ロリショタバトルロワイアル25

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1創る名無しに見る名無し
本性を晒け出せ!
衝動をぶち撒けろ!
欲望を解き放て!
情熱を、燃やせ!



ここは真性の漢共(女性可)が集まり、
ジャンルを問わないロリショタキャラでバトルロワイアルを行う、
あまりにもCOOLなスレです。
紳士淑女の心を忘れず冷静に逝きましょう。

前スレ
ロリショタバトルロワイアル24
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1244971036/

テンプレ、過去ログは>>2-8辺に
ロリショタロワ避難所(したらば)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/12693/
LSロワお絵描き掲示板
ttp://oekaki2.basso.to/user11/hisou/
LSロワお絵かき掲示板2
ttp://bbs2.oebit.jp/LoliSyotaRowa/
まとめwiki
ttp://www25.atwiki.jp/loli-syota-rowa
2創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 23:18:40 ID:q7SaJhpp
過去スレ
ロリショタバトルロワイアル23
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1230413656/
ロリショタバトルロワイアル22
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1226936035/
ロリショタバトルロワイアル21
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1219236331/
ロリショタバトルロワイアル20
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1214751824/
ロリショタバトルロワイアル19
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1211637231/
ロリショタバトルロワイアル18
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1207291360/
ロリショタバトルロワイアル17
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1201435693/
ロリショタバトルロワイアル16
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1197816204/
ロリショタバトルロワイアル15
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1195789761/
ロリショタバトルロワイアル14
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1192364080/
ロリショタバトルロワイアル13
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1187884192/
ロリショタバトルロワイアル12
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1183849166/
ロリショタバトルロワイアル11
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1179760274/
ロリショタバトルロワイアル10
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1177507709/
ロリショタバトルロワイアル9
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1175607059/
ロリショタバトルロワイアル8
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1174298614/
ロリショタバトルロワイアル7
http://human6.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1173267370/
ロリショタバトルロワイアル6
http://human6.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1171953607/
ロリショタバトルロワイアル5
http://human6.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1170746599/
ロリショタバトルロワイヤル4
http://human6.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1169810359/
ロリショタバトルロワイアル3
http://human6.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1169293272/
ロリショタバトルロワイアル2
http://human6.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1168265134/
ロリショタバトルロワイアルをやれるか話し合うスレ
http://human6.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1167045572/
3創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 23:19:23 ID:q7SaJhpp
〜参加者一覧[作品別]〜
【魔法少女リリカルなのは】高町なのは/フェイト・テスタロッサ/ヴィータ/八神はやて/アリサ・バニングス
【ローゼンメイデン】真紅/翠星石/蒼星石/雛苺/金糸雀
【魔法陣グルグル】ニケ/ククリ/ジュジュ・クー・シュナムル/トマ
【ポケットモンスターSPECIAL】レッド/グリーン/ブルー/イエロー・デ・トキワグローブ
【デジモンアドベンチャー】八神太一/泉光子郎/太刀川ミミ/城戸丈
【ドラえもん】野比のび太/剛田武/リルル
【魔法先生ネギま!】ネギ・スプリングフィールド/エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル/犬上小太郎
【絶対可憐チルドレン】明石薫/三宮紫穂/野上葵
【落第忍者乱太郎】猪名寺乱太郎/摂津のきり丸/福富しんべヱ
【名探偵コナン】江戸川コナン/灰原哀
【BLACKLAGOON】ヘンゼル/グレーテル
【クレヨンしんちゃん】野原しんのすけ/野原ひまわり
【ドラゴンクエストX】レックス(主人公の息子)/タバサ(主人公の娘)
【DEATH NOTE】メロ/ニア
【メルティブラッド】白レン/レン
【ちびまる子ちゃん】藤木茂/永沢君男
【カードキャプターさくら】木之本桜/李小狼
【テイルズオブシンフォニア】ジーニアス・セイジ/プレセア・コンバティール
【HUNTER×HUNTER】キルア/ゴン
【東方Project】レミリア・スカーレット/フランドール・スカーレット
【吉永さんちのガーゴイル】吉永双葉/梨々=ハミルトン
【ヴァンパイアセイヴァー】リリス
【MOTHER】ネス
【サモンナイト3】ベルフラウ=マルティーニ
【Fate/stay night】イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
【みなみけ】南千秋
【武装錬金】ヴィクトリア=パワード
【BLACKCAT】イヴ
【からくりサーカス】才賀勝
【銀魂】神楽
【ひぐらしのなく頃に】古手梨花
【灼眼のシャナ】シャナ
【とある魔術の禁書目録】インデックス
【るろうに剣心】明神弥彦
【ボボボーボ・ボーボボ】ビュティ
【一休さん】一休さん
【ゼルダの伝説】リンク(子供)
【ベルセルク】イシドロ
【うたわれるもの】アルルゥ
【サザエさん】磯野カツオ
【せんせいのお時間】鈴木みか
【パタリロ!】パタリロ=ド=マリネール8世
【あずまんが大王】美浜ちよ
【ポケットモンスター(アニメ)】サトシ
【SW】ベルカナ=ライザナーザ
【Gunslinger Girl】トリエラ
【ぱにぽに】レベッカ宮本
【FINAL FANTASY4】リディア
【よつばと!】小岩井よつば
計86名
4創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 23:20:07 ID:q7SaJhpp
〜参加者一覧[あいうえお順(名簿順)]〜
01:明石薫/02:アリサ・バニングス/03:アルルゥ/04:イエロー・デ・トキワグローブ/05:イシドロ/
06:泉光子郎/07:磯野カツオ/08:一休さん/09:猪名寺乱太郎/10:犬上小太郎/
11:イリヤスフィール(略)/12:インデックス/13:イヴ/14:エヴァンジェリン(略)/15:江戸川コナン/
16:神楽/17:金糸雀/18:城戸丈/19:木之本桜/20:キルア/
21:ククリ/22:グリーン/23:グレーテル/24:小岩井よつば/25:剛田武/
26:ゴン/27:才賀勝/28:サトシ/29:三宮紫穂/30:シャナ/
31:ジーニアス・セイジ/32:ジュジュ・クー・シュナムル/33:白レン/34:真紅/35:翠星石/
36:鈴木みか/37:摂津の きり丸/38:蒼星石/39:高町なのは/40:太刀川ミミ/
41:タバサ(主人公の娘)/42:トマ/43:トリエラ/44:永沢君男/45:ニア/
46:ニケ/47:ネギ・スプリングフィールド/48:ネス/49:野上葵/50:野原しんのすけ/
51:野原ひまわり/52:野比のび太/53:灰原哀/54:パタリロ/55:雛苺/
56:ビュティ/57:フェイト・テスタロッサ/58:福富しんべヱ/59:藤木茂/60:フランドール・スカーレット/
61:ブルー/62:古手梨花/63:プレセア・コンバティール/64:ヘンゼル/65:ベルカナ=ライザナーザ/
66:ベルフラウ=マルティーニ/67:南千秋/68:美浜ちよ/69:明神弥彦/70:メロ/
71:八神太一/72:八神はやて/73:吉永双葉/74:李小狼/75:リディア/
76:リリス/77:梨々=ハミルトン/78:リルル/79:リンク(子供)/80:レックス(主人公の息子)/
81:レッド/82:レベッカ宮本/83:レミリア・スカーレット/84:レン/85:ヴィータ/
86:ヴィクトリア=パワード
計86名
5創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 23:20:53 ID:q7SaJhpp
〜ロリショタロワ・基本ルールその1〜
【基本ルール】
参加者全員で殺し合い、最後まで生き残った一人が優勝となる。
優勝者のみが生きて残る事ができて『何でも好きな願い』を叶えて貰えるらしい。
参加者はスタート地点の大広間からMAP上にランダムで転移される。
開催場所はジェダの作り出した魔次元であり、基本的にマップ外に逃れる事は出来ない。

【主催者】
主催者:ジェダ=ドーマ@ヴァンパイアセイヴァー(ゲーム・小説・漫画等)
目的:優れた魂を集める為に、魂の選定(バトルロワイアル)を開催したらしい。
なんでロリショタ?:「魂が短期間で大きく成長する可能性を秘めているから」らしい。

【参加者】
参加者は前述の86人(みせしめ除く)。追加参加は認められません。
特異能力を持つ参加者は、能力を制限されている場合があります。
参加者が原作のどの状態から参加したかは、最初に書いた人に委ねられます。
最初に書く人は、参加者の参戦時期をステータス表または作中に記載してください。

【能力制限】
参加者は特異能力を制限されることがある。疲労を伴うようになっている能力もある。
また特別強力な能力は使用禁止になっているものもあるので要確認。

【放送】
放送は12時間ごとの6時、18時に行われる。内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」
「過去12時間に死んだ参加者名」など。

【首輪と禁止エリア】
・参加者は全員、爆弾の仕込まれた首輪を取り付けられている。
・首輪の爆弾が起爆した場合、それを装着している参加者は確実に死ぬ。
・首輪は参加者のデータをジェダ送っており、後述の『ご褒美』の入手にも必要となる。
(何らかの方法で首輪を外した場合、データが送られないので『ご褒美』もない)
・首輪が爆発するのは、以下の4つ。
1:『禁止エリア』内に入ってから規定時間が過ぎたとき。
2:首輪を無理やり取り外そうとしたとき。
3:24時間で死者が出なかったとき。
4:ジェダが必要と判断したとき(面と向かって直接的な造反をした場合)。
6創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 23:21:35 ID:q7SaJhpp
〜ロリショタロワ・基本ルールその2〜
【舞台】
ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/clip/img/76.gif

【作中での時間表記(2時間毎)】(1日目は午前6時よりスタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 真昼:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24

【支給品】
・参加者が元々所持していた装備品、所持品は全て没収される。
・ただし体と一体化している装備等はその限りではない。
・また衣服のポケットに入る程度の雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される物もある。
・ゲームの開始直前に以下の物を「ランドセル」に入れて支給される。
「食料」「飲料水」「懐中電灯」「地図」「鉛筆と紙」「方位磁石」「時計」「名簿」
「ランダムアイテム(1〜3種)」。
なおランドセルは支給品に限り、サイズを無視して幾つでも収納可能で重量増加もない。
その他の物については普通のランドセルの容量分しか入らず、その分の重量が増加する。

【ランダムアイテム】
・参加者一人に付き1〜3種類まで支給される。
・『参加者の作品のアイテム』もしくは『現実に存在する物』から選択すること。
(特例として『バトルロワイアル』に登場したアイテムは選択可能)。
・蘇生アイテムは禁止。
・生物および無生物でも自律行動が可能なアイテムは参加者増加になる為、禁止とする。
・強力なアイテムには能力制限がかかる。非常に強力なものは制限を掛けてもバランスを
取る事が難しいため、出すべきではない。
・人格を変更する恐れのあるアイテムは出さない方が無難。
・建前として『能力差のある参加者を公平にする事が目的』なので、一部の参加者だけに
意味を持つ専用アイテムは避けよう。出すなら多くの参加者が使えるようにしよう。

【ご褒美システム】
・他の参加者を3人殺害する毎に主催者から『ご褒美』を貰う事が出来る。
・トドメを刺した者だけが殺害数をカウントされる。
・支給方法は条件を満たした状態で、首輪に向かって『ご褒美を頂戴』と伝えるか、
次の放送時にQBが現れるので、以下の3つから1つを選択する。

1:追加の支給品が貰える。新たなランドセルごと与えられ、ランダムに1〜3個。基本支給品セットはなし。
2:ジェダに質問して、知人の場所や愛用品の場所などの情報を一つ聞ける。
3:怪我を治してくれる。その場にいれば他の人間を治すことも可能。
7創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 23:22:22 ID:q7SaJhpp
〜ロリショタロワ・基本ルールその3〜
【ステータス表】
・作品の最後にその話に登場した参加者の状態、アイテム、行動指針など書いてください。
・以下、キャラクターの状態表テンプレ
【現在位置(座標/場所)/時間(○日目/深夜〜真夜中)】
【キャラクター名@作品名】
[状態]:(ダメージの具合・動揺、激怒等精神的なこともここ)
[装備]:(身に装備しているもの。武器防具等)
[道具]:(ランタンやパソコン、治療道具・食料といった武器ではないが便利なもの。
     収納している装備等、基本的にランドセルの中身がここに書かれます)
[思考・状況]
(ゲームを脱出・ゲームに乗る・○○を殺す・○○を探す・○○と合流など。
 複数可、書くときは優先順位の高い順に)

◆例
【D-4/学校の校庭/1日目/真夜中】
【カツオ@サザエさん】
[状態]:側頭部打撲、全身に返り血。疲労
[装備]:各種包丁5本
[道具]:サイコソーダ@ポケットモンスター
[思考]
第一行動方針:逃げた藤木を追い、殺害する
第二行動方針:早く仲間の所に帰りたい
基本行動方針:「ご褒美」をもらって梨花の怪我を治す

【予約】
・キャラ被りを防ぐため、書き手は自分の書きたいキャラクターを予約することができます。
・期間は基本的に予約から72時間(3日)です。
 期間内に話が本スレに投下されない場合、予約は破棄されます。
・やむにやまれぬ事情で完成が遅れる場合、最大で96時間(4日、合計で一週間)期限を延長することができます。
 ただし、3日の期限の間に、進行状況の報告も合わせて延長申請を行う必要があります。
・予約期間終了後は、他の人がそのキャラを使った予約をして構いません。
 前予約者は話を投下してもOKですが、予約が入った時点で投下する権利を失います。
・予約しなくても投下することはできますが、その際は他に予約している人がいないか
 十分に確認してから投下しましょう。

【投下宣言】
・投下段階で被るのを防ぐため、投下する前には必ずスレで 「投下します」 と宣言を
して下さい。 投下前にリロードし、被っていないか確認を忘れずに。
・近頃連投規制が厳しくなっております。居合わせた方は、できるだけ支援するようにしましょう。

【トリップ】
 投下後、作品に対しての議論や修正要求等が起こる場合があります。
 本人確認のため、書き手は必ずトリップをつけてください。
8創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 01:21:32 ID:Kf9oZ+GK
>>1
9 ◆PJfYA6p9PE :2010/02/27(土) 11:39:40 ID:syfWWLk0
遅くなりましたが、パタリロ、明神弥彦投下します。
10口のない死人はよく喋る ◆PJfYA6p9PE :2010/02/27(土) 11:41:32 ID:syfWWLk0
街にグレーの幕をかける雨の中、白い影が街を駆ける。
戸から戸へ、ドアからドアへ。
闇に滲むような街の灯に、不審なヒトガタが浮かんでは消える。
水の滴るコンクリートのビル郡。
その壁面に無数穿たれた入り口をちょこちょこと忙しなく。

「ええい……ここも違うではないか!」

パタリロは探していた。
自らが殺めた男、グリーンの痕跡を求めて。
リリスとQBの密会。謎の死体探し。
その真相を明らかにするため。足りないピースを少しでも埋めるため。

だが、藁をもすがる探索行は今のところさしたる成果をあげていない。
A6エリアからC8エリアに亘って広がる南東の街。
タワーのふもとにこびり付くように存在する建物の数はあまりにも多い。
その中から、場所を特定する何らの手がかりもなく、お目当ての一棟を探し当てるのはやはり困難。
加えて、未だ明けやらぬ夜闇と降りしきる雨が、事態をより厄介なものにしていた。

「いくらぼくの目がいいといったって、条件が悪すぎだ!
 ……何か、今日は昼間から延々、人探しばかりさせられてる気がするぞ。
 こんなことなら、来る前におみくじを引いてくればよかった。
 きっと
 『待ち人:来ない。むしろ逃げていく。待ってない奴ばかり来る』
 とか書いてあるに違いない」

愚痴が漏れる。
千秋、『バンコラン』、弥彦、リリス、そして、グリーン。
現在まで探してきた人々は、リリスを除いて誰も見つかっていない。
何とも惨憺たる結果だ。

「まあ、そんなことを言っていてもしょうがない。
 一軒ずつコツコツやるか。
 本当はボタン一つでイナゴの佃煮からキリストの死体まで
 何でも探してきてくれる万能死体探しマシーンでも作ってさっさと終わらせたいが、
 そんなもん作ったらこの話はボツになって作者は叩かれ、
 ぼくの出番はまた持ち越しになるだろうからな。
 やめておこう。」

ブツブツ言っているうちに、今いる区画にある建物の検分が終わった。
最後に調べた雑居ビルのエントランスにも、血の飛沫や引きずった痕らしきものは見当たらない。
ふと、上を見上げると、ビルの正面に掲げられた看板が目に入った。

(街のド真ん中にあるくせに「海山商事」はないんじゃないか?
 海がなくて山ばっかりの県が「山なし県」を名乗るくらい納得がいかんぞ)

そのトボけたネーミングすら、今のパタリロには腹立たしい。
気分を切り替えるため、ぴょーんと飛び上がって、看板を一蹴り。
まっすぐに掛かっていた板がわずかに斜めにずれたのを見届けると、
そのまま次の区画に向けて走り出した。

黒々としたアスファルト上の水溜りが、激走を受けて高く撥ね上がる。
スピードを落とさず次の角を曲がり、すかさず建物の調査に入ろうとする。
そのとき。
11口のない死人はよく喋る ◆PJfYA6p9PE :2010/02/27(土) 11:43:07 ID:syfWWLk0

「ぎゃっ!?」

突然、衝撃が走った。
頭部を何かに激しく打ちつけ、吹っ飛ぶ。
小さな身体をゴロンと後ろに一回転させ、たまらず両手で額を押さえる。
と、ほぼ同時に正面からもやはり水の音とうなり声。
どうやら、角を曲がったところで誰かと衝突したらしい。

「いてててててて……
 ちくしょう!誰だ!こんなところで!?
 きちんと前見て走らんか馬鹿者!!」

自分のことは棚に上げ、怒鳴る。
不注意な狼藉者の顔を一目見ようと顔を上げると、
薄暗闇の向こうに、蹲った剣術道着が見えた。

「……弥彦か?」

おそるおそる、といった感じで声をかける。

「……パタリロ……か?……生きて……」

少し驚くような調子で帰ってきた声は、小さかったが確かに弥彦のものだった。
パタリロの顔に無意識の笑みが浮かぶ。
もう、とっくに別の場所に移動したと思っていた弥彦と再会できたことは、
彼にとって思いもしない僥倖だった。

「あったりまえだ!ぼくを誰だと思ってる?
 天下のパタリロ・ド・マリネール8世だぞ。
 ぼくのように有能な美少年がそう簡単に死ぬわけないだろう。
 ぼくくらい連載が長くなると、最早、作者がくたばったとしても
 死なせてもらえない可能性すらあるからな。それはそれでちょっと恐ろしい気もするが。
 ……いや、まあ、とにかく会えてよかった。
 昼間に会ってから随分、時間が経ってたからな。
 ぼくはてっきり……」

湧き上がる嬉しさに任せて、いつもの調子で口を回すが、
弥彦はまるでマネキン人形のように微動だにしない。
話を聞いているのかいないのか、その目は虚ろに宙を見つめたままだ。
昼間に会った時の快活さは見る影もない。
何か様子がおかしい。

「おい、弥彦、聞いてるのか?」

訝しげに眉を細め、弥彦に顔を近づけたパタリロは次の瞬間、息を呑んだ。
街灯に白く照らされた弥彦の身体には、
この暗闇の中でもそうと分かるほど、多くの傷が刻まれている。
紫色の打撲痕、赤白く爛れた火傷、何かに抉られたような首筋。
傷が、過ごしてきた時間の苛烈さを雄弁に語っていた。

会話が途切れたその場所を、静かに響く雨の音だけが支配していた。




12口のない死人はよく喋る ◆PJfYA6p9PE :2010/02/27(土) 11:44:27 ID:syfWWLk0
「……おい、いいかげん何とか言ったらどうだ」

せんべいの欠片を口から飛ばしながらパタリロが叫ぶ。
突然の出会いの後、二人は滝のような雨を避けるため、
手近な建物――どうやら、どこか大きな施設の守衛室らしい――に入っていた。
目に見えて疲労している弥彦を慮り、また、自身が空腹だったこともあって、
休憩スペースらしい畳に落ち着くと、パタリロは手持ちの食料を床に広げた。
食べることで僅かでも力を取り戻し、弥彦がまともに話せるようになる効果も期待しての行動だった。
しかし。

「………………」

弥彦は出会いざまの一言以降、ろくに口をきいていなかった。
耳は聞こえているらしく、言うことには従ってついてくるものの、
「ああ」とか「うう」とか呻く以外はがくりとうなだれたまま。
その様子は、いくら肉体的に消耗しているとはいえ、いささか異常だった。
ぼそぼそとパンを齧る彼は、口の中を切っているのか、
ときおり顔を歪めるものの、すぐにまた沈んだ無表情へと戻ってしまう。

「なあ、兄ちゃん、いいかげん口を割っちまいな。
 正直に言えば、お上にだって情けはあるんだぜ?」
「………………」
「郷里のおっかさんだって、泣いてるぞ、ん?」
「………………」
「……カツ丼とか食べる?」
「………………」

刑事の格好にコスプレしてのギャグにも、沈黙が返ってくるだけ。
ちなみに、この手のギャグは全く反応がないと、やっている方がとてもアホに見える。

「うるさいぞ!誰がアホだ!」

お前だよ、お前。

「なんだとーー!? ……っと、地の文と喧嘩している場合じゃなかった。
 ……まあいい。話す気力もないというんじゃあ仕方がない。
 今はこれでも飲んで元気を出せ」

そう言うと、懐からペットボトルを取り出し、中身を湯飲み茶碗に注ぐ。
湯気の立つ液体が八分ほどのところまで溜まったところで、そのまま差し出した。

「………………」

少し間があった後、弥彦は未だ焦点の定まらない目でゆるゆると湯飲みに手を伸ばした。
パンばかりで喉が渇いていたのか、縁に口をつけると一気にあおる。
すると、予想以上に甘い味が口の中に広がり――――

「……変わった匂いがする…………何だこれ?」
13創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 11:45:59 ID:pRBPjqOw
 
14口のない死人はよく喋る ◆PJfYA6p9PE :2010/02/27(土) 11:46:49 ID:syfWWLk0

「ぼくの小便だ」

喉に落ちる前に一気に吐き出した。

「うわっ! 吐き出す奴があるか!? 汚いな」
「それはこっちの台詞だ!?」
「何のことだ?」
「小便を飲ませておいて何のことだはないだろ!?」
「失敬な。人がせっかく元気づけようと思って新鮮なのを淹れてやったのに」
「んなもんで元気になるかよ!!」
「飲尿健康法を知らんのか。体にいいんだぞ」
「なワケないだろ!!」

「だが……お前は元気になったように見えるが?」
「え……あ」

思わず口をポカンと開ける弥彦。

「さあ、それだけ突っ込む元気があればもう十分だろう。
 そろそろ、何があったか話してもらうぞ」

パタリロはしてやったりとばかりにニヤニヤしている。

「……負けたよ……お前には」

弥彦はかすかに笑い、観念したかのように目を閉じると、大きな溜め息を一つついた。
本当に飲尿健康法の効果があったかは定かではないが、
再び開かれた目には、僅かばかりの光が戻っている。
その、吹けば飛びそうな光を消さまいとするかのごとく虚空の一点を睨みつける。
しばらく躊躇うような間があった後、
弥彦は搾り出すように、泣き出すように言った。

「俺……また、人を殺しちまった……」





パタリロと出会う前、弥彦は彷徨っていた。
全身を包む鈍い痛みと倦怠感、降る水の冷たさに意識を飛ばしそうになりながらも、
自分でも正体の分からない衝動に突き動かされ、這うように歩いていた。
どこかを目指していたわけではなかった。
ただ、身体を動かしていないと、頭の中で渦巻く闇に呑み込まれてしまいそうだった。

「俺は……一体、何をしてたんだろうな……」

誰も死なせたくない。
その一心だけで走り回ってきた。
たとえ相手が殺し合いをよしとする人間や、殺し合いそのものを仕組んだ張本人だったとしても。
自分の剣は殺す剣ではなく活かす剣。
戦場でもその理は不変、いや、戦場にいるからこそ変わってはいけない。
そう信じていた。
だが。
15創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 11:47:56 ID:OebjNN24
16口のない死人はよく喋る ◆PJfYA6p9PE :2010/02/27(土) 11:48:45 ID:syfWWLk0

『……………………ギギッ』

蟲の再誕。
柔らかな腹を裂き、赤い臓腑を撒き散らし、耳に障る羽音をさせて――――
それは防げたはずの未来。
殺していれば。
躊躇わず、殺意を籠めて、あの刃渡りを放っていれば。
キルアがあのような死に方をする未来は、多分、永遠に来なかった。

しかし、未来は果たして現実となった。
殺したくないと願ったから。
誰も殺さず、皆を救えると驕ったから。
剣心ほどの力もないくせに、奇跡を起こせると根拠もなく信じたから。

弥彦の不殺は理想などではなかった。
それは幼稚で夢見がちな、どこにでもあるただのエゴだった。

キルアの命を壊して、初めて気づいた。
理想だと思っていたものは、できそこないの陶器のように、
いとも簡単に砕けて散った。
一つ一つの欠片には、あの惨劇の映像が幻燈の照らし出す影のように現われた。
何度も。
何度も、何度も。
きっとそれは罰だった。
悪事を働いた子供が寒い夜、リンチにされて柱に縛り付けられるような、そんな罰。
猟奇的な上映会が終わるたび、黄色い胃液を吐いてはえづいた。

『弥彦、オレを殺──』

キルアの断末魔。
確かに殺せと言っていた。
あの瞬間、間髪を入れず、刃を振るっていたとしたら、
キルアの命は救えなくとも、QBだけは殺すことができた。
彼は自らの命と引き換えに、勇敢にも悪魔の使徒を討とうとしたのだ。

だが、それは成されなかった。
何故か。
弥彦が拒んだからだ。
偽善面した醜いエゴに、最後の最後まで縋りついたからだ。
短い間とはいえ友だった者の、命を賭けた最後の願いよりも、
これまで取り繕ってきたちんけな体裁の方が余程大切だったのだ。

「……何が不殺だ!……何が活心流だ!」

逆刃刀。
弥彦の理想を象徴するその刀を、彼は激情に任せて何度も捨てようとした。
しかし、できなかった。
手を離して地面に叩きつけようとするたび、赤髪が、頬の十字傷が、
小柄な、しかし大きな背中がちらついた。
それが幻影だと分かっていても、届かないと気づいていても、
できなかったのだ。

気がつけば、行き場所を見失ってしまっていた。
不殺で皆を守る道、殺してでも誰かを生かす道。
どちらの道にも踏み出せない。
行くも戻るも叶わない。
17口のない死人はよく喋る ◆PJfYA6p9PE :2010/02/27(土) 11:50:19 ID:syfWWLk0
だから、弥彦は彷徨っていた。
歩む道は定まらず、体の赴くままに流されていた。
柔らかく、足に絡みつく泥の道はやがて途切れ、固く冷たいアスファルトに変わる。
濃紺の闇のところどころに、明治の世では考えられない強烈な光源。
そして、その向こうに山と聳える丈高なビルの影たち。
半ば眠ったような意識で、初めの街へ戻ってきたことを理解した。

そんな時、突然の衝撃が襲い、吹き飛ばされた。
軋む身体を起こすと、
どこかで見たような顔がそこにいた。





「……なぁあ、パタリロぉ……
 俺ぁ……いったい、どうしたらいいんだ?
 もう、分かんねぇ……分かんねぇんだよぉ……」

その呟きを最後に、弥彦は口を噤んでしまった。
両の拳は床に付いたまま固く握られ、微かに震っている。

壁の向こうで、烈しい雨脚がコンクリートを叩いている。
壁のこちらでは、畳にいくつか、温い雫が跡をつけていた。

静寂を破るように、パキリ、と乾いた音がした。
話に区切りがついたと思ったのか、それまで黙って聞いていたパタリロが
最後の一枚の醤油せんべいに手を伸ばし、齧りついた。

ボリ、ボリ、ボリ、ボリ……
低く堅い咀嚼音が六畳間を満たし、徐々に消えていく。
完全に聞こえなくなった頃、突如としてパタリロが立ち上がった。

「話はわかった」

小さい声が聞こえたかと思うやいなや、
それよりはるかに大きい、高い音が鳴り、弥彦の目から火花が散った。
一瞬、目の前が真っ赤になる。

腰の入った強烈な平手が、右の頬を打っていた。
畳み掛けるように怒号が続く。

「この大ボケ野郎!!
 馬鹿も休み休み言え!!
 お前には、キルアの気持ちが全く分かっていなーい!!」

反応がついていかず弥彦は目をぱちくりさせる。

「……キルアの……気持ち?」
「そのとーり!
 キルアはQBを殺したかったのでも、お前に殺して欲しかったのでもない。
 むしろその逆だ。QBをも助け、お前に不殺の信念を貫いて欲しかったのだ!」
「何だって?」

突然の宣告に戸惑い隠せない。
パタリロが言っているようなことがあるはずがない。
現にキルアは自分ごとQBを殺せと言い残しているではないか。
18口のない死人はよく喋る ◆PJfYA6p9PE :2010/02/27(土) 11:52:25 ID:syfWWLk0
「どういう、ことだ」
「キルアの死の前の行動と、最後に残した遺言をもう一度、よく思い出してみろ。
 お前の話によると、
 協力して刃止め&刃渡り→生きてたQB、弥彦を狙う→キルアが弥彦をかばう→キルアを喰ってQB復活
 事態はこのように推移している。
 間違いはないな?」
「あ、ああ……」
「もし、キルアが何にも優先してQBを殺そうと思っていたとしたら、これはおかしい。
 QBがお前を狙ってる間に不意を討てば、死にかけの相手だ。
 いくら化け物だろうが、かなり高い確率で仕留められたに違いない」
「あのとき、キルアは手負いだったんだ。
 もう力が残ってなかったんじゃないのか?」
「お前をかばうために、すかさず飛び込んでくることはできたのに、か?」
「あ」

思わず声を上げる。
確かに、彼の目からは、キルアがわりと離れたところから、かなり素早く割り込んだように見えた。
あれだけの動きがまだ可能だったなら、自分をおとりにQBを殺すことはさほど難しくない――――
そう弥彦が思っても無理はない。

「ってことは……」
「そうだ。
 キルアはあのとき、殺せたにもかかわらず、敢えてQBを殺さず、
 お前を助けることの方を優先したのだ!」
「……キルア……何で」

そこまでして守ってくれたことに関して、
胸の内は、嬉しさが三分、申し訳なさが七分だ。
だが、それはそれとして、疑問も残る。
敵は容赦なく殺すと明言し、その邪魔をする弥彦さえも、
一度は殺そうとしたキルアが、何故、絶好の機会を捨ててまで彼をかばったのか。

「何で、だと?
 そんなことは決まっている」

パタリロは何か重大な発表でもするかのように、
決然と言い放った。

「病院に行く前の決闘でお前が放った正義の一撃が、キルアの殺人に凝り固まった心を浄化したんだよ!!」
「な、なんだってーー!?」

ガガーン。
弥彦に衝撃が走った。

「病院で目覚めた時、キルアは感動の涙にむせび泣きながら、こう思ったに違いない。
 命を奪おうとした自分を助け、あまつさえ介抱までしてくれるとは、明神弥彦は何て素晴らしい男なんだ。
 聖者だ。天使だ。マザーテレサだ。
 こんなとてつもない大人物に比べて、今までの自分は何と小さかったことか。
 もう、人殺しなんてバカな真似はやめて、これからは敬愛する弥彦先生のように、皆を守る道を行こう。
 今までの罪を海よりも深く反省し、不殺の道にこれからの生涯を捧げよう、と」

パタリロは胸の前で拳を握り込み、唾を飛ばし飛ばし、まくしたてる。
大きな身振り、感極まった声のトーンに弥彦はすっかり圧倒されている。
19口のない死人はよく喋る ◆PJfYA6p9PE :2010/02/27(土) 11:54:01 ID:syfWWLk0
「……だが、キルアは知ってのとおりグラスハートのシャイボーイだ。
 だから、大好きな弥彦先生の前では素直になれない。
 本当は『弥彦先生、尊敬しています。大好きなんです。抱いてください!!!』と思っていても、
 口では『あ、あんたが言うなら人殺しをやめてやってもいいわよ。
     べ、別に今までの私が悪かったとか、そんな風に思ってるわけじゃないんだから!
     勘違いしないでよね!』
 としか言うことができないのだ!
 嗚呼、いと哀しきはツンデレボーイの避けえぬサガよ。
 弥彦、よく胸に手を当てて考えてみろ。思い当たるところがあるであろうッ!」

問われたその瞬間、雷光のように、弥彦の頭にある一言が閃いた。
彼をかばったとき、キルアが発したあの言葉――――

『おまえみたいな馬鹿が一人くらい生きていても良いって……そう思っただけだ』

『おまえみたいな馬鹿が一人くらい生きていても良いって』

『おまえみたいな馬鹿が』

……………………

…………

……

「確かに!!」
「ほおら見たことか!
 ちなみに、その言葉を本音に翻訳すれば、
 『逃げて、弥彦先生。先生の信念のために死ねるんだったら、私、本望よ……ぐふっ』となる」
「じゃ、じゃあ、あの最後の言葉も……」
「そうだ。
 お前はてっきり『弥彦、オレを殺せ』と言っていると勘違いしていたようだが、とんでもない。
 正しくは『弥彦、オレを殺すな』だ!
 キルアは、もしかしたら仇討ちのために自分ごとQBを殺してしまうかもしれないお前を慮り、
 『自分のことは気にしなくていい、自分のような汚れた殺人者のために、不殺の志を曲げるな』
 と言い残して死んだのだ。
 ……どうだ弥彦。不殺のために命を捧げた一人の勇者を前にして、
 お前はまだグチグチと世迷言を口にする気かっ!!?」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

弥彦が吼えた。
両の眼から濁流のごとく涙を流しながら、声をかぎりに叫んでいた。

キルアの考えはあの対決を通じて変わっていたのだ。
伝えたいと願った思いは、逆刃刀を通じて、確かに届いていたのだ。
自分の行動は無駄ではなかった。
そう悟った弥彦の胸に、無上の喜びと真実に気づけなかった己に対する恥かしさが
噴火した溶岩のように湧き上がっていた。
20口のない死人はよく喋る ◆PJfYA6p9PE :2010/02/27(土) 11:55:25 ID:syfWWLk0
「すまねぇ。すまねぇ、キルア。
 俺はお前の気持ちを全く分かってなかった。
 ただ、自分のことしか目に入らず、勝手に一人で落ち込んじまってた。
 ……未熟が過ぎて、涙が出らあ。

 だけど、俺はもう迷わねえ!
 どんな困難が立ちふさがろうと、不殺を貫いてみせる!
 確かに俺はまだまだ未熟だ。
 この先も、守りきれず死んじまう人が出るかもしれない。
 でも、だからって、もう、剣を捨てようなんて馬鹿な真似は二度としない!
 一人を助けられなかったなら、次の一人は絶対助ける!
 それがこの、明神弥彦の活人剣だ!

 ……だから、見ていてくれよな、キルア……」

いい顔になったな、とパタリロは内心思った。
それは、弥彦がこの島に来てから初めて見せる、一点も曇りなき晴れやかな笑顔だった。
彼を纏っていた陰鬱な空気は最早、影も形もない。
弥彦の心の中の青空では、きっとキルアが満足そうな笑顔を湛えて微笑んでいるに違いなかった。

「よく言った!
 それでこそ、キルアも報われるというものだ。
 ……ところで」

だが、パタリロはこれで話を終わらせるつもりはない。
彼の真の目的は、もう少し先のところにあるのだから。

「その不殺の剣で、ぼくに協力してみる気はないか?
 うまく行けば、誰一人死なず、終わりにできるかもしれんぞ」

潰れアンマンがニヤリと歪んだ。





「やれやれ、うまくいったな」

ほっとした、というような風に、パタリロは息を吐いた。
パンツ一丁で畳にどっかと腰を下ろし、弥彦の荷物に入っていたパンを貪っている。
傍らにはせんべい布団が敷いてあり、中では弥彦が眠っていた。
顔色は二人が再会したときよりも、随分、良くなっている。
核金を二つも使っているせいか、それとも、精神が安定したせいか。
だが、おかしなことに、何故かこちらも全裸である。

このようなシチュエーションがあるとなると、読者の方の中には、
カットされた時間に、パタリロ原作ではおなじみの、あぁんだめぇんな行為が
二人の間で行われたと考える方があるかもしれない。
そう、実は全くその通りなのである。
あの後、余勢を買ったパタリロは初心な弥彦を巧みに誘惑し、
ついには道着もふんどしも剥ぎ取って、めくるめく快楽の世界へ――――

「行くか!!
 バンコランじゃあるまいし。
 弥彦は疲れて寝てるだけだし、服は洗濯機にかけてるだけだ、このオタンコナスめ。
 全く、そんなこと言ってると、弥彦のファンから怒られるぞ」

こりゃ失礼。
21口のない死人はよく喋る ◆PJfYA6p9PE :2010/02/27(土) 11:56:58 ID:syfWWLk0
「ま、ぼくもキルアからは、怒られるかもしれんがな」

賢明な読者諸氏はもうすっかりお気づきのこととは思うが、
パタリロが語った『キルアの本当の気持ち』とやらは、
彼が弥彦の話を元にして創りあげた全くの妄想である。
弥彦の気持ちがうまく立ち直れるように、
彼に都合のいいストーリーを、納得できるよう肉付けして話したに過ぎない。

いや、妄想というのは少し過ぎた表現かもしれない。
キルアの本当の気持ちは、結局、本人にしか分からない。
ということは、彼が死んでしまった今、もう誰も分かる者はいないということだ。
だったら、自分の説を正解にして何が悪い。
過去などというのは、生きている者のためにあるものだ。
生きている者にとって都合のいいように解釈すればそれでいい。
特にこんな非常時には。
パタリロはそう考えていた。
 
「まあ、ぼくを襲ってくれた礼だと思って諦めろ。
 文句があるなら、生き返って言うんだな。
 ちなみに、三途の川の渡し賃は恵んでやるつもりはないぞ。
 来るならバタフライでも犬掻きでも練習しとけ」

パタリロの心の中のキルアは『このケチ野郎』とでも言いたそうなジト目で睨みを効かせている。
そう簡単に割り切ってくれるキャラじゃないことは、実のところちゃんと分かっているようだ。


いつのまにか、外で聞こえていた音がしなくなっている。
どうやら、雨が上がったらしい。

「もう少し休んだら、荷物をまとめておくか。
 弥彦が起きたら、できるだけ早く出発したいからな」

グリーンの死体探し、首輪の解析、仲間集めと、やるべきことは多い。
いや、正確には、パタリロの誘いを弥彦が快諾したため、格段にできることが増えたと言うべきか。

あの後、パタリロが弥彦に示したプランは、次のようなものだった。

パタリロにはタイム・ワープという時間を自由に移動する能力がある。
それを使って殺し合いが始まる前の過去に戻り、ジェダを倒せば、
既に死んでいる人間も含め、全員を救うことができる可能性がある。
だが、ジェダのかけた能力制限を解かなければ、タイム・ワープは使えない。
また、当然、ジェダもタイム・ワープのことは分かっているだろうから、
制限の他にも、何かしらの対策を採っているだろう。その情報も欲しい。
能力制限の解除や情報収集のためには、ここに呼ばれている様々な人間の知恵を集積させる必要がある。
それには仲間を作らなければならないが、パタリロは開会式でのおイタが過ぎて、全員に警戒されている。

そこで、弥彦の出番だ。
パタリロを警戒し、場合によっては襲い掛かってくる参加者を、第三者である彼を介して説得する。
言ってわからぬ奴相手には、剣で叩きのめして話を聞いてもらう。
そのためには、彼のまっすぐな性格と不殺の戦闘術は実に都合がいいのだ。

このような提案に対し、弥彦はほとんど二つ返事でOKを出した。
確かに、タイム・ワープの話は明治時代に生きる彼にとって、到底、信じがたいものではある。
だが、全ての人間を救うことができるというアイデアは、その信頼性を差し引いても、あまりに魅力的だった。
それに、かつて大を生かして小も生かしたいと言った少年は、今また、それを現実のものにせんと動いている。
腑抜けていた彼に檄を飛ばし、自分を必要だと言ってくれている。
だから、その信義に応えたい。
弥彦は何より、そう思った。
22口のない死人はよく喋る ◆PJfYA6p9PE :2010/02/27(土) 11:58:32 ID:syfWWLk0
「しかし、事態が好転してきたのはいいが、支給品が貧乏くさい物ばかりなのは何とかならんのか。
 弥彦が寝てる間に奴の荷物も見せてもらったが、ろくなものがない。
 かろうじて金になりそうなのは短剣と刀くらいか。
 でも、骨董はぼくの趣味じゃないしな。
 だいたいジェダの奴、人に殺る気を出させようと思うんなら、金目のものを入れとくのは常識だろうが。
 まったく気の利かん奴だ。
 島にある施設も、学校とかシェルターとかシケたモンばかり。
 どうせなら、銀行とかジュエリーとか金閣寺とか用意しとかんかい!
 これはますます、魔界の救世主様の財産をメシアげる必要があるな。

 ……まあ、弥彦が起きたら、手始めにここの敷地内を調べてみるか。
 こんな守衛室まで作るくらいだ。札束の一つや二つあるかもしれん」

部屋の窓から、まだ暗い外の方に目を向ける。
広大な敷地に、黒く大きい、建造物の影が横たわっている。
パタリロ達はまだ知らぬことだが、この巨大な施設は元の世界にあったとき、地図上でこう表記されていた。
「内務省特務機関超能力支援研究局 BAse of Backing Esp. Laboratory」、通称「B.A.B.E.L」と。


【A-7/南部の研究所(B.A.B.E.L本部)敷地内、守衛室/2日目/早朝】

【パタリロ=ド=マリネール8世@パタリロ!】
[状態]:頭にたんこぶ、パンツ一丁
[装備]:S&W M29(残弾4/6発)@BLACK LAGOON
[道具]:支給品一式(食料なし)、44マグナム予備弾17発(ローダー付き)
    がらくたがいくつか、ミニ八卦炉@東方Project、クロウカード『翔』@カードキャプターさくら、
    エーテライト×2@MELTY BLOOD、はやての左腕、首輪(しんのすけ)
[思考]:弥彦が起きたら、この施設を調べてみるかな
第一行動方針:グリーンの死体を捜索する。
第二行動方針:首輪を調べたい。道具や設備も確保したい。
第三行動方針:弥彦と共に仲間を集める。接触は慎重に。
第四行動方針:対主催として有用な情報を得て、自分を信用してもらう材料とする。
第五行動方針:千秋と再会して、よつばと藤木の死について聞きたい。
第六行動方針:暇ができたらはやての腕を埋葬してやる。
基本行動方針:好戦的な相手には応戦する。自分を騙そうとする相手には容赦しない。
最終行動方針:ジェダを倒してお宝ガッポリ。その後に時間移動で事件を根本から解決する。
[備考]:自分が受けている能力制限の範囲について大体理解しています。
    エヴァが少なくとも今の自分にとっては危険人物であると判断しました。名前は知りません。
    自分が誰からも警戒されている存在だと、改めて把握しました。
    リリスとQ-Beeが内心ではジェダを裏切りわざと会話を聞かせたのだと考えています。
23口のない死人はよく喋る ◆PJfYA6p9PE :2010/02/27(土) 11:59:25 ID:syfWWLk0
【明神弥彦@るろうに剣心】
[状態]:疲労(大)、全身に打撲と青痣と擦り傷と火傷(全て一通り応急手当済み)
    全裸、睡眠中、核鉄×2で自己治癒力増進中
[装備]:逆刃刀・真打@るろうに剣心、サラマンデルの短剣@ベルセルク
    ヘルメスドライブ@武装錬金(破損中・核鉄状態、使用登録者アリサ)
    核鉄(バルキリースカート)@武装錬金
[道具]:基本支給品一式×4(食料二人分なし)、首輪(美浜ちよ)、コンチュー丹×3粒@ドラえもん
    水中バギー@ドラえもん、ブーメラン@ゼルダの伝説、テーブルクロス、包丁×2、
    食用油、天体望遠鏡@ネギま!、フライパン、調理用白衣、無数の純銀製のナイフ
[思考]:ZZZ......
第一行動方針:パタリロと共に仲間を集める。
第二行動方針:出来れば南西市街地に点在する死体(しんのすけ・ちよ・よつば・藤木)を埋めてやりたい。
基本行動方針:不殺を貫き、一人でも多くの人を救う。
最終行動方針:可能なら、パタリロの時間移動で事件を根本から解決し、全ての参加者を救いたい。
[備考]:バルキリースカートは、アームが一部破損した状態です(現在自己修復中)。
    深夜12時の臨時放送を、完全に聞き逃しました。

※パタリロの服は守衛室に干してあります。
※弥彦の道着(右腕部分が半焼け、左側袖も少し焼けてる)とふんどしは
 守衛室備え付けの洗濯機で洗濯中です。
24 ◆PJfYA6p9PE :2010/02/27(土) 12:00:49 ID:syfWWLk0
投下終了です。
ご支援くださった方、ありがとうございました。
25創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 12:28:36 ID:Dv+KlcIk
投下GJ。イイハナシダナー(棒)
いや、本当にいい話でした。主にパタリロ的な意味で。
これはパタリロとキバヤシを組み合わせた全く新しい死者の冒涜www
今までも死んでからひどい扱いのキャラはいたけどキルアッーは特にヒドイなw
なんだかんだで事態を一気に好転させたパタリロの手腕に感服しました。
26創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 14:20:58 ID:OebjNN24
まさかのスカトロキター
パタリロマジ鬼畜w
27創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 15:08:05 ID:GnxPF2c8
乙ー。
パタリロはこういう力技説得ほんと得意だよねw
弥彦はこれからいろいろな意味でものすごく大変そうだけど元気が出てなにより
28創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 16:11:12 ID:pRBPjqOw
投下乙
ようやくパタリロにちゃんとした仲間が…
これで他の参加者達の誤解を解ければいいけど、どうも弥彦巻きこんだ死亡フラグにしか思えないw
29創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 06:22:59 ID:2cYu8Kwn
メタい、メメタァい!
説教シーンは一応感動的なはずなのに爆笑したわっw

でも良いな、パタリロうめえ。GJだ
30創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 22:54:25 ID:TmWaecgj
放送から話数も随分、進んだので、各グループの到達時間帯をまとめてみた。

【深夜】
(ヴィータ、紫穂)

【黎明】
(リンク、なのは、インデックス、アリサ)、(エヴァ、蒼星石)
(トマ、ベッキー)、(メロ、ブルー)、(ヴィクトリア、イエロー、ひまわり)
(タバサ、小太郎、トリエラ)、グレーテル、(ベルカナ、桜、レックス、アルルゥ、イヴ)
リリス、シャナ

【早朝】
レミリア、南千秋、(弥彦、パタリロ)

多くのキャラが黎明まで到達。早朝に手が届いたキャラがチラホラって感じ。
唯一、深夜に取り残されているのがヴィータ紫穂組だが、
特に進行方向で大きなイベントが起こっているわけではないので、そう問題はないかも。
31創る名無しに見る名無し:2010/03/01(月) 01:07:09 ID:60VvvWxI
>>30
まとめ乙。最後の深夜組諸々の予約が入ってwktk
32創る名無しに見る名無し:2010/03/01(月) 04:08:24 ID:tQ9sD6Q+
黎明だけど工場組(リンク、なのは、インデックス、アリサ)なんかは何も無ければ寝てられるな。
城組(ベルカナ、桜、レックス、アルルゥ、イヴ)もほぼ同上。
シェルター組(トマ、ベッキー)も動きは放送前予定だけど放送後でも良いくらい。
中央付近と北東市街地だけはまだ動いてるってところか。
33創る名無しに見る名無し:2010/03/02(火) 19:59:05 ID:chzV6NLH
遅れたけど投下乙!
パwタwリwロw
色んな意味でこいつじゃなきゃ許されない、こいつならではのおもろい話だったw
34創る名無しに見る名無し:2010/03/02(火) 20:22:54 ID:iVNVOlIe
少しずつだが作品が来てくれるのは嬉しいなw
35 ◆v5ym.OwvgI :2010/03/02(火) 23:18:07 ID:8xSHaJti
ヴィータ、紫穂、トリエラ、ヴィクトリア、イエロー、ひまわり、Q-Bee
投下します。
36 ◆v5ym.OwvgI :2010/03/02(火) 23:21:25 ID:8xSHaJti


傘をさして、肩を寄せ合いながらヴィータと紫穂は進む。

紫穂はグレーテルからもらった『宝物』を掌の中で転がしては、怪しい笑みを浮かべるばかり。
ヴィータはそんな紫穂にいい加減嫌気がさしているが、『約束』の為に離れることはできずに。

そんなギスギスした空気の中、彼女らは歩き続け、
E-1にある橋をわたり、地図上の桜の木のところに差し掛かる。

そこで、ヴィータが気付いた。
暗がりに、誰かいる。

「誰だ……!」

ヴィータが構える。
しかし、相手はヴィータが構えるとすぐに、上空へ逃げて行った。

「あいつは……?」




桜の木の下には、何かを掘り起こしたような跡。
そこには黄色い服を着た、緑色の髪の人形が残っていた。





【F-1/桜の木の下/2日目/黎明】


【三宮紫穂@絶対可憐チルドレン】
[状態]:精神汚染。
[装備]:邪剣ファフニール@TOS、ワルサーPPK(銀の銃弾5/7)@パタリロ!、七夜の短刀@MELTY BLOOD
    ショックガン@ドラえもん
[道具]:支給品一式×3(水1.5人分パン二人分弱−一食)、デスノート(ダミー)@DEATH NOTE、
     きんのたま@ポケットモンスター、包帯、双葉の肉片セット、神楽とミミの眼球
[服装]:病人着
[思考]:ふふふ……
第一行動方針:とりあえず「北東の街」を目指す。
第二行動方針:ヴィータとグラーフアイゼンを出会わせて、互いの反応を楽しみたい。
第三行動方針:参加者の復讐心や不和を煽る。邪魔者は消す。
第四行動方針:能力を見抜いたエヴァに警戒と敵意。機会があればエヴァを消す。
第五行動方針:機会があればまたグレーテルと会いたい。2人きりで楽しく殺し合いたい。
基本行動方針:扇動、ステルス、実力行使、あらゆる手段を用いて殺し合いを加速させて楽しむ。
[備考]:紫穂は朝の放送ではやて殺害犯のことをヴィータに教える約束をしています。
     北東の街にグラーフアイゼンがあるらしいことを、まだヴィータには伝えていません。
37 ◆v5ym.OwvgI :2010/03/02(火) 23:23:11 ID:8xSHaJti


【ヴィータ@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:両腕に僅かに痺れが残る、左足に火傷跡、左手爪全剥、いらいら
[装備]:祈りの指輪@DQ、フランヴェルジュ@テイルズオブシンフォニア
[道具]:基本支給品(食料・水二人分−1食)
    ぬのハンカチ×20、マシカルアンバーミサイル×6@メルティブラッド 、
    救急箱、はやて特製チキンカレー入りタッパー、ボロボロの傘
[服装]:普段着(ドクロのTシャツ、縞模様のニーソックス等)
[思考]:あいつは……?
第一行動方針:当面紫穂に従う。
第二行動方針:はやてを殺した犯人を見つけ出し、殺す。
第三行動方針:エヴァはいずれ自分の手で殺す。
基本行動方針:はやての仇を討つ。その後、優勝してはやてを復活させる。
[備考]:「ヒント」からはやてを殺したのがなのはかもしれないとは思っていますが、
   少なくとも決め付けるのはまだ早いと思っています。
   エヴァとの会話で、紫穂のサイコメトリー能力に勘付きました(詳細までは知りません)。





   ☆   ☆


トリエラは慎重に、市街を進む。
家屋と家屋の間を。
時折周囲を警戒しながら、されど遅くなり過ぎないように。

決して開けた場所は通らない。
決して目立つ行動はとらない。

慎重に、辺りを警戒しながらヴィクトリアの指定した場所へ急ぐ。



無差別殺人犯の吸血鬼、レミリアは今もこの街の何処かにいるはずだ。
グラーフアイゼンの証言で、物語にでてくる吸血鬼同様流水は渡れないらしいとは聞いている。
その為、この街の中で休息ととっている可能性は十分にあり得る。

そして同時に、そんな彼女でも、動き回れる可能性がある。
奴はレイジングハートを所有している。すなわち、バリアジャケットをまとうことができる。
それは、この豪雨の中でも自由に行動できることを意味する。
彼女に会ってしまえば、積みだ。
38 ◆v5ym.OwvgI :2010/03/02(火) 23:26:55 ID:8xSHaJti
それに加え、これから会う人物。

ヴィクトリア。
仲間なんて関係はおらず、自分以外の人間はすべて利用する存在。
太刀川ミミとの関係を考えれば、そんな非常に利己的な人間だということは安易に想像できる。


相手の持っている道具が分からないが、もし仮に狙撃銃の様なものがあったとしたら。
この雨の中狙撃は難しいが、これから行く場所はヴィクトリアが指定した場所なのである。
こちらを殺せる狙撃ポイントを見つけている可能性は十分にある。

こちらがグラーフアイゼンを持っていることは話したのだ。
ヴィクトリアはミッドチルダ式のデバイスがいいといい、バルディッシュを求めたが、
同じデバイスであるこちらで妥協する可能性は十分にあり得る。

なにせ、自分の首輪は外れているのだ。
微妙に違うらしいグラーフアイゼンで失敗しても、それは他人の首輪だ。
ヴィクトリアの気にしているらしい魔法に詳しい者ならばともかく、それ以外の人間、例えば自分など、
ヴィクトリアにとってどうでもいいであろう他人の首輪を解除する際に失敗したとしても気にしないだろう。


情報交換を持ちかけた相手を殺す。
それをやりかねない相手だと思うぐらい、トリエラはヴィクトリアのことを信用していなかった。

せめて、こちらから場所を指定しておけばよかった、といまさらながらトリエラは後悔する。
グラーフアイゼンのサーチ能力はあてにできるが、それに頼り過ぎてもいけない。
建物の影から影へ。そして周囲の警戒。
左右前後、そして常時と違い、空を飛ぶ人間への警戒のため、空へも注意を払う。


そんな、警戒していた彼女だからこそ、上空を飛んでいく「奴」を見つけることができた。



【G-1/市街地/2日目/黎明】
【トリエラ@GUNSLINGER GIRL】
[状態]:頭部殴打に伴う頭痛。胴体に重度の打撲傷複数、全身に軽度の火傷、かなりの疲労。
    右肩に激しい抉り傷(骨格の一部が覗き、腕が高く上がらない)。
[装備]:拳銃(SIG P230)@GUNSLINGER GIRL(残弾数8/8)
    ベンズナイフ(中期型)@HUNTER×HUNTER、トマ手作りのナイフホルダー、防弾チョッキ
[道具]:基本支給品(パン1個、水少量消費)、ネギの首輪、血塗れの拡声器、北東市街の詳細な地図
    US M1918 “BAR”@BLACK LAGOON(残弾数0/20)、9mmブローニング弾×23
    インデックスの0円ケータイ@とある魔術の禁書目録、コチョコチョ手袋(片方)@ドラえもん
    グラーフアイゼン(ハンマーフォルム)@魔法少女リリカルなのはA's(ダメージ有り、カートリッジ0)
    回復アイテムセット@FF4(乙女のキッス×1、金の針×1、うちでの小槌×1、十字架×1、ダイエットフード×1、山彦草×1)
[服装]:普段通りの男装+防弾チョッキ
[思考]:あれは……?
第一行動方針:“太刀川ミミ(ヴィクトリア)”と接触、交渉する。
第二行動方針:朝になったら作戦(※)に従い、シャナを捜索する。タバサに携帯電話の説明も。
第三行動方針:トマとその仲間たちに微かな期待。トマと再会できた場合、首輪と人形の腕を検分してもらう
基本行動方針:好戦的な参加者は積極的に倒しつつ、最後まで生き延びる(具体的な脱出の策があれば乗る?)
[備考]:携帯電話には、『温泉宿』の他に島内の主要施設の番号がある程度登録されているようです。
     トリエラが警察署地下で見た武器の詳細は不明。
     ※トリエラの作戦
     まずシェルターまで全員で行動し、洞窟にも寄りつつシェルターに向かう。
     シェルター到着後に解散し、小太郎とタバサは城へ、トリエラは廃墟へ行く。
     それ以降は小太郎達は定期的にトリエラの携帯電話に連絡をする。
39 ◆v5ym.OwvgI :2010/03/02(火) 23:29:42 ID:8xSHaJti




   ☆   ☆


「起きて、イエロー。トリエラを名乗る人物から電話が有ったわ」

ヴィクトリアはイエローを起こすべく、彼女の眠る部屋へ声をかける。
が、返事はない。

舌打ちをしつつも、彼女の下へいくが、彼女は依然、ひまわりを抱えたまま眠ったままだ。

「起きて、イエロー。起きて!」

ヴィクトリアは、イエローを揺る。が、起きない。
イエローは深い眠りに落ちてしまっている。
これぐらいのことで、起きる彼女ではない。


イエローの睡眠は、深い。
いつ、いかなるところでも眠ってしまえるのは、イエローの個性だ。

その睡眠は、かつて四天王のカンナが操るジュゴンに「ふぶき」をくらった時も、
しばらくたつまで目を覚まさなかったくらいだ。

このどこでも眠れてしまえる個性は、彼女本来の気質も関係しているのだろうが、
彼女の能力も大きく関係している。

イエローの持つ能力。
ポケモンの傷をいやし、その意思をくみ取る力。
後にポケモンの権威、オーキド博士に「癒す者」といわれることになる力。
この力には、反作用とでもいうべきものが存在する。

イエローが『能力』を使う。
ポケモンの回復や、その意思を読み取った後、その反動でイエローは急激な睡魔に襲われてしまう。
この殺し合いに呼ばれなかった未来では、戦闘中にもかかわらず眠ってしまったほどなのだ。


そしてイエローはヴィクトリアの指示のもと、数時間前その力を首輪に10分も使い続けた。
今まではいつだって一瞬しか使わなかったその力を、ポケモンとは異なる存在に向けて長時間。
その時にやってくる睡魔は、通常時に比べてはるかに大きかったのだ。

それでなくても、昼間の行動での精神的、肉体的疲労も大きい。
彼女がなかなか目を覚まさないのも、当然と言えよう。
40 ◆v5ym.OwvgI :2010/03/02(火) 23:32:24 ID:8xSHaJti
「起きなさい、イエロー!」

次第にヴィクトリアの揺る力は大きくなっていく。
それでも彼女は眼を覚まさない。

だがそんな彼女は眼を覚まさなくても、彼女の腕の中で眠っていたもう一人の少女は眼を覚ました。

「たたーーーい!」

イエローに抱かれていた、ひまわりだ。

ひまわりは、出会ったときからヴィクトリアの悪意に気づいていた。
なにもわからない幼子だからこそ、彼女の悪意を見抜き、「わるいひと」だと認識していた。

そんな彼女が、自分をやさしく抱いてくれていたお姉さんを攻撃していた。
少なくとも、彼女にはそう見えた。

そしてひまわりは、それをだまって見ているほど大人しい赤ん坊ではなかった。
イエローの腕の中で暴れて、ヴィクトリアをイエローへと近づけさせない。
それどころか、ヴィクトリアをイエローから引きはがした。

無論、ただの赤ん坊に、ヴィクトリアを引きはがすだけの力はない。
だが、ひまわりにはかつてのび太をも打倒した必殺の武器がある。

ガードグラブ。その発生する力場を全てヴィクトリアにぶつけ、はじいたのである。

「く……この……!」

流石にこの行為にはヴィクトリアも怒りを抑えられない。
何もできない、何の価値もない赤ん坊にこけにされたようなものなのだ。
腹が立って当然だろう。

ひまわりのほうはというと、素早くイエローの腕の中から抜け出し、部屋から逃げる。

「この!」

ひまわりのことは無視してしまえばいいのに、
やはり腹が立っているのだろう、ヴィクトリアはひまわりを追いかけ、捕まえようとする。
ひまわりに追いすがり、捕まえようとする。
が、その瞬間ひまわりは直角レベルで方向転換をし、彼女の手から逃げ出した。

彼女ははいはいの天才だ。
その動きっぷりは時に、彼女の母親と兄、その両名から逃げ切ることができるほどの素早さを持つ。

人よりすぐれた力を持ってはいるが、赤ん坊に慣れていないヴィクトリア一人で、
本気で逃げる彼女を捕まえることは非常に難しいだろう。

無論、殺す気でいるならば流石にそうはいかないのだろうが、
ヴィクトリアにはひまわりを殺す気がない。
そこまではキレていない。


突然方向を変え、
机の下を潜り抜け、
机と椅子の間を器用に動き、
転がって横方向へ移動し、
ヴィクトリアの手をことごとく避け続ける。
41 ◆v5ym.OwvgI :2010/03/02(火) 23:37:13 ID:8xSHaJti
「待ちなさい! まて!」

ヒートアップしたヴィクトリアが、ひまわりを追う。
が、ひまわりはまた机の下に潜り込む。
ひまわりに集中していたヴィクトリアは、机にぶつかり、そのまま盛大に倒れこみ、鼻を打った。

「っ〜〜〜〜〜〜〜!!」

いくらホムンクルスといえども、これは痛い。
鼻っつらを抑え、痛みをごまかすようにごろごろと転がる。
そんなヴィクトリアを尻目にひまわりは逃げる。

「たや?」

だがふいに窓から視線を感じ、そちらに注意をそらした。
そこには、見たことがあるような、無いような生物が、
少なくとも人間ではないようだが、よくわからない生物がいた。
じっと窓の外の生物を見つめる。見つめ続ける。

そしてそのスキを見逃すヴィクトリアではない。
ひまわりを捕まえ、ゆかたの首辺りをつかみ、持ち上げる。

「さあ、つかまえたわよ……」
「ひ……ふぇ……」

が、その顔がよほど怖かったのか。
その大きな瞳が潤み、しゃっくりをあげだす。
ヴィクトリアがまずい、と思ったがもう遅い。


赤ん坊の最大奥儀、大泣きが始まった。



【H-1/住宅内一階/2日目/黎明】
【ヴィクトリア=パワード@武装錬金】
[状態]:精神疲労(中)、肉体消耗(中)、首輪解除、太刀川ミミに瓜二つの顔、いらいら
[装備]:i-Pod@東方Project、スケルトンめがね@HUNTER×HUNTER
[道具]:天空の剣@ドラゴンクエスト?、基本支給品×2(食料のみは1人分)、
    塩酸の瓶、コチョコチョ手袋(左手のみ)@ドラえもん、
    魔剣ダイレク@ヴァンパイアセイヴァー、ポケモン図鑑@ポケットモンスター、ペンシルロケット×5@mother2
    アイテムリスト、詳細名簿(ア行の参加者のみ詳細情報あり。他は顔写真と名前のみ。リリスの情報なし)
    マッド博士の整形マシーン、カートリッジ×10@魔法少女リリカルなのはA's、
    思いきりハサミ@ドラえもん、その他不明支給品×0〜2
[服装]:制服の妙なの羽織った姿
[思考]:だまりなさい!
第一行動方針:ひまわりをだまらせる、イエローを起こす。
第二行動方針:トリエラと接触する。イエローを連れていく?
第三行動方針:首輪や主催者の目的について考察する。そのために、禁止エリアが発動したら調査に赴きたい(候補はH-8かA-1)
第四行動方針:“信用できてなおかつ有能な”仲間を捜す。インデックス、エヴァにできれば接触してみたい。
基本行動方針:様子見をメインに、しかしチャンスの時には危険も冒す
参戦時期:母を看取った後。能力制限により再生能力及び運動能力は低下、左胸の章印を破壊されたら武器を問わずに死亡。
[備考]:首輪が外れた事により能力制限が外れている可能性も有ります。
     首輪に『首輪を外そうとしている』や『着用者が死んだ』誤情報を流す魔法を編み出しました。
     ただし、デバイスなど媒体が無ければ使えません。攻撃に使うのも不意打ちで無ければ難しいと思われる?
     更にヴィクトリアの場合、実際に致命傷を受けて殆ど死に体になっていた事が助けとなった可能性も有ります。
42 ◆v5ym.OwvgI :2010/03/02(火) 23:42:13 ID:8xSHaJti

【イエロー・デ・トキワグローブ@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:全身に擦り傷と打撲(行動にやや支障)、左瞼に大きく切り傷、疲労(中)、頭部に打撲(生命に危険なし) 、熟睡
[服装]:ベルフラウの私服姿。
[装備]:レッドのグローブ、おみやげのコイン@mother2、エスパーぼうし@ドラえもん
[道具]:共通支給品×3(食料?1)、浄玻璃の鏡@東方project(残り1回)、クロウカード×3(『甘』『火』『地』)
スケッチブック、城戸丈の首輪、イエローの服(泥だらけ) 、リルルのICチップ、ベルフラウの帽子
[思考]:……
第一行動方針:ヴィクトリアについていく。
第ニ行動方針:ベルフラウがどうなったか知りたい。
第三行動方針:グリーンやブルーと合流し、このゲームを破る方法を考える。
第四行動方針:丈の友人と合流し伝言を伝え、協力を仰ぐ。
基本行動方針:絶対にゲームに乗らない。生きてマサラに帰る。
[備考]:
トリエラ(外見)を「積極的なマーダー」だと認識しました。
トリエラ(名前)を「ククリやリルルの仲間で、良い人)と認識しました。
詳細名簿で上記トリエラの情報が結びつきました。
ネスからレッドの仇が「白い女の子」だと聞かされました。
レッドの仇に対しどういう態度を取るべきか、まだ考えが定まっていません。
ベルフラウの言葉と今の状況から、雛苺一行を危険な存在だと見なしています。
首輪内の生物の活動状態を把握可能


【野原ひまわり@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康。しんのすけの死を信じていない、泣き叫んでいる
[装備]:ガードグラブ@SW
[道具]:ピンクの貝がら、基本支給品、生乾きの服
[服装]:海鳴温泉の浴衣(お子様用サイズ)
[思考]:(おねえさんきらい!きらい!)
第一行動方針:(ヴィクトリアが気に入らない)
第一行動方針:(おにいさん(グリーン)を探したい。)
第二行動方針:(おねえさん(ククリ)の探している人を見つけてあげたい)
基本行動方針:(おうちに帰る)





北東市街。

数時間前に大乱闘を終え、あちこちにその傷跡が残った街の上空に、Q-Beeはいた。

目的はもちろん、死体の捜索。
現在は最優先といわれた太刀川ミミの捜索を行っていた。
43 ◆v5ym.OwvgI :2010/03/02(火) 23:45:18 ID:8xSHaJti
P-Beeの死亡確認証言を元に、太刀川ミミの死亡地点に向かったQ-Beeは、
そこでヴィクトリアの首輪と、爆発した太刀川ミミの首輪のかけらを見つけた。
首輪を解除したヴィクトリアが、そこにおいていったのである。

ヴィクトリアの死体は野上葵と同じだろう。そうQ-Beeは考える。
だが、現在の捜索対象は太刀川ミミだ。彼女に比べてヴィクトリアは優先順位が低い。
こちらは死亡地点には首輪がない。死体もない。
ますます捜索は困難だ。

彼女の死体の行方を野上葵の時と同じようにして探すことはできない。
もちろん、ニアの時のように誰かに聞くこともできない。
あの特例は、リリスに対してだけ許されているのだ。

さて、どうしようか。
またもや良くない頭を振りしぼって考えるQ-Beeだったが、

(オナカ、スイタ……)

その思考を止めるのは、やはり空腹。
そして数時間前にキルアを捕食したにもかかわらず、もう腹が減ってきているのだ。

少し休んで、ご飯を食べに行こうか。
そう考えるQ-Beeだったが、ふと名案を思いつく。

P-Beeに確認をとった後進路をF-1、桜の木の下へと向けた。



(21バン、ククリ。17バン、カナリア、シタイカクニン)

P-Beeから再度彼女達の正確な死体の位置を聞いたQ-Beeは、
直ぐに死体を掘り起こし、ククリと金糸雀の死体を確認した。

先ほどの太刀川ミミと違い、こちらは死体の場所がはっきり分かっていた。
P-Beeは死体がいるかどうかはよくわからないと返答していたが、
ジェダは彼女らが埋まっていると言っていた。だからそこに死体がいると思った。

手間はせいぜい掘ることぐらいだ。
ノガミアオイやニアに比べて、はるかに楽だった。

そしてQ-Beeは、ククリの死体を見つめ――

捕食した。


太刀川ミミの捜索を諦め、別の死体を見つけた理由。
それは別に、捜索を断念して次に行ったからではない。
44 ◆v5ym.OwvgI :2010/03/02(火) 23:47:24 ID:8xSHaJti
死体のあるところに行きたかったからなのだ。
捜索対象の元へいったのは、Q-Beeには珍しい機転だろう。


だが何故、ジェダの言いつけを守らず幼子を捕食したのか。


一度悪いことをした人間は、味をしめ、再び悪いことを行う。
それは誰しも、一つくらいは覚えがあるだろう。
Q-Beeも、それと同じだ。

野上葵の死体の時はジェダの言いつけを守ってQ-Beeなりに我慢しようとしたが、
その我慢は、キルアを捕食したことで霧散してしまった。
最初の時よりも、幼子の捕食への我慢が薄くなっているのである。


リリスとの密約も、その思考を加速させる。

黙っていればばれないのだ。
ならば、いくら幼子を食べようと、ばれるはずがないではないか。


故にQ-Beeは、ジェダが見ていないのだからと、
遠慮もなく幼子を食べる。

(オナカ、イッパイ)

