飯田鉄道999

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1名無し募集中。。。
このたびは(略
2名無し息子。:2001/05/16(水) 17:09
ジャニトゥザスター♪
3チュリプ:2001/05/16(水) 17:10
きっといつかは 君もくらうさー ひどいー 放置にー
4終了:2001/05/16(水) 17:11
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5名無し募集中。。。:2001/05/16(水) 17:13
飯田さんはもう思い出だけどー♪
いつも遠くで見つめてるー♪
6名無し募集中。。。:2001/05/16(水) 17:23
つぎは、「最果ての放置」に停車します。
7でへへ:2001/05/16(水) 17:24
飯田鉄道999999
8名無し募集中。。。:2001/05/16(水) 17:29
いざっ 電波伯爵に復讐だ
9名無し募集中。。。 :2001/05/16(水) 17:30
飯田鉄道69
10名無し募集中。。。 :2001/05/16(水) 17:31
で?笑う犬は皆見てんの?
11名無し募集中。。。 :2001/05/16(水) 17:31
TVはガチンコしかみねえ
12名無し募集中。。。:2001/05/16(水) 17:31
何で南原が出てるの?
13名無し募集中。。。:2001/05/16(水) 18:06
( ´D`)<いいらさんみたいな機械のからだがほしいれす
14爆発ブッシュ:2001/05/16(水) 18:07
小説スレです。
15名無し募集中。。。:2001/05/16(水) 18:08
飯田さ〜ん また一つ〜 スレが消え〜るよ〜♪
16名無し募集中。。。:2001/05/16(水) 18:36
「かおりん鉄道」のあったところ→ http://www.eris.ais.ne.jp/~kaotch/
17名無し募集中。。。:2001/05/16(水) 18:38
飯田は全ての少年にとって永遠の恋人
18ミスター・ポーズマン :2001/05/16(水) 18:39
ミスター・ポーズマン
19名無しさん募集中。。。:2001/05/16(水) 18:46
>>16
なんだ加護のファンサイトになってんじゃん(w
20名無し募集中。。。:2001/05/16(水) 18:48
   ((β)ξ) ノ ノ
   ( ) ノ ) ノノ
   ( ρ丿ノ
  ∧∧フ_Д_⊆⊇__廿_ー――
P( ゜皿 ゜)戸___≡用_|0||Π || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
|_ ⊂⊃  |/oi ニ号巨呈朋ニフ|旦゚゚||______|
 へ ̄ /o+o (≧Д≧Д≧)奔o毛 o-o    o-o
21名無し募集中。。。:2001/05/16(水) 19:51
飯田についていくと機械の体をもらえます
22ゴダイゴの:2001/05/16(水) 20:06
銀河鉄道999は名曲。
23名無しさん。:2001/05/16(水) 20:08
>>16
娘。と鉄道を結び付けていた神経はどうなんしょうか?
っていうかソレを知りながら相互してしまった過去のオレはなんだ?
 機械首都メガロポリスから離れた郊外。草の茂る丘の上で、貧しい身なりをした
 母(中澤裕子)と娘(辻希美)が、夜空を見上げている。
 光の軌跡を描いて、飯田鉄道の急行列車が、メガロポリス駅に向かって降下して
 くる様子が見える。

希美「お母しゃん、あれ・・・」(夜空の急行列車を指差す)
中澤「飯田鉄道の急行やね。山向こうのメガロポリスにやって来た今日の最終列車や」
希美「どこから来たのれすか?」
中澤「うーん・・・あれは776形みたいだから、飯田星雲の母星が始発やないか?」
希美「・・・・・・」(さっきから震えている希美)
中澤「寒いんか、希美?」
希美「ふぁい・・・」(洟を垂らす希美)
中澤「そろそろ冬や。冷え込んできたな」(希美を包み込むように抱き、家に向かって歩き出す)

 雪が降り始める。歯をガチガチと鳴らす希美。

中澤「あーあ。機械の体やったら、寒さなんて気にせんでもええのにな・・・」
希美「機械の体だったら、とっても長生きできるのれすよね?」
中澤「そうや。部品の交換さえ、まめにやってりゃ千年くらいは軽いで。せやけど
   うちら庶民は、機械の体なんて買えんから、せいぜい百年が限界やな」
希美「機械の体はお金持ちしか買えないのれすね」
中澤「お父さんが生きていれば・・・希美にも機械の体を買ってやれたんやけど」
  (目を閉じて、悲しそうに言う)
希美「お父しゃんは、人間が機械の体を買うことに反対して暗殺されたんれすよね?」
中澤「・・・・・・」(沈黙で答える)

 積もり始めた雪に足跡をつけながら、貧しい母娘は家に向かって歩き続ける。
25雪の降る夜に・・・2:2001/05/17(木) 00:49
 貧しい母娘の住むバラック小屋が見えてくる。駆け出そうとする希美を制する中澤。

中澤「家に入ったらあかんで!」(緊張した声を出す)
希美「・・・?」(訳が分からずキョトンとする)
中澤「こっちへ来るんや、早く!」(岩場の洞窟の方へ走り出す)

 中澤の体を一筋のレーザー光線が射抜く。崩れ落ちていく中澤。

希美「お母しゃん!」(駆け寄って、すぐさま中澤の半身を抱き起こす)
中澤「逃げるんや、希美・・・母さんはもうダメや・・・」
希美「嫌なのれす!」(激しく首を振る)
中澤「母さんの最後の話を聞くんや。ええか・・・飯田鉄道の超特急999号に
   乗れば、いつか機械の体がタダでもらえる惑星に着くそうや」
希美「ううっ・・・」(中澤の体を抱えて歩き出すが転んでしまう)
中澤「今までは夢みたいな話やから希美には黙っとったけど、父さんは確かにある
   と言ってたんや。希美・・・あんたはまだ若い。なんとか飯田鉄道999に
   乗って、機械の体がもらえる星に行くんや。そうして、うちや父さんの分ま
   で長生きするんや・・・約束やで」(次第に声がか細くなっていく)
希美「わ、分かったのれす。約束するから死なないれ欲しいのれす!」
中澤「ああ希美・・・もう一度、顔をよく見せて。・・・お別れよ、希美」
  (希美の腕の中で息絶える)
希美「お母しゃん! 死なないれ、死なないれくらさい! ののは一人ぼっちに
   なってしまうのれす!」(涙と鼻水で顔をグシャグシャにして泣きじゃくる)

 間もなく希美は、遠くの方に機械化馬に乗った大男たちの姿をみとめる。
26名無し募集中。。。:2001/05/17(木) 00:49
>>16,23
鉄ちゃんで娘ヲタ、2重苦だな
27名無し募集中。。。:2001/05/17(木) 00:50
わくわく…
28名無し募集中。。。:2001/05/17(木) 00:50
>>24-25って羊のコピペ?
29【外道】機械伯爵!:2001/05/17(木) 01:02
 中澤の亡骸に近付いてきた機械伯爵とその機械化従者。

伯爵「いたか?」(先を行く従者にたずねる)
従者「はい、ここに!」(馬上から中澤の亡骸を見下ろして言う)
伯爵「見事に仕留めたな。さすがは私だ、いい腕をしておる」(亡骸を確認して言う)
従者「いまどき生身の人間なんぞ珍しいですからな」

 伯爵と従者は馬から降りて、中澤の亡骸を調べ始める。

伯爵「少し年を食ってるが・・・素晴らしい美女だ! 応接間の壁に飾ろう」
従者「皆が伯爵の狩りの腕を称えることでしょう」
伯爵「アヒャハハハハハハハハハハハハ!」

 中澤の亡骸を馬に乗せ、伯爵と従者は高笑いしながらその場を去っていく。
 草むらの陰から、その一部始終を見ていた希美。

希美「お母しゃん・・・!」(なす術もなく伯爵たちの後ろ姿を見送る希美)
30涙も凍る雪原で・・・:2001/05/17(木) 01:17
 大雪が降り積もる広大な雪原を、ふらつきながら歩き続けている希美。

希美「飯田鉄道999に乗るなんて、夢のまた夢なのれす・・・。お金も切符も
   ないし、大体どうやってこの雪の中をメガロポリスまれ行けばいいのれしょう?」
  (もはや睫毛も涙も凍っている)

 きつい上り坂に差しかかる希美。何度も倒れながら登っていく。

希美「れきるらけのことはやるのれす! だけどこの寒さじゃ・・・」(崩れ落ちる)

 とうとう起き上がれなくなる希美。

希美「も、もう・・・手足がかじかんれ、動けないのれす。機械なら動けるのに人間って
   不便なのれす・・・」(目が開かなくなる)

 倒れ込んでいる希美の上にも、雪は容赦なく降り積もっていく。

希美「今度生まれてくるときは・・・最初から機械の体に生まれてくるのれす。
   お母しゃん・・・お母しゃん・・・」

 希美の姿は雪に覆われ、雪原上の小さな隆起物と化す。
 小奇麗な部屋の中。暖かいベッドの上で、希美は目を覚ます。
 希美は、キッチンに立っている背の高い少女(飯田圭織)の後ろ姿に気付く。
 圭織は黒い毛皮の服に身を包んでいる。

希美「ここは・・・?」(落ち着かない様子で部屋を見回す)
圭織「気が付いた?」(そう言って希美の方をふり向く圭織)

 希美のもとに、湯気を立てている温かいスープを運んでくる圭織。

圭織「さあ、このスープを飲んで。あなた、雪の中で半分凍りついていたのよ」
希美「ありがとうなのれす!」(一瞬のうちにスープを飲み干す)

 ベッド脇の椅子に腰掛ける圭織。

圭織「私はカオリ」
希美「わたしは・・・」
圭織「辻希美さんね。服に刺繍がしてあったのを見たんだ」
希美「そうれしたか。可愛い服に着替えさせてくれて嬉しいのれす」
圭織「希美、あのさ・・・飯田鉄道に乗るには、あなた完全に逆方向に向かって
   歩いていたのよ。メガロポリスの駅は東なんだから」
希美「ど、どうして、ののが駅に行こうとしていたのを知ってるのれすかっ?」
  (ギョッとしたように大きな声を出す)
圭織「そんなに怖い顔しないで。・・・圭織ね、宇宙人と交信しようと思って、
   精神集中してたら偶然、あなたたちの会話が聞こえてきたのよ。
   お母様はお気の毒だったわ・・・」

 そこまで言って、涙を流す圭織。希美は首を傾げながらたずねる。

希美「宇宙人と交信とか、精神集中とか・・・まさか圭織しゃん。あなたも
   機械化人間なのれすか?」
圭織「ガガガ・・・チガイマス・・・カオリハニンゲンデスヨ!」
  (なんだか不自然な声と動きに切り替わる圭織)
希美「う、疑ってごめんなしゃい!」

 圭織が怖くなった希美は、ぺこぺこ頭を下げて勘弁してもらう。
圭織「あなた、機械の体がタダでもらえるって星に行きたいのね?」
希美「ふぁい、そうなんれすよ」(まだ少し怖がっている)
圭織「もし圭織を一緒に連れて行ってくれるなら、パスをあげてもいいよ。
   圭織と同じパスをね・・・」(意味深に言う)
希美「パス・・・?」(キョトンとする)
圭織「これよ。パスっていうのは、無限期間有効な飯田鉄道の定期のことなの」

 圭織が手渡してくれたパスをじっと見つめる希美。
 【地球←→飯田星雲 オリオン・プレアデス経由 無期限 飯田鉄道株式会社発行】
 と書かれている。

圭織「それは本物よ」
希美「こ、こんな高価なものを、どうしてののなんかに・・・?」
圭織「深く考えることないよ。圭織はね、一緒に行ってくれる人が欲しいんだ」
希美「圭織しゃんは、どこへ行くつもりなのれすか? 旅の目的は?」
圭織「ごめん・・・それは聞かない約束にして」(妙に寂しそうに言う)
希美「分かったのれす。ののは約束は絶対に守るのれす!」
圭織「ありがとう、辻」
希美「これがあれば・・・ののは、ののは機械の体を手に入れられるのれす。
   機械の・・・体? そういえば、お母しゃんを殺したあいつらも!」

 バスを胸に押し当て、喜んでいた希美の顔色がいきなり変わる。

希美「機械伯爵の屋敷って、この近くなのれすか?」
圭織「目と鼻の先だよ。辻、敵討ちに行くんだね? 気をつけて・・・夜は、機械化人間が
   外にいる生身の人間を撃ち殺しても合法ってことになってるんだから」
希美「こっちも銃があれば怖くないのれす!」(壁にかかっていたレーザーライフルを手にとる)

 玄関で振り返った希美は、見送りの圭織に言う。

希美「駅へ行く前に、ちょっとらけ寄り道させてくらさいね。ののはすぐ帰って来るのれす!」
圭織「分かったよ」(希美の腰に、レーザー拳銃も装備させてやる)

 吹雪の中を力強い足取りで進む希美。

希美「機械伯爵・・・お前を倒さないことには、とても地球を離れる気にはなれないのれす!」
33機械伯爵の屋敷:2001/05/17(木) 03:34
 伯爵の屋敷、大広間。機械伯爵とその取り巻きたちが勢揃いしている。
 壁の高いところには中澤の剥製が飾られている。取り巻きたちの拍手の中、
 機械伯爵がいい気持ちで話している。

伯爵「見たまえ、今日の獲物だ。こうして飾ってみると、一段と素晴らしいだろう」
貴族「おめでとう、伯爵。多少トウは立っているが、滅多に手に入らない上物ですな」
伯爵「運が良かった。丁寧に皮を剥いで剥製にしたから、傷一つ無い。お金じゃ買え
   ないよ、これは。アヒャハハハハハハハ!」
貴族「アヒャハハハハハハハ!」

 伯爵はじめ一同が高笑いする中、大広間のドアが蹴破られて、希美が入ってくる。

希美「お母しゃん・・・」(レーザーライフルを構えている)
伯爵「なんだ、このチビは?」
希美「死ね、機械伯爵!」

 レーザーライフルを乱射する希美。伯爵や取り巻きたちを次々と蜂の巣にしていく。
 爆発を起こす取り巻きたちの体。ついに残ったのは機械伯爵だけになった。希美は
 ゆっくりと機械伯爵の方へ歩いていく。

希美「よくもお母しゃんを・・・」(照準を定める)
伯爵「ま、待ってくれ。殺さないでくれ。脳だけは撃たないでくれ! 脳を撃たれたら、
   もう再生不可能になってしまう! 本当に死んでしまうんだよ!」
  (煙を吹き上げながら、命乞いする機械伯爵)
希美「そうか・・・脳がお前の弱点なのれすね?」(伯爵の脳を撃ち抜く)

 機能停止した伯爵に目もくれず、希美は中澤の剥製を涙で潤んだ目で見つめる。

希美「お母しゃん・・・見るのれす。飯田鉄道999のパスを手に入れたのれす。
   ののは飯田超特急に乗って、機械の体をタダでくれる星に行くのれす!
   さよなら・・・お母しゃん!」(未練を断ち切るように屋敷から飛び出す)
34エアカーで移動中に・・・:2001/05/17(木) 03:39
 屋敷の庭先ではエアカーに乗った圭織が静かに待っている。

圭織「無事で何よりだわ、辻。それじゃ行きましょう」

 圭織と希美が乗ったエアカーは、メガロポリスに向かって走り出す。

圭織「辻、この景色をよく見ておきなさい。今度ここへ戻って来たとき、あなた
   は機械の目になってるんだから」
希美「いいのれす。どうせ悲しい思い出しかないのれすから」
圭織「悲しい思い出もいつか懐かしくなる時が来るんだよ。見ておけば良かったと思う時が・・・」
希美「・・・・・・」

 一時間後、メガロポリスの中心部に到着。圭織と希美は、エアカーをパーキング
 に停めて、飯田鉄道の駅に向かって歩き出す。
35機械ポリスの魔手:2001/05/17(木) 03:58
 広大な駅構内。飯田鉄道999号のホームに向かって歩く圭織と希美。
 突如、鳴り響くサイレンの音。複数の足音に、圭織と希美が振り返ると機械化警官
 たちが、大挙して押し寄せてくるのが見える。

警官「辻希美、機械伯爵および機械貴族殺害の容疑で逮捕する!」

 顔を見合わせる圭織と希美。

圭織「思ったより手が回るのが早かったみたいだね」
希美「どうしたらいいれしょうかね?」
圭織「とにかく逃げよう。ホームの中は地球政府の手が届かない治外法権だから!」

 圭織と希美は、長い階段を駆けのぼる。階段の上には改札口があり、その先は
 999号のホームになっている。

圭織「ガガガ・・・ウザイヤツラダ。パクリワザハツドウ・・・セクシービーム!
   オウギハツドウ・・・ネェワラッテ!」

 振り返った圭織の目や掌から、不気味な光線が迸る。これを食らった機械ポリス
 たちは、次々と爆発していく。首を傾げる希美。

希美「圭織しゃん・・・やっぱりあなたは機械化人間じゃないのれすか?」
圭織「あはは・・・気にしない気にしない!」(笑ってごまかす圭織)

 圭織と希美は機械ポリスの手を逃れて、飯田鉄道999号のホームに足を踏み入れる。
 長いホームに停まっているのは、見るからに旧式な蒸気機関車C62。

希美「メェ〜ッ? これがあの飯田鉄道999号なんれすか?」
圭織「ずいぶん派手な驚き方ね」
希美「らって、こんなに旧式な列車らとは思ってなかったのれす!」
圭織「旧式だなんてとんでもないよ、辻。この999号は、耐エネルギー無限電磁
   バリヤーに守られた、超近代化宇宙特急なんだから」
希美「ふぁい・・・」
圭織「見かけが心休まる大昔の蒸気機関車に仕立ててあるだけなんだ。中身は最新
   技術の塊で、外見は昔のままの日本のSL。・・・二度と帰らないお客のた
   めには、こんな型の列車じゃないと駄目なんだ」
希美「待ってくらさい、二度と帰らないって何れすか? ののは機械の体をもらった
   ら必ず地球に帰ってくるつもりなのれす!」(語気を強めて抗議する)
圭織「・・・辻、そのうち分かるよ。さっ、憧れの超特急に乗ろう!」
  (無理やりに明るく振る舞う)

 二等車の対面シートに座る圭織と希美。二人のもとへ小柄な車掌(矢口真里)
 が挨拶にやって来る。

車掌「エーこの度は、当飯田鉄道999号にご乗車下さいまして、まことに
   ありがとうございます」
希美「車掌しゃん、これからよろしくお願いしますなのれす」
車掌「キャハハ、矢口の方こそよろしくねっ・・・あ、失礼しました。こちらこそ
   何卒よろしくご指導、ご鞭撻のほどお願い致しますです、ハイ」

 挨拶を終えた車掌は、通路を歩きながら案内をする。

車掌「エー間もなく発車いたします。エー次の停車駅は、哀のバカやろう!
   哀のバカやろう! 停車時間は42時間31分35秒!」

 汽笛を激しく鳴らす飯田鉄道999号。間もなくゆっくりと走り始める。
37予告:2001/05/17(木) 04:51
ここは、精神的気圧の関係で体が大きくなってしまう星。そこの星にすむ二人の少女
機会のからださえあれば太らずにすむのに。あのパスさえあれば。希美とカオリに襲い掛かる
なつみとひとみ。なぜひとは、みにくくなるのだろう・・・
次回飯田鉄道999「デブの惑星」へ停車します。
38名無し募集中。。。:2001/05/17(木) 08:57
おもしろーい。
39名無し募集中。。。:2001/05/17(木) 16:45
期待sage
40名無し娘。:2001/05/18(金) 12:17
佐々木功って生え際が不自然。
41名無し募集中。。。:2001/05/18(金) 22:44
続きまだ?
42名無し募集中。。。 :2001/05/18(金) 23:15
次の星の停車時間はどのくらいだ?
43名無し募集中。。。:2001/05/19(土) 12:28
Uターンの不細工な方の鉄郎ムカツク
44名無し募集中。。。:2001/05/20(日) 12:07
まだ次の駅に着かないの?
45( ゜皿 ゜):2001/05/20(日) 13:22
まつり
46名無し募集中。。。 :2001/05/20(日) 13:23
>>40
カツラKGBの間ではとっくに常識です。
47モー娘。板に名無しさん(狼):2001/05/20(日) 13:30
TV版だな。
48 :2001/05/20(日) 13:31
メーテルは飯田。
49名無し募集中。。。:2001/05/20(日) 13:32
なっちは?
50名無し募集中。。。:2001/05/20(日) 13:33
機械男爵じゃないのか
51名無し募集中。。。:2001/05/20(日) 13:35
人工ラーメン美味そう
52名無し募集中。。。:2001/05/20(日) 13:35
>>50
うそ〜ん
53 :2001/05/20(日) 13:38
>>49
なっちは森雪だべ
54(゚-゚):2001/05/20(日) 13:45
なこたーない
55メーテル:2001/05/20(日) 13:48
鉄郎、999に乗りなさい
56名無し募集中。。。:2001/05/20(日) 13:49
豚なら松本零士のマンガにはよく出てくるじゃん
57:2001/05/20(日) 13:50
はっ?
58名無し募集中。。。:2001/05/20(日) 14:53
続き期待してます!
頑張ってください。
59第四話「アイボンのいる街」:2001/05/21(月) 00:38
 哀のバカやろう、デブの惑星の思い出を胸に、希美と圭織を乗せた999号は、
 小さな惑星に近付いている。ナレーター(松尾貴史、以下N)の声が聞こえる。

N 「その星は遠くから見る分には、あまり地球と変わらないんです。ところが
   近寄って、夜の部分を観察してみると、無数の金粉みたいな輝きが動き
   回っているのに気付くんです。そして、この惑星で希美には、とんでもな
   いことが起こってしまうんです! 衝撃の邂逅、この後すぐ大公開です!」

 座席横の窓から、惑星の様子を眺めている希美と圭織。

希美「なんて綺麗な星なんれしょうね? まるれ夢を見ているようなのれす。あの
   光って動いているものは何なのれしょうか?」
圭織「ここは夢みたいに変わった惑星だよ。惑星そのものは普通なんだけどね・・・」

 希美と圭織のもとに車掌がやって来る。

車掌「エー次の停車駅は【籠の中の蛍】。停車時間は24時間5分!」
圭織「良かったわ。この星で夜を過ごすことができるんだね」
車掌「キャハハ、そうだね。この星は泊まってみないと、本当のことが分からないよねー」

 ブレーキを軋ませながら、飯田鉄道999号は、籠の中の蛍駅へ降下していく。

希美「ケフン・・・あの光の点々が、汽笛の音を聞いて一斉にこっちを見上げたような
   気がするのれすが?」
圭織「見てるんだよ、みんなこの列車ををね・・・」

 999号が駅に到着する。希美と圭織はホームに降り立ち、改札口のほうへ向かう。
 見送る車掌の声が聞こえる。

車掌「希美さん圭織さん、お気をつけてー!」
60亜依のプライド:2001/05/21(月) 01:38
 飯田鉄道指定の高級ホテル。希美と圭織は上等な部屋に案内される。大きな窓から
 美しい街並みを眺める希美。トランクの荷物を整理している圭織。

希美「999号から見えていた金粉みたいな光の正体は、街の灯りらったのれしょうか?」
圭織「でも、街の灯りは動き回ったりしないよ」
希美「それにしても、ここは生活水準の高い惑星れすね。地球そっくりれすよ」
圭織「そうだね。だけど貧富の差は地球なんかと比べものにならないよ」
希美「なんれすって? ここはそういうところなんれすか?」
圭織「うん。その原因はね・・・」(ここまで言いかける)

 ノックの音がして、みすぼらしい格好をした小柄な少女アイボン(加護亜依)が
 部屋に入ってくる。

加護「お洗濯物や汚れ物があったら出してや。捨てるものがあったら、ほかしてくるで?」
圭織「うーん、列車の中で全部クリーニングに出しちゃったんだ。いまのところゴミも
   ないわね。ごくろうさま」
加護「トホホホホ・・・仕方ないやね」(しょんぼりとする)
希美「・・・・・・」(加護のボロボロの靴を見てハッとする希美)

 加護が出て行くのを見送った希美は、トランクの中から財布を探し出す。

圭織「辻、チップをあげるつもり?」
希美「ふぁい」(金貨を鷲掴みにする)
圭織「でも受け取るかな、あの子が・・・?」(意味深に問いかける)

 廊下をドタドタと走る希美。前を行く加護を呼び止める。

希美「ちょっと待つのれーす!」
加護「なんや?」
希美「これ!」(笑顔で金貨の山を差し出す)
加護「・・・うちの何をお求めなんや?」(一瞬考え込んでから言う)
希美「お求め・・・って、んーと特にないのれす」(気まずそうに答える)
加護「うちは物乞いやあらへん。代償もなしにお金を受け取ることはできへんのや」
希美「ごめん・・・プライドを傷つけたみたいれすね」(赤面する)

