ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第八部

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1創る名無しに見る名無し
         _,.-―――‐-、
        r/~~ ~'''‐、;;;;;;;;;\
.       rく´i r/  _ノ_>'|;;;;;;;;;;;|
       yェノ〈!'''rエコ  ヽ;;;;;__;!,
       |r/ -、く二-、. '-'/7|;;'i_
.       |;`ニ二´..-‐iヽ|_,ノノノ;;;;;ヽ_
      .ノ;└三-ニ-' !;;;;;;;;|'''´|;;;;;;;;;;;;;;;\          よぉーし!
     /''´;;;; ̄ ̄'''''''''';;;;;;;;;;;ノ  |;;;;;. -―――--、_      みてなベイビー
/二ニl;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/  /   ___  \    このブルート様が大統領をぶちのめし
/´   `>、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/  /   /     `''''ヽ ヽ  ジョジョロワ3rdでヒーローになてやるぜ
     人_`'''>---―/'/   /  _,. -      \ |
    /   /     /  /  / //         _,. -‐-、
   /  /     /   .|  // /        ,. ‐'´    )
  ./  /      |    |  .| |       ,. ‐´  ,     ,<
 .|   |       |    /  |       / ,,_  ヽ,,,.. -''´ ヽ
 |....:::::|::::::::::::::::::::/   /  |     _/  、_`'=ニ´‐''''´ ̄`¨''―---、
 |-‐''´\_,. -'´   /   |   ./    - 、_ ,,,  ,,    |i、     )
./_,. -―''''´   _,. /   /|  ./   \、   `'‐--''――'''`¨'''''''''''ヽ
´    _,.-‐二,, -‐'' ̄  |  /  \   \、_  |   |   ヽ__ノ
/ ̄ ̄ ___        |/     ヽ   \、  r-‐'―i''''´
-‐'' ̄ヽ ̄   _二- ̄ ,.-'´      .|     `'‐┤    |
--'_,.--!――‐''´   _,/   .i .ノ  /,,,,,-‐、,_  __,.\_,.   |
'''´,.--、,       (´     ノ'''''¨¨ヽ ,,,,____,. -''¨ヽ   .|
''´l´_|_,.ノ       `'‐---‐''´   `''‐- 、_     _,.-'´ `7  ヽ
 ,.-'´-‐‐'´ ̄                  ̄ ̄ ̄ \   \_  |

           __
        , - f⌒ヽ-r'⌒) ))
        { 人__ノーへ__)    あ〜〜ん…………
       ノ   { rュ  fラ|ハ   たのもしいわ!
       (___ (  __'_, j_ノ  __ あたしのブルりん!
       ト、`ヽヘ ー',/>, イ /
       /-ハ 「ノ`¨/fヨ  /
     /ノ==ミo\`ー/ そ} /ハ ))
     ,' {´ ̄`}8_iヨ廴ノノ\={
     {〈 /三≧' {VV) Y__ノノハ
     _V /{{ 廴/`´一'\'ノノ´⌒`ヽ
   x≦::::::\_≧イ     /} | \`ヽ }


このスレでは「ジョジョの奇妙な冒険」を主とした荒木飛呂彦漫画のキャラクターを使ったバトロワをしようという企画を進行しています
二次創作、版権キャラの死亡、グロ描写が苦手な方はジョセフのようにお逃げください

この企画は誰でも書き手として参加することができます

詳細はまとめサイトよりどうぞ


まとめサイト
http://www38.atwiki.jp/jojobr3rd/

したらば
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/15087/

前スレ
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd第七部
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1357114589/
2創る名無しに見る名無し:2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:zJ0BbAZv
名簿
以下の100人に加え、第一回放送までは1話で死亡する(ズガン枠)キャラクターを無限に登場させることが出来ます
※第一回放送を迎えましたので上記のズガン枠キャラクターは今後の登場は不可能です。

Part1 ファントムブラッド
○ジョナサン・ジョースター/○ウィル・A・ツェペリ/○エリナ・ジョースター/○ジョージ・ジョースター1世/○ダイアー/○ストレイツォ/○ブラフォード/○タルカス

Part2 戦闘潮流
○ジョセフ・ジョースター/○シーザー・アントニオ・ツェペリ/○ルドル・フォン・シュトロハイム/○リサリサ/○サンタナ/○ワムウ/○エシディシ/○カーズ/○ロバート・E・O・スピードワゴン

Part3 スターダストクルセイダース
○モハメド・アヴドゥル/○花京院典明/○イギー/○ラバーソール/○ホル・ホース/○J・ガイル/○スティーリー・ダン/
○ンドゥール/○ペット・ショップ/○ヴァニラ・アイス/○ヌケサク/○ウィルソン・フィリップス/○DIO

Part4 ダイヤモンドは砕けない
○東方仗助/○虹村億泰/○広瀬康一/○岸辺露伴/○小林玉美/○間田敏和/○山岸由花子/○トニオ・トラサルディー/○ヌ・ミキタカゾ・ンシ/○噴上裕也/
○片桐安十郎/○虹村形兆/○音石明/○虫喰い/○宮本輝之輔/○川尻しのぶ/○川尻早人/○吉良吉影

Parte5 黄金の風
○ジョルノ・ジョバァーナ/○ブローノ・ブチャラティ/○レオーネ・アバッキオ/○グイード・ミスタ/○ナランチャ・ギルガ/○パンナコッタ・フーゴ/
○トリッシュ・ウナ/○J・P・ポルナレフ/○マリオ・ズッケェロ/○サーレー/○プロシュート/○ギアッチョ/○リゾット・ネエロ/
○ティッツァーノ/○スクアーロ/○チョコラータ/○セッコ/○ディアボロ

Part6 ストーンオーシャン
○空条徐倫/○空条承太郎/○エルメェス・コステロ/○F・F/○ウェザー・リポート/○ナルシソ・アナスイ/
○ジョンガリ・A/○サンダー・マックイイーン/○ミラション/○スポーツ・マックス/○リキエル/○エンリコ・プッチ

Part7 STEEL BALL RUN 11/11
○ジャイロ・ツェペリ/○ジョニィ・ジョースター/○マウンテン・ティム/○ホット・パンツ/○ウェカピポ/○ルーシー・スティール/
○リンゴォ・ロードアゲイン/○サンドマン/○マジェント・マジェント/○ディ・ス・コ/○ディエゴ・ブランドー

JOJO's Another Stories ジョジョの奇妙な外伝 6/6
The Book
○蓮見琢馬/○双葉千帆

恥知らずのパープルヘイズ
○シーラE/○カンノーロ・ムーロロ/○マッシモ・ヴォルペ/○ビットリオ・カタルディ

ARAKI's Another Stories 荒木飛呂彦他作品 5/5
魔少年ビーティー
○ビーティー

バオー来訪者
○橋沢育朗/○スミレ/○ドルド

ゴージャス☆アイリン
○アイリン・ラポーナ
3創る名無しに見る名無し:2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:zJ0BbAZv
ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル発売おめでとうございます。

昨晩したらばに投下しましたが、スレが立てが成功したので改めてこちらに投下します。
4GANTZ ◆vvatO30wn. :2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:zJ0BbAZv
600 : ◆vvatO30wn.:2013/08/29(木) 00:51:49 ID:f6pinpKM
(さて………どこへ隠れたのかな………?)


薄ピンク色の亜人を傍に携え、吉良は礼拝堂内を見渡す。敵の姿は見えない。
この広い礼拝堂にはテーブルも椅子も多い。
柱や彫刻像のような遮蔽物も多ければ、カーテン付きの懺悔室まである。
隠れる場所は多い。

敵は吉良の『キラー・クイーン』とように特殊な能力を持ったスタンド能力を所持している。
吉良には初めての『スタンドバトル』だ。
現在のこの状況は吉良にとって非常に好ましくない状況だった。

1つめの問題は、講堂内にいたはずのストレイツォとリキエルの姿が見えない事だ。
死体を発見したわけではないが、吉良は2人が既に無事ではないであろうと推測し、その前提で考えを進めていた。
正義感の強いストレイツォがこの期に及んで姿を現さない理由がないし、それに現在の敵の手口は不意打ちの暗殺だった。
攻撃を受けた『キラー・クイーン』の―――吉良の両腕がまだビリビリ痺れている。
敵スタンドのパワーは非常に強い。波紋やロッズでは攻撃を防ぐことすらできないだろう。
奴を相手にするには、こちらも高い攻撃力を持つ『スタンド』でなければならない。
例えばそう、『キラー・クイーン』のような。

第2に、『キラー・クイーン』を敵に見られてしまった事だ。
先ほど攻撃を防ぐために、咄嗟に出現させてしまった。
もっとも防がなければ殺されてしまっていたので仕方がない事なのだが、目撃されたからには消す必要が出てきてしまう。
姿は見えないが殺気は感じるため、敵側も戦うつもりではあるようだった。
その点については幸いしているが、もう逃すわけにはいかなくなった。
この先も無力なサラリーマンを演じていくためにも、目撃者を生かしておくわけにはいかない。
5GANTZ ◆vvatO30wn. :2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:zJ0BbAZv
「ストレイツォ! リキエルッ! どこだ助けてくれ!? 攻撃されている!!」

おそらく返事は帰ってこないであろう呼びかけを叫ぶ。
声を張り上げた理由は敵を呼び寄せるためだ。『私はここに居るぞ、さあ掛かって来い』といったところだ。
だが、それでも敵は姿を見せようとしない。
吉良のハッタリを見破って、挑発に乗らずチャンスを伺っているのか?
だとしたらなかなか大した奴だ。
見た目は頭の悪そうな出で立ちであったが、戦闘においてという点ではバカでは無いということか。

(これでもまだ出てこない。やれやれ、面倒だな………)


問題その3。ホル・ホースと空条徐倫の存在だ。
散歩に出かけたあの2人。まだこの教会の付近……遠くへは行っていないだろう。
戻ってくるまで、あの1分?2分? 今すぐにでもここに現れるかもしれない。
ストレイツォたちが(おそらく)死んでしまった今となっては、もはやホル・ホースたちと組み続けることはできないだろう。
いろいろ聞かれて誤魔化し切ることは難しい。あの2人も、もう消すしかないだろう。

2人を殺すこと自体は別に問題無いのだが、まずいのは『今の敵との交戦中にこの場に戻って来られること』なのだ。
そのまま吉良と力を合わせて3人で戦ってくれるのならばまだいい。
だがあの空条徐倫という小娘は、『敵』と『私のスタンド』を確認して、そのまま何処かへ逃げ出してしまうかもしれない。
あの怯えていた様子では、無理もない。
さらにホル・ホースがそれに同調したならば、『吉良吉影がスタンド使いである事』、そして『その事実を隠していた事』を知る人間が、吉良の元より逃げてしまうということになる。
無力で無害な一般人を演じたい吉良としては、その展開は非常にまずい。
よしんばその場は共闘を選んだとしても、スタンド使いであることを隠していた事実は変わらない。
疑念を抱かれてしまえば、1対2では暗殺も難しくなる。

吉良にとってのベストは、ホル・ホース達の帰還前に敵を瞬殺し、後に戻って来た2人を不意討ちで仕留める事だ。




(敵は動きを見せない。時間は無い。ならば――――)


「『シアーハートアタック』―――!」

吉良自身から打って出るしかない。
6GANTZ ◆vvatO30wn. :2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:zJ0BbAZv
『キラー・クイーン』の左手甲から分離し射出される、無慈悲なる爆弾戦車。
第二の爆弾『シアーハートアタック』。
本体である吉良の意思とは分離した自動操縦型の能力であり、『温度』を頼りに標的を見つけ出し爆殺する。
禍々しい髑髏の顔とキャタピラのみの小さな車体は異常なまでの強靭さを誇り、物理的な破壊をすることもほとんど不可能と言える。

「――――――『弱点』は、ない」

そう吉良が自負するに値する無敵の能力なのだ。

『コッチヲ見ロォォ―――』

ギュルギュルと音を立てながら爆弾戦車が礼拝堂内を駆け巡る。
長椅子やテーブルの間を縫うように走り回り、自動で探索する。
この能力の前では、隠れる場所も逃げる場所もない。
やがて『シアーハートアタック』は『何か』の温度に反応し、走り出す。


(やれやれまったく、この能力まで見せる羽目になるとは思っていなかったが……
だが、『シアーハートアタック』が『奴』を捕捉した以上、もう勝負は付いた。
結局あの男が何者で、どんな能力だったのかわからないままだったが、しかし一つだけ間違いなく言えることがある。『シアーハートアタック』に弱点はない。
狙われた標的は、必ず仕留められる…)

講堂の入口方向へと加速する『シアーハートアタック』。
ロケット噴射のように飛び上がり、ターゲット目掛けて飛翔する。
妙な動きだ、と吉良は思った。
吉良の推測では敵が姿を潜めているのはテーブルか椅子の陰か、もしくは柱の後ろか、せいぜい壁際の懺悔室の中あたりだろうと思っていた。
それが、『シアーハートアタック』は空中に飛び上がったのだ。
この建物にも2階はあるが、天井はかなり高い。
敵の戦闘スタイルから言って、吉良を奇襲するに適した隠れ場所とは思えない。
やがて『シアーハートアタック』は、目標とした『標的』へと接近―――

(いや、違うッ! 『シアーハートアタック』の標的は『奴』ではないッ!!)

教会の入口扉から数メートル上方の壁にめり込まれた『何か』へ衝突し、大爆発を起こした。


「ああああァァァァアアアアア―――――!!!」

(何ッ!!)


突如、吉良の背後より聞こえる絶叫。
『シアーハートアタック』の標的が『敵』では無かったと気が付いた吉良が視線を切る間もなく、わずか背後1メートルに現れた敵の影。
スタンド『オアシス』に身を包んだセッコが、今にも吉良を殺すべく腕を振り上げていた。
そしてその手刀は振り下ろされることもなく宙を泳ぎ、視線と意識は爆心地付近を彷徨っていた。
7GANTZ ◆vvatO30wn. :2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:zJ0BbAZv
(この男ッ! いつの間に私の背後にッッ!? 何故『シアーハートアタック』に探知される事なく私の傍に近寄ることができたのだッ!?)

何より吉良は『シアーハートアタック』発動中でも周囲への注意は怠っていない。
その警戒を掻い潜り、吉良は敵の射程距離内への接近を許してしまった。

「ああああっ!!! おっ おっ おれのアートがァァああ!!! まだDIOに見せてなかったのにィィィィィ!!!」

セッコは吉良の姿には目もくれず、爆散した肉片に駆け寄り、グロテスクなそれをかき集め始めた。
吉良にはようやく、爆破された『それ』がなんであったかを理解した。
あれはリキエルだ。この男は教会に忍び込み、リキエルを襲い殺害した。そして彼の体を切り刻み、オブジェを作り上げて教会の壁に飾っていたのだ。
そしてそれを『シアーハートアタック』が探知し、爆破した。
折角の傑作を破壊され、この男は攻撃を止め、絶叫して肉片を拾い集めているのだ。

この事は、吉良吉影のプライドを大きく傷つけた。

この男にとって、死体オブジェが爆破された事は吉良への攻撃よりも重要なことだった。
オブジェが爆発されたことで、吉良への攻撃を中断して、今、肉片を掻き漁っているのだ。
そしてもし、オブジェを爆破しなければ。この男が攻撃を途中で止めなければ。

(殺されていた――― この私は――― 『いともたやすく』――――――)

怒り。
屈辱。

(この私を殺す機会がありながら、それを安々と棒に振ったということか………)

この上ない負の感情が、吉良の心を侵食する。
決して生かして帰すものか。

(この吉良吉影を侮辱した罪、その命で償って貰うッ!!)


一方のセッコも、四散して拾い集める事など到底できないであろう肉片たちを胸に抱え、吉良への怒りに燃えていた。
彼の『処女作』は3人の少年の肉をグニャグニャと練り合わせて作った、いわば肉塊の粘土だ。
それはそれで気に入ってはいたのだが、今度の作品は一人の人間(リキエル)から、原型をあまり損ねず、なおかつ独創性のある人形、剥製の様なオブジェを作り上げていた。
チョコラータの好む恐怖の表情までも取り入れた自信作だった。
DIOをここに連れてきて、これを見せたらなんと言ってくれるだろう。そんな事を想像していた矢先の出来事だったのだ。


「ゆっ 許さねェェ」

視線を切り、吉良を睨みつけるセッコ。
吉良は温度を感じさせない冷ややかな目つきでセッコの姿を眺めていた。

「てめえェェ! 絶対許さねえぞオオオオオ!! ぶっ殺――――」

『今ノ爆発ハ人間ジャネェ――――』

「ぬお?」

攻撃態勢に入ったセッコであったが、明後日の方向から聞こえる機械的な声に注意が逸れる。
吉良本体のいないセッコの側面より、活動を再開した爆弾戦車が忍び寄る。
自動追尾型スタンド『シアーハートアタック』は、本体である吉良吉影が能力を解除しない限り、いつまでも標的を狙い続ける。
攻撃はまだ終わってはいない。
8GANTZ ◆vvatO30wn. :2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:zJ0BbAZv
『コッチヲ見ロォォ!!』
「なっ なんだコイツゥゥゥ!!?」

「私に屈辱を味合わせた分きっちりなぶり殺しにしてやりたいところだが、あいにくもう時間がないのでね。
悪いが一瞬で蹴りを付けさせてもらうよ」

即効で勝負を決めにかかる吉良。
『シアーハートアタック』はリキエルの死体オブジェを爆破したあとも、その勢いを衰えさせることもなく猛然とセッコの方へ向かっていく。
だが、『シアーハートアタック』はまたもや吉良の思惑とは異なる挙動を見せ始めた。

(何!?)
「なんだァ?」

軌道は僅かにそれ、『シアーハートアタック』はセッコが背中に回していたデイパックをめがけて突っ込んだ。
体当たりの直撃を受けたのは、中に入っていたポラロイドカメラ。
思い切り殴りつけたような鈍い音と共に、カメラはデイパックから投げ出され地面に転がる。
そして同時に、デイパックの中から写真と思われる紙切れが数枚、ヒラヒラと溢れ出てきた。

「あああああ!! おっ オレのカメラ!!」

そして爆発は怒らなかった。『シアーハートアタック』は――――――

『アレ? アレ?』

標的を見失い、ウロウロと辺りを彷徨っているだけだ。


(なるほど、そういうことか)

ようやく、吉良は理解した。
奴の身体には、『温度』がない。
正確には、土と一体化したようなスーツ状の『スタンド』に身を包んでいることで、外からは奴の体温を感知することはできない。
だから、『シアーハートアタック』は奴を探知できなかった。
既に冷たくなったリキエルの死体よりも更に低温。だからこそ、『シアーハートアタック』はリキエルの死体を攻撃したのだ。

そして次に、あのポラロイドカメラ。
宙に撒かれた写真を数枚拾って見てみる。被写体はリキエルとストレイツォの死体、それも大量にだ。
ほんの数分前にこれほどの枚数を撮影したというのならば、カメラには熱が残っていたのだろう。
『シアーハートアタック』はその温度に反応した。しかし今度は爆発まではない。低くとも人間の体温程度の温度に達しなければ、爆発は起きないからだ。
そしてカメラが破壊されたいま、『シアーハートアタック』の攻撃対象(温度)は存在しない。
スタンド『オアシス』の温度は、教会の地面の温度と大差がないからである。


(弱点はないと思っていた『シアーハートアタック』だが、『温度を感じさせない敵』……
これではとんだ役立たずだ。こんな落とし穴があったとは、『スタンド』とは奥が深い)

だが、吉良は動じない。
『シアーハートアタック』が爆発しなくとも、まだ吉良には『第1の爆弾』という別の攻撃手段が残されている。
こちらは単純明快。『キラー・クイーン』の手で触れられやものは、なんでも爆弾に変えることができる。
例えそれが100円玉であろうと、なんであろうと。
今度は『シアーハートアタック』ではなく、『キラー・クイーン』の右手で敵に触れるだけでいい。
9GANTZ ◆vvatO30wn. :2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:zJ0BbAZv
「てめえカメラまで壊すとはあああッ!! っ覚悟できてんだろうなあ!?」

役目を終え吉良の元へ戻る『シアーハートアタック』を追い、セッコの『オアシス』が手刀を振り下ろす。
だが、無駄だ。『シアーハートアタック』の頑丈さは筋金入りだ。
吉良自身も『オアシス』の攻撃力は最初の攻防で理解していたが、それでも『キラー・クイーン』の両腕で止められる程度。
『シアーハートアタック』の強靭さは、そんなレベルをはるかに超えている。


ドロリ



そんな甘い考えが間違いであったことを、自らの溶け始めた左手首の痛みで思い知るのだった。

(何ィィィ!!?)

土や石と同じ温度で身を守る『オアシス』だが、能力の本質はそこじゃない。
鉱物のドロ化。それが『オアシス』の特殊能力。
爆発しない『シアーハートアタック』など、いくら硬くとも、『オアシス』の前ではただの硬い石でしかない。

(左手に痛みが……!! 『シアーハートアタック』を―――いや、物を溶かす能力―――――!!
誤算だ! 役立たずどころではない、これでは足手纏いだッ!!)

『シアーハートアタック』へのダメージが返り、左手首が泥のように溶ける。
激しく痛む左手を抑えうずくまる吉良と、その様子を見てゲラゲラと笑うセッコ。
攻撃が初めて通り、もう勝った気でいるセッコはこれから吉良をどう苦しめてやろうかを考え始めていた。




「吉良ッ!! これはいったいどういうことだァ―――!?」


そんなとき、サン・ジョルジョ・マジョーレ教会に、新たな登場人物が現れた。
ホル・ホース、その後ろには空条徐倫。気晴らしにと散歩に出かけて難を逃れた2人が帰ってきた。
教会から発せられる不穏な空気を感じ取り、警戒しつつも講堂内に入った2人は、吉良たちの前にたどり着いたのだ。


(ホル・ホースッ!! しまった、遅かったかッ!!)

まだ目の前の敵を仕留めていない、それどころか形勢は依然として不利なこの状況で、ついにホル・ホースたちが帰還してしまった。
ホル・ホースは訝しむ目で吉良と、その傍らの『キラー・クイーン』を見ていた。
無力な一般人を装っていた男が、目の前で敵とスタンドバトルをしていたのだから当然だ。

そして、その戦っている相手。
忘れるわけがない。忘れられるわけがない。
こいつは、あのDIOと共にいた、あの残酷で残忍な―――――――――
10◇vvatO30wn氏代理:2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:OQmBUpQL
「いやあああああああああああ――――――ッ!!」

次の瞬間、空条徐倫が叫び声を上げながら脱兎のごとく逃げ出した。

ホル・ホースたちのケアもあってか幾分精神を持ち直した徐倫だったが、身体の乗っ取りからくる不安定さと、一度覚えた恐怖はそう簡単に忘れられるものではない。
DIOへの恐怖。セッコへの恐怖。
あるいは教会入口に散らばっていた、ストレイツォなのかリキエルなのかも判別できない肉片の山に、自分自身を重ねてしまったのか。

「ホル・ホースッ!」
「はッ!?」

動揺し徐倫の走り去った方向を見て立ち尽くしていたホル・ホースが、吉良の呼び声に反応し正気を取り戻す。
行くな!と、吉良は目で訴え掛ける。
苦虫を噛み潰したような顔を見せたホル・ホースは、やがて冷や汗まみれの顔を背け、カウボーイハットを深く被って目を隠し、そのまま徐倫の逃げた方角へ走り去った。



(ホル・ホースの奴―――ッ! 逃げやがった! あの糞カスどもがァァ!?)

吉良にとって最悪の展開となった。
『キラー・クイーン』を見られ、敵と戦闘している自分を見られ、そして逃げられてしまった。
11◇vvatO30wn氏代理:2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:5v8+f/xt
嫌な予感はしていたのだ。
あの残酷で悪趣味な『アート』の姿を見た時から。
そしてリキエルの死体オブジェを爆破したとき、「まだDIOに見せてなかったのに」と、確かにそう言った。
情報交換にて得た、ディオの情報。
現在戦闘中のこの男は、空条徐倫を恐怖させた原因となった、食人鬼ではないか。
あの徐倫の反応を見るに、その想像は正解だったのだろう。
敵が他の誰かだとしたらともかく、これではまず間違いなく徐倫は逃げる。

目撃者は生かしておけない。
だが、この状況では彼らを追う事はとうてい不可能だ。
セッコは、吉良の想像をはるかに上回る強さを持った敵だった。
こいつを倒すのに、あと何分かかる?
その間に、ホル・ホースと徐倫はどこまで逃げる?
どこへ逃げる?
どうやって後を追えばいい?

セッコを倒したところで、もはや吉良吉影の秘密は守られない。
このゲームにおいて、無力なサラリーマンを演じる吉良吉影は、もう存在できない。
12◇vvatO30wn氏代理:2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:5v8+f/xt
「何だったんだァ? あいつら?」

2人が走り去った教会入口の外を、セッコは呆然と見つめる。
吉良という獲物が目の前にいる以上、逃げた奴らまでは対して関心がないようだ。

「フフフフフ、フハハハハハハハハ………」

そして吉良吉影は、自分の存在をアピールするかのように、自嘲的な笑い声をあげ始める。

「あんたァ、何が可笑しィんだあ? 仲間に逃げられて、これからオレに殺されるってのによお?」
「君、名前は?」

質問に質問で返す吉良。
突然英語の授業に出てくるような日常会話を始めた吉良に対し、セッコは「ハァ!?」とごく当然の反応を示した。

「私の名前は『吉良吉影』年齢33歳。自宅は日本のM県S市杜王町北東部の別荘地帯に有り、結婚はしていない。
仕事は東日本最大のデパート企業『カメユーチェーン店』の会社員で、毎日遅くとも夜8時までには帰宅する。」
13◇vvatO30wn氏代理:2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:5v8+f/xt
「? 何言ってんだァ? おめえ……?」

「正直、こんな事態にまで陥るとは思わなかった。平穏な私の暮らしは台無しだよ。全て君のせいでね。もうどうやら安心して熟睡できないらしい。
ただし――――――」

そこで吉良は言葉を切り、そして語気を強めて叫んだ。

「ただし『このゲームが終わるまで』だけだッ! このゲームで優勝して勝ち残り、元の生活を取り戻すまでだッ!!」

消極的なスタンスでいるのはもう終わりだ。
無力な一般人を演じ、誰かが主催者を倒してゲームが崩壊するのを待つのはもうやめた。
もうゲームは半分を過ぎ、多くとも残り70人ほどだ。
殺し尽くせばいい。
吉良吉影が残りすべてを殺し尽くし、優勝者になればいい。
もちろん、平穏な人生を送るためには、そのあと更に主催者陣営も壊滅させ、ゲーム自体の秘密も暴かなければならない。
困難で、先の見えない長い試練ではあるが、しかし………



「この吉良吉影が切り抜けられなかったトラブルなど、一度だって無いのだッ!!」
14◇vvatO30wn氏代理:2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:5v8+f/xt
【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会内講堂/1日目 昼】

【吉良吉影】
[スタンド]:『キラー・クイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その@、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:左手首負傷(ドロ化)、『シアーハートアタック』現在使用不可
[装備]:波紋入りの薔薇、聖書、死体写真(ストレイツォ、リキエル)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する。
0.まずは目の前の敵(セッコ)を始末する。
1.優勝を目指し、行動する。
2.どうにかして左手の治療がしたい。
3.ホル・ホース、空条徐倫(F・F)を始末する。どこへ逃げたかはわからないが、できるだけ早く片を付けたい。
4.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。
5.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。
15◇vvatO30wn氏代理:2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:5v8+f/xt
【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ローマでジョルノたちと戦う前
[状態]:健康、興奮状態、血まみれ
[装備]:カメラ(大破して使えない)
[道具]:死体写真(シュガー、エンポリオ、重ちー、ポコ)
[思考・状況]
基本行動方針:DIOと共に行動する
0.オブジェを壊された恨み。吉良を殺す。
1.人間をたくさん喰いたい。何かを創ってみたい。とにかく色々試したい。
2.DIO大好き。チョコラータとも合流する。角砂糖は……欲しいかな? よくわかんねえ。
[備考]
※『食人』、『死骸によるオプジェの制作』という行為を覚え、喜びを感じました。  


[備考]
※リキエルの死体で作ったオブジェがありましたが、『シアーハートアタック』で爆破されました。ストレイツォの死体については詳細不明です。
※それぞれの死体の脇にそれぞれの道具が放置されています。
 ストレイツォ:基本支給品×2(水ボトル1本消費)、サバイバー入りペットボトル(中身残り1/3)ワンチェンの首輪
 リキエル:基本支給品×2
16◇vvatO30wn氏代理:2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:5v8+f/xt
【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会周辺/1日目 昼】

【H&F】
【F・F】
[スタンド]:『フー・ファイターズ』
[時間軸]:農場で徐倫たちと対峙する以前
[状態]:髪の毛を下ろしている
[装備]:空条徐倫の身体、体内にF・Fの首輪
[道具]:基本支給品×2(水ボトルなし)、ランダム支給品2〜4(徐倫/F・F)
[思考・状況]
基本行動方針:存在していたい(?)
0.またあいつ!!? もう嫌だああああああ!!!
1.『あたし』は、DIOを許してはならない……?
2.もっと『空条徐倫』を知りたい。
3.敵対する者は殺す? とりあえず今はホル・ホースについて行く。
[備考]
※第一回放送をきちんと聞いていません。
※少しずつ記憶に整理ができてきました。
17◇vvatO30wn氏代理:2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:5v8+f/xt
【ホル・ホース】
[スタンド]:『皇帝-エンペラー-』
[時間軸]:二度目のジョースター一行暗殺失敗後
[状態]:健康
[装備]:タバコ、ライター
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:死なないよう上手く立ち回る
0.とりあえず徐倫を追う。
1.とにかく、DIOにもDIOの手下にも関わりたくない。
2.吉良はスタンド使い? DIOの手下と戦っていた?
3.散らばっていた肉片はストレイツォ?それともリキエル?何が何だかわからねえ!?
[備考]
※第一回放送をきちんと聞いていません。内容はストレイツォ、吉良のメモから書き写しました。
18◇vvatO30wn氏代理:2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:5v8+f/xt
はい、ここまでです。
タイトルは「GANTZ」です
(私にしては)短めな話に収まりました。
決着までも考えていたんですが、ここらで投げてみるのも面白いかなと(←ようやくリレー小説であることを自覚)
もしかしたら続きも書きたくなるかもしれませんが、しばらく無理でしょう。
なぜならオールスターバトルやらなあかんからや!

でも、さすがに今回ほど期間を開けることはしないよう努力します。
俺は9ヶ月間も何をやっとったんや……

ではまたそのうち。
19創る名無しに見る名無し:2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:JQYALqtd
投下&代理投下乙です!
一見無敵とも思われるシアハだったけど意外と対処法はあるんだなーとなるからスタンドバトルは奥が深い
F・Fちゃんはもう不憫ですね(他人事)
吉良のそれは遠回しな死亡フラグに見えてしまったのは気のせいだろうか…

本編とは全く関係ないけど今の季節にシアハ使ったら使い物にならなそう
20創る名無しに見る名無し:2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:ZRrTP/NJ
乙です
ステルスマーダー?止めちゃう吉良の明日はどっちだ
>>19
「 コッチヲ見ロォォ」ボーン「 コッチヲ見ロォォ」ドーン「コッチヲ見r「やかましい!」
こうですか分かりません
21創る名無しに見る名無し:2013/09/01(日) 18:31:17.44 ID:sfbGwYch
投下乙!まってました!
過去のロワとかぶらないようなキャラのスタンスを考えてくれる書き手さんって凄いです。えらいネェ〜
セッコはこれからもどんどん面白くなりそうなキャラだし、なんとか生き残って欲しいところだ
22記憶 その1 ◆yxYaCUyrzc :2013/09/02(月) 17:39:23.83 ID:WvNpgDIv
さて、たまには率直に本題に入ろうか。

今回は『記憶』に関する話だ。まあさっき話したのもある意味では記憶の話だったけど。
もう少し具体的にいうと、次に話すのは“忘れる”ということについて。

この“忘れる”って、何が厄介だっていうと、まあ皆もわかると思うけど、
『自分が何を忘れたかがわからない』ということだな。

あ、いやアレよ。1・2の……ポカン!で技忘れるとかそういうのはナシでね。
今回すぐに俺が本題入ろうって言ったのも、まあこの出来事もいずれ忘れちゃうかなと心配したもんでね、ハハハ。

で、先も言ったように、自分が何を覚えてて何を忘れたかを知らないという事は、そりゃあ相手だって『この人はどこからどこまでを忘れてしまったんだ』と推測することだってできない。
ゆえにこう聞くしかないわけだ。

「どちらさん?ってミスタさん、私ですよ、ミキタカです」
とね。でも忘れた当人からしたらそのセリフが既に意味不明。

「イヤイヤ、それが誰だよ。つーかココどこだよ?俺ぁジョルノと一緒にサンタ・ルチア駅に――」

「?……もしかして、ミスタさんアナタやっぱり記憶が」
「ハァ!?何ナメたこと言ってんだ!さっきは平気だと思ったがテメーやっぱ敵だなッ!」
「え、私はただアナタのことを――ゲブッ」

ここで問答無用でケリ入れたとは言っても、流石にミスタを責めることはできないだろうね。
というかこれはミキタカも甘かった。ミスタって男はたとえ同僚にもヤバけりゃ問答無用で皿を投げつけるような奴だってのを彼は身をもって体験済みだったんだから。

「おら!テメェなんか知ってんだな?2秒だけ待ってやるからチャッチャとしゃべりな、知ってること全部なッ」
襟首をひねりあげられたミキタカは必死に頭を巡らせる。

とは言ってもたかだか二秒。今君らに『とはいっても』と言ったのが実際の二秒くらいだ。
こんなんで何をどう説得しろというのだ?砲弾が自分たちのもとに届くまでに巨人になった友人が敵でないことを証明するよりも不可能だろうな。
だから必死にこれだけを叫んだ。

「私はホントーにあなたの敵ではありません!グイード・ミスタさん!」
23記憶 その2 ◆yxYaCUyrzc :2013/09/02(月) 17:45:47.15 ID:WvNpgDIv
本人から聞いていない本名を叫ぶ。が、沈黙……やっちまったか?ミキタカの顔にブアッと脂汗が浮かんだ。
一分とも十分とも受け取れるほどに長い数秒が過ぎた、なんて表現はきっと本人にしか感じられない苦痛だろうね。少なくとも今の俺にはわからん。
と、そんなことを言ってるうちにミスタが反応した。

「俺の名を迷いなく言うか……ケッ、聞いてやろうじゃねぇか。だが少しでも嘘言ってみな、目ん玉の間にもう一つ穴を開けてやるからよ」

そう言ってミスタがゆっくりと手を放す。
だが!ここで!あろうことか!ミキタカは!

「――私の名前はヌ・ミキタカゾ・ンシと言います。ですが私が話すのはあなたが今までどこで何をしていたかを聞いてからです」

逆に思いっきり問い返した!
その理由は!
「……は」
「ハッキリ言いましょう。ワタシはあなたが“『何者かに記憶を奪われてしまった』と疑っています”。
 その疑いが本当か、あるいはワタシの思い違いか。それをハッキリさせたいのです。
 だから聞きます。あなたはついさっきまで、何してました?」

中々に機転の利いたセリフだと思ったね俺は。
記憶を失った人に『アナタ記憶がないんですよ』と言っても普通は混乱するだけだ。
だったらそれを本人自身に『ああ今俺は記憶喪失なのか』と自覚させる方向に持って行ったと。
電波な頭だが決して中身は悪くないと評価できる一瞬だ。
24記憶 その3 ◆yxYaCUyrzc :2013/09/02(月) 17:50:36.51 ID:WvNpgDIv
となったら逆に混乱するのはミスタ。
「え……いや俺はジョルノと一緒に――まあ、ドライブか。ドライブしてヴェネツィアに」
「するとジョルノさんの事はご存じで?」

「ンだおまえジョルノのことまで知ってんのか」
「ええ、ワタシはジョルノさんにお会いして、あなたの名前、そして、ブチャラティさん、アバッキオさん、ナランチャさん、トリッシュさんという方々のお名前をうかがいました」
「じゃ……じゃあてめぇ、ミキタカゾ?っつったな?なんだジョルノの知り合いか何かか」
「――まあそんなところですかね。証拠を見せましょうか。ジョルノさんの外見ですよ。
 私は人の顔真似はできませんが……」

「……ブッ」
「どうです?ジョルノさんによく似てるでしょう?私は彼のことを知ってるんですよ」
「文明の利器ってスゲ――――!!!ぎゃーはっはっはっ」

なるほどなるほど。これはいい証明だ、と俺も吹いた。
ミキタカは自分の能力で――まあいきなり目の前でやると驚かれるからデイパックに手を突っ込み――手の一部をチョココロネみっつに変えて、それを頭の上に乗っけたんだ。
ミスタ、爆笑。ミキタカ、したり顔。コロネ、文明の利器。

しかし、ひとしきり笑った後。
いよいよジョルノとミキタカに明確な関係があったと証明された。そうなってくるとミスタの頭はパンクしそうになる。
お世辞にも良いとは言えない頭なのは彼自身良く知っているんだから。
「や、ウンわかったんだが、いやちょっと待ってくれ……頭ん中整理するからよ……」
そういって顎に手を当て考え込む。そんなミスタの決断をミキタカは待った。かつて仗助が自分のことを理解してくれたように。時間さえかければ理解してもらえるだろう。

――と。
25記憶 その4 ◆yxYaCUyrzc :2013/09/02(月) 17:54:49.58 ID:WvNpgDIv
「――ああ。とにかく俺は、ミキタカゾ曰く『どうやら記憶障害にあったらしい』という状況は理解した。
 認めたくはねーけどな。だったらまだミキタカゾとジョルノがただ俺の知らない友人だっていう方が信じられるぜ」
「ええ――そうおっしゃる気持ちはよくわかります。そして話してくれてありがとうございます。
 そうしたら私からの提案ですが。ともあれどこかにいるジョルノさんと合流するのが第一の目的だと思います。いかがでしょうか」

いよいよ提案。これも無意識かどうか知らないがなかなか良い。
何がって、『今はある男の主催で殺し合いをしてるんですよ僕ら』なんて言ってみろ?
そこでまた一悶着二悶着あるだろう。だからそこはスルーしたわけだ。
『とりあえず共通の友人に会う』という目的があれば今のところは大丈夫だ。
もちろんこれも不安定なロープの上を歩くに等しい行為だ。

「うーん。そうだな。本当に俺が記憶喪失なのかどうかもジョルノに会って聞いてみればいいか。
 ところで、ここはどこだ?確かにヴェネツィアじゃあねーようだけど……」

そう。記憶云々は置いといたとしても、現状を問われた時だ。
しかしここでもなかなかミキタカは冷静だった。

「そうですね、実をいうと私もさっきまで少しパニック状態でして。ここがいったいどこなんだか……
 とにかく、それも踏まえて少し移動しましょうか。さっきみたいに靴になります?」

……訂正。冷静じゃなかったからこそ正直に答えられたんだな。運がいいんだか頭が良いんだか、あるいはその逆か――

「それがオマエのスタンド能力か――でもとりあえずいいだろ。二人で並んで歩こうぜ」

とにかく、そんな綱渡りを二人は歩き出す。
彼らは無事にジョルノに、あるいはブチャラティチームのような信用できる人間に会うことが出来るのだろうか?
そしてミスタの記憶は?その現在の持ち主との遭遇は?

期待する気持ちはわかるが、まあこの辺でやめておこうか。こうご期待、ってね。
26記憶 状態表1 ◆yxYaCUyrzc :2013/09/02(月) 17:57:20.65 ID:WvNpgDIv
【C-2 南東 / 1日目 午前】

【グイード・ミスタ】
[スタンド]:『セックス・ピストルズ』
[時間軸]:JC56巻、「ホレ亀を忘れてるぜ」と言って船に乗り込んだ瞬間
[状態]:記憶喪失
[装備]:閃光弾×2
[道具]:拡声器
[思考・状況]
基本的思考:なし(現状が全くわからない)
1.とりあえず移動。ジョルノ他俺を(俺の現状を)知ってる人に会いたい
2.どうも俺は記憶喪失になっているらしい。でもあまり信じたくない
3.おいミキタカゾ、そのモノマネは反則だってwww

※第一回放送を聞き逃しました。名簿も未確認です。
※記憶DISCを抜かれたことによりゲーム開始後の記憶が全て失われています。
※ミスタの記憶はJC55巻ラストからの『ヴェネツィア上陸作戦、ギアッチョ戦の直前』で止まっているようです。
27記憶 状態表2 ◆yxYaCUyrzc :2013/09/02(月) 17:59:25.10 ID:WvNpgDIv
【ヌ・ミキタカゾ・ンシ】
[スタンド?]:『アース・ウィンド・アンド・ファイヤー』
[時間軸]:JC47巻、杉本鈴美を見送った直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:チョココロネ×3
[思考・状況]
基本的思考:ゲームには乗らない
1.とりあえずミスタの説得に成功して安心。しかし現状はわからぬまま。やや不安
2.ミスタと共通の知り合いであるジョルノと合流したい。まずは移動
3.知り合いがいるならそちらとも合流したい
4.承太郎さんもジョルノさんと同じように生きているんでしょうか……?
5.顔真似はできないけどこういう方法もあるんだぜ(ドヤ

※第一回放送を聞き逃しました。名簿も未確認です。
※ジョルノとミスタからブチャラティ、アバッキオ、ナランチャ、フーゴ、トリッシュの名前と容姿を聞きました(スタンド能力は教えられていません)。
※第四部の登場人物について名前やスタンド能力をどの程度知っているかは不明です(ただし原作で直接見聞きした仗助、億泰、玉美については両方知っています)。

[備考]
ミスタとミキタカは自分たちの現在位置がわかっていません。また地図も持っていません。
地図もコンパスもない以上は道沿いに歩くようですが、詳しい方向や目的地は決まっておりません(決められません)以降の書き手さんに一任します。
28記憶  ◆yxYaCUyrzc :2013/09/02(月) 18:16:12.17 ID:WvNpgDIv
以上で投下終了です。

仮投下からの変更点
・本文長さでの規制につき分割箇所変更
・コロネ、文明の利器

ミスタはともかくミキタカも放送の詳細や現在位置を知らない以上は移動させないと何も始まりませんので説得と行動方針の決定のみに終始しました。
とはいえ彼らの時間が朝で止まっていた上に会話と目的の決定だけだと話が(時間の進行度が)進まず申し訳ないorz
ミキタカのコロネ頭ネタはなんだかふと天から降りてきましたwでもイメージの原点はスマイルプリキュアを見てた(キャラの容姿を説明する際にコロネを、というシーンがあった)んですw
鉄塔戦を見るにミキタカは何だかんだで機転がきくタイプだと思うんですよね。
それから、ミスタがミキタカのことを「ミキタカゾ」と呼ぶのは1stでも誰か(ワムウでしたっけ)が同じように言っていたのをオマージュしています。

誤字脱字やその他矛盾がありましたらご一報ください。
29創る名無しに見る名無し:2013/09/03(火) 12:18:12.25 ID:v7ZXrYlm
投下乙です
そうかコロネは文明の利器だったのか!(違う)
仗助よりも整ってるらしいジョルノの頭(ASB)だけど一般人から見れば普通にアウトだと思うのです
ミキタカは天然さがいいように作用したなー
一応周りに危ない人はいないはずだしシーザーも向かってるはずだしなんとかなるといいなぁ…
30創る名無しに見る名無し:2013/09/04(水) 16:40:57.95 ID:XDBReDNO
吉良「せやな」
F・F「せやな」

F・Fは今はよっぽどのことがない限り大丈夫か……?
31創る名無しに見る名無し:2013/09/05(木) 03:21:50.90 ID:PIFHzb15
ASBに伴う投下&予約ラッシュに興奮
やっぱ新作読めるといいな
32創る名無しに見る名無し:2013/09/06(金) 20:46:48.87 ID:Nqbr0Q9y
エース書き手氏も復活?したしな。これは期待せざるを得ない
33創る名無しに見る名無し:2013/09/07(土) 15:04:58.33 ID:97jzxjf6
文明の利器に吹いたwww
34水金翔:2013/09/08(日) 06:54:47.65 ID:OQFkYcru
みんな、遊びに来てね♪

http://www.geocities.jp/destiny_br/
35創る名無しに見る名無し:2013/09/09(月) 10:26:35.32 ID:Ew6pWdT6
wiki収録しました。作者の両名ではないですが、勝手に収録してよかったんでしょうか。書き手の方は確認をお願いいたします。
それから不足もありましたら指摘してください
36 ◆c.g94qO9.A :2013/09/09(月) 21:46:48.66 ID:WZxtOu2y
ご無沙汰しています。予約したパート、投下します。
 ▼



  「ようこそ……男の世界へ…………」     
                            ―――リンゴォ・ロードアゲイン


 ▼




僕らが話を終えてどれぐらいの時間がたっただろう。
真昼だと言うのに北向きのキッチンは薄暗く、僅かに入った日差しもどこか埃っぽい。
向かいに座った千帆さんの頬に長い影が落ちる。彼女が首を傾げるたびに髪の毛が揺れ、衣擦れの音が僕の鼓膜を震わせる。

壁時計が沈黙を破るように時を刻む。チクタク、チクタク……チクタク、チクタク……。
不意に、壁越しに男たちの声が聞こえた。一つはさっき千帆さんと一緒にいた男の声。そしてもう一つは……聞き覚えのある声だった。
椅子を引き、立ち上がる。千帆さんは顔をあげ、何か言いたげな表情で僕を見る。僕も彼女を見返す。沈黙が流れる。

チクタク、チクタク……チクタク、チクタク……。そして僕は扉に向かう。


「ジョニィさん」


僕を引きとめるように、彼女が僕の名を呼んだ。懸命に、何かを訴えるようにその目は僕をまっすぐに射抜いて行く。
僕は立ち止まり、その目を見つめ返す。睨み返す、と言ったほうが正確かもしれない。
たじろく彼女に指を突きつけると、 僕はこう言い放った。


「君の言い分はわかるし、必死だってこともわかる。
 できることなら協力してあげたい、殺さずに済むのであればそれに越したことはない……。
 それは僕が感じていることでもあるからね」
「なら……」
「けどもしも彼が、蓮見琢馬が僕の邪魔をするというのなら僕は手を止めることができない。
 繰り返すことになるけど、これは決定的なんだ。僕の確固たる意志なんだ」


一言一言僕が言葉を吐き出すたびに、彼女の顔は大理石のように固まっていった。
真っ白になった彼女の顔を見て、胸が痛まないと言えばウソになる。
けど、仕方がない。こればかりは避けようもないほどに、僕の中では“絶対的”だった。曲げることのできない、確実なものだった。

もしも蓮実琢馬が僕の行く手に立ちふさがるのなら……僕は宣言通り彼を撃ち抜く。僕のこの手で、容赦なく。

男たちの声が大きくなった。僕は彼女に向かって話を続ける。
弱った動物に止めを刺すかのように、僕は言葉を振りおろす。
「殺し合いという舞台に立った以上、望むに望まざるに戦いは避けられない。
 僕には叶えたい目的がある。必ず会わなければいけない友達がいる。
 そのためなら……なんだってする。僕にはその覚悟が、ある」
「…………」
「優しさで誰かを救えるなら僕だってそうするさ。だけどそうじゃない……本当に誰かを救うのは強さだ。優しさなんかじゃない。
 今までも……そして、これからも…………ずっと」

扉をあけると暗闇を切り裂くように陽が刺した。眩しさに目を細めながら外に出る。僕は後ろを振り返らなかった。
彼女がどんな顔をしているか、見たくはなかったから。


「夢見る少女じゃ世界を救えない。僕はそう思うよ、双葉千帆さん」


バタン、と扉が閉まる音がする。あの薄暗い部屋に彼女を閉じ込め、僕は光の中を進んでいった。





 ▼



  「その子からさあ、きたない手をはなせよ。どうせ小便してもあらってないんだろ」    
                            
                                    ―――蓮見 琢馬


 ▼





「なるほど、話はわかった」


プロシュートさんの声はどことなく歯切れが悪い。そっとばれないように視線をあげると、彼は何も言わずにコーヒーを一口すすっていた。
キッチンの窓を背にした彼の表情は影になって、よくわからない。
けど、なんとなくだけど……どこか面白可笑しく思っているように、私には見えた。

ジョニィさんとの話し合いに時間はかからなかった。
お互いに出会った人について、知っている人について、危険人物の特徴、支給品の披露などなど……。
けど結局はそこ止まりだった。ジョニィさんは辛抱強くて、気が利いて、冗談を言って私を笑わせてくれたりしたけど一緒にはいられなかった。
一緒にはいてくれなかった。

話し合いが終わるとジョニィさんは私を置いて出ていってしまった。
少しの間、外ではなしあうような声が聞こえ、入れ替わりにプロシュートさんが部屋に入ってきた。
放送も近いし昼飯でも食べておこう……そう言って私たちはここに留まり、私はプロシュートさんにジョニィさんの話をしていたのだ。

彼の真っすぐな目と、折れることのない硬い、硬い意志について……。


「もしもここがタダの街で、俺とお前が偶然街ですれ違うような関係で、それでもってたまたま何か事件に巻きこまれただけとしたら……俺も同じことを言っていたかもしれない」


コーヒーの香りをぬうように、プロシュートさんの言葉が飛びこんできた。
顔をあげた私を見て、彼は話を続ける。


「俺もジョニィ・ジョースターと一緒だ。
 目的のためならば手段を選ばない。他人を蹴落とす必要があるならそうする。ぶっ殺すと心の中で思った時には既に行動は終わっている。
 心やさしいなんて的外れもいいところだ。そんな人種だ、俺たちはな」


コト……、陶器が触れ合う音が響いた。私は両手の中にあるマグカップを見下ろした。
真黒な液体の中で、白い顔をした私自身が見つめ返している。
どこまでも深く、濃い、真黒な渦の中で。


「だけど、死んだ。そんな人種と呼ばれる俺の仲間たちは六時間も持たずに、死んだ。どいつも俺より凄い奴らばかりだって言うのにな。
 一人は俺以上に強くて、頑固で、厄介な野郎だった。
 一人は俺以上に頭が回って、冷静で、冷酷だった。
 一人は俺以上に意地汚くて、しぶとくて、ぶっ殺しても死なないような奴だった。
 それなのに死んだ。そしてお前は生き残っている」
「プロシュートさん、私……」
「千帆、お前はとびきりの大甘ちゃんだ。 誰かを蹴落とすなんて考えたこともないって面してる。
 誰かを犠牲にするぐらいなら私が犠牲になってもいい、そんな夢みたいなことを大真面目に考えてる。
 実に、馬鹿馬鹿しくなるほどに、世間知らずのお嬢様だ」

言葉とは裏腹に、プロシュートさんの顔には笑顔らしきものが浮かんでいた。
コーヒーから立ち上る湯気越しに、微かに浮かぶ頬笑み。唇をひん曲げただけの不器用な笑顔は、それでも私を励ましてくれた。
これでもいいんだって、そんな気分になった。

女々しいかもしれない。臆病かもしれない。
でもそれはもしかしたら私にしかできないことかもしれないんだ。
私だけが持つ、大切なものなのかもしれないんだ……。


「そんな大甘ちゃんだから、俺はお前に賭けることにしたんだ」


ポケットに入っている歪な形の黒い武器。傍に佇むならず者剥き出しの男の人。
どちらも私からは遠く、遠くのものだった。けど今は、それ全部が大切に思えた。

強くならなきゃいけないと思った。ジョニィさんにああやって言われて、何一つ言い返せなかった事が急に悔しく思えてきた。
「少し寝ておけ、放送が始まったら起こしてやる」


目を閉じると暗闇が広がる。奥行きのない、どこまでも広がっていく闇。
私は何て言えばいいのだろう。こんな目をした、あのジョニィさんに何て言えば“勝つ”ことができるのだろう。
眼を開けてみれば差し出した腕はどこにも届かず、ただ天井向かって延びただけだった。

私はまだ、答えられない。けどいつかは……“答えられるよう”になりたい。




 ▼



  「来いッ! プッチ神父ッ!」     
                            ―――空条 徐倫


 ▼




「俺はそう思うよ、ジョニィ」
「だったら尚更僕は一緒にいられない」


足を引きずりながら進む俺と、ただ真っすぐに進んでいくジョニィでは彼のほうが歩くペースが速い。
少しだけ前を行くジョニィの後ろ姿を見つめながら俺は見たこともない、その双葉千帆という少女のことを考えた。
何故だか彼女の姿はイメージの中で、俺の愛した少女と重なった。

それは彼女がきっと……双葉千帆が徐倫と同じぐらい優しい子だと俺が思ったからだ。
殺したくない、傷つけたくない。誰だってそう思うだろう。
彼女に足りないものがあるとするならば、それを貫きとおす勇気だ。
武力でもなく、説得力でもなく、ただ自分にそれを課す勇気……いや、勇気と言うより愛、だろうか?

母親が子に授けるような不変の愛、聖母のように慈しみ信頼する心……それを貫き通すのは難しい。

だけど徐倫だって昔は寂しさのあまりメソメソ泣くような女の子だったんだ。
彼女なら、できる。双葉千帆にだって、なれるだろう。俺はそう思いたい。
このジョニィ相手に一歩も引かないような女の子なんだ……あとはきっかけさえあれば、彼女は変わる。俺にはそう思えた。


「彼女のことが心配かい、アナスイ」
「……いいや」


振り向きもせずにジョニィがそうたずねてきた。俺は返事をし、その後ろ姿をじっと見つめる。
ジョニィは変わった。たった数時間ぶりに会っただけだと言うのに……どうしようもなくわかってしまうほど、今のジョニィは剥き出しで鋭い気を放っている。
前に比べてずっと無口で、座った目をしている。ときどき俺がギクリとなるぐらいに。
会いたい人がいると言っていた。必ず会わなければいけない友人なんだと。
きっとその気持ちがジョニィを変えてしまったんだ。失うことを恐れるあまり、失う怖さを理解しているがゆえに。
俺とジョニィの立場は完全にひっくり返ってしまった。今や俺が下がり、ジョニィが先だ。
しっかりとした足取りで前を行く彼は、頼もしげだけれどもどこか怖さを感じる。そんな風に俺には見えてしまった。


「アナスイ」


ジョニィに呼ばれ、俺は我に返った。
行き過ぎた道を戻ると、曲がり角で元来た道へと戻っていく。待ってくれていたジョニィと肩を並べ、俺たちはまた歩き出す。


―――全てをなぎ払い、踏み倒し……それでも何も手に入らなかったらお前はいったいどうするんだ?


そうジョニィに聞いてみたかった。けれども俺は尋ねない。
俺がその問いに答えることができないならば、それを口にする資格はない。
それになんとなくだが、ジョニィの答えが想像できたのだ。


―――それでも変わらず、歩き続けるだけさ。


俺は、ジョニィがうらやましかった。
こんな抜け殻になった俺なんかとは違う。死んだ女の亡霊に取りつかれるでもない。
ただひたすら道を行く、ジョニィ・ジョースターという男が…………。


「そろそろ放送の時間だ」
「ああ」


短くそう答え、俺は空を見上げる。
底抜けするように青く澄んだ空を、馬鹿みたいにでかい雲が横切っていく。
心地よい、昼下がりのことだった。




【D-7 南西部 民家/1日目 昼】
【プロシュート】
[スタンド]:『グレイトフル・デッド』
[時間軸]:ネアポリス駅に張り込んでいた時
[状態]:全身ダメージ(中)、全身疲労(中)
[装備]:ベレッタM92(15/15、予備弾薬 30/60)
[道具]:基本支給品(水×3)、双眼鏡、応急処置セット、簡易治療器具
[思考・状況]
基本行動方針:ターゲットの殺害と元の世界への帰還。
1.暗殺チームを始め、仲間を増やす。
2.この世界について、少しでも情報が欲しい。
3.双葉千帆がついて来るのはかまわないが助ける気はない。


【双葉千帆】
[スタンド]:なし
[時間軸]:大神照彦を包丁で刺す直前
[状態]:疲労(小)
[装備]:万年筆、スミスアンドウエスンM19・357マグナム(6/6)、予備弾薬(18/24)
[道具]:基本支給品、露伴の手紙、救急用医療品
[思考・状況]
基本行動方針:ノンフィクションではなく、小説を書く。
1.プロシュートと共に行動する。
2.川尻しのぶに会い、早人の最期を伝える。
3.琢馬兄さんに会いたい。けれど、もしも会えたときどうすればいいのかわからない。
4.露伴の分まで、小説が書きたい。




【D-7 西/1日目 昼】
【ナルシソ・アナスイ】
[スタンド]:『ダイバー・ダウン』
[時間軸]:SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前
[状態]:全身ダメージ(極大)、 体力消耗(中)、精神消耗(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条徐倫の意志を継ぎ、空条承太郎を止める。
0.徐倫……
1.情報を集める。
【備考】
※放送で徐倫以降の名と禁止エリアを聞き逃しました。つまり放送の大部分を聞き逃しました。

【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、リボルバー拳銃(6/6:予備弾薬残り18発)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いたい。
1.ジャイロを探す。
2.第三回放送を目安にマンハッタン・トリニティ教会に出向く
以上です。なにかありましたら指摘ください。

めちゃくちゃ久しぶりだったので、すごい自分自身違和感を感じてます。
ようやく生活が落ち着いてきたので、少しずつまた書ければいいな、と思ってます。


***
代理投下終了です。一部分割箇所ミスってしまって申し訳ないですorz

決意がしっかりと固まっているジョニィに、プロとして誇りのある兄貴、揺らぐアナスイ、決意を見出したい千帆。
氏にしては珍しく(失礼)短い話ではありましたが4人のキャラクターの対比が絶妙でこの先の展開がすごく気になる幕引きでした。
今後も忙しいと思いますがロワを引っ張っていってください。最後になりましたが投下乙でした。
44創る名無しに見る名無し:2013/09/11(水) 08:49:18.71 ID:Mif855OU
投下&代理投下乙です

千帆の一般人らしさがいいなぁ
ただ、ここがロワな上彼らが原作でやってきたことを考えるとスタンスが相容れるわけがないんだけども
でもだからこそ兄貴の「賭ける」と言ったかっこよさが光るわけで
それぞれ目的を持っている中意志が定まっていないアナスイが不安だ…
45創る名無しに見る名無し:2013/09/12(木) 23:25:03.54 ID:zZiT6j1s
やはり投下はいいもんだ
これまでにない善人寄りな兄貴の活躍に大期待
最後の仲間ギアッチョももう死んでしまったし、今後の兄貴の運命が気になる
なんせ傍らには死の女神が…
46創る名無しに見る名無し:2013/09/15(日) 00:35:17.81 ID:jtLdujh5
月報です
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
147話(+3) 56/150(-0) 37.3(-0.0)
47創る名無しに見る名無し:2013/09/19(木) 02:03:07.58 ID:/OIrE72U
ちょっとずつ投下されてきてるけど他の書き手さんも戻ってきてくれるかな?
48創る名無しに見る名無し:2013/09/19(木) 21:38:05.06 ID:6/DvA5v8
書き手の皆様の復帰も楽しみだが、新規の書き手さんもほしいよな。ASBの影響でジョジョ混部もアイデアが浮かんできそうだし
49代理:2013/09/23(月) 18:58:55.21 ID:/hJiPncF
623 : ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:07:05 ID:tFZwjNi.
すみせん、遅くなりました。投下します。

624 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:07:38 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇



 ぱちぱちぱちぱち……―――(拍手の音)



 ◇ ◇ ◇
50代理:2013/09/23(月) 18:59:25.80 ID:/hJiPncF
625 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:08:36 ID:tFZwjNi.




「君たちには……人探しをしてもらいたい」

とろけそうになるほど甘い声。その声は一流音楽家が奏でるヴァイオリンよりも美しく響いた。
DIOは目前でうずくまる四人の男たちを眺める。誰もがぼんやりとした顔で、DIOの言葉に聞き惚れている。

「ジョセフ・ジョースター、空条承太郎、花京院典明、モハメド・アヴドゥル……。
 この四人を、君たちには探してもらいたい。いずれもこの私の野望を邪魔せんとする輩だ。
 君たちには彼らを探し出し、このDIOのもとに連れてきてもらいたい。
 生死は問わない……信頼する君たちなら必ずやり遂げてくれるだろう……。
 さぁ、行くがいい……このDIOの忠実な部下たちよ……」

話が終わったのを合図にDIOは椅子から立ち上がり、男たちは深々と頭を下げる。
薄暗い室内をぼんやり照らすロウソクが、怪しげな影を男たちの頭に落とした。
よく見れば額に小指大の肉片がうごめいていることに気がつくだろう。DIOによる洗脳、”肉の芽”だ。

部屋の奥へとDIOが姿を消し、男たちも立ち上がる。その足取りはどことなくぎこちない。目つきも虚ろだ。
プログラミングが終わったばかりのロボットのような動きで彼らは建物をあとにする準備を始める。
一連の出来事を部屋の隅で眺めていた虹村形兆は、ゾッとしない気分だった。

これがDIO……! これが悪の帝王……ッ!

他人を踏みつけることなんぞなんとも思っていない。
喉が渇いたから喫茶店に入るような気軽な感じで、彼は人を人有らざるモノに変え、己のコマとする。
罪悪感がない……、人としての『タガ』が外れている……。その点では間違いなくDIOは人間を超越しているだろう。
何かをしようとするたびに悩み、苦しむ形兆なんかとは違って。

形兆の指先がビリビリと震えた。『格の違い』に恐怖を覚えたのは初めてのことだった。
震えをごまかすためにもう片方の手でギュッと腕を押さえつける。
隣に立ったヴァニラ・アイスに動揺を知られたくはなかった。

「行くぞ、虹村形兆。奴らに先を越されてはならん」

ヴァニラの声は無機質で、人工的で、カラッカラに乾いてるように聞こえた。
形兆が小さく頷くと、ヴァニラ・アイスは先に立って歩き始めた。
その背中を眺めながら、こいつの首筋に弾丸をブチ込めたらどれだけスカッとするだろう、と形兆は思う。

第五中連隊をそっくりそのまま投入。
三六〇度より一斉一点射撃。首元の爆弾を引火させ、上半身を根こそぎ吹き飛ばす……。
そんな夢みたいなことができたならば……。
51代理:2013/09/23(月) 19:00:21.59 ID:/hJiPncF
626 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:09:14 ID:tFZwjNi.


「なにをしている、早く行くぞ」
「そう急かすんじゃあない。隊列行動は規律を守ってだ。俺に指図するのはやめてもらいたいね」

表面上は軽口を叩きながらでも、互いに警戒は全くといていない。
ヴァニラは隙あらば形兆を殺そうとしているし、形兆だって素直に殺される気はない。
まだここがDIOの目の届くところだから、ただその一点のみで二人は戦わずに済んでいる。
だが『ここ』からは違う。この扉を開け、GDS刑務所から出ればそこはもはや無法地帯だ……。

最後の扉を開くと強い日差しが差し込んできて、思わず目を瞑りそうになった。
目がなれると辺りの風景が一気に視界に飛び込んでくる。見れば先の四人は四方に散って、それぞれの方向へと向かっている。
同時に甲高い叫び声が聞こえ、つられて上を見上げれば一匹の鳥が上空高く舞っている。

側にも、上にも監視付きってことか。逃げ場なんてものはどこにも見当たらなかった。
ため息をひとつ吐くと、形兆はバッド・カンパニーを広げていく。
遅れないようヴァニラ・アイスについていきながら一人心の中で毒づいた。

(なぁ、億泰……なかなか狂ってやがるだろう? 
 あれだけ嫌ったオヤジなのに、今俺はオヤジの代わりに仕事を引き継いでいるんだ。
 皮肉なもんだ。殺したいほど憎んでいたはずなのに、そのオヤジの跡をそっくりそのままたどってやがる!
 この俺が! この俺がだぞ……!?)

吸い込んだ空気はベタベタと口周りで張り付いて、学ランの下で汗がシャツをぐっしょりと濡らした。

(だがな、俺は忘れてないからな…………!
 諦めたわけでもない。必ず俺とお前の借りは返してやるから!
 だから見とけよ、億泰!)

形兆の足元で何人かの兵士たちが武器を構え直した。
金属がぶつかりあう、特有の重量感を持った音が響いた。それは戦いを予期させるような鈍い音。
兵士たちは知らない。この拳銃をこの先誰に向けることになるか。
ひょっとしたら顔も知らない若者かもしれない。戦いに明け暮れた歴戦の兵士かもしれない。
そしてもしかしたら……。渋い顔で形兆の隣を歩くヴァニラ・アイス。
彼にその武器を向けるときは、そう遠くないのかもしれない。
52代理:2013/09/23(月) 19:00:52.51 ID:/hJiPncF
627 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:10:02 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇



散歩に付き合ってくれないか。そう言ったDIOの提案にヴォルペは黙って頷いた。
別に断る理由もないし、ちょうど暇をしていたところだった。
頷くヴォルペを見てDIOは笑みを深め、彼を地下へと誘った。二人はGDS刑務所内の地下へと続く階段を下っていく。
最初はコンクリートでできていた階段も下るに連れて砂や石が混ざり、ついには壁も足元も未整備のものへと変わっていた。
天井から滴る水滴が水たまりをあたりに作る。ゴツゴツした地面に足元を取られないようヴォルペは慎重に進んでいく。

DIOはどこか上機嫌で鼻歌交じりで先を進んでいた。さっきからやけにハイなようだとヴォルペは思った。
何かいいことでもあったのだろうか。
特別変わったことはなかったと思っていたが、思えばヴォルペはDIOのことをよく知らない。
好きな花も好みの歌も、出身も年齢も血液型も知らない。そもそも自分から誰かに興味を持ったことなんぞなかった。

足元が一段と荒れてきた。天井が低くなり、背が高いヴォルペは身をかがめながら進む。
頭をぶたないようにしながら、水溜りに足を突っ込まないようにするのはなかなか難しい。
進んではかがみ、よれては立ち止まる。DIOはなんでもないようにスイスイと進んでいく。
ヴォルペより一回り大きな体をしているというのに器用なものだった。

「君のスタンドは素晴らしいよ、ヴォルペ」

洞窟に入ってから一言も口を開かなかったDIOが突然そう言った。
返事をするどころでないヴォルペは言い返すこともできず、ただ頷く。この暗闇では頷いたところでわからないだろうけれども。
ともに足を止めることなく、進みながら話は続く。ヴォルペは黙って耳を傾けた。

「先の三人と一匹……チョコラータ、サーレー、スクアーロ、そしてペット・ショップのことだが……。
 君のスタンドは最高だ。ほとんど再起不能当然だった彼らが今ではピンピンしている。
 全くの無傷だ。本当に素晴らしいよ、ヴォルペ……!」
「……それは、どうも」
「確かにただ動けるようにするだけなら、この私にも可能だ。
 首元に指先をつきたて、吸血鬼のエキスを流し込めばいい。そうすれば屍生人として彼らは再び動き出すだろう。
 だがそうなってしまえば二度と陽の光を浴びることはできなくなる。
 この狭い舞台で地下でしか動けない部下なんぞ、扱いづらいことこの上ないよ」
「…………」
「だが君は違う。君の能力は違う。私の真逆の能力そのものであり、だが隣り合わせのようによくなじむ!
 過剰なエネルギーを流し込み、細胞を活性化させる。復元するのではなく、再生させるのだ。
 いうならば体の内部を加速させているわけだ。一日ががりの傷を三秒で、一年がかりの怪我を三分で!
 君は確かに生命を操っているよ、ヴォルペ! なんて素晴らしい! これ以上ないほど素晴らしい!
 君は生命を与え、私は生命を奪う。君は万物を加速させ、私は世界を凍りつかせる。
 コインの裏表のようだ! 素晴らしい引力だ! フフフ……! ヴォルペ、君は素晴らしいぞ! ヴォルペッ!」

DIOの喜びようはヴォルペを戸惑わせた。
話していくうちに喜びが増してきたのだろう。DIOはまるでクリスマスと正月が同時に来たようにはしゃぎだす。
だがヴォルペにはその喜びが理解は出来ても、共感はできなかった。
喜色満面のDIOを見つめながら、ヴォルペは何をそんなに喜ぶのだろうと考えていた。

自分はただ言われたとおり手当をしただけだ。
何も特別なことをしたわけではない。そもそもそんなにすごいというのなら、それは俺ではなくスタンドがすごいだけだ。
すごいのはむしろ君の方だ。そんな類まれなすべてを惹きつける、君の引力がすごいんだ。
53代理:2013/09/23(月) 19:01:23.20 ID:/hJiPncF
628 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:10:37 ID:tFZwjNi.