そしてククリを捕食し終わり、一息ついた。
空腹だったお腹は満腹になり、満足した。
ジェダの指令も半分を達成したし、いうことなしだ。

Q-Beeは、ちらりと横を見る。
そこにはもう一つ、食べられる死体があった。

金糸雀ではない。人形の体は食べられない。
タバサと小太郎によってククリ達と共に埋められた、イシドロの死体だ。

お腹がいっぱいになったQ-Beeだが、目の前に食料があれば悩む。
もっと食べようか、我慢して次に行こうか。そう考えてた時に

「誰だ……!」

ヴィータの声が聞こえ、自分が見られたのだと理解する。

今回のQ-Beeはやや冷静だった。
Q-Beeは咄嗟にイシドロをつかんで飛び去り、姿を消した。
キルアの時のように、食事を邪魔されなかったという理由が大半だろうし、今は満腹で満足している状態だ。
幼子に見られることを避けることができた。
45創る名無しに見る名無し:2010/03/02(火) 23:59:06 ID:TOy94GdL
支援 したほうがいい?
46創る名無しに見る名無し:2010/03/02(火) 23:59:44 ID:Hx704eHj
支援
47創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 00:05:13 ID:Qw/2ihZf
支援する!
48創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 01:16:03 ID:6KfqVYhR
支援
49創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 01:26:49 ID:XXkbiwH+
支援
50代理投下 ◇v5ym.OwvgI:2010/03/03(水) 01:31:05 ID:XXkbiwH+
これが、一度目の遭遇。





北東市街上空でイシドロを食べ終え、
食べられなかった首輪を放り捨て、Q-Beeは考える。

残る捜索対象は太刀川ミミと、ヴィクトリア。
他に古手梨花がいるが、こちらはリリスに任せている。

もう一度太刀川ミミの死亡地点へ向かう。
だがやはり、死体はそこにはなく、あるのは首輪と、壊れた首輪だけ。
しかしQ-Beeはそこで捜索を止めず、周囲をしらみつぶしに捜索する。
手がかりが何もないが、だからといって死体の捜索を止めることはできない。

街中を飛び、捜索するが、やはり見つからない。
やがて、あきらめたQ-Beeは、ヴィクトリアの捜索へと思考を切り替える。

ここでまた過去の経験が役に立った。
野上葵の時は、トマとレベッカ宮本が『首輪だけ』を運んでいた。
今回は逆のケース。誰かがヴィクトリアの『死体だけ』を運んでいるのだ。
そう、Q-Beeは考えていた。

……普通の人間からしたらおかしな発想だが、Q-Beeにとっては死体は立派な食糧。
首輪だけ外したのも、それが食べられないからだ。
何らおかしいことはない。


Q-Beeは早速、周囲の目撃情報から、首輪のない死体の捜索を始める。

F-1、桜の木の付近にいる29番と85番
互いにすぐそばに一人ずついることを確認。あとやっぱり見られていた。

H-1、家の中
04番と51番がすぐそばに二人ずついることを確認。

G-1、家の中
83番が一人で暖かい雨の中にいるのを確認

G-1、別の家の中
10番と41番がすぐそばに一人ずついることを確認。

G-1、街の中
43番が一人で冷たい雨の中、すぐ近くにいることを確認……!?
51代理投下 ◇v5ym.OwvgI:2010/03/03(水) 01:31:54 ID:XXkbiwH+


すぐにP-Beeの報告のあったほうを向く。43番トリエラがそこにいた。
死体の捜索に神経を集中していたせいもあるのだろうが、
事前の報告では集団で家の中にいたはずの彼女が外に出ていたことに気づかなかった。
それどころか、接近してきたことにも気づかなかった。

だが、見られたのなら、すぐに退散しなければ。
Q-Beeはすぐに、飛び去った。


これが、二度目の遭遇。






トリエラの前から姿を消したQ-Beeは、再度P-Beeと連絡を取り、確かめる。

H-1、家の中
04番と51番がすぐそばに二人ずついることを確認。


04番と51番。
イエローとひまわりの首輪の中にいるP-Beeは、それぞれ他に二人の人間がいることを報告した。
しかしその場のP-Beeの数は2匹。
数があわない。


そこに、死体があるはずだ。そう考え、Q-Beeはイエローとひまわりの元へ向かう。

そして――


(……ハッケン)

Q-Beeは、暗い部屋の中を除きこみ、そこに首輪のない人間を見つける。
首輪のない生きた人間。それも、ジェダに報告せねばならない存在だった。
そして、ジェダに報告しようとしたところ

(ジョオウサマ、ゴホウビ、キタ)

そのタイミングでご褒美の請求。55番、雛苺だ。
突然きた命令。しかもこちらが優先順位が上。すぐに動かなければならない。
しかし、今まさにジェダに報告をしようとした瞬間だったのだ。
二つの命令に、しばしQ-Beeは硬直する。


すぐにジェダに首輪のない人間の報告をしなければならない。
だが、ご褒美の配達は最優先の仕事のはずだ。


52代理投下 ◇v5ym.OwvgI:2010/03/03(水) 01:32:41 ID:XXkbiwH+

一度に来た二つの指令に、Q-Beeはパニックを起こす。


そして、ひまわりがこちらを見た。
まずいと思い、すぐに飛び去ろうとする思考が加わる。

ジェダの報告、
ご褒美の配達、
幼子に見られるな

3つの指令が重なり、Q-Beeの混乱はますますひどくなる。

火のついたような泣き声が響く。
その泣き声を聞き、Q-Beeは、あわててその場から去った。


これが、三度目の遭遇。






(エート……エット……)

ひまわり達のそばから去ったQ-Beeだったが、相変わらずパニックはしたままだった。
あの場から去ったのも、別に見られてまずいと思ったからではなく、単に泣き声に驚いて逃げただけだ。

混乱はしばし続き、ようやく立ち直ったQ-Beeは、
ひとまず最優先だったはずのご褒美の配達をこなすことにした。



もし仮に、Q-Beeが優秀だったら。
こんなにたくさんの参加者に見られることはなかっただろう。
妙なことで混乱をすることもなかっただろう。

優秀な部下がいない。
その弊害は、大きい。
53代理投下 ◇v5ym.OwvgI:2010/03/03(水) 01:33:30 ID:XXkbiwH+

【Q−Bee@ヴァンパイアハンター】
[状態]:健康、疲労(小)、混乱
[装備]:不明(なし?)
[道具]:ご褒美ランドセル(不明支給品0〜1(補給した場合は1〜3))
[思考]:ツギ、ナンダッケ……?
第一行動方針:ひとまず雛苺にご褒美を渡しに行く。
第二行動方針:ジェダの指令をこなす
第三行動方針:(……ゴハン)
基本行動方針:本能に逆らえる範囲内で、ジェダの指令を忠実にこなす
[備考]:野上葵、ニア、グリーン、ククリ、金糸雀の死体の存在を確認しました。
    キルアの殺害者を弥彦に偽装する事にしました。
    ククリ、イシドロの死体を捕食しました。いずれもジェダに言うつもりはありません


※生きているヴィクトリア(太刀川ミミの姿)を確認しました。ジェダへの報告はまだしていません。
 どちらで認識したかは次の書き手に任せます。

※ヴィータ、紫穂、トリエラ、ひまわりに姿を見られました。
 ですが、相手がそれをQ-Beeと認識したかは不明です。
 それぞれの反応は次の書き手に任せます。

※北東市街のどこかに、イシドロの首輪が落ちています。
 上空から落としたため破損があるかもしれません。
54創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 01:34:38 ID:XXkbiwH+
代理投下終了
55創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 02:01:46 ID:XXkbiwH+
感想
姿は違えど首輪を外したヴィクトリアが主催側に確認されましたか
ジェダがどうするのか気になるところ
3つの命令にパニクっちゃうダメな子wはまた隠れて食事したりとどんどん悪い子になっちゃって
教育は大変ですねジェダ様
56創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 06:30:18 ID:k5tXhkdR
ああそうか、こう来たかっ。
Q-Beeをメインに置いてきたのは割と予想外だ。
以前の戦闘中のヤバさとのギャップが面白いな。GJ
57創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 15:27:13 ID:hW/SMYxG
投下乙

Q-Beeは本当にもうwww
ヴィクトリアはバレたのかw
参加者達にとってはマイナスなんだがざまあみろと思ってしまったw
58創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 18:19:24 ID:7hWAnk6M
投下乙!
Q-Beeテラバカスwwww
ジェダは部下の人選を再考すべき。
まあ、過去に頭の切れる副官に裏切られて痛い目を見てるから、その反動かもしれんが。
しかし、ヴィクトリアは冷や汗モンだな。果たしてどう出るか。
59創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 19:19:14 ID:I609TcRS
投下乙
ヴィクトリアが生きてるのバレちゃったか
でも姿はミミなんだよね
これからどうなることやら

それと、前スレでも言ったジェダとQBの追跡表だけど、
QBの登場話は000,146,149,158,172,178,216,227,228,238,245,252,257,261,262,268
ジェダの登場話は000,175,238,245
で間違いないかな
あってればそれでwikiに収録しとこうと思うんだけど
60創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 19:37:01 ID:BDdvMqMY
してくれるのならお願いします
61創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 21:39:08 ID:Mu1KYGwY
QB といい リリスといい、ジェダは部下に恵まれてるなwww
62創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 22:14:22 ID:mMODmJnJ
全員黎明到達記念マップ更新だよー!
……実はまだタバサが深夜だけどノーカウントでいいよな。

ttp://www25.atwiki.jp/loli-syota-rowa?cmd=upload&act=open&pageid=8&file=romap271.gif

リリスが神社に、シャナが北東市街にと、
火種が発火地点にどんどん移動してきてますな。
一度爆発した千秋やグレーテルもどこに行くか分かんない、と。

工場や城等は特に脅威がやってくる心配もなく、このままいけば朝まで大丈夫そうだが……
63創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 23:19:11 ID:uAbsbotd
地図更新乙!
こうして見ると、対主催はほとんど三極化してるんだな。
情報いっぱいで首輪解除に最も近いけど仲が悪い北東市街組。
結束は固いけど戦力が微妙な工場組。
一人を除き元マーダーの城組。
それぞれのカラーがあって面白い。
64創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 00:49:09 ID:H9yeHju/
城組、どうして元マーダーばっかり集まるのやらw
梨々いなくなったから全員が誤解フラグ持ちになってるし。いや、誤解じゃないんだけど。
ベルカナは対主催だけど、野上葵の件があるから大手を振れないだろうし……

工場は戦力は十分だと思うぞ?
最大火力のミニ八卦炉がなくなったけどあれはなのはに持たせたら害にしかならないからプラスだろうし、
リンクは戦果が悪いけど自分の剣ゲットで十分戦力になるし、
アリサは言わずもがな。インデックスは考察に役立てそうだし。
問題は城組と接触した場合かな。
城組のイヴとレックスとアルルゥをマーダーだと思ってるし。

あとマーダーや危険人物が集団のいない方に向かってるのが怖いな。
グレーテルは学校から離れたし、リリスは学校に行くし、千秋もシェルターに行きそうだし。
65創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 02:08:47 ID:F2xCXMTO
工場組はどうだろうな。
今のインデックスとなのはは殆ど戦力にならないし、
リンクも機転と技術はあるけど子供の姿で力が弱いから、押し込まれると厳しい。

すなわち魔法少女カレイドアリサこそ戦力の要。
なにかおかしい気もするがまったくもって気のせいだ。
あ、あと知恵と勇気ね。これとても大事。
66創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 07:29:38 ID:ZJGYELEi
北東市街組と城組は磐石だな
工場はやや不安が残るかも
シェルター組とパタリロ組はヤバいなw色んな意味で

基本的に参加者は北に固まってるな
ブルーとかこれからどうすんだろw
北東市街にはレミリア様やヴィクトリアしかいないw
イエローを頼らなきゃだな
67創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 12:13:47 ID:H9yeHju/
おま、リンクが弱いとかいうなよw
負けてばっかりのせいで印象弱いけど現在の工場組の中で一番強いはずだぞw?

ブルーをマーダーだと思ってない連中……
シェルター組とヴィクトリア組ぐらいか。

比較的近い工場、城、学校にいる人と接触したらアウトだな。
南西市街地のパタリロ組も弥彦が知ってるし。
交友関係の広いシャナと小太郎に知られたのが運の尽き。
68創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 03:32:10 ID:Y0jAu7QA
いや、リンクの力が弱いってのは単純に筋力の話(アリサはルビーで強化掛かってる)
子供の姿だと装備が極端に制限される程だから、筋力はほんと子供並みだし。
正面から戦わず逃げ回りながら工夫すれば強そうだけど、それをすると仲間がヤバイ。

ある意味、一番美味しいチームだけどね。
百戦錬磨だけど大人になれないリンク、魔法知識は豊富だけど使えないインデックス。
装備のおかげで強いけど一般人のアリサ、魔法戦に強いけど杖が無くて殆ど魔法を使えないなのは。
無慈悲な圧倒的暴力に蹂躙されるか、弱者の団結で跳ね返せるか。
……煽りにしてみるととんでもなく美味しいな、こいつら。
69創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 14:32:19 ID:2MllCeVb
む?子供の姿の筋力が弱いってソースどこだ?
確かにダイゴロン刀とかハンマーは装備できそうにないし、ハイラルの盾は背負っていたが、
マスターソードが装備できなかったのはその時のリンクが(恐らく精神的に)幼かったからだぞ?
ただ、リンクの戦法は基本的に力押しじゃなくて機転と工夫と発想っていうのは同意だから、
レックス辺りと比べちゃったら流石に力はないと思うけどな。
つーかルビー補正かかっても所詮9歳の人間の女の子より筋力弱いってことはないだろ。
並行世界で一番怪力のアリサを連れてきたとしても。
いや、でも歳の差を考えたらありえるか?(リンクの年齢は8〜9歳)

連携とるのが日常茶判事なのが二人もいるし、精神的に戸惑ったり不安があるのは桜のみな城組と、
全員のスペックが高く、殺すことにもそれほどためらわないトリエラ組と比較したら、
技術よりのリンク、素人のアリサ、デバイスのないなのは、戦闘では弱いインデックスと欠点があるし、
なのはが殺しをするのを周りが止めるだろう分、リンクぐらいしか相手を殺せそうなのがいない。
70創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 14:39:47 ID:DPkQqI3J
お前らリンクの強さについて熱く語りすぎw
71創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 15:46:19 ID:jCE5Q1PO
白熱しない程度なら活性化につながるからいいんじゃね?

リンク云々より、ルビー補正を高く見るか否かの違いじゃないか、これ?
リンクの筋力自体は同年代ではかなり高いだろうし。
72創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 22:18:06 ID:SIxvJ3Q+
残り少ない主人公体質のキャラだからな。期待も集まるさ。
俺もリンクには期待してる。
73創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 22:58:34 ID:7MqLRPnS
主人公体質……生き残りの中ではリンク、レックス、弥彦くらいか。
あと個人的には、最近、リリスが主人公(ただし少女漫画の)っぽくなってきてるように感じるな。
74創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 23:05:46 ID:Y0jAu7QA
なにげにアリサの贄殿遮那もロリの身の丈近くある大太刀(刃渡り1m超)だから相当重いし、
柄が短い事も相まって大人の達人剣士でも持て余す、使えるだけで結構凄い代物だからな
75創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 23:20:32 ID:2MllCeVb
それを言ったらリンクも身の丈以上の大きさの大妖精の剣を振り回すし、
自分の胴ぐらいの大きさの恐らく鉄製の勇者の盾を構えながら金剛の剣を扱える。
……と、水掛け論になる。

しかし、改めて思ったがルビーの性能って便利すぎるな。
一般人のアリサが所持者のままでよかったよ本当。
76創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 23:24:36 ID:jCE5Q1PO
主人公体質よりもいい加減ショタ殺しをやめてほしい。
もう総人口の二割だぞ。
77創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 23:33:40 ID:DPkQqI3J
残り30人中ショタは7人かw
まあ男女平等にする必要なんてないんだし、あまり気にしない方がいいだろ
ヘタに意識して展開縛るようなことになっても嫌だし
78創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 23:57:02 ID:2MllCeVb
キャラの魅力がないに等しいところからの参戦が多かったからな、男子。
乱太郎とかちびまることかサザエさんのキャラを残す気はだれもおこらないだろう。

個人的に初期の頃に死んだ男子で惜しいと思うのはレッドとゴンとしんのすけぐらいだな。
しんのすけは残ってたらエロ方面で大活躍だったと思う。
ゴンはどこかゆがんでるし、なのは並みに強情だしで危険対主催化もできたと思うし、
レッドは単純にリーダー気質なのと考察も得意そうなのが。
79創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 00:11:07 ID:XlGNFX/N
先日の投下でパタリロと弥彦のコンビには長生きして欲しいと思ったw
80創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 14:48:39 ID:QHOyY/Nq
対主催組ごとのこれまでのキルスコア
城組  5人(イブ3 桜1 レックス1)
工場組 7人(なのはさん7)
市街組 6人(トリエラ3 ヴィクトリア3)
あれ元マーダーの集団の城組が1番平和的?www
81創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 15:42:03 ID:rFLISbOo
残り三十人か
これはまだまだ多いな
マーダーに期待したいけど質、量ともに微妙だな
危険対主催次第もあるがQBにも期待w
いや、ヴィクトリアの尻に火が付いてるようなもんだしQBがそっちと対決してもおかしくないんだよな
82創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 16:53:08 ID:Gha837jU
グレーテルはヴィクター化のフラグあり、なくても脅威。
レミリアは戦果が乏しいけど実力は十分。
トップマーダーの素質はあるんだがなぁ。
だが未だにトップはなのは。2位も一般人の千秋だしなあw
83創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 18:33:57 ID:i+jArQdn
重苦しく見えて、対主催対マーダーの視点で見れば対主催優勢なんだよ。
七人の魔女も南組は蒼の子が立ち直って-1どころか対主催が一人増え、
東組はイヴ改心に加えて雛苺が改心(?)&死亡して更にマーダーが減っている。
マーダーや誤解フラグにはむしろがんばってもらわないといけない局面だ。
雰囲気はどんよりしてるのにw
84創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 21:45:58 ID:Gha837jU
とはいえ誤解フラグで暴走するキャラは、中盤の誤解フラグ衝突が目立った分、
冷静に行動しないと「いいかげんにせい」となるしなぁw

特に誤殺クイーンのトリエラは殺したのが対主催ばかりなのは知ってるだろうし。
なのはもマーダーだと思って殺したのはヘンゼルだけだしな。
巻き添えでコナン殺したし、ご褒美の生贄に哀を殺して、
大砲撃で間違えて三人殺し、自分に余裕がなかったからと白レンを殺した。

……こうしてみるとどのあたりが対主催なのか果てしなく疑問だな。
下手なマーダーより立ち悪かったんだな、危険対主催。
85創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 21:57:59 ID:II6Xs392
なのはの戦績が圧巻過ぎるwwww
ぶっちゃけ下手なマーダーより危険対主催がヤバい。
確かに戦力比で対主催優勢だけど、団結できなきゃ意味がないわけで。
対主催にとって最悪のシナリオは「対主催が同士討ちで疲弊したところにマーダー襲撃」だ。
86創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 21:59:01 ID:LR+mT51a
千秋、グレーテル、紫穂、ヴィータ、レミリア、リリス
期待できるマーダーはこんぐらいか…。
ブルーとメロは雑魚だし、エヴァ様は偽悪だしな。
レミリアがマーダーまで殺してしまいそうだw
87創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 23:21:59 ID:Gha837jU
紫穂ヴィータをひとくくりにして、それぞれ二人ずつ倒して死ねば、
15人になるか……

それくらいなら生存ルートで転がせそうだけどな。
88創る名無しに見る名無し:2010/03/08(月) 23:40:28 ID:YN2I/pfa
このロワってご褒美ルールもあって対主催同士の潰し合いが頻発したからなw
現在も市街組は疑心暗鬼だし、城組はマーダー時代のつけがたまってるし。
89創る名無しに見る名無し:2010/03/08(月) 23:58:26 ID:qCnngo/z
市街地組はともかく、城組のは明確な元マーダー軍団なんだよなw
妹を返すために乗ったレックス、
帰るために乗ったアルルゥ、
記憶を消すために乗ったイヴ、
雛苺に操られてた桜。
あとついでに誤解された相手がすでに死んでるのを知らないベルカナ。
90創る名無しに見る名無し:2010/03/12(金) 00:30:07 ID:7UxGBGCw
危険対主催。
エヴァと蒼星石は方向性が違うから置いといて、
ベッキーも今のところは輸血パックがあるから問題なし。
シャナがトリエラとどういう風に会うかだよなぁ。
どちらにせよこれでとりあえず、シャナかトリエラのどちらかは死ぬ、と。

あとヴィクトリアがジェダ対面が迫っててどうなるか。
もしかしてマジで主催陣営に取り入る可能性も……w
91創る名無しに見る名無し:2010/03/12(金) 01:50:57 ID:7UxGBGCw
予約来たー。
って、この二人合流するのかw

向かう先は学校か、はたまたお城か。
92創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 10:28:45 ID:nAEEJkpE
グレーテル、南千秋投下します。
93なまえのないかいぶつ ◆PJfYA6p9PE :2010/03/14(日) 10:31:20 ID:nAEEJkpE
痛い。

明け方、濃紺の空に太陽色の流星。
昇る朝日より速く、消えゆく星の合間を縫って。
されど、その軌道はまるで哀れ死に行く毒虫のよう。
もがくよう、叫ぶよう、激しく宙をのた打ち回る。

痛い。
痛い。

それは実際、一匹の毒虫。
人の子の皮を借り、命を啜る昆虫だった。

痛い。
痛い痛い。

虫に迫るは死。
意地の悪い蝙蝠に心臓を齧られて。
傷が痛んで、痛んで。
たまらず虫は飛んでいた。狂ったように舞っていた。

痛い。
痛い痛い。
痛い痛い。

だが、いつまでもそうしてはいられない。
少しづつ、体から眩い光が消えていく。
速度が鈍り、力が失せる。
そうして虫は大地に堕ちた。

痛い。
痛い痛い。
痛い痛い痛い。

樹冠を突き抜け、枝を折りとり、強く背中で地面を叩く。
息が詰まって、槍が消えても、苦悶の時は終わらない。
心臓から出ずる割れそうな痛み。じっとはできず転げまわった。
それはピンに留められた昆虫の最後の足掻き。
だが。

痛い。
痛い。
痛くって――気持ちいい。

虫は同時に愉しんでいた。
巡る苦痛と官能の波が否応無しに身体を火照らせる。
細い首筋はおびただしい汗で光る。泥や草いきれが白い肌を穢す。
湿った唇から漏れる嬌声。高く木立に跳ね返り、甘く、淫靡な響きを齎す。
ふわりたなびくスカートの下、レースの布地はほのかに濡れて。

――ああッ! いい……あああッ!

虫にとって痛みは即ち快感であった。
数え切れない主人の愛は、虫の身体を歪に変えた。
神経が痛みの電流を脳に伝える。流れ出る大量の脳内麻薬。
それは命を噛んで、抉って奪って、流れるものと全く同じ。
究極のサディストであると同時に至高のマゾヒスト。
教育熱心な飼い主たちに恵まれ、躾け込まれたなれの果て。
94なまえのないかいぶつ ◆PJfYA6p9PE :2010/03/14(日) 10:32:41 ID:nAEEJkpE

――ああぁんあん……ああ、そこ……そこ、もっとぉおおおおおお!!

天国と地獄がチカチカ目の前をフラッシュバックする。
エロスとタナトスがトップを争うスピードレース。
頭、心臓、恥部。正中線に凝集される刺激は受容の限界を超えんばかり。
糸のもつれたマリオネットのように、びくん、びくんと手足が跳ねる。
瞳の中から光が消えて、口の端からは涎がたらり。

――あ、あはああああ、くる、きてしまいます……あっあああっ

虫の身に何かが迫る。
ぞくり、ぞくりと体内から少しづつせり上がる。
死か、絶頂か、それともその両方か。
いや、そもそも両者に違いなどなかったのか。
予感か不安か、湧き上がる底知れぬ感情に堪えられず、
虫は両手を大事な処へとあてがい激しく蠢き動かした。

――あああっあはああああっ、イク、イってしまう、あ、イク、イクゥーーーーーーーッッッ!!

最後の階段を駆け上がる。
これから来るものに堪えられず、虫は目蓋をぎゅっと閉じる。
綴じ目から溢れた涙の雫は、長い睫毛に絡まれて。
放たれる声も一段と高く、ついにその瞬間が――――













ミシリ。
ミシリ。

ミシリ。

――――パリン。














95なまえのないかいぶつ ◆PJfYA6p9PE :2010/03/14(日) 10:34:27 ID:nAEEJkpE
私がそれを見たのは、雛苺を川に捨ててほとんどすぐのことだった。
まだ暗い夜の空を滅茶苦茶に飛び回るオレンジ色の光。
カナなら「おお! UFOだUFO!」とか言って騒ぐところだろうが、
生憎、私はそんなに子供じゃない。

それに、私にはそれが何だかすぐに分かった。
あの光を忘れられるわけがない。
グレーテル。
空の奴が出していた光線は
あいつの持ってた大きな槍が出していたのとそっくりだ。

「何であいつがこんなところにいるんだ」

寒い風でも吹いたときみたいに、背中がゾクリとなる。
負けじとぎりり歯を鳴らす。
気持ちが、悪い。

折ってポケットに入れてあった地図を取り出す。
何時間か前のバカ野郎会議の後、あいつは南に行ったはずだ。
話し合ったのが多分、C−3の変な建物だから、そこから南に行くと……最初にあるのは。

「神社か……学校」

学校。
頭に浮かびそうになるアレやコレを心の中で殴り殺す。
今はまだ……駄目。

思い出してみれば、グレーテルは遠くの方からこっちに来て、落っこちた。
目の前の暗い森を抜ければ、学校はすぐそこだ。
つまり、あいつはここに来る前、学校にいた確率が高い。

学校にいた理由は何だろう。
懐かしくなった? 
いや、あの化け物に限ってそれはない。
多分、あいつのことだ。
誰か別の参加者を見つけて、殺そうとしたんじゃないか?

そう考えれば、何でわざわざあんな目立つように飛んでたかも分かる。
あいつは負けた。誰かを襲って逆にやられたんだ。
勝てなくて焦ってたから、あんな無様な逃げ方しかできなかったんだ。
ざまーみろ。
いつも調子に乗ってるからそういうことになるんだ、バカ野郎。
ちょっといい気分になって、何か自然と笑えてきた。

「……待てよ」

でも、次の瞬間、もっと楽しいことに気づいた。
負けて? 逃げてきた?
っていうことは、あいつ今、弱ってるんじゃないか?
よく考えれば、飛び方もフラフラしてて危なっかしかったし、
最後に着陸した時も“降りた”って言うより、“落ちた”って感じだった。
それも、余ってるパワーをコントロールできずに墜落したんじゃなくて、
パワーを残らず使い果たしてしまったみたいな……
96なまえのないかいぶつ ◆PJfYA6p9PE :2010/03/14(日) 10:35:57 ID:nAEEJkpE

「いける、かも」

間違いない。
あいつには今、ほとんど力が残っていない。
そして、私にはあいつの落ちたところが分かってる。
冷静に考えれば、いくら銃に撃たれても死なない化け物だって、まさか不死身ってことはないはずだ。
殺す方法は銃以外にもいくらでもある。
雛苺みたいに殴り殺してもいいし、よつばを殺したバカみたいに、たっぷり水を飲ませてやってもいい。
助けてやるフリをして、毒を盛るっていうのも面白いかもしれない。
それでも死なないときは、トンネルのときの奴みたいに首をへし折ってやる。
そうすれば、流石の化け物も死ぬしかない。

どんなに無様に命乞いをしたって、絶対に許してやらない。
逃げたり隠れたりしようとしたって無駄だ。
私には首輪探知機があるんだから。
ああ、あいつの悔しそうな顔が見れるかと思うと気持ちがいい。
私をさんざん怖がらせた化け物を好きにできると思うと胸がスッとする。

「……行こう」

少しづつ明るくなり始めた空の下、私はまだ暗い森に足を踏み入れた。





世界が割れた。
彼女にはそう感じられた。

しかし、彼女は生きている。
風の音、揺れる枝、草の匂い、土の味、背中が冷たい。
五感に異常はない。

何かに気づいたように、胸に当てていた右手を離す。
赤黒い掌に、銀色の欠片がいくつか乗っていた。

「何かしら、これ? あと……」

何かがいつもと違っている。
もう一度、手を見る。
赤黒い掌に、銀色の欠片が乗っている。

「黒い、掌?」

ゆるゆると起き上がり、袖をめくる。
赤黒い腕。
目を丸くして、今度はスカートをつまむ。
赤黒い脚。

「???」

白かった肌が、いつのまにか黒くなっている。
少しだけ眉根を寄せ、顔を上げると……そこにあったのは奇妙な光景だった。
97なまえのないかいぶつ ◆PJfYA6p9PE :2010/03/14(日) 10:37:29 ID:nAEEJkpE
頭上を覆う林冠。
黒々と逞しかった広葉樹のそれが、早回しのビデオ映像のように変化を見せていた。
青く張りがあった葉が見る間に干からび、カラカラの枯葉へと変わる。
太く堅い枝もやせ細り、赤茶けた老人の腕のように力なく垂れていく。
目の前の一本だけではない。見回す森の全てが急速に萎びていく。
ベキベキ、と背後で音がする。自重を支えきれなくなった木立が、そこここで折れ始めている。
妙なのは樹木だけではない。
一連の現象に驚いて、住処から飛び出した鳥や羽虫たち。
彼らも何故か力を失い、黒い小雨のように次々降ってきている。

彼女は目をぱちくりさせた。
しかし、痩せていく森をしばらく見つめた後で、ふと、左腕に目をやったとき、
彼女の顔は満面の笑みに変わった。

腕が、再生していた。
骨が戻り、肉が沸き、皮が張って、傷が消え始めていた。
腕だけではない。
穴の開いた胸も、凍傷で壊死した脚も、全身の切り傷や打撲も、全てが治癒されていく。
あれほど強かった痛みが嘘のように消滅していく。

「そう……そうなのね!」

何かに気づいたような熱っぽい口調で呟くと、ゆっくりと、まだ緑が残る森の方へ歩を進めた。
すると、彼女が近づくにつれ、それまで異変のなかった木々も、次々と色を失っていく。
そして、それとは対照的に彼女の足どりは時とともに軽やかに、力強くなっていく。

「うふふ……あははははははははははははははははははは!!!」

今や、彼女は全てを理解していた。
自分が傍にいるだけで、他の生き物は命を搾り取られるということ。
そして、失われた命はそのまま自分の命となること。
他人を殺して殺して、歯車をまわし続けてきた自分が、ついにその歯車そのものになったのだということ。
人の身に起こるには異常すぎるこの変化を、ごく自然に受け入れていた。
どうしてそんなことができたのか。
何故なら、彼女はついに悟ったからだ。
自分が最初から人間ではなかったということを。

かつて出会った人間のことを思い出す。
殺すことができずに死んでいった数多の幼い生贄たち。
沢山命を増やしてきたはずなのに、身体から汚い汁を流して命乞いをした大人たち。
そして、どこまでも明るくて、ジョークが大好きで、
最後の最後まで諦めることを知らなかった、あの変てこな男の子。
誰一人として、彼女と同じものはいなかった。

殺さなければ生きられないのに。
殺し続けてさえいれば、死ぬことはないのに。
それが世界のルールなのに。
それを呑みこむことのできないかわいそうな生命たち。
きっと、彼らこそが人間という名の生き物だったのだろう。

「私は醜いアヒルの子だったんだわ」

人間の中に生まれてしまったばかりに、誰からも嫌われ続けてきた異物。
それが彼女だった。
その個性をついに誰にも受け入れられなかった雛は、
銀色の殻を脱ぎ捨てて、ついに本当の姿を取り戻したのだ。
98なまえのないかいぶつ ◆PJfYA6p9PE :2010/03/14(日) 10:39:03 ID:nAEEJkpE




――――おやすみ、兄様
――――おやすみ、姉様

――――そして、おはよう、MONSTER




生きるものがいなくなった土色の荒野に、
なまえのないかいぶつの哄笑だけが響いていた。


【E−5/中央森跡地/2日目/早朝】

【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:健康、左腕に傷の跡。ヴィクター化
    喪われた心臓の代わりに核鉄(サンライトハート)が埋め込まれている。
[装備]:サンライトハート@武装錬金
    ソードカトラス×2(1+15/15)(銀10/15)@BLACK LAGOON、ソードカトラス専用ホルダー
[道具]:基本支給品一式、塩酸の瓶×1本、毒ガスボトル×1個、ボロボロの傘
    ソードカトラスの予備弾倉×3(各15発、一つだけ12発)、バット、
    蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン、救急箱、エルルゥの薬箱の中身@うたわれるもの
   (カプマゥの煎薬(残数3)、ネコンの香煙(残数1)、紅皇バチの蜜蝋(残数2))、100円ライター
    スペクタルズ×8@テイルズオブシンフォニア、クロウカード『光』『剣』@CCさくら、
    コエカタマリン(残3回分)@ドラえもん、
[服装]:いつも通りの喪服のような黒い服。胸の中央に大きな穴が空いている。雨に濡れて湿っている。
[思考]:怪物になれて嬉しい。
第一行動方針:不明
第二行動方針:千秋との再会を楽しみにする。千秋が「完全に闇に堕ちた」姿を見届けたい。
第三行動方針:機会があればまた紫穂と会いたい。2人きりで楽しく殺し合いたい。
基本行動方針:効率よく「遊ぶ」。優勝後はジェダに「世界のルール」を適用する(=殺す)。
[備考]:シルバースキンの弱点(同じ場所をほぼ同時に攻撃されると防ぎきれない)に勘付きました。
    「殺した分だけ命を増やせる」ことを確信しました。ただし痛みはあるので自ら傷つこうとはしません。
    銀の銃弾は微妙に規格が違う為、動作不良を起こす危険が有ります。使用者も理解しています。


※グレーテルのエネルギードレインにより、中央森の大部分が消滅しました。
99なまえのないかいぶつ ◆PJfYA6p9PE :2010/03/14(日) 10:41:42 ID:nAEEJkpE





気持ち悪い。
吐き気がする。
足が震える。
息が苦しい。
ここが学校だったら、間違いなく保健室直行だ。

私の中で燃え上がりそうになっていた暗い炎は、
あいつの姿を見たとたん、あっというまに消えてしまった。

OK、認めよう。
私はあいつを甘く見てた。
まさかここまでどうしようもない化け物だとは思ってなかった。
立ってるだけで周りの生き物の力を吸い取って、
自分の傷が塞がっていくような、ふざけた人間がいるなんて誰が想像できるか、バカ野郎!

隠れて見ていただけなのに、息が上がって体がだるい。
きっと、私もあいつにパワーを吸い取られたんだ。
今はご褒美の変な服のおかげで見つかってはいないみたいだけど、
もし、見つかったらと思うとゾッとする。

やっぱり、私みたいな普通の子が、いくら弱ってるとはいえ、
化け物を倒そうなんて考えたのが間違いだったんだ。
今度こそ、見つからないうちに逃げよう。
ゆっくり、音を立てないように逃げよう。

……でも、考えてしまう。
城にいたズルい奴ら。
仲良し面して人を殺す偽善者の子供達。
もし、この化け物とあいつらをぶつけられたら?
“化け物マイナスバカ野郎どもイコールゼロ”
前に考えた算数が現実になるんじゃないか?

もちろん、どうやるかっていうのは難しい問題だ。
一応、同盟もあることだし、直接話せば乗ってくれるかもしれないが……私はあいつとは絶対会いたくない。
あんな化け物と話をするなんて、もう一秒だってごめんだ。
何とか、姿を見せずにあいつを城に行かせることができれば……

ああ、ちくしょう。
城にあんな奴らがいなければ、すぐにでもここから逃げるのに、何で、何で……


何で私だけがこんな辛い目にあわなきゃいけないんですか。
教えてください、助けてください、ハルカ姉さま。


目元を流れる涙はまだ止まらない。
100なまえのないかいぶつ ◆PJfYA6p9PE :2010/03/14(日) 10:43:22 ID:nAEEJkpE

【E−5/中央森跡地/2日目/早朝】

【南千秋@みなみけ】
[状態]:健康、疲労(中)、人間不信&精神衰弱、涙目。
[装備]:ロングフックショット@ゼルダの伝説/時のオカリナ、祝福の杖(ベホイミ残1回)@ドラゴンクエスト5、
    首輪探知機、シルバースキン《核鉄状態》@武装錬金、光学迷彩《展開中》@絶対可憐チルドレン
[道具]:基本支給品×5(食糧、水のみ四人分)、ルーンの杖(焼け焦げている)@ファイナルファンタジー4、
    コンチュー丹(容器なし)@ドラえもん、青酸カリ(半分消費)@名探偵コナン、
    的の書かれた紙×5枚@パタリロ!、太一のゴーグル(血がついている)、替えのパンツ×2枚、
    ころばし屋@ドラえもん、小銭入れ(10円玉×4、100円玉×3) インデックスのメモ、ご褒美ランドセル
    F2000R(残弾12/30)@とある魔術の禁書目録、FNブローニングM1910(残弾0)、飛翔の蝙也の翼@るろうに剣心、
    グラス×5、爆弾石×2@ドラゴンクエスト5、確認済み追加支給品0〜2(外れではないが城に攻め込める程でもない)
[思考]:助けて、ハルカ姉さま。
第一行動方針:ここから逃げる or グレーテルを城組にぶつけ、相打ちを狙う。
第二行動方針:グレーテルには、もうできる限り関わりたくない。
第三行動方針:他者を利用しつつ、殺し合いを促進させる。危険因子はその都度排除。
第四行動方針:全て終わったら、八神ヒカリに形見のゴーグルを渡したい(自分が殺した事実は隠す)?
基本行動方針:優勝狙い。優勝のご褒美で“殺し合いに参加していた自分”を消してもらい、元の世界に戻る。
       もう正面から戦ったりしない。
[備考]:グレーテルに対し、シルバースキン以外の手の内をほとんど明かしていません。
    グレーテルの再生能力、エネルギードレイン能力を把握しています。
    イヴと木之本桜はレックス達に殺されたと思っています。


【光学迷彩@絶対可憐チルドレン】
周囲の景色に合わせ自動的に自らの色彩を変化させ、透明に見せる迷彩服。
(長袖の上下とヘルメットで1セット)
気配まで消せるわけではないため、足音等でばれてしまうこともある。
ヘルメットが外れたりすると機能は停止する。
身につけている装備品にも迷彩の効果は及ぶ。
101創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 10:45:11 ID:nAEEJkpE
投下終了です。
102創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 11:17:42 ID:wOs2KZhX
投下乙。

原作そのままの強さっぽいんですが、強すぎないでしょうか?
原作でもヴィクターやシルバースキン以外の対処がなかったですし。
103創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 14:17:14 ID:K8wZhmEw
投下GJ。地獄の釜のふたが開けられたぁッ!
冒頭の覚醒はグレーテルならではだよね。
他作品アイテムとこんなにも合致するとは驚き。
化け物になった感想がオリジナルのヴィクターと真逆なのも面白い。
今後のロワ内勢力図がどう塗り替えられるか非常に楽しみです。

>>102
そのままの強さかはこれだけの描写では確定してないように思えるがどうだろう
104創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 16:45:04 ID:Tb8GZOZZ
確かジャンプロワでもカズキがヴィクター化してたし、大丈夫だろ
105創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 16:57:43 ID:wOs2KZhX
ああ、前例があるんですか。なら大丈夫そうですね。
……ていうかそもそも、核鉄に無理な加工をするという問題点を作中でヴぃクトリアが指摘してるし、
何も起こらない方がおかしい、か。
106創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 17:08:14 ID:a8ib68wE
ジャンプロワって打ち切りENDじゃなかった?
カズキは持て余されたりしてなかったの?
107創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 18:30:11 ID:48VXJXT6
ラッキーマンが仲間あつめて、
トランクスが来て・・・って年表ENDだっけ
108創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 18:44:26 ID:NtIrVkZT
ジャンプロワのカズキって割とあっさり序盤退場だったような
109創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 19:47:40 ID:Tb8GZOZZ
確かヴィクター化した直後に心臓代わりの核金取られて死んでた
110創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 20:51:34 ID:wOs2KZhX
参考にならないwwww
111創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 22:31:29 ID:a8ib68wE
まあ問題ないだろ
素の実力ならグレーテル大きく上回る奴がごろごろいるんだし
天敵であるシルバースキンもあるし
強い能力っつったって書き手のさじ加減でどうにでもなる
112創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 22:36:40 ID:W4VPNNC3
どうにでもなるけど、強すぎると逆に扱いにくくなるぞ
接近しただけで殺しかねないから、うかつに絡ませにくくなって扱いにくくなる
まぁマーダーの役目を粛々と果たすだけならそれでいいんだけど
113創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 23:33:37 ID:vrADxHSv
要は、ヴィクター化という核鉄の特殊能力が強すぎるのが問題なんだろ?
ジェダがその能力を弱めていたしたら、何の問題もない。
例えば回数贅言があるとか、な
114創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 23:45:53 ID:Tb8GZOZZ
>>113
それで問題ないと思うけどね
任意で発動するもんじゃないから回数制限とかは無理だけど、エネルギー吸い取る効率を弱めるとかで

あとちょっと気になったんだけど、ヴィクター化に関する説明がないね
武装錬金知らない人はよく分からないだろうし、簡単な説明だけでも付けといてくれればありがたい
115創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 23:56:32 ID:UG880hrE
無理な改造をしたために、エネルギーを吸収していくと核鉄が崩壊していくとか
116創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 00:14:01 ID:ejpkyd8i
皆様、感想ありがとうございます。
励みになります。

ヴィクター化グレーテル(以下、ヴィクター)の能力制限について話題になっているようですので、
一応、私がこれについてどういうスタンスで作品を書いたかを表明させていただきたいと思います。
その上で、私の作品の描写が不十分であると思われた方が多数いるようであれば、
修正をさせていただくということでいかがでしょうか。

【エネルギードレインについて】
エネルギードレインは原作中でも“ヴィクター化した者の生態である”という趣旨の表現がされるなど、
ヴィクターにとっては重要な個性です。よって、より原作に近い形で残したいと考え、あのような表現になりました。
ただし、動植物はともかく、人間を一瞬で行動不能に追い込む力は、少なくともロワ中のドレインにはありません。
(現に、しばしヴィクターを観察していた千秋は疲労しているものの、倒れるところまでは至っていません)
もちろん、常にダメージを与え続けていることは確かなので、長時間傍にいると危ないでしょうが。

【再生について】
これについては、原作より明らかに弱体化させています。
原作では落ちた腕が即座に生えるなど、驚異的なスピードで損傷が治癒していたところ、
ロワ中では、比較的遅いスピードでしか再生することができません。
(今回の再生も、森をしばらくの時間歩き回っている間に少しづつ行われました)
また、森の大部分を喰って、大量のエネルギーを摂取したにもかかわらず、
左腕の傷が消えきっていない(状態表参照)など、吸収から再生へのエネルギー変換効率も大幅にダウンしています。

【戦闘能力・飛行能力・宇宙生存能力について】
これについては、今回の作品では触れていないので、次以降の書き手さんにお任せいたします。

もちろん、これらの見解は今作品の書き手である私が、作品に直接表さない部分でこう思って書いた
ということに過ぎないので、次以降の書き手さんは、問題にならない範囲で自由に書いていただければと思います。

>>114
なるほど。確かにヴィクター化についての説明はあった方がいいですね。
明日以降、作成してグレーテルの状態表の下にでも追加することにします。
まあ、ぶっちゃけwikipediaをコピペ(ry
117 ◆PJfYA6p9PE :2010/03/15(月) 00:14:57 ID:ejpkyd8i
おっと、トリップを出し忘れてた。
118創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 00:20:33 ID:0YM6u7ci
対応乙です
それで問題ないと思います
119創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 00:21:51 ID:HER8gwzR
>>116
乙です。自分は概ね同じように考えていたので改めて言うことはありません。
今までのフラグの丁寧な回収とヴィクター誕生のダークな描写力に今一度乙とGJを。
120創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 10:20:30 ID:dxMztn99
サンライトハート、まだ今は初期型のままなんだな
原作展開のような進化するのかなw グレーテルも一時的に戻ったりするかもね
121創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 16:23:13 ID:HIuYPBM4
グレーテルのエロっぽい描写に噴いたw
サンライトハートはどのロワでもとらぶる的なネタなのか!?
だが、ヴィクター化したことで強力なマーダーとなったグレーテルに期待
対主催サイドの大きな脅威となるだろうな
122創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 21:24:32 ID:gocIap09
グレーテル「私はまだX回変身を残しているの」
原作と違ってヴィクター化を完全に受け入れているから戻るのかすら怪しいなw
123 ◆PJfYA6p9PE :2010/03/16(火) 13:27:35 ID:shHoKR6n
wikiに作品を収録してくださった方、ありがとうございました。
こちらでさらに編集し、ヴィクターに関する簡単な説明を
グレーテルの状態表の下に付け加えましたので、ご報告させていただきます。

付け加えた内容は以下のとおりです。

※グレーテルがヴィクター化しました。
 ヴィクター化とは、黒い核鉄を心臓の代わりに埋め込んだ人間に起こる、
 ヴィクターと呼ばれる怪物への変異のことです。
 変異した人間は、肌が褐色、髪が白色となり、
 再生能力、飛行能力、周囲の生命から力を吸い取るエネルギードレイン能力などを身につけます。
 詳しくは、下記URLを参照のこと。
 ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A6%E8%A3%85%E9%8C%AC%E9%87%91#.E3.83.B4.E3.82.A3.E3.82.AF.E3.82.BF.E3.83.BC
124創る名無しに見る名無し:2010/03/16(火) 22:12:42 ID:LlKggDMc
スローペースだが順調に予約が入ってきていいねw
ところで放送はまだ?
125創る名無しに見る名無し:2010/03/16(火) 22:35:27 ID:H2e+ohlw
まだ早朝になってないところがかなりあるからなー。

南西市街のパタ彦組はもういいし、
工場と城は休息だからもう動かなくてもいいとしても、
学校付近のエヴァと蒼星石、シェルターのベッキーとトマはもう一アクションほしいし、
北東市街の面々と、メロとブルーは今のイベントを終わらせる必要があると思う。
126創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 23:13:07 ID:JzVKbZlt
自己リレーでもいいかと思うけどね
127創る名無しに見る名無し:2010/03/18(木) 23:57:44 ID:3TzHiE+t
予約きた!なんという大人数!面子から見て直接絡む感じじゃなさそうだが……
128創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 01:46:42 ID:C5JXr/05
シェルターから電話するんだろうな。シェルター組の予定だったし。
ともあれ、会話量から一気に早朝にいってそうだ。
129 ◆T4jDXqBeas :2010/03/21(日) 23:54:23 ID:/7wMbZ85
投下を開始します。前編後、後編は少し時間を空けるかも。
130つながり ◆T4jDXqBeas :2010/03/21(日) 23:55:11 ID:/7wMbZ85
それは一つの始まりを告げるもの。
希望か、それとも光明を騙るより昏い深淵か。
殺戮に灼かれる者達が手にした一筋の、糸。
思いと。
想いと。
重しを繋ぐ。

     *  *  *

朝が近い。
空が少しずつ白くなり始める時間。
放送まではあと一時間足らずといったところ。
レベッカ宮本とトマは幾ばくかの仮眠を終えて、動き始めていた。
トマは出立の準備、レベッカはシェルターで待機する予定だった。
しかし二人は、一つの部屋に篭り顔を見合わせていた。
その表情に緊張と、僅かな希望を浮かべて。

「ほんと危うく忘れるところだった。そうだよな、ここは記録が有るだけじゃなかったんだ」
「そうですね。結構時間が経ちましたし、人も入れ替わってるはずです」
レベッカとトマは頷きあって、受話器を取った。
シェルター通信管轄室の、短縮ダイヤルが登録された電話機だ。
夕方の放送前後、トマはここから電話をかけて島西端の工場や南東の病院と通話した。
それから半日近くが経過した。
折りしも雨の夜は終わり、放送が近づいている。
皆、落ち着いた場所で休息を取り放送を待ち受けているはずの時間だ。
今なら空振りだった場所にも誰か来ている可能性が有る。
二人は島の各地に電話ネットワークを張り巡らせる事にしたのだ。

工場は、後回しにした。
レベッカの気分である。
「E−8の救いの塔──繋がらないな。
 B−7のタワーは禁止エリアだから無しだ。
 B−3の廃病院──やっぱり繋がらない。
 ここら辺、もしかしたら電話機が壊れてるのかもしれない」
「電話機が、ですか?」
「全部そうだとは思わないけど、廃病院とかありえるんじゃないかな。
 それからD−4の学校とF−3の城は……あー……」
レベッカは困ったような苦笑いを浮かべた。
「どうしたんですか?」
「トマ、パスだ」
そう言ってレベッカは受話器を押し付けた。
困惑するトマ。
「ベッキーさん?」
「なんていうか、知り合いが居るかもしれないんだよ、その辺」
その二つはレベッカがレミリアを引き付け、アルルゥとレックスと分かれた場所に近い。
とはいえ必ずしも彼らが居るとは限らない。
限らないのだが……なんとなく、居る、予感がした。
単なる直感だが、妙に当たりそーな気がしてならないのだ。
ほら、吸血鬼のカン。
131つながり ◆T4jDXqBeas :2010/03/21(日) 23:55:56 ID:/7wMbZ85
「知り合いが居るなら良いじゃないですか」
「いや、そうなんだけどさ。多分、私は死んだと思ってるだろうし」
「じゃあ生きてるって伝えてあげましょうよ」
「だけど私はこんなになっちゃったし」
「仲間なんでしょう。だいじょうぶ、きっと受け入れてくれますよ!」
「ああ、それもすごく有るんだけどさー、なんてゆーか……」
レベッカはたははと気恥ずかしげに笑った。
「だってカッコがつかないし」

もし電話の向こうにレックス達が居たら、レベッカはなんと言えばいいのだろう。
無事だったか?
こっちは大丈夫だから気にするな?
吸血鬼にされたけど私は元気です?
あれだけかっこつけて別れておいてなんともないとは言いにくいし、
実際になんともなくはないのだが、なんとも有ると言って心配させたくもない。

「どんな顔して話せば良いのかわかんないんだよ。電話だけど」
というわけでパスだと受話器を押し付ける。
トマは仕方なくそれを受け取った。
「わかりました。でもベッキーさんの方が信用してもらえそうだったら代わってくださいよ」

トマは短縮ダイヤルを試していく。
D−4の学校──繋がらない。
F−3の城────。

『もしもし』

少女の声が、受話器の向こうから返ってきた。
トマの顔がほころび、後ろで聞いているレベッカの顔の方が引き締まる。
「もしもし、ぼくはトマといいます。朝早くからすみませんが、一つ情報交換でもしませんか?」
『……仲間と、相談してからでいいですか?』
「はい、もちろんです。そういえばあなたのお名前はなんですか?
 言いにくかったら偽名でも構いません」
『わたしの名前は、』
一瞬の。
迷いではなく何かを確かめるため、そんな間の後に。
『ヤムィヤムィです』
はっきりとした発音が返った。

横で参加者名簿を広げていたレベッカは、すぐさまヤムィヤムィという名前が無い事に気がついた。
(偽名か)
そう思った矢先、補足が続く。
『名簿には無い名前だけど偽名というわけじゃありません。
 それが、わたしの新しい名前だから』
「新しい名前?」
『はい。アルルゥさんに頂いた名前です』
聞いていたレベッカが、戸惑った。
132創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 23:56:49 ID:0RSYTNEi
 
133つながり ◆T4jDXqBeas :2010/03/21(日) 23:56:52 ID:/7wMbZ85
困惑、というわけではない。
困る以前に、予想外の話に首を捻ったのだ。
(一体何があったんだ?)

謎だ。
『あまり詳しい話をしてみんなに迷惑をかけるのもイヤだから。
 続きは少し待ってください』
「はい、わかりました」
言葉を交わすトマにも何が何だかわからない。
とにかくわからない事だけはわかった。
「それじゃ少し後で電話を掛けます。それで良いですか?」
『はい』
城との電話はアポイントメントを取り付けて、一旦終わった。

「ヤムィヤムィか。一体何者なんだろうな」
「ベッキーさんにも心当たり無いんですか?」
「ああ。てゆーかなんでアルルゥに名前もらったんだかさっぱりだ。
 聞いた感じ仲間って複数居るみたいだし、アルルゥもそこに居るみたいだけどさ」
「レックスさんとアルルゥさんですか?」
「多分なー。カンは当たったみたいだ」
頭を捻ってもやっぱりなんだかわからない。

「気を取り直して、今の内に次に行ってみましょう」
「ああ。次は、工場か」
少し後回しにした工場に行き当たる。
「“白”さんはまだ居るでしょうか」
「…………さあな」
レベッカは想像している。
彼女の正体が何者であるかを。
それはもしかして、高町なのはが絶望し暴走しているのではないかという事を。

不味い流れになったら無理にでも電話を代わろう。
そう思うレベッカの前でしばらく呼び出し音が鳴った後、向こう側の受話器が上がった。
しかしそこから聞こえてきた声は、以前の電話相手の声ではなかった。
『えーっと、これでいいのかな』
聞き知らぬ少年の声だ。
それからもう一つ、トマにとって聞き覚えのある声がした。
『リンクさんもう繋がってますよー?』
「ルビーさん!?」
カレイドルビーの声がした。

『ああ、トマさんですか。こんばんは。いえ、そろそろおはようございますでしょうか? お元気ですかー?』
「ルビーさんは無事だったんですね! あの、アリサさんは?」
腰を浮かし身を乗り出して問いかけるトマ。
『大丈夫です、アリサさんもぐっすりとお休み中ですよ♪』
その答えにほっと息が抜けた。
浮かした腰をぐったりと椅子に戻して呟きをもらす。
「ああ、よかった……」
八神はやてと共に転移してから消息の知れなかったアリサとカレイドルビーの生存を確認できた。
放送で呼ばれる事が無いと判った。
それだけでもトマにとって心の底が安堵する話だった。

気を取り直して問いかける。
「夕方に別れたと思ったらすぐに……はやてさんが死んで。一体、何が有ったんですか?」
『それは……』
134つながり ◆T4jDXqBeas :2010/03/21(日) 23:57:48 ID:/7wMbZ85
返事は濁る。
それはとても良くない事が有ったという意味だ。
レベッカが横から受話器を奪い取った。
「ちょっと代わるぞ」
『え? あなた誰ですか?』
「数時間前からのトマの仲間だ。レベッカ宮本だ、ベッキーでいいよ。
 一つだけ、要点だけ確認したいんだ」
『要点ですか?』
「ああ」
レベッカ宮本はカレイドルビーに問いかけた。

「高町なのははどうなった?」

その言葉にトマはアリサ達が何処へ飛んだのかを思い出した。
一緒に居たアリサ達の心配で頭がいっぱいになり、そこまで考えが回らなかったのだ。
「そ、そうです、なのはさんも怪我とかしてるんじゃ」
『大丈夫です』
きっぱりとした返事があった。
レベッカは軽く息を呑んだ。

『確かに色々有りましたが、もう大丈夫です。安心してください。
 何が有ったかはもースペクタルに次ぐ大スペクタルでアンビリバボーなミステイクのサスペンスから
 メランコリーなトラジディードラマにスイッチしたと思わせて突如主題歌が流れ出し
 インパクト溢れる全米が泣いたクライマックスへと盛り上がって余韻を味わうスタッフロール中です!』
「……あー、大体わかった」


「わかるんですか今の!?」
「まあ、なんとなくなー」
なんともないふりをして笑みを浮かべる。
だいたい、わかった。
カレイドルビーの言葉はそう難しいものでもなかった。
カタカナ語を乱用し煙に巻いているだけで、内容はこの上なくストレートなのだ。
(『スペクタクルに次ぐ大スペクタクルでアンビリバボーなミステイクのサスペンスから
 メランコリーなトラジディードラマにスイッチしたと思わせて突如主題歌が流れ出し
 インパクト溢れる全米が泣いたクライマックスへと盛り上がって余韻を味わうスタッフロール中です!』か。
 多分、そのまんまなんだろうな)

スペクタクルに次ぐ大スペクタクル──要するに物凄く派手な、多分戦闘があって。
アンビリバボーなミステイクのサスペンス──信じられない事故により惨劇が起きて。
メランコリーなトラジディードラマ──トレンディー(流行)ではなく憂鬱なトラジディー(悲劇)ドラマになった。
と思わせて突如主題歌が流れ出し──ここだけは意味不明。まさかほんとに歌で解決したわけでもないだろう。
インパクト溢れる全米が泣いたクライマックスへと盛り上がって──愛と絆と力技で強引に解決して。
余韻を味わうスタッフロール中──なんとかなった。

それが高町なのはに流れた物語だという。
もしかするとレベッカの想像は半分ほど当たっていたのかもしれない。
高町なのはは殺し合いに乗っていたのかもしれない。
だけどもう大丈夫。
ルビーの言う現状はそういう事だった。

実を言うとレベッカの中にはそれを聞いても不安が残る。
偽名を使い自らを隠し偽る事もした彼女が、ほんとうの心を曝している保障など無い。
しかしそれは、親友であるアリサですら見抜けない物だろうか?
「そこだけ判れば十分だ。何が有ったのかは判らないし、失ったものは……大きい、けど。
 トマ、大丈夫だよ。
 きっと、生きてる二人は大丈夫なんだ」
レベッカは大丈夫だろうと判断した。
135つながり ◆T4jDXqBeas :2010/03/21(日) 23:58:47 ID:/7wMbZ85
「そう、ですか」
一方のトマも別の意味で釈然としない様子ではあった。
八神はやてが。
アリサと共に転移した仲間がどうして死んでしまったのかは、判らないままである。
それを無かった事にするなんてできない。
だけど、きっと大丈夫だというならそれを信じる事しかできない。
トマと彼女達の間には10kmの距離があるのだから。
『ヘルメスドライブは盗られてしまいまして。こちらから会いに戻る事はできません。
 登録はアリサさんになってますから、悪用される心配も有りませんけどね』
今は、それを受け入れるほかになかった。

「それじゃ情報交換といこう」
傷心のトマを置いて、レベッカは話を進めた。
考えればトマだって何が起きたか少しは気づくかもしれないが、他に考えるべきこともいっぱいある。
悩む時間で進んでしまえ。
乱暴な結論だけれど、決して間違ってはいないはずだ。
「そうだな、まずは大事な事から。
 私たちはテレパシーとか念話……念波みたいなので情報を送れる奴を探してるんだけど、心当たり有るか?」
『念話ですかー。リンクさん使えます?』
『そういうのを受け取るだけならともかく、送るのは無理だ』
『なるほど。まあなのはさんやインデックスさんが起きたら聞いてみましょう』
『呼んだー?』
受話器の向こうで新しい声がした。

『インデックス!? ダメだよ、寝てなきゃ』
『うん、まだ大分熱っぽいかも。でもでも、超能力ならともかく魔術なら私の専門分野なんだから聞いてくれなきゃ』
『そうですねところでその手に持ったパンはなんでしょう?』
『しょ、食事は体力を消耗してる時こそ欠かしちゃいけないんだよっ、神様に感謝して食べることで気持ちも落ち着いてね』
『なるほど、つまり夜中に小腹が空いて目を覚ましパンを食べていたら私達が居ない事に気づいて捜しに来たと』
なんだか愉快な会話が聞こえてくる。

『それで念話だよね。念話、テレパティアはギリシア由来の言葉で「遠く離れた感受性」の意味で、
 魔術にも念話の類は幾つかあるし、私が知っているものでも出来なくもないと思うけど、
 魔術において精神により語りかけるっていうのは主に精霊など高次の存在との交信や神からの啓示が一般的で……』
「手っ取り早くできるかできないか、無理ならできそうな奴を教えてくれー」
『私には無理だよ。私は魔術を使えないもん。
 私がその場で指導すれば一回なら使えうるけど、よっぽどの事が無いとさせられないからね』
「それを電話越しに教えてもらうんじゃ無理なのか?」
『詠唱だけじゃなく動作や手順を含めてちょっとでも間違えると神経を焼ききられて最悪体が弾けるんだけど……』
「はうはう今の無しー」
物騒な方法だった。

『ねえ、どうして念話が使える人を探してるの?』
「それはもちろん、むぐっ」
「あー、ちょっとタンマだ」
レベッカは答えようとしたトマの口を押さえた。
不満と混乱を顔に浮かべるトマの前でペンを素早く走らせる。
『電話の会話は録音までされてるんだぞ』
トマはハッとなった。

首輪を解除するために念話が必要だ。
だがそれを電話で口に出しても大丈夫だろうか?
レベッカとトマはその危険を考えて、核心的な部分は筆談で行うようにしたのだ。
最初の頃は口に出していたのだから今更かもしれないが、最初の頃が何らかの幸運な偶然だった可能性もありえる。
今から考えれば、Q-Beeが殺害されるなどジェダ側もハプニングがあった時間帯だ。
何かが起きていた可能性は十分にありえる。
増してや電話の会話はわざわざ別に録音までされているのだ、危険すぎるにも程がある。
首輪の中のP-Beeによる監視が管理部分でザルだったとしても、こちらだけ聞かれる可能性が無いとはいえない。
レベッカはお茶を濁した答えを告げた。
「その内、必ず必要になるんだ。私達にとっても、そっちにとっても」
136つながり ◆T4jDXqBeas :2010/03/21(日) 23:59:31 ID:/7wMbZ85


これだけで何処まで理解出来るかは厳しいと言っていい。
理解できなくて構わないと踏んだ。

首輪解除は十分に準備が整ってから一斉にした方が対策を取られず効果的だ。
例えば、島の逆端の彼女達とすら団結できるほど事態が進行してからでも大差は無いだろう。
十分に研究し余裕を持って行いたい面もあるが、リスクを考えると口に出さない方がマシに思えたのだ。

『わかったんだよ。それじゃこちらでも探してみるね』
「ああ、頼む。そういえば、おまえインデックスっていうのか」
『そうだよ?』
レベッカはふと思い出していた。
その名前には見覚えがある。
「元の世界でもいいからさ。おまえの名前宛ての電話番号って何か心当たり有るか?」
『電話番号? うーん、もしかしてトーマからもらった携帯電話の事?』
「それだっ」
快哉を叫んだ。
「覚えてるならそれの電話番号を教えてくれ。どうやら仲間が持っているみたいなんだ」
『支給されてたんだ。判ったんだよ、それじゃ言うね』
インデックスは10桁の数字をすらすらと口にした。
慌ててトマが番号を書き取り、レベッカが復唱。
インデックスがそれを確認した。
『うん、それで間違いないよ……ケホッ、ケホッ』
電話の向こうから咳が聞こえた。

「お、おい、大丈夫なのか?」
『ほら、やっぱり寝ていた方が良いよ、インデックス』
『うん、お話が終わったらそうするんだよ』
『すまない、そういうわけだからこちらからも手短に行かせてもらうよ』
「ああ、わかった」
そして電話の相手は最初の少年に戻った。

『僕達は人を探しているんだ。出来ればその情報が欲しい』
『といっても夕方までのトマさんの知り合いはアリサさんも知っていますから、どっちかって言うと……』
「私が会って来た奴らか」
夕方以降の情報に加えて、レベッカ宮本の情報を聞きたい。

『ニケは多分、学校の辺りで雨宿りしてるんだと思うけど……』
その言葉で、横で聞いていたトマは思い出す。
そういえば“白”は言っていた、ニケとその仲間達は中央の学校付近を目指しているはずだと。
「そうか、あなた達が“白”さんの言ってた勇者さんの仲間なんですね」
『いや、僕は少し違うよ。インデックスはそうだけどね』
若干の訂正。
とはいえ同じような物なのだろう。
『“白”……っていうのは?』
「あ、放送の少し前頃にもその工場に電話をして情報交換したんです。
 その時に“白”という名前で女の子が出て……名簿から見て白レンという人でしょうか?
 あなた達の仲間じゃないんですか?」
『白レン? いや、それは知らないけど……』
『ああ、いえ、心当たりは有りますよ。仲間です、お気になさらず』
『ルビー? ……そうか、そういう事か』

向こう側でなにやらよく判らない納得があったようだ。
トマは首をかしげるばかりだ。
しかしレベッカは確信する。
やはりトマが電話で話した“白”は高町なのはだったのだろう、と。
137創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 00:00:23 ID:fVRRC61z
 
138つながり ◆T4jDXqBeas :2010/03/22(月) 00:00:57 ID:Xc0fiHzM
「トマ、ちょっと叩くぞー」
レベッカは問答無用で拳骨をいれた。
「いたっ!? な、なにするんですか!!」
「こっちの話だ。まーあんまり気にしなくていいから」
「気にします!」

仕方がない事なのだ。
あの時点のトマにそこまで推測できたはずは無いし、今でも気づいた様子は無い。
あの電話の相手が高町なのはで、トマの言葉が恐らく彼女の心を深く傷つけていた事など判るわけがない。
下手をすればその会話が高町なのはを暴走させた一因かもしれない事なんて。
それらをぶちまけて批判したら、トマは深く思い悩み、心の底から後悔するだろう。
だけど、仕方がない事なのだ。
トマのせいじゃない。
何もかも巡り合わせが悪かったのだ。
だからレベッカはそれ以上何も言おうとはしなかった。
(あー、やだなあ、隠し事って。大人になるってこーゆー事なのかもしれないけど。
 なんか、やだな)
もやもやした思いを押し込めて話を再開する。


「それで、捜してる人ってのは?」
『最優先はヴィータ、紫穂、エヴァの三人だ。
 ヴィータとエヴァは説得したい相手で、紫穂はヴィータと同時に姿を消したらしい』
「……物騒な奴だと考えていいのか?」
『紫穂はそんなこと無いはずらしいんだけど、消えた理由さえわからないんだ。
 今、生きているのかさえ』
「そっか」
『あとさくらって子も捜して欲しいんだけど、これは安全そうだったら一つ伝えておくだけで良い。
 「夕方より少し前に、小狼が君を捜して南西の街に向かったよ」って事だけ』
「わかった。生憎、一人も聞いた事が無いよ」

そう、聞いた事が無い。
午後の森林地帯での激戦の中、レベッカは木之本桜の名前を聞いてすらいないのだ。
茂みから一方的に、集団の中に桜の姿を目撃した。
たまたま一度も名前が出ていない、彼女と仲間との会話を聞いた。
それだけがあの戦いにおけるレベッカと桜の接点だったのだ。
「あ、でももしかして……」
『何か心当たりでもあるの?』
「いや、さ。なんでか知らないけど新しい名前を貰ったっていう奴が居たから、もしかしたらって思ったんだ。
 そういうの、思い当たる節はあるか?」
『新しい名前? よくわからないや。一応聞いておくけど、どんな子でどんな名前なの?』
「真面目で落ち着いた口調だったな。実はちょっと電話で話しただけだから私も詳しく知らないんだけどさ。
 アルルゥから“ヤムィヤムィ”という名前を貰ったと言ってたんだ。あ、アルルゥってのは……」
『“アルルゥ”が“ヤムィヤムィ”と名づけた?』
電話の向こうから、再びインデックスの声がした。

『知ってるの、インデックス?』
『ううん、その子のことは知らないんだよ。
 それにあの文明はアステカより文字が少なくてあまり詳しくないけど、でも……』
よく判らない少しの躊躇いの後に、インデックスは言った。
『電話の人、お願いがあるんだよ』
「お願い?」
少し息苦しそうなその声は体調の悪さによるものだろうか。
それとも胸の中で膨れる不安によるものだろうか。
『次に話す時があったら、ヤムィヤムィって子に訊いてみて。
 もしかしてそのアルルゥって子に怨まれるようなことをしていないかどうか』
「どーいう事だ?」
インデックスは胸の奥から湧き上がる不安の理由を、告げた。

139つながり(前編) ◆T4jDXqBeas :2010/03/22(月) 00:02:20 ID:/7wMbZ85

会話を手短に切り上げ、トマは再び城への短縮ダイヤルをコールした。
元々アリサとの情報を共有していた上に、盗聴を警戒して首輪関連をぼかした以上、
この二人とリンク達の間で新たに交換すべき情報は殆ど無かった。
詳しい話は後でも良い。
恐らく状況を、残酷にも変化させてしまう放送の後でも良い。
『もしもし』
受話器からヤムィヤムィの声が聞こえた。

「もしもし。仲間達との話し合いはできましたか?」
『うん。今呼んできてもらってる』
「そうですか」
城との電話という事で再び電話手を代わっているトマは、レベッカと目を合わせる。
頷きあって、言った。
「ヤムィヤムィさん。あなたについて、一つ訊いてもいいですか?」
『何ですか?』
インデックスからの問いかけを渡した。

「あなたは、そのアルルゥさんに怨まれるようなことをしてはいませんか?」
『──────っ!』

注意して聞いていたから、息を呑む音まで聞こえた。
レベッカが気づいた“白”の驚愕に似た音が。
まるで心の奥まで踏み込まれたような衝撃が聞こえた。
やはり、そうなのか。
『……どうして、それを』
「あなたの名前です」
トマは告げた。
ヤムィヤムィがそれを否定したならごめんなさいと付け加えた上での、情報を。
それは、一つの知識だった。
「アルルゥと、ヤムィヤムィ。この発音である言語を連想した人が居るんです」
『言語……』
「はい。アイヌ語というそうです。
 その音の連なりの両方に単語として意味がある別の言語が、たまたま有っただけかもしれません。
 その人も当てになる保障は全く無いと言っていました。
 殆ど文字の無い言語は専門分野から外れているとも」
『…………続けて、ください』
インデックスから伝えられた知識。
それは電話から聞こえる声を、僅かに震えさせている。
「アルルゥは特に奇妙な意味ではなかったそうです。
 ただ、ヤムィヤムィの方が人の名前のようではなくて気になったのだとか」
『その、意味は?』
トマは淡々と教えた。
それ以外にどうすれば良いかわからなかった。
「冷たい私、そして冷たい私達、だそうです」
『………………』
そして、静寂が訪れた。

ヤムィヤムィは黙り込んだ。
何処かしら沈鬱な気配まで漂わせて。
想像以上に重苦しい空気を作り出す。

「き、きっとたまたまですよ。二つの単語が一致するくらいたまたまありえる事ですし」
『………………………………そうですね』
ひたすら凝縮された懊悩が篭る返答は、素っ気無い。
耐えかねたレベッカが何か言おうとして。
『……すみません、電話を代わります』
向こう側の受話器が誰かに手渡された。
140つながり(前編) ◆T4jDXqBeas :2010/03/22(月) 00:03:32 ID:Xc0fiHzM
『……で話せ…………?…………』
いきなり声が小さくなった。
首を傾げるトマ。
『あ、あの、ベルカナさんそれ口と耳が反対です』
『………………失礼』
交代した相手はどうやら電話に慣れていないらしい。

『聞いての通り、私はベルカナといいます。
 こういう声だけのやり取りは私が長けていますので。そちらは?』
「トマです」
アルルゥとレックスにどう接するか悩んでいるレベッカは、ひとまず名前を出さない。
必要なら、で良い。
(しかしヤムィヤムィにベルカナか。アルルゥとレックスはなんで出ないんだ?)
トマにそれを訊くよう促してみる。
トマは頷き、問いかけた。
「あなた達は三人組なんですか?
 ヤムィヤムィさんには、アルルゥさんから名前を貰ったと聞いたんですけど」
『他に心当たりでもあるのですか?』
「い、いえ、そういうわけでは」
咄嗟に誤魔化すが言葉は濁る。
返ってくる質問に心の準備ができていなかった。
『放送を前にして掛かってきた不審な電話ですから、警戒はしていますわ』
素直に信用していないと言われた。

当然かもしれない。
工場にはカレイドルビーが居てお互い疑う必要も無かったけれど、こちらはそうでもない。
トマは小声でレベッカに囁いた。
「レベッカさんが出た方がよくないですか?」
レベッカは少し迷いつつも頷く。
レベッカが吸血鬼と化した事はアルルゥもレックスも知らないはずだ。
この名前には信用がある。
「わかった、そうするよ」
元々城にはレベッカの方が縁深い。
レベッカは電話の前に座り、受話器を受け取った。
話し出す。

「交代する。私はレベッカ。ベッキーで良いや。アルルゥの、仲間だよ」
『………………』
得られたのは予想外の沈黙。
「おい、どうした?」
『幾つか、聞いても良いですか?』
「ああ。いいけど」
奇妙な緊張感。
『まず聞きます。あなたにとってアルルゥは大切な存在ですか?』
「ああ。それは約束するよ。仲間の仲間で、私もあいつを護ろうとした」
『そして死んだと思われた。だけど実は生きていた、と』
「……なんだ、聞いてるんじゃないか」
僅かな拍子抜けと、困惑。
その隙間に。
『では、あなたは人間ですか?』
「それは……っ」
真実が鋭く突き立った。

そして、理解する。
電話の向こうのベルカナという少女は知っている。
レベッカが吸血鬼であることを。

『人間では“なくなった”のですね?』
141つながり(前編) ◆T4jDXqBeas :2010/03/22(月) 00:05:25 ID:Xc0fiHzM
レベッカは沈黙と共に思考する。
それを知っている者は限られるはずだ。
レミリア本人すら気づいているかわからない。
トマを除けば後は──。
(橋で出会ったあいつか!!)

