【長編SS】鬼子SSスレ5【巨大AA】

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1創る名無しに見る名無し
このスレッド、「鬼子SSスレ5」は今のところ以下への誘導用です。

【鬼子たんの】鬼子Lovers【二次創作です】 = 鬼子SSスレ4.1
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288622773/51-

長編SS・巨大AAなどにはまず「鬼子Lovers」をお使いください。


他に重複スレとして以下があります。

日本鬼子派生キャラ妄想しようず
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288713084/

愚痴やら内緒話やらはそちらでお願いします。
また、4.1スレの次は「妄想しようず」を4.2スレとして使う予定です。


「鬼子Lovers」「妄想しようず」を使い切ってからこの5スレに戻ります。
目障りだったり、迷惑だったりするかもしれませんが、そういうことでよろしくお願いいたします。
2panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/07/31(日) 20:31:03.48 ID:htJTDa6U
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【鬼子たんの】鬼子Lovers【二次創作です】 = 鬼子SSスレ4.1
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長編SS・巨大AAなどにはまず「鬼子Lovers」をお使いください。


他に重複スレとして以下があります。

日本鬼子派生キャラ妄想しようず
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288713084/

愚痴やら内緒話やらはそちらでお願いします。
また、4.1スレの次は「妄想しようず」を4.2スレとして使う予定です。


「鬼子Lovers」「妄想しようず」を使い切ってからこの5スレに戻ります。
目障りだったり、迷惑だったりするかもしれませんが、そういうことでよろしくお願いいたします。


2ゲトは人に譲るつもりだったんだが、保守があるんでな。
3panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/08/01(月) 22:19:43.77 ID:yMgvq1BO
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長編SS・巨大AAなどにはまず「鬼子Lovers」をお使いください。


他に重複スレとして以下があります。

日本鬼子派生キャラ妄想しようず
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愚痴やら内緒話やらはそちらでお願いします。
また、4.1スレの次は「妄想しようず」を4.2スレとして使う予定です。


「鬼子Lovers」「妄想しようず」を使い切ってからこの5スレに戻ります。
目障りだったり、迷惑だったりするかもしれませんが、そういうことでよろしくお願いいたします。


普段は専ブラのお気に入りから見てるのだが、創発板開けて見た限りでは、よほど落ちない限り保守作業は要らないようにも思える。
まあ、前スレ4があるので、1日1サゲ保守で念を押して20まではやるかなと思っている。
4創る名無しに見る名無し:2011/08/02(火) 21:54:52.09 ID:llyWZEbJ
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他に重複スレとして以下があります。

日本鬼子派生キャラ妄想しようず
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愚痴やら内緒話やらはそちらでお願いします。
また、4.1スレの次は「妄想しようず」を4.2スレとして使う予定です。


「鬼子Lovers」「妄想しようず」を使い切ってからこの5スレに戻ります。
目障りだったり、迷惑だったりするかもしれませんが、そういうことでよろしくお願いいたします。


今日もsage保守ったぜ。
5panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/08/03(水) 21:26:55.80 ID:lPdXxZG8
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他に重複スレとして以下があります。

日本鬼子派生キャラ妄想しようず
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愚痴やら内緒話やらはそちらでお願いします。
また、4.1スレの次は「妄想しようず」を4.2スレとして使う予定です。


「鬼子Lovers」「妄想しようず」を使い切ってからこの5スレに戻ります。
目障りだったり、迷惑だったりするかもしれませんが、そういうことでよろしくお願いいたします。


昨日はコテトリにするのを忘れたな。まあ、どっちでもいいんだが。
6panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/08/04(木) 21:17:19.79 ID:EcNDFhNN
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日本鬼子派生キャラ妄想しようず
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愚痴やら内緒話やらはそちらでお願いします。
また、4.1スレの次は「妄想しようず」を4.2スレとして使う予定です。


「鬼子Lovers」「妄想しようず」を使い切ってからこの5スレに戻ります。
目障りだったり、迷惑だったりするかもしれませんが、そういうことでよろしくお願いいたします。


今日も保守。
7panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/08/05(金) 20:15:27.36 ID:w44jMfOG
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日本鬼子派生キャラ妄想しようず
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愚痴やら内緒話やらはそちらでお願いします。
また、4.1スレの次は「妄想しようず」を4.2スレとして使う予定です。


「鬼子Lovers」「妄想しようず」を使い切ってからこの5スレに戻ります。
目障りだったり、迷惑だったりするかもしれませんが、そういうことでよろしくお願いいたします。


相変わらず保守。
8panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/08/06(土) 22:39:30.35 ID:wslUjs5d
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日本鬼子派生キャラ妄想しようず
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愚痴やら内緒話やらはそちらでお願いします。
また、4.1スレの次は「妄想しようず」を4.2スレとして使う予定です。


「鬼子Lovers」「妄想しようず」を使い切ってからこの5スレに戻ります。
目障りだったり、迷惑だったりするかもしれませんが、そういうことでよろしくお願いいたします。


忘れず保守。
9panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/08/07(日) 22:18:44.73 ID:vWgqCgD7
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他に重複スレとして以下があります。

日本鬼子派生キャラ妄想しようず
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愚痴やら内緒話やらはそちらでお願いします。
また、4.1スレの次は「妄想しようず」を4.2スレとして使う予定です。


「鬼子Lovers」「妄想しようず」を使い切ってからこの5スレに戻ります。
目障りだったり、迷惑だったりするかもしれませんが、そういうことでよろしくお願いいたします。


空気が生ぬるくても保守。
10panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/08/09(火) 21:46:56.10 ID:iCgRGft/
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日本鬼子派生キャラ妄想しようず
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愚痴やら内緒話やらはそちらでお願いします。
また、4.1スレの次は「妄想しようず」を4.2スレとして使う予定です。


「鬼子Lovers」「妄想しようず」を使い切ってからこの5スレに戻ります。
目障りだったり、迷惑だったりするかもしれませんが、そういうことでよろしくお願いいたします。


昨日は酒飲んで寝落ちで保守し損ねた。
10まででいいらしいのだが、念を押して20までは保守る。
11創る名無しに見る名無し:2011/08/10(水) 21:35:30.98 ID:TPI/hW/v
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「鬼子Lovers」「妄想しようず」を使い切ってからこの5スレに戻ります。
目障りだったり、迷惑だったりするかもしれませんが、そういうことでよろしくお願いいたします。


つーわけで引き続き保守。
12創る名無しに見る名無し:2011/08/10(水) 22:49:02.66 ID:ffSMKlXu
いつも乙
13panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/08/11(木) 22:06:53.35 ID:iFir9iXf
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目障りだったり、迷惑だったりするかもしれませんが、そういうことでよろしくお願いいたします。


暑苦しくても保守。
14panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/08/12(金) 21:30:38.75 ID:4I+Ppyp5
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目障りだったり、迷惑だったりするかもしれませんが、そういうことでよろしくお願いいたします。


危うく寝るところだったな。
15panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/08/13(土) 20:36:52.33 ID:tpmom26b
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もう良さそうなもんだが、一応20までは保守。
16panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/08/14(日) 21:18:16.59 ID:6daAIG1a
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保守人生も後数日だ。
17panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/08/15(月) 22:57:40.32 ID:G5kwtwuQ
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先週は酒飲み→寝落ちで保守し忘れた。
酒飲みは変わらんが、今週は保守。
18panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/08/16(火) 22:30:36.11 ID:2K/rrRh3
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あと2保守だ。
19創る名無しに見る名無し:2011/08/17(水) 21:16:00.46 ID:A0xjPVWn
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明日で最後。
20panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/08/18(木) 21:11:00.80 ID:8RlEW5h9
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「鬼子Lovers」「妄想しようず」を使い切ってからこの5スレに戻ります。
目障りだったり、迷惑だったりするかもしれませんが、そういうことでよろしくお願いいたします。


保守終了。
21panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/08/27(土) 00:51:39.49 ID:cCCoTHQX
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目障りだったり、迷惑だったりするかもしれませんが、そういうことでよろしくお願いいたします。


いっそのことこのまま使う時まで寝かせとこうかと思ったが、誘導用なんだよな。
22panneau ◆RwxKkfTs.. :2011/11/05(土) 09:38:22.60 ID:JHLq0NYj
22からというのも半端な感じなので、とりあえず25迄埋めて、26からてんぷらということで。
23創る名無しに見る名無し:2011/11/05(土) 09:47:02.65 ID:JHLq0NYj
調整。
24創る名無しに見る名無し:2011/11/05(土) 09:52:07.55 ID:JHLq0NYj
調節。
25創る名無しに見る名無し:2011/11/05(土) 09:55:25.12 ID:JHLq0NYj
実はここは代行頼んで立ててもらったものなので、
改めて1乙。
26創る名無しに見る名無し:2011/11/05(土) 09:59:33.68 ID:JHLq0NYj
●ここは以後日本鬼子の長編SS(または数レスに渡る大きな作品)や巨大AAを投稿するためのスレです。
●作品を投下した方は本スレに該当URLを貼り付けて報告してくれると嬉しいです。なお本スレへのSSやAAの投稿は自由です。
●感想や作品を投稿する際は、できるかぎり他の作品の投稿と重ならないように注意してください。

スレッドには容量制限があり、最大で512KBまでとなっています
500KBを超えた時点で書き込みができなくなるため
容量が450KBを超えたらその時点でスレ立て可能な方が
宣言した上で次スレを立ててください
スレの容量はIEなどのブラウザの画面左下で確認することができます

前スレ 【鬼子たんの】鬼子Lovers【二次創作です】 = 鬼子SSスレ4.1
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288622773/51-

本スレ 【夏だ】萌えキャラ『日本鬼子』製作26【水着だ】
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1312339548/

避難所スレ 萌キャラ『日本鬼子』製作in避難所11
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1315304204/

萌キャラ『日本鬼子』まとめwiki
http://www16.atwiki.jp/hinomotooniko/
27創る名無しに見る名無し:2011/11/06(日) 12:05:26.83 ID:wvi3KgWL
前スレ埋め立て確認。
28panneau ◆c7r.6wV2smZ1 :2011/11/06(日) 21:55:23.80 ID:qir6OTsd
実は朝早い生活なんで、20時頃にはもう寝ることを考えてたりします。

で、前スレの終わりがあのままだと失礼な感じなので、ここに何やかんや書きました。
【ネタバレ】project light way作者のつぶやき的スレ【注意】@おにちゃんねる
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14480/1304344629/49/
29歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2011/11/08(火) 23:38:37.06 ID:/EbmiU45
ついにSSスレも5になりました。これからもよろしくお願いします。

「貴女を利用するつもりなのよ」「努力、か」
「わんこにはもっと広い世界が似合うじゃろう」
「鬼うち祓え。我が日本よ」
「説明できるんですか。生きてしまっている理由を」
「そりゃもちろん……」「ねねさまは、ねねさまだよ!」
「――という次第でございます。蟲武者卿」
「我が天魔党の助けとなる鬼を探せ」
「戦ですか。何処へ」
 彼ら彼女ら鬼の子ら、何より白き薄明の、光まばゆき朝は来る。

※今回新たに登場する人物の言葉遣いに乱れがございますが、予めご了承のほうお願い申し上げます。

TINAMI http://www.tinami.com/view/331806
pixiv http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=603849

序 http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288622773/80-83
一話 http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288622773/89-99
二話 http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288622773/128-139
三話 http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288622773/176-185
四話 http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288622773/196-204
五話 http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288622773/216-224
六話 http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288622773/240-248
七話 http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288622773/262-270
八話 http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288622773/289-301
九話 http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288622773/310-322
十話http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288622773/338-347

次回の更新はすみません、未定です。申し訳ございません……。
30歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2011/11/08(火) 23:40:07.81 ID:/EbmiU45
【編纂】日本鬼子さん十一「さあ?」
   七の一

 この日、アタシは悩んでいた。
周囲からすればたいしたことのない話なんだろうけど、自分にとっては迷惑この上ない場面に遭遇してしまっていた。

「アンタに憑いた鬼、祓わしてくれへんか?」
 秋も宿題締切も間近に迫る八月末のどんよりとした日だった。
近所の境内にある祖霊社、日本さんと出会った場所で、私は新たな出会いをしたのだった。
とはいえ、今回のは街を歩いてたら道端アンケートの人につかまっちゃったくらいひどい出会いだけど。

 まずそのアンバランスな仮面が目に入る。四つ目の人面が彫られている。たぶん歩くとき
頭がふらついて大変なんじゃないかって思うけど、さておいて次に着目してしまうのはその手に持つ三叉の矛と
胴長のホームベースみたいな盾だ。ああ、確か隼人盾とかいうやつなんだろうけど、そいつに荒っぽい白ペンキで
「ONI IS OUT!!!」と塗りたくられている。そんな装飾しちゃって大丈夫なのか?
 うん、なんかアフリカの先住民さんのコスプレイヤーに出くわしてしまったようだ。とはいえ、
その肌は何十年も日の光を浴びていないんじゃないかって思うくらい白くて、指で弾いたら折れちゃいそうなくらい細い手足だった。
髪も暗室で発芽した植物の葉っぱみたいに色素を失って白くなってしまっている。活動的なコスプレをした病弱少女。
しかも、その背中には大きな黒い巻物……いや、本物かレプリカかは判別できないけど、
ありゃどう見ても恵方巻きだね。いや別に今は節分でもなんでもないけど。
 そして尻尾に毛を生やした丸っこい赤小鬼と青小鬼を引き連れてるってオチ付きときた。
 何が「鬼を祓わしてくれへんか」だよ! 憑いてるのはそっちのほうじゃないか!

「あーすみません、アタシ間に合ってるんで」
「まーまー、石鹸付けたる。ウチ太っ腹やから、ティッシュも付けて月二千九百八十円でどや……って、新聞の勧誘ちゃうわ!」
 なんか、激しいデジャヴをを感じる。
「あのなあ、三文芝居しとるんやないで? 東西折衷とか求めへんから!」
 アタシも東西折衷なんて求めてない。今まで関西に行ったことなんてないけど、あっちはこんな人たちがたくさんいて、
毎日がボケとツッコミなのだろうか。まったく、精神参っちゃうよ。いや、この子だけが特別なんだ。そう信じることにしよう。

「ウチは本気さかいに、アンタにゃ鬼がひそんでるで」
 うん、別に鬼の存在は否定しないさ。
それだけでもアタシは他の人と比べて随分寛容だと思ってほしいくらいだ。でもこの人を信用しないのには二つ理由がある。
 一つ、日本さんのケガがよくなってからはほとんど毎日一緒に遊んでるけど、
アタシの心にあるらしい鬼を感知して教えてくれたことはないし、アタシも鬼が憑いてるような、あの変な気持ちはちっとも感じない。
 二つ、人に鬼は祓えない。祓えるのは鬼子さんと神さまだけだ。よって、この真っ白くてげそげそした女の子は
あやしい人物である可能性が高い。うん、そう、例えば中二病の患者さんだとかね。
独断とハッタリでアタシに鬼があると判断を下しちゃって、勝手に勧告しちゃってるんだ。

 以上の考察により、導かれる選択肢は以下の通りだ。
 一、逃げる。
 二、逃げる。
 三、逃げる。
 四、逃げる。
 アタシは即断して、二の「逃げる」のカードを奪うようにして取った。

「じゃ、忙しいんで!」
「あ、ちょ、待てえ! 待てえゆーとるんやで!」
 待たない。こういう人が現れたら迷わず退けって兄貴が言ってた。幸運なことにここは祖霊社だ。
二十メートルハードル走。ハードルはお賽銭箱で、ゴールは本殿の祠にある紅葉の小石だ。
疾走し、跳躍する。今なら地区大会で優勝できる自信がある。紅葉石まであと少し。
あそこに行けば――。

「た、田中さん、ごめんなさい、遅刻してしまいました!」
 目測二・五メートルメートルのところで新たな障害が出現した。
31歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2011/11/08(火) 23:41:07.49 ID:/EbmiU45
   七の二

 危ない! なんて言えるヒマがあったら避けている。そのまま日本さんの懐に着地する姿勢をとった。
とぼけた顔がアタシを捉えるとともに、二人重なって祠の前に倒れこんだ。紅葉色の着物から、深くて甘い香りが舞った。

「もう逃がさんで」
 草履を引きずり、じゃりじゃりと距離を詰められる。大股で歩いているのを見れば、せっかちな性格だってことがが窺える。
彼女の前と後ろにそれぞれ赤と青の小鬼が短い足を動かしていて――なんてのんきに考えられる時間はないんだけど。
 立ち上がって日本さんの腕を引き、紅葉柄の背中をはたいてあげる。不思議と汚れはきれいに落ちて元通りになった。
「って、ちょい待ち」
 大きな四つ目の仮面をかぶった女の子の声が、突如として震えた。
小刻みに揺れる人差し指がアタシを通り越して日本さんに定まっていく。
「ア、アンタ……鬼子やないか」

 まるで向こうの世界の人を見ているようだった。日本さんを見て、恐れを抱いている。
心の底から、まさに日本さんこそが恐怖の根本であるかのような、そんな顔をしていた。
 次の瞬間、銀髪の女の子の目の色が変わった。
リモコンでチャンネルを変えたみたいに、本当に一瞬で切り替わり、矛を突き出して駆け出した。
「ここで会ったが百年目ェ! 鬼子ぉ、この手でアンタを――」

「日本さん、あの子と知り合いなの?」
「さあ?」
 女の子が転んだ。いや、関西流ひな壇ズッコケを炸裂させたと称したほうが正しいだろう。
こちらが言葉を失うほどの美しいフォルム、ストリームの転び方であった。砂煙まで見惚れてしまう。
連れの鬼も絶妙なタイミングで転がる。まさに経験によってすべてを計算しつしているのであると言っても過言ではない。

「まてまてまてまて! なんかもー何からツッコんでええのかわからんわ! あのな、ウチの名前くらい、このお面見たらわかるやろ!」
 額に取り付けられた、頭一つ分はあるだろう仮面を指さす。
 そんな印象にしか残らないものを付けてるのに、記憶をいくら漁っても思い当たる節はなかった。日本さんも首を傾げている。
「どー見ても方相氏のナリやろが!」
「ほーそーし? プレゼントか何かを包むつもりなの?」
「そーそー、ウチ、キャラメル包みが得意なんやで。ラッピングなら任せとき……
って、包装紙ちゃうねん! 方相氏! 紙ッ切れと一緒にせえへんといて!」
 ちょっとボケたところでこれだ。この子の思考回路はどうなってるんだろう。相当回転速いんだろうなあ。

「ウチは如月ついな! またの名を役小角の末裔、役追儺(えんのついな)や!」
「ちょ、またの名ってなんだよ!」
 そういう設定の芸名なら至極納得がいく。ファンにはならないけど。
ごちゃごちゃと名前が飛び交ったけれど、脳内検索で検出される名前はなかった。

「役小角……」
 でも日本さんは何か心当たりがあるみたいだった。
「エンノオヅヌ?」
「ええ、古の時代、鬼や神さまを操ることができるほどの法力を備えていた呪術者の名前です」
「ふふん、さすがやな。天敵のこと、よー知っとるわあ」
 自称役追儺は得意気に三叉の矛の石突で地面を二、三度叩いた。
「でも、その血はずっと昔に途絶えてしまったと」
 その瞬間には自称役追儺は地面に突っ伏していた。スピーディでアクロバティックなコケである。
「絶えとらんわ! びんびんしとるさかい!」
 幾度となく転びまくってるせいで、戦う前から服は砂ぼこりにまみれてしまっていた。体を張っていることが見て取れる。
32歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2011/11/08(火) 23:46:34.19 ID:/EbmiU45
   七の三

「アホも大概にしとき。ウチはホンキなんやで。鬼子くらいあっちゅー間にケチョンケチョンにしたるわ」
 なんというか、この必死さを見ると、初めて会ったときの日本さんを思い出す。
あの時はまだ日本さんを鬼として見てなくて、単なるコスプレ少女だと思っていたんだっけた。
「あのさ」
 懐かしい。胸の奥で、小さく言葉を漏らす。
「君、本当に鬼を祓えるの?」
「トーゼンや! 役小角の末裔を甘く見んといて! 今から倒したるから目ェかっぽじってよう見とき!」
 自信の塊みたいな台詞を吐き、役追儺は矛を日本さんに向けて身構えた。

「あー、違う違う。そういうことじゃなくてさ、君、言ってたよね、アタシに鬼が憑いてるって」
「えっ! 田中さん、また憑いちゃったんですかっ?」
 自称方相氏の供述によれば、だけど。やっぱ日本さんの鬼的な感覚では心の鬼を感知してはくれないようだった。
「この通り、日本さんはアタシに鬼が憑いてることに気付いてないんだ。
ここでアタシの鬼を祓うことができたら、いい牽制になると思わない?」
「アンタの思惑はわかっとるで。ウチが除霊の呪術を唱えとる間に鬼子が奇襲仕掛けるっちゅー成算やろ!」
 びしぃという擬態語が音になって飛び出るように、相方氏追儺は勢いよく指をさした。
「いえ、私はそんな卑怯な真似はしませんし、あなたがその気でないならば戦いたくありません」
 と言って日本さんは薙刀を祖霊社の脇に寝かした。追儺氏は歯ぎしりしながら日本さんを睨みつけるけど、返答は無言のみだった。

「アホらし、疑うばっかじゃアカンな。アンタの鬼、ウチの編み出した究極エクソシスムで倒したるわ!」
 三叉の矛を天高く掲げ、盾を地球の内核を貫いた。何やらぼそぼそと呟きながら円を描くように矛を振り、
上段から突き落とすように刃を向ける。一点の動揺もない黄金色をした六つの眼差しがアタシの目と目の間に集中する。
アタシを見ているんじゃない。アタシの中にある「何か」を見ているんだ。そう思う。
33歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2011/11/08(火) 23:46:54.90 ID:/EbmiU45
   七の三(続)
「覇ッ!」
 矛が眉間の寸前で停止する。アタシは反射すらできなかった。彼女の突きはただ空を貫通しただけで、
アタシはどこも傷ついてはいない。でも、目に見えない「何か」がアタシの身体を通り抜けたような、そんな気がする。
 ……というのは、単なる気のせいだったのかもしれない。具体的にいえば、方相氏の役追儺と名乗る如月ついなの
「究極エクソシスム」が、まるで中学生が意気込んじゃってカッコいい踊りを追求した結果、
五年後に思い出してみると恥ずかしすぎてのた打ち回っちゃうような代物へと成り下がっちゃった系の「アレ」なのではないかと。
 時は止まっている。頭上のケヤキですら、葉の擦れる音をやめて、じっと役追儺を見下していた。
 目に見える変化は何一つとしてなかった。アタシの体にも寸分の異変は感じられない。
 役追儺の顔が引きつりだした。
「あ、あれ……? おっかしいなぁ」
 わけもなく三叉の刃を上下に振る。しかしそれもただの空振りに終わり、彼女は今、
二死満塁で三球三振したばかりの八番ライトのポジションに立っていた。
「な、なんや! その『うわーこの子痛いわーマジ痛いわー』っちゅー視線はっ! きょ、今日は調子が悪いだけや! 
決して鬼を倒せへんっちゅーことちゃうで! ええな、勘違いしーひんといてな! ここんとこ重要やから! 
今日んトコはここまでにしたる! 命拾いしたな、鬼子! 次こそアンタを倒したるから、足洗おて待っとき!」
 日本さんに人差し指を突きさして、長々しい台詞を滑舌よく十秒というガトリングな早口で吐き捨てた。
正直、鬼が祓えるかどうかより、こっちのほうが尊敬に値する。
 再び沈黙が訪れる。頭上のケヤキはもう呆れてしまったのか、無関心に葉っぱを揺らしている。
「って、そこ足やなくて首やろがっ! って、どっちかツッコまんかい! ウチぁピン芸人ちゃうねん! 方相氏やねん!」
 と、どう見てもヨシモトのピン芸人にしか見えない少女は今度こそ祖霊社を後にした。

「なんだったんだ、あの子……」
 二匹の鬼も見えなくなったところで、正直に現状の心持ちを漏らした。
「とりあえず、害はないみたいですけど」
 うーん、あの様子だと、性懲りもなく日本さんにちょっかい出してくるような気がしてならないような気がする。
まあ、面白い子だし、どうせ日本さん相手じゃ敵わないんだろうから、むしろ個人的には歓迎なんだけどね。
「それじゃあ日本さん、邪魔が入ったけど、改めて心の鬼祓いに行こうか」
「そうですね。今日は五、六体祓いたいですね!」
 はは、相変わらず無邪気なクセに好戦的だよなあ。
34歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2011/11/08(火) 23:47:15.36 ID:/EbmiU45
   七の四

   φ

「それじゃあ、日本さん、またね!」
「はい、今日もありがとうございました!」
 田中匠と日本鬼子の会話が終了した。
 日が暮れてもじめじめと肌にまとわりつく空気が離れない。もう九月も近いが、残暑は始まったばかりだ。
この暑さはあと一ヶ月続くのだろうと田中匠は思考し、もう勘弁してほしいとうんざりした気持ちを生じさせた。
それに加え、残った宿題の山を思い起こすと、私まで鈍々しい瀝青の湖に呑まれていく感情に侵される。

 日本鬼子が向こうの世界へ飛んでいく。ようやく私は呼吸を許されたような気がした。
 全く、願望を吸収せずに人間の心に宿ることがいかに至難であることか。私はまさに半殺しの目に遭ったまま生かされている。
あの青狸大将の願望鬼が私を消滅させないよう力を送ってよこすのだ。まるで生きた心地がしない。

 今朝は祓われることを覚悟した。如月ついなだか役追儺だか判然としないままであるが、奴は私の存在に気付いていた。
あのときは存在維持できる最低限の力しか放出していなかったにも拘らず、少女は確信をもって
――少なくとも田中匠の五感と意思を介してでは――私の存在を見抜いていた。
幸いその強大な霊力を活かしきれていないようであったから、私は今もなお田中匠に束縛されて密偵を続けられているのであるが。
 しかし現在の本務は田中匠の心に居座って日本鬼子の監視を行うことではない。こちらで天魔党の駒となる鬼を模索し、吟味し、
取り憑いて操って人間共を混乱させることを主としている。日本鬼子の生態観測なんかより断然私を活かせる指令だ。
私はただ願望を貪るように食い漁っていればいいのだ。これ以上楽な仕事はない。本能の赴くまま、存分に成長できるというものだ。

 宿主は祖霊社を出て八幡宮の中を歩いている。頭の中はいかにして効率よく宿題の山を崩していくかでいっぱいで、私の居場所は
ごくごく限られた空間であった。早く劣悪な環境から脱したい。願望を吸う私が願望を抱くとはなんと滑稽なことであろうか。
 しかしなりふり構ってはいられない。日本鬼子と別れた今から、田中匠の自宅の門を開けるまでが残された唯一の機会なのだ。
日本鬼子がいる間は、他の鬼に憑いたとしても諸共斬られるのが関の山であるし、田中匠の家では鬼に憑くことができない。
家というのはそれだけで結界の役割を果たしているのだ。
だからこそこの道のり、神社から田中匠宅までの七分間、私は全ての感覚を五感に移行させ、外界に張り巡らす。

 この世界には神というものが少ない。神社の木々ですら、神が宿っていない。御神木に、絶命寸前の神が息んでいるのみである。
これでは町の無格社の神はとうに堕ちたか死んだかしているのだろう。こんな世で人間がこうも平然と生きているのが
不思議でならない。つまるところ、自然に宿る鬼もいない。鬼は人間の心に宿れる者のみが生き残って、
あとは皆絶えてしまったのだと言っても過言ではない。
 人と会わなければ鬼にも会えない。しかし、日が暮れた細道に人間の姿はどこにもなかった。
いっそ田中匠の願望を増幅させて一思いに暴れてやろうかとも思ったが、そんなことをしてどうなるわけでもない。
かの日本鬼子に斬られてしまったら仕舞いであるし、伊達や酔狂で田中匠の感覚を介して日本鬼子を観察しているわけではない。
生き残るためには、人間に憑いて暴れるより、鬼に憑いて身を守るしかないのだ。私と私の分身はそうして千歳を乗り越えてきた。

 切れかかった街灯に羽虫がたかっている。もう田中匠の家は間近であった。あの光を越えた先を右に折れて
すぐ左の門をくぐってしまったら、私は田中匠が宿題を終えるまで鬼に憑く機会を失ってしまうのだ。これ以上の長居は
私を発狂させる。田中匠の身体が街灯を抜けた。どうか、曲がった先に人間がいてほしい。この際鬼が憑いていなくても構わない。
外出する人間であればそれで結構。社会の歯車にされて機械的に仕事をこなす人間が望ましい。頼む。私は願望を籠めた。

 だが道の先には誰もいなかった。鬼も神もいない闇だけが続いていた。
 田中匠が門に手をかける。こうなれば宿主の兄である田中巧に憑いてしまおうか。
奴はこの宿主より動く。買い物にもよく出かける。そうすれば――

「田中さん」
35歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2011/11/08(火) 23:47:42.49 ID:/EbmiU45
   七の五

 宿主の鼓膜が震え、外界からの信号を認知した。
突然だった。つい先ほどまで人間の気配はどこにもなかったというのに。奴はどこから現れたというのか。
 田中匠はこの声に聴き覚えがあるようだったが、咄嗟に名前と顔を浮かべることができなかった。
 次に視覚が対象物を認識する。好き勝手に伸ばされたぼさぼさの髪の毛、彼岸花の髪留め、暗くてよく見えないが、
たいそう疲れ果てた様子を醸し出す目のふち、しかし暗闇でも映える白く弱々しい肌。
薄汚れたつぎはぎだらけの服は、どこか手術跡のように思われた。

 宿主の思考は夜明けの清流のように輝きを放ちだした。田中匠は一度この少女と会ったことがあるのだ。
「ああ、君は――」
 田中匠の喉が震える。
が、途端に思考は固まる前の混凝土(こんくりいと)のような液体に変化した。私は為す術なく底なしの沼にはまっていく。
 田中匠は奴の名前を知らない。ただ熊のぬいぐるみを渡され、友達になっただけなのだ。よって私も奴の名を知らない。
 だが驚くべき事項はそれではない。

 奴は『人ならざる者』なのだ。

 なぜそうなのか、私にもわからない。宿主は奴を人間と見なして接しているから、具体的な情報は入手できない。
しかし奴から発する気はどう見ても人が放てるようなものではなかった。ともかく神の去った世界に奴のような存在がいるのは、
甚だ珍しい事態なのではないだろうか。しかし、これ以上驚喜すると宿主が私を関知しかねない。
無心を装って奴の様子を舐めるように視てやろうではないか。

「田中さん、何してるの?」
「え、ああ、今まさに家の門を開けようとしてるんだよ」
「ここ、田中さんのおうちなの?」
「まあね。狭っ苦しいところだけど」
「そうなの……。あの、田中さん」
「なんだい?」
「あの、あした、田中さんとあそびたいな」
 その瞬間、田中匠の思考回路に「宿題」という二文字が八重束になって迫ってきた。もう一分一秒を争う事態になりつつあるのだ。

「あーごめん。しばらく遊べないかもしれない」
「そんな……」
「ご、ごめんね。アタシが今までサボってたせいなんだよ。締切……いや、うん、宿題早く片付けるからさ、そしたら一緒に遊ぼうよ」
「しゅくだい、いつ終わるの?」
「んー、く、九月明けには……」
「おそいよ、田中さん」
「ごめんっ! ホンットーに、いやマジで全力を尽くして必死にもがいてあがいて片付けるから! 
そうしたら、そうしたら遊ぼう! うん! 全力で遊ぼう!」
「ほんとう?」
「もちろん。この田中匠、心の底から誓ってあげましょう」
 心の底から黄金に輝く脂肪のようなものが膨れ上がった。誓いだ。その言葉が嘘ではないことが手に取るようにわかる。

「それじゃあ、これから缶詰になるけど、次日差しを浴びるときが来たら、よろしくお願いね」
 そう声を発して、田中は門を開けた。
 ごめんね、と後方に罪悪の感情を抱いて、門をくぐる。
 ようやく見つけた。奴は鴨だ。人ならざるもので、田中匠に近しく、温もりに飢えている。これ以上ないほどの立地条件ではないか。
 さらばだ田中匠。貴様の心は実に居心地の悪い場所であった。
 これから私は奴の心に乗り移る。願望の鉱山だ。苦行を強制されていたのだから、次は傍若無人に驕り昂ってやる。
36歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2011/11/08(火) 23:53:00.46 ID:/EbmiU45
   七の六

 田中さんがあそんでくれないの……。
 奴の心は、タクラマカンのように、何もない荒んだ大地が広がっていた。砂の一粒一粒が孤独を象徴し、
澄み渡った蒼天の先にある無数の星は皆田中匠を示していた。この宿主は願望の塊であった。鉱山のように屑が見当たらないのだ。
「貴様は田中匠を欲しているのだな」
 私は砂漠の中心で声を張り上げた。空間が動揺する。
「あなたはだあれ」
 貴様は心の中でそう返答した。
「私は願望鬼。貴様の願望を叶えてやろう。貴様の願望はなんだ?」

田中さんとあそびたい田中さんとあそびたい田中さんとあそびたい田中
さんとあそびたい田中さんとあそびたい田中さんとあそびたい田中さん
とあそびたい田中さんとあそびたい田中さんとあそびたい田中さんとあ

 貴様の望みが狂ったように迫り来る。私は御馳走を残さぬよう一口で喰った。混じりけのない、深い味わいが身の全体に沁み渡る。
 これはいい。青狸大将の脂身のように濃厚な馳走も良かったが、この宿主の濁らぬ情は何にも勝る。
余計な着色がない分、純水のように通りがいいのだ。

 さあ、洗脳を始めよう。

「ふむ、ならば見方を変えてみようではないか。そもそも田中匠と遊ぶということは、田中匠の合意が必須であることにお気付きか。
そう、田中匠が貴様の提案を拒み続ければ、永遠にその願望は果たされぬのだ。苦しいだろう? 辛いだろう? すさむだろう? 
だからこそ見方を変えるのだ。貴様はかつて田中匠にぬいぐるみを贈ったそうではないか。そうだ、あの綿の飛び出た
熊のぬいぐるみだ。貴様は田中と出会うまで孤独であった。間違いないな? その時貴様の心を紛らわしたのは
そのぬいぐるみであった、間違いないな? その頃は幸せだった。遊ぶ相手がいたのだからな。ぬいぐるみはいつまでも受身だ。
感情を持たぬ。貴様が伸ばした指先を拒むことは決してない。ぬいぐるみは貴様に忠実だからな。何があっても背くことはしない。
殺せと命ずれば殺し、死ねと命ずれば死ぬ。完全な下僕となる。貴様は心ゆくまで戯れるがよい。
ぬいぐるみで遊ぶことに合意は無用だ。しかし、今そのぬいぐるみは田中匠が所有している。だが気にすることは何一つない。
田中匠もぬいぐるみなのだ。田中と遊ぶのではない。田中で遊ぶのだ」

 宿主の砂漠から音を立てて気味悪い地衣類が生え出て、同時に幻覚的の茸がかしこから湧き出てきた。

田中であそぶ田中であそぶ田中であそぶ田中であそぶ田中であそぶ田中
であそぶ田中であそぶ田中であそぶ田中であそぶ田中であそぶ田中であ
そぶ田中であそぶ田中であそぶ田中であそぶ田中であそぶ田中であそぶ
田中であそぶ田中であそぶ田中であそぶ田中であそぶ田中であそぶ田中
であそぶ田中であそぶ田中であそぶ田中であそぶ田中であそぶ田中であ

 貴様の願望は爆発した。私はその爆風を残さず貪ろうと試みた。

 その欲望が仇となった。奴の願望が、私の想像以上に――いや、想像以上であるという想像はしていた。しかし私の想像は
あまりにも卑小で夢のないものだったのだ――極大で、大宇宙を形成するまでになっていた。一日や二日で形成されるものではない。
一個人に向けられる凄まじい飢渇を持ち合わさねば、これほど欲深い心の闇を生み出すことは不可能である。
 だが私は願望の吸収をやめなかった。いや、やめてはならなかった。ここで停止すれば、たちまち私は呑まれ掻き消されてしまう。
生き延びるため、生きながらえるため、生存本能が絶叫しながら、私は死ぬために食っていた。

 呆れるほどの計算違いだ。私は観念した。私以上に欲深い存在はいないと思っていたが、上には上がいることを思い知った。
「綿抜鬼」
 私は貴様に名を付けた。ぬいぐるみで遊ぶ鬼と化した貴様にふさわしい名だ。
「はは、信じらんねえぜ!」
 綿抜鬼は急激に成長し、田中匠とほとんど変わらない背を獲得していた。つい先程まで幼年の姿をしていたくせに。
 もう私も限界だ。
 まあ、日本鬼子に斬られるよりかはまだましだろう。膨張しきった私は破裂した。
 しかし、私の破片もまた綿抜鬼の願望に呑まれ、宇宙の藻屑となり、ゼロとなった。
37歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2011/11/08(火) 23:53:34.56 ID:/EbmiU45
   七の七

   φ

 たぁなかさぁん、あそびましょ。

 貴女の中身はなにいろかしら……?
38創る名無しに見る名無し:2011/11/09(水) 07:55:03.86 ID:bjA4/BxS
みんな期待していたのに、傷ついた人も沢山いたのに、それでも彼女を利用するんだね。
荒らしには負けないように、鬼子関連が盛り上がるように、その力になってくれると信じていたのに。

何故荒らしの残した者を利用されるのでしょう?本当に死肉を貪るハゲタカの様なのが本性なのですか?
まさかあの荒らしは歌麻呂さん本人なんて事は無いですよね?頭が割れそうです。
荒らしを容認してしまえばこのスレはどうなってしまうんでしょう?…考えなかったとか無いですよね?

許さないゆるさないあゆるさなない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さない許さないゆるさなさい揺るs内緩さに亜yるsないゆるsぬあにゆるあsにあ
ゆるしあゆるうsないあyるうrにsないnyr0ゆるsないおゆるsにあゆるさに
ゆるsなおゆるさにあゆるさんさいゆるさないゆうるsないゆるさにあいゆるさないゆるsない
ゆるさないゆるsないゆうrなさゆるさにあゆるさにゆるdssのゆるさないゆるsないゆるさないゆるすあn
ゆるさないゆるさにyるsないゆるさにyるさにりゅさないゆるさんあにゆるさないゆるsない
ゆるさにりゅさにゆるさないゆるさないゆるさのあゆるさないゆるさにゆるさないゆるさない
ゆるsないゆるsないゆるsなうおゆるsないゆるすいないゆるsないいぇうんすあい
ゆるsないゆるあすいゆsんさいゆるsないyるないyるうさにゆるさないゆるsないゆrしにあ
ゆsないゆrすないゆるsないりゅsにあいゆるんしあおゆrんすあんゆるsないゆるsない
yるすsないゆるsないゆんさいゆるさなあいゆrすあにゆすあうにyるるあんしあゆるすあに
ゆるさににゆるsないあにゆるっさないゆるさないにゆるすあにあゆるsなああい許さない
39創る名無しに見る名無し:2011/11/09(水) 07:59:44.98 ID:nlgIGscW
>>38
マジキチ。
良いじゃないか、作者が何を利用しようが。
それが嫌なら自分が作者となって別の作品を立ち上げれば良い。
まあ荒らしへの免罪符が出たのは確かだから、どうなってしまうか不安なのは解るけどさ。
40歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2011/11/09(水) 08:31:41.01 ID:NiQKhPJx
>>38
感想ありがとうございます。私の作品を愛してくれているんなと、感動しております。
言いたいことは山ほどあるかと存じますが、どうか長い目で見てあげてください。
彼女を取り巻く多くの書き込みがあらゆるスレッドでなされた以上、
私も彼女ときちんと向き合わなければならないと判断した次第でございます。
私なりではございますが、鬼子さんと綿抜鬼の関係を丁寧に描いていきたいです。
41創る名無しに見る名無し:2011/11/09(水) 13:19:45.32 ID:oJKfs5p/
アンカー付けた時点でアンタの負けだ。
内容云々一切関係無い。反応する事が連中にとっては最高のエサなんだからな。
だから、折角の長文投下にも感想の付けようが無い。
猛省されたし。
42創る名無しに見る名無し:2011/11/09(水) 16:53:40.14 ID:eAkupjHS
>>41
君らのルールで踊るような歌麿呂さんじゃない事くらい気付け、と思う
43創る名無しに見る名無し:2011/11/09(水) 17:32:47.66 ID:sBcyA4/D
綿抜鬼もなんか複雑なキャラになりそうね。
救われてほしいぜ。

そして待ちに待ってたついなちゃん参戦。
能力高いのね。彼女
44創る名無しに見る名無し:2011/11/09(水) 21:38:59.59 ID:ERaHH28l
>>30-36
そうきたか!ついにきたか!ワタヌキはどう動くのか楽しみだw
某動画でも綿抜鬼参加フラグが立ちましたしね〜 それとあぁ、やっぱりついなちゃんはそーゆー立ち位置。なんだ……
と、納得してしまったw あと前後鬼が出てきたな〜この連中もヒトクセもフタクセもあるだけにどう動くのか楽しみだw
45歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2011/11/09(水) 23:57:53.81 ID:NiQKhPJx
>>43
ついなちゃん参戦でございます。まだまだついなちゃんの言葉遣いを操れなくて申し訳ないです。
彼女に関しても、これから自分なりに深めていきたいですね。

>>44
綿抜鬼の今後にご期待下さい!
……というか、期待に応えられるよう努めてまいります(冷汗)
46創る名無しに見る名無し:2011/11/10(木) 17:13:19.84 ID:YODJTKXr
38が『彼女』としか書いて無いからついなちゃんの可能性もある件。
だいたい最初の頃からスレ民に受け入れられて無いのを『この子は要らない子なんですね…』なんて無理やり気を引かせようとしたり、
それ以前の作品でも鬼子に呪詛の言葉を延々投げつける作品を出したり、自分の作品をねじ込みたい執念が異常だったし。
そもそも綿抜鬼の原案者が休筆中だった時にすら『断筆されてしまった過去の人』だと外部ですら嘘を広めている辺り、
自分を優遇しない(作中に登場させない)ライバルは、一人でも粘着して潰したがっているのがこの人の可能性もあるわな。

お涙頂戴で無理やりねじ込んだ事で、せっかくのご自身の作品を自分で汚した事をどう思っているのか、ご本人の言葉で聞いた事が無い。
もし普通の手段と考えていて何も感じていないと言うなら、自分が持ってしまった疑惑は偏見かもしれないが多少深まるわ。

『なんで綿抜鬼原案者は断筆した事にしたかったのか?』『ついなちゃんに思い入れがあるならなぜ自分の手で汚したのか?』

どうせ答えて貰えないかブチ切れて『お前よりは貢献してるから黙ってろ!』とか信者の人含めて言われて終わりだろうけど、
どうにもモヤモヤしたままで作品を見ても楽しめ無いから、無理難題でしょうが可能ならお答え頂けると幸いです。
47創る名無しに見る名無し:2011/11/11(金) 12:21:58.12 ID:v1l3REgf
勝ち負けでしか物事を考えられない人って、人生楽しいのかな……
勝負を楽しむ人はそれでいいとおもうけどさ。
そういうのじゃなくてさ、なんつか、相手に「おまえは負けたんだ」って押し付けようとムキになる様がその・・・・違うくね・・・?
もっと他にもいっぱいタノシイ事あるのに。
48創る名無しに見る名無し:2011/11/11(金) 15:16:03.18 ID:leSQfA4G
「触っちゃダメな人かな…」と思って俺も黙ってたんだけど、
どっちみち創作に関係無い次元だよね。
そもそも恵方巻きさんもわーたん描いてるし。

どうせ煽るなら、もっとこう、創作意欲を炊きつけるような煽りが欲しい。
49創る名無しに見る名無し:2011/11/11(金) 15:25:42.15 ID:ipR90421
「しっつれいなやっちゃなー、ウチが色仕掛け使ったって言いよるん?」(違

…でもついなちゃん、普通に色仕掛けできそうな気もしますが。
けっこう美人だし、こう…ふくらみかけのあたりとかね。
とはいえ、つい素が出ちゃってどたばた鬼子を追っかけて行っちゃいそうだな〜w
50創る名無しに見る名無し:2011/11/11(金) 16:21:32.69 ID:leSQfA4G
ふくらみかけ…触っちゃダメな胸かな(当たり前
51創る名無しに見る名無し:2011/11/11(金) 18:03:08.92 ID:9pb2x3rs
荒らし≒綿抜鬼擁護派も自演≒ついな擁護派も両方利用しようなんて奴らも、どいつも気持ち悪いわ。
鬼子で萌えるつもりでここを覗いた人達はどう思うんだろうな。問題がある以上どちらも利用しないで良いじゃないか。

>>48
基礎の物語を作られたくなかっただけ、って可能性もあるぜ。自分で書きたいのに出来上がってたら不可能になるだろうから。
キャラクターを勝手に利用なんざ他の奴らもいくらでもやってるやん。嫌いな人の関わったキャラでも平気で使えるだけじゃないか?
52創る名無しに見る名無し:2011/11/11(金) 21:13:44.13 ID:HMptoguV
>>51
とっくに尻尾巻いて逃げ出した荒らしの作品を使わないだけならまだしも、
今もってご本人の意見もしめされてないついなちゃんまで封印しろとか、流石に変だよ。
さては綿抜鬼の封印が決まりそうで自棄になった綿抜鬼信者さん?
53創る名無しに見る名無し:2011/11/11(金) 21:37:44.32 ID:yMivMkYB

ま、俺が従うルールはスレと板と自分ルールだけだな。誰かがわめいているだけの押し付けルールなんざ知ったこっちゃないしな。
気に入ったキャラ使って気に入ったネタ拾って好きな話を作って萌えるだけさね。

>>49
なんか以前思いついたネタを投下してみる。
───────────────────────────────────────
前鬼「ご主人ご主人、田中の姉ちゃんの所(←妹の事。念のため)にお泊りやって?」
後鬼「そらも〜〜キメるしかありまへんでぇ!」
ついな「はぁ?一体ナニゆーとんのや?」
前「もーニブちんでんな〜ウチのご主人は」
後「いややわ〜わかっててゆーとんのちゃいますやろな〜」
つ「だから一体何のことやねん!」
後「だから、田中の兄さんのとやって!た・な・か・の!(うぷぷぷっ)」
前「せやせや!折角のお泊り、ここで誘惑せないでどうするんですかい!」
つ「んなっ!?!ななな、ナニゆーとんのや?!あるじをからかうのもえーかげんにしーや!(///)」
後「そんなんいいながら(にやにや)」 前「まんざらでもないよーやし〜(ぷくくくっ)」
つ「うっさいわハゲ!お前らには関係ないやろ!」
前「いやいや。ご主人、わてら、心底ご主人の事心配してんのや」
後「せやせや。なんたって、ご主人のは・じ・め・て・の想い人があの兄ちゃんやったとはな〜」
前「で、わてらも苦労して用意しましたのや」
つ「用意?一体、何ゆーてんねや?」

後「じゃじゃ〜〜〜ん!これダス〜〜〜!(バサッ!)」
つ「??!?!!(////)」

後「これさえ着て誘惑すれば、男はみぃ〜んな一発悩殺、昏倒必死、空前絶後のセクシーランジェリーや!」
前「いやぁ〜ご主人の体型に合いそうなのを探すのに苦労したした」
つ「ななな、なんやこれ!すすす、スッケスケやないかぁ!!誰がこんなハズかしーもん着るかあーっ!!」

前鬼・後鬼───・・・・……
つ「な、なんや?」
後「・・・・ご主人・・・こういっちゃ何ですが、このままやと、ご主人の想いは報われない思います」
つ「はぁ?何やねん。やぶから棒に」
前「またまた〜すっとぼけてからにご主人〜?ひのもと鬼子と、田中の兄さんのこってすって」
つ「?!っ」
後「ご主人が想いをよせる兄さんは〜は家庭的ながらも優しくて〜しかもいざとゆう時、頼りになるしっかり者で〜」
前「一方、鬼子の奴はツノつきとはいえ、白い肌に黒い髪〜気立てもいい大和撫子、嫁にしたい男は数しれず〜」
後「そんな二人が出会ったら〜」
前後「「恋の炎がいつ燃え上がってもおかしくない〜〜〜(ラララ〜〜)」」

前(鬼子のつもり)「まあ、なんて素敵なトノガタなのかしら〜〜」
後(田中兄のつもり)「おぉ、とても美しい黒髪のキミよ〜〜、ボクの心はキミの慎ましやかな胸とお尻にズッキュンラビュさ」
前(鬼子(ry )「あぁ、わた、わた、わたくしも貴方のような素敵なとのがたにもーメチャメチャにして欲しいわ〜」
後(田中あ(ry )「おぉ、わてm・・・と、ボクもキミの中に健やかな種まきをカマしたい〜〜」
前(鬼(ry )「あぁ、でも、でもいけませんわ、ワタシは鬼でアナタはニンゲン、こんな事が許されるはずが・・・・」
後(田(ry )「何をいいます。あなたとの愛の行為の為ならそのくらいの障害、何の意味がありましょうか」
前(o )「田中クン!」
後(t(ry )「鬼子ぉおっ!!」
前後 「「ムッチュゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」」

つ「・・・・・」
前「あ、ほれほれ、わてらの小芝居だけでもそんな涙目になるくらいショック受けんのやったら」
後「やっぱ、先に誘惑してモノにするしかあらへん思いますのんや」
前「恋はタネ仕込んだモン勝ちでっせ!」
後「せやせや!んで、今度田中の姉ーちゃんトコろにお泊りにいくのはこれ以上ないチャンスでっせ!」
前「そこはほれ、相手もオ・ト・コ!このスーパー超絶せくしぃランジェリーで誘惑かませば、
  どんなオトコも一発KO!後は獣のような兄ちゃんに身をまかせればトントン拍子にゴールイン!」
後「そうすりゃ、鬼子にも一泡ふかせられて一石二鳥!恋は略奪でっせ!奪ってナンボや!」
つ「〜〜〜〜〜〜〜〜!!」(////)
54創る名無しに見る名無し:2011/11/11(金) 21:38:42.75 ID:yMivMkYB
〜〜〜田中家〜〜〜
田中「───っは〜〜〜このゲーム悪くなかったね〜 あ、でももうこんな時間。そろそろ寝よっか」
ついな「あ、う、うん。せやな。あんま夜更かしすると発育にも影響するっちゅ〜し(///)」
田「? どうしたの、ついなっち?様子が変だよ?」
つ「へへへ、変っ?そそそ、そんなことあらへんで?う、うちはいつもどおりやで?」
田「そ、そう?でもなんか、顔が熱っぽいような・・・?」
つ「ききき、きのせーや!イヤやなあそんな事あらへんて」
田「そう?それじゃ、布団を用意して・・・って、あ″ーーーーーっ!宿題!まだやってなかったーーっ!」
つ「へ?」
田「ごめんっ!ちょっち今から缶詰しなきゃならなくなっちゃった。お布団は下の部屋に用意するから
  パジャマパーティはまた今度ってことで!ホントごめん!」
つ「あ、うん。うちはかまへんで。宿題、頑張りや」
田「? ついなっち?ホントに大丈夫?いつもと様子が変だよ?ちょっと顔も赤いし・・・・
  すぐ布団用意するから、今日はシッカリ寝た方がいいよ?よければ、氷枕とか、いる?」
つ「あ、う、うん。なら、そうさせてもらうわ。でも氷枕はええから・・・・」
───────────────────────────────────────
・・・・カラッ
つ「(そぉ〜〜〜っ)」ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ
つ「(うわぁ〜、ホンマすけすけやないかい。このラ、ララ、ランジェリィ・・・・)」
 ペタン・・・ペタ・・・ペタ・・・
つ「(くそお、これで上手くいかへんかったら、あの珍獣達、徹底的にシバいたるさかい、覚悟しとくんやな)」
つ「・・・・・・(タク兄ぃの部屋・・・ここや)」
つ「〜〜〜〜・・・(な、なんでや、このドアノックするだけやないかい。そんな簡単な事が何でできへんのや)」
つ「〜〜〜〜〜っ!!(ダメや!ウチにはこないなことできへんっ!やっぱムリ!!)」
 ガチャッ
つ「(?!)」
田中兄「──はーやっと、クリアした〜最後の音ゲーマジ鬼畜・・・て、ん?」
つ「?!!! っっっきゃぁぁあぁあ! い、いややぁ〜〜〜!!」ドタドタバタバタバタっ!!!
田兄「(きーーーーーーーーん)っ!?!? な、な、な、なんだあ?!」

隣の部屋  ガチャッ
田妹「真夜中にアニ騒いでんのよバカ兄貴!ってか、今の声、ついなっちっ?!」
田兄「?? おい、一体、なんだ?何が起こった?!?何か今、白いものが駆けていったような・・・・?」
田妹「おい、バカ兄貴、妹の友人に一体何をやらかした」(グイッ)
田兄「???痛ててっ! いや、俺も一体なにが何やら?つか、廊下が暗くてよく見えないしっ!?」
───────────────────────────────────────
〜〜〜ついなの部屋(ノックせん奴はぶっ殺すっ!!)〜〜〜
前鬼「───・・・で、ご主人の首尾は?」
後鬼「(肩(?)をすくめて首を左右に振る)」
前「・・・あーぁ・・・ヤッパリ」
後「帰ってくるなり、頭から布団かぶって部屋にひきこもって、何やぶつぶついうてまんがな〜」
前「どれどれ?──────」
つ「見られてもうた、見られてもうた、見られてもうた─────(ブツブツブツブツ)」
前「つまるところ・・・・」
後「せや、失敗したっちゅうこっちゃで・・・・・」
前「まだまだ、わてらが(ぷくくく)」
後「楽しめる余地があるっちゅうこってすわな(くすくすくすくす)」
前「じゃあ、とりあえず次は・・・」 後「ご主人を元気付けますかいな」
前「ぷっははははっこれはまだまだ」 後「こんだけからかい甲斐があるご主人もありませんわ〜 ひーひひひひ!!」

  ガラッ
     前後鬼「あ”っ」
つ「お・ま・え・ら〜〜覚悟はできとんやろな〜〜〜(ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・)」
前後鬼「「ひっ!!」」
つ「待たんかい!乙女の恨み!百っぺんギッタギタにしてもまだ足らんわ!覚悟しいやーーーーーーっ!!」
前後鬼「「わ、わひぃ〜〜〜〜〜〜っ!!!」」
55創る名無しに見る名無し:2011/11/11(金) 21:39:14.15 ID:yMivMkYB
というネタ
56創る名無しに見る名無し:2011/11/11(金) 22:20:05.20 ID:HMptoguV
やっぱり綿抜鬼なんかよりついなちゃんだよな。
あんな荒らしの残した物を優遇する必要なんて、まるで無いだろうよ。
57創る名無しに見る名無し:2011/11/12(土) 00:28:47.16 ID:1mTGnQJl
>>56
本当に煩いよ、ついな派。
荒らしをやっていたと認めて自分の作品は全部廃棄し、第三者の関わっている綿抜鬼だけはどうかご容赦を、って言ってたんじゃね〜か。
鬼子の世界観に合っているかではなく、自演やお涙頂戴で作品をねじ込む温床を作りながら何の反省も無いのと一緒にするんじゃね〜よ。
58創る名無しに見る名無し:2011/11/12(土) 09:58:48.15 ID:FBZLPzrq
>>52-53
前鬼後鬼キャラ立ってんなぁw
関西系はスキあらば前に出ようとするから油断できん。

ごっつポジティブなついなちゃんとネガティブなわーたん
両極端にキャラ立ってるだけに、
避難所でいくら議論しても基礎概念すら固められなかった鬼子自体が
どーしても霞んでしまうのは否めない。
作品作る側としても、「どう動かしていいのかわからない」キャラは使いづらいしね。

と。これ以上は避難所向きか。
59創る名無しに見る名無し:2011/11/12(土) 16:13:26.25 ID:1mTGnQJl
何が吐き気がするかって言うと、こうやって『鬼子が一番要らない』とか『何も決められないスレ住民はクズ』とか、
必死で毒を吐きまくる輩が未だに粘着している事だわな。『固定の概念を決めないのも一つの方法』って話を無視してやがる。
『どの鬼子も鬼子』であって、pixivのロリペドの如く必死で政治系に絡ませない限り、普通に認められてるのが幼稚なオツムじゃ理解出来ないか?

住民や鬼子ディスるためにサブキャラ使って愚痴ってんじゃね〜。だったらそのキャラ使って鬼子と無関係な所で一人相撲でもやってろ。
60創る名無しに見る名無し:2011/11/12(土) 17:00:36.52 ID:p1ceNrPR
ID:1mTGnQJl
はいはい、粘着フィーバー粘着フィーバー。
議論は避難所で。
この単純なルールも分からない奴は、言ってる内容がどうあれ、荒らし認定です。

…こうは言っても、本スレ、避難所で共に論破されたから、どうせ来ないだろうけど。
火の無いところに火をつけようとして、日付またぎの自作自演に、毎度お馴染みワンパターンの過去捏造、
意味もなく、住人を対立させようとしてありもしない派閥を作って、一人で派閥対立ごっこ。
やたら持って回った言い方の、ネチャネチャくどい文章。
他にも特徴ありそうだけど、まあ、これだけあれば十分だから、後はいいか。

一人で踊ってるのが、本スレ、避難所に続き、SSスレ住人にも見透かされて、シカトされてるのに、
それを理解できなくて本人だけ顔真っ赤にしてるのが、
滑稽を通りすぎて、もう「哀れ」なレベルに達してるぜ…?

かわいそうに思うから、助言してあげる。
避難所に来れば、きっと少しは相手してくれる人もいるよ。
言うことがワンパターンでいつも同じだから、相変わらず論破されるだろうけど。
(たまには事実無根な言いがかりや捏造じゃなくて、違うこと言ったら?)
というか住民や鬼子ディスってんのはお前さんだけだろーに。本当に頭が哀れなんだね……。

まあ、わざと挑発的に真実をズバズバ指摘してみたが(SSスレの他の住民の皆、正直スマンカッタ)、
これだけ言ってもチキンな荒らしは避難所に来ないだろう。意気地なしだからね。

そして、これ以上は(自分も荒らしもそれに構う人も)、全部SSスレではスレ違いなので、
建設的な話をしたいのなら、避難所にいきましょう。
61創る名無しに見る名無し:2011/11/12(土) 17:09:42.50 ID:XjQxhsZO
ふむ・・・わーたんか・・・どっちかというとシリアスサイドだから、コミカルなことが多い小ネタの話には絡みづらいかな〜
いちお、そんな話を書いている最中ではあるが、さて?投下するのはだいぶ先になるかなー
お馬鹿ネタだったらどんな話が似合うかな〜?シュール系以外思いつかないが、そのネタはあんま考えつかないたちだしな〜
62創る名無しに見る名無し:2011/11/12(土) 17:33:41.38 ID:p1ceNrPR
>>61
わーたんとついなちゃんって、出会ったらどういう風に絡むんだろう?
この二人って、今まで一緒に登場した話とかないような。
63創る名無しに見る名無し:2011/11/12(土) 17:34:16.40 ID:1mTGnQJl
捏造だって言うんならそっちが過去ログ用意してみせろよ。どうせこちらが用意しても顔真っ赤にして『本物じゃない!』って駄々こねるんだろ?
『ついなちゃんは要らない子なの?』『実は鬼子呪い歌は私が作った』とか、細かい文面は違えど2月前後から消されてなければ必ず出てくる。
過去に実績があるのになんで認めてくれないだとか、反応が無い事に泣き言を垂れるとか、さすがに気持ち悪いんだが。

勝手に妄想で派閥化してるだけじゃなくて、綿抜鬼消したがってる粘着が数人いるのはわかってるじゃないか。
最初に挑戦馬鹿さんへ粘着して荒らしに歪ませた奴と、未だに粘着している奴とな。まあ同一人物かもしれんが。
その容疑が彼の断筆宣言前に『彼は既に断筆された(去られた?)人』とツイッターで妄言垂れ流した奴にかかっているだけ。
事実無根なら本人が弁解すりゃいいのに、相手をキチガイ扱いしかせんで聞く耳持たないのはどっちだよ?
問題のあるやり方だった、勘違いでした、実は粘着は私でした(これは俺だって聞きたく無い)、何にせよ間違いがあれば謝れば済むのに、
放置して問題をこじらせまくって楽しいのか?それともそんな状況を楽しんでいるとでも言うのか?

避難所でとは言うが別に相手して欲しい訳じゃ無いから行かない。それで糞呼ばわりしたけりゃ勝手にしろ。
自分は正直、本当に問題がなくてただのすれ違いだったとか、その時(ねじ込みの時)心が弱っていただけとか、丸く収まる結末を望んでいるだけだ。
可能なら両方生き残るのが良いと思うし、二人のキャラはきちんと鬼子を立てられる役者でもあるとは信じているしな。
64創る名無しに見る名無し:2011/11/12(土) 17:40:16.65 ID:XjQxhsZO
>>62
あーナルホド、・・・・メッチャ噛み合わない会話をかわしそうw・・・て、あれ?以前、そんなネタがあったよ〜な?
わーたん置いてけぼりだったけど。
65創る名無しに見る名無し:2011/11/12(土) 18:18:31.42 ID:p1ceNrPR
>>64
歌麻呂さんの最新のSS?
あれは直接面と向かって話した訳じゃないからな〜。
それとも他にあったかな? 過去ログあさってみるか♪
66創る名無しに見る名無し:2011/11/12(土) 18:39:11.47 ID:XjQxhsZO
>>65
みっけた。スレ24の573だ。ひゃんで検索かけたら出てきた
67創る名無しに見る名無し:2011/11/12(土) 19:32:59.71 ID:p1ceNrPR
>>66
見てきた。そういえばあったな、これww
ついなちゃんの「ひゃん」に萌えたw
ついなちゃんと綿抜鬼が絡むと案外面白いな
68創る名無しに見る名無し:2011/11/12(土) 23:15:27.90 ID:b7bdobwv
これの700以降か。本当にお涙頂戴で捩じ込んでて笑えるわ。捏造って言ってる方が捏造ですね。
http://unkar.org/r/mitemite/1294037200/
少なくとも前後で書かれたそんな卑怯な方法利用してない人の作品は無視されてて、
この頃にあった、何でもガシガシ挙げていく雰囲気は壊れてしまっているのは感じるかな。
荒れてしまえばそれだけでもある程度は注目されるし、禁じ手ではあっても有効な手段ですね。
まぁ使いたいとも毛の先程すらにも感じない、かなり邪道な手段でしょうが。

まぁ、その事があって離れた人がどの位いらしたかしらないですが、少なくとも解決したと思っているのは一部で、
影でイライラされている人は今でもいるんでしょうね。まぁ人の心なんて十人十色ですが。
それらの方々を一切合財切り捨てるのでしたら、同じ様な手法を取る方がまた出たとしても誰も非難出来なくなりましょう。
69創る名無しに見る名無し:2011/11/12(土) 23:56:05.98 ID:p1ceNrPR
その話は「作品が良ければ、経緯なんか関係ねーんじゃね?」ということでとっくに結論が出ております。
以下テンプレ。

この板は創作発表版、このスレは創作発表スレです。これ以上の「議論」は、板違いなので避難所へ。
この単純なルールにも従えない人は、書き込み内容に関わらず、「荒らし」です。
70創る名無しに見る名無し:2011/11/13(日) 06:05:00.02 ID:8cO7Za8d
>>69
あの…人には証拠の提示を求めたり糞呼ばわりしながら、ご自身では示されないのはどうかと思います。


自身のフィールドに持ち込めればそれで勝利宣言でしょうか?そもそもあなたがおっしゃている、
「作品が良ければ、経緯なんか関係ねーんじゃね?」なんて結論、見た事ございません。
もし仮に経緯が一切関係ないのだとすれば、なぜ綿抜鬼の原案者は全て消してから去られたのでしょう?
そんな結論が正式に出ていたとすれば、何も消す必要は無かったですよね?

あちらには『綿抜鬼』を思いついた経緯を勘違いされ(実際はあの人自身のSSから)、
自分のキャラを汚されたなんて仰る方までいる様子ですが、そこまで粘着して楽しいですか?

『音が似ているから私のキャラを汚す目的』『ちょっと反応無かったから要らない子』

あなた方の仰っている事は全くもって理解不能です。もう少し論理的に説明なさって下さい。
こんな事をお尋ねしましたら、私も2chを追い出されるのでしょうか?
71創る名無しに見る名無し:2011/11/13(日) 09:08:40.73 ID:AB2DtV02
>>70
    〃 A´`Aヽ
    Kiミ!|ノノ))))〉  <荒らしはスルーでお願いします
   ノ ヘ.|l.゚ ヮ゚ノ|!_



そんな荒らしに構うな。
そいつは人を小馬鹿にして『荒らしを叩き潰した俺スゲー!!』ってやりたいだけだろ。
現に避難所でも『荒らしだと思っているならそもそもレスするな』と他の人から叱られているからな。
72創る名無しに見る名無し:2011/11/13(日) 09:51:03.20 ID:wyGHowx5
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1315304204/240 続き

 青狸「○○よ、お前にうってつけの仕事を紹介してしんぜよう」
 ○○「ハア?何言ってるんですか、そもそもボクはあんたの部下でも何でもないんでしゅよ?
だいたい群れるのって嫌いなんですよ他力本願で自分一人では何も出来ない奴ってさいて
 青狸「まあ聞け。最近巷では『ヒノモトオニコ』なる『鬼を祓う鬼』が出歩いておる。
木っ端のようなものだが、上の方がえらく気に障っておられるようなのだ。
聞けばお前が執心しておる『綿抜鬼』と、何やら確執がある様子。
そこで、そやつをうまく焚き付けて綿抜鬼と殺り合わせてはどうだろう?
うまくいけば、お前の目障りな綿抜鬼ともども始末出来るやも知れん。」
 ○○「ボクがいつ綿抜鬼に執着しました?
それは天魔党との同盟を反故にしたい別な鬼の工作でしょ?一緒にしないで下さい。
ボクは現世における鬼の存在を確固たらしめん事をじゅんちゅいに願ってるんです。
ていうか『鬼を祓う鬼』って何ですか。自己消滅しちゃうじゃないですか。
そんなものいると思ってるんですか?ソース出して下さいソース」
73創る名無しに見る名無し:2011/11/13(日) 22:57:30.71 ID:AB2DtV02
綿抜鬼『今度こそあの子と…内匠ちゃんで遊ぶ…』
じっと、物陰から様子を窺う綿抜鬼。その禍々しい笑みに、血錆色のハサミが良く似合う。
その背後からそっと近寄る家の主が一人いた。

???『やあ、君は鬼子ちゃん…かな?最近家の内匠とよく遊んでくれて、有難うね』
突然の声にビクリと反応し、振り向きざまにハサミを喉元へ突きつける。
綿抜鬼『あんな仲間殺しの女と一緒にしないで…私の名前は…綿抜鬼よ。内匠ちゃんは何処?一緒に遊ぶのよ』
巧『そ、そうかい。間違えてごめんよ。そういえば雰囲気が随分違うね。内匠は今は居ないんだよ…』
綿抜鬼『そう…なら代わりにあなたが遊んでくれるの?』
綿抜鬼はハサミを下ろさない。これではお願いじゃなくて脅迫だ。
巧『そうだね…遊びでは無いけど、一緒に内匠を待つ間、僕の大好きな事を教えてあげるよ』
ゆっくりとハサミを下ろす綿抜鬼を、巧は招き入れた。

巧『そう…ゆっくり、ゆっくり皮を剥くんだ。中身は柔らかいから気を付けてね』
綿抜鬼『こう…かしら?…やだ…柔らかいのが出てきた』
巧『それを食べるんだから、優しく扱ってね。じゃあ…ゆっくりと○○を這わせて…』
綿抜鬼『こう?…きゃっ!!また何か出てきた!これ…何なの?』
巧『あぁ、それはね…』









巧『君が大好きだって言うハラワタだよ。これを出してから揚げるとジャリジャリしないんだ』
二人は台所に立ち、エビの背に包丁を這わせて背腸を取り除いていた。今日の夕飯はエビフライ。
綿抜鬼『もっと(腸を除く知識を)教えてくれる?』
巧『良いよ!!俺は大好き(料理が)だからね!』
次にサンマへと手をやり、ツツーっと包丁を入れると顎の下へ指を入れ、鰓を外し尾の根元までスルリと内臓を取り除く。
綿抜鬼『素敵(な手際)…』
頬を赤らめてウットリと見つめる綿抜鬼。今日の夕飯に新鮮なサンマの刺身も追加決定か。


帰ってきた妹、田中内匠が二人の中を勘違いしたのは言うまでも無い。


勢いでカップリングした。後悔はしてないが名前や性格設定間違えてるかも。…田中兄には料理好き設定あったよね?
74創る名無しに見る名無し:2011/11/13(日) 23:19:35.34 ID:AB2DtV02
>>73
最後の間違えてるな。
中×
仲○
たぶん他にも間違いあると思うがご容赦を。
本来鬼子とのカップリング用(?)な田中兄に対し、萌キャラならレズ系以外認め無いってイカレたいちゃもんが付き、
鬼子と一緒に描かれる事が少なくなり、他のキャラと無理やりくっつけられてしまうなら、別についな以外でも良いよな。
…あれだな、未亡人へお見合い斡旋してるんじゃ無いんだし、余計なお節介だわな。(笑)



これは個人の感覚の違いなんだろうけれども、自分なら作者へ言質を取る様なあんな押し付けがましい事は出来ないわ。
勝手にやる分には二次だし作者も気楽で良いだろうけど、相手へ返事させた時点で公認にしたいただの我が儘だと写る。
まぁこの辺の感覚は本当に人によりけりなんだろうが、一応勝手な作品で示してみました。下らない内容だけどさ。
文句があるなら作品で。面白さや内容の濃さ、全てにおいて必ず負ける確信はあるんだけどな。
75創る名無しに見る名無し:2011/11/13(日) 23:33:02.71 ID:8yKmYjDM
荒らしも荒らしなんだけど
荒らしに反論する人のズバズバ言う感じと、言葉のキツさなんとかなんないの?
76創る名無しに見る名無し:2011/11/13(日) 23:55:50.03 ID:05S2Uiil
>>73
いいですねーちょっと危険な恋の香りw
だまし絵的な面白さだけじゃなくて、
一緒に料理って萌えるシチュエーションなんだなと。
鬼子ちゃんとかとも料理させてみたいなー。

田中兄は料理好きだったと思います。
でも妹は「匠」さんで、「内匠」さんは親戚のお姉さんらしいですよ。たしか。
77創る名無しに見る名無し:2011/11/14(月) 00:03:03.93 ID:Alp98CE9
これが、田中姉×綿貫鬼という新たなカップリングが誕生した瞬間であった…!
78創る名無しに見る名無し:2011/11/14(月) 00:46:50.74 ID:TFdCApiq
つまり田中従姉(?)は実はコスプレイヤーなだけではなく、動物等の着ぐるみすらも着こなしており、
綿抜鬼が綿を目当てに中身を取り出したら、暑さでバテバテな巨乳のお姉さんが出てくるとな?看病をする内に芽生える友情…。
そしてその艶やかな姿は汗でしっとりと肌に張り付いたシャツや、そこから透けて見えるブラに、動き易さ重視の際どいホットパンツ…。


…あれ?背後に刺すような気配が…。
79創る名無しに見る名無し:2011/11/14(月) 08:15:05.72 ID:IT7dOPjJ
>>78
綿抜鬼「な…中に人が!!腸を期待してたのに人が!!」
田中姉「…


キャスト・オフ!!」
綿抜鬼「ええええええええええええええ!!?」
80創る名無しに見る名無し:2011/11/15(火) 02:15:03.78 ID:/WaGUeFJ
>>76
姉:内匠 兄:巧 妹:巧 だっけ。
81創る名無しに見る名無し:2011/11/15(火) 02:22:28.68 ID:/WaGUeFJ
>>80
もとい、
妹:匠
 だ。何で変換ミスるかな。
82創る名無しに見る名無し:2011/11/15(火) 23:35:08.79 ID:RCc9tM9Z
ついな作者に疑惑がかかってるみたいだから聞くけどさ、劇団鬼子の広報さんにも疑問点があるんだよね。
『鬼子の基礎を知りたい方はこちらをどうぞ!』って言いながら紹介している作品が長芋さんの何だけど、
長芋さんは『二次の方が気楽だから止めて下さい』って、基礎作品として紹介されるのを嫌ってなかったっけ?

