>>1乙! これで安心して続きを投下できる。アリガタイ! そんな訳で「チリチリおにこ」続きを投下しますっ
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◇ ◇ ◇
結界の向こうは今までと大して変わらない光景が広がっていた。溶岩の流れや赤熱した岩の光に照らし出され、
ぼんやりと浮き上がるごつごつとした岩々。
相変わらずな地獄のような景色を見回しながら、嘘月鬼はたずねた。
「……で、そのでけー式鬼はドコにいやがんだ?話からすっと結界の真ン中にいンだろーがよ」
だが、嘘月鬼の気楽な様子に反して紅葉の様子がおかしかった。今までにない緊張感を漂わせている。
「なんて……なんて事っ、これは……っ!」
今までの冷静な様子とは打って変わって尋常ではない雰囲気だ。
そして、やにわにヘルメットのバイザーを慌ただしく操作しだした──
◇ ◇ ◇
紅葉は結界を抜けた途端、背筋を走り抜けるおぞけ……いや戦慄を感じた。
空間を満たす気配が尋常ではなかったからだ。この空間に居座る敵の強大さが肌で感じられた。
──これはレベルBどころの強さではない!──
気の迷いかと念のためバイザーを操作し、呪力濃度を測定する──
──間違いない。尋常ではない呪力と障気だ。最低でもレベルA、下手するとそれ以上の難敵だ。
自分一人ではいかようにもなる。が、ただでさえ苦戦する相手に足手まといまで引き連れている状態で挑むのは
自滅行為だ。
紅葉の決断は早かった。手元の自在符に結界から脱出するための手形データを転送し、脱出用の結界手形に
変更させる。これでこの符を持てば結界を抜け出せるはずだ。
「……状況が変わったわ。アナタ達は今すぐここから脱出なさい」
「あン?いってぇ、どういう事だ?」
浮月鬼が状況が読めないとばかりに聞き返してきた。
「事前情報が間違ってたわ。敵の強さが想定外よ。あなた達には荷が重い」
このコ達には追跡符の仕込んだ財布を渡してある。今も持っているはずだ。この前のように追跡して
合流するのは難しくない。
「とりあえず、私は忍務を済ませてくる。アナタ達は帰って休みなさい」
そう言うと、データを変更して手形にした自在符を浮月鬼に投げて渡す。岩の式鬼は投げてよこされた自在符を
いつものように器用に尻尾でキャッチした。
「その自在符を使えばこの結界から脱出できるはずよ」
「そらあ、オレっちらはそれでいーけどよ。姉ぇちゃんはどーすンだ?予想よか、厄介なヤツなンだろ?」
「……私一人くらいどうとでもなるわ。そんな事より、アナタこそ、その子をしっかり守りなさい」
「あ、あぁ」
おにこはキョトンとした顔で紅葉と嘘月鬼のやりとりを見守っている。
「へっ、オレっちの逃げ足は姉ちゃんも知ってンだろ。ソの心配は無用さ」
「……そう、なら行きなさい──」
紅葉は二人に背を向て、瞬動術で飛び出した──
◇ ◇ ◇
──紅葉は崖の上から結界の中央に居座る式鬼の繭を見下ろしていた。周囲は切り立った崖で囲われている。
眼下は無数に流れる溶岩流があった。アチコチに地面が顔を覗かせているものの、崖の下の地面は煮えたった溶岩が
幾重モノすじとなって常にドロドロと流動している。
その中央に孤島のような溶岩の切れ目があり、そこに5メートルはあろうかという巨大な繭が鎮座している。
その繭は周囲の溶岩に根を張るように触手を伸ばしていて、まるで溶岩から栄養を得ているようだ。
そして繭自身は鼓動するように蠢動を繰り返していた。半透明の薄い膜の向こう側では式鬼の本体が蠢いている。
羽化は間近のようだ。
という訳で、「チリチリおにこ」第13話
>>6-9を投下したっ
【専門用語解説】
屍体回収業者:したいかいしゅうぎょうしゃ
リサイクル業の一環。名の通り、死体を回収し、再利用できるように処理する業者。
『死者』の中には、生前、悪霊に身体を憑依されるのを嫌って「聖別」したり「対悪鬼術式」等を身体に埋め込んで
いたりする為、処理の大半を人力で行う事も多い。
術者が簡易式鬼を呼び出し処理を行うが、屍体に触れ、式鬼が消滅すると、その屍体は「聖別」化されているので、
後の処理は人力でしか行えない。
そういった事情で、不法投棄された遺体に関しては式鬼で回収を行う訳にもいかず、仮に出したとしても回収率は低い。
回収された遺体はニーズに合わせて処理され、各臓器は培養層にストックされる。骨組みや筋肉等も式鬼のヨリシロの
材料として利用され、脳組織も『呪言補助プロセッサ』として、フォーマットされ保存される。
特に心臓に関しては人格が残留している可能性が高いため、特に綿密に処理される。
【専門用語解説】2
防霊処置:ぼうれいしょち
基本的な建築物の殆どにこの処理が施されている。霊的な非実体存在が通り抜けられないよう処理されたモノ。
ただし、完全ではない。完全を求めるなら、さらに厳重に処置が必要である為、値段も相応にかかるようになってくる。
高レベルの式鬼程、こういうものをすり抜ける事に長けている為、政府高官などは乗り物や建物には信じられない程
、
防霊処置に金をかけている。
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今確認したら、ゼンブで15話なので、残すところあと2話だっ!