間違いない。
橋の上で遭遇した少女、明石薫。
放送で呼ばれとっくに死んでいるはずなのに、出現した謎の少女。
彼女が、電話の向こうに立っている。
いや、彼女ではなく彼女の仲間なのかもしれない。
どちらにせよ同じ事だ。
ベルカナはレベッカを敵とみなしている。
『私の情報から見て、あなたはもうどうしようもない程の、敵です』

それは当たり前の話だろう。
彼女と遭遇した時のレベッカは血に餓えていて、血臭を漂わせる彼女に襲い掛かったのだから。
どう考えても血に餓えた吸血鬼として確定されている。

『あなたをアルルゥとレックスに会わせるわけにはいかない。
 いえ、吸血鬼として蘇った事すら教えたくはない。そういう事です』
「あの時とは違うんだ。人を襲わずに得られる血も手に入れたし」
『先ほどの電話の相手ですか?』
「違う! 輸血パックだ」
『ユケツというと』
「治療に使う血をパックに詰めた物だ。病院で手に入れたんだよ」
『それが有る間は、人を襲う事は無いと?』
「ああ。私の体格の血液量の、丸二倍余りは有るからな。
 補充しなくても数日はいけると思っていいんだ」
『腐りませんか?』
「ちゃんと冷たく保存してあるから二日は保つ、はずだっ。
 クーラーボックスの保冷力って一日以上あるし、足りなくなったら補充しに行けば良い」
『それよりも新鮮な血が目の前にあったら?』
「……だいじょーぶだっ」

ちょっぴり迷った。
だけど踏み止まれると信じられた。
何も問題は無いと。

『何にせよしばらく時間をおいて、様子を見させてもらいます』
「……ああ。それ自体は、良いんだ」
それにレベッカも今すぐアルルゥ達に会おうと考えてはいなかった。
今は大丈夫と言っても、血を飲むようになってしまったなんて教えたくない。
だからいきなりは会いたくない。
「生きてはいるけど、事情が有って会いに行けないとでも言っておいてくれ。
 その方が良いとは思ってるんだ。ほんとに」
『ええ。伝えておきますわ』
「それと、電話に出なかったけどアルルゥとレックスは無事なんだろうな?」
『寝ているだけです、ご安心を。そろそろ起きてくるかもしれませんわね』
そこで、一息を吐いた。

お互いに話し合う事は、そこまでだ。
ベルカナがレベッカを信用しない以上、城の方から情報は聞けないだろう。
あと出来るのはこちらから提供する事だけだ。
レベッカは、ベルカナをある程度は信用に値すると判断した。
なんか気に食わないとか刺々しくてなんかイヤだという感情は置いておく。
142創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 00:06:06 ID:fVRRC61z
 
143つながり(前編) ◆T4jDXqBeas :2010/03/22(月) 00:06:20 ID:Xc0fiHzM
「伝えとく事が三つある。テレパシーとか念話ができる奴を探してくれ、きっと必要になる」
『気に留めてはおきましょうか』

「もう一つ、私は東のシェルターに居る。必要だと思ったら、来てくれ」
『覚えてはおきましょう』

「エヴァ、ヴィータ、紫穂、さくらの四人を西端の工場に居る奴らが捜してる。
 前二人は止めたいとか物騒な話だし、三人目は行方不明らしいけど、四人目は保護したいらしいな」
『そうですか』
「四人目は安全な場所に居るなら一つ伝えるだけで良いみたいだけどな。
 『小狼は君を捜して南西市街地に向かった』だとさ」
「安全な場所で会ったら伝えておきましょう。それで終わりですね?」

「おまけ。A quelque chose malheur est bon」
『それは?』
「フランスの諺だよ。『不幸も何らかの役に立つ』ってな」
『………………』
「前向きに生きる為の努力はしてるよ。死にたくはないし、ダメになりたくもないからな」
『信じるよう善処はしましょうか』
「政治家みたいな物言いだなこんちくしょー。まあいいや。それじゃあ、またなー」

城との電話は、それで終わった。
素っ気無ささえ滲むほどにあっさりと受話器を置いた。
未練も何も無いかのように。

「良いんですか? あれで」
「いーんだよ。別に、悪い奴じゃなさそうだったし」
アルルゥとレックスは新たな仲間に護られて休息を取っている。
今は、それ以上に望むべき事なんてない。
レベッカは、それで良いのだ。
ヤムィヤムィの事はかなり気になるが、それも彼女達の問題だ。
彼女達の間でどうにかなる事を祈るしかない。
逆にトマへと話題を返す。
「で、インデックスからはトリエラの番号を教えてもらえたわけだけどどうする?」
「難しいですね。途中経過くらいは伝えたいところですが」

トリエラはトマに二つの課題を出した。
『首輪』からどうやって逃れるのか。
『島』からどうやって逃げ出すのか。
この双方の課題について、具体的かつ説得力ある方法論を用意すること。
それが、トリエラがトマに協力する為の条件だという。

両方ともかなりの難題だ。
しかし『首輪』についてはようやく取っ掛かりが見えてきた。
もう一つの問題は『島』だ。
そもそもこの『島』は一体何処にあるのだろうか。
「考えてみたら国どころか世界もバラバラなんだよな。無茶な世界だ」
「そうですね。……あれ?」
「どうかしたか?」
「そういえばベッキーさん、さっきの言葉はなんですか?」
「A quelque chose malheur est bon.か? 言った通り、フランス語…………うん?」
「フランス語?」
「そういえば私たち、何語で喋ってるんだ?」
「何語?」
144創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 00:08:39 ID:fVRRC61z
 
145つながり(前編) ◆T4jDXqBeas :2010/03/22(月) 00:09:06 ID:Xc0fiHzM
それはもちろん普段使う言葉で、と答えかけて気づく。
トマの世界では日常語について世界中ほぼ統一されている。
しかし違う言語という概念が全く無いわけでもない。
「国どころか世界すら違ったら、同じ言葉を使えるわけがないんだ。
 多分、制限とかで何かした際にジェダと話せるよう全ての言葉が判るようにもして──いや、これもおかしいか。
 私はなんでフランス語を引用できたんだ?」
「お互いの言葉が判るようになってるなら、別の言語を使っても普通に通じるはずですよね」
「ああ。さっきのインデックスが教えてくれた、アイヌ語の名前だって典型的だ。
 自動的に翻訳されてるとしたら、“ヤムィヤムィ”と聞こえるわけがない。
 使われている字の意味に分解して、“冷たい私と冷たい私達”という風に聞こえるはずなんだ」
「でもそうなってはいません」
「他の名前もだな。外国語の単語そのものな名前も、名前として認識できてる」
奇妙な謎だ。
「普段使っていた、それぞれ全く違う日常語だけが統一されてるんだ。
 それぞれの頭の中を一人一人弄って知識を調整……なんて面倒なことされてるわけないよな。
 多分、それぞれは好き勝手別な言葉を喋ってるつもりなのに、意味はちゃんと通じてるんだ」
「それ、自動的な翻訳とは違うんですか?」
「言葉が翻訳されてるんじゃない。多分……いや、これだと文字や電話がダメか。むー?」
「なんですか?」
「あー、いや。実は私たち最初から念話で話してるんじゃないか、なんて思ったんだけどな。
 これなら伝えようとしてる事がなんとなく伝わるわけだし、別の言葉は“別の言葉”という意味が乗るから伝わらない。
 でもこれだと文字や電話が伝わらないし、素直に固有名詞だけ残し他は翻訳されていて、
 別言語を使ったらそこだけ固有名詞として翻訳されずに伝わる都合の良い技術が有ると考えた方が良いか」
「うーん? よくわかりません」
「わかんなくて良いよ、考えすぎたみたいだし」

彼女達が知らないだけで色々な物を都合よく解決させる技術は存在するのだ。
例えばある世界ある未来の超科学、翻訳コンニャクとか。
そういう現物を知らないだけに、レベッカは思う。

(つまり難しい問題を都合よく解決している不思議な技術、か。厄介だよな、そういうの)

首輪の中に居る人だってそうだ。
なんだかよく判らない無茶苦茶な技術の力技で動いている。
取っ掛かりを見つけたとはいえ逆に言うとそんな段階でしかない。
一つでも仕組みを見落としていれば瓦解するかもしれない。
そしてその一つの有る無しを確かめる時間が残されているのかも判らない。
突き進む他に許されはしないのだ。

「で、どうするトマ。トリエラに電話しとかなくて良いのか?」
「そうですね、電話はしておきたいんですけど……」
トマはちらりと記録装置に目をやる。
朝になれば、この六時間に話された内容が聴けるようになる。
朝の放送までもうそれほど無いだろう。
「出来ればもう少し課題を済ませておきたいです」
「待つか?」
「はい。朝になったら……放送と。それから新しい記録を聞いて、情報を纏めて。
 その後で電話します」

トマにとってトリエラへ電話する目的は単なる情報交換ではない。
課題への進行度合いを見せる事によりトリエラを説得する行為でもあるのだ。
出来れば確実に説得できるだけの情報を揃えてから電話したかった。

「なら、準備でも済ましておこう。トマは外に出るんだろ」
「はい。ベッキーさんは中ですね?」
「ああ。電話交換手って言ったかな、そういうのも必要だろうし。
 ま、放送で考える事もあるけど……ここに居ても出来ることは多い気がしてきた。
 城の奴らも、待ちたいしな」
146創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 00:10:35 ID:fVRRC61z
 
147つながり(前編) ◆T4jDXqBeas :2010/03/22(月) 00:10:48 ID:Xc0fiHzM
結局、二人の方針はそういう事になった。
放送は目前に迫っている。
新たな情報も。
何を知り、何に気づき、何を思いつくのだろう。
何をもたらし、何を共有できるのだろう。

二人はまだ、知らない。



【H−5/シェルター地下/2日目/黎明】
【レベッカ宮本@ぱにぽに】
[状態]:吸血鬼化(肉体強化、弱点他)。シャワーでさっぱり。休憩。
[服装]:普段通りの服と白衣姿(服は少し血などで汚れているが、白衣は新品)
[装備]:木刀@銀魂、ヒラリマント@ドラえもん(ボロボロだが一応使える) 、魔導ボード@魔法陣グルグル!
[道具]:支給品一式×2、15歳のシャツ@よつばと!を裂いた布、宇宙服(最小サイズ)@からくりサーカス
     輸血用パック×19、クーラーボックス、保冷剤、野上葵の首輪
[思考]:しばらくは休憩して、それから。
第一行動方針:雨と日光を避けるため、基本的にはシェルターで待機する。 電話ネットワークも構築したい。
第二行動方針:『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。
        また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など)
第三行動方針:レミリアを止め、ジェダにぶつける。そのために首輪を外す方法などを模索する。
第四行動方針:もし三宮紫穂に会ったら、野上葵の死体を辱めたことを改めて謝る。
基本行動方針:主催者を打倒して元の世界に帰る。
参加時期:小学校事件が終わった後
[備考]:吸血鬼化したレベッカの特殊能力として、魔力の存在と飛行能力を確認しました。
    トマと時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せします。
    宇宙服を着れば日中の行動が可能になる可能性に思い至りました。まだ真偽の程は分かりません。
    シェルター内の通話記録により、この会場の全ての電話上の会話を聞きました。
    イヴの名前はヤムィヤムィと聞きました。イヴである事は知りません。


【トマ@魔法陣グルグル】
[状態]:健康、ずぶ濡れ
[装備]:麻酔銃(残弾6)@サモンナイト3、アズュール@灼眼のシャナ 
[道具]:基本支給品、ハズレセット(アビシオン人形、割り箸鉄砲、便座カバーなど)、
    参號夷腕坊@るろうに剣心(口のあたりが少し焼けている・修理済み)
    はやて特製チキンカレー入りタッパー、手術道具の一部(のこぎり・メス・のみ等)、ジュジュの首輪
[思考]:しばらくは休んで、それから。
第一行動方針:シェルターでしばらく待機。雨が止んだら外に出て調査遠征予定。行き先は不明。
第二行動方針:『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。
        また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など)。
第三行動方針:他の参加者と情報と物の交換を進める。必要ならその場で道具の作成も行う。
第四行動方針:『首輪の解除』『島からの脱出』『能力制限の解除』を考える。そのための情報と物を集める。
第五行動方針:トリエラと再び会いたい。それまでは死ぬわけには行かない。
第六行動方針:レベッカ宮本が会った「明石薫」(実はベルカナの変身)について詳しく知りたい
基本行動方針:アリサとニケたちとの合流。及び、全員が脱出できる方法を探す。
[備考]:「工場」にいる自称“白”の正体は「白レン」だと誤解しています。
    レベッカ宮本と時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せ。
    イヴの名前はヤムィヤムィと聞きました。イヴである事は知りません。
148創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 00:17:20 ID:fVRRC61z
 
149創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 00:28:56 ID:olHmSWtf
状態票微妙に未修正?
まだ黎明でいいんかな?あとトマの思考欄のベルカナ部分とか。
150つながり(前編修正) ◆T4jDXqBeas :2010/03/22(月) 00:51:19 ID:Xc0fiHzM
【H−5/シェルター地下/2日目/早朝】
【レベッカ宮本@ぱにぽに】
[状態]:吸血鬼化(肉体強化、弱点他)。
[服装]:普段通りの服と白衣姿(服は少し血などで汚れているが、白衣は新品)
[装備]:木刀@銀魂、ヒラリマント@ドラえもん(ボロボロだが一応使える) 、魔導ボード@魔法陣グルグル!
[道具]:支給品一式×2、15歳のシャツ@よつばと!を裂いた布、宇宙服(最小サイズ)@からくりサーカス
     輸血用パック×19、クーラーボックス、保冷剤、野上葵の首輪
[思考]:なんとかなるだろ。なるといいな。なってくれ頼むー。
第一行動方針:放送を聞いたら情報を整理しトリエラに電話。雨と日光を避けるため、基本的にはシェルターで待機する。
第二行動方針:『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。
        また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など)
第三行動方針:レミリアを止め、ジェダにぶつける。そのために首輪を外す方法などを模索する。
第四行動方針:もし三宮紫穂に会ったら、野上葵の死体を辱めたことを改めて謝る。
基本行動方針:主催者を打倒して元の世界に帰る。
参加時期:小学校事件が終わった後
[備考]:吸血鬼化したレベッカの特殊能力として、魔力の存在と飛行能力を確認しました。
    トマと時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せします。
    宇宙服を着れば日中の行動が可能になる可能性に思い至りました。まだ真偽の程は分かりません。
    シェルター内の通話記録により、この会場の全ての電話上の会話を聞きました。
    イヴの名前はヤムィヤムィと聞きました。イヴである事は知りません。
    インデックス携帯の電話番号を知りました。

【トマ@魔法陣グルグル】
[状態]:健康
[装備]:麻酔銃(残弾6)@サモンナイト3、アズュール@灼眼のシャナ 
[道具]:基本支給品、ハズレセット(アビシオン人形、割り箸鉄砲、便座カバーなど)、
    参號夷腕坊@るろうに剣心(口のあたりが少し焼けている・修理済み)
    はやて特製チキンカレー入りタッパー、手術道具の一部(のこぎり・メス・のみ等)、ジュジュの首輪
[思考]:トリエラさんを説得しないと……。
第一行動方針:放送を聞いたら情報を整理し、トリエラに電話して説得する。
第二行動方針:外に出て調査遠征予定。『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。
        また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など)。
第三行動方針:他の参加者と情報と物の交換を進める。必要ならその場で道具の作成も行う。
第四行動方針:『首輪の解除』『島からの脱出』『能力制限の解除』を考える。そのための情報と物を集める。
第五行動方針:トリエラと再び会いたい。それまでは死ぬわけには行かない。
第六行動方針:どうにかしてベルカナから「明石薫」(ベルカナ)に関するもう少し詳しい話を聞きだしたい。
基本行動方針:アリサとニケたちとの合流。及び、全員が脱出できる方法を探す。
[備考]:「工場」にいる自称“白”の正体は「白レン」だと誤解しています。
    レベッカ宮本と時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せ。
    イヴの名前はヤムィヤムィと聞きました。イヴである事は知りません。
    インデックス携帯の電話番号を知りました。


ご指摘通り状態表が未修正でした、修正します。
トマの思考における明石薫(ベルカナ)については、正直見落としていたので後ほど修正案を投下します。
すみませんが、この点についてはまた後で。

先に後編の投下を行います。
追記。実質上行動を縛るため全員予約しましたが一部登場しません。
151つながり(後編) ◆T4jDXqBeas :2010/03/22(月) 00:53:36 ID:Xc0fiHzM
電話は終わり、リンク達は再び部屋に戻ってきた。
インデックスは存分に食べると再び横になった。
もう放送まで間は無いが、どれだけ休んでも足りない程だ。

「ありがとう、ルビー。おかげで大事な話ができたよ」
『いえいえどういたしまして、えへん』
電話が鳴っているとルビーに起こされて目を覚まし、電話の使い方も彼女に教わった。
そのおかげで、アリサの仲間であるトマの無事を確認できた。
更に、向こうでも仲間が一人増えているらしい。
見える範囲での物事は良い方向に進んでいる。
向こうだけじゃなく、ここだってそうだ。
確かにインデックスは高い熱を出し、高町なのはは心身とも傷だらけになり、アリサだって疲れ果てている。
でも高町なのははここに居る。
それはきっと良いことのはずなのだ。

だけどリンクは思い悩む。
「ルビー、はやてが死んだのは放送の直前なんだよね」
『ええ、そうですよ』
そのことがリンクの心に不安を残す。
ようやく気づいた一つの勘違いが、リンクの心を掻き乱す。

八神はやてが死亡したのは高町なのはが学校で三名を殺害した後である。

いや、それどころか彼女の移動経緯から考えてフェイトの死を知った事すら学校の事件の後かもしれない。
一度ヴィータの腕を破壊したそうだが、それだってもっと早い時期らしい。
それはつまり、どういう事なのか。

(なのはは、はやてを殺してしまったから、フェイトが殺されたからあんな道を選んだんじゃ、ない?)

リンクは、なのはが自分の犯した罪を償うために、自分を捨て、罪を償おうとしているのだと考えていた。
その為にあんな無茶苦茶な進み方をしていたのだと。
つまり八神はやての殺害こそ全ての起点だと考えていたのだ。
その殺害を契機に自らの意思による選択を放棄して、ひたすらに殺し殺し殺し続けてきたのだと。
だがしかし、八神はやての殺害が最後であるなら何処かが歪む。

(なのはは、どうして人を殺したんだ?)

八神はやての殺害はその引き金として納得しえるものだった。
リンクは、なのはがかなり早い時期にはやてを殺してしまい道を誤ったのだと考えていた。
しかしそうではなく、高町なのはが自らの意思で学校の三人を殺したとするならば。

(なのはは、最初から人を殺せる人間だったのか?)

歪んだピースが嵌りこむ。
高町なのはという人格が“最初から”殺人を許容できる人格であったと考えれば、全て説明出来てしまう。

すぐにそんな馬鹿なと思う。

リンクは見た。
彼女の涙を。
弱々しく震える彼女の姿を。
その瞳の奥に湛えられた迷いと苦悩を。

リンクは聞いた。
彼女の言葉を。
虚勢を砕かれて曝け出した彼女の叫びを。
リンクの言葉が押し開けた、彼女のほんとうの想いを。

高町なのはは立ち直った。
それを疑えというのだろうか?
152創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 00:54:43 ID:fVRRC61z
 
153つながり(後編) ◆T4jDXqBeas :2010/03/22(月) 00:54:59 ID:Xc0fiHzM

(ありえないわけじゃ、ない)

“白”。
高町なのはは偽名を使って電話に出て、トマを騙しきったらしい。
つまりアリサから多少話を聞いていた程度では見破れない偽りだ。
高町なのはは人を偽れる人間だ。

それならリンクはどうなのだろう。
高町なのはが嘘を吐いていたら、それを見破れるだろうか?

(僕となのはの接点は、違いだ)
それは触れ合わない接点だ。
リンクは、自分となのはの違いに気がついた。
なのはに、自ら行為を選んできた雰囲気が感じられない事に。
それはつまり、エヴァの言う通り何かに流されていたという事だ。

逆に言えばリンクが知っているのはその一点だけだ。
リンクは人の正体を見抜く力に欠けているのだろう。
かつて悪しきガノンの真の企みにも、善なるシークの正体にも気づけなかったように。
だけどそれを自覚したならば、考える事ができる。

確定しているのはなのはが何かに流されたという一点だけ。
なのはは何に流されて人を殺したのだろう?
なのはに人を殺させた流れは何だろう?

(この島の殺し合い……かな)
目の前で殺し合いが起きた。
だから選択するのでもなくただ流されそれに飛び込み多くの人を殺めた。
それはとても危険な事だ。

(だってそれは、ふとした拍子で人を殺してしまうという事じゃないか)

もしそうだとすればなのはの改心にさえ意味が無い。
いや、そもそもあの改心の言葉さえ信じられない。
リンクの言葉には、言葉が届くための最低条件である“理解”に欠けていたのだから。
そんな言葉を受け止めてくれるわけがない。

にも関わらず改心したとすれば最早それは偽りに他ならない。
なのはは自分を偽ってリンク達に接している。

『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……』

なのはが俯き涙する姿を回想する。
もしかするとあの姿は、罪を犯した事ではなく未だ偽りを重ね続けている事を謝っていたのかもしれない。

(警戒しなきゃ)

どんな事が有っても親友を信じ続けるであろうアリサでもなく。
熱を出してしまいまともに行動できないインデックスでもなく。
杖の精霊であり自ら動く事ができないカレイドルビーでもなく。

多くを乗り越えてきてここに立つリンクが警戒し続けなければならない。

新たな決意と共に眠る少女達を見据えて、リンクは朝を待つ。
時の勇者は朝を待つ。

     *  *  *
154創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 00:57:19 ID:bau1a8mO
 
155創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 01:10:37 ID:olHmSWtf
私怨
156創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 01:13:40 ID:hTADnpPa
仮投下スレに来てるので代理投下します
157つながり(後編) ◇T4jDXqBeas:2010/03/22(月) 01:15:01 ID:hTADnpPa
電話を終えたベルカナは、持っていた受話器を元の場所に置いた。
それから傍らに佇むヤミヤミを振り返り、告げた。
「よく私を起こしてくれました。助かりましたわ」
「……うん。多分、こういうのはベルカナが得意だと思ったから」

ヤミヤミは少し俯いていたが、ベルカナにはそれに気づく余裕も無い。
睡眠時間は二時間取れたかどうか、その精神力は全快時の半分にも足りない程まで消耗していたのだ。
ベルカナはこの城で最も睡眠を必要としていたし、本当なら放送ギリギリまで起こされたくなかった。
少しでも密度の高い睡眠を取る事こそ自分に課せられた役目だと思っていた。
しかしヤミヤミに起こされた用件は、それに見合うほどに重要な事だった。

レベッカ宮本。
会話で探りを入れたところ完全に確定した。
彼女こそ橋で遭遇し、ベルカナに襲い掛かってきた吸血鬼に他ならない。
その言葉は一見すると冷静で理知的に感じられたが、信用できるはずもない。
実際に問答無用で襲い掛かってきたのだから。
(血に餓えていなければ大丈夫、ね。どこまで信用できるのやら)
大嘘で本性を偽っている可能性は大いにある。
むしろ、そうならばまだ良い。
もしレベッカが嘘を吐いているだけなら、ベルカナにはそれを見破る手段が有った。

虚言感知〈センス・ライ〉

三分間しか持続しないが、発言内容にある嘘を全て見破る事が出来る魔法だ。
これを電話口で使わなかったのは精神力の温存もあるが、なにより嘘発見では不完全である事だ。
虚言感知は嘘を見破る魔法でしかないのである。
嘘を言わずに話すことと隠し事をしない事はイコールで結べない。
何より喋っている者が真実を知らないのであれば嘘にはならない。

例えば「血に餓えてなければ大丈夫」と本人が信じていれば嘘にはならないのだ。
目の前に新鮮な血があれば我を忘れるのだとしても、当人が大丈夫だと信じていれば嘘にはならない。
例えば「アルルゥは大切な存在」だと思っていても、
もし吸血鬼への変化に伴って愛しい者の血ほど飲みたくなるような精神汚染が起きていたら意味は無い。
危険な存在になっているという認識が無ければ、襲ってきながらでも正直に好きだと言うだろう。

だからベルカナはしばらく時間を空ける事にした。
時間が経って、色々起きて、それでも嘘無く安全な身分証明が出来るなら、信じるに値するだろう。
実際には完璧に安全ではなかったとしても、少なくともすぐに爆発はしないと信じられる。
だけどまだ会わせるわけにはいかない。
今は会話させるだけの信用すら無い。
ベルカナが電話の応対を出来た事は幸運だと言って良かった。

見張りをしていたヤミヤミが電話の扱いを知っていて。
口下手なアルルゥや、熱のある木之本桜は別にしても、レックスではなくベルカナを起こしてくれた。
ベルカナとはツーカー錠で隠し事無く(ほんとは有るが)会話したが、レックスとも何か有って絆を深めたらしいし、
レックスではなくベルカナを起こしてくれたのは、本当に向き不向きの差なのだろう。
そのおかげでベルカナはアルルゥ達に情報を選択して伝える事ができる。

(放送で呼ばれるかにもよりますが……)
放送の存在がある以上、生存については知られてしまう可能性が高い。
ベルカナの知るヴァンパイアならアンデッド、死者なのだが、それでも動くとしてカウントされる恐れがある。
そもそもベルカナの知るヴァンパイアとはどうも性質が違う。
レベッカの血を吸ったと思しき吸血鬼、レミリア・スカーレットの話はアルルゥ達から聞いている。
しかし彼女の特性はベルカナの知るそれとは何もかもが違いすぎる。
見かけからして、吸血鬼に羽が生えてるなんて聞いてない。
正直別物だと言わざるをえない。

電話の情報により予測できる事は幾つかある。
158つながり(後編) ◇T4jDXqBeas:2010/03/22(月) 01:16:37 ID:hTADnpPa
レベッカは恐らくレミリアに襲われて吸血鬼と化したのだという事。
同じく確証は無いがレベッカとレミリアは行動を共にはしていないようである事。
レミリアは羽が生えていて自在に空を飛ぶがレベッカは飛べないようである事。
やはり吸血鬼は吸血鬼であり、餓えた従者は血の匂いに耐え切れず襲いかかってくる事。
その一方で血の匂いが無い場所では理性的らしい事?
(何もかも推測ですわね。希望的観測かもしれません)

それからヤミヤミの話によると、一緒にトマという男の子が居たらしい。
吸血鬼と一緒に人間が居られるのか、やはりそちらも吸血鬼なのかは判らない。
アルルゥ、レックス、さくらにリイン、みんなに聞けば誰か一人くらい知っている可能性は有るだろう。
問題はどの程度まで話すかだ。
(とりあえず放送の後に話が有るとでも言っておけばいいでしょうか。
 放送でレベッカ宮本の名が呼ばれたならトマから電話が有ったと言って彼女の生存情報については様子を見る。
 そして放送でレベッカ宮本の名前が呼ばれなければ、話す。
 すぐに話さなかった理由はワンクッションを置くためと、放送で騙りでないか確認するためといったところです。
 実際、彼女が騙りである可能性も無いとは言えませんわね。
 どちらにせよ向こうに会いに行っても良いのですがそうなると予定が狂います。
 東回りのルートに変更する手も有りますけど……そういえば南西にさくらの知り合いが行ったのですか。
 これも放送の内容によっては考えなければならないでしょう。後は……)
ベルカナは思考する。
思考に没頭する。
レベッカ宮本の存在はそれほどまでに大きな情報だった。
だから気づかない。
ヤミヤミが先に部屋に戻ると言っても、電話については私から話しますと釘を刺しただけで気にとめない。

彼女が何かに動揺している事も気づかない。

ヤミヤミは一人二階の執務室を出て、皆の眠る宿屋へと戻っていった。

     *  *  *

ヤミヤミは宿屋の薄闇の中に佇んでいた。
思考はぐるぐると意味の無い渦を巻き、形を成さない。
混乱と動揺。
それから、強い感情が胸の中を責め立てる。
ヤムィヤムィ。
アルルゥから貰った名前を正確に発音して、電話の向こうに伝えた。
そう生きる事を宣言した。
それから返ってきたのは奇妙な話。
とても悲しい言葉。
わからない。
どうしてなのか。
何故なのか。
何もかもがわからない。

『冷たい私と冷たい私達』

自らが背負った罪がどんなに重い物でも、背負わなければいけないと思っていた。
背負おうと、思えた。
レックスとアルルゥが赦してくれたから。
そのおかげで前に進もうという意思を抱けたのだ。

『だから僕は、君のことを許す』

確かに、レックスは赦してくれた。だけど。

『アルルゥ、てきならたたかう。だけど、ヤムィヤムィはてきじゃない』
『ん、ヤムィヤムィはなかま!』

アルルゥは、ほんとうに赦してくれていたのだろうか?
159創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 01:16:52 ID:fVRRC61z
 
160つながり(後編) ◇T4jDXqBeas:2010/03/22(月) 01:17:29 ID:hTADnpPa

もしかしたらアルルゥにとって、ヤミヤミは敵であって欲しいのではないだろうか。
敵であれば戦う。
敵であれば殺せる。
敵であれば……仇を討てる。

「ヤムィヤムィ、どうしたの?」

見ればアルルゥが寝ぼけ眼をこすってヤミヤミを見ていた。
……恐かった。
全身を寒気が包みこみ、体も心も冷たくなっていくのを感じた。
でも、聞かなければいけない事だと思った。
ヤミヤミは、意を決して訊いた。

「アルルゥ。一つ、訊いてもいいですか?」
「なに?」

心臓が激しく脈を打つ。
どくどくという音が頭の中まで響くようだ。
こわい。さむい。
くるしい。
それでも言葉を続けて、
「私の名前の意味は、“冷たい私と冷たい私達”ですか」
訊いた。

アルルゥはそれを聞いて。
目を丸くした。
それから僅かに間をおいて。

「ん」

こくりと、小さく頷いた。
ヤミヤミは震える声で、もう一つだけ聞いた。

「それは、梨々さんが死んだからですか」

アルルゥの首は、

「ん」

小さく、縦に振られた。








耳鳴りがするほどの静寂の中で。

「名前をお返しします」

ヤミヤミは言った。

「ヤムィヤムィ?」
「イヴで良い。あるいはヤムィで良い。冷たい私で。
 冷たいのは、私だけでいいんです」
161つながり(後編) ◇T4jDXqBeas:2010/03/22(月) 01:18:53 ID:hTADnpPa
ゆっくりと足を進める。
部屋の外へ。
宿の外へ。
ここ以外の何処かへと。

「待って、ヤミヤミ!」
ベッドからレックスが跳ね起きていた。
恐らくは彼も目を覚まし話を聞いていたのだろう。
ヤミは振り返り、二人を見つめて、
告げた。
「ありがとう。私に温もりをくれて。
 ごめんなさい。あなた達から温もりを奪い続けて。
 さようなら。アルルゥも、レックスも、ベルカナさんも……私はみんな好きでした」

走り出す。
レックスの制止が聞こえる。
アルルゥの声が聞こえる。
だけど想いは届かない。
そのまま階段を駆け上がり、壁際の窓へ向かって走って、走って、走って。
跳躍して。
(──トランス)

身体構造を変化させた。
下半身を魚に、呼吸形態を地上用から水中用に。
そして数秒後。

増水して濁流渦巻く川が、ヤミの全身を受け止めた。

(怨んでるわけじゃない。憎んでるわけじゃない)

着水の轟音はすぐさま濁流の音へと取って代わる。
流される。
何もかもが流されていく。
冷たい水に包まれて。

(でも、許せない)

冷たいのが自分だけなら、それで良かった。
だけどアルルゥ達の心まで冷たくし続ける事は耐えられなかった。
冷たい私と冷たい私達。
梨々が死んだ事により名づけられた名前。
それはきっと、怨嗟を篭められた名前ではないのだろう。
ただ、あまりにも悲しい名前に思えた。
とても冷たくて、悲しくて、切なくなる名前。
アルルゥはヤミヤミの名を呼ぶ度に自分も自分達も冷たいと言い続けていたのだ。
きっと、梨々が死んだのにその死に関わる者すら仲間と受け入れる自分を責め続けていたのだ。

(アルルゥ達を冷たくし続ける事が許せない)

だから、ヤミは思った。
もし仇をも仲間として受け入れる事がアルルゥ達の心を傷つけるなら、自分はそこに居てはいけない。
アルルゥ達と一緒に居てはいけない。
とても短い間だったけれど、アルルゥ達と過ごした時間はヤミにとって人生の全てだったから。
もう、ほんとうに好きになり始めていたから。

(だから私は、居ないほうが良いんだ)

濁流に繋がれてヤミは流れゆく。
何処か、冷たい場所へと。
162つながり(後編) ◇T4jDXqBeas:2010/03/22(月) 01:21:08 ID:hTADnpPa
     *  *  *

間に合わなかった。
ヤミヤミを追ったレックスとアルルゥの手は、あと少しのところで擦り抜けた。
彼女の体は人魚のような姿に変わり、遥か下方に見える川に呑まれた。

「どうしてあんな名前を付けたんだ、アルルゥ!?」
レックスは厳しく詰問する。
許せなかった。
まるで、裏切られたみたいに思えた。
この想いは間違っているものだと思う。
アルルゥにはヤミヤミを怨むだけの理由がある。
だけど、もしも彼女を怨んでいるならどうして教えてくれなかったのだろう。
その事が裏切られたみたいに思えて。

ぽろぽろと。

アルルゥの瞳から涙が零れ落ちていることに気づいた。

「アルルゥ?」
「…………つめたかったの」

アルルゥはつぶやくように言葉を紡ぎ始める。
誰に伝えるでもないかのように。
何処か、呆然となりながら。

「アルルゥ、つめたかった。とても、さむかった」
「……梨々が、死んだから?」
ん、とこくり頷いて、
「りりがいなくなったのに、なにもしてあげられなかった。かなしんであげられなかった」
胸の内を打ち明けた。

「悲しんであげられない?」
わからない。
アルルゥは梨々を想い、散々に泣いていたはずだ。
それなのにどうして?
「レックス、なかなかった」
「それは……」
「ベルカナも、なかなかった」

……確かに、梨々のために泣いたのはアルルゥだけだ。
レックスもベルカナも泣かなかった。
いや、違う。

「みんな、なけなかった」
「………………」

そう、泣けなかった。
前に進まなければならないから。
あるいはもしかすると……別れ失う事に“慣れ始めて”しまったから?

「このしま、キライ。さむくなるから」
「それは、心が?」
「ん」
アルルゥは頷く。
163創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 01:22:34 ID:fVRRC61z
 
164つながり(後編) ◇T4jDXqBeas:2010/03/22(月) 01:22:46 ID:hTADnpPa
「みんな、みんなあえなくなってく。
 ジーニアスもベッキーもいなくなった。
 プレセアおねーちゃんもころされた。
 レミリアもわるくなった。
 りりも……」
身を挺してアルルゥ達を護り。
戦いの中で散り。
変貌し。
誰もかもがアルルゥの側から居なくなっていく。
「アルルゥ、つめたくなってく。
 みんな、つめたくなってく」
度重なる悲しみで胸の奥が冷めていく。
真冬の吹雪のように凍える寒気が心の温度を下げていく。
「だからあんな名前を付けたの?」
「ん」
アルルゥは頷いて。
そして。

レックスの手を握った。

「アルルゥ、こうしたいっておもったから」
「え…………」
アルルゥは言った。
「アルルゥもみんなもつめたくなってく。だから、こうする」

アルルゥの手は窓の外から吹き込む夜風で冷えはじめていた。
レックスの手も同じで、二人とも冷たい手を握り合わせているはずだ。
それなのに、しばらくすると体温が伝わってきた。
人の温もりが。
仲間の温もりが伝わってきた。
じんわりとした温もりが、手のひらから伝わってきた。
「ヤムィだけじゃ、ダメ。ヤムィヤムィじゃなきゃ、ダメ」

冷たい私だけでは凍えるだけだ。
だけど私だけではなく冷たい私達──仲間が居るのなら。
寒さに凍えていても、身を寄せ合って温かくなれる。

「でもアルルゥ、ヤムィヤムィをなかせた」
ぽろぽろと涙が零れ落ちていく。
温かなのに悲しい涙が止め処なく頬を濡らし続ける。
深い悲しみと後悔がアルルゥの心を傷つける。
「アルルゥ、いけないなまえつけた?」
「………………」
レックスは何も言わずに。
ちからいっぱい、アルルゥを抱きしめた。



そして、意識した。
ポケットの中に有る、一枚のカード。
『磁力』のカードを意識した。

一人でならタバサに会いに行く事もできるカードだ。
かつて意識した雛苺とさくらについて考える必要は最早無い。
しかし使ってしまえば、この城に居るアルルゥ達を放って行く事にもなる。
でも。
それなら。
どうすればいいのだろう?

このつながりを護るためには。
165つながり(後編) ◇T4jDXqBeas:2010/03/22(月) 01:23:41 ID:hTADnpPa
【A-3/工場仮眠室/2日目/早朝】
【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]:左太腿と右掌に裂傷、左肩に打撲、足に軽度の凍傷(治療済み)
[装備]:勇者の拳@魔法陣グルグル、コキリの剣@ゼルダの伝説
[道具]:基本支給品一式×5(食料一人分−1、飲料水を少し消費)、クロウカード『希望』@CCさくら、
   歩く教会の十字架@とある魔術の禁書目録、時限爆弾@ぱにぽに、エスパー錠とその鍵@絶対可憐チルドレン、
   じゃんけん札@サザエさん、ふじおか@みなみけ(なんか汚れた)、5MeO-DIPT(24mg)、
   祭具殿にあった武器1〜3つ程、祭具殿の鍵、裂かれたアリサのスリップ(包帯を作った余り)
[服装]:中世ファンタジーな布の服など。傷口に包帯。
[思考]:僕がやるべき事は……
第一行動方針:なのは達を守る。
第二行動方針:なのはやインデックスと情報交換。
第三行動方針:なのはの精神状態を警戒する。
第四行動方針:もし桜を見つけたら保護する。
第五行動方針:ゲームに乗った人間は、説得する(無理なら……)
第六行動方針:死者蘇生の可能性を探す。
基本行動方針:ゲームを壊す。その後、絶対に梨花の世界へと赴き、梨花の知り合い達に謝罪したい。
参戦時期:エンディング後
[備考]
リンクが所持している祭具殿にあった他の武器が何なのかは次以降の書き手さんに任せます。
(少なくとも剣ではないと思われます)
祭具殿の内部を詳しく調べていません。
カレイドルビーと情報交換しました。これまでのアリサの動向を知っています。

【インデックス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:仮眠中、高熱、全身に軽度の凍傷、軽い貧血気味、
   背中に大きな裂傷跡と火傷、足裏に擦過傷(共に応急手当て済み)
[装備]:水の羽衣(背部が横に大きく裂けている)@ドラゴンクエストX
[道具]:支給品一式(食料−1日分、時計破損)、ビュティの首輪、鉄製の斧@ひぐらしのなく頃に(?)
[服装]:私立聖祥大付属小学校の制服の下に水の羽衣。背中と足にシルクの包帯。
[思考]:食べて寝ちゃいけないんだよ……zzz……
第一行動方針:なのは、アリサと話をする。
第二行動方針:ヴィータを捜し、説得する。
第二行動方針:ニケ達と合流する。
第三行動方針:紫穂の行方の手掛かりを探す。エヴァの説得も諦めていない。名前しか知らないヤムィヤムィが少し気になる。
第四行動方針:落ち着いたら、明るい所でじっくりビュティの首輪を調べたい。
基本行動方針:誰にも死んで欲しくない。状況を打破するため情報を集め、この空間から脱出する。
[備考]
拾った双葉の型紐が切れたランドセルに荷物まとめて入れています。
インデックス自身のランドセルは壊れているので内容物の質量と大きさを無視できません。
深夜12時の臨時放送を、完全に聞き逃しました。


【F-3/グランバニア城二階・執務室/2日目/早朝】
【ベルカナ=ライザナーザ@新ソードワールドリプレイ集NEXT】
[状態]:精神力半減
[装備]:ネギの杖、果物ナイフ@DQ5、ゴロンの服@ゼルダの伝説、レースのビスチェ@DQ5、
[道具]:支給品一式×4、懐中時計型航時機『カシオペア』@魔法先生ネギま!、黙陣の戦弓@サモンナイト3
    テーザー銃@ひぐらしのなく頃に、爆弾石×2@ドラゴンクエスト5、魔晶石(15点分)@ソードワールド、
    消毒薬や包帯等、ツーカー錠x3@ドラえもん、マジカントバット@MOTHER2、パワフルグラブ@ゼルダの伝説
[服装]:ゴロンの服。その下にレースのビスチェ
[思考]:そういえば何やら騒がしいような……?
第一行動方針:電話の話についてどう伝えるか考える。
第二行動方針:朝の放送でイエローが無事だった場合、『交信』でイエローと連絡したい。
第三行動方針:イエローと合流し、丈からの依頼を果たせるよう努力はする(無理はしない)
第四行動方針:仲間を集めたい(イエローの友人の捜索。簡単には信用はしない)
第四行動方針:出来れば睡眠で精神力を回復させたいが。
基本行動方針:ジェダを倒してミッションクリア
[備考]:葵が死んだことを知りません。
    レベッカ宮本を『フォーセリアのレッサー・バンパイア』だと考えている?
166つながり(後編) ◇T4jDXqBeas:2010/03/22(月) 01:29:56 ID:fVRRC61z
【F-3/グランバニア城一階・宿屋/2日目/早朝】
【レックス@ドラゴンクエスト5】
[状態]:魔力中消費
[装備]:ドラゴンの杖@DQ5(ドラゴラム使用回数残り2回)、勇気ある者の盾@ソードワールド
[道具]:基本支給品×2、GIのスペルカード『磁力』@HUNTER×HUNTER、飛翔の蝙也の爆薬(残十発)@るろうに剣心
    ドラゴンころし@ベルセルク、バトルピック@テイルズオブシンフォニア、
    爆弾石×2@ドラゴンクエスト5、魔力の尽きた凛のペンダント、小さなメダル@DQ5
[服装]:普段着
[思考]:どうすれば良い?
第一行動方針:ヤミヤミが気になる。アルルゥの涙を止めたい。
第二行動方針:仲間を守りつつ、レミリアとタバサを捜す。
第三行動方針:魔力が回復して余裕が出来たら、不明アイテムや水中の調査
基本行動方針:勇者としてタバサの兄として誇れるよう生きる。でも敵には容赦しない。
[備考]:エンディング後なので、呪文は一通り習得済み
    アルルゥや真紅はモンスターの一種だと思っています。
    ベッキーは死亡したと考えています。
    お城の地下に迷宮があるのを確認しましたが、重要なことだと思っていません

【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:魔力消費(中)、右腕の手首から先が動かない。
[装備]:タマヒポ(サモナイト石・獣)、ワイヴァーン(サモナイト石・獣)@サモンナイト3
[道具]:基本支給品×2、クロウカード『泡』『駆』@カードキャプターさくら、
    海底探検セット(深海クリーム、エア・チューブ、ヘッドランプ、ま水ストロー、深海クリームの残り、快速シューズ)@ドラえもん
    スタンガン@ひぐらしのなく頃に、アタッシュ・ウェポン・ケース@BLACK CAT
[服装]:普段着である民族衣装風の着物(背中の部分が破れ、血で濡れている)
[思考]:ヤムィヤムィ……
第一行動方針:ヤムィヤムィが気になる。悲しい。
第二行動方針:レックスについていき、レミリアやイエローを捜したい。
基本行動方針:優勝以外の脱出の手段を捜す。敵は容赦しない。
参戦時期:ナ・トゥンク攻略直後
[備考]:アルルゥは獣属性の召喚術に限りAランクまで使用できます。
    ゲームに乗らなくてもみんなで協力すれば脱出可能だと信じました。
    サモナイト石で召喚された魔獣は、必ず攻撃動作を一回行ってから消えます。攻撃を止めることは不可能。
    アリス・イン・ワンダーランドに対して嫌悪を覚えています。
    ベッキーは死亡したと考えています。


【F-3/河川水中/2日目/早朝】
【ヤミ(イヴ)@BLACK CAT】
[状態]:疲労(中)、10歳前後の容姿、トランス〈人魚〉状態
[装備]:レミリアの服、エッチな下着@DQ5、返響器@ヴァンパイアセイヴァー
[道具]:基本支給品×2、光子朗のノートパソコン@デジモンアドベンチャー、
    フック付きロープ@DQ5、神楽の傘(弾0)@銀魂、エーテライト×1@MELTY BLOOD、
    胡蝶夢丸セット@東方Project、ラグーン号操船マニュアル、病院服、ただの布切れ
[服装]:レミリアの服、その下はエッチな下着
[思考]:アルルゥ達と一緒に居ちゃ、いけない。
第一行動方針:城から離れる。
第二行動方針:自分の過去を知りたい。そのために、ブルーや千秋から話を聞きたい。
基本行動方針:自分の過去を知りたい。そして罪と向き合いたい。
[備考]:記憶をすべて消し去りました。元世界の記憶、この島での記憶、共にありません。
    自らヤムィ(ヤミ)に改名しました。
167創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 02:09:55 ID:olHmSWtf
投下乙、かな?
流石にこれまで色々あっただけに単純に情報交換とはいかなかったか。
うまく会話できれば工場のなのはが念話をできたし、城組に湖底の調査をさせることができたのに……

リンクはなのはの歪みを警戒対象に。
確かになのはが殺し合いを受け入れていると考えるのは仕方ない情報がそろいすぎてるw
偽名使って騙しとおしたり、
大量虐殺したり、
はやてを殺したり、
猫を殺したり。

改心したと判断できるだけの情報がなのはの挙動のみなんだよな。
そこを疑われたら本当、どうにもならんw


イヴのほうはついにトラブルの名前にww
ヤムィヤムィってそういや、うたわれってアイヌが元になってたっけ。
しかしインデックスの余計なひと言が原因でこんなことになるなんてなぁ。
そのことを知っちゃったらインデックスのイメージが相当下がりそうだ。
一人になっちゃった危険なことを周りに知られまくってる人物。一体どうなるやら。
トリエラに見つかってズカンだけは簡便な!

船あるしトランスだし道具あるしで城組に湖底調査させようと思ってたプロットが―――!!
168創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 03:57:45 ID:fVRRC61z
一レスだけだったから代理投下終了宣言忘れてた、すまぬ。
投下GJ。インデックスは上条さんちで留守番していればいいと思うんだよっ!
トマも同罪だやっぱおまえは墓の下に埋まっていろゴラァッ!!
……ふぅ。仕方ないとはいえあちこち痛いなぁ。
もうなんか電話が悲劇の象徴になりつつある気がするw
リンクやめるんだ、多分君の役回りはそこじゃない。
今もエヴァがここにいてくれれば適任だったのにな。
そして諸々の懸念事項を吹っ飛ばすくらいアルルゥが良かった。
ここだけ切り取って喜劇にできたらいいのにってくらい。

>>167
ズガンだけに簡便だと……
ごめ、あやまるから石投げないで(ry
169創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 11:10:09 ID:pVqZW+yQ
投下乙!
誤解、迷推理、気持の行き違いは情報交換話の真骨頂だと思うの。
全員が考えて、考えうる限りのことをやった結果なのがまた痛々しい。
170創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 11:15:28 ID:SB1pDgES
投下乙!
予約が入ったときは正直、オイオイ対主催団結来たよコレもう体制整っちゃうんじゃねジェダ覚悟しろ
とか考えていたが、現実は甘くなさ過ぎて逆に吹いたw
つくづくインデックスの一言が余計だったな。いいからお前は寝とけとw
ベッキーとベルカナも、ある意味当然とはいえ険悪な感じだし、
リンクも不穏な考えにとりつかれ始めたし、
イヴが飛び出した先には、元ご主人様達や怪物グレーテルがうろついてるしで、
ヤバイ感じに暗雲が立ち込めてきたな。
171創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 14:12:56 ID:K122j/WS
投下乙です
これはwwwwww
みんな、考えに考えた結果がこれだよ!!
172創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 16:11:45 ID:lTmzP0ns
そういや、トマも最初にアルルゥに襲われてんだよな
名前は知らないだろうけど、直接会ったらヤバいなw
173創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 19:42:54 ID:olHmSWtf
トマ側はベッキーから話聞いてるから問題ないし、
アルルゥの方は……って、トマが銃を撃ったのがアルルゥがゲームに乗ったきっかけだったかw
改心軍団だから色々と厄介だなw

◆T4jDXqBeas氏に連絡。したらばの避難所に改正望の書き込みがあった。
ヤムィヤムィの発言をしたインデックスの描写が不足してたように思えるって内容。
言われてみれば納得の修正要望だし、何らかのフォローがほしい。
まさか仲違いを起こさせるためにではないだろうし。
174創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 12:09:56 ID:bRy4NsgZ
予約来てるな
最近いい感じだ
175創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 18:15:19 ID:7hw3llu0
修正要望も出てるみたいだけど、とりあえずwikiに収録しちゃっていいかな
直そうと思えばそれからでも直せるし
176創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 20:35:16 ID:od7shQBJ
いいんじゃない?
177創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 16:05:32 ID:vpLl4p0a
編集したいけど、しばらくPCが使えそうにない…
誰か暇な人いたら頼む
178 ◆v5ym.OwvgI :2010/03/25(木) 00:33:08 ID:1FK3SGrP
投下します。
179目撃者と追跡者  ◆v5ym.OwvgI :2010/03/25(木) 00:36:37 ID:1FK3SGrP

学校を後にしながら、エヴァンジェリンは考える。


学校に残した人形には話すべきことは話した。
その話した内容で、人形がどのような行動をとるのかは気になるが、
同行する気はないようだった。


人形から聞いた情報に、役立つことはなかった。
大多数の参加者の情報を持っていたが、誰が敵で誰が味方かを決めるのは自分だ。
強いて言うなら、トリエラが課題を課したトマという少年が首輪についてどれだけ調べたかに多少興味がある程度だ。


外はすでに雨があがっていた。
エヴァは向かう先を東と決めていた。
グレーテルをしとめたいところだが、学校を飛び出してからどこに向かったかわからない。
居場所のわからない奴を探すよりも、確実にいるであろう東方面の二人組を狙うことにしたのである。
そして森の中を進んでいた時。


異形が上空を通り過ぎた。







     ※     ※






神社から学校へと、空を飛ぶものがいる。
南からやってきた、リリスだ。

彼女はQ-Beeとの約束事通り、神社へ古手梨花の死体を捜索しに来ていたのだが、
移動してしまったのか、あるはずの彼女の死体は見つからなかった。

しかし埋められていることは聞いていたし、埋められていたとおもしき場所は発見できた。
あとはそこからぽつぽつとかろうじて残った土の跡から学校の方に死体は運ばれたのだろう、と考えることができた。


その死体は早くに見つかった。割と新しい戦闘後があり、
そこにニケと一緒にいたのだ。
彼女が古手梨花という確証はまだないが、見た目が泥だらけなので恐らくは間違いないだろう。
180目撃者と追跡者  ◆v5ym.OwvgI :2010/03/25(木) 00:38:12 ID:1FK3SGrP

リリスは早速Q-Beeを呼び寄せる。
やや時間がかかったが、Q-Beeがやってきて、不正行為の交渉に入る。

「フルデリカ、ミツカッタカ?」
「うん、この通りバッチリ。この子でいいんだよね?」

Q-BeeがP-Beeに呼び掛ける。
確かに、古手梨花だと判明した。

「それじゃあ、ハイ」

リリスは手を差し出す。働いた報酬を求めたのだ。

……が。

「……ゴホウビ、モッテナカッタ」
「……あ」

そういうQ-Beeの背には、確かにランドセルがなかった。

「どうしてもってないの? いっつも持ち歩いてるんじゃないんだ」
「サッキ、ヒナイチゴニワタシタ」

Q-Beeは、北東市街の混乱から立ち直ってから雛苺にご褒美を渡しに行った。
そしてその直後、リリスに呼び出されたのだ。
当然、その間にご褒美ランドセルを再度とりに行く間なんてなかった。
これが正規のご褒美の請求ならランドセルをもっていくという考えに至ったのだろうが、
あいにくリリスとのやり取りはそれとは微妙に異なっていた。
だが、リリスとの約束は覚えていたようだ。

「……トリニイッテクル」
「あ、ちょっとまって」

すぐに飛んで行こうとしたのだが、リリスに止められる。

「?」
「ヒナイチゴは支給品をもらったんだよね? じゃあ回復アイテムは持ってるでしょ?」

Q-Beeの能力に第三者を回復させる手段はないだろう、とリリスは考えている。

これが回復させるのがジェダならなにかあるのかもしれない、と思えるが、
子供たちにご褒美を配り、回復させているのはQ-Beeなのだから。
だが、先ほど述べたとおり、リリスはQ-Beeに回復手段はないと思っている。
ならば一体どうやって子供たちをご褒美で回復させているか。

リリスはそれに代わる道具をQ-Beeが持っていると考えたのだ。

「モッテル」

その考えは当たっていて、Q-Beeは肯定した。
181目撃者と追跡者  ◆v5ym.OwvgI :2010/03/25(木) 00:40:34 ID:1FK3SGrP

「じゃあ、それをかわりにちょうだい」

ホテルで道具をもらったことで、気付いたことがある。
それはご褒美の支給品であっても、ハズレはあるということだ。
銃の方は、大当たりといっていいすごい威力のあるものだったが、
もう一つのカードのほうは外れだった。
本当はリリスの勘違いで相当に厄介な道具なのだが、リリスの認識では役に立たないものだ。

最初に持っていた支給品も、ただの指輪と拳銃とお酒だった。
拳銃は今はおもちゃじゃなかったとわかっているし、人間が使えば便利ということもわかったが、
それでもリリスには使いこなせない。これもハズレだ。

次にもらうものが例えば刀のようなものだったとしても。
やはりリリスにとっては必要のないものだろう。

だから、リリスは何をもらえるかわからない道具よりも、確実に手に入れられる回復アイテムを求めた。
今はまだ必要がないが、いずれ大きな戦いをして傷ついた時。必要になってくるだろうから。

「……ソレハ、ダメ」
「なんでよー」

しかし、Q-Beeの返答は拒否。
このジェダからもQ-Beeが直接使うよう支持されていた。
ご褒美の回復は回復アイテムの支給ではなく、その場での使用に限るからだ。

その事をQ=Beeはリリスに説明する。
だが、リリスも引かない。

「大丈夫だよ。このお手伝いも、もともとはQ-Beeのお仕事だったんだし。
 それを私が手伝うのも、本当はいけないんじゃないかな?」
「…………」
「でも、それも私とQ-Beeが黙ってればジェダ様にばれないんだし。
 今回のこれも誰も言わなかったらばれないよ」


ばれなければ叱られない。


なんどもそれを免罪符にしてきたQ-Beeは、既にそれに慣れてしまったようだ。
すこし考えた末、「まあいいか」という結論にいたり、リリスに一枚のカードを渡す。

「……これは?」

リリスはそれを受け取り、眺める。
「大天使の息吹」とかかれたそれには、綺麗な女性の絵が描かれており、
その下に書かれている文章を信じるならどんな怪我も一瞬で治せるようだ。

「ソレモッテ、『ゲイン』ッテイウ。ソシタラカイフクデキル」
「そっか。ありがと」

使い方を聞いたリリスは、そのカードをしまう。


「そういえば、もう雨やんじゃったけど任務の方は大体終わった?」
182創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 00:42:21 ID:IO6Baj7B
<支援>
183目撃者と追跡者  ◆v5ym.OwvgI :2010/03/25(木) 00:43:49 ID:1FK3SGrP

今回のこれは、本当に何気なく聞いたことだ。
Q-Beeが命じられたジェダの指令について、多少ではあるが気になっていたのだ。

「ククリ、カナリアノシタイハカクニンシタ
 アト、イキテテクビワツケテナイニンゲンモミツケタ」
「あ、生きてる人って本当にいたんだ」

一応、Q-Beeから話を聞いて生きてる人間がいるかもしれないとは知っていたが、
流石にそれはないだろう、とはなから考えていなかった。
だが本当に生きていたとは。

「ちなみに、そいつの名前は?」

世間話レベルのそれに、Q-Beeの口も軽い。
リリスの問いにあっさり答える。

「ふうん……」

その答えに、リリスは考えこむ。


会話がなくなったことで、もう用はないと考えたのか、
Q-Beeは古手梨花の死亡確認をし終え、飛んでいく。
リリスもそれを見送り、その後また考え出す。


ジェダが首輪をはずした参加者を気にする理由。それには興味がない。
だが首輪をはずした人間がいる、という事実をリリスは気にしていた。

リリスは首輪と、この身体の違和感の原因である制限とが直結していると考えている。
すなわち、首輪さえ外せば制限がなくなり、100%の力で戦うことができる、と。

ならば、首輪を外せばQ-Beeを殺しうる強敵であるレミリアとも、
絡め手なしの戦いでもかなりやりあえるくらいになれるだろう。
そして逆に、もしレミリアの首輪が外されることがあったら――

ブルリ、と震える体をごまかすように首を振る。

強くなるために絡め手を覚えようとした矢先だが、
単純な能力の強化、いや弱体化していた能力が元に戻るわけだから強化とは言わないか。
ともかく首輪を外すことができるなら、外してしまった方が戦いの選択肢も増える。

だがニアやグリーンでも、この首輪をはずす目途は立っていないようだった。
いや、ニアの方はそういえば、グリーンの首輪をいじっていたか。
もしかしたら外せる段階までいってたのかもしれない。
そういえばニアはなにかメモをしていた。もしかしたら首輪について書いてるかもしれない。
もともと、この後どこに行けばいいかは決めていないのだ。
それをとりに行くのも一興だろう。
184目撃者と追跡者  ◆v5ym.OwvgI :2010/03/25(木) 00:46:14 ID:1FK3SGrP

ニア以外でも、首輪をはずせるような賢い人がいるのなら。
その人間を仲間に加えれば、自分の首輪をはずすことができる。
そして仲間にするための道具もあるし、自分の能力はそういう能力だ。


学校を出て、次にどこにいくかは決めてない。
さあ、どうするかと考えていたときに、急に寒気を覚えた。

そして、みた。
その異形を。変わり果てた、人間から変わってしまったモンスターを。
リリスは咄嗟に隠れて、その姿を見送る。

すると、その後を追うように見たことがあるような金髪が飛んでいたのである。
雨も上がってきているので、月明かりに照らされたその金髪は闇の空によく映えた。



それは、工場へと向かうグレーテルとエヴァンジェリンだった。

グレーテルが工場へ向かう理由。それはそこに人間がいると想像ができたからだ。
彼女ら7人の魔女は、東西南北に分かれてほかの参加者を殺しに行くつもりだった。
4つの方角の中、真っ先に選ばれたのが西で、その方向を選んだのはエヴァンジェリンだ。
そしてエヴァンジェリンは、元々裏切るつもりだった。

ならば、彼女が真っ先に選んだ西には、他の魔女たちを行かせたくない理由があったと考えるのは当然の理屈だろう。

グレーテルもそこに気づき、盟約を交わしたあの塔から西の方角の建物。工場を目指していたのだ。
そこにいるであろう、エヴァンジェリンが守りたい者を殺すために。
そしてその事実を知った時のエヴァンジェリンの絶望を見るために。

グレーテルの思惑に気づいたエヴァは舌打ちをした。
魔女たちを西にいる奴らと戦わせないためには、襲撃した相手を確実にしとめておかなければならなかった。
彼女は当然、グレーテルを追いかけた。



そんな光景を、リリスは運よく相手に気づかれることなく見ることができた。

どうみてもヤバそうな相手と、一度苦渋を飲まされた相手。
その二人が、どうにも険悪な雰囲気を出しながら飛んで行った。

リリスはチャンスだと思った。
強敵二人が戦闘を行う。エヴァの強さは身をもって知っているし、
もう一人の方もあのいやな雰囲気からして相当戦えるだろう。
ならば二人が闘えば、どちらも無傷では済まない。
そこを狙えば、強敵が二人も死んでくれることになる。
185目撃者と追跡者  ◆v5ym.OwvgI :2010/03/25(木) 00:50:50 ID:1FK3SGrP

リリスは空を舞った。
強敵二人をしとめるために。自分の目標に近づくために。







     ※     ※






そんな、外でのやり取りに気づくことなく学校に居続けた者。

エヴァが去った後もその場に居続けた蒼星石だ。
彼女はリリスとQ-Beeの話を聞いた後も、その場にいた。

今回の二人のやり取りも、第三者が見ていたのだ。

しかし、今回はパタリロの時のように、壁越しに見られていたわけではない。
蒼星石は身を隠していたが、時々は彼女らの様子をこっそり見ていたし、それにQ-Beeも気づいていた。

だが、それにもかかわらず今回もまた、Q-Beeはなんのリアクションもとらなかった。
なぜなら、Q-Beeは蒼星石が既に死んでいると判断していたのである。

勘違いの理由は、エヴァが蒼星石に施した契約による結果だ。
それにより、彼女の体を流れる魔力が変化し、それを死亡と誤認したのだ。

心臓もない、呼吸の必要もない。
そんな参加者の生死を確認する手段は、当然ながら他の参加者のようにはいかない。
薔薇乙女達の場合は、体を流れる魔力を生存反応とされていた。
その魔力がエヴァとの契約で変わったことで、死亡したと誤認されたのだ。


だが、今ジェダは魂の数を常に確認している。
その間違いは、すぐに訂正されるはずだ。
しかしその訂正はなされず、未だ蒼星石はエヴァに殺されたことになっている。

なぜ訂正されずに蒼星石は殺されたと認識されたままなのか。


同じように魂の数でジェダの目をごまかすことに成功していたヴィクトリアの時は、
Q-Beeが死亡することで、死亡者と魂の数が一致し、
一時的にだがジェダの目をごまかすことができていた。
今回もそれと同様のことが起きた。


今回、蒼星石の魂のかわりに神体に入ることになった魂とは一体何か。
一人、いや一つあるはずだ。蒼星石がエヴァと契約する前後に眠った者が。
186目撃者と追跡者  ◆v5ym.OwvgI :2010/03/25(木) 00:53:24 ID:1FK3SGrP

ジェダが支給品として参加者に配った、チャチャゼロの魂である。
エヴァが彼女を眠らせた際、チャチャゼロの魂も神体にいれられていたのだ。


ジェダは、エヴァの魔力の影響で表ではろくに動けないチャチャゼロに、
神体に収まるだけの魂の力はないと考えていた。

だが実際は、こうして子供たちの魂の一つとしてカウントされ、誤差がでている。


当然だろう。同じ人形である薔薇乙女の魂はカウントされているのだ。
何年も、何十年もエヴァと共に居続けた。
外での1時間が1日に相当する特殊な別荘の中でずっと過ごしてきた。
そんな彼女の命がカウントされないなんてこと、どうして言い切れる?

