シェアードワールドやりたいなあなんて

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1創る名無しに見る名無し
思ってるんだ
既にいくつか成功しているのがあるけど、入りづらいというか何というか
どうだろう
2創る名無しに見る名無し:2010/02/03(水) 20:45:14 ID:706k/sku
どうだろうって…
まず1がどんなのやりたいか設定なりSSなりとうかすればいいんじゃにないかな
惹かれるものがあれば誰かが続くし、似たようなのあればリンク貼ってくれるよ
3創る名無しに見る名無し:2010/02/03(水) 20:47:54 ID:m1Dtyyky
そーだなあ
シェアードワールドってSFチックな世界観が多いから、土台は現代風が良いかなあなんて
4創る名無しに見る名無し:2010/02/03(水) 21:01:05 ID:706k/sku
SFて別にサイバーパンクとかだけじゃないぞ
土台は現代でもアレンジを加えれば立派なSFだ
学園物とかあるけど、それとは違うのか?
まず、どんな「現代」でどんな「人達」が居て「何をやってるのか」がやってみたいのか
それを形にしてみないとわからない
>>1の話を聞かせてくれ
5創る名無しに見る名無し:2010/02/03(水) 21:05:09 ID:m1Dtyyky
現代物が良いなんて偉そうに言った癖に、思いつくは学園ものだけなんだよな
でもその学園での教育内容とか集まる人たちによって色々変わってきたりするのか……?
6創る名無しに見る名無し:2010/02/03(水) 21:23:05 ID:706k/sku
学校を創りませんか?part2
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1248533055/l50

学園同士で戦争するスレ 開始28年目
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1237122351/l50

【小中】学園クロスオーバー【高大】
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220108165/l50

とりあえず板内で学園の名を冠してるのはこれだけある
動いているのは一番上だけだが、逆にいえば残り二つに琴線がふれれば
今から始めたって問題ないと思うぜ

獣人総合スレ 8もふもふ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1263143962/l50

あと、ここにも学園物はある、獣人だから現代とはちょと違うかも


>>5
その設定を考えるのがシェアワールドじゃないのか
土台ってのはそれだぜ、学園物やりたいならどんな学園なんだい?
ちなみに恋愛や青春は既出だぜ
7創る名無しに見る名無し:2010/02/03(水) 21:27:06 ID:m1Dtyyky
恋愛とか青春はまあ副題的な
何か特殊な学校、例えば士官学校とか騎士学校とか(この時点で現代じゃないけど)
養成機関的な……
既出かな?
8創る名無しに見る名無し:2010/02/03(水) 21:47:25 ID:706k/sku
ほう、養成機関
つまり何かを目指す学校に入ったごく普通の生徒たちの話て感じ?
何の養成機関にしたいのかな? 魔法学園とか?
それともアイドル養成所?
9創る名無しに見る名無し:2010/02/03(水) 21:50:22 ID:m1Dtyyky
アイドルとかは考えてなかったな
魔法学園、超能力、何か突如現われた外敵に対する軍隊の士官候補生
とかかな
スカウトもいれば志願入学もいるみたいな感じのごっちゃな
10創る名無しに見る名無し:2010/02/03(水) 21:57:44 ID:706k/sku
なるほどね
あとはその具体案を形にすればシェアワールドの土台が出来ると思うぜ
まずはその学園設定を考えて投下してみては?
話の一つあれば誰かの目も惹けると思うぜ
君の設定を熟考してみるんだ

ちなみにスレは即死回避したんで残り続ける
あとは大願成就にむかって走り続けるしかないぜブラザー
お前には期待している、頑張れ
11創る名無しに見る名無し:2010/02/03(水) 21:58:10 ID:m1Dtyyky
おっけわかった
色々ありがとう
12創る名無しに見る名無し:2010/02/03(水) 22:13:58 ID:qJIeitvS
もう少し考えてスレ立てろよ
似たようなスレタイがもう二つもあるのに、またこんな名前でスレ立てたら検索の邪魔になるとか思わなかったのか?
13創る名無しに見る名無し:2010/02/03(水) 23:20:35 ID:fD8DbrQS
即死回避になるから書き込まなかったんだが、もう10きってるから
書いておく。
シェアード系はもう重複しているんだよ。
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1256567178/l50

スレ建てる前に他のスレで相談や雑談してからじゃダメだったのか?
14創る名無しに見る名無し:2010/02/08(月) 20:48:55 ID:m3veVF7u
さて,>>1は戻ってくるのか……

To be continued...
15創る名無しに見る名無し:2010/02/15(月) 11:41:25 ID:90TlmbJr
おーい、>>1はどこ行ったー
16創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 12:15:49 ID:jbEP7fAB
放置なら、シェア系雑談・交流スレとして利用できないか、と
17創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 18:08:37 ID:g3ZYbXiS
別にいいんじゃね?
>>1はもう十日以上放置してんだし。
18創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 21:09:24 ID:jbEP7fAB
じゃあ上げておこう
19創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 21:21:02 ID:gvSt2PvD
じゃあ参加しよう
世界を作ろうスレ書き手
20創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 21:26:08 ID:MCdnNXFF
交流って何すんの?
21創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 21:30:26 ID:gvSt2PvD
なんだろう。シェアスレ関連の雑談?
こっそりシェアスレクロスなんてやるのも面白いかもしれない
22創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 21:34:33 ID:i6X729+D
シェアじゃないスレのクロスだと……?
23創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 21:36:53 ID:gvSt2PvD
それはオリキャラスレでいい気もするw
24創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 21:51:21 ID:MCdnNXFF
雑談のために別個にスレ用意する必要はないんじゃねえの?
どうせ馴れ合いかヲチにしか使われなくなるでしょ
雑談スレは普通にあるわけだし
25創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 21:54:20 ID:jbEP7fAB
『こんなの書きたいが…』→『〇〇シェア行けば?』
『○○シェアに混じりたいが設定判らない』→『簡単に言うと…』
『○○君を使いたい』→『良いけど設定としては…』
『こんな世界でやってるから書き手来い』→『はい』

名前がピッタリくる放置スレだし、こんな感じで。
26創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 21:59:23 ID:gvSt2PvD
まあ雑談も各スレでやった方がいいのには賛成なんだけどね。
27創る名無しに見る名無し:2010/02/18(木) 22:09:02 ID:8Ipc2nKD
スレ立てる程でもないシェアードワールドを作るスレ

という言霊が
28創る名無しに見る名無し:2010/02/19(金) 19:49:11 ID:KE3Mpk93
過疎スレ乗っ取り隊参上
乗っ取りますよ?
29創る名無しに見る名無し:2010/02/20(土) 22:46:00 ID:ojIn03Q6
能力者モノやりたいなあなんて
30創る名無しに見る名無し:2010/02/20(土) 22:55:26 ID:yc1yTmHQ
なにかアイデアがあるならどうぞ
31創る名無しに見る名無し:2010/02/20(土) 23:08:12 ID:ojIn03Q6
2000年、無数の隕石が地球に降り注ぐ。
生き残った人類は一人にひとつ、様々な能力を手に入れた。

まあよくある感じの
32創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 00:19:39 ID:Y387RLBC
ああそういうの好き

一人にひとつだと、MOBにも何かしらの能力があるんだよね
その点新しいと思う
33創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 00:26:42 ID:uy0KMNxq
うんまずは書かないと始まらないな
書いてくるか
34創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 00:32:32 ID:jLo6tqPe
一人に二つ…って言おうとしたら遅かったか
35創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 00:37:29 ID:uy0KMNxq
まだ構想中なんだぜ
2つって扱いにくくないかw
36創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 00:38:11 ID:uy0KMNxq
とりあえずageておこう
37創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 00:48:50 ID:eS3qxYAp
>>34
奪い取ったり譲り受けたりした奴も
いるんじゃね

能力って言っても漠然としてるから
むしろ縛りが欲しいところ
38創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 00:50:44 ID:jLo6tqPe
>>35
まぁそうなんだけどね
昼と夜で使える能力が変わるっていうのを思いついたわけよw
39創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 00:53:03 ID:Y387RLBC
能力ってもいろいろあるよな

・特定の条件下で発動(植木の法則
・特殊な状況下で絶対的な支配力を持つ(冨樫
・一部身体能力の上昇、一部属性の付与(あやかしびと

みたいな
40創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 00:58:48 ID:9Wtmwrdg
・リスクを伴う(Darker than black
41創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:02:08 ID:Y387RLBC
それに類似して

・侵食される<必殺技使うと加速度的に

嗚呼素晴らしきかな厨二
42創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:04:08 ID:uy0KMNxq
>>38
なにそれ素敵かも

>>39-40
「何でもあり」でいいと思う
スタンド像の無いジョジョみたいな
43創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:06:06 ID:Y387RLBC
夜は最強だけど、昼はよわよわなヒロインですね、分かります
44創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:12:38 ID:jLo6tqPe
>>43
それでもいいし、火と水みたいに真逆の能力とかでも色々と話が広がりそうかなと
45創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:16:08 ID:uy0KMNxq
(やべっ、日没だ! 早く決着付けないと…)
(日没まで…日没まで耐え切れば…!)
46創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:20:08 ID:Y387RLBC
「グ。くそ、ここまでか……」
「これで終わりダァ!死ねェ!!」
漆黒の鎌が振り上げられる。
振り上がった刃が、光を、反射した
ガキィ
「なっ、なぜだ」
「残念だったな」
そう言って奴の後ろを指さしてやる。
「夜明けだ間抜け」
「ク、クソオオオオオこの俺がアアアアアアアア」
それが奴の断末の叫びとなった。
47創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:20:50 ID:Y387RLBC
あー、面白いかも、これ
48創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:21:48 ID:9Wtmwrdg
>>43
それしかないよなwww

あぁ、素晴らしきかな>>38
49創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:26:18 ID:jLo6tqPe
>>45>>46
ワロタww
まさにそういうことww
50創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:28:42 ID:uy0KMNxq
(決)昼夜別能力

あと事前に決めないとマズいこと何があるかな
治安は平和な場所は平和で世紀末な場所はヒャッハーでそれぞれ適度にあるってことでいいかな?
51創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:32:21 ID:jLo6tqPe
隕石衝突してからどれくらいたった設定?
52創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:33:21 ID:Y387RLBC
能力切替えの判定

単純に明るさで判定するとか(明るい場所で昼の能力発揮)、体内時間で判定とか(洞窟にこもり体内時計をズラす)、あとは普通に絶対時間で決定(6:00〜18:00、18:00〜6:00etc)、日が登った瞬間とか、あるいは徐々に能力が切り替わっていくとか
53創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:35:41 ID:uy0KMNxq
あーそうか
もう矛盾上等で自由に時代設定してもいいってどうだろう
54創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:37:21 ID:Y387RLBC
まあそうなるだろーな

あんまり決めすぎない方が書きやすいだろうし
55創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:42:15 ID:uy0KMNxq
日の出日の入りがやっぱり盛り上がるんじゃないかなあ
56創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:46:18 ID:jLo6tqPe
>>52
個人的には絶対時間か、日が登った瞬間がいいかなぁ
>>53
時代って揃えなくてもできるもんなの?
57創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:48:40 ID:9Wtmwrdg
>>55
圧倒的に日の入りの方が書きやすいし
能力は夜の方が強くなりそうだねぃ
学生とかに徹夜上等はちと辛い
58創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:54:08 ID:uy0KMNxq
>>56
パラレルワールドがいくつもできるってことにすれば
作品同士が歴史としてつながってなくてもいい
もちろんつながっててもいい

>>57
ん?切り替わりは1日2回あるぞ
59創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 02:25:54 ID:9Wtmwrdg
>>58
んん?朝と夕方っしょ?
まぁ>>52の絶対時間でいくとだが
60創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 02:30:47 ID:uy0KMNxq
>>59
うん
じゃあ勘違いしてるとこっちが勘違いしただけか
61創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 11:01:40 ID:XqIu3AUq
昼と夜の間の、夕暮れの時間は誰も能力が発動できない時間とか
俗に言う逢魔が時
62創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 13:32:28 ID:HhNi2e9L
>>57
夜は最強のヒロインは昼間学校で寝てばかりとかそういうのもできそうじゃね
63創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 14:12:41 ID:8LL1051K
>>62
そして登場キャラの半分が夜型へ……
何て不健康なシェアなんだ

いつの間にか脳内では現代異能力バトルになってる件
64創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 16:18:55 ID:uy0KMNxq
>>61
バトルやってるとその間ただの殴り合いになるとかいろいろあるしやめたほうが…
65創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 16:20:54 ID:Y387RLBC
不定期に全員の能力が発動できなくなるって方が使い易いな
66創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 17:13:21 ID:uy0KMNxq
ぶっちゃけ個人的にはそういうのは無いほうがいい
67創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 17:14:26 ID:8LL1051K
隕石衝突は確定事項なのかい?
68創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 17:19:22 ID:uy0KMNxq
何か代案があるならどうぞ
69創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 17:47:52 ID:8LL1051K
代案はないけど
人類みな能力者なのはどうかなと思ったのよさ
70創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 17:59:33 ID:uy0KMNxq
能力っていっても例えば
「服を一瞬でたたむ能力」
みたいなのもあってみんながみんな強いわけじゃないよ
71創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 18:17:29 ID:8LL1051K
そういうのもアリかw

んじゃ今のとこ
・隕石が衝突して生き残った人類は特殊な能力を得た
・能力は昼と夜で変わる
・時代は作者の御好きにどうぞ、パラレル可

こんな感じかね、俺の案としては
・強力な能力を持った人間を管理する組織あったらいいんじゃね?
・能力は生まれた時から備わっているのか、徐々に目覚めていくのか
 俺は徐々派です
とかかな
72創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 18:41:38 ID:uy0KMNxq
・隕石が衝突して生き残った人類(とその子孫)は特殊な能力を得た
・能力は昼と夜で変わる
・あとは作者の御好きにどうぞ、パラレル可

もうこれでいいかも知れないw
できるだけ把握するべきことは少なくしたほうがいいと思って
73創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 18:49:59 ID:jLo6tqPe
俺は>>70と考えがほぼ一緒だわww
そういう一見使えない能力をどう上手くねじ込むかが面白さを左右すると思う
>>71
俺の考えは
・隕石衝突によりなんらかの特殊物質で能力覚醒
・昼と夜で能力変わるのは、その特殊物質が太陽と月の力に関係している
・危険過ぎる能力者は監視される
・能力発動は一人一人違って、徐々にな奴もいればいきなり覚醒する奴もいて、昼だけとか夜だけとか一方だけ覚醒。みたいな

ところでパラレルってことは、他の人が作ったキャラは使い辛いと思うんだが、他の人のキャラは使わない?

74創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 19:00:52 ID:uy0KMNxq
パラレルでもいいよってだけでパラレルじゃないと駄目ってわけではないし
むしろパラレルだからこそ細かい設定が違ってても他の人のキャラ使えるんじゃないかなと

文で書くとなかなか分かり辛いな…
75創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 19:09:04 ID:8LL1051K
パラレルっていうか、要するに

             /)
           ///)
          /,.=゙''"/
   /     i f ,.r='"-‐'つ____   こまけぇこたぁいいんだよ!!
  /      /   _,.-‐'~/⌒  ⌒\
    /   ,i   ,二ニ⊃( ●). (●)\
   /    ノ    il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
      ,イ「ト、  ,!,!|     |r┬-|     |
     / iトヾヽ_/ィ"\      `ー'´     /


ってことじゃないの?シェアワ的に考えて
76創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 19:10:15 ID:uy0KMNxq
まあそういうことだwww
77創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 19:18:18 ID:jLo6tqPe
>>75
なるほどww

でも俺としては極力矛盾を減らしたいところだな
78創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 19:35:36 ID:uy0KMNxq
矛盾を減らす方向でいくと新規参入しようと思った人が「どれだけ把握すればいいんだよ」ってことになるからそれが嫌なんだ
79創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 19:49:51 ID:8LL1051K
んだねぇ
まぁでもシェアの雰囲気出そうとすると
どのみち把握する量は多くなりそうだけど
設定を凝り固めるのには俺も反対だなー

そろそろ誰かが叩き台を……
80創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 20:09:21 ID:uy0KMNxq
何の叩き台?
81創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 20:22:01 ID:Y387RLBC
書いてたけどPC落ちて再起動したらログが残ってなくてやる気も消えた
82創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 20:25:59 ID:uy0KMNxq
ご愁傷様です
83創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 20:58:16 ID:8LL1051K
>>81
何という悲劇……
ドンマイです(´;ω;`)
84創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 21:14:12 ID:jLo6tqPe
>>81
どうにかやる気を取り戻すんだ!


あとなに決める?
世界の名前、隕石衝突事件の通称、能力開花物質の名前とかくらいは統一する?
85創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 21:54:12 ID:Y387RLBC
かいたー

って、毎度のことながら、短いな……

投下します
86創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 21:56:28 ID:uy0KMNxq
世界は現実世界を基にした世界で考えてた
世界の名前というよりタイトルみたいなものは付けたほうがいいか

ネーミングセンスは無いよ!
87創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 21:57:58 ID:uy0KMNxq
おっとっと
支援
88創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 22:01:29 ID:Y387RLBC
 三島 柚子は目を覚ました。


「ぁつ、」

頭が割れるように痛い。その痛みで思い出した。少し前、何者かに襲われ、頭を殴られたのだ。

周りは延々と闇。その何者からに、どこかへ連れてこられたと考えるのが正しいだろう。

「でも、なぜ殺すのではなく捕えたのだろう」

問題はそこだ。
一番に思いつくのは、やはりこの力のことだろう。玉石混淆の能力がある中で、召喚術を使う者は私以外に聞かない。人を傀儡にするような力を持った者もいるようだし、他人の力を吸い取る能力があってもおかしくはない。
しかし、縄できっちりと結んで動けなくしているところを見る限り、私の昼の能力は知らないようだ。
あとは誘拐して身代金目当てという可能性と、体目当て……は、ないか。そうなら既にやられているはずだ。

(アグゼス、起きているか?)
自らに問う。返事はなかった。
つまり、今は朝か昼、ということになる。

「そう上手くは行かないな」

人が近づいてくる気配もない。もう少し休むことにしよう。
892/3:2010/02/21(日) 22:02:12 ID:Y387RLBC
ガヤガヤと男たちの騒ぐ声で微睡みから覚めた。が、情報収集の可能性のために、もう少しタヌキ寝入り。

「まだ起きねえのか、コイツ」
「フハッ、俺のハンマー様で殴ったからなあ」
「困りましたね。意識がないとオトせないのですが」

声は男3人。口を開いていない人間がいなければ相手は3人。

「意識がないのを起こしてまたオトす?ひゃひゃ、ニドデマじゃねえか」
「そうですね。ですが今回は一手間だけのようですね」

「……気づいていたか」

渋々起き上がり、対面する。手も使わずに起き上がるのは我ながら器用だと思った。

「おはようございます」
「すぐにおやすみなさいだけどなあフハッ」

男が3人。どこかに隠れていなければ相手は3人。真ん中の口調だけは丁寧な男がリーダーか。

「それで。私を捕えた理由を聞かせて貰えるか?」

「理由は簡単。あなたの能力をイタダキに。」

口元を歪めてニヤリ。こんなスッキリした悪人は久しぶりだ。

「それは嫌だから、縄を外して帰らせて貰う」

冗談に聞こえるが、当の本人はいたって真面目である。

「ああ、残念ですね。それは中からは外せません」
「そんなことだろうとは思った」

無駄な努力は省略する。
中からは外せないなら、外からならば簡単に外せるのか?もしそうならコイツらは私の夜の能力を知らないという事になる。

(今起きた。早う呼べ)

唐突に声が聞こえた。

どうするべきか索を必死で練っていたのに、この一声で問題は解決してしまった。

(もう夕方なのか?)
(ああ、たった今陽が落ちた)

まったく。もっとギリギリになってから出てきて欲しい。30分のヒーロードラマで、開始10分で変身してしまうようなものだ。下手をすればCMに入る前に番組が終わってしまう。

「残念だ」
「アァ?」

突然に憐れみの声を上げた私を、3人が怪訝な目で見る。

「何が残念なのですか?」

真ん中の男が、ニヤニヤした表情のまま、口だけは丁寧に尋ねる。

「出会ったばかりだけど、もう別れないといけない。それが残念だ」

アグゼスを3人の後ろに呼ぶ。彼は音も無く現れ、私が決め台詞を何にしようか迷っている間に腕を軽く振った――
903/3:2010/02/21(日) 22:02:52 ID:Y387RLBC
夕暮れの中をふたりで歩く。

「私は、」
「ん?」
「もっと物語を盛り上げてもいいと思うんだ」
「それはまた贅沢な悩みだ」
「アグゼスはつまらなすぎる」
「そのようだな。だが、直す必要はないであろう」

いつもの、他愛もない会話。今までジメジメしたところに捕まっていた事実は、もう綺麗さっぱり忘れている。

「帰るか」
「そうしよう」

夕日に照らされ、ひとつの影が、仲良く伸びていた。
91創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 22:04:05 ID:Y387RLBC
以上です。なんや勝手な設定が増えとりおますが、気にせんといてください。
92創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 22:09:49 ID:uy0KMNxq



                        ヽ○ノ   もう見切り発車でいいか!
                         /
                        ノ)
93創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 22:27:39 ID:8LL1051K
>>91
超乙ぅぅぅ!!1
いいじゃない!イイヨイイヨ!イーンダヨ!!グrウワナニヲスルヤメr
性格的に合ってそうなペアだねー、強そうだ

頑張って俺も書くか
散々レスしてたけどきちんと小説書けたことないのよね
94創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 22:31:40 ID:jLo6tqPe
>>91
乙!いい感じ!
>>92
俺の上げた3つくらいは統一したい
あまりバラバラだとただの設定が似ているだけの作品になっちゃうよ!
ただネーミングセンスは俺もないww
95創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 22:33:31 ID:Y387RLBC
―P.E.P.He―ペフェ→能力の総称
はどう?単なる思いつきだけど
96創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 22:37:17 ID:8LL1051K
男A「俺のペフェは最強だな(キリッ」
男B「え、パフェがなんだって?」


正直すまんかった
97創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 22:37:45 ID:uy0KMNxq
思いつきすぎて由来がよくわからないw
98創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 22:38:02 ID:XqIu3AUq
隕石衝突の日 「チェンジリング・デイ」
能力の総称 バッフ buff
てのはどうでしょう

まだ世界の人も困惑気味で、
通称も決まってなくて好き勝手に呼んでいるというのもいいかもね
99創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 22:39:04 ID:Y387RLBC
>>98

> まだ世界の人も困惑気味で、
> 通称も決まってなくて好き勝手に呼んでいるというのもいいかもね


それ賛成
100創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 22:42:48 ID:jLo6tqPe
>>99
俺も賛成だけど、数十年後の世界を書く場合は困る気がする
101創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 22:43:40 ID:uy0KMNxq
じゃあもう>>98の上は採用で能力の通称は方言があるということで
102創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 22:52:11 ID:8LL1051K
Exceptional Abilityの頭文字で『EXA(エグザ)』……
と言おうとしたら遅かった
103創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 23:00:52 ID:uy0KMNxq
チェンジリング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

チェンジリング (changeling)
取り替え子。ヨーロッパの民話で、妖精が人間の子供をさらった後に置いていく妖精の子供。転じて嬰児交換の意味でも用いられる。ブラウニー、フェアリー参照。


ほう
104創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 23:09:43 ID:jLo6tqPe
>>103
すげー!>>98素晴らしいな
チェンジリング・デイで決定だな!

能力は案が3つでたから、総称をペフェ、昼をバッフ、夜をエグザとか
ちょっと無理があるかな?
105創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 23:09:56 ID:8LL1051K
日産・エクサ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

EXA(エクサ)は、日産自動車で生産販売されていたクーペの小型乗用車である。
初代は日産・パルサーのクーペヴァリエーションとして設定され、正式名も「パルサー・エクサ」だった。
2代目はパルサーから独立した車種となり、パルサーの姉妹車という位置づけだった。


どうしろと
106創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 23:17:07 ID:jLo6tqPe
>>105
日産→日の丸→太陽→昼
ということで昼の能力ww
107創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 23:26:56 ID:uy0KMNxq
とりあえずまとめて語りっぽくしてみた
何かあったらお願い

【イントロダクション】

あれはそう、西暦2000年2月21日の昼のことだった。
ふと空を見上げると一筋の光が流れている。
最初は飛行機か何かと思ったんだ。
けれどもそれはだんだんと地面の方へ向かっているようだった。
しばらくすると光は数を増し、そのうちのひとつがこちらに向かってきた。
隕石だ。今でもうちの近所に大きなクレーターがあるよ。
とにかく、あの日は地獄だった。人がたくさん死んだ。

だが、隕石が運んできたものは死だけではなかった。
今、あの日は「チェンジリング・デイ」と呼ばれている。
それは、隕石が私たち人類ひとりひとりに特殊能力を授けたからだ。
物質を操る、他人の精神を捻じ曲げる、世界の理の一部から解放される……。
様々な特殊能力を私たちはひとりにふたつ使うことができる。
ひとつは夜明けから日没までの昼に使うことができる能力、
もうひとつは日没から夜明けまでの夜に使うことができる能力だ。
隕石衝突後に新しく生まれた子供もこの能力を持っている。
能力の覚醒時期は人によってバラバラらしいがな。
この能力の総称は、「ペフェ」、「バッフ」、「エグザ」、単に「能力」など、
コミュニティによっていろいろな呼び名があるそうだ。

強大な力を得たものは暴走する。歴史の掟だ。
世界の各地に、強力な能力者によって作られた政府の支配の及ばぬ無法地帯が造られた。
だがそれ以外の土地では以前からの生活が続いている。

そうそう、あとひとつ。
これは単なる都市伝説なんだが、世界には「パラレルワールドを作り出す能力」を持つ者がいて、
俺たちの世界とほとんど同じ世界がいくつもできているって話だぜ。
108創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 00:06:51 ID:90rR1WaA
>>106
なるほど、日産も捨てたもんじゃなかった…
ググった時はどうしたもんかと思った
>>107
素晴らしい、乙様です。
パラレルわらたwwメタ発言www
新規さんにもわかりやすそうだし、テンプレに良さそう
109創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 00:22:16 ID:MhwxcJbh
>>107
いいと思う!
これを基盤にやりますか
110創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 00:27:31 ID:CSWAjcpi
っしゃああ俺のビジョンが爆発だ!
今から書くぜー!!
111創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 00:43:10 ID:90rR1WaA
関係ないけど
雑スレのuyさんとY387さんにワロタ
112創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 02:35:54 ID:iljUxU4y
全身人間ライター能力とか、煙草の煙もくもくしながらスタンド能力的な
こんな厨二病的なものでもおkなのかしらん
ttp://loda.jp/mitemite/?id=876.jpg
113創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 03:17:30 ID:MhwxcJbh
>>112
何でもおk
「ハナクソを食べると身体能力が上がる能力」
「カップラーメンをどこでもだせる能力」
「くしゃみをすると核爆弾並みの威力の爆発をおこす能力」
とかでもおk
ちょっと極端過ぎだけどねw

邪気眼が疼くぜぇww
114創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 04:15:53 ID:90rR1WaA
>>112
絵うめええぇぇぇ
ライタ子可愛すぎる、制服ツインは正義

このスレは厨二病患者の為に作られたんですよ
ここで書かずしてどこに書く!
115創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 04:25:32 ID:CSWAjcpi

俺の名は岬 月下。
俺の右手はあらゆる物質を生み出す。悪の手に渡れば一瞬で世界は闇に染まる。忌まわしき力。
学生という立場は"組織"の目を逃れるための仮の姿だ。組織もいつかここを嗅ぎつけるだろう。
退屈な授業が終了し、俺は単独で帰路につく。何も知らない一般人を巻き込むことは俺の流儀に反する。
警戒は常に続けながら、俺は携行栄養食を口にする。む、しまった。口の中が乾燥しt

「こら陽太ー!!」

後頭部に突然叩かれた衝撃に、少年は口の中の物質を噴き出して盛大にむせるのだった。

「まーた勝手にひとりで帰ったりしてー!」
「う、うっせーな晶! 俺がいつ帰ろうと勝手だろうが!」
「最近猛犬が出るからひとりで帰るなって先生言ってたでしょーが!」
「んなもん俺の能力で瞬殺っつってんだろ! あと俺は月下だ!」
「まーたそういうこと言う。お母さん悲しむよー太陽君」
「月下だ!!」

僕の名前は水野 晶。僕の目線の下から、1hydeの身長を必死に伸ばすこいつの名前は岬 陽太。
僕と陽太はよくある幼馴染というやつだ。家もお隣で家族ぐるみの付き合いがある。
陽太は言ってしまえば、変な奴。俗に言う「厨二病」ってやつなのかな。昔はそうでもなかったんだけど…。

「俺にいちいち付き纏うなよ。足手纏いなんだよ!」
「また能力を狙う組織ー? いい加減そんなの卒業しなよ中二にもなってー。
 僕は来年高校だから陽太ひとりなっちゃうよ?」
「俺の能力がそれだけ強力でやべーの!」
「だからそのやばい能力見せてみなって。どーせホントは大したことないんでしょ?」
「こんな街中で使えるわけねーだろ!」

そう、この世界にはごく一般的に「能力」というものが存在する。無論、この僕にも。
電気を操る、心を読む、テレポートする、肉体を強化する。通常あり得ない現象を引き起こす、それが「能力」。
ただ、能力は千差万別、玉石混合で、さっき挙げた強力な能力なんてニュースの中のお話。そんな人はそうそういない。
たとえば僕の母は「服を一瞬でたたむ能力」を持っている。本当に一瞬だ、肉眼で確認できない。
おおよそ能力とは呼べそうにない能力だが、母はとても気にいっている。

「陽太っていっつも何か食べてるよね。今日はカロリーメイト?」
「いつ組織が襲ってくるかわからないからな。栄養補給は怠らない。月下だ」
「はいはい。間食ばっかしてるから背が伸びないんだよ。ほら」
「は?」
「あげる。どーせ口の中パッサパサで困ってたんでしょ」
「む…」

黙って缶コーヒーを受け取りまじまじと見ているのは、加糖であるか確認しているのだ。ブラックは飲めないから。
生意気だが、なんだかんだ言ってかわいい奴だと思う。僕にとってこいつは、手のかかる弟のような存在だ。
116創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 04:26:43 ID:CSWAjcpi

何てことない雑談を交わしながら繁華街を抜け、人通りの少ない住宅街へ。家まではあと10分といったところか。
いつも通りの帰り道に、変化が現れたのは突然だった。
アスファルトの地面を硬い何かが定期的にぶつかる音。その音はたちまち大きくなり、それは曲がり角から姿を現した。

「え、犬!?」

奇妙な犬だった。警察犬として見られる、中型の漆黒のシェパード・ドッグ。
筋骨隆々な身体つきにしっかりした足取りと、対称的に虚ろな双眸。その額には、血のように紅い宝石が埋め込まれていた。

そいつは僕たちの目の前でピタリと停止し、顔だけを動かして僕を見て、陽太を見た。紅い、第三の目で。
カチリ、カチリと、小さな機械音は確かにその犬から聞こえた。
茫然とする僕たちの前で、そいつは身を低くし、戦闘態勢をとる。

「こいつが…猛犬か…!」

思い出したように陽太が身構える。僕と犬の間に陽太の手が伸ばされ、僕も遅れて身を硬くする。
逃げるのが得策。だが低く唸る犬は、目を離せば一瞬で飛びかかり、その首を噛みちぎると全身で訴える。それだけの迫力があった。

「こいつは…逃げるぞ…晶」
「わかってる…けど…どうやって…」
「こいつは何考えてる、晶。どうして怒ってる」

普通はわからない質問を陽太がするのはわけがある。僕の昼間の能力。それは、動物の心を読み解く力。
僕はなんとか恐怖を抑えながら犬に意識を集中し、さらに驚愕する。

「嘘…なに、この犬。変だよ、絶対変!」
「見たまま変だろうが!」
「違う…この犬…意識が混濁してる。こんなんで動けるはずない…」
「は!? 能力なまってんじゃねえのか!? どう見たって怒ってんだろうが!」
「違う! 意識は感じるんだって! でも怒ってない、むしろ寝てるみたいな…」
「はあ!!?」

ガチャ

犬が一歩、こちらに踏み出し、僕たちはビクンと身体を震わせた。飛びかかってくるまでに、もはや一刻の猶予もない。

「そ…そう、能力! 今こそ陽太の能力使うときでしょ!」
「の…能力…か…」

陽太はチラリと西に目を向け、チッと舌打ちした。太陽は沈みかけているが、完全な日没までにあと10分はかかるだろう。
たったの10分間が、今の状態では気が遠くなるほど長い。

「昼間の能力は…その…」
「なんでもいいから! 何かできるでしょ! 早く!!」
「くっ…仕方ない…やるか…」

開いて伸ばされていた陽太の右手が下がり、グッと握られた。そこでおこるであろう現象を、僕は固唾を飲んで見守る。
手の甲を下に向け、ゆっくりとその指が開かれる。開いた手の平には、何もなかったはずのそこには…
117創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 04:27:39 ID:CSWAjcpi

カロリーメイトが乗っていた。

「…は?」

完全に予想外の現象に拍子抜けする僕の反応をよそに、陽太は少し屈み、地面にそのカロリーメイトを置いた。
そして一歩、二歩。慎重に犬から距離をとる。陽太に押されて僕も少し下がる。
同時に犬も踏み出し、クンクンと謎のカロリーメイトの臭いを確認する。そして顔を上げ、再び唸り声を上げはじめる。

「くっ…カロリーメイトは駄目かっ…!」
「ね…ねえ、あの陽太…」
「ならばっ…」

陽太は再び右手を握り、開く。その手には今度はハンバーガーが乗っていた。
先程と同じ動きで後ろに下がる。犬もまた、謎のハンバーガーの臭いを確認し、顔を上げ唸り声を(ry

「ハンバーガーでも駄目なのかっ…!」
「陽太の能力って…その…」
「これならっ…」

同じ動きで次に発生したのは、唐揚げ棒。串つき。
僕たちは三度下がり、犬は謎の唐揚げの臭いを確認し、顔を(ry

「晶っ!!」
「はいぃ!?」

真剣な陽太と犬。ひとり蚊帳の外だった僕は、突然呼ばれて奇妙な声をあげてしまった。

「何を出せばいい!? 何なら奴の気を引ける!?」
「え…えと…ドッグフード…とか?」
「んなモン食ったことねーよ馬鹿!! 真面目に考えろ!!」
「ええっ!!?」

理不尽に怒られた気がするが、陽太はあくまでも真剣で、どこか気が抜けている僕は反論できなかった。
どうやら陽太の能力は、過去に食べたことのあるものを手から出す、というものらしい。
考えを巡らせたが、唐揚げに反応しなかった犬が反応する食べ物を思いつかない。

「ええと…ファミチキとか…」
「…む!? そうか!! ファミチキ美味いもんな!!」
「えええっ!?」

なんとなく口に出した、突っ込まれることを前提にした提案が、陽太には素晴らしい提案と取られてしまったらしい。
慌てて言い返そうとしたが、陽太は途端にシリアス顔に戻り、その機会を失ってしまった。

「いいか、次はファミチキを出す。気は引けないかもしれないが匂いは嗅ぐはずだ。あの匂いならば…!
 …顔を下げたタイミングで逃げるぞ」
「う…うん…わかった」

陽太は慎重に右手を握り、少し力を込めてから、開く。その手には香り立つ熱々のファミチキが乗っていた。
顔を歪めたのは熱さによるものだろう。素手には間違いなく熱いそれを、慎重に慎重に地面に置く。
下がる僕たち、踏み出す犬。そして犬はファミチキの匂いを…嗅いだ!

「今だ!!」

陽太の手と声に押され、弾けるように僕たちは逃走を開始した。日没まで…約5分。

<続く>

ビジョンが爆発した結果こうなった。
予告した創作ほっぽりだして何やってんだ俺。もう寝る。
118創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 04:54:24 ID:90rR1WaA
いきなりシリアスかと思ったら中二でニヤニヤして
カロリーメイトで吹き出し
ファミチキで声に出して笑った

投下乙です!続き気になるwww
おやすみなさいー
119短くてすまん:2010/02/22(月) 06:03:14 ID:TT1eJPiV
「眠いよー……」
 いつも、夜ならば元気にぴこぴこと揺れているアホ毛が、しなびたように垂れていた。
 その本人の目尻も垂れ下がっていて、今にも夢の世界へと旅立ってしまいそうな面持ちだ。
 毎度毎度の事ながら、申し訳なさで一杯になる。
 俺――、桂木忍は、目の前の同い年の少女に向かって頭を下げた。
「悪いな……、ソラ」
「うーん、気にしないで良いよ……ふぁぁ……」
 ソラ――、鈴本青空は、疲れた顔で笑みを返し、そのまま机に突っ伏した。
 こうなってしまってはてこでも動くまい。俺は常備している掛け布団を彼女の肩に掛け、自分の席へと戻った。 
 いっぱしの高校生である俺とソラは、今日もまた学校へとやってきて、そこで授業を受けるのだ。
「……まあ、ソラは受けられる状況じゃないけど」
「……」
 くかー、と既に寝息を立てているソラを片目に、俺はノートを二冊用意する。
 まあ、いつものことだ。夜に迷惑ばかりかけている分、昼に俺が役に立ってやらないと。



 チェンジリング・デイ……。隕石が落ちてきたあの日から、人々は様々な能力を手に入れた。
 その数二つ。昼と夜で、その特性や力は全く別物になったりする。
 当然この世界に生きる俺やソラもその能力を持っているのだが……、ホント、下らない能力もあったりするんだな、これが。
 俺、桂木忍の『夜』の能力、それは――、
「わーっ、あいかわらず可愛いね、しのちゃん」
「その呼び方はやめろ、ソラ。後可愛いと言われても嬉しくない……」
「えー、でも、こんなに可愛いのに」
 ソラが、昼間とは別人のようにすっきりとした顔で、素晴らしい笑顔を見せた。
 しなびていたアホ毛も元気になっている。こいつの『夜』の能力が発動したためだ。
 ソラの『夜』の能力は『活性化』。体の全細胞が活発になって、ソラはすっきりしゃっきり目覚めるようになる。
「さーて、今日はお姫様を狙ってどんなのがやってくるかな!」
「その言い方やめてくれ……」
「えー、でもしのちゃん可愛いし」
 可愛いという言葉がグサリグサリと俺の胸に突き刺さる。男なのに、俺は男なのに……。
 と言っても、その説得力は極めて低いだろう。
 俺の『夜』の能力は『お姫様』。『夜』になると髪の毛の長さを自由に調節することが出来るようになり、声も高くなって、挙げ句体つきまで変化するという恐ろしい能力だ。
 本当に恐ろしすぎて参る。
「今日はロングなんだね、しのちゃん」
「ああ、まあ……、ていうかその呼び方やめてくれ」
「えー、でもしのちゃん可愛いし」
 デジャヴ。ソラはえへへ、と可愛く笑って俺に抱きついてこようとする。
 だが、俺はそれを手で制し、ソラの背後をきつく見据えた。
 現われるのは、犬。最近猛犬注意とか言ってたからな……。
 俺の能力にも惹かれて出てきたことに間違いはないが。
「しのちゃん」
「ああ……。悪い、引き寄せちまった」
「気にしないでよ。お姫様だもんね、しのちゃん」
「やめてくれそれ……」
「だいじょーぶ! お姫様を守るのが私の仕事! なんちゃって」
 ぶい、とピースしたソラの動きを追従するよう、アホ毛が揺れた。
 今夜もまた、ソラの戦いが始まる。『お姫様』を守るための戦いが。

続く!
120創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 13:37:36 ID:ThxNpaej
寝てる間に投下ラッシュきてたwww

>>112
女の子かわええ
火吹きっ娘といえばキョーコ思い出すな

>>115-117
厨二www
夜の能力に期待

>>119
ほうほう、大事な部分はどうなってるのか確認あべしっ
121創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 14:00:22 ID:ThxNpaej
言い忘れてたけど
服をたたむ能力が早速使われるとはw
122創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 17:18:42 ID:AU5zEimA
\厨二病なら任せろー/ メラメラ
せっかくのシェアスレなんで>>115-117のキャラ借りました。イメージに
あってなかったらすまんこ。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=877.jpg
123創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 17:44:03 ID:Mp9UqzvW
>>122
震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!!
あなたが神か
陽太と晶は俺もそんなイメージww

さて、毛糸のパンツをクンカクンカする作業に戻るか…
124創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 18:49:51 ID:TT1eJPiV
朝は投下しかできなかったので感想

>>112
かわえええ!ww鉄っちゃんの気だるそうな雰囲気が好きだ

>>117
厨二いいなww食べたものを召喚(?)する能力も面白いww
夜の能力に期待せざるを得ないぜ

>>122
毛糸のパンツだと……
125創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 19:25:34 ID:ThxNpaej
>>122
こんな形で遭遇ww
126創る名無しに見る名無し:2010/02/22(月) 21:20:21 ID:ThxNpaej
投下します
127飼い主、はじめました。 ◆KazZxBP5Rc :2010/02/22(月) 21:21:40 ID:ThxNpaej
目が覚めたとき、隣に全裸の美女が寝ていたらどう思うだろうか。
昨日連れ込んだ記憶も酒を飲んだ覚えもまったく無い。
歳は二十代前半といったところか。僕と同じくらいだろう。
腰まで伸びた長い黒髪が……って何観察してるんだ僕は!
「ん……。」
ヤバい、彼女が気づいたぞ。
「おはようございます。」
あれ? 反応があっけなさ過ぎる。
僕はおそるおそる尋ねてみることにした。
「あ、あの……。」
「どうかしたんですか?」
「その、服……。」
「あっ、ごめんなさい。私、能力のせいで裸に抵抗無くて。」
「いいからっ! 男物しか無くて申し訳ないですけど、
 そこのクローゼットから適当に選んで着替えてくださいっ!」
もちろん男として興味が無いわけではない。
でも、生まれてこのかた二十五年、全く女っ気も無く、
しかも一人っ子の僕には、この状況は刺激が強すぎる。
「くぅーん。」
レトリバーのハナが膝の上に乗ってきた。
「おまえたちにはモテモテなんだけどね。」
と、つぶやく。
128飼い主、はじめました。 ◆KazZxBP5Rc :2010/02/22(月) 21:22:22 ID:ThxNpaej
「おまたせしました。」
再びベッドの上に座った彼女はぶかぶかのジャージに身を包んでいた。
さて、どこから聞こうか。
「えーっと、僕はタク、犬飼拓。」
「ミヨです。三つの世界って書いて三世。」
まずは無難に名前を教えあう。
それで、ここからどうするんだ?
どうして隣で寝てたかなんて聞いたら変態扱いされかねないし。
いろいろと悩んでいるうちにミヨさんの方から声を掛けられた。
「動物、好きなんですか?」
実は、この狭い部屋にはハナだけではなく十匹もの犬猫が放たれている。
「昼は『犬に好かれる能力』、夜は『猫に好かれる能力』。
 たまに野良がついてきてそのまま玄関の前で居座られて、
 他の入居者の迷惑になるから部屋に入れたのがこいつらですよ。」
「……。」
あら、期待してた答えと違って、呆れちゃったかな?
「ミヨさん?」
「……運命って、あるんですね。」
はい?
「たまにはおさんぽコース変えてみるものね。」
何をおっしゃっているのか分かりかねます。
「昨日黒猫がここに入ってきたでしょ?」
「あ、そういえば朝起きたときにはもういなかったですね。出ていったのかな?」
「あれ、私。」
今度は僕の方がフリーズする番だった。
「それに……。」
彼女が目をつぶると、その体がだんだん小さくなっていって、ジャージの中に隠れてしまった。
中を覗こうとしたら、黒毛の柴犬がしっぽを振って現れた。
かと思うとその柴犬がだんだん大きくなっていき、再び裸のミヨさんが……って!
「というわけなんです。」
「と、と、とにかく服っ!」
「遠慮しなくていいんですよ。」
そう言ってミヨさんは僕に抱きつく。
「遠慮とかそういうことじゃ……。」
「だって、私、あなたと結婚するって決めましたから!」
もう……限界……。
「あれ? タクさん? タクさん!」
僕の意識はそこで途切れた。

おわり
129創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 00:32:18 ID:Top7GNGi
好かれる能力www
130創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 02:07:27 ID:7LIFIlXY
雑スレで紹介されたからには投下せざるをえない
131創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 02:08:10 ID:7LIFIlXY
街が夕暮れに沈む頃、あたしの仕事も終わる。不透能力素材のローブに手袋。もうどこからどう見ても完全に怪しい占い師。でも、こう見えても一応公務員の扱いを受けている。

「あ゛ーやっどお゛わっだー。一日中立ちっぱはマジでつれえよ」

すぐそばに立っている仮面の男がボヤく。彼はあたしの護衛兼カレシだ。ランクは上の中ってところかな。
こんな楽な仕事で、給料も安定してて、さらにカッコいいカレシもゲット。この能力に目覚めて本当に良かった。心の底からそう思う。

「おつかれ、カズ。ウチに帰ったらマッサージしたげるからさ」
「よしゃ、じゃあ早く帰るぞ」

歩き出した一貴は、なんだかロボットみたいにギクシャクしてて笑えた。
132見る名無しあっての創る名無し:2010/02/23(火) 02:08:50 ID:7LIFIlXY
「つかさー、どう考えても不公平だろ」

ふくらはぎを揉まれながら一貴がぶうたれる。

「不公平って、なにがー?」
「扱いが。お前は一日中座りっぱで、しかも何も喋んなくていいじゃん。でも俺はさ、一日中立ちっぱなし、しかもなんか雑用とかも押し付けられるし」

喋らなくて良い、じゃなくて喋ったらダメ、なんだけど。朝から夕方まで一言も喋れないのは、実際かなり辛いよ。

「何よりそんだけ働いても給料お前の方が上っつうのが一番納得いかねえわ」
「いいじゃん別に。二人でおんなじ口座なんだし」
「お前は分かってねえ。男の詰まらないプライドっつうもんが全然分かってねえ」

わーわー騒いでるんで、放っておいて、さっさと夕ごはんを作ることにした。
1333/4:2010/02/23(火) 02:09:32 ID:7LIFIlXY
ああ、そうそう。あたしの仕事についてセツメイしてなかった。
あたしは“鑑定士”ってのをしてる。勘の良い人はもう分かったかもしれないけど、つまるところ、他人の能力を言い当てる仕事だ。
これは正式に国から認められた職業で、鑑定士から貰った能力証明書がないと、保険に入れなかったりとか、いろいろ困る。
その他にも危険な能力を持った人に制約を掛けるって意味もあるみたい。ま、そんなひとは大抵鑑定しにこないんだけど。

最初に鑑定士が出来た頃は、やっぱり鑑定士とお客さんとのトラブルが絶えなかったみたい。
だから今は不透能力素材のローブと手袋を付けないといけない。さっきいってた喋っちゃダメってのもこれから。名前も教えちゃいけない。
そしてキチョーな鑑定士を守るために【守護の仮面】っていう護衛関係の能力を持った人がみんなお揃いの仮面を被って鑑定士の事を守ってくれてる。正直なところ、この人達がズラーって並ぶとちょっと怖い。

ちなみにあたしは、2年半くらい前に人の能力が分かる能力があることが分かって、1年間鑑定士のガッコに行って、1年前に晴れて鑑定士に。一貴ともその後すぐ付き合いだした。
1344/4:2010/02/23(火) 02:10:12 ID:7LIFIlXY
「はーい、できたよー」
「今日は何だ?」
「今日はカズの好きなハンバーグ丼でーっす」
「いよっしゃああ、これで疲れ吹っ飛ぶわ」

無邪気に笑う一貴を見ながら、あたしはものすごく幸せだった。

願わくば、この幸福がとこしえに続きますように

なあんて
135創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 02:12:14 ID:7LIFIlXY
ここまで
自分で能力に気づいた人以外(分かりづらい能力の人とか)はどうやって分かったのか、って思ったら書けた
136創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 02:15:48 ID:1tV+n8bY
わーいいらっしゃいませ、そして乙
次の話で鑑定の話ちょびっとキャラにしゃべらせようとしてたから心読まれたのかと思ったw
137創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 18:56:59 ID:WpbsUXFC
 触発されて自分も書いてみました。

「西暦2000年2月21日、世界は隕石の恐怖にさらされた!!

 大地は裂け、上空を塵芥が覆い、あらゆる生命体は絶滅したかに見えた。


 しかし、人類は死に絶えてはいなかった!


 そして世は再び暴力が支配する時代へと移り変わひでぶ!」
 迫真の演技でナレーションをしていた秋山 幸助(27)を、どこからか飛んできた衝撃波が吹き飛ばした。いくばくか遅れて、三つ編みの少女が鼻を摩りながら歩いてくる。
「ごめんこーちゃん、暴発した」
 彼女の名前は吉野 小春(よしの こはる)、兄貴代わりの幸助を慕う、ピチピチの高校二年生だ――――外見はもっと小さいが。
「おまえ……バッフの制御くらいいい加減できるようになれよ」
 2000年2月21日のチェンジリング・デイ以降、人類は“バッフ”とか“エグザ”とか呼ばれる、昼と夜で別々の超能力を発動する事ができるようになった。
 ちなみに小春は、朝は“衝撃波を発生させる能力”、夜は“あらゆる物を飛行させる能力”を持っている。だが本人は好戦的なタイプじゃないし、高い所も苦手なので宝の持ち腐れだ。
「こーちゃんなんか、まだどんなバッフかもわかってないじゃん」
「う、うるせぇ! もしかするとバッフがないのが俺のバッフなのかもしれないじゃねぇか! ジムカスタムみたいな!」
 そう、そうなのだ。幸助はまだ自分自身のバッフが何なのかわかっていない。
「ごめん、こーちゃんが何言ってるのかわかんない。鑑定士に見てもらえばいいじゃん」
「駄目だ、貴重な休日を無駄にしたくないし、金もかけたくない」
「うわー、こーちゃんったらなんて守銭奴なのかし……くちゅん!」
 小春がくしゃみをすると同時に地面が刔れた。バッフの暴発だ。冷や汗をかきながら幸助は思う。
 ――――こいつが花粉症だったら色々終わってたな。
「ういー、ちっくしょーい」
「オヤジかおまえは」
「あ! じゃあ、適当に踏ん張ってみるとか!」
 手をぽむ、と叩いて小春が言う。
「何を言ってるんだおまえは」
「なんか発動するかも?」
 なんで疑問系? と思いつつ、渋々踏ん張ってみる。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
 そして幸助は驚愕する。本当に何かが沸き上がってきたからだ。
138創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 18:57:34 ID:H55uuSfc
続くぜ。


「‥‥ううむ。どうしたものか‥‥」
「あなた、さっきから難しい顔してどうしたんですか?」

 ワシの名前は金河 余市満(カネガヨシミツ)。趣味は骨董品集め。
 ああ、横に居るのは家内の節代。
 今ワシは悩んでおる。この前買った壺。これがどこの誰のいつの時代の物か、サッパリわからん。
 これじゃテキトーな物を売り付けられたのかと疑われても仕方あるまい。
 しかーし!!!これでもワシの目は肥えておる!ワシの経験とカンが言うのだ!これは素晴らしい物だと!

「あなた、その壺買ってから家の中が変ですよ。勝手に食器が割れたり誰も居ない部屋から声が聞こえたり」
「気のせいだろう。それよりこの壺の正体が知りたい!ああ知りたい!」
「知らないほうがいいんじゃないですか?」
「うるさいぞ節代!ああ、何処かにいい鑑定師でもおらんものか‥‥‥?」
「後悔しそうですね。あなた」
「なぜそんな陰気な事ばかり言うのだお前は?」
「さぁ‥‥強いて言えば、女のカンですね」
「‥‥‥誰か鑑定してくれんかのぅ」
「もういいです」
139創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 18:58:28 ID:WpbsUXFC
「どう? みなぎってきた? みなぎってきた?」
「うおぉぉぉぉ、なんだこの身体の内から込み上げてくる力はー!」
 今なら何か、いつもはできない事ができそうな気がした。
「これが、俺の、バッフだぁぁぁぁぁぁ!」
 ぽんっ。
「え?」
「わあ、素敵」
 気の抜けるような音を立てて手の中に現れたのは、花束だった。それも薔薇の。
「なんだこれ」
「薔薇だね」
 ちょんちょん、と幸助が持つ赤いそれをつつきながら、小春。
「そりゃ見ればわかるっつの! なんだこのガッカリバッフは!?」
「私に聞かれても困ります」
 何故か小春が無い胸を張る。
「でも、もしかすると夜は凄いバッフが使えるかもしれないよ?」


 ♪  ♪  ♪


 というわけで、夜。
「今度こそ俺のバッフでおまえをギャフンと言わせてやるからな!」
「こーちゃんがんばれー」
 血走った目で小春を指差す幸助と、気のない声援を送る小春。
「よっしゃあ、やぁってやるぜ!」
 昼の時のように気張ってみると、また似たような感覚に襲われた。
「きたきたきたきたぁぁぁぁ! これがッ、俺のッ、夜のバッフだぁぁぁぁぁぁ!」
 ぽんっ。
「あ?」
「まあ、かわいい」
 気の抜けるような音を立てて――――今度は手の中には何も出現していないようだ。
「なあハル、俺なんか変わった?」
「うん、変わった」
 そう言って携帯で写真を撮って見せる。携帯の画面には、不精髭を生やしたネコミミのお成人男性が写っていた。
「ね? 変わったでしょ?」
「いや、まあ、確かに、変わったけどもよ……」
 もう一度小春の携帯を引ったくって写真を見る。
 うん、確かにネコミミだ……って、


「なんじゃあこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
140創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 18:59:51 ID:WpbsUXFC
 あちゃあ。すみません、被しました……。
141創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 19:15:23 ID:1tV+n8bY
>>137>>139-140
これまたいいコンビだなw
142創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 20:18:33 ID:EC3K5946
北斗の拳www
143創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 20:57:11 ID:WpbsUXFC
 感想ありがとうございますw
 ついパロを入れてしまうのが悪い癖でござる。
144創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 22:12:06 ID:1tV+n8bY
何か語りたくなってきた
145創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 22:27:03 ID:EC3K5946
じゃあ語っちゃえよ!
146創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 22:30:31 ID:1tV+n8bY
この設定だと「どんな能力が欲しい?」っていう割とありふれた質問でも新鮮だと思うんだ
147創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 22:31:30 ID:EC3K5946
部屋を片付ける能力がほしいです
148創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 22:34:51 ID:1tV+n8bY
たしかにw
あと誘惑に駆られない能力も欲しいなw
149創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 22:38:17 ID:1kl7ek+p
相手の来ている服を「女性用衣服」へと変化させる
夜は逆転して「男性用衣服」に

気になるあの子を巫女さんにしたり上だけ男物のYシャツへと変化させたりといった
夢幻の可能性を秘めた能力
名づけて『百花繚乱(メイドインヘブン)』
150創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 22:40:18 ID:1kl7ek+p
バストサイズを上昇させる能力
夜は逆転してバストサイズを減少させる
名づけて『人生山有谷有(モーショボー・オッパイ・プルンプルン)』
151創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 22:41:16 ID:WpbsUXFC
 私は無くした物を見つけられる能力がほしいです……。
152創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 22:42:09 ID:1tV+n8bY
本命はメイド服ですねわかります
153創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 22:44:13 ID:WpbsUXFC
 いいえ、ブルマです。
154創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 22:50:29 ID:1tV+n8bY
記録媒体を持ってストーリーを頭の中で思い浮かべると
その記録媒体の中にテキストファイルとしてストーリーが記録される能力ッ!
(夜で)

>>153
/(^o^)\
155創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 23:07:16 ID:WpbsUXFC
 スク水でm(ry

>>154
 そんな能力があったら……なんか作品がえろえろになりそうで怖いですw
156創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 23:10:19 ID:1tV+n8bY
メイドって入ってたからメイドって言ってみただけなんだ
本当に好きなのはビジネススーツのおねーさんなんだ

>>155
えろえろだと…ゴクリ…
157創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 23:16:01 ID:WpbsUXFC
 だって煩悩が邪魔するんだもの……。
158創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 23:20:46 ID:1tV+n8bY
問題ないよ全然問題ない
ガイドラインで問題ない範囲なら問題ないよ

wktk
159創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 23:31:38 ID:WpbsUXFC
 か、書くとは言ってないんだからね!
 あと、他スレとの兼ね合いもあるので……。
160創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 23:34:24 ID:1tV+n8bY
ごめんちょっと落ち着いた

さて、夜は最強昼はよわよわヒロインのエロさについてだっけ?
161創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 23:36:17 ID:EC3K5946
その時点でもうえろいなw
162創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 23:38:32 ID:1tV+n8bY
きっと性格まで豹変するに違いない
163創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 23:40:07 ID:QltOZjkq
aa
164創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 23:47:01 ID:1tV+n8bY
夜「な、なんで襲ってくるんですかぁ! やめてくださぁい…」

昼「おらおら、あたしゃ弱いんだからさっさと守りな!」
165創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 23:47:57 ID:EC3K5946
ち ょ っ と 待 てwww
166創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 23:51:00 ID:1tV+n8bY
ん?
何かおかしな所があるとでも?
167創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 23:54:24 ID:EC3K5946
昼の口調がオバサンっぽいのは何故だw
168創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 23:57:05 ID:1tV+n8bY
そういうツッコミかw
女王さまっぽくしようと思ったんだが…
169創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 00:07:44 ID:SH5bUHDU
>>131-134
モノクロ、ラフですまんこ。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=880.jpg

ストッキングと仮面+スーツにしちゃったけどさすがにまずかったかしら。
一応「チェンジリング」ってことで仮面の色も白黒に。
170創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 00:17:24 ID:3wmRxpSs
 個人的にはキリッとした女王様がいいですねー。ダンバインのシーラ・ラパーナみたいな。
171創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 00:19:56 ID:3wmRxpSs
>>169
(゚∀゚)o彡タイツ! タイツ!

 タイツは正義ですよね!
172創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 00:22:30 ID:G/9s9EL2
>>169
わがままそうな感じがいいな
ヒザガクガク辛そうw
173創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 00:29:34 ID:9ETnMMZU
>>169
おお、これはかわいいw
174創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 00:35:13 ID:3wmRxpSs
 しかし、こうまで上手いとウチの子もイラスト化してもらいたいなー、なんて(チラッ
175創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 00:36:52 ID:G/9s9EL2
しかしIDが変わっていた!
176137:2010/02/24(水) 00:38:15 ID:3wmRxpSs
 ぬかった、ぬかったわ!
 ……それも私だ。
177創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 00:40:35 ID:9ETnMMZU
チラ見すんなw
しかし盛り上がってきたな、ここw
178創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 00:41:20 ID:G/9s9EL2
なるほど、ネコミミか
男の…
179創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 00:42:49 ID:9ETnMMZU
ああ、男の……
何故女の子にしなかったし!
180 ◆KazZxBP5Rc :2010/02/24(水) 00:47:21 ID:G/9s9EL2
女ぬこならいるよ!
わんこにもなるよ!

…なんかちょっとゴメン
181創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 00:49:09 ID:9ETnMMZU
わん子はご褒美じゃね?
182PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2010/02/24(水) 00:53:15 ID:3wmRxpSs
 私もちょっと後悔し始めましたw
 でもいいんだ、三つ編みロリがあるなら、隣に変なネコミミ不精髭の成人男性がダルそうな顔で喫煙してても別にいいんだ!


 ……何でしょうね、この異様な光景。いや、C・D以降は普通の光景なんでしょうかw
183創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 00:54:26 ID:9ETnMMZU
おい、コテ出しっぱだぞw
184創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 00:57:49 ID:G/9s9EL2
なんとなんと
185創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 01:00:19 ID:3wmRxpSs
 ガッデム、シット、なんてこったぁぁぁぁぁぁぁぁ!! ああ、向こうでもコテ出てるよ……。
 さあ、今のコテは忘れるんだ!
186創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 01:02:28 ID:9ETnMMZU
大丈夫、三つ編みロリの時点で察しはついていた
さあ、俺と一緒にひとまずロボスレへ帰ろうか
187創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 01:04:38 ID:G/9s9EL2
どんまいw
188創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 01:09:43 ID:9ETnMMZU
まったく、こっちにも出入りしてたとはw
189創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 01:20:58 ID:Xd9Ui/qs
>>169
ヒャッハー。もといヒャッホウ!
ついに俺の作品にも絵が……
190創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 01:27:16 ID:3wmRxpSs
 どこの住人で何の作者かバレたけど、

  ヽ○ノ まあいいか!
   /
  ノ)


>>188
 だってここも雰囲気良かったんですもの! ROMるだけなのがもったいないような気がしたんですもの!

>>189
 おめでとうございますw
191創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 01:49:19 ID:9ETnMMZU
オォウ……うれしい事言ってくれるじゃないの
192創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 01:59:09 ID:z/9OQEvw
うぐあああーっとりあえずラフの落書きで!ごめんね!
ttp://loda.jp/mitemite/?id=882.jpg

>>174
じ、自分もSSは書けないから文章にして欲しいなんて(チラッ
193創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 02:04:11 ID:3wmRxpSs
 三つ編みだイィヤッホォォゥ!!

>>192
 私などに頼むと、キャラが確実に変態になりますが、それでもいいのですかなッ?
194創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 02:05:17 ID:Xd9Ui/qs
FOOOOO!!また来やがったよCOOOL

合ってる、合ってるよあんさん
195創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 02:07:22 ID:G/9s9EL2
うおおおおお
激しく乙です!
196創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 02:07:52 ID:z/9OQEvw
レスの速さにふいた。な、なんだこのスレは……常に住人が監視して
いるのかッ…ゾクゾクッ

>>193
むしろ書いて頂けるのなら、どなたにでも書いてほしい勢いです。わあい。
197創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 02:16:29 ID:9ETnMMZU
>>192
いいね、最高だ!

>>193
ていうか、あなたが書くとみんな神経図太くなるよねw
198創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 02:18:05 ID:3wmRxpSs
 HAHAHA! ロボか三つ編みか超能力がある限りッ、私はどこにでも現れますよブラザー!
 ……多分。

 ちなみにこのスレの設定を見て、鬱じゃないDARKER THAN BLACKを思い浮かべたのは秘密だ!