 逃げるようにその場を立ち去る希美。無言でそれを見送る加護。
61名無し募集中。。。:2001/05/21(月) 05:43
このスレ、マジでいい感じだな
62亜依のプライド2:2001/05/22(火) 01:23
 部屋に戻った希美に圭織が声をかける。

圭織「やっぱりあの子は受け取らなかったみたいね」
希美「ふぁい。少しでもめぐんでやろうなんて気を起こしたののが悪いのれす」

 希美、ベッドの端に腰掛ける。

希美「地球にいた頃は、ののも物乞い同然の姿をしていたのれす」

 そう言って希美、膝を抱え込む。

希美「いつもひもじくて、お金が欲しかったれすけろ、お母しゃんが・・・
   人様に物をめぐんでもらうくらいなら、歯を食いしばって働けといつも言って
   たのを思い出したのれす・・・」

 希美、上目遣いに天井を見つめながら、言葉を続ける。

希美「そうれすよね。ののらって人から代償もなしに、お金をもらうことなんて
   恥ずかしいことらと思っていたのれす。欲しかったら働くべきらと思って
   いたのれす・・・。
   体が動かないのならともかく、少しでも動けるなら自分なりにできるらけ
   働いて・・・自分の手れ稼ぐべきらと・・・。
   他人に施しを受けるくらいなら、死んら方がマシだと・・・ののはお母しゃん
   に、そう教えられて育ったのれす。
   そして、ののは・・・今れもそれが正しいと信じているのれす」
圭織「・・・・・」
希美「あの子は傷ついたれしょうか?」
圭織「分からないわ。でもね、辻・・・」(ここまで言いかける)

 ここで部屋のドアをノックする音が聞こえて、希美と圭織はドアの方を振り返る。
63名無し読者:2001/05/22(火) 07:07
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
64名無し募集中。。。:2001/05/22(火) 23:11
保全
65名無し募集中。。。:2001/05/23(水) 05:21
飯田のメーテルに萌え
66ん。:2001/05/23(水) 11:56
>>59〜の元になったお話しは僕が999で一番好きな話しなので、
なんかとても嬉しいです。
どうぞ頑張って下さい、更新楽しみにしています。
67亜依のプライド3:2001/05/24(木) 06:47
 ドアが開いて部屋に入ってきたのは加護。手には一枚のメモを持っている。

加護「今夜、うちの家に来て欲しいんやけど。失礼、えーと・・・」(口ごもる)
希美「辻希美っていうのれす。ののとか辻とかジーツーとか、好きに呼んれくらさい」
加護「のの、あんたを女と見込んで、是非買ってもらいたいものがあるんや。
   買うてくれたら・・・もしも、あんたが買うてもエエと思うたら・・・
   さっきの金貨を一枚でも・・・いや、半分でもくれへんか?」

 それだけ言うと加護は、希美の手にメモを渡して足早に去っていく。
 加護の後ろ姿を見送り、部屋に戻った希美に圭織は言う。

圭織「すごくしっかりしたいい子だね。素直に辻の好意を受け入れたんだ」
希美「へい」(微笑みうなずく)

 加護から渡されたメモを見る希美。そのメモには、加護の家までの地図と
 【九時に待っとるで。BYアイボン】という言葉が書いてある。

希美「あの子、アイボンっていうんれすね」
圭織「行ってあげな、辻。今日は特別に夜間外出を許してあげるよ」(保護者然として言う)
希美「かたじけないのれす」
圭織「きっと辻も、この星の正体が分かるだろうね・・・」(意味深に言う)
希美「・・・?」(ポカンとする辻)
68名無し読者:2001/05/24(木) 06:55
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
69光の街と闇のスラム:2001/05/24(木) 07:15
 希美、まばゆいシャンデリアの光に包まれた階段を降り、ホテルのロビーに出る。
 エントランスから街に出ると、そこはイルミネーションに溢れて昼間より、むしろ
 明るい。

希美「なんて綺麗な街なんれしょうか。百万ドルの夜景なんて、古い言葉を思い出す
   のれす」(楽しそうに歩く希美)

 地図を見ながら歩く希美は、川のほとりまでやって来る。パタリと人影が途絶えて、
 街の灯りも急激に寂しくなっている。

希美「華やかな部分は案外狭かったれすねえ。それはそうと・・・」(地図に目を落とす)

 橋の欄干横の階段をさらに下っていく希美。そこには暗闇に包まれた貧民窟が広がっている。

希美「真っ暗れすよ。明るい所と暗い所の落差が激し過ぎるのれす」
  (不安そうに歩いている)

 希美の前を一瞬、巨大な光の塊が横切る。

希美「メェ〜ッ? 今のは何らったんれしょうか? まさか幽霊・・・それとも
   巨大なホタルとか?」(驚いて呟く希美)

 少し歩いた希美は、地図にあったとおり加護の家を発見する。加護の住む傾いた
 バラック小屋の戸を、希美はノックする。

希美「アイボーン、ののれすよ。開けてくらさーい!」
70続きが気になるれす:2001/05/24(木) 15:11
彡    ビュウウウ…
          彡
  彡
       .ノハヽヽ  ハァ〜
       ヾ(´D`)),)
        人つゝ 人,,
      Yノ人 ノ ノノゞ⌒〜ゞ
    .  ノ /ミ|\、    ノノ ( 彡
     `⌒  .U~U`ヾ    丿
       ⊂     ⌒〜⌒
     ⊂           ̄⊃
       ⊂_________⊃ ̄
71名無し読者:2001/05/25(金) 07:09
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
72蛍のアイボン:2001/05/25(金) 07:59
 戸が開いて中に招き入れられる希美。バラック小屋の中には楽譜や振り付け表が
 散乱している。

希美「これは・・・」
加護「うちは歌手になるつもりや。ダンスもこなせる一流のアーティストになりたい
   んや。まだ見込みは立たんけど、いつかきっとなるつもりや」
希美「相当頑張ってるようれすね。ところれ、ののに買って欲しいというものは?」
加護「最近うちが吹き込んだ、一番好きな曲のデモテープや」(希美にテープを差し出す)
希美「・・・れも、これを売ったらオーディションを受ける時、困るのれはないれすか?」
加護「そやな、うちの一番大切なものや。ダビングもしてへん。テープは高価やからな」
希美「アイボンにとって宝物じゃないれすか!」
加護「うちの一番大切なものだからこそ、お金をくれと頼めるんや。楽譜はあるんやから、
   またいつか最高の歌が吹き込める時が来るはずなんや」
希美「このテープは、アイボンの青春そのものなんれすね」(加護のテープを愛しそうに胸に抱く)
加護「ホテルの部屋で聴いてみて、気に入ったのなら買うてくれや。気に入らなかったんなら
   金はいらへん」

 その時、いきなり停電によって、部屋の照明が飛んでしまう。部屋の中は暗闇に包まれる。
73蛍のアイボン2:2001/05/25(金) 09:08
 希美の顔が、淡い光に照らし出される。驚きで目を見開く希美。加護の額がまるで
 蛍のように、点滅しながら儚げな光を放っている。暗闇に浮かび上がる加護の姿。

希美「メェメェメェ〜ッ!?」(加護の姿を見て仰天し、手足をバタバタさせる)
加護「見るな! 後生やから目をつぶって、とっとと出てってくれや!」
  (その場に座り込み、額を両手で覆い隠そうとする加護)
希美「そうれしたか・・・この星の人たちの体は、暗いところでは蛍みたいに光るの
   れすね。999から見えた、夜の部分の動き回る夥しい数の金粉のようなもの
   は、この星の人間らったのれすか!」
加護「えぐっえぐっ・・・」(泣いている加護)
希美「なんれ泣いているのれすか? アイボンの光はとても力強くて、綺麗な色をしてるのれす」
加護「色とか光度は関係ないんや。この星の人間の価値はな・・・光る部分の良し悪し
   や、その面積で決まるんや」(袖で涙を拭きながら言う)
希美「なんれすって?」
加護「どの部分が光るかとか、どれだけ光るとかは、生まれてみるまでわからへんのや」
希美「まさか・・・それらけのことれ、その人の一生の運命まれが決まってしまうとれも
   言うのれすか?」
加護「そうや。一番美しいと言われるのは、全身くまなく光り輝く人で、彼らはこの星の
   特権階級を構成しとる。そして一番醜いとされるのが、うちみたいにごく一部分し
   か光らん連中なんや。おかしいやろ、うち。まるで禿げたオッサンみたいやんか?」
希美「アイボン・・・」
加護「うちみたいな不細工には、きちんとした働き口はあらへん。よって人並みの暮らし
   をしようと思ったら、他人が絶対真似のできない実力を身につけるほかないんや。
   ・・・ゴメンな。つい愚痴を言ってしもた」(無理に笑う加護)
希美「体の光らない星から来たののれすが、なんとなくアイボンの気持ちが分かるような
   気がするのれす」
加護「ありがとう、のの。そのテープは持って帰ってもらって差し支えないで。もし気に
   入ってもらえたんなら、買うてくれや。・・・また明日、ホテルで会おうやないか」
希美「分かったのれす」(うなずく希美)

 加護に見送られ、バラック小屋を後にする希美。
74名無し募集中。。。:2001/05/26(土) 05:20
保全
75名無し読者:2001/05/26(土) 06:58
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
76名無し募集中。。。:2001/05/27(日) 12:27
hozen
77名無し募集中。。。:2001/05/27(日) 14:05
保全
78織田裕二:2001/05/27(日) 14:21
まろ〜ん
79名無し募集中。。。:2001/05/27(日) 14:30
これは面白いよ
1年前のモー板全盛期にタイムスリップしたみたい
80名無しさん:2001/05/27(日) 14:44
避難sage
81織田裕二:2001/05/28(月) 00:51
まろ〜ん
82名無し募集中。。。:2001/05/28(月) 13:33
続きまだですか?
83名無し募集中。。。:2001/05/29(火) 00:11 ID:???
hozen
84名無しさん:2001/05/29(火) 14:07
保全
85名無し募集中。。。:2001/05/29(火) 16:00
いいねぇ。
86織田裕二:2001/05/30(水) 00:46
まろ〜ん
87心貧しき者、希美に吠える:2001/05/30(水) 15:37
 暗いスラムを歩く希美。しみじみと呟いている。

希美「蛍人間の星があるなんて知らなかったのれす。宇宙は広いれすねえ」

 向こうから光の塊が希美に近付いてくる。間もなく希美と衝突する。光の塊の
 正体は背の高いモデル体型の美女。

美女「気を付けろよ。・・・なーんだ、全然光らないバカもいるんだあ?」
  (希美を見下すように言う)
希美「なんらと?」(怒りを抑える希美)
美女「おまけにチビでガニマタで筋肉質で・・・お前みたいに不恰好な女が、よくも
   図々しく生きていられるものね。逝ってよし!」(偉そうに言う)
希美「・・・やかましい! 地球では光らなくて当然なのら。ののみたいな体型の
   アイドルらって沢山いるのら!」(八重歯をむいて怒る)
美女「そうはいってもね、この星ではお前なんて虫ケラ以下なのよ。羊や鶏にも劣るよ。
   まったく光らないチビなんてさあ」(さらに偉そうに言う)
希美「・・・そこを退くのれす。ぶっ飛ばすれすよ?」(怒りを抑えて静かに言う)
美女「え、わ、分かったわよ。ど、どくわよ」(希美の眼光に怯えて答える)

 希美、無言でホテルに向かって歩き出す。美女は捨て台詞を言う。

美女「お前みたいな不恰好な女は、二度とこの星に来るな!」

 希美、振り返ることなく静かに呟く。

希美「今度会ったら貴様を殺すのれす・・・」(腰のレーザー拳銃が鈍く光る)
88心貧しき者に、希美が吠える:2001/05/30(水) 16:03
 遠くに見える金粉のような光を見て、希美は呟く。

希美「あの光は街の灯りなんかじゃないのれすね。人間の体が光ってるのれす」

 高級マンションでパーティーをしている光る人間たち。路上に座り込んで震えて
 いる光らない人間たち。その様子を目の当たりにして、希美は心を痛めて呟く。

希美「きちんと光らない人間たちは、道路や橋の下の貧民窟での生活を強いられて
   いるのれす。・・・ただ見かけが悪いという理由らけで。金粉がちりばめら
   れて美しい星に見えたけろ、この星は地球より酷いところれすね」

 怒りの頂点に達した希美、思わず大きな声で言う。

希美「こんな星なんか一度ムチャクチャになって滅びてからやり直せばいいのれす!」

 希美に向かって、全身光っている警官が銃を構えて怒鳴る。

警官「おい、そこのお前。いまなんと言った? 逮捕してくれる!」(高圧的に言う)
希美「何を喋ろうと勝手れしょう?」(レーザー拳銃の照準を警官に合わせて答える)
警官「き、君は旅行者かね?」(希美の眼光に怯えて言う)
希美「そっちが銃なんて向けてくるから、危うくあんたをブチ抜くところれしたよ」
警官「あ、あのさ、旅行者みたいだから見逃してあげるよ。しゃ、喋る言葉には気を
   付けてくださいませ、ははは」(それだけ言って逃げ出す警官)
希美「大きなお世話れすよ」(銃をしまう)

 ホテルの玄関に入った希美、悲しそうに言う。

希美「なんて嫌な星なんれしょうね」(華やかなホールを歩く)
89名無し読者:2001/05/31(木) 06:55
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
90名無し娘。:2001/06/01(金) 01:18
保全
91名無し募集中。。。:2001/06/02(土) 16:33
保全
92名無しさん:2001/06/03(日) 12:06
保全
93名無し募集中。。。:2001/06/04(月) 22:47
続ききぼん
94名無し募集中。。。:2001/06/04(月) 23:06
http://hyper10.amuser-net.ne.jp/~auto/b5/usr/6666/brd1/bbs.cgi?email=&wtpass=

この掲示板すげーおもしろいよ!!!
95名無し募集中。。。:2001/06/05(火) 12:09
小学五年生のアイドル1番ていうまんがの表紙が
飯田鉄道になってるんだけどそれってこのスレを見たからじゃないよね?
あれは飯田鉄道の夜だよね?
96保全:2001/06/06(水) 10:44
保全
97保全:2001/06/07(木) 03:31
保全カキコ
98名無し娘。:2001/06/08(金) 01:02
保全しよう
99保全 :2001/06/09(土) 00:19

   。   。  パタパタ
 ((\\  //))
((\ ヽ ハヽ )) / ̄ ̄ ̄ ̄
 ((\( ´D`)<ほぜむん
   〜/っ/っ  \____
   ´u u
    *゜             *゜
    ゜*゜            *゜
     ゜・*゜・*.。.:.。.:*・゜
100泣いちゃった、腹減った:2001/06/09(土) 02:19
 部屋に戻った希美は、ベッドに座り、ヘッドホンで加護の歌を聴き始める。
 間もなく希美の頬を涙が伝い始める。圭織が心配して希美の横に来る。

圭織「辻、どうしたの?」
希美「あ、いいらさん・・・」(ヘッドホンを外す)

 立ち上がった希美、洗面台で顔を洗う。

希美「なんれもないれすよ、圭織しゃん」(顔をバシャバシャっている)
圭織「アイボンには会えたの?」
希美「へい。テープを預かって聴いたのれす」(顔を拭きながら答える)
圭織「テープ? ・・・そうか、あの子は歌手志望だったんだね?」

 希美、ベッドに座ってテープを愛しそうに胸に抱く。

希美「あんまり良い歌なのれ、つい不覚にもジーンときてしまったのれす」
圭織「そうか、辻。気に入ったら買ってあげる約束なんだね?」
希美「ふぁい」
圭織「で、どうするの?」
希美「もちろん買わせてもらうのれす。これは名曲れすよ。音楽好きで知られる
   宇宙海賊キャプテン・トゥンクも絶賛すると思うのれす」
圭織「良かったね、辻。きっとアイボンも喜ぶよ」
希美「へい。れも・・・アイボンの部屋にいた時、停電があったのれす」(暗い顔になる)
圭織「それじゃ、見たんだね。蛍のアイボンを・・・?」(悲しそうに言う)
希美「ふぁい。ののは気にしなかったれすけろ、アイボンはとても嫌がって・・・」
101泣いちゃった、腹減った2:2001/06/09(土) 02:24
 立ち上がった希美は窓の外の景色を、寂しそうに眺める。

希美「ろうして体の光り方なんかれ、人間の値打ちを決めるのれしょう?」
圭織「ここは見かけだけの美しさにこだわる見栄っ張りの惑星なんだよ」
希美「この綺麗な夜景は、虚栄心に満ちた愚か者たちが、精一杯外見を装って
   他人をたぶらかしているのれすね・・・」
圭織「辻・・・」(傷付いた希美の肩を包むように抱く)
希美「圭織しゃん、こうなったらヤケ食いして、嫌な気持ちを吹き飛ばすのれす!」
圭織「分かった、付き合うよ。ルームサービスで特製の揚げパンを注文しよう」

 運ばれてきた揚げパンを頬張る希美は涙ぐんでいる。

希美「ああ、おいしいのれす」
圭織「辻・・・」
希美「あの大都市の明かりも、アイボンたち光らない人たちには見えないのれす。
   なんて虚しい眺めなんれしょう。こんな星なんて・・・」
102はじめてのチュウ:2001/06/09(土) 03:06
 朝陽が差し込むホテル室内。よく眠っている希美と圭織。
 ドアをノックする音で、希美は目を覚ます。

希美「ふぁい、いま開けるのれす・・・」(目をこすりながら言う)

 希美がドアを開けると、そこには加護がいる。

加護「のの、おはよーさん」
希美「おっはー、アイボン」
加護「テープ聴いてくれはったか?」
希美「へい、最高れしたよ。買わせてもらうのれす」
加護「おおきに! 本当のこと言うとな、うち一文無しやったんや」

 希美は加護の手に二枚の金貨を握らせる。

加護「二枚もか? 助かるで〜」(ジャンプして喜ぶ)
希美「気にすることないれすよ、それだけの価値があるのれす。あと、このテープ
   もアイボンに返しておくのれす」(加護にテープを差し出す)
加護「そうか・・・のの。やっぱりテープを買うてくれるんやのうて、お金を恵んで
   くれるっちゅーわけなんやな・・・」(涙ぐんで言う)
希美「違うのれす! 約束どおりテープは、ののが買ったのれす。れもオーディションを
   受ける時には、やっぱりそのテープが必要らと思うのれす。最高の状態で勝負した
   方がいいと思うのれすよ。らから、いつかアイボンがデビューしてそのテープが用
   済みになったら、ののの元に送って欲しいのれす」(誤解を解こうと必死な希美)
103はじめてのチュウ2:2001/06/09(土) 03:19
希美「そうしたら、ののは必ずそのテープを胸に抱いて、宇宙のどこかのショップへ
   シングルを買いに行くれすから。そしてテープと一緒に、アイボンのことを思
   い出して、もう一度感動するつもりれすよ」

 希美、自分の泣き腫らした目を指差して、照れ笑いする。

希美「昨日の夜、アイボンの歌を聴いて泣いたのれす。恥ずかしいれすけろ、こんなに
   目が腫れてしまったのれすよ」
加護「・・・おおきにな、のの」

 加護はそっと希美と唇を合わせ、ホテルの廊下を去っていく。
 希美がベッドルームに戻ると、なぜか圭織がひとりで歌って踊っている。

圭織「ガガガ・・・KISSして髪をなでて KISSしてねぇ笑って!」
希美「ひーん、恐いのれすぅ!」
圭織「ナンダキミハ・・・」
希美「圭織しゃん・・・」
104名無し読者:2001/06/09(土) 06:49
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
105名無し募集中。。。:2001/06/09(土) 06:53
 立ち上がった希美は窓の外の景色を、寂しそうに眺める。

希美「ろうして体の光り方なんかれ、人間の値打ちを決めるのれしょう?」
圭織「ここは見かけだけの美しさにこだわる見栄っ張りの惑星なんだよ」
希美「この綺麗な夜景は、虚栄心に満ちた愚か者たちが、精一杯外見を装って
   他人をたぶらかしているのれすね・・・」
圭織「辻・・・」(傷付いた希美の肩を包むように抱く)
希美「圭織しゃん、こうなったらヤケ食いして、嫌な気持ちを吹き飛ばすのれす!」
圭織「分かった、付き合うよ。ルームサービスで特製の揚げパンを注文しよう」

 運ばれてきた揚げパンを頬張る希美は涙ぐんでいる。

希美「ああ、おいしいのれす」
圭織「辻・・・」
希美「あの大都市の明かりも、アイボンたち光らない人たちには見えないのれす。
   なんて虚しい眺めなんれしょう。こんな星なんて・・・」
106名無し募集中。。。:2001/06/09(土) 06:53
 部屋に戻った希美は、ベッドに座り、ヘッドホンで加護の歌を聴き始める。
 間もなく希美の頬を涙が伝い始める。圭織が心配して希美の横に来る。

圭織「辻、どうしたの?」
希美「あ、いいらさん・・・」(ヘッドホンを外す)

 立ち上がった希美、洗面台で顔を洗う。

希美「なんれもないれすよ、圭織しゃん」(顔をバシャバシャっている)
圭織「アイボンには会えたの?」
希美「へい。テープを預かって聴いたのれす」(顔を拭きながら答える)
圭織「テープ? ・・・そうか、あの子は歌手志望だったんだね?」

 希美、ベッドに座ってテープを愛しそうに胸に抱く。
107名無し募集中。。。:2001/06/09(土) 06:53
/   /从从      ワッショイかあ・・・
    /  /    人乂
   /  /      /人乂
  /   /     //  人乂                   |
  /   |   //       人乂乂                |
  |   |   ______  ___人乂乂___         |
  |    | /   , -―- 、\\_// , -―- 、  \       |
  |     | |   〈  〇 λ |┌┐|  イ  〇  〉   | |      |
  |     | |    `ー― ′ | |  | |   `ー― ´   | |   八   |
  | 八   | | 彡彡〃""゛゛ //  ヽヽ  ゛゛゛゛"″   | |   ノ |  |
  | | 从  \_____// 〃"  ヽヽ______//    ノ /  |
  | λ 从|    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄(      )  ̄ ̄ ̄ ̄   | 丿 /   |
  | λ  |          ヽ^`ー´^ ′          |_/   |
  |  \_|          〃                 |    /
  \   |            し              |
108ゴマキの近所男。:2001/06/09(土) 07:04
ウッチャンメーテルのがイイ!!
109名無し募集中。。。:2001/06/10(日) 18:27
保全
110名無し募集中。。。:2001/06/11(月) 17:03
保全
111永遠の命って・・・:2001/06/12(火) 03:04
 突然ですが、私のネタ書き込みは>>103(あと此処も)をもって終了させていただきます。
 またいつか何処か別の板で、この飯田鉄道ネタを大真面目に続けていければ
 いいんですが・・・。

圭織「親から子へ、子から孫へ。それが本当の永遠の命なんだよ、辻」
希美「へい。限りある命の中だから、生身の人間たちは一生という時間の中で
   精一杯頑張ると思うのれす。
   そうらからお互い優しさや思いやりが生まれるんらと思うのれす」
圭織「そうだね、辻。あんたのお父さんやお母さんの血が、あんたの体には流れて
   いるんだよ。辻の未来の子供に受け継がれて、そのまた子供へとずっと続い
   ていくんだ」

 感想の書き込みをしてくれた方、保全を続けてくれた方。どうもありがとうございました。
112名無し読者:2001/06/12(火) 07:16
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
113うわ!:2001/06/12(火) 10:35
終わっちまうのか!?
何でよ、何で何だよ!
ちょっと荒らされただけで凹んでるのか!!
甘ったれてんじゃねーよ! 荒らされてなんぼの小説スレだろうがよ!
先人達は平気の平左を貫いて今に名を残してんだぞ!
書き始めたらな根性入れて書きつづけろよ!
他板がどうのとか言ってるなよ。

待ってる。
114松本0時:2001/06/12(火) 16:43
〜その昔、あるアーティストは言った
 "夢は見なけりゃ始まらない"
宇宙のどこかには、そんな夢見る者の集う星があるという・・・