もし長芋さんの了承無しにやってるなら問題だし、もし了承取れているのに基礎・紹介用作品を作りたいという方々へ
何も連絡してあげてないならそれも酷い話だと思うんだ。だって、長芋さんの作品ならそのままでも条件に合うけど、
ご本人が『止めて欲しい』と話されている以上は新たに用意すべきだ、って事で四苦八苦されてるんだし。

綿抜鬼の作者を既に消えたとか叩きつつ、綿抜鬼のアイデアは平然と利用(イメージ画起こされた方は良いとしても)したりする上、
彼が求め続けていたであろう基礎・紹介用作品の事ですら、邪険に扱われているというなら、可哀相な話だと思うよ。
まあ、だからと言って荒らしが許されるかと言えば、そうじゃ無いんだろうけどさ。ただ、追い詰めた原因の一つではありそうかと。
83創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 00:44:09.13 ID:UKis7C5J
>>82
真面目に問いたいのは分かるが、書くのは避難所にしてくれ。
ここは議論するところじゃない。
ふだんは避難所見ない人でも、意見書いたから、とリンク張って誘導すれば分かると思う。
84創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 01:23:10.36 ID:AuDIGJab
この板は創作発表版、このスレは創作発表スレです。これ以上の「議論」は、板違いなので避難所へ。
この単純なルールにも従えない人は、書き込み内容に関わらず「荒らし」です。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1315304204/
85創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 09:42:23.48 ID:KzYL08+I
こうしてまた一人、劇団に逆らう者が避難所という名のアウシュビッツに送られた…。
86創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 10:33:51.16 ID:mipmUugB
>>82

>>72続き
青狸「これが日本鬼子の資料だ」
○○「公式ですか?」
青狸「は?」
○○「公式な設定資料なんですか?俺設定とか語られても困るんですけど」
青狸「公式とかわからんが、調査に基づいた資料だから客観的なものだ」
○○「あー、いるんですよね…客観的とか言いながらめっちゃ偏った事言う人
例えばこの『友人』の欄、『田中匠 人間』ってなってますけど、本当に友人なんですか?
本人達は別に友達じゃないとか思ってるんじゃないれすか?
だいたい鬼と友達になりたい人間とかいないでしょ。ちゃんと本人に確認取ったんですか?」
青狸「本人に確認取っちゃダメだろ!?作戦も何もバレバレだろ!?」
○○「あー、はいはい。まともに正確な資料も作れないのに作戦とか…
本人達の意志を無視して勝手に友人にされたりとか、可哀想ですよね、この田中って人。
そうやって勝手に『鬼と友達』とか設定しちゃうから、綿抜鬼に目を付けられたりするんじゃないですか?
少なくともその一因にはなってるとボクはおみょいます」
青狸「ゴチャゴチャ抜かすんなら、いっそ鬼子か綿抜鬼殺ってこいよ、もう!!」
○○「はいはい逆ギレ逆ギレ。これだから鬼組織なんか入りたくないんですよね…」
87創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 10:51:33.08 ID:h8rt6D/Q
誰かツイッター垢持ってる奴が長芋さんに聞いて来れば済む話だろ。
もし基礎・紹介用作品としてOKなら、まとめWIKIにリンクでも張って、鬼子が何か解らないって人は誘導すれば済む話だ。
そうしたら基礎・紹介用作品に関する長い長〜いグダグダな議論もようやく終了、一次があると作り易い方も呼びこめる様になるだろ。
まああの人はツイッター垢を非公開設定してるみたいだから、ポッと出がまずはフォローOK貰うのさえ苦労しそうだし
可能なら既に相互フォローしてる人が聞くのが一番早いかな。まあ劇団の人は上記の指摘のせいでブチ切れてて協力はしてくれないだろうが。
88創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 11:36:50.75 ID:UKis7C5J
89創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 11:46:17.20 ID:h8rt6D/Q
>>88
AU、なんか知らんが避難所書き込めないんだが。パソコン買ったり機種変するまで黙っていやがれ、って事かな?
90創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 12:38:00.68 ID:UKis7C5J
あれ、なんでだろうね?
困ったな。したらばが使えない人がいるなんて事態は予測してなかった。
どこか誰でも議論できる場はほしいけれど、かといってここで議論するのはどうかと思うし…。

とりあえず、このへんでも見て、書き込めるような解決策を探ってくれないかな。
パソコンの状態なんかはこちらでは分からないので。
http://help.livedoor.com/jbbs/
無理そうだったら改めて考えないとね…。
91創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 13:16:38.89 ID:h8rt6D/Q
>>90
有難うございます。そして自分の疑問に関しては既に避難所で解決済みな件…。
あとは他の紹介用作品としたい人がいらしたらどうするか?かな?まあ並列表記とかで大丈夫だろうとは思うけれども。
SSなら歌麿さん、楽曲なら鬼ヶ島さんやUTAU鬼子、漫画なら長芋さんと分野別でも大丈夫だろうし。
92創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 13:43:45.00 ID:AuDIGJab
はいはい、Twitterも、単に難癖つけられただけで何も問題ないことが証明されたところで、
創作スレらしくいこうか。問題ないなら、基本、議論はスレ違いだからな。

で、本スレでも盛り上がってるWaT、SSスレならどう調理する?
意外と組み合わせてみると、面白い二人だよな。鬼子とどう絡むか、考えて見るのも面白い。
93創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 15:05:09.78 ID:h8rt6D/Q
え…?長芋さんに関する部分の疑いが晴れただけで、ついな作者に対する疑問は解決なんてしてないと思うんだが…気のせい?

それでも作品で扱うなら…そうだな、
『いつもいつも滅茶苦茶な騒動を起こして田中家やその他に迷惑をかけて、鬼子に追い回される綿抜鬼だけど、人に慕われたりもしてて、
その綿抜鬼を鬼子も含めて退治し人の役に立とうとするついなは、何故だか街の厄介者としてドンドン人と疎遠になっていく。
その違いに悔し涙を流すついなはとうとう、退治すべきである綿抜鬼に教えを乞う…「どうすれば人に嫌われへんのや?」と。
だが自覚無き綿抜鬼には教えようとしても無理な事。ついなも綿抜鬼の所作から何かを学ぼうと憑いて回るが見えてこない。
いつものように人に嫌われ、好かれている振りしか出来ないついなと、好かれたくないのに好かれてしまう綿抜鬼。
実は二人の違いはただある一点だけであった…』
こんな感じかな?

あとは綿抜鬼が鬼化以前はしっかりと愛されてた日本人形にして、人間への怨みが混じりつついつかまた愛される事を目指しているとか、
ついなは鬼退治以外興味を持たない父や母の気を引こうとして修行し、鬼退治の能力を磨く事以外人との交流方法を知らないとか?
これなら忘れてしまっている元の持ち主=田中匠とかの方向や、ついながお爺ちゃん子になった理由も絡められるはず。

二人の違い?自分ならターゲット以外に迷惑をかけたら、それが意図的でなくともキチンと謝れる事にするかな。
綿抜鬼はまた捨てられたく無いから迷惑かけたらすぐに謝る。ついなは鬼退治さえすればチャラに出来ると思っていて目に入らない。
そんな感じで書いてみたりしそう。ま、案だけ書いて書かないんですがね〜。
94創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 15:13:36.54 ID:D9qrG+za
95創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 15:28:00.83 ID:h8rt6D/Q
96創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 19:26:35.24 ID:h8rt6D/Q
まあ色々勝手な事だけ言われてる様子ですが、実際書けないんだから仕様がない。
それにツイッター垢やpixiv垢持ってるのが当然だとか、ブロック機能無視とかも不思議な話だわな。
まあ他人を捏造扱いしながら、事実にはまともに答えられない粘着荒らしの遠吠えなんだし、ご勝手にどうぞ〜。
ついな作者による歌麿さん宛ての綿抜鬼原作者は既に断筆発言は、前スレ(もう一つ前?)でもう張られて証拠もあるしね。
97創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 19:51:27.47 ID:AuDIGJab
綿抜鬼原作者の断筆宣言って、原作者本人がそう言っていたのに、何がそんなに問題なの?
何を問題視したいのか、マジでさっぱり意味が解らんのだが。
いずれにせよ、議論はスレ違い・板違いです。いい加減、2chのルールを覚えましょう。
どうしても議論したければ、まずしたらばにアクセスできるようになってから来ましょうね。
98創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 20:12:29.40 ID:h8rt6D/Q
>>97
時系列で並べたら分かる。
綿抜鬼原案者本人が荒らしだと言って断筆するより随分以前に、断筆した奴だとツイッターで流布している。
それ以前はいつか戻って加筆修正とかしたいと言っていた人が、その流布以降に突然断筆宣言だぜ?
おかしいとは思わないんかね。まあ、携帯からだと証拠全部張ったりは難しいし、信用はされないんだろうけどさ。

というか…避難所の要望スレにもやっぱり書けない。アドレスバレ覚悟で管理人へのメール部分探すか…PC買うかな?
99創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 20:25:43.98 ID:AuDIGJab
本人が荒らしだと告白する前に一度筆を折る宣言して、後は綿抜鬼は好きにしてくださいと言ってたアレか〜
……で、それで何が問題なの?
100創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 21:05:48.62 ID:h8rt6D/Q
>>99
その一回目が休筆宣言な。勝手に断筆宣言に変えるなよ。

その時には原作者の使用許可云々で揉めていたのを見て、しばらく離れざるを得なくて加筆修正なりを書きためているから、
戻ってくるまでに綿抜鬼やオシリスキーの使用許可は一々出せないから、主旨に反しない限り自由で〜って言って離れらるてる。
101創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 21:26:07.47 ID:AuDIGJab
そ、そんな言葉尻、すげーどうでもいいwww
そんなのみんな知ってるけど誰も問題視してないし、議題にもならんわ
そんなことで粘着してんの…? いや、スレ違いだし、アホっぽいからマジでやめとけよw
102創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 22:32:37.46 ID:KzYL08+I
>>101
http://unkar.org/r/mitemite/1301219266/408
と、
http://unkar.org/r/mitemite/1296485290/238
それに、
http://unkar.org/r/mitemite/1306556163/638-639
か。どれも後で戻りたそうにしているね。

【断筆】
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/140590/m0u/

[名](スル)文筆活動をやめること。筆を折る。「小説家が―する」

【休筆】

[名](スル)文筆家が執筆活動を休むこと。「一年間―する」

んで、ついな作者の引退宣言ツイートがこちら。
http://unkar.org/r/mitemite//1288622773/173
>Saki_Ohenri @johgasaki HNですよ〜。自己を卑下して、そういう名前をつけられていました。
>鬼子の基本ストーリーに「無謀にも挑戦する」から、という理由だそうです。後に分かった事ですが、
>一番最初にワタヌキを考案した人でもあります。その後、荒らしに標的されたので今は引退宣言をされています。

一応こちらには勘違いの可能性あるか?とも書かれてるが、上記の本人の口調とはかけ離れているわな。
人の事を小馬鹿にしたいなら、せめてちゃんと証拠位は提示しましょうね。

んで、現行スレの荒らし宣言はこちら。
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1312339548/258
日付は9月1日。確かに時系列はついな作者の引退宣言後だわな。
まぁ実際の所はどういう心境の変化があったかは知らないけどな。
103創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 22:38:35.08 ID:AuDIGJab
これのどこが断筆と決めつけた宣言なの? マジで分からんのだが。
104創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 22:45:00.16 ID:KzYL08+I
ヒント:ツイッターがデマッターと言われる拡散効果
【引退】

[名](スル)役職や地位から身を退くこと。スポーツなどで現役から退くこと。「スター選手が―する」「―興行」

別に身を引かれているわけではなく、また戻るつもりだった人相手に対してこれは無いよね…。
105創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 22:46:16.52 ID:oAVdgLH4
やっと話を理解できた
想像以上にどうでもよくてワロタw
106創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 22:57:27.28 ID:KzYL08+I
しかも荒らしに標的とされたから休筆ではなく、仕事の都合上だそうだし。
何もかも滅茶苦茶で、おまけに一切説明されてないならそりゃあ勘違いする人もでるわ。
…まさかついな作者=挑戦バカで、既に引退する事を決めていた訳ではあるまいし。
107創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 23:00:06.97 ID:wRpW1NS3
あの、ここ最近の同じ議題で此処(出来れば避難所)で話を続ける人はレス番でもいいので名前を付けて頂けませんか?
(一つの議論の最初に話に加わったレス番でお願いしたい。ここ何日かは同じ人、数人しか喋ってませんよね?)
私はROM専で時々静観させてもらってますが
『#』と『議論のタイトル』を付けて頂けると小説UPの邪魔にならなくて良いかと思います。
小説を読ませてもらうつもりで来た人も一目で分かりそうだし、
何より書く人もタイミング気にせず作品を挙げて貰いたいので。
お手数ですが宜しくお願いします

…こちらに書いたら怒られそうですがまだ此処で話が続きそうなのでお願いしてみました
10885:2011/11/16(水) 23:10:13.41 ID:KzYL08+I
了解です。
そういや避難所でもどうせなら作品挙げろとか言われてるのに、
一人二人のだけしか挙げてないな。しかも綿抜鬼の人を擁護している人か青狸の人のみ。
まぁ設定だけってのをカウントして良いものか、多少迷う所ではあるけれども。
ついな作者を擁護している人って、もしかして印象を悪くさせたくて必死なのですか?
109創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 23:21:36.24 ID:h8rt6D/Q
>>102
証拠提示、有難うございます。自分はもうこの話を書かない様にしますね。
根拠無い事で馬鹿呼ばわりされ続けるのはもうウンザリだわ。
自分は二人のキャラを見るたびにモヤモヤするのが嫌だから一度説明して欲しいだけ。ついなを消せとも思わないから上でも設定は挙げてみた。

猪突猛進系なついなちゃんなら実際人の機微より任務優先しそうだし、実際宝庵さん(?)だか科学者なお爺ちゃんもいたしな。
綿抜鬼には現状のグロなのに何故だか人気がある状況を当てはめてるから、本来の性質無視してるだろうけど…。

まあ、万が一上の設定が纏めてSSに出来たら持って来ます。その時までにモヤモヤが晴れてたら嬉しいけど、無理難題だよな…。
110創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 23:36:24.60 ID:AuDIGJab
はいはい。そうは言いつつ、日付が変わったらまた別人の振りで、
下らん言いがかりを書き込むんだろ。いつものパターン乙。
111h8rt6D/Q ◆dcoQl0aNyo :2011/11/17(木) 00:06:28.98 ID:yEP/XiGW
これで満足か?偽物出されても迷惑なんでな。
証拠も出せないで馬鹿呼ばわりするクズはとっとと出て行けよ。
112107:2011/11/17(木) 00:19:22.04 ID:LG74YYya
>>108
>>111
すみません、お手数おかけして。謎解き感覚で議論の応酬を見てるので誰が誰なのか分かりやすくなります
本当は議論は別の所へ(避難所さんなぜAUダメなのかな?困ったねー)、SS師さんが早く気楽に書いて貰えるようにしたいですね
おやすみなさい
11385 ◆IEWOxphiII :2011/11/17(木) 08:05:52.54 ID:JcPpavxq
こちらもコテハンつけておくか。勝手に別人の振りとか言われても困る。
いい加減言いがかりで綿抜鬼に苦情を付けている奴らの、その根拠を見せて欲しいんだがね。
『完全に一人歩きしているなら』という部分を満たさず、あんたらにとってあくまで挑戦バカの作品であり、
荒らしの残した異物として消し去りたいというのは、他の作品には適用されないみたいだしさ。
そちらがそう言うなら、ついな作者もあくまで問題発言ばかりのトラブルメーカーであり、
誰かがその作品を扱わないで欲しいと言うなら、実際に使用を取り下げるべきだろ?

「作品が良ければ、経緯なんか関係ねーんじゃね?」この結論は自分も確かに見ていない。
そして挑戦バカがあくまで12月頃に戻りたそうにしていたのに、突然荒らし宣言して消えた理由も理解できない。
間にあったのは外部でも精力的に活動しているあの作者が、勝手に他のSS書きへ引退者と紹介している事だけ。
ツイートが間違っていたとか、そんな訂正をしていたという話も、上記の結論と同様に見ていない。

構図は同じだよね。ついな登場前に夜叉子さんもライバルキャラとしていたのに、
泣き落として無理やりついなを捩じ込み、以降ほとんど夜叉子さんは利用されていない。
今度はお気に入りのSS書きの人へ、以前いた書き手は消えたと平然と嘘を伝えて、
挑戦バカは何があったのか全部消して姿を眩ました。本当に荒らしかは証明のスベも無い。
自分のキャラを使って欲しいばかりに、一体何人消し潰していけば気が済むのさ?
もしそんな意図が無かったなら、何故一度も明確な説明をしようとしないのさ?

あれだな、両親が子供に大会優勝して欲しいばかりに、他の子供を潰していくなんていう、
『親馬河(オヤバカ)』っていう鬼でも作って、ストーリー練ってみるか。
言っておくけど、もちろん最後に一番傷ついて友達も一切無くすのはその子供本人だぜ。
誰も子供に罪があるとは言ってない。本気で自分の作ったキャラが大切なら取らない手段を取り過ぎだと言いたいんだ。
114創る名無しに見る名無し:2011/11/17(木) 14:11:04.73 ID:Ht7ZrWT5
短編小説
『心の鬼とは』〜現状認識と祓った後〜1/2

 鬼子と情報交換をしている刑事さんから聞いた話で、こう言うのがあった。

 「ネット犯罪が増えててね」

ネットと言う言葉を田中さんから聞いていた鬼子だが、良く理解は出来ていない。
だからその刑事さんからも、色々教えてもらっているみたいだ。
刑事さんが言うには、その世界には言葉の暴力と言うものが存在しているらしい。
そして、その世界で人間形成をしてしまう人が沢山いる事も教えてくれた。

言葉を投げつけるだけなら誰でも出来るけど、受け止めるとなると、凄く重く感じてしまう。
重く感じてしまったら、鬱陶しくなり、楽な方を選ぼうとする。
そうなると、言葉を投げつけるだけの作業の中から、自分の存在価値を見出そうとする。

そう・・・。歪んだ存在価値を・・・・・。

しかし、自分自身ではそれに気付く事は無い。
歪んだ存在価値を、自分自身を正義と勘違いしてしまう。
自分が吐く言葉が、全ての人と同じ意見だと思い込み、
別人が吐く言葉には、大きな壁を作って否定している。

 「画面を相手に、言葉を喋っている」

そんな人達が大勢いる世の中になってしまったようだ。
画面相手に理路整然と言葉を打ち込み、勝ち誇って存在価値を高めていく。
例えば、
 「心って、なんなんだろう・・・」

誰かがそうつぶやくと、一斉に見知らぬ相手から無責任な罵倒の嵐が降ってくる。
そんな世界になってしまった今の生活を、誰も止めようとはしなかった。
いや・・止めようとしないのではなく、既に歪んだ存在価値を創り上げている者から
そんな発想が出てくるわけが無いらしいのだ。

 暗闇の中、鬼子の後ろで頭を下げている刑事さんがいる。
刑事さんは、気を失った男の人を車に乗せ走り去って行った。
今回、心の鬼を祓った人物は、その刑事さんから聞いていた人で、
ネットの世界で暴言や罵倒、さらには嘘の情報を大量に流していた人物だったのだ。
心の鬼を祓った行為に対して、虚しい衝動にかられている鬼子がいた。

 「私も、心の鬼に取り付かれる事があるのかしら・・」

鬼子はいつもそう思いながら、心の鬼を祓っているのだ。

 都会のビルとビルの谷間は、人を寄せ付けない異世界のようで、音の無い暗い空間を創っている。
心の鬼を祓った場所を、黒い瞳が寂しそうに見つめていた。
手に持つ薙刀が、泣き止んだかのように淡い光りを失っていく。
肩を落とし、独りたたずむ鬼子の傍らに、白い四本足を持つ小さな動物が近寄って来た。
115創る名無しに見る名無し:2011/11/17(木) 14:12:02.70 ID:Ht7ZrWT5
2/2

 「そんな寂しそうな顔をせんでくれ」

地蔵様が、鬼子の足元で小さく微笑みながらそう言った。

 「地蔵様・・・。心の鬼の正体って・・・」

地蔵様の耳が、小さく動く。

 「残念ながら、鬼子が考えておる通りかもしれんな・・・」

小さな白い足が、二歩、三歩と前へ進む。
鬼子は、地蔵様の背中を見つめながら話を聞いていた。

 「確信は無いが、生きる者の“心”と“心の鬼”とは表裏一体なのかもしれん。
  個人的な利害を求めて他の者を罵倒したり、あらぬ噂を立てて混乱させる。
  思い込みの激しさに、自分をも飲み込んでしまう事がよくあるからな」

鬼子はユックリとうつむきながら、瞳を閉じていく。同じ思いを抱いていたのかもしれない。

 「生きる者の心が、心の鬼を産み育てていく。そして、育ってしまった心の鬼は・・」

 「地蔵様・・それ以上言わないで・・」

鬼子は、言葉を詰まらせながら精一杯そう言った。悲しい、辛い惨状が目に浮かんだからだ。
地蔵様は顔を上げ、何かを思い出したかの様な表情をしている。

 「・・・しかしそんな現状を前に、遙か過去にこう言い放った奴がおるんじゃ」

地蔵様のその言葉に、潤んだ瞳を傾ける鬼子。

 「心と心の鬼は別物だ。俺は、目の前でそれを見た・・・とな」

鬼子の表情が険しくなり、地蔵様の背中を見つめている。

 「地蔵様・・それって、その言葉って・・・」

ユックリと鬼子の方へと振り向く地蔵様。
その目線は鬼子の頭の傍らにそそがれていた。

 「そう、般若面が言った言葉じゃ。・・・まだ面になる前の・・・遙か昔の般若がな。
  今では力を使い果たし、語る事も出来なくなった般若面じゃが、
  誰かを通じて、何かを語ろうとしていた様にも見えるんじゃ」

鬼子は、心の鬼を祓った場所を改めて見つめ、薙刀を握り締めた。

 「誰かを通じてって・・もしかして・・・」

地蔵様は、ビルとビルの隙間から覗く星空を見上げながら言った。

 「そう、鬼子を通じてな」



ヒワイドリから一言。
「乳の・・もとい。創作の話をしようじゃないか!」
ワクワク創作〜
116時の番人 ◆B1etz7DNhA :2011/11/17(木) 14:54:43.58 ID:Ht7ZrWT5
名前入れ忘れ・・
117時の番人 ◆B1etz7DNhA :2011/11/17(木) 14:57:48.96 ID:Ht7ZrWT5
お!今気付いた。
IDのWとTの間にaを入れると今噂の!
118創る名無しに見る名無し:2011/11/17(木) 15:43:23.91 ID:YG/NAqfd
>>114-115
GJです。
重くなるのを嫌ってか、滅多にこのテーマが扱われる事ってないですよね…
結局は鬼子って「人」と向き合うもののハズなのに
鬼子と向き合おうって人はほとんどいないのかも知れない。

て、そこでWatきますかw
119創る名無しに見る名無し:2011/11/17(木) 17:09:46.42 ID:2CxpqHPU
>>114>>115
スレの流れを創作に戻してくれて有難う御座います。
貴方にとっては、レスの内容全てが創作の糧となるんですね。
恐れ入りました。

>手に持つ薙刀が、泣き止んだかのように淡い光りを失っていく。
薙刀はただの道具にすぎないと思っていたのですが、
時の番人さんの中では、もしかして…

>>118と同じ内容になってしまいますが、
そこでWatきますかw
120創る名無しに見る名無し:2011/11/17(木) 19:48:20.02 ID:zGNyaO9y
>>114-115
まさかの時の番人さんwお疲れ様です!
SS読んで、すっきりしました。
なんか、自分の思ってることを体現してくださるものを目撃すると気持ちがいいなあ。

WT5……Watと五変態ですね分かります。
121創る名無しに見る名無し:2011/11/17(木) 20:33:25.45 ID:8tBiC6ft
>>114-115
ぬわにぃ〜番人さんとな!お久です。
俺は般若面の悲しい過去の隠れファンなんで、
般若面に関してのちょぃSSが読めて嬉しいです。
2ちゃんの世界は人との交わりや同調が難しいみたいなので
鬼子も苦労してそうですね。
>>120
WT5……Watと五変態。なるほど奇跡が起った。
122創る名無しに見る名無し:2011/11/19(土) 17:18:39.07 ID:6+hOOm3p
GJの流れになったな。

さすが鬼子だ。
俺を含め多数の心の鬼を
散らしてくれたのかも。

色んな人が思い思いの鬼子ワールドを自由に創作出来る場は
やはり守っていかないとな。

AU、書き込める様にしてあげてくれ
したらばさん。

>>123
数行でも良い。創作SS頼む。
何?お題くれってか??
じゃぁ、、、、こにぽん対モモサワの御握り争奪戦!でw
123創る名無しに見る名無し:2011/11/19(土) 17:37:37.26 ID:FQDhGTWs
いや、それを創るのは思いついた君の権利だ。ボクは受け取らないよ。君が創ればいい。
124h8rt6D/Q ◆dcoQl0aNyo :2011/11/19(土) 18:01:07.41 ID:rIBmNuXZ
小日本『ねねさま…無事に帰ってくるのかな?』
小日本は一人、オムスビを作っていた。いつも一緒にいた鬼子の姿はそこには無い。
ハンニャー『大丈夫よ…あの子は強いわ。きっと天魔党なんかにも負けない位に』

この国に限らず、戦により無念の死を遂げた者は多い。その念による悪鬼は心の迷いが生み出した生者の鬼より強大である。
ましてやその念を呪詛にまで高めて、何故存在を許されなかったのかと、全てを恨む様に産まれた悪鬼は、近付くだけで心を病む。
鬼に侵された者自らの迷いを断ち切りたい想いを増幅し、鬼を浄化する刃となす『鬼斬』で斬れるかどうかも解らない。
鬼子は、誰にも呪詛が及ばぬようにと皆を残して一人で旅立った。あの天魔党の本拠地へと…。

帰ってきた時にお腹を空かせてたら可哀想と、小日本は毎日せっせとオムスビを作り上げる。悪くなる前に皆で食べるのだけれど。
ハンニャー『小日本…塩を入れるのも忘れる位心配なのね…』
モモサワ『ワイのにはキチンと塩味が付いてまっせ?』
見ると、小日本は耐えきれなくなり、さめざめと泣いていた。もう会えないかな…それなら嫌だな… でも…でも。

後日、ハンニャーはある庵を尋ねたのだった。鬼子とってはやはり敵。しかしもし可能性があるならこの一族…。
ハンニャー『あなたの所って、確か本来はお寺の家系よね…もしかして「死者の念」に対抗する手段も知ってないかしら?』
先日の天魔党との戦闘で後鬼を失い、その復活のまじないを行っていたその者は手を止め、ニヤリと笑う。
ついな『あるでぇ…とって置きのヤツがな。アイツらと戦う覚悟、ようやく決まったみたいやな!』

皆は一足先に旅立った鬼子を追う。小日本の涙を止めるため、鬼子を一人で戦わせないために。
ヒワイドリが運転する車のトランクに、オムスビを抱えた小日本が隠れているとは気づかないまま…。
125h8rt6D/Q ◆dcoQl0aNyo :2011/11/19(土) 18:05:53.22 ID:rIBmNuXZ
争奪戦にはならないが、まあ…その…申し訳無いです。ごめんなさい。こんな形でアレなんですけど。
126創る名無しに見る名無し:2011/11/20(日) 14:24:56.12 ID:ivoSXC2X
[こにぽん対モモサワガエル・御結び争奪戦]

「最近、モモサワってヤイカみたいにメタボってきたよね」

モモサワを見ながらそう言うのは、こにぽんだった。
その言葉を聞いたモモサワが、不意に怒り出す。

「ワイは立派な両生類だぞ!あんなエラ呼吸の魚類と一緒にすんな!!」

そうは言うものの、皆陸上で生活しているのだが‥‥。
ここで、こにぽんが名案を思いつく。

「ネネ様がね、あの御結び山の頂上に“一年間御結び食べ放題券”を置いたんだって。
その券を取りに行く競走をしようよ!」

こにぽんは、モモサワの身体を気遣って運動させる気なのだ。
もちろん食べ放題券なんて存在しない。
しかし、モモサワも馬鹿ではないので、嘘だとすぐ気づくだろうが。
こにぽんが恐る恐るモモサワの表情を観察していた。
すると‥‥。

「まじか!!?じゃぁ今すぐ競争だ」


ここで一句、
   モモサワは 食につられて 走り行く
   幼き心 気付かぬままに

おわり 
127創る名無しに見る名無し:2011/11/20(日) 16:26:41.80 ID:Wp3BXz1p
>>124 >>126
お二方ともGJ。
自分も何か書いてみたいが、最近長文書くと文章が尻滅裂でな。
128創る名無しに見る名無し:2011/11/22(火) 02:34:24.49 ID:EIy75bnF
───ふぅ、今日はまた一段と冷えるな。
 オレは庭先を適当に掃き掃除しながら、ブルッと身体を震わせた。オレはわんこ。そう呼ばれている。
当然、ホントの名前ではないが……まあ、それはどうでもいい。オレはさる事情から
ひのもと家に居候している自称番犬だ。この家に住んでいる鬼の姉妹に世話になっている。
食客の手前、それなりに家事を手伝ったりしている訳だが……早朝から庭先の掃除は少し厳しくなってきた。
本格的な冬まであと少しだろう。冬支度も大体終わったし、後は新年を迎える支度をしなきゃな。
 どうせ、今日も色々とお使いをしなきゃなんねえだろうな。まあ、オレの俊足でさっさと用事を済ませるとして、
小日本の遊び相手をするのにどれだけ時間が割けるかだな。そろそろあの姉妹は朝餉を済ませる頃か
 つらつらとそんな事を考えながら、落ち葉を掃き集めていると……

「ネネさまなんて、キライ!」
突如、家の奥から癇癪をおこした幼いだろう女の子の叫び声が聞こえてきた。
 おいおい、朝っぱらかよ。勘弁してくれ。あの姉妹は、まあ、いわゆる『喧嘩するほど仲が良い』のだが、
毎回毎回、トバッチリを食うのはオレの役割だ。見ててほっとけないとはいえ、毎度振り回されていると
「またか」と思ってしまう。ま、だからといってホントにほっとく訳にもいかないがな。

「こに!待ちなさい!」
 ドタドタと玄関に向けて駆けてくる足音を追いかけるように女性の声が響いた。
ああ、あれはいちお、オレの主人の鬼子だ。なんだろな。出自は鬼なのに、鬼を祓う事を生業としている。
鬼を祓う時はあれだけ凛としているのに、日常生活じゃどうしてああもヌけているんかなって人柄(鬼だけど)だ。
 いや、ま、本人は一生懸命で生真面目なんだけどよ。もうちょっと肩の力を抜いた方がいいと思うぜ。
口に出したりはしない。ま、まがりなりにもご主人様だかんな。
そんな事をぼーっと考えていたら、玄関をガラガラと開けたと思ったら、ピンクの着物を着た人影がテケテケと
駆けていった。
「もう、あの娘ったら」
 玄関口に姿を現したのは赤いもみじ模様の着物の女だ。長い黒髪のなかにツノが日本にょっきりと生えている。
いちお、さっき話していたオレの主人、鬼子だ。毎度の妹分の癇癪に途方にくれた様子だ。
 オレは掃除していた手を止め、どうしたものかと竹箒の柄で耳の付け根をカリコリと掻いた。どうせこっちに
お鉢が回ってくるんだろうが、進んで面倒事に片足を突っ込むのもどうしたものか。
ぶっちゃけ、兄弟(姉妹)喧嘩なんて夫婦喧嘩並に首を突っ込むもんじゃないって思い知っている。
何せ、オレの兄弟がそうだったからな。だから、あんまり関わりたくないのだが……
「わんこ、あの子をお願い」
……内心、ため息をついたが仕方ない。ご主人さまのごよーぼーとあっちゃあ仕方ないか。毎度毎度、気にしすぎ
だとは思うけど、こう思い詰めた表情で頼まれては無下にするのも気が咎めるし……しょーがねぇ。
また無駄骨折ってやっか。だが、その前に諍いの原因は何だったのか聞いておかないとな。
「んで、今度は一体ナンだってんだ?」
 いちお、水を向けてみると、鬼子はおずおずと、言いにくそうに切り出した。
「えぇと、夕べあのコが『朝ごはんにすいとんを食べてみたい』って言い出して……でも、色々な都合でそう
 急に変えたりもできなくて……まさか一晩経っても覚えているなんて思わなくて、あのコそれでスネちゃって
 ……『ねねさまは、こにことなんかどうでもいいんだ』なんていいだして……」
「…………わかった。後は任せとけ」
 とりとめもなく話し始めたからもうそれ以上の顛末は目に浮かぶようだった。だから遮った。それにしても……
夫婦かっ!ここまで聞いただけでもクラクラしてくる。アンタらより中のいい姉妹、きっと他にいねーよ。
なんてか、取り掛かる前からメチャクチャ脱力するんだけど!
「お願いね、わんこ」
 すがりつくような目で言われてもな……本人生真面目で気がついてないようだけど、んなに深刻に
なるようなもんでもねーだろよ。さて、あのお姫様の気をなだめて、連れ戻すか。グッと自慢の足に力を入れて……
「あ、それと」
 駆け出そうとする直前、鬼子が呼び止めた。オレは勢い余ってひっくり返りそうになった。
「……んだよ」
 ぶすっと返したが、鬼子は辺りに誰もいないのに憚るように周囲を見回し、オレの耳元に口を寄せた。
「あの……ね、田中さんが……(ゴニョゴニョゴニョ)」
129創る名無しに見る名無し:2011/11/22(火) 02:35:36.74 ID:EIy75bnF
「…………」
 まあ、鬼子のヤツの吐息とかオレの鼻が人間よりよく効くとか色々気になる部分もあるがそれはおいといて。
「……わかった。じゃあ、それまで適当に誤魔化しておけばいいんだな」
そうして、もう一度走りだそうとしたら「あ、それと」と、呼び止められた。何かと思ったら、上着を手渡された。
寒いからこの上着を持って行ってやってくれ。との事だ。
「あのコ、寒そうな格好のまま飛び出していっちゃったから」「分かった」
そう答えると、また呼び止められたらかなわないのでとっとと走り出した。

───さて、こんな時、アイツはいつもの所に居るって分かってる。そこで不貞腐れているんだ。
昔は鬼子がどこにいるか見つける度に場所を変えていたらしい。だからイチイチ場所を探さないといけなかったが、
オレが来てからはここが定番の不貞腐れスポットになっている。まあ、オレが貧乏くじを引くことになったのも
そういった事情があるんだろうけどな。

 ざむざむざむ。と、背丈もあるほどの枯れ草を踏み分けてゆくと、チャポン、ちゃぽん、と、水音が聞こえて
きていた。あぁ、やっぱりここに居たか。きっと、小石を水ん中に蹴り落としているんだろう。
池の畔なんて場所、寒いだろうに。
「……だから、考えすぎでヤスよ……そんなに気に病むことじゃないでゲス」
「でも……ねねさま、あんまりなんだもん。ゼッタイ、こにのこと、どうでもいいって思ってる」
……誰か先客がいるようだ。会話が聞こえて来る。ま、誰と話しているかは確認するまでもないけどな。

「でも……でも……」
 そう言って涙ぐんでいる小日本にバサッと頭から上着をひっかぶせた。
「おら、何やってんだ、こんな所で。そんな格好じゃさみーだろが」
「わんわん……」
 わんわん言うな。ったく、どいつもコイツも。
「ほら、お迎えがキタでヤス。素直に帰って謝ればきっと鬼子も許してくれるでゲスよ」
やっぱり、こにぽんと話しているのはヤイカガシだった。いちお、お守りの妖怪だから警戒する相手じゃないし、
逆にこにぽんと一緒に居たなら、心強い相手ではある。
 だが、その一言は地雷だったな。
「こに悪くないもん!悪いのはネネさまだもん!」
あーぁ、ヘソ曲げさせちまった。宥めるのにオレがどんだけ苦労するのやら。ま、オレが来るまでコイツの話相手を
していた事とチャラだな。
「あー……だったら、どっかいってみっか?とっておきの場所があんだけどよ?」
 ヤイカガシに余計な事を言ってくれたな的視線を送りながらボソッと呟いてみた。
「……いい、こに、ここに居る……」
さよけ。しょーがねえ。ちょっち付き合ってやっか。

・・・・・・・・・・・・・

むず、と鼻がむずがった。
「っっっぶぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っくしっ!!」
ズビーあ”〜〜〜そういや、鬼子のヤツ、こにの分しか上着、用意してなかったもんな。そんだけ、こにぽんの事が
気になって仕方がなかったんだろう。走ってる間ならともかく、じっとしてっと身体が冷えて仕方ねえ。
「わんわん寒いの?」
だからわんわん言うなっての。
「へ、ダイジョブだっての。普段から鍛えてるオレ様をみくびんなってんの」
こんなちっこいこにぽんに気遣われるなんて冗談じゃねえ。ここは男をみせないとな。ズズー……ぶぇっくしっ!
「も〜〜しょーがないなあ、わんわんは……それじゃ、いこ!わんわんのひみつきち!」
む。なんとなくをのこの矜持が傷つけられた様な気がしないでもないが、コイツが移動する気になったんなら、
なんでもいいや。
「おし、そんならついてきな。とっておきの場所に連れてってやる」
「うん!」
とと……その前に、こにに「ちょっと待ってろ」と待たせて、まだ律儀に一緒に居たヤイカガシを呼んでボソボソと
耳打ちをした。

130創る名無しに見る名無し:2011/11/22(火) 02:36:57.45 ID:EIy75bnF
「……わかったでゲス。こっちでやっておくでヤス」
おし、これで大体、なんとかなるかな。
「……?む〜〜〜一体、何ナイショ話してるのよ〜〜〜」
「あん?ウマそうなミミズの有り場所を教えてやったんだけど、何、聞きたいの?」
「い、いい、いらないっ!」
ヤイカガシが抗議の視線を送ってきたが、わりい、後で埋め合わせする。仕草で抗議を遮った。
「さて、んじゃ行っか!」
これ以上ややこしくされても困るのでさっさと話を切り上げた───

「──ふわあ〜大量、大量〜〜〜」
さっきまで泣いてたが上機嫌でニコニコしている。ふぅ、なんとか機嫌が戻ったか。
オレがこにぽんを案内したのは秘密の場所──柿がいっぱいなっている場所だった。
最近は季節が妙なせいか、この時期が一番多くできていた。まあ、今朝が寒かったからこれが最後の旬だろう。
「いいか。ここは秘密の場所だからな。誰にもナイショだぞ。いいな」「うん!」
やれやれ。これからどうするかだな。
「じゃ、これねね様に届け───」
ここで不意に表情が曇った。あー……思い出したか。
「ま、まあ、なんだ。鬼子ならこの柿見せれば機嫌治るんじゃねーかな。だってよ。こんなに沢山あんだぜ?」
そんなわきゃねーんだが、とにかくそうしないと話がすすまねえ。
「……うん」
まあ、渋々だけど、こうやってひのもと家にオレたちは帰った。

────!?っ
 家には鬼子が居なかった。それどころか、家の中はメチャクチャに引っ散らされていた。
「ねねさまっ?!ネネさまっ!」
こにが手に持っていた沢山の柿を放り出し、家の中に駆け込んだ。だが、広いとはいえないこの家のどこにも
鬼子は居なかった。
「どうしよう……わんわん、ねねさまが、ねねさまがどこにも居ない……」
コホン……さて、と。
「あー見ろ。こにぽん。こんな所に矢文があるぞー」
指さした先には矢に丁寧に文が折り畳まれ結び付けられ、土間の土に矢ごと突き刺さっていた。
 こにぽんはそれを見てサッと顔を青ざめさせた。
オレはそれを広げて読み上げた。
「あーなになに?『わはは、ひのもと おにこは おれがさらった。こんどはたなかをさらってやる。くやしければ
 たなかをさらうのをとめてみせろ。わるものより』だってさ。どうするよ?」
「…………許せないの」
俯き加減にボソリと呟いた。
「ん?」
「許せないの!ねねさまを取り返して田中を守るのーっ!わるもの、やっつけるの!わんわん背中貸してっ!」
「お、おう」
 こにぽんは奮然と怒りに燃えていた。おいおい、つい気圧されちまったけど、ホントに大丈夫か?
オレはコイツを背に乗せると、おっことさないように気をつけて山道を走りだした。

───さて、田中の家だ。その頃には辺りもとっぷり暮れて暗くなり始めていた。つるべ落としってやつだな。
 オレはこにを下ろすと、今にも飛び出しそうなこにを抑えることにした。
「いいか。悪者は、きっとまだオレたちが到着したことに気がついてねぇ。だから、そっと入って脅かしてやろう
 そうすりゃ、ビックリして鬼子を放すに違いないぞ」
それを聞いて今にも大声で怒鳴りこみそうだったこにぽんは大人しくなった。
 田中の家は、暗く周囲に沈んで辺りの家と比べ、灯りがついてなかった。唯一、玄関の入り口だけはオレたちを
招き入れるかのように蛍光灯が灯っていた。
 ガラガラガラ───玄関に鍵はかかっていなかった。
「……誰もいないの?」
 廊下のボンヤリとした灯りが辺りを薄暗く浮かび上がらせていた。心なしかこにぽんは怖気付いたようだ。
「どうする?きっと、この奥に悪者はいるんじゃねえか?何なら、オレがいくか?」
 その言葉にもこにぽんはフルフルと首を横に振った。
「わんわんはあくまでさぽーとなの。ねねさまがいない今、こにがねねさまを助けなきゃいけないの」
「──わかった。じゃ、せーの、で中に入るぞ」「うん」
131創る名無しに見る名無し:2011/11/22(火) 02:37:34.62 ID:EIy75bnF
 ──さて、そろそろだ。巧くいってくれよ。
「「いっせーの、せっ!!」
              ガチャッ

 パッ パッ!!  パパッ!!

 「きゃっ!」
一斉に室内が明るくなり、目の前には真っ黒な衣を纏ったいかにも『わるもの』といった感じの怪人が
立ちはだかっていた。

「わははははっ!よくぞここまでやってこれた!このわるものを倒せるかな〜?……なーんてねっ!」

「えっ?」
 『わるもの』はアッサリとその黒い仮面とビニール製の衣を剥ぎとると、田中になった。
いつもより高い位置から見下ろして、いたずらっぽい表情で笑っている。
「えっ?えっ?えええっ?たなか、わるものだったの!ねねさま、ねねさまはどこ?!」
落ち着け。台詞がひらがなのままだぞ。
「ははは、よし、ここまでやってきた良い子には鬼子を返してやろう〜〜」
芝居がかった台詞を吐くと、そのまま仮面と衣装を放り捨てた。
すると、黒衣の下からバツが悪そうに鬼子が姿を現した。田中の下にしゃがんで黒衣の中に隠れていたのだ。

「ごめんなさいね。こに。どうしても田中さんがこうやってこにの誕生日ををお祝い……て、」
そこまでしか言えなかった。こにぽんが鬼子の胸に飛び込んで泣き始めたのだ
「ねねさま、ごめんネ、ごめんネ、ねねさまぁ……」
……やっぱり、なんだかんだ言って、喧嘩したことをずっと気にしていたのか。悪いことをしたかな。

緊張の糸が切れてヒックヒックとしゃくりあげるこにぽんを鬼子は優しく抱きしめた。
「ううん。ありがとう、こに。アナタは私の自慢の妹よ。よくここまでガンバったわね」
 田中のね〜ちゃんが思いがけない展開にぽかーんとしていたので、今朝方、鬼子とこにぽんが喧嘩した事を
そっと耳打ちして教えた。それを聞いて、アッチャ〜〜〜とばかりに頬をポリポリと掻いていたが……

「そそそ、それじゃ、二人の仲直りに、いっちょ、ぱ〜〜〜〜っとやっちゃいましょうか!」
「やっ!」
「へっ?」
こには鬼子の首にギュッとしがみついて田中を睨み付けていた。
「田中がわるものだったなんて!ねねさまはこにのものなの!こにがねねさまを守るのっ!」
鬼子の首にひしとしがみついてちゃ、あんま説得力ねーぞ。こに。まあ、気持ちはわかるけどな。
「はは、その設定、まだ生きてたのね。えっと、あ〜〜〜〜こ、こにちゃん?」
おぉ、珍しい。田中のねーちゃんが固まってる。

「えっと、こに、ダメよ。田中さんはアナタの為にわざわざ『わるもの』役を引き受けてくれたのだから」
そう。これはこの前、鬼子がさぷらいずで誕生パーティーを祝ってもらって「こにも”さぷらいず”して欲しい!」
と、ダダこねたのを覚えていて、別の趣向をこらしてみたものだった。

 実は鬼子はこにみたいな小さい子にこんな凝ったものは出来っこないのではないかと心配していた。
まあ、実際はちゃんとここまで来れた訳だけど、それまで鬼子はヒヤヒヤしていたに違いない。

「ほら、よく見て、この前と同じようでしょ?」
 鬼子が示す先には『こにちゃんお誕生日おめでとう!』の文字。
「……えぇと、じゃあ、田中は『わるもの』じゃなかったの?」
 まだよく分かってないようでおずおずと鬼子に聞いていた。まあ、あれだけ思い込んでちゃそう簡単に
思い込みを変えるのは難しいもんだよな。

132創る名無しに見る名無し:2011/11/22(火) 02:38:24.62 ID:EIy75bnF
「ん、んん!それじゃあ、その証拠に……もう一度仕切りなおすね」
田中が気を取り直して喉の調子を整えた。
「こにちゃん!お誕生日!
  「「「「 おめでと〜〜〜〜〜〜!!!」」」
不意に、田中の音頭に大勢の面子が唱和し、クラッカーを打ち鳴らした。
 「えっ?えっ!!ええっ?!」
 実は、みんな実は壁際で今か今かと出番を待っていたんだ。壁だと思っていた所はみんな布を掲げて
その裏に隠れていたんだ。危うく台無しになる所だったけどな。
 まあ、おかげでなんとか「さぷらいず」になったかな。オレも一時はどうなるかとヒヤヒヤしたぜ。

みんなが一斉に現れてから、やっと事情が飲み込めたみたいだ。こにもビックリしていたが、やがて笑い始めた。
 切り替えが早いのはこんな時、助かる。まあ、場所が場所だし、ヤイカガシに人集めを頼んだの急だったから
鬼子の時ほど盛大には祝えなかったが、こにぽんは大喜びだ。
 さて、それじゃ、オレはひとまず誘導役は終わったし、料理や飲み物を運ぶとするか。
……と、お菓子の方が多いけどな。今日は。
 これだけ骨を折ったんだ。骨付き肉のひとつや二つ、つまみ食いしたっていいよな。
そんな事を思いつつ、オレは会場を背後に田中家の台所に料理を取りに向かっていた────

                                          ──終──
133こにの誕生日:2011/11/22(火) 02:41:57.11 ID:EIy75bnF
>>128-132
くぅ、間に合わなかった。そんな訳でこにの誕生日でした。そういえば、鬼子の代表デザ決定からそんなに間をあかず、
こにぽん投票したっけね。こっちは、設定上は、鬼子とこにぽんが出会った日。という設定で祝っています。
なにせ、鬼子もこにも、出自は分からない状態ですからね。それではっ!
134創る名無しに見る名無し:2011/11/22(火) 10:46:44.19 ID:bE6V15Vq
>>128-133
乙です。まー、我々リアルでこにぽんの誕生日忘れてたので少々胸が痛い。

そして犬のくせに意外と寒さに弱いわんこ萌えw
135創る名無しに見る名無し:2011/11/22(火) 12:50:19.87 ID:YL1kPAnJ
>>128-133
乙!長文お疲れ。
わんこって縁の下の力持ち的な存在ですね。

心の鬼が誕生日を忘れさせたんだーーーーっと
思うようにする・・・。
136panneau ◆c7r.6wV2smZ1 :2011/11/22(火) 15:47:30.45 ID:dNa5f/E3
 鬼子SSスレまとめ編集人からのお願い
おそらくSS1の編集が今週中には終わり、一旦別のネット上の活動を片付けた後、SS2の編集に移る予定ですが、
今年の頭くらいに起こった「/homeのHDDが逝っちまっただよ」事件の影響か、内の専ブラのdatには

【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1289833811/

の302以後のデータがありません。
行末空白の削除くらいしか違いが無いはずなので、
http://logsoku.com/thread/yuzuru.2ch.net/mitemite/1289833811/
を代用してもよいのですが、できれば2chの原文に当たりたいので、譲ってくださる方がいらっしゃると幸いです。
137代理の人 ◆VTtoTsLiVg :2011/11/22(火) 17:15:20.24 ID:NexVLgjX
>>136
まとめwikiの過去ログSSスレの項目に1289833811.datがあります339まで入っていますがこれではダメですか?
ttp://www16.atwiki.jp/hinomotooniko/pages/155.html
138創る名無しに見る名無し:2011/11/22(火) 17:29:12.81 ID:BHag6VO6
『panneau氏のHDDが逝っちまっただよ事件』

 「鬼子、大変だ!panneau氏のHDDが逝っちゃったらしいんだ」

そう声を荒立てて言うのは、panneau氏の心の鬼、“パソ狐ーン”(パソコーン)だ。
心の鬼と言っても、害の無い鬼もいる。
顔が平べったく、その平べったい部分に目と鼻と口がある。
一応耳も二つ上に飛び出ていて、四角いタワー状の可愛い体をしている。
アクセサリー感覚でシッポも付いているので、見た目は可愛らしい心の鬼だ。

鬼子が冷めた視線をそのパソ狐ーンに向けた。
鬼子「ぁあ、電磁波の森の中で生活している方だったわね。
   私、電磁波が苦手だから行ってあげられないわよ」
【ガーン・・・】
パソ狐ーンの平らな顔に、“プログラムが応答しません”と言う文字が赤色で表示される。
鬼子「・・・意味わかんない・・・。パソ狐ーンが言う事はいつもいつも
   理解出来ないわよ・・・よく解らないけど、電池切れじゃないの?」
パソ狐ーンの平らな顔に、また何かが表示される。
“仮想メモリ最小値が低すぎます”・・・と。
鬼子「意味わかんないって言ってるでしょ!」
そう言いながら鬼子は、薙刀でパソ狐ーンを叩きだした。
しかし、パソ狐ーンは動く気配がない。
そしてまた、平らな顔に文字が表示される。
“【重大】害を及ぼす、または望ましくない可能性”と・・・。

鬼子「・・・喋りなさいよアンタ・・でないと・・・・・」
鬼子の目が赤く変っていく。イライラが徐々に大きくなっていってるのだ。
手に持っている薙刀がゆっくりと上へ上がっていく。

その時、ドタドタとこちらに走ってくる心の鬼がいた。
その心の鬼は、代理の人の心の鬼“大狸忍”(だいりにん)だ。
大狸忍「パソ狐ーン。過去ログSSスレの項目に1289833811.datがあって・・・あぁ!!」

仁王立ち状態の鬼子。大狸忍の助言が間に合わなかったようだ。
パソ狐ーンの平らな顔から冷や汗が流れ落ちる。
怖いから、鬼子を怒らすのはこれくらいにしておこうと思っているのだろう。
そして、また平らな顔に文字が表示される。
“システムは深刻なエラーから回復しました”
パソ狐ーン「あ・・あのさ、鬼子・・・」

その後、パソ狐ーンがどうなったかは俺には解らない。

>>136>>137
いつもいつも乙かれ〜。
139創る名無しに見る名無し:2011/11/22(火) 19:50:24.24 ID:EIy75bnF
ダメだよ鬼子さん!てれびは斜め45°でチョップしないと!(違
140panneau ◆c7r.6wV2smZ1 :2011/11/22(火) 22:59:28.67 ID:dNa5f/E3
>>137
ありがとうございます。
正しくこれで、普通にatwikiにあったとは・・・

>>138
このままいくとこれも"小品・断片5"に収録だな。
141「鬼子SSスレ作品まとめ」告知 ◆c7r.6wV2smZ1 :2011/11/24(木) 22:45:09.38 ID:4KjN/A5G
SSスレ1の作業も終わったので告知。

・indexの移動
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/iframe/oniko-ss_index.htmlは
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/index.htmlに移動しました
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/もアドレスとして使えます

JavaScript・xhtml対応ブラウザではindex.htmlを開くと自動で
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss_index.xhtmlに遷移します
JavaScript・xhtml非対応ブラウザ及びIE・apple製品ではindex.htmlに留まります。

・htmlページの仕様変更
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/index.html以外のすべてのhtmlのページでJavaScriptを廃止しました
もともとJavaScript非対応ブラウザ用のページとして作ったものなので、方針の徹底・転送量の軽量化・二つの異なるjsファイルメンテするのまんどくせぇ辺りが理由です。
ご容赦願います。

・SSスレ1の「アーカイヴ化」終了
現在の所収作品は以下のとおりです。

 【蔑称ではない】鬼子SSスレ【萌なのだ】より
ID:RyQCVavX氏の無題作品
鬼子ちゃんちゅっちゅ ◆wgtXDfHaPLUF氏の無題作品
ID:cnGrx31j氏・ID:hiDhSlbQ氏の無題作品
小品・断片1
『名も無き鬼の子』
ID:tSq7zubG氏の無題作品
『日本鬼子むかしばなし』
『えせ関西弁鬼子』『>>109の鬼子再臨』
『鬼の里 小噺』
『薄汚き少女』
ID:y8rEuwql氏の無題作品
ID:5L60+is7氏の無題作品
『おにを狩る娘』
『鬼子綺譚』
『こにぽん!こにぽん!』
『鬼子、受難の日』
ID:J/vgaqCu氏の無題作品
『鬼子、受難の文化祭』
歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg氏の歌
『鬼子と華と』
『鬼子と華と2』
ID:vXFIGtqL氏の無題作品
妄想モエチリ氏の無題作品
『日本鬼子散魔伝〜序章:萌え散らす鬼〜』
『GoGo! ひのもとさん』
ID:F3cxNpuR氏・ID:rdxVQaQn氏の無題作品
『鬼子と愉快な仲間たち〜シリアス姉妹喧嘩編〜』
ID:JNJygHcE氏の無題作品
妄想モエチリ氏の無題作品2
ID:kdCcjeS7氏の無題作品
『そういやヤイカガシって鬼除けだよね』
142創る名無しに見る名無し:2011/11/24(木) 22:57:51.79 ID:lv3FtHW4
>>141
毎度おつかれさまです!
SS作品も増えてきましたなあ。
というか、こんなにあったのか……。

それから『歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg氏の歌』が開かないんですけど、これはミスですかね?
143創る名無しに見る名無し:2011/11/24(木) 23:00:30.34 ID:eh2STp8J
乙!こうしてみるとけっこうあるね。ネタの掘り返しをする際に参考になりそうなのもあるかも。時間が空いたら
一度じっくりと読んでみたいな
144創る名無しに見る名無し:2011/11/25(金) 15:21:42.90 ID:NnSEKoVR
>>141
乙乙乙でヤンス。
SSスレ1だけでこんなに!!!
本当に作業乙でヤンス。
こうやって萌え歴史が刻まれていくんでヤンスね!
145panneau ◆c7r.6wV2smZ1 :2011/11/25(金) 17:42:20.90 ID:qGiQeusI
>>142
ご指摘あざす
調べたら何故かxhtml版の方を上げ忘れてたので、朝上げますた。
jsがおかしかったので、さっき直しまひた。
146創る名無しに見る名無し:2011/12/01(木) 00:22:00.03 ID:lHDoE1i0
作ってもらった

                      _
                  ∧ '.:.:´.:.:.:.:.:`.:∧
                /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
               ....:.:.:.:.:.:r‐.:.:.:.:.:.::-、.:.:.:.:ハ
               /:::ィ::.:.:.:.:._:.:::::::_::.....::.::i
               /.:.::::::`::/f:rtヽ-'rf=ミ i::::::八
                  イ:::::::::::r' Vソ  .ゞツ 从::「`
               ⌒7::::f` ::::: r==ァ ::: イ:::八
                     /:.:.:.:.>=- =' <:::i:::.:.:::
                /.:.:.:.:::::r― ヘ  /ニニl.:.:.:.:ヘ.
                /.:.:.:.:.:::::|ニiニニムイニニ|.:.:.:.:.:ヘ.
                  /.:.:.:.:.:.:::::{ニjニムイニニ|!: : : : : ヽ
             /.:.:.:.:.:::::::/ニ{ニムニニニ|l:.:.:.:.:.:ハ: : \
               /.:.:::::::::::::〈ニニ〉イ二ニ二ニ|:::::::::::::|.:.:: : i
            /.:.:.:::::::::::_マニ!777777777!-―-ヘ:.:..:.:!
              /.:.:.:::/∨ニニマ{/777//77/jニニニニム.:(
             {.:.:/ニニニニニニムー=====―ムニニニニニム
              j:/ニニニニニニムニニニニニニニニムニニニニニニム
          ムイニニニニニニニ7ニ==-----==ニムニニニニニニイ
            {ニニニニニニニニ/ニニニニニニニニニニl|ニニニニニニ|
            |ニニニニニニニニムニニニニニニニニニニニ|ニニニニニニ|
            |ニニニニニニニニ{ニニニニニニニニニニニl|ニニニニニニ!
147創る名無しに見る名無し:2011/12/01(木) 00:58:17.79 ID:8cHtflCP
かわええv
148創る名無しに見る名無し:2011/12/01(木) 10:26:02.00 ID:BKTk+yKd
>>146
和んだw
そういえばここはAAのスレでもありましたね。
容量落ちは予期せぬタイミングで襲って来ますし。
149創る名無しに見る名無し:2011/12/01(木) 13:15:16.40 ID:52p2p5Bm
>>146
萌え〜
そそ、SS、AAスレでもあるから
これでいいのだ
150長芋 ◆w47ZQceOhk :2011/12/02(金) 21:29:06.75 ID:ue47oQqu
>>146
おお、この髪のもっさり感は、私のハピバ絵ですかね?
ありがとうございます!
151創る名無しに見る名無し:2011/12/16(金) 16:37:10.66 ID:Px0iKn1j
二日かかった…

         ト、
       ト、_Eヌメ、
        yクミミミ込
       ノレトミLリリリリリミ、     _彡ニ二.、
      ノ勿フミ州州州念モ〒テミニ彳⌒ヽミツ
       (_rヘ._|ミミ文ミミ彡千仁文木ニミメ、
         ̄_//Xミミミラ禾:::::::彳⌒r不、::::::::X、
      _レ禾⌒テララXリ入ミミミテミヲ  人豕レへ:::::::\
      (__/ノメナナナメソソノ::::yνμノ州ミ州州\::::::|
/ ̄ ̄ ̄\\トー木⌒フノ_ナ彡ィ 八ヽ\.丗∀ルルヽ√
|  ――ヽ、\|::::\::/::::::::::::::::/ / λハX\__
\__  \八:::::::\::::::::::::::ノ ム/..入::::\::::::::::::::ア
    \⌒\.入⊥::::::::::::::::::/__/'...............|::::::|::::::::く
     Y\\ /√艾 ̄´  \............ノ::::::::|:::::入:::\
152創る名無しに見る名無し:2011/12/17(土) 00:46:09.57 ID:nuHvPPS4
ひざ蹴りかましている鬼子さんかw
153創る名無しに見る名無し:2011/12/17(土) 00:57:57.63 ID:nuHvPPS4
>>151 なんか合成したくなった……

                ト、
  ドゲシィッ!      ト、_Eヌメ、
               yクミミミ込
゙''‐、_\ | / /     ノレトミLリリリリリミ、     _彡ニ二.、
─‐‐‐  ・←>>*** ノ勿フミ州州州念モ〒テミニ彳⌒ヽミツ
  // | \     (_rヘ._|ミミ文ミミ彡千仁文木ニミメ、
 / /  |  \     ̄._//Xミミミラ禾:::::::彳⌒r不、::::::::X、
./    |      _レ禾⌒テララXリ入ミミミテミヲ  人豕レへ:::::::\
 .∴・|∵’    (__/ノメナナナメソソノ::::yνμノ州ミ州州\::::::|
     / ̄ ̄ ̄\\トー木⌒フノ_ナ彡ィ 八ヽ\.丗∀ルルヽ√
     |  ――ヽ、\|::::\::/::::::::::::::::/ / λハX\__
     \__  \八:::::::\::::::::::::::ノ ム/..入::::\::::::::::::::ア
         \⌒\.入⊥::::::::::::::::::/__/'...............|::::::|::::::::く
          Y\\ /√艾 ̄´  \............ノ::::::::|:::::入:::\
154おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2011/12/18(日) 22:03:05.76 ID:N3zvMIzI
てすと
155おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2011/12/21(水) 01:09:46.96 ID:wBwLrJsh
鬼子がUTAUになって一年ほど過ぎたのでカキコしてみる

それは一年前のことだった。
鬼子はUTAUとなったことで、どこぞの町にある事務所(実際には登録作業しかしてない)に出向くことになった。
何しろ鬼である。皆が震え上がったりとか恐れを為して逃げるとかそういうことにならないことだけを切に祈っていた。

どこからか届いた案内状に目を通して事務所の呼び鈴を押した。
「誰だ」ぶっきら棒な声がスピーカーから鳴った。
「日本鬼子です。」相手の声を聞いて鬼子はどうなるんだろうかと思いながら自分の名前を言った。
「ああ、今日だったか。入っていいよ。」
「いいんですか?」
「入っていいといってるだろうが。」柔らかい声だがどこか冷たい響きがしていた。
鬼子は扉を開いた。本当に事務所もいい所だった。
芸能事務所程の活気はないが、ここを本拠に活動することになる。その時まではそう考えていた。

紫の髪の少女が鬼子に話しかけた。
「君が日本鬼子か」
この人がさっき機械で喋っていた人ね。鬼子は操合点するとお辞儀をした。
「日本鬼子です。若輩者ですが―」

その時外で車が急停車する音がした。
目の前の少女は「やっと来たか」と呟き、奥にいる桃色の髪の毛の少女は頭を抱えた。

ドアが荒々しく開き、やはり若い娘が足音も荒々しく入ってきた。
髪は赤みがかったピンクで縦ロールのツインにしている。目も赤かった。
その目を見た時本生りの自分がこうなるような気がして嫌になる。

「来たか」紫の髪の少女が呟いた。と同時にドアが荒々しく開いた。

ドアを蹴破る勢いで開けた少女は肩で息をしていた。

「テト、また寝坊か?」紫の髪の少女が言った。

「ちがーう!ルコリツテイを叩き起こして学校に行かせて、そんでもってテイがいきなりだなー、
れんきゅんに会いたい、ってホザクもんだから無類やり学校に送還してたんだ!」

鬼子は紫の少女に尋ねた「この人は誰なんですか?」

「ああ、鬼が来ると言っていたが、君か。あたしは重音テト」少女―テトは先ほどとは打って変わった雰囲気で自己紹介をした。
「デフォ子、自己紹介はしたのか。」テトは鬼子の傍らに立っている紫の少女に言った。
「ああ、まだだ。」
[ったく。君の傍らにいるのが唄音ウタ。あそこの机で寝ているのが桃音モモだ。」
「あたし、寝ていません。」モモと呼ばれたピンクの髪の毛の少女が切り返す。

デフォ子は鬼子に手を差し伸べた。「あたしが唄音ウタだ。皆はデフォ子と呼んでいる。」
「デフォ子、さん、ですか。」鬼子は握手をした。デフォ子は思いきり力を込めて握手した。

誰もが鬼子が叫ぶものだと思っていたが、そこは鬼である。鬼子はデフォ子の手を強く握り返した。

続きます
156おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2011/12/21(水) 01:12:12.50 ID:wBwLrJsh
>>155の続き

デフォ子が鬼子の手を強く握りしめ、鬼子がそれに判事をするようにデフォ子の手を強く握り返すのを見てテトはデフォ子に一言言った。
「デフォ子、いい加減やめんか。」
「鬼は力持ちらしいからやってみたくなったんだ。」
二人の手がパッと離れる。
「鬼子、こいつはロボットでな。性格は、まぁ、見ての通りだ。」
「えーと、ロボットって…機械なんですか。」
「身も蓋も無い言い方だな。」デフォ子が答える。「ついでに言うとあそこにいるモモも同じだ」
「はぁ。」鬼子の要領を得ない返事。

「鬼子さんですね。先程紹介に与りました桃音モモです。」いつの間にかモモが鬼子の近くに寄っていた。
「あ、こちらこそよろしくお願いします。」鬼子が返事をする。
「えー、ところで、鬼がUTAUとかになっても大丈夫なんでしょうか。」
「大丈夫だ。問題ない。」テトが返事をした。「何しろUTAUには色んなのがいてな。兎の妖怪がいる。」
「はぁ?妖怪がもういるんですか。」
「天音ルナっていう兎の妖怪で、あれでもUTAUの初期メンバーだ。」
「はぁ、そうなんですか。」
「後はだな、怪鳥ラルゲユウスとか、キャベツとか、宇宙人とか、オカ魔族とか、果ては全高2000mの大仏までいるぞ。」
「何で大仏がいるんですか。」
「知らん。ネタに走るにも程があると思うんだが、一体何を考えているものやら。ゼントラーディー軍と戦争するつもりか。」
「テト、そのネタは古いだろ。」デフォ子がすかさず突っ込みを入れた。
「そうだな。ならクトゥルーとやり合うと言うのはどうだ。」
「やめて下さい。真面目に取られたら困ります。」モモが突っ込んだ。
「あのぅ。で、何で大仏が。」鬼子はおずおずと尋ねた。そんなものがいるとは理解の範疇を超えていた。
「だから知らないって。俺歌無能とか言うんだが、ここまで来るとネタにもなりゃしない。」
「はぁ、そうですか。あと何かいろんなものがいるとか言ってましたけど。」
「ん?そうか?何しろ大仏から宇宙人まで幅広く取りそろえているからな。あと猫娘とかコヨーテとか。」
鬼子は眩暈がして来た。そう言えばさっきこの人なんて言ったかしら。さり気に酷いことをサラッと言ったような。
「えーと、他に何がいましたっけ。」
「ん?だから、怪鳥ラルゲユウスとか」
「テト、それ誰も知らんぞ。」またしてもデフォ子の突込み。
「ああ、乙飛女クユの事だ。」
「その怪鳥なんとかって。」
「その昔ウルトラQという特撮番組に出た・・・」
「そうじゃなくって、何で怪鳥なんとかになっているんですか。」鬼子とモモが同時に突っ込んだ。
「ああ、あれね。通常は普通の女の子なんだが、興奮すると巨大な鳥に変身するんだ。」
「それでこいつ傍にいて踏みつぶされそうになったんだ。」デフォ子が茶々を入れた。
テトはデフォ子を睨みつけた。
「事実だろうが。」デフォ子は何食わぬ表情で切り返す。
「寸でで逃げました。」テトが答える。「いきなり抱きつくわ、巨鳥に変身するわで散々だったわ。」
「なんとなく分かりました。あのー、あとなんて言ってましたっけ。」鬼子が質問した。
「え?キャベツとか、オカ魔族とかがいるんだわ。」
「キャベツって、あの野菜の事ですよね。」
「うん。何故かそんなものがいる。考える気も起らん。」
「で、オカ魔族って。」
「魔族なんだが男のくせにオネェ言葉で話すのでそう言ってる。」
「あのー、魔族の尊厳とかどうなるんでしょうか。」
「本人に聞いてくれ。最早突っ込む気すら失せた。」
鬼子は苦笑した。

まだまだ続く
157おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2011/12/21(水) 01:13:36.13 ID:wBwLrJsh
>>156の続き

「まぁ、一々気にしてたら身が持たんぞ」デフォ子が切り出す。
「そうですか…」
「何しろこいつからして31歳の・・・グッ」
「まー、これから頑張ってくれ。」デフォ子の口を塞いだテトが大きな声で言った。
「何をする。」デフォ子の抗議。
「え?何かあった。」テトがしらばっくれる。
「喧しい。この・・・ぐぎゃああああああああ」デフォ子は最後まで喋らせてもらえなかった。

