マルチジャンルバトルロワイアルpart15

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1創る名無しに見る名無し
様々な作品のキャラを使った上での、小説及び映画で有名なバトルロワイアルの企画を行おうというスレです。
小説・漫画・アニメのキャラが入り乱れていることから、マルチロワという名前になりました。
略して○ロワ。別に見るのに●はいりません。
この企画はリレーSS企画であり、ルールさえ守っていただければ、どなたでも参加可能です。
ルールの項に目を通していただき、分からないことがあれば気軽に本スレで聞いてみてください。
キャラ同士による殺し合いという内容のため、苦手な方は気分を害する恐れがあります。
読み進める際にご注意を、また自己責任でお願いします。



【過去スレ】
いろんなジャンルの作品キャラでバトルロワイアル
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220604468/
マルチジャンルバトルロワイアル part2
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221055898/
マルチジャンルバトルロワイアル part3
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221229891/
マルチジャンルバトルロワイアル part4
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221405474/
マルチジャンルバトルロワイアルpsrt5
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221749250/
マルチジャンルバトルロワイアルpart6
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221924153/
マルチジャンルバトルロワイアルpart7(実質8)
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1227019873/
マルチジャンルバトルロワイアルpart8(実質9)
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1230130775/
マルチジャンルバトルロワイアルpart10
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1232931721/
マルチジャンルバトルロワイアルpart11
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1235147692/
マルチジャンルバトルロワイアルpart12
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1235724325/
マルチジャンルバトルロワイアルpart13
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1237380564/
マルチジャンルバトルロワイアルpart14
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1241420923/

【したらば】
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11860/
【wiki】
http://www26.atwiki.jp/marurowa
【予約について】
 ・通常3日。延長は2日まで。(合計5日まで)
 ・したらばの予約スレで予約してください
【全キャラクター共通・スタート時の持ち物】
  地図、コンパス、懐中電灯、筆記用具、水と食料、名簿、時計、ランダム支給品1〜3
【MAP】
  (p)ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/70/405fccc08ebbff8b539e6e47e7acf801.png
   上が北、一マス一km四方、端はループしています。(例:A-1から北へ行けばH-1に出る)
2創る名無しに見る名無し:2009/06/02(火) 21:23:03 ID:3Gf0orWm
参加者リスト

6/6【うたわれるもの@アニメ】
○ハクオロ/○エルルゥ/○アルルゥ/○ベナウィ/○カルラ/○トウカ
6/6【BACCANO!@小説】
○フィーロ・プロシェンツォ/○エルマー・C・アルバトロス/○ラッド・ルッソ/○クリストファー・シャルドレード/○グラハム・スペクター/○クレア・スタンフィールド
6/6【ひぐらしのなく頃に@アニメ】
○前原圭一/○竜宮レナ/○園崎魅音/○北条沙都子/○古手梨花/○園崎詩音
5/5【スクライド@アニメ】
○カズマ/○劉鳳/○ストレイト・クーガー/○橘あすか/○無常矜侍
5/5【ローゼンメイデン@漫画】
○桜田ジュン/○真紅/○翠星石/○蒼星石/○水銀燈
5/5【ワンピース@漫画】
○モンキー・D・ルフィ/○ロロノア・ゾロ/○ウソップ/○トニートニー・チョッパー/○サー・クロコダイル
4/4【ジョジョの奇妙な冒険@漫画】
○東方仗助/○広瀬康一/○吉良吉影/○ジョルノ・ジョバァーナ
4/4【とある魔術の禁書目録@小説】
○上条当麻/○御坂美琴/○一方通行/○土御門元春
4/4【ポケットモンスターSPECIAL@漫画】
○レッド/○イエロー・デ・トキワグローブ/○サカキ/○ミュウツー
3/3【終わりのクロニクル@小説】
○佐山・御言/○新庄・運切/○ブレンヒルト・シルト
3/3【トライガン・マキシマム@漫画】
○ヴァッシュ・ザ・スタンピード/○ニコラス・D・ウルフウッド/○リヴィオ・ザ・ダブルファング
3/3【Fate/Zero】
○衛宮切嗣/○アーチャー(ギルガメッシュ)/○ライダー(イスカンダル)
3/3【BLACK LAGOON@漫画】
○レヴィ/○バラライカ/○ロベルタ
2/2【コードギアス ナイトメアオブナナリー@漫画】
○ナナリー・ランペルージ/○ゼロ
2/2【ドラえもん@アニメ】
○ドラえもん/○野比のび太
2/2【WORKING!!@漫画】
○小鳥遊宗太/○伊波まひる
1/1【ARMS@漫画】
○高槻巌
1/1【あずまんが大王@漫画】
○春日歩