 希美は雪原を歩いていた。メガロポリスの明かりが遠くに見える。父が死んでから、低所得者のバラックが点在するこのあたりで希美は育ったのだった。
(今日はバイトの給料が入ったのれ、お母しゃんの大好きな京風湯豆腐をつくってあげるのれす)
 早く帰らなくては。そう思いながら足を早める希美は、一方で、何か恐ろしい記憶が蘇るようなおぼろげな予感を感じていた。そう、我が家に帰り着くまさにそのときに、とても大きな不幸に見舞われるような・・・。
115松本0時:2001/06/12(火) 16:44
 希美は不安に抗うようにひたすら歩いた。しかし、通い慣れた道のはずなのに、なぜかいつまでたっても我が家にはたどり着かない。
(お母しゃん・・・早くお母しゃんのところへ行かないと・・・)
"のの・・・"
ふと、希美を呼ぶ母の声が聞こえたような気がした。
「お母しゃん・・・どこにいるのれすか?」
"のの・・・ウチ、もう卒業するんや・・・。ウチがいなくてもしっかりがんばるんやで・・・”
「お母しゃん!行かないでくらさい!ののは・・ののはまだ・・・。」
ふと気がつくと、希美はかすかな列車の振動に揺られていた。
「起きた?なにかうなされていたようだけど・・・。」
 そういえば、いま希美はこの向かいの席に座っている長身の少女、飯田圭織とともに、アンドロメダ行きの銀河超特急999で旅をしていたのだった。機械の体をただでくれる星へ行くために・・・。
116松本0時:2001/06/12(火) 16:44
「夢を見ていたのれす。とても・・・とても悲しい夢だったのれす。」
「そう・・・。」
「夢は・・・楽しいほうが・・・いいれすね。」
「カオリもさ、夢は楽しいほうがいいと思うんだよねー。でもさ、悲しい夢は悲しい夢でちゃんと意味があるっていうか、・・・」
 希美はまだ寝起きということもあり、圭織の話はあまりよくわからなかったが、なぜか言いたいことは伝わってくるような気がした。
「・・・ってことなんだ。そうそう、次に停まる星はね、夢見る人がいっぱいいる星なんだよ。」
「どういうことれすか?」
「うーん、辻が自分で見てみればわかるんだけどなー。」
117松本0時:2001/06/12(火) 16:46
「次の停車駅は〜花畑〜花畑〜。停車時間は〜23時間38分だぴょーん。」
最初から馴れ馴れしかったハイテンションの車掌矢口がそう告げ、列車は緑の多い惑星に降りていった。
「ここはのどかな星れすね。駅の周りはずっと草原れすよ。でも・・・ウンコ臭いれすね。」
「ここはねー、星全体が牧場なんだー。」
「そうなんれすか。あ、あれは!!幻のアロエヨーグルトの屋台じゃないれすか!?」
「たべてみよーかー?この星は農産物が豊富だから、合成じゃない本物のアロエヨーグルトだよー。」
「そ・・・それはすごいのれす!」
118松本0時:2001/06/12(火) 16:59
 希美はアロエヨーグルトを前にすると、キャラが変わったようだった。圭織は、
「飯田鉄道がくれるお金だから存分におかわりしていいよ」
とは言ったものの、
「昔、松村しゃんにも勝ったのれす」
などと言いつつひたすら食べ続ける希美を前にして、さすがに呆気にとられていた。
 しばらくやることのない圭織は、駅前広場で歌をうたっている3人の少女をぼんやりと見ていた。
・・・もしかして〜
   こういうの〜
    ささいな幸せです〜か〜
その少女たちの歌は、そこそこのレベルには達していたが、彼女たちの歌に足を止める者は少なかった。
119松本0時:2001/06/12(火) 18:08
「・・・らさん!いいらさん!」
圭織はいつのまにか交信モードに入っていたらしい。
「やっぱりののには贅沢はできないのれす。腹八分目でやめておくのれす。」
圭織が振り向くと、希美は大量の空の器を前にして言った。
「あのひとたち、いっしょうけんめいうたっているのに人気がないれすね。」
「うーん、ここは強敵が多いからねー。周りをみてごらん、たくさんの人が芸をみせてるでしょー。」
駅前広場には、至る所に人だかりができていた。
 黒ずくめのサングラスの男は、コップに手をかざして念を込めたかと思うといきなりそこからレモンを取りだして喝采を浴びていた。その向こうでは、プレハブの小屋の中で学生服にはちまきの男と頭の良さそうな女が缶詰めになって、大学受験を目指していた。
 そのほかにも、顔を白く塗って和服にちょんまげの男が「あい〜ん」などとコミカルな仕草をしていたり、屈強な男たちが足ツボマッサージに挑んでいたりと、ありとあらゆるパフォーマンスが行われていた。
「この星はね、酪農組合長のヨシタケってひとの呼びかけで、『半農半芸』の活動が盛んなんだよ。みんな普段は牧場なんかで働いていて、暇を見つけてはこうやって芸を披露してるの。」
120松本0時:2001/06/12(火) 18:58
「みんなすごいれすね。でも、ののはあの3人の女の子達の歌がとても気になるのれす。なんだか、蛍の星で出会ったアイボンを思い出すのれす。」
「うん。ちょっと聴きに行こうか。」
"・・・次は本日最後の曲『北海道シャララ』。私たちがとっても大事にしている曲です。・・・"
3人の少女達がうたい始めた。懐かしいような、悲しいような、心に響く歌・・・。
 希美は、まだ幼かった頃を思い出していた。父と母と3人で暮らしていた頃を。小さく粗末な家だったが、周りは森と田園に囲まれていて、家族はいつもあたたかな空気に包まれていた。
 父はよく言っていた。
"人間のくらしは機械のおかげでとっても便利になった。でもなあのの、人間も自然の一部なんだ。たとえ不便でも、自然との関わりを持たなければいつか滅びてしまうんだよ・・・"
 この星の景色は、なんとなくそのころの希美の住んでいた村を思い起こさせる。歌が終わると、希美と圭織は大きな拍手を送った。相変わらず周りに人は少なかったが、誰もが2人とおなじように惜しみない拍手を送っていた。一人の身なりのよい男が歩み出て、「よくやった!感動した!!」と、40kgはあろうかという花束を渡した。
 希美と圭織も駆け寄って握手を求めた。
「いい歌だねー。」
「ののもうるうるしてしまったのれす。」
121松本0時:2001/06/12(火) 19:43
 3人は、りんね、あさみ、梨華と名乗り、『カントリー娘』というグループなのだという。"午後は牧場の仕事があるから"と言って彼女たちは去っていった。
「はやく人気が出るといいれすね。きっとそうなるのれす。」
「そうだねー。」
「そろそろお昼ごはんの時間れすね。」
「えっ!?(さっきのアロエヨーグルトは別腹かい!)」
122松本0時:2001/06/12(火) 19:44
 昼食の後、希美は圭織を引っ張るようにしていろいろなところを歩いて回った。
「カエルがいたのれす」
「馬に乗せてもらうのれす」
圭織がこんなにはしゃぐ希美を見るのは初めてである。
「今日の宿はここよー。」
「『民宿とかち』れすか。なんだか牛舎みたいなところれすね。」
「そうだよー。ここはね、もともと牧場で、牛舎を改造して民宿にしてるの。」
玄関で声をかけると、一人の見覚えのある少女が出てきた。
123松本0時:2001/06/12(火) 19:45
「いらっしゃいませ。あ、あなたたち、昼間の!」
「辻希美れす。ののって呼んでくらさい。」
「私は飯田圭織。カオリンって呼んでー。」
(カオリン?)希美とあさみは、一瞬『えっ!?』と言う顔をしたが、すぐに立ち直った。
「あさみさん!なんでここにいるんれすか?」
「私たち、ここで働いてるんだよー。りんねちゃんと梨華ちゃんもいっしょだよ。ののちゃんとカオリンさんはここに泊まるんだ。偶然だねー。あ、でも民宿やってるのってここだけなんだけどねー。」
124松本0時:2001/06/12(火) 20:13
"いしかわぁ〜。そんなことじゃ〜カントリー娘。になれね〜ぞ〜っ。"
"まあまあタカさん・・・"
奥の方がなにやら騒がしいようだ。
「今ね、梨華ちゃんが鶏の世話を教わってるんだけど・・・。」
「うまくいってないのれすか?」
「うーん・・・梨華ちゃんは鳥が苦手だからね。それにね、梨華ちゃんは普段ここの仕事してるわけじゃないの。今だけの助っ人だから。」
「そうだったんれすか。みなさんの仕事って大変なんれすね。」
「よければ見学できるよ。今から乳搾りもやるし。」
「見たいのれす!」
「見せてー!」
125松本0時:2001/06/12(火) 22:42
 鶏小屋の前では、りんねが落ち込んでいる梨華を慰めていた。
「梨華ちゃん元気出しなよー。ナカイさんなんて、いまだに牛にビビッてるんだよー。」
「う・・・うん。ポジティブポジティブ・・・」
「ねえねえ、お客さんだよー。」
あさみが希美と圭織を紹介すると、りんねは
「わー!来てくれたんだー!」
と大喜びした。あさみは『偶然泊まりに来ただけだよ』と言いたそうだったが、結局言わないことに決めたようだった。落ち込んでいた梨華も、
「わざわざ会いに来ていただけるなんて、感激です。」
と、元気が出たようだった。
「乳搾り始めるよー。梨華ちゃんも初めてなんだよね。」
あさみが促し、みんなで牛舎へと向かった。
126松本0時:2001/06/12(火) 22:44
「ののは乳搾りしたのは初めてだったのれす。」
「カオリはね、あのフリスビー犬すごいと思ったよー。」
すっかりカントリー娘。達と意気投合した希美と圭織は、夕食の席でもずっと前からの仲間だったかのように会話に花が咲いた。
「私、いつもネガティブ思考なんですよ。今度の曲も、私のパートがなかなかうまくいかなくて、いつも悩んでるんです。」
そう話す梨華に比べて、りんねは底抜けにポジティブなようだった。
「大丈夫っしょ。今度の曲は自信あるんだ。きっと初登場1位だよ。紅白出れるかもね。」
「それはおおげさだよ。」
あさみがおさえたが、りんねはさらに暴走した。
「でもさあ、梨華ちゃんのすきな『ふるさと』だって、あの鈴木あみと堂々と勝負したっしょ。私たちの『初めてのハッピーバースディ!』だって、倉木麻衣に勝てるよ。」
127松本0時:2001/06/12(火) 22:45
「でも『ふるさと』は・・・」
希美は出かかっていた言葉をしまい込んだが、圭織が言ってしまった。
「『ふるさと』は負けたよー。くやしかったさー。」
なぜかその言葉には力がこもっていた。
 妊娠した牛の世話当番だとかでりんねが席をはずすと、あさみがぽつりと言った。
「りんねさんも、ああ見えていろいろつらいことあったみたいよ。カントリー娘。の仲間を事故で亡くしたり、もう一人の仲間も抜けて一人だけになったり。売れない時期も長かったし・・・。」
「いろいろあるのれすね・・・。」
128松本0時:2001/06/12(火) 22:46
 その夜、干し草のにおいのするベッドで希美がうとうとしかけた頃、窓の外で声がした。
"おーい、みんな来てくれー。今夜来そうだぞー。"
窓から身を乗り出して声のしたほうを見てみると、大勢の人が牛舎へ走っていくのが見えた。カントリー娘。と梨華の3人も走っていった。
「なんれしょうか?行ってみるのれす。」
熟睡している圭織を残し、希美は牛舎へと行ってみた。
129松本0時:2001/06/12(火) 22:47
"そら、がんばれ"
"まだまだだな"
1頭の牛の周りに集まった人たちが、忙しそうに作業している。
「りんねしゃん、生まれるんれすね。」
「うん、そう。でも逆子で、とっても危険な状態なんだぁ。」
130松本0時:2001/06/12(火) 22:47
 子牛の足に結わえたロープを引く手伝いだけはさせてもらったものの、希美にはどうすることもできなかった。牧場のスタッフの必死の努力の甲斐なく、母牛から引き出されたとき子牛はぴくりとも動かず、ついに呼吸を始めることはなかった。もう東の空は明るくなりつつあった。いつの間にか圭織もそばへ来ていた。希美たち5人の少女をはじめ、何人もの目から涙がつたっていた。
「悲しいけど、こういうことはこの先何回も訪れるんだよ。それに、牛たちだってペットじゃないからね、いつか食肉にまわすときだってくるんだよ。」
いつも明るかったりんねが寂しそうに言った。
131松本0時:2001/06/12(火) 22:48
 牧場の人たちとともに子牛の埋葬に立ち会った希美と圭織は、999の停車する花畑駅のホームにいた。りんね、あさみ、梨華の3人は特別に牧場の仕事を抜けさせてもらい、見送りに来てくれた。
「発車だよ〜」
車掌の矢口が叫んだ。
「梨華しゃん」
別れ際に、希美はふと、何かを思いだしたように呼びかけた。
「梨華しゃんはウンコ・・・いや・・・なんでもないのれす・・。」
 この星に来てからというもの、希美の頭の中ではウンコがぐるぐるまわっていたのだった。
132松本0時:2001/06/12(火) 22:49
「それより、みなさん、きっと・・・きっとうまくいくのれす。ののは信じているのれす。
「カオリもねー、ぜーったいに人気出ると思うよー。なんていうのかなー、曲から出る電波っていうのかあ、・・・」
圭織の話は長かったが、みんなはよくわからなかった。
「ののが前にたずねた星で出会ったアイボンって言う子も、めぐまれない境遇で、歌手を目指してがんばっていたのれす。ののは、アイボンもみなさんも応援しているのれす。そしてののも、まだなにをやるのかわからないけど、がんばるのれす。」
133松本0時:2001/06/12(火) 22:50
 汽笛のあと、機関車はゆっくりと999を加速させていった。手を振る3人が、どんどん遠ざかり、緑の牧場が広がる大地は、だんだんと青くかすんでいった。周囲が次第に濃紺色に浸食されていき、いつしか漆黒の宇宙の中に浮かぶ青い惑星花畑となり、それもだんだんと小さくなっていった。
「この星は生命にあふれていたのれす。なんだか、『人生ってすばらしい』と思えたのれす。」
発車のあとしばらく黙っていた希美が言った。
134松本0時:2001/06/12(火) 22:52
「じゃあ、機械の体はもうほしくなくなった?」
圭織が尋ねると希美はしばらく間をおいたあと答えた。
「生身の体の寿命なんてあっという間なのれす。だから、悲しい別れもたくさん経験しなければならないのれす。お父しゃんやお母しゃんが死んだとき、ののはとっても悲しかったのれす。みんなが機械の体なら、悲しみを経験せずにすむのれす。でも・・・」

 圭織はあえて話しかけなかった。アンドロメダまではまだまだ遠い。希美にはまだ考える時間は豊富に残っている。そして、いずれ知ることになる真実も・・・。

〜『カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)』の名で出された曲
「初めてのハッピーバースディ!」の歌詞に、次のようなくだりがある。
"初めて迎えるあなたのバースディ
もしかして こういうの些細な幸せですが
もしかして こういうの本当の幸せですね"
 長くても100年ほどしかもたず、年々老いていく生身の体をもつ今の希美にとって、誕生日を迎えることは大きな意味を持つ。
 機械の体を手に入れ、老いや死から解放されれば、一年の持つ意味は遙かに軽くなるだろう。
 はたしてそれは希美にとって幸福なことなのだろうか・・・。
希美にはまだわからなかった。

第二部 ののの牧場ものがたり 完
135名無し読者:2001/06/13(水) 07:00
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
136松本0時:2001/06/13(水) 14:54
「次の停車駅は〜大漁旗〜大漁旗〜。停車時間は〜25時間だよ〜」
車掌の矢口が、けたたましい声で告げた。
「"たいりょうばた"なんて、めずらしいなまえの星れすね。」
「ここはねー、とっても海が多くて、漁業が盛んな星なんだよー。だから星全体が青っぽいでしょー?」
「・・・なんだか茶色っぽいのれす。」
「!?・・・おかしいなー。前来たときはこんなじゃなかったんだけどなー。」
 列車が高度を下げていくと、徐々に地面が見えてきた。
「ここはなんれすか?水たまりが多くて、草も木もなくて、・・・。」
「ここは確か海だったはずよー。どうしちゃったんだろーねー!?」
137松本0時:2001/06/13(水) 14:54
 駅に降り立つと、希美たちは異様な臭気に包まれた。
「く・・・くさいのれす。磯のかおりを最悪にしたみたいなにおいなのれす。」
「海だったところからにおってくるみたいねー。たぶんねー、魚とか海草とかが腐ったにおいだよー。水がなくなったからねー。」
「ののは耐えられないのれす!列車にもどるのれす!!」
「むだだよー。もうバリヤーは切られてるから、列車の中もおんなじだよー。」
「じゃあ、ののは・・・ののはここでしぬかもしれないのれす・・・。」
138松本0時:2001/06/13(水) 14:55
「だいじょーぶだよー。前に本で読んだんだけど、人間の感覚で一番慣れやすいのって、においなんだって。たとえばさー、辻がトイレでウンコしたとするでしょー。でもさー、そのときってあんまりウンコのにおいって気にならなく無い?それってねー、鼻がにおいに慣れてるからなんだよー。」
「またウンコネタれすか・・・。でも・・・だいぶ慣れてきたのれす。」
139松本0時:2001/06/13(水) 14:56
 そこは寂れた漁村だった。駅前には商店が並んでいるが、いずれもシャッターを閉ざしている。
「わりとにぎやかな街だったはずなんだけどなー。」
「ひとが一人もいないのれす。」
路地にも、魚市場の大きな建物にも、全く人影は見えず、死んだ魚を引きずる猫やかもめばかりが目についた。
「あ、ここが今日の宿だよー。」
圭織が指さした建物には、『船宿 吉澤丸』と書かれた、錆びかけのトタンの看板が掲げられていた。
140松本0時:2001/06/13(水) 14:57
「さいきん、そぼくな宿ばかりつづいているのれす。」
「辻はこういうところは苦手?」
「そんなことないのれす。ののはこういうところのほうがおちつくのれす。」
そのとき、宿のほうから声がした。
「あ、お客さん?いらっしゃいませ。」
応対に出てきたのは、圭織ほどではないが背が高く、顔立ちはととのっているものの地味な印象を受ける少女だった。
141松本0時:2001/06/13(水) 14:58
 客室に案内された二人は、少女に尋ねてみた。
「ところでさー、街に全然人がいないんだけどなぜなのー?」
「この星にいるのは私たちだけなんです。今、海が干上がってるでしょう?いままでこの星には小さな島しか無かったけど、今回、海の水を抜いて、水の少ない星に売るそうです。そして、増えた陸地を大規模に開発して、大きな都市にする予定なんだそうです。だから、今営業しているこの宿以外の人たちは、新しい街ができるまで一時隣の星に移ってるんです。それに、今日はうちの両親も開発会社の説明会で留守だし。」
142松本0時:2001/06/13(水) 14:59
「すごいれすね。地球のメガロポリスみたいな大都会になるのれすね。」
「そっかあー。それで海がなかったんだー。あ、自己紹介してなかったねー。私は飯田圭織。カオリンって呼んでね。」
「わたしは辻希美といいます。ののって呼んでくらさい。」
「私は吉澤ひとみ。みんなからは『とみ子』とか『よっすぃ〜』って呼ばれてます。」
143松本0時:2001/06/13(水) 15:01
「じゃあよっすぃ〜、よろしくー。」
「よろしくなのれす。」
「・・・よろしく」
ひとみが奥にさがると、希美がつぶやいた。
「よっすぃ〜・・・なんだか元気ないのれす。(それに、『カオリンってよんでね』といわれて、まったくふきださなかったひとはめずらしいのれす・・・)」
「そうかなー。もともとクールな子なんじゃないのー?見た目もそんな感じだしー。」
144松本0時:2001/06/13(水) 15:02
 その夜、希美は風呂から上がると、業務用のクリーナーで床を磨いていたひとみに声をかけた。
「いいお風呂だったのれす。いいらさんももう済んだのれ、次はよっすぃ〜が入るといいのれす。」
「あ、どうも・・・」
そのとき、宿の黒電話のベルが鳴った。
「はい、民宿よしざ・・・あ、お父さん!・・・うん・・・え?・・・」
ひとみの表情が見る間にこわばっていく。
「・・・そんなの・・・そんなのずるすぎるよ!・・・どうにもならないの?・・・うん・・・」
145松本0時:2001/06/13(水) 15:02
 電話を終えたひとみに、希美は話しかけてみた。
「なにかあったのれすか?」
「お父さんからの電話でね、開発会社の人、説明会に来なかったんだって。事務所ももぬけの殻なんだって。まだ補償金のことも決まってないのに・・・。それにね、以前の説明では、海の水を45%だけ持っていくはずだったのに、もう80%も減ってるんだって・・・。」
「そういえば、うちゅうから見たとき、海はほとんどなかったのれす。」
「なんで・・・なんで・・・くそっ!」
ひとみはそばにあったソファーを蹴飛ばした。希美はその迫力にかなりビビった。
「私はね、元からこの計画には反対だったんだ。私、小さい頃から海がすきだったんだ。よく友達とナマコを投げ合ったりして遊んでたんだよ。よく親に連れられて海の仕事もしてきたし。海がなくなってビルばっかりの都会になっちゃうなんて絶対に嫌だよ・・・。」
146松本0時:2001/06/13(水) 15:03
「なるほどねー。ところで、この星の海の水って、いまどこにあるの?」
いつの間にか、圭織も話を聞いていたらしい。
「山一つ越えたところに、宇宙タンカーがたくさんならんでるんだけど、いまのところ一隻も飛び立っていないから、ぜんぶそこにあるはずだよ。」
「やっぱりねー。海が干上がったのはわりと最近みたいだから、まだ近くに残ってると思ってたんだよねー。」
圭織は不敵な笑みを浮かべた。それを見た希美は再びビビった。
「今からそのタンカーをぶっ壊しに行こー。そうすれば、開発会社のいままでの苦労は全部パー。しばらくはこんな大事業はできないはずだよー。」
147松本0時:2001/06/13(水) 15:04
 1時間後、3人は、街で失敬した軽トラに乗って山道を走っていた。2人乗りなので、希美は荷台に乗ると言ったのだが、ひとみがむりやり勧めて膝の上に載せてくれた。圭織の運転はかなり危なかった。
「カオリ免許ないんだよねー。」
と聞かされたときはすでに目的地に着いたあとだった。希美とひとみはすでに十分消耗してしまっていた。
148松本0時:2001/06/13(水) 15:04
 宇宙タンカーは、惑星一つの海水をたったの15隻に載せてしまうだけあって、ものすごく巨大だった。
「大きいねー。富士山くらいあるかなー?」
「もっと大きそうれすよ。上は宇宙にまで届いているみたいれす。」
「飯田さん、こんな大きいのをどうやってぶっ壊すの?」
「ネジをゆるめちゃえばいいんだよー。」
圭織があまりにも簡単に言ってのけるので、希美とひとみは一瞬、圭織の頭のネジのほうを心配した。
149松本0時:2001/06/13(水) 15:05
 なぜだかわからないが、圭織は宇宙タンカーに異様に詳しかった。早速セキュリティーを解除し、難なく侵入した。船内のエレベーター、リニアトロッコなどを使い、すんなりと目的のネジにたどりついた。
「このハンドルを回せば、水タンクの壁のネジが取れるんだよー。今はまだ全部のタンカーがパイプでつながってるから、これさえゆるめれば海の水は全部もどるはずだよー。それっ・・・うーん・・・固くて回らないねー。」
「3人で回せないかな?」
「持つ場所が小さくて、一人しか無理みたいれす。なにか機械がないと無理なのれすかねー?」
150松本0時:2001/06/13(水) 15:06
「私、やってみる。」
ひとみは力強く言うと、ハンドルをがっちりとつかんだ。
「じゃあ行くよ。ふんっ・・・」
ひとみが力を込めるとゆっくりとハンドルは回りだした。
「がんばれよっすぃ〜!」
「すごい・・・すごいのれす!よっすぃ〜はちからもちなのれす!」
151松本0時:2001/06/13(水) 15:07
 一旦ゆるんだハンドルはどんどん回され、ネジはもう少しで抜けそうになった。そのとき、希美はとても重大なことに気づいた。
「ちょっと!ちょっとまってくらさい!いまこのネジをはずすと、この下の壁がはずれるんれすよね?これって一辺何十kmもあるようにみえるのれす。こんなのを外して、一気に水が出てきたら、おおつなみになるんじゃないれすか?」
すると、圭織は得意げに言った。
「だいじょーぶだよー。カオリはねー、こういうの慣れてるんだからー。さっき飯田鉄道に言ってね、軌道バリヤーをこの星のもともとの陸地全体に広げてもらったんだー。さあ、もう少しではずれるよー。」
こういうのに慣れてるって?それに飯田鉄道にそんなコストのかかることをあっさり頼めるなんて・・・。希美が以前から感じていた、圭織の正体に関する謎はさらに深まった。
152松本0時:2001/06/13(水) 15:08
「あ・・・朝れすね・・・」
希美が目を覚ました場所は、軽トラの助手席だった。車は宿の3件隣の民家の壁に突っ込んだ状態で停まっていた。そういえば、帰りも圭織の運転で、あまりの恐怖に途中から気を失っていたらしい。
「いいらさん・・・よっすぃ〜・・・どこれすか?」
「う・・・うーん・・・」
希美の頭の後ろで声がした。そういえば、帰りもひとみの膝の上に乗ったのだった。
「よっすぃ〜・・・ケガはないれすか?」
「大丈夫みたい・・・。」
153松本0時:2001/06/13(水) 15:10
 ひとみの腕は、希美を抱えたままだった。
「最後までののを離さなかったのれすね。おかげでののもケガはないのれす。ありがとうなのれす。」
「そんなことないよ〜。シートベルトとエアバッグのおかげだよ〜。それより飯田さんが見あたらないよ。」
運転席はカラで、フロントガラスには大きな穴があいていた。
「いいらさん・・・ぶつかったショックでとばされたみたいなのれす。」
154松本0時:2001/06/13(水) 15:11
「カオリねー、家の反対側まで突き抜けちゃってたよー。」
圭織が笑いながらひょっこり現れた。
「無事でよかったのれす!いいらさん・・・やっぱり機械の体なんれすね?」
「さあねー。」
「辻ちゃーん、機械の体ってなーに?アニメみたいだね。それにしても飯田さんよく無事だったね。よっぽど丈夫なんだね。」
こののどかな星には、機械の体のことはまだ知られていないらしい。
155松本0時:2001/06/13(水) 15:12
 3人は海の上にいた。ひとみがどうしても漁船に乗せてあげたいというので、水が戻ったばかりでまだ土色をした海に出てみたのだ。ひとみは、きりりと鉢巻きを締めて舵を握っていた。
「よっすぃ〜げんきになったのれす。とってもりりしいのれす。」
「うーん。昨日会ったばかりの時とは別人みたーい。男前だよねー。」
ひとみは船をとめ、錨を降ろした。
「まだ魚はあまりいないと思うけど、ちょっと網でも引いて見ようよ。」
言うが早いか、ひとみは慣れた手つきで網を用意し、海へ向かって投げた。網はきれいに広がって水面を叩いた。
「3人で引っ張るよ。せーの!」
網は重かったが、入っているのは流木や海藻の切れ端ばかりだ。しかし何回目かに引いたとき、網の中でバシャバシャと跳ねるものがあった。
156松本0時:2001/06/13(水) 15:14
「あ、さかななのれす!おおきいのれす!」
3人で必死に網を引くが、その大きな魚は激しく暴れ、なかなか引き上げることができない。
「ふたりともしっかり網を押さえててよ!」
ひとみはそう言うと、そばにあった銛をつかみ、獲物に狙いを定めた。
「えいっ!」
銛は正確に的を射抜いた。ひとみは刺し貫かれた1.5mはあろうかという魚を甲板に引き上げた。
「おぉっ!かっけー!!(かっこいい)。これはメカジキっていうんだよ。刺身がうまいんだけど、この泥水じゃどうかな。」
「よっすぃ〜・・・とってもかっこいいのれす。」
「カオリもねー、よっすぃ〜には惚れたよー。」
157松本0時:2001/06/13(水) 15:15
 別れの時が来た。
「カオリねー、網引いたの初めてだったんだー。とっても楽しかったよー。」
「漁師鍋も、とってもおいしかったのれす。」
「私のほうこそ。この星を救ってくれて、本当にありがとう!」
「あれはねー、よっすぃ〜と辻と私の共同作業だよー。」
999の汽笛が鳴った。
「さあ、おきゃくさーん、早く乗らないと置いてっちゃうぞー。」
「あ、矢口さん!この前はお世話になりました。」
「キャハハー、なんのなんの。」
158松本0時:2001/06/13(水) 15:16
「車掌さんはよっすぃ〜と知り合いだったんれすか?」
「しりあいってゆーかねー、よっすぃ〜はわたしの弟子みたいなもんかな?」
「ふーん、そうなんだー。じゃあね、よっすぃ〜、元気でね。海も街もすっかり元通りになったころ、また来るからねー!」
「きっとなのれす!」
「うん!待ってるよー!」
159松本0時:2001/06/13(水) 15:17
 手を振るひとみはどんどん小さくなっていった。よみがえったばかりの海が、午後の光に照らされてきらきらと金色に光っていた。
「ののは都会になるっていうことはいいことばかりなのだとおもっていたのれす。でも、よっすぃ〜はいまのままのせいかつのほうがずっと生き生きとしているのれす。ののも、よっすぃ〜のまちのほうが、メガロポリスよりもずっとすきなのれす。」
「そうねー。カオリもさー、都会は暮らすところっていうよりは、なにかをしに行くっていうのかなー、都会のほうがいろんなものを売ってるし、いろんな情報が入るんだけどさー、でもさーやっぱり・・・」
希美は昨夜の疲れが出たせいか、圭織の話を最後まで聞かぬうちに眠ってしまった。希美と圭織を乗せ、999は、虚空の宇宙へと再び旅立った。