だが、それでもヴォルペはかすかにだが、『喜び』というものを感じていた。
だれかの役に立てたという達成感と満足感がヴォルペをすっぽり覆う。
それは初めての経験だった。こんなものが感情だというのなら、それも悪くないなと思える程だった。

「ところで」

ヴォルペの声は相変わらず乾いていたが、どこか和らげな感じだった。
先を進んでいたDIOだったがヴォルペの声に立ち止まると、彼が追いつくのを待った。
二人並ぶとゆっくり進みだす。道はだんだんと平坦になっていき、天井も3、4メートルほど高くなっていった。

「俺たちは今、どこに向かっているんだ?」

DIOはなんでもないといった感じで返事をする。

「どこでもないさ。強いて言うなら君の引力が向くがままにさ」

そしてそれに応えるかのように、前方から物音が響いてきた。
硬い金属をぶつけ合うような音だ。それは戦いの音。
DIOの顔に笑顔が広がる。今までの笑みとは違う、邪悪で凶暴な笑みだ。

ヴォルペはその横顔を黙ってじっと見つめていた。DIOの横顔からなにかをかぎ取るようにじっと……。
54代理:2013/09/23(月) 19:01:59.04 ID:/hJiPncF
629 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:11:18 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇



洞窟。
光が刺さない地下深く、手に持った懐中電灯だけを便りに二人は歩いていく。
空条承太郎と川尻しのぶ、二つの足音がこだまする。天井は低い。承太郎が手を伸ばせば触れられそうなほどだ。

承太郎としのぶはぶどうが丘高校を後にし、空条邸に向かっていった。
承太郎は理由を言わなかった。黙ったまま車を走らせ、門のところで止めると彼はようやく口を開いた。

『アンタ、吸血鬼の存在を信じているか』

突然の質問にしのぶは何も答えられない。承太郎も答えを期待してたわけでなく、淡々と話を続けた。
承太郎が持つ支給品の中の一つに地下地図、というものがあったらしい。
この街全体に張り巡らされたような地下道は交通のためにしては不自然で、下水や浄水のためにしては大規模すぎる。
しかしもしも日中外に出られないようなものたちがいたならば……。吸血鬼と言われる怪物たちが本当に実在するならば……。
そこはこの地で一番の危険地帯に早変わりだ。

学校の周りも駅の周りも人気は少なく、情報捜索は空振りに終わった。
承太郎はこれ以上待つことは不可能と判断し、攻めることにしたのだ。
参加者名簿の中に吸血鬼と呼ばれる人種が何人もいると、承太郎は言った。
そしてそれ以上の怪物、柱の男たちと呼ばれる者もいるといった。

『俺は今から地下に踏み込み、片っ端からそういう奴らをぶちのめすつもりだ』

にわかには信じられない話だ。おとぎ話でももう少し信ぴょう性がある。しのぶは何も言えず黙っている。
だが無言のまま承太郎が車から降りようとしたとき、既にしのぶも助手席の扉を開いていた。
もはやなんでもアリだ。スタンド、人殺し、爆弾首輪。そんなものがあるのであれば吸血鬼だっているだろう。

それになにより、さっき決めたばかりではないか。
空条承太郎を止めてみせる。ならばしのぶには選択肢はない。承太郎が行くところがしのぶの行くところだ。
たとえそこがどれだけ危険な死地であろうとも。

しばらく歩くと天井が高くなり、あたりもうっすらとではあるが明るさを増した。
壁に生えるコケがかすかに光り、ところどころから飛び出た燭台にはロウソクが灯らされている。
薄明かりの中、二人は無言のまま歩く。ただひたすら歩く。
承太郎は憎むべき敵を探し、一切の気配を見逃すまいとして。しのぶはそんな彼の大きな背中を眺め、内なる決断を済ませて。
55代理:2013/09/23(月) 19:02:29.74 ID:/hJiPncF
630 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:12:07 ID:tFZwjNi.

しのぶは諦める決断をした。
難しい判断だったがそうする勇気を持つことを、彼女は自分に決めた。
この先承太郎は何度も戦うだろう。
望まない相手に拳を振り上げる羽目になるだろう。自分を押し殺し、戦うべきでない相手と戦うことになるだろう。

しのぶにできることは『なにもない』。
なにもないとわかり、でもなにかせずにはいられない。そのためにまずは自分の身は自分で守ろうと思った。
戦う相手を救うことを、しのぶは諦めたのだ。今の彼女に、それはあまりに大きすぎたものだった。
彼女に救えるとしたらせいぜい一人ぐらいだろう。救えてたったひとり……承太郎、その人ぐらいなものだ。

だから承太郎が戦い始めたら彼女は逃げるつもりだ。
戦いを止めることは不可能だし、承太郎のそばにいたところで負担がますだけだ。
悲劇のヒロイン気取りでもうやめて、なんていうこともしない。
彼がどれだけ思いつめて、苦闘しているかはわかっているつもりだから。


大きく息を吸い込むと、砂の臭いに混じってタバコの匂いがした。
空条さんはいったい何を考えているのだろうか。一体彼には何が見えているのだろうか。
隣を歩いているというのにしのぶには承太郎の何もが、わからなかった。

頑張ったところで空回り。ただ励ましたいのに、力になりたいのに。
それなのにどうやったら力になれるかがわからない。
だけど、これ以外に、そしてこれ以上にできることは何もない。

それすらも欺瞞で、傲慢で、押し付けがましいおせっかいだ。

だから一緒にいたい。だけどそばにいたい。脇で立っていたい、寄り添っていたい。
何か一つだけでも秀でたものになりたかった。
しのぶは、心の底から『必要』とされたかったのだ。

今は無理でも……いつかはかならず……―――




―――そう、思っていた。
56代理:2013/09/23(月) 19:03:11.04 ID:/hJiPncF
631 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:13:04 ID:tFZwjNi.

「柱の男、カーズ……か」
「え?」
「アンタは逃げろ」

突然立ち止まった承太郎がポツリとつぶやいた。しのぶには何が何だかわからなかった。
次の瞬間、承太郎の姿が消え、凄まじい轟音が響いた。
しのぶは音にたじろぎながらも反射的にその場に伏せる。ぱらぱらと音を立て、頭上から崩れた砂が落ちてきた。

衝撃が収まるのを待ち、こわごわと顔を上げる。
目を凝らすと十数メートル先に承太郎の背中が見えた。そしてその脇に立つスタンドと……さらに奥に男の影が一つ。

その男は怪我でもしているのか、しのぶと同じように地面にうずくまっていた。背は高く、肩幅も大きい大柄な男だ。
黒いターバンのようなものを頭に巻き、冒険家風にマントを身につけている。
近くにはついさっきまでかぶっていたと思われる山高帽が転がっていた。
状況から察するに、承太郎がその男に攻撃を仕掛けたらしい。突然姿が消えたように見えたのは、彼のスタンド能力だろう。

「川尻さん、もう一度言う。死にたくなかったら逃げろ」

しのぶのほうを振り返りもせず、承太郎は今度ははっきりとした声でそう言った。
承太郎のもとへ駆け寄ろとしかけたしのぶはその言葉に足を止める。
それは拒否の言葉ではあったが、拒絶ではない。
承太郎がほんとうにしのぶのことを思ってなかったら何も言わず、そのまま戦い続けていただろう。

しのぶの脳裏に学校での出来事が古い映画を観るように、思い出される。
駆け寄るしのぶ、突き立てられたナイフ。薄笑いを浮かべた髭面の男。ガラス玉のような承太郎の目……。
ここで彼の言葉を無視するのは簡単だ。近くに駆け寄って、手を広げてもう戦うのはよして、と叫べばいい。

だがそれで何になるというのだ? しのぶは悩んだ末に、逃げることにした。
それは承太郎を困らせることになっても、改心させることにはならないだろう。
本当に承太郎を止めたいのであれば今は動く時でない。自分勝手な馬鹿なことをすべきでないと、しのぶは学んだのだ。

だがそれでも……やはり胸が痛んだ。
承太郎に独り戦いを任せること苦しさ、戦う相手にも家族がいるのではという哀れみ。
それでもそれらすべてを飲み込むと、しのぶは元来た道を走り出す。最後に承太郎にむかって、大声で言葉を残しながら。

「空条邸で待ってますからッ! 二時間でも、三時間でも……どれだけ待たされようとも待ってますからッ!」


636 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:18:10 ID:tFZwjNi.
すみません、抜けがありました。

>>631>>632の間です。



承太郎は動かない。返事もせず、頷きもしなかった。
足早に去る音を背にしながら、ただ目の前の男をにらみ続ける。
しのぶの足音がすっかり消え去った頃になって、ようやく地に伏せていた男が立ち上がった。
直角に曲がっていた足首も。あらぬ方向にひん曲がっていた首も。
一向に気にする様子もなく淡々と立ち上がると、服の埃を払ってみせた。
57代理:2013/09/23(月) 20:07:35.85 ID:/hJiPncF
632 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:14:11 ID:tFZwjNi.


そして…………―――また、轟音。


カーズの体が車にはねられたように吹き飛び、何度も洞窟の壁に叩きつけられる。
バウンドを繰り返し、天井まで達し……放り投げられたおもちゃのように落ちてくる。
当然のように位置を変えた承太郎はそれを黙って見ていた。今まで違ったのはその腕に真っ赤な線が走っていること。
時を止め終えたほんのゼロコンマの瞬間に、カーズの指先が承太郎の腕の肉をえぐり飛ばしたのだ。
音を立てて、承太郎の腕から血が滴り落ちる。傷は深くもないが、浅くもない。


二度の衝撃を終えて、両者はにらみ合う。
ゆらりと立ち上がったカーズの顔には憤怒の表情が張り付いている。承太郎は変わらず、機械のように無表情だ。
泥だらけになった自分の姿を一瞥し、カーズは苦々しく言った。


「貴様、何者だ……」
「てめェには関係ないことだ。これから俺にぶちのめされる、お前にはな……」


―――……殺してやる

これほどの屈辱は未だかつて味わったことがなかった。
ダメージはない。が、餌の餌、家畜当然かそれ以下の存在である人間にこうも弄ばされいいようにやられて、カーズのプライドはズタズタだった。
スラァァァ……と薄い氷をひっかくような音を立て、カーズの腕から刃が飛び出した。承太郎もスタンドを構え直し、戦いに備える。

最初から全力全開……最強のスタンド使いと最強の究極生命体のぶつかり合い。この戦いは長くは続かないだろう。


薄暗がりの中、影が動いた。そして……三度轟音が、そして今までよりさらに凄まじい轟音が、洞窟を震わせるように響いた。
58代理:2013/09/23(月) 20:08:06.43 ID:/hJiPncF
633 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:14:47 ID:tFZwjNi.

 ◇ ◇ ◇



「スター・プラチナッ!」
「KWAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

カーズが感じたのは強烈な違和感だった。
目の前の男は自分を知っている。柱の男の性質を、光の流法を……波紋使いでもないのに、完璧に対応しカーズの攻撃をさばいていく。
カーズの体に直接触れることは決してしない。輝彩滑刀に対しては刃をはねのけるように側面をたたいている。

数度の交戦を経て、大きく距離を取る。承太郎も無理には追わず、一度互いに呼吸を整える。
気に入らないな、とカーズは思った。その余裕が、強さが、すべてを見透かしたようなスカした視線が!
全てがッ! 気に食わんッ!!

大地を強く蹴りあげ、跳躍。狭い洞窟であることを最大限に利用する。
天井まで上昇、今度は天井を蹴り加速。壁を蹴り、進路を変更。また床に戻り、そして上昇……。
人間には決してできない、超三次元的な動き! あまりのスピードにカーズの影がぶれてみえるほどだ!

「刻まれて、死ねェェェエエ―――ッ!」
「オラオラオラオラオラオラッ!」

だが、やはりだ。それでも承太郎は完璧に対応してみせた。
上から切りかかっても、下から切り上げても、右から真っ二つにしてやらんと振り上げても、左からます切りにしようと振り下ろしても。
スピードと破壊力では間違いなくカーズが上だ。体力も、耐久力も、地の利もカーズが上。

だがしかし精密性という一点のみで! 悔しいが認めるしかない……ッ!
承太郎の体に細い切り傷が無数に広がっていく。その先の一歩が踏み込めない。
承太郎の超人的な集中力と、スター・プラチナの能力がそれをさせない。

カーズの刃を揺らし、折らんばかりに振り下ろされるスター・プラチナの攻撃に柱の男は認識を改める。
こいつは……強い。波紋使いとは違った次元でコイツは……このカーズの脅威となる男だ、と。
そしてなにより……ッ!


「……スター・プラチナ・ザ・ワールド」


そう承太郎がつぶやき、カーズの世界が一変する。
つい今の今まで、目の前にいたはずの影が消える。と同時に、ほんのゼロコンマ秒のズレもなく、体の側面に強い衝撃。
きりもみ回転をしながら洞窟の壁に叩きつけられる。
あまりの衝撃にそれだけでは収まらず、バウンドを繰り返し、何度か壁と床を揺らしてやっとカーズの体は止まった。
59代理:2013/09/23(月) 20:08:37.56 ID:/hJiPncF
634 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:15:50 ID:tFZwjNi.


そう、この謎の能力……。
人形使いに会うのは初めてではない。この舞台ではじめにあった人間もそれらしき能力をもっていた。
が、コイツはタダの人形使いではない……ッ! なにかそれ以上の恐ろしい……凄まじいなにかを、秘めているッ!


(そうでなければこのカーズが、こうまでも苦戦するはずがなかろうが……ッ! たかが人間相手に……忌々しいッ!)


体についた砂埃を払い落とし、立ち上がる。形としてはこればかりを繰り返している。
攻めるカーズ、迎え撃つ承太郎。互いにダメージはほとんどない。
なんどもカウンターをくらっているカーズだが、柱の男の耐久力、回復力がそれを補ってくれている。
承太郎も決して無理をしない慎重な立ち回りだ。じっと隙を伺い、待ち続けている。

互いを牽制しあうような時間が続き、小競り合いが二度三度。
焦れるような戦いが何度も続いた。このままでは決定打にかけ、いつまでたっても戦いは終わらないだろう。
二人にできることといえば待ち続けることだけだった。
集中力を途切らせることなく、何かこの状況を打破してくれるような「何か」をひたすら待つことだけ……!

「オラァ!」
「ふんッ!」

長い交戦の終わり際、二人はここぞとばかりに踏み込んだ。だがそれも有効打にはならない。
キィィン……と甲高い金属音が響き、カーズの刃をスター・プラチナが蹴り飛ばす。
よろめき体制が崩れたところを追撃するも、柱の男特有の柔軟さがそれをなんなく躱しきる。
顎先をかすめた蹴りをさけ、カーズは大きく飛び下がる。承太郎はスタンドを呼び戻し、また戦いに備える。

その時だった。
その金属音が止まないうちに、近づく一つの足音。そしてその場にそぐわぬ、乾いた拍手の音。
パチパチパチパチ…………。承太郎の動きが思わず止まる。一歩踏み出したところでカーズは何事かとあたりを見渡した。

二人の視線が向いた先から人影が浮かび上がってくる。
薄明かりの中出てきたのは……黄金に輝くド派手な衣装、筋骨隆々のたくましい肉体、傍らに立つスタンド。
張り詰めていた空気がさらに殺伐としたものに変わる。
承太郎の体から目には見えない、だが強烈な怒りの感情が熱となって一斉に吹き出した。

「…………DIOッ!」
「ンン〜〜、ご機嫌じゃないかァ、承・太・郎ォォ………? ンン?
 しばらく見ないあいだに随分と老け込んだじゃないかァ……。
 それともこのDIOに会うのは『数年』ぶりかな?」
60代理:2013/09/23(月) 20:09:08.16 ID:/hJiPncF
635 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:16:45 ID:tFZwjNi.

返事はなく、代わりに拳が飛んできた。いくつにも増え重なった拳が、壁のようにDIOめがけて迫ってくる。
手洗い歓迎というわけだ……ッ! DIOは軽いウォーミングアップだとつぶやくと、自らもスタンドを出現させた。

「ザ・ワールド!」

その音は拳と拳がぶつかり合う音にしてはあまりに殺気立ったものだった。
刃物と刃物をぶつけ合うように鋭く、甲高い音が洞窟中に響く。それも無数に……そして同時と聞き間違うほど素早い間隔で!
承太郎とDIOはスタンド越しに火花を散らす。
パワーA、スピードAのスタンドのぶつかり合いは凄まじく、衝撃で洞窟全体がビリビリと震えた。
突きが徐々に早くなっていく……。DIOの顔から余裕の笑みが消えた。承太郎は奥歯を噛み、鼓舞するように叫びを上げる。
だが!


「KUWAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」


この時を待っていた……ッ! そう言わんばかりの迅速な行動だった。
屈辱ではある。たかが人間相手に苦戦し、突然現れた邪魔者に助けられた形で隙を付くことになった。
だがカーズにとってもはやそんなことはどうでもいいことだった!
プライド、過程、こだわり……そんなもののために勝利を犠牲にするほどカーズは甘くないッ!
目的を遂行し、そのためにはどんな手であろうと迷わず実行するッ! そう、これが真の戦闘だ!
カーズにとってはそれがなによりもの真理ッ!

「その命、刈り取ってくれよォォオ―――――ッ!! KUWAAAAAAAAA!」

正面から真っ向勝負の二人に対し、真横から超速で接近。
狭い洞窟内に逃げ場はない。上下、左右。いずれに避けようとも、カーズのスピードを持ってすれば腕か足、あるいは両方共もっていかれる……ッ!
魚を下ろすかの如くッ! ただ包丁を振るうようにッ! カーズの鋭い刃が承太郎とDIOに襲いかかるッ!



   ―――その瞬間!  ……またも世界が止まった。



「「スター・プラチナ・『ザ・ワールド』ッ!」」


二人は迫り来る刃を前に、示し合わせたように同時に動いた。
ともに止まった時の世界で、DIOは左に、承太郎は右に。
たとえ柱の男といえど、止まった時の世界では『喰らう』ことは不可能だ。
DIOはそうとは知らず、承太郎はそれを知っていて。ともに最大速度でカーズめがけて拳を振るう。
61代理:2013/09/23(月) 20:09:38.94 ID:/hJiPncF
637 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:18:37 ID:tFZwjNi.

右からザ・ワールド、左からスター・プラチナ。左右からのすさまじい衝撃が一秒の狂いもなく、カーズの体内に圧縮されていく。
すべてが止まった世界でなお、その凄まじいエネルギーは暴走し、カーズの体を変形させていく。
極限までしなやかな骨は折れ、ゴムのように柔軟な皮膚ですら突き破られる。空気配給菅に押し込まれたわけでもないのにカーズの体はぺちゃんこに変わっていく。

「承太郎、貴様ッ!」
「オラオラオラオラオラオラァ!」

そして、ともに対処しなければならない共通の敵がいたとしても。
この二人が手を組むことは不可能だ。たとえそれが一時、一秒であったとしても。

時が動き出すほんのコンマゼロ秒前、体制を立て直した二人が激突する。
拳の嵐、蹴りの応酬。DIOの右肩が大きく裂ける。承太郎の腕の傷がぱっくり開き、天井に血のシミを作った。


「「そして時は動き出す……」」


「BAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」


吹き飛ぶカーズとその叫びを耳にしながら、最後に拳を放つ二人。
凄まじいエネルギーがぶつかり合い……衝撃波が洞窟を通り抜けていった。
弾き飛ばされるようにDIOも承太郎も、大きく飛び下がった。
天井と壁が割れ、パラパラと小石が落ちてくる。砂埃が舞い、足元を舐めるように通り過ぎていく。

「やはり止まった時の世界で動けるか、承太郎……! このDIOにだけ許された世界にッ! 貴様はやはり入り込んできていたのか!」
「答える必要はない」

会話の終わりに二人の傷口が大きく開いた。カーズとてただ闇雲に突っ込んだわけではない。
承太郎との戦いの中でその不思議な能力は曖昧ながらも把握していた。
たとえと時間が止められようと、吹き飛ばされる直前にDIOと承太郎の体に『憎き肉片』を飛ばす。
カーズは倒れふしながらもそれでも意地を見せた。しかし屈辱には変わらない。
あの柱の男の一族が、人間と吸血鬼相手に劣勢であることは変わらない事実なのだから。

「よかろう……例え貴様が時に侵入してこようとも、このDIOが貴様をたたきつぶしてやるッ!」
「……貴様らは殺す。肉片一つ残らず殺す。バラバラのブロックに切り裂き殺す。死体も残さずこの体に取り込み殺す。
 このカーズ自らの手で! 直々に! 殺し尽くしてやるッ!」
62代理:2013/09/23(月) 20:10:17.03 ID:/hJiPncF
638 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:19:06 ID:tFZwjNi.


激高するカーズの叫びと、DIOの高笑いがあたり一面にこだました。
増幅された怒りと憎しみの感情が霧のように承太郎を包んだ。しかし承太郎は怯まない。
その霧を弾き飛ばさんばかりのエネルギーが承太郎の体から立ち上った。

思い出せ、23年前のあの日のことを。怒りのままにDIOをぶっ飛ばしたあの日。
母を人質に取られ、友を殺され、祖父を侮辱され、プッツンしたあの日の怒りを……―――俺はッ!

洞窟内に見えるはずのない陽炎が立ち上っているかのようだった。
三人に増えたことで状況はより複雑なものになった。
誰かが動けば誰かが相手しなければならない。その隙に完全に自由な一人が生まれる。

ひりつくような状況で、いたずらに感情だけがそれぞれの中で昂ぶっていく。
コップいっぱいに水を注いでいくよう緊張感。火蓋が切られるギリギリまで一滴、また一滴……。
そして―――!


「お取り込み中申し訳ないのだが……君たち、泥のスーツをまとった奇妙な男を知らないか?」


辺りを漂っていた霧が散っていく。
戦いに水を差すようにひとつの影が姿を現すと、冷め切った調子で三人そう尋ねる。
見た目はただのサラリーマン以外の何でもない。きちっとしたスーツ、曲がっていないネクタイ、ピカピカに磨かれた革靴。

だがその奇妙な質問が何よりも知らしめていた。
この極限状況で、この殺気立った異様な空間で。こうまでも冷静に問を述べることができる。
カーズもDIOも理解し、承太郎は101%の確信をした。

この男もまた異形……・。絶対に始末すべき相手であると……。
63代理:2013/09/23(月) 20:45:43.05 ID:/hJiPncF
639 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:19:49 ID:tFZwjNi.

 ◇ ◇ ◇


たっぷり一分は待っても返事がないことを確かめ、吉良吉影は残念そうに首を振った。

「どうやら誰も心当たりがないようだな。すまない、邪魔をした」
「待ちな、吉良吉影」

唐突に名前を呼ばれ、立ち去りかけた男は振り返った。
彼の名前を読んだ男は視線を上げることなく、斜めに構えたままだ。
吉良はその生意気な横顔に生理的嫌悪感を抱きながらも、丁寧な物腰を崩さない。

「ええと、すまない。仕事柄人と沢山合うので名前を忘れてしまったようだ。どちら様で?」

問いかけられた承太郎は長いこと無言のままだった。
ロウソクの先から雫が垂れさがるほどの沈黙の後、承太郎はポケットから右手を出すとカーズを指差しこう言った。

「カーズ、柱の男と呼ばれる一族の中で天才と言われた男。
 太陽を克服したいという目的の元、石仮面を開発。さらなる進化を遂げるべくエイジャの赤石を求めた。
 1941年イタリアで目覚めたのち赤石を求めヨーロッパを放浪。のちにジョセフ・ジョースターの手によって始末される」

カーズの驚いたよう表情を無視し、承太郎は続いてDIO指し示す。

「DIO、本名ディオ・ブランドー。
 1860年代に生まれジョースター一族を乗っ取るべく、石仮面をかぶり吸血鬼となる。
 ジョナサン・ジョースターの手によって一度は殺されたと思われたが、100年の時を経て再び野望を達成すべく蘇る。
 1987年、エジプトにて空条承太郎の手によって殺される」

DIOはカーズとは対照的に驚きを一切示すことなく、承太郎の言葉を鼻で笑って見せた。
だがその目は怒りに染まっている。承太郎を睨み殺さんとばかりにその視線は赤く、燃え滾っている。
承太郎はそれを無視して吉良を指差す。あらかじめセリフ考えていたごとく、スラスラと言葉が飛び出てきた。

「吉良吉影、1966年生まれ。
 18歳のとき初めて殺人を犯す。それを皮切りに手の綺麗な女性をターゲットとした殺人を繰り返す。
 最終的には48人もの女性を殺害、二次被害を考えれば殺害数はそれ以上と推測できる。
 1999年、M県S市杜王町の郊外で自動車事故に遭い死亡する」

言葉はなかったが空気が揺らぐような感覚が辺りを走った。
いきなり死を宣言される戸惑い、自分の領域に勝手に土足で踏み上がられた気味の悪さ。
しかし稀代の極悪集である三人はそれ以上に怒りを感じた。屈辱を味わった。

時代のズレについては理解している。なるほど、自分はそうやって死ぬの『かもしれない』。
だがそれがどうしたというのだッ! それは『貴様』の世界でおきた出来事に過ぎないッ!
自らの終りの決めるのは自分自身の行いだ。自分自身の信念だ。
この私が! そうも無様な終わりを迎えるだと? 野望を叶えることなく、惨めに地に伏すことになるだと……?
64創る名無しに見る名無し:2013/09/23(月) 20:51:02.80 ID:c3XbrIdF
支援
65創る名無しに見る名無し:2013/09/23(月) 21:08:36.87 ID:XhM9zZS9
支援ッ! せずにはいられないッ!
66創る名無しに見る名無し:2013/09/23(月) 21:09:34.69 ID:Fke/8C2N
67創る名無しに見る名無し:2013/09/23(月) 21:36:39.67 ID:pU6ScIew
68創る名無しに見る名無し:2013/09/23(月) 22:48:01.97 ID:3zzfhvpV
支援
69代理:2013/09/23(月) 22:59:37.69 ID:/hJiPncF
640 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:20:27 ID:tFZwjNi.
吉良の登場で冷え切った空間が急速に熱せられていく。
爆発直前のエンジン中のように、三人の怒りがあたりの空気を変えていく。

承太郎とて同じことだった。彼は怒っている。どうしよもなく、こらえる必要もなく怒っている。
ここにいる三人は間違いなく性根の腐りきった「悪」だ。
川尻しのぶの放った言葉が上滑りしそうなほどの悪。彼らを悼む家族などいない。彼らが突然良心に目覚めることもない。
殺し合いに巻き込まれたから仕方なく殺すのでない。
彼らは殺し合いが起きなかったとしても、自ら殺しあいを仕掛けるような人種なのだから!


怒りに震える三人を眺めると、承太郎はポケットからタバコを取り出し一服する。
全員から立ち上る殺気をそよ風のように受け止めながら独りごちる。

「三人同時は『少しだけ』骨が折れそうだな……やれやれだぜ」

余裕の笑みを崩すことなく、しかし内心は怒り狂いながらDIOはザ・ワールドを傍らに呼び出す。
もはや遊びはおしまいだ。死よりも残酷な結末を……ここに描いてみせるッ!

「どんな未来に生きていようとも……どんな過去を辿っていこうとも……! 『世界』を支配するのはこのDIOだッ!」

吉良吉影は己の半生を思い返す。
どんな困難であろうと切り抜けてきた。どんなピンチもチャンスへと変え、この生活を守ってきた。
譲りはしない……! びくびく怯えながら過ごす日は『今日』だけだ。
私は帰るんだ。元の世界に帰って、必ずあの平穏な日々を……!

「私の正体を知られてしまった以上、誰であろうと生かしてはおけない。全員まとめて……始末させてもらおうか」

パキパキ……と音を立てながら体が修復をはじめる。しかし木っ端微塵に砕かれたプライドまでは決して治すことはできない。
突き出た刃物越しにカーズは三人の顔を眺めた。
どいつもこいつもアホヅラを下げてやがる。このカーズの足元にも及ばぬ程の、原始人どもが……ッ!

「簡単には殺しはしないぞ、人間。このカーズを踏みにじったその行い……泣き喚き、許しを乞うほどの後悔を与えてやるッ!」


そこは既にただの洞窟ではなくなっていた。
四人の超人たちによる生き残りデスマッチ。時間無制限。ギブアップなしの一本勝負。
先の戦いの余波で、天井からゆっくりと小石が落ちてくる。そしてそれが地面に落ちたその瞬間!


―――四人の戦いが始まった。
70代理:2013/09/23(月) 23:00:08.29 ID:/hJiPncF
641 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:21:20 ID:tFZwjNi.

 ◇ ◇ ◇



一番に動いたのはDIOだった。
承太郎目指し、真っすぐに向かっていく。が、左方向から迫る影を察知し、急停止。
スタンドを構え直したと同時に、上から振り下ろされた刃から身をかわす。

カーズの動きは早い。DIOが足を止めた一瞬の隙に二手、三手と攻撃を畳み掛けてくる。
小刻みに距離を取りながらDIOは考える。カーズは接近戦を仕掛けようとしている。スタンドを持たず、飛び道具もないようだ。
ならば距離を取るのが定石。スタンドがある分、距離を広げれば有利になる。

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ! ……なに?!」
「無駄、と言ったか……? 『無駄』と言ったのかァ、DIOォォ〜〜?」

が、しかしDIOは見誤っていた。相手を大きく吹き飛ばそうと放ったカウンター。
巨大なゴムをたたいているような違和感のなさ。見れば叩き込んだ拳にべったりと蠢く肉片が付着していた。
強力な酸を浴びせ掛けられたような熱さを感じ、DIOは歯を食いしばる。
嘲るカーズの追撃を間一髪でさけ、足元に転がっていた岩を放り投げ牽制する。
ようやく距離をとった頃には指先の皮膚は全て喰らい尽されたあとだった。

余裕の表情を見せるカーズ。強敵の出現に表情を険しくするDIO。

「フン、たかが吸血鬼がこのカーズに楯突こうとはなァ……。やめるなら今のうちだぞ、吸血鬼よ」
「柱の男だがなんだか知らんが……頂点に経つのはこのDIOだ。その言葉、そっくり返してやるぞ、カーズ!」



「…………」
「タバコ、やめてくれないか。そもそも吸うのであれば周りの人に一声かけるのが常識だろう」

人有らざる者たちの戦いの脇で、人同士の戦いも始まろうとしていた。
カーズとDIOの戦いを眺めていた承太郎は吉良の言葉に振り向く。
気だるげにこちらを眺める吉良の姿を確認すると、承太郎は黙って二本目のタバコに火を付けた。

吉良はイラついたような表情を浮かべたが、諦めたのか言葉を繰り返すようなことはしなかった。
代わりにキラー・クイーンを傍らに呼び出し、戦いの構えを取る。
ポケットに隠し持っていた小石を爆弾に変えようと手を伸ばす……―――。

「―――!」
「スター・プラチナ」

その一瞬の隙を付き、承太郎が仕掛けた。
時をゼロコンマ止め、一気に吉良の懐に潜り込む。吉良は突然の接近に慌てて後退するが、二人の距離は3メートルもない。
吉良は一瞬ためらい、距離をとることを諦めた。
キラー・クイーンは接近戦を得意としているわけではない。爆発の能力をフルに発揮できない分、戦いにくさは否めない。

「しばッ」
「オラァ!」
71代理:2013/09/23(月) 23:00:55.62 ID:/hJiPncF
642 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:21:50 ID:tFZwjNi.

連戦と負傷で満足には動けないといえど、それでもやはりスター・プラチナが上をいっている。
キラー・クイーンが振り下ろした手刀を拳で跳ね除ける。続けて放った連撃に、キラー・クイーンは対処しきれない。
二発、三発が入り、キラー・クイーンの体が衝撃に揺れる。吉良の口から苦しげな呻きが漏れた。承太郎は手を緩めない。

だが、キラー・クイーンは吹き飛ばされた衝撃を利用して、逆に後ろに飛び跳ねた。
さらに追ってくるスター・プラチナに対し、無造作に小石を投げつけていく。
どれが爆弾化されたかわからない承太郎は闇雲に突っ込むわけにも行かず、スタンドを止める。

急停止、急後退。承太郎は追撃を取りやめ、カウンターを恐れた。
接近戦ではかなわないと悟っていた吉良は、下がった承太郎に対しむやみに仕掛けない。
そのまま距離をとり続け、爆弾が届く距離で止まった。

再び両者の距離は広まり、承太郎と吉良の間には二十メートル強の間合いが生まれる。
勝負はこの間合いにかかっている。この間合いをいかに保つか。この間合いをいかに詰めるか。

吉良は口元からたれた血をハンカチで拭う。
ポケット内で染みがうつることのないよう、折り目を逆にしてしまいなおす。
一つ一つの動作は冷静だったが、その表情は屈辱に燃えていた。苦々しげにつぶやく。

「なるほど、全てお見通しというわけか……! 私の正体のみならず、キラー・クイーンの能力までもお前は知っていると!」
「どうした、俺を吹き飛ばすんじゃなかったのか……? そんなに離れてちゃ、爆弾どころか煙すら届かないぜ」



「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」
「KUWAAAAAAAAAAAA――――ッ!」

両者の戦いは熾烈を極めていた。互いに吸血鬼、柱の男の再生能力頼みの荒っぽい真っ向勝負。

DIOはカーズの『憎き肉片』に対処するため、ザ・ワールドに二本の斧を持たせていた。
自身もいやいやではあるが拳銃を手にする。直接手を触れずに、確実に息を止めるため。
カーズは既に纏っていたコートを脱ぎ捨て、帽子も放り捨てていた。
肉体を120%フルに活動させ、己の体でDIOを殺す。体面などを気にしている暇もなかった。

まるでおもちゃを扱うように、ザ・ワールドが斧を振り回す。カーズの刃をはじき飛ばし、首もとめがけ豪快に振り下ろす。
カーズは時に迎え撃ち、時に関節を捻じ曲げ、スタンドの攻撃をいなしていく。同時にDIOへの対処も怠っていない。
DIOも最初の数発でただいたずらに弾丸を打ち込むだけでは無駄と悟り、今では首輪のみを狙った射撃を心がけている。
もちろん隙あらば自身もザ・ワールドに混じり、カーズの体に攻撃を叩き込んでいる。

血が天井までとび赤いシミを作り出す。細かくちぎれた肉片が壁一面にべたりと張り付いていく。
そしてしばらくすると……パキパキパキ、と背筋が凍るような音が洞窟に響いた。
カーズの傷が癒えていく。DIOから流れ出ていた血が止まり、傷口がふさがっていく。

まさに化物どうしの戦いだった。凄まじい轟音を立てながら二人は洞窟内をめちゃくちゃに飛び回り、互いの刃を真っ赤に染めていた。
72代理:2013/09/23(月) 23:01:45.66 ID:/hJiPncF
643 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:22:18 ID:tFZwjNi.

「『シアー・ハート・アタック』!」
「スター・プラチナ!」

一方人間たちの戦いに動きは少なかった。すり足で間合いを詰める。牽制を細かくいれつつ、後退する。
飛び交う爆弾、立ち込める砂埃で視界は悪い。どちらも強力なスタンドを持ってるが故に不用意に攻撃を仕掛けるわけには行かない。
人間同士だからこその堅実で、しかし息詰まるような戦いは、吉良の仕掛けで崩れた。

左腕から飛び出た不気味なスタンド。
それを見ると承太郎は即座に詰めていた間合いを放棄し、後ろ後ろへ下がっていく。
シアー・ハート・アタックの後を追うようなかたちで吉良も走る。
二つのスタンドによる波状攻撃。ここで一気に仕留める……!

承太郎はさらに後退する。時折、姿が消えたようなあの不思議な能力を発動しながら、彼は逃げていく。
ついには四人が顔を見合わせた天井の高い洞窟を離れ、狭く暗い横穴に消えていく。
吉良にとっては好都合だった。承太郎の攻撃方向を前方のみに限定できる。
間合いを見誤らなければ今までよりもう一歩踏み込んで攻撃できるだろう。

『コッチヲミロォォォォオ――――ッ!』

シアー・ハート・アタックがついに承太郎に追いつく。合わせて吉良も足をはやめる。
たとえスタンド能力を使ってシアー・ハート・アタックをかわしたとしても、必ず隙は生まれる。
承太郎のスタンド能力は連発が効かない。ならばそこをキラー・クイーンで仕留める!
狭い横道に逃げ場所はなかった。承太郎は息を切らせながら後退する。
もう少し……、もう少しでシアー・ハート・アタックが追いつく……!

「今だ、殺れ! 『シアー・ハート・アタック』!」

爆発とともに舞い上がった煙を見て、『殺った!』と吉良は思った。逃げ場などはなく決定的だと彼には思えた。
しかし次の瞬間、吉良はものすごい衝撃を喰らい、ロケットのように吹き飛んだ。
今走ってきたばかりの洞窟を逆戻りし、地面を何度も跳ねながらようやく止まる。
同時に凄まじい痛みが全身を貫いた。腹部、左腕、左手、背中、後頭部……。
フライパンで思い切り殴られたかのような痛みに、情けないうめき声が漏れた。

爆破の余波で舞い上がった煙に紛れ横道から一つの影が浮かび上がる。
のたうつ吉良の視界に移ったのは、殺ったと確信したはずの男の姿だった。
承太郎の左半身はシアー・ハート・アタックの爆破でズタズタに引き裂かれている。
だが、足も腕も、頭も無事だ。ピンピンしている。
それどころかさらに怒りを滾らせ、吉良を始末しようと迫ってくる……!

両者のダメージで言えば承太郎のほうがひどい。吉良は軽傷、承太郎は重症だ。
だがスタンドは精神力だ。心と心のぶつかり合いだ。その点で、吉良にもう勝ち目はもうなかった。
彼の心は完全に折れていた。自分の能力を完全に把握し、秘密を知っている男に吉良は不気味さと恐怖を覚えていた。
戦いは一転、弱腰の吉良を承太郎が追い詰めていく形になる。
吉良はもう攻めていかない。彼の頭にあるのはいかにこの場を切り抜けるかだけだ。
73代理:2013/09/23(月) 23:02:32.99 ID:/hJiPncF
644 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:22:54 ID:tFZwjNi.

四人は戦った。時折相手を入れ替えて、一瞬のつばぜり合いをし、また戦う。
死力を尽くし、自らを鼓舞しながら戦い続ける。
終りの見えない、嫌な戦いだった。もしも誰かひとりでも倒れれば、四人のバランスは大きく傾き、戦いは終局に向かっていっただろう。

だが終わりは唐突にやってきた。誰ひとり倒れることなく、突然に。そして、唐突に。



「捉えたぞ、カーズ! 『ザ・ワールド』! 時よ、止まれッ!」

幾度の交戦を経て、DIOはフルパワーで時を止め、勝負を仕掛けた。
停止時間五秒をすべて攻撃に回しカタを付ける。
今までほんの一瞬時を止めてもフルパワーで時を止めるようなことはしなかった。
それはDIOならば承太郎の存在が、承太郎にとってDIOの存在が。
互いに時を止め終えた瞬間に時を止め返されたら大きな隙ができるとわかっていたからだ。

しかし長く待ちわびた状況がついに訪れた。
DIOとカーズ、承太郎と吉良。二組は洞窟内の端と端に分かれ、その間は優に三十メートルは離れているだろう。
たとえ時が動き出した瞬間に承太郎が時を止めても距離が大きく離れた今、十分に対処できる範囲内だ。
DIOは時を止めた瞬間、一瞬だけ承太郎の姿を確認する。いける……、今ならば間に合わない!


五秒前 ――― 戦いの余波で崩れ落ちてきた岩石をさけ、カーズのもとへ向かうDIO。
四秒前 ――― 十分間に合う。カーズまでの距離、残り十メートル。
三秒前 ――― DIOの顔に邪悪な笑みが広がった。哀れなり、カーズ……! こいつは自分が死んだことも知覚できない!
二秒前 ――― ザ・ワールドが構えた斧を振り上げる。死刑囚の首筋に叩き込むように斧が迫る!


「な、何ィィィ―――?!」

しかし直前でDIOは二つの違和感に気がついた。馬鹿な、とそう叫びたくなった。
まだまだ時間停止の世界は続くはずだった。途中で途切れたならば自身の消耗が激しかったからと納得も行きよう。
DIOにとって予想外だったのは自身も動けなくなっていたからだ。
斧が振り下ろされたその瞬間に、凍りついたようにすべてが止まったのだ!

「俺が時を止めた。カーズを始末したいのは俺とて一緒だが、お前を好きにはしておけないんでな……」
「承太郎、貴様ァ!」

そして二つ目の予想外は承太郎の行動であった。
大きく離れた位置から彼がしたことは間合いを詰めるでもなく、拳銃をぶっぱなすでもなく……。
なんと承太郎は『放り投げた』のだッ!
今しがたまで相手をしていた吉良のスタンド、『シアー・ハート・アタック』を掴むとDIOの目前めがけ放り投げたッ!
狙いすましたように斧の切っ先で停止した自動爆弾。
たとえDIOが振り下ろすのを止めたとしても、熱源に反応したスタンドは爆発するだろう。


―――そして時は動き出す
74代理:2013/09/23(月) 23:03:08.58 ID:/hJiPncF
645 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:23:19 ID:tFZwjNi.



そして……直後、凄まじい音と光を発しながらシアー・ハート・アタックが爆発した。
その衝撃は凄まじく、近くにいたカーズとDIOは爆風に吹き飛ばされる。
遠く離れた位置にいた承太郎と吉良も、巻き上げられた砂埃に視界を奪われた。
轟音がとどろきあたりは一面何も見えなくなる。爆破音はいつまでもこだまするかのように、洞窟中を揺らしていた。

いや、違う……! 本当に洞窟が揺れているのだ!
ミシリ、ピシリ……と音を立てて洞窟全体が揺れ始める!
四人の戦いの余波で崩れかけていた洞窟が限界を迎え、今の一撃で完全に崩壊しようとしていた!

すさまじい音を立てて天井が崩れはじめた。次から次へと巨大な岩が、雨あられと降り注ぐ。
戦いを続けることは不可能だった。承太郎はそれでも逃がすものかと、懸命に三人の姿を追ったが後の祭りだった。
影がひとつ、ふたつと横穴に消えていく。承太郎が落ちてくる岩を壊し、かわし進むスピードより、三人の逃げ足の方が上だった。

そして四人の戦いは終わった。
あとに残されたのは手持ち無沙汰の怒りをぶら下げた承太郎と、天井まで積み上がった行き止まりの洞窟のみ……。
誰も死なず、誰も殺さず。痛み分けの、後味の悪い戦いだった。
75代理:2013/09/23(月) 23:41:57.50 ID:/hJiPncF
646 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:23:49 ID:tFZwjNi.

 ◇ ◇ ◇



ずるずる…………ずるずる…………―――

洞窟の壁にもたれかかるように進む影がひとつ。体を引きずる音に紛れ聞こえるのは荒い呼吸音、ぴちゃんと液体が滴り落ちる音。
何も知らない人が彼を見たらぎょっとするに違いない。
吉良吉影は満身創痍で息絶え絶え、動いているのが不思議なほどにボロボロの姿をしていた。

何より目に付くのが血だらけの左腕。
手の甲は蜘蛛の巣のように裂傷が走り、上腕部は出血箇所がわからなくなるほどに真っ赤に染められている。
自慢のスーツも台無しだ。泥まみれ、血まみれ、埃まるけ……。時間をかけてセットした髪も、今はだらしなく垂れ下がっている。
ずりずり、と弱々しく進む。目に力はなく、もはや自分の容姿を気にかける余裕すらない。

「この吉良吉影が、なぜこんな目に…………どうして……」

闘争を嫌っていても劣っていると思ったことは一度もなかった。自分の能力をフルに発揮すればいつだって勝利できると、そう思っていた。
だが……見よ、この有様を! どうだ、この現実は!
惨めだった。情けなかった。誰ひとりとして敵う相手などいなかった。
黄金の吸血鬼、刃物を操る超人、最強のスタンド使い……どいつもこいつもこの吉良吉影よりも巨大な力を持っていた。

「くっ……なんでこんなことに……」

ぽたり、ぽたり……。
腕からの出血が止まらない。止血のため乱暴にまいたネクタイは既にたっぷりと血を吸って重くなっている。
滴る血に紛れて、頬を伝う涙が音を立てて落ちた。今、吉良は初めての敗北に打ちひしがれている。
何事も切り抜けられると思っていた。幸運は常に自分に味方してくれると、そう根拠もなく信じていた。

だが違ったのだ……! ここではそんな盲信は通用しない!
植物のような平穏な生活を送っていた彼にとって、まさにここは真逆の世界。
奪い合い! 殺し合い! 吉良は悟った。この期に及んでようやく、自分がどんな状況にいるのかが理解できたのだ……!

「私は、死なないぞ……ッ! 死んでたまるものかッ! 必ずあの平穏な生活を取り戻して……ッ!」

だがそう理解していても、吉良はどこか無用心だった。
怪我を負っているとはいえ、初めて敗北を知ったといえ、だれかの接近に気づかないほどに今の彼には余裕がなかった。
ころころと音を立て、小石が転がってくる。視線を上げ、すぐ目の前までに人影が迫っていることにようやく気がつく。

「空条……さん、じゃないですよね」

噛み殺したような声と共に懐中電灯が吉良の顔を照らす。顔を上げた吉良の視界に映ったのは川尻しのぶの姿だった…………。
76代理:2013/09/23(月) 23:42:28.24 ID:/hJiPncF
647 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:24:29 ID:tFZwjNi.

 ◇ ◇ ◇



「…………」

目の前高く埋まった石を見て、承太郎は元来た道を引き返す。もうかれこれ地下道を歩いて十数分はたっている。
承太郎が思った以上に先の戦いの影響は大きかったようだ。行く先行く先で天井が崩れ、元来た道も引き返せなくなっていた。
頼りになるのはコンパス一つのみ。地下地図はしのぶに渡してしまったため、方角のみを頼りに地上に向かうしかない。

走るほど焦ってはいないが、のんびり歩いているほどのんきでもない。
早歩きで分かれ道に向かい、左へ曲がる。ずんずんと道を進み、僅かな物音も聞き逃さないと耳を澄ませる。

まだ体の中で熱は残っていた。それは、確固たる怒り。
カーズ……、DIO……、そして吉良吉影……。
いずれも裁くべき邪悪だ。容赦なく拳を振り上げれる存在だ。改めて問いかける必要もない、完璧な悪。

承太郎はどこかで彼らを求めていた。
徐倫を失った悲しみを思う存分ぶつけられる相手を。自分の不甲斐なさを怒りに変え、躊躇なくぶつけられる悪を。
歩けば歩くほどに、少しずつその事実が承太郎を蝕んでいく。
娘の死にやけっぱちになっている自分。罪滅ぼしのために無謀な何かをしてみたいと思ってる自分。

わかっている……、わかっているとも……ッ!


『徐倫は……そんなことを望んではいやしないッ!』
『わたしは、ひどい母親でした』


頭の中でナルシソ・アナスイの言葉がガンガンと鳴り響いた。川尻しのぶの戒めるような視線が承太郎の体を貫いた。

そうだ、承太郎だってわかっている。とっくに知っていたんだ、こんなことをしてどうなるかなんて。
でも、それでもどうしようもないほどに、承太郎は自分が許せないのだ。
何か目的をもたなければ体がバラバラになって二度と立ち上がれないように思えるのだ。
その場に崩れ落ちて、ズブズブと地面に溶けさってしまいたい気持ちになってしまうのだ。

誰かを断罪せずにはいられない……そして、誰よりも罪を贖うべきなのは…………罪を償うべきなのは…………。
77代理:2013/09/24(火) 00:40:58.01 ID:YH970lDh
648 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:24:59 ID:tFZwjNi.



―――娘をこんなことに巻き込んだ、俺自身だ


はたり、と承太郎の足が止まる。どうやら考え事に集中しすぎていたようだ。
気づいた頃には、迫り来る足音がもうそこまでやってきていた。
誰かがそこにいる……。スター・プラチナを呼び出し、戦いの構えを取る。
今は考えている場合ではない。今やるべきことは、とにかく空条邸まで戻り、川尻しのぶと合流すること。

「……川尻さん?」

ぴたりと相手が止まった気配がする。川尻しのぶでは、ない。
痛む左腕をそっと抱きながら、承太郎は一歩、二歩と足をすすめる。
スター・プラチナの驚異的視力をもってしても、この暗闇では相手が誰なのかわからなかった。

しのぶでないしても無害な存在なら一応保護しなくてはならない。
この殺し合いに反している正義のものなら、もしかしたら協力できるかもしれない。
そうでない奴らであるならば…………容赦はしない。たとえ手負いであろうと全力を尽くして……ぶっ潰す。
承太郎の目が妖しく光る。無言のまま、さらに近づいていく。相手が動く気配はしない。さらに一歩……さらに一歩。
そうして懐中電灯が届くであろう距離まで近づいて……


「そこにいるのは誰だ……答えな」


―――相手の顔を照らすように光を掲げ、次の瞬間、承太郎の息が止まった。


手から滑り落ちた懐中電灯が地面で跳ね上がり、何もない空間を照らす。
ジジジ、ジジジと熱線がこげるような音が聞こえ、当たり所が悪かったのか、懐中電灯が消える。
暗闇に包まれる洞窟の中、見えるのはぼんやりと浮かんだお互いの影だった。

視界が遮られ、不自然にお互いの呼吸だけが鼓膜を揺らす。
ドクンドクンと異常な速さで心臓が早鐘を打った。
尋常でないスピードで、体の隅々めがけ血流が回っているのが承太郎にはわかった。

懐中電灯を取り上げようとする手は震えていた。
承太郎は懐中電灯が壊れてないことを確かめるともう一度目の前の影に光を向ける。


―――……徐倫


そこにいたのは空条徐倫だった。
青ざめた顔、震える両の肩、ほどけた髪の毛。自分に似た目の色をもった……まぎれもない空条徐倫が自分を見つめていた。


承太郎の中で時が止まる。何も考えられない。目の前の光景が信じられない。


チクタクチクタク……デイパックの中で動き続ける時計の音があたりに響いた。
どちらも動かなかった。誰も動けなかった。
二人はバカみたいな格好のまま、それでも互の姿を目に焼き付けるようにいつまでも見つめ合っていた……。
78代理:2013/09/24(火) 00:41:28.63 ID:YH970lDh
649 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:25:23 ID:tFZwjNi.

 ◇ ◇ ◇



―――空条徐倫は死んでいる。それは紛れもない事実だ。だとしたら考えられるのは……スタンド能力、か。


マッシモ・ヴォルペは冷静にそう結論づける。
放送で読み上げられたならそれは動かしようもない、確固たる事実のはずだ。
ならば承太郎がどれだけ望もうと、どれだけ願おうと、今彼が目にしている少女は少なくとも彼が望む『空条徐倫』ではない。
もちろん承太郎とてそんなことは分かっているはずだろう。だからこそ、ヴォルペは次の反応を息を潜めて待った。

ヴォルペはずっと見ていたのだ。
DIOに連れられてこの地下に入り、DIOが承太郎と戦うところを見ていた。鬼気迫る表情で怒りの拳を振るう承太郎を見た。
戦いが終わり、腕をかばいながら歩く承太郎を追った。瓦礫で先がふさがっていても、冷静に対処するその姿も見てきた。

―――だが……この状況でどうする……? お前は今何を考えている、空条承太郎……?

ヴォルペは気づいていなかった。目の前の現象に『夢中』になるあまり自分自身の大きすぎる変化に、彼はまだ気づいていなかった。
ヴォルペは自分に感情なんてないと思っていた。感情がないならば執着もない。感情がなければ冷静さを失うこともない。
だが今や彼は承太郎の一挙一動に『夢中』であった。
彼の苦痛に歪む表情が、怒りに染まった瞳が、血だらけになった両の拳が……その全てから目が離せなくなっていた。

ヴォルペは開花しつつある……。
その魂の奥底に撒かれた邪悪の花は、DIOの手に掛かり、承太郎という餌を喰らい、今おおきく花開かんとしている。

ヴォルペの右肩に乗った『マニック・デプレッション』が怪しげな笑い声を漏らした。
誰に聞かれるでもないその邪悪な声はヴォルペ自身をも通り抜け、洞窟の暗闇の中、木霊し続けていく……。

ヴォルペは学んでいる。憎しみという感情を。嫉妬という感情を。
そして……誰かを『壊してみたい』という邪悪な想いを……。
79代理:2013/09/24(火) 00:42:13.30 ID:YH970lDh
650 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:26:06 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇


愚痴の一つも言いたくなるもんだ、とホル・ホースは小さな声で毒づいた。
だらだらと冷汗が流れ、シャツをぐっしょりと濡らしていく。さっきシャワーを浴びたばかりだというのにこのざまだ。
慎重に、相手に悟られることのないよう、ホル・ホースはもう一度身を乗り出す。
はるか遠く、視線の先にいたのは学生風の東洋人と……あの『ヴァニラ・アイス』だった。

(どうしてこんなんになっちまったんだよ、まったくよォ……)

徐倫を追って教会を飛び出したものの、既に彼女の姿は見えず手当たり次第あたりを駆け回った。
どこをどう探しても見つからず、諦めようかと思っていた頃に人影を見つけた。
しめた! と思ったものの見つけたのは最悪も最悪、『あの』ヴァニラ・アイスだ。
能面のように固い横顔を見つめながら、ホル・ホースは震え上がる。

(DIOに首ったけのあのヴァニラ・アイスのことだ……見つかったらただじゃすまないに決まってる!
 そのうも、お供もついてるってもんだ。一対一ならまだしも二対一じゃ多勢に無勢だぜ……。
 ああ、クソ……徐倫のやろう、見つけたらただじゃおかないぜ……あんちくしょう〜〜〜!)

物音を立てないよう、もう一度木の陰に隠れなおす。
このままやり過ごすべきか。そもそもやり過ごせるのだろうか。
仕掛けるとしたらもう少し引きつけてか? いやいや、これ以上近づかれたらまずい。この距離なら『エンペラー』でやつのどたまを……
だが待て、逆方向から弾丸をぶち込めばそっちに向かってくれるのでは? 無理に戦う必要なんてない。
ここをやりすごせれば俺としては……―――

しかし、ホル・ホースの思考は突然そこで破られた。

ウニョン、と嫌な感触を足元に感じる。生暖かい息遣いと対照的に湿った手触り。
見下ろしてみれば泥のスーツをまとった男がホル・ホースの足首を掴んでいた。
二人の視線がぶつかりあう。突然のことに、ホル・ホースの思考が止まる。
泥の男としても掴んだものがホル・ホースであったことが予想外だったのか、固まっている。
二人とも動くに動けない、奇妙な沈黙が漂う。
そして―――

「うぉおおおおおおおおおお―――ッ!?」

立て続けに銃声が三発、叫び声が二つ。それを聞いた遥か遠くの二つの影が止まる。
ヴァニラ・アイスは立ち止まると形兆に合図を送った。バッド・カンパニーが一斉に動き出す。
ホル・ホースの不幸はまだまだ続きそうだった。
80代理:2013/09/24(火) 00:42:43.81 ID:YH970lDh
651 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:26:37 ID:tFZwjNi.

 ◇ ◇ ◇



 ぱちぱちぱちぱち……―――(拍手の音)



 ◇ ◇ ◇
81代理:2013/09/24(火) 00:43:23.26 ID:YH970lDh
652 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:27:04 ID:tFZwjNi.




 ぱちぱちぱちぱち……―――乾いた拍手の音が洞窟内に反響する。

「ご苦労、戻ってこい、『オール・アロング・ウォッチタワー』」

働き蜂が巣に戻ってくるように、どこからともなく一枚、また一枚とトランプのカードたちが姿を現す。
小言や愚痴を吐きながら、ムーロロの持つ帽子の中へと飛び込んでいくスタンドたち。
はるか遠くまで飛ばしていたカードもあって、完全撤退には時間がかかった。
ハートのクイーン、クローバの8、ダイヤの10……そうして、よろよろと最後の三枚が帽子の中に入っていった。
それでもムーロロは微動打にせず数十秒待った。が、それきり帰ってくるカードはいなかった。
ムーロロは眉をひそめる。足りない。スペードのキングがまだ帰ってきていない。

「ひょっとして君が探しているのは……コレのことかな?」

即座に振り返る。と、同時にものすごい速さで一枚のトランプカードがムーロロの足元に突き刺さった。
地面に突き刺さったまま、スペードのキングが弱々しく呻く。
ムーロロはちらりとそれを眺めると、目の前に立つ男に向き直った。

DIO。本名はディオ・ブランドー。
ジョナサン・ジョースター、空条承太郎を尾行させていてた時に仕入れた情報を思い出す。
相手に悟られない程度に舌打ちをした。考えうる中で最悪最強のやつと、よりにもよってこのタイミングで会ってしまうとは……。

ムーロロは後ずさりたくなる衝動をこらえて目の前の敵をじっくりと眺めた。
王者の風格、強者としての自信……なるほど、凄まじいわけだ。先の激戦を思わせるものは何もない。
疲弊をものともせず、堂々とした態度に気負いそうになる。だが、ムーロロは呼吸を繰り返すと冷静に頭を働かせ始めた。

決して敵わない相手ではない。
ムーロロが事前に調べ上げた情報と、この『オール・アロング・ウォッチタワー』があれば勝てる。
そう、ムーロロは確信した。そして、確信した同時に奇妙な虚しさがどこかから湧き上がってきたのを感じた。

「血肉湧き踊る戦いだったろう……楽しんでもらえたかな、『カンノーロ・ムーロロ』君?」
「…………!」
「おいおい、そんな驚くなよ……そんな難しいことじゃあない。ヴォルぺを知っているだろう?
 彼が教えてくれたんだ。当然君も知っているはずだ。
 なんせ私たちを、この六時間、それ以前から監視していたんだからなァ」

手負いだというのにDIOはそんなことを気にかけず、無用心にムーロロに近づいてくる。
ムーロロは背中に手を回し、集めたばかりのスタンドたちをふるい落とした。同時にポケットに『亀』がいることを確認する。
DIOは気がついているのだろうか。それともあえてムーロロの好きなようにやらせているのだろうか。
だとしたら舐められたものだ。もっと俺のことを見下すがいいさ、と内心で毒づく。
DIOが油断すれば油断するほど勝機は増える。生き残る確率は高まっていく。

「彼が君のことを教えてくれたよ。君自身のこと、君のスタンド能力について……。
 ありとあらゆる知っている限りのことを洗いざらいね」
82代理:2013/09/24(火) 00:43:57.87 ID:YH970lDh
653 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:27:30 ID:tFZwjNi.

二人の距離が縮まっていく。闇に紛れて何枚かのスタンドたちがDIOの背後に回る。
それ以外はムーロロの足元で待機。急襲時に壁になり、迎撃にも備えさせる。勝負は一瞬だ。
DIOが『時を止める』にはどうしたって一呼吸が必要なのだ。戦いの中でその「くせ」は見抜いている。
その瞬間にムーロロは自らを囮にし隙を生み出す。そして……喉元をかっきり、腕を切断し、バラバラに引き裂いてやるッ!


「どうだい、カンノーロ・ムーロロ……ひとつ、提案なんだが……」


もう少し……もう少し……―――今!

DIOが間合いに踏み込んだ完璧のタイミングで、四方八方から51枚のスタンドカードが襲いかかった。
ザ・ワールドの精密性とスピードをもってしてもすべてをはじき飛ばすことはできない。
DIOはあまりにたやすくムーロロの間合いに踏み込みすぎた。ムーロロはやった、と思った。
拍子抜けるほど簡単だ、とムーロロはその瞬間に違和感を覚えた。
達成感と同時にどこか虚しさすら覚えるほどだった。またこうやって俺は殺しを重ねるのかとがっかりしたほどだった。


だが……―――


「私と友達になってみないかい……?」


ムーロロが予想した以上に、DIOの時を止める能力は優れていた。
もう一秒、早ければ殺ったとは言わずとも両腕を吹き飛ばすぐらいは出来たかもしれない。
気がつけばトランプたちに埋もれるはずだったDIOの姿は掻き消え、ムーロロの目の前にその姿はあった。
ほんの一メートルもない距離に、その黄金の姿を見せつけるように彼は立っていた。その顔に満面の笑みを貼り付けて。

DIOは焦るふうでもなく、なんでもない感じでムーロロの肩に手を置く。
お気に入りの甥っ子をながめるように少しだけ目線を下げるとまっすぐムーロロと目線を合わせる。
いつのまにかのびた腕はがっちりと両肩をつかみ、例え殺されようと離さないにと言わんばかりの意志の強さが腕から伝わってきた。

ムーロロはDIOを見る。DIOはムーロロを見た。
考えてみれば二人共、直接こうやって互の姿を見ることは初めてのことだった。
真紅で縦長の切れ目はまるでオパールのように美しい。
瞳に反射した自分の顔が写り、ムーロロは『無様に狼狽している自分』をそこに見た。

沈黙が辺りを覆った。たっぷり三十秒はそのまま二人は向かい合い、DIOは手を離した。
そうして彼は満足げに頷きを繰り返すと、囁くようにこういった。
83代理投下:2013/09/25(水) 20:56:29.34 ID:I0FIDVqu
654 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:28:00 ID:tFZwjNi.

「なんて『恥知らず』なんだ、君は」


それは『未来から』の伝言であり、『送られる』はずの言葉だった。
ジョルノ・ジョバァーナがカンノーロ・ムーロロに宛て、贈るはずだった言葉だ。
ムーロロの底知れない闇と、虚しさを知り、そこから救い出すべく差し出した言葉。
だが時をこえ、因果を超え……・今、その言葉が新たなものから彼に送られようとしている。
ムーロロは動けない。雷に打たれたかのように、彼はその場に凍りついたままだ。


(見破られた、この男に。自分のこのうっすぺらな根性が……! 全て! 包み隠さず!)


時が止まった空間を切り裂くよう、スティーブン・スティールの声が聞こえた気がした。
だがそんなことすらムーロロにはどうでもいいように思えた。
今はただ息を潜めて待つだけだ。自分の目の前に立つ男が何を言うか。

DIOは放心するるムーロロを眺め、笑みを深めた。
子供をあやすような優しい声音で彼は今言ったばかりの言葉をもう一度繰り返す。

「友達になろうじゃあないか……、カンノーロ・ムーロロ君……?」
84代理投下:2013/09/25(水) 20:56:59.95 ID:I0FIDVqu
655 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:28:26 ID:tFZwjNi.
 ◇ ◇ ◇






【D-4とD-5の境目 地下/一日目 昼】
【カーズ】
[能力]:『光の流法』
[時間軸]:二千年の眠りから目覚めた直後
[状態]:身体ダメージ(大)、疲労(中)
[装備]:服一式
[道具]:基本支給品×5、サヴェージガーデン一匹、首輪×4(億泰、SPW、J・ガイル、由花子)
    ランダム支給品3〜7(億泰+由花子+アクセル・RO:1〜2/カーズ:0〜1)
    工具用品一式、コンビニ強盗のアーミーナイフ、地下地図
[思考・状況]
基本行動方針:柱の男と合流し、殺し合いの舞台から帰還。究極の生命となる。
0.首輪解析に取り掛かるべきか、洞窟探索を続けるか。
1.柱の男と合流。
2.エイジャの赤石の行方について調べる。
3.自分に屈辱を味わせたものたちを許しはしない。
85代理投下:2013/09/25(水) 20:57:34.64 ID:I0FIDVqu
656 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:30:56 ID:tFZwjNi.
【D-4中央部 地下/一日目 昼】
【空条承太郎】
[時間軸]:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
[スタンド]:『星の白金(スタープラチナ)』
[状態]:左半身火傷、左腕大ダメージ、全身ダメージ(中)、疲労(大)
[装備]:煙草、ライター、家出少女のジャックナイフ
    ドノヴァンのナイフ、カイロ警察の拳銃(6/6 予備弾薬残り6発)

658 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:32:11 ID:tFZwjNi.
[道具]:基本支給品、スティーリー・ダンの首輪、DIOの投げナイフ×3
    ランダム支給品3〜6(承太郎+犬好きの子供+織笠花恵/確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルの破壊。危険人物の一掃排除。
0.???
1.始末すべき者を探す。
2.空条邸で川尻しのぶと合流する?
[備考]
※ドルチの支給品は地下地図のみでした。現在は川尻しのぶが所持しています。
※空条邸前に「上院議員の車」を駐車しています。

【F・F】
[スタンド]:『フー・ファイターズ』
[時間軸]:農場で徐倫たちと対峙する以前
[状態]:髪の毛を下ろしている
[装備]:空条徐倫の身体、体内にF・Fの首輪
[道具]:基本支給品×2(水ボトルなし)、ランダム支給品2〜4(徐倫/F・F)
[思考・状況]
基本行動方針:存在していたい(?)
0.混乱
1.『あたし』は、DIOを許してはならない……?
2.もっと『空条徐倫』を知りたい。
3.敵対する者は殺す? とりあえず今はホル・ホースについて行く。
[備考]
※第一回放送をきちんと聞いていません。
※少しずつ記憶に整理ができてきました。


【マッシモ・ヴォルペ】
[時間軸]:殺人ウイルスに蝕まれている最中。
[スタンド]:『マニック・デプレッション』
[状態]:空条承太郎に対して嫉妬と憎しみ?、DIOに対して親愛と尊敬?
[装備]:携帯電話
[道具]:基本支給品、大量の塩、注射器、紙コップ
[思考・状況]
基本行動方針:空条承太郎、DIO、そして自分自身のことを知りたい。
0.DIOと共に行動。
1.空条承太郎、DIO、そして自分自身のことを知りたい 。
2.天国を見るというDIOの情熱を理解。しかし天国そのものについては理解不能。
86代理投下:2013/09/25(水) 20:58:38.21 ID:I0FIDVqu
659 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:32:29 ID:tFZwjNi.

【D-5 南部 地下/1日目 昼】
【吉良吉影】
[スタンド]:『キラー・クイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その@、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:左腕より出血、左手首負傷(極大)、全身ダメージ(極大)疲労(大)
[装備]:波紋入りの薔薇、聖書、死体写真(ストレイツォ、リキエル)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する。
0.けがの治療のため、地上を目指す。
1.優勝を目指し、行動する。
2.自分の正体を知った者たちを優先的に始末したい。
3.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。
4.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。

【川尻しのぶ】
[時間軸]:The Book開始前、四部ラストから半年程度。
[スタンド]:なし
[状態]:精神疲労(中)、疲労(小)すっぴん
[装備]:地下地図
[道具]:基本支給品、承太郎が徐倫におくったロケット、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条承太郎を止めたい。
0.地下道を抜け、空条邸で承太郎を待つ。
1.どうにかして承太郎を止める。
2.吉良吉影にも会ってみたい。
87代理投下:2013/09/25(水) 20:59:09.41 ID:I0FIDVqu
660 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:33:14 ID:tFZwjNi.


【E-2 GDS刑務所付近/1日目 昼】
【ホル・ホース】
[スタンド]:『皇帝-エンペラー-』
[時間軸]:二度目のジョースター一行暗殺失敗後
[状態]:健康
[装備]:タバコ、ライター
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:死なないよう上手く立ち回る
0.なんとかしてこの場を切り抜ける
1.とにかく、DIOにもDIOの手下にも関わりたくない。

【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ローマでジョルノたちと戦う前
[状態]:健康、興奮状態、血まみれ
[装備]:カメラ
[道具]:死体写真(シュガー、エンポリオ、重ちー、ポコ)
[思考・状況]
基本行動方針:DIOと共に行動する
0.オブジェを壊された恨み。吉良を殺す。
1.人間をたくさん喰いたい。何かを創ってみたい。とにかく色々試したい。
2.DIO大好き。チョコラータとも合流する。角砂糖は……欲しいかな? よくわかんねえ。
[備考]
※『食人』、『死骸によるオプジェの制作』という行為を覚え、喜びを感じました。  
※それぞれの死体の脇にそれぞれの道具が放置されています。
 ストレイツォ:基本支給品×2(水ボトル1本消費)、サバイバー入りペットボトル(中身残り1/3)ワンチェンの首輪
 リキエル:基本支給品×2

【ヴァニラ・アイス】
[スタンド]:『クリーム』
[時間軸]:自分の首をはねる直前
[状態]:健康
[装備]:リー・エンフィールド(10/10)、予備弾薬30発
[道具]:基本支給品一式、点滴、ランダム支給品1(確認済み)
[思考・状況]
基本的行動方針:DIO様のために行動する。
0.虹村形兆と合流、ジョースター一行を捜索、殺害する。
1.DIO様の名を名乗る『ディエゴ・ブランドー』は必ず始末する。

【虹村形兆】
[スタンド]:『バッド・カンパニー』
[時間軸]:レッド・ホット・チリ・ペッパーに引きずり込まれた直後
[状態]:悲しみ
[装備]:ダイナマイト6本
[道具]:基本支給品一式×2、モデルガン、コーヒーガム
[思考・状況]
基本行動方針:親父を『殺す』か『治す』方法を探し、脱出する?
1.隙を見せるまではDIOに従うふりをする。とりあえずはヴァニラと行動。
2.情報収集兼協力者探しのため、施設を回っていく?
3.ヴァニラと共に脱出、あるいは主催者を打倒し、親父を『殺して』もらう?
88代理投下:2013/09/25(水) 20:59:49.54 ID:I0FIDVqu
661 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:33:39 ID:tFZwjNi.

【ペット・ショップ】
[スタンド]:『ホルス神』
[時間軸]:本編で登場する前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:サーチ&デストロイ
0.???
1.DIOとその側近以外の参加者を襲う

【サーレー】
[スタンド]:『クラフト・ワーク』
[時間軸]:恥知らずのパープルヘイズ・ビットリオの胸に拳を叩きこんだ瞬間
[状態]:健康
[装備]:肉の芽
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様のために不要な参加者とジョースター一族を始末する
1.DIOさま……

【チョコラータ】
[スタンド]:『グリーン・デイ』
[時間軸]:コミックス60巻 ジョルノの無駄無駄ラッシュの直後
[状態]:健康
[装備]:肉の芽
[道具]:基本支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様のために不要な参加者とジョースター一族を始末する
1.DIOさま……

【スクアーロ】
[スタンド]:『クラッシュ』
[時間軸]:ブチャラティチーム襲撃前
[状態]:健康
[装備]:アヌビス神
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:ティッツァーノを殺したやつをぶっ殺した、と言い切れるまで戦う
0:???

【ディ・ス・コ】
[スタンド]:『チョコレート・ディスコ』
[時間軸]:SBR17巻 ジャイロに再起不能にされた直後
[状態]:健康
[装備]:肉の芽
[道具]:基本支給品、シュガー・マウンテンのランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様のために不要な参加者とジョースター一族を始末する
1.DIOさま……
[備考]
※肉の芽を埋め込まれました。制限は次以降の書き手さんにお任せします。
※ジョースター家についての情報がどの程度渡されたかもお任せします。
89代理投下:2013/09/25(水) 21:00:20.29 ID:I0FIDVqu
662 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:34:49 ID:tFZwjNi.