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3創る名無しに見る名無し:2009/06/02(火) 21:23:25 ID:3Gf0orWm
【バトルロワイアルのルール】


 1.【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が優勝者となる。
 優勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 また、優勝の特典として死者の蘇生などのどんな願いも叶えられるという話だが……?
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。


 2.【首輪】
 参加者には設定されたルールを破った場合に備え、爆発する仕掛けの首輪の装着を強要する。
 首輪は以下のルールを破った場合に爆発し、その者の命を奪う。
  A-バトルロワイアル会場の外へと出ようとした場合。
  B-後述される禁止エリアの中へと侵入した場合。
  C-24時間連続で死者がでなかった場合、参加者全員の首輪が一度に爆破される。


 3.【放送】
 バトルロワイアル中、ロワの進行状況(誰が死んだか)と禁止エリアを報告する放送が定時毎に会場内へと流される。
 放送が流れるのは、「0時」「6時」「12時」「18時」の6時間毎、1日4回。


 4.【禁止エリア】
 放送から1時間後、3時間後、5時間にマス目で区切られた会場のエリアが1エリアずつ禁止エリアとなる。
 禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。 これは直前の放送でそれぞれ発表される。


 5.【支給品】
 参加者にはバトルロワイアルを生き抜くための道具や武器が支給される。
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。サーヴァントの宝具も同様。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。主催者の手によってか何らかの細工が施されており、明らかに容量オーバーな物でも入るようになっている。四●元ディパック。
 「地図」 → MAPと、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。【舞台】に挙げられているのと同じ物。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。肝心の食料の内容は…書き手さんによってのお楽しみ。SS間で多少のブレが出ても構わないかと。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。ちなみにアイウエオ順で掲載。 (尚、テンプレやwiki編集ではわかりやすさ重視で作品順名簿で表記しています)
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「照明器具」 → 暗闇を照らすことができる。ランタン、懐中電灯など、なぜか統一されていない。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。


 6.【最後に】
 以上以外のルールは存在せず、参加者間に禁じ手は存在しない。
 また、生き残りゲームではあるがその途中で手を結んだり、徒党を組むこともルール違反には当たらない。


 7.【書いてみたいという方へ】
 当企画はリレーSS企画です。なのでルールを無視した作品の投下は受け付けていません。ご注意ください。
 書き手として参加する場合のルールはこちらですので目を通してみてください。
 分からないことがあれば気軽に本スレで質問をどうぞ

 ルール説明のリンク>http://www26.atwiki.jp/marurowa/pages/56.html
4創る名無しに見る名無し:2009/06/02(火) 21:48:16 ID:P+pdYmng
最高に>>1乙って奴だァーッ!
5創る名無しに見る名無し:2009/06/02(火) 21:58:51 ID:r9dS7g7y
この世の理はすなわち>>1乙だと思いませんか!?
6創る名無しに見る名無し:2009/06/02(火) 23:14:14 ID:fgUrVRIS
スレ立て乙です!
7創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 00:15:50 ID:5+WiX/f8
スレ立て乙です。
で、したらばの仮投下スレに議論になったSSの修正版が投下されてますよ。
したらばに修正稿の仮投下がなされたので、Woの了解を得た上で先に代理投下を始めますー
Wo氏、と。敬称失礼しました
輝く陽光が市街地の家屋とビルディングを照らしている。
アスファルトで黒く塗り固められた路上には人の姿は無く、そのものたちが駆るべき車や自転車の走る姿もない。
音は無く、太陽に熱せられた道路から発せられる僅かな陽炎の揺らめきだけがあった。
そんな静寂に包まれた街を横切るひとつの河川があり、だがそこにかけられた橋は先ほどの戦闘で行使された強大な力によって折れ砕けていた。
その川に沿った土手から下りた先の河川敷にハクオロとレッドがいる。
芝生が敷き詰められた平らな場所だった。
そこに男がうつ伏せで寝かされている。
男の背中は真っ赤に染まっていた。
それは男が羽織っていたコートに染みた血液の色だ。
鋭い金属の破片が深く食い込んでいて、そこからにじむ血の量は見るからに尋常ではなかった。
顔に血の気は無く、一刻も早く適切な処置をしなければ手遅れになるであろうことは想像に難くない。
レッドは先ほどの少女に受けた電撃の痺れがまだ取れていない。
無理に動こうとする彼をハクオロが押しとどめ、まずは重傷の男をどうにかすべく治療のすべを探していた。
男が倒れていた場所には様々なものが散らばっていた。
一つ一つを見てみると、それらには食料やコンパスなど、ハクオロや魅音に配られていたのと同じ支給品が混ざっている。
そこから察するにこれは男の支給品か、それとも手ぶらでここから逃げ出した少女のそれであろうとハクオロは結論付ける。