第三部 よっすぃ〜の大漁旗 完
160名無し募集中。。。:2001/06/13(水) 16:00
松本0時面白い!
応援sage
161松本0時:2001/06/13(水) 20:19
 惑星アサヤンの宇宙駅へと降りていく999号は、大きなモニターや色とりどりのネオンのついた高層ビルの間を縫うように進んでいた。
「わー、にぎやかなまちれすね。まるでまちじゅうが遊園地みたいなのれす。」
「ここはね、映画産業と音楽産業がとっても盛んなんだよー。宇宙のいろんなところから、歌手とか俳優になりたい人が集まってきてるんだよー。懐かしいなー。」
「いいらさんもなにかをめざしてここに来たことがあるんれすか?」
「ピピーガガー・・・いまカオリなにか言った?」
162松本0時:2001/06/13(水) 20:19
(おっと・・・また聞いてはいけないことを聞いてしまったみたいなのれす。こういうときには話題をそらすのれす)
「あ・・・あんなところにひとがたくさんあつまっているのれす。」
「あれはねー、たぶんオーディション会場だよ。ここではねー、毎日のようにオーディションがあるんだよー。」
「そういえばアイボンもオーディションを受けるといっていたれすね。駅についたら見に行ってもいいれすか?」
「もちろんだよー。カオリもすっごく見に行きたいしー。」
163松本0時:2001/06/13(水) 20:20
 オーディション会場の野外音楽堂は、ものすごい人だかりだった。座席券を持たない希美たちは、外からのぞくしかなかったが、舞台の様子は周囲にいくつも設置された巨大なモニターにも映し出されているので、十分に伺い知ることができた。
「ののくらいのとしのおんなのこもいるのれす。みんなすごくうまいれすね。」
「うーん・・・オーディションかあ・・・。」
圭織は何かの想い出にひたっているようで、口数が少なかった。
164松本0時:2001/06/13(水) 20:20
"それでは、第14回女性ロックボーカリストオーディション、三次予選通過者は次の方々です!"
「うーん・・・誰かなー?」
「みんなレベルが高くて、ののには全然わからないのれす。でも、あの茶髪のひとは特にうまかったのれす。」
「後藤とかいう子ねー。うまいとは思うんだけどねー、カオリはあんまり・・・。」
 希美にも、圭織の思っていることは何となくわかった。しかし、はっきりした言葉にはまだならなかった。
165松本0時:2001/06/13(水) 20:21
 オーディションでは、その後藤真希という少女を含む4人が決勝へと進んだ。結果を見届けた二人はホテルに荷物を置いて街へ出てみた。路上では、弾き語り、コント、演劇など、ありとあらゆるパフォーマンスが行われていた。
「ここはほんとうにすごいまちなのれす。みんな、とってもうまいし、とってもたのしそうなのれす。」
「そういう人ばかり集まってくるからねー。あ、あそこ歩いてるのって、オーディションに出てた後藤って子じゃない?」
 希美が圭織の指さす方を見たとき、その少女が手に持っていた封筒がぽろりと落ちて、雑踏の中に紛れてしまった。
166松本0時:2001/06/13(水) 20:21
「なにかおとしたのれす。ひろってあげるのれす!」
背の低い希美は、人々の足もとに分け入って封筒を拾うと、落とし主の少女に駆け寄って声をかけた。
「これをおとしたのれす。」
「んあ・・・ああ、ありがとう。でもどうせいらないんだけどね。」
「ちょっとあんた!」
そのとき追いついてきた圭織が口を挟んだ。
「これって、今日のオーディションの書類じゃないの!大事なものなんじゃないの!?」
「・・・明日はどうせ行かないから。」
「あんたねー!どういうことよ!カオリは・・・カオリはねー!・・・」
167松本0時:2001/06/13(水) 20:22
 ホテルの部屋で、圭織はむくれていた。
「なにもあんなところで大声で泣き出さなくたっていいじゃないの!カオリはすっかり悪者扱いされちゃったよー。」
「本当にいいらさんもこわかったれすよ。」
「カオリはねー、当然のことを言っただけなんだよー。あの子、せっかく合格したのにあんないい加減な態度で!」
「ひとそれぞれれすよ。今日はじめて会ったんれすから、いきなり言ってもわかってもらえないことはあるのれす。」
そうは言ったものの、希美にもあの後藤という少女のことは非常に気になっていた。
(アイボン・・・アイボンならどうするんれすか?)
168松本0時:2001/06/13(水) 20:22
「ちょっと出かけてくるのれす。」
「もう夜だから気をつけてね。」
希美は、ある決意を胸にホテルを出た。
169松本0時:2001/06/13(水) 20:23
 とあるミュージックスクールでのレッスンを終えた真希は、出口で待つ一人の少女を見つけた。
「あなたは・・・昼間の・・・。」
「辻希美れす。」
「あ・・あの・・・何か用なの?」
「うーん・・・後藤しゃんとお話ししたいなって・・・。」
「ああ、明日のオーディションには行くよ。合格したんだから。」
「でも、本当はいやなんじゃないれすか?」
「・・・」
「今日の予選の歌を聴いておもったのれす。後藤しゃんはいま、歌がきらいなんれすね?」
「・・・辻ちゃん・・・。」
170松本0時:2001/06/13(水) 20:23
「汚くしててごめんね。」
 希美は、真希のアパートに招かれていた。
「何でわたしがあのスクールにいるってわかったの?」
「昼間拾った封筒に、ごとうしゃんの名前と一緒にスクールの名前がかいてあったのれす。それより・・・、ののを追い返さないでいてくれてありがとうなのれす。ずうずうしいってことはわかってるのれす。でも、ののは後藤しゃんの歌がすきで、でもののがすきな後藤しゃんの歌はほんとうはあんなものじゃないって・・・そうおもうんれす。」
「ありがとう辻ちゃん。でもね、ごっちんの歌はあんなものかもしれないよ。今でもねえ、手抜きをしているわけじゃないんだよ。今のごっちんにはねえ、どうしても・・・自分にとって歌がなんなのかわからないんだ・・・。」
171松本0時:2001/06/13(水) 20:24
「ごとうしゃんは何でいま歌をならってるんれすか?」
「うーん・・・ごっちんはねえ、歌ならわりとうまくできちゃうんだ。人前に出ても、歌だったら何だか知らないけど落ち着いてうたえるんだ。」
「ごとうしゃんは才能があるのれす。もったいないのれす。・・・今から・・・ののの遠い星のおともだちのはなしをするのれすけど、ののはべつにごとうしゃんにその子たちのことをみならってほしいとかいいたいのではないのれ、気楽にきいていてもらえますか?」
 真希がうなずいたので、希美は今までの旅で出会ったアイボンや、カントリー娘。と梨華や、よっすぃ〜との想い出を語った。
172松本0時:2001/06/13(水) 20:24
「・・・なんていうことがあったのれす。」
希美が語り終え、ふと真希を見ると、さっきまでの疲れたようなやる気のない表情は消え去り、何か新しい目標を見つけたようにかがやいて見えた。
「・・・歌で・・・だれかに伝える・・・か・・・。昼間辻ちゃんと一緒にいた怖い人・・・飯田さんっていったっけ?そのひとの言っていたことも、今ならわかるような気がする。歌っていうのは、うまくなるために歌うんじゃないんだ。伝えたいことを、大事な人に歌にして伝えるってことなんだ・・・。」
「ごとうしゃん・・・ののは、自分がごとうしゃんに言いたいことがなんなのか自分でもわからなかったのれすが、いまのごとうしゃんの話で、やっとわかった気がするのれす。いいらさんもいま喜んでいるのれす。」
「飯田さんが?」
真希の部屋のドアの外でかすかに物音がして、鉄製の階段を駆け下りる足音がした。
173松本0時:2001/06/13(水) 20:25
「ふんっ。甘ったれてんじゃないわよ・・・。どうせ怖い人ですよーだ(ぶつぶつ)。」
希美がホテルの部屋に戻ると、先に帰っていた圭織はまだ機嫌が悪かった。
「まあまあいいらさん・・・。ごとうしゃんも、明日の決勝に出るって言ってたんれすから。」
「ふん、あいつにどれだけできるっていうのよー。」
そう言うと、圭織はふとんをかぶって寝てしまった。
174松本0時:2001/06/13(水) 20:25
 翌日、午前中には特撮がすごいと評判の新作SF映画を見に行き、午後にはこの星でもっとも人気があるというミュージカルを見て存分に楽しんだ希美と圭織は、17時には宇宙駅の999専用待合室にいた。
 待合室のテレビの画面には、『第14回女性ロックボーカリストオーディション』の決勝の場面が映し出されていた。天気予報を見るふりをして、希美がそのチャンネルにこっそり合わせておいたのだった。
「もうすぐ発車時刻れすね。」
「行こうか辻。あんなやつの結果なんて見なくていいから。」
圭織はそう言いながらも、待合室のドアを出る寸前までテレビを気にしていた。
175松本0時:2001/06/13(水) 20:25
 圭織はなにも口をきかずに大股で歩きながら改札を抜け、とっとと999号の座席に座った。
「さあ、早く発車しないかなー。」
 圭織は聞こえよがしにそんなことを言ったが、希美にはわかっていた。ちょうど圭織の座った席から、駅近くのビルにある巨大なモニタが見えるのだ。
 モニタに真希が映し出された。ついに真希の歌う番がまわってきたらしい。
「なんだか暑いれすね。」
そう言って希美は列車の窓を開けた。野外スピーカーから流れる後藤の歌声が開け放たれた窓から入ってくる。圭織は特になにも言わなかった。
 希美の耳に入る真希の歌声は、スピーカーが遠くて聞き取りにくいにもかかわらず、昨日とは全く変わっているのがわかった。
(ごとうしゃん・・・歌をすきになれたのれすね・・・)
176松本0時:2001/06/13(水) 20:26
 駅を出た999は、ぐんぐん高度を上げていった。圭織はずっと黙ったままだ。希美は列車が駅を出た後も、街のモニタを懸命に目で追っていた。そして、遠くなったモニタに映し出された文字を、希美ははっきりと見たのだった。
"合格者 後藤真希"
そして、全身で喜びを表す少女がアップで映し出された。もうはっきりとは判別できなかったが、その少女は真希に間違いないだろう。
 希美が圭織のほうをうかがうと、希美と同じモニタを凝視している。圭織がかすかにつぶやいた。声は聞こえなかったが、
(おめでとう・・・後藤。)
圭織の唇がそう動いたように希美には見えたのだった。
 車窓の夕焼け空は、地上よりも少し早く星空へと変わっていき、999は再び宇宙へと出ていくのだった。