【E-3とD-3の境目 地下/1日目 昼】
【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降。
[状態]:健康
[装備]:トランプセット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、『ジョースター家とそのルーツ』
    川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、不明支給品(5〜15)
[思考・状況]
基本行動方針:状況を見極め、自分が有利になるよう動く。
0.???
1.情報収集を続ける。
2.誘導した琢馬への対応を考える。
[備考]
※回収した不明支給品は、
 A-2 ジュゼッペ・マッジーニ通りの遊歩道から、アンジェリカ・アッタナシオ(1〜2)、マーチン(1〜2)、大女ローパー(1〜2)
 C-3 サンタンジェロ橋の近くから、ペット・ショップ(1〜2)
 E-7 杜王町住宅街北西部、コンテナ付近から、エシディシ、ペッシ、ホルマジオ(3〜6)
 F-2 エンヤ・ガイル(1〜2)
 F-5 南東部路上、サンタナ(1〜2)、ドゥービー(1〜2)
 の、合計、10〜20。
 そのうちの5つはそれぞれ
 『地下地図』→マーチン
 『図画工作セット』→アンジェリカ・アッタナシオ
 『サンジェルマンのサンドイッチ』→ホルマジオ
 『かじりかけではない鎌倉カスター』『川尻家のコーヒーメーカーセット』→エシディシ
 のものでした。

【DIO】
[時間軸]:JC27巻 承太郎の磁石のブラフに引っ掛かり、心臓をぶちぬかれかけた瞬間。
[スタンド]:『世界(ザ・ワールド)』
[状態]:全身ダメージ(大)疲労(大)
[装備]:携帯電話、ミスタの拳銃(0/6)
[道具]:基本支給品、スポーツ・マックスの首輪、麻薬チームの資料、地下地図、石仮面
    リンプ・ビズキットのDISC、スポーツ・マックスの記憶DISC、予備弾薬18発
[思考・状況]
基本行動方針:『天国』に向かう方法について考える。
0.???



[備考]
※地下道D-4付近一帯が崩壊しました。ひょっとしたら横道を使って通り抜けれるし、通り抜けれないかもしれません。

663 :大乱闘   ◆c.g94qO9.A:2013/09/23(月) 16:36:22 ID:tFZwjNi.
90創る名無しに見る名無し:2013/09/25(水) 21:19:20.37 ID:I0FIDVqu
投下乙でした。
したらばで指摘があったので止まっていたようですが、あと少しだったのと、私にも多少質問があったので代理投下しきってしまいました。

吉良VSセッコの件と同様に物語の根幹に関わる指摘で申し訳ないのですが、そもそもDIOはどうやってD-4まで行ったのでしょうか?
GDS刑務所から中央の洞窟へのルートはありませんし、下水道を使ったとしても川を越えられません。
だからこその状態表の「セッコが戻り次第、地下を移動して行動開始」だと思うのですが・・・
他にも、チョコラータと合流したい、という状態表もあったのですが、何の説明もないままチョコラータに肉の芽だけ植えて別れてしまっているのも、些細ですが気になりました。

あと最後のムーロロの場所についてですが、前話で「C-4 川沿い『亀』の中」にいたにもかかわらず、今回は「E-3とD-3の境目 地下」まで移動し、描写を見るに亀から出ています。
前話で「C-4」へ琢馬を誘導しておきながら、特に意味もなく移動するのは不自然に思えます・・・

リレー前のDIOと承太郎の位置もかなり離れていましたし、書きたいが先行して少し無理のあるリレーになっているのではないかという印象を受けました。
話自体は抜群に面白いので、前向きに検討願います。
91創る名無しに見る名無し:2013/09/27(金) 08:25:19.36 ID:BlCJHIxY
乙です
いや・・・圧倒されました。マジおもしろかったです
いろいろと話が動きましたが、吉良としのぶの今後が気になりますね
92創る名無しに見る名無し:2013/09/30(月) 00:39:37.67 ID:rXeghU8w
乙です。
すごい…面白かった…つ続きお待ちしてます
93 ◆VjwVrw6aqA :2013/10/05(土) 23:13:12.10 ID:FqCJz7+P
遅れてしまい申し訳ありません。
タルカス、イギー、ジョルノ 投下します
94 ◆VjwVrw6aqA :2013/10/05(土) 23:13:55.45 ID:FqCJz7+P
 影が二つあった。一つはとても巨大な壁で、どんな大男が並んでも小さく見える程だったが、その頭は下を俯いていた。彼の名はタルカス。歴戦の勇士だ。
 もう一つはとても小さな影で、遠くから見渡すと見えなくなる程小さいが、大男とは対照的に不適な眼差しは前を見続けている。彼(犬)の名はイギー、自由気ままに生きる砂の愚者だ。
 あらゆる意味で対照的で、とてつもなくアンバランスな組み合わせに見える二人は、ひたすら歩き続けていた。同時刻に行われている幾つかの激しい闘争に遭遇する事もなく、またそれを避けるかの様に、当てのない足は北へと進んでいた。
その理由は、タルカスが大事そうに抱えているもの。ほんの少し前までは生命の音を振動させ続けていた亡骸に答えがあった。

「人のこないところに埋葬をしたい……戦いに巻き込まれない様なところに……いや、殺し合いの舞台で、そんな場所などないのかもしれないが」
 
一度、シンガポールホテルの周辺に安置し、そのまま行こうと考えていたのだが、タルカスにはそれができなかった。
殺戮者が集まるかもしれないこの周辺で、スミレが傷つくのを見たくなかった。
 重荷である事を承知し、スミレの遺体を抱え、人が少ないであろう北端への移動を決めた。
 問題があるとすれば、彼が重傷であることだ。常人ならばまともに歩く事が出来ない程の怪我を負っていることだ。
大砲の様な豪腕は片方が使い物にならなくなり、大樹の様な足は部分的に肉や骨が削げて落ちている。
第三者が見たら『再帰不能』と言うかもしれない。立っているのが奇跡ではないか、そう思えるくらいに。

(ケッ、わかんねーおっさんだぜ。そいつを守れなかった事がそんなに悔しいのか?
過ぎたモンを気にしたって何の特にもなりゃしねーのによ。
自分の身体を客観的に見れねーのか?そのガキを抱えるだけでも辛い筈だぜ)

彼(犬)のいう事は正しい。全く持ってその通りなのだ。それでもタルカスは歩みを止めない。
不意に、タルカスが姿勢を崩した。巨大な体の歩行による衝撃を、負傷した足が支えきれなくなったのだ。
95 ◆VjwVrw6aqA :2013/10/05(土) 23:15:21.28 ID:FqCJz7+P
(そら見た事か、今までそうならなかったのがおかしいくらいだぜ。どれ、ご機嫌伺いに顔を見に行って……!?)

転倒したタルカスに近づき、顔を覗き込んだイギーは、思わず飛び退いてしまった。理由はシンプルである。

(こいつ、なんて顔してやがる!)

タルカスの顔は、戦闘による負傷もあったが、それだけに留まらなかった。
眼は血液と涙が混ざり、なんとも形容し難い色となっていた。唇は裂けんばかりの力で噛み続け、奥から除く歯は絶え間なく軋み続ける。噛み切った唇からこちらも血液と唾液が流れ続け、力を入れすぎた首の筋肉は異様に盛り上がっている。
鬼神か悪魔か、人間とは一線を隠した様な何かが、そこにはあったのだ。
立ち上がる。タルカスが立ち上がる。負傷を意に介する事なく立ち上がる!
「スミレの体は必ず故郷に連れて帰る! 俺に人の心を思い出させてくれたお前を、決して他の者達に穢させはしない!」
 混じり気のない、とても悲痛な叫びだった。せめてもの願いだった。
女王を奪われ、少女を奪われ、誇り高き戦友を失った。なにもかもを取り上げられた彼の、正に執念であった。
「俺は決して許さん!無垢なるスミレを命奪った奴をッ!スミレを巻きこんだ主催者をッ!
そしてブラフォード!魔道に落ちた貴様を!必ず殺してやるッ 一片も残らず殺し尽くしてやるッ その全てを成し遂げるまで、この足を止める訳にはいかんのだ!」
大切な者を奪った者への殺意。奪い返す為の闘争。ベクトルは異なるものの、『復讐』という一点でのみ、彼は盟友であるブラフォードと並び立った。
(ク、クレイジーな野郎だぜ……動かねえ自分の右腕にパンチを入れて、無理矢理動かしてやがる。それにあのツラだ。ニューヨークにいる野良犬共の方がまだ『人間』らしい顔ができるってもんだぜ)
イギーはタルカスから離れる事を考えたが、自分を庇護し、使い捨ての盾となる人間から離れたら楽が出来ないという日和見的思考により、結局はタルカスについていく事にした。先ほどよりも数メートル程距離を放した状態ではあるが。
それから数時間タルカスの顔は歪んだまま動かず、2人、正確には1人と1匹は一言も言葉を発する事はなかった。

◆◆◆
96 ◆VjwVrw6aqA :2013/10/05(土) 23:19:46.99 ID:FqCJz7+P
(双首竜の間……地図を見たときは我が眼を疑ったが、俺のよく知るあの双首竜の間であるならば、一時的にスミレを埋葬しておくにはよいかもしれん)
血腥い場所ではあるがな、と自嘲的に付け足した。
 彼等の現在地は、地図で指し示す所のB-2にあたる。
スミレを人気のないところに埋葬するために北上したタルカスは、地図からの情報でA-2にあたるエリアに双首竜の間があることを知る。
どこに行っても争いが起こるなら、血に飢えた参加者が多くこないであろう北端で、自分がよく見知った双首竜の間に埋めた方が気休め程度にはなる。
距離は離れてはいたが、その想いがタルカスの足を進めた

「犬公よ、礼を言うぞ。文句の一つも言わず、よくここまでついてきてくれた。元の場所に帰れるかどうかはまだわからんが、それまでは俺がお前を守ろう」

数時間ぶりにでた言葉は労いの言葉だった。晴れやかとは言い難いし、まだ表情に深い影が残ってはいるが、先ほどに比べれば幾分かはマシなものだった。
 頼るものができて安心した。そんな顔を見せたイギーは、無骨な腕に頭を撫でられる。
人懐っこい(様に見せている)その顔に、タルカスはほんの少しだけ安堵する。ふと思い浮かんだ事を口にする程、気持ちが緩まった。

「そういえば犬公、お前の名はなんという?」

言った後に彼は気づく、言葉が通じる訳ではないのだ。名前もない犬公呼ばわりでは良い気持ちはしないだろう、という彼なりの気遣いではあったが、その気持ちは、彼からそんな簡単な事実も忘れさせていた。

(何言ってんだこの野郎は、犬の俺に話が出来る訳ねーだろこのマヌケッ!)

それに対するイギーの感想は、砂の様に乾いていた。無論表情は取り繕っている。
(テメーみたいなおっさんの感謝なんかいらねーよ。イイ女連れてこいってんだ。それに名前を教えろだあ?図々しいんだよ!)
言葉を発せないイギーでも、名前を伝える方法はある。その特徴的な鳴き声は相手に人名を連想させる事だろう。しかし、イギーはそれをしない。
(出会ってまだちょっとのおっさんにそう簡単に名前を教えられるか。いいからテメーは黙ってそのでかい体で俺を守ってくれりゃいいんだよ!)
以上は、イギーが頭を撫でられている間の数秒の思考である。

◆◆◆
97 ◆VjwVrw6aqA :2013/10/05(土) 23:24:09.46 ID:FqCJz7+P
そうこうしているうちに、双首竜の間、騎士達の修練場が見渡せる場所が見えてきた。背の高い建物は、来訪者の目に嫌でも焼き付く。
名前を見ただけでは半信半疑だったものの、その外観はタルカスの記憶と寸分も違わない。

タルカスは、まるで昔に戻った様な錯覚を感じていた。
処刑される遥か前、主君と認めた女王が健在で、戦友と共に修練を繰り返した青春の日々を。

『そら見ろブラフォード、やはり小手先の技だけでは限界があるのだ!』

『抜かせタルカス、力押しだけの貴様に我が剣技が見切れるか!』


それは、とても遠い昔の日々。

天涯孤独だった二人の騎士は、ようやく築く事ができた生きる意味の為に、技を磨き続けた。
「ブラフォードよ……もうあの頃には戻れんのだな……」
この数時間。顔に出さない様努めてはいたが、やはり彼は悲しんでいた。変わり果て、悪魔もぶっ飛ぶ復讐鬼と化したブラフォード。
呪縛から解放する為に手をかけなければならないことに、深い悲しみを感じていた。一度違えた道は、もう元には戻らないのだと。
それでも彼は顔を上げた。沈みきった心が晴れないまでも、せめて逃げる事はしないようにと、真っすぐ前を見ることにした。
嘗ての威光や誇りはもうない。守るべき者も失った。それでも、戦う理由だけは残されていた。

「犬公よ、もう暫しだけ付き合ってくれるか?」

黙って後ろについてくるその行動を、肯定のサインだと解釈し、建物へ向かった直後、イギーが吠えだした。お利口で無害な犬の振りを続け、沈黙を保ってきただけに、その声はタルカスに嫌な予感を抱いた。
何事かと思い、振り返ったタルカスの目に、人影が躍り出た。もしもこれが知らない顔であったなら、敵であれ味方であれ、冷静さを保ったうえで対応が出来た事だろう。しかしそうはならなかった。
「僕の姿に疑問を抱いていると思います。しかしまずは話を聞いて欲しい」
 そこにあった顔が、参加者全員が見守る目の前で爆裂死した筈のものだからである。

◆◆◆
98創る名無しに見る名無し:2013/10/05(土) 23:27:19.44 ID:uo2lOLP5
支援
99 ◆VjwVrw6aqA :2013/10/05(土) 23:30:16.66 ID:FqCJz7+P
数時間程時間を遡り、視点を変える事にする。
ウェザーに別れを告げたジョルノは、ミスタ達との合流場所であるダービーズカフェへと引き返していた。
指定した時間はとっくに過ぎているが、他に目処が立っている訳でもなく、合流する機会を失いたくなかったがゆえの選択である。
僅かな期待を持ちながらカフェへ戻ったジョルノだが、当然のようにもぬけの殻であり、少し前にカフェを後にした状況と変わりはなかった。
別れてからの時間経過から考えて、何者かに襲われた可能性が高いと判断し、ジョルノの思考はその回転速度を上げる。
あせってパニックになってはいけないが、のんびりしているわけにもいかない。ウェザーと誓った約束。それを守る為に、一つの場所に留まるという事があってはならないのだ。
 思案した末、確実性は低いが、メッセージを記す事にした。文面はこう記されている。

『第3回放送 ボートに乗った場所』
『第4回放送 鏡の男』

ミスタとの情報交換による時間のズレを考慮した結果の文面である。
『ボートに乗った場所』とは、ブチャラティがディアボロを裏切り、チームのメンバーにボートに乗るか否かの問いを行った場所、すなわちD-2に位置するサン・ジョルジョ・マジョーレ教会を意味する。
『鏡の男』とは、鏡を使うスタンド使い=イルーゾォとの戦闘があった場所、F-6に位置する悲劇詩人の家を指す。ミスタはこの戦闘に直接参加した訳では無いが、チームの間で情報が共有されている事は言うまでもない。
つまり、第3回放送と第4回放送時に上記の場所に集まる、といい事だ。
このメッセージの意味はこの2つを経験しているチームのメンバー以外に知り得る事はなく、他の人物には意味のわからないメモとなる。
同行しているミキタカを考慮に入れていない内容だが、今もミスタと共に行動していることを祈るしかない。

(後は『これ』を使う。使う事によって、メッセージの伝達をより確実にする)
 
ジョルノは何かの切れ端を掴み、『ゴールド・エクスペリエンス』を発現。右の拳で軽く触る。
 切れ端の正体は、情報交換の際、ミスタのブーツの一部分を拝借したものである。(話をした時、かなり嫌がられた)
 蠅へと姿を変えた切れ端に、先程書いたメモと同じ内容の紙切れを蠅の体に目立たない様に巻き付ける。切れ端は持ち主であるミスタの元へ向かい、メモを持ったメッセンジャーとして機能する。

(これでカフェにミスタがこなくても、時間差で伝わるようになる。ゴールド・エクスペリエンスの習性から蠅は一直線にミスタに向かい、他者に発見されるリスクもほぼゼロになる)

しかし、これでも確実とは言い難い。他の参加者に潰される可能性も、僅かながら存在する。そうなったら、短時間での合流は諦めるしかないだろう。 

テーブルへの書き置きと、メッセンジャーの蠅。二重の網を編み終えた。後は行動行動するしかないといわないばかりに、ジョルノは歩き出そうとする。
100 ◆VjwVrw6aqA :2013/10/05(土) 23:30:57.22 ID:FqCJz7+P
不意に、二つの影が視界に飛びこんできた。男がとてつもなく巨大な人物でなければ、視界に入ってこなかったかもしれない。それほどまでに極端な巨躯を、一つの影は持っていた。
 隣には小さな点が揺らめいていた。人間ではない生き物、犬や猫の類いだろう。このルール無用のデス・ゲームの地において、人間以外の生物がいたとしておかしくない。
 しかし、その二つより、もっと彼の目を引いたものがあった。巨大な男は、その腕に小さな何かを抱えていた。それが何か理解した瞬間、ジョルノはえも知れぬ感覚に襲われた。例えるならコップから水が溢れて、どんどん流れ出すような、そんな気持ちだった。

(あそこにいる男は、あの子供を守れなかったことを後悔している。死を悼んでいる……)

コップから溢れた水は、二度と戻る事はない。
それがとても悲しくても、残された水はコップの中で這い回るしかないのだ。こぼれ落ちるその日まで。
もうあんな犠牲者を出してはならない。
彼ら/彼女らの魂の尊厳と安らぎは、死でもって償う必要がある。然るべき報いを与える必要がある。

今は亡き誇り高き剣士の姿を思いながら、ジョルノは決意を新たにする。
 しかし、その数秒がタイムラグとなってしまった。充分な距離を保っている筈だったが、小さな愚者にはお見通しであった。けたたましい鳴き声がジョルノの耳をつんざく。犬の嗅覚は凄まじい。
気がつけば、巨大な二つの目が、こちらを睨みつけていた。訝しみと驚きが混ざった様な、そんな視線だ。
 やられる前にやる。喧嘩だろうが話し合いだろうが、共通した事実だ。自分の目標を達するために、速やかに行うのだ。
 ジョルノは己が丸腰であるのを示す様に両手を空に掲げながら言った。

「僕の姿に疑問を抱いていると思います。しかしまずは話を聞いて欲しい」

どうすれば相手が納得するか、どんな方法を用いればいいか、彼の頭脳は、既に無限の回転を始めている。
◆◆◆
101創る名無しに見る名無し:2013/10/05(土) 23:31:09.10 ID:uo2lOLP5
支援
102 ◆VjwVrw6aqA :2013/10/05(土) 23:31:39.69 ID:FqCJz7+P
「そこで止まれィ!」

おっさんがでけー声で叫んだ。トーゼンだろーな。目の前に死んだ筈の奴が「僕は無害です」って感じに出てきたらビビる、俺だってビビってる。そいつを見た瞬間、反射的に吠えちまったぐれーだ。いや、本当だぜ?
 そこで突っ立ってる3連煙突ヘアーは最初の広い部屋で、メガネのおっさんに首を吹っ飛ばされていた。見たくはなかったが、前の方にいたからな。
じゃあ目の前にいるこいつはなんだ?そっくりさん?双子?
さっぱり訳がわからねえ。ま、考えた所でわかる訳じゃねーし、「そういう事」って事で納得するしかねーんだろうな。どのみち俺には関係ないことだぜ。植物の心みたいに平穏に過ごさせてくれるなら、後は好きにしてくれや。

「僕の名前はジョルノ・ジョバァーナです。何故僕がここにいるのか、構えてしまうのは当然です。だが納得してもらわなければならない。ですから、その槍を収めてはくれませんか?」

煙突の名前はジョルノとかいう名前らしい。まだあいつが喋ってる所をちょっと見ただけだが、どうにもスカした野郎で気に入らねえ。承太郎の野郎もこんな態度だったぜ。「俺は全部お見通しです」って感じのよォ〜っ。ガムがあったらあの穴に3つくっつけてやりてぇ。

「貴様はあの場で確かに死んでいた筈!それが何故生きている!?まさか貴様も生霊の類いかッ!」

 その単語を口にしたとたん、おっさんの口がまたギリギリ締まりがやがった。血が出てるぞ血が、ああ気持ち悪りぃ。さっきからだが、こいつ情緒不安定過ぎるぜ。もうちょっと落ち着いた奴はいねーのか?
「その言い回しからして、あなたは僕より前に死んだ筈の人物に会っている。しかもそれはあなたのよく見知った人物だった。だからこそ動揺している。違いますか?」
「ええい黙れ!死人の戯言など聞くつもりはないわッ!それ以上こちらにくるなら容赦はせんぞ!」

この煙突頭、したり顔で演説始めやがったが、どうも図星らしいな。おいおっさん、瞳孔開いてんぞ。

「だから僕は今からあなたに証明する。僕がれっきとした生きている人間であり、敵意もないということを」

気がつくと煙突は俺たちの目の前できていた。すかさずおっさんは槍を突き出す。さっき言ってたことの有言実行ってやつだな。これ以上きたらブッ刺す!だからこっちへくるな、そんなとこか?
こんな大男が武器構えてメンチ切ってんだ。さすがにこいつのしたり顔も……?

「なんの……つもりだ?」

おっさんが本当に驚いた感じで聞く。
俺もさっきはほんのちょびっとだけビックリしたが(みっともなく吠えてた?知らねえな)今度という今度はかなりビビった。この煙突、もうすぐキスができるんじゃねえかってくらい目の前に槍があるのに、歩くのをやめてねえ。
何考えてやがるんだ?脳みそにクソが詰まってるのか?
「ですから、僕が生きていること、あなたに敵意がないことへの証明をしてるんです。なにが問題でも?」
「くるなっ!それ以上くればお前をぶち撒けるぞ!くるなあッ!」
おっさんの声は怯えていた。まあしょうがないかもしれねえ。
「僕の存在を証明する手だてが他にないのであれば、それでも構いません」
あーあ、おっさんの沸点は見た目通り低いってのに、もう死んだな、こいつ。
そら見たことか、槍を握る手が少しずつ強くなってきたぜ。
「ぬわあああああああああああああ」
とうとう煙突の腕を突き刺した。そして次は頭か、アバヨ。調子こきすぎた自分を呪うんだな。そしておっさん。ここまでキレてるとは思わなかったぜ。ま、いざという時は簡単に捨てるから、どうでもいいことだがな。

103 ◆VjwVrw6aqA :2013/10/05(土) 23:32:56.09 ID:FqCJz7+P
結論からいうと、タルカスはジョルノの命を奪わなかった。奪えなかったというべきかもしれない。落ち着きを取り戻した彼の心が槍を止めたのか、ジョルノの持つ何かがそれをさせなかったのか。それはわからない

「命が惜しくはないのか?俺が腕に力をちょいと力を入れるだけでお前の脳組織はズタズタになり!肉片となるんだぞ!正気なのかッ!?」

加害者となったはずのタルカスは問う、叫び声をあげる。突き刺した槍は腕をミンチにし、顔面を串刺そうとしているのに、常人ならば恐怖のあまり叫び声をあげてもおかしくない筈なのにッ!
少年は止まらない、瞳に宿した輝きをさらに燃えたぎらせ、逆にタルカスに向かっていったッ!

「このジョルノ・ジョバァーナには夢がある!主催者を倒し、全ての人を救うという約束がある!ここで死んでしまう命なら、その全てを叶えられる筈もない!」

力強い宣言だった。腕から流れる血をもとともせず、大陽のように輝いていた。逆境を跳ね返す熱さが、確かに存在していたのだ。
        (これは、この姿はーーーーーー)
タルカスは認めた。認めざるを得なかった。目の前の人間から感じられる死とは対極の、生命の振動を。爛々と輝く、冷める事のないエネルギーに。
そしてその姿は、人間の尊厳に満ちている事に。タルカスは一瞬、正に光が輝くような一瞬、失われた君主がいるような、そんな感覚に陥った。

「だから退きません。この槍が僕の夢を阻むのならば、決して下がらない。」

鉄槍は抜け落ちた。同時に、騎士を支配していた暗闇も、ほんの少しだけ晴れた。
結局のところ、この場で命が失われることはなかったのだ。

◆◆◆
104創る名無しに見る名無し:2013/10/05(土) 23:33:10.86 ID:uo2lOLP5
支援
105創る名無しに見る名無し:2013/10/05(土) 23:33:36.57 ID:Y4KSJoZn
支援!
106 ◆J7YnVTzM6L1Q :2013/10/05(土) 23:55:06.17 ID:MV/R0Bf2
すいません。さるさんくらいました。

代理投下をお願いしても大丈夫ですか?
107創る名無しに見る名無し:2013/10/06(日) 00:09:58.61 ID:3I8dWpZ+
了解です。
108代理投下:2013/10/06(日) 00:11:36.71 ID:3I8dWpZ+
「すまないッ……本当にすまない!」

時間は経過する。あっという間に流れていく。ジョルノに「敗北」したタルカスは、体裁も気にせず必死に頭を下げ続けた。いわゆる土下座の型である。

「気にしないでください。僕があなたへの接触方法を考えていれば、こんな事にはなりませんでした。寧ろ、そこにいる小さな彼に感謝をするべきです。あなたはそれ程までに、あなたは沈み込んでいた」

目線を向けられたイギーは無害そうに一度鳴き声を上げると、二人にそっぽを向けて不機嫌な顔を作った。彼からすれば、自分が吠えなければ、あのままジョルノをやり過ごす事だってできたかもしれない、と思っていたので、不本意な結果に終わってしまった。

「俺が余計な事をしなければ、ジョルノが怪我をすることもなかったのだ。本当にすまないッ……!」

声を向けられたジョルノの腕には、負傷の後は見られない。勿論、ゴールド・E
で治療を行った結果だ。スタンドを初めて認識し、驚く他なかったタルカスだが、ジョルノはタルカスの治療を行い、後にスタンドについて説明をすることを約束した。(イギーはプライドが許さなかったので負傷箇所を懸命に隠した)
謝罪もそこそこに、タルカスは疑問を投げかけた。

「お前の行動に一つ疑問がある。俺が危険人物だという可能性はあった筈だ。負傷に加え、自分でいうのもなんだがこのガタイだ。犬公だって無理矢理従わせていただけかもしれん」
「理由はいたってシンプルです。あなたの目が優しそうだったから。それともうひとつ、僕と遭遇した途端に大事そうに自分の後ろに置いたーー」

ジョルノが、タルカスの背後を見やる。

「彼女がいたからです。あなたは彼女をどこか人気のつかないところに埋葬したかった。僕はそう思いました。そんな人物が危険人物だとは思えない。そう思ったからです」
「そうか……」

タルカスは消え入る様に呟いた。それ以上の言葉は不要だった。
「ところで、彼女をどこへ埋葬するつもりだったんですか?僕が見た限りあなたの足取りには迷いが見られなかった。つまり行く宛てがあると解釈しましたが」
タルカスは話す。双首竜の間の存在を。ジョルノは同行を申し出る。名も知らぬ少女の弔いのために。イギーは突っ伏す、寝たふりをするために。

◆◆◆
 
「着いたぞ、双首竜の間だ」
再数時間の移動の後、2人と1匹は双首竜の間にたどり着いた。騎士達の修練状は入り組んでおり、双首竜の間はかなり深い場所にあったものの、構造を知り尽くしたタルカスの案内のもと、無事に辿り着いた次第である。

「まさかこんな迷宮のような構造になっていたとは、驚きました。しかし、この鉄の扉はどうやって開けるつもりですか?どうやら内側からしか開かない作りになっているようだし、あなたの怪力でもこじ開ける事は難しい」

自分のスタンドがあれば話は別だが、とジョルノは内心で付け加えた。しかし、人並みのパワーしか出せないゴールド・Eではタルカス以上に時間がかかることも考えられる。壁を生物に変える事も考えたが、タルカスの手前、言わない様にした。
「それに関しては考えてきた。あそこに明かり窓があるだろう。」
タルカスが視線を向けた先には、十字に穴が開いた空間が存在していた。
(ゲ、嫌な予感がするぜ)
イギーは思った。この予測は的中する事になる。
109代理投下:2013/10/06(日) 00:13:01.23 ID:3I8dWpZ+
「人間が入るには無理があるが、犬や子供なら入れるだろう」
ジーッ、という音が聞こえそうなくらい、タルカスに見つめられたイギーは、なんとか無害な表情を装ってタルカスに近づく。

「すまんが犬公、頼まれてくれんか。お前ならあの明かり窓から中に入り、中にあるレバーを倒して部屋の扉を開けて欲しい」
(なにいってやがるこの野郎ッ、なんでそんな面倒くさい事をこの俺が!)
「お前は利口な犬だ。恐らく俺の言っている意味も大体は理解しているだろう。
頼む、スミレをもう人目にさらしたくはないのだ」

少女の名前が出て、イギーはスミレを見た。ジョルノによって遺体は整えられ、その表情はとても安らかだった。

(このガキ、犬好きだったのか?いや、そんな事はどうでもいいが、チッ、しょうがねえな。あくまでおっさんの信頼を得て盾にしてもらう為の下準備だ。計算された逃走経路だぜ。簡単に信じやがって馬鹿が)

あくまでも表情には出さずに、タルカスの両手に捕まった。タルカスは満足そうに微笑むと、イギーを明かり窓にやる。数秒後、レバーの下がる音と共に、扉が開いた。

「借りができたな犬公、心から感謝するぞ」
(勘違いすんじゃねーぞおっさん、俺の為に必死働いて死んでもらう為だからな。本当だかんな!)

そうして、一行は双首竜の間に入った。やはり内部もタルカスの記憶に相違なく、無機質な石畳と、鎖の鳴る音しか聞こえなかった。
タルカスは、スミレの遺体を部屋の最奥にそっと横たえた。

「すまんなスミレ。お前は嫌がるだろうが。あくまでもこの殺し合いが終わるまでだ。血腥いだろうが、勘弁してくれ」

タルカスは、スミレの遺体の手を組ませ、立ち去ろうとするが、それをジョルノが呼び止めた。
「このままでは少し殺風景なので、少し手を加えさせてもらっていいでしょうか?驚かせたいので、少し後ろを向いていてください」
二人にそう指示し、ジョルノはスタンドを発現させる。ゴールド・エクスペリエンスは、生命を生み出す。スミレの周囲を、花に変えていく。振り返ったタルカスとイギーは、その光景に驚いた。
「これも、『スタンド』とやらの力なのか?」
驚くタルカスを尻目に、ジョルノは語りだす。
「もうすぐ昼になって、お日様が差し込んでくるようになる。この明かり窓は、日当りがいいだろうな」

遺体を取り囲む花畑に、大陽の光が射した。大陽の光を受けて、花畑は光り輝く。
この輝きがあれば大丈夫だ。殺し合いの最中である事も忘れ、タルカスはそう思った。そして誓う、スミレに誓う。最後まで戦い抜くことを、そしてもう一つ
(見ていてくれスミレ……必ずこの殺し合いを打破してみせる。最後まで戦い抜いたお前の意志を、立派に受け継いでみせる!)
それに呼応するように、花が一際輝きを放った様に感じた。タルカスには、それが嬉しかった。


これから彼には、数多くの困難が待ち受けているだろう。その過程で多くを失う事になるだろう。それでも彼は負けない。少女との誓いがある限り、生きる意味を取り戻した騎士は、決して魔道には落ちない。そう決心した。

扉の施錠を同じ要領でイギーに任せ、双首竜の間を後にする一行。その未来にささやかなLUCK(幸運)がある事を祈るかの様に、スミレの花が咲き誇っていた。
110代理投下:2013/10/06(日) 00:14:56.82 ID:3I8dWpZ+
 
【A-2 双首竜の間/一日目 昼】

【タルカス】
[時間軸]:刑台で何発も斧を受け絶命する少し前
[状態]:健康、強い決意?(覚悟はできたものの、やや不安定)
[装備]:ジョースター家の甲冑の鉄槍
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:スミレの分まで戦い抜き、主催者を倒す。
1:ブラフォードを殺す。(出来る事なら救いたいと考えている
2:主催者を殺す。
3:育朗を探して、スミレのことを伝える
4;ジョルノと情報交換を行う
※スタンドについての詳細な情報を把握していません。(ジョルノにざっくばらんに教えてもらいました)


【イギー】
[時間軸]:JC23巻 ダービー戦前
[スタンド]:『ザ・フール』
[状態]:首周りを僅かに噛み千切られた、前足に裂傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ここから脱出する。
1:ちょっとオリコーなただの犬のフリをしておっさん(タルカス)を利用する。
2:花京院に違和感。
3:煙突(ジョルノ)が気に喰わない
111代理投下:2013/10/06(日) 00:15:47.56 ID:3I8dWpZ+
  
【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:体力消耗(小)
[装備]:閃光弾×3
[道具]:基本支給品一式、エイジャの赤石、不明支給品1〜2(確認済み/ブラックモア) 地下地図、トランシーバー二つ
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。
1.ミスタ、および他の仲間たちとの合流を目指す。
2.放送、及び名簿などからの情報を整理したい。
3.第3回放送時にサン・ジョルジョ・マジョーレ教会、第4回放送時に悲劇詩人の家を指す
4.タルカスと情報交換を行う
[参考]
※時間軸の違いに気付きましたが、まだ誰にも話していません。
※ミキタカの知り合いについて名前、容姿、スタンド能力を聞きました。

※ウェザー・リポート、エンリコ・プッチ、ホット・パンツの支給品、デイパックを回収し、必要なものだけを持って行きました。
 必要のないものは全て放置しました。回収したものはエイジャの赤石、不明支給品、トランシーバー二つ、閃光弾二つ、地下地図です。


【備考】
※スミレの遺体は双首竜の間に安置されました。周囲にゴールド・Eで生み出したスミレの花があります。
※ダービーズカフェにジョルノの書き置きが残してあります。内容は
『第3回放送 ボートに乗った場所』
『第4回放送 鏡の男』
と書かれています。
※同様の内容が書かれているメモを括り着けた蠅がミスタの方へ飛んで行きました。蠅が参加者に見えるかどうかは他の書き手さんにお任せします。
※タルカス達の移動経路はC-4→B-3→B-2 の順番でした。
112創る名無しに見る名無し:2013/10/06(日) 00:21:43.62 ID:3I8dWpZ+
代理投下終了です。
◆VjwVrw6aqAさん、新作乙です。
113創る名無しに見る名無し:2013/10/06(日) 14:59:27.09 ID:8dqQl045
投下乙
今までとことん運のなかったタルカスに、ようやくまともなパートナーが……
スミレの無念を晴らすためにも、タルカスには頑張ってもらいたい
114 ◆VjwVrw6aqA :2013/10/07(月) 01:30:36.06 ID:mpR3ETXq
規制解けました。代理投下や支援ありがとうございます。
文章の細部を修正して、後日改めてwikiに掲載しようと思います。

私事ですが、ASBのキャンペーン3弾をコンプしました。
承太郎と花京院の大陽戦でやった大笑いが挑発であって笑いました。パンつーまる見えの花京院も欲しい
115創る名無しに見る名無し:2013/10/09(水) 00:09:01.35 ID:fNYHIt5p
投下乙です
タルカスは見ていてハラハラするな
116創る名無しに見る名無し:2013/10/26(土) 22:11:25.95 ID:E1oYOOLm
いちおう保守。予約も入ってるし確実に進行しててうれしい
117創る名無しに見る名無し:2013/10/28(月) 23:12:01.09 ID:S5kfigPI
保守ついでに
2nd終わったの2011年だからもう二年くらい経つんだな
3rdもここまで続いてくれて感無量だよ
118創る名無しに見る名無し:2013/11/07(木) 20:55:10.26 ID:iPc9ZtGz
ほしゅ
119創る名無しに見る名無し:2013/11/09(土) 19:45:33.44 ID:YIil660h
前スレ落ちてから見てなかったけど復活してたのか
ROM専だけどこれからは見るようにしとこう
120創る名無しに見る名無し:2013/11/15(金) 01:00:16.24 ID:s6Tm0XRY
月報です
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
149話(+2) 56/150 (- 0) 37.3(-0.0)
121乖離 その1 ◆yxYaCUyrzc :2013/11/25(月) 11:55:17.93 ID:XEx1pYi0
……さっきから、君ら何やってんの?

え?
『ガキでも知ってるぜ?特に今年に新作が発売予定のゲームやったことがあるガキならよォ!!
 ……“水”に“電気”は、“効果はバツグン”なんだぜぇぇぇぇ!!』??
――ふ、ふーん。なんかよくわかんないけど、まあ対戦ゲームなのね。ずいぶんハイテンションだね?目が進化するの?ふーん。

……じゃあさ、あっちは?格闘ゲームの方。あれでしょ、来訪者もダウンロードできるように……

え?
『連射コントローラーとキーコンフィグで先輩がイージービートしてメダル稼いでくれる』??
――ふ、ふーん。じゃあなんだ、直接やってないの?ずいぶん寂しいね?
え、何?期待を裏切られた?悪い意味で?課金の団子?
ま……まあ詳しい話は聞かないでおこうかな。やる気削いでも仕方ないからね。

でもなんだな、今言った『裏切られた』ってのはさ、しっかり『期待』するから生じる結果でさ。
単純に目的や想像、考え方と結果が違ったと思えばそんなヒドい表現しなくても済むんじゃあないかな?


それに『想像と違う』と言えばさ……


●●●
122乖離 その2 ◆yxYaCUyrzc :2013/11/25(月) 11:59:48.00 ID:XEx1pYi0
結論から言えば、俺は地下に潜った。
理由は単純。人目につかないこと、そして恐竜の戦闘に適しているということだ。
例えば路地裏でルーシーを拷問でもしてみろ、目撃なんかされたらそいつが何をしでかすかわかったもんじゃあない。
そして、狭い地下では戦闘は不利かと問われればむしろ逆。壁や天井を利用した三次元的な超スピードによる攻撃が出来る。見逃す手はない。

カチリと歯を鳴らした合図で恐竜どもの足を止めた。このあたりで十分だろう。
意図を察知したのか、それとも生意気に逃げようとでもしたのか、ルーシーが言われるでもなく恐竜から降り、地に足をついた。

「……ほほう?なかなか強気なことじゃあないか、ミセス・スティール?
 気位の高い女性が嫁だと、あの旦那も鼻が高いんじゃあないか?なァ?」
「からかわないで。あなたみたいな人に何がわかるっていうのよ」
「おお、これはこれは」

言いながらカツカツと歩み寄り、ルーシーの顎に手を添え、クイと持ち上げる。
屈辱やら羞恥やら、あるいは決意やら怒りやら、そんなモノに満ちた何とも言えぬ表情がほんの数センチ先にあった。
これが傍から見たら、それか安っぽい映画のワンシーンだったら、俺は年端もいかない女に無理やりキスを迫る悪漢なんだろうが、実際はそんな生っちょろいモノでないことはお互い理解しているだろう。

顎に添えた手をルーシーの身体から話すことなくツツ、と滑らせる。立てた親指の爪を(ホット・パンツと比べるとかなり控えめな)胸元でピタリと止めた。

俺がその指を軽く皮膚に押し込もうとするのと、ルーシーが口を開いたのと、乗ってきた恐竜たちがうなり声を上げたのは殆ど同時だった。

「Di――」
「ディオ、様……?」


●●●
123乖離 その3 ◆yxYaCUyrzc :2013/11/25(月) 12:10:39.70 ID:XEx1pYi0
ブラフォードが二人と遭遇できたのは偶然という意外に説明がつかない。
彼自身は先に受けた波紋の痛みに耐え、しかしその場で悶絶するような無様な真似をすることなく地下を彷徨い続けていただけなのだから。
怒りと苦痛に顔を歪めながら耳にしたのは『今の主』の声。
耳をすませ、目を凝らし、遠くに見えたその姿は見間違うことなどできなかった。自分に新たな生を、現世への恨みを晴らす機会を与えてくれた『ディオ様』の姿だった。

思わず早足になる。駆けだしていたかもしれない。主のもとには2頭の怪物と一人の女。
ディオ様は今にもその女の血を吸い取ろうとしていたところであった。邪魔をすると思うと心苦しかったが、口を開かずにはいられなかった。

「ディオ、様……?」

ハッとしてこちらを振り向く女とは対称的に、控える怪物を手で制止しつつゆったりとした動作でこちらを向いた顔は初めて出会った時のような邪悪な笑みを浮かべていた。
「ほう……貴様は」
「黒騎士ブラフォード、無様にもジョナサン・ジョースターの波紋を受け、撤退してまいりましたことをお許しいただきたい」

一方のディオ様、もといDio、いや、ディエゴは余裕の笑みを浮かべつつ頭をフルに回転させていた。
なるほどなるほど。どうもこいつは『ディオ』という自分に似た存在と俺の事を勘違いしているらしい。
このDioを人違いとはずいぶんと生意気ではあるが、どうやらその『ディオ様』とやらに陶酔しているようだ。
(たしかジョニィの本名がジョナサンと聞いたことがあったような気もするが、それもどうせ勘違いだろう)
ならば利用しない手はなかった。せっかくだからそのディオ様とやらであるフリをして『期待』させてやろう。絞れるものはなんでも搾り取るのがDioのやり方だ。

「――なに、ブラフォード。いいじゃあないか。今お前はこうして俺のもとに戻ってきたんだ。
 失敗と言えば聞こえは悪いが、無謀に突っ込んで死ななかっただけマシだと考えろ。今回は不問にしておいてやる」
「ハ――ハッ、ありがとうございます。
 して、その女は……」
124乖離 その4 ◆yxYaCUyrzc :2013/11/25(月) 12:19:09.76 ID:XEx1pYi0
「ン、まあ、『生贄』と言ったところだ」
ルーシーに口は挟ませない。突き立てた親指に力を込める。くっと小さい吐息がルーシーから漏れる。
しかし生贄とは我ながらなかなか良い表現じゃあないか。そうディオは内心でほくそ笑んだ。
拷問して情報を得て――そうしたら、そうだな。もっとも屈辱なのはなんだ?……俺の子でも産ませるか。
『ディオの息子』それはきっと、とんでもない悪意の塊になるだろうだろうからな。
そんな事を考えると自然と口角が上がる。
それはルーシーの目にどう映っただろうか、などとくだらないことまではDioは考えなかった。

一方のブラフォードも生贄という表現に何の疑問も持たない。
ディオ様は波紋症の回復のために、生命に満ちた若い女の血を好んでいたということは良く知っているからである。

「さて――ブラフォード」
「ハッ」
「お前は今後どうしたい?今までは俺の指示通りに動いていただけだが、この半日、お前はどこで何をし、誰と戦い、何を得、何を失った?
 少しこのDioに話してみろ」
ここでもDioは冴えた。例の『ディオ』を『様』呼ばわりしているのだ。明らかに主従の関係だろう。
となればそのディオ様とやらがこのブラフォードをどう利用していたかもおおよそ想像がついた。
指示通り、なんてのは一種カマをかけたようなものだったが、目の前の黒騎士はそれを疑いもしなかった。
「ハ、ハイ、実は――」


●●●
125乖離 その4 ◆yxYaCUyrzc :2013/11/25(月) 12:26:01.90 ID:XEx1pYi0
さて、“想像と違う”話だったがいかがだっただろう。
ディエゴから見て、突然の乱入者は、自分が選んだ地下という場所では完全に『想定外』だったし、
ルーシーから見ればまさかのDioの味方が登場ッ!?って状態。せっかくの決意も幸先が悪くなりそうだ。
ブラフォードなんかは完全に『人違い』だしね。まあまだ想像と“違う”に至ってないのが救いだろうけど、ばれたらどうなることやら。

まあ何が言いたかったかって、さっきも言ったけど、こういう状況から『裏切り』は生まれるんだ。
最初から『味方を装って近づき、最後に裏切って寝首をかく』なんてのは俺に言わせれば“計画”であって裏切りではない。

期待や不安といった精神状態が誤解を生み、裏切りを生み、逆に信頼を築くこともある。

――なんて、カッコつけて言ってみたりして。

で、あのさちょっと聞きたいんだけど、この『時止め返しの隠しコマンド』ってさ……
126乖離 状態表 ◆yxYaCUyrzc :2013/11/25(月) 12:31:15.24 ID:XEx1pYi0
【D-5 南西・地下(空条邸地下付近)/1日目 昼】

【ブラフォード】
[能力]:屍生人(ゾンビ)
[時間軸]:ジョナサンとの戦闘中、青緑波紋疾走を喰らう直前
[状態]:腹部に貫通痕(痛みなし)、身体中傷だらけ(やや回復)、波紋ダメージ(小〜中)
[装備]:大型スレッジ・ハンマー
[道具]:地図、名簿
[思考・状況]
基本行動方針:失われた女王(メアリー)を取り戻す
1:『ディオ様』に状況の報告、今後の指示を仰ぐ
2:強者との戦いを楽しむ
3:次こそは『ジョナサン・ジョースター』と決着を着ける
4:女子供といえど願いの為には殺す
[備考]
『ディエゴ・ブランドー』を『ディオ・ブランドー』と勘違いしています。


【ディエゴ・ブランドー】
[スタンド]:『スケアリー・モンスターズ』
[時間軸]:大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×4(一食消費)地下地図、鉈、ディオのマント、ジャイロの鉄球、ベアリングの弾、アメリカン・クラッカー×2
    ランダム支給品2〜5(ディエゴ:0〜1/確認済み、ンドゥ―ル:1〜2、サンドマンが持ってたミラション:1、ウェカピポ:0〜1)
[思考・状況]
基本的思考:『基本世界』に帰る
1.ブラフォードから情報を得る。あわよくば『ディオ』に関する知識も得たいし、手駒として利用もしたい
2.思考1が終わった後、改めてルーシーから情報を聞き出す。たとえ拷問してでも
3.別の世界の「DIO(ディオ)」に興味
[備考]
ギアッチョから『暗殺チーム』、『ブチャラティチーム』、『ボス』、『組織』について情報を得ました。
ディエゴの付近には、ディエゴとルーシーが移動に使用した恐竜が2体(内1体は元ドノヴァン、もう1体は元が不明、後の書き手さんにお任せします)がいます。

【ルーシー・スティール】
[時間軸]:SBRレースゴール地点のトリニティ教会でディエゴを待っていたところ
[状態]:健康、緊張(中)、恐怖(小)、覚悟(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、形見のエメラルド
[思考・状況]
基本行動方針:スティーブンに会う、会いたい
0.現状の把握と打破、一体どうするのが最善なのか!?
1.ディエゴを出し抜く
127乖離 ◆yxYaCUyrzc :2013/11/25(月) 12:36:21.68 ID:XEx1pYi0
以上で投下終了です。私自身としては初の?ゲリラ投下でした。
タイトルの「乖離」は考え方のずれだとかなんとかいう意味だそうです。

仮投下からの変更点
・文章の変更、漢字の修正とか
・本スレに合わせて分割箇所の変更(その4が被ってますがご勘弁を)
・ディオのジョナサンに対するちょっとした反応。状態表に書くまではいかないと思いあえてのスルー

なんかもう少しディエゴとルーシーの絡みをエロく書いてみたかったんですがこれ以上は私のスキルでは無理orz
時間を一気に昼まで進めていますが、仮投下時にそんなに意見はなかったのでこのままいきます。
その他気になる点などありましたらご意見ください。
週末にでもwiki更新しようと思っております。それでは。
128創る名無しに見る名無し:2013/11/25(月) 13:34:17.48 ID:eo64S2RI
投下乙です
これでも十分エロいと思います
いいぞもっとや(ry
ルーシーに勝機はあるのか
129創る名無しに見る名無し:2013/11/26(火) 20:27:37.40 ID:XCtYiNSk
投下乙
ディエゴの機転の良さは異常だな
まだ他のキャラとの接触が少なめだけど、これから主要なキャラとの絡みが発生するのが楽しみです
130創る名無しに見る名無し:2013/11/28(木) 09:58:39.91 ID:6sE9woY7
投下乙です

ブラフォード<思ってたんとちがう

とはならなかったなディエゴすげぇ言いくるめちまった
ルーシーの逆転はあるのか
131創る名無しに見る名無し:2013/11/28(木) 12:46:49.54 ID:FaiCN1hs
投下乙です。

ブラフォード、それディオやない!ディエゴや!
132創る名無しに見る名無し:2013/12/18(水) 19:04:50.47 ID:gltC4ngm
保守
133 ◆vvatO30wn. :2013/12/21(土) 13:04:47.28 ID:1RbBr9BN
遅くなって大変申し訳ない
ヌ・ミキアカゾ・ンシ、グイード、ミスタ、蓮見琢馬
投下します
134レベルE ◆vvatO30wn. :2013/12/21(土) 13:06:23.17 ID:1RbBr9BN
参ったな。
少し無防備になりすぎたか。



「……どなたかは存じませんが、僕は危険な人物ではありません。
この殺人ゲームにだって乗るつもりは………」

「おい、勝手にしゃべるんじゃあねえ。てめえが危険かどうかは俺が判断する。
今度、俺に無許可で口を聞きやがったらお前の後頭部を狙っている拳銃が火ィ吹くぜ?」


面倒くさい男だ……。
俺に対して優位に立とうとして必死ってところか?
声の距離からして、約10メートル背後。
『本の能力』で攻撃するのも不可能な距離だ。
相性を補完している投げナイフも、今は手元にはない。
わざわざ『拳銃』という言葉を使ってきた。
彼がその気になれば(拳銃がこれがブラフでなければだが)俺に勝ち目はない。
問答無用で殺りに来る奴でなくてマシだったと考えるしかないか。
なんにせよ、この場はこいつの指示に従うしかない。



「問1。てめえは今何をしていた? 川の中を覗き込んでよ。
まさか学校の宿題でメダカの観察をしてたわけじゃあねえよな?」
「……その質問だけど、なにか意味があるのか? 君を満足させる答えを、僕が持ち合わせているとは思えませんし。
それに、僕が嘘をつく可能性だって」



ドォン!



銃声。と同時に、足元の石畳が炸裂し、銃痕が残る。
拳銃はブラフでは無かったか。
排莢音がしたということは、オートマチック式か。


「イエローカードだ。次は当てるぜ糞餓鬼。オレの質問にのみ簡潔に答えろいいか。
何を探していた?」


こいつ、クールに装っているが、なかなか熱いタイプだな。
尋問慣れもしている。普段なら今の一発も急所を外して当てているところだ。
わざと外したのは、俺という人間の善悪がはっきり判別出来ていないせいだ。
こういうタイプなら、付け入る隙は必ずある。
135レベルE ◆vvatO30wn. :2013/12/21(土) 13:07:52.85 ID:1RbBr9BN
「……小型のペンダントを探していた。母の形見なんだ。そこの橋の上から落としてしまってね。
だがもう見つからないし、もっと下流に流されてしまったのかもしれない。
状況が状況なんで、そろそろ諦めようかと思っていた頃だ」

嘘だがね。
だが、事前に嘘をつく可能性を示唆したことによって、ある程度の嘘なら簡単に見破られることはないだろう。
本当に探していたのは『亀』だ。C-4の川沿いの亀。それがあの『トランプ』の寄越した情報。
だが、小一時間探してみてもそれらしいものは見つからない。
なにかトラブルがあったのか、それともおちょくられただけなのか。
そもそも『亀』というキーワードの意味が不鮮明すぎて、見当がつかない。
奴がまだ俺とつながりを持つ気なら、『トランプ』で向こうからアクセスがあるだろう。
そう判断し、諦めて去ろうかと思った矢先に、こいつらに声をかけられたのだ。



「ほう。そいつは災難だったな? 問2だ。お前の名前と素性を話せ。できるだけ簡潔にな」
「蓮水琢馬。18歳。日本の高校に通うごく普通の学生だ。ぶどうが丘高校―――そう、奇しくも例の地図の『杜王町エリア』に載っているのと同じ名前の学校だよ」
「例の地図……? あ、ああ、なるほどな」


……?妙なリアクションだな。こいつ地図を見ていないのか?
いや、地図の存在を知らないというわけでもなさそうだ。一体どういう……



「よし、問3だ。ここに来てから――――」
「ミスタさんッ! もういいじゃないですか! これ以上はやめておきましょう!」
「てめっ! 喋んなっつってただろうがッ! しかもオレの名前まで―――ッ!」



……なるほど。二人組だったのか。
ミスタ。グイード・ミスタだな。
イタリア系の名だ。もしやジョルノがダービーズカフェで待っていた仲間ってのはこいつらか?
6時の放送時点で生き残っているイタリア系の名は、ジョルノと女性名を除いても10人弱……。
断定するには早いが、この地図の広さを考えると低い確率じゃあない。
ジョルノはギャングだ。仲間に尋問慣れした奴がいるというのも理にかなっている。
136レベルE ◆vvatO30wn. :2013/12/21(土) 13:08:34.52 ID:1RbBr9BN
「大丈夫です。この人は…… えっと、わたしの友達とご学友のようです。もしかしたら親しいご関係かもしれませんし」
「……僕の方からもお願いしたいですね。もう質問ごっこはいいでしょう。お互い、一緒に行動する仲間が欲しいとみえる。
これ以上の一方的な尋問は、今後の信頼関係に大きく影響すると思いますよ」
「くっ………」


グイード・ミスタが言葉につまる。もう一人の方は完全に俺の方に付いてくれたようだな。
話の主導権は完全にこちら側へ移った。
しかし、わたしの友達の……ときたか。
ミスタの名を出して咎められたことを気にしているのかもしれんが、全くフォローになっていない。
おそらく東方仗助らのことだ。
なるほどあのお人好しの友達ともなれば、与するのは容易い。
あとひと押し。


「……とにかく、移動しましょう。さっきの銃声で、誰かここへやってくるかもしれません。それが好戦的な人物だったとすれば」
「わかった! わかったから! オレの負けだ」




よし……!






☆ ☆ ☆
137レベルE ◆vvatO30wn. :2013/12/21(土) 13:10:31.65 ID:1RbBr9BN
歴史都市ローマを代表する観光施設サンタンジェロ城。
バチカン市国よりわずかに離れた場所に位置するこの建物は、紀元1世紀よりローマの歴史と共に存在し、軍事施設として、要塞として、または貴族の避難所として利用された来た。
しかし、『このローマ』においては、同位置に上書きされた「DIOの館」によってかき消され、存在してはいなかった。
もっともそんな背景を理解していたのは、生粋のイタリア人であるグイード・ミスタではなく、日本人である俺、蓮見琢馬の方。
そして、宇宙人(?)のヌ・ミキタカゾ・ンシ。
この妙な取合せのトリオが、DIOの館に集まっていた。



「この建物には、オレたち以外は誰もいないはずだ。………よし、この部屋でいいだろう。ゆっくりと話ができる」
「構わないが、もうあんな脅迫めいた尋問はやめてくれよな」


ミスタに連れられて来たのは、館一階の図書室だ。
千帆とよく通った茨の館の図書とは違い、何十年も前の古い書物ばかりだ。ジャンルも、彼女が好む小説の類はなく、もっぱら宗教や神話に関係するものばかり。
この館の主人(名簿に記載のあったDIOか?)は、なかなかいい趣味を持っているようだ。
この場所へ来る道すがら聞いた話によると、ミスタたちは俺に出会う前にも一度この建物に立ち寄りたそうだ。
そして、最上階で2人の遺体を見つけた。
一人は黒人で、射殺体。もう一人の白人は頭を尖った魚の骨で貫かれてという。
争った形跡もなく、死に方も不審で謎の多い現場だったそうだ(特に興味もないがな)。
ミスタの持つ自動拳銃もこの現場で見つけたらしい。
それまでは丸腰で、武器はおろかはじめに支給されたデイパックも地図も、放送で配られた名簿も無くしてしまっていたようだ。
さらにミスタが失ったものはそれだけではなく。



「記憶喪失……?」
「と、いうことらしい。多分………」



ミスタは記憶を失っていた。どの時点から、というのは細かく分からないが、少なくともこのゲームが始まった午前0時から、1〜2時間前に気絶から目覚めるまでの記憶は無いようだ。
その間の出来事に関してはミキタカに聞くことができるので然程問題はないが、ミスタの主観では不安も多いだろう。
スティーブン・スティールという謎の男のパフォーマンスも、空条承太郎とジョルノ・ジョバァーナ、そしてもう一人が爆殺される光景も覚えていない。
記憶を取り戻してからもミキタカ以外の生きた人間に出会ったのは俺が初めてらしい。
ミキタカの緊張感のなさと、不可解な死体。ルールをまた聞きしただけのバトル・ロワイアルのいう殺し合いゲーム。
混乱するのは無理もない。
尋問中に垣間見えた余裕のなさと、地図の話題を出した時の不可解なリアクションの意味も、ようやくわかった。

しかし、記憶喪失とはな………


ウェザー・リポート、エリザベスに続き、こんどはグイード・ミスタ。
このゲーム開始以降のたった数時間で、なにかと記憶障害者との縁が多い。
永遠に消えない記憶の闇に悩まされた俺に対する当てつけかと思うほどだ。
138レベルE ◆vvatO30wn. :2013/12/21(土) 13:11:19.11 ID:1RbBr9BN
それで地図も無く、そのジョルノさんと別れたカフェの場所もわからなくなってしまったと」
「そのとおりです。私がちゃんと場所を覚えていれば良かったのですが、あいにく取り乱してしまっていまして。
う〜ん、どこかのカフェに居たことは間違いないのですがねえ……」
「仕方なく、ローマに土地勘のあるオレを頼りに、町の中心方向へ向かっていたところで、お前を見つけたってわけだ」



いや、お前土地勘無いだろう。
まあ地元の人間ほど観光地の名所は詳しくないこともあるが、サンタンジェロ城すら把握していない程度には、こいつは郷土愛はない。
ジョルノがしばらくダービーズカフェで待つと言っていたにも関わらず見当違いの方角へ向かっていたのはそのためか。
デイパックを開き、テーブルの上に地図を広げる。


「今いるのがこの『DIOの館』だ。この建物から北へ出て、カイロ市街地エリアをまっすぐ進めばダービーズカフェという場所にたどり着く。ここじゃあないのか?」
「……あ、そういえば、カフェの周りの景色は、ヨーロッパというよりもっと繁華街じみていたような気もします」
「オイ、てめえそれを早く言いやがれよ……。まったく逆方向に向かうところだったじゃあねえか」
「そんなこと言われましても…… 地球人の顔の区別が付きづらいのと同じで、町の風景なんかも見分けるのは結構大変なんですから」
「都合のいい時だけ宇宙人の設定持ち出すんじゃねえよこの野郎!」


「……漫才はそのくらいにしたらどうです? 話が前に進みませんので」


まったくいいコンビだよあんたらは……。
ボケとツッコミを繰り返す二人を制す。時計を見ると、次の放送までもうあまり時間もない。


……放送がはじめるまでには、できる限り済ませておきたい。



「じゃあ次に、琢馬。お前の素性についてだが……」
「先程も軽く説明しましたが、僕はごく普通の高校生ですよ。ミキタカさんの友人の東方さんや虹村さんについても、学校の有名人だから名前ぐらいは知っている程度でして。
『クレイジー・ダイヤモンド』だとか『ザ・ハンド』などという能力についても、この殺人ゲームなんていう非現実的な状況でもなければとても信じられません」


自分のことは適当に誤魔化す。
無駄に記憶力がいい分、普通の人間のフリ、物を知らないフリ、そう言った嘘をつくことに離れている。
逆にミキタカから仗助たちの『スタンド』について聞き出すことができた。
このゲームに関係なく、仗助たちは俺に敵対心を持っていた。
今後戦うことになるやもしれない相手の情報は仕入れておかなくてはな。

名簿にあったぶどうが丘高校の人間は、仗助、康一、億泰、間田敏和、山岸由花子、双葉千帆、そして俺の7人。
中等部の矢安宮重清や初等部の川尻早人、卒業生の小林玉美らも含めれば、かなりの人数があの学校の関係者だ。
さらに吉良吉影や、空条承太郎、岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、双葉輝彦、飛来明里、織笠花恵らもまた、杜王町に縁のある人物だ。
特に、ミキタカによると吉良吉影は凶悪な殺人鬼だったという。ただのサラリーマンだという認識しか持っていなかった俺にとって、特に有益な情報だ。

そのヌ・ミキタカゾ・ンシに関しては、杜王町に暮らしていると言いながら、俺の記憶にはいない稀有な存在だった。
宇宙人を自称している時点でどこまで信用していいのやらわからない。
だがまあ、言動を見るに、大して重要な人間でもないだろう。

その後、ミスタの仲間たちについても軽く情報を聞き出す。
能力の詳細などは流石に聞き出せないが、名前と容姿だけでもわかれば有益な情報だ。
ブチャラティ、アバッキオ、ナランチャ、フーゴ、そしてトリッシュか。
やはりジョルノと比べて、このミスタの方が幾分か口が軽い。



よし、そろそろいいだろう。
仕上げに入るとするか。
139レベルE ◆vvatO30wn. :2013/12/21(土) 13:13:28.60 ID:1RbBr9BN
「じゃあ、最後に交代で名簿を見てください。それと、このメモが放送で呼ばれた名前の……つまり、最初の放送までに亡くなった方のリストです。危険人物の名前とか、お知り合いがいないか確認して欲しいのですが」

チェックが終わったら、すぐにダービーズカフェに向かいましょう。
そう付け加えて、2人に名簿とメモを手渡す。
放送の内容も全て記憶しているが、こんな時のために手書きでメモを用意しておいた。



「ええと、たしかこの噴上裕也って人は、仗助さんのお友達だったような気がします。
それとこの片桐安十郎って人と、音石明って人は、たしか仗助さんとは敵同士だったとか」
「でもその2人の名前は放送であったらしいぜ? それに……死んだはずの暗殺チームの奴らの名前までありやがるな。プロシュートって野郎は、確かあの老化ガスのやつだよな?」


2人してメモの内容をじっくり隅から隅まで目を通している。
そろそろだな。
それでは………


「オイオイ……マジかよ。たった6時間でいったい何人…… ん、なんだこの文章…………」




さよならだ、グイード・ミスタ。




「ふーっ、いやはやすごい人数ですね。ミスタさん。お仲間は全員ご無事で――― え?」


ミスタは突然血を吐き、倒れる。
それにワンテンポ遅れて、ミキタカが気がついた。


「なっ! ミスタさんっ! どうしたのですか? ミスタさんっ!?」
「わ―――わかりません。 僕も、ふと目を離した隙に…… 突然ミスタさんが血を噴き出して―――」


白々しくすっとぼけて見せる。
突然の事態にミキタカも混乱中だ。


「く……車………」
「―――え? ミスタさん、何です?」



「車に………轢かれた…………」


「はぁっ!?」


血を吐いて全身に傷と痣を負ったミスタが、うわ言のように呟いた。
ああ、そうだとも。車に轢かれると、痛いんだよ。死にたくなるほど強烈にな。
ミキタカがわけがわからないといった表情で慌てている。
当然だ。ここは館の室内。ついさっきまで隣にいた人間が突然血を吐き倒れ、挙句は『車で轢かれた』などと言い始めたのだからな。
140レベルE ◆vvatO30wn. :2013/12/21(土) 13:15:07.05 ID:1RbBr9BN
「いったい何が……名簿とメモを読んでいただけなのに………」
「ミキタカさん、とにかく落ち着いて! ここを移動しましょう! ミスタさんは僕が運びますから、ミキタカさんは荷物を集めて―――」
「わ…わかりましたッ!」

ミスタのズボンを破り、ふくらはぎを見る。
車のバンパーにぶつけられたような青い痣がよく目立つ。
やはりこの能力は強力だ。
自分の過去の体験を記したページを他人に読ませることで、【感情移入】によってその人物にも同様の事象を追体験させる。
ミスタに渡した放送のメモ、その列挙された名前の中に、むかし俺が交通事故にあった時の記憶のページをさりげなく紛れ込ませていたのだ。
例えば戦闘中に放送を迎えた者。ミスタのように放送中に気絶をしていた者。
そんな連中と遭遇した場合、当然放送の内容を記したメモを求められるだろう。
俺のスタンドは、文字を読むことで発動する能力だ。
グイード・ミスタのような情報弱者にとって、俺の能力は回避不能のトラップといっていいだろう。
そして………


「ぐふっ」


ミスタの落としたメモを拾い集めていたミキタカも、そのトラップに引っかかったようだ。
血を吐き、糸の切れたマリオネットのように地面に崩れ落ちる。
本のページを視界に入れ、存在を認識した時点で効果は発動する。
ミスタが見たのと同じ文章を目にしたようだ。
ミキタカには別の『飛び降り自殺』の記憶を見せてやろうと準備していたが、その手間は省けたようだな。

やれやれ。
ここまで来るのに疲れたが、ようやく善良な市民の演技から解放される。
千帆と2人でいるときでも、こんなに喋ったことはほとんどない。
だがなんとか、放送前にこいつらから色々な話を聞き出すことができた。


「悪く思うなよ」


俺だって、仲間が必要ないわけではない。
ただ、ジョルノ・ジョバァーナの仲間であるお前らとは組めないんだよ。

俺はこいつらとの情報交換の際、俺が既にジョルノと出会っている事や、ジョルノがこいつらを探していたことなど話さなかった。
組むつもりが初めからなかったからだ。
ジョルノ・ジョバァーナと別れた時、俺はエリザベスと一緒だった。
ほんの数時間前の話だ。
エリザベスという名前は名簿には無かったので、次の放送では違う名前で呼ばれるのだろう。
エリザベスの死が、直ぐにジョルノたちにバレることはない。
だが、ジョルノたちと別れたほんの数時間後に、エリザベスと一緒にいるはずの俺が単独で行動していたということをジョルノに知られるのはまずいのだ。
ミスタたちと組むことになれば、ジョルノとの再会は免れないだろう。
あの冷静かつ聡明なジョルノ・ジョバァーナに、無抵抗な女性を手にかけた俺が疑われるという状況は、絶対に避けねがならない。

もっとも、次の放送でジョルノの名前が呼ばれでもしたら、この殺人の意味は無くなるわけだがな。
だがあのジョルノがそう簡単に死ぬとも思えないし、ミスタをここまで楽に殺す絶好の機会が、そうそう何度も巡ってくるとも思えない。

虫の息のミスタの腰から、拳銃を抜き取る。
放っておいても(織笠花恵のように)失血死は免れないだろうが、きちんと止めを刺しておくべきだな。
とはいえ、もうじき放送の時間だ。

死亡推定時刻をあやふやにする為にも、殺すのは放送の直後の方がいい。
こいつらは既に籠の鳥。
軽く引き金を2度引くだけで、文字通りいつでも殺せる。
できる限り最善を尽くすべきだ。ゲームはまだまだ続くのだから。

血の水溜りに沈む2人を眺めながら、椅子に腰掛け、俺は第2回放送の始まりを静かに待った。
141創る名無しに見る名無し:2013/12/21(土) 22:58:07.38 ID:gYKFLZx1
投下きてるううう支援
142創る名無しに見る名無し:2013/12/22(日) 00:07:42.31 ID:BZKreQv3
支援
143創る名無しに見る名無し:2013/12/22(日) 10:03:54.10 ID:epCTUo1/
しえん
144創る名無しに見る名無し:2013/12/22(日) 15:13:29.22 ID:KC0LzVw6
【C-3 DIOの館 1F図書室/ 1日目 昼】

【蓮見琢馬】
[スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力』
[時間軸]:千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中。
[状態]:健康
[装備]:自動拳銃
[道具]:基本支給品×2(食料1、水ボトル半分消費)、双葉家の包丁、承太郎のタバコ(17/20)&ライター、SPWの杖、不明支給品2〜3(リサリサ1/照彦1or2:確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:他人に頼ることなく生き残る。千帆に会って、『決着』をつける。
0.双葉千帆を探す。
1.放送後、ミスタ、ミキタカの両名に止めを刺す。
2.『カードの能力』の持ち主とのコンタクトを図りたい。
2.千帆に対する感情は複雑だが、誰かに殺されることは望まない。 どのように決着付けるかは、千帆に会ってから考える。
[参考]
※参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。
※琢馬はホール内で岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、虹村形兆、ウィルソン・フィリップスの顔を確認しました。
※また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。
※また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります。
※ミスタ、ミキタカから彼らの仲間の情報を聞き出しました。
※拳銃はポコロコに支給された「紙化された拳銃」です。ミスタの手を経て、琢馬が所持しています。


【グイード・ミスタ】
[スタンド]:『セックス・ピストルズ』
[時間軸]:JC56巻、「ホレ亀を忘れてるぜ」と言って船に乗り込んだ瞬間
[状態]:記憶喪失、全身打撲、出血、気絶中。
[装備]:閃光弾×2
[道具]:拡声器
[思考・状況]
基本的思考:なし(現状が全くわからない)
1.車に……轢かれた?

※記憶DISCを抜かれたことによりゲーム開始後の記憶が全て失われています。
※ミスタの記憶はJC55巻ラストからの『ヴェネツィア上陸作戦、ギアッチョ戦の直前』で止まっているようです。
145創る名無しに見る名無し:2013/12/22(日) 15:16:28.83 ID:KC0LzVw6
(やばい…… まずい…… どうしたらいいんでしょうか――――――?)



もしやと思って、死んだフリをしたミキタカ。
彼が倒れた直後に、蓮見琢馬は慌てていた演技を引っ込め、冷酷な殺人者に姿を変えた。

どう考えても、外部から敵に攻撃された気配はなかった。
ギャングをやっているミスタに全く気が付かれずに、致死量のダメージを与えるほどの攻撃が、誰にも気がつかれずに行われるはずはない。
ミスタの近くにいたのは、自分以外では琢馬だけ。
そして、ミスタは琢馬から受け取ったメモを読んでいただけ。

どういう能力かはわからないが、これが攻撃のキーなのでは?
少ない情報からそこまで予想したミキタカは、琢馬に疑念を抱き、そして擬死行為によって確信を得たのだ。
ミキタカはミスタのダメージを真似て、体中に傷を作り、血を吐いた。
そういう『変身』をしたのだ。
琢馬は何も疑うことなく、自分の能力によってミキタカが傷ついたと思い込んでしまった。

ギャングのミスタに比べると、自称宇宙人のミキタカはどう見てもただのギャグキャラだ。
ミスタさえ封じてしまえば、ミキタカはどうにでもなる。
そう思い込んで先にミスタを攻撃した琢馬は、ミキタカを完全に侮っていた。




(危険…… 蓮見琢馬は危険です……! なんとかして逃げ出して、ジョルノさんを探さなくては……! 助けを呼ばなくては……!)




