参加者リスト
6/6【うたわれるもの@アニメ】
○ハクオロ/○エルルゥ/○アルルゥ/○ベナウィ/○カルラ/○トウカ
6/6【BACCANO!@小説】
○フィーロ・プロシェンツォ/○エルマー・C・アルバトロス/○ラッド・ルッソ/○クリストファー・シャルドレード/○グラハム・スペクター/○クレア・スタンフィールド
6/6【ひぐらしのなく頃に@アニメ】
○前原圭一/○竜宮レナ/○園崎魅音/○北条沙都子/○古手梨花/○園崎詩音
5/5【スクライド@アニメ】
○カズマ/○劉鳳/○ストレイト・クーガー/○橘あすか/○無常矜侍
5/5【ローゼンメイデン@漫画】
○桜田ジュン/○真紅/○翠星石/○蒼星石/○水銀燈
5/5【ワンピース@漫画】
○モンキー・D・ルフィ/○ロロノア・ゾロ/○ウソップ/○トニートニー・チョッパー/○サー・クロコダイル
4/4【ジョジョの奇妙な冒険@漫画】
○東方仗助/○広瀬康一/○吉良吉影/○ジョルノ・ジョバァーナ
4/4【とある魔術の禁書目録@小説】
○上条当麻/○御坂美琴/○一方通行/○土御門元春
4/4【ポケットモンスターSPECIAL@漫画】
○レッド/○イエロー・デ・トキワグローブ/○サカキ/○ミュウツー
3/3【終わりのクロニクル@小説】
○佐山・御言/○新庄・運切/○ブレンヒルト・シルト
3/3【トライガン・マキシマム@漫画】
○ヴァッシュ・ザ・スタンピード/○ニコラス・D・ウルフウッド/○リヴィオ・ザ・ダブルファング
3/3【Fate/Zero】
○衛宮切嗣/○アーチャー(ギルガメッシュ)/○ライダー(イスカンダル)
3/3【BLACK LAGOON@漫画】
○レヴィ/○バラライカ/○ロベルタ
2/2【コードギアス ナイトメアオブナナリー@漫画】
○ナナリー・ランペルージ/○ゼロ
2/2【ドラえもん@アニメ】
○ドラえもん/○野比のび太
2/2【WORKING!!@漫画】
○小鳥遊宗太/○伊波まひる
1/1【ARMS@漫画】
○高槻巌
1/1【あずまんが大王@漫画】
○春日歩
65/65
【バトルロワイアルのルール】
1.【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が優勝者となる。
優勝者のみ元の世界に帰ることができる。
また、優勝の特典として死者の蘇生などのどんな願いも叶えられるという話だが……?
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
2.【首輪】
参加者には設定されたルールを破った場合に備え、爆発する仕掛けの首輪の装着を強要する。
首輪は以下のルールを破った場合に爆発し、その者の命を奪う。
A-バトルロワイアル会場の外へと出ようとした場合。
B-後述される禁止エリアの中へと侵入した場合。
C-24時間連続で死者がでなかった場合、参加者全員の首輪が一度に爆破される。
3.【放送】
バトルロワイアル中、ロワの進行状況(誰が死んだか)と禁止エリアを報告する放送が定時毎に会場内へと流される。
放送が流れるのは、「0時」「6時」「12時」「18時」の6時間毎、1日4回。
4.【禁止エリア】
放送から1時間後、3時間後、5時間にマス目で区切られた会場のエリアが1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。 これは直前の放送でそれぞれ発表される。
5.【支給品】
参加者にはバトルロワイアルを生き抜くための道具や武器が支給される。
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。サーヴァントの宝具も同様。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。主催者の手によってか何らかの細工が施されており、明らかに容量オーバーな物でも入るようになっている。四●元ディパック。
「地図」 → MAPと、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。【舞台】に挙げられているのと同じ物。
「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。肝心の食料の内容は…書き手さんによってのお楽しみ。SS間で多少のブレが出ても構わないかと。
「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。ちなみにアイウエオ順で掲載。 (尚、テンプレやwiki編集ではわかりやすさ重視で作品順名簿で表記しています)
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「照明器具」 → 暗闇を照らすことができる。ランタン、懐中電灯など、なぜか統一されていない。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。
6.【最後に】
以上以外のルールは存在せず、参加者間に禁じ手は存在しない。
また、生き残りゲームではあるがその途中で手を結んだり、徒党を組むこともルール違反には当たらない。
7.【書いてみたいという方へ】
当企画はリレーSS企画です。なのでルールを無視した作品の投下は受け付けていません。ご注意ください。
書き手として参加する場合のルールはこちらですので目を通してみてください。
分からないことがあれば気軽に本スレで質問をどうぞ
ルール説明のリンク>
http://www26.atwiki.jp/marurowa/pages/56.html
スレ立て乙です
僭越ながら自分で次スレ立てさせてもらいました。
では後編を投下開始します
「さて、物品の確認は済んだな」
「誰も我が財を持っておらぬとは。失望させる連中だ」
(持っていたら持っていたで盗人呼ばわりしたくせに)
(ここは大人しくしとけて)
納得いかない梨花を小声でウルフウッドが諌めると、イスカンダルはやおら立つと一同を見渡し――
「では――お前たち、我が臣下にならぬか!?」
「ここで言うのかよ!!」
唐突にも程がある言葉にまたもチョッパーのツッコミが飛ぶ。
嘲笑と共に真っ先に答えたのはギルガメッシュだった。
「貴様、まだそのようなことが通ると思っているのか?」
「ほれ前にも申したであろう。お前の財と我が軍勢が合わされば」
「宇宙の果てまで征服できよう、か。ならば答えは前と同じだ。王は2人といらぬ」
「このような事態なのだから柔軟にいけんのか?」
「どのような事態だろうと曲げてはならぬものはある」
「あーったく。こういうときは正論言いおって」
イスカンダルが諦めた様子で息を吐くと残った梨花とウルフウッドに向き直った。
「お主らはどうだ?」
「私は……」
梨花はウルフウッドを見上げた。
ウルフウッドはその自分に気を使ってるの見え見えな顔を見ると、軽く眉をゆがめた後――
ゴチィン!
「〜〜〜〜〜〜!!」
「梨花ちゃん!?」
「おーいい音なりおった」
「ま、また殴ったわね!?」
頭を抑えながら梨花が抗議すると、その額を今度はデコピンした。
「〜〜〜〜〜〜!!」
「梨花ちゃーーん!!」
「おー響いた響いた」
「な、なんなのよさっきから!」
「何ワイに遠慮しとんねん。行きたいところに行けばええやろが」
「で、でも……」
「どうせワイはお前なんぞどっか預けたらトンズラしよおもうてたしな」
「なっ!?」
梨花が声を荒上げるのを無視してウルフウッドはイスカンダルに向き直る。
「というわけや。あいにく人の下っちゅうんはあまり好きやない。臣下なんちゅう堅苦しそうなのはお断りや」
「余は特に規律などしかんぞ。それに、細かく言うならば同盟だ。レナたちとは余が主催者を妥当するまでの過程を見せつけ余を主とさせる気にする、という
盟約の下に動いておるのでな。だから厳密に部下と言うわけではないぞ」
「ほお……それでも」
「ふざけないで!!」
更に言葉を続けようとしたウルフウッドを、梨花の怒声が遮った。
それをチョッパーはきょとんとして見つめ、ギルガメッシュは愉悦の笑みを深くし、レナは意外にも冷静に梨花を見つめていた。
「ここまで一緒にいて、そんなんであっさり終わらせる気!?」
「だから言うたやろ。ワイにとってはどうでも」
「私にとっては違う!!」
「な……」
ウルフウッドが唖然として梨花を凝視する。
目の前の少女は涙を浮かべ、こっちに怒りをぶつけてくる。
「私は嬉しかった! あなたがいてくれて。
私は楽しかった! あなたが話してくれて。
私は安らいだ! あなたの励ましで!
私は安心できた! あなたが守ってくれていたから!」
「お、おい……梨花」
「私にとって、貴方の存在はもう大きいの!
そんな貴方がここでさよならで、気が済むわけないじゃない!!
お願い……嫌なの。もう、私の手の届かないところで誰かが死ぬのは。
お願い……一緒に、いて。そして―――死なないで
もう……もう、消えないで……魅音みたいに、圭一みたいに。
もう嫌なの……誰かがいなくなるのは嫌……!」
「…………」
梨花は俯き、ウルフウッドの答えを待つ。
共にきてくれるか、きてくれないのか。
「なんとも傲慢な願いだ。男を縛り男の生存を強制する。娘、それは神のみ許される所業ぞ」
(人のこと言えんだろうに)
「なにか言ったか」
「いや何も。どうするのだ?ウルフウッドよ。娘の涙ながらの嘆願。受けるも拒むもお前次第だぞ?」
「……決まっとる。こんなガキの世話はゴメンこうむるわ」
「なっ!?」
「お、おいお前!!」
「チョッパーくん待って!」
梨花が顔を凍らせ、チョッパーが殴りかかろうとするのをレナが押しとめる。
そしてウルフウッドは足を浮かし――
イスカンダルに向き直った。
「1回どつきたい知り合いがおってな。そいつはとんでもないお人好しや。
せやから、お前らみたいなのにはホイホイ吸い寄せられてくるかもしれへん。
そういうわけや。お前らにはあのトンガリの餌になってもらうわ」
「え?」
ウルフウッドの言葉に梨花が顔を上げる。
「それって……」
「ついていったる。主催者に一発ぶちかましたいんはワイも同じやし。
ワイが出て行くとピーピーギャーギャー喧しいガキもおるし。
そいつのせいでお前らが襲われたりするんは夢見悪い。それだけや」
「さっきは子供らしく泣いてろって!」
「アーアーキコエヘンキコエヘン」
「!!!!」
「梨花ちゃん落ち着いて!」
「わー!杖振り回すなー!うわーー!」
蓮の杖をウルフウッドに向かって殴りつけようとする梨花をレナとチョッパーが抑える。
対してウルフウッドはそしらぬ顔で口笛吹いている。
けれど、誰もがどこか安心した顔をしていた。
****
「やれやれ。本当に飽きん連中よ」
「喧しいだけだ。雑種如きとあそこまで戯れるとは、つくづく気に入らん男だ」
「人のこといえんだろうに……さっきから何回これ言ってるんだ余は」
わーぎゃー騒ぐ4人を尻目に舞台に座るギルガメッシュにイスカンダルが悠々と近づいてきた。
「何だ征服王」
「英雄王…………お前もまた、主催者に反逆する気か?」
「知れた事。我に殺し合いをさせるなど、聖杯戦争よりも愚かしい。我手づから磔刑に処してやるまで」
「孤高のままか」
「貴様こそ。雑種共と共に反逆か。そして全て貴様の軍勢になれば貴様の優勝になる。世迷言もいいところだ」
「やってみなければわかるまい。我が征服の基本はそこよ。確かめられてないならば可能性はある」
「フン。現に1人失っているのにか」
「そして2人得た。もちろんこれが最善とは思っておらん。レッドが生きている事が最善であった。
だが、だからこそ進むのだ。屍の遺志を抱き、死しても残る遺志と共にな」
「ほう…………ならば、再戦と行こう」
そう言うとギルガメッシュは舞台から降り立ちイスカンダルに向き直る。
イスカンダルも顔を引き締め、その視線に応える。
「とはいっても武での優劣は既に決した。よって……次は総合的な戦で引導を渡してやる」
「何?」
「雑種共と共に行く貴様か、従者程度にしか使うつもりのない我か。どちらが先に主催者達に制裁へ下すかを競おうではないか。
無論勝負は一度決している。もう一度敗北を味わいたくなければ拒否しても構わぬぞ?」
「おいおい……そう言われてはこの征服王、受けずにはいられないだろうが。
よかろう。再戦と行こう。我が道と貴様の道。今は我が1敗。
今度こそ打ち勝って見せようではないか」
「そうでなくては面白くない。やっとこのくだらぬ場にも面白みが出てきた」
「やれやれ」
「ああ、そうだ……レナとリカと、それとサトコにシオンだったな。
貴様が失敗したとしても、コイツラは我が拾ってやってもよいぞ?」
「む?」
「ケイイチには面白いものを見せてもらった。よって、その仲間である4人には我が慈悲をくれてやろうと言っている。
……なんだ?間抜けにも口が開き放しだぞ。そこに槍を突っ込んで欲しいなら断る」
「いや、別に?」(むう……悪いものでも食ったのか?などと言ったら問答無用で槍を飛ばしてくるなこりゃ)
ギルガメッシュが舞台から飛び降り床へ着地した。
一見乱雑に見えるそれはけれどどこか優雅さも感じるものだった。
その視線は騒いでいた4人に向けられている。
視線に気付いた4人がギルガメッシュに気づき、警戒の目を向ける。
『喧しい。殺すぞ』あたりの暴言を予想していた。
「雑種共よ。英雄王たる我が命じる。我が従者前原圭一を丁重に葬れ」
*****
動いた。
「!!」
南劇場をずっと見張っていたカズマは座っていた街路樹からすぐさま腰をあげた。
瞬時に構え、南劇場から堂々と構えも警戒もなく出てきた1人を見つめる。
あの時見かけた大人数の1人だ。
そして、あの中で1番カズマが――不快感を覚えた男だった。
「ほう? 汚らしい野良犬にも王を出迎える智恵くらいは存在したか」
男、ギルガメッシュは目の前で構えるカズマに対して構えもせず立っている。
カズマが目を向けたと同時に、手に持っていた何かを投げ捨てた。
「っ」
それは首だった。
見覚えがある火傷傷のある女の首。
「アレは気にするな。手に入れたかった者に余計なゴミがついてきたのでな。捨てたまでのことだ。
にしてもあの狼。一度戻ってきたら女の服を剥ぎ取るとはな。我には関係のないことだが」
カズマは気づかなかったが、バラライカの首からは首輪が取られていた。
ギルガメッシュはイスカンダルたちが去った後、
「どういうつもりだ」
カズマは油断せず周辺にも目を配った。
さっきの連中がどこかから狙っているかもしれない。
1人で出てきたのがそれだけ怪しい。
「駄犬よ……我を舐めるな」
「っ!!」
ギルガメッシュがその美貌の眉間にしわを寄せカズマに威圧のまなざしを向けた。
それにカズマは戦慄する。
これほどの威圧感、そうそう出会えるものではない。
カズマは警戒のレベルを一気に引き上げる。
「我1人で駄犬如き殺すのも容易い。むしろ簡単すぎてやるのも面倒だ。
だが……駄犬に邪魔をされたくないことがあるのでな。
戯れてやろう。さあ、我を楽しませよ。犬はそれが仕事であろう?」
そう言うとギルガメッシュは嗤う。
カズマを見下して嗤う。カズマを蔑み嗤う。カズマを屈服させてやろうと嗤う。
「やっぱりな」
カズマの呟きと共に周りに穴が開いていき、アルター『シェルブリット』を形成していく。
逃げるべきだろう。まだ怪我も治っていない。体力も回復しきってはいない。目の前の男を相手するのは危険だとわかっている。
それでも
「てめえは……気にいらねえ」
逃げるわけには行かない。
逃げるという選択は消え失せた。
見下す目は元々許せなくて。
見下し蔑み人を人と見なさないその態度は、ある男を思い出させて。
だから壊す。
アイツの幻がちらつくなら、消し去る。
目の前の男ごと。
「その目が気にいらねえんだよ!!」
野良犬は吠え殴りかかる。
英雄王は波紋を揺らめかせる。
そして火蓋はきって落とされた。
『戯れ』であり『喧嘩』である戦いの火蓋が。
【E-5劇場・南劇場周辺/午後】
【ギルガメッシュ@Fate/Zero】
[状態]:肩と腹に刺し傷(小・回復中)、不死(不完全)
[装備]:王の財宝(の鍵剣)、黒のライダースーツ、劇場のパンフレット
[道具]:必滅の黄薔薇@Fate/Zero(王の財宝内)、首輪<バラライカ>
[思考・状況]
基本行動方針:ライダーより先に主催を滅ぼし、元の世界に帰還する。必要があれば他の参加者も殺す。
0:圭一の仲間を脱出させてやってもいい。見つけたら保護。
1:カズマの相手をしてやる。
2:自分を楽しませ得る参加者を見定める。
3:ゾロ、佐山に興味。梨花とウルフウッドについては当面様子見。
4:圭一が自分のクラスを知っていた事に関しては・・・?
5:宝具は見つけ次第我が物にする。天地乖離す開闢の星、天の鎖があれば特に優先する。
[備考]
※不死の酒を残らず飲み干しましたが、完全な不死は得られませんでした。
具体的には、再生能力等が全て1/3程度。また、首か心臓部に致命傷を受ければ死にます。
※会場が自然にループしていることを把握しました。
※悪魔の実能力者がカナヅチという弱点を知っています。
※本編での経験から、螺湮城教本を手に入れる気にはならなかったようです。
※クーガーには強い印象を受けていますが、橘あすかのことは忘れました。
※文中台詞の"山猫"とはクーガーのことです。
※銃火器にはもう対処できます。
※ラッドが不死者だと思っていますが喰うつもりはありません。
【カズマ@スクライド】
【状態】:疲労(大) 全身にダメージ(大) 砂鉄まみれ 右腕に痛みと痺れ 右目の瞼が上がらない 右頬に小さな裂傷(アルターで応急処置済み)
腹部と頬に打撃ダメージ、脇腹(打撃痕も)と左肩、左腕に銃創
【装備】:桐生水守のペンダント(チェーンのみ)、スタンドDISC『サバイバー』@ジョジョの奇妙な冒険
【道具】:基本支給品一式×4(食料を3食分、水を1/3消費したペットボトル×2、)、不明支給品(0〜4)、聖剣グラム@終わりのクロニクル
モンスターボール(ピカ)@ポケットモンスターSPECIAL、君島邦彦の拳銃@スクライド
【思考・状況】
1:ロストグラウンドに戻り、かなみを助ける。そのために優勝する
2:目の前のムカつく奴をぶっ飛ばす。
3:ギラーミンを殴り飛ばす
4:ムカつく連中をぶん殴る。(ゼロ:誰かはよく分かっていない、仗助:死亡を知らない、クレア、レヴィ、ライダー)
5:次に新庄、伊波と出会ったら……
6:メカポッポが言っていた、レッド、佐山、小鳥遊に興味。
※ループには気付いていません
※参戦次期原作20話直後。
※相手の部位が光ったり濁ったりすることについて疑問を抱きました。
*****
「圭一……私達は行くわ」
「お願い。見守ってて。圭一くん」
中央劇場脇の庭。
そこに盛り上がった土とその上に黄金の鎧の破片が突き立てられていた。
そこに手を合わせているのはレナと梨花だ。
先ほどここに圭一の遺体を埋め終えたところだ。
コレは全てギルガメッシュの命令だった。
その命令は梨花達にとって好都合だった。元々圭一を埋めてやりたいとは思っていたし、それに――
『業績を成した者は墓を立て、後までその業績を讃えなければならない。
圭一はこの英雄王の予想を覆した。一瞬とはいえこの我の予想を雑種に過ぎぬ者が超えたのだ。
これは讃えるべきことだ。でなければ我の面目が立たぬ。
よって、お前たちに圭一の墓を立てることを命じる。
外の犬は我が相手をしておいてやる。早く行け』
そう言ってギルガメッシュは外のカズマの元へ向かっていった。
確かにあのままならどの道ここから出る時に自分達はカズマと闘いになっただろう。
色々理由をつけていたが、自分達の為にやってくれたのだろうか。
「なんだかおれアイツのことよくわかんなくなってきたぞ?」
「分かればわかりやすい奴なのだがな。まあ深くは理解しようとせんことだ」
「する気はあらへん。ワイは最初から今までアイツのことはいけすかん」
振り返るとイスカンダル、チョッパー、ウルフウッドが偶然にも同じ事を考えていたのかギルガメッシュについて話していたようだ。
2人が戻ってくると、5人は集まり輪になった。
レナが会場の地図を広げ地面に敷く。
「ここまでで私達の成果は正直芳しくありません。仲間を失い、守れなかった物も多い。
でも、新たな仲間も出来ました」
そこでレナが梨花とウルフウッドを見つめる。
2人の腕には仲間の証である○印とそれを隠す包帯が巻かれている。ウルフウッドは嫌がったが、同盟の条件だと言われると渋々従った。
レナの視線に梨花もウルフウッドも意志ある目で頷く。ウルフウッドはすぐに目を逸らしてしまったがレナは笑ってそれを気にしなかった。
「まだ私達は完全に負けたわけじゃない。この先、まだ危険人物がいる可能性はある。
でもそれでも私達は仲間を捜さないと。
だから私達は同じように、ノルマを決めて二手に別れたい。
一度失敗してるのは分かってる。
でも、やっぱりこれが情報面でも1番最善だと思うの。
イスカンダルさん、みんな……いいかな?」
レナの言葉に反対する者はいなかった。
「ま、せいぜい気張らせてもらうわ」
「ニコラスは強いもの。大丈夫よ。銃器だっていっぱい手に入ったんだから」
「銃なんてあまりぎょうさんあってもな……ま、無茶して使えるんやから文句は言えんか」
「そういうこと。……な、なにレナ。……私の口調がやっぱり気になる?」
「ううん。それは別に。むしろ……えへへへへ」
「な、なによニヤニヤ笑って!」
「せや。こないなガキの何がおもしろいねん」
「む……!」
「はぅ〜〜〜〜〜! 鈍感なニコラスさんに怒る梨花ちゃんかぁいいよぉ〜〜〜〜!お持ち帰りぃぃぃぃぃ!」
「わーーーー!レナーーー!ストップストップーーー!」
「おーいレナ。完全に脱線しておるぞ」
「気を取り直して……それで、ここからどう向かうか。
最初はここから分かれている道で東西に分かれようと思ってた。
でも、それは無理になっちゃった」
「なんでだ!?」
「禁止エリアや。13時にF-6が禁止エリアになってもうて細い川と橋が進入禁止になってもうた。つまり」
「東に行ったら病院、神社にいけるけどその後は行き止まりになってしまうってことね」
「うん。だから悩んだんだけど……この際、東方向は見捨てようと思うの」
「ええええっ!? で、でもレナ!おれ病院の器具とかを手に入れておきたいよ!それにもしそこに人がいたら!」
「わかってる。だからチョッパーくんには病院までは行って欲しいの。でも、最低限の薬や機材をデイパックに入れたらすぐに戻ってきて」
「で、でもレナぁ!」
「いい?チョッパーくん。確かに病院や神社に隠れてる人はいるかもしれない。怪我した人かもしれない。
でもここで考え方を変えてみて。隠れてる人の気持ちになるの」
「隠れてる人の?」
「なるほど。端的に言えば『チェス盤をひっくり返す』ってところかしらレナ」
「うん、例えるならそんなところ」
レナは病院と神社を指差す。
「もしここに隠れていた人がいたとしたら、禁止エリアで南への脱出ルートを阻まれてたらどう思うかな?かな?」
「いざ北や東から外敵が来たら、袋のネズミやな」
「うん。泳いで逃げる、っていうのも音が立つし現実的じゃない。だから禁止エリアが指定された時点で隠れてた人も西か北に逃げてるはずだよ」
「なるほど。だが、医術師が病院に行くといっても1人で行かせる気か?」
「ううん。チョッパーくんの護衛も兼ねて一緒に誰か行ってもらって、ここで二手に分かれます。
そしてチョッパー君たちが病院に行っている間にもう一組は出発して東に向かう。勿論グラハムさんの捜索も兼ねてね。
チョッパー君たちも病院から戻ったらそのまま西に直進。もう1組を追う形で進んでもらいます。
これは万が一先発組がグラハムさんと入れ違った時の場合も視野に入れています。
「で、おれ達は先発に追いつけばいいのか?」
「ううん。駅までは同じルートだけど、駅からは別れてもらうから暫くは会えないと思う」
「おい……嬢ちゃん、一体どないなルート行かせる気や」
「なら、簡単に教えるね。
ルートは2つ。西ルートと東ルート。
まず西ルート。これは後発のチョッパーくんたちに任せたいな。
駅からそのまま南に行って、遊園地、廃坑、アーチャーさんのループの情報が確かなら、ここから北に繋がって、古城跡、山を降りてB-4、私達が誓いを立てたあの民家に」
「そこを集合場所とするわけか」
「学校はいいのか?」
「あまり欲を張ってもしょうがないし、トラブルも考えて余裕は持っておきたいから」
「成程。で、東のルートはどうなのだ?」
「東ルートは先発組。
ここはE-2駅に着いたらそこを探索後、電車に乗ってG-7駅まで行ってもらいます。
そこから映画館、消防署、ループして、モールを通ってB-4の民家に」
「なるほど、な」
「H-4で1回集まった方がよくないか?ほら、そんなに遠くないぞ?」
「でもすぐ南にあたるA-4が禁止エリアだから迂回することになっちゃう。
だからそこでは合流しないで探索を続ける。
B-4が禁止エリアになったら戻ってH-4。そこも駄目ならG-4で合流。
時間は今から6時間後。今が15時くらいだから……21時。
これでいいかな?かな?」
ルートを説明し終えてレナが5人の顔を確認する。
「ま、ええんとちゃうか。ワイらは来た道戻ることになるがな」
「でもそれも何時間も前。それに、あの時声が聞こえたわ。遊園地に誰かいる可能性はあると思う」
「おれはいいぞ!」
「余も構わぬが……そうなると先発には余が入った方がよさそうだな」
「なんでです?」
「医術士は獣になれば他のものも乗ることができようが、その足に合わせるとなると先発は遅くなりそうだ。
だが、余にはこれがある」
そう言ってイスカンダルが叩いたのはヤマハV-MAX。元々イスカンダルに支給されていたものであり図書館に置き去りにしてしまったものだ。
プケファラスで駆けつける道中図書館を確認したら消え失せていたため諦めていたが、まさか圭一のデイパックに入っているとは思わなかった。
「こいつは余にしか扱えん代物だ。これならば医術士の足に合わせられ、存分に施設の探索もできよう」
「なら、先発はイスカンダルさん組。後発はチョッパーくん組で、さっきのルートどおりにお願い」
「任されよう。今度こそは同胞を連れ帰り、お前たちを臣下にしてみせようぞ」
「……イスカンダル。おれ」
「お前の船長のことは知っておる。だから言ったであろう。結論は今でなくともよい。そう簡単に別の者の下にはつけまい。
余は焦らん。お前がじっくり決めればよい」
「ありがとう、イスカンダル……」
「じゃあレナと梨花ちゃんとウルフウッドさん、誰が誰と一緒に行くか決めなくちゃね」
「そ、そうね……」
「ワイは何もいわへん。梨花、お前が決めたいよーに決めたらええ」
「ニコラス……」
梨花は悩んでいた。
普通ならばここは1人と2人に別れ、それぞれがイスカンダルかチョッパーと組むことになる。
だが、そうなると梨花は少なくともレナかウルフウッド、どちらかとは一度別れなければならない。
死なないと信じている。でも、もしかしたらと思う自分がいる。
100年を共にした仲間か、ここで出会った、けれどずっと傍にいてくれたガンマンか。
それとも偏りは出てしまうが、3人でチョッパーに着いていくか。
「私は……」
【E-5劇場・中央劇場東口前/1日目 午後】
【チーム名:○同盟チョッパー組】
1:主催者の打倒。
2:病院で薬や器具を調達。その後遊園地、廃坑、古城跡を訪れ21時までにB-4民家へ向かう。禁止エリアの場合H-4、G-4へ。
2:グラハムとの合流(先発が会えなかった場合)
3:サカキ、ミュウツー、片目の男(カズマ)、赤髪の男(クレア)、リヴィオ、ラッド、電気の少女(美琴)を警戒。
クレアという女性、佐山、小鳥遊、アルルゥ、ヴァッシュを信用。アーチャーはやや信用。
ハクオロも一応信用。 真紅、沙都子は情報不足で保留。
【トニートニー・チョッパー@ONE PIECE】
[状態]:疲労(大)、腹部と顔にダメージ(中)、全身にダメージ(中) 腕に○印 深い悲しみ、獣形態
[装備]:なし 包帯、ランブルボール×4@ONE PIECE
[道具]:支給品一式×4(一食分、水1/10消費) タケコプター@ドラえもん、 タオル、救急箱
[思考・状況]
1:レナや皆を守り抜いてみせる。その為なら……
2:仲間と会いたい
3:グラハムの様子を見る。(別れている為現在実行不能)
4:ギラーミンを倒し、脱出する。
5:イスカンダルの臣下になるかはまだ決められない。
6:川に落ちたゾロが心配。
※レナからはあまり情報を受けていません。圭一たちについての情報は知りません。
※参戦時期はCP9編以降。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
※別世界から呼ばれたということを信じました。
※会場のループを知りました。
【E-5劇場・中央劇場西口前/1日目 午後】
【チーム名:○同盟ライダー組】
1:主催者の打倒。
2:F-3駅からG-6駅に向かい、映画館、消防署、モールを訪れ21時までにB-4民家へ向かう。禁止エリアの場合H-4、G-4へ。
2:グラハムとの合流
3:サカキ、ミュウツー、片目の男(カズマ)、赤髪の男(クレア)、リヴィオ、ラッド、電気の少女(美琴)を警戒。
クレアという女性、佐山、小鳥遊、アルルゥ、ヴァッシュを信用。アーチャーはやや信用。
ハクオロも一応信用。 真紅は情報不足で保留。
【ライダー(征服王イスカンダル)@Fate/Zero】
[状態]:魔力消費(中)、疲労(大)、腹部にダメージ(大)、全身に傷(小〜中)および火傷(小) 腕に○印
[装備]:包帯、ヤマハV-MAX@Fate/zero
[道具]:基本支給品一式×3、きせかえカメラ@ドラえもん きせかえカメラ用服装イラスト集 、スモーカー大佐の十手@ONE PIECE
イリアス英語版、各作品世界の地図、拳銃の予備弾30発、ウシウシの実・野牛(モデル・バイソン)@ワンピース、
レッドの両腕(包帯と○印あり)、絶縁グローブ(軽く焦げ)@ポケットモンスターSPECIAL
[思考・状況]
1:アーチャーより先にバトルロワイアルで自らの軍勢で優勝。
2:レッドの意志を無駄にはしない。
3:首輪を外すための手段を模索する。
4:有望な強者がいたら部下に勧誘する。
【備考】
※ヤマハV−MAXセイバー仕様@Fate/Zeroは図書館入り口に停めてあります。
※四次元ポケット@ドラえもんは図書館の中に放置されています。
※原作ギルガメッシュ戦後よりの参戦です。
※臣下を引きつれ優勝しギラーミンと戦い勝利しようと考えています。
本当にライダーと臣下達のみ残った場合ギラーミンがそれを認めるかは不明です。
※レッド・レナ・チョッパー・グラハムの力を見極め改めて臣下にしようとしています。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
※自分は既に受肉させられているのではと考えています。
※ブケファラス召喚には制限でいつもより魔力を消費します
※アルルゥの存在を知りました。
※現在の魔力残量では『王の軍勢』をあと一度しか発動できません
※別世界から呼ばれたということを信じました。
※会場のループを知りました。
【E-4劇場・中央劇場東口前or西口前/1日目 午後】
※以下の3人は、チョッパー組とライダー組どちらに入っているのかは不明です。
誰がどちらの組に入っているのかは後続の書き手に任せます。
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康 深い悲しみ 私服 右腕に○印
[装備]: 包帯、デザートイーグル(残弾数6/6)、シェンホアのグルカナイフ@BLACK LAGOON
[道具]:支給品一式×4(3食分、水1/10消費)、ドライヤー 、双眼鏡、ゾロの地図
二重牙@トライガン・マキシマム、デザートイーグルの予備弾×12
[思考・状況]
1:必ず脱出する。
2:誰と組むか、誰についてくかを決める。
3:グラハムが心配
4:部活メンバーと合流したい(ただし、積極的に探すかは保留)
5:何とかして首輪を外したい
6:イスカンダルの勧誘は保留。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
※圭一と会話できたかは不明です。
※梨花とウルフウッドの仲について察したようです。
※別世界から呼ばれたということを信じました。
※会場のループを知りました。
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康 腕に○印
[装備]:なし、包帯
[道具]:支給品一式×3、インデックスの修道服@とある魔術の禁書目録、ミッドバレイのサクソフォン(内蔵銃残弾100%)@トライガン・マキシマム、
蓮の杖@とある魔術の禁書目録
[思考・状況]
1:誰と組みたいか、誰についていくかを決める。
2:必ず生き残る。
※王の財宝の使い方(発動のさせ方)を分かっていません。(説明書もありません)
※ウルフウッドを信頼、けどちょっとむかつく。
※電車に誰か(橘あすか)が乗っているのに気づきました真紅に気づいたかどうかは不明です。
※サクソフォンの内蔵銃に気付いていません。
※スタープラチナに適正を持っています。僅かな時間ですが時止めも可能です。
※スタープラチナを使えないことに気付きました。落としたことには気付いてません。
※ルフィと情報交換しました。
※別世界から呼ばれたということを信じました。
※会場のループを知りました。
【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン・マキシマム】
[状態]:全身の数箇所に浅い傷、腕に○印
[装備]:デザートイーグル50AE(4/8 予備弾29)、包帯
[道具]:基本支給品(地図と名簿は二つずつ、一式×2)、SPAS12(使用不能)チーゴの実×3@ポケットモンスターSPECIAL
○印のコイン、AMTオートマグ(0/7)、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×二枚
ロベルタのスーツケース@BLACK LAGOON(ロケットランチャー残弾7、マシンガン残弾80%、徹甲弾残弾10)、ヴァッシュの衣装
AK47カラシニコフ(30/40、予備弾40×3)
[思考・状況]
1:誰と組むか、誰についていくかを決める
2:古手梨花を守る。(別れたなら同行者に託す)
3:ヴァッシュとの合流。リヴィオについては保留。
4:ジュンを殺害した者を突き止め、状況次第で殺す。
5:武器を手に入れる、出来ればパ二ッシャー
※ルフィと情報交換しました。
※自身が梨花の事を名前で読んでる事に気づいていません。
※○印のコインの意味は不明です。使い道があるのかもしれませんし、ないのかもしれません。
※ラッドの再生がミカエルの眼の改造技術に起因するものではないかと推測を立てています。
※別世界から呼ばれたということを信じました。
※会場のループを知りました。
※以下の支給品の5人への分配状況は後続の書き手に任せます。
不死の酒(空瓶)、探知機、通り抜けフープ、 手榴弾×3、ロベルタのメイド服@BLACK LAGOON、ガムテープ、ビニール紐(少し消費)、月天弓@終わりのクロニクル
フシギダネ(モンスターボール)@ポケットモンスターSPECIAL、エレンディラのスーツケース(残弾90%)@トライガン・マキシマム、
二重牙@トライガン・マキシマム
※既に所持済みだった支給品の分配も行われた可能性があります。
*****
動いた。
南劇場の屋根から中央劇場屋根へ移動したミュウツーはそこで2組がそれぞれ逆方向に出て行くのを確認した。
東に行く組と、西に行く組。
ミュウツーとしてはあの時垣間見た集団が別れたのなら好都合だ。あれほどの大人数だ。積極的に殺人をこなす連中とは思えない。
よって、倒しても問題はない。
問題はどちらを追うか。
東に向かった者か、西に向かった者か。
やがてミュウツーは意を決すると、中央劇場の屋根を蹴った。
自分が追い、仕留めると決めた組に向かう為に。
【E-5劇場・中央劇場屋根/1日目 午後】
【ミュウツー@ポケットモンスターSPECIAL】
【状態】:疲労(中)
【装備】:機殻剣『V−Sw(ヴィズィ)』@終わりのクロニクル、アデルの十字槍@BACCANO!
【所持品】:基本支給品一式、不明支給品0〜1個(確認済み)
【思考・行動】
0:当面は様子を見つつ、ギラーミンのいう『ノルマ』をこなす。
1:マスター(カツラ)を救う為、24時間以内に参加者を32人以下まで減らす。
2:中央劇場から出た2組のどちらかを追う。
2:隙を見て参加者に攻撃を加える
3:男(ラッド)には殺害数を稼いで貰う。殺すのは後回し。
4:魅音かハクオロが細胞を移植し、自分を追ってきたら相手をする。 魅音の死に気づいていない?
5:イエローを殺した相手を見つけたらたとえ後回しにしたほうが都合がよさそうでも容赦しない。
6:もしギラーミンの言葉に嘘があったら……?
※3章で細胞の呪縛から解放され、カツラの元を離れた後です。
念の会話能力を持ちますが、信用した相手やかなり敵意が深い相手にしか使いません。
※念による探知能力や、バリアボールを周りに張り浮遊する能力は使えません。
※名簿を見ていないため、レッド、サカキの存在を知りません。
※ギラーミンに課せられたノルマは以下のとおり
『24時間経過するまでに、参加者が32人以下でない場合、カツラを殺す。
48時間経過するまでに、ミュウツーが優勝できなかった場合も同様。』
※カツラが本当にギラーミンに拉致されているかは分かりません。偽者の可能性もあります。
※V−Swは本来出雲覚にしか扱えない仕様ですが、なんらかの処置により誰にでも使用可能になっています。
使用できる形態は、第1形態と第2形態のみ。第2形態に変形した場合、変形できている時間には制限があり(具体的な時間は不明)、制限時間を過ぎると第1形態に戻り、
理由に関わらず第1形態へ戻った場合、その後4時間の間変形させる事はできません。
第3形態、第4形態への変形は制限によりできません。
※男(ラッド)と戦った相手が「左腕が刀になる女」であると知りました。
※ブレンヒルトの場所は見失っています。
※ギラーミンから連絡のないことへの疑問、もしカツラが捕まっていないという確証を得られたら?
※なぜギラーミンの約束したカツラからの言葉が無くなっていたのかは不明です。
8のタロット、力または剛毅とも呼ばれる。
逆位置の意味は『放棄、自信喪失』また『過信、自意識過剰』。
正位置の意味は『意志、信念、努力』。
投下終了です。多数の支援ありがとうございました。
意見、感想、矛盾点など是非お願いします。
情報が著しく多く、整理しきれなかったかもしれないので些細な点も是非お願いします。
投下乙
何でワンピキャラ死なないの
投下乙
レッドの死に関わる二つのショックからレナとチョッパーが立ち直るところが個人的に良かった
○同盟はまた大きくなったが、効率的とはいえまた二手に分かれるか
今回は梨花やらニコラスやら英雄王やらいろんな人物を巻き込むことになったが次はどうなることやら
そしてまたも最後は観察されて終わるか
確かに情報は多かった
それでもしっかり纏まってて良かったと思うが
しかしミュウツー、予約されてたの忘れるくらい出番少なくてちょっと笑った
>>8で2文目の上から2行目
「主催者を妥当」になっているが打倒じゃないか?
投下乙です
数が増えるのは不吉だけど二手に分かれるのか
投下乙
圭一の死についてレナの描写があんまりなかったのがなんとも
我様、王の財宝入手かと思ったけどナシか。
宝具って魔力感知出来なかったっけ?
ワンピ死ねよ
なんか最近人少ない気がする
まあそれはともかくロベルタに予約が来てるな
ワンピ死ねー
何でワンピ死なないの?
夏休みもはじめだといろいろ忙しいから人も少ないのかもね
短いですが、ロベルタ投下します
「判断を誤りましたね」
無残にも崩落した橋を前に、ロベルタは呟いた。
B-4エリア南端、5つのエリアを横切る川の北岸。
詩音をその手にかけたロベルタは、更なる標的との遭遇を求めて市街中心部を目指していた。
山頂付近から移動を始め、西端から東端へ通り抜け、キャンプ場を経由して湖へと至ったのだ。
そこからの移動で西進を選ぶのは当然であり、川に沿って橋を目指すのは必定だ。
誤算だったのは、今から4〜5時間前ほどに橋が破壊されていたということである。
「無理にでも鉄橋を渡っていればよかった」
このフィールドでは全部で六箇所に橋が架けられている。
B-4、E-8、F-2、F-6エリアの人間用の橋。
F-1からF-2にかけてと、C-5エリアに設営された鉄道用の橋。
ここにくる直前、ロベルタはC-5エリアの鉄橋の前を通り過ぎていた。
そのときは列車の運行と重なることを懸念し、迂闊にも素通りしてしまった。
もし最初からここの橋が落ちていると知っていれば――
ロベルタは縁に立ち、橋の破壊状況を観察した。
橋は、何かしらの物理的な衝撃によって崩壊させられたらしい。
間違っても自然に壊れたわけではない。
周辺には血痕が残されており、ここで戦闘が行われていたことを物語っている。
死体が見当たらないのは、死者を出さずに終わったのか、或いは死体を片付けたのか。
橋の破壊と血痕が無関係である可能性もあるが、どちらだろうとロベルタには関係のないことだ。
「爆破……でしょうか。あるいは砲撃を……」
ここに至るまで、ロベルタが出会ってきた人間は、ある意味で尋常の範疇にいる者ばかりであった。
ハナハナの実。
月霊髄液。
不死者。
名前も知らない異能の数々。
このように、超常的な能力と交戦したこと自体は少なくない。
しかしそれらの持つ破壊力は、一個人が成しえる限度を越えるものでは決してないのだ。
故にロベルタは誤認する。
この破壊は何かしらの兵器によってもたらされたものであると。
兵器にも匹敵する威力を叩き出す『個人』がいるなど、夢にも思わずに。
「渡ろうと思えば不可能ではないのでしょうが……」
橋は崩落させられた。
だが、橋を構成していた建材が消えてなくなったわけではない。
多くは巨大な残骸として川に落ち、水面から氷山のように突き出ている。
小さな残骸は流されるなり水面下に沈むなりしているだろうから、こうして見えているのは安定した巨塊だけのはず。
うまく足場を選べば向こう岸まで渡れるだろう。
しかしロベルタは瓦礫に飛び移ろうとしなかった。
仮に落水してもずぶ濡れになるだけ――けれどそれが致命的。
濡れた服は身体に貼り付き、行動を著しく阻害してしまう。
それは一瞬を争う戦場では大きな痛手となるミスだ。
なるべくリスクの少ない手段を選びたい現状、それは避けたい。
強引な渡河は最終手段だ。
「……」
ロベルタは周囲を見渡した。
辺りの風景と、頭に叩き込んだ地図の内容を比較していく。
地図が正しければ、このまま西に行けば最初の場所へ戻るはずだ。
北へ行けば、かなりの遠回りになるが、市街地の中心へいくことは出来るだろう。
来た道を戻って、危険を承知で鉄橋を渡るのも選択肢の一つではある。
「……あれは」
ふと、ロベルタの目に奇妙なものが映る。
対岸の河原――ちょうど橋の真下にあたる位置。
そこにちょっとしたトンネルのような穴が開けられていた。
水の流れを見るに、川へ排水しているのではなく、川からの水がトンネルに流れ込んでいるようだ。
いわば地下水路への取水口。
ロベルタはしばし口を閉ざし、やがて地面を蹴って宙に身を躍らせた。
メイド服が風を孕み、横帆のように膨れ上がる。
落下距離はおおよそ2,3メートル。
なだらかな放物線を描き、ロベルタは川面から突き出したコンクリート塊に着地する。
十トンは下らない質量は落下のエネルギーを受けきり、期待通りの足場となってくれた。
しかし次なる残骸は難物だ。
元は路面であったらしい、アスファルトの壁。
――そう、壁だ。
今の足場は垂直に突き刺さっているため、上面に着地するのは容易であった。
だが、目の前の残骸は大きく傾いてしまっている。
それでもロベルタは止まらない。
圧し折れた断面から更に跳躍。
人間の限界に近い幅を跳び切って、黒い壁面に足を突く。
ず、と滑り落ちる感覚。
60度に達しようかという急傾斜は、さしものロベルタといえど容易に踏み止まれるものではない。
しかしロベルタは平静を失うことなく、黒鍵を抜刀。
アスファルトの路面に生じた亀裂に切っ先を突き立て、滑落を強制的に停止させる。
傷が鋭く痛んだが、無視できないほどではない。
黒鍵の柄を握る両手を基軸に身を引き上げ、拵えを踏み台にして最上端へと駆け上った。
足を止めることなく、水面から僅かに覗くコンクリートへ跳び移る。
ここまでくれば難所はない。
ロベルタは軽やかな身のこなしで対岸へ辿り着き、橋の直下に立った。
「やはり――ただの水路にしては大きすぎる」
こうして近付いてみると、その大きさに改めて驚かされる。
まるで川の支流が丸ごと地下に流れ込んでいるかのような規模だ。
トンネルは高さ3メートルを優に越え、水路の両脇には広めの通路が用意されている。
しかし規模に反して、かなり見つけにくい造りになっているようだ。
川岸の一部が凹型にへこみ、奥まった場所にトンネルの入り口がある構造のため、
正面から見据えでもしない限り、穴を目視することができない。
加えて橋や土手の影が常にへこみを覆い隠し、可視性を更に低下させている。
ロベルタが水路を発見できたのも殆ど偶然である。
橋が架かっていた頃は発見不可能に近かっただろう。
「KEEPOUT……ですか」
トンネルの入り口は、腰の高さほどの柵で塞がれている。
柵の片隅には、申し訳程度に立ち入り禁止の看板が提げられていた。
簡単に乗り越えられる柵しか用意せず、立ち入り禁止とはよく言ったものだ。
ロベルタはデイパックから照明を取り出し、水路の奥を照らそうとした。
深い――
光は最奥まで到達せず、無機質な水路を照らすだけ。
これでは先の様子は見当もつかない。
だが、この奥に『何か』があると、ロベルタの直感は告げていた。
問題は、その『何か』が何であるのかということだが。
「さて……」
ここは考えどころだ。
対岸へ渡ったのだから、当初の目的通り市外の中心を目指すべきか。
――彼女は知らない。
目と鼻の先に殺すべき者達がいることを。
それとも、川を遡って北西の山間部へ戻ってみるべきか。
――彼女は知らない。
サカキがそこで息絶えていることを。
或いは、目の前の未知なる空間へ進んでみるべきか。
――彼女は知らない。
地下空間の可能性に関する全てを。
ロベルタはゆっくりと目を瞑り、そして己の行くべき道をまっすぐに見据えた。
【B-4 川 南岸/一日目 午後】
【ロベルタ@BLACK LAGOON】
[状態]:メイド服を着用 薬物依存、疲労(中) 右腕に切り傷(応急処置済み) 、肋骨にヒビ、腹部にダメージ小、眼鏡なし 、
[装備]:パ二ッシャー@トライガン・マキシマム(弾丸数60% ロケットランチャーの弾丸数2/2) コルト・ローマン(6/6)@トライガン・マキシマム
投擲剣・黒鍵×4@Fate/zero
[道具]:支給品一式×3(水1/4消費)、コルト・ローマンの予備弾35 グロック26(弾、0/10発)@現実世界
謎の錠剤入りの瓶@BLACK LAGOON(残量 55%) レッドのMTB@ポケットモンスターSPECIAL
パ二ッシャーの予備弾丸 2回分、ロケットランチャーの予備弾頭1個、キュプリオトの剣@Fate/Zero 、首輪(詩音)
[思考・状況]
1:サカキとのゲームに乗り、殺し合いに優勝する。
2:必ず生きて帰り、復讐を果たす。
【備考】
※原作6巻終了後より参加
※康一、ヴァッシュの名前はまだ知りません。(よって康一が死んだことも未把握)
※詩音を『園崎魅音』として認識しています。
投下終了です
二つも投下が来てる!二人とも乙です!
>>力-Strength-
レッドの死についてのライダーの言葉がよかったです。
そして見た目は子供、頭は大人な梨花と
見た目は大人、頭は子供なニコ兄の駆け引きも面白かったわぁ。
久々に和やかムードなお話だった気がするね。
でも、上でも出ていたけど圭一の死に対するレナと梨花が意外にさっぱりしてた印象が。
まぁ、状況が状況だし落ち込んでいる暇もないか。
>>within spitting distance
ロベルタ、大分頑張って移動したなぁ。
そして発見された新たなる地下への入り口。
舞台は段々と地下へと移っていくのか・・・?
ロベルタにとって一番すばやくゲームを終わらせるのは、どの選択肢なのか。
続きが楽しみだな。
今更ながら感想を。
>>力-Strength-
仲間の死を知り嘆くチョッパーとレナ、それを一喝するライダーに、立ち直る二人。
この流れが良かった。
意外とわがままなことを言う梨花と不器用なニコ兄のコンビも良い味出してる。
そしてそれらをつまらなそうに見てる我様もw
大きなグループになりそうだったけど、ここでまた別れるか。
果たして吉と出るか凶と出るか…。
どういうメンバー構成になるかも重要だ。
そして何気に気になるのが武器を手に入れたチョッパーとニコ兄。
特にチョッパーは守る力にも壊す力にもなりえるから今後が気になるところ。
続きが気になる良い繋ぎでした!
しかしミュウツー、最近オチに使われっぱなしだなw
それとレナのことに関しては、自分はあまり気にならなかったけど
原作では意外と冷めたところもある性格だから
今回みたいな感じもありかも知れない。
けどロワ内では仲間のことを気にかけてたから、ちょっとした描写は加えた方が良いかな?
続きを書く書き手さんに心理描写を任せると言う選択肢もアリ?
>>within spitting distance
ロベルタも2択か。
どちらに行くかでまた大きく展開が変わりそうだなぁ。
地下には人は集まらなそうだが果たして…。
新しい予約もきたし、そっちの動きも期待!
WORKING!アニメ化おめでとう
心底どうでもいい
WORKINGアニメ化か
YGだと三作目か?
4コマ日常系?だからヒットはしなさそうかなー
らきすたやけいおんという前例があるからわからんぞ。
プロデュース次第だ
WORKINGアニメ化か!
○ロワ住人としては要チェックだな。
そしていつの間にか予約が増えている……!
ワンピキャラはいつになったら死ぬの?
あの様々な変態達が動いているのが見れるのかw
ロワに出ていないキャラたちも個性的だから楽しみだな
しっかしworkingアニメ化か、
アニメ化も7月からうみねこで10月からが超電磁砲
映画も年末から春に掛けてワンピース、トライガン、Fate(Zeroじゃないけど)、ドラえもんと
立て続けにあるし楽しみだ。
そして予約が3つ!
しかも久しぶりの予約の人もいるし楽しみ
予約が3つ…だと!?
しかもあの人は年の差コンビを作った人じゃないか!
wktkwktk
ドラえもんなんてもう全滅してんだから、映画しようが関係ないじゃん
>>52だって、楽しみって言っても別に見に行くわけじゃないんでしょ?
細かいことは気にしない気にしない。
別にアニメや映画の事にしただけで
あずまんがの新装版とかひぐらしテイブレイクの漫画化ってのもあるんだし
とりあえずさ、笑おう。
ワンピースだって誰も見ないでしょ
不人気作品だし
ベッドインはまだですか?
てかマジメに疑問なんだけど
何でここの人達はワンピースなんか擁護してるわけ?
ワンピースなんて、一部の信者スレ以外ではボロクソに叩かれてるのに
信者の自演?
予約が3つもきてるw
書き手万歳!
ねえなんで無視すんの?
図星付かれて焦ってんの?
なにげにドラマCDとかたなし君の声が違っている
中の人、ルルーシュと一緒になるのかw
あわよくば使おうとしてた新庄・伊波=カミュ・ユズハの
中の人ネタは無理そうだな
そうやって都合悪い意見は黙殺するわけか
とことん腐ってるな
あ、我様と対峙中のカズマが圭一と同じ声だw
ワンピ死ね
ワンピ死ね
あと中の人が同じなのは真紅とアルルゥか、
とりあえずはつながりは今の所無さそうだけど
他には
ウルフウッドと遠坂時臣
クーガーとくんくん
悟史とニース
作中に使えるかは別にして結構いるよね。
中の人ネタになりそうだな
ワンピ死ね
ワンピ死ね
ワンピ死ね
そろそろアク禁にした方が良いんじゃない?
ワンピ死ね
ワンピ死ね
>>74 アク禁ってできるの?
どうやってするんだ?
ミュウツー、ライダー(征服王イスカンダル)を投下します
前にニキビAA張りまくって2chアク禁された恥さらしがいたね、ここ
その時と同じでいいんじゃね
きたー!支援
街の静寂を引き裂いて、鋼鉄の騎馬が駆け抜けていく。
進路は西へ、唸りは空へ。
けたたましく響き渡る轟音はさながら獣の咆哮だ。
そして規格外の産物たるV-MAXを駆るライダーもまた、人類の枠に収まらぬ体躯を誇っている。
向かい風にはためくは豪奢かつ壮麗な赤い外套。
現代技術の粋を集めたモンスターマシンを駆るには些か古風な趣である。
様々な面で存在を誇示して止まぬ騎英の姿は、この無人の街においてあまりにも目立ちすぎていた。
(だからこそ、都合がいい)
V-MAXから遅れること百メートル余り。
ミュウツーは一定の距離を維持してライダーを追跡していた。
劇場の集団が二手に分かれたとき、ミュウツーは彼らの意図をすぐには理解できなかった。
あれだけの人数がおりながら、西へ向かうのがたった一人とは。
決別でもしたのか、とまで考えを巡らせたが、すぐに納得のいく理由を思いついた。
一人とそれ以外――この分割によって、戦力の均等な配分が実現されているのだ、と。
こんな状況で単独行動を選んだということ自体が、己の力量への自負を証明しているのだろう。
それはつまり、
東に向かった者か、西に向かった者か――
直前に掲げたこの選択肢が、次のように変化するということだった。
大人数と戦うか、強力な個人と戦うか――
容易には天秤に掛けられない比較である。
どちらにもメリットとデメリットが存在し、確実な答えなど有り得ない。
その上で、ミュウツーは後者を選んだ。
サイコウェーブの発動が自由にならない以上、複数の敵を一度に処する手段は限られてくる。
ならば一対一のほうが不利な要素が少ないだろう。
ミュウツーはそう考え、ライダーの追跡を選択したのだった。
(だが、移動中に追いつくのは難しいか)
画一的な造りをした、背の低いビルの屋上を駆けながら、ミュウツーは前方を行く騎英を睨んだ。
百メートル。
百十メートル。
百二十メートル。
彼我の距離がじりじりと開いていく。
どうやら、相手は速度を落として走行しているようだ。
それでもなお、ミュウツーの脚では追いきれないほどのスピードを維持している。
このままでは置き去りにされるのも時間の問題だ。
だが、それでも構わない。
元より追いつけるとは思っていなかった。
可能な限り追跡し、奴がどこを目指しているのか把握する。
そこまでやり遂げられさえすれば、後は容易い。
(この方角……あそこか?)
ミュウツーは西方にそびえる建造物を見やった。
E-3エリア、地図ではホテルと記名されている建物だ。
或いは、E-2エリアの駅か。
どちらも目的地としては絶好の目印ではある。
むしろ北ではなく西を目指す時点で、行き先はこの2箇所に絞られたも同然だろう。
残る問題は、どこで停止するかということだけだ。
ミュウツーは屋上の縁を蹴り、空中に身を躍らせた。
◇ ◇ ◇
「まだ追ってきとるようだな」
V-MAXの操縦を右腕に任せ、ライダーは左手の探知機に視線を落とした。
探知機に表示される光点はおおよそ二十。
そのうちの一つが、画面中心からいつまで経っても離れない。
表示の中央は探知機の位置を示しているので、誰かが追跡してきているということだ。
ライダーは不敵に口元を綻ばせた。
「そろそろ頃合か」
誰かが追跡してきているのは、探知機によって早い段階から確認している。
ライダーはそれを承知の上で低速運転を続けていた。
V-MAXが本来のスペックを叩き出せば、生身の相手に追尾を許すものではない。
地上の移動において勝りうるのは、彼自身の宝具たる『神威の車輪』くらいのものだろう。
では何故それをしなかったのか?
理由は単純。
半端に振り切ったのでは、未練がましく後をつけられる危険がある。
レナ達によると、グラハムはE-3エリアで片目の男の足止めを請け負って以来、戻ってこないのだという。
一方、探知機を見ると、E-3エリアにあたる部分には光点がひとつだけ表示されていた。
この結果は、グラハムの状況が抜き差しならないものであることを物語っている。
恐らくは片目の男と戦って負傷し、まともな身動きができなくなっているのだろう。
そんなところに追っ手を案内するなど出来るわけがない。
どうにかして、完膚なきまでに置き去りにしてやらなければならないのだ。
「そらっ!」
ライダーは強引にハンドルを切り、ビルの間の細い道に車体を滑り込ませた。
遠心力を筋力で捻じ伏せ、壁面に肩を擦りながらもバランスを安定させる。
『ライダー』のクラスが彼に与えた騎乗スキルはA+。
これは事実上最高峰の値であり、竜種を除く全ての獣と乗り物を自在に操ることができるランクである。
自動車、バイク、航空機――
たとえ征服王イスカンダルの生きた時代には存在しなかった乗り物であろうと、それを駆るに不自由はない。
人間が辛うじてすれ違える程度の道を、弾丸の如く走り抜ける鋼鉄の獣。
ライダーの膂力によって制されるそれは、迷路のように曲がりくねった道を、殆ど減速することなく疾走し続けていた。
浮き上がる前輪を腕力で押さえ、猛馬も同然に猛る後輪で路面を加熱し、直角の方向転換という不条理を実現する。
このモンスターマシンを言い表すにあたって、獣という表現ほど適切なものはないだろう。
デフォルトの状態で一四〇馬力もの圧倒的出力を誇るYAMAHA・V-MAX。
その出力を更に強化し、出力二五〇馬力オーバーを実現した怪物がライダーの駆る怪物の本性だ。
無論、二五〇馬力の二輪車など物理的に走行不可能である。
人間がこれを操縦しようとすれば、タイヤが路面を掴み切れずスリップするか、即座に前輪が跳ね上がり搭乗者を振り落とすかのどちらかだ。
まさしく、常人には背を許さぬ魔性の騎馬。
ライダーはその怪物を、条理を逸した筋力で力任せに組み伏せていた。
「ほォ……追い縋るか」
背後からの気配を感じ取り、ライダーは楽しげに笑った。
V-MAXの速度は既に生物の限界を越えている。
この速度差はもはや埋められるものではあるまい。
互いの距離は既に八百メートルは下らないはずだが、それでも諦めないとは大した執念だ。
もしくは、強引なコーナリングを強要されるこちらに対し、ビルの屋上を直線的に追えば良いと踏んだのか。
「良いだろう、相手にとって不足はない」
ついてくるのであれば、むしろ好都合。
倒してしまえば追いかけられることも有り得ない。
横道を抜け、比較的幅の広い道路に出る。
それと同時に、ステアリングの限界に迫る弧を描き、方向を反転させつつ道路の中央に停止した。
路面にはタイヤの擦れた跡が巨大な円弧となって残り、ブレーキングの凄まじさを物語る。
停止からしばし。
ライダーの右前方に建つビルの屋上に、異形の陰が降り立った。
「人ではない、か」
逆光を背負うその容貌は、明らかに人類のそれではない。
白色と紫色の皮膚。
爪が存在せず、数も人とは異なる指。
鞭のようにしなる尾。
『それ』が向けてくる敵意に、ライダーは揺るがぬ視線を以って応えた。
◇ ◇ ◇
呼吸を整え、ミュウツーは眼下の標的を見据えた。
現在位置はD-4エリア南西。
当初の推定から大きくずれている。
(何を考えているんだ……)
ミュウツーにとってライダーの急な北進は想定外であった。
追尾を振り切ろうとしての行為だというのは分かる。
西を目指していたが、追跡されていたので振り切るために進路を変えたのか。
そもそも西へ進んでいたこと自体がフェイクで、真の目的地は北にあったのか。
そこが分からなくなってしまった。
(まぁいい、ここで仕留めれば同じことだ)
ミュウツーは十字槍を構えた。
先ほどの急転で無駄な体力を消耗させられた。
狙うは短期決戦だ。
屋上の端に足を掛け、斜め下方へ跳躍。
念力による加速を乗せて十字槍を投げ放つ。
それと同時に念のスプーンを作り、未だ二輪車に乗ったままのライダーへ吶喊する。
乗車したままでは回避は困難で、十字槍を防げばスプーンへの対処が遅れる二段構え。
ミュウツーはこの一撃で勝負を決するつもりであった。
(――――!)