第四章 ごっちんの挑戦 完
177松本0時:2001/06/13(水) 22:19
第四章×→第四部 他、特に二部と四部に誤字、表記不統一があります。
178名無し募集中。。。:2001/06/14(木) 01:56
作者は代わっても999魂は不変sage
179名無し読者:2001/06/14(木) 07:09
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
180名無し募集中。。。:2001/06/15(金) 10:53
保全
181松本0時:2001/06/15(金) 18:46
 希美が地球を出て、どれくらい経ったのだろう。いままで、いろいろなことがありすぎて、希美には地球での出来事が遠い昔のことのように感じられる。
「ねえ辻、とうとう次の駅がこの銀河系の最後の駅だよ。」
「ずいぶんととおくまできたんれすね。」
「次の駅を出るとねー、アンドロメダまでしばらくのあいだは全く星がないんだー。だから宇宙軌道もずーっとまっすぐで、今までとは全然比べものになんないくらいすっごく長ーいワープがあるんだよー。」
「たいくつしそうれすね・・・。」
「うーん・・・そうだ、次の星はねー、本屋がすごく多いから、辻もなにか読みたい本買っていくといいよー。」
「それはたのしみなのれす。」
182松本0時:2001/06/15(金) 18:47
「どんどこどんどこどんどこどん!次の停車駅は〜マクドターミナル〜マクドターミナル〜。停車時間は〜36時間5分でーす。あと、この星には2泊するんだけど、列車は次の駅でいったん車庫にはいるから、滞在中に使うものはちゃんと持っていってねー!」
「車庫にはいるなんてはじめてれすね。」
「しばらく駅がないから、車体の点検をしなきゃなんないんだよー。それにねー、この区間のスピードを上げるための補助の機関車を追加するし、あと、しばらく補給できないから食料とかいろんな消耗品を積んだ荷物車、追加燃料タンク車もつなげるからねー。」
「さすがカオリン!車掌のわたしより詳しいねー。」
「えっへん。とーぜんよー。何回も来てるからねー。それに、なんてったってカオリは・・・おーっと、なんでもないよーん。」
どういうことなのか、希美は圭織に問いただしてみたかったが、そうすることがなにか大きな危険を呼ぶような予感がしたのでやめておいた。
183松本0時:2001/06/15(金) 18:48
 999号は、駅へと降りていった。
「わあー!列車がいっぱいなのれす。」
「ここにはねー、銀河のありとあらゆる星の路線があつまっているんだよー。この星には小説家や画家が多いんだけど、なぜかって言うとね、そういったあらゆる星のいろんな感性の人が集まっていて、創作意欲が刺激されるからなんだって。本屋が多いのもそのせいだよ。」
「おもしろそうなところれすね。」
「どう、駅に着いたら、まず近くの書店街に行ってみない?」
「そうするのれす。」
184松本0時:2001/06/15(金) 18:48
 難しい技術書を探すという圭織と別れて、希美は書店街を一人で歩いていた。ここには、大きな総合書店のほかに、宇宙工学専門、少年漫画専門、古典文学専門など、さまざまな分野に的を絞った小さな書店が軒を連ねていた。希美にとっては、こんなにたくさんの本があるというのは驚きの連続だった。うれしくて歩き回りすぎたので、すっかり疲れてしまった希美は、小公園を見つけるとベンチでしばらく休憩することにした。
 古ぼけた書店のビルに囲まれたその公園では、希美より年長に見える一人の少女が絵を売っていた。希美はその中の一枚に興味を持ったので、何気なしにその絵を見つめていた。少女はまもなく希美に気づき、話しかけてきた。
185松本0時:2001/06/15(金) 18:49
「どう?この絵は。」
「なんだかあったかい感じの絵れすね。これは猫の絵れすか?」
「うーん残念。近いんだけどね。」
「なんれしょう?しっぽがありますね。あと、このふくらんでるのはおなかれすか?うーん、こうさんれす。」
「これはね、カンガルーだよ。あ、今疑ってる顔した。いやあ、無理もないよ。これは私の心の中だけのカンガルーだからね。」
「心の中れすか・・・。」
「『芸術とは、感じたままを表現すること』・・・これが私の座右の銘なんだ。」
少しかしこまって、少女はそう言った。
186松本0時:2001/06/15(金) 18:49
「このカンガルーだってね、外見しか見ないでいれば、写真みたいな絵になると思うんだ。でもね、絵は自分の自由に描けるんだから、見たままじゃなくて、そのものから感じることを描くべきだと思う。それでね、私がカンガルーを見たとき、母親カンガルーがおなかの袋にいる子供をとってもいたわっているのがわかったんだ。そのときの私の気持ちを描いたのがこの絵なんだよ。」
「そうだったんれすか。そう言われてみると、ののにもなんとなくわかるのれす。なんだか、ののの大切にしている気持ちがこの絵の中に詰まっているような気がするのれす。あの、この絵、買ってもいいれすか?」
「大歓迎!芸術のわかるこなんだねー。これは3000円のつもりだったけど、特別に2000円にしちゃう。」
「ありがとうなのれす。大事にするのれす。」
「あなたが今日最初のお客さんだしね。ところであなた、ののちゃんっていうの?」
「辻希美なので、ののってよばれているのれす。」
「じゃあののちゃん、よろしく。私は保田圭っていうんだ。」
「よろしくなのれす。」
187松本0時:2001/06/15(金) 18:50
そのとき、服もメイクも派手な少女が声をかけてきた。
「よお、保田画伯!」
「あ、真里!」
「圭ちゃんひさしぶりー。あ、辻じゃないの?」
「・・・誰れすか?どこかで聞いたような声なんれすけど・・・。」
「まだわかんない?私だよ。わーたーしー!」
「あ、車掌しゃん!制服でないのれ、わからなかったのれす。」
999号の車掌、矢口真里だった。
「ヤグチも休暇なんだ。この星では列車の留守番はいらないからねー。で、こうして同期の親友に会いに来たってわけ。」
「同期ってことは、やすらさんも鉄道にいたんれすか?」
「そうじゃなくてねー、あ、これってあまり言っちゃだめなんだよね。」
「辻にはカオリンがじきに教えてくれるよ。」
「なに?カオリンも来てるの!?」
「あ、そういえば、いいらさんとまちあわせしてたんれす!うっかりわすれていたのれす!ちょっと呼んでくるのれす!」
希美はあわてて待ち合わせ場所へとかけていった。
188松本0時:2001/06/15(金) 18:51
 4人は、圭のアトリエ兼自宅となっているアパートに来ていた。
「ごめんね。ハンバーガーとポテトしかないんだ。」
「だいじょーぶだよ。ヤグチがいろいろ買ってきてあげたから。」
そう言って、真里は飲み物やスナック菓子を次々に取り出した。
「あの絵はなーに?」
圭織が、部屋の中でひときわ目につく大きな絵の方を向いて言った。
「ああ、あれがね、今描いてる絵なんだ。今度の『しゃちほこ展』に出そうと思ってたんだけど・・・。」
189松本0時:2001/06/15(金) 18:52
「なんていう題なのー?」
「うーん、まだ決めてないんだ。この絵はね、昔、カオリンたちといたころの気持ちを表してるんだ。」
 希美には、その絵に描いてあるものが何なのかまったくわからなかった。ただ、暖かいような、安心するような、そんな印象を希美に与える絵だった。
「そういえば、ほかのみんなはどうしてるかなあ。」
圭がそうつぶやくと、圭織が急に寂しそうな表情になった。
「実は圭ちゃん・・・いや、このことはあとで手紙書くよ。」
圭織はそう言うと、真里に目くばせし、真里もかすかに同意の仕草をした。この3人の仲間とは一体どういうものなのだろうか。希美の立ち入れない秘密がそこに存在していた。それは圭織の正体とも深く関わっているのだろうか・・・。今の希美はただ見守るしかなかった。
190松本0時:2001/06/15(金) 18:52
「それよりさー、その絵って、もう完成してるのー?」
「あとちょっと。最後の詰めがね。でもねえ、今回は間に合わないよ。」
「えーっ?どうしてー!?カオリたち、邪魔しちゃってるならすぐ出てくよー。」
「そんなことないよ。実は今ねえ、絵の具とか筆が足りないんだ・・・。」
「なーんだ。そんなもん、カオリがプレゼントしてあげるよー。」
「でもねえ、油絵の具ってわりと高いんだよ。筆だって、小学校のお絵かきとはわけが違うんだから。いくらカオリンが金持ちでも、そんなこと頼めないよ。」
「じゃあねえ、貸してあげる。」
「そんな気にしてくれなくていいから。私ね、絵で食べていこうって決めたんだ。この絵はねえ、最初からずーっと自分のバイトの給料だけで描いてきたんだよ。そういう覚悟で描いてきたんだから、今になって人に頼りたくないんだ・・・。公募展なんてしょっちゅうあるんだから、今回のがしても大丈夫だよ。」
191松本0時:2001/06/15(金) 18:53
「そう?でも、『しゃちほこ展』みたいな有名なのはあんまりないよ。さっきはヤグチの菓子バックバク食ってたじゃん。だからさ、そんなに気張らなくてもいいじゃん。」
真里も言う。
「食べ物は絵じゃないから。」
「ずるーい!」
「まあ、とにかく、気にしないで。私がどうにかするから。」
「圭ちゃん・・・。食べるものはあるの?ヤグチが持ってきてあげようか?」
「そっちは大丈夫。バイト先でさ、失敗作や賞味期限切れをもらえるんだ。さっき出したのもそれだよ。」
「圭ちゃーん、変なもの食わせるなよーっ!」
192松本0時:2001/06/15(金) 18:53
「みんな・・・心配かけてごめん。とりあえず、さっきののちゃんに絵を買ってもらったから、その分でなんとかしてみるよ。それにさ、その辺に転がってるガラクタの中にもなにか使えるものがあるかもしれないし・・・。とりあえず今日ももうすぐバイトなんだ。」
「ひもじいねー。圭ちゃんがそんなゴミあさりみたいなことするなんて泣けてくるよ・・・。」
そう言った真里は、ふと、なにかいいことを思いついたような表情を見せた。
「ねえ、明日も来ていい?」
「いいよ。みんなならいつでも大歓迎。8時以降ならいつでもどうぞ。」
「8時ね。絶対に来るよ。じゃあね。バイトがんばってねー。」
 真里にせかされて、圭織と希美も圭のアトリエをあとにした。そして、ホテルへと向かう道すがら、真里は自分の考えた画期的なアイデアを、圭織と希美に披露したのだった。
193松本0時:2001/06/15(金) 18:54
 翌日、8時ぴったりに圭の部屋を訪れたのは真里だった。
「圭ちゃん、今日はねえ、ヤグチが圭ちゃんの片づけ係をしにきたんだよー。」
「なにそれ?」
「圭ちゃんはさあ、なにか探してほしいものがあったらヤグチに言ってよ。そしたらさ、ヤグチはこのガラクタの中から探し出してあげるから。」
「別にそこまでしてもらわなくても・・・。」
「ヤグチはねえ、圭ちゃんにぜひその絵を完成させて、しゃちほこ展に出してもらいたいんだ。そこにある紙って、その絵の構想を書いてあるんでしょ?今描くことができないから、今思ってることを描けるときが来るまで忘れないようにって、書きとめてあるんでしょ?昨日来たとき見ちゃったんだ。圭ちゃんはねえ、描けるときまで待ってちゃいけないよ。今描きたいことなんだから、できるだけその想いが薄れないうちに描いてほしいんだよ。」
「真里・・・わかった。わかったよ。じゃあ今日は真里に頼む。」
「キャハハー。よかったー。どんどん頼んでね!」
194松本0時:2001/06/15(金) 18:54
「真里・・・悪いんだけど、そこらへんに「クリムソン」っていう色の絵の具ないかなあ?」
「クリムソンね。早速探すよ。クリムソンの絵の具〜!っと。」
圭のアトリエのドアの外には、圭織と希美がいた。二人の前には、絵の具のいっぱい入った箱がある。
 二人は小声でしゃべっていた。
「絵の具やさんにはものすごい数の絵の具があったのれす。これだけで足りるのか不安なのれす。」
「大丈夫だよ。お店の人に言って、一番よく使う色をそろえてもらったんだから。」
そのとき、中から真里の声が聞こえた。
「クリムソン一丁!」
「ほいな!」
195松本0時:2001/06/15(金) 18:55
圭織は絵の具箱の中から一本とりだして真里に渡した。
「圭ちゃん、あったよ。はいこれ。」
「・・・これって・・・私買った覚えないよ・・・。」
「そう?忘れてるだけじゃないの?」
「いや・・・この会社の絵の具は普段買わないよ・・・。ごめんね。同じ名前でも、会社によって調合が違うからね。」
「なにーっ!?こ・・・これは何かの間違いだねー。もいっぺん探してみるよ。」
196松本0時:2001/06/15(金) 18:55
「カオリン・・・いきなりしくじったよ。圭ちゃん、この会社の絵の具は買わないんだってさ。」
「がーん、いきなり全部ハズレかい!」
「これだってさ。」
真里はからになったチューブを手渡した。」
「カオリ、行きマース!」
そう言って、圭織は画材店へと豪快に走っていった。
197松本0時:2001/06/15(金) 18:56
「あっ!」
「どうしたの?圭ちゃんどうしたの?」
「筆の毛が取れた・・・。」
「この筆ね。ちょっと待ってよ。」
真里が希美のところに顔を出した。
「カオリン、まだ戻らない?」
「まだれす。」
「じゃあ辻、あんたにまでやらせたくなかったけど仕方ない。この筆お願い!」
「いくのれす!」
198松本0時:2001/06/15(金) 18:57
 3人の奮闘は、昼食抜きで夕方まで続いた。
「悪い真里!カーマインってないかな?」
「はあはあ・・・カーマインね。カーマインカーマインっと。圭ちゃん・・最近注文が多くなってない?」
「ごめん真里・・・最後の最後だからね、妥協できなくて・・・。本当にごめんね。」
「わかった。圭ちゃんはなんにも心配しなくていいから。どんどん言ってね。」
日が沈み、街の明かりが一つ二つとともりはじめた頃、圭がぽつりと言った。
「・・・完成。」
「なに?圭ちゃん・・・できたの?本当にできたの?・・・やったーっ!完成!完成だよー!」
その声を聞いて、希美と圭織は圭のアトリエの呼び鈴を押し、さも今訪ねてきたかのように入ってきた。
「わー・・・完成したんだ・・・偶然いいタイミング・・で・・来れたね・・・・。」
「・・・よかっ・・・た・・・れす・・・ね・・・。」
3人はもうへとへとだった。
199松本0時:2001/06/15(金) 18:57
 真里と圭織が『打ち上げをしよう』と言って、遠慮する圭を連れて買い出しに行ってしまったので、希美は圭の部屋に一人取り残された。希美は、圭の絵を改めてじっくりと見てみた。柔らかな光に包まれているのは、人のようにも見えるし、そうではないようにも見える。光は幾重にも束ねられて、空へと昇って行くようだ。希美は、圭の言った言葉を思い出した。『芸術とは、感じたままを表現すること』・・・希美には、この絵が何を表しているのか、言葉にすることはできなかったが、圭の心の中が何となくわかる気がした。
 そのとき、希美は床に落ちている一枚の紙に気づいた。
(これは・・・やすらさん・・・そうだったんれすか・・・)
しかし、希美をさらに驚かせたのは、その近くの床に無造作に投げ出されていた写真立てだった。圭はその写真立てをときおり手に取りながら絵を描いていたらしい。
200松本0時:2001/06/15(金) 18:58
 その写真立てには、色あせた写真が挟まっていた。その写真には、8人の少女がポーズを付け、きりりと前を見据えて写っている。その中の4人は希美の知らない顔だったが、3人は圭織、真里、圭だった。そして残る一人は・・・。
「お・・お母しゃん・・?なぜ?・・・なぜお母しゃんが・・・。」
そのとき、圭たちの話し声が近づいてくるのが聞こえたので、希美はあわてて写真立てを元の場所へと戻した。
201松本0時:2001/06/15(金) 18:58
 翌朝、最後に挨拶していこうということで、圭織、真里、希美の3人は圭のアトリエを訪ねた。昨日の疲れでぐっすり寝ていた圭を起こしてしまったようだが、圭は文句一つ言わず、しきりに昨日の礼を言っていた。
 その帰り道、
「ちょっと忘れ物したのれす。」
希美はそう言って、一人、圭のアトリエに戻った。そして、圭にぜひとも言っておきたいことを話し始めた。
「やすらさん、本当は全部わかっていたんれすね?」
「え?何のこと?」
202松本0時:2001/06/15(金) 18:59
「やすらさんの部屋で見たんれす。やすらさん、ののたちが買ったものを全部書きとめていたんれすね。あとでおかねがはいったら返すために・・・。」
希美は写真のことは黙っていた。
「・・・気づかれちゃったか。みんなにはいろいろと気を遣わせちゃってごめんね。」
「そんなことないのれす。やすらさんこそ、わかっていたのにずっと知らないふりしていてくれてありがとうなのれす。それを言いにもどってきたのれす。」
「でも、私が『やっぱりお金借してよ』って言えば、みんなあんなに苦労しなくてもよかったのにね。私ね、みんなの真剣な姿を見てるうち、そんなこと言えなくなっちゃって・・・。ところで、真里とカオリンは知ってる?」
「ののからはまだ言ってないのれす。ののも、二人があんなに一生懸命になっていたのれ、言えなかったのれす。」
203松本0時:2001/06/15(金) 19:00
「私ね、お金がないなんて言ってたけど、本当はそんなの自分に対する言い訳だってことはわかってたんだ。あの絵を完成させることが怖かったんだよ。未完成のままなら、『これからもっとよくなる』って言うことができるけど、完成させちゃったら言い訳できないもんね。」
「やすらさん・・・。」
「でもね、私のために一生懸命になってくれる真里やカオリンやののちゃんを見て、やっと自分の絵と向き合う勇気を持てたんだ。今はねえ、私、この絵がとっても好きだよ。『ほんとうはもっとよく描ける』なんて思わない。最高の絵だと思う。これもみんなのおかげだよ。あの二人には全部話してあげて。そして、こう伝えてあげてね。ありがとう。本当にありがとうって。」
圭はそう言うと、こぼれ落ちそうになった涙を隠すように希美から顔をそらし、誇らしげに絵を見つめた。その絵には、こう題が付けられていた・・・『友情』。
204松本0時:2001/06/15(金) 19:01
 999号はすでに星の海へとこぎ出していた。
「そっかー、バレバレだったんだねー。」
「ヤグチの計画なんてすべてお見通しってことかあ。圭ちゃんあなどれないねえ。」
「れも、やすらさんの絵もぶじに完成して、それに、とってもいい絵になって、とてもよかったのれす。」
 真里が車掌としてワープの確認の仕事をするため立ち去ると、やがて列車は鋭い音をたてて加速し、ワープ航法に移った。後方に見えていた銀河の星々は、一瞬長い尾を引いたかと思うと視界から消え去り、あとには完全な闇だけが残った。希美と圭織は買ってきた本をさっそく取りだして読み始めた。
「辻はなんて本を読んでるの?」
「これれす。『時を駈ける少女』っていうほんれす。」
「面白い?」
「なんだか、じーんとくるのれす。主人公が過去に戻って、今ははなればなれになってしまっただいじなお友達にあうっていうおはなしなのれす。」
「ふーん、そうなんだー。カオリはこれ。『我が闘争』。カオリと同じ名前の主人公がねー、イチイっていう部下と一緒にわるいやつらをやっつけるおはなしだよー。」
「そ・・・そうれすか・・・。」
 999号は、なにも存在しない亜空間を、音もなく進んでいくのだった。

第五部 真里の友情 完
205名無し募集中。。。 :2001/06/15(金) 21:22
すばらしい、、、、
206名無し募集中。。。:2001/06/16(土) 06:37
車掌活躍記念sage
207名無し読者:2001/06/16(土) 06:56
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
208( ´D`):2001/06/17(日) 20:06
ほぜんするれす。
209( ´D`):2001/06/18(月) 23:19
ほぜんするのれす
210松本0時:2001/06/18(月) 23:22
 希美と圭織は、地球のある銀河とアンドロメダ大星雲の間の長いワープの最中である。希美は、あまりにもヒマなので、希美の旅によく似たストーリーの『銀河鉄道999』という漫画を読んでみた。
 そして、その漫画の中で感じたいくつかの疑問について、圭織に聞いてみることにした。もちろん当たりさわりのない質問だけをしたつもりだったのだが・・・。
211松本0時:2001/06/18(月) 23:23
希美はうっかりageてしまった。
「いいらさん、ののにはいくつか質問したいことがあるのれす。」
「なあに?カオリがなんでもこたえてあげるよー。」
212松本0時:2001/06/18(月) 23:24
「まず・・・この鉄郎のお母しゃんは、『銀河特急999号に乗ると、いつか機械の体がタダでもらえる惑星の駅につくそうです』って言っていたのれす。れも・・・。」
「でもなに?」
「きかいの体より、999号のパスのほうがよっぽど高そうなのれす。」
「それはねー、たぶん、このパスっていうのが定期券だから高いのよ。ふつうの切符は安いんじゃないの?」
「れも、いきなり1巻の第2話で、きかいの体をもっているのに、銀河鉄道の"キップ"が高くて買えないのれ、鉄郎からパスをとろうとする『ゼロニモ』というひとが出てきたのれす。」
「うーん、それはね、きっとその人は、機械の体を買ったせいで、お金がなかったのよ。」
213松本0時:2001/06/18(月) 23:24
「うーん、れも、鉄郎のお母しゃんは、お父しゃんが死ななければ、機械の体くらい買ってあげられたと言っているのれす。あんな貧乏そうな鉄郎の家でも買えるというのは、やっぱり機械の体のほうが、銀河鉄道のパスより安そうなのれす。」
「うーん、じゃあね、やっぱり鉄郎のお母さんは、死ぬ間際で錯乱していたのよ。」
「そうだったんれすか。いいらさんは物知りなのれす。」
希美は圭織を尊敬のまなざしで見つめた。そして、この飯田鉄道の話にはそのエピソードがないので、自分には関係ないと思ったのだった。
214松本0時:2001/06/18(月) 23:25
「あと、1巻の第1話で、メーテルが、列車を降りたいというおばさんに向かって『この列車に乗った者は途中下車はできない』と宇宙列車運行規則第17条で決まっていると言っているのれすが、アイボンの星の話によく似た4巻の第2話では、蛍の星からのったヘタレなひとのことを『すぐへこたれて、途中下車して帰るわ』って言っているのれす。」
「それはね、やっぱりあんまり変な規則だから、それまでの間に改正されたのよ。」
「そうだったんれすか。いいらさんは物知りなのれす。」
希美は圭織を尊敬のまなざしで見つめた。そして、この飯田鉄道の話にはそのエピソードがないので、自分には関係ないと思ったのだった。
(はやく次の星につかないのれすかね・・・)
999号は、まだまだワープの中にいたのだった。

飯田鉄道999特別編その1 完
215松本0時:2001/06/18(月) 23:58
「いいらさん!」
「今度はなーに?」
「さっきの話の>>213 れすけど、あのエピソードはやっぱりのののおはなしにもあったのれす。」
「てことは、辻は安心しちゃいけなかったってこと? >>213 を削除すればなんとかよさそうだから、保存やさんに頼んでみようか。」
「そんなことできるのれすか?」
「できるよ。(あらぬ方角に向かって)じゃあそーゆーことで。」
「いいらさん、誰にしゃべってるのれすか?」
「保存やさんに決まってるでしょー。いればの話だけど・・・。」
この特別編自体、すべて削除すべきなのではないかと希美は思ったのだった。