事が起こるのは、放送後。
ミスタの生死はすべて、ミキタカの手にかかっている。
倒れて動けないフリをしながら、ミキタカは第2回放送の始まりを静かに待った。




【ヌ・ミキタカゾ・ンシ】
[スタンド?]:『アース・ウィンド・アンド・ファイヤー』
[時間軸]:JC47巻、杉本鈴美を見送った直後
[状態]:健康、死んだフリをしている
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本的思考:ゲームには乗らない
1.蓮見琢馬はやばい。ミスタを助け、なんとか逃げないと。
2.ジョルノと合流したい。
3.知り合いがいるならそちらとも合流したい
4.承太郎さんもジョルノさんと同じように生きているんでしょうか……?

※琢馬から第一回放送、名簿の情報を得ました。
※ジョルノとミスタからブチャラティ、アバッキオ、ナランチャ、フーゴ、トリッシュの名前と容姿を聞きました(スタンド能力は教えられていません)。
※第四部の登場人物について名前やスタンド能力をどの程度知っているかは不明です(ただし原作で直接見聞きした仗助、億泰、玉美については両方知っています)。
146創る名無しに見る名無し:2013/12/22(日) 19:20:02.78 ID:JExQPAyC
投下乙です。

ギャングと自称宇宙人だったら、ギャングの方を警戒する。
誰だってそーする。俺もそーする。
147創る名無しに見る名無し:2014/01/02(木) 00:01:09.87 ID:qn5SFUqS
683 : ◆c.g94qO9.A:2014/01/01(水) 00:55:10 ID:RV0yQFhI
「見間違いじゃねーんだろうな?」
「いいや、確かだ。俺の視力は両目合わせて4.0よ、仗助ちゃん。絶対に絶対だ」

先頭を行く噴上は二人の会話を背中越しに聞き、顔をしかめた。
この二人、緊張感がなさすぎる……。細かく震える指先で顎をなで、はと思い直し視線を落とす。
いや、俺が必要以上にビビってるだけなのか……?
隣を歩くドイツ軍人は何も言わず、あたりを警戒している。ジョセフと仗助の会話には興味がないようだ。
いつもだったら大声で割って入りそうなものなのに。軍人特有のカンが危険、だと判断してるのだろうか。
戦場で生き残るのは本当に優秀な兵士と臆病者だけだ。
そんな言葉を思い出しながら、噴上はもう一度鼻を鳴らし、前に進んだ。
あたりは静まり返り、四人の歩く音だけが壁と天井にこだまする。

洞窟内は血の匂いが充満している。ただでさえ鼻が利く噴上には辛いことだった。
血の匂いにまぎれ潜んでいるであろう何者かの匂いを探そうと、鼻をひくつかせる。
鉄臭い臭いに吐き気がこみ上げるが、噴上は根性で我慢した。


六人は今二手に別れ、行動している。
クレイジー・ダイヤモンドで治療を施したといえエルメェスとシーラEはまだ本調子ではない。
体調を整える意味を込めてふたりは地上で待機。

一方主力であり、機動性のある四人は洞窟探索に出かけた。
二手に別れることに懸念はあったものの、康一のことを考えれば一刻の猶予もないと判断したのだった。

「視界が悪いな……。噴上、何か匂いは見つかったか」
「猟犬じゃねーんだよ、俺は。
 ただでさえ地下で匂いがこもりがちだってのに、こんだけ血が広まってちゃそう簡単には見つかんねーよ」

シュトロハイムが一旦歩くのをやめ、四人は立ち止まる。シュトロハイムの問いかけに、噴上は苛立ちげに返した。
シュトロハイムは頷き、今度は問いかけるようにジョセフを見た。
ジョセフは肩をすくめ、手にしたペットボトルを突き出す。水面に異常なし。
付近に何者かが潜んでいる、ということはなさそうだった。

「ジョジョ、もう一度聞くが貴様が見かけた人影とは確かなんだろうなァ?」
「しつこいぜ、シュトロハイムッ! 見たって言ったら確かに見たんだ! そんなに俺が言う事信じられねぇかァ〜〜〜?」
「普段の行いが知れるな」

四人が地下に潜ったのはジョセフが見かけたという人影を追ってのことだった。
康一を追うというのが当初の目的であったが、あまりに手がかりが少なすぎた。
マウンテン・ティムからの連絡はなく、噴上の鼻もあたりに臭いがありすぎてすぐには見つけられそうにもない。
そんな時にジョセフが怪しげな人影を見つけた、と言ったのであった。
そしてその人影を追って行き着いた先が地下だったのだが……

「そろそろ放送の時間だし、戻ったほうがいいんじゃないスか」
148創る名無しに見る名無し:2014/01/02(木) 00:03:35.79 ID:NEiQjVAF
684 :新・戦闘潮流    ◆c.g94qO9.A:2014/01/01(水) 00:55:40 ID:RV0yQFhI

沈黙を打ち破るように、仗助が言った。三人は苦々しい表情で頷くしかない。
あとは放送で康一とティムの名前が呼ばれないことを祈るしかない。
本格的な行動開始はそのあとだ。今来た道を戻り、四人は古代環状列石に続く階段を目指す。

その時……―――


「……止まれ」

三人を制するように噴上が手を上げる。鼻を鳴らしながらあたりを探っていた噴上の顔に影がおちる。
合図で四人は前方からの攻撃に備える。仗助とジョセフが後ろに下がり、シュトロハイムと噴上は前で構える。
おぼろげながら人影が洞窟先から浮かび上がってきた。足音も聞こえてくる。
歩幅は小さく、足取りは慎重だ。小柄な男性か、あるいは女性ぐらいのサイズ。
しかし四人は緊張を解かない。シュトロハイムが一瞬だけ背後を見渡した。後ろから近づく影、なし。

互いの顔がようやく見えるかそれぐらいのころ、人影がゆっくりと口を開いた。
幼げな男の声が、洞窟内に反響した。


「僕のことを覚えているだろう、東方仗助……」
「てめぇは……―――!」


だがその先は続かなかった。目の前に立つ少年が醸し出す不気味さを上回る、なにかが仗助の背中を刺した。
背後から突然湧き上がった威圧感に、仗助は思わず振り返り、そして息を飲んだ。
噴上もシュトロハイムも気がついていない。突然現れた少年に目を凝らし、『それ』の存在に気がついていない。
さっきまで誰もいなかったはずの背後に突然現れたのは……筋骨隆々、圧倒的存在感を醸し出す、一人の戦士ッ!


「ワムウッ!」


ジョセフが叫び、飛び出そうとしたが全ては時すでに遅し。
仗助が二人を突き飛ばし、ジョセフが距離を詰めようと駆ける。だがすでにワムウの行動は終わっていた。
蹴り一閃。トンネルの天井を突き破るような一撃があたりを揺るがし、石屑が雨のように降り注ぐ。
砂埃が立ち、瓦礫が押しつぶさんと襲いかかり、そして……―――

四人は完全に分担されてしまった。それを見たワムウは、怪しげな笑みを浮かべていた。


149創る名無しに見る名無し:2014/01/02(木) 00:05:54.95 ID:Hh2qAiyl
685 :新・戦闘潮流    ◆c.g94qO9.A:2014/01/01(水) 00:55:59 ID:RV0yQFhI
背後には岩、前方には柱の男。
戦闘態勢に入ったワムウを見て、仗助は背中を汗が伝っていくのを感じた。
圧倒的担力。圧倒的存在感。本能的にわかってしまう。
もし俺がこの男と戦ったならば……タダでは済まないだろうということに。

しかし仗助は焦らなかった。
恐怖心を感じる一方で、絶対的な『自信』も存在していた。
心を落ち着かせるように、櫛を取り出しリーゼントを整える。
逃げ場が無い中、一向に構えを取らない仗助に対しワムウがドスを効かせ、言葉を吐いた。

「さぁ、構えろ。そして来るがいい。
 お前のスタンドとこのワムウの『風の流法』……どちらが優れているか、測ってみようではないか!」
「えーーっと、つまりアンタ、俺と戦いたいってことスかね」
「そうだ」
「正々堂々、真っ向勝負?」
「うむ」
「フェアースポーツ精神にのとった、爽やかで、裏みあいっこなしの本番勝負一本、みたいな?」
「くどいぞ、東方仗助ッ! もはや貴様に選択権は無しッ!
 構えろッ! そしてかかってこいッ! もしも来ないというのであれば……」
「なるほど、洞窟内に無理やり閉じ込めて、理想的な対戦環境を整える、と。
 こりゃ大したもんですよ。グレートな作戦ッスねェ〜〜〜……」

その瞬間、仗助の背後の岩が宙に浮かんだ。
ビデオを逆回しにしていくように、崩れた天井へと吸い込まれていく瓦礫。
そして、瓦礫の隙間にすべり込ませるように体をねじ込んでいた……ジョセフ・ジョースターがそこにいたッ!

「ただ一点、俺が素直に一対一を望むようなお利口さんじゃない、ってところを除けばな!」

驚き、目を見張るワムウを尻目にジョセフが立ち上がる。
イタズラがうまくいった悪ガキのような表情を浮かべながら、ジョセフは隣に立った少年を横目で眺めた。

そっくりだ、と思った。素直じゃないところ、意地汚いところ、皮肉屋なところ、相手の裏をかく頭の回転の良さ。
これが血筋というものなのだろうか。実感はないが、なんとなく、心でそれを理解した。
背中をくすぐられたような居心地の悪さもあったが、だがそれ以上に安心感を感じた。
あの柱の男ワムウを前にしても、ジョセフはなぜだか負ける気がしなかった。

「仗助ちゃーん、ナイスよ、ナイスぅ〜〜! この調子でさっさと全部、戻しちゃいな。
 俺がいれば全部大丈夫〜〜って言いたいところだけど、味方が多いに越したことはないからねェー!」
「そうしたいところだけどよ、目の前のこいつが許してくれそうにもないんスよね〜〜」
「なぁに、それなら仕方ない」

なぜだかたまらないほど頬が緩む。
ニヤついた表情で仗助を小突くと、仗助も釣られてニヤリと笑った。
笑いの伝染は広がり、ワムウすらも可笑しそうにニヤついている。
誰もが理解している。そして心の底、どこかでそれを望んでいる。
150創る名無しに見る名無し:2014/01/02(木) 00:07:12.71 ID:Hh2qAiyl
690 :新・戦闘潮流    ◆c.g94qO9.A:2014/01/01(水) 01:01:08 ID:RV0yQFhI
>>685 と >>686 の間にヌケがありました。



ジョセフの全身から薄い光が立ち上る。腹のそこから吹き出すような呼吸音。
体を半身に構え、両手をねじるような構えを取る。
仗助がスタンドを呼び出すと、ジョセフに並び立つように隣に立った。
ポケットから櫛を取り出し、いつもどおり髪型を整える。戦いの前の儀式のようなものだ。

「ジョジョ! 貴様とは一度決着をつけた身……勝負は決し、お前とは二度と拳を交えることはないと思っていた!」

ワムウのからだから闘気が立ち上り、あたりの瓦礫をビリビリと揺らした。
風が威嚇するように、仗助とジョセフの間を通り抜ける。
気を抜けば吹き飛ばされそうなほど、強烈な風だった。だが二人は微動だにしない。
ワムウの動きを見逃すまいと、神経を研ぎ澄まし、待っている。


「だが貴様がその気であるというのならッ 世代を超え、時を超え……再び俺と戦おうというのならッ!」
151創る名無しに見る名無し:2014/01/02(木) 00:10:08.77 ID:Hh2qAiyl
686 :新・戦闘潮流    ◆c.g94qO9.A:2014/01/01(水) 00:56:31 ID:RV0yQFhI


それ以上は不要だった。
ワムウは跳躍すると、二人に向かって弾丸のように迫っていった。
ジョセフが前に構え、仗助が後ろに回る。波紋を身にまといながらワムウを跳ね除けるようにいなす。
追撃とばかりに攻撃を重ねる。クレイジー・ダイヤモンドが軌道の逸れたワムウめがけ、思い切り拳を振るった。

「仗助、攻撃は俺に任せな! 柱の男に触れるとやばいぜ!」
「問題ないぜ、じじい……! 触れるからこそ『イイ』んだ。触れるからこそ……」

パワーAのスタンドに殴り飛ばされ、ワムウは壁へと叩きつけられた。
洞窟が揺れるほどの衝撃、一度の交戦で瓦礫が降ってくるほどの寸劇。
ジョセフの忠告に仗助は落ち着いた様子で返す。手についた肉片をなんの感慨もなく見つめ……

「『なおす』ことができる」

吹き飛んだワムウのもとに、肉片が戻っていく。状況はワムウにとって圧倒的不利だった。
仗助とジョセフ。ともに実力は折り紙つきの二人。簡単な傷ならば治癒可能。時間をかけて戦ったならば、増援が駆けつける。
だがワムウはこれ以上ないほど愉快だった。今まで生きてきた中でこれほどまでに生きている、と実感したことはなかった。

死者を愚弄し、勝者を嘲笑ったスティーブン・スティールのことはもはやどうでもいい。
あえて言うならば……感謝するほどかもしれない。
これほどまでに愉快なことがあるか。これほどまでに素晴らしいことがあるか。

二人のツェペリ、波紋と鉄球。
二人のジョジョ、波紋とスタンド。
楽しい……・楽しいッ! 心の底から、腹のそこから笑えてくるほどに! ワムウは戦いを楽しんでいるッ!

「フフフフ……ハハハハハハ、ハァアアアハハハハハハッ!!」

がれきの山から体を起こし、高笑いとともにワムウが仗助とジョセフに突っ込んでいく。
仗助もジョセフも、隣に立つ男を頼りになると感じながら、拳を振るう。
戦いは始まる。血肉湧き踊る、最高で至高の戦いだ……!





152創る名無しに見る名無し:2014/01/02(木) 00:12:48.92 ID:Hh2qAiyl
687 :新・戦闘潮流    ◆c.g94qO9.A:2014/01/01(水) 00:57:24 ID:RV0yQFhI
「我ぁぁぁああああがゲルマン魂が作り出したこの体がぁああああああああ
 一分間に600発の徹甲弾を発射しィィィイイ瓦礫の山を吹き飛ばしてくれるワァアア――――ッ!!」
「おい、待て。落ち着け……シュトロハイム」

がなるドイツ人をなだめながら噴上は暗闇に目を凝らした。
あたりの空気が変わったことに気づき、シュトロハイムもおとなしくする。
緊張感があたりを漂い、ぴりっと神経が張り詰めていく。噴上の目が暗闇に慣れ始めた。

いた。見間違いでなく、そこにはエニグマの少年が佇んでいた。
だが先までの怯えた面影は消えていた。影が落ち、力がみなぎり、戦う前の男の面構えをしている。
並々ならぬ凄みを感じながら噴上は鼻をヒクつかせる。少年の方に向かって、ゆっくりと進んだ。
宮本までの距離はおよそ十メートル強。ハイウェイ・スターで一撃を叩き込むには、まだ遠い。

「おっと、それ以上僕に近づくなよ」

噴上の足が止まる。シュトロハイムも動きを止めた。
銃を構えたわけでもない。ナイフを振りかざしたわけでもない。
宮本少年がポケットから取り出したのは一枚の紙。しかしそれだけで、足を止める理由は十分だった。

「僕は決して戦いたいわけじゃあない。生き残るために、戦うんだ」
「そこをどく気はねェようだな、紙使いの少年よォ……」
「噴上裕也、警告するようだが君の癖はまだ覚えているからな。
 『顎を指でイジる』……それが君の癖だ。君を紙にすることは紙を破くよりもたやすい。
 それを忘れないんだな」
「グダグダ言ってんじゃあねェぜッ!! 俺のハイウェイ・スターを舐めるなよッ!!
 この距離ならてめェに一発ぶち込むのに五秒もかかんねぇ!
 悪いこと言わねぇから、とっと尻尾巻いて逃げ出しな!
 どうせあのワムウとかいう野郎にも脅されてるだけなんだろうがよ、このウスラチビがッ!」

噴上の言葉は事実だった。
宮本に課された仕事は二つ。ワムウの元まで仗助一行を連れ出すこと。ワムウの戦闘を邪魔しないよう、それ以外を足止めすること。
だが実際のところ、戦闘が始まってしまえば宮本には関係のないことだった。
噴上の言うとおり逃げ出してもいいだろう。それどころか、仗助たち側に寝返るのも一つの手であろう。
だが……

(こいつらはわかっていない……! あのワムウとかいう男の恐ろしを、強さを……!
 仗助がいくら強くたって敵わない。今の僕にできることは、あのワムウに殺されないようにすることだけなんだ……ッ!)

恐怖に打ち勝つほど宮本は強くなかった。そして臆病で寝返るほどに弱くもなかった。
なまじワムウに感情があり、もしかしたら恐怖のサインを見抜けるのではと期待してしまったことも状況をこじらせた。
宮本はどっちつかずで、判断を下せない。現状維持の一手と八つ当たり気分で、宮本は噴上と対峙する。
153 ◆c.g94qO9.A :2014/01/02(木) 00:16:47.62 ID:Hh2qAiyl
「広瀬康一の癖を知ってるかい、噴上裕也」
「……なに?」
「康一の恐怖のサインは『まばたきを二度』だ。いろんな人がいるけど康一はその中でも随分と紙にしやすいやつさ。
 そう、『こんなふう』にすぐに紙にできるほどね……」

バレたところで宮本に不利になる点はない。
少しのあいだおとなしくしていれば、ワムウの勝負が終わるまでの間、時間が稼げさえすれば。
噴上の顎先が震えた。彼にはその可能性を消しきれない。
ありえない話ではないのだ。急に姿を消した康一が『紙になっていない』と断言することは、できない。

遠くどこかで戦いの音が聞こえた。
噴上は黙っている。宮本は笑みを浮かべる。シュトロハイムは現状を理解できず、二人の顔を見比べる。
無音で、静かな戦いが始まる。ブラフ、勇気、決断。戦いが長引けば長引くほど、勝負は進んでいく。

はたして少年たちの決断は?



154 ◆c.g94qO9.A :2014/01/02(木) 00:20:48.87 ID:Hh2qAiyl
688 :新・戦闘潮流    ◆c.g94qO9.A:2014/01/01(水) 00:58:38 ID:RV0yQFhI



「くそったれ、完全に埋まってやがるッ! クソがッ!」

ガァァァァアンン、と鉄が震える音が響き、続けざまにもう一度聞こえた。
地下へと続く階段は完全に埋まってしまっていた。中の様子は伺えない。
掘り起こそうにも周りの建物が折り重なるように倒れていて、それも容易ではない。
エルメェスは八つ当たり気味に瓦礫の山の頂上に転がっていた鉄扉を蹴飛ばした。
くそったれ、ともう一度毒づく。仲間が無事かどうか、それすらもわからない。

後ろから足音が聞こえ、エルメェスは振り返った。
苦い顔したシーラEが近づいてくる。状況はどうやら思った以上切迫しているようだ。

「こっちもダメ。細い隙間が見えるけど、下手したら全部崩れるわ」
「とりあえず手分けして崩壊の少ないところを探そう。四人全員が身動きがとれない、ってことは考えにくい。
 中と連携して瓦礫を取り除くのがベストだと思う」
「わかったわ」

二手に別れ、あたりの様子を探っていく。時折瓦礫を除いては崩壊具合を確かめ、また探る。
しばらく辺りには岩を放り投げる音と、悪態の声しか聞こえなかった。
エルメェスも次第に焦り始める。どこをどうさがしても、瓦礫の山と細い隙間しか見つからないように思えた。


「!」


エルメェスが立ち止まり、そして駆け出す。
瓦礫以外のものを初めて見つけた。灰色のコンクリートに映える、真っ赤な何かが目を引いた。
見間違えであってほしいのか、そうでないのか。それは明らかに人間の一部に思えた。
エルメェスの見間違いでないのなら……それは埋まった誰かの腕だけがそこにあるように思えた。

「待ってろ、今助けてやる!」

近づき、腕周りの瓦礫をキッスで除いていく。物音を聞きつけシーラEがこちらに向かっていくのが目に映った。
声をかける暇すら惜しい。キッスが地面を掘り進んでいく。
エルメェスは、今埋まっている人物が自分の知っている仲間でないことに気がついた。
だがそれが何だというのだ。誰だろうと助けない理由にはならない。掘り進めるスピードを上げる。完全に体が出るまであと少しだ。

「ダメよ、エルメェス!」

シーラEの声が聞こえた。エルメェスは掘り進める。
どうやら埋まっている人物は少年のようだ。小さな背中と腰の部分が見えてきた。
身動きが完全に取れないわけではないらしい。腕周りを彫り進めると、ガリガリ、と音が聞こえた。

「そいつは敵よ! そいつは……、ヴィットリオ・カダルディは! 危険な―――」
155創る名無しに見る名無し:2014/01/02(木) 10:33:47.64 ID:WJvBmy1q
支援
156 ◆c.g94qO9.A :2014/01/03(金) 15:54:59.25 ID:X0Xo4jBs
689 :新・戦闘潮流    ◆c.g94qO9.A:2014/01/01(水) 00:59:06 ID:RV0yQFhI



そして次の瞬間……キッスが少年を掘り起こした瞬間!

振り向きざまに一閃。エルメェスの胸を切り裂くようにナイフが横切った。
間一髪で身をかわし、しかし避けきれない刃が脇腹をえぐった。
鮮血が舞い、大きく後退する。コンクリートの上にポタリ、ポタリと血が落ちる。
シーラEの隣まで下がると、エルメェスはこれまで以上に、盛大に悪態を付いた。

「ようやく見つけた唯一の生存者がまさか敵だとはよォ……どんだけツイてねェんだ、アタシは」
「敵、というか狂犬ね。薬ヅケの精神異常者よ。手加減は無用、わかってるわね、エルメェス……」

二人はなんの打ち合わせもなく二手に分かれた。
シーラEが右、エルメェスが左だ。足場は瓦礫の山で、崩れやすい。
飛びかかるタイミングを揃えなければ各個撃破される。ビットリオを挟むように二人はジリジリ進む。
ビットリオは動かない。暗い、ぼんやりとした目で二人を見比べている。
現状を把握しきれえないものの、意識ははっきりとしているようだ。闘志も十分みなぎっている。

ヴィットリオはシーラEを知らない。ヴィットリオはエルメェスも、知らない。
だが……何か気に入らないから殺してやる。相手はどうやらやる気のようだ。なら、こっちもその気になってやろぉじゃあねぇか。
彼にとって、戦うにはそれだけで十分な理由なようだ。

ジリジリと焦れる時間が流れる。
飢えた狼が獲物を狙うよう、二人はヴィットリオの周りを円を描き、歩き続ける。
ヴィットリオも神経を研ぎ澄まし、集中する。下手な動きを見つければ容赦なく襲いかかるつもりだ。
手にしたドリー・タガーが輝いた。光の反射が目に飛び込み、一瞬だけ、シーラEの動きが止まった。


「!」


そして、その瞬間ッ! 二つの影が猛然と動き出す!
ヴィットリオが豹のように飛びかかる。それを追うように、エルメェスも飛び出した。
自分の失態に遅まきながら気づき、シーラEはヴードゥー・チャイルドを構える。

きらめくナイフ、躍動するスタンド。命が飛び交うその瞬間……勝負の火蓋が、切って落とされた。
157創る名無しに見る名無し:2014/01/03(金) 15:55:37.43 ID:X0Xo4jBs
691 :新・戦闘潮流    ◆c.g94qO9.A:2014/01/01(水) 01:01:26 ID:RV0yQFhI




【A-4とA-5の境目(地下)/一日目 昼】
【ジョセフ・ジョースター】
[能力]:波紋
[時間軸]:ニューヨークでスージーQとの結婚を報告しようとした直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:首輪、基本支給品×4、不明支給品4〜8(全未確認/アダムス、ジョセフ、母ゾンビ、エリナ)
[思考・状況]
基本行動方針:とりあえずチームで行動。殺し合い破壊。
0.ワムウに対処。
1.康一を追うことに同行
2.悲しみを乗り越える、乗り越えてみせる
[備考]
エリナの遺体は救急車内に安置されています。いずれどこかに埋葬しようと思っています。

【東方仗助】
[スタンド]:『クレイジー・ダイヤモンド』
[時間軸]:JC47巻、第4部終了後
[状態]:左前腕貫通傷(応急処置済)
[装備]:ナイフ一本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気はない。このゲームをぶっ潰す!
0.ワムウに対処
1.ジョセフ・ジョースター……親父とはまだ認めたくない(が、認めざるを得ない複雑な心境)
2.各施設を回り、協力者を集めたい
3.承太郎さんと……身内(?)の二人が死んだのか?
[備考]
クレイジー・ダイヤモンドには制限がかかっています。
接触、即治療完了と言う形でなく、触れれば傷は塞がるけど完全に治すには仗助が触れ続けないといけません。
足や腕はすぐつながるけど、すぐに動かせるわけでもなく最初は痛みとつっかえを感じます。時間をおけば違和感はなくなります。
骨折等も治りますが、痛みますし、違和感を感じます。ですが"凄み"でどうともなります。
また疲労と痛みは回復しません。治療スピードは仗助の気合次第で変わります。

【ワムウ】
[能力]:『風の流法』
[時間軸]:第二部、ジョセフが解毒薬を呑んだのを確認し風になる直前
[状態]:疲労(小)、身体ダメージ(小)、身体あちこちに小さな波紋の傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:JOJOやすべての戦士達の誇りを取り戻すために、メガネの老人(スティーブン・スティール)を殺す。
0.二人のJOJOと戦う。
1.強者との戦い、与する相手を探し地下道を探索。
2.カーズ様には会いたくない。
3.カーズ様に仇なす相手には容赦しない。
4.12時間後、『DIOの館』でJ・ガイルと合流。
[備考]
※『エニグマ』の能力と、輝之助が参戦するまでの、彼の持っている情報を全て得ました。
  脅しによって吐かせたので嘘はなく、主催者との直接の関わりはないと考えています。
※輝之助についていた『オール・アロング・ウォッチタワー』の追跡に気付きました。今のところ放置。
158創る名無しに見る名無し:2014/01/03(金) 15:56:18.54 ID:X0Xo4jBs
692 :新・戦闘潮流    ◆c.g94qO9.A:2014/01/01(水) 01:02:24 ID:RV0yQFhI

【A-4とA-5の境目(地下)/一日目 昼】
【宮本輝之輔】
[能力]:『エニグマ』
[時間軸]:仗助に本にされる直前
[状態]:恐怖、左耳たぶ欠損
[装備]:コルト・パイソン
[道具]:重ちーのウイスキー
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない
0.時間を稼ぐ
1.ワムウに従うふりをしつつ、紙にするために恐怖のサインを探る。
2.ワムウの表情が心に引っかかっている
[備考]
※スタンド能力と、バトルロワイヤルに来るまでに何をやっていたかを、ワムウに洗いざらい話しました。
※放送の内容は、紙の中では聞いていませんでしたが、ワムウから教えてもらいました。

【ルドル・フォン・シュトロハイム】
[能力]:サイボーグとしての武器の数々
[時間軸]:JOJOとカーズの戦いの助太刀に向かっている最中
[状態]:健康
[装備]:ゲルマン民族の最高知能の結晶にして誇りである肉体
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ドルドのライフル(5/5、予備弾薬20発)
[思考・状況]
基本行動方針:バトル・ロワイアルの破壊
1.現状への対処

【噴上裕也】
[スタンド]:『ハイウェイ・スター』
[時間軸]:四部終了後
[状態]:全身ダメージ(小)
[装備]:トンプソン機関銃(残弾数 90%)
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:生きて杜王町に帰るため、打倒主催を目指す。
0.現状への対処
1.康一を追うことに同行
2.各施設を回り、協力者を集める?
159 ◆c.g94qO9.A :2014/01/03(金) 15:57:53.37 ID:X0Xo4jBs
693 :新・戦闘潮流    ◆c.g94qO9.A:2014/01/01(水) 01:03:14 ID:RV0yQFhI
【B-4 古代環状列石(地上)/1日目 昼】
【ビットリオ・カタルディ】
[スタンド]:『ドリー・ダガー』
[時間軸]:追手の存在に気付いた直後(恥知らず 第二章『塔を立てよう』の終わりから)
[状態]:全身ダメージ(小)、肉体疲労(中〜大)、精神疲労(中)、麻薬切れ
[装備]:ドリー・ダガー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1(確認済)、マッシモ・ヴォルペの麻薬
[思考・状況]
基本行動方針:とにかく殺し合いゲームを楽しむ
0:ヤクが切れているのでまともな思考が出来ない。目的地も不明瞭
1:兎にも角にもヴォルペに会いたい。=麻薬がほしい
2:チームのメンバーの仇を討つ、真犯人が誰だかなんて関係ない、全員犯人だ!

【エルメェス・コステロ】
[スタンド]:『キッス』
[時間軸]:スポーツ・マックス戦直前
[状態]:全身疲労(小)全身ダメージ(中)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況] 基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.ビットリオに対処
1.康一を追うことに同行
2.まずは現状を把握したい
3.徐倫、F・F、姉ちゃん……ごめん。
[備考]
※他のメンバーと情報交換をしました。

【シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:肉体的疲労(小)、精神的疲労(小)
[装備]:ナランチャの飛び出しナイフ
[道具]:基本支給品一式×3(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1〜2(確認済み/武器ではない/シ―ラEのもの)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ様の仇を討つ
0.ビットリオに対処
1.康一を追うことに同行
[備考]
※参加者の中で直接の面識があるのは、暗殺チーム、ミスタ、ムーロロです。
※元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はあるかもしれません。
※他のメンバーとの情報交換を行いました。
160 ◆c.g94qO9.A :2014/01/03(金) 15:59:10.89 ID:X0Xo4jBs
694 :新・戦闘潮流    ◆c.g94qO9.A:2014/01/01(水) 01:06:15 ID:RV0yQFhI
以上です。誤字脱字があれば教えてください。

すみません、私用で手が離せませんでした。
とはいったものの一ヶ月前には余裕で書き込めるぐらい暇になったのですが……。
なにせ予約ぶった切って一ヶ月は突っ走ってたので気まずくて申し訳なくて現実逃避してました。
すみません。

今更来てなんじゃわれ、と思われるかもしれませんが、誰も書いてなかったので書いちゃいました。
ダメだったら却下します。ほんとすみません。

新年明けましておめでとうございます。
今年もいい年になりますように。
161創る名無しに見る名無し:2014/01/05(日) 12:33:28.36 ID:DKE5FRMh
投下乙です
時代を越えた親子共闘ですな
162創る名無しに見る名無し:2014/01/08(水) 22:18:17.67 ID:SfFLQOBH
もうそろそろ放送いけそうかな?
あとどのパートが足りてない?
163創る名無しに見る名無し:2014/01/13(月) 01:55:51.75 ID:WU8NZiY4
ジャイロたちとジョナサンフーゴ組だけじゃね
164創る名無しに見る名無し:2014/01/14(火) 22:05:22.30 ID:ygt0atIM
その2組も午前までは来てるし、どうしても必要なわけでもなくね?
予約入りそうになければもう放送予約入っても良さそうだけど
165創る名無しに見る名無し:2014/01/15(水) 02:05:28.79 ID:gk6LpFw0
集計者さんいつも乙です
今期月報
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
151話(+3) 56/150 (- 0) 37.3(-0.0)
集計までの間に仮投下分が投下された際は、話数を+1でお願いします
166 ◆LvAk1Ki9I. :2014/01/15(水) 21:42:32.18 ID:z0/IynO8
花京院典明、ラバーソール
本投下開始します。
167嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I. :2014/01/15(水) 21:46:15.55 ID:z0/IynO8
「なあオイ花京院さんよぉ、黙ってないでもうちっとなんか喋ったらどうだよ?」
「………………」

D-7北東の路上。
花京院典明は『人捜し』のため周囲を調べつつ、ただひたすらに北上を続けていた。

「ヒヒヒ、ひょっとしてどうせ歩くなら野郎二人よりも女と一緒の方が―――とか考えてるってか? なんならおれが叶えてやろうか」
「………なんのためにわたしがきさまと並んで歩いているのだと思っている」
「冗談だっての―――しっかしマジな話、ホントにこっち来てよかったのかねえ?」
「わたしは西から来たが奴はいなかった………きさまが隠れていた南東の方に来ていないのならば、北―――すなわちこちらの可能性が一番高い。
 手がかりはこれきりだが、きさまにも他に当てなどないのだろう」
「っていわれてもねぇ〜〜〜、わかんなかったら人に聞く………ってのはどうだ? 近くに誰かしらいねーのか?」
「先程の二人の他にはすぐ接触できそうな距離に参加者は見当たらない………きさまがその騒がしい口を閉じていてくれるならば、あるいは見つかるかもしれんがな」

(何処にいる………空条承太郎………)

スタンドも駆使して周囲を探るが、目当ての人物―――空条承太郎の姿は何処にも確認できない。
せめて手がかりぐらいは残っていないかとも考えるが、痕跡は何一つ見つからなかった―――そもそもこの時点で承太郎は大規模な戦闘などに巻き込まれたりしていないのだから当然だが。
そして、歩き続ける花京院のすぐ近くで彼にひたすら話しかけているのは当の捜し人、空条承太郎―――無論本物ではなく、その正体はスタンドで『変装』している彼の同行者である。

ラバーソール―――本名かどうかはわからないがそう名乗った男は、同行者としては先程まで一緒にいた山岸由花子に勝るとも劣らない存在だった―――悪い意味で。
DIOに金で雇われているというこの男は欲望をそのまま形にしたような存在であり、彼の下品な口調は信用できそうな要素など欠片も見られないうえにいちいちこちらを苛立たせる。
さらにいえば彼はDIOに忠誠を誓っているわけではないため、今でさえいつ襲い掛かってきてもおかしくない人物であった。
それでも我慢して同行させているのは、彼のスタンド『黄の節制』の存在、これに利用価値を見出したからだ。
承太郎に変装した彼と並んで歩いていれば彼らの知り合い―――DIOの敵が間違いなく接触を試みてくるだろうから、そこで不意をつくのもたやすい。

さらにもうひとつ、聞き出した『黄の節制』の防御能力がいざ承太郎と戦う局面において役に立つと考えていたからである。
―――忌々しいことだが未来において自分が敗れた可能性が高い以上、一人で挑むということはすなわち敗北を意味すると言っても過言ではない。
となれば承太郎と戦う前に戦力のひとつでも確保しておく必要がある………すぐに承太郎本人を追う以上、この時点で花京院の頭からラバーソールと別行動して効率的に敵を始末していく選択肢は自然と消滅し、彼との同行を選んだのだ。
だが花京院にとって、それらの利点と現在感じている不快感がつりあうかどうかはまた別の問題であった。
168嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I. :2014/01/15(水) 21:49:30.68 ID:z0/IynO8
―――そもそも何故彼らが承太郎ひとりに集中してその足取りを追っているのかというと、話は彼らが出会って情報交換を終えたころまで遡る。
ラバーソールとの情報交換………というよりお互いの一方的な話だったが、相手の話の中には有益な情報があった。

―――すなわち、彼が殺し合いの開始後に空条承太郎と遭遇していたということ。

承太郎一人を始末したところでジョースター一族が根絶やしになるわけではない。
だが、少なくとも彼が死ねば子孫を残すことも、DIOと戦うことすらも無くなるため、何らかの形で未来の『運命』は変わると信じていた。
すぐにラバーソールの記憶を頼りに承太郎と遭遇したという場所を訪れてみたのだが………

「………………いないな」
「ったりめーだろが。会ったっつってもまだ夜も明けてねーころだ、とっくにどっか行っちまったに決まってんだろーがよ、このタコッ!」

やはりとでもいうべきか、到着したときには時既に遅く目的の相手は同行者の言う通り、どこか遠くへ去ってしまった後のようであった。
花京院はどうにか承太郎の足取りをつかむべく、ひとまずスタンドで近くの参加者を捜索する。

「………やや東に星の模様の服の男、その少し南に原住民風の男………か」
「………ん? オイ、もうちょっと詳しく教えやがれ」

小さく呟いただけだったがラバーソールが耳聡く聞きつけ、何か思い当たることがありそうな顔で聞いてきた。
花京院が相手の容姿を告げると、頬を掻きつつ微妙そうな顔で言う。

「あー、あのガキにサンドマンのヤローか………そいつらは放っとこうぜ。さっき承太郎のフリしてダマしてやったからな………
 あいつら恐ろしくせっかちな上に人の話ぜんぜん聞かねーから、むしろ本物の承太郎と会ったら問答無用で殺そうとするんじゃないかねえ、ヒヒヒ」

結局彼らはその二人との接触を避け、交換した情報のみから推測して北を目指すことを決め、歩き出した。
そして話は冒頭へと戻るのだが―――



「………なあオイ花京院さんよぉ、アンタ実際あの得体の知れない承太郎に勝てるのか? ンン〜?」
「策はある」

現在の花京院はこの選択は失敗だったか、と思い始めていた。
ここまで承太郎の手がかりは全く得られていないどころか、油断も隙もない同行者が襲い掛かってくるのを警戒して自身のスタンドを近くに待機させているため広範囲の索敵も行えずにいた。
それに加えて、誰とも遭遇できずにラバーソールの好き勝手な無駄口や意味のない行動を一人で相手し続けることにもなり、次第にストレスもたまってくる。
いっそのこと襲い掛かってきてくれたほうが楽かもしれない………顔には出さずともそう思いつつ、花京院はひたすら歩を進めていった。

―――その後も移動中の彼らが他の参加者と遭遇することが無かったのは単に巡り合わせが悪かったからか、はたまた誰かにとっての幸運、あるいは不幸だったのか。
ともあれ、そんな彼らにようやく変化が訪れたのはじきにC-8が禁止エリアになろうかという時刻のことであった。
169嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I. :2014/01/15(水) 21:52:46.16 ID:z0/IynO8
#


「コイツどっかで見たことあるんだよな………確かDIO………様の部下の………なんて奴だったかな」
「………………」

C-7の路上に差し掛かったとき彼らの目に飛び込んできたのは首無しの死体―――いや、首はすぐそばに転がっていたため正確には『無い』わけではなかったが、ともかくそういう死体。
これまでスタンドによる索敵で死体を見かけたことはあったのだが、知った顔でない上に持ち物が奪い去られていることから無視してきた。
だがこの死体はデイパックを所持したままであるということ、そして進路上にありわざわざ避ける必要はないという二点の理由から、彼らはこの死体のある道へと足を踏み入れたのだった。
そこでラバーソールが首をひねりつつ生首のほうを見て「見覚えがある」と言い出して足を止め………しばらくして彼はどうにか記憶の中の回答に辿りつく。

「あーそうそうダンだな、スティーリー・ダンって奴だ。能力はしらねーが」
「………DIO様の部下」

それを聞いた花京院は死体を検分し始める。
―――周りには争いの跡は全く無い………死体と血痕が無ければここで何かが起こったとは思えないほどだ。
―――ダンのデイパックの中には、ほとんど………というよりひとり分にしては多すぎるほどの支給品が残っている―――基本支給品を除けば、使い道のなさそうな物ばかりだが。
―――首と胴体はさほど離れていないところにあるにもかかわらず、彼の首輪はどこにも見あたらない。
―――そして、首の切断面………『切断された』というよりは『ちぎりとられた』という表現のほうが適切といえそうな痕跡。

そこまで調べて胴体に軽く触れたところで花京院はある事実に気付き眉をひそめ………ラバーソールもそれを見て訝しむ。

「なんかあったか?」
「………まだ微かに温かい」
「………へぇ」

ふざけた言動が多いとはいえラバーソールも裏に生きる人間である。
その言葉の意味―――すなわち、犯人はまだ近くにいるかもしれないということを瞬時に理解し気を引き締める。
だが、花京院の様子から即座に襲撃を受ける様子はなさそうだと判断するとすぐにその表情は元に戻り………彼の注意は別のものへと移っていく。
その間、花京院は『犯人』について考えていた。

(不必要そうな道具は放置、その一方首輪は持っていったということは主催者に反抗する意思あり、さらに首の切断面からするとおそらく刃物は用いていない………
 そして、この辺りにいた参加者でDIO様の部下を殺害しそうな人間を考えると最も有力なのは――――――やはり空条承太郎か)

実際のところ花京院の推測は的中だったのだが、彼本人はあくまで自身の持つ情報のみから導き出したものという認識のため確信までは持っていなかった。
ひとまずラバーソールの意見も聞いてみるかと顔を上げたところで、彼はダンの胴体に黄色いスライムが纏わりついている、という異様な光景を目にする。
当然、誰の仕業かは一目瞭然だったので花京院はスライムの主に向かって問いかけ、相手もそれに答えた。
170嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I. :2014/01/15(水) 21:55:14.39 ID:z0/IynO8
「何をしている」
「見て理解しやがれってんだこの田ゴ作が、死体なんてもう用はねーだろ? おれがいただいて養分にしちまうんだよ、ドゥーユゥーアンダスタンドゥ?」
「………構わんが急げ、犯人を追う」

空条承太郎を相手どる以上、多少信用できないとはいえ戦力は多いに越したことはない。
となればラバーソールのこの行動は結果的にプラスへとつながるかもしれない………そう考えると花京院は捕食を許可し、無表情のまま再び歩き出そうとする。
一方、そんな彼の考えを欠片も理解していないラバーソールはどこまでも自分の意思で突っかかっていった。

「あん? てめーイカレてんのか? こんな奴の仇討ちなんてする必要ねーだろ」
「きさまの話が真実ならば、こいつを殺した奴はすなわち、DIO様の敵に位置するということだ」
「………ヒヒヒ、ご熱心なことで………まるで恋する少女みたいでッ!!?」

その言い回しが気に入らず―――『恋する少女』という部分で山岸由花子を思い出したからなのだが―――途端に不機嫌になった花京院はギロリと相手を睨みつける。
ラバーソールは一瞬たじろいだものの、それ以上の追求は無かったため言葉を続けた。

「ヒ、ヒヒヒ………で、花京院さんよぉ。その敵とやらを追うにはどっち行きゃあイイのかわかってんのかねぇ?」

ラバーソールからすれば何の気なしに出てきた軽口であったが、受けた花京院はその問題に改めて腕を組み考える。

(………そうだ、誰が犯人だとしても『どちらに向かった』のか………それがわからないことには―――)
「北か?西か? まさかそろそろ禁止エリアになる東に突っ込むなんてマヌケなことはしねーよなぁ?」

未だ話し続ける同行者から視線をはずすと花京院は地図を取り出し、しばらく眺めつつ考えを巡らす。
そのすぐ横のラバーソールは死体を食うことに夢中………というわけではなく、花京院をちらちらと横目で見ていた。
正直彼からすれば、まだ対策らしい対策も思いついていないのにあの得体の知れない承太郎と遭遇しかねない行動は避けたかったのだが………

(油断してる………わきゃねーよな。クソッ、『こいつ』さえ無けりゃ………)

ダンの死体をスタンドで捕食する間、ラバーソールは先程花京院と出会って彼の話を聞いた直後のことを思い出していた………
171嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I. :2014/01/15(水) 21:58:41.99 ID:z0/IynO8
#


「―――以上だ、きさまに心当たりのある人物はいるか?」
「いねぇーな………しっかしアンタ、マジでDIOに忠誠誓ってんのかよ? 人の心変わりってな恐ろしいねェ、ヒヒヒ」
「………………」
「まあ、その肉の芽がモノホンかどうかはしらねーが、おれとやる気ならとっくにやってる以上嘘じゃなさそーだな………で、結局アンタ何がしてーんだよ」
「無論、ジョースター達を始末する………特に重要なのは空条承太郎だ。やつだけは、一刻も早く始末しなければならない………きさまにも手伝ってもらうぞ」

―――ラバーソールと花京院が遭遇した場所からさほど離れていない民家。
花京院は自身の目的と今まで遭遇してきた参加者の情報を話し終えたところでラバーソールに聞くが、相手の反応はちゃんと答えているのかどうかすら怪しい曖昧なもの。
もっとも、花京院のほうも今対峙している相手がアレッシーの言っていた『自分に変装したスタンド使い』だとして、そういう男の情報に過大な期待など元からしていない。
………ただ彼が知る未来において、どうも自分がDIOの敵になったというのは事実らしく、それ自体に利用価値は見出しつつも内心複雑な思いを抱いていた。
ひとまず自分がDIOの味方だということだけ再確認させると、ラバーソールに協力するよう視線を向ける。
だが………

「………ん? 手伝えって? おれが、てめーをか? ヒヒヒ………ゴメンだね! おれはおれの好きにやりてーからな」
「………………」
「そもそも、おれへの態度がなっちゃいねぇんじゃねえのか? 協力しろってんならそれなりの誠意ってもんをみせてもらわねーとなぁ?」

ニヤニヤ笑いながらラバーソールは拒否する。
彼の立場からすれば目の前の花京院もジョースター一行であることに変わりはない。
DIOの支配下にあるとはいえ、自分の知る限りそこから逃れて敵に回った相手に協力する、しかも先程本能で危険と判断した承太郎を追うなどまっぴら御免であった。
またお互いに相手への信頼など持ちあわせていないため、自然と彼らの会話は平行線をたどる。

「誠意………? ふん、うぬぼれるな。わたしが誠意を見せる相手はただひとり、DIO様だけだ」
「ヒヒヒ………んじゃあこの話はなしだな。おれは勝手にやらせてもらうぜ」
「それもできない相談だな」
「あん?」

ラバーソールはしばし言葉の意味を考え………次の瞬間には相手がやる気になったのかと思い下品な笑みを浮かべつつ、構える。
しかし………

「へえ〜? んじゃあ今この場でおれに食われる準備ができましたってか? うれしいね「その通りだ」………は?」
172嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I. :2014/01/15(水) 22:01:42.63 ID:z0/IynO8
相手が割り込ませた言葉に耳を疑う。
今、目の前の男はなんと言ったのか?
目を白黒させるラバーソールに対し花京院は静かに続ける。


                  「その通りだ、わたしを食いたいのなら………食わせてやる」


次の瞬間ラバーソールは仰天した……
ふつう相手に捕食されそうになったら食われまいとする!
DIOへの忠誠心があるならなおさら食われるわけにはいかない!!
その脅しで有利に交渉をしかけるはずだった!
しかし! 花京院は…逆におもいっきり食われようとしたッ!

(ヒ、ヒ、ヒッヒヒヒ………こいつ、スタンドも―――)
「きさまはおそらくこう考えているだろう………こいつ、スタンドも出さずに何を考えているのか、と」
(………………)
「スタンドは『すでに出している』………………食いたければ勝手に食えばいい」

それを聞いたラバーソールは視線を動かして辺りを見回すが………『法皇の緑』の姿はどこにもない。
そうこうしているうちに花京院が再び口を開いた。

「ただし――――――きさまが食った後はわたしの好きにさせてもらうがな」
「………………ゲッ!!?」

言い終わると同時にラバーソールの両手が「勝手に」動き、自らの首を絞めはじめる。
その様子はまさに数時間前の光景の焼き直し………ただ異なるのは、犠牲者が山岸由花子ではなくラバーソールという点。

「確かに『きさまのスタンド』にわたしでは勝てんかもしれん………だが『きさま自身』はどうかな?」
「グ………ガガ………ッ」

自分の意思ではもがくことすらできず、スタンドは―――出せたとしても、自らの呼吸が止まる前に相手を捕食することは出来そうもない。
苦しみながらもラバーソールは舌打ちしつつ後悔していた。

(クソッ!もう気付きやがるとは………だから『こいつとだけは』戦いたくなかったんだ!!)

打撃も斬撃も、熱や冷気さえも無効化する自身のスタンド『黄の節制』。
そんな彼がジョースター一行の中で唯一警戒しなければならないと考えていたのが目の前の男―――花京院の『法皇の緑』である。
油断した拍子に自分の体内に侵入され、操られてしまえばいかにスタンドが無敵とてどうしようもない。
すなわち、ジョースター達と戦う際に彼だけは万が一にも近くにいてもらっては困る―――シンガポールでも花京院本人を遠ざけておき、その隙に彼に化けて承太郎を始末して残りは他の追っ手にまかせるつもりだったのだ。

現在のように相手がひとりだけ、しかも味方の立場ならばどうにでもできるという期待があったのだが、その考えは大甘だった―――いまさらながらにラバーソールは理解した。
脅しは十分と判断した花京院が一旦手を自由にすると、ラバーソールは途端に卑屈になって喋りだす。
173嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I. :2014/01/15(水) 22:04:52.09 ID:z0/IynO8
「じ………冗談だ、冗談! まさかおれと仲間われしようっていうんじゃあないよな!? DIOの部下同士、仲良くやろうぜ? おい!」
「………わたしは寛大だ。きさまの態度も、下品極まりない言動にも目をつぶろう………だが、これだけは言っておく」

命が惜しい相手は口先だけでも反抗の意思はないことを示してくる―――これまた似たような展開。
ワンパターン………そう表現することも出来るが、『定石』だけでねじ伏せられる相手にわざわざ『奇策』は必要ないのだ。
先程はこの時点で妥協した花京院だったが今度は下手に出ず、相手を睨みつけたまま大仰なポーズを取ると厳かに言った。

「DIO『様』だ………部下というなら、あの方には敬意を払え」
「わわ、わかってるって、おれにとってもDIO………様は大事な雇い主様だからな、な!」
「………………」

その言葉を受けてようやくラバーソールの全身は自由を取り戻す。
だがスタンドが出て行った様子は無く、彼の態度は低いままであった。
そして機嫌をとろうとでもしたのだろう、口を滑らせて今後の行動を決定付ける情報を漏らしてしまう。

「そ、そうだ! あんたにとっておきの情報があるぜ! 結構前だが、おれはこっから少し北で承太郎本人と会ったんだ!」
「なに………!? すぐにそこまで………待て、今の話は本当か? もし口からでまかせだった場合は………」
「し、心配いらねーって! この状況で嘘はいわねー!」

花京院はハッキリ言って彼の言葉など信用していなかった。
だがひょっとしたら真実かもしれないと思ったら………万が一でも真実だという可能性があるのなら………そう考えると、相手の話を聞かないわけにはいかなかった。

「………まあいい、さわりだけ話せ………」
「お、おう………まあ最初から話すとだ、おれはコロッセオのちょい北で―――」
「………きさまの頭脳がマヌケなことはよくわかった………………それとも」
「あん?」

相手の無知さに呆れつつも、眉ひとつ動かさずに花京院は続ける。

「空条承太郎は、実際そんな無駄口ばかり叩く男なのか? ならば別に構わんが―――」
174創る名無しに見る名無し:2014/01/15(水) 22:17:35.45 ID:oQpgUmzL
 
175創る名無しに見る名無し:2014/01/16(木) 00:35:42.41 ID:IGI1Z12l
支援
176嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I. :2014/01/16(木) 04:46:34.39 ID:clo9gvNL
#


(ヒヒヒ、大真面目な顔であの発言―――無駄口を叩きまくる?『あの』承太郎が? ほんとケッサクだったねえ。
 思わず想像して笑い転げちまって………って違うだろが!)

ラバーソールはうっかり別方向に行きかけた思考を元に戻す。

………そう、今まで同行という言葉を用いてきたこの二人の関係、断じて対等なものではなかった。
ラバーソールは花京院に力で脅され、反抗すれば殺されるという状態で強制的に連れてこられていたのだ。

何故花京院が相手を力づくで使役する方法を選んだのかというと、山岸由花子との一件で彼が懲りていたこともある。
つまり、いかに立場上『敵』ではなくとも、このような相手と対等な関係を結ぶ必要などない、首輪でもつけて上下関係をはっきりさせておかない限り、同行にメリットなど欠片もないということ。
すなわち花京院は最初からラバーソールと『対等』にも『仲間』にもなる気は無かったのだ………!
実際、ラバーソールの性格を考えるとこの方法は実に正しいと言えるが、勿論相手にしてみればたまったものではなかった。

改めてラバーソールは自分の状態を再確認する。
現在、体は自由に動くしスタンドも使える―――だが、今も自分の体内に潜んでいる『法皇の緑』が花京院の意思ひとつでいつでも自分を始末できるというのはおそらく事実である。
操る条件としてスタンドを体内に侵入させる必要があるということはわかっているが、それをどう防げというのか。
スタンドで体内をガードする、あるいはこのまま体内に閉じ込めて捕食してしまうというのも考えたが、『黄の節制』は空気を通さない上に相手のスタンドは紐状になれる。
わずかでも隙間があれば相手は脱出、攻撃共に思いのままであり、逆に隙間が無ければ自分が窒息してしまう。
また花京院本体に肉片を取り付かせて逃げても、射程外に離脱する前に操られて終了というのが関の山………そこまで考えてラバーソールの額に一筋の汗が浮かんだ。

(………ん? ひょっとしていまのおれ、『脱出不可能』なんじゃあ………ま、まさかな!
 なんか手はあるだろ! えーとまだ残ってた支給品は確か………)

と、その時。
考えを巡らすラバーソールの耳に遠くから微かに何か―――自動車のエンジンがかかるような音が飛び込んできた。
花京院の方へと顔を向けるとどうやら彼にも聞こえていたらしく、音の発生源と思われる方角を眺めつつ話しかけてくる。

「………聞こえたか? 西のほう、車のエンジンがかかる音がした」
「ん? ああ、なーんかそれっぽい音はしたような………」

音の正体に関して深く考えていないラバーソールを尻目に花京院は即座にスタンドを音の方向へと伸ばす。
チャンスかと思うラバーソールだったが、すぐに紐状のスタンドが自分の口から伸びつづけていることに気付いて全部出て行ったわけではないと理解する。
―――実際『法皇の緑』の一部だけではその人間を操ることはできないのだが、その事実を知らないラバーソールに反抗はできなかった。

そして『法皇の緑』が遠くに確認したのは―――高級そうな車が、道を左折して曲がり角へと消えていく光景。
その車が見えなくなるまでの『一瞬』………そう、本当に一瞬。
もしも承太郎がきちんとダンの死体の後始末をしていれば、花京院たちがこの場で立ち止まることは無かった―――そうなっていれば、生まれなかったかもしれない瞬間。
だが、確かにその一瞬のうちに花京院は車の運転席にてハンドルを握る男の姿を捉えていた。

「………空条承太郎」

花京院の知る姿―――元々の記憶にあった彼とも、殺し合いの最初に爆破された彼とも微妙に異なるその姿………
ラバーソールもその点については話の中で触れていたため、人違いという可能性も想定はしていた。
しかし、実際に見たことによりその考えは雲散する―――あそこまで似た人間が、他にいるはずがない。
追跡はその場で終了―――このタイミングで仕掛けるのは得策でないと判断し、スタンドを呼び戻すと即座にラバーソールのほうへと向き直った。
177創る名無しに見る名無し:2014/01/16(木) 10:53:20.96 ID:wij5hxLP
支援
178創る名無しに見る名無し:2014/01/16(木) 12:12:31.90 ID:R3O+sC1B
 
179嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I. :2014/01/16(木) 14:28:19.43 ID:clo9gvNL
「………承太郎を発見した。追うぞ、急げ………取り逃すことなど許されん」
「オイ、まだ首が残って―――」
「無駄口は控えろ、それともわたしに逆らう気か?」

戻した『法皇の緑』をちらつかせる。
それを見たラバーソールも胴体はすでに捕食し終えていたため、食い下がらずに従う。

「お、おう、しゃーねえな………んー、どっかにゴミ箱でもありゃあ、マイケル・ジョーダンばりのダンクでこの首をぶちかましてやるんだがねぇ」
「一塁ベースに………いや、さっさと来い」
「チキショー、エラそうにしやがって………っていうか相手は車だろ? んな急いだって追いつける保障はねーんだからもうちょいゆっくり行こーぜ?」

ラバーソールを半ば強引に促し、花京院は足早に歩きだす。
………あるいは、この時彼が抱いていた焦燥感―――DIOのためにジョースターを始末することを誓っておきながら未だに何も出来ていない自身の不甲斐なさが、遂に出口を見つけて溢れ出たのかもしれない。
傍から見てもそれが感じとれるぐらいに気迫がこもった足取りで花京院は進みだす。
そこにラバーソールもしぶしぶ着いていくが、彼の素顔はひどく歪んでいた。

(とはいったものの、あくまで早歩き………ま、全力疾走して追いついたときにはすっかり息切れしてました、じゃあとんだ笑いものだしな………
 クソ、付け入る隙が見当たらなすぎてホント笑えてきちまうぐらい冷静だなコイツ………しょうがねえからここはおとなしく従って―――)

今までラバーソールは花京院に対して無駄口を叩いて歩みを止めたり、必要以上に自分を警戒させて広範囲の索敵を封じることでのらりくらりと追跡を遅らせていれば承太郎の足跡を見失い、そのうち諦めるかと思っていた。
だが彼にとっては不幸なことに、承太郎は捕捉されてしまった―――となるとどうやら近いうちに決戦となる可能性が高そうである。
かといって花京院から逃げられない以上、往生際の悪い彼もさすがに腹をくくって―――

(―――いられるかっての! ジョーダンじゃあねえ! さっさとスタンドの対策してコイツを食っちまわねえと、おれのほうが使い捨てられちまう!
 承太郎を追うのはともかく、このおれがロクに日の光も浴びてねーようなレロレロのメロン野郎にこんな扱いされるのはメチャゆるさんよなああああ!!)

―――いなかった。
意外と余裕がありそうにも見えるのだがそれもそのはず、ラバーソールにはひとつだけ希望があったのだ………自分が生かされているという事実が。
いつでも殺せるとまで脅迫しておいて承太郎を倒すのに同行しろ、と指示してくるのは自分の能力が『必要』とされているという証拠。
つまり、よっぽど下手な行動でも取らない限り花京院は自分を殺す気はない………おまけに近くの敵は花京院が勝手に見つけてくれるため、歩く間自分が周囲に気を配る必要もない。

(要するに、ハンサムラバーソールさまがこの立場をひっくり返すようなアイデアを思いつく時間はまだあるってワケだ、ヒヒヒヒヒ)

立場上は花京院の下僕のような存在のラバーソールだが、彼は彼なりに現在の状況を利用していたのである。
もっともそれも浅知恵………例えば次の放送で承太郎の名が呼ばれ、自分が用済みと判断されたときはどうするのか………などといったことは何一つ考えていないのだが。


未来では味方となる男―――空条承太郎を殺さんとする男、花京院典明。
逆に未来では敵となる男―――花京院典明と共に行動する男、ラバーソール。
加えてどちらも完全に自分の意思で行動しているわけではないこの奇妙な二人組み。
信頼や協調性など欠片も存在せぬまま、彼らは当面の目標である承太郎へ向けてゆっくりと、だが確実にその距離を縮めていくのだった………
180創る名無しに見る名無し:2014/01/16(木) 14:36:46.86 ID:35qPEwgz
 
181嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I. :2014/01/16(木) 14:55:34.36 ID:clo9gvNL
【C-7 南部 / 1日目 昼】

【偽スターダストクルセイダース】

【花京院典明】
[スタンド]:『ハイエロファント・グリーン』
[時間軸]:JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前
[状態]:健康、肉の芽状態
[装備]:ナイフ×3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様の敵を殺す。
1.空条承太郎を追跡し、始末する。
2.ジョースター一行の仲間だったという経歴を生かすため派手な言動は控え、確実に殺すべき敵を殺す。
3.1、2のためにラバーソールを使役・利用する。
4.機会があれば山岸由花子は殺しておきたい。
5.山岸由花子の話の内容、アレッシーの話は信頼に足ると判断。時間軸の違いに気づいた。

※ラバーソールから名前、素顔、スタンド能力、ロワ開始からの行動を(無理やり)聞き出しました。


【アレッシーが語った話まとめ】
花京院の経歴。承太郎襲撃後、ジョースター一行に同行し、ンドゥールの『ゲブ神』に入院させられた。
ジョースター一行の情報。ジョセフ、アヴドゥル、承太郎、ポルナレフの名前とスタンド。
アレッシーもジョースター一行の仲間。
アレッシーが仲間になったのは1月。
花京院に化けてジョースター一行を襲ったスタンド使いの存在。


【山岸由花子が語った話まとめ】
数か月前に『弓と矢』で射られて超能力が目覚めた。ラヴ・デラックスの能力、射程等も説明済み。
広瀬康一は自分とは違う超能力を持っている。詳細は不明だが、音を使うとは認識、説明済み。
東方仗助、虹村億泰の外見、素行なども情報提供済み。尤も康一の悪い友人程度とのみ。スタンド能力は由花子の時間軸上知らない。


【ラバーソール】
[スタンド]:『イエローテンパランス』
[時間軸]:JC15巻、DIOの依頼で承太郎一行を襲うため、花京院に化けて承太郎に接近する前
[状態]:疲労(小)、空条承太郎の格好、『法皇の緑』にとりつかれている
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×4、不明支給品2〜4(確認済)、首輪×2(アンジェロ、川尻浩作)、ブーメラン、おもちゃのダーツセット、おもちゃの鉄砲
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残って報酬ガッポリいただくぜ!
1.花京院をどうにかして始末する、この扱いは我慢ならねえ。
2.承太郎と出会ったら………どうしようかねえ?

※サンドマンの名前と外見を知りましたが、スタンド能力の詳細はわかっていません。
※ジョニィの外見とスタンドを知りましたが、名前は結局わかっていません。

※花京院からこれまで出会った参加者を聞きましたが、知っている人間は一人もいないため変装はできません。
※エジプト九栄神は一人も知らないようです。そのため花京院からアレッシーが語った話や時間軸に関することは一切聞かされていません。


【備考】
・C-7南部路上のスティーリー・ダンの死体のうち胴体がラバーソールによって捕食されました。所持品もラバーソールが回収し、首だけがそのまま放置されています。
・二人が聞いた車の音は第143話『本当の気持ちと向き合えますか?』で承太郎たちがぶどうが丘高校から出発したときのものです。
・二人は体力を消耗しない程度の(承太郎たちの車よりもやや遅い)ペースで承太郎たちを追跡しています。
 そのため車が走っている間(第148話『大乱闘』で空条邸に駐車するまで)には追いつけません。
182嫌な相手との同行時における処世 ◆LvAk1Ki9I. :2014/01/16(木) 15:02:01.91 ID:clo9gvNL
以上で投下終了です。
前スレでもそうでしたが投稿が長時間になって申し訳ありません。

仮投下からの大きな変更点はありません。
誤字脱字、その他意見などありましたらよろしくお願い致します。
183創る名無しに見る名無し:2014/01/19(日) 17:09:18.71 ID:+SP3AJJt
乙でした
ラバーソール良いように操られてる訳じゃないのね
184創る名無しに見る名無し:2014/01/23(木) 00:46:54.23 ID:RU+51vNE
乙です
承太郎と偽承太郎が鉢合わせの可能性が……
肉の芽花京院は1st2ndにない狡猾さがあっていいですね
185創る名無しに見る名無し:2014/01/25(土) 23:48:45.09 ID:6GkQFmY6
したらば見たら予約入ってるじゃん
Lvさんの康一・ティムパートが投下されれば放送いけそうかな
どちらにしろ楽しみ!
186創る名無しに見る名無し:2014/01/31(金) 21:27:06.14 ID:wXBIIYGz
遅くなりましたが本投下済作品のwiki収録を行いました。不足等々ありましたらご連絡ください
187 ◆LvAk1Ki9I. :2014/02/01(土) 22:12:58.98 ID:tJtGRVBp
広瀬康一、マウンテン・ティム
本投下開始します。
188はぐれヒーローたちの協力と限界 ◆LvAk1Ki9I. :2014/02/01(土) 22:18:10.11 ID:tJtGRVBp
「………………」

太陽の下、二人の男が静かに歩いていく。
前を行くのはしっかりした足取りながら、後ろにいる相手と離れすぎないよう気を使いながら進む青年、マウンテン・ティム。
後ろを付いていくのは満身創痍と言っても過言ではなく、それでも遅れまいとその歩を進める少年、広瀬康一。

二人の間に会話はない―――ここしばらくは、ずっと。
口を開けば何かが壊れてしまいそうな、そうでなくともその歩みが完全に停まってしまうのではないかと思えるほど二人の間の空気は張り詰めていた。
彼らの立場は言うなれば………敗残兵。
戦いに敗れて『失った』彼らがお互いに会話をしたとしても、何が変わるわけでもないと理解して………あるいは諦めていたのだった。
彼らはそのまま歩き続け………しばらくして、ようやく口を開いたのは康一。

「………………ティムさん」
「………どうした?」
「ここ、川沿いですよね………どうしてわざわざここまで来る必要があったんです?」

極めて事務的に、どうしても確認したい事柄だけを告げる。
というのも彼らはカーズから逃げ出した後、タンクローリーの終着点となったコルソ通りを横切って西へと進み、現在はB-4の中央付近にてティベレ川沿いに北西へと歩いていた。
しかし、康一が覚えている限りでは彼らの仲間たちがいたのはB-4の北東、古代環状列石のはず。
直接そこに向かわず、遠回りをしているのは何故か………その問いに対しティムは康一の側によると、少し声を落として答えた。

「………鳥の中には木の上じゃなく草むらの中に巣をつくる種類がいる。
 そういった鳥は他の生物に巣の場所を知られないよう、あえて巣から離れた場所に降り立ってから歩いて巣まで戻るんだ。
 オレたちは今、それに似たことをやっている」
「………『アイツ』、ですか」
「ああ、まっすぐ皆の元に向かってあの『柱の男』に行き先がバレたら、合流する前に先回りされて皆が奇襲を受けるなんてこともあり得るからな」

康一の怪我を考えれば一刻も早く仲間の元に戻り、東方仗助の『クレイジー・ダイヤモンド』に治してもらうべきだった。
だが、問題なのはそこに辿り着くまで………文字通り化け物じみた身体能力を持つ『柱の男』を移動スピードで上回れるとは到底思えない。
さらにダメージと疲労が蓄積した今の自分たちではおそらく、追いつかれた場合に片方が囮になったとしても、もう片方も逃げ切れない可能性が高いのだ。
そうなると、現在戦える状態ではない者を含む仲間たちの位置だけは易々と教えるわけにはいかない………そう考えた末の移動経路。
また、望み薄ではあったが『太陽』に弱い柱の男から逃げる場合、日光を遮断できそうな建物が両側にある通りよりも片側が開けた川沿いの方が僅かながら有利なのではという算段もあった。

「………………」

答えを聞くと康一は再び黙りこみ………それを見てティムは嫌なことを思い出させてしまったな、と思う。
先程康一はひとしきり泣き叫んだ後、涙も乾かぬうちに自分から移動を提案したのだ。
それは吹っ切ったわけでも前向きになったわけでもなく、ここで止まっていては『足止め』をしてくれた由花子の死が完全に無駄になってしまうから―――ごちゃごちゃの頭で唯一考えられた、やけくそ気味の提案。
他者の言葉がしっかり届くようになるまでは、まだ時間が必要―――そう考えたティムは康一に余計な言葉をかけたりせず、ただ黙って彼の先に立って歩き出したのだった。

幸いというべきか、移動中の二人にちょっかいをかけてくる参加者は彼らが懸念するカーズも含め、誰もいなかった。
だがそれはあくまで外から見た結果………実際の彼らは今にも近くの建物から、地面から奇襲を受けるのではないかという悪いイメージにとりつかれ、精神的にも参りかけていたのだ。
そんな彼らが突然耳に飛び込んできた轟音に対して過剰に反応したとしても、誰も責めたりはしないだろう。
189はぐれヒーローたちの協力と限界 ◆LvAk1Ki9I. :2014/02/01(土) 22:27:53.15 ID:tJtGRVBp
「川が………!?」
「雨が降ったわけでもないのにここまで増水するなんて、ただごとじゃあないぞ………なにがあったっていうんだ?」

彼らの見ている前で、突如ティベレ川が原因不明の増水………しかもよく見ると、勢いよく水が流れ込んでくる排水溝は対岸の側ばかり。
奇妙な現象ではあったが、皮肉にもこれがきっかけで会話を取り戻した彼らにとっては仲間との合流が先決であり、現時点で何かアクションを起こすわけでもない―――はずだった。

「………! ティムさん、あそこッ!!」
「ん? あれは………!?」

急激に水量が増えていき、いまや完全に濁流と化した川の流れ―――その一点を指し示し康一が叫ぶ。
その指先が示す方向を見たティムの目にも『それ』が飛び込んでくる。

「人が………人が、流されているッ!!」
「何ッ!? この流れだ、水泳なんてやってる場合じゃあないぞ!」

彼らのいる川岸からやや上流の位置。
流れの中央を時折浮き沈みしつつ流されていくのは、まぎれもなく人間の体だった。

(位置は川のほぼ中央、ロープを投げたとしても届かない………
 ………いや、ちょっと待て………そもそもあれは………)

ティムはすぐさま救助の方法を考え始めるが、同時に流される人間を見て違和感を覚える。

(見た限りでは確かに人間のようだが、手足どころか体全体が全く動かずに流されていく………
 普通溺れているならば、最低限呼吸のために顔だけは上げようとするものなのに、その様子すら見られない………ん?)

さらに思案する彼の目前を小さな影が駆け抜けていった………その先にある川へと、一直線に。

「康一君―――!?」

影の正体に気付いたティムは仰天する。
だが時既に遅く、康一は川へとその身を投げ出していた。

「無茶だ、康一君ッ!!」

ティムも川で溺れている者をすぐに助けたいという気持ちは理解できる。
だが、たとえ康一がオリンピックの金メダル級スイマーだったとしても、この激流に着衣のまま飛び込むなど自殺行為以外の何物でもない。
ましてや今の彼は怪我人、傷口が開いたりすればそのまま失血死してしまう可能性もあるのだ。
慌ててロープを構え川岸に駆け寄ると康一の姿を探し………すぐに自分の目を疑う。

(あれは!?)

驚くべきことに、康一は溺れていなかった。
彼の体は徐々に下流の方へと流されてはいるものの水に沈む様子は全くなく、むしろボードもないのに波に乗りつつ流されている者との距離を縮めていく。
どういうことかと目を凝らし、ティムは気付いた―――康一の服になにやら『文字』が張り付いているのを。

(スタンド能力………! さすが康一君、あんなことも出来るのか………なら、オレも自分の仕事を果たさなくてはな!)

