静寂そのものだ。だが、その静寂さの中にある
危険な匂いを石黒は感じとっていた。
数時間前まで火山活動の兆候をしめす微震が断続的におきていた。それが
今はぴたりとやんでいる。それがかえって気になるのだ。
石黒「もし、噴火すれば…」
雪山の噴火。火口付近の積雪が大量に溶け雪崩がおきることは間違いない。
麓には学園の仲間数人が合宿しているという山荘があったはずだ。
もしものときはわたしが彼らを救いにいかなければなるまい。それが火山
の専門家である自分の務めだ。
石黒はフッと息をつき、傍らのウイスキーをあおった。
79名無しのオプ:03/01/17 13:09
ウィスキーを煽る石黒――と、不意に第六感がチクチクと彼を刺激した。
嫌な予感につつまれる。
石黒は吹雪の中に目をこらした。

浦賀「ニヤァ」
石黒「ぶっ」

勢いよく石黒はウィスキーを噴き出した。
80名無しのオプ:03/01/17 13:33
>>63 >>69
竹嬢の呼び方をまとめておきます

西尾=いーちゃん
清涼院=御大ちゃん
殊能=まーくん
蘇部=ぶーちゃん
舞城=おーちゃん
高里=しーちゃん
日明=メグちゃん
氷川=ひーちゃん
石崎=ざっきゅん
生垣=たろちゃん
浦賀=かずくん

それ以外はまだ呼ばれたことがない、かな?
古泉とのからみが文化祭であったけど何て呼んでましたっけね
81名無しのオプ:03/01/17 13:46
積木「>>80 っ! あ、あの、た、竹君?」
竹「うに? なんですかあ? つみつみ」
積木「…そうか、俺はつみつみか」
82名無しのオプ:03/01/17 18:42
それぞれが悲鳴を聞いて佐藤の部屋まで駆けつけていた。
外国人のように肩をすくめる石崎(しかしゴキッと音がして様にならない)と、
苦笑を見せる氷川の様子で大事ではないことがわかり一同はホッとした。

日明「はっ! まさか佐藤君は私の気を惹くために」
乾 「それはないない。ねっ、石崎……」
石崎「それでは仕切りなおして推理を再開するか」
氷川「そうですね。落ち着けるところで話しましょう」
まだ本気モードから抜けない石崎は、掛け合い漫才に乗ってこなかった。
唖然と見送る乾の背後に、意外に可愛いパジャマを着た高里が忍び寄る。
高里「うふふ。このままだと石崎君は乾君のこと忘れちゃいそうね」
乾 「どうせ僕は本格じゃないやい。ていうか元々友達じゃなかったし」
高里「くすくす。素直じゃないのね。そういうときは星空の下で語り合うのよ。
   そして二人は目と目を合わせ……きゃっ! ボーイズラブの王道ね!」
霧舎「さすがハニー。どんな状況においても801心を忘れないなんて素敵だね」
乾 「うわあ。お前、いつのまに」
霧舎「いやあ。ハニーに何かあったのかと思って」
高田「地下室の見張りは?」
霧舎「あ」
83名無しのオプ:03/01/17 18:43
うん?>>77の意味がわからんぞ。
僕ってヴァカなんだろうか。
84名無しのオプ:03/01/17 18:45
>83
佐藤の狂言だったんでしょ? 浦賀をかばうため、清涼院のせいにしようとした。
85名無しのオプ:03/01/17 18:48
最近の流れは「全てのキャラに萌えポイントを作る」という信念があるみたいでいいね
8683:03/01/17 18:52
>>84
いや、「尖った物」ってのになんか意味があるんだろうけどそれがわかんないの。
87名無しのオプ:03/01/17 18:59
>>86
串刺公に引っ掛けてる
88名無しのオプ:03/01/17 19:08
霧舎が扉を開け放したまま地下室を飛び出していったので、
蘇部と津村は途方にくれていた。

津村「このままでは我々がここにいる意味がないな」
蘇部「どうしよう。僕たち鍵もってないよ(当り前だ)」
津村「このままじゃ脱走を疑われる。とりあえず扉を閉めておくか」
やれやれとため息をつきながら、扉を閉めにいく蘇部と津村。
蘇部が扉に手をかけて何気なく廊下を見渡そうとしたその瞬間……!
津村「危ない!」
蘇部はぐいと部屋の中に引き戻される。代わりに津村はうめき声をあげた。
津村「くそっ、やられた……ボーガンだ……」
蘇部「そんな! 津山君、しっかり!!」
津村は霞む意識の中、ボーガンを発射した犯人の姿を思い起こそうとした。
しかし廊下の角にいたそいつすぐに立ち去り、津村の動体視力でも捉えられなかった。
そこへ、反対方向から差し入れをもった殊能と舞城が現れた。
舞城「くそ、なんてこった! 今高田を呼んでくる。じっとしてろ!」
殊能「蘇部君に怪我はないのかい?」
蘇部「僕は平気だよ。それより津山君が死んじゃうよ! 津山君!!」
津村「つやまじゃないよ……つむ…………ぐふっ」
89名無しのオプ:03/01/17 19:16
蘇部「しっかりして津山君。ほら、温かいお雑炊だよ」
殊能「蘇部君……自分の分も省みず津山君を気遣うなんて、優しいなあ……」
津村「むがむぐぐ……」

津村は舞城が手当たりしだいにいれたタバスコなどの調味料と、
隠し味の鼻くそを加えたスペシャル雑炊を食べさせられた。

殊能「あ、意識を失った」
蘇部「きっとお腹が落ち着いて安心したんだね。よかったよかった」
90名無しのオプ:03/01/17 20:17
事件初の怪我人か…津村の傷の具合が気になるな。

>>80
古泉のことは「かじゅーたん」って呼んでたはず。
91名無しのオプ:03/01/17 20:59
>>89
ひ、ヒドいw
92名無しのオプ:03/01/17 21:04
そういや乾って笠井の犬って設定だったような。
ご主人のピンチなのに落ちついてるなあ・・・
93名無しのオプ:03/01/17 21:11
高里は自室で髪を梳かしていた。
先程のシャワー(ただし水)の所為ですっかり身体が冷えてしまい
本当ならすぐにでも下の広間へ行って暖炉で暖まろうと思ったのだが、やはりそこは女の子。
髪くらいは乾かさないとね、ということでずっと自室でドライヤーをかけたりしていた。

騒ぎにかこつけてワインセラーの監視役を抜けてしまった霧舎は、そのために探偵役二人にボコられ、
首根っこをひっつかまれ、石崎に引きずられて行ってしまった。
(もう、ダーリンったら石崎くんにかまってほしい作戦、大成功じゃない!)

先程の悲鳴には少しどきりとしたが、何でもなかったようでほっとした。
(石崎くんは相変わらずモテモテ継続中…今相手にされてない寂しげな乾くんに注目しないと…)
それでもやはり、思考は妄想方面に傾いている高里。

(蘇部くんは今とらわれの身だし(←違う)、その所為で殊能くんは彼の心配ばかりだから
 余計に舞城くんの嫉妬が…)
そこまで考えたところで、思考が中断する。
94名無しのオプ:03/01/17 21:12
舞城。
(あーあ、思い出しちゃった…)
櫛を持つ手を止めてため息をつく。
一応、さっきの石崎や氷川の前では何でもないような振る舞いをしておいたが、
やはり、シャワーの場面を見られたのは、高里にとっては恥ずかしいことだった。当たり前と言えば当たり前。
おかげで、らしくもなく泣きそうになってしまった。

石崎と氷川はまだ良い。いや、全然良くないけど。
何故ならこの二人は、浴室に入ってきたときこそ堂々としていたが、
その後すぐに顔を赤くして慌てて部屋を出ていった。その後ドア越しに謝ってくれた。
問題は舞城だ。
彼は悲鳴の原因がシャワーの水だったと判明した後も、
探偵コンビのように焦ることもなく、悪びれた様子も全くなく、平然としていた。
おまけに正面からバスタオル一枚の高里を見て、少しだけ眉を上げてみせて、悠々と部屋を出ていった。

何となく。何となくショックだった。思い出すとまた涙が出そうになる。
(もう。らしくないらしくない)
頭を振って、もう一度大きくため息をつく。

はるばるダーリンと石崎くんをくっつけるためにここへやってきたのに。
スキーも少しだけ、楽しみにしていたのに。
まさか浦賀出現だとか、串刺し公だとか、思ってもみなかった。

(早く石崎くんたち、事件解決してくれないかな)
珍しく、普通にクラスメイトたちに期待する高里だった。

(あ、石崎くんが氷川くんと協力して事件を解決したら、彼らの絆がより深まって氷川くん一歩リード!?)
…そうでもなかった。
95積木:03/01/17 23:47
微妙に舞城に萌え始める高里だった・・。
それはひょっとすると、普通の恋?
・・凄い展開が予想される。
96名無しのオプ:03/01/17 23:57
ち、ちょっと普通な女の子になってる高里に萌えてしまったじゃないか……!
97名無しのオプ:03/01/18 00:00
このスレ、下手な小説よりよっぽどおもしろいし、よくできてるよなあ。
誰かまとめて文三に送れ(w
98名無しのオプ:03/01/18 00:00
>>78
雪山で酒飲んで大丈夫か、石黒!?
99名無しのオプ:03/01/18 00:11
一人部屋に残された秋月は目立つために、
探偵役を演じることが一番であると悟った。
「犯人役もおいしいけど、ミステリ書きならば探偵役を目指さないと」
そして考えた。
「そうだ。犯人がわかったぞ」
彼は語った。
「犯人は清涼院さんか積木さんでしょう。なぜならばメタだからだ」
しかし、探偵になる資質もなければ、このスレのタブーを知らなかった。
所詮、彼の役目は通行人Aでしかない。
そのことを判らない秋月は、満足そうに笑みを浮かべる。
「この超絶推理を誰かに聞かせないと」
地下室に捕らえられている人たちの顔を思い出し、そこへ足を運んだ。
100名無しのオプ:03/01/18 01:13
>>98
ロシア人は寒い日ウォッカで体を温めて仕事をするとか。それと同じ理屈でないかと憶測。
101積木:03/01/18 07:42
雪山なら豪雪地帯福井出身の舞城&殊能にもスキーをはかせておいしいとこ
つくってやってくれ…。
102名無しのオプ:03/01/18 10:00
黒田は吹雪の中を歩き続けていた。古処からもらったミカンを握りしめながら、足を
ひたすら前に出し続けている。すでに感覚が麻痺してしまい、寒いのかどうかすらわ
からなかった。
黒田「帰らなくちゃ…、俺は帰らなくちゃいけないんだ」
意識が薄れかけそうになるたびに、黒田はそうつぶやく。
雪は深い。黒田の歩みは遅々として進まない。
それでも黒田は歩くことをやめなかった。

黒田「明日は19日なんだから。俺は19日までに帰らなくちゃいけないんだ」

学園へ。いや、笠井先生の山荘でもいい。
テレビのあるところならどこでもいい。
黒田「だって、モーニング娘。の新メンバーが決まるんだから」
1/19にLOVEオーディション2002の最終結果特番がテレビで放送される。
黒田「まりっぺ、加護ちゃん、辻、なっち…、そして新メンバーが俺を待ってるんだ」
極限状態の黒田を支えているのはモー娘への愛だった…
103名無しのオプ:03/01/18 10:14
黒田…(笑
104名無しのオプ:03/01/18 10:16
ワインセラーでは、高田が気絶した津村の具合を看ていた。
高田「……」
殊能「どうですか、高田先輩」
蘇部「津村くん、死んじゃったりしないよね…?」
真剣な殊能と目に涙を浮かべている蘇部に、今まで黙っていた高田は顔を上げる。
そして、静かに首を振った。

殊能「…手遅れなんですか!?」
蘇部「つ、津村くん…僕を庇って…僕が廊下を覗いたりしたから…僕の…」
殊能「蘇部くんが悪いわけじゃないよ、自分を責めるのは良くないよ」
蘇部「でも……」
高田「おいおい、二人で勝手に話を進行させないでくれないか」
見つめ合い始めた彼らに、高田は呆れたように言った。

高田「別に津村君は死んでもいないし、危篤でも重傷でもない」
言いながら、津村を手で示す。
高田「というか、かすり傷一つない。強いて言えば、打撲傷があるだけだね」
殊能「打撲…?でもボウガンが」
ボウガンの矢は津村の脇に落ちている。高田はそれを拾い上げると、殊能の前にかざして見せた。
高田「こんな矢じゃ、よっぽどの速度がなければ人間の身体には刺さらないよ」
よく見れば、その矢は先が丸めてある。
高田「まあ、それでもボウガンから発射されれば速度もつくし、当たったら痛いと思うけどね」
殊能「笠井先生を襲った矢は、壁に刺さっていた。そのときとは別の種類の矢ってことなんですか?」
高田「おそらくね」

殊能は考える。
そんな矢をわざわざ使ったということは、犯人は最初から相手を殺す気など無かった…?
では何のために津村を、もしくは蘇部を狙ったのか?
いや、そもそも、ボウガンは第一の事件の後で、氷川が封印したはずだ。
他にも凶器になりそうなものはたくさんあったのに、何でまたわざわざボウガンを?
105名無しのオプ:03/01/18 10:17
高田「よって、津村君の怪我は、矢が“当たった”際の打撲傷のみ。
   気絶してるのは…彼自身が矢が刺さったと思いこんでショックで気を失ったとか、
   反射的に飛び退いたときに壁で頭を打ったとか、そんな所だろう」
気絶の本当の理由はスペシャル雑炊(しかも二人分)の所為なのだが、それを知っている人間はここにはいなかった。

蘇部「そっか…良かった…津村くんが無事で…ホントに良かった」
殊能(一歩間違ったら自分が危なかったのに津村くんの心配だけするなんて…蘇部くんは優しいなあ)

蘇部「そういえば、舞城くんは?」
高田「僕を呼んでから、石崎君と氷川君を探しに行ったよ。
   探偵の二人は、さっきの悲鳴で二階に行ってしまったから、今は多分二階か階段あたりにいるんじゃない?」
そう行って、高田は少し苦笑した。
高田「何だか随分怒っていたようだけどね、彼。第三の事件が起こったのが許せないみたいだね。
   あと、『何のための監視役じゃ、肝心なときにおらんようになりおって』って、霧舎君にも怒ってたね」
蘇部「へー。舞城くん、熱血漢で正義感みたいだねー」
殊能「行き過ぎてまた暴力振るわないと良いけど…」

106名無しのオプ:03/01/18 11:00
>>101
それを言うならスキー1級の黒田にも是非…
しかし、殊能はともかく舞城は結構おいしい場面があったと思うが。

公式キャラプロフィールが全員分更新されていたよ。
乙!>公式管理人さん
107名無しのオプ:03/01/18 13:08
舞城・殊能の福井コンビもそうだけどユヤタン・京極も北海道出身なので雪山に強そう…と言ってみるテスト
しかし、四郎バージョンの舞城はかっこいいんだがなあw
108名無しのオプ:03/01/18 13:16
>107
甘いな、オレは二郎バージョンに期待する・・・
109名無しのオプ:03/01/18 16:17
時間はほんの少しだけ遡る。

佐藤の悲鳴騒ぎの後、石崎と氷川は見張りをさぼった霧舎を廊下でボコっていたため、
乾・高田・日明は先に広間まで戻ってきた。
浅暮「おう、どうだった。また串刺しか?」
彼は赤ワインをすでに空け、今度はどこからか探し当てたらしいウィスキーをロックで飲んでいた。

高田「いや、詳しい事情はきけなかったけど、どうやら佐藤君の狂言だったみたいだね」
浅暮「佐藤が?…ま、大事じゃなくて何よりだ。お前らも飲むか?」
日明「そうね…少しだけ頂くわ。変なことばっかりで、お酒でも飲まなきゃやってらんない」
浅暮「お、いいねいいね。乾は?」
乾「…いらない。遠慮しとく」
浅暮「ん?どうしたんだ、元気ないな」
高田「石崎君にかまってもらえなくて拗ねてるんだよ」
日明「ちょっと石崎くんに相手にされなかったからって…まったく、子供なんだから」
乾「別に拗ねてなんかないって!ただあの石崎がボケもせずに探偵やってるからちょっと調子が狂って」
呆れたように言う高田と日明に、乾が必至に弁解する。

と、そこへ舞城が大股でやってきた。その表情は何故か硬い。
浅暮「お、舞城。お前も酒盛りに参加しないか。ここは酒がよりどりみどりだぞ」
舞城「それどころやない。おい高田」
高田「何…?何かあった?」
舞城「ワインセラー行ってくれんか。津村がボウガンで撃たれた」
乾「……ええ!?だってボウガンは氷川が使えないように…」
日明「ああもう…次から次と…何なのよ、一体!」
グラスを手に持ったまま、日明がうんざりしたように叫ぶ。
110名無しのオプ:03/01/18 16:18
舞城「石崎と氷川は?どこ行ったんじゃ、我らが探偵センセイは」
乾「い、今二階にいるけど、さっきの悲鳴で…あ、これは佐藤の狂言だったんだけど…」
舞城「霧舎のアホは」
乾「彼も二階にいたよ。佐藤の悲鳴が聞こえたからって…」
舞城「奴は何のための監視役じゃ、肝心な時におらんようになるのはどういうことや」
乾「い、いや、僕に言われても」
舞城「第三の事件や。第三?ふざけるなや。なあ?
   俺らは別にミステリーツアーに来とるんやねえんじゃボケが!」
乾「うわ、僕に怒らないでよ」
乾は怯えながら抗議したが、舞城はそれを無視して広間をまた大股で出ていった。
それを四人は呆然と見ていたが、やはり一番最初に動いたのは高田だった。

高田「取り敢えず、津村君の容態を確かめるのが先決だな。ボウガンか…止血の必要があるかな。
   日明さん、悪いけど、救急箱を探して持ってきてくれない?僕は先にワインセラーへ行ってるから」
日明「わかったわ。浅暮くん、また後でゆっくり飲みましょう。ごめんなさいね」

広間には、乾と浅暮、そして解凍中の古泉が残された。
浅暮「…早く、うまい酒が飲みたいものだな」
111名無しのオプ:03/01/18 16:34
まだ解凍できてないのかw
112名無しのオプ:03/01/18 18:04
古泉は意識の海の中を漂っていた。

何も見えない。何も聞こえない。しかし不思議と心地良い。まるで本当に海で漂っているかのようだ。
この感覚には覚えがある。
今まで瞑想のときに幾度か一瞬だけよぎり、しかし、捕まえようとすると霧のように消えていた、あの感覚。

それが、今はずっと継続している。
自分は夢を見ているのだろうか?それとも。
(アッラーとの、交信が…叶うときが来たのか?)
雪山での苦行は無駄ではなかったのか。

不意に、何も見えなかった筈の視界に眩しい光が入ってきた。
ゆらゆらと、しかし確実に、自分のもとへ近づいてきている。まるで意志を持つかのように。
長らく自分でもその存在を忘れていた指先が動いた。そのまま、導かれるように光に手を伸ばす。

(アッラー…)
光が、手に触れた。


古泉「積木ボンバイエ、積木ボンバイエ」
乾「うわっ!ビックリした!古泉が急に起きあがった!何何何!?」
浅暮「…積木か?」
古泉「『うむ。いい加減、向こうを漂わせているのもなんだからな。連れて帰ったぞ』」
浅暮「ご苦労さん」
古泉「『なに。それじゃあな』ブツッ………アッラー?…私は…」
乾「…お、おはよう、古泉。…って、あれ?ちょ、ちょっと、何泣いてんの!?」

古泉、完全復活。
113111:03/01/18 18:27
ワラタ 職人さん反応はやっ
114名無しのオプ:03/01/18 19:28
>アッラー?…私は…
ツボです……
115名無しのオプ:03/01/18 19:30
解凍しても役にたちそうにないのがw
116名無しのオプ:03/01/18 21:17
涙まで流して(w
117名無しのオプ:03/01/18 21:47
遅レスだが
>100
なるほど!納得した。

石黒は酒が飲めるキャラなのか?
今までは火山ネタくらいしかなかったが。
118名無しのオプ:03/01/18 22:35
地下ワインセラー。

日明「そう、怪我はなかったのね。良かったわ」
遅れて救急箱を持ってきた日明は、安堵のため息をついた。
高田「しかし…矢が丸めてあったとはいえ、ボウガンで狙うなんて危険極まりない」
殊能「さっき見てきたんですけど、ボウガン本体は廊下にはありませんでした」
蘇部「撃った人が持ってったのかな?」
殊能「そうだろうね。笠井先生のときは、捨て去っていったのに、ね…」

日明「とにかく、これではっきりしたわね。蘇部くんと津村くんは犯人ではないわ」
高田「うん、気絶した津村君をここに置いておくわけにはいかないし、皆広間へ移動しても良いだろう」
蘇部「いいのかな。…笠井先生が何て言うか」
殊能「大丈夫だよ。もしまた先生が何か言ったら、僕が黙ってはいないから」
蘇部「殊能くん…うん、ありがとう」
日明「はいはい、さっさと行きましょう」

高田「矢は一応持っていこうか。矢が落ちていた場所に印をつけて、と。
   蘇部君、津村君が撃たれたときのことを良く思い出して、整理しておいた方が良いね」
蘇部「石崎くんたちに訊かれるからだね。うん、わかったよ」

殊能「高田先輩、津村くんは目を覚ますでしょうか?」
高田「大丈夫だろう。いざとなったら、強力な眠気覚ましを投与するさ」
日明「…気絶に眠気覚ましが効くの?実験台じゃなくて?」
119名無しのオプ:03/01/19 00:22
19日になったな。
モー娘の番組まであと約18時間半、黒田は山荘(テレビ)に辿り着けるのか?

でもそこでテレビ東京系もBSも映らなかったら笑えるw
120名無しのオプ:03/01/19 01:13
121名無しのオプ:03/01/19 01:38
彼は一人、雪山を徘徊していた。

突き刺すような冷気に長時間晒され続けた身体は完全に冷え切り、もはや寒さすら感じない。
感覚が麻痺していくのと引き換えに極限まで研ぎ澄まされていく思考で、とめどなく考える。

自分は何故こんなことをしているのか。

はっきりと覚えている最後の記憶は、教室で笠井主催のスキー合宿について語り合うクラスメイトたちの姿。
そんな楽しそうな級友たちの姿を、教室の片隅で一人、ぼんやりと観察していた自分。

そして、石崎の台詞をきっかけに、記憶は靄がかかったかのようにあいまいになる。

石崎「吹雪の山荘! これは名探偵の宿命か!?」
石崎「氷川と行くよ」
石崎「だって、吹雪の山荘だぞ? 本格だからな」

それからのことは詳しくは覚えていない。
気がつくと吹きすさぶ吹雪の中を、空きっ腹を抱えてあてどなくさすらう自分がいた。
それから、いろいろなことがあったような気がするし、何ごともなかったような気がする。

そういえば北山と遭遇したような記憶もある。
北山の奴、涙と鼻水を垂れ流しながら必死で逃げてたっけ。
鼻水が溢れ出る端から凍りつき、つららと化して顔からぶら下がっていくのが笑えた気がする。
まあ、最後には大木によじ登ってしまったんで放っといたけど。

それから、黒田の奴にも出くわしたような。
奴は小賢しくもネット批評なんて卑劣な行為に手を染め、しかも俺の小説を批判しときながら、
いざ自分がデビューすると途端に悪口を言わなくなった偽善者だ。万死に値する。
奴を逃がしたのは残念だったが、まあいい。どうせ死からは逃れえぬ運命だ。
なんせ、石黒の話によれば……
122名無しのオプ:03/01/19 01:38
自分は今、正気を保っているのだろうか。

今まで何度も自問してきた問いを脳裏で繰り返すが、答えは得られない。
例え本格やら名探偵やらといった、いくら憎んでも飽き足らないものを信奉してるとはいえ、
相手はクラスメイトであり、それ以前に一人の人間。
それだけの理由で明確な殺意を覚えるだなんて、ある訳がない。いや、あっていい訳がない。

自分の周囲全てと、自分の内部全てを埋め尽くす真っ白な世界で、何かに憑かれたかのように思索する。

まあしかし、それもありなのかもは知れない。
所詮は推理小説作家などという忌まわしき存在。
生きていたところで何の価値もないのだから、殺しても構わないだろう。
そう、自分の存在も含めて……

急に愉快になり、一人哄笑する。
石黒の話によれば、この山はもうすぐ噴火し、大規模な雪崩が発生するらしい。
そうすればあの忌まわしい山荘も学園の生徒たちも自分も、全てがおじゃんだ。
石黒は頂上に貼ってあったテントに縛って放置しておいた。
いざ噴火となると真っ先に死ぬことになるのだろうが、どうせ一蓮托生の運命だ。
むしろあの愛すべき火山馬鹿にとっては、最高の死に場所を用意してやったことになるだろう。

これで、推理小説作家などという唾棄すべき存在が大掃除される訳だ。
さぞかし棲みやすい世の中になることだろう。
できれば、自分の手で直接殺戮してやりたかった。それが心残りといえば心残りだ。
本格なんてくだらないものを信奉して、自分が名探偵だと思いこんでるような奴らは特に……

と、そのとき、どこからともなく喋り声が聞こえてきた。
この粗暴で傍若無人な声は……新堂と中島か。
123名無しのオプ:03/01/19 01:39
「しかし山荘の事件とやらも生ぬるいな。死人どころか、怪我人の一人も出やしない」
「ああ、どうせ暇な誰かの悪戯だろ。たく、こっちは雪ん中捜索活動だっていうのに、能天気な連中だぜ」

激しい不快感が脳髄を刺激する。
雪の山荘はクローズドサークルでサークル内で疑心暗鬼か。下らない。陳腐にも程がある。
これでアレが出てきた日には……

と、鳴り響く吹雪の中、奇妙なほどくっきりと、ひとつの台詞が聞こえた。
明確かつ明瞭に、あたかも脳裏に刻印するかのように。

「まあ石崎と氷川の両名探偵先生が推理してくれてるみたいだし、すぐに解決するだろ」

その瞬間、視界は暗転した。

気がつくと、吹雪を切り裂くかのように疾駆していた。
背後でなにやら叫び声が聞こえるはずだが、それは大脳皮質で自動的に処理され、意識には伝わってこない。

身体と意思が完全に切り離され、全くコントロールできない、馴染みある状態。

凶暴な猛獣の破壊衝動と、冷酷な狩人の奸智を併せ持ったかのような、矛盾した状態。



……ああ、完全に『スイッチ』が入ってしまったんだな……


……YMOの新アルバム、聴きたかったな……
124通りすがり:03/01/19 07:31
いもの新アルバムは出ないょ。
125名無しのオプ:03/01/19 09:15
>>123
新堂と中島が北山と古泉を連れて一度山荘に来たときって、
また事件は起こってなかったから、彼らは事件のことは全く知らないのでは?

まあそれはそれとして、浦賀の内面が何やらヤバくなってるな…
どうなるんだ…
126名無しのオプ:03/01/19 11:01
石崎・氷川は霧舎を引きずって二階廊下を歩いていた。

石崎「まったく。そもそもお前が立候補したんだろ。ちゃんとしろ、ちゃんと」
霧舎「だからゴメンって」
氷川「笠井先生は蘇部先輩と津村くんを思い切り疑ってますから、
   そのへんきちんとしとかないと、後々余計に二人の立場が悪くなるんですよ?」
霧舎「反省してるよ、悪かったって……でもだからってあんなに蹴らなくてももいいじゃないか…」
石崎「何か言ったか?…霧舎、笠井先生が気づく前にさっさと地下へ戻…」
そこで階段を下りようとした石崎が、急に立ち止まった。いきなり止まったので霧舎がつんのめる。
階段の下に、舞城が立っていたのだ。

石崎「どうした舞城。怖い顔して…ってうわっ」
石崎がそのセリフを言い終わらないうちに、舞城は階段を一段飛ばしで駆け上がってきた。
そのまま石崎の横をを通り過ぎると、その後ろにいた霧舎の胸ぐらを掴んで壁に打ち付ける。

その間五秒。
ゴツッと嫌な音がした。

石崎「おい、ちょっと待てよ、いきなりだな。何やってるんだ、お前」
舞城「それはこっちのセリフや石崎」
石崎の方を見ずに舞城が言う。
舞城「おうコラ霧舎、おめえ監視やめて何でこんなとこにおるんじゃ。何でや、言うてみい」
霧舎「く、苦しい…」
氷川「舞城くん、彼が監視役を抜けてきたことなら、さっき僕と石崎さんで充分…」
舞城「おめえがワインセラーを離れんかったら、津村は撃たれずに済んだかもしれんのやぞ!」
石崎「…何だって?」
石崎と氷川の表情が固まる。霧舎も目を見開いた。
127名無しのオプ:03/01/19 11:02
高田「舞城君、津村君なら大丈夫だよ。矢はどこにも刺さってなかったから」
そこへ高田が階段を上って来た。やれやれ、やっぱりこうなってたか、と呟きながら。
高田「霧舎君を庇うわけじゃないけど、もしかしたら被害者は彼になってたかもしれない。
   だから、そんなに責めないで放してあげなよ。ほら、霧舎君だって反省してるんだから」
舞城「反省や後悔なんて誰にでも出来るやろ」
言いながらも、舞城は霧舎から手を離した。霧舎は壁に寄りかかった姿勢のまま、軽く咳き込む。
舞城「そんなんするくらいやったら、最初から必死でやればええんじゃ。クソが」   
高田「起こってしまったことは戻せないよ。それに、反省や後悔は決してタブーではない。
   反省なくして前進はない、と思うけどね、僕は」
舞城「綺麗事抜かすな。起こったことは戻せんから、いつも必死でやらんといかんのやろうが」

氷川「あの、津村くんが撃たれたって?まさか下で何かあったんですか?」
舞城「大ありや。第三の事件やぞ。おめえら何チンタラしとるんじゃ。
   その脳みそは今まで何に使っとったんや、早よ解決せえ。出来んのならもう死ねや」
高田「まあまあ、詳しい話は下でしよう。蘇部君と津村君を連れて来ているし、殊能君が今紅茶を用意してるから。
   最初と二番目の事件の整理もしたいだろう?一旦落ち着いて話そう」
そう言って、高田はゆっくりと階段を下りていく。石崎と氷川もそれに続いた。

氷川はふと、石崎の顔を見た。そして瞬間、ぞくりとする。

石崎の表情は、今まで見たこともない、いつもの全く彼に似合わない、鋭利な刃物のようだった。
128名無しのオプ:03/01/19 11:06
話の間終始俯いていた霧舎は、ようやく顔を上げて舞城を見た。
霧舎「…見張りを放棄したのは悪かったと思ってる…本当に。でも」
舞城「でも何や」
それを睨み付ける舞城。しかし、霧舎は目を逸らさなかった。
霧舎「悲鳴が地下まで聞こえて…ハニーに何かあったのかと思ったら、いてもたってもいられなかったんだ」
舞城「……」
霧舎「今更、言い訳にもならないかもしれないけど。……ごめん」
ちっと舌打ちして、舞城の方が視線を外した。
舞城「おめえが謝るのは津村と蘇部やろ。それにそんな高里が心配やったら、側にずっと置いておけや」
そう言って、舞城も階段を下りていく。

霧舎は一人、舞城の言葉を噛み締めるように、そのまま壁に寄りかかっていた。
129127:03/01/19 11:21
スマン。
×「いつもの全く彼に似合わない」→○「いつもの彼に全く似合わない」
意味不明な文だった。
130名無しのオプ:03/01/19 11:57
舞城萌えー(゚Д゚)
霧舎萌えー(゚Д゚)
131名無しのオプ:03/01/19 12:10
森「どうですか、積木君。向こうの状況は」
積木「シリアスな場面の連続だ。少し青春ドラマの趣まである。ネタスレとは思えないほどだ」
生垣「ネタスレ?ホワッツ?」
西尾「串刺し公事件もそろそろ解決編へ突入するのかな…それとももう一波乱あるのかな」
竹「いーちゃん、かずくんは今危ないモードだから、絶対ひとつは修羅場が来るんだよ」
積木「何にせよ我々は、ここでコタツに足を突っ込んでいるしかない」
森「そうですね。それじゃあ、カルタ大会でも開きますか?(笑)」
竹「いいんちょ、もう時期外れなんだよ…」

西尾「御大、帰ってこないな。どこまで行ったんだろ…?」
132名無しのオプ:03/01/19 15:03
生垣がナゼナニ君になってるw
133名無しのオプ:03/01/19 15:30
高里だったら浦賀の内面を「石崎への恋慕の裏返し」と解釈しそうだな。

しかし最近はギャグじゃないところで笑えます。
可愛い少女な高里とか鋭利な刃物のような石崎に爆笑しますた。
134名無しのオプ:03/01/19 16:51
石崎萌え
1351/2:03/01/19 17:24
淹れたての紅茶をティーカップに注ぎながら、殊能将之は考える。

 事件はすでに三度起きた。この後もまだ何度か事件は起きるだろう。
基本的に他人への関心が薄い彼は、たとえ事件がこのまま続いてもどうせイタズラのような他愛のない事件ばかりが
起きてクラスメートが何人かが軽い被害を受けてそのままどうにか解決するのではないかとタカをくくっていた。害がまさか自分や友人の蘇部にこれ以上くるとは思ってはいなかった。
 だから彼は監禁された蘇部を心配しながらも、頭のどこかでは冷静に、まるで観客のように、この一連の事件を眺めていたのだ。

「だけど……」第三の事件を思い出して、無表情に殊能は呟く。「ちょっと、やりすぎじゃないか?」

 蘇部健一。ワイドショーとSFと料理と映画・音楽以外、他人に興味を持つことの少ない彼が興味を持ち、この学園へ入学して出来た唯一の友人。
第一の事件で笠井に疑われて地下に監禁されはしたものの、事件はどうせ早々と解決して彼も今晩中には解放されるんじゃないかと殊能はどこか楽観的に考えていた。
1362/2:03/01/19 17:24
 だが、それはどうも甘い考えだったようだ。第三の事件では津村が蘇部をかばって狙撃された。矢は先が丸めてあり殺傷能力は削がれていたものの、犯人が蘇部や津村を直接傷つけようとしたことには変わりはない。

 第一・第二の事件が起きた当初、殊能は事件について真面目に考えようとは思わなかった。
石崎や氷川のような探偵をやりたい人間にこの事件を解決させればいいのだと思っていた。その方面において、彼らは信頼できるからと。
 でも、そうは言っていられないようだ。放っておけば事件は続き、それだけ自分や蘇部に降りかかる可能性が高くなる。それに身を呈して蘇部をかばった津村に借りを作ったままでいるのは、なにか落ち着かない。
 とはいえ、自分がまっとうな探偵役だとは思えない。探偵役はやはり石崎氷川に任せておけばいいのではないかと思う。
「ぼくはどうしようかな……」

ぬるくなりかけたカップの中の紅茶をみつめながら、殊能将之は考える。
137名無しのオプ:03/01/19 17:33
>>135,136
静観していた殊能が動くか?
今の流れはキャラがおのおの動いてて良い感じだな。
あまり動いてないのもいるが。
138名無しのオプ:03/01/19 17:36
積木「花の色はー、うつりにけりなー、いたづらにー、わが身世にふるながめせしまにー」
森「………」
竹「うにー……」
積木「わがみよにふる、ながめせしまにー」
西尾「……あ、あった、はい」
森「ああ、森の目の前にあったんですか。盲点でした」
積木「じゃ次。めぐりあいてー、みしやそれとも…」
竹「はいっ」
西尾「わ、竹ちゃん早い!」
積木「雲かくれにし、夜半の月かな…確かに」
森「やりますね(笑)」
竹「へへー。むすめふさほせ、なんだよ」

生垣「???…何故読んでる札と取る札の文句が違うんだい?後半しか書いてないじゃないか」
森「それは…ああ、高田君に訊くと良いですよ。彼なら色々教えてくれるでしょうから(笑)」

時期はずれの百人一首大会に興じるコタツ組であった。
139TUMIKI:03/01/19 18:19
>>138
な、なんて平和なんだ! 十角館とは構成は似てるのに内容はえらくのんびりw
140名無しのオプ:03/01/19 18:58
いやー面白すぎ。職人さんたち天才だ!
『積木ボンバイエ積木ボンバイエ』…ツボ



とかいいつつ今の本格+青春ドラマ風味も好きなんだけど
メフィ学ならではのメタメタにメタなのが少なくてちょっと寂しい
なんて我が儘言ってみるテスト(w
学園祭の御大が空飛んでるとこではマジ噴いた…
141いち:03/01/19 20:14
 やっと最初のスレから全部読了♪

短期間でスゴイ質と量ですね…。
142名無しのオプ:03/01/19 20:16
学園祭(つか御大)には毎回笑わせてもらったなw
今回それがあまりないのはやっぱり御大が学園の居残り組だからか?

本格風味ネタが続くけどこの流れも好きだ。
数名を居残らせたお陰でシリアスな間に138みたいな小ネタも入るしな。
職人さんたちにはがんばってもらいたい。
143名無しのオプ:03/01/19 20:49
古処「こんばんは」
森「おや、古処君。ようこそ。あなたは雪山に行ってたのでは?どうしたのです。」
古処「男一匹、雪山帰りでゆっくりと風呂につかりたいところなのであるが
    途中でこんなものに出くわしたのである。」

<−−何やら背中におぶっていたモノを下ろす古処 >

西尾「お、御大〜!どうしたんです。そんなにボロボロになって。」
竹「うに〜、御大ちゃん。なんか縮んでない?」
積木「それより、生きてるのか?コレ。」
竹「お湯かけてみよっか〜、それっ!」

清涼院「セイリョッ!イーン!」

一同「ぅわぁ〜動いたぁ!」
144名無しのオプ:03/01/19 21:16
インスタントラーメンかよ!
ていうか御大、雪山で何たくらんでたんだ(笑
145名無しのオプ:03/01/19 21:45
お湯をかけて増殖――ふえる流水ちゃん?
146名無しのオプ:03/01/19 21:56
学園祭の時の「千人の御大」並の悪夢だ…>ふえる流水ちゃん
147名無しのオプ:03/01/19 21:57
広間には石崎・氷川・高田・日明・乾・殊能・蘇部・津村(気絶中)・古泉(失意中)が集まっていた。

石崎「舞城から聞いたよ。第三の事件が起こったそうだな。
   津村に怪我がなかったとは言え、その発生を防げなかったのは俺たちの落ち度だ。すまん」
氷川「………」
喋る石崎の目は真剣そのもので、しかし表情はどこか暗い。まるで何か思い詰めているようにも見えた。
そんな彼を乾が微妙な表情で見ている。

石崎「しかし焦っては犯人の思うつぼだ。地道に、小さなところから突き詰めていくしかないと、俺は思う」
氷川「………」
石崎「第三の事件の現場検証は後で行うとして、まずは皆から事件の状況を聞こうと思う。それで良いか?」
高田「…ああ、そうだね。じゃ、蘇部君からかな」
石崎「そうか。……蘇部、もしかしたらお前が犠牲になってたかもしれないんだよな。悪かった」
蘇部「そんな、石崎くんが謝らないでよ。
   僕は元気だし、津村くんだって別にショックで気絶してるわけじゃないんだよ。雑炊を食べて安心して…」
氷川「………」
石崎「いや、そもそも二人の監禁命令が先生から出たとき、もっと考えておくべきだった
   先が見通せないなんて、探偵の風上にも置けないな…」
蘇部「石崎くん…」
石崎「じゃあ、順を追って話してくれ」
氷川「失礼。ちょっとその前に…石崎さん」
今まで無表情で黙っていた氷川が片手を上げた。
148名無しのオプ:03/01/19 21:59
石崎「ん?何だ氷川…って、なにふるんら、いれれれれ」
何を思ったのか、氷川はいきなり石崎の頬を引っ張った。ぐにー、と皮膚が伸びる。

石崎「いれれ…はなせ!…痛ってえ…何するんだ氷川!俺のほっぺた触って楽しいのか!?」
氷川「楽しいわけないじゃないですか。……うん、戻りましたね」
頬を押さえる石崎を見て、氷川は無表情のまま頷く。

石崎「は?何が戻ったんだよ」
氷川「いや。シリアス過ぎて石崎さんが怖かったんで」
だからちょっとボリュームを下げてみました、とわけのわからないことを言う氷川。
氷川「さあ、それじゃ改めて本題に戻りましょうか」

乾(氷川…ちょっとわかりにくい突っ込みだったけど…石崎に慣れてきてるな)
149名無しのオプ:03/01/19 23:33
石崎・氷川コンビ良いねぇ
150名無しのオプ:03/01/19 23:51
津村だが、
「D この人、J君と同い年ぐらい?昭和四十六年生まれって。」
の座談会の言葉から1971年生まれだと判明。
1511/4:03/01/20 00:17
竹「うにー、御大ちゃんの体をふかないとねー。部室にタオルを取りに行って来るから続けててー」
西尾「あぁ、いってらっしゃい。遅くならないでねー」
積木「・・・・・・気をつけてね。」

森「そう言えば西尾君。竹君とはもうキスぐらいはしたのかな?(笑)」
生垣「Wow!やっぱり二人はそういう仲だったのか!」
西尾「森先輩、何をいきなり変な事言い出すんですか。僕と竹ちゃんは
そんな仲じゃないですよ。そもそも僕にはおきゃんで女子高生な彼女がいますし、
本命は剣術家のお姉さんですよ。戯言ですけど。」


竹「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

学園内に突如響き渡る悲鳴。
それとほぼ同時にドアが開かれる音と強い調子で駆け抜ける足音が
森たちの耳に飛び込んで来る。

森「目にも止まらぬ速さとは正にこの事ですね。いや、若いというのはいい。
これも戯言かな?(笑)」
古処「うむ、男一匹たるもの愛する人は守らねばな。」
清涼院「リューーーーーーーーーーーーーーーーーーーースイ!」
1522/4:03/01/20 00:18
西尾は焦っていた。
一歩一歩が酷くもどかしい。

なぜ、この足はもっと早く動かない?
なぜ、僕の体は言う事を聞かない?
なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ?
竹ちゃんはなぜもっと彼女に危害が加わって
まだかまだつかない無事か?動かない?もどかしい。
殺してバラシテ並べて晒してやる!

思考が乱れる。

見えた!部室だ!
竹ちゃん、無事でいてくれ!

扉を開けた西尾の目の前にあったものは・・・・・・
1533/4:03/01/20 00:18
眼前には串刺しになっているキャンバスや画材道具で埋まっていた。
そう、文字通り大量に埋まっている。

西尾「こ、これは・・・・・・?」
竹「うわー!なんてことだよ!誰だよ、こんなひどいことしたの!
あー、こんな物まで串刺しにしているっ!何考えてるのかわかんないよー!」

西尾「竹ちゃん!無事でよかった!」
竹「あ、いーちゃんー。うにー、全然無事じゃないよー。あうー、死んだ方がマシだよー」
西尾「(良かった・・・・・・僕はまた取り返しの付かない事をする所だった・・・・・・)」

安堵する西尾。と同時に幾重にも串刺しになっているキャンバスに
一つのメモ用紙が付着しているのを発見する。


「今年、1000の串刺しが作られる。誰にも邪魔することは出来ない。  串刺卿」
1544/4:03/01/20 00:19
視界がブラックアウトする。
まさか。まさか、御大が?
そんなはずは無い!御大がこんな事をするはずが・・・・・・
まさか。まさか、学園祭のリベンジ・・・・・・なのか?

×××「今年、1000の串刺しが作られる。誰にも邪魔することは出来ない。
串刺卿・・・・・・か。」



西尾「!その声はっ!」
清涼院「面白い。実に面白い。この挑戦状、そう清涼院流水に対する挑戦状しかと受け取った。」

そこには黒マントに身を包んだ御大がいた。
しかし、なんだこの違和感は?何かとてつもない勘違いを犯しているようなこの感覚。
なんだ?何がおかしい?

清涼院「行くぞ、西尾氏。共に竹嬢の仇を討とうではないか!」

そう言って身を翻す御大の姿を認める。
在りし日の。そう、僕がかつて憧れた御大の姿がそこにあった。

西尾「・・・・・・そうか。実に1スレぶりの。実に1スレ以上ぶりの御大のまともな
発言を聞いたからか。それは違和感を感じて当然だな、うん。
まぁ、戯言だけどね。」

僕は戯言をつむぎながら御大の後に続く。
尊敬する御大と共に目的を遂行する事に軽い興奮を覚えながら後に続く。
そう、竹ちゃんの仇を討つために。
155名無しのオプ:03/01/20 00:25
雪に包まれた山荘を更に覆いつくす、続発する事件と悪意の連鎖。
その騒動に紛れて北山は一人山荘を抜け出し、雪山を必死の形相で一心不乱に登り続けていた。

「僕は殺されやしない……殺されてたまるものか……」

古処隊を逃げ出してからというもの、豪雪と猛吹雪の中を浦賀に追い掛け回され、
ようやく平和な山荘に辿り着いたかと思ったのも束の間、連続して発生する「串刺し」事件。
そして級友たちに守られた安全なはずの山荘の中にも、浦賀は平然と現れ、自分に襲い掛かった。
もはや、ただでさえ脆弱な北山の神経は灼き切れる寸前であった。

「間違いない……あれは浦賀だった……いや、浦賀に決まってる……浦賀じゃなきゃおかしい……」

北山はうつろな表情で呟きながら、熱病に浮かされたかのように歩き続ける。

串刺し公ヴラガ。

その名前を脳裏に浮かべるたび、身の毛もよだつような恐怖感が蘇る。
間違いない、あいつは僕を殺そうとしていた。あいつは僕を食べるつもりだったんだ。
僕には判る。あれは間違いなく浦賀だった。あいつは何食わぬ顔で山荘に潜り込んでいるんだ。
そして僕たち全員を食べてしまうつもりなんだ。百舌のハヤニエのように串刺しにした上で。
156名無しのオプ:03/01/20 00:26
なのに、あいつらの呑気さときたらどうだ。
皆、僕の証言を信じようとしやしないし、あまつさえ冗談のタネにして笑いあう始末だ。
違う、あいつらは浦賀を判ってない。
あいつは本気だ。この雪で外界から隔離された密室で、僕たちを食べ尽くすつもりで現れたんだ。
山荘の奴らは信用ならない。あいつらが浦賀と組んで僕を食べようとしてないという保証はない。
いや、もしかしたら既に浦賀に食べられた後なのかも知れない。
じゃああいつらは誰だ。幽霊か。死体か。それとも、皆が浦賀なのか……

もう信用できるのは一人だけだ。そう、古処隊長だけだ……

思えば、厳しい登山に音を上げて、パーティーを逃げ出したのが悪夢の始まりだった。
あれからというもの、周囲の全てが悪意に満ち溢れている。
隊長を発見して、脱走について謝罪して共に山頂を目指せば、こんな悪夢は消えてなくなるはずだ。
そう、間違いなくきっと……

そのとき、北山の視界が灯りを捉えた。
吹雪に閉ざされた白い視界の中に、仄かに見える暖かな光。どうやら洞窟から漏れているらしい。

「古処隊長……」

誘蛾灯に引き寄せられる昆虫のように、よろよろと洞窟に近づく。
灯りに近づくにつれ、声高な話し声が耳に飛び込んでくる。

中にいた人間は――湯気を立てるコッヘルを手にした、新堂と中島だった。
157名無しのオプ:03/01/20 00:30
(*)このエピソードは>>51の3段落目と4段落目の間あたりに入ります。スマソ。


新堂「何だ北山。せっかく山荘に連れてったったのに、なんで戻ってきたんだ?」
中島「手伝いなら要らねえぞ。足手まといがいても邪魔なだけだからな」

今まさにコーヒーを飲もうとしていたところを救助済みのはずの闖入者に邪魔され、二人の表情はやや不快げだ。

北山「そ、それどころじゃないんだ!!」

北山は、山荘で起った事件のことを話した。
第一の事件のこと、第二の事件のこと、そして、「串刺し公ヴラガ」のこと……。

北山「……と、そういうわけなんだ」
新堂「あのな、北山。バカなこと言うのも大概にしとけよ」
中島「全く。何が串刺し公だよ。前世とか生まれ変わりとか、普段から下らねえ寝言ばかり言ってるから、
   そんな下らない冗談を本気で信じこんじまうんだよ」
北山「き、君たちまでそんなことを言うのか!! 僕は見たんだ!! この目で確かに!!」

新堂と中島は顔を見合わせ、やれやれといった表情で肩をすくめる。
158名無しのオプ:03/01/20 00:31
北山「な、何がおかしいんだ!!」
新堂「あのな、北山。さっきまで雪山でお前たちを追い掛け回しとったはずの浦賀が、何で山荘にいる?」
北山「そ、それは、きっと僕を追って……」
中島「つーか、さっきから吹雪に乗って、時たま狂ったような笑い声や雄叫びが聞こえてきてるんだよな」
新堂「これが浦賀の仕業じゃないんなら、誰の仕業なんだ? 狼男か? それとも雪女か?」
北山「で、でも、僕は確かにこの目で……」
新堂「大体、お前がさっき言った探偵先生方の言う通りだろうが。
   もし仮にお前を襲ったのが浦賀なら、お前がケガ一つなく無事なのが説明できん」
中島「ああ。犯人が浦賀なら今頃お前はあいつの腹の中だもんな。いや、もう消化されて糞になって出てるかもな」

そう言ってゲラゲラと笑う二人。
それを蒼ざめた表情で睨み付けていた北山だったが、不意にきびすを返すと洞窟から走り出た。

北山「あんたらなんか信用できるか。そうか。あんたらも浦賀の仲間なんだな
   僕は山頂に行って、古処隊長と合流するんだ。そうすれば全てが解決するんだ」
中島「お、おい、待てよ……」

血走った目で捨て台詞を残すと、中島の制止も聞かずに北山は、吹きすさぶ吹雪の中に飛び出していった。
159名無しのオプ:03/01/20 00:32
中島「ど、どうするよ……?」
新堂「……どうするも何も、あいつの選択だ。放っておくしかないだろ」
中島「でもよぉ、メフィスト学園の生徒の安全を守るのが俺たちの役目だろ?」
新堂「心配するほどのこっちゃねえよ。ここから頂上までなんてさほどの距離はないし、
   登るだけだから迷う心配も皆無だ。それに確か、頂上には石黒の奴が調査とやらで
   テント張ってるはずだ。何とかなるだろ」
中島「しかしなあ、あいつは古処を探してるみたいだったけど、時間からしてあいつはもう……」
新堂「ああ。もうとっくの昔に下山してるはずだ。ひょっとするともう、学園に着いてる頃かもな」
中島「だったらお前……」

それまでにやけ笑いを絶やさなかった新堂が、不意に真面目な表情になる。

新堂「あのな、中島。俺たちが強引に助けてやったとして、北山が納得すると思うか?」
中島「それは、その……」
新堂「今のあいつは強迫観念で正常じゃない。そんな人間のカウンセリングは俺たちの任じゃねえな。
   石黒の奴はああ見えて最年長だし、責任感も人一倍強い。その上医師の資格まで持ってる。
   俺たちは肉体労働に専念して、んな詰まんねえ厄介ごとはそれが適任な奴に押し付けとけばいいんだよ」
中島「そっか……しかし新堂、お前はお前で結構いろいろ考えてるんだな」
新堂「当たり前だ。俺はインテリヤクザだからな。お前みたいな脳みそまで筋肉の男と一緒にするな」
中島「酷えな、おい」

再びにやけた笑いを浮かべる新堂。不適な笑みを返す中島。

新堂「さて、もうしばらく休憩していくとするか。もし北山が遭難したなら、
   そんときは改めてきっちりと救助してやらなきゃいけないからな」
中島「そうだな……チッ、すっかりコーヒーが冷めちまってるぜ、畜生」
新堂「まったく、人騒がせな野郎だぜ」
中島「仕方ねえな。とりあえず黒田の行方でも考えるか……」
160名無しのオプ:03/01/20 09:16
「今年、1000の串刺しが作られる。誰にも邪魔することは出来ない。
  串刺卿」

なんか、コレやっちゃうと今までの雰囲気ぶちこわしのような気がする。
せっかくの本格テイストが・・・
161名無しのオプ:03/01/20 09:28
伏線もだいなしになりそう。
162名無しのオプ:03/01/20 10:01
別に串刺しを作らなきゃいけないというわけでもあるまい。
与えられた材料からいかに調理するかが腕のみせどろこだべ

それはそれとして
>>151
>>154
メール欄
163名無しのオプ:03/01/20 11:13
浅暮「大変だ。新しい事件が起こったらしいぞ」
全員「ええ?」
浅暮「それも今度は雪山の外だ。居残り組らしい。詳しくは、積木に聞いてくれ」

 「積木ボンバイエ」の後、竹の画材事件の報が彼らにもたらされた。

石崎「コタツ組でも事件が……これじゃまるでメタじゃないか。この事件は本格じゃなかったのか?」
高田「あの、ちょっといいかな」

 いぶかしげな顔で、高田が手を挙げた。

高田「その予告状の全文、もう一度教えてもらえないかな」
浅暮(積木)「ああ、いいぞ。『今年、1000の串刺しが作られる。誰にも邪魔することは出来ない。
  串刺卿』」
高田「……やっぱり」
氷川「何がやっぱりなんです?」
高田「探偵二人のお株を奪う訳ではないけど、この件に関しては僕の歴史知識が有用だったようだね」
石崎「何か解ったのか? あの脅迫状だけで」
高田「うん。この画材事件の犯人は、山荘の犯人とは同一人物ではありえない。そういうことだよ」 
164名無しのオプ:03/01/20 11:24
別にどんな展開も自由なんだから>>151-154を否定するのはお門違いだとは思うが、
内容はともかく、>>151>>154のメール欄みたいに、端から逃げを用意しとくのはいかがなものかと。
んなこと言うくらいならお前、最初から書き込むなよと。

そもそも、何でもありである以上、他の書き手への影響はそれなりに考慮してから書き込もう。
腕のみせどろこも何も、肝心の書き手のやる気を萎えさせちゃ元も子もない訳だから。
もちろんこれは、>>151-154のことを言ってるのではないです。あくまで一般論です。まあ戯言ですね。

―――――――――――――――――――――――――――――――
積木「・・・まあ戯言ですね、っと」
竹「あーっ、つみつみがいーちゃんの『戯言』をパクってる〜」
森「積木君もメジャになりたかったんですね。世の中売れてなんぼです(笑)」
積木「い、いや、僕は、別にパクるつもりなんかはなくて・・・」
西尾「ああ。いいですよ、別に。しょせんは戯言ですから」
165名無しのオプ:03/01/20 11:50
山荘は本格でオチ
こたつは高田の知識をもとに流水&いーちゃんが1000の串刺しを食い止め、
まとまりかけたところを積木がメタでどんでん、と期待してみる。
166名無しのオプ:03/01/20 11:56
>>165
先読みはやめよう。そのネタが使いづらくなる。

167名無しのオプ:03/01/20 16:01
高田「その予告状には、『串刺卿』と書いてあるね? 串刺し公ではなく」
石崎「そのくらい俺たちにも解るって。だから犯人が違う、なんて言うなよ」
氷川「いや、彼を串刺し公と呼んだのは僕たちです。本人が違う名前を名乗ったという可能性も」
高田「それはないよ。公と卿。この二つの言葉の違いについて、きちんと説明出来る人はいるかな?」
 返事はない。答えが、というより、高田の意図が解らないのだろう。
高田「日本の貴族社会では、公は大臣を指す言葉だ。菅原道真公とかね。卿は大納言・中納言・参議など。大臣の方が位が高い」



168名無しのオプ:03/01/20 16:02
日明「でも、串刺し公はルーマニアなんでしょ?」
高田「もちろん。しかし西洋では、公はプリンスもしくはデューク、爵位の最高位だ。対して卿はサーもしくはロード、せいぜい騎士クラス。違いは歴然だ。予告状を残すような自己顕示欲の強い犯人が、自分の爵位を下げて申告はしないよ。つまり」
 高田はそこで言葉を切った。
高田「この『串刺卿』は、自分が『串刺し公の追随者』でしかないことを、自ら宣言していることになるんだ」
氷川「確信的な便乗犯、ということですね」
高田「おそらく彼は、串刺し公の邪魔はしないだろう。石崎と氷川は、安心してこちらの事件に集中するといい。あちらは、コタツ組がなんとかしてくれるよ」
石崎「うむむ、理系の俺にはよくわからんが……、西尾、清涼院、頼んだぞ」
169名無しのオプ:03/01/20 17:06
>>168
おお、お見事なり
170名無しのオプ:03/01/20 18:16
完全に忘れ去られてるが>>99

石崎「じゃあ、邸内の事件に戻るとするか」

みんなが集まってる!
話し相手を求めて邸内をさまよっていた秋月は、漏れてくる声に目を輝かせた。
名探偵、皆を集めてさてといい。これほどミステリらしいシーンが、他にあるだろうか。途方に暮れたみんなの前に、僕は颯爽と現れる。そして素晴らしい推理を、みんなの前で披露するんだ!
 秋月がノブに手をかけようとした、その時。

氷川「しかし良かったですね。犯人はメタ能力の持ち主、なんてことにならなくて」
石崎「さしずめ清涼院か積木ってとこだな。まあ、そんな推理が成り立つんなら、探偵なんていらないけどな、ははっ」

その後秋月がどこに消えたのかは、誰も知らない。
171名無しのオプ:03/01/20 18:43
>>168
高田(というか職人さん)博識だな。素直に感心した。

昨日1月19日は殊能の誕生日だったんだな。知らんかった。
172名無しのオプ:03/01/20 20:07
霧舎は、高里の部屋の前にいた。

(そんなに高里が心配やったら、側にずっと置いておけや)
先程の舞城の言葉が、頭の中で何度もリフレインしていた。
こんな事件が起こっているのに、今まで自分は何をやっていたんだろう。
笠井先生、北山、津村と狙われて、この次に彼女が狙われない保証なんてどこにもないのに。
見張りにしたって、彼女と二人でやれば良かったのだ。

事件の解決は石崎と氷川に任せておけば良いと思う。自分は名探偵なんてガラじゃない。
けれど、彼女を守れるのは僕だけじゃないか?
(目が覚めたよ、舞城。好きな人なら、全力で守らなくちゃいけないよな)

深呼吸をして、ドアをノックする…前に、いきなりドアが開いた。額に衝撃。
高里「…あれ?ダーリンじゃない。こんな所で何してるの?」
霧舎「ハ、ハニー……」
額をさすりながら顔を上げると、そこにパジャマ姿の高里が立っていた。
その上に紺色のどてらを羽織っているが、それがさらに彼女の可愛らしさを引き立てている。(霧舎フィルター)

高里「丁度良かった。私もダーリンの所へ行こうと思ってたのよ」
その言葉に霧舎は表情を明るくした。
霧舎(そうか…ハニーも僕と同じ気持ちだったんだ!こんな事件が起こって怖くないはずないもんな)」
舞い上がる霧舎の目の前に、いきなり高里はノートパソコンを差し出した。
高里「これ見て欲しいの」
パソコンは旅行に彼女が持参したもので、ディスプレイが霧舎へ向けられている。
173名無しのオプ:03/01/20 20:08
霧舎「………えーと、僕の名前と…石崎、乾、氷川、北山…?あと矢印と数字…?」
覗き込んだディスプレイには、ここにいるメンバー数人の名前と、
名前の間に引かれた矢印、そして数字が描画されている。
霧舎「ハニー、何、これ?」
さっぱり意味がわからずに訊ねると、高里は少しだけむくれてみせた。かわいい…(霧舎フィルター)

高里「何これじゃないわ、ダーリン。石崎くんを巡る五角関係相関図に決まってるじゃない!」
霧舎「…………は?」
高里「この矢印はもちろん石崎くん中心で…この数字は私が見たところの、現在の有利度よ。
   数字が大きいほどリードしているわ」
霧舎「……………」
高里「今一番なのは氷川くんよ。探偵コンビなんて組んじゃって、一気にポイントアップね。
   ダーリンは、監視役に立候補してアピールしたけど…でもそのあとずっと地下にいたでしょ?
   だから差が開いちゃってると、私は睨んでるの」
霧舎「……………」
高里「この状況をダーリンに知らせて、もっと張り切って頑張ってもらおうと思って」
そう言って、彼女は首を傾げてにっこりと笑う。まだ乾ききっていない髪が、さらりと揺れた。

高里「だって今回の合宿、私はダーリンの為に参加したんだもの!これくらいのサポートはしなくっちゃ」
霧舎「………ありがとう、ハニー」

最後のセリフはかなりきたが、内容が内容だけに複雑な気持ちで笑みを浮かべる霧舎だった。
174名無しのオプ:03/01/20 20:14
>>173
がんがれ霧舎!!
175名無しのオプ:03/01/20 22:41
一方学園のコタツ組。

部室から帰ってきた竹は、顔をコタツの上に載せてぼんやりしていた。

生垣「あんまり落ち込むなよ、リトルレディ。せっかくの可愛い顔が台無しだぜ?」
竹「うに、別に落ち込んではないんだよ。ちょっとビックリはしたけどさ」
そう言いながらも竹は口を尖らせる。
竹「絵はまた描けば良いし、道具は買えばいいんだよ。
  確かにお気に入りのものもあったけど、基本的に完成品に執着はないんだ、僕様ちゃんは」
生垣「へえ?それにしてはさっきからご機嫌斜めのようだけどな?」
竹「うにー……」
森「西尾君が清涼院君と出ていったのが原因でしょう?カルタ大会も途中でしたしね(笑)」
積木「≪串刺し卿≫と向こうの≪串刺し公≫は別物のようだからな。しかもこっちは千の串刺しと来た。
   元々こっちはメンバーが少ないから、探偵役というと限られてしまう。仕方ない」
竹「わかってるよ、それくらい。ていうか、いーちゃんのことなら、僕様ちゃんわかってるんだよ」
でもーと言って竹はコタツの中の足をばたつかせる。

積木「今回は清涼院が何故か知らんがやる気になってるから、案外ぱっと終わるかもしれんぞ」
古処「うむ。男たるもの、一度足を踏み入れた場所は、例え山であらずとも制覇するべきだ。
   それが愛する者のためなら尚更なのである」
生垣「ま、終われば真っ先に君の所へ戻ってくるさ。だから笑って待ってなよ」
森「西尾君が帰ってくるまでカルタは保留にして…それまで福笑いでもしましょうか(笑)」

竹「…いいんちょ、それもやっぱり時期はずれだし、大体今時やらないんだよ」
そう言って彼女はようやく笑みを浮かべた。
176名無しのオプ:03/01/21 02:09
オレのアタマの中の生垣は、トレンチコートのまま、コタツに入ってる・・・
177名無しのオプ:03/01/21 02:26
このスレ、キチンとまとめて出版できんもんか…
最近の展開は2chの優良スレ(それはそれで凄いが)として
終わらせるのがもったいないくらいだ。
密室本おまけの座談会本よりこっちの方が欲しい。

出版するには2chの商業利用とか、各書き込みの著作権とか
色々解決しなければならない問題が山ほどあるが、成立の経緯も含めて
充分商売になるだけの話題性を獲得できるように思える。

ついでにイラストは竹絵で(w

…やっぱ無理か。
178名無しのオプ:03/01/21 03:08
>>176
夜中に大笑いしたじゃねーか
179名無しのオプ:03/01/21 04:28
新堂「それにしても中島、おまえ道着だけで寒くないのか?」
中島「ああ、寒くない」
新堂「大したもんだな。鉄の精神力ってやつか?」