飯田鉄道999特別編その1 パッチ1
216名無し読者:2001/06/19(火) 06:56
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
217名無し:2001/06/19(火) 11:37
>>215
そう気にすることもないじゃない。
218ななしぼしゅうちゅう。。。:2001/06/19(火) 19:01
>>215 このままでいいと思いますよ…ってか、215自体ネタっぽいけどね(w
219( ´D`):2001/06/21(木) 01:53
ほぜんするれす。
220松本0時:2001/06/21(木) 08:28
 希美は、ゆるやかな丘の続く道を走っていた。丘は様々な色の花畑でパッチワークのように色分けされ、ところどころにポプラの木が、1本だったり、数本並んでいたりしながら立っている。すでにかなりの距離を走っているので息は苦しいが、一定のペースで走り続けている間はそのリズムに乗っている限りどんどん走れてしまう。自分の走る道の遙か先ではいったいどんな景色が見られるのだろうという期待感も、希美が走り続ける理由である。
221松本0時:2001/06/21(木) 08:28
(あと200mれすか・・・。)
 前方の路上に、空中に浮かぶようにしてゴールを示す標識が現れた。希美の体がその標識をすり抜けたとき、視野の上中央に見えている残距離の数値が0となり、クールダウンを指示する文字が現れた。希美の脈拍を示す数値が徐々に下がっていく。
222松本0時:2001/06/21(木) 08:28
 希美は、999号のトレーニング車にあるこのランニングシミュレータがお気に入りだった。この旅をはじめたばかりの頃、圭織から渡された『陸軍特殊部隊のサバイバル術』といういかめしい題名の本に、"生き残るためには筋力よりも長距離を走り抜く持久力のほうが有用である"と書かれていたのを読んだのがきっかけで、このトレーニングをはじめたのだ。
223松本0時:2001/06/21(木) 08:29
 あたかも実際に走っているかのように景色が動き、それもただの地上の風景だけではなく、実速度の数十倍で空中を走っているかのように見えるもの、自分がミクロ化して見上げるような巨大な草花のなかを走るものなど、いろいろと面白い風景画像が用意されているこの機械は、希美にとっては十分な娯楽だった。最近では、実在の美しい風景の中を走ることが気に入っていて、今回は「北海道 美瑛の丘」という画像を楽しんでいたのだった。
224松本0時:2001/06/21(木) 08:29
 一方、圭織の方は、自分が希美にそのような本を読ませたことなど忘れてしまったかのように、毎日ぐうたらしている。マクドターミナルで圭の画材を買うために走り回ったあとなどには、2日遅れで筋肉痛になり、何日もの間、自分の席の寝台を広げっぱなしにしてゴロゴロしていたというていたらくだった。
「ほんと走るの好きだねえ。昔ねえ、カオリの仲間に、辻みたいにいっつも走ってるのがいたよ。」
「どんなひとなんれすか?」
「どんな人って言ってもねえ・・・。その子、次に停まる星にいるんだよ。会ってみる?っていうか、会わせるよ。」
「こわい人れすか?」
「カオリほどには怖くないと思うよ。」
225松本0時:2001/06/21(木) 08:31
「次の停車駅は〜牟炉蘭〜牟炉蘭〜。停車時間は24時間だよー。」
矢口車掌が伝えた。
 列車が高度を下げていくと、眼下には、一面に工場の屋根が広がっているのが見えてきた。ところどころに巨大なタンクや煙突も見える。
「わー、工場がいっぱいなのれす!」
「ここはね、アンドロメダで一番工業が盛んなところなんだよ。」
 街全体が、鉄さびをまぶされたようにどことなく茶色みがかって見える。999号は、同じく鉄さび色をまぶされたような駅に入っていった。
226松本0時:2001/06/21(木) 08:31
 希美と圭織は、駅にほど近い、大きな工場の門の前に来ていた。圭織は「あらかじめ連絡しておいたから」と言って守衛所に行き、なにやら話していた。戻ってきた圭織は入構証と書かれたバッジを胸に付け、希美にもそれを付けるようにと手渡すと、ついてくるように言って工場の敷地の中に入っていった。
「今はねえ、ちょうど休憩時間なんだって。」
227松本0時:2001/06/21(木) 08:32
 二人はある建物に入っていった。中にはテーブルが並び、作業服を着たたくさんの人たちが雑談をしたり、飲み物を飲んだり、壁の大型テレビを見ていたりしている。ここは社員食堂らしい。
 近くのテーブルにいた作業服姿の小柄な少女が、こちらに気づいて駆け寄ってきた。
「カオリン、久しぶり!待ってたよ。」
228松本0時:2001/06/21(木) 08:33
「なっち・・・ほっぺにススみたいなのついてるよー。それに、化粧くらいしなよー。かわいい顔がだいなしだぞっ。」
「カオリンなーに言ってるのさー。化粧してきたときには惚れるなよー。」
希美には、その少女は今のままでも十分にかわいらしく見えた。そして、その顔にはかすかに見覚えがあるような気がした。
「でね、この子が・・・。」
「辻希美れす。」
「私はね、安倍なつみ。カオリンの昔からの友達だよ。」
229松本0時:2001/06/21(木) 08:33
なつみは、2人を今まで座っていたテーブルに案内した。
「お茶しかないけど・・・。」
「あ、私持ってきます。お二人は緑茶でいいですか?」
さっきまでなつみと話していた事務員の制服の少女が、立ち上がって言った。
「あ、これはどうも。辻は?」
「ののもそれでいいれす。」
230松本0時:2001/06/21(木) 08:34
「わるいね、あゆみちゃん。」
あゆみと呼ばれた少女が給湯器から4つの湯のみにお茶を入れて持ってきた。しかしあまりゆっくりすることはできなかった。簡単な挨拶程度の話しかすまないうちに、なつみが言った。
「あ、もう仕事だ。ごめんねー。カオリンたちにはねえ、工場見学してもらうようにしておいたから。この子が案内するよ。あゆみちゃん、お願いするね。あ、あとねえ、私、仕事のあと、陸上部の練習があるんだ。カオリンたちはどうする?」
「それも見せてもらっていい?辻もね、走るのが大好きなんだよー。」
「よかったらみせてもらいたいのれす。」
「もっちろん大歓迎。じゃあ、5時にまたここに来てね。じゃああゆみちゃん、よろしくね。」
231松本0時:2001/06/21(木) 08:35
 希美と圭織は、この柴田あゆみという少女の案内で工場の中へと入っていった。なつみが働いているのは、宇宙列車の動力部を作る工場だ。広々とした工場内は、金属のぶつかるような音、機械のモーター音、チャイムやブザーの音がひっきりなしに響いている。
 一通り説明を終えると、あゆみが工場内の一角を指さして言った。
「ほら、安倍さんはあそこで働いていますよ。難しい加工を任されているんです。」
圭織と希美がその方向を見てみると、なつみが手際よく工作機械を操作して、なにやら複雑な部品を作っているようだ。
「なっち・・・機敏だねー。昔のなっちからは想像できないねー。ところでさ、この工場って人が多いねー。この星って機械の本場でしょ?なのにロボットってあんまり使ってないんだねー。」
「まだまだロボットにはできない仕事って多いんです。複雑なトラブルに、素早く、臨機応変に対処できるのは人間だけなんです。それに、製品の細かいへこみや傷なども、人間にしかわからないものが多いんです。」
「そっかー、複雑な機械だからこそ人間が必要なんだー。」
「ふしぎなものれすね・・・。」
232松本0時:2001/06/21(木) 08:35
 圭織と希美は社員食堂でお茶を飲みながら約束の時間を待った。そして、その時間になり、社員食堂になつみとあゆみが現れた。
「あゆみちゃんも陸上部なのー?」
「そうなんです。」
「全員そろったし、早速行こうか。」
「ねえなっち、全員って、陸上部って2人だけなの?」
「そうだよ。でもねえ、あと、別の会社の2人と、もうひとつの会社の1人と合同で練習するんだー。」
233松本0時:2001/06/21(木) 08:36
「混合チームか・・・昔もそんなのだったねー。」
 圭織は、999号で希美に話した、かつてなつみが走っていた頃のことを思い出しているようだった。そのとき希美は、別のことを考えていた。このなつみという少女は、あの、圭の部屋で見た写真に写っていたなかの一人なのではないだろうか。作業服姿ではわからなかったが、トレーナーに着替えて少女らしくなったなつみは、あの写真のなかでも目立っていた一人の少女に似ている気がした。それに、圭織の古い友人ならば、当然あの写真に写っていてもおかしくない。
234松本0時:2001/06/21(木) 08:36
 希美たちは、練習場だという近所の市民運動公園に来た。レンガ色のグラウンドが照明に照らされ、野球部、サッカー部などが練習を始めている。すでに2人の部員が待っていたので、なつみがお互いを紹介した。
「村田めぐみでーす。」
「私はねえ、大谷雅恵どぇ〜っす!」
「いいらさんと気が合いそうな人たちれすね。」
「どこがー?」
圭織は少々不満そうである。
235松本0時:2001/06/21(木) 08:37
「ところで瞳ちゃんは?」
なつみがもう一人のメンバーについて聞いた。
「今日は残業だってさ。さっき電話来た。」
雅恵と名乗った少女が答えた。なつみは全員に向かって言った。
「じゃあ、私たちだけで始めようか。でね、辻ちゃんもいつも走ってるそうだから、今日は一緒に練習してもらってもいいよね?」
「いいよー!」
なつみたちの陸上部は、明日の駅伝大会に出るのだという。この日は試合前日ということで、軽くトラックをまわって練習は終わった。
236松本0時:2001/06/21(木) 08:37
 練習のあと、一同は観客席でコンビニから買ってきた食べ物や飲み物を囲んでいた。なつみは、希美と圭織の歓迎会と明日の試合の壮行会を兼ねてと言っていたが、普段もこんな感じだという。
「そっかー。辻ちゃんもランナー魂がわかるんだね。」
希美の話を聞いて雅恵が言った。
「うーん、私よりよっぽど頼もしいねえ。今度私たちの部に入りなよ。私ね、全然体力ないんだー。」
めぐみがそう言うと、あゆみが言った。
「うそうそ。村田さん、一番力持ちなんですよー。」
「なに言ってんのよ!私、ぜーんぜん力なーい。ほら、これも開けられないもん。うーん、あかな〜い。」
めぐみは大げさにペットボトルのふたを開けようとする仕草をした。
(やっぱり、いいらさんと気が合いそうなのれす。)
237松本0時:2001/06/21(木) 08:38
「瞳ちゃんまだかな?」
なつみが言うと、雅恵が携帯電話を取り出した。
「電話かけてみるね。」
しかし、なかなか相手が出ないようだった。
「出ないねえ、会社にかけてみるよ。」
雅恵はいったん切ると、再び電話をかけた。
238松本0時:2001/06/21(木) 08:38
「え?・・・けが?・・・」
その言葉を聞いて、全員一斉に雅恵の方を見た。携帯電話を切ると雅恵は内容を伝えた。
「瞳ちゃん、仕事中に大けがしたんだって。いま、病院にいるんだって。」
「えー!?すぐ行ってみよう。場所はわかるの?」
なつみが心配そうに言った。
「うん。すぐ近くだよ。」
239松本0時:2001/06/21(木) 08:39
「大けがだなんて、大げさだよー。」
包帯で腕を吊ったけが人が言った。もう一人のメンバー、斉藤瞳である。瞳は仲間とともに、病院の玄関を出たところだった。めぐみが聞いた。
「肩の脱臼って、一体どうしたの?」
「重い部品持ったままコケたんだ。あーはずかしい。それより、ごめんね。明日の試合・・・。足は動くんだけどね・・・。」
「試合のことは心配しないで。助っ人探すから。瞳こそ大したけがでなくてよかった。」
雅恵が言った。
240松本0時:2001/06/21(木) 08:39
「助っ人って・・・、誰かほかにもメンバーがいるの?」
圭織が聞くと、なつみは、
「明日の朝、どこかほかのチームの補欠の人を借りるよ。朝エントリーすればメンバーは変更できるんだ。」
「その助っ人って、誰でもいいの?」
「誰でもいいんだよ。カオリンでも。」
そう聞いて、圭織は言った。
「だったらねえ、ここにぴったりのピンチランナーがいるよ。」
241松本0時:2001/06/21(木) 08:40
「え?飯田さんが走ってくれるんですか?」
あゆみが、悪気もなく不用意なことを言った。
「ちょっとねー!話の展開から言ったって、ここは辻に決まってるでしょーが!」
「カオリン、あゆみちゃんいじめるなよー。」
なつみが笑いながら言った。
「ごめーん。カオリ、あゆみちゃん泣かしちゃった・・・。」
242松本0時:2001/06/21(木) 08:40
「泣いてませんよ。だいじょうぶですよっ。」
あゆみはにっこりと笑って見せた。
「かわいい・・・。」
「カオリンなーに言ってんのさー。ね?今日のカオリンって、なんか危険だべ?」
なつみは苦笑しながら希美に言った。希美も、圭織がいつもよりハイになっていることに気づいていた。
(きっと、あべしゃんに会ってうれしいからなのれす。)
「ということでね、辻に走ってもらったらどうかなあ・・・。辻はどう?みんなは?」
「れも・・・ののなんか、めいわくではないれすか?」
243松本0時:2001/06/21(木) 08:41
「どう?みんな。」
なつみがメンバーに問いかけると、皆は『ランナー魂のわかるののちゃんなら』と、歓迎してくれた。
「ふつつかものれすが、やらせていただくのれす。」
しかし、あゆみが大事なことを思い出した。
「あ、でもさあ、健康診断書がいるんじゃなかったっけ?もうこんな時間だよ。」
「さっきの病院なら大丈夫だよ。個人病院だし、ウチの会社の医務室に来てもらってる先生だから。ののちゃん、悪いけど明日はお願いね。」
瞳が動く方の右手を希美の肩において言った。こうして、希美はこのチームの一員として走ることが決まったのだった。
244松本0時:2001/06/21(木) 08:41
 明日は試合だということで、一同はすぐに解散したが、なつみの案内で、希美は明日のコースをたどって歩いてみた。圭織も付き添った。
「でね、この鉄塔で、残り200mなんだ。ほら、あの看板のところが中継所になるから。」
「覚えたのれす。うーん、きんちょうするのれす。」
「もう遅い時間だから、早くホテルに行って休んでね。カオリンも、また明日ね。」
なつみがそう言って別れると、圭織は大事な話があると言って希美を待たせ、なつみを追いかけて呼び止めた。しかし、なつみに話しかけたきり言葉に詰まってしまったようで、何回もなつみが聞き出そうとする仕草をしているのに、圭織は黙ったままのようだった。
245松本0時:2001/06/21(木) 08:42
 しばらくして、圭織は浮かない顔で戻ってきた。
「やっぱり言えないよ・・・。どうしよう・・・。」
「なにをれすか?」
「それも言えないんだ・・・。でも辻はもう知ってることだよ。」
(うーん、またれすか。れも、ここはきかないでおいてあげるのれす。)
 希美は話題を転じて、圭織とともに今日泊まるホテルへと向かった。
246松本0時:2001/06/21(木) 08:42
 希美は、4区のスタート地点にいた。徐々に緊張が高まってゆく。
(ののはだいじょうぶなのれしょうか?みんな、この駅伝のために練習してきた人ばかりなのれす・・・。)
1位の走者が見えた。なつみではない。その少し後を走ってきた2位の走者も違う。そして、やや間をおいてダンゴ状態で走ってきた4人の走者の中に、なつみが見えた。希美はコースへ出て、たすきを受け取る瞬間を待った。
247松本0時:2001/06/21(木) 08:43
 ここまでの間、1区の村田めぐみは、その俊足を発揮して3位で2区の大谷雅恵に引き継いだ。そして大谷は1つ順位を落としたものの、前の走者に食らいついたまま4位で3区の安倍なつみにたすきをつないだのだった。そして安倍は3位争いの混戦に巻き込まれていた。
 4人の走者はスパートをかけた。うち一人が、ややおくれをとった。なつみだった。3人の走者が希美の横をすり抜け、次々とたすきをつないでいった。そして希美も、少し間をおいて、なつみの差し出すたすきを受け取り飛び出した。
248松本0時:2001/06/21(木) 08:44
 希美は適切なペースを探り、一定のリズムを刻んでいった。走り始めの、波に乗るまでの間がこの区間を走り切れるかどうかの勝負だ。後ろから徐々に足音が近づいてきた。その足音は、やがて希美のすぐ後ろまで迫り、走者の息づかいまで感じられるようになった。ゆっくりとその走者は希美の横に出ると、前方へとまわり、また徐々に離れていった。希美は無理に追うことをしなかった。無理をすればここでペースを崩すことになる。
249松本0時:2001/06/21(木) 08:44
 希美を抜いたその12番のゼッケンをつけた走者は、少し前を走る3人の走者も抜いていった。速い走者だ。そして希美もまた、3人に徐々に近づいていった。
 1人抜いた。2人目を抜けるか、まだだ。しばらく走る。徐々に近づく。あと少し。抜いた。ついに3人目。ゆっくりとにじり寄っていく。2m、1m、抜いた。希美の前方には、やや離れて最初に希美を抜いた走者が見えるだけだ。
250松本0時:2001/06/21(木) 08:47
 後方の3人の気配は徐々に消えていき、希美は1人になった。最後まで走りきることができ、なおかつ最も速い走りという微妙な一点を維持していかなければならない。物差しなど無い。ただ自分の体との対話で探るしかない。
 希美のゼッケンには、31という数字と、『マロンメロン』というチーム名が書かれていた。もともと、なつみ以外の4人が以前ハーフマラソンに出たときのチーム名に『メロン』が入っていたので、今回もそれを使おうとしたのだが、今朝のエントリー直前に、『辻ちゃんやなっちも入ったんだし、変えてみよう』と、みんなで決め直したのがこの名前だった。そう、1人で走っているけど、1人じゃない。希美もチームの一員なのだ。
251松本0時:2001/06/21(木) 08:47
 昨日、コースを教わったときに教えてもらった、残り200mの鉄塔が見えた。希美は全力で走った。ここで順位は変わらないだろう。しかし、中継所には、アンカーの柴田あゆみがいる。ここで1mでも、1cmでも前に出てあゆみにつなぐことが必要だった。
 息が苦しく、足が動かない。しかしそれもたすきを渡すまでの短い間のことだ。あゆみにぐんぐん近づいた。希美はたすきを差し出し、あゆみがしっかりと受け取った。この時点では4位だった。
252松本0時:2001/06/21(木) 08:47
 希美たちメンバーは、なつみの同僚が車で運んでくれたりして、ゴール地点に集まった。メンバーの同僚も、大勢応援に来てくれているのだ。
 1位の走者が見えてきた。12番、希美を抜いた走者のチームだ。そして2位、これも希美たちのチームではなかった。しかしそのすぐ後ろに食らいついてきた走者は、31番、あゆみだった。二人の走者は最後の勝負に出た。あゆみが近づき、また離され、再び近づく。双方のチームの声援が交錯する。二人の走者がゴールに飛び込んだ。しかし、残念ながらあゆみは最後まで前に出ることはできなかった。
253松本0時:2001/06/21(木) 08:48
 チームメイトは一斉に駆け寄った。なつみは、「きゃー、うわー、3位だって!銅メダルだよー!うわー!」と、あとで圭織が「完全にこわれてた」と評するほど、大げさに喜びを表現した。そう言う圭織も。目を丸く見開き、両手を振り回して、あゆみから「到底喜んでいるようには見えなかった」と言われるほどの動作をしていたのだった。瞳は、肩をかばうことを忘れてはね回り、そのあとしばらく「痛え〜」とうなっていた。
254松本0時:2001/06/21(木) 08:48
 表彰式のあと、メンバーは、応援してくれた会社の人たちが開いてくれたささやかな祝勝会に出た。それが終わると、あゆみは「疲れたから思いっきり寝る」と言って、瞳は肩が痛いと言ってそれぞれ帰った。めぐみと雅恵は、二次会と称して会社の人たちと連れだって飲みに行ってしまった。
255松本0時:2001/06/21(木) 08:49
 希美、圭織、なつみの3人は、工場群のそばを流れる大きな川の土手に腰を下ろしていた。対岸にも煙突やタンクがいくつも見えるが、河川敷だけは緑にあふれていた。
「辻、寝ちゃったみたいだね。」
「カオリンがビールなんて飲ませるからだぞっ。」
そう言って、なつみは希美に自分のウインドブレーカーをやさしくかけてあげた。
256松本0時:2001/06/21(木) 08:49
「なっち・・・やっと二人きりになれたね。」
「・・・カオリン・・・なんだかアブナイなあ。」
「あのね、なっち・・・裕ちゃん、・・・死んだよ。」
「そう・・・裕ちゃんが・・・。昨日、大事な話があるっていうからね・・・まさかとは思ってたんだけど。」
257松本0時:2001/06/21(木) 08:50
「いままで黙っててごめん。辻や、なっちの仲間がいたし、なっちも試合前だったから・・・。」
「いいよカオリン・・・。早く聞いたからって裕ちゃんが戻ってくるわけじゃないもん。真里や圭ちゃんは知ってるの?」
「真里は999に乗ってたから、すぐ教えたよ。あの真里がそのあと何日も口もきかずにさ、部屋にこもってたそうだよ。真里はほんと裕ちゃん慕ってたからね。
 圭ちゃんにはね、会ってきたんだけど、そのときも辻がいたし、大事な絵が完成するところだったから、あとで手紙で教えた。そのことでは叱られたけどね。『絵なんてどうでもいいから真っ先に教えてほしかった』って返事がきたんだ。でも、心遣いありがとうとも書いてあった。」
そして、圭織は地球での出来事について話した。なつみは黙って聞いていた。
258松本0時 :2001/06/21(木) 08:51
 長い沈黙が続いたあと、圭織が言った。
「なっちは今も走り続けているんだね・・・。『一生懸命ってかっこいい』って、あのころからなっち言ってたもんね。」
「うん・・・。見たっしょ?こんなに小さい駅伝大会だっていうのに、みんなもあんなに夢中になってさ。あのね、カオリンたちと離ればなれになったあと、しばらくは何だか空っぽになっちゃったような気がしてたんだ。でもね、ここで陸上部作って、また走り始めて、やっと打ち込めることが見つかったんだ。
 『一生懸命ってかっこいい』・・・か。カオリンだって、この子・・・裕ちゃんの子を終点まで見守るっていう使命があるっしょ?」
「そう・・・そうだよね。なっち、デビュー前の頃のこと、覚えてる?」
「忘れるはずないっしょ。いっつもあんたと一緒にいてさ、いまみたいに二人して並んでさ、これからどうなるんだろう?やっていけるんだべか?って話してた・・・。」
「あのころからのメンバーも、もう私たちだけになっちゃったね・・・。」
259松本0時:2001/06/21(木) 08:52
 二人はふたたび口を閉じ、ゆったりと流れる川を見つめていた。ふと、なつみが立ち上がり、小走りに土手を降りて行った。そして立ち止まると、流れる川を見ながら、つぶやくようにうたい始めた。
〜さぁ 出かけよう きっと届くから 髪を切って夢を磨く 好きな空を めざすために
〜ねぇ 風にのり もっと輝いて 愛の種を まき散らしたい・・・
圭織もそばに行き、なつみに合わせてうたった。そろそろ秋を迎えるこの街の午後の日差しは黄色く、そよぐ風は涼しかった。
260松本0時:2001/06/21(木) 08:53
 希美と圭織は、なつみに見送られてこの星をあとにした。圭織は名残惜しそうに、ずっとなつみに手を振っていた。そしてなつみがもう見えなくなってからも、遠ざかっていく工場群を眺めながらなにかの想いに浸っているようだった。
 圭織が何を想っているのか、希美にはなんとなくわかっていた。あの土手で、希美は体になにか掛けてもらうのに気づいて目を覚ましていた。しかし、なつみの掛けてくれたウインドブレーカーの暖かさに包まれていたい気持ちから、そのまま目を開かずにいたのだった。そうして、偶然二人の話を聞いていたのだ。
261松本0時:2001/06/21(木) 08:53
 希美は、この旅がおわりを迎えるそのときまでは、あえて圭織たちの想い出の中にまで立ち入るのはよそうと思っていた。
(お母しゃんは、いいらさんたちにとって、とっても大切な人だったのれすね。ののにとっても、お母しゃんはとっても大切な人だったのれす。ののにとって大切な人は、この旅でもいっぱいできたのれす。そしてこれからも・・・)
 希美はそんなことを想いながら、今回もらった銅メダルを手にとって見つめていた。二人を乗せた999号は、星の海へと昇っていった。

第六部 マロンメロン走る!ピンチランナー
262名無しさん:2001/06/21(木) 09:24
あんた最高。
オモロイよ。
263松本0時:2001/06/21(木) 11:13
実は、今回の安倍編はちょっと自信ありません。メロン記念日には詳しくないし、すでに999とは関係ない話に・・・。
264名無しさん:2001/06/21(木) 22:12
いや、かえってオリジナリティあっていいよ。
265名無し読者:2001/06/22(金) 06:07
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
266名無し募集中。。。 :2001/06/22(金) 08:49
娘。には歌が似合う。
267名無し募集中。。。 :2001/06/24(日) 16:24
保全します。
268( ´D`):2001/06/26(火) 03:24
ほぜんするれすよ。
269:2001/06/26(火) 03:45
保全
270名無し募集中。。。:2001/06/26(火) 03:46
この時間帯での保全ageは止めてくれ。
271痔郎 :2001/06/26(火) 13:15
タッキーとあみのSEXは笑えた!

ピストン一回ごとにカウントしてたのってオレだけ?
(よっしゃー1000ピストン突破!よーし次は2000ピストン突破しろーって)
でも結局は1007ピストンしかしてないんだよね。全然、騒ぐほどじゃないし。
タッキーの腰使いには笑えた。まじで。

あみがイクのを堪えてるのを見て、手を叩いてわらったなぁ。
タッキーが腰振ってる間、部屋で2chしながら覗いてた。
結構タフだなーこいつらって思いながら。

わざわざタッキーの背後に回って記念撮影しようかと思ったよ。
でも2人のSEXのおかげで俺が生まれた訳だし、
結果的には良かったんじゃないかな。
272名無しさん:2001/06/26(火) 13:24
飯田鉄道に終焉を。
完結させてやってください。
273松本0時:2001/06/26(火) 22:11
>>272
ありがとうございます。
 私としては、スレの趣旨に合うものならば、批判であろうと、別ストーリーであろうと、書き込みしていただきたいと思います。
 どのみち保全書き込みでストーリーは中断するのですから、貴重なスレを私ごときに占有させる必要などありません。
 私も皆様の書き込みから学べば、もう少しマシな話が書けるかもしれません。
(sageておくべきだという意見には同意しますが)
274たまには:2001/06/27(水) 09:59
上げて欲しいよ
275名無し募集中。。。:2001/06/30(土) 05:15
276娘。さんだよもん:2001/07/01(日) 00:26
>松本0時さん
とっても面白いです。
時駆けなんかの小ネタも効いてるし、
5+3時代のメンバーの背景も奥深い構成でこれからが楽しみです。

すでに飯田鉄道のフォーマットは完成してるのだから、
999ネタにこだわる必要はないのでは?
むしろ999ネタの焼き直しよりもオリジナルの話の方が僕は好きです。
277松本0時:2001/07/01(日) 13:13
>>276さんをはじめ、ここや他スレで応援してくださった方、ありがとうございます。
次はついに終点に停まります。辻と飯田の旅もあとわずかです。
278名無し募集中。。。 :2001/07/01(日) 14:36
いよいよ終点かぁ。
応援してるよ。かんがれ!
279a:2001/07/03(火) 01:17
■□軍師助言■□
-------------------------------
          保田圭曰く
   ¶ヾ:ヾ:ヽ  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ∧| | | |  |おおっ、呪いじゃあっ!!!
  ( `.∀´) <
  /ヾΘΘヘ  |
 / |:::|つ (つ \________
           HIT ANY KEY
-------------------------------
280松本0時:2001/07/04(水) 13:05
はやくしないとやばいね。
http://natto.2ch.net/test/read.cgi?bbs=morning&key=994027652
↑ここで初めて「なかよし」見たら、ナニゲに飯田鉄道999に似てる・・・(かな?)。
特に石川編はワラタよ。こっちにもポジティブネタ書けばよかった。
281松本0時:2001/07/07(土) 00:12
保全 いますこしお待ちを
282名無し募集中。。。 :2001/07/07(土) 07:11
がむばれ!
待ってるぞよ。
283松本0時:2001/07/08(日) 17:53
もうすぐ
284名無し募集中。。。 :2001/07/08(日) 23:26
楽しみにしております。
285松本0時:2001/07/10(火) 13:21
( ^▽^)<詰まっちゃった   何が?>(0^〜^0)

しばらくお待ちください・・・
286名無し募集中。。。 :2001/07/11(水) 07:12
>>285
しないよ
287gj:2001/07/12(木) 03:02
gj
288名無し募集中。。。:2001/07/13(金) 18:38
(0^〜^0) <保全だよー
289松本0時:2001/07/13(金) 20:32
この土日が山です
290名無し募集中。。。:2001/07/15(日) 02:43
291ほぜーん:2001/07/15(日) 22:06
ほぜーん
292娘。さんだよもん:2001/07/17(火) 00:54
じっと待ってます
293松本0時:2001/07/17(火) 22:38
すみません。上の方が騒がしかったのでまだ書けてません。
294松本0時:2001/07/18(水) 11:15
>>293に一応補足
上っていうのは文春フィーバーのことだからね。
295松本0時:2001/07/18(水) 22:49
第七部 希美の終着駅

 999号が亜空間を抜けると、車窓には巨大な星雲が現れた。黄色く光る濃淡のガスが放射状に広がるさまは、まるで大輪のたんぽぽのように見えた。
「この星雲の向こうが終点の駅がある星だよー。やっと到着だねー。」
髪の長い長身の少女、飯田圭織が言った。
「とうとう・・・ここまで来たのれすね・・・。」
向かいの席に座る、小柄でまだあどけなさの残る少女、辻希美が答えた。
 希美は圭織に命を助けられ、この999号で旅をしていたのだった。母が死ぬ前に教えてくれた、不老不死の理想郷に行くために・・・。
296松本0時:2001/07/18(水) 22:50

「まもなく、終点、愛の種〜愛の種〜。飯田鉄道をご利用いただき、ありがとうございました〜。最後にわたくし車掌の矢口真里からプレゼントで〜す。せーの!『せくすぃ〜びぃ〜む』」
車掌がそう告げると、圭織がいつになく真面目な顔で言った。
「辻・・・とうとう話すときが来たね・・・。」
 希美はこの言葉をずっと待っていたはずだった。にもかかわらず、そのとき、希美は永遠にこの言葉を聞かずにいたいと思っていたことにも気づいた。
(終点なんかにはずっと着かなければいいのれす・・・。ずっとこのままでいたいのれす・・・。)
297松本0時:2001/07/18(水) 22:51

「まず、これを渡しておくね。終着駅の星で必要になるから。」
 圭織が渡したのは、ラミネート加工されたカードだった。ポーズつけた圭織の写真が印刷されている。
「これは・・・トレーディングカードれすか?」
「これはね、その星での辻の身分証明書だよー。ほら、裏にはあんたの名前がちゃんと書いてあるでしょ?これを持っていれば、当面の生活費も出るし、どれでも好きなこと勉強できるし、病院なんかも無料だよー。」
298松本0時:2001/07/18(水) 22:52

 それは地球での生活と比べれば夢のような話だった。その日の食事もままならず、冬の暖房さえあまり使えなかった地球での生活・・・。機械人間の横暴がはびこり、そのせいで希美の母も・・・。
(ん?きかいにんげん?お母しゃんはきかいにんげんに殺されたのれすよね?れも??)
 そのとき、希美はなぜか、自分の記憶に違和感を感じたのだった。しかし、そのことについて深く考えることをしなかった。それよりもずっと大きく、希美の心のなかを占めるものがあったから・・・。
299松本0時:2001/07/18(水) 22:52

「いいらさんは、どうするのれすか?」
希美は聞いてみた。
「私はもうお別れだよ。辻とはずーっと一緒に旅してきて、いろんなところに行ったよねー。・・・とっても楽しかったよ。いろいろ助けられたりもしたし・・・。でもね、私が付き添うのはここまでなんだ。これからは辻が一人でいろいろ決めていくんだよ。」
300松本0時:2001/07/18(水) 22:53

「いいらさん・・・ののにはまだわからないことがいっぱいあるのれす。さいごに聞いていいれすか?」
 希美には、なぜ自分をここまで連れてきてくれたのか、そして、希美の母と圭織たちの関わりとはなんなのか、今までの疑問を圭織にぶつけた。しかし圭織はすまなそうに首を横に振って言った。
「辻、それは言えないことになってるんだよ。これはね、決まりなんだよ。」
「いいらさん・・・」
301松本0時:2001/07/18(水) 22:53