しかし、ライダーの取った行動はミュウツーの想定を超えたものだった。
エンジンを唸らせ、膨大なトルクを持て余すことなく路面を把持。
脚を掲げる騎馬の如く、前輪を大きく振り上げた。
車輪が十字槍の柄を打ち、見当違いの方向へと跳ね飛ばす。
「せいッ!」
手綱を振るうように車体を路面に押し付けるライダー。
行き場を求めていたエネルギーがアスファルトを摩擦し、V-MAXを急加速させる。
(くっ……)
このまま攻撃を続けても空を切るだけと判断し、ミュウツーは咄嗟に減速へ転じた。
ミュウツーの真下を高速の鉄塊が通り過ぎる。
初撃はうまく回避されたが、目の前にはビルがそびえているのだ。
停止するにせよ、方向転換するにせよ、そこに隙が生じるに違いない。
弾かれた十字槍を手元に引き寄せて、着地と同時に後方へ向き直る。
瞬間、凄まじい破砕音が響き渡る。
ミュウツーは唖然と、その惨状を傍観した。
ビルの一階に備えられていたショーウィンドーが無残にも粉砕されている。
割れた、という表現では生易しすぎる。
高速で襲い来る超質量によって破壊され、破砕され、蹂躙されたのだ。
勢いを殺しきれずに突っ込んでしまったのか――
(――いや)
これは誘いだ。
戦場を屋内へ移そうという魂胆だ。
ミュウツーはV-MAXが破り抜けた穴を潜り、ライダーの後を追った。
あえて戦場を変えようというのだから、何かしらの策があるのだろう。
だからといって、撤退しようという考えは今のミュウツーにはない。
床に落ちたガラス片を十字槍で払う。
ビルの内部にはライダーの姿もV-MAXも見当たらなかった。
大方、屋内では邪魔になる車体はデイパックに片付けてしまったに違いない。
停車しなかったのは破壊されるのを防ぐためだろう。
(誘い込んだからには、必ず何か仕掛けてくる。
いざとなれば――……)
ミュウツーはデイパックに視線を落とした。
残された最後の支給品――
今まで使いどころがなかったが、こうした場では特に有効なはずだ。
十字槍を右手に、念のスプーンを左手に。
ミュウツーはビルの上階を目指して階段を駆け上がった。
ライダーがどこにいるのかは見当もつかない。
しかし、相手から攻撃を受けるまで立ち尽くしているのではただの間抜けだ。
敵の目論見が分からないのなら、こちらの目論見を押し通すまで。
即ち、見つけ出して、斃す。
集団から離れた相手との一対一はまさしく好機。
今を逃せば次にいつ巡ってくることか。
滑るように階段を昇り、三階の廊下へと辿り着く。
ここにもライダーの姿はない。
(どこだ……)
焦燥にも似た感覚がミュウツーの胸中に湧き上がる。
まさか、ビルに飛び込んだことそのものが罠だったのではないか。
屋内へ誘い込むと見せかけて、逃走の時間を稼ぐつもりだったのではないか。
しかしミュウツーは、その疑念を思考から振り払った。
奴と対峙したときに交わした視線は、そんなことを考えている人間のものではなかった。
死力を尽くした戦いを望む眼差し。
逃走ではなく闘争を求める意志。
そこに揺らぎはないはずだ。
ミュウツーが更に上階を目指そうとした瞬間、廊下の窓ガラスが一斉に激しく振動し始めた。
万の猛禽が羽撃いたかのような音の連鎖に、ミュウツーは思わず顔を上げた。
大気を捻り唸らせ、波濤の如く鳴り響く重低音。
床材のリノリウムまでもが細かく打ち震えている。
聞き違うはずがない。
かの騎兵が駆るモンスターマシンの咆哮だ。
(――まさか)
ミュウツーは槍とスプーンを構えた。
鋭く見据えるは廊下の奥先。
この階に二つある階段のもう一方。
(そう来るか!)
異形の足が床材を蹴る。
放たれた矢のように疾走するミュウツー。
その目線は、向かいの階段のある角へ向けられていた。
迎撃が間に合うとすれば、機先を制して潰すのみ。
鋼鉄の騎兵が成さんとする次の一手は、それほどまでに常軌を逸している。
(くっ――――)
階段まであと数歩まで迫った瞬間、防火扉が根こそぎ千切れ、廊下の窓を突き破った。
最初に見えたのは、扉を破壊した豪腕。
たなびく外套。
赤銅の鎧。
笑う貌。
そして黒と白銀で彩られた、鋼の騎馬――
「――待たせたな、異形よ」
あろうことか、ライダーはV-MAXに騎乗したままでミュウツーを追い詰めに掛かったのだ。
エンジンから伝達される出力が車輪を豪転させ、滑らかな廊下を駆ける推力を生み出す。
爆発的な加速力が容赦なく牙を剥く。
路上の疾走には及ばぬものの、ミュウツーとの距離は僅かに数歩。
致命的なまでに近過ぎる。
ミュウツーはV-MAXの直進を見るより早く、横へと飛び退いていた。
それでもなお、間に合わない。
猛獣の跳撃にも似た接敵は秒の単位を下回り、人間の反応速度をも凌駕する。
ミュウツーが次に知覚したのは、右腕に走る激痛であった。
(掠ったか……!)
圧し折れた十字槍の残骸が廊下に飛び散る。
高速で動く質量はそれだけで充分な威力を有した武器となる。
しかもライダーとV-MAXの合計重量は、実に四百五十キロにも達するのだ。
そのような怪物の突進を受けては無傷で済むはずがない。
だが、ここは決して広くない廊下である。
柔軟性に欠けるV-MAXの車体では方向転換すら不可能だ。
しかし『ライダー』の象徴たる騎乗スキルは、そんな条理すらも捻じ曲げる。
「はぁッ!」
ライダーの脚が床を打つ。
V-MAXの莫大な出力とサーヴァントの脚力の合力は、車体後部を紙細工のように浮き上がらせた。
同時にステアリングを限界まで酷使し、強引に車体を捻る。
前輪は廊下に、後輪は壁に。
三次元的なドリフトという奇跡の果てに、V-MAXはついに百八十度の方向転換を果たし遂せた。
もはや技量の巧拙で語ることができる次元ではない。
人外の存在が人間の道具を使えばどうなるか――まさしくその実例であった。
ミュウツーは身を翻し、スプーンに右手を沿えた。
狭い廊下という戦場は互いの回避行動を大きく阻害する。
先ほどの回避は幸運の賜物だ。
欲を出して次も避けようとすれば、間違いなく深手を負わされる。
(反撃――……いや)
支援
確かに凄まじい威力の突進だが、対処する手段は幾らでも思い浮かぶ。
変幻自在のスプーンであれば、先手を打ってV-MAXとライダーへ同時に攻撃することもできる。
バリアを張れば突撃を受け止めることも不可能ではないだろう。
ただしそれらの前提として、後先を考えなければ、と付くのが泣き所だ。
スプーンで仕留められる保証はなく、バリアを破る手段を持ち出される危険性も否定できない。
勝率が低いわけでは決してない。
事実ミュウツーは、渾身の一手で迎え撃てば六割方は押し勝てると踏んでいた。
しかし今は、残りの四割を無視してよい頃合ではない。
初撃をしくじった時点で――いや、追跡を見抜かれたと気付いた時点で、この獲物は諦めるべきだったのだ。
生き残れなければ全てが終わりなのだから。
(それなら!)
ミュウツーは念のスプーンを解除し、デイパックに腕を突っ込んだ。
V-MAXの排気筒が爆音を吐き散らす。
迫り来る黒銀の騎馬。
工学的限界を超えた加速力は、数秒と掛からず間合いをゼロにすることだろう。
「――ぬ?」
加速するV-MAXの上で、ライダーはその異様を見た。
ミュウツーが急に武装解除したかと思うと、デイパックから『扉』を引きずり出したのだ。
後ろ手にドアノブを掴み、通り抜けられる最小限の分だけ扉を開く。
開かれた隙間の向こうには、屋内には有り得ない風景が広がっていた。
アスファルト舗装された道路と、規則正しく立ち並ぶ街灯。
電線が交差する空にそびえるビルディング。
その扉は明らかに『外』へと通じていた。
ミュウツーの意図を察し、ライダーはV-MAXを更に加速させる。
しかしV-MAXの車輪が標的を捉えるより早く、ミュウツーは扉の向こうへと姿を消した。
そして扉そのものも空気に溶けるようにして消失する。
数瞬遅れ、ミュウツーがいた空間を貫くV-MAX。
戦闘の幕切れは、あまりにも呆気ない形であった。
◇ ◇ ◇
「逃したか」
廊下の突き当りまでの距離を全て費やして停止した後、ライダーは残念そうに振り返った。
アッサリと誘いに乗ったものだとは思っていたが、やはり脱出する手段を用意していたのか。
やはり、生き残りが半数近くなるまで生き延びていただけのことはある。
用心深さは折り紙つきなのだろう。
「まぁ……一応の目的は果たせたようだからな。それで良しとしよう」
ライダーは探知機の表示を確認しながら、そう呟いた。
今まで誰もいなかったエリアに、突如として光点が一つ現れていた。
方角はグラハムともレナ達とも違う向きで、距離もそれなりに離れている。
これなら追跡は諦めざるを得まい。
本来の目的は、グラハムとの合流前に追っ手を完全に撒いておくこと。
戦って倒すのはその手段のひとつに過ぎないのだ。
「それにしても、只の機械仕掛けでありながら、よくぞ余について来れたものだ。
セイバーめが夢中になるだけのことはある」
忠実な騎馬を褒めるように、V-MAXの車体を撫でる。
エンジンを覆うダミータンクの振動は、さながら駿馬の嘶きのようであった。
◇ ◇ ◇
(間一髪、だな)
見覚えのない街並みの中、ミュウツーは南へ向き直った。
ミュウツーが用いた最後の支給品、それは『どこでもドア』という名の道具であった。
自分がいるエリアを中心とした13エリア内であれば、どこにでも瞬時に移動できるという代物である。
しかし3回のみという使用回数制限があるのと、最大でも2エリア分の移動に過ぎないことから、今まで使用しなかったのだ。
(だが、どこからでも脱出できる扉と考えれば悪くはない。
問題は装備だが……)
肉体的な負傷は、幸いにして右手を強く打っただけだ。
この程度ならすぐに感知するだろう。
問題となるのは武装の損耗である。
今まで主に使っていた十字槍は、V-MAXの牙に掛かって破壊されてしまった。
手の傷よりもこちらの方がずっと痛い。
体力の消耗を覚悟で念による戦いに切り替えるか、あるいは――
(もしかしたら、お前に頼ることになるかもしれない)
ミュウツーはデイパック越しにV-Swを撫でた。
デイパックから出さない限りは声も届かないはずなのに、いつもの調子で『マカセテ』と答えてきたような気がした。
【D-4南西部 ビル3階/1日目 午後】
【チーム名:○同盟ライダー組】
1:主催者の打倒。
2:F-3駅からG-6駅に向かい、映画館、消防署、モールを訪れ21時までにB-4民家へ向かう。禁止エリアの場合H-4、G-4へ。
2:グラハムとの合流
3:サカキ、ミュウツー、片目の男(カズマ)、赤髪の男(クレア)、リヴィオ、ラッド、電気の少女(美琴)を警戒。
クレアという女性、佐山、小鳥遊、アルルゥ、ヴァッシュを信用。アーチャーはやや信用。
ハクオロも一応信用。 真紅は情報不足で保留。
【ライダー(征服王イスカンダル)@Fate/Zero】
[状態]:魔力消費(中)、疲労(大)、腹部にダメージ(大)、全身に傷(小〜中)および火傷(小) 腕に○印
[装備]:包帯、ヤマハV-MAX@Fate/zero
[道具]:基本支給品一式×3 、スモーカー大佐の十手@ONE PIECE
イリアス英語版、各作品世界の地図、ウシウシの実・野牛(モデル・バイソン)@ワンピース、
探知機、エレンディラのスーツケース(残弾90%)@トライガン・マキシマム
[思考・状況]
1:アーチャーより先にバトルロワイアルで自らの軍勢で優勝。
2:レッドの意志を無駄にはしない。
3:首輪を外すための手段を模索する。
4:有望な強者がいたら部下に勧誘する。
【備考】
※ヤマハV−MAXセイバー仕様@Fate/Zeroは図書館入り口に停めてあります。
※四次元ポケット@ドラえもんは図書館の中に放置されています。
※原作ギルガメッシュ戦後よりの参戦です。
※臣下を引きつれ優勝しギラーミンと戦い勝利しようと考えています。
本当にライダーと臣下達のみ残った場合ギラーミンがそれを認めるかは不明です。
※レッド・レナ・チョッパー・グラハムの力を見極め改めて臣下にしようとしています。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
※自分は既に受肉させられているのではと考えています。
※ブケファラス召喚には制限でいつもより魔力を消費します
※アルルゥの存在を知りました。
※現在の魔力残量では『王の軍勢』をあと一度しか発動できません
※別世界から呼ばれたということを信じました。
※会場のループを知りました。
【D-3中央部/1日目 午後】
【ミュウツー@ポケットモンスターSPECIAL】
【状態】:疲労(大)
【装備】:機殻剣『V−Sw(ヴィズィ)』@終わりのクロニクル
【所持品】:基本支給品一式、どこでもドア@ドラえもん
【思考・行動】
0:当面は様子を見つつ、ギラーミンのいう『ノルマ』をこなす。
1:マスター(カツラ)を救う為、24時間以内に参加者を32人以下まで減らす。
2:隙を見て参加者に攻撃を加える
3:男(ラッド)には殺害数を稼いで貰う。殺すのは後回し。
4:魅音かハクオロが細胞を移植し、自分を追ってきたら相手をする。 魅音の死に気づいていない?
5:イエローを殺した相手を見つけたらたとえ後回しにしたほうが都合がよさそうでも容赦しない。
6:もしギラーミンの言葉に嘘があったら……?
※3章で細胞の呪縛から解放され、カツラの元を離れた後です。
念の会話能力を持ちますが、信用した相手やかなり敵意が深い相手にしか使いません。
※念による探知能力や、バリアボールを周りに張り浮遊する能力は使えません。
※名簿を見ていないため、レッド、サカキの存在を知りません。
※ギラーミンに課せられたノルマは以下のとおり
『24時間経過するまでに、参加者が32人以下でない場合、カツラを殺す。
48時間経過するまでに、ミュウツーが優勝できなかった場合も同様。』
※カツラが本当にギラーミンに拉致されているかは分かりません。偽者の可能性もあります。
※V−Swは本来出雲覚にしか扱えない仕様ですが、なんらかの処置により誰にでも使用可能になっています。
使用できる形態は、第1形態と第2形態のみ。第2形態に変形した場合、変形できている時間には制限があり(具体的な時間は不明)、制限時間を過ぎると第1形態に戻り、
理由に関わらず第1形態へ戻った場合、その後4時間の間変形させる事はできません。
第3形態、第4形態への変形は制限によりできません。
※男(ラッド)と戦った相手が「左腕が刀になる女」であると知りました。
※ブレンヒルトの場所は見失っています。
※ギラーミンから連絡のないことへの疑問、もしカツラが捕まっていないという確証を得られたら?
※なぜギラーミンの約束したカツラからの言葉が無くなっていたのかは不明です。
【どこでもドア@ドラえもん】
お馴染みのひみつ道具。
行き先を思い浮かべながら扉を開くことで、その場所に移動できる。
どこにでも無制限に移動できるわけではなく、マップデータのない場所や異次元空間、
10光年以上離れた場所などは目的地に設定することができないらしい。
ロワ内では、MAPに描かれている範囲内かつ、周囲13エリア内のみで移動可能。
13エリアの内訳は、自分がいる1エリア、そこから東西南北に2エリアずつ、
北東、北西、南東、南西に1エリアずつの菱形状。
具体的に選ばなかった場合はランダムに飛ばされる。
地下へ移動できるかは不明。使用限度回数は最大3回まで。
支援
投下終了
支援感謝です
投下乙!
ライダーすげえええ。
V-MAXとライダーを合わせるとこんなに凄いことになるのかw
ライダーの名に恥じぬ一戦でした!
ミュウツーは槍を折られたか。どこでもドアとはまた凄いのをw。
まあ回数制限あるし、所詮は逃げにしか使えんわなあ。運悪けりゃ禁止エリアだし。
ついに概念核兵器の出番か!?
ライダーはグラハムを拾って駅に行けるのだろうか。
改めて乙でしたー
おっと、しまった
ミュウツーの状態表の一部を以下のように変更します
【状態】:疲労(大)、右手負傷(小)
それと、どこでもドアは「禁止エリアは対象外」としたほうがいいでしょうかね?
投下乙ッス。
ライダーとミュウツーの白熱バトル面白かったです。
ビルを舞台にしていつライダーと対峙するのかwktkしながら見てました。
ライダーはレッドの言ったミュウツーに気づいたのか、
グラハムと無事に合流出来るのか
ミュウツーは次は誰と合流するのか楽しみです。
それと指摘って程でも無いですけど、
ライダーの状態表の備考のV-MAXの欄、違ってませんか
投下乙!
V-MAXに乗ったライダーすげえええええええ!w
さすがライダーのサーヴァントだと言わんばかりの内容だ。
それに追いすがるミュウツーも凄い。
扉という単語でもしやどこでもドアかなとは予想したけどほんとに出てくるとはw
それと十字槍が壊れちゃったからV-Swの出番がきそうでwtwk!
どこでもドアはまあ回数制限もありますしどっちでもいいかな?
禁止エリアに間違えて突っ込むリスクも展開次第では面白そうな感じもするけども。
間違っている部分については、後ほどまとめてしたらばで修正しておきたいと思います
指摘はされていませんが、このままだと色々問題のあるミスも見つかりましたので
テレポート使えるのにどこでもドア
瞬間移動がかぶってるw
ミュウツーは時速300km程度なぞ余裕で出せるわけだが。
つ制限
>106
まじで?
まあここにいる人外なキャラは瞬間的に音速超えるようなヤツばかりだけどね
それはねーよ
ちょっとは考えてから物を言え
型月もスクライドもトライガンもギアスもポケモンも
実際余裕で音速超えてるのが出てくるからな
ポケモンで音速超えるのなんて一部だけだろ
少なくともミュウツーが時速300キロなんて初めて聞いたが
スピードスターあるし、作中の描写でもかなりの速さで空飛んでるからそれくらいあってもおかしくはない
それだと「かなり速い」ってだけじゃん
具体的な数字出すから、何か設定でもあるのかと思ったのに
つうかマッハ2のピジョットやカイリューすら及ばない速度だしなミュウツー
それはゲームの話?
ピジョットとカイリューの二匹は設定上、空では最速だったよな。
確かゲームのポケモン図鑑で見たから公式なのは間違いない。
ポケモンは金銀までしか知らないからこれより上がいるかは分からないが…。
能力値の話なら、一番速いのはマルマインだったはず
今はどうなってるのか知らないけど
そういや当時の攻略本で、「一番強いポケモンはフリーザー」って言ってるのがあったけど、
努力値とか当たり前になった今見ると滑稽でしかないな
ミュウツーの素早さの種族値(ステータスの基礎)は130
カイリューやピジョットなんか比べ物にならないくらい早い
設定と数値を合わせて最大数値を出すのは下手すると最強スレ脳と言われるから気をつけるんだ!
>>119 やっぱ確認して調べたが、やっぱ及ばないほど早いなミュウツー
スクライドにおわクロや笛、エネル編以降のワンピース、トライガンにゼロ様など、このロワはぶっちゃけかなり戦力バランス悪いよw
誰が優勝するかで考えたら、ひぐらしキャラ程度じゃあ万馬券なんてレベルじゃないw
ワンピースごときが(ry
バランスいいのなんて単独ロワとかシリーズ物のロワだけ
>>122 原作じゃポケモンは設定的に余裕に音速超え
スクライドやギアス、トライガンとか他は瞬間的に余裕に音速超えとか
そんなのばかりだ
だからバランスとる為に制限付ける。効果は激薄いだが
状態表に訂正を加えたものを、したらばに投下しておきました
具体的な変更点は以下の2つです
・ライダーの備考における、V-MAXの置き場所の記述の削除
・ミュウツーの状態と位置の変更
(前話でレナが「15時くらい」と言っているため、既にD-3が禁止エリアになっている可能性がある)
修正乙です!
お待たせしました投下します
しえん
しえん
「思いのほか……広いわね」
何処かひんやりした空気が流れる病院のロビーで、ポツンと少女の声が響いた。
既に幾人の参加者も訪れ、本来の目的通りに身体を癒したこの場所に新しく訪れた者達。
その一人である『百年の魔女』古手梨花は興味深そうに辺りを見渡している。
目的地である病院には何も問題無く辿り着く事が出来、梨花はほっとしていた。
最も安心できる仲間達が居たのだから、何かあってもきっと大丈夫だっただろうとも思いながら。
そんな事を考えながら梨花は仲間達の声が聞こえる方向に振り返った。
「おー! これだけ大きければ、沢山道具が手に入るぞ!」
「やったね、チョッパーくん」
「……これだけでかいなら煙草ぐらいあるやろ。流石にワイも疲れた。少し休んでもええか?」
「うん、チョッパーくんが道具を集めている間少し休もうかな、かな? でも人が潜んでいるかもしれないし……」
「大丈夫だぞ、レナ。おれも戦えるし。だからゆっくり休んでればいいぞ。疲れてるだろ?」
「……そう、じゃあその言葉に甘えちゃうね。護りはウルフウッドさんがしてくれるだろうし……あ、禁煙だよ?」
「……堪忍しーや。それぐらいええやろ……」
そこには梨花にとって微笑ましい光景が広がっている。
医者であり新たな仲間、トニー・トニー・チョッパー。
旧来の大切な仲間である青い炎、竜宮レナ。
そして梨花をずっと護り続けていてくれたガンマン、ニコラス・D・ウルフウッド。
その三名が今梨花と行動を共にしている者達だった。
結局梨花はウルフウッドとレナの両方を選んでしまった。
理論付けて理由を説明しようとしたものの上手くいかず、梨花の意を汲んだライダーが自ら単独行動を申し出たのだ。
梨花は素直になれず反発するも、結局ウルフウッドに丸め込まれて頬を赤く染めながらウルフウッドに八つ当たりしていた。
しかし結果的には梨花が望むものになり、その時梨花は確かに笑っていた。
その彼女の微笑ましい表情を皆も見て笑っていた。
そして現在に至っている。
梨花は笑いながら彼らの元に向かっていく。
「そうよ。ニコラス。女の子も居るのだから我慢しなさい、レディに失礼でしょう?」
「……何処にそないなもんがおるんや……」
「ここに居るわよ?」
「……なんや、ただのガキやないか」
「ちょっとっ!? 何よそれ!」
「ガキにガキと言って何が悪いんや」
「何をそれ! 失礼というものを知らないの!?」
「あーもうやかまし……だからガキなんやて」
「……ふん」
「静かにしておりゃあ可愛いものの……ったくやかまし」
「……っ」
「……なんや?」
「……何でもないっ!」
「ほんま……わからん」
梨花はウルフウッドの言葉にコロコロと表情を変えていく。
でも、それは何処か楽しそうで。
それを見守るレナとチョッパーまで笑顔が溢れてくる。
「……何か楽しそうだな」
「そうだね……梨花ちゃん凄い笑ってる」
「珍しいのか?」
「……うーん……でもこんな梨花ちゃん始めてかも?」
「レナも見た事ないのか?」
「かな、かな?………………でもよかったね梨花ちゃん。いい人が傍に居てくれて」
「ん、なんだ? レナ」
「何でもないよチョッパーくん」
そう言ったレナの表情は何処か柔らかく。
楽しく笑っている梨花を何処までも優しく見つめていた。
そして、優しそうな表情を向けていたレナを安心するようにチョッパーは見つめている。
そんな何処か優しいものに満ちた微笑ましい光景だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
暗い病院の中で規則正しい足音が響いている。
足音は何処かゆっくりで。
奏でる持ち主の心を何処か表しているようだった、
「よーし、これで必要な道具は集まったぞー。これなら治療も充分できるぞ」
空元気で声を張り上げるのはチョッパー。
治療に使う医療道具を片っ端から集めた結果、チョッパーが望むものは殆ど集まったのだ。
それを持って今はレナ達の下に向かっているのだが何処か気分は晴れない。
満足なはずなのに、これで人を救えると言うのに。
それなのにチョッパーの心は曇ったままだ。
理由はチョッパー自身にも解っている。
自身を変えた人物の死。
そう麦わら海賊団船長であるルフィの死であった。
正直死んだなんてチョッパーは信じたくはない。
いつだって彼は困難を希望に変えてきたのだから。
そんな彼がこんな所で力尽きるなんて……思いたくなかった。
それでも、立ち止まる事なんて出来やしない。
それはルフィが、彼が絶対望みやしないんだから。
だから諦めなかった。
ゆっくりでも一歩ずつ。
チョッパーはしっかりと歩いていた。
大切な、大切な船長の分まで。
しっかりと、ゆっくりと。
彼の分まで仲間を護れるように誓えるように。
だから歩みを止める事は絶対にしなかった。
最後まで船長の遺志を継いだ医師は歩み続けるのだから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……うまい。よーやっと人心地つけたきーするわ」
病院のある休憩室。
ウルフウッドはひとりで酒を呷っていた。
酒は病院から拝借した。何故あったかは知らないが。
レナ達は支給品の分別をするって事で離れている。
そんなこんなでウルフウッドは一人で久しぶりの休憩を取っていた。
アルコールの味が何処か久し振りに感じる。
そして大きくウルフウッドは息を吐く。
本当色々あったと感じて。
何か自分らしくないなと思いながら酒を飲んでいる。
原因は解っている。
古手梨花、小さい彼女のせいだ。
一回助けてしまったせいでずるずるとここまで護っている。
彼女は自分の心にどんどんと入り込んでいって。
どんどん心を抉っていく。
いつの間にか傍に居るのが何か当たり前の様に感じてきて。
ウルフウッドはそう感じた自分自身に驚いて。
大きく頭を振って、気の迷いとそう思って酒をまた呷った。
色々なものを誤魔化し続けながら。
「ニコラス」
そんな時、色々な原因である少女が含み笑いをしながら近づいている。
手にカメラみたいなものを持ちながら。
「私の事、レディじゃないといったでしょ?」
「……いったかいな?」
「言った!」
「さよか」
「どうでもいい風に言わないで!」
「……じゃあどなせいばいいんや」
何故か強く主張する梨花に少々呆れつつもウルフウッドは梨花の言葉を聞き続けていた。
そして梨花は妖しく笑ってカメラをウルフウッドに渡す。
「ふふっ……変わった私見ればその意見は変わるはず」
「……?」
「このカメラのシャッターを押してみて」
梨花は未だに笑いつつウルフウッドを急かす。
これからおきる事を心待ちにしながら。
「……はぁ……まぁええか。押すで」
ウルフウッドはため息をつきながら押そうとする。
その時だった。
「梨花ちゃん待ってー! まだ元になるのが入ってな―――」
レナが慌てて駆け寄ってきたのは。
しかしレナの静止の言葉は叶わず、ウルフウッドはボタンを押す。
その結果。
「……………………はっ?」
「…………………………え?」
何故か、服が消え全裸になった梨花が誕生した。
そのある意味異常な光景にウルフウッドは絶句する。
生まれたばかりの梨花の体。
まな板と表現するべき胸。
ありていに言えば未成熟。
体のあちこちから解る幼さ。
真っ赤に染まり羞恥に震える顔。
そんな梨花の裸にウルフウッドは一言。
「…………………………その……何や……………………まだまだガキやな」
梨花は更に真っ赤になって。
余りの理不尽と余りの羞恥心に目に涙を溜めて。
そしてウルフウッドに全力の怒りをこめて。
「この――――――――ばかぁああああああああ! 変態!!!」
叫びと梨花の掌が激怒に燃えたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……どうしたんだその頬。赤い手形がついてるぞ」
「……………………しらん…………なんでワイがこんな羽目に」
チョッパーがレナ達の下に帰ってきてまず見たのはウルフウッドの赤く腫れた頬だった。
綺麗な紅葉がウルフウッドの頬に咲いている。
原因は梨花のびんたなのだが。
梨花はビンタした後、体を隠しながらレナと一緒に去って行った。
どうやら、きせかえカメラに衣装の元が入っていなかったらしい。
その結果、梨花が裸にひん剥かれたのである。
ウルフウッドは梨花の体に欲情するほど落ちぶれてはいなく、ただの災難でしかない。
酒を呷って大きくため息をつくのであった。
そんなウルフウッドを察してチョッパーが一言。
「…………大変だったんだな」
「同情せんでええ……空しくなるだけや」
そして、もう一度ウルフウッドはため息をつく。
そのまま、二人はたわいもない話をしていてレナ達を待っていた。
大体10分ぐらいたった後だろうか。
レナ達はやっとウルフウッド達の元に戻ってきたのだ。
梨花は何故か身を隠していたが。
だけど、彼女達が変わっていたものが一つ。
「おおっ! レナ、凄いぞっ!」
「ふふっ、ありがとう、チョッパーくん」
チョッパーが歓喜の声を上げレナを褒める。
彼女が変わったものは服だった。
着せ替えカメラで汚れた服を変えていたのである。
レナが選んだのは常盤台中学の制服。
その制服はレナにぴったり似合っていてレナ自身も気に入ってとても上機嫌であた。
となると梨花も変わっているのだが……
「梨花ちゃん? 出てきなよ」
「……恥ずかしい」
「もー……早く出てきなよー恥ずかしくないよー」
「あ、ちょ、ちょっと梨花……」
梨花は何故か恥ずかしがって出て来ない。
レナが梨花を引っ張って無理やり連れて来る。
そして、そのままウルフウッドの方に向けて梨花を突き出した。
「……ぶっ!?」
その梨花の衣装にウルフウッドは驚き口に含んだ酒を噴出しそうになる。
咽ながら、ただ驚いている。
梨花は恥ずかしがって何も喋りはしない。
選んだのは良かったのだが着てみたら余りにも恥ずかしく感じてしまったのだ。
「な、なんや……その服は……」
その服は真っ赤な色をした服。
ひらひらが付いた所謂ゴシックロリータの部類に属する服。
梨花はそんな服を纏っていたのだった。
その姿はまるで人形のようで。
とても幻想的な雰囲気であった。
「……どう?」
梨花は回りながらウルフウッドに衣装を見せ付ける。
恥ずかしさに顔を真っ赤に染めながら。
ウルフウッドは絶句したまま、何もいえない。
「……何かいったらどう?」
何も言わないウルフウッドに少し苛立ちを感じた梨花。
やっぱり着なきゃよかったと思い始めた頃。
「………………………………いいやんないか?」
短くそっけなくぶっきらぼうに彼は答えた。
そして、顔を背ける。
梨花はその返事に少し失望しかけた時だった。
ウルフウッドの顔が少しだけ赤くなったのを見つけて。
「……ふふっ」
そんな彼に少し驚き。
梨花は何故か嬉しくなっていって。
そして笑ったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そんな、ささやかな衣装交換会が終わった後。
梨花はレナをつれて様があるとまた離れていった。
残されたのはまた男二人。
二人は酒を飲みながらもたわいのない会話を繰り返す。
しかしやがて、チョッパーが意を決した様にウルフウッドに聞く。
「なぁ……ルフィはどうだったんだ?」
「……麦わら?」
「あぁ……ルフィは何をやってんだろうナーと思っただけだ」
ウルフウッドはその言葉に思案しつつ考える。
余り行動自体は共にしてない。
その中で彼がやった事。
それを思い出して言葉を紡ぐ。
「せやな………………仲間を思って、そして仲間を護ろうとしていたで」
少なくともルフィは自分達を仲間と思っていたのだから。
最期まで仲間を思ってそして死んだ。
それがチョッパーに対していい返答になるかは解らなかったが。
でも、それが最善の答えだとウルフウッドはそう思ったのだ。
「そうか……ルフィはルフィだったんだな」
チョッパーはそう言って。
酒の入ったコップだけを見つめている。
ウルフウッドは何も言わず、チョッパーの言葉を待った。
そして、幾らかの時間が過ぎた後。
「……………………なら、頑張らないとな」
「……何にや」
「仲間を護ろうとな。ルフィのように。俺は頑張るぞ」
「…………せやな」
そう言葉を交わし。
お互い同時に酒を一気に呷った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「梨花ちゃん……どうしたのかな? かな?」
一方、女の子二人。
梨花はレナを別室につれていた。
レナは戸惑いつつも梨花に真意を問う。
「レナ……もう我慢しなくていいのよ」
「……何をかな?」
そう言う梨花の目は真剣で。
レナは心を見透かされてるような気分になる。
そして、梨花が何を言うかがなんとなく解ってしまう。
「皆の前じゃ素直になれないものね」
「……」
梨花は優しく微笑んで。
レナは表情を歪ます。
次に出てくる名前がわかっているから。
そう
「圭一の事……レナ。もう我慢しなくていいのよ。ここには私しか居ないわ」
前原圭一の事を。
先程仲間を護る為に散った圭一の事を。
梨花は口にする。
「次はレナの番……思う存分……気持ちを言いなさい」
「そ、そんな事ないよ梨花ちゃん……大丈夫、大丈夫だよ」
それでも、レナは我慢する。
梨花の前でも気持ちを伝えようとしない。
隠す事を貫き通そうとする。
「嘘」
それでも梨花は短くそういった。
何故なら。
「もう、泣いているわよ?」
「………………えっ」
レナはもう泣いているのだから。
涙がぼろぼろ流れて、流れて。
とまらない。
「だから………………レナ………………思う存分泣きなさい」
そして、その言葉を契機に
「うわぁ…………あぁ……あぁあぁああぁああああぁああああああああああああ」
子供のように泣き出した。
梨花は優しく抱きしめてその小さな少女をあやす。
「圭一くんっ!……圭一くんっ!…………あぁ……あぁあああああぁああああ」
梨花は知っている。
沢山のループの中でレナが圭一の為にした事。
そして、レナが願った事。
レナの圭一への―――想いを。
「本当は……本当はっ」
レナの願いは本当に……
当たり前のように存在しているような……
「普通に遊んで、普通に笑い合って、……普通に恋をしたかった……!」
日常でしかないのだから。
「もっともっと……沢山っ……沢山!」
それでも、もう前原圭一は存在しない。
ささやかな願いすらもう叶わない。
「なのに叶わないんだよね……もう無理なんだよね…………」
だから、涙があふれて。
あふれて、あふれて。
「約束したかった……けい……いちくんとそんな約束を……ずっと絶対に互いを疑わないって……互いを絶対に信じ合う……そんな約束」
梨花は知っている。
その約束は果たされている事を。
何回も繰り返されたループの先にそれは叶っていた事を。
それでも、それを口にしない。
今は……レナの想いだけで、レナの涙だけでいいのだから。
「でも……それも……もう無理なんだ……圭一……くん……しん……じゃった」
ただ、前原圭一に告げる想いが。
「……あぁ……けい……いち……くん……あぁ…………わ……たし……圭一くんの事が――――」
そして、前原圭一に捧げる涙が。
「あぁ………………うわぁ……ああああああぁぁああああああぁぁぁぁあああああああああああああぁあああ!!!!!!!!!!」
彼に届きますように。
【E-5 病院/1日目 夕方】
【チーム名:○同盟チョッパー組】
1:主催者の打倒。
2:病院で薬や器具を調達。その後遊園地、廃坑、古城跡を訪れ21時までにB-4民家へ向かう。禁止エリアの場合H-4、G-4へ。
2:グラハムとの合流(先発が会えなかった場合)
3:サカキ、ミュウツー、片目の男(カズマ)、赤髪の男(クレア)、リヴィオ、ラッド、電気の少女(美琴)を警戒。
クレアという女性、佐山、小鳥遊、アルルゥ、ヴァッシュを信用。アーチャーはやや信用。
ハクオロも一応信用。 真紅、沙都子は情報不足で保留。
※別世界から呼ばれたということを信じました。
※会場のループを知りました。
【トニートニー・チョッパー@ONE PIECE】
[状態]:腹部と顔にダメージ(中)、全身にダメージ(中) 腕に○印 深い悲しみ、獣形態
[装備]:なし 包帯、ランブルボール×4@ONE PIECE
[道具]:支給品一式×4(一食分、水1/10消費) タケコプター@ドラえもん、 タオル、救急箱、病院で調達した医療道具
[思考・状況]
1:レナや皆を守り抜いてみせる。その為なら……
2:仲間と会いたい
3:グラハムの様子を見る。(別れている為現在実行不能)
4:ギラーミンを倒し、脱出する。
5:イスカンダルの臣下になるかはまだ決められない。
6:川に落ちたゾロが心配。
※レナからはあまり情報を受けていません。圭一たちについての情報は知りません。
※参戦時期はCP9編以降。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康 深い悲しみ 私服 右腕に○印
[装備]: 包帯、デザートイーグル(残弾数6/6)、シェンホアのグルカナイフ@BLACK LAGOON、常盤台中学の制服
[道具]:支給品一式×4(3食分、水1/10消費)、ドライヤー 、双眼鏡、ゾロの地図
、デザートイーグルの予備弾×12 不死の酒(空瓶)、、通り抜けフープ、 手榴弾×3、
ロベルタのメイド服@BLACK LAGOON、ガムテープ、ビニール紐(少し消費)、
[思考・状況]
1:今はただ泣きたい
2:必ず脱出する
3:グラハムが心配
4:何とかして首輪を外したい
5:イスカンダルの勧誘は保留。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
※圭一と会話できたかは不明です。
※梨花とウルフウッドの仲について察したようです。
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康 腕に○印
[装備]:なし、包帯、真紅の衣装
[道具]:支給品一式×3、インデックスの修道服@とある魔術の禁書目録、ミッドバレイのサクソフォン(内蔵銃残弾100%)@トライガン・マキシマム、
蓮の杖@とある魔術の禁書目録、月天弓@終わりのクロニクル 、フシギダネ(モンスターボール)@ポケットモンスターSPECIAL
きせかえカメラ@ドラえもん きせかえカメラ用服装イラスト集
[思考・状況]
1:レナが泣き止むまで傍に居る。
2:必ず生き残る。
※ウルフウッドを信頼、けどちょっとむかつく。
※電車に誰か(橘あすか)が乗っているのに気づきました真紅に気づいたかどうかは不明です。
※サクソフォンの内蔵銃に気付いていません。
【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン・マキシマム】
[状態]:全身の数箇所に浅い傷、腕に○印
[装備]:デザートイーグル50AE(4/8 予備弾29)、包帯
[道具]:基本支給品(地図と名簿は二つずつ、一式×2)、SPAS12(使用不能)チーゴの実×3@ポケットモンスターSPECIAL
○印のコイン、AMTオートマグ(0/7)、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×二枚、洋酒
ロベルタのスーツケース@BLACK LAGOON(ロケットランチャー残弾7、マシンガン残弾80%、徹甲弾残弾10)、ヴァッシュの衣装
AK47カラシニコフ(30/40、予備弾40×3)、 二重牙@トライガン・マキシマム、二重牙@トライガン・マキシマム
拳銃の予備弾30発
[思考・状況]
1:梨花たちについて行く
2:古手梨花を守る。(別れたなら同行者に託す)
3:ヴァッシュとの合流。リヴィオについては保留。
4:ジュンを殺害した者を突き止め、状況次第で殺す。
5:武器を手に入れる、出来ればパ二ッシャー
※自身が梨花の事を名前で読んでる事に気づいていません。
※○印のコインの意味は不明です。使い道があるのかもしれませんし、ないのかもしれません。
※ラッドの再生がミカエルの眼の改造技術に起因するものではないかと推測を立てています。
投下終了しました。
支援感謝します。
此度は延長してしまい申し訳ありませんでした。
何か指摘ありましたらよろしくお願いします
投下乙!
ルフィの死に様で覚悟を決めるチョッパー、
そしてレナ、圭一の死はやっぱり大きかったか……
梨花ちゃんのドジっぷりとニコ兄さんの不幸っぷりに笑った。
ってか梨花ちゃんは真紅の服か。この二人が出会ったら一体どんな光景が……!?
そして何気にダブルファングを二丁もってるニコ兄、すごい組み合わせだ……
もうガンマン同士の対決で遅れを取る事はなさそうだな。
投下乙!
お久しぶりの投下もいい!
人数は偏ったがなかなかバランスよさそうなチームだw
ニコ兄、しばらくは不幸がないなあと思ったらこれかw
常盤台制服に真紅衣装……いいセンスだ
どたばたで処理しきれなかったレナやチョッパーの放送反応もいいなあ
特にレナ。やっぱり我慢してたんだなぁ。あの状況じゃ仕方ないか。
支給品の振り分けで大分戦力がアップしたな。
非力な梨花ちゃまはフッシーと月天弓でカバー。
レナにグルカナイフ……なんか似合う。
チョッパーのランブルボール、暴走するか否か。
そしてウルフウッドにダブルファング2丁!こりゃ恐ろしい。
対抗できるのはマーダーの中でも強力な相手だろうなあ…
V-Sw使用したミュウツー、パニッシャー使用ロベルタ、美琴&ナイン組か?
なんにせよ先が楽しみだ!
梨花はしかし月天弓使えるか?身長的に
結構でかかったような気がするぞ
二メートルの大弓だが、ぶっちゃけ狙いを定める必要がほとんどないので弦を引っ張ることさえできれば問題ない。
女子供の腕力で引けるのか……?w>二メートル
それだけでかいと結構な力がいるぞw
細かいことグダグダ言ってんじゃねーよ糞ワンピ厨が
引き絞るのは胸筋が必須だから胸が無い梨花には無理だろ
何バカなこと言ってんだ腹裂くぞコラ
月天弓はもともと婆さんが使ってる武器だから腕力は問題ないんじゃね?(たぶん軽量化とかされてるかと)
問題は夜間しか使えないとこと広範囲兵器なとこじゃね
投下乙です。
ロリの全裸は世界を救う。多分。
表情を変えずに棒読み台詞なウルフウッドを幻視したw
しかもチョッパーとのやりとりもかっこいいし、スペック高いにもほどがあるよニコ兄。
レナも一人で気張ってきたのがここにきて限界か。
うまく仲間とうちとけることができるといいが。
延長期限ギリギリになってしまって申し訳ないです。
橘あすか、真紅、御坂美琴、ブレンヒルト・シルト
投下します。
太陽は空高く上り、眩い光で地上を照らしつける。
時間は12時を回り、気温もジリジリと上がりつつある。
当初は65人居た参加者も、既に約半数が脱落……息絶えていた。
それは残された参加者にどの様な感情をもたらすのだろうか。
あるものは嘆き、あるものは喜び、あるものは怒り、そしてあるものは恐怖する。
……そしてその感情に耐え切る事が出来なかった人間は?
目の前に差し出された救いの手を、拒む事は出来るだろうか。
たとえその手を差し伸べているのが、「悪魔」だとしても……。
もしも、悪魔がその囁きを口にする前に誰かが手を差し伸べていれば……。
もしも、誰かがその心が折れぬよう、支える事が出来ていれば……。
未来は変わったのかもしれない。
だが……そうならなかった。
そうはならなかったのだ。
ただそれだけの事……かくして、二人の少女は悪魔の囁きに耳を傾ける。
目の前に僅かな希望を見せ付けて、言葉巧みに誘惑をしてくるその悪魔の言葉に。
それが本物の希望だという保障など、何処にも無いにも関わらず……
◇ ◇ ◇
ナインは駅構内の壁にかけられている時計へと視線を向ける。
12時を少し回ったところ、まだ第二回目の放送が終わってから然程時間は経過していない。
瞳を真っ赤に泣き腫らし、絶望に打ち震えていた少女……御坂美琴と簡潔に情報交換を終えた二人は、
駅の構内を一通り見回って、今丁度駅の出口へと足を向けている所だ。
駅の構内は悲惨なもので、壁には穴が空き、ひび割れていて、
挙句の果てには赤黒い血肉が散乱し、異臭が漂う場所さえあった。
誰がどのような力を行使したのかは不明だが、この場所にて戦闘があったことはほぼ確実であろう。
遺体が無かった事は気になるが……この場所では誰も死ななかったのか、もしくは埋葬されたか。
だが、どちらでもいいとナインは考える。
この駅には自分たち以外に参加者もおらず、有用な道具も見つからなかった。
それさえ分かれば他に用は無い、目的を達成するために次の行動を起こすだけだ。
二人の目的は同じ、この殺し合いに優勝して参加者全員を生き返らせる。
些細な差はあるだろうが、このスタンスに変わりは無い。
だが、共闘するという訳ではない。
今闘う事は無いとはいえ、順調に行けばお互いが邪魔になる関係。
そんな相手に自分の背中を預けることは出来ない。
言うなれば、停戦関係と言った所だろう。
「それじゃあ……ここからは別行動を取るわよ」
ナインは美琴の顔を見つめながら小さく呟いた。
それに答えるよう、美琴は無言で頷く。
「しっかりしなさい。これから私達は━━」
「分かってます」
ナインの言葉を遮るように、美琴は口を開いた。
その瞳はどこか虚ろで、しかし真っ直ぐナインの瞳を見据えている。
「……そう、それならいいんだけど」
不安だ。
ナインは美琴をみてそう考える。
先程は確かに私の手を取った、『手伝って欲しい』と問いかけた私に、肯定の意思を表した。
だがしかし、この少女からは覇気どころか、生気をも感じることが出来ない。
誰か大切な人が死んで、または殺してしまって。
……もう心は限界なのかもしれない。
本来は優しい少女なのだろう、首筋にARMSの巨大な剣を突きつけられ。
断る事が死ぬ事に直結するあの瞬間にも、美琴は戸惑った。
きっと、誰かの命を助ける為ならば。自分の命もいとわないのだろう。
そう、私が殺してしまった少女。
ナナリーのように。
駅の出口から顔を出し、辺りを注意深く見渡した。
人の気配は無い。それを確認してからナインと美琴は大きな通りへと歩み出る。
「ところであなた、これから何処へ向かうつもり?」
「何処って……」
「予定が無いのなら、一つ提案があるの」
「……」
「恐らくだけど、今一番人が居るのは市街地……ここから南下をしていくコースね。
だから、私たちの目標への近道は市街地に居る参加者を殺す事」
『殺す』という言葉に美琴は僅かな反応を見せる。
しかしそれに構わず、ナインは言葉を続けた。
「だから、あなたにはこのまま南下して行ってほしいの」
「私が……?」
「さっきの放送を聞いたでしょ?もうじきF-6は禁止エリアに指定される。
市街地から南へと抜けるための橋も使えなくなる……そして東には湖や川が行く手を阻んでいるわ。
参加者が市街地から出るためには、北か西に行くしかないの。
あなたが言っていた地下を使えばまだまだ方法はあるんだろうけど、大半の参加者はそれを知らないはず。
だから私はE-2駅へと向かう、電車を使ってね」
美琴は地図を取り出して、辺りの地形を確認する。
確かに市街地には施設も密集しており、参加者も数多く居るだろう。
効率よく参加者を減らしていくにはベストな選択なのかもしれない。
だが、すぐに南下をし始めた場合。電車にて移動時間がかからない分、参加者に初めに会うのは高確率で私だろう。
つまりは危険が高いと言う事を意味するのではないか。
ここまで考えて、美琴は少し自虐的に口元を吊り上げた。
そんなことはどうでもいい筈だ。
遅かれ早かれ、目の前に立ちふさがる全員を自らの力で排除し、進まなければならない。
「もしもあなたが嫌だと言うのなら、私がこのまま南下するわ。
だからあなたはE-2駅へと向かってちょうだい」
まるで考えを見透かしていたかのように、ナインは口を開いた。
「いえ、いいです」
美琴は間髪いれずにそう返事をする。
「……そう、ならば早速行動を開始しましょう」
「はい」
二人は自らのデイバックを肩に担ぐと。
背を向けて、それぞれが進むべき道へと足を向ける。
片方は駅の中へ、もう片方は南への通りへと。
「運が悪ければ、きっとまた会えるわ。
……そうならない事を祈ってる」
ナインは相手のほうを振り返らず、そう口を開いた。
相手からの返事は無い、きっと真っ直ぐ、振り返る事もせずに歩き出しているだろう。
罪悪感が大きな波となり、ナインの胸を締め付ける。
私は卑怯者だ、私一人が背負うべき業を。
心優しき少女にも着せてしまった。
駅の入り口に入ると、ナインは足を止めて後ろを振り向いた。
遠くには段々と小さくなる御坂美琴の姿が見える。
「ナナリー……待っててね。きっとあなたにもう一度、この世界を……」
服の胸元へ手を当てて、ナインはそう呟いた。
その声は駅の構内に悲しく反響して、消えていった。
◇ ◇ ◇
「真紅、何をやっているんですか?」
「……いえ、なんでもないわ」
二人が居るのは図書館のすぐ近く、一軒の民家の中だ。
何の変哲も無い、二階建ての戸建て。
リビング、キッチン、子供部屋、寝室、物置。
一般的な間取り、真紅が目を留めたのはその最後に訪れた部屋……物置だ。
中には乱雑に物が放置されており、うっすらとほこりを被っている。
その中に一つ、少し古ぼけた三面鏡があった。
真紅はそれに近寄ると、鏡に手を触れてみる。
モノには、生命のかけらを持つモノとそうでないモノがある。
薔薇乙女は、そのモノを介して「nのフィールド」という現実世界と表裏一体をなす空間へ入る事が出来る。
だが……この会場には生命のカケラを持つモノが極端に少ないようだ。
この鏡もそう……まるで急ごしらえで用意された単なる備品の一つのように。
同じく物置にてガラクタを物色していたあすかは、真紅の答えに顔を顰めると。
手に取っていた古ぼけた置物を放り投げ、手をはたいた。
「それで、気になる事は解決したんですか?」
「解決したとは言えないけれど、今はこれで納得するしか無いわね」
「……僕はその気になる事でさえ教えてもらってないんですが」
そう、民家に立ち寄りたいと言ったのは真紅。
真紅がこの会場に飛ばされてから今まで立ち寄った場所……
あすかと出会った民家、駅、休憩に使った民家、さらに図書館。
その全ての場所で、nのフィールドの入り口に使えそうなものは見当たらなかった。
確かにそう多くあるものでは無いが……全く無いと言うのには違和感を感じる。
数少ないそのカケラを感じられるものは、それぞれの参加者に配られている支給品からのみ。
だがしかし、その支給品も入り口として使えそうなものは無かった。
普通の人間にはその判断をする事さえ難しいはず、
だからこそ、この会場のどこかに『入り口』に使える物を主催が誤って用意していても、おかしくはないと思ったのだ。
そして、それを見つけることが出来れば……。
だが、それは考えが甘かったのだろうか。
結局この家でも発見する事は出来なかった。
それに万が一、入り口に使えるものが見つかったたとしても、
自らの人口精霊ホーリエが居ない事やこの場に来た時から感じている体のだるさ。
薔薇乙女自身の能力にも干渉を受けている可能性も考えられる。
「お父様が作ってくださったこの体に……?」
そう考えた瞬間、背筋にゾクリと悪寒が走る。
究極の少女、アリスを目指すために作られたローゼンメイデンにとって、
その体を傷つけられ、弄られるのは死にも値するほどの恐怖だ。
首を振ってその考えを頭から追い出した。
「どうしたんですか?」
薄暗い物置にて、あすかがそう尋ねてきた次の瞬間。
ズドンという重低音と共に、パラパラと天井から埃が舞い降りてきた。
目を見開いた二人は顔を見合わせると、どちらとも無く家の玄関へと走り始める。
外へと飛び出した二人は、辺りを見渡した。
すると南の方角に、煙が濛々と立ち上っているのが見える。
「あれは……真紅っ!」
「えぇ……あの場所で、誰かが闘っている」
「劇場の方面ですね……行きましょう!