今のところ溺れる心配はないとはいえ、スタンド能力がいつまで持続するかなど不安要素はある。
ティムは一度ロープをしまうと、自身も下流へ向かうべく地上を走り出した。
190創る名無しに見る名無し:2014/02/01(土) 22:34:56.86 ID:ej6EoROZ
 
191はぐれヒーローたちの協力と限界 ◆LvAk1Ki9I. :2014/02/01(土) 22:35:25.44 ID:tJtGRVBp
#


(ハァ、ハァ………)

荒れ狂う流れに揺さぶられ、康一の全身が悲鳴を上げる。
由花子に痛めつけられた際のダメージが直っていないのに加え、ここまで移動してきた疲労もあるのだ。
だが、物理的にも心情的にもいまさら後戻りなどできない。
自身の服に貼り付けた『プカァ』の文字が自分を浮かせ続けてくれることを信じつつ、康一は流れてきた人物―――男性に向かい必死で手を伸ばす。

(う、ぐっ………重………ッ!)

自身の体を『エコーズ』で支えつつ相手の首の後ろをどうにか掴むが川の流れに逆らいきれず、逆に康一が引っ張られるように流されていく。
掴まれた側は急にブレーキがかかったことにより一瞬止まり、引っ張られた衣服の懐から光る『何か』が幾つか零れ落ちて流されていくが、康一にそれを気にする余裕など無かった。
再び激流に流され始めた体を離すまいとするが、康一より一回り以上も大柄な男の体格に加え、たっぷりと水を吸った衣服が重さに輪をかける。
さらに男の体は康一と違い勝手に浮き上がらないため、岸まで引っ張り上げるどころか必死に支えようとするだけで精一杯となっていた。

(うわ………これはちょっとマズイかも………)

沈まなければ溺れないとはいえ、川から這い上がれなければどの道自分たちはジ・エンドである。
さらに男は気を失っているのかピクリとも動かず、意識が戻りそうな気配も全くない。
康一が危機感を覚えたその時―――前方から彼の耳に聞き覚えのある声が飛び込んできた。
慌てて声がする方向へと顔を向け、川にかかる橋から激流の轟音に負けじと声を張り上げる存在を確認する。

「捕まれ康一ィィ――――ッ!!!」
「ティムさんッ!?」

橋の高欄にロープを結びつけ、水面ギリギリのところまで降りて橋脚に脚をつきロープと腕を伸ばすのはマウンテン・ティムッ!
沈まないとはいえ、急な流れの中では康一にとってあまりに小さな救いの手。
だが侮るなかれ、康一と同様スタンド使いであるティムもまた、この状況に無策で挑んだりはしない!
彼の『腕』がロープを伝い………康一にとってこれ以上ないというくらいピッタリの位置に移動してきた!!

「すみません、助かりますッ!」

康一もまた、自由なほうの腕を伸ばし………ガッチリとその手を掴む。
すぐに掴んだ手に引っ張られて康一と男の体はティム本体の元へと運ばれ、橋脚に脚をつくことで宙ぶらりんに近い状態ながらもどうにか川からの脱出に成功した。

「まったく、その怪我でなんて無茶をするんだ。きみの行動には本当に驚かされる………
 こういう場合は、陸上から先回りして拾い上げる方が安全確実だというのに」

康一はすみません、と謝罪しようとして驚く………ティムの顔を見ると、彼が小さく微笑んでいたのだから。

「怒っているわけじゃあない。むしろオレは、一刻も早く人命救助をしようとしたきみの命がけの行動に敬意を表する………
 だがそれでも、この人を助けるには遅すぎたようだ………」
「………………!!」

しかし、言葉を続けるティムの表情は途中から徐々に曇っていった。
言われた康一も引っ張りあげた男の姿をあらためて確認し………男の体のあちこちが潰れており、首や関節もあらぬ方向に曲がっている状態なのに気がつく。
近くで見ると………いや、最初に見つけたときでもよく観察していれば、遠目にもわかったろう―――男が、既に死亡していたということが。

「おそらく、この人は殺された後に川へ投げ込まれたんだろう………オレたちにできることは『無かった』」
「………でも」
192はぐれヒーローたちの協力と限界 ◆LvAk1Ki9I. :2014/02/01(土) 22:40:38.92 ID:tJtGRVBp
(ぼくはまた、助けられなかった………)

言葉には出さずとも、ティムには康一の思いが手に取るように理解できた。

(当たり前だ………いくらスタンド使いで強い心を持っているとはいえ、人の死は辛く、重い………
 彼のようなごく普通の少年に、すぐに現実を受け入れろなんてのは酷過ぎる)

割り切れない思いは当然ある………だが、『すぐに』ではなくとも、現実から目を背け続けさせるわけにもいかない。
先程も同じような思いをした康一が相手ならばなおさらだった。

「納得できないか? ………なら、せめてこの人のために祈ってやれ。
 格好からして、どうやら神父様かなにかのようだからな………」
「………はい」

うなだれる康一に対し、ティムは語りかける………だが、彼はこのとき言葉とは別のことを考えていた。
現在康一は両手が塞がっており、ロープに掴まっている以上暴れたり逃げたりすることはできない―――つまり、今が話をする絶好のチャンスだということを。
汚い大人のやり方だな、と心の中で自嘲しながらティムは再度口を開いた。

「康一君………由花子君のことを考えれば、オレがきみに何か言う資格なんて無いのかもしれない。
 だがもし、きみに『戦う意思』があるのなら、きみひとりで挑むのではなくオレたちも頼りにしてほしい………
 ムシのいい話だとは思うが………彼女やこの男性のような人をこれ以上増やさないためにも、ひとりきりで事に当たってはいけないんだ」

ティムは康一が自分に一言の相談もせずに川へ飛び込んだ行為を、非常に危ういと考えていた。
今回の一件は急がずとも、康一が飛び込む前にあらかじめロープを体に結んでおくなど『協力』すればいくらでもやりようはあったのだから。
結果的には無事だったものの、もしこれが『敵』との戦いだったならば―――あの柱の男に対し、康一がひとりきりで挑んでしまったならば―――そのような警告を込めた言葉。
また、あえて正論をぶつけることによって、自分に対する康一の信頼はまだ残っているのか、話を聞いてもらえるのか確かめる意味合いもあった。

「………大丈夫です。由花子さんも………ティムさんだってぼくを死なせないために文字通り命を賭けてくれたんです………
 そんな人たちを嫌いになるなんて、絶対にありえません………」

顔を伏せたまま、激流の音にかき消されてしまいそうなほどの小さい声で康一はつぶやく。
相手の意図は理解しているようだったが、内容はその場しのぎとも言えそうな無難なもの。
それを聞いたティムは一瞬、まだ早かっただろうかと思う―――

「………ぼくは」

だが次の瞬間、勢いよく顔を上げた康一にティムの目は釘付けとなった。
康一の顔から先程までの沈んだ表情はすっかり消え失せ、傷が残りながらも凛々しい顔と力強い声で言葉を続ける。

「ぼくは、あなたたちと共に戦いたい―――いや、それだけでなく『成長』したいッ!
 いくら『覚悟』があったって、いざというとき何もできずにビクビク後悔するようじゃあダメなんだ!
 実際に皆を守れるような、皆がこの人なら大丈夫だって思えるような『強さ』を身につけたいッ!!」

康一は真剣な眼差しでティムを見つめ返す。
ヒーローの志を持った少年は、自身が『力なきヒーロー』であることの無力さを痛感し、力を求めていた―――貪欲に、しかし同時に気高く。
ティムもまた、彼の瞳にタンクローリーの中で見た、小さき体に秘められた強い意志が再び宿っているのがよく分かった。

「………由花子さんのことは完全に吹っ切れたわけじゃないですが、命を捨てるような真似は絶対にしません。
 それと、川に飛び込む前に相談すらしなかったことは謝ります………でも、あの行動自体に『後悔』はしていませんから」
193はぐれヒーローたちの協力と限界 ◆LvAk1Ki9I. :2014/02/01(土) 22:47:16.77 ID:tJtGRVBp
康一がティムに相談せず、すぐに川へと飛び込んだ理由はただひとつ………彼は、サンタナから逃げるとき以上に『ムカッ腹』が立っていたのだ。
自分や由花子、さらに味方であるはずのJ・ガイルすらためらいなく殺そうとしたカーズに?
そうするのが最善だったとはいえ、結果的に由花子を見捨てたティムに?
―――違う。


―――死に行く者をなすすべなく見つめているしかなかった、かつての康一自身にである。


ましてや、男は『川に流されて』いたのだ―――最初に康一を助けたヒーロー、ダイアーと同じように。
その光景を目にしたときに康一が感じた怒りや悔しさ………それらが一挙に溢れ出て、疲労困憊だったはずの彼を突き動かしたのだった―――!

果たして、あの時から『成長』した康一の手は届いた………だがまだ遠い。
さらなる『成長』を遂げなければ、救うべき命はその手から零れ落ちていってしまう。
しかし、だからといって噴上裕也が言った「一人で抱え込まず、力を合わせる」ということを忘れていたわけではなかった。
実際、先程もティムに助けてもらわなければ彼は今も川を流され続けていたかもしれないという事実があるのだから。

仲間との協力は必要―――それは康一も肯定するところである。
だが、いつもいつまでも仲間が側にいてくれるわけではない、助けてくれるわけではない。
一人で戦わざるを得ないとき、あるいは逆に仲間を助ける立場になったとき、最後に頼りとなる自分が『限界』を超えなければならないときは必ず来る………
康一はそのために『成長』を望んだのだ。

「………熱いな。だが、頭は冷えたようだな」
「はい、たっぷり水浴びしましたから………だけど『ここ』の熱さはたぶん、ずっとこのままです」

指で自身の胸を差しながら康一は、ようやく笑った。
ティムの言葉を冷静に受け止めることはできても、由花子を失った悲しみやカーズへの怒りは決して消えることはない。
だが『制御』はできる―――広瀬康一は無事、復活したのだから―――!

「それでいい。きみのような若者が持つ熱い心は、道を切り開くために必要だ………
 さあ、上がろう。結構離れてしまったし、急いで皆と合流しないと―――」

もう、あの柱の男に遭遇したとしても康一は我を忘れてひとりで挑みかかったりはしない………
言葉よりも心で理解し、安心したティムはロープを引っ張り橋の上へと登ろうとする。

―――だがその時。
なんという運命のいたずらか、あるいは複数人でぶら下がり続けた故の必然か。
彼らの命綱であるロープを結びつけた高欄の一部が、ポッキリと折れてしまったのだ!!

「………なっ!!?」

驚愕の声はどちらのものだったのか。
不意を突かれた彼らは何も対処できず、一瞬後にはすぐ下の川へと落下していた。

「「う、うわあああぁぁ―――――――ッ!!!」」

さらにここで、水面へ叩きつけられた二人に差が出る。

衝撃でロープから手を離してしまった康一の体は『エコーズ』のしっぽ文字により沈まないものの、未だ治まらぬ激流によってさらに下流へと流されていった。

一方ティムの体は浮かばないどころか、その場でどんどん水底へと沈んでいく。
それもそのはず………彼の持ち物にはこの状況で持っていてはとてつもなくヤバいもの―――重量80kgもするチェーンソーがあったのだから。
194はぐれヒーローたちの協力と限界 ◆LvAk1Ki9I. :2014/02/01(土) 22:51:39.76 ID:tJtGRVBp
(しまった、康一君ッ!)

水中という環境に苦戦しつつもどうにかチェーンソーだけを放り出すが、その時点で重しと支えの両方を失ったティムの体は当然、激流に翻弄されることとなる。
そして、いかに彼が凄腕のカウボーイとはいえ水中で縄は投げられない。

(落ち着けッ! 康一君は沈まない………まずは、オレ自身が陸に上がることを考えろッ!!)

浮きたくても浮けず、自分が上を向いているのかどうかすらわからない状況………だが、ティムは決して考えるのをやめたりしなかった。
パニックになりかけた自分自身に言い聞かせ、もがきにもがいてようやく水面に顔を出すことに成功する。
すぐに周りを見回すもティムの視界に康一の姿は映らず………彼もまた、襲い掛かる激流になすすべなく下流へと流されていくのだった―――


―――こうして、彼らの善意からくる行動は新たな決意を生み、互いの信頼を回復させたものの、思わぬ形でその代価を支払う結果となってしまった。
果たして二人はお互いと、そして別れた仲間たちと無事再会できるのであろうか………?
195はぐれヒーローたちの協力と限界 ◆LvAk1Ki9I. :2014/02/01(土) 22:57:00.26 ID:tJtGRVBp
【C-4 ティベレ川 / 1日目 昼】

【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → 『エコーズ act2』
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:全身傷だらけ、顔中傷だらけ、貧血気味、体力消耗(大)、ダメージ(大)
[装備]:エコーズのしっぽ文字
[道具]:基本支給品×2(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.とりあえずどうにかして陸に上がり、ティムと合流する。
1.シュトロハイムたちの元へ戻り、合流する。
2.仲間たちと共に戦うため『成長』したい。
3.各施設を回り、協力者を集める。

※『プカァ』のしっぽ文字を服に貼り付けているため、単体では水に沈みません。


【マウンテン・ティム】
[スタンド]:『オー! ロンサム・ミ―』
[時間軸]:ブラックモアに『上』に立たれた直後
[状態]:全身ダメージ(中)、体力消耗(大)
[装備]:ポコロコの投げ縄、琢馬の投げナイフ×2本、
[道具]:基本支給品×2(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気、一切なし。打倒主催者。
0.陸に上がり康一と合流する。
1.シュトロハイムたちの元へ戻り、合流する。
2.各施設を回り、協力者を集める。


【備考】
・ローパーのチェーンソーがC-4カブール橋下の川底に沈みました。
・男性の死体はエンリコ・プッチのものです。死亡場所→カフェ地下の水路→B-3とB-4の境目にある排水溝の経路でティベレ川に流されてきました。
 服から零れ落ちたのは第142話 Nobody Knowsでシーザーが拾ったDISCです。
・二人は個別に川を流されています。二人のどちらがどの位置で陸に上がる、誰かに見られる、救助されるなどは次の書き手さんにおまかせします。
196 ◆LvAk1Ki9I. :2014/02/02(日) 00:41:35.69 ID:G03qifrK
以上で投下終了です。
話の舞台となったカブール橋では毎年新年の恒例行事として寒中飛び込み大会が行われるそうです。

仮投下からは多少文章をいじった程度で大きな変更はありません。
誤字脱字、その他意見などありましたらよろしくお願い致します。
197創る名無しに見る名無し:2014/02/02(日) 02:01:19.16 ID:Ws7IfKDh
投下乙です
これは細やかな補完話
二人が合流できなかった理由や別の話の理由付けも納得のいくものでしたし何より康一の『覚悟』がイイ!
198創る名無しに見る名無し:2014/02/02(日) 14:11:01.90 ID:VlpphnIm
投下乙
ナイスつなぎですね。なかなかヒーローズが集合できないもどかしさ。

これで第二回放送にうつっても問題ないですかね?
一応様子見も兼ねて一週間待ってそれでもどこにも予約はいらなかったら
2/9(月)に第二回放送予約解禁でいいですかね?
199創る名無しに見る名無し:2014/02/03(月) 21:08:29.95 ID:MFczHfMu
いいんじゃないでしょうか?
放送楽しみですね
200付録 その1 ◆yxYaCUyrzc :2014/02/05(水) 00:41:38.18 ID:2zuxDw9E
……ん?そろそろ放送の話が聞きたいって?
まぁ、そうだろうね。参加者たちの物語が歯車となって――

え?

もっかい参加者の状況が知りたいって?それで俺のところに?
ふむふむ、ンなるほど。
要するに『把握すんの面倒だけど現状知りたいからまとめてくれ』ってこt――痛てっモノ投げないでッ!
悪い悪い、悪かったって!話すからッ!

***

まずはジョナサン。『判断』の話でジョンガリ・Aの襲撃を退けてフーゴ、ナランチャ、そしてトリッシュ&玉美と合流か。
情報の整理しつつ放送を待ってるところかな。

ツェペリのおっさんは『影に潜みし過去暴くもの』が最新かな。
ドルドの行動を許せぬ心境のままアヴドゥルのバイクに2ケツして地図中心部へ、か。

ブラフォードは……『乖離』の話をしたのが最後かな。出会った相手は『ディオ様』っぽいナニカ。
よくよく考えたら登場当初から人違いしまくりなんだよね、いくらゾンビったって思考力下がりすぎじゃあないかってね。

一方のタルカスはイギーとともに双首竜の間でジョルノと遭遇。スミレの……花葬って言うのかな、して。
『それでも明日を探せ』まさに彼の心境なんだろうね。

***

ジョセフは息子・仗助と共に宿敵・ワムウと対峙。時を越え場所を超え、戦いの火蓋は切って落とされたッ!
まさに『新・戦闘潮流』って感じだなぁ。

シーザーは氾濫したティベレ川にていくつかのDISCを入手、氾濫の原因を突き止めようと歩いてるところか、道中で放送を聞くのかな?
この後どのような運命に巻き込まれるかを知る者は誰もいない。まさに『Nobody Knows』ってところだ。

シュトロハイムは先のジョセフで話した『新・戦闘潮流』のもう一つの舞台。ワムウのもとへ向かおうとする自分たちを妨害する宮本輝之輔と対峙。
……というと聞こえはいいけど、噴上と宮本のスタンドバトル勃発直前にちょっと出遅れてる感じ……?彼らしいと言えば彼らしいけどね。

ワムウはさっき話したジョセフ・仗助親子との対峙中。
当初は死者を冒涜するゲームに乗り気じゃあなかったけど、やっぱり純粋な戦士なんだねえ。この状況を心底楽しんでるだろうよ。

カーズなんだよ問題は……というとちょっと語弊があるが。承太郎、DIO、吉良との『大乱闘』を繰り広げた後、シアーハートアタックの爆発から逃れて以降が全くの行方不明なんだよ。
まあ死んじゃあいないんだろうけどね。どこで余裕こいてるんだか――

***
201付録 その2 ◆yxYaCUyrzc :2014/02/05(水) 00:50:26.16 ID:2zuxDw9E
アヴドゥルは『過去に潜みし過去を暴くもの』でツェペリを後ろに乗せてバイクを駆る。目指すは会場中央部。
だが心境は複雑だ。張りつめたようなこの(主にツェペリとドルドの)関係と、ビーティーから送られた忠告と、感じた僅かな何か。それは恐怖なのか不安なのか……

花京院は『嫌な相手との同行時における処世』をその嫌な相手、ラバーソールに施したところだ。
承太郎を発見して追跡開始したのは良いがその先に待ってるものは……?

イギーは相変わらずというかなんというかタルカスにくっついて歩いた結果煙突頭と遭遇。
現状が大事な彼に対して『それでも明日を探せ』と言える日は来るんだろうかねえ――

ラバーソールは花京院から『嫌な相手との同行時における処世』を施されてしまい、もはや八方ふさがりか!?
追跡している承太郎、そしてこれから流れる放送で如何に彼が情報を得て、そして整理・利用できるかどうかが試されそうだね。

ホル・ホースは走る徐倫――の姿を借りたF・Fを追っかけてたらなんとセッコに襲撃される。
機転を利かせてうまく立ち回るのか、それともセッコと『大乱闘』を繰り広げるのか……でもそうしたら放送聞いてられないんじゃあないか!?

ペット・ショップは『大乱闘』を始めようと移動を始めたDIOの部下のひとりとして、虹村形兆を監視する役目についた。
彼自身には肉の芽は埋まってないみたいだけど……まあ動物としての本能的にDIOには逆らわない、逆らえないんだろうね。

ヴァニラ・アイスもある意味ではペット・ショップと同じ立場かな。形兆と一緒にDIO“様”の邪魔となる存在を消すために移動開始。
彼自身が『大乱闘』を繰り広げるときは来るんだろうかね?まあその前に放送を聞くことになるのかな?

で、DIOだよ。彼もまたカーズや承太郎、吉良らと『大乱闘』を繰り広げ、さらにその足でムーロロと接触をしている。
彼を“恥知らず”だと見抜き、評価したのはまさにカリスマ!ってやつかな。

***

仗助は今まさに『新・戦闘潮流』を繰り広げようとしているところ。
目の前には父のライバルにして生粋の闘士。隣にはその父、しかもさっきぶん殴って喝を入れた相手。放送なんか後で誰かから聞きやぁ良い、って感じだね。

康一君はやっとのことで理解しあえた“友人”由花子さんを失って憔悴しきってるところだろうか……
彼女の視点で言えばまさに康一は『マイ・ヒーロー(私の英雄)とラブ・デラックス(偉大な愛)』何だろうね――え、川?それはもう少し待ってくれよ。

えーと、次は変態……じゃなくて小林玉美か。ついて行くべき相手、トリッシュ様はかつての仲間と、そしてジョースター家の長男と合流した訳だ。
ここで放送を聞くとして、その前後の彼の『判断』はどうなるんだろうね。まあ聞くまでもなくトリッシュ様一筋なんだろうけど。

ミキタカはここにきて急に機転の利く宇宙人として評価されてきた感じだね。
蓮見琢馬の残虐性?に気付き、ミスタの現状を見た今、彼のとった行動のレベルはまさに『レベルE』ってかな?

噴上は仗助たち、そしてワムウとは違う場所での『新・戦闘潮流』を繰り広げようとしてる。
お互いのことを知っている相手・宮本との対峙に並び立つのはナチスの科学の結晶。安心なんだか不安なんだか。

形兆はねぇ……何とも複雑な気分だよなぁ。親父を壊した原因に従い、ヴァニラと共に、そしてペット・ショップの監視のもとに施設めぐりを予定している。
彼が億泰みたいに何も考えず『大乱闘』を繰り広げられたらどれだけ気が楽だったことか……

エニグマの少年・宮本輝之輔はさっき話した噴上と逆の視点だ。
彼の心の中では『新・戦闘潮流』はワムウに彼らの足止めを命令された瞬間から始まってたんだろうけどね。

川尻しのぶ……ここでは完全に守られる存在だった彼女。だがここでついに一人ぼっち。
そして出会ったのは先程まで一緒にいた承太郎ではない。『大乱闘』を終えてボロボロになった川尻浩作、もとい吉良吉影。一体どうなることやら。

そして『大乱闘』を潜り抜けた吉良。そうやって声をかけてきたしのぶのことを吉良自身は知らない。
このことが今後にどう影響するのか、見ものだね。二人の緊迫を放送がぶった切るのかな?

***
202付録 その3 ◆yxYaCUyrzc :2014/02/05(水) 01:05:25.43 ID:2zuxDw9E
ジョルノは出会ったタルカス(とイギー)と共に少女を安置するために双首竜の間に。
放送を終えれば得る情報も増える。そこで彼がどうなるかはまだ誰も知らないけど、あえて『それでも明日を探せ』なんて言わなくてもジョルノなら大丈夫だろうね。

ミスタは現在大ピンチ。『レベルE』の話で蓮見琢馬のスタンド攻撃を受けて車に轢かれる追体験。
とは言え回復しても記憶がないんだから何とも言えないか……?

ナランチャはトリッシュ(と変態)と合流してテンションアップ。
難しい現状の『判断』はフーゴあたりの頭脳キャラに任せるんだろうね。

そしてそのフーゴ。ジョンガリ・Aを退けた“ディストーション”を使いこなし、今後はトリッシュの護衛、出来るのかな?
放送で得る情報の『判断』はナランチャの期待通り彼がやるんだろうなぁ。気苦労の多いこと多いこと。

……と、トリッシュもその場にいるから『判断』はみんなで会議して決定するのかな?
仲間が増えたよ!やったね――ってこれ言ったらまずいか。ゴメン今の利かなかったことにしてッ!

サーレーは……肉の芽を埋め込まれてDIO様の障害を排除する道中か。
でも――『大乱闘』なんてしなさそうな『空気』なんだよなぁ。

プロシュートはもう完全に千帆の兄貴分だね。彼女に仮眠を促して静かに放送を待つのはまさに仕事人ってところか。
彼も千帆のように『夢見る子供でいつづけれたら』どれだけよかったことか、でもそんな仮定の話はしないでおこうか。

スクアーロは――『大乱闘』の後はどうしたんだっけ。サーレーと違って肉の芽埋め込まれなかったんだっけ?
まあ俺もDIO様の立場だったらサーレーとスクアーロどちらかに肉の芽って言ったらサーレーだけどさ。

それからチョコラータ。コイツもいわば肉の芽組だね。一番『大乱闘』を引き起こしそうなやつではあるんだけど。
でもその凶悪さがDIO様の気に障った。まあ仕方ないかな。

で、『大乱闘』続きで、しかもチョコラータとかかわってくるのがセッコだ。吉良とやりあってそのあとはホル・ホース。
でも現状、チョコラータに肉の芽が埋まってても「ふーん」としか言わないんだろうなぁ、もう。

***

承太郎はカーズ、DIO、吉良と『大乱闘』繰り広げて……そしてそのあとに出会った相手が悲運としか言えない、気がする。
傷ついた身体と心にこの追い討ちだよ……話すのがつらいからこの辺で止めとくか。

エルメェスはシーラEと共にHEROSを援護しに行こうとしたところ、遭遇した相手がなんとビットリオ。
地下に地上にと『新・戦闘潮流』が至るとことで勃発してる、っていう表現でいいのかな。彼女に休む暇はなさそうだ。

……あーさっき止めようって言ったのにF・Fの話題だとまた承太郎が出てきちゃうじゃあないか。
まあ流石にこのまま親子喧嘩という名の『大乱闘』が開始ってことはないだろうけど……?

アナスイはジョニィと一緒に路上で放送を待ってるところかな。1回目の放送は殆ど聞いてないようなものだから実質初めてだろうしね。
彼の心境、そして徐倫を思う心がいつまでも『夢見る子供でいつづけれたら』どんなに良かったことか、ってトシじゃないか、実際は。

ジョンガリ・Aはある意味で今一番混乱してる参加者だと思う。とばっちり受けた反撃をどこにぶつけるべきか、あるいはぶつけずにいるべきか。
そんな彼の『判断』は放送の前に下されるのか、それとも……?

***
203付録 その4 ◆yxYaCUyrzc :2014/02/05(水) 01:17:36.70 ID:2zuxDw9E
ジャイロはビーティーをはじめとする同盟と共に会場中央部へ移動しようとしているところだ。その前後、どのタイミングで放送を聞くことになるのかな。
そして……彼らに襲い掛かる、あるいは彼らの心の内にある『影に潜みし過去暴くもの』の正体は一体なんなんだろうね?

そしてジャイロの探し人・ジョニィはと言えばアナスイと共に放送をじっくり腰を据えて聞くことが出来そうだ。
――アナスイが羨むようなまっすぐで漆黒な意思を持つジョニィ。彼がずっと『夢見る子供でいつづけれたら』このロワイヤル、いやSBRレースの運命もずっと変わっていたんだろうね。

マウンテン・ティムが目撃した演目は広瀬康一と山岸由花子が演じる舞台、演目は『マイ・ヒーローとラブ・デラックス』。しかしその目撃も終盤中の終盤からだったわけだが。
想い人、って表現でいいのかな?を失った康一と共に仲間のもとへ向かう彼がどのタイミングで放送を聞けるのか――あるいはその前に“何かしらのトラブル”があるのか……?

ルーシーは、いよいよ決意を持ってDioに交渉しようと思った矢先に、想像と違う、まさに『乖離』したとでもいうべき状況……つまりブラフォードの登場でどうなることやら、ってところだ。
しかも放送は愛する夫、スティーブンによって行われるだろう。彼女にとってはあまりにもヘビィすぎるシチュエーションだろうね。

ディ・ス・コは……うーん。彼はどうも『大乱闘』を常に傍観する立場にあって何とも言えないんだな。
肉の芽に支配されてからは“最強”の考え方も出来なくなってるし、放送あったって立ち止まりもしないんじゃあないかな……?

さっきルーシーの話の中にちょっと出てきたがDioことディエゴもある意味、推測から『乖離』された状況に陥った。
とは言えそこは流石のディオ“様”だ。見事に乱入者まで取り込んでる。これはかなりの脅威と言っていいと思う。彼は本当に頭がいいやつだ。

***

蓮見琢馬は今まさに人を、ミスタを殺そうとしている。しかも放送のタイミングを把握しておりその後に引き金を引くつもりだ。
この状況を理解しているのは彼のほかには『レベルE』ミキタカのただ一人。いったいどうなるか、手に汗握る状況だ。

双葉千帆は民家で仮眠中。そろそろ放送だということでプロシュート兄貴に起こされるところかな。
このゲームにおけるスタンス、そして現在の文字どおりの意味でまさに『夢見る子供でいつづけれたら』そんな彼女が放送後どう動くかは見ものだね。

シーラEはエルメェスと共に仗助たちの援護に向かおうと思った矢先、当初――このゲーム以前での当初――のターゲットであったビットリオの襲撃を受けてるところ。
放送のアナウンスでビットリオは隙を見せないだろうし、この『新・戦闘潮流』は激流の流れになるだろうねぇ。

ムーロロは今までずっと傍観者として多くの参加者と関わってたが、蓮見琢馬と出会い、そして今は悪のカリスマ・DIOと対峙している。
目の前の男に“恥知らず”だと評価された彼が『大乱闘』を引き起こすのはいつになるんだッ!?

ヴォルペはムーロロに接触してるDIOとは別行動。でも近くにはいた。
『大乱闘』を引き起こした承太郎、そしてその娘の姿をしたF・Fに夢中になっている。自分自身のことを知るとてもいい機会になりそうだ。

シーラEの話題にも登場したビットリオ。ヤクが切れてるとはいえ身体とスタンドの能力はかなり強力で、そして脅威だ。
そんな彼が引き起こす『新・戦闘潮流』は一体どんなものになるんだろうかね?

***

ビーティーはスタンドも、あるいは波紋や鉄球といった技術も持たずに、殺人事件を解いて見せた、まさに『影に潜みし過去暴くもの』だ。
その頭脳が放送という大きな情報源をもとにどのような道を、答えを導き出すのか君たちも目が離せないだろう。

育朗は……ビットリオを見失ったが、その代わりアバッキオの『―タチムカウ―狂い咲く人間の証明』を見せつけられた。
そして自分自身にも、その証明を当てはめる。そうだ。彼は、彼こそが人間なんだッ!

ドルドはそんな育朗を警戒しつつ、そしてその情報を悪評としてばら撒きつつの立ち回りだ。
人を一人殺害しても責められないという状況だが、その『影に潜みし過去暴くもの』を裁くものが現れることはあるんだろうか……?

***
204付録 その5 ◆yxYaCUyrzc :2014/02/05(水) 01:21:19.70 ID:2zuxDw9E
フゥ〜……これですべて話しきったかな?

どうだろう、多くの参加者が今にも放送が始まりそうなこの状況の中で必死に運命に抗い、あるいは従い、あるいはもがき苦しみ続けている。

そう――もうすぐ放送なんだ。

たとえ時を止めるスタンド使いでも……いや、時を巻き戻そうがすっ飛ばそうが加速させようが……

――このバトル・ロワイヤルという運命の歯車を止めることだけは何者にも出来る訳がない。

なんて言ってみたりして。そういう俺自身も放送が楽しみで仕方がない。スティーブンは、その陰に見え隠れする大統領は、一体どんなアクションを起こしてくれるのかな?
ま、それはまた、その時のお楽しみという事にしておこうか。

To Be Continued...


***

勢いで書いてしまいました全キャラ2行状態表っぽいなにか。
反省はしている。しかし後悔はしていない。放送SS、誰が予約とるんでしょうか、あるいは議論あるんでしょうか。楽しみに待ってます。それでは。。。
205付録 ◆yxYaCUyrzc :2014/02/05(水) 11:03:43.40 ID:2zuxDw9E
あ、最後に付け加えておきますと、このSS(?)は投下でもなんでもないですwちょっと状態表をまとめただけですので。
ですからwiki収録だのなんだのは無しでOKですのでw
206創る名無しに見る名無し:2014/02/08(土) 21:11:51.42 ID:SXa6p9ka
わかりやすいまとめ乙です!
そういえば2ndの全選手入場ネタも氏の作品でしたね

ところで誰も突っ込まないけど放送の予約解禁って明日(2/9)?
それとも明後日(月曜)?
207創る名無しに見る名無し:2014/02/08(土) 22:17:57.18 ID:Pfn3Mjhr
明日というか今日(2/8)から明日(2/9日曜日)に変わる瞬間?
それとも明日(2/9日曜日)からあさって(2/10月曜日)に変わる瞬間?

なんかよくわかんないですよね
208 ◆c.g94qO9.A :2014/02/09(日) 19:33:09.00 ID:WSNisNjk
こんばんは。昨日の今日ですが、第二回放送投下します。
209第二回放送:2014/02/09(日) 19:34:17.19 ID:WSNisNjk
時刻は12時、正午の時間だ。これより第二回放送を始める。
放送は前回に引き続きこのスティーブン・スティールが、担当させてもらう……。

さて、早速だが本題に入ろう。この六時間での死亡者と新たな禁止エリアの発表を行う。
前回は少し与太話が過ぎたようで不評を買ってしまってね。簡潔に、端的に放送を進めさせてもらおう。
それではまずは禁止エリアから。今回の禁止エリアは……

 13時から A-7
 15時から A-2
 17時から D-8

13時A-7、15時A-2、17時D-8、この三箇所だ。よろしいかな。

次に6時から12時までの間に脱落した者たちを発表する。
今回脱落したものは……


ロバート・E・O・スピードワゴン
リサリサ
スティーリー・ダン
エリナ・ジョースター
ウェカピポ
ギアッチョ
ブローノ・ブチャラティ
レオーネ・アバッキオ
リキエル
ストレイツォ
J・ガイル
山岸由花子
サンドマン
ホット・パンツ
エンリコ・プッチ
ウェザー・リポート
マリオ・ズッケェロ
リンゴォ・ロードアゲイン

以上 18名だ。
210第二回放送   ◆c.g94qO9.A :2014/02/09(日) 19:34:59.53 ID:WSNisNjk
なかなかのハイペースだ。
参加者の半分以上が脱落した前回と比べればペースは落ちているものの、進行には問題がなさそうだな。
私としても一安心だよ。
だからここから先は一プロモーターとしていうより、一観戦者としての戯言を述べさせてもらいたいのだが―――。


少しばかり面白みにかけてきた、というのが私の意見なんだ。
隙を伺い、期を待ち続け……まさにその刹那! 一瞬の殺陣! と、いうのも確かにスリル満ち溢れ、心躍る時ではある。

しかし私はもっと見たいッ! 
超人たちが血肉争う、壮絶な戦いがッ!
強者と強者がぶつかり合う、ここでしか見れないドリームマッチがッ!

地に足つけて生き残るのも大いに結構!
しかし”地の底を這い蹲るよう”に生き残ったところでそれは果たして真の勝利と言えるのかね?
殺戮者たちよ! ”陽のあたる舞台”に出る度胸をもち給え! 君たちの力はその程度じゃないはずだ!

……今述べさせてもらったことは私個人の願望であり、強制力は一切ない。
今後ともゲーム進行は君たちの手に委ねようと思う。
一箇所にとどまっていようが、建物にこもってやり過ごそうが、戦いを徹底的に避けようが大いに結構だ。
だが再確認させていただこう。『最後に生き残る』のは『たったひとり』だけ。願いを叶えることができるのも一人だけだ。
それでもいいというのなら、私からはもうなにも言うまい……。

ともあれ放送は以上だ。君たちに会うのはまた六時間後、第三回放送の時だろう。
それではまたその時に! 諸君らの健闘を祈って! グッドラック!





211第二回放送   ◆c.g94qO9.A :2014/02/09(日) 19:35:52.72 ID:WSNisNjk
手袋をつけた、スラリとした指先がマイクのスイッチを切る。
目の前を横切るヴァレンタインの指先を、スティールはただいたずらに眺めることしかできなかった。
全て目の前の男の手のひらの上だ。
壁際に取り付けられた数十もの電子画面が、ぼんやりとヴァレンタインの横顔を照らす。

凛としたその横顔。そこからは自分を信じている気高さというものが感じられた。
これが日常であるならばスティールも手放しで彼を褒め称えただろう。
その横顔に、一人の市民として頼もしさを感じただろう。


だが今は違う。
ヴァレンタインが100名以上に殺し合いを強制し、スティールをそのスケープゴートにしている、今は。


「少し席を外させてもらおう。しばらく待っていてくれたまえ」


挨拶もそこそこにそう言うと、ファニー・ヴァレンタインは扉の向こうへ消えていった。
扉が閉まる音が聞こえ、それが消えると辺りを静寂が覆った。
マイクを前にしてスティールは動けない。罪悪感と無力感が彼を蝕む。

ジジジ……という虫の鳴くような声が聞こえた。
西部時代に生きるスティールには聞きなれない音。
電化製品が発するかすかな音に顔を上げると、スティールはあることに気がついた。

あたりを見渡す。監視役はいない。彼以外にその部屋には誰もいない。
何十ものディスプレイが壁いっぱいに取り付けられ、いくつかのノートパソコンが長机の上に置かれている。
画面に写っているのは会場内に取り付けられたカメラの映像だ。
そしてついさきまでヴァレンタインが見ていたディスプレイには……そうでない映像が、写っていた。

椅子から立ち上がり、離れたノートパソコンの前に立ち尽くす。
ためらいがちに、不器用なりに、ヴァレンタインが眺めていた画面を思い出す。
不慣れながらもマウスを操り、画面を戻していく。
進めど、進めど出てくるのはどこかのカメラの映像だった。だが、ヴァレンタインが見ていたものはそれじゃない。
スティールは探る。背後の気配に神経を研ぎ澄ましながら、それでも彼の手は止まらない。

数分間の苦戦を終え、スティールの手がようやく止まった。
スティールの目がディスプレイ上の文字を追っていく。
彼は文字の脇に表示されたひとりの男の写真を、食い入るように見つめた。



 ―――リンゴォ・ロードアゲイン:スタンド『マンダム』



震える手で次のページをクリックする。そこには彼のスタンド能力が記されていた。



 ―――スタンド能力は『六秒だけ時を巻き戻す』



ブゥゥゥン……と音を立てて、室内の機械が動き出した。
しかしその音すら今のスティールには聞こえない。
彼は何かにとりつかれたように目の前のディスプレイを見つめ続けていた。
その目は先程のような絶望に染まったものではなくなっていた。
ひとりのプロモーターとして、ひとりの男として。
妖しげな輝きがスティールの目には戻っていた……。
212 ◆c.g94qO9.A :2014/02/09(日) 19:37:02.85 ID:WSNisNjk
以上です。何かありましたら連絡ください。
213 ◆vvatO30wn. :2014/02/17(月) 13:29:13.14 ID:fb4DNhX/
放送が来てもなかなか盛り上がりませんねー
なんとか頑張りたいと思います。


ホル・ホース、チョコラータ、セッコ 投下します。 
214HUNTER×HUNTER ◆vvatO30wn. :2014/02/17(月) 13:36:42.13 ID:fb4DNhX/
よし、見てこよう。

そんな白々しい捨てセリフを吐いて、逃げるように相手との距離を取る。
もし自分が対戦格闘ゲームのキャラクターならば、そんな必殺技が用意されてもいいくらいには、ホル・ホースは自分の逃げ足に自信があった。
『一番よりNo.2』という彼の人生哲学は、誰かとコンビを組んでこそ真価を発揮する『皇帝(エンペラー)』のスタンド能力に起因する。
サポート役に適した能力だからこそ、敵との間合いを取ることは、彼の戦闘においての最優先事項だ。


(やべえ! やべえやべえやべえやべえ!!)


ホル・ホースの現状は、そんな彼にとっては最悪といえる。
両脚を封じられ、十八番の逃げ足は発揮できず、殺気立った敵スタンド使いの射程距離内。
弾丸を操作できるとはいえ、威力自体は実在の拳銃を変わらないその攻撃力は、『スタンド戦』においてあまりにもパワー不足。
泥の鎧に纏われた敵の姿はどう見ても近距離パワー型のスタンド使い。
『皇帝(エンペラー)』での接近戦などもってのほか。


「なんで何にも言わねえんだ? やっぱ敵だな? ジョースターだなァ?」
「ちっ 違っ――― オレは―――ッ」


混乱する頭で、必死に考える。
どうすれば助かる? なんて言えばこいつは止まる?

(こいつはさっき、吉良吉影と戦ってたバケモンじゃねえか!? 畜生! ツイてねえぜ! まったく今日はなんて日だッ!!)

教会に散っていた死肉は、おそらくリキエルかストレイツォ(どちらか判別できないほどバラバラだった!)。
自分があの姿になることを想像する。血の気が引いた。
そして、同時に理解する。

(そうだ! あの時の―――ッ! DIOと一緒にいた…… 泣き叫ぶあのガキを喰っていた――――――)

生きたまま喰われる。
自分が、こいつに。
嫌だ! 絶対に嫌だッ!

ホル・ホースの出すべき解答はなにか? ヒントはセッコの言葉の中に。


『DIOに歯向かおとうしてるんじゃあねぇのか?』

(歯向かう……歯向かうつもりなんて、ねえ! DIO『様』にッ!)

「オレの名前はホル・ホース! DIO様の手下の―――!!」




『時刻は12時、正午の時間だ。これより第二回放送を始める。 』



ホル・ホースの必死の弁明を遮るかのように、よく通る初老の男性の声が会場全体を包んだ。
6時間ぶりに聞くその声。第2回放送が始まった。




☆ ☆ ☆
215HUNTER×HUNTER ◆vvatO30wn. :2014/02/17(月) 13:47:03.44 ID:fb4DNhX/
「ブローノ・ブチャラティ……?」


放送途中で呼ばれたその名に、セッコが反応する。
セッコがこのゲームに連れてこられる直前まで、暗殺の標的とされていた人物の名だ。
だが、仕事面の管理はほぼ全てをチョコラータに任せていたセッコにとっては、「どこかで聞いた名前のような?」という程度の印象しかない。

だがそのわずかな気の緩みに、ホル・ホースを捕まえていた握力が弱まる。
脚を解放されたホル・ホースはその隙を付いて逃げ出し、セッコから距離を取ったところで尻餅を付いた。
セッコもその事にすぐ気がついたが、直ぐに深追いはせず、2人は睨み合ったまま、放送の終わりを待った。


『それではまたその時に! 諸君らの健闘を祈って! グッドラック!』


放送は特に遊びもなく、滞りなく終わった。
ホル・ホースは、今度もゆっくりと放送を聞くことができなかった。

(えーと、禁止エリアがA-7と、あと…… どこだっけ? で、死んだのが……えーーーっと)

自分の元パートナーであったJ・ガイルの名前は耳に入っていた。
あとは、顔見知り程度のスティーリー・ダン。それに、リキエルとストレイツォもやはり死んでいた。
耳には入っていたが、しかしホル・ホースの記憶に残ったのはこんな程度だ。

(だめだ、やっぱりちゃんと頭に入っていない。名簿に線引きながらでもないと、覚えきれないな。
目の前のこいつは…アテになりそうにないし。また誰か、放送を聞いている人間を探さなくては……)

だが、あのタイミングで放送がなければ、問答無用で殺られていたかもしれない。
そういえば第1回放送のときも、こんな感じで放送を利用して逃げていた。
奇しくも、その時も今回と同様、このセッコから逃げるためだった。
放送と、この男にやたら縁があるな。なんてことを考えているホル・ホースに、セッコが話しかける。


「オイ、てめえ。DIOの手下ってのは本当か?」


放送直前のホル・ホースの言葉。そして2分は続いたであろう放送を聞いている間に、血の昇っていた頭はさすがにクールダウンしている。
しかし、それでもDIOに仇なす者ならば、容赦無く殺す。

「あ…… ああ、勿論だ。改めて名乗らせてもらう。タロットカード『皇帝』の暗示、ホル・ホースだ。
DIO様の部下同士だってなら、オレたちに争う理由なんてねえ。違うか?」

てめえみてえなイカれ野郎と組むなんて死んでもゴメンだ。という言葉を飲み込み、冷静に対応する。
受け答えを誤れば、セッコの刃は再びホル・ホースに向けられる。
直感だが、戦闘になればホル・ホースはセッコに勝てない。
彼にとって助かる可能性が最も高い道は、『戦闘に持ち込ませない事』だ。

ホル・ホースは木陰から後ろを、チラリと確認する。
ヴァニラ・アイスともうひとりの姿はもう無い。放送の合間に、ホル・ホースたちに気付くことなく何処かへ去ったようだった。
無効に気を使う必要はもう無い。
目の前のセッコさえ凌げば、ホル・ホースは助かる。

一方セッコは、返答を聞いて頭をうんうんと捻らせる。
相変わらず頭を使うことは苦手だが、しかし考えること自体は癖になりつつあった。
216HUNTER×HUNTER ◆vvatO30wn. :2014/02/17(月) 13:55:07.30 ID:fb4DNhX/
(ホル・ホールぅ? うーん、どうだったかなァ―――?)

DIOの元を離れる前、セッコは何人かの名前と特徴を聞いて覚えさせられていた。
特に注意されたのは、『ジョースター』の姓。
この一族だけは、出会ったら迷わず殺してもよいと言われていた。
そして、殺してはならないと言われた者。

(え〜っと、たしか、ヴォルペって奴と、ナントカプッチとかって神父と、あとはアイスクリームみてえな名前だったかなあ?
う〜ん、やっぱりホル・ホールなんて名前聞いてなかったと思うんだけどなあ? でも、本当にDIOの仲間だったなら、殺したらDIO怒るよなあ…

…)

だが、所詮セッコの記憶力や思考力などこの程度。
実際、プッチの名前を聞いていても、放送で名を呼ばれた『エンリコ・プッチ』と関連付けるには至らない。
そんな頭で必死にDIOの言いつけを思い返し、そして気が付く。


『できれば一時間程度で戻って来て欲しいが――――――』

「あっ」

DIOの言い付けでは、本来セッコに与えられた遊び時間は一時間程度。
だが、2度目の放送を迎えたということは既に4〜5時間は経っている。

(ああ〜〜、やっべぇ! すっかり忘れてたぜェ―――! DIO怒ってるかなあ?)

一応、DIOに言われた通りにトンネルは掘っておいたが、それだけだ。
もしかして、まだ待っているだろうか?
DIOにだけは怒られたくないし、嫌われたくもない。


「オイ、ホル・ホール。着いて来な」

「は?」

「DIOに会わせる」

「はあああああああ!?」
217創る名無しに見る名無し:2014/02/17(月) 13:58:03.12 ID:k1TN9Qkd
支援
218HUNTER×HUNTER ◆vvatO30wn. :2014/02/17(月) 14:02:01.41 ID:fb4DNhX/
突然の展開にホル・ホースはビビる。
このままセッコを言いくるめて、そのままトンズラするつもりだったのだ。
相手が見るからに頭悪そうなセッコだけならば、どうにでもなる。
だが、相手がDIOとなれば、話が全く違ってくる。

DIOに最後に会ったとき、ホル・ホースはこう言われた。

『今度こそジョースター達を殺してこい。さもなけば、お前を殺す。』

そして結局DIOに屈服し、ボインゴと共にジョースター一行を襲撃。結果、敗北した。
ホル・ホースにもう後はない。
今度DIOに出会ったら、最悪一瞬で殺される。
良くても、肉の芽を埋められてしまうかも…?

「おい、さっさと来やがれホル・ホール! ぶっ殺すぞボゲェ!」

セッコに手首を掴まれる。
しまった、とホル・ホースは思った。
これでは逃げられない。無理やり振りほどこうとすると絶対に殺される。
すでにセッコはホル・ホースについて結論を出すことを諦めていた。
どうせDIOの元に帰るのならば、ついでにこの『自称DIOの部下』も連れて行って、DIO本人に任せればいい。
セッコの単純な思い付き。
それが、ホル・ホースにとって最悪の状況を生み出していた。

(くそったれが! DIOにだけはッ! DIOにだけは会うわけには行かねえってのにッ!!)

セッコの力には、先ほど足首を掴まれていた時ほどの敵意はない。
とりあえずの最低限、問答無用で攻撃されるという段階は乗り切った。
だが、ここで拒否したり、腕を振り払うほどの度胸は、今のホル・ホースには無い。

セッコに引きずられ、ホル・ホースは連行される。
行き先は、あの悪の宴が催された忌まわしき場所、グリーンドルフィンストリート刑務所。





☆ ☆ ☆
219HUNTER×HUNTER ◆vvatO30wn. :2014/02/17(月) 14:10:00.08 ID:fb4DNhX/
.

少し前までは9人もの参加者たちが集結していた刑務所内も、今は閑寂としていた。
中心人物たるDIOはトンネルを通じてここを去り、他の者たちも各々の命令を胸に行動を開始していた。
そんな中、DIOに肉の芽を埋め込まれながらも、DIOの命令に背いている男がいた。

チョコラータ。

イタリアのギャング組織、パッショーネに所属する構成員のひとり。
ボスの親衛隊という立場にありながら、ボスであるディアボロにすら警戒されている危険人物である。

ジョセフ・ジョースター、空条承太郎、花京院典明、モハメド・アヴドゥル、以上の4人を探し出し、連れてくる。
その命令に従うフリをして他の者たちと共に建物を出た後、DIOが去ったタイミングを見計らって戻ってきたのだ。


(DIOたちの話から察するに、ここで待つのが最適だろうが――― 問題はいつまで待つべきか?)


床やら壁やらに飾り付けられた、人間の死体で作られたオブジェを鑑賞しながら、チョコラータはある男を待っていた。
やがて第2回放送を迎え、待ち人の無事を確認する。
そしてさらに待ち続け、放送から10分ほど経過した頃、刑務所の入口から大声が聞こえてきた。


「おーーーーーーい!! DIOォォォォ―――――!! いるかァァ―――――ッ!?」


声の主はチョコラータの望む人物。
おもわず頬が緩む。思ったよりもずっと早い帰還だった。


「よぉぉ―――う、セッコ。よく来たなぁ。待っていたぞぉ」
「ああぁ――――――! チョコラータぁぁぁぁぁ―――――!!」


破顔して迎えるチョコラータに、セッコも少年のような笑みを返す。
DIOではなかったが、チョコラータもセッコが気に入り、懐いている相手だ。
感動の再会、というには少し大げさだが、セッコは元の世界で唯一心を許した相手との再会を素直に喜んでいた。

「ところで、セッコ。そっちの男は誰だ?」
「あ? え〜っと、名前なんて言ったっけ? なんかDIOの手下らしいんだけどよォ―――」
「ふぅん? まあいい。ところでェ―――」

セッコに連れられてやってきたホル・ホース。
刑務所内にDIOがいなかったことに少しは胸を撫で下ろした彼だったが、代わりに現れたチョコラータという男に問われ、再び緊張する。
だが、チョコラータはホル・ホースに対してさほど興味を持たず、話題を変えてきた。

「そこにある、『芸術(アート)』だが……。あれは、お前の作品なのか?」
「ああッ! うんッ! うんッ!! そうだぜッ!! どう思うッ!!」

チョコラータに指し示されたのは、エンポリオら3人の少年の死体で作られた『オブジェ』。
ホル・ホースは、以前ここからそのうちの一人がセッコに食い殺される様を目撃していた。
あの時受けた衝撃も凄まじかったが、今はそれ以上だ。
人間を人間とも思っていない所業。まともな神経じゃあない。


「ぐっ げぼっ………」

グロテスクななりかたちも、立ち込める死臭も、これを作り上げたセッコも、それを見て『アート』と評するチョコラータも、何もかも気持ちが悪い。
我慢しきれず胃の内容物を吐き出すホル・ホースだったが、セッコもチョコラータも既に彼への関心はほとんど無く、その様子を咎める動きはない。
220創る名無しに見る名無し:2014/02/17(月) 14:12:24.07 ID:k1TN9Qkd
支援
221HUNTER×HUNTER ◆vvatO30wn. :2014/02/17(月) 14:18:18.34 ID:fb4DNhX/
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「なあ? どうだ? これ、どう思う?」

気分を害したホル・ホースをよそに、セッコは興奮していた。
DIOに言われて初めて犯した、自分の意志での殺人。食人行為、そして死体アート。

DIOは、セッコが新たな挑戦を行うたびに評価し、賞賛してくれた。
セッコにはそれがたまらなく心地よかった。

そsてチョコラータはDIOと出会う前のセッコが唯一心を許し、尊敬していた人間だ。
DIO同様に、チョコラータもセッコの作品を見て褒めてくれるだろう。そんな期待を込めて、セッコは問う。だが―――


「ふむ。どう思う、と言われてもなァ。わたしの趣味とは少し違う。否定するわけではないが、生物感がなくてあまり好きにはなれんな」

「―――え?」

その回答は、セッコの望んだものとは大きく乖離していた。
チョコラータの最大の嗜好は、生者が死者へと変貌する瞬間の恐怖と絶望だ。
死後、ただのタンパク質と成り果てた肉塊で何を作ろうが、チョコラータの琴線に触れることは特に無い。

「え? えと…… えっと………」

チョコラータの予想外の反応に、セッコは焦る。
こんなはずでは無かった。チョコラータの言っていることの意味はよくわからないが、肯定されていないということだけは理解できた。

そういえば、とセッコは思い返す。
たしかDIOにも、このオブジェに関しては絶賛された、という訳ではなかった。
素材の少なさとバリエーションのなさを指摘され、評価としては中の中といったところだ。

ならば、リキエルやストレイツォのオブジェはどうだ?
あれはセッコにとっても自信作であり、あれならきっとチョコラータにも褒めてもらえる。
そう思いセッコは自分の持っている写真を取り出す。
だが、セッコの手元にあったのは、シュガー・マウンテンと少年らの写真のみ。
リキエルやストレイツォのオブジェの写真は、教会での戦いのさなか、落としてしまったようだ。

(ああ! くっそぉォォ!! そういえばあのオブジェ壊されちゃったんだよなぁ! それにカメラも! チクショ――― 吉良吉影めェ―――!)

「ふむ」
「………あっ」

ひとり地団駄を踏むセッコの手から、チョコラータは写真をひったくり、目を通す。

「ほう! こいつはいい! 実にいいぞォ! セッコォ!! 映像じゃないのが残念だ!! 実にいい写真を撮ったな!!」
「お…… おう。そう……か?」

シュガー・マウンテンらの死の瞬間を捉えた写真は、チョコラータの好みをドストライクで捉えていた。
素直に賞賛するチョコラータであったが、セッコはどこか腑に落ちない。
それは、今セッコが見せようとしていた写真ではない。
確かに、死体の写真だってチョコラータのためを思って撮った写真であり、それを褒めてもらえた事は確かに嬉しい。
だが、死体オブジェの方とここまで極端に反応を変えられると、セッコはまるで自分の作品を否定されたような、嫌な気分になっていた。

「ふっふっふっふっふ。ところでセッコよ。お前は埋められてないようだな? この―――」

いまいち納得のいかないセッコの様子に気がつかず、チョコラータは自分の額に手を当て、そして異物をむしり取る。


「『肉の芽』を―――」
222創る名無しに見る名無し:2014/02/17(月) 14:21:45.89 ID:k1TN9Qkd
支援
223創る名無しに見る名無し:2014/02/17(月) 14:25:51.19 ID:amNWXt5Z
支援
224HUNTER×HUNTER ◆vvatO30wn. :2014/02/17(月) 14:26:15.93 ID:fb4DNhX/
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チョコラータの手のひらで蠢くのはDIOの埋め込んだ肉の芽。
DIOが自らの奴隷を増やすため、支配するために利用する。
だがチョコラータは逃れた、DIOの支配から。

チョコラータが『肉の芽』というものの何たるかを理解していたわけではないが、自分にとって都合の悪い何かであることはなんとなく予想できた。
そこでチョコラータはスタンド『グリーン・デイ』を利用した。
自分の額の一部をカビ化させ、脳神経との繋がりをシャットアウトさせたのだ。
チョコラータの医学知識と『グリーン・デイ』の能力を使えば、例え全身バラバラになっていても自由自在に動くことも可能、肉の芽の支配から逃れるくらいの小細工は訳ない。
そのあとは、既に肉の芽の支配を受けたディ・ス・コらの真似をして従うふりをしていただけなのだ。

「いやあ良かった。お前がDIOに操られていなくてよぉ。どうやって奴から逃れたんだ?」

「操られ……? 逃れる? 何言ってんだチョコラータ?」

「ふふ…… まあいい。お前さえいてくれれば心強い。おれの『グリーン・デイ』の攻撃と、それを気にせず戦うことのできるお前の『オアシス』……
おれたちが二人揃えば無敵だ。お前さえいてくれれば、きっと勝てるぞ。DIOにッ!」

「DIOに―――ッ!?」

チョコラータは誰かに支配されることを誰より嫌う。
それは相手がDIOであろうがパッショーネのボスであろうが変わらない。
この点はDIOが予想しヴォルペに語った内容と同じだったが、チョコラータはDIOの考えを上回る狡猾さで難を逃れ、そしてDIOに牙を向けた。

「そうだとも! DIOなど恐るるに足らん! 強者は弱い奴らを支配してもいい資格があるのだ!
いや、他人を支配しなくてはならない宿命が、強い者にはあるのだ。たとえそれがDIOだろうとな!
あの威張り腐った糞DIOがッ! 死ぬときにどんな恐怖を浮かべて死ぬのか楽しみだァ!」

「チョコラータ……おまえどうしちまったんだ?」

「そうだ! DIOを倒せたら、また角砂糖を投げてやろう! 残念ながら今は持ってないが、必ず投げてやる。
いくつがいい? 5個か? 10個か? 20個か?」

「……………………」


「……セッコ?」
225創る名無しに見る名無し:2014/02/17(月) 14:28:25.71 ID:k1TN9Qkd
支援
226創る名無しに見る名無し:2014/02/17(月) 14:31:43.17 ID:amNWXt5Z
支援
227創る名無しに見る名無し:2014/02/17(月) 18:16:47.38 ID:UjbuY0be
しえん
228HUNTER×HUNTER ◆vvatO30wn. :2014/02/17(月) 19:37:34.49 ID:fb4DNhX/
ハイテンションで一方的に話していたチョコラータが、ようやくセッコの異変に気が付く。
セッコと言えば、馬鹿みたいに頷くだけで、角砂糖を投げてやればはしゃぐ子供のようなものだった。
押し黙って、角砂糖の話にも乗ってこない。チョコラータは、セッコのこんな姿を見たことがない。


「おいセッコぉ。どうかしたのか? いつものお前らしく――――――」


ドグァ


「どうかしたのはてめぇだろ? くそチョコラータ…… あんた、いったいどうしちまったんだよ?」


「ぐっ!!」


『オアシス』の打撃がチョコラータを襲った。
激しい拳での一撃を生身で受け、チョコラータは悶える。


「な…… 何をする…… セッコォ…………」

「あんたは頭も良くて、角砂糖投げて遊んでくれて、預金もいっぱいある。そんでとても強い。
だからあんたの言うこと聞いていれば安心と思ってた………


でもDIOを倒すだとォォォ――――― オレにいろいろ教えてくれるDIOを殺すなんて、何考えてんだおめえはよォォォオオオオ――――!!!
オレの作ったやつもぜんっぜん褒めてくれねえくせしてよォォォオオオオオ――――――!!!
そんなカスもうぜーんぜん好きじゃねェェェ―――んだよォォォォ――――!!!」

「な……… セッコ………… やめろォ――――――!」



思いもよらぬセッコの裏切り。
チョコラータにとって完全に誤算だったのは、想像を超えるDIOのカリスマ性と支配力。
たしかにDIOは自分の意に反する者に対しては肉の芽という手段を用いて強制的な洗脳を行うことがある。
だがDIOの支配力が最も発揮されるのは、DIOと波長の合う者への絶対的な崇拝だ。

プッチ神父、ヴァニラ・アイス、エンヤ、ンドゥール。
そして、このセッコ。

皆、DIOの魅力に取り憑かれ、神を崇めるように、彼の事を愛している。
少年のように純粋なセッコを魅了することで、チョコラータには勝ち目は無い。
229HUNTER×HUNTER ◆vvatO30wn. :2014/02/17(月) 19:48:49.40 ID:fb4DNhX/
「くそォォォォ!! 『グリーン・デイ』―――――!!」

「アホかおめえ? さっき自分で言っただろうが! おれに『カビ』は効かねえんだよォ!!」

容赦のないセッコの攻撃がチョコラータを襲う。
セッコの『オアシス』に対し、チョコラータの『グリーン・デイ』は全く効果を為さない。
『グリーン・デイ』は対生物にのみ発動する能力で、既に死亡している者や無生物に『カビ』を生やすことはできない。
これは、チョコラータの死者に対する関心の無さに起因する特徴であろう。
そしてセッコの『オアシス』は、全身を無生物(泥)で覆い纏うスタンド能力。
つまりスタンドを発動中のセッコは、外側の生物とは隔離された状態にある。
『オアシス』を纏ったセッコに対し、『グリーン・デイ』の能力は全くの無害。

(バカな…… セッコ…… なぜ………)

もちろんチョコラータもそれを理解し、それゆえに重用していた。
『グリーン・デイ』の範囲攻撃と、『オアシス』のコンボ。それが最強であると信じて疑わないからこそ、チョコラータはセッコを飼い慣らしていた。
その飼い犬に噛み付かれたとき、天敵という形で自分に立ちはだかることなど考えもせずに。


「DIOはよォ 偉ソーに威張り散らすだけのあんたと違って、おれにイロイロ教えてくれるんだよォォ!
あんたと違ってよォォ―――――!! あんたも―――」

セッコの豪然たる膂力がチョコラータの右手の四指を毟り取る。
あまりのスピードに自身のカビ化も追いつかず、激痛に叫び声を上げるチョコラータ。
そのチョコラータの開いた口を目掛けて―――

「こいつを喰らってみろよォォ―――」

チョコラータのちぎられた指を、チョコラータ自身の口の中に叩き込んだ。

「ヤッダーバァアァァァアアアアア!!!」

セッコの攻撃の手はそれでも止まらず、そのまま拳を口の中に突っ込んだまま殴りぬけ、チョコラータの下顎はグチャグチャに潰された。
そのまま床に倒れたチョコラータに馬乗りになり、セッコは更に拳を振り下ろす。
もはや脊髄反射で自分をカビ化させて身を守るしかないチョコラータだが、逆にそれがチョコラータ自身を苦しめていた。
カビのせいで出血は少なく、痛覚も麻痺しているためなかなか死ぬことができない。
このままじわじわと、セッコに嬲り殺されるのを待つしかない。
230HUNTER×HUNTER ◆vvatO30wn. :2014/02/17(月) 20:00:21.39 ID:fb4DNhX/
.



(なんっ…だ………? こいつは? 本当に…… 人間なのか? こいつは………?)


蚊帳の外から一部始終を見ていたホル・ホース。
初めはセッコが気の合う仲間と合流した事に、望ましくない思いでいたホル・ホースであった。
だが、いま目の前でセッコは、その仲間であったチョコラータへの一方的な虐殺を行っている。
事情のよくわからないホル・ホースにとって、理解できたのはセッコの異常なまでのDIOへの愛情。
はじめの様子を見るに、チョコラータもセッコにとって気に入られた相手だったろうに、DIOを否定した途端にこの様である。

「こらァァアァ!! 聞いてんのかくそチョコラータァァァァァアアア!! まだ終わんねえぞォォォオオ!!」
「………………」

ホル・ホースからは、チョコラータがまだ生きているのか、死んでいるのかすらもうわからない。
わかるのは、自分はこのセッコと一生かかっても相容れることなど無いということ。
震える手で頭を抑え、考える。

これから、いったいどうするべきか?

『逃げる』という選択肢は、今の彼が最も○を付けたい選択肢だ。
セッコはまだホル・ホースに背中を向けたまま、眼下のチョコラータに夢中だ。
このままこっそり走り出せば、気付かれずに逃げることはおそらく可能。
だが、その後は?
今日、この数時間の間にホル・ホースは2度セッコと遭遇し、その場から逃げている。
そして、ほとんど時間を置かないまま既に3度目の遭遇を果たしていた。
今、仮に逃げたとしても、またすぐに出会ってしまうような、そんな運命を感じる。

ならば、『従う』か?
否、これは逃げる以上にありえない。
初めはDIOと遭遇する事を最も忌避していたが、今はそれ以上にセッコの存在が受け入れられない。
まだ、吸血鬼であるDIOの方が話が通じる分マシである。

初めから答えは出ていた。
やはり『殺す』しかない。

ホル・ホースはスタンド『皇帝(エンペラー)』を取り出す。

(落ち着け! オレならできる! やつは全く気がついていない……!)

狙うは顔面。全身を覆うスタンドの目の部分は、穴になって空いている。
背後からの攻撃だが、『皇帝(エンペラー)』の弾丸ならば余裕で狙える。

相手は、ひとりだ。
今、ここに『DIOはいない』――――――。

今なら、殺れる。
今しか、殺れねえ。


(――――――絶対に、殺れる。)
231HUNTER×HUNTER ◆vvatO30wn. :2014/02/17(月) 20:10:48.34 ID:fb4DNhX/
.


セッコ殺害を決めたその一瞬、ホル・ホースの精神は驚くほど落ち着いていた。
過去にDIO暗殺さを試みた時に匹敵する冷静さを持って、標的に狙いを定める。

引き金を引くその刹那、ホル・ホースの頭の中には出会ってからの徐倫の姿が思い出された。
川の流れから助けた時は、ミステリアスな女だと思った。
自分の事を「イイ人」と言い、破顔した彼女はとても魅力的で、不意に心がときめいた。
DIOやセッコに怯える姿は、少し撫でるだけで割れてしまいそうなほど脆く、弱々しかった。
そして、彼女の姿は堪らなく、美しかった。

ゲーム開始から半日あまり、常に緊張感を絶やせなかったホル・ホース。
思えば彼にとって、徐倫と2人きりで過ごした数時間だけが、唯一心が安らいだひとときだった。

(やれやれ、しょうがねえ女だぜ。まったく―――)

今ごろまた、一人でどこかで震えているのだろう。
このセッコを殺したら、さっさと探しに行ってやらないとな。
手間のかかる女だが、彼女についていてやれるのは、自分しかいない。

(くだばりやがれ! くそったれ―――ッ!!)






「オレの銃口向けてるってことは、やっぱてめぇは敵って事だなァ!?」

「は?」


チョコラータに向かって拳を振り下ろした勢いのまま、肘を地面に叩きつける。
『オアシス』で泥化し「弾力あるもの」と化した床の反動を利用して、背後のホル・ホースに飛びかかる。
そして、反撃する暇もない『オアシス』での猛攻。



(やっぱ……… 今日のオレはツイてねェ……ぜ……… 畜生……)
232創る名無しに見る名無し:2014/02/17(月) 20:14:01.64 ID:amNWXt5Z
支援
233創る名無しに見る名無し:2014/02/17(月) 20:14:52.27 ID:UjbuY0be
ああ…
234創る名無しに見る名無し:2014/02/17(月) 20:22:20.41 ID:50kyUEke
 
235創る名無しに見る名無し:2014/02/17(月) 22:19:02.13 ID:gwDmgooW
投下きてるうううう支援んんんん
236創る名無しに見る名無し:2014/02/17(月) 22:24:13.47 ID:amNWXt5Z
支援
237創る名無しに見る名無し:2014/02/17(月) 22:31:24.10 ID:amNWXt5Z
支援
238HUNTER×HUNTER ◆vvatO30wn. :2014/02/17(月) 22:35:46.91 ID:fb4DNhX/
.

最後に思い浮かべた徐倫の姿。
それが走馬灯であったということに、最期の最期でホル・ホースは気が付いた。







【チョコラータ 死亡】
【ホル・ホース 死亡】

【残り 54人】





【E-2 GDS刑務所1F・女子監食堂 / 一日目 日中】

【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ローマでジョルノたちと戦う前
[状態]:健康、興奮状態、血まみれ
[装備]:カメラ(大破して使えない)
[道具]:死体写真(シュガー、エンポリオ、重ちー、ポコ)
[思考・状況]
基本行動方針:DIOと共に行動する
1.とりあえずDIOを探し、一度合流する。怒ってなければいいけど……
2.吉良吉影をブッ殺す。
3.人間をたくさん喰いたい。何かを創ってみたい。とにかく色々試したい。
[備考]
※『食人』、『死骸によるオプジェの制作』という行為を覚え、喜びを感じました。
239HUNTER×HUNTER ◆vvatO30wn. :2014/02/17(月) 22:36:17.53 ID:fb4DNhX/
投下終了です。
時間がかかってしまい申し訳ありません。

チョコラータが実は肉の芽の支配から逃れていた、という点がリレーできているのか微妙なラインですが、前作でチョコラータについての細かい描写があるわけではないので、これくらいはいいですよね?
それと、『オアシス』に『グリーン・デイ』が効かない、というのも原作では語られてはいない仮説の一つを前提に表現しました。
「ディアボロの大冒険」でもオアシス能力装備でグリーン・デイの階段降り不可を無効化したりできますし、チョコラータがセッコを飼っている理由と合わせて、この仮説を採用しました。
拙作にてシアー・ハート・アタックも無効化させてしまいましたし、『オアシス』は相変わらず応用が利いて、書いてて楽しいです。


第2放送前の時間帯では結局3本しか書けない体たらくでしたが、これからはもう少し頻繁に投下できるよう頑張りたいと思います。
240創る名無しに見る名無し:2014/02/17(月) 23:54:26.62 ID:amNWXt5Z
投下乙です!