新堂の軽口にも表情を変えない中島。そして一言、

中島「…チタンだ」
180名無しのオプ:03/01/21 09:50
>>176
わははははははははは。ホントだ。
181名無しのオプ:03/01/21 10:26
俺の中では、もちろんハンチング帽もかぶったままでこたつに入ってますが何か。
182名無しのオプ:03/01/21 11:49
今気付いたけど御大は今年で29なのか。
生活できてんのかなー(w
183名無しのオプ:03/01/21 13:12
(゚Д゚)<メヒーッ!!
184名無しのオプ:03/01/21 14:34
・・・・29?
あのなりで29?
歳を10〜30くらいごまかしてませんか?
185名無しのオプ:03/01/21 14:48
西尾「御大、これからどうしましょう?」
清涼院「まずは基本に立ち返り、動機面から攻めてみよう。
     西尾氏、今回の事件にどういった動機があると思うかね?」
西尾「えっとですね。ざっと思いつく限りですと、
1)竹ちゃんに恨みを持つ
2)今回の事件はカモフラージュ、次以降が本命である
3)単なる愉快犯
4)御大に恨みを持つ
5)美術部に恨みを持つ
の5つでしょうか?」

清涼院「うむ、模範的な回答だ。ただ一つ足りない。」
西尾「一つ足りない?」

清涼院「この状況は『私達のデビュー作』をなぞっているように見えないかね?
私の『密室卿』は言うに及ばず・・・・・・」
西尾「僕の『玖渚コンピューター破壊事件』ですね!」
清涼院「そう!西尾氏に恨みを持つ者という線も有り得る。その場合竹嬢にダメージを
     与えることは即西尾氏にダメージを与えることに繋がる!
     また、関係者は全て『あの部屋』にいたにも関わらず何故か竹嬢の
     作品が破壊されている!これはこの事件における重要なポイントだよ!」

西尾「え?でも御大、確かしょっちゅう山荘に出か・・・・・」
清涼院「誰にも行なう事の出来ない犯行!この点は重要だ!」
西尾「いや、ですから御大自身が・・・・・・」
清涼院「うむ!まずはこの点から攻めていこうか!」
186名無しのオプ:03/01/21 15:23
清涼院「いいかね、西尾氏。今回メタ及び超常現象は無しだ。全てを理論で持って解決しようではないか」
西尾「?何故です、御大?」
清涼院「山荘の氷川氏&石崎氏の本格コンビに対抗する為だよ。この辺でメタキャラのレッテルをぬぐう必要が我々にはある。」
西尾「はぁ、それは構いませんが。でもメタキャラは御大だけ・・・・・・」
清涼院「さて!私達のデビュー作になぞらえてるこの事件!まずは第一の謎、『犯行を行えた人物は誰か』から検討してみよう!」
西尾「いや、ですから僕はメタキャラでは・・・・・・」
清涼院「いいかね!最初に疑うべきは、私の『コズミック』よろしく竹嬢によるじさ・・・・・・」
西尾「うわぁぁぁぁぁぁぁ!それ以上言うと危険です、御大!」
清涼院「うむ、これ以上言っては『神』に消されてしまう・・・・・・か。不便なものだな、そうは思わないかい西尾氏?」
西尾「(そういう発言がメタキャラ以外の何者でもないと思うんですけど・・・・・・)」
清涼院「とりあえず竹嬢による(メール欄)の可能性は削除して良いだろう。彼女にメリットは一切無い。」
西尾「そうですね。」
187名無しのオプ:03/01/21 17:31
さすが御大。ギリギリのことをなさる(w
削除されても、それはそれで面白いのだが。
だって御大だから。
188名無しのオプ:03/01/21 17:42
>>184
19〜-1歳ってことか。
189名無しのオプ:03/01/21 18:07
石崎&氷川の推理パートを書いたのですが、
アップするのを待って見ようかな(笑)
清涼院&西尾面白そうだし。
190185=186:03/01/21 18:15
>>189
あげちゃってください。
とりあえずネタ考え中の段階なんで

|-゚) 。oO○(よかった、不評を買わなくて・・・・・・)
191名無しのオプ:03/01/21 18:53
>>190
うまいなあ。
192189:03/01/21 19:04
>>190
了解。では。


1931/3:03/01/21 19:07
蘇部「……というわけなんだ」
 事件の説明を終えた蘇部の顔に、いつもの無邪気さはなかった。
高田「その後舞城君に呼ばれて、僕と日明さんが駆けつけた。そこに落ちていた矢が、ほら、これだよ」
 ハンカチを広げ、高田は銀色に輝く矢を示して見せた。先端には矢尻が(ただし丸めてある)、反対側には四つに分かれた矢羽が付いている。
高田「落ちていた場所にも印をつけておいた。出来るだけの現場保存はさせてもらったよ」
石崎「サンキュー高田。助かった」
高田「いや、礼には及ばないよ。……しかし、案外軽い物なんだね」
氷川「あんまり重くては、空中を飛びませんからね」
 重さを量るように矢を弄びながら、高田が呟く。広間に戻って来た氷川が、白い布の包みを置いた。
氷川「しかしジュラルミン製ですから、強度は充分です。さて、問題のボウガンなんですが……石崎さん」
石崎「ああ」
 全員の前で、石崎が包みを開けた。
1942/3:03/01/21 19:10
 弦と引き金を外され、封印されたままの姿でボウガンはあった。
石崎「特に、変わった様子はないようだな」
氷川「ちなみに弦の方は石崎さんが、引き金の方は僕がポケットに入れてました。ボウガンを封印してからずっとです。犯人がこれを使用したという可能性は、捨てていいと思います」
石崎「じゃあ、一体……おい蘇部」
 うつむいていた蘇部が顔を上げる。
石崎「おまえ本当に、津村に矢が当たった所を見たのか?」
蘇部「ほんとに、って……」
殊能「まさか石崎君、蘇部君を……」
氷川「まあまあ二人とも、落ち着いてください」
 色をなした殊能と蘇部を、氷川が宥める。
氷川「犯人がこの矢でなく他の凶器を使用した可能性はないかってことですよ。そうですよね、石崎さん?」
1953/3:03/01/21 19:18
高田「それはないと思う」
 高田が首を振った。
高田「津村君の背中の傷は──といっても、ほんの小さな打撲だけどね──このボウガンの矢と一致した。これが当たったことは、間違いない」
蘇部「当たった所は見てないよ。高田君たちが来るまでは、気が動転してたし。でも、津村君が言ったんだ。やられた、ボウガンだ、って」
氷川「津村君はボウガンを見たんでしょうか? 飛んで来る矢だったんでしょうか? 衝撃をボウガンと思い込んだんでしょうか?」
石崎「できれば津村の証言が欲しいな。早く目が覚めてくれればいいんだが」
 さんざん探偵を罵った舞城だが、彼の雑炊のせいで捜査はより混乱しているのだった。
氷川「もしかしたら犯人は、ダーツのように矢を手で投げたのかも」
高田「そんなスピードでは、あの傷はつかないよ。ボウガンほどではないかも知れないけど」
石崎「ううむ、だとしたら……犯人は、どうやってボウガンの矢を撃ったんだ?」
196名無しのオプ:03/01/21 20:16
高田「まあ、あれこれ推論を交わすより、まず津村君に訊くのが先決だね。
   もしかしたら彼は、犯人の姿を見ているかもしれないし」
蘇部「でも津村くんは全然起きそうにないよ…本当に大丈夫なのかな…」
高田「そういうときは起こせば良いんだよ、蘇部君」
今までの神妙な表情を崩した代わりに、やけににこやかな笑みを浮かべ、
高田は広間に起きっぱなしになっていた薬草採取用リュックのもとへ行く。
しばらくの間リュックを探っていたが、目的のものを見つけたらしく、また戻ってきた。

高田「こういうときにうってつけの薬があるんだよ」
そう言って彼が見せたのは、採取した薬草ではなく、あらかじめリュックにあったらしい封付きの試験管だった。

石崎「何だそりゃ…毒々しい紫だな」
蘇部「綺麗な赤だねー、宝石みたいだ」
日明「緑ってことは、薬草を調合したものなのね?」
殊能「コバルトブルーですか、…でもそれを飲ませるんですか先輩」
浅暮「無色透明か。けっこうまともに薬らしい色だな」
氷川「……何とも形容しがたい色ですね。どどめ色というやつですか?」

それを見た者が一斉にそう言った。言い終わってから、皆が顔を見合わせる。

数秒の沈黙の後、何かに気づいたらしい蘇部が顔の位置を色々変えて
蘇部「あ、見る角度で色が変わるんだね。ってことは虹色だ」
などと嬉しそうに笑ったが、その他の者は黙ったまま、同情の眼差しでソファに寝かされている津村を見た。

高田「いや、薬草採取の途中で乾君が雪と寒さに参ったときに、と思って持参したんだけど、持ってきて正解だったね」
乾「俺に飲ませるつもりだったのかよ!」
197居残り組:03/01/21 21:13
生垣「ヘイ! リュースイ&イシン、急いで来てくれ」
西尾「何かあったんですか?」
生垣「イエス」

玄関に居残り組全員が集まっていた。ドアが開けられ寒風が室内に吹き込んでいる。
玄関先の雪の上に男が倒れていた。古処が男を抱きかかえ大声で呼びかけている。
古処「黒田! 黒田!しっかりしろ」
男は黒田であった。精根尽き果てたようなやつれ果てた姿だ。
森「とにかく中へ運びましょう」
黒田「…うう、じゅうく……しん……」
西尾「じゅうく!」
清涼院「…しん」
古処「む、気がついたか? 黒田」
生垣「冷え切っているな。暖炉で暖めてやろう」
森「残念ながら学園に暖炉はないので、とりあえずお風呂にいれてあげてください」
古処達の手により黒田は室内に運ばれていくのを清涼院と西尾は無言で見送る。
198居残り組:03/01/21 21:16
外には清涼院と西尾の他に森が残っていた。
森はタバコに火をつけ一息吹かせてから、清涼院と西尾に向き直る。
森「さて」
眼鏡の奥の瞳が鋭い光を放つ。
森「黒田君のうわごと、森は聞き逃していませんよ。じゅうく、しん、とね」
西尾「じゅうく……九十九十九ですか」
清涼院「そして、シン。西尾維新だと?」
清涼院は不敵な笑みを浮かべた。十九というのは清涼院の著作の超絶探偵の名である。
森「さてね。森にはそこまでわかりません。ですが…」
森が目を向けた先に黒田のかぶっていたらしいニット帽が落ちていた。
ニット帽は細長い何かで串刺しにされている。
清涼院「スキーのストックだ」
西尾「串刺しか…」
森「君達は探偵役だ。探偵=犯人(串刺卿)だなんて展開は勘弁してくださいね」
森はそう言い残し戻っていった。
199名無しのオプ:03/01/21 21:31
(笑)のついてない森は怖いなあ。
さすが首席。
200名無しのオプ:03/01/21 21:38
>>197-198
まさか……!(以下自主規制)
201名無しのオプ:03/01/21 21:46
>197
御大のときはお湯かけられたのに
クロケンにはお風呂とは…(w
202名無しのオプ:03/01/21 22:07
黒田「行かなきゃ……どうしても。」
古処「黒田、やめとけ。そのカラダでは無理だ。」
黒田「離してくれ!今すぐに行かなきゃならない理由があるんだ。」
古処「理由を話せ。この男一匹、悪いようにはしない。」
黒田「オーディションが……」
古処「どうした?なんのことだ?詳しく話せ。」
黒田「はっ!ところで……今日は何日ですか?」
古処「ん?今日か。21日だが。それがどうかしたか?」
黒田「そ、そんな……」(バタン!)
古処「おーい、誰か来てくれ!黒田が気絶した!」

203名無しのオプ:03/01/21 22:14
石崎「さてと、じゃあ早速だが津村、事件のことを思い出してくれ………ていうか大丈夫か?」
津村「ああ、大丈夫大丈夫…ちょっとクラクラするけど…倒れた拍子に頭打ったかな」
氷川「………」
本当に薬なのか、それ以前に体内に入れて大丈夫なのかすら怪しい液体のお陰で、津村は目を覚ました。
飲ませた瞬間に鼻と口と耳から煙が吹き出したのだが、本人には言わないでおこう。

石崎「単刀直入に訊くぞ。お前、犯人を見たか?」
津村「……いや、見なかった。撃たれた瞬間に顔を見ようと思ったんだけど、廊下の角でもう逃げた後だった」
氷川「廊下の角から撃ってきた、というのはわかったんですか?」
津村「ああ、その方向から矢が飛んできたのは分かったから。動体視力には自信があるよ」
氷川「飛んできたものが本当に矢だという自信は?」
津村「…え?」
虚を突く質問だったのだろう、津村は一瞬言葉を詰まらせる。

津村「いや…そう言われると。でも背中に刺さったっていうのが感覚で分かったし…」
氷川「つまり、“何か”が“廊下の角”から飛んできて、それが背中に当たったのは確実だが、
   それがボウガンから放たれた矢である、という確証はないんですね?」
津村「……うーん……」
氷川「もちろん、それを撃ったであろう犯人の姿も影も見ていない」
津村「そういうことになるね…悪い、俺がちゃんと見ていればすぐ解決したかもしれないのに」
情けない顔になって、津村は俯く。
石崎「いや、咄嗟の判断で蘇部を庇ったんだ。それで良いさ」
石崎は明るい調子で津村に言う。

石崎「それに、いくら動体視力が良くても、タイミングが良くても、犯人は見えなかったのかもしれないしな」
高田「と、言うと?」
石崎「……“何か”が津村または蘇部へ向けて撃たれた時、犯人はそこにいなかった」
可能性の一つだけどな、と石崎は付け加えた。
204名無しのオプ:03/01/21 23:02
氷川「考えるべき疑問はまだ色々ありますけど…ここで、今までの事件での、各人のアリバイを整理しましょうか」
手帳を取り出して、氷川はすらすらとペンを走らせた。
氷川「最初の事件の時に笠井先生が
  『二人一緒にいたと言う者達も片方が庇っている可能性があるからアリバイは成立しない』なんて言いましたけど…
  でもそうしたらキリがないので、ここではそういう人達はアリバイ有り、としますね」
石崎「トリックを弄すればアリバイなんて意味がなくなるかもしれないが、それもとりあえず置いておこう。
   素直に、各人の証言を信じる、と…」
205名無しのオプ:03/01/21 23:04
※「・」が間にある人物同士は事件発生当時に一緒にいたことを表す。

<第一の事件> 被害者:笠井
○:殊能・蘇部、霧舎・高里、石崎・氷川・北山・古泉・浅暮(以上三組はそれぞれ邸内)
  高田・乾(山へ薬草採取へ)、新堂・中島(山へ捜索へ)
△;佐藤・舞城(その少し前まで外で会話)
×:津村、日明、秋月
※ただしボウガンに糸での細工の跡があり、遠隔操作または時限発射の可能性がある。

<第二の事件> 被害者:北山
○:蘇部・津村・霧舎(地下ワインセラー)、石崎・氷川(邸内)
  新堂・中島(山で捜索中)
△:高田・乾・殊能・浅暮・日明・古泉(広間で会話。しかしずっと一緒だったわけではない)
×:舞城(第一発見者)、佐藤、秋月、高里(自室でシャワー)、笠井

<第三の事件> 被害者:津村
○:蘇部・殊能・舞城(厳密に言えば、殊能・舞城は事件直後へ現場に現れる)
  石崎・氷川・佐藤・高田・乾・日明・高里・霧舎(佐藤の悲鳴騒ぎ)
  新堂・中島(山で捜索中)、浅暮・古泉(広間)
×:北山、秋月、笠井

氷川「こんな所ですか」
石崎「うーん…第三の事件でアリバイのないのは三人だけか。その内二人は前の事件の被害者か」
氷川「……というか、三件の事件で共通してアリバイないのって秋月君だけじゃないですか?」
石崎「そうなるなあ……えーと、そういや秋月は?」

どうする、どうなる、秋月!?
206205:03/01/21 23:10
>>24-32とログを読み返して正しくまとめたつもりだが、
もし違っている箇所があればツッコミヨロスク。

古処と黒田と石黒は一度も山荘へ来ていないので除外した。
あ、でも浦賀入れるの忘れてた。どれも×になるが。
(北山は浦賀疑ってるんだったな…)

連続カキコスマソ。
207名無しのオプ:03/01/22 00:05
>>195
津村の背中に当たったのは落ちていた矢に間違いないって高田が言ってますね。
読み返して気づきました。すいません。
208名無しのオプ:03/01/22 00:07
上の207=203です。重ね重ね申し訳ない。
209名無しのオプ:03/01/22 11:13
>>202
くろけんはマジにモー娘オーディションを
見てなかったらしい。
雪山で遭難してたんか(w
210名無しのオプ:03/01/22 12:15
その頃秋月は、吹雪の中を一人彷徨っていた。

秋月「犯人役も探偵役も失敗した……あと目立つために残された役どころは……そう、被害者役だ!!」

ぶつぶつと独り言を言いながら、凍てつくような猛吹雪の中を憑かれたようにひた歩く秋月。
普段着のままの身体に容赦なく寒気は染み込み、着実に熱が奪われていくのが判る。

秋月「今頃みんな、大騒ぎだろうな……なんせこの僕が山荘から消え失せてるんだもの……
   密室情況からの人間消失かあ……うふふ、まさに王道の展開だね……」

既に山荘も雪山も密室には程遠い状態なのだが、そんなことに頓着する秋月ではない。
そんなことだからいつまで経っても通行人A役から卒業できないのだが、それはさておき。

秋月「後は、浦賀君に食べられるだけかあ……これなら流石に目立てるよね……くすくすくす……」

山荘に来てからというもの、秋月はひたすら目立ちたいが一心でいろいろなことをやってきたものの、
それらの試みはことごとく無視され、事件は秋月を完全に放置する格好で進行していった。

今まで同じように目立たなかった連中のキャラがどんどん立っていく中、一人取り残されてゆく焦燥感。
もはや目立つためには手段を選んでられない。そんな危機感が秋月から正常な判断力を奪っていた。
211名無しのオプ:03/01/22 12:17
秋月「あれ……」

秋月の視界が霞み、二三度空転する。
と同時に強い立ち眩みに襲われ、秋月は糸の切れた操り人形のように雪の中に倒れこんだ。

秋月「ダメだよ……普通に凍死したんじゃあ、全然目立てないじゃないか……」

全身の力を振り絞って起き上がろうとするが、もはや身体は言うことを聞いてくれない。
見渡す限りの白一色の中で、辛うじて精一杯の自己主張を行っている秋月の身体。
その上に容赦なく雪は降り積もり、秋月の存在を白い世界に取り込んでいく。

学園祭では自分だけが清涼院から無視され、山荘では石崎と氷川に相手にさえしてもらえなかった。
このまま自分は、無差別殺人鬼であるはずの浦賀にまで無視されてしまうのだろうか。
それだけはイヤだ。地味な僕にだって、それくらいの見せ場があってもいいはずだ。

緩慢に、しかし確実に失われていく体温。
もはや雪原に埋もれつつある身体の中で、雪に覆われていない部分は僅かでしかないだろう。
薄れゆく意識の中、最後に秋月は、何やら叫び声と共に人の駆け寄る気配をおぼろげに感じた。



……良かった……浦賀君は、僕を、無視したりしないみたいだね……
212名無しのオプ:03/01/22 12:18
同時刻。

彼は飢えていた。

山荘に行きさえすれば新鮮な「肉」がふんだんに用意されているとはいえ、
この飢餓状態では満足に「作業」ができるかどうかもさだかではない。
「作業」に取り掛かる前に、腹ごしらえが必要だ。

しかし確かにあのとき山頂で「獲物」を捕らえたはずなのに、何故俺はこんなに空腹なんだろうか。
ふといぶかしさを感じるが、すぐにそんな疑念は消え失せる。そう、たぶんこの辺だ。

吹雪を切り裂くかのように疾走していた身体を停止させ、全身の感覚を鋭敏にさせる。
間違いなくこの場所で「非常食」にありつけるはずだ。

その予感に根拠などない。しかし彼は、そのことを何故か確信していた。
見渡す限り白色以外の色彩が存在しない世界に視線を彷徨わせ、ゆっくりと確認していく。
そして、彼の極限にまで研ぎ澄まされた視覚は、普通の人間なら気付かないであろう僅かな違和感の存在を探知した。
213名無しのオプ:03/01/22 12:20
「ビンゴぉ……」

思わず声が漏れる。
彼はニタリと頬をゆがめながら、「違和感」の元へと近づいていく。

その「違和感」の正体は……こんもりと盛り上がった雪の中から僅かに露出した、黒い髪の毛だった。

彼は雪に埋まった人間の身体を掘り起こす。
その完全に冷え切った肢体はいかにも不味そうだが、まあ栄養という点では申し分ないだろう。

彼は微動だにしないソレを雪原の上に投げ出し、到底雪山に相応しいとは思えない衣服を剥いでいった。
続いて解体作業にに取り掛かる。肉切り包丁を器用に操りながら、鼻歌交じりに作業は進む。
いくつかの肉片に切り分けられていく、今や単なる肉塊と化したクラスメイトの姿。






そして彼は、食事を開始した。
214名無しのオプ:03/01/22 14:10
しかし、ここにきてあちこちで盛り上がってきたねえ。
いよいよクライマックスが近づいてるのか。
215名無しのオプ:03/01/22 16:32
殊能三十九歳かあ……。と言うことは……こんな感じか?

蘇部「殊能君、三十九歳の誕生日おめでとう!」
殊能「ありがとう、蘇部君。蘇部君は今年で四十二歳だよね」
蘇部「えへへ、誕生日にはおっきなケーキを作ってほしいなー」
殊能「全く、しょうがないなあ、蘇部君は。いいよ。作ってあげるよ」
蘇部「わーい、やったあ」

……恐ろしい会話だな。まあこのスレでは年齢はある意味タブーですからね。

あ、そう言えば学園のロゴが出来ましたね。
2161/2:03/01/22 16:33
清涼院「いや、流石は委員長。ここぞという時の迫力は凄いな。
     それはさておき、竹嬢の事件の整理を続けよう。」
西尾「あれ?黒田先輩の『ジュウクとシンの謎』は検討しなくてもいいんですか?」

僕は御大の不敵な表情に違和感を覚える。

清涼院「ん?あぁ、あれは謎でもなんでも無い。・・・・・・そうか、西尾氏は黒田氏の
     趣味を知らないのか。それならば分らなくても仕方が無い。」
西尾「黒田先輩の趣味・・・・・・ですか?」
清涼院「まぁ、それは黒田氏本人の名誉の為に伏せておこう。
     『あれ』は単なるうわ言・戯言の類だよ。」

流石御大。どうやらメタキャラの本領を発揮して黒田先輩の隠された趣味を知っているらしい。
しかし、『ジュウク』と『シン』が関わる趣味って何なんだろう?
まぁ、本筋に関係無いらしいしどうでもいいか。

清涼院「あの時、我々には全員アリバイがあった。これがまず第一の境界条件」
西尾「でもそれですと犯人がいない事になってしまいます。
    それともまさか、山荘組が犯人だと・・・・・」
清涼院「いや、その可能性は無いとは言いきれないがかなり低い。」
西尾「どういう事です?ここには僕等しかいないじゃないですか!」
清涼院「それは思い込みだよ。西尾氏。メフィスト学園の生徒は確かに僕達だけだ。
     だが、メフィスト学園には僕達だけが在籍しているわけではない。」

そう言って僕を試すかのような表情を向ける御大。
そうか、確かにその通りだ。僕は勘違いをしていた。
2172/2:03/01/22 16:34
清涼院「気付いたようだね、西尾氏。」
西尾「えぇ」

僕は確信を持った笑みを浮かべながら力強くうなずく。

西尾「つまり御大がメタキャラの本領を発揮して美術部を襲ったわけですね!
   罰ゲームの恨みを晴らす為に!」
清涼院「違う!どこをどうすればそんな結論に達するんだ!」

あ、本気で怒ってる。

西尾「冗談ですよ、冗談。僕の冗談はわかりにくいってよく言われるんです。
    なんてったって戯言交じりですからね。まぁ、戯言なんですけど。」

218名無しのオプ:03/01/22 16:50
石崎「俺の冗談はオヤジ臭いってよく言われるんだ。わはは」
森「森の冗談は嫌味ったらしいってよく言われるんです(にこにこ)」
竹「僕様ちゃんの冗談は萌え萌えだってよく言われるんだよ」

などのバリエーションが考えられます。
219名無しのオプ:03/01/22 17:07
高田が白目をむいた津村を抱き起こし、嬉しそうに薬を飲ませている。
高里「きゃあっ、新しいカップリングね!」
ヤオイフィルター起動中の高里は、もっと近くで見ようとして舞城にぶつかった。
高里「あっ、ごめんなさい」
舞城「ふらふらしてんなや。おらよ、霧舎」
舞城はよろめいた高里を一瞬抱きとめて、霧舎の方に無造作に押しやった。
霧舎「大丈夫かい、ハニー(舞城グッジョブ! 気が利くぜ)」
高里「え、ええ……」
おや、と霧舎は首を傾げた。なぜかぼんやりとしている。
紺色のどてらの端をつかんで目を泳がす姿は、まるで恥らっているかのよう。
そういえば……舞城が発言したり誰かが舞城を呼ぶたびに、
ハニーは複雑な表情を見せ、落ち着かない様子だった気がする。
いったいハニーと舞城の間に何が……?
舞城は僕らの仲を応援してくれているんじゃなかったのか……?
霧舎はどす黒い不安が胸の中に沸き出てくるのを止めることができなかった。
220名無しのオプ:03/01/22 17:09
>219
あ、書き忘れた。196と203の間の出来事です。
221名無しのオプ:03/01/22 18:43
ところで竹嬢ってフツーにメフィスト学園に混じってるな。
友キャラのおかげか・・・。
222名無しのオプ:03/01/22 19:01
竹「うにー。完全にすることがなくなったねー」
森「それは君の勘違いです。森はすることが尽きるという経験はありません(笑)」
生垣「まあまあいいじゃないか。さっきのカードゲームのかわりに何かしようぜ」
古処「うむ。この男一匹、その案に賛成である」
積木「カードゲームっておまえ・・・」

そんなこんなで居残り組はふたたびマターリとした時を過ごすことになった。
山荘で繰り広げられる一連の事件、そして美術室の新たな事件に、生徒達がその灰色の脳細胞をフル回転させている中、そこだけには特異なムードが流れているのであった。

竹「マジカルミステリ!ミステリといったら孤島っ〜」
積木「孤島といえば、クローズドサークル」
古処「クローズドサークルと言うならば、フーダニットである」
生垣「ちょ、ちょとまて!Mr,古処、あなたの発音にはやや問題がある。正確には、whod―・・・」
竹 「うにー。たろちゃん許してあげてよー」
森 「大人気ないですよ(笑)」
生垣「そ、そうだな。sorry!Mr,古処。」

にこやかに笑う彼ら。楽しそうな彼ら。
しかし・・・この数分後に起こる出来事を、誰が想像し得ただろうか?
もちろん、誰も知ることはできない。
急展開は、いつでも突然やってくるのである。
223名無しのオプ:03/01/22 19:01
古処「うむ。すまない。この男一匹、英語力は未熟であった」
積木「ははは。じゃあ、続けよう」
生垣「OK!whodunitといえばtrick」
森 「トリックといえば、謎解きでしょうか(笑)」
竹 「うにー。謎解きといったら、真相っ〜」
積木「真相といえば、“ピーーーーーーーーーーーーー”」
 

全員「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



しばらく通信を休憩していた積木のメタ神通力が臨界点まで達した結果だろうか?
それとも、メフィスト学園らしからぬこの場の空気が、積木の能力を最大限に引き出したのであろうか?
そんなことは、誰にも分からない。
事実はひとつ。

彼らは、真相を、知った。
224名無しのオプ:03/01/22 19:18
>223
>彼らは、真相を、知った。
それは、山荘にいるメンバー以外の全員だってことだよな?
そうじゃないと、誘導になると思うんだが。
225名無しのオプ:03/01/22 19:39
彼らって、要するに森・古処・生垣・竹ってことだろ?

>>217
お、御大が突っ込み側にまわっている…!(驚愕)
>>219
すまん、読んでて普通ににやけてしまった。
たまにはこういうのも良いな。霧舎がんばれ(笑
226名無しのオプ:03/01/22 19:41
>>224
マジカルバナナに参加してる人間だけだべ?
227名無しのオプ:03/01/22 19:56
「石川ってウンコするの?」
 誰かがそう訪ねた。
「しないよ」
 僕はそう答えた。
「好きなんだね、モー娘。」
「ハロプロ全般と言ってよ」
「そのくせに、新メンバー決定の瞬間を見なかったよね」
「…………」
「この偽善者! 偽善者!」

「俺はハロプロが大好きなんだー!!」
 僕は叫んだ。
「あれ? ここは――どこ?」
 周りを見渡すと、自分がベッドに寝かされるある一室に寝かされてるのが判った。
 状況を把握できなかったので、しばらくの間、思考を巡らす。
「そうだ、アイツのせいだ。アイツが包丁を振り回して追いかけなかったから……」
 テレビを見れなかった黒田の怒りが一瞬にして頂点に達した。 
 衝動に身を任せ、たたきつけるようにドアの開く。
 すると、そこはコタツのある部屋だった。
 そこにいる五人が五人とも目を丸くしていた。
228名無しのオプ:03/01/22 19:58
生垣「OH、黒田くんが目覚めたようだネ」
森「そうだ。メフィスト学園の新メンバの生垣を紹介――」
黒田「新メンバーの話はしないでくれ!」
積木「君が誰に怒っているのか、僕は《全部》判っているけど、《sage》ずに当たり散らすのはいただけないね」
古処「みんな、君のことを心配していたんだよ」
黒田「……そうだね。ごめんなさい、森さん。今度、きしめんをおごります」
森「うん。おごってくれるなら、許してあげるよ」
竹「これが『森の日記』ってやつなんだねー」
生垣「殺伐としているのは、別荘の中だけで十分だYO」
森「そうそう、黒田くんは事件について何か知っているのかい? なにかつぶやいていたけど」
黒田「へ? なにか事件があったんですか?」
積木「事件のまとめなら僕にまかせてくれ」

積木「かくかくじかじか……というわけなんだ」
黒田「うーん。そんな事件が起こっていたなんて」
森「なにか判りましたか?」
黒田「ええ、なんとか」
竹「本当!?」
黒田「偶然かは知らないけど、どうやら僕が今回の事件の探偵役に相応しいみたいです。でも――」
森「でも?」
黒田「事件の構造だけで、犯人の名前までは判っていませんが」
229名無しのオプ:03/01/22 20:05
まずは、《串刺し卿》と《串刺し公》の意味から考えてみましょう。
『なぜ、わざわざ二つの名称を分けて使ったのか』
僕は《確信的な便乗犯》ではなく、《犯人が二人いると誤解させるために》やったと考えています。
つまり、犯人は一人だと。しかし、実際、雪山とコタツ組を移動を考えると、犯人はメタを使える人――
清涼院さん・積木さん、忘れている人はいるかもしれませんが、殊能さんだってそうです。
ただ、それでは物語として破綻をしてしまう。僕はこの案をとりません。

竹「でもでも、メタに頼らないと、移動できないよー」
森「回りくどい説明は、ミステリィの常套手段なので黙って聞いていましょう(笑)」

次に、『なぜ《串刺し》なのか』考えてみます。
ミステリですからダブルミーニングがあると仮定しましょう。
《串刺し》と聞いてなにを思い出すか。ネットをやっている人ならすぐに思いつきますね。
これは《プロクシ》です。仲介サーバーを通している、とだけ憶えてください。

積木「仲介というと、まるで僕が犯人みたいじゃないか」

そうです。
仲介者というのは誰なのかというと、積木さんです。
しかし、《プロクシ》――仲介者を使って犯罪が起こっても、仲介者は罪に問われない。
つまり、積木さんには罪はありません。
さて、この仲介者を使って犯人はなにをやったのか。
これは、モーニング娘。の新メンバー発表が教えてくれました。
230名無しのオプ:03/01/22 20:12
>>227
すまない、無粋を承知で突っ込ませてもらうが
>>223との整合性は取れるですか?
231名無しのオプ:03/01/22 20:13
黒田「問題です。僕が新メンバーの発表が見たいと思ってから何日が過ぎたでしょうか」
森「つまり、こういうことかな。コタツ組と雪山組とでは流れている時間が違う」
黒田「正確には、雪山組はもう終わっている事件なのです」
積木「となると、僕がリアルタイムで教えていたのは勘違いだったと」
黒田「はい。だから積木さんは犯人ではありませんが、誤読させる一因を秘めているのは確かです」
竹「だから、真相がピーーーーーー!というのを知っていたのか」
黒田「だから、僕にふさわしい事件だと」


>>230
統合性は取れているのかなー。
232名無しのオプ:03/01/22 21:22
この流れでこのまま真相へ一直線なのか?
だとすると、山荘組の話は今書き込まない方が良いのか。

>>231の続きに期待してみる。
233名無しのオプ:03/01/22 21:38
整合性云々よりも
山荘組の話の真相解明編(?)を居残り組がしてしまったら
しらけない?

しかも「時間差」なんてことを持ち出したら。
234名無しのオプ:03/01/22 21:39
黒田「叙述的な構造になっていることだけで、犯人がわかっていません。僕の能力が足りないばかりに……」
竹「僕様ちゃんたちは犯人が誰かわかっているよー」
黒田「へ?」
古処「待てば海路の日和あり。すでに終わった事件であるのだから、帰ってきた人を捕まえて聞けば終わる」
森「ということは、森たちが考えることはもうありませんね。またコタツでぬくぬくしていましょうか」
生垣「OH、でも雪山の真相がばれているのに、こっちで犯罪を犯すというのはわけがわかりませんネ」
森「それがミステリィなんですよ(笑)」
235名無しのオプ:03/01/22 21:57
積木である。
まず、結末だけを言っておこう。
山荘の事件が解決したあと、彼らはスキーを楽しんだ。
そのとき、犯人だけ学園に戻り、居残り組の事件を起こした。
つまり、居残り組の事件は「事件であって事件ではない」というわけだ。
簡単な叙述トリックといっていいだろう。
それに関しては「私」が犯人といってもよい。

ただ、まだ山荘の真相は記されていない。
やはり、謎を解くのは当事者がやるべきだろう。
236名無しのオプ:03/01/22 22:12
>235
ん?ということは……
学園で起こった事件のほうは謎解きの必要がないと?

御大&い〜ちゃんのはただのヘンなお芝居ってことか。
237名無しのオプ:03/01/22 22:46
色んなところで辻褄があってないし。
折角の流れが壊れちゃったなぁ……もったいない。
238名無しのオプ:03/01/22 22:51
>237
執筆中のネタがいくつか使えなくなりました……
239名無しのオプ:03/01/22 22:57
>235
つまり、山荘組の話はまたこれまで通り続けていいってことだよね?じゃ書き込みます。

場面は再び山荘へ戻る。

石崎「…秋月がいない?」
氷川「ええ。自室にもどこにも、山荘の中にはいません。
   それと、ついでに北山君の様子を見ようと思って部屋を覗いたんですが…彼もいなくなっていました」
三件の事件にアリバイが無くストレートに怪しかった秋月は、既に山荘から姿を消していた。

高里「まさか本当に秋月くんが犯人で、それで逃げちゃった、とか?」
氷川「それは無さそうですよ。彼の部屋にはジャケットも手袋も、スキーウェアすらも置き去りにされていた。
   つまり、屋内に居たときの格好のままで出たことになる。犯人ならそんな格好で逃げないでしょう」
日明「疑心暗鬼になってここから逃げだしたとも考えられるんじゃない?」

舞城「北山もおらんようになったんやな。…クソ、無理にでも広間に引きずって置いとけば良かったか」
第二の事件の後、怯える北山を看ていたのは舞城だった。彼は苦虫を噛みつぶしたような顔になる。
氷川「それが…北山君の場合は、きちんと雪山装備をして出ていってるようなんです。
   どうも二人は別々にここを出ていったような印象を受ける。理由が全く別物のような…」
何かを考えるように氷川は空中を睨む。
霧舎「…どうするんだよ。外は浦賀がいるんだろ?それにこの吹雪じゃ普通に歩いてても危ないじゃないか」
高田「一応、新堂君と中島君が山へ入っているけど…必ず出会うとは限らないな」
舞城「特に秋月。部屋着で出てったやと?阿呆かあいつは」
苛々したように呟きながら、舞城は二階へ上がろうとする。
240名無しのオプ:03/01/22 22:59
石崎「おい舞城、どこ行くんだ」
舞城「あん?阿呆二人を捜しに行くに決まっとるやろうが。雪山装備が部屋にあるさけな、取りに行くんじゃ。
   ああ、別におめえらは来んでもええぞ。大人数だと逆に危ない」
高田「危険だよ、舞城君。さっき霧舎君も言ったように、この吹雪だし浦賀君もうろついている。
   いや、今の浦賀君が危険な状態だとは断言出来ないけど…」
舞城「少なくとも、北山から目を離したのは俺の責任。ほやから、そのケジメをつけるだけや」
言って、石崎と氷川に目をやってにやりと笑う。
舞城「何もせんで文句ばっか言うとるアホとは思われたくないんでな」
対して石崎も笑って肩をすくめてみせる。今度は、ゴキッという音はしなかった。

石崎「ああ、分かった。だが無理するなよ」
舞城「豪雪地帯福井をなめんなや。そっちはその間に事件について考えとれ」

佐藤「待ってくれ。僕も行く」

階段の上から声がした。皆がそちらを向くと、佐藤が立っていた。外へ出る格好をしている。
石崎「どうしたんだ。鬼気迫るような顔じゃないか。さっきの騒ぎといい…お前何かあったのか?」
佐藤「…………」
石崎の問いには答えずに、佐藤は舞城を見る。何かを決意したような表情に見えた。
佐藤「外には浦賀先輩がいるんだろ。だったら、僕も行く」
舞城「……へえ。ま、ええわ。用意してくるから玄関で待っとれや」
そう言って、舞城は階段を上がって佐藤の横を通りすぎると、自室へ向かっていった。
241名無しのオプ:03/01/22 23:09
そういや殊能は何やってるんだ?
242名無しのオプ:03/01/22 23:11
なんか>>233>>237みたいに所々に入る野次がウザイ。
243名無しのオプ:03/01/22 23:16
>242
そういう書き方したら荒れるよ。

前に誰かが書いてように「話の展開はなんでもあり」なら
違和感持った人が感想述べるのも自由でしょ。


244名無しのオプ:03/01/22 23:17
いや、てゆーか御大がしょっちゅう雪山に行ってたのはどうなんの?
245名無しのオプ:03/01/22 23:21
244> 「御大だから」でカタがつくのでは。
246名無しのオプ:03/01/22 23:28
>244
御大は話の本筋に無関係でしょ?たぶん。
247244:03/01/22 23:32
>>245
そーいやそーだったな
248名無しのオプ:03/01/22 23:40
御大は時空を超える……
249名無しのオプ:03/01/22 23:49
気に入らないなら、無理やり方向転換すればいいと思う罠。
ネタが潰れた経験なんて、山ほどあるぞ、といっておく。
しかし、ここいらで、収拾付けないと終わらない気がしないでもない。
昔のバトロワのように。

とにかく、時空ネタを変更させるネタは書いたんで、希望者がいればやるぞ。
250名無しのオプ:03/01/22 23:56
>249
そうだな。ここらへんから終結へ向かっていかないと雪が溶けてしまうかも。
とりあえず、山荘本編である串刺し公事件の前進希望。
251名無しのオプ:03/01/23 00:03
出来るだけ早く山荘に戻ることを約束させて、石崎と氷川は舞城と佐藤を見送った。
玄関の扉を閉めて、二人はそこで少し話をする。
氷川「消えた二人が心配ですが…僕たちはここで早く事件を解決しなければならない。
   これ以上事件が起こることを許してはおけませんから」
石崎「だな。それにああまで期待されちゃあ、応えないと男がすたるってもんだ」
相変わらずの明るい調子で石崎が頷く。
どうやら、少し前の追いつめられたような状態からは完全に脱したようだった。

氷川「さて。さっきの続きになりますけど、三件連続でアリバイのないのは秋月君のみ。
   しかし、彼は第二の事件の後、『自分が犯人だ』と言ってきた。これはちょっと変ですよね」
石崎「まあ、裏の裏をかいたって可能性もあるけどな。うーん、あのときもうちょっと構ってやれば良かったかな」
氷川「彼が犯人でないとすると、三件ともにアリバイのない人間はいなくなってしまう」
無表情で氷川が言う。その目はやはり空を睨んでいた。

氷川「しかも、第三の事件でアリバイがないのは、秋月君以外だと北山君と笠井先生。二人は先の事件の被害者だ」
石崎「事件直後、矢が飛んで来たのと反対側から殊能と舞城がやって来たんだったな。
   他の人間も佐藤の騒ぎの所為で完璧なアリバイがある。浅暮と古泉は広間に残ってたわけだが…」
氷川「第三の事件が一番厄介ですね」
石崎「複数犯の可能性…時限性のトリックを駆使した可能性…もしくは全くの外部犯の可能性…考えることが倍々ゲームだな」
ううむ、と唸って石崎は頭をかき回す。
石崎「ボウガンの細工とか、つららをわざわざポットに入れたこととか、矢を飛ばしたボウガン以外の仕掛けとか…
   何から考えていくかな…」
そう呟いて数秒間黙ってから、石崎はにかっと笑って氷川の肩をぽんと叩いた。

石崎「この際ストレートに、アリバイないから秋月が犯人だー!ってのはどうだ?」
氷川「駄目です」
即答だった。
252名無しのオプ:03/01/23 00:12
舞城と佐藤が危険な外へ出て行くことになったとき、
霧舎はちらりと高里の様子を窺った。こんなときいつもなら、
「男二人が共に危険を乗り越え凍える体を暖めあう内に愛が芽生えるのねっ☆」
とかなんとか妄想を広げておおはしゃぎのはずなのだが……
彼女は何か言いたげに顔を曇らせたまま、無言で舞城を見ていた。
まさか心配しているとでもいうのか? どうしてあいつを?
彼女にとってすべての男はヤオイの道具じゃなかったのか?
だから僕はこうして仕方なく石崎と腕を組んでみたりしているのに。
はっ! まさか彼女は初めて男を意識し始めているのだろうか……?
ヤオイフィルターなしに……それはまるで……初恋……?
だとしたら、僕の存在はどうなるんだ!?

霧舎「舞城君……荷造り手伝うよ……」
舞城「ほんじゃ、リュックに適当な非常食放り込んどいてくれやー」
暗い目をして微笑む霧舎に気づかず、舞城は着替えを続ける。
このまま戻ってこなければいいのに。そうすればハニーは僕だけのもの……。

霧舎は無意識に、リュックの底に穴をあけていた。
253名無しのオプ:03/01/23 00:17
>252
霧舎…男の嫉妬は怖いな(笑
254名無しのオプ:03/01/23 00:20
…………

彼は食事を終えると、立ち上がってその口元をぬぐった。

肉切り包丁の刃は、赤を通り越してどす黒い。

その手に付いた赤色は、流れ落ちる前に寒さで凍り付いている。

しかしそんなことに興味はないかのように、彼はまた吹雪の向こうに目をやる。

何か見えているのか、それとも、何も見てはいないのか。

………

そして、浦賀はまた吹雪の中を走り出した。
255福井出身:03/01/23 00:45
舞城の言葉は福井と言うよりは関西弁に近いものが使われているなかで
>>240
>雪山装備が部屋にあるさけな、
は、グッジョブ!
2561/2:03/01/23 06:52
石崎「……そう言えば、ワインセラーの事件の現場検証がまだだったな」
氷川「せっかく高田君が保存してくれたんですから、早めに済ませた方がいいですね。行きましょうか」

頷きあって、二人は地下に降りていった。……が。

氷川「……そんな」
石崎「まさか、こんなことが」

いつも明るい石崎が顔色を失い、氷川が動揺を隠そうともしない。
二人の目は、床に釘付けになっていた。
目の前に広がる、赤い液体に──

 











2572/2:03/01/23 06:53
石崎「これも犯人の仕業なのか?」
氷川「ええ、そうでしょうね……今僕は初めて、犯人に殺意を抱きましたよ」

 床に広がる、赤や琥珀色の液体。そして転がっている、瓶、瓶、瓶。
 世にも情けなさそうな顔で、二人はそれを拾い集め始めた。

石崎「見ろよ、ドンペリだ……うわっ、シャトー・マルゴーまである」
氷川「ワインだけじゃありませんよ……ああ、こんな酒まで」
石崎「かと思えば、クリスマス用のお子さまシャンパンまであるぞ。一体どうなってんだこの品揃えは」
氷川「ワインセラーの中も酒びたしだ……悪夢だ、これは悪夢だ」
石崎「どこの誰だか知らないが、犯人は絶対に酒の飲めない奴だな。でなきゃこんな暴挙ができる訳がない」
氷川「論理的にはおかしいですが、心情的には激しく同感です……とほほ」

 先に立ち直ったのは石崎だった。
 高田のつけたはずの落ちた矢の印は、綺麗さっぱり消えていた。
258名無しのオプ:03/01/23 07:52
高田「そうか……消されてしまったんだね」
石崎「すまん、もっと早く現場検証をしていれば」

 形だけの現場検証を終え、石崎は氷川を連れて広間に戻った。
 氷川はウイスキーの空瓶を抱えたまま、まだブツブツ言っている。

高田「犯人が現場に戻ったということは、証拠を消したということなのかな」
石崎「だろうな。時限発射装置を回収でもしたのか……」
高田「でも第一の事件のこともあるから、周りは一応見回したつもりなんだけどね。そんな大きな物があれば、気づくと思うけど」
石崎「……そうだな。おい氷川」
高田「それに津村君だって、古処隊の一員だ。本人は混乱してるみたいけど、人の気配のあるなしには敏感だと思うよ」
石崎「いちいちもっともだ。氷川、なんとか言え……だーっっ! こいつがしゃべらないと、推理にならんじゃないか!」
高田「ワインセラーで犯人が何をしたのかは解らないが、少なくとも探偵コンビにダメージを与えることには成功したようだね」
259名無しのオプ:03/01/23 08:20
>>223
>古処「うむ。すまない。この男一匹、英語力は未熟であった」
なんか知らんが、もう古処が何言っても妙に笑える。
260名無しのオプ:03/01/23 09:44
高田「気付け薬はさっき津村君で使ってしまったし……じゃあ何か、他の薬を調合でもして」
石崎「おまえの薬なんぞ飲まされたら、その後使い物にならんだろうが。仕方ない、酔いどれ探偵に一番効く薬を持ってきてやるか」

 そう言って石崎は、程近いキッチンへと入っていった。殊能が台所に立ち、蘇部がその手伝いをしている。
 冷蔵庫を開けたが、お目当ての物は入っていなかった。顔を巡らすと、誰かの置き忘れだろうか、暖炉の上に缶ビールがちょこんと載っている。
 
石崎「あ、殊能。ここにおいてあるビール、いいか?」
殊能「あ、いいよ」

 蘇部が解放されたせいか、殊能の顔もいくらか明るくなったようだ。
 笑い合う二人を見ながら、石崎はキッチンを出た。
261名無しのオプ:03/01/23 09:45
石崎「ほーら氷川、ビールだぞビール。おまえの大大大好きなアルコールだぞ〜」
 しかし氷川の目は虚ろなままだ。
高田「……反応がないねえ」
石崎「うう、最高級ウイスキーと缶ビールじゃ、さすがに分が悪いか。こうなったら、無理矢理にでも口に流し込んでやる」
 石崎はリングプルを引いた──

石崎「うわっ!」
高田「わっ!」
 ビールの泡が宙を舞い踊る。
氷川「えっ? わっ、何するんですか、わっ、わっ、わっ」
 中身をすべて氷川の上にぶちまけ、ようやく缶は沈黙した。
氷川「なんてことするんですか、石崎さん!」
石崎「いや、別におまえにぶっかける気はなくてだな、そう言えばあったかいな、このビール」
氷川「暖まったビールなんか開けたら、爆発するのが当たり前でしょう。見てくださいこの服、びしょ濡れじゃないですか」

 その瞬間、二人はハッと息を飲んだ。
262名無しのオプ:03/01/23 09:46
石崎「ビール……爆発……」
氷川「ぶっかける……びしょ濡れ……」
高田「ちょっとちょっと、どうしたんだい、二人とも」
石崎「おまえにもわかったのか、氷川」
氷川「……ええ、わかりました」

 二人は頷き、そして同時に叫んだ。

石崎「ワインセラーで、犯人が矢を撃ったトリックが!」
氷川「北山が襲われた事件の真相が!」
石崎「……」
氷川「……」
石崎・氷川「……えっ?」

 気の合わない二人だった
263名無しのオプ:03/01/23 11:27
おお、いよいよ解答編か。わくわく。
264名無しのオプ:03/01/23 11:45
石崎「高田、邸内の全員に伝えてくれ。これ以上事件は起こらない、ってな」
氷川「……石崎さん?」
石崎「夕食後に全員を広間に集めるんだ。そこで俺たちが、この事件を解決する」
氷川「ちょっと待ってください。まだ舞城君たちが戻って来ていない」
石崎「そうだったな。舞城・佐藤・北山・秋月。この四人が戻り次第、推理を開始する。──そう知らせてくれ。いいな、必ず全員にだぞ」
高田「どういうことかは知らないが──わかったよ。必ず連絡する」
石崎「氷川、俺たちは証拠固めだ。行くぞ」
氷川「あ、待ってください、石崎さん!」

 二人は駆け出した。
265名無しのオプ:03/01/23 12:27
山頂付近に張られたテントの中。
縄で厳重に縛られ、身動きのできない状態のままテント内に放置された石黒は焦っていた。

不幸中の幸いとでもいうか、観測機の稼動熱が暖房代わりになっているため、さしせまった凍死の心配はない。
ちょうど食事を終えて一杯やっていたところだったので、しばらく空腹を覚えることもないだろう。
吹雪は明後日には止むはずだし、そうすれば迎えのヘリが飛んで来てくれる予定だ。
これが「普通の」情況なら、遭難死の心配はまずない。
……もちろん、そんなことは少しの慰めにもならなかったが。

石黒「時間が……時間がない……」

浦賀によって拘束されてからしばらくたつが、
依然として、火山活動の兆候をしめす微震は停止したままである。
ということは、マグマ溜りには着実に噴火エネルギが蓄積されつつあるということだ。
この情況からすると、迎えのヘリが来る前に、ある程度以上の規模の噴火が起きるのは必定。
そうなると、今まさに火口部にいる自分が死ぬのは間違いない。

が、そのことに関しては何ら悔いはない。
火山の専門家たる自分に科せられた使命は、火山活動のもたらす災害からメフィスト学園と宮崎県を守ること。
その使命を果たす過程において犠牲となるのは、むしろ望むところですらある。

ただ、問題なのは……

石黒「現時点で起りうる最小規模の噴火しか起きなかったとしても、笠井先生の山荘は確実に壊滅する……」
266名無しのオプ:03/01/23 12:29
そう。
この積雪量から見て、発生する雪崩の被害は相当の広範囲に及ぶのは間違いない。
ましてや学園の生徒たちが合宿中の山荘はかなりの標高だ。雪崩が起きれば一瞬で押し潰されるだろう。
そうなれば生き残るものは一人も存在し得ない。全てが等しく雪の下だ。

石黒「彼らを一刻も早く避難させねば……」

石黒は懸命に身をよじり、なんとか拘束から逃れようと試みる。
が、彼の身体を幾重にもわたり、幾何学的に縛りつける縄は、緩む気配すらない。
しかし、こと災害に関する限りは、石黒の辞書に「絶望」の二文字は存在しない。
火山の専門家としての石黒は、例え可能性が限りなく薄くとも、いかなる事態が起きたとしても諦めたりはしない。
それだけが人類が、その想像力では図り知ることすら出来ない力を持つ自然の悪意に立ち向かい、
そして生き残るための唯一にして絶対のすべなのだから。

そのとき突然、テント内に身を刺すような冷気が吹き込むと共に、雪に覆われた影が飛び込んできた。

??「古処隊長っ、北山、現時刻をもちまして原隊に復帰しますうっ……!?」

テントに飛び込んできた影の正体は北山だった。何故かその表情は涙でくしゃくしゃだ。

石黒「北山君が何故ここに……っと、それはいい。今はそんなことを言ってる場合じゃないね。
   びっくりしたかい、これは浦賀君の仕業だ。悪いが縄を解いてくれないかい?」

しかし、蒼ざめた表情のまま北山は立ち尽くしたままだった。
その表情は見てはならないものを見てしまったかのように驚愕で歪み、
その視線はおぞましい化け物を見てしまったかのように恐怖で凍り付いていた。
267名無しのオプ:03/01/23 13:11
>264
氷川「本当にわかったんですか石崎さん。第二第三の事件が解けても、まだ第一の事件が」
石崎「バカ、誰が解けたって言ったよ」
氷川「……え?」
石崎「探偵がああ言えば、もう事件は起こらないんだよ。本格のお約束だ」
氷川「口からでまかせ、ですか?」
石崎「ま、そんなとこだな。これで俺たちは、意地でも舞城が戻って来るまでに、ボウガンの事件を解決しなきゃならないわけだ。そのくらい出来なきゃ、奴に申し訳が立たない。頼んだぞ、氷川」
氷川「……はい。でもその前に」
石崎「なんだ?」
氷川「このビールまみれの服、なんとかさせてくれませんか?」
268名無しのオプ:03/01/23 14:10
 服を着替えて捜査を開始しようとした、石崎と氷川。
 その耳に、突然異様な声が響いた。

石崎「なんだ? あの声は」
氷川「古泉君のコーランですよ」

 ドアは開け放たれ、玄関には雪が吹き込んでいる。
 そこで津村と日明が、必死で古泉を止めているのが見えた。

津村「あ、石崎さん、氷川さん!」
日明「二人ともお願い! 古泉君が!」
古泉「アッラーアッラーアッラーアッラー」
石崎「またかよ! そんな格好で外に出てったら、また凍っちまうぞ!」
古泉「アッラーアッラーアッラーアッラー」
269名無しのオプ:03/01/23 14:11
 何故だ?
 何故アッラーは、私を置いていってしまったのだ?
 ようやく対話が叶うと思ったのに……

古泉「アッラーアッラーアッラーアッラー」
石崎「ええいっ、いい加減にしろ! 日明、高田に薬もらって眠らせとけ!」
氷川「ああ、また服が濡れてしまいましたね」
石崎「確か事件の前にもこんなことがあったよな、全く。ようし、濡れたついでだ。外の捜査もすませちまおう。行くぞ氷川」
氷川「……そうですね。行きましょう」
270名無しのオプ:03/01/23 15:18
北山「しかし驚いたよ……ようやく古処隊長に出会えたかと思ったら、
   石黒君なんだもんなあ……しかもあんな格好だし……」
石黒「……」

北山の驚きももっともな話だった。
山頂付近でテントを見付け、息せき切ってその中に飛び込んだ北山が見たのは、
団鬼六や明智伝鬼の世界さながらに、妖しくも禍々しい結び方で緊縛された石黒の姿だった。

北山「あれって亀甲縛りって奴だよね……あ、手足も縛ってあったからちょっと違うか……
   でも驚いたよ。ほら、石黒君が『浦賀君の仕業』とか言うから、てっきり……」

と、そこまで言いかけて、北山は言葉を飲み込んだ。
いつの間にか高里に毒されてきている自分にショックを受けた訳ではない(それもあるのだろうが)。
「浦賀」という言葉を口にしたことで、必死で忘れようとしている悪夢が甦りかけたからだ。
北山はぶるぶると首を振り、脳裏に浮かんだ凄惨な光景を追い払おうと試みる。

北山「でも良かったよ、石黒君がいてくれて……これできっと助かるよ」
石黒「……」

懸命に何かから逃避するかのように、必死で喋り続ける北山。
しかし石黒は耳を傾けるそぶりすら見せず、厳しい表情で観測機群の数値をチェックしていた。

北山「……ねえ石黒君、さっきから何やってるんだい?」
石黒「……ああ、この山が噴火しそうなんで、その調査だ……ふむ、なるほど」

どうやら結論が出たのだろうか。ようやく石黒が顔を上げて返事をした。

北山「へえ、この山って活火山だったんだ。ところで噴火って、いつごろになりそうなんだい?」
石黒「8時間後ってところかな。これだけのデータが揃ってるから、あくまで予測だけどかなり正確だろう」
北山「ふーん、そうなんだ……って、8時間っ!!!???」

本日何度目かの北山の悲鳴が響き渡った。
271名無しのオプ:03/01/23 15:25
北山「石黒君石黒君石黒君石黒君、ど、ど、ど、どうなっちゃうんだよ、僕たち!!」

再びパニック状態に陥る北山。しかし石黒は落ち着いたものだった。

石黒「大丈夫だ。冷静に行動すれば十分助かる」
北山「で、で、で、で、でも、噴火だよ。しかもここって火口じゃないかっ!!」
石黒「とりあえず落ち着くんだ、北山君。災害に対処するにおいて、最も重要なのは冷静さを保つことだ」
北山「う、うん……」

あくまで落ち着き払った石黒の姿に、ようやく少し落ち着きを取り戻した北山。
そんな北山に、石黒は地図を広げて講釈を始める。

石黒「いいかな、噴火による雪崩の影響圏は、恐らく山麓部にまで及ぶ広範囲になるだろう。
   が、この山地さえ越えれば間違いなく安全だ。つまり、この地点まで避難すればいいということになる」

石黒は、地図上の一点を指し示す。そこには小さな集落の存在が示されていた。

石黒「そして笠井先生の山荘からこの地点までは、車を飛ばせば2時間ってところだろう。
   これから山荘まで下りて、それから全員で避難しても時間は十分あるね」

淡々と、それでいて確信に満ちた表情で説明する石黒の姿は、北山が信頼感を寄せるに十分なものだった。
272名無しのオプ:03/01/23 15:26
確かに、ここから山荘までの下山にかかる時間を考慮にいれても、避難には十分な時間が残されている。
山荘を出るときに見た駐車スペースには、大きなランドクルーザーが何台か止めてあった。
あれなら山荘のメンバー全員と雪山組を全員収容できるし、この豪雪もものともしないだろう。
だいじょうぶ。冷静に考えると避難は十分可能だ。そう、計算上は。

……計算上は?