ジェダがチャチャゼロを軽視した。
その結果が、今の蒼星石の状態である。


そんな彼女はこの状況をどのように生かすのか。

いや、それ以前に彼女は今その状況に気付けていない。
はたして彼女はこの幸運に気づけるのだろうか。

そして彼女は次に一体どのような行動をとるのか。
エヴァやリリス達から様々な話を聞いた彼女が選ぶ次の選択は――



【C−4/上空/2日目/早朝】
【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:健康、左腕に傷の跡。ヴィクター化
    喪われた心臓の代わりに核鉄(サンライトハート)が埋め込まれている。
[装備]:サンライトハート@武装錬金
    ソードカトラス×2(1+15/15)(銀10/15)@BLACK LAGOON、ソードカトラス専用ホルダー
[道具]:基本支給品一式、塩酸の瓶×1本、毒ガスボトル×1個、ボロボロの傘
    ソードカトラスの予備弾倉×3(各15発、一つだけ12発)、バット、
    蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン、救急箱、エルルゥの薬箱の中身@うたわれるもの
   (カプマゥの煎薬(残数3)、ネコンの香煙(残数1)、紅皇バチの蜜蝋(残数2))、100円ライター
    スペクタルズ×8@テイルズオブシンフォニア、クロウカード『光』『剣』@CCさくら、
    コエカタマリン(残3回分)@ドラえもん、
[服装]:いつも通りの喪服のような黒い服。胸の中央に大きな穴が空いている。雨に濡れて湿っている。
[思考]:うふふ……あははは……
第一行動方針:工場にいるであろうエヴァの仲間を殺す
第二行動方針:千秋との再会を楽しみにする。千秋が「完全に闇に堕ちた」姿を見届けたい。
第三行動方針:機会があればまた紫穂と会いたい。2人きりで楽しく殺し合いたい。
基本行動方針:効率よく「遊ぶ」。優勝後はジェダに「世界のルール」を適用する(=殺す)。
[備考]:シルバースキンの弱点(同じ場所をほぼ同時に攻撃されると防ぎきれない)に勘付きました。
    「殺した分だけ命を増やせる」ことを確信しました。ただし痛みはあるので自ら傷つこうとはしません。
    銀の銃弾は微妙に規格が違う為、動作不良を起こす危険が有ります。使用者も理解しています。
    エヴァンジェリンのことには気づいてません
187目撃者と追跡者  ◆v5ym.OwvgI :2010/03/25(木) 00:55:25 ID:1FK3SGrP


【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル@魔法先生ネギま! 】
[状態]:全身に痛み、左腕が殆ど動かない、魔力消費(中)
[装備]:フェアリィリング@テイルズオブシンフォニア
[道具]:支給品一式、手足の無いチャチャゼロ(半永眠)@魔法先生ネギま!
[思考]:グレーテルめ……やらせん!
第一行動方針:グレーテルを追う。
第二行動方針:リリスと遭遇することがあったら、リリスを倒し身柄を押さえ、情報を得る。
第三行動方針:ジェダの居場所に至る道を突き止め、露払いをする。
第四行動方針:ジェダを倒そうと挑む者たちの前に立ち塞がり、討たれる。
基本行動方針:ジェダ打倒のために暗躍。ただし仲間は作らない。誇り高き悪として、正義の前に散る。
[備考]
梨花の血を大量に吸いました。雛見沢症候群、及び女王感染者との関連は不明です。
ジェダ打倒を目指している者として、ニアの名前をグリーンから聞いています。
パタリロを魔族だと思っています。名前は知りません
紫穂の『能力』が、触れることで発動することを見抜きました。詳細までは把握していません。
雲に隠れていても満月による補正は有るようです。


【C−5/上空/2日目/早朝】
【リリス@ヴァンパイアセイヴァー】
[状態]:右足と左腕にレーザー痕。顔に酷い腫れ。全身打撲。(以上全て応急手当済み)
     疲労(小)。全身に軽度の火傷。額に浅い切り傷。背中に打撲。
     微かな哀しみとすっきりと澄み渡った決意。『考え』る事に目覚めた。
[装備]:首輪×2(グリーンとニアのもの。腕輪のように両腕に通している)
[道具]:基本支給品二式(ランドセルは男物)、眠り火×8@落第忍者乱太郎、魔女の媚薬@H×H、
    メタちゃん(メタモン)@ポケットモンスターSPECIAL、きせかえカメラ(充電済)@ドラえもん
    モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL 、小悪魔のウインク@H×H、 大天使の息吹@H×H
    ブラックバレル・レプリカ(13/13)@メルティブラッド(予備弾倉×1、ガマリエル弾×2)
[思考]:二人ともボロボロだったら楽なんだけどな
第一行動方針:グレーテルとエヴァを追い、殺す。
第二行動方針:できれば首輪をはずしたい。外したら制限もなくなるはず。
第三行動方針:ニアのメモをとりにいきたい。
基本行動方針:優勝して、グリーンの魂ともう一度語り合う。もう「遊び」に夢中になったりはしない。
[備考]:
荷物の中の『魔女の媚薬@H×H』と『大天使の息吹@H×H』には説明書がついていません。
Q-Beeからジェダに命じられた任務の内容を聞きました。
188創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 00:56:27 ID:OHAAzTqa
189目撃者と追跡者  ◆v5ym.OwvgI :2010/03/25(木) 00:58:31 ID:1FK3SGrP



【D−4/体育館内/2日目/早朝】
【蒼星石@ローゼンメイデン】
[状態]:金糸雀のローザミスティカ継承、雨で服が湿っている。
    殺人には激しい抵抗有り、チャチャゼロの部品と人形契約により四肢を維持
[装備]:庭師の鋏@ローゼンメイデン、金糸雀のバイオリンと弓@ローゼンメイデン
[道具]:基本支給品×2、ジッポ、板チョコ@DEATH NOTE、 戦輪×4@忍たま乱太郎
     素昆布@銀魂、旅行用救急セット(消毒薬と針と糸)@デジモンアドベンチャー
     トンネル南側入り口の鍵
[思考]:僕は……
第一行動方針:自分にできることは……
基本行動方針:優勝のお願いで全てを無かった事にしたかった。
[備考]:現在蒼星石の四肢はエヴァとの人形契約により動いています。
    蒼星石の自由に動き、エヴァにとっての負担もほぼ有りませんが、
    昼間のエヴァの魔力の減衰や、死亡によって影響を受ける可能性は有ります。
    エヴァと情報交換しました。少なくとも島を覆う結界や地下に本拠地があるであろうことは聞いてます。
    リリスとQ-Beeの会話の一部始終を聞いていました。

※ジェダ達に死亡したと思われています。首輪の中のP-Beeも眠っています。
 そのことに蒼星石は気付いていません。






【大天使の息吹@HUNTER×HUNTER】
「瀕死の重傷、不治の病、なんでも一息で治してくれる天使。
 ただし姿を現してくれるのはたった一度だけ。」(カード原文より)
グリードアイランドの指定カードの一つ。
作中では失われた拳や潰された喉も一瞬で直した。


ご褒美の時の回復の為にQ-Beeが所持している。
「ゲイン」と宣言しなければ発動しない。説明書もないので、
Q-Beeが使うところを見た者か、同作品の参加者(既に両名死亡済み)しか使用法はわからない。
190 ◆v5ym.OwvgI :2010/03/25(木) 01:03:04 ID:1FK3SGrP
投下終了。
支援ありがとうございます。
感想、問題点の指摘などお待ちしております。
191創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 01:12:33 ID:OHAAzTqa
投下乙
これで首輪解除二人目かな
まあ本人は気付いてないみたいだけど
とにかく主催側の綻びも大分大きくなってきたみたいで
いよいよクライマックスも近付いて来たか?
192創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 18:03:37 ID:YI3Bufa3
面白いな、良い感じだ。
グレーテル、エヴァ、共に妥当なところで……リリスはちょっとだけ漁夫の利だなw
Q-Beeも一度勢いが付くとどんどんわるい子になってもう。
あ、ただ小悪魔のウインクもカード状態で支給されてて、ゲインって言って使ってるみたいだから、
そこんところは修正するか使い方書かないかした方が良いと思います。


それより気になったところはチャチャゼロと蒼星石の扱いかなあ。
難しいのは、辻褄合わせようと思ったら合わせられる程度に微妙な点が複数有ること。
ベッキー吸血鬼化との比較とか、(仮死状態なのに)チャチャゼロの魂が神体に有る理由とかですね。
ただ、ここら辺は後の話で辻褄合わせられそう。

この話単体では、「(原作設定的に)チャチャゼロにも人並みの魂が有っていいのか」というところが気になる。

同じくドール契約でより人間らしい茶々丸の方でも、一応魂の証明はされたけどネギの助けも有っての事だったし、
魂が有っても人並み以下とか、そういう設定が原作で付いてもおかしくないキャラなんですよね。
(一方でエヴァは「魂など有ると思えば有る、無いと思えば無いんだよ」などと助言(?)している)
単行本派でここ数話分は知らないからそこで出てたらわからないけど、設定が難しいところだなあと思う。

個人的には首輪が外れるか死亡するまで触れない方が良い気もするんだけど……本当に微妙。
不味いと断言も出来ないし、問題無いとも言えないから。
193創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 18:21:11 ID:WDJGjFNQ
投下乙です
グレーテルとエヴァはそう動くか…
リリスも確かに少し得してるが下手したら…
そして蒼の子はこれはまた難しい立場だなw
194192:2010/03/25(木) 22:12:05 ID:YI3Bufa3
すみません、前言撤回です。
色々確認してみたら自分の考えていた辻褄合わせは使えなかったので、
ベッキー吸血鬼化とか、他にもシャナやグレーテルとの兼ね合い考えると、多分矛盾が生じます。
首輪を騙しても即座に外さないとダメみたいです。
195 ◆v5ym.OwvgI :2010/03/25(木) 23:16:08 ID:1FK3SGrP
>>192
自分としては、ベッキーやグレーテルの件は、後になって生きてる=バイタルが確認できた。
蒼星石は以降ずっと流れる魔力が変化したまま=死んだと思われたまま
だと思い、それらとは矛盾しないと判断していました。

カードの件はその通りですね。
収録後にその部分を修正します。

蒼星石の件と大天使の息吹の件は問題があると思いながら投稿したので修正する準備はあります。
修正したほうがいい、という意見が多いようなら変えるつもりです。
196192:2010/03/26(金) 03:12:51 ID:OdXExvPV
そういう説明なら他との絡みは……ベッキー以外は良いんですが。
東方の吸血鬼ってバイタル有るのかな。
でももし無かったにせよ一人なら説明付く気はします。
チャチャゼロの魂問題も有りますし所々微妙に不味いとは思いますが、
説明が付かない事も無いんじゃないかなというのが個人的な感想です。
という訳で蒼星石については消極的反対止まりで。

大天使の息吹の問題は、それ自体よりQ-Beeがこれをリリスに渡す事でしょうか。
少し気にはなりますけど、こっちは良いんじゃないでしょうか。
Q-Beeの暴走もリリスの特権も一段落しそうですし、それも含めれば許容範囲かなと思います。
197創る名無しに見る名無し:2010/03/26(金) 20:13:53 ID:FMYZryre
そもそもどの魂も同一と見ること自体がおかしいしなぁ……
一歳未満の赤ん坊や495歳500歳600歳のロリババアも同じ扱いだし、
人間やら吸血鬼やらロボットやらを混ぜてしまってるしなぁ

てか、ローゼンメイデンの人形達もあれって不完全な存在じゃなかったっけ?
確か他の姉妹達を殺してローザミスティカを集めてようやく完全なアリスになれるとか。
まあ、同じ人形のローゼンズが参加者なんだし、チャチャゼロの魂をカウントさせること自体はありだと思うんだよな。
仮死状態とはいえ、エヴァに蘇らせる気がないんだからほとんど死んだも同然だったろうし。

ただ、問題はこの状況を後に行かせるか。
もっと言えば、他の書き手が書けるのか。
自己リレーで済ませるのはよくない手だし、他の書き手の意見が聞きたいところ。
というわけで俺の意見としては条件付き賛成ってところか。

大天使の息吹のほうは問題ないと思うよ。
ただ気になるのはあのカードは原作だと3枚までしかカード化できないんだよな。
とはいえ、ほかのG・Iカードも出まくってるしいまさらか。
198創る名無しに見る名無し:2010/03/27(土) 07:48:54 ID:B3jtalS8
活かせるかと言われたら、保障は出来ないかな。
実はネタを思いついてはいるので、消極的に反対してはいるものの通ったら書こうとする。
でも何処かで躓いたら代案出せないかも。だから消極的な反対。

大天使の息吹は、原作で複製して補充とかやってたから陰でやってる事にすれば行けるんじゃない?
同一人物に対しては一度しか使えない制限も有ったけど、そもそもその制限も残ってるか不明だし。
武装錬金の形態固定とか色々されてはいるんだ。
199創る名無しに見る名無し:2010/03/27(土) 14:37:22 ID:EdgsPk4C
ネタが思いついてる人がいるならいいんじゃね?
最終的に生かせるかっていうのはだれにも分からないんだし。

ああ、そうか。核鉄の改造に比べたらカードの制限なんてチンケなもんだな。
それに考えたら引換券があったか。
200創る名無しに見る名無し:2010/03/31(水) 00:03:09 ID:jKFplIR8
強烈な反対意見もなければ、消極的反対を受けた作者さんの修正宣言もないので、
結局、修正なしってことでいいのかな?
201創る名無しに見る名無し:2010/03/31(水) 01:11:29 ID:p+l3WaFE
しばらくレスできなかったので遅まきながら投下乙。
修正なしには異存はないけど他の人同様少々不安を感じている。
今までの話でならコンマの魂はどういう処理がされていたのか、
これからの話ならアラストールやマジカルルビーやデバイス(少なくともリィン)
とかが死亡破壊となったとき神体に吸収されるか否か。
神体に入ってから取り除くとか無駄な労力だろジェダ様……。
今までのうっかりと違って予測できることだったんじゃないか?w
そこを逆手にとって色々展開できるかもしれないけどね。
202創る名無しに見る名無し:2010/04/04(日) 02:32:26 ID:O82NGafJ
ほっしゅ
203創る名無しに見る名無し:2010/04/05(月) 14:28:16 ID:/ztSPT2K
予約ktkr
204創る名無しに見る名無し:2010/04/05(月) 21:36:16 ID:YoFAiaee
予約うう!!

って、問題の蒼星石の扱いかww
しかも頭脳派対主催マーダーのメロと遭遇か。
メロは怪しい人間だしブルーはマーダーだと知ってるし、一体どういう対応するのやら。
205創る名無しに見る名無し:2010/04/06(火) 23:03:19 ID:NDETgoFV
なんか、ジェダの運命が決まりそうな気がする……
206冥探偵ジェダ〜解答編〜 ◇tcG47Obeas:2010/04/07(水) 10:11:31 ID:0DEl0oZD
冥王の城に、魔蟲の羽音が響く。
穴を抜け室を抜け通路を抜けて、羽音を立てて魔界蟲が降りたった。
魔蜂の女王はこの世界を統べる冥王に傅いた。
「ふむ、帰ったか」
ジェダは振り返りQ-Beeを迎えると、報告を促した。
Q-Beeは忠実に報告を開始する。

「49 バン、ノガミアオイ。シタイカクニン。
 45バン、ニア。リリスカラシボウヲカクニン。
 22バン、グリーン。リリスカラシボウヲカクニン」

Q-Beeは確認した順番に報告を並べていく。
グリーンもリリスから確認した事は予想外だが、76番の報告に有った二つの首輪に合致する。
そのまま続けさせる。

「86バン、ヴィクトリア=パワード。クビワダケカクニン。
 21バン、ククリ。シタイカクニン。
 17バン、カナリア。シタイカクニン」

首輪だけ。
報告の内容にジェダは眉を顰める。
それは中身を誰かが持ち去ったと考えるべきだろうか。
あるいは中身が自分で歩き去ったと考えるべきだろうか。
だがそれ以前の答えが姿を見せる。

「タブン、40バン、タチカワミミ。セイゾンカクニン。
 62バン、フルデリカ。シタイカクニン」

太刀川ミミの生存。
最早確定事項だろう。
ジェダは確認を始める。
「多分、というのはP-Beeの首輪が無いためか?」
「クビワツイテナカッタ。カオ、タチカワミミダッタ」
ふむと唸り考える。
「よくやった。首輪に入るP-Beeを一匹用意しておけ。
 それが終われば通常の仕事に戻れ、ただし放送の前になったら一度戻って来るのだ」
ジェダは一旦Q-Beeを帰らせて、思案する。

とにかく太刀川ミミの為に新たな首輪を用意しなければならない。
それ自体はそう難しいことではない。
予備の首輪の用意は有るし、太刀川ミミに付けられているものは一般人用の通常の首輪だ。
通常の首輪なら数分もあれば用意できる。
そう、太刀川ミミ自身は通常の首輪で十分な参加者の筈なのだ。
にも関わらず、どうして未だ生きている?

(首輪が爆発すれば死ぬはずだ)

首輪の爆発は全ての参加者を確実に殺傷せしめるだけの威力を持っている。
参加者本来の能力であれば耐え切れる者さえも、決して逃れる事ができない。
それは参加者全ての能力が等しく、そして個別に制限されているからだ。
207冥探偵ジェダ〜解答編〜 ◇tcG47Obeas:2010/04/07(水) 10:12:39 ID:0DEl0oZD
参加者には二種類の制限が課されている。
それは会場全域を覆うフィールド状の物と、首輪から個別に発動している物だ。

まず前者の制限フィールドはジェダ以外の基本的な能力を制限する。
どれだけ強力な参加者でも、少なくともジェダと首輪に抗えないレベルまで能力を落とされているのだ。
この正体はジェダが敷き詰めた自身の魔力である。
即ちかつてインデックスが見抜いた通り、法則が違うあらゆる界の魔法を同時に運用する為のフィールドでもある。
この世界におけるありとあらゆる異能はジェダの掌の上にあるからこそ動けるのだ。
その程度を制限する事も、容易い。

しかしこれにより制限できるのは比較的単純な能力だけである。
人外の身体能力、気、魔法、超能力、全てを等しく制限できる反面、
個別な特殊能力を制限しきる事が出来ないのだ。


そこでもう一つ、首輪により課されている個別の制限が存在する。
首輪には所謂呪いの一種が刻まれているのである。
これは様々な道具等を使い参加者の前歴を完全に洗った上で設定した物で、
前者の制限フィールドによる基本能力制限の微調整も兼ねている。
微調整といってもフィールドの制限は大雑把な物であるため、ケースによっては大きな差を生む。
割と理不尽かつ出鱈目に多種多様な能力を持っていたパタリロに至っては纏めて通常人間程度に制限してあるのだ。
首輪が外れたところで会場の制限がある以上そこまで脅威にはならないだろうが、一応バランスを考慮したのである。
まかり間違っても色々有って面倒だったというわけではない。

加えて首輪の制限は、それよりも特殊な能力に対して掛けられた部分が多い。
吸血鬼が無数の蝙蝠へと分離する事は出来ても、中枢部分を固め押さえて離さないといった具合だ。
物理攻撃を無効化する霧化に至っては封印してある。
これにより首輪の爆破を無効化する事も、首輪から抜ける事もできない。

また、別の話だが支給品で強化できる範囲でも首輪の爆発を防ぐ事はできない。
これは基本能力の強化では制限フィールドに妨げられ首輪の爆破に耐え切れない事と、
特殊効果の類も配慮した上で支給品に回しているからである。

制限下で首輪が爆発すれば死ぬはずなのだ。
なのにどうして、彼女は生き延びた?
増して自身はただの人間であるはずの太刀川ミミがどうやって。
首輪が爆発すれば死ぬ事を前提にするならば、太刀川ミミでは説明がつかない。

そもそも太刀川ミミの顔をした首輪が無い参加者は、本当に太刀川ミミなのだろうか?

そう、ジェダがその答えに辿りつく。
冥王の手が事実に届いてしまう。
幾条もの偽りを超えて真実を掴み取ってしまう。
冥王の知性はあまりにも怜悧だった。

「生き延びたのはヴィクトリア=パワードか」

ジェダは真相に到達した。
208冥探偵ジェダ〜解答編〜 ◇tcG47Obeas:2010/04/07(水) 10:13:35 ID:0DEl0oZD
確かQ-Beeが追加支給品として持って行った中には顔形を変えるような物が有ったはずだ。
それを使えばヴィクトリアが太刀川ミミに成りすますのは難しいことではないだろう。
ヴィクトリアは首輪を外し太刀川ミミに成りすまして生きている。

「だが」

ジェダはそこで止まらなかった。
薄っすらと笑みを浮かべ、呟きを漏らす。
「自分で言うのもおこがましいが 私は聡明なのだ……あきれるほどに」
そう、ジェダはもう一段踏み込んだ。

「君でも無理だろう? ヴィクトリア=パワード」



ヴィクトリアの持つ錬金術では首輪を外すに至らないだろう。
彼女には知識が有っても機材が不足していたはずだ。
機械的設備が無い場所で首輪解除を達成するには、恐らく魔法が必要になる。
ヴィクトリアが来た世界に錬金術は有ったが、魔法は存在していなかったはずだ。
もちろん支給品の中には有る程度の魔法を習得可能にする物もある。
だがそんな付け焼刃で首輪を外せたとは考えにくい。
何千何万人に一人という類稀なる適正を持ってでもいなければありえまい。

ならば誰が彼女の首輪を外した?
首輪を解除する方法を見つけたのは誰だ?
ヴィクトリアの死が誤報だとすれば、その場には誰が居た?
ジェダの知性はその者の名を告げた。

「君か。吸血鬼レミリア・スカーレット」

思えばレミリア・スカーレットの経緯は異常である。
ヴィクトリアすら殺害していなかったとすれば最早間違いない。
膨大な数の戦闘を積み重ねながら、殺害したのはあろう事かQ-Beeだけなのだ。
しかも彼女には前例がある。
夕方に起きたレベッカ宮本の吸血鬼化という些細なイレギュラーが。

レベッカ宮本の吸血鬼化。
すぐに修正されたため首輪から抜けたヴィクトリアとは雲泥の差が有るが、実を言えばあれもイレギュラーの一つだった。
生命の水などによる生態系の変化とは訳が違う。
幾ら生態系が変化しようとも、肉体が平常の生物の範疇であるならば首輪はバイタルサインを確認し続ける事ができる。
正確には首輪は、というよりもP-Beeが感知している。
着用させた時に有った、物理的にせよ魔術的にせよ生体反応を丸暗記し、それが途絶えれば死んだと判断する。
P-Beeの類稀なる触覚は密着している者の生体反応くらい余すことなく感じ取る事ができるのだ。
しかし吸血鬼、妖怪というものは肉体よりも精神に依存した生物なのである。
その肉体は精神により生かされているといっても過言ではない。
あまりにも命の形が違いすぎる。

本来そういう類の変化を起こすものは、全て会場から排除していたはずだった。
支給品にあるものでその類の変化を起こす事は出来ないし、参加者のそれも首輪の個別制限により封じていた。
例えば別の世界の吸血鬼であるエヴァンジェリンの場合、吸血による強化支配能力は制限してある。
スカーレット姉妹にあるもう一つの特性である、肉体が陽光に焼かれて生じる煙を吸った者が不死性を得る特性も制限してある。
それを吸った者は居なくとも、レミリアが日に焼かれた事は何度かあったのだ。

しかしスカーレット姉妹の吸血鬼化の特性は、過去一度たりとも効果を発揮した事が無かったのだ。
それどころか彼女達自身が望もうとも、その特性を発揮する事は出来なかった。
姉のレミリアはあまりの少食から。
妹のフランドールは生きた人間を木っ端微塵にせず吸血する加減が欠如していたから。
209冥探偵ジェダ〜解答編〜 ◇tcG47Obeas:2010/04/07(水) 10:14:55 ID:0DEl0oZD
幾らジェダとて過去の記録にも当人の意識にも無い上に特異すぎる性質を封じきる事は出来なかった。
過去当人が望んでも出来なかった事であり、起きる可能性は低いと判断して大目に見る事にしたのだ。
その隙を突かれた。
消耗した空腹の時に失血死寸前の人間から血を吸い尽くす事で条件を満たしたのである。
首輪はあまりにも特異な変容を追跡する事が出来ず、かくしてレベッカ宮本は一時ジェダの探知から零れ出た。

それが大きな問題にならなかったのは、確認が容易であったからだ。
機能を停止していたとはいえ、首輪が付いている事に変わりは無いのである。
ジェダは魂の漏れからそれに気づくと、すぐさまQ-Beeに命じて休眠状態のP-Bee達に確認を呼びかけさせた。
結果、レベッカ宮本の体内に通常とは違う新たな命が流れているのを感知する事が出来、彼女の監視は復活した。

その際、レベッカ宮本は未だ生き続けている参加者としてバトルロワイアルへの継続参加を認めると共に、
実行者であるレミリア・スカーレットに対しても特別な処置を与える事は無かった。
吸血鬼化による変化が起きても自動的に反応を追跡するよう設定した事も有るし、
事前に予測しえたにも関わらずジェダが油断した結果である事を理解していたからだ。
恐らくレミリア・スカーレットは人の血を求めただけだろうし、その行為自体はバトルロワイアルを健全に進行させる。
そう考えていたのだ。

「闇に惑う幼子達よりは聡明な部類に入ると考えていたのだがね。実に残念だ」

しかしそうではない。
これだけの経歴が積み重なれば幾らなんでも確信に至る。
レミリアはジェダの儀式を瓦解させようとしていたのだ。
その為に吸血鬼化現象を試し、殺し合いに乗ったフリをしながら誰も殺さず、それどころかQ-Beeを倒した。
あまつさえ妹を殺した仇であるヴィクトリアまでも助けるとは予想外だった。
いや、もしかするとだからこそ助けたのかもしれない。
この島で一番助けるはずのない者だからこそ、裏をかくために。

レミリアの怒りは真っ直ぐとジェダ一人に向いていたのだ。

ならばジェダはどうするのか。
ここまで明確に反抗したレミリアをどう処置するのか。
(まずは罰を与えるところだが、私は寛大だ。しばらくは泳がせてあげよう)
答えは何もしない。
ただ、レミリアへの監視を強めるだけ。
もしもレミリアが他の参加者に怪しい行動を行ったらそのデータを採らなければならない。
レミリアが一体どういう手段で首輪を外したのかを調べる為に。
210冥探偵ジェダ〜解答編〜 ◇tcG47Obeas:2010/04/07(水) 10:17:21 ID:0DEl0oZD
基本、ジェダはQ-Beeを通じてP-Beeにより参加者を監視している。
これでも大抵の場合は問題無いのだ。
P-Bee達は覗き窓から見た情報、耳にした情報を報告している。
場合によってはキーワードに反応して報告を行うようにも命じてある。
P-Beeの知性は低いため、そういったキーワードシステムが有効だったのだ。
『ご褒美をちょうだい』という後付けキーワードも反応するように、追加は容易だ。

例えば『首輪』というキーワードについても設定してある。
ただしこれを設定したのは第一放送の後である。
最初の内は身に付けられた首輪への戸惑いと恐怖から。首輪という単語が頻発すると予想できたからだ。
一方でそれ以降も会話に上るなら危険が有ると判断し、経過を見て監視ワードに設定した。
少し言い換えるだけで逃れられる事もネックだが、盗聴を警戒されなければ効果は有ると思われたのだ。
その結果、このキーワードは主にトマという参加者から多く検知された。
野上葵とトマとの会話。
既に死んでいるジュジュとの会話。
レベッカと会った時も、野上葵の首輪を取ろうとしている事が伝えられた。
何れもジェダの耳に入り、しかし気にする必要も無いと一笑に付した会話である。

野上葵の能力による首輪解除はそもそも首輪による制限が掛かっている限り不可能だった。
トマの予想は半分だけ外れ、能力制限の仕掛けは首輪“にも”仕込まれていたのだ。
ジュジュとの会話も、あくまで現実逃避だろう。
野上葵の首輪については恐らく死んでいるものだと思っていたのだが、これは逆に信用できず、
Q-Beeの死のせいで報告が途絶えていた事もあり、後からQ-Beeを調査に向かわせる必要が生じてしまった。

トマという参加者が首輪を外そうと足掻いている。
それだけだ。
監視ワードに入る内容はどれも足踏みをしている段階、気にする必要さえも無い。
日が過ぎてQ-Beeを生き返らしてからは殆ど検知されてすらいない。
『首輪』という発言が殆ど無いのだ。
リンクという参加者からも検知されたが、外す方法が見当もつかないと零す程度。
Q-Bee死亡中の報告が失われた──P-Beeに報告を覚えておくような事は出来なかった──のは気になるが、
今のところ、トマもリンクも問題のある段階ではないように思えた。

それよりもレミリアだ。
今回レミリアを監視する為に設定した条件は、キーワードではなく対象人物を指定したものだ。
レミリアの発言から行動の全てをジェダに報告するよう設定したのである。

(ヴィクトリア……いや、“太刀川ミミ”には新しい首輪を付けておくだけで良いだろう)

“太刀川ミミ” には設定がヴィクトリア用の首輪を付けなければならない。
しかし薄っすらと彫られている名前などは太刀川ミミの名を使うとしよう。
首輪を付けなければならないが、レミリアを油断させる必要も有る。
たまたま“太刀川ミミ”を見つけて首輪を付けた、その程度に思わせておくのだ。
放送の名前もヴィクトリアの方を呼んでやろう。
首輪を付けに行くのはその時が良いだろう。
そうやってジェダは巧緻な策謀を張り巡らせていく。

(さあ、レミリア・スカーレット。その真実を私に委ねるのだ)

冥王城の奥深く、殺し合いの主人はほくそ笑む。
その推理の絶対を信じて。
211冥探偵ジェダ〜解答編〜 ◇tcG47Obeas:2010/04/07(水) 10:18:09 ID:0DEl0oZD

余談であるが。
今のところ、ジェダ・ドーマは気づいていない。
いつの間にか新たにもう一組のイレギュラーが生まれていることに。
蒼星石とチャチャゼロのチェンジリング。
それは本来起こるはずもない事だから。

もちろんそれは蒼星石の魔力変質が予想外だったからでもある。
エヴァのドール契約自体は、少なくとも新たに従者を作り出す事は制限されていた。
これは意志が吹き込まれる部分などが制限により機能停止していたという意味である。
それ以上に制限する必要は無いと思われていたし、制限すれば他の魔法の使用まで支障を来たしていた。
チャチャゼロを材料に他の人形の参加者の治療に使うというのは応用的で、完全に想定外の使い方だったのである。
何よりもその結果として魔力が変質する程の劇的な症状が出るとは予想だにしなかった。
それは魔術的に高度な要素が複雑に絡み合った結果、偶発的に起きた現象なのである。
だがそれよりもチャチャゼロに起きていた現象こそ劇的だった。

実を言うとジェダは、一定以上の魂が含まれない事を条件に支給品を集めていた。
魂には重みという物が有る。
同じ種族ですら、Q-Beeは一人分に誤認されてもP-Beeのそれが誤差にすらならないように、
支給品“達” の魂は全て破壊されようとも参加者一人分にさえ満たないはずだったのだ。
実際、他の意志有る支給品が破壊された時の魂に誤差は出ていない。
にも関わらずチャチャゼロの魂には参加者一人分を満たす程の重みが有った。

考えられる事は幾つかある。
エヴァが近くに居た事で、魔力が流れ込まずとも何らかの強化に繋がったのかもしれない。
死んだというより仮死、あるいは擬死状態とでもいうべき状態から神体に吸引され、
魂が無理矢理引き剥がされて呑み込まれた事も一因と言えるかもしれない。
だがもっと単純に考えるならば、こうだ。
これまで数百年エヴァと共に歩んで来て成長しなかった魂が、僅か一日で急激に育っていたのだ。
そんな事は普通に考えるならありえない。
“人型である事から参加者と同じく魂を練磨する儀式の影響を受けたとしても”そこまでの成長は想定外だ。
だが事実、チャチャゼロの魂はそれほどの重みを持っていた。

だから気づけなかったのだ。
有り得ないと思われていた事が起きたから。
ジェダはチャチャゼロを甘く見ていたのだろう。
たかが人形がささやかな奇跡を起こしていたなんて思いもしなかったのだから。

儀式はあるべき形へと効率的に進んでいた。
誰が思うよりも劇的に、速やかに。

混迷は全ての真実を覆い隠していく……。
212蒼星石/Lapislazuri Stern ◇tcG47Obeas:2010/04/07(水) 10:19:28 ID:0DEl0oZD
蒼星石は物陰に隠れて、彼女達の会話を耳にした。
リリスとQ-Beeの会話。
危ないと思い咄嗟に隠れて聞いた話は衝撃的な物だった。

まず古手梨花、そしてククリと金糸雀の死体を確認したというQ-Bee。
それだけでも蒼星石にとっては重大な意味を持っている。
(死体を確認したという事は、タバサ達はどうなったんだ!?)
金糸雀とククリの死体はタバサが引く棺桶に入れられていたはずなのだ。
タバサや小太郎は無事なのだろうか。
気にはなるが、どうすれば良いか判らなかった。
少なくともあと二時間足らずで耳に出来る放送を待てば、その生死だけは確認できる。
しかし今すぐ確認に行かなくて良いのか。
(いや、Q-Beeは不用意に参加者を傷つけはしないはずだ。
 ジェダも、あの戦いは参加者の方から挑んだ物だという風に……ジェダの言葉を信じられるのか?)
動揺が胸の中を駆け巡り収まらない。
更に魔物達の会話は続く。

「アト、イキテテクビワツケテナイニンゲンモミツケタ」
「あ、生きてる人って本当にいたんだ」

(誰か首輪を外した人が居るのか!?)
どうやらQ-Beeはそれを捜し死体を確認して回っていたらしい。
苦渋を噛み締め、タバサ達への不安をさておき思考する。

そもそもどうして確認していた死体がククリ、金糸雀、古手梨花なのだろうか。
偶然にも、蒼星石はその全ての死体を知っていた。
ククリの死体も金糸雀の死体も、目の前の古手梨花の死体も知っていた。
それらの死体に共通する点とは何なのか?

ククリと金糸雀だけなら北東の街で死んだ事しか意味しない。
どうやら首輪を外した誰かもそこに居たらしい。
しかし古手梨花の死体を確認する必要が有ったのはどうしてだろう。

(箱に密封されたり、埋められていたからとか? ……いや、それだけじゃダメだ)
すぐに否定する。
もしそうだとすれば、一緒に棺桶に入れられていたイシドロの死体だって調べたはずだ。
だがイシドロの死体に興味は無かったようだし、そもそも夕方の放送時点で死亡したと認識されている。
そう、夕方の頃は。
(まさか…………時間が問題なのか?)
ククリと金糸雀の死体にもう一つ共通しているのは、殆ど同時に死んでいた事だ。
古手梨花は判らないが、彼女も似た時期に殺されたとすれば……。

(考えろ、考えるんだ蒼星石。あの名探偵くんくんのように)
薔薇乙女達の間で熱狂的ブームを引き起こしている推理物動物人形劇の探偵を思い出す。
彼のように鋭い推理をするのだ。
北東エリアで死んだククリと金糸雀、時間帯は多分九時かその前後だろう。
その調査をQ-Beeが行っていた。
Q-Bee。
レミリアに殺害され、日の替わりと共に復活したQ-Beeが調査していた?
(もしかして関係が有るのか?
  Q-Beeが倒された事。十二時に蘇り、雨が降らされた事。
 Q-Beeが調べていた死者達。死者の中に混じっていた首輪から逃れた誰か。
  Q-Beeが殺されたのと近い時間帯に殺されたのかもしれない死者達。
 もしもこれが一本の線で繋がるとすれば……!!)

Q- Beeが殺されたから、首輪から逃れる者が出た?
213蒼星石/Lapislazuri Stern ◇tcG47Obeas:2010/04/07(水) 10:20:16 ID:0DEl0oZD
(いや違う、そうじゃない!
 そもそもククリと金糸雀が死んだのはQ-Beeより少し前だったんだ。
 Q-Beeが殺されたから何か有ったなら、Q-Beeより後に死んだ人を調べるはずなんだ。
 ……どんな順番で死んだのか正確には把握できてないのか?
 それとも、もしかして。
 正確な把握もできなくなっていたのか?)

──Q-Beeが殺された前後は生死の監視に若干の粗が生まれる。

若干粗い仮説だ。
しかしそう考えるのが妥当に思えてきた。
Q-Beeが死ねば誰が生きているか誰が死んでいるかのチェックが甘くなるのだ。
その隙を突いて、何者かが首輪を解除した。

(逆に言えば、Q-Beeが生きている間はすぐに感知されてしまうのか?)
厄介な難題だった。
悔しいが、レミリアとQ-Beeとの激闘は手の出せる領域ではなかった。
再びあれを倒す事など出来るのだろうか。



しばらくしてリリスとQ-Beeは別れた。
蒼星石は思う。
せめてリリスだけでも倒すべきなのだろうか。
エヴァは言った。

『私は光を知らしめる影となる。おまえはそれを手伝え』
『別に罪を背負えとは言わん。私に付いてくる必要も無い。
 悪を映えさせる者として正義に味方してもかまわん。
 ただ私の在り方を手伝え。それすらしないというなら死ね』

正義に味方をしようがどうしようが構わない。
ならばリリスは倒すべき敵なのだろう。
蒼星石の道は未だ定まらなかったが、リリスを打ち倒す事は正しい事に思われた。
倒しても殺そうというつもりにはとてもなれなかったが、それでも。
ただしそれができるならだが。

(出来るのか? 僕に)
昼間に塔で戦った時の事を思い返す。
戦術の指揮を受けていたとはいえ、四人がかりで戦ってようやく撃退できた難敵だ。
あれに一人で太刀打ちする事などできるだろうか。
(僕の調子はどうなんだ)
ドール契約により四肢を取り戻し、腕や足は違和感さえ感じさせず自在に動く。
白兵戦であれば以前と同じように戦えるはずだ。
空を飛び白兵戦に持ち込むか、金糸雀のヴァイオリンを使えば戦いようがあるだろうか。
蒼星石はリリスを見上げる。

リリスは空を見回し、何かを見つけた様子で飛び立った。
リリスの視線の遥か先に居たのは。

「エヴァ……!!」

西の方角へと飛んでいくエヴァ。
自分の担当区域だと言いながら、エヴァが向かおうとはしなかった方角だ。
そちらに何か有ったのかもしれない。
何れにせよ最早選択の余地は無い。
蒼星石は助走を付け、自らもローゼンメイデンの飛行能力で飛翔しようとして。

雨上がりでぬかるみと化した地面に叩きつけられた。
214蒼星石/Lapislazuri Stern ◇tcG47Obeas:2010/04/07(水) 10:21:01 ID:0DEl0oZD
「うぐっ。クッ、一体何が?」
泥でべちゃべちゃになりながらも立ち上がる。
飛ぼうとしたはずだ。
ローゼンメイデンの飛行能力はそこまで優れた物ではないが、出来るはずだし出来ていた。
なのにどうして。
「飛べなくなってるのか……?」
それが出来なくなっているのか。

蒼星石はハッとなり自らの胸に手を当てた。
その奥に感じ取れるはずのものを感じ取ろうとした。
胸の奥深く、ドール達の中枢にある。

ローザミスティカの鼓動を。







感じ、とれなかった。


蒼星石自身のそれはもちろんの事、取り込んだ金糸雀のローザミスティカも反応が無い。
確かにそこに在るのだ。
存在しているのに、反応を返してくれない。
まるで化石になってしまったみたいに、そこから溢れ続けるものが感じられない。

「…………は……はは………… は………………」

乾いた笑いが零れた。
理解してしまった。
どうして自らの中にあるローザミスティカが反応を止めたのか。
自らの身に降りかかった現象が何であるのか。



蒼星石はローゼンメイデンではなくなったのだ。



自らの体だ、意識を巡らせれば実感として理解できる。
蒼星石の体内を巡る力はエヴァのドール契約の作用が複雑に絡み合い変質していた。
逆に言えばローゼンメイデンの力が機能を停止したのだ。

だから、ローゼンメイデンとしての力が喪われた。

金糸雀のバイオリンを取り出して、演奏してみた。
ギィギィと耳障りな音が響くだけで何も起きなかった。
金糸雀のローザミスティカはもう、ヴァイオリンの弾き方も教えてくれない。

空を飛ぶ力は失われ、夢に入る力も失われている事を感じとれた。
庭師の鋏で心の樹を正しく剪定する事も叶わない。
例えローザミスティカを集めても、最早何の想いも伝えてはくれないだろう。
究極の少女、アリスに至る事も絶対に有り得なくなった。

蒼星石の生まれた理由さえもが否定された。
215蒼星石/Lapislazuri Stern ◇tcG47Obeas:2010/04/07(水) 10:21:52 ID:0DEl0oZD
「そういう事、か……」
打ち捨てられた庭の様に胸の中で絶望が繁茂していく。
とっくの昔に判っていた事だ。
殺し合いを許容した自分が何かを望むなんておこがましいと。
だけどそれでも想ってしまった。
希望を抱いてしまった。
まだ何かを信じていいのだと。

「………… なにが」

例え徒歩で辿り着けたとしても、リリス相手には戦いにすらならないだろう。
空中から攻撃を続けられればそれだけで、今の蒼星石には何もできないのだから。
大体走って向かったとしても到着するのは全てが終わった頃だ。
西で起きる筈の戦いにおいて、蒼星石に出来る事は何も無い。

「なにが、悪いんだ」

そもそも蒼星石は何のために何をする。
最早生まれた意味すら否定された。
敬愛するお父様の願いを叶える事はできない。

こんなにも無力な体で誰かを護る事も。
こんなにも罪に穢れた身で誰かを救う事も。
できるわけがない。
できるはずがない。

なのに。

「一筋の光を求め続けることが!」

蒼星石は立ち上がる。
存在理由は否定された。
胸腔の奥に眠るローザミスティカはただの預かり物と化した。
その身は泥と罪に塗れ、心には絶望の蔦が絡み付いている。
泥に塗れた顔は涙でぐしゃぐしゃになっている。
意地を張るように噛み締めた歯はカタカタと噛み合わない。

胸が苦しい。

想いが辛い。

痛い。

痛い、痛い、痛い!

こころが、いたい。

最早許されなくとも、究極の少女アリスは父ローゼンの夢で、ローゼンの夢は蒼星石の夢でもあった。
とても大切な夢だった。
いや、言葉を尽くしても語り尽くす事などできないだろう。
ローゼンメイデンである事は、蒼星石にとっての根底だった。
全てだったとはいわない。
幾つもの絆が無意味な物だったとは思わない。
だけど蒼星石の全てはその基盤の上に構築されていた。
その基盤が崩れ去った。
だから何もかもが失われた。
蒼星石にとっての全てが崩れ去る。
意志も矜持も絆も思い出も、希望も。
何もかもが崩れ去る。
216蒼星石/Lapislazuri Stern ◇tcG47Obeas:2010/04/07(水) 14:12:16 ID:0DEl0oZD
それでも蒼星石は想うのだ。

(僕は救われたんだ)

死に瀕してなお勇者であったニケによって、心を救われた。
主人であるエヴァの手で消費されたチャチャゼロによって、体を救われた。

だったら、こんな所で足踏みをしている暇なんて有るものか。

歩き続けなければならない。
その想いが蒼星石の足を支えてくれる。

(どうする?)
自問する。
悔しいが西は、間に合わない。
それでも西に行くのか。
それとも他の選択をするのか。
(……西で起きている何かは、エヴァを信じよう)
何が有って向かったのかは判らないが、彼女ならそうそう仕損じる事は無いはずだ。
蒼星石は蒼星石に出来る事をしなければならない。

そう考えるなら答えは一つしかないのだ。
元より蒼星石にはしなければならない事がある。

(タバサ達に謝らなくちゃいけない)

それは蒼星石が犯した明確な過ちで、だけどまだ償える事だ。
タバサ達を捜し、再会し、謝ろう。
前に進むならその前にケジメを付けるのは当然の事なのだから。

(なら、どう向かう?)
問題は進路だろう。
蒼星石は北から来た。
だけど5時に発動するE-2の禁止エリアが蒼星石の帰り道を塞いでしまう。
急げば発動前に抜けられなくもないが、もし夜道に迷って途中で禁止エリアが発動すれば最悪だ。
森まで掛かるE-2エリアに迷い込まないよう進むには相当の余裕を見なければならない。
見通しの利かない森の中を進むのだから、1エリア余裕を見て C-4から森に入っても警戒しすぎという事はない。
あるいは、東から回るか。
G-4の禁止エリアこそ気になるが、こちらは道なりに行けばいいのだから概ね安全だ。
城に寄るのも良いかもしれない。

どのみち朝までには到底戻れない。
タバサ達は街を出ているかもしれない。
出ているとすれば、何処へ?

(……東、かな)
こちらから使いにくいルートは逆側からも使いづらいのだ。
北周りはE-2の禁止エリアが邪魔になる。
やはり、東回りだ。
途中幾つか有る施設に寄って行くのも良いだろう。

蒼星石は東を見つめた。
一度だけエヴァが向かった西を振り返り、それから。
東へと向けて歩き始めた。

(エヴァが自分を悪と引き立てろというのならしてやるさ。
 エヴァが悔やむくらいに、引き立ててやる)
だからその為に、今はエヴァと逆を行く。
蒼星石のケジメを付けて、それから必要な何かを見つけるために。
そう。
217蒼星石/Lapislazuri Stern ◇tcG47Obeas:2010/04/07(水) 14:13:09 ID:0DEl0oZD

(僕は君を諦めない) 

エヴァを連れ戻せるだけの何かを見つけてみせる。
エヴァが自らを悪だ影だと言うのなら、その悪や影にすら手を差し伸べ引き戻してみせる。

光の道とはそういうものだ。
どれだけ喪おうとも、どれだけ叶いっこ無いほどの奇麗事だろうとも挑み続ける。
現実を見ないだけだと蔑めばいい、憎めばいい。
こんな生き方で何かを掴めるはずも無い。
十中八九全ては徒労に終わるだろう。
だから正義は弱いのだ。
未来ばかり見る無想家は明日に辿り着けずのたれ死ぬ。
自分どころか周りを巻き添えにして死んでいく。
光は夜闇の前に儚くて、どこまでも愚かな蛮勇に過ぎない。
だけど蒼星石はそんな勇気に救われた。

行為だけを見れば最低だ。
ニケは蒼星石を救うアテも何も無く蒼星石を護って、散った。
それが無駄にならなかったのはエヴァが心動かされたからだ。
その成果ですらチャチャゼロという別の犠牲を必要とし、その上で蒼星石の力さえ失われた上での物だ。
何一つプラスになってはいない。
奇麗事でしかない光の道とはそういう物だ。
それでも蒼星石は奇麗事に救われた。
命を救えるのは闇の道を貫く悪の信念なのかもしれない。
でも心は奇麗事でしか救えない。
だったら奇麗事を選ぶのは当然の事だ。
何故なら蒼星石は。

「僕の役目は、心を護る事なんだから」

心の樹を護る庭師なのだから。
もうローゼンメイデンですらなくなったけれど、それでもそう在り続けようと思う。
ニケの遺志が、歩き続ける強さをくれるから。
だから胸を引き裂くような痛みを噛み締めて、蒼星石は歩き出す。

歩き、歩き、歩き、歩いて。
やがて目前に広がるのは立ち枯れの森。
蒼星石は何時ごろに誰がこれを為したのか、その後に何処へ行ったのか知る由も無い。
ただ、それを為した誰かに恐怖を抱きながら。
決意の一歩で、枯れ土を踏締めた。


【E−5/荒地/2日目/早朝】
【蒼星石@ローゼンメイデン】
[状態]:金糸雀のローザミスティカ継承、チャチャゼロの部品と人形契約により四肢を維持、
    ローゼンメイデンとしての機能失調、泥塗れ、精神的に激しい衝撃、それでも進む意志
[装備]:庭師の鋏@ローゼンメイデン、戦輪×4@忍たま乱太郎
[道具]:基本支給品×2、金糸雀のバイオリンと弓@ローゼンメイデン、ジッポ、板チョコ@DEATH NOTE、素昆布@銀魂、
    旅行用救急セット(消毒薬と針と糸)@デジモンアドベンチャー、トンネル南側入り口の鍵
[思考]:諦めちゃいけないんだ
第一行動方針:タバサ達に謝りに行く。
第二行動方針:エヴァを引き戻すための何かを探す。
基本行動方針:人の心を護る。
[備考]:現在蒼星石の四肢はエヴァとの人形契約により動いています。
    蒼星石の自由に動き、エヴァにとっての負担もほぼ有りませんが、
    昼間のエヴァの魔力の減衰や、死亡によって影響を受ける可能性は有ります。
    エヴァと情報交換しました。少なくとも島を覆う結界や地下に本拠地があるであろうことは聞いてます。
※ジェダ達に死亡したと思われています。首輪の中のP-Beeも眠っています。そのことに蒼星石は気付いていません。
218創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 21:20:51 ID:z/OR1dyX
投下乙
ジェダ様…途中まで見事な推理だったのに…
レミリアは何も企んでませんよw
んで前回ツッコミも入ってた意志持ち支給品の魂について
さっそく上手くまとめてくれて
ロワの裏舞台に関しても段々固まって来た感じで、先が楽しみだ
219創る名無しに見る名無し:2010/04/08(木) 03:42:51 ID:dsnS+7CH
投下乙!
ジェダ様勘違いww
さすが運命を操るレミリャ!
なにもしてないのに重要人物あつかいなんだぜ!

蒼の子のほうは絶望しながらも希望を持って進むのがイイカンジ。
頑張ってほしいよ本当。
220守るもの、奪うもの  ◇v5ym.OwvgI:2010/04/09(金) 09:46:54 ID:mbAqQxvb
ヤミは自ら、大切な人を手放す。
大切な人が、自分のせいで傷つくのが嫌だから。
大切な人を傷つける、自分自身が嫌だから。

冷たい濁流に流されるままに、お城を離れる。
お城の対岸に渡って、彼女は陸に上がる。

その下半身を人間の物に戻し、呆然と、ただ茫然とお城のある方向を見つめていた。

心にざわめく想いを声にしたら、謝罪になるか、未練になるか。
複雑な想いを、形にできないまま彼女はお城を見つめ続ける。

本心は、離れたくない。
彼らとともにいると、それだけで温かくなれるから。
彼らは自分にとっての、全てだから。

だけど、それは許せない。
例えレックスやアルルゥが許してくれたとしても。
私自身が、それを許せない。

だから私は、ヤミになる。
冷たいのは、自分だけでいいから。
冷たくあるべきなのは、自分だけなのだから。


パキ、と
突然、後方から木の枝が折れる音が響く。

「……っ! 誰!?」

警戒し、音のした方を注視する。
そこに人の姿はない。だが確かに音がした。

ヤミが警戒していると、そこに誰かがいるという証明をするように足跡が突如現れる。
ぺた、ぺたとぬかるんだ地面を踏む音が聞こえる。
そして、目の前の光景がにじみ、一人の少女が姿を現す。


「イヴ……か?」

その名前を。
今の自分が忌み嫌う、過去の自分の名前を聞いた時、
ヤミの中にいやな感情が流れる。

その名前は、自分の罪と同じだから。
自分が犯してしまった、罪と同じだから。

「お前……生きてたのか!?」

自分だった名前を告げた少女。
茶髪の、銀のコートをまとった少女。
221守るもの、奪うもの  ◇v5ym.OwvgI:2010/04/09(金) 09:48:49 ID:mbAqQxvb
ベルカナ達から聞かされた、自分が協力していた「ご主人様」のことを思いだす。
自分がイヴだった時、梨々を殺してしまうことになった原因を。
梨々を殺した、人間を。

そう理解したとき、彼女の中の嫌な感情は、全てが怒りとなって少女へ降り注ぐ。

そしてその激情の赴くままに少女に襲いかかり、馬乗りになり動きを封じる。

記憶を消し去ってしまったとしても、彼女はもともと戦いの為に作られたナノマシンだ。
そして何年も身体に沁みつかせた掃除屋の動きも、身体の記憶に刻まれている。

一般人にすぎない少女には、その動きに対応する暇さえなかった。

「イ、ヴ……?」

こいつのせいで。
こいつがレックス達を襲ったせいで。
こいつが梨々を殺したせいで。

そんな、半分以上が八つ当たりでできた思いでヤミは少女に襲いかかる。

「あなた、のせいで……!」
「っ!!」

無抵抗な少女の首を刈らんと、
彼女の髪が刃の形に変化する。

そして、その刃が振り下ろされようとしたとき。


「ぶはあ!」


場違いの様な声が響く。

ヤミが驚き、その方向を見ると、そこにはさっき別れたはずのレックスの姿があった。
それも、濁流にのまれ、溺れた状態の。



レックスは、躊躇していた。
『磁力』を使い、ヤミヤミを捕まえにいくか、否か。

使い捨て。故にたったの一度しか使えないそカードを使うか、否か。

だが、その躊躇は、目の前で泣くアルルゥによって霧散した。
レックスはアルルゥに、必ずヤミヤミを見つけて戻ってくると約束し、
すぐに『磁力』を使い、ヤミヤミの下へ飛んでいったのだ。
ヤミヤミとのつながりを守るために、アルルゥを悲しませないために。
222守るもの、奪うもの  ◇v5ym.OwvgI:2010/04/09(金) 09:54:41 ID:mbAqQxvb
だが、飛んだ先がまずかった。
河の中に飛び込んだヤミヤミの下に飛んだということは、水中に転移したということだ。

一応それはレックスも予想していたようで、衣服は全てランドセルに入れ、
アルルゥから海底探検セットをもらっていた。
そしてその中からエアチューブを取り出し、装着していた。

だが焦っていたのだろう。他の道具は装着しなかった。

そしてヤミヤミは魚のような下半身をしており、普通の人間の何倍も泳ぐスピードが速い。
レックスの転位先から背を向けていたヤミヤミは気付くこともなく去っていく。

今になって海底探検セットを全て装備しようとするも、もう遅い。
豪雨による増水で流れが急になっている今、ランドセルを開いてしまったら確実に荷物は流されてしまう。
レックスもそれに気づいているがゆえに、不用意にランドセルを開けることはできなかった。

レックスはその持ち前の体力だけで、ヤミヤミを追いかけた。
だが鍛えられた体でも、強すぎる自然の力にはかなわない。

勢いのある川の流れに流されるまま。
エアチューブのおかげで溺れることはかろうじてないが、流れのせいでなかなか陸に上がることができない。

そしてヤミからすれば、彼がエアチューブを装備しているなどということはわからず。

ヤミからみたレックスは、川の急な流れに攫われて必死で陸に上がろうとする姿であり、
まさしく溺れている人間そのものだった。

自分の大切な仲間ゆえに、彼らを『冷たい私達』でいさせることが嫌で別れたが、
彼が、彼らが嫌いなわけではない。

「レックス!!」

ヤミは無我夢中で千秋を突き飛ばし、すぐにその下半身を魚のひれへと変え、川へと飛び込む。




流されていくレックスを見つけ、抱え、陸を目指す。
しかし、ヤミは急に疲労感を覚え、規則的だった泳ぎに荒れが出た。

制限された中での体の構造を大きく変えるトランスの連続。
子供一人抱えての激流の中の水泳。
それらの行為は、ヤミの体力を大きく削っていた。

しかし彼女は、この激流の中必死に体制を整え、泳ぎ続ける。
抱えた彼の身体を絶対に手放さないよう、かたく抱きしめて。
彼は、彼の温もりは、彼女のすべてといってもいい大切なものだから。
223守るもの、奪うもの  ◇v5ym.OwvgI:2010/04/09(金) 09:55:55 ID:mbAqQxvb
だが彼女の意思に反して、彼女の身体は急激に力を失っていく。
体力の限界が近いのだ。

それでも。
この温もりを失わせたくはないから。
彼女は必死で泳ぎ、そして――――






    ※    ※



千秋は困惑していた。
目の前で起こった出来事全てに。

協力者と思っていたイヴに襲われた。
生きていたことに驚いたが、それ以上に喜んでいる自分がいた。

彼女は先ほど、恐怖に出会ったばかりだったのだ。
化け物の生まれる瞬間を目にして。
その化け物のいる場所に一秒でもいたくなくて逃げてきたのだ。

そして、逃げてきた先で、唯一の仲間に会えた。
死んだと思っていた、協力者に。

イヴはこの場において唯一といってもいい味方だ。
例え最後には争う関係になるとしても、今だけは味方といっていい存在だったはずだ。

その時の彼女は、余裕がなかったこともあり、とても喜んだのだ。
協力者が知っている姿よりも幼くなっていたことにも気付けなかったくらいに。

なのに。

その協力者は自分を殺そうとした。

出会ってすぐに彼女は自分に刃を向け。
そしてお城にいた、馬鹿みたいに強い少年が溺れているのを見て、迷わず川へ飛び込んだ。

わけがわからなかった。



何故?
224守るもの、奪うもの  ◇v5ym.OwvgI:2010/04/09(金) 09:57:04 ID:mbAqQxvb
最後には殺し合う中ではあるが、今はまだ仲間といえるはずなのに。

何故?

先ほど敵対していたはずの少年が溺れていて、助ける必要がある?


わからない。
わからないが、彼女がどうにかして城にいた連中の仲間になったことは理解できた。

そして、その連中がイヴにとって大切な存在になっていることを。




どうして。




イヴと自分は同じはずなのに。
何人も殺して、ご褒美をもらえるくらいに殺して。

なのにどうして、イヴばかりがいいめに会うのか。
自分は梨々も雛苺も殺して、冷たい雨の中走って、
会いたくもないモンスターの誕生を間近でみてしまって。

自分は散々な目にあったというのに。

なのにどうして。
彼女は温もりを手にしているのだろう。

「ふざけんな、馬鹿野郎……」

彼女が、憎かった。
どうしようもなく、憎かった。

暖かい場所で、暖かい思いをした彼女が。
彼女の温かみを壊してやりたかった。彼女の悲しむ姿を見てやりたかった。

それが、今なら実現可能だと千秋は思う。

お城の戦い。
一番やっかいだった、リーダーシップを取る少年。
もっとも戦い慣れ、もっとも多種多様なことができていた少年。
力も一番強く、雷を操り、おまけに回復までできる奴。
225守るもの、奪うもの  ◇v5ym.OwvgI:2010/04/09(金) 10:00:20 ID:mbAqQxvb
奴の名前はレックスだったはずだ。
そしてそいつは、どういうわけだか川を流されていた。

奴がいなくなった今なら。
倒せないと思った城の連中にも、勝てる。


千秋はお城へと走り出した。




    ※    ※




暖かい。


ヤミがまず認識したのは、暖かさを感じる触覚だった。

自分の前面から感じる、暖かい感触。
それにもっと触れていたくて、頬をすりつける。
そうしているうちにだんだんと、他の感触も蘇ってくる。

等間隔で弾むような、振動を感じる。
振動と同じく等間隔で、ぬかるんだ土を踏む音が聞こえる。
霞む目には、金色の何かがちらつく。

自分はさっきまで何をやっていたんだっけ……?

ぼんやりとした思考が、そこに至った瞬間、彼女は急激に覚醒する。

ハッとヤミは眼を覚ます。

「あ、目が覚めたんだ」

目を覚ました彼女は、自分がレックスに背負われていることをすぐに理解する。
川からはもう出られたみたいで、今は何処かに向かっているようだった。

「お礼がまだだったね。助けてくれて、ありがと」

照れくさそうに、レックスはそう告げる。
その姿は川の中のように裸じゃなく、城にいた時と同じ服を着ている。
自分の姿も、いつの間にか人魚から戻っていた。

その言葉にくすぐったさをかんじるも、すぐにそれじゃだめだと思い、
226守るもの、奪うもの  ◇v5ym.OwvgI:2010/04/09(金) 10:01:59 ID:mbAqQxvb
「おろ、して」
「だめだよ、さっき気絶したばかりなんだから」
「大丈夫、だから」

そういって暴れるも、レックスは離さない。

「だってヤミヤミ、僕が離したら逃げちゃうでしょ?」

その言葉に、ヤミは息詰まる。
いなくなりたいわけじゃない。
本心は、レックス達と一緒にいたい。
だけどそんな自分を、ヤミは許せない。

「その名前は、返しました。今の私は「それじゃあ、だめなんだよ」……え?」

だから、屹然と言い放つ。
言い放つも、その言葉はやはり、止められる。

「君だけが、冷たいままじゃアルルゥは悲しむ。
 僕たちみんなが、同じじゃなくちゃ」

レックスは続いて、そう言う。
だけどそれは、ヤミが最も望まないものだ。
周りのみんなを、そうさせないために分かれたというのに。

「今、僕の身体、あったかいでしょ?」
「え……う、うん」

どうやって彼から離れようかと考えていたときに、
突然のわけのわからない問い。呆然と答えるヤミ。

自分の身体は、レックスの身体と密着し、相手の身体を感じさせる。
レックスの身体は互いの体温で温もりに包まれる。

「それでも、川から上がった後はとっても冷たかったんだ。
 僕がこうやってあったかくなったのは、ヤミヤミと一緒だったからだ」

そういって、レックスはヤミを降ろす。
そして、ヤミに思いっきりだきついた。
お城でアルルゥにやったように。

「え……? え?」

いきなりのその行動に、ヤミは頬が染まる。
密着したレックスの身体からは、心音が響く。

「アルルゥは、こうしたくて君をヤミヤミって名前にしたんだ」
227守るもの、奪うもの  ◇v5ym.OwvgI:2010/04/09(金) 10:03:46 ID:mbAqQxvb
動転するヤミに、レックスはそう、語る。

彼女の名前の真実を。
彼女の名前に込められた、アルルゥの想い。


ヤミ……いや、再びヤミヤミと名乗ることになる彼女は、
身体と心にあふれるその暖かさに満たされた。









       ※     ※





「これでよし、っと」

千秋は目の前にある物騒な砲台を目にして、満足げだった。

その砲台の名は無敵砲台。
とある未来の世界の秘密道具の兵器だ。

千秋の残る追加支給品は、この無敵砲台と、ヴォーパルソードという氷の剣だった。

光学迷彩
ヴォーパルソード
無敵砲台

この中で、ヴォーパルソードは千秋にとってハズレだ。
レックス等の戦士達にとってはこの上ない当たりであろうこの道具も、
剣術の心得のない千秋にとっては包丁と同等の価値しかない。

光学迷彩も今の千秋にとって、実は使いにくい。
これは千秋が既に持っているシルバースキンとの併用ができないのである。
同時に装着しようとすれば、シルバースキンが光学迷彩の上に展開されてしまい、
服だけが浮いた状態になってしまうのだ。


故に、この追加支給品達でレックス達に再度挑んだとしても、勝てないだろうと千秋は考えていた。
228守るもの、奪うもの  ◇v5ym.OwvgI:2010/04/09(金) 10:05:01 ID:mbAqQxvb
例え雛苺と一緒に攻め入ろうとも、無敵砲台をあてるために彼らの姿を見なければならない。
そして、その距離からだと相手の攻撃を防ぐことができない。

こちらが「発射」といわなければ無敵砲台は発動しない。

そしてレックスの雷の魔法は、シルバースキン越しでもダメージが通った。
そのダメージに怯んでいる間に、レックスが瞬く間に近づいて、渾身の一撃をたたきこんできたら。
シルバースキンは無敵の装甲だが、あの雷のように耐えられないものも存在する。
本当に完全に耐えられるのか、と言われれば不安が残る。

あるいは光学迷彩をしていたなら、こちらの姿は見えないだろうが、
その時は「発射」という言葉で方向だけは気付かれるだろうし、
そうなるとレックスの雷やアルルゥのドラゴンの広範囲攻撃で殺されてしまう。
シルバースキンをまとわないわけにはいかなかった。

故に、千秋は当たりともいえる無敵砲台があろうと、お城の面々に勝てないと思っていた。


だが、一番厄介なレックスは今どういうわけだが城の外にいる。
今この城の中には、ベルカナとアルルゥと呼ばれていた面々しかいない。
この二人は、レックスほど接近戦が得意ではない。

これなら勝てる。
にやり、と千秋は口の端を釣り上げるような笑みを浮かべる。

「お前だけ、抜け駆けなんて許さないからな」

大切な存在がいなくなっていることに気づいたイヴが
一体どれほどの悲しみに染まるのか。

それを考えるだけで、自然に笑みができる。





彼女は気付いているだろうか。

今の彼女の笑みは、彼女が恐怖した存在とまったく同じだということに。
229創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 10:05:06 ID:MGMloCF9
 
230守るもの、奪うもの  ◇v5ym.OwvgI:2010/04/09(金) 10:06:30 ID:mbAqQxvb












仲間を得たことで、温もりを手にしたイヴ。
彼女はその温もりを愛し、その温もりの為に行動することを決意する。

一度は冷たい機械であろうとしたイヴは、
記憶喪失等のハプニングに助けられたこともあったが、再び暖かい存在になれた。



そして仲間も何もかも捨て、どんどん冷たくなっていく千秋。
彼女はいったい、いくつもの温もりを傷つけどこへ行こうとするのだろうか。




【F-3/グランバニア城一階・宿屋 /2日目/早朝】
【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:魔力消費(中)、右腕の手首から先が動かない。
[装備]:タマヒポ(サモナイト石・獣)、ワイヴァーン(サモナイト石・獣)@サモンナイト3
[道具]:基本支給品×2、クロウカード『泡』『駆』@カードキャプターさくら、
    スタンガン@ひぐらしのなく頃に、アタッシュ・ウェポン・ケース@BLACK CAT
[服装]:普段着である民族衣装風の着物(背中の部分が破れ、血で濡れている)
[思考]:ヤムィヤムィ、レックスおにーちゃん……
第一行動方針:レックスがヤムィヤムィを連れて帰ってくるまで、お城で待つ。
第二行動方針:レックスについていき、レミリアやイエローを捜したい。
基本行動方針:優勝以外の脱出の手段を捜す。敵は容赦しない。
参戦時期:ナ・トゥンク攻略直後
[備考]:アルルゥは獣属性の召喚術に限りAランクまで使用できます。
    ゲームに乗らなくてもみんなで協力すれば脱出可能だと信じました。
    サモナイト石で召喚された魔獣は、必ず攻撃動作を一回行ってから消えます。攻撃を止めることは不可能。
    アリス・イン・ワンダーランドに対して嫌悪を覚えています。
    ベッキーは死亡したと考えています。
231創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 10:07:13 ID:MGMloCF9
 
232創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 10:09:02 ID:MGMloCF9
 
233守るもの、奪うもの  ◇v5ym.OwvgI:2010/04/09(金) 10:09:34 ID:mbAqQxvb
【F−3/城入口/2日目/早朝】
【南千秋@みなみけ】
[状態]:健康、疲労(中)、人間不信&精神衰弱。イヴに対する憎悪
[装備]:ロングフックショット@ゼルダの伝説/時のオカリナ、祝福の杖(ベホイミ残1回)@ドラゴンクエスト5、
    首輪探知機、シルバースキン《核鉄状態》@武装錬金、光学迷彩《展開中》@絶対可憐チルドレン
[道具]:基本支給品×5(食糧、水のみ四人分)、ルーンの杖(焼け焦げている)@ファイナルファンタジー4、
    コンチュー丹(容器なし)@ドラえもん、青酸カリ(半分消費)@名探偵コナン、
    的の書かれた紙×5枚@パタリロ!、太一のゴーグル(血がついている)、替えのパンツ×2枚、
    ころばし屋@ドラえもん、小銭入れ(10円玉×4、100円玉×3) インデックスのメモ、ご褒美ランドセル
    F2000R(残弾12/30)@とある魔術の禁書目録、FNブローニングM1910(残弾0)、飛翔の蝙也の翼@るろうに剣心、
    グラス×5、爆弾石×2@ドラゴンクエスト5、ヴォ―パルソード@TOS
[思考]:今ならやれる……!
第一行動方針:お城にいる奴らを殺す。そしてイヴの反応が見たい。
第二行動方針:グレーテルには、もうできる限り関わりたくない。
第三行動方針:他者を利用しつつ、殺し合いを促進させる。危険因子はその都度排除。
第四行動方針:全て終わったら、八神ヒカリに形見のゴーグルを渡したい(自分が殺した事実は隠す)?
基本行動方針:優勝狙い。優勝のご褒美で“殺し合いに参加していた自分”を消してもらい、元の世界に戻る。
       もう正面から戦ったりしない。
[備考]:グレーテルに対し、シルバースキン以外の手の内をほとんど明かしていません。
    グレーテルの再生能力、エネルギードレイン能力を把握しています。
    木之本桜はレックス達に殺されたと思っています。

※無敵砲台@ドラえもんをF−3のお城中庭に設置しています。



【G−5/河川付近/2日目/早朝】
【レックス@ドラゴンクエスト5】
[状態]:魔力中消費、ヤミヤミを背負ってる。
[装備]:ドラゴンの杖@DQ5(ドラゴラム使用回数残り2回)、勇気ある者の盾@ソードワールド、エアチューブ@ドラえもん
[道具]:基本支給品×2、飛翔の蝙也の爆薬(残十発)@るろうに剣心
    ドラゴンころし@ベルセルク、バトルピック@テイルズオブシンフォニア、
    爆弾石×2@ドラゴンクエスト5、魔力の尽きた凛のペンダント、小さなメダル@DQ5
    海底探検セット(深海クリーム、(エア・チューブ)、ヘッドランプ、ま水ストロー、深海クリームの残り、快速シューズ)@ドラえもん
[服装]:普段着
[思考]:戻ろう、ヤミヤミ
第一行動方針:ヤミヤミと共にお城に帰り、アルルゥを安心させる。
第二行動方針:仲間を守りつつ、レミリアとタバサを捜す。
第三行動方針:魔力が回復して余裕が出来たら、不明アイテムや水中の調査
基本行動方針:勇者としてタバサの兄として誇れるよう生きる。でも敵には容赦しない。
[備考]:エンディング後なので、呪文は一通り習得済み
    アルルゥや真紅はモンスターの一種だと思っています。
    ベッキーは死亡したと考えています。
    お城の地下に迷宮があるのを確認しましたが、重要なことだと思っていません
234創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 10:10:53 ID:MGMloCF9
 
235守るもの、奪うもの  ◇v5ym.OwvgI:2010/04/09(金) 10:12:11 ID:mbAqQxvb
【ヤミヤミ(イヴ)@BLACK CAT】
[状態]:疲労(大)、10歳前後の容姿、レックスに背負われてる。
[装備]:レミリアの服、エッチな下着@DQ5、返響器@ヴァンパイアセイヴァー
[道具]:基本支給品×2、光子朗のノートパソコン@デジモンアドベンチャー、
    フック付きロープ@DQ5、神楽の傘(弾0)@銀魂、エーテライト×1@MELTY BLOOD、
    胡蝶夢丸セット@東方 Project、ラグーン号操船マニュアル、病院服、ただの布切れ
[服装]:レミリアの服、その下はエッチな下着
[思考]:アルルゥ……
第一行動方針:アルルゥに会いたい。謝りたい。
第二行動方針:レックス達についていく。もう迷わない
第三行動方針:自分の過去を知りたい。そのために、ブルーや千秋から話を聞きたい。
基本行動方針:自分の過去を知りたい。そして罪と向き合いたい。
[備考]:記憶をすべて消し去りました。元世界の記憶、この島での記憶、共にありません。
    再びヤムィヤムィ(ヤミヤミ)と名乗ることにしました。


【無敵砲台@ドラえもん】
巨大な砲台で、どこかに設置することで使用可能になる。
誰かを指差して「発射」と合図すると、思いのままにいつでも誰でも砲撃できる。
砲台の機能を停止できるのはセットした本人のみ。
それ以外の人間が停止したければ破壊しなければならない。

本来なら砲台に接近するものがいた場合、レーダーにより探知され迎撃されるが、その機能は制限で使えないため、
使用者の目の届かないところで見つかってしまえば何もできない。
砲撃から逃げることも防ぐことも一切不可能だったが、本作では制限の為可能。
また本作では同エリア内にしか砲撃できないものとする。


【ヴォ―パルソード@TOS】
氷の属性を秘めた秘剣。
物語のキーアイテムであるマテリアルブレードの片割れ。
フランベルジュと合わさることでエターナルソードに変化する。
作中では主人公ロイドが父親のクラトスにもらった。
236創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 10:13:00 ID:MGMloCF9
 
237創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 10:14:43 ID:MGMloCF9
 
238創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 10:15:44 ID:MGMloCF9
 
239創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 10:20:03 ID:MGMloCF9
 
240創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 10:31:11 ID:mbAqQxvb
代理投下終了。
とりあえずレックスはどれだけフラグを立てるつもりなのかとw
梨々、アルルゥに続き、イヴにまで手を出すとはけしからん奴だ。
241創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 19:03:53 ID:RoBiBY8t
投下乙です

千秋はもうどうしようもないというか何というか……w
城組襲撃後も、光学迷彩あればレックス達からは逃げられそうだし考えたな千秋。
だが、ここまで堕ちた黒い千秋を今までに見た事がないw
そしてそんな自分の変化に気付かない千秋を見てるのも辛いな。
うぅ……鬱ロワだな


もう一つ。




いーーーーーやーーーーーーー!!
オレのアルルゥに死亡フラグがあぁぁぁw
レックス間に合ってくれーアルルゥ逃げてー超逃げてーw

レックスと仲良くなると危ないw
ベルカナとさくらも攻略されそうだな


ともあれ最近投下多くて嬉しいです
書き手様ありがとう
242創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 23:52:24 ID:HKRIPeQ6
投下乙です。

レックス不在のところに千秋の襲撃か。
ベルカナの精神力がどれだけ回復してるかが鍵になりそうだ。
古代語魔法は精神力さえ十分なら1発KOが狙えるんだが・・・
243創る名無しに見る名無し:2010/04/10(土) 01:02:04 ID:tQScDddq
投下乙。レックスの天然ジゴロないい話の直後に無敵砲台来てリアルに吹いたwww
いいのかコレと思ったけど原作でもショック来るくらいで殺傷能力低いからいいのかw
制限で防げるとなると砲撃は目視できる弾でも飛んでくるってことなんだろうか。
そしてこの段階に来てのヴォーパルソードw エタ剣おいしいけど色々厳しいだろうなあ。
支給品がぶっ飛んでてそっちに目がいったけどイヴと千秋の邂逅と対比は良かったです。
244創る名無しに見る名無し:2010/04/10(土) 07:05:17 ID:DQv6iMVG
無敵砲台が来るとは思わなかったwwww
245創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 00:19:54 ID:UpMNBYeu
さっきのクレしん映画見て思ったけど、あの動物化する薬追加支給品とかで出したら、ひまわり活躍出来るなw
246創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 03:45:34 ID:BA5XYuc/
>>245
いや、所詮白熊、一般人より強い程度でしょ
魔女達相手に勝てる気がしない
247創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 09:09:11 ID:usxWQ1MB
つーかあの赤ん坊、片腕で自分の体重支えてたんだよな……
レミリアを昇ったのって誇張表現じゃなかったんだ
248創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 12:24:51 ID:kdp9QjQc
ひまわりの体力はすげえぞ。
劇場版を考慮しなくても眠ってるみさえを縄で引きずるぐらいの体力はあるんだぜ。
249創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 14:34:00 ID:KAVFQWdT
のび太くらいなら武器なしでも余裕で倒せそうだよな一回あったけど
250創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 15:44:05 ID:QwoL+oeK
まあ、ここのひまわりはシールドアタックの使い手だしな。
のび太もヴィクトリアもそれで吹っ飛ばしてるw
251創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 19:45:38 ID:FmyEUHnr
ひまわりの体力行動力は並の赤ん坊の比じゃないからなw
捕まえようとするひろしみさえしんのすけを振り切ってってか撃退して逃げ切ったりしてるし、
海上の船から一人(+シロ)でボート出して近くの無人島行ってジャングルの奥にいたしんのすけのとこまで辿りついたり、
超パワー手に入れた状態とは言え巨大ロボットとまともに闘ったり、
キックや頭突きで大の大人を撃退したりしてるし
252創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 19:54:29 ID:/EW/Zxti
そこまでチートだからジュダは参加者に加えたんだろうな……
253創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 21:10:07 ID:i40xWtSM
確か開始前議論で、ひまわり参加に文句つけてた奴いたけど、
「これくらいは出来ないと話にならないだろ」って挙げた条件を、
あっさり「全部出来るよ」って返されてて笑った記憶があるw
254創る名無しに見る名無し:2010/04/17(土) 01:24:21 ID:xgIogev6
そろそろ終盤?
255創る名無しに見る名無し:2010/04/17(土) 04:25:39 ID:xgIogev6
見たらまだ30人もいるわw
256創る名無しに見る名無し:2010/04/17(土) 09:52:48 ID:vTVuRL6/
グレーテルの工場組襲撃
千秋の城組奇襲
北東街での戦闘

ここらへんのイベントが終わった頃には終盤に入ってそうだな
たぶん人数も20人程度になってるんじゃなかろうか…
257創る名無しに見る名無し:2010/04/17(土) 11:06:02 ID:o8HlcNXD
全員復活エンドが割りとリアルに見えてる珍しいロワだよな
みんな魂残ってるし
まあこういうこと言うとあえて外そうとしてくるかもしれないけど
258創る名無しに見る名無し:2010/04/17(土) 12:00:45 ID:1Hy3XZtu
グレーテルと千秋のところは放送後でよさそうだね。
後はメロの所と北東を書けば放送に行けそうだ
259創る名無しに見る名無し:2010/04/17(土) 12:37:03 ID:9bLFMOKa
>>257
主催出展の漫画版がそんな感じの結末だったしな
あと殿下さえ生き残ればどうにかしてくれそう
260創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 01:00:08 ID:O6RnjqaY
予約来たー
お城は放送前に動くか
蒼星石はローザミスティカ拾うか微妙だな
261創る名無しに見る名無し:2010/04/19(月) 19:07:57 ID:4XQRB+uI
そっちが予約来たか
蒼の子もそっち行くのか
262創る名無しに見る名無し:2010/04/19(月) 23:26:53 ID:iSzlHC8b
放送後でも大丈夫な所よりまだ早朝になってないところをやってほしかったっていうのはぜいたくな悩みなんだろうな……
263創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 00:06:39 ID:CpyoMDoh
お城は放送の前か後か微妙なところで終わったからね。
確かに二か所ほど放送いけないところがあるけど、書いちゃいけないわけじゃないし。
ていうか書いてくれるだけでありがたい。

確実に死人が出るだろうし、そうなるとレックス達の反応が楽しみだw
アルルゥ死なないかなぁとか思ったりw
264創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 00:21:25 ID:EyNmVFKE
城組も蒼の子も早朝に収めるのはきついのは確か。
両パートとも早朝という枠では既に複数回書かれているしね。
けど書くほうも承知しているだろうからこのタイミングで通したいネタが
あるんだろう。矛盾なく面白ければ正義。
265創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 10:19:54 ID:i5M+vKT+
>>263
確実に〜とか言っちゃうのはやめとこうぜ
作者が気にしても困るだろ
266創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 23:23:02 ID:EyNmVFKE
週末(?)を楽しみに待っているんだぜ
267創る名無しに見る名無し:2010/04/22(木) 21:28:46 ID:GQXEU3pv
トップ書き手が久しぶりに予約したぞーーー!
そしてメロブルーきたw残るは一番厄介そうな北東というw
268創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 10:51:29 ID:xOKGud7d
いやあ、順調に予約が来て目出度いなw
269創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 15:39:12 ID:OGobLoeL
大イベントが着々と予約されていってるねw
やっぱりこういうわかりやすいイベントがあった方が続きが書きやすいんだろうか?
270創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 18:15:30 ID:yRBehdR7
そうでもない
書き難いと書き手が引く
でもまったく無いのも駄目
271 ◆PJfYA6p9PE :2010/04/23(金) 20:54:29 ID:bVvG1P4M
遅くなりましたが、
蒼星石、千秋、アルルゥ、ベルカナ、桜を投下します。
272Sneak Attack!! ◆PJfYA6p9PE :2010/04/23(金) 20:56:03 ID:bVvG1P4M
闇が薄らぎ、少しづつ陽の差す世界に、不安げな女の子が一人。
大きなお城の扉に小さな体を預け、アルルゥは外の方をじっと見つめていました。
丸い瞳を涙で潤ませ、いつもはきちんと立っているお耳も、今はしゅんと垂れ下がり気味。
冷たい風が吹き付けて、小さなお手手がぶるぶる。
こんなところにいるよりも、暖かい宿のベッドにいる方が余程いいのに、
アルルゥは一体、何をしているんでしょう?