「な……あ、何やってんだよ……はやく……治療しなきゃ……」

レッドの声だ。
まだ痺れが抜けない身体では口を利くのもつらかろうに、重傷の男の身を案じている。
ハクオロはそれに冷静な声で応えた。

「じっとしていろ。正直……彼は重傷だ。私やお前の手持ちでは、治療の役に立つものがない。
 だが……この橋のあたりにはあの傷の男と、この負傷した……衛宮とあの少女は呼んでいたな。衛宮と少女の荷物が近くにあるはずだ。
 そのなかに何か治療に使えるものがあれば、傷を何とかできるかもしれん」
「そ、そっか……それを探してるんだ……じゃあ、俺も――」
「探すのを手伝ってくれるのはありがたいが、ふらついた足取りでは足手まといだぞ」
「……くそっ」

悔しそうな顔でレッドは立ち上がろうとした己の体を再び芝生の上に戻す。
そんな少年の優しさを快いと感じる。
だがハクオロはその優しさが絶望へと変わるような、そんな一つの事実をレッドにさとられぬように心の内へと封じていた。


――この男……とっくに死んでいてもおかしくない。


それが先ほど衛宮の傷を診断したハクオロの結論だった。
傷は深く臓腑を抉り、今は突き刺さった破片が栓の役割をしているが、その内部では溢れんばかりの内出血が出口を求めて腹腔内に充満している。
事実、いったんは刺さった破片を衛宮から抜こうとしたハクオロだが、僅かに引き抜いただけで血の飛沫が傷口から噴出したほどだ。
むしろこれで何故生きているのかと疑問に思うレベルだった。
何らかの特殊な能力が肉体に宿っているのか。
カルラやトウカの身体能力、またはウルトリィたちのような特別な力を考えれば、この男にもそのような力があるのだろうか。

「……」

ハクオロは押し黙ったまま、周囲に散らばった品々を拾っていく。
骨折のため片腕が使えないので、デイパックのストラップを肘に引っ掛けて無事なほうの手で回収する。
拾ったそれは透き通った小さな容器で何かの液体が入っている。
それはレッドから、ライターというものだと教えられた。
その使用法を何故かハクオロは知っている。火をつけるためのものだ。
二つの筒をつなげたようなもの。穴があったので覗いてみると遠くのものがはっきり見えた。双眼鏡というらしい。
次に拾ったのは数枚の紙の束をまとめたものだった。
何かのまじないの符にみえるが、何に使うかは分からない。とりあえず拾っておく。
治療に役立ちそうなものはない。
こうしている間にも刻一刻と衛宮の命は失われていく。
だがハクオロには何故かさほど焦りの感情が生まれてこなかった。
失われかけた命を助けるのは当然だ。かつてハクオロ自身もエルルゥたちにそうやって救われたのだから。
だが一つの引っ掛かりがあった。それがどうしても気になる。


――あの男と少女は何故あそこにいたのか?