石黒「よし、いつまでもぐずぐずしてはいられない。避難活動においては迅速な行動が鉄則なんだ。
   すぐに山荘まで下りよう……って、どうしたんだ北山君、顔色が悪いぞ?」

テントの中に呆然と立ち尽くし、小刻みに震える北山の姿に、石黒は怪訝そうな表情をする。
北山「そ、それはダメだよ……できないよ……」
石黒「どうしたって言うんだ、北山君。落ち着きたまえ」

駆け寄った石黒に肩を掴まれて揺さ振られながらも、北山はうわ言のように繰り返すだけだった。


北山「……ここから下りたら間違いなく殺されるんだ……浦賀の奴に……」
273名無しのオプ:03/01/23 15:28

別荘周辺。

彼は「作業」にとりかかる前の「下準備」に勤しんでいた。
どす黒く光る肉切り包丁を縦横に駆使し、次々と目的物を切断し、切り裂き、破壊していく。
久しぶりに飢えを満たしたゆえか、彼は上機嫌そのものだった。

「……ちったあ腹ごなしに動いとかないと、メインディッシュが入んねえからなぁ……」

下卑た笑みを浮かべながら、彼は手際よく「下準備」を進めていく。
未だ収まる気配すら見せない吹雪の中、山荘内の人間に気取られないように密かに。
そして、一つの見落としもないように、着実かつ徹底的に。
そしてようやく「下準備」は完成した。

「……けっけっけっ、この状況って、あいつらの大好きな吹雪の山荘って奴なんだろ? 
 んじゃ、それに相応しい環境って奴を整えてやんねえと、名探偵様に失礼ってもんだよなぁ」

彼は、なすべき準備を全て終えると、満足げに一人ごちた。

再び腹部に空腹感が忍び寄って来るのを感じながら。
274名無しのオプ:03/01/23 16:42
>269
 二人は雪をかきわけ、書斎の裏へと辿りついた。
 風と雪は相変わらず強いが、太陽は僅かな光を投げ始めている。
 薄明かりの中で辺りを探す石崎に対し、氷川の方はどこか所在なげだった。

石崎「おい、何やってんだよ。手掛かり探さないのか?」
氷川「僕はいいんですよ。前回で十分堪能しましたから」
石崎「ああ、事件のすぐ後に、お前が現場検証やったんだったな」
氷川「ええ、そういえば、石崎さんは初めてでしたね。よかったですね、寒い思いをしなくて」
石崎「おいおい嫌味かよ。……ん? あれなんだ?」

 書斎からはいくらか離れた所にある、巨大な物体。
 それは石崎の腰までの高さはある、雪玉だった。

氷川「ああ、それですか。蘇部先輩が作った雪だるまだそうですよ」石崎「あいつテロルとか言って、こんなことやってたのか……いや、そうでもないか」
 雪玉の向こう側から、石崎は別荘を眺めた。この場所からなら、窓から書斎の中がよく見える。
石崎「雪だるまは口実で、笠井先生を観察してたのかも知れないな。いやあいつのことだ、どっちが口実だかわかったもんじゃないが。しかし、どうして首が落ちてるんだ? 西尾の作品の見立てか?」

 石崎の目が、落ちた雪だるまの首に向けられる。
 そしてその脇にある、小さな雪の山にも。

石崎「まさか……」

 石崎は、思わず目を見開いた。
275名無しのオプ:03/01/23 16:43
石崎「まさか……」

 石崎の頭の中を、今までの出来事が駆け巡る。
 まさか、そんなことが──

氷川「……石崎さん」

 石崎の思考が、不意に止まった。

氷川「犯人がわかったんですね、石崎さん」
石崎「……ああ」

 彼を現実に引き戻したのは、氷川の声だった。

氷川「誰が犯人なのか、僕にだけこっそり教えてくれませんか」
石崎「……駄目だ」

 乳白色の闇の中で、二人は互いに背を向けて立っていた。
 氷川は天を見上げ、石崎の目は地を見つめていた。

氷川「真相はみんなの前で、ということですね。いいでしょう」

 やがて、氷川が踵を返す。

氷川「戻りましょう。後は、舞城君たちを待つだけです」
276名無しのオプ:03/01/23 16:52
森 「事件の真相も判ってしまいましたし、やることもなくて退屈ですね」
黒田「あっちは思い切り緊迫してるみたいだけど、こっちは見てるだけだからねえ」
積木「僕もこうなってしまうと、あっちの事件に介入はできないしね」
竹 「うにー、いーちゃんも御大ちゃんも戻ってこないし、僕様ちゃんつまんない」
生垣「おいおい、君に膨れっ面は似合わないよ、リトルレディ」
古処「うーむ、乙女を退屈させることは紳士の流儀に反する。何か娯楽はないものか」
森 「それでは久しぶりに、google知名度調査などしてみましょうか(笑)」
黒田「うわ、森君の自慢タイムが始まったよ」
森 「何か言いましたか?(にこにこ)」
黒田「いいえ、何にも」
森 「それでは、まずはTOP10から。果たして1位は誰でしょうかね?(笑)」

1位 森博嗣   : 35800     森博嗣   : 30200   
2位 清涼院流水: 6400     清涼院流水: 6140    
3位 殊能将之  : 5210     殊能将之  : 4360   
4位 浦賀和宏  : 3730     高里椎奈  : 3950   
5位 高里椎奈  : 3480(- 1)  浦賀和宏  : 3440   
6位 西尾維新  : 3430(+11)  高田崇史  : 2570   
7位 高田崇史  : 3040(- 1)  古処誠二  : 2520   
8位 黒田研二  : 2710(+ 1)  霧舎巧   : 2370   
9位 舞城王太郎: 2680(+ 1)  黒田研二  : 2320   
10位 霧舎巧   : 2630(- 2)  舞城王太郎: 1990   
277名無しのオプ:03/01/23 16:53
森 「続いてその他大勢の方々です(笑)」

11位 古処誠二 : 2600(- 4)  氷川透   : 1940   
12位 氷川透   : 2140(- 1)  新堂冬樹 : 1420   
13位 佐藤友哉 : 1920(+ 2)  乾くるみ  : 1250   
14位 新堂冬樹 : 1720(- 2)  浅暮三文 : 1200   
15位 浅暮三文 : 1660(- 1)  佐藤友哉 : 1170   
16位 石崎幸二 : 1330    石崎幸二  : 1150   
17位 乾くるみ  : 1360(- 4) 西尾維新 : 1070   
18位 蘇部健一 : 1260    蘇部健一  :  993   
19位 積木鏡介 :  708     積木鏡介  :  667   
20位 北山猛邦 :  708(+ 2)  古泉迦十  :  628   
21位 秋月涼介 :  658(+ 2)  中島望   :  513   
22位 古泉迦十 :  661(- 2)  北山猛邦  :  463   
23位 中島望   :  562(- 2)  秋月涼介  :  410   
24位 日明恩   :  362(+ 1)  津村巧   :  304   
25位 津村巧   :  330(- 1)  日明恩   :  86   
26位 石黒耀   :  249            
27位 生垣真太郎:  16            

森 「以上です。ちなみに左側が1/22の調査、右側は去年の8/2の調査ですね(にこにこ)」
古処「むむむ、順位が4つも落ちているのである。なにしろ男一匹、由々しき事態である。
   これはやはり日記の公開中止に涙する美女が多かったということだろうか」
生垣「OOPS、僕がダントツの最下位じゃないか!!」
積木「生垣君はこれから増えていくんだからいいけど、僕はすっかり安値安定だね……」
黒田「よしよし、順調に上積みしてるぞ。しかし西尾君の躍進は凄いね」
生垣「ごぼう抜きとはまさにこのことだね。しかしMr.森は凄いね。桁違いの成績じゃないか(口笛)」
森 「まあ森がトップでないのなら、わざわざ集計なんか発表しませんから(笑)」
竹 「違うよ、いいんちょ。トップは僕様ちゃんだよ。なんてったって920000HITもあったんだから」
森 「おやおや、これは一本取られましたね(笑)」  
積木「以上、閑話休題ということで。それでは本編の続きをどうぞ〜」
278名無しのオプ:03/01/23 16:55
すごいな……全キャラに見せ場があるじゃないか。
しかも全員愛校精神を持っているみたいなのがよい。
279名無しのオプ:03/01/23 17:43
>竹 「違うよ、いいんちょ。トップは僕様ちゃんだよ。なんてったって920000HITもあったんだから」
爆笑しますた。

280名無しのオプ:03/01/23 17:50
>276-277

なぜ、高里だけHIT数が減っているのかが不思議でならない……

はたして何が起こったんだ!!!
281山崎渉:03/01/23 18:16
(^^)
282名無しのオプ:03/01/23 19:11
石黒「……なるほど、状況は理解した」

ようやく北山の支離滅裂な説明を聞き終え、石黒は重々しくうなずいた。

北山「……どうせ君もあいつらみたいに、僕の言うことを信じないんだろ……
   僕も判ってるんだよ、僕の言ってることが常識はずれのたわごとにしか聞こえないってことは。
   でも僕はこの目で見たんだ!! 見たものは仕方ないじゃないか!! なのにあいつらは……」
 
ヒステリックに喚き散らす北山。その目は狂おしく、それでいてどこか虚ろに輝いている。
が、石黒は何も言わず、静かに北山を見つめていた。

北山「な、何だよ……僕のことを小心者だと思ってるんだろ!!」

金切り声で叫ぶ北山。石黒はそれに取り合わず、ゆっくりと答えた。

石黒「北山君、僕は君の言うことを否定したりはしない」
北山「……へ?」

一瞬、唖然とする北山。その見開かれた目がみるみる涙で潤む。

北山「い、石黒君……じゃあ僕の言うことを信じてくれるんだね……」
石黒「いや、君の言うことを信じたわけでもない」

歓喜に咽び泣こうとする北山を押し留めるかのように、石黒は表情を変えずに答えた。

北山「えっ、ええっ……???」

一体何が起きたのか判らないといった表情で、きょとんとする北山。
その虚をつくような形で、石黒はゆっくりと話し始めた。
283名無しのオプ:03/01/23 19:13
石黒「北山君、僕はメフィスト学園の生徒ではあるが、一介の火山研究家に過ぎない。
   だから、君たちみたいに推理したり、あれこれ想像したりするのは得意ではない。
   でも、だからこそ判ることもあるんだ」

今まで起きてきたことや、現在の危機的状況などなかったかのように、淡々と話し続ける石黒。
そんな石黒の姿に北山は、呆けたように魅入られていた。

石黒「もちろん、僕は君の言うことを信じてあげたい。また、僕の常識は君の言うことを否定している。
   だが、神ならざる僕にとってはこの問題については判断できない。
   そして、今この時点で僕が断言できること、そして僕が断言しなければならないことは一つだけだ。
   そう、今すぐ皆で避難しないと、皆が死ぬということだ。
   犯人も被害者も、探偵役も警察役も証人も傍観者も無関係の人も、そう、全員が」

そこで一息つくと、石黒は表情を変えずに言った。

石黒「だから、僕から君に言えることは一つだけだ。”悩みたければ生き残れ”、とね」

北山「悩みたければ生き残れ……」
石黒「そうだ。君がいくら思い悩んだところで、このまま時間が経過すればそれらは全て無に帰す。
   そうなれば浦賀君が何を考えていようが、本当に犯人だろうがなんだろうが、一切意味はない。
   そうすれば悩みも何もない。真実も何もない。動機も凶器も真犯人も、全てが等しく『無』だ。
   全てに平等に災厄をもたらす、自然災害とはそういうものなのだからね」

石黒は長い長い言葉を終えると、表情を変えずに、静かに口を閉じた。
しばしの間の沈黙。
そして、呆然としたままだった北山の表情に、ゆっくりと生気が回復していく。
284名無しのオプ:03/01/23 19:16
北山「そうだ……そうだね、石黒君の言うとおりだ……」

石黒の傍らで一人、興奮したかのように話し続ける北山。
そして石黒は何も答えず、北山が自問から答えを導き出すに任せる。

北山「そうだ、僕もメフィスト学園の生徒なんだ……事件を『操る』べき存在なんだ……
   事件から逃げてちゃダメだ。事件に立ち向かい、僕の推理を突きつけてやるべきなんだ!!」
石黒「そう。生きていさえいれば真実はいずれ明らかにできる。自分の腕次第でね」
北山「自分の腕か……でも僕、今ひとつ売れてないしなあ……」

少ししゅんとする北山。そんな北山に声をかける石黒。

石黒「なに、生きていさえすればいずれ力は付く。君は若いんだから。
   あと、浦賀君のことだけど、あれは浦賀君であって浦賀君ではない存在だ。
   僕の専門は精神科ではないんで、あくまでこれは一つの仮説だけどね」
北山「へ……そ、それって一体!?」
石黒「おっと、続きは山荘まで下りてからにしよう。あそこには名探偵が揃ってるらしいし」

表情を変えずにうそぶく石黒に、北山は苦笑する。

北山「判ったよ。じゃあ下りよう。でも、僕のせいでずいぶん時間を浪費しちゃったね……」
石黒「何、大丈夫だ。取り返す手段はある」

そう言うと石黒は、どこからともなく二組のスキー用具を取り出した。
285名無しのオプ:03/01/23 19:19
そしてしばらく後。
石黒と北山はスキーの装備を整え、吹雪の中、山頂からの急斜面を見下ろしていた。
もちろんテントはそのままの手ぶら状態だ。石黒いわく「災害時は見切りが大切」らしい。

石黒「この道具は新堂君と中島君から預かってたものなんだ。
   彼らは捜索が終わったら、ここから一気に滑り下りるつもりだったみたいだね」
北山「あ、あの、石黒君……」

引き攣った笑みを浮かべる北山。

北山「僕、スキーは苦手っていうか、ほとんど滑れないんだけど……」
石黒「何、大丈夫だって」

石黒は表情を変えずに答えた。

石黒「僕だってスキーは始めてだ」
北山「えっ……」
石黒「大丈夫、方向は確認した。ここからまっすぐ滑り降りると、山荘にぶつかるから」
北山「い、いや、そんな無茶な……」

石黒はここで、初めて笑みを浮かべた。

石黒「なに、これくらいのこと、火山灰の降りしきるなか、溶岩流と火山弾を避けながら
   車を運転して安全な場所を求めて逃げ回ることに比べれば、どうってことない」
北山「いや、そんな超絶特殊状況と比べられても……」
石黒「大丈夫だって、それに災害時には手段はえり好みできないものだ」
北山「だ、だからって、ちょっと待って……って、うわああああぁぁぁぁっ!!」

そして、本日何度目になるかわからない北山の叫び声が響き渡った。
286名無しのオプ:03/01/23 19:55
やべぇ、石黒かっこいい!
2871/2:03/01/23 20:27
西尾「つまり、犯人は『生徒以外』という事ですね、御大。」
清涼院「その通りだよ、西尾氏。先生達には『一切アリバイが無い』。」

ハッキリと頷く清涼院。だがその表情にはどこか翳りが見える。

西尾「ですが御大。動機は一体?まさか先生達が単なる愉快犯で美術室を
   破壊するとは思えません。」
清涼院「動機が無ければ犯罪は起きないのかね?単純に『魔がさした』という事もある」
西尾「そんな、京極先生や森先輩みたいな事を・・・・・・ってまさか!?」
清涼院「いや、そんなつもりで言ったわけでは・・・・・・ない。単に、戯言だよ。」

どことなく苦しい様子を見せる清涼院。

西尾「御大?大丈夫ですか?」
清涼院「大丈夫。まだ大丈夫だ。それより、僕には動機の目星が付いている・・・・・・」
西尾「え!?それは一体!?」
清涼院「ウゥッ、いけない。予想以上に・・・・・・時間が、無い・・・・・・」
西尾「御大・・・・・・?大丈夫ですか御大!」

いきなり崩れ落ちる清涼院の姿を西尾は確認する。
2882/2:03/01/23 20:38
清涼院「いいか・・・・・・西尾氏。『竹嬢』の存在はメフィスト学園において『異物』なのだよ。」
清涼院「『異物』を排除しようと『彼』は・・・・・・動き出したに違いない・・・・・・」
西尾「御大!御大!いけない、早く保健室に行きましょう!」

グワシッと西尾の手を掴む清涼院。西尾もその手を強く握り返す。

清涼院「いや、これは治療不可能だ・・・・・・。いいかね、西尾氏・・・・・・『竜』に、
『竜』に気をつけろ・・・・・・ガクッ」
西尾「御大・・・・・・?御大!ダメです、まだ貴方には彩文家を書く義務が!御大!」
西尾「御大ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ」








清涼院「セイリョーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーインッ!」
清涼院「リュウスイィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」

いきなり叫びだす清涼院!と、同時にその姿が掻き消えていく。
後には呆然とした西尾だけが残される。

西尾「・・・・・・そうか。そういう事だったのか。まさか。まさか・・・・・・こち亀の日暮ネタだったとは。」
西尾「という事は・・・・・・次に御大がまともになるのは1スレ後・・・・・・か。これは哀川さんもビックリだね。」
西尾「しかし。結局メタキャラのままでしたね、御大。まぁ戯言だけどね。」
289名無しのオプ:03/01/23 21:00
石黒に惚れマスタ
290名無しのオプ:03/01/23 21:02
年の功だなぁ、石黒は。カッコよすぎだよ……
291名無しのオプ:03/01/23 21:30
>>287
御大、人格まで分裂してたんかいっ! ちょっと笑ってしまった。
最後の一言は……御手洗?
292名無しのオプ:03/01/23 22:07
おもしろすぎ…
マジでメフィスト賞狙えるぞ
293名無しのオプ:03/01/23 23:08
ちょっと質問!
 前スレで御大がまともだったのはどんなエピソードの
 ときなんでせうか?

 前スレ見れなくなってるので知ってる方教えてくだされ!
294名無しのオプ:03/01/24 01:12
山荘からはすでにかなり離れたその場所で、舞城と佐藤は吹雪の中で立ち尽くしていた。

佐藤「…これ、もしかして、血?」
舞城「もしかせんでも血やろ。おめえは氷イチゴに見えるんかこれが」

彼らの目の前には、真っ赤に染まった雪が広がっていた。
その上に新たな雪が今も降り積もっているが、まだその色は鮮明で生々しい。
しかし、周囲には血を流したであろうモノは何もない。ただ、雪が染められているだけ。

まだショックから抜けられない佐藤を尻目に、舞城はその雪へ歩み寄るとしゃがみこんで、端の方を手ですくう。
舞城「これだけだと…かなりの出血量やな………ふん」
佐藤「まさか、もう浦賀先輩」
佐藤は動揺していた。膝が震えている。

(浦賀先輩…)

浦賀に会おう、それが一人自室で悩み抜いた末の結論だった。だからこの吹雪の中、こうして自ら外へ出たのだ。
行方不明になった秋月も北山もどうでも良かった。ただ、浦賀に会って話をしようと、そう思ったのだ。
その決意は揺るぎない絶対意志だった。少なくとも彼はそう認識していた。さっきのさっきまでは。

しかし、今、この赤を前にして。この陰惨な雪景色を前にして。
絵の具の悪戯でもなく、トマトジュースだというオチもない、残酷な赤色を前にして、
その絶対意志は、否、彼がそう信じていたものは、簡単に揺らいでしまっていた。
簡単に言えば、恐怖を感じてしまったのだ。

(……僕は結局、何がしたかったんだ?)
浦賀に会って、その後自分はどうするつもりだったのだろう。
彼を止めたかったのか、肯定したかったのか、それとも非難がしたかったのか?
わからない。ただただ、彼に会おうと、そう思っただけだということに気づく。

自分が何をしても、きっとまた浦賀は見向きもせずに、彼にとっての現実を進んでいくだけなのに。
295名無しのオプ:03/01/24 01:13
佐藤「なあ、舞城」
しゃがみこんだままの舞城の背中に言葉を投げてみる。だが、舞城は振り向かなかった。
佐藤「浦賀先輩には、何が見えてるんだろうな?…いや、何も見えてないのかな。
   クラスメイトとか、仲間とか、それ以前に人間だとか、そういう区別はあの人には無意味なのかな」
それは半分、独り言だった。

佐藤「僕はあの人に、何を見ていたのかな……」

そのとき、舞城がゆっくりと立ち上がった。
立ち上がって、右手をジャンケンのグーのように握って、手のひら側を自分の方へ向けて、その手を高く掲げる。
まるで何かのポーズを取っているように、佐藤には見えた。丁度、オリンピックで聖火を掲げているような。その妙な行動に、思わず喋るのを止める。
佐藤「……?舞城、何やってるんだ?」
まさかいきなり宇宙との交信を始めたわけではあるまい。

しかし、舞城は答えないし振り向きもしない。仕方なく、佐藤が舞城の横へ行く。血だまりに近づくのは嫌だったのだが。
佐藤「舞城……」
言いかけて、その言葉を飲み込む。

舞城は何もない空中を見て、ニイ、と笑っていたのだ。
背筋が凍った。何で彼はこんな状況でわけのわからないポーズをとって笑っているのだこの男は。
まさか、極限状態でキレてしまったのか?

佐藤が判断をつけかねていると、舞城はグーだった手をパーにして、その妙なチャネリングポーズを解除した。
…と思ったら、今度はいきなり目の前の雪を蹴り飛ばし始めた。勿論、血に染まった雪を、である。
296名無しのオプ:03/01/24 01:17
佐藤「…舞城、大丈夫か?気分悪くなったんなら、一回戻ってもいいけど…?」
らしくもない心配の言葉が口をついて出る。するとようやく、舞城がこちらに顔を向けた。
舞城「平気じゃボケ。おめえと一緒にすんなや。気分はむしろ最高…いや、やや良ってとこか?」
そう言ってゲラゲラ笑いながら、雪を蹴り続けている。
舞城「あいつは確かにやばいけどなー、ってこれ北山にも言うたんやけどな、殺人鬼やねえやろ。
   アホやけど頭はええしな、区別も分別も、その意味もあると思うわ」

言葉ひとつひとつの意味はわかるが、そのセリフの内容が意味不明で、佐藤は狼狽する。
何でテンションが上がっているのか、全く理解が出来ない。

舞城「ま、答えは自分で見つけんといかんやろ。俺が何言うても多分おめえは聞かんで」
そこで、ふと、舞城が自分の問いに答えていることに気づく。
舞城「おめえの視界なんて俺には見えんしな。わからんのやったら、自分でもっと目ェ見開くしかないやろ」
そう言って、ようやく彼は雪を蹴るのをやめた。
生々しい赤色は、周りの白に紛れてその鮮明さを失っていた。その色には、不思議と恐怖は湧いてこない。
物質的には、さっきと何ら変わりないはずなのに。

佐藤は舞城を見た。舞城は雪の地面に目をやって、もう一度にやりと笑った。
舞城「こんなもんやろ。さ、先行くぞ」
佐藤「……え?これを山荘へ報告しないのか?」
舞城「アホ。俺らの役目を忘れたか」
呆れたように舞城は言ったが、それは佐藤も同じだった。
この血は二人のうちどちらか…最悪の場合その両方…のものなのに、呑気に捜索活動を続けるというのか?
佐藤(やっぱり、キレたのかな……?)
真剣に舞城を心配し始めたそのとき、佐藤はふと何か違和感を感じた。辺りを見回すが、吹雪の所為で視界が悪い。
目を閉じ、聴覚に神経を集中させる。
…音だ。微かだが、雪を踏む音。何かが歩いているような音だ。人間だろうか。
舞城も気配に気づいたのか、笑いを引っ込めて吹雪の先を睨んでいる。

音は、こちらへ近づいてきているようだ。

ざ、ざ、ざ、ざ、ざ…
297名無しのオプ:03/01/24 01:24
>>293
文化祭で大量密室発生のアナウンス時に一瞬だけまともになった

学園HPかLockedRoomに前スレ収録してくれんかなあ
298名無しのオプ:03/01/24 01:24
日明「はぁ……なんでこんなややこしいことになっちゃったんだろ……」

日明は今日何度目かの溜息をついた。
山荘の中で続発する事件に加え、山荘の外には浦賀くんが徘徊しているらしい。

日明「あーあ、私も「きゃ〜」とか言って素直に怖がれる性格なら良かったのになぁ」

そう、そういうキャラなら日明は、間違いなく今回の事件のヒロイン役になれたであろう。
しかし残念ながら、日明の身体に染み付いた秘書体質が、それを許してくれなかった。
何らかの出来事が発生する都度、気が付くとマメに周囲の面倒を見ている自分がいる。

日明「無力なヒロインなんて柄じゃないのは判ってるけど、こういうのも損な性分よねえ」

日明の調子を狂わせている原因は他にもある。
どうも、もう一人のヒロイン候補である高里の様子がおかしいのだ。

日明「あの娘があんな調子だと、どうも私も調子が出ないのよねえ」

学園に二人しかいない女子生徒同士として、ことあるごとに火花を散らしてきた日明と高里。
今回の事件でも、最初のうちは高里の態度はいかにもヒロイン気取りで、日明の癇に障るものだった。

が、ここしばらくの高里はおかしい。
さりげなく挑発してみても、何か心ここにあらずといった感で、一人ため息などついている。
299名無しのオプ:03/01/24 01:26
日明「はぁ〜、つまんないな〜……そうだっ」

日明はふと思い出した。
そういえば、まだ潔さんの無事を確認してないな、と。(>>64参照)

日明「乾くんが何度かご機嫌伺いしてるらしんだけどねえ……」

乾によると、笠井は乾の問いかけをドア越しに拒絶するばかりで、部屋にすら入れて貰えなかったらしい。
乾は嘆いていた。普段から笠井先生に忠誠を尽くしているのに、この扱いはあんまりだ、と。

日明「そうだわ……ここで疑心暗鬼に駆られて傷心の笠井先生を慰めることによって、二人の仲は急接近……なんて」

日明の妄想は膨らむ。

日明「やだ、笠井先生ったら……立場も何も全部捨てるだなんて……私、愛人で十分ですから……きゃっ♪」
300名無しのオプ:03/01/24 01:26
そしてしばらく後、廊下を足音を忍ばせて歩く、日明の姿があった。

日明「うふふ、笠井先生、恵ちゃんが慰めてあげまちゅからね〜」

抜き足、差し足、忍び足。
気配を殺したまま笠井の部屋の扉の前まで近づく日明。

と、扉の向こうから言い争う声が微かに聞こえた。笠井しかいないはずの部屋の中から。

好奇心の余り、ぴたりと扉に耳をつけて中の様子を伺う日明。
が、中で交わされている会話の内容を窺い知ることはできなかった。
辛うじて理解できたのは、一方が他方を説得しようと試み、他方がそれを頑なに拒んでいるらしきことだけ。

日明「んもう、このままじゃらちがあかないじゃないの……そうだっ」

日明は屋外に出て、壁伝いに笠井の書斎の窓を目指す。
そして笠井の書斎の窓に辿り着き、こっそりと中を覗き込んだ。
そこで笠井と対峙していたのは、意外ではないと言えば意外ではないし、意外と言えば意外極まりない人間だった。

日明「……ええっ!! どうしてあの人が、そこにいるのよぉっ!!」


そのとき、日明の肩が何者かによって、コツコツと叩かれた。
301名無しのオプ:03/01/24 01:30
>>293
>>297
うぷろださえ指定してくれれば、過去ログをうぷしますですよ?

まあ学園HPかLRにうぷして貰うに越したことはないんだけど。
302名無しのオプ:03/01/24 08:09
このスレが俺にとっての新聞小説です。
303名無しのオプ:03/01/24 14:11
そうですか
304名無しのオプ:03/01/24 14:21
高里「ハッ!どこか別の場所で新しいカップリングが誕生してそうな予感!
   >>282-285のあたりよ!」

高里の801アンテナはメタレベルに達した。
305名無しのオプ:03/01/24 15:11
高里は広間の暖炉の前でぼんやりと座っていた。

隣では、結局事件が解決するまでは外に出ないことになった古泉が、また瞑想をしている。
実はその前に高田が眠り薬を飲ませたのだが、何故か効果が現れなかった。修行の賜物だろうか。
それで津村が必死に説得し、ようやく引き留めることが出来たというわけだ。
ちなみに高田は薬が効かなかったのが悔しいらしく、自室で調合をすると行って二階へあがってしまった。

高里は、はぜる暖炉の火を眺めている。
周囲の人間はあちこち動いているのに、彼女はそこからずっと動いていなかった。

何だか、さっきから体調がおかしいような気がする。少し前に霧舎と話したときは何ともなかったのに。
おかしくなったのはそう、舞城と佐藤が秋月と北山を捜索することになったあたりからだ。
気分が悪いというか、落ち着かないというか。理由のわからない感覚が彼女をずっと支配していた。
高里(水なんか浴びたから、風邪ひいたかな…)

ぼんやりそんなことを考えていると、いきなり目の前に湯気の立つマグカップが現れた。
顔を上げると、そこにはカップを二つ持った霧舎が立っている。
霧舎「はいこれ。ココア」
高里「…ありがと、ダーリン」
礼を言ってマグカップを受け取ると、霧舎はそのまま自分の隣に座る。
彼は少しの間、俯いて黙っていたが、やがてこちらを見て言った。
霧舎「………心配だよね」
高里「……え?何?」
霧舎「捜索隊。居なくなった二人も心配だけど…、その、舞城と佐藤も、この吹雪だから…」
なぜか、言いにくそうに喋っている。
霧舎「ハニーがさっきから元気がないのは……えーと、二人を心配してるから?」

心配?そうなのだろうか。この感覚の原因は、外へ行った舞城と佐藤への心配なのだろうか。
306名無しのオプ:03/01/24 15:12
高里「…私、元気ないように見える?」
霧舎「見えるよ。さっきから見てたけど、何度もため息ついてるし……大丈夫かなって」
真剣な顔。いつもは見られない表情だった。

高里「大丈夫。ちょっと色々考え事してただけだから。心配かけてごめんね、ダーリン」
霧舎「いやっ!別にハニーの心配なら全然平気だって!」
首をぶんぶん横に振って、霧舎が言う。少し顔が紅い。
霧舎「むしろどんどんかけてくれって感じだし!……ハニーに何があっても、僕がハニーを守…」

そのとき、玄関の扉が乱暴に開く音が聞こえた。続けて、数人の乱れた足音。そのうちの一つが、この広間へ近づいてくる。
思わず、玄関へ通じる廊下の方を向いた。

広間へ現れたのは、雪まみれになった舞城だった。

霧舎「…舞城。お、お帰り…だ、大丈夫だった?」
舞城「何わけわからんこと抜かしとんのじゃ霧舎。俺は大丈夫に決まっとるやろうが。
   そんなことより暖炉にもっと薪くべろ、それとそこの古泉退かせ。あと高里、毛布持ってこい毛布」
しどろもどろに声を掛けた霧舎に、舞城は一気にまくしたてた。他の足音もこっちに向かってくるようだ。
舞城「高田は?高田はどこ行きよった」
津村「高田さんなら二階だよ…また何かあった?……え、あれ?……うわ!」
ソファに座っていた津村が立ち上がって、何故か顔色を変えた。
舞城「説明は後や。霧舎!早よ薪持ってこいや!急げ急げ急げ!」
急き立てられて、霧舎があわあわと立ち上がって広間を出ていく。

ふと舞城と目が合う。…いや、彼がこちらを見たのだ。そして、彼は先程と比べて少し落ち着いた声で言った。
舞城「大丈夫や秋月は死なん!新堂らが見つけた時点で生存決定しとるさけな、絶対大丈夫や。
   ほやから泣くな。泣く暇があったら毛布持ってこい、ついでに他の奴らにも知らせろ」
高里「秋月くん?」
307名無しのオプ:03/01/24 15:13
ふと、舞城の後ろにやはり雪まみれの新堂と佐藤がいるのに気づく。
そして自分の横に、つまり暖炉の前に中島がやって来ていて、秋月を下ろしたことにも気づく。
秋月は雪まみれというよりもはや氷漬けのようで、顔が白い。目を閉じていて、ぴくりとも動かない。

高里「え……秋月、くん?」
舞城「高里!!」
怒鳴られて、反射的に立ち上がる。手にもっていたココアが少しこぼれた。
けれどそれに構わずに、足がそのまま動いて広間を出る。リネン室は一階の奥だったっけと、別の自分が思い出している。
舞城「よっしゃ!高田は二階やな。呼んでくるわ」
その言葉と階段を駆け上がる音を背中で聞きながら、高里は最後にようやく気づいた。

高里(私、何で泣いてるんだろ?)
308名無しのオプ:03/01/24 16:50
舞城カコイイ。
そして高里がどんどん可愛くなっていく……。
309名無しのオプ:03/01/24 17:41
タカサト可愛い!
ヤバイ萌えそう
310名無しのオプ:03/01/24 17:51
玄関での喧騒を他所に、穏やかな雰囲気に満たされた食堂。
そこでは、殊能と蘇部がディナーの準備に勤しんでいた。

殊能「……」
蘇部「あれ、どうしたんだい、殊能くん。ぼーっとしちゃって」
殊能「いや、何でもないんだよ、蘇部くん」

殊能はずっと考えていた。とある可能性について。

もちろん、一連の「串刺し公」事件についてではない。
それについての探偵役は石崎くんと氷川くんだ。
冗談ばかり言ってるように思われがちだが、彼らはああ見えて優秀だ。
あの二人に任せておけば、間違いなく遠からず真実に到達し、事件は解決するだろう。

そう、三つの「串刺し公」事件については、確実に。
311名無しのオプ:03/01/24 17:51
もちろん彼らの推理力が、名探偵と称しても遜色ないものであるのは間違いない。
が、彼らの推理は、良くも悪くも正攻法だ。
彼らにこの事件の裏に隠された真相めいたものに辿り着けるかどうかは、正直、微妙なところだろう。

というより、ぼくがそれに気付くきっかけとなったあの「謎」に関しては、
例えそれに気付いていたとしても「謎」とすら認識しない可能性が高いだろう。
能力云々の問題ではなく、学園の生徒、学園の関係者であるかぎり避け得ない、
ある種の常識というか先入感の問題で。

もちろん、それとは別の経路から、彼らが真相に到達することは、十分に考えられる。
その場合はこの推理は全て無駄になるが、そのときは名探偵に拍手を贈るだけの話だ。

そう、ぼくも先ほどまでそのことを「謎」として認識していなかった。
高田くんと乾くんによってもたらされた、とても奇妙なはずなのに、
何故か誰もが「謎ではない」として無視してきた、あの出来事の意味することを。
そして、この雪山に自由に出入りしているにも関わらず、
当然のように事件の圏外に置かれている「彼」の、「物語」における意味について。

もちろん、物理法則も時空も無視する「彼」の行動には、理由も根拠も、そして意味すら存在しない。
そう切り捨てるのが学園に関わるものの常識だし、それはたぶん正しいのだろう。
が、たとえ「彼」の行動にあらゆる意味がなかったとしても、
「彼」が存在するという事実に意味がないとは言えないのではないか。
そう、メタと現実が奇妙に交差する、このような事件においては。

この謎と言えるのかどうかも定かではない下らない代物を解くためには、
「こちら側」からは窺い知ることのできない、とある情報がどうしても必要だ。

ぼくはその情報を入手すべく、虚空に向かって問いかける。

殊能「積木くん、ひとつだけ確認したいことがあるんだ……」
312名無しのオプ:03/01/24 17:52
積木くんからの返事は返ってこない。

が、ぼくはそのまま待ち続ける。

もちろん手はひとときも止まらず、我ながら手際よく料理を作り続けている。
恐らく、外部からぼくがメタの領域に入り込んでいることを察知するのは不可能だろう。

蘇部「ねえねえ、殊能くんってば、なんか上の空って感じだよ」
殊能「そんなことないって、さあ、みんなのために美味しい料理を作ろう」
蘇部「……うん、そうだね」

心配げな顔のまま、作業に戻る蘇部くん。
やれやれ、彼だけは騙せないね。
大丈夫、君が心配しなきゃならないようなことは、何ひとつ存在しないんだから。

と、そのとき、ぼくの脳内に静かな声が鳴り響いた。
313名無しのオプ:03/01/24 17:53
積木「……殊能か……既にこちらからの「回線」は遮断済なのに、強引に干渉してくるとは流石だな」
殊能「やあ、積木くん。ひとつだけ聞いておきたいことがあるんだけど」
積木「……残念だが、既に俺たちは「真相」を悟ってしまった。
   よって、もうそちらの事象に干渉はできない。
   それはミステリの「ルール」から逸脱した「アンフェア」な行為だからな」
殊能「やれやれ、ぼくが「カンニング」をしようとしてるとでも思ってるのかい。
   そんなにぼくが信用ならないかな」

大げさにため息をつく。もちろん実際にそうしたわけではない。あくまでニュアンスの問題だ。

積木「もちろん。なんてったってお前には「前科」があるからな」
殊能「まあね。「あれ」は普通の読者なら頭にくるところだろうね。
   でも今回の質問は「アンフェア」とは言えないと思うよ。
   いや、ある意味、この情報がぼくらに与えられないことの方が「アンフェア」と言えるだろうね。
   「こちら側」が現実と虚構が入り混じった虚構としての現実であることを考えるとね」
積木「……なるほど、世界が「繋げられて」しまった以上、「こちら側」の出来事であっても、
   「そちら側」の事象に影響を与えた場合は、その情報は何らかの手段で知り得るものであって
   しかるべきということか……まあいい、答えられる質問なら答えよう。何が知りたいんだ?」
殊能「心配しなくていいよ。まさにどうでもいい質問だから」

そして、ぼくは、本当にどうでもいい質問をする。

殊能「知りたいことはただ一つ。清涼院くんが何をしていたかについてだ」
314名無しのオプ:03/01/24 17:54
積木「は? いや、そもそもあいつの行動に意味なんてものは何一つ存在しないし、
   あいつの行動を聞くことがそちらの事件の解決に役立つとは到底思えないんだが……」

流石に虚を突かれたのか、積木くんの声に戸惑いが感じられる。

殊能「ああ、もちろん、「そちら側」での行動については不要だよ。
   要は、彼が「そちら側」から「こちら側」に接点を持った時の様子だけを教えてくれればいい」
積木「あ、ああ……もちろんそれは構わんが……」

積木くんから情報が送られてくる。
なるほど、確かにナンセンス極まりない。これ自体に「意味」を見出すことは不可能だろう。

積木「なあ殊能、これを言うのもルール違反なんだろうが、清涼院が事件に関与しようとしたってことはないぞ」
殊能「もちろんそれは判ってるよ。なるほどね、ありがとう。これでおおよその目星はついたよ」
積木「……まあいい。これで俺からの「そちら側」への干渉は終わりだ。後は自分たちで解決してくれ」
殊能「ああ、解決不可能な設定でない以上は、必ず解決できるさ。じゃあね」

そして積木からの「通信」は途絶え、二つの世界は遮断された。
これで「メタ」の時間はおしまいだ。
今から始まるのは、論理と事実のみが支配する、ごくありきたりの世界。
315名無しのオプ:03/01/24 17:55
殊能「さてと、後は新堂くんに確認をとって、と」

幸運なことに、新堂くんは舞城くんたちと揃って、山荘に戻ってきていた。
秋月くんを蘇生させようとする大騒ぎを無視し、ひとり悠然とくつろいでいた新堂くん。
そんな彼にひとつ質問をして、思っていた通りの答えを得た。

よし、これで「動機」と「経過」は把握できたと思う。あと判らないのは「手段」だけだ。
これについてはなんとでもなると言えばなんとでもなるが、それではどうもしっくり来ない。
まあ、これについてはいずれ明らかになるだろう。
全ての情報がひとつにまとめられる場所において。
明らかになったとしても、それを発表する機会があるかどうかはさだかではないけど。

ぼくはすぐに食堂に戻り、料理の仕上げに取り掛かる。
ここでしくじると折角の手間暇かけたごちそうが台無しだ。慎重に、慎重に。

蘇部「殊能くーん、できたよー。これはどうするのー?」
殊能「ああ、それはこのお皿に盛り付けてくれるかな」
蘇部「でも美味しそうだねえ。ああ、早く食事の時間が来ないかなあ……」
殊能「ふふっ、つまみ食いはダメだよ、蘇部くん」

準備万端。これで後は、間近に迫った「解決編」の開催を待つだけだね。
316名無しのオプ:03/01/24 18:58
>いや、そもそもあいつの行動に意味なんてものは何一つ存在しないし、
ひでぇ(笑
317名無しのオプ:03/01/24 19:34
佐藤は、一人呆然としていた。

暖炉前では高田が秋月の側にずっとついていて、幾度か周りの人間に指示を出していた。
高田はずっと深刻そうな表情だったが、今し方、どうやら秋月は「もう大丈夫」な状態に落ち着いたらしい。

それでも、佐藤は一人呆然としていた。この状況がうまく飲み込めない。

あのとき、自分と舞城の前に現れたのは、新堂と中島だった。
別にそれ自体は驚くべきことではない。自警団である二人は今回の事件が起こる前から山へ入っていたのだから。
驚いたのは、この吹雪の中胴着一枚という格好だった中島…ではなく、その彼が担いでいた秋月だった。
新堂と中島は、山荘へ戻る途中で倒れている秋月を発見したのだという。

中島「驚いたさ、そりゃ。何で普段着で秋月が倒れてるのかってな、わけがわからん」

しかし訳が分からないなりに、彼らは手持ちの荷物から寝袋を出すとそこへ秋月を放り込み、
ホッカイロやら何やらを全てその中へぶち込むと、急いで再び山荘を目指した。
その途中で、秋月と北山を捜して例の血染め雪を発見していた自分たちを見つけたというわけだった。

秋月の心配などしていないつもりだったが、彼の真っ白な顔色を見て背筋に冷たいものが走った。
だから、なぜか自分も必死になって、舞城たちとこの山荘へ全速力で戻ってきた。
そして、今に至る。
秋月を高田たちに任せて、一人少し離れたところでその騒ぎを見ながら、ようやく彼はその疑問に思い至ったのだ。

それではあの血は一体誰のものだったのか…?
今回の合宿とは…というか、浦賀先輩は関係のないものだったのか?
いや、それは考えにくい、考えられないと、佐藤は思っている。
318名無しのオプ:03/01/24 19:39
最初秋月を見たとき、「ああ、つまりこの血は北山のなんだな」と納得していた。
しかし、新堂たちの話では、北山はそれより前に彼らに遭遇し、そのまま山頂へ行ってしまったという。
諦めて山荘へ引き返すような雰囲気ではなかったらしいから、あの血が北山のものだとは考えにくい。
しかし、秋月と北山でないとすると、あれは誰の血になるというのだ?

舞城はあれが秋月たちのものでは無いことがわかっていたのだろうか?
だから捜索を続けると言ったのか?
だからいきなり笑い出したのか?
だから秋月を見たときも驚かなかったのか?

いや、それだけでは、あのときの奇行は説明できそうにない。
あの妙なポーズも意味がわからないし。
大体、血を見ただけで「ふむふむこれは秋月や北山の血ではないぞ」と判断出来るわけがない。浅暮の嗅覚じゃあるまいし。

舞城の姿を探すと、彼はソファにぐったり寄りかかっていた。さすがに疲れたのだろうか。
(そういえば、僕も疲れたな…)
らしくもない行動を短時間の間にいくつもとった所為だろうか。
(まあ、疑問を舞城にぶつけるのは、また後にしよう…)

珍しく穏やかな気分だった。秋月が助かって安心したのだろうか。………まさか、ね。
319名無しのオプ:03/01/24 19:41
すげえ緊迫感を増してきた……
「ウロボロスのメフィスト学園」だなこれは
320名無しのオプ:03/01/24 20:41
絶好調ですな。本にしてほすい。ねっころがってゆっくり読むんだ〜
321名無しのオプ:03/01/24 21:17
北山と石黒は、山の中腹で立ち往生していた。

北山「ねえ、石黒君。僕たち、何だかやばくない?」

計算だともうそろそろ山荘へ着いても良い頃なのに、山荘の灯りも何も見えてこない。
吹雪はますます激しくなり、きちんと装備をしているとはいえ、寒さで指先の感覚がない。
慣れないスキーで滑り降りてきて、体力も残り少なくなっていた。このままでは危険だ。
北山は遭難という言葉を強く認識する。

対して石黒は、流石というか何というか、やはり冷静だった。
石黒「ふむ…あの場所からまっすぐ進めば山荘へ辿り着くのに間違いはなかった。
   つまり、僕たちはまっすぐ滑っているつもりで、実は少しずつカーブしていたのだろうね」
北山「カーブって…確かに前もロクに見えてない状態で滑ったからね…って、違うって!
   今はそんなに悠長に原因を究明してる場合じゃなくて…!」
石黒「さっきも言っただろう?こういう時こそ冷静でなければならない」

落ち着いた様子で、石黒は周りを見渡している。
その姿に北山はまた声を荒げそうになったが、山頂での会話を思い出して深呼吸する。

そうだ、冷静にならなければ。ここでパニックになったら余計に状況が悪くなる。
自分たちが火山のことを山荘のメンバーに知らせなければ、全てが無になってしまう。

しかし、一旦途中まで引き返すことも出来ない。どこまで引き返せば良いのか検討がつかない。
どうすれば良いんだ?考えろ、考えろ、考えろ…
322名無しのオプ:03/01/24 21:19
北山が頭を抱えていると、周りを見渡していた石黒が、ん?と呟いた。見ると、何か一点をを見つめている。

北山「何?もしかして山荘が見えた?」
石黒「いや……あれは何かなと思ってね…」
言いながら、彼は三メートル程先へ歩いて行って身体をかがめる。そして、立ち上がった彼の右手には。

北山「え…それ、缶詰?良く見つけたね、そんな小さいもの」
石黒「これは…登山者が良く携帯している、非常食だね。何でこんなところに?」
考え込む石黒。
北山はその彼の更に向こう側を何気なく見てみる。すると、また十数メートル先に何か落ちているのが見えた。
慌てて近づいてみると、それも缶詰。またその先にも何かがうっすら見える。

北山「……これを辿っていけば、山荘に着けたりしないかな?」
石黒「確証はないが…少なくとも、これを落とした人物の元へは辿り着けるだろうな」
北山「じゃあ早く行こう!雪で缶詰が埋もれたら大変だ!」
石黒「よし、行こう。……しかし、これじゃまるでヘンデルとグレーテルだな」

残り少ない体力を振り絞って、二人はまた進み始めた。
323名無しのオプ:03/01/24 21:33
ああ、霧舎の妬みが役に立ってるよ。
びば、職人さま。ラストまでぶっちぎり〜
324名無しのオプ:03/01/24 21:50
>>298-300より

日明「ひっ!!」

私はいきなり肩を叩かれ、全身の血が凍りついたかのような悪寒に襲われた。
悲鳴を上げようにも、喉が締め付けられるかのように痙攣し、少しも声が出ない。
外には殺人鬼がうろついているっていうのに、どうして一人で出てきちゃったんだろ。
私ってバカだ。このまま死んじゃうんだろうか。

しかし、背後の殺人鬼はそれ以上の行動を起こさなかった。
私は全身の力を振り絞り、ゆっくりと振り返る。

そこにいたのは――安堵半分、怪訝さ半分の表情をした乾君だった。

乾 「高田くんから、夕食後に全員、広間に集まるように伝えといてくれって言われたんで、
   どうしても日明さんが見つからないんで、探してたんだよ。
   それにしてもどれだけ探してもいないはずだよ、まさか外にいるだなんて」

どうやら相変わらず高田にパシらされていたらしい。
まったく、つまんない男。こんなだから少女小説まがいのセクハラポルノしか書けないんだわ。
私は死ぬほど驚かされた恨みもあって、ついつい目の前の男に対して辛辣なことを考えた。

日明「わ、わかったわ。私もすぐに山荘の中に戻ろうとしてたところだから」
乾 「でも、なんで外なんかに出てたんだい? 危険だっていうのに」
日明「ち、ちょっと外の空気が吸いたくなっただけだって、さあ戻りましょ」

乾君が気付かないように、慌てて彼を押すような格好で屋内に戻ろうとする私。

乾 「わっ、押さないでよ、日明さん。危ないじゃないかい……ってこの部屋、笠井先生の部屋?」

しまった。気付かれた。
325名無しのオプ:03/01/24 21:51
乾 「先生、声かけても出てきてくれないんだよねえ。どうしてるか、ちょっと覗いてみよ」

そう言うと、窓の中を覗き込もうとする乾君。
慌ててその前に立ち塞がる日明。この中の光景は誰にも見せてはならない。
もしこの中の出来事を見ていい人間がいるとするなら、それはそう、私だけなんだから。 

日明「ほ、ほら、中なんて見えないわよ。ちゃんと板が打ちつけてあるじゃないの」
乾 「あー、それもそうか」

そう、一連の事件のせいで(ていうか殊能君と舞城君の仕業なんだけど)、
笠井先生の書斎の窓には大穴が開いちゃって、分厚い板を打ち付けて風が入らないようにしてある状態。

乾 「じゃあ仕方ないか。あーあ、せっかくの笠井先生に取り入るチャンスだっていうのに……」

ぶつぶつ言いながらも、山荘内に戻っていく乾君。
その後ろについていきながら、こっそりとぺろりと舌を出す。
ごめんね、乾君。実は板の隙間から、ちょっとだけ中の様子が見えてたんだ。
でも、あれを他人に見せるわけにはいかないのよ。これはプライドの問題なんだから。
そう、このことは絶対に秘密。誰にも知られちゃいけないんだから。

日明「はいはい、戻りましょ。夕食までもうすぐだし、広間でくつろいでましょう」

私は山荘の中に戻りながら、もう一度笠井先生の書斎の窓を見つめた。



……ところで私って、こんなに乙女ちっくなキャラだったかしら???
326名無しのオプ:03/01/24 23:38
遂に山荘に浦賀以外全員集合?
石崎・氷川の謎解きが楽しみだ。
あと、殊能の独白も一体何なのか気になるな。

にしても、今回のスキー合宿篇、キャラが立ったやつが多いよなあ。
327名無しのオプ:03/01/24 23:48
>>326
実は既に浦賀も山荘周辺でなにやらやってたり。

登場人物全員集合で解決編か。まさに王道だ。
328名無しのオプ:03/01/25 01:15
一応解決編らしき物を書いておりますが……長い……
少しずつ上げていった方がいいのかな……
329名無しのオプ:03/01/25 01:26
>>328
漏れは一気に一票
330名無しのオプ:03/01/25 08:37
ヴラガファンとしては解決篇楽しみだ。
331名無しのオプ:03/01/25 08:58
>328
謎ときの部分はやはり一人の職人さんにお任せした方が良いだろうし、
謎解きの途中で別のネタ入れるのも話の腰を折りそうだから、
おとなしく待っておきます。時間を見て上げていって頂ければ。

頑張れー!
332名無しのオプ:03/01/25 09:52
>>328
正直、ある程度小出しにしてもらった方がありがたい。
333名無しのオプ:03/01/25 12:05
職人さんそれぞれの解釈で書いてもらって
パラレル構造にするのもおもしろいかも、かも
334名無しのオプ:03/01/25 12:09
展開ってものは、それぞれの職人の書き込みの結果として決まるもの。
外野がそれに枷をかけるようなことを言うのはイクナイ!!

などと風紀委員を気取ってみるテスト。
335名無しのオプ:03/01/25 12:59
格好いい殊能に期待
336名無しのオプ:03/01/25 15:08
森 「さて、いよいよ山荘を取り巻く一連の事件もクライマックスが近いようですね。
   まあ森には関係ない出来事なので、これっぽっちも興味ありませんが(笑)」
生垣「まあ、せっかくのエンターテイメントだ、観客として大いに楽しませてもらうとしよう。
   しかし、既に真相を知ってしまってるってのが、ちょいとばかり興醒めなところだね」
古処「むむむ。ネタバレは重大な“ルール”違反である。こればかりは男一匹、軍法会議ものである」
積木「……ゴメンナサイ(汗」
黒田「あのー、一応、こっちの事件も未解決なんだけど……」
竹 「むーっ、いーちゃんも御大ちゃんも戻ってこないし、僕様ちゃんつまんない」
森 「こっちの事件にも、清涼院くんと西尾君が、上手くオチを付けてくれるといいですね。
   まあ清涼院くんに『オチ付く』なんて表現は似合いませんか(笑)」
337名無しのオプ:03/01/25 15:30
>>328
自分としては必要な伏線は一通り貼り終えたんで、あとは石崎&氷川の解決編待ちです。
できればある程度小出しにしてもらえると有難いですが、やりやすいようにやってくださいませ。
(その都度こっちの修正ができるので)
338名無しのオプ:03/01/25 17:07
西尾&清涼院でやりたいネタやッちまったですし

こっちの犯人は『竜の人』でいこっかなーとか思ったけど
山荘と同一人物と>>235で確定されちゃったしなー
学園内で勝手に動くわけにはいかないかと
339名無しのオプ:03/01/25 17:35
>>338
いや、235を(メール欄)と解釈すれば、同一犯と確定されたわけではないと思う。
辻褄はいくらでも合わせられると思うし、好きに動かしちゃっていいと思うよ。

つーか、同一犯ってことにされるとこっちも困るw
340338:03/01/25 19:10
>>339
ん?すまんです。そちらの(メール欄)で
>>そのとき、犯人だけ学園に戻り、居残り組の事件を起こした。
が覆る理由が不明。

いや、積木が嘘吐きだって事にすれば問題無くなるのか。
341339:03/01/25 20:36
いや、だから(メール欄1)って解釈で。ほら、この後たぶん(メール欄2)があるわけだし。
これが唯一絶対の辻褄あわせの手段ってわけじゃないし、多分後からなんとでもなる。

つーか、私が235書いたわけじゃないんで、強引なのは勘弁してくれw
342名無しのオプ:03/01/25 21:13
職人さん方の苦労を考えない無責任発言ですが、
うぉれは面白ければallOK!と思う次第です。
というか、今回のスキー合宿は見所が多すぎてどれをメインに面白がればいいのか
本気で悩むんですが・・・・・

まぁ、そこはそれ。

職人さん、頑張ってください!
343328:03/01/25 21:32
ありがとうございます。
キリのいいとこで切りつつ上げて行きます。
辻褄あわせの都合で、ちょっとご迷惑をお掛けするかとも思いますが。
では。
344名無しのオプ:03/01/25 21:35
石崎「噴火?」
石黒「ああ、そうだ。あと数時間で、この山は爆発する」

 山荘に辿りついた石黒は、石崎を呼んで言った。
 北山はといえば、山荘に着いた安堵でソファに崩れ落ちている。

石崎「で、なんでそれを俺だけに言うんだ?」
石黒「北山君からおおよその事情は聞いている。非常時には、集団の統制が取れていることが重要だ。今のような疑心暗鬼の状態では、皆に知らせてもパニックを呼ぶだけだろう。安全な避難もままならない」
石崎「山を下りる前に、とっとと事件を解決しろって訳か。わかったよ。どうやら、舞城たちも帰って来たし、秋月も落ち着いたみたいだしな。あ、そうだ」
石黒「何だね?」
石崎「山に登る時、この山荘に寄らなかったか?」
石黒「いいや。どうしてだね?」
石崎「日明が事件の直後に、黒い人影を見たって言ってるんだ。てっきり探知機を抱えたあんただと思ったんだが……あれが推理に収まりきらないんだけどな。まあいい、始めるとするか」
345名無しのオプ:03/01/25 22:47
広間の空気は久方振りに落ち着いたものだった。

秋月は、雪の所為で体温が非常に低下していたとはいえ、発見が早かったのが幸いして今はすっかり回復している。
本来なら自室のベッドで休ませるべきなのだが、またすぐに起こされるであろうことを見越して広間にあるソファに寝かされている。

その横には一応高田が控えているが、秋月を「もう大丈夫だ」と判断してからは、薬草採取の記録をノートにしたためていた。
ずっと厳しい表情だったのだが、今は楽しそうに薬草の束を手にとってはペンを走らせている。

先程山荘に無事帰還した北山は、ソファにぐったりもたれてコーヒーを飲んでいる。
見た目にはかなり疲れているようだが、その根本にある表情は決して暗いものではない。

秋月を担いでかなりの距離を踏破した中島は、何故か筋トレを始めている。さっきまでは腕立て伏せで、今は腹筋。
今日一日の殆どを雪山で過ごしたというのに、まだ体力が余っているらしい。さすがと言える。

新堂も、中島と同じく今日一日を捜索に費やしたのだが、その疲れは微塵も伺えない。
今は暖炉の前にあぐらをかき、霧舎を相手に花札を始めてしまっている。にやにや笑っているのを見ると、どうやら賭けているようだ。

本日一番怒鳴ったであろう舞城は、カーペットに座り込み、秋月とは反対側のソファに寄りかかってうたた寝をしている。
彼が人前で無防備に寝ているのは珍しいような気がする。いつの間にか、その身体には毛布がかけられていた。

佐藤も珍しいことに自室へ引き上げることもなく、広間のテーブルにつっぷしている。
舞城と同じくやはり肩に毛布がかけられていて、殆ど動かないところを見ると眠っているのだろう。
346名無しのオプ:03/01/25 22:48
霧舎は新堂相手に花札をしている…というか、多分半ば強引に相手をさせられていて、泣き笑いのような表情を浮かべている。
時たま高里の様子が気になるのか、ちらちら視線をやっている。

その高里は、テーブルの上にノートパソコンを置いて何やらキーボードを叩いている。
秋月・北山の失踪騒ぎがあった辺りでは沈んだ表情をしていたが、今は安心したのか、明るさを取り戻している。

津村はソファに座って俯いている。どうやら体調が悪いらしい。
たまに顔を上げては首を傾げ、頭を振ったりしている。その度に高田が濃度がどうとか後遺症がどうとか呟いているが、何故だろう。

浅暮は、新堂と霧舎の花札を横で見ながら酒をあおっている。さっきとはまた別の酒を飲んでいる。本当に彼は底なしだ。
たまに面白半分に霧舎にアドバイスしているが、あまり的確ではないようだ。

殊能と蘇部は、夕食の準備と言って食堂へ行ってしまっている。
さっき見たときは、二人の表情は明るいものに戻っていた。ただ、殊能が何か考えて込んでいるようにも見えたのだが…

乾は今回の合宿では、ため息ばかりついている。しかし、それほど深刻な心情から出ているのではないようだ。
今はカーペットに座り込んで退屈そうにしている。

日明も疲れてはいるようだが、特にそれを苦とも思っていない様子。
テーブルで高里の対面に座り、所在なさげにしている。時折、何かを思い出すような素振りをしてはいるが。
347名無しのオプ:03/01/25 22:51
氷川は先程広間に来たのだが、またすぐに出ていった。食堂へ行ったらしい。
相変わらず真面目な表情をしていたが、彼にはもう、わかったのだろうか?

石黒の姿は今はない。
帰還してすぐ、石黒が石崎を探して出ていったきりだ。

浦賀の姿は、こちらへ来てまだ一度も見ていない。今もこの吹雪の中を彷徨っているのだろうか。

広間の空気は久方振りに落ち着いている。
普段は雑念を取り払うために目を瞑っているが、今見ているこの光景は、不思議と心が安らぐ。
目を閉じ耳を塞ぐことだけが、道だけではないような気がしてくる。

広間に誰かが近づいてくる。……あの足音は、石崎だ。

事件は、もうすぐ、終わるのだろう。

根拠も何もなかったが、古泉はそう確信した。
348名無しのオプ:03/01/25 23:18
おお、素晴らしい。見事なまでの解決編への導入だ。ところで笠井先生は? 

……などと無粋を承知で聞いてみたりするテスト。
349名無しのオプ:03/01/25 23:39
>348
しまった…!忘れて(ゴホゴホ)
えー、生徒のみの描写ということで…どうでしょうか。
しかし、それを除外しても石黒の箇所の文が変だし…。失礼しました。
350名無しのオプ:03/01/25 23:49
あくまで個人的願望としては、笠井先生には串刺し公事件の解決編にいてもらいたい。
当方、そう希望するところであります。もちろん必然性があるなら出さなくていいっす。
ほら、解決編にそこまでに判明してる登場人物が全員引っ張り出されるのはお約束ってことでw

特に出番はなくていいんで(あ、もちろんあってもいいんですけど)。
 広間には、山荘の全員が集まっていた。
 先程はいなかった殊能や蘇部、笠井。そしてもちろん、石崎と氷川の姿も。

氷川「こうして集まってもらったのは、他でもありません」
 氷川が口を切った。
氷川「この山荘で起きたいくつかの事件について、僕たちの意見を聞いてもらうためです。と、その前に」
石崎「自首したい者は、今この場で手を上げて欲しい」
 石崎が右手を上げる。
石崎「言っておくが俺たちは、既に真相に辿り着いてる。先に名乗り出ておいた方が、心証が良くなるぞ」

 しばし沈黙が、場を支配した。

北山「あの……」

 北山が口を開こうとした、その時。
 スッと、一本の手が挙がった。

??「僕がやりました」
北山「え……」
笠井「何?」
蘇部「……」
全員「ええっ!」
舞城「まさか……殊能……」
殊能「ええ」

 殊能将之が立ち上がる。

殊能「犯人は、僕です」
352解決編1・2/7:03/01/26 00:12
舞城「な……」
殊能「動かないで!」
 素早く笠井の後ろに回り込み、襟首を締め上げる。
 舞城の動きが止まる。殊能の手に、ハサミが光っていた。
殊能「ボウガンを仕掛けたのも、北山君を襲ったのも僕です。笠井先生の蘇部君に対する仕打ちが、許せなかった……! 最後の事件は、蘇部君から嫌疑を逸らすためです」
日明「そんな、だって殊能君、ずっと蘇部君と一緒にいたって……そうでしょ?」
蘇部「……」

 蘇部は答えない。

日明「……蘇部君」
北山「違う! 殊能君は犯人じゃない!」

 北山が叫んだ。

石崎「違うって北山、おまえ犯人の顔は見なかったって言ってたじゃないか」
北山「ええ、そう言いました。でも殊能君じゃない! だって、だって……」

 北山は石黒を見た。石黒はただ、静かに北山を見返している。

北山「あれは、僕だから。僕が自分でやったんです。……ごめんなさい」
353解決編1・3/7:03/01/26 00:15
氷川「そうか、北山君は最初から、何もかも話してくれるつもりだったんだね」
 氷川が言った。
氷川「こんなお芝居をして、本当に悪かった。謝るよ」
舞城「……芝居?」
石崎「そういうことさ。おい、もういいぞ、殊能」

 殊能は笠井を放し、何事もなかったような顔で席に戻った。
 笠井は放心したように座り込んでいる。

石崎「蘇部に串カツ、ってのも考えたんだが、どう考えても絵にならないしなあ。殊能なら、舞城にボコられる心配もないし」
氷川「さっき、食堂で打ち合わせしたんです。蘇部先輩にも、何があっても黙っててください、ってお願いしてね」
舞城「氷川、石崎ぃ……!」
石崎「ビフテキを騙すならとんかつからって言うだろ。……悪かったな舞城、おまえには本当に感謝してる」
舞城「……けっ」

 石崎の言葉に毒気を抜かれたのか、舞城は戻っていった。
354解決編1・4/7:03/01/26 00:18
北山「僕がいけないんです……浦賀君の影に脅えて……僕が屋敷の中で襲われれば、みんなが信じてくれると思って……自分の思い込みの中に閉じこもって……ごめんなさい……ごめんなさい……」
氷川「わかった、もういいよ、北山君」
 訴える北山を、氷川がなだめる。
氷川「もし良かったら、少し時間をくれないかな。僕の仕事がなくなるんでね」

 北山が頷く。氷川は立ち上がり、一同を見回した。

氷川「まず、第二の事件から検証していきます。現場がどんづまりであったこと、北山君にケガがなかったことから、石崎さんと僕はまず、本人の狂言を疑いました。だがある理由から、その説を捨てざるを得なかった」
高田「ある理由?」
氷川「時間です。状況から考えて、北山君がこの計画を思いついたのは、舞城君が破壊活動のために部屋を出ていって以降。しかもその後、北山君がしばらく一緒にいたのを僕たちは見ている。そうだったね、霧舎君」
霧舎「あ……うん。確か僕が見張りに立候補したときに、北山もいたと思うよ」
355解決編1・5/7:03/01/26 00:31
石崎「しかも、北山の髪は濡れていなかった」
 石崎が付け加える。
石崎「俺たちも試してみたが、この吹雪じゃすぐに雪が吹き込んで来る。髪も服も濡らさずに、軒下のツララを取ることは難しい」
氷川「仮にこう考えてみましょう。北山君がポットを用意し、ツララを取って入れる。髪と服を乾かし、現場へ行き、ツララで服を刺して横たわる」
 氷川は続けた。
氷川「しかもその後、ツララが溶けるまで、北山君は発見されることがなかった。舞城君が到着した時、ツララは影も形もなかったんですよね?」
舞城「ああ、間違いない」
氷川「北山君が出ていってからの時間では、到底できない相談です。せいぜい現場についてすぐに刺されて被害者になるくらいが関の山だ。そう思いますよね、みなさん?」
 いささか不審がりながらも、何人かが頷いた。
石崎「そこなんだよ」
 石崎がにんまりと笑った。
石崎「そう考えた俺たちは、まんまと北山の術中に嵌まったんだ」
森 「やれやれ、あちらは文字通りのクライマックスみたいですね。しかも先はそこそこ長そうですね。
   どうですか、積木君、ちょっと助け舟を出してあげては。あ、これってもしかしなくても禁句でしたか(笑)」
積木「……も、森くん……そんなにいじめないでよぉ……」
黒田「まあ、ネタバレという、およそこの世の中に存在する限りの大罪を犯してしまった以上、
   ある程度虐められるのは仕方ないよなあ」
古処「ううむ、秩序の維持のためにはある程度の犠牲は仕方ない、
   そう考えてしまう自分の非情さが恨めしい、男一匹なのである」
生垣「まあまあ、あんまりMr.積木を責めちゃいけないよ。彼も悪気があったわけじゃないんだから」
竹 「むーっ、でもつみつみったら、いーちゃんや御大ちゃんの邪魔までしちゃってるし」
積木「あ、あれは、つい調子に乗って、口が滑っちゃっただけなんだってばぁ……」
古処「罪を憎んで罪を憎まず、それが紳士たるものの務めである。許してあげてはくれまいか、竹嬢」
黒田「ああ、懐かしいねえ。大巨人かぁ、性格悪かったよねぇ」
竹 「……うーっ、僕様ちゃん、そんなの知らないもんっ」
積木「ううっ、何も世代の違いまで見せつけなくても……もう、勘弁してくださいよぉ……」
森 「積木くん、反省するだけなら猿でもできますよ。大切なのは、反省が相手に伝わることです」
積木「……森くん、この映画のペア招待券、僕は使わないんで活用して貰えると助かるんけど……」
森 「皆さん、終わったことをほじくりかえすのは不毛です。未来志向でいきましょう(笑)」
黒田「うわ、相変わらず森君は森君でありまくってるし」
竹 「……もういいよ。あ〜あ、いーちゃんと御大ちゃん、早く事件を解決して戻ってこないかなぁ……」
積木「ぐすっ……なんで僕がこんな羽目にぃ……ううっ、それでは解決編の続き、どうぞぉ……」
357解決編1・6/7:03/01/26 00:34
乾「ええと、術中って?」
石崎「ツッコミになってないぞ乾。まあこっちの事件については、氷川の担当だからな。氷川、続き頼む」
氷川「はい。濡れた服、転がったポット、吹雪の山荘。そして、串刺しと言うキーワード。それらから、僕たちは真っ先にツララという凶器を想像してしまった。それがそもそもの間違いだったんです」
蘇部「まちが……い?」
氷川「ええ。恥ずかしい話、僕も石崎さんもそれにまるで気づかなかった。石崎さんが、僕にたっぷりビールをかけてくれるまではね」
石崎「だからあれはわざとじゃないって言ってるだろ? しつこいなおまえも」
氷川「(無視して)つまり、広間を出てからの北山君の行動はこうです。ポットに水を入れ、現場まで行く。服に穴を開け、水を掛けて現場に横たわる。それだけだったんです」
日明「え、それじゃあ……」
氷川「ええ、ツララなんて、この計画のどこにも存在しない。北山君が用意した『幻のツララ』を、僕たちは見せられてしまったんです」
 これでいいかな、と氷川は北山に聞いた。
北山「……はい」
358解決編1・6/7:03/01/26 00:45
石崎「考えてみりゃ、単純なトリックなんだ。あらかじめ小さなのを開けときゃ、トレーナーの穴なんて指でいくらでも広げられるしな。俺もそれで、何枚トレーナーを駄目にしたことか」
氷川「何枚もですか? それは単純に、学習能力がないだけなんじゃあ……」
石崎「うるさいな。ともかくそれで、所要時間は大幅に短縮出来る。ついでに発見者にも、ずっと前にそこに倒れていたように錯覚させられる」
 石崎は頭を掻いた。
石崎「ツララを取るために窓を開ける必要なんてないんだから、濡れる訳がないんだ。ポットと水だけでこれだけの状況を演出したんだから、大したもんだよ」
舞城「北山ぁ……!」
 思い出したように舞城が声を上げる。無理もない。北山を一番心配していたのは、間違いなく彼なのだ。
石崎「まあまあ、誰かを傷つけようとした訳じゃないんだ。許してやれよ。しかしあの短時間で考えたトリックにしちゃいい出来だ。はあどかばあ大学も夢じゃないぞ、北山」
359解決編1・7/7:03/01/26 00:50
氷川「ハードカバーかそれとも大学か、どっちに突っ込めばいいんですか。わかりにくいボケはやめてください」
石崎「お前のわかりにくいツッコミよりましだろう」
乾「だからあ、ツッコミなら僕に任せて……」
氷川「(無視)問題は浦賀君に怯えるうちに、北山君自身が襲われたのを事実だと思い込んでしまったようで。殊能君に頼んで、あんな狂言を仕組んだんですが……どうやら、杞憂だったようですね。すみませんでした」
 そして彼は石黒に向かって、深々と頭を下げた。
笠井「ふん、馬鹿馬鹿しい」
 笠井が首筋を撫でながら言う。
笠井「そんなことのために、何故私がこんな目に合わなければいけないんだ。貴様らまとめて退学だ、退学」
360350:03/01/26 01:00
>>351-355>>357-359
貴君の寛大さに尽きせぬ感謝を。
あ、こっちは特に急がないんで、解決編はそちらのペースでじっくりと続けてくださいませ。

内輪っぽくなるのもアレなんで、以後レスは慎みますです、はい。
361名無しのオプ:03/01/26 02:32
ただただ快哉を叫ばずにはいられないね、この解決編は……。嫉妬せずにいられない。
362名無しのオプ:03/01/26 07:49
おおおおおおおっ
363戯言探偵?西尾維新:03/01/26 08:22
僕は考えていた。とはいっても、消えてしまった御大の行方を心配しているわけじゃない。
御大のことだ。きっと雪山に遊びにいって雪だるまを作っていたり、とある山荘のワイン
セラーで高級酒をあさっていたり、ホテルに缶詰になってカーニバルの改稿をしていたり
するのだろう。そのうちひょっこり帰ってくる…と思う。
それにしても「竜」とはいったい何のことだろう。龍宮の龍ではないみたいだけれど。竜
というからには西洋の幻想獣をさすのだろうか。ドラゴンといえば……、ドラゴン、ドラ
ゴン、……中日ドラゴンズ、森委員長、黒田先輩。これは戯言だな。
御大は先生方にアリバイがないと言っていた。犯人は先生達なんだろうか? 確かに一見
アリバイはないように思える。でもそれは僕達が誰も先生達に会いに行ってないだけの話
なのだ。もしかしたらアリバイがあるのかもしれない。みんなで鍋を囲んでいたかもしれ
ない。いや、そもそも、本当に綾辻先生や法月先生は今この学園内にいるのか? それす
らわかってないじゃないか。それに、黒田先輩のあの謎のうわごとは事件に無関係なのか?