「おにーちゃん……」

そう、アルルゥはレックスお兄ちゃんを待っているのです。
自分のせいでお城を飛び出していってしまったヤムィヤムィをお兄ちゃんは連れてきてくれると言いました。
泣きじゃくるアルルゥをぎゅっと抱きしめ、そっと頭をなでなでしてくれた後、
魔法のカードを使って、冷たい水の中まで追いかけていったのです。

レックスお兄ちゃんはとても頼りになるお兄ちゃんです。
剣も上手いし、魔法だっていろんなのを使えます。
優しいし、かっこいいし、本当のお兄ちゃんだったらいいのにと思うくらい。
だから、きっと、無事にヤムィヤムィを連れてきてくれることでしょう。
アルルゥはそう信じています。
だから、寒いのも我慢して、たった一人でこうして待っているのです。

「ヤムィヤムィ……ごめんね、ヤムィヤムィ」

アルルゥの心はごめんなさいの気持ちで一杯でした。
嫌な気分にしてごめんなさい。誤解させてしまってごめんなさい。
ヤムィヤムィに一秒でも早くそう伝えたくて。
みんなで一秒でも早く暖かくなりたくて。
だから、眠い目をこすって待っているのです。
帰ってきた二人と一番早く会えるこの場所で。

「ううう……」

びょうと何度目かのつむじ風が小さな体を叩きます。
まるでアルルゥのことを責めているかのように。
細かい砂が巻き上げられて、目の中に入って痛い痛い。
堪らず目蓋をぎゅっと閉じ、奥から涙が沸いて出て――――

カツン……

その音は突然、アルルゥの耳に飛び込んできました。
何か固いものが床に当たるような乾いた音。
いったい、何の音でしょう?

「?」

不思議そうな顔でくるりと後ろを振り向いて、
垂れてた耳をピンと立て、ぴくりぴくりと動かします。
一生懸命聞き耳をたてると、また一つ、もう一つ。
暗い廊下の向こう側、先の見えない角の方、それは確かに鳴っています。

「だれ? べるかな?」

カツン…… 

心当たりの名前を呼んでも、返ってきたのはやっぱり変な音。
これにはアルルゥも困ってしまってお目目をぱちくり。
273Sneak Attack!! ◆PJfYA6p9PE :2010/04/23(金) 20:58:24 ID:bVvG1P4M

「……ん」

首をかしげて考えて、ちょっと悩んで、すぐ決めました。
分からない変なものは見に行くのが一番です。
そうと決まればてくてくと、廊下の奥へと進みます。

「……おう」

角を曲がったアルルゥは変なものを見つけます。
ひんやり冷たい石の床にぽつんと置かれた変なモノ。
走って寄って覗いてみると、黒いお板に光る点。
何個かピカピカ輝いて、まるで夜空のお星さま。
これは一体、何でしょう?

「?」

拾って近くで見てみます。
すべすべ板の真ん中に白く光ったポッチが一つ。
下からぐんぐんやってくる別のポッチがもう一つ。
ゆっくりゆっくり近づいて、
点と点とが重なって――――





指向性の光の束がまだ薄暗い石段を照らす。

「……全く、便利なものですわね」

ベルカナは懐中電灯を神妙な顔で眺めながら、ひとりごちた。
ただ、スイッチを押すだけで光を放つ細長い投光器。
光晶石より光量は劣るが、オンオフが自在であり、回数制限が無い分、使い勝手はいい。
こんなマジックアイテムを全員に配布するとは、今さらながら、ジェダも随分、太っ腹なものだと思う。
最も、こういったものが貴重なのはフォーセリアに限ったことであって、
別の世界、例えば、梨々やヤムィヤムィが元いた世界などでは、ごくありふれたものなのかもしれない。
あの電話という装置同様に。

不意に齎されたレベッカ宮本との通話。
そこに含まれていた情報はベルカナにとって多分に頭を悩まされるものだったが、
持ち前の卓越した思考力で話すべき部分とそうでない部分を選別し、概ねの整理を終えていた。
今は睡眠を少しでも取り戻すため、再び寝室へ向かっているところだ。

(それにしても、今回の冒険は懸念事項が多いですわ)

思わず溜め息が漏れる。
冒険者として、複雑に入り組んだ事件に出会ったことは一度や二度ではないが、
正直、今回の一件と比べれば、たいしたことのないものばかりと言わざるを得ないだろう。

住み慣れたロマールの地から拉致され、一転、魑魅魍魎たちが群がる魔の島へ。
実家の財力も、せっかく苦労して築き上げた盗賊ギルドのコネも当然使えない。
異世界から来たと思しきモノたちは、大きな建物から小さな物品まで
ベルカナの賢者としての知識を殆ど寄せつけず、謎また謎のオンパレード。
主犯格と思われる魔人に関しても、何ら有効な情報はなく、居場所の見当すらつかない始末。
274創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 20:58:45 ID:t9CpFXWD
支援
275Sneak Attack!!(前編) ◆PJfYA6p9PE :2010/04/23(金) 21:00:30 ID:bVvG1P4M

そして、何より痛いのは、気心の知れた仲間と引き離されたこと。
本当に大切なものは失ってから初めて分かると言うが、まさにそのとおり。
ここに至り、ベルカナは元の世界でパーティを組んでいた仲間達に、
どれほど助けられていたかを痛烈に思い知らされていた。

別に今の仲間を嫌っているわけではないが、何せ彼らとはつい数時間前に初めて出会ったばかりの仲。
能力についても性格についても、十分に分かり合っているとは言いがたく、
やりやすさの点からいえば、お互いのことを熟知していた元の世界のメンバーとは比べるべくもない。
それから、全体的に情報の真贋や他人の悪意を見抜く能力に欠けているのも辛いところだ。
今のパーティで取り越し苦労をする役に一番向いているのは、明らかにベルカナである。
だが、集団全体に降りかかる案件を一人で処理するというのは、やはり負担だ。
ぺらぺらーずの中においても、彼女は苦労人役をすることが多かったが、
一人で抱え込まねばならない事態にはなりにくかった。
他の仲間が必要に応じて、考えを巡らせてくれていたからである。

(ま、ないものねだりをしていても仕方がないですわ。
 今のメンバーでやれるだけのことをするしかありませんものね。
 ……しかし、お互いの能力の把握と有事の際の役割分担については、きちんとしておいた方がいいかもしれません。
 どのみち、もうすぐ放送ですし、そのときにでも改めて話し合って……
 ……!?)

階段を下りきったところで、ベルカナはびくりと体を震わせた。
思考の海に没入していたせいで、正面の人影に気がつかなかったのだ。

「……まったく、びっくりさせないでくださいませ。
 どうかしましたの、アルルゥ」

薄明けの光に浮かび上がったのはアルルゥだった。
何か嫌なことでもあったのか、俯き気味に立っている。

「…………」

だが、問いかけに対する返事は何故か返ってこない。

「アルルゥ?」

おかしい、と感じる。
答えが返ってこないこともそうだが、別の、何かもっと決定的な違和感があるような……

「!!」

だが、その正体に思い至るよりも、アルルゥがアクションを起こす方が速かった。
不意に、糸が切れるがごとく全身の力が抜け、前のめりに倒れこんだのだ。

「アルルゥ!! どうしましたの!?」

突然のことに動揺するベルカナ。
慌てて倒れた体に手をかけ、助け起こして介抱しようとして……目が合った。
276創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 21:00:50 ID:L8RjXXhZ
 
277Sneak Attack!!(前編) ◆PJfYA6p9PE :2010/04/23(金) 21:01:46 ID:bVvG1P4M

「ん」

おかしい。
何故目が合う。
アルルゥは前向きに倒れた。
今、上を向いているのは背中。
背中に目はない。
それでも目が合うというのなら

「…………」

急速に頭が冷える。
思考が事態に追いつく。
推論を確かめるため眼球を動かすのにコンマ数秒。
思ったとおりだ。

「……くっ」







――アルルゥの首は無残にねじ折られ、醜く捩れていた。







「ッッッ!!」

頭が真っ白になる。
多数の思考が同時に駆け巡る。
瞬間、脳が凍りつく。

だが、幸運はあった。
体は動いた。
冒険のために身につけた狩人《レンジャー》の勘が、
反射的に行動をとらせた。

だから、彼女は助かった。


ベキョグチ


ベルカナが飛びのいた一瞬後。
何かが振り下ろされていた。
それはふわりと揺れる栗毛を掠め、地上のアルルゥへと直撃。
骨と、肉の砕ける音がする。

「ち」
「ッ!」

襲撃者の舌打ち。
すかさず追い討ちの気配。
278Sneak Attack!!(前編) ◆PJfYA6p9PE :2010/04/23(金) 21:03:09 ID:bVvG1P4M

だが、次に動いたのはベルカナ。

「ぐ!」

爆音と閃光が狭い廊下を満たす。
投擲された爆弾石が破裂したのだ。

敵の姿は見えない。
だが、襲撃者は確実にいる。
だとすれば。
敵は姿の見えない襲撃者。
標的が見えないなら、
範囲攻撃を仕掛けるしかない。

このベルカナの試みは、果たして一定の成果を得た。
爆発の残滓が晴れたとき、そこには明らかになった敵の姿があった。
白銀の外套を纏った怪人の姿が。

どちらからともなく、
ぎりりと歯軋りの音がした。





打撃、打撃、打撃、打撃、打撃、打撃、打撃、打撃また打撃。
嵐のような乱打が吹き荒れていた。

(ちいィッ!)

右上からの振り下ろしを杖の首で弾く。
額に汗が滲む。
間髪入れぬ横薙ぎを杖の腹で受ける。
武器を持つ手に衝撃が走る。
ひと息おいての突きを体捌きで流す。
カッ! カッ! カッ!
木と木のぶつかる小気味よい音が響く。
されど猛攻は止まらない。
疾風に揉まれる木の葉のように、やっとさっとで
攻撃を受け流しながらベルカナは内心舌を巻いた。

(油断しましたわ!
 こいつ、こんな動きができましたのね)

先刻の城での戦いにおいて、彼女はこの白銀の敵の中身について、
戦闘慣れしていない一般人であるという推測を立てていた。
動きのぎこちなさ、判断の遅さなどを根拠に導いた結論。
確かに、それは半分は当たっていた。
だが。

「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「ッ!」

裂帛の気合とともに放たれた一撃をステップでかわす。
相手を捕らえそこなった杖は空を切り、床の石板を砕いた。
直撃していれば、間違いなく肩の骨を持っていかれていただろう。
それほどのパワーと、スピードの乗った打撃だった。
279創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 21:03:26 ID:L8RjXXhZ
 
280Sneak Attack!!(前編) ◆PJfYA6p9PE :2010/04/23(金) 21:04:34 ID:bVvG1P4M

ベルカナの読み違えていた残り半分。
それは怪人の身体能力。
石板を木の杖で粉砕する敵の筋力と敏捷力は一般人の枠に収まるものではない。
おそらく、専業のファイターと同じか、それ以上。
少なくとも、ぺらぺらーずの前衛、マロウよりも上を行っていることは確かだ。

(今にして思えば、さっき爆弾石で相手が怯んだ隙に、さっさと古代語魔法で先制しておくべきでした。
 失敗しましたわ)

思いのほか、アルルゥのことで落ち着きを失っていたようだ。
相手に戦士としての技能が全くなかったおかげで、防御に専念すれば、
そう容易くダメージをもらうことがないのが、不幸中の幸いか。

「ぐっ、くっ」

攻撃が中々当たらないことに業を煮やしたのか、怪人は手持ちの杖をめちゃめちゃに振り回す。
その太刀筋は傭兵の家に生まれ、戦う基礎を修めたベルカナにとってはいささか稚拙。
自分に届くものを冷静に見極め、タイミングを合わせて払っていく。
弾かれた武器が城の壁を削り、燭台を壊し、調度品を割り砕く。

しかし、打撃のほとんどを捌くことに成功しているにもかかわらず、戦況は彼女の不利に推移していた。

(はあっ、はあっ……まずいですわね……手の、感覚が……)

敵の強力な膂力を受け続けてきたベルカナの両手は徐々に痺れ、限界を迎えつつあった。
このままでは、いずれ力を失って杖の制動が乱れ、押し切られてしまう。
反撃に転じ、防戦一方の現状を打ち破れば、継戦時間が伸びる可能性もあるが、
相手が畳み掛けるように乱撃を見舞ってくる以上はそれも難しい。

(何とか……何とか、現状を打開する方法は……)

腕の感覚が失せるにつれ、焦りも高まってくる。
だが、打ち込まれる杖の嵐はその手を緩めることなく、無情に時間だけが経過する。
そして、ついに恐れていた瞬間が来てしまった。

「ああっ!」

腰だめに放たれた強烈な打突を受けきれず、尻餅をついてしまったのだ。
刹那暗転した視界が回復したとき、正面には武器を大きく振り上げる銀の影。
慌てて体を捻り、回避を試みるが、結果が出る前に彼女は理解してしまう。

敵の方が速い、と。

世界が突如、スローモーションに見える。
風切り音とともに振り下ろされた武器はそのまま吸い込まれるように
ベルカナの額を捉え、頭蓋を割り、脳を潰し、目や鼻から赤白い脳漿が噴出――――
281Sneak Attack!!(前編) ◆PJfYA6p9PE :2010/04/23(金) 21:05:48 ID:bVvG1P4M




――――しなかった。




「!!?」

視界のスローモーションが元に戻り、世界が色を取り戻す。
命を刈り取るはずだった凶器は身をかわした彼女の真横、石畳に当たり、コツンとかわいい音を立てた。
ベルカナは命を拾ったのである。

ほとんど反射で体を起こし、戦闘を継続する体勢を整えるが、頭の中はクエスチョンマークで一杯だ。

(……おかしいですわ。
 今のタイミング、完全にやられたと思いましたのに)

再び打ち合いを始めると、その疑問はさらに増大した。
これまで、あれほどベルカナを圧倒していた嵐のような攻めは鳴りを潜め、
代わりに打ち出されるのは、ひょろひょろした、まるで子供のちゃんばら遊び。
右へ左へ繰り出される打撃には全くキレがなく、ただ、杖をそこにもっていくだけで容易に防げてしまう。

(これは、何かの罠でしょうか?
 いや、明らかに勝負が決まっていたのにそれはない……か。
 いままでの無理がたたって体力が尽きたと考えるのが妥当でしょうか。
 いずれにせよ、この隙に攻めない手はありませんわね)

頭を切り替えたベルカナは打って変わって反撃に出る。
相手の杖を頭上に跳ね上げ、空いたガードに向かって横薙ぎを見舞うと、
その一撃は予想以上の滑らかさで相手の腰に吸い込まれた。

「うっ」

逡巡した敵に立ち直りの機会を与えぬよう、今度はベルカナが怒涛の攻めを見せる。
首、腰、腕、それから頭。
リーチのあるマギステル・マギの杖を用いた初歩的な杖術に、怪人はほとんど反応することができない。
気持ちよく決まり始めた打撃に優勢を見て取るが……すぐにその考えを振り払う。
攻撃の決まったその先で、コートの表面、銀の六角形が弾け飛んで、即座に再生する。
その一連の動きは、杖からのダメージを完全に殺していた。

(なるほど。あのコート、そういう仕掛けになっていましたか。
 私程度の打撃力ではびくともしないようですが……)

それならそれでやりようがある、とでも言わんばかりに攻め手を変更する。
牽制目的の高い攻撃で相手の意識を上段に惹きつけ、
下半身のバランスが危うくなったところで得物を思い切り回転。
杖の逆端で足元を衝く。

「それっ!」

足狙い。
軸足に後ろから強い衝撃を食らわされた怪人は、たまらず仰向けにつんのめる。
と同時、背部のコートが弾け、またもダメージを無効化する。
しかし、ベルカナは焦らない。

(元々、転倒のショックで倒そうなんてセコいこと、考えていませんわ。
 私が欲しかったのは……ココッ!!)
282Sneak Attack!!(前編) ◆PJfYA6p9PE :2010/04/23(金) 21:07:03 ID:bVvG1P4M

杖を立て、狙いをつけて、突き刺すように振り下ろす。
狙った先は、転んだことにより顎が上がり、剥き出しになった喉。

「……血の痰を吐きながら苦しみなさい」

人体の中でも有数の急所であるそこに、尖った杖の先端を捻じ込んで――





「は、発射!」





――とどめの一撃がヒットする刹那、凄まじい轟音が脳を揺さぶった。





「……ほぇ?」

夢の中で大きな和太鼓が鳴って、さくらは突然、現実に引き戻された。
せっかく楽しい夢を見ていた気がするのに、邪魔するなんて酷いよぅと
寝惚けたことを考えながら周りを見渡すと、そこは自宅のふわふわベッドではなく、
暗い石造りの部屋の堅い寝床。

自分が置かれた状況を思い出し、急速に意識が覚醒する。

ベルカナに矢継ぎ早の状況説明をされた後、
さくらは頭を整理しようと、ベッドの中で横になったまま、あれやこれやと考えて――
――纏らないうちに眠ってしまったらしい。
よいしょっと体を起こすと、何だかちょっと気分がいい。
思い当たって、小さな手を額にやると、すっかり熱が引いていた。

しかし、ほっ、と息をついたのも束の間、すぐに新しい不安の種を見つけてしまう。

「みんな、どこ行ったの?」

周りのベッドはさくらがいるところを除き、全て空になっていた。
さくらが眠りにつく前、この部屋にはあと四人もの人間がいた筈なのに。
どこも布団がめくれ上がり、誰かがそこで寝ていた形跡はあるものの、
本人が見当たらないばかりか、荷物まで綺麗さっぱり消えている。
これは一体、どういうことだろう。

「……置いていかれたのかな、私」

少し不安そうに、思い至ったその答えを口にする。
確かに、そう考えれば全てのつじつまが合う。

顔合わせの時は、皆、さくらを受け入れるフリをしていたが、内心は疎ましく思っていた。
それはそうだ。
さくらは自分の意思ではなかったとはいえ、雛苺と一緒に沢山の人に沢山ひどいことをした。
そんな子と一緒にいてもいいなんて子が、どこの世界にいるだろうか。
だから、みんなで示し合わせて暗い部屋にさくらを置き去りに――――
283Sneak Attack!!(前編) ◆PJfYA6p9PE :2010/04/23(金) 21:08:53 ID:bVvG1P4M

「……ううん、そんなことあるわけない」

しかし、さくらはこの島では誰もが身を委ねてしまいそうな疑神の囁きを、そっと振り払う。
何故なら、彼らは梨々の友達で、梨々はさくらの友達だから。
何を知ってるわけじゃないけど、友達の友達は、友達だ。
友達は友達を見捨てたりなんか、しない。
ベルカナあたりが聞けば、思わず眉を顰めそうな論理。
だが、木之本桜にとってはその論理こそが、自らの信じるよすがであった。
少なくとも、この島に満ちている悪意なんかよりずっと。

「きっと、何かわけがあったんだよ」

嫌な考えはゴミ箱に捨てて、勢いよくベッドから立ち上がる。
とりあえず、服を着ようと、掛けてある梨々の服を手に取ったところで、

「!?」

さくらはその音を聞いた。
低く、お腹に響く大きな音。

「……これって」

自分を夢から覚ましたあの和太鼓を思い出す。
もしかしてこの音だったのだろうか。

「!! また」

するうち、また同じ音。
一体、何の音だろう。
大きな太鼓を思い切り鳴らしてるような、怪獣さんが足踏みしてるような、大砲を撃つときのような……

「!!」

さくらの頭の中で何かが繋がる。
取り残されたさくら、いなくなった仲間、遠くからする大砲の音。
この符号が示すものは何か。
簡単だ。
ベルカナたちはきっと敵と戦っているのだ。
熱を出したさくらを一人安全なこの部屋に残して。

「……行かなくっちゃ」

シーツを振り捨て、足早に着替えを済ませると、音を頼りに走り出す。
行かないわけにはいかない。
もしかしたら、今、仲間達が戦っているのは、さくらを取り戻しにやってきた雛苺かもしれないのだから。
284Sneak Attack!!(後編) ◆PJfYA6p9PE :2010/04/23(金) 21:10:13 ID:bVvG1P4M
――頭が、痛い。
――気持ちが、悪い。

石畳の無機質な味を感じながらベルカナが考えていたのは、そんなことだった。
気だるい足に力を込めて、腕を突っ張り、よろよろと立ち上がる。
顔を上げ、敵を見据えようとしたところで、

「発射」

何度目かの砲撃が炸裂した。
軽く跳んで直撃だけは避けるが、それでも衝撃波の影響を免れることはできない。

「かはっ」

体が吹き飛び、石壁に背中をしたたかに打ちつける。
肺から搾り出された空気が声にならない声になった。

今度は倒れたまま、目だけで前方を睨み付ける。
すると、それは悠然と現われた。
コツコツと石畳を歩く音を廊下一杯に響かせ、
薄明けの闇の中から浮かび上がるようにやってきた。
テンガロン・ハットをかぶり、銀色の外套を身につけた怪人。
それは今やベルカナを一方的に蹂躙していた。

「発射」

抑揚のない声が響くと、哀れな被弾者はまた後方へと吹き飛んだ。
だが、朦朧とした頭で、それでもベルカナは思考を紡ぐ。

倒れた怪人の喉に終わりの一撃を叩き込もうとした瞬間、放たれた発射の一言。
その一言で、勝機は泡と消えた。
謎の衝撃が襲い、壁との接吻を強要されたからだ。
それ以降、彼女は途切れなく放たれる謎の衝撃波に翻弄され続けている。

手品のネタはもう八割がた割れている。
着弾までの僅かなタイムラグと伝わる衝撃波の指向性、
怪人方向への防御をものともしないその性質から、凡その見当をつけた。

おそらく、この攻撃の正体は壁をすり抜けてやってくる見えない砲弾。

支給品を使っているのか、それとも仲間がいるのか、その辺りは定かではないが、
いぜれにせよ、怪人の発射の号令にあわせて砲撃が行われていることは間違いない。

「発射」
「ッッ!」

またもかかる声にベルカナは必死の回避行動をとるが、努力も空しく宙を舞い、地を滑る。
正体は分かっているにもかかわらず、有効な対策がとれないのがもどかしい。
285Sneak Attack!!(後編) ◆PJfYA6p9PE :2010/04/23(金) 21:11:25 ID:bVvG1P4M

完全な回避はできないのか。
難しい、というのが結論だ。
その原因は二つ。
一つは、砲撃が正確で、迅速であること。
そしてもう一つは、彼女があまりに疲労していることだ。
先程繰り広げた激しい近接戦と度重なる砲火は、体からもうすっかり体力を奪いつくしている。
今できるのろのろとした動きでは、せいぜい急所をかばうのが精一杯だ。

では、反撃は。
これも望み薄。
この状態から起死回生を狙うなら、古代語魔法を極めるしかない。
しかし、古代語魔法の詠唱には、立った状態からの複雑な身振りが必要不可欠だ。
それを知ってか知らずか、銀の怪人はこの身振りを許してはくれない。
何せ、立ち上がり、何らかのアクションを起こそうとすると、すかさず撃ちこんでくるのだ。
これではいつまで経っても転倒状態から快復できず、埒が空かない。

仲間が救援に来る可能性は。
実のところ、これに一番期待したい。
だが、戦闘が始まってから既にある程度の時間が経過しているにもかかわらず、音沙汰がないこと、
仲間の存在を知っているはずの怪人が焦りを見せていないことなどから、
何らかの形で無効化されている可能性が高い。
最悪の場合、全員、アルルゥのように……というのは、悲観が過ぎると思いたい。

ということは、もう勝機はないのか。
そうではない、とベルカナは考える。
現在のところ、圧倒的に優勢に見える敵だが、実はこの状態をずっと維持していること自体に、弱点が垣間見えている。
敵の弱点、それは決定打が無いこと。
不可視の砲撃は確かに強力な攻撃であるが、被るダメージの量はたいして大きくない。
衝撃波に煽られ、転倒は免れないが、逆に言えば被害はそれだけ。
急所さえ守れば、致命傷にはなり得ない。
だから、敵は必ずベルカナにとどめを刺すため、いつか砲撃を止める。
そこが、つけ入る隙。
逆転の手を打つチャンスだ。

「発射」

だが、ベルカナは自分のその考えが間違いだったことをすぐに思い知った。

吹っ飛んだ自分の背中が何かを突き破るのを感じて、
突然の光に一瞬、目が眩んだ後、

「そう……きましたか……」

見えたのは昇り来る太陽だった。
感じたのは吹き渡る風だった。
聞こえたのは打ち寄せる潮騒だった。

ベルカナに巻き込まれて破れたのは城外への扉。
先程の砲撃で、彼女は外へと放り出されてしまったのだ。
これは偶然の結果か。
いや、違う。

銀の怪人によって、意図的に外界へと運ばれたのだ。

だが、何のために?
286Sneak Attack!!(後編) ◆PJfYA6p9PE :2010/04/23(金) 21:12:43 ID:bVvG1P4M

「発射」

その答えは、再び宙に舞った彼女が今まさに目撃している。
回る視界に映し出されたのは、朝焼けに照らされた黒い海と……切り立った崖。

「狙い……は……落下ダメージ……ですか」

敵には始めから、とどめを刺すために砲撃を止める気などなかった。
何故なら、あとほんのニ、三度衝撃波で吹き飛ばしてやれば、
相手は足場を失い、崖下の岩で頭を叩き割る運命にあるのだから。


(これは……………………………………………………チャンスですわね)


だが、この恐ろしい計画を悟ったベルカナは内心ほくそ笑んでいた。
彼女には自らの落下速度を自由に調整する魔法『フォーリング・コントロール』がある。
この魔法を使って崖を覆う木々の間に降り、敵の視線を外せば、
忌々しい砲撃地獄から脱出することができると考えたのである。

(一度、この状態から抜け出してしまえば、あとはこっちのもの。
 反撃するなり逃げるなり、いくらでもやりようはあります)

転倒状態から快復し、古代語魔法が使えるようになれば、採れる選択肢は非常に多彩だ。
来るべき逆転の時を思い浮かべ、僅かに頬を緩めたところに

「発射」

ベルカナを崖の端に追い込む、最後の砲撃が炸裂した。


(さあ、ここが正念場ですわ!)


丹田に気合を込め、必要なアクションに取り掛かる。
萎え切った手足を叱咤し、もう一度だけ撃たれるために立ち上がる。
だが、あくまで自然に、相手に悟られぬよう、さりげなく。


「発射」


声を放つ怪人。

空を飛ぶベルカナ。
287創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 21:24:21 ID:L8RjXXhZ
 
288Sneak Attack!!(後編) ◇PJfYA6p9PE:2010/04/23(金) 21:28:24 ID:L8RjXXhZ
「くっ、フォーリング・コントロールッ!!」


動作とともに呪文を唱えて――――










「え」










――――しかし、なにもおこらなかった。


それは、彼女の故郷、アレクラストの魔法使いにあまねく課せられた厳しい掟。
三十六度に一度の割合で、魔法の発動は失敗に終わるという奇妙な法則。
どんな大魔道士にも避けることはできない絶対的な不幸。
確率の神の残酷な悪戯。
人はそれを


ファンブルと呼んだ。


呆けた顔のまま


落ちていく


落ちていく


やがて海が近づいて


ぞぶりと


肉の裂ける音がした。
289Sneak Attack!!(後編) ◇PJfYA6p9PE:2010/04/23(金) 21:29:20 ID:L8RjXXhZ



彼女は崖の端に膝を付き、眼下に広がる海を眺めていた。
立ち上がって見ないのは、ギリギリのところでそうすると、そのまま落ちてしまいそうで怖いから。

こんな高いところから落ちたら大変だ。
こんな高いところから落ちたら――――ああ、なってしまう。

彼女は崖の端に膝を付き、眼下の海から突き出た岩を眺めていた。
岩の先には人間が引っかかっている。

「ハ」

尖った岩の先端で少女の腹は無残に引き裂かれ、だらしなくはみ出た桃色の小腸が波に洗われている。

「ハハハ」

信じられないとでも言いたげに大きく見開かれた瞳は、もう二度と瞬きをしない。

「ハハハハハ!」

手と足が変な方向に曲がっているのが、何だかとても滑稽だ。

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」

哀れな姿になったベルカナを見て、南千秋は心の底から笑い声を上げていた。

実際のところ、千秋の奇襲は全く巧みなものだった。

無敵砲台を設置した後、コンチュー丹を飲み、光学迷彩を使用。
首輪探知機で城内を動き回る二つの首輪――アルルゥとベルカナの位置を確認し、殺害を開始した。
アルルゥは杖で床を叩く音とわざと目立つように落とした探知機とを用いておびき寄せ、
背後から首をへし折った。
こちらから近づいていかなかったのは、足音で存在を看破されないため。
ベルカナはアルルゥの死体で動揺させた隙に撲殺する予定だったが、
思いのほか相手の勘がよく、失敗してしまった。
慌てているうちにコンチュー丹の効果が切れ、危うく逆襲されるところだったが、
そこは、事前に用意しておいた無敵砲台でフォロー。
結果は見てのとおりだ。

全てを思い通りに成し遂げた彼女の心に浮かぶ想いは、ただ一つ。

「ざまあみろ、ざまあみろイヴ!!
 お前の仲間はみんな殺してやったぞ!!
 一人だけいい子ぶってズルするからだ!!
 お前のせいでみんな死んだんだ!!」
 
心臓の鼓動が速い。
背筋がゾクゾクして、凄く興奮しているのを感じる。
290Sneak Attack!!(後編) ◇PJfYA6p9PE:2010/04/23(金) 21:30:15 ID:L8RjXXhZ
(やっぱり、この島で仲間を作ろうなんて考える奴は、どいつもこいつも大バカ野郎だ!)

ここに至り、南千秋は明確にそう考えるようになっていた。

そもそも、最後に残った一人しか助からないこの場所に、仲間なんて概念が馴染むわけがないのだ。
なのに、どいつもこいつもこぞって寄り集まり、群れたがる。
何故か。

(みんな、心が弱いからだ)

怖い、寂しい、辛い、不安だ、誰かに助けて欲しい。
そんな感情が、本来、場違いな仲間作りという行為に皆を走らせる。
そして、昨日までは顔も見たことのなかった他人に対して、
あたかも古くからの親友であるかのような態度を示すのだ。
優しい言葉をかけ、好意を伝え、共に泣き、共に笑う。
それは一見、とても暖かい光景だ。
だが。

(そんなのはただの現実逃避だ)

生きて帰れるのはたった一人だけであるという現実を忘れ、偽物のつながりに酔いしれる。
そんなのはただのおままごとで……タチの悪い裏切りだ。
そう、それは故郷にいる、本当に大切な人たちに対する裏切り。
誰だって、多かれ少なかれ、元の世界に自分のことを待ってくれている人がいる筈だ。
その人たちのもとに帰るため、最後の一人になる努力もしようとせずに、
死ぬのは嫌だ、殺すのも嫌だ、悲しいのも嫌だと一時の温もりに縋り続ける。
そんなのは……汚らわしい。

(……私は、もう、そんな風にはならない)

殺し合いに参加しない子たちを減らすためとはいえ、イヴに心を許したのは失敗だった。
ほんの僅かでも、一緒に何かを分かち合える存在だと考えたのは浅はかだった。
だから、あんなつまらないところで危うく死にそうになったのだ。

(だけど、もう迷わない。
 私が心を開くのは、元の世界のみんなだけだ。
 ハルカ姉様や、カナや、内田や、吉野や……みんなだけなんだ)

気を引き締めて、そして、思い知らせてやろう。
仲間を作るバカ野郎どもに、この島のルールを思い出させてやろう。
一時の暖かさに縋るような弱い子は、みんな死ぬんだってことを。
生きて本当の暖かい世界に戻れるのは、南千秋、ただ一人だけだってことを。

「そうと決まれば、長居は無用だな」

千秋は踵を返す。

安全な逃避ルートを確認しようと、ランドセルから首輪探知機を取り出して……
ディスプレイに映る二つの動く点に、彼女の目は、大きく見開かれた。
291Sneak Attack!!(後編) ◇PJfYA6p9PE:2010/04/23(金) 21:30:57 ID:L8RjXXhZ



「…………」

視界一杯に広がる巨石と鉄に圧倒されて、蒼星石は思わず息を呑んだ。
暁の光を受けて、灰色に照らされた城は耳が痛いくらいに静まり返っている。

北東の街を目指していた彼女がここに立ち寄ったのには理由がある。
森を抜け、さらに東へ進もうとしていたときに、ふと聞こえたあの音。
確かにこの城からしていたあの音は、大砲が発射されるときに出るもののように低く、重かった。
一度ではなく、続けて何度か打ち鳴らされたそれは、きっと戦いの音。
蒼星石の探し人――タバサがそこにいる可能性を考えると、無視することなどとてもできなかった。

今、城からは何も聞こえない。
多分、戦いは終わったのだろう。
誰がいて、どんな決着がついたのか。
いくらでも想像することはできるが、おそらく、それをする意味はない。

だから、蒼星石は一歩を踏み出した。
大きな声で名前を呼びたい衝動を、冷静な判断で打ち消して。
敵がいてもいいように鋏を構え、慎重に進む。

(……タバサ、無事でいて)

開け放たれた暗い門扉が、息を潜めた獣の口のように見えた。





「はー……はー……はー……」

墨汁を塗りこめような闇の中、少女の息づく声だけが木霊する。

荒い呼吸の主は、南千秋。
首輪探知機の放つ、無機質な光の白だけが、
闇の黒の中、彼女の顔を幽鬼めいた青に浮かび上がらせていた。

(くそっ、もう戻ってきたのかよ!?)

睨みつけている探知機の上では、二つの光点が相変わらず、ゆっくりと動き回っている。
レックスとイヴが戻ってきた。
千秋はレーダーが示す状況をそのように解釈した。

だが、事実は異なる。
探知機が示す二つの点はそれぞれ、
砲撃の音が聞こえなくなったせいで、行き場を見失ったさくらと
探し人がいるかもしれないという推測のもと、城に踏み込んできた蒼星石だ。

誤認を招いた原因は二つ。
千秋の認識では、さくらは既に殺されていることと、
レックスとイヴに対する憎悪と警戒の念があまりにも強かったことだ。
292Sneak Attack!!(後編) ◇PJfYA6p9PE:2010/04/23(金) 21:31:39 ID:L8RjXXhZ
今、二人に遭遇してしまうことは、千秋にとって大きな懸念だった。
ベルカナとの激戦で予定よりも消耗してしまったため、今の彼女に二人と戦う体力は残っていない。
仲間を殺されたと知ったイヴの顔を見たい気持ちはあったが、
そのためだけにノコノコ顔を出して、殺されては元も子もない。

二人をやりすごす方法として、当初、千秋は光学迷彩服を使おうと考えていた。
だが、ここで一つトラブルが起こる。
シルバースキンを解除した後、起動しようとした光学迷彩が何の反応も示さなかったのだ。
あまりにもタイミングの悪い故障に、彼女は憤慨した。
実際は故障ではなく、支給品の説明書に小さな文字で書かれた一文、
『ただし、本製品は一時間の使用につき、三時間のチャージが必要です』
を見逃しただけなのだが、焦っている彼女がそんなことに気づく筈もない。

結局、光学迷彩服の使用を諦め、隠れてこの場を切り抜けることにした。
二人と入れ違いざまに城から出るという手もあったが、
一人が唯一の出口付近をうろうろしていたためこの案は却下。
少しずつ近づいてくるもう一人から身を守るため、慌てて隠れる場所を探し始めた。

だが、ここで千秋に思わぬ幸運が舞い降りる。

身を隠す場所として、階段の下のスペースを検討していたとき、
何と、床の石板の下に、秘密の地下道があることを発見したのだ。
藁をもすがる思いで、地下へ潜りこんだ彼女が見たものは、あまりに広大で、あまりに複雑な地下迷宮。
予想外の大物の出現に、千秋はふと、昔、テレビで見た歴史番組のことを思い出していた。

(そういえば聞いたことがあるぞ。
 昔のお城には、戦争に負けたとき、偉い人が逃げるための地下通路が掘ってあるって。
 ……もしかして、ここは、そういうところなんじゃないか。
 だとしたら、この通路を通って、どこか別の場所に抜けられるかも……)


手元のレーダーと、眼前に広がる暗い通路とを見比べて、千秋が下した決断は……





打ち寄せる波が囁くように音を立てる。
白銀色の怪人が去った後、断崖は何事もなかったことように、静けさを取り戻していた。
聳える城は古ぶるしき石の灰色。
城の足元から伸びる地面は土の焦げ茶と草の緑。
崖は堅い黄色の岩肌をむき出し、その表面を燃えるように赤く色づいた木々が覆っていた。

その木々の間に、異質に紅く、されど黒くくすんだ色の物体がほの見える。
太い幹の上、身じろぎのせずに横たわるそれは二本の腕、二本の足を持つ人間。
彼女は海上の岩場に突き刺さった自らの死体と、誰もいない崖の上とを交互に見ると、
緊張を解き、大きく溜め息をついた。

「……やっと……行ってくれましたか」

息も絶え絶え、消えそうな声で呟いたのは、ベルカナ・ライザナーザ。
先の戦闘における敗北者だ。
フォーリング・コントロールの魔法に不幸にも失敗し、
そのまま墜落して臓物を晒したはずの彼女がどうして生きているのか。

「うまく……誤魔化、されて……くれたみたい、ですわね」
293Sneak Attack!!(後編) ◇PJfYA6p9PE:2010/04/23(金) 21:32:19 ID:L8RjXXhZ
その答えは古代語魔法『クリエイト・イメージ』。
この樹上に落下したとき、ベルカナは残りの体力と集中力を振り絞って、
幻覚映像を作り出すこの魔法を詠唱し、海の上に自らの偽死体を投影した。
敵が自らの死を誤認してくれるようにと、敢えて残酷な演出を施した幻は
見事に功を奏し、敵を遠ざけることに成功したのである。

「………………」

とはいえ、彼女の被ったダメージは決して小さくない。
ゴロンの服とレースのビスチェがダメージを軽減してくれたおかげで、
どうやら骨折は免れたようであるが、手足と胴体にはいくつかの打撲傷。
それから、落ちるときに切ったのか、額からこめかみにかけては大きな裂傷。
開いた傷からは骨が見え、流れる血は容易に止まる様子がない。
そして、何より辛いのは、木の幹に強打した腰。
クリエイト・イメージをかけた直後、強烈に痛み出し、そのまま立ち上がれなくなってしまった。
おそらく、しばらくして多少痛みが引いてくるまでは、移動もままならないだろう。

(助かったのはいいですが……状況は厳しいですね)

やらなければいけないことは無数にある。
応急手当と当面の安全確保。
城にいたはずの仲間、レックス、イヴ、さくらの状況確認。
三度戻ってくるかもしれない白銀外套の怪人に対する備え。
エトセトラ。エトセトラ。

「とりあえず、できそうなのは応急手当と……」

ベルカナはランドセルから救急用品とともにメモ帳と鉛筆、それから名簿を取り出す。
いくら苦しい状態にあるとはいえ、これだけは聞き逃すわけにはいかない。
遠くにいる知り合いの安否を確かめるほぼ唯一の手段であり、憎き悪の魔人の数少ない手がかりなのだから。





間もなく、二回目の放送が始まった。









【アルルゥ@うたわれるもの 死亡】
294Sneak Attack!!(後編) ◇PJfYA6p9PE:2010/04/23(金) 21:33:03 ID:L8RjXXhZ
【F-3/城内/2日目/早朝】
【木之本桜@カードキャプターさくら】
 [状態]:魔力消費(中)、疲労(中)、核鉄二つで回復中
 [装備]:核鉄『シルバースキン・アナザータイプ』@武装錬金、核鉄LXX70(アリス・イン・ワンダーランド)@武装練金、
     クロウカード『水』『風』、リインフォースII@魔法少女リリカルなのはA's
 [道具]:基本支給品×2
 [服装]:梨々の普段着
 [思考]:……行かなくちゃ。
  第一行動方針:戦闘の現場に駆けつける。
  第二行動方針:雛苺を止めたい、約束を守りたい、彼女にこれ以上殺人を起こさせないようにしたい
  基本行動方針:状況を把握する。雛苺のそばにいてあげたい。
 [リインフォースIIの思考・状態]:???、梨々の知り合いの情報を聞いている


【F-3/城門前/2日目/早朝】
【蒼星石@ローゼンメイデン】
 [状態]:金糸雀のローザミスティカ継承、チャチャゼロの部品と人形契約により四肢を維持、
    ローゼンメイデンとしての機能失調、泥塗れ、精神的に激しい衝撃、それでも進む意志
 [装備]:庭師の鋏@ローゼンメイデン、戦輪×4@忍たま乱太郎
 [道具]:基本支給品×2、金糸雀のバイオリンと弓@ローゼンメイデン、ジッポ、板チョコ@DEATH NOTE、素昆布@銀魂
     旅行用救急セット(消毒薬と針と糸)@デジモンアドベンチャー、トンネル南側入り口の鍵
 [思考]:……タバサ、無事でいて。
  第一行動方針:城を探索する。
  第二行動方針:タバサ達に謝りに行く。
  第三行動方針:エヴァを引き戻すための何かを探す。
  基本行動方針:人の心を護る。
 [備考]:現在蒼星石の四肢はエヴァとの人形契約により動いています。
     蒼星石の自由に動き、エヴァにとっての負担もほぼ有りませんが、
     昼間のエヴァの魔力の減衰や、死亡によって影響を受ける可能性は有ります。
     エヴァと情報交換しました。少なくとも島を覆う結界や地下に本拠地があるであろうことは聞いてます。
  ※ジェダ達に死亡したと思われています。首輪の中のP-Beeも眠っています。そのことに蒼星石は気付いていません。
295Sneak Attack!!(後編) ◆PJfYA6p9PE :2010/04/23(金) 22:47:36 ID:bVvG1P4M


【F-3/城地下迷宮/2日目/早朝】
【南千秋@みなみけ】
 [状態]:疲労(大)、極度の人間不信、仲間を持つ者への憎悪
 [装備]:ロングフックショット@ゼルダの伝説/時のオカリナ、シルバースキン《核鉄状態》@武装錬金
     首輪探知機、ルーンの杖(焼け焦げている)@ファイナルファンタジー4、
 [道具]:基本支給品×7(食糧、水のみ六人分)、祝福の杖(ベホイミ残1回)@ドラゴンクエスト5、
     青酸カリ(半分消費)@名探偵コナン、光学迷彩(使用可能まであと3時間)@絶対可憐チルドレン
     的の書かれた紙×5枚@パタリロ!、太一のゴーグル(血がついている)、替えのパンツ×2枚、
     ころばし屋@ドラえもん、小銭入れ(10円玉×4、100円玉×3) インデックスのメモ、ご褒美ランドセル
     F2000R(残弾12/30)@とある魔術の禁書目録、 FNブローニングM1910(残弾0)、飛翔の蝙也の翼@るろうに剣心、
     グラス×5、爆弾石×2@ドラゴンクエスト5、ヴォ―パルソード@TOS、スタンガン@ひぐらしのなく頃に
     タマヒポ(サモナイト石・獣)、ワイヴァーン(サモナイト石・獣)@サモンナイト3、
     クロウカード『泡』『駆』@カードキャプターさくら、アタッシュ・ウェポン・ケース@BLACK CAT
     海底探検セット(深海クリーム、ヘッドランプ、ま水ストロー、深海クリームの残り、快速シューズ)@ドラえもん
 [思考]:地下通路を行ってみるか?
  第一行動方針:安全な撤退の方法を考える。
  第ニ行動方針:他者を利用しつつ、殺し合いを促進させる。危険因子はその都度排除。心は誰にも許さない。
  第三行動方針:仲間を殺されたと知ったイヴの反応が見たい。
  第四行動方針:グレーテルには、もうできる限り関わりたくない。
  第五行動方針:全て終わったら、八神ヒカリに形見のゴーグルを渡したい(自分が殺した事実は隠す)?
  基本行動方針:優勝狙い。優勝のご褒美で“殺し合いに参加していた自分”を消してもらい、元の世界に戻る。
 [備考]:グレーテルに対し、シルバースキン以外の手の内をほとんど明かしていません。
     グレーテルの再生能力、エネルギードレイン能力を把握しています。
     木之本桜はレックス達に殺されたと思っています。
     首輪探知機に映る桜と蒼星石をレックスとイヴだと誤解しています。

     ※F-3/城中庭に無敵砲台@ドラえもんが設置してあります。F-3エリア内なら自由に砲撃が可能です。


【G-3/城東の断崖中腹/2日目/早朝】
【ベルカナ=ライザナーザ@新ソードワールドリプレイ集NEXT】
 [状態]:疲労(極大)、精神力消耗(大)、全身にいくつかの打撲、額に裂傷、腰に激痛(暫く移動不能)
 [装備]:ネギの杖、果物ナイフ@DQ5、ゴロンの服@ゼルダの伝説、レースのビスチェ@DQ5、
 [道具]:支給品一式×4、懐中時計型航時機『カシオペア』@魔法先生ネギま!、黙陣の戦弓@サモンナイト3
     テーザー銃@ひぐらしのなく頃に、爆弾石×1@ドラゴンクエスト5、魔晶石(15点分)@ソードワールド、
     消毒薬や包帯等、ツーカー錠x3@ドラえもん、マジカントバット@MOTHER2、パワフルグラブ@ゼルダの伝説
     GIのスペルカード『交信』@HUNTER×HUNTER
 [服装]:ゴロンの服。その下にレースのビスチェ
 [思考]:とりあえず、放送を聞くしかありませんか。
  第一行動方針:放送を聞き、仲間たちの安否を確かめる。
  第ニ行動方針:イエローが無事だった場合、『交信』でイエローと連絡したい。
  第三行動方針:イエローと合流し、丈からの依頼を果たせるよう努力はする(無理はしない)
  第四行動方針:仲間を集めたい(イエローの友人、タバサの捜索。簡単には信用はしない)
  第五行動方針:出来れば睡眠で精神力を回復させたいが……
  基本行動方針:ジェダを倒してミッションクリア
 [備考]:葵が死んだことを知りません。
     レベッカ宮本を『フォーセリアのレッサー・バンパイア』だと考えている?

     ※G-3/城東岸にベルカナの惨殺死体の幻覚が投影されています。
296 ◆PJfYA6p9PE :2010/04/23(金) 22:48:47 ID:bVvG1P4M
書き込めたので自らラスト1レスの投下を行いました。
代理投下をしてくださった方、ありがとうございました。
297創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 23:04:27 ID:OGobLoeL
投下乙!
アルルゥウウウウウウウ!!!
あまりにも良い子すぎて死ぬと覚悟してたけど覚悟が足りなかったぜ!
おのれ千秋許すまじ。
298創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 23:07:07 ID:t9CpFXWD
投下乙。
千秋が落ちるとこまで落ちたなぁ
蒼星石やさくたたちの動向がキーになりそうだな
299創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 23:36:11 ID:L8RjXXhZ
投下GJ。みぎゃあああああアルルゥウウウウウウウ!
レックスがイヴを選ぶかアルルゥを選ぶかがそのまま命運に繋がってしまった……
いやな予感はヒシヒシ感じていたけどさぁっ!
ベルカナさん久々のバトルはなかなか味わい深かった。無敵砲台の落とし所もうまくやったなと感じました。
光学迷彩やシルバースキンと相俟って正体不明の恐怖感がいい塩梅に現れてたしね。
各人ばらけたことで放送後の動かし方も面白くなりそう。
300創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 03:02:39 ID:LYLZOTPy
投下乙です

ああ、これは上手いわ…
アルルゥはここで脱落か
千秋はもう堕ちるとこまで堕ちたな。迷いはもう無い…
ベルカナのバトルといい道具による演出とか実にいいわ
GJ!
301創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 12:36:38 ID:jtU79dY6
アルルゥ…いい子だったのに…
放送聞いたレックスがどうなるかなあ
結果的に判断ミスになってしまったわけだし
302創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 15:51:11 ID:QZrMG5px
投下乙。
ベルカナw
生きててよかった…ファンブルで死亡じゃ間抜けすぎるw
レックスの選択はアルルゥの命運を決めちまったか
どうなるか先が楽しみだ
303創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 16:53:02 ID:7tSnF32g
ところでしたらばで禁止エリアを何処にするか議論されてるな
少し早いが何処がいい?
304創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 15:20:17 ID:OQKUA/Oc
投下乙。
元ネタ知らないし、女だけど千秋に惚れそうだよ。
ブラックで複雑な心を持つヒール好きにはたまらないキャラになっている。
いや、けっこう前からそうだったけど、これはもう戻れないの確定って感じで。
305創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 16:55:15 ID:xuZKL8fI
もうパタリロと再会しても改心はないな
でも、だからこそ今の千秋と再会させたい
306 ◆Xdenpo/R4U :2010/04/25(日) 18:37:21 ID:mZXx1hEJ
投下します。
307死が二人を分かつとも ◆Xdenpo/R4U :2010/04/25(日) 18:38:36 ID:mZXx1hEJ
アイツもチョコを気に入っていた。俺が出会った死神、シドウのことだ。
マフィアを率いてキラを追っていたころ、俺はチョコを取引材料に
シドウから死神の情報をつぶさに聞き出していた。
その中で一笑に付したものがある。
『人間に恋をすると死神は死ぬ』
酒のせいもあっただろう。その場にいたマフィア仲間で口を閉じていられたやつはいなかった。
シドウ自身、真偽の分からない与太話だと言っていた。

そんなつまらない話を、俺は今、思考の海に浮かべている。
一人の美しい死神を見上げながら。
俺に裁定を下さんとする、俺が仕立て上げた俺の死神だ。
闇に浮かぶ白い衣装は目に鮮やかで、女の持つ官能性を余すことなく引き出し。
当惑を抑えられていない瞳はか弱い小動物のように愛らしく。
熱に浮かされた頬と唇は誘っているようにしか見えない。
最高の気分だった。
今まで、これほどまでに享楽的な勝負に身を投じたことはない。
ベットは互いの命。俺が勝てばおまけで女の奉仕もついてくる。
間もなく結果が出るだろう。
目の前のこの死神も。
恋をすれば本当に死ぬのだろうか?



    *  *  *



メロとブルーの視線は絡み合い、そして。

「……できないわよ」

ブルーは折れた。
降伏するかのように手を差し出し、メロに肩を貸し始めたのだ。
つい先ほどのように。

「どういうつもりだ」

予想でも予期でもない。返答を予知しつつ、メロは問う。
痛快だった。
叶うなら両肺の空気をあまさず笑いに置換したいほどに。
それが仮初の感情であっても何ら構わない。
今このときは確かにブルーは極上の競争相手であり、魅力的な獲物だったのだから。しかし、

「……るの」

だからこそ、分からなかった。
ブルーの小さな口から零れた言葉の意味が。

「何を、言っている……?」
308死が二人を分かつとも ◆Xdenpo/R4U :2010/04/25(日) 18:39:18 ID:mZXx1hEJ
さしものメロも、聞き返さずにはいられなかった。
そんなはずはない、どころの話ではない。
冷徹な心と計算高い欺瞞でできた鎧を自ら身にまとい、
魂すらも篭絡させんとするメロの計略という枷をはめられ、
飛び方など疾うの昔に忘れているはずなのに。その言葉には、

「弟がいるのよ」

メロの全知をもってしても到達できない何かが、滲み出ていた。
全くもって理解できない。
なぜ、そんなことを口にする。
なぜ、そんな軽やかに言葉を紡げる。
なぜ、何の葛藤も懊悩もないかのように――――微笑んでいるんだ?
恐怖にも似た何かがメロの身体を駆け巡った。
同時に、自分の隣で肩を貸す存在が何者なのか確かめたくなった。
恐怖とは未知。未知は須らく、自分の前では既知とならなければならない。
しかし、分からない。
髪の香りが届くほど近くから、その横顔を見つめているというのに。
互いの体温が伝わるほどに、肌を触れ合わせているというのに。
分からない。
恐らく、まだ遠いから。
何枚もの手袋を嵌めたかのように、隔てるものが多すぎるから理解に至らないのだ。
もっと近く。
もっと強く。
心を揺さぶったあの唇に触れさえすれば、きっと全てが――
(――――っ!?)
空いている手を彷徨わせかけたところで、理性が最大級の警鐘を打ち鳴らした。不味い、と。
どんな色仕掛けにも耐え凌いできた防波堤が、ただ一度の微笑みで瓦解寸前にされたのだから当然だった。
(薬が、回りきったのか? 違う、不合理だ、それだけのはずがない……!)

「正確には弟みたいな存在だけど、ね」

そんなメロに構うことなくブルーは彼方を見やる。

「……さっきのあなたを見ていたら、なぜかあの子と重なって見えたのよ。
 ちょうど、今みたいに真っ暗で、出口も分からないような道を歩いていたとき、
 あの子とこんなふうに支えあいながら歩いたことがあったなぁ、って。
 そんなことを思い出したら何と言うか、……殺す殺さないなんてどうでもよくなっちゃったの」

そうしてブルーは再び、ここではないどこかへと想いを馳せ始めた。
309死が二人を分かつとも ◆Xdenpo/R4U :2010/04/25(日) 18:40:06 ID:mZXx1hEJ
メロはやりすぎた。あるいは効果を見誤っていた。
バカルディと媚薬がもたらしたメロへの慕情。
それらは極限状態にあったブルーにとって、存在の死にも等しい劇物群だったのだ。
ブルーは全てを切り捨てるつもりだった。
グリーンやイエローと対峙した際に断固たる解答を提示する自信は持てなかったが、
それ以外は全て利用し、使いつぶし、泥水をすすってでも生きて帰るつもりだったのだ。
だというのに、メロを殺せなかった。
薬物の影響があるにせよ、ブルーは打倒ジェダのために命を差し出すだけでなく、
想いと信念すらも託してきたメロを殺せなかったのだ。
それどころか、圧倒的な能力をどこまでも使命に殉じさせることができるメロに対して
敬愛の念すら生まれていた。
この人間を殺せない。
一度そう考えてしまえば築き上げた牙城はあっさり崩壊した。
一人殺せなければ、仲間を、グリーンもイエローも殺せなくなる。
帰るために、両親やシルバーと再び会うために優勝することができなくなる。
なら、本来の自分に化えろう。
たとえ手遅れだとしても、どれだけ多くの罪にまみれ償う方法などなかったとしても、
殺せない、殺したくないという想いを抱えて立ち止まるくらいなら、今の自分を脱ぎ捨てる。
マサラの図鑑所有者としての気質を呼び起こし、
メロに感じ続けていた圧倒的な敗北感、威圧感をそのまま強烈な尊敬と親愛に転化させる。
均衡を保とうとするブルーの精神は、数多のドラッグの力を借りて
自身の進化プロセスに一貫性を持たせようとフル稼働した。
その結実が、メロの理性と野望に牙を剥く。

「……もう限界だと思うの」

ブルーはそう切り出した。

「それが分かっているから、あなたは自分の命を捨てて、アタシを生かそうとしたんでしょ?
 あなたの実力は認めるわ。けど、きっとそれだけじゃもう進めないのよ。
 この島のモンスターにも、ジェダにも届かない。たどり着くより早く、擦り切れて消えてしまうわ。
 現に、アタシたちの身体はボロボロなんだから」

なぜか、メロには理解できた。
それらは正しい。正しいが、ブルーの本心は別のところにあると分かってしまった。
重ねた言葉は論理の正当性を得るための踏み台に過ぎない。

「だから……ねぇ、メロ。今からでも仲間を作ってみない?
 これでもアテはあるのよ。融通の利かないところと甘いところがある2人だけど、
 きっと頼りになるわ。だから――」

背筋が粟立つ。
聴いてはいけないと思った。
見てはいけないと思った。思うだけで身体は何一つ動かなかった。その結果、

「これからもアタシと一緒に、歩いていってくれないかしら」

狂った。

耳が腐った。透き通るように侵入してくるその声で。
目が爛れた。ただ純粋でほどよく品のあるその微笑で。
心が潰れた。幾重にも張り巡らせた論理防壁は何の役にも立たなかった。
ブルーは俺だけのために、まだ誰にも見せたことのない宝物を見せている。
そう考えるだけで、狂おしい想いの奔流で息をすることもできなくなりそうだった。
確信がある。
今、このときこそが呪縛の最登頂。
この局面を乗り切れば、あとは緩やかな下降線を辿り、元の自分に戻れるだろう。
路傍の小石以上に意味のない仮定だ。
この慕情を幻にしてしまうくらいなら死んだほうがマシだとさえ思えた。そうだ。
310死が二人を分かつとも ◆Xdenpo/R4U :2010/04/25(日) 18:40:54 ID:mZXx1hEJ
(俺は、ブルーと一緒に歩いていく……!)