橋の上という目立つ場所で二人の偉丈夫が刃をぶつけ合っていたのだ。
いや、それ以前からも魅音やハクオロが戦闘を行っていた。
危険なことは遠目からでも分かる。双眼鏡のような遠くを見通す道具を持っていたなら尚のこと。
ならば何故?
争いを止めるためにわざわざ乱入したのか?
いや、少女はライダーを敵だ、といった。
つまり……ライダーが傷の男と争っている機を狙って、漁夫の利を掻っ攫おうとしたと考えるのが自然だ。
少女の雷を操る力は強大だ。ライダーや傷の男相手でも勝機はあると見るのが道理だろう。
ならばあの二人は殺し合いに積極的に関与していたということではないのか?
レッドはあの少女が泣いていると言った。
が、だからといって被害者的な立場といっていいとは限らない。
むしろ傷の男なども含めて、ここに集められた者達は全員がギラーミンの被害者なのだ。
そして死の恐怖を押し殺して相手を殺すのが戦場の常だ。
それを楽しむような輩もいるにはいるが、それは少数派。
ハクオロ自身も楽しめるようなタチではない。むしろ忌避してさえいる。
それでも相手を殺さなければ生き残れない。だからそうするのだ。
彼らもそうだったのだろうか。
ライダーを敵だといった、その衛宮たちの立場に立って考える。
ならばライダーが実は彼らに討たれる理由をもった悪逆非道の輩であったと?
だがそれは考えづらい。むしろハクオロは自分を庇ったレッドを撃った彼女のこともあり、ライダーを信じるべきだと考える。
見も知らぬハクオロたちの窮地に飛び込み、助太刀してくれたことも大きかった。
そうでなければ今頃ハクオロの命はなかっただろうから。


――ならばレッドには悪いが衛宮を助けぬほうがいいのかもしれない。


どうせ放っておけば死ぬだけだ。
万が一、ここで彼を治療できる奇跡のような薬がここで見つかったとしよう。
だがそれで蘇生させたとして、また誰かを襲うことになっては元も子もない。
いや、こいつらはもしかしたら放送前にも誰かを襲っていて――エルルゥたちの誰かを殺したかもしれないのだ!!
そんな暗い考えがよぎった時だった。
ハクオロの眼前に一枚の紙片が落ちていた。
拾う。
橋の崩壊による水しぶきでやや湿り気を帯びた紙を慎重に広げて文面を探った。
――治癒符。
そこにはそう書かれていた。
重傷の者でも治療できる札。
そんな品物にハクオロは心当たりがあった。

「……ハクオロのおじさん?」
「いや……なんでもない。どうやら何か書いてあったようだが濡れていて読めない」

立ち尽くして拾い上げた紙片を見つめるハクオロにレッドの問いが投げかけられる。
それに対してハクオロはその紙を握りつぶしながら答え――




嘘を、ついた。


   ◇   ◇   ◇


それは御坂美琴のものだった。
彼女は治癒符の存在をもちろん知っていた。
だが切継が負傷した直後にそのことに思い当たるには、あまりに平常心というものに欠けていた。
そしてレッドたちと遭遇し、疑心暗鬼に陥り、最後にはハクオロの一言が決定的な引き金をひいた。
誰が悪いというわけでもない。
運が悪かったという他はない。


だが――ー。


何故。


よりにもよって何故ここでこんなものを見つけてしまったのか。


知らなければ。


知りさえしなければ、『選ばなければならない』などということにはならなかったはずなのに。


殺すか助けるかという選択肢に向き合う必要など無かったというのに。


   ◇   ◇   ◇


「うぉーい、小僧! それに仮面の男! 生きておったかぁー!」

崩れ落ちた橋の向こう側。
河川の南側に残った橋の残骸から声が聞こえた。

「ライダーのおじさん……! 生きてたんだ……!」

レッドの声に喜びの嗚咽が混じっているのをハクオロは聞いた。
どこから調達したのか、四本足の動物にまたがり、手を振っている偉丈夫が手を振って大声をあげている。

「今、そっちにゆくぞぉー! 待っておれ!」

そういってどこかウォプタルにも似た動物にまたがったまま身を翻すと、ハクオロたちからは姿が見えなくなった。
だがそれから数秒。
崩れた橋の先から矢のように飛び出したのはライダーだ。