放送明け一発目で凄いの来たあ!
セッコがチョコラータに悪態つくとこが原作まんまどころか予想以上すぎて
でもセッコがそう思う理由ももっともだしこうなってしまうのもある意味仕方ないか
チョコはともかくホル・ホースは不運だったなぁ…
241創る名無しに見る名無し:2014/02/18(火) 00:49:12.23 ID:HbxIkgpQ
乙です
DIOの影響を受け、セッコのキャラクターがだんだん確立されていく感じが楽しい
グリーン・デイとオアシスの解釈も新鮮な感じがして僕は楽しめました
ホル・ホースはさくっと殺られてしまい、残念
エンペラーと近距離型スタンドじゃあまりに相性が悪すぎましたね
242 ◆vvatO30wn. :2014/02/19(水) 22:51:55.19 ID:mGTRq5Th
したらば・なんでもありなスレにて◆c.g94qO9.A氏に質問を提示しました。
お気づきになられましたらぜひご返答ください。
243創る名無しに見る名無し:2014/02/22(土) 22:24:03.36 ID:YdIzyrQo
乙です。ヤッダーバァ吹いたww
ホル・ホース脱落かあ
244創る名無しに見る名無し:2014/03/05(水) 20:20:40.77 ID:i3a8vx5f
245 ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 13:08:18.57 ID:PdGHKBHx
毎度毎度、時間かかってしまい申し訳ないです。

タルカス、シーザー・アントニオ・ツェペリ、イギー、ヴァニラ・アイス、DIO、ヌ・ミキタカゾ・ンシ、虹村形兆、ジョルノ・ジョバァーナ、グイード・ミスタ、スクアーロ、蓮見琢馬、カンノーロ・ムーロロ

投下開始します。
246 ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 13:18:19.32 ID:PdGHKBHx
【Scene.1 タルカス】
   am11:50 〜双首竜の間〜


「今からだと、どこへ行こうにも移動中に放送を迎えます。ここでしばらく体を休めましょう。」


ジョルノの提案から、タルカスたちはその場でしばし休息をとることになった。
2人は胸の前で十字を切り、スミレの遺体に祈りを捧げる。
お互いの情報交換はある程度済ませたので、あと10分ほどは手持ち無沙汰な時を過ごすことになる。
その余暇を利用して、ジョルノはタルカスに聞きたいことがあった。


「タルカスさん―――あなたはスコットランドの騎士、タルカスですね? 黒騎士ブラフォードと共に戦ったという……」

「………たしかに、俺はテューダー王家に仕える騎士であるが、なぜそれを?」


やはり、とジョルノは思った。名簿にタルカスとブラフォードの両名があり、そして参加者たちは時代を超えて集結している。
ただの偶然かとも思ったが、実際にタルカスと出会い、その屈強な出で立ちを目の当たりにすれば、それを連想せざるを得ない。

もっとも、タルカスとブラフォードというのは、日本史で例えれば宮本武蔵と佐々木小次郎程度の知名度だ。
イギリス人ならば誰もが知る英雄だが、外国人の多いこのバトル・ロワイアルで気付ける人間はそういないであろうが。


(言うべきか―――? いや、しかし―――)

ジョルノはまだ、参加者たちの間に時代を超えた差があることを誰にも話していない。
そして、これを話すということは、タルカスにとって絶望しか与えない。
彼らはジョルノから400年以上も過去の人物であり、そして彼の仕えたメアリー・スチュアートは非業の死を遂げている。
タルカスとブラフォードは、メアリーが謀殺されたとほぼ同時に処刑されたはずなのだ。
このタルカスが、『メアリーの死後のタルカスである』という確証はない。
ジョルノがタルカスにそれを話すということは、メアリー・スチュアートにまつわる歴史をも、タルカスに語らなければならない。

「いえ、何でもありません」
「―――?」


(言えない。とてもじゃあないが……)


結局何も切り出せぬまま、ジョルノは放送の開始を待つしかなかった。




☆ ☆ ☆
247創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 13:49:34.05 ID:rubJrisU
しえーん
248 ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 13:53:00.16 ID:PdGHKBHx
【Scene.2 シーザー・A・ツェペリ】
   am11:55 〜カイロ市街地〜


ふらふらと街道を彷徨う男は、吹い寄せられるかのように目に付いたオープンカフェの椅子に座り込んだ。


(だめだ………さすがに疲れたぜ………)


川沿いからやや逸れ、ローマの歴史ある町並みが急に都会的に変わる『カイロ市街地』を不審に思い足を踏みいれたシーザーであったが、疲労により小休止を選んだ。
といっても、形兆からの攻撃は大事には至らず、波紋の呼吸でカバーできる範囲だ。
だがらこの疲労は肉体よりも精神的なダメージによるものが多い。
スピードワゴンやリサリサなどから聞いて、ディオ・ブランドーという吸血鬼の噂はさんざん聞いていた。
だが、実際に相対するとその存在感に圧倒された。
柱の男と石仮面、吸血鬼どもに運命を狂わされたツェペリ家の意地にかけてもディオに屈するなどありえないが、しかし、本気で死を覚悟した。
形兆の機転がなければ、自分は今この世にいなかっただろうと、自分を反省する。

(休憩は5分だけだ…… もう放送まで時間がないし、何か動くにしてもその情報を得てからの方がいいだろうし――――――)

先ほど拾ったディスクを取り出し眺める。
シーザーにはこれが何なのかまだわからない。
だが、ディスクから漂う生命エネルギー、特に既に持ち主を失ったスタンド『クリーム・スターター』の精神エネルギーをシーザーの波紋が感じ取り、これが特別な価値のある何かであることを理解していた。


(一体なんだこれは? 妙な力を感じる。何か秘密があると思うが……)


匂いを嗅いだり、覗き込んだり、いろいろ試すが何も起こらない。
知識のないまま『頭に差し込む』という発想に至る訳もなく、ディスクを弄り回すうちに、第2回放送が始まった。
今回の死亡者は18人。
その中にはスピードワゴンやリサリサも含まれることを、シーザーはまだ知らない。




☆ ☆ ☆
249創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:00:10.39 ID:XpsznLYx
支援
250創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:02:21.37 ID:XpsznLYx
 
251創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:05:10.74 ID:rubJrisU
しええええん
252創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:07:22.55 ID:XpsznLYx
 
253創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:07:27.03 ID:FASAwpm8
支援
254 ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 14:07:39.94 ID:PdGHKBHx
【Scene.3 ヌ・ミキタカゾ・ンシ】
   pm0:02 〜DIOの館-図書室-〜


放送を終え、琢馬が最初に抱いたのは安堵の感情だった。
つい数時間前に別れたばかりのウェザー・リポートの名が呼ばれたことよりも、一緒にいたはずのジョルノや因縁のある仗助の名が無かったことよりも、エリザベスに該当する名前が誰かということよりも、まず双葉千帆の無事が確認できたことに、安心した。
そして自分の想像以上に、自分が彼女の事を気に掛けていたことに気が付き驚いた。

自分の中に宿る感情から目を逸らし、次に琢馬は頭の中を整理する。
禁止エリアは、A-7、A-2、D-8。外側から徐々に狭まってきている。杜王町エリアがかなり狭まってきている。
探索するなら急いだほうがいい。

ウェザー以外の知り合いで死んだのは、山岸由花子ひとりだけのようだ。
あと分かるのは、エリザベスを突き落としたであろう救急車に乗っていたスピードワゴン。
エリザベスに対する私怨でもあったのか、彼女の身元を知る手掛かりの一人だったが、それも今となっては、だ。
その他はまあ、さらにどうでもいい。


「さて」


拳銃のスライドを引く。弾丸は装填した。
いよいよ死刑執行の時だ。


「ブローノ・ブチャラティとレオーネ・アバッキオが逝ったようだ。お前も直ぐに向こうへ送ってやる」


蓮見琢馬がミスタへ拳銃を向けたと同時に、地に伏せていたミキタカが突如起きあがった。
事故の記憶を読ませ、動けないはず。
何故、動くことができる?
その謎が琢馬に一瞬の油断を産んだ。ミキタカの手には、ミスタの所持していた拡声器があった。



「わあああああああああああああああああああああ!!!」



喉が潰れる程の覚悟で、ミキタカは叫んだ。
拡声器によってさらに凄まじく、そして太陽光を避けるために密閉された屋敷内で反響し合い、その大音量はたちまち琢真の耳を襲った。


「ぐっ……」


武力を持たないミキタカの、精一杯の攻撃。だが、効果は絶大だった。
ミキタカ自身も、想像以上の大声になったことに怯んだが、それでも懸命に動き、倒れているミスタに駆け寄る。
まだ息はある。だが、はやく誰かに診せなければ。
ミキタカはミスタの身体を抱え込み、そして背負う。そして逃げようと駆け出したミキタカを―――


ダン! ダン! ダァン!


琢馬の撃った弾丸が襲った。
255創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:08:03.98 ID:f4C4g6FD
支援
256創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:10:07.02 ID:rubJrisU
SIEN
257創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:12:21.67 ID:f4C4g6FD
支援
258創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:12:45.48 ID:XpsznLYx
 
259 ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 14:14:02.97 ID:PdGHKBHx
「痛てェ!」


何発か撃った弾丸の一発が、ミキタカの右膝に命中した。
狙って当てたわけではない。この一発はたまたまであり、琢馬の幸運だ。

琢馬の平衡感覚はまだ回復していない。
ただでさえ拳銃を撃ったことなどない琢馬が、こんな状態で何かを狙って撃つなど出来るわけがないのだ。
ゆえに琢馬は乱射した。早い話、下手な鉄砲も数撃てば、というやつだ。
この密室の中で拳銃を乱射。跳弾すれば自分の身だって危ないにも関わらず、その事を考慮する余裕もないほど、琢馬は焦っていた。

(ここでこいつらを逃せば、俺が殺し合いゲームに肯定していることが明るみになってしまう。あと56人も残っているこの段階で、そうなるのは避けたい。
こいつは、なぜか今動いている。能力が効かなかったのか、それともこの短時間で回復してしまったのか……
どちらにしても、厄介な男だ。始末しなくては………)

命を獲るには至らなかったが、足を奪ったのは大きかった。
痛む右脚を引きずりながら、それでも命からがら琢馬から逃げる。
撃たれた衝撃で拡声器を落としてしまったが、ミスタだけは絶対に放さない。
ミキタカがやっとの思いで図書室から脱出したころ、琢馬はようやく吐き気から解放され、立ち上がった。

(野郎……)

ミキタカの後を追い図書室を脱出し、すぐさま館の入口方向へ駆ける。

拳銃を構え―――奴が、いない。

ミキタカはどこへ行った?

(バカな? 部屋を出るまでのタイムラグは数秒だ。あの足で逃げられるわけがない……… ならば―――)

奴が逃げたのは、館の外へではない?
急いで『本』を取り出す。

読むのは3秒前の記憶。
戻りすぎると、また『あの大音量を聞く』ハメになるから気を付けて……

3秒前――― 図書室から脱出し、入口方向へ切った視線の最中………
ミュージックホール奥の部屋から階段方向へ消えていく人影が、琢馬の意識の外に写りこんでいた。


ミキタカは、外ではなく屋敷の中へ留まった。
拳銃を持つ琢馬に対し、ミキタカは足を負傷。ミスタという荷物まで抱えている。
外へ逃げての鬼ごっこなら、ミキタカに勝ち目はなかっただろう。
屋敷に留まり、隠れんぼの方を選んだ。
この後に及んでいい判断だと、琢馬は感心する。


(いいだろう。相手になってやるぞ、宇宙人―――)



そして今度こそ完全に琢馬の視界の外。数枚のトランプカードが通り過ぎたことに、琢馬は気が付いていなかった。


☆ ☆ ☆
260創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:15:43.69 ID:f4C4g6FD
支援
261創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:19:50.46 ID:f4C4g6FD
支援
262創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:22:14.23 ID:XpsznLYx
 
263 ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 14:24:03.20 ID:PdGHKBHx
【Scene.4 カンノーロ・ムーロロ】
   pm0:03 〜ウインドナイツの秘密の通路〜



時間を少し遡り、こちらも放送直後。

先導するカンノーロ・ムーロロのぴったり3歩後ろを、DIOが付いて歩く。
地下トンネル―――ウインドナイツの秘密の通路は迷路のように入り組んでいるが、既に『オール・アロング・ウォッチタワー』によって解析を終えているムーロロにとっては、答えの書き込まれたパズルに等しい。
道中、DIOはムーロロに対し質問を繰り返していた。
質問の内容はゲーム開始からムーロロが能力を用いて得た情報のことから、ムーロロ自身の内面性を問うものまで様々だ。

当初DIOに取り入ろうと画策していた時、ムーロロはその情報に虚実を交えて、自分のいいようにDIOをコントロールしてみせるつもりだった。
だがこの時ムーロロは、なぜか偽ることができない。何故か。

たった数分の問答の間に自分の本性を見透かされた。
その事に心境の変化を感じたからなのか、それともただ単にDIOに対する恐怖から無意識のうちに服従を選んでしまったのか、自分でもわからない。
ただわかっていることは、ムーロロの本能がDIOに従うことを選択し、その判断を肯定しているという事実だけだ。

「なるほど。『ウォッチタワー』の能力は伊達ではないな。この短時間に地下の道を迷うことなく目的地に辿りつける、か」

感心したように笑うDIO。ふたりは目的地であるサン・ジョルジョ・マジョーレ教会の地下納骨堂に到着した。
教会の地下にはストレイツォの死体で作られたオブジェが惨い形で放置されており、ムーロロの報告によるとこれをやったのはセッコであるという。
見事に入れ違う形になってしまったが、DIOはセッコが自分の意思を持ってゲームを楽しんでいることに満足する。
そんな事を考えながら、DIOたちは地上への階段を登る。
時間は正午過ぎなので差し込む日光を警戒しつつ、教会の講堂へ。そこでは既に3人の配下が、DIOたちの到着を待っていた。

「みんな早いじゃあないか。待たせてしまったかな?」
「DIO様、お怪我を!?」

現れるDIOに跪いて待機していたヴァニラ・アイスが、いち早く反応を示す。
ジョースター一行抹殺の命を受け、DIOと分かれてからほんの1時間弱だというのに、DIOの見た目は満身創痍。明らかにかなりのダメージを受けていた。

「DIO様! DIO様が望むのであれば、いつでもわたしの血でッ!」
「心配は無用だ、ヴァニラ・アイス。ありがたい申し出ではあるが、今お前を失うわけにはいかない。それに、この身に馴染ませるのは、やはりジョースターの血が好ましい」

いつでも命を差し出す覚悟がある。どこの世界のヴァニラ・アイスも同じである。
ヴァニラは納得していないようだが、DIOはこのヴァニラの忠誠心を再確認し、満足する。
まったく、優秀な『駒』である、と。

そしてヴァニラ・アイスの2歩後ろに立つのは虹村形兆。
さらに教会入口脇の壁にもたれ掛かり、DIOたちの様子を伺うのはスクアーロ。
ヴァニラと違いDIOに対して跪くことはなく、憮然とした態度である。
その事にヴァニラは腹を立てつつも、DIOがそれを咎める様子がないため黙認し、黙る。
この3人は、いわゆる非・肉の芽組だ。
肉の芽を埋めたディ・ス・コ、サーレー、チョコラータらと同様にジョースター一行の抹殺を命じた面々だが、DIOがムーロロを手にしたことから事情が変わり、『ウォッチタワー』の能力を用いて、この教会へ集合させたのだ。
264創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:24:13.33 ID:rubJrisU
支援
265創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:26:37.71 ID:f4C4g6FD
支援
266 ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 14:31:44.85 ID:PdGHKBHx
「端的に説明しよう。空条承太郎との戦闘があった。残念ながら仕留めるには至らず、私もこの通り手傷を負った。さらにカーズという男も、このDIOに迫る戦闘能力を持っていた。吉良吉影も、侮れない能力を持っている」


信じられない、という表情のヴァニラ・アイス。形兆とスクアーロも、思わぬDIOの言葉に目を瞬かせている。


「やはりジョースターの爆発力は侮れない。だが、このDIOとてまだ完全ではない。あと一人か二人、ジョースターの血を吸えば、この肉体は完全にDIOに馴染むであろう」


今のままでは分が悪い、先の戦いを経てそう判断したDIOは、ジョースター一行抹殺より先に、ジョナサンの肉体を完璧に馴染ませることを優先させるよう方針を変更した。
そしてジョースターの肉体を効率よく探すため、それまで放置させておいたムーロロとの接触を図った。
さらに、ムーロロの能力を用いて肉の芽を埋めていない3人の部下を集めさせた。
なおヴォルペとの接触を図らなかったのは、元々敵対していたムーロロの『ウォッチタワー』での接触は有効ではないとの判断である。


「ときに、お前たちは先ほどの放送を聞いて、何か気がついたことはないか? 形兆、お前はどうだ?」

「―――いえ? 特には。死亡した者で私の知っているのは、山岸由花子という少女ひとりくらいですが、特に関わりがあったというわけでも―――」

「シーザー・アントニオ・ツェペリ………」

「ッ!!?」


ポツリと漏らしたDIOの言葉に、形兆は顔面蒼白する。
バレていない、と思っていたわけではない。
自分が意図的にシーザーを生かしたという事も、自分がDIOへ服従しているわけではないという事も。
DIOの表情からも明らかだ。
形兆の反応を見て、DIOもニヤニヤと笑い、楽しんでいる。


「放送で分かるのは死亡した者だけではない。『死亡していない者』のこともわかるという事だ。不手際だったな形兆、あの状況でシーザーを仕留め損なうとは………」


言葉だけは、何も気が付いていない、という体裁でDIOは話す。
その言葉に潜む威圧感で、形兆は返答に困る。するとDIOは形兆に向けていた視線を切り、教会壁面に飾られている一枚の絵を指し示した。


http://www20.atpages.jp/r0109/uploader/src/up0302.jpg


「お前たち、この絵がどういったものか、知っているか? ヴァニラ・アイス、どうだ?」
「―――は? い、いえ。私には、そのような知識は…… 申し訳御座いません―――」

予想外の問いを振られ、ヴァニラは心苦しげに返答する。
DIOはさほど気にせず、今度は離れた場所に立つスクアーロに向けて問う。


「お前はどうだ? スクアーロ」
「ルネサンス期の画家、ティントレットの『最後の晩餐』だ。聖書にもある、イエス・キリストの最期――― ユダがキリストを銀貨30枚で売り払う場面を描いている。」
267創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:35:06.46 ID:f4C4g6FD
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268創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:37:16.40 ID:rubJrisU
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269 ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 14:40:28.10 ID:PdGHKBHx
「………………」

スクアーロの言葉に、形兆の血の気が引いてゆく。
パチパチパチと手を叩きながら、DIOは、

「素晴らしい解答だ、スクアーロ。そう、ユダの裏切りだ。『最後の晩餐』はミラノにあるダ・ヴィンチの方が有名だが、さすがはヴェニチア在住の殺し屋といったところか。
さて、この質問なら形兆、お前にもわかるだろう。キリストを裏切ったユダの末路――― 彼はどうなった?」

「……。死―――」
「そうだッ! 裏切り者には死を。そういうことだよ、虹村形兆。私の言いたいことがわかるか?」

形兆の答えを一文字目で遮り、DIOが高圧的に質問を重ねる。
表情には出さず、しかし肩で息をする形兆。もはやここまでか、そんな考えが、頭をよぎる。
返答に困る形兆へ、思わぬところから助け舟が出された。

「DIO様、蓮見琢馬らに動きが―――」
「ふむ」

カンノーロ・ムーロロだ。
傍らに立つムーロロがDIOに話しかけ、そのまま耳打ちで何かを伝えている。
DIOはそのままムーロロと小声で話を続け、シーザーの話題はそこで一旦停止された。

その様子に形兆は一先ず落ち着く。ヴァニラ・アイスの後ろまで下がり、しゃがんで膝をついた。
形兆の顔はびっしょりと汗で濡れていた。
気休め程度にしかならないが、形兆は今更ながらDIOに服従する格好を見せる、と同時に、頭を垂れることで動揺に歪む表情を隠そうとした。
形兆の態度に、ヴァニラが軽く舌打ちする。
その間、DIOはムーロロと小声で何やらやり取りをし、1分ほど後に目線を3人に戻して話を始めた。



「それでは、各々への命令を説明する。」





☆ ☆ ☆
270創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 14:43:20.23 ID:f4C4g6FD
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271創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 15:12:54.17 ID:uPgo4Zz2
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272 ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 15:14:19.16 ID:PdGHKBHx
【Scene.5 イギー】
   pm0:08 〜双首竜の間〜



「ブチャラティ……… アバッキオ………」

放送を終え、ジョルノは大きく肩を落とした。
自分の中で諦めはつけていたつもりではあったが、それでも心のどこかで期待していたのだろう。
ブローノ・ブチャラティとレオーネ・アバッキオ、死別した二人の仲間たちとの再会を。
タルカスたちの過去のことなど、完全に頭から消えてしまった。

「大丈夫か? ジョルノ・ジョバァーナ」
「……ええ。仲間が2人逝きました……… ですが、大丈夫です。ある程度は、覚悟していましたから………」

タルカスに心配をかけまいと気丈に振舞うジョルノであるが、ここで倒れるわけには行かない。
幸い、ミスタとミキタカの名前が呼ばれることはなかった。
何かトラブルがあったのかダービーズカフェにも現れなかった2人だが、まだ生きているらしい。
ジョルノにとってその情報は救いだった。
実際には2人は現在も窮地に陥っているわけであり、その点においては死亡時刻をずらさせた蓮見琢馬の策略は成功したとも言える。

「いつまでもここには居られんだろう。どうする?」

「そうですね――――――」

頭の中を必死に切り替え、今後の方針を話し合う2人。
その2人に我関せずといった態度で、イギーは後ろ足で腹を掻きながら大きく欠伸をした。

「ファァア――――――」

(まったく、辛気臭い奴らだぜ…… 無理して強がってるのが見え見えだぜ)

だが仲間思いの甘ちゃんってのはいいことだ。
なにより、理不尽に裏切られる可能性が少ない。
仲間のふりしていれば、とりあえずの安全は確保できる。

(やはり、こいつらに着いていくというオレの判断は間違ってねーな)


イギーの行動方針は、どこまで行っても自己保身が最優先事項なのだ。




☆ ☆ ☆
273創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 15:15:15.85 ID:f4C4g6FD
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274創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 15:29:53.26 ID:XpsznLYx
 
275創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 15:35:07.54 ID:XpsznLYx
 
276 ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 15:36:32.81 ID:PdGHKBHx
【Scene.6 ヴァニラ・アイス】
   pm0:17 〜サン・ジョルジョ・マジョーレ教会周辺〜




「オレは一刻も早く仕事を済ませたい。先に行かせてもらうぞ」

そう言い残し、スクアーロは走り去った。
躊躇せずDIOの命令を遂行しに向かうスクアーロと違い、虹村形兆には大いに迷いがあった。
そんな心の内を読んで、ヴァニラ・アイスは形兆に話しかける。

「とっくに気が付いているぞ、虹村形兆。私も、DIO様も。お前の稚気にな。お前にもそれくらいわかっているのだろう?」
「………………」

冷たく、感情のない口調で問う。
形兆には黙る事しかできない。その沈黙が肯定を意味することは明白だ。
だが、どうすることもできない。DIOに逆らうことも、ここでヴァニラ・アイスと戦うことも。

「できるのならば、私は今すぐにでも、貴様の首と胴を切り離してやりたい。暗黒空間に飲み込んで、粉微塵にしてやりたいと思っている。
だが、DIO様にも考えがある。あの方の慈悲に感謝し、諦めて従うことだ。
私ももう行く。貴様から目を離すことすら不満であるが、仕方がない……」

怒りを冷静に押さえ込み、そして自らに課せられた使命を果たすべく、教会を後にする。
ヴァニラはさっきから腹が立って仕方がない。怒りの原因は、虹村形兆だけではない。
むしろ、気に入らないのは………
最も気に入らないのは、カンノーロ・ムーロロだ。

(トランプの能力のスタンド使いだろうが、このヴァニラ・アイスを差し置いてDIO様の側近気取りか? ふざけるな!)

教会でDIOの話を聞く最中、跪いて命令を受けていた自分と、DIOの横に対等に並び立つあの男を比較し、嫉妬した。
ヴァニラにとっては、堪らなく腹立たしい場面だ。
ヴァニラ・アイスの『クリーム』は戦闘にのみ特化したスタンドであり、事務的な能力ではムーロロには遠く及ばない。
自分に出来ない能力を用いて、DIOの役に立つムーロロ。
話を聞く限り、DIOがムーロロと出会ったのはついさっき、30分も前ではない。
それなのに、ヴァニラから見て、ムーロロは自分よりも近くにいるようにさえ見えた。

(落ち着け――― 私に与えられた任務は、3人の中で最も難しく、最も重要なものだった。
私はDIO様に信頼されている。私はDIO様の剣だ。DIO様の期待に、信頼に応えることだけを考えるのだ―――)



向かう先は、北。
浮かんでくる雑念を払い、ヴァニラ・アイスは目的地を目指した。
277創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 15:38:25.35 ID:f4C4g6FD
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278 ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 16:16:44.03 ID:PdGHKBHx
【Scene.7 虹村形兆】
   pm0:25 〜カイロ市街地〜




(さて、どうする――――――?)

一人残された形兆。DIOなど無視して、逃げる―――わけにもいかなかった。
なるほど、『バッド・カンパニー』を用いて注意深く探せば、一枚のトランプカードが自分を見張っている。
ムーロロからは逃げられない。
『ウォッチタワー』というネットワークを得たDIOは、完全に配下たちを掌握していた。

(やるしか、無いのか?)

形兆は結局、DIOに指示された目的地へ到着していた。
ここはC-2『カイロ市街地』の一角。ターゲットは、シーザー・A・ツェペリ。
形兆に課された命令は、生き延びたシーザーを追跡し、逃がした責任をもって仕留める事。
命令を無視して逃げ出しても、命令に背いて再びシーザーと手を組んでも、ムーロロの能力によって形兆の裏切りはすぐにバレる。

シーザーはカイロ市街地の一角にあるオープンカフェの椅子に腰掛け、呆然としていた。
目には、一筋の涙が浮かんでいる。
スピードワゴンと、そしてリサリサの死にショックを受けていた。
形兆はその様子を遠巻きに伺い、『バッド・カンパニー』の中隊をシーザーを包囲するよう配置させる。

あの時、シーザーを助けるために形兆がとった行動は正しかった。
だが今、形兆はシーザーを殺さなければ、形兆自身もDIOの標的リストに名を連ねる事になる。

(だがしかしッ! DIOに心まで屈してしまったら、それはあの糞親父と同類になってしまう―――ッ!!)

最後の晩餐、イスカリオテのユダは、キリストを裏切った。
そして、皮肉にもその絵の飾られているサン・ジョルジョ・マジョーレ教会は、ブチャラティが組織を裏切り、組織のボスがブチャラティの『心』を裏切り、そしてパンナコッタ・フーゴがブチャラティのチームを裏切った舞台でもある。

葛藤する、裏切りの虹村形兆。
彼が真に裏切るのは、DIOか。それとも、シーザー・ツェペリか。


決断の時が迫られた。
279創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 16:38:32.10 ID:AcQ51vee
支援
280創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 16:45:59.79 ID:FASAwpm8
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281創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 16:50:45.72 ID:CM2ssNl8
支援
282 ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 16:50:45.64 ID:PdGHKBHx
【C-2 カイロ市街地 / 一日目 日中】

【虹村形兆】
[スタンド]:『バッド・カンパニー』
[時間軸]:レッド・ホット・チリ・ペッパーに引きずり込まれた直後
[状態]:悲しみ
[装備]:ダイナマイト6本
[道具]:基本支給品一式×2、モデルガン、コーヒーガム、『オール・アロング・ウォッチタワー』 のダイヤのQ
[思考・状況]
基本行動方針:親父を『殺す』か『治す』方法を探し、脱出する?
1.シーザーを殺す? それとも……



【シーザー・アントニオ・ツェペリ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:サン・モリッツ廃ホテル突入前、ジョセフと喧嘩別れした直後
[状態]:胸に銃創二発、体力消耗(小)、全身ダメージ(小) 、精神ダメージ(大)
[装備]:トニオさんの石鹸、メリケンサック、シルバー・バレットの記憶DISC、ミスタの記憶DISC
   クリーム・スターターのスタンドDISC、ホット・パンツの記憶DISC
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:主催者、柱の男、吸血鬼の打倒。
0.ティベレ川を北上、氾濫の原因を突き止める。
1.スピードワゴンさん…。先生……。
2.ジョセフ、シュトロハイムを探し柱の男を倒す。
3.DIOの秘密を解き明かし、そして倒す。
4.形兆に借りを返す。
5.DISCについて調べる。そのためにも他人と接触。


※虹村形兆に課されたDIOの命令は、シーザー・アントニオ・ツェペリの抹殺です。
命令を遂行するかどうかはわかりません。



☆ ☆ ☆
283 ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 17:31:57.45 ID:PdGHKBHx
【Scene.8 グイード・ミスタ】
   pm0:35 〜???〜




「(だいじょうぶですか? ミスタさん………)」

暗闇の中、ミキタカが小声で話しかける。

「(……あ………ああ………………)」

ミスタは意識が朦朧としつつも、それに答えた。

『(死ヌナ! ミスタ! 絶対死ヌナヨォ―――)』

そしてただひとり活動余力の残った『ピストルズ』の一体がミスタに檄を飛ばした。

「(大……丈夫……だ………。No.1……。心配………するな………)」

「(もう少しの辛抱です……。きっと、蓮見琢馬も、もう少しで諦めるかと思います)」

「(ああ…… 迷惑、かける…………)」

ミスタと共に、隠れるミキタカ。
ミキタカは、自分の隠れ場所が琢馬に見つけられない自信があった。
ゆえにミキタカは、琢馬が諦めて館を去るまで息を潜めて隠れる気でいた。
ミスタは徐々に意識を取り戻しつつあったが、それでも長時間放置すれば死に至る。
時間はあまりない。



「(シッ 足音です)」



階段を登る足音に、ミキタカたちは緊張する。
この部屋はさっきも調べたというのに、なかなか諦めない。
だが、ここを凌げば、きっと逃げられる。
放送でブチャラティとアバッキオの名前が呼ばれてしまった。
ジョルノとミスタの仲間の2人だ。非常に悔しく、そして残念に思う。
だが、ジョルノ・ジョバァーナの名は呼ばれなかった。
まだ生きている。生きているならば、ジョルノはきっとダービーズカフェで、まだ自分たちを待ってくれているはず。
琢馬の見せた地図によって、現在地とカフェの位置関係も確認済み、ここからすぐ近くだ。
ジョルノならば、ミスタのこの傷もすぐに治してくれる。



(もう少しの辛抱ですよ、ミスタさん)
284創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 17:39:18.13 ID:uPgo4Zz2
支援
285創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 17:50:10.56 ID:3VoRz75S
 
286 ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 17:51:07.98 ID:PdGHKBHx
.





































ザン―――――ッ




【ヌ・ミキタカゾ・ンシ 死亡】
【グイード・ミスタ 死亡】



☆ ☆ ☆
287創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 17:55:02.90 ID:AcQ51vee
うわっ……
支援
288創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 18:01:51.16 ID:XpsznLYx
 
289デュラララ!! ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 18:08:53.87 ID:PdGHKBHx
【Scene.9 スクアーロ】
   pm0:26 〜DIOの館-一階 玄関〜




数分前。


「蓮見琢馬だな?」


館に現れた男は、開口一番に彼の名を読んだ。
【記憶】を遡っても、琢馬の記憶に目の前の男の情報はない。
初対面のはずだが、この男はどこからか自分の情報を得ている。


(くそ…… ミキタカたちもまだ見つかっていないというのに、この時点で館に来訪者とは―――)

そもそも、この隠れんぼがここまで長引くのは予想外だった。
自分は【本】を用いて常に自分の視覚情報を分析しつつ探索していた。
相手は荷物(ミスタ)を抱えており、脚も負傷している。
来る途中に見た屋敷の外観と少々の探索から、この館は玄関の扉以外、窓は全て塞がっており、出入り口はない。
玄関さえ気に掛けていれば、逃げ道はない。
そうやって館の隅々まで探索をしているというのに、一向に見つからなかった。
次第に焦りが生まれる琢馬が時間を浪費するうちに、新たに館に現れた男、スクアーロと出食わした。


(何者だ……この男は? 何故この俺の名を知っている?)


琢馬はスクアーロの姿を観察する。
身長は琢馬と同じくらいの中肉中背。頭に大きなバンダナを巻いた白人。デイパックは一つ、さらに腰には長さ5尺はあるであろう西洋刀。


(―――迷うことはない。今優先すべきは、ミキタカとミスタ。この男は、殺してしまって問題ない)


考えを払い、琢馬は拳銃を構える。しかし―――


バシィッ―――


スクアーロの手から弧を描くように『何か』が飛び出し、拳銃を叩き落とした。

(速い―――ッ!)
290創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 18:20:16.40 ID:3VoRz75S
 
291デュラララ!! ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 18:24:20.22 ID:PdGHKBHx
「オレは敵じゃあない。妙な考えは起こすな。着いて来い」

琢馬の敵意を無視し、そのまま彼の横を通り過ぎて、階段を上っていく。
弾き落とした琢馬の拳銃すら拾わない。
それを琢馬に拾われても、決して二度と銃口を向けられないと言う自信の表れだ。
事実、琢馬はそんな気は起こせない。
攻撃するまでの間合い、隙、スピード。
口で言い負かしたミスタとは違い、この男は問答無用だ。
戦闘経験に差がありすぎる。修羅場の数が違う。

「着いて来い、塔の屋上だ。宇宙人とグイード・ミスタはそこにいる」

(なんだと!? この男、今なんと言った?)

スクアーロは、ミスタとミキタカの事まで知っている
琢馬のことを知っているだけの何者かではない。この『DIOの館』で起こった一部始終を知っているというのか?
拳銃を拾いながら、琢馬はそんなことを考える。
そして、スクアーロの後ろを着いていく事にした。
拳銃は、向けられない。今度は拳銃を叩き落されるだけでは済まないかもしれない。
【本】で確認すると、飛び出したのは鮫の形をした『スタンド』だった。





塔の屋上は閑散としていた。
部屋の中央には、シンプルな装飾に『D』とだけ書かれた棺桶が一つ。
まわりには2体の人間の死体。ゲームが始まり、誰と出会うこともなく勝手に死んだ男たち。
スティール・ボール・ラン・レースの上位入賞者、ポコロコとスループ・ジョン・Bだ。
もし琢馬が新世界に住む人間だったとしたら、世界的に名を挙げた彼らの名や顔も知っていたかもしれないが、レースなどない世界線から来た琢馬には知る由もない。

(妙だ。この部屋もちゃんと調べた。棺桶の中もだ。この部屋に隠れているのだとしたら、2人は一体どこへ?)

死体の事などはどうでもいい。ミスタに聞いていたし、一度この部屋も調べているので特に驚くようなものでもない。
だが、ミキタカたちがこの部屋に隠れているというならば、どこだ?

その疑問に答えるかのようにスクアーロはまっすぐ部屋の真ん中へ向かって歩き、棺桶の前で立ち止まる。
そして、腰に差した西洋刀『アヌビス神』を鞘から抜き、そのまま一閃、振り切る。
時代劇で見た里見浩太朗の殺陣のように美しい太刀筋が目の前の棺桶を真っ二つに――――――

否。

棺桶は切れていない。

スクアーロは静かに『アヌビス神』を納刀する。刀身には血が付いてた。

(なんだと? まさか―――――)

琢馬は棺桶に駆け寄り、力いっぱいその蓋を開く。
中には、断末魔を上げることすら出来ず即死したグイード・ミスタとヌ・ミキタカゾ・ンシの死体が重なって収められていた。
292創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 18:51:22.28 ID:3VoRz75S
 
293創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 18:51:55.91 ID:XpsznLYx
 
294デュラララ!! ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 18:53:12.15 ID:PdGHKBHx
(馬鹿な!? 一体どうやってここに―――!?)

ミキタカとミスタが隠れていたのは、DIOの棺桶の中だった。
だが、そんな目立つ場所……。琢馬も一度、中を調べて見ている。
見つけられなかった理由は、ミキタカの変身による偽装のせいだった。

琢馬は、ミキタカの変身能力『アース・ウインド・アンド・ファイアー』を知らなかった。
先程もその変身によるミキタカの擬死行為に気が付かずに逃げる隙を与えてしまった。
ミキタカは棺桶の中にミスタを寝かせ、そしてミキタカが上から偽の底面を作り隠れていた。
つまり、二重底の要領だ。

変身能力の知らない琢馬から隠れ切ることに、ミキタカが選んだ手段はベストだった。
ただ唯一の誤算は、その小細工を仕組む一部始終を『ウォッチタワー』の一枚に目撃されていたことだ。

(何なんだ一体―――? 何が起こっている?)

琢馬にはわからないことだらけだ。
棺桶の中から出てきたミキタカたちも、それを容易に発見したスクアーロも、棺桶を傷つけず中のミキタカたちだけを切り裂いた攻撃の謎も。
つい5分前まで最大の不安材料だったミスタとミキタカがあっさり死んだというのに、琢馬の立場は何一つ改善されなかった。

「貴様――― 一体何者だ?」

琢馬のすべての疑問を払うシンプルな問い。
普段とは違い、現状においての情報弱者は琢馬の方だ。
向こうが「敵ではない」というのであれば、それを信用し、少しでも情報を得る。
それくらいしか、今の琢馬にできることはなかった。

だが、今度もスクアーロは琢馬の言葉に答えず、代わりにデイパックから何かを取り出す。
スクアーロの動きに警戒し、琢馬は一歩下がって拳銃に手を掛ける。
銃口は向けられないまでも拳銃を握り締め、そしていつでも【本】を取り出せるよう臨戦態勢に入った。
スクアーロが取り出したのは、石の塊のような何か。

「―――こいつに聞け」

スクアーロは解答と共に、その何かを琢馬に投げつけた。
石? 爆弾? いや、違う。

「亀!?」

琢馬が投げつけられた陸亀の甲羅を咄嗟にキャッチする。
と同時に、琢馬の身体は亀の背中に吸い込まれ、姿を消した。







「ようこそ、ホテル『ミスター・プレジデント』へ」
295デュラララ!! ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 19:11:53.71 ID:PdGHKBHx
感覚としては、バトル・ロワイアルのゲームに呼び出された瞬間に近い。
一瞬で異世界に飛ばされる感覚。DIOの屋敷の塔の屋上にいたはずの蓮見琢馬は、いつのまにかどこかの『部屋』に飛ばされていた。
部屋は一見どこにでもある安ホテルの一室のような造りであるが、出入り口や窓の類のない閉鎖された空間だった。
さすがに超常現象にも驚かなくなってきた琢馬は、冷静に考えを進める。

「なるほど、あんたが一枚噛んでいたのか」

部屋にいた男は、ボルサリーノ帽で派手に決めた中年の伊達男だった。
琢馬にとっても初対面の男だが、声と亀、そして状況からこの男の正体は想像できた。
つまりは、あのトランプの能力の本体だ。
あのトランプの能力ならば、どこで自分を見られていても不思議ではないし、ミキタカたちの隠れ場所も探し出して当然だ。

「ほう、察しがいいな。ならば次に知りたいのは俺たちの目的といったところか?」

「―――まあ、そんな所だな」

「ふふふ、まあ、そう焦るな。少し待て。おい、スクアーロ!」

突然、ムーロロが天井に向かって声をかける。
琢馬も釣られて上を見る。天井は至って普通、何もないが、この天井が外の世界とつながっているのだろうか?
外にいるスクアーロ(琢馬はこの時初めて名前を知る)からの返事はないが、ムーロロは構わず言葉を続けた。

「まずはDIO様から伝言だ。『よくやった』。そして、許可が下りた。」

「……で、誰なんだだ? 俺はどこへ行けばいい?」

「殺ったのはプロシュート。オレたちと同じ組織の構成員だが裏切り者だ。現在位置はD-7南西部、同行者一名と行動している」

「―――プロシュート、か。………グラッツェ、感謝する」

簡潔なやり取りを済ませ、それ以降スクアーロの声は聞こえなくなった。
ムーロロは琢馬に向き直り、そして余裕のある笑みを浮かべて話を始めた。

「さて蓮見琢馬よ、まずはオレの自己紹介から始めようか」

296デュラララ!! ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 19:12:30.11 ID:PdGHKBHx
亀をデイパックの中へ放り込み、スクアーロは行動を始めた。
D-7エリアはここから遠いが、ムーロロの能力で追跡してる以上、移動されたところで逃しはしない。
スクアーロはこの情報を得ることと引き換えに、今回の任務を遂行した。



DIOの配下に甘んじたものの、スクアーロの立場は他の者とは少し違っていた。
サーレーやディ・ス・コ、それに花京院たちのように肉の芽に精神を支配されるでもなく、ヴァニラやンドゥールのようにDIOを崇拝しているわけでもない。
ヴォルペやプッチのような友人関係もなければ、ラバーソールや鋼入りのダンのように金の繋がりがあるわけでもない。
DIOとスクアーロの間にあるのは、利害関係だった。

スクアーロがDIOに仕え命令に従う代わりに、スクアーロの復讐をDIOが支援するという契約を結んだ。
スクアーロの強い復讐心を肉の芽や恐怖で奪ってしまうのはもったいないとDIOは判断した。
DIOがムーロロとの繋がりを持ったことでスクアーロの仇とする人物を割り出すことができたので、DIOはひとつ仕事を与え、その代償に復讐の機会を与えたのだ。

DIOがスクアーロに与えた仕事は、蓮見琢馬の確保。そしてミスタ、ミキタカ両名の始末である。
ムーロロから琢馬の情報を得たDIOは、彼に興味を持った。
すぐにとはいかないが、そのうち接触を図りたいと思ったDIOは、彼を確保したいと考えた。
ミスタとミキタカは、DIOにとっての利益も少なく、生かしても邪魔になるであろうと判断され、始末された。

スクアーロに亀を預けその中にムーロロを同行させたのは、琢馬をムーロロに見張らせると同時に、スクアーロとムーロロにお互いを見張らせるという理由がある。
どちらもまだDIOから100パーセントの信頼を得ているとは言い難く、どちらかが妙な気を起こした場合はもう片方に始末される。
DIOの見立てではスクアーロとムーロロの戦闘能力は拮抗しており、戦闘になればどちらも無傷ではいられないだろうという読みである。

もっとも、スクアーロにDIOへ反抗する意思は今のところ無い。
今スクアーロにあるのは、ティッツァーノの仇であるプロシュートへの復讐、それだけだ。
情報を与えてくれたDIOに感謝こそあれ、敵意を持つ理由はどこにもなかった。



「待っていろプロシュート…… ティッツァを殺した事を、地獄で後悔させてやる―――!!」



【C-3 DIOの館 / 一日目 日中】

【スクアーロ】
[スタンド]:『クラッシュ』
[時間軸]:ブチャラティチーム襲撃前
[状態]:健康
[装備]:アヌビス神
[道具]:基本支給品一式、ココ・ジャンボ(中にムーロロと琢馬)、『オール・アロング・ウォッチタワー』 のハートのJ
[思考・状況]
基本行動方針:プロシュートをぶっ殺した、と言い切れるまで戦う
0:とりあえずDIOの手下として行動する。
1:D-7エリアへ向かい、プロシュートに復讐する。
2:ムーロロが妙な気を起こした場合、始末する。
3:復讐を果たしたあと、DIOに従い続けるかは未定。



※スクアーロに課されたDIOの命令は、蓮見琢馬を確保すること、ミスタとミキタカを始末することです。
命令は果たしたので、スクアーロは私怨である復讐の機会を与えられました。
同時にムーロロとお互いを見張り合っています。



☆ ☆ ☆
297デュラララ!! ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 19:15:31.99 ID:PdGHKBHx
【Scene.10 ジョルノ・ジョバァーナ】
   pm0:34 〜カイロ市街地外れ-ピエトロ・ネンニ橋〜



「止まれ」



タルカスを先頭に東へ進路を取ったジョルノたちは、ティベレ川に掛かる橋の上で待ち構える男と出会った。
目の前の人物に対してか、それとも後ろのジョルノたちに対してか、タルカスの言葉で彼らはお互いの存在をその目に捉える。

「ジョルノ・ジョバァーナだな?」

彼らを待ち構えていたのは、ヴァニラ・アイス。
タルカスはヴァニラの出で立ちを観察する。自分に匹敵する鍛え抜かれた肉体に、鋭い殺意を放つ目付き。
直感で気が付いた。こいつはヤバイ奴だと。

「僕がジョルノですが、あなたは? 失礼ですが、何故僕の名を?」
「私のことなどどうでもいい。DIO様が貴様をお呼びだ。一緒に来てもらおう」

余計なことは喋らず、端的に目的を告げるヴァニラ。
ヴァニラの告げたその名にイギーはここに来て初めて動揺を見せ、ジョルノも表情を固くした。
DIOというのは母親に聞いたことがある、ジョルノの実の父親の名前だ。
写真だけは持っているが、ジョルノは実際に会ったことはない。
母親とは父親の話どころか日常会話すらほとんどなかったため、ジョルノは父親のことをほとんど知らないのだ。

地図上に存在するDIOの館、そして名簿に記されたDIOの名前。
そこまで珍しい名前でもないため、別人かもしれない。しかし、予感はしていた。
それが今、確信に変わる。DIOがジョルノ・ジョバァーナを呼んでいるという事実により。

「突然現れて、貴様はいったい何を言うか? 貴様もDIOとやらも、一体何者だ?」
「………貴様の名は聞かされていないな。私の目的はジョルノ・ジョバァーナのみ。だが、邪魔するというのならば―――」

ヴァニラ・アイスに課された命令は、ジョルノ・ジョバァーナをDIOの元まで連行することだ。
ムーロロの所持していた『ジョースター家とそのルーツ』の資料によってジョルノが自分の未来の息子であることを理解し、DIOは自分の元へ招き入れようと考えた。
本来ならばDIO自ら出向きたいところでもあったが、あいにくジョルノの現在地は地下道の通じていない会場の外れ、双首竜の間であった。
同行者にはタルカスとイギーもおり、非常に厄介だった。
ゆえにDIOは配下の中で最も戦闘能力が高く、また信頼のおけるヴァニラ・アイスに、ジョルノ・ジョバァーナを迎えに行かせた。


「始末させてもらおうか?」

「貴様ッ!!」

「―――大丈夫です」

ヴァニラの挑発に乗りかけるタルカスであったが、それをジョルノが制する。
タルカスに対し戦意を隠そうともしないヴァニラの様子から、穏やかな話とは行きそうにない。
だが、ジョルノは興味があった。自分の父親がどんな人物なのか、実際に会って確かめたかった。
298デュラララ!! ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 19:16:42.11 ID:PdGHKBHx
「―――いいのか? ジョルノ」

「はい。ですが、どうやらこれは僕一人の問題のようです。無理強いはしません。ここで別れるというのも、選択肢としてありますが……」

「ふっ それこそ何を言うか。乗りかかった船だ。どうせ俺にもこれといって目的があるわけではない。
それに、ここで貴様のようなまっすぐな男をみすみす一人で行かせてしまっては、それこそ騎士道に反するというもの。着いて行かせてもらうぞ」

「―――ありがとうございます」

危険な決断かもしれないが、2人は覚悟を決めた。
そんな2人の輪から離れ、こそりこそりと逃げていくイギーの姿があった。

(DIOに会うだと? 冗談じゃねえ! 付き合ってられるか!!)


イギーもDIOのことはよく知らないが、ジョースターの連中が追っている化け物で、ヤバい奴だということは聞いている。
そんな奴と関わるのははっきり言ってゴメンなのだ。
イギーの目的は気ままにちょっと贅沢して、いい女と恋をして、何のトラブルもない平和な一生を送りたい、それだけなのだ。


(悪いが、オレはここでオサラバさせてもらうぜ。アバヨ)


と、逃げようとしていた矢先………

「何をしている犬公? 行くぞ」

イギーはタルカスに首根っこを掴まれた

(にゃ!? にゃにィいいい〜〜〜!!?)

失敗した。タルカスに捕まってしまった。


「ワン!ワンワン!」(おい!ばかやめろ!!)

「まったく、何を勝手にコソコソしている。置いていくぞ?」

「ワンワンワン!ワンワン!!ワォーン!!」(置いていかれたいんだよ! 放せこのボケ!!チクショ―――!!)


タルカスには、イギーと意思疎通する気など初めから無い。
残念ながら、当然である。


「ムーロロ、ジョルノ・ジョバァーナを確保した。DIO様に伝えろ……」

持たされたトランプに向かって、ヴァニラは小声で話しかける。
そして、ジョルノたち3人に背中を向け、歩き始めた。

「よし、着いて来い。こっちだ」
「はい。よろしくお願いします。え〜っと………」
「―――ヴァニラ・アイスだ」

斯くして、奇妙な3人と1匹は、南へ向かって歩き始めた。
こういう時が来るのを、待っていたような――――――

DIOとジョルノ、親子対面の時が迫る。
299デュラララ!! ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 19:17:50.25 ID:PdGHKBHx
【A-3 ピエトロ・ネンニ橋の西側 /  一日目 日中】

【ヴァニラ・アイス】
[スタンド]:『クリーム』
[時間軸]:自分の首をはねる直前
[状態]:健康
[装備]:リー・エンフィールド(10/10)、予備弾薬30発
[道具]:基本支給品一式、点滴、ランダム支給品1(確認済み)、『オール・アロング・ウォッチタワー』 のダイヤのK
[思考・状況]
基本的行動方針:DIO様のために行動する。
1.ジョルノ・ジョバァーナとその他をDIOの元へ連れて行く。

※ヴァニラ・アイスに課されたDIOの命令は、ジョルノをDIOの元へ連行することです。
タルカスとイギーに関しては特に指示は受けておらず、また邪魔者がいれば始末する許可も得ています。

【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:体力消耗(小)
[装備]:閃光弾×3
[道具]:基本支給品一式、エイジャの赤石、不明支給品1〜2(確認済み/ブラックモア) 地下地図、トランシーバー二つ
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。
1.ヴァニラ・アイスに従い、DIOに会う。
2.ミスタ、ミキタカと合流したい。
3.第3回放送時にサン・ジョルジョ・マジョーレ教会、第4回放送時に悲劇詩人の家を指す
4.ブチャラティ…… アバッキオ……
[参考]
※時間軸の違いに気付きましたが、まだ誰にも話していません。
※ミキタカの知り合いについて名前、容姿、スタンド能力を聞きました。

【タルカス】
[時間軸]:刑台で何発も斧を受け絶命する少し前
[状態]:健康、強い決意?(覚悟はできたものの、やや不安定)
[装備]:ジョースター家の甲冑の鉄槍
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:スミレの分まで戦い抜き、主催者を倒す。
1.ジョルノの意思に従い、DIOとやらに会う。
2.ブラフォードを殺す。(出来る事なら救いたいと考えている
3.主催者を殺す。
4.育朗を探して、スミレのことを伝える
5.なぜジョルノは自分の身分などを知っていたのか?
※スタンドについての詳細な情報を把握していません。(ジョルノにざっくばらんに教えてもらいました)

【イギー】
[時間軸]:JC23巻 ダービー戦前
[スタンド]:『ザ・フール』
[状態]:首周りを僅かに噛み千切られた、前足に裂傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ここから脱出する。
1.放せ! やめろぉぉぉお!!
2.ちょっとオリコーなただの犬のフリをしておっさん(タルカス)を利用する。
3.花京院に違和感。
4.煙突(ジョルノ)が気に喰わない

※ジョルノとタルカスが情報交換を行いました。
300デュラララ!! ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 19:19:33.47 ID:PdGHKBHx
【Scene.11 蓮見琢馬】
   pm0:40 〜亀の中〜



「はい。ジョルノは素直に従ったそうです。ヴァニラ・アイスと共に、そちらへ向かっているかと―――
それともう一つ。セッコがチョコラータとホル・ホースを殺害しました。奴は肉の芽を埋められていなかったようです。―――――はい」

「随分と忙しいんだな?」

琢馬との会話中も、ムーロロは絶えずDIOとの連絡を取り合っていた。
『ウォッチタワー』を用いて連絡を取り合うにも、全て本体であるムーロロを介する必要がある。
ムーロロは言うなれば、ネットワークの管理者というわけだ。

「まあ、な。さて、どこまで説明したかな?」
「俺がDIOにとって興味がある。ただし優先度ではジョルノには劣る、という所だ」
「そう邪険になるんじゃあない。お前にとっても、ジョルノとの再会は避けたいところだろう。オレも、スクアーロも同じだ。だからこそのDIOの采配でもある」

蓮見琢馬との接触を図りたいDIOであったが、まず優先すべきはジョルノだった。
その間、蓮見琢馬を捕らえてしまい、逃げられぬように見張るのがムーロロに与えられた指示だった。
同時に、ジョルノとの接触を避けるべきムーロロ、スクアーロ、蓮見琢馬をDIOの元から離れさせるという目的もあった。
スクアーロにジョルノの仲間であるミスタとミキタカを始末させたのも、同じような理由である。

「ま、元々オレもお前と会う約束をしていたわけだし、諦めてくれねえか? DIO様も悪いようには扱わねえと思うぜ、多分」
「一度約束を反故にしておいてよくも言ったものだ。それに、行動の自由が奪われるとも聞いていなかったが?」
「だが、身の安全は保証してやれるぜ。この亀の中じゃあ、そうそう危険なんて無い。生き残るためには、DIOに従うのも正解の一つだとオレは思うがね」

琢馬は悩む。
この男、カンノーロ・ムーロロと、その黒幕であるDIOという男、どこまで信用なるものか。
トランプのカードで見られていただけだというのならば、ムーロロは【本】の能力をおそらく知らない。
カードに着けられ始めたのは、カフェを去ったあたりからだ。
エリザベスを殺した時も能力は使わなかったし、ミスタたちに記憶を読ませた時も行動の中に偽装したため『見ていただけ』では分からないだろう。
ここでムーロロと戦うのも、悪くないかもしれない。だが―――


「おっと、妙な気は起こすんじゃあねえぜ。黙って殺られるほど、オレも優しくないんでね」


琢馬の心中を読み、ムーロロは周りに26枚のトランプの兵隊を並べる。劇団<見張りの塔>という仮初の姿を隠し、本来の『暗殺団』の姿を現した『オール・アロング・ウォッチタワー』だ。
全体の半数、スペードとクラブのみで編成された部隊ではあるが、この亀の中という狭い空間では、十分な戦闘能力が期待できる数だ。
残りの半数は、これまでと同様に会場中に散らばり情報収集をしている。
探索能力は今までの半分になるが、ムーロロが琢馬から身を守るためには、最低限これくらいは残す必要があった。
301創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 19:20:41.68 ID:3VoRz75S
 
302デュラララ!! ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 19:20:43.65 ID:PdGHKBHx
「…………」

ムーロロの威圧が、琢馬を冷静さを取り戻させる。
琢馬としても、千帆に会う以外に明確な行動目的があるわけでもない。
亀の外にスクアーロがいるという事実もまた、琢馬の行動に制限をかけている。
最後まで従うつもりもないが、動くべき時は、今では無いかもしれない。

ムーロロの向かいのソファに腰を落とす。
琢馬にもかなりの疲労があった。身体を休めるいい機会だ。
ムーロロと琢馬を亀の中に隠したまま、スクアーロは東へ向かっていた。
スクアーロと、そしてムーロロには一つの誤算があった。

スクアーロのターゲットである、プロシュートと同行している娘、双葉千帆の存在だ。
ムーロロは、蓮見琢馬と双葉千帆の関係を読みきれていなかった。
スクアーロは復讐のために障害となるのなら、容易く他者の命を奪うであろう。
そんなスクアーロが、プロシュートと同行している双葉千帆と出会った時、どんな行動をとるか。
そして、その時蓮見琢馬がどう出るのか。

波乱を呼ぶ、スクアーロの復讐の時。
そして、琢馬と千帆の再会の時が迫る。

【亀の中 /  一日目 日中】

【蓮見琢馬】
[スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力』
[時間軸]:千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中。
[状態]:健康
[装備]:自動拳銃
[道具]:基本支給品×2(食料1、水ボトル半分消費)、双葉家の包丁、承太郎のタバコ(17/20)&ライター、SPWの杖、不明支給品2〜3(リサリサ1/照彦1or2:確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:他人に頼ることなく生き残る。千帆に会って、『決着』をつける。
0.双葉千帆を探したい。(ムーロロに従っているので今は無理)
1.ムーロロに従い、待機。
2.隙があれば、ムーロロを始末する?スクアーロの存在も厄介。
3.ムーロロの黒幕というDIOを警戒。
4.千帆に対する感情は複雑だが、誰かに殺されることは望まない。 どのように決着付けるかは、千帆に会ってから考える。
[参考]
※参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。
※琢馬はホール内で岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、虹村形兆、ウィルソン・フィリップスの顔を確認しました。
※また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。
※また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります。
※ミスタ、ミキタカから彼らの仲間の情報を聞き出しました。

【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』(手元には半分のみ)
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降。
[状態]:健康
[装備]:トランプセット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、
    川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、不明支給品(5〜15)
[思考・状況]
基本行動方針:DIOに従い、自分が有利になるよう動く。
1.琢馬を監視しつつ、DIOと手下たちのネットワークを管理する。
2.スタンドを用いた情報収集を続ける。
[参考]
※現在、亀の中に残っているカードはスペード、クラブのみの計26枚です。
会場内の探索とDIOの手下たちへの連絡員はハートとダイヤのみで行っています。
それゆえに探索能力はこれまでの半分程に落ちています。
※ムーロロに課されたDIOの命令は、蓮見琢馬の監視と、DIOと手下たちの連絡員を行うことです。
同時にスクアーロとお互いを見張り合っています。
303創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 19:33:24.03 ID:4Z7CZY9V
そしてワキガいなくなった
304創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 20:16:42.43 ID:XovH1fMw
投下乙です。

ミキタカとミスタ死んだか。
琢馬すら気づかない監視じゃあな。
305創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 20:26:21.85 ID:AcQ51vee
待て待て、まだDIOの現在状態表が出てないだろう
306デュラララ!! ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 20:35:11.62 ID:PdGHKBHx
【Scene.12 DIO】
   pm0:50 〜サン・ジョルジョ・マジョーレ教会-地下納骨堂〜



「わかった、よくやったぞムーロロ。そのまま蓮見琢馬の監視を続けろ」

ムーロロとの通信を終える。
いい調子だと、DIOは笑った。
命令を下した配下たちが、各々のターゲットとの接触に成功している。
ここまで采配がうまく立ち回ると、指揮官としては楽しみを感じずにはいられない。
特に、もっとも重要視していたジョルノ・ジョバァーナの確保を、ヴァニラ・アイスが成功したのは大きかった。
スクアーロの復讐は後々何らかの役に立つだろうし、形兆とシーザーの結末というのも見ものだ。
チョコラータが肉の芽から逃れていたことは誤算であったが、その代わりセッコの更なる成長の糧になったようで、DIOにとってのマイナスは無い。
ホル・ホースはどうせDIOの駒には戻り得ないだろうし、どうでもいい。


ムーロロから受け取った『ジョースター家とそのルーツ』を眺める。

空条承太郎 ―(殺害)→ DIO

ここは大いに気に入らない。
だが、事実なのだろう。未来の空条承太郎の言葉とも一致する。
相手はジョースターの血統だ。油断するわけにはいかない。
そう言った未来も、ありえるのだ。それを避けるためには、DIOの肉体を完全に馴染ませることが不可欠だろう。
そこで目を付けたのが、『ルーツ』にも記されたDIOの息子、ジョルノ・ジョバァーナだった。

(私の子が、未来でまだ生き残っているとはな。そして、同じようにスタンドに目覚め、このゲームに参戦しているとは興味深い)

DIOの意思を受け継ぎ、DIOの子として従うのならそれも面白いだろう。
だがムーロロからの話を聞く限り、それは難しそうだ。
エンリコ・プッチを殺したということからも、ジョルノはおそらく「あっち側」の人間だろう。
実際に話をするまで判断はできないが、おそらくジョルノは「こちら側」には来ないだろう。

だが考え方を変えれば、ジョルノ・ジョバァーナはジョースターの血統でもある。さらに、それと同時にDIOの血を受け継いでいる唯一の人間でもある。
つまり、ジョルノ・ジョバァーナほどDIOの身体に馴染む血を持っているものはいないということだ。

空条承太郎は強かった。カーズも危険な存在だ。
過去にディオに勝利したジョナサンや、全盛期のジョセフも侮ってはならない。
ムーロロの報告によれば、カーズに近い能力を持つワムウという男も厄介である。
そして、未知の戦闘力を持つバオーこと橋沢育朗もまた、驚異となり得る。

だが、それもジョナサン・ジョースターの肉体が完璧にDIOに馴染むまでだ。
ジョルノの血を吸ったとき、DIOの肉体は完璧を超えた存在へとパワーアップするだろう。

「認めてやるぞ、承太郎、そしてカーズ。貴様らは我が天国への道の最大の難関であるとな。
待っておれ。このDIOの手で、直々に始末してやろう。」


暗く澱んだ教会の地下で、DIOは静かに笑った。
307デュラララ!! ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 20:36:30.30 ID:PdGHKBHx
【DIO】
[時間軸]:JC27巻 承太郎の磁石のブラフに引っ掛かり、心臓をぶちぬかれかけた瞬間。
[スタンド]:『世界(ザ・ワールド)』
[状態]:全身ダメージ(大)疲労(大)
[装備]:携帯電話、ミスタの拳銃(0/6)
[道具]:基本支給品、スポーツ・マックスの首輪、麻薬チームの資料、地下地図、石仮面、
    リンプ・ビズキットのDISC、スポーツ・マックスの記憶DISC、予備弾薬18発、『ジョースター家とそのルーツ』、『オール・アロング・ウォッチタワー』 のジョーカー
[思考・状況]
基本行動方針:『天国』に向かう方法について考える。
1.ジョルノ・ジョバァーナと会う。おそらく配下にはできないだろうから、血を吸って身体に馴染ませたい。
2.承太郎、カーズらをこの手で始末する。
3.蓮見琢馬を会う。こちらは純粋な興味から。
4.セッコ、ヴォルペとも一度合流しておきたい。






【残り 52人】
308 ◆vvatO30wn. :2014/03/09(日) 20:38:36.34 ID:PdGHKBHx
投下完了です。
最後の2レスだけさるったのでしたらばに投下していたのですが、解除されていたので投下し直しました。
時間かかってしまい申し訳ありません。

久々の新人さんが現れたということで、最近ますます創作意欲が湧いています。
もっともっと書き手さんに増えていってほしいですね。
この次もよろしくお願いします。
309創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 20:54:30.94 ID:AcQ51vee
投下乙!
こんなわくわくする群像劇は久しぶりだなぁ

確実に勢力拡大をしているDIOに対して
対抗できそうな勢力っていえばHEROSくらいだけど、あっちはカーズとの因縁がデカいんだよなぁ…

ジョナサンはDIOとディオを完全に繋げられてないし
承太郎は……

新人さんも出てきたし、アニメも始まるし、最近いい感じじゃないですか〜〜〜ぁ?
310創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 23:51:18.59 ID:XovH1fMw
先走ってしまい、申し訳ありませんでした。
改めて、投下乙です。

ジョースターとDIOの血が混じってるジョルノは、確かに繋ぎにはピッタリだな。
311創る名無しに見る名無し:2014/03/10(月) 01:25:35.77 ID:7w80Auf5
投下乙です!
DIO様のカリスマと琢馬とムーロロのスタンドが合わさってとんでもないことになった…!
スクアーロにだけ肉の芽がなかった理由も面白いし形兆とシーザーの不安定な二人の続きも気になるし、何よりついにDIOとジョルノの親子対面が実現するのか!
言われて初めて気づいたがジョナサンの孫のジョセフより息子のジョルノの方がそりゃ血は馴染むよなあ
そしてミキタカとミスタは南無…
原作で流血描写はあったけど1stで生還してたしやっぱりミキタカが簡単に死ぬようなキャラに思えないから中々に衝撃でした
改めて投下乙でした
312 ◆c.g94qO9.A :2014/03/11(火) 01:20:40.44 ID:Oo8N90aP
投下乙です。
凄まじいばかりのフラグ整理に正直すごく興奮しました。
どのキャラも非常に美味しく繋がれていて、書きがいのある引っ張り方で終わっているなと思いました。

スクアーロの補完やムーロロDIOコンビなど、自分がやりたいと思ってたことをそのままやってくれて本当に嬉しかったです。
同時に自分が繋げたかった方向に何も言わずに、でもそれ以上の作品として帰ってくるという辺りに久しぶりにリレーの楽しさを思い出して本当に、テンション上がりました。
ジョルノとDIOの無駄親子対峙は予想できていなかったので武者震いします。
一体どんな会話と戦い(?)になるのか、想像するとワクワクしてたまりません。

あまりにテンション上がったんで予約の分を書き上げてしまいました。
空条承太郎、FF、マッシモ・ヴォルペ 投下します。
313ReBorn ◆c.g94qO9.A :2014/03/11(火) 01:22:16.83 ID:Oo8N90aP
老いは恐ろしい。
数十年前、空条承太郎は確かに最強のスタンド使いだった。
スタンドそのものも強ければ、それを操る空条承太郎という人間もまた、ずば抜けて強かった。
冷静さ、大胆さ、判断力、分析能力。何をとっても彼は超一流と言われる人間だった。

例え母親が人質に取られている状況であろうと。
親友が殺された直後であろうと。祖父が目の前で惨殺された直後であろうと。
彼はそれをエネルギーに変えられる生粋の戦士だった。
悲しみを、怒りを、原動力へと変え、走り続ける男だった。

だがそんな彼も、最強だった戦士にも……老いは訪れる。


どこからか聞こえた放送を耳にしながら承太郎は凍ったように動けない。
スティーリー・ダン、リンゴォ・ロードアゲイン。
聞き覚えのあるその名前を聞いたとき、チリッと焼き付くような痛みを脳裏に感じた。
それも一瞬で溶ける。情熱として体内に残るのでなく、ただありのままの事実として消えていく。

過ぎ去った時は承太郎を変えた。
すべてを受け止め続けることは誰にだって不可能だ。
心切り裂く悲しい出来事。一晩中涙したくなるような悲しい事実。
承太郎とて人間だ。彼は年老いて、それに対抗する術を身につけた。
そう、忘れるという手段を。現実に妥協して拠り所を見つけるという選択を。

だが、しかし。
そんな彼だってこんな事実はどう扱えばいいかわからなかった。
放送が鳴り止み、すべてが止まった時の中。承太郎は唇を噛み締め、ただただ目の前の少女を見つめ続ける。


 ―――徐倫
314ReBorn ◆c.g94qO9.A :2014/03/11(火) 01:24:43.80 ID:Oo8N90aP
徐倫の鼻先、数ミリのところでスター・プラチナの拳を止めた。
心の中、冷静なもう一人の承太郎はいう。

『躊躇うな、叩きつけろ。徐倫は死んだ。だとすれば目の前にいるコイツは―――敵だ』

わかっている。それが正解だ。だがかつて何よりも承太郎を最強におしあげた『感情』は……違う答えを導き出していた。

『俺は家庭で彼女を殺し、自分の身勝手さで彼女を殺し、巻き込みたくもない因縁の果てに、彼女を殺した。
 そして……また、殺すのか? 何度殺せば気が済むんだ?
 今度は本当に……文字通り、俺の手で徐倫を殺さなければならないのか?!』

葛藤に揺れる中、ちょっとした仕草が教えてくれた。目の前にいる存在が、彼の知る空条徐倫でないことを。
落ち着かないとき瞬きがゆっくりになる癖だとか、寒い時唇が震えるより肩をさする方が落ち着くだとか。
そんな些細な、けど微かな徐倫らしさが『ない』ことが……決断を後押ししてくれる。

『これは徐倫じゃない』

腕を弓なりにしならせ、力を貯める。
矢を放つ直前のようにエネルギーを蓄積させ、一気に解き放つ。
スター・プラチナの音速に迫る拳が今解き放たれる。

考えるな、躊躇うな。ありのままの事実を受け入れろ。
承太郎は理性を信じた。スター・プラチナの拳が振り下ろされる。



315ReBorn ◆c.g94qO9.A :2014/03/11(火) 01:26:54.69 ID:Oo8N90aP
「…………」
「…………」

砂埃と、ハンマーを叩きつけたような音。
直前まで徐倫が座り込んでいた場所には隕石が落ちたような跡が残されていた。
スター・プラチナは振り下ろした拳をゆっくりと持ち上げると、突如割って入った第三者へと拳を向ける。
黒く澄んだ目で承太郎は目の前の男を鋭く睨んだ。間一髪のところで徐倫を救った男を。

「何者だ」
「答える必要はない」
「知る権利はある」
「答えない権利もある」

承太郎が舌打ちする。それが合図であったように、スター・プラチナが動き出す。
冷徹なまでに目標を排除しようとする動き。狙いはヴォルペでなく、ニセの徐倫。
ヴォルペは徐倫を抱きかかえると反射的に左に跳んだ。
腕の中に抱いた徐倫を振り落とさぬよう、加減した跳びだったがすぐにそれを後悔する。

一発目は簡単にかわせたが、二発、三発と立て続けに迫る拳の嵐がヴォルペの体に傷をつける。
致命傷ではない。青あざも対した傷にはならない。
だがしかし、徐倫を抱えている以上……そしてなによりスター・プラチナの本来の実力を知っていれば……。
余裕は一切ない。追撃を敢えて受けると衝撃を利用し、後ろに吹き飛ぶ。
直後、マニック・デプレッションを再発動。ヴォルペは自身の体に新たに四本もの針を突き立てる。


 グオオゥゥゥゥゥゥウウウウウ…………―――


ヴォルペの体から目には見えない煙のようなエネルギーが立ち上り、あたりにエンジン音が響いた気がした。
身体能力の強化で逃走を確かなものにする。同時に傷を癒し、万全の体調を整える。
迫り来る最強のスタンド使いを前に、ヴォルペは冷静だった。

承太郎は追撃の手を止めると、その場で体制を整えた。
ヴォルペに対して正面の位置を取る。あいだに遮蔽物はない。時を止めれば一瞬で懐に飛び込める位置。
気取らぬよう、ヴォルペを睨んだまますり足で近づく。一歩、二歩、三歩……。


「それ以上近づくならば、貴様の娘の首をへし折る」


ぴたりと足を止める。視線の先にいる男は本気の表情をしていた。
いや、本気というよりも……当たり前のことを言っている、といった顔だろうか。
無表情の仮面脳あらにある、冷徹と冷静。そしてかすかな好奇心。
承太郎がどんな反応を示すだろうかと興味を持っているような、そんな匂い。
316ReBorn ◆c.g94qO9.A :2014/03/11(火) 01:30:20.43 ID:Oo8N90aP
怒りと悔しさを抑え、奥歯を噛み締める。承太郎は立ち止まると、ポケットの中で固く握りこぶしを握った。
これは挑発だ。娘と思しきものを人質に、承太郎に対して揺さぶりをかけている。
ふぅ、とひと呼吸入れると帽子のつばを触る。奥歯を噛み締め力を抜き、ゆっくりと口を開く。