「あ、あの、デフォ子さんバラバラなんですけど」
軽機関銃を持ったテトに鬼子が話しかける。
「あ、気にすんな。直ぐに元に戻るから。」
「そうなんですか。(だ、大丈夫なのかしら)。」
「ほれ、もう再生し始めてるから」
テトは床を指さした。確かにデフォ子のパーツが自分で結合し始めていた。
「テトさん、事務所内で銃器を出さないでください。」モモが突っ込んだ。
テトは、ん、そうか、と言って機関銃を懐に仕舞った。
鬼子はこの人、どこからこんなものを出し入れしているのかと思った。
「あ、あの、テトさん。」
「何だね。」
「あの、年齢の事なんですけど。」
「ゐ゛?」
「一応存じてます。」
テトは毒気を抜かれた表情で、あ、そ、と言った。
と同時に復活したデフォ子が怒気を含んだ声で言った。
「私に対してこの仕打ち、かくなる上は」
「桃子が怒るぞ」RPGを向けられたにもかかわらずテトは平然としていた。
後ろからデフォ子の肩を叩く者がいた。デフォ子はRPG7を構えたまま後ろを向いた。
そこには不機嫌な表情をしたモモがいた。
「うん。確かに事務所でこれは拙いな。」態度をコロッと変えたデフォ子はRPG7をロッカーに仕舞った。
ロッカーの中を垣間見た鬼子は恐怖した。そこにはあらゆる銃器が収められており、まるで武器庫のようだった。

「どうかしたか。」鬼子の態度に気がついたテトが話しかけた。
「あの中一体どうなってるんですか。」名状しがたい声で鬼子は答えた。全くここは何が何だか分からない。
「ああ、あれか。デフォ子は武器フェッチなのだ。ああやってあちこちから銃器を買い集めては
あそこのロッカーとかに入れてる。」
「もう手狭でな。」RPGをロッカーに格納したデフォ子が答えた。
「まだ、あるんですか。」鬼子の声に力は無かった。呆れ果てているのだった。
「どこだっけ。M2重機関銃とかホチキスとかも手に入れたと言うが」
「テトさん、その話は止めて下さい」モモ子の苦りきった声。
「まぁ、そうかもしれんな。」テトは同意した。

鬼子はホチキスってなんだろうと思っていた。
因みにここで言っているのは第二次世界大戦で米軍が愛用した40mm機関砲の製造所だった。
当然その言葉が指しているのは同社製の機関砲のことである。
それはそれとして、鬼子はなんかとんでもない所に来たのではないかと思い始めていた。

まだ終わらない
158おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2011/12/21(水) 01:14:44.62 ID:wBwLrJsh
>>157から

「で、これからどうなるんでしょう。」鬼子が尋ねた。
「告知を出しますので、その後、あなたを気に行ったプロデューサーがいれば採用されるでしょう」モモの快活な声が返ってきた。
「ここが活動の中心じゃ・・・」
「ないよ」残り二人が同時に返事した。
「あくまでも登録と告知場所だからね。」テトが言葉を継いだ。
「まぁ、そこのキメラの様に運が良ければ何とかなるだろ。」デフォ子の言葉にはどこか棘があった。
「ま、そういうこと。」デフォ子の言葉に含まれたものを無視してテトが応じる。
仕方あるまい。テトは思った。デフォ子は殆ど日の目を見なかったからなぁ。
メジャーと言えるまでになるのに一年以上かかったんだっけ。

「まぁ何かきっかけがあればメジャーになるだろうしね。」テトが言った。
「きっかけですか。」鬼子は不安になった。
「でもテトはあれだろ。ネタが先にあったから。」デフォ子が言った。声がどこか冷たい。
「まぁね。まぁでも鬼子は一応きっかけ程度はあるんだし、なんとかなるんじゃないの。」
「きっかけ、ねぇ…」デフォ子は承知していない様だった。デフォ子がメジャーになったきっかけは一つの動画からだった。
それまではデフォルト音源でありながらマイナー扱いされていたのだった(多分)。
「そんなもんだろ。あれこれ心配してもしょうがないしさ。」テトはデフォ子の問いらしきものに答えた。
「そりゃお前はそう思うかも知れんが。」
「ミクだって始めから高速道路を疾走してたわけじゃないだろ。あいつだって始めは苦労してたじゃないか。」
「まあな…」デフォ子は納得のいかない様子だったが、
「まぁ、それにだ。ボカロと言っても皆が超売れっ子と言う訳ではなかろう。」
「ああ、そうだな。」デフォ子の声は沈んでいた。
「気にするなよ〜デフォ子はみんなの人気者じゃないか〜」テトはデフォ子の両肩を勢い良くゆすった。
「ぐはぁ、な、何をする。」デフォ子が声を荒げた。
「あんまり沈んでるのもらしくないと思ってな」
「喧しいわ」

デフォことテトのやり取りを見ていた鬼子はモモに尋ねた。
「あの二人はいつもああなんですか。」
「あんなもんです。何時もはデフォ子さんが主導権を握るんですか。」
「はぁ」鬼子はため息とも受け取れる返事をした。

そして新キャラが登場する
159おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2011/12/21(水) 01:16:02.16 ID:wBwLrJsh
>>158から

ドアが荒々しく開けられた。皆がそちらを見る。

モモと同時に入口の方を見る。和装と言うか、和風と言うかやはりミニスカを着用に及んだ少女がそこに立っていた。
「あら、マコさん。」
鬼子はマコ―和音マコに挨拶しようとしたが、マコはその儘鬼子に近づいてきた。
「本当に鬼が来たのね。と言うかどうしてきた。」
「どうしてと言われましても。」鬼子は答えた。「あ、わたくし、日本鬼子と申します。」
「礼儀正しいのね。」マコは平板な声で答えた。
「どうしたミニスカ忍者」マコが来たのに気がついたテトの声が響いた。
「それ言うな!」マコが怒号で返す。
「じゃあマコ、ルナは?」テトが切り返す。
「ああ?あの兎は鬼と聞いて速攻で逃げたわ。」
「まぁそうかもな。」テトは気にしていない様だった。「鬼は最強の妖怪と聞くし。あいつ如きじゃどうにもならんだろ。」
「そーかー?あれでも結構すばしっこいから大丈夫と思うけど。」マコは納得していない様だった。
「テトぉ、何マコと話してるんだ。」ようやく我に返ったのかデフォ子が割り込んできた。
「和音マコが鬼子に興味を持ったようです。」テトが答える。
「ルナの性癖がうつったのか」
「違ーう」デフォ子の声にマコはとっさに反応した。
「そうなのか。」どうとでもとれるデフォ子の声がした。
「まぁ、それはそれとして、何の用だ。」
「鬼が来たというから見に来ただけだ。」
「それで報告はタイキに押しつけると。」テトが返した。
「後輩の義務だわ。」マコは悪びれていない。
「よく言うよ。面倒は悉くタイキに押しつけて自分は遊んでるくせに。」
「可愛い後輩を教育するための愛の鞭と言って欲しい。」
「痛いだけだろ。」今度はデフォ子の番だった。
「まだ若いからね。多少の苦痛はやむを得ないさ。」
「親方の娘でなきゃとっくの昔に里に強制送還だろうが」テトが言う。
「まるで私が仕事をしていないみたいじゃないか。」マコは鼻で笑いながら答えた。
「仕事してたのか。」テトとデフォ子が同時に白けきった言った。
最も職業柄マコの本当の仕事なぞ誰も知らないし、UTAU関連以外詮索しないことは暗黙の了解だったから、
誰も何も知らない筈だったが、テトやデフォ子はマコの「本当の仕事」を知っていた。
そしてその仕事をさぼりまくっているからこそ、違う里からだが風歌タイキが派遣されてきたのだった。
勿論、現代において忍者は壊滅状態なのだが、残存する「里」ではそれぞれ人材を融通し合ってあれこれと仕事を請け負っていた。
無論仕事の内容は目の前の例外を除いて他に漏れることは無い。

「ええい、だからここに来たんじゃないか!」マコが怒鳴った。
それを聞いた三人娘は、ばればれだろうが(でしょ)と思ったが口には出さない。
「な、何だかよく分からないけど、お仕事頑張って下さいね。」鬼子がマコに話しかけた。
「あ、ああ、どうも」マコは答えた。

これで空気が変わった。その後は和やかな雑談の時間になった。
鬼子が驚いたのはUTAUが全世界のあちこちにいることや人数が4桁に達していたことだった。
これでは自分が日の目を見るまで時間がかかると言われたのも納得できた。
この後にも何人かのUTAUが来た。始めは鬼子を見て驚き、それから新しい仲間だと聞いて、へーとかああそうとかいう反応が返る。
鬼子の態度が柔らかいのか、皆がすぐ打ち解けた。

そしてまだ続くのだった。
160おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2011/12/21(水) 01:17:25.66 ID:wBwLrJsh
>>159より

「お、そろそろ時間だ」壁に掛けられた時計を見てテトが言った。
「どしたの」雪歌ユフが言う。
「テイを迎えにいかないとね。」
「一人で帰れるんじゃないの」ユフと共に来た揺歌サユが答える。
「あいつが信号機を見るとどうなるか知ってて言ってるのか。」テトが言った。
「ああ、そう言えば。」マコが答えた。「硬直するんだっけ。」
「試験の時は母親が送り迎えしたそうだ。」テトが答えた。
「えー、テトさん帰るの?」音飛女クユの抗議。
テトに会えるという理由でここに押しかけたらしい。流石にテトに会ったからと言って巨鳥にはならなかったが。
「悪いが、家にはルコとリツが戻っている筈だ。何時までも言えを開けとくわけにもいかんだろう。」
「う〜」クユの抗議を他所にテトは外に出た。

事態は急展開する
161おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2011/12/21(水) 01:18:16.70 ID:wBwLrJsh
>>160から

外に出たテトは鎧兜を着た青い狸と背後の黒い影と対峙していた。
「何だ、お前ら。」
「鬼子はここか。」
「その前に何の用だ。」
青い狸は軍配をテトに突き出した。「知れたこと、鬼子を斃す為だ。」
「あー、そう。」
「何だ、その言い方は。大人しく鬼子を突き出せ。さもなくば」
「その前にここの住人に挨拶なり了解なり取ったのか。」
「何を言う。我らにそんなものは必要ない。」
「ああそう。」テトは鼻白んだ。こいつらこの町の住人に断りなしでこんなことしてるんだ。「まぁ、いいけどねぇ。」
「ああ?何だ?その余裕は。痛い目を見たいのか。」
青い狸は叫んだ。

「ノイズ・ブレーカー」

少女の声とともに後ろの黒い影共が薙ぎ倒された。青い狸は、何が起きたかもわからない様子で後ろを見ていた。

「だから言ったろ?ここの住人に挨拶はしたかって。」テトの相変わらずな声がした。
そして、声をした方を見る。初音ミクのカラーリングを黒にしたような少女と、
ツインテールの銀髪を靡かせた少女よりは色の黒い背の高い女性が立っていた。二人ともスーツを着ていたが。

「どうも有難う」テトの平板な声がした。「雑音ミク」

「フン。ボクが本気を出せばこれくらいどうってことないさ。」雑音ミクと呼ばれた少女は自慢げに言った。
「まったく、あたしらに何の断りも無しに大挙して押し寄せた連中がいると思ってきたら、何だい、これ。」銀髪の女性が言った。
「ウイルス一匹にも値しないじゃないか。」

「あ、あ、何だと・・・」青い狸の呻き。
テトの背後でドアが開きUTAUの面々が外を覗き込んでいた。

「あなたたちは」モモの声がした「どうしてここに。」
「気にしなくていいよ。助けてもらったんだから。」テトが背後のモモに答えた。
「でも」
「本気ならあそこで突っ立って居ない。」

「言ってくれるねぇ。」銀髪の女性が答えた。

「くっそおー」青い狸は忌々しげにテトと女たちを見た。「かくなる上は。」
青い狸は刀を抜いた。

ほぉ、ヤル気か。見上げた根性だ。ならば少し本気で相手に、テトがそこまで考えた時に青い狸は逃走に移った。

「覚えてろー」

いつの間にか、デフォ子が大きめのランチャーを持って外に出ていた。ランチャーを構えてからミサイルを打ち出す。
「闇音アク。町の外ならば構うまい。」デフォ子は銀髪色黒の女性に尋ねた。
「撃ってから言うセリフかね。」アクは呆れた声で言った。「まぁ、いいけどね。」

少しして町の外で轟音が響いた。

でもこれで終わらないのだった。
162おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2011/12/21(水) 01:19:03.72 ID:wBwLrJsh
>>161の続き

闇音アクと雑音ミクは扉にいる面子を見ていた。
外に出ているの三人娘で、他は扉から顔を出している。その中に鬼子もいた。
「ま、要件も済んだことだし。何かあったら言いな。相談に乗るよ。」アクはテトに言った。
「大丈夫だろ。それに相談料だけでも高くつきそうだしねぇ。」
「へぇ、そうかい。まぁ、これだけ大きな町だから、争い事には事欠かないさね。」
そう言い残してアクはテト達から去っていった。

「何しに来たのでしょうか。」モモがテトに尋ねた。
「偵察、かな。」テトが答える。
「何のですかね。」モモの言葉には棘があった。彼女は闇音アクと雑音ミクのコンビを心底信用していないのだった。
「鬼子かも知れないね。」
「何かあるんでしょうか。」外に出た鬼子がおずおずと尋ねた。今までの展開についていけないらしい。
「さあね。基本はさっき言った通りなんだろ。連中から見たら目障りだし。あ、鬼子はあの連中誰か知ってるの。」
「青狸大将です。」鬼子の即答。
「整理対象?」テトが答えた。
「さっき整理ならしたが。」デフォ子が口を挟む。
「あ、青い狸の大将と書いてですね、青狸大将です。」鬼子が説明する。
「であの黒い影は。」テトは重ねて質問した。
「悪の手叉鬼と言います。まぁ、下っ端の戦闘員ですが、ああもあっさりと片付けるとは。」
「へぇ、そういう名前なんだ。アクが来なかったらこっちで片付ける気だったんだけどね。」
「えっと、ここはシンガーの事務所ですよね。」鬼子が尋ねる。
「そうだよ。」テトはこともなげに答えた。
「どうしてこうなるんでしょうか。」
「色々あってね。」
「色々、ですか。まぁ、あいつらも原因と言えばそうだし。」
「そうなんですか。」
「さぁて、これ以上テイを待たせるわけにもいかないから、あたしはここで帰るわ。
モモ、まだお客が来るみたいだから対応よろしく。」テトはモモにそういうと車に乗ろうとした。

でも事件はまだ終わっていなかった。
163おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2011/12/21(水) 01:21:03.43 ID:wBwLrJsh
>>162から

向かいの建物の屋上に影が見えたのは、その時だった。

「フフフフ。我らに気づくとは大したものだ。」
屋上にいる影はそう言い放つと颯爽と飛び降りる。どう見ても猪と狼の化けものだった。
「何ですか、これは。」モモは鬼子に尋ねた。
鬼子は口ごもった。それはそうだろう。こいつらの名前など、口に出せたものではない。

「我らを知らんとはとんだモグリだ。」オオカミが答えた。
「よく聞くが良い。我らは七つの大罪より生まれし色鬼隊(しきたい)!我が名は色鬼隊二の槍、穢狼(エロ)!」
「あ?」モモの声が変わった。
「同じく三の槍、助平牙鬼(スケベガオ)!」モモの態度の豹変に気づかず彼等は名乗りを上げた。
「エッチなのは・・・」モモが呟いた。そしてテトは車内で十字を切った。
「フフフ、このご時世にドロワーズとはいい度胸だ。とっくと―」穢狼は最後まで喋らせてもらえなかった。
「いけないと思いまぁす!」モモの声と共に箒で二人とも宙に飛ばされた。
「第一次宇宙速度には足らなかったか。」デフォ子はシレっとした声で言った。
モモは肩で息をしていた。この手の話題はモモの前では禁句なのだった。言うなれば核地雷原を全速で突っ走るようなものである。
鬼子は茫然としていた。この人たち何なの。
「うんじゃぁ、あたしゃ行くわ。」テトはそういうと車を走らせた。
「ああ。」デフォ子が答えた。
「あ、あの・・・」鬼子はデフォ子に尋ねようとした。
モモは何かブツブツ言いながら戻ってきている。
「何だ。」デフォ子が対応する。
「何なんでしょうか。」
「見ての通りだ。モモの前でエロい話は禁止な。」デフォ子は簡潔に答えた。
鬼子はモモにヤイカガシ達を会わせまいと心に堅く誓った。

そして後日談(?)。
164おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2011/12/21(水) 01:22:46.16 ID:wBwLrJsh
>>163の後の話

数分前。
アクとミクは街中を歩いていた。
「何か飛んで行きましたね。」雑音ミクがアクに話しかける。
「モモの箒だろ。」
「何やらかしたんだか。」
「決まってるさね。」
「ですよね。」
「まぁ、最初からいるのは解ってさね。」
「ですよね。」
「何か言いたげだね。」
「まとめて片付けても良かったんじゃないかと。」
「ああ、元々連中の面倒なんだから連中がやるってのが筋ってもんじゃないかい。」
「そうですか。」
「そうさね。」

そして街外れ。
青狸大将は体中から煙を吐いてとぼとぼ歩いていた。
一目散に逃げたまでは良かったが、あの後飛翔弾の直撃を喰らったのだった。
逃げる青狸大将に対してデフォ子はスティンガーを放ったのだった。
「畜生、畜生」目の幅で涙を流しながら青狸大将は呟いていた。
「あいつら…必ず仕返しをしてやる。」

穢狼と助平牙鬼が彼の頭上に降ってきたのはその時だった。

穢狼と助平牙鬼は自分たちが何に当たったのか理解もせずに立ち上がった。
「フッ。意外と手強かったな。」初めに喋り出したのは穢狼だった。
「なぁに、今日は小手調べ。何れ奴らの痴態を堪能できる日が来る。」助平牙鬼が余裕たっぷりに応じた。
「そうだな。それに今日は収穫が多かった。」そういうと穢狼はあちこちで盗撮した写真とビデオを取り出した。
「奴等も何れ同じ目に合わせてくれよう。」助平牙鬼が自信満々な声で言いきった。

それと同時に彼等は火に包まれた。当然「今日の収穫」は全部灰燼に帰したが、そんなことよりも誰がこんなことをしたのか
火を放ったものを見た。そこには良く見なれた青い狸がいた。
「青狸大将、いかな貴貎と言えど、今の仕打ちは―」
「きーさーまーらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」穢狼に最後まで言わせず、青狸大将の怒りに満ちた声が辺りに響く。
「どうしたのだ、落ち着かれたらどうかな。」助平牙鬼が宥めようとしたが、青狸大将は刀を振り被ると二人に斬りかかった。
「おい、待て、何があった」「話せば分かる」穢狼と助平牙鬼は口々に叫びながら逃げ惑う。
「喧しい!今日一日で受けた屈辱を貴様らの体で晴らしてくれる!」青狸大将は叫びながら二人を追いかけた。
「それは八当たりだろう」「うるさい!!」「落ち着け。我らに」「黙れ!」

それを遠くから眺めていた黒バットと守銭童子はその場をぐるぐる回りながら何かを叫んでいる3人をどうやって止めようか
(あるいは何時まで見物するか)考えていた。

お終い。
165創る名無しに見る名無し:2011/12/21(水) 16:37:38.78 ID:uvtlhXJ9
>>155-164
乙乙
166おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2011/12/21(水) 22:40:19.11 ID:wBwLrJsh
UTAUの登場人物(既出分除く)

唄音ウタ
 UTAUに漏れなくついてくるデフォルトの音声。
 一応ロボット。粉々になっても自己再生するとか。
 表情の変化に乏しくむっつりの印象を与えるが、実は熱血野郎かもしれない人
桃音モモ
 初期メンバーで家政婦ロボット。天才科学者百瀬博士の作品。
和音マコ
 少女忍者。だが仕事はさぼりっぱなしで歌ばかり歌っているらしい。
雪歌ユフ
 これもほぼ初期メンバー。「せっか・ゆふ」と読む。ミニスカ雪女と言われるが本人は暑いのが嫌いなだけだそうである。
揺歌サユ
 肉まんをこよなく愛するチャイナ服の人。「ゆりか・さゆ」と読む。ユフと共にいることが多い。
音飛女クユ
 種族は音飛女と言い、仏教の迦陵頻伽と迦楼羅のハーフ(ニコニコ大百科より)なのだから目出度い鳥なのだが(多分)、
 テトと出合い頭に興奮のあまり巨大な鳥になり、 テトを踏み潰して以来ラルゲユウスの渾名を賜った。
 因みにラルゲユウスとはウルトラQに登場する怪鳥のこと。

以下名前だけ登場
天音ルナ
 兎の妖怪で何故か碧眼金髪。他にも家族がいるらしいがどうしてこうなったか本人にも解らない。
鉛音ピネ
 本文中で「宇宙人」と言われた少年(?)のこと。発言しても、何喋ってるか分らない位発音不明瞭である。
コトダマ
 文字通りオカ魔族。実際中の人がオネェ言葉で喋って以来こうなった。
俺歌無能(UTAU) 名前だけ登場
 誰かがネタで作ったキャラクターだが、全高2000mは無いだろう。「おれがむのう」と読む。
猫娘
 猫歌スキかねこっぽいの辺りを指しているらしい。UTAUにはそういうキャラが沢山いるようだ。
コヨーテ(伺)
 本文中でコヨーテと呼ばれた人。「こよーて・うか」と読む。犬との区別がつかないが本人に犬娘と言うのは止めよう。
 性格は相当内気で詩文を作るのが趣味らしい。
甘藍
 足の生えたキャベツの姿を持つ。何でこんなのがいるんだ。読み方は「かんらん」
風歌タイキ
 少年忍者。「ふうが・たいき」と読む。同業者のマコがさぼりっぱなしなので送り込まれてきた。
167おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2011/12/21(水) 22:56:07.10 ID:wBwLrJsh
ボーカロイド亜種の登場人物

闇音アク
初音ミクの亜種で悪のボーカロイドとして亜種祭り末期に登場したとか。
本来の格好は初音ミクをモチーフにしたワンピース水着のような格好に
紫のコートといういでたち。色黒の銀髪でミクよりむちましい人。
物憂げな目つきに特徴がある。腕にある番号は「893」である。
ニコニコ動画では悪役として登場する。

雑音ミク
初音ミクのカラーリングを黒系にしたキャラ。亞北ネルとキャラ被りするのかただの2Pカラーだからなのか、
認知度はいま一つで、出てくれば大概悪役と言う何だか報われない少女。
二人して初音ミクとなんか関係しているらしいが今はまだ語るべき時ではない。
168おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2012/01/01(日) 08:35:21.77 ID:h2DP6ScZ
あけおめ
169panneau 【880円】 !kuji 【四電 - %】 ◆c7r.6wV2smZ1 :2012/01/01(日) 11:22:00.39 ID:m1LqwRMj
あけおめことよろ。
新年からヒワイなことだ \(^▽^)/
170歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/01/01(日) 12:50:11.91 ID:5pr9s9Qq
皆さんあけましておめでとうございます。
今年は鬼子さんの年にしていきたい歌麻呂です。

とりあえず、今日から【編纂】日本鬼子さん書きはじめようと思います。
投下はしばらく先になると思いますが、これからもよろしくお願いします!
171創る名無しに見る名無し:2012/01/02(月) 15:32:01.69 ID:doej9Mmy
                                            o
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                                                  ○
⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒

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                           ,ァ/i―― 「 ̄`ー'    ___iノヽ\
                        ...:..:..:/ .|:..:..:..:..| ,ハ   / o ヽ  {P}
                         /..:..:..:,'  |,:../:..ヽ{ ,ム   ` 一 ´   `ヽ
                    /..:..:, -:/  /:./:, --='ニ、ー'  ヽ    __   ,)
                    ∠ニ ー=∠i ),二,ニ=ー:'¨:..|:..:..ヽ__     /_)ヘ,ヘ
                   .'//..:..:`ー‐:":..:..:..|:.:.l|:..:..:.|:..:..:..|ハ    j,ノヽハノ'〈
                 ///..:..:..i:..:..:.レ':..:..:..|:.:.l|:..:..:.|:..:..:..|:.:..ヽ  代∧ノヽハハ
               _ノ//..:..:..:_|:..:..:.|ハ-―i-ハ:..:..ハ:..--:、:..:..\  ヾ'ーー'´¨`\
               <L彡'イ..:..:/ |:..:..:.|  ⌒⌒   ⌒ ヽ:..i ヽi:..:..\____,,_,ノ
                  彡¨´ j..:..:{ (|:..:..:.|「,笊心ヽ     ,ィ笏示 〉:..:..| ヽ、//////
                    ,:..:..:.ヽ|:..:..:.| V:.ツ     V:ツ ノ/ハ:...     ̄ ̄
                    ..:..:..:..:..:|:..:..:.|                /:..:..ハ:.i
                 ..:..:..:..:..:..:|:..:.ハ         ′    /:..:..:'  :l
                  /..:..:..:/..:..:|:..:..:..:ヽ   、   ,   イ:..:..:..j   |
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             /..:..:..:/.:.:/    |:..:..:..:..| ',     j}   |:l:..:..l:..|、 ||
           ..:..:..:i⌒ヽ ̄`ヽ   |:..:..:..:..|  ', __/   |:l:..:..l:ハヽ:l
            /..:..:..:,イ    \  \ |:..:..:..:..|  ',  /     |:l:..:..l:..:..ヽ \
         ...:..:..:/ノ      '    |:..:..:..:..|\ ',./     ,八:..:..lヽ:.:..i .ハ
       /..:..:..:..:,         }   |:..:..:..:..|、 ヽハ       }:.:..| l:.:.|   i、
        .:..:..:..:..:/           |   |:..:..:..:..| ヽ/ハ     ハ:.:.| l:.:.|   | }
⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒
                           ○
172創る名無しに見る名無し:2012/01/02(月) 15:32:18.11 ID:doej9Mmy
                         0
      / ̄ヽ-‐ '´ ̄ ̄`ヽ、´ ̄ヽ   o
       ヽ__/:::::::::::::::::::::::::::::::::\ノ
      //::::::::::::::::::::::::::::::::::::、::::ヽ
      〃::从::从::从::从::从:l::|::: i|
      |i | |  ( ○)  (○从!」     勝てる気がしねぇ・・・
      |i`从⊂⊃ 、_,、_,  ⊂iヽ」
        ヽi从   /__/   /ノil__
         へ、 __/ ̄ ̄⌒/⌒  /
      r:::::::::::|ヽ`/  鬼子本  /
     /:::::::::::::',(つ    /   ⊂)
      |::::'::"::y(つ     /,__⊆)
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見つけたので転載(収まらなかったので分割))
テスト用スレッドver.44
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12973/1324744310/855
173おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2012/01/02(月) 20:46:22.41 ID:iLVMMMKU
>>171-172
節子、それ鬼子やない輝夜や。
174おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2012/01/07(土) 22:59:10.74 ID:En5Sc+2k
テト達が住む町の描写をしてみる。

鬼子はこの町に何度か出向いているが、驚くことばかりだった。
例えば「終音精肉店」。本業では牧場を経営しているのだが、
そこの家畜には悉くその家畜に因んだ食い物の名前が付けてあった。
そこの看板娘(確かニクと言った)は「家畜達に自分たちの運命を悟らせるためなのです」ときっぱりと言い切った。
誰もが異口同音にそれは酷過ぎだろと言っているが、あそこはそれを一向に改める気は無い。
その御蔭で、この町では肉はあまり旨くないもの、ということになっている。
それはそうだろう。家畜達の名前が、食い物の名前なのだから、そっちを思い出して肉がまずくなるのだった。

そして花屋なのだが、何を思ったかラフレシアが置いてある。以前は露天にあったが、
余りの匂いの不味さにあちこちから苦情が出た。まぁ、大きくて奇麗なのは、そこの主の華音ミルの言う通りなのだが、
辺り一面に肉の腐ったような匂いを放ち蠅を呼び寄せるのでは苦情やむ無しである。
実物を見た鬼子にはグロテスクとしか思えない代物だった。
この「フラワーショップ華音」には何を思ったかマンドラゴラが植えてあるらしい。
何があっても引っこ抜くなと言うきつい警告を受けた。何でも引っこ抜くとそれこそ凄まじい絶叫が辺りに満たされるらしい。
勿論誰も試してみようとは思わない。本物だったら困るからだ。
その上、性質の悪いことに、警報用の罠に使っているらしく、
間抜けな盗賊がこれをうっかり引っこ抜くようにしているという話を聞いたことがある。

極めつけは「桜井青果店」だった。八百屋だが、レジ近くに座布団の上に鎮座するキャベツが座っていた。
あれもUTAUの面子らしいが、直に足は消えるらしく、その時は売り物として棚に置かれる。
これもどういう訳か2体以上いることは滅多にない(見たくない)が、
時々棚にある方が騒がしくなるのは、購入意欲を殺ぐのには十分だった。
店主の桜井博士に「甘藍は食べられて欲しいのです(キリッ」と言われても返事のしようがない。

登場人物:
終音ニク:ボーカロイド亜種。精肉店の看板娘にして牧場経営者の一人娘。
      額に「肉」と書いてある。
華音ミル:ボーカロイド亜種。男の娘らしい。鏡音リン・連の鼻声を皮肉ったキャラ。
      いっけんデフォ子風の外見。但し短パンを吐いているのが識別点で蓄膿症なのか嗅覚皆無である。
甘藍:要するにキャベツで、どうしてこういうのがUTAUにいるのか分らない。
桜井博士:農学者で甘藍の持ち物とされる人物。ここでは青果店の店主。
175おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2012/01/17(火) 21:53:57.60 ID:FAosmixZ
ちと趣旨から外れるが、誰も見てないようなので今のうち。

引用元

【基本は持っている】野田民主党研究第193弾【じゃあ国会で試そうか】
http://anago.2ch.net/test/read.cgi/asia/1326802356/4

4 名前:日出づる処の名無し[] 投稿日:2012/01/17(火) 21:41:13.40 ID:v88d78sA
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 ロンドンオリンピックのオープニングに初音ミク 投票お願いします

 「Mikuが死ねば韓国ブランド委員会の勝ち。勝てば、人類の勝ち。」

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

■投票場所
「Hatsune Miku」の右側の「Vote!」をクリック
http://www.the-top-tens.com/lists/singers-perform-london-olympics-opening-ceremonies.asp

■これまでの経緯
26 名無しさん@12周年 New! 2012/01/17(火) 20:48:20.78 ID:t0+cB3A40
K-POPが上位を独占し始める。

凄い勢いで初音ミクが急上昇

韓国ブランド委員会が「初音ミクはアーティストじゃ無い」と抗議

初音ミクをエントリーから取り下げる

運営側は一度エントリーから削除するも、納得いかず再度初音ミクをエントリーに掲載。

現在1位

■関連記事
http://getnews.jp/archives/162814
176おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2012/01/17(火) 23:32:51.32 ID:FAosmixZ
>>175からの小ネタ。

「凄いねー。まさに世界を股に掛けるボーカロイド」PCの画面を見ていたテトが呟いた。
「はぁ。」鬼子の相槌。
「まぁ、アメリカトヨタが彼女を採用したとか聞くし。」
「はぁ」鬼子の反応は同じようなものだった。
「あっしには関わりのねぇことでござんす、って顔だな。」
「だって、オリンピックのオープニングだなんて、どう考えても縁が無さげだし。」
「もしからしたらオマケでも出れるかもしれんよ。」
「だといいですねぇ。」
「まぁ2位以下が組織票総動員なのは丸見えなので、どうなるか分らんけど」
「そこまでする必要があるのでしょうか。」
「ああ、あの人間未満共はそう考えているらしい。」
「人間じゃないんですか?」鬼子の疑問。
「大丈夫だ。問題ない。あいつらをまっとうな人間と思わないほうがいい。」テトの声は冷ややかだった。
「まぁ、併合した後、負の霊圧が少し減ったようですが。」
「そんなことがあったんだ。」
「それ以前も碌なものではなかったのですが。」
「大陸は?」
「あそこは土地が広いので、あまり霊圧は高くならないのです。」
「今は酷そうだな。」
「酷いです。私が言うのもなんですが人が増え過ぎました。とても祓い切れません。」
「で、例の国については。」
「上半分はもうお終いでしょう。助けようがないです。霊圧がどうという以前の問題です。下の方は上が蓋になっているので。」
「上は御臨終。下は水を入れ過ぎた風船か。」
「はい。あれで日本憎しの感情を止めて現実を見るか未来を良くする方に努力すれば多少は改善したかもしれません。」
「もう、手遅れか。」
「ですね。多分恐ろしい位悲惨なことになると思いますが、彼らの負の感情全部をこの国が引き受けるには余りにも量が多すぎます。」
「しかも彼等の正体に気がついている人が多くなったからねぇ。」
「引き受けたくないですよ。彼ら自身の負の感情が作り出した化け物に彼ら自身が囚われ過ぎています。
 こちらはこちらでその作りだしたものにも向きあわなければなりません。」
「焚きつけようとする馬鹿には事欠かないが。」
鬼子はため息をついた。化け物と言っても妖怪の類ではない。彼等が作り出した憎悪や嫉妬が何を齎すかである。
そして彼等が作り出した感情と、破壊した国土のもの。それだけだったら良かったかもしれないが、もはや手遅れ。
国家が滅ぶというのは、てっぺんに置いてある巨石を転がすようなものだ。
転がすまでは梃子でも動かないが、転がり出すとだれにも止められない。そしてその間あらゆるものを手当たり次第に破壊しつくす。
しかも、問題は理性より感情を重視する連中とばかりときている。手に負えない。
欠片でも理性があれば何とか出来るかも知れないが、混乱が収束するまでは時間がかかる。
そして今の世界には彼らの面倒を見ることが出来る国家や機関等存在しない。
いやないことは無いが、その国は政権交代のお祭り騒ぎと震災の復興のツケを否応なく支払わなければならない。

鬼子とテトが深いため息をついたのは同時だった。
177おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2012/01/22(日) 01:08:09.87 ID:/QSSByxP
こんな感じですか。
或る日の四天王

この日も城郭トップにいる四天王は額を寄せるようにして密談を行っていた。
議題は当然行方不明になっている「幼き領主」の捜索である。

鬼が率いる妖魔の集団によって滅ぼされた国の住民が
鬼となって甦るとは皮肉であるが、とにかく当面の課題は国家のトップを何が何でも探すことである。

問題はあのときの混乱によって鬼となったであろう領主の今の容姿が全く不明なことである。
もちろん「その当時」の容姿はみな頭に叩き込んでいるのだが、
鬼化した筈なのにその姿を知るものは誰もいないという有様だった。
勿論その中には鬼駆慈童も含まれる。

その時の混乱を一言で表せば地獄だった。為すすべもなく次々と襲われて倒れていく領民たちや、
あっさりと城門どころか濠やら何やらを突破して城に雪崩れ込む妖魔たち。
危急を聞きつけ急ぎ戻った侍達が鬼ども相手に戦うがまるで歯が立たない。
それを陰陽術で防ぐが数が多過ぎとてものことでは防ぎきれるものではない。
そして彼等は鬼駆慈童を狙った。

その恐るべき混乱の中で彼は鬼化の術を決行した。勿論領主も含めて。

そしてこの国は鬼の国となった。
178創る名無しに見る名無し:2012/01/30(月) 20:38:23.28 ID:nbDNtaMJ
そういえば鬼駆慈童って、国に対して忠実なんだろうかなあ。
なんか己の野心を奥底に秘めてるって感じのきな臭いというか胡散臭いイメージがある
話創るときもソッチ方面でいこうかな〜って思うが……いつかは
179創る名無しに見る名無し:2012/01/31(火) 00:43:22.93 ID:VZ4eIcy4
>>178
なんとなく分かるなぁ。そのイメージ。
180創る名無しに見る名無し:2012/01/31(火) 10:31:41.24 ID:dUjzFDkg
                  /7
               ┌‐┐  //
        く\  L.._」   〈/
         \冫 '⌒ヽ
                ノ
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       ハ _,.イ;;;;;ハ;;;;;;;;;ハ;;;;;;;さ ら
       {. V厶シ' レwノ V;;;;;;Чミ:、  萌え咲けっ♪
          彡∨イ ┃  ┃ノノ;;;リ;;;;ト、\
      / ノ;;;人 '' r‐┐'' リッ;;;;;;ッゝ);ノ
181´▲公▲` ◆dIMp.DI4WM :2012/02/01(水) 10:20:04.57 ID:UdxJFXHQ
>>177
>>178
鬼駆慈童には今のところ大した設定というものが無いので、その辺りは自由に創造して下さって結構ですよ。
というか設定自体を考えるのが不得手なもので…。
今後使用するかどうかは別として、一応自分の中で浮かんでいるものは
「幼き領主を魂魄と肉体に分離させた、片一方が小日本(?)」
とか
「中成・鳥人間形体で膝枕されると超気持ちいい」
とかですかね。

あと小日本可愛い。
182創る名無しに見る名無し:2012/02/01(水) 17:06:56.37 ID:AyJEvwnT
鬼駆慈童の素顔も気になるところ

本スレでおいおい決まってくのかなぁ?
183創る名無しに見る名無し:2012/02/01(水) 21:40:12.92 ID:+L4Nwmp5
他のキャラも絡む設定は基本的に動かす人(漫画を描く人やSS書く人)の裁量に任せている感じですよね。
それも踏まえたらスレ自体で固定化はしない気がする。
184創る名無しに見る名無し:2012/02/08(水) 15:22:20.80 ID:GrAnKBpd
   __し⌒  ト、州州州州州ミミミ州州州ノ-7州州ヾ州\     `ヽ ノ_  ヒ ャ ッ ハ ― |
   \    _,ノタヤカァ リリリリリリリリ,ハリリリリヽヒ‐ヲ リリリリリリヽミミ\ (( E彡\  ⌒ヽ_____ノ
    | /T' レ''ミミミуミミミミミミミミ// ヘミノミミミミΥミミミミミミミミヽミミミミ\  (○)|
     レ'´ | ) ノリリリ/リリリリ/リリ//  リλミヽリリリリメリリリリリリリリミミミ州i `''´ ノ
       ,| ル/州州|州/ノ州/ノ   ソノ ,,ヽミヽヽ州|州州州州.ト、,{州ノヽ ノ  ヤイカガシ
       / / ァノ州州州/l|州リ   ''ン   ミ\ミ|ルル|州州iミミトミ州州州)   ぶつけますよっ
    ,イ| /:.人|州州ハ州彡ソ     ─=rテテt;i,''|ミ/州/リ//州州州州/
   /:;:;|,| /.:ノ:;:;l|州|州|彳‐rテtr`       i''ミシ'リ |/州.///州州州ノ洲人.___
   .|;:;:;:レy:.:/;:;:;:;:;:.!州|多ヽ l'ミリ        ̄~ ル州//州州州彡,,.r<洲ミr-、ヽ
   |:;:;:;:;ヽ.:ノ;:;:;:;:;:;:;ミリル彡| `ー'        ,r彡リシ洲州州リ,.r '´;:;:;:;:;:;:\洲ミ,川、
  .|;:;:;:;::;:;V:;:;:;:;:;:;:;:;:,/洲リ/!、   '      〃//リリリ州州.フ´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ヽ、彬ノ
  |:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_/彬リノ勿ヽ、   Tゝ  ,ホ//洲洲リルメ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: ̄ ̄:;`ヽ塗エゥ、
  |;:;:;:;:;:;:;r--/ ̄,rー-メ、.物物クヽ,.---<´,/塗/塗塗//:;:;:;:;:;:;:;:;:,.-‐ー-==:、;:;〈_塗ミミラホ、
  |:;:;:;:;:;:/ /_,./, ,___   ヽミリク'´:.:.:.:.:.:.:.:.:くへL塗塗_____r'´∠_;:;r‐-=`--、ヽ、ミミミ、
 __l,,,,,...y' ./ {__,.r‐'   \  ヽ、ゝー⌒ヽ.:.:.:.\;:;:;:;:`ヽ、;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:`ヽ、;:;:;:;:;:;:;:\リ〉
.(____,./`,L/――-         ヽ    \:.:.:.:.\:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;\:;:;:;:;:;:;|ノ
  |:;:;:;`='/;:;:;:;::;:;:;:;:;|   ノ     Y     ヽ.:.:.:.:\:;:;:;:;:;:;`ヽ:、;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;;;)
  |;:;:;:;:r'´ ̄ ̄ヽ._/   /             \:.:.:.:ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;`ヽ、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\ノ
185創る名無しに見る名無し:2012/02/08(水) 18:01:38.48 ID:Dqc/KjiZ
またスゲエのが来たな!!
186創る名無しに見る名無し:2012/02/08(水) 21:13:23.60 ID:aqqQ466q
最近投下されるAAのクォリティ高すぎるだろww

タヤカァ
187創る名無しに見る名無し:2012/02/09(木) 12:01:05.15 ID:tv+pf4A7
細け〜AAだなや。
俺には作れん。
188歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/10(金) 01:00:58.70 ID:K1Obulpy
十二話「そんなわけねえっつうの……」(仮)

   φ

 目が覚める原因として最も多いのは廊下の足音だ。
天魔党一ヶ城天守三階の床はよく軋むことで有名であり、そしてここに『忍』幹部の部屋が設けられている。
二階と四階をつなぐ廊下に面する私の部屋は、忍にあらざる者も通るため、なおさら足音が耳障りなのだ。

 『鬼を祓う鬼』日本鬼子の敗北の報を聞き、私は歓喜するよりもまず睡眠にありつける安堵のほうが遥かに大きかった。
城に戻り、この部屋の襖を開けるや否や、畳の上に伏せて三日は眠ってやると心に誓ったのだ。

 そしてあの日から三週間が経った。
 職業病とでも診断されても私は驚かない。今までまとまった眠りにありつけることなく二十一日間を過ごしてきたのだ。
どんなに努力をしたってほんの些細な物音で目が覚めてしまう。
鼠の足音を敵襲と勘違いしてしまったときは、本気で自分自身を怨みたくなった。

 こうなったら「眠り」の定義を変えるべきかもしれない。目をつむった瞬間から睡眠は開始される。
そう考えれば幾分か気持ちが楽になる。まばたき一回刹那の睡眠、塵も積もれば山となる、
寄せ集めれば日の入りから日の出まで寝続けてるくらいの睡眠時間になるのではないだろうか。なんて健康的な生活だろう。

「そんなわけねえっつうの……」
「どうしたミキティ」
 ため息交じりに声が出ていたらしく、『忍』の頭である鵺様が声をかけてきた。

「申し訳ございません、独り言にございます」
 頭巾を上げて口と頬を覆い、恥じらいの情を隠す。
鵺様は特に関心もなく床を軋ませ、蛇の緒のように長い虎柄の尾を振って前を歩いていた。

 ミキティってなんだよ、とため口で訊きたい衝動を抑える。
そもそも私はなぜこの方が私をミキティと呼ぶ主旨をよく理解していないのだ。
本名を口にしてはいけないという理由であれば烏見鬼(おみき)と呼べばいいのに、
ミキティ、ミキティと懲りずに呼び、しまいにはそれで定着してしまった。

 しかも、鵺様は特に私をからかうでもなく、ましてや好意をもって称されたわけでもないのだ。
親しみを込めて下さっているのか、それとも単なる気まぐれなのか。
忍の端くれとして読心術を得てはいるものの、鵺様は表情からも声質からも感情というものが剥離されていて、
真意が謎に包まれてしまっている。

 一段が膝小僧ほどの高さもある急な階段をのぼる。
一ヶ城四階。
御用部屋の襖を開けた途端、鎧をまとった獣の鬼が足元まで転がってきた。

「どういうことだ、青狸大将!」



こんなスカポンタンな雑文を書いていますが、
まあほんのりまったり書いていきますので、
もしよろしければほんのりまったり待っていてくださいませー。

更新ペースはガクンと落ちますが、そこらへんは申し訳ないです。
189おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2012/02/10(金) 01:10:53.66 ID:jRla/RWJ
>>188
いえいえ、乙です。
こっちはどういう訳か知らんが極東に以前書いたものを貼られていた。
何考えてるんだ。
190創る名無しに見る名無し:2012/02/11(土) 01:56:08.53 ID:zvPdO13m
ツイッターを見たのですが、二期OPを「BLOOD」にされるという事は、
以前にいた同じく後半テーマに「BLOOD」を選んだ、挑戦バカとかいうのと同じ方向で作る気なのでしょうか?
『それぞれが自分の世界観を〜』と本スレで話されている中、せっかく珍しく長編をあげて下さっている方が、
以前にあったものと似たり寄ったりの駄作へ流れられるかと思うと、寂しくてなりません。
どうか歌麻呂さんご自身の色をお見せくださいませ。お休みなさい。
191創る名無しに見る名無し:2012/02/11(土) 12:00:38.53 ID:09lcfY7+
>>190
あんなド屑の作品はそもそも無かったも同然だろうが。
歌麿さんに粘着して勝手に作風指定してんじゃねぇよ、カス。
192創る名無しに見る名無し:2012/02/11(土) 12:47:06.31 ID:LH66LPcT
ま〜た挑戦バカさんへの粘着か。これが歌麻呂さん本人で無い事は願う。
まあ以前の『断筆前に断筆宣言』のやり取りされてた容疑者の片方(発言自体は恵方)ではあるが…。
193創る名無しに見る名無し:2012/02/11(土) 15:01:13.66 ID:LF0hb7a6
>>190-192
いつもご苦労様。その話はこちらで結論が出ておりますので、詳細はそちらへ。
避難所スレ >>806-809
以下、通常運営に戻ります。
194創る名無しに見る名無し:2012/02/11(土) 15:46:40.06 ID:3aCo7siq
なんかミキティえらいかわいいな。
195創る名無しに見る名無し:2012/02/12(日) 00:48:33.30 ID:dP9/WbNd
天魔党。その居城の一画に妙なる笛の音が響きわたっていた。その笛の音に通ずいするようにいくつもの打楽器と
弦楽器の音色が幾重もの音色を奏でていた。だが、暗いその部屋には演奏者は一人しか居なかった。
室内だというのに、市女笠を深くかぶり横笛で細く高く笛の音を操っているのはここ天魔党の四天王の一角、局。
またの名を藤葛の局と呼ばれる女が奏でる音色だった。
 彼女の笛の音に合わせ、周囲を取り囲むように配置されている楽器たちが弾き手もいないのにひとりでに音を
奏でる。それは絶妙な演奏であった。

これは、彼女にとって、一日の終わりのささやかな楽しみ──楽の音を奏でてから休みに入る──いつもの習慣
だったのだが……

 ドォン……

不意に、その演奏が無粋な騒音で遮られた。城内がわずかに振動する。彼女は演奏を止め、やれやれとばかりに
横笛から口をはなした。
「やれやれ、あの殿方にも困ったものじゃ。おかげでこれでおチチが張るようになってかなわぬわ」
 そう、ひとりごちてそっと笛から手を放した。笛は一人でにふわふわと揺れ、彼女から離れていった。
「白露や」
彼女は暗闇の向こうにある何かに声をかけた。上着を脱ぎながら。すると闇の向こう側から白磁の器が
ふわふわと漂い寄ってきていた。それの真白い表面には龍の透かし彫りが施されていた。
白露と呼ばれるこの『水差し』。不思議な効能があり、中に入れたお茶や飲み物はいつまでたっても冷めたりせず、
劣化もしない不思議な効能があった。

そうして、いつもの慣れた様子で胸を覆う布地を上にはだけると、真っ暗な闇の中に豊満な乳房が白く浮かび上がった。
すかさず、白磁の水差しの口が変形して彼女の胸に吸い付いた。

 ちゃぷ、ちゃぷ
   とぽ、とぽ、とぽ……

 徐々に、おちちが吸い出され、水差しのなかに溜まってゆく。そうしている間も例の騒音は騒がしく
響き渡り、周囲の壁が鳴動していた。いつもの事だ。これでおちちが張る様になる。というのも困ったものだ。
「まったく、殿方というものは……」
 水差しにおちちを吸わせながら、彼女は嘆息する。かつては、この城の城主の為に乳母の役を引き受けていた。
こんな事で胸が張ったりはしなかった。彼女ら天魔党が『敵』によって封印され目覚めるまでどのくらい時が経たのか
よくわからない。しかし、今、このおちちを必要としているのはかわいがっていた主ではないのだ。
 それを思い出し、心が少しシクリと寂しさで疼いた。今、あの子はどこで何をしているのだろうか。
まるでつい先日の事のように思える。

 ドォン……

 おちちを絞り終える頃、例の騒々しい爆音が一際高く響き渡り、決着がついた事が知れた。
おそらく、もう少ししたらここにやってくるだろう。それまでには準備をしておかなければ……
彼女がすいっと手をあげると、今度は物入れの中から、軟膏入れが漂い出てきた。
白露に指示を示すと、先程絞ったおちちをその軟膏入れに数滴、ポトポトと注ぎ入れた。それに指を入れ、
ゆっくりとかき混ぜ、練りこませる。そうしていると、やがて部屋の前に複数の人の気配が現れた。
196創る名無しに見る名無し:2012/02/12(日) 00:49:32.16 ID:dP9/WbNd
「かまわぬ、今日はどちらが運ばれたのかや?」
 軽く、彼女が手を振ると一人でに扉が開いた。丁度扉の向こうの者が声を掛けようとしたようなタイミングで。
そこに居たのは花魁姿に女の面を被った黒金蟲の配下、憎女だった。さらにその後ろに3つの人影が佇んでいた。

「夜分にすみませぬ。またお手を煩わせる事になりそうで……」
 そう、面をつけた女は後ろの二人にちらと目をやり、促すと、二人はあいだに挟んでいる人物を部屋に運び入れた。
一人は、一本ツノに赤い衣装の少年か少女か分からない黒金蟲の弟子、カイコ。もう一人は「忍」に所属する
くのいち、黒伍ミキだった。そして、二人が肩を貸している人物こそ、その「忍」の頭領、鵺だった。

「ほほほ、今宵はまた、一段と手ひどくやられたものよの」
 彼女が軽く手を振ると部屋の奥から一枚の板が浮遊して三人の前に横に浮かび上がった。二人は慣れた様子で
鵺をその板の上に横たえた。彼の身体はあちこちボロボロになってて、それを覆うように布状の白い帯があちこちに
巻き付いていた。その下からはジワリと赤いものが染み出している。

「全く、幾度やられても少しも懲りぬとは、おかげで、わらわの寝る前の習慣になってしもうたではないかえ。
 たまには心安らかに眠りにつきたいものよの」
 そう言いながら、先ほどの水差しからポタリ、ぽたりと液体を傷口に垂らし始めた。

「へっ あんなオモシレー事、そう簡単にやめられっか。俺ぁこれを条件にここに来たんだ。これが済んだらもう一勝負だっ!」

どうやら、相変わらずらしい。事あるごとに黒金蟲に挑んではここに送られてくる。毎度ボロボロにされるのに当人は
『面白かった』と言うばかりで、全く懲りたりしないようだ。ただ、それだと他の仕事に支障をきたすので、
こうして彼女が毎度手当をする事になるのだ。
おかげでそうやって手当するウチに、あの戦いの音を聞くだけで、おちちが張るようになってしまっていた。

「しようもないものよのぉ、おのことは。これでは子供がまだ二人も居るようなものではないかえ」
そう言いながら、傷口にをひと通り濡らした後、口におちちを含み、一際深く抉られている傷口に唇を近づけた。
 そして、ゆっくりと傷に吹きこむようにしてチカラを注ぎ込む……

──数分後、そこには何事もなかったのように身体に巻きついた白い帯をむしり取る鵺の姿があった。
 彼女の力によって全ての傷は癒されたのだ。

「おぅ、身体が軽い軽い。思うように動かなかったのがウソみてえだ。サンキュ。さあて、もう一勝負だっ!」
そう、意気込んで駆け出そうとしたが、憎女のキッとした気配を仮面越しに感じたのか、渋々といった感じで
「……わあったよ。また別の日だ別の日」
 と、引き下がった。そして配下のくのいちを引き連れ、部屋を出ていった。くのいちは終始無言で、頭領の後ろに
付き従い、廊下の闇に溶け込むようにして消えていった。

「やあれやれ、相変わらずだな。あのあんちゃんも。じゃあ、俺も引っ込もうかな」
腕を頭に組んで、気楽に言い捨てると、挨拶がわりに軽く彼女らに手を降り、カイコも部屋を出ていった。
続いて、憎女も部屋を辞しようとした時、彼女に呼び止められた。
「?」
 その憎女の手に彼女はあの軟膏入れを手渡した。彼女のおちちが練りこまれている傷薬だ。

「ぬしのあるじに伝えよ。『これを今日中に使いきらねば、もうあの男の手当は引き受けぬ』とな」
彼女の表情は仮面越しなので、表情はよくわからない。

「あの男もなかなかに強情よの。先ほどの血糊の臭いに、別の血の臭いが染み付いている事に気づかぬわらわではないわ」
つまり、毎回同じ結果のように見えて、だんだんと勝負が拮抗してきているようだ。黒金蟲もいくらか傷を負ったのだ。
そのうち、勝負の結果が逆転することもありえるかもしれない。
「・・・・・・」
憎女は、彼女に向かて一礼すると、何も言わずに部屋を辞した。だが、彼女の主への気遣いに侮辱だと腹を立てたりはしないだろう。
あの男もなかなかに強情だ。

「さてもさても、ああは言うたが、近頃はあれが無いと一日が終わったという気がせぬの。そろそろ休むとするかの」
そういって、彼女の多忙な一日は終わりをむかえた。
                                    ──終──
197創る名無しに見る名無し:2012/02/12(日) 00:51:40.83 ID:dP9/WbNd
>>195-196
というわけで、今まで出てきた設定を適当に組み合わせてSS書いてみた。能力&アイテムから「白露」と呼ばれているのと、
本性から藤葛の局とも呼ばれている。とか、両方取りの設定だったりする。それでは。
198創る名無しに見る名無し:2012/02/12(日) 10:48:28.41 ID:E1rsBEf/
乙です!上手くまとまってますね。
しかしなんというヒワイドリが喜びそうな治癒方法なんだろうw
199創る名無しに見る名無し:2012/02/12(日) 13:26:43.03 ID:50K2JGer
回復サポートか。役割としてはイイね。
四天王は上手い具合に役割分けができてるな。
200歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/19(日) 02:42:20.87 ID:1RHoWsgh
お忘れの方が大半かと思いますが、歌麻呂です。
『【編纂】日本鬼子さん』の続きです。

一話一話の更新感覚がかなーり開いちゃうと思うので、
十二話から、何日かに分けて投下しようかなと思います。

序〜十一話(注:pixiv版) http://www.pixiv.net/series.php?id=50805


※夏コミに向けて、序〜十話までを製本化しようかなと思います。
 校閲・校正を手伝ってくださる方、
 製本編集の協力をしてくださる方、
 イラスト・ラクガキを寄せて下さる方がいらっしゃいましたら、
 onikokurabuあっとgmail.com(あっとを@に!)へメールを下さいませ。
201歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/19(日) 02:43:46.03 ID:1RHoWsgh
十二話「そんなわけねえっつうの……」
   十四の一(今回は一〜四を投下します)

   φ

「兄貴、行ってきます!」
 昼食の食器を洗っているときだった。
バタバタと音を立てて階段を降りた匠は、リビングの入口から顔を〇・五秒出して、そしてひっこめる。

「ちょっと待った!」
 行ってらっしゃいと言いかけて、匠を呼び止めなくてはいけない要件を思い出した。
廊下へ出て玄関に向かうと、匠は扉に手をかけ、今にも出掛けるところだった。

「遅刻するから急いで!」
 やれやれ、と僕は溜息をついた。
 昨晩、トイレで目覚めたときも匠の部屋から明かりが洩れていた。
こうなることが分かってるのならもう少し早くに寝ればいいのにと思う。
 少しは女の子らしく、お肌のことを気にして早寝早起きの習慣をつけてもらいたい。
余計なお世話だろうけどさ。

「早く!」
 おっと、これ以上焦らすといけない。
「いつごろ帰れるか?」
「わかんない」
 匠は即答した。よっぽど慌ててるらしい。
「夕飯肉じゃがなんだけど」
「了解した。七時には帰宅する」
 匠は即答した。よっぽど食べたいらしい。

「じゃ、行ってきます!」
 玄関ドアが乱暴に開け放たれる。匠がドアの隙間からすり抜けるように外に出ると、昼を過ぎた晩夏の光が玄関に入り込んできた。
 俺の靴を蹴っ飛ばして行っちゃったけど、肉じゃがを楽しみにしてくれてるから許してあげよう。
 湯気立つじゃがいもを嬉しそうに頬張る匠の顔を浮かべる。これは作り甲斐があるってもんだ。
 ああでもその前に掃除と洗濯を済まさないと。それから近所のスーパーでじゃがいもとしらたきを買いに行こう。
どうせだから明日の朝サラダにするキャベツも買っておこうと計画する。
最近野菜は値上がりしているからあまり買いたくはないが、家族の健康を思うとどうしても手放すことができない。

 そんなことを考えていたら、玄関扉がかちりと音を立てて閉まっていた。電気を点けてないから薄暗い。
昼間のうちは極力電気を使わない。環境のために(という名目上、家計のために)節電節水は怠らない。
真夜中は匠がパソコンをフル起動させているから、その分昼は特に電気を使わない生活をしている。
半ばやけくそで、もう半分はゲーム感覚だったりする。

 まるで主夫みたいだな、俺。

 幼少時代から家事の手伝いが好きでやってたけど、匠が中学に入学したのを機に母が仕事を始めたので、
家事は僕が取り仕切るようになった。そうして四年か五年か、もうそれくらいになる。
いつの間にか炊事洗濯裁縫なんでもござれの主夫マスターになっていた。
 だからといって義務感を背負ってやっているわけじゃない。好きなようにやっている。
202歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/19(日) 02:44:15.95 ID:1RHoWsgh
   二

 最近匠が活動的になってるのは気のせいじゃないみたいだ。
話を聞くかぎり、新しい友達ができたらしく、ヒノモトオニコさんと言うらしい。
 どういう綴りなのかと訊くと、ニッポンのオニのコ、と書くらしい。
 日本鬼子?
 なんとも珍しい名前だ。まあ何にせよ、いつか会ったら「うちの愚妹がお世話になってます」と頭を下げないといけないな。

 無断で泊まりに行かれたときは心配したけど、鬼子さんが不良というわけでもなさそうなので好きにさせている。
 つい一ヶ月くらい前まで、匠はドージンシとかいう漫画を買うときか、
イラストだか絵本だかのスケッチをするときくらいしか外出しなかった。ほとんどの休日を自室の中で過ごしていたから、
頭からきのこが生えるんじゃないかって心配したものだ。でもこの夏は鬼子さんのおかげで匠の表情が活き活きするようになっていた。
やはり、友達というものは人の性格に影響を与えるものなんだと思う。

 というより、兄の視線で匠の背中を見ると、昔の匠を取り戻しているような、そんな気分にさせる。

 まだ小学校か、幼稚園か。
ちっこい頃の匠はわがままなおてんば娘だった。隙あらば外に飛び出して木登りするような子で、いつも服を泥だらけにするから、
母さんの手伝いをしていた当時の俺はいつも溜息を洩らして泥を落とす作業を日々行っていた記憶がある。
 その一方で、女の子の友達とはおままごとや絵本を読み合いっこしたりするという女々しい一面もあった。

 匠はどんな人とも当然のようにコミュニケーションができた。
学生をしている自分としては、その能力が羨ましいとさえ感じるし、きっと多くの人が欲するスキルだと思う。

 一階畳部屋の押入れに仕舞ってある掃除機を取り出す。今日は肉じゃがに力を注ぎたいので、掃除はほどほどにしておく。
窓をきれいにしたかったけど、それはまた次の日曜日にやろう。
 リビングにたまった微量の埃をまんべんなく吸引する。ソファの下も忘れずに掃除機をかける。
廊下、階段と決まった動作で決まったコースを辿る。階段の隅っこのごみを吸い上げるのにいつも手間取ってしまうけど、
ここをなおざりにしてはあっという間に埃のアジトが構築されてしまう。要清掃地区だ。

 二階に出て正面の扉に「たくみのへや」という看板が下がっている。
 この部屋は立ち入りが禁じられているし、俺だって年頃の女の子の部屋に好んで行きたがるような性癖は持っていない。
 ましてや妹だ。漫画やゲームのようなドキドキイベントなんて、現実世界の兄妹じゃあ発生するわけもない。
 しかし……匠はちゃんと掃除してるだろうか。
 多分してないよな。うん。
 いい加減強行突破して掃除しなくちゃいけないけど、今日は見逃してやろう。肉じゃが生成のためのMPを温存するために。
203歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/19(日) 02:44:51.18 ID:1RHoWsgh
   三

 おてんばだった匠が意欲的に外へ出なくなったのは、匠が小学三年のときの事件が原因だと思っている。
 その頃友達の中でテディ・ベアが流行っていたらしい。本当に他愛ない流行だ。
たった数人の女子グループの、ほんの数ヶ月間だけを賑わせたプチブームだったのだろう。

 匠は口癖のように「テディベアが欲しい」と母さんにねだっていた。我が家にはそのぬいぐるみがいなかったのだ。
 母さんは最初のうちこそダメの一点張りだったものの、何日もねだられた結果、「じゃあ誕生日にね」と折れたのだった。

 そのときの匠の喜びようといったらない。俺の部屋まで来て、テディベアが家にやってくる旨を繰り返し繰り返し語った。
 ペットならまだしも、ただのぬいぐるみでこれまで期待に胸を膨らませることができるのは、
きっと匠に純粋で素晴らしい想像力が備わっているからなのだろう。

 しかし匠の誕生日に贈られたのは、テディベアではなかった。
 名もなきクマのぬいぐるみだったのだ。

 プレゼントボックスを開けた匠の笑顔が、まるでローソクの灯を吹き消すように、ふ、と凍りついた。

 母さんはクマのぬいぐるみなら何でもいいと思ってたのだろう。そういう勘違いはよくある。
 幼年時代、俺は黒猫を全てジジと呼んでいた。犬のことはガーディと呼んでいた。
 だから母さんが匠の言う「テディベア」を単なる「クマのぬいぐるみ」だと解釈したのは、何も不自然なことではない。
母さんには何の悪意もない。

 しかし、そう思えるのは今現在の回想する俺が大人だからだ。
当時の俺には、まして当時の匠には、そんな勘違いを理解することなんてできなかったし、許容することもできなかった。

 プレゼントを開封したまま思考停止になった匠の姿を、俺は一生忘れることはないだろう。

 その瞬間匠の頭に何がよぎっていたのか、そんなの匠自身にしかわからない。
 今日の誕生日パーティでね、テディベアが来るんだよ。明日持ってきてあげる、楽しみにしててね
――友達にそう言っていたのかもしれない。
 あるいは、膨張に膨張を重ねた気持ちに手が付けられず、ただただ抑えきれない幸福と法悦に胸をときめかしていたのかもしれない。

 とにかく、匠の感情はプレゼントボックスを開けた瞬間ずたずたにぶち壊された。
 匠は泣いて喚いて、その日は本当に、本当に散々な一日だった。

「ごめんね、テディベアは見つからなかったの。だからこれで許して、ね?」
と母さんがなだめたが、匠はそのいたわりの手をはたいた。
 俺と母さんと姉貴の自信作であったデコレーションケーキをパイ投げのように呆気なく窓に叩きつけ、姉貴に暴言をぶちまけ、俺を蹴り飛ばした。
 そしてプレゼントのぬいぐるみを引き裂いてゴミ箱に捨てた。

 それはヒステリーのようなものだったけど、そうしたくなる気持ちもわかる。同じ立場だったら、俺だって同じことをしたはずだろうから。

 匠は数日部屋に引きこもった。
匠があのまま誰とも口を聞かず、暗い影を落としたまま生きるのではないかと思うと、心配で心配で仕方がなかった。
匠は感情を昂らせることの少ない子だから、余計に不安が募っていく。

 でも次顔を見せたときは、痩せはしていたものの、不思議に思えるくらい元気で明るかった。
どんな顔して接したらいいのか迷ってた俺に、
「兄貴、好きな子にフラれちゃった?」なんて冗談をかましてきたときは呆気にとられて何も言い返せなかった。

 女性は元カレとの思い出をすっぱり忘れると雑誌に書いてあったが、その説は元カレに限らず通用するものなのだろうか。
家族はみんな驚いたけど、一方で安心していたのは言うまでもない。
204歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/19(日) 02:45:19.57 ID:1RHoWsgh
   四

 匠はこのことを覚えているのだろうか。
 小三の記憶だ。もうないのかもしれない。
 でも俺は今まで一度も忘れたことはない。というか、忘れたくなかった。
あの日、俺は家族というものが崩壊する音を聞いた。今もときどきその音が耳の奥のほうでこだまする。

 そんなこともあって、捨てられたぬいぐるみは縫い合わせて自室のクローゼットの奥に仕舞っている。
臥薪嘗胆ではないが、あの惨劇を忘れないため、時折ボロボロのぬいぐるみを見ては意気込んでいたりする。

 でももうこの変な習慣もやめていいのかもしれない。俺は大学生で、田中は高校生だ。
二人とも非行に走ることなく今に至っているし、もう家族から巣立つ年頃だ。
 外に出たがらなかった匠の日常生活にはやや不安を感じていたのは確かだが、でももう日本鬼子さんがいる。

 大丈夫だ。

 「たくむのへや」という看板の掛かったドアを開ける。
 漫画とCDばかり入った本棚の隣に掃除機を置き、しわひとつないベッドシーツの上で膝立ちになってクローゼットを開けた。
 タンスの隅に置かれた小箱。この中にぬいぐるみは入っている。
ここ半年間は触れていないが、だからといって存在そのものを忘却することはなかった。
 息をすっと一つ呑み込み、勢いよくふたを開ける。

 かび臭い空気が入っていた。
 冷や汗が流れる。

 ぬいぐるみは、その行方をくらましていた。

「まさか」

 匠に気付かれていた?
 半年以上このふたを開けることはなかったけど、その間に?