御大…、黒マントをはおった清涼院流水。恰好は龍宮だったが、御大の探偵としての本質
はやっぱりメタ探偵だろう。
そして僕は思う。果たして御大はど・ん・な・メタ探偵なのだろうかと。
364戯言探偵?西尾維新:03/01/26 08:24
『コズミック』を思い出す。JDCには3人のメタ探偵がいた。九十九十九と天城漂馬…
そしてピラミッド水野。
黒田先輩の「じゅうく」といううわごと。九十九十九は事件解決のための情報が得られれ
ば必ず真相を悟る。はたして今回の事件においての手がかりは出つくしたのだろうか。
_
ねえ、御大。僕は思うんですよ。あなたは名探偵を気取っていましたけれど、清涼院流水
は本当に名探偵たりえるのですか? このメフィスト学園におけるあなたのキャラクター
からすると、同じメタ探偵でも、九十九十九ではなく、ピラミッド水野なのじゃありませ
んか?
ピラミッド水野の資質は「漠然と推理し、必ず真相を外す」。まさしく迷探偵。迷探偵も
名探偵のうち。姪探偵も瞑探偵も鳴探偵だってメイタンテイなのだ。
「まったくもって、戯言だよな」
僕は少しため息をついた。
365名無しのオプ:03/01/26 18:31
ピラミッドって(メール欄)じゃなかったっけ?
366名無しのオプ:03/01/26 18:57
コズミックを読んでる>363-4&365さんに拍手を贈りたい・・・
367名無しのオプ:03/01/26 20:01
>解決編1
複数の人間が書いたものを、ちゃんとまとめるとは。お見事。
笠井と津村の解決編も楽しみだな。

あと、「はあどかばあ大学」にちょっと笑った。わかりにくいよ石崎…
368名無しのオプ:03/01/27 01:32
おもしろい。
369名無しのオプ:03/01/27 08:32
乾乾乾
    ノ〜〜〜ヽ
   ノ  ゜∀゜   ヽ<しずおかしずおか!
  ノ         ヽ
 ノ           ヽ
ノ  ( (__,,... .∫_) )   ヽ
  .´,.:::;;:.. . . _  ヽ. <しずおかしずおかしずおか
  }ヾ:(; ゜∀゜`)_ン!   (  ゜∀゜)  <しずおか〜〜〜!
  }   ̄ ̄..;彡|  ⊂    つ
  l   . ..::;:;;;彡 {  ,(__つΣ===○
  }  . ...:::;:;:;;;彡|   し'
  i,   . ..;:;;彡j
   ト  .. .:;:;;:;=:イ
   `ー──‐
370名無しのオプ:03/01/27 18:20
太田「あ、皆さんこんなところでのんびりしてたんですか」
生垣「ハロー、J」
太田「どうやら生垣さんも皆とすっかり打ち解けたようですね。よかった。
  えっと、西尾君と清涼院さんの姿がないようですが」
竹「ぶー。2人ともどっか行っちゃったまま帰ってこないんだよ」
生垣「まあまあ。あんまり怒ってるとキャメラで撮っちゃうぞー」
竹「とか言いながらたろちゃん、さっきからもう撮ってるよー」
生垣「はい笑ってわらってー」
森「にっこり(笑)」
竹「いいんちょが笑ってどうするんだよっ」

黒田「ところで太田さん。なんですかその大きな袋は」
太田「ああ、これは豆です」
黒田「豆…、節分用ですか?」
太田「はい。いっぱい買ってきましたよー」
黒田「そうかあ。もうすぐ2月なんだなあ。新年早々雪山で遭難しそうになって
  縁起悪いし、節分の豆はちゃんと食べようっと」
太田「ということで、スキー合宿に行った皆さんが帰ってきたら節分大会ですよー」
古処「うむ、了解である」
生垣「節分か、日本のトラディショナルな行事なんて何年ぶりだろうな」
積木「・・・・・・」
古処「ん? どうした、積木殿?」
積木「みんな節分までに帰ってこれるのかなあ」
森「そのときは豆をバレンタインのチョコレートでコーティングして彼らに投げつけましょう(笑)」
371名無しのオプ:03/01/27 20:12
>古処「ん? どうした、積木殿?」
何か侍みたいだな古処。面白いけど。
372名無しのオプ:03/01/27 21:03
節分までに帰れるようにしたいですねえ……
でもコタツ組との兼ね合いもあって、
ストレートには終わらない解決編にするつもりなのですが、
いいのかなあ……
373解決編2 1/9:03/01/27 21:12
石崎「おやあ? そんなこと言っていいんですか?」
 変に強調した口調で、石崎が問う。
石崎「あいにく次の事件は、俺が解いたんでね。氷川のようには行きませんよ、笠井先生?」

津村「……笠井先生?」
日明「笠井先生が……?」

氷川「佐藤君の狂言と重なったせいで、ほとんどの生徒にアリバイがありましたからね」
 壁際に陣取った氷川が口を開く。
氷川「事件の際に作ったアリバイ表によれば、完全にアリバイがないのは、笠井先生と北山、秋月。しかも証拠を消したと見られるワインセラー酒びたし事件の時には、北山と秋月は山荘の外に消えているんです」
石崎「しかも事件現場には、津村と蘇部の二人がいた。殊能と舞城もすぐにやって来た。さらに駆けつけた高田のおかげで、すぐに現場を調べることも出来た。あいにく俺たちの検証の前に、犯人に荒らされちまったけどな」
374解決編2 2/9:03/01/27 21:15
石崎「発射装置みたいな物があれば、このうち誰かが気付くだろう。おまえもそう言ってたよな、高田」
高田「うん。駆けつけたうちの誰かが、こっそり装置を回収することも難しかったと思うね」
石崎「だ、そうだ。さらに、あれが仕掛けだとすれば、犯人は、見張りの霧舎がドアを開けっ放しで出て行くことを予測していたことになる。とすると考えられるのは、霧舎か佐藤が共犯の場合だが」
 といって、二人に視線を投げる。
霧舎「ちっ違うよ!」
佐藤「僕だって! 僕はただ、浦賀先輩を……!」
石崎「誰もおまえらだって言ってないだろ。安心しろ、霧舎ならそんな回りくどいことをしなくても、他にいくらでもチャンスはあったはずだ。なにしろ見張りなんだからな」
 石崎は続ける。
石崎「それに佐藤の方だが、何もあんな回りくどい狂言よりも、霧舎をワインセラーから遠ざけるもっといい方法があったはずだ。俺なら真っ先に、高里を狙うね。そうだろ高里」
高里「……」
 高里は答えない。
霧舎(ハニー……?)
375解決編2 3/9:03/01/27 21:17
氷川「あの、石崎さん、ちょっといいですか?」
 しばらく黙っていた氷川が口を開く。
石崎「なんだ氷川。俺の緻密な推理が不満か?」
氷川「佐藤君の悲鳴が聞こえるまで、石崎さんと僕も、ワインセラーの前にいたんです。秋月君はすぐに床に倒れてましたしね。仕掛けの可能性は、それでほぼ否定されます。なにもそんな回りくどい話をしなくても」
石崎「……しまったあああああ!」
氷川「本気で忘れてたんですか?」
笠井「ふん、緻密な推理が聞いて呆れる」
 叫ぶ石崎、あきれ返る氷川。その光景を見て、笠井が鼻を鳴らした。
笠井「要するにアリバイがないから犯人ということだろう。いかにも、あの事件は私だ」
376解決編2 4/9:03/01/27 21:20
石崎「おやおや、随分あっさり認めますね」
氷川「アリバイだけが根拠という訳でもないんですけどね」
 氷川が付け加える。
氷川「舞城君が『串刺しの道具』を壊し始めた時点で、みんなの頭から串刺し公イコールボウガンという図式は消えていたはずだ。わざわざ封印されたボウガンにこだわる必要はないんです。その場に居合わせなかった笠井先生を除いてはね」
笠井「理屈だな。蘇部の行状が目に余ったのでね。少し仕置きをしておいた方がよいだろうと思ってやった。当たった津村には、申し訳無いことをしたと思うが。館にあったもう一つのボウガンを使って……」
石崎「ああ、自白は後で結構です。お聞きしたいことが、一つだけあるんですよ」
 そこで石崎は、ぐっと身を乗り出した。
石崎「笠井先生、一体、何を隠したかったんですか?」
377解決編2 5/9:03/01/27 21:22
笠井「なっ……」
 笠井の顔色が変わった。
笠井「私が、何を隠してるというんだ!」
石崎「声が大きくなるのはやましい証拠ですよ、笠井先生」
 ミュージカル俳優さながらの勢いで、石崎が手を広げる。
乾「ちょっと、ちょっとちょっと」
石崎「あ? なんだよ乾。突っ込めないから、ここで質問してみましたなんていうなよ」
乾「いや確かに、ツッコミやりたいけどさ……笠井先生が何を隠してるかなんて言われても、僕たち全然話読めないんだけど」
石崎「ああそうだな。確かにおまえにはわかんないよな。よろしい、説明してやろう。氷川!」
氷川「まったく人使いが荒いんですから、石崎さんは」
 ブツブツ言いながらも、氷川が説明する。
氷川「笠井先生はワインセラーを酒びたしにして証拠を消している。しかしその工作は、犯人を隠蔽するためではなかった。現に先生は、こうして犯行を認めてる訳ですしね。じゃあ何のために、先生はそんなことをしたのか? ……とまあ、こんなところで」
378解決編2 6/9:03/01/27 21:23
石崎「はーいちゅうもーく。さてここで、ミステリィの基本である5W1Hを、津村が撃たれた事件を元にして考えてみよっかー」
乾「金八先生かよっ!」
石崎「こら乾ー、私語はよくないぞー。まずwhen、いつ。この事件はいつ起こったんだ、乾?」
乾「いつ、って言われても……佐藤君が狂言をやった直後、かな」
石崎「うーん、何時何分と言うわけにはいかないか。まあいいだろう。俺たちもそれ以上の答えは出来ないしな。次、where、どこで。新堂?」
新堂「くだらない質問だな。ワインセラーの前だ」
石崎「正解。つっても、津村と蘇部の二人がいて、殊能と舞城がすぐに駆けつけてるんだ。これは覆しようがないな。次。who、誰が……これならおまえにも解るな? 中島」
中島「馬鹿にするな! 笠井先生だろうが!」
石崎「ま、そういうことだ。次、what。これちょっと難しいな。高田」
高田「誰を傷つけたか、と言う意味なら津村だし、何を撃ったか、という意味ならボウガンの矢だろうね」
石崎「完璧な答えだな。次、why。わかるな蘇部」
蘇部「うん、僕への仕返しだね」
石崎「その通りだ。そうすると、後に残るのは──殊能」
殊能「どうやったか、つまりハウダニットだね?」
379解決編2 6/9:03/01/27 21:24
津村「……ハウダニット?」
石崎「うーん、入学試験をSFでパスした津村には難しいか。つまり笠井先生は、自分がどうやっておまえを撃ったか、それを隠したいがためにワインセラーを酒まみれにしたんだ」

笠井「何を言っているのかわからんな。さっきも言っただろう。私は倉庫にあった予備のボウガンで……」
氷川「そんな物があれば、第一の事件で僕たちに知らせていたはずです。あの時点で先生は、完全な被害者でしたからね」
石崎「笠井先生。きっと津村を撃った時ずいぶん」
 言って石崎は、グラスを傾ける仕草をした。
笠井「飲んでたんじゃありませんか? スキーも出来ない、書斎も使えない、部屋に閉じこもったままじゃ、他にやることないですしね。転がった瓶の中に、先生が空けた奴が結構あったんじゃないかと、俺は踏んでるんですが。……そんな時はとかく、魔が刺すもんですよ」
日明「魔が刺す、って、蘇部君を襲おうとしたこと?」
氷川「ええ、もちろんそれもあります。明らかに蘇部君から嫌疑を逸らすことになる訳ですから。だけど……ねえ」
石崎「笑うなよ氷川、失礼だぞ。でも確かに……ふふ、ふふふ」
笠井「貴様ら……ひょっとして……」
石崎「ええ、とっくに気付いてますよ。どうする氷川」
氷川「武士の情け、と言いたいところですが、ぶちまけられたワインやウイスキーの恨みもありますしね。バッカスの神の鉄槌を下すことにしましょうか」
古泉「神……アッラー……」
石崎「違うだろ古泉。……では、諸君、行くぞ」

 石崎が突然、後ろ手に隠し持った「何か」を取り出した。

石崎「これが笠井先生が使ったトリックの正体だ!」
380解決編2 8/9:03/01/27 21:24
 放たれた「何か」が音を立てて天井に跳ね返る!

秋月「ぎゃあっ!」

 跳弾を受けた秋月が、ソファの上で悲鳴を上げた。

秋月「何するんだよ石崎!」
石崎「あ、悪い悪い秋月。よけろって言わなかったか?」
秋月「言ってないよ! だいたい何だよこれ! ん? 栓?」
高田「そうか、これを使って矢を……!」

 石崎の手には、泡を吹く緑色の瓶が握られていた。

朝暮「シャンパンか……」
氷川「ええ」
 氷川が説明する。
氷川「栓に浅く切り込みを入れ、矢を固定して発射すれば、かなりのスピードが得られるはずです。津村君に当たった衝撃、さらに落ちた衝撃で栓と矢は分離し、床に転がる。ワインセラーの床に栓が落ちていても、あまり気に留める人もいないでしょう」
石崎「まあ、こいつはお子様向けのシャンパンだが、炭酸の威力おそるべしだぞ。子供の頃クリスマスの度に、こいつで蛍光灯を割ってたもんだ」
氷川「だからそういうのを学習能力がないって……」
石崎「うるさい。まあ暖まったビールのお陰で、俺はそれに気付いたわけだ。笠井先生も飲んでるうちに気付いたんだろうな。とはいえ」
381解決編2 9/9:03/01/27 21:28
 石崎が言葉を切った。そして笑い出す。

石崎「天下の笠井潔が使うトリックとしては、どうかと思うんですけどね、笠井先生」
氷川「いえいえ、笠井先生にも言い分はありますよ。きっともっと凝った時限装置にでもする予定だったんでしょう。しかしワインセラーから、蘇部先輩と津村君が突然出て来たのでつい発射してしまった──僕はそう推測してるんですけどね」
石崎「だから蘇部ー、めげなくていいんだぞー。おまえをゴミ呼ばわりした笠井先生だって、こんなトリック使っちゃうんだぞー、あははははー」
笠井「き、貴様ら……」

 笠井の顔が赤くなる。

石崎「まあまあみんな落ち着け。ともかく部屋に戻り、我に返った先生は、是が非でもこの『笠井潔にあるまじきトリック』を隠す必要に迫られた」
 石崎は続ける。
石崎「そこで自分のアリバイも顧みず、ワインセラーを酒浸しにした訳だ。廊下についた、シャンパンの染みを隠すためにな。以上、第三の事件終わり」



382名無しのオプ:03/01/27 21:48
スゲー(唖然呆然ブラボー
コズミ●クよりも、遥に面●いよ!
383名無しのオプ:03/01/27 22:10
ブラボー!
384名無しのオプ:03/01/27 22:23
イイ!
そういや乾の短編で「雪とボウガンの〜」とか言うタイトルのヤツがあったなあ。
乾の台詞が少ないのは笠井に恩があるからだろうか。
それとも影が薄いだけ・・・
385名無しのオプ:03/01/27 22:32
お見事ー!
要所要所をよく拾っておられる。
そしてちゃんと解決してるよ、スゲー。
386名無しのオプ:03/01/27 22:39
職人様に、惜しみなき拍手を。
387名無しのオプ:03/01/27 22:42
すげー!!まじすげえ。
これって複数の職人がそれぞれネタを書き込み続け、
そのうえ打ち合わせも何も抜きでその書き込みとキャラのふくらみだけで
やってることなんだもんな……ほんと神だよ。
文三の連中に絶対見せてやらにゃだぞ。関係者見てたら連絡しる!


>>379で一カ所名前の誤植があるですけど(揚げ足みたいで失敬)
388名無しのオプ:03/01/27 22:50
おお、素晴らしい。実に正統派の本格ちっくな謎解きだ!!

>>372
一応、当方では石崎&氷川の解決編が終わり次第、
探偵役を交代しての第二ラウンドを準備しておりますです。
これで伏線はあらかた回収できる……はずです。きっとw
もちろん、必要ないようであればやりませんが。

これは一気呵成の勢いで押し切るつもりなんで、
そんなに時間かからないと思います。
389名無しのオプ:03/01/27 23:30
最高だ。ありがとう、職人さん。
390名無しのオプ:03/01/27 23:42
おお。放ったらかしにしてた謎が、ちゃんと解決されている……。
しかも面白いですね。自分でやらなくてよかった(w
この分なら(メル欄)とかも388さんとかにお任せしちゃって大丈夫そうですね。
安心して読みに回らせていただきます。
391名無しのオプ:03/01/27 23:47
すばらしい・・・。
他にいいようがない・・・。
感動で笑いと涙がこみあげた。マジ


392名無しのオプ:03/01/27 23:58
ていうか、多重解決おもしれー。
これだけいろんな人が書いてるのに伏線がきちんとあって、
しかもそれがちゃんと解決に生かされてるってマジ凄いと思う。

他の解決も楽しみですわ。
職人さん頼みます。
393名無しのオプ:03/01/28 00:00
すげー!面白!
これ「2ちゃんねる文学」とか、ジャンルつけても良さげですよ!
合作・競作・共作の妙!
同人でもイイ、誰か本にしてくれ!
394名無しのオプ:03/01/28 01:19
気持ちはわかるが、お前ら落ち着け!
まだ終わっておらん!!
395〜381:03/01/28 03:10
うわあああああ。次どうしよう……

>388さん。
当方、この解決編では完全には(本格の)謎を解かないつもりだったのですが、
支障ないでしょうか?
それとも、最後まで解いた方が……?

396名無しのオプ:03/01/28 08:17
うわあすごすぎ。
黙ってロムしてたけどもうたまらん。
職人さんたち、応援してまつ!
397388:03/01/28 18:11
>>395
その辺はお任せします。あんま打ち合わせするのもアレだし。
ただ、物理的な意味でのトリック解決は全部済ませといて貰えると助かるかも。
3981/2:03/01/28 18:50
それはそれとして竹ちゃんが『異物』ってどういう意味なんだろう?
確かに竹ちゃんはメフィスト学園内で唯一の正統派美少女だ。
どこかの腐女子とは違うし、

高里「くしゅん!」

どこかの妄想秘書とも違う。

日明「ぶわっくしょん!」

でもだからといって『異物』と言える訳ではない。
異物異物異物異物。
他とは異なるもの。メフィスト学園において他とは異なるもの。


・・・・・・!
なんて単純なこと。なんて当たり前のことだったんだろう。
あまりにも単純過ぎて。あまりにも竹ちゃんの存在が当たり前すぎて。
僕は気にも留めていなかった。僕以外の誰もが気にしてなかった。
メフィスト学園。『メフィスト賞作家』が集う学園。
そう、竹ちゃんは確かに『異物』だ。
竹ちゃんは『メフィスト賞作家』では無い。ただの特別研修生だ。

西尾「なんて、・・・・・・なんて戯言だ。」
3992/3:03/01/28 18:51
でもどうしてそれが『動機』になるのだろう?
僕が言うのもなんだけれども、これだけ僕の本は売れているんだ。
理事長やJさんに竹ちゃんを迫害する動機は無いだろう。
他の先生達だってそうだ。『異物』だからといって動機には成り得ない。
森先輩や氷川先輩なんかは動機には拘らないだろう。
僕だって動機なんかはどうだっていい。ただし、今回だけは別だ。
竹ちゃんはどうして狙われた?

なんだ?何を見落としているんだ、僕は?
黒田先輩の言っていた『ジュウク』と『シン』なのだろうか?
いや、御大は事件との関連性を否定していた。
(「ん?あぁ、あれは謎でもなんでも無い。・・・・・・そうか、西尾氏は黒田氏の
趣味を知らないのか。それならば分らなくても仕方が無い。」
僕が知らない事。僕とは関係ない事・・・・・・?
待てよ。待て。何かが引っかかる。
何がひっかかった?
4003/3:03/01/28 18:51
ジュウク・・・・・・違う。
御大・・・・・・いや、違う。
西尾氏は知らないのか。僕が知らない事。
僕が知らない・・・・・・『僕とは関係ない』・・・・・・
『僕だけが関係ある事』。『竹ちゃん』。『美術室』。
『生徒以外の人間』。『竜』。『美術室』。
『異物』。『イラスト』。『美術室』。

まさか。・・・・・・まさか『こんな事』が動機なのか?
たったこれだけの事で『あの人』は犯行に及んだのか?
そして、これは『僕のせいでもある』。
僕のせいで、竹ちゃんに被害が及んだ。
僕のせいで、また竹ちゃんを絶望に追い込むところだった。
なんていう屈辱。なんていう戯言。

オーケイ。全ての道筋は繋がった。証拠は一切無い。
ただこの僕に証拠など必要ない。この戯言遣いの名にかけて。
『犯人』を追い込んでやる。
待っていろ、『竜』。この戯言遣い一世一代の『喜劇』を見せてあげよう。
401名無しのオプ:03/01/28 18:57
山荘組に見劣りしますが、こたつ組も進展させて見ました。
とりあえずぷらら規制かかってるため自宅から書き込み不可です。

どなたか上手くまとめて頂けると幸いです。
402名無しのオプ:03/01/28 21:41
山荘編の解決は「木の葉を隠すなら森に隠せ」の応用だな。いやー本格してますね!
こたつ組もそろそろ解決編? 黒田のダイイングメッセージ(違うw)の謎に注目ですね。
403名無しのオプ:03/01/28 22:19
>401
>>398-400読んだ感じだと、犯人と動機をもう考えてるみたいだし
それ使って自分が書いちゃった方が良いのでは?
404名無しのオプ:03/01/28 23:38
活字倶楽部見たら、さりげに森が「去年読んだ本」に
『木乃伊男』をあげてる。このスレがあるだけにちょっとワラタ。
405名無しのオプ:03/01/28 23:42
>>404
一見、無関係なように見えて、森が古き良き少女漫画ヲタってことを
考慮すると、実は不思議でも何でもなかったりする罠。

実は既にネタにならないものかと検討済みだったりするのだがw
406名無しのオプ :03/01/29 00:01
LockedRoomに3スレが収録されてますよー
ありがたやありがたや
407名無しのオプ:03/01/29 14:53
>404
森は前に六とんを叩いてたのに、挿絵が入っただけで変わるもんだな・・・
408名無しのオプ:03/01/29 15:53
このスレ読んでて古泉のキャラにはまりまして、「火蛾」を買ってしまいました。
作者がこんなキャラに設定されてしまう元ネタはどんなものかと思いまして。。
内容は…少なくとも似たような素材の平野啓一郎:著「日蝕」の百倍ましだった。
(解決編でだれてしまったように思うけど)

つーわけで、このスレのせいで今までスルーしていた
メフィスト賞作家の作品が読みたくてたまりません。
最低、受賞作と密室本だけは全部読もうかと思っております。
蘇部とか清涼院とか絶対読まない予定だったんだけどなぁ。
409名無しのオプ:03/01/29 18:03
文三に貢献してますねメフィ学(w
著作を読んだり周辺情報を知ってればさらに面白かったりしますしね
410名無しのオプ:03/01/29 19:59
>>409
貢献してるだろ。
だって漏れもこのスレで買うつもりの無かった清涼院と西尾と高田買っちゃったし
411名無しのオプ:03/01/29 21:23
殊能・森しか読んでなかったのに、このスレのおかげで
浅暮・古処・古泉・高里・西尾さらに蘇部まで
買って読んでしまいましたが何か。
個人的に古処・西尾は気に入ったので今後も買っていく予定。
あと佐藤・舞城が積んであるYO。
ここ2ヶ月で大出費じゃよー?

丁度いまフェアやってるから手に入りやすいんじゃよー<密室&メフィスト
412名無しのオプ:03/01/29 21:47
いつも完結近くになると職人さん譲り合っちゃって
話が進まなくなっちゃうな。
ガンガレーー!!職人さん!!!
どんなんでもO.Kだ!
413名無しのオプ:03/01/29 23:03
実はメフィ作家が売上増加のために、ここに書き込んでると言ってみる(リアルで打ち合わせてたり)
414395:03/01/29 23:04
>397
>397
了解。出来るだけ解決してお渡しすることにします。

こちらはかなりほったらかしの伏線が多くなるので、
回収していただけると助かりますです。
こちらは心おきなく「正攻法」をやらせていただくつもりですw。

では、少しだけですが。
415解決編3 1/3:03/01/29 23:09
石崎「ところで相談なんですけどね、笠井先生。この事件、学園側に伝えたらどうなると思います? 先生がこんなトリックで、生徒を狙ったなんて知られたら」
笠井「……何が望みだ」
石崎「さすがに話が早い。なあに、大したことじゃないんですよ。この山荘で起きた全ての事件を、不問にしてくれればいいんです。蘇部のテロル、舞城の破壊行為、そして、先生が狙われた第一の事件」
笠井「なっ……」
石崎「奴に笠井先生を傷つける意志がなかったことは、すでに確認済みです。先生の返事がなければ俺は、これ以上真相を話すつもりはありません。約束してください」
笠井「……」
石崎「それとも、学園中に言いふらされたいんですかあ? 天下の笠井潔があんなトリックを……」
笠井「わかった、わかった」
石崎「快く了承してもらえて嬉しいですよ。では」
舞城「ちょっと待てや、石崎」

 舞城が石崎の胸倉を掴んだ。
416解決編3 2/3:03/01/29 23:10
舞城「全てを不問にするやと? アホ言え。元はと言えば全部、あのボウガンの事件が始まりやろが」
氷川「──舞城君の言う通りだ」

 壁にもたれていた氷川が身を起こす。

石崎「……氷川」
氷川「たとえ傷つける意志がなかったとしても、みんなを怯えさせ、あまつさえ遭難者まで出した。その罰を犯人は受けるべきです。そうじゃないですか、石崎さん」
石崎「……舞城、頼みがある」

 胸倉を掴まれたまま、石崎は言った。

石崎「これから俺は、この事件の真犯人を指摘する。だが俺の話が終わるまで、奴に手を出さないで欲しい」
舞城「真犯人? 阿呆、それなら余計に」
石崎「おまえの気持ちは良くわかる。終わったら何をしようと、好きにして構わない。だが、今は俺たちの時間だ。少しだけ辛抱してくれ。いいな」

 石崎の視線に気圧されたか、舞城が手を放す。
 輪の中には石崎、そして氷川の二人だけが残った。
417解決編3 3/3:03/01/29 23:11
乾「おい石崎、真犯人って」
石崎「ああ。第一の事件の犯人こそが、この事件の本当の犯人なんだ。北山が起こした狂言、笠井先生が起こした第三の事件。犯人も動機もバラバラ、一見全く別々の事件に見えるだろ? だが違う」
北山「違うって、そんなことないよ! あれは僕が勝手に……」
石崎「本当にそうか?」
北山「え?」
石崎「おまえは浦賀……串刺し公ヴラガの仕業に見せようとして、あんなことをした。笠井先生だってボウガンの矢を使ったのは、串刺し公に罪を着せるためだったはずだ。つまり串刺し公の便乗犯という点で、二つの事件は共通しているんだ」
高田「確かにそうだけど、わざわざ言うほどのことでもないんじゃないのかな?」
石崎「犯人が、それを予測していたとしたら?」
高田「予測?」
石崎「第一の事件の犯人は、第二、第三の事件が起こることを知っていた。もちろんどこで誰がどんなふうに事件を起こすのかまでは無理だ、神様じゃないんだからな」
 石崎は息をついた。
石崎「しかし吹雪の山荘とメフィスト学園の生徒、串刺し公の伝説、皆の間に広まる疑心暗鬼──それが必ず次の事件を誘発することを、奴は知っていたんだ。いや、むしろそれこそが、奴の目的だったと言ってもいい」
高田「何だって?」
石崎「とにかく騒ぎを起こしたかったんだよ、奴は」
 石崎は喋り続ける。
石崎「そう、奴こそが、真の《串刺し公》なんだ。北山と笠井先生は、いわばその計画に載せられただけ。ましてや、浦賀とは何の関係もない……そう、犯人はこの中にいる」
418名無しのオプ:03/01/29 23:53
キター!!!
すげーYO
中の人が変わったのかと思うほどに石崎がかっこいい
419名無しのオプ:03/01/30 00:36
石崎が金田一少年みたいだ!
犯人はこの中にいる……!!

それは衝撃的な言葉だった。
仲間を犯人呼ばわりする石崎に、舞城が暴れだしてしばし騒然とする。
古泉は呪文を唱えだし、蘇部が怖がって泣き出し、殊能がオロオロと慰め、
何故か高里も泣きそうな顔で舞城を見つめている。
混乱しきった中で、日明はこっそり笠井を窺い見た。
(この中って、このメンバーの中? それともこの邸の中? だとしたら……)
笠井の部屋で見たあの人物のことを思い出していた。
(石崎君はあの人のことを知っているの? 彼が潔さんと一緒にいたことを……)
トリックの件で打ちひしがれているのか、それとも彼を庇っているのか、
どちらにしろ笠井はもう口を開く気はないようだ。
さりげなく笠井の横をキープした日明は、落ち込む笠井の肩にショールをかける。
日明はすでにあの人物こそが真犯人だと思い込んでいた。
だとしたら、一緒にいた笠井は共犯ということになりかねない。
そっと笠井の上着から鍵を抜き取り、日明は笠井の部屋に向かった。
まだ部屋にいるであろう彼に、直接に犯人かどうかを聞くつもりだった。
愛人として、潔さんがこれ以上不利になるのは我慢ならない。
誰よりもまず自分が真相を知っておかなければ……。
421名無しのオプ:03/01/30 01:06
日明がこっそり立ち去るのを、津村が見ていた。
こんなときにどうして? トイレだろうか?
津村は即座に後をつけた。
紳士たるもの、こんな状況で女性を一人にするべきではない……
古処隊長ならきっとそう言うだろうから。
422417:03/01/30 01:18
……続き、どうしましょう?(笑)
423名無しのオプ:03/01/30 01:24
日明は意を決し、鍵のかかったドアを開けた。
電気がついていない。しかし明らかに気配があった。
日明「どこ? いるんでしょう? 私、聞きたいことが……」
一歩踏み出した途端、何かが飛び掛った。
日明「きゃあ!!(私の馬鹿。美人秘書が男と二人きりじゃ襲われるに決まってる)」
日明が色々な思い込みで覚悟を決めたとき、津村が現れた。
津村「こいつ、何をする!!」
暗闇の中でしばし揉みあう。しかし相手は中々手強かった。
相手が津村の喉に噛み付こうとするのを見て、日明は大きな悲鳴をあげた。
その声に驚いたのか相手は津村から離れ、開け放たれたドアから走り去っていった。
日明「大丈夫? きゃあ、血が出てるじゃない!!」
津村「いや、これはあいつの口についてた液体が俺にもついただけです」
日明「じゃああいつはすでに誰かを襲っていて、血を……」
津村「それが……揉み合ってる時にも臭いがしていたんですが、
   これってどうも何かのシロップみたいなんです」
舞城「ふん、やっぱりな」
日明「舞城君! どういうこと?」
舞城「あんたこそどういうつもりだ。あんたは浦賀がここにいるのを知ってたんか?」
日明「あれは浦賀君だったの? 私、てっきり京極先生がいると思って……」
石崎「なるほどね。さあみんな、部屋に戻ろう。解決編の再開だ」
424名無しのオプ:03/01/30 01:30
>417
あ、やっぱ邪魔だった? スマソ。
遠慮せず、伏線を回収しようと思ったんだけど(w
解決編、無視して続けちゃって下さい。
こぼれたネタがあったらまた侵入します。
425424:03/01/30 01:37
あ、423で舞城が「おめえ」じゃなくて「あんた」とか言ってる。
重ね重ねスマソ。久しぶりに書き込むとこれだからイカン。逝ってくるよ……。
(石崎「犯人はこの中にいる!」)

石崎「……」

 皆の視線が石崎一人に集中する。
 しかし石崎は、なかなか口を開こうとはしなかった。

舞城「なにやっとるんや石崎。おい氷川、早よ教えろや!」
氷川「僕では駄目なんです。すべての真実は、石崎さんの頭の中だけにある」

 氷川が首を振った。そして石崎に言う。

氷川「どうしたんです? 犯人がわかったって言ったじゃないですか」

 しかし石崎は黙っている。

氷川「僕に遠慮することはないんですよ。探偵役がやりたかったんでしょう? ……さあ、石崎さん」
石崎「は、犯人は……」
氷川「犯人は?」

 氷川に促され、ようやく石崎は口を開いた。

石崎「──俺だ」

氷川「えっ?」
全員「ええええっ?!」

石崎「すまん!」
427解決編1/2:03/01/30 16:02
 石崎ががばっと膝をついた。
石崎「あのボウガンとロープの時限トリックで、笠井先生の部屋に矢を打ち込んだんだ。せっかくの吹雪の山荘だ、酒と麻雀だけで終わるなんて嫌だったんだ。ちょっとした余興のつもりで……」
 ただただ全員に頭を下げる。
石崎「一度でいいから探偵ごっこがやってみたかったんだ。まさかこんな大袈裟な事件になるなんて思わなかった。みんな、本当にすまん!」

氷川「いしざきさ……」
高田「そうか、だから事件を不問にしろなんて……」
霧舎「だから、舞城に手を出すなって……」
北山「だから、串刺し公ヴラガなんて話を……」
日明「そういえば、あんなに嬉しそうに探偵役を……」
乾「確かに、こいつならやりかねないよな……」

石崎「いや、だって、誰もたいしたケガしてないだろ? 秋月は、勝手に山荘を出てった訳だし。あは、あはははは」

舞城「そうか……終わったら好きにしていいんやったな、石崎」

 舞城が進み出る。その手には、おなじみのバットが握られていた。

石崎「いや、あの、舞城、そのな」
舞城「覚悟せいや!」
石崎「うわあああああ!」

 山荘に、石崎の絶叫が響き渡った。
428名無しのオプ:03/01/30 16:06
うわー、石崎らしー(藁
429427:03/01/30 16:14
↑すみません、とりあえずここまでです。
残された謎は後から解くつもりなのですが……
続けちゃってください。申し訳ないです。



430名無しのオプ:03/01/30 17:46
>427

氷川(まさか……)

誰にも聞こえないところで、氷川は呟いた。

氷川(そんな、石崎さん……真犯人を庇うなんて)





431名無しのオプ:03/01/30 19:17
「>398といい>427といい……どうして『1/2』なんだ?」
「これはなにかの伏線にちがいない」
「いやしかし……どういう意味を持つんだ。」
「1/2……半分、ハーフ、それとも1月2日か?」
「そんなバカな……」
「そんなことって……」
「いや、それ以外には考えられない。」
432名無しのオプ:03/01/30 20:04
佐藤「ちょっと…いい?」
それまで黙って俯いていた佐藤が右手を挙げて言った。

氷川「佐藤君?」
佐藤「この事件の真犯人が石崎先輩だっていうのはわかったよ。だけど」
氷川「(いや、石崎さんは…)……だけど?」
佐藤「だけど、今の状況が危険だってことには変わらないと思うんだ」
そこで佐藤はまた少し俯き、そして決意したように顔を上げた。

佐藤「…浦賀先輩が、この外にいることには変わりない」

新堂「まあ…確かに今の奴にはスイッチが入ってるみたいだがな」
軽く頷いて、新堂は神妙な表情をした。
新堂「しかし、俺と中島もここへ帰ってきたことだし、本気で行きゃあまだ止められるかもしれんぞ。
   大体、こんな大人数の中に浦賀が一人で飛び込んでくるかも怪しいしな。だから状況はさっきよりマシと思うが?」
中島も大きく頷いている。確かに今のメンバーなら、ハンティングモード浦賀を止めることは出来るだろう。
しかし、佐藤は首を振る。
佐藤「もう遅いんだ…浦賀先輩は…もう、誰かを殺して食べてるんだ…!だからもう止められないんだよ、誰も!」

これには氷川もぎょっとなった。
氷川「誰かって…秋月君も北山君も石黒君も帰ってきてるし、古処さんと黒田君はもう下山しているようだし、
   僕たち以外の人間がこの山にいるとは思えないけど…」
佐藤「誰かは知らない。でも見たんだ。さっき北山たちを探しに出たときに、雪の上に大量の血を…」
新堂「血?そんなもん、俺らは見てないぞ」
佐藤「そりゃそうだよ。舞城が蹴散らしてしまった後だったから」
そう言って、未だ石崎の首根っこを掴んだままの舞城を見る。
佐藤「そうだよな、舞城。君も血を見たろ?」
433名無しのオプ:03/01/30 20:05
ところが。
舞城「血?何のことじゃ。俺にはさっぱりわからんわ」
佐藤「え……何言ってるんだよ。見たじゃないか。あの真っ赤に染まった雪を」
舞城「真っ赤?そりゃおめえ、寒すぎて氷イチゴの幻でも見たんやろ。わけわからんこと抜かすなや」
石崎から手を離して、舞城はそう言った。……にやにや笑いながら。

佐藤「訳が分からないのはそっちだよ。血だって断言して、雪を蹴り飛ばしてたじゃないか。妙なポーズを取ったりして…」
あのとき彼がしていた意味不明意図不明の、あの聖火を掲げたポーズをしてみせる。
蘇部「何それ?ニューヨークへ行きたいかー?」
蘇部が場違いに明るい声で言ったが、佐藤はそれに構っている余裕はなかった。

確かに見た。あれは、あの赤色は血だった。舞城の方がより近くへ寄って行った。
『かなりの出血量だ』、そう彼が言ったのも覚えている。間違いない。あれは虚構の風景ではなかった。

しかし、舞城はにやにやを崩さなかった。
舞城「ああ、そのポーズな。あれや、天国のクマプーと話しとったんじゃ」
佐藤「……は?」
舞城「ほやから、あのときの俺はクマプーの姿しか見てねえんじゃ。血溜まりなんて見とらん」
佐藤「舞城、何を…」

何故?なぜ、舞城は知らない振りをするのだ?
浦賀先輩を庇っている…?いや、彼がそんなことをする理由などない。
それとも、やはり極限状態でおかしくなってしまっているのか?しかし、石崎先輩を殴る姿は普段通りだった。
どうして?あれは、あの赤色は、虚構ではないのに。

『浦賀は殺人鬼やねえやろ』…ふと、舞城がそう言ったのを思い出す。彼は、あの吹雪の中で何を見た?
彼と同じ風景を、自分も見たのに。
434名無しのオプ:03/01/30 20:06
佐藤が混乱していると、床に這いつくばった姿勢の石崎が、顔だけを上げる。
石崎「ちょっと待て。さっきから二人だけで話を進めるなよ。血溜まり?初耳だな。詳しく聞かせ…」
霧舎「うわあああああ!」
そのとき、霧舎が悲鳴を上げて立ち上がった。全員の視線がそちらへ集中する。石崎の言葉も途切れた。
霧舎「ちょっと浅暮くん、何するんだよ!うわーびしゃびしゃだよ…」
浅暮が霧舎の足の上にグラスを落としたようだ。まだ中身が入っていたようで、床に酒が広がっていく。

しかし、当の浅暮は慌てもしない。ただ、暖炉の方向を凝視している。
石崎「?…グレの旦那、どうしたんだ?また超感覚が何か捕らえたのか?」
半分茶化すように石崎が言う。一応暖炉の方を見ても、特に何もない。

浅暮「一瞬だが…嫌な感覚がした。が、今は消えている……何だ?酷く嫌な感じが…」
酔いが冷めてしまったかのように、浅暮は眉を寄せて呟いている。それを聞いて、佐藤が頭を抱えた。

佐藤「浦賀先輩だ…きっと、先輩が…」
435名無しのオプ:03/01/30 21:12
テーマは『浦賀の怒り』……?
むむっ……やはりホワイダニットへ帰結するのか……
436名無しのオプ:03/01/30 21:37
>435
いや、前の方で殊能が何か企んでたっぽい。
ただじゃ終わらないような気がする。だってメフィ学だし。
437名無しのオプ:03/01/30 22:32
遅かった……また書き直しだよ、とほほ。
 浦賀の襲来に備え、皆があわただしく駆け回っている。
 広間から人の姿は消えていた。ただ二人、石崎と氷川を除いては。

石崎「あいたたた。舞城の奴、思い切り殴りやがって」
氷川「同情はしませんよ。名探偵と犯人、おいしい所を二つも持ってったんですからね。馬鹿なことをしたもんですよ。真犯人を庇うなんて」
石崎「なに言ってんだよ。あんな雰囲気の中で吊るし上げ喰らったらな、明日から学園に出て来れねーぞ。その点俺なら、ギリギリ冗談で済む」
氷川「すでにギリギリのラインは越えている気もしますけど……」
石崎「ふん、いいんだよ。なんか最近ちやほやされ過ぎて、居心地が悪かったんだ。女子高生に踏まれてるくらいがちょうどいいんだよ、俺は」
氷川「踏ませてるんですか?」
石崎「だからそれは言葉の綾ってやつで、あ、いたたたた」

 笠井との「約束」のおかげで、石崎はなんとか処分を受けずにすんだ。もちろん舞城に、半殺しの目に合わされたのはいうまでもない。
 氷川の手当を受けながら、石崎は呟いた。
4392/9:03/01/31 00:42
石崎「観察者の干渉なしに、世界は存在しない」
氷川「なんですか石崎さん、唐突に」
石崎「探偵役の干渉なしに、事件は存在しない……だったかな」
氷川「それはきわめて表層的な理解ですね。後期クイーン問題というのはもっと……」
石崎「おしとやかな女王様が箱入り娘で密室、だろ」
氷川「確か委員長の本にそんなのがありましたね。全然違いますけど」
石崎「俺だって本格だからな、ちゃんと法月先生の講義は取ってるよ。しかしなんだな、あんなの真面目に受けてたら、鬱になって宿題遅れるのがオチだぞ。そういや氷川、あの授業成績トップだったな」
氷川「そりゃどうも。躁病の石崎さんは、どんな授業を受けたらそうなるんです?」
石崎「俺はオヤジギャグ研究会に属して日々研鑽を──って、何いわせんだよ。氷川おまえ、性格悪くなったぞ」
氷川「すっかり誰かさんに毒されたみたいですね。この合宿の間に」
 小さく笑って、氷川は次の言葉を待った。
4403/9:03/01/31 00:43
石崎「ま、なんだ。俺が言いたいのはだ」
 頭を掻きながら石崎さんは言う。
石崎「おまえこそがこの事件を操った、真の《串刺し公》だってことだ。そうなんだろ、氷川」

氷川「……」
石崎「事件が始まった時におかしいと思うべきだったよ。地味キャラのおまえが、らしくない科白を連発してるんだからな」

(氷川「この山荘に、事件を起こそうとした犯人がいる」)
(氷川「名犯人vs名探偵。ゾクゾクしますよ。なにしろメフィスト学園の生徒だ、誰が犯人でもおかしくない」)
4414/9:03/01/31 00:45
石崎「あれは、事件をあおってたんだろ? それに」

(氷川「串刺しの道具は、ボウガンとは限らない」)

石崎「特殊な武器であるボウガンではなく、《串刺し》が可能な物ならなんでもいい──これで凶器の種類は、事実上無限に広がった。便乗犯としては、こんなに楽な状況はないよな。実際北山は、ツララを使った訳だし」
 石崎は続ける。
石崎「ワインセラーの事件の推理でおまえが言ったとおり、この時点で串刺し公=ボウガンという図式は壊れた。だがそれを壊したのは、舞城じゃない。おまえだったんだ」
4424/9:03/01/31 00:45
氷川「そうか、確かに図式を壊したのは僕かも知れませんね」
 氷川はのんびりと答える。
氷川「不用意な発言をしたことは謝ります。でも、あれはあくまで、可能性を口にしただけだ。それとも、そんな一言だけで、僕を犯人にするつもりですか?」
石崎「まだあるぞ、佐藤の狂言の時だ。憶えてるか? あいつが、『黒いフードの男を見た』って言ったのを」
氷川「ええ、でもあれはただの狂言で──」
佐藤「部屋に閉じこもりっきりだった佐藤が、どこで北山を襲った黒いフードの人物のことを知ったと思う? 俺たちの事情聴取、それ以外にありえないんだ」
4435/9:03/01/31 00:46
氷川(「聞き込みですね。ついでに、黒いフードの人物の目撃情報も付け加えておきましょうか」)

石崎「おまえは聞き込みをするフリをして、逆に情報を広めたんだ。犯人は『黒いフードの人物』だってことをな。ま、自分の勘違いには、最後まで気がつかなかったみたいだが」
氷川「勘違い?」
石崎「北山は自分を襲ったのは『黒い布をかぶった奴』だって言ってるんだよ。フードだなんて、一言も言ってない」
氷川「……」
石崎「何か尖ったものを用意して悲鳴を上げ、黒いフードの人物を見たと言えば一丁挙がり。こんな簡単な事件の起こし方があるか?
しかもメフィスト学園には、犯人役だって被害者役だってやりたがる奴はごろごろいるんだからな」
 石崎が指を折る。
石崎「秋月だろ、秋月だろ、秋月だろ……あれ? まいったなあ。この合宿の間に、ほとんどの連中のキャラが立っちまったからな。少し前なら北山、積木あたりも喜んでやったかも知れないな。今回なら、乾が目立てなかったみたいだし」
4446/9:03/01/31 00:47
氷川「乾君が目立てなかったのは、石崎さんのせいでしょう?」
石崎「まあ、それはそれとして、だ。言ったよな、第一の事件の犯人は、第二第三の事件を予測してたって」
 石崎は言葉を継ぐ。
石崎「実際第一の事件を起こしただけでは、次の事件を誘発するのは難しい。だが便乗犯のリスクを極限まで下げ、しかも探偵として積極的に事件をコントロールすることで、おまえはそれを可能にしたんだ」

石崎「最初のボウガンに時限装置を使うことで、みんなのアリバイを曖昧にする。後は常に誰かと行動してアリバイを確保しつつ、他の事件が起こるのを待てばいい。そうすれば自動的に、嫌疑は自分から外れてくれる」
 石崎は肩をすくめた。音は鳴らなかった。
石崎「そういう意味でも、俺との探偵コンビはうってつけだったわけだな。そうだろ氷川」
氷川「成程、言いたいことはわかりました。でも」
 氷川が口を開く。
氷川「その条件なら、石崎さんだってほとんど変わらないはずだ。そもそも、串刺し公ヴラガを言い出したのは石崎さんですしね」
4457/9:03/01/31 00:52
石崎「俺は最初から、あれは冗談だって言ってるだろ? 俺が犯人なら、否定せずにそのままにしておくさ。その方が遥かに効果的だ、串刺し公の亡霊を操るにはな。それに」
氷川「それに?」
石崎「おまえが第一の事件の犯人だって証拠もちゃんとある。蘇部の雪だるまだ」
氷川「ああ、首が取れてた奴ですね」
石崎「取れてたんじゃないんだ。かなり強引に落とした跡があった。言ってたよな、おまえ。ボウガンを二階から釣るトリックじゃ、どうしたって先生に当たる可能性が残る。だから犯人は、自分の腕で狙うしかない、って」
氷川「ええ、それが何か?」
石崎「だがそのどちらとも違う、第3の方法が存在するとしたら?」
氷川「第3の方法?」
石崎「ああ。ボウガンの台座を雪を使って、雪だるまの上にくっつける。首を落としたのは、高さを調節するためだろう。ボウガンを固定することさえできれば、誤って矢が当たる確率を格段に減らせるんだ」
氷川「でもボウガンは、窓の外に落ちてたんですよ?」
石崎「そう証言してるのはおまえ一人だ。あの事件の現場検証を装って、ボウガンを回収出来た氷川。このトリックを使えたのは、おまえしかいないんだよ」
4467/9:03/01/31 00:53
氷川「やれやれ、完全に見抜かれてしまいましたね」
 氷川が長い長い息をつく。
氷川「僕の負けです。石崎さん、お見事でした」

石崎「ちなみにボウガンが落ちてたと嘘をついたのは、容疑を外に出た奴に限定させないためだよな? 古泉を止めようとして濡れた、俺や氷川のように」
氷川「ええ。最初に、動機から考えてみるべきだったんですよ。この事件が起こることで、一番得をするのは誰か」
石崎「神津恭介の犯罪経済学だな。五百円持って十個のミカンを買いに行きました、腐ったミカンはどれでしょうって奴だ」
氷川「全然違いますけど。……言うまでもなく、石崎さんと探偵コンビを組むことになる僕です。ついこの間まで、ほとんど出番もなかったんですけどね。北山君や積木君のような、自虐ネタさえなかったし」
石崎「聞いていいか、氷川」
氷川「ええ、なんなりと」
石崎「俺が、雪だるまを見つけたあの時な。証拠を隠そうとすれば、おまえにはいくらでも出来た。だけどおまえは、そうはしなかった。まるで、証拠を見つけてもらいたがってるみたいに……」
氷川「早く事件を解決して欲しかったんですよ、石崎さんに」
4478/9:03/01/31 00:54
氷川「確かに事件を起こそうとしたのは僕です。でも思いがけず、シリアスな事態になってしまって。津村君が撃たれたと聞いた時には、心臓が止まりましたよ」
石崎「確かに目立ちたいばっかりの奴が起こした事件なら、ほんのイタズラ程度で済んだだろうな。俺の放った串刺し公の亡霊が、それだけ強力だったってことさ」
氷川「僕もその、亡霊に憑かれた一人なのかも知れませんね」
 氷川は言った。
氷川「串刺し公の話を聞いて……玄関のボウガンを見て、あの計画を思いついた。勝てなかったんですよ。吹雪の山荘という舞台で、それを実行に移してみたいという誘惑に」
 氷川は天を仰ぐ。
氷川「同情の余地はありません。庇う必要なんてなかったんですよ。退学になっても文句はいえない」
4488/9:03/01/31 00:55
石崎「まあまあ、そう思い詰めるなよ。真面目な飲んだくれってのも珍しいぞ」
 石崎がひらひらと手を振った。
石崎「これに懲りて犯罪はミステリィの中だけにしとくんだな。特にそのなんだ、西尾が書いたなんとかハイスクール」
氷川「それはクビツリ」
石崎「それじゃ、鮎川先生の下り……」
氷川「はつかり、ですか?」
石崎「じゃあ、館シリーズを書いたうちの教官の」
氷川「それはアヤツジ。操りですよ、操り!」
石崎「そうそう、あなたが串刺し公だったのですねって奴だ。人の心なんて、そう簡単に推し量れるもんじゃないんだからな。って……あーっっ!」
氷川「どうかしたんですか、石崎さん」
石崎「今気付いたぞ。まさか俺が罪を被るのも、おまえの《操り》のうちだったんじゃないだろうな。いたいけな俺を言葉巧みに騙して……畜生、そうだ、そうに違いない。白状しろ、氷川」

氷川「……さあ、どうでしょうね」

 氷川は笑った。
4499/9:03/01/31 01:01
↑解決編は以上でございます。
もっとあとでも良いかと思ったんですけど……
450名無しのオプ:03/01/31 01:43
すばらしいー!
451名無しのオプ:03/01/31 01:55
>449
いや、やっちゃってよかったでしょう。早い者勝ち。
石崎は石崎らしいし、氷川は妖しくキャラ立ちしてよかったねという感じで、
なんか満足。
452名無しのオプ:03/01/31 01:57
職人様、感動しました。
石崎かっこいいです。ブラボーです。
今年の「このミス」ベスト1は自分的にはこのスレに決定!?
さらなる展開を期待しつつ。

453名無しのオプ:03/01/31 01:59
読み返したけど、よくもまあこれだけ見事に収集をつけたね。
スゲェ!
454名無しのオプ:03/01/31 02:10
職人の皆さま 素晴らしいです。 感動した!(c)小泉
455名無しのオプ:03/01/31 02:26
すげぇぜ、あんたらっ!
ああもう、こんな楽しいことはやめられません。
456名無しのオプ:03/01/31 03:28
むう、石崎と氷川が読みたくなってきたな……
457名無しのオプ:03/01/31 03:47
すげー感動で思わずカキコ
職人さんさすがです
458名無しのオプ:03/01/31 04:23
この吹雪の山荘編だけでも良いから、リライト/再編集して
メフィスト賞に応募するというのはどうだろう。
2chメフィスト学園スレ名義で。
メフィスト賞作品のある程度よりはしっかり本格してるぞ。

この解決編にはマジで感動した!
459名無しのオプ:03/01/31 08:07
次の本格ミステリ大賞候補に!
460名無しのオプ:03/01/31 08:44
すげえっす!
今までの書き込みがちゃんと反映されている!
しかも講談社ミステリの洒落もきいてるし。
京極の女郎蜘蛛まで出してくるとは渋い!