まだ間に合うかもしれない。これ以上犠牲者を出すわけにはいきません!」
「えぇ」
真紅が頷くと、二人はその民家から駆け出した。
あすかは図書館に面している大通りへとたどり着くと、辺りを見渡して安全を確認する。
そして誰も居ない事を確認すると、南へと駆け出していった。
それを追う様に、真紅も後へ続いて駆けてゆく。
しかし駆け出した直後……辺りに気を配りながら進んで居たあすかは急に足を止めた。
真紅は急に止まったあすかの足へと顔面から激突し、尻餅をついてしまう。
「ちょ、ちょっとあすか!止まるなら止まるって言いなさい!危ないじゃないの」
「真紅……あれを」
鼻を押さえて立ち上がった真紅は、あすかが指を刺す方向へと視線を向けた。
あたり一面、コンクリートジャングルであるこの市街地。
灰色の世界において、その黒に限りなく近い赤い水溜りはとても浮いてみる。
とあるマンションの敷地内、図書館からも離れては居ない場所。
その水溜りに歩み寄った二人は、思わず顔を顰めた。
赤黒い水溜りの真ん中に沈んでいるのは、右腕。
まるで人形のパーツのように沈んでいるその腕は、よほど切れ味のいい刃物で切られたのであろうか。
綺麗な断面をしてた。
通常、血液が完全に固まるまでの凝固時間は、37度の気温で8分〜12分だと言われている。
辺りの赤黒い水溜りは既に完全に固まり、乾いていた。
「もう既に血は乾いているわね……」
「えぇ、恐らく襲った奴も。襲われた人も近くには居ないでしょう」
あすかは辺りに注意を払いながらそう言った。
「あら……腕を落とされるほどの重症よ。
襲われた人間が痛みでろくに動けず、この辺りに隠れているという可能性もあるんじゃないかしら」
「……僕は医者じゃないですから詳しい事は分かりませんが。
腕には動脈が通っています、もし切断されたのだとしたらそれはおびただしい量の出血が伴うはずです。
それは一般の家庭での止血では難しく、更に輸血が必要になるほどの……。
ですから、この人は病院へ行って処置をするしか選択肢は無いはずです。
もしも痛みで動けずに隠れていたのだとしたら、その人はもう出血で……」
二人は顔を見合わせる。
重苦しい空気が二人の間に漂った。
真紅は右腕をドレスの上から押さえながら、沈痛な表情でその水溜りへ視線を落とした。
そして、とある違和感に気が付く。
「ねぇ、あすか」
「……はい?」
「おびただしい量の出血が伴うのならば、この人間が移動した方向に血痕があるはずじゃなくて?」
「そ、そういえば」
その赤黒い水溜りのすぐ近くには余り血痕は残されていない。
辺りを見回した二人は、すぐにその痕跡を発見した。
それは右腕から5メートルほど離れた場所、丁度敷地内の植え込みが邪魔になって見えにくくなってはいたが。
黒い血溜まりが線のようになって南へと伸びているのが見える。
「どうやら病院の方角へは向かっているようね」
「そうですけど、それは追跡されやすいと言う事を意味しています。
もし襲撃者に追撃の意思があったとしたら、逃げ延びるのは絶望的ですよ」
「えぇ……」
「それに、この様子だと時間は大分経過しています。
真紅、今の僕たちには南の劇場で起きている争い事を止めるのが最良ですよ」
「……分かってるわ、この事は一旦保留して劇場へ向かいましょう。
この人間も南に向かっているのだし、もしかしたら劇場にいるかもしれないわ」
二人は頷いて腰を上げると、通りへと戻った。
そしてあすかはふと視線を北へと向ける。
この場に来てから幾度と無くしている安全確認、そしてその殆どは異常なしという形で終わっている。
唯一異常があったのは電車の中だ。あの忌々しい金ぴか鎧を思い出す。
だが今回北へと向けた視線の先、なにやら動く影が見える。
今までと違った結果に多少興奮しながら、あすかは口を開く。
「し、真紅!」
「……うるさいわあすか、そんな大声出さなくても」
「あれ……人です!女の子が一人で」
その言葉を聞いて、真紅も北へと視線を向ける。
確かに通りの遥か向こう、少女がこちらへと歩いて来ているのが見える、
まだこちらへは気が付いていないようだ。
「急いで保護をしましょう!」
「……待ちなさい、あすか」
「何ですか?」
「不用意に近づいて、あの子が殺し合いに乗っていたとしたらどうするの?」
「殺し合いに乗っているって……子供ですよ?」
「あら、私からみれば貴方も十分子供よ。
それに子供でも銃なら扱う事が出来る、もしかしたら貴方のように何かしらの能力を持っている可能性だってあるわ」
「僕を子供扱いするのは辞めて下さいっ。
……じゃあ、どうしろっていうんですか。背後から武器で脅して殺し合いに乗っているか聞くんですか?」
「別にどうもしないわ、貴方が警戒心のカケラも持っていないから。用心しなさいと言っているだけよ」
「なっ……」
「武器で脅して聞いても本当の答えが返ってくるとは限らない。
それに相手にも不信感を与えてしまうわ」
「……」
「頼りにしているわよ、あすか」
納得がいかないという顔をしているあすかに、真紅は呟いた。
「えっ……今なんて?」
「何でもないわ、それよりも早くあの子を保護して劇場へと向かいましょう」
あすかは顔を顰めながらも、頷いて少女へと向かって歩みを進める。
そしてあすかの横に並ぶよう少し早足で歩きながら、真紅も北へと足を向けた。
◇ ◇ ◇
「どうして……」
少女の呟きは、誰にも届くことなく辺りに響き渡る。
「どうして……」
それは自分自身への問い。
「どうして……」
その答えの無い問いかけは、答えにたどり着く事は無い。
美琴の頭の中に渦巻いては消えて行く。
「どうして……」
こんな事になっちゃったのかな。
心の中で、美琴はそう呟いた。
自分にこんな力さえなければ……。
超能力、Level5の電撃使い(エレクトロマスター)でさえ無かったら。
1万人に及ぶ妹達が殺される事も。アイツが殺される事も……誰も死ぬ事は無かったのではないか。
バチバチと、辺りに乾いた音が鳴り響く。
暴走しかけている少女の発電能力は、肩から頭にかけて青白い火花を散らせる。
雷撃というと恐ろしいイメージがあるが、彼女にとってそれは優しい光だった。
初めて力を使えるようになった夜の事は今でも忘れない。
布団の中にもぐって、一晩中バチバチと小さな火花を散らしていた。
それは星の瞬きにも見えた。
大きくなって、もっと強くなったら、いつか星空を作る事が出来るかもしれない。
小さい頃は、本気でそう考えていた。
そう……彼女、御坂美琴はいわゆる天才ではない。
学園都市にてカリキュラムを受けながら、Level1からLevel5まで努力で上り詰めた。
普段の彼女からは伺う事が出来ない、誰にも負けないほどの努力をしてきたのだろう。
だがしかし、その努力が仇となってしまった……。
ふと、自らの両手へ視線を落とす。
自分の小さな手が見える、血塗られた、人殺しの、怪物の手が。
この血塗られた手で出来る事……まだ、この呪われた超電磁砲の能力で出来る事。
それは……優勝を目指すという事。
『……あなたにも手伝って欲しいの』
先ほど出会った自分より幾ばくか年上の女の人、ブレンヒルト・シルトの言葉が頭に木霊する。
彼女も言っていた。
人を"殺して"しまったと。
彼女も目指しているのだろう、失ってしまったものを取り戻す事……犯してしまった過ちを無かった事にする事。
そしてそれを望むのならば、人を殺めなければならない。
そう……美琴自身も、もう一度"アイツ"に会う為には。
「やめて」
意識に反して、美琴の口からは拒絶の言葉が飛び出してくる。
殺したくない、誰も死んで欲しくない。
自分の命ならば喜んで差し出そう……だから、もう誰も死なないで。
それは彼女の純粋なる想いだ。
肩に食い込むデイバックが瞳に写る……命を助けてくれたストレイト・クーガーから託されたもの。
それはせめてもの罪滅ぼしだったのだろうか、美琴はクーガーの仲間の事をナインに話さなかった。
だからといって合流してこのバッグを渡すつもりは無い。
彼が死んでしまったのは自分のせいだ、今更どんな顔をして彼の仲間と会えと言うのだろうか。
だが、みんな殺せばクーガーを生き返らせることも出来る。
「たすけて」
そう……アイツに再び会う事だって、出来るかもしれない。
「……たすけてよ」
こんな事を言う資格は自分には無い、それは分かっているつもりだった。
しかし我慢をしようとしても、それは口をついて零れだす。
……それは、誰にも届く事は無い。
だからこそ口にする事が出来る言葉だったのかもしれない。
「そこのあなた、ちょっといいですか?」
俯いて歩いていた美琴の耳に、突如男の声が入ってくる。
気を抜いていた、考え事をしていた自分の愚かさを呪いながら美琴は視線を上げる。
このまま一思いに殺されるのならば、それもいいのかもしれない。そう思いながら。
しかし……その瞳に写ったのは、美琴にとっては一番有り得て欲しくない光景。
「僕の名前は橘あすか。武装警察「HOLY」の隊員です」
恭しく礼をするその青年の、
白と青が基調の派手な服装はとても見覚えがあって。
「私の名前は真紅、ローゼンメイデンの第五ドールよ」
すぐ近くに居る真紅のドレスを着た少女の名前も、青年の名前にも聞き覚えがあって。
「あ……あぁ……嘘よ……」
「ど……どうしたんですか?」
「近づかないで!!!!」
こちらへ腕を伸ばしながら近づいてくるあすかに対し、美琴は大きな声で拒絶を表した。
間違えるわけが無い、ストレイト・クーガーが着ていたあの目立つ制服を。
忘れるわけが無い、二回目の放送を聞く前、唯一見えてきた希望の断片を。
だがその希望は絶望へと塗り代わり、美琴の目の前へと立ちふさがる。
彼女は叫ぶしかなかった。
自分の運命を、心の底から呪いながら。
◇ ◇ ◇
「近づかないで!!!!」
少女の叫び声が、辺りに木霊する。
保護をしようと声をかけた少女は、どこか様子がおかしくて……
さらに近づこうとした瞬間、まるでおぞましい化け物が目の前に居るかように拒絶した。
思わず前に出していた足を引き戻す。
……正直納得がいかない、こちらは助ける立場で。あちらは保護される立場のはずだ。
真紅の言うとおり、なるべく礼儀正しく、相手を逆撫で無いよう接触したつもりだ。
この点に問題は無いと自負している。
ならば何故?そんな頭ごなしに拒絶されなければいけないのか。
「大丈夫です、安心して下さい。
僕らはあなたに危害を加えるつもりはありませんよ」
「近づくなっつてんでしょ!!!」
落ち着いて話をしなければ何も進展しない、怖がっているだけなのかもしれない。
そう思って出した言葉にも、やはり少女は拒絶の言葉を返してくる。
落ち着いて話をしなければ何も進展しない、怖がっているだけなのかもしれない。
そう思って出した言葉にも、やはり少女は拒絶の言葉を返してくる。
「なっ……いい加減にしてくださいっ!!
僕が何をしたって言うんですか!」
「あすか……」
「こんな調子じゃ話も━━」
「あすかっ!」
真紅の声に遮られるように、あすかは口を閉じる。
明らかに不機嫌な表情をしているが、真紅は気にせずに少女へ向き直った。
「……ねぇ貴女、何があったの?」
少女は答えない。
「あすかも言ったとおり、私たちは危害を加えるつもりは無いわ」
少女は震えながら、デイバックを強く握り締めている。
「……貴女はあすかの姿を見てとても驚いていたようだけれど」
そこまで真紅が言った瞬間、あすかは目を見開いた。
「そうか……この制服ですね!
あなたは劉鳳かクーガーさんのどちらかに会ったんじゃないですか?」
刹那、少女の顔は驚愕に染まった。
そして視線を逸らし、俯いて黙り込んでしまう。
三者の間に重苦しい沈黙が漂う。
「えぇ……そうよ。私はクーガーさんに会ったわ」
沈黙を破り、震える声でそう切り出したのは少女。
「では何故、貴女はこの服装を見て怯えたの?」
何処までも見透かすかのような蒼色の瞳が、少女を見据える。
「怯えた?ハッ、私は怯えてなんか無いわ」
少女は視線を上げて、真紅を睨みつける。
先ほどとは違い、顔に表情を貼り付ける事もない。
バチリという音に青紫の火花が少女の肩に散った。
それを見てあすかは違和感に気が付く。
クーガーを知っているのなら、怯えるはずは無い。
彼は戦いこそすれ、襲う事は無かったはずだ。
……ならば如何して怯える必要がある?
「少しビックリしただけ、だってそうでしょ?
死んだ奴と同じ服装の奴が居るんだもん、どんなコプスレ集団かって話よ」
「……どういうことですか?」
理解できない。
そう言った顔で尋ねたあすかに対して、少女はあきれたと言わんばかりに微笑みながら口を開く。
「まだ分からないの?それじゃあはっきり言ってあげるわよ」
少女は肩にかけていたデイバックを開き、中からタイム虫眼鏡を取り出す。
「知り合いなら分かるでしょ?これはクーガーさんの支給品」
「ど、どうしてそれをあなたが」
「決まってるじゃない、私がクーガーさんを殺したから」
……え?
それを聴いた瞬間、あすかは目の前が真っ暗になるのを感じる。
理解できない……。
最速のアルター使いと同時に、A級のアルター使いであるクーガーが、こんな少女に?
「馬鹿な最後だったわ、使えない足手まといな参加者を庇って。
そのまま死んでいくなんて」
それほど親しい付き合いをしていた訳ではないが、彼の強さは良く知っている。
何より先ほど出会い、談笑していたクーガーがこんな子供に殺されたという事が信じられなかった。
「あなたが……殺したんですか」
否定の言葉を期待して、あすかは口を開く。
クーガーがこの少女に殺されたという事実も、こんな子供が参加者を殺して回っているという事実も。
全てが嘘であると思いたくて。
「……だから言ってるでしょ。私がストレイト・クーガーを殺したわ」
「……そうですか」
けれど期待は裏切られ、一番聞きたくなかった言葉があすかの頭に響き渡る。
次の瞬間。辺りのアスファルト、ブロック塀、マンホールが虹色の粒子となって掻き消える。
それはまるで削り取ったかのように、荒々しい穴を周囲に作り出した。
虹色の粒子は、あすかの周囲に集まって緑色の輝く宝玉を作り出す。
「なっ……ダメよ!あすか!」
隣で真紅が叫ぶが、それは無視。
あすかは腕を少女の方向へ伸ばし、ありったけの声で叫ぶ。
「エタニティ・エイトッ!!」
◇ ◇ ◇
「……だから言ってるでしょ。私がストレイト・クーガーを殺したわ」
出来れば避けたかった、この二人とは戦いたくなかった。
だけど、仕方が無かった……。
私の動揺は伝わり、クーガーさんとの繋がりにも気付かれてしまった。
もう、道は一つしか残されていない……この二人を殺すという道しか。
相手が何やら叫ぶと、それに答えるように周囲のものが削れて辺りに八つの宝玉が生まれる。
美琴はその光景を見て若干の驚きを感じるが、すぐに平静を取り戻す。
あの物を抉る攻撃は、こちらへ向かって行う事は出来ない。
この現象を目にするのは二度目、『シェルブリット』のカズマとの戦闘を思い出す。
恐らくあすかも、カズマと同じ系統の能力者なのだろう。
相手は憎しみの表情でこちらを睨みつけている……。
これでいい、きっとこれでいいんだ。
不意打ちなんて出来ない……どうせ殺さなければいけないのなら、真正面から。
立場は対等で、お互いに殺すつもりで。
「どうして……どうしてクーガーさんを」
あすかはこちらを睨みながら言った
「そんなの決まってるじゃない。勿論優勝を目指すためよ」
「ふざけ無いでくださいっ!人を殺してまで、叶えていい願いなんてあるはず無いじゃないですか!」
「あすか!落ち着きなさい!闘ってはダメよ」
「真紅は下がっててください!」
「下がらないわっ」
真紅は喰らいつくようにそう叫ぶと、美琴とあすかの間に割り込んで美琴を睨みつける。
「……貴女、本気で言っているの?」
「何よアンタ、私がこんな状況で嘘を言うと思うの?」
「思うわ」
間髪を入れずに答えた真紅に、美琴は射殺すような目で睨みつける。
「……アンタみたいなガキに。何が分かるって言うのよ!」
怒り任せに叫んだ美琴の言葉に答えるように、全身から青白い火花が飛び交った。
「真紅、下がってください。
この人はクーガーさんを殺した……きっと他の参加者にも手をかけるような人間です」
「あすか、闘ってはダメよ。
この子は嘘をついている、きっと何か━━」
「真紅、今回ばかりはあなたが間違えていますっ。
話し合いでは解決できない事もある。闘わなければ、殺されるのは僕たちです!」
そう叫ぶと、あすかは真紅を飛び越えて美琴へと猛進する。
周囲には八つの宝玉を引き連れて、その呼び名を叫びながら。
「エタニティ・エイトッ!」
その呼び声に答える様に、八つの宝玉は縦横無尽に飛び散って美琴へと襲い掛かる。
美琴は驚きながらも、初撃の宝玉を後ろにステップして交わす。
手を力強く開き、力を込める。
すると辺りの地面から、黒い煙のようなものが舞い上がって美琴の右手に集まっていく。
目の前に迫ってくる三つの宝玉を、その右手に作り出した黒い剣で両断した。
それは砂鉄の剣、ブゥゥンと音をたてながらムチのようにしなり空を泳ぐ。
しかし八つもの宝玉による縦横無尽な攻撃。
別段戦闘訓練を積んでいる訳でもない美琴に全てを裁ききる事は不可能だった。
後方から迫っていた宝玉に背中を突き刺され、前方に吹き飛ぶ。
地面に顔面からまともに突っ込み、口の中を切った。
手元に精製した砂鉄の剣もバラバラに砕けて元の砂鉄へと戻る。
「……お話になりませんね。あなたは本当にクーガーさんを殺したんですか?」
美琴のすぐ近くに立って、侮蔑の視線で見下ろしながらあすかは口を開く。
「いつっ……やってくれるじゃない」
口の中の鉄の味をかみ締めながら、美琴はヨロヨロと立ち上がるとあすかを睨みつける。
「本当ならば逮捕したいところですが、生憎ここには刑務所なんてものは在りません。覚悟してもらいますよ」
周囲の地面は削れ、あすかは不足した宝玉を補う。
そうしてあすかは八つの宝玉を手元に集めて直列でつないだ。
宝玉の周りには緑色の光が縦に現れ、剣を作り出す。
「あすか!待ちなさいっ!」
真紅が駆け寄ってくるのが分かるが、それを無視。
……そしてゆっくりと剣を振り上げる。
目の前の少女は俯いて、一言もしゃべらず震えている。
余りにも小さく見えるその少女に、あすかの心の中に疑問が生まれる。
━━この少女は、果たして本当にクーガーを殺したのか。
先ほどの真紅の言葉が頭をよぎる。
戦闘をして分かる、この程度の強さならばクーガーが殺される訳が無い。
だがこの少女はクーガーの支給品を持って居た。だとしたら、何か奥の手のようなものが……。
「ごめんなさい」
そこまで考えていたあすかの耳に、言葉が飛び込んでくる。
目の前の少女は、確かに一言。
震える声で呟いた。
少女は顔を上げて、涙で瞳を揺らす。
そして次の瞬間、眩いばかりの白い光があすかの瞳を埋め尽くした。
◇ ◇ ◇
「あすか!待ちなさいっ!」
真紅はそう叫びながら、二人の元へと疾走する。
少女は確かに怯えていた。そしてそれを隠すかのようにあすかを挑発した。
殺すならば不意打ちをすればいい。
殺すならばクーガーの事を言わず、一旦従う振りをすればいい。
なのにも関わらず、彼女はクーガーの死の事を言った。
まるで怒りを煽るように、自らを殺すように仕向けるかのように。
支給品を持っている点から考えても、クーガーと関わりがあったのは事実だろう。
何故あすかの格好をみて怯えたのかは分からない。
だが……真紅はその言葉を信じる事なんて出来なかった。
無防備に大通りを歩いていた少女。
声をかけたとき、こちらを見た顔には確かに涙の後があって、瞳もかすかに赤く腫れていて。
……そして何より、絶望してすべてを拒絶するようなその瞳が。
既に死んでしまった自らの媒介と重なって見えたからだ。
偶然にも美琴も中学二年生。
罪滅ぼしか?といわれたら拒絶しきる事は出来ないだろう。
だが真紅は思ったのだ、何としてもこの少女を助けたい。と……
あすかは剣を振り上げて、じっと少女を見つめている。
これならば間に合うだろう。
最初はそのままあすかを突き飛ばすつもりだった、思い切りグーパンチをくれてやってもいい。
だがしかし、真紅は目にしてしまった。
その俯いた少女の顔から雫が滴り落ちて居る所を。
そして少女の髪の毛は僅かに逆立ち、青白い火花を散らしている所を。
「ごめんなさい」
そう声が聞こえるのとほぼ同時。
真紅は右手で油断していたあすかを突き飛ばし、少女の攻撃を受け止めようと左手を突き出した。
刹那、辺りに眩い光が迸る。
何が起きたのか、それは真紅にも理解できなかった。
辺りに響き渡る轟音、遅れて何かが爆発するような音。
目の前に広がる光景は、何故か地面が真上に位置していて……。
ガシャンという音と共に、真紅は地面に叩きつけられる。
そしてそれとほぼ同時に、真紅の意識は闇へと落ちていった。
◇ ◇ ◇
「そんな……どうして……」
それは美琴が言い放った言葉、目の前の光景が信じられない。
「し、真紅?……真紅!!!」
あすかはそう叫びながら、数メートル吹き飛ばされてピクリとも動かない真紅へと駆け寄る。
左肩から先のドレスは吹き飛び、白い腕が露になっていて。
しかし腕に走っている大きな亀裂が、彼女が人ならざるものだと言うことを物語っている。
美琴は呆然としながら、あすかと真紅を見つめている。
「よくも……よくも真紅をっ」
怒りの形相で立ち上がり、こちらを睨みつけるあすかに、美琴は再び逃げ出したい衝動に駆られる。
……こちらを殺そうとしていたあすかを殺すため、美琴は雷撃の槍をあすかに向かって撃ちはなった。
初めて、人を殺すつもりで放った雷撃の槍。
それでもやっぱり殺したくなくて、覚悟をするまでには少し時間がかかってしまった。
至近距離から打ち出した美琴の雷、その電圧は実際のそれにも劣らない10億ボルトにも達する。
秒速約340kmで進むその槍は、あすかの体を貫いてその命を奪うはずだった。
ある程度距離があっても、常人に反応する事なんて出来ない速さの攻撃。
しかしそれは同時に撃つ側にとっても言えることだ。
あすかを撃ち殺すつもりで能力を発動させた美琴は、突如割り込んできた真紅に反応する事なんて出来なかった。
……全てを見透かしているかのようなその瞳が、美琴の脳裏にこびりついて離れない。
真紅は最初から自分に敵意を向けることは無くて、戦う意思も見せていない。
そして何より、自分よりも幼く、無力なその少女に雷撃を打ち込むことなんて、美琴には考えられなかった。
優勝を目指すのならばこの考えを捨てなければいけない……それは理解しているつもりだ。
それでも美琴は、その選択肢を選ぶ事は出来なかった。
甘いといわれればそれまでだろう、だがしかしその一線を踏み越えれば。
自らが最強から無敵になるために、実験と称して1万人の妹を喜々として虐殺した一方通行と同じになってしまう気がして。
……そして美琴は、その一線を越えてしまった。
「平気よ……だって最後は、みんな生き返らせるんだもん」
自分で離したその言葉に、美琴は驚いた。
心が叫び声を上げる……やめて、助けて、と。
しかし真紅を殺してしまったと言う事実が、美琴を追い詰めていく。
ぎこちない笑みを浮かべながら、美琴はあすかへと向き直る。
「なっ……」
美琴の辺りに青白い火花が散ったと思うと。
その次の瞬間、雷撃の槍があすかへと襲い掛かる。
だがしかし、あすかは一度見たその雷撃を予想していた。
自らの宝玉で壁を作り、その雷撃を防ぐ。
ズドンという音と共に壁にぶち当たった雷は、辺りへと拡散しながらゴロゴロと空気を膨張させる音を残した。
「そうよ、簡単な事じゃない。
誰を殺したって平気よ、みんな生き返るんだから」
「……まさか優勝を狙う理由っていうのは」
更にもう一撃、二撃と雷撃の槍があすかへと襲い掛かる。
しかしその攻撃は宝玉の壁に阻まれ、あすかには届かない。
防戦一方……だがしかし、その壁を解いたら最後。
あすかは攻撃に転じる事無く瞬時に消し炭にされてしまうだろう。
狂ったように笑いながら、美琴はあすかに口を開く。
「そうよ、みんなを生き返らせるの。
だからアンタも早く死になさいよ、そうすれば早くその子を生き返らせて上げられるわ」
「あ……あなたって人は!」
美琴は自らのデイバックを開き、メダルが入った袋を取り出した。
そして右手を袋に突っ込むと、一枚のメダルを取り出して握り拳、その親指の上に乗せる。
「もういいの、安心してよ。
だって私は超電磁砲。その気になれば誰だって簡単に殺せるわ。
唯一敵わなかった一方通行も……アイツだって死んだ。だから、絶対に生き返らせてあげるから」
右手を突き出して、あすかへと標準をあわせる美琴。
あすかは感じた、嫌な予感がする。
恐らく少女は奥の手を使ってくるだろう、雷撃を防ぐ事で精一杯の自分にそれを受けきる事が出来るだろうか?
……だけどここで引くわけにはいかない。真紅はこの少女に殺されてしまった。
距離をとっていれば雷撃も怖くない、慣れれば8個の宝玉のうち1つ位は攻撃に回せるはずだ。
その時を待てばいい。
次の瞬間。
音は無く、オレンジ色の槍がエタニティ・エイトで作り出した盾へとぶち当たる。
バリン、とガラスが割れるような音がして4つの宝玉が崩れ去った。
盾に当たって軌道がずれたその槍は、あすかの顔をかすって後方の民家へと吸い込まれていく。
居瞬遅れて雷のような轟音が轟き、後ろへと視線を向けたあすかは目を疑った。
エタニティ・エイトで作った盾を貫き、推進力を失っているはずのその弾丸は轟音をたてて民家を打ち崩している。
「ば……馬鹿な」
そして現状を理解する、8つあったあすかの宝玉は4つが崩れ去った。
今の状態で雷撃を受けきる事は不可能だ。
「くっ……エタニティ・エイト!」
そう叫ぶとのほぼ同時、美琴のから発された雷撃の槍があすかを貫いた。
「……まだ生きてるなんて、結構しぶといのね」
美琴はあすかへと歩み寄りながら、言葉を放つ。
倒れたあすかの目の前には四つの宝玉が、力を失って地面に転がっている。
あすかは少ない宝玉でも、なんとか雷撃を防ごうと足掻いた。
4つの宝玉で雷撃を出来る限り分散させて、あすかへの雷撃を軽減させたのだ。
「くっ……ぐぅ……」
「無理はしないほうがいいわよ、体が痺れて動かないんでしょ?」
「何故……優勝して……全員を生き返らせるなんて……」
「今さらそんな事を聞いてどうするのよ」
「願いを叶えたいのなら……全員でギラーミンを倒して、その力を……」
「奪い取れって……?無理よそんなの」
「なっ……」
「私は人殺しよ?みんなと仲良く手を取り合って、打倒ギラーミンなんて……今更言う資格は無いの」
「くっ……」
あすかは震える手を宝玉へと伸ばす。
「今更悪あがきするんじゃないわよ、今楽にしてあげるから」
バチリと美琴の前髪は逆立つ。
「私が優勝すれば……アイツも、一方通行も、砂男も、衛宮さんも、クーガーさんも、真紅って子も。
みんなみんな生き返るのよ。
ね?みんなが笑ってハッピーエンドを迎える方法なんて、もうこれしかないじゃない」
あすかは美琴の顔を見上げる、その顔には表情という類のものは映っては居ない。
しかし頬には、一筋の涙が流れていた。
僕は……何一つ成す事が出来なかった。
誰かを止める事も、誰かを救うことも、誰かを導く事も……
劉鳳が死に、クーガーが死に、真紅が死んだ。
この会場に来てから約半日。
ずっと一緒に行動していた真紅。
彼女を守ってみせると、心に誓ったのに。
真紅を失った今なら分かる、あの時のルフィの気持ち、クーガーの気持ち、そして少しならば……この少女の気持ちも。
だがしかし、もうどうする事も出来ない。
HOLY隊員になって、僕は何を成せただろうか。
何のために闘ってきたのだろうか。
……もうどうでもいい事だ、全てがここで終わるのなら。
「それじゃあ、さようなら」
そう言って美琴はあすかへと手を向ける。
それを見ると、あすかは瞳を閉じた。
「ちょっと、人を勝手に殺さないで頂戴」
突如、もはや懐かしくも感じる声があすかの耳に届く。
その声につられて瞳を開くと……
目の前にはあすかと美琴の間に立ち、
美琴の腕を掴み上げている真紅の姿が見えた。
◇ ◇ ◇
美琴は自らの目を疑った。
目の前には先ほど10億ボルトもの雷撃をまともに受け、吹き飛んだはずの真紅が立っている。
そして、雷撃を放つために帯電していた腕を掴み上げ、平気な顔をしてこちらを見つめている。
「貴女もやはり、誰かを生き返らせる為にこの殺し合いに乗っているのね」
「は、離してっ」
真紅の言葉で我に返った美琴は、腕を振り払うと大きく後ろへとステップした。
真紅はあすかを守るように間に立って、美琴を見つめている。
美琴は真紅を睨みつける、そして違和感に気が付いた。
露になった球体間接、その白い腕には一筋の亀裂が入っているのが見える。
「アンタ……一体何者なの」
「言ったでしょ?ローゼンメイデン第五ドール、真紅よ」
「そんな事を聞いてるんじゃないっ!」
「今重要なのは、そんな事では無いんじゃなくて?」
ギリ、と奥歯をかみ締めると。
美琴の肩に青白い火花が散った。
「そうよね……また振り出しに戻っただけ、私はアンタ達を殺して優勝を目指す」
「……私は、貴女と闘うつもりは無いわ」
「なっ……私の話を聞いていなかったの?アンタ達を殺すって、そう言ってるのよ?」
「それでも私は、貴女と闘うつもりは無い」
「……運良くさっきの雷撃では死ななかったみたいだけど、
二度目は上手く行かないわよ。死ぬのが嫌なら私と戦いなさい」
脅しの言葉をかけるも、真紅は微動だにせず美琴を見つめている。
「……闘えっつってんのよ!」
ズドンという音と共に、真紅の真横数センチを青白い光が通過する。
それは後方の民家の残骸に当たると、派手な音をたてて爆ぜた。
「これが最後の警告、次は本気でぶち抜くわよ」
真紅はスッと左手を美琴の方へ向ける。
美琴は身構えるが、相変わらず真紅の瞳からは敵意を感じられず。
まるで撃ってみろと言わんばかりの挑発にも見えた。
「ふざけるな……ふざけるなっ!」
再び雷撃の槍が出現し、真紅の足元の地面を抉る。
「アンタに私の何が分かるって言うのよ!
言ったでしょ!?私は人殺しなの、もう後戻りなんて出来ないのよっ!
半端な気持ちで私の前に立ちふさがるなっ!
私の覚悟を……踏みにじるんじゃないわよ!」
怒りの形相で猛る美琴に、真紅は悲しく微笑んで口を開いた。
「そうね……確かに私には貴女の事情は分からないわ」
……でもさっき貴女は言ったわよね。
みんなが笑ってハッピーエンドを迎えるにはこの方法しかない、と」
「そうよ……だって間違えて無いじゃない」
「いえ……間違えてるわ」
「なっ!?」
「だってそこに、貴女は含まれているの?」
その言葉に、美琴の表情は歪む。
「私は……いいのよ、そんな資格は無いもの」
「人を殺してしまったから?」
「……そうよ」
「ならば、貴女は罪を償わなければならないわ」
「ハッ……刑務所にでも入れって言うの?」
「人間の作った法律の事を言っているの……?
場合によってはその必要もあるかもしれないわね。
けれど私はその事を言っているわけではない。
私は、その人たちに償いをしなさいと言っているの」
「その人たちに……?」
「クーガーは……『使えない足手まといな参加者』である貴女に。
何を言って、何を遺したのかしら」
美琴は目を見開いて、一歩後ずさる。
突如、暗闇に包まれた地下鉄内でクーガーが言っていた言葉が脳裏に蘇る。
『今度は笑顔の貴方が見たいなぁと、どこぞのバカヤロウが思っていると覚えてくださいな! 』
それは楔、クーガーが心を閉ざしかけていた少女に遺した最後の言葉だ。
それは心の奥底に確かに打ち込まれ、真紅の言葉によって亀裂が走る。
……目の前の少女はクーガーの事に気が付いている。
それが堪らなく怖くて、美琴は全身の震えを止める事は出来なかった。
「うるさいっ……うるさい!だからみんな生き返らせなくちゃいけないのよ!
私は命を救ってもらうような人間なんかじゃない!
たたかえ……たたかいなさいよっ」
美琴は真紅を睨みつけ、叫ぶ。
そして次の瞬間、とうとう雷撃の槍が美琴の前髪から打ち出される。
それは人を殺傷するほどの威力は無い、加減された一発。
これを喰らえば大人しくしてなど居られないはず、抵抗の意思を見せるはず。
そしてその雷撃は一直線に真紅の左手へと近づいていき、辺りを眩い光が包む。
しかし目の前に広がるのは、雷撃を受けたにもかかわらず。
悲しそうな目でこちらを見つめている少女が一人立っているだけだ。
「なっ」
「残念だけれど、私には貴女の雷は効かないわ」
愕然としている美琴に、真紅は言葉を続ける。
「私はローゼンメイデンの第五ドール……人形よ。
そう、私はビスクドール。
磁器で出来ているこの体は絶縁体、電気が通るわけが無いのだわ」
「そ……そんな……だって最初は……」
「実は私のドレス、ここに来てから一度洗濯しているの……。
乾かしたつもりだったけれど、きっと少し湿っていたのね。
あなたも知っているでしょう?雷自体の物理的な力はそれほどでも無いわ。
私のドレスが爆ぜたのは恐らく僅かに残っていた水分が水蒸気爆発を引き起こしたから……」
そう言って、真紅は一歩美琴へと歩み寄る。
「こ、来ないでっ!」
拒絶するかのように、再び雷撃の槍を撃ちはなつ。
今度は全力、10億ボルトもの電圧を伴わせて。
ズドンと音をたてて真紅の左手へと吸い込まれたその雷撃は、
真紅の左手に僅かな黒い焦げ後を残すのみ。
それでも表情1つ変えず、真紅は美琴へと歩み寄る。
「来るなっ!来るなって言ってんでしょ!」
後ずさりしながら、美琴は雷撃を撃ちつづける。
しかし、真紅は諸ともせずに歩み寄ってくる。
そんな少女をみて、美琴の脳裏にはとある人物の影が思い浮かぶ。
その右手で全ての雷撃を無効化し、自分を軽くあしらった少年。
「やめて……もうやめてよっ!」
あの夜の鉄橋、一方通行にあっけなく殺されるという道を選んだ私の前に立ちはだかった少年。
幾度雷撃を受けようと立ち上がり、決して諦めずに私の目の前に立ち続けた少年。
「貴女は……人殺しなんかじゃないわ」
背中にアスファルト塀が当たり、これ以上下がる事が出来ない美琴。
その目の前まで歩み寄った真紅は、美琴を見つめて小さく呟いた。
「えっ……」
「確かに私には雷撃は効かない、けれど私を殺す事は出来るはずよ。
貴女には黒い剣がある、超電磁砲だってある。
確かに貴女の目標は、優勝をしてみんなを生き返らせる事だったのかもしれない……。
結局、それでも貴女は。貴女から最後の希望を奪おうとした私さえ殺せないほど、
悪い人間では無かったというだけの話なのだわ」
戸惑うように、混乱するように美琴は目の前の真紅を見つめる。
その瞳は一点の疑念さえ持っていない。
真紅は信じているのだろう……この私を。
美琴は屈んで、頭を抱えて拒絶するように首を振る。
「私に関わった人たちはみんな私のせいで死んで行ったわ……。
もう嫌なの、誰かを傷つける事しか出来ないこんな力も嫌、誰かが死ぬのも嫌、誰かを殺すのも嫌っ!
どうせ貴女も、あすかって奴も、みんなみんな死んでいくのよ!」
「私は死なないわ……」
「嘘よっ」
「嘘じゃない、だってそうでしょう?」
真紅は美琴を優しく抱きしめる。
「私には、貴女の電撃は効かないもの。
それに私は人間ではない、腕が切れようと、足がもげようと。
そこから出血する事は無いわ……」
「……」
「貴女は、ただ少しだけ迷子になっていただけ。
貴女を呼ぶ声も、ちゃんと貴女には聞こえて居たはずよ?
もう目の前に扉はある、後は少しだけ……勇気を振り絞ればいいだけ」
「でもやっぱり私は、私を許すことなんて出来ない」
「……そう」
「いくら危険な奴だからって、私の雷撃によって死んだ人も居るわ」
「……そう」
「もう私の手は血まみれなのよ」
「後悔、しているのね」
「……当たり前じゃない」
「そう、それならそれで、もういいんじゃないかしら」
「えっ……」
涙で瞳を塗らした少女は、思わず顔を上げる。
「人を死なせてしまった事を、殺してしまった事を後悔している。
そしてもう二度と繰り返さないと心に決めているのなら、今はそれ以上の事は出来ないはずよ」
「……」
「後ろを振り返る事も時には大切だわ……
けれど今は前を見なさい。
今の貴女は、貴女に出来る最善の事をしているの?
もしそうでは無いのならば……それは貴女に関わって命を落とした人への冒涜よ」
アイツの顔が、衛宮の顔が、クーガーの顔が脳裏へと浮かぶ。
私は、生き残るという道を選んでもいいのだろうか。
死んだ人間を生き返らせるという道を、諦めてもいいのだろうか。
この手で、この能力で、誰かを助けても……いいのだろうか。
『もうこれ以上方法が無くったって、他にどうしたらいいのか分からなくたって、それでも嫌なんだよ』
それは、脳裏に蘇るアイツの言葉。
『何でお前が死ななきゃいけないんだよ、どうして誰かが殺されなくちゃならないんだよ!そんなの納得できるはずねぇだろ!』
何処までも真っ直ぐで、何処までも優しく、何処までも力強い言葉。
如何して今、アイツの言葉を思い出しのかわからない。
だが今、なんとなく分かった事。
……今の私をアイツが見たら、きっと怒る。大激怒なんてものじゃないだろう。
アイツがまだ生きているとしたら、きっと一人でも多くの人を助けようとしているに違いない。
アイツはきっとこの悪魔のゲームをぶち壊し、どんな奇跡でも起こして見せるはずだ。
(バカ……死んじゃったら、しょうがないじゃない)
美琴は気が付いた、自分が涙を流している事に。
目の前の少女は言った、最善を尽くせと。
御坂美琴の最善……それは一人でも多くの参加者を助け、この悪魔のゲームをぶち壊す事。
(そう……だよね?)
瞼の裏に浮かんだアイツ━━上条当麻は、微かに頷いた……そんな気がした。
「ごめんなさい」
美琴は口を開く。
それは先ほどあすかを殺す事を決意した時と同じ、涙を流しながら。
だがしかし、その顔は覚悟をしたとても穏やかなもの。
「……えぇ」
真紅は美琴の頭を撫でながら答える。
どこか意地っ張りで、素直じゃないけれど。
本当は誰よりも優しくて、勇気を持っている。
もう死んでしまった自分の姉に、姿を重ね合わせながら。
「し、真紅っ。あぶないっ!!!!」
尋常ではないほど、焦燥感を乗せた声が二人の耳に届く。
それは、美琴の電撃を喰らって動けないはずのあすかの声。
その声を聞いた真紅は、すぐに違和感に気が付いた。
自分たちは、何かの影の中に居る。
ここは道路、空を遮るものなんて無いはずだ。
実際さきほどまでは、太陽の暑さを感じることが出来ていた。
真紅は空を見上げ、目を見開いた。
逆光で姿を確認することは出来ないが、そこには人影がこちらに迫りつつあるのが見える。
真紅はとっさに右腕で美琴を逆方向へ引っ張り、自分も同時にステップする。
それと同時にデイバックへと左手を突っ込み、庭師のはさみを取り出そうとする。
ザンッ!
何かを切断する音が響き渡り、放物線を描いてその切断されたモノが空を泳いだ。
カランと高い音を発しながら、それは地面へと転る。
「い、いやぁぁぁぁぁ!」
美琴は叫び声を上げる、先ほどまで自分を抱いていた人形の一部が。
地面を転がっているのが視線に入っていた。
……それはひび割れた左腕、地面にぶつかった衝撃でひびは更に細かく入り。
ところどころが砕けている。
上から一閃して真紅の左腕を切断したその人影をみて、美琴は目を見開いた。
肩の少し上で揃えられている、灰色の短いショートヘア。
黒が基調の独特の服に、大きな刃がついている異形の左手。
……忘れるわけが無い、E-2駅へ向かうといっていたはずのナインと名乗った少女が、今まさに地面に着地して衝撃を殺しているところ。
そして間髪を居れず、衝撃を殺すために屈んだ状態からこちらへと地面をけっていた。
美琴のすぐ近くには蹲って左肩を抑えている真紅、そして側には庭師の鋏が落ちていた。
迷っている暇はない……最善を尽くすと決めた美琴は真紅を抱きかかえると、庭師の鋏を握り締めて相手の攻撃を受け流すべく構える。
ナインは肉薄し、その左手の刃を大きく振りかぶって地面と平行に薙ぎ払った。
金属と金属がぶつかり合い、火花が散った。
ナインのARMSの斬撃をまともに受けた美琴と真紅は、二人もろとも吹き飛ばされてあすかの後方、民家の残骸へと突っ込んだ。
「……手ごたえは無い、まだ生きているわね」
左手のARMS、その手首部分から生えているその巨大な刃の先は少量の血で濡れていた。
そう……ナインはE-2駅へは向かわなかった。
彼女のとった作戦は単純明快、美琴の監視だった。
殺し合いに乗ると言った美琴、嘘はついては居ないと思えた。
……しかし、不安定な美琴の感情をナインは見抜いていたのだ。
もしも殺す間際になって手を下す事が出来なかったら。
誰かに説得されてしまったら……。
みすみす敵を増やしてしまう事になる、更に敵に団体を作らせてしまうというおまけ付だ。
美琴が誰かに手をかけるところを確認すれば、そのまま離れる予定だった。
だが……もしも殺す事が出来なかった場合。
誰かの説得に応じてしまった場合。
美琴を含めてその場に居る全員を処分する。
そのつもりで今まで三人の動向を監視していたのだ。
「御坂美琴、私はあなたを恨んだりしないわ。
期待はしていなかった訳じゃない……けど、これはやっぱり私一人でやり切らなければいけないって事よね」
「勝手な事……言わないで下さいっ」
美琴達の方へ歩み寄ろうとしたナインの前に立ちはだかるように、あすかは立ち上がる。
「あら……私と戦おうって言うの?知ってるのよ、あなたは電撃を喰らって体が痺れてるんでしょ?」
「だったら何だって言うんですか……このまま真紅達が殺されるのを眺めていろと?」
「そうね、それが私にとっては一番都合がいいと思うわ。
でも邪魔をするというのなら、まずはあなたから殺すわよ」
次の瞬間、辺りの地面が抉れて虹色の粒子があすかの周りに集まる。
「僕は無力です……誰一人助ける事も出来ない。
真紅は死んでしまったと思っていた……けれど生きて居てくれた。
思い出したんです、何故僕がHOLYに入ったのか……。
それは失いたくないものがあるから、守りたいものがあるから!」
虹の粒子は緑色の輝く宝玉へと変わり、あすかの周囲へと集まる。
だがしかし……その動きはどこか散漫で、何時ものような規則的な動きを見ることは出来ない。
「そこのビリビリさん!あなたは真紅を連れて逃げてくださいっ!
……これは僕の罪滅ぼしだ。あなたを早まって悪だと断定した僕の!
あなたと真紅が逃げ切るくらいの時間なら、稼いであげますよっ!」
その声を聞いたナインは、少し悲しそうな顔になってあすかを見つめる。
「あら、女の子二人の騎士になろうって言うの……?」
「騎士……?違います、僕はHOLY隊員の橘あすか。
ここから先へは一歩たりとも通すつもりはありません」
「体が痺れて上手く動かないってのに無謀ね、死ぬわよ?」
「……そんなの、HOLYになったときから覚悟は出来ていますよ」
そう。と呟くと、ナインはあすかへ向かって地面をけった。
あすかはそれに答えるよう、八つの宝玉を操って迎え撃った。
◇ ◇ ◇
パラパラと、周りの土砂が重力に引っ張られて落ちていく。
美琴はわき腹から溢れ出ている自らの血を気にする様子も無く、腕の中の真紅を見つめる。
自分が庇ったお陰だろうか、左腕以外の損傷は見られない。
今は意識を失っているようだ……。
ナインの薙ぎ払うような剣筋を、美琴は片腕にもった鋏で受け止めた。
しかし片腕で押し勝てるわけも無く、結果として鋏を体に密着させて体全体で受け止めたのだ。
そんな事をすれば斬撃すべてを受け止める事など出来るはずも無く。
振りぬかれた時にわき腹を深く切られていた。
辺りには美琴のデイバックの中身がぶちまけられている。
恐らくはここにぶつかった衝撃で出てきてしまったものだろう。
……あすかは逃げろと言った。
だが体は思うように動かない、恐らくはここにぶつかったときに頭を強く打ち付けてしまったのだろう。
平衡感覚が保てず、立ち上がるもその場に崩れ落ちてしまう。
あすかの方へと視線を向ける、せめて援護を……。
そう思うが、ナインは美琴の存在を忘れては居ないのだろう。
美琴とナインの直線状には必ずあすかが居るよう位置どっている。
また誰も助けられないのか……そう思ったその時、腕の中の真紅が突如瞳を開いた。
◇ ◇ ◇
『真紅……真紅……聞こえるかい?』
声が聞こえる、とても優しい声。
その声に導かれるように真紅は瞳を開いた。
ただただ白い、霧に包まれた世界が目に入る。
しかし、誰の姿を確認する事も出来ない。
「誰?」
『酷い有様だね、何時もの君らしくない』
「この声……聞き覚えがある」
『ふふっ、酷いな。僕を忘れてしまったのかい?』
「えっ、まさか……そんな事」
聞き覚えがあるその声に、真紅は目を見開いた。
有り得ない、もう既に遠くへ行ってしまった存在。
それが何故、今このタイミングで……。
支援
「あなたなの……蒼星石?」
『そうだよ……久しぶりだね、真紅』
徐々に霧が晴れて、目の前に人の形の輪郭が浮かび上がる。
蒼が基調のドレス、頭に被ったシルクハット。
忘れるはずも無い……目の前にはローゼンメイデン第四ドール、蒼星石がこちらを見つめていた。
『まさか腕を失ってしまっているなんて、これじゃあもうアリスになんてなれないね』
その声を聞いて、真紅は自らの左腕があった場所へと視線を移した。
……そして全てを思い出す、突然の襲撃者に襲われた事。
意識を失ってしまったこと。
「蒼星石……私は死んでしまったの?」
『……答えはNOだよ、でもこのままじゃ。そうなってしまうかもしれない』
「お願い蒼星石、夢から覚めるにはどうすればいいのか……教えて頂戴」
『腕を失っているって言うのに、随分冷静なんだね。
確か昔の君は、何よりも欠落する事を恐れていたはずだけど』
「……何かが欠けた不確かな存在たどしても、
それを埋めようとしてくれる人が居る。
呼んでくれる声に気が付きさえすれば、誰もジャンクなんかにはならないのだわ。
それはジュンが……私の媒介が教えてくれた」
『へぇ、彼がそんな事を。
でも彼はもう……』
「分かっているわ……もし失ったのが右腕だとしたら。
少しくらいはショックを受けていたかも知れないわね。
この右腕は、お父様が作ってくださり。ジュンが直してくれた腕。
でもね、私には他にも守らなくてはいけない存在が居るの。
お願い蒼星石、私を夢から覚まさせて……」
『……分かったよ真紅、君に僕の全てを託そう』
「え?」
『1つだけお願いがある、翠星石を……彼女を守ってやって』
「蒼星石……翠星石はもう」
その言葉を聞いて、蒼星石は首を横に振る。
『お願いだ真紅、翠星石を……』
そしてゆっくりと、右手を真紅へと差し出した。
「えぇ。分かったわ蒼星石、私は……」
そしてゆっくりと、蒼星石の手の上に自分の手を重ねた。
その次の瞬間、眩い真紅の光が辺りを包み込む。
◇ ◇ ◇
支援
真紅は瞳を開く、何やら柔らかいものに包まれている感覚を覚えながら。
「真紅……よかった、目を覚ましたのね」
頭上には美琴の苦しそうな顔が見える。
近くからは断続的な金属音が響き、時折あすかのうめき声が聞こえる。
目を見開いた真紅は、体を起こした。
「何が起きたの……?あすかはっ?」
「今時間を稼いでくれているわ、あなただけでも逃げて」
その言葉を聞いて、真紅は美琴へと視線を向ける。
その脇腹からは血がドクドクと流れ出していて、止まる様子は無い。
そして通りの方へと視線を向ける。
8つの宝玉を操り、防御に徹しているあすか。
その宝玉を掻い潜り、猛攻する少女。
体が痺れているとはいえ、それはカズマやクーガーのそれとは違い、
威力は少ないが精密操作が可能なエタニティ・エイト。
八つの不規則な動きの玉に責めあぐねているナインは、未だ決定打を撃つ事が出来ずに居た。
そして右手に何かを握っていることに気が付いた真紅は、視線を降ろす。
そこには不思議な光を放つ赤い石。
何かを語りかけるように輝いている光に、真紅は確信する。
これは……蒼星石のローザミスティカだと。
それを愛おしそうに胸へと押し当てると、次に覚悟をしたように口元へと運ぶ。
ゆっくりと口に含み、それを飲み干した。
目の前の美琴は、それを不思議そうに見つめている。
突如、微かに真紅の体が光り。
そして辺りには静寂が戻る。
そして真紅は、美琴へ向かって視線を移す。
「貴女、名前は?」
「えっ」
「名前よ」
真紅の突然の問いに、美琴はあせりながら答える。
「御坂美琴よ……今はこんな事をやってる暇じゃないの!アンタは早く逃げなさいよっ」
支援
しえん
支援
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創る名無しに見る名無し:2009/08/16(日) 22:20:44 ID:YiyuPOV2
しかし真紅はそんな美琴を無視するように、美琴を見つめて口を開く。
「こんなお願い、間違えだって分かっているわ。
あなたをアリスゲームに巻き込むことも、あなたの力を借りる事も」
「えっ……?」
「でも、まだ足りないの。私にはまだ力が足りない……。
残念だけど、このままじゃ私達は死ぬわ」
「だからっ」
「お願い美琴、私と薔薇の契約を……。
貴女の力を、貸して頂戴」
美琴は言葉に詰まった。
目の前の真紅の瞳はとても真剣で。
真紅の言葉はとても一方的だったけど、文句は言わなかった。
何故か、今にもなきそうな子供が「助けて」と言っているように見えて……。
◇ ◇ ◇
「エタニティ・エイトッ」
三つの宝玉が目の前で廻り、相手の斬撃を受け流す。
体に痺れはあるが、段々と抜けてきている。
雷撃を貰ってから時間が経っていることが幸いしたのだろう。
だがしかし、自在に変化するリーチをもつ相手の左腕をいなすので精一杯。
とても攻撃に転じる事なんて出来ない。
致命打は何とか避けているが、体中が切り付けられて血が流れている。
「もう諦めたらどうなの?あの二人もまだあそこに居るようだし」
「動けないのなら、逃げ切るまで僕は粘るだけです」
「そう……その覚悟はいいけど、そろそろ私もこの玉に慣れて来たし。
……終わりにしましょう!」
そう言って地面を蹴り、あすかに肉薄しようとしたその瞬間。
あすかの真後ろ……二人の少女が負傷してる筈の場所から眩い光りが漏れる。
思わず足を止めたその瞬間、視界を埋め尽くすほどの薔薇の花弁が現れてナインへと迫り来る。
ナインの頬に一枚の花弁がかする。
その瞬間、ナインは頬に痛覚を感じる。
その薔薇の花弁は、まるでカッターナイフのように鋭く、ナインの頬を切り裂いたのだ。
迫り来る花弁の嵐に危機を感じ取り、すばやく後ろへと下がる。
一枚一枚の威力は大したことは無いだろう……
だがもしもあの嵐が、体の一部をめがけて飛んできたとしたら?
ケガではすまないほどの傷を負う事になるだろう。
契約キター支援
支援
「そこまでよ……」
ストン、と音をたてて、
真っ赤なドレスを着た、左腕が無い人形が目の前へと着地した。
薔薇の花弁はその人形の元へと集い、守るように舞い踊っている。
そして右腕には大きな鋏を持って、ナインへと向けていた。
「こんな能力を持っていただなんて意外ね……隠していたの?」
「貴女に答える必要は無いわ」
「真紅っ……どうして逃げないんですか」
「あすか、ご苦労様……逃げる必要なんて無いわ」
「それはどういう意味?まさか私に勝てるだなんて……」
「そのまさかよ」
真紅はナインと呼ばれていた少女を見つめる。
ナインの瞳には迷いが無く、洗礼された殺意が身を刺すのが感じられた。
……この少女は、闘いなれている。
そう判断せざるを得ないだろう。
「あすか、もう少しだけ時間を稼げる?」
「くっ……全くあなたという人は、何時も無茶難題ばかりを……」
「……駄目なの?」
「任せてくださいっ!エタニティ・エイト!」
力強く叫んだあすかの元から、8つの宝玉が飛び出した。
それとほぼ同時、ナインは地を蹴ってあすかへと肉薄する。
それを遮るように、宝玉は終結して壁を作った……。
だがそれを笑って見つめるとナインは僅かに軌道を修正。
宝玉の壁を紙一重でかわし、隻腕の人形へと肉薄する。
「しまっ……真紅!」
あすかの叫び声が、辺りに木霊した。
迫り来るナインに、真紅は微笑んで鋏を向けた。
(蒼星石……力を貸して頂戴)
支援
そう心の中で呟いたその次の瞬間。
ナインはその左腕を大きく振りかぶり、真紅の上半身と下半身を別々にしようと迫り来る。
真紅はそれに対し思い切り鋏を振りかぶり、切り上げるように鋏を刃へと叩きつけた。
それは今まで長年使ってきた武器のように、よく手に馴染み。
そして力強い一撃をARMSの刃へと与えた。
結果、ナインの刃は上方へと弾かれる。
真紅のヘッドドレスを切り裂きつつ、空を切ったナインは次撃を繰り出そうと真紅を睨みつける。
その次の瞬間、真紅は大声で叫んだ。
「ローズテイルッ!この子を追尾して捕らえなさいっ」
突如、真紅の後方から蛇のような薔薇の道が迫り来る。
このまま振り下ろせば真紅は始末できるかも知れない……。
だけど、先ほどとは打って変わりいきなり戦闘力が上がっている。
花弁の大群に襲われて怪我を負うのは避けなければならない。
そう判断したナインは、大きくバックステップを取る。
……されどその薔薇の道は、自分が下がるよりも更に早くナインの方へ迫ってきた。
不味い、捕まってしまう。
そう思ってARMSの刃を盾にした瞬間、再び真紅は叫んだ。
「今よっ!美琴」
美琴……?あの子に何かが出来るわけが無い。
常に立ち居地には注意し、間には真紅かあすかが居るように仕向けている。
直線的な攻撃しか取れない美琴が、今更何かを出来るはずが無い。
そう思った次の瞬間。
真紅のローズテイル……薔薇の道中を通り、青白い槍が迫り来るのが見えた。
……それはARMSによる身体能力上昇の結果、一瞬捉えることが出来た光景。
次の瞬間、その槍はナインの体を貫いた。
全身に電流が流れ、一瞬息が出来なくなるのを感じる。
「はぁぁぁ!!」
美琴はそう叫ぶと、右手をナインへと向ける。
その親指の上には一枚のコイン、そしてそれを弾いて超電磁砲を打ち出した。
それは電撃を受けて動けないナインの左腕……ARMSの刃へ吸い込まれるように当たり、それをへし折る。
オリジナルARMS、ナイトの硬度はARMSの中でも一番の硬度を誇ると言われている。
しかしその第一段階でのナイトは、近代兵器の超電磁砲に耐えうる事は出来なかった。
凄まじい衝撃と共に、少し遅れて雷のような轟音が響き渡る。
結果、ナインはその衝撃によりブロック塀へと突っ込み。
辺りには粉塵が舞い上がる。
支援
美琴が打ち出した雷撃の槍。
それは殺すためではない、痺れさせるための攻撃。
ナインも言っていた。優勝を目指して全員を生き返らせると。
話し合えば止められるかもしれない……私と同じ過ちを犯そうとしているナインを。
……しかし粉塵が晴れたその先。
崩れて向こう側が見えているブロック塀の瓦礫の上にナインの姿は無かった。
「逃げ出した……?」
「見たいね」
あすかの問いに、真紅はそう答える。
次の瞬間、ドサリという音が真紅後ろから響く。
真紅が振り返ると、あすかが力なく倒れていた。
「あすかっ……!」
そう叫び、真紅はあすかへと駆け寄った。
「ははっ、今回はさすがに疲れましたよ……。
しかも僕、何の役にも立たなくて」
「そんな事は無いわ……貴方が居なかったら、私は……」
「……本当に死んだかと思いましたよ、真紅。
それに、僕がもっと早く気が付いていたら真紅は腕を……」
空を仰いでいるあすかの両の目から、一筋の涙が零れ落ちる。
そしてその手のひらには、真紅の左腕が握られているのが見えた。
「あすか……貴方」
「これがあれば……もしかしたら修理できるんじゃないかと……。
そう思ったんです……すみません」
「あの戦闘の中、私の腕を守ってくれたと言うの?」
「……」
真紅はゆっくりと屈んで、あすかの頭を抱き寄せる。
「ありがとう……あすか。
腕を直す事は出来ないけれど、貴方の思いは確かにここに……。
それが今の真紅の宝物」
「真紅……」
支援
支援
「ちょっといいかなお二人さん、いい雰囲気の所悪いんだけど」
ガラガラと言う音と共に、美琴が瓦礫の山から下りてくる。
その足取りは覚束なく、脇腹に手を当てて苦痛に顔を歪めている。
「美琴……貴女も早く傷の手当てを」
「……そのことなんだけど、これは自分でやるわ」
「えっ……?」
「私は優勝を目指す事はやめたけど、やっぱりアンタ達と一緒に行動する事は出来ない」
「何を……言ってるんですか?」
「本当にゴメンなさい、とくにあすかさん。だったわよね?本当に悪かったと思っているわ」
そう言って、美琴は一歩あとずさる。
「私はあなた達と行動を共にする資格は無いから……一人でもやってみせる。
出来る限りの人を助けて。この悪魔の所業をぶち壊して見せるから」
「……待ちなさい、美琴」
「ごめんね真紅、あなたのお陰で私は……」
「そんな事を言っているんじゃ無いわ、あなた私を殺すつもりなの?」
「は……?」
美琴は驚いて、真紅を見つめる。
「殺すってそんな大げさな」
「忘れたとは言わせないわ、貴女は私と薔薇の誓いを結んだ。
私は貴女が近くに居なければ、ろくに闘う事も出来ないのよ?」
「……ならこれを誓いを解いてよ。それであすかさんと」
「一度した誓いを解く事は出来ないわ、それは指輪の消滅……アリスゲームの放棄を意味するもの」
「ちょ……じゃあこの指輪は」
美琴は慌てて左手薬指に嵌められている指輪を抜こうとする。
「無理に抜こうとすればの指の肉がもげるわよ」
「そっ、そんな!そんなの聞いてない!」
支援
慌てている美琴を真紅は真っ直ぐと見つめて口を開いた。
「お願い美琴……私たちと一緒に来て頂戴。
私たちだけでは力が足りないの……この殺し合いを止めるのには」
「け、けどっ」
「僕からもお願いします……僕だけの力ではこの殺し合いを止めるどころか。
真紅を守る事さえ出来ないかもしれない……」
「……貴女の足りない部分は、私たちが埋めてみせる。
だから……私たちの足りない部分を美琴が埋めてくれないかしら」
そう言って、真紅は右手を差し出した。
少しだけ戸惑う、美琴はまだ自分の行いを許せていない。
もし又この力で二人を殺してしまったら……。
そこまで考えて美琴は気が付いた、自らの能力の暴走が収まっている事に。
ゆっくりと手を差し出して、真紅の手を握り返す。
……それはとても小さくて、力強くて。
電撃の効かない腕……そう考えた瞬間、何故か脳裏にはアイツの顔が思い浮かんで。
この人たちと、アイツが言っていた事を。やろうとしていただろう事を。
果たしてやろうと、そう思った。
◇ ◇ ◇
「これ……何とかなら無いの?さすがにダサイわ」
「文句を言わないで下さい、何なら一時的にあなたの意識を奪う事も出来るんですよ」
「ちょっと……変な事言わないでよ」
三人は通りを離れて目立ちにくい路地裏を歩いている。
美琴のおでこには緑色の宝玉が埋め込まれており、不思議な光を放っていた。
あすか曰く、人間の潜在能力を呼び起こして治癒能力を高める事が出来るのだとか。
三人が目指すのは病院……美琴が脇腹に負った傷は思ったよりも深くその身を傷つけていた。
内臓や太い血管を傷つけているという事ではないが、少し血を流しすぎているし、消毒や傷の縫合をする必要もある。
簡易的な止血をし、腹部に包帯を巻くという処置は済んでいた。
あすかの能力のお陰だろうか?血は止まっているが、いつまでもコレに頼るわけには行かないだろう。
「ナインと名乗ったあの少女も……優勝を目指しているのね?」
「……えぇ」
真紅の問いに、美琴は頷いて答える。
「あの人も言っていた、人を死なせてしまった。って」
「……そう」
「出来ればあの人も、私たちと一緒に……」
「それは難しいと思いますよ」
あすかは静かに、口を開いた。
支援
「あの人はあなたとは違う、人を殺す事に戸惑いは無かった。
言ってしまえばあなたとは『覚悟』の差がありすぎます」
「わ、私だって……」
次の瞬間、真紅の靴があすかの脛を蹴り上げた。
「いっ!ぐあぁぁぁ!」
足を抱えて飛び跳ねるあすかを尻目に、真紅は口を開いた。
「全く、無神経にも程があるわ。
……けれど、あすかの言っている事も間違えでは無い。
貴女も覚悟をしていたのでしょうけど。
彼女はそれ以上……何かに誓っているような、そんな決意を感じたのだわ」
「……」
「説得する事は無理でも、彼女を救えないことは無い……」
「えっ……?」
「簡単な話よ、彼女が誰かを手にかける前に全てを終わらせればいいのだわ」
「……そんな事」
「難しいでしょうね、でも貴女の雷撃を受けて。
少なくとも今は動けないはずよ」
隣で飛び跳ねていたあすかが、真紅へと向かって声を張り上げる。
「し、真紅っ!一応僕はケガ人な訳で!」
「それだけ元気があるなら平気よ、早く病院へと行きましょう」
美琴は二人を見つめて、自然に笑みがこぼれて来るのを感じた。
……それはこの会場に来て、初めての事だったのかもしれない。
(けど……難しいと分かっているけど、それでも私はやっぱりナインさんを助けたい)
そう心の中で呟くと、美琴は前に歩いている二人の後を追って足を前へと踏み出した。
支援
【D-5/南西/一日目 午後】
【真紅@ローゼンメイデン(漫画版)】
【状態】:左腕損失
【装備】:庭師の鋏@ローゼンメイデン 蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン
【所持品】:基本支給品一式、不明支給品0〜2個(未確認)、不思議の国のアリス@現実他、いくつかの本。
【思考・行動】
1:殺し合いを阻止し、元の世界へ戻る。
2:病院へ向かい、あすか、美琴の治療をする。
3:列車に乗って、会場全体を一通り見ておきたい。病院にて治療後再び電車に乗って最終的にはG-7駅を目指す。
4:ループを生み出している何かを発見する。
5:翠星石のローザミスティカを手に入れる。
6:劇場にて起こっている戦闘が気になる。
【備考】
※参戦時期は蒼星石死亡以降、詳細な時期は未定(原作四巻以降)
※あすか、クーガーと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。
※美琴と情報交換し、学園都市や超能力の事を大雑把に聞きました。
※蒼星石が居る事や、ホーリエが居ない事などについて疑問に思っていますが、参加時期の相違の可能性を考え始めました。
※ループに気付きました。ループを生み出している何かが会場内にあると思っています。
※情報交換済みの人物:ルフィ、前原圭一、クーガー
※彼らの知人:レナ、沙都子、梨花、魅音、詩音、切嗣(圭一)、ゾロ、チョッパー、ハクオロ、アルルゥ、カルラ(ルフィ)
※要注意人物:アーチャー(遭遇)、ライダー(詳細ではない)、バラライカ(名前は知らない)、ラッド
無常、ラズロ、ヴァッシュ、カズマ、クロコダイル、水銀燈(殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める)
※対主催チーム(佐山、小鳥遊、蒼星石)の存在、悪魔の実の能力者の弱点(カナヅチ)を知りました。
※nのフィールドへは入れない事。ローゼンメイデンへのボディへの干渉の可能性を考え始めました。
※地下空間の存在を知りました。
【橘あすか@スクライド(アニメ版)】
【状態】:疲労(中)腹部に軽い痛み 全身に痺れ(小)全身に切り傷(小)
【装備】:HOLY部隊制服
【所持品】:基本支給品一式、螺湮城教本@Fate/Zero、不明支給品0〜2個(未確認)
【思考・行動】
1:ギラーミンを倒し、元の世界へ戻る。
2:病院へ行き、自分と美琴の治療をする。
3:列車に乗って、会場全体を一通り見ておきたい。病院にて治療後再び電車に乗って最終的にはG-7駅を目指す。
4:ループを生み出している何かを発見する。
5:真紅が気になる……?