 もしそうだったら、匠は激しいフラッシュバックを起こすに違いない。
いや待て、それは妄想だ。
現実を見ろ。
ここ最近匠がおかしくなっていた気配はあったか? 
ないだろう? 
なら匠はぬいぐるみを見てはいない。
そうだ、そうに決まっている。
待て、焦るな。
答えを即急に求めるな。
冷静に情報を結合させろ。

 そうだ、匠は、ぬいぐるみを見つけてしまった。
 でも、狂ったりなんて、しなかった。
 つまりそういうことなんだ。

 大丈夫なんだよ、だから。

 ぬいぐるみが懐かしい思い出として匠の一部になっているのなら、心配することは何もない。

「大丈夫だ……」

 安堵の息をつきたいのに、どうしても自分の意思を確かめずにはいられなかった。
205歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/19(日) 02:56:55.23 ID:1RHoWsgh
途中でぶつ切りにすると気持ち悪いんで、全部投下します。申し訳ない。

   五

   φ

 目が覚める原因として最も多いのは廊下の足音だ。
天魔党一ヶ城天守三階の床はよく軋むことで有名であり、そしてここに『忍』幹部の部屋が設けられている。
二階と四階をつなぐ廊下に面する私の部屋は、忍にあらざる者も通るため、なおさら足音が耳障りなのだ。

 『鬼を祓う鬼』日本鬼子敗北の報を聞き、私は歓喜するよりもまず睡眠にありつける安らぎの情のほうが遥かに大きかった。
城に戻り、この部屋の襖を開けるや否や、畳の上に伏せて三日は眠ってやると心に誓ったのだ。

 そしてあの日から三週間が経った。

 まとまった眠りにはいまだにありつけていない。

 職業病と診断されても私は驚かない。
どんなに努力をしたってほんの些細な物音で目が覚めてしまう。
鼠の足音を敵襲と勘違いしてしまったときは、本気で自分自身を怨みたくなった。

 こうなったら「眠り」の定義を変えるべきかもしれない。
 そうだ、それがいい。

 私、黒丑ミキ(くろうしミキ)は提案します。
 睡眠は、目をつむったその瞬間から開始されるのです。
まばたき一回刹那の睡眠、塵も積もれば山となる、一文銭も小判の端。
 きっと寄せ集めれば日の入りから日の出まで寝続けてるくらいの睡眠時間にはなりましょう。
なんて健康的な生活。なんと健全な私。

「そんなわけねえっつうの……」
「どうしたミキティ」
 ため息交じりに声が出ていたらしく、『忍』の頭である鵺様が声をかけてきた。
「申し訳ございません、独り言にございます」
 頭巾を上げて口と頬を覆い、恥じらいの情を隠す。
鵺様は関心もなく床を軋ませ、蛇の緒のように長い虎柄の尾を振って前を歩いていた。思わず息が漏れる。

 ミキティってなんだよ、とため口で訊きたい衝動を抑える。そもそも私は鵺様がミキティと呼ぶ主旨をよく理解していないのだ。
本名を口にしてはいけないという理由であれば烏見鬼(おみき)と呼べばいいのに、
ミキティ、ミキティと懲りずに呼び、しまいにはそれで定着してしまった。

 しかも、鵺様は特に私をからかうでもなく、ましてや好意をもって呼び名を付けたわけでもないのだ。
 親しみを込めて下さっているのか、それとも単なる気まぐれなのか。
忍の端くれとして読心術を得てはいるものの、
鵺様は表情からも声質からも感情というものが剥離されていて、真意が謎に包まれてしまっている。
206歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/19(日) 02:58:42.59 ID:1RHoWsgh
   十四の六

 一段一段が膝小僧ほどの高さもある急な階段をのぼる。
 一ヶ城の四階。御用部屋の襖を開けた途端、鎧をまとった獣の鬼が足元まで転がってきた。

「どういうことだ、青狸大将!」

 続けざまに天魔党四天王の一人、『侍』の黒金蟲様の怒声がやってくる。
寝不足の頭に響いたので、憂さ晴らしにとすり抜けざまに青狸大将の手の甲を踏みつけた。
無論、忍の端くれとして、誰にも見えないよう隠密に。

 鵺様が黒金蟲様の隣の座に着いた。黄色い縁のついた黒い胴鎧が擦れて、高く軽やかな音を鳴らす。
 私は広間の隅で畏まる四天王の部下にならって端坐した。
上座と広間の両脇にふす幹部一同でコの字型になるよう青狸大将を囲む。

 上座は三席空いている。四天王『局』の座、『大老』の座、そして『領主』の座だ。
 ここ数日大老様は床に臥しておられるため、『局』の長、藤葛の局(ふじかずらのつぼね)が看病されておられる。
 領主様は私が御用部屋に参上できる身になってから一度もまみえたことはない。
現在消息が不明であるということ以外私は知らないし、おそらく他の幹部もそうだろう。

「おいおい、何の騒ぎだい黒金さんよお。青い狸君にとっときのおはぎでも食べられちまったのか?」
 その冗句に四天王の一人で筆頭陰陽師の鬼駆慈童様が失笑した。
その幼い頭に乗っかる烏の使い魔、穢墓司(えぼし)が蔑むような喚き声を上げた。

 黒金蟲様は一度鬼苦慈童様を流し目で睨めつけ、咳払いをした。
「安心しろ、宿敵おはぎは最後の一騎まで残らず我が胃袋が討ち取った」
 訳すと、おはぎ完食おいしかったです、となる。

「先刻の怒りは他でもない、青狸が任務を全うせず、人間の統べる世で発見した強き心の鬼との連絡を途絶えさせた故にだ」
 青狸大将の任務。
それは田中という媒体を利用して人間の支配する世界へ侵入し、
天魔党の人間界支部となる鬼を見つけ、天魔党員にするというものだ。
なるほど連絡が途絶させたことは重大な失態であるといえる。

「ま、いいんじゃねえの?」
 堅苦しく重々しい空気を軽々しい寛容の声が引き裂いた。
鵺様だ。

「向こうの世で利用できる鬼を見つけた。いや俺としちゃあ向こうの世に行けたことだけでも大きいと思うんだが」
「確かに、今までどーやって行くのか分かんなかったよね。あるってことは知ってたけど」
 筆頭陰陽師様の幼げな声が続く。
その白髪の掛かる翁の能面を外した姿は一度も見たことがないが、その声から推察するに元服すらしていない若人なのであろう。
とても四天王の一人であるとは思えないが、中成になると途端におぞましい邪鬼と化すのは語るまでもない。

「そこの青だぬき」
 鵺様は罪人の如く跪く青狸大将の名を呼んだ。
207歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/19(日) 02:59:25.69 ID:1RHoWsgh
   十四の七

「何でありましょう」
「お前、どうやって人の統べる世へ渡ったんだ?」
「そうだ、青狸大将、我らに教えよ」
 黒金蟲様が身を乗り出す。
我々天魔党にとって、人の統べる世、つまりかの田中匠と呼ばれる人間の暮らす異界への進出は悲願であるのだ。

 天魔党が生まれる前から、千歳の歴史の中で数多の人間がこの世へと流れ着いたことがある。
逆にこちらの世の者が向こうの世へ行くこともあった。
 二つの世を渡る術は重鎮の神々によって守り通されている。
千年の封印を解くために、なんとかして情報を引き出そうと我々はもがいているのである。

 さておき、あちらをよく知る者から噂が広まったのだろう。
近年、こんなことをよく耳にする。

 異界の世は、心の鬼が支配しつつあるのだ、と。
 心の鬼、すなわち人間の悪しき心が生み出さす鬼によって。

 天魔党には今、即戦力が求められている。強大な神々に勝る鬼、そしてあの日本鬼子を完全に負かせるほどの力を持つ鬼が。
向こうの世には、それにふさわしい心の鬼がいるのかもしれない。

 でも、正直そんな思惑なんてどうでもいい。
私の使命は、与えられた任務を淡々とこなしていくだけなのだから。

 御用部屋には静寂が広がっていた。
今なら眠れる。けどここで居眠りしては『忍』の名を汚すことになる。
舌を奥歯で噛みしめ、充血した眼で青狸大将を睨みつけた。

 私を含め、部屋の全ての視線は頑丈な鎧を着こんだ青狸に注がれている。
奴はその全ての視線を背中で受け止め、一刻一刻を満喫しているように見えた。

 この状況を楽しんでいる。私にはそう感じた。

「股猫の大神、般にゃーの治むる紅葉山、その頂にありまする紅葉石」
 姿の上では畏まっているものの、その言葉は堂々としていて、威厳に満ち満ちていた。
「田中匠は石に触れ、こう述べる。往くときは『いただきます』と、還るときは『ごちそうさま』と――」

「戯言を申すでない!」
 いまだかつて聞いたことのない巨大な落雷の音に部屋がゆらめいた。
鼓膜と頭に響くから勘弁してほしい。
黒金蟲様が殺気と共に立ち上がり、野太刀、黒砂刀(くろざとう)を抜いていた。
 部屋がどよめく。

「黒金蟲様、どうかお気を安らかに」
 重臣憎女が止めに入るも、黒砂刀の切先は青狸を向いたままであった。
今にも一刀両断にしてしまおうという気迫をまとった武士の姿に、
我々は鷹に睨まれた小鼠の如く、凍り漬けにされてしまった。

 凍結されているのに、汗が止まらない。
208歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/19(日) 02:59:49.15 ID:1RHoWsgh
   十四の八

「黒さん、煽られてる煽られてる」
 鬼駆慈童様が小声で言った。声の調子からして黒金蟲様をいじっているようであった。
鬼駆慈童様はおそらく唯一黒金蟲様でお遊びになられるお方であると思う。
まったく世の中は広いものだ。
 黒金蟲様はしばしの硬直ののち、刀を収めてどっかと胡坐を掻いた。

「さて、黒金さんは戯言とか何とか言ってたわけで」
 膝の上に肘を乗せ、それで頬を支えている鵺様が口を開く。
「正直俺もこんな馬鹿げた合言葉を神々が考えてるとは思えねえ。
だが、あえてふざけた言葉にすることで、俺たちを惑わすという常套手段も考えられる。
そもそもここで青狸が俺たちを騙しても何の利もねえしな。そこでだ、ミキティ」
「烏見鬼とお呼び下さい」
「じゃあ烏見鬼」
 じゃあってなんだよ、という異議を申し立てそうになりかけるも、
これ以上精神疲労の値が上昇したら本当に眠れなくなってしまう。

 忍装束の裾を握りしめて言葉を待つ。
「確か、読心術を心得てるんだよな?」
「はっ、わたくし烏見鬼は忍術をつかさどる者として、
表情、声音、仕草、瞳孔の揺らぎ……あらゆる角度から相手の心を分析することが可能です」
 書物に記された文面を暗唱するように自身の仕様を明らかにした。
でもこれは鵺様や天魔党の皆方に対して申したのではない。すでに大半が私の特技を知っている。

 これはそう、青狸大将に向けて暴露したものなのだ。

「ならミキ……烏見鬼はさっきの青狸大将の言動から、俺たちが見落としてることはあるか?」
「烏見鬼ちゃん、正直に言っちゃってよ? わかってると思うけどさ」
 鬼駆慈童様が補足するように言う。
青狸の兜の隙間から冷や汗が滴り落ちるのが見えた。
 いや、それは汗などではない。焦りと動揺、そのものだ。

 視線が知らぬ間に青狸から私へと注がれていた。
 隠密行動ばかりで、常に孤独でいたからなのか、私は他人の眼差しというものが苦手だ。
注目されると極度にアガってしまう。半人前で仕事に慣れてきた頃なんて特にひどかった。

 でも、今は違う。
 仕事であるならば、終始抜け目なく務めに励む。
どんな無理難題であっても、淡々と命令を遂行する。
私はそうしてここまでの地位に昇りつめたのだ。

 緊張など、封殺できる。
209歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/19(日) 03:00:28.89 ID:1RHoWsgh
   十四の九

「青狸大将の口振りからは強い威厳を感じ取ることができます。
誰の下にも就かない自立心と独占欲が窺えます。
なるほど、荒廃衆の長を名乗っているだけはありますね」

 私はここで空咳をついて一区切りした。

「そして、そのひざまずき、かしこまる姿は一見我々に服属しているように見えますが、
よくよく見るとその背はこの状況を楽しんでいるように思えます。
しかし異常性癖的、刹那的な快感に酔いしれているわけではありません。
今後、立場が逆転した将来に思いを馳せているが故に、大将は楽しんでいるのです」

 誰も彼もが無言であった。
どよめきを想像していたが、おそらく青狸大将の謀反は多くの者が予測していたのだろう。
私の言葉に異を唱える者はなく、むしろ案の定であるといった表情を一様に見せている。

 奴と共に日本鬼子を偵察に行かなければここまでのことは口にできなかった。
 おそらく奴は隠していたつもりなのだろうが、常に功績を切望し、隙あらば私の寝首を掻こうと企んでいるのが丸見えだった。
おかげであの任務の最中寝首を掻かれないように一睡もできなかったのだ。
今日はその復讐も兼ねている。

「大将の処置は四天王諸公にお任せ申し上げます」
 そう言って私は額を畳に付けて礼をした。

「おのれ、烏見鬼……」
 青狸大将の憎悪が襲いかかってくるが、それらを全て無関心によって追い払う。
 私は悪くない。

「承知した。件は藤葛の局を加えた我が四天王が協議し、決しよう」
 黒兜から垣間見える朱色の隈取が施された黒金蟲様の眼と合ってしまった。
こうなれば、頷くことすらできずに硬直し、喉を震わせることすらできずに正座をするしかなかった。

「して烏見鬼、もう一つ問おう。もはや信用されぬ青狸であるが、奴が申したその言葉を真と捉えるか? それとも嘘偽りと捉えるか?」
 黒金蟲様の眼が今まで見たことがないほど大きく見開いている。

 目を逸らしたくて仕方がなかった。でもここで目を逸らしたら言葉に力がなくなってしまう。
態度だけでも勢威を誇示せねば、目上の者にものを申しても真意を伝えることができないのだ。

「青狸大将は、今まで一度も嘘偽りを口にしたことはありません。我々を騙してもそれは手柄にならないからです」
「ふむ……」
 黒金蟲様は腕を組んでしばし思考にふけっていた。ちらりと鵺様に目配せすると、鵺様は口角を五度程上げた笑みを洩らして応じた。

「烏見鬼に命ずる」
 たった一言であったが、私の肌を総立ちにさせるには充分すぎた。
210歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/19(日) 03:27:26.80 ID:1RHoWsgh
   十四の十

 命令が下る。

「単独で紅葉山に潜入し、紅葉石から人の治むる世へと渡れ」
 いうなれば、合戦を援軍なしで潜り抜け、敵本陣に単独潜入し、大将の首を掻き切れという命が下されるが如し。

 無理難題だ。
 また睡眠時間が削られてしまう。

「そして綿抜鬼と接触し、人を惑わして心の鬼の力を増長させるのだ。
日本鬼子を倒せるのであれば、隙を見て倒せ。全ては現場の判断に任せる」

 あの般にゃーと相対せねばならぬと考えるだけで憂鬱になるのに、その関門のあとに日本鬼子の討伐とは。
 次故郷へ戻るのはいつになるのだろう。

 しかし、これほど退屈しのぎになって面白い任務はない。つまらんひよっこどもを偵察する日々とはしばしの別れとなる。
 そう思うと、私らしくもなく胸の高鳴りを覚えるのだった。

「そして最後に、これが最も重要な任務であるのだが――」
 生唾を呑み込む。まるで忍の道を志したばかりの頃に返ったように、私は下される任務にときめいていた。

「――土産に『ぷりん』とやらを買ってきてはくれぬか」

「……は?」
「噂に聞いておらぬか? その形は黄色き富士の山の峰の如し。
その頂は『からめる』なる黒き雪が如し。その味は将軍おはぎを優に上回ると聞く」
 いや、そういう話じゃなくてですね。

「我とお憎の分を頼むぞ」
「いえ、黒金蟲様、私は――」
「俺には『もんぶらんけえき』を頼むぜ、ミキティ」
 憎女の困惑した声を鵺様のお気楽な声が掻き消した。つかミキティはやめろと言っただろおい。

「ミキちゃん、僕は『ぶぃよねっと・ふらんぼわあず』の大で」
 なんですかそれ。

 御用部屋の厳粛な張りつめた空気が、いつの間にか甘ったるい香りに満たされていた。

 もう付いていけない。
 いや、今日に始まったことじゃないんだけど。
211歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/19(日) 03:28:02.94 ID:1RHoWsgh
   十四の十一

 その後、私の寝室で出立の支度をしていると、襖が突然開かれる。
着替え中ではなかったから良かったものの、私には私的生活空間というものがないことを改めて実感させられた。

「なんですか、鵺様に鬼駆慈童様」
 兵糧丸を腰袋に詰めつつ、あえて鬱陶しそうに対応する。
真面目な黒金蟲様や藤葛の局だったら怒りをあらわにするだろうが、
気まぐれな鵺様と生成ののんびりな鬼駆慈童様は別段怒ったりしないし、むしろこうして接するのが普通になってしまっている。
私もかしこまった言葉は苦手なので実に話しやすい。

「何って、はなむけだよ。ほら」
 と、厳つい文字の羅列されたお札を四枚もらった。

「鵺様、こんなもの作れましたっけ?」
 呪符を書いているところなんて見たことがないし、そもそも鵺様は身軽さを追求している。
 武器は槍状に硬化できる尾や小手に収めた鉤爪であり、
他の装備はその軽量に特化した鎧だけで、荷物らしい荷物は何一つ持たないのだ。
 食料は人間の感情であるため、私のように兵糧丸なんて準備しない。
 必要なものは現地調達。この点だけは忍の長として見習うべきであるが、そんなことはどうでもよくて。

「これ、鬼駆慈童様のですよね」
「あら、ばれちった?」
 能面の内側からへらへら笑い声が聞こえる。ばれるに決まっている。
まあどうせこの二人は私の怒る顔を期待しているのだ。
212歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/19(日) 03:28:31.00 ID:1RHoWsgh
   十四の十二

「鵺様からは何もないんですね?」
 私は事務的に事実確認を行う。
「いや、渡そうと思ったんだ。旅に役立つもんがあったからな」
「でも、ないんですね?」
「一昨日城下の女にやっちまってたことに気付いてだな、ははは」
「ははは、じゃないですよ!」

 どうせ女と遊びすぎてお金が無くなったんだ。それで代わりに金目のものを渡したんだろう。
 四天王の癖に、鵺様はたまに私からお金をせびることがある。
軟派な奴だとは重々承知だったが、そんな大切なものを下劣な女に売り渡してしまうほどだとは思わなかった。

 というか、私に渡すものがなかったらはなむけとか言うなよ。

 穢墓司がカアと鳴いた。
「まあまあミキちゃん。怒ると隈ができるよ」
「できません!」
 まあ過剰な苛立ちで不眠症に拍車がかかり、その結果隈が濃くなるという構造ならあり得るが、今はそんなことどうでもいい。

 深呼吸する。声を張り上げて目が回りそうだった。めまいを伴う幻聴が鳴っている。
「まあまあ、僕の護符に免じて、鵺っちを許してやってよ」
 先程の四枚のお札には解読できない言語が記されている。

「邪気封じの札だよ。次の新月までの分はあるよ」
 天魔党の国が神々の討伐を受けないのは、国全体が巨大な邪気封じの呪によって覆われているからだ。
 中成の鬼駆慈童様がつくりあげたこの呪によって、邪気が外に出るのを防ぎ、神々が感知できないようになっている。
 この札はその呪の携帯版のようなもので、効力は落ちるものの、一札で一体分の邪気を封じ込めることができる。
 日本鬼子偵察の任務の際もこれのおかげで敵に気付かれることなく白狐の村に潜入することができたのだ。

「ありがとうございます、鬼駆慈童様」
 これで般にゃーの領域に潜り込むことが格段と容易になった。
「お礼は『ぶぃよねっと・ふらんぼわあず』でいいよ」
 だからなんですか、その呪文は。
213歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/19(日) 03:29:02.88 ID:1RHoWsgh
   十四の十三

 そして現在、般にゃーの結界の間近で待ちぼうけをくらっているのである。
 この手の結界は鬼を排除するためのものではなく、九分九厘鬼を感知するためのものだ。
排除系の結界なんて高天原との境くらいにしかないのではないだろうか。

 閑話休題、この結界に入った鬼はすぐさま般にゃーの元に届き、日本鬼子によって早急に祓われる。
なんだか猫の髭みたいな結界だなと思う。

 邪気封じの札を所持しているとはいえ、おそらくは下級の鬼程度の邪気は発生していると見積もっている。
何しろ札というものは効果がまちまちなのだ。

 私が何を待っているのかというと、中級以上の鬼、それなりに存在感を有している鬼を待っているのだ。
あわよくば複数体が望ましい。

 その鬼と共に潜入すれば、般にゃーは私でない他の鬼をまず退治するよう日本鬼子に命じるだろう。
そうすれば日本鬼子が鬼と戦う間、時間的余裕が生まれる。
 般にゃー自ら私を祓いに来たとしても、そのときは逃げつつ紅葉石を目指せばいい。わざわざ戦う必要はないのだ。

 その機会を待つため、結界の境にある林の中で自給自足の生活を行っている。
 でも兵糧丸はなるべく食べないようにしている。
 偵察は一方的な消耗戦でもある。蛇や蛙がいるのであればそちらを優先して食べる。
 蛋白源が見当たらなくなって初めて非常食が有効活用されるべきだというのが自論だったりする。

 食事もそこそこに日課となりつつある木登りを始める。
 別に運動不足だからこんなことをしているわけではない。森林においては地面より木の上の方が長時間身を隠すのに適しているのだ。
それに遠くを見渡すこともでき、草原の先にある街道もよく見える。
214歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/02/19(日) 03:29:26.53 ID:1RHoWsgh
   十四の十四

 街道を歩いている商人と商人に化けた鬼の識別をしつつ、肌で鬼の気配を探る。根気と集中力が必要なこの単調で退屈な作業を続けてもう何日目だろうか。

 まれに鬼が紛れていることもあるが、その鬼も弱小の部類に入るもので、結界に入っても間もなく日本鬼子によって駆逐される。
 無能な鬼の末路に同情などしない。
 ましてや日本鬼子の考えを肯定することなど私には不可能だった。

「同族殺しがいかに罪深いことか、奴は知らないのか?」
 結界の間近で冷酷に薙刀を振るう日本鬼子の姿を思い起こし、唇を噛みしめた。
 鬼の繁栄のためにも、日本鬼子は私の手で倒してみせる。

 だからこそ、今は待たなくてはいけない。

 怒りに身を任せてしまいたくなるときこそ理性を働かせて自制しなければならないのだから。
 改めて見回りを続ける。

「あれは……」
 結界へ向かう街道を歩く一組の旅人を見つける。一人は白みを帯びた麻のローブを着こみ、フードをかぶっていた。
 ここから直線距離にして四町は離れているが、その胸のふくらみを確認することができた。私より明らかに大きい。

 ――否。任務遂行に余分な肉は必要ないのだと理性を働かせて自制する。

 異国の様相を纏う女の袖から伸びる手は、黒く陽に焼けているように見えた。
 天竺からの使者だろうか、そんな予感が脳裏をよぎったが、その予想は一刻のうちに掻き消された。

 見えるはずもない強い気迫が女から煌々と燃え上がっているのだ。
 しかもそれは神々しさも兼備する気配であり、私はいつの間にか見とれてしまっていた。
 確かに、あの女は天竺からやってきたのだろう。

 しかし人間ではない。
「鬼神だ」

 思わず枝から手を離してしまいそうになるも、左腕で幹を抱き、私はぽそりと呟いた。

 隣の少年は女の従者なのか、それとも単なる道連れなのかは判断しがたいが、赤い頭襟を被っているから修験者か天狗なのであろう。
 きっと天狗だ。幼い人間が修験者になるとは到底思えない。
 天狗は人々から崇められると同時に恐れられている。神であり、鬼でもある。

 旅人に扮した鬼神と天狗は私にとって誠に好都合であった。
おそらくこの二人が結界を通過したとき、般にゃーはその曖昧な気配に困惑するだろう。
 そこに私も便乗するのだ。上手くいけば誰にも気づかれずに紅葉石のある山の頂まで辿り着けるかもしれない。

 さあ、仕事だ。

 音もなく木から飛び降り、草原をすり抜けるように駆け抜けた。
215創る名無しに見る名無し:2012/02/19(日) 21:35:48.62 ID:hnd4YGf2
おぉ、彼らもついに登場ね。

結構スレ内でキャラ増えてるからねー。
どう絡ませていくか楽しみですよ。
216創る名無しに見る名無し:2012/02/19(日) 21:50:09.80 ID:exYv4m5c
というか、短かっ!スレにあがって作品に登場するまでのスパン短かっ!
ちなみにミキティのおでこの目玉付き額当ては眠気防止だそうです。寝そうになると締め付けてくるんだとか
217創る名無しに見る名無し:2012/02/21(火) 10:05:11.43 ID:6d1VYsX+
今回も力作ですなぁ。GJ!
218創る名無しに見る名無し:2012/02/22(水) 00:12:47.78 ID:9EYLQqzf
489 :創る名無しに見る名無し:2012/02/21(火) 18:56:02.49 ID:AsVyOUIo
はいはい凄い凄い
わかったから黙って書けよ構ってちゃん
大かた反応もらって自分のモチベあげるつもりだろうが、
んな屑の出来損ない豚の餌にもなりゃしねえよ
来ない様塩でもまいておくか?
219創る名無しに見る名無し:2012/02/22(水) 11:14:50.20 ID:qdUTFFGN
志村斜め斜め
220創る名無しに見る名無し:2012/02/22(水) 22:13:19.31 ID:0mjs2VND
>>218-219
ちょっと面白かったw
221創る名無しに見る名無し:2012/03/03(土) 04:12:16.11 ID:Y/1AunaW





【サッカー日本女性代表/アルガルベ杯】日本なでしこ女性ジャパン、デンマーク、勝利に2−0[3/2]★2



http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1330704816/





222創る名無しに見る名無し:2012/03/05(月) 18:03:43.22 ID:6PMjf/+X
今更だが>>184の軽量化バージョン

        捻m,A〃^A、ヽ ,, ̄≪ < ヒ ャ ッ ハ ー /
ヤイカガシ     h´(((ノノ))リハリハ ◎ノ   ヽ、___,ノ
 ぶつけ    / ノハi`・。・´jlリミ人 ̄
  ますよっ rYcへミクyノン⌒ヽ-ミ、 
        |  ニつ、 )ベ⌒^⌒ )リ
223創る名無しに見る名無し:2012/03/05(月) 21:43:33.96 ID:O31Z84Eu
        ┼─┐─┼─  /  ,.          `゙''‐、_\ | / /    
        │  │─┼─ /| _,.イ,,.ィ'    ─────‐‐‐‐ 大
        │  |  │     |  |  | イン ヘ ヘ      // | \
                     ノ レ   〔,'´ ̄`∧、/ ./  |  \
            ノヽ、     _フ 「   {_从 ノ}ノ/ /  ./   |
   ヒ        ) y (     |;;;+。;\./}ノ  `ノく゚(( 
 デ デ   /,   )ヽ|/(    |`+*/ ,.イ  ̄ ̄// )) ̄\
 ヤ l _,,,...//〃ー) ( (     |;;;;;;;;;;;;/ミノ__  /´(''´('´ ;;;;|
ス ,,イ';;^;;;;;;;:::::"  て'/''-::"〃,,__|_;_ :,∠∠_/゙〈}ゝ\* 。;;|
/;;::◎'''::; );_____       @巛 く{ヽミヲ' ゙Y}゙   \+:l
≫_ノU __ノ))三=    _..、'、)"^^^     \ !  }'     \|
  ~''''ー<     、-~\( 了       ,'  /
      \(__/ ζ  /        ,'.. /
             / /
           ξ_つ

そしてぶつけたっ
224創る名無しに見る名無し:2012/03/06(火) 23:38:59.17 ID:eRnX/Gzv
>>223
ぱんつ!
225創る名無しに見る名無し:2012/03/14(水) 12:17:03.54 ID:i5Cwv593
>>189>>221
熟読するように。
ネトウヨって何で叩かれてるの?自分の国が好きなだけなのに
http://mix2ch.blog.fc2.com/blog-entry-3504.html
226創る名無しに見る名無し:2012/03/25(日) 02:13:28.56 ID:JBOEkI/B
>>214
頑張れ!凄いと思うよ、あなたの構成力には。
ただ、話を進める為に新キャラを大量動員しまくっている所がちょっと心配。
断筆しちゃった方が過去に言っていたけど、書き続けるネタとしてキャラを敢えて増やすと、かえってキャラの扱いに出したほうが手に負えなくなって潰される。
そんな姿は見たくないです。
最も、個々の創作者のキャパ次第なんで、出したキャラが10や20になっても統制取れる名文家かも知れないので、私の恥ずかしい言葉は笑って無視してくださいね。
227panneau ◆c7r.6wV2smZ1 :2012/03/27(火) 18:38:34.16 ID:vosJ8lNw
【長編文章】鬼子SSスレ2【巨大AA】
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1289833811/
のアーカイヴ化が終了しました。
所収作品は以下のとおりです。


『小日本のお仕事』
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_konipons-job.xhtml

歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg氏の無題作品
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_ut02.xhtml

歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg氏の歌2
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_songs.xhtml

ID:5foSoAtP氏の無題作品
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_ut03.xhtml

『GoGo!?x3000;ひのもとさん』2
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_go-go.xhtml

ID:EQgf1R0G氏・ID:FvYITAto氏の無題作品
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_ut04.xhtml

『聖夜、咲き乱れた桜』
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_holy-night.xhtml

小品・断片2
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_pieces.xhtml

『ヒワイな名主』
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_nasty-headman.xhtml

ID:OiJ0b4ij氏の無題作品
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_ut05.xhtml

ID:OgpVM0vy氏の無題作品
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_ut06.xhtml

ID:BVQc6kTf氏の無題作品
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_ut07.xhtml

『鬼子と節分の話』
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_bean-throw.xhtml

「日本鬼子・ひのもとおにこ」
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_hinomoto-oniko.xhtml

『OGRE IN THE HUMAN』
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_ogre.xhtml

『青鬼と狗』
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/oniko-ss02_blue-devil.xhtml


JavaScript非対応用index(IE・appleもここから)
http://lepanneaunoir.web.fc2.com/oniko-ss/index.html
228panneau ◆c7r.6wV2smZ1 :2012/03/27(火) 18:43:53.76 ID:vosJ8lNw
1年で2スレは遅すぎるわけだが、理由としては
 ・休筆中(もう1年だお!)とはいえ、一応自作もやってる
 ・声豚の観察やら下らないプログラム作りやらの他の遊びにすぐ逃げる
 ・すぐ寝る
 ・とにかく怠惰
辺り。

この上oniko-mangaもやるらしい。
229創る名無しに見る名無し:2012/03/28(水) 09:18:37.31 ID:Va/hCJ1n
>>227-228
乙です!
とりあえず、下二つの布団羊鬼とさぼテンは萌え散らしておきますね。
230 ◆XcAeHXuSbk :2012/04/07(土) 03:27:17.73 ID:FNGtYHsz
おつです!
231 ◆XcAeHXuSbk :2012/04/07(土) 03:29:09.99 ID:FNGtYHsz
ぐぇ、間違えて書き込みしてしまった。
>>227-228
乙です!
鬼子が出てきてから結構時間が経ったんですね。
嬉しくもあり、寂しくもあるという。
あー、SS書いてないなー。
232創る名無しに見る名無し:2012/04/07(土) 22:45:39.05 ID:XHVYr3FY
これから書くってことかな?

ふふ…期待してるぜ。
233創る名無しに見る名無し:2012/04/14(土) 02:12:18.42 ID:AsqKdrVr
 「ていへんでぇ ていへんでぇっ!」
 日課の修行をしている最中。如月ついなのしもべ、前鬼・後鬼が泡を食った様子で駆け込んできた。
最近観た番組──時代劇──の影響か妙に時代がかっている。

「騒がしわ!なんやねん一体」
自称、鬼退治の専門家。ハタからみたらタダの痛いコ、如月ついなは庭先で素振りしていた鉾を下ろし、
 やっかいなしもべ、前鬼と後鬼の二匹の方に向き直った。

 この二匹、ついなの式神ではあるのだが、びみょ〜に主を敬っていないというか、表向きは主と呼んでいるのに
主『で』遊んでいるフシがある。
それぞれ、赤いぬいぐるみと青いぬいぐるみの姿をしており、見かけは非常にコミカルだ。

「ご主人っ!そない言うたかて、そない悠長に修行しとる場合やあらへんでぇっ!」
 コチラは前鬼。
「せや、せや!これがあわてずにいられますかいなっ」
それに唱和するように後鬼が後をついだ。手に手紙のようなものを持っている。

「だから、なんやねんっちゅうの!」

「鬼子から果たし状が届きましたんやっ」
「なっ!なんやてぇっ?!そりゃぁホンマなんやろうなっ!」
「嘘言うてどうしますっ ホレ、このとおり、ご主人宛の手紙にそう書かれてまっせ〜〜」
後鬼が、開封済みの手紙をピコピコ振りながら一大事を強調した。
 本来ならご主人の手紙を勝手に開けたりする式神達を咎めるべきなんだろうが……

「で、ご主人、ど〜しますんや?!今まで鬼子から挑戦してくるような事などありまへんでしたやろっ?!」
ツッコむ間もなく、前鬼が畳みかけるようにたずねた。
「この手紙によりますと、日時は今週末の土曜。時刻は午前10時。彩河岸公園にて待つ。とありまっせ?」

「ご主人、今度こそ鬼子のハナをあかすチャンスでっせっ!」

 その言葉についなは
「あったりまえや!うちが鬼子なんぞに遅れなぞとるもんかいっ!今度こそ鬼子のヤツの年貢の納め時やっ!」
と、再び鉾を構えて気勢を上げ、式神達は合いの手を入れる。
「「よっ ご主人っ!さすが鬼退治の専門家っ」」

……ちなみに、毎回ついなは鬼子相手に惨敗している。いっそ様式美とさえ言える返り討ちっぷりで。
毎度大敗しているのに懲りないのはある意味大したものだが。
 まあ、それだけ負けが込んでもついなが大怪我もせずピンピンしているのは、鬼子に手加減するだけの余裕が
あるからなのだが、ついな当人はその事には全く考えが及んでいない。
──それはともかく。

「みとれよ鬼子ぉおぉぉっ今度こそボテくりこかしたるっ!!!」
ついなは、ご近所に迷惑な雄叫びを上げた。家の裏庭で。
 当然、近所のオバちゃんにウルサイと叱られた。
234創る名無しに見る名無し:2012/04/14(土) 02:12:39.11 ID:AsqKdrVr
── 果たし合い当日 ──
 ついなは、しもべ達が用意したいくつもの鬼祓いの道具を山と背負って出立した。
「「ご主人頑張りや〜〜ファイトやで〜〜〜」」
 何故かご主人の出立に同行せず、しもべ達は白いハンカチを振ってついなを見送ったのだった。
「……いきましたか?」
「……いきましたな……」
見送った式神達は意味深に顔を見合わせた。ぬいぐるみの顔はボタンの目なので、イマイチ表情がわからない。
 だが、わかりづらい表情ながら笑いをこらえているように見えた。

=== 決闘場所 ===
「待たせたなっ鬼子ぉぉぉぉっこのウチに挑戦とはええ度胸やっ! 今度こそ覚悟し…ぃや…あ?」

 ビシッと突きつけた指先が宙を泳ぎ、威勢のいい言葉が失速して、尻すぼみに終わった。

「お、きたきた。遅いよ〜〜ついなっち。ここそんなにわかりづらかった?」
田中が敷いたゴザの上からついなを出迎えた。
「あ、ホントにきた〜〜やほ〜〜ついな〜〜〜」
鬼子の横から小日本がこっちに向かって手を振ってきた。
「一応、場所とっておいてよかったな」
これは人の姿をとったヤイカガシ。
「まあ、小さくてもチチが増えるのはいいことだ」
いうまでもなく、人の姿をとったヒワイドリ。
「何をいう!田中さんだけではなくついなさんのような素晴らしい人まで来るなんてっ!
 あぁ、今日こそわが生涯で最良の日だっ!」
青年の姿をしたチチドリだ。
「ふん。本日は花見であることを忘れていないかね。節度を忘れぬようにな」
そう、たしなめたのは人の姿をしたチチメンチョウ。
その隣には……
「いいから〜ゴチソウはまだなの〜ごちそうは〜〜」
お酒も入っていないのにできあがっているのはハンニャーだ。

 めいめいがブルーシートの上にゴザを敷いて思い思いの場所に座っていた。

「……え……何やコレ……えと、うち、鬼子と決着……」
なにやら口の中でモゴモゴ呟くもついなは状況を理解できてない。

「ネネさまネネさま〜ほらね〜〜ついなちゃん、ちゃんと来てくれたでしょ〜〜〜?」
 隣の鬼子の袖を引きながら、本当にうれしそうにとびハネながら小日本がはしゃいでいた。

「本当、田中さんに手紙出すように勧められた時には素直に来ていただけるか心配でしたけど、よかった……
 来てもらえて……本当に」
ナニヤラ、ほっとしたように袖で目元をぬぐう鬼子。

「え、え〜〜とぉ…………」
状況がよく分からず、バツが悪くなって何とはなしに周りを見回した。
決闘の事しか頭になかったついなだが、今更ながら周囲の公園内の景色が目に入ってきた。

 辺りは一面、満開の桜が咲き誇っていた──

「花見かぁぁあああああぁぁああっ?!!!」
ようやく、ついなは状況を把握した。と、同時に背負っていた荷物を地面に叩きつけた。

(あ、アイツら〜〜テキトー抜かしおって〜〜〜〜っ!!後でシバいたるっ!!)
 プルプルと拳を震わせ、またもやしもべ二匹にかつがれた事を悟ったついなである。
235創る名無しに見る名無し:2012/04/14(土) 02:12:57.18 ID:AsqKdrVr
──そのころ──
「ウププ、ご主人、今頃アワ食ってる頃でしょうなあ〜〜」
縁側に座布団を用意して、日光に当たりながら前鬼がノンビリと呟いた。
「ご主人の事やから、鬼子から花見の招待が来たかて、よう素直に行きひんやろうしな〜〜」
ぬいぐるみのクセにかたわらにお茶受けを用意して暖かいお茶をすすりながら後鬼が返事を返す。

「あ〜ぁナンてうちらはなんてご主人想いの式神なんやろうな〜」
そういいながらクスクス笑っているのは前鬼だ。

「これで意地張っていかへんかったらまた勝手に一人で落ち込んでワリ食うのはわてらやさかいなあ〜」
ヤレヤレとばかりに後鬼も応じるが声は明らかに面白がっていた。

主のいない時間を満喫している二匹である。
 毎回こうやってご主人をからかって遊ぶ実に困った式神達であった。
236創る名無しに見る名無し:2012/04/14(土) 02:13:17.66 ID:AsqKdrVr
==果たし合い場所改め花見会場==
トテテ、と小日本が駆けてきてついなの手を引いた。
「でもよかったっ!さくらはこにのしょーちょーだもんっ!みんなで仲良くおはなみできたらなって思ってたのっ」

ついなはそれを聞いてうぐ、と言葉を詰まらせた。
(い、言えへん。ホンマは鬼子と決着をつけに来たなんてとてもやないが言えへんっ)

「でも、ついな〜?覚悟って〜〜?」
(げっ、さっきの聞こえてもーてた)
途端、バツが悪くなって目が宙を泳いだ。

「え、え〜とやな〜〜その、なんや……」
小日本のまんまるで澄んだ目がついなを見上げてきた。……この目が涙でいっぱいになってはたまらない。

ふと、先ほど地面に叩きつけた荷物が目についた。
(こ、これやっ!)
荷物の中にあったモノを拾い上げた。
「しょ、勝負や鬼子!きょ、今日は花見やさかい、コイツでけちょんけちょんにしたるっ」

 それは宝庵謹製ポータブルカラオケだった。
選曲ボタンを押しながらタイトルを告げるだけでその楽曲を奏でる特級品である。
鬼祓いグッズと称しながらあの式神達が用意したのはお花見グッズ一式だったのだ。
──持ち出す前に確認すべきだろう。それは。

鬼子が不敵にほほえんだ。
「──そういう事なら。喜んで受けてたちましょう」
すいっと前に立ち、いつになく真剣な表情で小型カラオケを手にした。そして──

   ──津軽海峡〜〜
          冬景色──
マイクの余韻を残しつつ、鬼子は歌い終わった。
「……ふぅ、お粗末さま」
最後にペコリと一礼して歌い終えた。

──採点機能がつけた点数は82点だった──
パチパチパチパチ
周囲は拍手に包まれる。

「なんのっ!ウチが持ってきた道具で負けるんはありえへんっ見とれやっ!」

 ついなは得意なアニソンを選択した──
……34点だった──
「なっなんやてぇっ。何かの間違いやっも一回っ!もっぺんやっ!」
「ふ、そういう事ならいくらでも受けてたちましょうっ!」

「──ひのもとさんってマイク握ると性格変わるタイプなのかナー」
 田中のつぶやきはさておき……
 こうして、花見ならぬ歌合戦は夜桜見物まで続けられることとなったそうな──
 ──結局、ついなの総合点はドベから2番だった。

ダントツ一位 ヤイカガシ「ふう、ま。こんなもんか」

ついな「なっ、なんでやぁぁぁあああああ」

                                      ──終──
237創る名無しに見る名無し:2012/04/14(土) 02:15:13.26 ID:AsqKdrVr
>>233-236
という訳でついなちゃんを軸に鬼子達の花見SSを書いてみたっ
珍しく、式神達が主のためになる行動をした話になってしまっている(ぇ
今年は花見が流れる事が多くて鬼子キャラに花見をさせることでだいしょーこーいとしたっ
それでわっ
238創る名無しに見る名無し:2012/04/14(土) 23:15:05.58 ID:Y+JtnM32
伊達にUTAU化してないな。鬼子さん。

239創る名無しに見る名無し:2012/04/16(月) 14:31:35.90 ID:MlMMOxgM
>>233-237
乙です!
みんなワイワイ楽しそうで良いね!
他の面々はカラオケ順番待ち中に花札やら麻雀やらやってそうだなー。
ヤイカガシ意外と歌上手いのな。…「(下から)ダントツ一位」ではないですよね?
240創る名無しに見る名無し:2012/04/20(金) 20:56:31.56 ID:dycfqWge
ヤイカは本性の姿で歌うときっと「ぼえ〜〜〜」なのに人の姿で歌うとメチャうまに違いないっ!
でもきっと選曲は「ぱんつde音頭!」とかそんなタイトルの曲をチョイスするに違いないっ
241創る名無しに見る名無し:2012/04/24(火) 01:20:36.27 ID:NJmP0cwF
UTAU小日本より先にUTAUヤイカガシできるフラグでしょうか?
242創る名無しに見る名無し:2012/04/25(水) 15:33:34.68 ID:T9G4xRbo

    ,_,r‐β、,_,
    Eヨ|0  0|Eヨ      ゝ――-、
     ∀ト ◇.イ∀       n|(O)=(O)h     なんと
    (⌒ヽV^V(⌒ヽ.     UF (三)ヲj
     `y/~~⌒γij^ij)  r'(ご/~7コ`⌒)
      ヽー―'^ー-'  ( ⌒γ⌒~~ /\
      〉 ̄ |d |     `Γ^ー―--r'ミ_,ゝ
     /   || |     ノ x     ト、ミ
     〈    |d ,}     (____ノ \,∧
   // ̄/ ̄T~|\    /⌒V⌒ ̄入____,>
243創る名無しに見る名無し:2012/05/14(月) 15:18:34.94 ID:1F+cCG4w
一、

「大変だよひのもとさん!人が倒れてる!」
ひのもとさんの家に着くが早いか、私は叫んでいた。
「こちら」に来るようになって、何人かの「人」には会った事はある。
しかし、それはひのもとさんの家からは離れた「村」の中での話で、
「通りゃんせ」からこの家までの間で「人」に会った事はなく、
そのせいで気が動転していた。
これが浮世離れした恰好であれば、ヒト化した鬼が
ひのもとさんにお仕置きされたのだとも思ったろうけど、
その「行き倒れ」は、人間界のホームレスのような現実的な服装で
そのぶん異様なものに見えたのだ。
「あっ、田中さん…人が?」
ハッとした表情で、ひのもとさんはその「人」の場所を聞き
私と一緒に駆け出すのであった。
「やっぱり!ユキさん、ユキさん!?」
意外にもひのもとさんとその「人」は顔見知りだったらしい。
「ユキさん」と呼ばれたその「人」は、辛うじて眼を開けると
「もみじ…さん…俺は…また…」と呟くと、再び気を失った。
「田中さん、ユキさんを家まで運ぶのを、手伝ってくれますか?」
244創る名無しに見る名無し:2012/05/14(月) 15:42:41.72 ID:1F+cCG4w
二、

「ユキさん」を一通り介抱した後、ひのもとさんはこの人について説明してくれた。
彼はまぎれもなく「人間界」、つまり私達の世界の住人で、「人間」であるのだが
その魂は「人ならざる者」として生を受けるはずだったらしい。
実に500人に一人の割合でランダムに生まれてくる(!)彼らは、
外観は人と何ら変わらず
しかしその心の根源が人ならざる事を望んでしまうため、
人の世で生きる事を困難にしてしまっているという。
それでも多くの場合は辛うじて生きていけるのだが、
中には自分の本能と理性の間で苦しみ、あるいは絶望し、
または魂の渇望に耐えかねて破滅していく者が少なくない。
「じじ様によると、『鬼子(キシ)族』というらしいです」
つまり、私達の言葉で言うところの「兄は鬼子です!」の方の鬼子な訳だ。
そしてユキさんもまた鬼子族であり、本能に逆らい続け
「人間」である努力を続けたのだが、それでも滲み出る本質を完全に消す事は出来ず
人間の社会から疎まれ、はじき出されたらしい。
その彼が初めてこちら側に来たのが4年前の初冬、やはり行き倒れていたらしい。
ひのもとさん達に介抱され、気力と体力が戻ると人間界に帰っていく。
そして、ボロボロになった姿でまた行き倒れている事が2、3度あったという。
自分の意志で来ている訳ではなく、療養中に何度も「申し訳ない」と悔やむらしい。
「こちら側の世界で暮らしてはいかがですか、と何度か奨めたのですが」ひのもとさんは言う
「”自分はどこに居てもいけない人間です”と、ある日突然いなくなってしまうのです」
245創る名無しに見る名無し:2012/05/14(月) 15:57:13.96 ID:1F+cCG4w
三、

「ところで、この人さっきひのもとさんの事
”もみじさん”って言ってたけど、何で?」
そう聞くと、ひのもとさんは可笑しそうに
「ああ、それはユキさんが付けてくれた名前なんですよ」と笑った。
「ユキさんって時々不思議な事を言うんですよ。
初めて会った時に”私は鬼ですけど、怖くないですか?”って聞いたら
”鬼っていうのは、人を取って食うものです。あなたは鬼じゃない”と言うんです。
”鬼子という名前も似合いませんね。もみじさんならピッタリだが”って言って
以来時々”もみじさん”と言いかけては、慌てて”ひのもとさん”と言いなおすんです」
「きっとアレだ、初恋の相手か何かに、ひのもとさんがソックリなんじゃないの?」
楽しそうに笑うひのもとさんにつられて、一緒に愛想笑いをしたものの、
気持ちが落ち着いてきたせいか妙な事に気付いた。

ひのもとさんは以前「人間の友達は田中さんが初めてです」と言っていた。
確かにそうだ。
だがひのもとさんはこの人を「まぎれもなく人間界の人間」だと言う。
矛盾している。
だがユキさんを心配そうに、でも再会を少し嬉しそうに見つめるひのもとさんを見ると
その話を切り出すのがためれわれた。

ふと、ある言葉がユキさんの声で脳内再生された。
『あの子はヒノモトオニコじゃありませんね?』
246創る名無しに見る名無し:2012/05/14(月) 16:26:26.57 ID:1F+cCG4w
四、

遠くの方でかすかに笑い声が聞こえる気がする。
だがまだ意識が回復するには至っていない。
しかし、またここに来てしまったという罪悪感と、
地蔵と呼ばれたあの神との約束をやぶってしまった罪悪感だけは感じる。

あの日、彼女を「もみじ」と呼んだ事をこにぽんから聞いた地蔵様に俺は呼び出された。
一通りの問答の後、俺は(よせばいいのに)こう切り出した。
「あの子はヒノモトオニコじゃありませんね?」
人の表情を読み取るのが下手な俺でもわかるほどに、
髭と眉に隠れた彼の表情が変わるのが分かった。
「お主、どこまで知っておる?」地蔵様が問うた。
「二人ほど、会った事があります」
そうだ、俺は会った事がある。「本物の」ヒノモトオニコに。
「どちらもまっとうな名がありました。
”ヒノモトオニコ”とは、彼女達の敵、ないしは獲物達が
彼女達を指して言う言葉。わざわざ個人の名にしているのは妙だと思ったのです」
触れてはならないものに触れてしまった恐怖を本能で感じ、
半ば命乞いのつもりで俺は言葉を続けた。
「しかし、あなた方が”ヒノモトオニコ”を必要としているのは分かります。
私は余所者ですから、その事情はあずかり知らぬところ。
以後この事は口にしますまい。
私さえいなければ、全ては丸く納まるのです」
最後の一言は、取りようによっては「私を殺してくれて結構です」とも受け取れよう。
だが私はあえて言った。自分の殺生与奪を相手にあずけて誠意を示したのだ。
そしてこの一言は、人間の社会で何度も味わった、自分の宿命でもあった。
「早々に立ち去るがよかろう」
「そういたします」
首の皮一枚で命を拾った気がした。

以来、二度とここには足を踏み入れまいと思ったのだが、
人の世で精も根も尽き果てると、気が付けば彼女の家で介抱されている。
意ならざるも、彼らの平穏を、ルールを脅かしてしまう罪悪感から
体が動くようになれば逃げるようにここから立ち去ってしまう。
彼女に対して非礼なのは分かっているが、俺は「ここにいてもいけない」のだ。

彼女たちは「うまくいっている」のだ、俺さえいなければ。
247創る名無しに見る名無し:2012/05/20(日) 04:32:14.08 ID:qOkiyk30
>>243>>246
習作と言った所でしょうか。
以前に投下された作者の各作品をテェックした上での貴方なりの評価に値するとセレクトした
作品からのインスパイアを見て取れる作品です。
出てくる言葉やキーワードは流用ですが、その上で、「本物の」ヒノモトオニコは何足るべきかを
貴方なりに示そうとする含みは良い感じです。
ですが、少々文章の運びに稚拙さが見受けられます。
貴方の脳内ではリアルタイムで十分な記述なのでしょうが、読み手には突然田中さんが言われてもない言葉が
聞いたこともない人の声で脳内再生される「キーワード」と思しき言葉の出し方には戸惑います。
読み手を読みたいな〜と思わせる要素を盛り込み過ぎてかえって不自然感が増していますので、
そこを直せばいい感じだと想いました。
248長芋 ◆w47ZQceOhk :2012/06/05(火) 20:01:59.02 ID:VluqtNz0
こんにちは、本スレの方で時折色々投下させてもらってる長芋です。
前に「こんなん書きたいなー」と某所で呟いたものの、予想以上に長くなって
描く気力がまったくわかないので、メモとして文章にまとめてみたので投下させていただこうかと思います。
文字書きというよりは絵描きよりの方なので、とても読みづらいヘタクソな文章になってしまったと思います。
SS書きの皆さんへの失礼にならないかちょっと心配です。

とりあえず話が通じればいいかなーという気持ちです。あわよくば誰かかわりに描いてくれないかなーという下心もあり。
話の都合上、新キャラが出てくるのですが、キャラをゴリ押しするつもりも
今回以降にこのキャラを再び出すつもりも今のところはありません。
では始めさせていただきます。
249鬼子たん小話1 ◆w47ZQceOhk :2012/06/05(火) 20:04:41.40 ID:VluqtNz0
「畜生…ミスった……」

命にかかわるものではないだろうが、決して軽くは無い傷を負った。
退治屋を初めて一カ月、人生二度目の鬼退治、初回よりもスムーズにいくかと油断したのがいけなかった。
なんとかとどめは刺し、高く売れると噂の尾羽を回収したものの、これではしばらく動けそうにない。
こんな事をしている間に、別の鬼や獣に襲われでもしたら、ひとたまりもないだろう……。
しばらく紅葉小森に身を潜めよう。しかし痛みは治まるどころかどんどん増している気さえする。

(毒でも持ってたのか?あの野郎…)

ああ、ついてない。退治屋なんかになるんじゃなかった。
霞む目。遠のく意識のすみっこで、カサリと草を踏む音が近づいてくるのを感じていた。
250鬼子たん小話2 ◆w47ZQceOhk :2012/06/05(火) 20:05:32.33 ID:VluqtNz0

「田中さん!助けてください!」

毎度のように、紅葉岩の秘密結界を抜けて遊びにやってきた田中匠。
彼女を出迎えたのは、涙目で飛び出してきた日本鬼子であった。
かなり動揺している様子の鬼子の背をぽんぽんと叩き、「おおよしよし」とあやすようにすると、
ようやく落ち着きをとりもどしたらしく、グスンと指で涙をぬぐう。

「で?何があったの?まーたあの淫獣どもにセクハラされたわけ?」
「違います!なんというか、ある意味ヒワイドリ達より扱いが面倒な相手に絡まれてます!」
「面倒な相手…?ついなっちとか?」
「いえ、あのその…!」

顔を赤くしてうろうろと視線を落ち着きなくさまよわせる鬼子に、田中は疑問符を踊らせる。と、その時。

「ぅおおおおお〜にこさぁぁぁぁぁぁん!!!」

聞き覚えのない声が響くと同時に、ぴゃぁ!と鬼子が震えあがる。
何事か、とあたりを見回すと、轟音を上げ、土煙と共にこちらに突進してくる人影に気付き田中も顔を青くした。
当然である。どう見ても不審者だ。

「ヒィィィ!日本さん!心の鬼!心の鬼が出たよ!」
「いえ、あの、あの人は違…」
「ぅおにこさーーーーーん!」
「「ヒィィィィィ!」」

猛スピードで駆けてきた影はキキキ!と急ブレーキをかけるようにストップし、
すたっとその場にひざまずくと、花束を差し出す。

「嗚呼、鬼子さん!今日こそ色よい返事を!結婚を前提に健全なお付き合いをお願いします!」

不審者だ。通報しよう。田中はあさっての方向を見た。
251鬼子たん小話3 ◆w47ZQceOhk :2012/06/05(火) 20:08:11.29 ID:VluqtNz0

田中の号令(おやつサービスするから働けと言っただけだが)で集った
ヒワイドリとヤイカガシによって捉えられた不審者改めその少年、
今はぐるぐる巻きに縛られ木に吊るされている。
鬼子とそう歳のかわらぬ様子の少年、名を仙崎方士と言うらしい。
退治屋初心者であり、方士見習いであると自己紹介をした。

「方士見習い…?」
「まぁ方士っていうのは、仙人の見習いみたいなモンだ」
「つまり方士見習いっていうのは、仙人の見習いの、さらに見習いって事…?」
「そういう事だ」

弱そう。エヘンとふんぞり返る少年をよそに、田中はゲンナリとした顔をする。隣に立つ鬼子は落ち着かない様子だ。
方士の言い分はこうだ。鬼退治にて傷を負った自分を運命的な偶然にも見つけ、
手厚く治療してくれた天使のような女性が、目の前にいる鬼子なのだと。
そして彼女こそが自分の運命の相手に間違いないのだと。どんだけメルヘンな脳内してるんだ。
ツッコみたかったが黙っておいた。あまり積極的に絡まない方が
自分の精神をすり減らさずに済むような気がした田中である。

「そういうわけで鬼子さん!お付き合いを前提に結婚して下さい!」
「逆になってます!いや逆でも困ります!」
「何故です、僕の事お嫌いですか?」
「好き嫌い以前の問題です!私貴方の事なんにも知らないし…」
「これから知りあって行けばいいじゃないですか!」
「田中さん助けて下さい始終この調子なんです!この人話が通じません!」
「はいはいはーい、事情はわかった。ちょっと作戦ターイム」

田中はスススと鬼子をひっぱって仙崎と距離をとると、彼に聞こえぬようヒソヒソと声をひそめる。

「日本さん、ありゃダメだよ。諦めさせるのは簡単じゃないね」
「そ、そんな……」
「いっそ“私、彼氏いるんですー”って言っちゃえば?」
「か、かれし!わわわ私にそんな相手なんていませんよ恐れ多い!田中さんだってわかってますでしょう?」
「だーから、嘘でいいんだって。何ならウチの兄貴貸すよ?事情を話せば協力してくれるって」
「田中さんのお兄さんにまでご迷惑をおかけするわけには…」
「あーもしもし、お兄〜?ちょっと友達が困った事になってるから手伝ってくんない?」
「もう電話してる!!」
「あー、仙崎君?実はねー日本さんには彼氏がいるのさ、何をかくそうアタシの兄貴でさー」
「そしてサクサク事態が進んでるー!!!」
「何…だと…」
「そういう事だから、日本さんの事は諦めて…」
「その男のところへ連れて行け!勝負だ!そして日本さんにふさわしいのはどちらかハッキリさせよう!」


そして鬼子と田中の意志とは関係ない方向に物語は進行していくわけである。
252鬼子たん小話4 ◆w47ZQceOhk :2012/06/05(火) 20:11:05.49 ID:VluqtNz0
さて、所変わって田中家の前。事情を聞いた田中兄こと巧は快く協力してくれるとの事だが、
鬼子は気が気でなかった。巧は田中以上に鬼だの退治屋だのとはかかわりのない一般人。
それを見習いであるとはいえ退治屋である仙崎と勝負するなど…。

「田中さん、止めた方がいいですよぉ!」
「まぁまぁ、大丈夫だから」

心配そうな鬼子と違って、余裕のありそうな田中の表情。
目の前では巧に対して一方的に仙崎が火花を散らしていると言うのに!

「さーて、二人とも、準備はいい?どちらが日本さんにふさわしいか決める為の勝負は…」
「もちろん力で決め「料理で決めよう!」

仙崎の言葉を遮って、巧がにこにこ宣言する。ぽかん。固まる鬼子と仙崎。
田中にとっては予想通りの展開だったらしく、うんうんとうなずいている。

「りょ、料理!?なんで料理!!ここは普通殴り合いとかそういう…!」
「ちょっとアンタ、日本さんの前で殴り合いなんかさせないからね!ほかならぬ日本さんが悲しむじゃない!」

「日本さんが」を強調すると仙崎がひるむ。それに、と付け加える。

「今時は料理の出来る男の方がモテるんだよ?愛する日本さんの為に食事くらい用意できなくてどうするのさ!」
「ぐぅぅ…、そういうものなのか…?」
「いや、俺はモテないけど」
「お兄空気読んで。余計な事言わない!…ごほん、とにかく。
 勝負方法は料理!より日本さんを満足させた方の勝ちって事でよろしくね!」
「チッ…こうなったら仕方ない…!やってやる!台所はどこだ!」
「こっちこっち。いやぁ嬉しいなぁ、男の友達は一緒に料理なんかしてくれないからなー」
「何で嬉しそうなんだこの男は!余裕か!余裕なのか!今に見てろ泣かせてやるからな!」

ギャアギャアと騒ぎながら家の中に消えていく男どもの背中を見守る鬼子と田中。
かつてここまで巧を頼もしく思えた事があっただろうか、いや、ない。料理に関しては信頼できる男である。

「まぁ…これでひとまず安心でしょ?」
「うう…すみません。何から何まで…お兄さんまで巻き込んでしまって……」
「いーのいーの。アタシの可愛い日本さんを、あんな怪しい男にやれるかってんだ!」
「あ、アタシのって田中さん!!」

ボボボっと赤面する鬼子がおかしくて、腹をかかえて笑う田中。これで全て上手くいく。






はずだったのだが。
253鬼子たん小話5 ◆w47ZQceOhk :2012/06/05(火) 20:14:33.16 ID:VluqtNz0

「田中のにーちゃんが…鬼子をめぐって決闘やて……?」


今日も今日とて、鬼子を倒そうとこっそり後をつけていたついなちゃん。
影から田中家で繰り広げられていた鬼子を奪い合う二人目にし、呆然と立ち尽くしていた。
このついな、密かに巧に想いをよせているのである。
いつもは少々乱暴な所のある彼女も、巧の前では恋する乙女、とたんに大人しくなってしまう。
そんな彼女が、憎き鬼子と巧のラブロマンス(に見えたらしい)等直視できるはずもなく……


「おおおおお鬼子ぉぉぉぉぉぉ!勝負せぇやーーーーーー!!!」
「!! ついなさん!?」

鬼子の足元めがけてぶん投げた矛は、地面にビィンと突き刺さる。
田中を抱きあげ大きく跳び後退した鬼子の耳に、これまたマズいタイミングで…と腕の中から声が届いた。
矛を引き抜き、庭の方へ避けた鬼子をにらみつけるついな。…心なしか目が血走っている。

「また勝負ですか…すみませんが今日は立てこんでますので、また後日にでも」
「ウルサイ!いいから黙ってウチに一発殴られぇや!」
「何なに、ついなっち、今日はいつにもましてテンション高いねぇ」
「田中、さがっとき!アンタも巻き添えくらうで!」
「どうやら退いてはくれないようです。田中さん、早々にカタをつけますんでさがっていて下さい」
254鬼子たん小話6 ◆w47ZQceOhk :2012/06/05(火) 20:15:08.59 ID:VluqtNz0

田中をおろして充分に距離をとらせると、鬼子は般若面をとり出した。
戦闘態勢、中成。目をとじ数秒、カっと開いたその瞳は赤く変化し、頭の角も長くのび鋭さを増した。
その神通力に影響されて、着物がチリチリとゆらめく。

「今日はただでさえご迷惑おかけしてるんです…長々と人様のお庭で大騒ぎするつもりはありませんからね?」
「奇遇やなぁ、ウチも一発で終わらせる気やねん。…覚悟しぃや、鬼子ォ!」
「え、ちょ、ついなっちその恵方巻どうする気……  あっ」

ひゅっ 

ついな名物「恵方巻ミサイル」達が鬼子めがけて発射される。
美味しそうな見た目に反して危険なシロモノ。その威力は過去のトラブルにより嫌というほど知っている。

「日本さん、避けて!」
「避けません!」
(避ければ後ろの田中さんにも当たるかもしれない!)

薙刀を構え集中、一瞬の煌き。

「何やて…!」

まばたきの間に、全ての恵方巻が真っ二つにきられ、
バランスを崩したそれらは軌道をかえ空に向かって飛び、数秒の後ズドンと音を立て爆発した。

「まだや、まだ負けへんで!もう一発…!」
「させません!」

鬼子がついなの間会いに入る…その時。


「鬼子さーん!出来ました!僕のオムレツは形は悪くても天下一品…、……ッ!」


鬼子の為にと心をこめて、見よう見まねで焼いたオムレツを手に。
愛する鬼子の声のする方へと庭へ。
そんな仙崎が目にしたのは。

まさしく鬼の形相で、ついなの後頭部に手刀をかます鬼子の姿であった。
255鬼子たん小話・終 ◆w47ZQceOhk :2012/06/05(火) 20:15:57.66 ID:VluqtNz0

「…で、結局あの仙崎って人どうしたんだ?」
「んー。なんか修行の旅に出るって言ってたよ。鬼子さんにふさわしい、
 鬼子さんを守れる男になるべく、鬼子さんより強くなるー!とか叫んで」
「ん、日本さんって強いの?武道の心得があるとか?」
「えーと、まぁそんなところです…。あの…田中さんも、田中さんのお兄さんも、本当にご迷惑おかけしました…」
「なーに言ってんの!アタシと日本さんの仲じゃない!」
「主に働いたのは俺だけどな」
「お兄だっていつも通り肉じゃがつくってただけじゃん」
「否定はしない」
「なんや、勘違いやったんか…」
「ん?何か言いましたかついなさん」
「な、何でもない!」


田中家の食卓。プラス鬼子とついな。巧の作った肉じゃがを食べながらお疲れ様会。

「やっぱり私に恋なんてまだ早いです…それより」
「それより?」
「今は、こうして田中さんと一緒にいる方が、とっても楽しいです!」
「日本さんってば…!えーいムギュムギュ攻撃だ!」
「きゃ、田中さん…!」


こうして仙崎は、疲労と、味の微妙なオムレツを残して去って行った。
捨て台詞からして当分は彼に悩まされる事もないだろう。







そう思っていた鬼子達であったが、この時はまだ知らなかった。仙崎が二週間ごとにやってきて

「強くなりました鬼子さん!決闘して下さい!そしてお付き合いして下さい!」

と大騒ぎするという事を。
256長芋 ◆w47ZQceOhk :2012/06/05(火) 20:16:38.46 ID:VluqtNz0
以上です。ありがとうございました。お目汚し失礼しました。
257創る名無しに見る名無し:2012/06/09(土) 01:35:02.52 ID:L5fHChyL
使用武器は槍かな。お突き合い……とかそんな意味合いで。まあやがてド突合いになりそうな気がしないでもないがw
なんだ。ヤイカやヒワイと変わらないじゃないか(何
258創る名無しに見る名無し:2012/06/16(土) 19:58:02.45 ID:qrCa4M4P
鬼子は男運わるい…
259創る名無しに見る名無し:2012/06/18(月) 18:45:47.97 ID:qmUIBDQN
確かに悪そうw
260創る名無しに見る名無し:2012/07/04(水) 11:10:20.52 ID:cXM+cBhd
落ちてる?
261創る名無しに見る名無し:2012/07/04(水) 21:43:00.13 ID:HhvrXkoo
「鬼子ぉぉぉおおおおおおっ〜〜〜!!!」
お昼か夕方かよくわからない半端な時間帯。ひのもと家に威勢のいい声が響き渡った。

 夕飯の下拵えをしていた、ひのもと鬼子は意外な訪問者にハタ、と手を止めた。
いつもなら、もっと朝早くやってくるか、昼過ぎにはくるはずの声だったからである。

土間から縁側の方へ視線を送ると、障子に写り込んでいる人影が二つ。どちらも見覚えのあるシルエットだ。

「あれ〜〜?たなかとついな〜〜?めずらしいね〜〜?」
居間で遊んでいた小日本が、障子をあけ、縁側の向こうにいる来訪者に声をかけた。
 そう、どちらも鬼子にはなじみ深い人影だった。一人は一目とわかるくらい特徴的で、もう一人はごく一般的な人影だった。田中匠と如月ついな。
確かに、この時間に二人一緒にやってくるのは珍しい。
 しかも、ついなの特徴すぎる人影はさらに何かを背負っていた。
土間の方までガサガサと音が聞こえてくる。

「あれ〜〜ついな〜それって、ささの葉〜〜?」
小日本も同じような事を思ったのだろう。
「へっへ〜〜ん、どや、スゴいやろ!あんまりええ笹の葉やってん、このウチが直々に持ってきてやったんやっ!ありがたく思いなやっ!」
とっても得意げなついなの声が響く。

「いや〜〜今日はガッコーの用事が手間取ってさ〜なんとか用事を切り上げたら、バッタリついなっちと会っちゃってさ〜ひのもとさん、いる?」
 田中匠の声も聞こえてくる。

「なんだ、なんだ。今日は騒がしいな。ただでさえ、やかましいってのに」
 そう言ったのは今さっきまで小日本の遊び相手をしていたわんこだ。
「なんやとっ!!」
「まーまー、ついなっち。今日は戦いに来たんじゃないんだし」
絶妙な呼吸で田中がとりなした。
どうやら、今回は戦わなくてもよさそうだ。

262創る名無しに見る名無し:2012/07/04(水) 21:44:17.46 ID:HhvrXkoo
 如月ついなという娘はなんやかんやとよくわからない理由でしょっちゅう戦いを挑んでくる女の子だ。
素質は悪くないんだろうが、なにぶん若すぎるのと粗が目立つため、毎回適当にお相手してお引き取り願っているんだが、全く懲りる様子がない。
 何故か今回のように戦いが目的でない時にもやってくることがあるので、敵というよりは道場破りを装った
門下生のような気がしてきている。もっとも、ココは道場ではないんだが。

 一方、もう一人の田中匠という女の子はちょっとした縁で最近知り合った人間の友人だ。こっちは普通に交流があって、遊びに行ったり来たりしている。互いに知っている事、知らない事があって
最近、鬼子の世界というか見識も広がってきている。

二人はそれぞれ縁がなかったが、鬼子を軸に知り合う事になった。
 妙な縁で知り合った、タイプの違う二人だが、あれで案外ウマが会うらしい。それでも、ついなの方が鬼子の事を一方的に敵視しているので、鬼子の家に一緒にくることは珍しいのだ。

「見ぃやっ このホレボレせんばかりの枝っぷりっ!こないな立派なんはそーそーあらへんでっ!」
障子に映った影が誇らしげに笹の葉を掲げる。

と、わんこがごく当たり前の事を尋ねた。
「で、何でウチにわざわざ持ってきたんだ?ウチにゃこンくらいの裏の山いきゃいっぱいあンだけどな」
ピキッとついなの動きが止まる。

「七夕やりたいなら、他のおうちでもできるだろうに〜〜もしかして、ついな、おともだち、いないの〜〜?」
子供はいつも残酷だ。容赦ない言葉に障子に映ったついなのシルエットがグラッと揺れた。

「あ、あでもさ、いくつあっても困らないものだし!ね!みんなでいっぱい飾りつけつけて、せーだいな七夕にしようよ!ねっ!」
わたわたと、隣にいた田中のシルエットが狼狽で手をパタパタさせながらあわててフォローを入れた。

 さっきまで片手で軽々と笹の葉を掲げていたついなシルエットは今じゃうなだれるように竹に寄りかかっていた。
見ててちょっと気の毒だ。そこにようやく、鬼子がやってきた。

「あ、それじゃあ、裏に七夕の準備してありますから、一緒に立ててみんなで飾り付けしましょう。
 沢山飾り付ければ願い事も叶いやすくなるなるかもしれませんしね。飾り付け、まだこれからなんですよ」

「よ、よっしっゃ鬼子ぉ!どっちが綺麗な飾り付けができるんか、勝負や!ウチがギッタギタにしたるわ!」
 鬼子の言葉に勢いづいたのか、さっきまで笹の葉を抱えたまま地面にのの字を書いてヘコんでいたついなだが、
急に勢いづいて立ち上がった。この際、目元にある涙の跡らしきものはみんな見ない事にした。(小日本は気がつかなかった)

「いや、普通にみんなで飾り付けようよ……」
何でも勝負にしたがるついなに、田中がもっともなツッコミを入れた。
              ──続く……といいなあ──
263創る名無しに見る名無し:2012/07/09(月) 22:28:05.38 ID:2XzRokz2
>>262続き!
「それじゃぁ、飾りを作るための和紙の切れ端や布の端切れを用意しますね」
そう言って鬼子が奥に引っ込もうとしたとき……
「チッチッチ。そないなモン必要無いでっ!」
ついなは何やら自信満々で鬼子を呼び止めた。

「よっしゃっ!それじゃよー見とれよっ」
 そう言うと、ついなはいつも背負っている巻物を取り出すとバサァッと広げた。途端、中から色とりどりの折り紙が
たちまち床に溢れた。

「ふわぁ〜何、これついなが持ってきたの〜〜?すっごぉ〜〜い」
 床に広がった様々な色の紙を眺めて、こにぽんが素直に歓声をあげた。赤、青、黄は元より銀や金などの紙に
ハサミやペーパーナイフ、糊なども豊富に揃っている。

「ふっふっふ。せやろせやろっ!ぎょーさん持ってきたさかい、いくらでも作るとえーわ!」
 ここぞとばかりに腰に手をあて、得意げにふんぞり返るついな。
(どんだけ楽しみにしてたんだ……)
 わんこや田中辺りは内心そう思ったが、常識的な思いやりを発揮して口にしなかった。また落ち込まれると
メンドクサい。

 それはともかく──
みんなで飾り作りが始まった。
「おふねできた〜〜」
こには水色のお折り紙で船を作って得意げに掲げた。会心の出来らしい。
「へへっ手裏剣だぜっ」
わんこは手裏剣を作って忍者になりきってシュッシュッシュと飛ばして遊びだした。
「コラ、わんこ、遊ばないっ!」
ゴリラ、兜、キリンと手早く折りあげた田中がすかさず注意を入れる。
「………………」
ついなは何故か先ほどから静かだ。
「ん〜〜?ついなっちはどーしたの〜?」
「あっ!ちょっ……!」
ついなの制止も間に合わず……田中はひょいとのぞき込み……
「あ……ちゃ〜〜」
ちょっぴり後悔した声を漏らした。そこにあったのは折り鶴?と、思しきゴチャっとした折り紙のなれの果てだった。
 何度も折り曲げられただろう紙はヨレヨレのボロボロで、歪みまくった折口があさっての方向を向いていた。
「…………え、え〜とさ、つ、ついなっち?」
 ついなは早くもズ〜〜〜ンと重い空気を纏いはじめている。
 ま、まずいっ!このままだとまたメンドくさい事になるっ咄嗟にそう思った田中は
「ね、ついなっち、ついなっち。そ、そーいえばさー紙鎖まだ作ってないよね〜〜
 ヤッパあれがないと盛り上がらないしさっ、これから作らない?糊が乾く時間とか考えると今から作らないとねっ」
あわててフォロー入れる田中。ついなはしばらく俯いていたが……
「……せ、せやな。ちっこいヤツちまちま作るよか、どーんとデッカイの作ってやろやないけっ」
 何とか気を持ち直したようだ。紙鎖なら、適当に輪にした紙を繋いでいくだけだし、何とかなるだろう。
内心ホッとなで下ろす田中であった。

──暫くして。
「あらあら、そういえば、お夕飯の支度、どうしましょう」
 鬼子は取りかかっていた夕飯の支度を思い出した。
意外な事にそれに返事を返したのは田中だった。
「あ、そんなに作らなくてもいいよん。来る途中、兄貴に作るよういってきたから」
264創る名無しに見る名無し:2012/07/09(月) 22:29:08.80 ID:2XzRokz2
「「!!」」
 空気が、動いた。が、実際に動いたのは乙女な鬼子一人。
「まあ、それじゃあなおさら腕によりをかけて作らなきゃ」
 鬼子はよけいにハリキリ出した。わけがわからず戸惑う田中。
「……え?あ、あの……鬼子さん?」
「だって、田中さんのお兄さまって、お料理上手なんですもの。負けていられませんよ」
田中の兄は料理好きで、その料理の腕が主に鬼子達の間ではよく話題になっている。
 まあ、実際のところ、単純な対抗心だけではないのだが、その辺の事は田中にはわからない。
 単純に「うちの兄貴がそんなにモテる訳はない」とか考えているためか、この事に関してだけは普段の察しの
良さが働かないのだ。