あなたがこのスレにいてくれて良かったと思います!ホント>解決編職人さん
461名無しのオプ:03/01/31 10:16
このスレらしい解決編。素晴らしい。

で、火山は?
462名無しのオプ:03/01/31 10:22
竹「わあ、こどちゃん、かっくいい銃だね。さわらせてさわらせて」
古処「うむ。重いので落とさないようにな」
竹「うにー、すっごいなー。ねねね、撃ってもいい?」
古処「むむむ、紳士たるもの乙女の願いは断れないのである。よし、では照準を合わせて」
竹「こ、こうかな?」
積木「って、わあああ! なんで俺に向けるんだ」
古処「撃て(ファイア)!」
竹「ばきゅーん」
積木「ぎゃあああああ!!」  バタッ
竹「おー」
生垣「ヒューッ。ブラボー」
古処「うむ。なかなか筋がいいぞ」
竹「えへへー」
黒田「おい、積木君。弾はさっきの豆だよ…って気絶してるのか。情けないなあ」

森「…………」
森は窓の外を見ていた。いったん小降りになった雪がまた勢いをましてきている。
ガラスにぼんやりとうつった自分の姿。後ろでは皆が楽しそうに遊んでいる。
眼鏡をハンカチでぬぐい、かけ直す。
それにしても……
積木が悟った山荘の事件の真相。
そいて森が清涼院に告げた言葉。
「君達は探偵役だ。探偵=犯人(串刺卿)だなんて展開は勘弁してくださいね」(>>198

森「ふっ、本当の黒幕は氷川君でも石崎君でもなく、この森なのかもしれませんね(笑)」
463名無しのオプ:03/01/31 11:24
これから嵐の山荘脱出編?で、中島と新堂が大活躍のヨカーン
464名無しのオプ:03/01/31 11:42
石崎くんの衝撃的な(?)告白で、とりあえず一連の『串刺し公事件』は幕を下ろした。
今は浦賀くんが現れたときのの襲来に備え、皆があわただしく駆け回っているようだ。
が、そんなことはぼくの関心の外だ。ぼくは蘇部くんを『救う』ために動くだけのことだから。

それに、恐らく浦賀くんは『状況』、いや、『設定』に過ぎない。
間違いなく危険な存在ではあるが、逆に致命的な存在ではないはずだ。
まあ、これについては、ぼくにとってはどうでもいいことだ。舞城くんあたりに任せておけば問題ない。
皆が不安げな、それでいて生き生きとした表情で繰り広げる喧騒を観察しながら、ぼくはずっと考えている。

この展開は『彼』にとって誤算だったのだろうか。

ぼくは考える。

流石に石崎くんは見事な『名探偵』だった。ものの見事に事件を終わらせてしまった。その手並は感嘆に値する。
なんとなく広間に向けて歩きかけるが、すぐに足を止める。
そういえば石崎くんは「舞城くんに殴られた傷が痛む」と言って、広間に一人残っていたっけ。
今頃は、『真犯人』との(それが誰なのかは判らないけど)、真の、そして知られざる解決編の最中だろう。
その邪魔をするのは無粋だ。ぼくもそこまで野暮なつもりはない。

ぼくは考える。

が、恐らくはこの程度の誤算は『彼』にとっては計算のうちだろう。
もちろん、石崎くんと氷川くんの『名探偵』っぷりは予想外だろうが、それすら『彼』にはどうでもいいこと。
そう、この『事件の構造』は最初から、起りうるあらゆる事件を内包するような形で設計されているのだから。
恐らく、彼にとっての真の誤算があるとすれば――そう、石崎くんの言ったあの言葉、あれだけだ。
もっとも、あれは特効薬なんかではない。せいぜい、病状の進行を遅らせる程度の薬効しかないだろう。
が、それだけにある意味、『事件の構造』にとって致命傷になりかねない危険物だ。
もっとも、それは諸刃の剣。ぼくらが『免疫』を受けたということは『彼』にも判っているだろう。
恐らく、ここから事件はエスカレートしていくだろう。『事件の構造』を守るために。
だから、ぼくは『事件』を終わらせなければならない。それこそ徹底的に。
が、そのためには必要となるものがある。そう、ジグゾーパズルの最後の一片が。
465名無しのオプ:03/01/31 11:44
ぼくは考える。

あとひとつ、あとひとつだけ情報が提示されていない。
未だ見当も付かない『手段』の存在を示す、ハウダニットの部分を支えるべき証拠が。
何とかしてこれを見つけない限り、ぼくの視界に写る事件像はぼやけたまま。
輪郭だけは確かに判るものの、その姿を捉えようと目を凝らすとすぐにぼやけてしまう、そんな状態。
これでは『事件』は解決できない。
でも、その情報が事件内に示されていないとは考えにくい。それでは『美しくない』から。
いずれにしても確かに言えることはひとつだけ。このままでは、ぼくの「解決編」はスタートできない。

そしてぼくは考える……







蘇部「……ねえねえ、殊能くん、殊能くんったらぁ」
いつの間にか蘇部くんがぼくの顔を覗き込み、心配そうな顔で声をかけてくれている。
慌ててぼくは笑顔を作る。ぼくの考えていることを蘇部くんに気取られてはいけない。
そう、それでは何の意味も無いんだから。

殊能「ごめんごめん、ついぼーっとしちゃったみたいだ」
蘇部「殊能くん、さっきからちょっと変だよ……心配だなあ……」
殊能「大丈夫だってば、それよりどうしたんだい、蘇部くん。みんながまた集まってきてるみたいなんだけど」
蘇部「えっと、また皆に広間に集まって欲しいって知らせがあったんだ……でも、それより……」
心配そうな蘇部くん。その悲しそうな表情を見るのが辛く、ぼくは蘇部くんの言葉を遮るように問い返す。
殊能「またかい? 今度の名探偵役は誰なのかな?」
蘇部「えっと……」
ここで珍しく蘇部くんが言いよどむ。
蘇部「何か、笠井先生から皆に話があるらしいんだ……」
466名無しのオプ:03/01/31 11:48
一連の山荘の事件の、実に見事な解決編の余韻に浸ってるところにアレですが、
探偵役交代編に突入させて貰います。強引な展開でスマソ。
4671/5:03/01/31 12:40
そして、広間には再び、山荘内にいるはずの全員が集まっていた。
が、先ほどの場面とは違い、場に緊張した空気は感じられない。
それぞれの表情には、仕方ないから集まってやったといった感じの感情が露骨に浮かび、
無言のまま自席で目を閉じる笠井の存在に気を使う者は、今や殆ど存在しないと言っていいだろう。
強引に呼び集められたと思しき舞城に至っては、怒りと苛つきを込めた表情で笠井を睨み付けている始末だ。
広間に漂う空気は弛緩し切ったもので、好き勝手に私語が飛び交う、文字通りのだらけた光景。
そのなか、必死で乾が私語を止めさせようとしているが、まるで相手にされていない。

石崎「いやぁ、皆があそこまで冗談に乗ってくるとは思わなかったんだよなあ。誰もツッこんでくれないし。
   まあ、氷川も悪いぞ。お前がちゃんとツッこんでくれれば、この惨事は起らなかったはずだ」
氷川「それはないですよ、石崎さん。そもそも僕は突っ込み役なんかをする柄じゃないんですから。
   むしろ、この事件を引き起こした遠因は、乾君の怠慢にあると思いますね」
乾 「石崎っ、何でお前が被害者面でのうのうとしてるんだよ!! もっと反省しろよっ!!」 
   氷川っ、何で俺の責任なんだよっ!! ていうかツッコミを舐めるな!!」

北山「でも、まだ浦賀君の件は解決していない……それに……」
石黒「おっと北山君、それ以上は、ね。大丈夫だ、まだ時間は十分ある。何より今は混乱を避けなければ」
乾 「北山っ、思わせぶりなセリフはやめろっ!! 外で十分目立ったんじゃないのか!?
   石黒っ、いつの間にかしれっとキャラ立ててんじゃねえよっ!!」

津村「今の浦賀君は確かに危険だ。正規の戦闘訓練を受けた僕ですら、自分の身を守るのがやっとだった……」
古泉「アッラーアッラーアッラー……」
乾 「津山っ、お前どさくさ紛れに“哀しき戦闘マシーン”キャラにクラスチェンジしようと企んでるだろ!!
   しかもシリアスな空気に乗じて、ずっと『津村』って呼ばせてるじゃないか!! この腹黒タヌキめ!!」
   古泉っ、ていうかお前、何しに山荘に来たんだ!! 目立とうとする気が無い奴は帰れよ!!」
4682/5:03/01/31 12:43
日明「はあ……悩むわぁ……失意に沈むロマンスグレーと、私を追ってきたナイスミドル。
   それ二人の間で、私の心は波間に浮かぶ小船のように揺れ動いてるっていうのに、
   そこに不意に現れた荒々しくも猛々しい、野蛮な年下の略奪者。
   ああ、どうすればいいのかしら……美しすぎるって罪ねえ……
   ……はっ、判ったわっ。男たちの心を狂わせる私の魅力こそが、全ての事件の動機に違いないわっ!!」
浅暮「……もういい。お前は死ぬまで妄想してろ。ていうか浦賀に食われて死ね」
乾 「日明っ、妄想にふけってんじゃねえよ!! 所詮お前は“工業高校の女子”なんだよ!!」
   浅暮っ、お前意味ありげなセリフか酒飲むかしか能がないくせに、なんで日明だけにはツッこむんだよ!!」

霧舎「……ねえ、マイハニー……ハニーのキャラがパクられてるよ……?」
高里「え、ええ……そうね……」
乾 「霧舎っ、一人だけ抜け駆けして彼女作るから天罰が下ったんだ!! ざまあ見ろ!!」
   高里っ、お前が今更ラブストーリーなんていう柄かよ!! “アニ研の女子”のくせにっ!!」

秋月「はあ……ボクもキャラを立てたいなあ……でも、どうすればいいんだろうか……」
高田「そうだ秋月、目立ちたいならこのコーヒーを飲んでみるってのはどうだろう。
   あ、もちろん妙な薬物は入ってないよ。証拠に僕が飲んで見せるよ。ほらね。
   じゃあ、間接キスは嫌だろうから、この辺に口をつけて飲んでくれ」
乾 「秋月っ、既にお前は“目立てない”キャラとして十分目立ってるじゃないか!!」
   高田っ、ベタベタなトリックを無駄に用いて、意味も無く場を混乱させようとするな!!」
4693/5:03/01/31 12:46
舞城「ああ、イライラする。つーかむかつく。なんでこんなとこに意味も無く集まらんといかんのや。
   さっさとこのクソ忌々しいファッキンな事件をバッサリ解決したりたいつうのに。ああ、うぜえ」
佐藤「……わからない……いくら考えてもわからないんだ……くそぉっ……」
乾 「舞城っ、……は今気が立ってるのでパス。ほら、ドツキ漫才は苦手だしね……
   佐藤っ、お前いつまで引っ張る気なんだよ!! 冒頭の掴みんとこで活躍しただけでもう十分だろ!!」

新堂「しかし“救助する”となるとちょいと面倒くさいな。とりあえず倒してから考えるか。なあ、中島」
中島「1763、1764、1765……」
乾 「新堂っ、……あの、手荒なまねは控えようね。ほら、一応クラスメイトだし、ね」
   中島っ、……は筋トレに夢中か。しかし、これ以上鍛えてどうするつもりなんだか……」

蘇部「凄いねえ、中島くん。指だけで腕立て伏せしてるよ」
殊能「……あ、ああ、そうだね。ちなみにあれは指立て伏せって言うんだよ」
乾 「蘇部っ、お前最近、幼児化が進行してるぞ……いいのかそれで!?
   殊能っ、ていうかお前が甘やかしすぎだっ!! ……っておい殊能、聞いてるのかっ!!」

乾の渾身のツッコミに耳を傾ける者は、もちろん誰もいなかった。

勝手気ままに喋り続ける一同。
と、それを無視するかのように、笠井が不意に口を開いた。

笠井「……くだらん。まさに茶番劇だな」
4704/5:03/01/31 12:52
これが普段なら、笠井の言葉で場の空気は凍りついたことだろう。
確かに笠井にはそれだけの威厳と人格的圧力があった。そう、それは間違いなく存在した。が……

舞城「あのなあ、笠井センセイよ。さっきまで必死でその茶番劇に踊らされとったのは誰やと思てんのや。
   おめえやろが。今更、先生面して偉そうな口叩ける立場やと思うとるんか?」
もはや侮蔑の意思を隠そうともせずに、舞城が言い放つ。

日明「ちょっとちょっと舞城君、先生は疲れてらっしゃるのよ。幾らなんでもそれは言いすぎよ!!」
乾 「そうだ!! そもそも、笠井先生は石崎たちのお遊びにちょっと参加してくれただけなんだぞ!!」
笠井を何とかして庇おうとする乾の姿に、逆に一同から失笑が漏れる。
霧舎「だって……あれじゃあねえ……ね、ハニー」
噴出しそうなのを堪えつつ言う霧舎。ついでに高里の気をするが、高里は反応しない。
新堂「あんだけの醜態晒しといて、いまさらアレはお遊びだったなんて言われてもなあ」
ニヤニヤ笑いながら、馬鹿にしたかのように言う新堂。
氷川「あのトリック失敗は流石にいただけませんね。正直、別の意味で失望しました」
淡々とした口調で冷静に言う氷川。その心中は表情からは読み取ることができない。

石崎「うーん、やっぱり俺が煽り過ぎたのがいけなかったんだよなあ。まあ、そんなに気にしなくて
   いいですよ、笠井先生。ここでの出来事は“全て”なかったことにする約束ですからね」
そして最後に、石崎が余裕の笑みを浮かべながら、何かを確認するかのように言う。

しかし、その余裕もそこまでだった。

笠井「そんな姑息な真似はしない。ちゃんと落とし前はつけるさ。そう、きっちりとな」
4715/5:03/01/31 12:56
思いがけない笠井の言葉をすぐには理解しかねたのか、何とも言いようのない静寂が場を支配する。
そして、もちろんその沈黙は瞬時に破られた。

氷川「か、笠井先生っ、それじゃあ約束が違うじゃないですかっ!!」
冷静で真面目なはずの氷川が、珍しく声を荒げて笠井に詰め寄っている。だが、笠井は答えない。

舞城「自暴自棄で生徒を道連れに自爆ってか……はん、やっぱおめえは最低最悪のうんこ教師やな。
   いや、うんこ教師ですらあれへん。うんこ野郎や。史上最低最悪のファッキンうんこ人間や」
舞城が吐き捨てる。その表情はもはや暴発寸前だ。しかし、笠井には動じる気配は無い。

乾 「か、笠井先生……ここはその、穏便に済まされたほうがいいんじゃないかなぁ、っと……」
乾が卑屈な笑みを浮かべながら、とりなすように言う。もちろん笠井には無視される。

石崎「じゃあ俺は放校ですか。いやあ、困ったなあ。ちょっと先生を追い詰めすぎちゃったかなあ」
石崎が場違いなまでにのほほんとした表情のまま言う。だが、よく見ると目の奥は笑っていない。

先ほどとは一転し、今やこの場に存在する視線はすべて、笠井の挙動に集中されている。
そして笠井は、ゆっくりと次の言葉を口にした。

笠井「ああ、判っているとも。もちろん約束は守る。お前たちに一切の処分を課すつもりはない。
   しかし、私も教師の端くれだ。これだけの醜態を生徒の前で晒しておいて、のこのこと教師面を
   押し通し続けようとは思わん。この不始末の責任を取って、学園に帰り次第辞表を出すつもりだ」
472名無しのオプ:03/01/31 16:30
おおお!急展開!
4731/8:03/01/31 18:08
全員「な……」

笠井の思いがけない発言に、広間にいる全員の表情が驚き一色に塗り替えられる。
今までずっと、終始ふてぶてしい態度を崩さなかった新堂までが、珍しく驚きを表情に見せているし、
舞城ですら、先ほどまでの激昂はどこへやら、毒気を抜かれたかのような顔でぽかんとしている。

氷川「か、笠井先生……それは余りにも極端な……」
ようやく氷川が言葉を発する。
先ほどのからの急激な感情の変化に表情がついていけてないのか、未だに少し怒ったような表情なのが奇妙だ。

石崎「あれっ、俺はお咎めなしってことでいいみたいだな。でもなあ、それは困りますよ、笠井先生。
   まるで俺の悪さの責任を取って、先生が辞めさせられたみたいに見えるじゃないですか」
乾 「いいからお前は黙ってろ!! ……そ、それより笠井先生、それも先生一流のご冗談ですよね……?」
続いて石崎と乾が声を発する。
更に何人かが発言しようとするのを手で制し、笠井は静かに続けた。

笠井「調子に乗るな、石崎。別にお前のために、というより誰かのために犠牲になるつもりはない。
   あくまで一般的な意味での監督責任を取るだけの話だ。現実に私の山荘で事故は起きたのだからな。
   そもそもお前たちのようなお調子者にまんまと乗せられたというだけで、私にメフィスト学園の教師たる
   資格がないのは明らかだ。それに、元々、そろそろ私の仕事も潮時だと思っていたところだ。
   ちょうどいい機会だ。いさぎよく職を辞すことにしよう」

そこで笠井は声のトーンを変えた。
笠井「ただ、この機会に詫びておかねばならないことがある。津村、そして蘇部――」

津村&蘇部「……へっ?」
唐突に名前を呼ばれて驚く二人。

そんな彼らに笠井は、何か言いかけて、しかし言葉を飲み込み、ゆっくりと頭を下げた。

笠井「――この期に及んで言い訳はすまい。すまなかった、津村、蘇部」
4742/8:03/01/31 18:09
津村「せ、先生……」
素直に感動しているらしい津村に対し、蘇部の表情は複雑だ。
蘇部「ぼ、ぼく、別に先生に謝ってもらうことなんて……」
それに対し、何故か珍しく頑なな蘇部の態度に、笠井は不意に苦笑を浮かべる。

笠井「勘違いするな、蘇部。お前の作品をゴミと言ったことについては、
   もちろん撤回するつもりも謝罪するつもりもない。あれは正しい評価だと今でも確信している。
   私が謝罪するのは、お前の作品とお前の人格を混同して中傷したことについてだ。
   あれはいかなる理由があろうともやるべきでない行為だった。本当にすまなかった。
   これだけでも十分に、私は教師として失格だな」

最後は自嘲げに呟くと、笠井は蘇部の方を向いていた視線を、ゆっくりと一同に向けた。
場の深刻な空気を振り払うかのように、その力強い意思の込められた視線をふと緩め、穏やかな声で語る笠井。

笠井「なに、今回の事件はたいした問題ではない。ちょうど良い機会だったとすら言えるかもな。
   元々私は、いずれ教師としての仕事は終わりにして、自分の作品に専念しようと思っていたのだからな。
   50までに完成させなければならない仕事がたくさん残っているのでな。
   その時期が少し早まった。それだけの話だ」

そう言うと笠井は、少し照れたように笑った。
4753/8:03/01/31 18:11
笠井に翻意を迫る者あり、感極まって泣き出す者あり、それを冷笑したり苦々しげに傍観したりする者ありの、
あたかも往時の学園青春ドラマのような展開がひとしきりあった後、再び笠井は静まり返る一同の前にいた。

今や、笠井の威厳は完全に回復していた。
皮肉げな視線や困惑した視線を向ける者はいないではないが、少なくとも明確な敵意や侮蔑は感じられない。
それを確認するように一同を見渡し終えると、不意に笠井は表情を引き締める。

笠井「が、今はまだ私は教師だ。これ以上の混乱や事件の発生を防止すべき立場にある。
   これから、お前たちに年長者として、山荘の主人として、そして教師としての指示をする。
   この場はこれで解散だ。皆、一旦、自分たちに割り当てられた部屋に戻るように」

そこまで語ると笠井は、一座の雰囲気を確認した。
今のところ、表立って反論をしようとする人間はいない。ただし、説明を求める視線はいくつかある。
笠井は満足げな表情を浮かべ、少し語気を和らげて続けた。
4764/8:03/01/31 18:13
笠井「もちろん、お前たちをどうこうしようというわけじゃない。悪ふざけがしたい盛りのお前たちを
   無秩序に行動させとくと、また変な「事件」が次々と勃発するのは目に見えてるからな。
   言葉は悪いが、隔離さえしとけばとりあえず揉め事は起きないということだ。
   もちろん、そんな長時間のことじゃない。そうだな、皆の興奮が冷めるまでってところだ。
   後のことは追って指示を出す。以上だ。これでいいな、石黒?」

急に話を振られ、一瞬驚いたような表情を浮かべた石黒だったが、すぐにその表情は理解と納得に変わる。

石黒「はい。判りました、先生。みんな、ここは笠井先生の指示に従おうじゃないか」

はきはきと答えた後、石黒は笠井の方に、ゆっくりと振り返る。
その眼光は、何かを理解した者特有の満足感に満たされ、
その表情は、笠井への明白な敬意と賞賛の色で染められていた。

笠井「よし、それではお前たち、自室に移動してくれ。あと……」

しかし、笠井の指示はそこで中断させられた。

舞城「……ちょっと待てや、おめえら」

あらゆる感情を混ぜこぜにして押し殺したかのような、低い、野犬が唸りをあげているかのような声。
そこには、今にも挑みかからんばかりの勢いで笠井を睨みつける、舞城の姿があった。
4775/8:03/01/31 18:14
舞城「……勝手なことぬかしとるやないか、おめえら。部屋に引っ込んで指示を待てやて、人を馬鹿に
   すんのもたいがいにせいや。はん、笑わしてくれるわ。皆で部屋に閉じこもって震えとれってか?
   阿呆か。ほしたら誰が浦賀の奴を止めるちゅうんや。あいつも笠井センセイの溢れんばかりの愛の前に
   改心して、ほいでみんなで友情ごっこの続きか。はいはい、そりゃ美しいわ。最高の光景やわ。
   涙がちょちょぎれるとはまさにこのことやわ。オーケイオーケイ、おめえらはそうやって夢でも見とけや。
   その間に俺が全部片付けといたるわ。ちゅうわけで笠井センセイ、俺は自由に動かさしてもらうさけな」

マシンガンのような勢いでまくしたてると、そのまま笠井を睨みつける舞城。
一瞬、笠井の目の中に怒気が煌くが、すぐにそれはやれやれといったものに変わる。

笠井「もちろんそれでいい。そもそも舞城、最初からお前には浦賀の保護を頼むつもりだったからな」

舞城「へ?」
舞城の目が点になる。

笠井「もちろん、浦賀の捜索は必要だ。殺人鬼だとか串刺しだとかいう話は正直言って眉唾物だが、
   あいつがここに来ていることは確からしいな。だとすれば、捜索して保護する必要があるのは間違いない」

笠井はちらりと舞城の反応を窺い、その拍子抜けしたかのような表情を確認すると、話を続けた。

笠井「浦賀がどういう状態にあるのかは知らないが、正直、皆が勝手に動き回るという状況はマズいだろう。
   本当に浦賀が殺人鬼的な行動をしているのなら、それこそ弱いものから一人一人やられていくだけの話だ」
日明「ひっ!!」

いつの間にか笠井の隣に腰掛けていた日明が、浦賀に襲われた記憶が蘇ったのか、短い悲鳴を上げる。
もちろん、どさくさにまぎれて笠井にしなだれかかるのも忘れない。
4786/8:03/01/31 18:17
舞城「まあええわ。笠井センセエが何言おうが、俺は俺のやりたいようにやらせてもらうだけやからな」
笠井「ああ、好きにしろ。というわけで浦賀については舞城に任せたい。ただ、舞城一人では流石に危険だし、
   手も足りないだろう。そうだな、新堂と中島、お前たちもついていってやれ。
   このメンバーなら浦賀にも引けはとらないだろう」

笠井の指名を予期していたかのように、に、腕をさする中島。
中島「そうこなくっちゃな。まさにメフィスト学園自警団の腕の見せ所って奴だぜ。なあ、新堂よ」
新堂「ああ、悪い、俺は今回はパスさせてもらうぜ」
中島「よし、そうこなくっちゃな……って、ええっ!?」

思いがけない返答に驚く相棒に対し、新堂はニヤリと笑って答えた。
新堂「どうやら今回に限ってはこっちに居たほうが、面白そうな出来事に出くわせそうだからな」

新堂の言葉に、僅かに眉をしかめる笠井。
笠井「本人にその気がないのなら仕方ないな。それでは……」
広間に居る人間の顔を、ゆっくりと見回す笠井。

と、そのとき、一人の生徒がおずおずと手を挙げた。

佐藤「笠井先生!! 僕にやらせてください!!」
4797/8:03/01/31 18:20
笠井「佐藤か……」
一瞬表情を消し、考え込む笠井。が、すぐに答えは出たようだ。

笠井「駄目だ。お前は非力すぎる。正直言って、舞城たちの足手まといになるとしか思えない」
佐藤「そんな……ぼくは確かめなければならないんです……そう、自分の目で……」
必死に食い下がろうとする佐藤だったが、笠井の鋭い眼光の前に腰が砕けたようになり、がっくりとうなだれる。

笠井「とにかく佐藤は駄目だ。危険すぎる。そうだな……津村、お前に頼んでいいか?」
津村「はっ!! 笠井教官!! この津村巧、殺して殺して殺しまくります!!」
笠井「いや、殺さなくていいから、ほどほどに頑張ってくれ」
飛び上がるように敬礼して復唱する津村に、苦笑いしながら答える笠井。
乾 「津山の奴……あんなキャラだったっけ?」
氷川「ほら、笠井先生にさっき頭下げられたんで、感激してるんじゃないかな? 津村君って割と単純だから」

舞城「けっ、俺は一人で十分やさけな。付いてきたい奴は勝手にせいや」
未だに機嫌の直らない舞城をよそに、笠井は次々と指示を出していく。

笠井「よし、浦賀の捜索班については、とりあえずこれでいいだろう。
   後は、そうだな、石黒、私たちにも人数が居た方がいいな。誰がいいか?」

そう言うと、意味ありげな視線で石黒を見る笠井。
急な言葉に少し戸惑った石黒だが、すぐにその瞳に理解の色が浮かぶ。

石黒「そうですね。北山君と石崎君が適任じゃないかと思います」
流石は笠井先生、といった口調で、すらすらとクラスメイトの名を挙げる石黒。
4808/8:03/01/31 18:20
笠井「北山に石崎……両方とも例の馬鹿騒ぎの当事者だな……」

ぼそりと呟き、すぐに照れたような表情を浮かべる笠井。

笠井「まあ、それを言い出すと私も当事者の一人な訳だったか。これは失言だな。よし、北山は問題ないだろう。
   ただ、石崎は正直言って不安が残るな。なんといっても皆を煽った実績があるわけだからな」

石崎「ひどいなあ、先生。もうその件については、お互いに言いっこなしってことにしましょうや」
石崎がぽりぽりと頭を掻きながら答える。
笠井「ははは、済まん済まん。が、お前も事情はわかっているだろう。
   今は不確定要因は少しでも減らしたいんところなんでな。」
石崎「はいはい、わかりました。確かに俺なんかには最も不向きな状況ですもんね。
   ま、そのときまで俺はひとりでどっかに引っ込んでますよ」
氷川が何か言いかけるが、それを押しとどめるように石崎は答える。
笠井「済まんな。まあ、そんな長い時間じゃない。よし、ここは地下室にでも幽閉させてもらうとするか」
石崎「酷いなあ、先生。冗談がきついですよ。さっきの仕返しなら、もう勘弁してくださいって」
苦笑いする石崎。ニヤリと笑い返す笠井。

笠井「よし、以上だ。それでは皆、移動してくれ」

笠井の声に応じて、一旦散りかける一同。

しかしそのとき、落ち着いた、しかし毅然とした声が広間に響き渡った。
481名無しのオプ:03/01/31 18:27
(・∀・)ドキドキ


カサイセンセイニ ホ レ マ ス タ
4821/2:03/01/31 19:36
笠井「……くだらん。まさに茶番劇だな」

笠井先生によって再び広間に呼び寄せられたぼくたち。
その笠井先生の発言をきっかけに始まった話の流れは、完全な笠井先生のペースで進行している。
この辺はいかにも老練な大人といった感じで、流石は笠井潔といったところだろうか。
もっとも、かく言うぼくも、蘇部くんが泣き出したあたりではついもらい泣きをしちゃったんで、
あんまり人のことを言えた義理ではないんだけど。

ぼくは残された最後のピースを求めて、広間で繰り広げられてる往年の大映ドラマを彷彿とさせる
(ひょっとしたら新喜劇の方が近いのかもしれない。もちろん松竹のほうね)実に良いお話を冷静に観察した。
こういう言い方をすると何かぼくが冷血漢みたいだが、まあ、これも性分だから仕方ない。

そして、今は笠井先生の話も終わり、皆が広間から出て行きかけているところ。

さて、ここまでの動きは、まずは予想の範囲内だ。今までの事件の展開との辻褄は合ってる。
気になる会話もいくつかあった。ただ、例の証拠だけが、どうしても発見できない。
ぼくは、ジグゾーパズルのピースをひとつなくしてしまったときのようなもどかしさを感じつつ、
この場の動きの全てを、何一つ見落としのないように観察した。

しかしそれにしても、この合宿は長かった。
現実にはさほどの時間は経過していないはずなのに、もう何日も経っているような気がする。
クラスメイトたちの雰囲気も、人によってはずいぶん変った。
これが、皆がいつも目の色を変えてなりたがっている「キャラが立つ」という状態だろうか。
ぼくには目立ちたいという願望は希薄なんで、彼らの気持ちはよく判らないけど。
4832/2:03/01/31 19:38
……キャラが立つ?

そういえば、この合宿で、見違えるように変化したクラスメイトが一人いる。
普段は孤立しがちだった彼が、あんなに生き生きと輝いているのを見るのは初めてだ。

ぼくは、僅かに引っかかるものを感じる。
こういう言い方はあれだけど、彼は短期間に著しい人格的成長を遂げたように感じる。
が、それが人格的成長ではなく、何らかの理由で隠されていたものが花開いたと考えるとどうだろうか。
そして、すなわちそれは……

……いや、そんな考えは馬鹿げている。
常識的に考えればありえない。それこそ掟破りも甚だしい。
しかし、そう考えると、先ほどの会話の意味するところの辻褄も合ってくるのではないだろうか。

不意に、ぼくは、真相を理解した。
脳裏のぼやけていた光景は、今やピタリとピントが合い、鮮明にその姿を映し出している。

……そうか。なるほど、つまりはそういうことか。

そう考えると、今頃になって事態が動き出したことの説明もつく。
全てのピースがぴたりと当て嵌まる以上、これが恐らくは事件の真実なんだろう。

笠井「よし、以上だ。それでは皆、移動してくれ」

そう言い残し、石黒くんを連れて広間を出て行こうとする笠井先生。
ぼくは、ゆっくりと立ち上がり、その後ろ姿に声をかける。

殊能「待ってください、笠井先生。今から第二の解決編を始めますから」
484名無しのオプ:03/01/31 19:45
ミステリにこんなにわくわくしたのはすげえ久しぶりだ……
485398漫画喫茶より:03/01/31 19:46
>>431
えーっと。すんません単純な分量ミスです。
改行が多すぎますエラーが出た為やむなく全3編に分けました

>>427は個人的推測ですがクッキーが残ってたに一票
486名無しのオプ:03/01/31 22:40
殊能タンの「黒い仏」を読みつつ期待カキコ。
487名無しのオプ:03/01/31 23:15
>普段は孤立しがちだった彼が、あんなに生き生きと輝いているのを見るのは初めてだ。
うーんそんな感じのやつ何人もいるなあ…と真面目に考えたり。

殊能の解決編に期待。
488名無しのオプ:03/01/31 23:24
冷静な殊能はいいなぁ。
解決に期待大。
489名無しのオプ:03/01/31 23:51
おおっ、まさしく『名探偵最後の事件』!
しかし、読んでいく内に眩暈がしてくるな……。ホワイなのか、ハウなのか、フーダニットなのか……。
自分でどこをどう定義するかが問題なのか、と思うともう……眩暈が残る。
笠井「なんだ殊能、お前まで名探偵気取りで推理ごっこがしたいのか」

殊能の言葉に足を止め、怪訝そうな顔で振り向いたものの、すぐに普段の重厚な雰囲気を取り戻し、
いかにも血気にはやる青二才を上手くあしらうような態度で答える笠井。

殊能「ええ。まあ、ぼくは名探偵って柄ではありませんけどね」

笠井「馬鹿馬鹿しい。どうしても続きがやりたいなら後でじっくりと付き合ってやる。
   とにかく今は時間がない。私は部屋に戻らせてもらう。さあ、行くぞ、石黒、北山」

そう言い残すと、石黒くんたちを促して、広間を出て行こうとする笠井先生。
その後姿に向かい、殊能はゆっくりと、一つ一つの言葉を空間に刻み込むように問いかける。

殊能「先生、何人であっても探偵役による解決編を拒否できないのは、本格を構成する要素みたいなものです。
   現代本格の理論的指導者たる笠井先生が、それを認めないつもりですか?」

笠井の足が止まる。そして、ゆっくりと振り返り、殊能を凝視する。
その圧倒的な眼圧を、殊能はにっこりと笑って受け止めた。




……結局、笠井は殊能による解決編の開催要求を受け入れた。
もっとも、下らない内容なら即刻中止させるという条件つきでの話だが。

全員の視線を一身に浴びつつ、特に気負う様子もなく、探偵の指定席――広間の入り口際――に陣取る殊能。
そして、彼が最初に発した言葉は、誰もが予想だにしないものだった。

殊能「この、全てが巧妙に仕組まれた事件をとく鍵は、そう、清涼院くんの行動にある」
全員「……はぁっ?」

一座に沈黙が流れる。もちろん、殊能は平然としている。
皆が皆、殊能の発言の意図するものを測りかねているようだ。

奇妙な沈黙が続く。
誰もが腑に落ちないものを感じつつ、殊更に口にするのを躊躇っているかのような。
金田一先生(実在した方)ならこの状況を、「天使が通り過ぎた」という
慣用句の用例として、広辞苑に収録しようと考えたことだろう。

石崎「おいおい、名探偵が最初に突飛なことを言うのはお約束としても、いくら何でも清涼院は関係ないだろ」

ようやく、一座の空気を代表するような形で、石崎が苦笑交じりに口を開いた。

氷川「ええ。合宿に参加せず、一度も山荘内に現れていない清涼院くんが
   事件に関与してるなんてのは、はっきり言ってむちゃくちゃです。ありえません」
乾 「だいたい、この状況で清涼院が事件に絡んでいるとするなら、
   それはもはや推理の範疇で片が付く事態だとは思えないんだけど」
舞城「あいつは大概なんでもアリなメタメタうんこ野郎やけど、それを悪用するような奴とは思えんからなー。
   ちゅうか、あいつのあの力は徹底的に無意味やからなー。もうびっくりするくらいに。
   あいつがアレを使いこなせるなら、メフィスト学園なんかに居らんと、それこそ神サマでもやっとるわ」

何人かが石崎に続いて発言する。他の皆も、程度の差こそあれ、ほぼ同意見のようだ。
しかし、殊能は表情を変えずに、むしろ、何を当然なことを言ってるんだという口調で言った。

殊能「もちろん。そうだね、あらかじめ断言しておいたほうがいいかな。
   清涼院くんの行動そのものは、どれもこれも事件に何ひとつ関係ない無意味なものだよ」
再び、一座に妙な沈黙が流れる。もちろん殊能は平然としている。
口火を切ったのは、仕方ないなといった笑みを浮かべた舞城だった。

舞城「はいはい、もう降参やわ。泣く子と名探偵の意味ありげな台詞には勝てんって言うしな。
   もう無粋なツッコミは入れないさけ、思う存分謎解きを続けてくれや」

そういい終えると、にやりと笑って一座を見回す舞城。

舞城「皆さま、特に異論はございませんようですね……ってか。じゃあ殊能、続けてくれや」

おどけた口調で場の空気をまとめると、殊能に続きを促す舞城。
殊能はそんな舞城に特に感謝を示すでもなく、静かにその“推理”を披露し始めた。

殊能「もちろん、何の根拠もなく清涼院くんを持ち出したわけじゃない。
   清涼院くんが山荘の内外に現れているらしき予兆、それは事件の初期の頃に示されていたよね」

その言葉に、高田と乾がはっとしたような表情になる。

乾 「そうか、あの雪だるまか……」
高田「なるほど、深く考えてなかったが、確かにあれはいかにも清涼院くんっていう感じだったね」
乾 「ていうか高田君、係わり合いになるのを避けて、思いっ切り見なかったふりしてたような……」

完全に忘れていたことを唐突に思い出したような表情で、しきりに頷き合う高田と乾。
と、そんな二人の会話に、いきなり殊能が割り込みをかけた。

殊能「そう、それこそが問題なんだよ」
乾 「……へ?」
高田「問題って、僕たちのことかい? そりゃあ、もっと親身になって対応すべきだったかもね。
   でも、相手が清涼院くんだからねえ。意味もなく雪だるまくらいやってても、別に不思議でも
   何でもないだろ。ていうか正直、君に指摘されるまで綺麗さっぱり忘れてたくらいだ」

全く悪びれることなく、当然のように語る高田。
もちろん一座に、それを咎め立てするような雰囲気はない。むしろ当然視する意見が殆どだ。

石崎「まあなあ、清涼院だもんなあ……」
氷川「いちいち真面目に対処する方が、ちょっとアレっていうか……ねえ」
日明「そうねえ。ゴキブリと清涼院君は、1匹見かけたらその100倍はいるって言うし」
中島「うぇ、学園祭のことを思い出しちまったじゃねえかよ……」
蘇部「で、でも、確かに清涼院くんはいろんな意味で凄いけど、そのときは何か困ってたかもしれないし……」

殊能は、級友たちの中に一人だけ、少数意見の持ち主を発見し、僅かに口元をほころばせる。
もちろんそれは一瞬だけだ。よほど注意深く観察していない限り、それに気付く人間はいないだろう。
そして殊能は、一座が落ち着くのを待って、淡々と話を続ける。

殊能「もちろん、高田くんや乾くんを責めようという気なんて更々ないよ。
   後の山荘内の出来事を考えると、あれが清涼院くんかもしれないと気付いただけでも大したものだよ。
   彼のことは「清涼院だから」とか「御大だから」という言葉で全てを片付けるのが普通だしね。
   むしろ、清涼院くんの奇行に真面目に取り合う方が、ぼくたちの常識に反してるわけだからね」

もし清涼院が聞いていたとしたら憤慨するに違いないようなことを、さらりと言ってのける殊能。
ここで一旦言葉を止め、殊能は意味ありげに一座を見渡した。

殊能「もっとも、常識を否定するだけの根拠があるなら別ですが……っと、それはまだ関係ないね。
   さて、今回の一連の出来事にまぎれて、学校に居るはずの清涼院くんはこの雪山一帯に、
   何度か来ていることが、積木くんからの情報で判っている。これがそれだよ」

そう言うと殊能は、一枚のメモを示した。一同がそれを覗き込む。
殊能「まず、この時点(>>前スレ900)で、清涼院くんはその“なんでもあり”能力を駆使して、山荘に現れている。
   続いて(>>前スレ912)では、皆を驚かせようとして山荘内に現れていますが、完全に無視されている。
   積木くんによれば、このあと清涼院くんは皆を驚かせられなかったことについて怒っていたとのこと。
   その後、清涼院くんは、しばらくの間、学園から姿を消す。(>>69-70
   そして、しばらく後に戻ってきた清涼院くんは何故か縮んでおり、お湯をかけると復活したらしい。
   そのときは、メタ的手法によってではなく、古処くんによって物理的に運搬されてきていた。(>>143
   ”学園に居る”清涼院くんが、この雪山に接点を持ったときの状況は以上だね」

長い説明を終え、殊能は一息つく。
誰も言葉を発しない。
広間に、なんとも言いがたい奇妙な空気が流れた。

氷川「あの餅って……清涼院君が持ってきたものだったんだ……」
絶句する氷川。
舞城「あんときか。なんか踏んだような気はしてたんや。なんや、あれって清涼院やったんか。
   せやったらもっとしっかり踏み潰しとくんやったわ」
高笑いする舞城。
他の面々は、あまりといえば余りの清涼院の「非常識な」行動に、呆れてものも言えない様子だ。

石崎「……で、殊能。ちゃんと解説してくれるんだよな?」
一同の疑問を代表するようにして、石崎が質問する。

殊能「もちろんだとも。まず言っておこう。この雪山に出没していた清涼院くんは、実は二人いたんだ」
そう言っておいて、殊能は密かに一同の反応を窺う。もちろん、殆どの人間は特に驚いた気配を見せない。
当然だ。つい先日の学園祭であれだけの経験をしているのだ。
今更、清涼院が二人いたことくらいで驚く人間がいるわけがない。そう、一人を除いて。

殊能は、先ほどから細心の注意を払って観察している人物が、一瞬だけ見せた驚きを見逃さなかった。
もちろん、そんなことはおくびにも出さず、殊能は淡々と解説を続ける。

殊能「積木くんによると、清涼院くんは間違いなく今回のスキー合宿に参加しておらず、
   少なくともこの時点(前スレ>>900)の時点まではずっと、学園に居たとのこと。
   とすれば、学園にいた清涼院くんと、雪だるまの中にいた清涼院くん。
   この二人の清涼院くんが存在した、そう考えるのが自然だね」

石崎「でも、高田たちが目撃した雪だるまの中に、清涼院がいたとは限らないんじゃないか?」

石崎が当然の疑問を投げかける。が、それに答えたのは殊能ではなかった。

新堂「いや、清涼院は二人いた。それは間違いない」
舞城「そうそう。そして雪だるまの中に入っとたのも事実や。もっとも、もう入ってへんけどな」
氷川「……ところで君たち、何でそんなことが判るんだい?」

新堂はニヤニヤ笑ったまま、氷川の問いを無視する。そして、舞城がもったいぶって口を開いた。

舞城「そりゃ、雪だるまに入っとった清涼院が喰われとるのを見付けたさけな」
舞城の言葉に、流石に驚きを隠せない一同。

特に、佐藤の驚きっぷりは酷い。口をぽかんと開け、心ここにあらずといった状態だ。

佐藤「ま、舞城、それっていったい……」

息せきこんで言いかける佐藤。その瞳には懐疑と焦燥が渦巻いている。
が、それは不意に引き締まった表情になった舞城の、射すくめるようなきつい眼差しによって制止された。

舞城「だから言うたやろが。答えは自分で目ェ見開いて考えろってな」

何か言い返そうとする佐藤。しかし、その声は巻き起こった喧騒の前に掻き消された。

日明「……ちょっとちょっと、その“食べられた”ってのはどういうことよ!?」
津村「それって、やっぱり……」
新堂「ああ、浦賀の奴の仕業だろうな。まあ、喰われたのが清涼院で良かったってこった」

しばらく騒然としていた一同だったが、すぐにそれは安堵の雰囲気に変わる。
石崎「いやあ、確かに清涼院で良かったよ。これが他の奴だと洒落にならないところだったしなあ」
高田「そうだね。それなら浦賀君も、辛うじて一線は越えてないってことだからね」
氷川「……えっと、そういう問題なんですか?」
中島「あ? 違うのか? 清涼院なら余裕でアリだろ。俺も学園祭で何人かブッ殺したしな」
北山「でも、僕は確かに雪山で浦賀の奴に襲われて……」
乾 「そうか、浦賀にとっては、人間に見えるモノなら何でも良かったのかもしれない」
石黒「いや、それはない。現に僕は浦賀君に捕らえられたが、縄で拘束されただけで、
   この通り食べられたりはしてないからね」
秋月「……僕は、襲ってさえ貰えなかったけどね……ふふふ」
舞城「へえ。ほなことがあったんかー。やっぱりあいつはちゃんと分別できとるやないか。な、佐藤」
佐藤「……」
霧舎「だ、大丈夫だよマイハニー、君は僕が守るから……」
高里「……え、ええ、そうね……」
古泉「……全てはアッラーの思し召しだ。恐れることなど何もない」
蘇部「みんな、清涼院くんに酷いこと言いまくってるような気がするんだけど、いいのかなあ……」
浅暮「まあ、いいんじゃないか? 清涼院なんだから」

一座が静まるのを待って、再び殊能が口を開いた。

殊能「そういうわけで、清涼院くんはこの雪山に、少なくとも二人存在した。
   これを清涼院くんの行動を推理する上での前提にさせて貰うよ」
石崎「で、それがどうしたんだ? 清涼院の奴が二人いたとして……」

そこまで言いかけて、石崎は言葉を止める。

石崎「なるほどねえ、そういうことかあ。いかにもお約束って奴だねえ。
   しかし、清涼院ということで手段については考えないとしても、動機が判らないぞ」
殊能「動機? 清涼院くんのすることに理由なんて必要かい?
   まあ、強いて言えば、彼は皆を“驚かせたかった”んだろうね」
石崎「……ああ、そういうことね。確かにこりゃ、俺みたいな常識人の出る幕じゃないな」

苦笑して引き下がる石崎。

氷川「ち、ちょっと、石崎さん、僕には何が何だかさっぱり……」
乾 「そうだそうだ。だいたい石崎は探偵役をお役御免になった筈なのに目立ちすぎだぞ」
石崎「あのなあ。お前たちもメフィスト学園の生徒だろうが。ちょっとは自分で考えてみろよ。
   吹雪の山荘で事件が発生し、そこには同じ顔、同じ体つきの奴が二人存在するんだぞ。
   細かい理屈はともかくとして、やることつったらひとつしかないだろうが」
全員「あ……」

その言葉で、その場に居合わせた殆ど全員が、殊能と石崎の会話の意味するところを理解した。

中島「……なあ、石黒の先生よぉ。お前、あいつの言ってる意味、判ったか???」
石黒「さあ。僕は火山の専門家だからね。こういうことに関しては門外漢だからさっぱりだ」
津村「ううっ、ひしひしと疎外感を感じる……」

……判ってない人間もいるようだった。

殊能「そう。二人の清涼院くんは、入れ替わっていたんだよ」
当然のことのように軽く言った後、殊能はメモを片手に解説を始めた。

殊能「説明の便宜上、学園に残っていた方の清涼院くんを清涼院1、
   雪だるまに入っていた方の清涼院くんを清涼院2とさせてもらうよ。
   さて、一連の事件が始まる前に、清涼院2は何らかの理由でこの雪山に現れ、
   そして何者か――恐らくは浦賀くん――によって、雪だるまの中に入れられた。
   高田くんと乾くんが目撃したのは、この清涼院くんだね。
   まず、学園にいる清涼院1は、餅を届けるために山荘を訪れた後、
   皆を驚かせようとして、今度は山荘の内部に現れた。
   しかし、誰にも気付いてもらえないばかりか、
   舞城くんたちに踏んづけられて廊下に倒れてしまう体たらくだった。
   さて、積木くんによると、学園に戻ってきた清涼院1は非常に怒っていたみたいだ。
   積木くんと浅暮くんの意思疎通を意味も無く妨害した後、清涼院1は暫く姿を消してしまう。
   そして古処くんに拾われて学園に戻ってきたときには、何故か干からびて縮んでしまっていて、
   しかも奇妙なことに、お湯をかけられて復活した清涼院くんはどういうわけか、
   それまでとは全く違う、いわゆる“まとも”な状態の清涼院くんだったらしい」

そこまで淡々と説明すると、殊能は一息ついた。

舞城「つまりや、いま学園におるはずの清涼院こそが、元々雪だるまに入っとった、
   言うところの清涼院2やと、そうゆうことやな」

驚きというより、むしろ呆れるあまりに声のない一同を代表するような形で、舞城が話をまとめる。

殊能「そうだね。そう考えると、いろいろなことの辻褄があう。
   戻ってきた清涼院くんが“まとも”になっていたことの理由は、これは憶測だけど、
   長い間雪だるまに閉じ込められていて退屈だった、そんなところじゃないかな。
   もちろん、清涼院くんだけに、別に理由なんて存在しないのかもしれないけどね」
石崎「でもなあ、例え入れ替わっていたとしても、俺たちにそれが判らないんじゃあ
   意味が無いんじゃないか? はっきり言って、俺には清涼院の区別なんてつかねえぞ?」
殊能「多分、そんなことは清涼院くんにとってどうでもいいことなんじゃないかな。
   それこそ彼の行動には文字通り“意味がない”わけだから。彼にとって重要なのは、
   皆を驚かせるために入れ替わりトリックを駆使したという事実、それだけなんだろうね、きっと」

と、先ほどから青白い顔色で呆然としていた北山が立ち上がり、ヒステリックに叫び始めた。

北山「で、でも、おかしいじゃないかっ!? 
   雪だるまの中に戻ったら、いずれ浦賀の奴に食われるんだろ!?
   だったら、せっかく雪だるまから脱出できたっていうのに、
   わざわざもう一人の方が雪だるまに入り直す意味がないじゃないかっ!!」
殊能「それは普通の人間の感覚だね。清涼院くんにとっては自分、もしくは自分の一部が食べられることより、
   入れ替わりトリックによって皆を驚かせることの方が重要だった。それだけのことだと思うけどね」
北山「な……」
殊能「そもそも、最初に言っておいたはずだよ。
   清涼院くんの行動そのものは、どれもこれも事件に何ひとつ関係ない、無意味極まりないものだって」

冷ややかに切り返す殊能に、口をパクパクさせて立ち尽くす北山だったが、
殊能がそれ以上の言葉を発する気配がないのを見ると、悄然とした表情のまま席に腰を下ろした。
隣の席の石黒が何やら声をかけているようだが、もはやその様子は誰も見ていない。
氷川「ちょ、ちょっと待ってくれよ。頭の中がこんがらかってきたよ」
石崎「よし、こういうときは状況経過表の出番だ。ううむ、本格っぽいな(笑)」

そういうと石崎は、隣に座っていた乾の手帳をひょいと取って破り、タイムテーブルをまとめ始めた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

清涼院1 学園  → 山荘(餅)→ 山荘(驚)→ 雪だるま→ 雪だるま →食べられる
清涼院2 雪だるま→ 雪だるま → 雪だるま →  ?? → 古処に救出→ 学園

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
    
石崎「ざっとこんな感じだな。うんうん、我ながらいい出来だ」
乾 「ていうか石崎、なんで俺の手帳を使うんだよ!?」
石崎「ああ、悪い悪い。少しでもお前の出番を作ってやろうと思ったんだが、不満だったか?」

にかっと笑う石崎。その悪びれない態度に、ぶつぶつ言いながらも引き下がる乾。
氷川「この“??”のところで何かが起きて、清涼院2は縮んでしまったという訳ですか」
殊能「そうなるね。さて、ここでひとつの疑問が生じる。
   吹雪の吹き荒れる雪山に、縮んで乾ききった清涼院2は倒れていたとのことだ。
   これがカチンコチンに凍りついた清涼院くんというのなら判る。
   しかし、乾ききって縮んだというのはおかしい。周囲は水分に満ちているのに」

殊能はそう言うと、反論を求めるかのように一同を見回す。

石崎「そうだなあ、浦賀の奴に全身の血を吸われたってのはどうだ?」
殊能「その可能性は僕も考えました。しかし、浦賀くんの嗜好はあくまでカニバリズムであって、
   吸血行為ではないからね。その浦賀くんが、血を吸うだけで肉は食べなかったというのは不自然だよ」
氷川「そもそも清涼院くんの行動に意味なんて無いんだから、
   自分で勝手に乾燥して、勝手に倒れたってのはどうだろう?」
殊能「もちろん、その可能性もあるね。しかし、清涼院くんは入れ替わりトリックによって、
   皆を驚かせようとしていたという前提に立つ以上、それも考えにくいと思う。
   清涼院2が学園に戻って初めて、彼にとっての入れ替わりトリックは成立するわけだから。
   彼がメタ的能力によって戻るのではなく、倒れているところを古処くんに偶然発見されて、
   学園に連れ帰られたというところから考えると、彼は“縮んだ上、戻らなかった”
   のではなく、“縮まされた上、戻れなかった”と判断する方が妥当だろうね」
舞城「つまり、何者か何らかの行為を清涼院2に対してやらかした、そうゆうことやな」
殊能「そうなるね。さて――もう質問はないかな?」

そう言うと殊能は、もう一度、広間を見回した。
503名無しのオプ:03/02/01 02:26
すげぇすげぇ!!
入れ替わりトリックかよ!!
ああもう、続きが待ち遠しい!!
職人さん、貴方凄すぎ!!
504名無しのオプ:03/02/01 03:11
ワロタ
何というメタな入れ替わりトリックだろうか!
これでこそメフィスト学園!(w
505名無しのオプ:03/02/01 03:28
メフィ学のいいところが全部つまっている!!!
506名無しのオプ:03/02/01 03:33
後編が待ち遠しい!
507名無しのオプ:03/02/01 05:07
公式HPの美術室にもスキー編の絵が出揃ってきてますな(w
もーメフィ学、すべてがいい感じだ!
508名無しのオプ:03/02/01 06:21
おお、公式のPTA会長さんがメフィストに送る決意をされたようでつ!!
これは祭だっ!!ワショーイ!!
↑と、さきに書き込まれてしまいましたが、いかがでしょうか。
みなさんの同意を得ておいたほうがいい、というご意見をいただきましたので、
ちょっとお伺いしたいのですが。
何度か「まとめて応募してみては」というような書き込みがこちらにあったので、
それなら、仮にも(勝手にですが)会長を名乗っている私が、と思ったのですが、
たしかにこの作品はみなさんのものですし、
身勝手な決意で応募するのは、と思いなおしました。

そういうわけで、職人さん方のご意見をお聞きしたいのですが、
こちらでそれをしてしまうと作品の進行を妨げてしまいますので、
公式HP掲示板
ttp://www.finito-web.net/bbs6/ppetit.cgi?room=mephisto
のほうまで、みなさまのご意見をお寄せいただけると幸いです。
どうかよろしくお願いします。
510名無しのオプ:03/02/01 21:21
リアル氷川に、このスレが通報されてた。
511名無しのオプ:03/02/01 21:39
>510
レスはなかったですね。その話題は避けてるのでしょうか?
512名無しのオプ:03/02/01 22:14
>510
通報されてたことはどうやって知ったのでつか。
513名無しのオプ:03/02/01 22:17
氷川の掲示板に書いてあるやん<通報
それに対して氷川は「ノーコメント」。まあ、当然ですね。
514名無しのオプ:03/02/01 22:30
>513
掲示板・・・キヅカナカッター
天然だけどちゃんと大人の対応ができるんでつね。ますますハァハァ
515名無しのオプ:03/02/02 01:13
リアル氷川にちょっと萌え。
でもメフィ学の氷川、
漏れの脳内では氷川の顔は「氷川」つながり「氷川きよし」なんだけど(w

何はともあれ、心底から楽しみにしている続き待ちsage
殊能「さて、この雪山において、人間の水分を奪うようなことの出来る手段がそうそうあるわけじゃない。
   山荘内なら幾つか考えうる場所はあるけど、乾燥させるためにはそれなりの時間がかかる。
   そして、山荘内では石崎くんと氷川くん、そして舞城くんたちがずっと捜査活動に
   勤しんでいたわけだから、見つからないようにするのは極めて困難だろうね」
石崎「ああ。風呂場は何回か見たが、そんな様子は感じられなかったな」
氷川「暖炉の近くには常に誰かしらがいました。あそこもありえないでしょう」
殊能「そして、台所にはずっと僕と蘇部くんがいたから、ここもない。
   でも、山荘内にこだわらなくても、まさに“乾燥させるための”場所が、この雪山にはあるんだよね」

そう言うと、殊能は舞城のほうを見た。舞城は一瞬きょとんとし、そして不敵な笑みを浮かべて答える。

舞城「そや、スキー用具の乾燥小屋っていう、うってつけの場所がな」

殊能「そう。僕たちは吹雪のせいでまだスキーをしてないから使用してないけど、
   この山荘にはスキー用具の乾燥用の小屋がありますよね、笠井先生」

無言で頷く笠井の姿を確認すると、殊能は不意にある人物の方を向いて言った。

殊能「というわけで蘇部くん、ちょっと頼みがあるんだけど、いいかな?」
蘇部「えっ、僕に……?」

いきなり話を振られて、ぽかんとした表情を浮かべる蘇部。
そんな蘇部に殊能は、笑顔で語りかける。

殊能「悪いんだけど、乾燥小屋の様子を見てきてくれないかな。
   恐らく、清涼院くんが閉じ込められていた痕跡が残っているはずだから」
蘇部「で、でも、僕なんかより、石崎くんや氷川くんが行った方がいいんじゃないかと思うんだけど……」
殊能「うーん、これは君にしか頼めないんだ。悪いんだけど、お願いしていいよね」
蘇部「……うん。判ったよ!! じゃあちょっと見てくるよ」

そう言うと、小走りに広間を出て行こうとする蘇部。それを殊能が呼び止める。

殊能「そうそう、外には浦賀くんがいるんだったね。うっかり忘れるところだったよ。
   まあ、恐らく襲われることはないと思うけど、それでも蘇部くん一人じゃ危険すぎるね。
   えっと……中島くん、悪いけど蘇部くんに付いていってもらえるかな? 
   中島くんなら浦賀くんに遅れをとることはないだろうからね。
   あっ、でも不意打ちの危険はあるか。そうだね、浅暮くん、きみも付き添ってくれるかな。
   浅暮くんは凄く感覚が鋭いから、浦賀くんの気配が近づけば間違いなく気づくはずだからね」

そう言うと、殊能は二人に頭を下げた。

中島「あ、ああ、それは別に構わねえが、でもよお……」
浅暮「了解した。蘇部は責任を持ってガードするから、殊能は事件を解決しといてくれ。そう、徹底的にな」

殊能の突然の言葉に何やら言いたげな中島を手で制し、浅暮が飄々と返事をした。

蘇部「良かった、君たち二人が一緒だと頼もしいよ。よろしくね、中島くん、浅暮くん」
そして、再び広間を出て行こうとする蘇部を、もう一度殊能は呼び止める。
殊能「あ、ちょっと待ってよ、蘇部くん。鍵がかかってたら入れないだろ。
   というわけで笠井先生、鍵がありましたら貸して頂けませんか?」

そう言うと殊能は、先ほどから一声も発せず、無表情のまま席についている笠井に声をかけた。

笠井「……乾燥小屋には鍵はかかっていない」
殊能「なるほど、外からかけるタイプの鍵ってことですね。じゃあ大丈夫だ。蘇部くん、よろしくね」
蘇部「うん、じゃあ行ってくるよ」
殊能「しっかり調査してきてね。僕の推理の運命は君にかかってるんだから」
蘇部「ちょっと自信ないけど……でも、任せといてよ!!」
中島「はあ……自警団ともあろう者が蘇部のお守りかよ……」
浅暮「ぼやくなって。まあ、守る相手が美人女優とかじゃないのは残念だけどな」

わいわいと言い合いながら、蘇部たち三人は広間を出て行った。
扉の向こうに消えていく蘇部の後ろ姿を、微笑みを浮かべて見送る殊能。

そして、そんな殊能の姿を見つめる、広間に残された面々の表情は――心底、呆れ返ったというものだった。

もちろん、約一名を除いて。
石崎が苦笑しつつ、口を開く。

石崎「おいおい、殊能。いくらなんでも過保護が過ぎるんじゃないか?」
殊能「さて、何の話ですか?」
石崎「あのなあ、なんでわざわざ蘇部を行かせる必要があるんだよ。ご丁寧に護衛までつけて。しかも二人も。
   そもそも、浦賀が危険だから中島と浅暮を護衛につけるっていうなら、最初から中島なり浅暮なりに
   見に行かせればいいだけであって、蘇部を行かせる必要がないだろ。まあ、いいけどな」
殊能「それは邪推ってものだよ。ぼくは蘇部くんの観察力を信頼してるんだよ。そう、他の誰よりもね。
   だから、どうしても蘇部くんに行ってもらう必要があった。それだけの話でしかないさ」
新堂「おいおい、何が蘇部の観察力だ。あいつに石崎や氷川以上の観察力とやらがあるわけないだろうが。
   これから始まる『本当の解決編』って奴を蘇部だけには見せたくなかった、そういうことだろ。
   しかしまあ、お前は教育ママかよ。教育的配慮って奴にも程があるぞ、まったく。
   そんな理由で、折角の解決編を見逃すことになる中島や浅暮が、ちったあ可哀想だとは思わないのかよ。
   石崎のセリフじゃないけどよ、お前、ちょっと過保護すぎるんじゃないか?」

石崎が肩をすくめて言うと、新堂までが珍しく本気で呆れ果てたかのように言ってのける。
もちろん、殊能は平然としたものだ。

乾 「あの、皆さん、それくらいにしておいたほうがいいんじゃないかと……」

舞城をちらちら窺いながら、冷や汗を浮かべた乾が言う。
そこには、溢れんばかりの激情を露わにして、ぎりぎりと音を立てて歯を食いしばる舞城の姿。
まあ、それでも暴れださないあたりは、辛うじて自制が利いているということだろうか。
いつの間にか、舞城の隣にいたはずの高田はちゃっかりと避難している。
今、舞城のそばの席にいるのは、先ほどからずっと、熱に浮かされたような表情でなにやら呟いている佐藤だけ。
そして、そんな舞城を心配げに見守る高里。
そして、そんな高里を心配げに見守る霧舎。
妙な具合に弛緩した広間の雰囲気の中、氷川が控えめに殊能に問いかけた。

氷川「そんなことより、いいんですか、殊能君?」
殊能「ん、何のことだい?」
氷川「蘇部君が戻ってくるまでに解決編を片付けてしまうつもりみたいですけど、
   それだと、乾燥小屋にあるっていう証拠が確認できませんよ。それで本当に解決できるんですか?」
殊能「ああ、大丈夫だよ。あれは基本的にどうでもいいんだ。別に無くてもいいから。
   まあ、後で答え合わせをするときには役立つかな」

当然のように答える殊能に、思わず絶句する氷川。

氷川「……僕には、明らかに重要な証拠品だと思えるんですけど……それこそ、推理の根幹に関わるような。
   ……でも、それじゃあいったい何のために取りに行かせたんですか?
   ……まさか、乾燥小屋云々ってのは単なる蘇部君を遠ざけるための方便なんですか?」
殊能「そんなことないよ、氷川くん。乾燥小屋には何らかの証拠品が残ってるはずだよ。
   『彼』が、清涼院くんが乾燥小屋から抜け出していることに気付いてなかったのは間違いないからね。
   ただ単に、この段階の推理においては、証拠があろうがなかろうがさしたる意味がないってこそさ。
   そもそも、清涼院くんの行動を推理することそのものが無意味なんだから」
氷川「……」

今度こそ本気で絶句してしまった氷川をよそに、殊能はひとつ咳払いをしてから話し始めた。
殊能「さて、蘇部くんが戻ってくるまでに、僕なりの結論を言っておこう。
   清涼院2は清涼院1と入れ替わって雪だるまから出た後、それを皆に見せるために山荘にやって来た。
   皆の前に現れて初めて、入れ替わりが成立する訳だからね。が、彼はぼくたちの前に現れていない。
   恐らく、そこで何者かによって乾燥小屋に閉じ込められ、カラカラに乾いて縮んでしまったんだろう。
   だけど、何らかの手段でそこから脱出もしくは救出され、雪山に倒れているところを古処くんに拾われた。
   もちろん現時点ではこれは推論でしかないけど、まあ多分これが正解だね。これでどうかな?」

そう言うと、殊能は質問を受け付けますといった様子で、再び広間を見回す。
しかし、何故か皆が皆、何かを言い出しかねてもじもじしているような様子で、頻りに顔を見合わせる。
そんな場の空気を意に介することなく、殊能は一人、平然と反応を待つ。

そして、皆の疑問を代弁するような形で口を開いたのは、やはり石崎だった。
石崎「なあ、殊能。お前の清涼院の行動に関する推理については、よーくわかった。
   どうも裏付けの乏しい理論のための理論、まさに机上の空論に思えなくもないが、
   まあなんといっても題材が清涼院だ。それについてはよしとしとこう」

石崎は飄々とした表情を崩さずに、話を続ける。

石崎「でもなあ、どうしてもわからないことがあるんだよな。
   お前の言う通り、清涼院は入れ替わっていたとしよう。
   そして仮に、俺が清涼院を閉じ込めた犯人だということにするぞ。
   で、それでどうなるっていうんだ? ただそれだけの話じゃないか。
   少なくとも俺には、いや、俺たちには、それに何らかの意味があるとは到底思えないな」
 
ここで石崎は息をいれ、不意にシリアスな表情になる。

石崎「いったい、今までの推理に何の意味があったっていうんだ?
   そもそも、お前の解決しようとしている”事件”ってのは何なんだ?」

最後にそう問いかけると、石崎は殊能に、探るような視線を投げかける。
もちろん、殊能は目を逸らさない。新旧二人の探偵役の視線が、静かにぶつかり合う。
そして、殊能は、ゆっくりと口を開いた。

殊能「とりあえず、最初の質問に答えておくよ。最初から何度も言っているよね。
   清涼院くんの行動そのものは、事件に何ひとつ関係ない、徹底的に無意味なものだって。
   もちろん、入れ替わりについても何の意味もないし、入れ替わりがなかったとしても特に問題はない。
   石崎くんが清涼院くんを閉じ込めた犯人だとしたところで、もちろんそれは、それだけの話だ。
   そもそも清涼院くんのやることに、あらゆる意味で意味なんてあるはずがないんだから」

殊能はなんら感情の動きの見えない淡々とした口調でここまで言うと、
口を開いたときと同様の自然さで、ゆっくりと口を閉じた。

石崎「じゃあ、今までの推理には、本当に意味がなかったってことかぁ?」
殊能「そういうことだね。推理そのものには本当に意味はないよ。
   まあ、推理がされたという事実に意味が無いわけじゃないけど」
氷川「推理がされたという事実には意味がある、ですか……どういう意味なんですか?」
殊能「そうだね。いろいろあるけど、一番重要な意味は“勧告”かな。もう、続ける意味は希薄なはずだから」
石崎「ああ、もう。わかったよ。もう口出ししないから好きにやってくれ」

もはやお手上げといった表情で引き下がる石崎と氷川。

そして、もうすっかりお馴染みになった、いわく何とも言いがたい妙な沈黙が場を支配する。
誰も口を開こうとしない。いや、開くことができないかのようだ。

そして沈黙を破ったのは――

ここまで殆ど何も発言せずに、殊能のらしからぬ饒舌っぷりを、静かに見ていた笠井だった。
笠井「……くだらん。わざわざ皆を呼び止めておいて、やったことといえば全く無意味な推理ごっこか。
   いや、推理ですらないな。証拠の欠片すらない上滑りの妄想を自慢げに垂れ流しただけか。
   まさに時間の無駄だ。馬鹿馬鹿しい。殊能、お前には失望したよ」

吐き捨てるように言う笠井。が、殊能はその言葉を軽く受け流す。

殊能「まあ、ぼくの推理が、基本的に無意味で無駄な時間の浪費に過ぎなかったことは認めますよ」
笠井「ふん、開き直りか。見苦しい。もういい、私は部屋に戻るぞ。
   私に、いや我々にとって時間は貴重だ。これ以上、お前のお遊びに付き合っている暇はない」

そう言い残すと、立ち上がりかける笠井。しかし、その動きは殊能の次の言葉で止まる。

殊能「これは心外ですね、笠井先生。他の皆にとっては無意味な時間の浪費であったとしても、
   少なくとも笠井先生にとっては、意味のある行為だったと思ってたんですけどね」

笠井は浮かしかけた腰をゆっくりと下ろし、改めてソファーに身を沈めた。
そして、すっと目を細め、値踏みするかのように殊能の表情を注視する。
もちろん、殊能は目を逸らさない。逆に笠井を値踏みするかのように視線を投げ返す。
笠井「……殊能、何が言いたい?」
殊能「おっと、これは失言でしたか。今の発言は撤回しましょう」

苦笑して言う殊能。しかし、その目は笑っていない。
冷たい微笑みを頬に浮かべたまま、殊能は笠井に向かって問いかける。

殊能「でも、妙な話ですよね、笠井先生。この推理が無意味で不毛な言葉遊びでしかないのは、
   ぼく自身が最初から明言していることですし、笠井先生ほどの方なら、この推理が無意味であるのは
   すぐにわかったはずです。全てが仮定と予想の上に成り立った、まさに机上の空論ですからね。
   さて、ここで疑問が生じますね。笠井先生は、何故ぼくの無意味な推理を途中で止めなかったんですか?」

笠井「……例え下らない推理でも、最後に意味が生じることはある。それを期待していたのかもな。
   ましてや、私はお前の才能を高く買っていたからな。だが、それも買いかぶりだったようだが」

重々しく述べられた笠井の言葉に、瞬時に切り返す殊能。

殊能「おかしいですね。そのお言葉と、先生が最初につけた“下らない内容なら即刻中止させる”という条件は、
   どこか矛盾していませんか? 最後まで待つ気があるのなら、そんな条件をつける必要はありませんよね。
   先生がぼくの無意味な推理を止めなかった理由を想像してみましょうか?
   ぼくの、清涼院くんに関する、誰にとっても無意味なはずのくだらない推理は、笠井先生にとっては
   無意味なものではなく、くだらないものでもなかった。だから止められなかった。どうです?」

笠井「ふん、根拠のない妄想も、そこまで来ると見事なものだな」

笠井の嘲笑混じりの言葉を無視し、殊能は何者かに語りかけるように、ゆっくりと言葉を発する。 
殊能「さて、確かにこの事件において、清涼院くんそのものは完全に無意味な存在です。
   それは、舞城くんたちが山荘に現れた清涼院くんを次々と踏みつけておきながらも、
   清涼院くんの存在にすら、誰ひとりとして気付かなかったことからも明らかです。
   つまり、どこにでも存在しうる可能性があるが故に、どこに存在したとしても
   意味を持ち得ないということですね。しかし……」

殊能はここまで言うと、意味ありげに笠井をちらりと見る。笠井はその倣岸な表情を崩さない。

殊能「清涼院くんが無意味に存在しているという事実に、何らかの意味を見出しうる、
   いや、見出してしまわざるを得ない事情を持つ人間がいたとすれば、どうでしょうか。
   つまり、清涼院くんがある特定の場所に存在しているはずという確信があるが故に、
   山荘の中をうろつき回っているはずがないという確信のある人間、そう、言い換えれば、
   清涼院くんは自由に動き回れない状態のはずだという確信を有する人間が存在したとすれば、
   彼は山荘の中で清涼院くんを見たとき、どう考え、どう行動しますかね」

殊能はそこまで語り終えると、視線をゆっくりと動かし、
そして、クラスメイトの一人のところでぴたりと止めた。

殊能「新堂くん、そういえばきみは、クリスマスパーティーのプレゼント交換のときに、
   清涼院くんから清涼院くんを貰っていたね。きみはあれをどうしたんだい?」
殊能の、全てを見通しているかのような眼差しを受け、新堂は不敵な笑みを浮かべる。

新堂「ああ、あれね。いや、それがな、どうしたもんかと思ってたんだよ。
   ほら、バラして臓器とか売ろうかとも思ったんだけど、なんつっても清涼院だろ。
   人間と同じ臓器がついてるとは限らんし、肉にしても不味くて食えそうにない。
   まあ、どうやら浦賀の口には合ったみたいで、実に結構な話だぜ」
殊能「済まないけど新堂くん、要点だけかいつまんで話してくれないかな。そんなに時間がないんだ」

待ってましたとばかりに喋りだす新堂に、殊能が苦笑しながら釘を刺す。

新堂「ああ、判ってるって。どうしたもんか迷ってたんだが、急に買い手がついてな。
   まあ、俺が依頼されたのは、単に“清涼院を連れて来い”って話だったんだけどな。
   報酬ははずむっていうし、貸しを作っといて悪い相手じゃないのは間違いないって訳で、
   とりあえず承諾はしといたんだが、ほら、相手があの清涼院だろ。
   まともに連れて行こうとしたなら、どれだけ手を焼かせるかわかったもんじゃねえよな。
   で、ちょうど手元に例の清涼院があったんで、これを連れてけば丁度いいやってことで、
   昨日の早朝に、そいつのところに届けておいたと、ま、そういうことだ」
殊能「なるほどね。で、新堂くん。その“買い手”とは誰なんだい?」

殊能の問いかけに対し、新堂はもったいぶるような素振りを見せる。

新堂「それはほら、守秘義務とかあるからなあ……て殊能、そんな怖い目で睨むなって。冗談だよ、冗談」
殊能「冗談は程々にお願いするよ。じゃあ、もう一回聞くよ。
   君がもう一人の清涼院くんを引き渡した相手は誰なんだい?」

殊能の穏やかな、それでいて鋭く研ぎ澄まされたかのような声に肩をすくめてから、
新堂はニヤニヤと笑いながら、ゆっくりと、焦らすように答えた。


新堂「その相手はな――そう、笠井のおっさんだよ」
528名無しのオプ:03/02/02 02:46
続きがたのしみでつ。

これまでに読んだミステリの中でも最高傑作の予感。
529名無しのオプ:03/02/02 02:54
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
笠井、あらゆる意味でオイシイな
530名無しのオプ:03/02/02 03:00
メフィスト生徒以外で一番目立ってる人間って、
Jなどの文三の奴らでも京極でもなくて実は笠井なんだよな。
現実ではともかく、学園の笠井は結構好きなキャラだなあ。さりげなく現実の彼とキャラが似てる気がするし(w
531名無しのオプ:03/02/02 03:11
現実の笠井タンもいい男だから好きだけどね(w
532名無しのオプ:03/02/02 03:17
続きキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
恰好いいぜ首脳!! 本領発揮か!?(w
533名無しのオプ:03/02/02 06:57
>>515
>漏れの脳内では氷川の顔は「氷川」つながり「氷川きよし」なんだけど(w
お前もか。
534幕間<高里椎奈>:03/02/02 09:11
「その相手はな――そう、笠井のおっさんだよ」

そんな…
そんなことって…
笠井先生が清涼院君を……

みんながハッとしたような表情で笠井先生を見つめる。
笠井先生は動揺した様子もみせず殊能君から決して視線を外さなかった。

ああ、なんてことなの…
今まで全然気づかなかった

笠井先生が清涼院君を愛していただなんてっ!!
535幕間<高里椎奈>:03/02/02 09:12
高里の瞳がきらきら輝きだした。両手を胸の前で組み、見つめ合う(睨み合う)殊能と笠井を
うっとりとしたような表情で眺める。

笠井先生X清涼院君。すごく意外性のあるカップリングね。きっと、清涼院君のとらえどころ
のないミステリアスな魅力に笠井先生は気づいてしまったんだわ。でも、清涼院君は100人
に分裂したり密室を作ったり、そんなことに夢中で笠井先生の気持ちには気づいてないの。そ
れで笠井先生は思い余って新堂君にお願いして。けれど、清涼院君はお金や権力に服従するの
が嫌だったのね。彼は何者にもとらわれない自由の人だから。笠井先生から逃れようとして入
れ替わりトリックを使った。そう。きっと、そうなんだ…

妄想はとまらない。

それに殊能君のこの態度。もしかしたら殊能君も清涼院君のことが気になっていて…。だ、駄
目よ、それは。そしたら蘇部君はいったいどうなっちゃうの? あんなに殊能君を慕っている
のに。…でも、殊能君は蘇部君をわざと遠ざけるようなことをした…。清涼院君への気持ちを
蘇部君に知られたくなかったから? 舞城君は殊能君の気持ちを知ってそれであんな表情を。
そ、それに、さっきから笠井先生と殊能君じっと見つめ合っちゃてるし、2人で対決している
うちに互いの力を認め合って愛が芽生えつつあるのかも…
ああん、もう。椎奈困っちゃうよお!