「この河を飛び越えるつもりか!? 無茶な!!」

ハクオロは思わず叫ぶ。
だが彼は知らない。
ライダーがまたがる駿馬こそがブケファラス。
馬でありながら伝説となった英霊にも等しい存在だ。
その力はハクオロの知るウォプタルなどとは比べ物にならない。
ライダーを乗せたまま、英馬は強靭な後ろ肢のひとけりで高々と宙を舞っていた。
常人ならば肝を凍らせるほどの大跳躍と大滑空。
それを一組の人馬は易々とやってのける。
何事も無かったようにハクオロたちのいる北岸へと辿り着き、豪壮な気を纏った駿馬が蹄を鳴らしてこちらへと近づいてきた。

「よう、小僧。それに確か最初にギラーミンに突っかかっていた奴だな。余は征服王イスカンダル。ここではライダーという名になっておるがな」

言いながら馬から下りて、どすどすと地を踏み荒らすような足音ともに歩み寄ってくる。
イスカンダルと名乗ったその男はまるで熊のような巨躯だった。
ずぶぬれの黒い外套を脱ぎ去り、肩にかけるようにしている。

「いやあ参った。向こう岸の下流に流されたもんで、我が愛馬を召喚して急いで戻ってきたが……どうした?
 こちらが名乗ったからにはそちらも名乗るのが礼というものではないのか? ん?」
「あ、ああ……私はトゥスクルの皇、ハクオロというものだ」
「ほう、貴様も一国の王か。だがトゥスクルとは聞いたことが無いな。歴史上にある名ならば余が知らぬ者はいないはずだが」
「おじさん! ちょっと見てよ、大変なんだ!」

ハクオロたちの会話を遮ってレッドが叫ぶ。
指差すのは血まみれのまま横たわる衛宮の身体だ。
イスカンダルがレッドに促されるまま二人の足元に横たわるその姿を認めると、途端に表情が王者と呼ぶべき威厳を纏ったそれに変わる。
その視線は男の右手に注がれていた。
そこには妙なしるしがあった。

「令呪……この男はマスターか」
「何……?」

その言葉を聞きとがめ、ハクオロはイスカンダルに問いかける。
衛宮はライダーを敵といっていたという。あの雷を操る少女の言だ。
14創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 00:20:04 ID:tjWC/Ju/
 
そしてイスカンダルのこの反応をみるに、なにやら因縁があることは間違いないだろう。

「イスカンダル……この男は貴方の敵なのか」
「うむ? なんだ、貴様ら令呪を知らんのか?」

イスカンダルの問いにレッドもハクオロも首を横に振る。

「うーむ……だいぶ前から疑問だったが、余が受肉していることといい、これはもしや聖杯戦争ではないのか?」
「なに、どういうことだ?」
「聖杯戦争のことは知っておるか? ……やはり知らんか。簡単に言えば、最後まで戦い抜き勝利した者が何でも望みを叶えられるという戦いだ。
 余はここに来る前にその戦争に参加していたのだが……この殺し合いも概要はよく似ているが、細部に違いがありすぎるからのう」

イスカンダルはこめかみに拳をやってぐりぐりと押し当てながら難しい顔で思考している。
それがこの男のクセなのかもしれない。
その時ふと、ハクオロはイスカンダルの言に対してある疑問が湧き上がった。
それを問いという形にして口に出す。

「何でも望みを叶えるなど……可能なのか」
「全ての不可能を可能にするのが聖杯だ。その証拠に二千三百年前の世で滅んだ余の肉体も、これこの通り蘇っておる」

その言葉はあまりにも堂々としており、嘘とは思えぬ確信の響きを持っていた。
それでもにわかに信じられるものではない。

…………しかし。

……もし、

そうならば、実現可能なことであるならば、

エルルゥたちを……生き返らせることもできるのか……?