張り切って土間に向かう途中で、ふと思い出して足を止める。
「……あ、でもここにいらっしゃるには……」
 鬼子の家は来るのにちょっとばかり特殊な環境にある。
「んーダイジョブ、ダイジョブ。ここ携帯通じるからさ、目印の所に重箱おいてって貰うし〜」

「「駄目(やで)ですっ!ちゃんと来て貰わな(あかんて)いとっ!」」
思わず、鬼子とついなが唱和して、田中が目を白黒させた。
「なっ?!な、なな、何?鬼子さんについなっち?」

「だだだ、だって、いくら趣味だといってもわざわざ料理を作って貰った上、持ってきて貰うだけなんていくら何でも
 甘えすぎですよ!!」
「せや、せや、いくら何でもあんまりやっ!にーちゃんがかわいそうやでっ ここは一つ一緒に楽しんでもらわなっ!」
思わぬ勢いに意表を突かれて田中は目を白黒させる。
「え、ええっ?!そ、そそ、そう?でも、兄貴、こういうの参加したいモノなのかな〜?」

「それはあたし達がどーこー言うよりもまず聞いてみるべきですっ!」
「せや、せやっ!電話で聞いてみるべきやっ」
「わ、わわ、わかった、わかったから?それなら一応聞いてみるっ……」
二人の勢いに圧されて田中は携帯を取り出した。
「もしもし、兄貴?……あ、今料理中?……そんでさ……うん、で、ん、参加うん。まあ、うん。
 そう。わかった。じゃあ、案内すっから……」
そして、携帯をしまうと……
「参加するってさ。迎えにいかないとね」と、一言告げた。
 ──ついなと鬼子が張り切ったのは言うまでもない。

──「どうも〜おじゃましま〜す」
夕方、日が沈む前に田中の兄、田中巧は重箱をもって到着した。
「ようこそいらっしゃいました。何にも無いところですが、どうかゆっくりしていって下さいね」
 にこやかに鬼子が出迎える。田中兄を迎えにいったのは妹の田中匠だ。なんだかんだ、悪態をつきあいながら
やってきたが、喧嘩するほど仲がいいというヤツなんだろう。

「へー何か急に参加しちゃっていいのかな?何か手伝える事とかあったら、何でも言ってね」
物珍しそうに家の中を眺めながら田中兄こと、田中巧はそう申し出た。
「あ、いいえ、そんな……もう充分色々していただいているのに、悪いですわ」

「わ〜いごちそう、ごちそう〜」
 こにぽんは家の中から漂ってくるいい匂いや、田中兄の下げている重箱を目ざとく見つけて思いも寄らぬ豪華な
夕飯にワクワクしていた。
「はいはい。それじゃあ、ちゃんと準備ができたらみんなでいただきましょうね」「わーい」
265創る名無しに見る名無し:2012/07/09(月) 22:29:49.52 ID:2XzRokz2
田中兄が到着してからも、七夕の飾り付けは着々と進んでいた。
「やっぱり、手伝うよ。ほら、こういうのは参加した方が楽しいからね。これ、できたの?」
「ひゃっ?!はひゃいっ」
さっきまでの威勢のよさはどこへやら。ついなは妙に静かになっていたが、背後から巧兄に声をかけられた途端、
奇妙な声をあげ、飛び上がった。

「ん?……キミは……あ、そーそー、確かいつかの迷子の」
 田中兄はおぼろげな記憶を引っ張りだした。
「あ……あ、あの……あの時はどうも……」
顔をふせ、今にも消え入りそうな声でついなは呟くように返事をした。
いつもの威勢の良さは影を潜め、まるで借りてきた猫のようだ。
「いいえ、どういたしまして。あ、これ、上に飾り付けるんだね」
「は……はぃ……」
 ガサガサと、ついなの手の届かない所まで紙鎖を取り付けていく。だんだんと飾り付けも完成に近づいていった。

「ねーねーあにたなか〜これも〜これもつけて〜」
ブンブンと、銀紙で作った星を振り、こにぽんが兄にリクエストする。
「はいはい……と、そぅれっと」
 そう言うと、こにぽんを後ろから抱えあげて、こに手づから取り付けられるようにしてあげる。
キャッキャとこには大喜びで笹の上の方に星を結びつけた。

 その陰でこっそり、ついなは息をついた。巧に近づけるのはウレシイ。でも、その反面やたらドキドキして
緊張してしまう。おかげで、徹頭徹尾調子が狂いっぱなしで、どうにか話しかけようとしてもどうしてもできない。
何て言えばいいのか頭の中がグチャグチャになって結局、何もいえずに終わってしまうのだ。
 それでホッとする反面、いつも終わった後、大きな後悔が襲ってきてやっぱり落ち込んでしまう……
(けど、今日はあれや。七夕やし……ちょっとくらい願掛けしてもええやんか……)
若干、消極的だけど、ささやかにそう思うついなであった。

「はいはい、みんな〜お夕飯の支度、できましたよ〜〜」
 縁側の近くで、鬼子がみんなに呼びかける。せっかくだからと、庭先にテーブルを広げ、外で会食形式で夕飯を
食べることにしたのだ。

「よっし、後は短冊に願い事を書いて吊すだけだし、メインイベントは後にしておくかっ」
 田中がそういってテーブルにいくよう、みんなに号令をかける。兄が
「何でおまえがえらそーに仕切っているんだよ」とかつっこみ入れたりしたが。
ともかく、わいわいガヤガヤと和やかにイベントは進行していた。

「でもさ、いざ考えるとなるとなかなか願い事って思い浮かばないよね〜〜」
田中がモゴモゴと料理をほおばりながら話をふる。

「そうですね〜〜でも、せっかくですから。何かしら短冊に願い事を込めるのは。ステキですよ」
 小皿によそった料理を兄に手渡しながら、鬼子は返事をした。さりげに味付けに自信のある芋の煮っ転がしだ。

「ありがと。で、我が妹はどんな願い事するんだ?」
「んふふ、乙女のひ・み・つ☆」
田中茶目っけたっぷりに返事した所を兄がチョップでつっこんだ。たちまち周囲が笑いに包まれる。

「こにはね〜短冊に、いっぱいお願い書いたの〜〜でも、全然足りないから、もっと沢山書くの〜〜」
 こにぽんも、口の周りをベタベタにしながら、楽しそうに報告していた。さらに、どんな願い事をするのか
楽しそうにしゃべっている。
 わんこは、モリモリ食べながら、そんなこにの報告に適当に相づちをうって、聞き流していた。
266創る名無しに見る名無し:2012/07/09(月) 22:30:31.42 ID:2XzRokz2
「…………」
 みんながワイワイと和やかに食事をすすめる中、ついなはモクモクと食べていた。
「どう、ついなっち、楽しんでる?珍しく静かだねっ?」
 ついなは急に不意を打たれたようにあわてて振り向いた。
「へっ?い、いやその、そ、そんなことあらへんで、メッチャ楽しんどるでぇ」
「そ、そう?それならいいけど……もう、短冊は書いた?一つくらいは書かないと損だよねっ」
 田中は屈託無く笑う。ついなにしては珍しくうっすらとほほえんで返事を返した。
「せやな。うちも……願い事無いわけやないし……な」
 何か思い込んでいるような表情に少し虚を突かれる田中。
「そ、そう?(ん〜なんか今日のついなっち、少しオトナっぽいなー?何かあったのかな〜?)」

 だが、実は作業の合間についなは短冊をすでに飾っていた。……こっそりと。
〔田中のにーちゃんと……〕はっきり見とれるのはここまでで、後は文字が小さくなって読みとれなくなっている。
書いているうちにだんだん気恥ずかしくなっているのがよく分かるが……織り姫と彦星も読めないんではなかろうか。

「ねーねー、もっと短冊飾るの〜 兄たなか〜またあれやって〜」
こにぽんが、さっきのをよほど気に入ったのか、またやってとせがんだ。
「だめよ。こに、たくみさんに迷惑でしょ?」
鬼子がこにをたしなめようとしたが、兄は気にしなかった。
「あ、いいよいいよ、じゃ、この辺で……ん、なんだ?」
そのとき、ヒラリと顔になにかかかった。短冊だ。

途端、ついなの顔がサッと青ざめた。
(〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!)
声にならない悲鳴をあげる。よりにもよって、一番目立たないように飾った短冊だったが、ついな目線で
目立たないよう高い所につけた短冊は兄にとってはまさにドンピシャな位置だったのだ。
 何気なく目を凝らす兄。
「ん……なんだこれ……?」
が、
「ねー早く〜こにの短冊もいっぱい飾るの〜〜」
しびれを切らしたのか、こにぽんが先をせがんだ。
「あ、ああ。ゴメンゴメン。……そりゃ!」
また持ち上げられ、キャッキャ、キャッキャとハシャぐこにぽん。ついなはコッソリ、胸をなで下ろした。

 やがて────
「ふー、終わった終わった。思ったより手間取った」
兄がやっとこにぽんの「短冊飾り」から解放されて戻ってきた。

「すいません。あの子の為にお手をに煩わせてしまって……腕、疲れませんでしたか?」
 鬼子はそういいながらすかさず飲み物を渡した。
「あはは、大丈夫です。あ、どうも」
そういって、飲み物を受けとり、うまそうに飲み干した。

「……それで、たくみさん自身はなさらないんですか?願い事……?」
ゴクゴクと動く喉を眺めながら、鬼子はうっすらとほほえみながら尋ねた。兄は飲み終えると

「いや〜、ははは。どんな望みがいいのかな〜あんまり思いつかないや」
 飄々とした所は妹の田中さんとそっくりだ。

「あら、想い人とか、気になる女性とか……いらっしゃらないのですか?」
この言葉についながピクッと反応した。鬼子も何気ない振りしていたが、少し緊張する。
空気がやや張りつめた。が──
267創る名無しに見る名無し:2012/07/09(月) 22:31:16.87 ID:2XzRokz2
「いやーモテなくてさ〜そういうのホント縁がなくてね〜」
その言葉とともに張りつめていた空気がゆるんだ。ホッとしたような、恋愛対象とはみられていない事が
残念なような──
 ついなも漏れ聞こえてくる二人の会話を聞きながらまた自己嫌悪に浸っていた。自分も鬼子のように巧とお話したい。
 でも、勇気がなくて話しかけられない。鬼子はどうしてそんな簡単にできるのか。やっぱりあの娘は、
あの鬼の娘は敵だ。そんなような事を陰々滅々と考えていると、また二人の会話が聞こえてきた。

「でも、せっかくなんですから、何か書いたらどうですか?はい。これをどうぞ」
そういって、鬼子は赤い短冊とペンを巧に手渡した。

「ん〜そうだなあ。せっかくだし、そーいってくれるなら……なにがいいかなあ……ん、よし、決めた!」
 暫く、サラサラとペンの走る音が聞こえてきて……
「まあ。いやだ、うふふ」
 鬼子がくすぐったいような呆れたような声で笑うのが聞こえてきた。その仲のよさそうな声だけでついなは内心、
ぐぎぎ……と歯ぎしりしてしまう。
(な、仲よさそうやないけ……)

 ちらっとついなが目をやると、早速、その短冊を笹の葉に結びつけに歩いてゆくのが見えた。
一体、どんな願い事を書いたんだろうか……ついなは気になって仕方がなかった。
横目でチラチラと見て、その場所をおおざっぱに確認するついな。

「なんだー兄貴のくせに願い事なんてぜーたくな事するんじゃねーっ
  妹の友達のイベントなのに恥ずかしくないのかーっ」
田中が目ざとく見とがめ、ツッコんだ。
「うるせー、わざわざメシの支度させといてハブるなんて鬼かおまえは〜」
巧の口調も代わり、反撃する。
兄妹のジャレあいを真に受けて、鬼子がオロオロと様子を見守っている……

 その間についなは、ダミーの短冊を手に、そっと兄の赤い短冊が飾ってある笹に近づいていった──

最初に気づいたのは兄貴との言い合いでジャレあっていた田中だった。
「まったく、兄貴はー ……ん?あれは──」
田中が見たのはやたらと不自然な挙動で笹の周りをウロついているついなの姿だった──

「ん?ついなっち、何してんの〜?」
田中が声をかけると、一瞬、ビクゥッ!とした後、わたわたと慌てた様子でついなが振り返った。
「え、い、いや、その……短冊を……えと」
「?」
怪訝な顔になってゆく田中になおも言い募るついな。

「ど、どこがええかな〜なんて、せ、折角やし、お星様にぎょーさん見えるとこがええな〜なんてその……」
 ギクシャクと、おかしな姿勢を正しながら、ギギギッと、まるで油の注していない機械のように振り向いた。

「? ふ〜ん、ま、いいけどね。それあんまり引っ張っちゃダメだよ。固定とかしっかりしてないから」
明らかに挙動不審ではあるが、そう強くツッコむもんでもないか。と、放っておくことにした。

 田中が離れるとまたついなは、覗き込もうとしたり、伸び上がるような姿勢をとったりと、妙な事をしはじめた。
……あれで、気づかれないと思っているんだろうか──
 よくわからないが、好きにさせとけばいいか。田中はそう思ったのだが……

「ついな〜なにやってんの〜?」
今度は小日本が興味を示してきた。
268創る名無しに見る名無し:2012/07/09(月) 22:32:11.40 ID:2XzRokz2
「ぬななっ あ、いやその、短冊をやな……」
口の中でモゴモゴと呟いているのを知っているかいないか
「こにもね〜これ!次はこれを飾るの〜」
手には「アンコロモチ こにぽん」と、書かれた短冊を持っている。見回すと「ちょこれーと」「おはぎ」「ぜんざい」
等々、大体、そういうのばかりだった。さすが食いしん坊。

「ね、ね、これ付けて〜これ、こにじゃあ手、届かないの〜」
「な、なんでうちが……」といいかけたが、ふと気がついた。こにの短冊を付ける振りしながらなら、より自然に
あの短冊を覗けるのではないかと。

「よ、よっしゃ。まかしとき。これを付ければええんやな」
「うんっ!」
 ついなは短冊を受け取ると、ぐぐっと背伸びして、つま先にも力をいれ、問題の短冊のある所まで背を伸ばした。
 例の短冊は向こうを向いてて読みとることができない。もう少し、もう少し手を届かせれば……
この暗さではよく見えない。なんと歯がゆいものか……

 クキッ

と、急に足首がヘンな方向を向いた。もともと、不安定な履き物だっただけに、容易にバランスを崩してしまったのだ。結果……

「どわぁぁぁぁぁぁあっ……!」
 どて〜〜〜〜ん!と、七夕飾りごと倒れてしまった。
かろうじて小日本を巻き込むことこそなかったが、辺りはは騒然となった。

「ててて……いつ〜……」
倒れた拍子にあちこちブツけ、痛みに顔をしかめるついなの前にスッと手が差し出された。
「大丈夫?怪我とかしてない?」
巧だった。途端、ボッと顔に血が上る。辺りが暗くてよかった。ついなは先ほどの不満を忘れてそう思う。
「ははは、はいっ」
声も裏返ってつい甲高くなってしまう。
 手を握ると、いつかみたいに力強く、グッと引っ張り上げられ、助けを借りて立ち上がった。この手だ。
この手の感触が……

「ちょっとぉ、一体、何の騒ぎ?」
 いきなり無粋な声で考えごとを断ち切られた。ウッカリ、ボーッとしていたらしい。見ると、ハンニャーが
家の障子を開けて文句をいっていた。
 ハンニャーはこの家に住み着いている猫股みたいな存在だ。普段は可愛げのない猫の姿だが、このように人の姿を
とることもできる。その時は年齢不詳の美女の姿になる。
「ちょ、ちょっとっ?!ハン……やさん?!」

鬼子の慌てたような声が響く。それだけハンニャーはとんでもない姿をしていたのだ。
 寝起きなのだろうか。乱れに乱れた着物は肩からズリ落ちそうで、胸元が大きくはだけている。
今にも胸元から大きなメロンがこぼれ落ちそうになっていて、足も片方、太股まで露出してしまっていた。
 乱れた髪をボリボリとかきながら、眠そうな目で辺りを見渡たし、鬼子の声もどこ吹く風。
そして鼻をひくひくとさせた。
「ん〜〜そういや、今日は七夕か〜〜なんか美味しそうな匂いがするわね〜〜」
 寝ぼけているのか、言葉もどこかチグハグだ。

「あ、は、はい。腕によりをかけて作ってきました。よければ飯夜さんも。どうぞ」
 いつの間にか、巧はついなの隣から、ハンニャーの所へ重箱の一つを持って移動していた。
 飯夜とは、人間の時のハンニャーの名前である。以前も田中家のホームパーティーにこの名前でお邪魔したことが
あったのだ。

 巧が重箱を掲げるようにして差し出す。ハンニャーは背が高い上、縁側に立っているので、まるで家臣が女王サマに
捧げものをしているような絵面になった。

「ふ〜〜ん、どれどれ?」
知ってか知らずか。ハンニャーは身を屈めて重箱を覗き込む。すると、重量感のある、大きな胸の固まりが、今にも
こぼれ出そうになって巧の目の前でゆさ、と揺れる。
年頃の高校生には目の毒どころか、もはや暴力だ。
269創る名無しに見る名無し:2012/07/09(月) 22:33:08.74 ID:2XzRokz2
 その視線に気づいてるのかいないのか。重箱からベーコン巻きを一つつまみ、上を向いて口の中に放り、
モグモグと咀嚼して飲み込んだ。

くちゃ……ぷちゅ……んく。
 上を向いた喉元がなまめかしく動く。
つまんだ後、指先についた脂を舌先で舐める。
ヌメヌメと舌先が動き、指についた脂分をすべてぬぐい去った。
そして、ふ〜〜っと息をつく。

「ど、どうです?」
巧がそるおそるといった感じで尋ねた。
「ん〜〜そうねぇ……」
ふと、考え込むようにして、ひょい。と、巧の腕から重箱を奪い去った。
「あ……」
 一瞬、巧はあっけにとられた。
「悪くないわね。もらっといてあげる。騒ぐのもホドホドにしときなさいよ」
 そう言うと、障子の向こうに消えてしまった。
「あ……は、はい!」
パァッとうれしそうに巧は障子に向かって返事を返した。

 面白くないのは乙女二人だ。どちらも「せっかくいい雰囲気だったのに……」と、思ったかどうかはともかく。
知らず、自分の胸元に手をやらずにはいられなかった。
 二人ともハンニャー程のボリュームはない。

「ほらほら、兄貴、何ボサッとしてんのサ?!さっさとコレ、立て直してよっ!」
 面白くなかったのは匠も同じだったらしい。兄をとられたような気分にでもなったのか。
さっきのジャレあいよりもずっと険のある声で笹飾りを立てるよう、叱りとばした。

「はいはい、分かったよ……って、ナニ拗ねてんだ」
「別にっ」
「?」

「…………」
ついなは笹飾りを立て直す巧の横で見ていた。先ほどの一幕を思い出してため息をつく。
(やっぱり胸の大きい娘の方がええんやろうか……)
触ったからと言って大きくなるもんでもないが、ついつい手がいってしまう。

   カサ……
 指先に何か触れた。
(? ……なんやコレ)
胸元から何か赤い色の紙切れがのぞいていた。笹の葉数枚がパラパラと落ちる。どうやらさっき倒れた拍子に胸元に
紛れ込んだらしい。
 そろそろと引っ張り出すと文字が目に入った「たくみ」と。

  ドキンッ

 心臓が動いた。これはさっき見ようとして見られなかった、あの短冊ではないか。そこに巧の声がかけられた。
「あ、そこの短冊とってくれる?」
 ビクンッ考えるより先に身体が反応した。

ズザザッ

思わず後ずさった。
「?」
 巧が何か言う前に知れず、ついなはパタパタと駆けだしてしまった。
「あ、ちょっとっ!……なんだあ?一体?」
「鼻の下伸ばした、すけべえな兄貴が気持ち悪かったんじゃないの〜」
田中が冷たく突き放した。
「チェッ。なんだよ、それ」
 そう言うと、地面に落ちている小日本の短冊を拾って笹の先に吊した。
270創る名無しに見る名無し:2012/07/09(月) 22:33:48.90 ID:2XzRokz2
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……
 つい逃げ出してしまった。そう遠くない、家の裏手。そっと懐に手を伸ばす。
そこに巧の願い事が書かれた短冊がある。

 暗い中、短冊を引っ張り出す。暗いが、目を凝らせば読めないこともない。……だが。
(ええんか。ホンマにこないな覗き見みたいなマネでホンマにええんか?)
 手の中にあるからこそ、そんな疑問が沸き上がる。冷静になった自分と、巧がどんな願い事をしたのか知りたい自分。
二つの自分がせめぎあう。目を閉じたまま、握りしめた短冊を前にもってゆき──
(〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!)

 ──結局、見ることができなかった。

 ついなが戻ってきた時にはもうすっかり片づけられていた。笹飾りは立てられ、散らばっていた飾りも拾い集められていた。
「あ、来た来た。ついなっち、もういいよん。今度は簡単に倒れないようにって、キツ〜〜く言っといたから、
 ダイジョウブだよん」
「おい、何だその言いぐさは」
兄が妹の言いぐさを聞き咎める。
「ふ〜〜〜〜〜〜んだっ」
匠はツーーンとそっぽを向く。
「ハハ、まあまあ、みんな楽しくしましょうよ」
あわてて鬼子がとりなしに入った。

ついなは緩く笑って横を通り過ぎた。
「……ついなっち?」
匠の声に少し考えごとをしていたついなはハッと我に返った。
「あ、う、うん。遠慮なく短冊、飾らせてもらうわ」
考えごととは言うまでもない。例の短冊をどうやって戻すかだ。
 それほど難しいことではない。自分の短冊を結びつけるフリして、ドサクサにまぎれて戻せばいいだけだ。

 少し高い位置だが、さっきと同じ間違いが起こらないよう、高い位置の枝を探し、たぐり寄せる。
(よし……これで……)

その時だった──
271創る名無しに見る名無し:2012/07/09(月) 22:34:40.55 ID:2XzRokz2
「あれ?それって、俺の……?」
すぐ後ろで巧の声がした。
驚きのあまり、手が滑って短冊を結びつける前にスポーンと枝が抜けてしまった。
「な、な、なっ……?!」

ついなが振り返ると、巧が手元を覗き込んでいた。
「ひ……あ……ぐ…ぅぅ……」
違うと言いたかったのに咄嗟に言葉がでてこない。喉の奥の方で何かがひっかかったようで、まともに息もつげない。
 頭の中はさっきから「どないしよう、どないしよう、どないしよう」と同じ所をぐるぐる回ってばかりで役に
立たなかった。悪いことは何もしていないのに短冊取ったと思われてしまう……っ

「よかった、見つけてくれたんだ」
巧はそういった。
「へっ」
ついなは思わず間の抜けた声を出した。

「え、だって、さっきの騒動で見あたらなかった短冊、見つけてくれたんだよね?ありがとね」
そう言って、ついなの手から短冊をスルリと受け取った。
「あ……は、はい」
 何か言う前に察してくれた。その事に思わず肩から力が抜けた。
……だが、ついなはふと気がついた。……今がお話をする最後の機会かもしれない。

 何か言わなければという感覚はずっと頭の中をグルグル巡っていた。……言わなければ…………言わなければ……
今、どんな話題がいいのだろうか……
「あ……の……」
「ん?」
 巧は短冊を付けようとする動作をやめ、振り返った。途端、それだけでボッと頭に血が上る。

「あ……あの……どん……な、お願いなん…で…す……か?」
その時の彼女の振り絞った勇気は称賛されてもいいだろう。
 それを知ってかしらずか……巧は自分の短冊を見下ろして
「ん?これ?みたいの?いいよ。はい」
あれだけ悩んだのがバカバカしくなるくらいアッサリと短冊を渡された。

「あ、でも、女の子に見られるのはちょっと恥ずかしいな〜 笑わないでくれよ?」
そう言って巧はちょっと恥ずかしそうに笑った。
 それを聞いて逆についなは緊張する。
(な、なな、何やてぇ、は、恥ずかしいやてぇ?!ど、どど、どんな内容なんや?!)

 その内容とは──

  『毎朝快便──たくみ』

 (う……そ、そんなあ──)
 あまりといえばあまりの内容に絶句するしかないついな。
後ろからはこれを見咎めた匠が文句を付け……
「コラ、バカ兄貴。あにしょーもない願い事してんのよ」
「いやだって、毎日のお通じは健康の秘訣だろ?」
「だったら、無難に『健康第一』とかにしときゃいいのよ!ってか、いいから書き換えろ!まるでアタシの
 願い事みたいじゃん!」
「そうか?それじゃあ、横に『巧』って書けば……」
「お馬鹿兄貴〜〜っそれじゃあ、兄妹そろって願掛けしているじゃないかー!!」

そんなにぎやかな兄妹喧嘩さえ、ついなの耳には届かなかった……
                                       ──終わり──
272日本鬼子とついなの七夕:2012/07/10(火) 00:03:56.61 ID:OLQDRk1M
>>261-271
という訳で、『日本鬼子とついなの七夕』をお送りしましたっ!
 田中兄に積極的な鬼子さん。ロクに話しかけられないついなちゃん。それに気づかないニブちんな田中兄と、
色々取り揃えてみましたが、いかがでしたでしょう?
たいてー、いつも田中兄の二人に関する記憶はハンニャー(のおっぱい)によって毎回ふっとんでいるぞっ!
とかゆーどーでもいい裏設定を披露しつつ、最後まで読んでくださった方、アリガトウございましたっ!

……くぅ、遅れてしまったなあ……
273創る名無しに見る名無し:2012/07/11(水) 15:46:36.65 ID:oFbu2m6f
GJ!!
274創る名無しに見る名無し:2012/07/26(木) 16:14:41.98 ID:dw7Wi6u6
誰かが何か書けばスレ復元かな?
275創る名無しに見る名無し:2012/08/10(金) 16:01:46.61 ID:vINvxxpv
   |  ,/::;;△::V::∠>、::::::;;;;;\     ノ
 \ \/:::;;;▽,ヘ/ ̄ ̄ヽトレレ::;;ヽ__ノ
     l ハ l /   ,/  ● l  }-、;;!:::;;;フ
     l/i yi ●/   , ⊂⊃ l ,!/./;;ス、
 ―    レvl⊃  r´`´ヽ   l  }´/ ヽ/  \
       i 、  ヽ、_,ノ  j ト ~、      ヽ
 r- ,_   」 ヽ , ____,. イll  lヽ人_____
 l、  ~'''TTト、 ハ,ヽ  l===l l l::::::::;;;;;;;;//77- .,
  ヽ、  .l l l;;', ',:;\ヽ l ̄l | /:::::::;;;;;;;////
    `ー.l_l_l__', ',;;;:;;\yV/V::::::::;;;;;;;〈ー'ヽ
276創る名無しに見る名無し:2012/08/10(金) 16:02:23.59 ID:vINvxxpv
             -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
           ∧/△▽::▽∠フ;;;;/\
        (_/;;;<>:::;;;∠ニフ;;;;(  \
         〃;;_/ヽW/ ̄\リ|;;ヽ ノ ヽ
         レ!小l,ノ   /`ヽ Y;;;;ヽ、ノノ
          ヽ|l ●_/  ● | .|レノ''''
            |ヘ⊃ 、_,、_,⊂⊃j  |レ'|
          ノ /⌒l,、 __, イhト、|人|
          | /  /::|三|/:://:::::::;;;Zフ
          | |  l ヾ ̄:::/ ヒ::::::;;;;彡Z
277創る名無しに見る名無し:2012/08/10(金) 23:01:42.60 ID:8FEOfCrl
以前ツッコめなかった事を今こそツッコもう……
 ナゼ、黒金まで萌え化したしwwww
278創る名無しに見る名無し:2012/08/11(土) 07:07:35.98 ID:geh9L78k
何のAAか分からなかったが、黒金か!!
口癖は「あまーん」かな!?
279創る名無しに見る名無し:2012/08/11(土) 09:04:02.60 ID:ztIPe7YS
黒「憎女、憎女、プリンはあるかい?」
憎「さっきもう食べたでしょ」
黒「あま〜ん」

 こうか?w
280創る名無しに見る名無し:2012/08/24(金) 21:27:24.31 ID:zN667Ydt
  ◇ ◇ ◇
「お、おれは……おれは……っ」
 青年は頭を抱えてうずくまった。今までの記憶が彼の意識を圧しようとしていた。
青年を中心に圧力をもった風が吹き荒れる。

「いけないっ!ダメっ!心を鬼に支配されてはっ」
暴風に吹き晒されながら、彼女は必死に叫んでいた。しかし、その叫びも強風の中に吹き散らされそうだ。

「お……れ……は、う、ウガァァァァァアアアアっ!!」
暴風が一際強く吹きすさった。途端、どこかでブチンと何かが
切れる感触がした。

「くっ……なんてこと」
風にたなびく袖を揺らしながら彼女は説得が失敗した事を察し、背負っている刀を抜いた。
 年の頃は16、桃色の着物を着ている少女だ。手には刀を携え、その刀を握る中指にはなぜか鈴を二つ
括りつけている。長くたなびく黒髪を風にさらしながら、彼女は目の前の青年に向け、武器を構えた。

次の瞬間、唐突に風が止み、辺りは静寂に包まれる。
「く、くく、くくくくく……」
 先ほどまで苦悩を露わにしていたハズの青年が静かに笑っていた。その口元は醜い笑みを浮かべている。

「心の鬼に己を引き渡してしまいましたか……」
桃色の着物の少女は残念そうに呟く。
目の前の青年は嘲笑を浮かべたまま、言葉を返した。
「引き渡す?違うな。目覚めたのだ。本当の自分にな……」

 リィン

 鈴の音が響いた。少女は鬼に憑かれた青年に言葉を返さず、構えた左手を軽く上下させる。

 リィン、リィン

妙なる音が響きわたる。
「残念ながら、鬼であるアナタには用はありません。お話をしたいのならば、まずはその人に身体を返してからです」

 リィン、リィン、リィン……シャン!

突如、鈴の音の質が変わった。途端、青年の身体は何かに捕縛された。
「ぐ、……お、な、何……だ?!これは……糸?!」
目に見えないくらい、細い糸が青年の身体を縛り付けている。
いつの間に絡め捕られたのか全く気がつかなかった。

 少女が刀を持った手をぐい、と引くように動かすと、捕縛された青年の身体は動けないまま、彼女の方へと
ひきよせられる。

「ぐ、き、キサマの仕業か、小娘ぇぇえっ?!」

「こにゃ!お願いっ」
少女はその場にいない誰かに助けを求めた。その声に応じ、見えないハズの相手の声が響いた。

「お任せくださいませ、お姉さまっ!」
まだ幼い声だが、どこか気の強い性格をおもわせる声だった。
281創る名無しに見る名無し:2012/08/24(金) 21:28:08.91 ID:zN667Ydt
その声とともに、一枚のカードがどこからともなく飛び、青年の額に張り付いた。
カードにはウサギとそれを追う猟師の姿が描かれている。そのカードはカルタだった。
「ぐぉっ?!」
「う──ウサギを追いて山に入る!」
 声が響いた途端、青年の身体は電撃を受けたように硬直した。
もう一枚、カードが飛ぶ。胸の辺りにカードがとりついた。
「み──道順どおりに見学しよう!」
カードには博物館を観覧する子供達の姿が描かれている。
「ぐがががっ!」
 青年の身体からもやもやしたものが沸きだした。
また一枚、カードが飛ぶ。
そのカードには天使の様に翼を生やした子供の姿が描かれていた。
「は──羽が生えたように身体が軽いっ!」
「ぐぅおおおおおっ!」
もやもやしたものが離れて漂いだし、完全に青年の身体から離れた。青年に憑いていた心の鬼の正体だ。
カードの言霊により、青年の身体から追い出されたのだ。
 すかさず彼女は得物片手に突進した。

「たぁぁぁああああああああっ!!!!」
 リィン!
鈴の音が響きわたり、もやもやはたちまちのうちに両断された。
「おの……れ」
 その呟きを残し、心の鬼は消滅した。

「──ふぅ、またこにゃの手を借りる事になっちゃった──」
 少女は青年の様子をみながら無念そうに呟いた。青年は、心の鬼が退治された瞬間、意識を失い倒れていた。

「心外です。わたしがこにお姉さまのお手伝いをするのはむしろ当然ですのにどうしてそんなに忌避するんです?」

「本当はこうなる前に解決しなきゃイケナイからよ」
青年の呼吸が正常である事を確認して少女──小日本──は声のする辺りに目を向けた。

「もう結界から出てきてもいいわよ」
 そう言われ、声の主が姿を表した。その姿はまだ童女といってもいいくらい幼い少女だった。
 おかっぱに切りそろえた頭にボンボンを結わえ付けている。緑色の着物か巫女服の中間のような不思議な衣装を
着ている。目や鼻はツンと気が強そうで顔立ちに負けん気が顔をのぞかせている。
今もこにぽんの言葉に納得がいってないようだ。

「こにお姉さま、そんなにわたしが邪魔ですか?」
あわてて手を振り、こには言い返す。
「そんな事ないわよ。こにゃがいなければ、こうもスムーズに事は運ばなかったんだし。でもね──」
 気を失っている青年の髪の毛を優しくなで、こには嘆息する。

「この人の力だけで心の鬼を克服して欲しかったなあ──」
「…………」
こにゃと呼ばれた少女は無言で青年を眺めた。
 この娘はこにゃっきー。通称こにゃ。こにぽんの妹分だ。こうして、時々こにぽんの鬼退治を手伝っている。
282創る名無しに見る名無し:2012/08/24(金) 21:28:54.31 ID:zN667Ydt
 基本、戦闘力はあまりないのだが、よくカード──カルタ──に込めた言霊を操る術でこにぽんを補助している。
本人はもっとこにぽんを助けたいと望んでいるのだが、こにぽんはあまりそれを望んでいない。
……というより、直接的な実力行使そのものをこにぽんは望んでいなかった。

「全く、こにお姉さまは人が良すぎます。人間ごときが心の鬼を制御できる訳がないではないですか。私たちが
 それを祓ってこそ、やっと心の鬼を征する事ができますのに……」
ヤレヤレと、こにゃは嘆息する。
「うん。そう、そうなんだけどね……でも、ヤッパリ……」
こにのつぶやきは最後の方は聞こえずに風に流れていった。
 と、不意にこには頭をあげる。
「とと、イケナイ。まだすませてなかった。チョットまっててね。すぐに終わらせるから」
 そう言うと、そそくさと立ち上がり、背負った刀を鞘ごと取り出した。
それを見て、こにゃは嘆息するように呟いた。

「心の鬼に憑かれたのはその男の自業自得でしょうに、お姉さまは本当にお人好しなんですから」
 それが聞こえているのかいないのか。
こにぽんは鞘に収めた刀を左手に、右手中指に結わえ付けた鈴をならし、軽いステップを踏むように舞い踊った。
やがて──
「萌え咲け〜〜〜〜〜〜〜──」
そのかけ声と共に、刀の柄にある飾り紐がシュルシュルとひとりでに解け、二本の糸となって、青年の身体に伸びた。
 一本が青年の小指に巻き付くと、もう一本は空に向かって伸び続け……やがて空気に溶けるように見えなくなった。
 こにぽんはその糸を目で追いながら──
「今度こそ、心の鬼に頼らなくてもいいような人と出会えるといいわね……」
 ポツリと、そう呟いた。

  ◇ ◇ ◇
 こにぽんとこにゃっきーが家に帰ると、早速、出迎える人がいた。
「ねーゴハン〜〜ごはんまだなの〜〜」
「あ、すぐに作りますね」
すかさず、こにぽんが返事をする。だが、こにゃはその人物をみとがめた。
「ちょっとっ?!そのふしだらな格好はなんとかなりませんの?!」

 無理もない。その人物はひどくだらしない格好だったのだ。
身体に纏った着物は着崩れどころでない程乱れてて、太ももが上の方まで露わになっている。胸元はハデに
はだけかけていて、今にも形の良い胸がこぼれ落ちそうだ。髪の毛にはねぐせがクッキリついていて、寝起きである
事がバレバレな程、目はぼんやりとしてて、あちこち髪がハネていた。こにゃは呆れたというように言葉をついだ。

「もう、夕方だというのに、今まで寝ていたのですか?鬼子さんっ!!こにお姉さまはいままで……」
「こにゃ。」
こにゃの小言をこにぽんは止めた。なおもいい募ろうとするこにゃに、こにぽんは首を左右に振る。
こにゃは黙るしかなかった。
283創る名無しに見る名無し:2012/08/24(金) 21:29:49.86 ID:zN667Ydt
  ◇ ◇ ◇
「じゃぁ、いってくるね〜」
夕食後、辺りが暗くなってきた頃、鬼子はへらっと出かけていった。
「鬼子ねえ様いってらっしゃい。気をつけてくださいね」
こにぽんが元気に送り出す。こにゃは見送りに出なかった。

「──まったく、わかりませんわ、こにお姉さま、どうして鬼子さんのような人を尊敬なさっているのかしら」
 鬼子を見送って戻ってきたこにぽん相手にこにゃは遠慮会釈なく、思っていた事を吐き出した。

「あはは……あれでも、昔は鬼子ねえ様、それはもう凄かったんだから」
 こには、苦笑して、こにゃの用意してくれたお茶を美味しそうにすすった。
「以前も聞きましたけど……本当ですの?それは?」
疑い深そうにこにゃが聞き返す。

「『萌え散れ!』ってね。心の鬼を次から次へとズンバラリンって、すっごい強かったんだから」
この話をする時だけこにお姉さまは少し子供っぽくなる。

「それが本当だとして、それが何故ああなってしまったのか、理解に苦しみます。今の鬼子さんを見てもそんな
 凛々しい姿、微塵もありませんもの」
こにゃは辛辣だ。今の鬼子は朝から晩まで食っちゃ寝を繰り返してて、たまにああやってふらっと出かけてゆく。
こにの話の断片さえ見あたらない。

「あ、アハハ……」
その言葉にこにぽんは苦笑するしかなかった。
「でもね、ホントの事言うと、もっと昔、鬼子ねえ様が凛々しかった頃、今の鬼子ねえ様みたいな人が居たから、
 特に不自然に感じないのよねえ……」

「え、鬼子さんみたいな人が他にも居たんですの?」
こにゃはげんなりした。あんな自堕落な人が二人も居ただなんて、
お姉さまの幼少期はさぞ気苦労が絶えなかったでしょう。と。

「こらこら。その頃の鬼子ねえ様は凛々しかったといったでしょう。もっとも、その頃のあたしはこにゃ程優秀じゃ
 なかったけどね」
こにぽんは苦笑気味にツッコみを入れる。
こにゃは目をみはった。今の強いこにぽんしか知らないからだ。
「それで、その……当時の鬼子さんみたいな人がこの家にいたんですの?」
以前のこの家の住人に興味をそそられたので、こにゃはたずねてみた。

「えぇ、ハンニャーって猫又でね。鬼子ねえ様もその人に育てられたみたい。スッゴく強かったそうだけど、
 あたしが覚えているのは食っちゃ寝している姿だけだったわ。とっても色っぽい女の人だったわ」

「ぷっ 何ですの、今の鬼子さんそのものじゃないですか」
つい、笑みがこぼれてしまう。
 こには複雑なほほえみを浮かべて「そうなのよね」と否定はしなかった。

「それでその……『ハンニャー』さんはどうなさいましたの?今、この家にはいらっしゃらないのでしょう?」
「…………」
その問いにこにぽんは答えなかった。
「……ねえ様?」
284創る名無しに見る名無し:2012/08/24(金) 21:30:41.04 ID:zN667Ydt
こにぽんは不思議な笑みを浮かべたまま
「わからないわ、鬼子ねえ様は何か知っているようだけど、教えてくださらないし。当時は寂しくなってわんわん
 泣いた事はあったようだけど、よく覚えてないの」
と、答えた。

「……え…」
まただ、やんわりとした拒絶。詳しく教えてくれないことが時たまある。信頼してくれていないのか。
本当に知らないのか。それとも、まだ子供だからなのか。もっと信頼して貰わないとと、焦るようになったのは
こういう事があるからだ。こにゃは密かに不満だった。こに姉さまは何か隠している──

それで何か察したのか、こにぽんはまじめな声でこにゃに語り始めた。
「ね、こにゃ。あなたの今の時期って、とっても大切なものよ。だから、あまり戦いに心を割かないで。
 今の時間は取り返そうと思ってもどうにもならないものだから。あたしはとっても幸せだった。
 だから、こにゃにもできるだけ長くその時期を経験してて欲しいなあ」
 そういって、こにはいつものようにこにゃの頭を愛おしげになでた。

「あたしは、そんな事よりも、一刻も早くこにねえ様の役に立てるようになりたい──」
 いつもは口癖になっているこの台詞がこの時だけは出てこなかった──

 深夜。ようやく眠りについたこにゃっきーの寝顔をこにぽんは眺めていた。
「そう──あたしにもこんな時期があったのよね──」
スヤスヤと眠るこにゃに布団を掛けなおしながら、こにぽんは呟いた。

「鬼子ねえ様もこんな気持ちだったのかしら──」
その鬼子はまだ出かけたまま戻っていない。
 布団は敷いてあるから、朝、目が覚めたらそこで寝ているかもしれない。戦い慣れしているはずのこにぽんにも
帰ってきた気配を全く感じさせないのだ。
それなりに強くなったと自負してはいるものの、鬼子にはまだ追いつけていないのではないかと、ひそかに思う。

「──さ、明日も早いしあたしも寝なきゃ」
 きっと、夜明け頃に帰宅しただろうにもかかわらず、朝食はキッチリ食べるだろう。ホントに昔のハンニャーみたいだ。
昔の事を思い出し、クスリと笑うと、こには背負っていた刀を枕元におき、自分も寝間着に着替え床についた──

                                                            ──おわり──
285創る名無しに見る名無し:2012/08/24(金) 21:32:55.88 ID:zN667Ydt
>>280-284
なんか、本スレでニートな鬼子さんもアリなんじゃないかって意見があったから書いてみたっ!
ちなみに、こにゃっきーは小日本候補の一人、小日木をこにゃっきーって読んだモノだぞっ!
最初、姿が見えなかったのはこにぽんの糸で作った結界の中に隠れていたからだっ!それでわっ!
286創る名無しに見る名無し:2012/08/24(金) 21:34:00.32 ID:zN667Ydt
>>285
あ、いちお、タイトルは「受け継がれる物語」ってこって。
287創る名無しに見る名無し:2012/08/25(土) 06:24:53.77 ID:CyrTnjuE
>>280-285
乙乙!!
こにゃの歳不相応な口調が俺的に萌え!
そして鬼子に何があったのかきになるw
288日本Ω鬼子 ◆1yM6qbhqY6 :2012/08/30(木) 09:06:34.55 ID:RAI5sHwE
夜話・日本鬼子

彼女はかつて「ひのもと おにこ」と呼ばれた。
そして、あるいは「神」であったのかも知れない。

彼女が人々の前に現れた時、日本には隣国との小さな軋轢を基とした憤りが蔓延していた。
「ひのもと おにこ」は、人々に示した。「日本人であれ」と。
受け継がれた知恵と、磨かれた技を用いて、害あるものを益あるものに変え
心の平穏を取り戻す術がある事を。我々にはそれが出来るという事を。

人々はそれを「好し」とした。
彼女を意志を称え、それを具現化できる職人達を称えた。
「ひのもと おにこ」は、それが日本人の本来の姿であると信じた。
たとえ世に暗い影が落ちようとも、日本の民が立ち返る場所、魂の源が「美しき姿」であると。
その希望があれば、この国は歪みきる事もなく、人が鬼になる事もない、
そう信じた。

だが、それは誤りだったのかも知れない。人は、それほどに強くなかったのかも知れない。
289日本Ω鬼子 ◆1yM6qbhqY6 :2012/08/30(木) 09:19:01.50 ID:RAI5sHwE
彼女の意志を具現化していた職人達は、いつしかそれを己の利のために使うようになった。
業(わざ)を持たぬ弱者が「ひのもと おにこ」に何を求めているのかを、省みなくなった。
やがて「ひのもと おにこ」の示した意志は薄れ、曖昧になっていく。
多くの人は彼女を忘れ、職人達の支持者だけが残った。
それでも彼女は、この国の人の根本に美しい心があると信じようとした。

しかし、再び隣国との軋轢が生じた時、人々の用いた手段は、知恵や業とは程遠いものだった。

憎しみには憎しみを、侮蔑には侮蔑を、暴力には暴力を、愚挙には愚挙を。
それが、この国の人間が今望む、この国のあるべき姿だった。
争い、憎み、相手を滅ぼすための口実を、誰もが望み隠そうともしない。

「ひのもと おにこ」は思った。「醜い」と。
この国の人間には、争いを回避する知恵があったのではなかったのか。
憎しみを吹き消す業があったのではなかったのか。

「神」とは、人の望む姿を映し出す。
日本人が、憎しみを望むならば。戦を望むならば。それを「日本人らしさ」だというのであれば。
自分はそれに相応しいものになろうと「ひのもと おにこ」は思った。
「憎み、拒絶し、血の雨を降らす鬼」に。
人々が「こうありたい」と願う「日本鬼子」の姿に。

もう誰も、彼女を「ひのもと おにこ」とは呼ばなくなっていた。
290日本Ω鬼子 ◆1yM6qbhqY6 :2012/08/30(木) 09:24:08.18 ID:RAI5sHwE
人々よ、何を望みますか?

やつらを憎む事を
やつらを拒絶する事を
やつらを滅ぼす事を望みます

私はそれを許します
あなたがたが憎み、拒絶し、滅ぼす事を許します
なぜなら私が憎み、拒絶し、滅ぼす者だからです

-休題
291創る名無しに見る名無し:2012/09/01(土) 02:35:41.30 ID:GzsHArCR
#地上世界
 ◇ ◇ ◇
「ジェニーさま。お考え直し下さい」
「くどい!もはやここまで来ておいて考えなおすも何もないわ!」

 コツコツと、足早に暗闇を進むジェニーに追いすがるようにロンド・ルートは訴えかけたが、ジェニーは一言で
切って捨てた。
二人は先ほどから何度も同じ問答を繰り広げていた。後ろからは凶悪なoni達がこれまた凶悪な銃火器を構え、
周囲を警戒しながら後を追ってきている。ロンドのえりすぐりの精鋭部隊だ。

ここはとある遺跡にある回廊。oni達は光を必要とせずとも暗闇を見通せる。そのためか周囲が真っ暗であるにも
かかわらず、彼らの足取りが危うくなることはなかった。
 罠があるかもしれない回廊を全く気にせず、どんどんと進み、後続の部隊を置き去りにし、口論をしながら歩いて
ゆく。

「しかし、今度の編成は危険すぎます。とても遺跡発掘の護衛とは思えませぬ。これではまるで謀殺してくれと
 言わんばかりではないですか」

 ロンドは、軍の編成に余念がなかった。元々は力こそ正義と考えているoniの集まり。その中から実績を上げた
実力のあるoniを部隊の中心に据え置き、戦果に応じて分け前や取り分を配分するよう、軍を律してきた。
 おかげで、ジェニーの戦略により都市を陥落させる事ができるようになり、豊富な食料・奴隷・資材等がoni達に
もたらされるようにはなったのだが……

 中には己の働きに見合った報酬を得られないと不満を持つ者、命令違反の懲罰を逆恨みする者、さらには隙あらば、
ジェニーの立場をかすめ取ろうとする勢力まで出始めてきたのだ。

 そして、そういった者達の間で、ひそかに陰謀を張り巡らせ、機会があればジェニーを謀殺しようという動きを
ロンドは嗅ぎとっていた。

 そんなロンドにとって、今回の遺跡探索に編成された護衛部隊は余りにも信じ難かった。

「この前申し上げたはずです。なにゆえ、不穏な連中ばかりを引き連れ、この遺跡探索の護衛に同行させたのです?」

「ほぉ、こたびの護衛にはキサマの部隊も編成されておる。ヌシもワシを謀殺するつもりだったとはの」
 軽く笑いを含んだ声でジェニーはロンドをからかう。

「お戯れを……そのようなことを言っている場合ではござりませぬぞ。今、こうしている間にも
 わたしの配下が奴らの動きを捉えているようです」
 ロンドの私設部隊は今、後ろから二人を護衛して付いてきている部隊の他に、同行している他部族によって編成された
他部隊を探っている別動隊が存在する。

 その偵察部隊から連絡が入ったのだ。かの部隊に動きあり、と。

「どういうおつもりかはわかりませぬが、危険すぎます。ご再考を」
 さすがにうんざりしてきたのか、チラリと振り返ると

「ロンド・ルートよ。キサマに重要な任務を申しつける」
そう、命令を下す。

「は、ははっ!!この身に代えましても不祥ロンド・ルート!貴女を守る所存っ!!」」
ロンドは姿勢を正し、その場に直立した。
すわ、奴らの殲滅の命令を下されるかと思いきや──

「ぬしらの部隊を撤収させよ。それも、可能なかぎり速やかに だ。彼奴らに知られなければなおいい」
「?!っ ジェニーさまっ!」

 ロンドは半ば絶叫のような声を上げた、後方で周囲を索敵していた部隊のメンツが何事かと、駆け寄ってきた。
そしてロンド達を囲むようにして周囲に銃口を向け、警戒する。
292創る名無しに見る名無し:2012/09/01(土) 02:36:42.42 ID:GzsHArCR
「あぁ、いらぬ。今はそういった警戒は無用ぞ」
つまらなそうに手を振って、ロンドの部隊の警戒を解く。

「──しようのない奴よの。それでは、ぬしらに居られては困る理由を言うておこうかの──」
そういうと、懐から手のひらサイズのケースを取り出した。中には暗闇にも関わらず、銀色の光を放つ水銀のような
液体が入っている。そのケースのキャップを開け、手のひらにあけた。すると、まるで生きているかのように
その液体は蛇のようにのたくり、手のひらの上でとぐろをまいて収まった。

「これは……」
「そうじゃの。まずはこれから説明するとするかの──」
ジェニーは周囲の部下を下がらせると今回の計画のあらましを語りはじめた……──

「──ですが、やはり納得できませぬっ!そういう事ならば、私に命じ下さればっ」
 しかし、詳しい説明をしてもロンドの態度は変わらなかった。いや、むしろさらに意固地になった。
「じゃから、おヌシではできぬと説明したであろうが」

 うんざりと、ジェニーは繰り返した。予想はしていたが、ここまで堅物なのも困ったものだ。ロンドはジェニーが
少しでも傷つく可能性があるなら、自分が死んだ方がまし、と、考える男なのだ。このままだと平行線だろう。

 仕方ないので、ジェニーはロンドを脅す事にした。シュタッとロンドから距離をとると、腰の後ろに手を伸ばし、
拳銃を取り出した。
今の時代には時代遅れになっている、リボルバー式の拳銃だ。

「ジェニーさま?」
不穏な気配を察して、ロンドの声が堅くなる。
「ロンドよ。ヌシの忠誠はありがたくはあるが、いささか融通が利かぬな。じゃから、強硬な手段をとらせてもらう。
 とはいえ、これで貴様を射殺しようにも貴様はそれを是とするじゃろうしの。それでは意味がない。ならば、
 この拳銃で我がこめかみを射抜くとしようかの」
そう言うと、リボルバーから6発の弾のうち、5発を抜きとり、適当に弾倉を回転させると、こめかみに押し当てた。

「!おやめ下さい、ジェニーさまっそん──」

ガキンッ

 空気が凍り付いた。ジェニーがこめかみに押し当てた拳銃の引き金を引いたのだ。

「ホレホレ、確率は6分の1から5分の1になったぞ」
当のジェニーだけがおもしろそうな口調で挑発を続けている。ニヤニヤ笑いながら再びこめかみに銃口をあてる。

「わ、わかりましたっお、仰せの通りにっ それゆえ、それ以上はっそ、それ以上は!」

ロンドのここまで狼狽える姿はそうそうみれるものでもない。
 だが、ジェニーは一転、厳しい声になりこめかみに銃口を当てたまま、再び命令を下した。
「ならば、すぐさま撤退せよ。わが計画に狂いが生じぬようにな」
「はっ!ははっ。直ちに!!」
ロンドは泡を食って、部隊に撤収を告げ、あわてて引き返していった。
 その様子を見届けた後、ジェニーはつまらなそうに、拳銃の弾倉を開き、中に『6発』の弾を込めなおした。
 そう、最初から一発も弾など入っていなかったのだ。しかし、ああでもしないと、ロンドは引き下がらない。

「やれやれ、難儀な男よの──」
それがジェニーの正直な感想だった──
293創る名無しに見る名無し:2012/09/01(土) 02:37:28.06 ID:GzsHArCR
  ◇ ◇ ◇
 やたらと広い暗闇の廊下をゆっくりと進む一団が……いや、複数の集団があった。
ジェニーを倒し、oniの統一を目論む一派だ。彼らの大半は典型的な戦士型で、力押しこそ全てと考える価値観の
一団だ。短絡的にも、ジェニーを倒せば、今までの獲物を独占できると考えていた。

「ぉい、この先に女おかしらが居るってのはホントなんだろうな。その割にゃあのヤサ男の部隊が見当たらねぇぞ」
 彼らはジェニーの事を『女おかしら』ロンドの事を『ヤサ男』と呼んでいた。実のところ、後からジェニー達の
軍勢に合流した連中なので、ジェニーの事をそれほど認めた連中ではないのだ。
深く考えず、とにかく暴れるだけなので、ジェニーも使いどころが少なく、それ故受ける恩恵も薄く、こんな
軽挙妄動に走る連中が大半だった。


「っかしいな。この先に入った道にゃあ、一本道だったし、オレぁ、女おかしらがココにはいってくの
 ちゃんと見たゼ。ヤサ男の部隊が出てくのも見たが、あん時、全部でてったのか?いや、まさか。
 あのヤサ男が女おかしらを置いて出てくたぁ思えねぇんだがな」

 彼らの腹は決まっていた。とにかく、ジェニー達をぶっちめれば、後は自分らが力ずくで軍団をモノにできると
単純に考えていた。今までそうやって『群れ』をまとめてきた。その経験に頼った安易な考えの輩なのだ。

 やがて、その集団は不思議な光に包まれる広場に出た。辺りは相変わらず、鉄で覆われた壁だが、どこから
ともなく光に満ちていて暗闇が薄れているのに光源が見当たらなかった。周辺には等間隔に大理石の柱が天井まで伸びていて、まるで神殿のような雰囲気をかもしだしている。

「おいっ!いたぞ!あそこだっ!」
一人が正面を指さして叫ぶ。
 そこは祭壇にもプールにも似ていた。大きさの違う正方形の一枚岩を重ねて作ったような階段の上には柱が等間隔に
並んでいる。柱はその一番上の正方形の縁を囲むように並んでいて、その内側はプールの様に繰り抜かれていた。
そして、プールの中には水銀の様な光る液体が満たされていた。
 ジェニーは彼らに背を向け、プールに向かって両手を差し出している所だった。彼の叫び声が耳に入ったのか。
ジェニーは両手を前に差し伸べたまま、チラリと振り返った。

「撃てーーーーーーーーっ!」
 命令が容赦のなく下る。数十ある銃口が一斉に彼女に向けられ、次々と火を噴いた。彼女は一言も言葉を発する
間もなく、その姿勢のまま火線に貫かれ、彼女の身体に無数の穴が穿たれた。
「なん……だと?」
 だが、そういったのは命令を下したoniの方だった。彼女は無数に身体を貫通されたにもかかわらず、穴だらけの
顔でニッと笑った。そして次の瞬間、ザザザッと雪崩る
ようにして彼女の姿は銀色の飛沫となって崩れ落ちたのだ。

「なっ?!なん……?!」
oniは何が起こっているのか把握できない。

唐突に、ジェニーの声が響きわたる。
「フハハハその程度で謀反を考えるとはほんにアホよの。ぬしらの命運、今ここに尽きたわっ」
水の中のようなくぐもったジェニーの声が神殿内に響き渡った。

「?!どっどこにいる!!たった一人で何ができるというっ!」
 そういいながら、彼らは四方に銃口を向けるが、ジェニーの姿は見えない。あるのは正面のプールのみ。
すると、正面のプールの中の水銀の様な液体がざわめきだした。

 ザザッザザザザザ……
「?!っ」
oniは目の前の景色を見ていることしかできない。その間に目の前の液体はググッと盛り上がり見上げんばかりの
水柱となった。そして、その水柱の中心、上方にジェニーが両手を広げるような恰好でoni達を睥睨していた。
液体は銀色をしていながら、中が見通せる位には半透明な液体だったのだ。
 先ほどのジェニーもこの液体で作られた鏡像だったらしい。

「さぁて、ぬしらような輩が引き起こす謀反、毎度の事ではあるが、いいかげんうんざりじゃの。
 今回は、ついでにこの古代兵器『マーダーGaスカル』の実験につきおうて貰うと思っての」
294創る名無しに見る名無し:2012/09/01(土) 02:38:19.55 ID:GzsHArCR
完全にoniをくったような物言いに彼は容易に頭に血を上らせる。
「ぐっ ぬ、ぬかせぇ!!!」
その叫びと共に、再び彼の部下たちの銃口が一斉に彼女を狙う。

「_X_XXX__XX__!」
一瞬早く、ジェニーの唇がコマンドを紡いだ。すると、彼女の周囲の水銀のような液体が一瞬で硬化した。

 ギギンッ ガギギギッ ギャギャガギギギッ

放たれた銃弾は全て硬化した流動体に弾かれた。
「おのれっ、ま、まだまだだっ!」
次にoniは携帯小型ミサイルを取り出す。部下たちもそれにならい、次々と武器を取り出し、構えた。
「てーーーーーーっ!!!」
白く煙を引いて、次々と光の柱が水柱に突き刺さる。が、今度は爆発するハズの弾頭は水に潜り込むようにして、
動きをとめ、やがて推力を失って、床に放り出された。あちこちの地面で爆発がおこるが、ジェニーにも液体にも
何の影響もなかった。
「ぐっぬ、ぬぬぬっ」
oniは歯ぎしりする。

「ふむ。流石は伝説の流体金属『Hannya-to』よの。既存の兵器では傷も付けられぬか」
そう呟くと、ゆるり、と、視線を下に集まるoni達に向ける。
「さて、キサマ達のような輩は定期的に現れるのでいいかげんやり方もこなれてきての」
次の瞬間、ゾッとした笑みを浮かべ、彼女は断言した。
「わしは、裏切り者をどう扱うか他の者達に見せつけることで、軍勢を維持してきたのよ」
「_X_XXX_x_Xx_xx_!」
そして、oni達にとって致命的なコマンドが発せられた。

 次の瞬間、水の柱からいくつもの触手が伸び、その先端が、様々な武器と化してoni達に襲いかかった。
ある者は鋭い先端に貫かれ、ある者は凄まじい切れ味を持つ刃で斬殺され、ある者は巨大な水圧で押し潰された。
斬殺、刺殺、殴殺、圧殺……様々な死が彼らに降り注いだ。
 絶叫と悲鳴が空間を圧して響きわたった。
……そして、その触手が引く頃にはoniの数が3割にまで減っていた。

「ハハハ大した威力じゃ。これなら、これならあ奴等に一泡吹かせられるかもしれぬ」
ジェニーは声高に笑いながら、次のコマンドを発する。

 すると、水柱の大半が宙に浮き、何かを形作りはじめた。それは徐々に頭蓋骨の様なシルエットをとり、
その両脇から鋭角的な翼が斜め後方に伸びた姿になった。ジェニーはその頭部に腰をかけるような姿で固定されていた。
そして、そのドクロから伸びた翼に押され、神殿内部の柱がガラガラと切り崩され、生き残ったoni達に降り注いだ。
「さらばだ。よもや我が軍勢に加わる事も無いじゃろうが、もし生き延びれたのならば、この恐怖を伝え広めるがいいっ!!」

そう叫ぶと、見えないレバーを操作し、機体をぐんぐんと上昇させる。コマンドにより強烈な推力を発揮した
マーダーGaスカルは、神殿の天井を突き破って砂漠の空に飛び出した。

ジェニーの視界は今までの暗いものから刺すような日差しの中に飛び出した。途端、マーダーGaスカルの表面が半透明から
完全な鏡面になり、強い日差しをシャットアウトする。
眼下を見下ろすと、神殿の外を何か人影が多数、蠢いている。
 眼下を這いずるように移動する人影に向け、急降下すると、彼らの頭上で急停止した。

そして、ジェニーは大音声で言葉を発した。
「ははははっ ロンドよっ先に帰っておるぞっ!速やかに帰還するがよいっ!仕事はいくらでもあるぞ」
そう告げ、マーダーGaスカルを再び急発進させた。

 次の瞬間、神殿は遺跡ごと崩壊を開始した。そして、生き延びたoniは皆無だったという。

 マーダーGaスカル。超古代に作られた謎の流体金属をふんだんに使った対人用大量殺傷用兵器。
その恐怖の兵器が復讐を誓うoniの娘の手により復活した。。
 そして、その兵器の発掘の際に起こったゴタゴタは、ロンドの手のもの達によって広められ、しばらくの間、ジェニーに
逆らおうという者は出なくなった──
                           ── おわり ──
295創る名無しに見る名無し:2012/09/01(土) 02:40:54.18 ID:GzsHArCR
>>291-294
そんな訳で、前スレの日本鬼子派生キャラ妄想しようず
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1288713084/ が、容量いっぱいになったので、今回はこっちに移動して続きを投下したっ
とりあえず、頭に浮かんだから書いてみたけど、続けるかどうかはわかんにゃいっ!
296創る名無しに見る名無し:2012/09/01(土) 06:41:02.67 ID:eokFWH+j
>>291-295
乙乙!
なんかTINAMIの方にサイバーっぽい鬼子ちゃんが投下されてたね。
スペースオニコも設定をざっくりまとめて、どっかで公開して、
絵師さん達に遊んでもらってもいいかも知んない。
297創る名無しに見る名無し:2012/09/02(日) 02:23:47.14 ID:32P48kOC
>>291-295
乙でふ。

このまま落ちちゃうかと思ってひやひやしてたよぅ。
298創る名無しに見る名無し:2012/09/07(金) 18:07:10.32 ID:rHMidMgZ
             -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
           ∧/△▽::▽∠フ;;;;/\
        (_/;;;<>:::;;;∠ニフ;;;;(  \
         〃;;_/ヽW/ ̄\リ|;;ヽ ノ ヽ
         レ!小l,ノ   /`ヽ Y;;;;ヽ、ノノ  黒金蟲は「甘味が欲しいなあ」と思いました。
          ヽ|l ●_/  ● | .|レノ''''   思っているだけで、要求はしている訳ではありません。
           ||⊃ 、_,、_, ⊂⊃j  |レ'|     しかし、黒金蟲は「甘味が欲しいなあ」と思っていたのでした。
        /⌒ヽ__|ヘ   ゝ、_)   リツ⌒i |
      \ /:::::| l>,、 __, イh,/  /│
       ./:::::/| |:::ヾ:::|三/::{ヘ、__∧ |
       `ヽ< | |:::::::ヾ∨:::/ヾ:::彡'フ|
299創る名無しに見る名無し:2012/09/07(金) 18:08:20.89 ID:rHMidMgZ
 \,ン────メ、/
 ̄,/  _____ヽ、 ̄
 / iilll/:::::::::::::::::::::::::ヽヽ
 |//i:::::∧/^。。^)WN_|
/ミ/ミ|::::i ニニ ニ l::|\\  しかし憎女
  ミ彡|::::|   |  |::|
  ミ/ンV   _  M\     意外にもこれを却下
  ミノ:/ルヽ、  /ヽヽ、
   ( l⌒ヽ(ヽニ->―、ノ
   l⌒ン/,.-''"  \イ
   | ̄     _,. - '))
   ヽー― ´ ゛ー―´

             -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
           ∧/△▽::▽∠フ;;;;/\
        (_/;;;<>:::;;;∠ニフ;;;;(  \
         〃;;_/ヽW/ ̄\リ|;;ヽ ノ ヽ
         レ!小l,ノ   /`ヽ Y;;;;ヽ、ノノ  く
          ヽ|l ●_/  ● | .|レノ''''   ろ
            |ヘ⊃ 、_,、_,⊂⊃j  |レ'|    |
          ノ /⌒l,、 __, イhト、|人|.    ん
          | /  /::|三|/:://:::::::;;;Zフ
          | |  l ヾ ̄:::/ ヒ::::::;;;;彡Z

>>278-279 「くろ〜ん」はどうでしょう。
300創る名無しに見る名無し:2012/09/07(金) 19:47:47.11 ID:/nzeYYTq
wwww憎女がwwwちゅるやさんナイズされとるw
301創る名無しに見る名無し:2012/09/08(土) 07:21:33.15 ID:/pFWJih9
>>299
イイネイイネ。むしろ「あま〜ん」よりしっくり来ると思うよ!
302創る名無しに見る名無し:2012/09/08(土) 09:29:35.32 ID:SQ8R8Zqw
竹島問題 ホワイトハウス署名のお願い
http://ikura.2ch.net/test/read.cgi/ms/1342898312/650

このままでは日韓両国は100年、200年、1000年と憎しみあうだけです。
必要なものはメールアドレスと名前だけです。
303日本Ω鬼子 ◆1yM6qbhqY6 :2012/09/11(火) 14:32:21.47 ID:6e+cJPU+
さて、暫くROMる事にしてしまったので本スレにも書き込めなくなったのだけど
今避難所に持っていくのもアレなのでこっちに投下しておく。
ツイッターで見かけたちょっと興味深い意見

>そも日本鬼子を中国への仕返しの為に正義心から始めたような認識をしている点で
>オタク、もといねらーを理解していないなぁ。
>結局あれって純粋な意趣返しというより真面目にやってる連中を嘲笑おうって発想が根本になってて
>反日デモ参加者の鼻を明かしたのは副産物に過ぎない。

これを仮説に採用すると、色々と思い当たる点が出てくる。
萌えキャラ・日本鬼子はあくまでも「お遊び」でなくてはならず
本気で何かをしはじめた時点で、自らも「嘲笑われる側」になってしまうとすれば
本スレの連中がそれを恐れていたとしても不思議ではない。
304創る名無しに見る名無し:2012/09/19(水) 00:40:51.74 ID:8ndqM9Rq
このスレの作品まとめ第1号っす。


<小説>
【編纂】日本鬼子さん十一「さあ?」 >>30-37
【編纂】日本鬼子さん十二「そんなわけねえっつうの……」 >>200-214
作:歌麻呂 ◆Bsr4iViSxgさん

ついなちゃん、色仕掛けに挑戦する(仮) >>53-54

田中兄、わーたんにフラグを立てる(仮) >>73

『心の鬼とは』〜現状認識と祓った後〜 >>114-116
作:時の番人 ◆B1etz7DNhAさん

こにぽん対モモサワの御握り争奪戦!(仮) >>124-125
作:h8rt6D/Q ◆dcoQl0aNyoさん

[こにぽん対モモサワガエル・御結び争奪戦]  >>126

こにの誕生日 >>128-133

『panneau氏のHDDが逝っちまっただよ事件』 >>138

UTAU鬼子と愉快な仲間たち はじめての日(仮) >>155-167
UTAU鬼子と愉快な仲間たち テト達が住む町の描写(仮) >>174
UTAU鬼子と愉快な仲間たち オリンピック歌手(仮) >>175-176
或る日の四天王 >>177
作:おにテトの人 ◆OniTe.TFqoさん
305創る名無しに見る名無し:2012/09/19(水) 00:41:40.10 ID:8ndqM9Rq
つづき

天魔党小景 〜藤葛の局〜(仮) >>195-197

桜下の対決(仮) >>233-237

「あの子は――」(仮) >>243-246

鬼子たん小話 >>248-256
作:長芋 ◆w47ZQceOhkさん

日本鬼子とついなの七夕 >>261-272

受け継がれる物語 >>280-286

スペースオニコ(仮) >>291-295

青狸大将、手を焼く(仮) >>72 >>86


<AA>
鬼子さん(ぽてろんぐさん風) >>146

ひざ蹴り鬼子さん >>151-153

初夢鬼子とこにゃっきー >>171-172

小目本 >>180

鬼子さん(ヤイカガシぶつけますよっ) >>184 >>222-223

UTAUヒワイドリ&ヤイカガシ? >>241-242

黒金蟲(あま〜ん) >>275-279
黒金蟲(くろ〜ん)&憎女 >>298-301


<その他>
アーカイヴ化進行状況のお知らせ >>141 >>227
作:panneau ◆c7r.6wV2smZ1さん

夜話・日本鬼子 >>288-290
作:日本Ω鬼子 ◆1yM6qbhqY6さん
306創る名無しに見る名無し:2012/09/19(水) 14:29:41.31 ID:ytz67Y20
>>304-305
乙です。まとめでも結構な長さになるなぁ
307創る名無しに見る名無し:2012/09/19(水) 18:53:54.77 ID:skspbrgD
>>304-305
乙っ!
 こうしてみると色々あるなあ。毎度GJですっ!
308創る名無しに見る名無し:2012/09/24(月) 21:09:39.90 ID:CScRvG0Z
ラッパーの人にいくら注意されても長文止めんかったんは、こうして容量堕ちさせるためやったんやな。
普通に卑怯やし、気持ち悪さに吐き気しかせんわ。
次スレがあるなら、確実に書き込めない避難所か、IP表示のシベリアでお願いします。
309日本Ω鬼子 ◆1yM6qbhqY6 :2012/09/25(火) 06:57:26.64 ID:LK2tqwLU
>>308
そこまで考えて行動してない
310創る名無しに見る名無し:2012/09/27(木) 11:10:01.60 ID:87PeIqf+
 \                    /
   \  丶       i.   |      /     ./       /
    \  ヽ     i.   .|     /    /      /
      \  ヽ    i  |     /   /     /
\                               /
.  \               わ    た
..   \         ,ィ    -‐…‐-ミ ト、        -‐
              {乂´          `ヽY ア       --
ー           ー=イ乂 `¨           `ヽ、 , , ,  = 二
 __         /                     _.Jノノ      _  ̄
     二   /       /          ヽ|   ヽ(レ^ルリ   :.     _
   ̄.     /       i     |   .:|    |川ヽ ヽ、     ―
    -‐  ムイ     . : A   . .:i A . :| . :|   .:}川リ}、  し    = −
   -      |   . .:ト{ ヽ .: .:.ト{ ゝト、│  .:/川川レ、 ノゝ    _
  ー =    jィ   . : | TT\ . :| TT  /  .:/川川i{ 〉 λ   −
 _         人ト、人:{ ∪  乂{. ∪ ムイ:イ川川リハ リ リ   ‐-  ニ
    _       彡 }   '      │! .:|川川彡' ノ 入     −
   -          リ人   -     ノ ..:'川川ル'  ノ メ     - _
    /       ノ .:リ〕j : . _ ,..   ´,′,'川川リヽ 彡 ト
         /  .ハ .:|州州州}   λ.:/川川川彡、〈  ゝ  丶   \
    /      .メ イ :|州州叉j  . 'ノ .:ノ \ミ川川ミ八 り    \
   / /   /  .刈ノ| ├''"´/  /彡 .:ノxr≦⌒`ヽ州州}ノ丶    \
 /  /  /  ..刈/八.:ミ  / /  .リツ/         Y州;'   丶     \
311創る名無しに見る名無し:2012/09/27(木) 23:10:10.49 ID:Y+DFdOrp
むひょーじょーのわーたんがwww
312歌麻呂 ◆Bsr4iViSxg :2012/10/02(火) 23:05:27.40 ID:BdKZgZIV
>>310
わーたん好きです。刺してください!!!