妄想が脳内をぐるぐるかけ回りオーバーヒートをおこしかけた高里は、頬に両手を当て気持ち
を落ちつかせようと深呼吸をした。
顔を真っ赤にしながらため息をつくその仕草は、まるで恋する乙女のように見えた。
536名無しのオプ:03/02/02 10:04
前編・後編で終わりかと思ったら第二の解決編「1」なのか。

これが終わるまでは
節分の豆まきネタは始めづらいな。
537名無しのオプ:03/02/02 13:30
>>536
職人さんのモチベーションをさげるようなことは言わない。
漏れは今の状況を十分楽しんでるよ
538名無しのオプ:03/02/02 13:46
なんか最近ストーリー外のところでは
言論規制が厳しいな。

ちょっとでも批判的なカキコがあるとすぐ
>537みたいなヤツが出てくる。
539名無しのオプ:03/02/02 13:47
>>536
とりあえず学園組で節分始めたら?
事件が解決しないと西尾&清涼院も使えないけど
540名無しのオプ:03/02/02 14:03
>538
人の楽しみに水を差すような香具師は、嫌われてもしょうがないと思うが。
漏れモナー
541名無しのオプ:03/02/02 14:15
批判とか水差しじゃなくて「節分ネタを考えてるけどどうしよう」な職人カキコだと思うのだが
542名無しのオプ:03/02/02 14:20
536が遠まわしな皮肉に見えたんだよ。スマソ。
543名無しのオプ:03/02/02 15:19
そろそろ「メフィスト学園をヲチするスレ」が必要なのか?
544名無しのオプ:03/02/02 16:53
>543
メフィスト学園予備校開校準備中です!(嘘)
545名無しのオプ:03/02/02 18:46
別に同時進行で節分ネタ始めればいいんじゃないの?
というか、書くも書かないも決めるのは本人の自由っしょ。

あまりに出来が良くてみんな2ちゃんだということを忘れてないか?(藁
546名無しのオプ:03/02/02 19:03
そう、書くも書かないも決めるのは、本人の自由と節度だけ。
誰にも止められないし、誰にも止める権利はない。
書いていいと判断すれば書けばいいし、書かないほうがいいと判断すれば書かなければいいだけの話。

もちろん、2ちゃんは無法地帯だから何やってもOKって開き直るのも、本人の自由。

ああ、自由ってのはいろいろ大変だねえ。
547名無しのオプ:03/02/02 19:15
ていうか、冒頭で石崎あたりに「いやあ、雪山ではいろいろあったねえ」とか言わせておけばOKな気も。
548幕間<霧舎巧>:03/02/02 20:49
心がざわめいていた。殊能の推理披露を霧舎はほとんど聞いていない。事件への興味がない
わけではないのだが、聞こえてくる言葉はすべて霧舎の意識を素通りしてしまっていた。

「そんな高里が心配やったら、側にずっと置いておけや」

霧舎は閉じていた目を開き高里を見た。少し不安げな表情で殊能の推理を聞いている高里。
高里はふと舞城の方に目をやり、前髪をいじりだす。
高里には困ったときや何か考え事をするときに指で前髪をさわるクセがあった。
霧舎の心は揺れる。これは嫉妬なのか? 彼女が舞城を気にしはじめているそぶりを見せ
ていることに対する嫉妬心なのか?
霧舎はずっとそのことを自問し続けていた。そして、嫉妬なのだと、そう思っていた。
つい、さっきまでは。

「一度でいいから探偵ごっこがやってみたかったんだ」

石崎の言葉が、笑ってそう言った言葉が霧舎の胸を猛烈にしめつける。霧舎には核心をつ
かれたという感触があった。何の核心かだって? そんなのわかりきっている。あの飄々
とした名探偵は事件の犯人でも何でもないただの傍観者でしかないこの霧舎巧の核心をい
とも簡単に貫いてくれたのだ。
549幕間<霧舎巧>:03/02/02 20:49
「そんな高里が心配やったら、側にずっと置いておけや」

どうして僕は彼女の側にいなかったのだろう。事件がおこっていた中でどうして簡単に彼
女を1人にしておけたんだろう。彼女に危害が加わると思っていなかった? 彼女にいい
ところを見せようとして深く考えずに行動してしまった? 確かに僕は馬鹿だ。ああ、大
馬鹿だよ。でも、あんな状況なのに。好きな女の子の側にいてその子を守ろうとさえ思い
つかないほどに僕は鈍感で気がきかない大馬鹿野郎なのか?

彼女を見つめる。細くて華奢な身体。肩にかかった綺麗な髪。少しずり落ちた眼鏡。

文化祭で僕は彼女のことを放って女子高生のパンチラに夢中になっていた。文化祭が終わ
ってからは石崎とじゃれあってばかりだ。合宿に来てから彼女と一緒に過ごした時間なん
てほんのわずかの間だけ。事件が起きてからも僕は彼女を放って蘇部君たちと遊んでいた。
しかも、そのときに彼女が上げたという悲鳴に僕はまったく気づかなかった。

なあ、霧舎巧……、君は本当に高里椎奈のことが好きなのかい?

揺れる、ゆれる、ゆらゆら、ゆらゆら、ゆうらゆら。
答えなんてもう出ている。これは僕が自分自身を納得させるための理屈だ。こういうのを
戯言だなんて言うのかな?
そう。僕はただ
ただ…

恋愛ごっこがやってみたかっただけなんだ。
550幕間<霧舎巧>:03/02/02 20:50
彼女のことが本当に好きなら、僕は何を投げ打ってでも彼女と一緒にいたいと願っただろ
う。でも、僕はそうしなかった。彼女と一緒にいるよりも石崎達と馬鹿なことをやってい
る方がずっと楽しかったから。彼女の気を惹くために石崎との仲を見せつけるだって?
そんな方法で彼女とより親密になんてなれるわけがないのは誰だってわかる。でも、僕は
そうやって自分の心を誤魔化した。ああ、あわれな道化師。

本当は自分でもわかっていた。相手は誰でもよかったんだ。誰でも。
たまたま高里椎奈が僕の目の前にいて、僕が衝動的にはいた「つきあってくれ」という言
葉に、彼女がどういう気まぐれかで「うん」と頷いた。それだけのことだったんだ。
本当は好きでも何でもない。いや、たぶん好きなんだろうけど、でもそれは石崎や乾に対
して僕が抱く仲間への友愛という意味の”好き”なのだ。僕にとって彼女は”一番”じゃ
ない。だから、僕は彼女のことを何より優先して行動しようとしなかった。自分が興味を
ひかれること、面白そうなことを優先した。
551幕間<霧舎巧>:03/02/02 20:51
「そんな高里が心配やったら、側にずっと置いておけや」

そうだよ、舞城。
僕は彼女のことをたいして心配なんてしていなかったんだ。何よりも大事な人だなんて思
っちゃいなかったんだ。舞城の言葉を聞いてからずっと心がざわざわしていたのは、それ
を心の底で気づいてしまっていたからなんだ。
彼女の顔を見るたびに僕の心はぎゅうぎゅうにしめつけられる。表面的につきあっている
フリをして、僕は彼女のことを全然大切にしようとしていなかった。彼女はいつも僕に笑
ってくれていたけど、本当は笑顔の下で傷ついて泣いていたのかもしれない。やっぱり、
僕は大馬鹿野郎だ…

彼女の表情がかわる。顔を赤くして両手を頬に当てる。少しうつむいてため息。彼女の視
線の先……殊能と笠井先生…の向こうに舞城がいた。
恥らうような彼女の表情。

君はたぶん…舞城を好きになったんだね。

うん、そうだね。不毛な恋愛ごっこはもう終わりにしよう。
石崎だって自分からすべてを告白して謝ったんだ。僕もそうすることにしよう。
君が僕なんかに気を使わずに舞城の胸にとびこんでいけるように、潔く僕は身を引こう。
事件が終わったら、霧舎巧と高里椎奈は偽りの恋人をやめて、ただのクラスメイトに戻る
んだ……
552548-551:03/02/02 20:55
もし高里&霧舎でネタ考えてた人がいたらゴメン
流れみてて、このカップルを引き離したくなっちゃっいました
高里はフリーのほうが今後動かしやすいかなーと思って
553名無しのオプ:03/02/02 21:07
霧舎が独りよがりな自意識過剰野郎になってしまった!
まぁ、らしいと言えばらしいが。
554名無しのオプ:03/02/02 21:20
悲しむ霧舎タソのために高里のパンティラを…
必要ならそれでよりが戻ってもいいから(w
555名無しのオプ:03/02/02 23:29
>>551
高里が赤くなってる理由が違うよ霧舎ー!

「ダーリン」「ハニー」と呼び合えなくなるのは寂しいようなそうでもないような。
事件のエピローグで別れ話が入る?ちと期待。
556名無しのオプ:03/02/02 23:58
破局もまたドラマを呼ぶネタになるでっしょ♪
ズキドキ恋愛ものもまたよし!
557名無しのオプ:03/02/03 00:01
これぞ青春。
558名無しのオプ:03/02/03 00:15
高里&霧舎のカップルは好きだったので、正直残念…
559名無しのオプ:03/02/03 00:25
>558
スレの空気が押せば、またくっつくでしょう。漏れは別れて舞城とに一票だが。
新堂「その相手はな――そう、笠井のおっさんだよ」

新堂の言葉は、少し遅れて、広間にある種の科学反応のような衝撃をもたらした。
驚く者あり、動揺する者あり。呆然とする者あり、理解不能といった表情の者のあり。
何故か真っ赤になって溜息をつく者もあるかと思えば、うっとりと自己陶酔に浸っている者までいる。

そして、いつの間にか、期せずして広間の視線は一斉に笠井に集まっていた。
しかし、笠井の経験に裏打ちされた確信に満ちた風貌は、その全てを受け止めて小揺るぎだにしない。

そんな周囲の反応には我関せずといった様子で、新堂と話を続ける殊能。

殊能「新堂くん、最後にひとつだけいいかな? きみはこのことを、他の誰かに話したかい?」
新堂「いや、誰にも話してないぜ。中島にもまだ言ってないしな」
殊能「なるほどね。ありがとう、新堂くん。実に興味深い話だったよ」

ひとしきり話し終えた新堂は、ニヤニヤと笑いながら、笠井の表情を無遠慮に窺う。
が、笠井の傲然とした表情が何ひとつ揺るぎだにしていないのに気付くと、
急につまらなさそうな表情になり、軽く鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまう。

そんな出来事には目もくれずに、殊能は今度は笠井のほうに向き直り、そして穏やかに問いを発する。
殊能「笠井先生、今の新堂くんの話は事実ですか?」
笠井「ああ、そうだ。新堂に頼んで清涼院をここに連れて来させたのは間違いない。
   あいつは学園で一番の問題児だ。なんとか一度、腹を割って語り合う必要があると感じていたのでな。
   普通に呼んでも私のところには来ないと思ったので、不本意ながら強引なやり方をさせて貰ったがな」

殊能の問いに、笠井は悠然と答える。
その声色は落ち着き払ったもので、動揺の気配はかけらも感じられない。

笠井「しかし、慣れないことはするもんじゃないな……」

そう言うと笠井は、ふと寂しげな表情を浮かべた。

笠井「よほど私と一緒に居るのが息詰まりだったのか、すぐに山荘から飛び出してしまいおった。
   まったく、馬鹿な奴だ。こんな雪山に飛び出したところで凍死するのが関の山だというのに……」

しかし、そんな笠井を冷ややかに見ながら、間髪入れずに切り返す殊能。

殊能「やれやれ、この期に及んでお芝居ですか。しかし素晴らしい演技力ですね。
   どうやら、次の文士劇の主役は笠井先生で決まりですかね。もちろん脇を固めるのは浦賀くんで」
笠井「何……?」

笠井の表情に怒気が走る。しかし、殊能は意に介さず、これまでの話を総括するかのように語り始めた。
殊能「そうすると、こういうことになるね。この山荘にいる人間の中で、新堂くんを除けば、
   笠井先生だけが清涼院くんがこの雪山にいるはずだという確信を持っていた。
   それはそうだ、自分が連れてこさせたんだからね。そして、新堂くんは基本的に山荘の外にいた。
   つまり、笠井先生だけが、無意味に山荘の中をうろつき回っている清涼院くんの存在に対し、
   何らかの意味を見出しうる、いや、見出さざるを得ない意味を持っていたということになるね」

殊能はそこまで言うと、笠井をちらりと見て、そして話を続ける。

殊能「では、この事情を先ほどの、ぼくなりの結論にあてはめて整理してみるよ。
   スキー合宿が始まる前に、既に山荘には清涼院2くんが新堂くんによって連れられて来ていた。
   もちろん、笠井先生は清涼院くんが二人存在するだなんて思っていない。
   それから、清涼院2くんは何らかの理由で山荘から姿を消し、雪だるまの中に埋められてしまう。
   笠井先生はもちろん、そのことを知っていたに違いない。
   仮にそうでないとすれば、笠井先生が清涼院くんが山荘に来ていることを誰にも言わず、
   そして、姿を消しているのに捜索するそぶりすら見せていないことの説明がつかないからね」

そして、殊能はここで一同を見回し、少し口調を改めた。
殊能「さて、ここからは全て、ぼくの想像でしかありませんが、参考までに言っておきましょう。
   まず笠井先生は、清涼院くん(清涼院2)と、恐らく浦賀くんを他のみんなに先立って山荘に連れてきた上で、
   ある手段を用いて浦賀くんに清涼院2くんを襲わせ、雪だるまに埋められた状態にさせた。
   ところが皆が到着した後、笠井先生は山荘内で清涼院1くんを見てしまった。
   さぞかし驚いたでしょうね。山荘の外で凍りつき、浦賀くんに食べられる運命のはずの清涼院くんが、
   あろうことか、のうのうと山荘内をうろついているんですからね。
   もちろん、笠井先生が清涼院くんが二人存在するだなんて思うはずがない。
   当然のように、山荘外で凍てついているはずの清涼院くんが、
   何らかの理由でそこから逃れてきたのだと考えたでしょう。
   それではいろいろと困る笠井先生は、次に山荘に現れた清涼院2くん(入れ替わり済)を捕らえ、
   とりあえず、山荘から離れた場所にあって目に付かない乾燥小屋に閉じ込めておいた。
   これは、山荘内だと石崎くんや氷川くん、舞城くんが捜査のために動き回っていたので、
   すぐに見つかってしまうと考えたからでしょうね。
   ……とまあ、これがこの事件における清涼院くんの動向についての僕の推理です。
   いかがですか、笠井先生。先生ならこの推理に何点をつけてくださいますか?」

笠井を挑発するかのように、わざとらしい丁寧さで問いかける殊能。

そんな殊能の目を見据えたまま、笠井はゆっくりと口を開いた。
笠井「……30点、というところだな」

殊能「それはまた、予想以上の評価は頂けたとはいえ、なかなかに手厳しい点数ですね。
   どこがお気に召しませんでしたか? やはり根拠に乏しいうえ、仮定条件の多すぎるところですか?
   あ、突飛過ぎるという指摘は困りますよ。まあ多分、事実はこの通りなんですから」

いかにも心外だという表情を作り、澄ました声で言う殊能。
が、笠井は殊能の発言を馬鹿にするかのように、あくまで冷徹な口調で答える。

笠井「勘違いするな、殊能。30点というのはお前の“推理”とやらに対する評価ではない。
   お前の“推理”とやらは、そもそも評価の対象にすらならない代物だ。
   想像と仮定と恣意的な選択を強引に積み重ねていくことによって辛うじて成り立っている、
   詭弁とこじつけで作り上げられた机上の空論、そんなものを私は“推理”とは呼ばない。
   それが事実であるかどうかは、また別の問題だ」

笠井は吐き捨てるように言ったあと、不意に表情を冷徹な批評家のそれに変え、静かに言った。

                 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
笠井「私が30点といったのは、殊能、お前が描こうとしている絵についての評価だ」
そういい終わると笠井は全てを見通すかのような冷たい眼光で、殊能を見やる。

笠井の視線を迎え撃つべき殊能は――
何故か、何を言われたかを咄嗟には理解しかねているかのような、妙にあいまいな表情を浮かべていた。

完全に予期外の出来事に出くわし、酷く驚かされた後のような表情で、ぼんやりと立ちすくす殊能。
そんな殊能に説いて聞かせるように、笠井はゆっくりと語り続ける。

笠井「“突飛過ぎるという指摘は困る”か。違うな、問題は“突飛さが足りない”ということだ。
   お前の“推理”は意味があるというには意味がなさ過ぎるし、意味がないというには意味があり過ぎる。
   殊能、お前は優秀な生徒だが、どうも整合性や完成度に拘り過ぎる部分がある。
   どうせ無意味なものなら、より徹底的に、あらゆる意味での無意味にしてしまえばいい。
   そう、それこそ清涼院のようにな。これが採点理由だ。納得したか?」

殊能は呆然とした表情を隠そうともせず、笠井のいかにも教師めいた講評に聞き入っていた。
殊能のこれほどに無防備な表情は、恐らく蘇部すら見たことがないだろう。

殊能のぼんやりとした表情に、ゆっくりと生気が回復していく。
そして、殊能は、くすくすと笑い始めた。
学園の面々に見せる作り物めいた微笑でもなく、蘇部にだけ見せる穏やかな微笑みでもない、
心の底から面白くて仕方がないといったような、無邪気で楽しげな笑み。

殊能「なるほど、流石は笠井先生だ。驚きましたよ、ぼくの考えなんて、ちゃんとお見通しってことですか」
どうしてもこみあげる笑いを抑えきれないといった様子で、饒舌に話し続ける殊能。
笠井を除く広間の面々は、その殊能らしからぬ生気に溢れた表情を、戸惑うように眺めている。

殊能「さっきまで、実はぼくは憤ってたんですよ。どうしてみんな、そんなに笠井先生を過小評価するのかなって。
   でも、どうやら過小評価してたのはぼくの方だったみたいですね。謝罪しましょう。
   しかし、流石は笠井先生ですね。まさにメフィスト学園の“先生”たるに相応しい方です」

そこまで一息に言うと、殊能は不意に表情を引き締めた。
その表情からはもはや、先ほどまでの楽しげな様子のなごりは、完全に拭い去られている。

殊能「さて、そろそろ無意味だったり意味ありげだったりするお話は、終わりにしないとね。
   先ほども言った通り、山荘における清涼院くんの行動には意味はないよ。
   従って、今までの“推理”は、その殆どが無意味な机上の空論でしかないことになるね。
   もっとも、今までの話の中で一つだけ、いや、二つだけ意味のあることがあるんだ。それは――」

そう言うと、意味ありげに広間の面々を見回す殊能。

石崎「笠井先生があらかじめ、清涼院をわざわざ山荘まで連れて来てたことだな、ひとつは」

のんびりと答える石崎。

舞城「そして、それを俺らに隠してたことやな。しかも、その後山荘からいなくなっとることも含めてや」

口を開きかけた氷川を押しのけるかのように、答える舞城。
いつの間にかその瞳は不敵な精気に満ち溢れ、獲物を見出した肉食獣のように爛々と輝いている。

殊能「そう、その二つは、まぎれもない事実だね」

殊能は、にっこりと笑い、二人に対して肯定の意を示した。
そのとき、笠井がいかにも不機嫌そうに口を開いた。

笠井「なるほど。その二つについては認めよう。が、それがどうしたというんだ?
   仮に私が清涼院を山荘から雪山に放逐していたとしよう。なるほど、それは犯罪かもしれない。
   が、もう一度言うぞ。だからどうした? 石崎の言い草ではないが、それだけの話ではないか。
   それとも殊能、お前が解決しようとしていた“事件”とやらは、これのことなのか?」
   
最後には嘲るような口調になって、笠井は言い放った。しかし殊能は、平然と笠井を見返して答える。

殊能「もちろん違いますよ。清涼院くんの事件そのものは、清涼院くんには悪いですけど、
   それこそ『まあ清涼院だし』の一言で全てが片付いてしまう程度の問題です。
   いくらぼくでも、こんな事件のために解決編を要求しようだなんて思いませんよ」

当然のような口調で言ってのけると、殊能は今度は、石崎の方に向き直った。

殊能「そういえば石崎くん、きみの二番目の質問にまだ答えてなかったね。
   ぼくの解決しようとしている“事件”ってのは何か、という質問に」
話を振られた石崎だが、なにやら憮然とした表情で苦笑いをしている。

石崎「なんだかなあ。ついさっきまでは渋い本格の名探偵役をやってたのに、ここんとこめっきり、
   単なる便利キャラ扱いのひきたて役ばっかだからなあ。まったく、ひどい話だよ」
乾 「お前は結局、名探偵じゃなくて駄犯人だったろうが!!」
氷川「……まあまあ、せっかくのシリアスな流れに無理矢理逆らってみるのはやめましょうよ、二人とも」
石崎「まあ、それはいいんだよ。俺にはもう十分に見せ場があったしな」

ここまで言うと、石崎は口調を真面目なものに変える。

石崎「でもなあ、殊能。ここまできてまた、意味がどうとか無意味がどうとかいった、
   難しい話を持ち出すのだけは勘弁してくれよ。
   なんせ俺はクイーンの後継者として自他共に認める、古き良き正統派の本格界の住人なんだから」
氷川「石崎くん……そんなことばかり言ってると、クイーンが怒って化けて出ますよ……」

石崎のとってつけたような嘆き声に、殊能は涼しい声で答える。

殊能「大丈夫ですよ、安心していいよ。これから始まるぼくの本当の解決編には、
   もう意味とか無意味とかいった抽象的な戯言は出てこないから。
   もちろん、清涼院くんの“なんでもあり”や積木くんの“メタ”みたいな、
   現実を超越する何らかの力が関わってくるってこともない。
   全ての謎が、現実の法則の中で論理的に説明できるように解決されるはずだから。
   そういったものの存在を排除するためにも、わざわざ無駄な時間をかけて、
   無意味なことの殆ど全てに、無意味に答えを出しておいたんだからね」

しれっとした表情で言ってのけると、殊能はどこか遠くを見るようにしながら、静かに語り始めた。
殊能「さて、現在判明している事実をまとめましょう。
   笠井先生は、清涼院くんだけをわざわざ山荘に呼びつけ、そして、雪山で凍てついているのを知りながら
   助けようともせず、しかも、そのことを他のみんなには隠していました。
   そう、確かにこれは、それだけをとって見れば大した事件ではありません」

そこまで言うと、殊能は一息いれ、遠くを見つめたまま続ける。

殊能「そもそも、今回のスキー合宿については、最初からいくつかの違和感がありました。
   もちろん、それらはそのものでは大した違和感ではなかったので、誰も気にしませんでした。
   しかし、この二つのどうでもいいことを照らし合わせて考えてみると、とある仮説が浮かび上がってきました。
   清涼院くんの一見どうでもいい事件は、実はより大きな目的の達成のために用意された、
   いくつかのパーツのうちのひとつではないのかと。
   ぼくは、このことについてずっと考えていました。そして、つい先ほど確信を得ました。
   この、普通の人間ならば容易には信じられないであろう、
   馬鹿馬鹿しくも精巧に組み上げられた“事件”の存在について。
   さて、それでは石崎くんの二番目の質問に答えましょうか。
   ぼくが解決しようとしている“事件”とは、そう――」

殊能はゆっくりと呼吸を整え、その、悪い冗談としか思えないような、現実感の欠片も感じられない言葉を口にした。



殊能「笠井先生による、メフィスト学園生徒への、大量殺人計画事件です」   
570名無しのオプ:03/02/03 01:40
とりあえずここまで。長くて申し訳ない。次からは今までの伏線の回収に徹する予定。
(メール欄)以外の山荘&雪山関連の伏線はほぼ回収できるかと。
誰か可哀想な佐藤君を救ってやってください。

>>536 
長々と続けてしまい、申し訳ないです。
571名無しのオプ:03/02/03 02:01
  _n
 ( l    _、_
  \ \ ( <_,` )
   ヽ___ ̄ ̄  )   グッジョブ!! 
     /    /


   _、_
 ( ,_ノ` )      n
 ̄     \    ( E)  グッジョブ!!
フ     /ヽ ヽ_//
572名無しのオプ:03/02/03 07:05
うわうわ、すげーすげー。
推理小説でこんなにどきどきしたのは久しぶりだ
573名無しのオプ:03/02/03 12:33
面白い!
早く続きうpしる!
574名無しのオプ:03/02/03 12:41
>>570
(570のメル欄)了解。
エピローグあたりでさり気なく回収しますから
構わずどんどん続きアップしてもらってオッケーですよー。
575名無しのオプ:03/02/03 17:07
うわ、マジですごい展開になってきたな!
続きが気になって仕事にならねぇ〜!
576名無しのオプ:03/02/03 20:25
殊能サソカコイイ!

って云いたい位面白し。
職人さん、インフルに負けずにうpキボンヌ♪
577<幕間>謎の男:03/02/04 19:16














謎の男「セイリョーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーインッ!」
578名無しのオプ:03/02/04 19:26
>577
いや、名乗ってるし!
579名無しのオプ:03/02/04 23:24
>566,567
おまえらサイコーw
580579:03/02/04 23:37
まちがえた・・・ 577と578にむけてです。はい。
581577:03/02/04 23:50
>>578
つっこみさんくー
殊能の余りに唐突な告発は、広間の一同の表情に劇的な衝撃を――もたらさなかった。

皆が皆、程度の差こそあれ、驚くことすら放棄したといったような、なんとも表現し難い表情を浮かべている。
そのなかにあって、笠井の表情は変わらない。その無機質な視線は、殊能に据えられたまま動く気配すらない。
奇妙な、どことなく居心地の悪い雰囲気が、広間の空気に漂う。
沈黙を破るべく口火を切ったのは、血相を変えて立ち上がった乾だった。

乾 「し、殊能!! 何を馬鹿なことを言い出すんだよ!! 冗談にもほどがあるぞ!!
   笠井先生が俺たちを殺そうとしてるだなんて、あるわけないじゃないか!!」
顔を真っ赤にして立ち上がり、ぶるぶると震える指を殊能につきつけて、ヒステリックに叫ぶ乾。
ちらちらと笠井の反応を窺いながらの行為なのは、まあご愛嬌といったところだろう。

津村「殊能、貴様っ、教官殿に対するその暴言はなんだ!!」
日明「そうよ、殊能君。笠井先生がそんなことをするとは思えないわっ!!
   ……はっ、でも、もしかすれば教師である笠井先生は、生徒である私への禁断の愛に悲観して、
   他の全てを巻き込もうとも共に死ぬことを選択したのかもしれないわねっ!!
   いけませんわっ、笠井先生!! 私はともかく、他のみんなを巻き込むなんてっ!!」
続いて日明と津村が声をあげる。津村はぴしりと背を伸ばした姿勢で殊能に指を突きつけ、
何故か日明は両手を目の前で握り合わせて、くねくねと身をよじらせている。
石黒「殊能くん、僕には推理とかそういったことには疎い人間だが、ひとつ言わせて欲しい。
   笠井先生はそういうことをされるような方ではない。それは僕が保障しよう」
北山「そ、そうだよ、だいたい、いきなりそんなこと言い出されても、説得力がないと思うよ」
山荘に到着してからというもの、ずっと周囲の喧騒には我関せずといった格好を貫き、
普段の彼とは見違えるほどの落ち着き払った態度を示していた石黒までが殊能を諭すように言い、
そしてそれに追随するかのように、おずおずと北山も意見を述べる。

舞城「なんやお前ら、いつの間にか笠井のおっさんのことを聖人君子扱いか。けっ、まんまと懐柔されよって。
   笠井先生がそんなことするわけがない、やて? 阿呆か。そんなん、何の根拠もない思い込みやないか」
新堂「それについては同意だな。人間、やるときゃ何でもやるんだよ。どんなご立派な人間であってもな」
舞城が速射砲のようにまくしたて、新堂が冷然と言い放つ。

高田「でも、僕らを皆殺しにすることによって、笠井先生に何らかのメリットが発生するとは考えにくいね」
高田はまるで、この事態そのものを他人事と思っているかのような表情で言う。

高里は何も言わない。どこか遠い目で、ぼんやりと広間の出来事を見つめている。
霧舎も何も言わない。ただ悲壮な表情で、真剣に広間の出来事を見つめている。
佐藤は依然として、食い入るような目で虚空を睨み続けている。
古泉は目を閉じたままだ。その脳裏には何が浮かんでいるのか、何も浮かんでいないのか。

ちなみに秋月については、特筆すべきことは何も無いので省略。
そして、騒ぎが少し静まるのを待って、相変わらずののほほんとした表情の石崎が口を開いた。

石崎「とにかくなあ、殊能。どういうひねくれた思考過程を辿ればそんな突拍子もない結論が
   出てくるのは皆目見当がつかないけど、まあそれはよしとしとこう。
   でもなあ、正直言って、笠井先生に俺たち全員を殺さなければならない動機があるとは思えないぞ。
   これが『清涼院を殺す』ってのなら、まあ何となくわからなくもないけどな」

石崎が話し終えるとすぐに、氷川が冷静な口調で続ける。

氷川「それに、僕たちのうちの誰かが殺されたというわけでもありませんし、今までの事件については、
   全て愉快犯もしくはそれに準ずるものだと判明しています。
   行為も結果も、もちろん凶器も存在しないっていうのに“事件”って言われても、正直、困惑するだけです。
   それとも、笠井先生はまだ実行に着手してなくて、全てはこれから始まるはずだってことなんですか?」

二人のもっともな疑問に対して、殊能はそんなことは自明の理だと言わんばかりに、澄まして答える。

殊能「いや、もちろん事件はとっくの昔に始まっているよ。そして今もなお進行中だ」
殊能の平然とした表情に刺激されたのか、乾が再び叫び始めた。

乾 「……そうか、わかったぞ!! 殊能、お前、目立つために探偵役をやってみたかっただけだろ!!
   そんなくだらない理由で、笠井先生を大量殺人犯呼ばわりするだなんて、例え先生が許してもこの乾が……」

殊能に指を突きつけ、あたかも背教者を裁く弾劾者であるかのように、まくしたてる乾。
と、完全に表情を消して端座していた笠井が、不意に口を開いた。

笠井「乾」

笠井に名前を呼ばれるのを待っていたかのように、ぱっと振り返る乾。その顔は期待と興奮で上気している。

笠井「目障りだ。しばらく黙っていろ」
乾 「はい!! わかりました、笠井先生!! ……って、へっ?」

表情を一切変えずに、ごく当たり前のことのように言ってのける笠井。
乾は何が起きたのがよくわからないといった表情で、ぽかんとしている。

乾 「せ、先生、それはいったい……」
笠井「黙れといったのが聞こえなかったのか、乾」

笠井にすがりつくような目線を向ける乾。しかし冷たく一瞥され、へなへなと萎れ落ちるように席につく。
その表情は気の毒なほどに蒼ざめ、その瞳の中には疑問と焦燥がぐるぐると渦巻いている。
それを見て、新堂があからさまな嘲笑を浮かべるが、もはや乾にはそれに気付く余裕すらない。

そんな光景には目もくれずに、笠井は言葉を続ける。
笠井「もちろん、断じて私は、お前たちを殺そうなどとはしていない。が、それはこの際どうでもいい。
   ひとつ言っておく。『ありえない』だの『はずがない』だのといったくだらん先入観を、
   メフィスト学園の生徒ともあろう者が軽々しく口にするな。
   我々が考慮すべきなのは、論理と、それを裏打ちする事実。それだけだ。
   殊能、私がお前たちを皆殺しにするためにこの山荘におびき寄せた、
   そう主張したいのなら、自らの推理で私を、いや、全てを納得させてみろ。
   その結果としてもたらされたものが、我々にとっての唯一の“真実”なのだからな」

悠然と語り終えると、笠井は、挑発するかのように、鋭い眼光を殊能に向ける。
殊能はそれを真っ向から受け止め、逆に不敵な視線を笠井に返す。

広間を重苦しい緊張感が支配する。
いつの間にか、佐藤や古泉までもが、笠井と殊能のやりとりを注視している。

そして笠井の言葉が、静寂を切り裂くかのように広間に響き渡った。

笠井「さあ、殊能。お前の“事件”とやらを推理してみろ。もっとも、そんなものが存在するならの話だがな」
笠井が語り終えると、広間を重苦しい沈黙が覆う。

殊能「ありがとうございます、笠井先生。先生のフェアさに敬意を捧げますよ」

そんなことなど意に介さぬかのように、笠井に芝居めいた一礼をしてから、殊能は一同に向かって語り始めた。

殊能「さて、ぼくの解決編を披露する前にひとつ、断っておきたいことがあるんだよ。
   この単純明快にして複雑怪奇な事件は、とある“解き方”をとらない限り、
   完全には解決できない構造になっているんだ。手順が重要、ってことだね。
   それ以外の解き方では、事件そのものは解決できても“解けない謎”が残ってしまう。
   そして、真の意味での“事件の解決”にもなりえないんだよ。
   従って、いささか変則的な進行になるけど、それはあらかじめ了承しておいてね」

口を開きかけた石崎を強引に制するかのようにして、満面の笑みを浮かべた舞城が答える。

石崎「あのなあ……」
舞城「今までこんだけ無茶苦茶な推理を見せといて、いまさら了承もなにもないやろうが。
   俺らは名探偵様の推理を拝聴するだけやから、やりたいようにとことんやってくれや」

そう言うと舞城は一応確認しとくかといった表情で、広間を見回した。
もちろん反対の声はない。石崎はぽりぽりと頭をかきながら、苦笑いをしている。
舞城は殊能のほうに振り向くと、片頬でにんまりと笑った。
そんな舞城を特に気にする風でもなく、殊能は淡々と皆に告げる。

殊能「それじゃあ、今度こそ本当に、ぼくの解決編を始めさせてもらうよ」
588548-551:03/02/05 08:33
霧舎と高里の話の続きは用意でけました。学園に帰ってから展開する予定です。
589名無しのオプ:03/02/05 17:31
解き方だとー!!!!!!!!11
もしそれが本当だとすれば、前代未聞のミステリになる予感。
590幕間<浅暮三文>:03/02/05 19:43
日明「……いけませんわっ、笠井先生!! 私はともかく、他のみんなを巻き込むなんてっ!!」

日明が盛大に叫び声を上げていた、その頃。
スキー用具の乾燥小屋では、蘇部たち三人が、懸命に清涼院の痕跡を探していた。

浅暮「……あの女、また妄想をぶちまかしてやがるな……まったく」
蘇部「どうしたんだい、浅暮くん。何か見つけたのかい?」

急に苦虫を噛み潰したような顔になる浅暮を、きょとんとした表情で見る蘇部。

中島「ひょっとして……浦賀の奴か!?」

蒸し蒸しする乾燥小屋の中での、なかなか終わらない調査にすっかり嫌気がさし、
絵に描いたようなうんざり顔になっていた中島が、途端にぱっと表情を輝かせる。

浅暮「……いや、違う。なんでもないさ。ちょっと妄想酔いしただけだ」

乾燥小屋の入り口の扉にもたれかかったまま、浅暮はぽりぽりと頭をかいて答える。

蘇部「よくわかんないけど、気をつけてね。でも、清涼院くんのいた証拠、なかなか見つからないねえ……」
中島「たくよぉ、殊能の奴、適当ぶっこいたんじゃないだろうな?」
蘇部「ちょっと中島くんっ、殊能くんがいい加減なこと言うはずないじゃないかっ!!」
中島「わ、わかったって……ったく、なんでこの俺がこんなつまんねえことを……」
浅暮「まあ、まだまだ調べ足りないんだろうな。もうちょっと詳しく調べてみないとな」
591幕間<浅暮三文>:03/02/05 19:45
ぶつぶつ言いながらも、律儀に捜索を再開する中島。

その不平満々ながらも真面目に探し物にとりくむ後ろ姿に、浅暮は苦笑して軽く頭を下げる。
もちろん、痕跡などが出てこないのは判っている。
最初に『様子を見る』と称して小屋に入った自分が、それを綺麗に消してしまったのだから。
事件解決のその時まで、蘇部を足止めするために。

中島「しかし浅暮、お前も少しは探すの手伝えよな。一人で涼しい顔をしやがって、まったく」
浅暮「すまんな。俺はここで周囲の状況に気を配ってないと、浦賀の接近を感知し切れんからな」

涼しい顔で言ってのける浅暮。もちろんその鋭敏な感覚は、周囲の状況を探り続けている。
今のところ、浦賀に動く気配はない。どうやらどこかで息を潜めて、山荘内の様子を窺っているようだ。
間違いなくいずれ、浦賀は皆の前に姿を現す。敢えて燻り出す必要もないだろう。
浅暮はそう判断し、片頬に微かな笑みを浮かべる。

と、急にその表情が僅かに歪む。

浅暮「またか……しかし何なんだ、さっきから時折感じる、この酷く嫌な感覚は……
   まるで、俺の身体が勝手に危険信号を発してるかのような……」
592名無しのオプ:03/02/05 22:15
最近、グレの旦那のことを大好きになっていた自分に気付きますた。
593名無しのオプ:03/02/06 00:54
公式HPにグレさんの絵があるよ、見た?
素敵スギィィィィー!!
594名無しのオプ:03/02/06 09:42
>593
あれは素晴らしいね。
595名無しのオプ:03/02/06 13:41
>>593
あのグレさんステキです。
スキー編、皆キャラ立ち過ぎだよ!

個人的には新堂がちょっと丸いのが不満だが(w
新堂鬼畜編とかやってホスィ
今度こそ本当に始まるらしい、殊能による解決編。殊能は既に、準備万端といった表情だ。
もっとも、今まで散々焦らされた広間の一同は、お決まりの名探偵よろしく入り口の大扉の前に悠然と立つ
殊能に対して、また肩透かしを食うのではないかといった、猜疑心交じりの視線を向けている。
それに気付くと殊能は、苦笑いを浮かべてから語り始めた。

殊能「安心してください。今度こそ本当に“事件”の謎を解決していきますから。それこそ徹底的にね。
   さて、お待たせしました。それではぼくの解決編を始めますね。
   さて、ぼくも石崎くんを見習って、ミステリの基本である5W1Hから始めることにしようかな。
   まずwhoは笠井先生、whatはぼくら全員、そしてwhereはこの雪山、ここまではいいよね」
氷川「“山荘”じゃなくて、“雪山”なんですね」

氷川が、冷静な口調で確認する。

殊能「うん。つまりwhatには、途中から山荘にやってきた人たちや、
   まだ雪山にいる浦賀くんも含まれることになるね。
   そして、whenとhowだけど、この二つはちょっと複雑なんで、とりあえずは後回しだ。
   というわけで、まずはwhy、すなわち動機を明らかすることから始めようか。

そこで殊能は 口調を厳しいものに改める。
  
殊能「――そう、どうして笠井先生は、ぼくたちメフィスト学園の生徒を山荘に集め、
   そして、この世から消し去ろうとしたのかの理由を」
鋭い口調で言うと、不意に殊能は表情を穏やかなものに変えた。

殊能「さて、この合宿には、その最初の段階から、不自然に感じられる点が幾つかありました。
   まず、参加者の顔触れです。笠井先生は、自他ともに認めるスキー愛好家です。
   そんな笠井先生が、学園の生徒たちを山荘に招待してスキー合宿を開催する、ここまでは問題ありません。
   しかし、ひとつおかしな点があります。どうしてこの合宿には、他の先生方は参加してないんですか?」

問いを投げかけておいて、答えを待たずに言葉を続ける殊能。

殊能「笠井先生は毎年のようにスキー合宿を開催されています。それは非常に有名ですね。
   そして、そこには法月先生や綾月先生、我孫子先生、そして二階堂先生らの学園の先生方が、
   常連として参加されています。しかし、今回の合宿には何故か、先生方はひとりも参加していません」

そこで息をつく殊能。その口から発せられた言葉に、顔を見合わせる一同。

石崎「言われてみればそうだよな。先生連中は暇を持て余してるだろうに、一人も顔を出してないよな」
氷川「確かに。笠井先生のスキー合宿といえば、先生方が勢ぞろいして行われるのがお約束なんですけどね」
乾 「それは笠井先生が、生徒たちと触れ合う機会を持とうとしてくださったからだろ」

顔を見合わせる石崎と氷川。そこに、なんとか虚脱状態から回復したらしい乾が、口を挟む。

殊能「確かにそうだね。先生方が勢揃いしてたんじゃ、こんなに笠井先生と接することはなかっただろうからね。
   というわけで、先生方が参加されていないことについては、まあわからなくもないよ。ただ――」

そう言うと殊能は、鋭い視線を笠井に向けた。

殊能「しかし、先生方はこの合宿を知らなかった。いや、知らされていなかった」
高田「そういえば、職員室でスキーの話題をしている先生方を見かけたけど、
   この合宿のことについては誰ひとり知らないみたいだったねえ」(前スレ775)

高田が相変わらずの他人事のような表情で、ひとりうんうんと頷いている。
そして殊能は、高田の発言に続けるような形で、自らの言葉を続ける。

殊能「そう、笠井先生はこの合宿のことを、何故か他の先生方には、誰にも言っていなかった。
   これはどう考えてもおかしいですね。たとえ笠井先生が私的に主催するイベントであっても、
   学園の教師がこれだけの数の生徒を招くんですから、普通なら報告くらいはするでしょう。
   それを抜きにしても、他の先生方はこの合宿について誰ひとりとして気付いていなかったというのは、
   いくらなんでも不自然すぎます。以上のことから、ぼくはこう考えざるを得ません。
   笠井先生は、なんらかの意図があって、この合宿の存在そのものを他の先生方には秘密にしていた、と」

そこまで言うと、殊能は確認するかのように笠井を見る。笠井は答えない。
別段、笠井の反応を期待していた訳でもなかったらしく、すぐに殊能は話の続きを始める。
殊能「次に、合宿への参加方法です。この合宿の参加方法はこうなってましたね。
   強制参加の学園行事ではなく、あくまで自由参加。但し、参加にはチケットが必要であり、
   そして、ペアを組んでの参加でなければならない。こうでしたね」

確認するかのように一同を見渡す殊能。肯定の反応を確かめてから、殊能は話を再開する。

殊能「どうも今ひとつ理解しにくい参加方法ですね。
   これが、一般のパーティーか何かだというのなら、まだわからなくもありません。
   ただ、学園の教師が生徒を招いて行うスキー合宿の参加方法としてはどうでしょうか」

そこで言葉を切り、殊能は一同を見回す。
しかし、それがどうかしたのかと言いたそうな皆の訝しげな表情に気付き、苦笑して話を続ける。

殊能「さて、参加にはチケットが必要ということになっていましたけれど、どうもその意図が判りません。
   学園の教師が生徒を招くのに、チケットなどという形式をとるのはいささか不適当な気がしますし、
   そもそもチケットの送り方からして、無作為にばら撒いたとしか思えないようなものでした。
   これがお気に入りの生徒にだけ送られていたというのならまだ判りますが、チケットは先生の覚えが
   めでたくないはずの蘇部くんにまで送られています。それに、ばら撒かれたチケットの数は
   かなりの数だったので、実質的ににはペアさえ組めれば自由参加といっても差し支えないものでした。
   しかしそうなると、ますますチケットの存在理由がわからなくなってきます」

そこでいったん息を入れて、更に殊能の話は続く。

殊能「また、参加をペアに限定したのも、不自然といえば不自然です。
   夫人同伴が原則のディナーパーティーとかならいざ知らず、これは教師が生徒を招いてのスキー合宿です。
   それに、知っての通り、学園に女生徒は特別研修生の竹さんを含めても、たったの三人しかいません。
   無論、男女のペアでなければならないとは書いてありませんから、男二人でもいいわけです。
   でも、そうなるとますます、何故ペアでの参加にこだわったのかが説明できません」
そこまで言い終えると、殊能は僅かに表情を改めて言った。

殊能「この疑問に対して、ぽくはこう考えました。
   強制参加ではなくあくまで自由参加という形式をとった上で、
   ペアチケットという手法を用いてまで、ペアでの参加に限定した。
   これは、とある人物を合宿に参加させず、
   そしてとあるペアを合宿に参加させるためのものであるとすれば、どうだろうかと」

殊能は再び、自らの発した問いかけへの返答を待たずに続ける。

殊能「そして、そのうちのひとつは成功したものの、もう片方は失敗に終わりました。
   後者は先生にとっては大きな誤算だったでしょうが、それでも致命的な失敗ではなかったと思います」

確信に満ちた話し振りで語る殊能の姿に、新堂が呆れたような声を上げる。

新堂「おいおい、この期に及んでもったいぶる気かよ、殊能。その意図って言うのはいったい何なんだ?」

新堂の問いかけを待っていたかのように、静かに答える殊能.

殊能「ぼくの考えはこうです。参加方法に隠された二つの意図、それは、森くんを合宿に参加させないこと、
   そして、西尾くんと竹さんを合宿に参加させることです。それも、あくまで自発的に」
殊能はそこまで言い終えると、質問を待つかのように言葉を止めた。
当然のように、石崎と氷川が疑問の声を上げる。

石崎「おいおい、ちょっと待ってくれよ。なんで今の話が、森を参加させないでおいて、そのうえで、
   西尾と竹を参加させるためってことに繋がるんだよ。これが『女性同伴でのみ参加可』って条件なら、
   ああ笠井先生は少なくとも俺だけには参加させないつもりなんだなってわかるんだけどな」
氷川「石崎さんって、生理的に女性に受け入れられないタイプの人ですからね」
石崎「うるさいなあ、俺はもう諦めてるからいいんだよ。だいたい氷川、そう言うお前はどうなんだよ」
氷川「……僕の冗談はわかりにくいですから」

二人の掛け合いが終了するのを待って、殊能が再び口を開く。

殊能「今の疑問については後で説明しますので、とりあえず話を進めさせてもらいますね。
   さて、基本的に目立ちたがりで、イベントが大好きなメフィスト学園の生徒たちです。
   例えペアという制限があったとしても、いずれは殆ど全員が何らかの形で参加してきたことでしょう。
   ただのイベントというならまだしも、何と言っても雪山の山荘ですからね。これに参加しない方が変です。
   実際、何やかにやと理由をつけて、殆ど全員が雪山に来ているわけですし。
   そう、本当に誰にも絡んでもらえなかった積木くんのようなケースを除いてね」

殊能はひとり、くすくすと笑い、すぐに真顔になって続ける。

殊能「ただし、一人だけ例外がいます。そう、森くんです。
   彼は実に判りやすい個人主義者であると同時に、自他共に認めるインドア派です。
   別に目立ちたいとも思ってないでしょうし、寒いのも身体を動かすのも願い下げでしょう。
   強制参加ならいざしらず、自由参加なのに、しかもわざわざペアの相手を見つけてまでして、
   彼にとっては何の興味もないスキー合宿に来るはずがないのは、誰の目にも明白です」
高田「森君は計算高いからね。笠井先生に直接呼ばれたら来るだろうけど、でなければ確実に来ないだろうね」

うんうんと高田が頷く。殊能は続ける。
殊能「次に、ペア参加についてですね。学園の生徒たちの間にも、様々な人間関係が存在します。
   霧舎くんと高里さんは付き合ってますし、新堂くんと中島くん、古処くんと津村くん、そしてぼくと――
   いや、それはともかく、仲の良い二人組というのは幾組も存在します」

殊能の言葉に反応し、高里がちらちらと霧舎を見る。しかし、霧舎はうつむいたまま、反応を示さない。

殊能「その中から、切っても切り離せない、まさに絶対のカップルと言い得る存在を選ぶとすれば、
   このペアしかないでしょう。そう、西尾くんと竹さんのカップルです。
   竹さんが学園に特別聴講に来た経緯を考えても、この二人の関係はある意味特別ですから。
   まさに切っても切り離しえない、メフィスト学園のベストカップルと言っていいでしょうね」
石崎「ちくしょう、西尾のやつ、羨ましいよなあ。ああ、俺もイラストレーターが女子高生だったら、
   今頃は振り回されたり罵られたり足蹴にされたりと、そりゃあもうウッハウハだったんだけどなあ。
   なあ、氷川。お前も男としてそう思うだろ?」
氷川「いや、ぼくとしてはお嬢さま女子大生にされるほうが……って、何を言わせるんですか、石崎さん」

二人の漫談を無視し、殊能の話は続く。
殊能「先生はその目的――つまりこれこそが動機な訳ですが――を達成するために、
   どうしても西尾くんと竹さんを合宿に参加させたかった。それも、あくまで自発的に。
   そこで思いついたのが、ペアチケットという参加形式でしょう。
   この学園でペア参加とのイベントを開催する以上、西尾くんと竹さんのカップルが参加しないはずはない、
   参加しないほうが不自然だから、と。他のペアはいざしらず、この二人だけは不動のペアですからね」

もっとも、その試みは失敗に終わったわけですが、そう呟くように言って、殊能は話を続ける。

殊能「もちろん、あくまでこれはぼくの想像の話でしかありません。が、これだけは言えるでしょう。
   この合宿の参加形式はそもそも、学園の生徒なら誰もが参加するであろう構造になっています。
   そしてまた、森くんが参加していないのが自然に感じられるような構造になっているし、
   西尾くんと竹さんが参加していないのが不自然に感じられるような構造になっています。
   そして実際に、この3人と可哀想な積木くんを除く残りの全員は、雪山を訪れている、と」
   
そこまで言い終えると、殊能は再び、確認するかのように笠井を見る。笠井は答えない。
その微動だにしない無表情をちらりと見てから、殊能はまた少し口調を変えて喋り始めた。
殊能「さて、話は変わるけど、みんなはそれぞれに目的があって、この雪山に来ているよね。
   スキー合宿組は言わずもがなだし、高田くんと乾くんは薬草の採取、新堂くんと中島くんは自警団の活動、
   北山くんともう下山した古処くん・黒田くんは登山、古泉くんは修行、そして石黒くんは火山の調査だ。
   ぼくと舞城くんは――ちょっと特殊だけど、まあ、蘇部くんを助けるためということでいいよね」

そう言うと殊能は舞城に向かい、にっこりと微笑む。複雑な表情で、なにやらもごもごと答える舞城。

殊能「ところが一人、いや二人だけ、この雪山にやって来た理由が判らない人物がいます。
   一人はもちろん、自らの意思によらず、新堂くんに連れられてきた清涼院くん、そして二人目は――」

殊能の意味ありげな問いかけに、待ってましたとばかりに口を開こうとする舞城。
が、それより早く、乾いた、それでいて重く鬱屈した声が、その人物の名を告げた。
言おうとしていたことの先を越され、途端に不機嫌そうな表情になる舞城に構わず、彼は再び言葉を発する。

佐藤「そう、浦賀先輩だよね。本当にわからないのは」

ギラギラと狂おしく輝く瞳を殊能に向けたまま、佐藤はもう一度繰り返した。
佐藤「殊能先輩、あなたは知っているんですね、浦賀先輩が何を考えて、何をしているのかを」

血相を変え、殊能に詰め寄る佐藤。しかし殊能は、ゆっくりと首を振る。

殊能「残念だけど佐藤くん、ぼくには浦賀くんの考えている事はわからない」

佐藤「で、でも……」
舞城「何度言わせれば判るんや、佐藤よ。人に頼るんやのうて、ちゃんと自分で目ェ見開いて考えれや」

なおも食い下がろうとする佐藤を、舞城が一喝する。
佐藤はひるんだかのように口を閉じ、それでもぎらぎらと光る瞳で殊能を睨んでいる。
殊能は口元に微かな笑みを浮かべると、淡々と話の続きを開始した。

殊能「とりあえず、浦賀くんについて、現時点で判明している事実だけを確認してみよう。
   浦賀くんがぼくたちの前に姿を現したのは、以下の4ケースだ。
   北山くんが襲われたケースと(前スレ837)、石黒くんが捕まったケース(>>79>>265-266)、
   山を駆け降りているところを新堂くんと中島くんに目撃されたケース(>>51-53)、
   そして、笠井先生の部屋に潜んでいるところを日明さんと津村くんが遭遇したケースだね(>>420-423
   もう下山した黒田くんや清涼院くん絡みのケースは、まあ考慮の対象から外すしかないだろうね」

殊能は喋りながら、皆に確認するかのように、ゆっくりと指を折っていく。

殊能「この中で浦賀くんの考えている事について、何か知っている可能性のある人物といえば、石黒くんかな。
   一方的に襲われた、もしくは見かけただけのあとの人たちと違って、彼は山頂で浦賀くんに襲われ、
   捕らえられ、何故か拘束されただけで放置されている。つまり、しばらく素の浦賀くんと接している。
   ある程度、浦賀くんの様子を観察しえた立場にあった訳だね。ましてや彼は医師の資格を持っているし。
   というわけで、石黒くん。浦賀くんを間近で見て、なにか気付いた事はあるかな?」
殊能の問いに、石黒は思い出すかのように目を閉じ、ゆっくりと答える。

石黒「ああ、彼は非常に不安定な精神状態だったな。発言は支離滅裂だし、矛盾した行動も目立った。
   そう、あれは、一種の解離性人格障害といってもいいような状態だったね」
石崎「怪狸精・人隠し妖怪? なんだそりゃ、京極先生の考えた新しい妖怪の名前か?」

石崎が素っ頓狂な声をあげる。氷川がやれやれといった表情でたしなめる。

氷川「……石崎さん、さすがにその間違え方には、いくらなんでも無理がありますよ。
   一応言っておくと、解離性人格障害ってのは、いわゆる多重人格のことです」
石崎「ああ、そうだっけな。そういえば浦賀が好きだったよなあ、二重人格ネタ」
氷川「そうでしたね。それに浦賀くんには、普段から分裂症のようなところが感じられましたし」

うんうんと頷きあう、石崎と氷川。

北山「そうだったんだ……石黒くんがあのとき言ってたことの意味は、こういうことだったんだ……」
佐藤「あの人はいくつもの顔を持っていた……みんなは『キャラが固まってない』とか言ってたけど……
   僕には判るんだ……そう、ずっとあの人を見てきたんだから……」

北山が、佐藤が、それぞれ誰に聞かせるともなく呟く。

石黒「それだけならまだいい。彼の瞳孔を観察してみたが、かなり顕著な縮小の兆候が見られた。
   あれはほぼ間違いなく、ある種の薬物中毒の症状だ」
殊能「薬物中毒……ですか?」

殊能の目が興味深げに煌く。なにやら脳裏の記憶を探っているようだ。
殊能が考え込むような表情になるのをよそに、石黒はいかにも専門家らしく、整然と説明を続けている。

石黒「僕を捕らえたときの浦賀くんは、まだいわゆる主人格による制御がある程度働いているようだった。
   が、あのまま中毒症状が進行しているとすると危険だ。既に完全に理性を喪失している可能性が高い」
舞城「あの阿呆、薬なんかで自分を見失うとうたんか。正直、もう少し頭のええ奴かと思うとったわ」

舞城が吐き捨てるように言う。佐藤がぴくりと反応する。
そして、平然とした表情のまま、殊能が口を開く。

殊能「なるほど、浦賀くんについてのことは、不確定要素として放置しておくしかないと思ってましたが、
   どうやら何とかなりそうですね。ありがとう、石黒くん」

そう言うと殊能は、こんどは高田の方に向き直った。

殊能「そういえば高田くん、ちょっと前に広間で、この雪山で採取した薬草について解説してくれたよね」
高田「ああ。あのとき言った通り、この山にはここでしか採取できない貴重な薬草が、何種類か自生している。
   それをかなりの量採取することができたんでね。うれしくて、つい、ね」
殊能「それは良かったね。ところで、ひとつ聞いておきたいことがあるんだけど、あのとき、
   一種類だけ説明してくれなかった薬草があったよね。あれにはどういう効果があるんだい?」
高田「……ああ、なるほどね。そういうことか。流石は殊能君だ」

高田は何かを納得したように二三度頷いてから、平然と答えた。

高田「あの薬草、いや、植物の効果は――そう、強力な幻覚作用だよ」
高田の何ひとつ悪びれるところのない喋り方と内容のギャップに、ぽかんとする一同。
特に乾の驚きっぷりは酷かった。口をあんぐりと開けて、絵に描いたような茫然自失っぷりだ。
と、急に我に帰ったのか、顔を真っ赤にして怒り始めた。

乾 「た、高田っ、僕に麻薬採集の片棒を担がせるだなんて、酷いじゃないか!!」
高田「いや、あれは麻薬じゃないよ。今のところはまだ指定されてないから。それに、さほど常習性もないしね」
乾 「今のところは、じゃないっ!!」

怒り狂う乾を、適当にあしらう高田。そんな状況を無視し、殊能は高田に声をかける。

殊能「ところで高田くん、その草を摂取した場合、どういう症状が生じるんだい?」
石黒「それについては僕も興味があるな。是非聞かせてくれないか?」
乾 「だから人に黙って……って、聞いてるのかっ、高田っ!!」

乾を無視し、石黒と専門的な会話を交わす高田。
すぐに二人のやり取りは終り、腑に落ちたような表情を浮かべる二人に、殊能は声をかける。

殊能「で、どうでしたか。浦賀くんの症状は?」
石黒「ああ、恐らく間違いなく、その植物とやらの中毒症状のようだ」
高田「そうらしいね。しかし、そこまでの症状になってるだなんて、一体どれだけの量を摂取したんだか」

殊能の問いに、ともどもに答える石黒と高田。
殊能「ありがとう、高田くん。実に興味深い内容だったよ」

殊能は高田に言うと、再び広間の一同に向き直った。

殊能「さて、浦賀くんが重度の薬物中毒により、いわゆる多重人格状態であることが判明しました。
   では当然、次に考えるべきことはこうなりますね。浦賀くんを薬物中毒状態にしたのは誰かと」

殊能はそう言いながら、広間の一同の顔を見回していく。

殊能「この植物のことを知っていたのは、ぼくたちの中では、もちろん高田くんだけでしょうね。
   しかし、高田くんはずっと乾くんと一緒に薬草摘みをしていましたし、
   山荘に戻った時点には既に、浦賀くんは薬物中毒の状態になっていました。
   というより、浦賀くんがずっと雪山にいることを考慮すると、
   かなり早い段階から浦賀くんは、中毒状態になっていたと考えるのが妥当でしょう。
   だとするとこれは、誰の仕業なんでしょうかね。その答えは明白です。
   この植物の存在を知りえ、そして、浦賀くんに薬物を盛ることが可能だった人物、それは――」

殊能の視線は、とある顔のところでぴたりと止まった。

殊能「そう、笠井先生だけです」
610名無しのオプ:03/02/06 22:14
うわ……
素でわくわくどきどきしてきた
上質のミステリだー
611名無しのオプ:03/02/06 22:46
笠井の陰謀を解く殊能にドキドキ
612名無しのオプ:03/02/06 22:47
勃起age
613名無しのオプ:03/02/06 22:54
凄い…面白すぎる…。
614名無しのオプ:03/02/06 23:22
すげーよ職人さん!
2ちゃん見ててよかった。
615名無しのオプ:03/02/07 00:17
ペアチケットからの論理展開には感動いたししますな
殊能「ちなみにその植物は、生で中毒するまで食べられるようなものなのかい?」
高田「いや、無理だね。この雪をものともせずに生えているような強靭な植物だ。苦さも硬さも折紙付きだ。
   ましてや、それを生で、しかも大量に食べるだなんて、古処君の作品の登場人物でも不可能だろうな」
殊能「なるほど。あともうひとつ。その植物の存在はどれくらい知られているのかな?」
高田「未だに麻薬に指定されてないくらいだ。知っている人間は殆どいないだろうね。
   いるとすれば、よほど薬物に詳しい人間か、あるいはこの山に詳しい人間か、それくらいかな」
殊能「ありがとう、高田くん。実に興味深い内容だったよ」