本能が身体を支配し、脳の制御を奪いにかかる。
理性は沈黙した。
ブルーが、愛しい。
だが、抵抗をやめた理性は別の腹を突いてきた。

――――コイツじゃないだろう、と。

理性が思考に刷り込みをかけてくる。

(オマエが、全ての策と想いを託そうとした女はコイツじゃない。
 打算を投げ捨て、易々と心を覗かせ、どこにでもいるような
 凡百の女がするような微笑を浮かべられるヤツなんかじゃないはずだ。
 分かるか? オマエが愛する女はここにいるが、オマエが認めた女はもういないんだ。
 そんな荷物を抱えて打倒ジェダを果たそうとするなど笑わせる。
 共に歩きたければ歩くがいい。
 ジェダにも、キラにも、ニアにもLにも届かずに朽ちることが望みならな。
 オマエが今まで散々蔑んできた愚者共と何一つ変わらない。
 情にほだされ愛に雁字搦めにされ、証一つ立てずに汚泥に沈んでいったヤツらと同じだ。
 もう一度言う。
 打倒ジェダか、ブルーの想いか。手に入るものは二者択一だ)

メロは考える。
ブルーを愛している。ブルーもまた、愛してくれている。
奇跡のように紡がれたこの想いを露と消すことなど最早不可能。
しかし、生まれたときからずっと付き合ってきた理性だ、
告げたことが事実であることも痛いほど理解している。


思考時間において数瞬、実時間においては一瞬。
理性と本能が火花を散らし『メロ』は答えを弾き出した。


   *   *   *


再び動きが生まれた。
男は肩を借りていた女を突き飛ばし、馬乗りになりながらその細い首元へと手を伸ばす。
絞首、ではない。狙いは女が身につけているマフラー。
抵抗はなかった。
男は剥ぎ取ったマフラーを剣に変え、静かに女と視線を通わせ合う。
そうして、一連の動きが終わりを迎えた。
雨音が情景を塗りつぶす。

「……あーあ。少しだけ、こうならないことを期待していたんだけどなー」

取り乱した様子はなかった。一欠けらの未練はあった。

「いいわよ、メロ。アタシは既にあなたに負けている。
 初めて会ったときも、……あなたを殺せなかった、今も。
 でもね、これはアタシが自分で望んだ選択なの。後悔はないわ。
 あなたを信じるって決めたし、あなたが無益なことを決してしないことも分かっている。
 アタシが足手まといでジェダに至る道の障害になるなら、遠慮なく殺せばいいわ」
311死が二人を分かつとも ◆Xdenpo/R4U :2010/04/25(日) 18:41:43 ID:mZXx1hEJ
視線が再度、絡み合う。
ブルーは瞳を逸らすことなく口元に笑みすら湛えていた。
メロもまたその瞳を覗き返し、心中では場違いな苦笑を漏らしていた。
あぁ、こんな些細なことでも高揚感を感じてしまうのか、と。
覗き込んだブルーの瞳の奥には、小さな輝きが沈んでいた。
思えば、止めを刺したのはこの光だったのだろう。
ブルーと初めて会ったときには埋もれていた光だ。
ゆえに錯覚した、ブルーも自分と同じ世界に身を置き、同じものを見ているのだと。
だが違った。
闇の中を生きてきたにも関わらず、ブルーはずっと光を抱き、求め続けてきたのだ。
近しい存在であるからこそ、その小さな差異にメロは鮮烈に惹かれた。
己の意志を託すためだけの器、精巧精緻な代行体に仕立て上げるという
当初のデザインとはかけ離れているが、これはこれで美しい作品だった。
史上に残る画家であろうと手を加えるのが躊躇われるほどの逸品だ。
そんな不可侵領域に、今から足を踏み入れなければならない。
最高だ。実に背徳的で、征服欲が満たされる。
こんな気分、他の女で味わったことなどなかった。

「ブルー。おまえは、自ら人を手にかけたことがあるか?」

最初から返答を待つつもりはなかった。
ただ、慈しむように組み敷いていたブルーの手を握る。

「ないなら、――――許せ」

メロは強く口を結んだ。ブルーは握られた腕に空でも落ちたかのような衝撃を憶えた。
咲いたのは赤。
ブルーの頬に飛散し、握られた彼女の手とメロ自身をぬるりと染め上げるものの色だった。
身も凍える雨の世界で、儚くも熱いものがブルーの真上から降り注ぐ。

「メ、ロ……?」

メロは風の剣をブルーに握らせ、その切っ先でメロ自身を貫かせていた。
一瞬の静寂。
ぐらりと。メロがスローモーションのように傾いでいく。
そのままブルーのもとへ覆いかぶさるように倒れこむ、
それも大いに魅力的なことだとメロは考えたが、彼はそうしなかった。
最後の力で本当に大事なものを守るように、ブルーを避け、その隣に転がり込むように仰向けに不時着した。
同時に、命を吐くような咳が落とされた。

「どうして!? あなたが……今死ぬことなんてないのに!」

覚醒し飛び起きたブルーは傍らのメロに問うた。

「おまえのおかげで、決心がついた。おまえなら大丈夫だと、な」

天を仰ぎながら、メロは語る。

「理由は先ほど告げたとおりだ。一人では満足に動けない俺を抱えていたら、共倒れになる。
 ……早くここを離れろ、ブルー。厄種やエヴァンジェリンがいつ現れるとも限らない。
 使えるものは持っていけ、……といっても首輪以外にはローブくらいしかないか。
 それでも構わなければ持っていけ。俺の命は餞別代わりにおまえにくれてやる」
「そんなものいらなかったわ!」

雨とは違う水滴が、メロの頬に零れ落ちた。
冷たくもなく、熱くもなく、ただ暖かかった。
312死が二人を分かつとも ◆Xdenpo/R4U :2010/04/25(日) 18:42:27 ID:mZXx1hEJ
「アタシは、あなたと……!」
「みなまで言うな。おまえの気持ちは理解している」

メロは彼らしくもなく視線を背けた。
しかしそれも僅かのこと。瞬き一つでいつもの力強さを取り戻し、静かに言い聞かせる。

「そして、みなまで言わせるな。気に入らない女に俺は俺の遺志を預けたりなどしないし、
 ……命だって懸けはしない。
 おまえはこれから俺ができなかったことを俺の代わりにやらなければならないんだ。
 俺の今の気持ちくらい推し量れなくてどうする」

メロに叱咤され、ブルーは今、何をするべきか考えた。
最早言葉はいらない。
そっとメロの手を握り。
涙と血の化粧をぬぐうこともなく、ただただ静かに微笑みかけた。
言外に大丈夫だと伝えるように。

「それでいい。……合格、だ」

心が満ち足り、笑みとなって溢れた。
メロは安らかに目を閉じる。



   *   *   *



懸念していたことがあった。
ブルーは確かに人を裏切ることができる女だ。
親しい人間にさえ嘘を吐き、翻弄することができる。
騙り、偽り、謀り、誤魔化し利用して陥れることができる。
だが、――本当に人を自分の手で殺せるのかどうかは疑問だった。
ブルーが何の躊躇もなく息をするように人を殺せるなら、エヴァンジェリンが去った後、
俺はブルーに策を仕掛ける暇もなく殺されていたはずだ。
その証拠に、ヤツの中には守るべき良心ともいうべき何かが潜んでいた。
結果的にそのときには都合が良かったが、それでは俺の遺志を託すに値しない。無能な足手まといなどいらない。
しかし生憎と薬漬けにされた本能はブルーの排除を拒みやがった。
ブルーの些細な仕草一つで、俺は無反応を装うことができない。
そしてひとたび反応してしまえば、ブルーはそれを敏感に受け取り、更に魅力的な仕草を見せる。
あとはその繰り返し。あたかもハウリングのように、互いの恋慕は肥大化していったのだろう。
俺は苦悩した。
ブルーを殺さず、ブルーの愛をそのままに、ジェダに打ち勝つための道を作る。
そんな連立方程式の無理解を探し求め、至った。
ブルーに覚悟を決めさせる。
何も参加者を皆殺しにしろと言っているわけではない。
ただ、殺すことが必要なときに躊躇うようでは駒としては木偶もいいところだ。
だから俺はこの身を差し出すことにした。
ブルーの恋慕を一身に受けるこの身体を、ブルー自身の手で破壊させる。
そうすれば、一度踏み越えてしまえば、こいつに殺せないものはなくなるだろう。
いくつかの付録もある。
ブルーはこのことを一生抱えていくのだ。
俺の身体を貫いた感触と、その重さを。
手を伝う夥しい血の流れと、その熱さを。
ブルーの最初の人間になったのかもしれないなら、尚のこと愉快だった。
あいつは生涯俺のことだけを見ていればいい、その材料が増えるなら本望だ。
これが俺の解答。理性でも、本能でもない。それらを統合した『メロ』の解答だ。
313死が二人を分かつとも ◆Xdenpo/R4U :2010/04/25(日) 18:43:23 ID:mZXx1hEJ
俺の死は、ブルーの中の光に影を落としただろうか。
死を前にしてそこだけが分からず、微かに気がかりだった。
しかし、どちらでもいいと思った。
俺の遺志は間違いなく託された、ブルーはその想いを裏切らない。
遂行方法がどんなものであろうと何ら問題は感じなかった。
仲間や家族というものを知っているブルーのほうが、存外俺よりもうまく他人を使えるのかもしれない。
精々自由にやればいい、おまえはきっともう飛んでいけるのだから。
もっともその空はどこまで行っても俺の檻の中だがな。
そう、おまえは俺のものだ。
おまえの怒りも恐れも。
この島で誰にも見せたことがなかっただろう涙も微笑みも。
……喜怒哀楽全て、俺だけのものだ。

あぁ、そうか。

今なら分かる。死神が愛で死ぬのは紛れもない事実だったのではないかと。
なにせ俺自身ありえないと考えてきたというのに、愛に引きずられてこの様だ。
所詮、俺もただの人間だったのかと思わなくもないが、この衝動に打ち克てる存在がいるとも思えなかった。
それにこんな気分で死ねるなら、なるほど、悪くはない。
俺は無理だった。だが俺にはブルーがいる。
俺への愛を完璧に内包し。俺の策と遺志を寸分たがわず受け継いだ俺の死神。
ブルーが愛で死ぬことはないだろう。そうならないように、俺が仕向けた。
あいつの心に他のものを介在させる余地を消したのだから、器の中を盲愛で満たすことで。
そんな工作も、これで終わりだ。
Lを追いかけ、ニアと競い、キラと戦った生涯の幕引きだ。あとはうまくやれよ、ブルー。


ここに。俺自身の死を以って、俺の作品は完成を迎える。


【メロ@DEATH NOTE 死亡】



【D−3/森/2日目/早朝】
【ブルー@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:全身に骨折、打撲、擦過傷等多数(以上応急処置済み)、精神疲労(中)、激しく動揺
    メロに惚れた。びしょ濡れ。
[服装]:新体操で使うレオタードに、ジャージの上だけを羽織った格好(メロの血が諸所に付着)
[装備]:風の剣(マフラー状態)@魔法陣グルグル、シルフスコープ@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]:支給品一式×3(食料、水分少し減)、
    ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン(やや不調)
    年齢詐称薬(赤×3、青×3)、G・Iカード(『聖水』)@H×H、チョークぎっしりの薬箱、
    Lのお面@DEATH NOTE、マジックバタフライ@MOTHER2、
    シャインセイバー(サモナイト石・無)@サモンナイト3、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL
[思考]:……メロ。
基本行動方針:メロの遺志を継ぐ

・以下の旧方針は一時凍結中(以降の書き手にお任せ)
第一行動方針:イヴと合流できてまだ利用価値があるようなら、上手く利用する
第二行動方針:グリーン、イエローのことが(上の行動方針に矛盾しない程度に)心配

[備考]:
 イヴの心変わりに気付いていません。イヴがGIのカードを使って脱出した可能性に思い至りました。
 頑張って光子朗の考察内容を思い出しました。どの程度思い出したのかは未定。
 メロの考察を知っています。
 ターボエンジン付きスケボーは、どこか壊れたのか、たまに調子が悪くなることがあります。
314 ◆Xdenpo/R4U :2010/04/25(日) 18:44:24 ID:mZXx1hEJ
投下終了です。ブランクたっぷりなので何か至らない点ありましたらどうぞ。
315創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 19:22:59 ID:uAbkOT5t
投下乙。
何だか甘酸っぱい感じだけど
2人はステルス系。
ギャップがいいねと思った。
316創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 21:10:28 ID:hGHTuYfG
投下乙!

殺されるかとおもったら殺されなくて、
それどころか自ら死を選んで決意させるとか……普通に精神がやばいな、メロ。
デスノート自体が主要人物は皆精神が常人とはちがうんだけどw

またショタ死か!!
いやまあ、メロはショタではないと思うけど。
これで今はもう男女比が1:5になったんかな?
ニケとかメロとか、孤立したところから死んでいくなぁ……
317創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 21:44:10 ID:xuZKL8fI
投下乙

確かにデスノート勢は常人とは精神がかけ離れてますねw
自分の死も計算に入れて誘導するとは…
しかしロワの全員だけどブルーも最初のスタンスから大きく変化したな…
318創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 22:44:25 ID:KCLYhFqI
投下乙。
苦く切ないいい話だった。
メロはニアと同じく仕組まれた恋を理由にして逝ったか。
ニアが求愛を拒絶して殺されたのに対し、メロは求愛を受け入れて自殺。
似た者同士だが対照的な二人をよく表した死に様だね。

そして、ブルーが一瞬にして綺麗になってて吹いた。
きれいなジャイアンを目の当たりにしたときののび太の気分だw
319創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 23:26:18 ID:zwNFrmbu
投下乙
メロが死んだか……
そういえばブルーは双葉を殺したと思ってるんだよな
今リーチだと錯覚してるんだろうか

明日の朝投下される話でまた死人がでるだろうし、思ったより死んだな
320創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 23:50:09 ID:nJyMjiuZ
メロに惚れた。びしょ濡れ。wwww
321創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 00:41:26 ID:OnM09QjV
ああ、確かにニアと状況は似ているが対象的だわw
322創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 00:46:26 ID:iJKQC9pA
しばらく死人なかった反動が一気に来てる感じだな
323 ◆S4WDIYQkX. :2010/04/26(月) 02:34:56 ID:12lSL1Fv
投下を開始。
324想いは百秒で砕け散る ◆S4WDIYQkX. :2010/04/26(月) 02:39:02 ID:12lSL1Fv
電話の後。
一人早く起きていたリンクは皆の眠りを妨げぬよう、部屋の外の廊下に居た。
放送までの時間はそれほど無い。
仮眠に戻ることなくそのまま起き続け、思考していた。
自分が何をすべきなのか。
自分の役割が何であるかを噛みしめて、想う。

(僕の役目はみんなを護ることだ)

それは間違いの無い前提だ。
リンクは仲間達を護らなければならない。
数多の戦いを乗り越えてきたリンク最大の役目だ。
問題は、誰から護るのかということである。

(襲い来る敵から。殺し合いに乗ってしまった相手から)

それはある事柄を意味している。

(つまり、場合によっては仲間の翻意からも仲間を護らなきゃいけないんだ)

仲間の翻意。
正確には仲間であるはずの者の翻意からも、他の仲間を護らなければいけない。

(高町なのは)

そもそもそれは本当に仲間と言えるのだろうか。
仲間だと信じて良いのだろうか。

(君は一体、どんな想いを秘めているんだ)

それすらも解らないままに想いを秘めて。
朝を待つ。
窓から外を見てみれば、もう東の空が白くなりはじめている。
朝は目の前に迫っている。
もうすぐ放送が朝の始まりを知らせるだろう。
朝焼けだろうか、眩い光が木々の合間で煌めいて……。
(待て)

まだ日は昇りきっていない。
朝日には少々早すぎる。
それならこの輝きは何だ!?
「何か、来る!!」

数秒後、光り輝く最悪の敵が廊下の壁をぶち抜いた。
325想いは百秒で砕け散る ◆S4WDIYQkX. :2010/04/26(月) 02:41:00 ID:12lSL1Fv
「みんな起きて! 敵だ!!」

警告の叫びを上げてリンクは剣を抜き放つ。
コキリの剣。
子供の姿の自分にとっては丁度良い、長く使い慣れた剣だ。
自分の剣が手元に回ってきたのは幸運だった。
この島では愛用の武器と再会出来る可能性など極めて低いのだから。
大人の姿になれたなら最良の剣は聖剣マスターソードになるのだろうが、
(この姿の僕としてはこれが最良の剣だ)
子供の姿のリンクにとっては、コキリの剣こそ最良の武器だった。
自らの実力を引き出せる得物を手に敵を見据える。
濛々と上がる粉塵の中を視認する。

ソレは熱を帯びた赤銅の肌をしていた。
淡く輝く螢火の髪をしていた。
髪はまるで生き物のように蠢いて見える。本来の長さまで再生しようとするように。
絡み付いていた銀髪のウィッグが、伸びる髪に押されて落ちた。
喪服か、あるいはゴスロリ調の、黒いドレスを身に纏っている。
しかしズタズタのドレスだ。
心臓の直上には膨らみの無い肌が覗き、奇妙な黒い文字──∀IIIが浮かび上がっている。
左腕の袖も途中から無いし、他の部分もそこら中に破れ目が覗いている。
奇妙なことに、破れ目の下の赤銅色の肌には傷跡一つ見当たらなかった。
そして右手には巨大な突撃槍が握られていた。
穂先は何処かしら龍のような形状で凶悪な“顔つき”をしている。
怪物の手にあるそれは、まるで怪物の一部のようにも見えた。
その石突から伸びる飾り布は途中からエネルギーに転じ、光り輝いている。
まるで太陽の光のような、美しい山吹色に。

ヴィクタースリー・セカンド。
グレーテル。

残酷極まりない愉悦を浮かべて、少女の姿をした怪物は槍先を向ける。
幼き時の勇者へと、その切っ先を。
そこからは猛烈な殺意が吹き荒れていた。

知らない。
リンクはこんな怪物を知らない、はずだ。
だけどどうしてだろうか、見たことが有るように思える。
目の前の少女のような誰かと、何処かで戦った記憶、が。
それを思い出す暇など無い。
襲来した怪物は愉悦に歪めた口元から、天使のように美しい声で囁いた。

「天使を呼んであげましょう」

飛来から十秒。
それが開幕のベルだった。
326想いは百秒で砕け散る ◆S4WDIYQkX. :2010/04/26(月) 02:42:46 ID:12lSL1Fv
グレーテルは巨大な槍を手に突撃する。
リンクはそれを正面から迎え撃った。
半身だけずれて突撃を回避しながら、コキリの剣を振り下ろす。
停止、した。
「くっ」
読まれた。いや、力ずくで止まられた。
小さく息を吐く。
槍が届く間合いで視線が絡み合う。
それでも体勢は崩れていない。コキリの剣は小回りが利く、振りを戻すのは一瞬だ。
槍が振るわれた。
剣が振るわれた。
速度はグレーテルの方が上だったが、技量ではリンクの方が上回る。
斬り合いに関して言えば互いの速度は同等だった。
つまり。
(ダメだ、押し切られる!!)
巨大な突撃槍を手斧の如く振るえる剛力分、グレーテルの方が上だった。
数合でリンクは後退り、それでも。
その隙に誘い込んで、反撃に転じた。
相手が槍を振りかぶった瞬間に懐へと飛び込んで脱力感を堪えて剣を一閃したその瞬間に
衝撃が走り視界が弾み白く染まり重力を見失い居場所を見失い状況を見失い──。

皆が眠る部屋の壁に叩きつけられていた。

「ぐぁ……!?」

戦況に理解が追いつかない。
視界が揺れて意識が酔いに冒される。
脳が揺れて体が動かない。
襲撃から二十秒余り。
リンクが体勢を立て直すまでは数十秒。
永遠のように長い時間。
グレーテルは槍をリンクに向けて飾り布のエネルギーを爆発させて突撃しようと。

「させるかぁっ!!」
リンクの脇の扉が開き、アリサ・バニングスが飛び出した。
左手にステッキ、右手に秀麗な刀を握り締め、リンクの前に立って壁となる。
グレーテルはくすりと笑い、右手に突撃槍を握ったまま左手で何かを取り出した。
片手で握れるサイズの金属の塊。
リンクにはそれが何かは判らなかった。
しかしアリサの気配が緊張に強張る。

それは、拳銃である。

一瞬で引き金が引かれた。
轟音と共に銃弾が放たれる。
射線上にはアリサとリンク。
アリサが避ければ鉛弾はリンクの体を穿つだろう。
その状況でアリサの持つ贄殿遮那の白刃が。
閃いた。

鋭い金属音が響いた。
カラカラと音を立てて金属片が床を叩く。
カレイドステッキに支えられたアリサの剣術は、銃弾を断ち斬ったのだ。
流石に音速の銃弾を目視したわけではないけれど、
銃口から射線を読み、指の動きから刹那を測り、
巨漢の成人男性が振り下ろす大斧をも凌駕する運動量の銃弾を斬り落としたそれは、
絶技、
という他にない。
カレイドステッキの与える技は、力は、様々な補正が有れば上位の吸血鬼とすら渡り合えなくもない程のモノなのだ。
327想いは百秒で砕け散る ◆S4WDIYQkX. :2010/04/26(月) 02:44:18 ID:12lSL1Fv
「く、舐めんなっ!」
グレーテルは驚愕に目を見開き、しかし表情を笑みに変えて、続けて数度引き金を引いた。
アリサには、それ以上は防げない。
その表情には銃弾への怯えが浮かぶ。
その足膝には恐怖からの震えが見える。
僅かに崩れた体勢が“付け焼刃の達人”の限界だった。

ならば二度三度繰り返せば良いだけだ。
引き金は引かれ、銃弾は二度三度と放たれて。

見えない壁に防がれた。

部屋から飛び出してきたのはアリサだけではなかった。
高町なのはも目を覚まし、転がり出るように部屋から出てその片腕をかざしていたのである。

プロテクション。
物理攻撃に強力な耐性を誇る魔法の壁が続く銃弾を防いでいた。

数瞬の攻防だった。

グレーテルは笑う。
哂う。
嘲り嗤う。
「森鹿のシチュー。フィッシュアンドライスに紅茶を添えて」
拳銃を懐に戻し、突撃槍を両手で握り締める。
ヴィクター・スリーの手で振るわれる武装錬金の突撃ならば、プロテクションなど紙にも等しい。
戦車砲の如き破壊力は障壁ごと三人を粉砕しても余りある。
「ブレックファーストには贅沢かしら?」
「ワケわかんないこと言ってんじゃないわよ!!」
させまいとアリサが突っ込んだ。
贄殿遮那が振るわれる。
銃弾を切り落としても刀身には刃こぼれ一つ無い。この刀は完全なる強度を誇っている。
その斬撃に襲われてグレーテルは突撃を中止した。
代わり槍が振るわれて、宝具贄殿遮那と武装錬金サンライトハートが切り結ぶ。
襲撃からはまだ僅かに三十秒。

力はやはりグレーテルが圧倒していた。
それでもアリサは耐え凌ぐ。
付け焼刃でも今のアリサは達人で、超人だ。
人間を一薙ぎで粉砕する化物であっても、カレイドステッキの技術があれば立ち向かえる。
斬撃が服を食み、刺突が髪を掠めても、致命傷だけは受けまいとする。
それどころか幸運にも一撃分の隙が訪れた。
(今だっ!)
殺人が良い悪いなど斬り合いの最中には考える暇も無い。
アリサは渾身の斬撃をグレーテルの胸部に叩き込み。

切れ味の悪い包丁で大型トラックのタイヤに斬りつければこんな感覚が返るだろうか。
グレーテルの胸部には、肉すらも覗かない極々浅い傷が付いただけだった。

四十秒。たったそれだけしか経ってはいないのに。
「な……っ」
「私は、殺せないわ」
最悪の笑みがアリサを迎える。
確信と信仰に満ちた満面の笑顔で突撃槍がかざされる。
そして、
「だってたくさん殺してきたんだもの。たくさん命を取り込んだんだもの」
破滅が振り下ろされた。
328想いは百秒で砕け散る ◆S4WDIYQkX. :2010/04/26(月) 02:46:16 ID:12lSL1Fv
辛うじて贄殿遮那を間に挟み、それでも圧倒的な打撃が全身を駆け降りる。
腰が、膝が、体勢が崩れる。
ディバインシューターという叫びが響いた。
続く刺突が、突き立った。
アリサの右肩に深い傷が穿たれて、悲鳴と共に贄殿遮那を取り落とす。
「ネバーエンド。そう、私たちはネバーエンドなのよ」
更なる刺突が襲う二瞬前に、魔弾の一つがアリサの懐に飛び込んで一瞬静止して。
刺突が床を穿つのとアリサの体が跳ね飛ばされるのは同瞬だった。
なのはがアリサを受け止めて倒れこむ。
死んではいない、けれど。

グレーテルはコンクリート床に突き刺さった槍をあっさりと引き抜いた。
その視線が獲物の群れを品定めするように舐っていく。

リンクは立ち上がり、再び剣を構えていた。
事実上、現在グレーテルに立ちはだかれる敵は彼だけだった。

右肩から出血し粗い息を吐いて倒れているアリサは、既に戦力外だった。
出血量からして急ぎ治療しなければ命に関わるかもしれない。
奇妙なステッキがアリサさんと名を叫び、心配している様子だった。

遅れて起きてきたインデックスがアリサに駆け寄っている。
熱で消耗したその動きは遅く頼りなく、何の障害にもなりえない。

なのははアリサを抱き続けることもできず腕からこぼし、ただ呆然となっていた。
彼女は大凡無力だったのだから。

そう、高町なのははディバインシューターを放ちアリサを支援した。
グレーテルの攻撃を止めようとしたのだ。
放たれた魔力弾の数は三つに及ぶ。
しかし槍を狙った一つはグレーテルが振るう腕と交差しただけで傷一つ付けられずに砕け散った。
槍に直撃したもう一つが心臓を狙った槍の狙いを逸らし、
遅れた一つを使いアリサの救出したのは見事な芸当だったが、攻撃として無力な事実は変わりない。
ディバインシューターはグレーテルを傷つけることすらできなかった。

ヴィクタースリー・セカンド。
その赤銅の肌が圧倒的な強度で攻撃を阻む。
高町なのはにミニ八卦炉は無く、リンクに大人の体とマスターソードは無い。
その肌を穿てる武器など一つたりとも無かった。
襲撃から僅か一分足らず。
アリサは倒れ、グレーテルを斃す武器は無い。
──完全に追い詰められていた。

(どうすればいい!?)
リンクは刹那の時間で疾く思考を巡らせる。
アリサの敗北を見て、リンクは一つ理解していた。
今のがさっきの自分だ。
リンクはグレーテルに斬撃を命中させたが、グレーテルは意に介さず槍を振るったのだ。
どこまでも一方的な蹂躙だった。

それでも剣を握り対峙する。
仲間を置き去りにして逃げるなんて選択肢にすら浮かばない。
どうやって仲間を逃がすかなら考えた。
アリサは深手を負ったし、インデックスは高熱で消耗している。
足止めをするにしたって、一切傷を付けられないのでは難しい。
やろうと思えば、横合いからの攻撃を無視して逃げる者を襲えるのだから。
どうしようもない。
(ほんの少しでも痛みを与えれば違うかもしれないけど……っ)
リンクの視線が、グレーテルの胸元で止まった。
329想いは百秒で砕け散る ◆S4WDIYQkX. :2010/04/26(月) 02:49:30 ID:12lSL1Fv
そこは銃弾をも斬り落とすアリサの剣戟が打ち込まれた部位だ。
肉すら見えない、浅い傷が付いた場所。
一撃ではダメだった。
だったらもう一度刺突を打ちこめば?

(あそこを狙えばダメージを与えられる? でも、そんなこと出来るのか!?)
確かにリンクもアリサもグレーテルに一撃を命中させていた。
グレーテルの方も自らの強度を理解しているのか、威力が弱い攻撃には隙を作っている節がある。
それでも当てられるのは、どこかに当たれば良いという攻撃だ。
動いている相手の一点を正確に狙うのとは話が違う。
しかも全体重をぶつける必殺の突きでなければ話にならないだろう。
自殺覚悟で突撃しても成功するかわからなかった。

(勇者の拳で……いや、これも難しいか)
腕のリングに意識を向けて、やはり否定する。
緊張した状態から十分な威力を出す自信は無いし──リンクにはユーモアが足りない──攻撃の範囲も面だ。
当たりやすいのは良いが、一点は突けないし、相手の攻撃にも正面からぶつかってしまう。
ヴィクターと化し圧倒的破壊力を誇るグレーテルの突撃槍に正面から拮抗出来る者は、そうそう居ない。

(せめて動きを止められれば)
さっきもなのはの攻撃は槍先を狙い撃てた。
アリサにトドメを刺そうとした瞬間、遠距離からの攻撃は不意打ちの狙撃にも等しかったのだ。
だから当たった。
何らかの手段で動きを止めることさえ出来れば当てられる。
(そういえば、なのはは?)
リンクは脇目でなのはを見て……息を呑んだ。

       ◇

「…………ごめんなさい…………」
高町なのはは呆然となっていた。
襲来したグレーテルを見て、思い出していた。
それが誰であるかを理解していた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
自らが殺した一人の少年のことを回想していた。
あの、学校で遭遇した災厄の化身を。

江戸川コナンを犠牲にしてまでして殺した少年。
髪の色も肌の色も違うし、少年でなく少女だけれど、見間違えるなんてありえない。
忘れられるはずもない。
彼と江戸川コナンは、高町なのはが初めて命を奪った相手なのだから。

なのははその名前さえ知らない。
ただ、理解はしていたのだ。
わるい人だから殺していいわけじゃないし、そもそもわるい人でもなく、
ただ狂っていただけなのだと理解していたのだ。
それでも殺した少年だから、その死は高町なのはが背負わなければいけない死だった。

プロテクションで銃撃を防いだ時、その存在に気がついた。
アリサが殺されそうになって咄嗟にディバインシューターを放つことさえ戸惑いがあった。
例えどんな怪物であろうとも、高町なのはは彼女に対して罪を背負っている。

「さっきは撃ってしまってごめんなさい。
 あなたを……ううん、お兄さんを殺してごめんなさい。
 こんな言葉に意味を感じない人だって知っています。
 あなた達がどういう人間なのかを知っています。
 ずっと、生きることと殺すことが同じところに居たからそうなったことを知っています。
 たぶん、わたしのことも仇じゃなくて獲物でしかないってことを知っています。
 でも」
330想いは百秒で砕け散る ◆S4WDIYQkX. :2010/04/26(月) 02:56:23 ID:12lSL1Fv
今のなのはにはどうすれば良いのか判らなかった。
こんな時、少し前のなのはなら殺そうとしていた。
あるいは打ち倒し、戦う力を奪おうとしていた。
それをいけないというのならどうすれば良いのだろう。
なのはには見当もつかない。

『はやてに、謝ろう。コナンに、アイに謝りに行こう。
 君はコナン達に一度も謝っていない。死んだ人たちに謝っていない』

なのはの脳裏に反響したのはリンクの言葉だった。
なのははリンク達に依存することで殺し合いを否定したのだ。
それによって、どんな人間でも殺すのはいけないことだと信じられた。
その結論がこの行為だった。

謝ろう。
おねがいしよう。
話し合いをしよう。
だから。

「ごめんなさい。
 でもおねがいです。みんなを殺さないで」

ゆっくりと歩み寄る。
今度こそ話し合いを試みよう。
それがきっと正しい行動なのだと信じよう。
その行動を前にグレーテルは驚きの表情と、それから楽しげな表情を浮かべて。
なのははそれでも祈り続けて。

「あなた達にとってこんな話は笑い話なんだと思います。
 それでも、おはなしを」

突撃槍が振るわれた。

高町なのははリンクの足元まで吹き飛ばされて、倒れ伏す。
襲撃からはざっと八十秒と少しだけ。
グレーテルが嘲嗤う。
高町なのはの愚かさと無謀を嘲う。

「ねえ、東の方の国に踊り食いっていうものがあるそうよ」
リンクには理解できない。
邪悪に過ぎてあまりに装飾的な言葉を、断片からは理解できない。
グレーテルはその可憐な唇から愉しげに続きを綴る。
「海産物を生きたままお刺身にしたり、殻を剥いて食べるそうよ。とっても美味しいそうね。
 学校でも素敵な勇者さまでやってみたけど、この子も最後まで今の話を続けられるのかしら?」
「な……おまえ、まさかっ!?」
グレーテルの微笑が詰問を肯定した。
九十五秒。

そして、五秒間。
331想いは百秒で砕け散る ◆S4WDIYQkX. :2010/04/26(月) 02:58:09 ID:12lSL1Fv
リンクの胸に怒りが満ちる。
殺意が満ちる。
学校の素敵な勇者さま。
それはインデックスの仲間だったニケのことではないか。
だったら、目の前の相手は絶対に判り合えない敵だ。
分かり切っていた事実を再確認し、剣を握る指が柄に食い込む。
殺す他に無い敵だ。
怒りが血管を脈打たせ、殺意を体に充填させる。
九十六秒。

リンクは傷の一点に攻撃する手段も見いだせてはいなかった。
それでも倒さなければいけないのだ。
それが間違いの無いことならば、やり遂げるより他に無い。
一縷の望みに賭けて挑もうと、駆け出し──。
九十七秒。

「ダメ…………」
殴り倒されたはずの高町なのはが倒れこむように這いずってリンクの腰にしがみついていた。
微かに聞こえる殺さないでというか細い言葉。
リンクが、高町なのはを見た。
グレーテルが、獰猛な笑みを浮かべた。
九十八秒。

グレーテルが槍を手に襲い来る。
高町なのはからそれは見えない。
そしてリンクは──
この襲撃者は敵だ。
判り合えない敵だ。
邪悪にすぎる敵だ。
ニケを殺した敵だ。
殺意に溢れる敵だ。
必ず倒すべき敵だ。
殺すしかない敵だ。
邪悪な殺意に溢れ仲間を殺した今も殺そうとしてくる敵だから倒さねばならない殺さねばならない敵だから
こいつを殺さなければいけない倒さなければいけない戦わなければいけないなのにどうして邪魔をするんだどうして
だってこいつと戦わないと倒さないと殺さないと殺される僕も君も仲間達もみんな殺される護らなきゃいけない仲間が
だから──敵を見た。
九十九秒。

高町なのはは信じたくてグレーテルを信じたくてリンクの言葉を信じたくて人の想いを信じたくて
殺さなくてもいいと信じたくて世界の優しさを信じたくて戦いなんていらないと信じたくてだから信じて
信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて
信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて信じて
信じて信じて信じて信じて信じてグレーテルの殺意が迫ってリンクの剣が敵を敵を敵を敵を敵を敵は何処だ
敵は誰だ敵は君か敵は君なのかやっぱりだって君は殺してきたたくさん殺してきた今も殺そうと僕を殺そう
としてるそれにどうして君は理解しているんだあの狂気をどうして受け入れるんだあの悪意をあれはきっと
受け入れちゃいけないものだ受け入れちゃ壊れるものだ受け入れたら壊れているものだからやっぱりそうだ
それなら敵だ君は敵だ君が敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ
敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵だ敵なら敵なら敵なら敵敵敵敵敵敵敵敵剣が肉を裂く感触と血と
僕を見る瞳があなたを見る瞳が絶望と殺意とそれと殺意が迫って山吹色の光が切っ先が彼の僕の肉を穿って
誰かの悲鳴と慟哭と絶望と叫喚と狂気と殺意と殺意と殺意と殺意と殺意と殺意と殺意と殺意と殺意と殺意と
殺意と殺意と殺意と殺意と殺意と殺意と殺意と殺意と殺意と殺意と殺意と殺意と血が血が血が血が血が血が
血が血が血が血が血が血が血が血が血が血が血が血が血が血が血が血が血が血が血が血が血が紅い血が──



襲撃から丁度百秒が経過した。


332創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 02:59:16 ID:UsqeTJYS
333創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 03:05:22 ID:jsDuAVtf
支援
334想いは百秒で砕け散る ◆S4WDIYQkX. :2010/04/26(月) 03:06:36 ID:12lSL1Fv
ザッという音がした。
グレーテルが壁に開けた穴を抜け、人影が一つ飛び込んできたのだ。
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
自称最強の悪の魔法使い。
リンク達を護るため、他の悪を討つために、魔女たちに同盟を示唆しながら四散させた張本人。
つい先ほどヴィクターと化す前のグレーテルと戦い撃退した、夜に生きる吸血鬼である。
彼女は変貌したグレーテルが工場の方角に向かうのを見て、それを追ってここに来たのだ。
しかしグレーテルがヴィクターの飛行能力を使いこなし挙句にサンライトハートで加速までしたため、
彼女の飛行能力では若干の遅れが生じ、出発の時間差も含めて百秒の遅れが生じた。
たったの百秒だ。
例えば廊下など見晴らしの良い場所に出ず適当な部屋に隠れて、迎撃に出るのではなく待ち伏せれば過ぎ去る程度の時間。
救援の見込みなど薄いのだからそんな可能性は低かったが、一つ違えば何事も無く間に合ったほどの時間。
それだけの時差で彼女は戦場に辿り着き。
その光景を視た。

リンクの剣が高町なのはを斬っていた。
高町なのはは呆然と崩れ落ちて、ぐったりとなった。
そして。

グレーテルの突撃槍がリンクの頭部を粉砕していた。

紅い液体と赤い塊と白くて硬い欠片と白くて柔らかい欠片と灰色の塊と白く小さな球体と細い金糸の生えた肌色が
リンクの頭部だった場所から四散して壁にへばりつき少女達を赤く紅く染めていた。

それが一つの結末だった。

「そういう、事か」

エヴァは呟く。
悲壮と共に。
怨嗟と共に。
哀哭と共に。

「やはりそういうものか」

絶望と共に。
苦痛と共に。
悲嘆と共に。

「やはり正義とは、勇者とは、そんなものか」

正義の勇者の敗北を知った。
その儚さと、無力さと、愚かさを識った。

確かめ、実証されるところを観た。

何が悪の中ボスだろう。
それは最終的に正義が自らと大ボスに勝てることを前提としている。
正義という物がその前に過ち死ぬ愚かで弱い存在なら意味を為さぬ前提だ。
それでもこの道を貫くかどうか。
全てが今この瞬間はどうでもよかった。

だから正直に、胸の奥から溢れくる感情に身を委ねた。

「良いさ。貴様は殺してやるよ、バケモノ」

グレーテルに向けて氷のように凝固した憤怒を、叫んだ。

       ◇
335想いは百秒で砕け散る ◆S4WDIYQkX. :2010/04/26(月) 03:09:20 ID:12lSL1Fv
インデックスはそれを見ていた。
倒れ伏し、声も上げられないほどに消耗しながら。
喘ぎ、苦しみながら見ていた。

(ダメだよ、エヴァ……)

そして恐怖していた。
襲撃者の持っている能力と、この状況がもたらす最悪の組み合わせに。

インデックスは戦いに巻き込まれないよう、なのはの腕から零れたアリサを仮眠室に引きずり込もうとしていた。
呻き声を上げていたが、出血で一時的に意識が飛んでいたのか抵抗は無かった。
その途中で急激な脱力感に襲われ倒れてしまったのだ。
戦況を観察し続けて、やがてその原因を理解した。
最期にリンクとグレーテルが相対した時、グレーテルの胸には一筋の傷さえも残っていなかった。
いつのまにか再生し、消え失せていたのである。
見れば壁の穴の向こう、森の木々に前に見た時は無かったはずの枯れ枝が見えた。
全てが一本に繋がった。

グレーテルは周囲から生命力を吸い上げて自らの傷を再生していた。
即ち、エナジードレインだ。
その生命力は戦う力にも使われているのだろう。
グレーテルはそこに居るだけで周囲の者達を衰弱させ、力を増し続けていた。

とはいえ、本来は至近距離でなければこうも即効性を持つ力ではなかった。
健康な者ならこの距離でやられはしなかったはずだ。
だがインデックスは高熱と貧血で消耗していた。
微弱なエナジードレインに耐える体力すら残っていなかったのである。

深手を負ったアリサも同じことだ。
荒い息を吐くばかりで戦うなど以ての外だろう。
それどころかこのままエナジードレインを受け続ければ命に関わる。

更になのはも意識を失った様子で倒れている。
傷の深さは判らないが、精神的な理由かもしれない。動けないなら同じことだ。

インデックスもアリサもなのはもまともに行動出来ず、しかしまだ生きている。
それこそが最悪だった。

(私たちの事は見捨てなきゃいけないんだよ……)

それは裏を返せば、生命力のまだある、無力な存在が転がっているという事だ。
インデックスはグレーテルが周囲から力を吸い上げている現象に気づき、その“最悪”に気がついた。

この戦場で戦う限りグレーテルは力を増し続け、回復を続けるのだ。

(いくらエヴァでも、ここじゃ勝てないんだよ……!)

だからインデックスは祈る。
戦況が不利になれば、エヴァが苦渋の選択で自分たちを見捨ててくれる事を。
せめて一人でも生き延びてくれることを。

       ◇
336想いは百秒で砕け散る ◆S4WDIYQkX. :2010/04/26(月) 03:12:41 ID:12lSL1Fv
アリサには全てがわからなかった。

どうしてこんなことになったのかわからなかった。

やっと、なのはを引き留められた。
暴走し続ける友人を止められた。
その幸福を噛みしめて眠りに就いた。
だけど朝も間近に突如現れた敵が、リンクも自身も薙ぎ払った。
それでも話し合おうと試み、リンクを止めすらしたなのはを。

リンクが、斬った。

それはほんとうに緊急時だからとかそういう理由なのかもしれない。
あくまで振り払うための浅いものだったのかもしれない。

でも、どうして?

どうしてリンクは、敵を視るような目でなのはを見ていたのだろう。
どうして迫り来る襲撃者よりもなのはへと敵意を向けたのだろう。
まるで襲撃者よりなのはの方が恐ろしいみたいに。

なんで?

どうしてこんなことになったの?

絶望でも諦観でもなく、ただただ疑問が脳裏を塗り潰している。
掠れきった喉から、誰にも聞こえないような……か細い悲鳴をあげた。

「……………………なんでよ」

悪夢は百秒で訪れた。

【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ 死亡】


【A-3/工場/2日目/早朝】
【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:健康、左腕に傷の跡。ヴィクター化
    喪われた心臓の代わりに核鉄(サンライトハート)が埋め込まれている。
[装備]:サンライトハート@武装錬金
    ソードカトラス×2(1+12/15)(銀10/15)@BLACK LAGOON、ソードカトラス専用ホルダー
[道具]:基本支給品一式、塩酸の瓶×1本、毒ガスボトル×1個、ボロボロの傘
    ソードカトラスの予備弾倉×3(各15発、一つだけ12発)、バット、
    蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン、救急箱、エルルゥの薬箱の中身@うたわれるもの
   (カプマゥの煎薬(残数3)、ネコンの香煙(残数1)、紅皇バチの蜜蝋(残数2))、100円ライター
    スペクタルズ×8@テイルズオブシンフォニア、クロウカード『光』『剣』@CCさくら、
    コエカタマリン(残3回分)@ドラえもん、
[服装]:いつも通りの喪服のような黒い服。胸の中央に大きな穴が空いている。雨に濡れて湿っている。
[思考]:うふふ……あははは……
第一行動方針:エヴァと周囲の連中を殺す?
第二行動方針:千秋との再会を楽しみにする。千秋が「完全に闇に堕ちた」姿を見届けたい。
第三行動方針:機会があればまた紫穂と会いたい。2人きりで楽しく殺し合いたい。
基本行動方針:効率よく「遊ぶ」。優勝後はジェダに「世界のルール」を適用する(=殺す)。
[備考]:シルバースキンの弱点(同じ場所をほぼ同時に攻撃されると防ぎきれない)に勘付きました。
    「殺した分だけ命を増やせる」ことを確信しました。ただし痛みはあるので自ら傷つこうとはしません。
    銀の銃弾は微妙に規格が違う為、動作不良を起こす危険が有ります。使用者も理解しています。
337想いは百秒で砕け散る ◆S4WDIYQkX. :2010/04/26(月) 03:14:35 ID:12lSL1Fv
【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル@魔法先生ネギま! 】
[状態]:全身に痛み、左腕が殆ど動かない、魔力消費(中)
[装備]:フェアリィリング@テイルズオブシンフォニア
[道具]:支給品一式、手足の無いチャチャゼロ(半永眠)@魔法先生ネギま!
[思考]:殺してやる、殺してやるさ
第一行動方針:グレーテルを殺す?
第二行動方針:リリスと遭遇することがあったら、リリスを倒し身柄を押さえ、情報を得る。
第三行動方針:ジェダの居場所に至る道を突き止め、露払いをする。
第四行動方針:ジェダを倒そうと挑む者たちの前に立ち塞がり、討たれる。
基本行動方針:ジェダ打倒のために暗躍。ただし仲間は作らない。誇り高き悪として、正義の前に散る。
[備考]:梨花の血を大量に吸いました。雛見沢症候群、及び女王感染者との関連は不明です。
    ジェダ打倒を目指している者として、ニアの名前をグリーンから聞いています。
    パタリロを魔族だと思っています。名前は知りません
    紫穂の『能力』が、触れることで発動することを見抜きました。詳細までは把握していません。
    雲に隠れていても満月による補正は有るようです。

【インデックス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:高熱&貧血&エナジードレインによる消耗で行動不能、全身に軽度の凍傷、
    背中に大きな裂傷跡と火傷、足裏に擦過傷(共に応急手当て済み)
[装備]:水の羽衣(背部が横に大きく裂けている)@ドラゴンクエストX
[道具]:支給品一式(食料−1日分、時計破損)、ビュティの首輪、鉄製の斧@ひぐらしのなく頃に(?)
[服装]:私立聖祥大付属小学校の制服の下に水の羽衣。背中と足にシルクの包帯。
[思考]:逃げて、エヴァ……!
第一行動方針:どうにか、したい
第二行動方針:ヴィータを捜し、説得する。
第三行動方針:ニケ達と合流する。
第四行動方針:紫穂の行方の手掛かりを探す。エヴァの説得も諦めていない。名前しか知らないヤムィヤムィが少し気になる。
第五行動方針:落ち着いたら、明るい所でじっくりビュティの首輪を調べたい。
基本行動方針:誰にも死んで欲しくない。状況を打破するため情報を集め、この空間から脱出する。
[備考]:拾った双葉の型紐が切れたランドセルに荷物まとめて入れています。
    インデックス自身のランドセルは壊れているので内容物の質量と大きさを無視できません。
    深夜12時の臨時放送を、完全に聞き逃しました。

【アリサ・バニングス@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:全身に軽い火傷(右腕と顔は無事)、左腕出血(軽度打撲)、背中出血(深い切り傷)、以上応急処置済み。
精神負担中、足と両手に軽度の凍傷、右肩に深い刺し傷、出血と軽度エナジードレインで行動不能
[装備]:カレイドステッキ@Fate/stay night
[道具]:なし
[服装]:パジャマ。変身を解いたらショーツ一枚。
[思考]:??????
第一行動方針:この状況をどうにかしたい。
第二行動方針:リンク、インデックスと情報交換する。
基本行動方針:はやての遺志を継いで、なんとかする。(なのはと一緒に)ゲームからの脱出。
[備考]:深夜12時の臨時放送を、完全に聞き逃しました。
    カレイドルビーは臨時放送を聞いています。
    贄殿遮那@灼眼のシャナはグレーテルの足元に転がっています。

【A-3/工場仮眠室/2日目/黎明】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:魔力消費(中)、両手首に浅い傷、背中に軽度の凍傷(治療済み)、頬骨と肋骨一本にヒビ、
    胴部打撲、切り傷(部位・程度不明)、精神的ショックにより意識不明
[装備]:なし
[道具]:なし
[服装]:シーツでできた服
[思考]:……。
第一行動方針:これまでに殺した人たちに謝る……
基本行動方針:自らの罪を償う。自身の想いに素直になる。………………。
[備考]:深夜12時の臨時放送を完全に聞き逃しました。
338 ◆S4WDIYQkX. :2010/04/26(月) 03:18:18 ID:12lSL1Fv
以上で投下終了。

支援ありがとうございます。
リリスは実質上拘束だったので予約しましたが、半端に展開を縛るためやはり登場せず。
(自己リレーを気にする場合でもリリスはパスを回ったと見るのが良いと思う)

【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
の上の行の
【A-3/工場仮眠室/2日目/黎明】
は消し忘れ。
339創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 07:06:01 ID:2lLAT2Fj
ええと、投下乙といってほしいの?

いくら前の話で疑心暗鬼になっていたとはいえ、あのリンクが仲間を切るんだろうか。
ていうかなに?これ話の展開でまたなのはを悪魔にもっていきたいの?
そこまで二重人格の話が惜しいと思ってたの?
340創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 07:48:28 ID:QOvN75Da
投下乙

リンクがなのはを斬るにいたるまでに違和感があったかな。
前回まででなのはに殺すなって言ってたんだから、それが聞き入れられたらこうなるっていうのはわかると思うし、
まずはなのはに殺すなといったリンクが人を殺そうとするみたいな矛盾を書くとか……?
なんていうか、リンクの心理描写が不足してる。
一つ前の話しでなのはに疑心を持っただけではこんな行動にならないと思う。
これが誰かを殺された後ならまだわかるんだけど。

あと、この状態で切られると次の話が書きにくくならないだろうか。
エヴァ以外が行動不能のこの状態、全滅以外の展開がどうにも思い浮かばない。
近くにいるブルーやリリスは傍観するだろうし。
そのお膳立てだというならもうその先まで書いちゃっていいと思うよ。
勿論、リンクがなのはを斬った所はリンクの心理描写をしっかり増やすか、なしにして。
341創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 16:20:30 ID:JGOV8TxX
こうしてまた一人、書き手は去っていくのですねわかります。
死亡話だからってきつく言いすぎだと思うよ
342創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 19:10:28 ID:pDWiLY8r
きつく言いすぎ
しかし実際どうする?
訂正してもらう?
それとも通し?
破棄する程矛盾は無いけど強引さが目に付く展開だし…
343創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 19:45:05 ID:1hrfULJy
確かにおざなりで強引だな
344創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 19:55:08 ID:pDWiLY8r
リンクの強引な行動は無しにして心理描写だけに留めたり
エヴァ以外が行動不能のこの状態も緩めて全滅以外になりそうなのも回避して
次の書き手に繋げたら無難どころかけっこう良くなると思うんだが…
345 ◆S4WDIYQkX. :2010/04/27(火) 00:24:35 ID:6YhSkt9/
話が綺麗すぎると思い没にした別Ver(そこからクライマックスを変更した)が有りますので、
リンクの行動に疑問が出るならひとまずそちらを投下しておきます。
変更箇所としてはレス番330の所からの変更になります。
346330より ◆S4WDIYQkX. :2010/04/27(火) 00:27:02 ID:6YhSkt9/
今のなのはにはどうすれば良いのか判らなかった。
こんな時、少し前のなのはなら殺そうとしていた。
あるいは打ち倒し、戦う力を奪おうとしていた。
それをいけないというのならどうすれば良いのだろう。
なのはには見当もつかない。

『はやてに、謝ろう。コナンに、アイに謝りに行こう。
 君はコナン達に一度も謝っていない。死んだ人たちに謝っていない』

なのはの脳裏に反響したのはリンクの言葉だった。
なのははリンク達に依存することで殺し合いを否定したのだ。
それによって、どんな人間でも殺すのはいけないことだと信じられた。
その結論がこの行為だった。

謝ろう。
おねがいしよう。
話し合いをしよう。
だから。

「ごめんなさい。
 でもおねがいです。みんなを殺さないで」

ゆっくりと歩み寄る。
今度こそ話し合いを試みよう。
それがきっと正しい行動なのだと信じよう。
その行動を前にグレーテルは驚きの表情と、それから楽しげな表情を浮かべて。
なのははそれでも祈り続けて。

「あなた達にとってこんな話は笑い話なんだと思います。
 それでも、おはなしを」

突撃槍が振るわれた。

高町なのはは叩きつけられように床に倒れ伏した。
襲撃からはざっと八十秒と少しだけ。
グレーテルが嘲嗤う。
高町なのはの愚かさと無謀を嘲う。

「ねえ、東の方の国に踊り食いっていうものがあるそうよ」
リンクには理解できない。
邪悪に過ぎてあまりに装飾的な言葉を、断片からは理解できない。
グレーテルはその可憐な唇から愉しげに続きを綴る。
「海産物を生きたままお刺身にしたり、殻を剥いて食べるそうよ。とっても美味しいそうね。
 学校でも素敵な勇者さまでやってみたけど、この子も最後まで今の話を続けられるのかしら?」
「な……おまえ、まさかっ!?」
グレーテルの微笑が詰問を肯定した。
突撃槍が足元のなのはへと向けられる。
床に手をつき呻いているなのはへと。
九十五秒。

そして、五秒間。
347創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 00:27:36 ID:NMcjL+y+
 
348330より ◆S4WDIYQkX. :2010/04/27(火) 00:28:44 ID:6YhSkt9/
「くそっ」
リンクは仕方無しに距離を詰める。
それを予想していたグレーテルが向き直る。
結局リンクは傷の一点を狙う術を見いだせない。
それでも一縷の望みに賭けて挑もうとして。
九十六秒。

「っ!?」
グレーテルの動きが鈍る。
殴り倒されたはずの高町なのはが倒れこむように這いずってグレーテルの腰にしがみついていた。
微かに聞こえるもうやめてというか細い言葉。
九十七秒。

「そのまま抑えてて!!」
リンクはそれを、高町なのはがグレーテルを抑えたたのだと思い込む。
やはり彼女は演技力に優れた人間でグレーテルを油断させて嵌めたのかそれともたまたまなのか
どちらにせよこれで狙えるもう少し抑えてくれればあの傷口をコキリの剣で──。
九十八秒。

「ぁ……」
高町なのはは何故か急速に薄れゆく意識の中でリンクの姿を見つめる。
剣を構えグレーテルに突撃する姿を見てまるで氷の刺が刺さったみたいな冷たい悲しみとかすかな失望が
胸に広がるのを感じてでもそれがどうしてかわからなくて意識が見る見るうちに暗く──。
九十九秒。

なのはが今度こそ崩れ落ちる。
開放されるグレーテルを見てリンクの心中に一瞬焦りが走る。
高町なのはを信じたのは失敗だったのか?
すぐにそれを否定する。
彼我の距離はほんの僅か、動きを止められていたグレーテルが回避するには間に合わない。
だから間に合うはずだ。
貫けるはずだ。

果たしてリンクの刃はグレーテルの胸に届いた。
狙いたがわず正確に一点へと鋭い突きを叩き込む。
その動きは完璧でグレーテルの行動はそれに一瞬間に合わなくて。



襲撃から丁度百秒が経過した。



ザッという音がした。
グレーテルが壁に開けた穴を抜け、人影が一つ飛び込んできたのだ。
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
自称最強の悪の魔法使い。
リンク達を護るため、他の悪を討つために、魔女たちに同盟を示唆しながら四散させた張本人。
つい先ほどヴィクターと化す前のグレーテルと戦い撃退した、夜に生きる吸血鬼である。
彼女は変貌したグレーテルが工場の方角に向かうのを見て、それを追ってここに来たのだ。
しかしグレーテルがヴィクターの飛行能力を使いこなし挙句にサンライトハートで加速までしたため、
彼女の飛行能力では若干の遅れが生じ、出発の時間差も含めて百秒の遅れが生じた。
たったの百秒だ。
例えば廊下など見晴らしの良い場所に出ず適当な部屋に隠れて、迎撃に出るのではなく待ち伏せれば過ぎ去る程度の時間。
救援の見込みなど薄いのだからその行動の可能性は低かったが、一つ違えば何事も無く間に合ったほどの時間。
それだけの時差で彼女は戦場に辿り着き。
その光景を視た。
349創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 00:30:18 ID:NMcjL+y+
 
350330より ◆S4WDIYQkX. :2010/04/27(火) 00:31:07 ID:6YhSkt9/
リンクの剣は確かに狙いたがわず一点を貫いた。
グレーテルが傷を負っていたその場所を。
そこからならリンクの刺突はグレーテルの肉を裂き、致命傷とまで言わずとも傷を与えていたはずだ。

その一撃が、赤銅色の皮膚で止まっていた。

リンクは幾つか気づくべきだった。
何よりも高町なのはが冷静な判断で戦術的行動を取っていたわけではない事に気づくべきだった。
この状況における高町なのはは何処までも無力な少女でしかなかった。
その行動に作戦を見てはいけなかったのだ。

高町なのはがグレーテルにしがみついたのは動きを抑えるためではない。
だから、その力は動きを妨げるにはあまりにも弱かった。
回避行動を妨げる事が出来ても、攻撃の邪魔まではできない程に。

そして今の高町なのはに冷静な判断力は無く、観察眼も無かった。
だから高町なのはは気づいていなかったし、
なのはの行動を信じられるかどうかという言ってみれば
戦闘とは無関係な方向に思考が逸れてしまったリンクも気づいていなかった。
背後で、アリサを安全な場所に運ぼうとしたインデックスがいつの間にか二人して倒れている事にも、
その理由も、それが何をもたらすのかにも。

高町なのははヴィクターと化しているグレーテルにしがみつき、密着した。
高町なのはの意識を奪った最終的な要因は、ヴィクター化によるエネルギードレインである。
ヴィクターと化した者はそのエネルギーで武装錬金を振るい。

あるいは自らの肉体を再生する。

僅かに血が滲む程度の掠り傷など、ほんの数瞬なのはが密着していた分で十分だった。
リンクの剣が届く前に再生は完了し、赤銅色の皮膚はリンクの剣を受け止めた。
そしてさっきまでの様に、攻撃に頓着せず振るわれたグレーテルの突撃槍が。

リンクの頭部を粉砕していた。

紅い液体と赤い塊と白くて硬い欠片と白くて柔らかい欠片と灰色の塊と白く小さな球体と細い金糸の生えた肌色が
リンクの頭部だった場所から四散して壁にへばりつき少女達を赤く紅く染めていた。

それが一つの結末だった。

「そういう、事か」

エヴァは呟く。
悲壮と共に。
怨嗟と共に。
哀哭と共に。

「やはりそういうものか」

絶望と共に。
苦痛と共に。
悲嘆と共に。

「やはり正義とは、勇者とは、そんなものか」

正義の勇者の敗北を知った。
その儚さと、無力さとを識った。
学校に引き続き勇者が敗れ去るところを見せつけられた。

確かめ、実証されるところを観た。
351330より ◆S4WDIYQkX. :2010/04/27(火) 00:32:54 ID:6YhSkt9/
何が悪の中ボスだろう。
全てが今この瞬間だけは、どうでもよくなっていた。

だから正直に、胸の奥から溢れくる感情に身を委ねた。

「良いさ。貴様は殺してやるよ、バケモノ」

グレーテルに向けて氷のように凝固した憤怒を、叫んだ。

       ◇

インデックスはそれを見ていた。
倒れ伏し、息苦しいほどに消耗しながら。
喘ぎ、悶えながら見ていた。

(ダメだよ、エヴァ……)

そして恐怖していた。
襲撃者の持っている能力と、この状況がもたらす最悪の組み合わせに。

インデックスは戦いに巻き込まれないよう、なのはの腕から零れたアリサを仮眠室に引きずり込もうとしていた。
呻き声を上げていたが、出血で一時的に意識が飛んでいたのか抵抗は無かった。
その途中で急激な脱力感に襲われ倒れてしまったのだ。
戦況を観察し続けて、やがてその原因を理解した。
しがみつきすぐに倒れたなのはと、グレーテルの胸の傷を見て。

グレーテルは周囲から生命力を吸い上げて自らの傷を再生していた。
即ち、エナジードレインだ。
その生命力は戦う力にも使われているのだろう。
グレーテルはそこに居るだけで周囲の者達を衰弱させ、力を増し続けていた。

とはいえ、本来は至近距離でなければこうも即効性を持つ力ではなかった。
健康な者ならこの距離でやられはしなかったはずだ。
だがインデックスは高熱と貧血で消耗していた。
微弱なエナジードレインに耐える体力すら残っていなかったのである。
深手を負ったアリサも似たようなものだろう。
エナジードレインを直接受けて倒れたなのはに至っては言うまでもない。

インデックスもアリサもなのはもまともに行動出来ず、しかしまだ生きている。
それこそが最悪だった。

(私たちの事は見捨てなきゃいけないんだよ……)

それは裏を返せば、生命力のまだある、無力な存在が転がっているという事だ。
インデックスはグレーテルが周囲から力を吸い上げている現象に気づき、その“最悪”に気がついた。

この戦場で戦う限りグレーテルは力を増し続け、回復を続けるのだ。

(いくらエヴァでも、ここじゃ勝てないんだよ……!)

この消耗では警告を叫ぶことさえ難しい。
だからインデックスは祈る。
戦況が不利になれば、エヴァが苦渋の選択で自分たちを見捨ててくれる事を。
せめて一人でも生き延びてくれることを。

【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ 死亡】
352創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 00:33:08 ID:NMcjL+y+
 
353330より ◆S4WDIYQkX. :2010/04/27(火) 00:35:08 ID:6YhSkt9/
【A-3/工場/2日目/早朝】
【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:健康、ヴィクター化。胸元に微かな傷(すぐに再生する)
    喪われた心臓の代わりに核鉄(サンライトハート)が埋め込まれている。
[装備]:サンライトハート@武装錬金
    ソードカトラス×2(1+12/15)(銀10/15)@BLACK LAGOON、ソードカトラス専用ホルダー
[道具]:基本支給品一式、塩酸の瓶×1本、毒ガスボトル×1個、ボロボロの傘
    ソードカトラスの予備弾倉×3(各15発、一つだけ12発)、バット、
    蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン、救急箱、エルルゥの薬箱の中身@うたわれるもの
   (カプマゥの煎薬(残数3)、ネコンの香煙(残数1)、紅皇バチの蜜蝋(残数2))、100円ライター
    スペクタルズ×8@テイルズオブシンフォニア、クロウカード『光』『剣』@CCさくら、
    コエカタマリン(残3回分)@ドラえもん、
[服装]:いつも通りの喪服のような黒い服。胸の中央に大きな穴が空いている。雨に濡れて湿っている。
[思考]:うふふ……あははは……
第一行動方針:エヴァと周囲の連中を殺す?
第二行動方針:千秋との再会を楽しみにする。千秋が「完全に闇に堕ちた」姿を見届けたい。
第三行動方針:機会があればまた紫穂と会いたい。2人きりで楽しく殺し合いたい。
基本行動方針:効率よく「遊ぶ」。優勝後はジェダに「世界のルール」を適用する(=殺す)。
[備考]:シルバースキンの弱点(同じ場所をほぼ同時に攻撃されると防ぎきれない)に勘付きました。
    「殺した分だけ命を増やせる」ことを確信しました。ただし痛みはあるので自ら傷つこうとはしません。
    銀の銃弾は微妙に規格が違う為、動作不良を起こす危険が有ります。使用者も理解しています。

【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル@魔法先生ネギま! 】
[状態]:全身に痛み、左腕が殆ど動かない、魔力消費(中)
[装備]:フェアリィリング@テイルズオブシンフォニア
[道具]:支給品一式、手足の無いチャチャゼロ(半永眠)@魔法先生ネギま!
[思考]:殺してやる、殺してやるさ
第一行動方針:グレーテルを殺す
第二行動方針:リリスと遭遇することがあったら、リリスを倒し身柄を押さえ、情報を得る。
第三行動方針:ジェダの居場所に至る道を突き止め、露払いをする。
第四行動方針:ジェダを倒そうと挑む者たちの前に立ち塞がり、討たれる。
基本行動方針:ジェダ打倒のために暗躍。ただし仲間は作らない。誇り高き悪として、正義の前に散る。
[備考]:梨花の血を大量に吸いました。雛見沢症候群、及び女王感染者との関連は不明です。
    ジェダ打倒を目指している者として、ニアの名前をグリーンから聞いています。
    パタリロを魔族だと思っています。名前は知りません
    紫穂の『能力』が、触れることで発動することを見抜きました。詳細までは把握していません。
    雲に隠れていても満月による補正は有るようです。

【インデックス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:高熱&貧血&エナジードレインによる消耗で行動不能、全身に軽度の凍傷、
    背中に大きな裂傷跡と火傷、足裏に擦過傷(共に応急手当て済み)
[装備]:水の羽衣(背部が横に大きく裂けている)@ドラゴンクエストX
[道具]:支給品一式(食料−1日分、時計破損)、ビュティの首輪、鉄製の斧@ひぐらしのなく頃に(?)
[服装]:私立聖祥大付属小学校の制服の下に水の羽衣。背中と足にシルクの包帯。
[思考]:逃げて、エヴァ……!
第一行動方針:どうにか、したい
第二行動方針:ヴィータを捜し、説得する。
第三行動方針:ニケ達と合流する。
第四行動方針:紫穂の行方の手掛かりを探す。エヴァの説得も諦めていない。名前しか知らないヤムィヤムィが少し気になる。
第五行動方針:落ち着いたら、明るい所でじっくりビュティの首輪を調べたい。
基本行動方針:誰にも死んで欲しくない。状況を打破するため情報を集め、この空間から脱出する。
[備考]:拾った双葉の型紐が切れたランドセルに荷物まとめて入れています。
    インデックス自身のランドセルは壊れているので内容物の質量と大きさを無視できません。
    深夜12時の臨時放送を、完全に聞き逃しました。
354330より ◆S4WDIYQkX. :2010/04/27(火) 00:43:36 ID:6YhSkt9/
【アリサ・バニングス@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:全身に軽い火傷(右腕と顔は無事)、左腕出血(軽度打撲)、背中出血(深い切り傷)、以上応急処置済み。
    精神負担中、足と両手に軽度の凍傷、右肩に深い刺し傷、腹部打撲、出血と軽度エナジードレインで行動不能?
[装備]:カレイドステッキ@Fate/stay night
[道具]:なし
[服装]:パジャマ。変身を解いたらショーツ一枚。
[思考]:??????
第一行動方針:この状況をどうにかしたい。
第二行動方針:リンク、インデックスと情報交換する。
基本行動方針:はやての遺志を継いで、なんとかする。(なのはと一緒に)ゲームからの脱出。
[備考]:深夜12時の臨時放送を、完全に聞き逃しました。
    カレイドルビーは臨時放送を聞いています。
    贄殿遮那@灼眼のシャナはグレーテルの足元に転がっています。

【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:魔力消費(中)、両手首に浅い傷、背中に軽度の凍傷(治療済み)、頬骨と肋骨一本にヒビ、
    胴部打撲、密着エナジードレインにより昏倒
[装備]:なし
[道具]:なし
[服装]:シーツでできた服
[思考]:……。
第一行動方針:これまでに殺した人たちに謝る……
基本行動方針:自らの罪を償う。自身の想いに素直になる。………………。
[備考]:深夜12時の臨時放送を完全に聞き逃しました。






以上で投下終了です。
最後のアリサパートが消えるのは仕様。
また、それも利用してアリサの消耗状態に不明要素を入れています。
少なくともインデックス視点では行動不能に見えていた模様。

この後の展開幅については、全滅以外の可能性も割と有り得るはず。
展開潰しなので一例に留めますが、そもそもグレーテル視点で殲滅に執着する理由が有るかどうか。
エヴァには痛い目を見てるんだし、流れによっては足下の関係有る子だけでも満足しそう。
どう転ぶかは幾つか考えられますが、結局はリレーによります。
あと投下支援ありがとうございます。
355創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 01:00:05 ID:sbZuTrC5
修正案乙です

書き手本人は全滅以外の可能性もあると言ってるがどうなんだろう?
俺も書き手だが自分の認識が間違ってる場合もあるから自分の作品のことでも信じられない場合がある…
他人の目から次の話が書き難いように見えるならそれは真実かも
でもリンクの件が解決したのならこれで通しでもいいような気もする
他の人の意見も聞きたいが?
356創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 01:46:42 ID:Ni0HLevl
何とも鬼畜なことに、このあと全滅目的のリリスも残ってるんだよね。
その状態でどうやって違和感なくグレーテルもリリスも撤退させるのかと考えると、
ぶっちゃけ全滅の話が一番書きやすいというか、よっぽど無理させないとエヴァぐらいしか生存できない。
全滅、もしくはエヴァだけ生存という話以外の方向にさせる気はないんじゃないか?
あとなあ、せっかく改心したようななのはなのに不安要素のある状態票を見せられるとなぁ……
ていうかこれ、本当に放送前に書かないといけないものなのか?
放送後だと誰かに書かれるかもしれないから急いで鬱に繋げようとしてないか?
前の話の時点でグレーテルの工場組襲撃はほぼ確定されたお膳立てされてるんだし、
この話はその後の展開を狭める話でしかないと思う。

一番ダメだったリンクの部分はまあ改善されたからいいけど、
他の部分の悪いところが浮き彫りになった気がするわ。
本当に全滅させる気がないんだったらこの戦いの結末まで書いたらどうか。

あー……ごめん、最初に非常に悪い話を見たから邪推してしか見れない。
でもとりあえず、落ち着いたら悪い点をリストアップするわ。
357創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 02:19:55 ID:LkNVw/2m
投下&修正案乙です。
ヘンゼルの生き写しであるグレーテルに、許しを請うなのはが何とも切ないですね。彼女の消耗を如実に感じさせます。
謝ろうと思っていたところに現れた最初の被害者遺族がこいつというのが不運すぎますがw

さて、それはそうと、私も少し気になった点がありましたので、質問させていただきます。
作中では贄殿遮那による斬撃を弾く、コキリの剣による刺突を止めるなどの形で、
ヴィクター化した人間の肉体が非常に堅固であることが表現されていましたが、
原作中でこのような性質が描写されたことはありましたでしょうか。
カレイドアリサやリンクといった達人・準達人クラスの振るった、高品質な武器の一撃でかすり傷程度しか負わない
ということであれば、その防御力は守備に特化した武装錬金であるシルバースキンに匹敵するものと言わざるを得ず、
さすがにそこまで硬いヴィクターには、個人的に違和感を覚えます。
私の記憶が確かならば、原作中のヴィクターは再生能力に優れこそすれ、
肉体の強度は特筆するほど高いものではなく、武装錬金による一撃で腕を飛ばされるシーンなんかもあったような気がします。
これについても、ご回答いただければ幸いです。
何分、手元に単行本がなく、記憶に頼った指摘ですので、もし、私の方に誤解がありました際には、どうかご容赦ください。
358創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 06:41:04 ID:SMPxMXLW
>>357
終盤は(ページの都合もあり)さほど強くないモーターギアで腕を落とされてるが
初登場時は旧サンライトハートが1ミリも刺さらないほど堅かったぞ
絡む前に原作をきちんと確認した方がいい
359創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 08:40:44 ID:ggl3511o
>>358
でもモーターギアで腕落とされてるんでしょう?
360創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 09:15:47 ID:QllnInN+
超回復なんて能力持ってるんだし
その防御力くらいは制限でなしにしないと歯が立たないぞ
アーカード以上のチートじゃないか
制限必須
361創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 09:40:11 ID:cWiyuPxR
1ミリも刺さらないのは、防御に専念して狙い通りのとこで受けられれば、くらいじゃないかな
原作の絵も「受け止めた」感じだろ。受け止め方が並じゃないからインパクトあるけど
それだって攻撃側がパワーアップしたら同じ武器でダメージ負ってるし
その後も原作で硬さが強調されるシーンはほぼないし、カズキが似たようなことやってたわけでもないし、
元祖ヴィクター個人の戦闘技術の高さを示す場面ではあっても、種族的な防御力を示す場面ではない気がする

必殺を期した攻撃が止められる展開はありえない、とまでは言わないけど、身体性能差だけで押すのは厳しいかな
362創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 12:55:08 ID:e8eiHSmM
「じゃないかな」「気がする」程度の解釈問題で修正要求かい?
覚えときな、そういうのは書き手の領分ってんだ。
363創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 13:53:06 ID:Ni0HLevl
リンクのなのはへの警戒
俺はこれが、なのはが危険対主催のままだって警戒だと思ってた。
だけどこの話では、なのはがマーダーになる懸念をしてる。

少なくとも、なのはは間違えたことはやってなかったのだし、
そう考えるのは間違いだと思われる。


グレーテルが強すぎる
188話にて、エヴァのリンクへの評価は自分とそれほど違いはないというものだった。
経験の差となれない武器の差だと評価してるし、今現在のなれた武器を持ったリンクなら、
普通にやりあえるぐらいにはその差は縮まってるはず。

そのエヴァは、リンク、アリサ、なのはの三人に善戦したが、
その時はリンクに殺す気がなかった。だから両刃の剣は使えなかった。

そしてエヴァとグレーテルの戦闘はエヴァ優勢だった。
ヴィクター化したとはいえ、ここまで劣勢というのはヴィクター補正が強すぎないか。

→ヴィクターが強すぎる
エネルギー吸収、再生に加えて防御力も高いというのはヴィクター補正が強すぎないか。
ここまで強いと相手することができる参加者が非常に限られてしまう。
エネルギー吸収自体が既に最悪クラスの能力なのだし、各種能力上昇は控えめにするべきじゃないか。
このあたりはヴィクターを登場させた◆PJfYA6p9PE氏に意見を聞きたいところ。


なのはが精神的に弱くなりすぎじゃないか?
前回の話を書いたのも氏なのだし、最後のなのはの一言らしく、なのはらしい動きをさせるべきでは?
ようやく改心したというのに、状態票の……なんかに悪意が見える。

全滅以外の話の展開が難しい
前の話の段階で、既にグレーテルの襲撃はわかっていたのだし、ここは書ききるべきじゃないか?
この時点で切られると全滅以外に持っていきにくいと思うし、書く必要性も感じない。

まあ前の話で既にマーダーが二人時間差でしかけられる配置に持っていかれているし、
周りに対主催がいないしだしで全滅前提だったのか?
これは◆v5ym.OwvgI氏の意見を聞きたいところ。


いまさらな意見

カレイドルビーが便利すぎる
アリサ個人の技量があれだから初期の頃は良かったが、この頃は本職の人以上の技量を身につけてしまってる。
”付け焼刃の達人”にしてもありとあらゆる達人になれるんだし、もうちょっと自重したほうがよくないか?