>>196
 では本業の合間にちまちま書かせていただきますねw

>>197
 あとロリっ娘と毒舌キャラが絶対出てきますねw
199創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 02:56:07 ID:Xd9Ui/qs
眠いので投下します
200見る名無しあっての創る名無し:2010/02/24(水) 02:57:21 ID:Xd9Ui/qs
俺の名は天野 翔太。鑑定士には定期的に見てもらいに行っていたが、行く度に能力の発現はまだだと言われた。(言われたというのは正しくない。正確には筆談だ)

だが俺にもとうとう目覚めの時が来たようだ。最近昼の能力が分かった。

そう、漢の夢、透視だ。

最初の内はもうウハウハだった。昼の間はずっと外にいて、ベンチに座りながら道行く女性を視まくった。
もうずっとギンギン。ただ力の加減を誤るとさらに中まで視えて一気に萎えるので、そこのところは注意が必要だった。
ちなみにこの力が及ぶのは現実の物だけだ。写真とか、絵は透視出来ない。

そんなこんなで能力を満喫していたのだが、やっぱりこういうのはすぐに飽きてくる。もう普通に視るだけでは何の反応も示さなくなっていた。
大体視たからといって、それ以上のことはできないのだ。それに気づいてからは虚しさも覚えるようになっていた。

そうなると次に思い立つのは金だ。この能力を使って金儲けはできないだろうか。
先にいっておくと、博打関係は出来ない。能力ができてから、馬の声を聞いてから馬券を買ったり、パチンコ玉を念で操作するような輩が続出したため、今ではそういった産業はすっかり廃れてしまった。

「うーむ」

今日は一日中能力の使い道を考えていた気がする。気づけば辺りは暗くなっていた。そろそろ帰ろうかと思いベンチから腰を浮かせたところで、

俺の体が落ちた。衝撃。

「な、に……」

これはヤバい。なんか口から血吹いてる。
隣には自分の足が立っていた。?おかしいだろ。なんで足のほうが頭より高いんだよ。

「……あ」

気づいた。俺死ぬ。つうか既に死んでる。だって上半身と下半身分かれてるのに全然痛くないから。

「はいハイどーもゥ、フェイブ・オブ・グールでェーっす。聞いたことあるかなァー?」

なんか変なおっさんが俺のことを見下ろしていた。おっさん見てないで助けろよ。まあもう助からないけどさ。

「ンンー?知らない?アアアッーそれはざンネんだ。俺ショック!」

ふぇいぶ、なに?だめだ、あたままわらくなてきた。

「じャあ、何か言い残すことはアるかなァー?
……ってオウプス!こーゆうのは殺す前に聞くもンだな、ミスったミスった」

……しぬのはべつにいいけど、そうだなあ、おれのよるのちからとか、しりたかったかも。
ああ、くだら、な――
201見る名無しあっての創る名無し:2010/02/24(水) 02:58:12 ID:Xd9Ui/qs
「くそっ、またか」

男は苛立たしげにデスクを叩いた。

「これで10人は超えましたね……」

その後輩と思しき男が呟く。

「ああ、見つかっているだけで、な」

タバコに火をつける。

「しかし、犠牲者がここまで増えると、奴らが出てくるやもしれんな」
「噂に聞く、バフ課の連中ですか?」
「ああ。もっとも、バフ課っていうのは通称で、その他は詳細不明。少なくとも俺等平には名前すら分からん」
「噂だけならいくらでもありますね。ミュータントの集まりだとか、チェンジリング・デイの前からあったとか」
「噂は噂だ。どうせ俺らにゃ関係ない世界の話だ。本当にそんな課があったとして、俺らにゃ何も知らされねえよ」

どうせ自分たちには何も出来ない、と男は厭世的に。煙を吐き出した。
後輩もタバコを銜える。狭い部屋の中に一気に煙が充満した。
202創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 02:59:36 ID:Xd9Ui/qs
ここまでです

なんかどんどん風呂敷が広がってくるけど、設定だけ作って逃げるつもりでいる
20340:2010/02/24(水) 04:37:37 ID:CWBEK5tC
(代行です)

【本文】
>>198
鬱じゃないDARKER THAN BLACK

  `¨ − 、     __      _,. -‐' ¨´
      | `Tーて_,_` `ー<^ヽ
      |  !      `ヽ   ヽ ヽ
      r /      ヽ  ヽ  _Lj
 、    /´ \     \ \_j/ヽ
  ` ー   ヽイ⌒r-、ヽ ヽ__j´   `¨´
           ̄ー┴'^´              同志

>>202
投下乙です!天野カワイソス
バフ課……、俺も政府機関でそういうの考えてた
しかし規制で自分のPCから書き込めん
というわけでみんな!避難所の代行はちゃんとやるようnウワゴメンナサイイシハナゲナイd
204創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 05:21:18 ID:eUFl5XvX
「ねーむーいーよー」
「そりゃそうだろうけど……、ソラ、お前単位が危なくなるぞ」
「知ってるけどー……くぅ……」
「寝てるし」

 何だかんだで翌日。
 色々あって猛犬からは逃げられた俺たち二人は、朝っぱらから絶賛勉強中だ。
 場所は俺たちの家。隕石の落下で家族を失った俺は、同じような境遇のソラと意気投合して、廃ビルに住まっているのだ。
 風通しは良すぎるくらいだし灯りはないしぼろぼろだし、と良いことは何もないが、それでもちゃんと毎日暮らせてるだけマシというものだ。
 俺はゴミ捨て場から拾ってきたちゃぶ台に教科書を広げ、赤以外の点数を取ったことがないソラにテスト範囲の内容を叩き込むべく気合いを入れた。
 が、結果はごらんの通り。

「……ん、むにゃ……」
「はぁ……。俺のせいではあるけど、まずいぜソラー」

 机に突っ伏すソラのアホ毛をぴこぴこ弾く。
 ソラの昼間の能力が発動した以上、俺に為す術はないのだ。手慰みと言ったところか。
 ソラの『昼』の能力は『いつでもどこでも寝られる』という能力だ。
 夜は『活性化』、昼は『超睡眠』。不健康極まりないし、完璧に高校生として終わっている能力である。

「けど、まあ……仕方ないか……」

 すやすやと寝息を立てるソラの頭を優しく撫でつつ、俺は嘆息する。全ては俺の能力のせいなのだ。
『お姫様』。外見が少女のそれに変化し、髪型も胸の大きさもある程度自由に決められるようになる、不可解な能力。
 それだけだったらまだ救いようがあったが、問題なのはこれがただの『女体化』ではなく、『お姫様』ということにある。
 ファンタジーや童話において、姫とは悪者に襲われ、奪われ、そして最後は主人公に取り戻されるものだ。
 つまり、『お姫様』と化してしまった俺は、老若にゃんこいかなる人種性別種族を越えて襲われる宿命にある。
 そしてソラは、そんな『お姫様』を守るために日夜戦ってくれている。……本当に、申し訳ない。
 せめてその罪滅ぼしが出来ればという思いで、彼女に勉学を叩き込むつもりだったのだが……。

「……無理っぽいな。……仕方ない、俺も寝よう」

 夜はまた忙しくなるだろう。それまで、のんびり過ごすのも悪くはないかな……。
 気持ちよさそうに眠るソラの肩にお気に入りのコートを掛けて、俺は床に転がった。

「……冷たい」


とりあえず投下。感想は後ほど
205創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 05:22:40 ID:3wmRxpSs
 本業の合間にちまちま書くとか言っといて、寝れないから一発で書いてしまった俺、参上!

>>202
 投下乙です! ファイブ・オブ・グール……どんな能力なんでしょうか。
 やっぱりC.D後の世界は地獄だぜフゥハハァハァー!
 どうでもいいですけど、何故かバフ課が裏でバ課と言われているところを幻視しましたw

>>203
 やっぱりDTB思い浮かべちゃいますよねw

 さてさて、私も投下しようかと思います!
206ファイア&スモーク:2010/02/24(水) 05:23:38 ID:3wmRxpSs
 暗い夜道を、並んで歩く影二つ。片やくわえた煙草の煙を操り、片や口から火を吹いて。
「暗いね、はーたん☆」
「ドキドキするね、みーたん★」
 煙草をくわえた眼鏡の男――――川芝 鉄哉が、煙で形作った猫のような謎の生命体で腹話術をして遊びだした。どうやら右がはーたん、左がみーたんらしい。
「鉄っちゃん、よっぽど暇なのね……」
 呆れた顔で、溜息と一緒にボッと火を吹いたのが八地 月野だ。歩調に合わせて長いツインテールが揺れる。
「いや、これでけっこう楽しいんだぞ……あ、やべ、煙草切れそう」
「もうお別れだね、鉄っちゃん☆」
「今までありがとう、鉄っちゃん★」
「ああ……先にヴァルハラで待っててくれ、みーたん、はーたん」
「あーれー」
 みーたんとはーたんごと、煙草は吸い殻入れに消えていった。鉄哉は懐から新しい煙草を取り出して、くわえる。
「ツキ、火ィくれ」
「……どうせまた腹話術するんでしょ。煙草ばっかり吸って、寿命縮んじゃうよ?」
 月野はツン、と突っぱねる。鉄哉の健康を考えての事だ、別に嫌がらせとかそういうのではない。
「じゃあ他に何を吸えばいいんだ?」
「線香は?」
「……本気で言ってるのか?」
「駄目なの?」
 そりゃいかんだろう、と鉄哉が言おうとした時、前方から二人を呼ぶ声がしたので立ち止まる。
「あ、ヤッチーだ」
「おう、鉄っちゃんじゃねーか」
 自転車を引いている三つ編み少女と、パーカー姿の青年。吉野 小春と秋山 幸助だ。
「ハルちゃん、こーちゃん、こんばんは」
「よう、こーちゃん」
 まずは取り敢えず適当に挨拶を交わし、ひとつ質問を。
「なんでこんな時間に出歩いてるんだ、おまえら」
「こーちゃんの夜のバッフが何なのか確かめてたの」
 へぇ、と鉄哉と月野が同時に幸助を見やる。その目はまるで、獲物を見つけたハンターのよう。
「で、何だったの?」
「それはね、ネコ――――もがが」
 能天気な顔で説明しようとした小春の口を、幸助が赤面しながら塞いだ。素晴らしい反応速度だ。
「ネコ?」
「ねこ?」
「いや、何でもない、おまえらは何も聞かなかった。ところでおまえらは何でこんな時間にブラブラしてるんだ? 人の事は言えんが、ヤッチーなんか補導されるぞ」
 ひた隠しにするあたりかーなーり怪しいが、今は触れないでおく。どうせすぐにわかるだろう、と、幸助の傍らで自転車を引く三つ編み少女を見ながら思う。
「ああ、この辺に猛犬が出るって聞いて、一目見てみようかと思って」
「中学生が襲われてファミチキで逃げたというアレですな?」
「鈴本さんと桂木くんも襲われたらしいね……鈴本さんが撃退したらしいけど」
 わー鈴本さんスゴーイ……なんて学校での出来事に話題がシフトしていってる女子高生ズを尻目に成人男性二人は、
207ファイア&スモーク:2010/02/24(水) 05:24:22 ID:3wmRxpSs
「最近どうよ?」
 幸助が煙草を取り出して火をつけ、くわえた。肺まで煙を充満させてから、ふぅっと吐き出す。
「どうもこうも、競馬がないと生活に刺激がなくて困る」
 同じように鉄哉も煙草を吸い始めた。
「だよなぁ、仕事ばっかじゃ疲れちまう」
 男二人で大きな溜息。一方、女子高生ズは、
「こーちゃん、鉄っちゃん、見て見て! ET!」
 小春のバッフで自転車を飛ばして遊んでいた。ちなみに小春は高い所が駄目なので、にこやかに見てるだけ。
「子供はいいなぁ」
「あの頃に戻りたいよなぁ」
 男二人、便所座りで大きな溜息。なんとも女々しい野郎共である。
 さて、本来の目的を忘れてしばらくくっちゃべって、そろそろ帰ろうと重い腰を上げた時だ。
 ガルルルルル……。
 今更になって、目的の猛犬が現れたのは。
 ベースはシェパード。虚な瞳と額に埋め込まれた紅の宝石が、なんとも言えない気味の悪さを醸し出していた。
「オーゥ、これが件の猛犬か」
「気持ち悪いね、はーたん☆」
「そうだね、みーたん★」
 いつの間にやらヴァルハラから帰ってきていたみーたんはーたんが顔を見合わせて言った。
「何やってんだ鉄っちゃん、帰るぞ」
「いや猛犬に気付けよこーちゃん」
「うわ、何あれ気持ち悪い」
「あれも誰かのバッフなのかな?」
 次々と飛び出す緊張感のかけらもない言葉は、あたかも波状攻撃の如し。
 一方の猛犬は、低く唸りながら攻撃の構えをとる。その身体から、機械の駆動音。
「おい、あのワンちゃん戦る気満々だぞ」
「よし、ツキ、撒くぞ」
「あいあいさー」
 目線でタイミングを合わせる。三、二、一……今!
208ファイア&スモーク:2010/02/24(水) 05:25:13 ID:3wmRxpSs
 月野が猛犬に向かって火を放つ。火は動物にとって本能的な畏怖の対象だ、怯まないはずはない。続いて鉄哉が、
「行け、みーたんはーたん!」
「さー、あいあいさー」
 みーたんとはーたんをけしかけた。鉄哉のバッフによってあたかも生き物のように動くそれらは、確実に猛犬の視覚と嗅覚を麻痺させる。
「よし、光の早さで明日へダッシュだ!」
 全員一斉にとんずら。顔見知りだけあって息はピッタリである……が。
「……暗くて前が見えない」
 夜分遅いからだろうか、民家の電気はついてないし、電灯もまばらだ。
「火ィ出せ、火!」
「足元くらいしか照らせないよ!」
 全力疾走する一行に、内ゲバムードが漂い始める。
「そんな時は、こーちゃんにお任せ! ね?」
「いや『ね?』って何だよ!?」
「バッフがあるじゃん」
「マジで!?」
 小春は迷う事なく頷いた。どうやらマジもマジの大マジのようだ。幸助は一度舌打ちをして、
「しゃーねーな……おまえら笑うなよ!? 絶対笑うなよ!?」
 バッフ発動、ついでに笑われるフラグも発動、キュートなネコミミが頭部から顔を出す。するとどうだろう、幸助の視界が、だんだんと鮮明になっていくではないか。
「おお、すげぇ、ちゃんと見える!」
 どうやら幸助のバッフは、“ネコミミを生やす能力”ではなく“ネコの能力を宿す事ができる能力”のようだ。
「わあ、凄いねこーちゃん」
「やるじゃねぇかこーちゃん!」
「流石こーちゃん!」
「まあ、そうでもあるがな! よし、おまえら俺の身体しっかり掴んでろよ!」


 ♪  ♪  ♪


 その後、猛犬が追い掛けてくる様子もなく、全ては事なきを得た。
 猛犬のたけしくん(命名:小春)については警察に報告するという事に決定し、四人はそれぞれ家路につく。

 ――――余談だが、逃げ切った後に幸助が各々から爆笑されたのは言うまでもない。

 どっとはらい。
209創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 05:30:27 ID:3wmRxpSs
 ぬふぅ、投下完了ですたい。こんな出来ですみません、>>192氏。
 思ったよりもパロと変態スメル(というか下ネタ)は押さえられました。いやはや、よかったよかったw

>>204
 投下乙です!
 なるほど“救われる”のではなく“襲われる”能力なんですね。難儀だなあ。
210レス代行:2010/02/24(水) 10:51:03 ID:bit4dFK/
>>209
乙ぅー!
言われてみれば同年代同士だったこの二組
しかし一体何故こんな三十路近い野郎共がピチピチの女子高生と一緒にいるのか問い詰めたい小一時間問い詰めt(ry


ちょっと気になったから言っちゃう!
>>204さんのSSだけ隕石からそんなたってないぽい
211創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 10:52:07 ID:0sMoLGv+
>>209
投下乙っ!
シェアワ面白いなぁ

自分もちょっと投下

「君がヨシユキ?風魔嘉幸?」
喧噪の多い街路を歩いていると、ペラペラとレポート用紙を捲りながら瓶底眼鏡の女が話しかけてきた。
俺は無視。
何で名前まで知っているのかと疑問にも思ったが、そういう能力もあるのだろうと自分で納得した。
こういう怪しい客引きのやわらは大抵持ち場を離れれば商売っ気を無くす。
だと思ったのに。
「ちょっと待ってくださいよ〜」
いくら歩いても黒くて長い髪をなびかせて、隣にひっついてくる。
「お前な……ふっとばすぞ?」
脅しを掛ける。
誰がどんな能力を持っていると分からない以上、誰でも加害者となりえる。
だからこれは適切な脅しのはずだった。
「バッフも持っていないのにどうやって?」
心底疑問そうにこちらを見てくる。顎に手を当て、器用に顔を45度傾けて。
“鑑定士”か……それにしては護衛の姿が無い。
「何者だ」
「リンドウ」
瓶底眼鏡を外したリンドウの横顔は心底綺麗で、その眼には一切の光が無かった。
「私は能力者から能力の成分のみを回収することに成功した」
チクリと、痛み。
服の袖を通して、注射針が刺さっていた。
「!?」
「私の昼の能力はありとあらゆる薬を作る能力」
腕をとっさに引きぬくが、薬とやらは注射された後だった。
視界が歪む、というかアスファルトが透けて見える!?
「やっぱり“透視”の能力は徐々に発現させないとキツそうだね」
「てめぇ……」
視界が歪んで、意識が混濁する。俺の体はいつの間にか地面に倒れていた。
リンドウの声が降ってくる。
「あなたが将来発現する能力は、我々の組織には必要不可欠。それまでに体を大事にね」
眼を開けていられないが、眼を閉じても瞼が透けて見えて、焦点が合わない。
そして俺の意識は消失した。

続くかも
212創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 11:01:14 ID:Xd9Ui/qs
新しい人来た!

ありとあらゆる薬ってTUEEEなあ
213創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 11:02:21 ID:0sMoLGv+
>>200さんの奴を拝借しました。
ところでフェイブ・オブ・グールは人名ですかい?組織名ですかい?
214創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 11:07:05 ID:Xd9Ui/qs
>>213
あ、人名っすよ。fave of ghoul
能力は後ほど
215創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 11:07:36 ID:0sMoLGv+
>>212
どもっ!よろしくっす〜
216創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 11:08:59 ID:0sMoLGv+
>>214
なるほどw
リンドウもフェイブ・オブ・グールさんと同じ立ち位置に入れといてくださいませw
217創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 13:02:07 ID:9ETnMMZU
半日目を離した隙になんかすげぇ盛り上がってる件w
みんなまとめて投下乙!

>>202
やっぱり来たか殺人鬼と警察ネタwこれは次回以降の展開に期待せざるを得ない!

>>204
どっちも難儀な能力だなぁw
ソラは昼と夜で能力が表裏一体なのね

>>209
はええwwwそして緊張感がまるでねぇwww
猛犬関係のキャラ全員絡めてきたか……
しかし鉄っちゃん楽しそうだなw

>>211
またひとり、危険な奴が増えよった……
ありとあらゆる薬を作り出す能力って面白いなw
218創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 13:40:01 ID:3wmRxpSs
 おお、感想きた、投下きた、みなぎってきた!

>>210
 感想、ありがとうございます!

>何故こんな三十路近い野郎共がピチピチの女子高生と一緒にいるのか
 シェアワ七不思議のひとつ、とでも言っておきましょうかね!
 はいそこ「他の六つは何?」とか野暮ったい事聞かない!

>>211
 投下乙です!
 ほほう、これはきっとバ課の出番ですね!
 しかしこの世界、表と裏があっていいですねw

>>217
 感想、ありがとうございます!
 時間軸スルーしてネタとしてぶち込みましたけど……よかったかしら?

  ヽ○ノ まあいいか!
   /
  ノ)
219創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 13:45:57 ID:9ETnMMZU
>>218
他の六つは何?
220創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 13:48:05 ID:3wmRxpSs
 言ったそばから、君は!
221創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 14:30:00 ID:G/9s9EL2
盛大に寝てたことが悔やまれる…
だんだんとクロス増えて面白くなってきたな

>>219
そのうちひとつは七不思議なのに七つじゃないこと…かな
222創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 14:39:32 ID:9ETnMMZU
なるほどw

つか今更だけどバ課定着させようとすなw
223創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 14:51:05 ID:G/9s9EL2
バカ!
224創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 15:31:14 ID:3wmRxpSs
 ばかぁ!

 のほうがグッときまs(ry
225創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 16:01:24 ID:9ETnMMZU
「鉄っちゃんのばかぁ!」
……なるほど、グッとくるな!
226創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 16:07:22 ID:3wmRxpSs
 なして鉄っちゃんですかw
227創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 16:13:02 ID:G/9s9EL2
「鉄っちゃんのばかぁ!」
なんというタイミングの悪さ。
鉄哉が部屋に入ったのは、月野が着替えている最中のことだった。
「わ、悪ィ」
おとなしく扉を閉めて出て行く鉄哉。
後ろから「乙女の着替えを見てなんちゃらかんちゃら」と聞こえてきたが気にしない。
「それにしても……」
鉄哉はつぶやいた。
「毛糸のパンツ……か」
228創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 16:30:08 ID:9ETnMMZU
鉄っちゃん、夜じゃなくてよかったなw
229創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 16:31:52 ID:Xd9Ui/qs
そういや月野と鉄ちゃんは昼夜設定ないのな
230創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 16:33:21 ID:3wmRxpSs
 投下乙ですイィヤッホォォォゥ!!
 毛糸のぱんつイィヤッホォォォゥ!!
231創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 16:34:15 ID:G/9s9EL2
昼はまだ不明っぽいね
232創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 16:34:39 ID:9ETnMMZU
というか、漫画を読む限り、今のとこ判明してるのは夜だけだよね
233創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 16:37:05 ID:9ETnMMZU
>>230
落ち着けw
234創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 16:54:32 ID:3wmRxpSs
 これが落ち着いていられますか!
235創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:02:35 ID:eUFl5XvX
>>210
やべえ、これはやべえ
言われて気がついた

……ちょっと再構成してくる
それより師匠落ち着け!ww
236創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:03:15 ID:Xd9Ui/qs
俺のもそんなに経ってないよ。せいぜい数年程度
237創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:04:08 ID:Xd9Ui/qs
みんにゃは?
238創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:05:17 ID:G/9s9EL2
             /)
           ///)
          /,.=゙''"/
   /     i f ,.r='"-‐'つ____   こまけぇこたぁいいんだよ!!
  /      /   _,.-‐'~/⌒  ⌒\
    /   ,i   ,二ニ⊃( ●). (●)\
   /    ノ    il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
      ,イ「ト、  ,!,!|     |r┬-|     |
     / iトヾヽ_/ィ"\      `ー'´     /
239創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:05:32 ID:eUFl5XvX
>>236
どっちも朝起き抜けにぱぱっと書いてしまった奴だから色々穴とかありまくりなわけでねぇww
個人的に思いついたネタをさっさと書いて投下してしまおうという心持ちだったもんで
240創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:14:13 ID:3wmRxpSs
>>235
 私が落ち着いていた事があったかい!?


>>237
 ハハッ……時間軸完全スルーで進めてたとです……。

  ヽ○ノ まあいいか!
   /
  ノ)
241創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:15:16 ID:Xd9Ui/qs
   ヽ○ノ まあいいよね!
    /
   ノ)
242創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:17:28 ID:9ETnMMZU
  ヽ○ノ まあいいな!
   /
  ノ)
243創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:19:51 ID:0sMoLGv+
  ヽ○ノ おっけーよ!
   /
  ノ)
244創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:20:05 ID:3wmRxpSs
 なんかジェットストリームアタックが発動してるような気がするんですがw
245創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:20:56 ID:9ETnMMZU
便乗しといてなんだけど

何このノリwww
246創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:22:46 ID:eUFl5XvX
  ヽ○ノ 気が楽になったよ!
   /
  ノ)
247創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:22:49 ID:G/9s9EL2
人を棒人間にする能力者が紛れているな…
248創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:24:17 ID:0sMoLGv+
いいそびれてたけど、
             /)
           ///)
          /,.=゙''"/
   /     i f ,.r='"-‐'つ____   全部投下した奴読んでるよ!
  /      /   _,.-‐'~/⌒  ⌒\   皆おつ!
    /   ,i   ,二ニ⊃( ●). (●)\
   /    ノ    il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
      ,イ「ト、  ,!,!|     |r┬-|     |
     / iトヾヽ_/ィ"\      `ー'´     /
249創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:24:48 ID:9ETnMMZU
このままにしとくとスレがヤバイ

つまりバ課出動!
250 ◆EROIxc6GrA :2010/02/24(水) 17:27:18 ID:Xd9Ui/qs
  ヽ○ノ まあいいや
   /   投下しよう
  ノ)
251創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:27:39 ID:z/9OQEvw
  ヽ○ノ 毛糸のぱんつは健康的な生活を送るための第一歩です!
   /
  ノ)

>>209
仕事の速さにしっこ漏れた。
…じゃなくて、有難うございます。おやじと少女コンビが
組み合わさってて良いなあ!
ttp://loda.jp/mitemite/?id=883.jpg

>>211
瓶底眼鏡フェチにはたまらんですな。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=884.jpg

>>229
月野は、夜に人間ライター。昼は手に触れたものを(火を出さずに)燃焼化。
単純にコゲコゲの固形物に変えちゃうとか。そんな感じで。
鉄ちゃんは、夜に煙。昼はまだ未定っす。色んな世界設定が出てきてかなり
美味しいので、バ課にでも入れさせて貰いたいなーとw
厨二病路線なら「実は裏でバ課やってたんだ!(キリッ」なんて。
252創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:27:40 ID:G/9s9EL2
wktk
253創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:29:32 ID:z/9OQEvw
割り込んじゃった。支援支援。
254創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:30:05 ID:9ETnMMZU
オラも支援すっぞ!
255フェイヴ・オブ・グール 〜バ課出動〜:2010/02/24(水) 17:30:25 ID:Xd9Ui/qs
じゃあ投下します

code:シルスクは頭痛に苛まれていた。


「こちらシルスク。何?また民間人に危害?いい加減にしてくれよ……」

俺はシルスク、と名付けられている。肩書きはバ課第2班の隊長だ。バ課つうのは通称で、ほんとは長ったらしい名前があるんだが、この課にいるのは出撃時の命令すら忘れるようなバカばかりなので、バ課で十分だ。
今も部下の一人が民間人に襲いかかったらしい。一応副長が止めたので殺されはしなかったものの、また記憶処理班への書類が増えたかと思うとこっちが死にそうだ。

現在俺ら2班と、5班がフェイヴ・オブ・グールと呼ばれる犯罪者を追っている。何の能力か詳しくは分かっていないが、報告によると、どうやら不死身らしい。
不死身って勝てんのかよ、と思うが、バ課の連中はバカだから勝ち目のあるなし関係なく突っ込んで行ってくれる。その点では臆病な奴らより使いやすい。

っと、また報告か。

「こちらシルスク。おう、見つかったか。なら今から向かう」

どうやら奴さんが見つかったらしい。走って現場へ向かう。
256フェイヴ・オブ・グール 〜バ課出動〜:2010/02/24(水) 17:31:13 ID:Xd9Ui/qs
現場では既に戦闘が始まっていた。どうせ敵を目の前にして、ブカどもを止められる訳がないことは分かっているので、初めから止めていない。

「code:ラヴィヨン、状況は?」

先に到着していた副長に問う。

「既にひとり、ああ、たった今二人やられたとこっスね」

部下の死亡は、民間人の死より手続きが面倒だ。まあそれも慣れてきたから、5人までなら俺の精神も持つがな。6人を超えてくると、余りの書類の多さに発狂しそうになる。ラヴィヨンは頑として手伝わねえし。

「隊長?」
「ん、ああ、すまん。それで、敵の方はどうなんだ?」
「んー、それがですね、分かんねえんですわ」
「何が?」
「能力が。ホラ、今氷槍出したっしょ。でもあれ出したのは今回が初めてッス。さっきは炎だったし……」
「まさか……何でもあり、ってやつか?」
「そうかもしんねッス。」

ああ、くそ、頭痛が……

「まあ、能力に関しては、未だ殆どが解明されていない。【どんなことでも出来る能力】があってもおかしくないだろうな」

最悪の場合はそうなるだろう。だが、その可能性は低い。なぜなら、どんなことでも無制限に出来る、のであれば、最強の攻撃をし続ければいいからだ。すると、自ずと出る攻撃は限られてくる。
奴の能力、どこかに穴があるはずだ。

「ブハッ、おやおやァ、もう終わりカな?」

フェイヴ・オブ・グールが醜く笑う。……それにしても、フェイヴ・オブ・グールって長いな、ええと、Fave Of Ghoul、FOG、フォグ。うん、今度からそう呼ぶことにしよう。

「リンドウチャン、こイつらテイクアウトで」
「ちゃん付け気持ち悪いです。はあ、なんで私ばっかりこんな役回り……」

ブツブツ言いながら、フォグの近くにいた女が何かをする。すると絶命した俺の部下3人は瞬時に消え去った。おいおい、マジかよ……

「なあ、ラヴィ」
「なんスか、隊長」
「……これ、勝ち目あると思うか?」
「今のとこはなさそっスね」
「だよなあ……」

はあ、多少は怒られるだろうが、ここは一旦帰るか。
257創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:31:23 ID:9ETnMMZU
 
258フェイヴ・オブ・グール 〜バ課出動〜:2010/02/24(水) 17:31:56 ID:Xd9Ui/qs
「おい、フォグ……じゃなかった、フェイヴ・オブ・グール」

フォグは振り向いた。

「おぅフ、なァんだ?新手カイ?」

「いや、今回はお前の勝ちにしておいてやる。だから見逃してください、お願いします」

とりあえず超丁寧に言ってみた。

「オーケーオウケイ、見逃してやラないであ・げ・る」

うっわ、キモチワル。今のは鳥肌ベスト8入りだったな。

「いやはや、ありがたい。じゃあおやすみ」

最早言葉のドッヂボールだが、そんなことは気にしない。言うだけ言って俺は逃げ出した。生き残った部下たちは既に退避させてある。

「ハハッ、おセェおせェ!止まッて見えるゼ!!」
「実際止まってます、おじさま」
「んァ?」

そう、本物の俺は既に逃げた後だった。フォグと話していたのは、ラヴィヨンの能力による人形だ。

「察するに、遠隔操作可能な人形みたいですね」
「マヂかよ……」
259フェイヴ・オブ・グール 〜バ課出動〜:2010/02/24(水) 17:32:37 ID:Xd9Ui/qs
「ふう、撒けたか」
「もう追ってこないみたいス」

ようやく一息付けた。いや、これからが本番だな。今のうちに腕をほぐしておかないと。

「さあて、本部に戻るか」
「了解っス」
「一風呂浴びるとするかな」
「あ、お背中流しますよ」
「……ヤメテくれ、吐き気がする」
「酷いっス!」

半泣きのホモい副長は放っておいて、俺は本部へ歩き出した。
これからの事を考えると頭痛が絶えないが、今は歩きながら心身を休めるとするか。
260創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:33:50 ID:Xd9Ui/qs
ここまででです。

>>251
ヒョワー、また絵が絵が……あああ嗚呼!!(発狂
261創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:38:01 ID:G/9s9EL2
これはいい厨二

>>251
おお、描くのが速い!
猫耳www
262創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:38:55 ID:9ETnMMZU
投下乙!

>>251
こーちゃんwww難儀だなあwww
あとリンドウさんふつくしい……

>>260
まさかのバ課定着wwwwwwフォグ強いなぁ
これは次回も期待せざるを得ない!
263創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:42:46 ID:eUFl5XvX
こうなるとまとめが欲しくなってくるわね

か、感想は必ず書くから……! だから待ってて!
264創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 17:43:34 ID:0sMoLGv+
>>251
絵師降臨!グッジョブすぎる!
俺はここまで上手く描けねえw

>>260
やったーリンドウちゃん出番キター
しかし、バ課は面白いなw
265 ◆EROIxc6GrA :2010/02/24(水) 17:43:39 ID:Xd9Ui/qs
私をお呼びかな?

あ、デモ自分のをまとめるって正直恥ずかしいかも
266創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 18:01:00 ID:3wmRxpSs
>>251
 投下乙でs三つ編みイィヤッホォォォゥ!!
 こーちゃんはドンマイとしか言いようがないですw
 リンドウさんかっこいいなぁ、フォグ(いい意味で)気持ち悪いなぁw

>>260
 バ課定着……だと……!?
 てか軽く流してるけどけっこう人死んでますねw
 では、次回も楽しみに待ってますね!
267創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 18:01:32 ID:0sMoLGv+
>>265
トリがEROIwww

ちょっと桃花
_________________________
「君は会ったんかね?リンドウと名乗る少女と」
「……はい」
ここは、どこだ?意識が朦朧とする。
「彼女はテロリストなんよね。あ、ちなみにうちらはバフ課とか呼ばれてるけど、名称なんてどうでもいいんよ?バ課でもいい。あ、やっぱバフ課がいいよね」
君はどう思う?と後ろの男におっさんが話しかけてるが、どちらの顔もぼんやりとした輪郭しか見えない。
「うちら8班。スパイ。って言い方は感じ悪いよなぁ。バ課8班諜報係」
「……はぁ」
「彼女の特徴は、瓶底眼鏡に黒服で身長は君と同じぐらい。あっとる?」
「そうですね」
「で、何かされたん?っと、あと三秒で目覚ますか。また今度話そうかね」

暗い病院のベットで目を覚ました。陽は沈んでいるらしい。
ぐっしょりと枕が濡れていて、気色悪い。
ここは病院か。だとしても、今さっきまで会議室のような場所で話していた感覚がある。
そして会話の内容を思い出して戦慄した。
先程の会話全部が、夢の中で行われたと言う事に。

ここまで桃花。
どうやってリンドウ達と合流させようかの〜
268創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 18:03:57 ID:Xd9Ui/qs
おつ

バ課のバクか。いいねえ
269創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 18:08:02 ID:G/9s9EL2
ほう、どうなるのか…
270創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 18:36:54 ID:eUFl5XvX
短いけど感想書いたよー
みんな投下乙!

>>128
タク果報者だなちくしょうwww
羨ましいぜ……

>>135
そうかぁ、こういう能力があってもおかしくないよなあ。
しかしラブラブで羨ましいぜ……

>>139
言うまでもなく師匠は三つ編みゲフンゲフン
受難だな幸助ww

>>202
フォグつええなww
しかし翔太可哀想。

>>211
リンドウさんかっこかわええな
しかし組織とは一体……

>>259
バ課の面々来たww
目下フォグが最大の敵かねぇ……。

>>267
夢に介入する能力か
いろんな能力あっておもろいな
271創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 18:45:17 ID:0sMoLGv+
ちょいと投下
書きためて投下した方がいいのかしらん。

「こんこん、リンドウですけど」
ノック音まで擬音語にする必要はないと思う。
いや、病室のドアは開きっぱなしだったからそういう対応をする必要があったのかもしれない。
それは無いか。
直接疑問をぶつけることにする。
「お前は……テロリストなのか?」
リンドウは疑問を避けて、さぁね、と眼鏡を外しながら隣のパイプ椅子に座った。
眼鏡を外したリンドウの瞳は、この病室の夜の暗闇よりも暗い。地獄の闇を覗き込んでいるようだった。
「……この病院はチェックが厳しくて、出入りは厳しく監視されているはずだが」
一度脚を骨折していて、そういうことは知っていた。
リンドウはまた質問を避けて、何もなかった手のひらからリンゴを取り出した。
手品?いや、この世界でいうならば――
「私のもう一つの能力。物を置き換える力」
先にリンドウが答えを言った。監視カメラも、何かと置き換えているのだろう。
「……どうして俺に肩入れする。関わり合いになる気はないぞ」
俺には家族がいる。巻き添えにはしたくない。
「詳しいことは言えないわ。これから尋問もされるでしょうから。だから、ヒントをあげる」
そう言って窓際の窓を開けて、夜風を招き入れた。
「私たちの組織には、運命を見ることができる人がいる」
カーテンが春の夜風で揺れていた。
「このままの運命だと、あなたは殺される」
二度、三度カーテンが揺れて彼女の半身を隠す。
「死にたくなかったら私との関わりはなるべく隠す事ね」
そう言って眼鏡を掛け直す。四度目、カーテンが彼女の全身を隠した後、彼女は消えていた。

ここまで。
272創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 18:49:11 ID:G/9s9EL2
まとめたほうが読むほうも読みやすいし
書くほうも投下前に一気に見返せるからそのほうがよさげ
273創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:04:13 ID:Xd9Ui/qs
まとめる側としてはぜひまとめてお願いしたい
274創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:26:13 ID:Xd9Ui/qs
まとめようとしたけど、どうやれば良いか分からねえ

とゆうか、急に過疎ったなw
275創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:29:40 ID:eUFl5XvX
 夜の街が、快楽と一時の栄誉、そして危険に塗れているのは、いつの時代、どこの場所も変わらない。
『活性化』したソラに連れられ住処の廃ビルを後にした俺は、ネオンが煌びやかな歓楽街へとやってきていた。
 行き交うのは何かを出したかすっきりした顔のサラリーマンや、いかがわしい店の呼び子、柄の悪いあんちゃん達。
 間違っても健全な高校生である俺とソラが来るような場所ではない。
 まして世間一般では美少女に分類されるであろうソラと、お姫様と化した俺が二人だけで来るのにはいくら何でも無茶がある。
 と、いうのも今では昔の話だ。
「姐さん! ちわーっす!」
「ソラの姉御! 姫さんも!」
「今日もまた一段とお目見え麗しい……」
 俺とソラが道を歩くだけで、その後ろにはヤンキーとチンピラを足して2で割ったような輩達がずらずらと連なっていく。
 ここら一帯の荒くれ達は、全員漏れることなくソラへの忠誠を誓ったのだ。
 彼らは皆、例に漏れず俺に襲いかかってきた。ソラはそれに対して拳を振るう。
 そう、つまりソラは毎夜ストリートファイトに明け暮れていたことになる。
『活性化』の能力を最大まで活かしたソラの猛攻に、いかな能力者も膝を立ててはいられなかった。
 夜の間、ソラは無限の身体能力と回復能力を得るのだ。プラスして元来持ち合わせていた喧嘩のスキルを組み合わせれば、ソラが王者として君臨することは想像に難くない。
 いつしかチンピラ達はソラを『姉御』や『姐さん』と慕うようになり、俺は『姫』と呼ばれるようになった。
 付近一帯を取り仕切るカラーギャング、『ブラッディ・ベル』が発足したのはそれからまもなくのことである。
「さぁーて、今日もまた暴れたいから……、早くかかってきてよね!」
 歓楽街を少し抜けたところにある空き地にやってきたソラが、開口一番相手を求めた。
 ずらりと並んだ、総勢三十人ほどの構成員を挑発するかのようにアホ毛が揺れる。
 活性化したソラは正直やばい。思考回路が結構凶暴になるからだ。
「おっしゃ、俺が行きます姉御!」
「いや俺が!」
「テメエは黙ってろ!」
「姐さんと組んずほぐれつするのは俺だぁぁぁぁ!」
「るせえよボケ!」
 我も我もと、皆が一斉にソラに詰め寄る。正直五月蠅いが、まあ仕方ない。
 それだけソラが慕われていると言うことだろう。
「うるさいよー」とか言いながら、何の躊躇もなしに手当たり次第殴っている彼女の姿を見ると、それで良いのかと思ってしまうけれども。
「何なら全員でも良いよ! 今日の私は元気爆発、誰にも負けるつもりはないからね!」
「昼間寝てたもんな……、ずっと」
「さぁ、どうするあんた達!」
「「「「「「勿論行かせて貰いますうううううぁぁぁぁぁぁっ!」」」」」」
 モヒカンやスキンヘッドが叫び、ソラに向かって拳を振り上げた。まあ、いつものことだ……。
 ソラは悠然とした態度で、彼らの攻撃を待ち構える。
 突き進んでくるのは四人。他の面子は外からヤジを飛ばしたり声援を送ったり「姫さんついてるんすか!」とか言っている。
 ちなみにこんなんでもついてるからな。
「能力無しじゃつまんないんだよぉっ!」
 さて、叫んだソラはもの凄い勢いで地を蹴り、モヒカンの一人に肉薄した。
 驚いた顔のモヒカンの意識を刈り取るよう、鳩尾に強烈なパンチが入る。さらに崩れ落ちたモヒカンに追い打ちを掛けるように、ソラは肘鉄をその頭に食らわせた。
 そのまま動きを止めることなく跳躍、直後ソラの立っていた場所を電撃が襲った。彼らの能力の一つだ。
「そうじゃなくちゃ面白くないからね!」
「姐さん、しゃぁーすっ!」
「はあああああああああっ!」
 気合いを入れるかのようにソラが叫び、残ったスキン達に向かって特攻する。
 元気だねえ、ほんと。
「……今夜は珍しく平和みたいだな、ふぅ」
 俺は小さく肩を竦め、ソラの応援に戻ることにした。結果は見えているけれど。
 ……ところで俺、無理矢理カラーギャングに組み込まれてないか?
276創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:31:15 ID:eUFl5XvX
とりあえず投下
ソラの姉御がどんどんと凄いことに
そして影が薄い忍。大丈夫かこいつww

>>274
俺も手伝うぜ! 少しだけなら何とか
277創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:33:06 ID:Xd9Ui/qs
*シェアードワールドやりたいなあなんて

このスレは皆でシェアードワールドで創るスレです

※シェアードワールドとは※
世界観を共通させ、それ以外のキャラ達を様々な作者がクロスさせる形で物語を進める事です。
要するに自らが考えたキャラが他作者のSSに出たり、また気に入ったキャラを自らのSSにも出せる、
という訳です。

[[本スレ>【シェア】みんなで世界を創るスレ【クロス】]]とは違い、現在展開されているシェアードワールドはひとつのみです。これから増える可能性はあります。

#region(closed,目次)
#contents()
#endregion
**現行スレ
シェアードワールドやりたいなあなんて
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1265197091/

**関連スレ
【シェア】みんなで世界を創るスレ【クロス】
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1265899908/

シェアード・ワールドを作ってみよう part3
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1224991514/

----

**SSまとめ


ガ、ゴフッ……バタン
ここまでやって力尽きた
作者ごとでまとめるべきか、それにしてもクロスが多いし……知恵plz
278創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:34:30 ID:G/9s9EL2
キャラ名考えるの難しいれす

>>274
専用のwikiが欲しいなあとか思ったり
でも自分で借りたくないなとか思ったり
そもそもアカウント名決められなくねと思ったり
じゃあ次スレのスレタイを早々に決めちゃうのがいいのかなと思ったり
279創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:35:06 ID:eUFl5XvX
テンプレ乙

うーん、作者毎で良いと思うよ。
280創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:35:50 ID:Xd9Ui/qs
作者が分かんないのもあるし、
281創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:36:57 ID:eUFl5XvX
そっか
じゃあ投下順かな。
あとwiki借りてくるわ
282創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:37:28 ID:Xd9Ui/qs
専用wikiは良く分からんから頼む
283創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:42:43 ID:v74Idy9v
それにしてもスピードはええw
油断すると感想書く暇すぐなくなるなw
284創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:45:17 ID:eUFl5XvX
とりあえずここね
http://www31.atwiki.jp/shareyari
285創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:50:40 ID:G/9s9EL2
ちょっと止まったと思ったら…

>>275
姉御!姉御!
ほう、ついてるのか
だがそれもいい

>>284
乙!言ってみるものだw

ところでこのスレが終わったらスレタイ変えてチェンジリング一本でやるものだと思ってたんだけど
286創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:51:02 ID:Xd9Ui/qs
さんせーい
287創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:52:42 ID:9ETnMMZU
次のスレタイは
チェンジリング 2回目
みたいな感じが妥当かな?
288創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:54:37 ID:G/9s9EL2
【シェアード】チェンジリング 2回目【超能力】

とりあえず中身が分かるようにしてみた
289創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:55:06 ID:Xd9Ui/qs
【チェンジリング】能力世界でシェアードワールド 2力目【バッフ】
290創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:55:49 ID:Xd9Ui/qs
……先を越されたか
291創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 19:58:26 ID:v74Idy9v
まとめ乙ー
個人的に字数に余裕あれば「昼夜」みたいな単語あってもいいかなーと思ったりした
292創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:00:27 ID:Xd9Ui/qs
【昼夜別能力】
みたいな

まとめがんばr
293創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:01:46 ID:eUFl5XvX
【能力】シェアワ/changelingday 二年目【昼夜】

長すぎかww
どれくらいだっけ限度
294創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:05:38 ID:G/9s9EL2
48Byteまでだな
295創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:06:21 ID:Xd9Ui/qs
82bytewww余裕でアウト
296創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:07:15 ID:eUFl5XvX
一応一番始め(だよね)に投下された
アグゼスのをやってみた


だれかまとめ上手い人頼む……orz
297創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:10:29 ID:0sMoLGv+
>>275
投下おつっす!
姐さんカッコヨスw
wiki立てもお疲れ様です♪

>>277
テンプレお疲れ様です〜w
298創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:11:24 ID:Xd9Ui/qs
画像認証イライラ……

右の更新歴は左と統合して消しちゃっていいよね
299創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:13:06 ID:eUFl5XvX
ああ、頼む
300創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:14:01 ID:Xd9Ui/qs
だがしかし俺にはページ削除の権限がないのであった


〜完〜
301創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:15:13 ID:eUFl5XvX
あ、あとメンバー追加しよか?
302創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:16:32 ID:G/9s9EL2
キャラごとに1ページ作っちゃってタグで管理するといいかなと思ったけど

*名前
*性別
*性格
*昼の能力
*夜の能力
*その他
*登場作品
#list_by_tagsearch(名前,sort=furigana2)

こんな感じで
303創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:16:53 ID:eUFl5XvX
sharesharewdあっとyahoo.co.jp

これにパスワードでも書いて送ってくれたらこっちでメンバー認証するから
304創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:18:27 ID:eUFl5XvX
>>302
はあく
試しに姉御でやってみる
305創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:18:34 ID:3wmRxpSs
 【シェアワ】チェンジリング 2日目【超能力】

 昼夜で能力が変わる事についてはテンプレで説明すれば十分なんじゃないですかね?
306創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:24:37 ID:eUFl5XvX
へたくそだな俺……orz
へるぷみー
307創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:25:44 ID:Xd9Ui/qs
ちょっとまって今真剣だから
308創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:26:28 ID:eUFl5XvX
うん、待つよ
でもこれから幼児で俺ちょっといなくなってしまうんだすまない
309創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:34:16 ID:Xd9Ui/qs
送ったよ
310創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:39:27 ID:G/9s9EL2
タグ便利すぎる
311創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:49:18 ID:Xd9Ui/qs
〇〇少女やってるんだけど、二つ目の屋敷が先に進めん。
今汚れたぬいぐるみ取って、振り子探してるところ
312創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:50:10 ID:Xd9Ui/qs
あああああ……ヤッチマッタorz
313創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 20:58:48 ID:0sMoLGv+
>>303
メール送りましたっす
微力ながらお手伝いさせていただくっす

>>311
探し続ければきっと見つかるさ〜
314創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 21:03:48 ID:eUFl5XvX
とりあえず送ってくれた二人にはメール返信しました
間違ってたらごめん、多分大丈夫だと思うけど……
315 ◆uvoLj2S3GM :2010/02/24(水) 21:09:49 ID:0sMoLGv+
オッケーでーすw
ありがとうございますw
316 ◆n.DUTbwJIc :2010/02/24(水) 21:14:50 ID:0sMoLGv+
編集難しいw
317創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 21:19:48 ID:G/9s9EL2
無題の扱いに困るな…

とりあえず作者ページは
↓これだけ
#list_by_tagsearch(作者名,sort=furigana2)
↑これだけ
でタグ欄に「作者」

キャラページはタグ欄に「キャラクター」

作品ページはタグ欄に「作品,(SSorイラストor漫画or...),(作者名),(登場人物をカンマ区切りで)」

こんな感じで勝手に一覧に追加されてくれるよ!
318創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 21:23:55 ID:v74Idy9v
PC回線不安定だから当分不定期になるけど、出来る分は手伝うよー
しかし何をやっていいのか分からん……
319 ◆IulaH19/JY :2010/02/24(水) 21:27:13 ID:0sMoLGv+
>>221の題名はとりあえず「リンドウ編」とでも
作者名は今のトリップ名で
難しすぎるwあれ?俺の@wikiと細部が違うのかなぁ
320 ◆n.DUTbwJIc :2010/02/24(水) 21:41:23 ID:0sMoLGv+
む、wikiの名前で変になるのか…
321 ◆W20/vpg05I :2010/02/24(水) 21:41:35 ID:8XV6DJ00
短いのちょっと投下


ジリリリリリリ――

目覚まし時計の音で目覚め、ゆっくり体を起こす。

「眠い〜」

でも高校行かないと……
でも行きたくないな……

ぼーっとした頭でそんなことを考えながら、布団から起き出した。
お母さんが作った朝食を食べる。
朝ごはんは一日の基本。食べない友達も多いけど不健康だと思う。

ご飯を食べ終わって歯磨きして、ぱじゃまから制服に着替える。
腰まで来てる髪を一本の三つ編みに結わいて、黄色いリボンで止める。
姿見で自分の姿を確認。
うん、大丈夫。ちゃんとしてる。紺のセーラー服はごく普通の物でどこもおかしくないし。

「――昨日のことはきっと夢、夢に違いないわ」

はっきり声にだして自分に言い聞かせる。
昨日路上で起こったことは全て夢。

「いってきまーす!」

お母さんに挨拶して学校へと向かう。

でも、一つ目の坂を曲がったところで、昨日のことが事実だったことを思い知る。

「よう! 裸王! なんだ。今日は普通じゃないか」
「だれが裸王よ! 桜 香織って名前よ!」

目の前には見たくなかった男子生徒――確か加藤陸って名前の男子が立っていた。
絶対待ち構えてたわよね。ごく普通の容姿のごく普通の男子。特に印象はない男子。
しかし、これが昨日の唯一の目撃者。
そして唯一の目撃者は最低な奴だった――


322 ◆W20/vpg05I :2010/02/24(水) 21:42:46 ID:8XV6DJ00
「よう! 裸王! なんだ。今日は普通じゃないか」
「だれが裸王よ! 私には桜 香織って名前があるのよ!」

開口一番なんてことを言ってくれるのよ。思わず詰め寄る陸の方は澄まし顔だった。

「道端であんなことをしてる時点で裸王で十分だ。まったく可愛い顔して……」
「あ、あれは事故! 事故なのよ!!」
「ま、そう言うことにしてやるよ」

意味ありげに笑う陸に思わず殴りたい衝動に駆られるけど我慢。
実際昨日の事故は事実なので、なにも言えない。

その事故を思わず思い出す。私の昨日開花してしまった夜の能力。
その感覚がよくわからず帰り道の道端で発動してしまった能力。
それは『皮膚に触れた物を瞬時に落とす能力』のこと

「ま、『瞬時に脱ぐ能力』なんて持ってるなんて誰が聞いても裸王だと思うぞ」

茶化すように言う陸の言葉に、私は顔が蒸気するのを止められない。
神様、なんで私にこんな酷い能力を授けたのですか? これは何かの試練ですか?
心の中で祈りながら陸を無視して歩く。

でも、陸の方はそう思ってないようで、その私の後をついてくる。

「……何よ」
「まだ、口止め料もらってないんだけどなー」

幸いと言っていいのか悪いのか、能力を使った所を見られたのは陸一人。
だけど、こいつの性根が問題で、当然のごとく口止め料を請求してきた。
もちろん学生の私に払えるわけもない。

「そんなの無理に決まってるわよ!」
「その能力の事、言いふらしてもいいのかなー」
「それは止めて! ……どうすればいいのよ?」
「それならときどき俺の用事に付き合ってくれ。とりあえずはそれでいい」

にんまりと笑う陸の顔を見て、私は諦めに似た気持ちになった。
頷いてから深いため息をつく。

「神様、これも何かの試練ですか?」

思わず口に出す私の言葉に陸は笑った。……うう、やっぱり腹が立つ。

「そーなんじゃないか。ま、よろしくな。裸王?」
「それは止めて!!」

……うう、こんな能力なんて大嫌いだー!
二度と、絶対、能力なんて、使わないわよー!

私はそう心に誓いながら学校に向かった。
ああ、平穏な日常が恋しいな……


ここまでです。能力が開花する瞬間ってどんな感じだろうと思って書いてみた。
ついでに自分の能力を心底嫌ってみました。
323 ◆n.DUTbwJIc :2010/02/24(水) 21:57:22 ID:0sMoLGv+
>>317
教えてくれてサンクスw
やっと分かったw

>>322
夜中に使ってしまったら寝冷えして風邪ひきますねw
投下おつですw
324創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 22:02:00 ID:v74Idy9v
何という能力
エロい未来しか思い浮かばないw
325創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 22:06:17 ID:9ETnMMZU
>裸王
ラオウ……
ジョインジョインラオゥ!
テーレッテー

こーちゃん「西暦2000年2月21日、世界は隕石の恐怖にさらされt(ry
大地は裂け、上空を塵芥が覆い、あらゆる生命体は(ry
しかし、人類は(ry」
326創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 22:09:46 ID:G/9s9EL2
>.322

エロい使い方もできそうだがテロい使い方もできてしまいそうだ
327創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 23:00:42 ID:Xd9Ui/qs
登録どうも、

でもタグの使い方分からないからいまいち役にたてないってゆう……

あ、右のメニューは管理でログインして右上にある「設定」から消せたハズだよ
328創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 23:04:32 ID:G/9s9EL2
タグは編集するとこの下の1行テキストボックスにタグとして付けたい単語を「,」で区切って入力するだけ
(゜∀゜)カンタン!
329創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 23:08:46 ID:0sMoLGv+
勝手にキャラ一覧のとこ変えちゃった
見にくかったら編集してね
330 ◆akuta/cdbA :2010/02/24(水) 23:43:34 ID:z/9OQEvw
wiki編集お疲れ様です。みんなすごいなあ…
こういう難しいのはてんでだめなので、妄想しかすることがないお……
バフ課の制服?描いていたのですが、あくまで個人の妄想程度ということで。
資料がなくて、もろにSAT風味に。前衛系の制服。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=888.jpg

>>322
えろす…だと…!
331創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 23:59:34 ID:0sMoLGv+
>>330
バフ課の制服来た!これで勝つる!
てか仕事が早いwすげえw
332創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 00:00:06 ID:1Pj0gKmf
おお、かっくええ
333リンドウ編 ◆n.DUTbwJIc :2010/02/25(木) 01:13:20 ID:8WxYHppL
投下して寝やす↓


リンドウが去ってから、白い天井を睨みつけたまま一睡もしていない。
なぜだか知らないが、眠らないほうがいい気がした。
カーテンから外を覗く。
裏手の山から朝霧が出ていて、うっすらと闇が晴れて空が白んできていた。
病院の中庭にはリンドウの姿はない。
あの瓶底眼鏡の何処が気になるのか分からないが、惹かれるものがあった。
ふと、隣に置いてある台の上に赤いリンゴが置いてあることに気がついた。
「……まぁ、一つだけ言えることは」
リンゴをくるくると回しながら独り言を呟く。
「能力者なんて大嫌いだ」

無精ひげの男がエンジンを響かせてハーレーを引っ張り出す。サイドカーに黒服の男が体操座りで乗り込む。
「どうしてヨシユキ君眠らんかったんと思う?」
「所長の夢が気持ち悪いからじゃなかったんですか?」
黒服の男が応対する。
「ほげー、ひどいなゼン君は。あ、フェム君。一応彼の家に行っといてくれん?」
フェムと呼ばれた僅かに会釈する。彼が僅かに動く度に体中から機械音がする。
「さて、リンドウが目ぇ付けた男、抑えに行こうか。彼氏なんかな?」
334リンドウ編 ◆n.DUTbwJIc :2010/02/25(木) 01:14:59 ID:8WxYHppL
病院の受付で散歩の許可をもらって外に出る。
山間に作られた病院だけに空気が奇麗だ。日の出直前の冷え冷えとした空気を肺で味わう。
受付にメールが来ていたが、俺の親父とお袋は昼頃に見舞いに来るらしい。
「さて、どこでリンゴを食うかだな」
赤いリンゴを片手に持ち、座れそうな場所を探す。
そこにバイクの重低音が響いた。
「いかんいかん。患者さんに迷惑やったかいな。おろ?そこにおるのはヨシユキ君かね?」
その特有な口調に聞き覚えがあった。
「バフ課8班の……」
「諜報係やね」
俺の傍にハーレーを停めると、髭面の太った男がハンカチで汗を拭きながらヘルメットを脱いだ。
「code:トルトル。まぁ呼ぶときは変なおっさんでもええな」
ニカッと笑う顔には前歯が一本欠けていた。
「彼はcode:ゼン。ちゃんと呼ぶときはゼンさんって呼ばんと怒るやろけどな」
ゼンと呼ばれた男は黒い帽子に隠れて顔がよく見えない。
「勘弁な。ゼン君は人見知りやから。そいで、単刀直入に聞こうかね。リンドウ君と会った?」
「……さぁ、知りません」
何故か、俺はそういう風に答えていた。
なんで?テロリストだろ、あいつは。匿う必要はないのに。
「ありー?そうなんか。久々に予想外れたなー」
射的は外さないんやけどな、と黒服の男に話しかけている。
「とりあえず、君はうちらが保護することになったけん、受付に連絡してきてくれるか?」
この場合、親にも連絡したほうがいいのだろうかと尋ねると、それはすでにうちらがしている、との事だった。
受付に行って、無理な外出許可を何とか取り自動ドアから外に出た。
世界が変わっていた気がした。
いや違う、光が。
「陽が出たのか!」
“透視能力”が無意識に発現した。
「……くっ」
とっさに掌で眼を抑えるが、その掌の肉の断面すら透けて見えた。
そして俺は信じれないものを透視した。
おっさんの服の裏には、爪剥がし器、巨大なペンチ、九つに分かれた鞭、そしてありとあらゆる拷問器具が。
「ん、どうしたん?大丈夫か?救急車って呼ぶかって、病院はここか」
笑って、悪意を感じさせない顔で呼び掛けてくる。
だが、俺にはその顔が死神の顔に見えた。
このまま付いていけば殺される。そう直感した。
ふいにリンドウの言葉を思い出した。

『私の昼の能力はありとあらゆる薬を作る能力』

そして手にはリンドウから貰った赤いリンゴ。

瞬時に彼女の意図を理解した。
トルトルが何かに気づいたように俺に向かって駆け出したが、遅い。
俺はガブリと、赤いリンゴに噛みつく。
そして俺は風になった。
335リンドウ編 ◆n.DUTbwJIc :2010/02/25(木) 01:16:19 ID:8WxYHppL
「お前、この報告書間違えてんぞ」
バシッと報告書の束でラヴィヨンの頭を叩く。
「え〜、何処っスかぁ?」
「ここだよ、ここ。俺らバフ課は7班までなのに、『5〜8班が活動中』って書いてんぞ」
「あ、マジっすね。訂正しときます」
そういってカタカタとラヴィヨンがパソコンのキーを打ち始めた。
ラヴィヨンが打ちながら聞いた。
「もし8班なんてのが実在してたらどう思います?」
俺はしばらく考えて答えを出す。
「そりゃお前、俺らの名を騙っている時点で弩級のアホか、弩級のヤバい集団だろ」

「……ゼン君、追おうか」
ハーレーを片腕でかっ飛ばして、片腕で携帯を掛けるという神業めいたことをトルトルは行っていた。
スピードが出すぎているが、それだけキレているということだろうな、とゼンは口には出さずに思った。
「会ったことを隠した時点で殺すべきだったんやな」
珍しく表情がわずかに変わっていた。目尻を痙攣させながらトルトルは応対している。
電話の相手はすぐに出たらしい。
「フェム君、駄目やった。一応彼の家族、殺しといてくれん?」


あい、おやす。
336創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 01:54:17 ID:CoQOtqnN
うおうお
続きが気になるぜ
337117の中の人:2010/02/25(木) 04:07:42 ID:QpxXJ005
数日目を離してただけでなんだこの加速ありえねえw結局皆厨二大好きなんだなww
自分も忘れ去られる前にさっさか後編書いて投下しようと思います。

ところで>>116で言うところの「猛犬」
こいつは「クローン動物をサイボーグ化した量産型生物兵器」のつもり。
どっかの組織が使ってるとか、裏社会に出回ってる商品といった感じですかね。
それ以外はまったくもって未定です。要は種類自由、強さ自由、数自由、利用者自由。
便利なやられ役としてどんどんやっちゃっていいと思うのです。

相談なんですが、ネーミングセンスなくてこいつの正式名称がが決まらないんです。
どんなのにすればいいでしょうかね…。
338創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 05:07:03 ID:48816aEF
ケルベロスで決まりだな!ww
まあ犬だけになるけど
339創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 11:34:30 ID:IbUXT1og
キメラとか?
340創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 13:35:23 ID:CoQOtqnN
神話伝承から名前を引っ張ってくるなら

ケルベロス
ライラプス
バーゲスト

あたりお勧め。キメラも悪くない。
341創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 16:03:40 ID:Mu50SED2
みぽぽん すてんて れってけとぁー

てめとん ぽてぷこ ぱたととぁー

ぽこてん ぼげるる ぷきゃららるぁー

ぺんとこ すてんて とっとこなぁー
342創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 16:05:02 ID:Mu50SED2
誤送信……
343 ◆akuta/cdbA :2010/02/25(木) 17:34:31 ID:k5+srzpV
シルスク隊長とラヴィヨンさん借りました。縦長でちょっとファイル大きいので注意。
とりあえず3ページだけ(´`)
ttp://loda.jp/mitemite/?id=889.jpg
344創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 17:57:05 ID:Mu50SED2
衝撃の事実
鉄ちゃんがバ課だっただと……?
345創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 19:24:58 ID:Mu50SED2
>>343
おふたりかりてもいいですか?
346 ◆IulaH19/JY :2010/02/25(木) 20:12:47 ID:8WxYHppL
>>343
うっひょ〜漫画だw
すげぇなあw
続きどうなるw
347 ◆IulaH19/JY :2010/02/25(木) 20:15:41 ID:8WxYHppL
>>337
ワンちゃん借りちゃうかもしれませんw
じゃあでっかいのはフェンリルって名前でw
348 ◆akuta/cdbA :2010/02/25(木) 20:27:21 ID:k5+srzpV
>>345
鉄っちゃんと月野については許可無しにお好きにしてくださいですじゃ。
シルスク隊長とラヴィヨンさんは◆EROIxc6GrAさんに聞いてくだされー。
349 ◆EROIxc6GrA :2010/02/25(木) 20:30:34 ID:Mu50SED2
ありがとござます
こちらもどんどん使ってやってください

(これ、実は創作用じゃなくてまとめ用の鳥なんだけど……まあいいか)
350創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 21:42:56 ID:8WxYHppL
能力をただ単純に使う人と、それを技まで昇華する人

まで妄想した
351創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 22:03:44 ID:Mu50SED2
あれ?鉄っちゃんと月野って一緒に暮らしてるものとばかり思ってたが、違った?
352創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 22:11:48 ID:Mu50SED2
どうしよう……3.5kまで書いてロジックエラーを起こした……
353創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 22:12:01 ID:CoQOtqnN
仲の良い近所の人とか。そういう関係かと
354創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 22:50:34 ID:Mu50SED2
ふう。同棲スキーフィルターで物事を見ていたせいで酷い目にあった。

てなわけで投下します
355fave of ghoul 〜火と影の出会い〜:2010/02/25(木) 22:53:33 ID:Mu50SED2
「ふぅ」

ドサリ。と音がすることもなく、犬は闇に消えて行った。
物陰から影が現れる。

「そちらは終を得たか?」
「うん、終わったよ。
それにしても今日は犬が多い」
「ふむ。現在の時点で9匹。確かにいつもより多いと言うことができるだろう」

いつもの調子でアグゼスが述べる。
アグゼスとは離れて戦っていたのだが、彼は今夜二人が出会った犬の、正確な数を把握しているようだ。
彼とは人生の半分以上を共に過ごしてきたが、未だその力は計り得ないところがある。

「次を得るために、動きをとろう」
「分かった。どこへ行く?」
「北北西から人が聞こえる。そこだ」

北北西は、大体でいうと、真後ろにあたる。

「今来た道じゃないか」
「仕方あるまい。人には足がある」
「むー」

言い負かされ、渋々今来た道を戻る。
356fave of ghoul 〜火と影の出会い〜:2010/02/25(木) 22:54:45 ID:Mu50SED2
「それで、その人はどんな?」
「彼女の人となりについては、こちらの知るところにない。会話すら交わしたことがない」
「いや、そうではなくて……」

アグゼスは天然ボケというか、呆けているところがある。あまり真剣に相手にすると疲れるので、これと接するときは、適度に流すのがコツだ。

「あとどのくらいだ?」
「ああ、そのまま歩けばちょうど額をぶつけ合う」


ピタリ。
クルリ。

「……そういうことは、早く言ってもらいたいな」
「ああ、謝罪する」

「だ、誰かいるの?」

その子は飛び出してきた。指先からは炎が漏れている。

「こんばんは。今日は冷えるね」

警戒されているようなので、とりあえず道端で会った近所の人のような気持ちになって挨拶してみた。

「……ふ、ふつうのひと?」
「普通の人ではないが、危害は加えない」
「……分かった。信じるよ」

そう言ってかざしていた手を下ろした。
357fave of ghoul 〜火と影の出会い〜:2010/02/25(木) 22:55:26 ID:Mu50SED2
「で、君は何をしているんだ?フェイヴ・オブ・グールのせいで、このあたりは危険区域に指定されていたと思うんだが」
「う、それは……」

少女は言い淀んだ。少し尋問のようになってしまったか。

「ああ、勘違いしなくていい。私もただの民間人だ」
「あれ、そうなの?てっきり警察の人か何かかと」
「いやいや、私のはただの趣味だよ」
「趣味?」
「そう。夜街中を散歩して、」
「ユーコ」

アグゼスが呼びかける。頷く。前と後ろ、四頭の犬がいた。

「こういう世の中の害になりそうな輩を退治している」
「うわ、たけしくんがいっぱいだ」
「たけし、くん?」
「襲い来るぞ、備えろ」

幻覚でも見せられているのだろうか。戦力にはならないと判断し、少女を守るようにアグゼスと背中合わせで立つ。彼は前、私は後ろを。決めたわけではないが、二人の間ではそう決まった。
358fave of ghoul 〜火と影の出会い〜:2010/02/25(木) 22:56:08 ID:Mu50SED2
「に、逃げないの?」
「アグゼス、彼女はこう言っているが、逃げるか?」

既に気分が乗っていた私は、アグゼスに否定の言葉を貰うために問うた。
そしてその期待は、やはり否定された。

「了解をした。疾く逃げよう」
「い、いやいやいや、そこは『逃げるわけない』と否定してほしかったのだが」
「?逃走という作戦ではなかったのか」

アグゼスがニ頭の首根っこを抑えたまま首を傾げた。

「だからあれは『逃げずに戦う』という、」
襲いかかってきた一頭をもう一頭に投げつける。
「期待を込めて聞いたものであってだな」
「ならば敵を打ち倒す旨の言を発するべきであっただろう」
「ああ、もう。貴様の行間の読めなさにはいい加減に辟易だ」

犬を地面に叩きつけ、怒りを露にする。

「あれ、これって……もしかして私のせい?
あ、あのー、あふたりさん?もうそろそろたけしくんがかわいそうだから止めてあげた方が……」

少女の言葉で何とか吾に返った。既に犬は闇に消えていた。

「ん、すまないな。取り乱してしまった。アグゼスの行間については今度時間がある時に二人で話しあおう」
「行間を読むところによると、何かが解決したようだな」

うるさい、だまれ。
359fave of ghoul 〜火と影の出会い〜:2010/02/25(木) 22:56:49 ID:Mu50SED2
「さて、私たちはもう行くが、君はどうする?」
「あ、二人に付いてってもいい?実は相棒を探してたんだけど、一人じゃ怖くて」
「相棒?」
「うん。鉄っちゃんって言って、いつもタバコ吸ってる人なんだけど」

いつもタバコを……?