殊能は高田に言うと、再び広間の一同に向き直った。

殊能「さて、浦賀くんが重度の薬物中毒により、いわゆる多重人格状態であることが判明しました。
   では当然、次に考えるべきことはこうなりますね。浦賀くんを薬物中毒状態にしたのは誰かと」

殊能はそう言いながら、広間の一同の顔を見回していく。

殊能「この植物のことを知っていたのは、ぼくたちの中では、もちろん高田くんだけでしょうね。
   しかし、高田くんはずっと乾くんと一緒に薬草摘みをしていましたし、
   山荘に戻った時点には既に、浦賀くんは薬物中毒の状態になっていました。
   というより、浦賀くんがずっと雪山と思われることを考慮すると、
   かなり早い段階から浦賀くんは、中毒状態になっていたと考えるのが妥当でしょう。
   だとするとこれは、誰の仕業なんでしょうかね。その答えは明白です。
   この植物の存在を知りえ、そして、浦賀くんに薬物を盛ることが可能だった人物、それは――」

殊能の視線は、とある顔のところでぴたりと止まった。

殊能「そう、笠井先生だけです」
617609:03/02/07 00:40
609にコピペミスで欠けた部分があったのを、今頃になって発見。
609と616を、脳内で差し替えといてもらえると幸いです。

とりあえず今日はここまで。長々と続けて申し訳ないっす。
618名無しのオプ:03/02/07 01:14
乙!
しかし毎回いいとこで切られるので続きが気になってしかたないす。
619名無しのオプ:03/02/07 03:12
すげーすげーすげー!!!!
ミラクルだ!!
620名無しのオプ:03/02/07 08:19
探偵殊能編、後半も期待してますぜ! 職人さま!
621名無しのオプ:03/02/07 11:26
早く笑える展開にならんかなぁ
622名無しのオプ:03/02/07 12:34
そういえば、いーちゃん&御大は放置プレイ?
ていうか結局『竜』って何だったの?
623名無しのオプ:03/02/07 12:59
>>622
(メール欄)だと思うんだけど、誰も学園サイドの解決編書きませんねえ
624622:03/02/07 13:45
>>623
ああ、そういうことか。納得。ていうか素で感心。
判ってなかったのって俺だけ……じゃないよね?w

というわけで学園サイドの続きキボンヌ。
625401:03/02/07 16:48
いや、自分は自宅から書きこみ出来ないもので。
まさか仕事場から書きこむわけにも行かんですし<じゃぁ、今なんだよという突っ込みは勘弁

一応>>623の指摘通り(多少反則だけど)で考えてはいたんですけど、
漫画喫茶に行く時間がない。
どなたかプリーズ。

まぁ、山荘の解決に合わせたほうが「美しい」とも思ったりするんですが
緊迫した空気のなか、殊能は笠井を静かに見据える。笠井は――ゆっくり、口を開いた。

笠井「なるほど、私があらかじめ浦賀を山荘に呼び寄せ、その薬物とやらを盛ったと言いたいわけか」
殊能「ええ。この山に山荘をお持ちの笠井先生なら、この植物の存在を知っていても不思議ではありませんからね」

殊能はさらりと答えると、視線を広間の一同に向け、口調を柔らかいものに変えて言った。

殊能「ところでみんな、ああ見えて浦賀くんには、人との繋がりに飢えているような節が感じられないかな。
   本当に他人を拒絶している人間なら、推協の会員になんかならないだろうからね」

さりげなくそう言うと、再び笠井を見る殊能、そんな二人をよそに、何故か盛り上がる一同。

新堂「おいおい、浦賀の奴、推協なんかの会員だったのかよ。人は見かけによらないもんだな」
石崎「確かにそれは意外だねえ。この正統本格の申し子である俺も、あそこには加入してないのに」
氷川「だから誰が正統本格なんですか。だいたい、石崎君は人望がなさ過ぎて推薦が貰えないだけじゃないですか。
   確か、黒田君は会員ですよ。まあ、僕にもあそこは敷居が高いですけど。本ミスならともかく」
乾 「そ、そうなのか!? くそう、黒田の奴、上手いこと二階堂先生をたらしこみやがったな……
   いや、あるいは娘。繋がりで島田先生か……」
高田「流石は調子の良さには定評のある黒田君だね。ちなみに当然のように、森君も加入しているはずだよ」
秋月「さすがは森君だね……少しでもメリットのありそうなことは絶対に見逃さないや……うふふ」
日明「他にあそこの会員だったのは、確か浅暮くんと……あと一人、誰かいなかったかしら?」
霧舎「……あ、ああ、僕だよ……」
高里「きゃあ、そんなハイソなクラブの会員だなんて、さすがはダーリン……って、どうしたんだろ?
   ダーリンったら、さっきから元気がないみたいだけど……まあ、いろいろあったし、
   疲れてるのよね、きっと。しばらくそっとしといてあげなくちゃ」
津村「えっと、さっきから言ってる推協ってのは、いったい何なんだい?」
石黒「僕も詳しくは知らないが、確か推理に関わる人間の親睦団体みたいなもののはずだ」
舞城「親睦団体、か。まさにその通りやな。重鎮連中が集まって文士劇だの何だの慣れ合っとるだけやからな。
   何が乱歩以来の伝統を誇るや。阿呆らしいにも程があるわ。んなクソの役にも立たん馴れ合いやっとる
   暇があったら、己の魂込めた傑作のひとつも仕上げとけや、クソジジイどもが」
佐藤「……知らなかった……浦賀先輩が、あんなところに入ってたなんて……そんな……」
古泉「そう、全てはアッラーの思し召しだ」
北山「古泉君……話を締めたつもりなのかもしれないけど、全然意味が判らないよ……?」

広間のちょっとした騒ぎを無視し、静かに睨みあう殊能と笠井。
その二人だけの沈黙を破ったのは、やはり殊能の方からだった。

殊能「ぼくたちには人付き合いなんかには無関心だといった態度を貫きながら、
   密かに推協の会員になるほど、人との繋がりに飢えていた浦賀くん。
   笠井先生の演技力、いえ、人格的影響力をもってすれば、
   そんな浦賀くんを誑かすことなど、まさに造作もないことだったでしょうね」

いつの間にか広間の喧騒は収まり、再び満座の注目は相対する殊能と笠井に集まっている。
殊能「さて、浦賀くんがこの雪山に来るに至った経緯について、ぼくは、こんな想像をしてみました。
   笠井先生の企画したスキー合宿、しかし、それはペアでしか参加できません。
   もちろん、プライドの高い浦賀くんが誰かに声をかけるなんてことは、まず不可能でしょう。
   しかも舞台は雪山の山荘です。いかにも本格の王道といった雰囲気のシチュエーションです。
   いわゆる本格的なものに愛憎相半ばする想いを抱く浦賀くんとしては、平静ではいられなかったでしょうね。
   さて、そんな浦賀くんに声をかける人物がいたとしたらどうでしょう。
   例えば、犯人役をやってみないか、といったような声を……」

そう言うと殊能は、意味ありげに笠井を見つめる。笠井は答えない。

石崎「なるほどねえ。浦賀だけに“愛情の裏返し”か。さすがは殊能、やるなあ」
氷川「だから石崎さん、無理矢理シリアスな雰囲気に割り込もうとするのは止めにしませんか?」

そんな二人を完全に無視し、緊迫した空気のまま、殊能と笠井の対峙は続く。

殊能「もちろん、笠井先生が直接、浦賀くんに薬物を盛ったなどとは思いせん。それでは美しくないですから。
   恐らく先生は、例の植物が大量に入った料理を、浦賀くんが食べるように仕向けただけなんでしょう。
   それも、あくまで自発的な形で。そのための手段はいくらでも考えられます。
   たとえば、浦賀くんを空腹な状態にしておいてから、その料理をさり気なく置いておくとか、ね。
   もちろん、笠井先生のことですから、もっとスマートなやり方だったでしょうけれど」
石黒「なるほど。それで浦賀君は、犯人役としての自分と現実の自分との境界を見失ってしまった訳だ」
高田「それだけではないだろうね。石黒君から聞いた浦賀君の状態は、薬物中毒というだけでは説明がつかない。
   浦賀くんはもともと分裂症気味だったし、自分を投影した人物を作品に出すことが多かった。
   そういった元々の脳内人格も入り混じって、今のややこしい状態になったんだろうな」

石黒と高田が、それぞれの仕草で頷く。
そして一瞬、殊能と笠井の視線がぶつかり合うが、何故か視線をすっと逸らし、殊能は軽い口調で言った。
殊能「もっとも、浦賀くんのことについては、本人がこの場にいない以上、あくまで想像の域を出ません。
   それに、笠井先生ご本人が、なんらかの犯罪行為をしたという訳でもありませんしね。
   先ほどの仮説でいえば、置いてあった料理を勝手に食べて中毒状態になったのは浦賀くんですし、
   そもそも、例の植物からして、法の禁じる麻薬というわけではありませんからね。
   ただ、浦賀くんがこの雪山にやって来たことにおいて、笠井先生が何らかの関与をしている可能性が高い、
   これくらいならまあ、言ってもいいでしょうね」

そう言うと殊能は、やや拍子抜けしたかのような観のある一同を見回し、不意に話題を大きく変えた。

殊能「ところで、笠井先生といえば、自他共に認める、いわゆる新本格の理論的指導者にして、いわば象徴です。
   そんな笠井先生はこの数年、ある事態を憂え、そして警鐘を鳴らし続けてきました。
   その内容は、本格の形式から逸脱した作品――笠井先生の言葉を借りると“脱格”作品ですね――の氾濫が、
   新本格というジャンルを滅ぼし、今の繁栄に終焉をもたらすのではないかと」
   
突然、今までの推理と何ひとつ関係のないことを淘々と語り始めた殊能に、皆があっけにとられる。
しかし殊能は周囲の反応を意に介する様子も無く、話を続ける。

殊能「そう、かつてSF校に在籍し、その繁栄と衰退の一部始終に立ち会ってきた笠井先生だからこそ、
   新本格の未来について、人一倍強い責任を感じざるを得ないのでしょうね。
   しかし、笠井先生の警鐘も空しく、かつての新本格の担い手達の動きは鈍いものでした。
   それに対していわゆる脱格系には次々と新しい担い手達が登場し、その存在感は増すばかりです。
   そして今や、清涼院くんから始まった脱格という流れの勢いは、とどまるところを知りません」
石崎「おいおい、殊能。正統本格の担い手たる俺にとってもそれは由々しき問題だが、
   今はそんな関係ないことを語ってる場合じゃないだろ。それとも関係あるとでも――」
氷川「――なるほど。わかりました。そういうことですか」

石崎がやれやれといった表情で止めに入ろうとする。と、その石崎の言葉を、急に氷川がさえぎる。

石崎「なんだよ、氷川。そりゃ冒頭部でいきなり登場人物に後期クイーン論について議論させるお前なら、
   こういうのもありかもしれないが、ここは解決編だぞ。解決編で意味のない話なんて――」

とそこで石崎は言葉を切った。ほんの一瞬だけ、そのいかにも眠そうな目が、鋭く煌く。

石崎「なるほどねえ、そういうことかあ。しかし現代本格の担い手として
   自他共に認める俺としては、笠井先生にひとつ文句がいいたいところだな」
氷川「石崎さんはふざけすぎですからね、自業自得です。でも、僕も後半については同意見ですね」
乾 「ていうかお前ら、いい加減に自分たちだけが先に納得するのやめろよ!!」
舞城「あー、ほうかほうか、そうゆうことか。なるほどなー。しかしそりゃ、滅茶苦茶やないか」
乾 「ああっ、舞城までっ!!(泣)」

察しのいい者が次々と気付いていくなか、殊能はマイペースで語り続ける。
殊能「さて、笠井先生は危機感に襲われました。このままでは先人達が築き上げてきたものを継承し、
   そして自分たちが育て上げてきた新本格というムーブメントが滅びてしまうと。
   しかし、台頭する脱格を本来迎え撃つべき存在であるはずの綾辻先生を始めとする先生方は、
   今や自らの地位に安住するかのように動きが鈍く、怠けていると言われても仕方ないような体たらくです。
   笠井先生は絶望したでしょう。しかし、新本格の理論的指導者として、象徴的存在として、
   そして、SFが衰退していくのを手を拱いて見守る事しかできなかった者として、
   新本格を滅びさせるわけにはいかない。笠井先生はさぞかし悩まれたことでしょう」」

殊能は言葉を止め、笠井を見る。笠井は、ただ静かに殊能を見つめている。
殊能は、毅然とそびえ立つ巌のような笠井の表情から目を離さずに、ゆっくりと言った。

殊能「そして笠井先生は、遂に踏み切らざるを得なかった。
   そう、いわゆる脱格系を、いかなる手を用いても排除することに」

そして一同を見回す。もはや誰も口を開くものはいない。
殊能は再び、視線を広間の一同に向けて、語り始める。

殊能「さて、笠井先生が今回のスキー合宿において、どうしてもこの山荘に連れて来ようとした人物は、
   四人ほどいましたね。作品的には西尾くんと同一視できる竹さんを除くと、全部で三人です。
   清涼院くん、浦賀くん、そして西尾くん。この三人ですね。
   彼らこそが、笠井先生がその動機を達成するために、この雪山に連れてくる必要があった人物、
   すなわち、その動機を達成するために、どうしても消し去りたかった人物ということになりますね」

殊能の落ち着いた声が、静まり返った広間に響く。
と、そこに突然、精気に満ちた、騒々しくも陽気な声が割り込んできた。

舞城「いや、四人やで、殊能。ついでやさけ、俺の名前もそん中に入れといてくれや」

舞城は、上機嫌そのものといった声で、楽しくて仕方ないとばかりに言い放った。
石崎「あのなあ、舞城。ご機嫌のところ申し訳ないが、なんでいきなりお前の名前がでてくるんだ?」

石崎が一応といった感じで、舞城に聞き返す。舞城はゲラゲラ笑いながら言う。

舞城「なんや、判っとるくせに。名探偵、いや、元名探偵様ともあろうもんが固いこと言うなや。
   聞くところによると、笠井のおっさん、蘇部をずいぶん虐めとったそうやないか。しかも露骨に。
   笠井のおっさんはいけすかん奴やけど、自己満足のためだけに他人を虐めるような奴やないやろ。
   ましてや蘇部にはわざわざチケットを送っとったんやろ。せやったら間違いなく何かの意味があるわ。
   それはつまり、蘇部を虐めとけば、いずれ殊能が出てくると。泣きつくか何かして」
氷川「そして、殊能くんが来ると、必然的に舞城くんも来るってことですね。
   なるほど、強引ですけど、いちおう理屈は合ってますね」
舞城「まあ、細かい理屈はええって。とりあえず入れといてくれればええわ。その方が座りがええやろうから」

強引にまくしたてて、ニヤリと笑う舞城。氷川はやれやれといった表情になる。
そして殊能は、仕方がないなという笑みを浮かべる。

殊能「ああ、わかったよ。舞城くん。四人と言うことにしておくよ」」
殊能「さて、これで笠井先生がその動機を達成するために、消し去る必要があると考えた人物は四人になりました。
   清涼院くん、浦賀くん、西尾くん、そして舞城くんです。この四人の共通項は――」

殊能は一同を見回す。理解しているものと理解していないものの割合は、ほぼ半々といったところか。
そして、理解しているものを代表するような形で、石崎が答える。

石崎「その四人は皆、いわゆる脱格系の連中だな。ああ、まだ納得いかねえなあ、くそっ」

何者かにぶつぶつと愚痴をこぼす石崎。氷川がそれを宥めているが、それを気に掛ける人間はいない。
皆が皆、殊能の言わんとしていること、そして笠井の反応を注視している。

殊能「さて、そろそろwhy、すなわち、笠井先生の動機について答えましょうか。
   どうして笠井先生は、ぼくたちメフィスト学園の生徒を山荘に集め、
   そして、まとめてこの世から消し去ろうとしたのか。その問いへの答えを」
   
殊能はそこで息をつき、ゆっくりと言った。

殊能「笠井先生がメフィスト学園の生徒たちを山荘に集め、まとめてこの世から消し去ろうとした動機、
   それは、いわゆる脱格の流れを根絶やしにすることによって、新本格の衰退を防止するためです」

笠井は、その表情を微動だにさせなかった。
広間から一切の音が消えたかのような、重苦しい沈黙の中、殊能の声だけが響く。

殊能「笠井先生は、先ほど挙げた四人こそが、いわゆる脱格の中心的人物と考えたのでしょう。
   そして、その中でも清涼院くんだけは、どうしても今回の事件の被害者にしなければいけなかった。
   当然ですね。この脱格という流れを作り出したのが、まさに清涼院くんなのですから。
   だから清涼院くんだけに関しては、事前に新堂くんに依頼して、確実に身柄を確保しておいた。
   更に、普通に合宿を開催したなら絶対に来ないであろう浦賀くんについては、自ら山荘に誘い出し、
   そして、現在の脱格の代表的存在である西尾くんと竹さんのペアについては、
   参加方法に工夫を凝らして、参加しない方が不自然なような状況を作り出しておいた。
   脱格系と目されるその他の人たち、そう、舞城くん、佐藤くん、そして北山くんたちについては、
   特に策を弄さずとも、いずれ必ず山荘にやって来ると踏んだのでしょう。実際、そうなってますしね」

殊能が話し終えると、再び広間を静寂が包む。しかしそれは、すぐに破られた。

乾 「そ、そんなのおかしいぞ、笠井先生ともあろう方が、意味もなく無意味な殺人を犯すはずがないっ!!
   笠井先生が清涼院たちを殺す事によって新本格を守ろうとしている、それはいいとしよう、
   でも、なんで僕たちまで殺されなくちゃいけないんだよっ!!」
石黒「殊能君、僕も乾君に同感だ。正直、それは無意味かつリスクが大きすぎると思うのだが……」
秋月「ついでで殺されるのは、納得いかないなあ……ていうか僕、脱格にすら入れてもらえないんだ……うふふ」

乾が、石黒が、そして秋月が、次々に言葉を発する。しかし殊能はさらりと答える。

殊能「いいえ、笠井先生は最初から、この雪山にいる全員を殺すつもりでした。それは間違いありません」
まるで当たり前のことを言うような殊能の口調に、二の句を継げなくなる一同。
一瞬の沈黙の隙を突いて、石崎がぼやく。

石崎「玉石ともに砕くって奴かあ。でもなあ、俺みたいな“玉”にとっては、とんだとばっちりだよなあ」
氷川「石崎くんは文字通り“石”だと思いますけどね。これはもちろん冗談ですけど。
   それより、たった四人を殺すために全員を殺すというのは、いくらなんでもおかしいです。
   誰を殺したかったのかを隠すためのカモフラージュだとしても、いささか行き過ぎています。
   どう考えても、リスクに見合うリターンがあるとは思えません。
   それに、笠井先生がそんな理由で無意味に大量殺人を犯すような方だとは、どうしても思えません」
高田「そうだね。そもそもこの場の全員を殺すなんてことは、かかる労力が大きすぎて現実的じゃない。
   無論、毒物などを使うのであれば不可能ではないけど、そのチャンスは幾らでもあったはずなのに、
   こうして僕達はピンピンしてるからね。今更その手段をとるのは、もう警戒されて不可能だろうし」
日明「そ、それに、古処君と黒田君はもう下山しちゃったんでしょ。じゃあ、全員を殺すのは無理じゃないの?」
北山「西尾君と竹さんも、結局のところ来てないしね……」   

石崎のぼやきに端を発した氷川の問いに、高田や日明、北山までもが加わってくる。
そろそろ説明をする必要性を感じたのか、ゆっくりと殊能が口を開く。

殊能「“玉石ともに砕く”ですか。かなり近い比喩ですが、厳密に言うとちょっと違いますね。
   笠井先生の意図を正確に喩えるなら、それは“玉石と器をともに砕く”ではないと」
殊能の意味深な言葉に、即座に理解の色を示したのは舞城だけだった。

舞城「なるほどなー、そりゃその通りや。こんなけったいな学園でなければ、清涼院のアホみたいな
   とんでもない奴が、そもそも入学できる訳あらへんからな。今も選考基準なんか滅茶苦茶で訳判らんし。
   ま、その無茶苦茶さのお陰でもって、俺らも入学できたんやさけ、文句言う気はさらさらないけどなー」
佐藤「……浦賀先輩……僕は……わからない……」

舞城はゲラゲラ笑いながら、佐藤の背中をバシバシと叩いては言う。
佐藤は舞城のなすに任せたまま、ブツブツと独り言を言いながら、呆然と考え込んでいる。
そして殊能は、その全てを見透かすかのような視線をどこか遠くに向け、淡々と語り続ける。

殊能「もちろん笠井先生に、脱格系以外のみんなを殺さなければならない理由は存在しません。
   いえ、乾くんや石崎くん、氷川くんといった本格寄りの人たちは、積極的に殺したくなかったでしょう。
   彼らの存在を失うことは、先生の守ろうとしている新本格にとって、明らかにマイナスですから。
   しかし、個人個人の事情に関係なく、笠井先生は一定以上の数のメフィスト学園の生徒を、
   確実にこの世から消し去らなくてはならなかった。そう、メフィスト学園という器そのものを砕くために」

そう言って鋭い眼光を、笠井に向ける殊能。笠井は何も言わない。そして表情も変わらない。
そして殊能は、あたかも評論家であるかのような口ぶりで、話を続ける。
殊能「さて、笠井先生を始めとする多くの先生方が唱えている、脱格系の台頭による新本格の危機ですが、
   その元凶とされている、いわゆる脱格系と目される人間は、実はメフィスト学園にしか存在しません。
   もちろんメフィスト学園は、多くの異能・異才をまさに無秩序に掻き集めてきましたし、
   その異様なエネルギーを考えると、脱格系と目される人間がこの学園に集中したとしても、
   特に不自然とは言えないでしょう。しかし、こうも考えられますね。
   メフィスト学園に脱格系の人間が集まるのではなく、
   メフィスト学園にいるからこそ、彼らは脱格系と規定され得るのではないかと」

誰も言葉を発しないまま、殊能の評論家めいた話は続く。笠井は、目を閉じたまま何も言わない。

殊能「つまり、京極先生という異能の存在を契機に設立され、森くんを見い出し、清涼院くんを世に問い、
   良くも悪くもミステリ界を牽引してきたメフィスト学園の強烈な存在感があればこそ、
   清涼院くんをはじめとする脱格系の人たちは、個人としての枠を超えて、
   笠井先生すら恐れる“脱格”というひとつのムーブメントを形成し得たのではないかということです。
   そして、ライトノベル校のうえおくんについてはその存在を無視できる先生方も、
   これがメフィスト学園の生徒ということになると、何故かその存在を無視できなくなります。
   この学園の持つ歴史と異様なエネルギーが、無視し得ない何かを生み出すのですね。
   そして、その無視し得ない何かが、更なる異能を学園に引き寄せていくと」

殊能は息を入れ、更に続ける。

殊能「そう考えると、たとえ清涼院くんや西尾くんといった、現在の脱格の担い手が抹殺されたとしても、
   メフィスト学園が存続する限り、彼らの後継者たちが登場しつづけるのは、当然の話です。
   とすれば、この脱格の流れを断ち切るには、メフィスト学園そのものを消し去るしかありません。
   そういうわけで笠井先生は、メフィスト学園が存続不能になるほどの人数を殺す必要があったんです。
   それこそ、器を砕くために、玉石ともに砕く覚悟で」
淡々と話し続けてきた殊能は、ここでちらりと笠井を見る。笠井は軽く目を閉じたまま、反応しない。

殊能「ただし笠井先生は、どうしても森くんだけは殺すわけにはいかなかった。
   怠けがちな綾辻先生たち、いわゆる新本格の第一世代の人々に代わり、現在の新本格を支えているのは、
   森くんや西澤先生といった、いわゆる第二世代の人々だと、以前、笠井先生は言っていました。
   その中でも京極先生に匹敵する人気を持つ森くんが消えるとなると、その影響は計り知れません。
   そういうわけで笠井先生は、少なくとも森くんだけは合宿に参加させるわけにはいかなかった。
   そしてもちろん同時に、先生方も合宿に参加させるわけにはいかなかった。
   ただでさえいわゆる第三世代の中核を担うメフィスト学園の生徒たちが大量に消えるんです、
   これで第一世代の方々まで消えてしまうとなると、新本格そのものが滅んでしまいますからね」
石崎「そこが納得いかないんだよなあ。俺が森に負けてるのって、女性人気くらいだろ?
   本格の未来を考えると、どうしても殺すわけにはいかないのは森じゃなくて俺だろ、どう考えても」
氷川「……はあ……もういいです。好きに言っててください」、

殊能の延々と続く話に、ようやく石崎と氷川が口を挟む。しかし、殊能の話は止まらない。
殊能「さて、ここで、笠井先生の計画が成功した場合の事を考えてみましょう。
   仮に、今この雪山にいる人間及び清涼院くんが、全員死亡したとしますね。
   そうすると学園に残されるのは、転入予定の新入生を除くと、僅か五人です。
   これでは学園の体をなしません。否応無く、メフィスト学園は閉鎖ということになるでしょうね。
   もちろん、そうなったとしても、たとえば森くんは一向に困らないでしょう。
   既に森くんは先生方の多くを凌ぐ力を身につけていますし、学外でも活躍しています。
   メフィスト学園という呪縛から解放される事は、むしろ彼にとっては望むところかもしれませんね」
高田「ああ、森くんならそう思うだろうね。彼は抜け目無くあちこちにコネを作ってるしね」
新堂「おいおい、その森にサトちゃんを貢いで、ちゃっかりコネを作ってるお前が言うなよ」

高田の他人事のような声に、新堂が突っ込みを入れる。そしてまだ、殊能の話は続く。

殊能「また、西尾くんも困らないでしょう。現に、ライトノベル校との二重学生生活を送っている彼のことです。
   メフィスト学園がなくなれば、ライトノベル校に移るだけの話ですから」
氷川「なるほど。そうなれば、西尾君は新本格にとって無視できる存在になるってことですね」

氷川が感心したかのように口を挟む。殊能は軽く微笑む。

殊能「そうです。ですから笠井先生にとって、西尾くんと竹さんが合宿に来なかったことは、
   もちろん痛い誤算であるにはしても、少なくとも致命的な失敗ではなかったわけです。
   一人でも多くの生徒を殺し、メフィスト学園さえ消し去ってしまえれば、
   西尾君の持つ“脱格”としての意味を無効化できるわけですから」

そこまで言うと殊能は息をつき、今までの話をまとめるかのように、ゆっくりと語り始めた。
   
殊能「つまり、笠井先生は、脱格系の人間を殺すついでに、他の生徒たちを殺すつもりではありませんでした。
   むしろ逆です。真の目的は、一人でも多くの学園の生徒を殺し、メフィスト学園を消し去る事です。
   そしてそのときに、脱格系の生徒はできるだけ殺しておきたかった、そういうことです」
そして、殊能は話し始めたときと同じような自然さで、ゆっくりと口を閉じる。
長い、長い話にさすがに疲れたのか、軽く目を閉じて呼吸を整えているようだ。
それを待ち構えていたかのように、石崎が口を開く。   

石崎「なるほどなあ。俺達全員を殺すには弱いような気もするけど、まあ動機が無いとはいえないよなあ。
   けどなあ、その程度の動機なら、誰にでも設定し得るんじゃないか?
   乾が売れるために自分以外の全員を殺すとか、乾が目立つために自分以外の全員を殺すとか」
乾 「だからどうして僕をたとえに持ち出すんだよ!!」
石崎「だいたい殊能、お前の話からは、普通なら最初に言ってあるはずの部分がすっぽり抜け落ちてるからなあ。
   そもそも笠井先生は俺たち全員を殺すために、具体的に何をしたって……」

そこで石崎は言葉を止める。その顔から完全に表情は消え、瞳には珍しく驚きの色が浮かんでいる。
石崎の言葉に続き、乾や津村らが殊能に詰め寄っているが、もはやそれは石崎の視界に入らない。
乾 「そうだよ、その程度の動機なら、それこそ誰にでもでっちあげられるだろ!!
   笠井先生が僕達を殺すために、具体的に何をしたのか言ってみろよ!!」
高田「津村君をボウガンで撃ったのは笠井先生だけど、そもそもあれには殺傷能力がなかったしね」
津村「小官は笠井教官を信じる。そもそも、その程度の動機で大量殺人ができるものか」
日明「そ、そうよっ!! 笠井先生が私との愛を裏切るはずがないものっ!!」
舞城「ああ、もうええわ。おめえらは好きに歌うとれって。頼むから自分で考えもせんと口挟むなや」
新堂「ふん、馬鹿馬鹿しい。笠井の奴が何を考えていようが、何をしようとしてようが、どうでもいい話だ。
   殺そうとしてるだと? 上等だ。人間最後は、生き残りたい奴が生き残るんだよ」
古泉「そう、全てはアッラーの思し召しなのだからな」
北山「古泉くん……さっきからそればっかりだね……」

自らの言葉が引き起こした喧騒を無視し、石崎は黙って氷川を見る。
こちらも心なしか、呆然とした表情になっている氷川が、無言のまま頷く。
そして石崎は、困ったように頭をぽりぽりと掻きながら言った。

石崎「……なるほどねえ、全ては笠井先生の掌の上、ってことか」

そんな名探偵たちの一幕には気付くよしもなく、沈黙する殊能を問い詰める乾たち。

乾 「さあ、言ってみろよ、殊能!! 笠井先生は僕達を殺すために、何をしたって言うんだ!!」

そして殊能は、ゆっくりと口を開いた。

殊能「その質問には答えられません。何故なら、笠井先生は何もしていないからです」
乾 「え……?」

予想外の殊能の答えに、思わず顔を見合わせる乾たち。
その虚をつくかのように、殊能は自らの話を続ける。

殊能「そう、笠井先生は、少なくともぼくたちに直接危害を加えるような行為は何ひとつしていません。
   先生はただ“状況”を設定しただけです。そう、あたかも舞台の演出家であるかのように」

笠井だけを見据えながら喋りつづける殊能。笠井は目を閉じて答えない。

殊能「そして、先生はただ見ていた。事件が始まってから先生がした事は“状況”のコントロールだけです。
   演出家は舞台に登りません。ただ、舞台裏で密かに指示を出すだけです。
   よって、笠井先生も何もしませんでした。そう、ただひとつの、ほんの些細な過失を除いては」

はじめて笠井がぴくりと反応する。閉じていた目をゆっくりと開き、静かに殊能を見返す。
もちろん殊能は目を逸らさない。久しぶりに、真っ向から二人の視線がぶつかりあう。

殊能「笠井先生、先生は事件を連鎖的に誘発させるであろう環境を作為的に設定し、
   そしてあとは、状況をコントロールしながら、ただじっと見ていましたね」

殊能は視線を逸らすことなく、一旦そこで言葉を切る。笠井の表情は変わらない。

殊能「そう、この雪山にいるみんなが、ゆっくりと死につつあるのを」

――笠井は、薄く笑った。
643名無しのオプ:03/02/07 23:56
モッタイブルナ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!!
と言いたいが、もはやこんな駄レスしていい雰囲気じゃない気も。
644名無しのオプ:03/02/08 00:00
これはもうメフィスト学園の事件じゃなくって
ミステリ界の事件では・・・・。
マジ・・・
645名無しのオプ:03/02/08 00:11
すっげェェ〜〜〜〜〜!!!!!
これ以外の言葉が見つかりません…もう凄すぎ。
646名無しのオプ:03/02/08 00:16
まさに前例のない動機!
しかもここでしか書けない!(w
647名無しのオプ:03/02/08 00:43
素晴らしい…
お見事です。
648名無しのオプ:03/02/08 00:50
2ちゃん文学の最高峰!(w
これは職人たちの無鉄砲さと叡智が為せる業だ!
まさか2ちゃんねるからこんなミステリーが生まれるとは……!
続きが待ち遠しいっす!!
649名無しのオプ:03/02/08 01:03
すげぇ……この解決編はさすがに一人の職人さんが書いてるんだよね!?
コタツ組は既に犯人は解ってたわけだけど、
この動機を(積木づてにw)聞いてどんな反応を示すのやら…
650名無しのオプ:03/02/08 01:13
未曾有に広がっていた筈の大風呂敷が幾度も畳まれては開かれ、そしてまた畳まってゆく。そんな爆発寸前にまで膨れ上がった静止画像を見て、
その度にただただ、驚嘆の音を上げてしまう。
上手い。上手過ぎる。
仮令叱責を浴びようとも、私はこのストーリーテーリングに諸手を上げ、快哉を叫ばずにいられない――。



とか何とか言ってる評論家はいませんかねぇ……。
651名無しのオプ:03/02/08 01:28
Jとユヤタンと舞城は見てるだろうね。
652名無しのオプ:03/02/08 01:39
スレ的にはまだ2月3日より前だと思ってて良い?
いや、節分ネタ(きっとあるに違いない)が見られないのは
悲しいでつ。
653名無しのオプ:03/02/08 02:35
どのメフィ賞受賞作よりもすばらしいのは間違いないな。
654名無しのオプ:03/02/08 04:08
すげーすげー
このスレでしか出来ない動機に感動
本当に何人も職人さんが書いてたのが信じられん…
655名無しのオプ:03/02/08 04:57
ごめん、ライトノベル校のうえおって誰?
656名無しのオプ:03/02/08 05:41
解決編職人さんラブ。求婚しちゃうよもう。
まったく書き込む余地なし。こんな動機思いつかねいよ……。
笠井先生のテロルっぷりがたまんないっす。

>655
上遠野のことかな。かどのって読む気がしたけど。
657名無しのオプ:03/02/08 05:53
>>655>>656
『悪魔のミカタ ―魔法カメラ―』というファンタスティックミステリで
第八回電撃ゲーム小説大賞の銀賞を受賞してデヴューした、うえお久光って
やつのこと。
謎の案出のために超常現象を持ち込んだ手法が西澤保彦を思わせるけど、
二作目からほとんどミステリしなくなって萌えに走るようになった。
658名無しのオプ:03/02/08 07:49
解決編職人さんがうえお久光を読んでた?のは驚きました
本格ミステリの要素を薄めた西尾維新、みたいな作品です。戯言はないですが、作者の志向が近い。
5はスポ根、2はミステリ形式の導入からバトルものへ、4は特殊空間の中でのドタバタ脱出劇
6〜7は連作短編集(日常の謎系ミステリな話もある) 1がもっともミステリしてます。
電撃文庫でデビューは2002年1月
659名無しのオプ:03/02/08 08:36
うえおの弱点は、出てくる不思議アイテムを見ただけでトリックが解ってしまう所だな。
660名無しのオプ:03/02/08 11:47
まさに、メフィスト学園だからこその事件だな!
現在のミステリ界が抱える病巣をえぐりだした社会派ミステリであるともいえる!
661名無しのオプ:03/02/08 12:46
氷川が石崎のことを石崎さんって呼んだり石崎君って呼んだりしてるのが気になる。
もしかして、萌えポイントですか(違
662名無しのオプ:03/02/08 13:00
>661
氷川が年齢不詳だけに難しいところですな
663名無しのオプ:03/02/08 13:21
動機がヘヴィだ…。
こんなに読者(ミステリ読み)の心にグッと来る動機は初めてかも。
664名無しのオプ:03/02/08 14:55
解決編、凄いことになってるね。メフィスト学園ならではの。

>652
節分過ぎたから書き込まないか、節分過ぎてないことにして書き込むか、
あるいは時期遅れの節分ネタとしてアレンジして書き込むか、
それはそのネタを考えた職人さんの判断に任せるしかないでしょう。
665名無しのオプ:03/02/08 16:55
バレンタインも近いしね
それにしても、このまま笠井黒幕説で終わるのか、さらにもう1回ひねるのか…
666名無しのオプ:03/02/08 19:12
微妙に関係ないけど、新堂の新刊(ハードカバー)の表紙見てびっくりしたよ。
このスレですっかり「インテリやくざ」のイメージになってたもんで。
667名無しのオプ:03/02/08 20:41
>>666
それ漏れも見た。
帯に誰かの言葉が載ってたけど(田中麗奈だっけ?)
なんか泣ける話らしい……
668名無しのオプ:03/02/08 21:14
すいません、ソブタソ達はどうなったノ?
とか無粋な質問してみるうぉれ。
669名無しのオプ:03/02/08 22:00
>668
スキー用品の乾燥室で清涼院がいた痕跡がないかどうか捜索中。(>>590-591
でも殊能的には別に痕跡云々はどうでもよくて、
今の解決編には蘇部はいてほしくない?とかだったような。(>>519
本当の所どうなのかはまだわからんけど。
670名無しのオプ:03/02/08 23:28
そういやメフィスト学園殺人事件でも殊能タン探偵だったね
殊能の言葉のもたらした衝撃は、緩やかに広間に浸透し、凍てつくかのような沈黙をもたらした。
しかし殊能は、その全てを見透かすかのような瞳を笠井に向けたまま、平然と話し続ける。
そして笠井は、口元にあるかなきかの笑みを浮かべたまま何も言わず、泰然と座っている。

殊能の、どことなく抑揚に欠けた言葉だけが、広間の重苦しい空気のなかを流れていく。

殊能「さて、それでは、笠井先生が設計された、この事件の構造を確認してみましょう。
   笠井先生は、雪山の山荘でのスキー合宿を計画し、生徒たちを招待しました。
   まさに、これこそ本格といった、事件の発生を予感させるシチュエーションですね。
   そして、山荘は見るからに犯罪誘発度が高い造りで、しかも少し傾いてさえいました。
   しかも玄関には、ご丁寧にボウガンまで飾ってあるといった念の入れようです」

氷川がぴくりと反応する。それをちらりと見て、一瞬だけ興味深げな顔をする殊能。
しかしすぐに冷徹な表情に戻り、話の続きを始める。

殊能「こんな状況のなかに、目立ちたがりで騒動好きな、メフィスト学園の生徒を多数放り込んでおくんです。
   仮に何ひとつ事件が起こらなかったとすれば、そのほうがむしろ事件であると言えますね。
   そして、先ほど笠井先生が言われた言葉を借りれば、“悪ふざけがしたい盛りの”ぼくたちですから、
   探偵役も犯人役も、そして被害者役でさえも、やりたいという人はいくらでも現れるでしょう。
   そして、変な“事件”が次々と勃発して収拾がつかなくなるであろうことは、火を見るより明らかです。
   そうですよね、石崎くん」

澄ました顔で、石崎に話を振る殊能。ぽりぽりと頭を掻きながら答える石崎。
その表情からは先ほどの真剣な色は消え、いつもの石崎のとぼけたものに戻っている。

石崎「おいおい殊能、あんまり虐めないでくれよ。そもそも、俺を虐めてもいいのは女子高生だけなんだからな。
   一連の”串刺し公事件”については、ちゃんと反省してるぞ。それに舞城にも、もう十分殴られたしな。
   それになあ、こっちはただでさえ、ちょっとショックを受けてるところなんだからな」
   
石崎の少しも悪びれた様子のない反応に、殊能は苦笑し、そして話を続ける。
殊能「さらに笠井先生は、皆に黙って浦賀くんを山荘に連れてきて、殺人鬼としての人格を刷り込んだ上で、
   吹雪の吹き荒れる雪山に放ち、登山にかこつけてここに来ていた北山くんや黒田くんを襲わせました。
   山荘の中では謎の事件が頻発し、山荘の外には吹雪のなか無差別殺人鬼が徘徊している。
   これだけの条件が揃えば、事件が起きるたびに疑心暗鬼が広まり、それが次の事件を誘発し、
   そして事態が混迷の度を深めていくであろうことは、石崎くんならずとも容易に想像できるでしょうね」

ふたたび石崎をちらりと見る殊能。石崎は苦笑するだけで、もう何も言わない。

殊能「まさに、それこそが、笠井先生の求めていた状況でした。そう、事件が事件を呼ぶ、連鎖の構造です。
   笠井先生は自らの手を汚さずして、自らの望む状況を創りあげたわけです。
   あとは、この状況を維持すればいいだけの話です。いわゆるマッチポンプというやつですね。
   事態が沈静化しそうになったら、意味ありげな“演出”を投入するなどして事件を煽り、
   事態が深刻化しすぎそうになったら、自らのカリスマで人心を落ち着かせる。
   そう、まさに演出家として、舞台裏から俳優達に指示を出すだけで良かったんです」

そこまで言い終えると、殊能は言葉を止め、反論を求めるかのように広間を見回す。
そのどことなく挑発的な視線に反応するかのように、意外な人物がゆっくりと立ち上がる。

氷川「……おかしいですよ、そんなの。いくらなんでも無理がありすぎます」

そこには、普段の澄ました顔ではない、どことなく怒気を秘めた表情の、氷川の姿があった。
氷川「なるほど、笠井先生が意図的に、この山荘に事件を引き起こしやすいような状況を設定し、
   そして、まんまとそれに乗せられた愚か者がいたということはわかります」

殊能の目を見据えたまま、氷川が語る。あくまで冷静な、それでいて、どことなく嘲笑するような口調で。
その氷川らしからぬ過激な発言に、皆の視線が石崎に集まる。石崎は黙って、首をすくめる。

氷川「しかしそれが、笠井先生が僕たちを皆殺しにしようとしていたということと、どういう関係があるんですか?
   笠井先生は、事件がエスカレートして、僕たちが凄惨な殺し合いを始めるのを待つつもりだったんですか?」
石崎「おいおい氷川、どうしたんだよ。いつもとキャラが違うじゃないか。ははん、イメチェンを図る気だな」

普段の落ち着き払った態度からは想像もできないような攻撃的な口調で、殊能を問い詰める氷川。
すかさず石崎がとぼけた口調でフォローに入るが、氷川はそれを無視して続ける。

氷川「馬鹿馬鹿しい。高見君の小説じゃあるまいし、そんなことは起りえません。
   いくら僕達が軽はずみなお調子者揃いとはいえ、そこまで愚かだとは思えませんよ。
   それとも餓死を待つつもりだったんですか? 凍死を待つつもりだったんですか?
   まさか浦賀君が、僕達全員を殺し尽くすのを期待してたってわけでもないですよね。
   さもなくば、実はこの雪山には、新種の病原体が散布されていたとでもいうのですか?
   それも、今までに何の伏線もなしに。もちろん、そんなことはありえないですね。
   そんな下らない手段を笠井先生が弄するとは思えません。ミステリのルールに反しますから。
   それとも、食事に遅効性の毒物でも仕込んであったとでも言うのですか?」

鋭い口調で吐き捨てるように言うと、氷川はらしからぬ挑戦的な視線で殊能の目を見る。
その傍らでは石崎が、やれやれといった表情で、お手上げのポーズをしている。
殊能「もちろん、それらは全てありえないよ。さっきも言った通り、笠井先生はたったひとつの過失を除いて、
   直接ぼくたちに危害を加えるような行為は何ひとつしてないからね」

氷川の挑戦的な口調など全く意に介してないかのように、平然と殊能は答える。

氷川「じゃあ、笠井先生は何のために、事件の連鎖とやらを引き起こしたんですか?
   僕達に危害を加えることなく、どうやって僕達を皆殺しにするつもりだったんですか?
   そもそも、そんな手段は本当に存在するんですか?」

もはや完全に殊能を睨み据えながら、氷川はたたみかけるように問いかける。
その問いに答えたのは――意外な人物だった。

石崎「残念ながら氷川、その手段は存在するんだよ」
氷川「……え?」
石崎「な、そうだろ、殊能」

殊能が静かに頷く。不意打ちを食らったかのような表情で、呆然と立ちつくす氷川。
一座の面々も、驚いたような表情で石崎を見つめている。

そして、満座の視線を一身に集めた石崎は、にんまりと笑った。
氷川「い、石崎さん……もしかして石崎さんは、既に真相に辿り着いているんですか……?」

まだ虚脱状態から完全に立ち直れていない氷川が、かろうじて石崎に問いかける。
石崎は何故か、思い切り胸を張って答える。

石崎「もちろん、最初から全て判っていたに決まってるだろ。なんてったって俺は、正真正銘の名探偵だからな」

石崎の答えに、心底ショックを受けたような表情になる氷川。

氷川「そ、そんな……いったい、どうやって……」
石崎「あのなあ、氷川。俺が真相に辿り着いていたとして、なんでそこまでショックを受けなきゃならないんだよ。
   あっ、さてはお前、俺の推理力を舐めてただろ。失礼にもほどがあるぞ、まったく」
氷川「い、いえ、そんなことはありませんが、でも、僕には何も……」
石崎「まあ、あんまり考えるなって。俺のほうがお前より優秀な名探偵だった、それだけの話だ」
氷川「……」
殊能「石崎くん、その辺にしておいてあげてね」

二人のやり取りを静かに見ていた殊能が、やれやれといった感じで口を挟む。

殊能「氷川くん。石崎くんやぼくに判って、氷川くんに判らないのは当然だよ。別に能力の問題じゃない。
   石崎くんやぼくが持っているパズルの一片を、氷川くんは持っていない。ただそれだけの話だからね」
石崎「まあ、そうとも言うな」

殊能の言葉を聞き終えた氷川の顔に、急速に理解の色が浮かぶ。
そして、再び口を開いた氷川の表情は、既にいつもの冷静さを取り戻していた。
氷川「なるほど。僕が持っていない情報を、殊能君と石崎さんは持っている。そういうことですか」
石崎「まあな。つまり、殊能の考えてることは、俺にとっては最初から全てお見通しだったってわけだ」
氷川「何を言ってるんですか。今まであれだけ驚いておいて、よく言えたものですね。
   よく考えてみれば、石崎さんが殊能君の意図を見抜けてなかったのは間違いありませんでした。
   今の殊能君の話で、うっかり見逃していた情報をようやく思い出した、どうせ、そんなところでしょう」
石崎「……その通りだよ。ちぇっ、せっかく久々の名探偵気分を味わっていたのになあ」

いつの間にか、すっかり普段の落ち着き払ったペースを取り戻した氷川。
ぽりぽりと頭を掻きながら石崎は、しかし何故か微笑する。

舞城「おいおいお前ら、あんま俺らを放ったらかしにして話進めるなや」

舞城が呆れたような、焦れたような、そして怒ったような声をあげる。
それを契機に、今まで言葉も無く殊能たちを見守っていた面々が、口々に喋り始める。
新堂「まったくだぜ。もっとテキパキ進められないのかよ、殊能」
日明「氷川くんがあんな感じになると、止める人がいなくなっちゃうのよねえ」
乾 「笠井先生……まさか……そんな……」
高田「突っ込み役のはずの乾君がこの有様だからねえ。やっぱり進行担当は重要ってことかな」

高田は先ほどから呆然とした表情のままの乾を見やり、軽く肩をすくめた。
そして、ひとときの喧騒は、北山の発した一言で終わりを告げられる。

北山「で、その僕達を皆殺しにする手段ってのは、いったい何だったんですか……?」

一同の注目が殊能と石崎に集まる。息詰まるような緊迫感が広間に充満する。
誰も口を開かない。誰も声を発しない。誰も身じろぎ一つしない。
笠井は、何の反応も示さず、ただ殊能を見ている。
殊能は、何の反応も示さず、ただ笠井を見ている。
そんな二人の姿を見て、石崎はやれやれといった様子で、ゆっくりと立ち上がる。

そして、今まさに、石崎が喋り始めようとしたその瞬間――殊能が、静かに口を開いた。

殊能「いえ、それについてはまだ答えられません」
殊能の言葉に、広間にもはや何度目になるのかわからない、拍子抜けしたかのような空気が流れる。
珍しく笠井までもが、その表情に軽い驚きを表している。

新堂「おいおい、またかよ。どんだけ焦らせば気が済むんだよ」

新堂が心底呆れ果てたという声を出す。何人かがうんうんと頷く。
そして、彼らの意見を代弁するかのように、なにやらきまり悪げに立ったままの石崎が、咳払いして口を開いた。

石崎「なあ殊能、これさえ言ってしまえば、間違いなく事件は解決するんじゃないのか?
   そりゃ、にわかには信じがたいような話だし、証拠もへったくれもないけど、
   でも、状況が全てを物語っているだろ。皆も納得するさ。これ以外はありえないってな。
   正直、今までのお前の推理は、これを前提にしてるとしか思えないんだがなあ」
殊能「ええ。石崎くんの言う通り、これで事件は解決します」

石崎の疑問に、殊能はさらりと答える。石崎はますます呆れた顔になって言う。

石崎「じゃあ、さっさと解決してしまおうぜ。時間も限られてるんだし」
殊能「いえ、それでは駄目なんですよ」

平然と答えておいて、殊能は、不意に真面目な表情になる。

殊能「最初に断っておきましたよね。この事件には、ある“解き方”があるということを。
   この事件は、単に解決するだけでいいのなら、それは今すぐにでも可能です。
   その“方法”を明かし、あと二三の事実を確認すればいいだけの話ですからね。
   というより最初から、ここまで長々とくだらない推理をせずとも、この事件を解決させることは簡単でした。
   実はかなり前の時点で、既にこの事件はほぼ破綻していたのですから。
   しかし、それだと、最初に言った通り“解けない謎”が残ってしまいますし、
   何より真の意味での“事件の解決”になりえないんです。そう、誰もが望むはずのハッピーエンドに」

殊能はそこまで語り終えると、皆の判断を仰ぐかのように、口を閉ざした。
広間に、殊能の真意を図りかねるかのような、戸惑いの空気が充満する。
そして突然、その雰囲気をぶち壊すかのように、舞城が愉快そうに笑い始めた。

舞城「ああ、まったく、意味深な発言ばかり繰り返しよって。んなこと言われたら、もう気になってしゃあないわ。
   そうまで言われたら、もう俺らとしてもとことん付き合うしかないやないか。なあ、おめえら」
石崎「そりゃあ、俺もそう思わなくはないけどなあ。しかし、時間がなあ……」

笑いながら言う舞城。渋い顔で答える石崎。そこに石黒が口を挟む。

石黒「まあ、いいじゃないか、石崎君。まだ大丈夫だろう。それに、どうせ乗りかかった船だ。
   推理のことは門外漢なのでよく判らないが、できれば僕は、ハッピーエンドを希望したいからね」
石崎「あれっ、石黒までそんなことを言うのかよ。じゃあ反対する理由がないじゃないか」
氷川「まあ、解決編での名探偵の要求は、絶対かなえられるのがお約束ですからね」

石黒の言葉に口をとがらせる石崎に、澄ました顔で答える氷川。
続けて、広間の面々が口々に言う。

新堂「ふん、好きにするんだな」
日明「なんだかよくわからないけど、ハッピーエンドってのはいいわよねぇ……」
乾 「……笠井先生……どうしてなんですか……」
佐藤「……浦賀先輩……どうしてなんですか……」
高田「やれやれ、辛気臭いのが二人に増えちゃったねえ。まあ、僕としては好きにしてくれていいよ」
高里「どうしよ、ダーリン……って、いけない、ダーリンに頼ってばっかりじゃダメよね……」
霧舎「……そう、それでいいんだ……もう僕なんかに頼る必要はないんだから……」
秋月「僕にも発言権はあるのかな……まあ、どうせ目立てないんだから、どうでもいいんだけどね……うふふ」
津村「この問題は僕の判断力を越えているね。ということは、もはや運を天に任せるだけか」
古泉「そう、まさに全てはアッラーの思し召しということだ」
北山「あれっ、古泉君がちゃんと締めてる……?」

殊能は、広間を見回し、皆のしょうがないなといった表情を確認し、軽く頭を下げる。
そして、笠井を見る。笠井は表情を変えず、ゆっくりと口を開く。
笠井「……どういうつもりだ、殊能?」

笠井の威圧感が込められた口調には、しかし、若干の戸惑いが混じっていた。
殊能はそれを指摘するわけでもなく、澄ました顔で言う。

殊能「これだけ話を盛り上げておいて、緊急避難的になし崩しに事件が終わってしまうのでは、
   あまりにも芸がない話じゃないですか。それに、先生が渾身の力で創りあげた事件を、
   こんな中途半端な形で終わらせるのも、どうにももったいない話ですし。
   それに、このまま終わってしまうと、どう考えても先生から合格点は貰えそうにないですからね。
   というわけで、徹底的にやってみることにしました」

笠井は軽く目を見開く。殊能はにっこりと笑う。そして笠井は吐き捨てるように言う。

笠井「物好きな奴め……好きにしろ……」

再び笠井は目を閉じ、沈黙する。そして殊能は、広間の一同に向かって告げる。

殊能「それでは、推理の続きを始めますね。大丈夫、もう、そう時間はとらせませんから」
682名無しのオプ:03/02/09 01:44
焦らせ過ぎ!
もう何日待ってると思ってるんだ!(w

でも毎日がとても楽しみです。
最後までがんがってください!
683名無しのオプ:03/02/09 02:02
毎日、無料でこんな面白いものを読めていいのだろうか、と。

それとメフィ学の思い出のアルバムの御大アニメデビューに
萌えそうになりました。(何とか思いとどまりました)
あれ見たさに何度もクリックしてしまった…
684名無しのオプ:03/02/09 02:12
>>683
同意。あのアニメーションはアルバムを読むときの楽しみの一つだよ。
685名無しのオプ:03/02/09 03:24
>>683
禿同。アニメデビューしても御大は御大だった!

えっと・・・・例の文化祭トップの御大イラスト、
あれのアニメ化も見たいような、激しく見たくないような、激しく見たくないような、ちらっと見たいような・・・(w
686名無しのオプ:03/02/09 12:10
第2の解決編だけで凄い長編になってきたゾ!

月が変わって2月最初のカキコとしてスタートした第2の解決編!
まさか2月9日現在、未だ「to be continued...」とは
誰も予想していなかったであろう!

このスレのアクセスカウンタがあれば見てみたかったりする・・・
687名無しのオプ:03/02/10 19:03
うおぉ、面白い!思わず一気読みしてしまった。
結構時間かかったけど、この解決編が読めてそれも報われたよ!
今日の23時が楽しみだ。
688名無しのオプ:03/02/10 23:51
24時になるゾ!
職人、降臨求ム
689名無しのオプ:03/02/11 00:41
無理はイクナイ!
この良作が読める幸せを胸に
マターリと待機でつ。
690名無しのオプ:03/02/11 01:47
しかしバレンタインも近いんだがなぁ…
691名無しのオプ:03/02/11 03:35
こちらはこたつでぬくぬくしている森、黒田、積木、生垣、竹。太田(J)は酔っぱらって泥酔。

森「積木くん、向こうは進んでいるのかな」
積木「うん…でも、ちょっと変なんだよね。ほんとはもう干渉できないはずなんだけど、
さっき殊能くんから呼び出されたし、清涼院くんに妨害されたり。
妨害が終わってからも、こう、そわそわした感じが続いてるんだよ」
 

生垣「ワオ。外から物音…清涼院くんたちかもしれないよ」
竹の一瞬表情が明るくなるが、すぐ元に戻る。
竹「でもいーちゃんとは歩幅が違うんだよ。ひとりだし」

「誰かいるの?」
と扉を開けて入ってきたのは…
692名無しのオプ:03/02/11 03:35
古処「法月先生!」
法月「あ、どうしたの? 新入生歓迎会にしては人が少ないけど」
森「先生こそどうしたんですか」
法月「実家から帰り道だし学園においてある資料も持って帰りたかったから寄ってみたんだけど…。
あ、日本酒あるけど、いる?  持って買えるの重いし。正月だし、ま、学園内でもちょっとくらいなら
いいだろ。あ、太田さんも寝てるし」

適当に場所を明けて法月先生を迎える一同。積木と森がこれまでの経緯を説明した。
法月「なるほど。どうもぼくも操られているような気がするな…。森くんは気付いてたの?
ぼくがきたことも、他のみんなほど驚いていなかったようだし」
森「今回は境界条件が曖昧すぎますからね。むしろ不定といってもいい。ちゃんと考えたわけではないですが、
発散する項を繰り込むとしたら思考の方向は限られます」
法月「なるほどね。ちょっとこれは…」
と悩みはじめる法月。
693名無しのオプ:03/02/11 03:36
生垣「(小声で)これがミスター森の彼のジョークなのかい?」
竹「(小声で)たろちゃん、これは違うんだよ」
694名無しのオプ:03/02/11 03:39
あちゃ。2重カキコすまそ。
403のこたつ編謎解きに影響は与えないつもりですんで。
695名無しのオプ:03/02/11 03:47

法月はまだ悩んでいる。
立ち上がって歩き回り、またこたつに戻るが、まわりのことが目にはいらない。
「動機は…いや、笠井先生がそんな…境界条件? 裏返しなのか?」

森「法月先生はああなったら何年かかるかわかりませんからね。
竹ちゃん、ちょっと森のラジコン・スノーモビルと一緒にまわりをぶらぶらしてみましょうか。
西尾くんたちに会えるかもしれないしね」
竹「うにー。寒いの苦手なんだけどなー。でもいいや。いいんちょのスノーモビル、すごいの?
手製なの?」
森「(にこり)」
竹「僕様ちゃんにも操縦させてくれる?」
森「(にこり)」
竹「いくー!」
696名無しのオプ:03/02/11 03:52
法月はまだ悩んでいる。
「神は?…やっぱり操られているのか…でもそれは…そうか!」

法月はこたつに目を向ける。
共通の話題もなくぼんやりと残ったつまみに箸を伸ばす古処、黒田、積木、生垣が振り返った。

法月「森くんと竹ちゃんは?」
黒田「さっき出ていきましたよ」
法月「そうか…そういうことになるのか。しょうがないな」
古処「どうしましたか」

法月「…柄じゃないんだけど、安楽椅子探偵役を仰せつかったようなんだ」
697名無しのオプ:03/02/11 07:19
うを、法月先生が動きますか!?
698名無しのオプ:03/02/11 10:55
はたして、1000レス以内に終われるか?>スキー合宿・バレンタイン編
そういう意味でもドキドキ(w
699名無しのオプ:03/02/11 11:32
良作になりそうな予感はするし俺も毎回楽しみに読んでいるのだが、
第二の解決編始まってからもう二週間近く経つ。
正直、時間をかけすぎのような。
(別にバレンタインが過ぎてしまいそうなのがイカンと言う意味じゃないぞ)

第二解決が終わった後だって、エピローグ的ネタや学園組もあるだろうし。

職人さんに毎日カキコしろなんて強制できる権利などないのはわかっているが…
ま、職人さんがインフルエンザで寝込んでいる可能性もあるけど。

長文&偉そうにスマン。
700名無しのオプ:03/02/11 11:59
皆の者、待つのじゃ!
汁をあふれさせながら待つのもプレイのうちじゃ!ヽ(`Д´)ノ
701名無しのオプ:03/02/11 12:39
しかし殊能の解決偏はもっと短縮できそうな気がするんだが
他の職人さんが書き込めない状況だもんなあ
702名無しのオプ:03/02/11 14:56
>700
プレイなのかよ!
703名無しのオプ:03/02/11 16:16
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そして、満座の注目を浴びながら、再び殊能は口を開いた。

殊能「さて、推理の続きです。最初に言った5W1Hのうち、残ったのはwhenとhowでしたね。
   まず、この事件にhowはふたつ存在します。笠井先生が事件に先立って設定した、
   いわゆる“連鎖の構造”と、先ほど石崎くんの言った“方法”ですね。
   そして、この二つを繋ぐ、いわば時限トリックのような形で、whenは存在しています」

先ほどの一幕などは存在しなかったかのように、淡々と語り続ける殊能。

殊能「もっとも、時限トリックといっても、二つのhowに直接の因果関係はありません。
   基本的に第一のhowは、第二のhowが起動するまでの時間を稼ぐための手段に過ぎません。
   だから笠井先生は、ただ見ているだけでよかったんです」
新堂「おいおい、この別荘には時限爆弾でも仕掛けてあるっていうのかよ。冗談じゃないぜ」

新堂が顔をしかめる。殊能は平然と答える。

殊能「いいえ。それはありません。ずっと言っている通り、笠井先生はぼくたちに直接危害を加えるような
   行為は何一つしていませんし、そして何一つするつもりはありませんでしたから」
高田「さっきから言っている“美しくないから”ってやつだね」
殊能「そういうことです。笠井先生はこの事件において、自らは手を汚すつもりはありませんでした。
   それは、メフィスト学園の教師として、新本格の担い手としての笠井潔の矜持のようなものでしょうね。
   ただ殺すだけなら、それこそ毒薬でも爆弾でも使えばいいだけの話です。
   ただ、それだと本格になりませんからね。ましてや、笠井先生の動機は本格を守るためなんですから」

そう言うと殊能は笠井を見て、にっこりと笑う。
しかし笠井は、どことなく憮然とした表情のまま、目を閉じて反応しない。
殊能は軽く肩をすくめ、話を続ける。
殊能「さて、この事件において、笠井先生は自らの手を汚さずとも良い構造を作り上げたはずでしたね。
   しかし、唯一の例外がありました。そう、津村くんがワインセラーで撃たれた事件です」
石崎「ああ、俺が見事に解決した事件だな」

石崎がえっへんと言わんばかりに胸を張る。殊能は石崎に軽く微笑んでから、話を続ける。

殊能「そう、あれは笠井先生にとって、非常に大きな過失でした。自らに課した制約を破ってしまったばかりか、
   生徒達の前で、晒さなくてもいい醜態を晒す羽目になってしまったのですから」
氷川「確かにあのトリックは、笠井先生ともあろう方がといった感じでしたね」
石崎「しかも俺の解決編では、思いっきりぶざまなところを見せてしまったしまったしなあ」

笠井をからかうような目で見る石崎。しかし、笠井は目を閉じたまま、何ひとつ反応を示さない。

殊能「確かに、あの解決編での取り乱しようは、笠井先生にあるまじき、まさに絵に描いたような醜態でしたね。
   もっとも、その後すぐに笠井先生は、その悪魔的な演技力、いえ、人格的影響力を駆使して、
   何事もなかったかのように、見事に自らの威信を回復してみせたわけですけどね」

にこやかに言った後、殊能は、急に口調を変える。

殊能「しかし、ここでひとつの疑問が生じます。あれほどの演技力の持ち主である笠井先生が、
   どうして石崎くんの解決編では、あそこまで無様な取り乱し方を見せたのでしょうか?」

そう言うと殊能は、一同をゆっくりと見回す。そして石崎が口を開く。

石崎「それはほら、自分のミスを隠そうとしたのを、まんまと見抜かれたのが恥ずかしくて逆上してだな……」
殊能「ぼくは笠井先生をもう少し高く買っています。その程度の自制心すらない方だとは思いませんね」

からかうような石崎の言葉を、ぴしゃりと遮る殊能。石崎は、やれやれといった表情で頭を掻く。
そして殊能は笠井をちらりと見てから、今度は落ち着いた口調で語り始めた。
殊能「そもそもぼくには、笠井先生の使用しようとしたトリックも、そして、それを暴発させてしまったミスも、
   敢えてリスクを犯してまで証拠隠滅しなければならないほどの恥ずかしいものには思えません。
   あのとき氷川くんは、“天下の笠井潔が使うトリックとしてはどうか”と言いましたよね。
   でも、それはある意味あたりまえのことです。笠井先生にとってはこのトリックは、
   あくまで事件の連鎖を活性化させるための、ちょっとした悪意の演出に過ぎなかったのですから。
   入念な準備が必要な精巧かつ複雑なトリックなんかだと、かえって不自然ですからね。
   そして、笠井先生が些細な過失により、それを津村くんに誤射してしまったことについてもそうです。
   これは確かに笠井先生の失敗ではありますが、取り返しようのない失態とまでは思いません。
   笠井先生は犯罪行為の専門家であっても、犯罪行為の実行の専門家ではないんですからね」