6:劇場での戦闘が気になる。
【備考】
※参戦時期は一回目のカズマ戦後、HOLY除隊処分を受ける直前(原作5話辺り)
※真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました。
※美琴と情報交換し、学園都市や超能力の事を大雑把に聞きました。
※ループに気付きました。ループを生み出している何かが会場内にあると思っています。
※情報交換済みの人物:ルフィ、前原圭一、クーガー
※彼らの知人:レナ、沙都子、梨花、魅音、詩音、切嗣(圭一)、ゾロ、チョッパー、ハクオロ、アルルゥ、カルラ(ルフィ)
※要注意人物:アーチャー(遭遇)、ライダー(詳細ではない)、バラライカ(名前は知らない)、ラッド
無常、ラズロ、ヴァッシュ、カズマ、クロコダイル、水銀燈(殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める)
カズマとアーチャーは気に食わないので、出来れば出会いたくもない
※対主催チーム(佐山、小鳥遊、蒼星石)の存在、悪魔の実の能力者の弱点(カナヅチ)を知りました。
※参加者によっては時間軸が異なる事を知りました。
※地下空間の存在を知りました。
【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
【状態】:疲労(大) 全身打撲(中)脇腹の切り傷(止血済み) 自分への強い嫌悪感 多大な喪失感 精神不安定(小)
契約:ローゼンメイデン(真紅)、エタニティ・エイトの力により自然治癒力強化
【装備】:基本支給品一式
【道具】:コイン入りの袋(残り96枚)、タイム虫めがね@ドラえもん、
【思考・状況】
1:一人でも多くの人を助ける、アイツの遣り残した事をやり遂げる。
2:人は絶対に殺したくない。
3:病院へ行ってあすか、自分の治療を行う。
4:真紅とあすかに着いて行く。
5:切嗣とクーガーの死への自責
6:上条当麻に対する感情への困惑
7:ナインは出来る事ならば説得したい
【備考】
※ 参加者が別世界の人間、及び参加時期が違う事を聞きました。
※ 会場がループしていると知りました。
※ 切嗣の暗示、催眠等の魔術はもう効きません。
※ 真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました。
※ あすかと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。
【契約:ローゼンメイデン】
人間がローゼンメイデンの持つ指輪に口付けすることにより、その契約は行われる。
ローゼンメイデンは戦闘時、契約をした人間の体力を吸収して出力の向上、特殊能力の発動を行う事が出来る。
力の吸収量はローゼンメイデンの意識で調整できる、人間が拒む事は出来ない。
尚、契約によって繋がっているローゼンメイデンの媒介の間では、考えが相手に伝わってしまう事がある様だ。
◇ ◇ ◇
「はぁ……はぁ……」
その灰色の髪をなびかせながら、ナインは駆け抜ける。
予想外だった、まさか雷撃を曲げ、尚且つブレードをへし折られるなど。
予想外だった、まさか雷撃を受けた影響により、ARMSの制御が出来なるなるなんて。
しかし、考えてみれば出来ない事も無いだろう。
真紅は薔薇の花弁で電気の通り道を作り、電気を通すその花弁へと雷撃の槍を潜らせる。
あの場ですぐに思いついたのだろうか……大したアイデアだ。
ならば何故、今ナインは体が痺れずに駆けているか。
それはナインが持っていた「全て遠き理想郷(アヴァロン)」の効果。
持ち主が受けるダメージを一段階下げることが出来る鞘……。
これは美琴の雷撃とて例外ではない。
結果としてARMSを戦闘不能にし、ナインの体を痺れさせる程までは届かなかった。
突然戦闘力の上がった人形。
真紅とのコンビネーションで自在に曲がる電撃。
痺れが取れかけた八つの宝玉使い。
直線的な攻撃だが、よける事も難しい超電磁砲。
3人を相手にするにはARMSの使用が絶対条件だ。
それが封じられた……ナインに残された唯一の手段、それは撤退だ。
『ブザマだな……ブレンヒルト・シルト……』
ナインの脳裏に、魔導器ネモと名乗った人形の言葉が蘇る。
その黒が基調の服の胸元を掴み、ナインは顔を歪ませる。
「どうして……どうして上手く行かないのよっ」
足を止め、肩で息をする。
支援
『人を死なせてしまった事を、殺してしまった事を後悔している。
そしてもう二度と繰り返さないと心に決めているのなら、今はそれ以上の事は出来ないはずよ』
真紅が美琴に言った言葉を思い出す。
「後悔していれば、それだけでいい……?
それ以上の事は出来ない……?
それは違うわ、ここには人を生き返らせることが出来る力がある。
そして全員を殺せば、それを手に入れる事だって出来る。
その可能性は、決して0じゃない」
震える自分の肩を抱いて、ナインは蹲った。
「そうでしょ?ナナリー……
私は罪を犯しているかもしれないけど。
この道の先には、きっとあなたが待ってて居てくれるのよね?」
震える声でそう呟いたナインの言葉は、誰にも届かない。
ここには道を導いてくれる小さな黒猫も。
助言を与えてくれる衣笠書庫の司書も居ない。
痺れは段々と取れてきた……左腕のARMSは、とりあえず元の形を取り戻す。
ナインは再び歩み始める。
誰の人影も見えない、孤独な道。
それは少し不気味で、そして恐ろしくて。
しかしナインは止まらない、彼女が求めるものがあるのはこの孤独な道の先ある。
そしてその道を振り返る事も無く進むと、自分の名に誓ったのだから。
【D-3/一日目 午後】
【ブレンヒルト・シルト@終わりのクロニクル】
[状態]:疲労(中)、左半身に火傷(小)、左腕欠損(ARMSで代替)、ARMS復旧率80%
[装備]:汗で湿った尊秋多学院制服(左袖欠損)、ARMS『騎士(ナイト)』@ARMS(左腕に擬態)、全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero アリス・ザ・コードギアスの衣装@ナイトメア・オブ・ナナリー
[道具]:支給品一式×2、アンフェタミン@Fate/Zero
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い
1:殺し合いに優勝し、優勝者の褒美でナナリーを含む全ての参加者を『蘇らせる』
2:望みが同じ参加者とは協力する
3:佐山と新庄には注意(特に佐山)
4:1st-G概念を行使できるアイテムを手に入れる
5:ミュウツー、ラッド、詩音を許すつもりはない
6:御坂美琴、真紅、橘あすかは見つけ次第殺す
7:ARMSが完全に回復するまでどこかで休憩する。
※森林破壊者、男湯銃撃者を警戒しています。また双方とも別人だと思っています。
※ARMSコアの位置は左胸です。
※ARMSについては詩音には話していません。
※アリスの衣装はネモが変化した姿です。ネモの意識、特別な力はありません
※髪を切りました
※ARMSは電撃を学びました、以後電撃を浴びても操作不能にはなりません。
支援
以上で投下を終了します。
沢山の支援ありがとうございました。
注意点、修正点、ご意見等ありましたらお願いします。
投下乙!
美琴はやっぱり非情には成り切れなかったか。
真紅とも契約したし、ようやく本来の調子を取り戻せて良かった良かった。
真紅とあすかの信頼関係も大分強いものになってきたな。
そして空気社長にようやく見せ場が!しっかり時間を稼ぐ辺り、何だかんだで流石だよな。
そして幸先の悪いスタートになったナインはこの先どうなるか……。
投下乙
あすかヘタレW
真紅がかっこええ、そして強え
美琴の苦しみに気づいてあげる事ができるのはすごいな。
あすかには絶対むりだ。
それと美琴の葛藤が読んでていろいろ悲しかったな。人殺しなんてできる奴じゃないのに無理して鬼になろうとして、ボロボロに傷ついていってたからな。だから立ち直れた時は感動した。
そしてナインが怖え。
覚悟完了した迷いの無さが何か凄みがあったな。負けはしたがこれからどうなっていくのか期待。
GJでした
すみません、ちょっと状態表にて抜けている所がいくつかありましたので訂正しました。
修正・議論スレに落としておきましたので、よろしくお願いします。
修正おつでした
久々に予約が止まったな
予約が止まったというより人の気配が感じられない。
嵐の前の静けさ……だといいな
確かに最近人が減った気がする
予約は劇場付近の火種に集中してたから
劇場付近がある程度進んだ今はちょっと勢いが落ちたのかもな
一応、いるぜw
このくらいで人いないとか言ってたらやってられないよ
この時期でも人があれだけいただけでも凄いぞ
他のロワなら2〜3週間に予約が1つあるか無いかだぞ
折角だし雑談でも、
序盤の主役って言われて誰を思い浮かべる?
タイトルにもあるとおり、フィーロが……
あんまり主役っぽくなかったね!
みんながみんな動いていたし、それを決めるのは難しいんじゃないかな?
それを承知で……すごく個人的な意見だけど。
佐山は何か最初から主役っぽく動いてる気がするかな
なぜか一番最初に思ったのが前原圭一w
ハクオロさんかな
個人的には切嗣さんを殺すまでは主役っぽかった
個人的には断然レットと圭一だな。
正統派主人公とヘタレ主人公って感じがしてた。
小鳥遊もそれなりに主人公ぽいとおもうけどな
原作七原みたいで
ここまで名があがった奴らが軒並みヘタレな件
>>301 フィーロは超奥手だけど恋愛以外じゃヘタレじゃないよ、多分!
俺的には佐山は主人公っていうよりもトリックスターってイメージだなw
でも恋愛だと超へたれだから、そのイメージがww
主人公…輝いてるキャラが多くて選びづらいな…!
個人的には登場から最後まで文化的に駆け抜けたクーガーの兄貴を推したい!
逆に負の方向に輝いたダーク主人公を選んでみる。
やっぱ勢いで突き進んだバラライカ、序盤カワイソスで突き進んだ美琴かな。
序盤の姐さんの活躍は凄かったな…!正に軍人の面目躍如
御坂はもちなおしたかと思ったら、更なるどん底に突き落とされるカワイソスっぷりだったからなぁw
今回救われて本当良かったw
ダークは園崎詩音かなw
こういう話題のときにもやっぱりワンピースには誰も触れないんだな
まあ不人気作品だから仕方ないけど
>>306 美琴はやっぱり相手を殺せない甘さで救われたよな。
逃避だったってのもあるからな
自分の本当の気持ちに向き合えたのは大きい
>>308 だってワンピースのキャラなんて誰も活躍してないじゃん
ふぅ…
ワンピースは強いてあげるならゾロか
前線で活躍というよりは、話のつなぎで目立ってるといったところか
支給品の出典数が一番多いのはワンピースだったけか
キャラは活躍しないけど支給品はいっぱい出しますって、
まるっきり便利屋扱いだな
単なるコマとしてしか見られてない
まあワンピースは不人作品だから(ry
チョッパーは主役じゃないけどうまく活躍してる、というか周りと巧いことあってるきがする
というよりかは○同盟の初期5人の相互補完、って言うのかな?
お互いにキャラらしさを出しつつ他の仲間を活躍させてるって言うのかな
そこら辺のバランスが絶妙だと思うな
何ていうか、ワンピースのキャラはただそこにいるだけって感じ
別に喋んないとかそういうわけでもないけど、何かこれといって目立ったとこがない
まあルフィとかクロコとか、流石に死ぬ話ではそれなりに目立ってたけど
チョッパーは医者+レナの移動手段でチョッパーらしい活躍してると思う
ただ、ゾロは存在が薄いね
仇が両方死んで復讐イベントが潰れちゃったしな
話に絡み辛い
活躍の見込みないし、やっぱさっさと死んだ方がいいな
そうだな
変な荒らしも湧いてる事だし、ここは思い切ってすっぱり切った方が後々プラスなのかもよ
それだと荒らせば嫌いなキャラを消せると勘違いしちゃいそうじゃない
既に勘違いしているからこそのコレじゃないか?
空気澱みすぎワロエナイ
ゾロは今まで戦闘には余り絡んでないけど、
電車から蹴落とされたり、ひどい方向音痴だったりと印象深いけどなw
目的地病院なのに、古城につくとかどれ位迷ってたんだと言いたくなるよなw
ついてからもアレだけどw
しかし集団多くなってきて、個性的な面子が集まってるよなー
集団かぁ
今だと
○同盟
レナ、チョッパー、梨花、ウルフウッド
(ライダー、グラハム)
古城組
新庄、いなみん、ゾロ、ヴァッシュ、水銀燈、ハクオロ
ペドヴァンパイア一行
クリストファー、さとこ、アルルゥ、(ゼロ)
人形と下僕達
真紅、美琴、あすか
変態高校生
小鳥遊、佐山
遊園地の殺戮ショー
レヴィ、クレア
うん、間違いなく個性的だなw
遊園地の殺戮ショーってww
しかしクレアは半身不随になってから、どんどん味が出ている気がするのは自分だけかな
前はどうも万能かつ自信満々すぎて、個人的に好きじゃなかったんだけどw
クレアは作者も出すと話が終わっちゃうから扱いに困ってるくらいだしな
足かせあるくらいが人間味でてくんのかもしれん
まさかとは思うがライダーはホモなのか?
どうしてそうなる!?
普通に息子もいたよ!
暗殺されたけど
つか参加者に同性愛疑惑のかかってる奴なんていないよ。
両性類ならいるけど。
>>329 アレクサンダー大王はホモっていうか両刀使いらしいから…
アーサー王が女だったり、エンキドゥが中性的美形だったりする世界だ
現実の伝承と違っていても何ら不思議はない
あくまで噂だけど、原案ではイスカンダルはアーサー王と同様に「実は女性だった」ネタで考えられていたらしい
ワンピ厨キモいです(^^)
アレクサンダー大王は両刀使いっていう史実の設定使って、魔力供給してる四コマがあるけどねw
あれは完全にネタだww
この場合ローゼンの翠と蒼は別問題だよな、
付いてるかもしれないし
今蒼い子が血相変えて飛び出して行ったわ、何があったんだろう。
同性愛者は居ないけど、重度の変態は居たよね。
そしてそれが蒼星石の元に集った訳だけど……
参加者全体から見ても多くない筈の変態が、一体どうして?
○ロワ七不思議のひとつですね。
蒼い子だからなぁwww
まあ蒼い子がメロメロぼでぃなのは周知の事実として
ここで新しい仮説を言いたい。何故終わクロ・ワーニング共に変態しかいないのか。
そしてある意味変態なコンビが変態コンビが出来てしまったのは何故なのか!!!
そう、変態は 変態を 呼ぶのではないか!?
元から変人変態ばっかりの作品だか(ry
…じゃなくて!
◆tt氏の「誰かの願いが叶うころ」が分割になったので、どこで区切るか言っていただけるとありがたいです
勘違いされやすいが、終わクロにも常識人は結構いるんだぜ!
ただし、周りが濃すぎるから相対的に影がうす(ry
先生!レナや土御門は変態に入りますか?
>>342 wiki編集お疲れ様です!
分割ですが、227と229の間で区切ってやって下さい。
お手数おかけします。
>>345 レナ……暴走する程度のかぁいいもの好き
土御門……義妹に手を出す程度の妹好き兼ロリコン
変態じゃないよ、変態だとしても変態という名の美少女と陰陽師だよ!
>>347 上はともかく、下は紛ごうことなき変態だ
上も下もまごう事なき変態だろw
レナのかぁいいレーダーはメイド姿から圭一の女装姿に反応するまで幅が広いw
じゃあ変態は佐山・小鳥遊・キラ・レナ・土御門の五人か
戦隊モノみたいになりそうだな
マルロワ戦隊ヘンタイジャー!!
ごめん無理だな
吉良もう死んでんじゃん
それを言うならば土御門も……
戦隊ものならカラーが重要だよな。
レナはピンクで決まりだと思うが、他は……?
っていうか戦隊に狙われている蒼星石って一体なんなんだ
いや、原作のレナには「自分の居場所をアピールするため」っていうちゃんとした目的があるんだぜ
>>350 寧ろ「スーパー変態シリーズ」のほうが語呂がいい
>>353 んなこといったら佐山も原作じゃ新庄君以外に全く手を出してないんだぜw
ただし、新庄君に関してはどこぞのヤンデレも真っ青なくらいヤバイがw
こんなわけ分からない話して楽しい?
楽しいけどなにか問題でも?
他のロワでも言えることだけど、特にここはマルチジャンルロワ。
ラノベと漫画とアニメと……みたいなジャンルの違う作品同士について比較したり、
相違点挙げてみたりなんてことがスムーズにできるのもパロロワスレの特徴だと思う。
そんなことしたことあったっけ?
ただいつもくだらない雑談しかしてなかったような気がするけど
くだらないと思うかどうかは人それぞれ
あんまり自分の価値観を人に押しつけるもんじゃないよ
過去スレ見てると意外とあったりw
しかしバッカーノは小説原作を上手くアニメ化してるよなぁ
ところで話変わるけど、参加作品の中で、ワンピースだけ明らかに浮いてるよね
他のは大人向けというか、割と深くて高尚な感じのする話だけど、
ワンピースは完全に子ども騙しの漫画だし
バッカーノは珍しくアニメ化に成功したラノベだからなw
二期もやって欲しい、動くクリスとか見たいし
地図が最近更新されないから作ってみようと思ったら悲惨なのが出来た……
時系列関係無しに、それぞれの最新位置のものです。
クオリティを期待しないで見てやってください。
そしてコレはwikiに乗せないで下さい……クオリティが低すぎる。
ttp://dl3.getuploader.com/g/6%7Csousaku/109/map0829.png まだまだ劇場周辺には人が一杯居る感じ、
そして気が付いたんだけど……病院組みのニコ兄達が夕方なのに対して、
病院へ向かっているあすか達はまだ午後。これは少しおかしいですよね。
時間認識が甘かった自分の責任です、すみません。
書き直して向かう先変更させたほうがいいでしょうか?
乙です
あ、ミュウツーの位置はC−5ですね
ミュウツーの場合は時間的に禁止エリアになってるかもしれないので変更になってます
>そして気が付いたんだけど……病院組みのニコ兄達が夕方なのに対して、
>病院へ向かっているあすか達はまだ午後。
特に問題ないのでは?
劇場の方面で戦闘があった頃の話なんですし
アニメ化は厳しいかな
同じ成田作品のデュラララのアニメ化が決まってる分割を食いそう
ポケスペも権利の関係でアニメ化が有り得ないって話しだし
ジョジョも二部でナチスが見方になるのが致命傷って話を聞いたことあるな
どれも面白いのに……ってジョジョの二部ってバッカーノとほぼ時代一緒?
地図乙です
最近更新されてなかったからどうなってるのか気になっていたが
中心の人口密度高すぎだろ
しかも劇場周辺は戦闘直後だからさらに人が集まるだろうし
このロワの続きとデュラララ早く見たいなぁ
あれ?何か無視された?
いやでも実際そうだと思うんだけど
ワンピースだけ明らかに対象年齢低いよね?
普通にポケモンやドラえもんの方が低いだろ
ポケスペは小学舘で連載するのが惜しいレベルだぞw
つーか対象年齢云々ってロワに関係ないだろwww
なんで構ってるんだお前ら
ドラえもんは普通に大人でも読める内容じゃん
ポケスペだって、連載開始して長いし読者の年齢層は高めだと思うけど
>>372 浮いてるって言ってるだけだよ
太宰治とか夏目漱石とかの作品の中に、かいけつゾロリが混じってるようなものだし
浮いてるっていったら某ロワの某作品が思い浮かぶな
開始当初から浮いてる言われまくってたのに、いつの間にかそのロワの看板の一つになってた
正直、浮いてようが浮いてまいがあんま関係無い
何でワンピースなんか擁護しようとするのか分からないな
元々多重で入った作品なんだから、そんな丁寧に扱うことないのに
好きでもない作品を何で庇おうとするの?
っていうかワンピースの話題ふったのあなたでしょうに。
好きでもないとかいうなら触れなければいいじゃない。
そもそも多重って言う根拠は何だよ
133 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 00:38:52 ID:6x7AneN/
{{ワンピース}}
{{ドラえもん}}
{{ひぐらしのなく頃に}}
{{ポケットモンスターSPECIAL}}
{{らんま1/2}}
148 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 01:55:32 ID:lhPGd3+O
{{ドラえもん}}
{{パーマン}}
{{ONE PIECE}}
{{ライブアライブ}}
{{ひぐらしのなく頃に}}
166 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 08:16:26 ID:1Tz1vHZh
{{戯言シリーズ}}
{{刀語}}
{{ジョジョの奇妙な冒険@漫画}}
{{ワンピース@漫画}}
{{涼宮ハルヒの憂鬱@どちらでも}}
202 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 15:08:46 ID:GTIz6jz2
{{ドラえもん}}
{{ひぐらしのなく頃に}}
{{ドラゴンクエストモンスターズ+}}
{{ワンピース}}
{{相棒}}
238 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 19:24:21 ID:hDeAJEgQ
{{GANTZ@漫画}}
{{スターウォーズ@映画}}
{{プリズンブレイク@ドラマ}}
{{ワンピース@アニメ、漫画どちらでも}}
{{カイジ@アニメ、漫画どちらでも}}
248 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 20:28:07 ID:oqBOkKmy
{{魔王(漫画)}}
{{ひだまりスケッチ@アニメ}}
{{オニデレ@漫画}}
{{ワンピース}}
{{ビーストウォーズメタルス@アニメ}}
>>133と
>>148と
>>202はどう見ても多重だな
ワンピースはボーダーギリギリだったから、これがなかったら通ってない
ID:avdcX0/A
お前なんかワンピースに恨みでもあるのか?
ドラゴンクエストモンスターズ+は名作だよな
ポケスペに並ぶゲームコミカライズの傑作だと思ってる
どう考えてもあの漫画だけじゃ把握しきれないから、出ても困っただろうけどw
○ロワはボーダー高かったから(つまり、人気のある作品に集中的に票が集まった)いくつか被る作品があって当然
ついでに、俺みたいに他の人の投票を見て「この作品出してみたいな」と共感して同じ作品に投票する人も少なからずいたはず
十人二十人が全く同じ作品群に投票してるなら多重くさいが、そのデータ程度では多重だと断定するのは早計
過去スレで見たことある流れだw
ワンピースの人はいつも同じ事しか言わないので無視するヨロシ
ゲームのコミカライズは探すと名作多いよなぁ
この間復刊されたロックマンメガミックスはガチ
ああなるほどね
このスレはワンピ信者しかいないわけか
だからワンピなんて糞漫画を擁護するわけか
>>385 少なくともこのロワに出てくる漫画の中では一番面白い漫画だけどな
本当に信者しかいなかったらルフィが死ぬわけないじゃん。
ワンピースの信者とアンチという形でしか判別できないのか?
どんだけワンピースに依存してるんだよ。
っていうかあくまで多重だっていうなら
>>383に反論するなりしろよ。
>>385 そうだな少なくともID:avdcX0/A、お前の様な奴から擁護する価値はあるな。
信者じゃなくても。
・意味の分からない理屈を振りかざし、自分が正しいと言い張る
・反論するやつ、無視するやつは全員敵、狂信者
なんだ、ただのリアルL5患者か
というか、インベルタウン編でgdgdしたけど、それ以降の異常なまでに面白いよなワンピ
最近は面白すぎて見てて心配になる
何かなあ…
どいつもこいつもアホ過ぎて話にならない
今日のお前が言うな選手権大会会場はここですか?
>>392 ID:avdcX0/Aのぶっちぎり優勝で閉会しました。
話にならない以前に何の話がしたいんだお前は?
お前の発言内容からは構ってくれ以外の内容が伝わってこないんだが
確かに話にならないなw
というか、まともに話する気無いでしょ君
ワンピースは参加作品の中でも浮いてるし、通ったのも多重だから早く退場させた方がいい
残念ながら、それらは既に論破済みだ
というか理由をでっち上げている時点で意味不明。
「俺はワンピースが嫌いで見たくないから、早く退場させた方がいい」だろ?
底の浅いテメエの人間性なんて、とっくの昔に見透かされているんだから、本音晒しとけよ
>>396 なるほど、いいたいことは分かった。
なら、その発言の根拠を提示しなければならない。
君の意見は主観が先立っているようなので明確に誰もが納得できる形でね。
まず、君のすべきは何をもってしてワンピースがこの作品群の中で浮いているかという証明だ。
上では対象年齢を根拠に挙げているけれど、ワンピースの購買層は幅広いが一番多いのは20代というデータがある訳だけど
君は何を根拠にその発言をしてるのかを提示する必要がある。
勿論君が30、40過ぎたオッサンで20代など子どもだというのならそれもいいだろうけど。
そしてポケスペに関して連載期間が長いため購買層が高いという意見もあるが、連載開始はワンピ、ポケスペともども1997年であるため。
ポケスペは高くでワンピが低いという理由づけにはならないため別の根拠も提示する必要がある。
そして、これが証明できたなら、続いて浮いている作品があったとして退場させなければいけない理由も明確にしなければならない。
ロワのルール上作品群で浮いている作品は退場すべきなんてルールはないからね。
浮いていようと何だろうと投票で当選した以上、まっとうに描き切るのが当たり前なんだから、当たり前を覆す以上それに足る根拠が必要なのはわかるよね?
続いて多重に関してだけど、これも当然明確な証拠を提示する必要がある。
これはIPでもなんでも調べればいいだけだから比較的簡単だと思う。
そして上と同じく多重で当選した作品を退場させる必要性の説明だね。
以上の事柄に対して明確な回答ができて初めて君の意見は聞き入れられるので、がんばって回答してくれ。
>>399 まあ最初に対象年齢とか言っちゃったのは俺だけど、そういうの関係なくワンピースは内容が稚拙なんだよな
fateやバッカーノみたいにちゃんと話が練りこまれてない
多重に関しては、一人が何票も入れて当選した作品が普通に活躍するなんて前例作るわけにはいかないし
見せしめのためにも、徹底的にこき下ろす必要がある
しかし、荒らしにはその長文に答える義務なんてないし、答えるわけがない
狂信者が長文書いてるよwwwww必死すぎwwwwwwとしか思わないだろう
荒らしは構ってほしいだけなんだから、そんな長文を書いても大喜びして居座る
つまり構うな
だから一人が何票も入れた証拠は?そこまで言うなら証拠だせよ。
逆にいうとお前が良いって言っているバッカーノとかがつまらん、消えろとか言われていたらどう思う?嫌じゃないか?
人によって好き嫌い有るのは当然。それはしょうがない。だけどそれをあからさまに態度に表すのはガキ。
お前は何歳なのかは知らないが、例え30代だったとしても精神年齢は10歳にも満たないガキと一緒。
そもそもそんなに嫌なら見なきゃ良いじゃない。何で見るの?馬鹿なの?
というか、ワンピどうこうじゃなく荒らしたいだけの人だから構うだけ無駄
言ってる内容ワンピである必要ないものばかりだし
構ってるやつも荒らしと同義だよ。他の話しろよ
>>402 証拠は
>>380 投票内容が被ることが絶対にないとは言わないけど、
5票中3票が被ってて、しかもそれが3人となると偶然とは言い切れない
そもそも多重はそんなに難しいことじゃない
携帯使えば簡単に2,3票は入れれるし、もう少し知識があれば実質無限に投票できる
そんな話してるぐらいならプロット練って予約しろよw
ワンピースがどうやって多重だって証拠だよ
言っとくけどワンピースは多重じゃないから
あんまりしつこいとバラバラに引き裂くぞ
>>405 わっかた、仮に380を多重の証拠として認めよう。
だがそれなら、同じ多重であるひぐらしやドラえもんについて何も言及しないのは何故だ?
『多重に関しては、一人が何票も入れて当選した作品が普通に活躍するなんて前例作るわけにはいかないし 見せしめのためにも、徹底的にこき下ろす必要がある。』
何て事言っておきながらひぐらしやドラえもんは少しもこきおろしてねぇじゃねえかよ。
つまりあれだろ、多重だのなんだの言いがかり付けて、ワンピースをこき下ろしたいだけなんだろお前は。
いい加減見てて不愉快だ、とっとと消えろや。
そろそろ落ち着こうぜw
>>408 ドラえもんやひぐらしは普通に人気あるから問題ない
ワンピースは人気もないのに多重で通ったからダメなんだよ
実際、ドラえもんやひぐらしは多重分抜いても普通に通ってる
そもそもドラえもんは既に退場してるじゃん
帰ってきたらまだ続いてたのかよw
いい加減なんだからネタフリでも
読んでるときのBGMとかある?
ちなみに自分は戦闘系の話を読んでるとき、BGMでブラクラのOP曲を聴いてる
前にも聞いて、結局はぐらかされたが、もう一度聞くぞ
「ワンピースに人気がない」という主張の根拠はなんだ?
前みたいに「人気あると思ってんの?」なんて質問を質問で返すのは受け付けない
>>412 根拠なんてなくてもワンピースの不人気は明らかだろ
まあどうしても根拠が欲しいんだったら、ワンピース関連のスレ色々覗いてみるといいよ
たいてい叩かれてるから
ワンピース絶賛してるのは、ゆとりニコ厨だけ
過去の名作をリアルタイムで読んでなかったから、ワンピース程度で満足しちゃってる可哀想な連中だよ
>>411 最初に読む時は何も聞かないなぁ
話の内容とBGMのイメージが違いすぎると困るしねw
読んだ後に、「あ、この場面はこの曲かなー」ってのはたまにかるかなぁ
>>411 どの作品もいい曲ばっかりだよな
ワンピースは除いてだけど
かるか、ってなんだよorz
>>415 えっ? このロワのワンピースの出展って漫画だから曲とかなくね?
それこそいくらでも自演できるんじゃね?
お前ら北朝鮮の工作員だろw
唐突に質問なんだけど、死者スレってある程度長いもんの投下ってありなん?
おぉ、それは良かった!
色々漁ってたら大分前に書いた死者ネタのやつ見つけちゃってさw
スレ上がってたからなんとなーく投下しようって思ったんだ
っつーか、死者増えてて増量したい位だものww
>>413 つまり、少なくとも「ゆとりニコ厨」や「可哀想な連中」には人気があるわけだ。
とりあえず前に書いたのはそのまま投下して、
今度スレ追いついたら改めて何かしようとして結局ROMに戻るよー
>>421 答えてくれてありがとなー
これがキッカケで死者スレが活発になったら嬉しいな。
ただ蒼の子は相変わらず変態の玩具になってそうだな
死者スレあまり活用されてなかったから嬉しいね
基本的に濃い連中ばかりだから、一堂に会した死者スレは凄いことになってそうだw
>>423 そんな奴らに人気あっても百害あって一利なしだよ
投下してきたんだぜ!
いやー、書いた当時に比べて死亡者増えてるねw
こういつは追いつき甲斐&死者ネタの考え甲斐があるってもんだww
長いだけであんまり面白くないね
わざわざ予告してから投下する程のもんでもない気が
まあみんな微妙だと思ってもそれを口に出したりはしないだろうけどね
だからって好評なわけではないから勘違いしないように
そりゃそうだw
なにより、したらばが15行で途中省略されるってことを意識せずにやってたのが痛いよなぁ
サラサラと流し読みできないからちょっとテンポ死んじゃってるし
っていうか、予告じゃなくて確認なw
使われてないスレだったみたいだからやったんだぜ!
自分で微妙だと思ってるものを投下すんなよ
いやいやこれは面白いぜw
JUM引きこもることに情熱かけすぎだろうw
そしてエルルゥひどいww
>>427 百害ってどういう百害だよ。
「ゆとりニコ厨」や「可哀想な連中」に人気があると誰か困るわけ?
>>428 投下乙ッス
やっぱりこういう投下は有り難いね
これからの投下にも期待!
それとこのまま死者スレの投下増えないかな…。
死者スレって色々遊べそうだよねぇ
っていうか、変態って単語と蒼星石がセットみたいになりすぎだろう、このスレww
>>433 その手の奴らは総じて思慮が浅いとこがあるからね
具体的にどうって言うんじゃないけど色々問題起こしやすいんだよ
お前だってニコ厨が起こした数々の問題は知ってるだろ?
知らないならググれ
蒼い子は可愛い、つまり変態が寄ってくる
うむ、何の不思議もないじゃないか
ちょww最後にまさかの通りすがりのサラリーマンww
途中の(キンキンキン! 子供のこ〜ろの夢〜は〜♪)に盛大に吹いたw
GJ!
実に納得のいく回答だ
可愛らしい花の蒼星石に、変態という名の蝶が群がるのは自然なことだよね!
もうちょっとしたら僕も死者スレに投下してみようかな
>>437、
>>440 お前らwww
ペドヴァンパイアに幼女ばかりが集まってくるのも自然な…クリスてめぇそこ変われ!
このタイミングで「僕」……だと……?
おい、まさかID:0euAQmfsお前は――!?
何人か、キャラ知らないけどとりあえず出しましたって感じのもいるな
そんないい加減な扱いするくらいなら出さない方がいいのに
一応全把握してるでー
把握すると、書き手さんの仕込んだネタがわかるようになって面白いよねぇ
ID:0euAQmfsが「僕」…だと…?!
なんてこった……!
もうID:0euAQmfsが蒼い子にしか見えないw
投下楽しみに待ってるぜー!
そもそもこのロワ一人称が僕って多くね?
蒼の子は勿論、新庄君、梨花にイエロー
のび太、クリストファー、あすかにヴァッシュ
これ、多い方だよね
大概は「俺」だし、結構多いと思う
逆に珍しい一人称って誰だろう
僕なんて珍しい一人称でもないし
多くも少なくもないだろ
僕っ娘は素晴らしいよね!
そうか、女だけでも四人もいたのか。確かに多いかも
でも一番目立つのは「我」(オレ)という一人称な罠w
魅音
一人称がおじさん
>>451 やっぱりそれだよなw
魅音すまん、一人称忘れてたw
あぁ、さりげなくニコ兄の「ワイ」も珍しいかな?
似非関西弁って難しいよねぇw
ライダーも「余」だし、fateキャラは一人称も濃いw
あ、そういやキリツグも一人称「僕」だな
一つ謝らせてくれ
康一君も一人称僕だ。
>>457 金色コロネもだなw
考えてみれば、一人称で特定出来るキャラって案外多いね
相手のことを「オンドレ」と呼ぶキャラはニコ兄以外にいないなw
そういや沙都子も私と書いて「わたくし」とかだね
相手のことを「雑種」と(ry
某、おじさん、ワイ、我、余なんかはすぐにわかる
まぁ、中には自分の名前を一人称にしてる奴もいるくらいだしw
>>459 カルラもそうだねー
「わたくし」って、“く”から“し”へ移行する時の音の響きがエロいと思うんだ
トウカの某(それがし)も分かるな
大阪はウチだっけ?
御坂妹が出てたら凄かっただろうなw>自分の名前一人称
大阪は「私」かな
意外と間違うよねw
>>463 シスターズが出てたら俺のあそこがラストオーダーでヤバい
そういやトウカの某もあったか!
普通の一人称の私でも、男だと基本的に頭脳派キャラが使うとかあるね
ハクオロさん、無常、吉良、サカキ、佐山、ゼロかな?
確かにそんな感じはするねーw
そういや、ナナリーとネモって最初「あたし」だったけど途中から「私」になったよね
これってどっちかに統一してる? それとも書き手さんによって違ったり?
超特急で確認してきたぜ
「私」でやってr……やってたっぽいねー
ああうああこれはもう本気で追いつこう
昨日あれだけワンピの害を説明したのに、いまだに理解できんらしいな
ここはワンピ信者しかいないから
ID変えての自演乙です。
だから嫌ならくんな。俺も消えるからお前も消えろ。
じゃあお前から消えろよ
いや俺が消えるよ
いやいや、俺が消えるよ
俺も消えるぜw
ううん、私が消えるかな、かな
どこでどうぞどうぞのオチが来るか!
下手に書き手に当たったりしたら……。
だが断る
と、みーせーかーけーてー
でも断る
ところがどっこい
もういいよこういう流れ
予約キテル
うぉ……病院組みに真紅達が合流か?
いや、すれ違いって可能性もまだあるよね。
でも梨花とレナって今それぞれ真紅と美琴の格好してるんだよな。
出合ったら出会ったでなかなか面白そうだ。
久々の予約、投下が楽しみだね!
久しぶりの予約来たんか
今からすごい楽しみだぜ
予約までまだ有りそうだし雑談でも、
38話Doubt & Trustでレナが想像してしまった仲間の死ぬ姿が
実際の死因とほぼ一致している件、
>前原圭一が胸を撃たれる。
>園崎魅音が首を切り落される。
>園崎詩音が殴り殺される。
うわマジだ。
部位こそ違えど『射殺』『刺殺(斬殺)』『撲殺』と考えると一致するな。
あーあ、言っちゃった
全員死んでから話題に出そうと思ってたのに
>>488 すまん、先にネタにしてしまって
…………ちょっと待て、残り二人も死亡確定!!?
>>489 そういうわけじゃないけど
一回話題に出しちゃったら、これからもし梨花や沙都子が同じように死んだとしても、感動が薄れるじゃん
梨花ちゃんはとあるロワで生還したからね。
そんなこと言ったら、レナと我様も生還済みだし、じゃあ殺した方がいいのか?て話になりますよ。
そらぁ書き手に任されるだろう。あるロワ生還したキャラ達もあるロワでは全滅済みだったりするしな
みんなが他ロワを全て把握してる訳でもなし
496 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/03(木) 21:42:05 ID:zW9Wu8sE
キャラの死に法則性を見出して感動(笑)
まあ「感動」は違うような・・・
「おお、すげーな」って思うのは感動ではないの?
うん
わけ分からん理由でスレ荒らしてんじゃねえよ糞ワンピ厨が
なんでもかんでもワンピ厨のせいにすんなよ
相変わらず真性馬鹿の型月厨がいるようだ
二次制作のスレでわざわざ厨だの言う時点で不毛だ
お待たせしました。したらば予約スレでは間に合わないと延長を申請したのですが、
なんとか間に合いましたので投下開始します。
「みぃ。待たせてしまったですか?」
「あはは。ただいまなんだよ。だよ?」
竜宮レナ、古手梨花の2人は話のあと病院入り口近くの待合室まで戻ってきた。
レナは既に泣き止み目じりの涙も拭いている。
ありったけ泣いた。全てをぶちまけた。彼への想いを、理性も何もかなぐり捨てて。
梨花もレナの涙は知り合いにだけにしか見せたくないのだろうと悟っていた。
だからチョッパーたちにはそれを隠した。決してチョッパーたちを信用していないのではない。ただレナが自分の中に溜め込んでしまう性分なだけ。
(もう少しニコラスたちを頼ってもいいんじゃないかと思うけど……いきなりは酷よね。
それに実のところレナはあのチョッパーをかなり信用しているみたいだし)
梨花はそう考えながら二人に笑顔を向けた。
ソファーで酒を片手に待っていたウルフウッドは梨花のキャラつくり具合にまた呆れ顔をしている。
梨花はその態度にむっとした。キャラつくりは長年の癖なのだから仕方ない。ご愛嬌というやつだ。
その後ウルフウッドはレナを一目見ると、またつまらなそうに目を外してしまった。
(あはは。見抜かれちゃったかな、かな)
レナは苦笑するがウルフウッドはそれを見ようともしなかった。彼はもしかしたらレナが梨花と何をしてきたのか察したのかもしれない。
だがそれは結局当人のみの知るところ。いくらレナでもウルフウッドの真意を推測するには情報不足だ。
「お帰りレナ、リカ!」
一方もう1人の待ち人、チョッパーは既に獣の状態で待っていて二人を温かく迎えた。
既に荷物を体に結び付けているチョッパーを見てレナと梨花は気を引き締めた。
もう時刻は4時半を回る。
残り4時間半で遊園地や古城跡まで巡るにはいささか急がなくてはならない。
「準備はできてるぞ!」
「そう、ありがとうチョッパーくん」
「よーいうわ。さっき忘れ物した言うて戻ったやないか」
ウルフウッドがニヤニヤしながらチョッパーに言うとチョッパーは顔を真っ赤にする。
「わーー!言うなっつったのに!しょうがねーだろ、うっかりしちまったんだよ!」
「はぅ〜〜!うっかりを隠そうとするチョッパーくんかぁいいよぉ〜〜!お「持ち帰りは駄目なのですよレナ」
「はぅ〜」
「手馴れとるな扱い」
「付き合い長いのよ(100年以上ね)」
お持ちかえりレナを御する梨花にウルフウッドが珍しく感心する。
と、チョッパーが2人を見て言った。
「あ、おれ戻った時に何もみてないからな! 2人が部屋にいるのなんてでええっ!」
「空気読めっちゅうねん鹿。それに急がな間に合わんとちゃうんか」
「あ、そうだった! ほら、早く2人とも乗ってくれ! あとおれは鹿じゃねえ!」
迂闊な事を言ったチョッパーを諌める感じでウルフウッドがせかすとチョッパーはすぐにドアから出ようとする。
だが、レナと梨花は今のチョッパーの発言について顔を見合わせた。
(もしかして、みられちゃったのかな?でも…)
(変ね。あの時ちゃんと扉は閉めておいたはずだったんだけど……少し閉め忘れたのかしら)
レナが泣いたのはある病室の一室だ。そこで梨花が外に声が漏れないように扉を閉めたはずだった。
にも関わらず見られていた? そもそもいくらなんでもチョッパーが扉の外に来て気がつかないものだろうか。
2人はどうも引っ掛かり互いに話し合おうかと思った。のだが。
「おーいレナー、リカー!早くしないとまにあわねーぞー!」
既に外に出たチョッパーと背に乗ったウルフウッドが囃し立てる。
確かに急がなくてはならないだろう。なにしろ劇場では今も尚アーチャーとカズマの戦いが起こっている可能性もあるため劇場を迂回する方針だからだ。
迂回した上で時間を厳守するにはかなりペースを速めなければならない。
「いきましょうレナ」
「う、うん。そうだね」
遅れるわけには行かない。
2人は一抹の疑問を後回しにし外に向けて駆け出した。
【E-5 西端/1日目 夕方】
【チーム名:○同盟チョッパー組】
1:主催者の打倒。
2:劇場を迂回して遊園地、廃坑、古城跡を訪れ21時までにB-4民家へ向かう。禁止エリアの場合H-4、G-4へ。
2:グラハムとの合流(先発が会えなかった場合)
3:サカキ、ミュウツー、片目の男(カズマ)、赤髪の男(クレア)、リヴィオ、ラッド、電気の少女(美琴)を警戒。
クレアという女性、佐山、小鳥遊、アルルゥ、ヴァッシュを信用。アーチャーはやや信用。
ハクオロも一応信用。 真紅、沙都子は情報不足で保留。
※別世界から呼ばれたということを信じました。
※会場のループを知りました。
【トニートニー・チョッパー@ONE PIECE】
[状態]:腹部と顔にダメージ(中)、全身にダメージ(中) 腕に○印 深い悲しみ、獣形態
[装備]:なし 包帯、ランブルボール×4@ONE PIECE
[道具]:支給品一式×4(一食分、水1/10消費) タケコプター@ドラえもん、 タオル、救急箱、病院で調達した医療道具
[思考・状況]
1:レナや皆を守り抜いてみせる。その為なら……
2:仲間と会いたい
3:グラハムの様子を見る。(別れている為現在実行不能)
4:ギラーミンを倒し、脱出する。
5:イスカンダルの臣下になるかはまだ決められない。
6:川に落ちたゾロが心配。
※レナからはあまり情報を受けていません。圭一たちについての情報は知りません。
※参戦時期はCP9編以降。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康 深い悲しみ 私服 右腕に○印
[装備]: 包帯、デザートイーグル(残弾数6/6)、シェンホアのグルカナイフ@BLACK LAGOON、常盤台中学の制服
[道具]:支給品一式×4(3食分、水1/10消費)、ドライヤー 、双眼鏡、ゾロの地図
、デザートイーグルの予備弾×12 不死の酒(空瓶)、、通り抜けフープ、 手榴弾×3、
ロベルタのメイド服@BLACK LAGOON、ガムテープ、ビニール紐(少し消費)、
[思考・状況]
1:必ず脱出する
2:グラハムが心配
3:何とかして首輪を外したい
4:イスカンダルの勧誘は保留。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
※圭一と会話できたかは不明です。
※梨花とウルフウッドの仲について察したようです。
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康 腕に○印
[装備]:なし、包帯、真紅の衣装
[道具]:支給品一式×3、インデックスの修道服@とある魔術の禁書目録、ミッドバレイのサクソフォン(内蔵銃残弾100%)@トライガン・マキシマム、
蓮の杖@とある魔術の禁書目録、月天弓@終わりのクロニクル 、フシギダネ(モンスターボール)@ポケットモンスターSPECIAL
きせかえカメラ@ドラえもん きせかえカメラ用服装イラスト集
[思考・状況]
1:必ず生き残る。
※ウルフウッドを信頼、けどちょっとむかつく。
※電車に誰か(橘あすか)が乗っているのに気づきました真紅に気づいたかどうかは不明です。
※サクソフォンの内蔵銃に気付いていません。
【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン・マキシマム】
[状態]:全身の数箇所に浅い傷、腕に○印
[装備]:デザートイーグル50AE(4/8 予備弾29)、包帯
[道具]:基本支給品(地図と名簿は二つずつ、一式×2)、SPAS12(使用不能)チーゴの実×3@ポケットモンスターSPECIAL
○印のコイン、AMTオートマグ(0/7)、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×二枚、洋酒
ロベルタのスーツケース@BLACK LAGOON(ロケットランチャー残弾7、マシンガン残弾80%、徹甲弾残弾10)、ヴァッシュの衣装
AK47カラシニコフ(30/40、予備弾40×3)、 二重牙@トライガン・マキシマム、二重牙@トライガン・マキシマム
拳銃の予備弾30発
[思考・状況]
1:梨花たちについて行く
2:古手梨花を守る。(別れたなら同行者に託す)
3:ヴァッシュとの合流。リヴィオについては保留。
4:ジュンを殺害した者を突き止め、状況次第で殺す。
5:武器を手に入れる、出来ればパ二ッシャー
※自身が梨花の事を名前で読んでる事に気づいていません。
※○印のコインの意味は不明です。使い道があるのかもしれませんし、ないのかもしれません。
※ラッドの再生がミカエルの眼の改造技術に起因するものではないかと推測を立てています。
*****
彼らの病院での物語はここまでだ。この後4人は急いで遊園地に向けて出発する。
だが彼らは気づいていなかった。いや、1人は気づいていたがそれを理解する事ができなかった。
実は自分達が病院に居たまさにその時刻、もう1組、病院に来訪していた者たちが居た事を。
彼らが何者だったのか。何が目的だったのか。何を知っていたのか。
少なくとも『今』の彼らは知らないままになってしまった。
では語ろう。彼らが知らなかった事実。もう一組の来訪者たちについて。
それは丁度ウルフウッドが着せ替えカメラの珍事をやらかした頃にまで遡る。
*****
病院は広い。
この会場における病院は中庭を囲んだかたちになっている。3階建てになっており、正面にはイスが多く並ぶ待合室に受付。
幅広い受入を行っているようで、内科外科小児科など、いくつもの診察室や病室、手術室を備えている。
裏には緊急搬送用の出入り口。くぐった先は診察室や手術室に繋がっている。
そして正面入り口と裏口の距離は建物自体の大きさゆえにかなり遠い。
つまり
「大丈夫。誰も居ないようです」
このように、裏の緊急搬送口から侵入したものがいたとしてもウルフウッドたちは気づくことができなかったということだ。
*****
「以上。私が辿ってきた経緯はこんなところよ」
御坂美琴はこれまで辿ってきた経緯についての説明をその言葉で締めくくった。
「ありがとうございました」
「私も礼を言うのだわ。包み隠さず語るのも勇気がいること。貴方は立派なのだわ」
「そこまで持ち上げられると……なんか逆に恥ずかしいんだけど!」
正面のイスに座っている橘あすかと真紅が彼女の語ったことについて感謝と賞賛を詠う。
決して世辞ではない。
あすかや真紅はこれまでしてきたことにやましい事はない。
無論最善とは思えていない。だが語るには問題が無い程度のことだ。
だが美琴は違う。彼女の語った経緯は罪の道筋。人を傷つけてきた道。
事故もあった。
暴走もあった。
それでも彼女にとっては全て罪だった。それを全て正直に語ることがどれほどの苦痛であろうか。
だが美琴は全てを告白した。その愛らしい顔に時折苦痛を滲ませて。もう罪から逃れたくなくて。それはさながら教会の懺悔のように。
それを聞きどけた二人は礼を言わずには言われなかった。
特にミーディアムとして繋がる真紅はその美琴の心情をシンクロして感じていた。だからこそ彼女を心から賞賛できるのだ。
「では、互いの経緯を打ち明け終えたところで少し情報を整理しておきましょう。
全ての情報は開示したとは思いますが、もし気づかぬうちに互いに誤解や齟齬が生まれていては厄介ですから。
それにその途中意見を聞いてみたいところもありますし」
少し場が気まずい空気を悟ったのか、もしくは単に予定通りに話を進めているだけなのか、あすかが2人にそう切り出した。
その言葉に2人は力強く頷いた。
3人がいるのはある診察室の中だった。具体的には『外科担当』の診察室だ。
3人の目的は美琴の脇腹の重傷の治療。その薬を求めて裏の緊急搬送口からここまでやってきた。
そこで薬や治療用具を見つけた彼らは美琴の切り傷の処置を始めた。
尤も、こんな状況下とはいえ美琴は少女。さすがにあすかが直接治療するわけにはいかなかった。これについては3人同意見のものだった。
とはいえ真紅は他人の治療ができるほどの知識がない。美琴は自分でするのはどうにも不確実だし視点的に無理がある。
結局、あすかが薬棚を向き真紅が怪我の具合を言葉で伝える。あすかはHOLY部隊として最低限熟知している応急処置法から適切な薬や用具を真紅に手渡し
細かく指示して治療をさせた。
なんとか応急処置とはいえ消毒や包帯などを終え、ついでにあすか自身の切り傷にも似た処置を施した。
そしてそうしながらも3人はそれぞれの情報、経緯を交換し続けた。
その間はいくらかの補足以外は話の流れを優先した。つまり情報について深く話をしていない。
それはこれから始まるのだ。
「まずは――美琴さん。貴方が昨夜遭遇したカズマと言う男について」
「やっぱり知り合いなの?」
「気づいていましたか」
「あすかさんがあの玉出す前に起きた現象と、あいつが起こした周辺破壊が似てたからもしかして、って思った。
それに、あいつの話した時あすかさん、少し黙ったから」
「あなたは勘が鋭いですね。ええ、確かに彼は知り合いです。彼も僕もアルター能力者。あの現象は全員共通のものなんです」
「アルターって、さっき言ってたのよね……ねえ」
「アルターに関しては後で纏めさせてください。貴方の疑問はおおよそ予想していますから」
「……わかった」
美琴が渋々といった感じで頷く。
そこに真紅が割り込む。
「で、そのカズマという男。どんな男なの?貴方の敵?美琴から聞いた話では素行のいい男とは思えないようだけど」
「敵ですよ。僕らにとってはね。HOLYに反逆し、潜入して暴れて去った犯罪者。
風貌も能力も美琴さんの話と一致します。取りうる行動も、ね」
「にしてはあすか、残念そうな顔をしているのだわ」
「そんなことはありませんよ。
奴はその時は敵意などなかった美琴さんに遠慮なくアルターを使用し殺そうとした。彼女を追い詰めた遠因の1つともいえます」
「ちょ、ちょっとあすかさん。そこまで」
「奴は……カズマは必ず僕が捕らえます。あの時僕が勝っていたなら……あの男が捕まっていたなら、ここにも呼ばれず美琴さんを追い詰める事はなかった。
僕はそれが悔しい。申し訳ありません。美琴さん」
「気にしないでって! それに、アイツに関してはあんまり気にしてないし」
そうは聞いてもあすかの顔色は優れなかった。
怒りがこみ上げていた。年端もゆかぬ少女にアルターで襲い掛かったカズマに。
後悔が止まらなかった。あの決戦でカズマに勝てなかった自分が。
ふと思う。なぜ自分はここまでカズマに怒りを覚えているのだろうか。
カズマをただの犯罪者と思うなら、彼の凶行など当然と考えて怒りなどしないのではないだろうか。自分でも違和感があった。
(まさか僕はあの男が――そんなことをしない、などと少しでも思っていたのか?)
だからカズマの決定的な行動を知らされてショックを受けた。それが怒りに変わっている?
地下にて、いくらか行動を共にして全力でぶつかったあの男のことを――僕は信じていた?
(そんなわけがない! 僕は……僕は奴に心を許してはいない!