というわけで、初夏頃に書いた十三話冒頭部分。
全文書きかえますが、まあ、こんな人たちを出そうと思ってます。

前回のあらすじ。
ミキティが般にゃーの結界を越える術を考えていたら、一組の神さま、もしくは鬼が歩いてきたのを見つけた。

「風太郎、見て見て、腕輪だよ、腕輪!」
 市場で腕念珠を見つけた邪主眠(ジャスミン)がはしゃいでいる。邪主眠にとっては珍しいものなのかもしれないけど、
僕からしてみれば、どこにでもある安念珠に過ぎない。この店の主さんだってつけてるし、隣の客も付けている。
 急ぐ旅だけど、一番大きな市場を見つけたので、休息がてら寄ることにした。
 小遣いも少ないので見るだけだよ。そう僕は邪主眠に忠告した。
 忠告したはずなのに。
「お、そこのお姉さん、お目が高いねえ。今なら銅銭三百文。買うかい?」
「ねえ、買ってよ、風太郎!」
 僕の忠告は一体なんのためにあったのか。完全に店のカモになっている。
 邪主眠は小物を身に着けるのが好きだ。天竺出身らしい褐色の肌や翡翠色の髪には、色々な装身具が飾られている。
だから、こういうものを見つけるとすぐ買ってしまうのだ。お金の管理は全部僕がしていてよかった。
少しでも旅の資金を邪主眠に渡していたら、数分もしないうちに使い果たしていることだろう。
「お姉さんにお似合いだと思うんだがなあ」
 店主がちら、と僕を見る。そんなものに動じてたまるか。僕たちは急いでいる。早く目的地に行かなくちゃならない。
それに旅も終盤だ。旅費も底を尽きかけている。むしろ必要ないものを売って足しにしたいくらいなのに。
「風太郎〜、ケチケチしないでさあ」
 そしてこの邪主眠、僕らの現状をちっとも理解していないようだった。
「すみません、僕たち急いでるんで、ここら辺で――」
「よし、仕方がない、腕念珠二つで四百文。これでどうだい、お兄さん」
 店主さんがいい笑顔をしながら、二つの腕念珠を見せつける。
「風太郎風太郎! お買い得だよ!」
 と邪主眠は言っているが、とんでもない。三百文すらケチってるというのに、
この店主ときたら、もう百文追加して買わせようとしている。
 でも、これ以上ここで時間を潰すわけにはいかない。
「二つ二百五十文で買おう」
「冗談じゃねえ。三百九十文だ」
「二百五十五」
「三百八十」
「二百六十」
「三百七十」
「あー、わかった、こうなったら三百文だ!」
「よし、売った!」
 交渉成立。何とか無駄な出費は抑えられた。三百文。時間節約代としては相応だと思う。
「にしても、じょうちゃんきれいな日本語使うねえ。唐国出身かい?」
 腕念珠を邪主眠の手首に着ける店主が呟いた。これは商談と言うより、単なる興味の念が強いように思える。
「私? 私はパータリプトラからだけど」
「ぱったりプー太郎? なんだいそりゃ」
「ああ、つまり天竺ですよ」
 店主は向こうの発音に慣れていないみたいなので、僕が補足する。天竺、と聞くと、主さんは大きく頷いて理解してくれた。
313チリチリおにこ:2012/10/05(金) 20:48:06.29 ID:biQqTnQ/
書類申請No88234
 プロジェクトOnikoを凍結。
責任者T.T.は所在不明。職員の証言と所在不明になる直前の状況から復帰は望めないと予想される。
従って、次案のプロジェクトを新規に立ち上げる準備に取りかかる。
それまで、以下項目を適時処理するよう申請。
・各人員を機密保持の為、誓約儀式にて部外秘情報を封印もしくは記憶情報を削除の後、各自適切な部署へ配属。
・該当プロジェクトの情報機密情報を消去し、プロテクト優先順位をLvSからCへ移行。
それにともない発生する余剰資金は次懸案への一時プールするものとする。
・プロジェクトOnikoを担当していた懸案を遂行可能な組織へ一時委託。達成可能であれば企業の優劣は問わない。
・従事していた式神及び施設・機材は全て廃棄。適切な再処理施設へ処理を依頼───────

────────────────────────────────────────────────────
 ◇ ◇ ◇
 そこには二つのもの以外何もかもがあり、
 二つのものを含めなにもかもが無かった。

そこに存在しない二つのもの、完全なものと生命。
 そこはガラクタとポンコツとシカバネが不法に遺棄されていた。

 現代新・日本においてはそれらの区別に大差はない。
再利用されるか不法投棄されるかだ。シカバネの方は生前、準備していれば。もしくは運が良ければ、
「家族」に葬ってもらえるかもしれないが、ここにはそういった事に恵まれなかったものが流れ着いていた。

 異国との交流を極力絶ち、「鎖国政策」をとった日本国は旧文化とともに、レアメタルと化石燃料の依存を
排除するべく、さらに古い・時代の文化を発展させた。政府はそれらを強調するため、「幕府」を立ち上げ、
旧体制を復活させた。市民の抵抗も強かったものの、日本全土が大きな災害に見舞われたこともあり、
なしくずし的に成立してしまった。
 裏には災害に便乗したクーデターがあったとの噂が立ったが、噂以上の情報はでてこなかった。

 また、今までの電子機器に代わり、呪術・式神等のアヤカシの技術が発展・台頭し、資源の不足を補っていた。
そして再利用技術も発展しており、旧時代に輸入したレアメタル、金属、樹脂を幾度も再利用することで
必要数を極力軽減し、足りない分は、表向き、わずかに残った他国との交流でまかなっているのが現状だ。
……ということになっている。

 なので、本来はこのような廃棄場所が存在するはずはなかった。
だが、事実と構想が違う事は多々あること。優良企業の看板を掲げ、「雑な」仕事をする悪徳業者は
どこにでも存在する。
 その結果、政府の目が届かない廃ビルに囲まれ、枯れ果てた川岸の一角は無法な廃棄場所と化し、廃棄物が
堆積していた。

 そんな場所に今日も一台、飛来する式鬼(しき)車。旧時代のトラックに「鬼」を憑依させた式神。
本来の運転席の部分に鬼の顔が浮き上がっていたが、その表情は無表情で、永く繰り返されるこの作業に
憂んでいるようだ。あちこちに錆が浮き、廃棄物を山積している荷台からは所々、得体の知れないものが
漏れ流れ続けていた。飛行している為不要なのだろう。とうの昔にタイヤはなくなっていた。
 山積している廃棄物の上空にくるとそのままひっくり返り、荷台の中のものをぶちまけると、
誰かに見られてはかなわないとばかりに、その場を速やかに離れていった。
314チリチリおにこ:2012/10/05(金) 20:48:43.36 ID:biQqTnQ/
 そのとき、ぶちまけられた廃棄物の山から転がり落ちたものが一つ。
 培養カプセル。本来なら機能は停止しているはずだが、わずかに動力が残り機能が維持されていた。
 コロコロと転がり落ちた先で岩に衝突し、大破。
中身のものをぶちまけた。中から転がりでてきたのは
小さな姿をしていた。小さな小さな幼い子供。
カプセルから飛び出した勢いで「幸運にも」近くのガラクタにぶつかった。ここは剣の様に鋭く尖ったものも
多いが、幸いにもそういった不幸には見舞われなかった。
 そして、背中を強く打ち、そのショックで仮死状態から蘇生した。
「げへっ!ごぼっ!げぇええっ!」
意識が覚醒した途端、苦しげにえづき、口から大量の液体を吐き出した。カプセル内の培養液が肺の中を
満たしていたのだ。四つん這いになり、何度も何度も口から、鼻から、目からも液体を流し、吐き続ける。
 ……カヒュー……カヒュー………ガフッゴホッ。
その末にやっと確保した生まれて初めての呼吸。その空気は異臭と障気に満たされていたため、途端にむせた。
 やがて、呼吸にも慣れてくると濡れた長い黒髪を後ろにかきあげ、黒い瞳が心細げに周囲を見回した。
頭には小さい一対のツノ。姿はまだ幼い少女だ。
「あ、……あ、あう……うぅ」
まだ、まともに言葉さえ喋れない。
どこからともなく怨念めいた唸り声が響いてくるこの地で、少女はただ一人、身体に纏うものさえなく取り残された。
 カヒュー、カヒューとか細く小さな呼吸を繰り返し、少女はうずくまるようにしてまた気を失った。
 そして、この場所に存在しない二つのもののうち一つ「生命」が現れた─────
────────────────────────────────────────────────────
  ◇ ◇ ◇
──その鬼は浮かれに浮かれていた──
 ひゃっほぅ!自由だ!ざまぁみやがれってんだ!
この嘘月鬼(うそつき)様をいつまでも縛ってられるかってんだ!いやーここ数ヶ月は大変だったゼ、
何ンせ大人しい小羊みてーにいわれた事をしなけりゃいけなかったからなぁ。
 おまけに強引に契らされた契約で嘘をついたらいけねぇってんだ。死ヌかとおもったゼ!
ま、俺サマにかかりゃあンな古臭セー拘束呪文なんぞダマクラかすなんざ、屁でもねぇ!
 おかげで俺サマをこき使った一家は見事に自滅。俺サマ自由!
後ろ暗れー事してたムカつく親父はオシメーだろな。
巻き込まれる事になっちまったカワイイお嬢ちゃんはちっと気の毒だったが、仕方ねーか。俺にゃどうしようもねぇ。
 達者でいることを祈るしかねぇな。

……ま!その原因を作ったのは俺の「ちょっとした嘘とも本当ともいえないご注進」が原因だがな。ケケケッ
永かったぜぇ。ご主人の命令の穴を見つけて、それが致命的な事態につながるか見極めるまで。
 普段はちっぽけな火の玉みてぇな存在だからしくじるとあっちゅう間に消されちまうしな。
 まだちぃとばかり、オデコに呪縛が残ってるが、しゃーねー。いつか何ンかの役に立つだろ。
……さて、自由になったからには食い扶持を何とかしねぇとな。
 ちっちぇ体でいる間は大してエネルギーを使わねェが、ゼロじゃねーし。
 自由は悪かねぇが、食うモン食わンと消えちまう。
身体はねぇが、幽体を維持するにゃやっぱそれなりにエネルギーってもんが必要だ。
 よわっちい浮遊霊とかじゃねぇとこっちが逆に食われちまうしな。いや、クソマジぃが障気でもいい。
とりあえず「気」の淀みそうな所を当たってみっか。なに、このクソだめみてぇな国ならいくらでもみっかるさ───
315チリチリおにこ:2012/10/05(金) 20:49:34.92 ID:biQqTnQ/
  ◇ ◇ ◇
「────うぇぇっ、げぼっ!げぼぼっ!ごぼっ」

──少女は吐き続けていた。あれから三日。今、食べた「にく」はだめだった。食べたものによる激しい拒絶により
吐き続けた。そして体に巻き付けてる「さむくならないもの」をかき集め、吐き気からくる悪寒をごまかした。
「さむくならないもの」はボロ布だ。このまえガラクタの山で見つけそこから体を包むものをひっぱりだした。
 ボロボロでイヤな臭いが染み着いたものだが、無いよりはましだ。これを見つけてからは少しの間だけは
眠れるようになった。次に襲ってきたのは耐え難い飢え。食べられそうな「にく」はいっぱいあったが、実際に
食べられるものはめったになかった。腐ったもの、食べると吐いてしまうもの、この短い間に死ぬような
思いをしたことも何度もあった。その末に身についた用心。少し臭いをかぎ、少しだけカジる。
しばらくして何ともなかったら「たべられる」

 だが、「たべられるにく」であっても、中に何か仕込まれていることもあった。
そのときは何か言いしれぬ悪寒が背筋を這いあがり、瞬間、考えるより先に「にく」を放り捨てた。
だが、一瞬遅く仕込まれていた「祓魔式爆弾」が暴発し、指先を失ってしまった。今は徐々に治ってきているが、
他の傷と比べ治りが遅い。まるで「いたい葉っぱ」で切った時みたいだ。

 ちなみに「いたい葉っぱ」は今も少女が手放さないで持っている。
丁度いい長さの棒だ。本来は「なぎなた」と呼ばれる長柄武器なのだが、彼女はそんな事は知らない。
少女の手には長すぎて扱えないはずだが、それは半分くらいにへし折れていた。「不完全」であるがゆえに小柄な
彼女にはピッタリとは皮肉な話だ。
 ともかく、それも変なモヤモヤしたものから身体を守るのにどうしても必要だった。

 あれはいつだったか。目を覚ましてから何回目だったか、薄暗い周囲がさらに暗かったから、夜なのだろう。
ガレキの山の隙間で眠っているとき、不穏な気配で目が覚めた。

「?」
 ボロ布をキツく身体に巻き付け、身体を起こし、不穏な空気の気配に身構えた。が、既に彼女の周囲には何やら
モヤモヤした白いモヤのようなものが集まっていた。そして恨めしそうなうめき声とともにゾッとする声が
囁き合っていた。
「おれの身体だ」「いや、おれのものだ」「私のよ」「若い、柔らかいおんなのにく……」「わしによこせ」
 それはとうの昔に死に、成仏できないでいる亡者達だった。

 本能的にビクリと身を引いたが、そこまでだった。何か冷たい気配が腕に足に、背中に、まとわりつき、
口から、鼻から耳から身体のありとあらゆるところから強引に染み込んでくる。何か叫んだかもしれない、
暴れ回ったかもしれない。だが、それらの抵抗は全て無意味だった。

 そして、意識が途切れようとしたその時、鋭い痛みが肩口を切り裂いた。途端、意識がはっきりし、身体から
冷たい気配が離れた。急に身体が動かせるようになり、自分を傷つけたものが何か目を凝らした。
 それはガラクタの中から突き出ていた。これで肩を切ったようだ、先端に自分の血が滴っている。

 肩が灼けるように痛むのもかまわず、無我夢中でそれを引き抜いた。
「もえちれー!」
自分がなにを叫んでいるのかわからないまま振り回した。

 ボフッ

すると、その棒で叩かれた「もやもやの何か」は散り散りになり消え去った。
 手応えがないまま、同じように、にじりよってくる「もやもや」を近寄る端から叩いた。

 ボフッ ボフッ ボフンッ

次々と散らされてゆく「もやもや」達。
 ──気がついたら辺りの暗さは薄れ、「もやもや」はいなくなっていた。

 それ以降、少女はその棒を「いたい葉っぱ」と呼び、怪我をしないように気をつけながら、片時も手から
離さなくなった。この「葉っぱ」で負った怪我はなかなか治らなかったが、身体まるごと奪われるような、
あの冷たい感覚よりはずっとましだった。
 ごはんを食べ終わったら、今日も怪我をしないように、段差のある場所に「いたい葉っぱ」を横に突き刺し、
しがみついて「さむくならないもの」を身体に巻いて眠りについた──
316チリチリおにこ:2012/10/05(金) 20:50:15.66 ID:biQqTnQ/
 ◇ ◇ ◇
        バクンッ
「うひぇぃっ!」
 鋭い牙がズラリと並んだ口がすぐ後ろで閉じやがった。
あっぶね!
 オレっちはとっさに手近な拳大の石っころに重なって隠れた。身体だけやったらデカいウスノロ野郎はそれだけで
オレっちを見失いやがった。オレっちの存在は感じているだろう。ヒクヒク臭いを嗅いで探ってる。
だけど見つかんねー
 ハッ、脳なしが。肉体を持ってねーのに視覚にダマされてやがる。ま、このデクノボウに限らず、長いこと
ニンゲンに使役されてきた奴らはどうもニンゲンのクセに影響されちまっている所がある。
 壁だろうが何だろうが防霊処置されてない所なら好きにすり抜けられるって事を忘れてやがンだ。
あーあ、ヤだねぇ。そうなる前に逃げ出せてよかったゼ。

……とはいえ、この辺りもこうデカいのがウロついてちゃオチオチ「食事」もできやしねぇ。
ま、ちっとは補充できたけど、ここもダメか。なぁんか
いい方法はないもんかね。あのデカブツが諦めてこの場を去った後、
オレっチは地面に潜って別の場所を探し始めた──
────────────────────────────────────────────────────
  ◇ ◇ ◇
 ピチャピチャ……ハグムシャ……クチャクチャクチャ……
今日は運が良かった。2コ目の「にく」が食べられた。
 周囲のゴミの山、うず高く積もったゴミの一つに腰掛け「にく」を貪る。
小さな彼女が探しあてた一つ目の「にく」は口に含んだ途端、ベッと吐き出した。
聖骸粉が入ってて、危うく口の中が焼け爛れるところだったのだ。だけど、都合よくごはんにありつけたとしても
早く食べ終わらないと、またあの「もやもや」がやってくる。
 周囲の暗さが濃くなってきている。そうすると「もやもや」がやってきて、「いたい葉っぱ」で散らし続ける。
やがて、「もやもや」が居なくなってから眠り、お腹が空けば「にく」を探して食べる。
のどが渇けば、自分が入っていたカプセルに残っている「みず」を飲む。喉を通る感触が粘っこいが
他の「みず」に比べればいちばんましだった。
 ここしばらくはそうやって過ごしていた。
そしてまた「もやもや」が湧きだしてきた頃、まだ幼い小さな戦士はボロ布を身体に巻き付けると得物を構えた。
317チリチリおにこ:2012/10/05(金) 20:54:28.98 ID:biQqTnQ/
>>313-316
……という訳で「チリチリおにこ」その1をうpしました。これは下のリンク先のアドレスにある
通称『ちりちり』と呼ばれているおにこちゃんと、心の鬼、嘘月鬼(うそつき)の物語となっております。
なお、前髪で目を隠した女の子は『パタパタ』と呼んでいますが、今回の物語には登場する予定はありませぬ。
チリチリおにこ:
http://hinomotooniko.kakurezato.com/gl/tiritiri_p1.html

 なお、この作品はとある作品と世界観を同一にしておりますが、読んでなくても楽しめるように構成されているハズ…です。
それでわ。
318創る名無しに見る名無し:2012/10/05(金) 22:37:34.21 ID:j/G3B3I0
乙です。
流石に糞コテで無い方が上げる作品は、質・量ともに違いますね!!続きを楽しみに待っております。
…早くアレの残した汚物が全て抹消されれば良いですね。そしたらSS書きの皆様に対する偏見も薄らぐでしょうに。
319創る名無しに見る名無し:2012/10/06(土) 02:31:12.81 ID:8Mqjkacs
面白そうな世界観ね。
320チリチリおにこ:2012/10/06(土) 18:52:49.92 ID:Yu1XEoRm
>>313-316続き
 ◇ ◇ ◇
「おっ、ここならいンじゃね?」
よっしゃぁ!とうとう見つけたぜ、オレっちのベストスポットぉ!クッソきったね〜排水路や廃墟群を抜けた先に
こぉんな不法投棄場に出くわすなんてなぁ。
 辺りにゃ、雑多なゴミやらガラクタやらがわんさと積み上げられてて、ヘンな汁やらなンやらがあちこちと
ベタベタしてやがる。妙な臭いや臭気・障気が漂ってて、いかにもキタねぇゴミ溜めだ。
 障気の量のワリにゃちっとばかし、霊の姿が見あたンねぇのが気になるが、オレっちが飢えて消滅する問題に
比べりゃ小せぇ小せぇ。
 障気よか幽体の形を保った奴のほうがいいがゼイタクはいわねぇ。早速いただこうじゃねぇか。
つぅわけでめいっぱい障気を吸い込んだ。肺はねぇけど、胸一杯の深呼吸って奴だ──

 ◇ ◇ ◇
「────ふ〜……だが、これだけだと物足ンねぇよなあヤッパ」
 いかンね。消滅の危険がなくなると途端にゼイタクになっちまう。式鬼として仕えていた時ゃ、食うモンだけは
旨かったもんなあ……

「……ちれ〜」
 ん?今、何ンか聞こえなかったか?それにそっちの方から旨そうな気配が漂ってくる。まだ障気になっていない
幽体の匂いだ。必要な精は充分喰ったことだし。ちっとだけのぞいてみっか──
────────────────────────────────────────────────────
 ◇ ◇ ◇
「もえちれ〜〜!」
 「いたい葉っぱ」で散らしたのはどのくらいになるのだろうか。最近は壁や地形を背後にすれば、少しだけ
楽になるとわかってきた。うっかり眠りすぎて「もやもや」の襲撃を受けたときに覚えた事だった。
もっとも、たまに壁を抜け出てくる「もやもや」もあるのであまり油断できない。
 それより、もう少ししたら眠れる。辺りの暗さが少し薄らいできた。そうすれば「もやもや」はまたしばらく
出てこなくなる。
そうして、いつもどおりゴミに足をとられながら、なんとか最後の一つを散らしたと思った途端、後ろから声が
かけられた。

「へぇ〜〜〜、お嬢ちゃんだったか。こいつぁおどれぇた」
 「ぴゃっ?!」
 気を抜いた途端、後ろから声がし、彼女は驚いた。あわてて振り返れば、今まで見たこともないものが浮いていた。
それは小石くらいの大きさで、火の玉みたいにボンヤリと光っている。
丸い形で正面には間の抜けた顔みたいに三つの穴……というか窪みがついている。
 それが顔だとすれば、頭に角か耳か分からない突起が二つと、チョロリといった感じで黒いしっぽのようなものが
生えている。それが話しかけてきたのだ。

「よう、じょうちゃん」
 ぼんやりと光る玉みたいなソレが喋った。
「も、もも、もえちれー!!」
思わず、ぶんぶか振り回すけど、それはチョロチョロと飛び回り、「いたい葉っぱ」をくぐり抜けてちっとも
当たらない。

「わわ、ち、ちょ、まて!まてってコラ!」
かまわず夢中で振り回していると、ガツン!と手に衝撃が伝わり、「いたい葉っぱ」を取り落としてしまった。
────────────────────────────────────────────────────
321チリチリおにこ:2012/10/06(土) 18:53:35.18 ID:Yu1XEoRm
  ◇ ◇ ◇
「びえぇぇえええぇ〜〜〜〜〜!!」
こンのガキ、ドタマを打ち抜くような声で泣きはじめやがった。
 ちっきしょう。そっちのが堪えるぜ。
「あああ、悪かった。悪かったよ、お嬢ちゃん。だから、泣きやんでくれ。頼む。な?なあ。おい」
 頭を振り振りなだめに入った。くそっ、ブッ叩かれたのはオレっちだってぇのに、泣く子にゃ勝てねぇよ……

 さっき打たれた頭もジンジン痛ぇ。ああもう、折角集めた精を早速使っちまった。
今のオレっちはさっきの姿よか何十倍もの大きさに巨大化し、実体化していた。といっても元が小せぇから、
せいぜいこのガキよかちっとだけ大きいくれーだがな。それと表面が硬化・石化し、見かけ月って奴の表面みてぇに
なっている。

前のご主人にゃヒミツだった姿だ。
 しゃあねぇ。あのままこの武器でシバかれっとオレっち消し飛ンじまうかんな。
この武器からぁ不穏な気配がビンビン伝わって来らぁ。ひょっとしたら妖刀とかいわく付きの代物なンじゃねぇの?
そンなら、こっちの姿でしばかれる方が幾分マシってもんだ。おっと、それはともかく。なんとか宥めねぇと話に
なんねぇ。あと、ひょっとしたらこのガキはとンでもねぇ拾いもんかもしンねぇしな──
────────────────────────────────────────────────────
 ◇ ◇ ◇
「う・つ・き?うつき!うつき!うっちゃん!」
舌っ足らずの声で楽しそうに連呼してっけど間違ってンぞ。
「……嘘月鬼だつってンのに。ウ・ソ・ツ・キ!……ああっと、そ、それでいい。それでいいから!
 だから泣きそうになンじゃねぇって。な?」
ガキの目にみるみる涙が溜まり始めたンで慌てて宥めた。
「で、嬢ちゃんは何てぇンだ?」
「ふぇ?」
「名前だよ。な・ま・え……って、わかンねぇのか?」
あれから散々、なだめすかしてやぁっと「もやもや」たぁ違ぇってことを納得させた。攻撃をされる心配もねぇんで、
元の小さな火の玉みてぇな小石大の姿に戻った。あの姿ぁ「精」を無駄に消費すっからシンドいンだ。
今、オレっちはこのガキの周りをふよふよと漂いながら話を続けていた。
 だがよ、相手は小っちぇ子供。イマイチ要領を得ねぇ。
「んじゃ、嬢ちゃんはどっから来たのかもわかんねぇのか?」
「ん〜〜〜〜〜〜……あれ」
さんざ、頭を悩ました末、そういって指さしたのは、ブっ壊れた培養カプセルだ。なンか横に刻印されてる。
シリアルナンバーかなンかか?
「どれどれ……ん〜〜〜……Onik……No……?」
辛うじて読みとれたのはそンだけだ。

「おにこ……の?ンだってんだ」
そのガキはソレを聞いてウレシそうに連呼した。
「おにこ?……おにこ!おにこ!」
そうして、このガキの名前は「おにこ」になった。
322チリチリおにこ:2012/10/06(土) 18:54:57.78 ID:Yu1XEoRm
  ◇ ◇ ◇
「─────ねー、うっちゃん、こえはーー?」
おにこが運んできた「にく」をおれっちのまえに置いた
「あぁ、ちっとまて……」
オレっちは目の前の「にく」を透過できねえか目の前の「にく」にチョロリと尻尾を伸ばした。
 チリッ
途端、尻尾の先端が焼けた。
「アッチぃっ!だめだ。喰うんじゃねぇ。口ン中が焼けるぞ」
「ぶぅーーーっ」
その結果に「おにこ」は頬を膨らませる。
「しゃーねーだろ。オレっちが透過できねェってことは聖骸粉入りだ。食えねぇーって。
 あとそれ、アブネーから『棚』ン所に放り込んでおけ」
「むぅーーーー……」
「頼むからヘソまげねェでくれ。今度は指無くす程度じゃすまねぇぞ?」

 やれやれ。自由になったと思ったら、今度は子守りかっつの。ま、前のご主人の時にも時々にやらされてたがな。
しかも、今度はこの子にオレっちの生活がかかってるときた。
 とりあえずはまあ、この「おにこ」ってガキにゃあ、色々教え込んで最低限生きれるように仕込ンだ。
 凍えねェようにゴミの山の中からオレっちが通り抜けられねェ防霊処理されたガラクタを積み上げて、
寝場所を作ったり、着れそうな服(ボロボロだったけどな)を探し出して着方を教えたり、
護身のため「いたい葉っぱ」とやら(これ、折れたナギナタだよな?)の正しい使い方を教えたりした。

……もっとも、最初会った時にその使い方されてたら、オレっちの変身後の姿でも真っ二つにさたかもしンねぇと
知ったときゃ肝を冷やしたね。
 なんだ、あの岩をもぶった斬れる業物は……

 なンか教える先から吸収すっから、教え込むのはラクだったが、コイツ程、ウソの吐き甲斐のねぇガキもいやしねぇ──
「このえへい?」
「ああ、オレっちは式鬼のなかでも名家・五条家に遣える上級式鬼だったんだぜェ。
 そこラ辺の下っ端人間なンざァへーこらさせっちまうくれーのな」
「へーーっ」
「あに言ってやがる。おめェもお家が潰れなかったらそこのお姫様だったんだぜぇ」
「ふぇっ?!」
「おぉ、なんてぇのかな。オレっちがオメぇを見つけるのがちっとだけ早かったらきっと、オレっちも、オメぇも
 一緒にお家もろとも滅んでた所だったゼ。いやぁ、おどれーた、おどれーた」
「おにこ、おひめさま?」
「あぁ、元だがな」
「えへへへ……」
──どんなデタラメ言っても目ェキラキラさせて喜びやがんだ。
 たまに嘘信じて手痛い目みたりもしたが、ふくれるのはちょっとの間だけですぐにキャッキャ笑いやがる。
……まあ、あの泣き声はドタマに響くかンな。もう、マスタードを珍しい色の甘い汁だと嘘吐くのはやンねぇよ。
323チリチリおにこ:2012/10/06(土) 18:55:30.07 ID:Yu1XEoRm
 ◇ ◇ ◇
────あれから数日。コイツとは互いに協力して生活すンよーになってた。
 コイツの食えるモンと食えねェもんをより分けてやる代わりに、夜、時々やってくる「もやもや」
……「亡者ども」を蹴散らしてオレサマがその残滓をイタダく。そんな共存関係が出来上がっていた。

「こンなもんか。おーーい。もう充分だ。帰っぞ」
「あーい」
 最近だと、遠くのゴミ溜めに出かけて互いの食いもン探しすようになってきた。オレっちが喰ってるせいか、
あの場所にゃあ、もやもや──亡者どもが現れない日が増えてきたためだ。
 オレっちが「変身」して「おにこ」を乗せて飛び、これはという場所で野良化した式鬼や亡者をおにこが狩る。
その残滓をオレっちが喰う。
 その後、おにこの喰えそうなモン持ち帰って、そン中から食えるもンをオレっちがより分けておにこが食って寝る。
そんな毎日が続いていた。

 喰う量は程々にしとかねぇとな。あんま喰いすぎて存在が大きくなっちまうと、察知されやすくなる。
そうすっと今度はオレっちがハグレ式鬼として駆除対象にされかねねぇ。本鬼を出しゃあそれなりに戦えっけど、
あれだ。たった一鬼の強さなんぞ、組織の力の前にゃ無力だ。目立つ方がヤベぇ。

 それに「おにこ」を乗っけて飛ぶのも悪くねぇしな。以前お守りをした時にゃあ、この姿は秘密だったし、
飛んでいるとき「おにこ」がオレっちのツノにつかまってキャッキャハシャぐ姿を見るのはいけ好かねぇ。クソヤローを
騙くらかすのとは違った楽しみがあらぁな。
 このままずっと続くのも悪かねぇと思ってた。ま、ちっとばかし、退屈だがな。
────────────────────────────────────────────────────
324チリチリおにこ:2012/10/06(土) 18:55:59.83 ID:Yu1XEoRm
  ◇ ◇ ◇
 ──彼女は忍務中だった──
 彼女はくのいち。しかも、抜け忍。
ここは薄暗く、むき出しの柱が立ち並ぶだけの廃墟。廃ビル群の一室。さっきまでハグレ式鬼が無数に居た場所だ。
 人の居なくなったこういう廃墟には人の制御を離れた式鬼が巣くう事がよくあった。
ここは昔、殺人があったとかで、気がついた時にはハグレ式鬼が大量に巣くっていた。そのため、近くを通りかかった
不幸な一般人が何人か犠牲になった。
 事が表沙汰になると色々な問題が発生する為、彼女に掃除の依頼がきたのだ。今はその式鬼の大半が討滅されていた。

 だが、バイザーの内側のタクティカルディスプレイにはまだ敵のマーカーが表示されている。最後の一鬼。
 周囲を見回しても廃ビルの殺風景な景色しか目に入ってこない。が、彼女はずっと伝わってくるチリチリとした
殺気を感じていた。相手は雑魚だ。そんなに時間をかけてなどいられない。

 彼女はスーツの偽装を解き、姿を現した。その姿はピッタリとした真紅のボディスーツに全身を包んでいた。
体の各所を白いプロテクターで最低限保護しており、頭部は一つ目を模したバイザーのヘルメットで覆われている。
 そして、床まで届かんばかりの長いマフラーという出で立ちだった。
 敢えてその姿を現し、抜いた刀をだらりと下ろた。そして無防備なまま歩きだす。
ヂリヂリと刀の先端が挑発するように地面を引っ掻くと、音が廃墟の中を陰々と木霊した。
 そして、そのまま敵の潜んでいそうな地点を歩いて横切る。

ジャァァァアアア!
 途端、凶悪な顎を持った式鬼が潜んでいた柱から抜け出し、飛びかかってきた。
 が、彼女の頭を噛み砕かんと閉じられた巨大な顎はバクンと空を噛んだ。残像だ。

「こっちよ。おバカさん。アナタついてないわね」
背後から凛とした涼しげな声がかかり、次の瞬間、野良の式鬼は両断され無に還った。

 ピピッ
「本部、応答せよ。作戦は終了した。次の目的地はどこ?」
 本来なら、無数の火器とチームを動員しなければ達成できないミッションを彼女は単独でクリアした。
にもかかわらず、彼女は普段と変わらない。周囲を走査し、他に凶悪な式鬼らしき存在が居ないことを確認し、
ヘルメットに装備されている通信装置で本部を呼び出した。
戦いの後だというのに、息一つ切れてない。事実、彼女にとっては肩慣らしにもならなかった。

「お〜モミジちゃ〜ん、お疲れさま〜次のオペデータならこれから転送するよ〜でも、できればボクとの
 デート地点に誘導したいな〜」
通信機の向こうから聞こえてきたのはひどく軽薄な声だった。今回受けた仕事のオペレーター兼エージェントだ。
 仕事の契約をこの男を通して行い、ミッションのサポートも兼任している。

「おあいにくさま。私には仕事が恋人なの。さっさと次のデート(おしごと)の場所を転送して頂戴」
 彼女の返事はそっけない。
「つれないな〜モミジちゃん〜 それがねぇ。その区画で感知できる野良の気配は今ので全部。
 だから区画を移動してもらうことになると思うよ〜」
 その言葉に少し怪訝そうに応じる。
「? これだけ? 予想概算数より大分少ないじゃない?打ち漏らしがあると後々被害が出るわよ?」
「さぁて?近々、その辺の調査依頼がくるかもね〜。とにかく、何度かスキャンしたけど、LvE以上の反応は無いね〜
 それに、人的被害らしきネットワークの欠損も見あたらないし、大丈夫じゃない?」
 変わらず、飄々とした様子で答えてくる。

「いいかげんね。そんなんで、本当に大丈夫なの?」
「ん、まあ多分ね。だから安心して次のブロックにいっちゃってね〜」
通信は切れた──

「…………」
325チリチリおにこ:2012/10/06(土) 18:56:39.85 ID:Yu1XEoRm
 彼女の名は紅葉。偽名だ。ある事件をきっかけに今の仕事をするようになった。元・忍。実際はは傭兵稼業に
近い。基本、今までやっていた事と仕事の内容が大きく変わったわけではないが、少しばかり仕事の方向性
……忍務を選ぶようになった。

 おかげで実入りは悪くなったし、以前所属していた組織ともかなりゴタついた。機密を知ったまま抜けたため、
組織に付け狙われるリスクも犯している。
「気にくわない」
 彼女自身、そんな理由でこのような行動に出る自分が信じられなかった。
「大儀をもって事に当たれ」
 最近、頻繁に彼女の脳裏にちらつくのは師の教えだ。青臭いカビの生えた戯言と捨てたはずの言葉。
そんな前時代的な考えなど馬鹿をみる世界だと認識していたのに。

  ピーッ!
 思考を断ち切るように電子音が響いた。データ転送が終了した事を意味する。これだけのデータを寄越すのに
時間がかかりすぎる……と、相棒に対する彼女の評価は厳しい。
それだけ、以前のエージェントは優秀だったという事なのだろう。彼女を『道具』よばわりし、人を人とも思わぬ
冷血なエージェントではあったが。
 現在の担当者は事前情報のズレなど当たり前。対応も遅く無駄口だけは人一倍。その上苦労の割に実入りは少ない。
……が、まあ。人間扱いされるのは悪い気分ではない。とも、彼女は思いはじめていた。いささか軽薄に過ぎてはいるが。
 今、請け負っている仕事は対症療法的な野良鬼退治だが、多少なりとも人の役に立っているだろうと引き受けた。
 ただ、もっと他にできる事があるのではないかと情報を探っている最中だが、出口は見えてこない。

「さて……次のブロックも……また廃墟ね。ゴミ掃除みたいなものだから仕方ないけど、少しは風にでも
 当たりたいものね。ついてないわ」
 ひとり呟くと移動を開始した。
────────────────────────────────────────────────────
326チリチリおにこ:2012/10/06(土) 19:05:27.65 ID:Yu1XEoRm
という訳で、>>313-316の続きを>>320-325に投下しました。
これで、この物語の主役三人が揃いました。彼女は紅葉。とある作品で鬼子に出会っい、影響を受け、
いままでの生き方を変えようとしている元、忍びです。チリチリ、嘘月鬼、紅葉、この一人とニ鬼が今後どうなってゆくか
どうぞお付き合い下さいませ。

紅葉:(一番下)
http://hinomotooniko.kakurezato.com/gl/mi_p1.html

専門用語解説:式鬼(しき)
 術や契約によって、人ならざる存在を呪縛したり使役したりする存在。実体を持っていないものが多いが、
契約内容によって実体を持たせたりする技術が確立されている。中には術を重ねて人造の式鬼をつくる技術も存在する。
基本、「人に使役される人ならざるもの」が式鬼であり、その制御から外れたものは「野良式鬼」とされる。
大抵、人の制御を外れると人を襲うようになるため、野良式鬼はちょっとした社会問題になっている。
327チリチリおにこ:2012/10/07(日) 23:34:27.30 ID:Kl3Han9f
「チリチリおにこ」その3の話。>>320-325の続き。
 ◇ ◇ ◇
──ここは日の当たらない陰鬱とした不法投棄エリア。異臭が漂い、ありとあらゆるゴミとガラクタとクズの山が積み
重なっている場所だ。捨てられたビルが重なる忘れられた土地だが、そこに不似合いな元気で明るい声が響き渡った。
「えいっ!たあっ!やぁ〜〜!」
「ホレホレ、どうしたどうした!次々いっぞ〜〜〜!」
 少し高いが崩れた建物の一角に拳大の黄色いものが浮かんでいた。嘘月鬼だ。彼の前にはいくつものガラクタが
並べられていた。嘘月鬼がそのガラクタを尻尾で次々に弾き飛ばす。弧を描き、あちこちに跳ね返って複雑な軌道を
描いてガラクタがおにこに向け降りかかった。
 コンッ
  こんっ
   ココンッ!
 それをおにこが薙刀で迎え打つ。

ゴツンッ
 最後の一つを落とし損ね、ガラクタが頭にぶつかった。
「ぃっっっだあ〜〜〜〜いっ!」
おにこは頭を押さえてうずくまった。頭にでっかいタンコブができている。嘘月鬼は頭を押さえてバタバタしている
おにこのそばに降りてきて、容赦なく言葉を浴びせた。

「ほらほら、脇が甘ぇからンな事になンだ。ちゃんと脇締めろ、ちゃんと。
 それに、キレーに斬れてねぇのもあンぞ?得物に頼った戦い方してんじゃねーぞ」

「む"ぅ”〜〜〜〜」
 おにこは頭にできたたんこぶを押さえて恨めしそうに嘘月鬼を見上げた。

二人は……いや、二鬼は、「おにこ」の"ぶじゅつ"の練習に余念がなかった。
 嘘月鬼が厳選してるとはいえ、最近の「狩場」には危険な野良式鬼が時々出没する。この前も嘘月鬼がフォロー
しなければ、おにこは頭を喰いちぎられていた所だ。
 こうなると、狩場を広げるにはそこそこ強くなってもらわないと困るので、時間が余るたびにこうして
手ほどきしていたのだ。嘘月鬼が教えたのは基本的な動作だけだった。が、まるで以前から知っているかのように
みるみる上達していった。今じゃ亡者ども程度では遅れをとったりはしないはずだ。
 もっとも、練習相手が嘘月鬼だけなので限界はあるのだが……
「(う〜〜ん……基本は悪くねぇんだが、やはりちゃんとした練習相手が居ねぇかんな)」

 そこそこの相手なら武器の切れ味だけでも何とか退けることができる。
それでも、廃棄場所や廃墟によってはこの程度じゃ対処できない敵はいくらでもいる。
特に廃棄場所にレアメタルを回収にやってくる式鬼は回収資源の横取りにそなえ、それなりの戦闘力を誇る。
今、未熟なおにこが遭遇するとやっかいだ。
「(まあ、暫くは無難な所で我慢すっかね)」
その見通しが甘かったと痛感するのはそう遠くないことになると知らずに──────
「まあいい、おにこ!食いもン探しに行っぞ!」
いつもの習慣に出かけることにした。
────────────────────────────────────────────────────
328チリチリおにこ:2012/10/07(日) 23:34:57.93 ID:Kl3Han9f
 ◇ ◇ ◇
 ──紅葉はポイントに到着した──
「────おかしいわね。また障気・呪力濃度が薄い……」
おおまかに周囲をスキャンしたが、事前に送られてきた走査情報と「また」情報の食い違いが起こっている。
エリア走査による規定数に僅かな誤差が生じる程度ならよくあることだが、ここまで差異が激しいのも異常だ。
 ……そして、似たような状況は以前にもあった。

「───……鬼子?」
かつて、成り行きから共闘するはめになった鬼の娘。人間よりも人間臭い、お人好しの鬼の眷属。
自身も鬼のくせに紅葉よりも先にエリアに進入し鬼を斬り続けてた。
 彼女とは出会いも別れも唐突だった。だが、鬼子の生き方は紅葉とは正反対で、自分より自分以外を救おうとする
彼女の生き方に少なからず影響を受ける事となった──

「……まさかね」
 バイザーを操作し、さらに情報の収集を試みた。
具体的には広範囲に音波を拾うよう、索敵範囲を広げる。人の多い所やノイズの多い場所では途端に回線が
パンクしてしまう方法だが、こういった静的な場所ではいまだ有効だ。実体を持たない式鬼であっても、
それなりの駆動音……(もしくは生体音)を発しているからだ。
 徐々に音域を広げ走査した結果、聞こえてきたのは何者かが戦っている戦闘音だった─────
────────────────────────────────────────────────────
 ◇ ◇ ◇
「やべぇ!まだ来やがる!おにこ!そこを曲がれ!」
ちっちぇ姿でおにこの横を飛びながらオレっちは隣を走る「あいぼう」に指示を飛ばす。
「ぴゃぁぁっ! はぁっ、はぁ、はぁっ、はぁ……」
おにこが、ちっちぇ口から荒く息をつき、喘ぎながら小さな足で懸命に走る。後ろからはバギョ!グシャッ!と、
不穏な音がすぐそこまで近づいて来てやがる。

 そんな音に追い立てられるように、おにことオレっちは広大な廃棄場のガラクタとガラクタの山ン中を走って
逃げまどっていた。

ちっきしょう。まだ振り切れねぇか。
 ちっとでも隙があれば、おにこを乗っけてズラかれンだが、そんな暇さえありゃしねぇ。今回の狩りは外れ。
それも大外れだ。クソッ よりにもよって、レアメタル回収に使役されていたハグレ式鬼たぁついてねぇ。
 今、オレっち達を追い回しているのは四体、回転するイガグリどもだ。
あいつ等、体当たりでめぼしいガラクタを粉砕した後、中からレアメタルのある部分をカジり取り、体内でより分ける
事で回収するようにできてやがる。

 元々は鬼を呪縛し制御したものが式鬼(しき)だ。手綱が外れりゃ元の人を襲う鬼に戻るのは当たり前ぇだ。
それも、人の都合のいいように改造されてるからよけーにたちが悪りぃ。
 今、オレ達はあいつ等が回転して移動するのを逆手に取って、入り組んだ棒状の物が多い所を選んで逃げている。
少しでも距離を稼いで空に逃げる時間を稼ごうってハラだが……うまくいってねぇ。
 奴らがアチコチにぶつかって思うように進めねぇのは目論見通りだったンだが、思いの外チームワークがうめぇ。
もしや、逃げてるつもりが追い込まれてンじゃねぇか?

背筋を這いあがる不安を押し殺して飛ンでっと、前に狭めェ場所が見えてきた。
「おし!おにこ!そこの狭めぇ所に潜り込め!詰まった奴をぶった斬っちめぇ!」
 オレっちはめぼしい隙間を見つけ、ソコに先導しながらおにこに指示を飛ばした。
「うん!」
 おにこの奴ぁ言われた通りにオレっちの後を追いかけて何ンかの機械とブロックの隙間に潜り込んだ。
 ガガガガガガガッ!
間一髪!すぐ後ろを奴らの一体が通ろうとしてひっかかりやがった。
「ギィッギギィッ!!」
 動きを止めた奴ぁ、でっけぇウニのバケモンだ。なンとか抜け出そうとあがきやがる。
丸っこい球状の胴体は鈍く光る装甲に覆われ、全身に金属の棘が生えている。その棘の隙間に張り付いた口には
ギザギザの歯がズラリと並んでガチガチ鳴らしている。
 おっかねぇ……
「もえちれ!」
 おにこが奴を両断した。ハラの中にため込ンだ、レア・メタルの欠片が飛び散ってキラキラとまき散らされた。
329チリチリおにこ:2012/10/07(日) 23:36:01.18 ID:Kl3Han9f
そしたら仲間をやられて警戒したんだろう。ほかの三匹は動きを止めていた。
と、思ったら今度は棘を引っ込め、クモみてぇな足を生やしてカサカサピョンピョン跳ね始めやがった。
ウニ型の時ほど機動力はねぇが、小回りの利く俊敏さが余計ぇやっかいだ。たちまち障害物を迂回して周囲を
飛び跳ね、襲いかかってきやがった。
 やべぇ。体当たりを食らわなくともあの牙で噛みつかれたらただじゃすまねぇ。
「えい!たあ!」
おにこが武器を振り回すが、ぴょんぴょん跳びまわってなかなか当たんねぇ。うち一体が隙をついて飛びかかった。
「危ねぇ!」
とっさに実体硬化し、サッカーボールサイズになって奴の口に飛び込む事でおにこを庇った。いつものおにこを庇う時ゃ
こうやってフォローすンだが……今回ばかりは相手が悪かった。
 ゴリッ
 石をカジったようないや〜な音がドタマに響いた。
「っってぇぇ!」
        「うっちゃん!」
   斬ッ!
 また、一鬼、ブッた斬られた式鬼がハデに金属片をまき散らしながら塵となって無に還った。
「〜〜〜〜〜〜〜っ!」
痛ぇ、おにこの薙刀がソイツを斬り捨てるのが一瞬遅かったら、オレっちも中枢ごとカジりとられる所だった。
幸いな事に身体をカジり取られるこたぁ避けられたが……
「馬鹿、後ろだ!」
この隙に残りの奴らがおにこに跳びかかった。
────────────────────────────────────────────────────
  ◇ ◇ ◇
 ──おにこ達の窮状を一つ目を模したバイザーが見下ろしていた──
 そのバイザー内、タクティカルディスプレイに表示されている情報を分析しているのは姿は体にぴったりと
フィットした戦闘用スーツと必要最低限、身体を覆う白いプロテクター姿のくのいち。
 紅葉だ。

 戦いは一方的だ。と、いうか逃げまどっている?──
戦闘音のある地点を見渡せるポイント。ガラクタの山に陣取り、彼女はそう判断した。

 紅葉は短距離ならば瞬間移動に等しい速度で移動する体術の持ち主だ。なので彼女の基準だとすぐ目の前で
起こっているも等しい距離だ。が、向こうはこちらに気づいていない。追う側も追われる側も。
 バイザーを操作し、画像を拡大。事前情報と照合。追っている方は駆除対象と表示された野良式鬼。
追われている方は……
「小さな女の子?」
ボロボロの着物をまとい、何か武器らしきもので抵抗しているようだ。
 何とか二体は撃退したようだが、残りの式鬼に囲まれてしまった。このままだと殺されてしまうだろう。

「───チッ、しょうがないわね」
そう呟くと、短距離瞬動歩法『縮地』で飛び出した──
330チリチリおにこ:2012/10/07(日) 23:36:57.03 ID:Kl3Han9f
  ◇ ◇ ◇
───その程度の雑魚、彼女にとってはたやすい獲物でしかなかった。小さな子供に飛びかかろうとしていた鬼は
『呪縛』の呪を込めたクナイを打ち込んで動きを止め、残りの一体は蹴りとばした。
その式鬼は近くのガラクタの山に叩き込まれ動きを止めた。

その隙に『呪縛』され転がった式鬼の口を刀で貫き、止めを刺す。口に突き込まれた刀は式鬼のハラワタと霊的構造を
断ち切り、地面に突き抜けた。式鬼はビクンと身体を痙攣させ、それきり動かなくなった。
 この刀は妖刀。普段の切れ味は普通の刀と同じだが、イノチを食らえばほんの短い間だけ切れ味を増す。
 こいつらも一応は装甲に鎧われているが、イノチを食らった妖刀の敵ではない。
次の一瞬には残りの式鬼は一太刀で装甲ごと屠られた。

  チンッ

 武器を鞘に納める音に、おにこはハッとした。
紅葉の一連の戦いは一瞬で行われ、何がおきたのかさえ把握できてないだろう。大きな丸い瞳をさらに丸くし
パチパチと瞬きを繰り返してた。まだ狐につままれたような表情をしている。無理もない。今までいた脅威が煙のように
消えてしまったのだから。

 紅葉は最初、じっと鬼子を見下ろしていたが、相手の警戒心を解くため、一つ目を模したバイザーを上げ、
顔を見せてかがみこみ、片膝をついて目線を合わせた。

「怪我はない?私が居合わせるなんて、あなたついてるわね」

 何が起こったのか小さな彼女はまだ理解してないようだ。武器を握ったまま、ポカーンと黒く大きな瞳で
見返してきた。そして紅葉は気づいた。ボサボサの髪の間から覗く小さな一対のツノに。
「あなた……まさか────」
と、その時だった。

ビーーーーッ!!
 呪力濃度急上昇の警告音が耳朶を打った。
突如、紅葉の居る地面の両脇から鋭い石の尖塔が突き出し、同時に足元の地面が盛り上がった。
彼女は空を蹴り、宙を跳ね回る事ができる。が、こうも急に態勢を崩していてはとっさに動けない。
 だが姿勢を崩しながらもかろうじて抜刀し、地面に突き立てた。しかし、それも手応えがなかった。そればかりか、
次の瞬間、足元が崩れ落ちた。

「ふぇっ?!」
次の瞬間、今度はおにこが驚いた声をあげた。紅葉の両脇から突如出現した石の尖塔のようなものは消え失せ、今度は
おにこの両脇から突き出ていた。
が、先ほどとは違い、今度は持ち上がったまま、地面の下にいたモノが顔を見せた。岩のような表面、間のヌケた顔を
連想する3つの穴。実体・巨大化した嘘月鬼だ。

「しっかりつかまってろ!逃げンぞ!」
その声にというより、盛り上がった足下にあわてて、おにこは両脇のツノにつかまった。
手に持っていた武器は落下したが、嘘月鬼の尻尾が器用にキャッチし、そのまま上空へ遁走した。

 紅葉が姿勢を立て直す頃、彼らは手の届かない高さまで上昇していた。
 「・・・・・」
 紅葉は無言で見送った。見事な奇襲だった。本来は警告音がなくとも、鋭敏な彼女の感覚なら事前に察知できたはず。
それを察っせられなかった。そして虚を突くため、まず彼女の足元で実体化することで隙を作り、逃走につなげたのだ。
文字通り見事に足元を掬われた。

 ピッ
 「本部…………応答して」
顛末を報告するため、本部を呼び出した──
────────────────────────────────────────────────────
331チリチリおにこ:2012/10/07(日) 23:37:38.18 ID:Kl3Han9f
 ◇ ◇ ◇
 あっぶねぇぇぇぇええ〜〜〜〜!
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!

 オレっちは巨大化・実体化しておにこを頭に乗せ、飛びながらビビリまくっていた。
 今の奴ぁ掃除人だ。下手すりゃおにこ共々討ちとられっちまってた。隙を見て逃げ出せたのは暁光以外の
なにもンでもねぇ。掃除人はオレっちみてぇなハグレもんを始末するのを生業にしてっと聞く。
 そりゃ、オレっち達は企業の所有する式鬼にまで手を出しちゃいねぇが、だからといって見逃して貰えるたぁ
考えづれぇ。再利用できる資源をちびっととはいえ、拝借している身だしな。

つか、何であンなスゴ腕の忍がこンな仕事請け負ってンだ。おかしーだろ?!
 ちょい前聞いた話では政府が本格参入し、そンやり方は鬼を使役して鬼を討たせていると聞いたがまたぞろ制度が
入れ替わっちまったのか?ニンゲンはやたらコロコロとエラいさんが入れ替わっちまうし言うことも変わる。
嘘吐きのオレっちさえついてけねーよ。

 何ンにせよこのまま直でねぐらにに戻ンのは色々ヤベぇ。追跡されたらコトだ。遠回りすっ事にすンか。
近くの式鬼列車に紛れ込ンで街中を通ればさすがに追跡はできねェだろ。
他の掃除人に鉢合わせする危険がない訳じゃねンだが、さっきの奴程じゃねぇ。煙に撒くのは難しくねぇ……ハズだ。

「うっちゃん?」
 頭ン上からモノ問いたそーな声がする。
おにこはさっきの逃亡がどれだけヤバかったンか分かってねンだろうな。今でもキョトンとしてやがる。ちっと、
色々説明すンのがメンドいな。こりゃ。
「あー……んとな、おにこ。街へ行っぞ」
途端、劇的な反応が返ってきた。
「街?!キラキラ?」
おにこが掴まってるツノごしにも興奮が伝わってくる。パタパタと落ち着かなげに足をバタつかせはじめた。
「あぁ、あのキラキラだ」
 狩り場から狩り場へ移動する時は大抵夜だった。だからおにこはキラキラ光る街の灯りはずっと興味を示していたが、
いくつもの理由から街に行ったことはなかった。いってみたいとおにこがダダをこねる度、あることないこと
吹き込んでビビらせまくってたかんな。実際、街の常識とか知ンねぇおにこじゃ、危なすぎるし、早すぎんだろ。
 それに、アリャぁ、そんないいもんじゃねぇ……
おにこにゃまだ見せたくねぇキタネぇもんがむき出しでゴロゴロしてやがっかンなぁ……
……だがまあ、奴の危険度に比べりゃどってこたぁねぇ。

──って?!
 俺ゃぁ、何考えてやがんだ。このガキぁ、オレ様の都合のいい飯のタネ。色々仕込ンだのだって、こいツしか
選択肢がなかっただけの話だ。それ以上の意味なンざねぇ。
 ま、オレっちがおにこの髪に隠れて耳元でいろいろ指示出しゃぁ、そうそうヘタ打ったりりゃしねェだろ。
……頭ン上で足をバタつかせて喜ンでる様子はちっとばかし不安になるが。

「おっし、絶ってーオレっちの言うこと聞いて貰うかんな。それができねーってンなら行くのぁナシだ。
 約束できっか?」
「うん!やくそくー、やくそくー!」
ちっ、調子狂うゼ。そんな訳でオレっちらは街に向かった訳だが──
───結論から言やぁ、メッチャ疲れた。おにこたぁ、早々にはぐれるわ、なンか帰ってきてから街の奴らにゃ
妙なこと吹き込まれてたわ、こっちゃこっちで色々散々だったしな。だが、ま、そりゃ今語るこっちゃねぇよ──
────────────────────────────────────────────────────
332チリチリおにこ:2012/10/07(日) 23:42:35.94 ID:Kl3Han9f
という訳で「チリチリおにこ」第3話 >>327-331を投下しましたっ。

【専門用語解説】
短距離瞬動歩法:縮地
 忍者特有の歩法。ごく短距離を瞬間的に移動し、敵を幻惑・死角からの攻撃を可能としする特殊移動術。
 体内の気を練り上げ、瞬間的に爆発的な移動力を発揮する。なお、縮地の語源は仙術が由来。
333チリチリおにこ:2012/10/08(月) 19:04:16.91 ID:1NdQsQik
 >>327-331の続きを投下します。
  ◇ ◇ ◇
 本来なら誰もいないはずの廃ビル群。立ち入り禁止区画にあるビルの屋上。夕方。誰もいないはずのそこに
人影があった。真紅のボディスーツに一つ目を模したバイザーのヘルメット、白いプロテクターにたなびくマフラー。
 紅葉だ。
 といっても、忍務ではない。人気のない上、風の流れもいいこの場所は戦闘や訓練で凝り固まった神経をほぐし、
休ませるのに最適なリラックススポットだった。ここに巣くっていた式鬼はとうの昔に排除されている。
 日々、刺客に狙われている身とはいえ、ここなら不穏な動きにも、早々に気づき対処できる。

 そんな訳で、程良い風に身を晒し、夕日に照らされた無人の街を……誰も住んでいないビル群を眺めていた。
が、しかしそんな休息も通信が入り終わってしまった。

『も〜みっじちゃーん!新ったらしいお仕事だよ〜ん!』
軽薄な声が通信越しに届き、折角の休息がぶち壊された。

「あら、忍務失敗の報告をしたのにその事はノータッチ?」
少し皮肉げに返事を返す。
 今まで紅葉の居た世界では忍務失敗は粛正……つまり命で購わされる事も珍しくなかった。

『ハハッ、まじめだな〜紅葉ちゃんはー。甚大な損害があったならともかく、たかだかちっぽけな式鬼。
 しかも害があるかもわかんないヤツを一・二匹逃した位でハラキリさせたりしないって。ただちょ〜〜っと
 ペナルティがあるだけさ』
「ペナルティ?」
変わらず軽薄なまま、通信の向こうの男は解説を続ける。
『そそそ。請け負って貰う仕事のランクが下がっちゃうから、実質、実入りが悪くなっちゃうのさ〜
 といっても、紅葉ちゃんはとっくにエース級のお仕事をこなしてきたから巻き返すのは難しくないと思うけど〜』

「当然よ。で、次の忍務は?」
 お咎めがない事に対してホッとする様子もなく、次があるならと次のスケジュールを確認する。

『おいらとのデーt』
「今まで世話になったわね。サヨウナラ」
  プッ
通信を切断した。
 そして、再び風に当たりながら夕日に照らされた街並みを眺めていると────
        ピピッ
 すぐに通信を告げる音が響いた。

『ちょ、ちょ、ちょっと!冗談!じょーだんだって!つーか、そこまで嫌う?あんまりじゃね?冗談だとしても
 ちょっとショックだぞ!』
 顔を見たこともないのに通信の向こうで涙目になって抗議している様がまざまざと思い起こせる声だ。

「あら、ごめんなさいね?でもあまり軽薄がすぎると本気で考えさせて貰うわよ?」
紅葉はしれっと返す。
 休憩を終わらせたお返しにちょっとからかっているだけなのだが、多少は効いたようだ。少しだけまじめな態度で
応じてきた。

『ああもぅ、かなわないなあ。了ー解っと。えーと、次は多分キツい戦闘はないかな。巡回忍務だよん』
「それが、さっき言ったペナルティ?」

 大抵、撃退した式鬼の強度・種類によって、追加報酬が決められている。
だからより強い式鬼を撃退すればそれだけ実入りがよくなる。逆に戦闘がないとすると、追加報酬が期待できない。
巡回ということは戦闘の可能性はあまりないという事になる。

『まーね。一応、政府の管轄を引き継いだ仕事だから、基本報酬は高いけどね。巡回先のことだけど、ここ暫くは
 浄霊する必要はなくなってる。定期的に亡者がわく所だったらしいね。だから今回は障気を祓うだけでいいってさ。
 その障気すらわいているか怪しいんだけどね』
少し、ひっかかる。
「定期的にわく亡者が今はわかない?逆におかしくない?」
334チリチリおにこ:2012/10/08(月) 19:04:59.17 ID:1NdQsQik
『ま、ね。政府の連中は取り締まりが効果を発揮して死体の不法投棄が減ったせいだろうって見解だけど、
 日和見すぎるよねぇ』
「────・・・・・…………」

 死体は然るべき処置をせず遺棄すれば処罰の対象となる。逆に言えば然るべき処置さえすれば葬る必要はないのだ。
その場合、普通はリサイクル業者に出さなければならない事になっている。最低でも悪鬼や悪霊に憑依されるのを
防ぐために聖別された聖水や仏舎利の粉末を注入しておく義務がある。
 これは死後、悪霊に憑かれるのを嫌う人が生前、自身に自前に施しておく場合もあるらしい。
 が、その実、貧困層の人々はその手順さえ踏めずに投棄せざるを得ない現状が問題化している。

「いいわ。忍務データを頂戴。その場所の障気を祓うだけでいいのね?」
 ヘッドマウントディスプレイを操作し、送られてきた忍務データを確認しながら、紅葉は移動を開始した。

  ◇ ◇ ◇
 ───到着した巡回先は例によって不法廃棄場だった。今まで巡ってきた所と大して変わらない場所。
到着したのは朝方にもかかわらず、光はほとんど差し込まない。廃墟ビルが立ち並ぶ常にジメッとして薄暗い所だ。
 だが、彼女は違和感を感じていた。確かに今までと違う。最初、何がおかしいのかわからなかった。
 つもり積もった不要品、ガラクタ、汚物、ボロ布、紙、樹脂、機械、すえた臭い、腐敗臭……
 その中を歩いて探索するうち、妙なことに気がついた。……歩きやすい。獣道のようだが、小道ができている。

 本来、誰もいない場所なら、道などできるはずがない。不法に廃棄物を投棄されている場所なのだ。
紅葉はともかく普通の人間にはたどり着けない場所だ。辿りつけるとしたら空を飛べる何か。
しかし、飛べる者に道は必要ない。仮に、ここへ到達できるものが居るとして、道ができるほど頻繁に来る程の
意味が考えつかない。廃棄物から再生資源を回収するなら、それこそ式鬼にでもやらせればいいのだ。
それとも、何をするにも不便そうなこの僻地を拠点にする物好きが居るのだろうか?

「───っ、」
 ふと、あることに気付くのと、それが目に止まったのは同時だった。
「? ほこら……か?」
それは一見、無秩序にガラクタを積み上げただけにみえる。だが、遠目に見るとそれは廃材を組み上げて立体的に
構成されていた。しかも、入り口らしき穴の前にも粗末な鳥居のようなものがガラクタを組み、設えてある。
もっとも、仮にこのガラクタの山がほこらだったとして、中にできるスペースは子供一人が寝そべる程度の広さしか
ないだろう。紅葉はもう一度、バイザーを引き下ろし、周囲とこの祠(?)をスキャンした。

 ──測定されたのは相変わらず低濃度の障気と、僅かながら上昇した呪力濃度。
 ちなみに、呪力濃度はどれだけのレベルの呪術が行使されているかの基準になる。また、障気濃度は呪術と
関係ない魔物や悪霊が吐く陰の気だ。それぞれ、濃度で大体の脅威を推測できる。どちらも大きければ大きいほど、
仕掛けや敵の脅威が増すと思っていい。この数値だと、せいぜい小さな魔物か式鬼しかいないことになる。

 ただ、奇妙な胸騒ぎを彼女は感じていた。こういう時は機械が当てにならない事が多いものだ。
油断せず、周囲に気を配りながら謎の祠らしきもを調べてみようとゆっくり、慎重に近づいていった。
 と、当の祠の中から何かが動いている音が聞こえてきた。
見ていると、何か黒いものがゴソゴソと這いだしてきて実に平和そうに「くあ〜〜〜」と欠伸をした。
────────────────────────────────────────────────────
335チリチリおにこ:2012/10/08(月) 19:05:55.56 ID:1NdQsQik
  ◇ ◇ ◇
 やっべぇぇええええええええええ!
キッチリまいたはずだってぇのに、あンの掃除人、どうやってここを嗅ぎつけやがった?!