                           つづく
302名無し読者:2001/07/19(木) 07:02
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
303娘。さんだよもん:2001/07/19(木) 21:37
始まった!
304いいらさんが:2001/07/20(金) 21:20
305名無し募集中。。。:2001/07/22(日) 03:31
306松本0時:2001/07/22(日) 23:51
 車窓にはいつの間にか、終着駅の星が間近に見えていた。希美は、圭織にかける言葉を必死に探していた。本来なら、旅の最後をしめくくるこの場では、いままでの数々の疑問点についての種明かしが聞けるはずだった。しかし、圭織はそのことは話せないという。
 無理にでも問いただせばよいのだろうか?それとも、ここまでの旅のことにはきっぱりと別れを告げて、これからの自分についてだけ考えるようにした方がよいのだろうか?希美はまだまだ時間が欲しいのに、列車は非情にも正確な運行を続け、終着駅はどんどん近づいていく。
307松本0時:2001/07/22(日) 23:52
 圭織のほうも、希美に言葉をかけられずにいるようだった。圭織も、希美の質問には答えたいのだろう。そう、この旅のあいだ、圭織は希美のいろいろな質問に答えてくれていた。圭織の答えは、時にはあまりにも個性的にすぎることもあったが、いつも希美を助けてくれていた。しかし、とうとう最後まで、答えの得られないものはそのまま残ったのだった。
(もう到着してしまうのれす・・・。とうとういいらさんに聞けなかったのれす。いいらさんとずっと一緒に旅をしてきて、いいらさんのことは全部わかったつもりだったのれすが、ほんとうはなんにも知らないままなのれす・・・。)
308松本0時:2001/07/22(日) 23:54
 気持ちの整理がつかない息苦しさを紛らわせるためか、希美は窓の外に目を向けた。もう地表がかなり近づいてきている。青い海と、緑に覆われた海岸線が見える。きれいな星だ。列車の前方に、都市が見えてきた。その都市は、街全体が落ち着いた色あいに統一されているようだった。高層ビル、公園、住宅地などが整然と並ぶ様子はかなり近代的に見えるが、建物の一つ一つはむしろ懐かしさを感じさせるような、重厚なデザインだった。
 地表から斜めに突き出すガイドレールがみるみる近づき、車輪がレールに乗る衝撃音が列車の前の方から希美の足下を通り過ぎて後ろへと流れていった。999号は、ついに最後の星の地面にその車輪を乗せたのだった。
309松本0時:2001/07/22(日) 23:55
「いいらさん・・・いままでありがとうなのれす。本当なら、ののは地球で死んでいたのれすね・・・。いいらさんのおかげで、ここまで来れたのれす。本当にありがとうなのれす・・・。」
「辻・・・カオリは・・・カオリは・・・」
「さっきは余計なことを聞いてしまったのれす。ののは、こんなにいいらさんにお世話になったのれすから、もう無理なことはいわないのれす。いいらさんにもいろいろ事情があるのれすから・・・。いいらさんにいくら秘密があっても、ののにとっていいらさんはとっても大事な人なのれす。ずっと・・・ずっと・・・。」
「辻・・・ありがとう。お礼を言わなきゃならないのはカオリのほうだよ。なあに、辻・・・泣いてるの?・・・そんな・・・似合わないぞ。ねえ、笑って。そんな顔するから・・・カオリまで・・・涙が出てきちゃったよ・・・。」
310松本0時:2001/07/22(日) 23:55
 終着駅は、以外とこぢんまりした駅だった。まだ造られて間もないようなきれいさだが、ホームの頭上は細かい鉄骨に支えられたガラス張りの屋根に覆われ、レンガ造りの壁にはアーチ窓が並ぶ、懐かしさを感じさせる造りだ。
 ホームに滑り込んだ999号は、静かに停車した。
「ご乗車ありがとうございましたー。終点、愛の種にただいま到着いたしましたー。どなたさまもお忘れ物のないようにお降りくださーい。」
矢口真里が到着を告げた。
311名無し読者:2001/07/23(月) 07:07
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
312名無し募集中。。。:2001/07/23(月) 13:02
ワクワク・・・
313松本0時:2001/07/23(月) 23:44
 コンコースには人影はまばらだった。窓からの傾きかけた日差しが床に縞模様を描いている。希美も圭織も、いざ別れの時を迎えてみると、なかなかふさわしい言葉がみつからず、型通りのあいさつをぎこちなくやりとりするだけでだった。
「いいらさん・・・。さようならなのれす・・・。」
「じゃあね。辻も元気で・・・。さようなら・・・。」
最後の言葉のあと、圭織はほんの少しの間希美を見つめていたが、すぐに眼を伏せて視線をはずすと想いを断ち切るように背を向けて歩き出した。希美は、これまでの旅の重さに比べ、ずいぶんとあっけない別れのような気がした。この瞬間こそが、今までで一番想いの詰まった時間だったということはわかっていたのだが・・・。背の高い後ろ姿が遠ざかっていくのを、希美はずっと見つめていた。
314松本0時:2001/07/23(月) 23:45
(ののは・・・とうとう本当のひとりぼっちになってしまったのれす・・・。ううん・・・そんなことないのれす。これから行くところで、いっぱいいっぱいおともだちができるはずなのれす・・・。)
希美は駅前でタクシーを拾い、圭織に教えてもらったとあるビルへと向かった。これからは、圭織に頼らずに、自分でいろんなことを決めいかなければならない・・・。期待よりも不安のほうが遙かに大きかった。希美はふと、不思議な感覚にとらわれた。少し前にも、今と同じように、不安でいっぱいのまま、一人でなにか大きな場所に飛び込んでいったことがあったような・・・。街の風景までもが、なぜかそのときと同じような気がしてくる。
(いままで・・・ずっと旅をしてきただけのはずなのれす。れも・・・なにがあったのれしょうか?おもいだせないのれす・・・。)
315松本0時:2001/07/23(月) 23:46
 希美はずっと、その奇妙な感覚を振り払えないまま、目的の場所に着いた。タクシーを降りてそのビルを見上げたことさえも、なぜか過去に一度あったことのような気がしてしまう。そして、希美に重くのしかかる不安もまた、そのときと同じなのだ。
(どうすればよいのれしょう・・・。もう・・・こんなことは放り出して帰りたいのれす・・・。なぜれしょう?なんにもこわいことなんてないはずなのれすが・・・。)
 希美はしばらく立ち止まっていたが、ついに心を決めて入り口の扉をくぐった。前回もそうだった・・・希美にはなぜか、そんな感覚が鮮明にあるのだった。
316名無し読者:2001/07/24(火) 07:26
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
317松本0時:2001/07/24(火) 23:56
「飯田財団」・・・希美が訪ねたのは、そういう名前の慈善団体のオフィスだった。受付で圭織に言われたとおりカードを見せると、建物内のいろいろな場所に案内され、映像を見せられたり、パンフレットを渡されて話を聞いたり、いろいろとここでの生活について説明を受けた。その内容は、今までの生活に比べればあまりにも恵まれすぎていて、希美にはうまく現実のこととして思い描くことができなかった。
(この星では、ののはなんでもできるのれす・・・。なにをすればよいのれしょう?いままでは目の前のことをやるだけでせいいっぱいだったのれす。いきなり何をやってもいいと言われても、ののにはわからないのれす・・・。)
318松本0時:2001/07/24(火) 23:57
 ホテルに戻っても、希美の迷いは深まるばかりだった。すぐに決める必要はないとは言われたものの、これから時間をかけて考えたところで、何がわかるというのだろうか。たくさんもらってきたパンフレットをいくら見ていても、何も答えは得られなかった。
(いいらさん・・・いいらさんならなんて言ってくれるのれしょうか・・・。もう一度・・・もう一度いいらさんに会いたいのれす・・・。)
 希美はあらためて、自分の心の中に占める圭織の存在の大きさに気づいていた。
319松本0時:2001/07/24(火) 23:57
 翌朝、あまり熟睡できないまま目を覚ました希美は、窓の外に広がる青空を見て、無性にどこかへ出かけたくなった。昨日もらったパンフレットなどは全部部屋に置いたまま、軽やかに腕を振ってホテルの玄関を出た。
(どこに行ったらよいのれしょう・・・。あ、あれに乗ってみるのれす。)
ちょうど目の前の停留所に路面電車が停まったので、希美はそれに飛び乗った。行き先はまったくの運まかせだ。
320松本0時:2001/07/24(火) 23:58
 路面電車は、ビル街の広い道の真ん中を走っていく。いろいろな店、行き交う人々・・・、単調だった999号の車窓とはうってかわって、街を歩くのと同じ視線で眺められるのがとてもおもしろい。
 電車はいくつもの停留所に停まり、だんだんと乗客が減っていった。町の中心部からどんどん離れ、車窓には緑が多くなっていった。突然、窓の外に深い青色が広がった。
「あ、海なのれす!」
321松本0時:2001/07/24(火) 23:58
 希美は海に近そうな停留所で電車を降りた。港町らしくいくつもの倉庫やタンクが建ち並び、その合間から大きな船もその巨体をのぞかせている。海鳥の鳴き声と潮のにおいが風に運ばれてくる。
 希美は海のほうへと歩いてみた。すると、かすかに楽器の音色が聞こえてきた。
「なんれしょう・・・ラッパの音みたいれすね・・・。」
 その音色の流れてくるほうへと歩いていくと、海岸の広場に出た。そこで希美は、海に向かってサックスを吹いている少女の姿を見つけた。
 希美はふと、その曲に聞き覚えがあることに気づいた。ジャズ風にアレンジしてあるため、最初はわかりにくかったが、この曲は確かに、昔よく耳にしていた曲だ・・・。
322松本0時:2001/07/24(火) 23:59
「"・・・千葉県好きれすか〜?"」
希美は思わずその歌の一節を口ずさんだ。すると、少女は手を止めて、びっくりしたように希美の方を見た。
「ごめんなしゃい。邪魔してしまったのれす・・・。」
「いいのいいの。あなた、この歌知ってるの?」
「死んだお母しゃんが、よく聞いていたのれす。」
323名無し読者:2001/07/25(水) 07:14
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
324名無し募集中。。。:2001/07/26(木) 00:25
晒し
325名無し募集中。。。:2001/07/26(木) 03:08
狼で小説やるのは大変みたいだね。
326松本0時:2001/07/26(木) 05:17
>>325
このスレに限っては、特に大変でもないよ。
この話は名作集系と違ってネタスレみたいなもんだからかな。
気になることと言ったら、読者が少なそうなことくらい。
そもそも再利用スレだからね。自分で立てるなら羊にしたはず。
327名無し募集中。。。 :2001/07/27(金) 00:49
>>326
いつも読んでますよ
頑張ってください
328a:2001/07/27(金) 11:24
>>326
miteru yo
329へぼ@まっく:2001/07/28(土) 02:34
俺連載モノのマンガとか雑誌で読まずにまとめて単行本で読むのが
好きだからこの小説はじめのとこしか読んで無い
>>326
頑張って完結させてください
楽しみにしてまス
330松本0時:2001/07/28(土) 07:34
みなさんありがとうございます。
「あすりか」や「BAD DAYS ON HAPPINESS」のような激論がないのは
喜ぶべきことなのかもしれませんね。

>>329
私が書いたのは>>114以降で、それ以前の部分とはかなり違います。
そのころからレスが少なくなりました・・・。
331名無し募集中。。。:2001/07/29(日) 01:10
レスが減ったのはネタから小説に変化したからでしょう……。
読者はあなたが思っているよりはるかに多いですよ。
332名無し募集中。。。:2001/07/29(日) 14:31
個人的に999が心のベスト10に入ってる漫画なんよ。
多大な文章量で褒めちぎりたいんだけど、このスレ汚したくないんだよね。
だから、頑張ってくださいとしかレス出来ない。したくない。
続き楽しみにしてます。
333松本0時:2001/07/30(月) 17:04
私の駄文も、ベスト100くらいに入れれば光栄です。
>>322の続きいきます。
334松本0時:2001/07/30(月) 17:05

「そう・・・。私の知らないたくさんの人が、この歌を聴いてたんだね・・・。なんだか照れくさいな・・・。」
「てことは・・・もしかして、この歌は、おねいしゃんの歌だったのれすか?」
「うん、そうだよ。私と、もう一人の仲間の・・・イメージソングみたいなもんかな。私ね、昔、プロとして大勢で歌ってたんだ。そのころはちょっとした人気だったんだよ。でね、1曲だけ私たち二人をメインにして作ってもらったのがこの歌なんだ。」
「そうなんれすか・・・。ののはかんげきれす。この歌をうたってたひとに会えるなんて。」
「ありがと。私もこんなところでファンに会えるなんて感激だよ。そうだ、お昼まだでしょ?ごちそうするよ。いい店知ってるんだ。」
「いいのれすか?・・・ありがとうなのれす。」
335松本0時:2001/07/30(月) 17:06

 その少女が案内した店は、黄色い2階建てバスを使った軽食堂だった。目の前には白い砂浜が広がっていて、夏であればとてもにぎわいそうなのだが、今は人影もすっかり消え、かき氷の旗と時期はずれのビーチパラソルだけが秋風にはためいている。
「さあ、何にする?」
「うーん・・・焼きそばもいいのれすけど、おすすめって書いてあるのれ、ホットドッグにするのれす。」
「じゃあ私も。」
 二人は屋外のビーチパラソルの下に席を取った。
「あ、自己紹介してなかったね。私、市井紗耶香。よろしく。」
「私は辻希美れす。この星には昨日来たばかりなのれす。」
336松本0時:2001/07/30(月) 17:07

希美は紗耶香に、いままでのことを説明した。
「へー、これからなにをやるのか決めなきゃいけないんだ・・・。で、やりたいことはあるの?」
「うーん・・・。ののには・・・まだわからないのれす。」
「それじゃあさ、好きなことってなに?」
「すきなことれすか・・・。歌を・・・うたうことれしょうか・・・。れも、ののはあんまりうまくないれすよ。」
「でも、好きなことなら、がんばれると思うよ。歌だってこれから練習してうまくなるかもしれないし、もしだめでも、歌に関係したなにかの仕事につくことだってできるんだし。もしも全然関係ない仕事についたとしても、歌でがんばったっていう経験がほかのことへの自信につながることもあるしね。若いんだから、好きなことに挑戦してみるってことは大切だよ。」
「そ・・・そうれすね・・・。」
「あ、なんだか押しつけみたいなこと言っちゃったみたいね。ごめん。実はね、わたしも今、夢に向かってがんばってるんだ。それでつい、ひとにまでそんなこと言っちゃって・・・。」
「いいのれす。ののにはとっても参考になったのれす。ところで、市井しゃんは何をがんばっているのれすか?」
「私ね、シンガーソングライターになりたいんだ。いつか大勢の人の前で、私が作った歌をうたうっていうのが私の夢・・・。」
337松本0時:2001/07/30(月) 17:07

「市井しゃん!・・・気をつけてくらさい。なんだか・・・よくないことがおこるような気がするのれす!」
 希美はなぜか、反射的にそんな言葉を発してしまった。自分は知っている・・・その夢が、まもなく障害に突き当たるということを。なぜなのだろうか・・・。
「なあに?失敗するとか?失礼だぞーっ!」
何も知らない紗耶香は、笑いながらそう言った。
「ご・・・ごめんなしゃい・・・。ののは最近へんな夢を見たのかもしれないのれす。」
しかし、希美にとっては夢ではない、過去にあった事実のような気がしてならないのだった。
338松本0時:2001/07/30(月) 17:11

「ののちゃん・・・私もね、簡単じゃないてことはわかってるんだ。たくさんの人が夢を追いかけてるけど、成功した人はごくわずか。私たちは成功した人しか目にしないけど、その影には誰にも知られないまま失敗した人が山ほどいるんだもんね・・・。
 私が前にデビューした時だって、私は運良く選ばれたけど、あのとき落ちた人だって大勢いて、その人たちは全然違う仕事してるんだろうし・・・。」
そう言っている紗耶香を見ているうちに、希美にも先ほどの奇妙な感覚はただの思い過ごしのような気がしてきた。
339松本0時:2001/07/30(月) 17:12

 希美は悪い予感などはもう心に中に押し込めて、そのあとしばらくは、紗耶香といろいろと好きな歌の話をした。紗耶香は、希美が昔聞いた覚えのある歌から、希美が知らない巨匠の歌まで、いろいろな歌を知っていて、それぞれの歌への想いを聞かせてくれたり、サックスで吹いてみせてくれたりした。希美もそんな時間がとても楽しかった。
(やっぱりののも歌がすきなのれす・・・。)
時のたつのも忘れて語り合ったあと、別れにあたって、紗耶香は言った。「じゃあね、最後に、特別にののちゃんにだけ、私が作った最初の曲聞かせてあげる。これ、ちゃんと人前で吹くのははじめてなんだぞー。」
「そ、それはうれしいのれす!かんげきなのれす!」
340松本0時:2001/07/30(月) 17:13

 二人は砂浜に出た。紗耶香は海を向いて立つと、ゆっくりとサックスを構えて口に当てた。そして、初めて自分自身で作りあげた曲を、初めての観客のために吹き始めた。
(これが・・・市井しゃんのつくった曲・・・。いい曲なのれす。これから大変なことがあったとしても、いつかきっと市井しゃんの夢もかなうはずなのれす。)
 秋の寂しげな砂浜の上を、紗耶香のサックスの音色が波の音に乗って流れ続けていた。
341名無し読者:2001/07/31(火) 07:19
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
342名無し募集中。。。:2001/07/31(火) 21:45
343名無し募集中。。。:2001/07/31(火) 21:48
344名無し募集中。。。:2001/07/31(火) 22:00
さらば地球よ石川りかよ
345かおりん祭り:2001/07/31(火) 23:18
かおりんが美しすぎて生きていくのが辛い。
346名無し募集中。。。:2001/07/31(火) 23:20
>>345
同意。でも松本さん、飯田さんへの応援はsageで!
347飯田ウザイ死ね:2001/08/01(水) 01:02
飯田応援するやつ=家畜
348名無し募集中。。。:2001/08/01(水) 11:09
がんばってねー
349松本0時:2001/08/02(木) 01:48

 街へと戻る路面電車の中で、希美はずっと考えていた。
(ののは、ほんとうに歌をやるべきなのれしょうか?そんな才能あるのれしょうか?ののは・・・市井しゃんのようにずっとがんばっていくほど強くないし、あんなすばらしい曲なんて書けないのれす・・・。)
 朝乗ったのと同じ停留所で降りたものの、そのままホテルにはもどらず、街を当てもなく歩いた。いつの間にか、希美は芝生の広場に出ていた。街をそこだけ長方形に切り抜いたようなその広場の中央、ゆるやかな起伏の頂上にあるあずまやのベンチに座り、希美はぼんやりと目に見えるものを眺めていた。芝生を横切って帰路につくビジネスマン達、外周の道路を走る、そろそろライトを点灯し始めた車の流れ、沈みつつある夕日に照らされて、上の方だけが金色に輝いている高層ビルの列・・・。
 希美はふと、近づいてくる背の高い人影に気づいた。その姿には見覚えがあった。そう、ここに来るまでの旅のあいだ、いつもそばにいた人・・・。
「辻?・・・よかった・・・見つかって・・・。」
聞き覚えのある声がした・・・。
350松本0時:2001/08/02(木) 01:49

「いいらさん!いいらさん・・・とっても、とっても会いたかったのれす。」
「辻・・・ごめんね・・・。決まりだからなんて言って、ちゃんと全部話さなかったこと、間違ってたよ。辻とはずっと一緒に旅をしてきた仲間だもんね。」
「いいらさん・・・ののは・・・いいらさんにまた会えただけでじゅうぶんなのれす。い・・・いいらさーん!」
希美は泣きだしながら圭織にしがみついた。圭織は少しの間驚いて立ち止まっていたが、我に返るとそんな希美を強く抱きしめた。
「ひーん・・・ひーん・・・いいらさん・・・あったかいのれす・・・心臓の音が聞こえるのれす・・・。のののおかあしゃんとおなじれすね・・・機械の体なんかじゃなかったのれす・・・。」
「当たり前でしょー・・・。」
圭織もそれだけ言うのがやっとで、あとは涙で言葉にならなかった。
351松本0時:2001/08/02(木) 01:50

 圭織は希美に見せたいものがあるといって、希美についてくるように言った。そして歩きながら、なぜ希美をこの星に連れてきたのかを話した。 しかし、希美にはもはや、そんなことは重要ではなかった。本当は、この旅の理由なんてどうでもいい。圭織と再び会えたことだけがうれしかった。「・・・でね、辻が選ばれたんだ。この星の特別給費生に。やっぱり、辻には、何か光るものがあったんじゃないかな?」
「そ・・・そうれすか?ののには、あんまりそんな気はしないのれすが・・・。」
「そんなことないよ。今までの旅でも、辻は立派だったよ。」
352松本0時:2001/08/02(木) 01:50

 圭織が立ち止まった。「ほら、ここだよ。」
そこは、大きなコンサートホールだった。この日は何もイベントがないらしく、すっかり夕闇に包まれていたが、圭織がIDカードをリーダーに通すと、通用口が開き、廊下に灯りがともった。
 圭織は、希美を大ホールの観客席に案内した。非常灯だけがともるがらんとした空間は、観客であふれている時とは全く違い、怖くなるほどの暗闇と静寂に包まれていた。
 圭織は、舞台の袖でなにやら操作したあと、希美のところへ戻ってきて言った。「さあ、これから、カオリたちの晴れ舞台が始まるよー。」
 モーターの音がして、天井からいくつもの投影機が降りてきた。そして、照明が一斉に舞台を照らしたかと思うと、そこに8人の少女の姿が現れた。
353名無し募集中。。。:2001/08/02(木) 19:52
誕生日に向けてage
354松本0時:2001/08/02(木) 21:14

〜OH NO HOLD ON ME
   愛がない男ね・・・

 ホールの大きなスピーカーは、圧倒的な迫力の歌声を響かせた。そして最先端の投影設備が映し出す8人の姿は、まるで本人達がその場にいるかのようだった。
 希美はこの歌をよく知っていた。昔、時折音飛びのする安物のプレーヤーで母とよく聞いていた歌だ。その想い出の歌を、希美は初めて現実感のある音で聴いたのだった。そして、それをうたう8人の姿もまた、希美には見覚えがあった。
 それはあのとき、圭の部屋で見た写真の8人だった。圭織も、なつみも、圭も、真里も、目の前のステージの上で生き生きと踊っていた。そして、もちろんその中には希美の母の姿もあるのだった。
355松本0時:2001/08/02(木) 21:15

「ん?あれは・・・市井しゃん・・・。」
「なあに?辻は紗耶香のこと知ってるの?」
「昼間、港で会ったのれす。市井しゃんは、シンガーソングライターになるために勉強しているって言ってたのれす。ののは、市井しゃんの作った曲を聴かせてもらったのれす。」
「そうだったんだ・・・。まさかそんな近くにいるなんて・・・。」
「いいらさんは、市井しゃんとつき合いがないのれすか?」
「うん・・・あれから・・・もう1年になるかな・・・。紗耶香はね、自分の夢を叶えるんだって言って、去っていったんだ。ううん、紗耶香だけじゃない。ほら、あの子、福田明日香って子なんだ。そしてあっちにいる、石黒綾って人も・・・。紗耶香で3人目だった・・・。」
圭織はステージ上の、まだ仲間だった頃の姿を指さして言った。
356松本0時:2001/08/02(木) 21:16

「あのころはね、モーニング娘。って、すごかったんだよ。ほら、これみてごらん。」
圭織はバッグから、1冊の古い雑誌を取りだした。表紙にはこう書いてあった。
『特集 モーニング娘。頼むから消えて』

「これは・・・悪口れすか?」
「中を読んでごらん。」
圭織はいたずらっぽい表情で言った。希美は記事を読んでみた。
357松本0時:2001/08/02(木) 21:17

******************************************************
モーニング娘、頼むから消えて

 モリッシー

 「モーニング娘。を否定するということは、マドンナを肯定
  するということだ。そんな奴らには、濡れた運動靴でピシャリ
  とお見舞いしてやるさ」

 アレック・エンパイア

 「セクスィービーーム」にはデジタル・ハードコアに通じる
  破壊性がある。」

 ロバート・フリップ

 「モーニング娘。は、素晴らしい。
  彼女らの声は西洋の歴史からも、
  そして彼女自身のアイデンティティの
  基になるはずの東洋の歴史からも自由だ。
  完全な自由。私が30年に渡り心身を削って得ようとしたものを
  彼女らは意識することなく最初から身につけている。
  そして何より、彼女らは、私の妻と同じくらいチャーミングだ(笑)。」

             ・
             ・
             ・
******************************************************
358松本0時:2001/08/02(木) 21:18

 それは、数多くのアーティストからの賛辞の嵐だった。
「モーニング娘。って・・・ほんとうにすごかったのれすね・・・。そして、いいらさんやお母しゃん達は、そすごい人たちだったのれすね・・・。」
「うーん、カオリはねー、毎日の仕事に追われて、何が何だかわからないうちに有名になってたんだよ。一人一人は、あんまりすごくなかったかもしれないけど、みんなの力が一つになって、それが世の中から求められてるものとうまく一致したって言うのかなー?」
359松本0時:2001/08/02(木) 21:19

「なんれ、今はモーニング娘。をやってないのれすか?その上、みなしゃん、モーニング娘。のことを隠してるみたいだったのれす。」
「うん・・・もう、その時が過ぎちゃったって言うのかな?
 もう戻れないんだよ。みんなそれぞれ、目標っていうのが違ったんだよ。最初はとにかく歌で認められたいって団結してがんばったけど、そのうちみんなもっと上を目指そうとして、その目指すものがそれぞれ違っていて・・・。
 それにね、みんな、いつもいつも一緒にいると、お互いの気に入らないところばかり見えてくるんだ。最後のほうなんて、すっごく険悪な雰囲気だったからね。カオリとなっちだって、あのころは犬猿の仲だったんだよー。信じられないでしょ?
 それで、もう終わりにしようってことになったんだけど、辻のお母さん・・・裕ちゃんがね、私たちが解散するときに言ったんだ。いくら"ふるさと"で負けたとは言っても、元モーニング娘。って名乗れば、どこへ行ってもちやほやしてくれる。でも、みんな、モーニング娘。はきっぱりやめるんだから、それぞれ自分の道を選ぶってきめたんだから、もうモーニング娘。なんて名乗ってはいけないって。一人の人間として、勝負して行かなきゃだめだって。私たちはずっと仲間だし、助け合うべきだけど、ただ安心しきって、お互い頼るだけになっちゃだめだって。」
360松本0時:2001/08/02(木) 21:21