とりあえずここまでつらつらーと。
一つ一つは許容範囲でも、重なってしまうとどうにも許容しにくい。
364創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 14:39:39 ID:QR7d2hms
問題点が多いな
365創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 16:00:33 ID:e8eiHSmM
>>363
読み手の疑問に一から十まで答える口はねえよ
お前さんが書き手なら議論スレで鳥付けてもう一度聞いとくれ
366創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 20:56:50 ID:s1xIzPPN
結局、疑問点が多く噴出したけど…読み手の主観的なものも多いしな…
俺としてはせっかくここまで復活したのに破棄がどうとかで揉めてまたロワそのものが終了とか最悪な結末だけは避けたいし
復活しただけでも奇跡なのにとどめ刺すようなマネは…
大きな矛盾が無ければ通しでいいような気もするが…
ロワ崩壊だけは勘弁して欲しい
367創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 21:53:43 ID:7xlzFXyG
そこまで大事にはならないだろ
逆にそれ言うことで煽る結果になりそうだからやめとけ
とりあえずこれ以上の議論は議論スレ行こうぜ
368創る名無しに見る名無し:2010/04/28(水) 02:18:26 ID:hg8YPbhf
>リンクヘイトが漂うんだ。

議論スレで言う事じゃねーよ。
369創る名無しに見る名無し:2010/04/28(水) 11:46:33 ID:imvQfqiy
うーん、それはつまり究極の話ルーファウスのアレはありだってことかい?
まあ描写は不足しているわけだけど。

あるいは7KDのアレって言ってもいいかもね。
370創る名無しに見る名無し:2010/04/28(水) 14:29:29 ID:qi0ONHXR
>それはつまり
なにが「それ」で、どう「つまり」なのか。
371創る名無しに見る名無し:2010/04/28(水) 15:06:49 ID:imvQfqiy
ただ殺したいから殺したという話はありなのかって話。
7KDもルーファウスのアレも、殺すためだけに書いた話。

今回の◆S4WDIYQkX.の作品も、リンクを殺したいだけで書いた作品なんじゃないか?
氏は前回の工場組全滅話でも、唐突だからと全滅させたらしいけど、
今回のは氏自身が唐突にリンクが死んだ部分で終わらせてるし。
7KDのあの話がなのはを殺したかっただけの話だったように、今回の作品もそう見えるんだろう。

それでも矛盾がなければいいよっていうなら、7KDの時はどうして破棄になったのか?
372創る名無しに見る名無し:2010/04/28(水) 15:58:40 ID:2YDvr41J
で? っていう。
お前がそう感じるのは勝手だが、そうではないと作者が一言答えれば納得するのか?
373創る名無しに見る名無し:2010/04/28(水) 16:00:46 ID:qi0ONHXR
>>371
いや、そうじゃなくて

>>369の「それ」とは何かを聞きたいんだ。

理由は
>>368
>>リンクヘイトが漂うんだ。
>議論スレで言う事じゃねーよ。
に対する>>369の答えがズレてると感じたから。

○○が漂うという内容を議論スレに言うなって書いてあることに対し、
>うーん、それはつまり究極の話ルーファウスのアレはありだってことかい?
と答えることはズレてないかい?

だから、「それ」が具体的に何で、「つまり」が具体的にどういう理由からつまりなのかが知りたかったの
374創る名無しに見る名無し:2010/04/28(水) 16:26:35 ID:imvQfqiy
>>373
ああ、ごめん。確かにあれは議論スレで言うことじゃないと思うよ。
矛盾でも疑問でもないただの不満なんだし。

>>372
それが本当かと判断することができないからな。
襲撃させて、一人戦えそうなの殺して、行動不能者ばかり作って全滅のお膳立て。
それを書いたのがピンポイントになのはを殺したのが不満に思って虐殺した氏だっていうのがね。
今回の話をわざわざ書いた理由は聞いてみたいかな。
375創る名無しに見る名無し:2010/04/28(水) 16:52:17 ID:iTjuHdaZ
イライラする気持ちも分かるが、毒は毒吐きで。ここは本スレだ。
今回の話で言えば、議論スレで正式に修正要望が出てるんだから、
今は作者氏の反応を待つしかないだろう。
376創る名無しに見る名無し:2010/05/02(日) 01:40:03 ID:xSTA3Yyw
向こうの仮投下スレに修正案が来たな
377創る名無しに見る名無し:2010/05/08(土) 11:13:37 ID:l0D7sFvh
今の議論が通しでも破棄でも、あと北東が終われば放送に行けるな
378創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 23:11:06 ID:V39M2U7c
あの書き手が考えを変えない限りいつまでたっても議論は終わらない
379創る名無しに見る名無し:2010/05/11(火) 13:08:48 ID:WpeB4cEr
〜ろりしょたろわいある終了のお知らせ〜

太公望の悲劇再びですよ。
読み手様マジ自重してくれ・・・

他のロワや前回でも言える事だが、なのはが絡む生死話は
儲がひたすら暴れるんだよな。

たぶん同一人物なんだろうけど、本当勘弁してほしい
380創る名無しに見る名無し:2010/05/11(火) 19:47:35 ID:QZVoySkD
これでなのは殺せるのかな?
書こうと思う人いるのか?
純粋に疑問だわ
381創る名無しに見る名無し:2010/05/12(水) 00:42:43 ID:vuON2vic
読み手様も悪いが、書き手様も悪いだろ
ていうか書き手様が前回と同一人物だからな
本当勘弁してほしい
382創る名無しに見る名無し:2010/05/20(木) 01:37:28 ID:oZCSJcwA
やっぱ終盤になって、ジェダとの闘いや脱出の局面になったら、外部からの干渉とかもあるのかな
ドラえもんやクレしんのタイムパトロールとか、ドラクエVのマスタードラゴンとか、ゼル伝の賢者達とか
外伝で登場してる時空管理局や紫達やバンコランなんかも本編に登場したりとかするかな
383創る名無しに見る名無し:2010/05/20(木) 01:57:53 ID:SurFaYYb
タマネギ部隊なんかは、殿下が来ちゃってるので干渉できないうえに
「平和でいい」
とかしばらくはなごんでそうだ
384創る名無しに見る名無し:2010/05/20(木) 07:43:34 ID:u+BmRRgy
平行世界から無限といえる数の殿下(全員チート道具大量持ち)が駆けつけます
385創る名無しに見る名無し:2010/05/21(金) 00:30:35 ID:b1v4TvQN
ゼル伝はもう終わりだろう。
あの書き手様がなにがあっても殺そうとしてるし
386創る名無しに見る名無し:2010/05/21(金) 16:28:14 ID:qnRYUr7F
一応状況活用と原作設定の解釈次第では
>>354からでも犠牲者リンク一人に抑えて場合によってはグレーテルも撃破可能だが・・・
まあ展開潰しになるから方法は伏せとくけど

なのはのメンタル豆腐っぷりはもう胡蝶夢丸のせいにしとこうぜ
387330より:2010/05/22(土) 03:36:21 ID:4f0nucf0
今のなのはにはどうすれば良いのか判らなかった。
こんな時、少し前のなのはなら殺そうとしていた。
あるいは打ち倒し、戦う力を奪おうとしていた。
それをいけないというのならどうすれば良いのだろう。
なのはには見当もつかない。

『はやてに、謝ろう。コナンに、アイに謝りに行こう。
 君はコナン達に一度も謝っていない。死んだ人たちに謝っていない』

なのはの脳裏に反響したのはリンクの言葉だった。
なのははリンク達に依存することで殺し合いを否定したのだ。
それによって、どんな人間でも殺すのはいけないことだと信じられた。
その結論がこの行為だった。

謝ろう。
おねがいしよう。
話し合いをしよう。
だから。

「ごめんなさい。
 でもおねがいです。みんなを殺さないで」

ゆっくりと歩み寄る。
今度こそ話し合いを試みよう。
それがきっと正しい行動なのだと信じよう。
その行動を前にグレーテルは驚きの表情と、それから楽しげな表情を浮かべて。
なのははそれでも祈り続けて。

「あなた達にとってこんな話は笑い話なんだと思います。
 それでも、おはなしを」

突撃槍が振るわれた。

高町なのはは叩きつけられように床に倒れ伏した。
襲撃からはざっと八十秒と少しだけ。
グレーテルが嘲嗤う。
高町なのはの愚かさと無謀を嘲う。

「ねえ、東の方の国に踊り食いっていうものがあるそうよ」
リンクには理解できない。
邪悪に過ぎてあまりに装飾的な言葉を、断片からは理解できない。
グレーテルはその可憐な唇から愉しげに続きを綴る。
「海産物を生きたままお刺身にしたり、殻を剥いて食べるそうよ。とっても美味しいそうね。
 学校でも素敵な勇者さまでやってみたけど、この子も最後まで今の話を続けられるのかしら?」
「な……おまえ、まさかっ!?」
グレーテルの微笑が詰問を肯定した。
突撃槍が足元のなのはへと向けられる。
床に手をつき呻いているなのはへと。
九十五秒。

そして、五秒間。
388330より:2010/05/22(土) 03:37:21 ID:4f0nucf0
「くそっ」
リンクは仕方無しに距離を詰める。
それを予想していたグレーテルが向き直る。
結局リンクは傷の一点を狙う術を見いだせない。
それでも一縷の望みに賭けて挑もうとして。
九十六秒。

「っ!?」
グレーテルの動きが鈍る。
殴り倒されたはずの高町なのはが倒れこむように這いずってグレーテルの腰にしがみついていた。
微かに聞こえるもうやめてというか細い言葉。
九十七秒。

「そのまま抑えてて!!」
リンクはそれを、高町なのはがグレーテルを抑えたたのだと思い込む。
やはり彼女は演技力に優れた人間でグレーテルを油断させて嵌めたのかそれともたまたまなのか
どちらにせよこれで狙えるもう少し抑えてくれればあの傷口をコキリの剣で──。
九十八秒。

「ぁ……」
高町なのはは何故か急速に薄れゆく意識の中でリンクの姿を見つめる。
剣を構えグレーテルに突撃する姿を見てまるで氷の刺が刺さったみたいな冷たい悲しみとかすかな失望が
胸に広がるのを感じてでもそれがどうしてかわからなくて意識が見る見るうちに暗く──。
九十九秒。

なのはが今度こそ崩れ落ちる。
開放されるグレーテルを見てリンクの心中に一瞬焦りが走る。
高町なのはを信じたのは失敗だったのか?
すぐにそれを否定する。
彼我の距離はほんの僅か、動きを止められていたグレーテルが回避するには間に合わない。
だから間に合うはずだ。
貫けるはずだ。
389330より:2010/05/22(土) 03:39:06 ID:4f0nucf0
だがしかし、次の瞬間、リンクの考えは一変する。
なのはをあのままにしておいてもいいのか…?
僕は仲間達を護らなければならない。
襲い来る敵から。殺し合いに乗ってしまった相手から
それは間違いの無い前提だ。
じゃあなんで今僕はなのはをあのままにしている…?
高町なのは
そもそもそれは本当に仲間と言えるのだろうか。
仲間だと信じて良いのだろうか…?
君は一体、どんな想いを秘めているんだ?
リンクがなのはに対して抱いている感情はそれだ。
だがしかしいつからそんな感情を抱くようになったのか。
仲間を守らなければならないと誓ったこの時からか。
『はやてに、謝ろう。コナンに、アイに謝りに行こう。
 君はコナン達に一度も謝っていない。死んだ人たちに謝っていない』
自分は確かにそういった。なのはは今それをやっているじゃないか。
しかし、今なのはが謝っているのはあのグレーテルだ。
たくさんの命を奪い、あまつさえ人を食ったという化け物だ。
倒さなくてはならない。現に今自分たちを殺そうとしている。あの化け物だけは…
しかし、今なのははグレーテルのそばに倒れている。あのままでは…
いや、なのはは仲間かどうかも怪しいこのまま放っておいてあの化け物にとどめを…
(にげ…て)
しかし、頭に響いてきた声によってリンクは一瞬何事かと立ち止まるり、次の瞬間、その優れた反射神経か、グレーテルの振るった突撃槍を間一髪で回避した。
しかし、その風圧で吹き飛ばされてしまうリンク。
(今の声は…?)
いったい誰が発したのかリンクには分かった。否、知ることができた。
今の声はなのはの声だ。
リンクは知らない。なのはは気を失う直前になって最後の力をふりしぼって念話を使い、グレーテルがリンクに向かって槍を振るうのを知らせたのだ。
しかしリンクにはそんなことはどうでもよかった。
彼が気ずいたのはなのはが自分を助けてくれたということだけだ。
リンクにはそれだけで十分だった。

『はやてに、謝ろう。コナンに、アイに謝りに行こう。
 君はコナン達に一度も謝っていない。死んだ人たちに謝っていない』
ああ、どうして疑ってしまったのだろう。
大切な、守るべき仲間を…ほかならぬ自分が説得したなのはを…罪を償おうと必死になっているなのはを…。
なのははこんなにも自分の罪を償おうと必死になっていたというのに。

リンクの迷いは一瞬で消し飛ぶ。
ああ、馬鹿だった。仲間を疑うなんて。なのはを疑うなんて。
なのはだって仲間だ。守るべき仲間だ。
リンクは強く剣を握りしめ、グレーテルを睨みつける。

襲撃から丁度百秒が経過した。
390330より:2010/05/22(土) 03:40:06 ID:4f0nucf0
グレーテルを見たリンクの目は驚愕に支配された。
奴に与えた傷がみるみる再生していくではないか。
ヴィクター化によるエネルギードレインである。
ヴィクターと化した者はそのエネルギーで武装錬金を振るい。

あるいは自らの肉体を再生する。
高町なのはの意識を奪った、背後で、アリサを安全な場所に運ぼうとしたインデックスがいつの間にか二人して倒れている最終的な要因だった。

グレーテルは周囲から生命力を吸い上げて自らの傷を再生していた。
その生命力は戦う力にも使われているのだろう。
グレーテルはそこに居るだけで周囲の者達を衰弱させ、力を増し続けていた。

そのことをリンクは知る由もなかった。

だがそれがなんだ。自分は仲間を守る。そう誓ったのだ。
その仲間の為にもここであきらめてなるものか。

「そうだ。諦めない…諦めてたまるか。
 僕は仲間を守る。僕が、守るんだぁぁぁ!」

咆哮するリンクに対してグレーテルはさらに高笑いを続けている。

その時だった。
ザッという音がした。
「ほう、生きていたか。少しは見直したぞ。勇者。」
グレーテルが壁に開けた穴を抜け、人影が一つ飛び込んできたのだ。
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
自称最強の悪の魔法使い。
リンク達を護るため、他の悪を討つために、魔女たちに同盟を示唆しながら四散させた張本人。
つい先ほどヴィクターと化す前のグレーテルと戦い撃退した、夜に生きる吸血鬼である。
彼女は変貌したグレーテルが工場の方角に向かうのを見て、それを追ってここに来たのだ。
しかしグレーテルがヴィクターの飛行能力を使いこなし挙句にサンライトハートで加速までしたため、
彼女の飛行能力では若干の遅れが生じ、出発の時間差も含めて百秒の遅れが生じた。
たったの百秒だ。
例えば廊下など見晴らしの良い場所に出ず適当な部屋に隠れて、迎撃に出るのではなく待ち伏せれば過ぎ去る程度の時間。
救援の見込みなど薄いのだからその行動の可能性は低かったが、一つ違えば何事も無く間に合ったほどの時間。
それだけの時差で彼女は戦場に辿り着き。
その光景を視た。

リンクはグレーテルの攻撃をかわし、その後何かが吹っ切れたように、仲間を守ると言った。そしてまた、化け物となったグレーテルに剣を向けている。

それが一つの結末だった。

「そういう事か。」

エヴァは呟く。
感心と共に。
希望と共に。
391330より:2010/05/22(土) 03:41:50 ID:4f0nucf0
誰かを助けるために誰かを殺すって、どう考えたって泥沼じゃねーか。
 もう助からないから殺すって、もっと違うだろ。
 殺した奴は嫌われて、殺された奴の仲間は悲しむんだ。
 戦わなきゃいけないのかもしれないけど。
 殺さなきゃ生きられないのかもしれないけど。
 仲間が仲間を殺すなんて、仲間が敵に殺される以上に最悪じゃないか。
 誰かを嫌いになるなら、敵だけ嫌いになった方が、マシだっ

オレは仲間を嫌いになんてなりたくないんだ。
 仲間が仲間を殺すなんてイヤだね

二ケの言葉が一つ一つ浮かんでは消えていく。

(少しは認めてもいいのかもな…ニケ)

「エヴァ!」
リンクの声が聞こえる。だが自分は…

「勘違いするな!私は考えを変えたつもりはないぞ。
 ここに来たのもあの化け物を殺すためだ!」

やはりまだ考え直してはくれないのか…
リンクはがっかりしながらも、

「それでも今はエヴァの力が必要なんだ!仲間を、アリサヲを、インデックスを、なのはを、みんなを助けるために力を貸して、エヴァ!」

対するエヴァはリンクをほんの一瞬だけ見て、
「フッ、いいだろう。だが忘れるな。グレーテルを倒したら、次は貴様らだ!」
あくまでもスタンスを変えなかったがリンクは。

「うん!行くよ!エヴァ!」

第二ラウンドのゴングが今、なった。

392330より:2010/05/22(土) 03:42:31 ID:4f0nucf0
インデックスはそれを見ていた。
倒れ伏し、息苦しいほどに消耗しながら。
喘ぎ、悶えながら見ていた。

(気をつけて!エヴァ、リンク……)

そして恐怖していた。
襲撃者の持っている能力に。

インデックスは戦いに巻き込まれないよう、なのはの腕から零れたアリサを仮眠室に引きずり込もうとしていた。
呻き声を上げていたが、出血で一時的に意識が飛んでいたのか抵抗は無かった。
その途中で急激な脱力感に襲われ倒れてしまったのだ。
戦況を観察し続けて、やがてその原因を理解した。
しがみつきすぐに倒れたなのはと、グレーテルの胸の傷を見て。

グレーテルは周囲から生命力を吸い上げて自らの傷を再生していた。
即ち、エナジードレインだ。
その生命力は戦う力にも使われているのだろう。
グレーテルはそこに居るだけで周囲の者達を衰弱させ、力を増し続けていた。

とはいえ、本来は至近距離でなければこうも即効性を持つ力ではなかった。
健康な者ならこの距離でやられはしなかったはずだ。
だがインデックスは高熱と貧血で消耗していた。
微弱なエナジードレインに耐える体力すら残っていなかったのである。
深手を負ったアリサも似たようなものだろう。
エナジードレインを直接受けて倒れたなのはに至っては言うまでもない。

インデックスはグレーテルが周囲から力を吸い上げている現象に気づき、その“能力”に気がついた。

この戦場で戦う限りグレーテルは力を増し続け、回復を続けるのだ。

(いくらエヴァやリンクでも、ここじゃ勝てないんだよ……!)

この消耗では警告を叫ぶことさえ難しい。
だからインデックスは祈る。
せめて一人でも生き延びてくれることを。


A-3/工場/2日目/早朝】
【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:健康、ヴィクター化。胸元に微かな傷(すぐに再生する)
    喪われた心臓の代わりに核鉄(サンライトハート)が埋め込まれている。
[装備]:サンライトハート@武装錬金
    ソードカトラス×2(1+12/15)(銀10/15)@BLACK LAGOON、ソードカトラス専用ホルダー
[道具]:基本支給品一式、塩酸の瓶×1本、毒ガスボトル×1個、ボロボロの傘
    ソードカトラスの予備弾倉×3(各15発、一つだけ12発)、バット、
    蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン、救急箱、エルルゥの薬箱の中身@うたわれるもの
   (カプマゥの煎薬(残数3)、ネコンの香煙(残数1)、紅皇バチの蜜蝋(残数2))、100円ライター
    スペクタルズ×8@テイルズオブシンフォニア、クロウカード『光』『剣』@CCさくら、
    コエカタマリン(残3回分)@ドラえもん、
[服装]:いつも通りの喪服のような黒い服。胸の中央に大きな穴が空いている。雨に濡れて湿っている。
[思考]:うふふ……あははは……
第一行動方針:エヴァと周囲の連中を殺す?
第二行動方針:千秋との再会を楽しみにする。千秋が「完全に闇に堕ちた」姿を見届けたい。
第三行動方針:機会があればまた紫穂と会いたい。2人きりで楽しく殺し合いたい。
基本行動方針:効率よく「遊ぶ」。優勝後はジェダに「世界のルール」を適用する(=殺す)。
[備考]:シルバースキンの弱点(同じ場所をほぼ同時に攻撃されると防ぎきれない)に勘付きました。
    「殺した分だけ命を増やせる」ことを確信しました。ただし痛みはあるので自ら傷つこうとはしません。
    銀の銃弾は微妙に規格が違う為、動作不良を起こす危険が有ります。使用者も理解しています。
393330より:2010/05/22(土) 03:45:45 ID:4f0nucf0
【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル@魔法先生ネギま! 】
[状態]:全身に痛み、左腕が殆ど動かない、魔力消費(中)
[装備]:フェアリィリング@テイルズオブシンフォニア
[道具]:支給品一式、手足の無いチャチャゼロ(半永眠)@魔法先生ネギま!
[思考]:勇者か…いいだろう認めてやるよ
第一行動方針:グレーテルを殺す
第二行動方針:リリスと遭遇することがあったら、リリスを倒し身柄を押さえ、情報を得る。
第三行動方針:ジェダの居場所に至る道を突き止め、露払いをする。
第四行動方針:ジェダを倒そうと挑む者たちの前に立ち塞がり、討たれる。
基本行動方針:ジェダ打倒のために暗躍。ただし仲間は作らない。誇り高き悪として、正義の前に散る。
[備考]:梨花の血を大量に吸いました。雛見沢症候群、及び女王感染者との関連は不明です。
    ジェダ打倒を目指している者として、ニアの名前をグリーンから聞いています。
    パタリロを魔族だと思っています。名前は知りません
    紫穂の『能力』が、触れることで発動することを見抜きました。詳細までは把握していません。
    雲に隠れていても満月による補正は有るようです。

【インデックス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:高熱&貧血&エナジードレインによる消耗で行動不能、全身に軽度の凍傷、
    背中に大きな裂傷跡と火傷、足裏に擦過傷(共に応急手当て済み)
[装備]:水の羽衣(背部が横に大きく裂けている)@ドラゴンクエストX
[道具]:支給品一式(食料−1日分、時計破損)、ビュティの首輪、鉄製の斧@ひぐらしのなく頃に(?)
[服装]:私立聖祥大付属小学校の制服の下に水の羽衣。背中と足にシルクの包帯。
[思考]:リンク…エヴァ…死なないで…。
第一行動方針:どうにか、したい
第二行動方針:ヴィータを捜し、説得する。
第三行動方針:ニケ達と合流する。
第四行動方針:紫穂の行方の手掛かりを探す。エヴァの説得も諦めていない。名前しか知らないヤムィヤムィが少し気になる。
第五行動方針:落ち着いたら、明るい所でじっくりビュティの首輪を調べたい。
基本行動方針:誰にも死んで欲しくない。状況を打破するため情報を集め、この空間から脱出する。
[備考]:拾った双葉の型紐が切れたランドセルに荷物まとめて入れています。
    インデックス自身のランドセルは壊れているので内容物の質量と大きさを無視できません。
    深夜12時の臨時放送を、完全に聞き逃しました。

394創る名無しに見る名無し:2010/05/22(土) 14:40:35 ID:YFECEAZy
修正乙。
リンク殺さないだけで大分印象が違うな。
前は無理やり感があったけどこれならOKだと思う。
395創る名無しに見る名無し:2010/05/22(土) 18:29:42 ID:GgStYn//
こういうのを、荒らし乙という。
謝るなら今のうちだから、早く行っておいで。
396創る名無しに見る名無し:2010/05/23(日) 06:06:23 ID:fiR0igVX
没スレに後篇来てた
まともに取り上げると、また紛糾しそうな感じだな…
397創る名無しに見る名無し:2010/05/23(日) 08:40:43 ID:yV7Ysbh/
>>396
少なくともあんなのを投下されるのだけは絶対に御免です。
グレーテルとはやはりあそこで決着をつけるべきです。
398創る名無しに見る名無し:2010/05/23(日) 14:30:23 ID:SY4B0IFT
やっぱり硬すぎるな。ヴィクター化が強すぎる。
硬すぎる、修正城って意見があったのにまだ硬いとか修正する気ねーだろ
399創る名無しに見る名無し:2010/05/24(月) 02:29:02 ID:g/vjjLnq
なのはが死んだのでおk
今処理しておかないと永遠に暴れ続ける
400創る名無しに見る名無し:2010/05/24(月) 17:28:38 ID:UmwBELaz
工場組より残りの北東組を何とかして欲しい
でもあれも難しいパートなんだよな…
401創る名無しに見る名無し:2010/05/24(月) 18:54:13 ID:J+G5W462
議論に飽いたから北東方面書いてるよ。
ひゃっはー全部まとめて書いて放送だーなテンションでネタ練ったら
パッと済ませようと思ったヴィクトリアのパートだけで一つのSSになりそうで困った。
レミリアは朝だから大人しくしててもいいだろうけど
早朝にすら行っていないシャナ紫穂ヴィータの来訪者組が放送まで
何の行動もしないとかありえないから更に困った。
やらなきゃならないこととやりたいこと詰め込んだら
前後編かそれ以上の分量書かないとまとまらないや。予約できる状況すら遠い。
402創る名無しに見る名無し:2010/05/25(火) 01:55:41 ID:BxBH1a/A
あれ、リンクの状態表が見当たらないんだが・・・

あとコキリの剣って一応初期装備だし
ヴィクター相手に大したダメージなくても仕方ないと思う
403創る名無しに見る名無し:2010/05/25(火) 04:32:33 ID:9K38fixk
リンクは死んだんじゃないの?
404創る名無しに見る名無し:2010/05/25(火) 22:40:29 ID:BxBH1a/A
>>403
そっちじゃなくて>>387-393の方
405創る名無しに見る名無し:2010/05/25(火) 22:43:34 ID:jYvpjvr1
>>387-393は所詮偽者荒らしが書いたものだからそこまで気が回らなかったんだろう
406創る名無しに見る名無し:2010/05/26(水) 00:02:42 ID:GZaVM7SJ
俺はそっちの方がいいと思うけど
誰かしら殺したいなら次の話で殺せばいいし
407復活できると思ったか!! カオスロワだよ:2010/05/26(水) 01:41:08 ID:G8r3hc/g
もう>>387-393でいいよ
408330より:2010/05/26(水) 21:43:02 ID:R93+nZ9L
【アリサ・バニングス@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:全身に軽い火傷(右腕と顔は無事)、左腕出血(軽度打撲)、背中出血(深い切り傷)、以上応急処置済み。
    精神負担中、足と両手に軽度の凍傷、右肩に深い刺し傷、腹部打撲、出血と軽度エナジードレインで行動不能?
[装備]:カレイドステッキ@Fate/stay night
[道具]:なし
[服装]:パジャマ。変身を解いたらショーツ一枚。
[思考]:??????
第一行動方針:この状況をどうにかしたい。
第二行動方針:リンク、インデックスと情報交換する。
基本行動方針:はやての遺志を継いで、なんとかする。(なのはと一緒に)ゲームからの脱出。
[備考]:深夜12時の臨時放送を、完全に聞き逃しました。
    カレイドルビーは臨時放送を聞いています。
    贄殿遮那@灼眼のシャナはグレーテルの足元に転がっています。

【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:魔力消費(中)、両手首に浅い傷、背中に軽度の凍傷(治療済み)、頬骨と肋骨一本にヒビ、
    胴部打撲、密着エナジードレインにより昏倒
[装備]:なし
[道具]:なし
[服装]:シーツでできた服
[思考]:……。
第一行動方針:これまでに殺した人たちに謝る……
基本行動方針:自らの罪を償う。自身の想いに素直になる。………………。
[備考]:深夜12時の臨時放送を完全に聞き逃しました。

【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
 [状態]:左太腿と右掌に裂傷、左肩に打撲、足に軽度の凍傷(治療済み)、強い決意
 [装備]:勇者の拳@魔法陣グルグル、コキリの剣@ゼルダの伝説
 [道具]:基本支給品一式×5(食料一人分−1、飲料水を少し消費)、クロウカード『希望』@CCさくら、
     歩く教会の十字架@とある魔術の禁書目録、時限爆弾@ぱにぽに、エスパー錠とその鍵@絶対可憐チルドレン、
     じゃんけん札@サザエさん、ふじおか@みなみけ(なんか汚れた)、5MeO-DIPT(24mg)、
     祭具殿にあった武器1〜3つ程、祭具殿の鍵、裂かれたアリサのスリップ(包帯を作った余り)
 [服装]:中世ファンタジーな布の服など。傷口に包帯。
 [思考]:守るんだ!仲間を!
 第一行動方針:なのは達を守る。
 第二行動方針:エヴァと協力してグレーテルを倒す。
 第三行動方針:もし桜を見つけたら保護する。
 第四行動方針:ゲームに乗った人間は、説得する。
第五行動方針:戦い終わったらエヴァを説得したい。
 第五行動方針:死者蘇生の可能性を探す。
 基本行動方針:ゲームを壊す。その後、絶対に梨花の世界へと赴き、梨花の知り合い達に謝罪したい。
 参戦時期:エンディング後
 [備考]
 リンクが所持している祭具殿にあった他の武器が何なのかは次以降の書き手さんに任せます。
 (少なくとも剣ではないと思われます)
409創る名無しに見る名無し:2010/05/31(月) 12:27:46 ID:huSn3Mza
一応、本スレにも告知を。

現在、避難所の議論スレにて「分岐制の導入により、◆S4WDIYQkX.氏最新作の採否に係る問題を解決しよう」
という旨の提案がされております。
(提案の詳細については、議論スレの該当レス参照のこと)
意見のある方は議論スレまでお早めによろしくお願いいたします。
410創る名無しに見る名無し:2010/06/02(水) 02:13:47 ID:UJaQwDPe
良かった。
リンクは生きてるよ。
411創る名無しに見る名無し:2010/06/03(木) 21:12:39 ID:uQetkhc9
あの人ってなのは二重人格が破棄にされたから報復になのは殺したのかな
412創る名無しに見る名無し:2010/06/03(木) 21:42:02 ID:+K8MJS+z
なのはをマーダー復帰させたかったけど無理そうな空気だから殺したって感じじゃね?
413創る名無しに見る名無し:2010/06/04(金) 11:02:37 ID:SfJ+exHT
ゆっくりでもいいから>>401に頑張って欲しい
空気悪いから投下で空気変えて欲しい
いや、マジでお願いします
414創る名無しに見る名無し:2010/06/04(金) 13:35:41 ID:43hLzXyz
とりあえずsageしよう、な?
E-mailの欄にsageって入力するだけでいいから。
415創る名無しに見る名無し:2010/06/04(金) 21:53:20 ID:T/Zw5AYk
なのは死亡確定?
416創る名無しに見る名無し:2010/06/05(土) 13:39:57 ID:bO9usaeB
分岐採用なんだから確定も何も無いんだよ
嫌なら書け、の時代だ
417創る名無しに見る名無し:2010/06/05(土) 21:02:30 ID:bUyv415A
>>409みたいな議論開始の告知だけでなく、結論の告知も欲しいな
418創る名無しに見る名無し:2010/06/05(土) 23:32:06 ID:NjGQQxtG
話を書いて無理に押しとおしたら全部通るってことさ
そうやってネタ潰しすることも可
419創る名無しに見る名無し:2010/06/05(土) 23:40:57 ID:AzROgvpz
カオスロワ開始のお知らせってことか
いい時代になったものだ
420創る名無しに見る名無し:2010/06/06(日) 01:39:24 ID:vpm0GPJB
通るけどwiki編集もされなければリレーもされない、ただのボツ作品と同等の扱いをされるだけ。
書き手荒らしをいちいち議論の俎上に上げないための分岐制度だからね。
421創る名無しに見る名無し:2010/06/06(日) 03:11:20 ID:MVFAf15v
wiki編集も俺、リレーも別トリの俺でロワの私物化がさらに加速する訳ですね、分かります

まあそれでも面白い作品なら別にいいんだけど
422創る名無しに見る名無し:2010/06/07(月) 20:01:36 ID:68IASU5A
予約来たぞ
破棄や修正で揉めるだけは勘弁…
423創る名無しに見る名無し:2010/06/07(月) 21:38:54 ID:ky5mj74p
難しいパートだからなー
まあ大丈夫だと思うけどね


ところで、最近初めてネギま!を読んだ
小太郎……可愛すぎだろ…w
424創る名無しに見る名無し:2010/06/07(月) 23:08:07 ID:tocB9dxO
リンクが死んでショタ比率がますますひどくなったからねー。
小太郎には本当に頑張ってほしい。
425創る名無しに見る名無し:2010/06/07(月) 23:51:12 ID:c+1Zh45f
>>424
だからリンクはまだ死んでないって。
426創る名無しに見る名無し:2010/06/08(火) 01:29:00 ID:fKoaEfUx
結局あの作品はどういう扱いになったの?
wikiにも収録されてないけど
427創る名無しに見る名無し:2010/06/08(火) 07:50:15 ID:NvifS5Xh
分岐されれば分岐前のAルートとして収録
されなければそのまま登録でしょ
428ピコンケ:2010/06/08(火) 16:33:57 ID:sq8FQNOM
お前らショタだろ!!
429創る名無しに見る名無し:2010/06/08(火) 19:07:54 ID:O8a3OBaq
>>426
wikiにも収録されてないってことは没スレのやつかい?
あれは状態票もついてないし本投下もされてないから収録のしようがない。
書き手が投下する気があるならそのうち投下されるんじゃない?
430創る名無しに見る名無し:2010/06/08(火) 19:25:22 ID:O8a3OBaq
って前編のほうも削除されてんのか。
431終幕 ◆DMJuKxLb.o :2010/06/08(火) 20:11:04 ID:cDJiBMM0
「あーもうめんどくせ」
ロワに飽きたジェダは大量の核爆弾を会場に打ち込み、自分の世界へ帰って行った。

ロリショタバトルロワイアル ―完―
今までご愛読ありがとうございました。
432創る名無しに見る名無し:2010/06/08(火) 22:59:53 ID:fKoaEfUx
とりあえず通しでいいんだったら今から編集してくるけど
てか分岐制採用になったの?
実際分岐した場合って、wikiのページはどういう風にすりゃいいのかな
話数とか追跡表とか色々
433創る名無しに見る名無し:2010/06/08(火) 23:03:54 ID:O8a3OBaq
分岐制採用にはなったけど実際にその制度が使われるまでは
今までと同じように編集してればいいんじゃないかな
434創る名無しに見る名無し:2010/06/08(火) 23:29:01 ID:2sGKqR56
とりあえず後半は宙ぶらりんだけど、前編だけは通しなんだから収録しておけばいいんじゃね?
435創る名無しに見る名無し:2010/06/09(水) 23:37:31 ID:Ul9NXa7D
◆S4WDIYQkX.のあれ通しに入れるんなら
>>431も通しに入れとこうぜ
436創る名無しに見る名無し:2010/06/10(木) 13:40:53 ID:mkO3llE1
分岐制あるんだし書いた作品は全部通しだな。
暇があるときに>>431も収録しておくよ
437創る名無しに見る名無し:2010/06/10(木) 17:04:35 ID:KnyEumYU
好きにすれば
でもやるんなら分岐用のページもちゃんと作れよな
438創る名無しに見る名無し:2010/06/10(木) 17:52:39 ID:mkO3llE1
収録はあっちが先だから分岐つくるなら後から書いた奴がだろ?
439創る名無しに見る名無し:2010/06/10(木) 19:55:42 ID:6UuirDWE
投下したけりゃしたらばの予約スレいってからにしろ
440創る名無しに見る名無し:2010/06/10(木) 20:03:11 ID:BL9YEJNe
ならグダグダ言ってないでさっさとして来い
お前の言うとおり、分岐制だから誰も文句は言わないよ
441創る名無しに見る名無し:2010/06/10(木) 22:35:17 ID:eMMxP/eT
ああ、忘れてるかも知れないから一応言っておくけど、wikiって管理人が編集IPみられるからね
編集禁止IPなんてのも設定できるので、いや別にだからどうって他意はないんだけど
442創る名無しに見る名無し:2010/06/11(金) 00:26:53 ID:JeN1UGPi
管理人がまだいればの話だな
443創る名無しに見る名無し:2010/06/11(金) 01:06:21 ID:hMrnkThJ
何でもいいよ
どうせ口先だけで本当にやる気はないんだろうし
444創る名無しに見る名無し:2010/06/11(金) 23:46:59 ID:Isb6PUvE
本編に投下するには予約スレ行って予約してからその後どうすればいいの?
445創る名無しに見る名無し:2010/06/12(土) 00:36:04 ID:ffxV+qVK
その後は投下でいいはず。
446創る名無しに見る名無し:2010/06/12(土) 20:51:21 ID:3GA5YcWe
ゴミロワイアル完
447創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 20:38:45 ID:pUVHPAMW
そろそろかな?
支援の準備はできてるぜ
448創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 21:03:22 ID:knZK95+o
そろそろだな
まあ、完成する目途があるのなら少しぐらい遅れてもいいぞ
449 ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 21:39:48 ID:qjp8xZNx
お待たせしました。投下します。
あんまりやりたくないと思いつつ三分割になってしまったのでゆっくり付き合ってください。
450それぞれの再会 -ongoing-(前編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 21:41:20 ID:qjp8xZNx
雲も疎らな空の下。東の水平線が微かに明けの光を帯び始めたころ。
ヴィクトリア、イエロー、ひまわりの3人はトリエラとの約束の場所であるパン屋の前にいた。
つい先ほどまで休んでいた民家では泣き出したひまわりによって、
この世の終わりもかくやといった様相が呈されていたのだが、
冥王の枷すらねじ伏せたヴィクトリアの悪運の敵ではなかった。
程なくして何をしても起きなかったイエローが泣き声に目を覚まし、ひまわりをあやしたのである。
災い転じて福となすを地でいく行動。それを目の当たりにしたヴィクトリアは、
イエローの年齢不相応な母性に半ば本気で感謝しつつ、トリエラから連絡があったことを伝え現在に至る。

「来たわね。ようこそ、トリエラ」
「イエローに……太刀川、ミミね?」
「ええ」

そうして彼女たちは対面を果たした。
パン屋の工房の一室で最初に行われたのは誤解の解消。

「ネスのことは軽率だったわ。私は馬乗りにされたあなたが襲われていると思ったの。
 申し訳なく思っている」
「……ボクも人のことは言えないよ。元はといえばボクがリディアを殺してしまったせいなんだ。
 だから、ボクがトリエラさんを許すとか許さないとか言うことはできない。
 けど、こんなこと繰り返しちゃいけないんだ。ボクもあなたも」

一つの約束が交わされ、両者のわだかまりに一応の決着がついた。
次の段階に進むべくヴィクトリアが口を挟む。

「イエロー。"これ"のことでトリエラと二人きりで話したいのだけどいいかしら?」
「分かったよ、ミミさん。ひまわりと向こうの部屋に行っているね」

ひまわりを抱えたイエローの後姿が扉の向こうに消えた。
含みを持たせた言葉がトリエラの口から漏れる。

「……随分うまく手懐けたものね」
「この顔あってこそのものよ。今は大いに後悔しているけど」

勿論、その言葉は倫理や情からではなく利便性から来ているものだということをトリエラは理解している。
目の前の女はそういう女だ。

「さて、本題に入る前にまずは互いの経緯でも軽く話し合いましょうか」

そうして一対一の情報交換が始まった。
トリエラは真実ほぼそのままに、ヴィクトリアも自身の正当性を殊更強調しつつも、概ね事実を述べた。

「あなたがフランドールを殺さなければレミリアも大人しくしていたかもしれないわね」
「それはあの吸血鬼と相対してない人間のセリフよ、トリエラ。
 最初の印象と違って思ったより甘いのね。私と同じ立場ならあなたもどう動いたことかしら」

情報交換が続き、

「あなたなら金糸雀がどういう存在なのか分かっているんでしょう?
 金糸雀を始末したのは事実だけど、私がククリまで殺したと犬上小太郎に誤解されているのはまずいわ。
 今後のためにもよく言い含めておいて」
「分かったわよ」
451それぞれの再会 -ongoing-(前編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 21:43:15 ID:qjp8xZNx
粗方片付いたところで。

「それじゃ、例の件に移りましょうか。持ってきたデバイスは?」
「グラーフアイゼンよ」
「ベルカ式か。試させてもらってもいいのかしら?」
「いいけど条件がある」

立ち上がったトリエラは素早く銃を構え、ヴィクトリアの脳天に突きつけた。

「あなたの作業中、ずっとこの状態を維持させてもらうわ」

穏やかとはかけ離れた刺すような空気の中。
ヴィクトリアは笑みに顔を歪めた。

「結構。そのくらいやってくれないとこっちが不安だわ」

それから数十分が経過した。
魔法の式が違うため、念話の調整にすら時間がかかったが、
どうやら以前のものと同程度の術式を構築したらしい。

「さて、式はこれでいいはず。で、どうするトリエラ?」

鉄槌がトリエラの喉元に突きつけられた。
トリエラの銃の狙いは全くぶれず、柄長の鉄槌と平行線を形作っている。

「早速実験台にでもなってみる?」

挑発的にヴィクトリアが薄く犬歯を覗かせる。
ヴィクトリアが意図しようとしなくとも、首輪の爆発は大いにありえる状況。
ここで死んだら、その死はヴィクトリアによる多大な脚色に彩られることだろう。
だが、ここまで乗り込んでおいて臆病風を吹かせるのは矜持が許さない。

「イエローを呼び戻してからなら、試してみて構わないわ」

だから、トリエラはイエローを証人とすることにした。
誤解が解けたばかりの彼女のほうが、眼前の悪女よりよほど信頼に足る。

「もとよりそのつもりよ。イエローがいないと成否の判定もできないのだから」

そうしてイエロー立会いのもと、首輪解除魔法の行使された。
儀式の当事者たるトリエラは、少々拍子抜けした。
魔法が関わるといっても、傍目には何も起こったようには見えない。
想定してしかるべきだったヴィクトリアの裏切り、首輪の爆破どころか、それらしい光の一つも発生しない。
終わりよというヴィクトリアの言葉を聞いたときにはペテンにかけられたのかとさえ思った。
イエローの手が、トリエラの首に嵌ったままの首輪に触れる。
数秒の間を置いて、イエローは結果を告げた。

「たぶん、ダメだと思う。これはまだ活きている」

やっぱりか、と呟くヴィクトリアの声が聞こえた。

「私のときにはそれこそ死に掛けの状態で行ったからバグが起こったんでしょうね。
 ただ止まれと命令するだけじゃ恐らくバイタルサインを誤魔化しきれない。
 かといってこれを試すたびに参加者を瀕死状態に持っていくなんて方法は現実的じゃない」
452それぞれの再会 -ongoing-(前編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 21:44:51 ID:qjp8xZNx
ヴィクトリアは両腕を抱えて黙考し始めた。
トリエラもまた、似たような様相を呈している。
そんな中、

「あの、ミミさん」

思わぬ方向から声が発せられた。イエローだ。

「生きているかどうか誤魔化したいなら、……身体を氷漬けにするとかはどうだろう」

イエローは欠片の苦悩も見せずにその言葉を放った。
氷漬け。それが彼女に何を連想させるのか、この島で知るものは少ない。
もう会えない背中。幼い日の憧憬。
再会。交わした言葉。伝えられなかった想い。
この手で集めて弔った、無数に散らばってしまった彼の残骸。
大切なものを仕舞い込むように。
閉じた瞼の裏に投影するように。
イエローは僅かな時間、双眸を伏せた。

「氷漬け、ね。試す価値はあるかもしれないわ。当然もとに戻せなければ論外だけど」

イエローを甘く見ていた節のあるヴィクトリアは、僅かな感嘆とともにその案を評価した。

「それなら石化っていうものでも代用できるのかしら」

トリエラが続く。氷漬けも石化も非科学的なものという考えは揺らがない。
だが、その案が他者から実際に提示されたのなら話は別だ。
自分に支給された毒消しなる薬は本物だったのだから、
同様に石化回復の効能があるという金の針も本物であると考えるべき。
つまり、石化も実在する。
しかし、支給品にあるということは当然ジェダの想定範囲内。
ただの石化や氷漬けだけで首輪を外せるというわけでもないだろう。
(けど、それと首輪解除魔法の複合なら?)
ヴィクトリアの言うとおり、試す価値は大いにある。

「氷結、石化系魔法の使い手の心当たりはある? 
「確かタバサは使えるって言っていたはずよ。
 あとは小太郎が言うにはエヴァンジェリンは氷結魔法のエキスパート」
『想定スペックどおりならリィンフォースUと蒼天の書でも可能だと思われます』

情報を纏めながら改めてトリエラは思う。
(やっぱり、タバサとこいつを引き合わせないと話が進まないかな……)

「トリエラ」

呼びかけと同時に銀色の小物が放られた。
片手でキャッチする。アイゼンの待機フォルムだ。
返ってきたそれを首元につける。

「私たちと組んでくれる気になったかしら?」
「……一応、私の仲間ともう一度話し合う時間を頂戴」
「保留ってことね。良い返事を待っているわ」

分かるものにしか分からない含んだ笑みを背に受け、トリエラはその場をあとにした。

453それぞれの再会 -ongoing-(前編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 21:46:37 ID:qjp8xZNx
(さて、どうするか)
街路を歩きながらトリエラは思考を巡らせる。
思うところはあるが、首輪を外したという事実はあらゆる懸念に勝る。
やはり、ヴィクトリアに協力する方向で小太郎やタバサにも話を進めるべきか。

『熱源接近、退避を』
「っ!?」

グラーフアイゼンの警告は思考に気をとられていたトリエラの反応よりも半瞬早かった。
義体の力を活かし、全身のバネを使って身をかわすトリエラ。
その軌跡を塗りつぶすように一発の炎弾が駆け抜け後方のアスファルトを西瓜大に爆ぜさせた。
攻撃の威力を横目で確認し、飛び込みの勢いを側転に置き換えながら拳銃を襲撃方向に構える。
その先には一つの色が在った。
(……銀色の、紅)
頭の中にそのような奇妙な形容が浮かび、しかしそれは矛盾していないと感じた。
銀の下地の上に紅を重ねたような、輝く紅蓮。
宙に浮かんでいた天使のようにも見えるそれは、地に降り立つと双翼を炎の残滓としながら散らした。
後に残るのは同じ色を刺すように放ってくる、長髪と双眸。
トリエラの記憶にあるそれよりも危うさを放つ色彩。

「シャナ」
「ようやく会えたわね、自動人形」

弁解の余地を許さない、威圧的な声。
命を狙う、ではまだ遠い。最もシンプルな「殺す」という単語が相応しい声音だった。
(まずい、よりにもよって小太郎がいないときに遭遇するなんて……!)
即座に路地裏へと飛び込み、トリエラは身を隠した。
初動の差で距離を稼いだが、その差も間もなく埋まるだろう。
現に後方の壁やガラスが粉砕される音が刻一刻と縮まってくる。
迎え撃つしかないか。
そう考えたトリエラの身体が突如開いた横合いの扉から伸びた手に捕まり、中に引き込まれた。

「出て行ったと思ったら何の騒ぎなの、これは?」
「ヴィ、じゃなくてミミ?」

現れたのは眼鏡をかけたヴィクトリア。
どうやらここにいるのは彼女だけらしく、イエローとひまわりは安全なところにでも置いてきたようだ。
無闇に連れまわさないあたり、動機はどうあれ二人の身を案じていることが窺える。
454それぞれの再会 -ongoing-(前編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 21:47:45 ID:qjp8xZNx
「レミリアじゃないみたいだから様子を見に来てみたけど……。
 あれがさっき言っていたシャナね」
「ええ、そうよ。丁度いいところに来てくれたわ。このままじゃ話も通じないだろうから止めるの手伝って」
「嫌よ」
「は?」

呆けた声が突いて出た。

「私は様子見に来ただけ。あなたが言ったんじゃない、同盟はまだ保留だって。
 あんな面倒くさそうなの相手にする義理はないわ。
 自分で撒いた種なんだし、精精仲良くしてくればいいじゃない」

トリエラの抗議を無視し、やる気なさそうに手を振りながら踵を返すヴィクトリア。
その顔目掛けて弾丸のような剛速球が飛来した。
弾丸の正体は拳大の瓦礫。
ひらひら彷徨わせていた右手が反射的に動き、瓦礫を掴み、そのまま粉微塵に握りつぶした。
背筋に冷たいものを走らせ、歩みを止めたヴィクトリアに声が刺さる。

「もしかしてと思ったらその身体能力、やっぱり自動人形は群れるものなのね。
 そっちのオマエは日常的に人を喰っているひどく血腥い臭いがする。
 偽装しきれていないのかする気がないのかは知らないけど……オマエが親玉ね」

固まったままのヴィクトリア、その肩にポンと手が置かれる。

「そういうことみたいだから、仲良くしよ?」
「……あなた、この借り返すアテはあるんでしょうね」

こめかみをひくつかせながら魔剣ダイレクを臨戦態勢に移行させる。

「やるからには殺す気でかからせてもわうわよ」
「それはダメ」
「……つくづくふざけた要求を重ねてくれるわね。自分が何を言っているのか理解しているのトリエラ?」
「とにかくダメなんだ。イエローと約束した。
 それにここでシャナを殺したりしたら……小太郎に殴られるだけじゃすまなくなる」

やり取りに焦れたとばかりにシャナの殺気が膨らんだ。

「絶対に逃がさない。錬金術が生み出した化け物はまとめて叩き潰す」

ヴィクトリアの眉根が微かに動いた。
そんな言葉を他人からまた聞くことになるとは思っていなかったためだ。
生じたのは微かな驚愕。次いで静かな憤慨。
誰だか知らないが易々と口にしていい事柄なんかじゃない。
どいつもこいつも散々人の神経を逆撫でしてくれるものだ。

「錬金術なんて滅べばいい。そこは同意するけど、私はあなたなんかに滅ぼされる気はこれっぽっちもないの」

各人がそれぞれにボルテージを引き上げ、戦闘が始まった。


   *   *   *

455それぞれの再会 -ongoing-(中編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 21:50:32 ID:qjp8xZNx
『南西に微少魔力反応。数は1〜2』
「誰か来たんか」

バルディッシュの近距離サーチに反応があり、身を休めていた小太郎は腰を上げた。
トリエラが向かった交渉の場とは逆方向、それに戻ってくるにしても時間が早すぎる。
新しい人間がこの町にやってきたと考えるのが自然だろう。
年長者であり参謀役(少々疑問符が残る)が板につきはじめてきたトリエラがいないとはいえ、
せっかくやってきた情報源を見過ごす手立てはない。
そう考えた小太郎は未だ寝息を立てているタバサに声を掛けようとして……、
数拍悩んだあと傍らの金色のアクセサリに向かって口を開いた。

「バルディッシュ、タバサを頼むわ」
『お一人で行かれるのですか?』
「様子見で済ませてくるつもりやけど、万が一トリエラが帰ってきたときに誰もおらんかったってのもマズイやろ?」

それに、と小太郎は続ける。

「……タバサにはまだ時間が必要や。せやから事前に調べられるんなら
 引き合わせても問題ないヤツかどうかこの目で見ときたい。留守番よろしくな」
『了解』

バルディッシュの返答を背に受けながら寝室をあとにし、外へと向かいながら、思う。
(とくに、来たのが蒼星石やったりしたら目も当てられんからな)
別に蒼星石のことを憎んでいるわけでも嫌っているわけでもない。
ただ、誰にとっても、それこそ蒼星石自身にとっても不幸だったから遠ざけてしまっただけだ。
タバサと仲直りするために戻ってきた、という可能性も大いにありえるし、そうであってほしいとも願っている。
だが確実なものでもない。コインの裏表を間違えれば少女一人の運命が決まってしまう上に、
今のタバサが何とどのように反応してしまうのかも判別がつかない。
慎重になりすぎるくらい刺激物を検閲しておくことにこしたことはない、小太郎はそう考えた。


市街地南西部。舗装されていない道沿いに、痩せた林のように建物が点在する。
それらの影に身を隠しながら、小太郎は来訪者の姿を覗き見た。
二人の少女が向かい合って会話をしている。
一人は見知らぬ赤髪の少女。年のころは自分と同じくらいか。
もう一人の少女。こちらのほうは問題だった。
(紫穂?)
一時は行動をともにした、けれど小太郎にとって気を許しきれない存在。
接触するべきか否か逡巡している間に、赤髪の少女は来た道を引き返しはじめ、背を向けた紫穂だけが取り残された。
観察していても紫穂は一向にその場を動こうとはしない。何かを待っている。
妙だ、と漠然と思う。紫穂は相変わらず何をするでもなくただこちらに背を向けて立っている。
右手には先端が二股に分かれた血のような赤い短剣、左手にも恐らく何かを握りこんでいる。
ここまではいい。自衛のために武器を用意しておくという行動は理解できる。
だが、あんな開けた場所に立っているというのに紫穂はまるで周りを見ていない、
何かを待っているにしても注意の払い方がおかしい。
まるで。
こちらのほうを敢えて向かないように――
(!? しくじったッ!)
"敵"の意図を察し撤退のために両足に溜め込んだ力は、

「――――だあああああっっ!!」

頭上から落雷のように飛び込んできた炎剣の一薙ぎを回避するために浪費された。
退路を赤髪の少女に塞がれた小太郎は隠れていた家屋裏から平原側へ投げ出されるように跳んだ。
その、先に。

「瞬迅剣」
456それぞれの再会 -ongoing-(中編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 21:53:01 ID:qjp8xZNx
紫穂の張った網がある。全身の動きを連動させた教本のような刺突。
先読みされたという事実に小太郎の思考は警鐘を鳴らし、
達人さながらの型の良さを見せ付ける紫穂の太刀筋に二度目の警鐘を鳴らした。
未だ回避運動の最中、地に足すらつけていないが、このままではその前に撃墜される。
回避を諦めた小太郎は微少時間中に集められるだけの狗神を右手に纏わせ、邪剣の刺突に真っ向から激突させた。
否、正確には真っ向ではない。
分が悪いと見た小太郎は僅かに打点をずらすことで邪剣の刀身を足場にし、
拳の狗神が裂かれきる前に紫穂の後方へと自ら跳ね飛ばされるように動き、草むらの上に着地した。
奇襲挟撃という最悪状態は脱出。仕切りなおしだ。少女二人と少年の立ち位置が変わり、一直線上に並ぶ。
(なんやさっきの突きは。気による強化か、それとも風精霊の加護でも受けとるんか?)

「誰かと思ったら小太郎君じゃない。もうー、それなら声掛けてくれても良かったのに。怖かったのよ?
 物陰からコソコソ誰かに見られてると思ったら恐くて、怖くて、本当にこわくて……殺すつもりで動いちゃったじゃない」

くすくすと口だけで嗤う。顔面の上半分と下半分が別の生き物になってしまったようなその笑みは、
人にできる表情ではなかった。
握り拳に僅か血を滲ませ、えも言われぬ悪寒を振り払うように、小太郎は紫穂を睨み付けた。
やはりか、と思った。同時にどういうことだという疑問も浮かんだ。
遮蔽物が少なかったため、それほどの距離を置かずに紫穂たちの動向を探らざるを得なかったのは事実。
しかし、だからといって気配を絶っていたこちらの居場所をこうも正確に特定される道理はない。
気の扱いに精通し、西洋魔術師とも渡り合ってきた小太郎は、自身の経験則に信頼を置いていた。
法則が違えど、術であるなら予兆をつかむ事くらいはできるはずだと。
(となると支給品か、それか全く違う特殊能力っちゅーことやな)
思考を巡らせながら、眼前の脅威への対抗策を練る。
屋根から飛び降りつつ斬撃を見舞った赤髪の少女は勿論、
廃病院で別れるときには戦闘力の欠片もないと考えていた紫穂ですら油断ならない敵となっている。
(敵……、待てよ。もしもホンマに紫穂が俺の予想通りやったんなら――)
小太郎は脳裏に浮かんだ地獄絵図を、僅か首を振ることで棚上げにした。
今重要なのは少しでも情報を入手し、タバサやトリエラと合流すること。
そう決意したときだった。

彼方から遠雷のような破砕音が響き始めたのは。

小太郎は意識だけを音源の方角である東北東へと向け、その意味に気づき戦慄した。
(トリエラの待ち合わせ場所のほうやないか!
 くそ、ヴィクトリアとの交渉が決裂でもしたんか!? それともレミリアのヤツか!?)
何に重きを置いて動くべきか考える小太郎の視界の中で、紫穂とその付き添いの少女もまた破壊音に意を注いでいる。
やがて、口を開いたのはまたも彼女だった。

「なるほどね。ヴィータちゃん」

紫穂は傍らの少女に呼びかける。
告げられた名は小太郎にとっても無視できないものだったが、
それを実感として受け止めるには現況は錯綜に過ぎ、時間は少なすぎた。

「何だよ」
「これがきっと最後の任務になるわ」
「そこの獣人をやることがか?」
「いいえ、違うわ。
 あなたには宝探しに行ってもらいたいの」

暗い瞳を微かに輝かせながら、紫穂は嬉しそうに述べた。
疑問符がヴィータの口から漏れる。
457それぞれの再会 -ongoing-(中編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 21:54:24 ID:qjp8xZNx
「相変わらずもったいぶった言い方するやつだな。死にてーのか?」
「せっかちなのはだーめ。約束の時間までもうすぐなんだから我慢してよね。
 あなたはさっき爆発があったほうへ行ってくればいいの」
「何があるんだよ?」
「それは行ってからのお楽しみ。私は小太郎君にお話があるからヴィータちゃん一人で頑張ってね。
 私が死んじゃう前に帰ってこないと泣いちゃうわよ。
 ああ、けど心配だわ。ヴィータちゃん一人じゃ迷子になっちゃうかも」
「……おまえが死んでくれればいくらかは気が晴れそうだな。
 ただし、勝手に死んだらゆるさねーぞ」

ヴィータが背を向けて駆け出した瞬間、小太郎もまた引きずられるように一歩を踏み出していた。
宝探し、ヴィータ、トリエラの向かった場所。
これらの単語を重ね合わせれば、紫穂たちが何をしようとしているのかが一点に結ばれる。
(狙いはトリエラのグラーフアイゼンか!)
最早、何故だと考えることすら無意味。
理由手法はどうあれ、紫穂は事実を述べているのだから止めなければならない。
二歩目が草原を抉り三歩目が地を噛んだところで、

「ッ!」

まるで草刈機のように高速爬行する衝撃波に行く手を塞がれた。
足を止めた小太郎の前に、悠揚と歩いてきた白い病人着の少女が壁となる。

「そこどけや、紫穂……!」
「つれないわね、小太郎君。半日ぶりに逢ったんだからゆっくりお話しましょうよ」

瞬間。
紫穂の視界が明滅した。
露に煌く草の世界から雲間に光差す明けの空へと。
浮遊感を感じ下方へと意識を向けると、拳を振り上げきった小太郎の存在があった。

「訊きたいことならいくらでもあるんやけど、今はそれどころやないんでな」

まほら武道会やこの島で蒼星石に行ったように、小太郎は紫穂を拳圧だけで触れずに吹き飛ばした。
浮かせたのは精々五メートル程度。小太郎が算出した、相手を傷付けず無効化することができ得る限界高度だ。
背中から落ちるように調節したため、そのまま地面に落ちれば一時的な呼吸困難くらいで動きを止めることができるだろう。
もっとも。
相手が本当にノーマルであったならばの話だが。
背筋に微かな悪寒を走らせた小太郎の眼前で、脳裏に描いた予感が現実のものとなる。
紫穂は空中で不自由そうに手足をばたつかせるように捻り、その無様さからは想像もできないほど見事に両足と片手、
三本の支えでしかと地を踏みしめた。
理解はしているが身体がついてこない、そんな印象を抱かせる身のこなしだった。

「ひどいわ、死ぬかと思ったじゃない。
 そんなにヴィータちゃんとお話したかったの? 私じゃダメ?」

無言と臨戦態勢をもって応じる小太郎に、紫穂は表情だけを落胆の形に変えた。

「あーあ、ふられちゃったか。でもね、小太郎君。実は私とっておきの殺し文句を持っているの。
 きっとこれを聞いたら小太郎君は私とお話せずにはいられないと思うなー。
 あのね、私がここに来た目的っていろいろあるんだけど一番の理由は……」

焦らすように間を置いて。

「タバサちゃんに会いに来たの♪」
458それぞれの再会 -ongoing-(中編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 21:57:31 ID:qjp8xZNx
取って置きのものを差し出すような口ぶりで紫穂は告げた。
口を開けば呑まれる。小太郎はそんな危機感を心中に渦巻かせたが紫穂の意図を確認しないわけにもいかなかった。

「……おまえが、タバサに何の用や」
「ふふ、ヴィータちゃんを向こうに行かせた理由は見当がついているんでしょ?
 だったら、私がタバサちゃんに会いたい理由も推測できるんじゃない?」

図星だった。しかしそれは同時に最も起こってほしくない事態の到来をも意味していた。
目の前の苦い現実を咀嚼するように。
小太郎は考えられる最悪の予想を押し出すように口にした。

「蒼星石にあったんか」

正解、と少女が微笑む。
会ったこともないはずのタバサの名を、まるで旧知のように語ったところで確信した。
グラーフアイゼンの所在まで知れているのだから蒼星石から情報を得たのは間違いない。
それだけでは説明がつかないことが多々あるのも間違いないのだが。

「蒼星石と仲良しになっちゃってね。頼みごとされちゃったのよ。
 自分の全てを奪ったあなたたちに、これ以上ないほどの苦痛を与えてほしいって」
「……それが、アイツの答えなんか」

小太郎の心が軋みを上げた。

「可哀想よねぇ、蒼星石。タバサちゃんと出会わなければ姉妹を捜すことに集中できたのに。
 いろんな人を傷つけ、自分の心をすり減らすこともなかったのに。
 それでも、……タバサちゃんと二人だけの世界で完結できていたならまだ幸せだったかもね」

暗にあなたのせいなのだと、紫穂は小太郎を陰湿に非難する。
最後の一押しで相手の中の柱をあっさり折ろうとするのではなく、
もがき苦しみ、自重で勝手に潰れる様を鑑賞しているかのようだった。

「タバサちゃんには伝えておきたい言葉がたくさんあるの。
 まずは何がいいかしら。君のせいで僕には皆殺しの道しかなくなった。
 君に会わなければ良かった。僕の時間を返して。
 姉妹に会わせて。君の顔なんてもう見たくない――――」

謡うような言葉が並んで。

「君なんて仲間じゃない」

音もなく場に緊張が走る。
小太郎の纏う威圧感が高まった。蚤の心臓なら近づくことも叶わないほどの重圧。

「ふふ、どうやらこれが良さそうね」

場圧から乖離するような、しかし馴染むようにも見える歪な笑みを向けられ、
小太郎は構えた拳をむしろ強く握りなおした。

「ふーん、大した傲慢さね。蒼星石をあれだけ傷つけておいて、それでもまだ素直に罰を受けるつもりはないんだ」
「蒼星石が俺やタバサに言いたいことがあるっていうんなら、アイツが直接言いに来ればええ話や。
 当事者でもないオマエなんかに罰だのなんだのもらいたくないんでな。
 それでもオマエがタバサに会って余計なこと吹き込もうって言うんなら……」

小太郎の周囲の草が不自然に波打ち始める。
459創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 21:57:32 ID:CZy0vum4
支援
460創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 21:58:46 ID:LZ0R29vM
sien
461それぞれの再会 -ongoing-(中編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:00:10 ID:qjp8xZNx
「俺に喧嘩ふっかけてきた敵やと思わせてもらうわ」
「良かったわ。これでも小太郎君に無視されちゃったらどうしようかと思ってたの。
 本気で逃げられたら私なんかに追いつけるはずないしね」

誰が逃げるか、と小太郎は憤った。
何の枷もなければこいつは犬以上の嗅覚でタバサの居所を嗅ぎ付ける。
そして、5秒もかけずにその毒でタバサを蝕むに違いない。
タバサはそれが毒だと分かっていても、涙を流しながら残さず呷るだろう。
そんな確信めいた予感があった。絶対にこいつをタバサの目に付くところへ近づけるわけにはいかない。
(時間なんてあらへん。一気に片付ける!)