「……すまない、思い当たらない」
「こちらも様々な過去を当たってみたが、該当はなかった」
「そっか」

少し残念そうだ。

「どうして探しているんだ?」
「うん、実はさっき見かけたんだけど、なんだか様子がおかしかったから付けてたら」
「見失ったと」
「……いぐざくとりー」

力なく立てた親指から火が上がった。
360fave of ghoul 〜火と影の出会い〜:2010/02/25(木) 22:57:36 ID:Mu50SED2
「よし、じゃあ夜の散歩を再開しよう」
「男の捜索も留意条項に追記するのだな」
「ああ」
「二人とも、よろしくね」




こうして三人は夜の街を歩き始めた。

果たして鉄っちゃんは見つかるのだろうか。そして柚子はなぜ夜の街を歩くのか、その理由は――?

全ては、次回へ続く
361創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 22:59:26 ID:Mu50SED2
ここまで

他キャラの口調って案外分からないものですね
じゃあ明日国公立の試験あるんで、もう寝ます
362創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 00:00:23 ID:8WxYHppL
>>361
乙!柚子もアグゼスも強えw
やっぱシェアワ面白いwそれぞれの作者さんの味が出てていいねw
試験頑張れ〜!緊張しても意外と何とかなるぜ!
363創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 00:01:45 ID:CoQOtqnN
投下乙 良かったよー
作者によってキャラクターの描写にブレが生じるのはある種の必然なんで、自分はそこまで気にしないけどナー
試験頑張ってくださいね!


あとここ何日か世界設定について考察してみたんで、
その結果をこれから連載っぽい形で投下するかもしれません。
364比留間慎也の考察(第1回):2010/02/26(金) 00:13:37 ID:pv0r+clx
*自己紹介
始めまして。僕の名は比留間慎也(ヒルマ シンヤ)だ。
普段はとある組織で“隕石に起因する超能力”の研究分析を行っている。

チェンジリング・デイから4年経った現在、
今夜はこの「ペフェ」、「バッフ」、「エグザ」などと俗に呼ばれている能力について、
僕の研究成果を少しだけ紹介しようと思う。


*個人が持てる能力数について
まず、大原則として
・1人の人間は昼にしか使えない「昼の能力」と夜にしか使えない「夜の能力」の2つの超能力を持つことができる。
という法則があることが、研究によってつきとめられている。

昼夜どちらかの能力しか持っていない人、あるいはまったく能力を持っていない人も沢山いるが、
そういう人はまだ自分の能力に気づいていないだけで、潜在的にはすべての人が超能力者だと考えることができる。

また、一見3つ以上の能力を持っているように見えても、そのうちのいくつかは他の能力を応用して使っているということになる。

まれに見掛け上昼夜問わず能力を発揮することができる人もいるけど、
そういう人は偶然似たような性質の能力を2つ持っている、と考えることができる。
そういった人たちの能力についてよく検証してみると、やはり昼と夜で能力の性質が明確に(あるいは微妙に)異なっていることが分かるはずだ。


では、「昼の能力」が使える時間帯と「夜の能力」が使える時間帯の境目はどこなのか、
あるいは、昼と夜を分ける基準は何か、といった疑問が浮かぶが、これについては諸説があるようだ。
その話をすると時間が長くなってしまうので、またの機会に回そうと思う。
365比留間慎也の考察(第1回):2010/02/26(金) 00:15:54 ID:pv0r+clx
今回は、そうだな──
僕が研究結果を纏める際に使っている、能力の分類法について話そう。


*比留間慎也による能力の分類法(その1)

“能力”は、その効果が発揮される条件によって、大きく「意識性」と「無意識性」の2つのタイプに分類することができる。


・「意識性」は、使用者が能力を行使しようと思うことで、初めて効果が発揮されるタイプ。
無論、昼の能力は昼の間だけしか使えないし、夜の能力は夜の間だけしか使えない。
もちろん、この他に特定の条件を満さなければ使えない場合もある。


・「無意識性」は、本人の意思とは関係なく、常に効力が発揮されつづけるタイプの能力。
または、特定の条件下で、やはり本人の意思とは関係なく発動してしまうタイプの能力。
それぞれ日没や夜明けになると、自然に効力は消滅してしまうことは言うまでもない。
366比留間慎也の考察(第1回):2010/02/26(金) 00:19:07 ID:pv0r+clx
*比留間慎也による能力の分類法(その2)

次に、能力はそれが影響を及ぼす範囲によって、4つに大別することができる。

・自己改変型(変身型)
身体能力の向上や変身能力など、自分に変化をもたらすタイプの能力。

・他者干渉型(操作型)
サイコキネシスなど、主に指定した対象に影響を与えるタイプの能力。

・物理生成型(具現型)
物質や現象を無から生み出すタイプの能力。
一説には異世界から取り寄せたり召喚したりしているのではないかとも言われている。

・法則歪曲型(結界型)
宇宙の法則そのものを書き換える能力。
367比留間慎也の考察(第1回):2010/02/26(金) 00:20:29 ID:pv0r+clx
*法則歪曲型についての補足
ちょっと注意してもらいたいのが、法則歪曲型能力についてだ。
基本的に書き換えられた法則は時間的、物理的に限られた範囲内にしか適用されないと思ってもらっていい。
(能力保持者は世界中に数えきれないほどいるんだから、そうでなければ宇宙は文字通り収拾がつかなくなってしまうだろう。)

限られた空間の中で法則を変えてしまうことから、「結界型」と名づけられているというわけだ。
ちなみに、地球全体とか、日本全土に作用するようなスケールの大きな能力は未だに報告されていない。

他者干渉型との違いは、範囲内なら無差別にその効果が適用されてしまうことにある。
(もっとも、範囲内の対象にのみその法則が適用されないようにできる能力も世の中にはあったりして、
そういうのは他者干渉と法則歪曲の両方の性質を併せ持っている事になる。)
368比留間慎也の考察(第1回):2010/02/26(金) 00:22:53 ID:pv0r+clx
もちろん、すべての能力が上に挙げた類型に当てはまる、というわけじゃない。
上の用語は、あくまでも僕の研究上で統計を取るために便宜上使っている言葉にすぎない。
しかし、一方で研究した能力をデータベース上に纏める上でこの分類法は非常に役立っているということもまた付け加えておきたい。

というわけで、今夜の講義はここまでだ。
また何か分からないことがあったら呼んでくれよ。
369363:2010/02/26(金) 00:27:51 ID:pv0r+clx
ここまで

というわけで、主に設定考察用のキャラクターを作ってみました。
といっても勝手に設定つけ足して世界観狭めるのもアレなんで、チート能力が作られない程度にのみ抑える方向で。

能力の分類法は「この世界にはこのタイプの能力しかない」ということではなく、
あくまでも「多様な“能力”を整理するために研究者が提案したもの」という位置づけです。
生物学者が生き物を【動物】【植物】【菌類】に分類するような、そんな感じのものだと思ってください。

この分類法はwikiにまとめる際、こういった分類がしてあると他の人が描写しやすい、ということで提案させていただきました。
特に“能力”が任意発動なのか強制発動なのかといったことは重要だと思いますので。


鈴本さんの例で言いますと、

《昼の能力》
名称 … 超睡眠
【意識型】【変身型】
いつでもどこでも眠ることが出来る。
一度眠りに落ちると大抵目を覚まさない。

《昼の能力》
名称 … 活性化
【無意識型】【変身型】
全身の細胞が活性化し、身体能力と回復能力が急激に上昇する。


といった感じになります。
370創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 00:32:03 ID:ip4xwM8V
>>368
ぜひともまた来てくださいw投下乙!
何度も読み返してしまったwこれは良いまとめw
371創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 00:45:50 ID:sUlfWz/G
>>363
おつおつ
イイヨイイヨー

じゃあ俺も書いとくか。ネタバレしない程度に

・三島 柚子
《昼》
???
《夜》
名称 … アグゼス
【意識型】【具現型】(変身型)
魔人、アグゼスを自身の近辺に呼び出す。大まかな位置指定は可能。
アグゼスの効果により、身体能力の強化が成されている。

・天野 翔太
《昼》
名称 … 透視
【意識型】【変身型?】
現実に存在する物の内部を視ることが出来る。人なら服から内臓、骨まで透視可能。
視える細かさは視力に準拠。細胞レベルで診断して腫瘍の早期発見!というのは出来ない
写真や絵など、“そこにないもの”の透視は出来ない。
《夜》
※発覚前に死亡



ゆうこチートだ……どうしよう


つテンプレ置いときますね
・人物名
《昼の能力》
名称 …
【意識型】【】

《夜の能力》
名称 …
【意識型】【】



分類1は適宜“非”を追加してください
じゃあおやすみ
372363:2010/02/26(金) 01:00:22 ID:pv0r+clx
しまった間違えた……
意識性、変身型とやろうとしてたのに>>369では意識「型」って書いてしまった。

《昼の能力》
名称 …
【○○性】【○○型】

《夜の能力》
名称 …
【○○性】【○○型】


これでお願いします。
【意識性】【無意識性】
【変身】【操作】【具現】【結界】
373363:2010/02/26(金) 01:07:56 ID:pv0r+clx
また間違えた……
最後の行は
【変身型】【操作型】【具現型】【結界型】と読み替えてくださいです。
374 ◆IulaH19/JY :2010/02/26(金) 01:59:05 ID:ip4xwM8V
投下〜


「了解シタ」
フェムは携帯電話の電源を切る。現在は風魔家の門前に居た。
赤外カメラにより内部に二名の人間を確認した。
ガシャンと、両腕から菱形の金属板を出す。
――私ニハ、ワカラナイ。生キテイルトイウ事ガ、ドウイウモノカ。
両腕を空に突き出す。
能力ノ発生。
誰にも知覚されないが、空ではある異常が発生していた。
それをそのまま下へと振り落とす。
目の前の住宅が圧壊した。
雷が落ちたような轟音と衝撃で地面が揺れる。
衝撃波で飛んできた等身大の木材を腕の盾で受け止める。
――殺人ニヨッテナラ、分カルカモシレナイ。生キテイルトイウ事ガ。
「……サテ、死体ヲ確認スルカ」

「くそっ、透視能力が薄れてきた!」
俺が新しく薬で得た昼の能力は“視界に入る地点に一瞬で移動できる能力”。
壁の向こう側を透視して移動できたということは、移動中は壁など関係なく無制限のテレポートなのだろう。
それを透視能力と組み合わせることで、病院裏の森林を難なく抜けてくることが出来たのだが……
「やはり能力は一つだけってことか」
山を抜けて住宅街に入った地点で透視能力は消えてしまった。
このままの能力でも十分早いが、移動速度は数段落ちる。
携帯も財布もなく、追跡されているだろうから立ち止まれない。
「連絡手段は……直接会うことか」
親父、お袋、どうか無事でいてくれ。
跳ぶ先を目で確認したとたん、足が止まった。
「やほ〜」
リンドウがそこにいた。分厚い眼鏡を掛けて、分厚いレポート用紙を持って。
「ちゃんと時間通りに来たね」
「……リンドウ。どけ。悪いが今は構っている暇はないんだ」
リンドウを避けて跳ぶ位置を目視する。
そこをリンドウの掌が俺の視界の邪魔した。
「リンドウ!」
「……行っても間に合わないよ」
レポートに目を落としながら、焦る俺を尻目にリンドウが呟く。
「あなたが病院に行った時点で、風魔ヨシユキとその家族が今後出会う運命は、一つも存在しない」
375 ◆IulaH19/JY :2010/02/26(金) 02:03:07 ID:ip4xwM8V
ガラガラと、人間の力とは思えない力で屋根を取り除く。
フェムは空気を匣型に切り取って、それの重さを自在に変えることができる。
上空からの空気の攻撃は、木造住宅には一溜まりもなかった。
「ヤハリ……即死……」
内臓が潰れ、顔も判別できない程に砕けては人は生きてはいけない。
「アッケナイナ」
そのように無残な死体を見ても、フェムの心には何の感傷も起さなかった。
――生キテイルトハ、ドウイウコトダ?
携帯を掛け、トルトルに任務終了とだけ伝えておく。
サテ、次ハ何処ニ行コウ。
フェムには意思が無かった。忠実に命令に従い、その命令をこなすためだけの日々。
行き先など決まらず、携帯の時計の数字を見つめ、ただ立ち尽くしていた。
「やあっ!」
鉄パイプで頭を殴られた。
フェムの脳内にゴーンと音が鳴り響くが、損傷なし。
曲がった鉄パイプを握った瓶底眼鏡の女が痛そうに手首をさすっていた。
「いたたたた、なんつー石頭。鉄パイプの方が曲がるなんて……」
腕を一閃したが、女は猫のように機敏に後ろに下がり、捕まえられなかった。
戦闘モードに移行しようとしたが、それより先に誰かに首を掴まれていた。
「ひと一人分くらいは触れていれば一緒に跳べると、リンドウで検証済みだぞ、と」
振り返ると青年が双眼鏡を持って何かを探していた。
「変なおっさんと黒服が来る前に立ち去るぜ」
「オ前ハ……風魔ヨシユキ」
「見つけたっ!灯台!」
一瞬で風景が一変した。灯台の屋根の上にいて、朝日が海面を照らしていた。
ブンッ、と殺すつもりで腕を振るうが、引き裂いたのは空気。
「こいつは壊させてもらう」
いつの間にかヨシユキは灯台の下の地面に降り、フェムの携帯を二つに折った。
誰かもう一人いるが、光の反射で姿の判別が付かない。
「さぁ超能力バトルと行こうぜ、お兄さん」
フェムは戦闘モードに移行した。

ここまで
携帯逆パカですね、わかります。
376 ◆IulaH19/JY :2010/02/26(金) 02:54:58 ID:ip4xwM8V
・リンドウ
《昼の能力》
名称 … ありとあらゆる薬を作る能力
【意識性】【具現型】
鎮痛剤、毒薬とありとあらゆる薬を作りだせる。
薬の有効範囲は有機物(人間、動物)まで。
能力者の死体から能力成分を取り出し、その能力を薬にすることも可能。

《夜の能力》
名称 … 物を置き換える力
【意識性】【操作型】
手に触れた物と特定の物を置き換える。
双方のどちらかはリンドウの手と接触していなければならない。
人間程の大きさを置き換えたこともある。
置き換えるときに空気が接触していないと駄目なようだ。

・風魔嘉幸(ヨシユキ)
《昼の能力》
名称 … 視界に入る地点に一瞬で移動できる能力
【意識性】【操作型】
この効果は薬で得た能力であり、本来の能力ではない。
薬の効果時間は不明。
能力は上書きされるようであり、透視能力は消えている。
触れて意識すれば、その持ち物ごと跳ぶことも可能。
しっかりと見えている場所にしか行けないようだ。

《夜の能力》
発現無し。

・トルトル
《昼の能力》
不明。

《夜の能力》
名称 … 夢に介入する能力
【意識性】【操作型】
夢の中に自分の意識を介入させる事が出来る。
夢の中で相手を傷つけた場合、現実には反映されないが、心理的ショックを味わう。

・フェム
《昼の能力》
名称 … 空気の匣を作りだす能力
【意識性】【操作型】
匣の大きさは最大で車サイズ。
高い地点に作れば作るほど威力は増すが、落ちてくるのが遅い。
匣の中の空気の重さを変える事が出来る。
あまりに高い地点には作れない。限度があるようだ。

《夜の能力》
不明。

テンプレ使わせていただきました〜w
よし、寝よう。
377創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 04:10:35 ID:7JFCyZ2G
きいぃぃぃとうぅぅああぁぁぁぁぁ規制解除おおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!111

>>376
投下おちゅ
家族は死んじゃったのかな……?ガクガク
前の回の爪はがし機は想像して手がうわあぁぁってなった


鉄っちゃんがバフ課なのと能力が予想外すぎて
妄想してた話がおじゃんになったでござるの巻
378創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 08:17:11 ID:sUlfWz/G
>>376
おつです。

>能力者の死体から能力成分を取り出し、その能力を薬にすることも可能。
>「やはり能力は一つだけってことか」
ってことは、追加する前の能力は消えてしまうとか、そういう感じ?
379 ◆IulaH19/JY :2010/02/26(金) 13:01:22 ID:ip4xwM8V
>>377-378
どもっすw
おじゃんになるのはシェアワ特有の現象なり

とりあえずは昼夜の能力は一つずつというのを踏まえて
前の能力は消えてしまう設定にしてあります。
380創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 15:42:31 ID:sUlfWz/G
>>379
ごめん。
俺通知表に人の話をもっと聞くようにって書かれるタイプだったから……
381 ◆IulaH19/JY :2010/02/26(金) 16:42:13 ID:ip4xwM8V
>>380
えええwそういう通知表もあるのかw
382創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 19:58:55 ID:ip4xwM8V
>>380
いや、すまぬ。自分も話聞けん性格でしたわ。
383創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 20:22:46 ID:pv0r+clx
>>380
俺もそんな評価だった気がする……
384117:2010/02/26(金) 22:37:40 ID:ndhqIPT9
>>115-117の続き書けたー。
トリは付けないけどタイトルは付けといたほうがいいよね。せっかくだから厨二な感じで。
ってわけで前のと合わせて、タイトルは

『月下の魔剣』

犬の一瞬の隙をついて、僕たちは逃走を開始した。犬はすぐに気付き追いかけてくる。
ただ、犬の足は思ったほど速くはなく、全力で走れば一定距離を保つことができた。これなら家まで逃げ帰ることができるかもしれない。
逃走を開始して数秒、不自然なことに気付く。この周辺は確かに人通りの少ない住宅街だが…

「ねっ、陽太っ、こんなに人いないのっ、ておかしくないっ!?」
「くっ、やはりっ、組織のっ、差し金かっ!!」
「いやいやっ、それはないっ!」

こんな状況でも冴える厨二発言に突っ込みをいれながら走る。ひたすら走る。爪の音は変わらず背後から響いている。
次の角を右に曲がって直進すれば我が家、希望が見えてきた。が、次の瞬間、希望は驚愕に変わる。我が家へと続くその道に待ち構えるもう一匹の犬!

「そんな…嘘でしょ…」
「止まんなこっちだ晶ぁ!! 走れ!!」

陽太に手を引かれ家とは反対方向に走り出す。迫る爪の音は二倍に増えた。

「これからどうすんのっ!?」
「街中まで戻るぞっ! 人多いし交番もあるっ!」
「わかっ…!!! 前っ!!」
「くっ!!? こっちだ!!」

繁華街までの道を走る僕たちの進行方向から迫るさらにもう一匹の犬!!
僕は陽太に続いて狭い脇道に飛び込んだ。

「どうなってる…普通に考えてありえねえ…」
「ねえどうする陽太っ!? 家も街も離れてってる!」
「くっそぉ…今考えてるっ」

三匹の猛犬に追われる最悪な状況の僕たちに、とどめだ、と言わんばかりに最高の不幸が降りかかる。
狭い道のその終端は…無慈悲な壁。もはや言葉も出なかった。すがるように陽太を見ると、壁に手を当て呟いている。

「おかしい…ここは抜ける道だったはず…」
「そんなこと言ってる場合じゃっ!」
「不可解な壁…能力か…?」
「いつまで言ってんだこの馬鹿っ!!」
「…いや…まあここは腹を決めて…」

僕とは対称的に落ち着いた態度で陽太は振り返る。視線の先には少し距離を置いて唸り声をあげる三匹の犬。

「戦うしかないな」

自信に満ちた態度で、陽太は犬たちの前に立つ。
その背中は、いつもの小さな背中より何倍も何十倍も大きなものに見えた。

「もう日は暮れた。そうだろ?」
「…いや、あと一分以内」
「………はあぁっ!!!?」

…さっき大きく見えたのはただの錯覚だったらしい。慌てふためき振り向く陽太は、一瞬でいつもの小市民になり下がるのだった。
385『月下の魔剣』:2010/02/26(金) 22:40:10 ID:ndhqIPT9

「おいどういうことだよっ、もう日の光見えねーじゃんっ!?」
「雲に隠れただけだろうね。まだ"視える"。数秒かかるかな」
「おいおいおいマジかよ…」

僕の昼の能力は動物の心を視る。その能力は日没が近づくと徐々に弱まり、日没と共に消え去る。
それを利用すれば僕は日没のタイミングを完璧に知ることができる。

「数秒、か…わかった、集中する。夜になった瞬間に教えろ」

陽太は犬に向き直り、身体の前に輪を作るように、腕を広げて両手の平を合わせた。
それは、彼と同じように低身長に悩むとある漫画の主人公が、術の発動前に取るポーズと酷似していた。

対峙する陽太と犬。対等に睨み合っているように見えるが、今攻撃されたら対処不可能だ。僕はただひたすら祈る。
じりじりと距離を詰める犬。まだ…頼むからもう少し、もう少し待ってくれ…あと…数秒………



「今っ!!!!」
「出でよっ!!!!」

陽太が手を離す動きと、一匹が地面を蹴るのはほぼ同時だった。



目を開けた僕が見たのは、弾き飛ばされる犬。

見上げる陽太の手には「それ」が握られていた。

腕ほどの太さと長さ。天に向かって真っ直ぐに伸びるそれは、暗闇の中に燦然と、純白に輝く…

「魔剣…レイディッシュ!」

「……………」


「…大根だよね」
386『月下の魔剣』:2010/02/26(金) 22:42:43 ID:ndhqIPT9

「ねえ大根だよね」
「魔剣レイディッシュ」
「大こ」
「レイディッシュ!!」
「………」
「………」

「首領パッチソーd」
「それを言うなあああぁぁぁ!!!!」

すごい剣幕で振り返る陽太。残された二匹の犬はどこか戸惑っているように見える。

「葱じゃねえ!いいか葱じゃねえの!大根!わかったか!!」
「やっぱ大根じゃん」
「ちっげえよ!! 魔剣レイディッシュ!!」
「ああもうわかったから!後ろ後ろ!」

はっと思い出したように、陽太は犬に向き直りレイディッシュを構えた。
弾き飛ばされた最初の犬も体勢を立て直し、再び戦闘体勢をとる。

「それよりお前の能力はどうした!! 夜ならなんとかできるだろ!?」
「とっくにやってるっ! 止まれっ!」

僕の夜の能力は昼とは逆。動物の心が視えなくなるかわりに、こちらの意思を正確に動物に伝える。
僕としてはあまり好きではないけれど、強い意志で命令し従わせることもできる。これは大きい動物や賢い動物ほど難しい。
中型犬数匹程度なら、簡単な命令くらいは従わせられるはずなんだけど…

「止まれって…ああもう! やっぱ駄目だ! こいつらまともじゃないよ…」

さっきから言葉も合わせて強く強く静止を命じているのだが、犬たちは一向に攻撃態勢を緩めない。

「くっそ…! お前の能力もよくよく使えねえ能力だな」
「大根構えてる奴にだけは言われたくない」
「レイディッシュだっての!」

希望はあった。陽太の隠された能力を見るまでは。
いよいよ絶望的な気分になった。低く唸る犬たちを、僕はぼんやりと見つめる。
いつもの日常から、急に現れた非日常、まるで夢のよう。でもこれは紛れもなく現実なわけで。

ああ、お母さん。頼りの綱だった陽太のやばい能力は大根を出す能力でした。
もう無事にあなたの元に帰れないかもしれません。親孝行できなくてごめんなさい。
387『月下の魔剣』:2010/02/26(金) 22:43:45 ID:ndhqIPT9

「ハッ! 何言ってんだか」

突然声がかかる。思っていただけのつもりが、口から漏れていたようだ。

「俺が突破する。お前はそこにいろ。いつでも動けるようにしとけ」

陽太に目を向けてハッとする。なぜだろうか、僕の心に生まれる安心感。
こんな非日常でも、厨二を繰り返す日常とまるで変わらない陽太の自信に満ちた態度。必ず勝つと、その背中は語っていた。

こいつ…こんなに頼りになる奴だったんだ…

「…ふっ、わかりましたよ、っと。よしっ!」

噛まれるでも逃げるでもなく、僕も「勝つ」覚悟を決めて、いつでも動けるように身構えた。

「来いよ、ケルベロス。格の違いを教えてやる」

こんな状況でもなお冴えわたる陽太の厨二発言を合図に、戦闘は始まった。


<続く>

>>45>>46みたいに昼夜別ってこと生かすなら非意識性能力は便利だよね。晶の能力も非意識性です。
陽太のほうは……なんていうかごめん。
388創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 23:15:51 ID:mpLYZHBv
魔剣www
陽太自信ありすぎだw
389創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 23:50:07 ID:ip4xwM8V
>>387
乙!
レイディッシュwwノリがいいなw
続き待ってます!
390創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 23:51:30 ID:2Q0j40iZ
やべぇ!こいつら面白いなwww
これは良い厨二だww
391 ◆akuta/cdbA :2010/02/27(土) 00:47:13 ID:S2xsa6EN
ぐっ……!右手が勝手に…ッ静まれ俺の邪気(ry
ttp://loda.jp/mitemite/?id=895.jpg
392創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 00:49:35 ID:EG+vg5Cs
>>391
ボーボボww
ちょw面白いなww
393創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 00:51:27 ID:Gv/SS/RH
>>391
これはwwwやべぇ。イメージがそれで固定化されてしまうw
394 ◆W20/vpg05I :2010/02/27(土) 00:58:35 ID:Gv/SS/RH
できた。また短いのちょっこと投下
395 ◆W20/vpg05I :2010/02/27(土) 01:00:52 ID:Gv/SS/RH


「へっくちっ!」
「なんだなんだ。裸王、風邪か?」
「ちょっと夜寝ぼけて能力使っちゃて余りの寒さに……って陸、あんた何言わすのよ! それに裸王は止めて」
「裸王が勝手に言ったんだ。あ、半径5m以内に近づくなよ。風邪をうつすなよ」
「ふんだっ。私だって近寄りたくないからちょうどいいわよ」

俺はしっしと手で追い払う動作をしながらパンを齧る。
うむ。学校の昼休みに屋上で食べる、この揚げパンのカリッとした触感は最高だ。

「それで、パンも買ってきたし、もう行っていい? 」

露骨に冷たい視線を向けてくる裸王。それも俺にとってはそよ風のような物。
パンを食べながらあっさり頷く。
ほっとした表情を一瞬見せ、踵を返した少女はあっという間に視界から消えていった。
その鮮やかな逃げっぷりに俺は思わず苦笑する。

「まったく、嫌われたもんだなぁ」

その言葉自体はただの独り言。しかしその声に答える声があった。

『あいかわらずね、"ピーターパン"?』
「なんだ、聞いてたのか」
『定時連絡の時間。忘れてる?』
「ああ、そうだった」

そう俺は頷き、懐にある通信機を見る。
定時を知らせる青のLEDが光っていることを確認。

「あー、あー。こちら特に進展なし」

とりあえず適当なことを言う。
396 ◆W20/vpg05I :2010/02/27(土) 01:02:37 ID:Gv/SS/RH

『あら、そう? 最近弛んでるわよ。年とって諜報稼業も飽きたのかしらね』
「さあな。そもそも俺にフェイヴ・オブ・グールの捜索まで回すなよ。
 俺の昼の能力『ピーターパン』と夜の能力『ディスガイズ』、どちらも戦闘には向かん。
見つかったら即殺されるぞ。そんなもんバ課に任せておけよ。
 こっちは本命の仕事だけで忙しいんだからな」

俺の自分の能力名をあえて言いながら通信相手に文句を向ける。
その通信相手はしれっとしたもので、

『あたいに言っても意味ないわよ。それにフェイヴ・オブ・グールの方は
別に主目的じゃないし。それで、本命の方も進展なし?』
「あー、まあ進展ありっていえばありだ」
『へぇー、どんな?』
「囮に使えそうな人材を確保した」
『……民間人に危害がでると色々後が大変よ?』

イヤホンから呆れたような声が聞こえる。しかし俺は笑って無視する。

「大丈夫だ。あんな能力持ちならなんも問題ないさ」
『へぇ? どんなすごい能力? もしかして本部の監視が必要なほど?』
「いや、そういう意味じゃない」
『……?』

疑問の声が聞こえる。俺はあえて一拍置いて、答えることにする。
きっと驚くだろうと思うと自然と笑みがこぼれた。

「一瞬で裸になる能力」
『……それは、性別どっち?』
「女。高校生。ってか今は同級生だ。たまたま能力発動した所に出くわしたが、
まだまだ幼さの残る顔立ちのくせに体は大人。出るとこ出てひっこむ所は引っ込んでいる。
それが、恥ずかしさのあまり全身真っ赤にしてるんだ。
正直、この俺で持ってしても性欲を持て余す。どうだ、今回の囮役としては最適だろう?」
『こっ、この変態!!』

ぶつっという音とともに通信が途切れた。
最後の怒鳴り声で耳が変な感じになるのを感じながら、俺も通信機を切る。

「……うーむ、怒らせてしまったか。話術には自信があったんだが、何がいけなかったんだ?」

よくわからないが考えてもしょうがないので、次の計画について考えるとするか。

「さて、今回の仕事もそろそろ終わりかねぇ。楽しめるといいがなぁ」

口元の笑みを止めようともせず、俺は昼休みの間、作戦を練った。

「くっくっく……夜が楽しみだなぁ」




これでしゅうりょうです。
397 ◆W20/vpg05I :2010/02/27(土) 01:03:43 ID:Gv/SS/RH
ついでにキャラ紹介でも

《名前》
桜 香織

《性別》


《性格》
つっこみタイプ。ムードメーカー
運動得意。

《昼の能力》
不明

《夜の能力》
皮膚に触れた物を瞬時に落とす能力
【意識型】【結界型】

名称そのまんま。ただし一度発動するとほぼ無差別に効果を発揮する。

《その他》
高校生。腰まで届く髪を一本の三つ編みにしてしている。
少し茶色掛った黒髪。グラマータイプ




《名前》
加藤陸

《性別》


《性格》
悪い。ドS、陰険

《昼の能力》
名称:ピーターパン
【無意識型】【変身型】
肉体年齢を10〜19才までに変化させる能力。
自動発動だが年齢自体は自分の意思で可変。

《夜の能力》
名称:ディスガイズ
【意識型】【具現型】

光学情報を変化させて幻を作る能力。
人の体に被せることも可能なため、夜はこの能力で自分を昼と同じ姿にしている。

《その他》
28才。能力を生かした諜報活動をしている。
平凡な顔立ちなのは印象に残らないため好都合だと思っている。
398創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 01:06:33 ID:EG+vg5Cs
>>396
へ、変態だー!
乙です!なにやら色々裏がある人みたいですなw
本命とは何だろう。続き期待です!
399創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 01:13:41 ID:Gh9LreeD
変態!変態!変態!変態!
政府スゴス
400369:2010/02/28(日) 00:00:05 ID:b9xA2UIX
ちょっと相談

比留間慎也の考察(第2回)は昼夜の切り替わるタイミングについて考察したいと思うんだけど
(シェアワ的な意味で)大丈夫だろうか……
401創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 00:03:51 ID:PiXZmzsk
  ヽ○ノ おっけーよ!
   /
  ノ)
402創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 00:07:19 ID:L1X/VJPn
こまけえことはいいんだよ!が合言葉です
403創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 00:13:03 ID:sWb8Qcf0
>>400
          l      /    ヽ    /   ヽ \
          /     / l    ヽ /      |  \
| し な 間 〉 //  l_ , ‐、   ∨ i l  | |    \      投
| ら っ に |/ l ,-、,/レ‐r、ヽ  |   /`K ,-、 <   し
| ん て あ   / | l``i { ヽヽ l | / , '/',` //`|_/       下
| ぞ も わ    |> ヽl´、i '_   。`、llィ'。´ _/ /,) /\    ろ
| |   な   |`/\ヽ'_i ,.,.,.⌒´)_ `_⌒  /__/l  \      
っ   |    く    |/ / l´,.-― 、l`ー一'_冫 /l l |   /   っ
!!!! |        \ ', /  /`7-、二´、,.| /// |   /
           lT´ {  /  /  ト、 |::| /// /  /    !!!!!
          l´ ヽ、 > ー    ,/ |ニ.ノ-' / / _
              i``` 、/ }    ',,,..'  |-'´,- '´     ̄/ ヽ∧  ____
           \/ ' \_  `´ノ7l´      /    // ヽ l ヽ
         / ̄ |      ̄ ̄/ ノ L___/      ★  U  |
        /   ヽ      /`ー´     /l                 |
404 ◆IulaH19/JY :2010/02/28(日) 00:32:36 ID:PiXZmzsk
ちょっと先に投下

フェムの腕が二倍以上に膨れ上がり、鈍色の光沢を放つ。
怒りで我を忘れているのか、肩口まで服が破けてしまっていた。
調子に乗って煽ってみたものの、冷や汗が出る。脚の震えはちゃんと隠せているだろうか。
「にゃっ、にゃっ、にゃっ」
隣の人影、深く被ったフードの奥から声がする。どうやらそれは笑い声らしい。
全身が一枚の大きな茶色の服で、フードに猫耳が付いていた。腕の服の裾もブカブカで、手足が見えない。
寝巻のようなそんな服装で戦えるのだろうか。
「リンドウの仲間の、ルローさん?」
「ルローでいいにゃ。ヨシユキ」
フードからは女の子の声。そう言って手を耳当たりに置く。
「通信。リンドウからの報告にゃ。やっこさんは、」
いきなり蹴飛ばされた。
俺が今までいた場所の防波堤のコンクリートが砕けた。
「こういう能力にゃ」
「省略しすぎだろ!」
不可視の攻撃が行われたことは分かる。しかし、それでは俺には避けようがない。
にゃにゃっ、とフードの奥から楽しそうな声が響く。
「新人は下がっておくにゃ。うちが注意を引きつけておくにゃ」
そこで待機するにゃ、と言ってルローは四足歩行で跳びはねながら防波堤を灯台の方まで駆けていく。
上空からの不可視の攻撃を敏捷な動きで難なくかわす。一体、どうやって避けているんだ?
機械男・フェムが灯台の屋根から降りてきた。
ズンッ、と地面が地震のように揺れる。
「――名前ヲ聞イテオコウ」
「お前に名乗る名前なんてないにゃ」
ガリッ、とフェムの胸から三本の火花が上がる。
見れば銀色の金属製の大きなグローブがルローの手にあった。
グローブの先に三本の銀のナイフが出ており、籠手と合体したカタールを思わせる武器だ。
斬撃はフェムの上着を引き裂いただけ。
「……なかなか堅いにゃ」
フェムはそれには答えず両手の指を組んで、振り落とす。
爆音。ルローは避けていたが、コンクリートには大穴が空いていた。
どれほどのパワーと質量を持っていやがる。
ハンマー攻撃に怯えず、ルローは踊るように腕を振るう。
片腕を振るう毎に三本のナイフがフェムに向かって空を舞うが、何事もなくフェムは突っ立っている。
銀のグローブは次から次へとナイフを装填していく代物らしい。
雨のようにナイフを投げていたが、彼女は跳躍した。
不可視の匣の攻撃。
「無駄にゃ。その攻撃は音が大きすぎにゃ」
「……貴様」
ルローは匣が落ちてくる風切り音で落下地点を予測していたらしい。
なんつー化け物だ。いや、化け猫か。
「それより自分の体をよく見てみるにゃ」
「ナンダ?」
金属の体にワイヤーが巻かれていた。フェムの二の腕が膨らむが、切ることができない。
どうやら投げていたのはナイフだけでは無かったようだ。
「今にゃ!」
俺は跳んだ。動けないフェムを掴み、海岸を視る。
視えずらいが、視えた。海岸上に漂流していたペットボトル。
跳べ。
405 ◆IulaH19/JY :2010/02/28(日) 00:33:20 ID:PiXZmzsk
一瞬でその地点へ移動した。
瞬間、まるで海上に立っているかのようにペットボトルの上に静止していたが、重力が下へと俺とフェムを落とす。
着水。
フェムを掴んでいた俺の手が一瞬ワイヤーに絡まり、一緒に沈みこみそうになったがすぐに抜けた。
機械男が憎々しげな表情で俺を見ていたが、自重で海底へと沈んでいった。
必死にバタ足で海面へと向かう。服が水に濡れて思うように動けない。
海面から頭を出し、地上の方向を確認しようとする。どこだ?
そして、たしかに異質な風切り音を聞いた。
浮かんだまま上空を見上げる。
光の屈折で俺にも見ることができた。特大の透明な匣が俺に向かって落ちてくる。

やべ、死ぬ。

その時、水の中からもう一つの頭が浮き上がってきた。
ネコミミのフード。
「ルロー!」
ルローはそのまま右手の爪を空中に突き出す。
気のせいか、黒い靄が出ている気がした。
そのまま落ちてくる匣に合わせてルローが一閃。匣を4つに切り裂いた。
匣はバラバラになるのでもなく、ただ風となって俺の顔に吹き付ける。
すぐに灯台の位置を目で確認。ルローの襟首を掴まえて能力で飛ぶ。
着陸。
ルローを地面に降ろすとぐったりしていた。
「……水は嫌いにゃ」
406 ◆IulaH19/JY :2010/02/28(日) 00:34:17 ID:PiXZmzsk
とりあえずここまで。
407創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 01:19:46 ID:L1X/VJPn
猫語尾キャラきたー
408創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 02:18:58 ID:yElVtbwt
猫語尾は良いものです
409創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 03:54:56 ID:gV9e7zyD
投下乙!にゃんにゃんキャラ!

にしても何故急に過疎ったんだ……
俺は消失ハルヒスレに張り付いていたからなんだが
410Beyond the wall ◆KazZxBP5Rc :2010/02/28(日) 07:17:13 ID:L1X/VJPn
この街の風景は変わっていた。
果てしなく続く壁。それはこの街の住民が向こう側からの侵攻を抑えるために造ったもの。
この壁の向こう側には、街の住人から「魔窟」と呼ばれている、暴力の支配する世界があるという。

ところで、最近この街では行方不明者の数が急増している。
そしてそのほとんどが幼児から中学生までの子供に集中しているのだ。
大多数の見解は壁の向こうに連れ去られたのだというもの。
この件に対して街では子供たちを見守ることを徹底しようと運動が展開されているが、
隙はいくらでもあるらしく、多少の減少はあるものの依然事件は絶えない。

高さ数十メートルの巨大な壁を見上げる高校生、東堂衛。
彼の弟もまた、行方不明者のひとりである。
昨日彼が学校から帰ったときにはもう連絡が取れなかった。
自分の能力ならこの壁の向こうに行っても無傷で帰ってこれる。
意を決して衛は壁の中に足を踏み出した。

十歩も壁の中を歩いたあと、急に視界が開けた。
崩れたビルや焼け焦げた跡。まさに衛が想像していたとおりの世界がそこにはあった。
だが、なによりもここを地獄だと印象付けたのは、目の前で倒れている男と戦闘体制をとる男三人の姿だ。
いきなりの歓迎に衛は戸惑いを隠せない。
その隙に衛の後ろにテレポートした男の斧が襲い掛かる。
斧は空を切った。いや、実際は確かに衛のいる位置を捕らえていた。
これが衛の昼の能力である。
衛と彼が身に付ける生物以外のもの(主に服)を、この世のあらゆる物質・現象から干渉しなくさせる。
つまりお互いに触れることができないという状況を作り出す。
しかしこれでは衛のほうも攻撃ができない。
では例えば、衛が能力を使い腕で相手の胴を貫いたまま能力を解除するのはどうか。
それも駄目だ。その場合、衛の腕が相手の体の外に弾かれるだけでお互いに何のダメージも無い。
結局戦うためには一時的に能力を解除して戦うしかない。
だが三人もの敵を相手にそれが容易でないことは明らかである。

衛はこのまま逃げようかどうしようか迷っていた。
なにせ倒れている男を助けたところで三人と同じようにいきなり襲い掛かってこないとも限らない。
衛が判断できずに立ち尽くしていると、ものすごい速さで何かが複数飛んできた。
それらは三人の男に正確に命中。男たちは一斉に地に伏せる。
続いて衛の目に飛び込んできたのは少年の姿だった。
少年はその姿に似つかわしくない黒くごついバイクにまたがっている。
「僕はセイ。相棒を助けてくれてありがとう。」
411Beyond the wall ◆KazZxBP5Rc :2010/02/28(日) 07:18:05 ID:L1X/VJPn
「じゃあその弟を助けるためにこの『クレーター』に来たというわけか。」
夕刻、衛たちは廃れたホテルの一室にいた。
外から「魔窟」と呼ばれていたこの地域は、中では「クレーター」と呼ばれている。
チェンジリングデーに、この地域の中心に大型の隕石が落ちたのがその名の由縁だ。
その影響でこの周辺では強力な能力が生まれやすくなっている。
セイの相棒と呼ばれた男は名を真山情といった。
「オレのライトエグザは『マイルストーン』と呼んでいる。」
「ライトエグザ?」
「昼の能力のことだよ。夜の能力がダークエグザ。両方あわせてエグザ。」
セイが横から補足した。
「実際に体感したほうが早いな。」
そう言って情は衛に枕を投げつけた。
当然衛はそれをキャッチする。すると衛の頭に突然情報が流れてきた。
マイルストーンとは物体に思念を込める能力である。
思念が込められた物体に触れた者はその思念を心の声として聞く。
枕から伝わってきたのは情とセイのエグザやふたりが旅をしていること、それにクレーターの基本的な知識だ。
昼に衛と情を助けたセイのライトエグザは「ピストル」という名前らしい。
物体を弾に見立てて銃のパントマイムをすると、実際にその物体が銃の弾の速度で撃ち出されるというものだ。
「さて、今日はジョーが深手を負った事だし、早めに寝ますか。」
セイは嫌味を残して部屋を去った。
このホテルにはシングルルームしかない。衛も隣の部屋に向かい床に就いた。

朝日が差している。
衛はベッドの上で頭をひとつ掻いて昨日のことを思い出した。
そのまま部屋を出て寝ぼけまなこで隣の部屋の扉を開けたところでしっかりと目が覚めた。
中ではセイが上半身裸で衛を見て立ち尽くしている。
白い布を持ったままのセイの胸には、小さいながらもはっきりと分かる膨らみがあった。

つづく
412創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 07:19:13 ID:L1X/VJPn
投下終わり

>>409
俺は書くのにやけに時間かかってたからなんだが
413創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 15:01:09 ID:EwILj0Ua
ロボスレにかかりっきりだったんだ、すまない
とりあえずみんなまとめて乙!
414 ◆akuta/cdbA :2010/02/28(日) 15:14:08 ID:sWb8Qcf0
世界観がどんどん広がっていってて良いなぁ。
そしてフォグさんが好きだー(パロ絵)
ttp://loda.jp/mitemite/?id=899.jpg

>>343の続きを描こうと思ったんですが、>>355-360のSSの続きが
投下されてからの方がいいかな?
415創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 20:55:08 ID:b9xA2UIX
そこはほら、矛盾が出てもパラレルワールドが。
416創る名無しに見る名無し:2010/02/28(日) 21:57:38 ID:Hwz+NlL9
夜w神w月ww
417『月下の魔剣』:2010/02/28(日) 23:58:41 ID:Dngmcpd7
>>391
てめえなんてことしやがるwww
なぜ参考文献がばれたし

さて続き続き


「はあぁっ!!」

高く飛びかかってくる最初の犬に、待ち構えていた渾身の力を込めて陽太はレイディッシュを振り上げる。
レイディッ根は犬のわき腹に直撃し、その身体を高く打ち上げた。犬はブロック塀の淵にぶつかり、そのまま向こう側に転がり落ちる。

一瞬で無力化…まさかこれを狙って!? 驚愕して陽太を見ると

「お、おぉ…!?」

本人も驚いていた。偶然だったらしい。

そんな陽太が息つく暇なく、ほぼ同時に二匹目、三匹目が襲いかかる。
今度は踏み込んで二匹目の頭にレイ大根を振り下ろして怯ませ、即座に引いて三匹目の攻撃を防御する。
その牙がガッチリと大根に食い込むのが見えた。引っ張るがまるで離れない。
しかし陽太はあろうことか早々に武器を手放し、犬の口に嵌るように足の裏で蹴りこんだ。

「陽太まだっ!!」
「問題ない」

二匹目に向き直る。合わせられた両手が開かれ、その手から新たな武器が現れる。
白く、細く、その長さは身長を軽く超えていた。右手に持ち左手を添え、頭上に構えるそれは…

「レイディッシュ・守口(ガード)!!」

「…え何、それも大根なわけ?」
「………」

もう突っ込むのは諦めたのか、陽太は無言で攻撃を始める。
細長い大根の先端がヒュンと目の前を通り過ぎて、僕は慌てて陽太から距離をとった。
前進しながら長いリーチで鞭のように振り回すそれは、犬を少しずつ後退させ僕から離れていく。
そこで気付いた。さっき大根を口に嵌めた犬が見当たらない。

「ねえ陽太、もう一匹は…」
「逃げたんだろたぶん。レイディッシュ落ちてたし」

細長い大根を振り回しながら歩く陽太の足元に、落ちていた普通の大根。空いた手で拾い上げる。
真ん中辺りが少し削れているのは牙の跡だろう。

「つまりこいつをとっちめれば終わりってわけだ」

残った犬を睨みつける。犬は後退しながらも戦う意思は依然変わっていないように見えた。
418『月下の魔剣』:2010/03/01(月) 00:00:10 ID:Dngmcpd7

「こいつで…決める!」

身体を横に捻り勢いをつけて、細長い大根を投げた。
意表を突かれた犬は脚を掬われバランスを崩した。その無防備な横腹に大根を叩きつけると、ついに折れる大根。
大根が折れるほどの凄まじい勢いで弾き飛ばされ、壁に叩きつけられる犬。

バチッ…何か機械がショートしたような音が聞こえて、犬は動きを止めた。
恐る恐る近寄って見る。荒い息は聞こえるが、立ち上がる様子はない。

「や…やった……すごいじゃん陽太!!」
「ふっ。こんな雑魚相手にな…」

振り向いた陽太が言葉を止める。どうしたのか聞こうと口を開けたその瞬間。

「伏せろ晶ぁっ!!」

叫ぶ陽太の剣幕に押されて、わけもわからずしゃがみ込んだ。
一瞬両手を合わせ、大きく引かれた陽太の手から大量の何かが散弾のように放たれる。
そのうち幾つかが、僕のすぐ後ろで何かに当たって弾けた。ギャン、と、今日何度か聞いた声。
陽太に手を引かれてその背中ごしにやっと見たのは、さっき逃げたと思い込んでいた犬だった。

「こいつ…逃げたんじゃ…」
「どっからかまわり込んでたらしいな。くだらねえ真似しやがって…お前の相手は俺だ」

僕を背中で押して犬から離し、両手を合わせてもう一度、手の平に大量に発生させるそれは

「ショットガン…ナッツ!」

クルミだった。大概予想はついたので突っ込むのはやめておいた。

陽太と犬の距離は数歩。犬よりも先に動いたのは陽太。右手のクルミを投げると同時に走り出す。
走りながら両手を合わせ、新たな武器を生み出した。
緑の持ち手の先端に、白く丸い球体。その大きさは頭部を超える。

「終わりだ!! レイディッシュ・桜島(ロゼオ)オオォッ!!!!」

クルミの嵐で動けない犬の頭部に、十分な勢いをつけて丸い大根が叩きつけられた。
砕ける大根。潰されるように地に伏せる犬。その頭部の宝石に、ビシッと小さなヒビが入るのが見えた。
バチチチッ…激しく火花が散り、犬は動かなくなった。

「お…終わっ…た?」
「ま、こんなとこだな」

これが当たり前、とでも言うように軽く、すっと振り返る陽太。
以前だったら信じがたいことだけど、その姿は…まるで本物のヒーローのように見えた。


<続く>

ちなみに…

守口大根:大阪の守口が起源とされる世界最長の大根。長いもので2mにも達する。直径は2.5p程度。
桜島大根:鹿児島県特産品の世界最大の丸型大根。平均的なものでも重量6kg、直径30pを超える。

食べ物を大切にしましょう。犬を殴ったりすると罰が当たるぞ。
419 ◆IulaH19/JY :2010/03/01(月) 00:17:26 ID:IphR+PGe
>>407-409>>413
どもっす!
やはり皆それぞれのスレに分散しているのねw

>>410
新設定来た!不干渉能力面白いなぁ。
そしてセイはまさかの女の子。
続き期待してます!

>>414
キャー!フォグサーン!
かっこいいです!
あの漫画の続きは期待しているっすw
420 ◆IulaH19/JY :2010/03/01(月) 00:26:18 ID:IphR+PGe
>>418
大根無双しやがったwww相変わらずセンスがすごいwww
ロゼオwwまさかワンピースか?ww
投下乙です!
421創る名無しに見る名無し:2010/03/01(月) 01:05:47 ID:Ai+tOYa+
>>418
大根スペック高すぎだろwwwww
守口・桜島は相変わらずセンスすなぁ、面白い
422創る名無しに見る名無し:2010/03/01(月) 02:11:09 ID:yqUjAN5Y
投下乙!
中二病が素敵過ぎるwww
423 ◆akuta/cdbA :2010/03/02(火) 20:10:14 ID:UfjUUkcg
>>343の続きこれでおしまい。能力ものってより鉄っちゃんの変態独白に。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=902

>>417
澤井たんファンの自分に隙はなかった。くるみ強すぎふいたw

一応キャラも載せておきまんもす。

・川芝鉄哉  ♂/26歳
バフ課に勤めている。隕石衝突の日に家族を失い
マンションに暮らしている。ヘビースモーカー。下戸。
《昼の能力》
名称 … 猛毒ガス
【意識性】【具現型】
半径5メートル以内なら、自分の指定した場所に毒を発生できる。
致死量・効果範囲も指定可能。なお、自分自身には何故か毒が効かない。
《夜の能力》
名称 … 煙
【意識性】【操作型】
煙草等、口から吐ける煙を自在に動かせる。動くだけで特に
攻撃性も何もない。

・八地 月野  ♀/16歳
実家と高校が離れているため、鉄哉のマンションに下宿して
学校に通っている。超甘党。二つ年下の弟がいる。
《昼の能力》
名称 … 燃焼化
【意識性】【変身型】
手に触れたものを一瞬にして丸コゲにできる。火や炎を使うのではなく、
高温で溶かす事に近い。
《夜の能力》
名称 … 人間ライター
【意識性】【変身型】
頭のてっぺんから足の先、髪の毛、体のどこからでも火を出す事ができる。
本人は熱くない。
424創る名無しに見る名無し:2010/03/02(火) 20:35:44 ID:brDtYaMC
>>423
鉄っちゃん!どうしてそこでちゅーをしないんだ!ちゅーを!
投下お疲れ様ですw
425Beyond the wall (2) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/02(火) 22:31:25 ID:Fxy1mqqr
避難所に投下したのの再掲です
----

ホテルの一室で、なぜか正座で対面する衛とセイ。
「参ったな。ジョーはいつも起きるの遅いから、油断してた。」
「セイさんは、その……。」
「カギが壊れてるホテルなんて選ばなきゃよかった。」
「あの……。」
「ああ、ごめん。そう、本名は月宮星夏、歴とした女だよ。」
セイは男装の理由を衛に語りはじめた。

クレーターの中でも比較的安全な海辺の町で星夏と情は生まれ育った。
他に歳の近い子供がいなかったため、ふたりはよく一緒に遊んでいた。
そして星夏はいつしか情に淡い恋心を抱くようになったのだ。
ところがある日、情は一家もろとも、誰も知らないうちに忽然と町から消えてしまった。
情が十二歳、星夏が十歳、まだ星夏の能力がどちらも覚醒していなかったときである。

七年後、それでもますます星夏の想いは募るばかり。
ある日、星夏が砂浜を歩いていると、大きめの石がひとつ置いてあった。
別に海岸に石など珍しいものではない。
しかし、その石は特別だった。マイルストーンの能力が込められていたのである。
ここに置いてあると塩の満ち干で簡単に流されてしまうはず。
とすると、情はまだ近くにいるはずだ。
星夏は急いで情のあとを追いかけた。少年、セイとして。

「その石には、ジョーの男装少女フェチとしての熱い想いが、言葉にすると原稿用紙百枚分くらい込められていたんだ。」
「……もしかして、それだけの理由で?」
「うん。」
もっと深い、たとえば家庭の事情だとか、敵の組織に命を狙われているので身を隠す必要があるだとかを想定していた衛としては肩すかしを食らった気分だった。
「じゃあ別に隠す必要は……。」
「甘い! 『自分から正体を名乗ってはいけない』、男装少女の心得その三だ!」
「それも、マイルストーンに入ってたんですか……。」
「もちろん。」
もう勝手にして、と衛は思ったとか思わなかったとか。
426Beyond the wall (2) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/02(火) 22:32:13 ID:Fxy1mqqr
所変わってとある建物の中、三人の男が土下座する姿を一人の男が上から眺めていた。
「それで、まさか丸めたティッシュにやられたと?」
「い、いえ、ですからその、それが銃弾のように……。」
歯切れの悪い言い訳を上の男が脈絡のない質問で遮る。
「君たち、カニは好きかね?」
上の男が手を鳴らしたのを合図に、天井から数え切れないほどのカニが三人の男に降り注いだ。
「私は大嫌いだ。」
三人の男の悲鳴が建物の外にまで響いた。

情が起床し、朝食を終えたあと、衛・セイ・情の三人は次の目的地を目指す。
クレーターでは有力者によって日々ナワバリ争いが繰り広げられている。
クレーターの外でまで事件を起こすとなると、犯人はナワバリのボス格の人間である可能性が高い。
そこで三人はこの一帯を支配していると言われている人物の屋敷を訪れることにしたのだった。

「ようこそ、我が屋敷へ。」
声の主は白スーツをびしっと着こなしワイングラスを携えた男だった。
男はとても登れそうにない三階くらいの高さの出窓に立っていた。
「私のことはドウラク、とでも呼べばいい。もちろん偽名だが。」
そこまで言い終えるとドウラクは余裕たっぷりにワインを口にした。
情が、その態度が気に入らないとばかりに凄んでみせる。
「単刀直入に聞く。お前が外の人間を連れ去ったのか?」
情の鋭い目つきにもドウラクは全く動じない。
「そんなことは知らん。だが。」
ドウラクの表情が笑顔に変わる。
「侵入者は排除しなくてはな。」
その顔はこれから三人を倒せるのが嬉しくてたまらないという顔だ。
パチンという音が静かな屋敷に高らかに響く。
そして、カニが落ちてきた。

つづく
427創る名無しに見る名無し:2010/03/02(火) 22:33:12 ID:Fxy1mqqr
んで感想

>>417-418
大根TUEEEEEEEEEEE
しかも大根を使い分けるとか凄い

>>423
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 シャンプー!シャンプー!
 ⊂彡
428創る名無しに見る名無し:2010/03/02(火) 22:44:02 ID:Fxy1mqqr
重要なことを忘れてた…


避難所できたよ!
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1267446350/

429創る名無しに見る名無し:2010/03/02(火) 22:54:46 ID:Q43RJiCo
カニは何だwそれ能力なのかww
あくまでハードでシリアスな話かと思ってたけど結構遊び心あるのね
430創る名無しに見る名無し:2010/03/02(火) 22:55:11 ID:M/f+juhQ
>>423
やっぱ同棲してたw

>>425
カニの能力怖いな。
どこぞの大根とはえらい差だw
431 ◆akuta/cdbA :2010/03/02(火) 23:54:01 ID:UfjUUkcg
蟹と大根あわせたら美味しい鍋ができそうな気がするじゅるり
そして連投ごめん、こちらも投下。ルローちゃん。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=904.jpg

ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm9818699
この「にゃにゃにゃにゃにゃにゃ(ry」の声が離れなかったせいで…
432創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 00:03:25 ID:RraE5Uny
>>431
おおお、可愛いw
投下乙です!
433創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 00:03:43 ID:Fxy1mqqr
にゃっにゃっにゃっ
かわいい
猫口が特にかわいい
434369 ◆VECeno..Ww :2010/03/03(水) 00:30:24 ID:3Bcry6y3
>>431
かわいいいいいいいいいいい!1!!!