殊能はそこまで喋ると、石崎と氷川に、挑むかのような視線を向ける。
二人は少し顔を見合わせてから、苦笑いを浮かべて続きを促す。そして、殊能は再び喋り始めた。

殊能「しかし、笠井先生は、犯人が現場に戻るというリスクを犯してまで、その失敗を隠蔽しようとしました。
   アリバイがないのを承知の上で。もっともそれは、石崎くんに格好のヒントを与えてしまう形となり、
   結局笠井先生は、自らが犯人であることを認めさせられる羽目になりました。
   まさに、笠井先生とは思えない無様さですね」

淡々とした口調で言っておいて、不意に殊能は真剣な表情になる。

殊能「ですが、どうしても引っかかる部分があります。これが単独で成立している事件であれば、
   プライドを守るために敢えて自らの罪を認めるという選択も理解できなくはありません。
   しかし、笠井先生はメフィスト学園の生徒全員を死に至らしめるという計画の最中だったんです。
   それだけの決意をしている笠井先生ともあろうかたが、この程度のプライドを守るために、
   多大なリスクを犯してまでして証拠を隠滅しようとするのは、どう考えても不自然ではないでしょうか」

殊能は鋭い口調で疑問を投げかけておいて、更に話を続ける。
殊能「そもそも、その証拠隠滅についても、どうしても納得できない点があります。
   確かに地下室を酒浸しにすれば、自らの犯したミスの証拠を消し去ることはできるでしょう。
   しかし笠井先生は、そうまでして自らの犯した些細なミスを隠そうとしておきながら、
   津村くんを撃った犯人が自分であることを、半ば自ら進んでのような形で認めてしまっています。
   もちろん、それで自らのミスについては隠蔽できると踏んでのことと言えば、それまでの話です。
   しかし、ここで矛盾が生じます。津村くんを撃った犯人であることを認めるということは、
   地下室を酒浸しにして証拠隠滅をした人間も自分であることを、自分から認めているようなものです。
   津村くんを撃った犯人以外に、敢えて証拠隠滅をしなければならない人物は存在しませんからね。
   そう考えると、わざわざ証拠隠滅をしたことに、全く意味がありません。ただ単に醜態を晒しただけです。
   いえ、むしろ、証拠隠滅をしたことが、自らが犯人であることを補強してしまっています」

鋭い口調で語り続ける殊能に、石崎が割り込むような形で異を唱える。

石崎「おいおい、俺の推理に駄目出しをする気かよ。えっと、そうだなあ、それは結果論じゃないのか? 
   シャンパンの痕跡さえ消してしまえば、俺たちは真実に気付くまいとたかをくくっていたのに、
   結局アリバイの方向から犯人であることがばれてしまったんで、
   せめて自分のみっともない失敗だけは隠そうと、無駄を承知で悪あがきしただけじゃないのか?」   

相変わらずのとぼけた口調で言う石崎に、しかし殊能は鋭く切り返す。

殊能「そうでしょうか。メフィスト学園の生徒、それもわざわざ探偵役を買って出るほどの自信を持つ人間が、
   この程度の小細工にだまされる相手でないことは、笠井先生も承知しているでしょう。
   そんなことをしても単なる恥の上塗りになるだけだという事が、笠井先生に判らなかったとは思えません」
石崎「そりゃまあ、笠井先生もこの俺が探偵役だってことは知ってるんだし、覚悟してただろうからなあ。
   そう考えると笠井先生の目論見は甘すぎて、ちょっと不自然かなあっていう気はするな」
氷川「だから石崎さん、その根拠のない自信はどこから湧いてくるんですか?」

うんうんと頷く石崎に、氷川が呆れ顔で突っ込む。
と、そこで殊能は、ふと口調を和らげた。

殊能「まあ、いずれにしても結局のところ、笠井先生は、自らの失態を隠そうとして失敗し、
   逆に更なる醜態をさらけ出してしまったわけですね」

殊能は肩をすくめて言うと、ちらりと笠井を見る。
しかし笠井は、広間で進行している事象にまるで関心がないかのように、目を閉じて微動だにしない。
そして殊能は、不意に語気を改めて、いずこへともなく問い掛ける。

殊能「しかし、こう考えるとどうでしょうか。笠井先生が晒した二重の失態、それは敢えて晒したものであり、
   笠井先生が本当に隠したかったものから、皆の目を逸らさせるためのものであったとすれば」

殊能の言葉が発せられた直後、石崎のとぼけた表情が、一瞬だけ真面目なものになる。
それに構うことなく、殊能は続ける。
殊能「笠井先生は自らの過失の証拠を隠すために、ワインセラーを酒浸しにしました。
   もちろんそれはその通りでしょう。石崎くんが気付かなければ、すべては闇の中だったでしょうから。
   しかし、石崎くんはそれに気付き、逆にそれをヒントにして、鮮やかに事件を解決してみせました」
   
そう言うと殊能は、ちらりと石崎を見た。しかし石崎の表情には、何の感情の色も浮かんでいない。

殊能「しかし、事件が鮮やかに解決されることこそが、笠井先生の意図であったとすればどうでしょうか。
   つまりこういうことです。笠井先生は自らのミスで津村くんを撃ってしまったあと、こう考えました。
   この事件についての捜査が進行すると、いずれはどうしても隠しておく必要のあった、
   とある秘密の存在が明らかにされてしまう。その事態だけは、どんなことがあっても避けたい。
   そこで、現場に戻った犯人による証拠隠滅というヒントを与えることによって事件を解決させ、
   本当に隠しておきたかった秘密から、目を逸らさせようとした、と」

殊能は意味ありげに言うと、微妙に声の調子を変えて続ける。

殊能「そして、こう考えると、解決編で笠井先生が見せた見苦しいまでの取り乱しようも説明できます。
   そもそも、第三の事件において、笠井先生が犯人であることを示す根拠は、ほぼアリバイだけでした。
   普通なら、いわゆる事件像について、きっちり明らかにしておきたいところです。
   しかし、誰もそんなことは気にしませんでした。
   笠井先生がうっかりミスをして津村くんに矢を当ててしまった、それ以上のことは誰も考えなかった。
   何故でしょうか、それは、笠井先生が自らの過失の証拠を隠蔽しようとして墓穴を掘り、
   みんなの前で絵に描いたようなぶざまな醜態を晒したからですね。
   そこで事件はひとつの笑い話として完結してしまい、それ以上追及される意味を失ってしまったわけです」

殊能は笠井を見る。しかし笠井は反応しない。
次に殊能は石崎を見る。石崎はそのとぼけた風貌に、困ったかのような笑みを浮かべている。
殊能「以上のことから、ぼくはこう考えました。笠井先生は自らのミスを隠すために、地下室で隠蔽工作をした。
   そして、それは石崎くんによって見破られ、笠井先生は解答編で更なる醜態を晒す羽目になった。
   しかしそれらは全て、笠井先生がいかなる犠牲を払っても隠したかったある存在から、
   みんなの目を逸らさせるために、笠井先生が仕組んだ一幕だった、こんな感じですかね」

殊能は意味ありげに言うと、一同を見回した。
そして、誰も発言しようとしないのを確認してから、不意に話題を転換する。

殊能「ところで、蘇部くんによって襲われかけてからというもの、笠井先生は自室に篭りきりだったよね。
   あの出来事の後、先生の部屋以外の場所で、先生の姿を見かけたことがあるという人はいるかな?」

一同、顔を見合わせ、申し合わせたように首を振る。

殊能「そう、笠井先生はずっと部屋に閉じこもっていた。一度も外に出ているところは目撃されていない。
   もちろん、それを証明する人はいないから、これがアリバイを証明するということにはならないけどね」

更に殊能は唐突に、乾に向かって問い掛ける。

殊能「ところで乾くん、君は何度も笠井先生の部屋にご機嫌伺いに行ってたよね。
   そのときの様子を聞かせてくれないかな?」
しかし乾は、依然として呆然としたままで、殊能の問いかけに反応しようとしない。

殊能「しょうがないなあ。悪いけど誰か、乾くんを起こしてやってくれるかな」
高田「ああ、任せておいてくれよ。ちょうど例の薬物を加えた改良版が出来たところなんだ」

そう言うと高田は、怪しげな液体を鞄から取り出し、乾の半開きの口に注ぎ込む。
一同が固唾を飲んで見守るなか、乾は特に反応を示さない――と、突然、乾は文字通り椅子から飛び上がった。

乾 「僕は短小なんかじゃないっ、ていうか犬いって呼ぶなあっ!!……ってあれっ、みんなどうしたんだい?」

目をパチクリさせる乾。その様子にはもはや、今までの虚脱したような様子は微塵も感じられない。

高田「うん、今度は副作用はなさそうだね。後の問題は後遺症の有無だけだ」
石黒「ほう、なかなか強力な気付け薬だね。防災セットに入っていると役立ちそうだ」

何が起きたのか判らないといった表情の乾に、にっこりと微笑んで、もう一度問い掛ける殊能。

殊能「乾くん、君は何度も笠井先生の部屋にご機嫌伺いに行ってたよね。
   そのときの様子を聞かせてくれないかな?」
乾 「あ、ああ。何回か先生の様子を伺いに行ったよ。でも、それがどうしたっていうんだい?」

まだ事態を把握し切れてないのか、素直に答える乾。
殊能「それで、笠井先生には会えたかい?」

殊能の言葉に、乾は情けなさげな表情になる。

乾 「それが、一回も顔を見せてくれなくてさあ。ノックしても『帰れ』って言われるか、無視されるかの
   どっちかで、ひょっとしたら殺されてるんじゃないかとか思ったりして、もう、心配したよ……」

ちらちらと笠井の無表情な顔を窺いながら言う乾に、殊能はさらに問い掛ける。

殊能「それじゃあ、返事がなかったときはどうしたんだい?」
乾 「そ、そりゃ、ほら、中で殺されてるかもしれないだろ。だから、扉を開けてみようとしてみたさ。
   けど、鍵がかかってて入れなかったし、中から人の気配はしたんで、
   まあ、少なくとも部屋の中にはいるんだろうなって思って……」
殊能「部屋の鍵は外からは掛からないからね。なるほど、わかったよ。ありがとう、乾くん」

殊能は再び一同のほうを向き、ゆっくりと語り始めた。

殊能「今の乾くんの話からもわかるように、笠井先生は基本的に部屋に閉じこもっていました。
   一度も部屋の外にいるところは目撃されてませんし、乾くんが訪れたときも、
   常に先生本人が返事されるか、あるいは扉が施錠されていました。
   ということは同時に、僕たちの正確な動向は掴みようが無いということですね。
   誰がどこで何をしているとか、そういった細かいことについては」
殊能はどこか遠くを見るような目でそこまで話すと、やや表情を引き締めて続ける。

殊能「さて、この第三の事件絡みで、笠井先生は少なくとも二度、自室から地下まで往復しています。
   しかし、誰にも目撃はされていません。それそのものは、別に不自然ではありませんね。
   ただ、笠井先生は、山荘内を探偵役の生徒たちが調べまわっていることは分かっているはずです。
   そんな中、ボウガンの矢のついたシャンパンなどという申し開きのしようのない物を持って、
   自室から地下のワインセラー前まで行くのは、かなりのリスクを伴います。
   地下に下りる階段はひとつしかありませんから、誰かに出くわす可能性はそれなりに存在したでしょう。
   そんな運頼みのお粗末な行動を、笠井先生ともあろう方がとろうとは、ぼくは考えません。
   なにより笠井先生には、敢えてそんなリスクを犯さなければならない理由が存在しませんから。
   むしろぼくはこう考えますね。そもそも笠井先生にとって、そのリスクは存在しなかったのではないかと」

殊能はそこまで言うと、息をつき、そしてそのまま話し続ける。

殊能「そして、そのことに石崎くんもいずれ、辿り着いていたはずだったんです。
   調査を進めれば、状況その他から笠井先生が犯人で間違いないという結論に達するでしょう。
   しかし、それを証明する決定的な物証はありません。
   そして、当然、地下室に行っているはずの笠井先生には、何故か一度たりとも部屋から出た形跡がない。
   とすれば、どうやって笠井先生は、部屋から出ずに地下室に行き得たのかを調べるしかありません。
   決定的な証拠がない以上、ありとあらゆる可能性を疑ってみるのが推理の鉄則ですからね。
   もっとも、笠井先生によってより明快な解決へのヒントが与えられたので、
   石崎くんにとって、それ以上推理する必要はなくなったわけですけれどもね」

石崎「おいおい殊能、俺の鮮やかな推理を否定するつもりかあ?」
殊能「いえ、石崎くんの推理そのものは完璧だったよ。それは間違いない。ぼくでよければ保証するよ。
   ただ、事件を別の角度から見てみると、新たに浮かび上がってくる光景があるんじゃないかってことだよ」
そう言うと殊能は、一同を見ながら、静かに語り始める。

殊能「さて、石崎くんの解決編には、もちろん石崎くんも承知していたであろう、ある強引な部分がありました。
   それは、アリバイ不在によって、笠井先生を第三の事件の犯人と断定したことです」

そう言うと殊能は、石崎と氷川を見る。二人は顔を見合わせ、なにやら笑みを浮かべる。

殊能「秋月くんや北山くんについて石崎くんたちは、「既に山荘内にいなかった」と言いましたね。
   そして、消去法により笠井先生を犯人と断定しました。しかし、厳密に言うとそれに根拠はありません。
   確か、秋月くんが最後に確認されたのは、第三の事件の直前でした。(>>57
   つまり、秋月くんについて断言できるのは、それ以降のいずれかの時刻に姿を消したということだけです。
   したがって、第三の事件の時点で既に秋月くんは山荘内にいなかった、
   よって秋月くんは容疑者から外し得るという石崎くんの言葉に、何ら根拠はありません。
   これは北山くんについても同じです。北山くんは第二の事件以降その姿を確認されてませんからね」

そこで殊能は、決まり悪げに頭をぽりぽりと掻いている石崎をちらりと見て、話を再開する。

殊能「では、どうして石崎くんはあそこまで自信たっぷりに断言できたんでしょうか。
   ぼくの考えはこうです。石崎くんには、笠井先生が犯人であるという確信と、
   そして、笠井先生もそれを認めるだろうという確信があったからでしょうね」

そこまで言うと、殊能は石崎を見る。石崎は困ったかのように頭を掻くと、苦笑いしながら答えた。

石崎「ああ、その通りだよ。あれは実は単なるハッタリだった」
新堂「おいおい石崎、お前、単なるハッタリだけであそこまで自信満々だったのかよ」
   
新堂が呆れたような声をあげる。

石崎「いや、殊能の言う通り、笠井先生が犯人だってのは判ってたんだよ。そしてそれを認めるだろうことも」
舞城「ああ、ほうか。証拠隠蔽のお陰ちゅうことか。なるほどなー、そりゃ引っかかるわ」

石崎の言葉に、舞城が理解の声を上げる。石崎はにやりと笑って、話を続ける。

石崎「ああ。シャンパンのトリックなんてしょうもないトリックは、誰でも思いつくだろうさ。
   でも、それを恥ずかしいと思って隠そうとするほどプライドの高い人間は、そうはいないからなあ。
   だってな、秋月や北山がシャンパンのトリックを恥じるか? 
   あいつらなら多分、前代未聞の素晴らしいトリックを考案したとか思って、もう自信満々だぞ」
北山「ちょ、ちょっと待ってよ、石崎君……、いくら何でもそれは言い過ぎじゃないかな……」
秋月「しょせん目立たない僕だからね……否定できないよ……うふふ」

石崎のあまりといえばあまりの暴言に、秋月と北山が抗議の声をあげかける。
しかし石崎は、そんなことには頓着せずに話し続ける。

石崎「そもそも全ての状況は、笠井先生が犯人であることを示していたんだよなあ。
   だいたいこの山荘で、ボウガンの矢なんてものを調達できるのは笠井先生くらいだからな。
   でも、確たる証拠があるわけじゃないから、あくまでシラを切りとおされたらそれまでだろ?
   で、俺の自慢の、灰色の脳細胞で考えたわけだ。
   わざわざ証拠隠滅をしようとしてるということは、逆にいえばそれを隠し切るためなら、
   どうでもいい罪くらいは、自分から進んで認めるんじゃないかってな。
   だからわざわざ、不完全で根拠薄弱なアリバイの話から切り出したんだよ。俺の鈍さを示すためにな。
   俺がシャンパンのトリックには気付いてないと思って、自分から認めてくれれば大儲けってことだ。
   まあ、たとえ反論されたとしても、それだけの話だしな。こっちとしては一枚上を読んだわけだ。
   もっとも、どうやら笠井先生は更に一枚上だったらしいけどな」

そう言って石崎は、いつもと変わらない、とぼけた笑みを浮かべた。
石崎の告白に、驚いたものか、呆れ返ったものか迷うような空気に包まれる広間。
その弛緩した空気を引き締め直すかのように、殊能の声が響いた。

殊能「それでは、ここまでの話をまとめましょうか。
   笠井先生はちょっとした“演出”をしようとして失敗し、津村くんを撃ってしまいました。
   これは、自らの手を汚すつもりのなかった笠井先生にとって大きな失敗でしたけど、
   それ以上に大きな問題がありました。そう、この事件を調査する探偵役がいずれ、
   どうしても秘密にしておく必要のある、この山荘の秘密にたどり着いてしまうであろうことですね。
   そこで笠井先生は、探偵役が速やかに解答にたどり着けるように、ヒントを用意した。
   それが、ワインセラーを酒浸しにすることによる証拠隠滅ですね。
   そして笠井先生は、まんまと探偵役の罠に乗せられたあげく、更なる醜態を晒すことによって、
   事件を、単なる笑い話として完結させてしまったんです。
   そう、もう誰にも、事件をほじくり返そうなどとすら考えさせないようにするために」

殊能はちらりと石崎を見る。石崎は、やれやれといった笑みを浮かべたまま、何も言わない。

殊能「さて、先生はこの事件を自ら手を汚す必要のない物として、一から自分で設計されました。
   そして、演出家として山荘内の出来事をコントロールするつもりだった以上、
   当然、そのための手段も確保していたのではないかと考えても、あながち不自然ではないでしょう」

殊能は笠井を見る。笠井は何も言わない。そして殊能は続ける。

殊能「自らの醜態を生徒の前で晒してまでして、笠井先生が守りたかった山荘の秘密、
   それは、笠井先生が“演出家”として、状況を陰でコントロールするために不可欠なものでした。
   普通の事件ならば、そんな馬鹿な、非現実的すぎると言われそうな代物だけど、
   この山荘、そしてこの事件に限っては存在してもあながち不思議ではない何か、そう、それは――」

殊能はそこで言葉を切り、一同を見渡した。誰も言葉を発するものはいない。
そして、何かを宣告するかのように、殊能は言った。

殊能「――この山荘全体に張り巡らされた、隠し通路の存在です」
殊能の、あまりといえばあまりに馬鹿馬鹿しい、荒唐無稽な言葉に、しかし誰も反論しようとしない。
本当にこの事件なら隠し通路くらい存在してもおかしくないと思っているのか、
それとも、もはや殊能のペースに慣れてしまい、突拍子のない発言にも耐性がついたのか。
いずれにしても、殊能の言葉を遮ろうとする者は、一人も存在しない。

一人一人の鼓動が聞き分けられるかのような沈黙の中、殊能はゆっくりと、笠井と向かい合う。

殊能「笠井先生、この山荘には隠し通路が存在しますね。
   それも、恐らくは笠井先生の部屋を中心に、山荘のあらゆる場所に通じた」

殊能の鋭い問いに、笠井は答えない。しかし殊能は、追及の手を緩めない。

殊能「先生、本当のことを言ってください。隠し通路が本当に存在するどうかは、
   きちんと調べさえすればいずれ判ることです。ここで隠し立てをすることに意味はありません。
   先生はこの事件において今まで、一度たりとも見苦しい振る舞いはされてないですよね。
   ここまできて無意味な悪あがきをされて、せっかくの美しさを台無しにされるつもりですか?」

殊能の念押しするかのような言葉に、笠井の無表情が僅かに崩れ、ある種の諦念が浮かぶ。

そして、笠井は、ゆっくりと口を開いた。

笠井「……ああ、隠し通路は存在する」
笠井の言葉に、広間にどよめきが走る。

石崎「いやあ、吹雪の山荘に隠し通路とはねえ。これぞ、まさに本格といわんばかりの設定だな」
氷川「初めて山荘を見たときから、妙な感じは受けてたんですよ。意味もなく傾いてたりしてましたし」

元名探偵コンビが、うんうんと頷きあう。

北山「まあ、この手の怪しげな館に、隠し通路があったりするのはお約束だからね……」
秋月「そして迷宮になってたりすると、もっとそれっぽいんだけどね……うふふ」

目立たないコンビが、ここぞとばかりに自己主張する。

舞城「しかし、笠井のおっさんもええ趣味しとるやないか。驚いたを通り越して呆れたを通り越して驚いたわ」
新堂「なるほど、たいしたもんだ。抜け道を活用することは商売の基本だからな」

アウトローコンビは、何故か妙な感心の仕方をしている。

高田「なるほど。それなら笠井先生が、一度も部屋から出てこなかったのも納得できるね」
殊能「そう、笠井先生は自室にいながらにして、隠し通路を利用することによって、山荘内の状況を把握し、
   そして、いかなる場所にも介入することができたんです」

そして、高田のいかにも得心が行ったという感じの声を引き継ぐように、殊能が口を開く。

殊能「とすれば、笠井先生としては部屋に引き篭もっている方が都合がいいということになりますね。
   誰にも邪魔される事なく、あらゆる場所に介入し得るのですから」
そして殊能は、広間の面々の顔を見回しながら、静かに言う。

殊能「さて、この隠し通路の存在を前提に一連の山荘内の事件を見てみると、また違った様相が見えてきますね」

殊能はもう一度、一同を見る。皆が殊能の話に集中している。

殊能「まず、この一連の事件の発端となった、蘇部くんが笠井先生を襲った事件を振り返ってみましょう。
   この事件を引き起こすきっかけになったのは、笠井先生の蘇部くんへの挑発だったそうですね。
   それも、かなり露骨な。そして、それにまんまと引っかかるような形で蘇部くんは笠井先生を襲い、
   それは未遂に終わったものの、笠井先生は見苦しいまでに激怒されて、自室に引き篭もってしまいました」

蘇部の名前を呼ぶときだけ、僅かに沈んだ表情になる殊能。
しかしそれはほんの一瞬で消え、すぐにいつもの冷静な表情に戻る。
そして殊能は、何の感情の存在も感じさせない、事務的な口調で話を続ける。

殊能「結果として笠井先生は、見苦しいまでに激怒されることによって、自室にひきこもる理由を得たわけです」
石崎「なるほど、あの一幕は全て、笠井先生の仕組んだ筋書き通りということか」

石崎が呆れたような口調で言う。殊能は頷く。

殊能「そう、あのとき笠井先生が退学だと騒ぎ立てたのも、蘇部くんを挑発したのも、全て演技だったんです。
   その後、部屋に引き篭もっても、不自然でないと感じさせるための」

殊能はそう言うと、確認するかのように笠井を見る。笠井は目を閉じて、何も言わない。
そして殊能はそれに構うことなく、再び口を開く。
殊能「さて、この一連の事件の中で、笠井先生がらしからぬ見苦しい振舞いを見せたケースは三回ありました。
   第三の事件の解答編において、自らの失態を隠そうとして逆に、無様な二重の醜態を晒したケース、
   蘇部くんによる襲撃未遂のあとに、蘇部くんを罵倒し、退学にすると怒鳴り散らしたケース、そして――」

そこで言葉を止め、殊能は一同を見回す。すかさず氷川が続ける。

氷川「第一の事件のあと、蘇部君と津村君を疑い、監禁しろと騒ぎ立てたケースですね」
殊能「そうですね。さて、こうしてみると、笠井先生が見苦しく振舞われた三回のケースのうち二回までもが、
   何か別のものを隠すための演技でした。とすれば、こう考えるのが自然ではないでしょうか。
   第一の事件の後に先生が見せた不自然な激怒も、何か別のものを隠すための演技ではなかったのかと」

殊能はそう言うと、意味ありげに広間の面々の顔を見渡す。

殊能「そして、そう考えると、今までに山荘内で起きてきた出来事の辻褄が、ぴたりと合います」
石崎「で、笠井先生は、いったい何を隠そうとしてたっていうんだ?」

石崎の興味津々と言った問いかけに、しかし殊能は、はぐらかすかのように答える。

殊能「いえ、その質問には答える事ができません」
広間に、もはやすっかりお馴染みとなった、間の抜けた空気が漂う。
一同が白い目で見ているのに気付くと殊能は、困ったように頭をかいた。

殊能「いやだなあ、今回は別にもったいぶっているわけじゃないんだよ。
   一応、ある程度の目星はついてるんだけど、証拠も説得力も何もないんだよね」

殊能の悪びれた様子など微塵も感じられない白々しい声に、広間の一同が騒然とし始める。

石崎「おいおい、またかよ。じゃあどうするつもりなんだよ」
氷川「そうですよ。そろそろこの辺で収拾をつけてくれないと困ります」

皆の意見を代表するかのような石崎と氷川の言葉に、殊能は、澄ました顔で答えた。

殊能「そうですね。それでは、今から先生が隠そうとしていたものを出すことにしましょう」

殊能の言葉に、何故か再び、ざわめき立つ一同。

石崎「……殊能、お前まさか“あの手”を使うつもりじゃないだろうな?」

再び皆を代表するかのように、珍しく厳しい表情になった石崎が、詰問口調で言う。
殊能は不穏な空気に気付き、苦笑しながら手を振って、石崎の言葉を否定する。

殊能「いえ、最初に言っておいた通り、この解決編に超自然的な力は関与してないよ。
   もちろん“あの手”も使わないから、安心してくれていいからね」
広間の一同のうさんくさげな視線を気にする様子もなく、殊能は広間のひとすみを指差した。
特筆すべきことは何もない、ごくありきたりの広間の一角。

殊能「ぼくのここまでの“解き方”が正しければ、今からあそこに“証拠”が出現するはずだよ。
   もちろん、いかがわしいメタ的手法は介在してないよ。みんな、目を離さないでおいてね」

広間の一同の、猜疑心と好奇心が半々といった視線が、その、何の変哲もない、何も存在しない空間に集まる。
そして、しばらくの時間が経過した。しかし、何ひとつ起きる気配はない。
と、そのとき、殊能は先ほど指差した場所とは正反対の方向に、すっと振り返った。

殊能「ああ、間違いました。こっちでしたね」

落ち着き払った口調で、誰にともなく言う殊能。
その声に引き寄せられるかのように、広間に存在する全ての視線が、一斉にそこに集中する。
しかしそこにも、特筆すべきものは何ひとつ存在しない。
殊能への不信感をあからさまに宿した視線を、もとの場所に戻す一同。
しかしそこには、ありうるはずのない光景が出現していた。

そこには、一人の男が立っていた。

今まで何もなかったはずの空間に、忽然と出現した黒衣の男。そして男は、静かにうそぶく。



「世の中には不思議なものなど、何もないのだよ――」
723名無しのオプ:03/02/11 18:56
とりあえずここまで。次でとりあえず第二の解決編はおしまい。
しかし、我ながらいくらなんでも長すぎで申し訳ない。
ああ、ものごとを端的にまとめられる文章力が欲しい……
724名無しのオプ:03/02/11 19:15
えー!
725名無しのオプ:03/02/11 19:17
>>722
京極キターーーーーーーー!!

職人さんお疲れ様です。頑張れファイトー。
726名無しのオプ:03/02/11 19:17
御苦労様です、ハラショ〜。
727名無しのオプ:03/02/11 19:19
隠し通路キターー(・∀・)ーー!!
728名無しのオプ:03/02/11 19:55
京極キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!

ゆっくりでもいいんで職人さんがんがれ
729名無しのオプ:03/02/11 20:10
京極カヨ━━━(゚∀゚)━━━!!
素敵だ…素敵すぎる!!
730名無しのオプ:03/02/11 21:08
職人さんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
クライマックスももうすぐ終わりになるかと思うと

嬉しいよーな。。。。。
寂しいよーな。。。。。

噛みしめつつ職人さんにエール!
731名無しのオプ:03/02/11 21:09
解決編おしまい?
放置プレイはいやん。
732名無しのオプ:03/02/11 21:14
出たな、黒衣の男!決めゼリフもバッチリだ!
乙です。残りも頑張って下さい。

ところで、この解決で浦賀も片付きます?>第二解決編の職人さん
733名無しのオプ:03/02/11 22:11
まあ黒衣の男の正体は実は御大(マント着用)なんだがな
            ∧_∧
     ∧_∧  (´<_`  ) なんと。さすがは兄者
     ( ´_ゝ`) /   ⌒i
    /   \     | |
    /    / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
  __(__ニつ/  FMV  / .| .|____
      \/____/ (u ⊃
734名無しのオプ:03/02/11 22:12
ワショーイワショーイ
735名無しのオプ:03/02/12 00:07
まさか京極の手袋がこんなところで効いてくるとはな。
            ∧_∧
     ∧_∧  (´<_`  ) というか俺達はその存在すら忘れてたよな、兄者。
     ( ´_ゝ`) /   ⌒i
    /   \     | |
    /    / ̄ ̄ ̄ ̄/ |
  __(__ニつ/  FMV  / .| .|____
      \/____/ (u ⊃
736名無しのオプ:03/02/12 01:29
兄弟ちょっと黙っててくれる。
737名無しのオプ:03/02/12 01:32
うわ、京極先生かよ!!
まさかここで出てくるとは…まさに驚愕…。
738名無しのオプ:03/02/12 13:32
>737
驚愕夏彦ってか。
739名無しのオプ:03/02/13 00:18
>>738
(´Д`;)
740名無しのオプ:03/02/13 07:25
これで京極じゃなかったらアレだな(w
「この世には、不思議なことなどなにもないのだよ」
じゃなくて「世の中には――」って言ってるのが気になる。
741名無しのオプ:03/02/13 16:51
本日職人タン降臨キボンヌ!!!!!!!!!!!!!!!
742名無しのオプ:03/02/13 17:25
今日ぐらいに終わらないと
明日用にネタを用意してる職人さんが困るのではと思うが
743名無しのオプ:03/02/13 18:01
ていうか、同時進行でどんどんやっちゃっていいと思うがどうか。
体育祭とかもそんな感じだったわけだし。
744名無しのオプ:03/02/13 18:15
もうネタ用意したからってこんな予告をするのも
他の職人さんを牽制しているみたいで嫌なんですが、今回ばかりはご容赦を。

第二の解決編の後、伏線回収で一つ小ネタ用意してます。些細な伏線なんですが。
解決編読んで微調整すればすぐアップ出来るんで、
もし良ければそれまでバレンタインネタ待ってもらって良いでしょうか?>職人さん
いざとなればバレンタイン絡めてアレンジしますが、やっぱり雪山は雪山でまとめた方が良いかなと。

体育祭のときみたいに雪山とバレンタイン同時進行可なら、別に何の問題もないですが。
745名無しのオプ:03/02/13 18:30
首脳の続きがあって、伏線回収があって、のりりんもいて、もう一つこたつ側の解決がある、てことなら、
次スレ立てちゃってそっちでバレンタイン始めるってのはどーよ。
746名無しのオプ:03/02/13 18:32
時期にあわせなくても良いんじゃないか?
この一連の流れが終わってから節分やバレンタインやってもよくね?
747名無しのオプ:03/02/13 18:37
>>745に一票投じてみるテスト。
しかし議論してる間に肝心のこのスレが埋まってしまいかねない諸刃の剣。素人(以下略

まあどっちにしろ、同時進行でやるしかないと思われ。
748名無しのオプ:03/02/13 20:29
同時進行するには解決編のクライマックスと
混ざるってのがネックですな。
749名無しのオプ:03/02/13 22:25
同時進行か新スレ(別スレ)立てるに一票。

理由は……そのほうがたくさんネタ読めて楽しいもん
750名無しのオプ:03/02/13 23:11
「メフィスト学園・課外活動です!」かな?

とはいっても課外活動以外のネタはなかったりするが……
751名無しのオプ:03/02/13 23:13
専門学校板にたてるとか(w
752名無しのオプ:03/02/13 23:43
次スレはともかく新たな別スレはやめた方が良いと思う。流れがかぶるのって今だけだろ。

「バレンタインネタを書き込もう!」と思った最初の職人が
こっちのスレに書き込めば同時進行になるし、
次スレ立てて書き込めば続けてそちらへ書き込んで行けば良いし、
結局誰も書き込まなければ雪山の片がつくまで保留ってことになる。

やはりここは職人次第だろう。
前にも誰かが言っていたけど、こういう議論はレスが勿体ない。(オレモナー)
753名無しのオプ:03/02/14 01:26
バレンタイン・デイの前日。
メフィスト学園の近隣に住む、女子高生たちの会話。

「京極先生ってチョコよりも、おはぎとかの方が喜びそうだよね」
「あはは、いいね。それ採用。がんばれ」
「あ、冗談なのに」
「わかってるって」
「清涼院先輩には、開けても開けても箱っていうのはどうかしら」
「それは、クロケン先輩だね」
「蘇部は、考えるまでもなくとんかつだ。とんかつ」
「積木先輩は本命チョコを送らないといけないわね」
「――!? 本気?」
「ち、ちがうわ。口が勝手に……。ふう、積木先輩、勝手にワタクシを動かしたわね」
「キャラ立ちしてから、やり放題だ。次は、石崎。あたしは義理」
「義理」
「ワタクシも同じです」
「やっぱ、そうなるか。森は?」
「なんでも送れば喜ぶ人だと思うから、考えなくてもいいんじゃないかな」
「お返しはしてくれるでしょうけど、三倍返しの反対だと思いますが」
「でも、お返ししてくれるだけでも私はうれしい」
「これだからミーハーは」
「乾先輩にはどうしましょう」
「名前のせいで、女性と勘違いされているんじゃないかなぁ」
「うわ、最低候補の筆頭だ。んじゃ次は、新堂さん。あたしはお返しが期待できると思うな」
「貰ったら怖いですけど、送るならばきちんとしてくれそうです」
「実は、純愛趣向だったからね」
「好きですって面と向かっていったらテレそう。かわいー! 本命は新堂さんに決定!」
「うわ、珍しい」
「そういう、あんたは誰に本命をあげるのよ」
「――へ? なななな、なんで訊くかな」
754名無しのオプ:03/02/14 01:26
「ちなみにワタシクは、浅暮先輩です。ウイスキーボンボンはすでに購入してあります」
「渋いなー。おじさん趣味」
「はい」
「石黒も年食っているのに、無視ですか」
「なにあげてよいのやら。ネタが思いつきません」
「同じくらい津山も難しいね。津村か。んで、あんたは誰に送るのよ」
「……笑わない?」
「数学者?」
「もう。言わないよ」
「あはは、ごめんごめん。でも、あげる人想像つくなー。ユヤタンでしょ」
「――!! なななな、なんでわかったのっ!」
「女のカンってやつかしら。でも、学校留年しそうだしなー。それでもいいの?」
「うん」
「Feel For Love。まずは彼の愛を探してあげないと」
「伝説の木の下にでも呼び出して、あげなさいってアドバイスしておくわ」
「あう。酷い扱いだ。んじゃ、気を取り戻して、殊能先輩は?」
「むしろ頂戴ってせがみたい」
「ワタシクは交換してもらいます」
「ただであげようよ。つぎは、浦賀先輩」
「んーノリリンくらい悩むな。あたしの肉を食べてもいいよ。っていうは駄目?」
「いやな告白。肉って、あんた」
「それでは、氷川先輩はどうでしょう」
「女子高生なんでしょ。だからあげない」
「中島先輩は?」
「北山先輩、霧舎先輩、高田先輩、生垣先輩と一緒に五円チョコあげますわ」
「あたしも同意。あとは、古処さんと舞城さん、いーちゃんかー」
「なんか、本命が他にもいそうだよね」
「そうですね。彼らがモテないわけがありません。パスしましょうか」
「これで終わりだ。んじゃ、明日。がんばろうねー」
「ばいばーい」「さようならー」
755名無しのオプ:03/02/14 01:41
「あ、古泉さんを忘れていた――まっ、受け取らないから。問題ないか」

 そうつぶやいて去っていく女子高生を、一人の男が眺めていた。
 そして、しばらくの間、その場に立ちすくんでいると、いつも楽しそうな石崎が彼に近づいてきた。
「おーい、そこでなに突っ立ってるんだ?」
「……い、石崎さーん」
「お、お前、泣いているのか? なんだよ、おい、どうしたんだよ」
「ぼ、僕はそんなに……そんなに目立たないですかー!」
「…………」
 男が泣き止むまで時間がかかりそうだった。
756名無しのオプ:03/02/14 01:50
ワラタ
高里がどう動くかな。
757名無しのオプ:03/02/14 02:56
藁た。癒されたよ(w

バレンタインや節分のネタで議論してるけど、
前々から思ってたが、漫画とかで良くある季節モノ・ショートショートの形式で良いんじゃないかな。
そういうのには「オイオイ、本編ではお前ら今は遠いところにいるはずだろっ」というツッコミを入れるのは野暮ってもんで。
758名無しのオプ:03/02/14 03:36
長いため息をついて一口酒をすする。
法月「さて。」
視線をあげず、法月は話をはじめる。
黒田、積木、古処はこっそり視線を合わす。
生垣「(小声で)ワ?」
黒田「(小声で)…法月先生の“さて”は長いんだよ」

法月「いや、今日は授業じゃないからね。時間もなさそうだし、簡単にすすめよう。ぼけ役もツッコミ役もいないし。
 まず、メタ・フィクションって何かっていうことを理解してもらわなければいけない。要は、読者に今読んでいるのが
 虚構だということを明かしながら書いていく小説、虚構であることを前提として話が進められる小説なんだけど…」
生垣「シャドウ・オブ・ヴァンパイア! メタ映画っていうのもあるますからね」
黒田「バラエティ番組もそうか…」
古処「演習のことであるな」
積木「あー、なんとなくわかる」

法月「…これに対して、メタレベルというのは、英語圏の哲学でよく使われる用語で、
  対象レベルを語る一段上のレベルのこと」
生垣「監督か」
黒田「つんくか…」
古処「内閣総理大臣である」
積木「あー、なんとなくわかる」
759名無しのオプ:03/02/14 03:36

法月「…そういったメタという概念が、ミステリでは重要なことはわかるかな。つまり、謎の設定や推理の過程において、
  虚構内部の完結した世界の事象なのか、そうではない可能性を考慮しなければいけないか、それによって、
  大きく作品世界の因果関係が変わってくる。通常は考えられないトリックを使うために虚構を“開く”場合もあるし、
  逆に“閉じている”と宣言するために虚構の外にいる人間が必要になってくることもある。
  ただし、ある程度論理性を保持しないと、作品自体が壊れてしまうから、難しいわけだ」

生垣「ホーリーマウンテン! いや、ブレアウィッチ!」
黒田「加護ちゃんがつんく批判をしたらやばいけどネタで笑いとれたらオッケーみたいな…」
古処「自衛隊は常にそのような力関係のなかにあることは重々承知している」
積木「あー、なんとなくわかる」

積木「みんなすごいじゃん。おれは感覚として掴んでるけど…授業でこんな話ついてこれるのって
  委員長と氷川と殊能くらいだよ」

法月「そこなんだよ」
760名無しのオプ:03/02/14 03:36

4人の目が法月に注がれる。

法月「“この”事件は君たちの事件なんだよ。こたつ組に対する、山荘の事件の語り部が積木くんだよね。
  本来、コタツ組が謎解きをしなければいけない…ところを、積木くんがネタバレしてしまった。
  でも、それで終わりなのか? だからこそ君たちはこの事件の真相に気づかなければならなかったんだ。

   ここで殊能くんの推理を吟味してみよう。笠井先生は何を企んでいるのか。

  ぼくはどうしても納得できないんだ。 先生は脱格を認めたくないかもしれないけど、
  そのために自分が黒幕になって殺人を試みたり、ましてそれを仕組みながらなりゆきに任せるなんてことは
  考えられない。別に先生同士だから肩をもつわけじゃなくて、彼は常に特権的なものを憎み、
  その一方でテロルのありかたを厳しく自分にも課している人だからね。テロルという言葉は、
  佐藤くんが使いだす前は、笠井先生の専売特許みたいなものだった。先生が、何かを仕掛けるなら、
  正面から突破すると思う。殺すなら個人として殺すだろう。そして、やけに口数が少ない。
  いつもの笠井先生なら、激しく論駁し逆にオルグするはずだよ。メフィスト学園をなくすなら、
  Aの中にいる人やDの中にいる人を排除するだろう。あるいは、いくら御しにくいからと言って、
  清涼院くんや浦賀くんや西尾くんをテロルの対象から外すことがあるだろうか? 
  本格を支えようとしている氷川くんや石崎くん、本格・脱格とは無縁の津村くんや日明さんや
  石黒くんをまきぞえにするだろうか? 笠井先生らしくない。中途半端なんだ。
761名無しのオプ:03/02/14 03:36

 発端はクリスマスのプレゼント交換で笠井先生が用意した山荘へのペアチケットが、高里さんの手に渡ったことだ。

  ただし、学園の教師の山荘に、高里さんと霧舎くんの男女二人でいくわけにも行かないだろう。
  面白み半減てとこか。高里さんと日明さんていう可能性もあるけど、その組み合わせと笠井先生って言うのも
  ちょっと妙だ。必然的に大人数の合宿になる。
  清涼院くんは予想できない。西尾くんは、清涼院くんや竹ちゃんがその気になるか嫌がるかによってで
  しか決めれないだろうから、やっぱり予想できない。浦賀くんも予想できないね。彼らは別にしておこう。
  チケットが届いたのは霧舎くん、蘇部くん、石崎くん、西尾くん、浅暮くん、日明さん。これだけ送れば、
  何がどうあっても、殊能くんや舞城くんも来るし、氷川くんもくる。キャラを立てるチャンスだから
  乾くんや秋月くんもくるだろう。
  山荘には、チケットがあろうがなかろうが集まる奴は集まる。高田くんと石黒くんは、
  山荘に呼ばなくても学園にはこないで、出かけているはずだし、佐藤くんも部屋から出てこないと予想できる。
  浅暮くんと日明さんはチケットがなければ、無理してはいかない可能性もあった…けれども、チケットは届いた。
  山荘に集まる人の中で、どうしても外せないのは、殊能くんだけ。石崎くんと氷川くんは、
  ぼくの授業でも成績はいいほうだけど、虚構の外に出るタイプじゃない。むしろ枠をしっかり作るために、
  メタに関する知識を蓄えているって感じだよね。だからこの構造のなかで歪みがあることに気付くとしたら
  殊能くんだけだ。
762名無しのオプ:03/02/14 03:37

  ポイントは、山荘に誰が集まるか、ではなくて、学園に誰が集まるか、だったんだ。つまり、森くんと、君たち4人。
  選ばれたのはこっちなんだよ。
  …いや、今ぼくたちが得ている情報だけでは、山荘で何が起こっているのか、何がこれから起きるのか、
  全体像はわからない。ただ、この歪みをだれかが指摘しておかないと、事件は誤った方向に進んでしまう可能性がある。

  さあ、君たちで考えてみてほしい。もう一つ補助線を引くなら、笠井先生が憎んでいたのは“特権的な存在”だ」

黒田「――娘。を操っているつんくも操られてる、てことですか」
法月「近いな」
生垣「ゴダールだ! 監督もまた登場人物たり得る、そういうことではないですか?」
法月「近付いてきてるよ」
古処「…二人が何を言っているのかわからないが、上官は下士官にとっては絶対的存在に見えるけれど、
  全体を眺めればその階級の人間は複数いる、というようなことであろうか」
法月「そう、あとは今回の事件に当てはめるだけだ」
積木「天啓!」
古処「どうした、何かひらめいたのか?」
積木「違うよ。ぼくには山荘の状況がわかった。きみたちも一緒にきてたじゃないか。殊能くんもぼくと通信した。
  清涼院くんにいたっては、実体ごと行き来してた。ぼくたちにできるなら、笠井先生にも…」
法月は太田に近付いていく。
法月「これでどうですか?」

763名無しのオプ:03/02/14 03:37

泥酔していたはずの太田が体を起こす。
太田(笠井)「『ようやくたどりついたか。』」

笑みを浮かべてこたつに入り宴に加わる。空いている器に自分で酒を注ぎ、一息に呷る。

積木「口数が少なかったのは、学園の動向を見にきていたんですね」
太田(笠井)「『ああ。森はわかっても全部は説明しないだろう。お前ら4人がある程度気付き、
  森に説明させるという展開しかないと思っての人選なんだよ。森が逃げることも予想してはいたが、
  ちょっとだけ期待していたんだがな。やっぱりフヌケだったか。法月先生が帰ってくる日とちょうど重なっていたから、
  森がいなくてもお得意の課外授業をやらかしてくれるとは思っていたから、まあ予想ドウリだ。
  積木ももう少し理論を学ばないと、そろそろ授業についていけなくなるぞ』」
法月「ま、今日はいいじゃないですか。森くんは…そこに踏み込むことをあえて避けているんでしょうね。
  むしろ構造として使用するほうを選んでいる。昔の京極先生に似ているかもしれませんね」
太田(笠井)「『綾辻先生や法月先生、それに積木くんみたいに行き詰まるのを見ているから、かもな。
  それもどうかと思うがな。向こうでも、一番期待していた殊能がぐずぐずしてるし、氷川もどうだか。
  ま、殊能がどういう結論を述べようが、本人も言ってる通り机上の空論だから最後まで言わせることにするつもりだ。
  部屋に戻り損ねたけど、よく喋ってくれているおかげでときどきこっちの様子を窺うことくらいはできる』」
法月「氷川くんはわかってても言わないですよ。彼は境界を意識してはいるけど、外には出ないでしょう。」

764名無しのオプ:03/02/14 05:51
・・・!!??
悪い、正直メタな展開についていけない・・・首脳の某作品を読んだ時のような感じだ。
早く続きプリーズ!
765名無しのオプ:03/02/14 06:41

積木「ちょっと待って下さい」


教師同士の話に割り込む。積木にはめずらしい積極的な行動だ。
積木「じゃあ、笠井先生は、犯人を知っているってことですか?」
太田(笠井)「『どの犯人だ? お前が誰の名前を口にしたかは知っているよ。しかし、
  山荘のことを学園に伝える“作者”としての積木は既に消えている。
  小文字の積木が思い込んでいた犯人というだけに過ぎんよ。同じく、笠井もここでは小文字の笠井だ。
  ある程度までは見えているが、真相は…どうかな。まだ確定的ではない』」

法月「笠井先生でもまだわからないんですか?」
太田(笠井)「『ああ。確かに笠井が仕組んだ部分もあるし、佐藤が山荘にきたなんて展開にしても考慮のうちだ。
  山荘の生徒たちにはまだ隠している部分もあるが、どうも殊能はそっちには気付いているみたいだ。
  ただ…おれと関係ないところで誰かが別の企てをしているような気配があってな。だから長居はできん。
  そろそろ集中して考えるよ。説明が必要なら法月先生に聞いてくれ。新学期がんばれよ。じゃあ』」

太田は再び倒れ込んだ。
766名無しのオプ:03/02/14 06:42

「ふう…」
緊張が途切れ、全員が息をもらす。
黒田「結局…事件には何の関係もないんですよね」
法月「ああ。そもそも山荘の事件は合理的な解決がもたらされているからね。ここでは物語の構造を整えたに過ぎない。
  あとは動機かな。笠井先生はたぶん、ちょっとしたテストのつもりだったんだよ。森くんと殊能くん、
  そして君たち4人に対するね。他に質問がなければ、ぼくもそろそろ行くよ」
積木「あとは…自分たちで考えます」
法月「それがいいだろうね。わからなかったら新学期がはじまってから職員室へおいで。
  森くんもそろそろ戻ってくるだろうし」

玄関口へ法月は歩を進める。ちょうど、扉が開き、森と竹が入ってきた。
森「先生、お帰りですか」
あまりのタイミングの良さに法月は苦笑して答える。
法月「ああ。清涼院くん達はいたかい?」
竹「いないんだよ。心配はしないけど、まったくこまったもんなんだよ。じゃあ、先生ばいびー」
法月は、外に出た。

767名無しのオプ:03/02/14 08:29
正直、ウンザリな展開だぜ。ガッデム
768名無しのオプ:03/02/14 08:50
……えっと、よくわかんないけど、これだけ延々と盛り上がった山荘編の解答編のクライマックスは、書かれる前に既に笠井本人によって、取るに足りない茶番劇にすぎないって宣告されてるってことだよね。

それって幾らなんでも、あんまりなんじゃない?
769名無しのオプ:03/02/14 09:03
 オーケイ、オーケイ。
 ほうか。それやったら俺らはいったい何やったんや?
 操り人形?違うやろ。俺らは俺らの意思で行動しとるんやで。
 後付けで論理的に説明しとるつもりか?
 整合性が取れたらええのか?けどな俺らかてあほやないねど。 
 これだけのメンツが揃ってて誰かの思うがままに操られることなんか
 ありえんやろ。
 ましてや……
770名無しのオプ:03/02/14 09:25
笠井が仕組んだのは、山荘組とこたつ組の振り分けと
山荘で殊能が言う「笠井先生の仕組んだ筋書き」>>719
までってことじゃないか?

「隠している部分」が、京極らしき人物登場以降の本筋の流れで、
その後何が起こっても
「真相は…どうかな。まだ確定的ではない」「おれと関係ないところで誰かが別の企てをしている」
ってことで逃げれると思うが。
「事件には何の関係もないんですよね」ってわざわざ最後に書いてるんだし。

違ったらすまん>>766
771名無しのオプ:03/02/14 09:32
だいたい、待つことは性にあわんのやさかい自由に喋らせろや。
レスがもったいないてなんやそら?
なんか勘違いしとるんやないか?
ここは掲示板やろが。書き込んでなんぼ。
それを解決編の最中やからいうてずっと待っとるだけか。
ハイハイわかりました。アンタはそうしとれや。
けどそれを他人に強いる権利はないやろ。
自分の言いたいことだけ言うたらこんな議論はレスがもったいない、ですか?
そうですか?そら自分は満足やろ。
それに対する他人の反論は第三者からしたらウザいだけやもんな。
反論した方が悪者や。たしかに正論、お見事お見事。
772名無しのオプ:03/02/14 09:41
 バレンタインディ当日。

石崎「チョコの数は多いけど義理ばっかだなー。そのくせ、ホワイトディのお返しを期待されているんだからたまらないよ」
 それでも笑みを絶やさず、チョコの入った袋を抱えながら校内を歩いていた。
 職員室の前に着いたとき、一人の女生徒が法月先生にチョコをあげる場面に遭遇する。
 しかし、なぜか法月先生の表情は硬い。
 石崎は軽く口笛を吹き、聞き耳を立てた。

女生徒「法月先生。右手には本命チョコ。左手には義理チョコがあります。どっちにしますか?」
法月「……本命ってことは、好きだってことだよね」
女生徒「もち、ラブってことです」
法月「……義理ってことは、好きだってことだよね」
女生徒「一応――ホント一応ですけどね。去年新刊が出したことですし、その祝いです」
法月「……それを僕が決めるの?」
女生徒「はい、どっちにしますか?」
法月「……あーちょっと時間をいいかい。タケマルの餌の時間なんだ」
女生徒「その間にしっかり悩んでくださいね」

石崎「どうしてどうして」
 法月先生が、その場から逃げるように立ち去ったの確認すると、女生徒は手を叩いて喜んでいた。
 石崎は、女子生徒に近づいていき、その肩を叩く。すると女生徒は氷のように固まった。
石崎「北山だけの設定だと思っていたよ」
 にやりと石崎は笑った。
石崎「ノリリン先生を悩ませて、自分の作品の発売日とかぶらせないようにする魂胆なのかな? 氷川くん」
氷川「……ち、違いますよ。ここだけの話ですが、実は本当の女子高生なんです」
石崎「まーいいけどね。何歳になっても、女子大生の作家はいるし」
氷川「……はぁ。僕のギャグはわかりにくいんですね」
石崎「おや、噂をしたらあそこに北山がいるわ。しかも女装をしてる。よし、捕まえよう」
773名無しのオプ:03/02/14 09:41
石崎「しかし、なんだな」
 女装をしている氷川・北山を見つめて、石崎は苦笑いを浮かべた。
石崎「女にもてないからって、それはないんじゃないの」
 すると、二人は顔をあわせて、ため息をついた。
北山「石崎さん、あなたはなにもわかっていませんね」
石崎「――? どういうことよ」
氷川「今日は……ああ、いいところに御大が」

清涼院「リューーーーーーーーーーーースイ」

石崎「な、な、な、なにがなんなんだ!」
 石崎はその姿を見て、おもわず叫んだ。
 清涼院も女装をして空を颯爽と飛んでいるではないか。
北山「つまり、そういうことですよ」
氷川「はじめからおかしいって気づかないと。石崎さん。あなたが女子からチョコを義理すらもらえるわけがないでしょ」
北山「なんといっても嫌われていますしね。DNAレベルで」
石崎「だからって、こんなオチありか? 俺のガラスのハートは粉々だよ」
氷川「防弾ガラスでしょ」
北山「ま、それはそれで。石崎さんもセーラー服に着替えましょうよ」
石崎「ちょ、ちょ、ちょっと待て。それはいくらなんでも」
浅暮「おや、石崎君。君はまだかつらをつけていないのかい?」
石崎「うわー。見たくないものを見てしまったー」
古泉「アッラーアッラー」
774名無しのオプ:03/02/14 09:42
男一匹、古処である。
今朝はいやな夢を見てしまった。
しかし、まだよかったのかもしれないな。
このあと、森くんや新堂くん、蘇部くんを見てしまったら私の精神はずたぼろになっていたころだろう。
ま、そんなことはいいか。
いぶし銀の私は、いつでもチョコレートを募集している。
ギブミーチョコレート。それでは、ヨロスク。
775名無しのオプ:03/02/14 09:45
別にここまで話を複雑化させなくても……なんだか、なあ
776名無しのオプ:03/02/14 09:48
>>774
和んだw
777名無しのオプ:03/02/14 09:52
>>775
まあ、「物語の構造を整えただけ」ってことだし、メタなのはここまでっしょ。
今日はバレンタインデー編を楽しみましょう。
778名無しのオプ:03/02/14 09:54
>>770
でも山荘編の事件がどういう解決になろうが、所詮は笠井による“ちょっとしたテスト”でしかないんでしょ?

書かれた後引っくり返すならともかく、書かれる前からそれはどうよって話。
779名無しのオプ:03/02/14 10:05
「大量殺人計画」ってことで驚愕の解決編のはずだったのにね。

「ちょっとしたテスト」だもんね。
780名無しのオプ:03/02/14 10:08
僕らにできることなら先生方にも……

ってなんや。メフィスト学園の主役はあくまでも生徒なんじゃ!
先生連中なんかは脇役にすぎんのやで。
もちろん脇役を軽んじるつもりはないんやけど
助演男優賞の対象にはならんでええのやさけ。
781名無しのオプ:03/02/14 10:17
ていうか、法月の推理ってとこで止めとけばいいものを、わざわざ笠井を連れてきて確定させてるしね……
782名無しのオプ:03/02/14 10:22
最初、法月の推理編を「何だこれ」と思って読んでたが、考えてみたら解釈のしようがあるな。
解決編の職人さん、大変だが頑張ってくださいー
783名無しのオプ:03/02/14 10:25
竹  「ねーいーちゃん。なんか、外野がうるさいよ」
西尾「それはね、チョコレートを貰えないことを僻んでいるだよ」
竹  「うわー傑作だ」
西尾「戯言だよ。そういって予防線をはらないと、あとあと困るからざ・れ・ご・と。わかった?」
竹  「うにー」
西尾「でも、職人さんよりも読者が増えちゃったって感じだよね」
竹  「んーそれは喜ばしいこどなんだけどねー」
西尾「意見や感想をいうのをヤメレ、っていうわけじゃないけど、多いとさすがになえるよ」
竹  「それは戯言?」
西尾「うん、戯言。便利でしょ、この言葉」
竹  「うにー。でも結局、終わらないと文句をいうなっていいたいね」
西尾「袋いっぱいの本命チョコレート。でも本当は、まだ渡す前みたいな」
竹  「職人さんたちに幸せがおとずれろーぎぶみーちょこれーとー」
西尾「えーと、僕にチョコをくれないのかな」
竹  「戯言だね」
784名無しのオプ:03/02/14 10:45
竹ちゃんはいつから人間失格に(w
785名無しのオプ:03/02/14 10:47
竹ちゃんすっかり馴染んで…

>>778
先に書かれてるから本編のほうでより効果的に使えるという気も。
解釈の幅はけっこう作れそうな書き方をしているように読める。

個人的には笠井の動機はのりりんのほうが納得できるので擁護してみますた。
786名無しのオプ:03/02/14 10:57
自作自演、か。
787名無しのオプ:03/02/14 14:49
蘇部「ねえねえ、ぼくこんなの作ったよ。殊能くん喜んでくれるかなあ」
頬を上気させて蘇部が持ってきたそれは、トンカツチョコだった。
いや、チョコトンカツと呼ぶべきだろうか。ともかくそんなようなものである。
生垣「ワオ! 僕の知らない間に日本の食文化は変わったんだね」
浦賀「肉……肉に余計なものが……」
高田「豚肉と豚肉の間に板チョコを挟んで揚げたのか。胃薬が必要だね」
古処「男たるもの一生懸命であればよいというものではない。材料を無駄にするな」
笠井「お前は本当にゴミしか作れんのだな。まさに殊能の胃袋に対するテロ行為だ」
新堂「お前本当に殊脳のこと好きなんかい。こりゃ悪質な嫌がらせだぞ」
古泉「あるいは試練……そして修行……アッラーアッラーアッラー」
中島「もしくは罰ゲームだな。無自覚にしろ、恐ろしい」
森 「大目に見ましょうよ。トンカツにしかアイデンティティを見出せないのだから(笑)」
秋月「トンカツにしか? 目立てるアイテムが一つでもあれば充分だよね……うふふ」
氷川「まあまあ。被害に遭うのは殊能君だけなんだからいいじゃないですか」
石崎「そうだそうだ。みんなチョコが羨ましいからって僻んじゃだめだぞ」
乾 「羨ましいのはお前だけだっ」
北山「石崎さん、そんなに欲しいなら僕が女装してチョコを差し上げますよ」
高里「きゃあっ! バレンタインデーに新たな恋の予感ね。告白のチャンスよ★」
霧舎「ふう……(ハニーにチョコを貰ったとき、僕はどうすればいいんだろう)」
浅暮「俺は酒入りのチョコしか興味ないね」
黒田「僕はモー娘。からのチョコしか興味ないな」
佐藤「……妹からのチョコ……萌えだよね……」
788名無しのオプ:03/02/14 15:00
チョコとんかつって美味しいらしいけど?
miffu.hp.infoseek.co.jp/chocoton.htm
789名無しのオプ:03/02/14 15:09
みんなにやいのやいのと騒がれて、さすがに蘇部は落ち込んだ。
蘇部「やっぱり迷惑なのかなあ」
日明「乙女イベントに口出しする無粋な輩は放っておけばいいのよ」
積木「つまり自分も誰かに渡すつもりでいる、と」
津村「あ、日明さん。言われたとおり、すべての教官に配ってきましたよ」
西尾「さすが秘書。用意周到だね」
竹 「ぜんぜん乙女ちっくじゃないよう」
清涼院「セーリョーインッ!!」
舞城「あーもーおめえらゴチャゴチャうるせえ。蘇部も辛気臭い顔すんなや。
   あの殊能がおめえの作ったもん食わないわけないやろ!」
蘇部「舞城くん……。そうだね、ぼく、思い切って渡すよ!!」
と、そこへ殊能が現れた。
殊能「みんなどうしたんだい。まさか蘇部君、苛められてないだろうね」
蘇部「違うよ。みんな親切にアドバイスしてくれてたんだ! ハイ、これ」
ちょっと緊張しながらも笑顔でチョコを渡す蘇部。
しかし受け取ったものの浮かない表情の殊能を見て、その笑顔が崩れそうになる。
蘇部「やっぱり……料理好きの殊能くんの口には合わないよね……」
殊能「あ、違うんだ。実は僕が君にチョコをあげるつもりでいたから」
そう言って殊能は先ほど調理室で作ってきたばかりのチョコを差し出した。
殊能「じゃあ、これは僕のチョコと交換だね」
蘇部「うんっ」
暖かくも美しい友情+あるふぁの光景に、クラスメイト達は拍手を送った。
その中に舞城の姿はなかった。
その後。
蘇部「あ、ようやく見つけた。探したんだよ〜。お礼が言いたくて」
舞城「ほんならこれ貰っとくわ。感謝料な」
蘇部「あっ。僕が貰った殊能君の…………」
取り返そうと思ったが、チョコを手にしたときの舞城の顔を見てやめた。
とても欲しかったもののようだから。
790名無しのオプ:03/02/14 15:12
>788
あ、そうなんだ。
まあ、みんな単に絡みたかっただけということで。
791名無しのオプ:03/02/14 15:19
>787
イイ(・∀・)!!
792名無しのオプ:03/02/14 15:38
いや、チョコとんは美味くない。

そこまで不味くもないが一度食せばもういい。
793名無しのオプ:03/02/14 17:38
>>792
神。食ったのか……
794名無しのオプ:03/02/14 17:41
高里「大事な話ってなあに?」
霧舎「あ、ああ…」
高里「…?」
霧舎「あの…やっと帰ってこれたね」
高里「うん。なんだかホッとしたね」
霧舎「そうそう。…それで…ええっと」
高里「……? 変なダーリン」
霧舎「…う……」

覚悟を決めたはずなのに、霧舎はいざ高里を前にするとなかなか言葉を切り出せな
かった。そんな霧舎の心は露知らず?高里は、山荘で関係が深まったのは誰と誰だ
とかいう分析を嬉しそうに話しだす。
石崎争奪戦では氷川が大きくリード。笠井先生X清涼院や殊能X蘇部←舞城に新た
に登場した清涼院。でも蘇部と殊能はバレンタインのチョコを交換していたし、や
っぱり絆は強いのかな。
そんな話に適当に相槌をうちながら、霧舎は話を切り出すタイミングを逃し続けて
いた。舞城の名前が出たときに胸がチクリと痛む。
795名無しのオプ
高里「あ、そうだそうだ」
高里が何か思い出したようにバッグから何かを取り出そうとした。会話がとまる。
霧舎「高里さん」
霧舎は意を決して呼びかけた。「ハニー」ではなく「高里さん」と。
高里「うん?」
顔をあげた高里は霧舎の真剣な表情に困惑したような笑みを浮かべた。
高里「…ど、どうしたの?」
霧舎「山荘でずっと考えていたんだ」
高里「………ダー」
霧舎「僕は本当に高里さんのことが好きなんだろうかって」
高里「!!」
霧舎「僕は高里さんのことが好きなんだと思っていた。でも、それは違ったんだ」
高里はゆっくりと視線を下に落とし両手をぎゅっと握りあわせた。
わずかな時間その場を静寂が支配する。
逃げ出したくなるような気持ちを必死に制御しながら、霧舎は決別の言葉を続けた。
霧舎「たぶん、本当は誰でもよかったんだ。ただ寂しさをまぎらわせてくれる人が欲しか
  っただけで。…やっとそのことに気がついた。…ゴメン。悪いのは僕だ。こんな身勝
  手な僕なんかが高里さんをこのまま拘束していいはずなんてない。高里さんには僕よ
  りももっとふさわしい相手がいる。僕たちは別れた方がいいと思う」

霧舎は空を見上げた。しばらく見ていなかった冬の青空だった。