「俺の娘は死んだ」

自分で答えておきながら、その言葉に揺らぐものを感じた。
そしてそれを冷静に実感できる自分にも。

「ソイツは俺の娘じゃねェ。だからそうやって俺の動揺を誘うつもりなら無駄だ。お門違いだぜ」
「ならばコレは誰だ?」
「さぁな。おおかたDIOの部下の一人か、スタンド能力か。
 どちらにしろ俺をたぶらかそうとしている部分には変わらねェ……全部まとめてぶっ飛ばすだけだ」

言葉とともに一歩踏み出す。
承太郎の動きに合わせヴォルペは意外にも、抵抗することなく逃走の体制に移った。
少し、残念に思った。ヴォルペとしてはもっと承太郎が苦しみ、葛藤するものだと思っていたから。
腕の中の少女を抱き直し、足に力を込める。
売り言葉に買い言葉で首をへし折るのもいいかと思ったが、それは大きな隙を生んでしまう。
近づく承太郎に体を向けたままジリジリと下がっていく。時を止める、という能力を前に逃走は圧倒的不利。
ヴォルペには時間が必要だった。承太郎の足と思考を止める、衝撃的な何かが。


「『―――……父さん』」


そしてそれは訪れた。
腕の中に抱いていた少女がそう言った瞬間、ヴォルペは大きく跳躍した。
止まった承太郎を尻目に大きく飛び下がり、同時に洞窟の天井を大きく切り崩す。
雪崩打つ瓦礫に紛れ、ヴォルペは叫んだ。自分でもわかるぐらい、その声は感情豊かに彩られていた。
 
「娘を返して欲しければDIOのもとに来い、空条承太郎ッ! それまで娘の命は預かっておいてやるッ!
 12時間だッ! 今夜真夜中の0時までに、俺たちを探し出せなければ空条徐倫を殺すッ!
 この俺の手で直々にッ! 最も残酷な手段を持ってこの娘は終わりを迎えるだろうッ!」

承太郎の様子は伺えない。目を凝らし、耳を澄ましたが瓦礫が邪魔でなにもわからない。
ヴォルペは確信と満足感を感じた。やはり承太郎は徹しきれていない。
非情であろうともがいているが、それでもニセの娘を前にして振り切れずにいる。
その葛藤と苦しみを考えると……ひとりでに彼の頬は緩んでいた。

雪崩が加速する。散る岩が衝撃をもたらし、新たな岩石を辺りに振り落とす。
そうして洞窟は瓦礫に埋まり、承太郎はまたもひとり取り残された。



317ReBorn ◆c.g94qO9.A :2014/03/11(火) 01:33:29.57 ID:Oo8N90aP
「『父さん』…………父さん―――? この私に……父親?」

フー・ファイターズは揺らいでいる。
6時間前、フー・ファイターズはエンポリオ・アルニーニョの名前をきっかけにより『空条徐倫』に近づいた。
しかし結局のところ、『この人物』は今でも空条徐倫でありフー・ファイターズであり、どっちつかずの状態だ。

肉体と精神と魂。それらが複雑に絡み合い、人格はひどく不安定な状態だ。
肉体の空条徐倫、その肉体が宿す空条徐倫としての記憶。
その記憶の中にいるフー・ファイターズ。プランクトンとして肉体を動かしているフー・ファイターズ。
あまりに情報量が多すぎて、処理しきれていないのだ。
体内(脳内)で人格がせめぎ合い、拠り所を見つけられないでいる。
だからすぐに揺らぐ。だから時折徐倫らしくあって、人間らしくなり、そして時に驚く程無機質で機械的にもなる。

一つの肉体、二つの記憶、三つの感情が共通して持つものは唯一つ。
存在してたい。知性と記憶を失いたくない。それはつまり『生きたい』ということ。


「生きたい……私は、『あたし』は―――『生きていたい』」
「それがお前の望みか?」

フー・ファイターズはその言葉を跳ね除けることができなかった。
父親に出会った衝撃に流され、気づけばどこか見覚えのある男に抱かれ、洞窟を移動している。
問いかけられて改めて男の顔をみる。どこか自分と同じような雰囲気を持つ男だった。

「生きるということが何なのか、それは俺にもわからない。
 俺にそれを語ってみせた男によると……『生きることは安心を得ること』らしい。
 人間は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる。
 名声を手に入れたり、人を支配したり、金もうけをするのも安心するためだ。
 結婚したり、友人をつくったりするのも安心するためだ。
 人の役立つだとか、愛と平和のためにだとか、すべて自分を安心させるためだ。
 安心をもとめる事こそ、人間の目的だ」
「それじゃあ……あたしは人間なの? 『私』は人間として生きていいのか……?」
「会ってみるか、その男に」

フー・ファイターズは安心を求めていた。
かつてエンリコ・プッチに言われるがままにDISCを守っていたのはそうすれば何も奪われないという安心だった。
それさえしておけば何も変わらず、生きていられると安心できたからだ。

痛むはずのない頭に、一瞬鋭い痛みが走った。
こんなのは間違っている、と力強く言う少女の声が聞こえたような気がした。

しかし今のフー・ファイターズにとって、ヴォルペの言葉はあまりに魅力的すぎた。
12時間経って何一つ成し遂げられず、何一つ決められずにいた現状も後押しの要因になった。
すがるように、決断するように彼女は頷いた。それを見たヴォルペは彼女を抱きなおすと、走るスピードを上げた。
ヴォルペは急ぐ。生きる意味を論じた男、DIOのもとへ。


だがフー・ファイターズは気づいていなかった。
頷き、前を向いたヴォルペの口元に浮かんだ微笑みの意味を。
自分と同じように揺らいでいる男が持つ底知れない悪意に。
そして、『DIO』と『空条』が持つ……因縁の深さに。



318ReBorn ◆c.g94qO9.A :2014/03/11(火) 01:36:57.08 ID:Oo8N90aP
暗闇の中、承太郎は立ち尽くす。
凍りついたようにその場にとどまり……そして、ゆっくりと歩き出す。
心臓が血を全身へと流し込み、筋肉が連動し、体を前へ運んでいく。

動き出した時、承太郎は体の中に熱を感じた。
彼を突き動かすエネルギー。
身を焦がすような、燃えるような、そんな。

ポケットに入ったタバコを取り出そうとし、空になったことに気がついた。
そのままの勢いで包装ごとぐしゃり、と握りつぶす。別に吸わなければいけないというわけでもない。
わざわざ自分に『そうしなければ』と言い聞かせる必要はもうなくなっていた。
承太郎の瞳が暗闇を映す。微かに……だが確かに、その目には光が戻っている。
弱々しいとも呼べるかもしれない。控えめとも言えるだろう。冷静とも言えるかもしれない。

グダグダと思い悩むのは、もうおしまいだ。
気に入らなければぶっ飛ばす。文句があれば蹴り上げる。なぜそうしちゃいけない? 自分が大人になったから?
守るべき家族ができたから。そう答えが出た時、承太郎は自虐的に微笑んだ。
その家族ももういない。娘は死んだ。妻は去った。母は目の前でバラバラに引き裂かれた。もうなにも残っちゃいない。

―――娘らしき、残骸を残しては。


「ワムウ、カーズ……」


大切な人を失ったと知ったとき、承太郎の心は切り裂かれバラバラになった。


「ラバーソール、ホル・ホース、ペット・ショップ、ヴァニラ・アイス……」


心荒れ狂うままに周りを喰いちぎった時間は無駄と呼べるものだったかもしれない。
だが彼には確かに必要だった。覚悟を決める、不可欠な遠回りだった。


「吉良吉影……そして、DIO」


承太郎は怒った。
愛するものを傷つけたすべてのものに。大切なものを奪う吐き気を催す邪悪に。
言葉とともに瞳が輝き出す。濁った琥珀色ではない。見境なしに燃える緋色でもない。

あるのは悲しみの果てにたどり着いた―――赤より熱い、青の炎。
たとえそれが自らを焼き尽くすと知っていても……それでも承太郎にはもうなにもない。
怒りだけだ。感情だけだ。立ち止まる術を、彼は知らない。
それはかつて彼を最強に押し上げたものと瓜二つだが……確かな悲しみがその背中からは感じられた。


「てめーらは俺を怒らせた」


帽子のつばを触り、前を向く。やれやれだぜ、と承太郎は自嘲を込めてつぶやいた。
319ReBorn ◆c.g94qO9.A :2014/03/11(火) 01:39:07.13 ID:Oo8N90aP
【D-4中央部 地下/一日目 日中】
【空条承太郎】
[時間軸]:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
[スタンド]:『星の白金(スタープラチナ)』
[状態]:左半身火傷、左腕大ダメージ、全身ダメージ(中)、疲労(大)
[装備]:煙草、ライター、家出少女のジャックナイフ
    ドノヴァンのナイフ、カイロ警察の拳銃(6/6 予備弾薬残り6発)
[道具]:基本支給品、スティーリー・ダンの首輪、DIOの投げナイフ×3
    ランダム支給品3〜6(承太郎+犬好きの子供+織笠花恵/確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルの破壊。危険人物の一掃排除。
0.???
1.始末すべき者を探す。
2.空条邸で川尻しのぶと合流する?
[備考]
※ドルチの支給品は地下地図のみでした。現在は川尻しのぶが所持しています。
※空条邸前に「上院議員の車」を駐車しています。




【D-3 東部 地下/一日目 日中】
【F・F】
[スタンド]:『フー・ファイターズ』
[時間軸]:農場で徐倫たちと対峙する以前
[状態]:髪の毛を下ろしている
[装備]:体内にF・Fの首輪
[道具]:基本支給品×2(水ボトルなし)、ランダム支給品2〜4(徐倫/F・F)
[思考・状況]
基本行動方針:存在していたい(?)
0.混乱
1.『あたし』は、DIOを許してはならない……?
2.もっと『空条徐倫』を知りたい。
3.敵対する者は殺す? とりあえず今はホル・ホースについて行く。

【マッシモ・ヴォルペ】
[時間軸]:殺人ウイルスに蝕まれている最中。
[スタンド]:『マニック・デプレッション』
[状態]:健康、高揚
[装備]:携帯電話
[道具]:基本支給品、大量の塩、注射器、紙コップ
[思考・状況]
基本行動方針:空条承太郎、DIO、そして自分自身のことを知りたい。
0.DIOの下に『空条徐倫』を連れて行く。
1.空条承太郎、DIO、そして自分自身のことを知りたい 。
2.天国を見るというDIOの情熱を理解。しかし天国そのものについては理解不能。
320◇c.g94qO9.A氏代理:2014/03/11(火) 05:37:45.90 ID:vxPReM69
以上です。なにかありましたら連絡ください。
あたらしく書いてくださった方もいるみたいで、嬉しいことが続きますね。
私もなるべく、早く、多くの作品を書けるように頑張ります。
321 ◆3yIMKUdiwo :2014/03/11(火) 05:49:35.71 ID:vxPReM69
◆c.g94qO9.A氏、投下乙です。やっぱりすんなり疑似親子の共闘、というわけにはいかなかったようで。
ただ、徐倫の身体にもう物理的な血液がなさそうなのと、DIOに少なからず反発心があるのが救いと言えば救いなのか…

次から仮投下していた分を投下します。
322冷静と激情のあいだ ◆3yIMKUdiwo :2014/03/11(火) 05:52:52.38 ID:vxPReM69
…流されていく。

『プカァ』のしっぽ文字がなければ、水の中で康一の体力は無くなっていたかもしれない。辺りを見回すが、ティムの姿はなかった。
(…ティムさんっ…どこかに、どこかに掴まれるようなものはないのか?)
そのうち、また橋が見えて来た。あそこなら?
しかし、今いる位置から橋脚や川岸へは少し遠い。まだ流れが急な今、無理をするべきではないと判断して次の橋を待つ。
(…来た!)
今度は、橋脚に近い所を流れていきそうだ。
失敗すればまた流される。タイミングを図りながら、康一の取った行動は迅速なものだった。スタンドに己の身体を引っ張らせ、その尻尾から『ピタッ』を生み出して橋脚に張り付き…そこで少しずつ方向と高さを変更し取り敢えず水から上がる。

(…誰も、いないか?大丈夫か?)
エコーズで周りを確かめながら、川岸の方を見る。幸運な事にくっついた反対側まで回れば、川岸まで数メートルの距離だ。障害物はない。
そこへ移動すると、康一とエコーズは密着し同時に橋脚を蹴った。バランスを崩して頭から着地してしまう可能性もあったが、『ポヨン』のしっぽ文字がうまくクッションになり、最終的には倒れるような格好で川岸に落ち着く。

立ち上がって辺りを見回すと、北西と北東の方角に何やら大きな建物が見えていた。北東のそれは流される前に南に見えていたホテルらしい。
取り敢えず辺りに人の気配がないとわかった所で、橋の下で隠れるようにして身体を休める事にした。すぐに北上したいのはやまやまだったが…今は単独である以上、川岸やその土手という開けた場所で疲労困憊して倒れるのは最悪に近づく事だ、そう判断する。

「…そもそも、今何時だろう?」
太陽はかなり高い。時計を探すついでにデイパックからパンを1つだけ取りだし、少しの水と共に腹に入れる。食べ過ぎれば眠くなるから、最小限。仲間たちの顔を、声を思い出しながら…近いと知ったその時までを過ごした。
(みんな…どうか、無事で)
323 ◆3yIMKUdiwo :2014/03/11(火) 06:01:41.08 ID:vxPReM69
暫くして、その時…即ち2回目の放送が響き始めた。禁止エリアを聞いて、それが遠い事にひとまず安堵する。続いて死亡者の名前が読み上げられていく。山岸由花子の名前を告げられた時…ずきん、と胸が傷んだ。
(由花子さん…)

それでも続きの名前を耳をそばだてて聞き続ける。他に知りあいの名前が含まれていない事に康一は大きく息を吐き出した。
「じゃあ、大丈夫なんだな…」
最悪ティムはまだ流されているかもしれない。ただ、先に陸に上がった可能性もある…さて、どうしようか。
そんな思考に入ろうとしていた康一を引き戻したのは、勝手な言い分を並べ始めたスピーカーだった。
(…冗談じゃない…!)
大勢の生命を弄ぶように引き込み、けしかけるだけけしかけて自分達はそれを眺めている…それだけでも許されない事だ。尚且つ、もっとぶつかり合え?地を這って得たものが真の勝利と言えるのか?希望に過ぎない?…そんな言葉に踊らされてたまるものか。

時計を見て放送が近いのを知った時、きっとその後は多かれ少なかれこんな気分になるとは思っていたが、予想以上だ。
ならば休憩は終わりにしよう。この怒りは前進するために使うべきだ…まだ疲労の残る足で、満身創痍で、それでも康一は川岸を土手沿いに北へ向けて歩き始めた。
324 ◆3yIMKUdiwo :2014/03/11(火) 06:03:18.34 ID:vxPReM69
その途中で背の高い草の群生を見つけたので、葉を結んで数個輪を作っておく事にした。
歩いた痕跡を残すのは危険だが…これなら川に落ちた事を知っているマウンテン・ティムが通りかかるか、探知に特化したスタンドでもなければ誰だかは特定できないはずだ。
誰でも良いから…と言うような奴はそもそも目印など見なくても襲いかかるだろう。

その分、注意を払わなければならない。
(…気をつけろ、康一…見るんじゃなくて、観るんだ…聞くんじゃなくて、聴くんだ…さもなければ折角繋いでもらった命を、台無しにしてしまうぞ)
自分に言い聞かせながら、康一は隙なく進んでいった。

【C-4 ティベレ川・川岸/ 1日目 日中】

【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → 『エコーズ act2』
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:全身傷だらけ、顔中傷だらけ、貧血気味、体力消耗(中)、ダメージ(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(食料1、パン1、水ボトル1/3消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.主催者への反発
1.マウンテン・ティムを信じ、シュトロハイムたちと合流する。
2.仲間たちと共に戦うため『成長』したい。
3.各施設を回り、協力者を集める。

※勿論戻る道中にマウンテン・ティムがいれば合流するつもりです。
325 ◆3yIMKUdiwo :2014/03/11(火) 06:05:34.49 ID:vxPReM69
以上で投下完了です。
初めてで不慣れですので、問題点などあれば御指摘下さい。
326創る名無しに見る名無し:2014/03/11(火) 11:13:04.43 ID:vA8HthRw
投下が二つ来てる…だと

>ReBorn
承太郎と徐倫(の肉体)が邂逅した前話のヒキがすごく気になってたので予約来たときから楽しみにしてたけどこれはもう…!
今の承太郎なら徐倫の肉体でも容赦なくやりそうだったからそうならなくてよかったけど、ヴォルペと一緒にDIO行きとか洒落にならねえくらい危ない予感
今までとは違う意味になるけどやっぱり承太郎が不安なだあ…
指摘としては>>319のF・Fの状態表でヴォルペではなくホル・ホースになっています

>冷静と激情のあいだ
新人さんようこそジョジョロワへ!
文字通り冷静と激情の間で自分をコントロールしてる康一がすごくイイ
このまま問題なく合流できるといいなあ…

最後になりましたがお二方投下乙でした!
327 ◆vvatO30wn. :2014/03/12(水) 21:59:15.77 ID:KxJWdooa
お二人共投下乙です。
なんというか…ここまでヤンデレな承太郎は見ていてヒヤヒヤしますね
2ndとは別パターンでガンガン(書き手に)いじめられている承太郎先輩に涙です。
ガンバレ!もう少しでアニメ始まるから!

対称的に、康一くんはへこたれない。精神的に強い感じでうまく描かれていていい感じですね。
素晴らしい新人さんが現れてくれたことに感謝です。
「見るんじゃなくて、観る、聞くんじゃなくて、聴く」これを承太郎無しで気付けるとは、ここの康一くんは大したもんやで


拙作、デュラララ!!をwiki収録しました。
誤字修正の他に、ムーロロのDIOへの呼び方を、DIOの前→DIO様 いないとき→呼び捨て
に統一しました。この方がムーロロらしいでしょう。
それと、ミキタカたちが隠れていたのは屋上ではなく塔の最上階でした。なぜ書いてる時気がつかなかったのか…… 脳内の映像と文章が噛み合ってなかったです。

ちなみに、ジョジョロワ初の本編中挿絵、wikiの方でも対応済みです。
328創る名無しに見る名無し:2014/03/15(土) 00:24:39.77 ID:dB3CnZXZ
集計者さんいつも乙です
今期月報
話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
158話(+6) 52/150 (- 4) 34.7(-2.6)
作者さんの発言もありますので付録は数に入れていません
329創る名無しに見る名無し:2014/03/15(土) 00:32:22.57 ID:PsVoNnI2
UFC 154 : ジョニー・ヘンドリックスvsマルティン・カンプマン
http://www.youtube.com/watch?v=NSSLHc_IxdA
330創る名無しに見る名無し:2014/03/15(土) 01:26:37.75 ID:6p5QTa73
集計乙です。
今回は結構減りましたね

>>326
FFの状態表のホル・ホースについて行く。
というのは、ヴォルペの間違いではなく、ホルホースとはぐれてから状態表が更新されていないだけでは?
どちらにせよ不自然なので修正したほうがいいかと
331役割 その1 ◆yxYaCUyrzc :2014/03/20(木) 17:43:07.08 ID:ojt4lIYB
そういえば――この数年で、流動的な操作をすることで反応したプラスチックを動かすことが出来る粒子が発見されたそうじゃあないか。
最近の世界大会じゃ中学生やそこらの実力者がオペレーターとファイターに役割を分けて勝ち進んでるそうだし。
役割論理っていうのかね。『コイツは俺の相手、アイツはお前の相手』『僕が作って、俺が戦う』と言ったところだが……

とは言え、現実は非常である。
どちらもが互いの役割をこなさなければならない時が必ずある。

放送を終えて――まあマトモに聞いてない連中もいるだろうけど――このゲームも中盤に差し掛かったところだ。
そろそろ役割論理が通じない相手が出てくる頃ですぞ。


***


宣言していた通り、プロシュートは放送の五分ほど前に千帆を起こし、名簿と地図を卓上に広げて待った。
ここまでじっくりと腰を据えて放送を聞くことが出来る人間はそう居ないだろう、などと思いながら。

放送は定刻通りに始まり、そして終了した。
スティーブン・スティールの吐き出す言葉、その一言一句さえ漏らすまいと無言でメモを取った二人。

どこからともなく聞こえ始めた声が、それ以上続きを喋らなくなったことを確認してから何分が経っただろうか。
千帆とプロシュート、どちらも何も言わない。
そんな張りつめた空気の重さに千帆が小さくため息をつく。
それを待っていたかのようにプロシュートが口を開いた。

「さて」

一方の千帆も、決して険悪な関係ではないと言えど、ここまで長い沈黙に耐えきれず、かといって何を話しかければ良いのかわかりかねていたところに相手が口火を切ったことに安堵する。
「――プロシュートさん?」
そっと相手の言葉を促すように呟いた。

「今後の方針だ」
単刀直入にそう示すプロシュート。
「はい」
千帆はそのまっすぐな目的意識に先ほど話していたバンダナの青年を一瞬だけだぶらせる。
「まずは」
ゴクリ、と小さく喉を鳴らして次の言葉を待った。


「寝る」
332役割 その2 ◆yxYaCUyrzc :2014/03/20(木) 17:50:07.79 ID:ojt4lIYB
「――え?」

これが漫画や何かだったら確実にズッコケるセリフである。
だがプロシュートのギラギラとした視線が、それがツッコミ待ちのボケではないことを明確にさせる。

「俺らが今いる位置はC−7かD−7あたりだ。すぐ傍が禁止エリアに設定されたがそれは午後五時。
 念を入れて余裕を持った距離をとるにしてもまだまだ余裕だ」
「え、えぇ」
「放送を聞いた参加者はまずその内容を考察なり何なりするだろう」
「つまり――その間はこちらもある程度自由に動ける」
「そうだ。そして嬢ちゃんはそんな連中の隙をついて殺して歩くスタンスではない」
「もっ、もちろんです」
「だったら“そういう連中”に警戒しつつ、それこそ考察なり何なりすればいい」
「は、はい」
「それをお前さんに一任する。そしてその間俺は寝る。寝れる時に寝ておくのだって重要だろう?」
「そ、それはそうです……私だって寝かせてもらってましたし」
「つー訳だ。無論何かあればすぐ起こせ」
「わっ、わかりました。で、ど、どのくらい――」
「30分は欲しいところだな、短くとも」

言いながら席を立つプロシュートの背中を千帆は静かに見送った。


***
333役割 その3 ◆yxYaCUyrzc :2014/03/20(木) 17:53:12.81 ID:ojt4lIYB
そうだよね。
プロシュートさんだって人間だもん。
『よーし1時間寝溜めしたから2週間は不眠不休で大丈夫だぜ』
なんて漫画のキャラだけだもんね……

そんな事を思いながら地図に視線を落とす。
新たに書き足した×の印と時間。
このゲームが否応なしに進行している事を改めて実感する。

そして……

「由花子さん……」

名簿に視線を移して小さく口にした名前。放送を聞いて、線を引いた名前。
決して仲が良かった人ではない、挨拶をして来れば返す、そのくらいの間柄。
でも、私にとっては友人の一人。

それなのに。

不思議と涙は出てこなかった。

なんでだろう。
悲しくない訳じゃあないのに。

『同じクラスだった子がクラス替えで別々になって、そのまま知らないうちに転校してしまった』

そんな気持ちだった――そんな気持ちで考えてしまった、そんな考えになってしまった自分が寂しいとも思ったけど、それでも涙は流れなかった。

顔をそっとプロシュートさんが入っていった部屋のドアに向けて、壁にかかっていた時計に向けた。
まだ5分も経っていない。

『考察なり何なり』っていうのをしようにも、何をどう考えていけばいいのかな。
『一任する』って言われても……私にできることって何があるんだろう。

――秒針がカチカチと動き回るのを少しの間眺めて、私はもう一度視線を机に戻した。
さっきと同じままの名簿と地図が、私の視線が来るのを待っていたように感じて、なんだか悔しくなった。
その気持ちをぐっとこらえるように、私は眠っているものにそっと手を伸ばした。


***
334役割 その4 ◆yxYaCUyrzc :2014/03/20(木) 17:58:57.92 ID:ojt4lIYB
千帆の嬢ちゃんに言ったことは間違っちゃあいない。
俺にだって睡眠が必要だ。アンパンと牛乳で一晩見張りを続けるってのも不可能じゃあないが、神経を使うゲームの上ではとれるものは何だってとっておく。
さっき彼女が寝ていたであろうベッドに横になる。ふとシャンプーだかなんだかのニオイが鼻をくすぐったが、それだけだ。下心もヘッタクレもあるものか。

そして言葉にならないほど、吐息と言っていいほど小さく呟く。
「ギアッチョ」
名簿を本物と信じるなら(今更偽物だという方が説得力に欠けるが)暗殺チームのメンバーはいよいよ自分だけになってしまったという事になる。

だからこそ。

無理矢理に一筋だけ涙を絞り出した。

なぜだろうか。
そんな感情捨てきったつもりでいたのに。

『自分にバンド加入を勧めてきたやつが、そのくせ急場の小遣い欲しさに大切にしてたギターを売っちまった』

そんな気持ちだった――何をセンチになってるんだ、あの嬢ちゃんの心情が伝染したかと小さく笑い、顔に残った水滴を指の背で拭う。

敵対していたブチャラティ、アバッキオの名もあった。
『死は平等だ、優しい』と千帆に言ったセリフが頭をよぎる。そう彼らとて死ねば同じなのだ。黙祷する気もないが、ヨッシャとガッツポーズする気にもならなかった。

秒針がカチカチと動く音にぼんやりと耳を傾ける。
まだ5分も経っていない。

『考察なり何なり』と言ったのは半分は本音だが半分は建前。
とは言え『一任する』のも事実。素人の視点が案外核心を突くことだってある。

規則的に刻まれる秒針の音から注意をそらし、俺はスタンドを呼び出た。
いつも通りの“偉大なる死”が、俺の視線を全ての眼で受け止めたように感じて、少しだけ口元が緩んだ。
その気持ちにブレーキをかけるように僅かだけのガスを噴出し、俺はそっと瞼を閉じた。


***
335役割 その5 ◆yxYaCUyrzc :2014/03/20(木) 18:04:36.83 ID:ojt4lIYB
結論から言ってしまおうか。千帆はまだプロシュートを起こしちゃあいない。
『眠っているもの』は“物”であって“者”ではないってことさ。
千帆は岸部露伴の手紙をもう一度だけ引っ張り出し、今度は最初から最後まで涙をこらえて読み切った。
それからだ。この家の本来の持ち主……と言っても作られた会場だからそんなのはいないんだろうけど、とにかくその人がいたとして、彼らから拝借した紙の束に文字を書き始めた。

そう小説だよ。

とは言ってもまだまだアイディアノートみたいなもの。漫画で言うならネーム。
だが千帆は書かずにはいられなかった。
この悪魔のような半日間。その中で見たもの、話した事、感じたこと、そして、出会った人たち。
さっきまでこらえていた涙がボロボロと零れながらも構わなかった。
どんな些細な事も書きなぐった。消しゴムなんて使わず、斜線を引き、矢印をひっぱり、どんどん書き足していった。

『書くべきは現実(リアル)じゃない。それを土台とした現実感(リアリティ)なのだよ。』
読み直した露伴の手紙には確かにそう書いてあった。
その通りだ。彼女はノンフィクション作家なんかじゃあない。小説家だ。
でも、そう、土台なんだ。リアルがなければリアリティは生まれず、リアリティを育まなければ物語は完成しない。

自分の言葉で改めて書き直すのはいつだってできる。それこそ『小説を書く』時にすればいいことだ。
しかし感じたことを感じたように書くことは後でやる訳にはいかない。記憶というものは研磨されて、良い思い出は美化。悪い思い出は風化される。
それは決してリアリティとは言えないだろう。それは露伴だってそう言うはずさ。

さて『どんな些細な事も書き足した』と言ったね。
――君たちは『どんなこと』を『些細な事』だと思うかい?

例えば一本の木があったとする。
俺は観察眼なんて持ち合わせてないから『ああ木だ』か、せいぜい『大きいなあ、いつごろから立ってるんだろう』くらいにしか感じない。
だが見る人が見れば『そこには鳥がいる』かもしれないし、『何枚もの葉がそよ風に揺られてざわざわと音を立てている』かもしれない。
もっと見る人がいればきっと『かつて誰かがここで背を比べたのだろう、高さの違う二本の傷が今ではあんな高い位置にある』とか『根元では蟻たちが晩御飯の調達のためにせっせと往復している』とか見つけるかもしれない。
でも、俺に言わせてもらうならそれらはすべて“些細な事”だ。

しかし彼女は小説家。そんな『些細な事』に目を向けられる子だ。
きっと彼女は物を“見る”のではなく“観る”いや『診る』。“聞く”のではなく“聴く”そして『訊く』のだろう。


ゆえに千帆は気が付いた。
336役割 その6 ◆yxYaCUyrzc :2014/03/20(木) 18:12:25.70 ID:ojt4lIYB
……というのは嘘だ。そんなに彼女は超人じゃあない。

だけども違和感には気が付いた。
期末テストの開始5分後に背後から感じるような、あるいは急に猫背になった前の座席の背中から感じるような。

ふい、と窓辺に目をやった。

そこには何もいなかった。しかし直感は確かにあった。


『いた』


誰が、あるいは“何が”いたのかはわからない。
でも……あのなんだ、漫画で言う『サッ』って隠れるときのあの効果の三本線、アレが確かに千帆の目には映っていた。
それを感じたサイズから判断すると――

「……小人?妖精?
 それとも顔だけ出して覗いてた?」
思わず口に出して聞いてしまった。答える相手なんかいないというのに。

しばらく窓を見つめた後に時計を見上げる。かれこれ40分近く机に向かっていたようだ。
――というのを感じながらフェイント気味にもう一度窓を振り返る。やっぱりいない。でも――

確かに千帆は任された。考察なり何なりを。
そして逆に――というか、ハッキリ言って戦闘はプロシュートに任せるつもりでいた。
それが『適任』であり自分の『役割』だとどことなく決めつけていたんだ。

とはいえ、“第一発見者”はあくまでも千帆自身。本来は自分が未知の相手を追いかけるべきだったのだろう。あるいは逃げられる前に察してプロシュートに合図すべきだったのだろう。
逃げる相手を追いかけて捕獲――始末するようなことは千帆にはできない。『そんな銃の使い方』は教わっていない。『そういう事』はプロシュートの役だ。

まあ、いずれにせよ……逃げられてしまった現在ではどう対処することも不可能だ。未知の相手に対し完全に後手に回ったことになる。
その揺るがない事実があるとプロシュート兄貴のことだ、怒って口をきいてくれないかもしれない。

しかし、『すぐに起こせ』とプロシュートに言われていたのもまた事実。
そう――ここでの千帆の“仕事”は敵の識別でもなければ、追跡でも始末でもない。
『ゲームの考察をし』、『場合によってはプロシュートをすぐに起こす』事。
ギャングだろうと学生だろうと、与えられた役目をこなす事が一番重要だってことさ。
もっとも、そういうモノに縛られすぎて臨機応変な対応が出来ないのも困り者だけどね。その点千帆は優秀だったってことかな、この場では。


――千帆は静かに立ち上がると、プロシュートのいる部屋のドアをノックした。
337役割 状態表 ◆yxYaCUyrzc :2014/03/20(木) 18:18:17.07 ID:ojt4lIYB
【D-7 南西部 民家/1日目 日中(約12:45)】

【プロシュート】
[スタンド]:『グレイトフル・デッド』
[時間軸]:ネアポリス駅に張り込んでいた時
[状態]:全身ダメージ(小〜中に回復)、全身疲労(小に回復)、仮眠中、スタンドガスを小範囲に展開中
[装備]:ベレッタM92(15/15、予備弾薬 30/60)
[道具]:基本支給品(水×3)、双眼鏡、応急処置セット、簡易治療器具
[思考・状況]
基本行動方針:ターゲットの殺害と元の世界への帰還。
0.休息を取りつつ、千帆の決断・現状の展開を待つ
1.この世界について、少しでも情報が欲しい。
2.双葉千帆がついて来るのはかまわないが助ける気はない。
3.残された暗殺チームの誇りを持ってターゲットは絶対に殺害する。

【双葉千帆】
[スタンド]:なし
[時間軸]:大神照彦を包丁で刺す直前
[状態]:疲労(ほぼ回復)、悲しみ(極小)
[装備]:万年筆、スミスアンドウエスンM19・357マグナム(6/6)、予備弾薬(18/24)
[道具]:基本支給品、露伴の手紙、救急用医療品、多量のメモ用紙
[思考・状況]
基本行動方針:ノンフィクションではなく、小説を書く。
1.プロシュートと共に行動。まずは現在感じた『違和感』を報告する。
2.川尻しのぶに会い、早人の最期を伝える。
3.琢馬兄さんに会いたい。けれど、もしも会えたときどうすればいいのかわからない。
4.露伴の分まで、小説が書きたい。

【備考】
・千帆のことを観察していた相手の正体は『不明』です。いつから覗いていたのか、千帆“だけ”を覗いていたのかも不明です。
(メタな事を言えば十中八九ウォッチタワーでしょうが、遠隔操作スタンドの頭部だったのか、あるいは人間なのか?)
 以降の書き手様にお任せします。
・プロシュートが仮眠している部屋に少量の『グレイトフル・デッド』が展開されています。
 千帆には(部屋の外)には影響はなく、例えば『人間が直接プロシュートを殺害しようと接近した時に老化する』程度の範囲です。
338役割 ◆yxYaCUyrzc :2014/03/20(木) 18:25:45.72 ID:ojt4lIYB
以上で投下終了です、なんだかものすごく久しぶりにSS投下した気がしますw

仮投下時からずいぶんと文章を改変しました。内容は変わっていないですが。
特にタイトルから(仮)を取るために『役目』『役割』と言った単語、文章を足しまくってます。それでクドくなってなければいいんだけど……w

第二放送はじっくり腰据えて聞けた参加者は少ないんじゃあないでしょうか。
移動中ならともかく、放送なんか気にせず戦闘中なんてのも多そうですよね。ワムウさんあんただよあんた。

新人書き手さんが参入してくださって古参としてはうれしい限りです。どんどんジョジョロワを引っ張って行ってもらいたいものです。
最後になりましたが、矛盾点、誤字脱字等ありましたらご報告ください、それではまた。
339創る名無しに見る名無し:2014/03/21(金) 00:14:39.04 ID:qS5LS8Rq
投下乙です。
兄貴いいですねえ
本格的な休息を選んだり、仲間の死に少しセンチになったりと、ギャングでありながら人間臭い感じが何とも言えません
空気を読んで移動しないあたり、書き手勢もプロシュートVSスクアーロの対戦カードも見たいとみえる(笑)
340創る名無しに見る名無し:2014/03/21(金) 00:33:30.35 ID:SlS1pZ45
投下乙です
いいなあ兄貴がいいなあ
数少ない落ち着いて放送聞けた組だけに考察もしっかり進んでくれるといいものだけど…
覗いていた影も気になることだしどう動くか楽しみです
341創る名無しに見る名無し:2014/03/21(金) 11:04:04.46 ID:qS5LS8Rq
放送後未登場、未予約 一覧

【グループ】
ツェペリ、アヴドゥル、ジャイロ、ビーティー、ドルド @サンモリッツ廃ホテル
ディエゴ、ブラフォード、ルーシー @空条邸地下付近

【バトル】
ジョセフ、仗助 VS ワムウ @A-4とA-5の境目(地下)
シュトロハイム、噴上 VS 宮本輝之輔 @A-4とA-5の境目(地下)
エルメェス、シーラE VS ビットリオ @古代環状列石

【単独(DIO配下)】
ペット・ショップ、サーレー、ディ・ス・コ

【単独(その他)】
カーズ @D-4とD-5の境目(地下)
ジョンガリ @E-6 中央部
ティム @ティベレ川
育朗 @D-5 地下
342She's a Killer Queen ◆Be1WM97dDg :2014/03/22(土) 12:46:34.57 ID:1I0l05YT
全身の傷の痛みが、激しい屈辱が、身を焦がす。
しかしそれらを全て抑え込まなくてはならない。
ストレスは思考を妨げ、迂闊な行動をする要因となる。



「…………申し訳ないんだが、まずはその懐中電灯を下ろしてもらえないか。
 眩しくって………仕方がないんですがね」


地下通路で出会った人物に光を当てられた吉良吉影は、まずその些細なストレスを解消させることにした。


「あっ、すいません。気が付かなくって……」


吉良は川尻しのぶの申し訳なさそうな口調としぐさから敵意がないと判断した。
その一方で、彼女が出会い頭に、空条の名を呼んだことにも気づいていた。

名簿にある空条は三名、内、第二回放送前で生存しているのは空条承太郎ただ一人。

チラリと空条徐倫の存在も頭をよぎったが、彼女は違うだろう。
自分と泥のスーツの男の戦闘を見て取り乱し、教会から飛び出したあの少女が、この短時間で新しい協力者を得られたとも思えない。

それに、いくら地下通路が視界の悪い環境とはいえ、自分と目の前の女との距離は、成人男性を少女に見間違えるほどの距離ではない。
なら、自分と同じ背丈ほどの人物と見間違えたと考えるのが自然だ。
それが、空条承太郎という人物。

そして先の戦闘中、DIOと呼ばれた男がその名を呼んでいた。


『ぐぁッ!』
『フフフ、ココに来る前にはお前と少しだけ突きの速さ比べをしたが、あの時の方がキレがあったなァ。
 時を止めても老いは止められんようだなァ!承太郎ォォ!!』
『くっ……オラオラオラオラァ!!』
『無駄無駄ァ!!!』


自分がカーズと呼ばれた人外を前に悪戦苦闘していた時、視界の端に入っていた。
DIOが戦っていたのは、自分と同じほどの背丈の人物。
時を止める、凄まじい能力の持ち主である二人の男が衝突し、鍔迫り合い、拮抗していたド突き合いが、一度だけ、一瞬だけ膠着状態が

崩れた瞬間のセリフ。
崩れたバランス状態を好機としようとDIOが男に畳みかける前に、自分とカーズがDIOへ攻撃し、また小競り合い程度の戦闘が続い

た。


あの長いようで短かった戦いの中で、帽子の男が明らかなダメージを受けていたのは後にも先にもアレ一度きりだった。
DIOは、吉良が爆弾で焦がした男の左腕を潰していた。
素直に認めるには吐いてしまいそうなほど悔しいが、自分より格上であったあの男と戦って負けずにいられたのは、その腕の傷のおかげ

もあっただろうことを覚えている。


奴が、自分と同じほどの背丈の、この吉良吉影の破滅を予言したあの男が、空条承太郎。

他人の紹介をしておいて自己紹介もしなかった生意気な男。

つまり目の前の女性は、あの男の仲間………………。
343She's a Killer Queen ◆Be1WM97dDg :2014/03/22(土) 13:10:20.49 ID:1I0l05YT
「……あの、怪我をしているなら、ひとまずここから出ませんか?
 ここからすぐの、地図の空条邸って場所なんです。とりあえずは安全だと思うんで…………」



しのぶの口から出た言葉に、吉良の思考は数瞬止まった。
そしてすぐに気づいた。

この女は、自分を労わっている。
そして、自分のことを、この私が吉良吉影だということを、知らない。

それから、女の言葉を頭の中で反芻する。
安全な場所が(もちろん比喩であって、この状況下で完全に安全な場所なんてどこにもないのはわかっているだろうが)あって、そこに見

ず知らずの、傷だらけでズタボロのいかにも怪しい男を招き入れようとしている。

罠か。
しかし、このバカみたいに不安そうな顔をしている女が、自分を嵌めようとしているというのも、なにか腑に落ちない。

脳裏に、自分を見下し敵を睨む鋭い眼光の男の顔がよぎる。
そして、このバトルロワイアルで最初に行動を共にしたストレイツォの顔が浮かんだ。


少しだけ返事を迷った吉良は、

「…………………案内を、頼みます」

虎穴に入ることにした。




+++




『それではまたその時に! 諸君らの健闘を祈って! グッドラック! 』

主催者の、忌々しい声が止んだとき、吉良は空条邸の応接室のソファーに身を沈めていた。
純和風の館には畳と布団ばかりで、傷ついた体でわざわざ布団を敷いて枕を置いて、などとやっていられなかったからだ。
ちなみに地下通路は空条邸の台所の床下収納スペースに続いていた。


向かいのソファーではしのぶが神妙な顔つきで、斜線を入れた名簿を見つめていた。
とはいっても、彼女の知り合いは第一回放送時に死亡した二人の家族と、空条承太郎ただ一人。
死者と生存者を見比べても、彼女に出来ることは何もない。

ただ、 ナニカをしていないと辛いだけなのだ。


放送前に空条邸に着いた二人は、屋敷に置かれていた救急箱で吉良の治療をした。

承太郎が屋敷に入り地下への入り口を探すとき、万が一の時の為にと保管場所を確認していたのをしのぶは見ていた。
承太郎に、救急箱はココにありますからね、と教えられたってわけじゃあない。
だが、後ろで見ていた自分の事も考えてくれていたとも思う。
しのぶには高いタンスの上にあったのを近くの机の上に置いておいてくれた心使いに、彼女は承太郎の優しさを見ていた。

とにかくそうして確保した救急箱は、今、二人が挟んでいるテーブルの上に置かれている。
344She's a Killer Queen ◆Be1WM97dDg :2014/03/22(土) 13:16:38.38 ID:1I0l05YT
医療品があると言っても、満身創痍と言ってもいい吉良の傷を素人のしのぶが適切な処置を取れるはずもないわけで。
吉良が絶え絶えの息でしのぶに指示をし、それにしたがってしのぶは吉良の体を治療していく。

そうして一段落した時に放送が始まり、吉良は安静に、しのぶはメモを取る体制に入ったのだった。



そうしてしばらくお互い黙っていた二人だったが、しのぶがついに名簿を見ることに耐えられなくなった。
名簿を見れば、死者の数がわかる。そしてどうしても、目が行くのだ。
二人の川尻と、二人の空条に。

すでに第一放送から6時間が経過している。
日常で親しいものが亡くなれば数時間で立ち直る必要などないが、この場ではそんな常識は通用しない。
それでも、痛いほどの後悔と悲しみが唇の裏を寒くする。二の腕を泡立たせる。

見ていられない、と名簿から目をあげると、正面の男の姿が見えた。
痛みと疲労にしかめた顔。閉じられた瞼。

彼の様子を改めて見て見れば、気になることはたくさんあった。


「えっと………まだ、なにがあったのか、聞いてなかった……ですよね」

落ち込んだ気分をなんとか落ち着けようと深呼吸した後、暗い気持ちを誤魔化すように男に話しかけた。
口を開いても、出てきた声は恐々とした質問だった。すこし声が小さかったかもしれない。

交渉だとか尋問だとか、そういうものを一切考えない、ただ疑問をぶつけただけの拙い問い掛けだった。



一方の吉良吉影は、治療を受けているときからずっと頭を働かしていた。

空条承太郎の仲間かと思ったが、どうやらこの女は協力関係といえるほど奴と対等ではない。
おそらくは庇護対象。なんの力も技術も持たない、巻き込まれた一般人。

そうなると、この女は殺した方がいいのではないか。

これから先、何らかの要因で脅威になる前に。
他の参加者に自分の事を広めてしまう前に。
空条承太郎と合流される前に。
345She's a Killer Queen ◆Be1WM97dDg :2014/03/22(土) 13:22:32.83 ID:1I0l05YT
空条承太郎と、合流。

それだ、と吉良は思った。

吉良の行動優先順位の内、自分の正体を知りもっとも警戒せねばならないのは、泥のスーツの男から空条承太郎に変わっていた。
しかし正面からでは勝ち目がない、とまでは言わないが、苦戦するだろう。力の差は身に染みている。

ならば絡め手を使うことも躊躇いはしない。


心の中で決めた後は、すでに行動は終えていた。
先の治療中、しのぶが体に触れているときに、死角からキラー・クイーンの手だけを出し、触れた。

現在、彼女を爆弾に変えてある。

任意で爆発させるものでなく、接触した瞬間に爆発させる設定。
対象を爆裂させるのではなく、接触したモノを爆発させる設定。


空条承太郎と女が合流した時、もし自分とこの女が一緒にいればどうなるだろうか。
間違いなく奴は自分を殺しに来る。だが、その前に彼女を救うための行動を起こすだろう。

具体的に言えば、時間を止めてこちらの動きを封じ、女を自分の後ろにでも匿う。

あのなんでもお見通しだとでも言いたげなキザな男だ。おそらく爆弾についても予想はしているに違いない。
しかしそれでも、女を救うには自分の手の届く範囲に連れてこなくてはならないはずだ。

奴は罠だとわかっていて、それに触れなくてはならない状況になるのだ。

これで確実に、空条承太郎を殺すことが出来る。

あとは彼女が勝手に、他のバカを爆殺しないように、見張ればいいだけなのだ。


「地下通路で、なにがあったんですか?」


そして問題はこの問い掛けだ。
346創る名無しに見る名無し:2014/03/22(土) 13:26:08.74 ID:ecDYaRBl
 
347She's a Killer Queen ◆Be1WM97dDg :2014/03/22(土) 13:32:10.35 ID:1I0l05YT
トラブルを避けるいつもの吉良なら、戦闘に巻き込まれ、命からがら逃げてきた、とでもしただろう。あながち間違いでもない。

ただ、彼女を見張る上で想定しなくてはならないのが、彼女を『守る』場合もあるだろうということだ。
第一の爆弾がなくともシアーハートアタックがあれば、防衛戦であれば十分可能だろうとも思う。
キラー・クイーンの肉弾戦でも十分戦える。

となればだ、彼女にだけはスタンドについて教えてしまったほうがいいのではないだろうか。

おそらく空条承太郎から説明は受けているだろうから、突然スタンドを出しても慌てたりはしないだろう。
むしろ自分のチカラを見せ、教えることで信頼を得るというのも手ではないだろうか。

もちろん爆弾を仕込んだことは教えまい。
どうせ空条承太郎を殺せれば用は無くなり殺す相手。
見張っている間は不味い情報が広まることも抑えられるだろう。
ならば……………………。


吉良吉影は知らない。現在の空条承太郎が、川尻しのぶを人質にとったスティーリー・ダンを危険を顧みずに殺し、助けられた彼女自身

、状況が変われば一緒に始末されていただろうなどと思われる、危うい存在であることを。
川尻しのぶはしらない。現在目の前にいる男こそ、自分が会ってみたいと思い、杜王町で待っていた、そして今帰りを待っている男、空

条承太郎と戦闘を行った殺人鬼、吉良吉影その人であることを。


吉良は迷っていた。女性に己の力を明かしていいものかを。
しのぶは待っていた。男の返事を、そして男の帰りを。
348She's a Killer Queen ◆Be1WM97dDg :2014/03/22(土) 14:11:31.27 ID:1I0l05YT
そして、この時点でお互いの名前も知らない二人のそばに、魔の手はゆっくりと這い寄ってきていた。

男の悩みを解決する時間を与えず。
女の想いが解決する機会を与えず。

車の痕跡を追う片手間に放送を聞き、己が主と怨敵が無事であることだけを確認した男たちが、空条邸の敷地内に停められた車を発見し

た。

吉良としのぶが待つ、空条承太郎、その彼を追いかけてきていた二人の男。

その手を、屋敷の引き戸に伸ばす………――――






【D-5 空条邸(応接間) / 一日目 日中】
【偽川尻夫妻】

【吉良吉影】
[スタンド]:『キラー・クイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その@、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:左腕負傷、左手首負傷(極大)、全身ダメージ(極大)疲労(大) 負傷部に治療 安静中
[装備]:波紋入りの薔薇、聖書、死体写真(ストレイツォ、リキエル)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する。
0.空条承太郎を殺す。
1.目の前の女性(しのぶ)を見張る(守る)。そのためにスタンドを明かしてしまっていいものか……。
2.優勝を目指し、行動する。
3.自分の正体を知った者たちを優先的に始末したい。
4.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。
5.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。

※怪我の止血はしましたが、無理をすればまた傷が開くかもしれません。

※キラー・クイーンの第一の爆弾を川尻しのぶに使用中です。他に使うときは解除しなくてはいけません。


【川尻しのぶ】
[時間軸]:The Book開始前、四部ラストから半年程度。
[スタンド]:なし
[状態]:精神疲労(中)、疲労(小)すっぴん 触れた物を爆発させる爆弾状態
[装備]:地下地図
[道具]:基本支給品、承太郎が徐倫におくったロケット、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条承太郎を止めたい。
0.空条邸で承太郎を待つ。
1.目の前の男性(吉良)の話を聞く。
2.どうにかして承太郎を止める。
3.吉良吉影にも会ってみたい。


※キラー・クイーンにより、接触型、触ったモノを爆破する爆弾が仕込まれています。


※移動中も治療中も最低限しか会話していないので、現時点でお互いのことは何も知りません。
※応接間の机の上には救急箱が置かれています。大怪我の吉良を治療し切れるので一般の救急箱より充実してるかも。
349She's a Killer Queen ◆Be1WM97dDg :2014/03/22(土) 14:19:08.81 ID:1I0l05YT
【D-5 空条邸(玄関先) / 一日目 日中】
【偽スターダストクルセイダース】

【花京院典明】
[スタンド]:『ハイエロファント・グリーン』
[時間軸]:JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前
[状態]:健康、肉の芽状態
[装備]:ナイフ×3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様の敵を殺す。
1.空条承太郎を追跡し、始末する。
2.ジョースター一行の仲間だったという経歴を生かすため派手な言動は控え、確実に殺すべき敵を殺す。
3.1、2のためにラバーソールを使役・利用する。
4.山岸由花子の話の内容、アレッシーの話は信頼に足ると判断。時間軸の違いに気づいた。


※ラバーソールから名前、素顔、スタンド能力、ロワ開始からの行動を(無理やり)聞き出しました。



【アレッシーが語った話まとめ】
花京院の経歴。承太郎襲撃後、ジョースター一行に同行し、ンドゥールの『ゲブ神』に入院させられた。
ジョースター一行の情報。ジョセフ、アヴドゥル、承太郎、ポルナレフの名前とスタンド。
アレッシーもジョースター一行の仲間。
アレッシーが仲間になったのは1月。
花京院に化けてジョースター一行を襲ったスタンド使いの存在。



【山岸由花子が語った話まとめ】
数か月前に『弓と矢』で射られて超能力が目覚めた。ラヴ・デラックスの能力、射程等も説明済み。
広瀬康一は自分とは違う超能力を持っている。詳細は不明だが、音を使うとは認識、説明済み。
東方仗助、虹村億泰の外見、素行なども情報提供済み。尤も康一の悪い友人程度とのみ。スタンド能力は由花子の時間軸上知らない。



【ラバーソール】
[スタンド]:『イエローテンパランス』
[時間軸]:JC15巻、DIOの依頼で承太郎一行を襲うため、花京院に化けて承太郎に接近する前
[状態]:疲労(小)、空条承太郎の格好、『法皇の緑』にとりつかれている
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×4、不明支給品2〜4(確認済)、首輪×2(アンジェロ、川尻浩作)、ブーメラン、おもちゃのダーツセット、おもちゃの鉄砲
[思考・状況]
基本行動方針:勝ち残って報酬ガッポリいただくぜ!
1.花京院をどうにかして始末する、この扱いは我慢ならねえ。
2.承太郎と出会ったら………どうしようかねえ?


※サンドマンの名前と外見を知りましたが、スタンド能力の詳細はわかっていません。
※ジョニィの外見とスタンドを知りましたが、名前は結局わかっていません。


※花京院からこれまで出会った参加者を聞きましたが、知っている人間は一人もいないため変装はできません。
※エジプト九栄神は一人も知らないようです。そのため花京院からアレッシーが語った話や時間軸に関することは一切聞かされていません。


※二人は移動しながら放送を聞きました。聞き覚えのある名前は頭にあるかもしれませんが、他の死亡者についてはほとんど覚えていませんし、重要視もしていません。
350 ◆Be1WM97dDg :2014/03/22(土) 14:22:46.54 ID:1I0l05YT
以上です。
ところどころ改行とかおかしくなってますが内容には問題ないと思います。

誤字などありましたら指摘をお願いします。
ではよろしくお願いします。
351創る名無しに見る名無し:2014/03/23(日) 08:40:36.25 ID:y87Bs6xb
投下乙です
吉良はこの後どう対処するのか・・・
352創る名無しに見る名無し:2014/03/23(日) 09:12:44.33 ID:QndHjfwX
投下乙です。
忘れられてるかもしれないけど、アヴドゥルさん一行も地図の真ん中目指して進行中なんだよな。
空条邸大バトルの予感…
353創る名無しに見る名無し:2014/03/23(日) 22:53:01.64 ID:HAHS7weo
投下乙です。
しのぶさん!それアンタが会いたいって言ってた男だよ!
354創る名無しに見る名無し:2014/03/24(月) 17:45:15.21 ID:kh66s0Vm
投下乙。
状況によっちゃ吉良がしのぶを守るという展開にもなりうるがはたして……
どうなる空条邸!?
355創る名無しに見る名無し:2014/03/25(火) 22:34:22.89 ID:gJB3E4BQ
投下乙です。
いつも楽しんで読ませてもらっています。
356 ◆3yIMKUdiwo :2014/04/06(日) 12:38:22.13 ID:tZp38q57
2度目の仮投下の後レス貰ってないのですが、大丈夫だと信じて本投下します。
357星環は英雄の星座となるか? ◆3yIMKUdiwo :2014/04/06(日) 12:40:48.74 ID:tZp38q57
「…」
ダークグリーンの眼に映る、太陽。
空条承太郎が地上に出てきたのは、結局の所道が他に無かったという単純な理由だった。歩き出して間もなく、上へ行く階段が現れたのだ。

開け放ったその大きな扉の横合いから、声が投げられる。
「…空条、承太郎、か?」

***

マウンテン・ティムが水から上がるのに成功したのは、康一よりも下流だった。
びしょ濡れの身体でそれでも休まずにここまで歩いてきたのだが…さすがに疲労が重なり、どこかに休める場所はないかと建物の側へとやって来た所で放送が流れ出して。
結局ティムは中へは入らない事を選び、入り口の横で放送を聞いて暫し休憩をしていた所へ、承太郎が出てきたというわけだ。

主催者に爆破されたはずのその顔をティムはよく覚えている。そして何より…仗助、噴上、康一がその名前を口にしていた。仗助曰く『グレートな甥っ子』であるという男。
「…人に名前を尋ねる時は、名乗ったらどうだ」
低いがよく通る声、傷ついた身体…何よりティムの目を引いたのは怒りと悲しみの宿るダークグリーン。まるで孤高の狼…いや、それ以上か。触れれば焼きついてしまいそうなこの男が歴戦の戦士だという事はティムにも痛いほどわかった。

「…すまない。私はマウンテン・ティム。保安官だ」
「…空条承太郎だ。武器もスタンドも出さねえって事は、やる気はねえと思っていいか?なら、俺に関わるな」

承太郎はティムに背を向けようとした。
「…待ってくれ。一緒に…来てほしい…仲間が待ってるんだ。仗助くんも、裕也くんも…康一くんも」

ティムは食い下がった。一人でも多く協力者が欲しい。もし自分が主催者であるなら…見せしめに使うような人物が何処かの下っ端と言うことはないだろう。かなりの影響力を持っているはずだ。

「…『エコーズ』…広瀬康一か?」
承太郎は呟いた。
「…やっぱり、知っているんだな?」
「…保安官だと言ったな?カウボーイか?」
「…ああ」

承太郎は無造作に紙を1枚取りだし、自分とティムの前に広げた。
「…なら、これで帰ればいい」

付いて行きたくはなかった。ただ、広瀬康一という人間は承太郎にとって敬意を払うべきものだ。年など関係はなく、敬うべきと思ったものを敬う。怒りの中に生まれたそれは、結果としてティムに味方した。

承太郎が背を向けた次の瞬間、その身体は僅かにバランスを失う。
空白の一瞬…それは確かに大いなる偶然だったが、ティムは見逃さなかった。頭より身体の反応の方が速く、気づくと縄を投げていた。
幸運だったのは、承太郎が反射的に身体にかかった縄を掴んだ事だ。
ティムは愛馬の首元に承太郎の上半身を、自分の背中に腰と脚をくくりつけて背負う。そのままロープの端を手に巻き付けて手綱と共に持った。

「少し重いが…頼むぞ。『ゴーストライダー・イン・ザ・スカイ』…手荒な真似をしてすまないが…そんな眼をした奴を置いてはいけない」

承太郎は自分に起こった事に表情を変えず困惑していた。いきなり冷水を頭から被ったかのようだ。
無理矢理に、思考が引き戻されて行く。色々な事を経験してきたが…無論馬に蹴られた挙げ句、身体をバラバラにされるなどというのは初めてである。
「…」
「もし何か良からぬ事を考えてるなら、やめてくれると嬉しい。ロープが切れたら…あなたの身体がどうなるか保証しかねる。その代わり…連れていけたなら、その後で遠慮なく殴ってくれても構わない」

ティムの言葉と眼差し、その真っ直ぐさに誠実を感じた承太郎は軽く首を振った。
「…よくわからん奴だな、あんたは…」
「…俺は、『黒』を打倒したいだけだ…来てくれれば…出来るかもしれない。その為になら、力を使うことを惜しまない。頼む」

元々川尻しのぶと合流することは『今すぐ』の選択肢として承太郎の頭から消えていた。逃げおおせているならば自分が行っても意味がなく、敵に見つかっていたなら尚更しのぶが危険だ。徐倫まがいを救う事…こちらは『結果論』として頭にあった。

ティムは言葉を続ける。
「…あなたもそんな眼をしているからには、大事なものを失ったんだろう。俺がどうこう言える立場じゃないが…俺の知っている範囲の事を話す。ひとりごとだと思って、聞いてくれ」
「…その前に」

承太郎はスタープラチナを現した。
358星環は英雄の星座となるか? ◆3yIMKUdiwo :2014/04/06(日) 12:46:04.05 ID:tZp38q57
落とされるのか?
ティムは落馬を覚悟したが、その影はティムを通りすぎた。
「…スターフィンガー!」

スタープラチナが指を振るう。その手は次の瞬間、間髪入れず真っ二つになったトランプのカードを捕まえていた。
それはもちろん、ティムの愛馬にくっついて情報収集しようとしていたムーロロのスタンドである。
「…誰か、俺達をつけてやがったようだ。くだらねえ」
「…ありがとう」
ティムは振り向いてそれを確認し、承太郎に告げた。
「…別に助けたわけじゃねえ、こいつは、『警告』だ。盗み見してる根性の曲がった奴へのな」

それがティムのものではない事はわかっていた。地下にいた時からずっと、朧気ながら何かに見られている感覚があったからだ。スタープラチナはトランプを細切れにして放り投げた。
「それに、いくらスタープラチナでこの縄を細切れにした所で…万一でも俺の胴体が泣き別れでもしたら、死んでも死にきれねえ。分の悪い賭けは嫌いじゃねえが、今それをするのは得策とは言えん」
「…では、改めて…」

ティムは自分の知る限りの事を、簡潔に述べ始めた。

***

シュトロハイムは、唐突に噴上の足を払った。
「…な…」
宮本と噴上とが両方驚愕した時には、シュトロハイムのその目から宮本に向けて紫外線が照射されていた。
「…う、あ…」

たまらず怯んだ隙を見逃さず…つかつかと宮本に歩み寄るとその手元にある紙を躊躇なく引っ張り、取り上げて開いたり閉じたりして確認する。

「…フンガミ、これはただの紙のようだが?」
転ばされた噴上にとってはいい迷惑だったが、これぐらいで済めば良い方だろう。
「…やっぱり騙しやがったな、紙使い!」
「…っ…仕方が…なかったんだ…僕は…あいつに…」
「…やかましい。そんな事を言いながら、シュトロハイムの事を『観察』してたのを、俺は見逃しちゃいねえぜ…」

言って、噴上は宮本の頬に『ハイウェイ・スター』の拳を叩き込んだ。
「…ぐふ…っ」
「…それでおあいこにしてやる。とっとと、どこへでもいっちまえ」
「…うむ、よくわからんが…人質をとるような人間はこの戦いに必要なし!蜂の巣にされないうちに、去ることだな」

シュトロハイムに仕込まれた機関砲の銃口が宮本に向くと、宮本は流石にきびすを返して逃げ出した。装備自体は雲泥の差だし、何より自分の役目は果たしたのだ。
ワムウの事は気になるが、今はこれでいい。

「…フンガミ、ジョジョを探せるか?」
シュトロハイムと噴上は走り出した。
359星環は英雄の星座となるか? ◆3yIMKUdiwo :2014/04/06(日) 12:49:12.53 ID:tZp38q57
***

その戦いは、途中から純粋な殴りあいに変化した。
ジョセフと仗助、双方とも『食え』ず…また今の狭いトンネル内にいる状態では神砂嵐を使っても文字通り砂山を作りかねない。もっと良くないのは、瓦礫を風で吹き飛ばして増援を呼んでしまうことだ。
それでもクレイジーダイヤモンドのラッシュと、それに乗じてフェイントを掛けたジョセフの波紋入りパンチをいなしているのだから、ワムウは正に怪物と言って良かった。

紙一重の攻防が続いた。
何回目かのやりとりの後、仗助とジョセフはワムウから距離を取る。放送が流れ出したが、構っていられそうにない。
深いものはないが、手足は細かい傷だらけだ。
「…いやあ、しぶといスね…」
「…ヒトじゃないから…疲れるのを狙ってたら、ダメなんだろうぜ…何か…ないか…」
ジョセフがごそごそとデイパックを漁ると、指先が紙に触れた。
「…そういや、なんだこれ?」
引っ張り出して開いた紙の中のものを見て、笑った。

「…いくぜ、ワムウ!」
ジョセフはくっつく波紋で洞窟の天井からぶら下がり、奇襲をかけた。
「…そんな格好で仕掛けてきても無駄だ!」
「くらえ、波紋!」

ジョセフは左手の掌で、ワムウの頭に触れようとした。無論、黙ってさせるワムウではない。
かわした場所に、右の拳が迫る。
「くどい!」

一手遅れてやってきた仗助とクレイジーダイヤモンドに対応すべく、ワムウは頭を僅かに振ることでそれを回避した。

―その後頭部から、波紋の衝撃。

「…ジョセフ・ジョースター…」
ワムウはよろめいた。
クレイジーダイヤモンドのラッシュを受けて、吹き飛ぶ。
「…今回もやらせていただきましたァン」
ジョセフの右の小指には糸が絡んでいた。その先には、ブリキのヨーヨー。拳で殴ると見せかけてそのヨーヨーを離し、死角から攻撃したのだ。

立ち上がったワムウは己の人差し指をこめかみに当てる。
一度、これと似た攻撃をされた事があった。確かアメリカンクラッカー…とか言うものだったか。その時は身体を変形させる余裕があったが、今はなかった。
即ち、それは仗助のクレイジーダイヤモンドのラッシュのスピードの速さを物語っている。
戦う事の喜びの中に、あるひとつの感慨がふつふつと湧いてきた。
「…ジョジョの子よ。お前も、一人前の戦士であるのだな…」
「…あんた、どうして…」
音石から二人が親族であるとは聞いていた。確信をもったのは、一連のやりとり、そして何より何かを企んでいるようなその笑顔だ。
「…そっくりではないか…俺は…一度ジョジョに負けたのだ。もう一度その姿を…その子供まで見られるとは、幸せだと思わんか?」

そこまで告げた所で、近くから破砕音がした。
「ジョジョ!ジョウスケ!近くにいるか!?」
「増援か…やはり奴は足止めにならなかったようだな」

元より、ワムウはすっかり恐怖していた宮本が誰かを長時間引き留めておけるとは思っていなかった。
これ以上敵の数が増えれば正々堂々とした戦いはしにくい。声を聞いたワムウは、神砂嵐の構えを取ってバックステップを踏んだ。
「「おわっ!?」」
二人が数メートル吹き飛んだ後には風が荒れ狂い、その隙に作ったらしい瓦礫が先を阻んだ。

「…ワムウ…その気があるなら…もう一度、待ってるぜ…」
「…行こうぜ…皆が、待ってる…おーい、聞こえるか?」

(…このワムウが…ジョジョ…ジョウスケ…俺は今かつてない程に、強くなりたいと願っているぞ。この猶予、無駄にはせん)

(ワムウにとって地下はハンデだろうな…さすがにみんなでかかって倒すってのも、なんか目覚めが悪ぃし…)

(…やれやれ、なんつーか…二人の複雑な思いって奴か?目ぇつけられちまったみてえだし…まあ、それより、早く合流しねえと)
360星環は英雄の星座となるか? ◆3yIMKUdiwo :2014/04/06(日) 12:53:22.86 ID:tZp38q57
***

膠着状態から、ナイフの飛び交う接近戦へ。
いつものビットリオであれば自傷して相手にダメージを与える所だろうが…麻薬切れで混濁した意識と、2対1の構成が中々それを許さない。
特にシーラEは…隙を与えてはならないと悟り、多少の傷を承知でヴードゥ・チャイルドを牽制に使っていた。

そして金属同士が弾かれる、音。

何度かのそれを制したのは、意外なものだった。
「…んの、っ…!」
何かに気づいたヴードゥ・チャイルドの拳が、ビットリオとエルメェスの距離を引き離す。
そこへ、「バコォン」の文字が貼り付けられてビットリオは更に吹っ飛んだ。
「「…康一!」」

吹っ飛んだビットリオの額には、唇が出来ていた。そこから、呪詛のような罵りが漏れる。
「…うるさい、うるさい、うるさい…!」
蓄積していたビットリオの精神疲労は、罵詈雑言を聞いた所で限界を迎えようとしていた。

『ドリー・ダガー』には何も映っていないように見えたが、躊躇なく額を抉ろうと刃を突き立てたその瞬間…そのスタンドは映り込んだ不安定な瓦礫の柱にダメージを反射してしまう。
「…!」
離れていた三人にはどうすることもできない。ビットリオは頭を潰されて死を遂げる事となった。

…彼の幸運は尽き、不幸が襲ったと言っても良いだろう。

【ビットリオ・カタルディ 死亡】

***

外と中から瓦礫をどうにかし、何とか仗助、エルメェス、噴上達は合流した。
それから暫くして戻って来たティムと予想外の客に仗助や康一は眼を丸くする。

ありありと傷を作っているその姿を見て仗助が「またアブねえ事してるんでしょう?」と言うと、承太郎は帽子を深く被った。
「悪いか」
「…悪いっスよ。あんた絶対無茶苦茶ばっか、するんです。わかんねえんスか?おれだって承太郎さんが傷つけば平気なわけ、ないじゃないですか。まして…おれはあんたが死んだって、思ってたんスから…」

ジョセフは何も言わなかった。
ただ、パンチが一発飛んできた。
「心配してる奴に向かってその態度は何だ」という意味合いのその拳は、承太郎に当たる寸前で止まる。

仗助が近寄って半ば無理矢理承太郎の傷を癒していく。空条の名前に線の引かれた名簿は仗助も既に目にしている。何より双方の痣が燃えるように痛んだ。
「あんたが悲しいのも、怒ってるのもわかる。けど…一人誰かが死ぬたび、見てるホントのクソッタレはほくそ笑んでるんですよ。
殺されたそいつがいいやつとか、悪いやつとか、関係なく。それは承知して下さい。
そして少なくとも…悔しいですけど、そういう奴に『空条承太郎』は一度負けたんスよ。あれは…人形なんかじゃ、なかった」
「…だからと言って、吉良やDIOを野放しにしておくわけにはいかねえ。俺は…母親も娘も…」

二人とも表情や口調こそ平静だが…その後ろにある殴りあいが始まりそうな雰囲気を仲裁したのは康一だった。
「…承太郎さん、取り敢えず…何があったか話してくれませんか?」
「…やれやれ、だ」

承太郎は全てを話す事にした。
望んだというよりは、その方が小出しに色々問われて鬱陶しいよりはマシだろうと判断したからだ。
361星環は英雄の星座となるか? ◆3yIMKUdiwo :2014/04/06(日) 12:56:48.71 ID:tZp38q57
***

「父さん、って、確かにそう言ったんだな?」
これまでの放送内容と情報交換が粗方終わった後漏れた、その疑問の声。それは承太郎にとって意外な人物…エルメェスからのものだった。
「ああ」
「…それは…F・Fかもしれない…あいつが…徐倫の記憶を…」

エルメェスは背中を預けていた石柱から背中を離す。冷たかったはずのそれには、すっかり温もりが移ってしまっていた。

承太郎は息をひとつ吐き出す。
少なくとも、ここに承太郎が『敵』だとはっきり認識している者はいない。
エルメェスは、危険を承知で神父を倒すために付いてきたのだとアナスイに聞いた。
そしてF・Fの事も無論聞いて知っていたが…あの状態で思い至れというのは、流石に無理がある。」
「確証はねえだろう。ラバーソールの奴か、他の…DIOの手下の自作自演なら、心配は無駄だ」
「…承太郎さん、あんたの『感覚』でもわからなかったのか?」
エルメェスは再度尋ねた。

「…少なくとも、徐倫まがいのその身体自体が『生きていない』事はわかったが、それ以上はわからん。そんなに便利な代物じゃねえ」

声が僅かに苛立ちを含んでいた。この男は冷静に怒っている、と声を聞いた誰もが感づき、考える。
承太郎がその徐倫まがいを味方(若しくはそうなれる者)ではないと思いたいのは自然だ。いっそ、その方がすっきりするだろう。
『よくも娘を冒涜したな』と、殴りかかれば良いのだから。
それにしても、まず探し出さねばならないが。

暫し場は沈黙に包まれる。次に口を開いたのは康一だった。
「…近くにDIOを感じますか?」承太郎は緩く首を振った。
「少なくとも奴はこの近くにはいない。逆に、僅かに遠くなったように感じる」
「…そうですか…川尻さんも…心配ですね…」

その返答に、承太郎は僅かに顔をしかめる。
「…あまり四の五の考えたくはねえが…彼女には地図がある。名前は呼ばれなかったんだろう?ならば、すぐ殺されたり落盤の下敷きになった可能性は低い。一番厄介なのは…DIOか吉良と会ったパターンだ」
確かに逃げろと言ったのは自分だが…もし人質に取られたら厄介以外の何者でもない。そして、それは過去に起きているのだ。

「…いずれにせよ…行きましょう。承太郎さんの家って言うのがちょっと皮肉みたいですけど…これも何かに引かれているなら、必要なのかもしれません。
何が待っていようが、みんなで行けば大丈夫です。そして、次にDIOを探しましょう」
康一が軽く頷きながら告げ、一同も納得したように顔を見合わせる。その中でティムが唯一納得のいかない顔をしていた。
「そのDIOという吸血鬼は恐らく地下か建物の中にいるんだろう?出会ったばかりで戦闘になったというなら…そこからとんでもなく離れているわけではないと思う。それはそれでいいんだが…」
「…何だ?」
承太郎は尋ねた。
「主催者…スティーブン・スティールの事だ。彼はこっちの関係者というべきなんだが…そうだ、承太郎。ファニー・ヴァレンタインという男が合衆国の大統領になったことは?」
「ねえな」
ティムは顎に手を当てる。
「…と言うことは、僕らと君らとは、大分違う世界という事も考えられるな。
もうひとつ…引っ掛かった事があるんだ。君には俺がスティール・ボール・ランの参加者だったと話したが、そのレースにはディエゴ・ブランドー、そして、ジョニィ・ジョースターの二人が同じように参加して優勝争いをしていた。
ブランドーにジョースター…偶然にしては妙だろう?ただ、ディエゴ…彼は人間のはずだ。さもなければ、とっくに塵になっている」
「少なくとも俺の祖先…ジョナサンはイギリス生まれだ。確か1890年と言ったな?その年にアメリカでレースに出ていたはずはない。出られたはずがないんだ。第一そのレース自体がこっちの歴史には存在しないもの…
と言うことは、DIOの信奉者が主催者を操っている、もしくは結託しているとは限らなくなってくるわけか?…クソ…」

出られたはずはない、というのはその前の年にジョナサンはこの世を去っているからだ。
承太郎が言いながら人を射殺せそうな顔で訝しんでいると、康一が顔を上げた。
「…これは承太郎さんから話を聞いただけの僕の邪推に過ぎませんけど…
もしそのDIOが全てを知らされていて、優勝する予定の出来レースだったとしたら…まだ残りが随分いる中、挨拶に出てくるのかって疑問が生じますよね。
何より、承太郎さんにわざわざ『数年ぶりか』と尋ねたのも…ブラフにしてはうっかりしてる気がするんです。
もし裏があったとしても…僕らと同じく何も知らされないまま参加したと読んだ方がいいかもしれません」
362星環は英雄の星座となるか? ◆3yIMKUdiwo :2014/04/06(日) 13:03:11.50 ID:tZp38q57
そこで、珍しく黙って話を聞いていたシュトロハイムが口を挟んだ。
いつもの調子でがなっていれば、承太郎は「やかましい!」と告げて踵を返してしまったかもしれないが、その声は静かだった。

「…要は吸血鬼なのだろう?このシュトロハイムがいれば…」
「…ダメだぜ、シュトロハイム。時を止めて逃げられるのがオチって奴だ」
噴上が、すかさずツッコむ。

「…いずれにせよ、主催者の目的がよくわからないね。ジョースター、ブランドー…スタンド使い、人間…殺しあわせて何がしたい?」
シーラEがぽつりと呟いた。空条承太郎が生きているなら、ひょっとしたら、ジョルノ様もいるのかもしれない。
自分の事を知っているかはわからないが、それは二の次だ。
「…それとも、何かを探してるのか?」
仗助が大分くたびれた声で唸る。
情報交換しているうちに皆を治して回っていたので、休息しようと口を出さないでいたのだ。
まあ承太郎が仗助より未来からやって来たらしいとわかった時点で、説明する事もなかったのだが。
しかし柱の男であるカーズ、DIO、そして吉良といっぺんに遭遇するとは…無論待ち合わせていたはずはないし、仮に約束していたとしてもそんな邂逅は無理に近いはずだ。
この甥は光が強い分、濃い闇まで引き寄せてしまうとでもいうのだろうか。
そんな事を仗助がぼんやりと思っていると、承太郎が幾分か落ち着いた様子で口を開いた。
「いずれにせよ、俺はDIOをぶち倒しに行く。一応、待ち合わせの場所にも寄るつもりだからそこまでは一緒でもいい…
放り出しっぱなしってのは、目覚めの良いもんじゃないからな」
パズルのピースが足りないようだが、自分のやる事に変わりはない…承太郎はそう自分に言い聞かせて帽子を被り直す。

「…ワムウとカーズを逃したのは痛いが…その吸血鬼とやらも問題なら、止めねばならんだろうな。仕方あるまい。
肉の芽…だったか?屍生人より、よっぽどたちが悪いではないか。配下を増やされたなら厄介この上ない…救急車があったな?あれで行けば速かろう。点検したら、出かけるとするか」
そう言ってシュトロハイムは立ち上がった。

***

ジョセフは承太郎から粗方の話を聞くと、エリナを埋葬しに行っていた。この先何があるかわからないので、少しでも早く安心して眠らせてやりたかったのだ。
「…エリナ…おれは…」
丸い石を墓標に、近くに咲いていた小さな花を手向けてジョセフはただ目を瞑った。

「…そろそろ行くぜ、『ジジイ』」
呼びに来たのは仗助だった。
親父と呼ぶにはやはり違和感がある。かといって、ジョセフと呼ぶのも何か他人行儀なような気がしたのだ。

「仗助ちゃん、俺まだ新婚なんだけどォ?…まあいいか。しっかし俺ら、改めて奇妙な体験してるよな…これが殺しあいじゃなけりゃ、笑ってどんちゃん騒ぎしたいとこなんだけどなあ…」

子供に、孫。
しかも、孫に至っては自分より年上とくる。
(…しっかし…仗助はともかく…なんつーか堅物な孫が出来たもんだ…リサリサの血かねえ?)