カズマは必ず僕が捕まえる! 最悪……僕が殺す)
「あすか。話は終わり?」
「あ、ああすいません真紅。カズマに関しては以上です。危険人物として捉えて問題ありません。
次に、美琴さんが橋で遭遇した3名について。ライダーという巨漢、レッドという少年、それからハクオロという白仮面の男で合っていますね?」
「ええ……合ってるわ。ハクオロ、って名前はあすかさん達から初めて聞いたけど」
「僕らも又聞きの情報なので詳しくはわからないのですが、『白い仮面』という情報でしたからね」
彼らについて語るとき美琴はどうしても顔が曇った。
それも仕方ない。なにせ彼らとの遭遇の記憶は彼女にとって最も思い出したくない記憶でもあるからだ。
1人を殺め、1人を見殺しにし、2人に攻撃を加え、1人を傷つけた。
あまりに辛い記憶だ。
「ライダーに関してはエミヤという男は敵であり倒さなければならないと言った。
だがレッドという少年はライダーを仲間として信頼している様子だった。そうですね?」
「ええ……」
「エミヤと言う男はレッドと言う少年については何も言及していない。にも関わらず少年はライダーを信用していた。
つまりエミヤがライダーの知り合いとすれば、ライダーとレッド少年はここで出会ったということになります。
初対面の相手をそこまで庇わせるほど信頼を得られる人物が、果たして危険人物と見なせるのでしょうか。
加えて白仮面の男もまた助けられたと言っていた。ここまで証拠がそろうと、正直僕はエミヤという男の話を疑わざるをえない」
「エミヤさんが嘘をついたっていうの!? だってライダーのことが危険だって言ってたの他にもいたんでしょ!?」
確かに話の途中であすかが口を滑らせたのは『ライダーが危険だという情報を既に知っている』というもの。
あすかと真紅は前原圭一からライダーは危険、衛宮はここで知り合った相手だという話を聞いている。
しかし
「ですが、ライダーが危険だというのはやはり衛宮からの人伝です。同一人物からの風評では判断材料にはできません」
「そんな!」
あすかの推察に美琴は思わず声を荒上げた。
それを真紅が諌める。
「落ち着くのだわ美琴。嘘とは限らない。勘違いかもしれないし、それにもしかしたら、彼らは時間がズレていたのかもしれないのだわ」
「ズレ?」
「実は僕とあなたもご存知のクーガーの間には記憶の食い違いがあったんです。それが主催による記憶操作なのか、呼んだ時間が違うということなのかはわかりません。
ただ1つ言えるのは、知り合いであっても記憶が食い違うケースがあるということです。
衛宮とライダーは僕らと同じなのかもしれない。衛宮の記憶では危険人物であってもココでのライダーはどうもそうは思えない。
だから衛宮の記憶がズレていたのかもしれないんです」
「じゃ、じゃあ……私、やっぱり無実の相手を……!」
美琴の体があからさまに震えた。
そこにあすかがフォローをした。
「ただ彼らを100%信用するわけじゃありません。
気になるのはレッドという少年が貴方の電撃を受けても生きていたことです。放送で呼ばれていない以上ね。
不意に受けた電撃を少年が受けてそうそう無事でいられるでしょうか。
僕にはそこが作為的に見えて仕方ない。つまり」
「彼らは美琴を追い詰めるために一芝居打っていた、という可能性もあるということ?」
「可能性としてです。そうなるとライダーに関してはやはり警戒するに越した事は無く、衛宮の証言は正しかったといえるかもしれません」
「少年と白仮面、ライダーは手を組んでいたと言うの?」
「低い可能性ではありますが、衛宮が彼らの保護下に置かれていたはずなのに死んでいたことがどうしても気になって」
「傷が深すぎたのかも……あの柱、かなり深く……刺さって……」
美琴が衛宮の重傷の様を思い出したのか、辛そうに顔をゆがめる。
それを引き起こしたのもあの時退かなかった自分だと感じて。
その手を誰かが握ったのを感じ美琴は顔を上げた。
いつのまにか真紅が立ち上がり、その小さな片手で美琴の手を握っていた。
真紅の瞳が美琴を見つめていた。柔らかな笑みを顔に浮かべて。『大丈夫。私がついている』そんな言葉が聞こえてくるようだった。
だんだんと震えが収まってきた。
人形のはずなのに温もりを感じる真紅の手。それが美琴の心を落ち着かせてくれる。
自分は、1人じゃない。
「ごめん。もう大丈夫……衛宮さんの傷は深かった。だから、あの人たちが衛宮さんを殺したとは言い切れないと思う」
「そうですか。ありがとうございます。一先ずその3人に関しては、白。ただし僅かな警戒を残しておく。こういう認識でいいですか?」
あすかの言葉に2人は頷く。あすかはすぐに次の話に移った。
「次は確実に要注意と言え、かつ今までの放送で呼ばれていないと思われる人物を僕らと美琴さんの話、聞いた情報から割り出していきます。
バズーカを持った白スーツの男、
黄金の鎧を着た男アーチャー、
火傷顔の女、
黒スーツの男無常矜持、
モヒカン男ラズロ、
赤服の男ヴァッシュ、
黒羽の銀髪人形水銀燈、
騎士風の服の少女ナイン、
以上です。
美琴さん、確か白スーツとラズロには地下鉄で遭遇したんでしたね」
「ええ」
「そして彼らはどちらも殺意をむき出しにしていた。これも合っていますか?」
「ええ。あと白スーツの男は説明の時に死んだ女の人と話してたラッドって呼ばれてた奴よ。多分間違いないはず」
「あの男ですか……顔と名前がわかったのは大きいですよ美琴さん。真紅、貴方は覚えていますか?」
「…………」
なんだか不機嫌そうな顔をしている真紅をあすかと美琴が見ていると、真紅が口を開いた。
「隣の巨漢の男が邪魔で見えなかったのだわ」
「……ご愁傷様です」
「……真紅、わかるわ。その気持ち」
「ああ、真紅も美琴さんも背が低」
しんく の はたく こうげき!
みこと の でんきショック !
てきの あすかは たおれた !
「は、話を戻します……。とりあえず今言った人物に関しては覚えておいてください。
もし遭遇した時に警戒心を持っておくに越した事はありませんからね。
次に、さっき美琴さんが話してくれた地下鉄について」
地下鉄の話には2人とも驚いた。まさか地上の電車の他にもそのようなものが存在したとは。
しかもその出入り口は図書館の北エリア。つまり自分達が素通りした場所にあったのだから尚更だ。
自分達の調査不足に2人が肩を落とし美琴がそれを励ます。そんな場面もあった。
「線路がどうなっているかはわからない、とのことでしたね。
とすれば、僕は早急にここを調査するべきだと思います」
「根拠は何?あすか」
真紅が静かにあすかを見つめて問う。
どうやら真紅は地下鉄に関してあまり有用性を見出せていないらしい。確かに移動に関しては地上で事足りる。
わざわざどこに通じているかわからない電車にいく必要があるのか、とそう言外に言っている。
だからこそあすかは根拠を示す。
ただし
「わざわざ隠されているような場所です。調査する価値はあるでしょう」
『ループの『装置』がもしかしたらここにあるかもしれませんからね』
「!?」
「な――!」
驚いて声が出そうになった美琴が慌てて口を抑えた。
真紅もまた驚いて目を外せない。
あすかが口を開きながら目の前に出したメモの内容を見て。
盗聴についてはあすかと真紅は今まで配慮の外だった。
それを気づかせたのは美琴だった。正確には彼女に筆談を教えた衛宮切嗣。
衛宮について話した際、美琴は自然に彼が筆談を使った事を筆談自身で教えた。ここで2人も筆談に思い当たったわけだ。
あすかはここから大事な話を筆談でするつもりだ。そう悟った2人はデイパックからメモと筆記用具を取り出す。
片腕の真紅はいくらか速さに差は出てしまうが仕方ない。
もちろん言葉も織り交ぜなければ不自然な沈黙となってしまう。それは2人とも自ら察する事ができていた。
『いいですか?まずこの会場の端と端がループしていること。これは理解していますね?』
『ええ』
「でもあんなところ調査する価値あるの?」
『衛宮さんから教えられたわ』
『僕は機械でも僕や美琴さんのような能力でも、何かこのループを維持させている『装置』がここにあると思っています。
これほどのもの、遠隔からでなんとかなると思いますか?もしその維持しているものを見つけられれば』
「貴方がいたのは一駅だけ。なら他のところは分かりません」
『衛宮さんもそういうのはあるかも、って言ってた。そのループさえなんとかできたら』
『だっしゅつできるかもしれないのだわ。でもあすか。そうちがちかにあるというのはすこしたんらくてきではなくて?』
「それに移動手段が増えるには越したことはないのだわ」
『あー……それだったらちょっと理由分かったかも私』
真紅の問いに対して美琴がそう答えてデイパックから新しいメモを取り出した。
これでも彼女は学園都市の進学校に通う学園都市第三位。
知能についてはかなり優秀であり、高校の内容すら先行している。だから理解も速かった。
メモを3人の間のテーブルに置く。
『地図の端はループしてるのよね?しかもループが分からないくらい自然に。
衛宮さんは地図の端か中心に何かあるかもしれないって言ってたけど……ループしてるって考えたら端って概念はないと思うわ
世界地図だって日本が作ってるからアメリカとかアフリカが端に来てるだけ。日本が端の世界地図だってあるんだから。
端なんて存在しない。この地図だって主催が用意してんだから逆に信用しちゃいけない。そう考えたら』
「まあ、そうかもね……でも派手に電車突っ込んだけど大丈夫かしらあそこ」
そこで美琴は筆記用具をテーブルのメモに移した。
文字は書かなかった。
それを記すのにかかったのは1秒。それで充分だった。
その形を見て真紅はついに思い至ったのかはっとした顔をし、あすかは満足そうに頷いた。
『極論として、この会場はこんな形になってるって考えてみていいんじゃない?
それこそ世界と同じに考えて』
『○』
『えんけい……ちきゅうのように?』
「大惨事になっていたならすぐに出て行けばいいんですよ」
『小さな擬似的地球。そう考えると自然なループに関しては説明がつきます』
『でもそう考えると夜の場所と昼の場所とかが問題なんだけど』
『そこまで地球に当てはめる必要はありませんよ。あくまで擬似的に考えるんです』
『でも、ということは……』
真紅が○を見ながらそう書く。
美琴とあすかはそれに力強く頷く。
「まあ、そうね。じゃあ後で案内するわ。説明しただけじゃ行きにくいだろうし」
『この会場を維持してる力は会場全てに働いてる。だとしたら』
「お願いします。煙が上がっていた劇場に立ち寄ったらすぐに北へ向かいましょう」
『衛宮の論。4隅か中心にループ基点がある。4隅の概念は存在しない。中心も存在しない。
ただしそれは平面で考えた場合です。もしこの論をこれに当てはめたならば』
3人の指が一緒に動いた。
そしてただ一点を指し示す。
○の中心を、3人の指が指し示す。
『この中心に、ループの『装置』はあるのかもしれない』
『ということは、へいめんからすればそれはちか』
『だから地下鉄を調べてみる価値はある、そういうことね』
*****
「僕の話はこんなところです。真紅、美琴さん。何か話しておきたいことはありますか?」
重要な推察の後、あすかはこう切り出した。
美琴は特になさそうだったが、真紅にはどうしても気になることがあった。
「美琴。蒼星石のローザミスティカはクーガーから受け取ったデイパックにあった。間違いないわね?」
「ええ……てか、元々持ってた荷物はコイン以外河に置いてきちゃったし」
「でもそうなると……彼は私達と別れて美琴に会う僅かな間に蒼星石と遭遇した……近くにいたのかもしれないのだわ」
「そうは言えませんよ。クーガーのラディカルグッドスピードなら短時間でも思わぬ距離を走破した可能性もありますし。
一概に自分を責めないでください真紅。クーガーが自ら手にかけたとは考えにくいですから、おそらく彼も手遅れだったのでしょう。
彼ですら間に合わないのでは、僕らでは」
「そう、ね」
そう考えても真紅の顔色は優れない。
もうこの会場で残った知り合いは、敵対するローゼンドールである水銀燈のみ。
契約者のジュンも、翠星石も蒼星石ももういない。
そう考えると、別れたクーガーが蒼星石と出会えたというのはどうにも複雑な気分だった。
「そういえば蒼星石は佐山、小鳥遊の2人と行動をともにしていたという話でしたが、彼らは放送で呼ばれていない」
「誰かに襲われたか、あるいはそいつら自身がってこと?」
「彼らに関しても又聞きですからね。どちらとも言えません」
あすかと美琴は冷静に話を進めていく。
結局、佐山と小鳥遊に関しても判断は保留となった。
と、あすかは真紅の顔色を見て頭を掻く。
美琴もそれには気づいているらしいが……。
(仕方ありませんね)
「すいません。少し席を外します」
あすかがベッドから立ち上がり扉に向かって歩いていく。
真紅がそんなあすかに声をかける。
「どうしたの?」
「あー、えっと……」
どうにも細かく説明しにくい。
とあすかが悩んでいると美琴がばっさりと
「ああ、トイレ? いってらっしゃーい」
「…………いって、きます」
「…………いってくるの、だわ」
少し複雑な気分になるフォローをもらったあすかは扉を開き外へ出た。
女2人だけにしたら気兼ねなく話せるかもしれない。そう思ったのだが。
中から何かを叩く音が聞こえてきた。
そして抗議する真紅の声と笑う美琴の声。何が起こったのか大体予想が付く声だった。
彼女らしいといえば彼女らしい励まし方だ。
(彼女のこんな笑い声が聞けるとは……真紅。貴方は凄い。僕は本気でそう思いますよ)
罪なき人を救う。彼はここではそういう信念を持っていた。
確かに命の危機から救うことは出来た。けれど、彼は自分だけでは完全に美琴を救う事はできなかったと思っている。
それは自分だけではナインに倒されていたという話ではない。
自分では美琴を絶望から引き上げる事はできなかった。
自分では美琴の助けを求める声は聞けなかった。
真紅だからこそ。真紅だからこそ彼女を助ける事ができた。彼女の悲鳴を聞くことができた彼女だから。
心を救う。それはあまりに難しい。
彼はそれを痛感していた。
(…………本当に催してきた…………)
*****
さて、気遣いの男あすかが本当にトイレへと向かったその頃。
真紅と美琴が病室で向かい合い話しているその時。
「あれ?」
誰も気づいていなかった。
真紅と美琴は病室の窓際で話している。
だが窓はカーテンを閉めており誰かに見られるという発想はなかった。
カーテンがわずかに短く、窓から見られるスペースがあるなど思いもよらない。
中庭を挟んだ1階の廊下の窓から2階の病室が見上げられるなど思いもよらない。
ましてや、そこを1人のトナカイが偶々歩いていて偶々見上げたなどと。
「あれって……」
本当に偶然だった。
忘れ物に気づき薬置き場に戻り、それを拾ってウルフウッドのところへ帰る途中。
気まぐれに見上げてみたその方向に。
窓とカーテン、そしてその下からのぞく2人の人影。
真紅の背では下から見上げては本来なら見えないはずだが、この時真紅はベッドの上に立っていた。
故に下からでも服を見るくらいはできた。
不運だったか幸運だったかはわからない。
ただ、彼、チョッパーが顔はカーテンで見えなくても2人の人物を確認した事は確かだ。
この後彼は、これをウルフウッドに報告するか、あるいは自分で2階の病室に行き直接確認する。
どちらにせよそれは2つのグループの遭遇を意味する。しかもそれは穏便な形に成る可能性は高い。
ただし、それはある1点の偶然が無かった場合。
だからこれはIFの話でしかない。
現実は――
「梨花とレナ……あそこで話してたのか?」
そう。それが分岐点。
あまりにありえない偶然。
2つのグループの『それぞれ2人が同じ時間に同じ服装だった』。
レナは美琴と同じ常盤台中学の制服。梨花は真紅と同じ服だった。
だからチョッパーは、カーテンから覗く服だけを見て、それを話し合いで離れた2人だとしか思わなかったのだ。
レナと梨花の服が変わったのはほんの僅か前。
もしその前にあすか達がここに来ていたならば。
(あんな服、二つもあるわけねえしなぁ。顔は見えねえけど……)
もしレナ達の服が変わらない、あるいは別の服だったら。
(おっと邪魔しちゃだめだよな! そういうのは野暮だっておれだってわかってる!)
もし真紅の隻腕がカーテンから見えたなら
(おっと、急がないと遅れちまう!ウルフウッドにも急げって念押されてんだ、いそごう!)
チョッパーが何事も思わずにウルフウッドの下へ戻る事はなかったはずだ。
*****
こうして2つのグループはすれ違う。
同じ時刻に同じ場所にいながら。
接触が僅かでもあったにもかかわらず。
とんでもない偶然の下に、主催打倒を目指しており、本当なら手を取り合えるはずの者達はすれ違う。
今は会えずにここで別れ、次はいつチャンスがあるか、それすらわからない運命の下に投げ出されていく――
となれば、まだよかったのかもしれない。
*****
「なっ!?」
レナと美琴、梨花と真紅の服が同じである。
その偶然が影響を与えたのはチョッパーだけではなかった。
トイレから出てきた橘あすか、彼もまたふと窓から下を見下ろした。
特別な意味は無かった。ただ誰か近づいてくる者はいないだろうか、その程度のものだった。
結果的に彼は見つけた。ただしそれは近づく者ではなく離れていくもの。
しかもそれは速いスピードで通り過ぎ、すぐに住宅街の景色に紛れてしまった。
何か四足の獣だったと思う。
そして、その背に何人か乗っていた。もっとも速すぎて服くらいしかしっかり確認は出来なかった。
黒い服、そして――
「真紅に、美琴さん!? な、なぜ……」
なぜ診察室で待っている彼女らが獣ともう1人の人物と一緒にここから消え去るのか。
突然の出来事に彼は困惑した。そしてそんな彼は1つの推察にいたる。
何者かが彼女らを拉致したと。
他に考えられる理由が無い。
はっきりと見ていないとはいえ、あんな服を2種類着ている人間が『他にいるはずがない』。ありえない事だ。
アレが真紅と美琴であるのは確かだ。ならば彼女らが自分達に何も言わず、黒い服の人物と共にここから逃げる理由は何だ。
実は自分を見限っていた? 実は2人で逃げる算段だった?
考えにくい。いくらなんでも考えにくい事だ。
となれば、捕まったとみるのが1番自然だ。
勿論疑問が無いわけではない。
電撃を扱う美琴と、蒼星石の力を持った真紅。その2人を派手な音もなしに拉致した。そのあまりの手際に不自然さはある。
だが、その僅かな疑問をあすかから奪い去るものがある。
焦燥感。
あの獣は大分速かった。
こうして悩んでいる間にもどんどん真紅や美琴との距離は離れていってしまうだろう。
追いつけなくなってしまう。
どうする?
あれが真紅と美琴であることは明白だ。
どうする?
打算的なことを考えるなら、地下鉄への出入り口を知っている美琴をここで失うのは辛い。
どうする?
ここまでずっと行動を共にした真紅は尚更だ。
どうする?
彼に、冷静に考える時間は無かった。
彼に出来る手はたった1つしか存在しなかった。
「エタニティエイト!!」
窓を開けてそこからジャンプする。
落下する前に既に病院の壁を砕いて形成したエタニティエイトを足元に配置。浮遊して西へ向かった獣達を追う。
何が目的かはわからない。
だが、逃がすわけには行かない。
(待っていてください、真紅!美琴さん!)
彼を一概に責めることはできないだろう。
チョッパーは急いでいた。その速度を目で追うのは至難の業だ。
真紅の服と美琴の服が他にも存在した。それを想定しろというのは無理難題だ。
診察室に戻ればよかった? そんなことをすれば間違いなくチョッパーには追いつけなくなる。その判断は賭けだ。
橘あすかは不幸に見舞われた。
全ては誰が悪いわけでなく、そうとしか言い切れないことだった。
【E-5 病院前/1日目 夕方】
【橘あすか@スクライド(アニメ版)】
【状態】:疲労(中)腹部に軽い痛み 全身に痺れ(小)全身に切り傷(小、処置済み)
【装備】:HOLY部隊制服
【所持品】:基本支給品一式、螺湮城教本@Fate/Zero、不明支給品0〜2個(未確認)
【思考・行動】
1:ギラーミンを倒し、元の世界へ戻る。
2:真紅と美琴を助ける為、後を追う。
3:劇場へ向かった後、北へ向かい地下鉄を調査する。
3:列車に乗って、会場全体を一通り見ておき地下鉄調査後再び電車に乗って最終的にはG-7駅を目指す。
4:ループを生み出している何かを発見する。
5:真紅が気になる……?
6:劇場での戦闘が気になる。
7:カズマは自分が必ず捕まえる。最悪の場合殺すことも辞さない。
【備考】
※参戦時期は一回目のカズマ戦後、HOLY除隊処分を受ける直前(原作5話辺り)
※真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました。
※美琴と情報交換し、学園都市や超能力の事を大雑把に聞きました。
※ループに気付きました。ループを生み出している何かが会場内にあると思っています。
※情報交換済みの人物:ルフィ、前原圭一、クーガー、美琴
※彼らの知人:レナ、沙都子、梨花、魅音、詩音、切嗣(圭一)、ゾロ、チョッパー、ハクオロ、アルルゥ、カルラ(ルフィ)
※要注意人物:アーチャー(遭遇)、ライダー(詳細ではない)、バラライカ(名前は知らない)、ラッド
無常、ラズロ、ヴァッシュ、カズマ、クロコダイル、水銀燈(殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める)
カズマとアーチャーは気に食わないので、出来れば出会いたくもない
※ライダー、ハクオロ、レッド、佐山、小鳥遊に関しては100%信用はしていません。
※対主催チーム(佐山、小鳥遊、蒼星石)の存在、悪魔の実の能力者の弱点(カナヅチ)を知りました。
※参加者によっては時間軸が異なる事を知りました。
※地下空間の存在を知りました。地下にループ装置があるのではと推察しています。
※会場は『○』の形に成っているという仮説を立てています。○の中心にワープ装置があるのではという仮説を立てています。
*****
「長いわね」
「トイレ長いのね、あの人」
それと彼の真摯な思いと裏腹に、あすかに『トイレの長い男』という称号が付きそうなことも不幸だった。
【E-5 病院内2階診察室/一日目 夕方】
【真紅@ローゼンメイデン(漫画版)】
【状態】:左腕損失
【装備】:庭師の鋏@ローゼンメイデン 蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン
【所持品】:基本支給品一式、不明支給品0〜2個(未確認)、不思議の国のアリス@現実他、いくつかの本。
【思考・行動】
1:殺し合いを阻止し、元の世界へ戻る。
2:あすかを待ち、劇場へ向かってから北へ向かい地下鉄を調査する。
3:列車に乗って、会場全体を一通り見ておきたい。地下鉄調査後再び電車に乗って最終的にはG-7駅を目指す。
4:ループを生み出している何かを発見する。
5:翠星石のローザミスティカを手に入れる。
6:劇場にて起こっている戦闘が気になる。
【備考】
※参戦時期は蒼星石死亡以降、詳細な時期は未定(原作四巻以降)
※あすか、クーガーと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。
※美琴と情報交換し、学園都市や超能力の事を大雑把に聞きました。
※蒼星石が居る事や、ホーリエが居ない事などについて疑問に思っていますが、参加時期の相違の可能性を考え始めました。
※ループに気付きました。ループを生み出している何かが会場内にあると思っています。
※情報交換済みの人物:ルフィ、前原圭一、クーガー、美琴
※彼らの知人:レナ、沙都子、梨花、魅音、詩音、切嗣(圭一)、ゾロ、チョッパー、ハクオロ、アルルゥ、カルラ(ルフィ)
※要注意人物:アーチャー(遭遇)、ライダー(詳細ではない)、バラライカ(名前は知らない)、ラッド
無常、ラズロ、ヴァッシュ、カズマ、クロコダイル、水銀燈(殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める)
カズマとアーチャーは気に食わないので、出来れば出会いたくもない
※ライダー、ハクオロ、レッド、佐山、小鳥遊に関しては100%信用はしていません。
※対主催チーム(佐山、小鳥遊、蒼星石)の存在、悪魔の実の能力者の弱点(カナヅチ)を知りました。
※参加者によっては時間軸が異なる事を知りました。
※nのフィールドへは入れない事。ローゼンメイデンへのボディへの干渉の可能性を考え始めました。
※地下空間の存在を知りました。地下にループ装置があるのではと推察しています。
※会場は『○』の形に成っているという仮説を立てています。 ○の中心にワープ装置があるのではという仮説を立てています。
【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
【状態】:疲労(大) 全身打撲(中)脇腹の切り傷(止血及び応急処置済み) 自分への強い嫌悪感 多大な喪失感 精神不安定(小)
契約:ローゼンメイデン(真紅)
【装備】:基本支給品一式
【道具】:コイン入りの袋(残り96枚)、タイム虫めがね@ドラえもん
【思考・状況】
1:一人でも多くの人を助ける、アイツの遣り残した事をやり遂げる。
2:人は絶対に殺したくない。
3:あすかを待つ。
4:真紅とあすかに着いて行く。
5:切嗣とクーガーの死への自責
6:上条当麻に対する感情への困惑
7:ナインは出来る事ならば説得したい
【備考】
※ 参加者が別世界の人間、及び参加時期が違う事を聞きました。
※ 会場がループしていると知りました。
※ 切嗣の暗示、催眠等の魔術はもう効きません。
※ 真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました。
※ あすかと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。
※ 危険人物などについての情報は真紅と同様。
※ 地下空間の存在を知りました。地下にループ装置があるのではと推察しています。
※ 会場は『○』の形に成っているという仮説を立てています。
支援!
投下終了です。多くの支援ありがとう御座いました。
タイトル変更をミスってしまいました。
『SideB』は
>>510からです。失礼しました。
タイトル元ネタは、『バッカーノ1934娑婆編』の章タイトルより。
投下乙!
ちょwポケモンネタ自重wwwでも、はたくと電気ショックは実にあの二人らしいw
会場についての考察かー。このロワの名称である○をここで絡めてくるとはこれは予想外。
というか○同盟結成も氏の作品だ!凄いなぁw
そして一番驚いたのはやはり服装からの誤解かな。
梨花ちゃんのコスプレがこんな展開になるとは自分も含めてだれも思ってなかったんじゃないかとw
どうにも気になるところで切られたけど続きはどうなるか。改めて乙です!
投下乙!
ちょ、あすか何処へ行く気だ!w
所々に挟んである小ネタが面白かったです。
そして地下の考察も……なるほどね、○になっているとしたら面白いかも。
段々と会場の全貌も見えてきたね!
そして服が偶々一緒だったのを利用したすれ違いも予想が付かなかった。
今までずっと一緒だった凸凹コンビがとうとう別行動か、
再開は出来るのか……非常に楽しみだ。
ここからは、気が付いた点を。
確かあすかは除隊前からつれて来られている筈、
カズマと地下で遭難はまだして無いんじゃなかったっけか。
そして状態表ですが、「誰かの願いが叶うころ」で一度投下された後。
修正板の方に修正されたものが投下されていますよ。
何はともあれ改めて乙!
修正も含めて乙
予約きた!
とうとうグラハムに動きが来たか。
危機を迎えたペドヴァンパイア組だけど、グラハムとクリスは手を組めるのかな。
楽しみだ!
ちょっと待て、シーツー……だと……
魔王ゼロがC・Cモードだからそう言ってるだけじゃね?
遅くなりましたが投下乙です。
会場は丸かった。新しいギミックが脱出へと繋がるか
地下施設ともつながりが有るのか楽しみです。
そして妙なすれ違いから離れた人形一味は再開出来るのか、もしくは合流出来るのか、も楽しみです。
そして新しい予約!
クリスとグラハムの同時予約、なんかグラハムが久しぶりに感じるなぁ。
あれ?、参加の時間軸で言うとあの二人ってどんな感じだったっけ?
1934だと敵になったり味方になってた気がするけど…
>>537の指摘から、修正稿をしたらばの修正スレに投下しておきました。
・あすかのカズマについての心象部分
・真紅の蒼星石の記憶回想部分を追加
・それに伴う情報微修正
・真紅の状態表修正
修正点はこんなところです。是非一読お願いします。
>>543 修正乙!問題無いと思います。
ってか小鳥遊と佐山の評価に笑ったw
確かに変態だけども、それだけじゃない……と思うよ!
真紅があの二人にあったらどうなるんだろうか
修正乙
予約も来てるね
グラハムとクリスか、殺しあう事は無くてもこの二人は嬉々として殴り合いそうなイメージだ
グラハムは満身創痍だし、どうなるか楽しみだね
新予約キタ!
あの2人の戦いか。真逆と言っていい価値観と生き方の2人なだけに楽しみだ。
しかもスクライドに定評のあるWo氏となれば期待!
547 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/12(土) 20:27:38 ID:dcTYdSBQ
ここは安定して投下がくるな。
毎週楽しみだ。
延長か……投下が楽しみだな。
ところでここは人気投票とかしないのかな?
なんか他のスレではやってるようだけども。
やりたいと思った人が主導すればいいんだよ
他のスレの企画者がよそのスレを憐れんで導きにきてくれたりはしないよ〜
すいません、投下にはもう少し掛かりそうです。2時前後になるかな
また投下はPCの規制+危険球の為仮投下スレに投下します。
了解ー。お待ちしております!
楽しみ☆
おお!さらに予約が!
明日は月曜だし、そろそろ活動限界時間が……
ってか、仮投下は支援いらないんだっけか?
おぉ、とうとうレヴィ&クレアも動き出すか。
どうなるか楽しみだ。
遅くなってしまい申し訳ありません
二時とか言っときながらこんな時間になってしまいましたが仮投下をしました。
色々と問題有りますがよろしくお願いします。
>>555 仮投下お疲れ様です。
ですが、すこし問題があるようですので先ずは仮投下スレでの返答をお願いします。
それとせっかくですので進行報告を。
予約したカズマ、ギルガメッシュですが恐らく今日の21:00には投下出来ます。
その時お暇でしたらぜひ支援お願いします。
それではカズマ、ギルガメッシュを投下します。
「衝撃の!ファーストブリットオオオオオオオオオオオオオッ!!」
弾丸だ――見る者に思わずそんな感想を抱かせる程の勢いが其処にあった。
エリアE-5劇場周辺、髪を逆立たせた一人の青年、カズマが吼える。
いや、犬だ。この殺しあいでの優勝を目指すだけのただの野良犬の一匹でしかない。
また青年の右腕には、黄金と橙色の装甲を張り付けたガントレット状の、唯一無二の武器が宿っている。
“アルター”なる一種の超能力に類し、“シェルブリット第一形態”と呼ばれる代物であり、彼の誇りでもあるそれが晒される。
(速攻だ……モタモタしてる暇なんてねぇ!)
右肩から生えた三枚の真紅の羽の内一枚が消えうせ、眩い緑光を撒き散らす。
ファーストブリット射出の勢いに身を任せながらカズマは思考を回す。
人数はまだまだ残っている。最後の放送の時点で残り37人というこの現状。
生き残るためにはこの場からの撤退は悪い手ではなく、寧ろ良い手だとも思える。
簡単な事だ。今現在負っている傷は決して軽くはない。
長期戦になれば不利を強いられるのは誰よりもカズマ自身がわかっている。
だけど出来ない。曲げたくはないという感情が暴れ狂っている。
眼前の敵を、壁をこの拳で叩き砕く。曲がりようのない意思がこの身体を突き動かす。
ならば委ねるしかない。たとえ無鉄砲だとバカだと罵られようとも、やはり自分はこういう生き方しか出来ないのだから。
気に入らないものが、乗り越えなくてはいけないものがあれば。
そう、たとえばこんな眼をしたヤツが目の前に居るならば。
自分は駄犬にでもなんでもなってやる。
その意思に歪みなどはない。
「ほぅ、見違えたぞ。駄犬にしておくには惜しい速さだ」
だが、そんなカズマの覚悟を嘲笑うかのように男は口を開く。
カズマと同じように逆立たせた髪は金色に染まり、真紅の両眼はどこまでも赤みを帯びている。
その男こそ古代バビロニアの王にして最古の英霊、英雄王ギルガメッシュ。
そしてギルガメッシュは何処からともなく取りだした、黄色の短槍の柄でシェルブリットを受け、衝撃を殺していた。
漆黒のライダースーツに覆われたギルガメッシュの細身からは不釣り合いな気迫が周囲に拡散している。
当然、シェルブリットの一撃をあっさりと受けられた事で驚きを隠せないカズマもその内の一人だ。
こいつは強い。楽に終われない展開が今、眼前にあるのだと五感総てでカズマは感じ取る。
驚きはない、まったくもって。シェルブリットを放つ前から予感はしていた。
赤い血で塗りつぶしたようなギルガメッシュの両の瞳を見ればわかる。
この見下したような眼をカズマは確かに知っている。
たとえ色が違えども、込められた感情はあのいけ好かない蛇野郎となんら変わりはしない。
だからむざむざと尻尾を巻いて逃げるような真似は出来ない。
「ッ!うらぁ!!」
カズマが伸びきったシェルブリットを軸に腰を回す。
同時に地を踏みしめていた右脚を振り上げ、ありったけの力を込める。
なにもシェルブリットだけがカズマの全てというわけではない。
生きるだけで精いっぱいだった、ロストグランドでの生活を忘れてはいない。
鍛えざるを得なかった身体もカズマにとっては立派な武器の一つだ。
カズマの右の回し蹴りががら空きになったギルガメッシュの腹へ飛び込む。
「なにをする? よもやこの我の身体に触れるなど度し難い」
しかし、響いた音は肉が潰れるものではなく、ギルガメッシュの怒りが籠った声だった。
見ればカズマの蹴りに合わせるかのように、ギルガメッシュの右脚も振り上げられている。
碌に勢いを乗せていなかったにも関わらず、カズマの渾身の蹴りを止めている。
依然としてシェルブリットの侵攻も抑えており、そのギルガメッシュの力には目を見張るものがあるだろう。
その理由にはギルガメッシュが人間ではない事が絡んでいる。
“聖杯戦争”と呼ばれ奇跡を求めるために、7組の魔術師達が互いに殺しあう戦争。
その戦争に於いて魔術師達に使役される者こそがサーヴァントと呼ばれ、彼らは歴史に沈んだ英霊の魂が具現化した存在だ。
当然、並みの人間はおろか鍛錬を積んだ魔術師でも彼らサーヴァントに立ち向かうのは難しい。
故にこの殺しあいで力の制限を受けようともサーヴァントの、それも最古の存在であるギルガメッシュの力は脅威以外のなにものではない。
(重てぇ……だけどよぉッ!)
右脚に走った衝撃がカズマの意識を揺さぶる。
元より多くの傷を負った身だ。
下手を打てばフラリと気を失ってしまうかもしれない。
同時にそれはカズマの揺るぎない死を示す合図と成りうる。
そんな結果は一片たりとも望んではいない。
よってカズマはただがむしゃらに前へ進むしかない。
シェルブリットに更なる力を込め、槍ごとギルガメッシュの身体を叩くためにも。
「――ッ!」
そんな時、ギルガメッシュがまるでカズマの意図を察したように右へ身を逸らした。
同時に黄色の短槍――必滅の黄薔薇が廻り、シェルブリットの勢いを捌く。
潰すべき対象を見失い、シェルブリットの爆発的な加速に引っ張られカズマは前のめりに傾く。
そしてギルガメッシュは動いた。空いた左腕を軽く上げて、一気に振り下ろす。
背中から襲いかかった衝撃に強く打ちつけられ、カズマは更に体勢を崩した。
前方を映していた視界には土色の地面が映りだし、丁度うつ伏せの状態で屈する形となるもののカズマは直ぐに体勢を起こそうとする。
しかし、ギルガメッシュにむざむざとカズマの好きなようにさせるつもりはない。
「ガッ! てめぇ!!」
「ははははは、良いぞ。やはり駄犬はそうして地に這い蹲る姿こそふさわしいものよ!」
屈辱的な言葉と共にカズマへ投げ掛けられたのはギルガメッシュの右脚だった。
サーヴァントの怪力をもってしてカズマの背中を容赦なく押しつけている。
その力は強大であり、負傷が絶えないカズマの身体には無視出来ない負担となる。
抜け出せない拘束。更にギルガメッシュは、追撃と言わんばかりにカズマの頭上へ黄薔薇の矛先を翳した。
カズマからは死角となっていて、自分の命が既にギルガメッシュに握られていることが確認出来ない。
だが、感じることは出来た。このままじゃヤバイ。このままだと守れない。
譲れないものを、どうしてもこの手に取り戻したい存在を護れない――と。
今現在、刻一刻と身に迫る危険をカズマは確信の領域で感じ取る。
幼少の頃から生きるための闘いを続けた事で、鍛えられた感覚がカズマを動かす衝動となる。
既に黄薔薇は恐るべき速度で振り下ろされ、秒にも満たない内にカズマの脳天を刺し貫くだろう。
しかし、カズマの方も完了している。
なぜなら右腕のシェルブリットはまだ、曲がってはいないのだから。
強引に体を動かして、ギルガメッシュの足の支配を払い、シェルブリットもまた振り下ろされようとしている。
ただし――果てしなく広がる地面へと向かって。
「――なめんじゃねぇ!!」
カズマは力強くシェルブリットで大地を殴りつける。
シェルブリットが生み出す威力は爆弾と称するに相応しい。
制限を掛けられ、不完全な体勢で撃とうとも程度差はあれどその事実に変わりはない。
故にシェルブリットがカズマの身体を持ち上げる。
地に叩きつけたことで生まれ出た反発の力はもはや確認するまでもない。
意に反しながらもギルガメッシュは咄嗟に後方へ身を飛ばす。
その刹那、ギルガメッシュが居た場所を一迅の風が――暴風ともいうべき力が空へ駆け上がった。
シェルブリットを打ちつけ、逆立ちの要領で足を上へ向けて、カズマはそのまま飛び上がる。
華麗さも優雅さもあったものではない。
だが、数十メートル程の距離を悠々と飛び越し回転を挟み、膝から着地する。
「くだらん真似をしてくれるな、雑種ッ!」
立ち上がりながら振り返ったカズマの視界には、やはりギルガメッシュの姿が映っている。
そしてその大きさは今も大きくなっており、黄薔薇が一直線にこちらを向いている。
目を見張るほどの瞬発力は、ギルガメッシュの異常性をカズマが改めて認識するのには十分過ぎた。
しかし、やりあう相手の事についてモタモタと考える暇はない。
苛立ちを感じながらもカズマは生き残ることへ全ての神経を回す。
反撃のタイミングは既に終わり、身を引いての回避を半ば本能に従いながらも選択。
ドンピシャかそれともギリギリか。
そのスリルを楽しむ余裕は生憎この状況では存在しない。
紙一重の差でカズマは黄薔薇の刺突を免れる。
幸いにもそれは短槍が故の黄薔薇の柄の短さも関係したのだろう。
しかし、カズマの表情にはこれといって安堵の色は見られない。
何故ならまだ終わってはいないのだから。
「そらそらそらそらぁ! どうした、もっと踊ってみせよ!」
一撃目の次には二撃目を、そしてその次には三撃目を。
ギルガメッシュは速度を一向に緩めずに、何度も黄薔薇による突きを繰り出す。
その槍捌きはランサーのクラスに召喚された、ディルムッド・オディナのものより鮮やかさは落ちる。
だが、ギルガメッシュはサーヴァントであり、彼の宝物庫にも槍の宝具は眠っている。
並大抵なものではない。
人を殺すには十分すぎる加速が、誰に言うわけでもなく物語っている。
いや、敢えて言うならただ一人にだ。
今も黄薔薇の連撃を無我夢中に避け続けているカズマへ。
一度でも喰らえば決して軽くはない。
まるでそんな事を言っているかのように。
「ちっ、この野郎が……!」
一方、カズマの方は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべている。
黄薔薇の猛攻に隙は見られず、避けることで精一杯の現状がカズマの焦りを誘う。
こんなことでいいのか。
こんなことで自分は生き残れるのか。
こんなことで本当にこの男に勝てるのか。
当然、いつものように“No”という反逆をそのふざけた問いに突きつけてやりたい。
右腕のシェルブリットを前へ繰り出そうという衝動は、今か今かと出番を待っている。
だが、一度やってしまえば代わりに槍の一撃を貰う事だろう。
それも絶妙なタイミングで、確実に自分の命を刈り取る傷をもってして。
そんな確信が頭からどうにも離れない。
柄にもない不安が時間と共に積み重なっていくのを実感させられる。
このままじゃ駄目だ。
先に倒れるのは自分の方かもしれない。
なんらかの変化が、目に映る行動をしなければ自分は負ける。
依然として力の衰えも見せないギルガメッシュを見れば嫌でもそう思い知らされる。
故にカズマが取る道は――いつもどおりの一本道だ。
(そうさ。迷うコトはねぇ……気にいらねぇヤツは殴る、ただそれだけだろうがッ!)
後ろへ下がっていたカズマが急に前へ踏み込む。
唐突に現れた黄薔薇の連撃の衰えがカズマを突き動かす。
一瞬の綻びも見逃すつもりはない。
ギラギラと鋭さを帯びた瞳が見る先はただの一点だけだ。
それは一発ブチ込みたいと掛け値なしに願う相手、ギルガメッシュの顔面。
余裕そのものでしかなかったギルガメッシュ顔が、ここにきて僅かに焦りで歪んでいる。
みすみすとチャンスを逃すつもりもない。
ここぞとばかりにカズマは二撃目のシェルブリットを撃ち出そうと身構える。
「――は、ここまで我の思い通りになってしまうのでは逆に興ざめというものよ」
しかし、一変してギルガメッシュに余裕が戻り始める。
まるでそれが当然であるかのように、カズマが踏み込む事を見通していたかのように。
誘われた――ギルガメッシュの意図を、カズマは図らずとも間合いにより理解する。
再び向けられた黄薔薇の切っ先はカズマの左胸を正確に捉えている。
貰えば先ず致命傷は免れない。嘆くことよりも憤る事よりもカズマは左腕を翳す。
シェルブリットの大振りな動作は止まらせずに、敢えて直進させたままで。
相打ちすらも辞さない覚悟はとうに済んだ。
ただし、生き残る事だけはなにがあろうとも譲るつもりはない。
闘志を曇らせることはなく、その意思を誇示するかのようにカズマは突き進む。
「言っておくが……この宝具、あまり舐めていては足元をすくうコトになるぞ」
「知ったことじゃねぇッ!!」
肉が裂け、赤い飛沫が地面に飛び散った刹那、ギルガメッシュが嘲笑う。
左胸を護るために犠牲にした、左腕からの焼けるような痛みがカズマの神経を駆け巡る。
その痛みに耐えながら同時にギルガメッシュの言葉の意味に思考を回す。
だが、いい考えは浮かばない。元より考える事は苦手といえども情報が少なすぎる。
それよりもだ。カズマは自身のシェルブリットの一撃の行方に意識を向ける。
確かな手ごたえはない。代わりに視界に映るものが一つ。
首を軽く傾け、さもつまらなそうに一瞥をくれたギルガメッシュの顔がそこにあった。
「そう暴れるでない。我が直々に手を下してやるのだ。むしろ誉と思うがよい、駄犬」
ギルガメッシュの屈辱染みた言葉への感情など二の次だ。
土壇場でしくじった事を嫌でも思い知らされる。
思わず舌打ちするカズマだが、直ぐに左腕を己の方へ引き戻した。
血肉に塗れた黄薔薇がカズマの左腕から引き抜かれ、新たな赤い雫が彼の足元を濡らす。
顔をしかめながらも決して無視出来ないダメージを意識から強引に飛ばす。
両脚で踏ん張り、一度後方へ飛んで腰を落として、右腕を駄目押しの支えとする。
未だ衰えを知らない意思を滾らせる左眼は、しっかりと相手の動きを探るために、前へ。
「俺のアルターはまだまだ燻ってんだ、かってにいい気になってんじゃねぇ!」
もう一度、渾身の力を込めてカズマはシェルブリットで大地を撃つ。
瞬く間に生まれた衝撃がカズマの身体を空高く翔け上がらせ、右腕を突き出す。
さながら強力な力で撃ちだされた弾丸が目標を定めるように、カズマは地上を指し示す。
否、地上ではない。
依然として両腕を組み、さも尊大な様子で立ち尽くすギルガメッシュの元へだ。
カズマが取ったその行動を止められる者はこの場には一人も居ない。
「撃滅の!セカンドブリットオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
二枚目の羽の消失と共に再び爆発的な衝撃が生まれ、轟音が大気を揺るがす。
セカンドブリットが捉えたものは咄嗟に横へ飛びのいたギルガメッシュではない。
彼の後方に位置する建造物、劇場の南館の外壁の一部がいとも容易く粉塵に還った。
右腕を弾丸に見立て、アルターの力でさながら大砲とも思しき勢いをもってして前へ撃つ。
その威力は測り知れるものではなく、ただ判る事は規格外なものであることだけだ。
まさに英霊が用いる宝具にすらも匹敵する脅威――と。
聖杯戦争に少なからず関わる者は感想を漏らすかもしれない。
だが、この男にはそんな考えを思いつく筈はなかった。
「脆弱な犬ほどよく吠えるとは言うが度が過ぎるぞ、駄犬。少し頭を冷やすがよい。
それとざっと検分してみたが、これをキサマが持っていたことは腹立たしいが結果として我の手に戻ることが出来た。
それだけは褒めてつかわせてやろう」
「てめぇ、俺の持ちモンを……!」
カズマが持っていたデイバックの紐をいつのまにか黄薔薇で切り取り、ギルガメッシュは手に取っている
黄金の毛髪が僅かに揺れたかと思うと、ギルガメッシュの周囲がふいに歪み出す。
それは空間の歪み。錯覚ではなく確かにユラユラと蝋燭の灯が風に揺れるような光景だ。
原因はギルガメッシュが奪った支給品。いや、それはサーヴァントが使いし宝具の一種。
やがてその歪みの中から何かが飛び出していく。
「ただし――頭だけとは言わずに、貴様の躯体総てをもってしてな!」
それらの正体は剣、槍、斧などの無数の武器の群れだ。
数は10には満たないもののそのどれもが華美な装飾が施されている。
何故ならそれら一つ一つがギルガメッシュの所有する蔵に納められ、正真正銘の宝具である。
それこそがカズマのデイバックの中にあった、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の中身。
王の財宝の鍵剣との使用でようやく本来の力を行使することが可能となった。
そして王の財宝の鍵剣により、解放された宝具共がシェルブリットの着弾点に殺到する。
その勢いはまさに疾風怒濤の如く、外壁の残骸を更に砕いていく。
しかし、肝心の標的は其処には居ない。
「そこだあああああああああああああああああああああああああ!!」
ギルガメッシュが見上げた先にカズマの怒声がやかましくも響きわたる。
今までのやりあった事でカズマも、セカンドブリットで終わるとは思っていなかったのだろう。
セカンドブリットの直撃から直ぐにカズマは瓦礫を蹴り飛ばし、飛び込んでいた。
未だに日が差し込む蒼い空へ、ギルガメッシュの上を取れる場所へ。
今度こそ必殺の一撃を、最高のタイミングで撃ちこめる位置をカズマは掴み取る。
だが、ギルガメッシュもただ見ているわけではない。
少し驚いたような顔を見せながらも腕を翳し、再び王の財宝から宝具を射出する。
一方カズマに避ける動作は見られず、愚直なまでに直進するだけだ。
ただし、カズマの方も何もしないわけが――ある筈もない。
「抹殺の!ラストブリットオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
廻る。最後に残った一枚の羽根を使い、緑色の輝きを散らしながらカズマが廻る。
三発の弾丸の内、最後の一発であるラストブリットをカズマは自身の回転の勢いを加えて撃ち出す。
迫りくる宝具はシェルブリットで横殴りに打ち払い、カズマの勢いが削がれる様子はない。
対してギルガメッシュは憎々しげに口元を歪めながら、王の財宝から黄金に彩られた盾を取り出した。
己の鎧が破壊されてしまった今、たとえサーヴァントといえど、生身で喰らえばただでは済まない事だろう。
そのための防衛手段をギルガメッシュは抜かりなく講じる。
「ハッ! 恥を知れ、雑種! 英雄王たる我にここまで見苦しい真似をしてくれるとはな!」
だが、ギルガメッシュの浮かべる表情に焦りは見られない。
カズマの反撃には驚かされたものの、己の財宝が負けるとは露にも思っていないためだ。
それらの財はギルガメッシュの選定を受けて王の財宝に納められている。
当然、今現在カズマのシェルブリットの直撃を受け止めている盾にもその事は言える。
たとえ、予期していたものよりも遥かに膨大な衝撃が盾越しに襲おうとも構わない。
ギルガメッシュが想像する結末に、自身が押し破られる光景などありはしないのだから。
しかし、それはあくまでもギルガメッシュ側だけの考えである。
そもそも完全なものではなくとも、誇りの塊ともいえる彼が敗北を認めるわけもない。
故に傲慢ともいえる程の自身から湧いた油断。
俗に言う“慢心”がギルガメッシュから正常な判断を失わせていた。
その答えを示すかのように、拮抗し続ける状況に変化が訪れる。
刻一刻とではなく、まるで不意を突いた形で。
依然として、右腕をギルガメッシュの盾に喰らいつかせるように撃ちつけたままで。
男の――カズマの周囲で地面が唐突に消え失せた。
「恥なんか知ったことか! 壁があるんだ、俺の眼の前にてめぇという壁がな……だったらよぉ!」
カズマのシェルブリットにアルターの象徴ともいえる、虹色の光が収束し出す。
いや、それだけでは終わらない。
一瞬だけシェルブリットが右腕ごと消失し、代わりに新たな腕が生えていく。
手の甲には円形の奇妙な模様が刻まれ、第一形態よりも更に重厚な装甲を纏い、それは右顔面にも渡っている。
それこそが“シェルブリット第二形態”。
かつてアルター結晶体との邂逅により手に入れた力だ。
軽く腕を引き、カズマは再びシェルブリットを前へ突き出す。
「やるしかねぇだろうが! 押し通すしかねぇだろうが!
このシェルブリットで、てめぇに――俺の“反逆”をなああああああああッ!!」
ファーストブリットではなく、セカンドブリットでもラストブリットでもない。
当然だ。カズマの三発の弾丸は既に使いきってしまった。
だが、カズマのシェルブリットには宿っている。
力が、禍々しい程に強烈な力の存在がまるで外観に現れている。
シェルブリットの弾丸は時間が経てば自動的に生成されるというわけではない。
されども弾丸の補充が完了した原因は至って単純なもの。
新たな装填を行うには、また新たにシェルブリットを形成すればいいだけだ。
そう、だからこそ今のカズマには撃つ事が出来る。
新たなシェルブリットを、己の手で造りあげたカズマに――出来ない道理がない。
「もっとだ!もっと輝けえええええええええええええええええええええええッ!!」
ギルガメッシュに向けて突き出されたシェルブリットに変化が生じる。
背中には今までの三枚羽とは違い、プロペラを模した翼が現れ、金色に発光しながら廻り出す。
右腕の二の腕が横へ開き、続けて手甲に刻まれた円状の部分も開き、代わりに漆黒が顔を見せる。
同時に虹色の光がその黒点から旋風を起こしながら吹きあれ、黄金の輝きを宿す。
周囲の地面をアルター形成の糧として巻き込み、眩い程の輝きが黒を完全に塗りつぶした。
一切の躊躇なくカズマはその拳を更に前へ前へと突き進ませ、ありったけの声で叫ぶ。
既に右腕全体が黄金の色に染まったシェルブリットがただ一人の標的を狙う。
「シェルブリットバーストオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
黄金の盾と、黄金の輝きを放つ拳がぶつかり合う。
今までとは段違いの速度を伴い、叩きこまれたものはシェルブリットの新たな威力。
その名はシェルブリットバースト。掛け値なしに一撃必殺に相応しい一撃。
盾の上面から絶え間なく迸る火花が、その暴力的な力をありありと示す。
さすがのギルガメッシュももう片方の腕を添え、両腕で受け止める。
刹那、激突の余波でギルガメッシュとカズマの周囲の大気が震えた。
ついで目下に広がる大地からも地響きが湧く。
その変化は聴覚だけではなく、まるで叫ぶかのように視覚にも訴えかける。
そしてそれはギルガメッシュの持つ盾にも、無数の亀裂という形でハッキリと現れた。
こうなってはもう――カズマのシェルブリットは誰にも止められるわけがない。
「なに、よもやキサマ――――」
ギルガメッシュが驚愕に満ちた声を漏らした瞬間、黄金の盾は完全に砕け散った。
日の光に反射し、黄金色に輝く破片が辺り一面に散らばったかと思うやいなや、シェルブリットが飛び込む。
思わず口を開け、ただ前を見ていたギルガメッシュの顔面にあまりにも強烈な一撃が。
鳩尾を抉るように叩きこまれたシェルブリットは、いとも容易くギルガメッシュを地に伏せさせる。
そしてギルガメッシュの背中を起点に、既にひび割れていた大地に更に負荷が掛かり――
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
ギルガメッシュとカズマの周囲の地面は崩壊し、二人は暗闇の中に落ちて行った。
◇ ◇ ◇
「ッ……どこいきやがった、あの野郎…………!」
暗闇の中、カズマが一人不機嫌そうに唸る。
明かりはなく、視界が悪いためにギルガメッシュの位置を完全に見失ってしまった。
カズマが歩いているのは駅とは遠く離れ、線路沿いに連なる作業員用の通路のようなものだ。
今のところ運行する地下鉄は見かけてはいない。
しかし、そんなことは正直、今のカズマにとってはどうでもよかった。
「さっさと終わらせねぇとこっちがヤバイな……」
頭が、両腕が、両脚が、身体のそこら中が鉛のように感じられる。
呼吸の音も普段よりも荒々しく、一定の規則性が見られない。
先程のギルガメッシュとの戦い以前に、カズマはあまりにも傷を負いすぎていた。
美坂美琴、カルラ、レヴィ、東方仗助、クレア・スタンフィールド、グラハム・スペクター、無常矜持。
いずれも一筋縄ではいかない相手だった。
勝敗に差異はあれども貰った傷と痛みは確実に増えている。
そしてそれらは明らかに異常としてカズマ自身の身体に色濃く出ている。
特に右腕の負傷が重い。シェルブリットバーストは強力故に代価となる負荷を伴う。
制御になれたとはいえども、使い始めた頃には激痛のあまりにただ叫ぶしかなかった。
貫かれた左手の感覚にも依然として確かな不快感がこびりつき、拳を握れそうにもない。
笑えない状況に立たされている事を再度確認するが、カズマは歩みを止めるつもりはない。
「まだ終われねぇ。そうさ、終われるわけがねぇじゃねぇか……根性みせろよ、カズマ。
お前の拳はまだ潰れちゃいねぇだろうが……!」
左腕が握れないのであれば右腕がある。
シェルブリット第二形態、他の誰にもないこの力だけが頼りだ。
たとえクソッタレなこの殺し合いで踊らされる事になっても譲れない。
大切な存在を取り戻すまでには進み続けなければならない。
だから今、自分がすべき事はあの金髪野郎を見つけ出し、一秒でも早く倒す事だ。
揺るぎようのない確信が新しい一歩を踏み出す糧となる。
ようやく目が慣れてきた頃だ。
一向に鋭さが衰えない瞳が、つい先ほどまで鎬を削っていた相手を捜すが――
不意にカズマの視界に揺れが訪れた。
「なっ……?」
カズマの右足に焼けるような感覚が走る。
足元へ目を向けようとするが間に合わない。
右脚による支えが弱まり、疲労も相まってカズマは思わず前のめりに倒れた。
続けて除々に広がり出した生温かい感触が右脚を浸していく。
それが自身の鮮血なのだと理解し、右脚に一本の剣が突き刺さっているを視覚する。
どこから来たかはわからないが、誰がやったのかの見当はつく。
その正体を己の目で確認するために、咄嗟に首を回す。
「がっ!」
だが、再びカズマの視界は先ほどよりも大きく揺さぶられることになった。
後ろを見ようと振り向かせた身体が後方へ吹っ飛ぶ。
既に覚えがある感覚が今度は胸の辺りから広がり、激痛が神経を巡っていく。
胸からは黄色の何かが血に塗れながら生えている。
それが見覚えのある槍だという事にカズマが気づくのは難しくはなかった。
もはや疑問の余地はない。これはアイツだ、と断定出来る。
その証拠に――声が響いた。
気に入ることは出来そうにもない、とある人物の尊大な声が
「さて――そろそろ戯れの幕引きといこうか。なぁ、駄犬よ」
サーヴァントの身体能力は常人のそれを軽く凌駕する。
それは五感にも及び、たとえ漆黒の中であろうとも視界は効いている。
故にギルガメッシュは王の財宝から剣の射出で文字通りカズマの足を止めた。
駄目落しと言わんばかりに黄薔薇の投擲を行ったのは彼の性格ゆえの問題だろう。
そして口振りは相変わらず傲慢そのものであり、声に震えなどはない。
しかし、まったくの無傷というわけではなかった。
ライダースーツの胸のあたりが敗れ、隆々とした肌が顔を見せている。
シェルブリットバーストは伊達ではなく、焼けただれただけで済んだのはサーヴァントである恩恵によるものだろう。
実際にはカズマの頭に入っているスタンドDISC、“サバイバー”による肉体強化も関係している。
更にそこに加えて不完全ながらも不死者であるため、今も傷は修復を続けているのだが。
されども、既に勝敗は決しているこの状況で、そんな些細な事をギルガメッシュが気にするわけもない。
トドメを刺すといわんばかりに、ギルガメッシュは仰向けに倒れたカズマへ近づいていく。
「だが、よくもここまで足掻いたものよ。よって、名乗ることを許す、駄犬。
この英雄王、ギルガメッシュがキサマの名をしかと心に留めておこう」
だが、ギルガメッシュの口から出た言葉は意外なものだった。
英雄王の名が示すようにギルガメッシュは正真正銘、一国のかつての王である。
シェルブリットバーストの威力が王の目に適ったのだろう。
単に気まぐれを起こしただけかもしれないが、ギルガメッシュは問う。
ギラついた瞳に怒りを滲ませながら、喰い入るように見つめている。
少しの間を置き、やがてカズマの口が開き、吐き捨てるように言葉を紡いでいく。
「……カズマだ、クソッタレが」
「カズマ? よもやそれだけとは言うまい。なにか一つくらいあるであろう。
キサマを示す名が、キサマの位を示すものが」
「苗字もねぇ、何にもねぇ、ただのカズマだ……!」
「は――はは、はははははははははははははははははは!! これは実に滑稽なコトだ」
ギルガメッシュの不愉快な笑い声が響く。
カズマはその意思を言葉に込めるかわりに、右腕のシェルブリットを固く握りしめる。
しかし、その拳がギルガメッシュへ届く事はない。
距離が足りない。なにより貰ったダメージが大きすぎる。
おそらくその事をギルガメッシュは承知の上であるので、彼は話を続ける事が出来る。
「無礼なヤツだとは思っていたがまさかこれほどとはな。
碌な名すらもない雑兵如きに、我の財を見せてしまったとでもいうのか?
まったく、この我としたコトがとんだ醜態をさらしてしまったものよ!」
悪意は感じられない。
ただ単にギルガメッシュは自身の感想を述べているだけだ。
対するカズマは沈黙。ただし、反抗を秘めた目線は依然として逸らさずに。
そしてギルガメッシュは再び話を続ける。
「では、問おう、カズマとやら。キサマは何を求め、この英雄王に刃向かった?
そう、どのような理由でこの我に刃向かおうという気になったのだ?