投下いきます
435比留間慎也の考察(第2回):2010/03/03(水) 00:33:04 ID:3Bcry6y3
こんばんは。
前回の講義を聞いた人は知っていると思うが、僕の名は比留間慎也(ヒルマ シンヤ)だ。
普段はとある組織で“隕石に起因する超能力”の研究分析を行っている。

この講義は今晩で第2回目だ。
今回からは研究の結果明らかになった“能力の性質”について紹介していこう。

といってもまだこの分野の研究は始まって間もない。
この講義で取り扱うものの多くは研究途中のデータや仮説にすぎないので、ひょっとしたら間違っているかもしれない。
(まあ科学の理論と言うのは、ある意味では須らくそういうものなのだが、この分野は研究が始まってまだ間もないので、特にその傾向は顕著だ。)
その点に関しては常に留意しておくように。
436比留間慎也の考察(第2回):2010/03/03(水) 00:35:10 ID:3Bcry6y3
*補講(第1回)
と、その前に、前回の講義で飛ばした部分が何点かあるので、本題に移る前にちゃちゃっと説明してしまいたいと思う。
世の中にどんな“能力”がありうるのかを知りたい人だけ聞いてくれればいい。

それと、前回の>>367
(書き換えられた法則は)「時間的、物理的に限られた範囲内」(にしか適用されない)
と言ったと思うけど、正しくは「時間的、空間的に限られた範囲内」だ。訂正しておいてくれ。


**意識性能力についての補足

意識性、と書くと、使用者が意識を失えば(気絶させるor眠らせる)能力は解除される、と誤解されるかもしれないので補足。
確かにその方法は有効なことも多いが、すべての能力に対して通用するとは限らない。
使用者が意識を失っても効果が発揮されつづける能力もあるし、中にはコントロールが失われたことで暴走を始めてしまう能力もあるだろう。

また、基本的に能力は日の出日の入りをまたいで使用し続けることはできない。
しかしこれも法則ではなく傾向に過ぎないようで、意識型能力の中には一旦発動してしまうと日の出や日の入り後も効果が継続する能力も(非常に稀な例だが)確認されている。


**無意識性能力についての補足

使用者の訓練次第では意識を集中させることで一時的に能力を停止できる場合もある。
もちろん、すべての無意識型能力においてそれが可能というわけではなく、
また大抵の場合は非常な努力と集中力を要する芸当であることには留意しておいてほしい。
437比留間慎也の考察(第2回):2010/03/03(水) 00:40:48 ID:3Bcry6y3
長い前置きだったけど、それではこれから講義を始める。
今晩のテーマは、「昼の能力」と「夜の能力」が切り替わるタイミングについてだ。


*「昼の能力」と「夜の能力」が切り替わるタイミングについて

1人の人間が2つの能力を持っていて、それぞれ「昼」「夜」にしか使えないことが分かった。
その次は当然、「じゃあその昼夜の判定基準ってナニよ?」って疑問が出てくると思う。

これについてはだいぶ前からいろいろな議論がなされていて、たとえば>>52でいろいろな仮説が立てられていたりするけど、
専門家たちの間では「体内時計」説が今のところ一番妥当だとされているようだ。

しかし、有力じゃない、というだけで排斥するのもアレなんで、
一応、他の説についても専門家たちの検証結果を解説しておこう。
438比留間慎也の考察(第2回):2010/03/03(水) 00:42:43 ID:3Bcry6y3
**光度判定説の欠点

まず、「明るさで判定する」という説は、ある意味では合っているが、核心をついてはいない。
夜中に明るい部屋で「昼の能力」を使おうとしてもあまりうまくいかない、というのは諸君も経験済みだろう。
同様に、昼間に暗い部屋で「夜の能力」を使おうしても上手くはいかない。どうやら“能力”には太陽の光が大きく関係しているらしい。
もっとも、“太陽光と同じ性質を持つ光”を当てることによって、人工的に発動タイミングをずらせるのではないかと考えている専門家もいるらしいが。


**時刻判定説の欠点

「絶対時間」(標準時)で決定されるという説もある。
ここでいう絶対時間説とは、例えば現地時間で6:00〜17:59の間の12時間は「昼の能力」、18:00〜翌5:59は「夜の能力」が使える、というような説のことだけど、
しかし、この説には致命的な欠点がある。

まず思いつくのは、季節によっては日の出や日の入りの瞬間と切り替わりの瞬間との間にかなり大きなズレが生じてしまうという問題だ。
日本国内だけで見ても、冬至と夏至では日没時刻にかなりの差がある。
さすがに真っ暗になっても「昼の能力」が発動していたり、日が昇ってもしばらく「夜の能力」が使えたり、というのはマズかろう。

外国にまで視野を広げるともっと極端な例を出すことができて、たとえば夏のフィンランドやドイツなどでは夜8時になっても日が沈まなかったり(いわゆる「白夜」というヤツだ)するので、
一律に6時から18時までは「昼の能力」の時間帯、と見なしてしまうのは都合が悪い。

そもそも時刻なんてものは近代の人類が勝手に決めた時間の基準にすぎないのであって、自然現象(隕石によって齎されたわけだし。)がそれに従って動くとは考えにくい。
(たとえばロシアのウラジオストクは日本の明石市よりも西にあるにも関わらず、日本よりも東にあると見なして時差が計算されていたりする。)

「地域や季節によって基準となる時刻が違うんじゃないか?」という反論も一応成り立つけど、
そうすると事実上光度判定説や体内時計説と変わらなくなってしまうし、変わらないのだったらそれらの説を採ったほうが話が早いだろう。
439比留間慎也の考察(第2回):2010/03/03(水) 00:46:00 ID:3Bcry6y3
**体内時計説

体内時計を知らない人のために簡単に説明すると、
人間を始め、ほとんどの生物は「概日リズム」という約24時間のリズムに沿って生理現象(寝るとか)を行っている。
このリズムは本能の一種で、ずっと日光の当たらない環境に居たとしても保持される。いわば体の中に時計を備えているようなものだ。
そこで、各々の生物が持っているこのような時計を「体内時計」と呼ぶ。
ちなみに、もしこの時計にズレが生じたとしても、日光を浴びることでズレが直るしくみになっている。
(ここまでは隕石衝突前の地球の科学でも分かっていたことだ。)

そして、検証実験の結果、隕石による能力もどうやらこの「体内時計」に従っているらしいということが分かった。
つまり、基本的には日光がない場合は、その人が直前で生活していた場所での日の出や日の入りの時刻によって「昼」と「夜」どちらの能力が使えるかが決定される、ということだ。
(ただ、この実験はまだ数回しか試みたことがないため、まだ正確な事は分からない。真相の究明にはさらなる追試が必要だろう。)
440比留間慎也の考察(第2回):2010/03/03(水) 00:51:04 ID:3Bcry6y3
ただし、先程「“概”日リズム」といったように、生物の体内時計は正確に24時間というわけではない。
(人間の場合は、個人差はあるが大体25時間などと言われている。)
普段の生活においては、この一時間ほどのズレは“太陽の光”によって修正されているが(逆にいえば、修正が利くようになっている、ということである。この環境適応能力は生物の進化の過程で有利に働いてきただろう。)
日の当らない空間の中で長時間過ごすとか、もっと単純に海外に行く(時差があるからね)ことで「ズラす」ことができてしまう。


でも、こうした「ズレ」を利用した能力の活用(悪用)は、うまいことにうまくいかない。

理由は簡単、つい今しがた言った通り、体内時計は太陽の光で修正されてしまうためである。
仮に意図的に体内時計をずらし、「昼」に「夜の能力」を使えるようにしたとしても、外に出て日の光を浴びた瞬間、その努力は水の泡になってしまう。(「瞬間」といっても個人差はあるだろうけど)
しかも体内時計と外界の時刻が著しくズレている場合(「時差ボケ」がひどい場合)、体内時計の調整が終わるまでは能力がうまく使えなくなってしまうという実験結果が報告されている。
まったく生物の体というのは、上手く出来ているものだ。

また、近くで昼の能力(or夜の能力)が使用されると、体がそれに反応して昼夜を認識してしまう場合もあるらしい。
これが本当だとしたら中々興味深い事だ。
441比留間慎也の考察(第2回):2010/03/03(水) 00:53:17 ID:3Bcry6y3
**能力の切り替わり方
昼夜の能力が徐々に切り替わるのか、あるいはある時点を境に瞬間的に切り替わるのかについては個人差がある。
また、同じ人でも体調や日によって切り替わる速度に差があるようだ。

***アナログ的変化
前の時間帯の能力が徐々に弱まっていき、次の時間帯の能力が徐々に強まっていくパターン。

***デジタル的変化
ある瞬間(多くの場合日が差した瞬間)に瞬時に能力が入れ替わるパターン。


僕が思うに、これは人間が眠りに入るときや夢から醒めるときに似ていると思う。
布団に入ってすぐに眠ることができる人もいれば、布団の中でいろいろ考えているうちにだんだんと眠りに入っていく人もいる。
何の前触れもなく目を覚ます場合もあれば、夢の中に現実の情報(音など)が入り混じってきてそれから目が覚める場合もある。
442比留間慎也の考察(第2回):2010/03/03(水) 00:56:02 ID:3Bcry6y3
**「昼」「夜」の具体的条件

まとめると、
・屋外では基本的に「日の出」「日の入り」で判定。
・密室や窓のない建物、極地方などの特殊な条件下では体内時計で判定。
・徐々に切り替わるのか、ある時点で瞬間的に切り替わるのかはその人次第、体調にも左右される。
・近くで使われている“能力”が昼の能力か、夜の能力かといったことも体内時計に影響を与える。(要検証)

ということになる。

この他にも「最も近くの隕石が衝突した場所での時刻」「実は時間帯の基準になる能力を持つ人物がいる」
などいろいろな説が唱えられているけれど、どれも説得力や根拠の面ではどうしても体内時計説には劣ってしまう。

とはいえ、学会はそれほど排他的なシロモノじゃない。他の説や反証が出てくれば体内時計説が覆されたり修正されることがあるかもしれない。
もし何か新しい、面白い説があれば学会まで届けてほしい。その時は僕も考察に参加するとしよう。


というわけで、今夜の講義はここまでだ。
あと、質問は常に受け付けている。
また何か分からないことがあったら呼んでくれよ。
443創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 00:57:27 ID:um4IDiWe
俺52だけど、こんなすごい考察が来るとは思わなかった
理路整然としてやがるぜ……
444比留間慎也の考察(第2回):2010/03/03(水) 01:00:42 ID:3Bcry6y3
***補足
本文中では説明を省いたが、体内時計の修正に使われる自然の要素は太陽の光だけではないようだ。
本文の表現だと、外国へ旅行して夜に現地へ到着した場合、時差ボケを直す要素がないために「昼の能力」が使えてしまうようにも読み取れるが、
実際にやってみるとやはりうまくいかない。

また、人工的に太陽の光を当てるにしても、それなりの量の照射が必要となる。
曇りの日でさえ、屋外は照明をつけた室内よりもずっと明るいのだから。

ちなみに、専門的に言うと「概日リズム」は日光などの修正要素を加えない状態でのリズムのことであり、
生物が普段従っているのはこれに修正要素を加えた「日周リズム」である、というのが正しい表現になる。
……まあ、生物学者を志すのでなければ覚えなくてもいい知識だろう。
445創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 01:01:52 ID:3Bcry6y3
ここまで
第2回は昼夜の判定についてでした。
大分私の意見が入ってしまいましたが、物議を醸しそうなので
あくまでも「隕石衝突から4年後の時点での科学者の見解です」と予防線を張っておきます。
慎也さんありがとうございました。
446創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 01:02:38 ID:um4IDiWe
おっとごめん、割って入っちゃった
447 ◆VECeno..Ww :2010/03/03(水) 01:08:47 ID:3Bcry6y3
>>446
うんにゃ、紛らわしいところでやって来るバイさるがすべて悪い
448創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 01:20:11 ID:sfJ0ZRKC
昨日ぐらいに比留間慎也の名前の意味に気づいてひとり笑ってたり
>>441の夢の例えとかよく思いつくなぁ
449Beyond the wall (3) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/03(水) 01:55:05 ID:sfJ0ZRKC
一度始まったらなんだか筆がスイスイ進むw
投下、
>>410-411
>>425-426
の続きです
450Beyond the wall (3) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/03(水) 01:55:58 ID:sfJ0ZRKC
「セイさん、情さん、大丈夫ですか?」
不干渉の能力でカニを避けた衛が問いかけた。
「オレは大丈夫だがセイが……。」
セイは気を失っていた。物理的な衝撃ではなく、精神的なショックのようだ。
「ったく、だらしねえな。」
「ハハ……。」
床ではカニが地面をうごめいている。
女の子はこういうの苦手なんだろうな、と思い苦笑いする衛。
「ま、こんなしょぼい能力に頼ってお山のボスザル気取りの野郎なんて相手にならないがな。」
情は挑発を止めない。
だがドウラクのほうも依然落ち着いた様子である。
「天井からカニを降らす能力などと誰が言ったのかね?」
「な……熱っ!」
「情さん!?」
衛が振り返ると、そこには転げまわる情の姿があった。
「カニを降らせたのは単なる屋敷の仕掛け。私のライトエグザは、『カニをボイルする能力』!」

衛は考えをめぐらせる。自分の能力では生きたカニと味方ふたりを干渉させないようにすることはできない。
この屋敷の壁に能力を発動させてドウラクを落とすことはできるが、
ドウラクは出窓に立っているため壁の向こうに落ちて逃げられてしまう。
一番役に立ちそうなセイは気絶したまま。
壁には三メートルくらいの高さまでは何もなく、衛がよじ登ることもできそうにない。
「情さん、ここは一旦退いて態勢を整えなおしましょう。」
「おっと、私がなぜ自分のエグザをわざわざ教えたか分かっていないようだな。」
「何!?」
「私はこの能力で世界中のカニを絶滅させることもできる、ということだ。
 一週間もすればもう人類は二度とカニは食べられなくなる。
 それ以上に、種の絶滅は生態系にどんな影響を及ぼすか分からない。
 この世界の全カニが人質だということを忘れるなよ。」
「くっ……。」
451Beyond the wall (3) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/03(水) 01:58:23 ID:sfJ0ZRKC
ドウラクが衛と会話している間に、情は再び立ち上がっていた。その顔に不敵な笑みを浮かべて。
「おっさん、今の言葉、ちゃんとこいつらに伝えてやったぜ。」
いつの間にか屋敷の中の大量のカニたちが壁を登ってドウラクの元へ向かおうとしていた。
「これは……! 貴様、一体何をした!」
「生憎だが、さっき言ったことが全てだ。」
マイルストーンの能力は思念を心の声として伝える。
この心の声というのは人間の言語という枠を超えて理解できるものなのだ。
だから外国人や生まれたての赤ん坊、果ては人間以外の生物にも思念を伝えられる。
そして、思念を込める物体というのは実はなんでもいい。
この場合「なんでもいい」というのは生物でも、さらには自分自身の体でもいい、ということ。
つまり、ドウラクの問いに馬鹿丁寧に答えるならば、
「マイルストーンの能力で、情自身に『ドウラクはカニを利用している』という思念を込め、それをカニに受け取らせた」となる。

ドウラクはすぐに余裕を取り戻していた。
ゲームを楽しむように、一気には事を終えず、目についたカニからボイルしていく。
「ふははははははは、下等生物が!
 なぜ気が変わったのか知らんが、お前らが束になってかかろうと私のエグザには敵わない!」
「それはどうかな。」
声の主は、この場で初めて口を開いた者であった。
「セイさん! 気がついたんですね!」
「さすがにあの熱さじゃね。」
もはや床の上に残ったカニは程よくボイルされたものだけ。
既に、セイはゆで上がったカニを、見えない弾倉にセットしていた。
中途半端に握られた手のすぐ上でカニが宙に浮いている光景はかなりシュールである。
「なんだそれは。まるでけんじゅ……!」
ドウラクは思い出した。部下の三人がどうやってやられたかという報告を。
そして今自分に向けられているのがおそらくその能力である、ということを理解した。
「まさか……やめろ……カニを絶滅させるぞ!」
「やってみるといいよ。間に合うんならね。」
次の瞬間、轟音。ドウラクは自分が殺した生物の体の直撃を受け、倒れた。

「お、こいつは食えそうだ。」
戦闘後、情はカニを拾い集めていた。
「情さん、なにもそこまで……。」
「馬鹿野郎! クレーターでは食料も限られてるんだぞ! あ、ラッキー、ズワイめっけ。」
その後姿を見て、衛はひそかにセイに尋ねる。
「あんなののどこがいいんですか?」
セイは笑うしかなかった。
452Beyond the wall (3) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/03(水) 02:02:06 ID:sfJ0ZRKC
つづく

キャラ紹介です
主役3人はたぶん次回
この話では負けた敵はもう出ないので自由に使っちゃってください

・ドウラク(本名不明)
「クレーター」の一地帯のボス。白スーツ。
紳士的な口調だが、傲慢。カニが嫌い。
《昼の能力》
名称不明
【意識性】【操作型】
カニをボイルする能力。その能力は世界全土に及ぶ。
《夜の能力》
不明
453創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 02:04:13 ID:sfJ0ZRKC
以上です
454創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 04:38:15 ID:7fS52WhK
なんだこの能力w
ショボいけどある意味すげー
455創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 10:43:05 ID:XydUDEqu
限定的すぎるwww
しかし発想と攻撃方法が面白い
456創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 10:51:35 ID:3Bcry6y3
全世界射程圏内www
457『月下の小ネタ』:2010/03/03(水) 18:29:53 ID:O5v6566z
>大根無双しやがったwww
>大根スペック高すぎだろwwwww
>くるみ強すぎふいたw
>大根TUEEEEEEEEEEE

陽太「レイディッシュ…」
晶「(まだ言ってんのかコイツは)もーいいじゃん大根でさー。すごい褒められてんじゃん」
陽太「まあ…いいけどさ……」
晶「何、まだ何か気になるって?」
陽太「これはあくまでただの大根なわけで…この能力使いこなして戦ってんのは俺なわけでさ…」
晶「………(メンドくせっ! この厨二酷くメンドくせっ!!)」

>カニの能力怖いな。
>どこぞの大根とはえらい差だw

陽太「ふっ…本編で使う場面まで見せたくなかったが…仕方ないっ!」
陽太「サイレント・シールド!!」ポン
晶「わーでっかいカニ。魚介類とかも出せるんだ」
陽太「俺の能力は万物を生み出す力。こんなこと造作もない」
晶「で、どう使うのそれ」
陽太「全てを沈黙させる最強の盾。防げないものは無い」
晶「ふーん…ま、いいけどさ。アレだよね」
陽太「?」
晶「そーやってカニ持って構えてるのってさ。大根以上にビジュアルがアレだよね」
陽太「うるせえエエエェェ!!!!」

パァァァァ(朝日)

ドウラク「ふははははっ!! 私のライトエグザはっ!!」
陽太「敵かっ! くそっこんなタイミングでっ!」
晶「突然誰ですか」
ドウラク「カニをボイルする能力っ! さあ味わうがいい!」
陽太「何いっ!! 熱っちぃああああ!!」
ドウラク「ふはははははは、煮え尽きろ下等生物が!」
陽太「手が…焼けるっ!! ぐああぁぁぁ……」
晶「いや離そうよ」
陽太「だがっ!!こいつを倒すためにはこの武器を手放すわけにはいかないっ!!」
ドウラク「さあさあいつまで耐えられるかな! どんどん熱くなるぞ!」
晶「ほっといても害なさそうだけどねこの人」
陽太「ならばっ!!このままいけええええぇぇ!!うおおおおぉぉ!!!!」
ドウラク「な、何ぃっ!!」
陽太「サイレント・ヒート・ハンマアアアァァ!!!!」ボコォン
ドウラク「ぐあああぁぁ!!熱っつああああぁぁ!!」
陽太「熱っつああああぁぁぁ!!」

晶「どうしてこうなった」

<おわり>
458創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 18:46:52 ID:O5v6566z
>>431
猫かわええええぇぇ!! こんな顔して殺人鬼か、尚更恐ろしいな

>>435
素晴らしい考察。気になってたところをよくぞやってくれました。
陽太の場合はあれね、昔から晶基準で昼夜判別してたからプラシーボ効果ってやつで。

>>450
こんな能力バトル見たことねえwww
最初の雰囲気に反して意外とギャグ寄りだったのね。なんでもありで面白い
自由に使っていいとのことなのでさっそく自由に使わせてもらいました

本編はも少し続く予定
遊んでないでさっさと書こうぜ俺…
459創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 20:36:07 ID:RraE5Uny
>>445
ヒルマシンヤさん考察お疲れ様です!
無意識性と意識性には差異があるのか〜
てか、朝夜の切り替えについて考察が詳しくてすごい!

>>451
テラシュールwマイルストーン効果範囲広くて良いなぁw
この後どのような展開になるのか
投下乙です!

>>457
なんという人物の共演wてか陽太w
熱いってww
投下乙です!本編待ってます〜
460創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 22:36:18 ID:sfJ0ZRKC
(まずいっ、これより面白い能力は用意してないっ!)

>>457
なんという(物理的に)熱いバトルww
ツッコミが冴えてるな
461創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 02:10:53 ID:sEVlPQhl
蟹を「サイレント」と称するネーミングセンスが素敵だw
462創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 16:30:21 ID:yuB8Tj07
パワ原&カツラがイマツ
463創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 22:38:56 ID:h1CB/4iw
故・天野翔太くんが他所でやたらいい思いをしてるw
464創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 22:46:58 ID:5VngyEGm
チラリズムというものを教えてあげたい
465創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 23:04:51 ID:duLXpqhe
チラリズムなんてしたらエロくなっちゃうでしょ
創発版はエロ禁止なんだよ
466創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 23:19:00 ID:Xob1/dn1
チラリズムが18禁と申すか
467創る名無しに見る名無し:2010/03/04(木) 23:42:08 ID:0+uKae8G
チラリズムでもやりすぎたら18禁
468創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 17:15:12 ID:eK7LoLa6
まあ、何をチラするかによるからな
モツチラとかもやりすぎたら18禁だし
469創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 17:38:08 ID:dk/9hYmi
「ほらほらーモツ鍋だー」チラッ
「気になるだろー食いたいだろー」チラッ
470創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 18:09:30 ID:EThMGaPp
仮に毛糸のぱんつならチラリズムした所で全然気にならな……
ん?誰か来たようd
471創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 18:24:51 ID:dk/9hYmi
火事だー!
472Beyond the wall (4) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/06(土) 06:11:29 ID:cXpmkXms
>>449-452の続き投下します
473Beyond the wall (4) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/06(土) 06:12:09 ID:cXpmkXms
クレーター内のほとんどの娯楽施設は廃業して何年も経つが、ここもその例に漏れない。
とある天文博物館。その中で戦いは始まろうとしていた。
「君たちがドウラクを倒した三人だね。僕はハカセ。この辺りのリーダーさ。
 ククク、ぜひ君たちを部下にしたい。」
自分の台詞だけ言い終えるとハカセはさっさと館入口の大きな天球儀の裏に隠れてしまった。
衛たちは二手に分かれすぐさま回り込む、回り込む、回り込む……。
「なんだ、どうなっている? 全然奴にたどり着けないぞ!」
必死で走っているはずなのに何故か天球儀の裏側までの半分の地点にすらたどり着けない。

ハカセのライトエグザは「円周率を変化させる能力」である。
円周率とは直径に対する円周の比。天球儀を回り込むには円周以上の距離を要する。
三人は知らずに途方もない長さを走らされようとしているのである。
「そして夜になってヘトヘトになったところを僕のダークエグぶぼげっ!」
「回り込むのが駄目なら、中を通ればよかったんだ。」
円周は変わっても直径は変わらない。衛は不干渉の能力を使って天球儀の中から向かっていった。
衛に殴られたハカセはあっさりと倒れた。

「結局ここも手がかり無しか。」
衛は未だに弟の足取りをつかめずにいた。
さらにその一方で戦闘は激化していく。ナワバリのボスを次々と倒していく三人組の噂が流れたのだ。
敵は昼夜かまわず襲ってくる。特に夜は闇に紛れて奇襲を受けやすい。
「貴様らを倒して俺たちもナワバリを持つんだ!」
「ほざけ。」
情が眼を光らせる。昼はあまり戦闘に向かない能力なだけあって、存分に暴れられる夜は楽しみらしい。
天に向かって手をかざす情。すると巨大な岩石が現れた。
直径十メートルほどの岩石が完全に姿を現すと情は思い切り手を振り下ろす。
「まさか……。」
そのまさかだった。岩石はすとーんと落下する。この能力、その名を「ストーン」という。
「ひえええええ!」
「おっと、逃がさないよ。」
ストーンから逃げた敵にはセイが追い討ちをかける。
大気中の水分を指先に集め撃ち出す「アクアショット」の能力で。
「すごい……。」
ふたりの能力に完全に打ちひしがれる衛。
衛の夜の能力。それはいかなる攻撃、事故をも防ぐ無敵の防御。
しかしそれは衛が誰にも危害を加えないことが前提だ。
もし衛が誰かを攻撃した場合、その無敵の能力は次の日没まで失われる。
衛は自身のふたつの能力をこう卑下する。「自分だけが助かるための能力」と。
いや、こんなことを考えていては駄目だ。
ネガティブな気分を打ち消そうと、衛は目を閉じた。
474Beyond the wall (4) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/06(土) 06:12:54 ID:cXpmkXms
次の日、一行は新しい町に来ていた。
クレーターには珍しく、ちゃんとした町だ。
「それはな、エンマ様がこの町を治めておられるからじゃ。」
町で初めに出会った老人に導かれるままに、三人は階段を上っていく。
やがて高台にあるひときわ大きな建物に連れられた。

それなりに豪華な内装だ。広間では美女が玉座に座っている。
彼女こそがこの町の主、エンマだった。
衛がエンマに尋ねる。
「あなたはクレーターの外の人間を連れ去った人物のことを知っていますか?」
「おそらく隣のクレーター最大のナワバリのボス、キングの仕業だろう。
 奴め、なにやら軍隊を作るとか抜かしてやがった。」
酒を一気飲みするエンマ。
「ところで、そこの一番背の高いお兄さん。」
杯を扇に持ち替えて情を指す。
「あん?」
「死ね。」
そう言われた瞬間、情はその場に崩れ落ちた。

つづく
475Beyond the wall (4) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/06(土) 06:14:22 ID:cXpmkXms
キャラ紹介


・ハカセ
「クレーター」の一地帯のボス。打たれ弱い。
《昼の能力》
名称不明
【意識性】【操作型】
円周率を変化させる能力。
《夜の能力》
不明


・東堂衛
高校生。弟を救うために「クレーター」に来た。
《昼の能力》
名称 … 不干渉
【意識性】【変身型】
衛と彼が身に付ける生物以外のもの(主に服)を、この世のあらゆる物質・現象から干渉しなくさせる。
つまりお互いに触れることができないという状況を作り出す。
固体を貫通したまま能力を解除すると、能力が掛かっていた側が押し出される。
《夜の能力》
名称 … 無敵
【無意識性】【変身型】
いかなる攻撃、事故をも防ぐ。
ただし衛が誰かを攻撃した場合、この能力は次の日没まで失われる。

・月宮星夏(セイ)
「クレーター」で真山情と旅をしている男装少女。情に恋心を抱いている。
《昼の能力》
名称 … ピストル
【意識性】【操作型】
物体を弾に見立てて銃のパントマイムをすると、実際にその物体が銃弾の速度で撃ち出される。
《夜の能力》
名称 … アクアショット
【意識性】【操作型】
大気中の水分を指先に集め撃ち出す。

・真山情
「クレーター」で月宮星夏と旅をしている。熱血漢。
《昼の能力》
名称 … マイルストーン
【意識性】【操作型】
物体に思念を込める能力。
思念が込められた物体に触れた者はその思念を心の声として聞く。
心の声は人間の言語という枠を超えて理解でき、外国人や生まれたての赤ん坊、人間以外の生物にも思念を伝えられる。
また、思念を込める物体は自分自身を含む生物の体でもよい。
《夜の能力》
名称 … ストーン
【意識性】【操作型】
空中に巨大な岩石を呼び出し、すとーんと落とす。
476創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 06:15:05 ID:cXpmkXms
投下終わり
477創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 13:13:25 ID:mOsNEuwF
テンション高え展開早えw
地味に強力だけどなんて主人公向きじゃない能力だ
478創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 16:29:41 ID:PYOv4OkT
エンマ!エンマ!
エンマ様が殺すって、どうなんだ?w
続き期待
479創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 23:18:11 ID:1ydYtDAY
あえて空気読まずに乱入投下します
このスレの「みんなでわいわいやろうぜ」的なふいんきに
堪らず書き殴ってしまいました
480創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 23:19:51 ID:1ydYtDAY

信号が、青に変わった。
一歩早く、娘が駆け出して、横断歩道を渡る――

おい走るな、と言おうとした矢先。
コツン、とつまづいた。

「あ」

続けて、ばたんと地面に倒れる。

――やっちまった。

案の定、それを契機に、娘が泣き出した。


「ちっ、泣くなら転ぶなっての」
俺はうんざりしながらも娘を抱え上げ、横断歩道を渡った。

4歳の娘は、まだびーびー泣いている。
こうなったら、いくら手馴れたおばちゃんがあやしたところで効果はない。
俺はそのことを経験的に知っている。


日の傾き具合を確かめてから、意識を集中させる。

クラクション、風がビルを掠める音、ショップの店頭で呼びかける売り子の声。

その場に存在するあらゆる音が、次第にまとまりを持ち、シンフォニーを奏でる。
リズムに乗って、整列した音があたりを包む。

娘はすぐに泣き止み、きゃっきゃ笑っている。

――ゲンキンなヤツだ、誰に似たんだろうな?


+ + +


スーパーで買物を済ませ、家路に付く途中だった。

ビルのオーロラビジョンでは、海の向こうの東洋の国の学者が、なにやら解説していた。

俺は足を止め、画面に見入っていた。
それが、例の「能力」に関することでなかったら、さっさと帰宅して、娘のために晩ご飯をつくっているところだった。

しかし――

「ヒルマ博士、か」

例の「能力」の研究では、第一人者だ。といっても、一般にはまだあまり知られていない。

俺だって、この「能力」に気づかなかったら一生縁の無い人物だっただろう。

481創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 23:23:26 ID:1ydYtDAY
あの、「掏り替え子の日」からまもなく、彼は「能力」の存在に気づき、研究を進めていたと言う。

2000年2月21日。

俺にとっては、複雑な思いの日だ。
隕石が衝突したまさにその日に、妻は死に、娘は生まれた。


妻の死因は出産に伴う多量の失血で、隕石とは直接関係が無いのだが、
俺は、あれが全ての災厄を運んできた忌々しいものに思えてしょうがない。

あの日以後、人々は様々な能力を手にすることになったようだが……
俺にとっては、そんなことはどうでもよかった。

しかし皮肉にも、俺の「能力」はなかなか生活の役に立ってはいるのだった。

その場に存在するありとあらゆる音を、意図的に鳴らしたり消したりし、音楽を奏でることができる。

その能力に気がついたのは、娘が生まれて1年ほどたった後だった。


+ + +


「この通りだ……なんでもする。どうか、仕事をくれないか」

俺は昔の友人に土下座をして頼み込んだ。

「おい、そんな真似よしてくれ。奥さんを喪って、心中察するよ……けど」

友人はちらりと傍らにあるベビーカーを見た。

「託児所が無いんだ」

「助手席に、乗せていく。世話は自分でするよ……形振り構っちゃいられないんだ」

「バカ言うな! まだ赤ん坊だろ?」


隕石が衝突したあと、俺は娘を連れて祖国に帰った。

タクシー会社をやっている友人の元で、運転手として生計を立てていくしかなかった。

ベビーカーを押して営業所へ行く。
助手席にチャイルドシートを付け、娘を乗せる。
それで後部座席に客を乗せるという、ムチャクチャな仕事をしていた。

当然、泣き出したりもする。

>「おい、なんだこのタクシーは! 赤ん坊なんか載せてんのか。つまみ出せ、オレは赤ん坊の泣き声が嫌いなんだ」
>「こんな小さい子を連れ回して。非常識なんじゃないの?」

俺は男だし、赤ん坊をあやす術など何一つ心得ちゃいない。
なにか面白がらせようと思い、リズムに乗せてハンドルをボールペンで叩いたのがきっかけだった。


娘は、リズムや音楽が聞こえるとピタリと泣き止んだ。

以来、俺は娘の機嫌が悪くなりそうになると、指を鳴らしたり口笛を吹いたりした。
482創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 23:26:36 ID:1ydYtDAY
しかし、客を乗せて運転している最中にそんなことはできない。

ある日、気難しそうなやくざ者を載せていた時だ。

娘が、グズりだした。

――まずいな。

客は、明らかにイラついている。
今にも懐から拳銃でも出しそうな気配だ。
しかも悪いことに、渋滞していてクラクションがあちこちで鳴っていた。

――鳴らすなら、せめて音楽奏でるみたいに鳴ってくれねぇかな……

祈るような気持ちでそう考えていたとき。

けたたましく鳴っていたクラクションが、次第に形を揃えて、秩序だってきた。
耳をすまして、良く聴くと、それは明らかに意図をもって鳴っているかのようだった。

奏でられた「音楽」は耳障りが良く、娘はまるでそれにうっとりと身を委ねているように、静かになっていた。

後ろの客は、ため息を一つ吐くと座席に沈み込んで寝に入った様子だった。


それ以来、ことあるごとに俺はその「能力」を試してみた。

耳に入る音を、いったんすべて引き受けて、イメージする音列に並べる……

そのとおりに、その場の音たちは、鳴ってくれた。


娘は、それをいつでも喜んだ。

この「能力」のおかげで、娘をあやすことは容易になった。
欲を言えば、料理が美味しくできる能力とか、掃除が一瞬でできる能力なども欲しかったのだが。


シンヤ=ヒルマ博士によれば、「能力」は一人に「2つ」授けられているのだという。

「昼の能力」と、「夜の能力」。

2つを同時に繰り出すことは、自然科学的に、不可能だ。
つまり、昼間・夜間それぞれの時間に於いて、人は一つの「能力」しか発揮できないのである。
483創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 23:29:19 ID:1ydYtDAY
↑以上です
バレバレですが、まだ続きがあります
自重したフリを装って、ここまでにしときました

すみません、酔に任せて発作的に書いて投下しました
今は反省しています
484創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 23:35:00 ID:CBHtcg+J
面白い能力だな
外国が舞台になったのは初めてでwktk
続き期待
485創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 23:38:37 ID:v1/Qju7j
乙。
イイヨイイヨー
486創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 00:36:44 ID:f3/onBjJ
>>482
ほう、新たな紡ぎ手が来たか…ナンツッテ
投下乙です!
487 ◆IulaH19/JY :2010/03/08(月) 00:27:46 ID:N/x65fQb
避難所どうしようかと思ったけど投下します
スペース取っちゃってごめんね

ゴトン、と海底に着く。水圧で胸板や腕の金属が軋む。
能力で狙ったが、風魔ヨシユキや、背中にひっついて一緒に跳んできた女が死んだかは海底からでは確認できない。
腕に力を込めるがワイヤーが絡まって動けなかった。
――生キテイルトイウ事ハ、ドウイウ事ダ?
――私ハコノママ、バッテリー切レデ、死ンデシマウノダロウカ?
フェムはあの時の事を思い出す。
空港でのテロに巻き込まれたあの日。
フェムのすぐ傍で爆発が起こり、フェムの体は血塗れになった。
それから息絶え絶えに崩壊した空港内を彷徨い、一人の博士と出会う。
「君、生きたい?」
――アノ日カラ、何モカモ変ワッテシマッタ。
――私ハ、マダ、何モ知リ得テハイナイ。
フェムはバーストモードに移行した。

海面に大きな水飛沫が上がった。
「何だ!?」
灯台の屋根の上で俺は怖気づく。ルローは欠伸をした。
特大の轟音がした。地面が恐ろしいほどに揺れる。
灯台ごと、防波堤が崩れていく。
「くそっ!」
眠そうにしているルローを掴んで海岸の砂浜に能力で跳ぶ。
「嘘だろ……」
いままで居た灯台は海へと崩れ落ちていく所だった。
どうやって破壊したと言うのか。
フェムが海底から現れてくる。
両腕からジェットエンジンのような部品が突き出しており、灼熱したように赤く白く輝いていた。
これは夢か。ヨシユキは自分の頬を指でつねってみる。
痛い。
フェムはどうやら腕力だけで防波堤を破壊しつくしたらしい。
「金属スクラップはさっさと廃品回収されるべきにゃ」
ルローが飛び出す。フェムも能力による攻撃は避けられると思っているのか、空中からの攻撃は行わなかった。
ルローの進路をフェムはただ殴った。
それだけなのに。
拳の軌道が視認できない。
砂浜が爆裂した。
砂が巻き上げられるなか、紙一重という体術でルローは避けていた。
ルローが懐に回り込み、体を高速回転。両腕で9回斬りつけるという荒業を見せた。
フェムは無傷。
「私ハマダ、生トイウモノヲ何モ知ラヌ!マダ、ココデ死ヌワケニハイカヌ!」
フェムの一撃。またルローは紙一重で避ける、事は出来なかった。
能力を応用されていた。
フェムとルローの間に生成された空気の匣をフェムが全力で叩く。
それにより発生した衝撃波がルローの全身を撃った。
ルローは両手の銀のグローブでガードしたかのように見えたが、軽そうな体が高々と吹き飛ぶ。
「ルロー!」
488 ◆IulaH19/JY :2010/03/08(月) 00:29:22 ID:N/x65fQb
ルローはくるくると空中で回転し、足から地面に降りた。
ぱさりと、猫耳フードが捲れて、俺はルローの顔を見た。
本物の猫耳が赤毛の頭部にひっついており、瞳孔は縦に細長い、金色の猫の目。
それ以外の顔の造りは完璧な美少女だったが、それは本来の人の姿ではなかった。
唇からは紅い鮮血。
「……貴様、切リ裂キ魔、ルロー」
「正確には“霧裂・ルロー”にゃ」
口を袖で拭きながらルローが答える。
その言葉で思い出した。ルローと言えば、脱獄囚だ。
能力者の体の一部を切り取って蒐集するという猟奇殺人鬼。
全世界に指名手配されたが、その手配書の特有な姿は誰もが目を引いた。
「ルジ博士ノ、オ気ニ入リガ、ココデ何ヲシテイル?」
ルジ博士?
「お前が新入りのフェムとか言う奴だったかにゃ」
「人体改造ノ能力者、ルジ博士ニハ感謝シテイル」
フェムが自らの金属の胸に手を当て、言葉を紡ぐ。
「ルジ博士カラノ伝言ダ。『お前を造ったのは失敗だった』ト。私ガ貴様ニ引導ヲ渡シテヤロウ」
フェムの両腕のジェットエンジンが活動を始める。
フェムの周りには空気の匣が幾つも生成されていた。
あれを何発も撃たれればルローでも耐えきれない。
ここが引き際なのか。俺が能力を使ってルローと撤退を図ろうとした時、彼女の右手が上がった。
「お前、うちをこんにゃ目に合わせたあの博士の手先にゃら……手加減せずに殺す」
ルローの口調のトーンが下がった。全身を纏う空気が変わる。
どす黒い特大の殺意がフェムの全身を刺し貫く。
ルローがゴトンと右手の銀色の装備を落とす。
そこに現れたのは、黒い靄を纏った腕。

――俺ガ生キテイタカッタノハ、死ニタクナカッタカラデハナイノカ?

なぜフェムはその時、そんな事を思ったのだろうと疑問に思った。
フェムは疑問をぶつける様に、自身の能力で生成した匣を殴る。
衝撃波はルローの目前で消滅した。
「何もかも柔らかすぎるのにゃ」
だるそうな表情で近づいてくる。
衝撃波が次々とルローを襲うがルローが黒い腕を振るうことによって消失していく。

フェムは炎を上げる空港に、血塗れで倒れていた時を思い出す。
――アノ時、自分ハ『死にたくない』ト言ッテイナカッタカ?

そして猫は目の前にいた。その瞳に輝くのは、金色の殺意。
ジェットエンジンを爆発させ、拳で殺そうとする。
その軌道さえ見えない拳が、見切られた。
ズパンと言う音と共に、殴るはずの右腕が、肩口から斬られて吹き飛んでいた。
にぃ、と愉快そうに瞳が嗤う。
フェムは最期に相手を観察した。
ルローの右手は黒い霞が爪を形作っており、その手だけは猫というよりは、恐竜の爪のようだと。
黒い霞が、フェムを引き裂いた。
489 ◆IulaH19/JY :2010/03/08(月) 00:30:12 ID:N/x65fQb
今まで弾かれていた斬撃が嘘のように、易々と黒い爪はフェムの金属の体を引き裂いていった。
斬撃の後、胸板の金属が剥がれ落ち、オイルとも血液ともつかぬ液体が傷口が溢れ出す。
フェムが左手を付き、完全に倒れることを防ぐ。
勝敗は決した。フェムの負けだ。
それなのに――
「まだ生きてるのかにゃ?丈夫なやつにゃ」
再び、ルローの横薙ぎの黒い斬撃。
機械男の正面の防御壁はすべて破壊された。
フェムが大きく仰け反り、そして前に倒れようとして、さらに黒い斬撃。
幾度となく続く攻撃。それはフェムをサンドバックに見立てた攻撃で、相手が死なないように手加減をしている様子だった。
そしてそれに飽きたかのように、冷たい瞳のルローが最後の一撃を放とうとして、
「もうやめろ!勝負はついた!」
俺は能力でフェムの前方に両手を広げて立った。
ルローの爪が急速停止。
「……邪魔をするな……殺すぞ」
ルローが擦れた犯罪者の声で喋り、俺を細い瞳孔で睨みつけてくる。
俺は動じない。
「お前たちが俺を殺せるはずがない。ここまで守ってきたのが良い証拠だ」
特大の殺気を放った後、フン、とルローが他方を向く。それはつまらない物を見た、とでも言いたげな様子だった。
リンドウの言うとおり俺の能力が必要なら、俺が発現するまで殺さないはずだ。
フェムが残った左腕で重傷の体を庇いながら俺に話しかける。
「イ、イノカ?私ハ、オ前ノ家族ヲ……」
「殺してねえよ」
リンドウたちの話が本当なら、ここまでは計画。俺の両親はまだ生きているはずだ。
「……スマナイ。コノ恩ハ必ズ返ス」
フェムがセーフモードと呟くのが聞こえた。
流れていた黒と赤の体液が止まり、立ち上がってゆっくりと去って行った。
ルローは、追いかけても俺がまた邪魔すると分かっているのだろう。
追わずにフェムから切り取った右腕を回収していた。
「……お前にはまだ、ちっぽけな善意が体にこびりついているようだにゃ」
「それは褒め言葉として受け取っておく」
ルローはもう機嫌が治ったのだろう。茶色のフードを被りなおし、にゃははと笑っていた。
「きっと、その中途半端な善意が自身に跳ねかえってお前を滅ぼすにゃ。ところでヨシユキ」
どこに隠していたのか、左手の袖から黒い携帯電話を二台取り出す。
「お前に一個やるにゃ。それで、アドレス交換するにゃ」
490 ◆IulaH19/JY :2010/03/08(月) 00:31:02 ID:N/x65fQb
「んー、ここがヨシユキ君の家かいな?ぐっちゃぐちゃやな」
ハーレーから降りたトルトルは集まってきていた野次馬を、どいたどいたと言いながら押しのけ家の残骸の中へと進む。
警察はまだ来ていない。好都合だとトルトルは思いながら家の残骸の山に登っていく。
「フェム君が居らん。まぁ、契約終わったから帰ったんか。保険として雇っといて良かったなぁ」
ゼンが黙ったまま木材の中に座り込んで、青年の服を引きずり出し匂いを嗅ぐ。
ゼンの昼の能力は、“匂いを嗅ぐ能力”。
それこそ、匂いを出す物質が辿った道のりを、警察犬より詳細に特定できる。
「……匂いがだいぶ途切れてますけど、南西に、2km」
「ゼン君は相変わらず犬みたいやなぁ。お、こっちに死体あったで」
トルトルは喋りながら、ゼンはヨシユキの服を捨て無口で、二つの死体を覗き込む。

突如として死体が蠢き始める。

ためらわずにトルトルは腰から引き抜いたリボルバーで頭部を吹き飛ばし、ゼンは足で踏み砕いた。
ゼンが嗅ぐ能力を発動し、隣の民家の垣根へと視線を向ける。
「そこ居るやろ、出てき」
トルトルが話しかけるとラヴィヨンの顔が垣根越しに出てくる。
そのまま、よっと垣根の上に乗る。
「びっくりしました?僕のオートマタ」
「君、何者や?」
「そちらが先に名乗るのが礼儀っしょ」
ラヴィヨンは余裕そうな笑みを浮かべていた。
「うちらはバフ課8班の諜報係やけど」
「へぇ、バフ課……こういう偶然も面白いっスけどね」
ラヴィヨンが皮肉気に顔を歪めて告げる。
「僕らもバフ課なんスよ」
トルトルとラヴィヨンが同時に銃を構える。ゼンは家の瓦礫の穴にしゃがみ込む。
同時に垣根から人影が銃を突き出し、野次馬が全員銃を出した。
「どうスか?これが全て僕のオートマタっス」
トルトルの表情に焦りの表情が浮かぶ。
「お別れっス」
全ての銃が火を噴いた。
491 ◆IulaH19/JY :2010/03/08(月) 00:33:17 ID:N/x65fQb
波紋。先程は体中が飛沫を上げていたが、今は波紋を浮かべるだけだ。
トルトルは最後のオートマタと言う人形を破壊する。
「ゼン君、無事かいな」
「……なんとか」
家の陰に隠れていたゼンは、肩の埃を払って立ち上がる。
まったく、大したもんだとゼンは思う。
トルトルの体を液体にする能力は、つまりは死なないと同義に等しい。
例え生命器官が破壊されていても、能力発動中は体内で代わりの器官を創り上げるらしい。
「やっぱり不味かったですね。バフ課なんて名乗るのは」
「なら、次からは……去年名乗ってたイモータルとか名乗ろうかい?」
「ダサくて嫌ですよ」
会話を続けながらゼンとトルトルが去っていく。
ラヴィヨンの死体には、顔に大穴が開いていた。
完全に死んだであろうと思われるその腕が、突如動き始める。
懐から携帯を取り出し、短縮番号をプッシュした。
『こちらシルスク。ラヴィヨンか。状況はどうだ』
「手ごわいっス」
ラヴィヨンと同じ姿をした、顔に穴の開いてない方が、顔に穴の開いたラヴィヨンから携帯を取り上げ会話を再開する。
「太った方は“液体に変わる能力”、もう片方の黒服は“嗅ぐ能力”っスかねぇ?だいたいそんな感じだと予測できます」
『了解。追跡しろ。こちらも手続きが終わり次第合流する』

携帯を切り、シルスクはため息を付く。
『おはようございます。前回殺した貴方の部下の携帯を使って電話を掛けています。これから話す事をよくお聞きください』
一時間前、風魔家を襲うと、あのリンドウから電話が合った時は驚いた。
罠かとも考えたが、一応風魔家の家族の安全を確保し、早急に身代わりとして人形を立てた。
どうやら本当だったが、襲ってきたのはフォグでもリンドウでも無く、二人の男。
つまり、今回俺たちは利用されたらしい、とシルスクは思った。
携帯の連絡をもう一度暗号化し、現在行方不明もしくは死亡した隊員の携帯は本部に繋がらないようにする。
シルスクは唇を噛む。利用されたことは悔しいが、ただでは済ませない。
リンドウが関わっているということは、何らかの形で風魔家を襲った二人組と、行方不明の風魔嘉幸は繋がっているはずだ。
ということは、とりあえずは本部で保護している風魔嘉幸の両親は、最悪の形ならばアメリカあたりに記憶を消して飛ばすつもりでいる。
最悪の形、つまり、風魔嘉幸がリンドウやフォグの仲間になったということに。
「……犯罪者になったならば消すだけだ」
拳を握りしめ、シルスクはそう決心した。
492 ◆IulaH19/JY :2010/03/08(月) 00:34:35 ID:N/x65fQb
ここまで。
シルスクさんやラヴィヨンさん使用させていただきました。
試験の予定があるので次の投下は未定です。すみません。
493創る名無しに見る名無し:2010/03/08(月) 01:46:37 ID:es/Vu6Dt
ラヴィヨンかっこいいよラヴィヨン
494『月下の魔剣』:2010/03/08(月) 08:11:42 ID:Q3or73dX
>>417-418の続き書けたー
これで一応は終わりになりますので。


「しかしこいつら…ほんとに何なんだ?」
「あ、危ないって!」
「問題ねえよ。怖いならそこで見てろ」

沈黙する犬を膝をついて覗き込む陽太を、僕はハラハラしながら見守った。

「し…しんでるの…?」
「いや、息はある。どう見たって生身の犬だよなぁ」
「うん、それは保障する。もしかしたら何かに操られてるのかも…」
「お前と同じ類の能力か」
「ええ!? いや、僕はせいぜいお願いできる程度だよ。こんな強制力ない」
「…絶対か?」

じろり、と陽太の目がこちらを向いて、僕は少したじろいで、答えた。

「う、うん、絶対」
「ふむ…やはり頭のこいつか……」

陽太は犬に向き直ると躊躇なく手を伸ばす。
危ないってば、などと言う間もなく、ヒビの入った額の宝石に手が触れる。

「くっついてる…ってレベルじゃないな。埋め込まれてる…?」
「何それ、気持ちわる…」
「誰かの能力かあるいは…組織の仕業か…」
「いやだからそんな組織なんてないってば」
「同時に三匹だぞ。周到に用意されたものと見るべきだ。組織め…ついに動き出したか…」
「…ふぅ…」

またこいつの厨二が始まった。付き合ってられない。ただ今回は実際に助けられた手前、あまり強くも言えない。
僕は溜息をひとつついて、犬を調べるのに夢中になっている陽太から目線を外した。

そして、目が合った。陽太の向こう、ブロック塀の上。無傷で立つ三匹目の、犬。

「陽太後ろっ!!!!」

反射的に叫んだ。反応して振り向いたときには、走り出した犬は陽太の目前に迫っていた。
瞬時に手を合わせる、が、間に合わない。


「止まれええええぇぇっ!!!!」


瞬間、時が止まった。

495『月下の魔剣』:2010/03/08(月) 08:12:48 ID:Q3or73dX

犬が、静止していた。今にも陽太に噛みつく体勢で、大口を開けたまま。不自然な体勢の静止。
いや、僅かに動いている。信じられないとでもいうように虚ろだった目が開かれ、ふるふると小刻みに震えている。

「能力が…効いた!?」

これまでになく強く念じたからだろうか。
金縛りにあったように動かない犬。と陽太。

「って陽太ああぁ!! お前は動けえええぇぇ!!」

「…はっ!? つ、貫けブースト・ドリルっ!!」

合わされた両手が離れ、右手に現れたドリル…もとい筍が犬の大口に突っ込まれる。
それと同時に犬も動きだした。最大限開いた口に嵌り込んだ筍が外れないのか、必死で頭を振っている。

「あ、あっぶねー!! こいつどっから来やがった!?」
「最初の奴だよ、塀乗り越えてきた」
「犬がか!? マジで普通じゃねえな…ドリルが一瞬遅れたらヤバかった…」

相変わらず陽太は自信満々だ。なんだか微笑ましい。

「ははは。遅れたどころか止まってたじゃん」
「は? 止まる余裕なんて一瞬もなかっただろ?」
「え? いや僕の能力で犬が止まって…」
「最初に効かないって言ってただろうが。止まってねえじゃん全然」
「え? あれ?」
「んなことより…」

振り向いた先の犬は、口から筍が外れかけている。
宝石にヒビの入った犬は、バタバタと手足を動かし、
壁に叩きつけられた犬は、ゆっくりと立ち上がり始めていた。

「信じらんねえな。どんだけタフなんだこいつら…」
「ど、どうする陽太!?」
「撤退するぞ。いい加減付き合ってられるか」

陽太に手を引かれて、来た道を走り出した。背後からすぐに聞こえ始める爪の音。
496『月下の魔剣』:2010/03/08(月) 08:13:36 ID:Q3or73dX

「もう来た!?」
「任せろ。足止めする」

陽太は走りながら両手を合わせる。
はああああぁぁ、と気合を込めた後、両手を離して右手を後ろに向けた。

「アクア・ニードル!!」

斜め下に向けた右手から、棘だらけの黒いボールが大量に発生し狭い道路に広がっていく。

「く、栗?」
「ウニだよ馬鹿!」

一通り道路を埋め尽くした後、僕たちは振り向かずに走り出す。
背後で聞こえた、キャン! という悲痛な声は、きっと陽太の足止めが効いたんだろう。


僕たちは家に帰るよりも近かった繁華街まで戻り、人通りに紛れてやっと一息ついた。
あの危険な犬のこと、もう少し歩いた先の交番に報告しておくべきだろう。

「あー怖かったー! 何なんだよもーあの犬はさー!」
「…そうだな」
「交番行くよ、交番。一刻も早くなんとかしてもらわないと!」
「………」
「陽太?」

返事がない。疑問に思って振り向くと、陽太は電灯に手を当て力なく膝をついていた。

「え…陽太!! 大丈夫!? どっか怪我したの!?」
「力を…使いすぎた…反動か…」
「ええっそんなっ!?」

ゼロから一瞬にして何かを生み出す力。普通なら絶対に不可能な、まさに超常的な力。
そういう能力は、使うたびに何かを犠牲にしている場合も多いと聞いたことがある。
497『月下の魔剣』:2010/03/08(月) 08:14:58 ID:Q3or73dX

「どどどうしよっどうすればいいっ!? 病院…じゃダメかなっ!?」
「医者では無理だ…ぐっ!」
「そんな…陽太ぁ」


そして、その音は陽太の中から聞こえてきた。


ぐぅ〜……

「…え?」
「くっ!! バグめっ、俺の身体を食い破るつもりかっ!!」

ぐううぅ〜……

「…いやバグて…」
「鎮まれっ!! くそぉぉ…!」

ぐうううぅぅぅ〜………

「………」
「………」

「オーケー。把握した」

陽太の能力は食材を生み出す能力。
それをあんなに大量に(主にウニ)生み出せば、それはそれはものすごく…

「お腹が減っちゃうわけね」
「………」

無言の陽太のかわりに、陽太の腹の虫が、ぐぅ、と鳴いた。

「陽太さ、今日は何か持ってきてないの? カロリーメイト食べてたじゃん」
「いつものは…能力で出したもんだ…食っても意味ない」
「はっ!? え、そうだったの!? ハンバーガーもチキンも!? 意味なくない!?」
「意味はある…能力の修行だ」
「修行って…そんな使う場面もないってのに…」
「お前な…俺が一瞬で出せんのは修行の成果なんだぞ…」

ふぅ、と僕は肩を竦める。
あれほど食材を生み出しての空腹。生半可な空腹ではないのだろう。

今日の陽太はすごくすごく頑張った。何もできなかった僕を守って勇敢に戦った。
僕なんかよりずっとずっと立派だった。まあ、能力は変だけど。

でもやっぱり、こいつは手のかかる弟だ。
ふふ、と小さな笑みがこぼれた。
498『月下の魔剣』:2010/03/08(月) 08:15:46 ID:Q3or73dX

「ほら、おいで」

陽太の足元にしゃがんで背中を叩く。

「姉ちゃんがおんぶしてあげるからさ」

「ばっ、馬鹿っ女になんか!」
「ふらふらで動けないのが何言ってんのさっ、よっ!」
「ちょ、わっ!」

そのまま立ち上がって無理矢理背中に乗せた。小さく軽い陽太は女の僕でも簡単に持ち上がる。
最初はパタパタと抵抗したが、やがて背中の陽太はおとなしくなった。

「昔はよくこうしてたよねー」
「………」

歩く僕と背中の陽太。道行く人には、きっと仲の良い姉弟のように見えているんだろう。
もしかしたら兄弟に見えてるのかもしれないけれど。

「なんか食べて帰ろうか。何でも奢るよ」
「…カロリーメイトがいい」
「…陽太さ、奢るって聞いてそれはないよね普通」
「じゃあファミチキ…」
「…おーけー。ファミマは…あっちか」
「あっ!? やっぱやめ」
「遠回りだけどいいや行け行けー」
「やーめー……」

人々の微笑ましい視線を受けながら少し遠いコンビニまで、陽太を背中に僕は歩いていくのだった。


それは、日常の中に不意に現れた非日常。
僕が陽太のおかしな能力を知って、ちょっぴり陽太を見直した、小さな事件。
これが終われば、いつもの日常が帰ってくるはずだった。そのはずだったのに。
この日を境に、僕たちは数奇な運命に巻き込まれていくことになるんだ。

そうだね。それはまた、別の機会に話そう。
499『月下の魔剣』:2010/03/08(月) 08:17:27 ID:Q3or73dX

モニターの明かりだけがぼんやりと形を伝える、薄暗い部屋。
白衣の男がひとり、大きなモニターに向かっている。男は口元のマイクに呟く。

「報告を」
「報告を開始します」

スピーカーから流れる女性の声。画面に小さなウインドウが現れ、少年の顔写真とデータが表示される。

「調査ナンバー51。岬陽太。14歳男性」

続いて新たなウインドウが現れ、不鮮明な動画が流れる。
二人の子供。前に立つ少年と、背の高いほうは少女だろうか。

「映像が不鮮明だが」
「申し訳ございません。調査対象に攻撃を受けカメラを破損しました」
「攻撃を受けるのは常、か。仕方ないな。キメラが破壊されなかっただけよしとする」
「はい。では報告を続けます」

映像は少年の手元にズームされる。

「岬陽太。昼。右手より携行栄養食、ハンバーガー、唐揚げ、チキンの発生を確認」
「ふむ」

映像が夜のものへと切り替わる。

「夜。右手より大根、クルミ、筍、栗の発生を確認」
「昼は料理、夜は食材の具現化能力…か」
「そのように推測されます」

男はマイクから顔をそむけ、クス、と小さく笑った。

「奇妙な能力もあるものだな」
「なお、カメラの破損は大根の打撃によるものです」

男の眉がピクリと動く。

「その能力でキメラを破損させたと?」
「はい。大型の大根によるものです。ですが、それに関しては同行者の能力も関わりがあります」
「ふむ。ではそちらの報告を」
「はい。報告を続けます」
500『月下の魔剣』:2010/03/08(月) 08:18:34 ID:Q3or73dX

新たなウインドウに、少女の顔写真とデータが表示される。

「調査ナンバー52。水野晶。15歳女性。昼。能力の確認無し。
 夜。未確認の能力波を発生。ゆらぎはありますが、キメラ3体の運動能力約30%の低下を確認」
「30%も? 恒常的に?」
「はい。夜に変わった瞬間より確認しています。最大時は52%の能力低下が確認されました」
「なるほど。面白い」
「さらに。キメラ1体の起動、同時に同行者の動きを約5秒間停止させました」
「キメラの起動を停止させたか…しかし同行者については確認できないだろう?」
「それについては映像をご覧ください」

不鮮明な映像に、キメラと少年が映る。小刻みに揺れる映像が停止画ではないことを証明している。
牙をむき不自然な体勢で停止するキメラの目前にして、少年もまたピタリと停止していた。

「…なるほど」
「緊急時の不自然な停止です。直前に少女も、止まれ、と発声しており、能力によるものと推測されます」
「そうだな。能力波の発生能力。昼も含め未確認の部分が多いな」
「はい。少女については以上です」
「では次の報告を」
「はい。調査ナンバー53。〜〜〜」


一通りの報告が終わり、男は一度身体を伸ばして部屋の外へと出ていった。

モニターに残された数十人のリスト。それぞれ名前の横には大文字のアルファベットによる評価がついている。
大多数を占める「C」、ぽつぽつと見かける「B」、片手で数えるほどの「A」。

岬陽太の名前の横には「C」評価がついていた。

水野晶の名前の横には「A」。そして、他にはない「重要調査対象」の一文が添えられていた。


<おわり>
501創る名無しに見る名無し:2010/03/08(月) 08:19:32 ID:Q3or73dX
一応終わり。
思わせぶりな終わり方しといて続きは全く考えてなかったりする。
組織は何者か?目的?晶の真の能力?知らねえよ!!まさに外道!!
組織もスレ内作品のどっかに属してるのかもしんないし独自なのかもわからん。
全く考えてないんです。発覚したらそれにあわせます。
ネタ浮かんで余裕できたらまた書くかもしんない。

最後にキャラと能力紹介。

岬 陽太
身長1hyde(156cm)の中二男子。中二としてはそれほど低身長というわけではないのだが、
幼馴染で女の晶が長身なため強く気にしている。「太陽」と呼ばれるのを嫌い「月下」と名乗るが誰も呼ばない。
両親が困った旅行趣味でしょっちゅう陽太を残して家を空け、世界中からあらゆる食材や菓子をお土産として買ってくる。

《昼の能力》
名称 … 万物創造(リ・イマジネーション) ※本人命名
【意識性】【具現型】
過去に食べたことのある菓子、屋台食など、いわゆるジャンクフードを手から発生させる。
味は本物に劣るが、集中すれば再現性は高くなる。串等も同時に発生する。
使えば相応に空腹になるため出したものを自分で食べても無意味、むしろマイナス。

《夜の能力》
名称 … 叛神罰当(ゴッド・リベリオン) ※本人命名
【意識性】【具現型】
過去に食べたことのある食材をサイズを問わず丸ごと発生させる。
巨大な食材や大量の食材を発生させることもできるが、激しい空腹や体力の消耗、
使いすぎれば栄養失調等の症状も出る。


水野 晶(あきら)
中三女子。170cmの長身で胸は控え目、髪型はベリーショートでボーイッシュな性格のためよく男に間違えられる僕っ娘。
しっかりもののお姉さんとして、留守番が多い陽太の面倒を見ることが多く、手のかかる弟のように思っている。

《昼の能力》
名称 … 動物読心
【無意識性】【変身型】
動物の心を視る。付近にいる動物の心は常に視えているが無視できる。
集中することでより鮮明に視ることができる。動物と人間を分ける基準は不明。

《夜の能力》
名称 … 伝心
【意識性】【操作型】
人間、動物に対して言葉を介さず正確に意思を伝える。
小型、中型程度の動物であれば、強い意思で命令してある程度操ることもできる。


そうなんです。最初からそのつもりで書いてたんです。ごめんなさい引っ張りすぎました申し訳ない。

こいつら使いたいって奇特な方いるならお好きにどうぞー。チョイ役でも脇役でも主役でも。
ひどいことにならない限り何したっていいです。何せ考えてないのでー。
ではでは。
502創る名無しに見る名無し:2010/03/08(月) 08:24:29 ID:Q3or73dX
>>483
能力のアイディアがナイス!
能力物だけどバトルに限らないってのがこのスレの面白いとこだよね

>>492
続いた!!
みんなかっけえなぁ、正しく能力バトルやってるなぁ
503創る名無しに見る名無し:2010/03/08(月) 09:21:18 ID:0mNteHTS
組織ってまさか比留間さん・・・
504創る名無しに見る名無し:2010/03/08(月) 11:42:34 ID:N/x65fQb
晶つえええええw
てか、続き読みたいw
投下乙です!
505創る名無しに見る名無し:2010/03/08(月) 11:44:34 ID:p1BjTs55
>>501
晶が女の……子……?


なんてな!わかってたぜ!俺の僕っ娘アンテナにはビンビンきてたぜ!!
さすが作者、信じてた。しかも高身長とか俺得すぎるんだけど




イラストとかの影響で男に変更されるのかなーとか思ってたのは内緒だ
506 ◆akuta/cdbA :2010/03/08(月) 15:39:46 ID:AwcOzZzS
普通に男の子だと思ってた!
ttp://loda.jp/mitemite/?id=923.jpg
507創る名無しに見る名無し:2010/03/08(月) 23:17:17 ID:ATloT/CQ
>>506
う、うっうわあぁああぁぁぁ
陽太ヲコロシテ、ウバイトル

GJですっ!ハァハァ
508創る名無しに見る名無し:2010/03/08(月) 23:18:18 ID:es/Vu6Dt
女の子…だと!?
長身ボーイッシュかわいい
ってかあいかわらずイラスト速いww

避難所投下あったよ!
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1267446350/26
509501:2010/03/09(火) 15:56:09 ID:zk6xo6lH
>>503
その発想はなかった!
後々どうとでもできるように特徴のない「男」ってしといたんだけどそれ面白いかも。
とは言っても作者さんの許可が必要だし書くかもわかんないけども。

>>506
そうこれ!まさにこんな感じ!
イメージ通りでびっくりしましたごめんなさい。
510創る名無しに見る名無し:2010/03/09(火) 19:34:48 ID:vpIivkFK
他シェアから天野くんに釣られてきますた
511創る名無しに見る名無し:2010/03/09(火) 19:52:52 ID:314eT1Ze
>>510
残念彼は既に死亡している
512創る名無しに見る名無し:2010/03/09(火) 21:10:59 ID:TdFRq+Af
>>472-475の続きと小ネタ投下します
513Beyond the wall (5) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/09(火) 21:12:19 ID:TdFRq+Af
倒れた情の体を調べた衛が、驚きと恐怖の入り混じった声を搾り出す。
「呼吸も……心臓も……止まっています。」
「うそ……。」
「おーっほっほっほ。私の『地獄の審判』は言葉ひとつで人を殺めることができる。」
少しも悪びれずに話すエンマに、セイが飛び掛かろうとする。
「こいつ……!」
その目には隠せないほどの涙。
「セイさん!」
しかし衛はそれを諌めた。
「もしその能力が本物なら今は勝ち目がありません。夕暮れを待ちましょう。」
情を背負った衛とセイはエンマの家から逃げ去った。室中では高笑いが鳴り響いていた。

エンマは町の統治者だ。町の中にいると危ない。
衛たちは町の外れの廃屋に身を潜めていた。
セイは、ベッドに横たわるぬくもりを失った情に抱きつく。すぐ横にいる衛の目も気にせずに。
「ふたりで一緒にいた一年、楽しかったよ。」
その声は情の鼓膜を震わせはするが決して届くことはない。
そう思うとのどの奥がつっかえてまぶたが熱くなる。
「こんなことなら、ちゃんと名乗っとくんだった。」
そして、自分の想いを伝えたかった。
行き場のない感情が怒りの炎を大きくする。
「あの女、日が落ちたら殺してやる!」

「衛、もう我慢できない。僕は行くよ!」
太陽が地平線の上に最後の光を放つ頃、セイは静かにそう言った。
「気をつけてください。相手の能力は分かりませんから。」
衛には、セイに掛けてやることのできる言葉はそれくらいだった。
514Beyond the wall (5) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/09(火) 21:13:00 ID:TdFRq+Af
町の中を走りに走る。
セイがエンマの家のドアに手をかけたのと日が沈みきったのは同時だった。
「なんだ? 血相を変えて。」
平然と放たれた質問を黙殺して水の矢がエンマに襲い掛かる。
しかしそれはすぐにかき消された。
「くそっ!」
指先に溜める水の量を多くして再び放つ。
すると今度は空気のゆらめきが見えた。
「炎か!」
「水は炎に強いなどとファンタジーのように考えないことだ。私の『地獄の業火』は灼熱。
 沸点たった百度の水なんぞすぐさま蒸発してくれる。」
そう言って、今度はエンマが炎の弾を飛ばしてきた。
セイが避けると炎が家具に当たり燃え広がる。
「こいつ、自分の家を……正気か?」
「私は配下に『物質再生』の能力者を擁する。いくら燃えてもかまわん。」
ならば。
「これで終わりだっ!」
指先にありったけの水分を集める。しかし集めるだけで攻撃はしない。
「無駄だと言っている!」
火球が大量に降り注ぐ中、セイは未だ弾を撃たずに……逃げ出した。
「な?」
部屋は瞬く間に火に包まれる。中からはエンマの叫び声が聞こえてきた。
「アクアショットの水分は周りの空気から集めてるんだ。
 それを持ち去ったら、空気は乾燥し炎はあっという間に燃え広がる。」

町に戻ると既に火事に気づいた人たちが屋外にごった返していた。
人の流れに逆らってセイは町を出る。
衛は先ほどの廃屋の前で待っていた。
「終わったよ。」
セイは寂しく微笑んでそう言った。
「じゃあ、行こうか、衛。」
「ちょーっと待った! 誰か忘れてやしないか?」
「え……?」
嘘? この、声は……!
廃屋の中から情が姿を現した。どこにも異常はなさそうだ。
「なん……で……?」
「エンマのあの能力は、効果が昼の間だけだったんです。」
今度は嬉しさの涙で溢れそうになる。
しかしセイはそれをぐっとこらえた。
「まったく、油断しすぎなんだよ、ジョーは。」
「悪い、心配かけた。」
そんな、素直に謝られると……。
「ほ、ほら、ラスボスの名前も分かったんだし、さっさと行くよ!」
セイは慌てて自分のバイクを駆って先に行ってしまった。
その様子を見て、衛と情は顔を見合わせて笑った。

つづく
515Beyond the wall (5) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/09(火) 21:13:41 ID:TdFRq+Af
キャラ紹介

・エンマ
「クレーター」のとある町のボス。女性。高飛車。
《昼の能力》
名称 … 地獄の審判
【意識性】【操作型】
相手を夕暮れまで仮死状態にする。効果中は死んだのと全く同じ状態になるが後遺症は無い。
《夜の能力》
名称 … 地獄の業火
【意識性】【操作型】
灼熱の炎を操る。本人は火に耐性は無い。
516ボーイッシュラバー ◆KazZxBP5Rc :2010/03/09(火) 21:14:42 ID:TdFRq+Af
情「結婚してくれ!」
晶「は?」
陽太「貴様、晶を狙うとは、組織の刺客か!」
晶「いや、違うでしょ。」
情「分かる、俺には分かるぞ。ショートヘア、大人しめのトップス、パンツルックに身を包みながらも、
  その丸みを帯びた輪郭、しなやかな四肢の美しさは損なわれるどころかむしろ強調される!
  そう!男装少女とは調和の象徴!そして究極の……」
晶「男装してるつもりはないんだけどな。」
情「……としての自分を……」
セイ「はは、まあこいつのことは気にしないで。僕はセイ。この馬鹿はジョー。」
情「……も去ることながら……」
陽太「……しかし奴らはなぜ……」
晶「あはは。僕は晶だよ。で、そこの中二が陽太。」
陽太「月下と呼んでくれ。それにしても……」
情「……困難に打ち勝ち……」
陽太「……だが例の秘宝は……」
晶「ところでセイさん、もしかして……。」
セイ「あ、分かる? ふふ、男性陣にはナイショだよ。ほら。」
晶「服の中見ろって? ……なっ!」
情「……時にはかなく……」
陽太「……から尾けられて……」
晶「陽太、やっぱりこいつら敵だよ。やっつけちゃって!」
陽太「……それも今回で……何だとっ! 貴様ら! 俺のアイスソードの餌食になるがいいっ!」
晶「棒アイスだよね。キンキンに冷えてたら、殴るとちょっと痛いかもしれないけどね。」
セイ「へ? (普通の中学生相手に『ピストル』使うわけにもいかないし……)ジョー、逃げるよ!」
情「ちっ、しょうがねえな!」

陽太「おい、晶! あいつら、逃がして大丈夫なのか?」
晶(背低いくせに……サラシ巻くくらいはあるなんてっ!)

おわり
517創る名無しに見る名無し:2010/03/09(火) 21:17:05 ID:TdFRq+Af
投下終わりです
晶ちゃん女の子という事実にあまりに衝撃を受けてやったw
情のフェチ設定、本編でもてあましてたからちょうどよかった

>>510-511
そこでイタコ能力ですよ
518創る名無しに見る名無し:2010/03/10(水) 03:10:30 ID:qOBPcCJ8
>>517
どの作者にも言えるけど能力の特性を生かしたバトルが面白いな。
にしても展開が早すぎるw
次回に楽しみだw

それと情が変態すぎてワロタ。まあ、俺も人の事は言えないけどな!
519 ◆VECeno..Ww :2010/03/10(水) 05:01:21 ID:T8rVtsWu
>>509
慎也さんの件ですが、悪役として出してくださってもOKですよ。
パラレルワールドの中には研究のために悪の組織に身を置いている比留間さんがいてもおかしくありませんし、
むしろ敵に回った彼も見てみたいです。
520創る名無しに見る名無し:2010/03/10(水) 23:34:44 ID:CEhIMnPv
かそかそ

避難所の続き来てるみたい
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1267446350/29
521 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/11(木) 01:32:19 ID:T9fNqII4
ヒトガイナイ、イマノウチニトオリスガル……

何気に見つけたこのスレを見ている内に、何やら心に湧き上がる物を感じたのでババッと書いてみた。
少し長いので見ている方が居ましたら支援してくれると有り難いです。

次レスより投下開始
522 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/11(木) 01:33:04 ID:T9fNqII4
――いきなりの事だが、俺、遠藤 直輝(えんどう なおき)は追われていた。
何でこうなったのか、俺自身にも良く分からない。
しかし、例えそれを理解出来ていたとして、今の状況が好転するとは思えない。

「……ああもう、しつこいなこいつら!」

状況は最悪だった。ちらりと後ろへ目をやれば、大挙してこちらを追う『奴ら』の姿。
――っておいおい、さっき見た時より数が増しているんですけど!?
さっきまではちらほら程度だったのに、今じゃわんさかかよ、ふざけんな
……しかし、なんだってこう言う事になってしまったのか? と俺は何度も考えて仕方がない。

――何で、如何して、俺は街中で野犬の群れに追い掛けられる事になるんだ!?