ジョセフは苦笑いすると仗助と並んでそこを後にした。

***

ぞろぞろと、男たちは救急車に乗り込む。マウンテン・ティムはその時、紙を承太郎に渡した。
「…乗ったら読んでくれ」

エルメェスの運転で救急車は走る。シーラEが助手席に陣取り、後ろはそれぞれが見張る…いくらか定員オーバーだが致し方あるまい。その後ろから、マウンテン・ティムが愛馬にまたがってついてきた。念のため、救急車の後ろは開け放たれている。

「…」
この首輪にカメラらしいものがないのはスティーリー・ダンの首輪を拾った時にスタープラチナで確認済だ。承太郎は紙を開いた。
『首輪の仕組みがわかれば、能力を組み合わせて外せるかもしれない。そうすれば、光が見えてくる』
小さくそう書かれた文字を一瞥し、車の左側の窓からスタープラチナの眼で外から何か不振な動きがないか見張り始める。
右側はシュトロハイムが引き受け、後ろは噴上。ジョセフと仗助は、休憩しながらお互いの傷を癒している。
仗助が時計を見れば、針が3時を指そうとしていた。

―目指すは、空条邸。

【残り 51人】
363星環は英雄の星座となるか? ◆3yIMKUdiwo :2014/04/06(日) 13:20:31.59 ID:tZp38q57
【B-4 古代環状列石(地上)/1日目 午後】
【チーム名:HEROES+α】

【空条承太郎】
[時間軸]:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
[スタンド]:『星の白金(スタープラチナ)』
[状態]:痛みと違和感、疲労(小)
[装備]:ライター、家出少女のジャックナイフ、ドノヴァンのナイフ、カイロ警察の拳銃(6/6 予備弾薬残り6発)
[道具]:基本支給品、スティーリー・ダンの首輪、DIOの投げナイフ×3、ランダム支給品3〜5(承太郎+犬好きの子供+織笠花恵/確認済)
[思考・状況] 基本行動方針:バトルロワイアルの破壊。危険人物の一掃排除。
0.…。
1.始末すべき者を探す。
2.空条邸へ向かう。
[備考]
※空条邸前に「上院議員の車」を駐車しています。
※織笠花恵の支給品の中に『ゴーストライダー・イン・ザ・スカイ』が含まれていました。
※全て納得してついてきているわけではありませんが、DIO捜索まではチームと同行するつもりです。
※カンノーロ・ムーロロの『ウォッチタワー』を1枚切り裂きました。どのカードかは次にムーロロのSSを書かれる方にお任せします。

【マウンテン・ティム】
[スタンド]:『オー! ロンサム・ミー』
[時間軸]:ブラックモアに『上』に立たれた直後
[状態]:痛み、体力消耗(小)
[装備]:ポコロコの投げ縄、琢馬の投げナイフ×2本
[道具]:基本支給品×2(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況] 基本行動方針:殺し合いに乗る気、一切なし。打倒主催者。
0.ゴーストライダー・イン・ザ・スカイから辺りを見張る。
1.空条邸へ向かう。
2.協力者を探す。
[備考]
※ゴーストライダー・イン・ザ・スカイを空条承太郎から譲り受けました。
※自分の能力+承太郎の能力で首輪が外せないか?と考えています。ただ万一の事があるのでまだ試す気にはなっていません。
364創る名無しに見る名無し:2014/04/06(日) 16:31:36.78 ID:WiC8UpGo
支援
365星環は英雄の星座となるか? ◇3yIMKUdiwo:2014/04/06(日) 16:37:09.63 ID:/MyDFVJ4
【エルメェス・コステロ】
[スタンド]:『キッス』
[時間軸]:スポーツ・マックス戦直前
[状態]:全身疲労(小)、痛み
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況] 基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.ちきしょう、こうなりゃ何処までも行くぜ!
1.空条邸へ向かう。
2.F・F…おまえなのか?

※ビットリオの持っていたデイパックがB-4のどこかに埋もれています。

【シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:精神的疲労(小)
[装備]:ナランチャの飛び出しナイフ
[道具]:基本支給品一式×3(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1〜2(確認済み/武器ではない/シ―ラEのもの)
[思考・状況]
基本行動方針:ジョルノ様の仇を討つ
0.ジョルノ様が生きている?
1.空条邸へ向かう
2.このまま皆で一緒にいれば、ジョルノ様に会えるかも?
[備考]
※参加者の中で直接の面識があるのは、暗殺チーム、ミスタ、ムーロロです。
※元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はあるかもしれません。

【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → 『エコーズ act2』
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:痛み、貧血気味、体力消耗(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2(食料1、パン1、水ボトル1/3消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.色々考える事はありそうだけど…まず、今は川尻さんを…
1.空条邸へ向かう。
2.仲間たちと共に戦うため『成長』したい。
3.協力者を集める。
366星環は英雄の星座となるか? ◇3yIMKUdiwo:2014/04/06(日) 16:39:36.31 ID:/MyDFVJ4
【ルドル・フォン・シュトロハイム】
[能力]:サイボーグとしての武器の数々
[時間軸]:JOJOとカーズの戦いの助太刀に向かっている最中
[状態]:健康
[装備]:ゲルマン民族の最高知能の結晶にして誇りである肉体
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ドルドのライフル(5/5、予備弾薬20発)
[思考・状況]
基本行動方針:バトル・ロワイアルの破壊
0.柱の男だけが脅威ではないのか…?
1.周りに警戒する。
2.空条邸へ向かう。

【噴上裕也】
[スタンド]:『ハイウェイ・スター』
[時間軸]:四部終了後
[状態]:痛み
[装備]:トンプソン機関銃(残弾数 90%)
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、ランダム支給品1(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:生きて杜王町に帰るため、打倒主催を目指す。
0.何だか大所帯になってきたな…
1.空条邸へ向かう。
2.協力者を集める。
367星環は英雄の星座となるか? ◇3yIMKUdiwo:2014/04/06(日) 16:51:43.58 ID:/MyDFVJ4
【ジョセフ・ジョースター】
[能力]:波紋
[時間軸]:ニューヨークでスージーQとの結婚を報告しようとした直前
[状態]:健康
[装備]:ブリキのヨーヨー
[道具]:首輪、基本支給品×4、不明支給品4〜7(全未確認/アダムス、ジョセフ、エリナ)
[思考・状況]
基本行動方針:とりあえずチームで行動。殺し合い破壊。
0.ワムウ…エリナ…
1.空条邸へ向かう。
2.悲しみを乗り越える、乗り越えてみせる
[備考]
エリナの遺体をB-4に埋葬しました。
母ゾンビの支給品がブリキのヨーヨーでした。

【東方仗助】
[スタンド]:『クレイジー・ダイヤモンド』
[時間軸]:JC47巻、第4部終了後
[状態]:左前腕貫通傷(応急処置済、波紋治療中)、疲労(中)
[装備]:ナイフ一本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗る気はない。このゲームをぶっ潰す!
0.ジョセフ・ジョースター……ジジイ、か。
1. 承太郎さん…
2. 空条邸へ向かう。
[備考]
クレイジー・ダイヤモンドには制限がかかっています。
接触、即治療完了と言う形でなく、触れれば傷は塞がるけど完全に治すには仗助が触れ続けないといけません。
足や腕はすぐつながるけど、すぐに動かせるわけでもなく最初は痛みとつっかえを感じます。時間をおけば違和感はなくなります。
骨折等も治りますが、痛みますし、違和感を感じます。ですが"凄み"でどうともなります。
また疲労と痛みは回復しません。治療スピードは仗助の気合次第で変わります。

※仗助が傷を塞いで回り、その間にチーム内で放送内容やこれまでに会った者などの情報交換が行われました。
そのやりとりの中でチームメンバーは多かれ少なかれ空条承太郎が悲しみと怒りに囚われていることに気づきました。そして、誰かが見張っている事を知らされています。
※救急車はD-4空条邸(地上)に向けて疾走中。ティムの馬で並走できる位なので、速さの目安はスクーター程度でしょう。
368星環は英雄の星座となるか? ◇3yIMKUdiwo:2014/04/06(日) 16:54:27.73 ID:/MyDFVJ4
【B-4 古代環状列石(地下)/1日目 午後】

【宮本輝之輔】
[能力]:『エニグマ』
[時間軸]:仗助に本にされる直前
[状態]:恐怖、左耳たぶ欠損
[装備]:コルト・パイソン
[道具]:重ちーのウイスキー
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない
0.取り敢えず逃げる。
1.ワムウの表情が心に引っかかっている
[備考]
※考えなしに逃げています。ワムウと会えるかはわかりません。

【ワムウ】
[能力]:『風の流法』
[時間軸]:第二部、ジョセフが解毒薬を呑んだのを確認し風になる直前
[状態]:疲労(小)、身体ダメージ(中)、身体あちこちに波紋の傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:JOJOやすべての戦士達の誇りを取り戻すために、メガネの老人(スティーブン・スティール)を殺す。
0.ジョジョ…
1.JOJOとの再戦を誓って強者との戦いを求め地下道を探索。
2.カーズ様には会いたくない。
3.カーズ様に仇なす相手には容赦しない。
4.12時間後、『DIOの館』でJ・ガイルと合流。
369ありえない筈の遭遇 ◇jNtKvKMX4g(代理):2014/04/06(日) 17:47:37.89 ID:tZp38q57
僕はまず、トリッシュと少し話をしようと思った。その前にトリッシュから話しかけてきた。

「ねぇフーゴ。あなたはいつの時代から来たの?」
トリッシュは不安げに僕に話してきた。

「!トリッシュもそれに気付いていましたか。僕は2001年の○月×日から来ました。トリッシュ、あなたは?」
僕は驚きながら聞き返した。

「私はあなたが来たホンの数日前だわ。ほとんど一緒ね。ということは本当の世界でのアバッキオやナランチャやブチャラティの事も………」
彼女は悲しそうな目をしながら尋ねてきた。

「知ってるよ。詳しくは知らないけどね。とりあえずナランチャの知ってる辺りまでを話しておこう」
僕は落ち着きながら言った。

「あとフーゴ。…………この世界でブチャラティが死んだわ」
彼女は震える声でそう告げた。

「えっ!?ブチャラティが……。これもナランチャには黙っておこう。放送の時にはバレてしまうが今言ったらさらに混乱させてしまう」
僕は彼女を落ち着かせるように諭した。

「あちらの方から何か感じる気がする」
ジョナサンがふと言った。
ジョナサンのその一言で、D7の方に歩く事にした。
トリッシュが話すには、ボスとトリッシュはお互いの存在を何か感覚でわかるらしい。
ジョナサンの親族ならば、会ったら協力してもらえるであろうという考えである。

「ところで、君は寒いのかい?波紋で治してあげよう」
ジョナサンが歩き始めてからすぐにトリッシュに問い、波紋で治した。

「!!ありがとう。は……もん?なに?それは?」
トリッシュは疑問そうに尋ねた。

ナランチャにエアロスミスで警戒してもらいながら、僕たちは情報交換を歩きながら行った。
SBRの事や、フーゴ達が居た世界の事(ナランチャが知っている所まで)や、ジョナサンが居た時代の事や、玉美の居た時代の事や、ここに来てからの事について話した。
370ありえない筈の遭遇 ◇jNtKvKMX4g:2014/04/06(日) 17:50:02.30 ID:tZp38q57
「ちょっとまってくれ、フーゴ。つまりは僕たちは時代を越えてここに呼ばれてるって事か?」
ジョサナンが確かめるように僕に聞いてきた。

「僕の考えではね、ジョナサン。どう考えても言ってる事が食い違いすぎる。偶然そこの変な男と僕たちは時代が近かったようですけどね」
僕は横目でその男をチラッと見、話した。

「変な男って俺の事かよ!お前。なにいってくれて
「玉美うっさい。フーゴの話を邪魔しないで」
トリッシュが少し怒りながら言った。

「すみません、トリッシュ殿。さあさあ話を続けてください」
調子が変わったかの様に玉美は喋った。

「つまりよぉ〜、ジョルノやミスタやブチャラティが俺らを知らない可能性もあるわけってことか?難しいけどよぉ〜」
ナランチャが難しい顔をしながら聞いてきた。

「そうですが、それより先が重要なんです。僕たちを知らなければ攻撃してくるかもしれませんし」
僕はナランチャにわかりやすいように喋った。

「だけどそんなんわかんねぇじゃねぇか〜」
ナランチャがお手上げのような顔をしながら言った。

「今それの対策を考えようとして

『時刻は12時、正午の時間だ。第二回放送を始める。』

「!放送だ。とりあえずそこら辺でメモをとらないと。ナランチャだけじゃなくて他の皆も警戒を頼む!僕はメモをとる」
僕は皆に素早く伝えた。

『ロバート・E・O・スピードワゴン』
(スピードワゴン。違う時代から来たとしても死んでしまったのは悲しいな)

『ウェカピポ』
(ウェカピポ!死んでしまったの!?)

『ブローノ・ブチャラティ』
『レオーネ・アバッキオ』

「えっ!?ブチャラティが何で死んでんだよぉぉぉぉぉぉ!!
なんでアバッキオが今呼ばれてんだよぉぉぉぉぉ!フーゴぉぉぉぉ!
さっき呼ばれたんじゃなかったのかよぉぉぉぉ!どういう事だよぉぉぉぉ!!
説明してくんなきゃわかんねぇよぉぉぉ!」
ナランチャが動揺しながら叫んだ。

「落ち着いてください。ナランチャ。そ、それはですね」
僕は素早く脳を動かしながら口を開いた。
(どう言えばいい!?アバッキオがこんなにはやく死ぬなんて予想外過ぎる!)

フーゴが困っていたその時だった。

「そこの人達、そこで止まるんだ!止まらなければうつ!」
そこには何故か指を突き出す妙な男が居た。
371ありえない筈の遭遇 ◇jNtKvKMX4g:2014/04/06(日) 17:52:32.99 ID:tZp38q57
****************************

《第二放送が始まる10分か20分前の事、D−7路上にて》

アナスイと僕は情報交換をした。ここに来る前の時代の事、ここに来てからの事。その途中で時代の食い違いに気づいた。
もしかしたらサウンドマンも昔から連れてこられたのではないか、D4Cの能力ではないではないのか?そうも考えた。
これらを歩きながらおこなった。僕がある方向から何か感じたからだ。彼の知り合いもそのようなものがあったらしい。
同じ血族とかでそのようなことがあるらしい。 同じ血族なら問題ないであろう、と考え向かう事にした。
そちらの方に行ってから目的地に行けばいい、との話になった。
幸い何も起きずに進めた。
それらを第ニ放送が入った時にやめた。居た場所の近くの隠れられる場所でとりあえずアナスイにメモをとってもらい、僕は警戒をすることにした。
放送の最中子供の大声が聞こえた。

「アナスイ、僕が見てくるからそこにいてくれ」
僕はアナスイにそう言い向かおうとした

「いや、ジョニィ。放送が終わったらにしよう。もうすぐ終わる筈だ。」
アナスイは僕に少し動揺しながら言った。
(ウェザーとプッチが死んだ!?)

『諸君らの健闘を祈って!グッドラック!』

「物しまったか?アナスイはそこにいてくれ。いざというときにそなえて」
僕はそう素早く言い向かった。

「わかった。頼むぞ。」
アナスイが僕の後ろからそう告げた。

「そこの人達、そこで止まるんだ!止まらなければうつ!」
僕はタスクを出す態勢になり叫んだ。
372ありえない筈の遭遇 ◇jNtKvKMX4g:2014/04/06(日) 17:54:37.47 ID:tZp38q57
******************************

「!!てんめぇ、何もんだぁぁぁぁぁ!」
ナランチャがそう言い、スタンドを出そうとしたときに何かを突き抜ける音がした。

「スタンドも出すな!次何かしたら体を狙うぞ!」
そう相手が言った時、僕のバックに穴が空いていた。

「あなた、まさかこのスタンド、ジョニィ・ジョースター!?SBRの選手の!?」
トリッシュが嬉しそうにさけんだ。

「君は何で僕の事を?」
ジョニィは疑問に思いながら問いかけてきた。

「ルーシーやウェカピポに会ったの!彼らがジャイロ・ツェペリやあなたは頼っていい人だと言っていたわ!」
トリッシュは説得するかのように彼に喋りかけた

「そうか、ルーシーやウェカピボが。なら質問する、ルーシーは何のスタンドを持ってた?」
ジョニィは態勢を崩さないまま聞いてきた。

全く僕にはわからない。ルーシーはスタンドを持っていたのか!?そんな話聞いてないが。

「いえ、彼女はスタンドを持ってなかったわ」
トリッシュは何も迷いもなく言った。

「よし、信用しよう。彼女と争ったのなら確実にはわからない情報だ」
ジョニィもまた何も迷いなく言った。

ただのハッタリだったのか。

「おい、ジョニィ」
髪が長い男が出てきて、ジョニィに話しかけた。

「大丈夫だ。それに彼らの目からジャイロの輝きと同じような物がある。そこの大男からはさっきから言ってる感覚があるしな」
ジョニィは髪が長い男に返事をしていた。

「よくわかんないけどあの二人は味方なのか?」
ナランチャがトリッシュに聞いた。

「ええ、そうよ。」
トリッシュが簡潔に答えた。トリッシュ、ナランチャの扱いうまくないか?

「まあとりあえずそこの家に入って情報交換しましょうよ」

僕は皆にそう言いバックを持つついでに中身をみた。
ウォッチタワーのカードが二枚ともなくなっていた。
疑問に思いながらも僕は歩き始めた。

******************************

「なあ、君はなんて名前なんだ?」
僕は家についたので、僕は大男に名前を尋ねてみた。

「僕はジョナサン・ジョースターさ」
彼はそう気軽に答えた。

「な、なにーーーーーー!」
僕は驚き、叫んだ。

To Be Continued
373ありえない筈の遭遇 ◇jNtKvKMX4g:2014/04/06(日) 17:58:45.31 ID:tZp38q57
【D-7 南西、家】
【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]:全身ダメージ(小程度に回復)、貧血(ほぼ回復)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:力を持たない人々を守りつつ、主催者を打倒。
0.あれがジョニィ?情報交換をしよう。しかし僕に何か似てる
1.先の敵に警戒。まだ襲ってくる可能性もあるんだから。
2.知り合いも過去や未来から来てるかも?
3.仲間の捜索、屍生人、吸血鬼の打倒。
4.ジョルノは……僕に似ている……?

【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:額にたんこぶ(処置済み)&出血(軽度、処置済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
0.ジョニィ?味方みたいだから、エアロスミスで警戒してるから情報交換しようぜ!
1.ブチャラティが死んで今アバッキオの名が呼ばれた?どういうことだよフーゴ(今は忘れています)
2.よくわかんないけどフーゴについていけばいいかな
【備考】
ナランチャは警戒をしていたため情報交換の時にろくに話を聞いていません

【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:健康、やや困惑
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
0.あれがジョニィ?とりあえず情報交換だ
1.先の襲撃&追撃に引き続き警戒。
2.利用はお互い様、ムーロロと協力して情報を集め、ジョルノやブチャラティチームの仲間を探す(ウォッチタワーが二枚とも消えたため今の所はムーロロには連絡できません)
3.アバッキオ!?こんなはやく死ぬとは予想外だ。
4.ウォッチタワーはどこに行った?
【備考】
『オール・アロング・ウォッチタワー』 のハートのAとハートの2はムーロロの元に帰り、消えました。

【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:肉体的疲労(中程度までに回復)、失恋直後、困惑
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服
[道具]:基本支給品×4、破られた服、ブローノ・ブチャラティの不明支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する。
0.ジョニィ!!とりあえず情報交換
1.ルーシーが心配
2.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく(ただし情報交換・方針決定次第)
3.ウェカピポもアバッキオも死んでしまったなんて…
4.玉美、うっさい
374ありえない筈の遭遇 ◇jNtKvKMX4g:2014/04/06(日) 18:02:12.76 ID:tZp38q57
【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降
[状態]:全身打撲(ほぼ回復)、悶絶(いろんな意味で。ただし行動に支障なし)
[装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュを守る。
1.トリッシュ殿は拙者が守るでござる。
2.とりあえずトリッシュ様に従って犬のように付いて行く。
3.あくまでも従うのはトリッシュ様。いくら彼女の仲間と言えどあまりなめられたくはない。
4.あの二人は味方か?トリッシュ殿にまかせよう。

【備考】
彼ら四人はアバッキオ以降の放送を聞いていません
彼らはSBR関連の事、ジョナサンの時代の事、玉美の時代の事、フーゴ達の時代の事、この世界に来てからの事についての情報を交換しました(知っている範囲で)

【ナルシソ・アナスイ】
[スタンド]:『ダイバー・ダウン』
[時間軸]:SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前
[状態]:全身ダメージ(極大)、 体力消耗(中)、精神消耗(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条徐倫の意志を継ぎ、空条承太郎を止める。
0.徐倫……
1.情報を集める。
2.とりあえず目の前のやつらと情報交換だ。


【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(小) 、困惑
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、リボルバー拳銃(6/6:予備弾薬残り18発)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いたい。
1.ジャイロを探す。
2.第三回放送を目安にマンハッタン・トリニティ教会に出向く
3.ジョナサン!?僕の本名と同じだ。D4C以外でどうやって
4.D4Cの能力で連れてこられたんじゃない?
5.情報交換をしよう
【備考】
ジョニィとアナスイはお互いにいた時代の事について情報交換をしました。
ジョニィは警戒をしていて放送をろくに聞いていません
375 ◆3yIMKUdiwo :2014/04/06(日) 18:06:24.56 ID:tZp38q57
以上、投下及び代理投下終了です。状態表代理投下して下さった方、ありがとうございました。

当方投下については誤字一ヵ所修正申告済み(不振→不審)。

その他矛盾点あれば御指摘ください。
376創る名無しに見る名無し:2014/04/06(日) 19:06:05.44 ID:/MyDFVJ4
>>375
代理投下した者です
突然PCが落ちたので状態表投下終了の報告が出来ませんでした、すいません

改めて、投下乙です
承太郎の危うさと、腫物に触るような慎重なヒーローズの態度
まだ直接の動きはありませんが、今後どうなるかワクワクです

まだ新人さんといっても問題ない活動期間の短さですが、
精力的に活動されていて読んでいる側もとてもうれしいです

急かす意味はありませんが、次も期待しています
377創る名無しに見る名無し:2014/04/08(火) 20:52:40.98 ID:5HTbfS6b
投下乙
>>368のワムウの状態表の中の
4.12時間後、『DIOの館』でJ・ガイルと合流。
は修正したほうがよくないですか?
約束を交わしたのはもうずいぶん前ですし、午後3時まで進んでいるのでぶっちゃけ3時間後くらいだと思います。
そもそもJガイルは放送で名前呼ばれてますし…
ワムウが放送を聞いていないのであれば、別途注記しておく必要があると思います。
378 ◆3yIMKUdiwo :2014/04/09(水) 09:50:49.33 ID:ND8WGHRY
>>377
修正申告してきました。指摘ありがとうございました。
379創る名無しに見る名無し:2014/04/15(火) 00:42:43.65 ID:0/IrMOMx
亀なんですけど、
>>342の『She's a Killer Queen』中で吉良が承太郎を「自分と身長が同じぐらい〜」
と(何度も)言っているのがちょっと気になります
承太郎195 吉良175で同じぐらいの身長と言うには難があります
まして、同じ文中で承太郎と(多分)同じ身長であるDIOが登場しているのに、
DIOと承太郎が同じ身長である事には言及せず、自分と承太郎が同じ身長だと何度も書いているのは気になります
380 ◆q87COxM1gc :2014/04/24(木) 20:51:20.92 ID:gFA2oF0l
タルカス、イギー、ジョルノ・ジョバァーナ、DIO、ヴァニラ・アイス、ジョニィ・ジョースター、ナルシソ・アナスイ、ジョナサン・ジョースター、パンナコッタ・フーゴ、ナランチャ・ギルガ、トリッシュ・ウナ、小林玉美投下します。

予約では◆BW2tPRCYkgとなっていますが、自分の不手際でトリップのキーワードをさらしてしまったので、こちらで投下します。不慣れで申し訳ありません…。
381血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/24(木) 20:55:16.67 ID:gFA2oF0l
 ジョニィ・ジョースター、アナスイと合流したジョナサン、フーゴ、ナランチャ、トリッシュ、玉美は、改めてお互いの話をした。
 アナスイの怪我はジョナサンが波紋である程度治療し、今は何とか足を引き摺らずに歩けるほどに回復していた。

「ファニー・ヴァレンタイン大統領…『並行世界を行き来するスタンド』、ですか…」
 話を聞き終えたフーゴ達は、大きく息を吐いた。
 無理もない、とジョニィは思う。
 自分だって、最初は大統領の能力に戸惑った。さらに今回は、時間を飛び越える、なんてさらにとんでもない能力まで持っている。
 ナランチャという少年など、理解するのを脳が放棄して、口を開けたままフリーズしている。後で誰かが解凍してやらなければなるまい。玉美――紹介時にトリッシュが“変態”と言っていた。何かの暗号だろうか――は考えるのは人に任せて、自分は聞き役に徹しているようだ。
「私もその話は聞いたけれど…。ねえジョニィ、その大統領の能力は、100年以上の時間も飛び越えられるものなの?」
 トリッシュの言葉に、ジョニィは少し考えた。ウェカピポから話を聞いていた彼女は、どうやら大統領のスタンドについて色々と考察していたらしい。
「大統領と戦った時には、同じ時代から連れて来られた人間しか見ていない。もしあの時、大統領が時間さえも乗り越えられたのだとすれば、僕等との戦いでそれを出していたはずだ」
「そう…」
「だったら、大統領以外の人間の仕業、ということはないのかい?それこそ、時間を飛び越えられるような力を持った」
 ここまで言葉少なだったジョナサンが、やっと口を開いた。
 彼はスタンドという能力をよく知らなかったため、フーゴ達の話について行くだけで精いっぱいだ。
「そうかもしれない。ただ、大統領が関わっていることだけは確実だ。スティーブン・スティール氏を見れば分かる。彼は、自分の意思であんなことをする人物じゃあない。わざわざ彼を巻き込んだのには、きっと理由がある」
「理由?」
 これは僕の想像だけど、と前置きして、ジョニィは話を続ける。
「復讐、という面もあるんじゃないかな。自分を破滅に追い込んだ人間を、苦しい立場に追い込んでいるんだ。きっとスティール氏は、言うことを聞かなければルーシーの首輪を爆発させる、というようなことを言われているんだと思う」
「なんてことだ…!婚約者を人質に取るなんて…ッ!」
 ジョナサンはそう憤って拳を握った。
 重苦しい沈黙が、その場を満たす。
 考えるべきことは山ほどある。大統領の能力のこと。ディエゴのこと。ルーシーのこと。
 しかし、答えが出ない。考えてもその先は袋小路で、解決策は浮かばない。
 並行世界を行き来でき、さらに時間も超えられる力に、どう対抗できると言うのだろう。
382血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/24(木) 21:05:13.79 ID:gFA2oF0l
「…あたし、お茶を入れてくるわ」
 やがて、空気を変えようとしたのか、トリッシュが立ちあがる。

「僕も手伝いますよ。ほら、ナランチャ。起きろ」

「――ん?あれ?話は?」

「あ、俺が入れますよ、トリッシュ様!!」

 急に人がバタバタと動き始め、騒がしくなり始めた。作戦会議は一時中断だ。
 それぞれが好きなように動き出す。

 その中で、ジョニィはそっとジョナサン・ジョースターを見やった。

 ジョナサン・ジョースター。同じ名前。同じ名前だ。話を聞いてみると、ほとんど同じ時代から来ているようだった。しかし、自分は彼とは面識がない。そして、自分とはまったく似ていない。大きくたくましい身体に、紳士的な態度。
 D4Cで連れて来られたのか、と疑ったが、それにしては別人のように違っている。
 彼から感じるものはある。だが、彼と自分との繋がりは、一体なんなのだろうか。

 そのジョナサンが、ジョニィの方を向いた。

「そういえば…ディエゴ・ブランドーというのは、騎手なんだよね?」
 ディエゴ、という名前に、ジョニィの動揺が大きくなる。
「あ…ああ。そうだけど」
「いや…似た名前の知り合いがいるんだが…違ったようだ」
「…そうか」

 ディエゴ・ブランドー。一度目は大統領によって殺され、二度目はルーシーによって倒されたはずの、男。
 生きて会おう、と約束したサンドマンは死に、ジャイロへの伝言も伝わらなかった可能性が大きい。だと言うのに、ディエゴはまだ生きている。ルーシーを手に入れ、またしても何かを企もうとしている…!!

 ジョニィの目に、一瞬だけ暗い炎が宿る。

「君は、」
 ジョナサンの声に、ジョニィの思考は引き戻される。

 ジョナサンは一度言葉を止め、もう一度口を開いた。
「…君は。ジョースターという姓だけれど…僕と君とは、何か関係があるのかな?」
 ジョナサンの言葉に、ジョニィは少し考えて、かぶりを振った。
「ないと思う。ジョナサン、なんて名前は僕の家系にはいなかった。きっと、偶然だろう」
 ジョニィは大事な言葉をあえて飲み込んで、そう言った。わざわざ本当は同じ名前だということを明かす必要はない。余計な混乱を招くだけだ。

 ジョナサンはそれでもまだ納得できないように眉を寄せたが、すぐに笑顔を見せて手を差し出した。
「でも、僕はやっぱり君に何かを感じるんだ。もしかしたら、どこかで血がつながっているのかもしれない。ジョナサン・ジョースターだ。よろしく」
「…ああ」

 ジョニィは指先だけでジョナサンに触れた。その手が普通に触れ合ったことを確認して、今度こそ強くジョナサンの手を取る。



“別の世界から来た自分”ではないことに、安堵して。
383血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/24(木) 21:19:35.42 ID:gFA2oF0l
 一方、解凍され改めて簡単な話を聞かされたナランチャは、フーゴに喰ってかかっていた。

「ブチャラティが…。おい、なんでそれをオレに言ってくれなかったんだ!!」
「すみません、ナランチャ。その話はもうとっくに終わっています。君が聞いてなかっただけですよ…」
「はぁあ!?なんだよソレ!!」
 ぶんぶんと子どものように拳を振り、ナランチャは暴れる。それをフーゴは宥めている。

 トリッシュはそんな彼らの姿を、ため息をつきながら、それでも微笑ましい気持ちで見つめていた。

 ――――ナランチャ・ギルガは、ブチャラティと同じように、かつてボスとの戦いで命を落とした。

 そのことを、フーゴは彼に伝えていないらしい。そんなことを知れば、ナランチャが混乱すると思ってのことだろう。トリッシュも同じ意見だ。
 何となく、ナランチャは『頼りになる仲間』ではなく、『手のかかる弟』のように感じてしまう。そんな以前と全く変わらない様子のナランチャに、トリッシュは安心感を覚えていた。

 しかし、その傍らにいるフーゴの雰囲気は、随分と変わっていた。
 トリッシュとフーゴが共に行動していたのはわずかな時間である。それでも、変化に気付いてしまうほど、フーゴの顔つきは変わっていた。

 何と言うか、『覚悟』のようなものが、できていた。

 フーゴはかつてボスに反抗することを拒否し、ブチャラティチームを抜けた。そのことについて思うところはあるし、その後彼がどうなったのか、トリッシュは知らない。
 それでも、“かつてブチャラティ達と行動を共にしていたこと”と、“覚悟を決めた今の彼”は信頼に値する。

 トリッシュは、なおもフーゴに言い詰めるナランチャを見た。
 ブチャラティが死んだことが、よほどショックだったのだろう。自分だって、彼のことを思い出すとまぶたの裏が熱くなる。そう簡単に、割りきれるものではない。

 そろそろ仲裁に入ろうかと思ったところで、ナランチャが一際大きな声を上げた。

「でもよォ、おかしいんだよ。やっぱり、アバッキオがさっき呼ばれたのはッ!」

「…何かの手違いではありませんか?向こうが呼び間違えたか、何かでしょう」

(―――え?)
 耳に入ってきた会話に、トリッシュは驚いた。

 放送が、間違いだった?そんなことが起こりえるのだろうか?妙にはっきりと否定したフーゴの様子も気になる。

「はん、仲間同士でもめるなんざ、何やってんだか。ねえ、トリッシュ様?」
「あんたはちょっと黙ってなさい」
 玉美に釘をさし、トリッシュはさっと周りを見回した。
384創る名無しに見る名無し:2014/04/24(木) 21:20:57.37 ID:iWuxtsap
 
385創る名無しに見る名無し:2014/04/24(木) 21:21:27.97 ID:iWuxtsap
 
386創る名無しに見る名無し:2014/04/24(木) 21:22:23.22 ID:iWuxtsap
 
387創る名無しに見る名無し:2014/04/24(木) 21:22:54.75 ID:iWuxtsap
 
388血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/24(木) 21:31:52.32 ID:gFA2oF0l
 ジョナサンと話を終えたジョニィは、何かを考えていたのか聞いておらず、アナスイは身体を休めることに専念し、目を閉じていた。

 トリッシュはほっとした。

 今の妙なやりとりを聞かれていたら、疑いの目がフーゴに向いていただろう。
 ジョニィもアナスイも、大事な人がこの殺し合いに巻き込まれているらしい。
 トリッシュには、フーゴが何か理由があってそう言っているのが分かったが、他の者はそうではない。

 傍でフーゴとナランチャのやり取りを聞いていたジョナサンだけが、気になったのか間に割って入る。
「いや、待ってくれフーゴ。それはさすがに――」
 フーゴが、すっと人差し指を自分の唇にあてた。その仕草に気付き、ジョナサンは黙る。しかし、何か納得できないように、その眉根は下がったままだ。

 それを見たフーゴは、みんなに聞こえる声で言った。
「どうやら、落し物をしてしまったようです。ジョナサン、すみませんが、ついて来てくれませんか?ついでに、この周囲に人がいないか探しましょう」
「…分かった」
 突然の提案だったが、何かを察したジョナサンは頷いた。
 二人きりで話がある――フーゴはそう言いたいのだろう。

 しかし、それに気付かない他の人間は、さすがにこの提案には納得できない。
「お、おい!フーゴ!話は終わってねーぞ!!」
「ナランチャ。ブチャラティの話はトリッシュに聞いてくださいね」
 文句を言うナランチャをかわし、フーゴとジョナサンは二人だけで外に出ようとする。

「待ってくれ」

 そこへジョニィが来て、フーゴの肩を掴んだ。
「落し物?そんなもののために二人だけで行くなんて…」
「そうだそうだ!」
 何も知らないジョニィが抗議の声を上げ、意味もなく玉美が賛成する。玉美は何かフーゴに恨みでもあるのだろうか?
389血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/24(木) 21:35:35.97 ID:gFA2oF0l
(まったく、仕方ないわね)
 トリッシュはフーゴとジョニィの間に入り、ジョニィを押しとどめた。
「周囲に誰かいるかもしれないわ。二人に見て来てもらった方がいいでしょう?」
 トリッシュはそう言って、ジョニィの瞳を見つめる。
 彼は苛立った様子で、トリッシュを見返した。
「時間がないんだ。僕は、早くジャイロを見つけないと…」
 ジョニィの苛立ちも、トリッシュには分かっている。トリッシュだって、ルーシーのことが心配だ。
 それでも。
 フーゴ達が抱えている小さなトゲを今抜かなければ、彼らの信頼関係は、きっとどこかで崩壊するだろう。

「お願い」

 トリッシュがもう一度言うと、ジョニィの瞳の奥の何かが揺らいだ。

「ジョニィ」

 アナスイも、ジョニィを宥めるように声をかける。
 ジョニィは、トリッシュからすっと目を逸らした。
「…分かった。ただ、僕は急いでいる」
「ええ。分かっているわ。でも、休息も必要でしょ?あまりに時間がかかるようだったら、先に行くわ。それでいい?」
 かまわない、と目を逸らしたままジョニィが返事をする。アナスイも頷いた。

 何とか場が収まり、トリッシュは肩の力を抜いた。そしてフーゴの方を振り向き、彼にだけ聞こえるように囁く。
「―――この借りは、後で必ず返してよね?」
 フーゴは軽く目を見張り、ああ、と微かに笑って頷いた。
「すまない。――ありがとう」
 その言葉に、トリッシュもまた、目を大きく開く。

 ブチャラティチームでいた頃は、お互いにこんなことが言える性格でも、そんな関係でもなかった。
(あたし、変わったかしら…。人を思いやれるほど、強くなっているのかしら…。ねえ?ブチャラティ…)

 フーゴとジョナサンは、手を振りながら二人だけで外に出ていった。

 トリッシュは、残ったメンバーを見回す。
 ナランチャ、ジョニィ、アナスイ、そして変態。
 随分と、個性的なメンバーだ。
 しかし、強くなった自分なら、こんな中でもちゃんと―――
「………」




 トリッシュ・ウナは、ちょっとだけ頭を抱えたくなった。
390創る名無しに見る名無し:2014/04/24(木) 21:52:48.79 ID:iWuxtsap
 
391血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/24(木) 21:54:07.48 ID:gFA2oF0l
【D−7 南西、家/一日目 午後】
【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:額にたんこぶ(処置済み)&出血(軽度、処置済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
0.ブチャラティ、アバッキオ…!!
1. 放送まちがいとかふざけんな!!
2.よくわかんないけどフーゴについていけばいいかな

【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:肉体的疲労(中程度までに回復)、失恋直後、困惑
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服
[道具]:基本支給品×4、破られた服、ブローノ・ブチャラティの不明支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する。
1.ルーシーが心配
2.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく(ただし情報交換・方針決定次第)
3.ウェカピポもアバッキオも死んでしまったなんて…
4.玉美、うっさい

【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降
[状態]:全身打撲(ほぼ回復)、悶絶(いろんな意味で。ただし行動に支障なし)
[装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュを守る。
1.トリッシュ殿は拙者が守るでござる。
2.とりあえずトリッシュ様に従って犬のように付いて行く。
3.あくまでも従うのはトリッシュ様。いくら彼女の仲間と言えどあまりなめられたくはない。
4.あの二人は味方か?トリッシュ殿にまかせよう。

【備考】
ナランチャ、トリッシュ、玉美はSBR関連の事、大統領の事、ジョナサンの時代の事、玉美の時代の事、フーゴ達の時代の事、この世界に来てからの事についての情報を交換しました(知っている範囲で)
392血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/24(木) 21:55:13.97 ID:gFA2oF0l
【ナルシソ・アナスイ】
[スタンド]:『ダイバー・ダウン』
[時間軸]:SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前
[状態]:全身ダメージ(中程度に回復)、 体力消耗(中)、精神消耗(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条徐倫の意志を継ぎ、空条承太郎を止める。
0.徐倫……
1.情報を集める。
2.とりあえず目の前のやつらと情報交換だ。

【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(小) 、困惑
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、リボルバー拳銃(6/6:予備弾薬残り18発)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いたい。
1.ジャイロを探す。
2.第三回放送を目安にマンハッタン・トリニティ教会に出向く
3.ジョナサン!?僕の本名と同じだ。僕と彼との関係は?
【備考】
ジョニィとアナスイは、トリッシュ達と情報交換をしました。この世界に来てからのこと、ジョナサンの時代のこと、玉美の時代のこと、フーゴ達の時代のこと、そして第二回の放送の内容について聞いています。
393血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/24(木) 21:59:57.08 ID:gFA2oF0l
◆◆◆


 ジョルノとタルカス、イギーは、ヴァニラ・アイスの案内によりDIOの元へと歩を進めていた。


「しかし…DIOという男は一体何者なんだ…?」
 タルカスはヴァニラ・アイスを警戒しながら、ジョルノに問いかける。
「僕も、直接会ったことはありませんが……随分と、部下に慕われているようですね」

 ジョルノは、タルカスにDIOが自分の父だということを隠した。
 もしDIOという男が自分たちとは相容れない存在だった時、その情報が足かせになる可能性を考えたのだ。
 タルカスは情に厚い。ジョルノの父というだけで、DIOとの戦いに迷いが生じてしまうかもしれない。
「まずは、DIOに会ってみましょう。もちろん、警戒は怠らずに…」


(バカ野郎が…。DIOに会ったら、てめーらは確実に殺されるぞ…)
 ジョルノがあれこれと思考を巡らせている一方で、その答えを知っているイギーは、無言だった。
 彼は犬なので、何を言おうと伝わらないのだから、仕方がないのだが。

 DIOについて、イギーはアヴドゥル達から話を聞いていた。だから、この甘ちゃん達とは絶対に相容れないだろう、と予想はつく。
 イギーとて、スタンドで伝える方法も考えた。しかしそれでは、ヴァニラ・アイスに自分が目をつけられ、攻撃されてしまう。
(くそ、ジョーダンじゃねェ…。このままDIOに会ったら、オレは殺されるじゃねえか!スキを見て、逃げてやる…!!)

 イギーは、自分の保身のみを考える。
 彼にとって、逃亡を邪魔するタルカスとジョルノは、敵であるヴァニラ・アイスと同じくらい、邪魔な存在だった。
394血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/24(木) 22:13:23.74 ID:gFA2oF0l
 ほどなくして、ジョルノ達は無事に目的地へと辿りついた。


「ここは…」
 ジョルノは思わず、声を上げた。
 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会。
 第三回放送ではここにいる、とジョルノがミスタにメッセージを残した場所である。
「どうした?」
「いいえ。随分と、縁のある場所だなと思っただけです」
 トリッシュがディアボロに殺されかけ、ブチャラティが肉体の死を迎えた場所だ。
 そして、ディアボロを裏切ると決めた、始まりの場所でもある。
 そんな所に、自分の父がいるという。
 何と言う巡り合わせだろうか。

「何だ、誰もいないぞ…?」
 教会に一歩踏み込んだタルカスは、首をかしげる。
 教会の中は何があったのか荒れ放題で、とても人のいられる場所ではなさそうだ。
「ここに、DIOがいるんですか?」
「DIO“様”だ。正確には、ここの地下に、だ。ジョルノ、中に入ることができるのはお前だけだ。他の者はここで待っていろ」
 冷たく言い放つヴァニラ・アイスに、タルカスが吠える。
「待てッ!ジョルノだけとはどういうことだ!!オレ達も共に行かせてもらうぞ!!」
(げエェ――ッ!!冗談じゃねえ、オレはDIOになんか会いたくねえぞ!!)
 イギーの心の声は、当然のことながら誰にも聞こえない。
「従えないのなら、ここで…」
 ヴァニラ・アイスの殺気が膨れ上がる。

「落ち着いてください。僕なら大丈夫です」
 タルカスを制し、ジョルノが一歩前に出た。そして、胸のブローチをはずす。
「僕に何かあったら、このテントウムシで知らせます。どうかこのまま待っていてください。もし、このテントウムシに異変があったら…」
「分かった。オレがすぐお前を助けに行く」
 力強く言い切るタルカスに、ジョルノは苦笑した。
 ジョルノはタルカスに『逃げろ』と言うつもりだったのだが、この様子では言ったとしても聞かないだろう。

「それでは、行ってきます」
「ああ。気をつけろよ」
395血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/24(木) 22:18:32.51 ID:gFA2oF0l
 ヴァニラ・アイスは教会の地下の納骨堂へと続く扉を開けた。
 ジョルノは彼と共に地下へ降りていく。
 明かりは所々にあるロウソクだけで、視界は悪い。ジョルノは時々壁に手をつきながら、地下を進んでいった。
 納骨堂というだけあって、下へ行くほど空気が冷たくなっていく。

「……」
「……」
 この間、どちらも無言だった。
 ヴァニラ・アイスは、たとえジョルノがDIO の息子だったとしても、そこに何の感情も浮かばない。
 大事なのはDIOの意思のみ。殺せと言われれば殺す。守れと言われれば守るだけだ。
 また、ジョルノも、むやみにDIOについて聞くようなことはしなかった。自分の目で相手を判断すると、決めていたからだ。

 ヴァニラ・アイスの足が、急に止まる。

「DIO様。ジョルノ・ジョバァーナを連れて来ました」
 ヴァニラ・アイスがそう告げる。ジョルノは暗闇の奥を見つめた。
 しかし見えるものはなく、暗闇の奥から声だけが響く。
「そうか。よくやった、ヴァニラ・アイス。戻って来るのを、待ちわびていたぞ―――」
「………!」

 『よくやった』――――『よくやった』―――――!
 その言葉だけで、ヴァニラ・アイスは歓喜に震えた。
(やはり、DIO様は私を一番信頼しておられる。あのムーロロとかいう男よりも、マッシモ・ヴォルペとかいう男よりも、私を…!!)
 ヴァニラ・アイスはDIOの忠実な部下である。主君がどう思っていようと、主君のために動くことに変わりはない。だが、この時ヴァニラ・アイスはその考えを忘れ、ただ喜びを噛みしめた。
 つまりはそれほどそれらのことに拘っていたのだと、気付くことも、ない。

 わずかなロウソクの明かりに、DIOの艶めかしい唇だけが浮かび上がる。そして。

「もういいぞ、ヴァニラ・アイス」

 ―――同行者を、始末しろ―――

 声には出さず、ジョルノからは見えない位置で、そう唇を動かした。

「はっ!!」
 内心は喜びに打ち震えながら、ヴァニラ・アイスは元の道を戻り始めた。
396血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/24(木) 22:21:44.93 ID:gFA2oF0l
「………」
 ジョルノはDIOと二人きりになり、緊張した面持ちで暗闇を見詰める。
 DIOの姿ははっきりとは見えず、わずかに輪郭が分かる程度だ。

「よく来たな、ジョルノ」
「…ええ、はい。父さん」
「―――そうか、知っているのだな」
 男の態度は、まるで久しぶりに息子に会ったかのようなものだった。しかし、親子の対面はこれが初めてである。心のうちにするりと入り込まれるような感覚に、ジョルノの体は自然と強張った。

 相手と戦闘になることを考え、ここに来るまでの間、こっそりと周囲の壁や小石に触れ、仕込みはしておいた。しかし、それを忘れるほどの衝動が、今ジョルノを襲っていた。
 父。目の前にいるのは、父親だ。
 そう、自分の血が叫んでいる。
 トリッシュもディアボロが自分の父だと分かったし、その血によって奴がどこにいるかも感知することができた。それが、自分の身にも起きているのだ。

 そのことに、ジョルノは動揺していた。

 いつものジョルノなら、DIOという男を観察し、どういう人間かすぐに見抜いていただろう。
 だがこの時、ジョルノは冷静さを欠いていた。
 これまで、彼は『家族』というものにあまりに縁が薄かった。
 母も養父もジョルノを蔑ろにしてきたし、実父に至ってはもう会えないと思っていた。
 ジョルノはずっと父の写真を持ち歩いてきた。いつか会いたいとか、そんなはっきりとした理由があったわけではない。ただ、本当の父親なら義理の父のように暴力をふるうことはないだろう、という幼い頃の幻想が、まだそこには息づいていたのだ。

 ほんのわずかな、髪の毛一本分ほどの、親愛の情。


 それゆえ、ジョルノは目の前の男の邪悪さに気付くのが――――遅れてしまった。
397創る名無しに見る名無し:2014/04/24(木) 22:24:17.87 ID:iWuxtsap
 
398創る名無しに見る名無し:2014/04/24(木) 22:27:15.47 ID:iWuxtsap
 
399血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/25(金) 05:34:43.28 ID:ZoiyvoI4
【D−2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会/一日目 午後】
【DIO】
[時間軸]:JC27巻 承太郎の磁石のブラフに引っ掛かり、心臓をぶちぬかれかけた瞬間。
[スタンド]:『世界(ザ・ワールド)』
[状態]:全身ダメージ(大)疲労(大)
[装備]:シュトロハイムの足を断ち切った斧、携帯電話、ミスタの拳銃(0/6)
[道具]:基本支給品、スポーツ・マックスの首輪、麻薬チームの資料、地下地図、石仮面、
    リンプ・ビズキットのDISC、スポーツ・マックスの記憶DISC、予備弾薬18発、『ジョースター家とそのルーツ』『オール・アロング・ウォッチタワー』 のジョーカー
[思考・状況]
基本行動方針:『天国』に向かう方法について考える。
1.ジョルノ・ジョバァーナの血を吸って、身体を馴染ませたい。
2.承太郎、カーズらをこの手で始末する。
3.蓮見琢馬を会う。こちらは純粋な興味から。
4.セッコ、ヴォルペとも一度合流しておきたい。


【ヴァニラ・アイス】
[スタンド]:『クリーム』
[時間軸]:自分の首をはねる直前
[状態]:健康
[装備]:リー・エンフィールド(10/10)、予備弾薬30発
[道具]:基本支給品一式、点滴、ランダム支給品1(確認済み)、『オール・アロング・ウォッチタワー』 のダイヤのK
[思考・状況]
基本的行動方針:DIO様のために行動する。
1.タルカスとイギーを始末する。
400血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/25(金) 05:35:42.25 ID:ZoiyvoI4
【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:体力消耗(小)
[装備]:閃光弾×3
[道具]:基本支給品一式、エイジャの赤石、不明支給品1〜2(確認済み/ブラックモア) 地下地図、トランシーバー二つ
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。
1.DIOを見定めなくては…。
2.ミスタ、ミキタカと合流したい。
3.第3回放送時にサン・ジョルジョ・マジョーレ教会、第4回放送時に悲劇詩人の家を指す
4.ブチャラティ…… アバッキオ……
[参考]
※時間軸の違いに気付きましたが、まだ誰にも話していません。
※ミキタカの知り合いについて名前、容姿、スタンド能力を聞きました。
※地下にはすでにGEを仕込んであります。

【タルカス】
[時間軸]:刑台で何発も斧を受け絶命する少し前
[状態]:健康、強い決意?(覚悟はできたものの、やや不安定)
[装備]:ジョースター家の甲冑の鉄槍
[道具]:ジョルノのテントウムシのブローチ
[思考・状況]
基本行動方針:スミレの分まで戦い抜き、主催者を倒す。
1.ジョルノが心配だ。
2.ブラフォードを殺す。(出来る事なら救いたいと考えている)
3.主催者を殺す。
4.育朗を探して、スミレのことを伝える
5.なぜジョルノは自分の身分などを知っていたのか?
※スタンドについての詳細な情報を把握していません。(ジョルノにざっくばらんに教えてもらいました)

【イギー】
[時間軸]:JC23巻 ダービー戦前
[スタンド]:『ザ・フール』
[状態]:首周りを僅かに噛み千切られた、前足に裂傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ここから脱出する。
1.放せ! やめろぉぉぉお!!
2.ちょっとオリコーなただの犬のフリをしておっさん(タルカス)を利用する。
3.花京院に違和感。
4.煙突(ジョルノ)が気に喰わない
401血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/25(金) 05:37:20.93 ID:ZoiyvoI4
◆◆◆


 トリッシュ達のいる家を出て、ジョナサンとフーゴは西に向かって歩いていた。
 フーゴは周囲を警戒しながら、ジョナサンにアバッキオのことを伝えた。

 ジョナサンは、フーゴからアバッキオの真相を聞いて驚いた。

「そうか…アバッキオが、あの大男に…」
「そうなんです。しかし、それをナランチャに言うことはできなくて…」
 ジョナサンは大きく頷いた。今の不安定な状態のナランチャに、実はあの大男がアバッキオだったのだ、と打ち明けるのは、酷だ。
「分かった。そういうことなら、僕も手伝おう。もうどちらも亡くなっているんだ。ナランチャがこれ以上悲しまないよう、協力するよ」
 そう言うと、フーゴはほっと息を吐きだした。
「ありがとうございます。それと、もう一つ…」
「なんだい?」
「敵のスタンド能力が、時間を飛び越えるものだという話はしましたよね?…ですから、言います。ナランチャは、僕の知っている時間では死んでいる」
「な…!?」
「もちろん、彼はあなたの言っていた吸血鬼だとか屍生人ではありません。彼は…」
「時間を飛び越えて、彼が生きている時間からここへ連れてこられた、と…?」
「はい、そうです。ジョナサンの理解が早くて助かりました」
 フーゴにとって、それはついでのような話題だった。重荷を一つ下ろし、そのはずみでつい口に出してしまったような。

 だが、このことはジョナサンにとっては大きな意味を持つ。

「いや…僕も、その可能性を考えていなかったわけではないんだ。エリナのこと…父のこと…。彼らが時間を飛び越えてきたとしたら、全ての辻褄が合う。合って、しまう…」
 なるべく、考えないようにしていた。他人であってくれと、心から願っていた。
 だが、ナランチャという例が出てきたからには、そう言ってはいられない。
 もし。エリナが、自分と結婚した後にここに連れて来られていたとしたら。
 もし、父が生きている時間から、ここに連れて来られていたとしたら。
 そして、もし。『ジョースター』という名の人間たちが、自分の知らない、自分の子や孫であったなら。

「僕は…知らないうちに、多くの家族を…失っていたのか…?」
402創る名無しに見る名無し:2014/04/25(金) 14:46:41.87 ID:22CILZ4K
支援
403血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/25(金) 18:33:41.42 ID:ZoiyvoI4
「僕は…知らないうちに、多くの家族を…失っていたのか…?」



 茫然と呟くジョナサンを見て、フーゴはやっと自分の失態に気付いた。

 フーゴは、まだ出会って少しの時間しか経っていないジョナサンに、ある程度の信頼を寄せていた。
 吸血鬼に対抗できるという波紋が使え、こんな状況でも自分を見失わず、精神的にも強い。
 だが。
 いくらジョナサンでも、自分の家族が巻き込まれて気丈でいられるほど、強いはずがないではないか。
 アバッキオ、ブチャラティと続いた仲間の死に、生死の分からないジョルノ。フーゴも他に気が回らないほど、追いつめられていた。

「………すみません、僕は…」
「いや、いいんだ。おかげで気持ちの整理がついた。ありがとう、フーゴ」
 ジョナサンは無理に笑顔を見せ、足を止めた。
 大きく息を吸い、長く息を吐く。そして上を向き、そのまま彼は目を閉じた。
 つう、と一筋だけ、涙が流れる。
 何を思っているのか、誰を思い浮かべているのか。
 見ているだけのフーゴには、分からない。

 やがて落ち着いたのか、ジョナサンは目を開け、フーゴに向き直る。
「さて、随分戻ってきてしまったね。そろそろ帰ろうか。きっとみんな心配しているよ」
「…はい」
 フーゴは頷いたが、まだ心残りがあった。

 ムーロロのウォッチタワーと、接触できていないのだ。
404血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/25(金) 18:35:35.75 ID:ZoiyvoI4
 フーゴは、ただジョナサンと話がしたいという理由だけで、外に出てきたのではない。
 ムーロロのスタンドがフーゴを探しに戻ってきていないか、確かめる必要があったのだ。
 だが、いまだに彼のスタンドは姿を見せない。
 スタンドを引っ込めるほどの事態になり、それが解決したのなら、ムーロロはまたスタンドを向かわせて来るだろう。
 しかし、それがないということは、事態はまだ解決していないのだろうか。
 それとも、ムーロロに何かあり、動けないのだろうか。

 スタンドを向かわせることのできない、何か。

 怪我か。敵襲か。だが、そういう理由なら、撤収する前にフーゴに一言何か言っていけばいい。
 よほど切迫した事態だったのだろうか。そう考えると、いなくなる前から何か様子がおかしかったような気がする。

 嫌な予感に、フーゴは身震いする。
 状況はどんどん悪くなっていく。信用できる人間は死に、敵は人質を手に入れた。主催者の正体はつかめたが、目的は分からない。
 果たして、我々に勝機はあるのだろうか――――?

「……なんだろう…?」
 ジョナサンがふと呟いた。
「どうかしましたか?」
「向こうから、何か感じるんだ…。ジョニィのときのような、何かを。それも、彼より強いものを、二つも…!!」
「それは…!」
 はっとフーゴも息をのむ。
 ジョナサンの言う“何か”は、トリッシュが持っているのと同じ、血縁と引きあう感覚だ。それでジョニィに出会えたのだから、信用できる人間に出会える確率は高い。
 だが、今は。
 迷うフーゴの前で、ジョナサンは走り出した。
「だめです!トリッシュ達と合流してから向かいましょう!!」
 フーゴは慌ててジョナサンを追う。
 二人で外に出ようと提案したのはフーゴだが、それはわずかな時間だけと思っていたからだ。二人だけでは、敵と遭遇した時の危険度が跳ねあがる。
「頼む!!」
 ジョナサンが叫ぶ。
 その瞳には、深い悲しみが浮かんでいた。

「頼む、行かせてくれないか…。嫌な予感がする。誰かに、命の危機が迫っている!もう、僕の家族が死ぬのは、嫌なんだ…!」
 それは、今まで聞いたことのない悲痛な叫びだった。
 必死なジョナサンに、いくつもの顔が重なる。
 ナランチャ。アバッキオ。トリッシュ。ミスタ。ブチャラティ。
 そして、なぜか一番強く重なったのは、ジョルノ・ジョバァーナだった。彼の悲愴な表情など、一度も見たことがないはずなのに。
 ――――それもそうだ。
 自分は、彼がそんな表情を浮かべた時、彼の傍にはいなかったのだから。

「…分かりました。僕も行きます」
「―――すまない」
 フーゴはジョナサンと共に走り出した。

 向かう先が、かつて“一歩を踏み出せなかった場所”であることを、フーゴは知らない



 二人は、西―――サン・ジョルジョ・マジョーレ教会へとひた走る。
405血の絆 ◆q87COxM1gc :2014/04/25(金) 18:37:54.06 ID:ZoiyvoI4
【D−5/一日目 午後】
【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]:全身ダメージ(小程度に回復)、貧血(ほぼ回復)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:力を持たない人々を守りつつ、主催者を打倒。
1.先の敵に警戒。まだ襲ってくる可能性もあるんだから。
2.知り合いも過去や未来から来てるかも?
3.仲間の捜索、屍生人、吸血鬼の打倒。
4.ジョルノは……僕に似ている……?
※ジョナサンとDIO の肉体は共鳴し合っていますが、DIOと会ったときにどうなるかは分かりません。
※ジョナサンが現在感じているのは、ジョルノとDIOのみです。

【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:健康、やや困惑
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
1.先の襲撃&追撃に引き続き警戒。
2.利用はお互い様、ムーロロと協力して情報を集め、ジョルノやブチャラティチームの仲間を探す(ウォッチタワーが二枚とも消えたため今の所はムーロロには連絡できません)
3.アバッキオ!?こんなはやく死ぬとは予想外だ。
4.ムーロロの身に何か起こったのか?
【備考】
『オール・アロング・ウォッチタワー』 のハートのAとハートの2はムーロロの元に帰り、消えました。
406 ◆q87COxM1gc :2014/04/25(金) 19:16:49.56 ID:ZoiyvoI4
以上で本投下終了です。

本スレ転載用スレを使うべきだった、と後になって思い至りました。
エラー出しまくりました。時間もかかりました。
申し訳ありません…!!

「書きたい!」という衝動のまま予約をし、落ち着いた後にビビりながら投下。でも全然落ち着いていませんでした。

気になっているのは、時間帯を午後にしたことです。
“あの”ヴァニラ・アイスが、ジョルノをDIOの元に連れていくのに一時間以上かけるのか?とも思いました。
しかし、お互いに警戒している部分やそれぞれの会話がありましたので、一応午後にしました。
407創る名無しに見る名無し:2014/04/26(土) 02:43:57.59 ID:1SgSoaDB
投下乙です。
時間帯に関しては氏が思うようにやって大丈夫だと思います。
とても面白かったです、最近は腕のいい新人さんが多くて読んでる側もなんだか楽しいですね
408 ◆q87COxM1gc :2014/04/27(日) 18:18:01.09 ID:ZO07mBB6
ありがとうございます。
それでは、時間帯は午後のままにします。
409 ◆c.g94qO9.A :2014/05/02(金) 02:48:45.41 ID:6CIGgCgy
投下します。
410 ◆c.g94qO9.A :2014/05/02(金) 02:49:56.98 ID:6CIGgCgy
シーザーが涙を流したのは父を失って以来のことだった。
柱の男にマルクを殺された時も、ジョセフの首輪を爆破された時も、シーザーは泣かなかった。
だが母のように慕うリサリサを失い、年の離れた友人であるスピードワゴンを失い、シーザーの心は悲しみで張り裂けそうだった。

あまりの悲しみとショックでシーザーは我を失った。
こんな状況だというのにあたりの警戒を怠ってしまうほどに。


「シーザー・アントニオ・ツェペリだな?」


そう問いかけれら、ようやく我に返った。涙をぬぐい、顔を上げる。
太陽を背に10メートル離れた位置から声をかける男が一人。
髪を左右で3本にまとめ、カニの甲羅を被ったような髪型をした男だった。
そうだ、と返事をしながらシーザーは立ち上がる。敵か、味方か。男の真意はわからない。
涙をぬぐい、頷くと立て続けに問いかけられる。

「波紋使いの?」
「……どうしてそれを」

そこまで口にして、自分の失態に気づく。
波紋という言葉に反応した時点で、それは肯定したも同じ。
そしてこの場で不用意に自分の情報を差し出すのは致命傷に近い。

カニ男、サーレーはなるほどと、小さく呟くとニヤッと笑った。
サーレーの体から見えない影が飛び出るのと、シーザーが椅子を蹴り飛ばしながら後退したのは同時だった。
波紋を乗せたシャボンが数十、数百とサーレーに襲い掛かる。サーレーは下がらず、むしろシャボンの嵐に自ら飛び込んでいった。

カフェ店内に入らず、路地裏を走っていくシーザー。
無数に放ったシャボンが割れることなく、宙に留まるのを見てシーザーは一瞬で不利を察した。
飛び道具は無効。しかし懐に飛び込むにはあまりに無謀。

まずは相手のスタンド能力を把握すること。
顔と足めがけ放ったシャボンカッターが固定された隙に、シーザーは高く跳躍。民家の壁を駆け上がる。
411 ◆c.g94qO9.A
「鬼ごっこのつもりか」
「その顔と髪じゃあ女の子にいつも逃げられてばかりだろ? 来いよ、ここまで登ってみやがれ」

挑発に乗ったサーレーが登ってくる。
シャボン玉を踏みつけ、しがみつき、シーザーと同じ高さまで登ってくる。
シーザーはおぼろげながらサーレーの能力を理解した。
そして自分が圧倒的に不利な状況であるということも。

触れたものを止める? ならば肉弾戦は避けることが懸命。
距離をとって隙を伺う? だが持久戦を打開できる策があるかは不明。

民家から民家へ、飛び移りながら戦うシーザー。
サーレーをなんとか誘導しなければならない。
死角から触れることなく波紋を流し込めるような場所へ! わかっていても避けようがない攻撃をたたき込める場所へ!

何度かの交戦。形は変わらず迫るサーレー、逃げるシーザー。
20キロ走ったところで切れるはずのない息が上がり始める。焦りと疲労がシーザーの足と頭脳を鈍らせる。
屋上で角に追い込まれ、仕方なしに6メートルの高さから飛び降りた。
足の痺れを我慢して走り出そうとするが、その時シーザーは気がついた。
地面を伝う波紋に浮かぶ二つの足音が、両側から挟み込むように迫っている。頭上からはサーレーがやって来る。
前後上下、左右表裏。逃げ場がない。

背後から髭面の男がシーザーに近づいていた。腕に奇妙なバンドのようなものを巻き、用心深い目でシーザーを睨みつける。
サーレーがその男の隣に並び立つように、屋上から降り立った。
そして前方から一つの影がシーザーに迫ってくる。激しく差し込む太陽が、追撃者の顔に影を落としていた。


「……形兆」


シーザーの呟きは銃を構え直す冷たい音にかき消された。
日陰から身を乗り出し、暗く冷たい目をした虹村形兆がそこにいた。
全身異常な雰囲気を感じさせる形兆。命を賭してでも必ずやり遂げる、ナイフのように鋭い目をしていた。

シーザーにはわかった。
自分はここで死ぬ……どうしようもなく避けがたい未来がそこには広がっている。

数瞬後、街頭に銃声が重なるように響いた。そして重たい何かが倒れる、どさり、という音が聞こえた。