我の臣下となれば褒美も貰え、この殺し合いとやらからも抜け出せただろうに」
ギルガメッシュにカズマを臣下に加える気があったかは定かではない。
しかし、疑問に思った事は確かだろう。
自分に挑み、今も満身創痍の身でありながらも諦めの意思を捨てない姿勢。
並大抵の覚悟では無理な芸当だ。
たとえば聖杯戦争で、聖杯の恩恵を得るために戦ったサーヴァント達のように。
この男が捨てきれない理由とは一体どんなものか。
ギルガメッシュは興味本位でそれを聞き出そうとする。
「……だったらアンタはどうなんだよ。剣だのなんだのポンポン出しやがって。
アンタはその力でなにがしてぇんだ……?」
が、カズマは素直に答えようとはしない。
質問を質問で返すのは時間を稼ぐためなのかは定かではない。
されども除々に立ち上がろうとするカズマを気にすることなく、ギルガメッシュは口を開く。
「この世のすべてはかつて我が支配せしめたものだ。
どれほどの年が過ぎようとも我のものであるコトに変わりはない。
此処がどこであるのかは知らぬ。
だが――あのギラーミン如きに好きにさせてやるのも気に食わん」
酷く傲慢な物言いだが、ギルガメッシュに躊躇している様子は全くない。
土地、人、財宝などのこの世に存在する全ての所有権は自分にある。
あまりにも絶大な、王である誇りがギルガメッシュに自信を培わせた。
たとえ他人にとって思わず頭を抱えるような世迷いごとに聞こえようとも。
ギルガメッシュは彼だからこそ言い切れる。
「たとえばサーヴァント共が求めた、聖杯たる万物の願いを叶える財をギラーミンが持っているというのであれば尚更のコト。
全ての財は我のものであり、我の手に戻ることがあるべき姿というものよ。
ならば我が取り戻すのが道理であろう。英雄王ギルガメッシュがギラーミンの持ちし、ヤツの身には不相応な財をな」
「なんだってんだ……てめぇは何様のつもりなんだよ」
「は――つまらんコトを聞く。我の真名を知らぬとは学がないにほどがあるな。
ならばしかと聞くがよい」
カズマのもっともな問いすらもギルガメッシュには愚問にすら等しい。
何故ならギルガメッシュは――王だ。
誇り高き王はいついかなる時でも己の言葉に自信を持っているのだから。
「我が何様か? 我は我様に決まっているであろう、この痴れ者が。
この世に二人とはいない、最古の英雄王にしてこの世全てを背負いしもの――それが我、ギルガメッシュだ」
逆にここまでくれば清々しいものとも思えてしまう。
真紅に染まった双眸は、当然の事を言ったまでとカズマを見下ろしている。
肝の小さい人間なら失禁をもよおしてしまうかもしれない鋭さがそこにある。
その視線を一身に受け、カズマはただ言葉を漏らした。
「わかんねぇ……からっきしわかんねぇよ。ギルガメッシュだがなんだか知らねぇが、俺にはさっぱりわからねぇ。
だが、一つだけはわかる……絶対にな」
「ほう、申してみせよ。その取るに足らん脳でいったい何を知ったというのだ」
「けっ、わかってんだろ。てめぇにも……どうせなああああああああああああああ!!」
刹那。カズマは右腕で思いっきり引き抜く。
手が伸びた先は自身の胸元、黄薔薇の柄の部分に。
赤黒い鮮血を散らしながら、カズマは黄薔薇を無造作に投げ捨て、同時に立ち上がる。
依然として刺さったままである剣を気にした素振りはない。
軽く口を開き、少しだけ感心したような様子を見せたギルガメッシュに向かい、カズマは叫ぶ。
「俺とてめぇは絶対に相容れねぇってコトがよぉッ!!
殴り合うか! どっちかが倒れるか! それともどっちかが負けを認めちまうか……どうせそんな関係でしかねぇッ!!」
ギルガメッシュと手を取り合う未来など考えられない。
たとえ命が惜しくとも、ギルガメッシュの臣下になるなど絶対にNoだ。
他人の命令に従って生きるなど、野良犬のように野たれ死ぬ方がよっぽどましだ。
だからこそカズマは立つことだけでも危うい身体を無理やりに動かせられる
止まれはしない。たとえこの身が砕けようとも譲れない道が目の前にある。
そのためになら、カズマはいくらでも限界を超えることが出来る。
それがネイティブアルター、シェルブリットのカズマの生き方なのだから――。
だが、ギルガメッシュの表情には不愉快さが色濃く滲んでいる。
「くだらん――この英雄王に対し、まだそのような戯言を申せる口があるとはな。
やはりキサマと言葉を交わすのは無駄でしかなかった。
キサマの血で相応の償いをするがよい、駄犬よ」
ギルガメッシュが腕を振り上げた瞬間、再び空間に歪みが生じ、王の財宝が射出される。
対するカズマは背中のプロペラ状の羽を回し、後ろへ飛ぶ事で辛くも逃れる。
残りを一つに纏めたデイバックは手に取ったものの、カズマの動きには精彩がない。
羽による浮遊もどこかおぼつかなく、今にも墜落してしまいそうな様子だ。
しかし、ギルガメッシュにカズマに対する慈悲などあるわけもない。
ギルガメッシュは執拗に王の財宝をカズマへ飛ばし続ける。
「がっ!!」
やがてその内の一本がカズマの左腕を突きさし、彼はあえなく地に倒れ伏せる。
持っていたデイバックも思わず取り落とし、更に飛来した王の財宝により引き裂かれ、中身が周囲に散乱する。
変わらない、むしろ先ほどよりも更に悪くなった状況が自分の前にあることがわかる。
左腕が碌に使えなくなったため、右腕一本で立ち上がるしかない。
それも追撃がやってくるまえに、こんないつ事切れてもおかしくない身体で。
思わず弱い考えが浮かぶ。
これは――ヤバイ、と。
「どうした、もう限界とやらがきたか?」
ギルガメッシュが言っていることにも碌な反論が出来ない。
もっと力があればと強く思う。
たとえばあの蛇野郎が事あるごとに言っていた、“向こう側”の力がもっとあればと。
だが、現実はそこまでやさしくは出来ていない。
今のカズマにはただ、既にボロボロなシェルブリットで前方の砂利を掴む事くらいだ。
そんな時、ふいに右腕に砂利以外の感覚を覚えた。
(こいつは……!)
それは一丁の拳銃。
見間違うはずもない。
おそらく少女の持ちものの中に入っていたのだろう。
今は破かれ、碌に確認をしなかったデイバックから外へ飛び出ていた。
目の前に転がっていた、拳銃をカズマは迷いなく右手に取る。
その瞬間、王の財宝の一部が砂利道を串刺しにするが其処にカズマの姿はない。
シェルブリットを利用し、間一髪で前方へ飛びのいていた。
そして今度はシェルブリットをブレーキの要領で使い、ギルガメッシュの方へ振り向く。
「限界ってなんだよ、もしかして喰えんのか、それ?」
「ほう、しぶとさだけは褒めてやろう。が――所詮、そこまでだ」
「かってなコトぬかすんじゃねぇッ!!」
ギルガメッシュの言葉に負けじと、カズマが右腕を突き出す。
固く握られた拳には握られたものが一つ。
もはや言うまでもない。
見間違うはずもない。
それはとある男の形見の品。
唯一無二の親友、こんな自分にも出来た最高の友――。
君島邦彦の愛用の銃をカズマは宙へ放り投げる。
「意地があんだよ!男の子にはなぁッ!!」
君島の銃が虹色の光となり、アルターの糧となる。
実のところギラーミンは支給品のアルター化は制限している。
だが、それは敵対者の支給品をアルター化してしまえば、あまりにも実力に差が開いてしまうためのものであった。
故に幸運にも、アルター能力者の一定範囲内の支給品であればアルター化は可能だった。
そして光はカズマの左腕に収束し、彼だけの新たな力となる。
「そう思うだろ、君島ああああああああああああああああああああああああッ!!」
右腕と同じく左腕にもシェルブリットが発現する。
黄金の拳、合計二本のシェルブリットをカズマは構えた。
今はいない。あの日、自分におぶられたまま逝ってしまった君島の顔が浮かぶ。
どこかにやけ顔な、自分を笑ったような顔が浮かび、消えていく。
やっちまえ、カズマ――君島がたしかにそんな事を言ったような気がし、そして前へ飛んだ。
垂れ下った羽をしならせ、腰を回しながら両方の腕を振りかぶる。
飛来した王の財宝が左のシェルブリットを貫くが、カズマの勢いは止まらない。
「シェルブリットオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
右腕のシェルブリットがギルガメッシュの顔面を横殴りに叩く。
鈍い嗚咽を漏らしたと思うと、ギルガメッシュは後方の外壁に吸い込まれるように吹き飛ぶ。
衝撃が無数の破片と塵を作り出し、ギルガメッシュの姿が一瞬で粉塵に消える。
やったか。思わずカズマはそう、心の中で零す。
しかし、ギルガメッシュが倒れたと思われる場所の空間が揺らめく。
「ちっ、クソッタレが!」
ふらつく身体を、羽を軸にカズマは後方へ飛ばす。
間髪いれずに王の財宝が先程までカズマがいた場所を通って行く。
意外にも驚きはなかった。どちらかというとやはりという感情が強い。
手頃な場所へ降り、膝を折りながらカズマはじっと目を見据える。
どうにもしぶといやつを。どうにも越えにくい壁の存在を再び視覚に捉えた。
「は――二本になったところで変わることもなかろう。
仮に我を殺すのであればこの三倍はもってこい。
それが王たる我に対し、せめてもの礼であろう」
やはりサーヴァントであるギルガメッシュはただでは終わらない。
制限を受けていようとも常人を遥かに超える身体能力。
更には不完全な不死者による再生力とサバイバーによる肉体強化。
これらの付加がギルガメッシュに、異常なまでの生命力を可能とさせている。
ギルガメッシュの足取りは軽く、受けた傷はやはり今も修復を続けている。
カズマは本能で直感する。こいつを倒すのであれば一瞬でなければならない。
このムカツク口を開かせる間もなくただの一瞬で、と。
「悪ぃが俺はどうしようもなくクズでバカ野郎なんでよぉ。
礼だなんて言われてもよくわかんねぇなぁッ!!」
ならば力が必要だ。もっと、もっと自分の拳に輝きをくれるなにかが。
咄嗟にあの場所へ視線と飛ばす。
続けて王の財宝の追撃を避ける意味も兼ねて、身体ごとその場所へ。
碌に見やしなかった支給品、自分のデイバックのなれの果てがそこにはある。
まず目に映るものは多くの食料だがそんなものはどうでもいい。
あのカルラが持っていた剣も、二色のへんてこなボールも同じだ。
それよりもなにか自分に使えそうな、アルターに使えそうなものが――あった。
強引に手に取る。灰色の棒状のそれには見覚えがあった。
「使わせてもらうぜ、もう一度!」
握りしめた一本の棒が瞬く間に消えていき、アルター形成に使われる。
それはかつて、カズマが初めてシェルブリット第二形態に使用した代物。
アルター発祥の地とされる、向こう側の世界からロストグランドへ迷い込んだ、アルター結晶体の肋骨の一部。
文字通りアルターの結晶である肋骨ほど、アルターに利用するのに適したものはない
そしてカズマの両脚からも橙色の装甲が覆われ、やがて頭部を除く全身にいきつく。
だが、それまだ終わりというわけではない。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
カズマは、自身の身体の変化にまるで気づいていない様子でただ叫ぶ。
言うまでもなく更なるアルターの、更なる力の形成。
今度は周囲の砂利や外壁などありったけのものを削りとっていく。
あまりにも膨大な量。自分達が居る場所が崩壊する危険すらも頭にはないだろう。
この戦いだけは途中では終われないのだから。
「負けられねぇ! てめぇが世界を背負っていようが、んなこと関係ねぇッ!!」
不意にカズマの背中から新たな光が、アルター粒子が吹き荒れる。
アルターが形成される様子はない。むしろその逆だ。
カズマの身体の何かからアルター粒子が強烈な勢いで放出している。
その噴出点は無常矜持のアルターを受けた箇所から。
そう、向こう側の力を手にした無常のアルターが触れた場所からだ。
「だいたい俺にはそんなでけぇもんは背負えねぇし、そんなつもりもねぇ!
俺のこの拳は、俺が進みてぇ道をこじ開けるためだけにあるんだッ!!」
ホワイトトリック、ブラックジョーカーとの接触により少なからず向こう側の力が流れたのだろう。
元よりカズマは何度か向こう側の世界とのアクセスに成功したアルター使いだ。
身体に残った、向こう側の世界の残留すらも己のアルターに利用できてもおかしくはない。
たとえそれがただのアルターではなく、向こう側の力に直結した力であろうとも――。
譲れない信念。意固地なまでに固く培われた意思がそれを後押しする。
ただ、前へ進むという意地がシェルブリットの新たな力を紡いでゆく。
右腕の、そして左腕と両腕のシェルブリットがアルター粒子に塗れ、更に強大なものへ姿を変える。
その光景はまさに圧巻そのもの。熱気すらも覚える勢いがたしかに顔を見せた。
「だからよぉ……まだ進ませてもらうぜ、ギルガメッシュさんよぉ!
あいにく、俺のゴールってやつはまだ見えてないからなああああああああああああッ!!」
咆哮と共にカズマが両腕のシェルブリットを使い、空高く飛ぶ。
先程自分達が落ちてきた、天井へ向けて一直線に。
たとえ新たなシェルブリットを身に纏おうとも、受けた傷がいえるという事もない。
アルターの応急処置は所詮その場凌ぎのものだ。
故に速攻で勝負をつけなければならない。
「言いたいことはそれだけか、駄犬よ。ならば――死ね。
一瞬で、何人も味わったことのない程に濃密な苦しみに抱かれながらなッ!!」
一方、ギルガメッシュの周囲の空間が歪む。
もう何度目かもわからない、王の財宝が展開する。
だが、その数は今までの比ではない。
十はゆうに超えており、恐らく数百――もしくは千すらも超えるかもしれない。
ギルガメッシュにとってもこれ以上カズマと付き合う義理もない。
彼もまたこれで全てを終わらせるためつもりなのだろう。
無限にも等しい王の財宝の全てがカズマに向けられる。
(チクショウ……なんて数だよ、オイ)
しかし、カズマに止まることは出来ない。
ここで少しでも怯んでしまえば、自分が一方的に刺し殺されるのはわかっている。
それこそ肉片が少しでも残るかどうかわからないくらいだ。
なにも恐れをなしわけじゃない。
たとえ相打ちになろうとも、ここで退くほどヌルイ生き方をしてきたわけじゃない。
ただ、どうにも思ってしまう。
あとすこし、シェルブリットをぶち当てるまで狙いを逸らさないように。
ギルガメッシュの虫唾が走る顔に一時も視線を外さないように、なにかが。
剥き出しになった頭部を護る、あと少しのアルターをこの手で作り出せれば、と。
そんな時、不意にカズマの視界に映るものが一つ。
ヒラヒラと、赤とピンクを混ぜた一枚の布切れのようなものが宙を舞っている。
きっとデイバックが王の財宝を受けたときに外へ飛び出たのだろう。
何気ない代物。大抵の参加者なら特に気にとめないような支給品。
だがカズマは驚きのあまり、両目を見開く。
知っている。これは知っている。
こいつは、あいつのものだ。
右腕を伸ばし、自分の方へ手繰り寄せる。
ただの布切れではない。それは一枚のリボン。
カズマの元から連れ去られた、由詫かなみが常につけていたリボンだった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
来るべきだった、そう遠くはない未来。
アルター能力に目覚めたかなみは無常の手から助けられた。
そしてカズマと劉鳳が本土側のアルター使いと戦いと続ける中、彼女は確実に成長した。
かなみが持つアルター能力も同様に――。
月日は流れ、かなみは村を一望出来る。とある丘の上に立っていた。
きっと会える、きっと会える――姿を消したカズマへ、そう強く願った最後の夢を浮かべながら。
自分の願いを、そして自身のアルター能力をリボンに込めて空へ流した。
そしてそのリボンが、かなみの想い全てが詰まったリボンが今はカズマの手にある。
「かああああああああああああああなみいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ!!」
もちろん、カズマにその未来を知る筈もない。
だが、既に十分すぎた。リボンをアルター粒子に変えた時点で、全てを悟った。
衣食住を共にし、新しい朝日を何度も迎えた存在の想いが広がっていく。
ただ、かなみと自分の力が合わさる感覚が身体中を満たすだけで、どんな事でもやれる気になる。
愛の力だなんてこっ恥ずかしい事を言うつもりは毛頭ない。
それに、何もこの力は二人だけのものでもないのだから。
そして終わりを告げる。
シェルブリットの、カズマの進化が遂に。
「刻んでもらうぜ! こいつが、こいつが――」
瞬く間にカズマの頭部にアルターが覆われ、橙色の毛髪のようなものが生える。
獰猛な獣を模したようなその形状はまさに野獣そのもの。
まさに百獣の王と恐れられる獅子と称するに相応しい。
その姿こそが“シェルブリット最終形態”。
本来の進化に足りない向こう側の力は別の力で代用した結末がそこにある。
そう、代用した力とはこの輝きの元になった力だ。
全身を、シェルブリットだけではなく、カズマの全身を黄金色に染めてくれるこの――
天下無敵の力だ。
「俺とかなみと、そして君島の輝きだああああああああああああああああああああああああああッ!!」
黄金が暗闇を照らす。
照明がなくとも既に問題ではない。
今は砕けた黄金の鎧以上の輝きがカズマから周囲に拡散する。
あまりの神々しさに思わずギルガメッシュは目を細め、王の財宝の発動の機会を逃す。
だが、そこはさすがのギルガメッシュといったところか。
直ぐに両目を見開き、カズマの進化の終末をその目に焼きつける。
「英雄王たる我をさしおいてそのような輝きを得るとは許せるものではないぞ、駄犬!
それにその姿、黄金の獅子とでもいうつもりか!?
くだらん、獅子は我が愛でるものであり、キサマ如きには能わぬッ!!」
余程ギルガメッシュは気に障ったに違いない。
王の財宝の数を更に増やし、鉄壁の布陣をギルガメッシュは築く。
その間に既に展開した王の財宝を射出しないのは、強すぎる誇りによるものだろう。
向こうが一瞬に賭けるのであれば、こちらもその一瞬で応える。
王である自分ならば姑息手段を取らずとも、完全な勝利を得ることはもはや必衰の事なのだから。
一方のカズマは――なぜか笑っていた。
「ちゃんとした名前もねぇ、てめぇのように立派な位とかもねぇ。
それでも、ただひとつ、てめぇが一生かかっても手に入れられねぇものが俺にはあるッ!!」
「戯言を! 我の手が届かぬものなど、この世に存在する道理がないッ!!」
「だったらぁ――――見せてやるッ!!」
右の垂れ下った羽で宙を打ち、カズマは更に上へ跳ぶ。
黄金の輝きは失わずに。それどころから更に周囲の外壁を削り、輝きを増しながら。
カズマはどこまでも高みへ昇り、やがて宙でクルクルと回り、両腕を突き出す。
赤い。果てしなく赤い両の拳はまっすぐギルガメッシュの方へ向いている。
王の財宝が遅れて一斉にカズマを指し示すが、碌に気にしたようすはない。
ほどなくして回転が終わったかと思うと、カズマの身体に強烈な加速が掛かり――
金色の弾丸が宙を一直線に翔けた・
「――しねぇなぁ」
両腕を突き出しながら、カズマがギルガメッシュに迫る。
対するギルガメッシュもついに腕を振り下ろし、王の財宝を射出する。
数えきることは不可能なほどの数の宝具が一斉にカズマだけを目指し、殺到する。
その勢いはあまりにも激しく、空をきる音ですらも轟音に等しい。
カズマに避ける様子は見られない。ただ、ひたすらに一直線に。
よってカズマの全身を王の財宝が切りつけるが、アルターの装甲に阻まれる。
だが、それも完全無欠というわけでもなく、除々に傷は生まれていく。
当然、カズマにもその事は先刻承知のはずだ。
「負ける気が――しねぇッ!!」
今も続く王の財宝が顔面を覆っていたアルターを抉る。
大剣はアルターを貫き、カズマの額にすらも及んだ。
赤い血が流れるがカズマはどこか、余裕があった。
まだまだ王の財宝の数は残っている。
だけども確かな安堵が胸とは言わず全身に宿っている。
友が、最高の友が二人も。彼らの想いが自分のアルターの一部になっている。
それだけで、カズマは言いようのない自信を噛みしめていた。
だから――止まれるはずがない、今のカズマには絶対に。
「なに? 我の知らぬ力があるとでも言うのか」
「そうさ、これが俺の、俺達のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
王の財宝がカズマの両脚を、両脇腹を、腹部を、胸部を、頭部を串刺しにする。
だが、両腕は無事だ。マグマのように赤く迸る両の拳には傷一つない。
そしてカズマ自身の黄金の輝きにさらに別の光が加わる。
それはシェルブリットバーストの威力で、二人がここに落ちることになった亀裂から漏れている。
そう、その光とは太陽の光だ。
何の事もない。だが、ギルガメッシュが世界を背負う存在であるのならば――
今のカズマは太陽を背負い、世界を背負う存在に挑む形となる。
その事実は誰にも知られることなく、だがカズマは太陽をと共にギルガメッシュへ飛び込む。
金色の輝きをもってして、更には灼熱の太陽を匂わせる、光を放つ拳を向けながら。
カズマはただ、力の限り拳を叩きこんだ――
「自慢の拳だああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
ギルガメッシュの胸部に生まれたものは強烈な衝撃。
そして秒にも満たない間に湧き出たものは光の奔流。
太陽の表面を割ってしまえばこのようになるのだろうか。
橙色の光が暴れ狂うように、シェルブリットを受けた傷口から噴出する。
サーヴァントの身体能力? 不死者の再生力? サバイバーによる身体強化?
馬鹿げている。そんなものはもはや通用しない――と言わんばかりの勢いは誰にも止められない。
最古の英雄王であるギルガメッシュにも、そしてカズマ自身ですらも。
そもそもカズマには止めるつもりはない。
依然として全てを飲み込もうとする光の中、カズマはただ――
「これでてめぇの負け、そして――俺達の勝ちだあああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
ありったけの声で咆哮を上げるだけだ。
やがて、シェルブリット最終形態が起こした光が周囲を包み――全てが崩壊する。
外壁が崩れ、砂利道には粉塵が塗れ、カズマもギルガメッシュもその崩壊にのまれていく。
(よもや、我が……な…………)
その中でギルガメッシュは確かに、己の身体が崩れていくのを感じ取っていた。
【アーチャー(ギルガメッシュ)@Fate/Zero:死亡確認】
【残り29名】
◇ ◇ ◇
エリアE-5、南劇場周辺。
どこまでも広がると思われる大地に、ぽっかりと空いた穴がある。
その下を覗くと漆黒の世界が続いている。
幸いなことに地盤沈下は起きていない。
だが、下の光景はあまりにもひどい。
至る所に瓦礫が並び、粉塵がそこら中に舞っている。
とても人が居ないと思われるほどに酷い惨状だと言える。
だが、そんな時、パラリと瓦礫をどかすような音が微かにした。
見れば一本の腕が伸びていた。
力強い腕、奇妙な縦線が何本か伸びている。
それはアルターの酷使による起きる症状の一つ。
そう、その腕の持ち主はアルター使い。
元々多くの怪我を負いながら限界を無視し、既に事切れた男のもの。
正義や悪の問題ではない。
自分の信念を、自分の譲れない道を常に進み続けた男がかつて生きた証がそこにあった。
シェルブリットのカズマ、そいつはたしかにさっきまでは生きていたのだから。
だから天に向かって伸ばされた腕が折れることはない。
ずっと、いつまでもその腕は伸ばされたままだ。
自分の道を進み続けた、自身の生き様をまるで現すように。
ただ――固く握られた拳がいつまでもそこにあった。
【カズマ@スクライド:死亡確認】
【残り28名】
支給品解説(すべてカズマが持っていた不明支給品からの登場)
【王の財宝@Fate/Zero】
アーチャー(ギルガメッシュ)が所有する王の財宝の中身。
鍵剣との使用で多数の宝具を使用、射出することが出来る。
なお、天地乖離す開闢の星、天の鎖は抜き取られている。
【アルター結晶体の肋骨@スクライド】
原作9話、「シェルブリット」により登場。
カズマがアルター結晶体から引き抜いたものであり、シェルブリット第二形態への進化のきっかけとなった。
【由詫かなみのリボン@スクライド】
原作最終話、「夢」により登場。
成長したかなみがアルターの力とともに、大空へ飛ばしたリボン。
リボンがほどける前にかなみの身体からはアルターの光がともり、リボン自体にもアルターの光が宿っていたため、アルターに関係していると思われる。
投下終了しました。
長い間支援どうもありがとうございます。
それではなにかあればお願いします。
面白かった、凄く面白かった
読みながら支援をしていたから、支援をしている間の時間が非常に短く感じられた
投下時間は30分……それがとても短く感じられましたわ
というよりも、
>>663でのレス、「長い間」っていうのが無ければ気付きませんでしたよ
いやはや、この時間帯にこんな熱い物を読ませられては困ります、とても凄くありがとうございました
GJ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!111
投下乙
ここだけラストバトルwww
引き分けか…いや、カズマが勝ったか。カズマ全身ボロボロだったからあっさり殺されると思った。
しかし熱い話だ。GJ!
投下乙!
熱い!そして圧巻!
孤高の英雄王と絆持つ反逆者の対決。それぞれ支給品のめぐり合わせで全力を奮い、自分達の価値観をぶつけ合う。
全てを持っている、だが孤独な英雄王に対抗できたのは仲間という存在。それを思い切りぶつけるカズマに燃えました。
決着は両者相打ち。ここまで考察したり好き勝手したり圭一を認めたりしたギルもここで脱落。けど大分満足したんだろうなぁ。
一直線に進み続けたカズマもここで死亡。反逆者らしい最期だったな。
まさかスクライド勢で残ったのがあすかとは…。
改めてGJ!
カズマは勝ち抜けか……。
投下乙です
凄まじい勢いの展開で、思わず息を呑みました
以下、ちょっと気になったところを
・左腕のダメージ
ゲイ・ボウで貫かれたり、立ち上がるのにも使えなくなっていた左腕を、
ラストのところで普通に使っていたのが気になった
ダメージというと他に、胸を刺されたのに凄く元気だな、とも思ったり
・王の財宝
複数の武器が支給品枠1つにまとめて納まっているというのは、ちょっとどうなんだろう
ギルガメッシュが脱落したとはいえ、発射した分を含めて1000以上の宝具がその場に残っているわけだし
双剣が左右2本セットで、とかならまだしも、1000以上というのは桁が違いすぎるような
・制限
「支給品のアルター化」「カズマの第三段階以降」という制限が凄い勢いでぶっちぎられてる
前者には文中で解説が入っていたけど、後者は勢いで押し切った感がw
・性格
細かい点だけど、Fate/Zeroの時点でのギルガメッシュは「慢心はするけど油断はしない」という性格設定だった
なので、途中で油断した描写があるのに少しだけ違和感
投下乙!
二人の熱い戦いに、ぐいぐい話に引きずり込まれました。
絶望的だと思われてたカズマの大逆転、君島とかなみの支給品アルター化は胸に来るものがあるね。
自分も少し気になった所が。
カズマの支給品及び王の財宝から出た道具類は全て埋まってしまったって事でいいのかな
そうだとしても、他の参加者が掘り返えせる可能性があるのなら埋まってるって補助書等欲しいかも
王の財宝の最高出現数は47ほどだぞ、100どころか1000なんて無理
そんな設定聞いたこともない
みなさん、感想どうもありがとうございます。。
>>669 ご指摘どうもです。
・左腕
自分のイメージとしては負傷した箇所をアルターで覆い、どうにか使ったという感じでした。
ですがたしかに少しわかりにくいですので地の文に少し加筆したいと思います。
・王の財宝
じつはこれ、最初自分は王の財宝は参加者の支給品からではなく本来の宝物庫から使えると思いこんでいたための苦肉の代案でした……。
たしかに会場に1000以上の宝具が残っているのはバランスを崩すかもしれませんね。
では今回使用した王の財宝の説明に以下の文を追加します。
「ギラーミンの制限により、取り出した、もしくは射出した宝具は10分経過すると自動的に王の財宝内に戻る」
これでもまだ危険であれば鍵剣を回収不能にするというのも考えています。
・第三形態以降
これはたんに威力の制限だと思っていました。
同列に扱われている無常のホワイトトリックはこのロワで問題なく使用されてますし。
・性格
これについては失念してました。
取り敢えず油断はなしの方面で修正しておこうと思います
>>670 そこは次に書く方の自由でよいかとw
掘り出してもいいですし、掘り出せなくてもいいでしょうし。
ですが王の鍵剣は上での対応次第で回収不能になるかもしれませんが。
むしろ、Zeroなら少なくとも80は展開している
>>671>>674 そもそもZeroで80以上展開してるっての
展開数が増えていく過程の描写だから、まだまだ増加しているし
>>669 >自分のイメージとしては負傷した箇所をアルターで覆い、どうにか使ったという感じでした。
書き手さんのされていたイメージは理解できました
自分個人の感想としては、原作でゲイ・ボウによって付けられた傷は、
新しい肉体の組織を移植するという治療法でも治せなかったので、違和感がないというわけではないですが
>「ギラーミンの制限により、取り出した、もしくは射出した宝具は10分経過すると自動的に王の財宝内に戻る」
これは「使用者(この場合はギルガメッシュ)のデイパックに戻る」ということで?
そういえば、「王の財宝@Fate/Zero」はどのような形で支給されているのでしょうか
「アーチャー(ギルガメッシュ)が所有する王の財宝の中身。」ということは、
大量の財宝がそのままデイパックに入っているように思えます
しかし、鍵剣を併用しなければならないようにも書かれているので、
何か別のものに収まっているようにも取れます
もし後者で、制限によって戻されるのがその「何か」なら、それのカタチが問題になりそうな気がします
第三者による支給品回収などを考えると、カタチのないものを支給するというのは無理がありそうなので
あと、ヴィマーナなどの宝具も含まれているのでしょうか?
>これはたんに威力の制限だと思っていました。
自分はARMSと同様に進化の制限だとばかり
まずはWo氏投下乙です。
カズマとギルガメッシュの壮絶バトル
いやもうこれは凄いの一言に尽きますよ。
どこまでも折れないカズマにかなみと君島の輝きの一撃
めちゃくちゃ面白かったです。
カズマがマーダーで有ることを忘れるような熱血バトル
改めてGJです。
それと仮投下にしておいた作品ですが
申し訳有りませんが修正の時間が取れそうに無いので
破棄させて頂きます。
長時間のキャラの拘束失礼をいたしました。
残念ですが次のお越しを待ってます。
>>676 ・ゲイ・ボウ
もう少し考えてみたんですけども擦り剥いた傷にかさぶたが覆われる感じですね。
本来なら自然にかさぶたが出来るけどもゲイ・ボウその働きを失っている。
だから代わりにアルターでかさぶたの役目をし、そしてシェルブリット……そんな感じを。
・王の財宝
いえ、王の財宝の宝物庫に戻るという意味です。
どのような形と聞かれれば難しいですね……完全に今回の話で使用するためだけに出したものですし。
なのでもういっそ、回収される事を防止するために鍵剣はギルガメッシュと共に消滅した事にします。
それならば王の財宝が他の参加者にわたる事もないでしょうし。
ヴィマーナは特に決めていないので、他の方が出したければ出してもらえばいいと思います。
>>677 お疲れ様でした。
次の投下をお待ちしています。
>>677 了解しました
>>679 >そんな感じを。
それで動くのかなぁ、とは思いますが、残ったアルター使いが社長だけだから……
>いえ、王の財宝の宝物庫に戻るという意味です。
ということは、中身入りの宝物庫が支給されていたということですか?
>それならば王の財宝が他の参加者にわたる事もないでしょうし。
それでもやっぱり、「王の財宝」がどういう形式で支給されたのかってのは重要だと思います
形がないなら、そういう無形のモノも支給できる前例になっちゃいますし
>>680 左腕の件は装着融合型アルター使いだからこその荒技だな。
ダメージで碌に動かなくなった左腕を『分解』し、アルターに『再構成』したゆえに何とか使えたって所でしょう。
実際アニメ最終話で肩口から斬り飛ばされた右腕を、再々構成復活させてたりしてますし。
・左腕
再構築できるってのはいいんだけど、問題はいかなる手段を以ってしても治癒不能とされてるゲイ・ボウの傷もそれで治るのかという点
対処法としては槍の破壊、若しくは使用者の殺害による呪いのキャンセルか、呪いを上回る神秘よる治療がある、同じく不治の呪いを持ってるゲイ・ボルクの傷はアヴァロンで治ったしね
んで、問題はシェルブリット>ゲイ・ボウなのはいいとして、シェルブリットの構成力>ゲイ・ボウなのかというところ
まあ、どさくさで槍を折っちまえば一番手っ取り早いんだけど、ニーキック一撃で折れるしアレ
・王の財宝
ギルの宝物庫自体が世界にある全ての財の原点であり、伝承が増えるたび中身も増えるという概念的なものなので支給は厳しいかなと
中身の宝具1000本セットを現物支給とかで代用させてもいいのですが、宝具の詳細が不明過ぎるのと、なんでもありすぎるのと上でも言われてる通りバランス崩しそうですね
まあ1000本あったところで王の財宝がなければ同時に使えるのは1、2本なんで別に、王の財宝を消滅させれば問題ないといえば問題ないのですが
まあ鍵剣があったところで同時に1000本なんてアホな使い方しようとするのも、できるのもギルくらいでしょうけど
あと、どーでもいいですけど、王の財宝というより、王の宝物庫ですね名前的に
・支給品のアルター化
演出上必要とはいえ、さすがに支給品のアルター化はどうかと
明確に禁止されてますし距離で可能になるなら、近接戦で社長無双になっちゃいますし(気付かないでしょうし、ならないでしょうけど)
しかしこれを修正すると非常に演出が盛り下がるというのも確かなので難しいところですが
例えば、デイバックに入れた時点で所有権が上書きされるとかなんとかにして自分の所有権のある支給品のみ可能とかにしたほうがいいかもしれません
・第三形態以降
まあこれはアリかなと、確かに無常も(ryですし
残る社長に進化の可能性なんざ(ryですし、今後どうこうなる可能性もないでしょうから
傷を治したんじゃなくて、腕を作ったんじゃないの?
ていうか別に制限なんか、多少ぶっちぎってもいいと思うがなぁ。
投下乙!
お、おかしい。
俺は何故最終回みたいな余韻に浸ってんだ!?
素敵過ぎだろ、ギルVSカズマ!
やっぱり圧倒的なギル。
カズマを足蹴にしたり世界背負ったり財宝引き当てたり!
そしてそんな超越者に立ち向かうのがこの上なく映えるカズマかっけえええ!
ってかなんだ、この夢の組み合わせによる最終形態は!?
すげえ、ばかっこすぎる!
色々正反対な二人の全力のぶつかり合い面白かったです、GJ!
バビロンについては中身増えるのは制限で増えないことにしとけばいい
つかバビロンは普通に誰かに支給されると思ってた。アニロワ2ndで出てたし
アニロワ1stでもカズマは英霊と相討ちだったりする
どういう形態で支給されたかってのは、4次元デイパックなんてもんが平然と存在してるんだから
それに準じた物の中に入れられてたって事でいいんじゃね?
>>686 漫画では一般人のジジイと相討ちだったりする
>>681>>683 サーヴァントは霊体化→実体化で損傷をある程度復元できるし、
新しい肉体の組織を作って移植する方法でも快復しなかったから、イメージには合わないなぁ
あくまで個人的な意見だけどね
>>685 アニロワ2ndでもデイパックの中身オンリーで支給じゃなかったっけ
>>688 ワシズ様なら仕方がない
再生能力だろうと治癒魔法だろうと完全無効化するゲイ・ボウが再構成のついでに治りました、はさすがにない
あと、なんでか勘違いしてるやつがいるけど、王の財宝はとっくに登場していてギルがすでに持ってた
今回登場したのは宝物庫の中身な
んで、この宝物庫が核兵器でも蘇生アイテムだろうとなんでもござれなバランスブレイカーだからどうするかって話な
>>689 ゲイ・ボウについては、再生能力をもってしても『傷を負った状態』にまでしか
回復することができない、とあるからなぁ
制限を加えるならそれでもいいが……
>>690 例えるなら、既に支給されている四次元ポケットの「外部」と併用する前提で、
四次元ポケットの「内部」がひみつ道具ごと支給された、みたいなものかな?
その「内部」ってどうやってデイパックに入ってたんだとか、
中身が強烈過ぎるだろとか言われている感じで
予約直後ですが、佐山・御言、小鳥遊宗太投下します
予約した時点で殆ど出来ていたともいう
廃坑の周辺は、浅緑の森林に包まれている。
道らしき道など見当たらず、ただ草木が地面に茂るばかり。
こういった場所にありがちな獣道すら出来ていないのだ。
――そういえば鳥の声も聞こえないな――
小鳥遊は梢から覗く空を見上げながら、そんなことを思った。
深夜から今に至るまで、そんな当たり前の音に出会っていない。
都会ですら鳥の囀りとは無縁でいられないというのに。
聞こえるのは、小鳥遊と佐山が草木を踏む音と、風が葉を撫でる音。
そして、どこからか響く小川のせせらぎ。
見た目は『自然』そのものだが、感じる気配は『不自然』そのものだ。
――植物も生き物だけど、動物と扱いが違うのかも――
思考が脱線しはじめた途端、視界がぐらりと揺らいだ。
足元に感じる固い感触。
でたらめにひっくり返る平衡感覚。
空を見上げたまま歩いていたのが悪かったのだろう。
小鳥遊はひょっこりと顔を出していた石に躓いて、盛大に地面へ倒れ込んでしまっていた。
「痛たた……」
「大丈夫かね?」
前を歩いていた佐山が立ち止まる。
小鳥遊は大丈夫だと答え、すぐに立ち上がった。
露出の少ない服装が幸いして、怪我はどこにも――
「あ……」
――無いわけではなかった。
左手の付け根辺りに軽い挫傷が出来ている。
咄嗟に手を突いたときに擦りむいたのだろう。
とはいえ出血もないので、怪我と呼ぶのも躊躇われる程度だ。
「軽傷だが、汚れを水で洗い落としておいたほうがいい。
そこから化膿することも考えられる」
「うん、えっと……」
小鳥遊はしばし辺りを見渡して、林の向こうへ走り出した。
先ほどから微かに聞こえていた小川の水音。
水と聞いて真っ先にそれを連想したのだ。
「待ちたまえ、生水での洗浄は――」
そこで言葉を切り、佐山は小鳥遊の後を追った。
声で制止するより直接止めたほうが手っ取り早いと考えたのだ。
生水には何が混ざっているか分かったものではない。
下手をすれば、洗わないよりも悪くなることまで有り得る。
歩調の違いもあって、佐山は数秒と掛からず小鳥遊に追いついた。
「傷口の洗浄には飲料水を使ったほうが……何をしているのかね?」
「えっと、これなんだけど……」
先に小川へ辿り着いていた小鳥遊は、傷を洗うでもなく、水中に右手を突っ込んでいた。
よくよく見れば、川底の何かを引っ張り上げようとしているようだ。
佐山は小鳥遊の意図を理解し、川底の『何か』を下敷きにしていた大きな石を持ち上げた。
「これは……」
「地図……だね」
小鳥遊が川底から引き上げたもの。
それは一枚の地図であった。
水でくっ付いた部分を、千切れないよう慎重に開いていく。
相当浸水しているが、紙としての体裁はどうにか維持している。
もしこれが全員に支給された地図であったなら、そうと知れた時点で捨て置いただろう。
しかしこの地図に描かれた地形は、二人が未だ見たこともないものであったのだ。
佐山と小鳥遊は、平らな石に濡れた地図を広げた。
一目で分かるその異質。
色鮮やかに塗り分けられた通常の地図と違い、暗色系ばかりが占めている。
山や谷のような地形の起伏すらも描画されていない。
「ふむ」
おもむろに、デイパックから自分の地図を取り出す佐山。
小鳥遊は佐山の意図を汲みきれず、訝しげに首を傾げている。
「何か分かる?」
「ああ、ここを見たまえ」
そう言って佐山が指したのは、濡れた地図の上端の余白であった。
水に浸かっていたせいで読み取りにくいが、算用数字で1から8までの数字が印刷されている。
「そして、左端にはAからHまでのアルファベット――」
「――そうか、地下の地図!」
思わず声を上げた小鳥遊に、佐山は小さく頷いてみせた。
それと分かれば、意味不明だった地図の内容も理解できる。
「色の濃くなっている部分は地中で、根のように広がっている、色の薄い部分は坑道内部。
恐らくはそういう意味合いなのだろう。入り口の位置ももH−2エリアと一致する」
感心したように地図に見入っていた小鳥遊だったが、やがて怪訝そうに眉をひそめた。
坑道の地図が存在すること事態に疑問はない。
迷宮探査ボールという代物がある以上、こんな地図は下位互換の支給品でしかないからだ。
小鳥遊が気に留めたのは、また別の点であった。
「どうしてそんな地図が川の中なんかに……。
わざわざ石の下に敷いてあったんだから、前の持ち主がうっかり落としたってわけじゃないんだよね」
隠し場所としては保存状態があまりにも悪くなりすぎる。
多少の防水加工はしてあるようだが、度が過ぎれば、このとおり。
「君はどう考える?」
「えっと……」
水中は、地図の秘匿には致命的に向かない。
見つかりにくい場所ではあるが、長時間で使用不能になってしまう。
かといって破棄する手段としては悠長だ。
こんな小川で、しかも石を錘にしているのだから殆ど流されないだろう。
水を吸ってダメになるのも、数時間、或いは十数時間は後のこと。
秘匿には不向きで、破棄にも不適。
ならばその間――
「バレにくい隠し場所で……もし回収できなくなっても、自動的に処理してくれるから……?」
「私も同じ推理だよ。最善の策とは言いがたいが、次善の策としては選ぶ価値はあるだろう」
佐山は腰を上げ、周囲を見渡した。
その表情が変わったことを横目に見止め、小鳥遊も立ち上がろうとする。
「ストップ。動かないように。確かめたいことがあるので、暫くそのままの姿勢でいてくれたまえ」
そう言い残すが早いか、佐山は坑道へと走り去っていった。
「ちょっと佐山君ー!」
取り残された小鳥遊の声など聞き届けずに。
◇ ◇ ◇
人の足を停めるのは絶望≠ナはなく諦観
人の足を進めるのは希望≠ナはなく意志
―――さあ、行くんだ
◇ ◇ ◇
「随分と奇怪な姿勢だね。新手の健康法かい」
「佐山君が動くなって言ったんじゃないか……」
小鳥遊は恨めしげに佐山を見やった。
律儀にも同じポーズを続けていたのか、中途半端に立ったままの格好でガクガクと震えている。
「それより、どこにいってたの?」
「これを借りに。事実上の無断拝借なのだが、そこは許して貰おう」
佐山の手にあったのは、片方だけの革靴であった。
小鳥遊が疑問を挟む間もなく、佐山は小鳥遊の足元に屈み、泥に靴底を押し付けた。
「やはり同一だな」
同じ大きさ、同じ形の『二つの』靴跡。
ひとつは先ほど佐山が付けたもの。
もうひとつは、小鳥遊が地図を見つけるよりも前から――
「まさか……」
「そのまさかだよ。この靴は廃坑の亡骸から拝借したものだ。
単なる地下の地図が、重大な意味を帯びてきたように感じるのは私だけかな」
小鳥遊はぶんぶんと首を振った。
坑道で佐山に聞かされた仮説を思い出せば、これ以外の反応はできまい。
首輪のない参加者――彼が秘匿しようとした地図。
それが無意味であるはずなど。
偶然通ったに過ぎないという考えは、足元を見るだけで瓦解する。
川岸の泥に刻まれた足跡は、佐山と小鳥遊、そして革靴のそれだけだ。
地図を秘匿したのは革靴の主以外にありえない。
獏に『彼』の夢を見せられたとき、小鳥遊は伊波のことばかりに気を取られて彼の行動を注視していなかった。
尤も、佐山もまた『彼』の一挙一動を仔細に記憶していたわけではない。
あのときは首輪に注意を集めており、足跡を見つけたことでようやく、地図との関連性に思い至ったのだ。
「彼はこの地図に何を見たのだろうね。
危険人物には渡せない情報が載っていると確信したのか。
或いは、万が一そんな情報があるといけないという、保険程度のことだったのか」
一端言葉を切り、佐山は生乾きの地図を手に取った。
最初は理解できなかった表記も、地下の地図であると知った上で見れば新たな発見がある。
「差し当たって怪しいと思えるのは、これだ」
佐山は、坑道の北に描かれた歪な青い楕円を指し示した。
座標でいえば、おおよそD−2、D−3、E−2、E−3の4エリアに跨っている。
地上の2つの湖を加えれば、大きな円環を描く形になることだろう。
「私はこれを『地底湖』だと考える」
小鳥遊は神妙に、佐山の言葉に耳を傾けていた。
皆が立っている地面の下に湖がある。
何の前振りもなく聞けば眉唾だと思うに違いない。
だが、小鳥遊は充分すぎるほど前振りを経験してきていた。
「靴を借用するついでに確認したのだが、この小川は廃坑の付近で地面の下へ流れ込んでいる。
つまり地下にも水の流れがあるということだ」
「てことは、あの人が隠したかったのって」
先走りかけた小鳥遊の思考を、佐山は身振りで否定した。
「先にも言ったが、万が一を防ぐための保険だったのかもしれない。過信は禁物だよ」
とはいえ、この地図が重要な情報源であることに変わりはない。
命を賭して伊波まひるを救った彼が、小鳥遊宗太にも遺産を残したというのは、流石に夢想が過ぎるだろうか。
「道草を食いすぎた。地図は移動しながら乾かすとしよう」
「うん、目指すは――」
小鳥遊は森の向こうを仰ぎ見た。
この選択が正しいのかは分からない。
けれど後悔だけはしないつもりだ。
「――古城、だね」
◇ ◇ ◇
「―――さあ、行くんだ。この方向に行けば、とりあえずは安全な場所に出られるだろう」
男は自らのデイパックを少女に差し出した。
近くに落ちていた少女のデイパックを渡したと誤認させるように。
少女は躊躇っていたようだが、真っ直ぐな目でこちらを見つめ立ち上がると、
「ありがとうございました」
綺麗なお辞儀をし、森の向こうへと走り去っていった。
少女の姿が夜闇に消えたのを確認し、男はデイパックを開いた。
『奴』に力を渡すわけにはいかないと考え、少女に“あれ”を託した。
しかしこちらにも“あれ”の類が入っていないとも限らない。
果たして中身は――奇妙な果実と、異様な地図。
「こいつは――」
男は地図を抜き取り、今しがた越えてきたばかりの小川へと踵を返す。
後退、即ち『奴』への接近に他ならないが、もはやそれは度外視だ。
折り畳んだ地図を小川へ放り、足で適当な石を落としておく。
ざぶりと立った水音は、片脚を突っ込んだときと大差ない。
むしろ『奴』を確実に引き寄せる撒き餌になってくれるだろう。
「これでよし、とは言い難いが」
デイパックに入れたままで奪われてしまうよりは幾分かマシだ。
もうこれ以上の措置は取りようがないのだから。
それよりも男は、少女がここから離れてくれた事に安堵していた。
「……私は卑怯なのかもしれないな」
物思いに耽る暇もなく殺気が近付いてくる。
今は、出来る限り時間を稼がなければならない。
そのためには、すぐに殺されるわけにはいかない。
「……―――来たか」
男は小川を離れ、迫り来る脅威へと向き直った。
【H−3 森林/一日目 日中】
【佐山・御言@終わりのクロニクル】
[状態]:健康、左腕欠損(リヴィオの左腕を移植)
[装備]:つけかえ手ぶくろ@ドラえもん(残り使用回数3回)、獏@終わりのクロニクル
[道具]:基本支給品一式(一食分の食事を消費)、空気クレヨン@ドラえもん
[思考・状況]
1:古城へ向かう。
2:優先順位に従い行動する(注1)
3:本気を出す。
※ポケベルにより黎明途中までの死亡者と殺害者を知りました。
※小鳥遊が女装させられていた過去を知りました。
※会場内に迷宮がある、という推測を立てています。
※地下空間に隠し部屋がある、と推測を立てています。
※リヴィオの腕を結合したことによって体のバランスが崩れています。
戦闘時の素早い動きに対して不安があるようです。
※地下鉄を利用するのは危険だと考えています。
※過去で伊波の顔を知りました。
【小鳥遊宗太@WORKING!!】
[状態]:健康、腹部に痛み
[装備]:秘剣”電光丸”@ドラえもん
[道具]:基本支給品一式(一食分の食事を消費)、地下の地図
[思考・状況]
1:古城へ向かう。
2:優先順位に従い行動する(注1)
3:佐山と行動する。
4:ゲームに乗るつもりはない。
5:全てが終わった後、蒼星石と吉良吉影を弔ってあげたい。
※ポケベルにより黎明途中までの死亡者と殺害者を知りました。
※過去で新庄の顔を知りました。
※獏の制限により、過去を見る時間は3分と長くなっています。
※地下鉄を利用するのは危険だと考えています。
注1:これからの行動の優先順位(1から高い順)
1、まずは強力な武器を見つけ、ラズロの様な参加者にも対抗可能な状況を作る。
(戦闘力を持つもの(ゾロなど)との合流なども含む)
2、新庄と伊波を捜索して保護する。
3、4-C駅へと向かい、ストレイト・クーガーの仲間と合流をする
4、地下鉄内を探索する
【地下の地図】
伊波まひるに支給され、高槻巌によって隠匿されていた。
廃坑の内部や地底湖(D−2、D−3、E−2、E−3)などについて記述されている。
どれほどの情報が記載されているのかは不明。
少なくとも、地下鉄の経路については記されていない。
短いですが投下終了です
投下乙!
投下乙!
二人が選んだのは古城か……上手く新庄と伊波、はたまたゾロと合流できるのか。
そして明らかになった第三の湖、こいつぁあの謎はブラフじゃ無かったって事か!?
地下の地図だけど、全貌が載っているわけじゃ無いのか。
まぁ当たり前か、主催が地下に居場所がばれたら不味い物を隠していたとして
それにたどり着ける地図なんて支給するはずが無いもんねぇ。
そして湖も主催が用意した謎だとして……罠なのか、ボーナスアイテムでもあるのか。
でもその謎を知っているはずの詩音はもう脱落してるし。
マルチロワの地下は一体どうなってるんだw
地上なんて会場のごく一部って感じか!
投下乙
新しい予約も来てるな……マーダー大集合だな。
対主催もいくつかグループできてるし、対抗してマーダー連合でも作るのか
乙!GJです。
ホントだ。マーダー連合は凄いな。
>690>691
ゲイ・ボウで貫かれた腕を肩口もろとも切断>クローンで作った腕を繋げる
これもダメなのか?付けた瞬間に穴でも開くのか?拡大解釈して無理って決め付けてないか?
手順と手間は違うが再構成ってこーゆーのだろ
投下乙
リーマンは死後も活躍するなぁww
地下の重要度も上がってきてどうなるのか楽しみです
>>708 ダメだね
再構成した瞬間に穴が開くんじゃなくて、穴が開いた状態で再構成される
ゲーム的な表現をすると、HP100の相手に20のダメージを与えて80/100から回復しないようにする呪いじゃなくて
HP上限自体に20のダメージを与えて80/80にする呪いなんだから、回復しようが再生しようが再構成しようが全快自体がダメージを負っている状態になる
過大解釈とかじゃなくてそういう槍だから
というかそんなんで治るんなら再生能力持ちのセイバーも原作で同じことやっとるわい
穴にアルターで栓をした
でいいじゃん
んで、
Q、何で動かせたのか?
A、熱血したから
死に際の最期の光とか
>>709 じゃあ義手付けても穴空いちゃうような感じなの?
流石にそれはないだろ
もとから義手の奴が義手に穴開けられたんならその義手の修復は不可能だろうけど、ゲイ・ボウで腕ぶった切られた奴が義手を付ける分には問題ないと思うよ
ただ今回の場合はシェルブリットは義手でも揉んでもなく、アルター化したカズマの左腕である以上、修復は無理、概念的な呪いだし型月の呪いは
というか、最低SSじゃないんだから二次制作なのに無理矢理に都合よく原作設定を改変して解決したり、気合で解決しましたなんて愚にもつかない戯言で乗り切ろうとしなくても
>>682でも言ってるけど、ゲイ・ボウ折れば呪いは解けるんだから壊せばいいじゃん
シェルブリットで横からぶんなぐれば確実に壊れるぞ
要は呪いとアルター能力のどっちが優先されるかってことか
書き手の裁量の範囲だな
まぁこれ以上は議論スレでやれと
アルター化は再生じゃなくて再構築だから概念呪いなんて無意味
エーテルだか魔力だかで身体を自由自在に構築出来る英霊でも無理
一般作品の設定>エロゲの設定は当たり前だろ
知ってる人間の数が違う
じゃあシェルブリッドの反逆力によって世界中の人間の体に対する認識の概念を変えましたでいいざん
ほら解決
つーかさ、前から思ってたんだが、これが最後の機会だから言わせてくれ!
ロワでやたら反逆反逆言ってるけど、反逆がパーソナリティーなのは漫画版カズマだよね
ゲイ・ボウに関しては過大解釈だのなんだの言っておいて、シェルブリットに関しては設定模造もおkなんですね
お前らゲイゲイうるさいな変態村の住人か
模造に突っ込めばいいのかこれは
クロスなんだから書き手が正しいと言えばそれは正しいんだよ
リレーの場合は最初に書いた書き手の設定が正しい設定
理解しろ
そうだね、一次設定に矛盾しなければね
少なくともロクな解決案を出してないスクライド厨よりも、原作の設定を根拠に述べてる月厨のほうがましに見える
誰だよゲイボウの存在と制限出した奴。
そいつがOKといえば丸く収まるのに。
ノリと勢いと精神論で限界突破できるスクライドと設定過多の型月のクロスで設定云々言い出したらきりないぞ。
個人的には面白いからこれでOKだと思ってるけど。
腕→変換→アルター で、
再構成したら腕じゃなくてアルターなんじゃないの?
アルター解除でノーマルの腕(傷持ち)状態に戻る、とか。
アルターの腕を傷つけられていたら、アルター再構成時に100%で構成されない
とかもうわかんねえええええええ
原作からの乖離が激しいなら修正されるにこしたことはないが、
ぶっちゃけ当事者たち死んでるから
多少原作と矛盾があろうあんま問題ないだろ。
書き手さんが書き直すと言うなら修正を待って、連絡ないなら通しでよくないか?
新しい組織を作って移植する、という方法でも治らなかったからなぁ
というか一次設定に矛盾しちゃいけないとか初耳だぞ
ロワ出来ねえよ
なるべく尊重しろってんなら分かるが
つ「制限」
でいいんじゃね?
ゲイ・ボウだけ原作そのままの能力ってのもどうかと思うぜ。
全部厳密に考えるとどこかで確実に破綻するよ。
>>729 連絡なかったら通しってのは、今後のことを考えるとよくない
どんなに突っ込みがあっても放置していれば通ることになりかねないし、
かといって区別する基準なんて決めようがない
あと、支給品や支給品のアルター化についての件もある
>>732 で、どういう風に制限するんだ
むしろ「能力発動したら傷が癒える」って方が、よく制限される類の能力な気がするんだが
昔ロトの紋章で似たような攻撃方法があったな。
技の名前はゲンマ剣(たぶん)で効果は切り付けられた相手は自然治癒能力が発動せずに
失血死確実ルートになる。ドラクエ世界でべホマや薬草使っても無駄だった。
でも2つほど裏技があって、一つは気功術使って回復する方法。
そしてモウひとつは、強引に傷口周辺の肉を噛み切って、後は自己再生能力で傷をふさぐ方法。
『つまり、カズマがゲイボウで腕吹っ飛ばされたなら、シェルブリッドで肩吹っ飛ばしてから肩と腕の両方を再生する』
修正することになったならこうすりゃいいんじゃね?
>>733 何をやっても回復しないって所を制限。
ゲイ・ボウの魔力を上回る「何か」ならば回復可能って感じにしたらどうだ。
正直、他作品のあらゆる能力でも回復不能ってのは強すぎる気がする。
うん。それ
>>709で言われてる80/100から回復しないタイプの例だね
本当に修正が必要なら議論スレに持って行って正式に書き手氏に修正要求をする、
そうじゃないならこの話題はもう終わりでよくないか?
だな。やりたいなら分岐って手もあるしな。
制限で解決も黄薔薇の能力だけ制限されて、何でアルター化による回復は制限どころか強化されてんだ、となって堂々めぐり
というか、この件に限らず、支給品のアルター化とか第三形態の進化とかもろもろあるけど
王の財宝まわりで修正するって言ってるんだから、作者の修正版くるまで待ったほうがいいかもね
修正版でもろもろ解決してるかもしれないし、正直、修正中騒がれてもウザいだろうし
>>735 >正直、他作品のあらゆる能力でも回復不能ってのは強すぎる気がする。
そうでもないだろ
何かしらの再生手段を持たない相手にとっては、ただの強靭な槍でしかないんだから
そういう相手に対して意味が出てくる頃には、とっくにロワは終わってる
>>739 だな、暫くは書き手待ちでいいだろ
>>734 うん、だからそれじゃ傷がある状態で再生するのね
最大HPの減少は覆らないから
月厨はどこにいてもウザいな
月厨のクズっぷりはどこでも見かけるからなw
キャラが死ぬと発狂するからな。前回の時もそうだし
ギルがカズマ最終形態と渡り合えただけでも、大健闘もいいとこなのに
くだらない言いががりでケチ付けてるようにしか見えん
月厨のウザさは異常
ごね得は許さない
スクライダーもどこでも大概だけどな
ほうら月厨が根拠も無い反撃に出てきましたよ
もういらないだろこのクズ共
てか傷が治ってようが治ってなかろうがどっちでもいいだろ
あの時のカズマは満身創痍のボロボロの状態なのに何でピンポイントで槍の傷だけ描写されるんだよ
アルターってのはそもそも魔法に近い。
立浪というキャラクターがスクライド作中でアルターを破壊されて精神的に再起不能になった。
治してるんじゃなく、向こう側の力と物質を錬成、変換して作り直してるんだよ
その事はあの状況では何か重要な事なのか?
黄薔薇の能力なんかどうでもいいってこと
おっと、金糸雀の悪口を言うのはピチカー党の俺が許さん
矛盾点の一つとして指摘があって、スク厨が噛みついて月厨が噛みつき返しただけだろ
正直、傷一つのことなんてどうでもいいわい
また荒らしてんのかよ…
これだからワンピ厨は…
>>752 いちゃもんつけたいだけですね、よくわかります。
巣に帰れ。
月厨はどこにでも巣を作るから言うだけ無駄
しかしよくあんな薄っぺらいキャラと中身のないストーリーにそこまで狂信的に傾倒できるな
厨設定の羅列に興味がある年頃の奴はロワ住民には向いてないよ
アニロワの頃から月厨と月作品はロワには不要な存在
月厨にスク厨にワンピ厨と、このスレの住人は厨がお好きですね
厨だったり、汚い言葉使いしてるのは大体荒らしたいだけの人
物事はなんにしろ言い方によって説得力が違うよね
さて、そういや放送後から序盤からのコンビが結構解散してるね
金ぴか圭一しかり紅い子社長しかり
えー自分が投下した作品についてですがゲイ・ボウの扱いに問題があったみたいですね。
ですので途中でカズマが胸からゲイ・ボウを引き抜く際に、槍を地面に叩きつけて破壊することで修正したいと思います。
どうもお騒がせしました。
修正乙
月厨涙目wwwww
修正乙です!