言っておくが、俺は何処ぞの悪ガキの様に犬に石ころ投げたりして喧嘩を売るような真似をした覚えはない。
俺はただ、毎週見ているジャ○プを買いに、何時も雑誌の早売りをしている書店まで出掛けてただけである。
それなのに奴らは、俺に出くわすやいきなり襲い掛かってきたのだ。猛犬注意以前の話だろ?

俺を追う犬達の様子から見て、追い付かれた後の事は容易に想像が付く。
何せ犬達はみんな、何れも逝っちゃった目で涎垂らして牙剥き出しのどう考えても狂犬病です状態である。
これでうっかり転ぶなりして足を止めよう物なら、俺は即座にわんわんパラダイスならぬわんわんバイオレンスである。
まだろくに青春を謳歌してすらいないというのに、ここで犬に食われて死すって言うのは流石に洒落にならない。

「くっ…はっ! …クソッ! 食われてたまるかっ!」

無論、俺はそんなのはゴメンとばかりに必死に走る速度を上げる。
……ああクソ、こうなる事だったら体育の授業くらい真面目に受けとくべきだった。
まだ10分も走ってないというのに、息苦しいくらいに呼吸は乱れているし、足の節々には嫌な感覚が広がり始めている。
はっきり言ってもうダメポに近い状態だ。こう言う時自分の体力の無さに悲しい物を感じる!
このままでは、何れ俺の体力も尽きてTH・ENDとなるのは間違いないだろう。

……しかし何でだろうか?
こう言う時に限って、何時もならば開いている筈の店やスーパーが軒並みシャッターを下ろしてるなんて。
まるで俺の逃げ場を塞いでいるとしか思えないじゃないか!

おまけに交番に逃げ込もうにも、こう言う時に限って交番が中々見つからず、
更には交番がある場所へ向おうとすれば、その方向から追加の犬の群れが現れて結局行けずじまい。
しかも、もう何十分も逃げ続けて居ると言うのに、如何言う訳か通行人の姿すら見えないのは如何言う事だ?
こんなあまりの理不尽かつ不可解な状況に、俺は何かの悪意を感じて仕方が無い。

「ゲッ、前からもかっ!? ちくしょう!」

考えている間に前方の曲がり角から更なる追加の犬が参上!
これで俺を追いかける犬の総数は十数頭に増えた。つか、この状況でのんきに犬の数を数えている俺って……。

「って、そんな事を考えてるより今は逃げなくちゃな!」

前と後ろから迫ってくる犬達から逃れるべく、俺は即座に横手のビルとビルの間の裏路地へと入る。
放置されてる自転車を道を塞ぐ様に薙ぎ倒し、更には置かれているゴミバケツを犬達の方へ蹴りつけて、
何とか犬達から逃れようと必死の逃亡を続ける。

しかし、そんな俺の努力を嘲笑うかの様に、
犬達は追跡の手を全く緩めず、徐々にでは在るが逃亡する俺との距離を詰めてきている。
拙い(まずい)、これは本当に拙い! いよいよ本気でわんわんバイオレンスの可能性が出て……。

「――いや、もうわんわんバイオレンス確定か……」

力無く呟きを漏らす俺の前方、
高さ5メートルの鉄条網付きのフェンスが、俺の逃げ道を完全に阻む様に立ち塞がっていた。
普通のフェンスなら登って乗り越える事が出来るけど、何でこう言う時に限ってクソ高い上に鉄条網付きなんだよ……。
523 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/11(木) 01:34:05 ID:T9fNqII4
程無くして、アスファルトを蹴る爪音と共に俺へ追いつく犬達。
ここでようやく俺は犬達の姿をはっきりと見る事が出来たが、この犬達は見れば見るほど野良犬にしては妙だった。
先ずその種類、ジャーマン・シェパードにドーベルマン・ピンシャー、そしてマスティフ。
それらは何れも、野良犬として街中をうろついているような犬種ではない。
無論、何処かの心無い飼い主が捨てた犬にしても、特定の種類だけが十数頭も群れを成して居るというのは何かおかしい。

次に犬達の様子、牙を剥き出し涎だらだらと垂らして如何にも飢えてますといった感じで、
実は人懐っこい犬でわんわんパラダイスというほのぼのとしたオチはあり得ないといえる。……じゃなくて。
こんな見るからに『私は狂犬病です^^』といった風貌の犬が、徒党を組んで街中をうろついていれば間違い無く騒ぎになる。
にも関わらず、こいつらと街角で出くわす今まで、それといった騒ぎや事件の話を聞いた事は全くと言って良い位に無かった。

そして俺が一番妙に思ったのは、今、目の前に居る犬達は何れも額に宝石みたいなのを付けてる事である。
これは一体如何言う事だろうか? 最近の野良犬の流行りか? クソ、野良犬風情が変なオシャレに目覚めやがって。

「いや、野良犬風情だとか変なオシャレだとか考えてゴメンナサイ、カッコイイですよ額の宝石」

俺の考えを見透かした様に、唸り声を強めてこちらへじりじり迫る犬達。ちょっ、マジ怖いっての!
そう言えば、さっきから犬達から唸り声に混じってカチリカチリと小さな機械音が聞こえるが、これは一体……?
とか考えている間に、犬達の中で一番先頭の一頭が唸り声を強めると同時に、身を低くして戦闘態勢を取る。

――いよいよ来るか! 俺は無駄だと分かりつつも身構える。
そしてそれに合わせる様に、犬が俺の喉笛を食い破らんと大きく顎を開き跳躍した!

「――!」

――が、その顎が俺の喉を食い破る事無く、犬は俺の直ぐ横を通りすぎ、後ろのフェンスにぶち当たって大きな音を立てた。
俺が自分の肩越しに犬の方へ目をやると、犬はどう言う訳かぐったりとしたまま、ピクリとも動かなくなっている。
良く見れば、動かなくなった犬の延髄の辺りに突き立っているのは一本の細身のナイフ。

「え……?」

突然の事が理解できず、思わず戸惑いの声を漏らす俺。
それは犬達も同じらしく、仲間に起きた災難の原因が掴めないのか戸惑った様に動きを止めていた。

「ようやく発見したと思ったら、早速か」
「……っ!?」

掛かった声に目を向ければ、何時の間にか犬達の群れの向こうに立つ一つの人影があった。
薄暗い裏路地の上に遠目なので顔などは良く分からないが、それはコートのような物を身に纏う長い髪の女(声から判断)。
そのだらりと下げた左手に、細身のナイフと思しき物を持っている辺りから見て、多分さっきのは彼女の仕業なのだろう。
当然、犬達は仲間を屠った彼女を敵と判断したらしく、威嚇の唸り声を上げながら彼女の周囲を包囲し始める。
……おいおい、助けのヒーローのつもりかもしれないけど、これは流石に数が多すぎるぞ!? 
悪い事は言わないから早く逃げた方が……って、それで本当に逃げられても困るけど。
524 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/11(木) 01:34:49 ID:T9fNqII4
「……キメラか、相変わらずつまらない物を使う」

周囲を囲む犬達の唸り声の中にも関わらず、彼女は全く動じる事無く、むしろ落ち付いた様子で呟きを漏らす。
……キメラ? RPGに出てくる怪物の事か? いや、あの犬達の事を言ってるのか? 俺の頭の中に浮かぶ様々な疑問符。
そんな俺を余所に、彼女の周囲を囲む犬達は彼女の態度が余程気に食わなかったのだろうか、
一斉に四肢に力をこめる様に身を屈め、戦闘態勢に入る!

――そして、犬達が跳躍するのと彼女が動くのは、ほぼ同時だった。

ほぼ全方向からの犬達による一斉攻撃、回避は不可能に近い。一瞬、最悪の結末が俺の脳裏に過ぎる(よぎる)!
だがしかし、次の瞬間には彼女が目にも止まらぬ早さで螺旋を描く様に回転、同時に忽然とその場から姿を消す。

「――!?」

当然、目前で獲物が消えた事でお互いに激しく空中衝突し、悲鳴を上げる事無く無様に地面に転がる犬達。
そしてその直後、さっき立っていた場所から数メートル前方に着地する彼女。
ここでようやく俺は、彼女が姿を消したのではなく、高く跳躍する事で犬達の攻撃を回避していた事に気付いた。

「終わった」

彼女のその一言に俺が思わず犬達の方へ目をやると、犬達は何れも喉を切り裂かれて絶命していた。
その彼女の両手に何時の間にか握られているのは、さっきの細身のナイフとは違う、大振りな片刃のナイフ。
薄暗い中でもぎらつく刃先が血に塗れている所から見て、犬達の命を奪ったのはこのナイフと見て間違い無いだろう。
……と言う事は、あの一瞬、彼女が跳躍したその時には、既に犬達は全員喉を切り裂かれていた……?
……いや、めちゃくちゃ強いんですね、この人。

「……大丈夫か? エンドウナオキ。奴らに何かされなかったか?」

声を掛けられ、俺は彼女の方へ目を向ける。
彼女がこっちに歩み寄ってきた事で、さっきは遠目で良く分からなかった彼女の風貌がようやく確認できた。
見た感じの年の頃は俺と同じ位。欧米系の外国人なのか長い銀髪に端正に整った顔立ち、そして透き通るような白い肌。
何処か南極の氷を思わせるアイスブルーの双眸の、何処かクールな感じを抱かせるやや細身の美少女である。
その身に纏っているあちこちに妙な金具のついた黒のロングコートが、その風貌と妙にマッチしており、
人通りの多い道を行けば、ナンパな男の一人か二人かは声を掛けてきそうな魅力がある。

……ただ、その顔の双眸の間を中心に、
額から頬へ掛けて大きくバッテンを描く様に刻まれた古い傷痕さえなければ、の話だが。
と言うか、なんでこの人、初対面なのに俺の名前を知ってるんだ?

「怪我は無いようだな」
「――え、あ…ああ、大丈夫です、はい」

顔の傷痕に思わず目を奪われた所で彼女に声を掛けられ、慌てた俺はやや上擦った声で返答を返してしまった。
しかし幸い、彼女は俺が顔の傷痕に見入っていた事に気付いていなかったらしく、「そうか」と小さく返すだけだった。
……この人は何だか色々と知ってそうだし、あの犬の事とか少し事情を聞いてみるか……?
いや、その前に先ずは礼を言っておくべきか。助けてもらっておいてハイさよならは少し気が悪い。
525創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 01:35:04 ID:7011DJaG
526創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 01:35:44 ID:7011DJaG
527 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/11(木) 01:35:56 ID:T9fNqII4
「あ、あの……危ない所助けて頂いて有難うございます」
「当然の事をしたまでだ。気にするな」

少し無理のある丁寧口調で例を述べる俺に対し、
彼女は安全でも確認しているのだろうか、周囲を見やりながらつっけんどんに返す。
どうやら彼女は見た目にそぐわぬクールさがあるようだ。心の中で妙に納得する俺。
っと、納得してるより先ずは聞くべき事を聞かないと。

「所であの、一つ聞きたいんですけど……俺を襲ってきたあの犬は一体……」
「あれか? あれはコード212キメラ。大型犬種をベースに遠隔操作用のチップを脳へ埋めこむ事によって製造される、
主に諜報活動や内部かく乱、または爆弾を搭載しての潜入破壊工作などに用いられる生体改造兵器だ。
クローン犬を使用する事で汎用性の割に製造コストが比較的安く、組織の使用する兵器の中ではポピュラーな部類に入る」
「……え?」

いや……あの、なんかマンガやアニメの中でしか聞いた事の無いような単語がいくつか出てきたんだが……?
思わず困惑する俺を余所に、彼女は先ほど自分が屠った犬、もといキメラを見やりつつ話を続ける。

「しかし、比較的安いとは言っても、
一般サラリーマンの平均年収分はある物を一気に十五機も投入するとはな……奴らは余程金に有り余ってると見える。
まあ、それを一瞬で全機撃破した私が言えたことじゃないか」
「え、ええっと、あの、その……」
「ん? なんだ? エンドウナオキ。まだ説明が足りないのか?」

ある程度言った所で何か聞きたげな俺の様子に気付き、彼女は乏しい表情ながらも不思議そうな顔で問う。
俺は目いっぱい深呼吸した後、貯め込んだ息を吐き出す様に彼女へ言った。

「あんたは一体何なんだ? つか、なんで俺の名前を知ってるんだ?」
「…………」

彼女にとって想定外の質問だったのか、きょとんとした表情でこちらを見る彼女。こっちみんな。
それから数秒ほどの間を置いて、何か考え込む様に腕組をしつつあらぬ方を向いた彼女は「ふむ」と小さく呟いた後、
ようやく質問の意を察したのか、改めて俺へ向き直って言う。

「どうやらいきなりの事で自己紹介をするのを忘れていた様だな。済まない。
私の名はコードネーム『クロス』、ある『機関』に所属するエージェントだ」

またまたマンガやアニメでしか聞いた事の無い単語が出てきた……まあ、それは良いとして。

「それで、その…クロスさん?」
「私の事は呼び捨てで構わない。またはクーちゃんと呼んでも良し。…それで質問はなんだ?」
「話を聞く限りじゃ、あんたは俺に何か用がある様だけど――」
「急に犬どもの反応が消えたから様子を見に来てみてりゃ、やっぱりテメェが邪魔していたか、スカーフェイス!」
「――っ!?」

俺の質問を遮って後ろから割って入った声に振り向けば、十メートルほど先、薄暗い裏通りを背に佇む一つの人影!
草臥れた皮のジャケットに所々破けたジーパン、短い黒髪の何処か表情に粗暴さを感じさせる20代くらいの若い男である。
男はこちらへ向って歩み寄りながら、何処か忌々しさと歓喜を入り混じらせた声で

「ガキ一人捕まえてくる程度の事の癖に他の奴が中々動こうとしねぇから、わざわざ俺様が出張ってやったが、
まさかガキ一人にテメェら『機関』がしゃしゃり出てきてるとはな! お前の顔を見て納得行ったぜ、スカーフェイス!」
「……その名で呼ぶな」

男の言うスカーフェイス、と言う名が気に入らないらしく、何処か憮然とした感じに返すクロス。
見た感じ、この男とクロスは以前からの知り合いらしい。無論、悪い意味でだが。
528創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 01:36:25 ID:7011DJaG
529 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/11(木) 01:36:51 ID:T9fNqII4
「……知り合い?」
「奴の名は『ファング』、私の所属する『機関』と敵対関係にある組織に所属している男だ。
奴と私の関係は、まあ見ての通り腐れ縁と言う奴だ」

声を潜めての俺の質問に対して、冷静淡々と答えるクロス。ああ、やっぱりそう言う関係か。
その間に俺達まで約5mほどの所で足を止めた男、もといファングはへっへっへと粗暴さ丸だしな笑い声を漏らしつつ。

「しかしまあ、そのお陰でテメェをここでぶっ殺す事が出来るからな、動かなかった他の連中に感謝しねえとな!」
「……やはり、そう言う事か」
「――あん? 何が『そう言う事か』だ?」

クロスがぽつりと漏らした言葉を聞き咎めたファングに、
彼女は事切れたキメラ達を指差しながら、口の端を笑みの形に小さく吊り上げて嘲笑う様に言う。

「やたらと躾のなってないケダモノのような飼い犬だったのでな、飼い主は誰かと思っていたのだが。
成る程、飼い主もケダモノでは飼い犬がそうなってしまうのも無理もないか、と思ってな」
「……っ!! て、テメェ……!」

図星でも突かれたのか、ファングの表情と声が一気に怒りの色を帯びる!
を、をいをい、幾ら挑発されたからって相手を挑発し返して如何するつもりなんだよ!?

「ガキ攫うついでにテメェをたっぷりと嬲って嬲りまくってからぶっ殺してやろうかと思ったが、気が変わった!
テメェは今ここで八つ裂きにしてy――がっ!?」

しかし怒りのセリフを言いきる間も無く、ファングはクロスが無造作に投げたナイフを胸に受け、そのまま倒れ伏した。
……って、ちょwwwwwいきなり殺しやがったwwww

「無駄にベラベラと喋るからこうなる」
「いや、ちょっ、いきなり殺すなんてあんたは一体何考えてんだ!?」
「殺す?……あの男があの程度で死ぬと思ってるのか?」
「……え?」

クロスの冷徹な一言に我に返った俺がファングの方へ目をやれば、
其処には急所へ投げナイフを受けたにも関わらず、刺さったナイフを引き抜きながらゆっくりと立ち上がるファングの姿。
……う、うそだろ? どう見ても心臓へモロにナイフが刺さってるってのに、なんで生きてるんだ?

「クソが……いきなりご挨拶じゃねぇか! スカーフェイス!
この俺様じゃなきゃ、今頃は三途の川の渡し守に挨拶してる所だったじゃねえか!!」
「やはり、この程度じゃ死なないか……流石はケダモノだな」
「…っ! テメェ、ケダモノって二度も言いやがったな!」
「いや、私がケダモノと言ったのは今回入れて今日で四度目だ。相変わらず記憶力無いな、お前は」
「ぅるせぇ! 甘い顔してりゃつけ上がりやがって! テメェは今度こそ俺様の『能力』でミンチにしてやるっ!」

ファングが叫ぶと同時、その身体がブルリと震え、目に見える形で変化が起きる。
身体の体積が増し、露出している肌が黒味がかった獣毛に覆われ、骨格と筋組織がめきめきと音を立てて変形し
指先の爪は大きく湾曲しながら形を変え、鋭いナイフを思わせる形へと変貌を遂げる。
更にはその腰のジーパンの破れた隙間からふさふさの尻尾が飛び出し、ブルンと振るわれ、
顔の上顎と下顎が鼻梁を巻き込みながらめりめりと音を立ててマズルを形作り、
耳も獣毛に覆われながらその形と位置を変えて行く。

「……へ、変身、した!?」
「ああ、変身したな」

人間が獣へと姿を変える。そのあまりの非常識な光景を前に、俺はただ呆然と立ち尽くすしか他が無い。
そして、やけに長い数秒が過ぎた時には、目の前の男は伝説上の怪物である狼男へと姿を変えていた。
530創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 01:37:05 ID:7011DJaG
531創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 01:37:45 ID:7011DJaG
532 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/11(木) 01:37:59 ID:T9fNqII4
「くはははははっ、どうだ見ろっ! スカーフェイス! 俺様のライトエグザ、ウルフフォームだっ! 
この姿になったからにはもうテメェのナイフなんぞ効きやしないぜ!」

ギラリと光る白い牙を見せ付ける様に、大きく口を開けて勝ち誇った様に笑う男、もとい狼男。
その証拠と言うべきなのだろうか、先ほどナイフが深深と刺さっていた胸の傷口が見る見るうちに塞がって行く!
なんと言う非常識な能力、これじゃとてもじゃないけどナイフだけで勝とうだなんて到底思えやしない。

「……相変わらずケダモノだな」

しかしそれにも関わらず、俺の隣にいるクロスは、何ら慌てる事無く飽くまで冷静な呟きを漏らす。
この状況でここまで冷静なのは、心臓に毛が生えている位に豪胆なのか、それとも単に状況を理解していないだけのか、
そのどっちにしろ、その横に居る俺にとってはどうなるのか気が気ではない!

「ちょ、クロス、あんたは何でそんなに落ち付いてるんだ!? 見るからにヤバそうだぞ? アレ」
「案ずるな。奴が変身したとしても、単に動きが素早くなって力も強くなり、ついでに再生能力が強化されただけの事だ」
「あー、そうかー、それだけの事かー…って、それって充分過ぎるくらいにヤバいんですけどぉっ!?」
「ヲイコラ、俺様を置いて勝手に漫才してるんじゃねぇ!!」

ちっとも励ましになっていないクロスの言葉に、思わずノリ突っ込みする俺。
その様子が面白くなかったのか、ファングは尻尾をぴんと立てて的外れな事で怒声を上げる。
クロスはちっ、と舌打ち一つして、面白くなさそうな目でいきり立つファングを見やり

「そんなに急かすなケダモノ。お前は私をミンチにしたいのだろう?
ならばケダモノはケダモノらしくとっとと掛かってくれば良いじゃないか、このトンマのケダモノめ」

飽くまで乏しい表情ながらも、ファングへ向けて明らかに嘲笑混じりに言い放つ!
ちょwwwwwwここで何を挑発してるんですかあんたはwwwwwしかもケダモノって四連続で言いやがったwwww 
うわ、ファングさんめちゃくちゃ怒ってますよ? 全身の毛が怒りに逆立ってますよ!?

「て、て、てててテメェ!……分かった、良く分かった、テメェは余程俺にミンチにされたい様だな!!」
「ふっ、出来るものならな?」
「うっ……がぁぁあァぁあぁぁァぁっ!!!」

クロスの嘲笑混じりな一言を引き金に、ファングが野獣の如き咆哮を上げて飛び掛ってくる!
思わず「ひっ」と悲鳴を上げて目を閉じて身を屈める俺。一瞬、脳裏に浮かぶは血肉飛び散るバイオレンスな光景!

「slow」

――その瞬間、彼女が何かを呟いたような気がした。
533創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 01:38:25 ID:7011DJaG
534 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/11(木) 01:38:52 ID:T9fNqII4

「あ……れ?」

そして、何時まで経ってもバイオレンスな事はおろか、何かが起きる様子すらない。
恐る恐る目を目を開けて、屈んでいた態勢から身を起こした所で、俺はそれに気がついた。
それは、牙を剥き出しにして跳びかかって来る体勢のまま、空中で動きを止めたファングの姿。

「……止まっている?」
「いや、止まっている訳ではない。今の奴の時間が約1000倍遅くなっているだけだ」
「……え?」

平然としているクロスに言われて良く見れば、確かにファングは酷くゆっくりとではあるがじりじりと動いていた。
思わずゆっくりとした動きのファングへ手を触れようとして、俺はクロスに手で制された。

「触るな。迂闊に触ったら最後、その途端に奴の時間は通常の速度に戻ってしまうぞ?」
「どう言う事だよ……これって一体? クロス、あんたの仕業なのか?」
「ああ。私が『slow』と名付けているライトエグザは
空中を浮遊している、もしくは空中を飛来する物体の時間を約1000倍遅くする波動を、両方の手から放つ事が出来る。
しかし、それが少しでも地面や地面に接している物体へ触れた場合、即座に効果の対象外となって解除されてしまうのでな。
だからこそ私は、奴を挑発する事で跳びかかって来るように仕向け、私の能力の対象にしたのだ」

な、成る程……ある意味使い所が難しい能力なんだな。

「それとな、地面、もしくは地面に接している物体に触れる事で解除されるなら、
その逆に地面に何ら接していない物体が触れた場合はと言うと……」

言いながらクロスは路地の隅に置かれていたコンクリートブロックを拾い上げ、

「こうなる」

――おもむろにのろのろとしているファングの顔へ投げ付けた!
当然、コンクリートブロックはファングの顔へめきゃって感じで思いっきりめり込む……筈なのだが、
ファングの顔へ触れた途端、そのコンクリートブロックがめり込む動きは酷くゆっくりとした物になってしまう。
……ひょっとして、これって?

「時間が1000倍遅くなってるファングに触れた事で、コンクリートブロックの時間も1000倍遅くなってしまったのか?」
「その通りだ。飲みこみが早くて助かる。
この副次的効果により、布などの面積の広い物体へ波動を当てる事で、銃弾などの飛来物から身を守る事も可能だ
尤も、地面、もしくは地面に接している物体が触れたら最後、其処から連鎖的に元に戻っていってしまうがな」

あー。本当だ、徐々にコンクリートブロックがひび割れて行って、衝撃でファングの頭が仰け反り始めてる。
しかもコンクリートブロックの直撃で折れて飛んだファングの牙や、鼻から飛び散る鼻血までゆっくりと動いている。
まるでハイスピードカメラで撮った映像を、更にスロー再生したような状態だなぁ……。
って、のんきに様子を観察している場合じゃなくて。
535創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 01:39:06 ID:7011DJaG
536創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 01:39:47 ID:7011DJaG
537 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/11(木) 01:39:53 ID:T9fNqII4
「所でクロス、こいつ如何するんだ?」
「放っておく」
「え? いや、攻撃する絶好のチャンスじゃないのか?」
「馬鹿を言え、奴はナイフで心臓を刺されても死なずにあっさりと再生するような能力者だぞ?
例えここで私が奴へ攻撃をして、多少のダメージを与えたとしても。直ぐに再生されて徒労に終わるのが関の山だ。
だったら、動きが鈍い今のうちに、とっととこの場から逃げ去るのが良策だ」
「あー、確かに」

言われてみればそうである、相手は異常な再生能力を持つ化け物なのだ。
ここで無意味な攻撃をして折角作った貴重な時間を無駄にするより、いっその事逃げた方がまだマシなのだろう。

「しかし、かと言ってこのまま何もせずに放置しておくのも癪だしな……」

言いながらクロスは周囲を見やった後。
そこら辺にある物を手に取って、未だに空中でのろのろしているファングへ適当に投げ付け始めた。
中身たっぷりのゴミ袋、放置自転車、キメラの死骸、薄汚れたぬいぐるみ、更には何故か落ちてたボーリングの玉……。

「良し、これで充分だろう」
「ひ、ひでぇ……」

――数分後、満足げに頷くクロスの前で、ファングは空中に浮かぶ奇妙なオブジェと化していた。
多分、彼は地面に触れて効果が切れるその時まで、ずっとこの状態なのだろう……なんと言うか敵ながら哀れである。
そんな事考えている俺とはつゆ知らず、空中の前衛的芸術を見るのも満足したクロスが振り返り、俺へ言う。

「さて、今のうちにとっとと逃げるとしようか。
お前も私に対して聞きたい事が色々とあるだろうが、今は安全な場所に逃げるのが先決だ。
取り合えず、先ずはお前の家まで案内させてもらおう、エンドウナオキ」

                              ※ ※ ※
538創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 01:40:26 ID:7011DJaG
539 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/11(木) 01:41:04 ID:T9fNqII4

「ぬぐをぉわ゛っ!?」

クロスと直輝が去って十数分ほど経った後、裏路地の一角で唐突に上がる激しい物音と男の悲鳴。
その音の余韻すらも消え去った後、物音の出元と思われるゴミとガラクタの山がもそもそと動き、不意に弾け飛ぶ。

「ぐぁぁぁぁぁっっ!! くっそうっ!! またスカーフェイスの口車に乗せられちまった!!」

ガラクタの山から出て来るなり怒りの咆哮をあげるのは、黒味掛かった毛並みを持つ狼男。
ファング、と言うコードネームを与えられた彼は、今から十数分ほど前、腐れ縁とも言うべき相手と遭遇し。
その相手の挑発にまんまと乗せられた挙句、見事に相手の能力を食らい今に至っている。

「くそ、歯が何本か折れちまってるじゃねえか……ああもう、歯ってのは他と比べて再生にやたらと時間が掛かるんだよな。
これで暫くは他の連中にハヌケって馬鹿にされちまう……スカーフェイスの奴め、今に見てろ!」

失われた自分の前歯の牙へ手を当てながら、一頻り(ひとしきり)聞く相手の無い愚痴を並べた後。
ファングははと、自分がさっきまでやろうとしていた事を思い出す。

「って、今はスカーフェイスの事より。あのエンドウナオキってガキを攫ってくるんだった!
奴が逃げてからそう時間は経ってないから……良し、ガキの匂いはまだ残ってる、こっちか!」

言って、ファングは地べたに伏せると、鼻先を地面へ近付け、スンスンと匂いをかぎ始める。
やがて、獣化能力によって強化された嗅覚によって、地面に残された直輝の靴のゴムの微かな匂いを嗅ぎ当て、
ファングはにやりと口角を笑みに形に歪める。その際、尻尾がぶんぶんと振られているのはちょっとしたご愛嬌。

「へッ、スカーフェイスの奴め、逃げ急ぐ余り消臭するのを忘れてたな?
これであのガキのヤサ(住処の意味)を見つけられ…――あん? 携帯か? なんだオヤっさんからか、しかも緊急?」

地面に残った直輝の靴の匂いを辿り始めた矢先、突然鳴り始めるジャケットのポケットの中の携帯。
それに気付き追跡を一旦止めたファングは、その取り出した携帯の液晶画面に表示された相手の名前を見て、
狼の顔でも分かるくらいに怪訝な表情を浮かべつつ、携帯を繋げる。
540創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 01:41:17 ID:7011DJaG
541創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 01:42:20 ID:pLJ2W1aa
支援
542創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 01:48:34 ID:pLJ2W1aa
 
543創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 01:49:11 ID:ZIRCLvIg
 
544 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/11(木) 01:51:12 ID:T9fNqII4
はい、こちら『ファング』。どーしたんっスか? オヤッさん。いきなり緊急コールで電話なんかしてきて……」
『……ファング、今お前は何をしている?』
「ああ。今、俺様は第63号案件のエンドウナオキってガキの事に関する任務をやってる最中ッス。
途中、『機関』の奴らにちょいと邪魔されましたが、じきに奴のヤサを見つけて攫ってきますんで、今しばらく……」
『悪いがファング、直ちにその任務を中断し、本部へ帰還しろ』
「はぁ? オヤっさん、いきなり何言ってるんッスか!?」

通信先のオヤっさんと呼ばれた男から言われた寝耳に水な言葉に、思わず尻尾を立てて声を荒げるファング。
しかし、男は口調一つ変える事無く、冷静淡々と言い放つ。

『お前が現在、任務の対象にしているエンドウナオキは、まだ能力が覚醒していない状態と報告されている。
その為、エンドウナオキの能力の威力、及び効果範囲などの詳細はまだ観測すらされていないのが現状だ。
そんなデータも揃ってない状況で覚醒された場合、我々にとって非常に好ましくない事態に陥る事も充分に考えられる。
よって、エンドウナオキの能力が観測されるまでの間、直接的な行動は厳禁と上層部から通達された』
「そんな! そう言われても覚醒されてからじゃ遅いかも知れないッスよ?」
『上層部からの通達は絶対だ。これを破れば反逆の意思ありと判断され、最悪、処断される可能性もある。
それに『機関』も動き出している以上、迂闊な行動は厳禁だ。……ファング、悪い事は言わん、直ちに帰還しろ』
「……ちっ、分かりました。これよりコード『ファング』は現任務を中断し、直ちに本部へ帰還します……以上」

言って、通話を終了させた後、携帯を乱暴にポケットへと仕舞ったファングは、
裏路地のビルとビルの間に覗く青空を見上げ、何処か苛立たしげに体毛を逆立てつつ漏らす

「ったく、道理で他の連中が動かなかったわけだ。
流石のあいつらもお偉方がストップかけてりゃ動きようがねーもんな。
……まあ、とはいえ、あのスカーフェイスが関わってる以上、俺様もこのまま放っておくつもりはねーんだがよ……」

其処まで愚痴をもらした所で、ファングはふとある事に気付き、思わず「げっ」と声に漏らす。
そして、肉球の付いた毛むくじゃらの手を見やり、何処か疲れた調子で漏らす。

「……そういや俺様、スカーフェイスの奴に乗せられた勢いに任せて変身してたんだっけ?
って事は、日が完全に沈むまでずっとこのままかよ……ハァ……」

……多分、後でルローのチビ辺りにもふもふーとか言われて、尻尾とか耳とかを弄られるんだろうなぁ。
と、これからの自分に起きる事を思ったファングは、無意識の内に自分の尻尾を重く垂らすのだった。

――――――――――――――ー――――続く――――――――――――――ー――――
545 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/11(木) 01:53:03 ID:T9fNqII4
以上です。
どのスレに作品を投下するときもコテ消さないのが俺のジャスティス

それと、キャラの説明と能力の詳細は次回の投下した際に書きます。
楽しみにせずお待ちください。
546 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/11(木) 01:55:47 ID:T9fNqII4
それと書き忘れてたけど、支援してくれた方々、本当に有難うございました!
547創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 02:10:11 ID:pLJ2W1aa
>>546
投下乙!
なんなんだこれはw面白すww
続きも期待していますよ〜

>>515
ボーイッシュラバーワロタw
続き期待してますw
エンマと結婚したい
結婚させてください

>>506
かわいいw
これが男の子……じゃね、女の子だと……
俺の中に男装少女属性が、グアアアアア
548 ◆KazZxBP5Rc :2010/03/11(木) 02:16:58 ID:7011DJaG
>>546

ファングの間抜けさが好きだw

>>547
いいよん
549創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 14:30:55 ID:8TTVrGeD
>>516
ひどいw情がひどいwww
晶のツッコミがそれらしくていいなあ

>>519
マジすか! イエス! 敵だぜ慎也さん!
ナイスな相手役が見つかってちょっと先の構想が見えてきたかも。

ただ敵と戦うのに食材の能力だけじゃあまりにもあんまりなんで
たぶん同じ街に住んでるっぽい能力者さんたちお借りします。
借りるどころか相当酷使するかも…。あらかじめご容赦ください。

>>546
氏までこのスレにwそしてやっぱり獣化能力だったw
これはまたすごそうなシリーズ来ましたね。本格的な能力バトルに期待してます。
550創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 23:42:54 ID:YL8wD0eT
スレの雰囲気に触発されて書きたくなった
岬陽太をお借りして書いていきます
当然のごとく厨っぽいノリでw
今回はプロローグのみ
551創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 23:45:26 ID:7011DJaG
wktk
552白夜に輝く堕天の月:2010/03/11(木) 23:48:44 ID:YL8wD0eT
「ああ、そういえば主任。向こうの連中、あの少年からはマークを外したようですよ」
「あの少年……? あーあー、あの大根振り回して改造犬を退治した中学生か。マーク
を外したって、観察対象外になったというのか?」

 一日の作業を終えての定時報告。その最後に、まるで世間話でもするかのように、助
手はおそらく今一番この上司がほしいであろう情報をしれっと口にした。それを受けて
の上司の反応は、予想通り手ごたえのあるものだった。

「ええ、そのようです。向こうの連中としては、彼とともに行動していたもう一人の
しょうね――失礼しました。少女のほうに関心があるようですね」
「あのモデルみたいな体型の女の子か。ふーむ、まあ道理だろうな。彼女は”人間の動
きさえ止めた”って話だからな。本腰入れて観察する価値のある能力ではある。いやま
あそれよりも、だ。我々にとって重要なのは”彼”のほうなわけだ。ならやはりこれは
好機と呼ぶべきなのかいやそれとも……」

 ぶちぶちと何事かをつぶやきつつ、主任と呼ばれた男は思案に落ちていく。
 じっと目をつむり、眉間に人差し指を添えて、いかにも全力で悩み中ですと言いたげな
その姿。

 だが、助手はもう知っている。この上司がこんな風に悩んでいる時というのは、実は
意外に悩んでいないらしいということを。というかすでに答えを出しているらしいことを。
もっと酷い場合、全然別のことを考えているらしいことを。

「主任、お悩みのフリはしなくて結構ですから。もう次に取る行動は決めていらっしゃる
んでしょ?」
「お、おいおい、最近助手くんノリが悪くなってきたな。たまには『重要な局面で苦渋の
決断を迫られ、我がふりを定めきれずに思考の泥沼にはまるダンディな中年男性』を演じ
させてくれたっていいじゃない」
「お断りです。そんなものを見せられても嬉しくありません」
「えー。助手くんなんかどんどん手厳しくなっていくよね……」

 そう言いながら、主任は露骨にしゅんとなってしまった。ぐりぐりと指で押していたせ
いか、その眉間はほんのりと赤くなっている。

 瞳をうるうるさせながらしょぼくれる三十路男。それだけですでに香ばしい眺めだが、
それプラスポチッと局所的に色づいている眉間。助手はのどからこみあげる笑いの衝動
をぐいと飲みこんで言った。
553白夜に輝く堕天の月:2010/03/11(木) 23:49:42 ID:YL8wD0eT
「あーもう、仕方ないですね。次はとことん付き合ってさしあげますから、そんなに拗ね
ないでください主任。全然可愛くないんですから。じゃあ話を戻しますよ。もう次に取る
行動は決めていらっしゃるんでしょう?」
「それ、約束だぞ? 破ったら能力使うからな。よし、じゃあ本題に入ろうか。まあ君の
察しの通りだ。次にやることはもう決めている。そして君のことだ、次にやることが何か
ってことも察しちゃってるんだろう?」

「接触されるんですね? 岬陽太に」
「イエスェス! あのモデルみたいな子と関わりがある以上、あちらさんとニアミスして
しまうリスクは抱えることになるけど、まあ我々が直接あの子と接触しなければ面倒なこ
とにはならないと思うしね。上の許可は結構前から取ってあるし、あちらさんがマークを
外した以上、全面衝突ってことにはならないと考えてるんだ」

 落ち着いた口調で整然と考えを述べる主任の顔は、穏やかでありながら、確固とした自
信を湛えていた。
 こういうまともな面を見せられる度助手は、やや奇矯なこの上司の本性はいったいどっ
ちなんだろうかと、ほんの少し悩んだりもする。本当にほんの少しだけ。

「主任がそうお考えなら、きっとそうなんでしょう。それでは、接触は主任自ら行うとい
うわけですか?」
「そのつもりだ。彼にはずっと興味があったからね。中学二年であの身長ってところに、
抗いがたい親近感を覚えちゃってね。私もちっちゃかったからね」
「あえてツッコみませんが。ところで主任、彼との接触にあたって、僕から提案があり
ます」
「別にボケてないからツッコんでくれなくていいもん。それで、どんな提案を叩きつけて
くれるんだ?」
「岬陽太との接触には、”彼女”を同行してはいかがでしょうか」

 助手の発言から、暫しの沈黙が流れる。だがその沈黙の間に、微笑を浮かべていた主任の
顔は、軋む音が聞こえてきそうなほどにみるみる引きつっていった。

「か、彼女って、あの子のこと、だよな……? えー、めんどくさー! 私あの子めっさ苦
手なんだよなー……いや、自分で連れてきといてこんなこと言うの、人としてアウトだって
ことはわかってるよ? でもさ――」
「御心配には及びません。僕の見立てでは、あの少年と彼女とは相性抜群のはずです。主任
の入り込む余地はないかもしれません。というか、出る幕もないかもしれません。むしろ、
主任は行かなくてもいいかも」
「……私の出番なくなっちゃうわけ?」
「まあまあ。とにかく、彼女を連れていくと面白いことになると思うんです。ぜひ検討して
みてください」
554創る名無しに見る名無し:2010/03/12(金) 00:06:49 ID:qsc0x4Na
投下終わり?
555創る名無しに見る名無し:2010/03/12(金) 00:37:05 ID:78yi168e
うわ、申し訳ない
つづくとか書いてなかったな
ここで一旦終わりです
次回から本編っぽくなってくと思う
556 ◆akuta/cdbA :2010/03/12(金) 00:42:26 ID:gek+STgQ
うおお、おつおつー。じゃあもう投下して大丈夫かしらん?

ttp://loda.jp/mitemite/?id=941.jpg
「シルスク・レッド…」
「クエレブレ・ブルー!」
「ラヴィヨン・イエロー!」
「バk……バフ課戦隊サボリタインジャー!!」

>>549
>たぶん同じ街に住んでるっぽい能力者さんたちお借りします
色んなクロスクルー?( ・∀・)
557創る名無しに見る名無し:2010/03/12(金) 00:52:17 ID:qsc0x4Na
>>555
んい、乙
主任お茶目

>>556
ひどい同僚だw
558創る名無しに見る名無し:2010/03/12(金) 00:56:08 ID:JuFrXBor
>>555
投下乙です!
次でモニターしてた人が出てくるのか
続き期待

>>556
ちゅー…ちゅーだと?
サボりたいんじゃーってw
投下乙です!
559創る名無しに見る名無し:2010/03/12(金) 21:13:04 ID:ZlLLoeHL
>>555
まさか陽太の能力がマークされるとは
厨二の気配がプンプンするぜ

>>556
仕事ハードなのに楽しげな職場だなw

しかしこの街やべえ
どんだけの組織が暗躍してんだよw
560創る名無しに見る名無し:2010/03/13(土) 22:28:49 ID:ZR35RaY4
休日なのに人稲
561創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 00:47:04 ID:/MOjc6P3
ネタはあるのに書きあがらない……
終わりが見えないぜヒャッハー('A`)
562創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 00:53:48 ID:4i9bhdvt
頑張れ!としか言えない
563創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 00:55:20 ID:Sdbv5Nid
待ってる作品があるんだが…
避難所見てると規制されてる人もいるみたいだね
564創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 00:56:28 ID:4i9bhdvt
この時間帯実は人結構いるな!?
565創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 01:03:45 ID:gCG4NUun
貴様!見ているな!?
566創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 01:54:40 ID:4i9bhdvt
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
567『月下の魔剣〜邂逅〜』:2010/03/14(日) 01:55:10 ID:API5E3NG
描き始めたぜ続き。最後まで描きあがらなくてもキリがよければ投下しちゃっていいと思うんだぜ。
ありがとう>>519さんあなたのおかげで先のイメージがわいた。よし投下投下。

『月下の魔剣〜邂逅〜』

俺の名は岬 月下。
俺の能力は万物創造(リ・イマジネーション)。万物を創造する力。
もうひとつの能力は叛神罰当(ゴッド・リベリオン)。神に叛く力。
この力を使い続ければ、俺はいつか地獄に堕ちるだろう。構いはしない。
俺に未来は必要ない。過去もいらない。必要なのは現在(いま)だけだ。

今日もまた退屈な授業を終え、古い情報媒体から情報を収集し、夕日の中帰路につく。
俺は能力で生み出した新たな武器、ハードクラッカーに牙を立てる。うわなにこれ硬

「はいそこの厨二ー」

急に真上から頭を押され、円盤に食い込んだ少年の糸切り歯がゴリリと嫌な音を立てた。

「まーた立ち読みしてたでしょー。真っ直ぐ帰れって言われてんのにさー」
「……い……」
「陽太?」
「痛ってええぇな晶あぁ!! 歯折れるかと思ったぞ!!」
「あ、それ。さっそく出してみたんだ。伊賀名物の」
「幾多の伊賀忍者の歯を打ち砕いたという伝説の武器。ハードクラッカーだ」
「ほんと硬いよね。木槌で割らなきゃ食べられなかったもん、かた焼き」
「ハードクラッカーだ!」

このちっこい中二の厨二病、陽太の能力は、昼はお菓子とか軽食を、夜は食材を手から出すっていう変な能力。
過去に食べたことのあるものじゃないとダメらしい。
それでもって、陽太の両親。彼らは大の旅行好きで、世界中からいろんなお菓子とか食材をお土産に買ってくる。
今回は国内旅行だったから帰ってくるのは早かったみたいだね。

「で、どうすんのそれ。そんな硬いの出しちゃってさ、食べらんないじゃん」
「投げるっ!」
「馬鹿」

グーから中指を出してコツンと陽太の頭を叩いた。

「食べ物で遊ばない! もったいないでしょー。そんなことすると罰が当たるよ!」
「い、いいじゃねーかよ、俺の能力で出したもんなんだからさー」
「ダーメ! 食べ物は食べ物!」
「昼に戦う武器だって必要だろーが」
「そんな前みたいな機会そうそう来ないってば!」

あれから数週間。僕たちは少し遠回りになるけど、人通りの多い道を選んで通学している。
あれ以来猛犬の姿は見ていないし、話も聞かない。ちゃんと報告したからお巡りさんがなんとかしてくれたんだろう。
僕はそろそろ通学路を戻してもいいかな、と思っている。

「そのお煎餅はちゃんと持ち帰って割って食べる! いいね!」
「…わかったよちくしょー」
「よし、じゃあ缶コーヒーを奢ってあげよう」
「加糖な」

微糖を買って渡してあげた。平気な顔して飲んでいるが、ちょっと涙目になってる陽太。かわいい。
ほのぼのとした平和な時間。今となっては数週間前の非日常が、まるで夢だったように感じられた。
568『月下の魔剣〜邂逅〜』:2010/03/14(日) 01:57:06 ID:API5E3NG

街中を歩く僕と陽太。目で、耳で視る街の雑踏。僕の心に直接視える、動物たちの心。
巣に急いで帰ろうとしているのは、あのカラス。大好きなメスにあげるプレゼントをくわえたネコ。
今日もたくさん獲物を捕らえようと張り切っているのは、コウモリ。
みんなそれぞれに生きている。もうすぐ消えてしまうけれど、僕はやっぱりこの昼の能力が好きだ。

そんな平和な雑踏に変化が起きた。僕だけが感じる変化。心に響く、怖い、苦しい、痛い、負の感情。
これは…犬。そう、小さな仔犬だ。助けを求めているのを感じる。あの並んだビルの間から。

「ごめん。ちょっと待ってて陽太」
「は? ちょ、どこ行くんだよ」
「仔犬が苦しんでるの。助けてあげなきゃ」
「おい待てって! 危ねえぞ! 罠かもしんないだろ!」
「だからそんなのないって! ほうっておけないよ」

薄暗い路地裏に飛び込む僕に、続く陽太。意外と道は長く、幅は狭く2mもない。
少し走った先に、ひとつの人影を見つけた。

恐らく20代後半。所々に金属の装飾がついたハードな黒服。少し動けば腰のチェーンがジャラジャラと音を立てる。
何というか…世紀末な男だった。残念ながら頭はモヒカンではなくツンツン尖った金髪だったけれど。
男はその露出した太い腕で、小さな犬の頭を掴んでいた。

その姿に一瞬たじろいだけど、意を決して声をかけようと息を吸う。
と、意外にもその男に先に声をかけられた。

「よォ、来たな。待ってたぜェ、水野晶」
「え…何で……」
「いつもおびき出すまでが苦労するんだがよォ、今日の仕事は簡単だったなァオイ」

僕は本能的に後ずさる。この男はヤバい。一刻も早く離れなれないとヤバい。
そんな僕の肩に突然何かが触れて、バクンと心臓が跳ねた。
そのまま身体を引かれ、男と僕の間に見慣れた腕が差し込まれる。

「な。やっぱり罠だったろ」

そこにはいつも通りの、余裕溢れる陽太がいた。
569『月下の魔剣〜邂逅〜』:2010/03/14(日) 01:57:47 ID:API5E3NG

「チッ、やっぱりか。大根のガキまでついてきちまった」
「初対面じゃねえな。犬と戦ったあの日にも近くにいた。そうだろ、壁の能力者」
「あァ、よくわかったな。生意気なガキだぜ」
「ね、ねえ壁って…」

陽太の背中に恐る恐る声をかけると、男と向き合ったまま親指で後ろを示す陽太。
振り向けば、僕たちがたった今入ってきたはずの入口には、ビルの頂上まで続く壁。完全な行き止まりになっていた。

「そんな、いつの間に…」
「この道に入った直後だ。危うく分断されるとこだったな。あの壁は壊せねえ越えられねえ、ついでに電波も通らねえ」

慌てて携帯を取り出して驚く。画面には、街中であるにも関わらず圏外の文字が光っていた。

「昼の能力だが夜になっても消えねえし消せねえ。でかい壁を作れんのは一つだけで、持続時間は十時間…ってとこか」

そこまで無表情で聞いていた男が、ピクリと露骨に顔をしかめる。

「…てめェ、何モンだ」

「岬月下。神に叛く能力者だ」

あの日と同じく、いや、あの日以上に。
陽太は冷静で、余裕で、自信に満ちていて。そして悲しいほどに厨二だった。


<続く>

月下の魔剣シリーズ序盤のテンプレができたぜ!どーせ次からは守らないけどな!!まさに外道!!
ずっと犬と戦ってるわけにもいかんので対人戦。俺の描写能力じゃどんな様子かわかったもんじゃないけどな!!まさに(ry

かた焼き:伊賀名物の日本一硬い煎餅。伊賀忍者の携帯食料として誕生した。
     非常に硬く、付属する木槌で割って食べることを推奨される。
570創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 02:29:58 ID:4i9bhdvt
陽太の大物感がすごすぎるwww
571創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 11:35:12 ID:QVFvQQNC
堅いお菓子のことを、jawbreakerというみたいですね
(hardcandyはエロパロ行きな意味らしい……)
転じて、「発音しにくい言葉」の意味もあるらしいです
ちなみに、いわゆる早口言葉はtongue twisterだってさ

陽太のネーミングセンス、厨二なんてバカにしたものでもないかもww
572創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 11:48:54 ID:4i9bhdvt
>>512-515の続き投下します
573Beyond the wall (6) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/14(日) 11:49:56 ID:4i9bhdvt
遠くから見てもはっきりと分かる、西洋風の城のような建物。
それがキングの本拠地である。
今そこに、二台のバイクに乗った三人の若者が向かおうとしていた。
「いよいよだね。」
五メートルはあろうかという巨大な扉を前にしたときだった。
「危ないっ!」
上から降ってきた物体が地面に突き刺さる。それは紙ヒコーキだった。

空を見上げると男が空を気ままに舞っていた。
男はだぶだぶのストリートファッションに身を包んでいる。
そして先ほど落ちてきたのと同じ紙ヒコーキに男は乗っているのだ。
「ちっ、仕留めそこねたか。まあいい、俺は『人事部長』パイロットだ。冥土の土産に覚えときな。」
パイロットがパーカーを開くとそこには大量の紙ヒコーキが納められていた。
それを両手で六つくらい持ち、投げる。すると紙ヒコーキは紙ヒコーキと思えない速さで急降下を始めた。
避けても地面に落ちるまでおおざっぱに追ってくる紙ヒコーキたち。
「くっ! それなら!」
と、情が落ちている紙ヒコーキをパイロットに向かって投げた。
しかしその紙ヒコーキはまともな放物線を描いて落ちてゆく。
「馬鹿かテメェ? 俺のエグザの影響から離れたヒコーキはただの紙切れに決まってるじゃねえか。」
その一言で情は気付いた。この飛行能力の攻略法を。
「衛っ!」
まずは衛に紙ヒコーキを投げる。
そしてバイクまでダッシュ。トランクからロープを取り出すとそれを今度はセイに投げた。
「了解!」
セイは落ちている紙ヒコーキをひとつ拾い、ロープを紙ヒコーキにくくりつけた。
そして紙ヒコーキを透明の拳銃にセットする。
逃げ回っているせいで狙いがつけにくい。
「くそっ……。」
あと三センチ……一センチ……。
「今だっ!」
紙ヒコーキは勢いよく離陸した。そしてパイロットの股下をすり抜けていった。
「ひゅー、惜しいねー。」
「衛、今だよ!」
待っていましたと言わんばかりに衛がロープを掴んだ。
「あん? な、なんだよこれ!」
パイロットは、気付いた時には裸で空中にいた。離れてゆく自分の服に慌てて手を伸ばすが触ることができない。
奇妙な声を上げてパイロットは落ちていった。
パイロットに何が起きたのか。
服装というものは体を覆っているものである。それぞれのパーツは大抵触れ合っているものだ。
そこに、足に引っかかったロープを通して衛の不干渉の能力を発動させたのだ。
するとパイロットは自分の服と紙ヒコーキに触れていられなくなり落ちるしかなくなるのである。
この作戦を思いついた情が二人にマイルストーンで作戦を指示したのだった。
574Beyond the wall (6) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/14(日) 11:50:37 ID:4i9bhdvt
「空を飛ぶ能力者、か。」
考えていることは三人とも同じだ。あの能力なら壁を容易に越えることができる。
「さて、虎穴に入るとしますか。」
そして重い扉が開かれた。

「ようこそ、私の城へ。」
エントランスホールでは手首に傷を負ったダンディな男が待ち構えていた。
「おいおい、『私の城』ってことはまさかお前がキングなのか?」
「その通りだ。」
三人は一斉に身構えた。
「お前が、街の人たちを連れ去ったのか!」
「……私は忙しいので君たちと遊んでいる暇は無いのだよ。」
「おい、待てっ!」
奥の部屋に去ろうとするキングを追おうとしたが、ホール二階から飛び降りてきたマッチョな男に足止めされた。
「がははははは、ワシは『教育部長』キューピッドだ。これ以上貴様らの好きにはさせんぞ。」

つづく
575Beyond the wall (6) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/14(日) 11:51:17 ID:4i9bhdvt
すごく簡素なキャラ紹介

・パイロット
キングの部下。ストリート系。
《昼の能力》
名称不明
【意識性】【操作型】
パイロットが投げた紙ヒコーキは地面につくまで自由に操れる。
スピードは投げた以上の速さを出せ、強度は人を乗せられるくらいになる。
《夜の能力》
不明
576創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 11:56:10 ID:4i9bhdvt
投下おわりです。
577創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 22:34:15 ID:QVFvQQNC
>>575
乙です! 飛べる能力か……バトル向きですね
教育部長ww 早速やられ役フラグがww
社員教育には部長ポストあてないんじゃ?ww
往々にして、教育係は2年目〜5年目あたりがやらされるから……


んじゃ、バトルとは無縁な、空気読まない投下しちゃおかな!↓
578創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 22:36:22 ID:QVFvQQNC

出勤前。
タクシーの車体を拭いていると、声をかけられた。
振り向くと、このタクシー会社のオーナー ――つまり俺の友人だが――が、立っていた。

「なんだ?」

俺は彼に一瞥をくれ、作業に戻ろうとした。

「気を悪くしないでくれ、お前のプライベートを詮索するつもりはないんだが……」
彼は、言いにくそうに言った。

「だから、何なんだよ」
イラつきながら、答える。

「……お前、この前の日曜に、『能力』を使っただろう」

しばし沈黙する。

「ああ、使ったよ。だから、何なんだ」
「気を付けた方がいい。お前の能力は、訴えられる可能性がある」

それを聞いた瞬間、俺は怒りが湧いてきた。
「はぁ? なんで、訴えられなきゃなんねぇんだ」
ダスターをボンネットに叩きつけ、俺は彼に向き直る。

友人は怯まず、話を続ける。
「いいか、この国は訴訟天国だ。何でもかんでも、訴えた者勝ちだ。

お前の『能力』は、『作用する』、ないしは『操作する』系統の能力だろ。他人に影響を及ぼすことだってある。
つまり、他人がそれで受けた影響を、訴訟のタネにしてくる可能性があるんだ」

俺は、呆れ果てた。

――ふざけたハナシだ。

「おいおい、いつからこの国は『自由の国』じゃ無くなっちまったんだ?」

「お前がこの国を離れている間に、『自由』の意味が変質しちまったんだろうな」
友人は、あきらめ顔で呟いた。

――なんてこった。こんなことなら、妻の母国に留まっていたほうが良かったかもしれない。
579創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 22:39:07 ID:QVFvQQNC

「よその国じゃ、能力の『鑑定士』なんてものが存在するらしい。
鑑定を受けて、能力を役所に届け出て、公共に影響を及ぼす能力ならば、許可を受けないと発動できないという話だ」

「ギャグにもなんねぇぞ、そんなの。一体どこに、自分の能力発揮するのにお上の許可をいちいち受ける奴がいるんだよ?」


そのやりとりがあった頃から、俺は『能力』を使うのをやめた。

そんな下らないことで、訴えられてはたまらない。
その頃には娘も大きくなっていたし、能力の出番も少なくなっていた。


+ + +


「おとーさん、これなーに?」
娘が、紙切れを手にもって尋ねてきた。

「飛行機の切符だ。来月、行くぞ」
「どこに?」

娘はきょとんとして、首を傾げる。そんな些細な仕草一つひとつが、妻に似ていると思わせる。

「母さんの墓参りだ」
「おかーさんの……」
娘の視線が、宙を彷徨う。


娘の7歳の誕生日が近づいていた。
それはつまり、妻の7回忌が近いということである。

妻の母国で長く暮らしていたため、そういった風習や習わしは自然に身についていた。
俺は、娘を連れて妻の母国へ墓参りに行くことにした。


娘が生まれたのと引き換えに、妻はこの世を去った。
娘が、妻のことを覚えているはずはない。
にもかかわらず、仕草や話し方が、成長するにつれ似てきていると感じる。

そこで、ある考えが頭を過ぎった。
『鑑定士』なるものがいるというのは、ほかでもない妻の母国の話だったはずだ。

――鑑定を受けてみるのは、どうだろうか。

考えてみれば、娘にも『能力』は授けられているはずなのだ。
俺は、それを知らない。娘自身は、気づいているのだろうか。

『能力』がらみの事件や訴訟は、目に見えて増えていた。
自分が『能力』を使わなくとも、他人の『能力』のとばっちりを受けることもしばしばあった。

政府や、何らかの「組織」が、『能力』を取り締まる、あるいは組織的に運用する、ということは十分に考えられることだった。

だとすれば、自分の『能力』を熟知していないのは、危険だ。

580創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 22:42:54 ID:QVFvQQNC
↑以上、お目汚しすみません
581創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 22:53:30 ID:4i9bhdvt

娘の能力wktk

バトルも日常モノもバランスよく発展するといいなと思ってるんだぜ

>>577
重役少ないからみんな部長なんだよ!
582創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 23:43:18 ID:Sdbv5Nid
>>569
陽太wwだが、今回はひょっとしてもしかして多分かっこいいかもしれない可能性がある
さて、続きどうなる!?期待!

>>573
お、今回は衛が仕事したw
重役少ないから部長なのかw

>>579
おお!続き来た!これは次回どうなるんだ!?
同じく娘の能力、男のもう一つの能力に期待してますよ〜w
583創る名無しに見る名無し:2010/03/14(日) 23:58:26 ID:4i9bhdvt
陽太はキングクリムゾンの能力とか使われても堂々としてそうだw
584創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 01:26:07 ID:UGPHbSGE
>>573
何という悲惨な敵w
能力の意外な使い道、これぞ能力バトルだぜ。

>>579
こういうのもありかー。
全員能力者設定のこのスレならではの話で面白いね。

陽太はまずい状況でも厨二で堂々としてるけど、晶とわーわーやってるときとか
本当に焦った状況(前作の筍出した直後とか)は素に戻っちゃう感じで書いてたりする。
585創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 01:41:18 ID:HYHu1Ctx
あー、なるほど
そういや止まってたなw
586創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 02:38:12 ID:pNjpfmdU
ガイアが俺にもっと投下しろと囁いている
嘘です



「それは『運命レポート』にゃ。今のうちらの仲間の一人が夜の能力で一生懸命書いてるのにゃ」
リンドウと合流した後、スプーンでチョコパフェをつつきながらルローが言った。
ルローはテーブルの横に灰色の襤褸(ほろ)で巻かれた大きな円柱を置いた。フェムから切り取った右腕である。
それを堂々とオープンカフェのテラスで置くのはどうかと思うが、ルローの奇抜な格好(街中で茶色のパジャマの猫耳フードである)からしてある意味目立たなくなっていた。
そして、冒頭の説明は俺の疑問へのルローの答えである。
リンドウと人通りの多い街路のカフェで合流した後、俺は聞いた。
「なぜ全てを予測できた?」
「すみません。チョコパフェ一つ、たこ焼きパフェ一つ、ヨシユキはどうする?」
「コーヒー、砂糖なしで……待て。たこ焼きパフェって何だ」
「え〜。知らないの〜?たこパフェ。おいしいのに」
「フェムの腕、後でピカピカに磨くにゃ」

つまるところ、『運命を見る能力者』と言うものが彼女らの組織に居り、その予測によって最低限の犠牲で動けるという。
その能力者が書いたレポートが、リンドウが常日頃持ち歩いている『運命レポート』。
しかし、その能力には色々と制約が付いているらしいが。
「それは企業秘密にゃ」
「お前ら企業人だったのか」
コーヒーを啜りながら、たこ焼きパフェなどという異形の食い物を食べているリンドウに顔を向ける。
「これから俺をどうするつもりだ?」
「あなたを保護したい。けど、私がアジトまで連れていくから夜まで待機」
そう言ってクリームが乗ったたこ焼きを口に運んでいく。
「……なぁ、ソレ、旨いのか?」
「はい、あ〜ん」
パフェ用の長いスプーンが差し出される。その上にはクリームと青海苔のかかった温かそうなたこ焼き。
……男になれ、俺。一息に口の中に運ぶ。
口の中に広がるソースとクリームの味がうま…………イ゙ッ!????
587創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 02:39:30 ID:pNjpfmdU
「それじゃ、もう一つ質問。俺のテレポート能力は消せるのか?」
先程のたこ焼きパフェなどという過去は無かったことにする。
「それは分からないわ。参考に言えば、私の置換能力だって後から手に入れた物だけど今まで消えていない。
 おそらく新たな薬を飲むか、ヨシユキ自身の能力を発現するまで消えないわ。私の薬に間違いがあったことなんてないもの」
「それに便利だにゃ。テレポート能力。それとも何か不都合なんてものがあるのかにゃ?」
「いや、不都合というか……」
俺は言葉を濁す。二人が聞きたそうな顔で見てきたので続けるしかない。
「俺は能力がいらない。不要だ。はっきり言って能力なんて嫌いだ」
リンドウとルローは目を見合わせて、ああ、と頷く。
「居るわよね、そういう人。少数だけど能力に馴染めないって人」
「チェンジリング・デイ以降では治安はかなり悪化、重大犯罪は増大してるからにゃ。でも、前世代の方が良かったっていうのは古い考え方にゃ。今では誰もが折り合いをつけて生活しているにゃ」
確かにそうかもしれない。
だが、現実はどうだ。俺はこうして命を狙われ、家族と一生会えないことを宣告された。
「……これも俺の運命か?」
「不可避かはともかく、少なくともその運命になる因子はあったって所かにゃ」
リンドウとの接触の事か。
「人の運命は難しいにゃ。路傍の石でも、運命を変える事が出来るのにゃ。『運命レポート』は確率の高い指針書にしかならにゃい」
「だから、最終的な判断はあなたに任せる。あなたはどうしたい?」
「俺は……」
無意識の中で決まっていた答えを紡ぐ。
「俺は、お前らと一緒に居たい」
リンドウとルローの唇が不敵に笑う。犯罪者の笑みだ。
「それではようこそ、我らが組織“ドグマ”へ」
共犯者の俺も、笑みを返した。



テストが悲惨な結果でオワター
588創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 12:33:51 ID:HYHu1Ctx
たこ焼きパフェwww
とうとう組織の名前が分かったか
ルローかわいい

テストも乙w
589 ◆akuta/cdbA :2010/03/15(月) 17:05:16 ID:u9W+Pqfi
相変わらずラフで申し訳ないのですが…

>>579
ttp://loda.jp/mitemite/?id=951.jpg
おとんと娘という組み合わせにひどく弱いもので。うぐぐ、もえる。

>>587
ヨシユキ\ハーレム状態!/
ttp://loda.jp/mitemite/?id=950.jpg
590創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 19:03:05 ID:pNjpfmdU
>>588
どもっす!