「お母しゃんらしい言葉なのれす。ののは、今でもみなしゃんの歌がとっても好きなのれす。みなしゃんの歌は、いつまでものののこころにのこっているのれす・・・。
 ん?おかしいのれす!みなしゃんは・・・今でもうたってるはずなのれす!」
「どういうこと?」
「・・・ごとうしゃんが・・・ごとうしゃんが入って・・・そして・・・あれ?おかしいれすね??」
 希美の記憶のなかにある、どこか別の世界の出来事が、いままでの旅の間に次第に実体を持ってきて、この世界のものよりもむしろ現実味を帯びてきているような気がしてきた。
 希美は、圭織や、旅の途中で出会ったたくさんの大切な人たちとの想い出が、幻となって消えてしまうような気がして、なんだか悲しくなってきた。
361松本0時:2001/08/02(木) 21:21

「辻の言うこと、なんだかわかるような気がする。」
希美は驚いて圭織を見つめた。
「いいらさんも、何か知ってるのれすか?」
「カオリもねー、よくほかの世界のことが頭に入ってくるんだー。なんて言うのかなー?交信っていうのか・・・。」
 希美も以前から、圭織には何か神秘的なものを感じていたが、今の圭織の説明でもまだよくわからなかった。
362松本0時:2001/08/02(木) 21:22

「・・・ところで、辻はこれからどうするのか決めた?まだ急ぐ必要もないけど。」
「ののは・・・歌がすきなのれす。歌のお仕事ができればいいと思っているのれす。」
「歌かぁ・・・。カオリとおんなじだね。」
「れも・・・ののにはそんなに才能があるのれしょうか?全然自信がないのれす。」
「じゃあ試しにうたってみせてよ。」
「え、今れすか?・・・うーん・・・やってみるのれす。」
「何うたう?一応これだけあるけど・・・。」
圭織は何枚かのディスクを希美に見せた。
「これにするのれす。」
「『ふるさと』!?よりによってふるさとかぁ・・・いや、うん、じゃあかけるね。」
 希美はステージに上がった。自分を照らす照明がまぶしい。目の前に並ぶ座席の数に圧倒される。これで満席の観客がいたらどんな感じなのだろうか?希美は普段とはくらべものにならぬほど緊張した。
 前奏が流れてきた。希美は覚悟を決め、息を吸い込んだ。
363松本0時:2001/08/02(木) 21:22

〜東京でひとり暮らしたら
  母さんのやさしさ心にしみた・・・

 歌い始めは、緊張のあまり声を出すだけで精一杯だったが、だんだん、周囲を見たり、歌に気を配る余裕が出てきた。大勢の聴衆の前で、自分の歌を披露する・・・そのことが、とてもすばらしいことだと思えてくるのだった。
364松本0時:2001/08/02(木) 21:23

 歌い終わると、がらんとした観客席から拍手がきこえた。
「なかなかうまいよー。すごいすごい。」
「れも・・・どうしても音のはずれてしまうところがあるのれす。"失恋しちゃったわ"のところとか・・・。」
「練習してみようよ。カオリがみてあげる。苦手なところだけ10回やってみよー、10回。」
365松本0時:2001/08/02(木) 21:25

 希美は圭織の指導のあと、再びうたった。今度は最初よりはうまくできたような気がした。
「できたじゃん。うまいうまい。今ここに、もうひとりの明日香が誕生しましたー。」
「とんでもないのれす。ののなんか、ふくらさんに比べたらぜんぜんへたなのれす。」
「みんな最初は下手なんだよ。でもカオリにはね、辻は大化けするような予感がするんだー。」
「いいらさん・・・ののにはそんな自信はないのれす・・・。」
「辻はこれからの人間だからね。辻、あんたはこんな星にいちゃいけないよ。アサヤンのオーディションを受けなさい。」
「アサヤン?・・・ごとうしゃんみたいにれすか?」
「そうだよ。この星には過去しか残ってないんだよ。辻には未来がある。こんなところにいちゃいけないんだよ。・・・明日、999号が出るから、それに乗りなさい。」
「れも・・・ののは、いいらさんとまた別れるのはつらいのれす・・・。」
「辻・・・いつかは一人立ちしなきゃならないんだから、がまんするの。それにね、手紙とか電話とかは、いつでもちょうだい。苦しいことがあったら、どんなときでも相談に乗るよ。さあ、辻の新しい旅の始まりだぞー。」
 その夜、希美は圭織と枕を並べて話をした。かつて母とそうしたように・・・。
 圭織は今までのことをいろいろ話してくれた。デビュー前の不安、手売りの苦労、叱られたこと、喧嘩したこと、うれしかったこと・・・。希美はこの時初めて、圭織のことが本当にわかった気がした。
366松本0時:2001/08/02(木) 21:26

 朝起きると、圭織の姿はなかった。代わりに、一枚のメモが残っていた。
-----------------------------------------------------------
少し長いけど、最後まで読んでね

 私は、ちょっと準備することがあるので出かけてきます。
 見送りには間に合うようにするから、辻は先に駅で待っててね。
 それから、こんどは辻一人での旅になるから、じゅうぶん気をつけてね。
 あと、列車には絶対に遅れないように。それから持ち物は・・・
             ・
             ・
             ・
             ・
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 そのメモには、圭織がこれからの旅のことを心配して、いろいろな注意事項を書いてくれていた。希美には、圭織のその気配りがうれしかった。
「ののは・・・がんばってみるのれす。」
367松本0時:2001/08/02(木) 21:27

 希美は、999号の停まるホームに立っていた。発車時刻が迫っているのに、圭織の姿はまだ現れない。
"999号は、あと5分で発車となります。ご乗車になってお待ちください・・・。"
(まだなのれしょうか・・・。)希美は心配になって、ホームへの階段の降り口を見つめた。するとまもなく圭織が駆け込んできた。
「いいらさん!間に合ってよかったのれす!!」
368松本0時:2001/08/02(木) 21:28

「これ探すのに手間取っちゃったんだ。はい、カオリからのプレゼントだよ。」
圭織は、そう言うと、小さなメモリースティックを差し出した。
「これにはね、カオリが昔、去っていく友達から贈ってもらった歌が入ってるんだ。裕ちゃんも、この歌は大事に聴いてたはずだよ。だからもしかすると・・・まあとにかく聴いてみてよ。」
「れも・・・ののはプレーヤーを持ってないのれす。」
「あ、そっかー・・・どーしよっかー・・・あ、亜弥ちゃん!ちょっとちょっと!」
圭織は、通りかかった新任の車掌を呼び止めた。
「あ、飯田さん!なんのご用ですか?」
「これを車内放送で流してよ!今すぐ!いいでしょ?」
「もちろん、飯田さんの頼みでしたら・・・。あ、でもあと1分で発車ですよ。」
「この子が聞ければいいよ。大急ぎでおねがーい。」
 少しして、999号の車内に、軽やかな前奏が流れだした。希美ははっとした。この歌は、母が特に大事にしていた歌だった。そして、希美が歌を好きになったきっかけも、この歌だった。
「いいらさん!この歌は、お母しゃんとの想い出の歌なのれす!ののの大好きな歌なのれす!」
圭織はほほえんで、深くうなずいた。
369松本0時:2001/08/02(木) 21:29

 車掌のホイッスルが響いた。一拍置いて、汽笛とともに999号がゆっくりと動き始めた。車内に歌声が響く。

〜I'll Never Forget You 忘れないわ あなたの事
 ずっとそばにいたいけど ねえ仕方ないのね
 ああ 泣き出しそう ・・・

 圭織は列車を追いかけながら叫んだ。
「辻ー!カオリねー、辻とはきっとまた会える気がするよー。絶対にそうなる!こんど会うことは、もう決まってるような気がするんだよー。次に会ったときには、一緒にうたったり、踊ったりしよーねー!」
「いいらさーん!きっとれすよー!ののも、いいらさんとは、また会うって、もう決まってるような気がするのれすー!いっぱい勉強して、必ず会いに行くのれすー!」

〜きっとまた逢えるよね きっと笑い合えるね
 今度出会うときは必然・・・

 希美は圭織が見えなくなっても、ずっと手を振っていた。快晴の空を、列車はぐんぐん昇っていった。
370松本0時:2001/08/02(木) 21:30

 希美には、これからの旅で是非会いたい大事な仲間たちがいた。
〜あべしゃんたちはいまも走っているんれすよね。『一生懸命ってかっこいい』・・・ののも、あべしゃんのことばをずっとおぼえておくのれす。
〜やすらさんの絵は、きっと賞を取れたんれしょうね。『芸術とは、感じたままを表現すること』。やすらさんの心の絵を、また見たいのれす。
〜ごとうしゃん、いまもきっと好きな歌をうたってるんれすよね?ごとうしゃんならきっと大活躍できるのれす。
〜よっすぃ〜の海はどのくらい元にもどってるのれしょうか?早く街のひとたちと漁ができるようになるとよいれすね。
〜カントリー娘。と梨華しゃんも、いま牧場でがんばっているんれすよね?歌のほうも、きっとたくさん売れてるんれすよね?
〜それに・・・アイボン、もうオーディションは受けたんれしょうか?アイボンならきっと合格するはずれすよ。
〜お母しゃん・・・お母しゃんはモーニング娘。のなかざわしゃんだったんれすね。お母しゃんの仲間だった人たちに、ののは会ってきたのれす。とってもいいひとたちだったのれす・・・。
 希美はいつしか眠りに落ちていった。

第七部 希美と圭織の終着駅  完
371松本0時:2001/08/02(木) 21:31
エピローグ

「・・・辻!つーじー!起きなさーい!」
希美は肩を揺さぶる圭織の声で我に返った。宇宙の暗闇に代わって、光にあふれた世界が視界に飛び込んできた。
「そろそろ到着だぞー。さあ、準備してー。」
「もう星におりたんれすか?なんだか急にれっしゃがあたらしくなったみたいれすね。いつの間にかわったんれすか?」
「なに寝ぼけてるの!ずーっと同じ車両だよー。それに星ってなによ?」
「なんや?辻がどうかしたんか?」
「あっ、お、お母しゃん!」
「なんやて?辻〜、冗談きっついわー。ウチはあんたのおかんちゃうでー。せめてねーさんにしといてほしいわー。」
372松本0時:2001/08/02(木) 21:32

"本日は、JR西日本、新幹線「のぞみ」にご乗車いただき、ありがとうございました。まもなく、終点博多に到着いたします。・・・"
希美が乗っていたのは、飯田鉄道999号などではなく、自分と同じ名を持った、地上の超特急だった。
「辻ってば、品川あたりからずーっと寝っぱなしだったんだからー。」
圭織が口をとがらせながら言うと、前の席から車掌、ではなくて真里が顔を出した。
「『寝る子は育つ』だからね。辻もこれからおっきくなるぞお。」
373松本0時:2001/08/02(木) 21:33

 福岡で行われるコンサートのため、希美たちは移動していたのだった。博多駅から会場へと向かう貸切バスの中で、希美は999号での旅についてみんなに話して聞かせた。
「ウチのデコが光るんやてー?ののちゃんなにゆーてんの!?」
「私、牧場で働いたら耐えられるかなー・・・。」
「私が海の男?辻ちゃんには、私ってそんなにワイルドに見えるの!?」
「私って、そんなにやる気ないかなあ?誤解してない?確かに部屋はきたないけどさ〜」
「私は画家だってハハハハ。ある意味正解かも。」
「なっちは駅伝選手だってさー。やっぱこの中では一番かっこいいっしょ?」
「ヤグチは車掌さんだって。似合わねー。出番は多かったみたいだけどね。」
「ねえねえ聞いて!カオリが一番たっくさん出てたのー!」
「そらええねん、そらええねん。けどな・・・、ウチは出たとたん死んだんかい!辻ー!どういうこっちゃ!」
374松本0時:2001/08/02(木) 21:34

 希美が999号の旅で出会った仲間たちは、ここにいる仲間ではない。しかし希美にとっては、あの宇宙での想い出も、まぎれもなくこの仲間との想い出だった。
「結局夢オチだったわけや。ま、ハイスクール奇面組みたいなもんやな。」
 あちらの世界では希美の大切な母であり、こちらの世界の希美にとっても最も頼れる存在である中澤裕子が言った。
 中澤のいる10人のモーニング娘。という日常がもうすぐ終わりを告げ、想い出の中だけのものとなってしまうことを、希美はすでに知らされている。機械の体などというものに比べれば遙かに短い希美の一生の間にも、時は確実に過去へ過去へと現在を運び去ってしまうものだ。
 だからこそ、今の、この一瞬一瞬を大切にしていこうと希美は思った。
 もうすぐできなくなることだから・・・希美はそう思って中澤に尋ねてみた。
「なかざわしゃん、はいすくーるきめんぐみってなんれすか?」

飯田鉄道999(松本0時版)  完
375松本0時:2001/08/02(木) 21:38
アイボン編までの作者さん
名作集スレの名無し読者さん
応援してくださった読者のみなさん
ありがとうございました

修正版UPしました。ご利用ください
http://www.musume2ch.f2s.com/up/files/284.htm

...The Galaxy Express 999
   Will take you on a journey
    A never ending journey
     A journey to the stars...
376ななし:2001/08/02(木) 21:54
おもしろかったよ!
最後のオチが・・う〜ん、何とも言えないね。
ホントお疲れさまでした。
377:2001/08/03(金) 00:32
うーん、名作でしたね。
378名無し募集中。。。 :2001/08/03(金) 00:33
もう終わったからリスペクトage?
まだ最後読んでないけど脱稿おめでとう
379名無し999。。。:2001/08/03(金) 01:01
お若い方へ

ゴダイゴ(知らないかな?)の歌う『銀河鉄道999-The Galaxy Express』
を是非聴いてみて下さい。かなり良い曲です。
今、聴いてみても新鮮さにあふれています。
380名無し募集中。。。:2001/08/03(金) 01:09
脱稿お疲れさま。
ただね、>>355 >石黒綾って人も・
ここだけは「彩」に直してくれ。お願いだ。
381矢口応援団 .:2001/08/03(金) 01:13
ここの話を読んで最後の方は泣きまくりでしたね。
すべてが終わったあとのオチが全く予想できなかったです。
個人的には飯田がすべてでした。
また読もうと思います。
382名無し風来坊:2001/08/03(金) 01:45
すばらしい!Great! Good job!
感動した!! 
383旧担当者:2001/08/03(金) 02:12
松本0時さん、長い間お疲れさまでした。
途中で撤退してからも、このスレッドの行方が気になっていましたが、
そんな心配はまったくいりませんでしたね。
漫画をなぞっただけのネタスレから、完璧なオリジナル小説に発展したことは
喜ばしい限りです。
松本0時さん、Maximum respect!
384へぼ@まっく:2001/08/03(金) 02:46
やっと読み終わったー
市井登場〜飯田との再開あたりでちょっと感動

>>383
このシーンが面白かったですヨ
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385名無し募集中。。。:2001/08/03(金) 05:50
元松本0時です。

最初は、軽い気持ちでした。
カン梨華編などは直書きだったし、吉澤編と後藤編は同じ日に書きました。
最初に悩んだのは保田編でしたが、それも骨格が決まると一気に書き上げました。
安倍編からは本格的に詰まってきて、冗長な話になってしまったと思います。
最後、エピローグは保田編を書く前にだいたい決まっていて、
そこまでどうつなげるのか悩んだ末、市井にも登場してもらいました。

 私のお気に入りは後藤編、次いで保田編です。
皆さんはいかがだったでしょうか?

>>380
ありがとうございます。他のミスも一緒に修正して上げ直しました。
http://www.musume2ch.f2s.com/up/files/284.htm
386名無し読者:2001/08/03(金) 07:01
>>375 >>385
御脱稿おめでとうございます。
モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。
お疲れ様でした。
387名無し募集中。。。:2001/08/03(金) 11:54
最初の方がいなくなってどうなるのかと思ってましたが、
その後素晴らしいものが読めてうれしかったです。
狼でもこういうのが出来るぜってのが感じられて余計に。
388名無し募集中。。。:2001/08/04(土) 00:18
松本0時さん、夢と感動をありがとう!

まもなく「飯田鉄道999」新シリーズが始まります。

引き続きこのスレッドを御覧ください。
389ナレーション:2001/08/04(土) 00:26
N 「さきごろ大団円を迎えた飯田鉄道999。精神的に一回りも二回りも成長した
   希美は、現実の世界へと還っていきました。
   しかし夢の中で希美が出会った少女たちは、確かにあの飯田鉄道の世界で今日
   も逞しく生きているんです。
   さて、希美と圭織の名コンビが搭乗してくるよりだいぶ前、飯田鉄道で宇宙を旅
   していた少女がいたんです。彼女の名前は矢口真里。そうなんです、希美と圭織
   の旅をナビゲートしていた、あの車掌さんなんです。
   当時の真里は、アイドルを夢見る元気な女の子。惑星アサヤンの支配者である
   宇宙海賊キャプテン・トゥンクが主催するオーディションに参加するため、車上の
   人となった真里は、途中で出会ったハンバーガーショップの美人店員・保田圭、
   そして生真面目な少女・市井紗耶香たちと一緒に、999号で長い旅を続けて
   いたんです。
   今回、真里たちが立ち寄る惑星は『コスモドラグーン』。どんな出会いと別れが真
   里を待っているんでしょうか? 車掌さん若き日の冒険、間もなく大公開です!」

 『A NANASHI FILM』
 メインタイトル・イン
 『もうひとつの飯田鉄道999』
 サブタイトル・イン
『放て、セクシービーム!』
390999客車・真里たちの席:2001/08/04(土) 00:29

   999号は惑星コスモドラグーンに、ぐんぐん接近していく。車掌(平家みちよ)
   が矢口たちのもとへ案内にやってくる。
車掌「んーと次の停車駅は・・・惑星コスモドラグーン、惑星コスモドラグーンや。
   停車時間は・・・だいたい一週間くらいやね」
   アナウンスを終えた車掌、するめを噛みながら通路を去っていく。
保田「(窓の外を顔をしかめて見ながら)ねえちょっと、見てみなよあの星!」
市井「なんか血の色みたいに真っ赤だね(少し震えている)」
矢口「(怯えた様子なく)キャハハハハ、こわーい!」
   コップ酒片手に酔っ払った車掌、矢口たちのもとへ戻ってくる。
車掌「なあ、お客さん。この星では降りん方がええと思うよ」
保田「どうして?」
車掌「最近な、あの星でろくでもない殺し屋集団が暴れまわってるって、飯田財団の管理
   局からメールが届きました。着いちゃった」
   矢口たち三人は一斉に首を振る。
保田「寝台車の硬いベッドにはもう飽きたわよ」
矢口「今日こそホテルのふかふかベッドで寝たいんだよー!」
市井「そういうことだから降ろさせていただきます」
   車掌、ひとつシャックリをする。
車掌「ういー・・・ほな好きにしいや。死んでも知らんでー」
   車掌が立ち去り、999号は惑星コスモドラグーンのホームに滑り込んでいく。
391名無し募集中。。。:2001/08/04(土) 01:01
おお。「奴隷島」や、このスレでも前に書いたりされてた方ですね。
モー板でただ一人の真面目に戯曲を書こうとしている(小説からの逃げとしてではなく)
方として、前から好感を持って読ませていただいておりました。

今後の更新にも期待しております。がんばってください。
392レッドロブスターを追え!:2001/08/05(日) 02:57

   飯田鉄道指定のホテル。チェックインの手続きを済ませた矢口たちは、さっそく
   レストランで夕食を摂ることにする。
   さすがに高級ホテルというだけあって、この星の名士も食事に来ている様子。少し
   離れた席には、多数の取り巻きに囲まれてドンチャン騒ぎしている紳士がいる。

矢口「(顔をしかめて、紳士たちの方を見ながら)もう、うるさーい!」
保田「せっかくのお洒落な雰囲気が台無しだわ」

   矢口たちの席へ、ロブスターが丸ごと一匹載った大皿が運ばれてくる。
市井「(真っ赤なロブスターに目をやって)待ってました・・・(ニヤリと笑う)」
   市井、ロブスターを丸ごとフォークで突き刺し、自分の口へ運ぼうとする。
矢口「あー、ロブスター楽しみにしてたのにー!!!!(泣きそうな声で叫ぶ)」
市井「フン」
   市井、それに構わずロブスターにかぶりつく。目をぎょろっと見開いた保田は
   フォークをふりかざして、市井のロブスターめがけて襲いかかる。
保田「一口くらい食べさせなさいよ!」
市井「(保田の攻撃をかわして)やだねったらやだねぇ〜♪」
   保田と市井の鬼気迫る女の戦いに、矢口は入っていくことができない。次の料理を
   待っている間、ミネラルウォーターやソフトドリンクばかり飲んでいる。小さな体
   に似合わず、かなりの量を飲んでいる。
393レッドロブスターを追え!2:2001/08/05(日) 03:00

市井「クックックックックッ!」
   結局、ロブスターの肉をほとんとほ食べたのは市井。保田は悔し涙ポロリしながら、
   無念の形相で市井を睨みつけている。
矢口「キャハハ、圭ちゃんコワーイ! ・・・はうっ!?(膀胱のあたりを押さえて呻く)」
保田「どうしたの?」
矢口「(少し恥ずかしそうに)ごめん、ちょっとオレンジジュースを・・・」
   矢口、席を立ってどこかへ去って行く。保田、不思議そうに言う。
保田「変な矢口。オレンジジュースなら、まだたっぷり残ってるのに?(そう言って、グ
   ラスのオレンジジュースを口に含む)」
市井「(低い声で)クックックッ、言えやしない、言えやしないよ。矢口の言うオレンジ
   ジュースがお小水を意味してるなんて。クックックッ・・・(保田を見つめる)」
保田「ブーッ!(オレンジジュースを口から吹き出す)」
市井「・・・(保田の吹き出したオレンジジュースを顔面に食らって沈黙する)」

   矢口、すっきりした表情で席に戻ってくる。顔面ずぶ濡れの市井を見て首を傾げる。
矢口「キャハハハハ、どうしたのその顔〜?」
市井「(屈辱に震えつつ)言えやしない、言えやしないよ・・・」
保田「あーっはっはっはっ!(勝ち誇ったように笑う)」
   そして矢口たちの席へ、また次の料理が運ばれてくる。ウェイターのポケットから、
   一枚の紙切れが落ちる。「とても戯曲と呼べるようなものではありませんが、頑張
   ります。応援ありがとうございます」と書かれている。
394名無し募集中。。。:2001/08/06(月) 13:51
保全します。
395名無し募集中。。。:2001/08/07(火) 05:56
保全
396名無し募集中。。。:2001/08/07(火) 21:00
保全&heart;
397名無し募集中。。。:2001/08/07(火) 23:45
車掌さん、がんばれー!

        (゙,,゙゙゙゙,,,゙,゙)
        |     |     ,,,'⌒ ヽ、
          |,,,_,,,,,,_|    _ゝ=@==>
       ( ゜皿゜川    /!^◇^-ノヽ、
       (゙,,゙゙゙゙,,,,,゙゙゙,゙)    ,へVへ,,,ノ,. ヽ
       /     |    || |: :  |二|
     .ノ       |    ゙|__|:_:  ,;○'
     (゙,,゙゙゙゙,,,,,゙゙゙゙,,゙゙,゙)   ( ~( ̄ ̄,)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
398かおりん祭り:2001/08/07(火) 23:59
かおりんだいすっき
399 :2001/08/08(水) 00:07
400永田裕志(179):2001/08/08(水) 00:07
<(`△´) ゲット400!
401隔膜:2001/08/08(水) 00:19
>>397
すごい!
マシュマロAA描いてらした人よね?
402名無し募集中。。。 :2001/08/08(水) 13:27
age
403名無し募集中。。。:2001/08/08(水) 20:11
元松本0時です。
また始まりましたね。応援してます。

すみません。また修正しました。
http://www.musume2ch.f2s.com/up/files/291.htm
404ほぜーん
羊はkako行きが速くてスレ消えまくりです。ここはがんばってください。