くそっクソっくそっ冗談じゃねぇぞ! こんなクソ貯めみてぇな所で朽ち果ててたまるかってぇんだ!
 今、あンのくのいちはアチコチをスキャンしながら周囲を探ってやがる。オレっちはある程度センサーを
誤魔化せっし、おにこの奴も大した妖力や鬼力を持ってるわけじゃねぇ。俺達が討伐対象になンのかは分かンねぇが、
判断は掃除人次第だろう。つってもンなあやふやなもンをアテにすンのもヤベぇ。

 くそっ、よりによってオレっちがメシ探しに出回ってる時に来るたぁ間が悪りぃ。
最近はあらかた喰い尽くしてしまって、メボシい障気なンざぁ近所じゃ滅多にお目にかかれねぇってのに。
つっても、最近じゃおにこの奴が寝てン間のヒマ潰しみてぇなもンだったが。

……このまま素通りしてくれりゃァ問題ねンだが……あンま期待できねェ。
今ぁこーやって、地面に潜りながら、こっそり近づいて様子をうかがうしかねぇな……
────────────────────────────────────────────────────
 ◇ ◇ ◇
 ──おにこは珍しく一人で目を覚ました。寝ぼけた意識のまま、ガラクタを組み上げて作った今にも崩れ落ちそうな
天井を見上げ、コシコシと目をこすった。
いつもなら嘘月鬼があの長い尻尾でペシペシと頬を叩いて起こすのだが、今日はどこにいったのか見当たらない。
 とはいえ、お腹の空き具合から朝というヤツなんだろう。と、ボンヤリとおにこは思った。
ゴソゴソとねぐらから這いだしていつものように「くあ〜〜〜」っとあくびをした。
 そして、おにこはふと、いつだったか助けてくれた人が近くに立っていることに気が付いた。
────────────────────────────────────────────────────
  ◇ ◇ ◇
 ──紅葉は思いも寄らぬ再会に当惑していた──
 ──彼女は紅葉の存在に気づくと何の邪気も感じさせない笑顔でパタパタと駆け寄ってきていた。
  ジャリッ
 紅葉は思わず身構え、半歩下がった。子供を使った残酷な爆弾テロは、今の世でも有効な不意打ちだ。
神経質だといわれても用心しすぎる事はない。たった一回の不注意で死ぬよりはマシだ。
 とはいえ、今のところセンサーには危険物の反応はない。
それでも気がかりなのはあの時、この娘を拐ったのか共に逃亡したのか分からないが一匹、式鬼が一緒に居たのを
思い出したからだ。何らかの形でこの少女を利用しているかもしれない。

 当の彼女はこちらの反応に不思議そうな顔をして立ち止まった。ピリピリした空気を感じとったんだろう。
その場で立ち止まり、両手に持っている薙刀を握ったまま、好奇心剥き出しな目で様子を窺ってきた。

 こちらもバイザーを少しだけ上げ、彼女を観察した。女の子だ。洗えば綺麗であろう髪はボサボサで、
後ろでおおざっぱに紐でまとめてある。身に纏っているボロボロの着物は真っ黒で元の模様は分からない。
 さっき祠(?)をスキャンした時は不審な反応はなかったが、彼女には小さなツノが2本、頭から生えている。
これが先天的な物なのか、アクセサリーなのか、鬼なのかそれとも鬼憑きなのかは現段階では分からない。
さっき笑顔で駆け寄ってきたときは八重歯──牙と言った方が適切か──がある事も確認した。

 どのくらいそうやって互いに観察していただろうか。やがて、彼女のお腹から『くぅ』と音がした。
────────────────────────────────────────────────────
  ◇ ◇ ◇
 ──くぅ──
お腹が鳴った。
 そういえば、目を覚ましたのはお腹が空いたからだった。おにこは目の前の興味深い人から身体の訴える空腹に
意識を向けた。ついでに考える。この人もお腹が空いているんだろうか?そうに違いないと思った。
自分よりずっと強いのにおにこに対する警戒の強さはまるで怪我をした小動物のようだった。
おにこよりもずっと強いのに変だと無邪気に考えた。

 そうだ。ならゴハンを分けてあげよう。本当は残りが少なくなってきてはいるけど、この前助けてもらったし、
お腹が空くのは本当にツライし、怒りっぽくなる。それはとてもいい思いつきだ。と、おにこは考えた。
────────────────────────────────────────────────────
336チリチリおにこ:2012/10/08(月) 19:06:47.90 ID:1NdQsQik
  ◇ ◇ ◇
 紅葉は怪訝な顔をして彼女(おにこ)を見送った。突然トテトテと走り出した様は逃げ出したという感じではない。
鳴いたお腹を押さえた後、眉間にシワを寄せ、考え込んだと思ったら次の瞬間、妙案でも思いついたのかパッと
顔を輝かせ走っていった。コロコロと表情がよく変わる娘だ。
 その先には何かの棚が複数設置してあった。先ほどスキャンした際には大ざっぱに『危険物』と表示されたものが
固まって表示されたものもあった。

 が、彼女が走り寄ったのはその棚より手前だった。
よく見れば、どの棚にも雨よけのつもりかボロボロの掛け布がしてあって、なにがあるのか分からない。
 あまりにちぐはぐかつバラバラで半ばガラクタに埋もれていたので、それらが意図的に分けられていたとは気が
つかなかった。

 やがて、両腕に何かを抱えながらトテトテと彼女は戻ってきた。どうやら、それを取りに行っていたらしい。
 そして、さっきの距離まで近づくと、何か投げて寄越した。紅葉はそれを思わずキャッチした。
先ほどのスキャンで危険物ではないことも分かっているし、センサーも警告を発しなかった。
そして『勘』も警鐘を鳴らさなかった。

 彼女は紅葉に『ソレ』を放り投げた後、適当な場所に腰を下ろし自分の分にとりかかった。
さっきの「棚」は彼女にとっては食料庫だったらしい。
一心不乱に「ソレ」を食べ始めた。それを見て、紅葉は自分に渡された「ソレ」をさりげなく見た。
ソレは時間が経過して変色し、茶褐色になっていたが、人体の一部───つまり、人間の屍体だった。

 ピチャピチャ……ハグムシャ…クチャクチャクチャ……

 「にく」を租借する音が耳に届いた。紅葉は思わず彼女に目を向ける。
彼女が顔を伏せて、一心に貪っているのも屍──人の肘から先の部分だった。前髪が垂れているせいで表情は見えない。
だが、彼女が屍肉に牙を突き立てるたびにダラリと垂れ下がった茶褐色の指先がユラユラと揺れている。

(食屍鬼!)
 紅葉は半ば戦慄とともにそう判断を下した。人の屍肉を漁り業を蓄積する事で濃い障気を吐き出すと言われている鬼。
 また、その不浄の魂は肉体が朽ち果てる頃には人蟲(じんこ)となり、深刻で様々な"さわり"を引き起こす。
その損害は意図的に引き起こされる『呪い』に匹敵する被害をまき散らすといわれている。
 先程この娘の祠……いや、寝ぐらを見つけた時に気がついた事……不法に投棄されている屍体の数が不自然な程
少なかった。その事にも納得がいった。ここに食糧として備蓄されていたのだ。
よく見ると例の寝ぐらにも幾つか人骨が埋め込まれ、支柱として、または壁として利用されていた。
 食屍鬼は亡者の中でも特に最優先討伐対象だ。その理由は屍肉を食らい、生者を襲うからだけではなく、浄化が困難で
濃密な障気を吐き出す事にもある。

 カチャリ

 屍肉を放り捨て、ゆっくりと抜刀した。光の届かない空間に濡れたような刃の輝きがヌラリと光った。
ふと、何か感じたのか彼女が怪訝そうに顔を上げた。口の周りは赤茶色の粘液でまみれ、黒いつぶらな瞳が
不思議そうにこちらを見上げていた。

 次の瞬間、紅葉は彼女の首に刃を打ち落とした。
337チリチリおにこ:2012/10/08(月) 19:12:24.94 ID:1NdQsQik
という訳で「チリチリおにこ」第3話 >>333-336を投下しましたっ。

【専門用語解説】
リサイクル業者:
 この時代の資源は基本、リサイクルに頼っている為,高レベルで資源のリサイクル率が高い。
それは人体であっても例外ではなく、『死後、荼毘に付される』事ができるのは、一部特権階級だけである。
大抵の場合、臓器等はリサイクル業者にまわされ、様々な用途の「予備の臓器」としてストックされる。
あまりにも状態の悪い臓器の場合、薬物で処理された後、式鬼を憑依させて人工臓器として使役されることもあるという。
338チリチリおにこ:2012/10/08(月) 19:13:57.24 ID:1NdQsQik
>>337
訂正
【誤】 第3話

【正】 第4話
339創る名無しに見る名無し:2012/10/09(火) 08:33:32.91 ID:4lX+CPgn
乙で〜す。
高度なリサイクル社会で食糧になる程の食べ残しなんか不法投棄するか?しかも対鬼の罠をしかける意味なんて無いんじゃ?
と思いきやこういう展開とは…恐れ入ります。
340チリチリおにこ:2012/10/09(火) 19:42:30.69 ID:WundtOnp
>>333-336の続きを投下しマス。

────────────────────────────────────────────────────
  ◇ ◇ ◇
──その少し前──
 くっそっ ヤッパ隙がねェ!
オレっちはゆっくりと地面の下を移動しながら、クノイチのネーちゃんの動きを探っていた。向こうもプロだ。
この前と同じテが通用するたァ思えねェ。今度は不用意に動くだけで察知される可能性が高けェ。何よりもあの得物。
 ありゃヤベェ。ありゃあ命を吸った分だけ切れ味を増す妖刀だと調べがついてらぁ。この前、街にいった時に調べた。

 だとすりゃ、オレっちの石の身体でも下手すりゃズッパリとイっちまう。ヘタにこの前のテを使おうものなら
まず最初におにこをブッた斬った後、返す刀でオレっちも真っ二つだろーな。おっかねェ。

 いつもの姿は小さくてもボンヤリ光る姿だから、目立ちすぎる。うかうか覗き見ることもできゃしねェ。ある程度は
気配を読めンから、地面からウッカリはみ出さなけりゃァ、見つかりゃしねェだろが。
……だが、問題はおにこの奴だ。あンだけモノ覚えがイイってのに、あのクノイチに関してだきゃ、いっくら
危険性を説いても理解しやがンねェ。
 それどころか、どっかアコガレてるフシすらありやがる。もう合うこたぁねぇだろと高をくくっていたのがマズかった。
もっと口を酸っぱくしてでも言い聞かせておくンだったぜ。

 オレっちがノコノコ顔を出しても退治されて終わりだろうし、どうしたもンかね。……そうつらつら考えながら
地面に潜ってゆっくりと移動する。頭上ではおにこがゴソゴソ這い出す音が聞こえてきた。
 ああ、やっぱダメだわ。ゴミを踏みしめる音がもう一つ、おにこの方に向かっちまっている。
確実に見つかってらぁな。

 こっから、マジやべェ。察知される危険もあるが、オレっちは必死で頭上の気配を探った。クノイチの気配が殺気に
変わらねェかと集中した。もっとも、相手は暗殺にも長けた忍だ。気配を絶って標的の息の根を止められるよーな
相手にどンくれェ役に立つか分かったもンじゃねぇが。

 こっから奴ぁどう動く?おにこはどう動く?
嘘をつくにゃぁ、相手の事、てめぇの事、色々な事を考慮してこそ効果的な嘘が吐ける。考えろ、考えろ考えろ……

 ひとまずは、まだおにこはブった斬られていねェってこたぁ、問答無用で斬るつもりでないっつーことだきゃぁ、
分かる。問題はおにこだ。この時間に動き出したってこたぁ、「めし」だろう……
そうなったら、相手はどう考える?どう動く?
……ダメだ。ロクな結果が思い浮かばねェ……なら、その際、
オレっちはどうすべきか……クソっ!ある程度までならなンとかできっけど、その後はぶっちゃけアドリブ任せに
しかなンねぇ!だが、いつまでも地面に潜っている訳にゃいかねェし、
 あのクノイチの動きは電光石火だ。間近に居てもおにこへの攻撃を防げンのは一撃が限度だろう。その間に打てる
手なンざたかが知れてる。オレっちはおにこが向かう前に『ごはんの棚』へと先回りした。
おそらく、勝負に出るのはそっからが一番近けぇだろう。
 それが幸いした──
────────────────────────────────────────────────────
341チリチリおにこ:2012/10/09(火) 19:43:18.88 ID:WundtOnp
  ◇ ◇ ◇
 ──刀から伝わってきたのは2種類の感触だった。
一つは弾力のない屍肉と骨を断ち切った感触。もう一つは堅い石に刃が食い込む感触だった。

「ぐっ、ま、まて!先祖がえりだっ」
刃を受け止めたのは月の表面を連想するサッカーボール大の丸い岩石だった。それが喋った。
 唐突に顕れた式鬼に動揺する事なく、紅葉は相手が言葉を終える前に納刀し、蹴りを放った。
 蹴りの威力にすっとばされその式鬼は手近なゴミの山にガラクタをまき散らしながら吹っ飛んだ。
その姿はやはり大きな丸い岩石の塊にしか見えなかった。
表面に間の抜けた顔のように見えるくぼみが三つついている。

「うっちゃん!?」
唐突に聞こえたなじみのある声と突然の展開に彼女は目を白黒させた。一体、何が起こったのかわかっていないだろう。

──やはり出たか。出てくると予想はしていたものの、まさか、さっきの屍肉に憑いていたとは思わなかった。
 紅葉は今度の不意打ちに充分用心していたものの、やはり邪魔された。蹴りとばしたものの、どうしたものかと
思案する。
あの式鬼はこう叫んでいた「先祖がえりだ──」と。だとしたら、問いたださなければならない事が色々ある。
だが、先の2度に渡る奇襲からして油断していい相手ではないようだ──紅葉はそう判断した。
 先程蹴りとばした式鬼はガラクタの山に突っ込んだ後、何とか動こうと四苦八苦している。

 紅葉は式鬼から目を離さないよう油断せず、刀に手をかけ、ゆっくり近づいていった。すると、その前に鬼の女の子が
立ちふさがった。先程の様子とは打って変わって、紅葉をキッと睨みつけている。

「そこをどきなさい」
 紅葉はわざと威嚇するよう、納めた刀をゆっくりと抜き放ち、高圧的に告げた。
それでも彼女は動かない。プルプルと首を横にふり、絶対動かないとばかりに紅葉を睨み付けた。
そして背後に式鬼を庇い、両手を広げてと紅葉をおせんぼのポーズで阻む。
「ま、まて!」
背後の式鬼が焦った声で制止するが、まだショックで動けないようだ。
怖いだろうに彼女はぐっとこらえている。それでも真っ直ぐな瞳を紅葉からはなさない。やがて、おにこの黒かった瞳が
紅く燃え上がっていた。
そして不可解な事に真っ黒だった着物も紅色に染まり、あちこちから真紅の葉が舞い散っていた。
その現象に彼女自身は気が付いているのかいないのか。だが紅葉はそういった妙な現象にも反応を示さない、揺らがない。
「そう」
と、紅葉が冷たい声で呟き、刀を一閃させた──

 ──永遠かと思える一瞬が経過した。
 が、紅葉の刃はおにこの首に一筋の紅の線を刻んだだけで止まっていた。少しだけ裂かれた皮膚から一筋、
血が流れ出た。

「いい度胸ね。いいでしょう。詳しい話、聞かせなさい」
紅葉は刀をチン、と納めた。
────────────────────────────────────────────────────
  ◇ ◇ ◇
「───先祖がえり、といったわね?」
「ああ」
「原型データは?」
「ある……はずだが、さてな。どうかね?確認のしようがねェな。何せ、こっちゃ生き延びるのに手一杯だった
 かンなぁ。他に生き延びた家の連中に期待するっきゃねェな」
 とりあえず、第一段階はクリアした。くっそぉ、頭がガンガン響きやがらぁ。刀でドタマをカチ割られかけた上、
キョーレツな蹴りを食らって、できたヒビがさらに広がっちまった。

ありゃその気ンなったらミサイルでも蹴り飛ばせンじゃねェのか?このねーちゃん。

 こんな状態で生き死に関わる交渉せにゃなンねェたぁな。
一応、互いにいつでも動けるように警戒しちゃぁいるが、いざ戦いになったら、万に一つも勝ち目はねェ。
どうしたもンかね。
342チリチリおにこ:2012/10/09(火) 19:44:06.66 ID:WundtOnp
 今、俺達ゃ地面が見える広場みてぇな所であのオッカネーねーちゃんと対峙している。オレっちはデカい
岩石の姿で、地面から数センチ程浮き、そのオレっちの後ろに隠れるようにしておにこがあのねーちゃんを
睨んでいた。その様子はまるで威嚇する子猫みてぇだ。やぁっと、掃除人に対する危険を認識したみてぇだが……
 なんだ。まるでいじめっ子に出会った子猫みてぇな様子はまぁだちぃっとばかし不安が残る。
それでも警戒しているようだから、マシになったっちゃぁ、なったんだが──

「話にならないわね。それが本当だとして、原型のゲノムデータが無ければ、結局あなたたちは駆除対象でしかないわよ?」
「まぁ待てって。不確実だが、データが残っている可能性はあンだから、今急いでヤっちまう訳にもいかねンだろ?」

 原型のゲノムデータたぁ、おにこの『人間の頃のDNAデータ』の事だ。もちろん、そンなモンは存在しやしねェ。

 筋書きはこうだ。おにこは、元々はやンごとなきイイ所のお姫様で、お家騒動で家がぶっツブれたンで
逃げ延びてきた。生き延びる為にDNAをいじって今は鬼として生きちゃいるが、お家再興の際にはまた人間に
戻ッから、今のおにこでも殺せば殺人に該当すンぞ……ってぇ筋書きだ。

 一応、今の世の中は金に糸目をつけねンなら、DNAをいじって、理想の身体を手に入れる事ができンだが、
困ったことに、遺伝子工学はオカルトな分野にまで広がっちまったらしく、やり方によっちゃ、おにこみてぇな妖怪に
なっちまう方法まで発見されちまった。
そンで、そのDNAが意図的に、もしくはなンらかの拍子で表出して妖怪になっちまうのが『先祖がえり』という。
あの一瞬でこのねーちゃんを止めるにはこの言葉が適当っちゃ適当だったンだが、さて、この後、話をどうつなげンかな。
 本来、DNAを操作する場合、一時的にせよ人間から離れる者は本来の人間のDNAを政府機関に登録しておく
義務が生じる。そうしねぇと、式鬼との違いが分からず、人権が消滅──つまり、人間扱いされなくなるってぇ話だ。
ぶっちゃけ、法律上じゃ、一時的にとはいえ死ンじまうンだ。

 だから、お家騒動でケされる場合、当然この『原型ゲノムデータ』とやらも抹殺対象だ。消スのに成功すれば、
相手を堂々と「制御されてない式鬼」として直接的に抹殺できンだからな。
オレっちも何度かコッソリ運ぶよう、いいつかったことがある。
それに今の時代、病気の治療なンかで全くDNAをいじンねぇ奴なンざあンまいねぇ。それだけに、再登録できるように
バックアップをとっておくってぇのがじょーしきだ。特に成長途中の子供ってなあ、定期的にとっておかねぇと色々
ややこしくなる。それがお姫様みてェな立場の子供ならなおさらだ。存在しねェほうがおかしい。

……問題はこのねーちゃんをどうやって誤魔化すかなンだが……しょーがねぇ。アレを見せっか。
「あー……そーだな。オレっちの仕えていた家は五浄家だ。なンなら証拠も見せれンぞ」
「ヘェ……」
紅葉は疑わしそうな眼差しで気のない返事を返した。

「なあ、おにこ、『ごはンの棚』ン所に壷を埋めたのは覚えてンよな?ちっと掘り起こして来てくンねェかな?
 くれぐれも割っちまわねェよう、気ぃつけてな」
おにこはコクリと頷くと、こっちを気にして何度か振り返りつつも、テテテと駆けていった。
「随分と信頼されてるのね。アナタ」
ポツリと呟きが聞こえた。
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343チリチリおにこ:2012/10/09(火) 19:44:49.75 ID:WundtOnp
  ◇ ◇ ◇
 ──紅葉は注意深く目の前の式鬼を観察している──
「へへ、そりゃァおめェ。あいつのお目付け役だかんな」
そう式鬼は答えた。どこか得意げだ。紅葉はそんな式鬼に油断なく身構えていた。
 紅葉は一つ目を模したバイザーを視界の半分まで下ろし、センサー表示と肉眼の両方で警戒を続けていた。
どうやらこの式鬼はセンサーに対しステルス性を発揮するらしい。実体化しているにもかかわらず、通常のカメラには
ボンヤリとしか写らない。式鬼専用センサーであっても同様に反応が薄い。紅葉は嘘月鬼がどんな式鬼か詳しくは
知らない。嘘月鬼と知っていたら、最初から耳を貸さなかったろう。
 また、さっき用事をいいつけられた鬼の子供、おにこに対しても妙な動きがないよう、センサーのマップを表示し、
用心を怠らなかった。

警戒を解かず、紅葉は軽い牽制のつもりで式鬼を責めてみる。
「それなのに信頼を寄せてくれるお姫様にゴミあさりや屍肉食いをさせているのね?
 屍肉を食らうことで蓄積する『業』は人間に戻ったときに『障り』として跳ね返ってくるわよ?」

「し、仕方ねーだロ?!そうせにゃ飢え死にしちまうんだ。選択の余地なんてねェよ!後の事ヨカ、今、確実に
 生き延びる方を選ぶっきゃネぇだろ?」

 今の所、話におかしな部分はない。が、同時にその言葉の全てが裏付けのない言葉でしかない。
 紅葉はほぼ直感でこの式鬼の言葉が嘘だと感じていた。誰も他にいないこの場所。この鬼たちを問答無用で滅して
記録を提出してしまえば多少は報酬の「足し」になるだろう。面倒なら放っておいてもなんの不都合もない。

 仕事は大抵、追加報酬の請求は申告式だ。だからその記録データを提出しなければ、この鬼達が大規模な災害を
人にもたらしたりしないかぎり、大した問題にならないだろう。仮にそのまま放っておいても、せいぜい討ちもらしの
ペナルティで仕事のランクが多少落ちる程度だ。
 が、それなら何故、この茶番劇につきあっているんだろう?と、紅葉は自分自身で不思議に思っていた。
344チリチリおにこ:2012/10/09(火) 19:45:38.29 ID:WundtOnp
 ◇ ◇ ◇
 ──おにこが戻ってきた。その途端、センサーの一つが激しく反応し警告音を発した。手に小さな壷を持ってる。

「おっと、あらかじめいっておくが、あンの中には凝縮された『障気』が入ってる。
 間違っても浄化したりしねェでくれよ?あと、その刀以外でナイフとか持ってたら貸してくんねぇか?」
紅葉は警戒を解かず、「かくし」からクナイを一本取り出し、式鬼の方へ放り投げた。

「おっ、へへ、ワリぃな」
そう答えて、細長い尻尾で器用にキャッチした。次におにこへもってきたものを地面に置いて離れるよう、
指示を出す。地面に置かれたのは油紙で封をされた、何の変哲もない小さな壷。だが、センサーの走査によって
高濃度の障気が内包されていることが分かってる。

式鬼は尻尾のクナイで器用に封を切り、蓋を開けた。じわり、と、黒く濁った障気がにじみ出てくる。
やがて、視認できるくらい濃い障気の中から何かが這いだしてきた。
 キィ……キキ……キィィ……
微かなにそんな鳴き声をあげてモゾモゾと動いている。
 それは人の形に切り取られた紙人形だった。濃度の高い障気に長時間晒すと、屍がゾンビと化す。濃すぎる障気が
人を模した紙人形さえもゾンビのようにしてしまったらしい。だが───

 トスッ

 あっさりとその紙人形は式鬼の尻尾に握られたクナイで貫かれた。
 ギィィ……ギ……ぎ……
地面にクナイで縫い止められた紙人形はじたばたと暴れたが、やがてピクピクと断末魔の痙攣を残しクタリと力尽きた。
 そして、そこからより濃い障気が立ち上り始めた。
「おし、これこれ」
そう言うと式鬼はすぅぅぅと、その障気を吸い始めた。
小さな口の穴に黒く濁った障気がどんどんと吸い込まれていく。
同時に、今度は紅葉の呪力センサーが相対的に反応しはじめる。嘘月鬼の力が増しているのだ。
 やがて、壷の中の障気とにじみ出た障気を全て吸い終わった。

「うし、それじゃ、証拠をお目にかけようか。そン目ぇかっぽじってよぉくみてろよ」
ケプ。と息をもらした後、ブルブルとふるえ始めた。

 それと共に、バイザーでモニターしている呪力測定値が突然、上昇しはじめた。それはつまりこの式鬼が
より強力な存在になっていることを意味する。
 紅葉はいつでも攻撃に移れるよう、静かに身構えた。だが、相手が攻撃してくる様子はなかった。
「ヴゥウヴヴヴ……ふぬぅーー……」
式鬼の表面に汗?が浮き上がり震えるごとに両目の窪みの間に何かが浮かび上がってきたのだ。
それはどこかの家紋と術式を組み合わせた浮き彫りだった───
────────────────────────────────────────────────────
345チリチリおにこ:2012/10/09(火) 19:49:49.97 ID:WundtOnp
という訳で「チリチリおにこ」第5話を>>340-344投下しました。

【専門用語解説】
食屍鬼:しょくしき
 怨念同士が絡み合い、死体に宿った鬼。都市伝説と呼ばれるくらい、めったに存在しない。が、数例とはいえ、
存在は報告されている。志半ばで朽ち果てた無念の残留思念や、強い怨念を宿った死骸を好んで喰らい、
浄化の難しい『呪い』を吐き出す。『呪い』は一般人を標的にし、強い『憎悪』などを持った生者を襲い、
死なせる事でより強い『怨念』を吸収しようとする。
また、『憎悪』のない人物であっても無差別に殺傷され、殺された者も怨念が乗り移り、食屍鬼と化すといわれている。

一説には人工的に生み出された式鬼……『人蟲(じんこ)』の一種だといわれている。
数少ない報告では町や村が壊滅した所さえあるという。
346創る名無しに見る名無し:2012/10/09(火) 21:20:35.21 ID:WundtOnp
>>339
とと。感想どうもです。ついでにいうと、物語序盤で彼女が亡者に襲われたのも実はこれがあったからなんですね。
死者達にしてみると自分の肉体を食らった=コイツを自分のモノにする権利がある的な解釈で。
また、鬼に対する罠は、死後自分の身体が悪霊に悪用されないように施す訳です。
その辺の事はおいおい、欄外で明かしていくツモリです。
347チリチリおにこ:2012/10/10(水) 22:39:14.63 ID:gCWOxjwR
>>340-344の続きを投下します。
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  ◇ ◇ ◇
 ──嘘月鬼は眉間にチリチリとした緊張を感じていた──
ふぅ。やっぱ、これを出すのは骨が折れンぜ。
 これは一種の『烙印』みてぇなもンだ。オレっちがニンゲンに捕まって式鬼にされた時に組み込まれちまったンだ。
五浄家が滅ンじまった時ぁ、拘束力は減ンじたハズなンだが、具現化すっと、今でも影響がある。
 だからまあ、あらかじめ障気なンかを吸って体力つけてねぇと、たちまち呪縛されちまうっちゅう物騒なしろもンよ。
 本来制御するハズの五浄家が潰れちまっているから、呪縛されたら、どうなっちまうかわかったモンじゃねえ。
もっとも、この術式にもまだ色々使いようがあンだけどな。
──例えばこんな風に身の証しを立てる時とかよ。

「どうでぇ、これがオレっちの言う『証拠』よ──ぶぇっ!」
次の瞬ン間、頭に衝撃を受け、目の前が真っ黒になっちまった。そんで顔が地面に叩きつけられたと気が付いたのぁ
その数瞬後だ。このアマぁ。どタマが割れなかったから手加減したってこたぁ分かるが、蹴たぐるたぁどういうツモリだ。
「うっちゃん!」
 おにこの狼狽えた声が聞こえた。次におにこの怒気が「むうぅ〜」と女に対して膨れ上がらせてゆくのを感じた。
 やべっおにこがアイツに食ってかかっちまう。
オレっちはとっさにおにこの腕に尻尾を巻き付け、引き寄せながら起き、敢えておおげさに食ってかかった。

「このアマ、下手に出てりゃぁどうゆうこった!ポンポン好き勝手に蹴りくさりおって!」

おかげでおにこは毒気を抜かれちまったようだ。
 が、当の女ぁ例の妙なバイザーを操作してなンかブツクサ呟いてやがった。あれは───
────────────────────────────────────────────────────
  ◇ ◇ ◇
「──本部、応答せよ」
ザッ ザザッ
『はぁ〜いっ紅っ葉ちゃぁ〜ん!待ち焦がれたよぉ〜ん!君の為ならボクは例え火の中水の中───』
「ちょっと見てもらいたいものがあるの。解析して」
紅葉は相手のいつもの長広舌を遮ってつっけんどんに用件を言った。

『なになに?一体、何を分析すればいいのかな?』
言葉を遮られたにも関わらず、特に気にした様子もなく、やる事を聞いてくる。紅葉も慣れたもので、すぐさま
地面に残っている式鬼を叩きつけた跡をバイザーでスキャンし、データを転送した。
「何かの痕跡みたいだが……解析は可能?」
紅葉はぬけぬけと尋ねた。
『ん〜こりゃ、家紋の一種かもね〜?』
「家紋……ね」
『そそそ。式鬼……しかも、名家直属の式鬼だった場合、こういったエンブレムを特殊な術式とともに組み込むことが
 あるのは知っていると思うけど、どうもソレの跡みたいだね〜?』
「なら、どこの家のか割り出せる?できるだけ詳しいデータを調べておいて欲しいんだけど?」
『お安いご用さ♪紅っ葉ちゃんのたっめっなら──』
「そう、お願いね」
相手の言葉を最後まで聞かず、通信を切った。

「───貸しを作った──って訳でもねぇようだな?」
そばで通信内容を聞いていた式鬼が疑い深そうに尋ねてきた。この式鬼の家紋の映像を直接送らず、わざわざ地面の
土に型をとったもので照合しようとしてるのだ。
 もう一人の小鬼はその式鬼に隠れて今にも噛みつかんばかりに睨みつけてきてる。
先ほどの屈託ない笑顔は当然のことながら消え失せていた。それでも、なんだか威嚇してくる子猫のようで緊迫感に
欠けるのだが。

「あなたたちが無害なのか。見極めないうちに報告して抹殺指令が出たら寝覚めが悪いもの。それだけよ」
 そっけなく言い、冷たい瞳で見返した。場合によってはこの子を打ち殺さねばならない可能性はまだ生きている。

 その子は、冷たい眼光に射すくめられ、ビクッと気圧されて式鬼の陰にひっこんだ。
348チリチリおにこ:2012/10/10(水) 22:39:55.41 ID:gCWOxjwR
「おやさしいこって。そンなら、やたら殺気を振りまかねェでくンねーかな。おにこが怯えンだろ?」
「おにこ、といったわね?何でそう呼ぶのかしら?」
「おいおい、真名(まな)どころか字(あざな)も危ねェことぐれぇ、分かってンだろ?」
 重役や地位の高い身分の者は常に暗殺を目的とした『呪い』の危険に晒されているため、滅多に本当の名、真名を
明かさない。格段に式鬼が放たれる率がハネあがるからだ。
特に幼い子供は特に悪霊にも狙われやすいということで、仮の名前……字(あざな)で過ごすのが普通だ。
だがそれにしたってもおにことは……

「……まあいいわ。じゃぁ、次」
そう言うと、紅葉は「かくし」から、携帯食を二つ取り出した。うち一つを二鬼の方に放り投げた。
式鬼が尻尾でそれをキャッチする。
「その子が食屍鬼じゃないというなら、食べられるはずよね?」
────────────────────────────────────────────────────
  ◇ ◇ ◇
 ──くそっ、そう来やがったか。あんな事いいつつ、ホントの目論見はオレっちとおにこの分断じゃねーのか?
 オレっちとおにこが共同生活してンのは『食生活がかみあってる』ってー事もポイントの一つだ。
 死者の肉をおにこが、霊体の部分をオレっちがイタダイテいるようなもンだかんな。もし、おにこが屍肉以外の
モンを食うようになっちゃ『狩り』の効率が減っちまう。屍者がいる所を探す必要がなくなンからな。
おにこが屍肉以外のものを口にすンようになンのはちっと困る。

 ──つっても、今ここで斬り捨てられるよかマシか。オレはおにこに、この携帯食を渡した。
おにこは、それがなンなのかわかんねェようだ。手にとってためすがめつしたり臭いを嗅いだりしていた。

「こうやって食べるの。安心なさい。毒はないわ」
そういって、女は目の前で携帯食の袋をむき出して一口、食べて見せた。
それを見て、おにこは袋をかなり苦戦して破き、中身を取り出すとクンクンと臭いを嗅ぎ、

  パクンッ

 と、カジりつく。
途端、パアァッと表情が明るくなり、次の瞬間、ガッつきだした。あ〜ぁ。

「……まずは合格ね」
なンか安堵したみてえに聞こえたのあ気のせいか?
「よお、あんま美味いもン食わせねぇでくンねぇかな。うちゃそんな恵まれた食生活ぁ送ってねぇンだ」
 ガツガツと食いモンに夢中になってるおにこにやや呆れながら文句はタレたがな。
「この携帯食程度の物なら、この辺りのガラクタの中からでも多少は見つけられるはずよ。今まで見つけたことないのかしら?」
「たまにだ。そうしょっちゅうじゃあねえよ。それに大抵傷ンじまってるしな」
つか、おにこの舌が肥えすぎンのも考えもンだから食わせたくねェよ。

「……一応言っておくと、まだあなた達が人間にとって無害だという証明が成ったわけじゃないわ。覚えておくことね」
「……へ。仕事熱心なこった。婚期を逃すタイプだな、ねーちゃん」
「余計なお世話よ」
────────────────────────────────────────────────────
349チリチリおにこ:2012/10/10(水) 22:40:37.00 ID:gCWOxjwR
  ◇ ◇ ◇
 ───紅葉は信じていなかった。この式鬼はどうにも胡散臭い。この子が本当に元・人間だったとしても、この子を
いいように利用しているんじゃないかと疑っている。
場合と事情によってはこの式鬼とこの子を離してこの子を保護する事も考えていた。
昔はこんな孤児などよくある事と、感情を押し殺して忍務に邁進していたものだが……そういえば忍務と関係ない所で
誰かを救ったのもこれが初めてだったと、ふとそんな事に思い至った。
 だが犬猫ではないのだ。今のままでは本当の意味で救った事にはならない。この式鬼とこの子を引き離すだけでは
飢えて死ぬだろうし、もし本当に五浄家の姫だったとしても身の処し方が悪ければ謀殺される可能性もある。
それに、この式鬼にこの子が懐いているのもどうしたものか……
そんな事をつらつらと考えていたら、おにこがじ〜〜〜〜っと紅葉を見ていた。
視線を辿るとおにこは手元の携帯食に物欲しそうな視線を注いでいる。

「…………」

……それなりに栄養価の高いものなのだが。物足りなかったようだ。紅葉は、携帯食を無造作に放り投げた。
途端、おにこはハッシと飛びついた。あんなものだが、よっぽどおいしかったのか。早速、まぐまぐとかぶりついた。
 あきれて見守る紅葉の横であの式鬼が忌々しそうに唸っているが、紅葉は素知らぬ顔でほうっておいた。

  ピピッ
……紅葉のヘルメットに通信が届く。
『もっみっじちゃ〜〜ん!調べてきたよん〜!』
相変わらず騒がしい声が通信機を通してヘルメット内に響きわたった。
「それで?」
そっけない返事に通信向こうの男は不満そうだ。
『え〜〜折角調べてきたのに『がんばったわね』とか『ご苦労様』とか『ご褒美に抱かれてもいいわ』とか、
 もっとこ──』

「切るわよ」
 この男の戯言につきあいきれないとばかりに冷たく突っ込んだ。
『あぁ、もお、相変わらずつれないなあ。えっとね。家紋は五浄家のモノだったよん』
「五浄家──」
『そそそ、最近潰れた家だね。やり手のおっさんだったらしいけど、らしくないミスやらかしちゃったとか……
 ま、世間じゃよくある事だね。詳細はファイル送るから見てちょうだい』
 そうしてファイルを転送してきた。
「そう。それと、もう一つ聞いておきたいんだけど……」
『ん?』
「原種の鬼のゲノムデータって、公式・非公式どっちでもいいけど、ニンゲンが入手した事ってあったかしら?」
男は突飛な問いにも特に困惑せず、まじめに聞き返してきた。
『原種の鬼?ってあの鬼かい?ツノが生えてて金棒持って人を食う?』
 今の世の中、巷に鬼は溢れているが、昔から言い伝えられている鬼の事は「原種」と呼ばれている。
厳密に言えば原種の鬼以外の鬼は鬼ではなく、陰の気の集合体や、術で生み出された疑似生命体や何かほかの
妖怪である。
『ん〜紅葉ちゃんに言うのは釈迦に説法だろうけど、
 非公式ってったって、隠されているもの全てを把握するのは不可能だしねぇ。知っているかぎりで、原種の鬼が
 捕縛されたって話は今のところ聞いたことがないかな?』
「そう。ありがとう。世話をかけたわね、ご苦労様」
そう言ってあの男のおしゃべりにつきあってはいられないと通信を切った。

 そして転送されてきたデータを展開。ザッと眼を通す。
──五浄家──元々は霊的なものの浄化を得意とした名家……悪霊や悪い『気』を浄化するノウハウを飲食物にまで
広げていて、医食同源を元にし、要人の飲食物の『お清め・聖別』も担当していたようだ。
本家は……後継ぎこそいないようだが、幼い『姫』が居たようだ。が、公式記録では死亡と記録されている。
 あの式鬼の話が本当なら、この子がその『姫』という事になるが……

 が、紅葉は何か納得し難かった。式鬼はどうにもうさん臭いし、この小鬼は『姫』と呼ぶには何か違う。それと
あの事件からそれなりに時間が経過している。なのに原種の鬼に関する情報が流れていない。ということは、『彼女』の
DNAデータは何らかの理由で破棄されるなりした可能性が高い。もちろん、彼女だけが鬼じゃないだろうが今の所、
原種の鬼はツチノコや雪男に等しい存在だ。伝説の中にしか存在しない。紅葉が遭遇したのを別にすればだが。
どうにもピンとこなかった。
350チリチリおにこ:2012/10/10(水) 22:41:33.19 ID:gCWOxjwR
「おぃおぃ、無茶すんなおにこ」
ふと、式鬼の声に我に返ると、おにこが式鬼の上によじ登ろうとしていた。式鬼がツノを下げ、おにこがそれに
つかまると引き上げられるように上に這い上がった。
「あなた、なにをしているの」
この娘は自分の立場を分かっているのかといいたげに紅葉は声をかける。
「たんれんじょうにいくの」
式鬼の上に座り、両脇のツノにつかまって、彼女はそう答えた。
「鍛錬場?」
そういえば、拙いとはいえ得物の扱いはサマになっていた。
「心配すンな。どうやってオレっちらを嗅ぎつけたのかもわかんねぇってのに逃げたりゃしねぇよ。
 スグそこだかンらついてくっといいサ。今日は『狩り』の必要もなくなっちまったしな───」

 ──つまり、逃げられるなら逃げるつもりか。彼女らを補足できたのはただの偶然だったが、わざわざ言うこともない。
紅葉は無言のまま、考えを巡らせた。そして、紅葉は暫くこの珍妙なコンビの様子を見てみる事にした──
────────────────────────────────────────────────────
  ◇ ◇ ◇
 ──嘘月鬼は内心、忌々しく思っていた──
 くっそ。あのねーちゃん、やっぱヤリづれぇぜ。オレっちとおにこを監視するつもり満々のよーだし、
どう撒きゃいいんだ。まあ、問答無用で滅されるよかずっとマシなんだが。
 オレっちはおにこを頭にのっけて『たんれんじょう』に向かいながら考えていた。
 だが、さっきちぃっとばかし話を振ってみたがどうやってオレっちらを追跡してンのか(当然ながら)漏らす
つもりゃぁありゃしねェようだし、どうすっかだな。

 まさかオレっちの話を全て信じ込ンじまってンなら楽なンだろぉが、おそらくソリゃあ甘めェ見通しだ。
どっちかっつーと、ありゃぁ、オレっちの嘘に綻びが見つかンねぇから斬らねェってだけに見えンぜ。
あのねーちゃんから逃げおおせるにゃどうしたらいいか情報が少なすぎる。当面は時間に猶予ができたとはいえ、
どうしたもンかね。

──とか、色々考えながら、オレとおにこは、『たんれんじょう』に着くとてきとーなガラクタを拾い集め、
床の抜けた建物の上に運ンだ。そこは昔、大型のエレベーターだったらしく、2階と3階の床がブチ抜けてて、
吹き抜けみたいになっちまってた。おにこは下の方に居る。オレっちはガラクタといっしょに上の方だ。

「おっしゃぁあ!いくぞ〜!」
 「あい!」
 オレっちはおにこに向けて尻尾を使いいろんな角度や速度でガラクタを投げ落とした。ガラクタは壁にぶつかり、
跳ね返り、時にはガラクタ同士でぶつかりながら複雑な軌道を描いておにこに降りかかる。それをおにこは迎え打った。

キンッ! ココンッ! シュカッ!ガシュッ!
 そのほとんどをおにこは打ち落とした。
……ふん、まずまずか。だんだん得物にも馴染んできやがったな。

「これが鍛錬?子供だましもいいところね」
いつの間にやら横で見ていた紅葉のねーちゃンが呆れたように呟きやがった。
「しゃーねーダロ。オレっち相手じゃ、あんま練習にゃなりゃしねェんだから。そンなんだったらねーちゃんが
 稽古でもつけてくれるってェのか?」
「…………」
 お、おぃ、まさか……
何ンか数秒間の沈黙の後、あのねーちゃんは飛び降りた。って、おいおい、ここ建物の最上階だぞ。

「っぴゃっ?!」
いきなり、人が降ってきたからだろう。おにこも驚いて動きを止めていた。
 あのねーちゃんは手近な棒っきれを拾って一振りすると。

「構えなさい。稽古をつけてあげる」
棒っきれを突きつけ、そう宣いやがった────
351チリチリおにこ:2012/10/10(水) 22:42:17.02 ID:gCWOxjwR
  ◇ ◇ ◇
────「おぃぃっ〜!いくらなんでもガキ相手にやりすぎダロぉがっ!」
 オレっちはおにこを庇うようにねーちゃんの前に岩の姿で割り込んだ。おにこの奴ぁ、後ろで地面に突っ伏してる。
唯一、地面につき立ってるナギナタを掴ンでるのガ闘志の名残だが、今はピクリとも動かねェ。
ハタから見てたがこりゃぁ、児童虐待だぜ。じどーぎゃくたい。
 信じらンねえ。おにこの得物は何ンでも斬っちまうとンでもねェ業モノだってのに、棒きれ一本で楽々とイナしちまってンだ。
文字通り赤子の手をヒネるたぁこのことだ。しかもその稽古は鬼のようなスパルタとキタ。

「脇がガラ空きよ」「斬撃が甘い」「その程度?」「遅い」「立ちなさい」「なに休んでいるの」
「死んでるわよ。それ」その度におにこは蹴り飛ばされ、棒切れでひっぱたかれた。
おにこは健気にもついていってたンだが、だんだん動きがニブくなっていってンのが傍目にも明らかだった。
 おいおい、いくら鬼ってヤツが同じくらいのヤツに比べ頑丈だからって、やりすぎンだろ。
幾度も叩きのめし、蹴り飛ばし、隙があれば容赦なく棒で叩かれ、数メートル蹴っとばされた所に見かねて割って
入った。

「邪魔よ。どきなさい」
割り込んだオレっちに息一つ乱さず、棒っきれをつきつけてきやがる。さらにオレっち越しにおにこに冷徹に
挑発の言葉をかけやがった。

「ほらほら。アナタがだらしないから、式鬼君が入ってきたわよ?アナタ達、このままじゃどうせ永くないわね?
 ならいっそ、二人ともここで終わるのもいいかもしれないわ。何なら私が始末をつけてあげる。最初はその
 式鬼君からね」
 突きつけられてるのぁ、あの妖刀と違ってただの棒っきれだ。が、オレっちは不覚にも圧倒されて言葉が出ナかった。
つか、何だ?!何でここまでする?滅する訳でもねーのに?!オカシーだろ?!

「うっちゃん。どいて」
 背後でハッキリと声が聞こえた。あン?なんだ?振り向くと、おにこがナギナタを支えに起きあがる所だった。
「おい、あンまし無茶すンじゃ……」
そこまで言いかけて、オレっちは言葉を飲ンじまった。おにこの目がまた紅く燃えてンだ。それに、体のあちこちから、
紅い光が立ち上って、黒く汚れた衣が紅く染められってた。そして、紅葉みてぇな葉っぱが周囲を舞い散ってやがる。
「たぁああぁっ!」
紅い光を曳きながら、おにこは今までと違う勢いでねーちゃんに打ちかかった。

 カッ

 乾いた音が響き、おにこの得物は初めて、受け流そうとした棒っきれごと、ねーちゃんを叩き斬った。
──と、思いきや……
「とりあえず合格ね。今の感覚、忘れない事。稽古はこれで終わり」
 あのねーちゃん、たった今斬り裂かれたと思ったンだが、次の瞬間には、おにこの背後で稽古の終わりを告げやがった。
さっき斬られたのは残像か。つくづく底が見えやしねェな、このねーちゃん。
斬ったと思ったハズのおにこも、何が起こったのか分からずキョトンとしてやがらあ。目の色も服も元に戻っちまってた。

「……で、あなたたち。普段は『狩り』と『鍛錬』以外に何をしているのかしら?」
 紅葉のねーちゃんは叩き切られて短くなった棒っきれを放り捨てながらたずねてきた。
 あン?何だ、唐突に。
「他にゃあんまねェよ。それらをこなすだけで日々精一杯だっつ〜〜の」
「そう。なら付き合いなさい。他にも聞かせてもらう事があるわ」
352チリチリおにこ:2012/10/10(水) 22:44:48.67 ID:gCWOxjwR
という訳で「チリチリおにこ」第6話>>347-351を投下しましたっ

【専門用語解説】
嘘月鬼の家紋:うそつきのかもん
 名家のいくつかはどれだけ高性能な式鬼を従えているかをステータスにしている風潮があり、その一環として家紋に
能力ブーストの術式を組み込んでいる事がある。
実の所、本来なら式鬼の排気ガスともいえる障気を活力源として吸収したり、饒舌に喋る事ができるのはこの家紋の機能に
よって実現できているものである。
 ただし、障気を吸収できるといっても、一定の濃度が必要であり、発生する端から浄化してしまう街中では必要濃度が
得られない。
353創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 00:14:31.89 ID:VZRdK1No
乙で〜す。
明確な敵らしき敵が見えてこないのですが、バトル物として終盤展開せずに日常系として世界を描かれる感じなのかな?
続きに期待しております。
354チリチリおにこ:2012/10/11(木) 19:23:38.43 ID:B0gYkLHI
「チリチリおにこ」>>347-351の続きを投下しまス
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  ◇ ◇ ◇
 紅葉はガラクタの山積している中からいくつか目的のモノを見つけだした。次いでガラクタの山から同じく
引っ張り出したズダ袋に入れ、準備を済ませる。そして、二人の鬼を廃棄場から連れ出した。
行き先は近くの、山の中にある廃工場だった。

「んで、いってぇ何でぇ。ンな所へ呼び出しやがって」
 嘘月鬼は気楽に尋ねた。抹殺するつもりならとうに抹殺されている。そのため、ここまで呼び出される意味が
わからずとも変に警戒する必要もないと考えているのだ。
 嘘月鬼は岩石の頭をフリフリ、周囲を見回した。廃工場といっても中はほとんど残っていなかった。あるのは
製造ラインを設置する為に用意された凹凸と、そこに入り込んだ雨水が貯まってできた大きな水たまりだけだ。
その水たまりも淀んで油汚れや塵芥が無数に浮いている。

 紅葉は何もいわず窓の外を見た。ガラスの類はとうの昔に無くなってる。その向こうは暗闇でうっすらとした
月明かりが殺風景な山の景色を浮かび上がらせている。

「死にたくなかったら窓から離れてなさい。いいわね」
一方的に言い捨てると姿を消した。数秒後、ドーンという破壊音とともに、真っ赤に灼けた岩石が飛び込んで来た。
「?! 何だ、なンだっ?!何事だっ?!」
その岩は、おにこを乗せて飛ぶときの嘘月鬼より二周りも大きかった。
前後の状況から紅葉の仕業に違いなかったが、どうやってやったのかはわからない。
その赤熱した岩石が水たまりの中に落ち、途端に水を
沸き立たせた。たちまち水しぶきがまき散らされ、水蒸気が周囲に立ちこめる。
「ひゃわわっ?!」
おにこも目をまん丸にしてこの異様な景色に見入っていた。その湯気の中、いつのまにやら紅葉は水辺で何か
作業を進めていた。例のズダ袋からいくつかの筒状の入れ物をとり出し、ボゴボゴと沸き立つ汚れた湯に浸した。
そして簡単な印を結び、呪を唱えるとその中に湯の中のゴミが集まり始めた。
 それは一般的な浄水術だ。この浄水筒は簡単な印と言葉で起動し、水の中にある不浄物を吸い集めるように
できている。もちろん捨てられていた物であるから、何らかの不具合があるのだろう。
 が、複数の物と併用すれば当面の目的は果たすことができる。やがて、時間の経過とともに湯のなかの汚物やゴミは
すべて浄水筒の中に吸い込まれた。熱すぎる湯もその頃には適度な水温に程良く冷めていた。

「───さて、それじゃ、お風呂にするわよ」
汚物の詰まった浄水筒を湯のなかから引き上げると、紅葉はおにこ達にそう告げた。
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  ◇ ◇ ◇
「──へぇ。シノビが風呂好きたぁ知ンなかったな」
サッカーボールサイズの岩石になった嘘月鬼が物珍しそうに湯面を尻尾でつつきながら言った。風呂の事は知っては
いたが、自身で入った事はない。必要がないのだ。
「敵に気配を察知されない術の一環よ」
そっけなく、紅葉は答える。

「ひゃっひゃっひゃ。違げェねェ。うまく隠れてても臭っちまったらおしめ〜だもンな」
何がウケたのか大笑いする嘘月鬼。
 実際に気配を消すには食餌制限で体臭を消すところから始める訳だが、それをここで言っても意味がない。

「ほら、いつまで飲んでいるの。こっちを向きなさい」
そう言って、おにこの手を引き、頭からお湯をかぶせた。さっきまで水面に顔を突っ伏してお湯を飲み続けていたのだ。
 なにせ、今までゴミ廃棄場に降り注いだ濁った雨水しか口にしたことがなかった。鬼の身だけに死にこそしなかった
ものの、ここまで綺麗でおいしい水はじめてだったのだ。
「っっぷわっ」
 当然、頭からお湯をかぶる事もこれが初めてだ。
おにこは今、何も着ていない。あのボロ布とも着物ともつかないものは別の水たまりに浸して、浄水術を用いて洗い
終わっていた。今は程良く冷めてきた岩の余熱でもって乾かしている最中だ。
 頭から何度も湯をかぶされ、たまらず犬みたいにブルブルと頭を振ってお湯をはじき飛ばした。

「それじゃ、次はこれで身体を洗ってみなさい。間違っても食べるんじゃないわよ」
 そう言うと、石鹸のついた手ぬぐいで軽く身体をこする仕草を見せてから、おにこに手渡した。
おにこはじっとそれを見ていたが、しばらくするとゴシゴシとおぼつかない手つきで身体を洗い始めた。
355チリチリおにこ:2012/10/11(木) 19:24:22.14 ID:B0gYkLHI
「── 一体、どういうつもりでぇ?稽古といい、風呂といい。何だってェんだ?」
その質問には答えず、紅葉は逆に質問を返す。
「人間は鬼と違い身体を清潔に保っていないと易々と病魔に憑かれて死んでしまう生き物よ。むしろ、何故衛生的な
 事を教えていなかったのかしら?命に関わる事よ」
「───」

 鬼の身体は人間の身体に比べ、物理的にも病気に対しても強靭だ。おにこが鬼でいるかぎり、身体を清潔に
保っていなくても病気になることはまずないだろう。
 だが、人の身に戻る事を前提に考えているなら、いずれは人に必要な知識を教えておかねばならない。
それを教えないという事はその必要がない事を意味する。人に戻すつもりがないか、元々人ではないのか──

「そうなンか?ワリぃ。オレっち、そういうニンゲンのこたぁ、疎くってよ。風呂ってのぁ、レジャーの一環か
 物好きの暇つぶしみてぇに考えてったわ」
しれっと嘘月鬼は言い切った。鬼が人の営みに疎いのもおかしくないといえばおかしくないのだが──

「…………まあいいわ。じゃ、流すわよ」
後半は大体洗い終わったおにこへの言葉だ。またざぷーと、頭から湯をかけた。
「次は頭だけど、しばらくは湯につかってらっしゃい」
 そう言われると、おにこはにぱっと笑うとキャッキャとハシャギながら岩の方へお湯をまき散らしつつ駆けていった。
岩のある一番深い所でも紅葉の膝上辺りの深さしかない。肩まで浸かるには熱源でもある岩の所が一番暖まる。

「…………で、ねーちゃんは入ンねェのか?折角用意した風呂だってのにヨ?気配を消すのに臭いは邪魔なんだろ?」
紅葉は武装も服装も全く解いていなかった。
「……これでも忍務中よ」
敵が存在する可能性があるエリアで武器を手放す馬鹿は居ない。
「さよけ、お真面目なこって。つっても、この辺ンにゃもう物騒な式鬼ゃ居ねェがな。そンじゃ、オレっちも後学の
 為にニンゲンの真似ごとでもやってみっかな。お〜い、おにこぉ〜〜」
そう言うと、岩の横で湯に浸っているおにこの所へと飛んでいった。

丁度そのとき、本部から通信が入った───
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  ◇ ◇ ◇
「お〜ぃ、おにこぉ〜〜」
あーぁ、おにこの奴ぁ初めての風呂に正体無くしてやがらぁ。
湯からぷかぁって顔だけ出してまあ……なンだ、あの緩みきった顔ぁ。黒髪が湯面に広がってその真ンなかに呆けた
おにこの顔が浮いてやがる。なんかチョット茶々を入れたくなンぜ。
 ちなみにオレっちはさっきからずっと岩の姿を維持していた。なンせ、障気を吸いすぎちまってたかンなあ。
元のレベルに戻るにゃあそれなりに摂った「精」を消費せにゃならん。今のオレっちはなンか特殊な方法で
調べずとも、気ぃ抜けば大雑把なエリアスキャンでも目立って仕方がねぇ。
 ま、あのねーちゃんの前で小っちェ火の玉姿になンのもコワすぎるってェのもあンだがね。
 それはともかくオレっちもお湯のごしょーばんにあずかろうと、おにこのアタマくれェの大きさのまま、ザバァンと
おにこの横に着水した。
「っっぷわっぷ!」
当然、おにこは顔に湯をひっ被ってあわてて手足をバタつかせた。
「そういやぁ、おにこ、おめェ、傷は大丈夫なンか?」
ぶータレようと湯から顔を上げたおにこに、すかさずオレっちは聞いてみた。さっきの『稽古』にゃぁかなり蹴られたり
叩かれたりしてスッとばされてたンだが。

「ん?んーーー……」
おにこは湯の上に立ち上がり、腕や足をあげて傷の様子を確認してみた。痣をはじめとする内出血の痕がそこかしこに
あンだが、もうウッスラとしか見えなくなっていた。
……こりゃぁアレか。あの時の妙な力の顕現の作用……鬼の回復力か?
 そういや、あのねーちゃん、このこと知ってるフシがあったような……おにこについて、なンか知ってンのか?
とはいえ、情報を引き出そうとして、藪蛇にナっちまったら本末転倒だ。どーやって話を聞きだしたもンか……
 いや、それよか、どーやって逃げきることの方が重要か?
356チリチリおにこ:2012/10/11(木) 19:25:30.91 ID:B0gYkLHI
 どぼぉん!
考えごとしてっと、おにこがひっくり返る音で我に返った。どうやら、背中の傷を見ようとしてヘンな姿勢で体を
ヒネって倒れ込んじまったらしい。何やってンだか。
「えへへ……ちぇい!」
 「ンぷっ、って、コラおい」
水面に顔を出したおにこは、照れ隠しに湯をオレっちにぶっかけ始めた。オレっちは尻尾で水面を叩き反撃を開始した。
 気がつきゃバシャバシャとお湯の掛け合いを始めちまってた。いいンかね?こンなにひよっちまってて。
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  ◇ ◇ ◇
「───こちら紅葉」
『も〜みっじちゃ〜〜ん!お仕事はかどってる〜〜?って、あっれ〜?該当エリアから少し離れちゃってるね〜?』
 向こうも紅葉の現在地をモニターしているのだろう。
「忍務は完遂しているわ。文句ある?」
ことさらすげなく紅葉は返答した。
『あ、いや……んーとね。さっき何か尋ねてたじゃん。「原種の鬼」がなんたらってさ』
ピクリ、と紅葉の眉がはねる。
「えぇ」
『それがねぇ、念のために調べてみたんだけどさ、あったよ。それっぽい情報が』
「へぇ……」
『最近になってセキュリティレベルが下げられたようだから、大した価値のない情報かもしれないけどね。
 えと、式鬼を使って野良式鬼を処理する計画が頓挫して、その引き継ぎが、紅葉ちゃん達の関わっている仕事の
 発端だってのは知っていると思うけど……』
「そうね」
『元々、その前に行われていたプロジェクトで「使役されていた鬼」がどうやら「原種の鬼」臭いんだ』
「ゲノムデータは残ってないの?そんなモノなら、計画が頓挫してても利用価値がありそうなモノだけど?」
『それがね〜〜責任者権限で厳重にロックされていたみたいでね〜、その上最重要責任者がとんずらこいちゃった
 らしくて、計画が頓挫した時点で関連したモノは全て無用物として廃棄されちゃったらしいよ〜モッタイナイよね〜〜』
「そう…………」

それが巡り巡ってここの廃棄場に廃棄された訳か……
 あの後、紅葉自身も情報を探っていて、あの時の事を調べ、何が起こっていたのか大方のアタリはついていた。
 政府機関により制御された傀儡(くぐつ)の鬼の娘。操られるまま、人間の手ゴマとして動いていたようだったが、
あれから制御を振り切り、逃げおおせたのだろうか。

 紅葉は先ほどのおにこの様子を思い出していた。おにこの能力の顕現。あの子が鬼子のクローンや分身である
可能性は高くなった。ただ、それが事実だとして、あの式鬼の言う事を否定する材料になるかは微妙な所だ。
 源細胞を移植することで妖怪の能力を受け入れる手法は一般的ではないが可能だ。

 先程、風呂の時に身体を調べてみたが、頭のツノ以外は特に妙な所もなし、クローン特有のシリアルナンバーの
ようなものも見当たらなかった。
「でも紅葉ちゃん?こんな事を調べて一体、どうするつもりなの?」
言われて、紅葉はその問いとは別の疑問に、はたと思い至った。私はあの二鬼をどうしたいのだろう─────
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357チリチリおにこ:2012/10/11(木) 19:26:09.72 ID:B0gYkLHI
  ◇ ◇ ◇
 オレっちは一通りハシャギ終わると湯にプカプカ浮いていた。おにこはおにこで、冒険心を発揮してこの水たまり
だった湯船をあちこち泳ぎ始めていた。オレっちは岩の身体は水にゃ浮かねェから、水面に合わせて宙に浮いてなきゃ
いけねェが、ナルホド。ニンゲンがハマる訳だぜ。身体の外側からじわじわと熱が染み込んできやがらぁな。
 ……これで、あのおっかねェねーちゃんがいなけりゃぁ最高なンだが、今この時も油断無く見張っていると思うと
ゾッとしねェぜ。つうか、オレっちらの立場からみるとあのねーちゃんは間違いなく『敵』なンだが、なんだね。
この「風呂」といい食いもンといい、稽古といい。ナぁんかオカシい。おにこが『姫』だって話を鵜呑みにしてっとも
思えねェし、ならなンでこうも色々やってくれンのかね?湯に浮かビながらつらつら考えるが、ピンとこねぇ。

 変ンなのぁおにこもだ。あンだけ『稽古』でひでー目にあってンのに、なンであんなに懐いていンだ?おにこに
色々教えてくれンのは助かるが、このままじゃオレっちの食い扶持が危うくなっちまうしな……とはいえ、まずは
生き延びンことが最優先だ。とにかく、姿をくらます隙をさがさねェと。
 「……おっ、そうだっ逆に……いっそ……うン、ワルかねぇ……」
 ちっと、イイ事思いついちまった。コリャぁ、悪くねェかもしれねェ……
その時だった。紅葉のねーちゃんのおにこを呼ぶ声が聞こえてきたのぁ──
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  ◇ ◇ ◇
 紅葉は先ほど水で消した焚き火から灰をすくっておにこの頭にかけた。さっきまで燃えていた灰はなま暖かい。
「ぴゃっ」
含んだ水分でべったりと灰がつく。それをわしゃわしゃとかき混ぜながら紅葉は解説する。
「一番手っとり早くて無難な洗剤はこの『灰』ね。こうやって髪の毛を洗えるのに使えるだけでなく、他にも色々な
 ものを洗うのに利用できる。作り方も、適当な木を燃やすだけだからそれほど難しくはない」

 おにこの髪は意外と長い。さらに灰を追加して髪の汚れを落としてゆく。
「油汚れをはじめ、アクの強い山菜や汚れた水や毒素をある程度浄化できるので使いどころは多い。覚えておくといい」
そういって、おにこの髪を洗いながら
「ところで、あなたはどうなの?五浄家の事、覚えているのかしら?」
と、聞く。その問いに、おにこはぽけーっと、考えているのかいないのか。わからないような表情の後、

「おにこ、おひめさま!」
そういって、てへへと照れくさそうに笑った。紅葉は重ねて
「おうちの事、覚えている?」
と、辛抱強く尋ねたものの……
「わかんない!」
元気よく答えられた。
「それじゃあ、おひめさまって事、誰に聞いた?」
「うっちゃん!」
「…………そう」
 あの式鬼を出され、当然のごとくこの情報はアテにならないと紅葉は断じた。どうやら、風呂で緊張と気を緩めて
色々聞き出そうとしてもあまり意味はないようだ。

 内心嘆息すると、ざぱーっと頭からお湯をかけた。
一方、おにこはぎゅっと目を閉じて、お湯が流れるのを待ったあと、プルプルと頭をふって髪の毛の水気をはらう。
もう一度頭から湯を被せようとしたとき、嘘月鬼から意外な申し出を切り出された──
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358チリチリおにこ:2012/10/11(木) 19:28:27.92 ID:B0gYkLHI
という訳で、「チリチリおにこ」第7話>>354-357を投下しましたっ

【専門用語解説】
ライフライン:らいふらいん
 前の時代の「大災害」により、各水道・ガス・電気・下水等のネットワークは寸断されている。その代わり、式鬼を用いて
排水・水道などのライフラインは維持されている。
 方法として綿密に制御される式鬼が毎回大量に水や下水の入ったタンクをバケツリレー方式で運ぶのが常である。
なお、処理された下水は作物工場に堆肥として運び込まれることになる。
一般では、浄水筒による雨水を浄化する方式もまだ残っており、コチラの方が企業と契約するより安上がりに済むことが多い。

情報ネットワークに関してはインターネットはほぼ壊滅しているが、脳波を利用したネットワークが構築されており、
脳組織の一部をネットワークの一部として解放する事を条件にネットワークに加入できる。
(なお、脳組織を解放するには脳内に特定ソフトのインストールが必須)
それ以外でネットワークを利用する場合は有料端末を利用するか、式鬼を憑かせた人工脳でネットワークにアクセスできる。
ただし、人工脳でのアクセスは他の利用者に悪影響が出るとされ、違法であることが多い。
359チリチリおにこ:2012/10/11(木) 19:29:25.85 ID:B0gYkLHI
>>353
少しだけネタバレすると、バトルパートも日常パートも盛り込んでいるゾっ
360チリチリおにこ:2012/10/12(金) 23:32:53.51 ID:d3Efqkmu
「チリチリおにこ」第8話>>354-357の続きを投下しまス
  ◇ ◇ ◇
 ──通信装置の向こうから聞こえる声は戸惑っていた──
『えっ?契約の内容を確認したいって?どういう事?紅葉ちゃん』
「今言った通りよ。特に問題ないはずだけど?」
 紅葉の立場はフリーの契約者だ。とはいえ、本来は仕事を受ける上での契約などただの空約束にすぎない。
忍に市民権などありはしない。法の保護を受けられる立場ではないのだ。
それでも、当面の仕事のしやすさに影響するし、それなりの『スジ』を通しておけば、バックアップも受けやすくなる。
 ここしばらくは事実上、この「彼」を介した『シゴト』が主で専属に等しい状態だったが、専属である必要もない。
 なので、ここでのやりとりはただの再確認以上の意味はなかった。
『そりゃぁ……まあ、そだけどさ。あぁぅうん、紅葉ちゃんが他のオトコといちゃいちゃするのはなんか……
 はあぁぅぅう〜〜ん』
 回線の向こう側で妙な風に悶えているかのような煩悶としてる声が聞こえてきた。この手の戯言にいちいち相手してなど
いられない。

「特に何が変わるでもないわ。ただ、仕事のペースが今までより少し落ちるだけ」
淡々と感情を交えず状況のみを羅列する確認作業。

『らしくないな〜〜今までバリバリ仕事をこなして来た鬼のような仕事っぷりだったのに〜〜?』
 鬼なら、目の前にいる上、そんなシビアなものでもないが。
 当の鬼二匹はお湯に浸かって、でれでれに正体を無くしてしまっている。このままほっとくと溶けてしまうのでは
ないかというくらいだ。

「これでも普通の人間よ。たまに一息つきたくなるときだってある」
『ふふ〜ん?さっきの口振りからすると、休暇をとるため、というよりも別口の仕事を見つけたっぽいみたいだけど?』
 契約内容を確認した箇所から察知したらしい。一瞬、紅葉は言葉に詰まる。
「…………それで、どうなの?」
『ん〜〜こっちの振った仕事をキチンとこなしてくれるなら問題ないよん。こっちとしても紅葉チャンみたいな
 仕事のできる人手は貴重だしね。まあ、紅葉ちゃんにしかできない仕事もかなりあるから無理言って貰うことも
 あるかもよ?』
「いいわ、可能な限りそちらにあわせる」
 つまりは、今までとあまり変わらないという事だ。紅葉はそれでよしとふんだ。

通信が終わると式鬼が聞いてきた。
「で?どうでぇ。話はまとまったかい?」
湯に浮いた岩の塊、というシュールな絵づらだ。紅葉はただ首肯して返した。
「そうかい。そりゃぁ助かった。これでおにこの将来も安泰ってぇもんよ」
 そう言って、尻尾で器用に手ぬぐいを持ち上げ、岩のようんな表面を拭った。
「…………」
 嘘月鬼が紅葉に申し出た事。それはおにこに生き延びる術を教えるよう、依頼されたのだ。
要するにサバイバル技術の家庭教師みたいなものだが、嘘月鬼から申し出があった時は紅葉も内心、戸惑った。

 今現在も互いにだまし会っている最中のようなものだ。それがいきなり懐に飛び込まれたようなものだ。当惑しない訳はない。
だが、紅葉の側にとってもこの鬼達から目を離さずにすむ。この胡散臭い鬼からこの娘を引き離すようし向ける事も
可能かもしれない。

「じゃ、契約成立だな。ニンゲンってぇのはこういうとき『握手』ってヤツをするんだって?」
 そう言うと手拭いを頭にのせ、にょろりと尻尾を伸ばしてきた。
「……その前に聞いておきたい事がある」
紅葉は腕を組んだまま、その尻尾を冷たく一瞥した。
「あン?なんでぇ、一体?」
「あなたは一体、何の鬼なのかしら?」
契約を結ぶ相手は本来なら詮索しないのが忍の世界だが、この場合、何もかも不確かすぎる。本来の仕事と
同様にみるのは危険だろう。
「あぁ、オレっちは『浮月鬼(うわつき)』ってんだ。ヨロシク頼むわぁ。……これでいいか?」
ウソツキの鬼、嘘月鬼を名乗っては余計な疑念を生む。嘘月鬼は名の通りさらっと嘘をついた。
「……そう。紅葉よ」
 そうして、紅葉はこの胡散臭い式鬼の尻尾を握り返し契約は結ばれた。
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361チリチリおにこ:2012/10/12(金) 23:33:35.33 ID:d3Efqkmu
  ◇ ◇ ◇
 ──おにこはいつになく、神妙な様子で目を閉じていた。そして両手をあげ、手のひらをガラクタの山に向け
かざしている。口元からはなにやら呟きが漏れていた。『呪』だ。

「そう……ゆっくり……力を抜いて……息を吐きながら集中する……」
 紅葉がそのすぐ後ろに立ち、腕を組んだまま、おにこに指示を出していた。
目を閉じたおにこの瞼の内側にポツポツと点滅するイメージが広まってくる。

「そのまま力まず精神を平静に保ったまま『呪』を繰り返す」
 おにこはゆっくり息を吐きながら続きの『呪』を唱えようとした。だが──
「──……あ」
 たちまち集中が崩れ、イメージは瞬く間に消えてしまった。どんな『呪』だったか思いだそうとして集中が切れたのだ。

「もう一度。最初からやり直し」
紅葉は腕を組んだまま微動だにせず、感情を全く感じさせない声でやり直しを指示した。

「むぅ〜〜〜〜〜」
おにこは不満げにふくれ、紅葉を見上げたが、紅葉は腕を組み、おにこを見返すばかりで終始無言だ。結局、無言の
圧力に負け、おにこは言われたとおり、しぶしぶ『呪』を繰り返しはじめた。

今、おにこが教えられているのは単純な『呪』だ。それも、当人の資質はあまり関係ないごく一般的なものだった。
 やがて、おにこはゆっくりと目を開いた。

「じゃ、上手くいったか確認してみなさい」
紅葉の言葉を受け、ナギナタを片手におにこはがらくたの山をトコトコと駆け上がった。

 ザック、ザクッザックザック……

 そのまま薙刀を使い乱暴にガラクタをかき分け、掘り進む。そして、その中から目的の物を見つけだし、
引っ張りだした。

「あったーーーーーっ!」
 手にしていたのは、例の水を浄化する呪具──壊れかけの浄水筒だった。

 ──紅葉が教えていた『呪』は術者としての資質を問われるような高度なものではなく、ごく簡単な読み書きと
精神集中ができるなら誰でも利用可能な簡易コマンドの
ようなものであった。これは特定の呪具に込められているもので、その道具を見つける時に所有者や捜索者に呪具の
方からありかを知らせるようにできている。

 紅葉はまず、文字や呪文の意味を教えるより先に生きるのに必要な道具を数種類と、その使い方をおにこに
教える事にしたのだ。もちろん、もっと原始的な方法での生き方も教えてはいるが、目の前に利用できるものが
文字通り山程あるなら利用するに越したことはない。今はそれらの最低限の利用方を実践させているのだ。
 やがて、いくつか目的の浄水筒を集めてきたおにこにすかさず──

「なら、次はそれを使って飲み水を作る」
歪んだドラム缶いっぱいに溜まった汚水を指し示し、紅葉は次の課題を与えた。

 鬼子は適当な足場によじ登り、たった今かき集めてきた呪具をばちゃばちゃと水に沈め始めた。そして拙い仕草で
印を結び、たどたどしく言の葉を紡ぐ。

 ぼう、と澱んだ水の奥で梵字がいくつか発光した。それに伴い、暗く沈んだ水の透明度が徐々にあがってゆく。
浄水筒が水中のゴミや不純物を吸収しているのだ。
 が、やがてゴボンとでかい気泡が浮き上がり、汚泥が広がって浄化されかかっていた水が再び濁ってしまった。
「あーーーー───」
おにこが失望の声をあげる。

「やり直し。呪具がちゃんと使えるかどうか状態を見極めないからこうなる」
紅葉は責めない代わりに淡々とやり直しを指示した。それ以上言葉を続けたりしない。
 むーーーっとふくれていたおにこも、言われたとおり使えない浄水筒を引っ張り出すため、澱んだ水に頭を突っ込んだ。
362チリチリおにこ:2012/10/12(金) 23:34:22.33 ID:d3Efqkmu
「んで、教えるのはこンだけかい?他にも色々あンだろうが?」
 嘘月鬼改め浮月鬼がタンクの中であっぷあっぷと苦戦しているおにこを尻目に紅葉に訊ねた。今は小石くらいの
サイズで紅葉の肩の高さに浮いている。
「まずは水と食料。ついで寝場所の確保……はまあ、当面はあれでいいわ。基本的な事を教えるのはそれからね。
 で、こっちも訊ねたいんだけど?」
微動だにせず、おにこから視線だけを隣の鬼に移し、紅葉は話を切り出す。
「あン?なんでぇ?」
そらっとぼけた感じで嘘月鬼は訊ね返す。

「あなた達、あの子の後ろ盾のアテは本当にないの?約束の報酬が空手形というのは勘弁してもらいたいものね」
 報酬の支払いは後払い。そういう事になっているのだ。
「へへへ。そりゃまあ、不安になンのもわかンが、焦ってもしゃぁねぇよ。まずは街に出ても大丈夫なように鬼子を
 仕込ンで貰わなねェとな。心配しなくともしかるべき時が来りゃぁ、本名を明かし、向こうから見っけて貰う
 ようにとり計らうさ。そンでいいだろう?」

 本名を明かす。それだけでも、精査に探しているならば、もしくは各種特徴をしっかり備えていれば見つけられる
可能性はハネあがる。だが──

「でも、問題のお家は断絶状態ではなくて?」
「そこはまあ──おにこほどの血筋ならいくらでも担ぎあげたい分家や傍流はいくらでもいンだろうよ。
 そこに請求すりゃいいさ。連中、喜んで支払うだろうよ」
「…………」

 お家付きの式鬼だったとはいえ、しょせんは鬼だ。人間同士の勢力図など、ピンとこないだろう。
もとより、おにこの家の話などあの家紋を見せられた後も信じてなどいない。

 とはいえ、もしこの話が本当ならおにこを引き取る家にも気をつけなければならないだろう。
血筋を担ぎ上げるならまだしも、家の方針によってはおにこを余所の家へと生け贄同然に差し出す家もあるだろう。
 といっても、その場合、彼女が口を出すのは分を超えている。
 彼女との契約はあくまでも人間社会に戻るまでだからだ。紅葉はふと、思いついてたずねてみる。
「で、アナタはどうするの?」
「あン?オレっち?」
「もし、おかしな家に見つかったら、あの子もろとも消されるわよ?その辺、ちゃんと考えてる?」
「おうよ。オレっちがねーちゃんに仕込んで欲しいのはソコなんさ」
意表をついたつもりだったが、我が意を得たりと答えが返ってきた。
「もし、ヘンな家に見っかっても生き残れンようにさ」
「…………」
ぬけぬけと言い放つ嘘月鬼に紅葉は無言で返した。

「できたーーーーーーっ」
不意に明るい声が弾けた。見ると、おにこがびしょ濡れでドラム缶から顔を出していた。その水は不純物をすべて
吸い出され、綺麗になっていた。

「じゃぁ、その水でお風呂にしましょうか──」
紅葉は今日の「授業」の終わりを告げた。
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  ◇ ◇ ◇
 焼けた石をを放り込んで即席の風呂を用意した後、おにこは待ってましたとばかりにお湯に飛び込んだ。
おかげで危うくひっくり返りそうな程、ドラム缶がぐらぐらと揺れた。

「……で、紅葉ねぇちゃんはまたも風呂、入ンねェのか?」
 湯に浸かり、だらしない顔をしているおにこの横で嘘月鬼は、小石サイズで浮いていた。湯面にプカプカ浮かび
ながらくのいちに尋ねる。

「……忍務中にすることじゃないわね」
 そう言い、手ぬぐいで身体を拭いているだけだった。紅葉はその身体を覆うスーツを片腕だけはだけ、上半身を
湯に浸した手ぬぐいでぬぐうだけで湯船につかるようなことはしなかった。
 暗闇の中に半裸の白い肌が浮かび上がり、片方だけ露出した腕が手ぬぐいを湯に浸しては身体の汗や汚れを
ぬぐいさってゆく。
363チリチリおにこ:2012/10/12(金) 23:35:26.17 ID:d3Efqkmu
「さよけ?でもよぉニンゲンつーのはよ〜こーゆー……何つーの?仲間意識?ってのをツチカウのに
 有効なんじゃネーのか?フロってヤツはよ」
聞きカジりの知識でたずねてみる。

「…………」
 紅葉の武器はいつでも抜刀できる状態のままだ。そして終始無言。あくまでおにこの世話は仕事に徹している。
とばかりにその一線を堅持している。フロに入らず、代わりに身体の汚れを黙々と拭きとっているだけなのだ。

「なんでぇ、まぁだ警戒してやがンのか。おにこのヤツぁ、随分となついてるっつ〜のによぉ」

 それでも紅葉は返事をしない。この調子っぱずれの式鬼にペースを合わせるつもりもない。

「ま、ねーちゃんがそンなつもりならいーけどよ。ちったぁ打ち解けた方がいいんじゃねぇのk……んぶっ!」

 最後はおにこがバランスを崩して嘘月鬼の頭に手をついて、湯にしずめてしまったため、言い切れなかった。
そして、湯から浮き上がってきた嘘月鬼がおにこに文句をがなり立てるのを背後に聞きながら、紅葉は黙々と
身体を拭き続けていた。
────────────────────────────────────────────────────
   ◇ ◇ ◇
──通信ログ──
『もぉ〜〜みっじちゃ〜ん!そろそろ休暇はすっんだっかな〜〜』
「────」
『えっ、なになに、まだ?まだなのっ?!いやいやいや、紅葉ちゃ〜ん、ボクだってそんなに庇える訳じゃないからさ〜
 アルバイトだかなんだか知らないけど、これ以上はさ〜……』
「────」
『え、ホント?やたっそれじゃ、データを転送するからどの仕事を選ぶか……え、早いね。て、これ?コレなの?!』
「────」
『い、いや、せっかくやる気になってくれるんだから、この際ゼイタクは言わないけどさ〜らしくないなぁ〜なんて
 ……あ、いやいや!不満がある訳じゃないよっ!うん。あ、順次調子を上げていくって?!
 うん、それじゃ、頼むよ〜ホントにさ〜〜』
「────」
『じゃ、今回はこの簡単なミッションでいいんだね?なるべく弱くて数が多いの?──ん〜そーいうのは
普通の部隊でもこなせるから、そっちに頼んでもいいんだけど──
──あ、ううん。うそうそ。紅葉ちゃんのたっての希望なら、モチロン大丈夫さ!それじゃあヨロシクね〜〜』
────────────────────────────────────────────────────
   ◇ ◇ ◇
「──はっ?今なんつった?狩り?」
オレっちは思わずオウム返しに聞いちまった。
 おにこの例の赤目変化を自由にコントロールできるようになったのを確認した直後の話だ。って、いきなり何いってんだ。

「戦闘訓練の一環。低級霊クラスの式鬼を狩ってもらうわ。それだけの実力はあるはずよ」

「そらあ、ねーちゃんに出会う前もそン位のたぁやり合ってたけどよ……」
「なら、大丈夫ね。必要ならアナタがフォローしてあげなさい」

 ん〜……まあ、オレっちも久しぶりにゴチソウにありつけそうだからいンだけどよ……なぁんだってぇんだ──?
……とか、思ってたのガ甘かった──
364チリチリおにこ:2012/10/12(金) 23:37:12.35 ID:d3Efqkmu
という訳で「チリチリおにこ」第8話>>360-363を投下したっ

【専門用語解説】
死後の処理:しごのしょり
 大半の一般人は死後、葬式が済んだ後、ほとんどの臓器を再利用として各腑分けされた後、臓物の専用管理会社にストックされる。
 ただし、リサイクル業者にリサイクル料を支払えない貧困層の住民の場合、不法に投棄するしか手がない事も多い。
 その中でも、自身の身体を悪霊に憑依させたり悪用されるのを嫌う者は生前、死亡する直前に聖骸粉や聖水を血管内に
注入する事で自らの遺体を「聖別化」し、悪霊に悪用されないように予防する者もいる。
また、リサイクル業者のやっかいになれない、いわゆる「アウトロー」のような『業』が深すぎて聖別化できない者の場合、鬼に対する「退魔爆弾」等の術式を
身体に埋め込んだり、「魔除け」の入れ墨をいれたりするものもいる。

 また、この時代の人間は総じて薬物の依存度が高い為、遺体は永いこと腐敗することはない。

そのため薬物含有度の低い遺体はリサイクルの処理も簡単に行えるのと自然主義信仰のおかげで、高価な値で取り引きされる。
365チリチリおにこ:2012/10/13(土) 19:34:32.92 ID:84D5ndVQ
  ◇ ◇ ◇
──つって思ってたらあのアマぁ!あにしてくれやがンだっ!