>>589
ハーレム!これはwww
男と娘もかわええw
591創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 20:31:57 ID:HYHu1Ctx
>>589
仲の良い父娘の雰囲気がいいなあ

おっさんが入るのはハーレムなのかwww
592 ◆W20/vpg05I :2010/03/15(月) 20:32:09 ID:q48MHbYF
>>587
ドグマか……いったい何を目的としてるか気になるなあ

>>589
これはいいほのぼの雰囲気だ。好きだな、こういうの

ついでに>>395-396の続き投下します。
593 ◆W20/vpg05I :2010/03/15(月) 20:34:33 ID:q48MHbYF

キンコンカンコンー

「うーん! あー終わったー!」

チャイムが響く中、私は思いっきり伸びをした。
やっと長い長い授業は終わり、放課後になったところ。
ついでに退屈すぎる教師の長話が終わって大あくび。
はしたないかもしれないけど、この解放感には変えられない。

「香織ちゃ〜ん。今日はどこ行く〜」

後ろでなんかふにゃらかした良く知った声が聞こえる。
振り返って見ると見知った親友の顔がそこにあった。
肩までかかるウェーブがかかった黒髪を揺らし、
縁のないメガネを持ち上げる彼女の顔を見るとかなり安心する。

「美柑、どうしよっか。まだ決めてないのよね」
「ん〜。そうだね〜。こないだ新しくできたカラオケ店に行ってみない〜」
「そうだね。そうしよっか」

よっと声を出して、立ち上がる。
鞄の中はいつも通りほぼからっぽで軽い物だったり。
学校終わってから勉強なんてしないしね。
もちろん成績も下の上って所だけど気にしない。親には良く怒られるけど。

「よ〜し。いこ〜!」

元気よく号令をかけて歩く美柑と並んで校舎を出た。
594 ◆W20/vpg05I :2010/03/15(月) 20:39:44 ID:q48MHbYF

放課後の帰り道。カラオケ店に行くまでの道で私たちは他愛もない話に興じる。
その中、ふと美柑は一つの話題を出してきた。

「あ〜。でもいいのかな〜。最近この辺色々危ないって先生言ってたよね〜」
「あ、そうだね。凶暴な犬がうろついてたり、凶悪な犯罪者が潜んでるって話だよね」
「そうそう〜。それに私たち位の女の子が何人も行方不明になってるって話も聞いたよ〜」
「私は大丈夫だと思うけど、美柑は気をつけないと危ないかもよ」
「ん〜。そうかな〜? 大丈夫だよ〜。私たちってしっかりしてるじゃない〜?」

にこやかに笑う親友の顔をみて、思わず首をかしげてしまう。
どう見てもしっかりしてるようには見えないよね。
特に美柑なんて、淑やかな外見と柔らかい口調が男子に受けているらしく、かなり人気が高いんだから。
それでいて隙が多そうに見えるらしいし、変なのに絡まれないか心配でしょうがない。
そんな私の心の中を知らず、こくっと小首を傾げる。

「でも香織ちゃんはどこか抜けてる所がから危ないと思うよ〜」
「……さりげに酷いこと言ってるわね?」
「あ怒った〜? ごめ〜ん。今度お弁当持ってくるからそれで許して〜」
「大丈夫だって。あ、でも今度オカズは頂戴ね」
「わかったわ〜」

びしっと親指を立てる美柑に私も応じる。
そう、美柑の料理はおいしいのだ。
なにせ美柑の夜の能力は"どんな料理でもおいしくする能力"、そして昼の能力は"料理をできたてにする能力"
私としては正直羨ましすぎる能力だったりする。
焼き肉ねるねる○るね巻き寿司なんて料理までおいしくなった時には、ちょっと複雑な気持ちになったけど。

そのまま肉のジューシーさとねる○るねの甘さとお酢の酸っぱさの絶妙なハーモニーまで回想したところで、
美柑がじっと私の方を見ている事に気付いた。
良くわからないので首を傾げてみせる。

「そういえば香織ちゃんの能力はまだわからないんだっけ〜」

ああ、そのことね……正直思い出したくもないわね。

「……うん。まぁ」
「? あ、もしかして変な能力が発現しちゃった〜?」
「……うっ」
「ま〜、話したくないなら言わなくていいからね〜」

私の一瞬の口ごもりから瞬時に答えを導き出されてしまった。
あーもう。妙な所でするどいんだから……
これだから美柑は侮れない。
とりあえず全力でごまかすことにする。
595 ◆W20/vpg05I :2010/03/15(月) 20:43:51 ID:q48MHbYF

「ま、そんなことよりこの辺だよね。新しいカラオケ店って」
「うん、そう〜。……あれ?」

何かに気付いたのか疑問系になった美柑。きょろきょろと周りを見回す。
その行動に私も異変を感じ、立ち止る。
何かおかしい。……さっきから人とすれ違っているのに私たちを気にしていない。
いえ、違う。これは、

"私たちのことを誰も認識していない"

強烈な違和感の正体を悟り、とっさに美柑の手を取ると走る。

だけど、もう時はすでに遅かった。
次の瞬間それは明確な悪意になって襲ってきた。具体的には上空から網が降ってきた。
ふってきた網にあっさり絡まれた私たちは転んでしまう。

「いた〜い」
「いたた……なんなのよ、もうこれは!」

隣で半べそになっている親友がいる。これは私の方がしっかりしないといけない。
そう心に決め、なんとか網から出ようとしていると、路地裏から一人の男が現れた。

……覆面をしてて顔はわからない。というか、存在自体が希薄で、意識してないと見逃しそうになる。
多分、この男が何らかの能力を使っている。

「……おっ、これは久しぶりの上玉だな。いい金になりそうだ」

男は鼻歌を歌いつつポケットから機械を取り出す。

うそ、あれは……スタンガン!?

「あんた何者!?」

私の声にびくりと反応する。男が本気で驚いている。
まるで私が気付くと思っていなかったような反応だった。

「おー。ここまで僕のことを見れるのも珍しい。ま、僕も全力で能力使ってるわけじゃないけど」
「質問に答えて!」

私の声に男はおどけたように一礼し、覆面の上からもわかる嫌な笑みを浮かべた。

「僕の名前は"ゴースト"。はした金で悪いことしてるチンピラさ」

そう言った男は手に持ったスタンガンを押しつける。
うわ……これは……まずいかも……

「はいはいちょっと眠っててね。次起きたら、君たちには新しいご主人様がついてるよー」

そして、強烈な痛みと痺れを感じ、何も思うことなくそのまま意識を失った――


続くかも?
596 ◆W20/vpg05I :2010/03/15(月) 20:44:40 ID:q48MHbYF
投下終わりです。
597創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 20:46:35 ID:HYHu1Ctx
ヤバそうな男だな
続きが気になるところ
598創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 22:06:29 ID:pNjpfmdU
>>595
続きキター!
彼女たち、売られてしまうのだろうか?
続き期待です!
599創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 22:43:09 ID:XaTqCqbX
本家の方も再開してるみたいだから
ちょっとややこしくなるかもだが、
>>552-553の続き投下します
完全にパラレルですねw
600白夜に輝く堕天の月:2010/03/15(月) 22:44:20 ID:XaTqCqbX
 人気もまばらな休日の森林公園で、少年はひとり、静かな激闘を繰り広げていた。
「チッ、これも駄目か……。食材とは違って、武器として使えそうな菓子やら料理ってのは、
なかなかこれってものがないもんだな」

 岬陽太はそう呟いて小さくため息をつき、自分の足元にちょっとした山を形成しつつある、
お菓子やジャンクフードの群れを見やった。すべて彼が自らの能力で具現化したものだ。

 万物創造【リ・イマジネーション】。天の啓示が少年に与えた、陽の力。陽の力であるが
故に、少年は自分がこの力を使いこなせないことは、むしろ自然なことなのかもしれないと
感じ始めていた。

 昼下がりの雲ひとつない澄み切った青空を、陽太は少し恨めしげに見上げた。
 中空に浮かぶ、ぼんやりと白く今にも消え入りそうな月。そのあまりにも頼りなく弱弱し
い姿が、彼の弱気な予想をより増幅させていく。

「おいおい、ほんと頼むぜ。俺は月下、月の光の下に生まれた男なんだ。いくら太陽が眩し
くても、お前がそんな死にそうな顔してちゃ困るんだよ」

 不甲斐ない自分の守護者に向かって悪態をつきつつも、陽太はそれがさすがに理不尽で不
当な言いがかりであることも、もちろんわかっている。太陽の光は、ただそれだけで絶対の
存在であり、陰たる存在である月が敵う相手ではないのだと、もちろん知っている。

「フン、まあいいさ。使えない能力なら、使えないなりの使い方をすればいいだけの話だしな。
すでに俺は神に叛いた身だ。それならとことん叛いてやるだけさ」
 茫洋とした月から目をそらし、彼の守護者を無力者たらしめている宿敵を細目で見つめる。

「岬月下、この名前を覚えておけ。神に叛いた男、そして、この世の理にも叛く男の名前だ」
 視線の先には、燦然と輝く太陽。挑発するかのように指をつきつけながら、陽太は決然とそ
う言い放った。

「岬月下、ね。今、私の心に深く刻んだわ。深く、裂けるほどに深く、刻んだわ」
 不意に、陽太の背後で声がした。機敏な動きで振り返った陽太は、手を伸ばせば届きそうな
ぐらいの近距離に立つ、ひとりの少女の姿を確認した。後ずさりながら、彼は少女に問う。

「だ、誰だお前は!? いつの間に俺の背後に……」
「でも残念ね。貴方の名前を私の心に刻むのは、神に叛いた者の名として、ではないの。この
私の手で、安寧なる虚世(うつろよ)へ渡る者の一人として、なのよ」
 まるで話が通じていない。しかし、彼女が自分にとって不穏な存在であることは間違いない
ことぐらいは、陽太にもはっきりと理解できた。そして、それさえ理解できれば十分だった。
601白夜に輝く堕天の月:2010/03/15(月) 22:46:36 ID:XaTqCqbX
「……ハッ、なるほどな。お前、組織の者か。犬っころには手が負えないってんで、とうとう
能力者がしゃしゃり出てきたってところだろ」
「生憎だけど、私はあの汚らわしい魔犬とは欠片ほども関わりはないわ。私が何者かなんてこ
と、貴方は知る必要もないの。だって、貴方は今日、此処で旅立つのだから、虚世へと。この
私の手にかかってね」

 そう言って少女は、にっこりとほほ笑んでみせた。その表情のあまりの可憐さとあどけなさ
に、陽太は一瞬たじろいでしまう。いつかはこんな日も来るだろうと想像してはいたが、その
相手がまさか、自分とそう年の変わらない少女だという事実が、彼の気分を重くさせる。
 
「冷たいな。殺されるのなら、せめて誰に殺されたかってことぐらい知っておきたいもんだ。
殺す者と殺される者の間にも、礼節ってものは面倒だが存在する。お前もレディなら、それぐ
らい知ってるだろ?」
 陽太の言葉に少し心が揺れたのか、少女は考えるような素振りを始めた。
 その間に陽太は、この不意の来訪者を冷静に観察することにした。

 やはり、年齢は自分とほぼ同じ。下を向いて考えている今の姿勢だと、量感のある長いまつ毛
がはっきりとわかる。腰に届こうかという長い黒髪は、太陽の光を受けて、天使の輪をくっきり
と形作っている。日蔭者っぽくはあるが、クラスにいれば男子にちやほやされそうな雰囲気だ。
 ここまでならまあいいが、と、陽太は頭を抱えそうになった。
 
 彼女のあの服装はなんというのだろうか。黒いワンピースにも見えるが、実は分割されている
のか。いずれにしても彼女は真っ黒だった。ロングスカートの裾から見える白いレースっぽい物
体以外、何もかもが黒い。

 いわゆるゴスロリってやつか。もう面倒だから、そういうことにしておこう。陽太はその辺に
ついては深く考えないことにして、思考を中断した。彼女が顔を上げたからだ。

「貴方の妄言に服従するわけではないけど、確かに間違ってもいないわね。いいわ、教えてあげ
る、私の名前。刻んでね、深く。あなたの心に、深く、裂けるほどに深く」
「ああ、もちろんだ。裂けるほどに忘れることはねぇ」
 陽太の答えを聞いた少女は満足そうにゆっくりと頷き、さっきと同じように柔らかい微笑を浮
かべ、つやのある唇を開く。

「白夜。それが私の名前。夜の闇を祓う者、白夜よ」


つづく
602創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 22:48:20 ID:XaTqCqbX
投下終わりです
603創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 23:10:23 ID:pNjpfmdU
>>601
投下乙です!
本当に陽太と相性ぴったりだなw白夜w
続き期待!
604創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 23:26:00 ID:q48MHbYF
乙です!

イヤッホォォォー!! ゴスロリ少女来た! これで闘える!!
・・・って相性抜群杉吹いたわwww
厨二病万歳って感じだなー
605創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 23:40:45 ID:HYHu1Ctx
ツッコミがいないから厨二暴走してるなwww
606創る名無しに見る名無し:2010/03/16(火) 01:09:44 ID:kGPGrDvi
>>586
ふたりの怪しげな雰囲気が実によい
ドグマも対立組織もなんかもう相当にやばそうだ

>>589
おおぉ目が青いねぇ。外人親娘萌ゆる。
眼鏡と猫はいいじゃねえかよヨシユキよう

>>593
なんという便利さ、その料理能力リアルにほしいなw
あの怪しい変態ははたして助けてくれるのだろうか…

>>599
相性抜群のすばらしい厨二w完璧に陽太だwww
うまいなぁ厨二病セリフ回し

設定ここまで拾ってくれると嬉しくて仕方ない。
スパッとパラレルにしちゃうのはもったいない気がするな。
こっちははあくまで晶目線で陽太の内面描写はしないから、犬事件から
邂逅までの間の出来事ってことにすれば問題ないはず。
長期間の拘束とかがなければだけども。
607創る名無しに見る名無し:2010/03/16(火) 18:33:15 ID:kGPGrDvi
ああ、>>599さんにちょっと聞きたい。
このあと晶がこの事件のこと、知ったり関わったりするんだろうか。
ネタバレになって嫌なら答えなくてもいいんですが。
608創る名無しに見る名無し:2010/03/16(火) 20:00:54 ID:VcOEqe2D
>>607
今の考えとしては、晶をこの話に直接絡ませるつもりはないです
陽太から話を聞くとかして、間接的に知ることはあると思います
「直接関わらない」こと以外は自分の中でも曖昧にしてるので、
どのように解釈してもらっても構わないと思います
609創る名無しに見る名無し:2010/03/16(火) 20:44:23 ID:kGPGrDvi
ありがとうございます。それだけわかれば十分です。
ではこっちが後の話ってことで書きますんで。
610創る名無しに見る名無し:2010/03/16(火) 21:46:24 ID:oGypzarz
>>589
なんとッ……
こんな駄文に、素敵な画がつくなんてッ……

ありがとうございます嬉しいです涙出てますもうこの世に思い残すことはないですあwせdrftgyふじこlp;@:「」

>>587>>593
たこパフェとか、ねる(ry巻きずしとかww
ここはBグル板かっ!!

>>600
ちょっと、あんたたち!
ツッコミ役が居ないことをいいことに、厨二暴走しまくりって、どういうことっ!?
も、もっとやりなさいよ!! 


比留間先生の中の人さん、今回もお借りしました
間違ってたら指摘お願いいたします

611創る名無しに見る名無し:2010/03/16(火) 21:48:14 ID:oGypzarz

窓の外を見ると、地平線の彼方に日が沈むところだった。
空は深い藍色からグラデーションを描き、橙色へと繋がっている。

「……たいくつ」

娘は窓の外を眺めるのにも飽きたらしく、不満そうに言う。

それは俺も同感だった。

カネをケチッて格安航空チケットに飛びついたのがいけなかった。
俺はずっと機内のオーディオを聴きながら雑誌を読んでいたが、音楽はろくなものが無いし、
雑誌も薄っぺらい内容のものばかりだった。

「ねぇ、おとーさん。おと、ならしてみて」
娘はじっと俺の顔を見て言った。

「アイリン、お前いくつになったんだ。あれは赤ん坊をあやすためのもんだぞ。そのイヤフォンで聴いてろ」
俺は取り合わず、雑誌に目を戻す。読むべき記事などありゃしないんだが。

「やだ。つまんないもん。ね、やって! 小さ〜いおとでいいから!」

冗談じゃない。
こんな密室で「能力」を使ったら、俺はテロリスト扱いされかねない。
友人の言ったことを間に受けたわけじゃないが、なにしろ飛行機だ。
妻の国に、犯罪人として入国するなんて、まっぴらごめんだった。

「だめだ。つまんないなら、寝てろよ」
「おとーさんがおと、ならしてくれたらねる」

そこで俺は、はたと考えた。

――今、この時間に俺は「音楽を奏でる能力」を使えるのだろうか?
612創る名無しに見る名無し:2010/03/16(火) 21:50:55 ID:oGypzarz

たしか以前に、例のヒルマ博士がそれについて考察していた。

そのレポートをウェブから落としたのだ。

詳しい内容までは覚えていないが、サーカディアンリズムが関係していたように記憶している。

だとすると、それが乱されるとき――例えばまさに今、長時間フライトの飛行機に
乗っている場合――では、“「どちらの『能力』も」十分に発揮出来ない”可能性がある。

時差ボケというのは、サーカディアンリズムの乱れだと聞いた。
リズムを戻すためにメラトニンを服用する人間も多い(俺は薬がキライだから飲まないけどな)。


――ま、飛行機の防犯上はその方が都合がいいだろうな……いて。

娘が、俺の腿をリズミカルにバシバシ叩いている。

「痛えって。おい、今、音楽聞こえたか?」

娘は手を止め、きょとんとした。

「へ? なんにもきこえないよ?」
「そうか、じゃあダメだな。今は音楽鳴らない時間なんだ」

我ながらうまい言い訳だった。今度から、そう言うことにしよう。

「……つまんないの。おとーさん、ついたらぜったい、きかせてよね。やくそくだからね」
「わかったよ。いいから寝ろ」

娘の頭に手を置き、撫でた。
指をちょっと伸ばして、額に触れる。

ほどなく、娘の寝息が聞こえてきた。

――よし。つまり今は、「夜」ってわけだな。少なくとも、俺の身体の中では。
まぁ、ただ単に娘が疲れていただけかもしれないが。


+ + +
613創る名無しに見る名無し:2010/03/16(火) 21:52:24 ID:oGypzarz
+ + +


娘がまだホントの赤ん坊だった頃。
俺は、夜になると「音楽を奏でる能力」が使えなくなることに気づいていた。


友人に便宜を図ってもらってはいたが、タクシーは夜の仕事も多い。
俺自身も寝不足だったが、そこへもってきて娘の夜泣きが続いた。

「いい子だから、寝てくれよ……」
――でないと、お前を殺しちまうかもしれないぞ。

冷静になって考えればぞっとするようなことだが、当時の俺はそれくらい疲れていた。

祈るような気持ちで、無意識に、娘の額に指をあてていた。

すると、娘はそのまま眠りに落ちた。

やれやれ、という気持ちでその時は俺も床に就いたのだったが、
以来、夜に娘がどうしても寝付かないときは、額に指をあてて念じた。

再現性は十分だった。

その頃から、俺は「能力」に関する本を読み漁り、ウェブで情報を集めだした。

ヒルマ博士を知ったのも、その頃だった。

614創る名無しに見る名無し:2010/03/16(火) 21:58:44 ID:oGypzarz
|つ↑以上!

|彡 サッ
615創る名無しに見る名無し:2010/03/16(火) 22:03:27 ID:gB9wTodz
規制解除
この二人は気になるんだよなぁ
乙です
616創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 00:43:26 ID:Q8hoSLFA
>>613
投下乙!男の夜の能力は眠らせる能力かな?
皆投下早いなぁ〜俺は書き終わらねぇw
はたしてヒルマ先生との接触はあるのかな?
次も期待してま〜すw

>>615
おおw避難所の方、規制解除おめでとですw


フォグを使いたいけど、設定どうしよう?設定作っても良いのかな?
617 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/17(水) 00:48:43 ID:WDICQqiZ
またもこんな深夜に俺が通りますよっと……。

>>587
たこ焼きパフェw何の罰ゲームだこれはww
それを美味しそうに食うリンドウもリンドウだw

>>589
いや、おっさんが居る時点でハーレムじゃねえw

>>596
そしてここはねるね●ねかwww
小さい頃良く食ったなぁ、懐かしい。

>>602
突っ込み役がいないと何処まで行くんだこの二人はw
って、存在自体が厨ニ病気味なエージェントを出してる俺が言えた義理じゃないかw

>>614
遂におとんの夜の能力発覚か、
娘の能力といい続きが気になるなぁ


さて本題、
今回は>>586の人の設定を幾らかお借りして投下します。
次レスより投下。結構長いので見てる人が居ましたら支援お願いします。

それと、生憎だけど今回はバトルはないんだ、うん(´・ω・`)
618 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/17(水) 00:49:32 ID:WDICQqiZ
――『能力』。
10年程前のあの日、チェンジリングディを境に、地球上の全人類は二つの力を使えるようになった。
一つは夜明けから日没まで間の昼に使えるライトエグザ、もう一つは日没から夜明けの間の夜に使えるダークエグザ。
それは周囲の音を操る、洗濯物を瞬時に乾かす、どんな料理でも美味しくする、などのごく小さな力から、
あらゆる物体を爆破する、物質を別の物質へ変換する、果てや天候を自在に操る、などの奇跡に等しい強力な力まで、
大きい小さいの違いこそあれど、人々は一人の例外も無く力を行使する事が出来る。

……筈なんだが、俺、遠藤 直輝はと言うと、未だに自分の『能力』が何なのか分からないままである。
以前、人の能力を”鑑る”事が出来ると言う鑑定士に高い金を払って、俺の能力を調べてもらった事があるが。
幾ら見ても鑑定士は首を傾げるばかりで結局、『君の能力はまだ分からない』と言う納得の行かない証明を頂く事となった。

尚、その事で『無能バロスw』と爆笑した親友へ、怒りのドロップキックを浴びせる事になったのは、飽くまで余談である。

――そんな無能力である俺はある日、
キメラと呼ばれる変な犬に襲われ、あわや危機一髪の所で一人の少女に救われる。
クロスと名乗る黒ずくめの銀髪の少女は、自分をある『機関』のエージェントだと言った。
更に詳しい事を彼女から聞こうとしたその矢先、ファングと言う名の見るからに粗暴そうな男が現れる。
そして始まる能力バトル……と思いきやファングは挑発に乗せられた挙句、クロスの能力をあっさりと食らい戦闘終了。
結局、クロスの能力により時間が1000倍遅くなったファングは、彼女の手によって前衛的芸術にされたのであった。

そんなこんなで裏路地を後にした俺とクロスは、
『今は安全な場所まで逃げるのが先決』というクロスの提案により、先ずは俺の家に行く事となった………。
619 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/17(水) 00:50:14 ID:WDICQqiZ

「はぁ、やっと家に帰れたよ……」
「着いたか」

そして今、キメラがまた追って来てない事を何度か確かめつつ大回りを繰り返し、
何やかんやの紆余曲折を経て、俺とクロスはようやく俺の住むマンションへと辿りついた。
何時もの店へ買い物へ出かけただけだと言うのに、何日もさ迷ってた様な気がするのは、決して気の所為ではないだろう。

――あ……そう言えばジャ○プ買うの忘れてたな?
ま、良いか。今更買いに戻るにしても、またあのファングって奴に出くわしたらかなり面倒な事になリそうだし。
それに、たまには早売りではなく通常の発売日に買ったってバチは当たらないだろう。

そんな他愛の無い事を考えつつ、俺はマンションの自分の部屋の鍵を開け、クロスと共に入る。
一人暮らし又は小世帯向けのの、敷金礼金不用の何処にでもあるような全室1LDKのウィークリーマンションである。
チェンジリングディのあの日、消息不明となった両親の代わりに俺を育ててくれた母方の叔母夫婦がその家主で、
その為、俺は通常ではあり得ないくらいの格安でこのマンションに住まわせてもらっている。
窓からの見晴らしも良く、更に何時も通っている学校からも近い事もあって、俺は何かとここが気に入っている。

「ここがお前の家か、随分とこじんまりとした部屋だな」
「悪かったな、大体の一人暮らしの部屋はこう言うものなの」

部屋の中を見やりながら漏らすクロスへ憮然と返しつつ、俺は部屋の床に散らかっているゴミやその諸々を片付ける。
いきなり客が、それも女の子がやってくるとは予想だにしていなかったからな、全くもって部屋を片付けていなかった。
ああ、もし俺に予知能力があったらこんなクソ恥かしい事にならずにすんだと言うのに……自分の無能ぶりに腹が立つ。
ってヤバッ! 昨日読んでたエロ本をまだ片付けてなかった! こんな物、彼女に気付かれる前に早く片しておかないと!

「ナオキ」
「ふぇ!? ひゃい! 何でしょうか?」

いきなり声を掛けられ、俺は上擦った声を上げつつもなんとかエロ本を体で隠す。

「色々あって少し汗をかいてしまったのでな、話の前にちょっと身体を清めたい。
だから少しの間シャワーを貸してくれないか?」
「え、ハイ、どうぞどうぞ。お好きなだけ……」
「そうか、ならば有り難く使わせてもらおう」

あ、危なかったぁ……エロ本を隠している所を気付かれたかと思った。
これからこういう危ない事が無いように、この手の物品は厳重に隠しておくべきだな、こりゃ。
そうなれば早速、彼女がシャワーを浴びている隙にやるべき事をやっておかねば……。

「エーと、エロ本の類は普通のマンガ雑誌の間に挟んだ上に厳重に縛って、DVDは押入れの奥へ隠しておいて…っと。
うわ! 中田の奴から借りたまま無くしたと思ってた本がこんな所に……後で謝っておかないと……」

シャワー室から聞こえる水音が響く中、俺は急いで女性に見られては困る類の物品を隠し、あるいは処理していく。
数こそは決して多くはない物の、いざ隠したりするとなるとこれがかなり面倒臭い、特に本の類は隠し場所に困るんだよな。
ベッドの下とかは簡単に見つかるだろうし、かと言ってタンスの裏とかは使う時に取り出すのが面倒臭くなるだろうし……。
そんな愚にも付かない事を考えつつ片付けてをしていた所で、シャワー室からの水音が唐突に止んだ。
そしてシャワー室のドアが開く音。どうやらそろそろクロスが出てくるようだ、早く片付けないと!
620 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/17(水) 00:51:17 ID:WDICQqiZ

「忙しい所悪いが、身体を拭く為のタオルは何処にしまってあるんだ?」
「え、タオルだったらシャワー室前のキャビネッ…ト……に……」

片付けをする手を早めた所で不意に後ろから声を掛けられ、振り向き様に答える俺の言葉が途中ですぼまり、消えて行く。
それも無理もない、何せシャワー室から出てきたクロスは一糸纏わぬ生まれたままの姿だったのだ。
そう、小ぶりな乳房も、細いながらもしっかり腹筋の付いた腰周りも、そして秘密の花園も、何ら隠さずに堂々と出てきたのだ。
ああ、水に濡れた銀髪が掛かった、白く瑞々しい肌が美しい……って、ナニミトレテヤガルンデスカオレハ

「シャワー室前のキャビネットか、諒解した」
「…………」

言って、ペタペタとシャワー室へと戻っていったクロスの後ろ姿を呆然と見送った後、
俺は片付けの最中である事も忘れて、アホみたいに口をポカーンとかっぴらいてその場に立ち尽くすしか出来なかった。
つか普通は硬直するし、呆然ともする。もしこの状況でも冷静で居られる男が居るなら、俺は一生崇め奉っても良い位だ。

「そんな所でボーっと何をしている? ナオキ。シャワー終わったぞ?」
「ふぁ!? え? うわわわわっ!? ……って、裸じゃない……?」

――それからどれくらい経ったのだろうか?
服を着終えたクロスに声を掛けられた事でようやく硬直状態から解放された俺は
慌てて見られて困る物を押し入れへ放り入れ、其処から振り向き様に間の抜けた問いを投げ掛けた。
無論の事、クロスは表情の乏しい顔からでも分かる位に不思議そうな眼差しを俺へ向け、

「裸じゃない? シャワーを終えて服を着れば裸じゃないのは当然だろうが。何を言ってるんだお前は」
「あ。いや、そりゃ当然ですよね、ハイ」
「……?」

少しセリフを噛みながら誤魔化す俺を、彼女はほんの少しだけ怪訝な眼差しで眺めていたが、
その事に関してあまり深入りしようとしなかったらしく、「まあ良い」と一言呟きを漏らした後、
適当な所へ腰を落ちつけて話に入る。

「さて、と。早速だが話に入ろうか、ナオキ。
ファングがつまらん邪魔をしてくる前、お前は私の事について色々と聞こうとしていたな?」
「あ、ああ……結局、家に付くまで聞けずじまいだったけど」
「では、お前はこれから以下の三つの事柄についての話を聞こうとしていると私は見ている。
先ず、何故お前は狙われたか。そして何故、私はお前の名を知っているか。最後に何故、私はお前へ接触をしてきたか。
恐らくはこの三つで正しいと思っているのだが、何か間違っている部分は無いか?」
「い、いや、全然」

あまりの的を射たクロスの言葉に、俺は驚きを隠せぬまま首を横に振る。
彼女は「そうか」と一言返し、更に話を続ける。

「ナオキ。先ず最初に今、この世界に存在している人類は全て、、
10年前のチェンジリングディを境に、ライトエグザとダークエグザの二つの能力を得ている事は知ってるな?」
「ああ、言われるまでもなくな」

この事は小学生の頃に嫌と言うほど習っているので、むしろ知らない人は殆ど居ないだろう。
621 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/17(水) 00:53:42 ID:WDICQqiZ
「では、その能力の中には日常に役立つと言った程度の物から、それこそ世界を変える物まである事も知ってるな?」
「あ、ああ……けど、流石に世界を変えるって程のは物凄く珍しいって聞くけどさ……」
「ナオキ、その認識は間違っている。物凄く珍しいのではない、”普通に珍しい”と言う程度に存在するんだ」
「……え?」

クロスの言った言葉が半ば理解できず、思わず俺の頭の上に浮かぶ疑問符。
それを説明を求めたと取ったのだろう、彼女はテーブルに転がっていたボールペンを手に取り、
同じくテーブルの上にあったレシートへ、流暢な字で何かの計算式を書き込みつつ話す。

「そうだな、確率的に言うと世界を変える程の強力な能力を有する人間は……ざっと約10万分の1位だな。
これは全人類の人口が60億人居るならば、この世界に約6万人程が存在する計算となる。
そして日本国内では1億3千万人だから…約1300人程が居る計算になるな」
「ろ、ろくまん…せんさんびゃく……?」
「とは言え、その殆どが自分の能力を十分に理解して居なかったり、あるいは能力がある事すら気付いていないのだがな」

世界中で約6万、そして日本国内では約1300人。
レシートに書かれている意外に多い恐ろしいその数字に、俺は思わず愕然としてしまう。
もし、それらがある日、一斉に発動したとなったら……俺はうっかりそうなった時の事を想像し、少し背筋を寒くした。

「そんな強力な力を持つ事を知った者の中には、自分の力に溺れて暴走する者が現れるのが世の常だ。
そして同時に、知らず知らずのうちに悪意を持った誰かに、強力な力を利用される者が現れるのも、同じく世の常だ」
「あ、ああ……」
「そんな能力者の暴走、もしくは悪意を持った第三者による能力者の悪用を防ぐ為、
今から8年ほど前、有志達の出資によって私が所属する『機関』が秘密裏に設立された」

そう言えば、数ヶ月前に飛蝗を操る能力を持った奴が、穀倉地帯へのテロを企てていたってニュースを見た事があるな。
話によると、アメリカのFBIが執念の捜査の末にその能力者を逮捕してなければ、かなり大変な事になってたと聞くが……。
まさかと思うけど、この事件の裏には彼女の言う『機関』が関わっているのだろうか?

「『機関』についての詳しい事は殆どが特秘事項に該当する為、
あまり多くは教えられないのだが、とにかくそういう機関があると言う事は知っておいてくれ」
「ああ、わかった。……で、その『機関』のエージェントのあんたがなんで俺に?」

問い掛ける俺にクロスは「ふむ」と小さく呟き、

「さっきも言ったが、私の所属する『機関』は悪意を持った第三者による能力者の悪用を防ぐ、と言う目的がある。
そして、それはナオキ、お前自身にも該当する事なのだ」
「……え?」

彼女の言葉が理解できず、一瞬だけ思考が停止する。
お、おいおい、無能力者の俺を利用する悪意を持った第三者だって? そんな馬鹿な事あり得る筈が……。
そんな思考がどうやら表情にも出ていたらしく、クロスはふぅ、と溜息をついて、

「どうやら、その顔からするとまだ信じられない様だな……。
ナオキ、お前は何ヶ月か前に、鑑定士に自分の能力を調べてもらった事があるだろう?」
「あ、ああ。だけどその時は『君の能力はまだ分からない』って書かれただけだったが?」
「そうか……だが生憎、その時の鑑定士は君の能力をしっかりと”鑑て”いたのだよ。
だがその結果は、本人に伝えるには余りにもショックが大きすぎる内容であると鑑定士は判断したのだろうな。
だからこそ、鑑定士は敢えて『まだ分からない』と書いたのだろう」
「は?……どう言う事だ?」

思わず聞き返す俺に、クロスは「話はまだ終わっていないぞ」と返し、話を続ける。

「お前の能力を”観て”、その強力さと危険性に気付いた鑑定士は
お前へ偽りの鑑定書を出したその直ぐ後、”本来”の鑑定書を私の所属する『機関』へと送った。
そう、お前が自身の能力で暴走してしまうその前に、そしてあるいは悪意を持った第三者に能力を悪用されるその前に」
「……」

あの鑑定士の野郎……んな事隠してやがったのか……。
これだから面の見えない奴は信用できないと言うかなんというか。
622 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/17(水) 00:54:35 ID:WDICQqiZ
「だが、悪い事に鑑定書が『機関』へと送られたその時。
我が『機関』の内部では、あろう事か内通者によって機密情報が外部へ漏れ出す事態が起きていた。
本来、こう言う事態は機密を厳守する『機関』としてはあってはならない事だ。無論、発覚後は直ちに対策が取られた。
……だが、我々が内通者を特定し、処断した時には既に時遅く、事態はもう手遅れだった」
「まさか……」
「そう、そのまさかだ。悪い事は続くものでな。この事件によってお前の鑑定書の内容も外部へ漏洩し、
そして、それは最も渡ってはならない組織の手の内へと渡ってしまったのだ」

其処まで言った所でクロスは気を落ちつかせる為か一旦間を置いて、鋭い眼差しを俺へ向けて話す。

「その組織こそ、我が『機関』が『ドグマ』と呼称し、その全容の解明に全力をあげて捜査している秘密結社だ。
目的、思想は一切不明。多数の強力な能力者を構成員としており、その能力を用いたテロ行為や犯罪行為を主に行う。
そう、先ほどお前を攫おうとしたファングもまた、この『ドグマ』の構成員の内の一員だ。
そして最近、奴らは誘拐や脅迫などの非合法な手段によって各地から有力な能力者を集め、
集めた能力者から何らかの手段によって能力の抽出を行っているらしい。……と、ここまで話せばもう分かるだろうな?」

酷く現実味のない、悪い夢を見ている様だった。喉がカラカラに乾く物を感じる。
もし、彼女の言っている事が正しいのならば……。

「俺は……その、あんたの言う『ドグマ』に狙われてるって事か? クロス」
「認めたくは無いだろうが、その通りだ。
ついでに言えば、『ドグマ』はその筆頭であるだけで、
その他にお前を狙っている組織が幾つあるかは、まだ分かっていないのが現状だ」

……案の定どころか、もっと酷いのかよ。
ある日突然、俺は変な犬に襲われたと思ったら、何処ぞの機関のエージェントの女が現れ、犬を撃退し俺を助ける。
女の話によると実は自分には隠された凄い能力があり、それを知った謎の組織にその身柄を狙われている事を知る。
こんなの、何処の出来の悪い中ニ病小説のシナリオだ? 全然笑えやしねえじゃねえか。
……そう言えば、クロスの口振りからすると俺の能力を知っているみたいだが……すこし聞いてみるか?

「じゃあ、そいつらに狙われる程の俺の能力ってなんだよ? それを教えてくれよ、クロス」
「……残念ながら、その質問に関しては特秘事項に該当する為、答える事は出来ない」
「答える事は出来ないって……」
「私とて、お前の質問に答えてやりたいのも山々なんだが……生憎、あの事件以来『機関』の機密管理は厳しくなっている。
もし、下手に特秘事項を他者へ漏らしたとなれば、その時は……」

言って、横向きにした手刀でシュッ、と自分の首を斬る仕草をして見せるクロス。
なるほど、下手に漏らしたら『機関』に消されるので言えないって事か。……全然納得いかねぇぜ、おい。
623 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/17(水) 00:56:22 ID:WDICQqiZ
「その顔からすると、どうも納得いかないって口だな……かく言う私もお前と同感だ。
幾ら機密を守る為とは言え、当の本人相手にでさえも事実を知らせる事が出来ない。
こんな不条理、本来はあって良い物じゃないんだ……それなのに……」
「…………」

何処か悔しそうに語る彼女の横顔を前に、俺は何も言い返せずにいた。
恐らく、彼女は彼女なりに俺へ事実を知らせたいのが本音なのだろう。
だが、彼女の所属する『機関』はそれを許してはくれない。
そんな今の彼女の心情は如何なる物なのかは、所詮は他人に過ぎない俺には一部しか理解出来ない事だろう。

「――と、私とした事が、どうやら話が逸れてしまっていた様だな」
「いや、気にしないで良いから、話を続けてくれ」
「そうか、済まないな」

その言葉で俺の気遣いを察したのか、彼女はふっと一瞬だけ俺に向けて笑みを浮かべる。
あ、笑うと意外と可愛いじゃないか、とか一瞬思ったのは青少年の悲しいサガか。

「では話を戻すとしよう。
――『機関』関係者による機密の漏洩の発覚、その内通者への処断と言う忌々しき(ゆゆしき)事態の最中。
情報を得た『ドグマ』を筆頭とする組織に何らかの行動に出るだろうと予測した我々『機関』は、直ちにその対策として、
丁度任務を終えたばかりのとあるエージェントへ、その狙いとなるであろうエンドウナオキの護衛の任務を命じた。
そして、その任を受けたとあるエージェントこそ、他ならぬこの私、コードネーム『クロス』だった言う訳だ」
「だから初対面にも関わらず、あんたは俺の名前を知ってた訳か……」
「そう言う事だ。本来ならばもう少しスマートな形で接触と行きたかった所だったのだが、
あのケダモノとクロウが余計な邪魔をしてきた所為で、少々ややこしい第一次接触となってしまったな」

と、少し苦笑する様に語るクロス。
その時の彼女は、何処か冷酷な印象を感じさせた第1印象と比べ、ホンの少しだけだが人間的に思えた。

「さて……これでお前の聞きたかった事は全て答えたつもりだ。他に何か質問は無いか?」
「いや、特に……」

質問する事は無いな、と言いかけた所で――はと、俺はある事に気付く。
そう、彼女は何時、誰かに襲われるかもしれない俺の護衛をする為に来たと言う事は……つまり……。

「な、なあ、もう二つほど聞きたい事が出てきたんだが、良いかな?」
「なんだ? 特秘事項に該当する物以外ならば何でも答えるが?」
「じゃあ聞くけど。クロス、俺の護衛ってのは、ひょっとしてこれから毎日24時間付きっきりでやるのか?」
「……? 何を言いたいのか良く分からんが、身辺警護と言うのは24時間付きっきりでやるのが普通だが?
――って、ナオキ、いきなり如何した? 急にテーブルなんかに突っ伏して、具合でも悪くなったのか?」
「い、いや、なんでも無い……気にしないで」

心配の声を掛けるクロスに対し、俺はよろよろと身を起こしながらも何とか誤魔化した後。
頭にずきずきと感じ始めた精神的な頭痛を堪えつつ、俺は引きつった笑みを浮かべて彼女へ二つ目の質問を投げ掛ける。

「じゃ、じゃあもう一つ聞くけど。その、俺の身辺警護の際……君は何処で寝泊まりするのかな?」
「ん? 何を聞くのかと思えば……それだったら当然、お前の住んでいる部屋で寝泊まりするに決まってるじゃないか。
そう、『ドグマ』は何時動くか分からないのだ。だからこそ、何があっても即座にお前の身柄を守れるように……、
――って、ナオキ、本当に如何したんだ? いきなりその場に倒れるなんて……まさか、敵の『能力』の仕業か!?」
「いや……いや違うから……本当に気にしないで……」

や、やっぱり案の定だったか……薄々こうなる事は予感してたんだよな、俺。
そう、この状況は中ニ病小説に良くある展開なんだよ。ある日突然現れた異性となし崩しに同居生活する事になるって奴。
……と言う事は、これからの俺の人生って、前途多難どころか中ニ病小説真っ青の超展開もあるんだろうな……?

「くそ、一体何処から何時の間に攻撃があったというのだ? こんな能力者、初めてだ……!」
「……はは、なんだか俺、これから気の休まる暇がなさそうだなー……」

何だか勘違いした挙句、ナイフを構えて居る筈の無い敵に警戒するクロスを横目に
床に突っ伏した俺は、より一層激しさを増した精神的な頭痛を感じながら、悲しくもこれからの事を予感するのであった……。
624 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/17(水) 00:57:30 ID:WDICQqiZ
                             ※   ※   ※

その頃、ある街の地下深く。
かつては一大プロジェクトとして計画されていた地下鉄線の計画が資金不足により頓挫し、
残ったのは建造半ばの広大な地下構造物と、ごく少数の資料のみとなって数十年。

最早、指で数える程の数の関係者しか知らぬ、その未完の地下鉄線にて、
既に人が通る筈のない荒れ果てた構内を、草臥れた皮のジャケットに所々破れたジーパンを履いた人影が行く。
照明一つすらない構内は完全に真っ暗闇で、其処に人が居る事を知らせるのは人影の立てる足音のみ。
人影は己の耳と鼻を駆使する事で、完全な闇の内にある構内でも迷う事も躓く事もなく、ある場所へと歩みを進めていた。
もし、構内に照明の一つでもあれば、その人影は人間ではなく黒味掛かった体毛を持つ狼男である事が分かる筈だ。

やがて、狼男が辿りついた場所は、荒れ果てた構内に不釣合いな真新しい金属製のドアの前。
特殊合金製のその扉は、如何なる能力者が能力を駆使しても通り抜けられない様に様々なセキュリティが施されている。
そのドアの前で彼はポケットから取り出したライターに火を付けて、そのか細い光りでドアにある電子式のテンキーを見つけ出し、
毛むくじゃらで肉球の付いた人外の手ながらも、慣れた手つきでテンキーを入力して行く。

「ちっ、相変わらずめんどくせー仕掛けだよな……どうせならスイカかイコカみてーな方式にすりゃー良いのに」

液晶に『認証完了』と表示された後、ぶつくさと文句を漏らす男の前で音も無く静かに開くドア。
その向こうに広がっていたのは、最近建造されたと思しき真新しいコンクリート作りの通路。
蛍光灯によって薄緑に照らし出されたその通路を、彼は何ら躊躇する事無く進み行く。

「ったく、幾らなんでも俺らが地下組織と言ってもさぁ。
文字通り地下深くにアジトを置かなくたっていーじゃねーか。俺達はモグラかっての」

背後で閉まるドアに一瞥する事も無く、誰に向けるでもない文句をぶつくさと漏らしながら彼は通路を行く。
やがて、その先にあった入り口の物と同じタイプの金属製の扉を抜けると、
その向こうには家の一軒か二軒は丸々入りそうな広大な空間が広がっていた。

何かの仕掛けなのだろうか、照明器具は何一つ無いにも関わらず昼間の様に明るい空間の中心辺りには、
様に高級木材製の10人掛けのテーブルと椅子のセットが、まるでぽつんと置かれたかの様に設えて(しつらえて)あり、
その上に並べられた湯気を立てる紅茶と茶菓子を前には、既に数人の男女が席に付いていた。
席に付いてる男女のメンバーは歳は子供から老人まで、格好は整ったスーツから不良風のラフな物までと一貫性は無く、
彼らに共通している点と言うと、その誰もが強力な力を有する能力者である事と同時に、ある組織に属している事であった。
625 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/17(水) 01:00:50 ID:WDICQqiZ
「こちらコード.ファング、ただいま帰還しました……っと」
「戻ったか、ファング」

狼男――ファングのやる気の無い帰還の報告に、
テーブルの1番上座の席に居る黒のスーツ姿の、頭の所々に白い物が混じった初老の男が抑揚の無い声で返す。
一見、その初老の男は駅のホームで電車を待っている姿を見ても、何ら違和感を感じさせない外見ではあるが、
その身に纏う抜き身の日本刀の様な剣呑な雰囲気と鷹を思わせる鋭い眼差しが、彼が只者ではない事を明確に示していた。
と、ここでテーブルの端でクッキーを齧ってた今風の格好の若者がファングの姿に気付き、何処か悪戯っぽい口調で言う。

「あれ? 如何したんですか? ファング。 ワンコの姿で戻って来るなんて……?」
「テメェ、俺がスカーフェイスとやりあってた事をもう既に運命レポートで知ってるだろうに、嫌味で言ってるのか?
それにこの姿はワンコじゃねーっての、狼だ狼。いいかげん憶えろフール」
「いやぁ、僕は記憶力は悪い方なんで、どうでも良い事は一日もしない内に忘れちゃうんですよ」

尻尾立てて眉間にシワを寄せて睨みつけるファングへ、若者――『フール』はへらへらと笑って返しつつクッキーを齧る。
彼も一見、何処かの駅前の広場辺りで携帯片手に談笑しているのを見ても、何ら疑問を感じさせない外見ではあるが、
その身に纏うおぞ気を感じさせる冷たい雰囲気とにこやかな瞳の奥に宿る酷薄な色が、彼もまた只者ではない事を示していた。
そんなフールの態度に苛立ちを感じたのか、体毛を逆立てたファングはフールへ詰めより、牙を剥き出して言う

「じゃあぜってーに忘れねーように紙にでも書いて覚えとけ!」
「ええ、ならばチラシの裏にでも書いておきますよ。……捨てちゃうかもしれませんけどね?」
「捨てたら駄目だろ、捨てたら……ったく」

ここでファングは、フールと延々と言い合っても無駄だとようやく悟ったらしく、
フールから視線を外すと、席に付いている他のメンバー達を見回し、訝しげに尻尾を揺らしながら初老の男へ問う。

「所でどーしたんッスか? オヤッさん。今日は嫌に集まってる面子が少ないような……」
「ここに居ない人達デシたら、皆さまそれぞれ事情があって今は出払ってマス」
「んお? ナタネか……って事はリンドウもルローもいね―のかよ?」

オヤッさんと呼ばれた初老の男の代わりに疑問に応えたのは、
この場には不釣合いなくらいに幼い、年の頃は10歳前後のおかっぱ頭の少女。
ナタネと呼ばれた少女は、レポート用紙へ速記の文字で何かを書き連ねながらファングの疑問に答える。

「現在、リンドウさまとルローさまは、フェイヴ・オブ・グールさまと共に仕事に取り掛かっている最中デス。
そして他二名もそれぞれ別件の仕事に取り掛かっている所デス」
「なるほど、皆さん仕事熱心な事で……」

ファングは外見と言葉では呆れつつも、ルローの姿がここに無い事に心の内で安堵した。
何せ昼間にルローと会うと、毎回の様にウルフフォームへの変身を強要された挙句、
彼女の気が済むまで耳と尻尾を弄繰り回されて、最後は身も心もへとへとになってしまう。
それを考えれば、彼が思わず心の内で安堵してしまうのも無理も無いだろう。
626 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/17(水) 01:02:32 ID:WDICQqiZ
と、其処でナタネが何かを思い出したのか、速記をしている手を止めて

「あ…そう言えばクロウさまだけは、皆さまとは違う事情で居ませんデシたね」
「……違う事情?」
「……クロウは現在、我が組織から離反している」
「え? オヤッさん、それはマジッスか!?」

ナタネへオウム返しに聞いた所で、初老の男が言った思わぬ言葉に思わず声を荒げるファング。
しかし初老の男はファングの態度に怒る事も無く、先ほどと同じ抑揚の無い声で話す。

「今から数時間程前、『クロスは俺が殺す』と言う連絡を最後に連絡用の携帯を破棄した。破棄された携帯も確認済みだ。
我が組織に於いて、連絡用の携帯の故意による破棄と言う行為は、反逆行為に該当する事は奴も理解している筈だ」
「彼はこの前、クロスのお嬢さんにこっ酷くやられてますからねぇ。根に持っちゃうのも無理も無いですか」
「加えて、現在そのクロスが関わっているエンドウナオキの件は、上層部の命によって手が出せなくなっている状況デス。
プライド高いクロウさまの性格から考えて、組織から離反してでもクロスを倒そうと行動に出るのは充分に考えられマス」
「ありゃりゃ……って事は最悪、処断食らうな、あいつ……」

フールとナタネの話を聞いて、ファングは今この場に居ない元仲間の暗い将来に呆れ混じりに漏らした。
元々そう関わりの無く、顔を会わせた事すらも数度しかなかった関係である。ぶっちゃけファングにとっては如何でも良かった。
だが、それでも一応元仲間である以上はクロウの処遇が気になリ、初老の男へ問う。

「じゃあ、あいつはこれからどうなるんで? やっぱ慣例に則って処断ッスか? オヤッさん」
「……いや、奴は暫く泳がせておく」
「へ? それは如何言った訳ッスか?」

耳をピンと立てて思わず聞き返すファング。
初老の男は口角を僅かに笑みの形へ歪めて、

「……奴の離反は、私にとって好都合だからだ」
「え、えっと、何が好都合ッスか……?」

初老の男の言葉がいよいよ理解出来なくなったファングが、頭をぽりぽりと掻き始めた所で、
紅茶を飲みながら様子を見ていたフールが、やれやれといった調子で話に加わる。

「察しが悪いですねぇファング。クロウがクロスのお嬢さんへ戦いを挑むって事は、
彼女が護衛しているエンドウナオキも、必然的にその戦いに巻き込まれる事になリますね?
そうなるとその最中、運が良ければエンドウナオキの能力の発現が観測出来るかもしれないって事ですよ。
そう、上層部の命でエンドウナオキに手を出せない今、このクロウの離反行為は実に好都合と言う訳です。
ここまで話せば流石に察しの悪いワンコでも、大体の事情がお分かりになるでしょう」
「はー……なるほど、クロウをていの良い当て馬にするって事か……。
――って、悪かったな察しが悪くて! それにさっきも言っただろ、俺はワンコじゃなくて狼だって!」
「まあ、ファングがワンコか狼かとか如何でも良い事は置いといて」

フールの話にうんうんと頷いた後で牙を剥き出して突っ込みを入れるファング。
しかしそれをフールはさらりと受け流して話を続ける。

「これでクロウがクロスを倒したならば、結果的に邪魔者が消える事になって良し。
万が一、クロウが敗れたとしても、その時はその時の対策も講じているからそれでも良し、って訳ですよ。
それに、クロウには変な所で拘りがあります故、先ず間違い無くエンドウナオキには手を出さないでしょうし」

ここまで話したフールは、やや演技っぽい動きで「そうでしょう?」とナタネと初老の男に同意を求める。
話を肯定したのか、無言で頷いて見せる初老の男。対するナタネは速記に夢中で無反応、マイペースである。
627 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/17(水) 01:04:18 ID:WDICQqiZ
ファングは別の意味で文句有り気にちっ、と舌打ち一つ漏らして適当な席へどっかと座り、初老の男へ聞く。

「じゃあ、オヤッさん。これから如何するんッス?
クロウの奴を当て馬にするにしても、ずっと放ったらかしって訳にも行きませんし。
下手すりゃ、何かの拍子にバ課の連中に捕まるって事も有るかも知れないッスよ?」
「言われるでもなく、クロウには既に監視を向かわせている。万が一の事もあり得るからな」
「流石オヤッさん……抜け目ねーわ」

目の前の上司である初老の男の底の知れなさに、ファングは耳を伏せて呆れ混じりに感服して見せる。

「それより、今日は良い茶葉が入ったのでな。
ファングも折角ここに来たのだ、今はゆっくりと茶の味と香りを楽しんでくれ」

初老の男に言われて、ファングが自分の前のテーブルへ目を移すと、
其処には何時の間にか、紅茶がなみなみと入ったティーカップと茶菓子のクッキーを乗せた皿が置かれていた。
紅茶は今さっき淹れられたばかりの様に湯気を上げており、席に付く前から置かれていた物ではないのは確かだった。
恐らく、これは初老の男の能力による物なのだろう。相変わらず得体の知れねぇ能力だ、とファングは心の中で漏らす。
そのまま紅茶へ手を付けようとした所で、自分のクッキーを食べ終えたフールが、意味もなく声を潜めて聞いてくる。

「……所で、クロウVSクロスの勝負、どっちが勝つと思います?
昔からクロスとは因縁の有るあなたですから、さぞかしこの勝負の行方が気になるかと思いますが」
「別に…興味ね―よ」
「おや? あなたにしては珍しいですね? 如何言った心変わりでしょうか?」

そっぽを向いたファングにつっけんどんに返され、酷く驚いた様子で聞き返すフール。
しかしファングはふぅ、と溜息一つ漏らして、何処か皮肉めいた口調で言う。

「さぁな、それはテメェで考えてみろ。俺より頭が良いんだから考えりゃ分かるだろ?」
「え? 自分で考えろって、それは酷くないですか?」

何やら抗議の声を上げるフールから視線を外し、ファングは独り物思いにふける。
――あいつ……スカーフェイスとは色々な意味で付き合いの長い俺だから分かる。
――クロウの奴が幾ら如何がんばった所で、到底あいつを倒せるとは思えねぇんだ。
と、妙に確信めいた事を考えながら、彼は紅茶をひと呷りで飲み干すのだった。

―――――――――――――――――――ー―続け―――――――――――――――――――――
628 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/17(水) 01:06:51 ID:WDICQqiZ
以上です。
次回投下まで少し時間掛かるかも……。

それと、前回に言っていた通り、設定をつらづらと

・遠藤 直輝
性別:男
年齢:17歳
性格;明るい、ややツッコミより、少し責任感強し
何処にでも居る一般の高校生男子だったが、クロスとの出会いにより数奇な運命に巻きこまれてゆく(予定)
クロスの話によると、世界を変える程の凄まじい能力を持っているそうだが、
今現在発現していない為、本人にその自覚は殆ど無い。尚、無能と言われるとブチぎれる

《昼の能力》
現時点では不明

《夜の能力》
現時点では不明

ただし、昼も夜も世界を変える程の力が有ると見られる。

・クロス
性別:女
年齢:高校生くらい
性格:冷静沈着、しかし常識からズレてる
・強力な能力者の暴走及び第三者による悪用を防止を目的とした組織、『機関』に所属するエージェント
能力を駆使したナイフ格闘術は高いレベルに有り、その為、彼女の前での迂闊な飛翔や跳躍は自殺行為である。
尚、顔面の十字傷から、彼女を知る者(特に敵対組織)からはスカーフェイスと呼ばれる事も有る。

《昼の能力》
名称 …slow 
【意識性】【操作型】
空中にある物体、もしくは飛来する物体の速度を約1000倍遅くする波動を照射できる。
ただし、その物体が地面に接している、もしくは地面に接している物体に触れている場合は効果は無く、
効果を受けている物体も、上記の対象に触れた場合、自動的に効果が解除される。

《夜の能力》
現時点では不明
629 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/17(水) 01:11:07 ID:WDICQqiZ
更に敵の設定も、運命レポート書く人出しちゃったけど、問題あったらパラレル設定で

・ファング
性別:男
年齢:20代くらい
性格:粗暴、単純、短気、ケダモノ
・思想不明・目的不明の裏組織、『ドグマ』に所属する構成員。
能力を用いた破壊工作に要人暗殺及び略取を主な任務としている。
クロスとは以前より因縁が有り、会う度に彼女の口車に嵌められ、結果、酷い目に遭う。

《昼の能力》
名称 … 獣化(ファングはウルフフォームと名付けている)
【半意識性】【変身型】
本人の意思で黒味掛かった体毛を持つ狼男へと変身する事が可能。
この状態になる事でパワー・耐久力・再生能力・聴覚・嗅覚が強化される。
ただし一度変身した場合は、夜になるまで本人の意思であっても変身が解除されない。もふもふ
尚、この能力の影響により、再生能力だけは人間の状態でも異常なレベルである。半意識性とあるのはその為。

《夜の能力》
現時点では不明

・フール
性別:男
年齢:20代くらい
性格:楽天的かつ皮肉屋
・『ドグマ』の構成員、今風の服装を好んで着る。
常ににこやかな表情をしているが、実際はかなりの皮肉屋で口を開けば強烈な毒舌を吐く。
その為かファングとは仲が悪いらしく、彼と会う度に言い争う姿が見られる。

昼の能力、夜の能力ともに現時点では不明

・ナタネ
性別:女
年齢:10歳前後
性格:少し大人しめ
おかっぱ頭が可愛らしい少女。言葉の中にデス、マスと混じっている口調が特徴。
未来をある程度予知できる能力を持つため、『ドグマ』では重要なポジションに居る。

《昼の能力》
名称 …自動書記
【無意識性】【操作型】
ペンを持つとある程度先の未来の事を勝手に速記で書き記してゆく。
しかし、書かれている事は絶対ではなく、飽くまで確率の高い予測に過ぎない。
その為、努力などによる不確定要素によって変える事は可能。

《夜の能力》
現時点では不明

初老の男(名前不明)
性別:男
年齢:50代くらい
性格:外見では温厚、しかし抜け目無く冷酷かつ狡猾
・『ドグマ』では高い役職に居る男、ファングからはオヤッさんと呼ばれている。
紳士的な外見、口調には似合わず、かなり狡猾かつ冷酷、その上抜け目が無い。
紅茶が好きなのか、アジトでは紅茶を嗜む姿が良く見られる。

昼の能力、夜の能力共に不明。
ただし、狙った位置へ音も無く物体を出現させている事は確認されている。

それと、ファングは使いっぱしりキャラなので使いたい人はご自由にどうぞ
630 ◆IulaH19/JY :2010/03/17(水) 02:03:02 ID:Q8hoSLFA
>>629
投下乙!すげぇおもしれぇwまた何度も読み返しちまったw
ここまで組織を深くしてくるとは……
運命レポート書く人出しても全然問題なしです
やる夫氏曰く「こまけぇこたぁ(ry」
最近、皆さんのかいてる物語や絵が見れて満足してますw
続き期待してます!
631創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 03:25:37 ID:HzKrQCW3
>>613
親父さん渋いキャラだなあ

>>629
クロスは無自覚可愛い


いい感じに広がってきたな
632創る名無しに見る名無し:2010/03/17(水) 20:10:46 ID:/TGO7pKU
>>629
なんという王道展開。胸が熱くなるな
ドグマの勢力の広がりっぷりがやべぇ
某大根みたいな生半可な能力じゃ関わった瞬間終わりそうじゃねえかw

しかし数人の書き手がそれぞれ風呂敷広げて所々繋がるもんだから
とんでもない大風呂敷になってるぞこのスレw全部畳める日は来るのかwww
633創る名無しに見る名無し:2010/03/18(木) 03:21:10 ID:fi/rXPC5
>全部畳める
またまた御冗談を
634創る名無しに見る名無し:2010/03/18(木) 16:09:16 ID:FqLe37Ek
1994年生まれの人集まれ!☆2
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/nendai/1266477523/
635Beyond the wall (7) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/18(木) 17:38:41 ID:yc2rFiTx
隅のほうでひとりで風呂敷広げてる俺登場!
全部畳んじゃらめぇwww

さてダレモイナイトウカスルナライマノウチ
>>572-575の続きです
636Beyond the wall (7) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/18(木) 17:39:28 ID:yc2rFiTx
突然現れた筋肉男・キューピッドに、早速銃口を向けるセイ。
しかしそれを情が制止した。
「セイ、こんな時だが、ひとつ話がある。」
「な、なんだよ急に。」
「オレは……お前のことが好きだ!」
「へ?」
本来なら嬉しい状況ではあるのだが、こんな場面で言われても困る。
セイが動揺している間にもうひとつの声が上がった。
「待ってください!」
今度は衛だった。
「僕も、セイさんを愛しています。」
セイにはもう訳が分からなかった。
なぜふたりは敵を目の前に自分に告白しているのだろう。
「ふん、お前なんて出会ってから何日だ? よくそんなことが軽々しく言えるな。」
「愛の深さは時間じゃないと思います。」
「それはお前の価値観だろ。セイがどう思ってるのか分からねえ。
 だが、少なくとも短ければ短いほうがいいなんて奴は見ねえがな。」
「……でも僕は、あなたが知らないセイさんの秘密を知っている。」
バン! バン!
突然銃声がふたつ鳴り響いた。
「ふたりとも、勝手に僕のこと好きだとかなんだとか言ってるけど、僕の心はキング様のものなんだからね。」
キューピッドとセイは、倒れた衛と情を残して、館の奥に行ってしまった。

「見事にやられたな。」
目覚めた情は真っ先にそうつぶやいた。
「セイさんが手加減してくれたのが幸いでしたね。」
先に起きていた衛が返した。
「ところで、お前が言ってた秘密って……。」
「あ、いや、それは……。」
「『星夏』のことだろ。」
「えっ?」
突然出てきたセイの本名に衛はうろたえる。
「気付いてたんですか。」
「何年幼馴染みやってると思ってるんだよ。」
情はふっと柔らかく笑う。
「なあ、あのマッチョマンはオレに任せてくれ。」
言い終わるより早く情は走り出してしまった。
637創る名無しに見る名無し:2010/03/18(木) 17:40:10 ID:yc2rFiTx
エントランスにひとり残された衛。
情を追いかけようとしたが少し考えてやめた。
自分にはこの城でやらなければならないことがある。
行方不明の街の人たちを探さなければならない。
それはそうと、さっきのようにいつ不意打ちを食らうか分からない。
能力は常に発動しておこう。
そして衛も、城の奥へ足を踏み込んでゆく。

「てめえ、セイをどこへやった!」
一方の情はキューピッドを見つけ出した。
しかし隣にセイの姿は無い。
「生きていたか。
 仲間割れで全滅を防ぐためにひとりだけキング様に献上したが、
 さらに我々の兵力を増強しに来てくれるとはな。」
「ごちゃごちゃうるせえぞ!」
「貴様もキング様の虜になれ!」
キューピッドの叫びとともに、情の中に、入口で一度見ただけのキングに対する恋心が芽生え始めた。
638Beyond the wall (7) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/18(木) 17:40:50 ID:yc2rFiTx
暗く湿った空間。そこかしこに苔が生えている。
衛は地下を進んでいた。
「あれは……!」
目を凝らして見つめた先には牢屋があった。
急いで駆け寄ってみる。
「セイさん!」
そこにはセイが閉じ込められていた。だがセイは虚ろな目をして衛に気付かない。
次の牢、さらに次の牢。街の人たちだ。
その中に弟を見つけた衛は叫んでみる。
「おいっ! 大丈夫か!」
しかし結果はセイのときと同じだ。
「なんだ、騒がしいな。侵入者は片付いたはずだが。」
突然、暗闇から浮浪者のような身なりの男が現れた。
「なんと、まだ動ける奴がいたのか!」
衛は身構える。
「そんな怖い顔をしないでくれ。私はカギを掛けることができるだけの『設備部長』。戦う力は無い。」
不意に牢のひとつがギィと音を立ててひとりでに開く。
中からはひとりの女が出てきた。
「何でしょうか、キーマスター様。」
「私のために奴を洗脳してくれ。」
「分かりました。あとでごほうびをくださいね。」
「分かっておるよ。」
あの人もキューピッドの能力で恋に落ちているのか。そう考えるとぞっとした。
さらに、会話に出てきた洗脳というフレーズ。
先ほどのセイや弟の態度はそれが原因だったんだ、などと悠長に考えている暇は無い。
夜は完全に無敵なので大丈夫なのだが、昼の衛では精神的な攻撃はどうしても受けてしまう。
しかし、時刻を考えるともう少しで能力が切り替わるはず。
いったん逃げて態勢を立て直そう。
そう考えたそのとき、女が突然口を開いた。
「あれ? 私は……。」
639Beyond the wall (7) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/18(木) 17:41:30 ID:yc2rFiTx
キューピッドは、突然のパンチに受け身を取るのが間に合わなかった。
「くっ、なぜ解けたのか知らんがもう一度だ!」
情はまた恋に落ちる。
しかし、情は靴の中に仕掛けを施していた。
一歩歩くたび土踏まずに触れる小石から思いが伝わってくる。
――オレはキングには屈しない。
これは自分の能力によるもの。自分の意思。
そこで情は我に返る。
そして再びキューピッドにパンチを浴びせる。
「ちぃ!」
能力が効かないとようやく分かったキューピッドは構えを取った。
しかし、彼は趣味で体を鍛えてはいるものの、ケンカの経験など全く無い。
ひたすら情にサンドバッグにされ、キューピッドはとうとう意識を失った。

「あれ? 私は……。」
キューピッドの気絶によって、牢の女に掛かっていた恋心が解けたのだった。
「何をしている! 早く……く……。」
「キーマスターを洗脳しました。これからカギを開けさせます。
 ここのカギはこいつにしか開けられないので。」
「あ、は、はい。」
突然の形勢逆転に、衛はしどろもどろな返事しかできなかった。
「あなたはこれからどうするんですか?」
「端の牢と、あと別の部屋に、このクレ……じゃなかった、魔窟で出会った仲間がいるんです。
 その人たちとキングをぶっ倒して、一緒にここから出ましょう。」
「ありがとうございます。でも私たちはここの部下たちにも手が出なかった。一緒には戦えません。」
「分かってます。正直、僕も足手まといにしかなっていないかもしれない。
 だけど、自分のできることをやればいいんだと思います。」
「強いんですね。」
「いえ、そんな……。」
会話が途切れたところで、牢が一斉に開いた。
「兄ちゃん!」
衛のもとに、弟が駆け寄ってきた。
「ああ、もうすぐここから出られるからな。」
そして振り返ると、共に戦った仲間が。
「じゃあ、さっさと終わらせちゃおうよ!」
衛とセイは、最後の戦いへと向かう。

つづく
640Beyond the wall 番外:夜のボス集会 ◆KazZxBP5Rc :2010/03/18(木) 17:42:20 ID:yc2rFiTx
エンマ「さて、今回は、ふがいなくも夜まですら戦いを長引かせられなかった馬鹿共のために、
    夜の能力・ダークエグザを紹介する機会を設けてやったぞ。」
ドウラク「そんなこと言って、貴様も結局やられたではないか。」
エンマ「くっ、あのあと全身大火傷を負ったんだ。思い出させるな。」

エンマ「それよりまずはお前から紹介しろ。」
ドウラク「ああ。ここにカニがたくさんいる。」
エンマ「お前、カニが嫌いなのではなかったか?」
ドウラク「その通りだ。だから私はカニ五匹を生贄に捧げ……出でよ! シザーゴーレム!」
説明しよう! シザーゴーレムとは、手がハサミになっている巨大な石の化け物である!
ドウラク「ははははは、すごいぞー! かっこいいぞー!」
エンマ「……。」

エンマ「次は薄気味悪いお前だ。」
ハカセ「僕は薄気味悪くなんか無いんだ。ブツブツ。」
エンマ「いいから早くやれ。」
ハカセ「ちっ、分かったよ。僕のダークエグザは、重力を操る力だ。」
エンマ「なんだと! それはかなり強力ではないか?」
ハカセ「そうだよ。だから夜に攻められていたら勝てたんだ。ブツブツ。」

エンマ「最後はキングの部下三人衆だな。」
パイロット「俺的にはー、地面をスケートみたいに滑る? みたいな。しかも壁も天井も関係なく滑っちゃう。すげーっしょ。」
キューピッド「がはははは、ワシは相手の目を一時的に見えなくするのだ! がはははは!」
キーマスター「私は、ある範囲に入った侵入者を察知できる。それだけだ。」
エンマ「キングはよくこんなまとまりのなさそうな奴らを従えてるな……。」

エンマ「以上だ。正直私にはどうでもよかったがな。」
641Beyond the wall ◆KazZxBP5Rc :2010/03/18(木) 17:43:01 ID:yc2rFiTx
いーかげんキャラ紹介

・ドウラク
>>452
《夜の能力》
【意識性】【具現型】
カニを5匹生贄に捧げ、シザーゴーレムを召喚する。
シザーゴーレムとは、手がハサミになっている巨大な石の化け物。

・ハカセ
>>475
根暗。
《夜の能力》
【意識性】【操作型】
重力を操る。

・パイロット
>>575
《夜の能力》
【意識性】【変身型】
地面や壁や天井をスケートのように滑る。

・キューピッド
キングの部下。マッチョ。
《昼の能力》
【意識性】【操作型】
相手に、自分以外の誰かに恋をさせる。
夜や睡眠時も効果は続くが、キューピッドが気絶すると解ける。
《夜の能力》
【意識性】【操作型】
相手の目を一時的に見えなくする。

・キーマスター
キングの部下。浮浪者のような身なり。
《昼の能力》
【意識性】【操作型】
部屋にカギを掛ける。カギは物理的なものではない。キーマスターだけがそのカギを開けられる。
カギは夜でも持続する。カギを掛けることができるのは昼だけだが、開けるのは夜でも可能。
《夜の能力》
【意識性】【変身型】
範囲に入った侵入者を察知できる。範囲は任意に変更可能。
642創る名無しに見る名無し:2010/03/18(木) 17:43:42 ID:yc2rFiTx
投下おわり

主要敵の能力は他の人が勝手に決めづらいかなと思って…

洗脳おねーさんと衛の弟は特に設定は決めてないので
使うんなら好きに決めてくれていいですよ
643創る名無しに見る名無し:2010/03/18(木) 22:40:15 ID:g/VuPwUb
>>642
投下乙!キューピッド強かったw
衛もセイに告るとかワロタw
次回はキングとの対戦かな?
続き期待してま〜す
644 ◆VECeno..Ww :2010/03/18(木) 23:45:21 ID:952QrXXn
投下します。
645比留間慎也の書簡(その1):2010/03/18(木) 23:48:08 ID:952QrXXn
比留間慎也のノートパソコンに入っていたファイルより。

>川芝鉄哉
昼の能力の煙草は確か見せてもらったことがあるな。面白い能力だと思う。
夜の能力はまだ見たことがないが、どんな種類の毒を生成することができるのだろう。

僕が考え得るパターンは2つ。
・自分が毒として認識(または経験)したことがある物質を発生させる。
・通常この世には存在しない、この能力特有の未知の物質を発生させる。

ちなみに、あらゆる毒を作り出せる、というのは言葉の定義からしてあり得ないと思う。
なぜなら“毒”というのは所詮人間の主観的な概念にすぎないからだ。
たとえば酸素も高濃度ならば毒、麻薬も適量ならば薬になることからもそれが分かるだろう。


>八地月野
距離がどんなに短くても、自分以外にのみ影響を与えるという点からすると、
君の昼の能力は【操作型】かもしれない。


>>459
一応言っておくと、意識性能力の方がよい、というような捉え方は宜しくない。
例えば当研究所ではフェイブ・オブ・グールの不死身能力は【無意識性】の可能性が高いと推定している。
もしそうだとすれば、通常の手段では彼を殺すのは不可能、ということになる。


>加藤陸
夜の能力は光を直接操る他に、体のまわりに特殊な物質ないし空間を形成して間接的に光を操っている、という原理も考えられる。
あるいは、見る人やカメラに直接干渉する能力である可能性も否定はできない。
646比留間慎也の書簡(その1):2010/03/18(木) 23:50:06 ID:952QrXXn
>三島柚子
身体能力が強化されるのはどうやらアグゼスが独立して持つ能力のようだ。
だから貴方自身の能力は【具現型】と見ていいだろう。
ちなみに、アグゼスの能力が我々の持つような能力と同じ法則に因っているのかは、残念ながら不明だ。

>風魔嘉幸
この手の能力のメカニズムは非常に興味深い。移動先の空間にあった空気はどうなっているのだろう。
恐らく、能力を使用する直前に君が居た場所に入れ替わりで転送されていると思うのだが。

>ルロー
猫、ということはニラやタマネギは迂闊に食べない方がいい。
これらの植物は人間にとっては何でもないが、犬や猫にとっては猛毒だからだ。
半獣状態でも結果はどちらに転ぶか分からないのでやめておいた方がいいだろう。
同じことを“ファング”にも伝えておいてくれ。

>リンドウ
“能力”の中でも、「あらゆる」と説明されている能力は分析がし難くて厄介だ。
「あり得ない薬」は流石に作れないが「現在の人間の科学力では作れない薬」も作れる、ということだろうか?
それと、日没後も効力が続く能力が報告されたケースは、私の記憶では貴方が初めてだったと思う。報告に感謝している。


>岬陽太
馬鹿にされることが多い(らしい)君の能力だが、使い方次第では普通に有用な能力だと思う。
例えばフグを具現化できれば非常に強力な武器となるだろう。
そこまで大げさでなくても、レモンやトウガラシなんかは眼潰しに使える。
シュールストレミンg……いや、なんでもない。

>水野晶
動物と人間を見分ける基準として考えられるのは
・DNAで判定
・“能力”を(潜在的に)持っているかどうかを見分ける
といったところだろうか。

>白夜
まあ、その…なんだ……頑張れ。
647比留間慎也の書簡(その1):2010/03/18(木) 23:53:22 ID:952QrXXn
>東堂衛
自他の境界の線引きは中々難しい。
自分の肉体(と精神)のみが自分なのか、それとも着ている服を含めて自分なのか。
つい先ほど食べたばかりで、今は胃袋の中に納まっているパンは自分に含まれるのか。
あるいは、噛んでいる途中のガムは……?
現在僕が研究中のテーマの1つだ。

>月宮星夏
空気中の水分を集めるだけでは武器として使うには量が不十分だ。
従って君の能力には水を膨張させるか、具現化させる力が含まれていると思う。

>真山情
人間以外にも思念を伝えられるタイプの能力の持ち主は、非常に意義があると思う。
しかし、原始的な生物ほど弱い思考や感情しか持ち合わせていない。
使い方を間違えれば、君の能力は生物を洗脳してしまうことになりかねない。

それと、夜の能力「ストーン」は【具現型】ではないだろうか。

>ドウラク
やられたよ……
まさか僕も地球全土に影響を及ぼせる“能力”がこの世に存在しているとは思わなかった。
ところで、タラバガニは実はカニじゃなくてザリガニの一種だそうだが、タラバガニも調理できるのだろうか?
是非一度試して欲しい。

>キューピッド
気絶時(死亡時もか?)にのみ解けるとは比較的珍しいケースだ。
睡眠中には脳波が解除を防ぐ役割を果たしているのだろうか。

>キーマスター
夜の能力は【結界型】かと思ったが違うのか。
【変身型】だと原理的には、気配を察知する能力が非常に高い体質になることができる……とかになるのか?
648比留間慎也の書簡(その1):2010/03/18(木) 23:58:58 ID:952QrXXn
>>632
よく分からないが宇宙モデルには発散するタイプのものと収束するタイプのものがある、とだけ言っておこう。

>>611
Thanks for reading my repoat! I feel honored to be estimated in other country.
In my opinion, your daytime-ability may come under the "forcefield-ability",
and the nighttime's one may be the "manipulative-ability".
To tell the truth, I got on the same flight at that time, sitting the near seat of economy class.
You might not notice because I was in plain clothes.