修正中なのにご足労かけます
しかし、あれだけ煽っていた単発連中が静かなものだな
やっぱ一人でID変えてやってたんだろう
絶対数が少ない月厨ならではの姑息な手口が明らかになったな
まあこれであのカスどもが再び沸き上がることはないだろうよ
fateキャラが全滅するまでは油断はできないよ
>>763 どう考えても逆だろ
ああ、触っちゃいけない人だったか
ほら沸いた
月厨勘違いワロス
いきなり沸いてるしw
そもそも英霊程度が超音速どこの話じゃない最終カズマに
多少なりダメを与えたことが驚嘆だ
月厨をいつまでも叩いてても仕方ないだろ
同じ過ちを繰り返させないように更正させるのがスクライダーの使命なのでは
日付変わってから、荒らしじゃないコメが一つだけとかw
携帯とPC使い分けてるのか知らんが、いくらなんでもハッスルし過ぎだろ
月厨自己擁護必死すぎ
呆れられてるって理解しろよ
自分が敗北したということを認識できないのが月厨
>>764はキャラが全滅すれば鎮圧できるというが、
他ロワを見てもそんな単純な連中ではないのは火を見るより明らか
型月が参戦してる時点で多少の火種は我慢しなくてはいけないんだよ
もう余計な手を出さずにフェートは無視して他に目を向けた方が健全だと思うが?
一応注意レス
いつものことながら、この人は自分に構ってくれそうな人に物乞いしてるだけだから、餌を与えないように
ID見ればわかると思うけど、基本ID変えてる一人と便乗がいるかいないかなので注意されたし
ワンピ厨、月厨、スクライダーと来ていよいよ自治厨まで沸いてきたか
次の投下までには沈静化するのを願おう
>>773もこの状況で自治しちゃうあたり月厨の偽装臭いな
単発自演認定してるIDも単発でワロwww
不死者にゲイ・ボウで傷付けたらどうなるんだ?
設定
酒飲んだ時の状態が固定(最強の盾)VSあらゆる治癒不可(最強の矛)
制限
再生速度・不死性の限定化VS原作通りにどんな傷も治っちゃいけないんだ
パロロワの制限っつーのは一般的に再生側に厳しく働くから攻撃側の設定が競り勝ちそう
まぁこのロワだとかなり再生に甘いけど
正直、制限云々は書き手に任せるのが最善だと思われ
外野がとやかく言っても意味の無いことだし
1934読めばわかるが、不死者の再生は阻害するものがあれば治らないから、呪いで阻害されて治らないんじゃね?
まあ、ここで決めることでもないが
では投下開始します
支援
クレア・スタンフィールドは走る。
ジェットコースターのレールの上を走る。
それがどういった用途に使われるのかは1931年のアメリカで生きていたクレアは知らないが、まるで電車のレールのようだと考えた。
まさにレイルトレーサーが駆けるには相応しい。
そんなことを考えながらカーブを曲がって直線に入ると、そこはまるで駅のプラットホームだった。
色鮮やかなペイントを施された、まるでトロッコのような形のカーゴがいくつも連結されて停車している。
そのすぐ脇のスペースは乗りこみやすいように段差になっていた。
なるほど、ここはあれを走らせるためのレールか、とクレアは思い至る。
「……よお、追いついたぜ」
ホームの奥から足音。
煮えたぎる感情を押し込めた声だった。
真っ黒いコーヒーを煮詰めたような闇を宿す瞳を持つ女。
ショットガンと拳銃を両手にぶら下げて足取りはゆっくりと。
「おまえか」
見覚えのある顔だった。
たしか指を落としたはずだが包帯が巻かれている様子はない。
いや、傷すらない元通りだ。
「あれ、お前指は――」
「まあ、いいじゃねえかそんなことは。どうでもいいことさ、なあ?」
クレアの言葉を遮って女はそのままカラフルな列車? へと乗り込んだ。
座席の背もたれに片足をかけてそのままこちらに向き直る。
女の名はレヴィ。
クレアに何の用があるのかなど聞くまでもない。
それほどの殺気を撒き散らしてニチリ、と猛獣のように嗤う。
『――本日はようこそ、この遊園地が誇る巨大高速ジェットコースター【シェルブリット】をご利用いただき、まことにありがとうございます!』
不意にベルが鳴り、続いてどこからか女性のアナウンス。
ようやくラジオが普及しようかという時代に生きていたクレアはそれに軽く驚き、アナウンスの音が聞こえるほうへ顔を向けた。
そこへ間髪入れずの銃声。
正確な狙いでクレアのこめかみへ銃弾が飛んだ。
だが当たれば即死の一撃を向き直りもせずスタンドの腕で弾く。
そして慌てる風もなく言い放つ。
「危ないぞ」
「うるせえ、余所見してんじゃねえよ」
ベルが鳴り響き、アナウンスは続いている。
「またやる気か? まあこちらも全員皆殺しにするつもりだったから丁度いいが」
「へえ、随分と様変わりしたのは見かけだけじゃあねえってか。じゃあ来いよ。踊るぜ、ジルバだ」
『――発車します。お乗りの方はバーをしっかりと下ろして固定してください』
一際大きく、長くベルが鳴った。
ガタン、と列車が動き出す。
クレアは最後尾のすぐ後ろのレールに立っており、ジェットコースターとやらに乗り込んだレヴィとはゆっくりと距離が離れていく。
「どうした? あからさまな誘いにのるほど馬鹿じゃねえってか? 皆殺しにするんじゃなかったか?」
「……安い挑発だ。だがそれに乗ってやったところでお前は俺に勝てない」
ひとっ飛びで最後尾に飛び移る。
スタンドを組み合わせたクレアの身体能力はほぼ今までどおり。
いける、と感じる。
揺れながらゆっくりとジェットコースターは急角度の坂を登っていく。
自然と先頭車両のレヴィを見上げる形になる。
ガシリ、ガシリと一歩一歩。
血まみれの車掌服。
半身は生きたまま石となった。
まさに、化けもの。
線路をなぞるもの――――レイルトレーサー。
座席の背もたれに足をかけて、踏みしめ、登る。
距離を詰めて、拳銃の射程距離――来る!
飛んだ。
銃口からマズルフラッシュの光が煌く。
飛翔したクレアの下を掠める銃弾。
かわしたことは当然。
なんの感慨も抱かずに数メートル、しかも高低差ありの間合いを一気に詰める。
「オラァ!!」
レヴィが咆哮と共に放ったのはショットガン。
飛翔したクレアは身動きが取れない。
逃げ場のない散弾による攻撃がクレアの視界を埋める。
スタープラチナで防ぐには弾丸の数がやや多いか、と一瞬で判断。
スタンドでジェットコースターの座席を掴み、引っこ抜く、それで防ぐ。
全て弾丸が飛来するまでの刹那で済ませてクレアは防御策を完成させた。
「お返しだ」
盾となった座席をレヴィに向けて蹴り上げた。
猛烈な勢いで襲い掛かる人間大の物体を、向こうは同じく座席を盾にして交わす。
同じく、とはいっても引っこ抜くほどのパワーがないので、かがんで陰に隠れて防ぐという形ではあるが。
ともあれ、その間は銃弾はこない。クレアは更に距離を詰める。
こちらの射程距離――。
大きく飛び上がって一気に近づいた。
「チィ!」
「もらうぞ」
赤い化け物の飛来。
フック気味の拳が、頭上から獲物の命を狙う死神の鎌と化して襲い掛かる。
それを銃使いの女は大きくのけぞってかわす。
たいした反射神経だとクレアは思う。
だが後には続かない。
この後の追撃を、この体勢では防げない。
第二撃のストレートを放つ。
頭蓋がへこみ脳漿が飛び散るほどの膂力を込めた攻撃は、当たれば確実に相手を戦闘不能に追い込むだろう。
だがそこで彼女の体は不自然なまでの高速で沈み込む。
拳はレヴィの黒い前髪を掠めるにとどまった。
そこで暗い瞳を宿した銃使いと眼が合った。
嗤う。
貌で嗤い、眼で嗤っている。
クレアだけでなく、世界の全てを嘲るような笑み。
それがどんどん視界から遠ざかっていく。
ジェットコースターそのものが高速で降下していると、その時ようやく気付いた。
クレアが決着を確信した拳を放ったときに丁度レールが山の頂上を過ぎたのだ。
発車してゆっくりと登りのレールを上がっていたジェットコースターはその頂点から猛スピードで加速を始める。
宙空に飛び上がっていたクレアは、眼下を過ぎ去っていく車両の座席をスタンドで掴み、危うく置き去りにされるのを防いだ。
だが、一端詰めた距離はまた開いた。
レヴィは先頭車両、そしてクレアのほうは車両のだいぶ後方まで下がってしまった。
「こいつは――」
「ご機嫌だろ? ハイウェイ・トゥ・ヘルだ。振り落とされねえように気をつけな!」
左右のカーブ、上下のアップダウン。
それが時速100km超の高速で行われることで生じる慣性が自由な身動きを封じる。
そして地上から最低20メートル以上はある高さから落下すれば……その結末は言うまでもない。
互いが迂闊に動けないとなれば射程距離が長いほうが有利。
しかも狭いジェットコースターの上ではいい的だ。
「なるほどな……だが」
カーブに差し掛かるところで飛び出した。
クレアから見て右へと曲がる下りのカーブだ。
体を前方へ倒れるかというほどに屈めて、そして左方向へと飛ばされる慣性力に抵抗するために右側に傾けて座席の上を疾走する。
しくじって落ちればただでは済まない。
だがその程度で揺らぐほどクレアの確信は脆くはない。
「サーカスの軽業とそうは変わらん!!」
「……ピエロかなんかかテメェ!!」
ショットガン。
前方全てを埋め尽くす弾丸の雨だ。
クレアはそこで飛び降りた。
地上数十メートルの高さ。
大地は固いアスファルト。
自殺行為――ではない。
「よっと!」
落ちる寸前に腕一本でジェットコースターのドアを掴み、そしてぶら下がった己の体を引き上げるのはあっという間だった。
「どうだ? すごいだろう。拍手の一つもくれてもいいと思うんだが」
「……イカレてんのか、オイ。ああ、そうか。お前は確か自分が死ぬわけねえとか抜かしてやがったな」
「そうさ。俺は死なない。死ぬわけがない。俺は世界の中心で、そしてそれにふさわしいだけの努力を積んできた――俺が神だ」
「努力でどうにかなるなら警察とマフィアと麻薬はいらねえよ!!」
さらに散弾の嵐。
連射で更に広範囲を埋め尽くす。
支援
今度こそ逃げられないとクレアは考えたか――否だ。
前の戦いで偶然に掴んだあの感覚。
時間が止まったと錯覚した。
いや、本当に止まったのだ。
あの世界を、あの領域を、もう一度再現できれば。
できる、できる、できる、できる。
できないなら努力しろ。どう努力すればいいかなど見当もつかないが、いやできるはずだ。
努力だけじゃない、俺だけでもない、今まで努力を重ねてきた俺を信じ抜けば出来るはずだ。
「世界の中心なら、世界を止める事ぐらいできるはずだ――――!!」
その時、一つの言葉がクレアの中に生まれた。
『ザ・ワールド』
それは誰の言葉だったか。
クレアは知らない。
半身をスタンドで動かしているせいか。
これはスタンドの意思なのか。
そうなのならば嫌だな、とクレアは思う。
自分のものではないモノを使う嫌悪感はやはりぬぐえない。
ならば今度は完全に自分の意思で言い直そう。
もう一度――。
「時よ止まれ!! ザ・ワールドッッ!!!!!!!!」
止まった。
完全に止まった。
ジェットコースターが止まった。
レヴィが止まった。
目の前を埋め尽くす散弾は微動だにせず、クレアが手で払えばそれは横にズレた。
だがこれは一瞬のことでしかないと自分で分かる。
もうすぐこの停止現象は解かれる。
「防ぐのに一つでは足りないな。ならもう一つ使えばいい」
クレアが言ったのはジェットコースターの座席だ。
先ほど盾に使ったように一つ、ふたつと引っこ抜いて重ね、自分の身を隠した。
「そして時は動き出す」
音すら静止した世界は、その言葉と共に荒れ狂う銃弾の音に染め上げられる。
散弾の衝撃と二つ分の座席の重量は、高速で揺れ動く足場の悪さも相まってクレアでも難儀する。
持ちこたえられはするが、このまま突撃というわけにはいかないようだった。
レヴィは思ったよりもやる。
それでも負ける気はしないが、考えてみればあまりボヤボヤしている時間もない。
やがて嵐のような銃声は止み、ガチリという金属音がやや距離を置いた場所から聞こえた。
弾切れ。丁度いいタイミングだった。
クレアは一つの策を思いついた。
「悪いな、これ以上は付き合っていられん。俺の勝ちだ」
「あ――!?」
単純にして明快。
背負って盾にした座席をその怪力で――己が立つジェットコースターそのものに強烈な勢いで叩き付けたのだ。
「な――」
強烈無比の衝撃で車両が跳ね上がった。
レールから外れた列車がどうなるのか、そこに乗っていた人間がどうなるのか。
それは脱線事故の事例を列挙するまでもなく明らかだ。
レヴィとクレアは2人とも地上数十メートルの空間へと投げ出された。
「何考えてんだテメェ――――――ッッ!!」
◇ ◇ ◇
頭が地面を向いている。
脚が空を向いている。
レヴィは今、真っ逆さまで落ちている。
現在の状況に混乱しながらも、まず視界に入ったのは敵――赤毛の怪物、クレア・スタンフィールド。
「何を考えているか? 簡単なことだ、この状況でも俺は生き残る。お前は無理だ。だから俺の勝ちだ」
奴はこともなげにそう言い放った。
そのときブチッと何かが切れたような音がした。
レヴィはこう考えている。
――どこまでもムカつく野郎だ。
こだわるべきは、生き死にじゃあない。
地べたに這いつくばってくたばることを許せるか、そうでないかだ。
あんな野郎に舐められっぱなしのまま地面とキスでハイおさらば、かよ。
「冗談じゃあねえんだよッッ!!!!」
ショットガンの引き金をひく。
落下していく己の身体など微塵も省みない。
ただ敵を撃ち、血のツイストを躍らせるため。
撃つ撃つ撃つ。
AA12による散弾の連射はまともに浴びせれば敵を穴だらけにするには充分だろう。
だが今は座席を盾にするクレアに対して貫通力が足りない。
スプリングフィールドXDもごく普通の拳銃に過ぎない。
何も出来ない。
何も。
「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
人間は死の際に過去の思い出を走馬灯のように見るという。
地面に激突する瞬間。
レヴィが意識の狭間に見たのは一人の男の顔だった。
その男の眼は憐憫と、憤りと、そして何か――。
『そうやって――――どぶ沼の中でくたばるのが、お前の趣味って訳か?』
「そんな眼で、あたしを見るんじゃ――」
ごしゃり。
◇ ◇ ◇
「思いのほか時間がかかったな……銃は……ショットガンは完全に駄目か。拳銃のほうはどこか壊れてなければいいんだが」
クレアは物言わぬレヴィの骸のそばで一人呟く。
落下の衝撃でショットガンは完全に銃身が曲がっていた。
とてもじゃないが使えるとは思えない、と地面に置き捨てる。
拳銃のほうは一見、大丈夫そうだが何かフレームに歪みがあるかもしれない。
使ってみないと何ともいえないが、わざわざリスクを犯すこともないだろう。
これも不要。
他にめぼしいものはないようだった。
クレアはスタープラチナのラッシュで地面を砕き、その反動で落下の衝撃を中和したことで無事に着地していた。
何か使えるものがないかと来てみたのだが、レヴィが持っていた他の荷物は落下の際にどこかに吹き飛んでしまったらしく、ここには見当たらない。
「さて、何処に向かうかが問題だ」
休んでいる暇はない。
レイルトレーサーはその責務を果たすまで休むわけにはいかない。
……だがその責務を果たしたらその後はどうする?
この身体でまともな人間として生きていけるのか?
ふとそんな考えが脳裏をよぎった。
「……そのあとのことはその時考えるさ」
今は時間が足りない。
そんなことは後回しだ。
世界の中心であるならそれ以外の人間のためなどに自分を犠牲にする必要はない――とはクレアは考えない。
何故なら自分にとって大事な人間とは、自分自身に必要不可欠だからだ。
人間は自分ひとりでは絶対に成り立たない。
それはクレアも例外ではない。たとえ怪物と呼ばれるような男だとしてもだ。
「フィーロを死なせちまってただでさえガンドールの兄貴たちに合わせる顔がないってのにな。これ以上、間抜けは晒すわけにはいかん」
そういってクレアは名簿を取り出す。
フィーロの名前に斜線が引いてある部分をしばらく見つめていた。
そしてやがて盛大な血の花が咲くアスファルトに背を向けて、レイルトレーサーはまた歩き出した。
【レヴィ@BLACK LAGOON 死亡】
【残り27人】
支援
【G-3 遊園地/1日目 午後】
【クレア・スタンフィールド@BACCANO!】
[状態]:拳に血の跡 脚にいくらかの痛み、左肩にわずかに切り傷、背中に銃創、腹部・胸部・右頬にダメージ(中)、
右半身がコンクリートと癒着(右目失明、右腕並びに右脚の機能喪失等)
[装備]:スタンドDISC『スター・プラチナ』@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:支給品一式×2 未確認支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、ギラーミンから元の世界へ戻る方法を聞き出す。
1:他の参加者を探す。
2:優勝のために他の参加者を殺す。迅速に、あらゆる可能性を考慮して。
3:ウルフウッド、梨花、沙都子、クリス、カズマと再び出会った時には彼女らを殺す。
4:フィーロを殺した相手が分かったら、必ず殺す。
5:スタープラチナに嫌悪感はあるがある程度割り切っている。
【備考】
※参戦次期は1931~特急編~でフライング・プッシーフット号に乗車中の時期(具体的な時間は不明)
※ほんの一瞬だけ時間停止が可能となりました。
※梨花が瞬間移動の能力を持っていると思っています。
※右半身の数箇所がコンクリートと一体化しました。余分なコンクリートはスタープラチナが破壊しましたが、機能は戻っていません。
※スプリングフィールドXD 5/9@現実、スプリングフィールドXDの予備弾9/30 @現実、AA12@現実、予備弾薬(マガジン)は破損したままG-3に放置されています。
※支給品一式×3<レヴィ(一食消費、水1/5消費)、クリストファー、カルラ>、クリストファーのマドレーヌ×8@バッカーノ!シリーズ
包丁@あずまんが大王、ミカエルの眼の再生薬×4@トライガン 応急処置用の簡易道具@現実、痛み止め
以上がまとめられたデイパックが遊園地のどこかに放置されています。
投下終了です。
ご意見感想誤字脱字、修正点などございましたらお願いします。
バキ…か?
投下乙!
クレア怖えぇ……
全快レヴィ相手に焦るそぶりも見せずに完勝とは。
スタープラチナも大分慣れてきたのか、もう弱っているマーダーには見えないな。
このロワのマーダーは一個人の戦力がすごい強く見えるね!
再生薬は結構重要な支給品ぽいけど、このまま遊園地に放置か。
下手に一般人が使うと死ぬし、怖い支給品だね。
リヴィオが拾うと恐ろしい事になるけど、上手くニコ兄が拾えれば……!
>>782 >「またやる気か? まあこちらも全員皆殺しにするつもりだったから丁度いいが」
おかしい日本語アルヨ
全員殺すor皆殺し
アルネ
ご指摘ありがとうございます
まとめの際に修正します
俺、中学の時実際に体の半分コンクリに埋め込まれたことあったけどスタンド使っても殆ど動けなかった…
クレアばねえな
799 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/21(月) 18:17:34 ID:7c7jqIGl
ゴゴゴ
投下乙です
施設を使った面白い話でした
いやー、すごい。こういうこと思いつかなかったから、尊敬するw
しかしクレア強ぇなぁw
投下乙です
ジェットコースターを利用した話の構成が面白かった
決着も予想外の方法で決まるなど、とても楽しめました
唯一の疑問点は自分が原作知らないためですけど
時止めにリスクってないのか?ってことがちょっと気になりました
確かに今までの話でも梨花も含めて使ってどうにかなったって描写はありませんけど
今夜の10時ごろには投下できるかと思います
もしお暇でしたら支援をお願いします
>>801 原作では時止めにリスクはありませんね
一度の発動で止めていられる時間の長さには限度がありますが
原作だと時止めのリスクというと連続使用不可くらいだな
ただ他のロワだとたいてい
停止時間の短縮
あまり時間をおかずに何度も使うと大きな疲労が溜まる
くらいはついてるかな
自分しか動けないと思ってたら他にも時間停止系スタンドがいて、オラオラされるとか
ラッド・ルッソ、トニートニー・チョッパー、竜宮レナ、古手梨花、ニコラス・D・ウルフウッド、橘あすか
投下します
中途半端な情報は、時に誤った情報以上に判断を狂わせる。
病院の窓を飛び出し、西へ向かう獣達を追ったあすかの判断もそうであった。
赤いドレスを着た古手梨花を真紅と誤認。
常盤台中学の制服を着た竜宮レナを御坂美琴と誤認。
(まさか、あの黒服の男は――!)
そして更に、黒いスーツを着たニコラス・D・ウルフウッドを無常矜持と誤認しつつあった。
あすかがこうも誤認を重ねるのも、ある意味当然のことである。
彼が知る範囲で、黒尽くめという外見と、少女を拉致する姑息さを併せ持つのは無常矜持ただ一人。
それもストレイト・クーガーからの伝聞であり、信憑性のかなり高い情報だったのだ。
低空を滑るように移動しながら、あすかは歯噛みした。
(建物が邪魔に……)
もしここが開けた土地であったなら、獣達の姿をじっくり観察し、誤解を解けたかもしれない。
だが現在地は市街地、それもメインストリートから離れた複雑な路地の真っ只中であった。
当然、西を目指すルートも一直線ではなく、獣達が進路を調節するたびに、建物の死角に入り込んでしまう。
あすかが空中からの追跡に限界を感じ始めた頃――
「……しまった!」
ついにあすかは獣達の姿を見失ってしまった。
実際は獣が建物の陰で停止したため、あすかからは見えなくなっただけである。
いわば単なる小休止だ。
しかしあすかにしてみれば、追跡を撒かれたとしか思えなかった。
心の内から激しい焦燥感が湧き上がる。
目と鼻の先で攫われたのみならず、追跡にも失敗して見失ってしまうとは。
あすかは急速に高度を落とし、路面すれすれを滑走する。
直前まで獣達が進んでいたルートを辿ればきっと追いつくはずだ――そう考えて。
◇ ◇ ◇
「方角はこっちでいいのか?」
「ああ、まっすぐ西に突っ切れば大通りに出るはずや」
チョッパーが膝に広げた地図を覗き込みながら、ウルフウッドは指先で道をなぞった。
その傍らでは、レナと梨花が遠慮気味に水分を補給している。
現在位置はE−4とE−5の境界付近。
病院から1kmほど離れたそこで、四人は数分程度の小休止を取っていた。
状況を省みれば、一秒を惜しんで前進するべきなのかもしれない。
しかし地勢がよくないのだ。
病院から劇場を迂回して川の南を目指すなら、必然的にメインストリートを外れることになる。
それはつまり、網の目のように巡らされた道を抜けなければならないことを意味する。
真西に進んでいるつもりでも、道なりに進んでいくうちに、進行方向が歪んでしまうかもしれない。
こうして現在位置を再確認しているのも、見知らぬ街を確実に抜けるための措置であった。
「よし、行こう!」
「もうちょっと休んだほうがいいよ。チョッパー君が一番体力使っちゃうんだから」
地図をたたみ、先を急ごうとするチョッパーを、レナは穏やかに制した。
ただでさえ劇場でダメージを追った上、ここまでメンバーの足として頑張ってきたのだ。
必然的に、疲労も最大であるに違いない。
しかしチョッパーが自分からそれを主張することはないだろう。
「そうなのですよ。遠慮はダメなのです」
「……わかった」
レナの勧めに梨花も同調する。
確かに先を急ぎたいところではあるが、無理をするのは望ましくない。
それが原因で危険に晒されては本末転倒だ。
チョッパーも二人の意図を悟り、再び路傍に腰を下ろした。
「やれやれ……」
傍らのやり取りを横目に、ウルフウッドは間断なく周囲を警戒し続けていた。
辺りは遮蔽物の多い市街地。
隠れてこちらを伺うには絶好の環境である。
例えばビルの屋上。
例えばテナントの一室。
例えばブロック塀の向こう側。
こういうとき、火傷顔の女の荷物から得た探知機が欲しくなってしまう。
それさえあれば、相手がどこに隠れていようと一発で見抜くことができる。
だが、それはグラハムを探すライダーにこそ必要な代物だ。
こちらは探知機の代わりに数の利で補うしかない。
一人よりも二人、二人よりも三人、三人よりも四人。
注視する目が多ければ多いほど、探知機を持たない分を補える。
「…………!」
ウルフウッドの視線がビルの一角に止まる。
他よりは高いものの、高層とは言いがたい程度の雑居ビル。
距離はおおよそ二〇〇メートル。
直線的に繋がる道はない。
(誰かおったな)
はっきりと目撃したわけではない。
何かが光った、何かが動いた――その程度の違和感。
だが、それでも警戒するには充分すぎる。
二〇〇メートル『もの』距離と考えるのは素人だ。
現実は『たったの』二〇〇メートルでしかない。
達人的な狙撃手であれば、この五倍以上の距離からでも当ててくるだろう。
そして、あのビルのように見晴らしのいい高所は絶好の狙撃地点なのだ。
(場所を変えたほうがええ)
ウルフウッドはおもむろに腰を上げた。
――さて、どう説明したものか。
狙撃されるかもしれないから場所を変えよう、と言えば分かってくれるだろうか。
◇ ◇ ◇
同時刻、雑居ビル六階。
ラッドはつい先ほどまで構えていたバズーカを、デイパックに押し込めた。
装填していた風貝も取り外し、通常弾頭を撃てるように切り替えておく。
「ちっ……勘のいい奴だ。
せっかく景気良くズガーンといってやろうと思ったのによ」
悪態を吐きながら、がらんどうのテナントを後にする。
ウルフウッドの直感は的中していた。
あの瞬間、ラッドはまさにバーンバズーカの照準を合わせていた真っ最中であった。
ラッドの不幸、ウルフウッドの幸運は、バズーカの照準器が狙撃向きでなかったこと。
狙撃よりも機動射撃に対応した兵器であったため、狙いを定めるのに時間が掛かってしまったのだ。
加えて言うなら、ラッドが一撃で全員を巻き込もうと拘ってしまったことにも原因があるだろう。
「それより、あそこ何人いたんだ? 四人か? 三人と一匹か?
黒い服は間違いなくニコラスとかいうヤロウで、赤い服着てたのがあのクソガキだな。
着替えてんじゃねぇよ、見間違えるとこだったじゃねぇか。
それとも服装に気を使うほど余裕綽々ですってか?
思ってんだろうなぁ。ラッド・ルッソは両腕なくして再起不能だから安全です、とか思い込んでるんだろうなぁ。
もう一度両手で首絞めてやったら、すげぇ顔するんだろうなぁ……!」
饒舌に独白しながら階段を降りていく。
狙撃こそ失敗したが、ラッドはさほど落胆していなかった。
相手の人数を把握できただけでも充分な収穫といえる。
ラッドが服装の違いを看破できたのは、ひとえに相手が動いていなかったからに他ならない。
高速で疾走する相手を見ていた橘あすかとは条件が違うのだ。
「鹿っぽい奴は宇宙人の同類かもな。もう一人の餓鬼は地下の電気女か?
いや、ありゃ別人だったな。同じ服なんか着やがって紛らわしい。
むかつく奴を一気にぶっ殺せるかと思ったのに、期待しただけ大損だな。
……とりあえず、何か新しい武器が要るか。いつまでも大砲ひとつじゃあな」
成し得なかった一手よりも、次の一手に思考が傾けられていく。
二時間以上の休息を挟んだことで、肉体の機能はかなり取り戻されている。
しかしバズーカの残弾も風貝の容量も無限ではない。
いつかは確実に使い切ってしまう上、どうすれば補充できるのかも分からないのだ。
できることなら、早急に新しい武器を手に入れておきたいところである。
入り口付近に置かれていた無料配布の紙マッチをごっそりと掴み取り、ポケットに突っ込む。
こんなモノでも使いようはあるだろう。
殺し以外にも、色々と。
標的を殺す他の目的を定め、意気揚々とビルから出ようとした瞬間――
「うおっ!」
「わあっ!」
歩道を滑るように移動していた何者かとぶつかりかけた。
その男は驚いて安定を失ったものの、転ぶことなく路面に着地した。
「すみません、急いでいたもので! 大丈夫です……か? ……っ!?」
男は反射的に謝罪を口にしようとしたが、すぐに体勢を整えてラッドと対峙する。
ラッドを見据える男の眼差しは、初対面の相手へ向ける類のものではない。
具体的に喩えるなら、警察官が逃走中の凶悪犯を捕らえようとする瞬間のようだった。
そしてラッドは直感する。
こいつは自分のことを知っている、と。
「おいおい、怖い顔するなって。何も取って食いやしねぇ」
「騙されませんよ。そのバッグにはバズーカが隠してあるんでしょう?
それで何人殺してきたんですか」
男が警戒を向ける一方で、ラッドも男を観察する。
自分を追い詰めうる情報網があるなら、早めに断っておいたほうがいい。
そういえば、この服装には見覚えがある。
地下で戦闘になったストレイト・クーガーと同じものだ。
とても私服とは思えないデザインなので、恐らくは何かしらの制服だろう。
――組織のネットワークで情報が流れたか?
否、それは考えにくい。
ストレイト・クーガーの名が放送で呼ばれたのは、地下での戦闘の直後だった。
仲間に情報を伝えるには時間的な猶予が少なすぎる。
ここはひとつ、鎌をかけてみるべきか。
「何か急いでたみたいだけどよ、誰か探してたのか?
――例えば黒服の男とか」
眼前の男の表情が明らかに変わる。
ラッドは口元を歪めて笑みを作ると、デイパックからバズーカを引きずり出した。
「貴様っ……!」
「慌てんじゃねぇよ」
身構える男を嘲笑うように、ラッドはバズーカを投げ捨てた。
更にデイパックをも放り投げる。
「質問だ。黒服の男はお前の敵か?」
「敵……になると思いますね」
言葉を選んだ回答だが、これだけでも充分だ。
この男がニコラスの敵であるというなら話は早い。
「それなら利害一致だな。俺も奴には痛い目に合わされたんだ。
知ってるかもしれねぇが、奴は銃使いだ。それもかなり強えぇ。
少なくとも俺と戦ったときは拳銃を使ってたな」
男が口を挟む暇もなく矢継ぎ早にしゃべり倒す。
相手も困惑こそしているものの、話を遮ろうとはしてこない。
聞きたいのだ。
自分がこれから戦うであろう相手の情報を、少しでも得ておきたいのだ。
話し手が危険人物であっても関係ない。
銃を使うなんて、当たり前過ぎて偽情報として流す価値もない。
これがもし『奴は銃を持っていないし強くもない』という内容だったら疑う余地もあるだろう。
しかし、ラッドが語る情報が嘘であったとしても、想定より弱いことになるだけで不利益はない。
だからこそ遮らない。
心の片隅に留めておくだけでも有意義であるがゆえに。
「さて、俺は情報を提供した。
お前も見返りに何か教えてくれるのが筋じゃないか?」
「ええっ!?」
理不尽なのは明らかだ。
勝手に喋っただけだろう、と突っぱねられても当然である。
それはラッドも分かっている。
だから、ここで一歩引いてみる。
「なにも上等な話を聞こうとは思ってねぇ。どうして奴を追いかけてるのか聞かせてくれ」
男は視線を落とし、悩む素振りを見せた。
ラッドが知りたいのは、どこで自分のことを知ったのかということだ。
情報網を聞き出して断ち切れば、憂いなく殺しを続けられるだろう。
だが、直接訊ねたところで答えるはずもない。
ならばせめて、周辺的な問いから足がかりだけでも引き出せれば御の字だ。
「……攫われた仲間を助けにいくんです」
「仲間ぁ?」
予想外の答えにラッドは眉を顰めた。
遠くから見ただけだが、あの四人の間に不穏な雰囲気は感じられなかった。
あの中に拉致された者がいたというのか。
少なくとも黒服の男本人と連れの餓鬼は除外。
となると、鹿か女。
「仲間って、鹿みてぇな生き物のことか?」
「違います! 女の子ですよ!」
そっちか、とラッドは合点した。
電気女と同じ服を着た女がこいつの仲間で、それを攫ったのが黒服の男。
何となくだが大筋の流れは掴めてきた。
しかし、どうしても納得できないことがあった。
攫われた奴が、あんな風に馴れ合えたりするものなのか?
もしかしたら遠目にそう見えただけで、実際には違う関係があったのかもしれない。
だが、特に赤い服の餓鬼とのやり取りは、馴染み深い友人とのそれを思わせるものだった。
少なくとも誘拐犯と肩を並べて仲良く水分補給なんてしないだろう。
こいつ何か誤解してるんじゃないのか――?
思考がそこまで及んだ瞬間、ラッドの笑みが一層深まった。
「俺の勘違いかもしれねぇけどよ。
攫われた仲間って、ミサ何とかだのミコ何とかだの、そういう名前じゃねぇか?」
「ッ……あなたに話す必要はありません」
――当たりだ。
ラッドは背中に回していた手を戦慄かせ、骨が軋むほどに強く握った。
笑い出したくなるのを堪えるので精一杯だ。
電気女と何も関係がないのなら、いいえ違いますの一言で充分だったのだ。
こいつを電気女が仲間だという前提で考えれば全てが一本に繋がる。
自分に警戒心を露わにしたことも、バズーカの存在を知っていたことも。
先ほどの問い掛けで言葉を濁したことも説明できる。
ああ、我慢した甲斐があったというものだ。
殺したい衝動を抑え込み、心にもない台詞を吐いただけの価値がある。
殺したい相手の居場所が二つも同時に分かるなんて。
できれば今すぐにでも――
丁重に、丁寧に、心を込めて、じっくりと――!
◇ ◇ ◇
あすかは焦っていた。
病院を飛び出し、その後真紅と美琴を見失って早数分。
直前まで進んでいた道を辿ってここまできたが……
「つれねぇな。共闘するかもしれないんだぜ?」
よりによってこの男に捕まるとは。
あすかの目の前では、白いスーツの男が狂ったような笑みを顔面に貼り付けている。
こいつが美琴から聞いた危険人物であることは疑いようがない。
ありとあらゆる特徴が、人格も含めて合致しているのだ。
「冗談でしょう。あなたと一緒に戦うなんて願い下げですよ」
美琴の話によれば、こいつは彼女に対して明確な殺意を抱いている。
もし攫われてしまった仲間が美琴のことであると知れたら――
「余計な時間を使いました。先を急ぎます」
これまでに明かしてしまった情報だけでも、許容範囲ギリギリだ。
奴が黒服の男の一行を目撃していたなら、仲間を攫われたという発言から、美琴のことに思い至るかもしれない。
自分達の関係までは気付かずとも、美琴イコール黒服の仲間と誤解する危険もある。
どちらにせよ、この辺りでお引取り願うのが賢明だろう。
場合によっては力尽くでも。
「無理にでもついてくるつもりなら……」
「そりゃそうだな。共闘なんて俺もゴメンだ」
「……あれ?」
あっさりと引き下がられ、あすかは思わず面食らった。
武力による排除すら選択肢に入れていたというのに、説得することなく解決だなんて。
もちろん違和感は大いにある。
戦闘狂とも殺人狂とも言える輩が、殺すと決めた相手を簡単に見逃すものだろうか。
だが、男の心変わりを追及する暇はなかった。
優先順位は真紅と美琴の身の安全が一番だ。
この狂人との会話で生じたタイムロスはせいぜい二分か三分。
急げば充分取り戻せる。
「とにかく! もしついてくるようなら、あなたも敵とみなして排除しますよ!」
「分かってるよ。……そうだ、煙草吸いたいんだが、火ィ持ってないか」
言いかけた言葉を繰り返し、念を押すあすか。
しかしラッドは暖簾に腕押しとばかりに動じない。
紙煙草を探して背広をまさぐり――
――カァーン
そんな音を立てて、何かが落ちた。
それは掌大の貝のようなもので。
ラッドの表情が『しまった』と歪むのを、あすかは見逃さなかった。
「動くな!」
慌ててそれを拾おうとしたラッドを、大声で制する。
自分とラッドの周囲にエタニティ・エイトを配し、落ちた貝とラッドを引き離していく。
「僕が拾います。あなたは動かないでください」
やはり何か企んでいたのだ。
黒服の男を追うために背を向けた瞬間、この貝で攻撃するつもりだったのだろう。
どう見てもただの貝だが、外見で能力を判断できないことはあすかも承知している。
彼が助け出そうとしている二人など、その最たるものではないか。
身を屈め、奇妙な貝へ腕を伸ばす。
彼女達は様々な"強さ"を見せてくれた。
パートナーと姉妹を次々に失っても折れない"強さ"を。
自らが犯した罪に正面から向き合う"強さ"を。
そんな彼女達と比べ、自分は何をしてきた?
罪なき人々を救うと決意しておきながら、一体誰を救えたというのだ?
ならばせめて、彼女達を護り抜かなければ――
「悪いな、火ィあったわ」
その言葉と、あすかが異臭に気が付いたのは、ほぼ同時であった。
燃える紙マッチが弾かれる。
直感的に可燃ガスと悟り、後方へ飛び退く。
しかし人体の成し得る動きよりも、爆風の方が遥かに速い。
青い炎風と共に炸裂した閃光を最後に、あすかの視界が黒く塗り潰される。
一瞬遅れ、全身を激痛が走り抜けた。
「ぐうっ!」
焼かれた――
服を、肌を、瞳を――
息を吸い込む。
それだけで爛れた粘膜が苦痛を訴える。
「――――!」
己のアルターの名前すら言葉にならない。
しかし、それでも。
刹那、あすかの意識は途切れた。
◇ ◇ ◇
ウルフウッドが駆けつけたときには、全てが終わっていた。
アスファルトを焼いた爆発痕。
砕け散った貝の欠片。
中ほどから圧し折れたバズーカの砲身。
そして、無残な少年の亡骸。
全身を焼かれ、胸から上を爆発で吹き飛ばされている。
人相どころか頭部そのものが消し炭となり、死に顔すら残っていない。
即死であることは疑いようもないだろう。
「……まさか」
ウルフウッドが見下ろしているのは、残骸に成り果てたバズーカである。
見紛うはずがあるものか。
劇場で白いスーツの男が使っていた武器に間違いない。
「こりゃまずいで」
爆発音から数分と経っていない。
まだ奴は近くにいるのだろう。
休息は、終わりだ。
◇ ◇ ◇
ウルフウッドの足音が遠退いていく。
ラッドは身を潜めていた路地から離れ、ウルフウッドとは反対向きに歩き出した。
「思ったよりしぶとかったじゃねぇか……」
爆発の原因は単純な仕掛け。
貝の可動部にマッチを差し込んで固定し、可燃ガスを出しっぱなしにするというものだ。
押ボタンに細工をして、作動しっぱなしにする細工を想像すればいい。
そうして橘あすかを葬ったラズロだったが、しかし無傷というわけではなかった。
左腕が、糸の切れた操り人形のようにだらんと垂れている。
ガス爆発だけで仕留め切れなかったと判断した直後、ラズロは即座にバズーカを拾い上げていた。
最初から予定していた通りの行動。
しかしそれはあすかに見切られていたのだ。
引き金を引いた瞬間、ラッドに八つの宝珠が殺到し、その身に幾つものダメージを叩き込んだ。
その結果が折れた左腕であり、破壊されたバズーカである。
だが、肉体の傷は徐々に癒えてきている。
むしろ最初よりも治りがいいくらいだ。
しかし破壊されたバズーカまでは戻らない。
風貝はここで使い捨てるつもりだったからいいものを、これは手痛い損失だった。
「良いモン入っててくれよ?」
ラッドは肩から提げたあすかのデイパックを叩いた。
外装はかなり焼け焦げているが、どうやら中身は無事のようだ。
バズーカの代わりの武器が入っていれば、それでよし。
入っていなければ、調達できるまで派手な真似ができなくなってしまう。
「さて、どっちを殺すか……」
ウルフウッド達は引き続きは西へ向かうのだろう。
今から追いかければ間に合うかもしれないが、先を急がれれば難しい。
そしてもう一方――
「ぶつかりかけたときにした臭い……ありゃ消毒液の臭いだった。
てコトはだ! アイツはついさっきまで病院にいたってことだよなぁ!
電気女と一緒によぉ!」
殺意は増大し加速する。
手の届く場所に獲物がいると知ればこそ。
【橘あすか@スクライド 死亡】
【残り26人】
【E-5 西端/1日目 夕方】
【ラッド・ルッソ@BACCANO!】
[状態]:左腕骨折、肋骨(右)骨折、腹部内出血 全て再生中 不死者化
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×2、螺湮城教本@Fate/Zero、不明支給品0〜2個(未確認)
[思考・状況]
0:当面の標的を定める。
1:あのギラーミンとかいう糞野郎をぶっ殺す。
2:そのためにこの会場にいるやつを全員殺す。とにかく殺す。
3:ラズロ(リヴィオ)は特に念入りに殺す。
4:御坂と黒スーツの男(ウルフウッド)、子供(梨花)も殺す。
5:ギラーミンが言っていた『決して死ぬ事のない不死の身体を持つ者』(不死者)は絶対に殺す。
6:宇宙人(ミュウツー)は出来れば最後の最後で殺す。
7:左腕が刀になる女(ブレンヒルト)も見付けたら殺す。 詩音はまあどうでもいい。
8:ギラーミンが言っていた『人間台風の異名を持つ者』、『幻想殺しの能力を持つ者』、『概念という名の武装を施し戦闘力に変える者』、『三刀流という独特な構えで
世界一の剣豪を目指す者』に興味あり。
9:グラハムについて少し気になる。
【備考】
※麦わらの男(ルフィ)、獣耳の少女(エルルゥ)、火傷顔の女(バラライカ)を殺したと思っています。
※自分の身体の異変に気づきましたが、不死者化していることには気付いてません。
※リヴィオとラズロの違いに気付いていません。また、ラズロ(リヴィオ)のことを不死者だと考えています。
【E-4 東端/1日目 夕方】
【チーム名:○同盟チョッパー組】
1:主催者の打倒。
2:劇場を迂回して遊園地、廃坑、古城跡を訪れ21時までにB-4民家へ向かう。禁止エリアの場合H-4、G-4へ。
2:グラハムとの合流(先発が会えなかった場合)
3:サカキ、ミュウツー、片目の男(カズマ)、赤髪の男(クレア)、リヴィオ、ラッド、電気の少女(美琴)を警戒。
クレアという女性、佐山、小鳥遊、アルルゥ、ヴァッシュを信用。アーチャーはやや信用。
ハクオロも一応信用。 真紅、沙都子は情報不足で保留。
※別世界から呼ばれたということを信じました。
※会場のループを知りました。
しえん
【トニートニー・チョッパー@ONE PIECE】
[状態]:腹部と顔にダメージ(中)、全身にダメージ(中)、疲労(小) 腕に○印 深い悲しみ、獣人形態
[装備]:なし 包帯、ランブルボール×4@ONE PIECE
[道具]:支給品一式×4(一食分、水1/10消費) タケコプター@ドラえもん、 タオル、救急箱、病院で調達した医療道具
[思考・状況]
1:レナや皆を守り抜いてみせる。その為なら……
2:仲間と会いたい
3:グラハムの様子を見る。(別れている為現在実行不能)
4:ギラーミンを倒し、脱出する。
5:イスカンダルの臣下になるかはまだ決められない。
6:川に落ちたゾロが心配。
※レナからはあまり情報を受けていません。圭一たちについての情報は知りません。
※参戦時期はCP9編以降。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康 深い悲しみ 私服 右腕に○印
[装備]: 包帯、デザートイーグル(残弾数6/6)、シェンホアのグルカナイフ@BLACK LAGOON、常盤台中学の制服
[道具]:支給品一式×4(3食分、水1/10消費)、ドライヤー 、双眼鏡、ゾロの地図
、デザートイーグルの予備弾×12 不死の酒(空瓶)、通り抜けフープ、 手榴弾×3、
ロベルタのメイド服@BLACK LAGOON、ガムテープ、ビニール紐(少し消費)、
[思考・状況]
1:必ず脱出する
2:グラハムが心配
3:何とかして首輪を外したい
4:イスカンダルの勧誘は保留。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
※圭一と会話できたかは不明です。
※梨花とウルフウッドの仲について察したようです。
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康 腕に○印
[装備]:なし、包帯、真紅の衣装
[道具]:支給品一式×3、インデックスの修道服@とある魔術の禁書目録、ミッドバレイのサクソフォン(内蔵銃残弾100%)@トライガン・マキシマム、
蓮の杖@とある魔術の禁書目録、月天弓@終わりのクロニクル 、フシギダネ(モンスターボール)@ポケットモンスターSPECIAL
きせかえカメラ@ドラえもん きせかえカメラ用服装イラスト集
[思考・状況]
1:必ず生き残る。
※ウルフウッドを信頼、けどちょっとむかつく。
※電車に誰か(橘あすか)が乗っているのに気づきました真紅に気づいたかどうかは不明です。
※サクソフォンの内蔵銃に気付いていません。
【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン・マキシマム】
[状態]:全身の数箇所に浅い傷、腕に○印
[装備]:デザートイーグル50AE(8/8 予備弾25)、包帯
[道具]:基本支給品(地図と名簿は二つずつ、一式×2)、SPAS12(使用不能)チーゴの実×3@ポケットモンスターSPECIAL
○印のコイン、AMTオートマグ(0/7)、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×二枚、洋酒
ロベルタのスーツケース@BLACK LAGOON(ロケットランチャー残弾7、マシンガン残弾80%、徹甲弾残弾10)、ヴァッシュの衣装
AK47カラシニコフ(30/40、予備弾40×3)、 二重牙@トライガン・マキシマム、二重牙@トライガン・マキシマム
拳銃の予備弾30発
[思考・状況]
0:先を急ぐ
1:梨花たちについて行く
2:古手梨花を守る。(別れたなら同行者に託す)
3:ヴァッシュとの合流。リヴィオについては保留。
4:ジュンを殺害した者を突き止め、状況次第で殺す。
5:武器を手に入れる、出来ればパ二ッシャー
※自身が梨花の事を名前で読んでる事に気づいていません。
※○印のコインの意味は不明です。使い道があるのかもしれませんし、ないのかもしれません。
※ラッドの再生がミカエルの眼の改造技術に起因するものではないかと推測を立てています。
投下終了です
支援ありがとうございます
あすかって男だったのか…
知らんかった。
投下乙
だけどラッドが一部ラズロになってるとこがあるね
投下乙
あすかには期待してただけに凄い空虚感だ……
ノリでコスプレしたのが原因とか泣き笑いできるレベルだ畜生w
投下乙です
しゃ、社長……真紅との会話で成長もしてたのに
こんなあっさりと…えええええええええ
投下乙
同じくあすかには期待大きかったからなんだか複雑な心境
死因も迂闊すぎるだろ……やっぱり真紅から離れた時点でダメだったのか。
大好きだった凸凹コンビの片割れもコレで終わりかぁ
ロワ内で一番精神的成長が実感できるキャラだったのになぁ……残念だ
そういやこれで生存者残り四割か
随分と減ったもんだ
つかいつまで序盤だよ
もう四割にもなってるのに本当に今の状態で終盤まで持って行く気かよ
投下乙!
し、社長ーーー!よく頑張った、お疲れ様です。
またもや誤解してたけどラッドのバズーカも壊したんだし、上出来だw
マッチを利用したトリックはシンプルながらに凄い。
自分もこういうのをロワで使っていきたいなぁ……。
ラッドの支給品には何があるのかは気になるところ。
そして報告を。
カズマVSギルガメッシュの修正を仮投下スレに投下したのでよろしくお願いします。
修正乙です。
問題無いと思います
修正乙です
支給品に関しては、それ自体が使用不能になっても、
似たような別の支給品を同じように出しても良い、という前例になってしまうと思うので、
少し細かい見方になっているかもしれません
>バラバラに支給された支給品を二つとも手中に揃える運、そして宝具の連続使用に耐えうる体力の持ち主。
>体力の方はまだしも運の良さなど個人でどうにか出来るものではない。
この条件だとライダーも該当するような……?
ステータスの幸運は、アーチャー(幸運A)よりライダー(幸運A+)の方が高いですし、
アーチャーのスキル「黄金率:A」は、人生を通してお金がどれだけ入ってくるか、を示すものですし
>【王の宝物庫@Fate/Zero】
結局、これがどんな支給品なのかよく分かりません
宝物庫(原作でも出てきてないけど)が丸ごとデイパックに入っていた、と言うことでよろしいのでしょうか
それと王の財宝は、空間を繋げて宝物庫の中身を取り出す宝具、との設定(Fate/Zero vol.3 巻頭)なので、
文中で出てくる「王の財宝内」という表現が引っかかりました
宝物庫とその中身が支給されているのなら、
>王の宝物庫がデイバックから王の財宝内へ瞬時に移される。
ってどういうことなんだろう、という感じで
これ以外のモノが「王の財宝内へ瞬時に移され」たなら、
宝物庫(もしくはデイパック)の中に収められたんだな、と想像できますが
とあるトラブルで投下できないかなと思って延長申請したら、あっさりトラブルが解決したという最悪のオチとなってしまいました。
というわけで延長しましたが、今から投下開始します。
しえん
殺し合いが始まって14時間以上が過ぎた。
高くなった日も徐々にその光を翳らせ、だんだんと地平線に近づいていく。
それに合わせ空もまただんだんと暗い色に染まっていく。
そんな1日の中でも過ごしやすくもなってきた環境。しかし
ダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!
殺し合いという状況は、そんな日向の下の休憩も許しはしない。
*****
ダダダダダダダダダダダダダダダダ!!
連続した破裂音が晴れやかな空に木霊する。
それと同時にいくつもの閃光が辺りのものを照らし出す。
ベンチ。歩道。バスの時刻表。切符売り場。改札口。そして看板。
そこには『C-5駅』という実際ではありえない駅名がデカデカと表示されていた。
説明するまでもないが、そこはC-4駅駅前。
そこが今連続した破裂音と閃光に包まれていた。『光と音のイリュージョン』というと遊園地のイベントのようで軽々しいが、おそらく実際にそれを見てそんなことを
言えるセンスや神経を持つのはどこかの運び屋会社やどこかの戦闘部隊の人間たちくらいだろう。
破裂音は銃声。閃光はマズルフラッシュ。
放たれる元は――何の冗談か大きな十字架。
パニッシャーと呼ばれる強力兵装。それがこのイベントを彩る楽器であり照明装置であり、殺戮兵器であった。
それを構えるは1人の女。
またも何の冗談かメイド服を風にたなびかせ、しっかり足をふんばり十字架を抱え銃撃を放ち続けている。
その眼光は冷徹そのもの。
撃つことへの躊躇いも、撃つ相手への怒りも、撃っていることへの悲しみも、撃っていることへの喜びも無い。
ただ撃つ。それをする。それしかその目からは感じない。
それは彼女の視線の先の者に対しても全く同じだろう。
銃声と共に閃光。それと同時に彼女が見る、駅の屋根。
そこが弾けとび、哀れ屋根は蜂の巣。今まで駅を守ってきていた木板たちは無数の木片へと成り下がる。吹き飛んだそれが落ちる前に、その隣の箇所が同じ末路を辿る。
そこを走る者がいた。
全力で駆け抜けているであろうそれは、またまた何の冗談か、人ではなかった。
白い体、ぐにゃりと曲がっているのが特徴的な尻尾。カンガルーのような脚。
そしてもう冗談極まったかのように、それが構えている物は滑稽だった。
右手に大きな剣、これはまだいい。現実的ではないがまだ武器として通用する。
が、左手に持っているのは――どう見てもスプーンだった。
食器のスプーン。その大きなものを持っている。
それの名はミュウツーといった。
伝説のポケモンミュウの睫毛から採取された遺伝子からロケット団によって作り出された150番目のポケモン。
それは必死に屋根の上を走っていた。
当然だ。なぜなら彼が少しでもいた場所が、1秒後には穴開きチーズになっているのだから。少しでも足を緩めれば、空を舞う木片は肉片と血に早変わりだ。
軽機関銃といえるパニッシャーの銃弾は並みの数ではなく、いくらかはミュウツーに向かってくるが、それを彼は超人的感覚を頼りに大剣V-Siと念のスプーンで弾いて
いた。ただしこれは銃弾が彼に定まっていない状態でこれだ。もし彼の足が遅れていたら捌ききれていないだろう。
もしこれをどこかの外人が見ていたら、笑いながら言うだろう。
『おいみなよ。メイドがイエス・キリストと一緒に、スプーンで食事に来たエイリアンとスターウォーズを始めやがった』と。
もっとも実際にこの光景を見ていた『彼』はそういうことを言う性格ではなかった。
*****
屋根の上を駆ける異形をメイドの弾幕が追っていく。
異形の方は駅の上を移動していく。スピードについてはそれなりのようだが、剣やスプーンで防ぐのが手一杯で相手との距離が詰められないようだ。確かにここで近づこう
とするのは自殺行為。軽機関銃の嵐の中に飛び込むとなると、捨て身の攻撃となるがどうやら異形はそこには踏み切れないらしい。
ではメイドの一方的優勢かと言えばそうでもない。『彼』から見ればあのパニッシャーの攻撃はあまりに温い。彼が知っているそれならば屋根は穴だらけどころか骨組みす
ら木っ端微塵にできるはずだ。威力も連射数も明らかに少ない。
さらに言えば、これは彼の経験からの見地なのだがメイドは手を緩めているように思える。それこそ連射できるところをいくらか小休止を入れている。(ただしその間には
拳銃で威嚇してカバーしている)
彼が推測するに、おそらく彼女は弾を温存しているのだろう。思ったよりも相手が手ごわく、弾を無駄遣いするのを恐れている。この後の相手に際してこの武器をただの
鉄塊にしてよいものか。そこがメイドの優勢を崩している。
メイドの小休止、そこを異形が突くのが先か。
異形の足が鈍りメイドが撃ち貫くのが先か。
勝負はそこにかかっていた。
(だけど)
それは、彼には関係ないことだ。
駅前からいくらか離れた茂みの中。そこに『彼』、リヴィオ・ザ・ダブルファングはいた。
大柄な体を屈め茂みに潜み、2人の戦いを見守っている。
いや、手元に拳銃を持ちその視線が鋭くメイドに向かって突き刺さっている様子を考慮すれば、こう言い直した方がいいだろう。
彼はメイドを殺す隙を伺っていた。
劇場を後にしここまで北上してきた彼がその戦いに気づくことは容易だった。なにせ音が激しすぎる。
そして彼にはこの音に聞き覚えがあった。
当然だ。
彼のよく知る男たちはこれを愛用する者たちばかりなのだから。
最強の個人兵装パニッシャー。それに気づいた彼はその音の方向へ迷い無く足を向けた。
こうして今に至る。
(アレを手に入れられれば――ラズロの戦力は格段に上がる)
未だ眠り続けるラズロ。その彼が最も愛用し最も力を引き出せる兵装が今彼の目の前にある。
ただし障害は2つ。兵装を独占する女とその相手だ。
交渉して貰えるとは最初から思っていない。だから女を殺すことはまず決定事項だ。問題はその方法にある。
中途半端な攻撃では手痛い反撃を食らう。いくらか治ってきたとはいえ手負いの身だ。あの武器の恐ろしさを身をもって知りたくはない。
さらに女を殺せばいいという問題でもない。
直後に相手にパニッシャーを奪われてしまっては話にならない。
つまりリヴィオの取れる最善は、2人を一度にあるいは間断なく殺すこと。
次点で女を仕留め、相手が動くより先にパニッシャーを入手し離脱する。もしくは相手が倒された後に女を仕留める。
AA弾は残り4発。
2人の戦いをこのまま見守るのも確実性に欠ける。二人が戦場を移動してしまっては厄介だ。
かといってここから女を仕留めるにも少し遠い。
万全の状態ならば一気に相手に近づくのだが、ウルフウッドに与えられた胸部内へのダメージは制限の影響もあって未だに完治していない。
(くそ――俺にできることは、せめてアレをラズロに渡すことなのに)
それすらできない自分に悔しさが募る。それを阻む怪我を与えた人物に不覚を喫した自分に腹が立つ。
デイパックを見やる。そこにはココに来る途中、ビルの崩落現場にあったデイパックから見つけた日本刀が入っている。
それでの接近戦も考えたが、すぐに却下した。自分の本分は銃撃戦。刀などそうそう使えるものではない。
(――次だ。次にあいつが連射を止めた時に勝負を賭ける)
リヴィオは腹を決めた。
何が何でもラズロに後を繋げる。その為に何が何でもパニッシャーを手に入れる。
メイドが連射を切り相手に銃を向けた瞬間、一気に茂みを抜けて接近。
確実射程に入った瞬間にメイドの命を断つ。そしてそのまま駆け抜けてパニッシャーを手にする。
少しでもしくじれば後は無い。ウルフウッドの時のような失態はもうできない。してはいけない。
メイドの掃射が止まった。
もうすぐだ。もうすぐ。
彼は足に力を込め、隻腕に銃を握り締める。
集中する。銃を向けた瞬間に飛び出せるように。胸部の痛みで足が鈍らないように。有効射程に入ればすぐに銃を撃てるように――
ガサッ!!