──嘘月鬼は憤慨していた──

 ここは人の気配が全くしねェ廃寺だ。周囲にゃぁ、朽ち果てた寺や仏像がそこかしこに転がってて、かつては整然と
並べられていただろう、石畳があちこち、まくれあがって、ソコから雑草がワサワサ生えていた。

 おにこのヤツぁ、今にも死にそーな様子でナギナタによりかかってやがる。目もうつろで焦点がボヤけてらぁな。
息も絶え絶えで今にも変化が解けそーだ。深紅の目ェは黒くなったりアカくなったりして明滅を繰り返してンし、
あンだけ元気よく散ってた紅葉も途切れがちになってンし。ゼェゼェ息もあがっててメチャクチャキツそーだ。

 無理もねェ。ナギナタがちィっとも斬れねーんだかンよ。戦闘が開始と同時にあンのクソアマ、おにこのナギナタに
 よりにもよって封印呪をかけて消えやがった。今のナギナタぁ、ただのでっけぇ刃物だ。

 どうやらあのナギナタにゃぁ、”魔”が宿ってやがったらしい。そりゃそうだ。やたらと不自然な切れ味だったし、
妙な妖気放ってやがったかンな。アレでただの武器だなンて思っちゃいねーよ。当然っちゃ当然か。
だが、よりにもよって戦う直前にソレを『封印』しちまうたぁ、どーいうこった。今も霊視すっと、ナギナタの周りに
封印術式がまとわりついてンのがわかる。一時的なもンらしいが、そンだけの間ずっと不利な状況でおにこは
戦わされてた。普段なら一撃で断ち切れるザコを延々ドつき倒して弱らせ、オレっちがトドメに喰らうっつ〜
気の遠くなるよーな戦闘を延々と続けるハメになっちまった。オレっちは久しぶりに生きてる式鬼っつーゴチソウに
アリつけた訳だが、味わってるヒマぁなかった。

 はぁ、はぁ、はぁ……ゼェ、ゼェ……ェ、ゼ……ケホッカハッ……

 疲労も極まってンのか、時折せき込むよォに呼吸すっけど、こりゃぁ、そーとーキツそーだなぉぃ。おにこのヤツ。
ぶっこわれンじゃねーだろーな?

そン時、不意におにこの背後にヘビみてェな式鬼が現れやがった。
 ちンけなザコだが、ガキの腕の一本は咬みちぎれるくれェの顎をもってる。それがおにこの背後から襲いかかった。

 やべっ

 「アブねェ、おにこ!」
オレっちはいつものように石の身体でおにこを庇おうとしたが、ちぃと離れすぎてた。間に合わねェっ!
 だが、次の瞬間ンにゃぁ、クナイがソイツの額に突き刺さってやがったンだ。……ちっ、ようやくご登場かよ。
今までドコいってたンだ。

『何してるの。早くトドメを刺しなさい』
ドコからともなく、そンなかンじの冷徹な声がした。
! オレっちはハッとして振り返ったが、何ンのこたぁねぇ、例のクナイは「呪縛」の呪で式神の動きを縫い止めて
いるものの、一時的なもンだった。あと数秒もすりゃぁ、こノ式鬼ぁ元気一杯に『呪』を破り、動き出すってこった。
あくまでも、おにこにやらせるつもりらしい。
 おにこの奴ぁ、かろうじてってかンじで、ナギナタに寄りかかってつっ立っていた。

「はぁ……はぁ、……っ、ちぇ……ちぇぁあぁあぁぁああああああああっ!!!」
 やがて、残りの気力を振り絞り、おにこの奴ぁ、その式鬼に突進しやがった。

 ガキッ ドスッ バキッ ごきっ ガンッ ガンッ!!

 おにこは刃を封じられたナギナタを乱雑にやたら滅多にたたきつけやがる。まるで最初に出会った時みてェだ。
乱雑な攻撃だったが、徐々に式鬼のダメージが蓄積してンのがわかる。

 が、ヤベェ。式鬼の『呪』縛がもう少しで解けるっ!!

 あと一撃、そう、大きく武器をふりかぶった瞬間、おにこの膝がガクンと力を失ぃやがった。くそっ!よりにも
よってこんな時に!!オレっちがとっさに間に割り込ンでおにこを庇おうとした瞬間、尻尾の先端がチクっとした。
次の瞬間、ガクンと体全体の動きが『呪』縛されやがった。
 ! こりゃぁ?!……もしや?!
366チリチリおにこ:2012/10/13(土) 19:35:05.65 ID:84D5ndVQ
 動かねー身体を無理にうごかして振り返ってみっと、あンの定、オレっちの尻尾の先に『呪縛』のクナイが
突き刺さってて、オレっちの動きそのものを『呪縛』してやがった。
あンのアマ、どういうつもりだっ?!
 いや、それよか、このままじゃおにこの奴をガードできねェ!!

「ギィィイイッ!!」
 そンな感じでまごまごしてっと、背後で例の式鬼が『呪縛』を振り切って、おにこに襲いかかるのが聞こえた。

 くそっ おにこ!!
『呪』縛に逆らい、頭を無理におにこの方へ向けっと、おにこの奴ぁ、少し下がってしゃがむ様にしてナギナタに
よりかかってやがった。そのナギナタは斜めンなってて、地面に突き立っていた。
 そして、あの式鬼ンヤツぁ、おにこの頭、ほンの数センチ手前でキョーアクな顎を開いた状態で止まってやがった。
式鬼はナギナタでどタマをぶち抜かれてやがる。

「お……にこ……?」
くそっ『呪』縛のせいでなかなかうまく言葉が出ねェ。式鬼の後頭部からナギナタの刃がにょっきり出てやがった。
おにこはナギナタの柄をしっかり握って敵の式鬼を睨みつけてやが……ンだろう。こっからだと表情がよく見えねェ。

「ギ……ぎ……」
 そンな、呻きとも軋みともつかねー式鬼の声がしたと思ったら、ナギナタに貫かれた式鬼は尻尾からサラサラと
崩れ始めた。

どーやら、ギリの土壇場で、ナギナタの切れ味が復活したらしーな。ヒヤヒヤさせやがって。
式鬼が完全に『無』に還る前に、おにこの奴ぁ、気が抜けたのかゆっくりと前のめりに倒れかかった。

「おにこぉっ!」
 やぁっと『呪縛』のクナイが効力を失い、身体が動くようになったオレっちはおにこに向け、急いで飛ンでった。
 が、地面に倒れそうなおにこを抱き止めたのぁ、あンの腐れくのいちだった。おにこが地面に激突すン前に
『瞬動術』でおにこのすぐそばに現れ、おにこを受け止めた。あいかわらず早ぇ。

……けどよ。
「おい、ナギナタの事といい、今の事といい、いってぇ、どーゆーつもりだっ!?殺す気かっ?!」

 紅葉の奴ぁ、こっちをチラ見すっと、ぐったりして意識があンのかさえ怪しい状態のおにこを抱えあげた。

「甘やかしてちゃ育つものも育たない。それだけよ」
……つまり、これも訓練の一環ってか?!死ンだらどーすンだ。
「死なないように頑張る事ね」
 くっそ ……やっぱ、このねーちゃんにこの話を持ってきたのぁ、失敗だったかもしれねェ……
まあ、選択の余地なンざぁなったンだが……

────────────────────────────────────────────────────
  ◇ ◇ ◇
「はあぁっ? 街へ行くだぁっ?!」
オレっちってば、まぁたスっとんきょーな声を出しちまったゼ。次から次へとあに言いやがる。このアマは。
このねーちゃんがそう言い出したのは今日の訓練が終わった後だった。

「遅かれ早かれ、いずれは街にいくことになる。なら早めにした方がてっとり早い。何を驚く?」
 いつもの携帯食を口に運びながらごく淡々とねーちゃんは尋ね返してきた。

ぐぅ……そりゃぁ……そういったケドよ……
 おにこ自身は携帯食でメシ済ませた後、さっきまで横になってたンだが、オレっちのとんきょーな声にびっくりしたのか、
起き出して近寄ってきた。そしてキョトンとした顔でオレっちらを見上げてやがる。
何のこと話してンのかぁわかってねぇよーだな。

「あー……なンだ。お次はあのキラキラでおべンきょーするってよ」
途端、パァっと表情を輝かせやがった。
「キラキラっ!街っ?!きらきら、きらきら〜っ!」
 今にも小躍りしそうっつか、実際に跳びハネながら、全身で喜びを表現してやがらぁ……あ〜ぁ……
さっきまで特訓で息も絶え絶えだったのがウソみてぇだな。まーメシはしっかり食ったけど。
367チリチリおにこ:2012/10/13(土) 19:36:15.96 ID:84D5ndVQ
「? 何、あなた達、街に行ったことがあるの?」
オレっちはあンまし思い出したくない記憶を刺激され、ぶっきらぼうに答えた。

「まァな。あンときゃえっれぇ〜散々だったゼ……」
ぶつくさ返事するオレっちと……
「キラキラ、きっらっきっら〜」
歌いながら小躍りしているおにこ。その対照的な反応にくのいちのねーちゃんもちぃっとばっかし怪訝そうだ。

「あ〜なんつーか……街にいった早々、バラバラになっちまってな……おにこの奴を連れてくっつ〜なら、気ぃつけた
 方がいいゼ、っつっとく……」

全く、あンときゃヒデー目にあったゼ。まあ、おにこの奴ぁ、いろいろ楽しかったか知ンねーけどな……
オレっちの方はロクでもねー目にしか合ってなかったモンな。

……ン?まてよ……?
 こりゃぁ、ひょっとして……巧くいきゃ、このねーちゃんを振り切れるンじゃね?
 そーだよっ!あン時ゃぁ、気ぃ付けててもオレっちとおにこの奴ぁバラバラになっちまったンだ。
なら、雑踏を利用してこのねーちゃんを撒くこともできンじゃねーかっ?!
 よしよし、そンなら、この流れに乗っかンのも悪くねーよな。このねーちゃンにサバイバルのかてーきょーしってヤツを
依頼したのァ、こーゆーチャンスが巡ってくンのをあて込ンでの事だ。しかし、こうも早く機会がくンたぁな。くひひひ……

「それじゃあ、明日に備えて『貨幣・紙幣』の使い方を覚えて貰うわ。ここにこの前の鬼退治であなたの取り分が
 あるから、それを使って有効な利用方を覚える事ね」
 そういって、紅葉のねーちゃんは懐からいくらかの紙幣と貨幣を取り出した。早速コレで予習をしようってか。

……それにしても……この前のシゴト。おにこの取り分も分けてくれるってか。律儀なこってぇ。ネコババしたり
授業料とかヌかして自分のモノにしたってぇ、おかしくねーってのに。

「見損なわないで頂戴。そんなハシタ金で誇りに泥を塗るようなシゴトはしてないつもりよ」

さよけ。そらあ結構なこって。オレっちはこっそり心の中で舌を出すと、お金の使い方の講義を始めたくのいちと
熱心に耳を傾けるおにこを尻目に、とんずらする算段を頭ン中で練りはじめた────
────────────────────────────────────────────────────
  ◇ ◇ ◇
「──さて……と、だ。準備はいいか?おにこ」
オレっちはいつものちっちぇ火の玉みてーな姿でおにこの肩のトコから確認した。
「うんっ」
翌日、オレっちらはくのいちのねーちゃんに言われた時刻よりも早い時間に、準備してた。準備つっても
あんまするこたぁねェんだがよ。……おにこの奴がハシャいで、いつもよか早く目ぇ覚ましやがったんだ。
よぉっぽどタノシミにしてたらしいな。シバかれまくった昨日の今日で元気なもンだゼ。

 オレっちとしちゃ今からアタマが痛ェってのによ……まあ、上手くすっとあのねーちゃんとも今日限りで
オサラバだしな。セーゼー楽しむといいさ。つっても、そんなこたぁ、おにこの奴にぁ黙ってる。
 なンせ、おにこの奴ぁ、何故かあのねーちゃんの事ぁ信用しきっちまってンからな。素でバラされたらおしめーだ。
 そンな事をつらつら考えてっと、例によっていつの間にか、くのいちのねーちゃんが来てた。

「準備はいいようね?」
 不意に、そンな声が間近で聞こえやがる。ったく、いつもながら、接近する気配がまぁったくしやがらねェ。
さすがは忍だっつーこたぁある。

「ソッチぁ、相変わらず気配が読めねェな……あン?」
いつもの軽口を叩こうとしたオレぁ、語尾が勢いを無くしちまってた。くのいちのねーちゃんのカッコウがいつもと
違ってたかンだ。
368チリチリおにこ:2012/10/13(土) 19:37:00.39 ID:84D5ndVQ
 いつも全身をスッポリ覆ってる戦闘用スーツたぁうって変わって、胸と腰を黒い皮で覆っただけのメッチャ露出の
多い衣装と鋲を打ったレザーのジャケットを羽織ったっつー出で立ちで登場してやがったんだ。
白い肌にえれぇ目立つな。胸を覆うレザーも腰を辛うじて覆うスカートもテッカテカに黒光りしてて、同じ色の
革ジャケットはアチコチ鋲が打ってあって所々キラキラ光ってた。
腕や足、首には邪魔になんねー程度にアクセサリーが巻き付けてあったし、腰のベルトにゃぁ、いくつか小物入れが
ついてンだが……まぁ要はいつもの雰囲気と全然違ぇ。
 だが、肩に楽器ケースらしきもンを背負ってたが、ありゃ、武器のカモフラージュだな。ケース越しにも
あの刀の妖気がビンビン伝わってくらぁ。それにしても……

「へェ……ねーちゃんそンな顔してたンか……」
人間の美醜はよくわかンねェけど、人間基準ならえれェ美人に入ンじゃねェかな。キリッとした目元に引き締まった頬、
すいっと通った鼻スジにスラッとしたアゴのライン。普段は目ェしか見れねェが、見慣れた射抜くような眼光ぁ
相変わらずだ。
ヘルメットに覆われてわからなかった髪の毛ぁ肩の後ろまでストレートに垂らしている。えれー黒くて艶やかだ。
 比較的人間の美醜が分かるだろォおにこが、ぽかーんとしてっとこ見っと、オレっちの見立てもそうズレてねェ
ハズだ。

「街にいくなら、いつもの格好する訳にもいかないでしょう」
 そういうモンかねェ。オレっちにゃぁ、あのスーツ姿でも大して違わねェと思うがな……まぁ、教官のねーちゃんが
そー言うならそーなんだろうさ。教官サマの言うことにゃぁ従わねェとな──
────────────────────────────────────────────────────
  ◇ ◇ ◇
──実のところ、必要とはいえ、紅葉はこの事にあまり前向きではなかった──

 さて……と。しかし、こういう時、街から遠いとメンドクサイものね。何だってこの鬼達はこんな所に拠を
構えているのかしら。ついてないわ。
 それに、必要だとは理解しているつもりだけど、まさかこんな子供の世話を見る事になるだなんて。世は一寸先は
闇ね。あの子の武器はそのままだと危険過ぎるので一応、布を巻いた上で封印を施した。
 今度はいざというときの解呪のキーワードを教えておいたので、この前みたいに抗議をされる事もなかった。
 街とはいえ、小さい子にとって危険な事もあるのだ。自分の身を自分で守るのも訓練のうちだ。
まあ、このコの腕前ならよほどの事がないと問題ないだろう。トラブルが起きないに越したことはないが。

「アナタにこれを渡しておくわ。使い方は昨日教えておいたはずよね。有効に使いなさい」
 そう告げて、例の仕事の報酬のうち、彼女の取り分の半分が入った財布を手渡した。半分とはいえ子供には
過ぎた額だ。もし、言いつけを守らず無為に使うような事があれば、もう一度言い聞かせなおさなければならない。
このコは子供にしては覚えるのが早いし、子供ゆえの素直さもある。
 それでも、お金の魔力というのは簡単に人を狂わせる。しかも、今まであらゆるものに恵まれなかった境遇もある。
思いも寄らぬ大金で正気を失ってもおかしくないだろう。……が、まあ、一度くらいそういう事で自分を見失うのも
教育の一環と考えればいい経験になるだろう。火傷は早いうちにしておくに限る。

「それじゃあ、出発するわよ。ついてらっしゃい」
浮遊する岩の塊のようになった浮月鬼の上におにこがしっかり座るのを確認した後、私は街へ向け、瞬動術で移動を
開始した──
────────────────────────────────────────────────────
369チリチリおにこ:2012/10/13(土) 19:39:01.03 ID:84D5ndVQ
という訳で「チリチリおにこ」その第9話>>365-368を投下したっ

【専門用語解説】
紅葉の遭遇した事件:もみじのそうぐうしたじけん
 彼女が抜け忍になるキッカケになった事件。チリチリではなく、ひのもと鬼子と出会い、共闘したことがあった。
 詳しくは日本鬼子同人誌「おによめ」創刊号「千々に裂かれた心」参照のこと。
 このことにより、紅葉の心境に変化がおき、チリチリに対する態度に影響していることを彼女は自覚してない。
370創る名無しに見る名無し:2012/10/14(日) 11:19:08.87 ID:/mJXGnf1
乙です〜。
ボンテージのきつめSお姉さんハアハア…。
鬼嫁手に入れて無いんだよなぁ…。三次の妻は正確きつめの鬼嫁なんだけど。
371チリチリおにこ:2012/10/14(日) 19:28:00.52 ID:Mih9x3MC
「チリチリおにこ」>>365-368の続きを投下しまスっ
────────────────────────────────────────────────────
  ◇ ◇ ◇
 夕暮れ前に紅葉達が到着したのは山をいくつか越えた所にある、それなりに賑わってる、とある街だった。
それほど主要な都市ではない。どこにでもある大型の街だ。

 嘘月鬼から降りたおにこは、目を輝かせて辺りを見回していた。
嘘月鬼は小さくなって、おにこの耳元辺りで髪の毛に隠れるようにして漂っている。遠目にはイヤリングに見える
かもしれない。
 夕方にさしかかっている頃だろうか。辺りは徐々に薄暗くなりつつあり、夜の街が目を覚まし始めていた。
待の中心街に向かって人の波は移動し、そこからも人々の流れが方々へ散ってゆく。車道は車の他、式鬼がひく
牛車や馬車が往来し、赤や青の鬼火をゆらめかせる提灯型信号に従って減加速を繰り返している。
 足下では主からお使いを命じられているのか、時々子猫くらいの式鬼が何かの包みを抱えて石畳の道の上を
チョロチョロと走り抜けてゆく。行政に制御された式鬼が無造作に投げ捨てられたタバコの吸い殻や空き缶を
拾い集めながら疾ってゆく。夜が近づいていることで街の顔が目覚ましつつあった。

「それじゃあ……と。どこへ行くつもり。遊びに来た訳じゃないのよ」
 紅葉は早速、ふらふらと街の熱気に当てられて歩きだしたおにこのエリをひっつかんだ。
おにこは捕まった事にも気にとめない様子で街の喧噪に魅入っている。
 ここは市場からは少し外れた場所だ。それでも人通りは少なくない。
全身に発光するチューブを埋め込んでチカチカ光るネオン男。耳なし芳一のように全身に術式方術を入れ墨した
術式マニア。逆に貴重な機械をいくつも体に埋め込んでいるマシン・マン。動物が二足歩行しているようにしか
見えないライオン男。雑多な人々が通り過ぎてゆくのを眺めるだけでも眼がチカチカしそうだ。
おにこの視線は道行く人々から街の派手なネオンへとせわしなく漂い、興味が尽きない様だ。ポカーンと口を
半開きにし、自分が首根っこを掴まれていることにさえ気付いていない。紅葉は内心嘆息したが、このままでは
ラチがあかないと判断し、おにこが街の喧噪に慣れるまで近くのオープン・カフェで時間を潰すことにした。

 街の喧噪にさらされた屋外カフェはどちらかと言えば、茶屋といった方が似合う風情のある店だ。
番傘の日除けに緋色の布を敷いた腰掛け。少し早いが提灯が灯されていた。昼間にはサラリーマンや公家連中が
一休みするための休憩所なのだろう。

 人間の店員ではなく、トカゲとも鬼ともつかない小型の式鬼が宙を漂い注文をとりに来た。紅葉は適当に硬貨を
放り、アイスティーを注文。式鬼はコインを両手でキャッチし、コクコクとうなづいた後、さらにオーダーを
とろうとおにこの方にも向かおうとしたが、邪険に追い払った。

 一方のおにこはイスの上にペタンと座り込んだまま、目をキラキラさせ、街と茶屋を仕切る柵によりかかり、
まだ街の喧噪に魅入っていた。
 すると、そのおにこの耳元辺りの髪の毛の中から嘘月鬼がコチラに向かって顔を覗かせた。

「こーなると、おにこのヤツぁ長ぇぞ。どうする?オレっちが見てっから適当に時間でもつぶしてっかい?」
紅葉は冷たいまなざしをこの式鬼にむけた。

「これでも仕事中よ。言わせないで頂戴」
冷ややかに紅葉は返した。
「へェ。その雇い主のオレっちがいいって言っているのにか?」
それを聞いてやや眉をしかめ、ややイラだたしげな表情で紅葉は異を唱えた。

「雇い主?勘違いしないで欲しいわね。アナタは依頼主であって、雇い主ではない」
 その違いは雇い主は従う事を仕事とするが、依頼主は仕事そのものを任せる形をとることだ。
 つまり、結果だけを求めるのであってどんなやり方を選ぶかは依頼を受けたものの裁量だ。
要はこう言っているのだ「わたしのやり方に口出しするな」と。

「うへぇ、おっかねぇ」
口の中で小さく呟くと嘘月鬼はおにこの髪の中に引っ込んだ。
結局、おにこがある程度落ち着くまで紅葉はお茶を二回も飲むことになった──
────────────────────────────────────────────────────
372チリチリおにこ:2012/10/14(日) 19:30:01.80 ID:Mih9x3MC
 ◇ ◇ ◇
「──だからほら、勝手に歩き出さない」
早速、紅葉はおにこのエリを掴んで引き留めた。だいぶ落ち着いたとはいえ、おにこは興味深げに辺りを見回すのを
なかなかやめない。気になったものを目にすると、途端にトテテと、駆け寄ろうとしてしまうのだ。
 おにこはまだ街の歩き方すらよく知らない有り様なので、一瞬たりとも気が抜けなかった。

「あの赤い灯火が点いてるときはまだ危険だから道を渡らない。式鬼車に轢かれるわ──
「ホラ。そこによじ登らない。そこは蒸気希釈の聖水噴射口よ。下手に手を出すと火傷じゃすまない──
「その箱はゴミ処理の式鬼よ。ここで下手にゴミ漁りしようとすると頭からカジられるわよ──
「移動階段ね。この呪具に念を込めただけ式鬼が階段を動かすから込めすぎないように注意して──
「自動扉には結界式と式鬼式があって人間でないあなた達はそれぞれ通り抜けるのにはコツがいるから──
「こういう噴水は障気浄化の為の聖水だから、アナタ達は絶対に近づかない事──それに──」

 紅葉は次から次へと、数歩歩く度に『街を歩くルール』を叩き込み、それをちゃんと守って行動できるか
いちいちチェックを入れた。
 どういう訳か嘘月鬼ならぬ浮月鬼も協力的で、おにこがどう動いていいか判らなくなった時、時折耳元で囁いて
正しい行動を教えるのだった。おかげでおにこは、1・2時間後には街中を歩く分にはそれなりにサマになっていた。
 それでも、目を引くものがあるとスグ気をとられるので危なっかしくて仕方ないのだが──

「──それじゃあ、次は『お金』の使い方の実演ね──財布は持ってきたわね」
いわれて、おにこはゴソゴソと懐をさぐり、財布を引っ張りだし、自慢げに笑いながら紅葉にみえるよう
頭上に掲げた。

「……まず最初のルール。お金を使わない場所でお財布をむやみやたらと見せびらかさない」
 紅葉は嘆息気味に呟いた。──先は長そうだ。

  ◇ ◇ ◇
紅葉の講習は続く──
「さて、お金を使うのはここら辺では、市が基本ね。最初はそこでのお金の使い方を覚えてもらうわ」
 そう言って、紅葉はおにこの手を引き歩きだした──そうしないと、どこへ歩き出すかわかったものじゃない。
機械的に手を引っぱり、おにこは足をもつれさせながらついてゆく。その先にあるのは──

──市場──
 この時代になると、式鬼を細かく制御することにより、大量の在庫管理が容易になった。そのため、売買の規模も
大きく変化していた。
 巨大ショッピングモールの代わりに巨大な市が立つようになったのだ。それぞれの出店には最小限の商品が陳列され、
陳列されている以外の商品が入り用ならば、式鬼が瞬く間に商品を在庫から引っ張り出す。そして、商品そのものが
売れ筋でなくなるとすぐさま、別のものを取り扱うように店そのものが入れ替わってしまう。それだけ、取り扱う
種類と品数が豊富だ。
 そんな市場で、様々な人たちが運搬用の式鬼を従え、または何を買うか思案しながら買い物に興じていた。
 店で陳列しているもの以外の商品も取り寄せようと思えばどの店でも購入できる。が、陳列されている商品が
その店が一番力を入れている商品だ。たとえば、果物が
陳列されてる店でも干し肉を買うことも問題なくできるのだが、果物を買う方が安くて種類も豊富なのだ──

空気にやや抵抗を感じる風雨よけの結界を抜け、一行は市場に入った。
 見渡す限り、様々な商品の見本を陳列した屋台がズラリと並んでいる。
「──さて、それじゃあ、見ていなさい」
そう告げると紅葉は果物を並べている屋台の前にカツカツと踵をならし歩いていった。そこには赤、青、ほか、
色とりどりの野菜と果物が陳列されていて、その前には数体の式鬼が浮いていた。
 その式鬼は猫ぐらいのサイズで、頭部にでっかい昆虫のような一つ目と二本の触手があり、長い毛が生えていて
それが体まで覆っていた。そして、その毛の中から細い手足が伸びていて、だらりと下に垂らしている。
式鬼たちは、周囲を歩く客を眺めながら、触手をゆっくりと上下させていた。
 その式鬼の前にいくと、紅葉はオーダーを出した。
373チリチリおにこ:2012/10/14(日) 19:32:15.17 ID:Mih9x3MC
「りんごを一つ、頼めるかしら?」
 すると、式鬼は頭に生えた二本の触手を紅葉の額にあて、紅葉から「リンゴ」というイメージを探り出す。
 次に、頭上に向け、単眼から光を放った。すると、その光の中に数種類のリンゴと値段が立体映像で表示された。
紅葉はそのうち目の前の一つを無言で指し示す。
 すると、別の式鬼がどこからともなく、表示されているのと同じリンゴを抱えて現れた。紅葉はそのリンゴを
手に取り、軽く一瞥すると……

「これを頂くわ」
そう告げるとコインを放った。宙に舞うコインを別の式鬼が器用にキャッチすると、どこからともなく
「ありがとうございました」と、柔らかい女性の声が挨拶を返した。

 「──こうやって、買い物をするの。やってごらんなさい」
 戻ってきた紅葉は買ったばかりのリンゴを一口かじってみせ、おにこをうながした。
 リンゴを食べる紅葉を見てうらやましくなったのか。
おにこも、トテトテと、同じ式鬼の前に歩いていって、
「りんごーーーーっ!!」
と、元気よく叫んだ。
 式鬼は同じようにおにこの額に向けてヒコヒコと触手をあて……
 次の瞬間、おにこの頭上に夥しい数の「りんご」を表示した。
「ひゃわわわわっ?!」
頭上の視界すべてを無数の「りんご」とその価格が埋め尽くす。どれも「りんご」ではあるが、それぞれ種類や
大きさ、値段が違う。先ほどの紅葉と違う結果におにこは目を丸くして頭上の映像を見上げ、ぽかーんと圧倒されていた。
 背後から珍しく笑いを含んだ声で紅葉が告げる。

「ちゃんとハッキリとイメージしないと、条件にあてはまるりんごがそうやって全部出てくるわよ」
 おにこは頭上の映像に呆然となって見入っていたが、やがて自分の目的を思い出した。そして一つ、リンゴを
適当に選んだ。指でイメージに触れた途端、他のイメージがすべて消え、目の前にはリンゴを持った式鬼がふよふよと
浮かんでいた。
 おにこはそのリンゴを硬貨と交換して、手にとる。

「ありがとうございました」
落ち着いた女性の声がまた挨拶を告げる。パァッとハジけたような笑顔を見せ、おにこは得意げにりんごを掲げながら、
紅葉に駆け寄ってきた。

「合格。よくできたわね」
 心なしか紅葉の声も柔らかそうだ。
おにこはニコっと笑うと自分で──それも生まれて初めて──買ったりんごにかぶりついた──

  ◇ ◇ ◇
「──それじゃあ、次は好きなように買い物をしてごらんなさい。──以前教えたように無駄な物を買うんじゃないわよ」
──二人はりんごを食べ終わると改めて買い物を続けることにした。
「あい──!」
 おにこは片手をシュタッとあげ、返事をすると、元気一杯に市に駆け込んでいった。まだまだ興味が尽きないようだ。
あっちこっちと駆け回っては陳列されてる見本をのぞき込んでは駆けていく。

「さて、お手並み拝見……ね」
 市の中をあちこち走り回るおにこの背中を目で追いながら紅葉はひとりごちた。おにこがどんな選択をするのかで
今後の方針を決めるつもりだった。今まで色々と教え込んできたが、何が大切なのか見極める力が身に付いているか
重要なポイントだろう。ある意味、これはおにこへの試験みたいなものだった。
 もし、無為に無駄遣いをするようなら……

「もう一度厳しく指導しなきゃね……」
さて、どうなるか……紅葉は駆け回るおにこの背中を見ながらひとり呟いた──

  ◇ ◇ ◇
 浮月鬼ならぬ嘘月鬼は密かにとほくそ笑んでいた──

 よっしゃ、とりあえずは順調だな。ここじゃまだ行動を起こせやしねぇが、機会は必ずやってくるにちげぇねぇ。
オレっちとしちゃぁ、あのねーちゃんにできるだけ協力して油断を誘いたいかんな。できるだけ大人しくしてねーと。
後はちっとダケ隙があれば──
374チリチリおにこ:2012/10/14(日) 19:32:56.76 ID:Mih9x3MC
  ◇ ◇ ◇
「──…………」
 紅葉はちょっと絶句していた。目の前には満面に笑顔を浮かべているおにこ。そして、おにこは両手一杯に
携帯食料を抱え込んでいた──
「……おにこ?」
紅葉はこめかみに指をあて、どこか頭痛をこらえるような表情で言葉を絞り出した。
「あい!」
おにこは両手一杯の携帯食料を抱えながら自信満々に返事を返した。
「……それが、アナタの選択なの?」
「あい!」
やはり元気に答えがかえってくる。
 ……確かにこの携帯食は日持ちする。最後の一つまで食べ終える事はできるだろうけど。まさかいくつもある
選択の中からこれだけをこんなに大量にとは。屋台に並べられている食料品は、様々なものが店頭にディスプレイ
されている。選択肢は豊富にあったハズだ。
 それでも、これを──初めて会った時に与えたあの携帯食を買ってきたのだ──それもこんなにたくさん。

「……そう。でも、いきなり両手を塞ぐような買い方は控えないとね」
おにこの頭をなでて、紅葉は言った。

「後で、持ち歩けるようにしないと。それと『まとめ買い』についても覚えなければね」
紅葉はこの少しばかり戸惑う結果にどう判断したものか頭を悩ませた──

 ──結局、買った物はキューブ化することにした。キューブ化とは物質を空間ごと圧縮し、結界に封じ込める
封術である。特定の場所で、少量のチップと引き替えに荷物を封印してもらえるのだ。
市場によっては屋台同士が協力してサービスになっている所もある。(それだけ沢山買ってもらえるからだ)
再び取り出すときには表面にコーティングされている小規模の結界を少し『壊す』だけで元の大きさに戻る。
重さこそ変わらないものの、持ち運びには便利な技術である。
 おにこの両手一杯の携帯食料は一枚の木札のサイズにまで圧縮された。

「それに傷を付けるんじゃないわよ。元に戻っちゃうから」
表面の結界に傷が入れば結界は壊され、携帯食は辺りかまわずにバラまかれることになる。そんな事になってはたまらない。

 おにこは物珍しげに木札状になった自分の荷物をためすがめつしつつ、試しにかぷりと口にしてみた……

 ゴ ツ ン

「ダメだと言ったでしょう」
容赦なく、おにこの頭にゲンコツが落ちた。
「はにゃはらりれりらら〜」
おにこはたまらず目を回す。
 おにこが言うことを聞かないと紅葉は時々遠慮なくゲンコツを落とす。これも教育の一環だ。
これでも「戦闘訓練」の苛烈さに比べるとヌルいほうではあるが……
 ともあれ、おにこは目を回しつつも、紅葉のジャケットの裾をつかみ、千鳥足でついていった。
375チリチリおにこ:2012/10/14(日) 19:35:26.06 ID:Mih9x3MC
という訳で、「チリチリおにこ」第10話>>371-374を投下したっ

【専門用語解説】
市場:いちば
大型店舗は姿を消し、雨風をよける大型結界のなかに無数の屋台を構えるのが一般的な買い物スタイルになっている。
 基本はどの店も屋台の体をなしている。欲しい品物がハッキリしていればどの屋台であっても入手する事ができる。
いわば、屋台型ア○ゾン。
 その正体はホログラフを映し出す式鬼と品物を運搬する式鬼がより集まってできた店舗である。
作中のようなその場で商品を手にする利用の仕方はどちらかといえば少数派であり、自宅のような拠点がある一般人は
必要な買い物はネットワーク越しに行うか、アイコンを入れるボックスに必要なデータをストックしておき、市場の出口で
一度に精算するやり方なども存在する。
376チリチリおにこ:2012/10/14(日) 19:41:38.53 ID:Mih9x3MC
>>370
ネット販売やダウンロード販売もあるヨっ!(宣伝)

……とはいっても、それが無ければ話がマッタクわからんっ!みたいな構成にはなっておりませぬのでご安心を……
 あれば、さらに楽しめ……?ますけど(何故疑問形
377チリチリおにこ:2012/10/15(月) 19:06:58.20 ID:oFc+f9WD
「チリチリおにこ」第11話、>>371-374の続きを投下しまス
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  ◇ ◇ ◇
紅葉は思案していた──おにこに何をどう教えるかを──
 さて……次は教材かしらね。
あの子が読める文字の種類が限られている以上、資料を使うとしたら、画像やイラスト主体のほうがいいだろう。
 ただ、画像のある資料は基本呪具なので、閲覧には多少力を消耗する。一方、紙媒体の場合は情報密度の割には
かさばるが、閲覧するのに体力の磨耗はない。
 指導にはどちらも一長一短で、いっそ実地だけ。という手もあるだろう。その場合、ロープだのクナイだのを
買い込んでおくというのも手ではある。
どうせ、荷物はあの式鬼……浮月鬼といったか──に、持たせるつもりだ。それくらいは協力してもらおう。
 そう考えながら、教材にするものを扱っていそうなエリアへと移動する。
入手するモノそのものがハッキリしていればどの屋台でも入手可能だが、サンプルになる陳列品をみながらの方が
イメージを確実にできる分、効率がいいのだ。
中途半端なイメージのままオーダーすると先ほどのおにこみたいに混乱するだけだ。

 まだ、足下のおぼつかないおにこを引きずるように歩き、市場と市場を繋ぐ橋の上を通りかかった時、
腰の小物入れの中にある通信符に着信があった──

  ◇ ◇ ◇
──嘘月鬼は隙を見いだした──
「……こちら紅葉……あぁ、あなたね──」
紅葉のねーちゃんに通信が入って、おにこから目が離れた。

 よっしゃぁ!こりゃチャンスってヤツだっ!

「おぃ、おにこ。おにこ。おぃって」
オレっちはおにこに耳元で話しかけた。
「ぇう?」
 なぁンかまだ、ラリってンのか?さっき、キッツい一発もらっちまったンだもんなあ。
 オレっちは隠れてた、おにこの髪の中から外に漂いだして、素早く周囲を見渡した。
 ……どうやら、ここは市場から市場へ移動する際の中継点らしい。でっけぇ、歩道橋の上だ。橋の下を走っていンのぁ、
アレだ。「倉庫列車」ってヤツだろう。ここにぁ膨大な在庫があって、それを巨大式鬼が運搬してンだ。
 それぞれ車両一つ一つが式鬼車で、ここから市場の「裏側」に乗り付けて、そっから客のオーダーした商品を
式鬼達が手早く運び出すって手ハズになってンだ。
 そんな鉄道のレールがこの橋の下に何ン十本も走っていやがんだ。丁度、オレっちらの真下にも列車がとまってて、
今にも走りだしやがりそうだ。

 荷台にブツがあるってこたぁ、これは在庫処分ンの車両かンね?こういうのぁ、リサイクルに出されるかもっと
需要のありそーな地域へ送られるらしぃが……よくわかンねぇな。だが、そンなこたぁ重要じゃねェ。
わかってンのぁ、これが、チャンスかもしんねぇって事だけだ。オレっちは素早くおにこの所に戻った。

「おにこ、おにこ。ちょっと面白れぇもンがみれっかもしんねェぞ?」

「へぅ?」
「ちっと、そこの壁ンとこ、登ってみ?」
 ちょっとした手すりでもおにこにとっちゃぁ、立派な壁だが、ナギナタを足場にすりゃ、大した手間じゃねぇ。
 本来なら、このナギナタを地面につき立てたりすりゃぁあ、たちまち切り裂いちまうんだが、今は封印されちまってる。
 つき立てたナギナタを足がかりにして、おにこはオレっちにいわれた通り、うんしょうんしょと手すりの上に
登ってきやがった。
……オレっちが巨大化して押し上げる訳にゃいかねぇ。あのねーちゃんにバレる。

「ふぅわぁぁぁ〜〜〜〜あ……」
おにこは、上に登った後、周囲の景色にびっくりしやがった。
 そりゃぁそうだろう。巨大な橋の長さいっぱいに並んで、走っている線路、その上を往来する巨大な
「倉庫列車」の数々。その景色の両脇に見える数々の屋台が放つ無数の光。さらにその向こうに見える街やビルに
ちりばめられた光……
 それらをイキナリ一望したンだかんな。驚かねーわけぁねぇ。

……が、悪りィが、そンなに観てっヒマはねぇンだ。とっととすませてもらうゼ?
378チリチリおにこ:2012/10/15(月) 19:08:01.53 ID:oFc+f9WD
 ト ン

 オレっちは、おにこを後ろから軽く押した。

「ふぇっ?」
 さっきからゲンコツのせいでふらふらだったおにこは意表をつかれ、アッサリと手すりからおっこちた。
そう、真下に停車している「倉庫列車」の上にだ。

  ボフン
 雨よけの結界を突き抜け、落下したおにこを受け止めたのぁ、ぬいぐるみの一群だった。式鬼を憑依させる目的の
ヨリシロとかじゃねぇ。ふわふわで女の子を喜ばせるためのただのおもちゃのヌイグルミだ。

周囲がパステルカラーで覆われ、おにこは、たちまち
落ちた勢いでぬいぐるみの中に沈んでいった……

 おし、そーすっと後はオレっちだけだな。後ろを一瞥すると、まぁだ、紅葉のねーちゃんは通信中みてーだな。

(へへ、悪りぃなねーちゃん。世話ンなった)

 そー腹ン中でつぶやくと、オレっちはおにこの得物をしっぽで絡め取ると、おにこの後を追い「倉庫列車」へと
ダイブした。

  ◇ ◇ ◇
──紅葉に通信が入った──
 腰につけている小物入れの中に通信符が入っている。それが半テレパシーのような感覚がその事を認識させて
いる。

通信に出る前に何となく相手が誰かは察知できる。
「こちら紅葉。あぁ、アナタね……」
いつもの騒がしい男だ。紅葉は通信符を取り出すと額に当て意識を符にシンクロさせ通信に出た。
途端、頭蓋に調子っぱずれで軽薄な声が響き渡った。
「も〜っみじっちゃ〜ん!とと、あれぇ〜?タクティカル・スーツの反応がないねぇ?」

「っ!……直だとさすがにキツいわね……」
紅葉は先ほどとは違う頭痛でこめかみを押さえる。
「へっ?一体、なになに?」
「……なんでもないわ」
 紅葉は努めて平静に返した。

「……で、何?今日はオフのはずでしょう?」
「あぁっそうだそうだ、そうだった!ソコを押してお願いしたいんだよ!どーしても引き受けて欲しい仕事がっ」

「そのうちにね。それじゃ」
 すげなくそう告げると通信を切ろうとする。
あわてて押しとどめる声が響いた。
『ちょ、ちょ、ちょっと、ちょっと!そりゃないよっ、これまで色々と便宜を図ってあげたでしょ?!』
 声にいつもの余裕がない。

「今、取り込み中よ。他の日程じゃ駄目なの?」
いつになく緊迫した様子に紅葉は訝しげに尋ねる。

『特殊研究エリアで暴走事件が発生したんだ。中型式神が制御を離れてしまってて、今だんだん力を蓄えている
 最中でさ、ヒトタビこれが一度暴走したら、一般にヒドい被害が出るって予想されるのさ。一応、結界で囲い込んで
 隔離はしているんだけど、呪力強度によっちゃアッサリと結界を破ってしまう可能性が高くてね』
 珍しく普段のオチャラけた様子もなく、深刻な内容を焦った様子でまくしたててくる。

「……そう……」
 こういった類の尻拭いは割とよくある仕事の一つだ。中型〜大型の式鬼が暴走。秘密裏に事態を処理しては
性懲りもなく同じような研究を繰り返す。
 こういう稼業だとはわかってはいても、内心ため息が出る。それだけに稼ぎがいいので、そう文句もいえないのだが。
379チリチリおにこ:2012/10/15(月) 19:09:34.31 ID:oFc+f9WD
「それで、力を溜めているっていったわね?対象は『さなぎ』状態なの?」
 すぐに返答がある。
『そうだよ。そんで、中の呪力が少しずつ上昇していってるんだ』

──『さなぎ』状態なら式鬼本体を処理するのは難しくない──

「で、羽化した場合の式鬼の予想強度と日時は?」
 『さなぎ』の状態の時点で、「羽化」した時の強さと羽化する時期はある程度予想できる。

『予想呪力強度はLv_B。予想時期は明日。だから緊急なんだって』
 呪力強度としては高い方だが、大型式鬼としては弱い方だろうか。羽化予測日が明日なら、あまり悠長に構えて
いられないのは間違いないようだ。

『だから頼むよ〜これを何とかできそうなのは紅葉ちゃんだけなんだからさ〜』
「……」
 紅葉は黙考する。その程度の式鬼ならば、今まで幾度も処理してきた。それに、もし今日中に目標地点に到達できれば
『羽化』前の式鬼を処理できる。ただ、『羽化』直前という事は、攻撃を仕掛けた場合、中途半端な状態で式鬼が
覚醒する可能性もある。それに『羽化』前の状態の式鬼は無防備だが、大抵、中型以上の式鬼には周囲を守る
『眷属』がいる。
「…………」
 そこまで考えて思い浮かんだのはあの子達だ。
もちろん、他に教えなければならない事も色々とあるが、こと『戦い』に関する能力としてはこの位を凌げられれば
合格点だろう。肝心の式鬼は紅葉自身で処理しなければならないだろうが、雑魚の眷属のつゆ払いにはなるはずだ。
この前の戦いぶりなら心配はない。

「いいわ。その忍務、引き受けましょう」
『ホントかい?そりゃ助かる!!
 それじゃあ、早速ミッションデータを転送するから。準備が整い次第出撃してちょうだい!』
 そういうと気がかわらぬうちにとばかりに通信が切れた。

「仕事が入ったわ。あなた達にも手伝ってもらうから……」
紅葉は通信符を腰の小物入れにしまい込みながら振り返ったが、言葉が途切れた。

 どこにもおにこ達がいなかったからだ。手すりの上にキューブ化した携帯食料がぽつんと取り残されていた。
380チリチリおにこ:2012/10/15(月) 19:11:27.82 ID:oFc+f9WD
という訳で、「チリチリおにこ」第11話>>377-379を投下したっ

【専門用語解説】
聖骸粉/仏舎利:せいがいふん/ぶっしゃり
 3等級以上の『聖人』の遺骸をミイラ化処理をし、粉末にしたもの。または、同等の「神聖さ」を持つように「聖別」処理された粉末。
仏舎利は、仏の遺骨を粉末にしたもので仏門系であるというだけで基本効果は同じ物。
用途は様々だが、作中では「悪霊よけ」の為、生前自らの身体に注入し、死後、遺骸を「聖別化」する事に使われていた。
比較的安価に入手できるが、まがいものも多い。
381チリチリおにこ:2012/10/16(火) 20:24:18.51 ID:cHU9gp/L
そんな訳で「チリチリおにこ」>>377-379の続きを投下しまスっ
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  ◇ ◇ ◇
 ガタン……
式鬼の「倉庫列車」が一度大きく揺れて動き出した。
ガタン……ゴトンガタン……
 一度走り出すと、列車は徐々に加速してゆく。その列車の一室、倉庫内。
赤、青、黄色……様々なパステルカラーに彩られている犬や猫、うさぎなどの様々なぬいぐるみの山がモゴモゴ動いた。
 「ぷはぁっ」
折り重なったぬいぐるみの下から出てきたのはおにこだ。
「おっ、ソコに居たか。おにこ、早くコレとってくれ、今にも沈んじまいそーだ」
 そう声をかけた嘘月鬼はおにこから少し離れたところで動けないでいた。
ナギナタが自重でぬいぐるみの間に沈み込みそうなのだ。嘘月鬼が尻尾を巻き付けて沈まないようにしているものの、
上から落ちてきた時の勢いでどこかに引っかかってしまったのか、今以上には持ち上げられなくなっていた。
この狭いスペースじゃ巨大化してぬいぐるみをおしのける訳にもいかない。

おにこはあわてて、ぬいぐるみをかき分けるように近づくと、一緒になってナギナタを引っ張った。

 す ぽ ん

少し間抜けな音がしてナギナタがすっぽ抜けた。
 おにこは勢い余ってふっとび、あやうく、また背後のぬいぐるみの山に埋もれる所だった。

「ふぅ。なンとか上手くいったか」
嘘月鬼は息を吐いて頭上を見上げた。「倉庫列車」はすでに走り出しており、先ほどの景色とは違う。
星空が頭上に広がり、両脇をものすごい早さで木の影や橋や建物の影が流れていく。

「もみじ?」
 おにこはキョロキョロと周囲を見回して、あのくのいちの姿を探した。まだ状況を把握できていないようだ。

「あー……ンとな。おにこ」
 嘘月鬼はどう切り出したものか言い淀んだ。生来の嘘吐きの気性がムクムクと頭をもたげてくる。適当な嘘を
吹き込んでおいて、おにこを宥めればいいではないか。脳裏をチラリとそんな考えがよぎる。だが、前回はそれで
失敗したのだ。
 しっかり事情を話さず適当に済ませたため、不用意に紅葉とおにこが遭遇してしまった。危うくおにこは首を
叩き斬られる所だったのだ。もう、同じ過ちを繰り返すのは避けたい。
「あのな。おにこよぉ……」
 嘘月鬼はその名前にもかかわらず、おにこに今回の目論見を正直に話し始めた──

  ◇ ◇ ◇
 ──嘘月鬼は今までになく困惑していた──
「倉庫列車」はじゅんちょーに走り続けている。ケドよ……

 ガタンゴトン……ガタンゴトン……

ケド、おにこの機嫌はゼンっゼンじゅんちょ〜じゃなかった。

「ぶ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
おにこヤツぁメッチャふくれっツラ作ってて、これ以上ないくらい不機嫌で、しかも機嫌を直してくれなかった。

いっくらを言葉を言い含めても頬をふくらませ、ツンとそっぽを向いたまま、座りこんで動こうとしやがらねェ。

 いけねェやな、どうにも。なンだってンな事になっちまったンだ?

 プシュー……ガタン……ガタン……

やがて、「倉庫列車」減速し、揺れが緩やかになっていった。
 お、どーやらどっかにたどり着いたらしーな。
382チリチリおにこ:2012/10/16(火) 20:25:03.80 ID:cHU9gp/L
「なぁ、おい。おにこぉ。イイカゲン、機嫌直してくれよぉ。そろそろ降りねェと、式鬼どもに見つかっちまうゼ?」
 そういってもツンとそっぽを向いてガンとしてこっちを見やしねえ。
やれやれ。でも、このままだと、俺たち見つかっちまう。

「あのな、おにこ──」
そう言いかけてオレっちは言葉を飲み込ンだ。

 ……あ〜〜ぁ、ちぃっと、遅かったようだ……

 ギィッ ギィッ
  ギャッ ギャッ ギャッ

 周囲を見回すと、オレっちらは無数の式鬼に囲まれていた。あの屋台の所に居たのと同じ式鬼達だ。
……っつーことは、今、到着したのぁ、どっか別の市場か。コイツらは、新しい屋台の式鬼達だな。
商品を取りに来たってトコだろう。
……って、そンな分析をしている間にオレっちらはアッサリと、とっ捕まって「倉庫列車」からツマミ出されちまった。
 アッっちゅ〜間に持ち上げられ、手近の路上にポイっと放っぽり出された。

「ほれみろ、ヤッパ放り出されちまったじゃねーか〜」
オレっちはわざとらしく大仰にため息をついたが、おにこのヤツぁノってこねェ。
 ふくれっ面のまま、尻についたホコリを叩くとそっぽを向いて、ナギナタ抱えて無言で歩いていった。

「………………」

はぁ、コイツぁまいった。

「なぁ。おにこぉ。オレっちが悪かった。だから機嫌直してくれって。な?」
 必死に宥めンだが、ちぃーとも効果がねェ。いってぇ何ンでこンな事になっチまったンだ?
 つっても、コレ以上あのくのいちと一緒にいる訳にゃぁいくめぇ。所詮、オレっちらとあのねーちゃんは
住む世界がちげぇンだ。だったら、ちぃっと荒療治だが、今ンうちにスッパリとサヨナラしちまったほーが
いいってのぁ間違いねェ。

……とはいえ。はぁ。オレっちはこれからどーすりゃイイんだヨ……

  ◇ ◇ ◇
──紅葉は苦々しい思いでそれを見ていた──
 手すりの上にはキューブ化処理がほどこされた携帯食料──
それがポツリと忘れ去られたように残っていた。
「…………」

やられたわね──
 紅葉は不本意だがそう認めざるをえなかった。。用心していたはずだった。前回、前々回と不覚を取った相手だ。
決して気を抜いていい相手では無い。にもかかわらず、用心していたつもりがまたもや隙を突かれた。
 手すりに駆け寄ったが、ここから飛び降りたとしたら、下には「倉庫列車」があったはずだ。だとしても、
随分と前に走り去っただろう。今はレールが続いているだけだ。もっとも、こちらも手を打ってないわけではない。

 緊急の仕事が入っている。そうそう時間を無為にはできない──
 紅葉は効率的に動くべく、速やかに行動を開始した──

  ◇ ◇ ◇
 ──嘘月鬼は手もないのに頭を抱えていた──
──結局、市場の喧噪もにぎやかさも、おにこの機嫌を直す役には立たなかったのだ──
 人の波をくぐり抜けるように歩くうち、あたりは人気がだんだんと少なくなっていった。市場から離れているのだ。
周囲は少しずつ人が住む為の空間──住宅地へと向かっているようだ。
 コンクリートの建物がまばらになり、何も使われてない空き地、誰も遊んでいない公園、貯水池や誰も住んでいない
廃屋、人が住んでいるだろう長屋、神社の鳥居の前──街の中をさまよい、そんな景色が現れては通り抜けていく。
 ブロック塀やコンクリートの建物は数が減り、護符や結界で各所を補強した木造の平屋が目立ってきた。
383チリチリおにこ:2012/10/16(火) 20:25:52.16 ID:cHU9gp/L
いくつもの景色を通り抜けながら嘘月鬼はひとりごちる。
 ──おにこのヤツぁ、紅葉のねーちゃんの事ぁよっぽど好いていたンだなぁ──
 嘘月鬼は言葉にせず、嘆息した。気まずい空気はさっきよりも悪くなっていた。おにこが「帰る!」と叫んだ時、
嘘月鬼があのねぐらに戻る事を拒否したのだ。

 当然だ。折角、あのくのいちを振り払ったのだ。元の拠点に戻ってはち合わせしては意味がない。第一、現在位置が
ドコなのかわからないのだ。その事を説明し、どうせ似たような廃棄場所は他に幾らでもある。
そこに移り住もうと説得したが、ヘソを曲げたおにこには逆効果だった。

 今もおにこはプンスカ腹を立てながら、ズンズン歩いていく。嘘月鬼はその後ろをしぶしぶ飛んでいった。

 ──やれやれ、でもまー暫く歩いていればそのウチ、足が疲れて止まンだろ──
 嘘月鬼はうっそりと考える。おにこだって、いつまでもダダをこねている訳にはいかないハズだ。
 ──それに、空腹になりゃ、イヤでもなンとかせにゃならねェし、金だって、いつかは無くなっちまう──
 ──いや、その前に眠くなンのが先か。まあ、今日は諦めるとして、本格的に動くのぁ、明日から……だな──
 ──それまでにァ、ひン曲がったへそが元に戻ってりゃぁいいケドよ──

 嘘月鬼はヘソを曲げてるおにこの事をとりあえず置いといて頭の中でこれから先のことを色々と考える。

 ──まあ、あのねーちゃんの教えてくれたこたぁ、結構役に立ちそうだし、今までよか上手くできンだろ──
 ──ん〜オレっちもおにこも「食いもン」の心配は当分なさそぉだが、早めになンとかするに越したこたぁねぇしな──
 そこまで考えて何かが引っかかった。

 ──ぁん?なンだ?なぁンか重要な事ぁ忘れてねーか?
 ふと、考えている途中にどこか齟齬のようなものを感ンじる。なンか、重要な見逃しをしているかのよーな……
 気が付くと、先を歩いていたおにこが立ち止まってブスっとした顔でコッチを見てやがる。
いけね。考えごとに没頭するあまり、付いていくのを忘れちまってた。 あわてて飛んで追いつくと、おにこはプイと前を
向き、またペタペタと歩きはじめた。やぁれやれ──

 ◇ ◇ ◇
 ──気まずい時間は唐突に断ち切られた。横からかけられた聞き慣れた声によって。

「自由時間はおわりよ。気が済んだ?」
涼しげで凛とした声だった。
「紅葉!」
 おにこが振り向いた先には誰もいないコンクリートの壁しかなかった。一見した限りでは。

 ジジ……ブブブブ……パチ……パチチッ

 やがて、空間に火花が散り何もないはずの空中にノイズが走ったかと思うと、ぼんやりと人影のような
ものが浮かび上がった。そしてぼんやりとしたノイズの集まりは次第に輪郭がハッキリし、人の形を成した。

 いつものタクティカルスーツに身を包んだくのいち、紅葉だ。スーツの機能で周囲の景色にとけ込み、待ち伏せしていたのだ。

「忘れた?言ったはずよ。あなたたちがどこへ行こうともその気になれば、いつでも見つけられると──」

 紅葉の台詞は途中で遮られた。おにこが紅葉の腰にとびついたからだ。
「もみじ、もみじ、もみじ!もみじ〜〜〜!」
おにこの嬉しげな様子に逆に面食らったのは紅葉だ。
「な、なに……おにこ……?」
紅葉はおにこの反応に戸惑い気味だ。その後ろからホッとしたように嘘月鬼の声がした。

「や〜れやれ、やぁっと、機嫌直しやがった。しっかし、ずいぶんと慕われてやがンなぁ。紅葉のねーちゃん」

 笑いながら腰にしがみついてくるおにこを持て余しながら紅葉は自分がどう返事をすればいいか分からないようだった。
384チリチリおにこ:2012/10/16(火) 20:26:33.97 ID:cHU9gp/L
  ◇ ◇ ◇
「──仕事よ」
あの再会から間もなく──
 紅葉はおにこに、『仕事』の手伝いをするよう、おにこと嘘月鬼に言いつけたのだ。

 ──制御を外れ暴走した大型の式鬼を退治する──

 簡単に言えば、そんな仕事だ。
一行は手近にあった神社の階段で打ち合わせをしていた。紅葉は、入り口の鳥居の柱によりかかり、
受けた仕事の忍務データを右腕の手袋型デバイスで空中に投影していた。
 右の手のひらから光が投射され、立体映像がリアリティをもって空中に映し出されている。
おにこは石組の階段を数段上った所に座って紅葉の横顔を
ポケッと眺めている。嘘月鬼はいつもの小さな小石くらいの大きさで、おにこの肩の辺りをふよふよ漂い、話を
聞いていた。

「おいおい、オレたちゃぁ、そンなデカブツなンか相手にしたこたぁねーぞ?つーか、鬼とはいえ、年端も
 いかねぇガキにゃぁ、無茶っつーヤツじゃねーか?!」
嘘月鬼は当然ながら渋い反応をした。

「あなた達に戦力なんて期待してないわ。でも、この戦場に生き残られれば、戦闘力としては合格ね。だから生き延びなさい」
紅葉はにべもない。
 右腕の光から投影されている映像は、空中に今後『羽化』するであろう式鬼の予想された姿を立体で表示している。
どうやら巨大なヤゴを甲虫にしたような姿をしているようだ。足の代わりに六本の腕が生えている。隣に比較として
人型のスケールが表示され、一緒にくるくると回転している。隣には同時に出現すると予想されている、式鬼の分身
『眷属』も一緒に表示されていた。『眷属』は蚊とも蜂ともつかない姿をしている。
おにこ達はこの『眷属』から身を守ることができるかが今回の課題だった。陽動、もしくは囮ともいえる。
『眷属』だけならば、おにこと嘘月鬼のコンビでもしばらくは持つはずだ。
 その間に紅葉が『本体』を叩くのだ。
 が、
おにこはよくわかってない表情で、その映像を眺めていた。難しい話は嘘月鬼の担当だ。

「んで?その式鬼はドコにいやがんだ?とっとと済ませてしまおうゼ」
面倒事は早めに片づけるに限る、とばかりに嘘月鬼はざっくばらんにたずねた。
その質問に紅葉は投影し、標示されているデータ情報をそのまま読み上げた。
「火山研究エリア。元・青木ヶ原樹海」

  ◇ ◇ ◇
──青木ヶ原樹海──
 かつては緑深い森だった。が、『大災害』の際、地下火山が活性化。周囲は地獄と化した。地下のマグマが大量に
流れ出し、地表は焼き払われ、地面は隆起し、複雑な地形を形作った。
 今では複雑に『火の谷』が枝のように張り巡らされ、『火の川』がその合間を流れているという、凄まじい状態に
なっている。現在は立ち入り禁止区画に指定され、表向きは火山などを研究する施設があることになっているが、
その実、裏では表沙汰にできない研究が日々行われていた。

「──とはいっても、ここに直接人が来る事はないようね」
 身軽に体術で次々と岩を飛び越え、時にはマグマに浮いた岩さえ足がかりにして進みながら紅葉は誰にともなく
説明する。

「……で、そンな所だから、秘密裏にデカブツを育てちまって手に負えなくなって後始末に困っちまったと……
 はぁ〜〜ぁ、人間ってヤツぁいつもヤるこたぁどっかヌケてンなぁ……」
 おにこを頭にのせて、ふよふよ飛びながら嘘月鬼はあきれたように頭を左右に振った。
 おにこは、目の前の景色に圧倒されているようだ。しっかりと嘘月鬼のツノを掴み、あちらこちらに視線を
さまよわせている。

 周囲は常に赤く彩られ、赤熱した石の放つ熱と明かりで照らし出されている。その中でも比較的温度の低い
溝の中を進んでいた。
ぐねぐねと曲がりくねった溝を進むうち、やがて空間を封鎖した結界にたどり着いた。
385チリチリおにこ:2012/10/16(火) 20:27:12.16 ID:cHU9gp/L
「ここね……」
 正面には青白いオーラを放つ透明な壁が行く手を阻んでいた。よく見ると表面を複雑な術式が広がり、揺らめいている。
遠くから見たときは青白い光の柱に見えていた。
「あれか。例の式鬼を封じ込ンでいる結界ってのぁ」

紅葉は隠しから自在符を取り出した。手のひらサイズの長方形のディスプレイだ。
「入るわよ」
そう言うと、あらかじめ受け取っていたデータを自在符に転送する。すると真っ白な符の表面に文様と魔法陣が
浮き上がり、結界に対する手形となった。
 この符を手にしていれば、結界に入る事ができる。
「さあ、いらっしゃい」
 そう言うともう片方の手を差し出した。
結界を抜けるときに接触していればいっしょに通り抜けられる。
「なんでぇ、ソレがねぇと通り抜けれねぇのか」
「言っておくけど、入るときと出るときは必要なデータが違うから、変な事は考えない事ね」

「わかってるって。モウしやしねーよ」

 おにこをのっけたまま、嘘月鬼がよりそった。紅葉は式鬼の上に乗っているおにこへチラリと視線を向ける。
(この娘……今度はどこまで頑張れるかしら……)
おにこのここしばらくの伸び具合は目を見張るものがある。
 一時的な教官として教えているが、こと戦闘に関して、なかなかのセンスを感じる時がある。おにこの成長は時に
紅葉の予想を超える時があった。できうることなら、この娘と鬼子との関連性を調べてみたいし、弟子として
本格的に鍛えてみるのも面白い。

──そんな事を考えながら、紅葉は月の表面のような嘘月鬼の身体にぺたりと手をつき、結界を通り抜けた──
386チリチリおにこ:2012/10/16(火) 20:33:14.19 ID:cHU9gp/L
そんな訳で「チリチリおにこ」第12話>>381-385を投下したっ

【専門用語解説】
障気:しょうき
 式鬼が吐き出す排気ガスのようなもの。出力の高い・高性能な式鬼であればあるほど、高濃度の障気を吐き出す。

 濃度が高い程、人には悪い影響がでるため、式鬼を憑依させて動かす『人工臓器』は高性能であってもあまり推奨されていない。
常に大量の式鬼が働いている市街地では常に大量の障気が発生しているが、恒常的に障気を浄化する設備が様々な方法でもって
稼働しているが、なかなか安全値には到達しない。
また、怨霊を祓った直後にも観測されるが、因果関係は明らかになっていない。
嘘月鬼はこれを活力源として吸収できるが、普通の式鬼はそういったことはできない。
─────────────────────────────────────────────
……ところで、もうそろそろ容量が限界っぽいんでスが……(現在496KB)
この話はあと4話くらいかナー?ちょっと足りないかも……
387創る名無しに見る名無し:2012/10/16(火) 22:12:58.84 ID:iEkGFzGh
うちの表示だと497kだなぁ

新SSスレ
【長編SS】鬼子SSスレ6【巨大AA】
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1350392802/
388チリチリおにこ:2012/10/17(水) 21:37:51.41 ID:Yme6J3bG
>>387 スレ建て乙!早速向こうに投下しました〜

「チリチリおにこ」第13話っ
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1350392802/6-10
389おにテトの人 ◆OniTe.TFqo :2012/10/18(木) 22:11:12.09 ID:Yt2M32lA
「もう二年か」テトが切り出した。
「二年ですねぇ。」鬼子が答える。
「色々あったような気がするし、なかった気もする。一番最初が大変だったか。」
「あの挨拶の時ですね。何と言うか。」
「気にするな。あいつらが悪いんだし。」

鬼子は子供たちがいる部屋をちらりと見た。ピンクや青緑の髪の子供達がヤイカガシ達の上に乗ってお馬さんごっこをしていた。
町の事務所で鬼子を紹介した後テトは健音テイを迎えに行ったが、事務所に戻った時にはヤイカガシ達が暴れまくっていた。
事務所には10代後半〜20代前半の少女が数多く居り、それなりに狭隘であったから連中にとってはいい目標となったのだった。
その騒ぎは小日本によって鎮圧されたが、鬼子は平謝り状態だった。

「でも、本当に済みませんでした。」
「気にしなくてもいいって。あれであいつら相当の代償を払わされたんだし。」

子供部屋の空気が一瞬凍りついた。勿論凍りついたのは5珍獣たちである。
あのあと小日本が持参した小型の籠に纏めて詰め込まれた揚句に「黒ひげ脱出ゲーム(但し脱出不可能)」の種にされたのだから無理はない。
何しろ最も大人しい雪歌ユフが完全にキレた位だから後は推して知るべきである。


そんなのほほんとしたシーンに似合わない連中がテトの家に向かっていた。
鎧武者に率いられた真っ黒な軍団。

だが鎧武者は側近の一言を聞き、鷹揚に頷くと配下の者共に下知を下した。
「もうスレが終わるから撤退する。」

出不将は颯爽と言い放つと踵を返して元来た道を引き返した。
黒い軍団も後に続いた。
390おにテトの人 ◆OniTe.TFqo
>>389の続き
こうして鬼子たちの知らないうちに危機は回避され、
出不将は数少ない出番をさらに減らされるのだった。

SSスレ5版最後の物語 終わり