                     (訳)

僕のレポートを読んでくれてありがとう! 海外でも評価されているとは光栄だ。
僕の見立てでは、貴方の昼の能力は【結界型】、夜の能力は【操作型】と思われる。

それと、実は僕も同じ便の飛行機に乗り合わせていたんだ。それも同じエコノミークラスの結構近い席に。
私服だったから気づかなかったかもしれないが。
649創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 00:00:46 ID:952QrXXn
ここまで。

個々の能力に関する考察は講義という形じゃできないからこういう形式にしてみました。
wikiにまとめた時のことを考えると別シリーズにしたほうが見やすい、という理由もありますが。

これらの文章が実際に各キャラクターに対して発信されたものなのか、
それとも研究メモやチラシの裏的な何かなのかは皆様のご想像にお任せします。

あと、全能力に対してレスできなくてすみません。
元々気になった点をちょいちょい考察していくだけの予定でしたので……
これからもちょいちょい考察していく予定です。
650創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 00:21:10 ID:5ReZODvU
個別考察乙
ニアミス…だと…
651創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 01:10:30 ID:SKF1N+7b
ニアミスって表現は飛行機的にあまり宜しくないだろw
652創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 01:11:42 ID:5ReZODvU
それもそうだなw
653創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 01:17:40 ID:isMVtBeB
>>630
誰も突っ込まなかったから今になって気付いたけど、
>>586で『運命レポートは夜の能力で書いてる』って書かれている事に気づかずに、
ナタネの自動書記を昼の能力にしちゃってたんだよ。俺のアホウ('A`)

もし都合が悪い様でしたら、ナタネの設定はパラレル設定or黒歴史にします。
俺のつまらんミスで迷惑かけて申し訳無い。

>>649
クロス「私の事が書かれていないな、ナオキ」
直輝「いや多分、後で書くんだろ? だからそう深く気にするなよクロス」
クロス「……私の事が書かれていないな」
直輝「あの、ちょっと? 俺の話聞いてますかー?」
クロス「私の事が……私の……」(無表情でしゃがみ込み、地面に『の』の字を書き始める)
直輝「……(あー……かなり気にしてるみたいだな、こりゃ)」
654創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 01:24:02 ID:5ReZODvU
クールだと思ってたのにwwwクロスかわいいwww
655『月下の小ネタ・煮』:2010/03/19(金) 01:46:59 ID:hTULisGo
陽太「ふっ」
ドウラク「ふははははは!!」
晶「…何でまたいるのさ。しかも陽太と一緒に」
ドウラク「少年と私は激闘を繰り広げたライバル!! そして…!」
陽太「ライバルがタッグを組むことにより凄まじい力を発揮する!! いくぜオッサン!!」
ドウラク「オッサンじゃないお兄さんだっ!! あるいは紳士(ジェントル)と呼べ少年!!」
陽太「月下と呼べジェントル!!」

スゥゥゥゥ(日没)

陽太「行くぜジェントル!」
ドウラク「私のダークエグザは強力だが五匹のカニを必要とする! 故に使える場所は限られる! だがっ!!」
陽太「叛神罰当(ゴッド・リベリオン)!! 出でよサイレントシールド!!」
ドウラク「月下の能力により瞬時に用意できるのだ!! そしてカニ五匹を生贄に捧げ…」

二人『出でよっ!!』

ドウラク「シザーゴーレム!!」
陽太「沈黙の巨人(サイレンス・ギガント)っ!!」
ゴーレム「グオオオオン」

晶「うん、出たけど…」
陽太「………」
ドウラク「………」
晶「シザーゴ…ガント? ごめんよく聞こえなかった」
ドウラク「シザーゴーレムだっ!!」
陽太「サイレンスギガントだっ!! ネーミングセンスねーんだよオッサン!!」
ドウラク「ふざけるな少年!! なんだ沈黙ってわけわからん!!」
陽太「わかんだろうがカニだぞカニ!! カニ食ったことねえのかオッサン!!」
ドウラク「ないっ!! 私はカニが嫌いだっ!! ええいっもう出したからには用はないっ、少年を叩き潰せシザーゴーレム!!」
ゴーレム「グオオオン」
陽太「ふざけるな!! お前を出したのは実質俺だっ!! オッサンを吹っ飛ばせサイレンスギガント!!」
ゴーレム「グオオオン…?」
ドウラク「私の言うことを聞けぇ!!」
陽太「俺の指示に従えっ!!」
ゴーレム「グォォン………」

晶「どうしてこうなった」

晶「仕方ないなぁもう」
ゴーレム「グオォォ…」
晶(カニさんカニさん、僕の言うことを聞いて)←伝心能力
ゴーレム「グオオン?」
晶(その変な二人の言うことは聞かなくていいんだよ。君は海にお帰り)
ゴーレム「グオオオン!」

ドウラク「ど、どうしたシザーゴーレム!? どこへ行くつもりだ!?」
陽太「あっ、ちょっ待てっサイレンスギガント!!」グゥ〜
ゴーレム「グオオオオン!!」ドーンドーンドーン
ドウラク「シザーゴーレムうううぅぅぅ!!」
陽太「サイレンスギガントおおおぉぉぉ!!」グゥゥゥゥ〜
晶(ばいばい。元気でね、カニさん)


<おわり>

さっそく使用した。反省はしてい(ry
656創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 02:08:46 ID:hTULisGo
>>642
能力もその使い方も多彩で面白いなあ。
ついに最終決戦か、感慨深い。期待してます。

>>649
本格的な考察乙。よく考えてるねえ。
フグか…それは考えてなかったぜ。

ところで質問なんですが、比留間さんの設定、
身体的特徴とか年齢経歴とか眼鏡とかそういった設定は考えているのでしょうか?
あるのならば実際登場させる際に使用したいと思っています。
考えていないならば無難なところで適当に(アトランダムって意味の適当ではなく適切な感じで)
こちらで勝手に創っちゃいますが、どうでしょう?
こういうのは勘弁してくれ、というのも言ってくれればそうします。

…悪役は勘弁してくれ、ってやつ以外で…
657創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 02:23:29 ID:5ReZODvU
>>655
ほんとどうしてこうなったよww
気が合ってるような合ってないようなが面白いww
658 ◆VECeno..Ww :2010/03/19(金) 02:42:35 ID:x7SKd9l7
>>653
>クロス
「空中」、「地面」あるいは「物体」の定義についての考察が難しくて棚上げしてしまいました。ごめんなさい。

挙がった疑問点としては、
例えば水中で能力を使った場合はどうなるのでしょう?
波動は水を透過するのでしょうか、それとも水ごと停止させてしまうのでしょうか。
また、空中で使った場合、自分が能力に巻き込まれる可能性は? 等々。

直輝君の言う通り、後々考察したいと思います。

>>656
んー、年齢は2010年時点で30代前半ぐらい。
黒髪で、仕事柄普段はスーツもしくは白衣を着用。
あと自分のイメージでは視力は悪くないらしく、眼鏡は特につけてないです。
とまあこんなところですかねえ。

“能力”についてはちょっと今悩んでいて、とりあえず白夜さんの能力を見てから決めたいと思います。
659創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 14:07:38 ID:x3nQEJI6
>>653
いやいや、俺の方を変えても問題ないので俺のほうを変えますよw
もちろんパラレルがいいと言うならそれでもOKです
まぁ、投下する以外ほとんど書き進めてないので急な変更でもどんとこいですがねw
クロスかわいいw

>>655
早速設定を使った…だと…
こいつら仲いいのか悪いのかわかんねw
しかし能力の使い方上手いな
また頼むよw

>>658
何だが中の人は同じ科学者としての匂いがするぞぉw俺は英語は使えんけどw
リンドウって夜まで能力続いたっけ?EROIさんの小説と統合とれてなかったかな?
まぁ、無から原子一個発生させただけでエントロピーだっけ?それの増大かで地球が消滅するから、
化学を純粋に書いてたらシェアワはありえん話なんですがw
「され竜」ごとく書くのは面倒だから嫌だぜwあまり詳しく考察しすぎて作家がやる気なくさない程度に考察頼むよ〜b
660 ◆VECeno..Ww :2010/03/19(金) 18:01:54 ID:x7SKd9l7
>>659
中の人は数学できなくて文転した似非科学者ですw自分も英文書く時は辞書とにらめっこ状態ですよw
確かに「比留間慎也の〜」を書く時は変な考察して作者さん方のモチベーションを下げてしまうのが一番怖いですねー。
そういう理由もあって「比留間慎也の〜」シリーズは、作中で起こった現象を否定(バッシング)するのではなく「どういう原理なら実現可能か?」という観点で書いてます。

無から物質生成→地球を消滅させるほどのエネルギー っていうのは、あくまでも既存の科学の中で知られている現象の中での話であって、
前提条件が違うならば科学的にもまったく無視していい話っぽいです。
(たしか以前に魔法・呪文創作スレのほうで同様の議論があって、そこでは「疑似物質」という解決法が提示されてました。興味がある方は見てみるといいかも)

リンドウさんの件については、作った薬(の効力)は日没やその次の日の出以降も消えないということから、
効果が日没後も続くとさせていただきました。

あと考察ばかりだと飽きてくるから自分もそのうちSS書こうかなーと思ってたりします。
661 ◆VECeno..Ww :2010/03/19(金) 18:05:31 ID:x7SKd9l7
うわ、我ながら凄い長文w何やってんだろ自分ww
662創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 21:16:16 ID:ea0D6AY1
>>646
お主……鋭い奴だ……
663創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 22:40:08 ID:jPmCbhiI
>>648
Doctor! you'd have reserved business class, not economy!
(ドク、あんたはビジネスに乗るべきだろ! エコノミーじゃなくて!)


英語って、日常で使ってないと全然ダメになりますね……
うわー英語きちゃったよどーしよどーしよ、で、上記のごとくorzになりました
反省していますもうしません

さすが◆VECeno..Ww! 
クールで知的な考察を、いともサラリとやってのけるッ、そこにシビれる憧れる!

で、駄文置いときますね↓
664創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 22:43:14 ID:jPmCbhiI

「わぁ、まっしろ! おとーさん、雪だよ!」

空港に降り立つと、冷たい風が頬を切った。
娘はタラップを降りると、目を丸くしてきょろきょろしている。

滑走路のまわりは雪で覆われていた。
多彩な四季が訪れるこの国の、2月らしい光景だった。


空港のロビーで電話をいれ、バスに乗った。
前に来たのは三回忌の時だから、4年ぶりになる。
一日に5本しか無いバスは、前に来た時と変わらず、時刻表から10分ほど遅れてやってきた。


バス停を降りて雪道を歩き、目的の家の前で、呼び鈴を鳴らす。
ほどなく、着物を着た初老の婦人が出てきた。

「遠いところを、大変でしたわね」
「お久しぶりです。ご無沙汰しておりました」
俺は頭を下げた。そして傍らにいた娘に、挨拶しろ、と促す。

「こんにちは、おばあちゃん」
「アイリンちゃん、大きくなったわね」
婦人が目を細める。


家の一室に通され、しばし待つ。
すぐに車が来ますから、という婦人の言葉通り、ほどなくクラクションが聞こえた。


墓のある寺に向かい、数人の親族とともに本堂に集まる。
僧侶の読経を聞き、続いて説話を聞く。

娘が居眠りすれば小突いて起こし、あくびをするとたしなめ、
足がしびれたといえばうまい正座の仕方を教えてやった。

そうこうしているうちに法事は形式的に終わり、俺たちは寺をあとにした。


ここは、この国でも保守的な田舎町だ。

金髪碧眼の外国人は、それだけで忌避される対象になる。
親族(厳密に言えば姻族だ)といえど、よそ者にかわりはない。

この国での長い生活で、俺はこうした付き合いの類をやんわり断る術を身につけ、また断ることに決めていた。
たとえ誘ってくれたとしても、それは形式的なことに過ぎない。
俺が、この国の言葉を十分に話せないと思っている人も、いまだに多いのだ。

665創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 22:45:39 ID:jPmCbhiI

俺と娘は、婦人とともに家に戻った。
そしてバスが来るまでの間、はじめに通された部屋で待っていた。

「……たいくつ」
畳の上で、娘はつぶやいた。

なにしろ、バスは1日に5本しか無いのだ。
少なくともあと30分はここで時間を潰さなくてはならない。


さっきまでは婦人が、娘と遊んでいてくれていた。
娘は夢中で、家での生活や学校であったことなどを話し、婦人は嬉しそうにそれを聞いていた。

――麻衣子が生きていたなら、こんな光景が当たり前のように見られたかもしれない。

婦人の穏やかな笑みや上品な声は、妻のそれをいやでも思い出させる。


+ + +


「おとーさん。ついたら、音楽きかせてくれるってやくそくだよ? はやくきかせてよ」
婦人が部屋を出て行ってしまい、やることが無くなった娘は、畳にごろごろ転がりながら、うらめしそうに俺を見る。

日は高い。あたりは誰もいない。
言い訳する要素が無い。

――仕方ねぇな。

俺は目を閉じ、耳に意識を集中させた。
どうせ何にも聞こえない、そう思っていた。


雪は、音を吸収する。
そのため、雪が降り始めると辺りは静寂に包まれる。
昔、妻に聞いた話だ。


しかし、いざ耳を澄ますと、かすかに、音は聞こえた。
葉ずれの音とか鳥の鳴き声とか、音源が特定できるものではない。

何が鳴っているのか分からないが、かすかに、けれどたしかに、音は聞こえるのだった。


その透明感のある音を紡いで、俺はメロディを綴った。
素朴で、どこか哀愁を含んだメロディだ。


奏でながら、俺は別の事を考えていた。
666創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 22:48:07 ID:jPmCbhiI

――俺は、このまま娘を一人で養っていけるのだろうか?

  俺は男親で、女親の代わりはできない。

  娘も、これから成長していくにつれ女同士だから話せることがたくさん出てくるだろう。

  それは、娘にとって不利益なことじゃないのか?

  娘は……志乃さんのもとにいる方が、いいんじゃないのか?

  志乃さんも、麻衣子の分までアイリンを愛してくれるだろう。

  俺はときどき、会いに来ればいいんじゃないか……



どれくらいそうしていただろう。

メロディに人の声が少しずつ混ざり、はっきりと聞き取れるようになった頃、
障子が開いて、志乃さんが姿を表した。

「ごめんなさい。懐かしいから、つい口ずさんでしまったわ」

すでに眠ってしまった娘に薄掛けをかけてやりながら、俺に訊ねた。

「パウロさん、この唄……ご存知なのね」


――知らない。

俺は、このメロディを知らない。
無意識に出てきたのだ。


「この唄、あの子が好きだったの。ちょうど今のアイリンくらいの頃、しょっちゅう唄ってたわ」
遠くを見るような目で、志乃さんは続けた。

「ほんとに大きくなったわ。歳はとるものね」
娘を撫でながら、俺を見る。

「言葉も、とっても自然だわ。逆に、あちらの言葉をちゃんと話せているのか、心配になっちゃう」

「子供のほうが、言葉の順応が早いです。家と学校と、二ヶ国語を自然に使い分けていますよ」


志乃さんを見て、はっきりと確信する。

麻衣子は母親似だ。
そしてアイリンもまた、母親である麻衣子の貌の特徴を備えていた。


俺は、考えていた事を切り出した。

「志乃さん。あの、厚かましいお願いなんですが」

なに? と目だけで言い、微笑む。

「今晩、こいつを泊めていただけませんか」
667創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 22:50:40 ID:jPmCbhiI

彼女にしてみればアイリンは、孫娘であり、麻衣子の忘れ形見だ。
今夜は水入らずで過ごしてもらいたい。


ところが彼女は、
「あなたも一緒に、泊まっていかれればよろしいのに。てっきりそのつもりで、準備してましたのよ」
といって穏やかに微笑んだ。

俺はもともと、駅の近くのビジネスホテルを取っていた。
そういって辞退しようとした矢先、

「……おとーさん」
娘がいつの間にか目を覚まして、俺のシャツをひっぱった。

ほらごらんなさい、と婦人はいたずらっぽい笑みを浮かべたあと、娘に向かって言った。

「大丈夫よ。二人とも、今夜はうちにお泊まりなさいな。お刺身もたくさんあるわよ」
「やった! おとーさん、おさしみ!」
娘が起き上がって、俺の腿をバシバシ叩いた。


+ + +


結局俺は、娘と共に妻の実家に泊めてもらった。

翌日、朝食を食べながらテレビを見ていると、聞き覚えのある名前が耳に入った。

テレビには、まさに俺が予約を取っていたホテルが映し出されていた。
668創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 23:00:40 ID:jPmCbhiI

「……俺たちが、泊まる予定だったホテルだ」

駅の近くのビジネスホテルの従業員と宿泊客数人が、野犬に襲われたという。
もしも婦人のすすめを断ってホテルに泊まっていたら、俺が襲われていたかもしれない。

「まぁ。……虫が、報せたのね」
婦人が、静かにつぶやいた。

「むしが、しらせた?」
娘が尋ねる。

「なんだか悪いことが起こりそう、って予感がすることよ」
婦人の説明を、娘は不思議そうに聞いていた。


「志乃さん、『鑑定士』って、ご存知です?」

「ええ。例の『能力』の内容を教えて下さるらしいわね。こんな田舎町にも、案内のビラがきましたわ」

「けっこう受けている人、いるんでしょうか」

「若い人達はみんな受けているみたいですわ。わたしはもうこんな歳だし、なんだか怖くって」
そういって苦笑いした。


+ + +


昼過ぎに、妻の実家を出た。

出かけ間際、志乃さんはアイリンを抱きしめた。
そして頭を撫でながら、
「アイリンちゃん。お父さんのもとを離れちゃダメよ」
と言った。

娘はきょとんとしていたが、うん! と大きな声で答えた。

それを見て微笑む志乃さんの眼が、かすかにうるんで見えた。

669創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 23:02:59 ID:jPmCbhiI

バスに乗り、駅に向かう。
駅で特急列車を待つ間、俺は、朝食の時の「虫の報せ」について、志乃さんが俺に言った時の会話を思い出していた。


(こういうのも、『能力』なのかしらね?)
志乃さんの問いかけに、俺は返答に詰まった。

彼女は虚空を見つめながら続けた。

(昔は、歳をとれば誰でも不思議な力を発揮したわ。
 村のおじいちゃんはどんな機械でも直してしまったし、おばあちゃんの手にかかれば、どんな料理でも美味しくなった)

俺は、ガキの頃の記憶を辿る。思い当たることはたくさんあった。

それは、能力というよりは、経験則という方が正しいのだろう。

しかし、たしかにそれは、子供のみならず年若のものからすれば、魔法のように魅力的なものだった。


最近、世間を賑わせている例の能力――「バッフ」とか「エグザ」とか呼ばれる――は、果たしてどうか。
俺の頭の中には、「cheat(イカサマ)」という単語が、思い浮かんでいた。


志乃さんは、自分がどのような『能力』があるのか、知らないし知りたくもないと言う。

(きっとわたしにもなにかの『能力』が備わっているのかもしれないけれど……
でも、そんな『能力』が無くとも、人は今まで幸せに暮らしてこられたでしょう?)

古くさい考えかしら、といって笑っていたが、その表情は翳っていたように見えた。

その意見については、俺も同感だ。

俺は自分の能力を、麻衣子や志乃さんが貸してくれた「助け舟」だと思うようになっていた。
不器用な男が、ひとりで娘を育てるための。

だから俺は、自分の能力を、他人を傷つける目的では、絶対に使いたくない。

娘の能力がどういうものかは、わからない。

しかし、娘にも、能力をそういう目的で使ってほしくない。

そのために、鑑定を受けよう。

670創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 23:09:51 ID:jPmCbhiI
↑以上です

読んで下さっているすべての方へ。

本当にありがとうございます。
こんなにレスが付いたのは初めてで、舞い上がってしまってます。
空気読まずに申し訳ありません。

自分としては、本編(組織とのバトルでしょうか)にはあまり絡まずに、
世界観を補完する作品――『アニマトリックス』みたいなもの――を書ければいいなぁと思っています。

では、引き続きこの世界をお楽しみください
671創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 23:22:34 ID:5ReZODvU
乙です
シェアワに「本編」なんて無いんだぜ
逆に言えばみんな本編

和やかな感じでいいな
そして野犬も(テレビだけど)出てきたw
672創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 23:36:57 ID:EWX8GRgH
グールは殺人鬼でバフ課に追われてて不死身で炎とか氷出せてリンドウと知り合い。
バフ課はシルスクとリヴィヨン(ある世界では故人)が在籍。1〜7班。
今出てる設定はこれくらい?
673創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 23:56:26 ID:hTULisGo
>>670
いいなあ人情モノ。こういうのも十分あり。和やかな空気のいい文章だと思う。
レスの数ってのは運によるところも割と大きいんだよねw

ところで、小ネタとはいえドウラクさん二回使ったら彼にえらい愛着が湧いてきてしまったw
街に引っ越してきたみたいな設定加えて月下の本編に出してみてもいいでしょうか?
674創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 00:01:40 ID:Z9kWK5oS
>>670
相変わらずいいなあ〜、乙。

>>672
鉄っちゃんもバフ課だったはず。何班かは出てなかったけれど。
そういえばバフ課の班決めって何かルールとかあるのかな?
675 ◆KazZxBP5Rc :2010/03/20(土) 00:03:32 ID:5ReZODvU
>>673
どうぞどうぞ

>>672
リヴィヨンじゃなくてラヴィヨン
676創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 00:09:16 ID:rHHol1yH
>>670
乙乙、もっと舞い上がってしまえ!
毎回ぐっとくるSSを書いてくれるじゃないの
こういうの好きだからたまらんぜ
677創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 00:11:25 ID:rHHol1yH
IDがHolyでHすぎワロタ
678創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 00:11:40 ID:J6LIGjFA
>>670
投下乙です
望まないのに能力を発動してしまう人がいて、逆に私利私欲のために
能力を使い倒す輩もいて、って世界なんだろうな
続き期待してます

さて慎也先生に「頑張れ」との言葉を頂いたので、そろそろ>>600-601
の続きを投下します
この2人は今回も絶好調です
そろそろツッコミ役を出さねばと思いつつ、
厨二を書いてると楽しくなってくるものでw
679創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 00:12:03 ID:7mP2Qtzp
もう、Hなんだから///
680白夜に輝く堕天の月:2010/03/20(土) 00:13:30 ID:J6LIGjFA
「白夜…………フン、そういうことか。月の落とし子であるこの俺にとっては、仇敵と呼ぶべき
相手ってわけだ」
「絶対者たる太陽の光に、卑小な存在である月がなす術もなくその膝を屈する夜、それが白夜。
それこそが私の名前なの。そんな名前を持つ私と、貴方は出逢ってしまった。そのことが持つ
意味、月の落とし子である貴方ならわかるわよね」 

 相変わらず不穏な言動と一致しない可憐な笑顔のまま、名前とは裏腹に真っ黒の少女は、ボソ
ボソと聞き取りにくい小声でそう語る。

 わざわざ聞かれるまでもなく、陽太は理解していた。
 今自分の頭上で太陽の眩しさに力を奪われ、白くやせ細っている彼の守護者。太陽の光が届か
ない夜になれば、それは太陽から力を奪い返し、妖しい輝きを纏って濃紫の空に君臨する。

 これはつまり、月が夜空を支配できるのは、太陽が姿を消すからこそだということ。
 なら、太陽が夜になっても空気を読まずに図々しく居座り続ければ、月は――

「うふふ、今の貴方みたいな表情、私たまらなく好きよ。そんな追いつめられた小動物みたいな
顔されたら、私、少し躊躇ってしまうわ」
「追いつめられている? この俺が? ハッ、寝言は寝てから言うんだな。確かに、お前は俺に
とってかなり分の悪い相手らしい。それは認めてやる。だがな」

 正直なところ、陽太は図星をつかれている。その動揺を悟られまいと、彼は一際声を大きくし、
大げさな身振り手振りを交えて反論、そして締めとばかりに
「戦う前から追いつめられなんかしねえ。あきらめもしねえ。それこそが俺、岬月下の流儀だぜ」
 と、大見栄を切った。

「流儀、ね。貴方ってほんとにかわいいわ。そして、同時に哀れね。そんな妄執、棄ててしまえば
楽になれるのに。でも安心して。私が貴方を解き放ってあげる。悪しき妄念、その咎なき虜囚とな
り果てた貴方の心を。死はきっと苦しいけど、その先には安寧の光が見えるはずだから」

 くすっと上品に微笑みながら、朗らかな声でそんなことを語る白夜。自分の精いっぱいの虚勢も
この少女には軽く流されてしまったらしいことが、陽太の焦りを加速させた。

「貴方の妄執は、貴方の心の深層に根付いて、すっかり凝り固まってしまっているみたい。相当に
苦しい思いをすると思うけど、どうか私を恨まないで。そんな澱みをそこまで育ててしまったのは、
他でもない貴方自身なのよ」

 陽太を見る白夜の眼光が、猛禽類のように鋭く研ぎ澄まされていく。
 能力が来る。直感した陽太は、その行動に意味があるのかどうか迷いつつも、本能的に身構えた。

 そして、その異変は訪れる。

「うっ、ぐぐっく……うぅああぁあぁぁあぁっ!?」
681創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 00:13:56 ID:hzow5vV0
>>674 >>675
鉄っちゃんバフ課、ラヴィヨン把握。あと見直したらラヴィは死んだの人形だった(多分)

設定増えてきたから自分でまとめとかないとついていけない……
682白夜に輝く堕天の月:2010/03/20(土) 00:14:43 ID:J6LIGjFA
 突如として頭の中に大音響で鳴り響く強烈な不快音に、陽太はたまらず叫び声を上げた。上げたの
だが、その自分の叫び声さえまったく聞こえてこない。陽太の聴覚は、この謎の不快音に完全に支配
されてしまっていた。
 たまらず耳をふさいでうずくまるが、聞こえる音の大きさが緩和されることはまるでない。
 
 どこかで聞いたことのあるようなその不快音は、拷問にも等しい辛苦を伴って、確実に陽太の精神
を蝕もうとしていた。

 自分はきっと叫んでいる。叫び続けている。ありったけの大声を上げて、無様に、恥もプライドも
忘れて。
 それでも聞こえてくるのは、ひたすらに無慈悲な不快音のみ。鼓膜の内側にイヤホンを突き刺ささ
れて聞かされているような、ダイレクトなノイズ。
  
 もうやめてくれ。助けてくれ。そう思い始めた矢先、ふっと音が止んだ。

「ううっ……く……な、なんなんだよ、これは……」
「これが私の能力。『天導者の詩【エコーズ・オブ・フォールン】』よ。聞こえたでしょう? 貴方
を安息の地へ導く者が紡ぐ、壮大で荘厳な歌声が」
「う、歌声だと? 今のが? ハッ、随分音痴な歌声だったがな。こんな音痴な奴に導いてもらうな
んざ、俺はごめんだぜ」
「……そうして我を張って抗うほど、私の能力は貴方により強い苦痛を与えるだけよ。まあ私は一向
に構わないけど。さあ、もうお喋りは終わり。次で貴方の心は崩壊(おわ)るわ。さっき以上の素敵
な絶叫を私に聴かせて。貴方の末期の声として、鼓膜に焼き付けておいてあげるから」

 ここにおいて陽太は、自分が思っていた以上にやばい状況に立たされていることを認めざるを得な
かった。そして同時に、自分の不甲斐なさに憤りを覚えた。
 自分はまだ、この少女相手に能力を発現させることさえできていない。だが、たとえ能力を発現し
たところで、彼女の能力を凌駕できるのかと言えば若干怪しい。

 太陽の光の下で、自分はこうまで非力な存在だったのか。月の光ごときが太陽に打ち勝とうなんて、
所詮叶うはずのない絵空事だったのだろうか。

「……違う。こんなのは俺の考えることじゃねえ」
「へ? なんですって?」
 この状況で陽太がしゃべるとは思っていなかったのだろう。妙に抜けた声でなんとか反応した白夜
に構わず、陽太は続けた。

「白夜。俺の名前を教えてくれないか」
「……は? な、何を言い出すのかしら。岬月下、でしょう? かわいそうに、さっきので既に脳に
深刻なダメージがあったようね」
「岬月下……そう、そうだ。俺は……」
 
 目を閉じて、自分の名を噛みしめるように何度もうなずく陽太。
 ゆっくりと開かれたその目は、憎らしいほどの自信に満ちた、いつもの輝きを取り戻していた。

「俺は、俺の名は岬月下! 神に、この世の理に叛く男! 今日俺がここで死ぬことが、神の定めた
理ならば! 叛いてやるさ! その理にも!」


 つづく
683創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 00:18:57 ID:J6LIGjFA
投下終わりです
684創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 00:22:54 ID:7mP2Qtzp
相変わらず素晴らしい厨二www
地味に戦いづらい相手だな白夜
685創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 00:24:46 ID:rHHol1yH
乙ですwwwひどいwww厨二ひどいwwwww
台詞回しが旨すぎる、白夜ちゃんハマってるなー
音攻撃ってかなり強い希ガス
686創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 18:01:54 ID:SR3Dv3Gw
ちと設定をまとめてみますた
まだすべてのSSに手を付けられていませんが、予定では全部やる予定です
ツッコミや訂正等、お願いいたします
687設定まとめ(仮):2010/03/20(土) 18:03:57 ID:SR3Dv3Gw
『fave of ghoul』……by ◆IulaH19/JY

風魔嘉幸;
 男子。高校生くらい? 組織「ドグマ」に無理やり引き込まれようとしている。
 透視能力→瞬間移動能力へと能力が上書き保存されている。

リンドウ;
 瓶底メガネの少女。組織「ドグマ」の一員。
 ありとあらゆる薬を作る能力と、物を置き換える力を持つ。

ルロー;
 猫人間。切り裂き魔。組織「ドグマ」の一員。

fave of ghoul;
 通称fog。殺人鬼。能力は不明。

トルトル;
 関西弁の太ったおっさん。バフ課8班を騙る、謎の集団の主導者的ポジション(今までのところ)
 他人の夢に介入する能力。自分の体を液体にする能力も?

フェム;
 トルトルの部下。機械化人間?
 空気の匣を作りだす能力。

ゼン;
 トルトルの部下。
 ニオイをかぐ能力。

シルスク(code name);
 バフ課第2班の隊長。fave of ghoulを追っている。

ラヴィヨン(code name);
 バフ課第2班副長で、シルスクの部下。「〜ッス」が口癖。ホモ疑惑あり。
 auto-mata(自動人形)の能力。
688設定まとめ(仮):2010/03/20(土) 18:05:17 ID:SR3Dv3Gw
『月下の魔剣』……author unknown

岬 陽太;
 厨二全開の中二男子。大根使い。
 ジャンクフード、食材を手から発生させる。

水野 晶;
 しっかりものの中三女子。ボクっ娘。
 動物読心、伝心の能力。




『比留間慎也の考察その他』……author unknown
比留間慎也;
 学者(博士号あり?)。とある組織で“隕石に起因する超能力”の研究分析を行っている。




untitled……by ◆/zsiCmwdl.
遠藤 直輝;
 17歳男子。ハードラックな運命に巻きこまれている。
 まだ発現していないが、「世界を変える程の凄まじい能力」を持っているらしい。

クロス;
 高校生くらいの女性。『機関』に所属するエージェント。ナイフの使い手。顔に傷があることからscarfaceとも呼ばれる。
 物体を遅くする能力。

ファング;
 20代くらいの、粗暴で単純で短気な男。『ドグマ』に所属する構成員。
 狼男。
689創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 18:09:24 ID:SR3Dv3Gw
↑とりあえずここまでです
相関図はパワポで作ろうと試みるも力尽き…… orz

各キャラの能力容姿性格等は、テンプレ参照ってことで

あ、該当レスに安価しとけばよかったのか……       o ...rz
690設定まとめ(仮)の訂正:2010/03/20(土) 18:20:55 ID:SR3Dv3Gw

『比留間慎也の考察その他』……by ◆VECeno..Ww
比留間慎也;
 30代前半ぐらいの学者(博士号あり?)。とある組織で“隕石に起因する超能力”の研究分析を行っている。
 
 
さっそくやっちゃった……すみません。上記に差し替えで
691創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 21:41:38 ID:7mP2Qtzp
まとめ乙

今400kB
692創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 21:42:19 ID:c10fefQw
>今400kB
なッ……!!?
693創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 21:57:37 ID:c10fefQw
あ、次スレ建てる時のテンプレに以下2つ追加してもらえると嬉しいかも。

避難所:http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1267446350/
うpろだ:http://loda.jp/mitemite/
694>>1案:2010/03/20(土) 22:03:13 ID:7mP2Qtzp
とにかく簡潔にしてみた
スレタイも決めないとな>>287-295


ここは、人類が特殊な能力を持った世界での物語を描くシェアードワールドスレです
(シェアードワールドとは世界観を共有して作品を作ること)

【重要事項】
・隕石が衝突して生き残った人類とその子孫は特殊な能力を得た
 (隕石衝突の日を「チェンジリング・デイ」と呼ぶ)
・能力は昼と夜で変わる
 (能力の名称は地域や時代によって様々)
・細かい設定や出来事が食い違っても気にしない


まとめ:http://www31.atwiki.jp/shareyari/
うpろだ:http://loda.jp/mitemite/
避難所:http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1267446350/
前スレ:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1265197091/
695創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 22:05:28 ID:1tutGTE4
>>691
いつの間にw

>>694
1はそれでいいと思う
696 ◆VECeno..Ww :2010/03/20(土) 22:15:46 ID:mbBzl1Vy
>>690
ん、考察シリーズの年代設定は2004年なので、その時点では慎也博士は20代後半ですよー
697創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 22:44:09 ID:SR3Dv3Gw
>>696
おっと、そでした 訂正どもです!

>>ALL
他の書き手さんたちも、訂正ありましたらお願いします
698創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 22:56:48 ID:Hz8Eg+rh
俺の友人は一升瓶を半分にする能力を持っていた。

>>660
俺は文章を書くのが辛くて理系に行ったなんちゃって科学者ですよ。
理論とかむちゃくちゃでイライラすると思いますが、そうなってしまったらごめんなさいです。
リンドウが創りだした薬も能力として扱われるか。しまったな。ルールを破る気は無かったのに。

>>670
投下乙です!
犬が来たって事は、娘か男が狙われたのか?
鑑定を受ける事で、また何か厄介事に巻き込まれなければいいんだが。
続き期待!

>>682
白夜すげえw
どうやって倒すんだ、陽太は。
地味に最後の陽太のセリフに感動してしまったw

>>687
フェイブオブグールは◆EROIxc6GrAさんが最初に書いてるから名前の追加よろしくですb
トルトルは俺の地元の言葉だから、関西弁じゃないかもw 後のまとめは完璧ですw
699創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 23:42:42 ID:SR3Dv3Gw
>>698
ありがとうです! よく見たらあの二人もEROIさんの子でしたww 足しときます

すみません、「ダ行」が「ヤ行」に変われば何でも関西弁だと思ってしまう悪い癖が……
広島とか九州とかは、関西と「全然違う!」って、大学の友人に言われてたの思い出しましたww
「関西弁」ってのが、代名詞として便利なんですよね……

700設定まとめ(仮)の訂正:2010/03/20(土) 23:50:25 ID:SR3Dv3Gw
『fave of ghoul』……by ◆IulaH19/JY

三島 柚子;
 年齢不詳の女性。20代のキャリアウーマン風と予想したが……
 魔人「アグゼス」を召喚する。魔人は独立人格を持っているが、忠実に行動する。

天野翔太;
 年齢不詳の男性(高校生〜大学生?)。fogにより既に殺害されている。
 透視能力を持っていた。

※追記
シルスク(code name);
 頭痛持ち。 ←これを追記

『比留間慎也の考察その他』……by ◆VECeno..Ww
※追記
比留間慎也;
 学者(博士号あり?)。歳は若く20代後半。 ←訂正しこれを追記

701>>2案:2010/03/20(土) 23:52:19 ID:7mP2Qtzp
>一升瓶
こええよw

これも一応入れといた方がいいのかな
んで>>3>>107とか


キャラテンプレ
使わなくてもおk

・(人物名)
(人物説明)

《昼の能力》
名称 … (能力名)
(分類)
(能力説明)

《夜の能力》
名称 … (能力名)
(分類)
(能力説明)


(分類)について
【意識性】…使おうと思って使うタイプ
【無意識性】…自動的に発動するタイプ

【変身型】…身体能力の向上や変身能力など、自分に変化をもたらすタイプ
【操作型】…サイコキネシスなど、主に指定した対象に影響を与えるタイプ
【具現型】…物質や現象を無から生み出すタイプ
【結界型】…宇宙の法則そのものを書き換えるタイプ
702設定まとめ(仮)の訂正:2010/03/21(日) 00:13:12 ID:TUtpJ4BB
『fave of ghoul』……by ◆EROIxc6GrA−◆IulaH19/JY
author追加でおながいします

なんで肝心なトコを忘れちゃうのよ……もうタヒんでって感じ o... // rz

703創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 01:15:21 ID:9TbToxxo
タヒんじゃ駄目だー!
まとめ超乙です!
704『月下の魔剣〜邂逅〜』:2010/03/21(日) 03:05:06 ID:sZNYed24
411KBか…まだ行ける…よね? あんまり長くないもんね?
>>567-569の続き投下します。


「…チッ。まァいい」

一触即発の睨み合いから、男は顔を逸らした。

「水野晶。おめェをおびき出したのは勧誘のためだ。俺ァ女子供に手ェ出す趣味はねェ」
「…か…勧誘…?」
「俺ァある男の依頼を受けてきたンだ。名前は言えねえがそいつぁ能力研究者でなァ、
 能力の発展のためにおめェの能力を調べさせてほしいって言ってやがンだ」
「僕の能力…って動物の心が視えたり伝えたりするだけで…」
「そうなのか? まあ俺ァ依頼主の考えなんざ知ったこっちゃねェがな」

陽太が一歩踏み出す。

「ゴスロリの次は世紀末か…俺を狙う組織!」
「あァ、大根はいらねェ」

見事な即答。
顔は見えないけど、ちょっと、いやかなりショックを受けてたのが見てとれた。

「って…ゴスロリって?」
「………」

あらら、陽太かわいそう。背中に哀愁が漂う。
そんな陽太に少し和んでいたところに男の太い声がかかり、僕は急に現実に引き戻される。

「で、どうだィ? 長い拘束も危険もねェ、謝礼も弾むって話だ。どうする、水野晶」
「そ、そんなこと…まずその犬を解放してあげなさいよ!」
「おォ、忘れてたぜ。悪かったな」

男は右手にぶら下げていた犬を、屈んで解放する。幸い犬は健在のようで、道の奥へと全力で逃げていった。
放すとき、犬に向かって何事か小さく呟いたように見えた。
705『月下の魔剣〜邂逅〜』:2010/03/21(日) 03:05:59 ID:sZNYed24

「で、どうするよォ、水野晶!」
「そ…それは………」

嫌だ絶対に嫌だ。こんな怪しい男について行きたくない。こいつの言うことなんてまるで信用できない。
でも断ればこいつは乱暴な手段に出るに違いない。そうなったら陽太が……

「断る」

答えに窮している僕を尻目に、きっぱりと答えたのは陽太だった。

「おめェには聞いてねェンだがな」
「まっとうな勧誘ならまっとうな奴をよこせばいい。てめぇみてえな世紀末野郎が出てくる時点で怪しさ満点だろうが。
 前の犬もどうせその依頼主とやらの差し金だろ。んな怪しい組織に晶をあずけられるかよ」
「おめェは何だ。水野晶の保護者か何かかァ?」
「てめぇが気に食わねえ。だからてめぇの思い通りにはいかせねえ。そんだけだ」
「…そうか。そいつァ残念だ」
「残念? よく言うぜ」

陽太の右手がそろりと後ろのポケットに向かう。そこにはさっきの…

「最初っから腕ずくで連れてくつもりだったんだろうがっ!!」

手を出すや振られる右腕、高速で男に飛来する円盤、ハードクラッカー。

「おいおい、俺ァ…うォッ!?」

こと、かた焼きは男のすぐ脇の排水管に当たり、派手な音と共に粉々に砕け散る。

「ジョー…ブレイカー!」
「って名前変わってるし!?」

僕の言葉を無視して、握り、一呼吸置いて開かれる右手。同時に出現した数枚のかた焼きを、一気に投げる陽太。
男の頭に胴体に脚に、唸りを上げて迫るかた焼き。あれは回避は難しいはず…

「うォあッ!? 喧嘩っ早えガキだなオイ!」

言いながら男は広げた両手をこちらへ向けた。瞬間、地面から生えるように出現した壁が男を覆い隠す。
男に向かったかた焼きは全て壁にぶつかり、はじけ飛んだ。

「チッ、やはりかっ! だったらっ!!」

陽太は再度右手を握り、開く。そこには…
706『月下の魔剣〜邂逅〜』:2010/03/21(日) 03:06:50 ID:sZNYed24
「なっ、馬鹿なっ!? 出ない!?」
「えっ!? 何で!?」

開いた右手は空。陽太につられて僕も驚愕する。しかし僕は意識を少し周囲に向けて、すぐに気付く。

「違う陽太、もう夜になってる!」
「なっ……なんだ夜か。…チッ」

悔しげに舌打ちする陽太の反応に強い違和感を感じた。陽太は夜の能力でこそ真価を発揮するのだから。

「え、なんで? 夜になったら嬉しいんじゃ…」
「確かに昼の万物創造(リ・イマジネーション)に比べ夜の叛神罰当(ゴッド・リベリオン)は強力だが…」

先程、男の生み出した壁を見やる。地面と同じ灰色の壁は、かた焼きのぶつかった場所に亀裂が入っていた。

「奴はあきらかに時間稼ぎをしていた。それはつまり、奴も俺と同じ…」

亀裂が伸びて、やがて壁全体に広がる。壁は端から不安定に崩れ始める。

「夜の能力が本場。防御じゃねえ、戦うための能力ってわけだ」

そして、ガラガラと一気に崩壊する壁。奥に立つ人影。

「そォいうワケだ」

男は不敵に口元を歪ませていた。

ハッと気付いて振り向いた。しかし依然、背後の道は完全に閉ざされていて、僕は落胆する。

「あの壁は崩れないんだ…」
「奴の能力はたぶん、一定時間で崩壊する壁を出す能力だ。出したらもう管理の外。昼夜は関係ねえってわけさ」
「ハッ、いい洞察力だ。能力がも少しマシなら仲間にしてェくれえだぜ」
「神に叛く能力を舐めんなよ。罰が当たるぜ」
「そりゃあ…」

あんたにでしょ、と出かけた言葉は呑み込んだ。そんなことを言っていられる雰囲気ではなかったから。
707『月下の魔剣〜邂逅〜』:2010/03/21(日) 03:07:46 ID:sZNYed24

「おめェの能力は知ってる。最初に言っとくが、その能力じゃ勝ち目はねェぜ?」
「前に見たことを言ってんだったら甘いな。俺はまだ能力の片鱗も見せちゃいねえ。
 武器はこの世界に無限に存在するんだぜ? 無限の可能性、それが俺の叛神罰当だ」
「どォしてもやるってか」
「ああ、こっからが本番だ」

そう言って両手を合わせる。久しぶりに見る、陽太の能力発動ポーズ。
しかし、何も出さずに手を離した。

「おっと、その前に。名乗れよ、それが流儀だろう。俺はとっくに名乗ったんだぜ?」
「そりゃあ…まァいいか。当然本名じゃねェがな」

男はボリボリと頭を掻く。

「俺はベン。隔離と戦闘を単独でこなす、便利屋のベンだ。そう呼ばれてる」
「そうか。刻んだぜ、ベン」

陽太は腕を組みうなずく。そして、ゆっくりと目を開き、大きく息を吸う。

「俺の名は岬月下! お前を倒す男の名だ! いくぜベン!!」
「おォ、来てみろ月下ァ!」

「はあああぁぁぁ…」

陽太は片膝をつき地面近くで手を合わせ、力を込める。

「出でよ!」

一気に立ち上がると同時に右手を高く振り上げる。

「魔剣!」

天に向けた右手から出現する純白の大根。

「レイディッシュ!!」

大根は右手一本で袈裟に振られ、4時の位置でピタリと停止した。

「………」
「………」

沈黙。場を支配する妙な空気。

「………」

「…その無駄な動きはナニ?」

無粋なツッコミは自重するつもりだったけど、さすがに言わずにはいられなかった。


<続く>

こっちが後の話ってことを示唆する感じでちょっと取り入れてみた。問題ないよね?
厨二病の陽太はこっちのがかっこいいと思ったら武器名なんかコロコロ変えちゃうんだぜw

小ネタなんか書いて遊んでるからなかなか本編が進まないんだよなあ、反省反省。
708創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 03:27:38 ID:sZNYed24
>>682
かっこいいこと言うじゃないの陽太。しかし厨二度パねえw 厨二力じゃ勝ち目ねぇよホントにw
っていうかこっちが設定だけで実際厨二できてないような気がしてきてしゃーない。

まとめ乙! 超乙!! 簡潔にわかりやすくていいまとめだと思います。
陽太の説明完璧だけど…大根使いってあまりにもあんまりだよw
709創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 03:41:36 ID:9HhFLoP5
晶愛されてるなw
710創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 10:14:39 ID:DRvxlK3c
>>708
乙です
大根片手に対能力者戦……
どうなるんだ陽太w
こちらで書いたものはもうどんどん使っちゃって
ください。シェアードの醍醐味だと思いますし

「高めあう厨二」みたいなノリで書いてるので、
彼ら暴走気味になってますwそろそろちゃんと歯止めを
かけようと思ってるところです

711設定まとめ(仮):2010/03/21(日) 13:32:15 ID:TUtpJ4BB
untitled……by ◆/zsiCmwdl.
ファング;
 20代くらいの、粗暴で単純で短気な男。『ドグマ』に所属する構成員。
 獣化能力、ってか狼男。

フール;
 20代くらいの男、皮肉屋。 『ドグマ』の構成員。ファングとは仲が悪い。
 能力は不明。

ナタネ;
 10歳前後のおかっぱ頭が可愛らしい少女。『ドグマ』では重要なポジションに居る。口調が丁寧。
 未来予測の自動書記能力。速記で書かれたそれは「運命レポート」と呼ばれている。

初老の男(名前不明) ;
 50代くらいの温厚にみえる男。しかし抜け目無く冷酷かつ狡猾。 『ドグマ』では高い役職に就いているらしい。
 ファングからはオヤッさんと呼ばれている。紅茶が好き。
 能力は不明。




『煙と猛毒』……by ◆akuta/cdbA
川芝 鉄哉;
 26歳男性、ヘビースモーカー。バフ課に勤めている(このことは月野には伏せてある)。バフ課でのcode nameはクエレブレ。
 猛毒ガスを吐く能力、口から吐ける煙を自在に動かせる能力。

八地 月野;
 16歳の女子高生。鉄哉のマンションに下宿して学校に通っている。
 身体のどこからでも火を出せる能力。人間ライター。
712設定まとめ(仮):2010/03/21(日) 13:33:44 ID:TUtpJ4BB
『Beyond the wall』…… by ◆KazZxBP5Rc
東堂 衛;
 男子高校生。弟を救うために「クレーター」に来た。
 昼は、お互いに触れることができないという状況を作り出す能力。
 夜は、いかなる攻撃・事故を防ぐが、本体が誰かを攻撃した場合、能力は次の日没まで失われる。

月宮 星夏;
「クレーター」で真山情と旅をしている男装少女17歳。主にセイと呼ばれる。一人称は「僕」。情に恋心を抱いているらしい。 貧乳。
 指鉄砲で物体を撃ち出す能力。 夜は水分を撃ち出す。

真山 情;
 「クレーター」でセイと旅をしている。ジョーと呼ばれている。熱血漢の19歳。どっちかというとボケ。
 物体に思念を込める能力。夜は空中に巨大な岩石を呼び出し、すとーんと落とす能力。


ドウラク;
 「クレーター」の一地帯を仕切る。紳士的な口調。変な人。
 カニをボイルする能力。でも(ゆえに?)カニが嫌い。夜はシザーゴーレム(手がハサミになっている巨大な石の化け物)を召喚する。

ハカセ;
 「クレーター」の一地帯を仕切る。弱い。というか残念な頭脳の持ち主。根暗。
 円周率を変化させる能力、重力を操る能力。

エンマ;
 「クレーター」のとある町の長。妖艶な美女。高飛車。
 相手を夕暮れまで仮死状態(死んだのと全く同じ状態になるが後遺症は無い)にする。
 夜は灼熱の炎を操る能力だが、本体は火に耐性無し。

パイロット;
 キングの部下。ストリート系の兄ちゃん。自称「人事部長」。ミョーに軽薄なノリ。
 紙ヒコーキを操る能力。飛行速度および揚力・強度などはある程度可変。紙ヒコーキを使って本体が飛ぶことも可能。
 夜は壁や天井をスケートのように滑る能力。

キューピッド;
 キングの部下。マッチョのおっさん。 よくわからないが「教育部長」(自称)。無意味に豪快。
 昼は、相手に誰か(本体以外)に恋をさせる。 夜は相手の目を一時的に見えなくする。

キーマスター;
 キングの部下。浮浪者のような身なり。
 部屋にカギを掛ける能力。本体だけが解錠可能。 夜は、範囲に入った侵入者を察知する能力。

キング;
 上記のごとくヘンな連中を束ねる、謎の悪玉。
 能力は不明。
713創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 13:37:21 ID:TUtpJ4BB
↑ここまで、訂正等お願いします
714創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 13:38:32 ID:9TbToxxo
>>707
晶、そこに突っ込んじゃ駄目!
戦闘もの良いねぇw
ベンの夜の能力も気になる
715創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 13:40:29 ID:9TbToxxo
>>713
おおwすっきりまとまっているw
まとめハイパー乙です!
716創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 20:38:09 ID:9HhFLoP5
>>713
まとめ乙
星夏と情は旅を始めてから1年だからそれぞれ+1歳です


スレタイだけど、大体必要な単語が入るようにまとめてみた
どうでしょう
【シェアード】昼夜別能力 チェンジリング・デイ2
717創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 20:43:31 ID:LWTbvOYg
>まとめ
おつかれさま
いいと思う

>スレタイ
いいと思う
718創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 20:47:23 ID:TUtpJ4BB
>>716
スレタイ、いいと思うです あと訂正ありがとです!