茂みから飛び出し一気に相手へと近づく。
ただし――
「ッ!!」
近づかれたのは――リヴィオの方だった。
*****
(くっ……厄介な相手に当たってしまったな)
ミュウツーにとって今の状況は芳しいものではなかった。
駅に着いた直後に鉢合わせし、問答無用でマシンガンの掃射を受けた。瞬時に屋根の上に飛び上がったものの、掃射の連続を未だに受け続けている。
掃射自体に脅威を感じているのではない。問題は今の状況そのものだ。
相手は問答無用の攻撃から見て間違いなく優勝狙いの殺戮者だ。つまりミュウツーにとっては生きていた方が都合がいい相手で自分がわざわざ戦う必要は無い。むしろ
戦いは避けるべきだ。
なのに今のこの有様だ。逃げようとしても掃射の間に拳銃で狙われてはそれもできない。(ちなみに逃げようとかがんでいるのをリヴィオは遠かったこともあり接近し
ようとしていると勘違いした)
ミュウツーにとっては最悪の状況だ。
ロベルタもそんなミュウツーの意志は察していた。相手が逃げようとしている事はわかっている。
だが南下を決めて見つけた獲物だ。わざわざ逃す気はない。
相手がこちらは掃射しかできないと思ってきている今がチャンスだ。
ロベルタはパニッシャーを反転させた。制限でいくらか軽いとはいえ巨大な十字架をバトンのように軽々と回すメイドというのはなんとも恐ろしい光景だった。
「!?」
ミュウツーがそれを見てV-Swを構える。敵の攻撃を見極めようとパニッシャーを凝視する。
ロベルタが反転させたパニッシャーからミサイルランチャーを発射する――
「ストップ!」
「!?」
――前に、突然凛とした声が響き渡った。
2人がそちらに目を向ける。
そこに佇んでいたのは騎士のような服に身を包んだ灰色の髪の少女、そしてその後ろに無表情でいる大柄の男だった。
ロベルタは既に拳銃を少女に向けている。ミュウツーも片手を少女に向ける。
それに対し、少女、ナイン・ザ・コードギアスは全く動揺していない様子だった。
「待ちなさい。貴方達、ひどく無駄な事をしてるって気がつかないの?」
「……」
「……」
その言葉にミュウツーはまさに自分の考えていた事を言い当てられて歯をきしませた。
一方ロベルタは――――遠慮なく銃の引き金を引いた。
パァン! ガキィ!!
「メイドの癖に物騒ね。ああ、でも聞いた話じゃ物騒なメカメイドがいるとかいないとか」
「貴女も……ですか」
ロベルタは銃弾を弾いてみせたナインの硬質化した腕を見て顔を歪めた。脳裏に浮かぶのは園崎魅音。目の前の少女も同じような特異的な存在とロベルタは判断する。
「まあいいわ。貴方、聞いた情報から考えて単独行動の優勝狙いよね?
で、そこの白いのもそう。そうよね?」
そう言ってナインはミュウツーを見た。
その物言いにミュウツーは疑問を抱いたが――ナインの顔を直視できた瞬間、その疑問は消えた。
(この女……あの時の女だったのか)
機械巨人を相手にしたあの一戦。確かにあの時この女はその場にいた。髪型、服装、そして雰囲気が全く違った為なかなか気づけなかった。
(何があったというんだ? まるで別人だ。同行していた女が死んだからか?)
自分が森で追っていた時と同一人物とは思えないその変化に彼は戸惑いを隠せなかった。
そんな彼を無視してナインは話を続ける。
「優勝狙いが互いに潰し合う…………これじゃあ殺し合いを嫌がって徒党を組んでる連中が得するだけでしょ?」
「それはどうでしょうか」
ナインの論にロベルタは取り付く島もなく反論する。
「もしかして『私達が殺す分くらい自分で殺せる』とか思ってるのかしら」
「…………」
無言という形でそれを肯定するロベルタにナインは嘆息した。
「ココの連中を甘く見てるんじゃない? 私だって3人組についさっき手痛い反撃を喰らっちゃってね」
「貴女が力不足なだけでは?」
「言ってくれるわね。でも少なくとも既に組んでいて強力な連中がいるのは確か。
あなた達も心当たりくらいないのかしら」
「私は 『4人』 !?」
突然3人の脳裏に言葉が『聞こえた』。
奇妙な感覚だが、耳で聞いたというよりそう表現するのが正しい感覚だった。
『オレは4人組を見かけている。しかもその前にもう1人組んでいた男がいた。つまり元来は5人組ということだ。
その別れた男はバイクを自由に駆る巨躯の男だった。4人組の方も侮れない奴らだろう』
「…………今のは」
「もしや」
「あなた?」
3人の視線がミュウツーに向けられると、彼は静かに頷いた。
そして彼のナインへの敵意も薄れているのがその様子から感じられた。
彼に向けてのナインの反応は、不敵な笑みだった。
「情報ありがとう。で、あなたは私の静止を聞いてくれたってことでいいのね?」
『オレも優勝狙いが減ると困るからな』
「ふうん…………で、残ったのはあなただけなんだけど?」
ナインの視線にロベルタは未だ銃口で応える。
「貴女は心当たりないの?」
「生憎ここで徒党を組んだ相手との遭遇がありませんもので。
それに集団相手は慣れておりますので、貴方方の力不足としか感じておりません」
「本当にそう? じゃあ――――いつもならありえない事態。これはどう?」
(っ……)
心当たりがないと言えば嘘になる。
その辺の女学生程度の娘に首を絞められるなど考えられなかった。
その辺の女学生程度の娘を2度も逃すこともまずありえないことだった。
そもそも胸から腕が突き出てくること事態あり得ない。
水銀が自由自在に動く事も――
「そっちは心当たりがあるみたいね。そしてそういう連中が力を合わせてしまったら?
貴女の『慣れてる』集団戦と果たして同じでいられるの?
私やそこの白いのの異常性はもうわかってるわよね。こういうのがゴロゴロしてる。そう考えていいはず。
そんなのが組んでばかりの場所で利害が一致してる者たちが潰し合い……馬鹿らしいと思わない?」
「…………」
ロベルタはナインを敵意の篭った視線で睨み、一息置いた後――銃を降ろした。
「貴女の戯言を最後まで聞いて差し上げましょう。ただし少しでも奇妙なそぶりをすれば容赦は致しません」
『本題の予想はついているがな』
苦々しそうな言い方を隠さないロベルタ、いたって冷静なミュウツーにナインは2人の顔を真正面から見据えた。
その目に宿るは決意。絶対の意志。何かを成し遂げようと言うその瞳。
その瞳に2人が既視感を覚えたのは錯覚ではないだろう。
なぜならば――
「単刀直入に言うわ。私達、手を組まない?」
それは『誰かの為』の意志なのだから。
*****
「話になりません、とだけ申しましょう」
ロベルタにとってこの提案は2度目の経験だった。
1度目は夜に黒服の男サカキから。そして彼女はその提案を蹴った。
今度も同じだ。手を組む必要など無い。自分は犬。同じような犬と馴れ合う道理はない。
「そもそも手を組んだ場合のこちらのメリットというものが不明瞭でございます。
貴女の異常性は見させていただきましたが、そこの男はかなりの手負い。
そのような者を―」
「彼、肉体の治癒能力がかなり速いんですって。だから、数時間もすれば大分治るそうよ?」
「…………」
「貴方はどう?」
ナインは無言になってしまったロベルタから目を外し、ミュウツーに視線をやる。
腕を組んでいた白い異形がその静かな視線でこちらを見てくる。
『オレは乗らせてもらう。1人で立ち向かうことの限界性にはオレもそろそろ感づいてきていた。
お前たちをせいぜい利用させてもらうとしよう』
「そういうことよ。別に絶対の信頼を置けって言ってるんじゃない。
せいぜい利用しろ、って言っているの」
「…………」
ロベルタは3人を見やる。
ミュウツーがあちらに回った以上、今の状況は単純に1対3と考えてもいい。
異形の力は既に知っている。手負いの男ですらその眼光や佇まいから只者ではないことはわかる。少女ですらその腕は剣に変わる。銃弾に反応できた瞬発性も見逃せない。
パニッシャーならばいくらか立ち回りはできる。
3人どころか5人以上でも相手をできる自信はある。
だが、どこかでこう思う自分がいる。
『今そこまで無理をしていいのだろうか』
「…………」
人数はまだ半分近く。
この距離で3人を相手取るにはハイリスクに過ぎる。
手痛い反撃を喰らう。そしてロベルタには今のところ再生能力という手段などない。
1対1だったサカキの時とは状況が違う。
「撃ちたければ背後からいつでも狙えばいいわ。ただし、その行動の意味を後悔しないならね。
何が何でも生き残りたいなら。何が何でも帰りたいなら。
どんな手も尽くす。どんな相手も利用する。そして自分は絶対死なない。
――そうでしょ?」
そう語りかけるナインの瞳は変わっていなかった。絶対の意志を、強い決意を感じる瞳。
無言で佇んでいる男も、白い異形も同じ瞳だった。
泥に血に闇に塗れても、何かの、誰かの為に生き残る決意。
それはまさに汚れた狂犬のような目だった。
(犬ならば犬と群れるもまた道理、でしょうか……)
「わかりました。
ただし利用価値を失った場合は即刻見捨てさせていただきますので」
「こちらも同じよ」
『ああ』
「…………」
こうして4人は一応の手を結ぶ。
それぞれの目的と思惑を秘めて。
****
やれやれ。なんとか収まりがついたわね。
奴らに対抗するには私1人だけでは駄目だ。
こちらも協力、利用しなくては歯が立たないもの。
それに私の目的は全ての参加者を蘇らせる事。
今は黙ってるけど、いずれ明かしてみようかしら。
この中の誰でもいい。主催から力を奪い全員を蘇らせてもとの世界に帰る。私としてはそれで構わない。何よりも優先するべきなのはナナリーの蘇生なのだから。
今ここで言わないのは3人の目的がわからないから。
けれど全員蘇らせる、という目的と反するものがそうあるとは思えない。
だから他の3人にこのことを打ち明けるのも良いでしょうね。
さて、一応情報交換、それと支給品をチェックして物によっては分配しましょうか。もっとも素直に見せてくれるかは怪しいけどね。
にしても概念核兵器まであるなんて……本当ふざけてるわね。
そういえば後ろのリヴィオ、というのはあの十字架の武器を渡すのを協力条件にしておいたのよね。あのメイドが渡してくれればいいけど。
それと、4人一団で行動するか、二手に分かれるかも問題ね。前者なら戦力、後者なら迅速さ重視になる。
2手に別れた場合は美琴に言ったことを本当に実行してみるのもいいかもね。北と西での挟み撃ち。電車があるから移動は出来るし。
あと内訳も問題ね。
――――あの白いのと2人きりは勘弁して欲しいわね。
――――だって、殺したくなってしまうもの。
――――でもまだ駄目。利用できる内はせいぜい利用する。だから我慢しなくちゃ。
――――大丈夫。私は絶対やってみせる。主催者を倒し、全員を蘇らせる。たとえ他の者に託してでも。
――――ナナリーの為に――――
****
俺の目的はただ1つ。パニッシャーだ。
その為にナインと名乗った少女の提案も呑んだ。それに、ウルフウッドさんから受けた傷は大きい。
もし組んだなら敵と遭遇した時攻撃される確率は低下する。ただし、仲間に攻撃される確率も高いのは問題だけど――その時は、容赦しない。
なにしろこの中の誰もあの弾のことは知らないんだから。
女が素直に渡してくれればそれでよし。渡してくれなかったなら――チャンスを伺う。
あるいは女が誰かに殺されるのを願おう。
――――絶対に俺は死ぬわけには行かない。必ずパニッシャーを手に入れてみせる。
――――亡きマスターC、そしてラズロの為に――――
****
今は群れよう。けれど牙はなおも貴方方に向いている。隙あらば喉元を食いちぎるでしょう。
いずれにしても利用しこちらの消耗を減らす。
そういえば、あの男もまた集団を組むと言っていましたね。
最後に見たのは学校近く…………彼とのゲーム、ここで終わらせるのも良いでしょう。
まだ彼らがあの周辺にいたら、そしてこいつらがあの周辺へ行く事を容認した場合ですが。
それから何時まで組むかもはっきりさせておかねば。
残り人数が何人とわかったときか、あるいは24時まで、など。
いつまでも馴れ合うつもりはございませんので、その辺りは決めておきましょう。
――――今はまだ見逃しましょう。ですが、必ずや貴方方全員に死を。私は帰らなければならないのだから。
――――鉄槌を与えなければならない奴らの下に。そしてガルシア坊ちゃまの下に――――
****
オレとしては好都合な展開だ。
殺戮者が潰し合うのが回避され、協力して他の集団とぶつかる。1日中に半数を割って欲しいオレとしてはな。
最善は自らは消耗せずそこで残り疲弊した者を倒すのが最善だが――3人とも同じことを考えているだろうな。
要は仲間に敵をあてがて、自分はそれを避ける。それの早い者勝ちか。『仲間』とは名ばかりの集団だな。
所詮は利害の一致か。
だが単体戦力が優れているのは文句をつけようが無い。男の方は未確認だが、弱いとは思えん。
これだけいればあのバイクの男にも勝てるとすら思える戦力だ。
人数としては病院方向に向かった一団と同じだが……奴らはどこに行ったのか。
病院より先は禁止エリア。となると戻って北か西。北は奴が向かっていたはずだから、西の駅に向かえば奴らを迎撃できるだろうか。
一応進言してみるか。
――――オレは絶対に優勝せねばならない。たとえこいつらと手を組んででもだ。
――――全てはマスターの為に――――
****
マスター。
起源はラテン語『magister』。師を表し、原義は「より偉い人物」。
名詞としては主人、主君、師、達人、〜に精通した人などの意味が一般的だろうか。
『マスター』と言う言葉を使っているのはミュウツーのみだが、他の3人はどうだろうか。
ナイト・オブ・ナナリーを名乗るナイン・ザ・コードギアス。
彼女にとっては親友と言う位置だろうが、体裁としては『主君』と言えるだろう。
リヴィオとラズロの戦う原動力であるマスターC。
彼は彼らにとって紛うことなき『師』であった。
またリヴィオにとってのラズロもまた『師』であり『達人』。自分の上を行く存在であると認識している。
亡き主人の復讐を誓うロベルタ。
彼はまさに『主人』である。そしてその息子もまた『主人』であり大切なものだ。
きしくも4人とも誰かの為に戦っている。
それぞれの『マスター』の為に。
それから、マスターには限定的な意味でこんなものも存在する。
競技やスポーツで使われる用途なのだが、優勝を狙う集団と言う意味ではこの意味も該当するであろう。
『勝利者』という意味が。
【C-4駅前/一日目 夕方】
【ブレンヒルト・シルト@終わりのクロニクル】
[状態]:疲労(中)、左半身に火傷(小)、左腕欠損(ARMSで代替)、ARMS復旧率90%
[装備]:汗で湿った尊秋多学院制服(左袖欠損)、ARMS『騎士(ナイト)』@ARMS(左腕に擬態)、全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero
アリス・ザ・コードギアスの衣装@ナイトメア・オブ・ナナリー
[道具]:支給品一式×2、アンフェタミン@Fate/Zero
[思考・状況]
基本行動方針:優勝狙い
1:殺し合いに優勝し、優勝者の褒美でナナリーを含む全ての参加者を『蘇らせる』
2:望みが同じ参加者とは協力する
3:リヴィオ、ロベルタ、ミュウツーと手を組む。具体的な方策を話し合う。
全員蘇生についても話す予定。
4:佐山と新庄には注意(特に佐山)
5:1st-G概念を行使できるアイテムを手に入れる
6:ミュウツー、ラッド、詩音を許すつもりはない
7:御坂美琴、真紅、橘あすかは見つけ次第殺す
8:ARMSが完全に回復するまでどこかで休憩する。
※ARMSコアの位置は左胸です。
※アリスの衣装はネモが変化した姿です。ネモの意識、特別な力はありません
※髪を切りました
※ARMSは電撃を学びました、以後電撃を浴びても操作不能にはなりません。
【リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】
[状態]全身治癒中、内臓にダメージ、左腕再生中・見かけは復元、背中にダメージ小、胸にダメージ中 背中のロボットアーム故障
[装備]M94FAカスタム・ソードカトラス×2@BLACK LAGOON、.45口径弾×14、.45口径エンジェルアーム弾頭弾×4@トライガン・マキシマム
[道具]支給品一式×6、
スチェッキン・フル・オートマチック・ピストル(残弾20発)@BLACK LAGOON、
ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、.45口径弾24発装填済みマガジン×3、45口径弾×24(未装填)
天候棒(クリマ・タクト)@ワンピース、ミリィのスタンガン(残弾7発)@トライガン・マキシマム、三代目鬼徹@ワンピース
[思考・状況]
0:ラズロが戻るまで必ず生き抜く。
1:参加者の排除。ウルフウッドとヴァッシュに出会ったら決着を付ける?
2:ウルフウッドを強く意識。
3:身体が万全になるまで戦闘は避ける。
4:ロベルタからパニッシャーを手に入れる。
4:ナイン、ロベルタ、ミュウツーと手を組む。具体的な方策を話し合う。
【備考】
※原作10巻第3話「急転」終了後からの参戦です。
※とりかえ手ぶくろによって左腕を肩口から奪われました。
※ラズロとの会話が出来ません。いつ戻ってくるか、もしくはこのまま消えたままかは不明です。
【ロベルタ@BLACK LAGOON】
[状態]:メイド服を着用 薬物依存、疲労(中) 右腕に切り傷(応急処置済み) 、肋骨にヒビ、腹部にダメージ小、眼鏡なし 、
[装備]:パ二ッシャー@トライガン・マキシマム(弾丸数20% ロケットランチャーの弾丸数2/2) コルト・ローマン(6/6)@トライガン・マキシマム
投擲剣・黒鍵×4@Fate/zero
[道具]:支給品一式×3(水1/4消費)、コルト・ローマンの予備弾35 グロック26(弾、0/10発)@現実世界
謎の錠剤入りの瓶@BLACK LAGOON(残量 55%) レッドのMTB@ポケットモンスターSPECIAL
パ二ッシャーの予備弾丸 2回分、ロケットランチャーの予備弾頭1個、キュプリオトの剣@Fate/Zero 、首輪(詩音)
[思考・状況]
1:サカキとのゲームに乗り、殺し合いに優勝する。
2:必ず生きて帰り、復讐を果たす。
3:ナイン、リヴィオ、ミュウツーと手を組む。具体的な方策を話し合う。
心を許す気はない。
【備考】
※原作6巻終了後より参加
※康一、ヴァッシュの名前はまだ知りません。(よって康一が死んだことも未把握)
※詩音を『園崎魅音』として認識しています。
【ミュウツー@ポケットモンスターSPECIAL】
【状態】:疲労(大)、右手負傷(小)
【装備】:機殻剣『V−Sw(ヴィズィ)』@終わりのクロニクル
【所持品】:基本支給品一式、どこでもドア@ドラえもん
【思考・行動】
0:当面は様子を見つつ、ギラーミンのいう『ノルマ』をこなす。
1:マスター(カツラ)を救う為、24時間以内に参加者を32人以下まで減らす。
2:隙を見て参加者に攻撃を加える
3:ナイン、リヴィオ、ロベルタと手を組む。具体的な方策を話し合う。
3:男(ラッド)には殺害数を稼いで貰う。殺すのは後回し。
4:魅音かハクオロが細胞を移植し、自分を追ってきたら相手をする。 魅音の死に気づいていない?
5:イエローを殺した相手を見つけたらたとえ後回しにしたほうが都合がよさそうでも容赦しない。
6:もしギラーミンの言葉に嘘があったら……?
※3章で細胞の呪縛から解放され、カツラの元を離れた後です。
念の会話能力を持ちますが、信用した相手やかなり敵意が深い相手にしか使いません。
※念による探知能力や、バリアボールを周りに張り浮遊する能力は使えません。
※名簿を見ていないため、レッド、サカキの存在を知りません。
※ギラーミンに課せられたノルマは以下のとおり
『24時間経過するまでに、参加者が32人以下でない場合、カツラを殺す。
48時間経過するまでに、ミュウツーが優勝できなかった場合も同様。』
※カツラが本当にギラーミンに拉致されているかは分かりません。偽者の可能性もあります。
※V−Swは本来出雲覚にしか扱えない仕様ですが、なんらかの処置により誰にでも使用可能になっています。
使用できる形態は、第1形態と第2形態のみ。第2形態に変形した場合、変形できている時間には制限があり(具体的な時間は不明)、制限時間を過ぎると第1形態に戻り、
理由に関わらず第1形態へ戻った場合、その後4時間の間変形させる事はできません。
第3形態、第4形態への変形は制限によりできません。
※男(ラッド)と戦った相手が「左腕が刀になる女」であると知りました。
※ギラーミンから連絡のないことへの疑問、もしカツラが捕まっていないという確証を得られたら?
※なぜギラーミンの約束したカツラからの言葉が無くなっていたのかは不明です。
投下終了です。
感想、意見、矛盾点などありましたら是非お願いします。
投下乙
悲しい……悲しい話をしよう
この4人が組むって、そりゃ一般人が入り混じってる対主催にとってはとてつもない脅威ですね。
一人当たりの戦闘力もバカみたいに高いし、対主催のお先真っ暗w
ピンと張り詰めた空気の中での交渉が面白かったです、
ナイン……やっぱりミュウツーへの恨みは忘れてなかったか。
ところで既に参加者4割な訳だけど、次の放送までにそろそろ主催位は決めたほうがいいんじゃない?
議論スレでも何でも使ってさ
投下乙です
マーダー連合ついに誕生か
クレアVSレヴィ、ラッドVSあすかと続いてマーダー連合と
このシルバーウィークの間に対主催側に向かい風が吹き出してきたな
そして全員マスター繋がりってのもおもしろい共通点だな
名づけるなら「マスター連合」とかその辺りか、まんまだけどw
これから対主催VSマーダーがどうなっていくのか続きの気になる展開でおもしろかったです
気づいたら二つも投下がお二方共に乙です。
>バッドエンドは…
あすか…これから成長の成果を出せると思っていたのに、
そしてラッドは新たに何を手に入れたのかそしてどっちに行くのか
レッドの一件があるとはいえ、グラハムへの信頼もあるレナやチョッパーのいる方にいくか
はたまた地下道での因縁再びの美琴の方向に行くのか楽しみです。
(そういや次の放送で真紅達驚きそうだな、)
>マスター…
優勝狙いの4人が仮初めとはいえ手を組んだ!
なんか○同盟やペドヴァンパイア組みたいに名前が付きそうだな
マスターという共通点を持つ4人は果たして勝利者になれるのか?
どこに行くにしても怖い集団だな。
そういやこの4人リヴィオにとってはゾロとヴァッシュ
ミュウツーにしてみればハクオロ
ロベルタにしてみればヴァッシュ
ナインにしてみれば新庄と
古城に因縁の相手?がことごとく揃ってるんだよな。
なんにせよ今後も楽しみになる話でしたお二方共にGJ!
あとゼロとクレアへ一言
ラッドとグラハムは信頼関係、古城組は一括りだとすると
会場に『仲間』と呼べる奴がいないのは君たちだけだぞ!
投下乙です!
何だこの連合怖いw
一人でも十二分な実力だし、二人二組になってしまったら勝てる奴が……
対主催涙目と聞いたのでスタンスまとめてみた
〇対主催(超人、準超人):クリス、グラハム、真紅、ゾロ、チョッパー
美琴、ライダー、ヴァッシュ、ウルフウッド
〇対主催(一般人):アルルゥ、レナ、佐都子、梨花、新庄、佐山、小鳥遊、まひる
〇マーダー:ラッド、クレア、ミュウツー、リヴィオ、ナイン、ロベルタ、ゼロ
〇スタンス不明:ハクオロ、水銀燈
対主催も戦闘面はまだ何とかなりそう。
それよりも考察が変態ペアに任せきりなのが心配だ
>>865 こうしてみると今は結構バランスがいいのか。
でも、対主催(超人、準超人)とマーダーの一人当たりの戦力は結構差がある気がする……
チームワークに期待か。
脱出に向けて具体案を持っているのは
変態ペアは勿論。
真紅、美琴ペアも地下に目を向けてるし、解読不能だけど本も持ってるから
いい線行ってるんじゃ無いか?
だが今後考察を進める暇がなくなりそうなんだよな、マーダーの協力で
考察してるのが死亡というのもある得るし
頭いいのが学校に集まったと思ったら即殺されたのもあるからなぁw
ハクオロさんが頭使い始めれば多少は…
というか聖上仕事しろw
ちょっとネタ振りでも、
今残っている参加者に一言エール、声援を贈るとしたら
誰になんて言いたい?
だから何でそういう寒いネタばっかり振るのかなあ
もっと簡単に、今後に期待してるキャラについてとかさ
>>869 難しいネタだなぁ……
ふむ、ここはペドヴァンパイアに
「もっとまじめにやれよ」とw
いや、十分クリスにとってはまじめなんだろうけどさ。
今一番ピンチというか、お前の判断で二人の子供の命が左右されるってこの人は分かってんのかね。
あ……人じゃないか
声援ってyellじゃね?
>>871 最後になんて実も蓋もないツッコミをw
一言かー…
まあとりあえず梨花ちゃまに
「がんばれ、壁は厚いよ」と言っておきたいw
ああもうあの二人ニヤニヤするよなぁ
黄金コンビの一人が欠けてしまった紅い子にも……
あー…、かける言葉が、みつからん……
頑張れ、めっさ頑張れ
そうだな…俺も梨花ちゃま・ニコ兄にエールを。がんばれ!
最弱キャラが頑張っていると応援したくなる。2人の掛け合いも非常に何というか…
後はハクオロかな…さぼってんじゃねぇえ!
お面君のJKジンクスに期待
女子高生もう残り二人しかおらんがなw
それにしても古城組は面白いのが集まったよなぁ
寄せ集めっぽいというか、他の組と違ってちぐはぐな感じがする
何かイマイチぱっとしないやつらが集まってると思えなくもない
今まであんまり活躍してない連中だな
全員ほとんど面識がないからかな>ちぐはぐ
コンビが変態コンビ、迷いに迷ってやっとまともな人と会えたゾロ、働け聖上、
傷心中の銀様、ちょっと立ち直ったラブアンドピース
単体でみるとものっそい濃いのになぁw
全体で見るとなんか統一感がない
ワンピースのキャラまだ死んでないのか
小鳥遊・佐山も古城行きが確定したな。こっちは相方が両方いるし、考察と戦力の両方が揃うのがいい感じだ。
問題は、マーダー4人組も古城へ行く可能性が無きにしもあらず、ってことか。
もしそうなったら……12人が1箇所に集合する事に。
また火種が増えるのかw
12人ってほぼ半分じゃないか
これ謎とか主催者とかほっとくと展開においていかれそうだ
パッとしないキャラは後半で活躍するのがお約束だから期待
そのままフェードアウトする奴も多いが
某青ダヌキの事かー
ここでは空気のまま死んでしまったな。蒔いた火種は中々大きかったけど
地味に遊園地北部も火種の臭いがするんだよな
クレアがどっち行くかにもよるけど
レナ、チョッパー、梨花、ウルフウッド、ライダー、グラハム
ラッド、ゼロ、沙都子、アルルゥ、クリストファー、クレア
こっちも12人いるからいろんな意味で楽しみな組み合わせが
多い、
つかグラハム、どのグループとも何かしらのつながりが有るんだし
いい加減そろそろ起きろ
再起不能寸前だったクレアがいつの間にか(ry
サザエさんの努力が(ry
ニコ兄がんばれよw
久々にきたが大分進んだんだな。
残り人数ももう26人か。
新しい予約も入ってるしこれからどうなるか楽しみだ。
予約来た!
……それも新人さんだと!?
しかもとうとう動きが見え始めたグラハム、
どうなるか非常に楽しみだ。
>887
誰の髪型がアトム見たいだって?
「ゼロ様が見てる」状態だったペドヴァンパイア達に更にグラハムとライダーだと…!?
なんて一波乱ありそうな面子なんだ
しかも新人さんとはwktkが止まらないぜ!
とりあえず
逃げてー、アルルゥ超逃げてー!
そういや今の予約次第じゃ放送って以外と近いのかな
夕方に突入して無くても佐山・小鳥遊やクレアは問題なさそうだし
(移動なり放送までの休息なりいくらでもなんとかなる)
○同盟、マーダー連合、古城組、真紅組はもう夕方だし
あっ、新庄君の変身(DVDだと霧が無くなってる奴)があるのか
そういやスレの残り容量大丈夫なのか?
もし前後編とか来たら足りなくね?
ここでは初書き手さんだからどのくらいの長さになるか
予想出来ないな。
書き手がここ見てるなら、次スレが必要になるかどうか
聞いて見るのがいいんじゃないか。
分割級じゃなくても25kbくらいでもヤバい
テキストの時より多くなるから
報告させていただきます
とりあえず二分割は確実かと
出来れば、どなたか新スレを立てていただけると有り難いのですが……
あと、現在推敲中なので明日の夜には投下できると思います
>>897 了解です、楽しみに待ってますね!
>>898 スレたて乙
もう次の放送も見えてきたか……
次の放送でも色々と波乱を呼びそうだね。
ねーねー、圭一を失った沙都子。
サカキと共闘状態だったヴァッシュ。
……そしてパートナーを失った真紅。
これからの展開も、色々楽しみだ。
お待たせしました
これより投下します
支援
Q、クリストファー・シャルドレードについてどう思いますか?
「ただの仕事仲間だ」
「同じく。それ以上でも以下でもない」
「おお、彼は我らと同じフラスコの中のこびと。
しかし赤いこびとはその小うるさい口で囀るのです、出して、出してと。
もしもそれを創造主が認めるならば、我らは大手を振って別れを告げるでしょう。
ああ、彼はどこに行き、何をするためにこの世に生を受けたのでしょうか……?」
「少しは黙ってろ、『詩人』」
「あはは、またシックルに蹴られてるよ『詩人』さんったら。もしかしてマゾなのかな?」
「ぼ、僕に言われてもわからないんだなあ」
「どう思うかっていわれたら、やっぱり友達かな。
ヒューイの糞変態野郎と違ってクリスは優しいし」
「ク、クリスさん……どこ行ったんでしょうね……?」
「あれ、アデルいたの?」
「彼はなかなかに面白い。人間になりたいのにそれを恐れている、矛盾した存在ですよ」
「クリスって何考えてるのか良く分かんないからあんまり好きじゃなかったなあ」
「それは貴方がまだ幼いからですよ、リーザ。もっと大きくなればきっと分かります」
「そうなのかなあ……まあ、どうでもいいや。私はお父さんがいればいいもん!」
「クリスって……あの赤目のクリストファーですか?
どう思うって聞かれても、ほんの数日一緒にいただけだし、何とも言えないな。
結局いつのまにか居なくなってたし、なんかあの事件は良く分かんなかったなあ……ああ、申し訳ない。
やっぱり変な奴だとしか言えません。あと、優しい振りして極悪人ですよ、あいつ。
あんなこと堂々と言われるとは思ってもみませんでした……えっ?なんて言われたかって?
…………あなた、死なない人間って信じます?」
「彼は僕の唯一の友達、それだけだ」
Q、ゼロについてどう思いますか?
「純粋に凄い奴だと思うよ。いつも他の誰にも思いつかない作戦を立ててくるし……」
「俺たち、黒の騎士団にとって無くてはならない存在だよな」
「あったりめえだろ!ゼロの大親友である俺様が言うんだから間違いねえ、ゼロは凄い奴だ!」
「でも、ここだけの話、何考えてるのか全然分からなくて不気味よね……」
「そもそも、あの仮面は何なんだろうな?ファッションって訳でもあるまいし」
「人には、誰にも言えない秘密が一つや二つはあるもんだよ……ゼロは俺たちのリーダー、それで十分だろ?」
「まあ、扇がそう言うんなら……」
「我らがブリタニアに刃向かう愚かなテロリスト、それだけだ」
「めっちゃくちゃダサいよねえ、あの仮面とか」
(あれ、ちょっと格好いいとか思ったのは黙っておこう……)
「いかなる敵であろうと関係ない。私たち特殊名誉外人部隊(イレギュラーズ)は作戦に従うだけ」
「私の目の前でその名を口に出すな、叩き斬るぞ」
「それにしてもコーネリア様さえ生身で倒すあの強さ、彼は本当に何なんでしょうね?」
「我らがコーネリア様を二度も辱めたのだ。極刑すら生ぬるいわ!」
「あいつは……魔道に俺の親友を誘い込んだ、ただの魔女だ」
「私が滅びを与える愛すべき兄さんだよ……クックックックックックック」
「私が世界で一番愛している大切なお兄様です!」
◇ ◇ ◇
「……以上が私が知っている全ての情報だ。これ以上語れることは何もない」
「その水銀燈という方は本当にゲームに乗っていたんですの?」
「間違いない。アリスになるために手段は選ばないと言っていた」
「それなら翠星石の言ってたアリスゲームってのと辻褄も合うしねえ」
「……さあ、次はそちらの番だ。こちらが全て明かしたのだから、そちらも隠し事は無しで頼む」
嘘だ。語っていないことはまだまだある。
例えば、湖城の大広間に存在した三つの○の空洞。
例えば、水銀燈という危険な人形と自分たちがついさっきまで組んでいたこと。
例えば、自分たちがゲームに乗っているという事実。
(この程度の甘ちゃん集団、騙すのは簡単だな)
殺し合いの場で、まるでピクニックでもしているかのようなふわふわとした雰囲気がそこにはあった。
バットを振り回す少女。それをすいすい避ける吸血鬼のような男。ただその光景を見つめている獣耳の少女。
状況説明だけなら危険極まりないが、全員に緊張感は全く存在していなかった。
それでも流石に見知らぬ他人との接触ならば、と思ったがこれも大外れ。
C.Cもデイパックを彼らの方に放り投げただけで「乗っていない」と判断され、少々拍子抜けの感は咎めない。
そこから流れるような情報交換。待ち望んでいた展開ではあったがここまで上手くいくと返って恐ろしい。
初めは電車に乗りながら、という提案もあったが、C.Cはそれを拒否した。
表向きの理由は、このエリア付近でいったん別れた男達と合流したいから、というもの。
しかし、実際の理由はもちろん違う。
(確かに電車内なら逃げられる可能性は低い。
だが、相手の力量を見誤ってしまえば、電車内で逃げ場がないのはこちらも同じ。
マシンガンでも乱射されれば事だからな、余計な傷を負うのは避けたい)
よって、とりあえずは出会った辺りの林の中で、少し開けたところに腰を落ち着かせている。
少しばかり悲痛な顔を作りながら、水銀燈が彼女の同行者達を皆殺しにしたと吹聴しておく。
どうせこの後殺すのだから、話自体は信憑性を持たせるためにある程度の真実を話しておいたが。
「へえ、これって爆弾かな……」
「クリスさん!勝手にアルルゥのデイパックを漁らないでください!」
「でも、アルルゥは良いっていってくれたよ。ねえアルルゥ?」
「ん」
「そういう問題じゃなくて!今はこちらの方の話を聞く方が先でしょう!」
「すまん、続けても良いか?」
赤目は支給品の解説を読みながら適当にこちらの話を聞き流し、それを金髪の少女が注意すること3回。
出会ったばかりのC.Cも、赤目が酷くマイペースであることだけは理解した。
それに対し、人見知りが激しいらしい獣耳の少女がこちらをじーと見つめていたのは気になったが。
それも彼女が金髪の少女に諭されてからは問題も起きていない。
(獣の耳、か。一応注意は払っておいた方が良いか?)
自分たちはそれぞれ違う世界から連れてこられた、と言うことは既に知っている。
人形が動く世界があるのだから、人間と獣が混ざったような世界があっても何らおかしくはない。
問題は、彼女の能力がどこまで獣に近いのかと言うことだ。
(鼻がきく、という可能性もある。もしかすると……)
「なるほど。そちらも苦労したのだな」
懸念を顔には一切出さずに彼らの話に耳を傾ける。
どうやらゲームが始まった当初、あの水銀燈の姉妹である翠星石と彼らは行動を共にしていたらしい。
その後、赤目の男、クリストファーが以前殺し合ったらしい赤髪の男と交戦。
翠星石は目の前の少女、北条沙都子を庇ってその人生を終えたらしい。
馬鹿な人形だ。出会ったばかりの他人のために命をかけるなど。
そんな嘲笑を微塵も表に出さないまま、話を聞きながら少し悲しむような素振りを見せる。
ほら、簡単だ。これだけで彼らは自分のことを「優しい人間」だと勘違いしてくれるだろう。
学校で殺したあの男達と比べれば、なんとも単純なお人好しどもだ。
気になるのは、巨大な人形を従えた赤髪の男。
少女が撃退できるレベルなのだからそこまで驚異にはならないだろうが、一応注意はしておくべきだろう。
加えて、自分が最初に出会った柄の悪そうな女。
彼らも接触したらしく、名前はレヴィというらしい。
腕に大怪我を負ったらしいので、こちらもそこまで驚異ではないだろう。
しかし、あまり良い別れ方はしなかったがまた接触する可能性は十分にある。
今のこちらはマッチョ仮面とかけ離れた姿だが、服装でばれるかもしれない。
そうなれば面倒くさいこととなる、何しろ一度彼女と自分は戦ったのだから。
少なくとも、良い印象は持っていないだろう。
よって、このまま彼らと共に行動する、と言う選択肢は改めて排除された。
(……これで、こいつらを殺す理由が一つ増えたな)
そう自然に考え、思わず苦笑を心の中で漏らす。
自分はルルーシュの共犯者だ。彼が殺し合いに乗ると言ったら反対はしないし、罪の意識も感じない。
彼が殺し合いに乗ったのは至極当然のこと。疑問を挟む余地はない。
ルルーシュの行動はいつでも一つの根底から成り立っている。
ナナリーが幸せな生活を送るために。
そのためならば悪魔とだって契約するし、大国にさえ立ち向かう。
それほどまでに、ルルーシュは妹を心の底から愛していた。
そのナナリーが、死んだ。
何の前置きもなく、ただ黙々と語られる放送。
ナナリー・ランペルージ。
たった一言が、ルルーシュの全てを粉々に打ち砕いた。
その後の彼の一連の行動は、暴走と言っても差し支えない。
いくら彼が合理的な判断の下に行動したと主張しても、また実際にそうだったとしても。
あれは、あの虐殺劇はどう見ても暴走だった。理性ある暴走だった。
別に、C.Cがそれを咎めることは未来永劫無いのだろうが。
(さて、そろそろ……やるか)
そして、双方の話が終わり、舞台は次の局面を迎える。
「さて、これで話すことは何もない……か」
「これからどうしますの?とりあえず、ゼロさんはお仲間さんを探しに?」
「おとーさん、はやくみつけたい」
「クリスさん、何をしてるんですの?」
黄緑の髪を持つ美女、金色の髪を傾げ疑問を表す少女、ただ父の安否を気遣う獣耳の少女。
三者三様の言葉を聞きながら赤目の男は無言でやおら立ち上がり、デイパックに手を伸ばす。
沙都子のそれから取り出したのはF2000Rトイソルジャー。
小学生でも撃つことが出来る「怪物」を手に携え、八重歯がにやりとこちらに向いた。
何度も見たことがあるはずなのに、何故かその笑みに寒気が走る。
「……何のつもりだ?」
「いや、ちょっとした保険だよ」
目を白黒しながら状況に唖然としている沙都子。
少し顔をこわばらせながら、己のデイパックを掴むアルルゥ。
そんな彼らを無視しながらクリスは囀る。
C.Cもゆっくりと立ち上がりながら服についた土を払い、挑戦的な目でそちらを睨む。
「説明して貰えるなら嬉しいんだが?」
「まあ、ありがちにいえば殺気を感じたってところかな」
そう言われても沙都子にはさっぱり分からない。
ただ、そう言われてみると確かに目の前の女は少し浮き足立っている気がしないでもない。
しかし、それだけ。彼女のように幸せな日々を過ごしてきた普通の人間では感じ取ることは出来ない、僅かな殺気。
クリストファー・シャルドレードは副業として殺し屋を営んでいる。
相棒のチーと共にアメリカ中で依頼を受け、アメリカ中で人を殺す。それが彼の日常だった。
クレア・スタンフィールドに敗れ、人が殺せなくなってからはその副業も停止していたがそれでも彼が長年殺し屋をやって来たのは事実。
彼が『不老』だという事を考えると、『長年』というのは5年や10年では到底あり得ない。
実際にどれほど殺したのかは分からない。恐らく本人も覚えていない。
そして、彼はわざわざ狙撃などという無粋な真似は行わない。
ただターゲットの目の前に現れ、花を摘むような気軽さで、殺す。
相手が複数の場合だってもちろんある。反撃なんてものはない方がおかしい。
そんな生活の中で不死者でもない彼が生き延びてこれたのは、一重に実力のたまものに他ならない。
常人ならばとうに二桁以上死んでいるような修羅場を鼻息一つでくぐり抜け。
愛用の銃剣を手に赤目を輝かせ、尖った八重歯を見せつけながら。
斬り、撃ち、殺す。それが彼の日常。
そんな死と隣り合わせの生活を送ってきた彼だからこそ気付く、懐かしい臭い。
目の前の女、いや、その裏側から滲み出る死の臭い。
「何か、僕たちに隠してないかな?例えば……人を殺したとか」
「…………」
「おねーちゃんから……血の臭いがする」
「…………」
「どういうことですの!?ちゃんと説明してくださいまし!」
「…………」
全ての言葉を聞き流しながら、魔女はただ思案にふける。
そして。
「良いだろう、まずはお前からだ」
沙都子が嫌な予感を感じ、しかし何をすれば良いのか分からなかったその時。
目の前の女の姿が突然かき消え、そして別の何かがその場に姿を現した。
真っ黒なマント、身体を包むぴっちりしたスーツ、そこから覗くボディーラインは見事な物だ。
何よりも特徴的なのは、その顔面を覆う不気味な仮面。
見る者に不安や恐怖を抱かせ、逆に装着者の感情を包み隠す。
こちらからは、素顔もその表情を窺い見ることは出来ない。
(だれ?いいえ、まずどこから!?)
混乱する頭が今の状況に必要のない答えを求めてしまう。
いくらトラップマスターの異名を持った所で、彼女はそういう方面のこととは無縁に生きてきた。
そして、殺し合いというものは酷くせっかちで着いていけないものは容赦なく振り落とす。
結論から言えば、彼女は非常に運が良かった。
もしも彼女が最初に狙われていたならば、なすすべなく×されていただろう。
だが、全く無防備だった彼女は最初のターゲットとはなり得なかった。
確立は三分の一といい、かけるチップが一つしかない命である以上これはギャンブルに例えると大勝ちの部類に属する。
しかし、彼女がその幸運を喜ぶかどうかはまた別の問題ではある。
困惑する幸運な少女の目の前で、何かが吹き飛ぶ。
それは冗談みたいにあっけなく近くにあった木の幹に突っ込み、停止した。
「アルルゥ!?」
「ほう、とっさにデイパックを盾にしたか」
こちらの少女、アルルゥはもまた、運が良かった部類にはいるだろう。
瞬時の判断でとっさに掴んだ自身のデイパックを身体の前にかざし、緩衝材とする。
そのまま、ゼロの腕がデイパックを突き破る直前に後ろに身を投げ、更に危険から離れる。
手刀による刺殺はなんとか免れたものの、予想以上の衝撃までは避けることが出来なかったが。
魔王の圧倒的な怪力による衝撃を緩和したデイパックはもはやその原形を留めていない。
内部はどういう構造になっているのか、中に入っている物は全く損害を受けておらず破けたデイパックから剣の柄がはみ出ている。
「さて、二人目だ」
そう呟いた仮面の男が視界からかき消えた。
次の瞬間、彼が居たその地点に届く弾丸の嵐。
仮面の男は危なげなく右に身を投げ、こちらが反応できない速度で迫る。
黒のマントがこちらに届くかと思われたその瞬間、またもや襲い来る銃弾。
沙都子を避け、仮面の男にだけ当たるように調節されたそれを再び驚異的な速度で回避。
赤目の男が沙都子と呼ばれた少女を後方に引き寄せるのを目の端で捉え。
「やはり一筋縄でやらせてはくれんか」
「あらら、僕もなめられたもんだね」
アサルトライフルを構え、流れ出た冷や汗を真っ赤な舌で舐めとる。
けん制の弾幕をばらまきながら、もう片方の手で沙都子をアルルゥの方に押し出す。
彼女を連れて逃げろと。赤い視線がそう告げているのを理解しながらも、沙都子は引かない。
「私も戦いますわ!クリスさんだけに任せるわけにはいきません!」
心強い仲間達をこの場に顕在させようとして、ボールをデイパックから取り出し。
「駄目だ、この場から離れてくれ」
仲間のはずの赤目の男にその手を押さえられ、驚愕に目を開く。
どうして?自分とクリスが力を合わせればあの男もきっと……
抗議の声を上げようとして、それを読んでいたかのような相手の言葉。
「沙都子、あの変な仮面の動きが見える?彼は恐ろしく早い。もしかしたらあいつよりも……
残念だけど、ポケモンっていうのは指示を受けなきゃ動かないんだろう?
はっきりいって、君の反応速度程度でその子達が動くと間違いなくやられる」
「そ、そんな……でも、クリスさんが動きを止めてくれれば……」
「君の友達が流れ弾で殺されても文句を言わないなら構わないけど?」
残念ながら、沙都子の手持ちは殆どが近接攻撃を主とするポケモン達だ。
接近戦を挑むために相手と密着する必要があるポケモン達にとって、銃の援護はむしろ危険となる。
遠距離攻撃はニョロの冷凍ビームやみずてっぼうはあるが、それ以前の問題が一つ。
(まあ、仕方ないよね。彼女は俺とは違って『あっち側』の人間だったらしいし)
クリスの言うとおり、沙都子はあの化け物と戦うにはあまりにも遅かった。
彼女は何の訓練も受けていないただの子供。仲間達と無邪気に遊ぶのが日課だった表側の人間。
いくら大人顔負けに頭は回っても、ここにいる人外達に反応速度は遠く及ばない。
クレアの時のように事前にポケモンに指示を出していればある程度は対応できる。
しかしそれは、相手の行動をある程度予想してのこと。
突然現れた仮面の男。彼の行動を予測しトラップを仕掛けるにはあまりにも時間が足りない。
沙都子が作戦を考えて指示を出す間に、仮面は間違いなく次の行動に移っている。
その結果犠牲になるのは、彼女自身ではなく、ポケモンたち。
沙都子は彼らを犠牲とするにはあまりにも優しすぎることを、クリスは理解している。
そうなれば、あとはクリスのように人を殺すために生み出された道具を頼るしか手はないのだが。
「銃、使ったこと無いよね。いや、それ以前に君は人を殺す覚悟を持っているとは思えない。
はっきりいってそういうのにうろつかれると迷惑だ……邪魔なんだよ」
突きつけられる残酷な現実。
理屈は分かる。誰だって三人の身を守るよりも自身だけを守った方が楽だと。
クリスのためを思うならば、足手まといになる自分は居ない方がましだ。
最善の答えは既に目の前に。しかし感情がその最適解を否定する。
どんなに人格に問題があっても、今まで一緒にいてくれた恩人を見捨てることなど出来ないと、彼女の心が邪魔をする。
「でも……」
「勘違いしない方が良い、僕だって自殺志願者じゃないんでね。
ちゃんと、あいつを追っ払う作戦くらい考えてるさ……行ってくれ」
沙都子は、クリスが人を殺せないことを知っている。
だから、今の話が9割方嘘だと言うことも理解できた。
だが、それが分かったところでどうすることもできない現実。
ただ歯がみすることしかできない自分を呪いながら、決断。
せめてもの援護として、デイパックから最愛の兄、悟史の金属バットを。
そしてトイソルジャーの予備弾薬をクリスのデイパックに移し替える。
(にーにー、どうかクリスさんを守ってください……)
「……ニョロさん、お願いします」
赤髪の男との戦いの際、頼りにした異形が再びその場に現れる。
今度は、気絶した仲間を移動させるための運搬役として。
圧倒的な力に屈し、二人の少女は森の奥に消えていった。
これでどっちもさる復帰
そして、残された赤目と黒面。
「さあ、始めようか。まさか待っててくれるとは思わなかったけど」
「貴様らが分離してくれるなら好都合だ。わざわざ楽をさせてくれて感謝するぞ」
「はははっ!面白いことを行ってくれるじゃないか、後悔しても知らないよ?」
互いに言葉のジャブを交わし。
殺し屋は銃を手に笑い、テロリストは拳を握りしめ。
殺し合いが、始まった。
◇ ◇ ◇
ゼロの考えで行くと、北条沙都子は最後の仕上げに殺される予定だった。
当初通り、最も警戒すべきは赤目の男。
自然がどうとかほざく腑抜けた男だと一時は思い直していたが、こちらの殺気を見抜いたことで再び警戒度は最大まで引き上がる。
既に銃を手に持っていたことからも、彼を最初に狙うのはいささかハイリスクだとも言えた。
よって、どの程度の実力か見極めるまでは保留。手痛い反撃を受けることは避けたい。
逆に、最も警戒しなくても良いのは金髪の少女。
赤目の男に言われるまでこちらの殺気に気付かなかったり、ゼロへの変貌をただ呆然と見つめていたり。
典型的な一般人。警戒度は最底辺に位置する。
よって、彼女は最後。例え未知の支給品を使おうが、使う本人が脆弱ならば問題はない。
最初に狙うべきはこちらの血の臭いに気付いたもう片方の少女。
やはり先程の警戒はこちらに染みついた血の臭いに対してのものだったらしい。
しかし、このような場で赤目が動くまでそれを伝えなかったところを見ると、そうとう危機感に乏しい。
多少は人間離れしているらしいが、所詮は適切な状況判断ができぬ獣の子供。
それでも、あの一瞬でデイパックを盾にした「野生の勘」ともいえるものには計算を狂わされた。
本来ならば彼女を速攻で殺し、最悪赤目の男達に逃げられても湖城の○に必要な小さめの首輪だけでも、と思っていたのだが。
(まあ、問題あるまい。子供の足ではせいぜい1エリア程度しか短期間で動けん)
今の最重要目的は目の前にいる赤目の男の抹殺。
戦闘能力に乏しい子供なら何人群れようがただの餌だが、強いもの同士が手を組むと厄介なことになる。
よって、あの少女達は後回し。先にこの男から片付ける。
「舐めているのか?我に鉛玉など通用しない」
相手の銃は中々の連射性を持っているようだが、未だこちらに擦りすらしていない。
なかなか出来る奴だと思っていたのだが、こちらの見込み違いだったのだろうか。
遂に弾が切れたのだろう、男は後ろ手にデイパックを探り予備弾薬を漁っている。
(あまりにも遅い。ここで詰みか)
確かに男の動作はよどみなく、予備弾薬を取り出し、取り替えるのに3秒もかからないだろう。
だが、自分の身体能力にかかれば、その3秒は致命的だ。
弾幕を避ける横の軌道を一瞬で訂正。そのまま前方に足を向け、地を駈ける。
それなりの距離を取っていたが、男までの接触は2秒以内。いける。
「さらばだ、無力な只人よ」
五指を一直線に伸ばし、相手を貫く動作。
人間がすれば精々相手を悶絶させる程度だろうが、魔王の力はそれを本物の刀並みの殺傷力に変換する。
ようやくお目当てのものを探り当てた赤目が勢いよく何かを引き抜く。
意外なことに、加速する風景の中で彼の掴んだものは、予備弾薬ではない。
かといって、刀剣や他の銃といった武器類でもあり得ない。
(あれは……まさか爆弾の類か!?)
男の手に握られた、赤と白でカラーリングされた真っ赤な球体。
まさか、自爆覚悟で特攻する気だろうか。
どの程度の威力か分からないが、彼はこちらを殺す十分な威力がそれに込められていると思っているらしい。
残念ながら、こちらにはそれを避ける手段がある。とんだ拍子抜けだ。
自爆してくれるのなら大いに結構。首輪やデイパックは残しておいて欲しいものだが。
おもむろに見せつけ、こちらが攻撃を止めると勘違いしてくれるのなら更に結構。
爆弾だろうが何だろうが迷いはない。ただ相手を殺すのみ。
スピードを殺さず、そのまま直進。
相手が球体の中心にあるボタンらしきものを押す。やはり爆弾だったか。
「魔王にそんなものは通用しない」
だが、その時不思議なことが起こった。
球体はパックリと割れ、中から何かが飛び出してくる。
それは通常では考えられない超巨大な蜂のような姿を晒す。
恐らく、何らかの技術により小さなボールに閉じこめられた化け物を使役できる、という支給品なのだろう。
異形の化け物はこちらに相対する男のように真っ赤な目でこちらを睨み。
「ダブルニードル」
赤目の男の言葉一つで、こちらにその針を向ける。
巨大な二針から繰り出される高速の一撃。
面白い。たかが蜂の分際でこの魔王に逆らうとは。
「万死に値する!!!」
とっさに握りしめた全力の拳でそれを迎え撃ち、衝撃。
先程までの風景が視界で逆再生。自分がふき飛ばされたのだと気付くのに数瞬かかった。
後ろの木々を突き破り背中に鋭い痛みが走る。
自分と渡り合った蜂も同じように反対側に吹き飛んでいるのを確認。
それを全く気にかけずに、今度こそ弾を詰め替えながらこちらに迫る赤目。
イルカをモチーフにしたような八重歯がランランと輝き、銃口がこちらを向く。
とっさに後方の木を蹴り飛ばし、上へと逃れる。
代わりに掃射を受けた太木の幹に幾つも傷が刻まれる。
「あああああああああ、愛する自然を傷つけちゃったよ!?」
悲しげに叫びながらも空中のこちらから目を離さない憎き対峙者。
まだまだ状況は予断を許さない。次の手を仮面の下でめぐらす。
そこで頭をかすめる違和感が一つ。
(あの木に刻まれた銃弾の跡、どこかおかしい)
普通に考えれば、銃痕はゼロの存在していたところを中心に生まれるはず。
しかし、もし一瞬見えた記憶が間違っていなければ実際のそれは中央に一切残っていなかった。
よくよく思い返してみれば、今までの銃弾もこちらの中枢、胸や頭部を狙っていない。
(手加減されている?いや、そこまでの余裕を持っているようには見えなかった。
こちらを殺さずに無効化しようとしている中途半端な偽善者か?それとも、人を殺すのが怖い臆病者か?)
様々な可能性が一瞬で脳裏に浮かぶが、それを全て振り払う。
相手の弱点を見つけたのならば、それを利用するだけだ。
◇ ◇ ◇
(さて、どうするかなあ……)
吹き飛んでいく仮面の男を追いながら、予備弾薬をセット。
蜂君こと、スピアーは気にしない。自分は沙都子と違い彼らを道具としか見ていないのだから。
自分も道具として扱われることに慣れているので、嫌悪感は一切ない。むしろ当然だとさえ感じる。
あと何度『使えるか』くらいは気にしていたが。
クリスはゼロに、そして大半の参加者に勝利することが出来ない。
殺し合い、という観点から見て「殺せない」というのはすなわち敗北を意味する。
彼に出来ることは、せいぜい殺さないで相手の自由を奪うことくらい。
仮にゲームに乗ったとして、自分以外の参加者が同士討ち、もしくは餓死することでしか自分は勝利を得られない。
あまりにも非効率的。かつ運の要素も大きく関わってくる。
(それに、そんなのつまんないし)
そもそも、あの赤目の男に出会った時点でクリスは優勝をとっくに諦めている。
それならば、あえて殺し合いに乗らずにここから脱出を図るグループと一緒にいた方が生き残れる可能性は高いと彼は考えた。
新しい友達も出来るかも知れないし、という訳の分からない希望もあったが。
つまり、義憤でもなく他者への思いやりでも無く。
純粋に生き残りたいから、という理由で彼は沙都子たちと共にいる。
そして、自分が残った方が全員が生き残れる可能性が高いと踏んだからこそ、彼はここにいる。
相手は殺せない。だが自分も殺されたくない。
自然と出来ることは限られてくる。一番楽なのは相手の戦力を奪うこと。
意志だけでは人は殺せない。物理的に殺し続けてきたクリスには自明のことだ。
(とりあえず、死なない程度に……ね)
己の時代には存在し得ない高性能のライフルを構え、相手の腕や足を狙い、撃つ。
出血多量による死もあるかもしれないが、そこまで構っては居られない。
(これで終わってくれれば良いんだけど、甘いよね)
予想通り、仮面は常軌を逸する強さで後ろの木を蹴り飛ばしその身を虚空に飛ばす。
相変わらずの化け物ぶり。これでさえまだ傷一つ負わせられないとは。
冷静に銃口を上へ向け、照準を手足に合わせ……
「なっ……!?」
思わず目を疑う光景が、そこにはあった。
仮面の男は空中で強引に身体を丸め、マットの上で前転するように身を高速で回転させる。
一見すると無防備とも馬鹿だとも言える、もしかしたら美しささえ感じるかも知れない行動。
しかし、『人を殺せない』クリスにとって、それは狙うべき的が身体の中に収まってしまったようなもの。
どこを狙っても相手が死ぬかも知れない、という不安が引き金を引かせない。
そして、高速で行われる戦闘に空いた一瞬の隙間を魔王は見逃さない。
回りゆく視界の中でデイパックから黒鍵を二本取り出し、着地と同時に投げ放つ。
狙うは頭と胸。例え一撃でも致命傷を受けるのは確実。
こちらの着地を狙っていただろう赤目は不意を突かれ、咄嗟の思考で首をひねる。
滑らかな茶髪が一筋千切れて持ち主の元を離れ、しかし血球はそこに追随しない。
頭への一撃を避け、しかし胴体までは逃がしきれない男は一つの選択を強いられる。
すなわち、己の武器を犠牲にするという選択を。
学園都市製の科学の結晶が聖なる教会の黒き剣によって打ち砕かれる。
虎の子の超高性能アサルトライフルという牙を失った吸血鬼が後ろに下がり、魔王がそれを追う。
さきほどまでとは全く逆の構図。違うのはその速さ。
ゼロは己の圧倒的な身体能力を生かし、即座に赤目に肉薄。
赤目は胸を狙った一撃目に対し、身体全体を相手の腕に向かって水平に傾かせ、回避。
続けて少し上を狙ったもう片方の手斧を、今度は半身の姿勢から膝を曲げ姿勢を落とし、なんとかクリア。
しかし、しゃがんだ姿勢に容赦なく襲い来る直蹴り。
手に残っていた銃の残骸を、無理矢理に超高速で迫る足に合わせ、ぶつける。
指の先のグリップにまでもヒビが入り、刹那、完全にそれらはただの鉄屑となった。
続けて来るのは腕全体に走る鋭い痺れ。口の奥で挙がる悲鳴。
強引にポケットの中のグロック17を引き抜き、力の篭もらぬ指でトリガーを引く。
仮面は一瞬で距離を離し、身体を少し傾けながら死のカタチを後ろに見送る。