「で、一緒に楽しんでくれるのはいいけど……あなたに何ができるのかしら?」

紫穂の取った構えは小太郎の目には異質なものに映った。
足腰を落としながら上体を傾ぎ、更には右手の赤い短剣を地面に触れるほどの低さで後ろ手に垂らし、
左手のナイフを前に突き出した不可解な二刀流。
人というよりは猿か獣、あるいは節足動物と表現したほうがまだ近い様子だ。

「んじゃ――行くで」

小太郎の身体が一足飛びで加速する。左足の怪我がひびき完全な瞬動には至らないが速いことには何ら変わりない。
同時に振りかぶった拳が紫穂の身体に一直線に向かい――すり抜けた。
そう錯覚するほどの至近距離でかわされたのだと理解が追いつく。
背後に上体を傾いだ紫穂。常人では反応も困難な攻撃を避けられ、
小太郎の胸中に巣食う驚愕は僅か二分。いい加減敵の実力を疑うつもりはないし油断もない。
既に後方の紫穂に向けて回し蹴りを放っている。
その軌道が紫穂の首元を刈り込もうとした瞬間、今度は姿が消えた。
見れば、紫穂はただでさえ低かった姿勢を更に引き下げて蹴りをやり過ごしている。
驚愕が四分に膨れ、続けて放ったフェイントを絡めたパンチが三度空を切ったことで過半数を超えた。

「なるほどね。今の私ならここまではできるのか。
 小太郎君は適任だったかもしれないわ、いつか姉様と楽しく殺しあうためのステップにね」

紫穂は底の知れない笑いを張り付かせながら、変幻自在の流水のように小太郎の連撃をかわし続ける。
まるで後ろに目が付いているかのように死角からの不意討ちに的確に対応し、
未来予測に近いレベルで攻撃タイミングを掴んでくる。
おまけにこちらの隙に対しては容赦なくナイフ短剣による牽制を差し込んで来る為、勢いで押すのも憚られる。
(っく、何やこの気味の悪さは!?)
小太郎が抱いた紫穂への印象は奇異の一言だった。頭脳はそのままで、大人が子供の身体になったとでも言うべきか。
別に力があるわけではない。まともにぶつかれば紫穂程度、片手で身体ごと吹き飛ばせる。
速いわけでもない。現に紫穂の移動速度攻撃速度は小太郎から見れば止まっているも同然。
だが、突き崩せない。得物が二本の短刀という理由だけではない。
紫穂がその得物を使いこなしているから、突破口が見つからないのだ。
魔力のないエヴァンジェリンが、それでも糸と体術で立ち回っている姿と同じ印象がある。
守勢に回り続けている紫穂は二刀を巧みに使い、小太郎の豪拳をはじき、受け流している。
剣の達人でもこのような芸当を続けざまに行うことは不可能。
少なくとも対人戦を想定した戦法ではあり得ない。
もしも無理矢理紫穂の戦い方に当てはまる言葉を捜すなら――対化物戦。
人間が、その身一つで人外の化物を相手取るために生まれた戦闘技術と表現すべきものだった。

「ほらほらぁ、そんなんじゃ日が暮れちゃうわよ。
 もっと力を見せて、私はそれを踏み越えて次のステージに進むんだから」
「この……! 後悔しても知らんでッ!」

蹴りの勢いを逸らされた小太郎は距離をとり、足元の影を高粘度の重油のように波立たせた。

「疾空、黒狼牙ぁッ!」
462創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:01:49 ID:knZK95+o
支援
463それぞれの再会 -ongoing-(中編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:02:00 ID:qjp8xZNx
黒尾を棚引かせ放たれた狗神は計4射。
上下左右、黒の曲線が紫穂を取り囲む牢獄となり――即座に炸裂した。
爆ぜた空気の流れを身に受けながら小太郎は着弾点に目を向ける。
たとえ、いどのえにっきのようなアーティファクトで思考読取、
あるいは未来予測を行っていたとしても、今の攻撃は紫穂の身体能力的に不可避だ。
避けるなら瞬動、転移。受けるなら何らかの障壁が必須。

「……ふふ、また一つ扉を開けたわ」

だというのに。
着弾点の前方数メートル。双剣を携えた三宮紫穂は確かに地面を踏みしめ、その身の健在を誇示していた。
小太郎の目が捉えた紫穂がとった行動は事前に想定したもの、そのどれでもなかった。
正面に迫った狗神の一つを右手の短剣の衝撃波で相殺。と同時に全く迷いのない獣のような低背走法で、
相殺によって生まれた空間に飛び込み残りの狗神を自身の後方で同士討ちさせ、やり過ごしたのだ。
理屈は分かる。分かるが、一歩間違えれば複数の狗神が直撃していてもおかしくなかったはずだ。
間違いなく頭の螺子が吹き飛んでいる。正気の人間のとる行動だとは思えなかった。

「……お前、ホンマに紫穂か」
「あら、小太郎君も疑っちゃうんだ」

くつくつ、くつくつと嗤う。密やかに毒でも煮詰めている音によく似ていた。
紫穂はたった今こう言った。
小太郎君も。
"は"ではなく"も"。
はっきりとそう口にしていた。
それはいったいどういう意味なのか。
思うところ少なくない小太郎は、骨の中に氷でも突き刺さったかのような面持ちで紫穂を見やった。
その様を紫穂はどこまでも楽しそうに、童女のような笑顔で迎える。

「私たちやっぱり楽しくお話できそうじゃない。そう思わない、小太郎君?」


   *   *   *

464創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:02:35 ID:knZK95+o
支援
465創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:03:20 ID:LZ0R29vM
sien
466それぞれの再会 -ongoing-(中編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:04:07 ID:qjp8xZNx
自動人形なんかじゃない。
小太郎の仲間だ。
おまけに首輪解除の手がかりがあることも暗に匂わせてみた。
全て無駄だった。
尽くした言葉がどれだけ無力だったかは、荒れ始めた町並みが無言で説明してくれる。

「あるるかん――コラン」

黒衣の死神のごときピエロが一陣の暴風と化し、今しがた放たれた3発目の銃弾を小石のように弾く。
硝煙燻る拳銃を構えたトリエラはその光景を収めた瞬間、一時撤退を即断した。
(出鱈目すぎる、拳銃じゃ歯が立たないなんて)
駆動部か懸糸部を狙えれば話は別だろうが、正攻法で破壊するならライフルか爆発物でも要求したいところだ。
もっとも前者を達成することは繰り手の技巧が許さず、後者はただのないものねだりでしかない。
街路の角を曲がりきり、追っ手たる傀儡人形の姿が遮られる。好機だ、一刻も早く身を隠し態勢を立て直さなければ。
隠遁場所を視界内で検索しながら、尚も逃走を図るトリエラの眼前が轟音とともに灰色に染まった。
灰煙から現れたのは黒い影。
人形が塀を突き破って先回りしたのだと判断したときには、
その手に握られた無機の手が鞭のようなしなやかさで振るわれている。
(まずい――――!?)
咄嗟に腕を犠牲にしようとしたトリエラの頭上に、自らの腕でも人形の腕でもない影が落ちた。
ガキィという鈍い音を立て、自立浮遊した大剣と人形の腕が交差している。

「世話を焼かせないで!」

ヴィクトリアの援護に内心で感謝しつつも、見開かれた目だけは最善手を模索している。
黒衣の間隙からちらつく歯車をつぶさに捉えたトリエラは、逃げではなく攻めの手を撃とうと右手の拳銃を向けた。
(っ!?)
ズキンとした痛みが右肩に生じ、反応にブレーキがかかる。
その間にマリオネットは見世物のように大きな宙返りを行い、立ち込める粉塵を舞台袖とするように後方へと下がっていった。
素直に助かった、という思いが湧き出る。
今の判断ミスはシャナに読まれていたなら今度こそ真っ二つにされていただろう失態だ。
傍まで駆け寄ってきたヴィクトリアの気配を感じつつ、トリエラは立ち上る粉塵、
その中央に位置する色濃くなりつつある人影を見つめる。
状況は不利もいいところだった。前回のシャナとの戦いでは一騎打ちとはいえ殺す気でかかることができたし、
ベンズナイフという奇策を隠し持てていたからこそ勝利することができたが、今回はそうもいかない。
シャナの戦闘スタイルが近接主体からマリオネットによる遠隔主体に切り替わっているためだ。
手の内がばれている以上、そう易々と同じ攻撃を食らってはくれないだろう。
(けど、それは裏を返せばベンズナイフを恐れていることの証拠になる)
塵のカーテンから、再演を告げるべく白マスクのピエロが現れた。
467創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:05:39 ID:knZK95+o
支援
468それぞれの再会 -ongoing-(中編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:06:48 ID:qjp8xZNx
「さて、そろそろ建設的な策を聞かせてくれるんでしょうね、トリエラ?」

ヴィクトリアが値踏みするような口調で訊ねる。
辛うじて共同戦線を張れたとはいえ、味方と数えるには色々な意味で抵抗のある存在だ。
トリエラとしては首輪解除の手がかりを積極的に前線に出すような真似は避けておきたい。
ヴィクトリア自身もその点は同じように考えているだろうし――それ以上のことにも方策を巡らせていることだろう。
援護といっても精々魔剣ダイレクによる遠隔サポート程度のもの。
だが、それがトリエラの命をここまで繋いでいるのもまた事実だ。
その気まぐれがいつまで続くか分からない以上、早々に決着をつける必要がある。

「……シャナを無力化する策があるわ。手伝って」

トリエラは手短に作戦概要を告げた。

「少し気が進まないところもあるけど……いいわ、乗ってあげる。
 ただしそう何度も通じる手じゃないわね。抑えるのは一瞬だけよ」
「分かってる」

トリエラとヴィクトリア、そしてヴィクトリア制御によりダイレクが同時にあるるかんへと疾走した。
キリキリと音を立て、あるるかんが文字通り手刀のごとき人形の手を握り締める。
その様を確認し、真っ先に行動を起こしたのはヴィクトリアだ。
ホムンクルスの尋常ならざる脚力を活かし高く高く跳び上がった彼女は、
落下速度と持てる膂力の全てを両腕で握った得物に注ぎ込んだ。
得物の名は天空の剣。鞘によって刀身が封印されているが、その頑強さはまさに伝説が保障している。
担い手の腕力を計算に加えれば、ヴィクトリアたちがとれる指し手の中で最も強力かつ単純な質量攻撃だ。

「こっのおおおおお!!」

激突。金属音に被さるようにあるるかんの足元のコンクリートが罅割れ、
周囲の建物を管楽器とするかのように暴力的な音が打ち鳴らされる。
手首の破損を恐れてか、あるるかんはオリンピアの腕ではなく聖ジョージの剣を使って腕全体で防御に回っていた。
両足を僅か地面に打ち付けられ、一本しかない腕も天空の剣に抑えられたこの状態。
片腕のないピエロにできる芸は、どこまで極めても二本腕には敵わない。

「ほら、今よ!」

ヴィクトリアの頭上を幅広の板状のものが飛び越えていく。
魔剣ダイレクだ。だが、現れたのはそれだけではない。

「決める!」
469創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:08:29 ID:7i+GNPlP
しえん
470創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:08:57 ID:CZy0vum4
支援
471それぞれの再会 -ongoing-(中編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:10:46 ID:qjp8xZNx
波乗りでもするかのようにダイレクの背にトリエラが乗っていた。
人形の動きが止まった今、狙うは命綱たる操り糸。
ダイレクの背上でトリエラはベンズナイフをきつく握りなおす。
ヴィクトリアの後頭部を越え、ピエロマスクが視野の隅へと流れ、
宙を漂う幾重もの糸を捉え――――紅が見えた。
紅は炎。
懸糸傀儡の弱点をついてくるだろうと見越していた、シャナの放った複数の炎弾だ。
トリエラたちがどのルートを通ろうと関係ないとばかりに、あるるかんの後方広範囲を壁のように埋め尽くしている。
一際強く輝き――炸裂。
薄暗い町並みを一瞬昼以上の明るさに染め、しかしそれとは対照的な面持ちでシャナはその光景を見ていた。
所詮は不意を突くために極短時間で用意できる牽制用の炎弾をばら撒いただけ。
あんなもので自動人形を仕留められたはずがないが、積載過多気味にも見えた空飛ぶ剣のほうは話は別だろう。
破壊には到底及ばずとも、撃墜する程度の衝撃にはなったはずだ。
だから、想定していなかった。
爆炎の中から何かがこちらに向かって飛び出してくることなど。
驚愕に否応なく見開かれる目。
爆風を追い風としたトリエラは鋭敏な視力でそれを捉え、踏み出す足に更なる力を込めた。
(このくらいの妨害なんてあって当然、こっちは最初から"あなた"の無力化が狙いよ!)
作戦開始からこの事態を予想していたトリエラは、それこそ本物の波乗りのようにダイレクの刀身を爆風に乗せ、
同時にダイレクに急制動をかけることにより投石器で打ち出される石のように自身を発射した。
あくまでダイレクの制御はヴィクトリアが担っている中、それでも成功たらしめたのは義体とホムンクルスの成せる業か。
シャナが炎弾を放った直後での超加速突撃。
ともすればバラバラになりそうな負荷を全身にかけながら、得難い好機を手繰り寄せようと疾駆する。
シャナが反応を開始。遅いあと三歩。
懸糸の指輪が今は枷となっている。遅いあと二歩。
漸く片腕を盾にしようと突き出し始めた。遅いあと一歩、いや――もう刺せる。
そもそもシャナは前提を間違えている。咄嗟のことで判断を違えたか。
このナイフは"受けて"はならないのだ。
肺に溜め込んだ空気をその腕から放出するかのように。
腕どころか身体全体を一つの矢にしたような刺突がシャナを捉えた。
(な)
捉えた、触れた、当たった。
だが、"刺さって"はいなかった。
(防刃コート!?)
ナイフは黒衣夜笠の表面を歪めた程度でその進行を止めている。
甘かった。シャナは殺す気でかからなければいけない相手だったというのに、
トリエラはナイフを突き刺す最後の最後で手心を加えてしまったのだ。
軽く皮膚を裂ければそれで勝利することができたがために。必要以上に傷つけたくはなかったがために。
全力を振り絞れば容易く貫けたはずの黒衣を前に、最後の一歩を踏み出すことをしなかった。
意味するのは作戦の失敗。チャンスの放棄。
(まだだッ!)
だがトリエラは許容しなかった。
(まだ、速度の有利はこっちにあるッ!)
シャナが次の行動を起こす前に、最後の一歩を踏み出し、踏み抜く。
突き出した右手のナイフはそのまま。刃先がコートを噛み込んだこの瞬間は絶対に逃がさない。
後ろに位置している右足を前へ。一歩先、無理なら半歩でもそれ以下でも構わない。
前へ。前へ。前へ!
その一念が全身を駆け巡り、右足に集中し、浮いた足が五分の四歩の位置にまで進んだ。
そこで気づいた。
シャナもまた自分と同じように右足を浮かせていることに。
しかし、その様は微妙に異なる。大地を穿つつもりのこちらと違い、狙いはもっと上方。
他でもない――トリエラだ。避けるでもなく、受けるでもなく、
(この期に及んで迎撃する気!?)
472創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:12:03 ID:knZK95+o
支援
473それぞれの再会 -ongoing-(中編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:14:06 ID:qjp8xZNx
何が彼女をそうまでさせるのか。
見せる表情は凍り付いているというのに奥底の妄執は溶岩のような粘度で灼熱している。
だが、気圧されるわけにはいかない。引くわけにもいかない。
重心の移動に伴い、ナイフが黒衣をミクロンオーダーで裂いていく。
最後の一歩まで、一刹那。
(届け)
逃げ場は互いにない。
(届け届け届け)
踏み出す一歩に全てを懸けて、

「届――けええええぇッ!!」

瞬間。
爆発音と同時にトリエラは盛大に吹き飛ばされた。
シャナの右足が爆風を生み、それを推進力としたロケット弾のような膝蹴りが発射されたのだ。
蹴りはトリエラの胸部に容赦なく突き刺さりその意識を半ば闇に沈めた。
ノーバウンドで数メートルも跳ね飛ばされ、瓦礫の山にその身を投棄するトリエラ。
そのぼんやりとした視野の中で新たに紅い光が生まれる。
徐々に大きく、近づいてくるそれが何なのか識別できないまま。
突如飛来した鮫のような影がその光を両断した。
同時に茫洋としていた頭だけでなく身体にも浮遊感を感じたトリエラは、
自らを抱きかかえ瓦礫の山から連れ出した存在に声をかけた。

「ヴィク、トリア……?」
「寝ぼけないで、今は太刀川ミミ」

破壊跡も疎らな街路に降り立ち、トリエラの脳の六割が復帰する。
霞む視界の向こうに黒い影が二つ、一つは眩い銀色の紅を輝かせている。

「やったんでしょうね」
「……、……ええ」

肺から逃げた酸素を取り戻し状況整理の時間をとった分だけ、トリエラの返事は遅れた。
その手に握られているのはぬらりと光る血塗られたナイフ。
最後の瞬間、ベンズナイフは確かに夜笠を刺し貫き、シャナの胸部に傷を負わせたのだ。
まさに捨て身の一撃。
防弾チョッキを身に着けていなければ命に関わっていたことだろう。

「ようやくスタートラインってところかしら」
「……もう一頑張り、よろしく」

口元の血を拭いながら、トリエラは改めて目線だけで周りを見渡す。
どこもかしこも無数の虫食いのような破壊、損傷の跡が見て取れる。
想うのは一人の少年の姿。
事態終結への鍵。
(タバサとヴィクトリアのことがあるにしても、
 これだけの騒ぎが起こっているっていうのに何で来ないのよ、小太郎……!)
歯痒さに表情を歪めた直後。
道化師が戦端を開き、演者たちは再び命がけの舞台を駆け巡り始めた。


   *   *   *


474創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:14:33 ID:pUVHPAMW
支援
475創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:17:27 ID:7i+GNPlP
支援
476それぞれの再会 -ongoing-(後編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:17:58 ID:qjp8xZNx
三宮紫穂は邪剣ファフニールの意志を覗き、精神を病んだ。
邪剣は紫穂の心に干渉し血を求め、紫穂は邪剣の中の知識を引き出し続けた。
ギブアンドテイク。相互リンク。
両者はすでに呪的にも魔的にも連結している関係にある。
もとより邪龍の骨を材料とするこの剣は有機的な呪物。
それは紫穂のESPを余すことなく伝達する、紫穂の新たな骨格、新たな手となっていた。
本来の未来で、彼女が手にしていたはずの専用のワイヤーガンのように、
刀身で触れた物体の思念や記憶を読むことができるように彼女たちは成長したのである。
グラーフアイゼンの現在位置、所持者の把握、その他諸々の情報を把握できたのはこの力によるもの。
更には、邪剣によって倫理観を破壊されつくした紫穂は、あらゆる情報を読むのに最早忌避感を感じない。
どこまでも深く、際限なく。光届かぬ情報の海に、呑まれることなくその身一つで潜り続けることができる。


――――サイコメトリー、オン。

左腕:七夜。戦闘記憶読み込み。対混血用戦闘準備。
右腕:ファフニール。戦闘記憶読み込み。
   更にファフニールを地面に接触。周辺地形情報を追加読み込み。

(さて、うまくやれるかしらね)

右腕:ファフニール。地形情報参照。犬上小太郎の両足接地圧掌握。
   重心に片寄りあり。最初の踏み込みは右足、確率93%。
左腕:七夜。視覚情報、右腕地形情報同時参照。攻撃予測、腹部に右拳による打撃、88%。
右腕:ファフニール。左腕の判断を肯定。上体を左方に逸らすことで回避可能。

(じゃあ、それでいってみましょうか)
小太郎の拳が身体ごと紫穂の背後へと流れる。
(回避成功、いけるわね)

右腕:ファフニール。地形情報参照。犬上小太郎の左足に負荷大。反転後、首元を狙った右足による回し蹴りと推測、91%。
左腕:七夜。右腕の判断を肯定。七夜の体術応用による低背状態への移行を推奨。回避確率87%。

(これも避けられる)
身を伏せた直後、小太郎の足が宙に扇を描く。
(擬似的な未来予測ってところかしら)
思わず薄笑みが漏れる。
紫穂の両腕には百戦錬磨のアドバイザーがついている。
七夜の暗殺技術、邪剣による常識を超えた剣技。そして、二つの短剣の保有する人妖を問わない膨大な戦闘記憶。
無論、それらは知識でしかない。
七夜の体捌きは頭の中に浮かぶが、紫穂の身体能力でその全てを再現することは到底不可能。
壁や天井を足場とするような特殊機動を実現できるわけではない。
だが、その知識が全く生かされないわけでもない。
それはプロスポーツ選手同士の勝負に似ている。
彼らの世界では、相手が行動してからこちらも行動を起こすのでは間に合わないことがほとんどだ。
重要となるのは先読み。
相手の視線の動き、足捌き、手の位置、呼吸のリズムetc。
これらと自身の経験則とを照らし合わせ、彼らは熾烈な駆け引きを行っている。
だからこそ自身の限界速度を遥かに凌駕した、時速数百kmの球をも打ち合うことができるのである。
今の紫穂が行っているのもこれと同様のことだ。
場の空気を肌で感じ、視覚や聴覚から得た情報を双剣に託し、判断を仰ぐ。
更に、それらの情報にファフニール経由による地形情報、小太郎の足捌きの情報まで加わるのだから態勢は磐石の一言。
その精度は予知の域に達していると言っても良い。
たとえ紫穂の動作が緩慢であろうとも、思考速度においては小太郎に並び立つことができる。
いや、違う。
両腕に豊富な戦闘記録を蓄えた演算装置を二基も抱えているのだから、判断力だけなら優に三倍以上もの差がある。
紫穂が支配するこの場において、紛れもなく知は力だった。
477創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:19:02 ID:CZy0vum4
支援
478創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:19:39 ID:NnAtfc7U
 
479それぞれの再会 -ongoing-(後編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:19:40 ID:qjp8xZNx
右腕:ファフニール。地形情報参照。犬上小太郎の接地圧弱。接近と見せかけたフェイクと判断。
   判断精度向上のため、接地圧情報を左腕と共有。
双腕:ファフニール、七夜。接地圧弱、フェイク。接地圧弱、フェイク。
   弱、弱、弱、弱、弱――――強、拳打接近、回避推奨。

(防御に徹しつつ本命を待つ。そうすれば私でも避けられる)
だが、これではまだ足りない。
ただ速いだけの格闘術をいくらいなしたところで、紫穂の求めるものには届かない。
打ち砕くべきは人の理の外。
超能力。気。魔術。魔法。自在法。
これらに相対する力がなければ、更なる惨劇の場へ身を投じる資格などない。
グレーテルとの約束も果たせようはずがない。
(だから)

「疾空、黒狼牙ぁッ!」

(ここで一つ――乗り越えてみせる)
双剣から引き出す情報量を更に引き上げ処理速度を加速させる。
まるで両腕に新たな心臓が生まれ、それぞれから潤沢な血流が駆け巡ってくるかのように、
殺人的なデータの奔流がパラレルに押し寄せる。

左腕:七夜。4体の使い魔を視認。宿主の身体能力では不可避。片腕を犠牲に被害を最小限に食い止めることを推奨。
右腕:ファフニール。魔神剣、および双牙により一体ないし二体の使い魔は撃破可能。
   ただし技発動後の硬直により完全回避は不可能。三歩分、回避距離不足。
左腕:七夜。静動自在の七夜の歩法により魔神剣後の硬直をキャンセル。
   不足の三歩を同歩法により補填することで無傷完全回避可能。82%。

道筋は剣が付けてくれる。
あとはナノセコンド以下の躊躇も許さずそのプログラム通りに身体を運べばいい。
枷となる不安や恐怖など、疾うに邪剣が食いちぎっている。
機械のように剣を振り、獣のように地を這い、悪魔のように心を殺す。
そうして彼女は踏み越えた。

「……ふふ、また一つ扉を開けたわ」

狗神の一つが撃墜され、残りが後方で互いを食い合って消滅した。
小太郎の困惑した眼光という十二分な礼賛を受け、心地よさそうに紫穂は嗤う。
これは門出に過ぎない。目指すは更なる高み。
紫穂は新たなプログラムを走らせる。

右腕:ファフニール。大気接触。空間情報読取開始。
   エラー。未知項過多。初期値、境界条件、処理速度不足。戦闘予測不可能。

(やっぱり、こっちはまだ実用には足らないわね)
大地ではなく大気接触による間接読取。
実現すれば目を瞑っていても相手の一挙手一投足を仔細に掌握することが可能になるが、
処理事項が多すぎて今の紫穂には扱いきれない代物だ。
(けど、いつかはたどり着いてみせる)
そうして煮え湯を飲まされたエヴァンジェリンすらこの手で屠れたなら至上の悦びが得られるに違いない。

480創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:20:21 ID:NnAtfc7U
 
481創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:21:16 ID:7i+GNPlP
支援
482創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:21:17 ID:NnAtfc7U
 
483創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:22:10 ID:NnAtfc7U
 
484それぞれの再会 -ongoing-(後編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:22:55 ID:qjp8xZNx
閑散とした町並みを風が撫でる。響くのは激しい拳打の嵐。
互いに決定打を打ち込めぬまま、幾十もの攻防がかわされる。

「紫穂、やっぱりおまえリリスの手下だったんか……!」
「やっぱり? 思ったより勘は鋭かったのね、小太郎君。
 でもハズレ。リリスの手先だったのはコナン君とネギ君のほう、これは本当よ。
 ……それにしても、私のこと怪しんでいたんだ。へえ、そうなんだ。ふふ……」

双剣が閃き、危機感を得た小太郎が大きく間合いをとる。

「そうだ、小太郎君。ネギ君には会えたのかしら?」

小太郎の眉間にピクリとした反応があった。
一瞬き後、大きく回避運動をとる紫穂とその背後の家屋を拳で穿った小太郎という構図が生まれた。

「あ、そう言えばネギ君は死んじゃっていたのよね。
 ごめんなさい、私気がつかなくて。
 ごめんなさい。ごめんなさい。本っ当に――――――ご愁傷様」

爆発。紫穂が立っていた場所にギロチンのような踵が落ちてきた。
爆砕する地面を見世物のように楽しむ薄ら笑いが間近で泰然と佇む。

「ねえ、小太郎君。ネギ君の仇討ち私の力で手伝ってあげよっか」
「……そうやってヴィータのことも焚きつけたんか」

嫌悪を端緒とする純粋な怒り。
だが、小太郎はその感情を押し込み、紫穂と己の視線を真っ直ぐに結んで口を開いた。

「あいにくやけどな、仇ならとっくに見つけたしどう向き合うかも決めてある。
 それに俺は……ネギの敵討がしたくて動いていたわけやない」

佇まいは静かに燃える炎。
江戸川コナンが最期に放った願い。それは確かに小太郎の中に息づいている。
紫穂がどれだけ甘い言葉を並べ立てようとも、そよぐ風ほどの意味もない。

「何よ、それ……」

紫穂から初めて笑みが消えた。
信じられない何かを見た、人間のような表情が刻まれている。

「そんなはずない。憎いでしょ? ネギ君を殺した犯人が。
 この手で八つ裂きにして焼却してもまだ溢れるほどの恨みがあるに決まってるわ」
「……恨むんならジェダだけで充分やろ。ネギが死んだときの事情が分かって、
 仇のヤツとも話してある程度のケジメはつけたからそれでええ。
 まあ、おまえなんかには分からんかもしれへんけどな」

生気が抜かれたように紫穂は俯く。

「……そっか。小太郎君はそうなんだ」
485創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:22:59 ID:NnAtfc7U
 
486創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:23:44 ID:NnAtfc7U
 
487創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:24:28 ID:NnAtfc7U
 
488創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:24:32 ID:7i+GNPlP
 
489創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:25:20 ID:NnAtfc7U
 
490それぞれの再会 -ongoing-(後編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:25:34 ID:qjp8xZNx
そうしてぶつぶつと何かを呟く。呟き続ける。
それは呪詛のように、壊れたラジオのように。
あるいは何かの儀式の準備でも行っているかのように雑音が循環している。
やがて、

「っぷ、あ、はは……」

空気が漏れ出すような音が生まれ、

「アーハッハッハハハハハハハハハハハハハハハハハァッッ!!」

少女はあらん限りの声量で大笑した。
信じられない愚者を見た、超越者のような壮絶な笑みが刻まれている。
何がおかしいと小太郎は静かに問うた。

「何がおかしい、ですって? これがおかしくないはずないわよ!
 だってあなたは自分がどこに立っているのかすら理解していないんだもの!!」

一頻り嗤い、紫穂は我慢できないといった風情を滲ませながら、
耳元でささやく様に唇を震わせた。

「小太郎君に教えてあげるわ。あなたがネギ君を捜しに行った後、何があったのかを」

ドクン、と。
小太郎の心臓が跳ねた。

「あの後ね、シャナちゃんと双葉ちゃんと一緒に廃病院に戻ってからなのはちゃんに会って、すぐに別れたの。
 廃病院を出たらインデックスちゃんとヴィータちゃんに会って、シャナちゃんは一人で約束のタワーに向かった」

聞かなければならない、だが聞いてしまえば何かが終わる。
どうしようもできないまま、小太郎はただ立ち尽くす。

「ここからがお話の本筋よ。残った私たちはペアを組んで楽しい楽しいピクニックへ行きました。
 私と双葉ちゃん、そしてヴィータちゃんとインデックスちゃんという組み合わせです」

紫穂がランドセルから手品の小道具のように何かを取り出し、小太郎のほうの地面へ向けて高く放り投げる。

「さて、小太郎君」

手のひらより小さい何かが宙でくるくると回っている。
赤黒い何かが。鼻腔を突く腐臭が。くるくると。

「双葉ちゃんはぁ、どうなったと思う?」

視覚嗅覚経験則を総動員した小太郎の乾ききった喉が何かを紡ごうと震え始めた瞬間。
小太郎の足元にそれがぽとりと寄り添った。嗚呼、――残念無念時間切れ。

「ご・馳・走・様・で・し・た・♪」
「てっっっめええええエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!」
491創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:26:03 ID:NnAtfc7U
 
492創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:26:33 ID:CZy0vum4
 
493創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:26:56 ID:NnAtfc7U
 
494創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:27:07 ID:7i+GNPlP
しえん
495創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:27:34 ID:pUVHPAMW
siren
496それぞれの再会 -ongoing-(後編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:27:49 ID:qjp8xZNx
土くれが波濤のように舞う。
入りも抜きも無視。力任せの瞬動で小太郎は自身を砲弾と化した。――眼前の衝撃波にも気づかずに。
魔神剣による浮遊機雷だ。挑発すれば猪突猛進するだろうと読んだ上での。
地を這う衝撃波を前に、小太郎は歯を食いしばりながら一瞬の冷静さを呼び戻し、片足を無理矢理上げる。
瞬動中の方向転換は不可能、姿勢を変えるだけでも着地の失敗をもたらす下策。
だが、今の小太郎には塵芥以下の瑣末な問題だった。
最速でこの拳を叩き込む。それ以外のことは全て後。
これ以上頭がいかれる前に発散しなければ本当に狂ってしまいそうだったのだから。
衝撃波が足を掠め、通り過ぎる。
代償に態勢が崩れた。拳が予定コースに乗らない。だがもはや拳でなくてもいい。
立て直す暇すら惜しい。この速度運動量を全身に満たしたままぶつけて何もかも砕いてやる。

「残念ね、それも読めてるの」

背後から、声。
同時に小太郎は突進の勢いそのままに地に擦られていた。
一拍の驚愕のあと、把握。
紫穂に突進の軸を逸らされつつ二刀による回転切りを浴びせられたのだと。

「魔神閃空波。私の筋力じゃやっぱり一回転がいいところか。
 本物の奥義なら高く打ち上げて小太郎君だって3枚以上におろせたんだけどね」

把握はできたが、納得はできない。
衝撃波を放った隙を突けたはずだというのに。
迎撃するなら、衝撃波を避けたあとに行ったのでは到底間に合わない。つまり、
(それすらも読んだんか、あるいは保険のつもりか)
顔をしかめつつ、傷の状態を探る。
紫穂自身確実に狙いを定められたわけではなかったこと、気を纏っていたことが幸いし、
右腕と右脇腹に浅い傷があるだけだ。
立ち上がろうと両腕に力をこめて、

「何で小太郎君が怒っているの? あなたが怒る理由なんてないのに」

こめた力が霧散しかけた。

「私のこと疑ってたくせに、戻ってこなかったじゃない。
 双葉ちゃんの安否よりも大事なことがあったのよね。あ、そうじゃないか」

小太郎の心にメスが入った。

「小太郎君は本当は双葉ちゃんや他人のことなんてどうでも良かったんだものね。
 別に誰かを救いたいって思っているわけじゃない。
 誰かを救ったっていう自分を飾り付けるための勲章が欲しいだけで、
 救う対象なんて何でもいいし救った後のことなんて知ったことじゃないんでしょう」

いきなり奥まで切り込もうとはしない。
薄皮を剥ぎ、肉を削ぎ、骨を露出させたところで臓腑を目指す。

「そう言えば初めて会ったときもそうだったわね。まだ目覚めてもいない双葉ちゃんを置いて、
 ネギ君を捜しに行こうとしたあのとき。あなたは最初から身勝手なだけだった。
 だから蒼星石のことだって平気で傷つけられるし、防げたはずの災厄に見て見ぬ振りをすることができる」

もう辛抱できないとばかりに紫穂の顔が喜悦に引き裂かれた。

「かわいっそぉな双葉ちゃん!! 最初に刺されたときに死んじゃってれば幸せだったのに!
 身勝手に救われたせいでモルモットよりも酷く弄繰り回されて死んじゃったっ!!
 生きることも死ぬこともできない境界上に焦らすように何分も何分も居座り続けて
 最期は呆気なくゴミ屑みたいに惨めに中身ぶちまけて逝っちゃったああああははははははっははははは!!!」
497創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:29:44 ID:knZK95+o
凄く…外道です…
498それぞれの再会 -ongoing-(後編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:30:15 ID:qjp8xZNx
野獣の咆哮があがった。
小太郎は血走った眼を剥き、飛び掛かった先に新たなクレーターを生み出した。
轟音。それが破砕音なのか少年の叫声なのかは判別できないほど両者は融合している。

「おまえがっ!! おまえが双葉のこととやかく言うなああああああああああああああ!!!」
「言うわよ。だって私は小太郎君に止めてもらいたかったんだもの」

空気が凍りついた。熱を失った小太郎の拳が紫穂の目前で制止する。
突き出した拳の向こうには、僅かな時間をともにした少女の面影。取り戻せない昨日の象徴。
それが一瞬で、歪んだ。
自覚したときには身体が勝手に後退し、赤い飛沫が宙に置き去りになっていた。

「……って言えば小太郎君は止まっちゃうわよね。女の子に優しいもの」

くすくすと侮蔑するかのように血が滴る二又の短剣を見せびらかす紫穂。
過呼吸のように息を荒げる小太郎は、額の傷から血を流しつつ片目だけでその光景を苦々しく睨む。

「シャナちゃんかなのはちゃんが残ってくれていれば悲劇は回避できたかもしれない。
 でもね、彼女たちは本当にやるべきことが明確だったからまだいいわ。
 知人が死んだとしても怒り悲しみこそしても後悔しないくらいに優先するべき使命がある。
 それがあなたはどうなの? 双葉ちゃんのこと気にしていたくせに、
 やったことと言えば仇討つつもりはないけど仇を捜してきます、ってどういう冗談?
 復讐のために双葉ちゃんを見捨てたって言ったほうがよっぽど分かりやすかったのに。
 まあ仕方ないか、小太郎君には何の信念もないものね」

信念。

『考えて、考えて……それが一番、失う物が少なくて済むって思ったの。
 その為なら悪魔になっても良いって、そう思った』
『私はこの世のバランスを崩しかねないジェダを確実に討滅しないといけないし、
 そのためなら、この島の人間がどうなろうと構わない』

この島で出会った言葉たちが脳裏をよぎる。
彼女たちみたいに生きられなければ、息をする資格もないのだと紫穂は言う。

「面倒みきるつもりもない命を無理に繋ぎとめて自己満足にひたる。
 病巣部位を切り捨てて、それで女の子一人を救えたんだと誇る。
 切り捨てられた病巣はこの島の生き物を全部腐らせる決意を固めたっていうのに!」

心棒を透視するかのような冷たい蔑みが身を貫いた。

「死んじゃえば、小太郎君。
 それがいやなら信念のない子供らしく欲しいものに駄々でもこねればいいじゃない。
 恥も見栄も仮初の絆も全部捨てて、本当に取り戻したいものに対してね」

用意した台本を読み上げるようだった。間髪も入らず語調が高まる。

「ごめんなさい! それも無理だったわ!
 小太郎君の強さなんて中途半端の見苦しいものだから優勝だって目指せないわよね!」

優勝。ただ一人残った最も強い者。

『私の最強を証明する為さ』

またも、この島で出会った強固な信念が浮かんだ。
499創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:30:19 ID:7i+GNPlP
支援
500創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:30:30 ID:CZy0vum4
小太郎死ぬかな? またショタが……
501創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:31:53 ID:NnAtfc7U
 
502それぞれの再会 -ongoing-(後編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:32:26 ID:qjp8xZNx
「その点、ヴィータちゃんはいいわよ。自分の半端な強さを認めて、強くなるためにはどんな犠牲も厭おうとしない。
 ただ一途にはやてちゃんの蘇生だけを願っている。戻ってきたはやてちゃんが前と同じように笑えるはずもないのに、
 はやてちゃんの形をした何かが存在していればそれでいいってばかりに身も心も研ぎ続けているの」
「……おまえかてそこまで分かっとるやないか。他のヤツ蹴落として得たもんに意味なんかあらへんって」
「ええ、そうかもしれないわね。じゃあ小太郎君に訊くけど」

一拍。

「……他者を蹴落とさずに戻れた日常になら価値はあるの?」

そう呟いて紫穂がまた笑った。
気のせいか寂しそうに見えた、その笑みが呼び起こす。
やっと得た、心穏やかな日常。
家族と呼べる人たち。競える仲間や頼れる師。
その中に、いない。

『あいつが俺のコト見てくれへんよーになったら……どないしょう……』

小太郎の身体が衝撃波に吹き飛ばされた。
防御受身をとる素振りも見せない。そのまま背中から無様に地に落ちる。
神経が通わなくなったようなその無反応は糸の切れた操り人形の末路に酷く似ていた。

「ほら、また揺らいじゃった。そんな様でよく私の前に立っていられたものね」

酷薄な笑みを浮かべながら、しかし紫穂は急速に興味が失せていくのを感じた。
ある面で満足したのだろう。散々嬲りつくした今の小太郎では弄る価値もない。

「もう起き上がらなくていいわよ。全部終わらせた後、熟れて美味しくなってそうなときにもう一度来てあげるから」

紫穂は踵を返した。
次の瞬間、

「ッ!」
503創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:32:32 ID:knZK95+o
死ぬ時は死ぬべき
504創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:33:47 ID:7i+GNPlP
 
505それぞれの再会 -ongoing-(後編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:33:55 ID:qjp8xZNx
振り向き様に交差させた双剣に魔人剣を纏わせたまま、壁に背中を強打させていた。
一瞬遅れて両腕に痺れ。空気が爆縮する音。微かにノイズが混ざった視界の中。
黒い拳を振りぬいた、狗族の混血が熱した刃のように鋭い眼光を光らせていた。
(ここに来て、まだ速さを上げるのね)
小太郎と遊ぶのは興が乗らない。だが、小太郎で弄ぶのはまだまだ面白いと思えそうだ。
紫穂は立ち上がって埃を払い、口端を微かに吊り上げながら双剣を構えた。
対する小太郎は荒い呼吸を繰り返し、今にも息絶えそうな体でそれでも大地を踏みしめていた。
たとえ、どれだけ心を抉られようともたった一つだけ正しいと思えることがある。
(こいつを……行かせたら終わる)
今まで目を背けてきた犠牲の上に積み重ねたものが。
ようやく守れたと思えるものが。
タバサの心が。
終わってしまう。
そうしたらもう、空っぽな自分の心に残るものなど何一つない。
叩き潰す。罪を塗りつぶしているだけだという謗りを受けようとも、ここに立つ敵だけは絶対に叩き潰す。

「おまえはもう、口を開くな……ッ」

あまりにも冷たすぎて触れるだけで火傷しそうな声音が空に溶けた。

「いやよ。こんな楽しいこと止めたら口寂しくて我慢できなくなるわ。
 何か咥えるものでもくれるんなら考えないこともないんだけどなー」

餌を待つ雛鳥から無垢さを取り払ったように、紫穂は口を開き、その奥の赤い舌を蠢かせて小太郎を見つめた。
その顔面を叩き割るように放たれた小太郎の拳は紫穂の身体があった場所の壁を盛大にぶちやぶる。

「選べや……。拳でも、蹴りでも、好きなもんくれたる……ッ」
「無粋な返し方ね、これだから男の子は」

双剣が地を噛み、空気を裂き、少年の身体を掠める。
紫穂は暗い笑みを一層濃くした。
どう転んでも、救いなんてない。
目の前の少年は今度は何を失い、何を取りこぼすのか。
それが楽しみで楽しみで、仕様がない。


   *   *   *

506創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:35:45 ID:knZK95+o
しえん
507それぞれの再会 -ongoing-(後編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:36:29 ID:qjp8xZNx
フレイムヘイズにしてしろがねたる少女は従者とともに猟犬のように獲物を追い回す。
入手した懸糸傀儡が白銀の手がけたあるるかんだったことも幸いし、その運指に澱みはない。
だが、どこまでいっても彼女の源流はフレイムヘイズ。
それも"狩人"や"天目一個"を小細工なしの地力で打ち倒した当代最強クラスの格闘特化タイプだ。
鬼巧の繰り手や万条の仕手ならいざ知らず、こと戦闘において彼女が懸糸傀儡を使い続けることにはいくつかの理由がある。

一つ、自動人形の黄金律。
二つ、存在の力の消費低減。
三つ、遠方からの戦況把握。
四つ、斥候役の配置。

一度は手ひどくやられてしまった自動人形が相手。
警戒に警戒を上塗りして尚足りないと考え、ひたすらあるるかんで敵の出方を窺い続けたが……徒労だった。
先ほどの自動人形たちの連携はなかなかのものだったことは認める、どうしようもなく画竜点睛を欠いたこと以外は。
浅はかだ。所詮いつまで経っても造物主一体笑わせることもできない存在か。
よりにもよって最後の一手に持ってきたのが麻痺毒。
生命の水を飲み、高免疫性を獲得したしろがねに対してそんなものをぶつけるなど愚かを通り越して白痴ですらある。
素体が強靭な肉体を持つフレイムヘイズであることも鑑みれば、害毒の入り込む余地など微塵もない。
更にはコキュートスが手許にあり、アラストールとの意思疎通も問題ない今なら、
紅世の王主体の自在法"清めの炎"も行使可能。天地が逆転でもしない限り同じ轍を踏むことはない。
夜笠にしまった桜観剣で一息に勝負をつけるか。

『本当に良いのだな、シャナ』

アラストールのそんな言葉も無理からぬことだった。
自動人形と呼ばれる存在が関わるとき、少女は彼の知っている少女とは異なった趣を纏う。

「ごめんなさい、アラストール。私にも……分からない。
 ただあれを斬らないと前に進めない、斬ればきっと全部分かる、だから私は斬らないといけない……!」

抗いきれない何かに苦悩するその姿はアラストールの知る少女のものだった。
彼女は全てが変わり果ててしまったわけではない、
だからこそアラストールは彼女の内面にどう踏み込んでいけば良いのかを図りかねていた。
いったい自動人形とは何なのか。それはアラストールが抱いてきた疑問であり、彼に理解できるものではない。
当然だ、当のシャナ本人にも理解できていないのだから。
自動人形がどれだけの悪逆非道を働き、ゾナハ病がどれほどの惨禍を巻き起こしてきたのか、
知識と白銀の記憶があるだけでシャナ自身には植え付けられた空虚な憤怒しか存在しない。
だから斬る。刷り込まれた感情を己に馴染ませ制御するために。
身のうちに潜む白銀の激情に折り合いをつけさせるために。
(本当にごめんなさい、アラストール)
行動の正当性はさておき、きっと今の自分は正しくないという漠然とした思いがある。
せっかくアラストールが、ヴィルヘルミナが、シロが築き上げてくれたというのに。
彼らが手塩にかけた怒り憎しみに囚われない討ち手はもういなくなってしまった。
おぼろげながら見えていた後姿、いつかたどり着けたはずの理想とする炎髪灼眼の討ち手は闇の中。
こんな曇りきった眼には『断罪』も『審判』も相応しくない。
(それでも)
止まるわけにはいかない。
どれだけ不純物が混ざろうと自分は討ち手。そこだけは譲らない。
今は道が見えずとも、斬れば道が開く。
答えはきっと、すぐそこにある。
銀の灼眼が、煌く先に。


508創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:36:59 ID:pUVHPAMW
なんという外道…w
いいぞもっとやれ
509創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:37:19 ID:7i+GNPlP
 
510それぞれの再会 -ongoing-(後編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:38:22 ID:qjp8xZNx
【H-1/路地/2日目/早朝】
【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]:しろがね化、消耗(小)、胸部に刺し傷、夜笠展開
[装備]:楼観剣(鞘なし)@東方Project、コキュートス@灼眼のシャナ、あるるかん@からくりサーカス
[道具]:支給品一式(水少量、パン一個消費)、包帯
[思考]:斬る。
第一行動方針:自動人形(トリエラ・リルル・ヴィクトリア)を破壊する。
第二行動方針:要件が済んだら、インデックスや双葉たちと合流。
基本行動方針:ジェダを討滅する。自動人形(と認識した相手)は、全て破壊する。
[備考]:義体のトリエラ、ロボットのリルル、ホムンクルスのヴィクトリアを自動人形の一種だと認識しました。
[備考]:これまでのインデックスの行動の全てを知っています。
    神社を拠点にする計画も知っています。
    弥彦、キルア、アラストールと情報交換しました(どの程度かは次の書き手任せ)

【トリエラ@GUNSLINGER GIRL】
[状態]:頭部殴打に伴う頭痛。胴体、胸部に重度の打撲傷複数、全身に軽度の火傷、疲労(小)。
    右肩に激しい抉り傷(骨格の一部が覗き、腕が高く上がらない)。
[装備]:拳銃(SIG P230)@GUNSLINGER GIRL(残弾数5/8)
    ベンズナイフ(中期型)@HUNTER×HUNTER、トマ手作りのナイフホルダー、防弾チョッキ(一部破砕)
    グラーフアイゼン(待機フォルム)@魔法少女リリカルなのはA's(ダメージ有り、カートリッジ0
[道具]:基本支給品(パン1個、水少量消費)、ネギの首輪、血塗れの拡声器、北東市街の詳細な地図
    US M1918 “BAR”@BLACK LAGOON(残弾数0/20)、9mmブローニング弾×23
    インデックスの0円ケータイ@とある魔術の禁書目録、コチョコチョ手袋(片方)@ドラえもん )
    回復アイテムセット@FF4(乙女のキッス×1、金の針×1、うちでの小槌×1、十字架×1、ダイエットフード×1、山彦草×1)
[服装]:普段通りの男装+防弾チョッキ
[思考]:止める……!
第一行動方針:シャナを止める。
第二行動方針:朝になったら作戦(※)に従い、シャナを捜索する。タバサに携帯電話の説明も。
第三行動方針:トマとその仲間たちに微かな期待。トマと再会できた場合、首輪と人形の腕を検分してもらう
基本行動方針:好戦的な参加者は積極的に倒しつつ、最後まで生き延びる(具体的な脱出の策があれば乗る?)
[備考]:携帯電話には、『温泉宿』の他に島内の主要施設の番号がある程度登録されているようです。
     トリエラが警察署地下で見た武器の詳細は不明。
     ※トリエラの作戦
     まずシェルターまで全員で行動し、洞窟にも寄りつつシェルターに向かう。
     シェルター到着後に解散し、小太郎とタバサは城へ、トリエラは廃墟へ行く。
     それ以降は小太郎達は定期的にトリエラの携帯電話に連絡をする。
511それぞれの再会 -ongoing-(後編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:39:10 ID:qjp8xZNx
【ヴィクトリア=パワード@武装錬金】
[状態]:精神疲労(中)、肉体消耗(小)、首輪解除、太刀川ミミに瓜二つの顔
[装備]:i-Pod@東方Project、スケルトンめがね@HUNTER×HUNTER、
    天空の剣@ドラゴンクエストX、魔剣ダイレク@ヴァンパイアセイヴァー
[道具]:基本支給品×2(食料のみは1人分)、
    塩酸の瓶、コチョコチョ手袋(左手のみ)@ドラえもん、
    ポケモン図鑑@ポケットモンスター、ペンシルロケット×5@mother2
    アイテムリスト、詳細名簿(ア行の参加者のみ詳細情報あり。他は顔写真と名前のみ。リリスの情報なし)
    マッド博士の整形マシーン、カートリッジ×10@魔法少女リリカルなのはA's、
    思いきりハサミ@ドラえもん、その他不明支給品×0〜2
[服装]:制服の妙なの羽織った姿
[思考]:さて、どうしたものかしら。
第一行動方針:この場を切り抜ける。
第二行動方針:氷結、石化魔法の使い手を捜す。
第三行動方針:首輪や主催者の目的について考察する。そのために、禁止エリアが発動したら調査に赴きたい(候補はH-8かA-1)
第四行動方針:“信用できてなおかつ有能な”仲間を捜す。インデックス、エヴァにできれば接触してみたい。
基本行動方針:様子見をメインに、しかしチャンスの時には危険も冒す
参戦時期:母を看取った後。能力制限により再生能力及び運動能力は低下、左胸の章印を破壊されたら武器を問わずに死亡。
[備考]:首輪が外れた事により能力制限が外れている可能性も有ります。
     首輪に『首輪を外そうとしている』や『着用者が死んだ』誤情報を流す魔法を編み出しました。
     ただし、デバイスなど媒体が無ければ使えません。攻撃に使うのも不意打ちで無ければ難しいと思われる?
     更にヴィクトリアの場合、実際に致命傷を受けて殆ど死に体になっていた事が助けとなった可能性も有ります。


【G-1/町外れ/2日目/早朝】
【犬上小太郎@魔法先生ネギま!】
[状態]:疲労(中)、気が少々、背中と左足に怪我(瞬動は不完全) 、左額から出血、浅い切り傷多数
[装備]:手裏剣セット×7枚@忍たま乱太郎
[道具]:基本支給品×4(一人分の水、パン1個消費)、工具セット、包帯、指輪型魔法発動体@新SWリプレイNEXT
    さくらの杖@カードキャプターさくら、目覚まし時計@せんせいのお時間、生乾きの服
    レミリアの日傘@東方Project、真紅の腕、金糸雀の腕、戦輪×5@忍たま乱太郎
[思考]:おまえだけは潰す。
第一行動方針:紫穂をボコボコにする。
第二行動方針:タバサやトリエラ、ヴィータのことが気になる。
第三行動方針:朝になったらトリエラの案に従い行動する。
第四行動方針:レックスと再会した後、シャナ一行あるいは梨花一行との合流を図る
第五行動方針:双葉に頼まれた梨々、小狼に頼まれた桜を探す。見つけたら保護する。
基本行動方針:信頼できる仲間を増やし、ゲーム脱出(必ずしも行動を共にする必要はない)。

【三宮紫穂@絶対可憐チルドレン】
[状態]:精神汚染。疲労(小)、高揚感、背中に打ち身
[装備]:邪剣ファフニール@TOS、ワルサーPPK(銀の銃弾5/7)@パタリロ!、七夜の短刀@MELTY BLOOD
    ショックガン@ドラえもん
[道具]:支給品一式×3(水1.5人分パン二人分弱−一食)、デスノート(ダミー)@DEATH NOTE、
     きんのたま@ポケットモンスター、包帯、双葉の肉片セット、神楽とミミの眼球
[服装]:病人着
[思考]:楽しみましょうか♪
第一行動方針:しばらくは小太郎で遊ぶ。
第二行動方針:ヴィータとグラーフアイゼンを出会わせて、互いの反応を楽しみたい。
第三行動方針:参加者の復讐心や不和を煽る。邪魔者は消す。
第四行動方針:能力を見抜いたエヴァに警戒と敵意。機会があればエヴァを消す。
第五行動方針:機会があればまたグレーテルと会いたい。2人きりで楽しく殺し合いたい。
基本行動方針:扇動、ステルス、実力行使、あらゆる手段を用いて殺し合いを加速させて楽しむ。
[備考]:紫穂は朝の放送ではやて殺害犯のことをヴィータに教える約束をしています。
     北東の街にグラーフアイゼンがあるらしいことを、まだヴィータには伝えていません。

512それぞれの再会 -ongoing-(後編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:41:07 ID:qjp8xZNx
【G-1/町外れ/2日目/早朝】※紫穂と別れた直後の状態票
【ヴィータ@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:両腕に僅かに痺れが残る(ほぼ気にならない)、左足に火傷跡、左手爪全剥
[装備]:祈りの指輪@DQ、フランヴェルジュ@テイルズオブシンフォニア
[道具]:基本支給品(食料・水二人分−1食)
    ぬのハンカチ×20、マシカルアンバーミサイル×6@メルティブラッド 、
    救急箱、はやて特製チキンカレー入りタッパー、ボロボロの傘
[服装]:普段着(ドクロのTシャツ、縞模様のニーソックス等)
[思考]:何があるってんだ?
第一行動方針:当面紫穂に従い、宝探し。
第二行動方針:はやてを殺した犯人を見つけ出し、殺す。
第三行動方針:エヴァはいずれ自分の手で殺す。
基本行動方針:はやての仇を討つ。その後、優勝してはやてを復活させる。
[備考]:「ヒント」からはやてを殺したのがなのはかもしれないとは思っていますが、
   少なくとも決め付けるのはまだ早いと思っています。
   エヴァとの会話で、紫穂のサイコメトリー能力に勘付きました(詳細までは知りません)。


【G-1/民家/2日目/早朝】 ※小太郎と別れた直後の状態票
【タバサ@ドラゴンクエスト5】
[状態]:魔力消費小、右頬に細く浅い切り傷、睡眠中
[装備]:バルディッシュ・アサルト(待機状態)@魔法少女リリカルなのは(カートリッジ残数2/後小一時間で破損部全快)
[道具]:支給品一式×2(パン一個、水少量を消費。イシドロの服の食料も回収済み)、手榴弾×2、ヴェルグ・アヴェスター@Fate/hollow ataraxia
[思考]:すやすや……。
第一行動方針:朝まで休息を取る
第二行動方針:トリエラの案に従う
第三行動方針:落ち着いたら蒼星石と再会し、話がしたい。
基本行動方針:レックスを捜索する
最終行動方針:蒼星石とも再会し、レックス達とゲームからの脱出
[備考]
「ドラゴンクエスト5」内でタバサが覚えている魔法は全て習得しています。

513創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:41:11 ID:knZK95+o
支援
514それぞれの再会 -ongoing-(後編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:42:11 ID:qjp8xZNx
【H-1/民家/2日目/早朝】※ヴィクトリアと別れた直後の状態票
【イエロー・デ・トキワグローブ@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:全身に擦り傷と打撲(行動にやや支障)、左瞼に大きく切り傷、疲労(小)、頭部に打撲(生命に危険なし)
[服装]:ベルフラウの私服姿。
[装備]:レッドのグローブ、おみやげのコイン@mother2、エスパーぼうし@ドラえもん
[道具]:共通支給品×3(食料−1)、浄玻璃の鏡@東方project(残り1回)、クロウカード×3(『甘』『火』『地』)
スケッチブック、城戸丈の首輪、イエローの服(泥だらけ) 、リルルのICチップ、ベルフラウの帽子
[思考]:ミミさんとトリエラさん大丈夫かな……。
第一行動方針:ひまわりの面倒を見ながらヴィクトリアを待つ。
第ニ行動方針:ベルフラウがどうなったか知りたい。
第三行動方針:グリーンやブルーと合流し、このゲームを破る方法を考える。
第四行動方針:丈の友人と合流し伝言を伝え、協力を仰ぐ。
基本行動方針:絶対にゲームに乗らない。生きてマサラに帰る。
[備考]:
ネスからレッドの仇が「白い女の子」だと聞かされました。
レッドの仇に対しどういう態度を取るべきか、まだ考えが定まっていません。
ベルフラウの言葉と今の状況から、雛苺一行を危険な存在だと見なしています。
首輪内の生物の活動状態を把握可能

【野原ひまわり@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康。しんのすけの死を信じていない
[装備]:ガードグラブ@SW
[道具]:ピンクの貝がら、基本支給品、生乾きの服
[服装]:海鳴温泉の浴衣(お子様用サイズ)
[思考]:(わるいおねえさんがいなくなった)
第一行動方針:(ヴィクトリアが気に入らない)
第一行動方針:(おにいさん(グリーン)を探したい。)
第二行動方針:(おねえさん(ククリ)の探している人を見つけてあげたい)
基本行動方針:(おうちに帰る)
515それぞれの再会 -ongoing-(後編) ◆Xdenpo/R4U :2010/06/13(日) 22:42:58 ID:qjp8xZNx
投下終了。支援感謝。おかげで規制されず投下できました。
状態票の後半4人の時間と場所はあえてぼかしてあり、かつ前半四人と時間が少し離れています。
そのへん含めて何か問題点ありましたらどうぞ。
516創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 22:49:16 ID:CZy0vum4
投下乙です。
小太郎セーーーーーーーーーーーフ!!
いやあ、よかったよかった。ショタが死ななくて。
もう数少ないショタかつ熱血キャラだからな。本当に生きててよかった。
……でも次で死にそうな気もするけどw

シャナが陰鬱とした感じでいいね。
ヴィクトリアもターゲットにしちゃったり、本当に対主催かよw
確かに人形に戦わせるとか、近接戦一本のシャナらしくないとおもったらそんな理由だったか。

さてこれで全てのパートが放送に突入。
問題なく放送に行けそうだね。

気になったのは紫穂の強化くらいかな?
でも原作でもこんな風な強化されてるらしいし、兆候はあったしありか。
魔法まで使ったら流石に問題だけど。
517創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 23:03:59 ID:knZK95+o
投下乙です
シャナも紫穂ももうね…
シャナは変質した自覚がありつつも止まらずに直進
ヴィクトリアはターゲットに入れられてざまあと言いたい所だが…
紫穂はTUEEEE&超外道でいいわ。タバサと出合ったらこれはヤベええw
小太郎は止められるのか? でも次で死んでもおかしくないのが…

そしてこれで放送に行けそうだ

紫穂の強化は原作でもこんな風な強化があって兆候があったから俺もありだと思うが
518創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 23:04:19 ID:CZy0vum4
あーごめん。一点だけ気になった点が。
前回のQ−Beeの目撃に関しては何もないのはいいのかな?

トリエラは人影を見ただろうし、
紫穂はサイコメトリーであちら側の状況が読めるかな―とか思ってたんだけど。
519創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 23:15:14 ID:pUVHPAMW
投下乙です!

とりあえずは死人はでなかったな
でもトリエラ達はちょっとヤバいかもしれないな
シャナとヴィータに探されてるわけだしね

それにしてもヴィクトリアw
親玉…か……善人ではないが…w
ヴィータも迫ってるぞ気を付けろ


そして小太郎は可愛い
紫穂に毒されて発狂するかとも思ったがどうにか踏みとどまったな
でもここを生き抜いたとしてもその後の精神状態が心配だ……
てか紫穂外道すぎwww
ヴィクトリア以上の性悪だ


これで放送いけそうだね
このパートはもう一話あっても問題なさそうな気はするが
まあ、なくても大丈夫そうだけどね
520創る名無しに見る名無し:2010/06/13(日) 23:34:09 ID:gFgOxcHh
投下乙です。
街の二箇所で因縁のバトルが勃発!燃える展開でした。
一枚目のカードはシャナVSトリエラ・ヴィクトリア。
呉越同舟的な連携で、ダメージを負いながらもトリヴィク組がベンズナイフを決め勝利か、と思われたが。
……そうでした。今のシャナはしろがねでした。何という絶望感。
二枚目のカードは紫穂VS小太郎。
単純な戦闘力では小太郎が勝るが、単純直情の彼は紫穂とは相性がよくない。
案の定、二刀の戦闘術と話術で地力を埋められ……先の見えない戦闘にハラハラしました。
街には未だ姿を見せぬみんなのラスボス、レミリアもいるし……この先の展開が楽しみです。

これで放送にも行けて、実にめでたい。
それはそうと、そろそろ容量の方もやばげな予感。
放送が来たら、次スレ行く感じかな?
521創る名無しに見る名無し:2010/06/14(月) 00:08:46 ID:8Q2oUJw/
シャナも何で自動人形憎んでるのか自分自身分かってない状態だから、説得は通用しないな
しかしトリエラ達2人が死んだらせっかくの首輪解除技術が…
一体どうなるんだろう
続きに期待
522創る名無しに見る名無し:2010/06/14(月) 01:15:16 ID:uj0fu/6l
しかも放送後になったらジェダが首輪付けに来るからな。
そのタイミングもすごく重要だろう。
そしてレミリアも出待ち、と。

本当、イベントだらけだな北東。
いっそ禁止エリアに指定されればいいのに。
523創る名無しに見る名無し:2010/06/14(月) 07:56:12 ID:/O0+LQwJ
なるほど北東街を禁止エリアかw
それはそれで面白そうだw
524 ◆Xdenpo/R4U :2010/06/15(火) 22:34:24 ID:uENMg9Ns
遅くなりましたが感想指摘どうもです。

>>518
まず、トリエラのほうの描写を追加するつもりはありません。
あとの展開で必要になったときに「そういえばあのとき見たのはQ-beeだった気がする」
としても違和感がないでしょうから。

紫穂のほうは一応保留で。
当初は掘り返した跡を読んでもQ-beeが死体掘り返して食べた以上のことは分からないから
スルーするつもりでした(Q-bee本人の思考や記憶読めるなら話は別ですが)。
しかし、これは後で「実はあのときサイコメトリーで読んでいたんだよ!」って回想するのは
苦しい気もするので冒頭に軽く追加したいと思います。
ただ今週は忙しいので日曜あたりになるかもしれません。
525 ◆PJfYA6p9PE :2010/06/16(水) 22:26:14 ID:25sBTBWo
テスト投下スレに放送案投下しました。
特に問題がなければ、本投下いたします。
禁止エリアは概ね、避難所に上がっていた叩き台案+北東市街禁止エリアな感じです。
526創る名無しに見る名無し:2010/06/17(木) 19:44:10 ID:/z2/3FnK
仮投下乙です

特に問題は無いです
527創る名無しに見る名無し:2010/06/20(日) 13:05:13 ID:+ar9Yxhn
放送案の投下は誰がするのだろう…
まだ議論中?
528第二回定時放送 ◆PJfYA6p9PE :2010/06/20(日) 15:59:45 ID:EhO8genQ
古人曰く
始まりの時、まず混沌を創造した絶対者が、次に生み出したものは光であった。
光は昼と名づけられ、続く闇は夜と名づけられた。
光陰は巡り、世界に二度目の朝が来る。

古人曰く
この日、絶対者は混沌を二つに割り、天上と天下の別を生み出した。
しかし、この世界において、絶対者はそんなことをしたりはしない。
何故なら、天上と天下を分けるのは混沌自身に課せられた役目なのだから。

世に放たれし86の混沌。
既にそのうち50と9が天の上へと召されて消えた。
天の下に存在を許されるそれは、たったの1。

神聖なる運命が最後の裁きを下すまで、絶対者はその手を下さない。
行なうは、ただ囁くこと。
優しく、厳かに――――そして何より、残酷に。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ――夜の帳を潜り抜け、朝の光に浴する幼子たちよ。
 私は君達に、心からの称揚と労いの言葉を贈ろう。

 おめでとう。
 君達は過酷な運命に打ち克ち、この試練の島で一昼夜生き残った。
 流された聖別の血は、その類希なる魂をより一層輝かしいものへと変えただろう。

 そんな君達だからこそ、これから私が放つ言の葉を、すなわち、第二回目の定時放送を聞く権利がある。
 言うまでもないことではあるが、二度同じことはない貴重な機会だ。
 心して聞きたまえ。

 まずは、向こう半日で追加される禁止区域を発表しよう。


   7時より A-4
   9時より H-1
  11時より B-8
  13時より H-6
  15時より F-2
  17時より E-5


  ――以上だ。

 これから一時間後に次の禁止区域が発動し、以後は二時間毎に数が増えていく。
 前の放送の時とルールは変わらない。
 禁止区域に踏み込む危険さも、今までと同様だ。
 せっかく残った尊い命だ。愚昧な方法で散らしてしまわないことを祈っているよ。
529第二回定時放送 ◆PJfYA6p9PE :2010/06/20(日) 16:00:36 ID:EhO8genQ


  ――――次に前回の放送から今までの間で、不幸にも命を散らしてしまった者の名前を発表する。
  
 03番   アルルゥ
 08番   一休
 17番   金糸雀
 20番   キルア
 21番   ククリ
 22番   グリーン
 33番   白レン
 36番   鈴木みか
 38番   蒼星石
 45番    ニア
 46番   ニケ
 49番   野上葵
 52番   野比のび太
 55番   雛苺
 62番   古手梨花
 66番   ベルフラウ=マルティーニ
 70番   メロ
 73番   吉永双葉
 74番   李小狼
 77番   梨々=ハミルトン
 78番   リルル
 79番   リンク
 86番   ヴィクトリア=パワード

   ――以上23名だ。


 聞いてのとおり、選定の儀は已然、滞りなく運んでいる。
 3人殺しのご褒美を求める声はますます高く、こちらの支給が追いつかないほどだ。
 私もまさか、このルールがこれほどの好評を勝ち得ることになるとは、思ってもみなかったよ。
 勇気を持って提案してくれた少年には、この場を借りて感謝を述べておくとしよう。
 ああ、無論、支給が遅れている者の元には、この後、すぐにQBを派遣する。
 好きな褒美を受け取ってくれたまえ。
 それから、あと少しでご褒美に手が届くという者は、急いだ方がいいかもしれない。
 当然のことだが、人数が減れば、他人を殺せる機会も減ってしまうことになる。
 今なら殺せるという状況に出会ったら、早めに実行に移すことだな。

 最後に。
 君達は選ばれた人間だ。誇っていい。
 開始直後にはあれほどいた君達の同胞も、今や三分の一以下の人数になった。
 その時間の分だけ、その犠牲の分だけ、君達は確実に救世主に近づいている。
 ついに救世主が現れたあかつきには、私は跪き、最上級の礼をもってこれを迎え、
 然る後に、その願いを寸分の違いもなく成就させるであろう。
 世界を救う道のりは辛く、険しい。
 君達もその途上で焼けるような苦しみを味わうことだろう。
 しかし、その魔境を越えた先には、只々救世の福音のみが待っているのだ!
 救済の時は近い。
 
 次の放送は午後六時だ。
 そのときには、更なる練磨を積んだ君達にまた会えることを願っているよ。
 
 ――今回の放送は以上だ。
530第二回定時放送 ◆PJfYA6p9PE :2010/06/20(日) 16:01:20 ID:EhO8genQ

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

岩盤を刳り貫いたような荒々しい広間に、再びの静寂が戻る。
豪奢な玉座に身を沈めたまま、この世界の絶対者――冥王ジェダは満足げに唇を歪ませた。
滲み出る喜悦の所以は、先刻終えたばかりの放送か。それとも、右手が弄ぶ銀の輪か。
か細い蝋燭の炎が揺れて、一瞬、輪の表面を照らし出す。
鈍い光沢を返す金属の表には、確かに、“太刀川ミミ”の銘が刻まれていた。


古人曰く
光や混沌が創造されるより以前、始まりの時よりさらに昔、
そこには闇だけがたゆたっていた。

天上と天下が別れ、
この世の全てが生まれ出て、
幾星霜の時が過ぎても、

闇は今も、ここにいる。
531創る名無しに見る名無し:2010/06/20(日) 16:14:48 ID:ytADFS+q
投下乙
あと「それぞれの再会」だけど、修正するらしいからそれ来てからwiki載せようと思ってたけど
もう載せちゃってもいいかな?
532創る名無しに見る名無し:2010/06/20(日) 19:48:05 ID:wsx57mqe
投下乙です

こういう言い回しとかいいな…闇か…

wikiで修正する手もあるから一応乗せたら?
不都合があるなら後から連絡してもらうって手もあるし
533創る名無しに見る名無し:2010/06/21(月) 00:42:49 ID:Nh8RaWt6
そろそろ次スレ立てないといけないな
放送も来たからちょうどいい具合だな
534創る名無しに見る名無し:2010/06/21(月) 18:38:27 ID:0CC0JKtU
少し早いけど立てました
ぎりぎりで立てるよりいいと思うし

ロリショタバトルロワイアル26
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1277112367/
535創る名無しに見る名無し:2010/06/22(火) 00:23:25 ID:jsISTYvd
>>534
スレ立て乙です
536創る名無しに見る名無し:2010/06/22(火) 08:38:12 ID:6O7RD8Q3
スレ立て乙です。
あと、wiki編集してくれた人も乙。
区切りもついて、元日に新しいパンツをはいたようなすっきりした気分で二日目を迎えられますね。
537創る名無しに見る名無し:2010/06/22(火) 14:22:37 ID:F9ZAFDwX
予約解禁の日はしたらばに書いてある日で決まりかもな
538創る名無しに見る名無し:2010/06/22(火) 23:49:40 ID:c7dZ753+
こっちは埋め立てかなー?
539創る名無しに見る名無し:2010/06/23(水) 00:08:21 ID:SDrrGmKZ
埋め立てだね
540創る名無しに見る名無し:2010/06/23(水) 18:07:02 ID:yvQLXesO
雑談でもしながら埋めるか
放送後に期待してるキャラは誰?
541創る名無しに見る名無し:2010/06/23(水) 21:33:59 ID:SDrrGmKZ
悩むなー
542創る名無しに見る名無し:2010/06/24(木) 00:12:14 ID:FXqQHgO6
一人選ぶなら桜かな。小狼死んだからって優勝目指そうとするようなキャラじゃないけど。
雛苺も消えて久々に自由意志獲得したからどう動くのかは気になるところ。
543創る名無しに見る名無し:2010/06/24(木) 09:22:34 ID:kV5qGW31
ベルカナだな
放送でレックスとヤミヤミ、そしてイエローが生きてることを知ってどうするか
交信をイエローに使うのか、それともレックス達に助けを求めるか

イエローに使ったらどうなるかな
北東街大荒れしてるけどw
544創る名無しに見る名無し:2010/06/24(木) 19:29:48 ID:dSg8ISDv
桜はな……
とりわけ戦力になるわけでもなし、
これまでのフラグの相手は全て死亡したしでいつ殺されてもおかしくないんだよなw

俺はリリスが気になるな。
グリーンが死んでからどんどん悪知恵を身につけて行ってるし、
首輪をはずす気にもなってるしでどう動くか予想しにくい。
545創る名無しに見る名無し:2010/06/25(金) 00:44:27 ID:vMPnxnfT
桜は魔力さえ回復すれば、そこそこ戦力になるんじゃないか?
「風」と「水」だけだが、クロウカードも手元にあるし。
あと、フラグ的なものでいえば、千秋と因縁があると言えなくもない。

そんな俺は殿下に期待している。
弥彦を仲間にしてことで、とれる選択肢は増えたはずだし、
ここは一つ、豊か過ぎる才能を思う存分発揮していただきたい。
546創る名無しに見る名無し:2010/06/25(金) 00:59:32 ID:zd7c8ic1
首輪解除できる人が気になるなー。
ヴィクトリアは監視が強くなるからもう無理そうだし。

劇中の人は皆念話させようとしているけど、
首輪の構造的に、中のP-Beeをなんとかできるなら方法は何でもいいんだよな。
直接ラリホーやらスリープクラウドやらで眠らせるなり殺すなりできたらそれで解決なんだが。
首輪解除のダークホース的意味でイヴに期待。
精密機械と接触とかできるし。首輪の中に入り込んでなんとかできそう。
547創る名無しに見る名無し:2010/06/25(金) 01:31:31 ID:JnNO0zON
首輪中のP-Beeをなんとかするのは難しいんじゃないかな。
建前上は参加者の能力で首輪解除は不可能、魔法やら何やらはP-Beeや首輪内部には効かないはずだから。
(このへんどこかで名言されているSSがあったか怪しいけど)
じゃあ何で念話で外れんのっていうのはQ-Beeの念話(のような)命令を偽装しているから。
全ての念話が効かず、首輪内部と外部で全ての情報が遮断されたらP-Beeに何の命令も送れないしね。
そこらのシステム上の穴をついている……あれ? 書いていたら自分で勝手にそう解釈しているだけな気がしてきた。
548創る名無しに見る名無し:2010/06/25(金) 01:41:33 ID:zd7c8ic1
んー、リリカルの念話がよくわからない概念だけど、
リンカーコアがないと使えないわけだからこれも魔法でしょ?
となると条件次第では首輪内部にも魔法は通るわけだ。
エヴァぐらいの実力者とか、デバイス込みなら首輪内部だけ凍結とかもできそうだし。

あとQ-BeeとP-Bee間での会話は念話というよりは、
種族間の意思疎通(どちらかというと超能力に分類?)だろうし、
こっちはリリカルの念話とは違うだろうから普通に通じるとおもうよ。

この辺言及されたSSってあったかな?
ないなら解釈次第で可能ってことになると思うよ。
549創る名無しに見る名無し:2010/06/25(金) 13:31:03 ID:bTsAoIYI
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       /      l/  l__ll....ヽ  l ヽ  l   l    l   ヽ    ,-''=,'- .i_ヽ、 .l       .,  _/    . . . : : : : : :_..-二,
550創る名無しに見る名無し
                    /: : :\ヽ、: . :`丶、: : . \( /   _ハ__
                   /: : / : :/`丶、 、: . : . `丶: :辷!-‐-<__仁vヽ
                    /: : ´: /     `丶 、:`ヽヽ_ム-‐〈 ヘコ〉人
                   ,゙: . :l : . /          `丶ミ、(∧  ヽ二ノ |〔
                   l: : :l,、≠ ‐‐ - 、,_         _,, ..ム∧    |ノV
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                  ゙,:l :.{  _メ_ノrッc}`      '{_ノッ゙vド くこヒ/
                  ヾ :.!  ヽ辷ン       ヽこ:シ´  !::〃
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