>>書き手さんたち
短くまとめるために、キャラ付けとか結構ヒドい書き方しちゃってるかも(「大根使い」とか)
悪ノリが過ぎてたら、ピシッと言って止めてくだされ
あと、次スレでも【訂正版】としてまとめ再掲しようかと画策しています
719設定まとめ(仮):2010/03/21(日) 20:52:33 ID:TUtpJ4BB
untitled……author unknown
秋山 幸助;
 27歳男性。川芝鉄哉とは知り合い。
 ネコ耳。もとい、ネコの能力を宿す事ができる。

吉野 小春
 高校二年生。三つ編みの女の子。背が低い。八地月野と友達。
 衝撃波を発生させる能力、物を飛行させる能力。




untitled……author unknown
鑑定士の女性(名前不明);
 上記の通り。二十歳前後? きままな性格っぽい。鑑定士は公務員扱い。
 「能力」を鑑定する能力。

一貴;
 鑑定士の女性の護衛兼彼氏。仮面を着けている。
 護衛に役立つ能力を持っているようだが、詳細は不明。




untitled……author unknown
桂木 忍;
 男子高校生。影が薄い。鈴本青空とはクラスメート。八地月野や吉野小春らと同じ高校のようだ。
 夜に女性化する能力。「お姫様」のような外見になる。でも……ついてるらしい。

鈴本青空;
 女子高生。前時代的なカラーギャング共を束ねる、「ブラッディ・ベル」なる集団の頭。「姉御」と呼ばれる。
 昼間は寝てばかりいるかわりに、夜に身体能力が飛躍的に向上し、思考が好戦的になる。上記集団は、ストリートファイトの結果形成された。

720設定まとめ(仮):2010/03/21(日) 20:54:05 ID:TUtpJ4BB
untitled……by ◆W20/vpg05I
桜 香織;
 女子高生。つっこみタイプ。運動得意。ナイスバディ。
 皮膚に触れた物を瞬時に落とす能力。

加藤 陸;
 28才男性。能力を生かした諜報活動をしている。普段は男子高校生の姿。ドS、陰険。
 肉体年齢を10〜19才までに変化させる能力。光学情報を変化させて幻を作る能力。 

美柑(姓は不明);
 女子高生で桜香織のクラスメート。フチなしメガネをかけている。
 どんな料理でもおいしくする能力、料理をできたてにする能力。




『白夜に輝く堕天の月』……author unknown
白夜;
 ゴスロリファッションの女の子。中学生くらい。ハトメがきかない厨二分子その2。
 不快感を催すノイズを発生させる能力のようだが、詳細不明。
721創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 20:57:44 ID:TUtpJ4BB
↑ここまで、425kb
722創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 23:03:00 ID:9HhFLoP5
まとめ乙です

避難所また投下あったよ!
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1267446350/56-
723創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 01:07:32 ID:tGEgvEI1
>>722
お知らせどもです!毎回避難所に投下してくれている方、男と娘の旅の方、比留間氏の方投下乙です!
◆W20/vpg05Iさんのピーターパンを待ってるんだが、書きあげたらぜひとも投下してくれりゃ!
さて、450KBまで投下してみるか。マジすみません。

ガラスケースに陳列された商品は競うようにその姿を晒す。
その中に大きなガラス瓶があったが、ジャムでもいれる物なのだろうか。
俺たちはその横をすり抜けて歩いていく。
「どうかしたかにゃ?ヨシユキ」
「暑い」
俺はダウンジャケットを脱ぎ、脇に抱える。
リンドウは手を口に当てくすくすと笑っていた。
「凍らせる能力は寒さにも耐性を持つみたいね」
「そうみたいだな」
ふー、と掌で扇を作り、パタパタと扇ぐが全然涼しくならない。
まさか、先程のたこ焼きに薬が入っていようとは。
周りを見渡す。正午過ぎで太陽が照っているとはいえ、春先でこんな薄着になっているのは俺だけか。ちと恥ずい。
先程のオープンカフェで新しい薬を飲んで10分。テレポート能力は完全に消えた。
リンドウは俺の額に手を当てたりして、興味深く効果の具合を確かめていた。
「体温の変化は無し。だけど体感温度は変わっている。能力の一時的な複合によるショックや副作用は認められないわね」
今のところは、と付け足すリンドウ。何だ、今のところはって。
「ところでどうして今度は凍らせる能力なんだ?」
「どうしてって、戦闘用」
「戦闘……」
「尾行している二匹の蝿を叩き潰すのにゃ」
ルローが両手をパフンと叩き合わせる仕草をする。
恰幅(かっぷく)の良い髭面トルトルと、黒服のゼンの事か。
「なぁ、どうして奴らは俺らを追ってるんだ?いや、俺らというかリンドウをか」
かねてからの疑問を二人に聞く。
「さぁ。以前壊滅させた組織の復讐かしら?」
「この前のイモータル壊滅作戦は面白かったにゃ。いくら斬っても死にゃにゃい人間ばっかりだったから夜の能力に切り替わるまで相手を斬り続けてたにゃ。何人かには逃げられたけどにゃ」
「……なんとも頼もしい限りで」
やはり、そのような争いもするのか。
俺にはまだそのような覚悟はできない。
だとすれば今、こいつらから逃げ出してみたらどうだろう?
だが、何故かこいつらとは縁を切りたくない感情があった。
「それとコレを渡すにゃ。扱いに注意するにゃ」
「うぇ」
ルローが袖からひょいと取り出したそれは、黒光りする玩具のようでずっしりと重い、本物の拳銃だった。
急いで腰の裏のズボンに突っ込む。
「人ごみで取り出すなよ」
「にゃはは、注意するにゃヨシユキ。そろそろ来るにゃ」
724 ◆IulaH19/JY :2010/03/22(月) 01:10:03 ID:tGEgvEI1
何が、と聞こうとして背中に悪寒。ビリビリと痺れるほどの。
これはフェムやルローを前にしたときに感じた、本物の殺意。
ルローのフードがピクピク動く。金色の瞳がフードの陰からせわしなく左右を見ている。
リンドウも、ルローの死角を何気ない振りを装って見渡している。
俺も会話している振りを装って、集中して周囲を見渡す。
時間が遅くなったような感覚。
街の喧騒が、耳触りで酷く騒がしい。
「街中で仕掛けてくる確率は低かったはずににゃ。なりふり構ってられにゃくなったかにゃ?」
俺に向けられる殺意は一つ。背筋が凍りつくような暴力的な圧力。
オブジェの鐘が、午後一時を告げる音を鳴らした。
噴水が水を噴き上げる。
信号が変わり、歩行者と人が歩いていく。
ひどく時間がゆっくりと感じられた。
「奴らはこんな街中で荒事を起こす気なのか?」
「そんな連中の集まりよ。彼らも、私たちも」
水色の服を着た男の子が走って俺らの脇をすり抜ける。
ルローが俺の襟首を掴んだ。
「噴水にゃ!」
無理に引っ張られて地面へと強制的に伏せられる。
倒れる間際、噴水に奇妙な金色のオブジェが浮かんでいるのが見えた。
金色のリボルバー。それが撃鉄を起こし、薬莢を叩く。
銃弾が子供の肩を掠めて倒れさせた。
突然の光景に、俺の脳内が停止。そして、激烈に怒りが沸き起こってくる。
「あらら、水辺からの狙撃は無いと判断してくれんかったか」
「金色の銃なんて目立ちすぎにゃ。次からは銃も透明にしておくべきにゃ」
ルローが俺を街道の大きな植木鉢の陰に隠しながら時間稼ぎのために返答する。
トルトルが透明な液体の姿で噴水から出てくる。その姿はさながら水の魔人だった。
街中は、三秒ほど普段の光景を保ったが、歩行者が一人、また一人と気づき、悲鳴が連なる。
日常は崩壊した。俺は植木鉢に姿を隠しながら、子供を保護し建物の陰に隠れる。
リンドウに少年を診せると彼女は傷を確認するやいなやポーチから医療器具を取り出しアルコールで殺菌、血止めを行い、傷口を手早く縫合していく。
増血剤として能力で合成された錠剤が子供に飲まされる。
その時間、わずか三十秒。
その子供を父親らしきサラリーマンがリンドウに礼を言いながら奪い取るようにして逃げて行った。
「ほんとはな!能力で戦いたかったからな!わざと気づかれるように撃ったんよ!」
周囲の悲鳴に負けぬように大声で叫ぶトルトル。透明な人体模型の肥満型の姿。
「家畜が人間様に許可なく喋るにゃ、髭豚」
ルローも両手から銀の爪を取り出す。黒い霞も纏わりついて、本気モードだ。
トルトルとルローが互いに走り出す。俺は建物の陰から二人の様子を見ていた。
ルローが投げた銀のナイフは水を突き抜けてトルトルの背中から飛び出す。見た目的にはダメージを受けていないみたいだ。
トルトルは体中の水を腕に集中させて振り下ろす。それは水量に任せた大瀑布の攻撃。ルローは見切って回避した。
俺の傍で同じように観察していたリンドウが俺に情報を与える。
「彼は傭兵事務所“イモータル”所長、トルトルね。仲間の仇討にでも来たのかしら?」
「奴の能力は?」
「水になる能力。殺し方は不死身を利用して接近したあとに窒息させること。あなたのすることはルローの合図で飛び出すこと。彼のリボルバーに注意して」
「了解」
そして注意深く二人を観察する。
一見不利だと思われるルローは、それでも不敵に笑っていた。
ルローの黒い霞による能力の一閃。トルトルの透明な液体に朱が混じる。
「ぐわあっ!水を斬りやがった!?」
「ルロー様に不可能は無いのにゃ。ヨシユキ!」
725 ◆IulaH19/JY :2010/03/22(月) 01:11:16 ID:tGEgvEI1
合図。俺は飛び出す。
トルトルが俺にリボルバーの先端を向けてくるが、銃身をルローが切り裂いた。
「うおおおおおおおおおおっ!」
恐怖に負けぬよう叫びながら、両手に能力を最大限に発動。
氷の冷気が飛び出す。俺の手が凍りついたが、冷たさは全く感じない。
冷気が水男に直撃。トルトルの腹部が凍りつく。
だが、能力が急激に減少していった。
「どうして冷気が十分に出ない!」
「なんや知らんけど助かった!?」
青ざめる俺とは対照的に、好機を見出したトルトルの右腕の水量が増大。
一気に加速して俺に殴りかかってくる。
だが、俺には全てがスローモーションに見えた。
極限状態で剣術の極意にでも触れたのかもしれない。それに感謝しつつ、わざとトルトルに向かっていた自らの脚を絡ませて、盛大にこける。
右の頬を地面に強く強打。血の味が口の中に広がった。だが、それが幸いした。
俺の頭上を過ぎていった水の腕は、コンクリートの建物の壁に亀裂を入れていた。
避けなければ、俺の体が四散していただろう。
だが、脅威は終わらない。トルトルの左腕が急激に増大。
脚が絡まった体勢で倒れたため、すぐには起きられない。
ルローが能力で左腕に斬りかかるが、トルトルが痛みを無視して水量を増大させていく。
その腕に何処からともなく飛翔してきた大量の白い粉がブチ当たる。
大量の白い粉はトルトルの水の体を固め始めていた。
みると、建物の陰に隠れていたリンドウが両手から消火器のように粉を噴出させていた。
おそらく乾燥剤か凝固剤。それを理解したのかルローの黒い爪が斜めに動く。
ルローの攻撃が左腕を捉え、斬りつけた左腕がいとも容易く切断された。
トルトルの白い粉でドロドロになった口が動くが、言葉は出なかった。
残忍な笑みがルローの口の端に浮かぶ。
あっさりとトルトルの首をルローが刎ねた。両断された首と胴は再び接合することは無かった。
俺は立ち上がり、しばらく待っても動かないことを確認して、盛大に深呼吸をした。ふー。
「あ、危なかったー」
「どうしたにゃ、ヨシユキ。さっきは全然役に立って無かったにゃ」
「能力が低下してるわね。どうしてこんな症状が」
確かに、凍らせる能力が低下したせいで、気温の上がりきらない春先の寒さが堪える。
道端に落としていたダウンを拾い上げ、再び着る。
「リンドウもリンドウにゃ。途中で出てきちゃ駄目にゃ」
「仕方ないじゃない。私の後任が不甲斐ないばっかりに」
不甲斐ないと言われた俺は両手を広げておくしかない。ん、後任だと?
「一応、首を持って帰るかにゃ。まだ生きてるだろうから途中で復活されても困るにゃ」
そう言って一番近かったリンドウがトルトルの白く固まった頭部を拾い上げる。
だが、俺はトルトルの白く固まった体が動くのが見えた。
俺が警告を発しようと思ったと同時に、固まった体から腕を突き出し、男の拳がリンドウの腹部を直撃。
苦痛で意識を失ったリンドウを腕に捉えた。
「つーかまえたー」
トルトルの歪んだ笑みが、そこにはあった。
726支援いるかな?:2010/03/22(月) 01:11:40 ID:JN+AQtf7
727 ◆IulaH19/JY :2010/03/22(月) 01:13:49 ID:tGEgvEI1
トルトルが完全に白い体を脱ぎすてる。
先程口が動いているように見えたのは、頭を胴体に引っ込めていたからだろう。
詐術に騙された。
トルトルはよりにもよって、俺が凍らせた体の一部を剣のようにリンドウの首筋に付けていた。
トルトルの暴発を防ぐため、ルローが俺を引っ張って大きな柱の陰まで退避する。
「別に君らに興味は無いんや。そっちが見逃してくれたらうちはこのまま去るけどどうする?」
「リンドウをどうする気にゃ」
陰に隠れながらルローが聞く。対策を考えているようだった。
「リンドウ君はうちらの仲間にする。もともと、優れた能力者を集めるために事務所を経営しよったんやけど、リンドウ君の能力者の死体から能力を奪う技術があれば人件費も安く抑えられると思ってな」
「能力者が道具かにゃ」
「君らの組織だって同じやろ。ヨシユキ君。あんまり彼らを信用せんほうがええよ」
トルトルが俺の動揺を誘うが、俺は揺れない。
「そうかもしれない。だが、お前よりは嘘を付きそうに無さそうだな」
「ほう、どうしてや?」
「嘘を付くのは弱者だけだからだ」
「暗にうちを弱者として罵ってるわけか。ま、ええわ。それでどうするん?」
「ちょっと待つにゃ」
ルローが俺に向かって小さな声で問う。
「……何か隠し事してないかにゃ?」
あまりの意外な発言に俺は動揺した。
「『運命レポート』にはこんな展開は無いにゃ。冷気の能力の低下といい、リンドウの捕縛といい、何かのイレギュラーが発生している可能性があるにゃ」
「いや、何もない……待てよ。先程から戦闘に入ったときだけ、時間が遅く流れるように感じるんだが……」
「にゃるほど」
ルローがポリポリと頭を掻く。
「お前の本来の能力が目覚めかけているにゃ。能力の早期発現も、何らかのイレギュラーが発生した結果のせいにゃんだがにゃ。ま、今は目の前の出来事に集中するにゃ」
そうだ。リンドウが危ない。
「奴らはリンドウを拷問にかけて無理やり協力させる気にゃ。まぁ、奴ら程度に従う女じゃにゃいから毒薬で自害するだろうけどにゃ」
そんな事は許せないし、許さない。俺は自然と拳を握りしめていた。
「『運命レポート』に書かれていない以上、取る選択肢は二つにゃ。奪還か撤退、どちらを選ぶにゃ?」
俺は腕に弱まった冷気を集中させる。
「決まっているだろ」
「にゃはは。じゃあ行くにゃ」
唇の端から牙を見せて、ルローが笑う。
俺とルローは柱の左右から飛びだした。
728支援多分大丈夫b:2010/03/22(月) 01:14:32 ID:tGEgvEI1
「やっぱり来たか!」
トルトルの腹腔が増大。口から水飛沫を噴き出す。
それはトルトルの体の脂肪だった。それが地面に穴を空けるとはどんなエクザをしてやがる。
だが、命の危険を感じたときだけ、俺は時間がゆっくりと感じる。脂肪の水弾をギリギリで回避した。
ルローはフェムの拳ですら見切っていただけあって、この程度は余裕でかわしていた。
トルトルがリンドウの首筋につけていた氷の剣を外す。
そしてリンドウを高々と放り投げる。
戦闘力の低い俺が、地面へと落ちていくリンドウを受けとめるためそちらに走る。
俺の背後から迫る氷の刃。
俺は前転しながらそれを躱す。
放り投げられたリンドウはルローが受けとめた。
「よくかわしたなぁ!ヨシユキ君!」
「あたりまえだ、そんな見え見えな手!」
本当はトルトルの思考が分かったのだ。俺の方が奴より弱いから、詐術には強い。
「だが、君じゃうちには勝てんよ」
「くっ」
前転した回転を利用して、立ち上がるが、目の前には氷の刃。
ルローはリンドウを受けとめたせいで動けない。だったら生き残るために俺が戦うしかない。
俺はトルトルの胸に突っ込んで、能力を全力で発動。腕と肩を凍らせる。
「うおっ!?」
回転の軸を凍らせてしまえば、氷の刃は動かない。
俺の本来の能力とやらは、戦闘時に高速の思考が出来て色々と役に立つ。
だが、凍らせる能力がほとんど消えてしまった事に気付いた。
封じ込めれたのは右肩と右腕だけ。
俺を掴もうと左腕が伸びる。
今の無力な俺を掴まえてしまえば、無理やり鼻腔やら口から水を飲ませることで窒息死させることが出来る。
だが、その腕は空を掴んだ。
「なっ……消えやがった!?」
トルトルが半身を凍らせた体勢のまま、左右を見渡す。
「おい、おっさん」
驚愕している髭面に背後から呼び掛ける。
「こいつ!いつの間に回り込んだ!」
……その指摘は間違いだ。
俺の本来の能力とは、おそらく俺の時間を早めるものなのだろう。
トルトルがゆっくりと俺の残像に手を伸ばしている間、俺はショーウィンドウに飾られていたあるものを盗んできてからトルトルの背後を取った。
あるものとは、握りこぶし大のジャムの瓶。
それをトルトルの脈動する胸の一点に突き刺し、蓋を閉める。
トルトルが反応するまえに腕を高速で取り出すと、ジャムの瓶の中には透明な心臓が入っていた。
729 ◆IulaH19/JY :2010/03/22(月) 01:16:50 ID:tGEgvEI1
それをキラキラと目を輝かせているルローに投げる。
人体蒐集家として透明な心臓に興味を持ったのだろう。
「……はっ、心臓抜かれたからと言って、死にはしないよ」
焦るトルトルが体の構造を変化させる。
代用で人工心臓を創り上げていた。
「そうだな。昼の間は死にはしないだろう」
俺は腕時計を確認。午後二時を指していた。
「だが、夜の能力に切り替わったとき、心臓が無ければどうなるかな?」
「……こんのぉ、糞餓鬼!」
水の拳を俺は能力で回避する。何もかもが遅い。
こいつを殺す気は無かったが、リンドウを傷つけたのなら話は別だ。
ドロドロとした黒い感情が、俺に歪んだ笑みを作らせた。
「ルローは追わなくていいんですか?」
見るとルローは心臓を掲げて街路を颯爽と走って行った。
トルトルは盗まれていく自分の心臓を見、余裕の表情の俺を見、意識を取り戻したリンドウを順番に見た。
「くそおおおおおおおおっ!」
トルトルは沸騰した形相でルローを追いかけていった。透明な顔で感情が分かりにくい。
「待てや糞猫!ぶっ殺しちゃる!」
「にゃはは!仮に殺されたとしても返さないにゃ!」
ルローの楽しそうな声と、トルトルの怒りの声がだんだんと小さくなっていくのを確認して、俺は膝を付いた。
余裕そうな演技をしていてよかった。もう俺の意識は限界だった。
初めて体験した、俺の常識外れの能力。だが、過剰な情報量が俺の脳に過負荷を掛けていたらしい。
駆けよってくるリンドウの無事な姿を確認したとたん、俺の意識がブラックアウトした。

ここまでです。容量とってすみませんでした。
730創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 01:24:55 ID:cdsGSLW8
加速能力か、激熱だぜ!
731創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 01:31:12 ID:JN+AQtf7
投下乙
ヨシユキTUEEEEEEEEEそしてKOEEEEEEEEEEEEEEE
732創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 02:45:47 ID:izBSzgxf
時間能力は厨二に必須だよね!
投下乙です 、ルロー強すぎワロス

しかし…その…うん…
俺の考えてたキャラがトルトルと同じ能力orz
なんかむしょーに言い表せない気分
733 ◆IulaH19/JY :2010/03/22(月) 02:55:38 ID:tGEgvEI1
>>732
マジですか。トルトルなんかに水能力持たせて申し訳ない…
比留間氏によれば能力の重複はあるみたいですよ
別展開の物語も気になるんでよければその物語も投下してくれると嬉しいです!
734創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 03:08:14 ID:GCw9Ge+E
なんという熱さ!なんという能力バトル!!一気に読んじゃったよ。
ヨシユキ強いルロー強いトルトル怖い!
液体化能力がこれほど攻撃的な強さ見せるとは驚いた。
魅せるなぁ本当に…
735 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/22(月) 04:10:32 ID:k8sGLCa1
亀レスだが

>>658
少し分かり辛かった様で申し訳無い。
と言う訳で次のレスからト書き方式の小ネタで分かりやすく?説明します。

>>659
あわわわわわ、気を使わせてしまったようで本気で申し訳無い(滝汗
もうパラレル設定でも良いかなと思ってた所で、まさか変えても良いと言って頂けるとは、本当にすみません。

次からはくだらんミスしないように心がけねば……。

それと、設定まとめ(仮)をした人達
超乙乙です
736 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/22(月) 04:12:07 ID:k8sGLCa1
とあるマンション。遠藤 直輝宅にて……

クロス「そう言う訳で、これから私のライトエグザの詳しい説明をしようと思うのだが」
直輝「いや、ちょっと…いきなりそう言う訳って何さ?」
クロス「ふむ、何がそう言う訳かと言うと、あのへぼな作者が私のライトエグザを分かりやすく解説しなかった所為d」
直輝「いや、俺が悪かった! だからメタな話は止めてさっさと説明始めて!」
クロス「む、そうか? ならば早速説明に入るとしようか 先ずは……」

・「地面」「空中」の定義についての考察

クロス「1番最初は地面の定義に付いての説明をしよう」
直輝「そう言えば確かに、最初に君の能力の説明聞いた時、地面ってどの地面を指すんだって疑問に思ったな」
クロス「うむ、確かにナオキの言うとおり、地面と言っても色々ある。
    舗装されていない土剥き出しの地面、アスファルトに覆われた地面、砂浜などの砂に覆われた地面……
    この通り、地面と一言で言ってもこの地球上には様々な状態の地面が存在しているな」
直輝「それで、クロスの言う『地面』ってのはどの地面を指すんだ?」
クロス「簡潔に言ってしまえば、地球のマントル部分そのもの、と言うべきだな」
直輝「地球のマントル部分?」
クロス「更に簡潔にすれば、山や海底を含めた地表全てが、私の言う『地面』に該当する訳だ」
直輝「……と言う事は、『地面に接している物体』は家やビルとかの建物や、植物なども含まれるって事?」
クロス「そう言う事だ。だから例え足が地面に付いていなくとも、立ち木や建物の壁、更には天井から下がったロープ等でも、
    その一部が身体の何処かへ触れてさえいれば、私の能力の波動を浴びても一切影響を受けないと言う事になる」
直輝「って事は、君の言う『空中』ってのは、地面や建物等に何処も一切触れていない状態って訳か」
クロス「ああ、そう言う事だ」

ガタガタッ!

ファング「へへっ、それは良い事聞いたぜ!」
直輝「うわっ!? 何だよあんた、いきなり押入れから出てくるなよ! というか、何時から押入れに入ってたんだ!?」
ファング「小ネタだから深い事は気にするんじゃねえぜ!」
直輝「……小ネタ云々抜きにひとんちの押入れから現れるのは如何かと……?
   って良く見たら中の布団が抜け毛だらけになってるし……ひょっとしてあんた、出てくるまで布団で寝てた?」
ファング「ね、寝てねーよ! この頭のクセもただのお洒落だぜ?!」
直輝「……(完全に寝癖じゃねーか!)」
クロス「どうやら、ケダモノが現れるのは時と場所を選ばない様だな」
ファング「へっへっへ、そんな大きな口を叩いてられるのも今の内だ、スカーフェイス!」
クロス「ほう? 大した自信だな」
ファング「さっきの話を聞いててな、ならばこうしちまえばテメェの能力は無意味だって事に俺様は気付いたんだ!」
直輝「ああっ! 身体に巻きつけた長いロープの端を床に垂らしてる!?」
クロス「なるほど。そのロープの端が建物の床や地面などに付いてる限り、私の能力が効かないと踏んだ訳か」
ファング「その通りだ! もうこれでテメェの昼の能力は怖くないぜ!」
クロス「ケダモノにしては中々考えたな、ほんの少しだけ見直したよ、だが……」
ファング「だがなんだっ? ぐちゃぐちゃ言ってないで覚悟しやがr――(ビターン!!)ぐへっ!?」
クロス「……自分でそのロープを踏んづけて転んだ挙句、自滅している様では能力も何もあったものではないのだがな」
直輝「……うわぁ、すっげーマヌケだ……」
737 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/22(月) 04:14:06 ID:k8sGLCa1
・物体の定義に付いての考察

クロス「さて、勝手に転んで気絶したファングの奴をオカマバーへ預けた所で。次は物体の定義についての説明をしよう」
直輝「いや、なんかさり気に酷い事してるような……まあ、小ネタだしその上敵だから別に良いか」
クロス「ファングがこれから如何なるかはさて置き。この世には物体の三態と言う言葉があるのを知っているか? ナオキ」
直輝「あー、確か中学生の頃に理科の授業で聞いたような……」
クロス「物体の三態と言うのは、この世の全ての物質、物体がもつそれぞれ、固体、液体、気体の三つの形態を指す。
    例えば常温では液体である水で言うと、冷やして凍らせた氷が固体であり、逆に熱して蒸発させた水蒸気が気体となる。
    この変化を物体の三態変化と言うが、ここから先は別の話となるので置いておくとしよう」
直輝「……それで、その物体の三態がクロスの能力と如何言う関係があるんだ?」
クロス「関係は大有りだ、ナオキ。
    と言うのも、私の能力が効果を及ぼす『物体』と言うのは、この物体の三態の内、液体と固体が該当するのだ」
直輝「液体と固体……って事は、気体は効果が無いって事?」
クロス「そうだ」
直輝「……気体だけ効果が無いって、何か中途半端だな」
クロス「だが、もし気体にまで効果があった場合、私の能力は途端に意味を成さなくなってしまう。その理由が分かるか?」
直輝「理由って……あ、そうか! 空気も気体だ!」
クロス「そう言う事だ。もし周囲の空気にまで私の能力の効果があった場合、
    その空気自体が既に地面に触れてしまっているから、効果を受けたその途端に解除されてしまう事だろう」
直輝「確かにそりゃ意味ねぇな……」
クロス「まあ、例外としては、飽和蒸気のような非常に密度が濃い気体に対してはだけは効果がある」
直輝「って事は、空に浮かんでいる雲も遅く出来るのか? あれも言ってしまえば密度の濃い気体になる訳だし」
クロス「まあ、空の上まで波動が届けばの話だが、極論を言ってしまえばそうだな」
直輝「なら、台風とかの動きを遅くする事も出来るんだよな!」
クロス「……ナオキ、幾ら私でもそれは無理があるぞ」

・ある科学者からの疑問

クロス「ここまで説明した所で、『機関』へ届けられた私宛の手紙に書かれていた質問に答えるとしよう」

※疑問その一、水中での能力の使用

クロス「先程も言った通り、水も物体に該当する為、実質上は不可能だ。
    私が水中で能力の波動を放とうとしても、周りの水に阻まれて放つ事は出来ないだろう」
直輝「って事は、水中じゃあかなり不利じゃないか!?」
クロス「大丈夫だ。もし水中で戦う事になった場合に備えた対策も色々と講じてある」
直輝「え? 如何言う対策なんだ?」
クロス「それを言ったら面白く無くなるだろう。だから見てのお楽しみだ」
直輝「(本当は何も考えてないだけじゃ……?)」

※疑問そのニ、空中における能力の使用

クロス「……ここが1番あのヘボ作者が失念していた部分だな」
直輝「いや、だからメタな話は止めようなー」
クロス「いいや、ここは言わせてもらう。あのヘボ作者は空中で能力の波動を放つ場合において、
    波動を放つ私自身が、1番最初に能力の影響を受ける可能性がある事を全く考えていなかったのだ。
    何処まで抜けているのだ、あのヘボ作者は!」
直輝「……で、自分の能力に巻き込まれる可能性は?」←(無理やり話題を変えた
クロス「一応、そうなる可能性があると考えて、如何なるか過去に一度試してみた事があった
    やり方は簡単だ、高く放り投げたボールへ波動を当てて、ゆっくりと落ちていくそのボールへジャンプして触れるだけだ」
直輝「それで、結果は?」
クロス「私がジャンプしてボールへ触れた途端、ボールは能力が解除されて元の速度で地面に落下した。
    どうやら、私が触れた場合は、私がいる場所に関わらず能力が解除されてしまうらしい」
直輝「あー、なるほど……となると、クロス自身が能力の影響を受ける可能性は無い、って事か」
クロス「そうなるな……だが、これはあのヘボ作者が今更になって書き加えた可能性も」
直輝「だからメタな話は駄目ー!!」
738 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/22(月) 04:15:45 ID:k8sGLCa1
・追記:能力の代償?

クロス「所でナオキ、能力におけるリバウンドと言う言葉があるのは知っているか?」
直輝「リバウンド?……あれだろ? 無理なダイエットのあとに食事を多く取ると余計に太るって奴」
クロス「それは別の意味でのリバウンドだ。私の言うリバウンドは、能力の使い過ぎによる物の事だ」
直輝「能力の使い過ぎ?」
クロス「この世界において、人間がどのような事をするにも、それなりの代価、代償が必要だ。
    無論、能力を使うにしても、人間は無意識の内にそれなりの代償を支払っている」
直輝「え? でも、他の人を見る限り、とてもそうは見えないけど……?」
クロス「ところがどっこいだ、ナオキ。意識性の能力を行使する能力者において、
    能力の使い過ぎで代償が払いきれなくなると、その代償を代わりの物で補おうと、能力者へある現象が起きる」
直輝「それがリバウンドって奴?」
クロス「そうだ。能力者によってそのリバウンドの種類は様々でな、
    その中でも良くあるのが急激な空腹感や強い眠気、そして疲労感の三つが挙げられる」
直輝「……思ったより深刻じゃないな?」
クロス「ナオキ、リバウンドの種類は様々と言っただろう。中には能力者が死に至るリバウンドだって存在するのだ」
直輝「……マジ?」
クロス「ああ、マジだ。過去には身体が塩の塊になってしまったという例も存在している。
    こう言った死に至る強烈なリバウンドは、特に強力な能力者において発生しやすいと言われている。
    だからナオキ、お前も気を付けた方が良いぞ。今は発現していないがお前も強力な能力を持っているのだからな」
直輝「わ、分かった、能力が発現しても軽軽しく使わない事にする」
クロス「因みに、私の場合は能力を使いすぎるとその場で昏倒してしまう、状況に関わらずにな」
直輝「こえーな、リバウンド……ってちょっと待って、無意識性の場合は如何なんだ?」
クロス「良い質問だ、ナオキ。無意識性の場合、普通より空腹になるのが早い、睡眠時間が長い等の
    何らかの恒常的なデメリットと言う形で代償を支払っているそうだ」
直輝「と言う事は、無意識性はリバウンドは無いって事か……?」
クロス「いいや、無意識性においてでも、食事を抜いたり睡眠を取らなかったりなどする事でリバウンドは発生するんだ。
     ……と言っても、意識性のそれと比べ、無意識性のリバウンドは取るに足らない物が多いのだがな」
直輝「……例えば?」
クロス「そうだな、例えば肌が青色になる」
直輝「ぶっ!w」
クロス「声がヘリウム吸った様に甲高くなる」
直輝「ぶひょ!www」
クロス「更には大便が水玉模様になる!」
直輝「ぶひらば!wwwww」
クロス「とまあ、私の言ったのは飽くまで一例だが、無意識性にもこう言ったリバウンドが発生する」
直輝「な、何だか本当にしょうもないけど、有る意味強烈かつ恐いリバウンドだな……」
クロス「そうだな、特に最後のは命に関わらずとも精神的にダメージが大きい事は間違いないだろう」
直輝「ああ。だから皆、リバウンドが恐かったら能力は使いすぎるなよー」
クロス「無意識性の能力者は充分な食事と睡眠を心がける事だ」
739 ◆/zsiCmwdl. :2010/03/22(月) 04:16:43 ID:k8sGLCa1
以上です、ちょっと個人的な考察も書いてみた。

こんな夜遅くまで何やってるんだろうな―、俺。
740創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 04:24:27 ID:tGEgvEI1
俺もこんな夜更けまで何やってるんだろと思いつつ、書けるときに書かないと書けないという真理を先程発見した。
学会に提出する所存でゴワス。

ファング可愛いwそしてカワイソスw
リバウンドか。これまた新しい設定。
充分な食事と睡眠。ごもっともです。
741『月下の魔剣〜邂逅〜』:2010/03/22(月) 07:20:28 ID:GCw9Ge+E
書けるときに書かないと書けない真理に超同意。今は書けるときだったらしく
割とすぐ書けた件。今451KBか。容量大丈夫か?大丈夫だよね?
>>704-707の続き投下します。


「陽太…余計なことしてる場合じゃ…」
「余計なんかじゃないさ」

そう言って、陽太は大根を左手に持ち替える。

「俺の奥義を見せてやる」
「いや奥義って…」

空いた右手で、天空をビシッと指差した。

「堕ちろ……ブラッディレイン!!」

つられて見上げる僕とベン。その瞬間、

「えっ!!!?」
「なっ!!!?」

ベンの足元に、肩に、顔面に。天空から降り注ぐ、真っ赤な……完熟トマト!?

「なっ…なンだこりゃあ!!?」

顔面に直撃したトマトは弾けて広がり、ベンの視界を塞ぐ。
ベンがうろたえる隙にすでに陽太は大根の間合いまで接近していた。
渾身の力を込めた大根で狙うは、無防備な足元。

「はああぁっ!!」

 バキィッ!

ベンの右足の脛に、大根が直撃した。盛大な音とともに一撃で折れる大根。

「なっ!?」

驚きの声を上げたのは陽太だった。右足一本をピンポイントで狙ったにも関わらず、折れる大根。
そして直撃を受けたはずの右足はピクリとも動かない。その右足が、スイと上がり後ろに引かれた。

「やるじゃねェか…よっ!!」

 ガコン!

放たれた回し蹴りは陽太の胴体に直撃し、変に硬い音を立てる。空き缶のように軽く吹き飛ばされる陽太。しかし

「くァッ!?」

次に苦悶の声を上げたのはベンだった。
吹き飛ばされるもなんとか足から着地した陽太の腕には、

「サイレント…シールド!」

大きく立派なカニが構えられていた。
742『月下の魔剣〜邂逅〜』:2010/03/22(月) 07:21:20 ID:GCw9Ge+E


「おいおいそいつァ…カニか。可能性あるたァ聞いてたが…やっぱ魚介類も出せンだな」
「出せるさ。俺の武器は無限だ」

とても信じがたい、息をつく暇もない攻防だった。僕の目の前で、それも陽太が、こんな戦いをするなんて…

「しっかし驚いたぜ、こいつァ聞いてなかった。まさか離れた空中に食材出すたァな」
「神に叛く能力だぜ? その程度はできて当然だ。次からは頭上にも注意するこったな」

食材を空中に出した。確かにそう見えたけど…そんなことができたの…?
いや、そんな離れ業ができるならもっと強力な攻撃ができるはず。不意打ちで大きな食材を出せばいいはずだ。
それに陽太の能力は発動ポーズもとっていない。指差しだけて空中に出すなんてあり得るの…?

ふと、目の前の物体が目に入る。
最初に陽太のいた場所に、一つだけ落ちていたそれは、下側が少し潰れたトマト。
さきほど落ちてきたトマトは全て原型を留めていない。なぜこんなところに一つだけ残って…

――こっからが本番だ――おっと、その前に――
――出でよ!――魔剣!――

「あっ!!?」

脳裏に電撃が走る。

そうだ、発動ポーズはとっていた。相手に名乗れと言う直前。あの時、何も出さずに手を下げたように見えた。
でも本当は遅れて出していたんだ。ベンと話しながら、何食わぬ顔でトマトを足元に用意していた!
そして大根を出す無駄な動き。あの派手な動きに乗じて足元のトマトを拾い、上空に投げたんだ!
それを全て、敵に気付かれずにやってのけた!!

気付けば陽太がこっちを見ていた。その目は、黙っとけ、と静かに語っていた。

恐るべし陽太、なんて抜け目のないことを…

思えばカニのときもそうだ。大根が折れたことに驚きながらも、すでに出す準備をしていた。
バトルセンスというのかな。もしかしたら陽太は、僕が思った以上にすごい奴なのかもしれない。
743『月下の魔剣〜邂逅〜』:2010/03/22(月) 07:22:21 ID:GCw9Ge+E


「こいつは最強の盾だ。こいつが手元にある限りてめぇの攻撃は効かねえぜ。絶対に手放すことはねぇ」
「ただのカニだろ。ンなもんすぐ砕ける」
「こいつで守りながら武器を降らせて決める」
「ンな消極的なやり方で俺を倒せると思ってんのか」
「やってみなきゃわからんさ!」

陽太は再び、ビシッと天空を指差す。
ベンの意識が一瞬上を向いたその瞬間、陽太は手にしたカニを…投げた!

「うォッ!!?」

不意を突かれて反応が遅れるも、腹部に迫るカニを弾き落とす。
投げると同時に駆けだした陽太の目の前に、一瞬晒される無防備な頭部。
そしてすでに用意されている、前よりも一回り巨大な桜島大根。

「レイディッシュ・ロゼオオォッ!!!!」

 バキャアン!!

十分な速度でもって叩きつける。上げかけた顔面に直撃。派手な音を立てて桜島大根は砕け散る。
立ったまま完全に停止し、動かないベン。

「やったの!?」
「ばっ馬鹿そういうこと言うとっ」

突如ベンの腕が動き、陽太の襟首を掴んだ。そのまま片手で軽々と持ち上げる。
陽太はバタバタと暴れるが、ベンの腕は重機の如く揺らがない。

「う、嘘っ!?」

桜島大根が直撃したはずのベンの顔には、傷ひとつ、跡ひとつとして残ってはいなかった。

「まんまと騙されたぜ、盾を投げるたァな。だが残念、効かねェなァ!」
「ほら見ろっ、やってないフラグが立っちまうんだっ!」
「ンなこと言ってる余裕あんのかァ?」
「余裕なんか…ねえよっ!!」

つりあげられたまま、無理矢理伸ばした右手をベンの顔面に向ける。

「ゼロ距離アクアニードル!!」

そして出現する大量のウニ。ほぼ触れるような距離で放たれたそれは、ベンの顔面にこれでもかと降り注ぐ。
あれならいかにタフだろうと…

「なん…だと…」

ウニの嵐の中でもベンは動かず、嵐が晴れた先でもまるで変わらず、不敵に口元を歪めていた。
744『月下の魔剣〜邂逅〜』:2010/03/22(月) 07:23:20 ID:GCw9Ge+E

「なンだこいつァ、栗かァ?」
「ウニだよ馬鹿!」
「ハッ! まァいいさ。栗だろうとウニだろうと…」

ベンは陽太をより高く持ち上げ、後ろに引き…

「俺にゃあ効かねェンだよっ!!」
「ガハッ!」

ブンと放り投げた。
陽太は地面に強く腰と背中を打ちつけ、下敷きになったトマトがべシャンと潰れる。

「陽太っ!」

僕は慌てて駆け寄る。幸い大事はないようで、陽太はすぐにむくりと起き上がった。

「どうだィ、理解しただろう? おめェの能力じゃ俺にゃあ敵わねェのさ」

怪我はなくとも、精神的な痛みは大きいだろう。悔しさにギリリと陽太の顔が歪む。

「洞察力のあるおめェのことだ、俺の能力はもう理解してンだろ?」
「…硬化…」
「その通り、硬化だ。俺はいつでも全身漏れなく鋼鉄以上の強度になれる。
 目ん玉だろうと口ん中だろうとな。言っとくが制限なんてねェぜ? 
 硬化した俺は刃物で斬られようと銃で撃たれようと、ダンプに轢かれようと無傷なンだよ。
 当然、食材で殴ったところで効くわけがねェのさ」

そんな…そんな能力、陽太が敵うはずがない。どうしようもないじゃないか。

「実際おめェはすげェよ。しょぼい能力だってのにこの短時間に何度も俺をビビらせた。
 弱ェ能力を工夫とテクニックで補う。その若さで大したモンだ。
 だがな、いくら手ェ尽くそうとも越えられねェ壁ってのは存在する」
「それがてめぇだってのか…!」
「誰にだって越えられねえ宿命ってのはあるのさ」
「宿命…か…」

僕は意を決して立ち上がる。絶対に嫌だ。嫌だ…けれど…!
これ以上陽太が傷つくのは…見ていられない…!

「…僕、行きまっ……!」

突然伸びてきた陽太の手が僕の口を塞いだ。

「黙ってろ」
「………ぷはっ! 何だよっ! だってあんな能力っ…絶対に…敵わな…」

目が熱くなって…最後まで言うことができなかった。
745『月下の魔剣〜邂逅〜』:2010/03/22(月) 07:24:07 ID:GCw9Ge+E

「この男女っ!!」

コツン。

おでこを小突かれた。痛い。

「何すんだよっ!」
「似合わねえ顔すんなこのヤロウ! 気持ち悪いわ! 怒ってたほうがよっぽどマシだ!」
「何だよ気持ち悪いって!」
「まだ手はあんだよ。使える手段全部出してからでも遅くねえだろ」
「手段って」
「まあ黙って見てな。俺を信じろ」

いつの間にか立ち直った陽太が、ベンをキッと睨みつける。

「勝てねえのは宿命と言ったな、ベン!」
「あァ、その通りだ」
「そうか。だがな!!」

バシンと大きな音を立てて、陽太は両手をつき合わせる。
戻ってきた。どんなに絶望的な状況でも、僕に安心感を与えてくれる、陽太の力強い背中が。

「俺の名は岬月下! 神に、天の宿命に叛く男! 今日お前に負けることが、神の定めた宿命ならば…
 叛いてやるさ! その宿命!!」


<続く>

>>682の台詞が格好いいんで早速アレンジして使っちゃったぜw
これそげぶみたいな決め台詞にしたい…けど…使いどころ難しいかも。うん、難しいな。
746創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 07:30:47 ID:GCw9Ge+E
>>739
面白いわぁこいつらw
よーく考えてるねぇ能力の設定。すごいバトルが期待できそうだ。
747 ◆W20/vpg05I :2010/03/22(月) 09:55:20 ID:3/Fi90Pf
なんか朝起きたら大量すぎるw。感想は後でしますね。
こっちも投下します。>>593-595の続きです。
748 ◆W20/vpg05I :2010/03/22(月) 09:57:04 ID:3/Fi90Pf


『香織ちゃんにつけた発信機の反応が消失したわ』

通信機から伝わる意味に俺は一人ほくそ笑む。

「OK。予定通りだな。作戦通りにいくぞ」
『……本当に大丈夫なの? 彼女……』

どうやら通信相手は囮にした彼女を心配しているらしい。
だが俺は鼻で笑ってそれを無視。いまさら中途半端に心配したところでどうなるわけでもない。

「それじゃ、行くか、ゴーストの今のアジトにな」
『……気をつけてね。あんたに死なれると給料なくなるから』
「心配すんな。アジトに罠なんてないさ。
 あいつがいるとアジトの位置すら判別できないから、罠を設置する意味もないしな」
『……そう』
「一旦通信を切る」
『わかった。なにかあればすぐにコールして。後、突入は夜になってからよ。
 あたいがフォローできるのは夜だけだからね』
「分っている」
『そう、じゃ、任せたわよ』

俺は通信を切ると地図を開く。
「さて、今度はうまく行くか……」

今回の目的をもう位置を頭の中で確認する。

今回の仕事の目的はゴーストが運んでいる、ドグマを代表する各種組織の情報の奪取。
ゴーストの本来の仕事はフリーの運び屋であり、今も様々な組織の物を運んでいる。

奴の昼の能力は『薄っぺらな世界』文字通り奴を中心とした半径100mにもう一つの世界を作り、
任意の人や物を取り込む能力。その世界に取り込まれた人や物は元の世界から文字通り消える。
夜になれば能力が消え、無事に戻ってくる。ただ、取り込む為の能力
そして、夜の能力は『ステルス』。あらゆる探査から任意の人や物を見つからなくする能力を持っている。

その能力を使うことで中々尻尾を掴むことができない相手だが、今回はなんとかなりそうだった。

今回の隙をつけることができた理由は奴のポリシーによるもの。
奴いわく『僕はチンピラだから』とのことだ。
奴は、どんな重要な用事があっても目先の金を諦めることはしない。
裸王たちに嘘の情報を掴ませ、あいつが張っている場所に誘導、捕まえさせることで
確実にアジトに戻らない状態を作り出す。そうすれば、重要書類をステルスで隠される心配もなくなる。

ここまではうまく行っている。後は奴が運んでいる情報を入手するだけだった。

「さて、行くか……。裸王の方は……ま、大丈夫だろう」

さて、集中しないとな。ここまでやってヘマしたら意味がない。



* * *
749 ◆W20/vpg05I :2010/03/22(月) 09:59:19 ID:3/Fi90Pf



「……こんなところか」

ざっとゴーストのアジトを漁る。
所詮1Rの狭い部屋だ。5分もかからず探索は終了する。
それなりに収集終了。ゴーストといえど外部の運び屋なので、そう重要な情報はないだろうが、
機関に売るにはちょうどいいだろう。これで数カ月分の給料は払えるはずだ。

「まったく。総従業員2名の零細企業はつらいな。いつも金策を考えなければならん」

ぼやきもたまにはいいだろう。
一通り探し終わり、ふっと一息つくと、すぐに移動を開始する。
万が一奴に戻られると面倒だ。

「さて、なかなかの成果だったしさっさと帰るか」

扉を開け、外に出る。
中々の解放感とともに一歩を踏み出し――

横にスライドするように体を投げ出す。
目の端に銀の軌跡のみが写りこむ。後一瞬でもそこに留まっていれば首が飛んでいただろう。

「やっばいな。もう戻ってきたのか――よ!」

数回転してそのまま立ち上がる。
一瞬前まで俺がいた場所には覆面をした男が一人立っていた。
その男は能力『ステルス』の使用を止め、口元は笑みを形作っている。

「さすがだなぁ。"ミラージュ" 見事な罠だったよ」
「お前じゃなきゃあんな罠には引っかからんさ。
 それにな、"ゴースト"。そんな古くて恥ずかしいコードネーム言うな」
「照れるなよ。僕と君の仲だろう?」
「ただの敵対関係ってだけだろうが」
「だが、もう8年にはなるさ。この関係もな」

あー確かにそれくらいにはなるか。
俺が受ける依頼の内容は"ゴースト"と関わることが多い。
潜入捜索が基本の仕事になるため、多くは敵対し、時には協力することもあったか……。
だが、今は敵であることには変わりはない。

「ま、邂逅を喜ぶのもここまでにして……じゃあ久しぶりに遊ぶか?」
750 ◆W20/vpg05I :2010/03/22(月) 10:01:41 ID:3/Fi90Pf

左手に軍事用ナイフ、右にリボルバー式の拳銃を持った"ゴースト"は、一歩、詰めてきた。
俺もそれに応じる。右手に軍事用ナイフを持ち、左手にはリボルバー式の拳銃。
お互い能力は使わない……いや、使う暇がない。


一歩、全速力の踏み出す。お互いナイフの距離――
瞬間、数度の金属の擦れる甲高い音が響く。
銀閃が通り、ぶつかり、火花を知らせる。
ナイフを振り切った瞬間、ゴーストの銃口が向く。

一瞬の判断――銃を離しゴーストの手首を掴む。

――発砲

逸らした銃口は俺を捉えず、銃弾が顔スレスレを通り抜ける。
銃には意識を置かない。ただ掴んだ勢いのまま捻り上げ――投げる

「っと、危ないな」

しかし、ゴーストも自ら回転し、足から着地、同時に腕を捻り俺の手を引き離した。
その瞬間に、俺は落下途中の銃を引き離された手でキャッチしゴーストへと向ける。

――発砲

今度は同時だった。
両者の銃弾がぶつかり合い、明後日の方向に飛び散る。

――連射

だが、お互いが傷つくことはない。全て銃弾同士がぶつかり逸れていった。

お互い弾薬が空になり、ようやく銃口を向け合いつつ動きが止まる。

「ひゅう。相変わらずやるねぇ」
「相手がお前だからだ。戦闘用の能力者相手じゃこの程度ではあっさり負けるさ」
「まったく、違いない。お互いになー」

その言葉と同時に――お互い銃口を降ろした。

「ちぇー。今回は僕の負けだねぇ」

ゴーストの笑みは消えない。ただ自身の負けを認める。
751 ◆W20/vpg05I :2010/03/22(月) 10:04:02 ID:3/Fi90Pf

「まー、僕はチンピラだからね。重要な情報なんて持っちゃいないから取られても別にいいさ」
「そんな事はわかってる。だからこそ俺みたいな零細企業に回ってくるんだよ。こんなどうでもいい仕事がな」
「そっちの本部はでっかいからねぇ。孫請け会社はつらいねぇ」
「まったくだ。――だがフェイヴ・オブ・グールの捜索までこっちにくるのはどういうことだ?」

フェイヴ・オブ・グールはバ課の管轄のはず。零細企業のこっちに回ってくるなど通常では考えられない。
こいつは曲がりなりにも運び屋だ。場合によっては知っていることもあるだろう。

「さぁ? 僕はチンピラだからそんなことは知ったことじゃないね。……ただ」
「ただ?」

少し間をおくゴーストに、俺は疑問を向ける。ゴーストは静かに笑みを深くした。

「機関が相当焦ってるって情報は聞いたことがあるぜ。
何か重大なヘマしたんじゃないか? ドグマもそれに関わっているらしい」
「……なるほどな」

それなら納得できる。だがドグマか。できればそんな危険な組織を相手するつもりはないのだが……
この状況では探すふりくらいはした方がいいのかもしれないな。機関は上得意様だしな。
そう思っているとゴーストは首をこきこき鳴らしながら再び俺に目を向ける。

「さて、僕は失敗したことをクライアントに伝えないといけない。ここでバイバイだね。今日は楽しかったよ」
「そうだな。俺もそれなりに楽しかった」

お互い背を向けて歩き出す。が、ゴーストは足を止めると気軽に声だけよこしてきた。

「そういえば囮の方は助けんでいいのか? 発信機は壊しといたよ」
「これから行くさ。すでに相棒が追ってるはずだ。……ま、その必要はないかもしれんがな」
「なるほど。一人は僕にすぐ気付いた位だし、中々楽しそうな子だねぇ。うん、気に入ったよ」
「止めとけ。あれはお前に扱える奴じゃないさ」
「そーかい、残念だなあ。ま、そのうちな」

その言葉を最後に再び歩きだしたゴースト。
俺も背を向けたまま手だけ振って歩きだす。

さて、これで運び屋が持つ情報の奪取は成功。
この辺で起こっている女子高生連続誘拐の件もこれで少しは減るだろう。
後は少女たちの買い主をどうにかするだけだ。

もっとも最近様々な組織による能力を目的とした誘拐が多い。
誘拐事件自体が止まることはないだろうが。

「さて、こっちの任務は終了。後は裸王の方だけか」

さて、あっちがどうなっているか、楽しみだ。


露骨に続く。
752 ◆W20/vpg05I :2010/03/22(月) 10:05:58 ID:3/Fi90Pf


・ゴースト(本名不明)
(人物説明)
フリーの運び屋。ドグマを含む様々な組織の依頼を受けてどんなものでも運ぶ。
自称チンピラ。というかポリシーがチンピラ。一人称が僕。いつも目だし帽を被っている。
密かに素でナイフ、銃、格闘のスペシャリストでもある。

《昼の能力》
名称 … 薄っぺらな世界
【半意識性】【結界型】
ゴーストを中心とした半径100mにもう一つ同じ世界を作り、任意の人や物をその世界に取り込む能力。
その世界に取り込まれた人や物は元の世界から文字通り消える。
夜になるかゴーストが止めることで効果が消え、元の世界に戻ってくる。
半径100mにもう一つ同じ世界を作るまでは無意識性であり、自動的に作っている。
任意の人や物をその世界に取り込むことは意識して行っている。

《夜の能力》
名称 … ステルス
【意識性】【操作型】
ほとんどの探査から任意の人や物を極端に見つかりにくくする能力を持っている。
昼になると効果が自動的に消える。



投下終了です。能力バトルのはずなのに能力つかってないや。
あ、こっちのキャラで、もし使ってくれるのであれば自由に使って構いません。
むしろ使ってもらえると嬉しいです。
753創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 10:43:09 ID:3/Fi90Pf
>>729
加速能力つえぇな。そりゃ欲しがる訳だ
トルトルもこいつら相手じゃなきゃ強力な能力者だよなぁ

>>738
リバウンドかー。そういやありそうだ。
なんも考えずに使わせてたなーそこらへん。
しかし、どうにも怖いような面白いような物が多いなw

>>745
こいつらw いー感じに厨二のはずなのにだんだんとしっくりくるようになってきたw
やばい。洗脳されてる気がするぞw
754創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 10:48:21 ID:ya+CEDMQ
みなさん投下乙です!

>>723
トルトルって、敵ポジションだけどなんか好き
喋り方のせいか?


>>736
クロス、造詣深いなww
「機関」に研究所でもあるのかな?


>>741
他のヤツはこの能力のことをくだらねーと言う……
クク…… 「くだる」「くだらねー」ってのは所詮……
頭(ここ)の使い方ひとつさ……
                 ホルマジオ

やべ、陽太カッコいい。「大根使い」取り消して
「バトルセンスはピカイチ」に差し替えよう!


>>748
「仇敵」もしくは「好敵手」と書いて「ライバル」と読むッ!
敵なのに旧知の仲、って好きだなぁ

しかし、チンピラのクセに口調は丁寧だなww
そのまえに、「チンピラ」自分で言ってるしww
755創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 13:03:06 ID:JN+AQtf7
>>739
クロスは俺のよm

>>745
陽太ハッタリスゴスww

>>752
銃撃戦もかっこいい
ゴーストいいなあ



そろそろスレ立てようぜ俺は無理だった
スレタイ>>716
本文>>694
2 >>701
756創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 13:14:53 ID:jVDR6eTA
|つ【昼夜】チェンジリング・デイ 能力値2【大根】

|ミ サッ
757創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 13:23:26 ID:JN+AQtf7
大根wwwでもシェアードワールドだってことは要ると思うんよ
758創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 13:26:29 ID:7TGD+s5d
【シェア】チェンジリング・デイ 能力値2【昼夜】
無難に
759創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 14:01:23 ID:JN+AQtf7
って間に誰かが立ててくれてた

【シェア】チェンジリング・デイ 2【昼夜別能力】
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1269232809/
760創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 14:06:04 ID:GCw9Ge+E
妙に人いるなと思ったらそうか、今日は世間一般は振り替え休日だったのか。
>>755案で問題ないっしょ。
>>756おいコラwww

>>752
この変態強いw
能力戦闘向けじゃなくても十分超人レベルじゃねえかこいつら
ゴーストのキャラが面白いな
761創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 18:27:37 ID:tGEgvEI1
>>745
キメ台詞wwまさに王道だな。そうこなくっちゃw
フラグとか分かってるなw
続き期待してやすw

>>751
銃弾を全て銃弾で弾き落としただと…なんていう技量をもってやがる!
投下乙です!
次はもう一人の相棒が出てくるのかな?
ゴースト、カッコヨスw
762創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 00:52:34 ID:3o9cRMQ6
763創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 19:59:06 ID:vO44pnZ4
まだ大丈夫のハズ…
投下いきます!
764Beyond the wall (8/最終話) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/23(火) 20:00:49 ID:vO44pnZ4
衛とセイは迷路のような廊下を走っていた。
「夜になったみたいだ。」
能力を試しながらセイがつぶやいた。
その直後、目の前の十字路に人影がよぎる。
「キング!」
しかし、角を曲がったとき、既にキングは消えていた。

大きな岩石がごろごろと転がる玉座の間。
そこで情はキングにストーンの攻撃を仕掛けた。
だが、キングの頭に岩石が当たる直前に、それは消えてしまう。
「ちっ!」
そして同時にその同じ岩石が情の頭上から落下してくるのだ。
避けることはできる。
しかし、銃を携えるキングに近付くことは容易くない。
765Beyond the wall (8/最終話) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/23(火) 20:01:31 ID:vO44pnZ4
不意に情の後ろで大扉が開いた。
「ジョー! もう戦ってたんだ。」
衛とセイだ。
セイはすぐさまキングに水弾を撃ち込む。
しかしキングは全く動じない。
水弾は、キングに当たろうとする瞬間軌道を変え、セイを狙ってきた。
「うわっ!」
「くそ、何でも反射されるってことか。」
セイは、とりあえずもう一度水を指先に集める。
その行動が吉となった。水玉に映って大扉の陰に男の姿を確認した。
すかさず振り返りアクアショットを放つ。
男も同時に銃を撃ってきたが、弾道が反れ当たらない。
一方セイの水弾は男の手首を掠めていった。
ところが、セイは男の顔に気付いて呆然となった。
「どうした!?」
「後ろに……キングがもうひとりいた。」
「なんだと!」
「追いましょう!」
三人は玉座の間のキングを放っておいて、とりあえずもう一人のキングを追いかけはじめた。

走りながら三人は口論を交わす。
「変身能力じゃないんですか?」
「いや、だったらキングに化けるより、俺たちの誰かに化けた方が動揺を誘いやすい。
 たとえ性格も能力もコピーできなくてもな。」
このとき、セイにはキングに対して不審に思っていた点があった。
そして一つの仮説に行き着いた。
セイからその仮説を聞いた衛と情は驚愕。
「まさか……そんな能力が?」
だが。情は数秒間思考を巡らせてニィと笑った。
「オレに良い考えがある。」
766Beyond the wall (8/最終話) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/23(火) 20:02:11 ID:vO44pnZ4
「さて……。」
情のつぶやきが合図であるかのように、ふたりのキングが前後から同時に現れた。
思っていたとおりの展開だ。
「待ってたぜ、『鏡の能力者』。」
キングは戦闘の開始からそうであったように依然口を開かない。
「『同じ人間がふたりいる』、『攻撃を反射する』、そのふたつを同時に満たすエグザだ。間違いない。」
ふたりのキングはこちらに一斉に銃を向ける。
しかし情は臆することなく言葉を続けた。
「さっきの戦いを見てて分かったんだが、虚像の方は攻撃をはね返すが、本物には攻撃が届くらしいな。」
既にキングたちの頭のすぐ真上でストーンが完成していた。
「この距離なら避けるのも間に合わねえ!」
前方のキングの頭の上で岩石が落ちるそばから消えてゆく。
情はこちらが偽物だと踏んだ。
一方後方のキングはというと。
「消え……た……?」
「何っ!」
もう一人のキングは霧消していた。本物だと思っていた方がだ。
あまりの衝撃に反射の攻撃を忘れていた三人は、巨大な岩石の下敷きになった。
767Beyond the wall (8/最終話) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/23(火) 20:02:54 ID:vO44pnZ4
キングは再び玉座に腰掛けていた。
自分の平和を脅かすものなど何もない。
そろそろ操った街の人間で進軍するのもいいだろう。
大扉が開くまではそんなふうなことを考えていた。大扉が開くまでは。
「お、お前らっ!」
倒したはずの衛、セイ、情の三人がピンピンしたまま戻ってきた。

「本当の謎解きをはじめようか。」
最初に話し始めたのはセイ。
「邪魔だったんだよ、あんたの『ライトエグザ』が。だからわざと負けたふりをしたんだ。」
「くっ……!」
キングは先程の戦いとはうってかわって、明らかな同様を見せた。
「おかしいよね、変身や鏡じゃあこんなことは起こらない。
 そう、僕がもうひとりのキングにつけた傷と全く同じ傷が、最初にあんたに会った時には既についていた、なんてことは。」
セイの言葉に耳を貸さず、周りを見渡して何かを期待するキング。
しかしその期待したことが起こらないことは自分がいちばんよく知っている。
「あんたのライトエグザは、『昼と夜を行き来する能力』!
 だから昼のあんたに僕たちの完敗を見せて、安心して昼に帰るように仕向けたんだ。」
「……それがなんだというのだ。私には全ての攻撃を反射するダークエグザがある。」
「いや、違うな。」
ここで情が口を挟んだ。
「お前が何でもかんでも反射出来るなら銃なんていらねえんだ。」
キングはさらに後ずさる。
「お前が反射できるのは能力だけ。
 ついでにもうひとつ実験させてもらった。お前の反射は自動で行われている。
 オレのダークエグザは、石を生み出しているわけじゃない。石を呼び出しているんだ。
 だから最初にこの部屋で戦ったとき試してみた。
 お前に落としている最中の石を自分の真上に呼び出す。
 これでもお前は不審に思う素振りを見せなかった。
 自分で考えて反射しているなら、自分の反射じゃないって気付くはずだからな。
 さっきの廊下でも同じ手を使わせてもらった。
 くぼみのある石を、お前に落とすときはくぼみを上に向けて、オレたちに落とすときはくぼみを下に向けた。
 助かったのはそういうことだ。」
「だからどうした! これがある限りお前たちは私には近付けまい!」
キングはいよいよ銃を構え始めた。その体は震えている。
その様子を見て衛が飛び出した。
「ひぃっ!」
ついに撃った。
いくら無敵とはいえ、自分に向かってくる銃弾は怖い。
だが衛は振り返りはしない。
今までこの能力は自分を衛るための能力だった。
しかし今、今まさにこのとき、この能力は街のみんなを衛るための大事な能力になる。
「うおおおおおおおおおおおお!」
衛は思いっきりキングをぶん殴った。
しかしキングは痛みを感じない。倒れもしない。無敵の能力が反射されたのだ。
キングはもう一度衛の頭に狙いを定めた。
その時、水の銃弾がキングの手から銃をはじき飛ばした。
「チェックメイトだ、キング。
 僕の能力は人を殴ったとき一時的に能力を無くす。
 全ての能力を自動で反射しているお前なら、この無効化をも反射せざるを得ない。」
「そんな……まさか……この私が……!」
「行くよ、ジョー!」
「おう!」
容赦のない水と石の攻撃がキングに襲いかかる。
「ぐわああああああああああああああ!!」
今度こそ決着はついた。
キングは熱い心を持った彼らの前に完全に敗れたのだった。
768Beyond the wall (8/最終話) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/23(火) 20:03:39 ID:vO44pnZ4
夜明けが近い。
二台のバイクが、ふたりを乗せて、荒れた大地を行く。
「本当に僕たちがついてなくて大丈夫だったのかなぁ。」
「大丈夫だ、衛ならな。」
「ねぇ、ジョー。僕、ずっと前から言いたかったことがあるんだ……。」

一方、街の住民を率いてきた衛は久々にあの大きな壁を目にしていた。
「もしもし、東堂衛です。
 はい、みんな無事です。
 テレポート系の能力者を手配してくれると助かります。
 はい、じゃあ待ってますね。

 壁の向こうで。」


おわり
769Beyond the wall (8/最終話) ◆KazZxBP5Rc :2010/03/23(火) 20:04:20 ID:vO44pnZ4
ラスボス紹介

・キング
「クレーター」最大の領地を治めるボス。「クレーター」外から人をさらって軍隊を作ろうとしていた。
《昼の能力》
【意識性】【結界型】
昼と夜を行き来する能力。約12時間後(正確には「日の出から日没まで」に対する「日の出から能力使用時まで」の割合と、「日没から次の日の出まで」に対する「日没から移動先の時刻まで」の割合が同じになる時刻)に飛ぶ。
《夜の能力》
【無意識性】【結界型】
自分が攻撃されたとき相手の能力を反射する。
770創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 20:07:24 ID:vO44pnZ4
投下終わりです

これ忘れてたw
>>635-641のつづきでした

では、ご愛読ありがとうございました
また次スレで
771創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 23:56:03 ID:ArPNKgze
ああなるほど、
相手の能力を自分のものにして反射するってことか。
だから衛の能力のペナルティ部分まで貰っちゃったわけだな。
772創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 01:05:56 ID:qO69MPXL
>>770
うおっ、なるほど。良く考えられている。
投下お疲れ様でした!またよろしく!
773創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 18:56:09 ID:i6zb7HwP
>>770
完結おめ!
デメリットをメリットとして使うってのは熱いな。
よく考えられてる素晴らしい能力バトルだった。
次スレでもよろしくね。

そういえばこの三人はこの後どうするんだろう
もしクレーター出るなら例えば他の人の話にも出演していけると思うんだ。

最後に少しアドバイス。
文章がちょっとあっさりしすぎている感があると思うんだ。
淡々と現象と台詞だけを書くのではなく、間を取る、文章表現を工夫する、
言ってしまえば、文章をくどくする。そうすればもっと熱いバトルになるよ。
>>723氏や>>748氏のバトル描写なんかは非常に参考になると思うぜ。
774 ◆KazZxBP5Rc :2010/03/24(水) 23:04:50 ID:8zFk6+MF
みんなありがとう
ちょいレス

>>773
衛は街に戻るよ。その後の構想がちょっとあったり
残りの二人の方は考えてないのでおまかせってことで

アドバイスd
頑張る


>>647
ストーンは最終回のために操作型なのでした

結界型は…実はよく分かってなかったり
775 ◆IulaH19/JY :2010/03/27(土) 02:38:43 ID:OnqFxPuK
リンドウ編の設定を投下です。使用は本当に自由なので、気兼ねなく使ってやってください。

・リンドウ
ドグマの幹部の一人。瓶底眼鏡、長い黒髪の女。
不思議な食べ物に興味があり、得体の知れないものをおいしく食べている光景をホーローが目撃している。

《昼の能力》
名称 … 『薬を創り出す』能力
(分類)【意識性】【具現型】
(能力説明)薬を創り出す。ある程度の距離も飛ばせるらしい。
      死体を溶かして能力を精製する事も可能。

《夜の能力》
名称 … 『物を置き換える』能力
(分類)【意識性】【操作型】
(能力説明)触れた物を別の場所の物と置き換える。置き換える物の大きさに制限がある。(人間二人分まで)
      その置き換える物同士は空気が接触していなければならず、能力を使った後にある程度インターバルも発生する。


・風魔=ホーロー(ホーロー、元:風魔嘉幸)
ドグマの構成員。
『プロトタイプ:弐』の改造人間。プラズマを発生する短剣を二本持つ。
忍者のような服装をしている。リンドウの部下。リンドウに好意を持つ。

《昼の能力》
名称 … 『時間操作』能力
(分類)【意識性】【結界型】
(能力説明)自分の周囲の時間と、他の時間の流れを変える。
      過去に戻る事は、能力が安定してきた最近では出来なくなった。

《夜の能力》
名称 … 『能力を否定する』能力
(分類)【無意識性】【結界型】
(能力説明)彼の周り半径30メートルにわたり、球状に青い霧を発生させる。この霧は壁を透過する。
      その霧の中では能力が使えなくなり、能力の効果が無くなる。


・霧裂=ルロー(ルロー)
ドグマの幹部の一人。
茶色の寝巻のような猫耳フード付きの服を着ている猫語尾少女。
中身は生体強化された人間で、『プロトタイプ:壱』の猫人間。本物の猫の耳と眼を持つ。赤毛。
能力者の一部を斬り取って蒐集する癖がある。脱獄囚。
腕に銀のナイフが三本でてくるカタールのような籠手を装備している。ナイフは飛ばすと新たに装填される。

《昼の能力》
名称 … 『切り裂く』能力
(分類)【意識性】【操作型】
(能力説明)黒い霞を纏う。その霞に触れた物は境界の意義が崩れ、斬れる。
      霞を右手より遠くにはあまり飛ばせない。

《夜の能力》
名称 … 『爆発させる』能力
(分類)【意識性】【具現型】
(能力説明)左手の素手に触れた物を指向性を持たせて爆発させる。爆発の威力は触れた時間に比例。
776 ◆IulaH19/JY :2010/03/27(土) 02:41:38 ID:OnqFxPuK
・トルトル
傭兵事務所“イモータル”の所長。髭面の肥満男。
悪夢を見るのは主にこいつのせい。
現在は死亡している。
《昼の能力》
名称 … 『水になる』能力
(分類)【意識性】【変身型】
(能力説明)体を液体にする事が出来る。液体状態の時、損傷した体の器官を体の中で作り変えて代用できる。
《夜の能力》
名称 … 『他人の夢に介入する』能力
(分類)【無意識性】【操作型】
(能力説明)対象の夢に介入する。ただしそのためには対象の姿をとった写真を自分の枕の中に入れなくてはならない。

・ゼン
“イモータル”の副所長。黒い服と黒い帽子がトレードマーク。
運動神経が良いが、生体強化人間ではない。鑑定士の力を持つ。
現在は猿轡をはめられバフ課5班に捕まっている。
《昼の能力》
名称 … 『嗅ぐ』能力
(分類)【無意識性】【変身型】
(能力説明)匂いの元を辿れる。
《夜の能力》
名称 … 『絶対暗示』能力
(分類)【意識性】【操作型】
(能力説明)能力発生と共に腕に生えた赤黒い糸を使う。赤黒い糸に触れた人間に、暗示を掛ける事が出来る。
      命を奪うなど、本能に反して暗示を掛ける事は無理らしい。

・フェム
“政府”に属する機械男。
戦闘モードで腕からジェットエンジンが突き出る。
バーストモードで使用電力を三倍に引き上げて、攻撃力を上げる。
セーフモードで全ての機能を治癒に当てる。
《昼の能力》
名称 … 『空気の匣を精製する』能力
(分類)【意識性】【具現型】
(能力説明)空気の匣を精製し、その中の重さを変える事が出来る。
《夜の能力》不明。

・ルジ(ルジ博士)
“政府”の重要な位置に属する長い白髪の女。リンドウと瓜二つ。
リンドウの母親であり、ルローを作った張本人である。
火の付いてない咥え煙草をする。
“ドグマ”と敵対している事を条件に、自分が作った人造人間を貸し出している。
《昼の能力》
名称 … 『人体改造』能力
(分類)【意識性】【操作型】
(能力説明)手術の成功率を限りなく高める事が出来る。
《夜の能力》不明。

変えたいと思ったり、何か違うな?と思ったら変えてください。
それでは本当にありがとうございました!
777創る名無しに見る名無し:2010/03/27(土) 03:08:24 ID:OnqFxPuK
すいません。最後にもう一つだけ。
wikiのリンドウ編にある無題7.jpgは、関係ない絵なので消しておいてください。
管理人さんしか消せないみたいなので。
文章の転載などは自由です。
それでは。
778 ◆VECeno..Ww
>>774
今見ると確かに考察シリーズの書き方はちょっと分かりにくいですね。
結界型は「周囲の空間を支配して自分が有利になる領域を作り出す能力」といえます。
(作り出す、といっても2スレ目のゴーストのように物理的に創り出すのではなく、周囲の空間の性質を弄って作り変えるイメージ)

リバウンド理解。第三回のテーマ決まったぞー