「――そんなことよりも大変なんだよ! 早くこの人を手当してやらなきゃ!」


ハクオロの思考はレッドの大声によって目の前の現実へと引き戻された。
もう痺れはほとんど取れているようだ。
ハクオロは次にイスカンダルのほうを見る。
彼は困ったような顔をしてレッドに向かって話しかけた。

「まあ、そうするにやぶさかではないのだが……どうすればいい? 余のブケファラスで治療できるところまで運ぶのか?」
「……待ってくれ」

ハクオロがここで口を開いた。
その声には重々しい響きがある。
誰もが言葉を遮ることができない力が宿った声だ。
皇としての力を示すその声にレッドは押し黙り、イスカンダルは、ほう、と感心の表情を見せる。

「イスカンダル、あなたは先ほど戦っている最中に、あの傷の男の以外から攻撃を受けなかったか?」
「うむ? ああそういえば乱入者がおったな。なにやら電雷のような攻撃を喰らったが、誰だったかは見ておらん。
 あの後すぐに河に飛び込んだからな」

雷。
その攻撃ができる者にこれ以上ないほど心当たりがあった。

「我々は貴方が戻ってくる前に、ここで一人の少女と出会った。そしてその娘はあのコートの男を衛宮と呼んでいた。
 彼女は貴方を敵だといい、そしてレッドが貴方の知り合いとわかると我々に向かって電撃による攻撃を放ち、そして危うく私を庇ったレッドが死ぬところだったのだ」
「待ってよ、ハクオロのおじさん! じゃあ……この人が敵だって、だから助けないっていうのかよ!」
「察しがいいなレッド。そして彼らはあちらから進んでイスカンダル殿に攻撃を仕掛けたのだ。つまり自分から殺し合いに乗っている。
 あの少女を……魅音を殺したあの傷の男と同じだ。それでも助けるのか? イスカンダル殿……貴方はどうだ?」

イスカンダルは、ふむうと大きく頷くといきなり豪快な一喝を叩き付けた。
ハクオロの問いを些細なことと嘲笑うように。
そんなことを聞かれようとも答えは決まっていると言わんばかりに。


「――勝利して滅ぼさず、征服して辱めぬ! これこそが真の征服である!」


皇としての威厳をまとったハクオロすらも一瞬気圧される迫力だった。
歯を剥く獣の笑みをもって宣言する。

「ゆえにその問いに対する答えは決まっておる。殺し合いを望むというなら叶えたい望みがあるのであろう。
 ならば我が配下となって共にこの戦を勝ち抜けばよい! 受肉を果たした今、その望みを譲ることに何の躊躇いがあろうか!」

ま、とりあえずさっさと助けようではないか、と征服王を名乗った男は屈託無く笑った。
釣られてレッドも瞳を輝かせて笑う。
賛同者を得られ安心したというわけだ。
ハクオロは大きく溜息をついた。

「そうか――私の命を助けてくれた貴方がそういうのならば何も言うまい。イスカンダル殿、あの橋のあたりに傷の男の荷物があるかもしれない。
 探してもらうことは出来るだろうか?」

崩れ落ちた橋の北側付近を指差す。
ここまでで見つかった荷物は三つ。
衛宮の近くに転がっていたデイパックが一つ。
そして少女のものであろう散らばった荷物が一つ。
イスカンダルが所持していたものが一つ。これで彼の荷物が橋の瓦礫に埋まったり、川に沈んだりしていないことが判明した。
ならば傷の男の荷物が残っているはずだ。
治療に使えるものがあれば何とかなるかもしれない。
以上のことをハクオロはイスカンダルに説明する。

「うーむ……実はな。余の荷物ではないのだ、これが。おそらく戦闘のどさくさで誰かのものと入れ替わったのであろう」
「とすると……」
「うむ、見つかっていないのは余のデイパックということだな」

三人は崩れ落ちた橋の残骸を見る。
イスカンダルに聞くと治療に使えそうなものは無いという。
つまり、手詰まりだ。


   ◇   ◇   ◇


彼らに出来ることは何も無かった。
ここで拾った薬や包帯などの医療品で何とかできるレベルの負傷ではない。
もはや外科手術が必須の状況であり、怪我をしてからかなりのあいだ放置していたのだから輸血も必要だろう。
そのための技術がレッドたちにはない。
ましてやハクオロのほうは片手を骨折しており、自身の治療が必要なほどだ。

「……なあ、本当に何とかならないのかよ!?」

レッドが悔しさのこもった声を上げてハクオロを見た。
落ち着け、とハクオロは返し、そして言葉を続ける。

「お前の持っていたX-Wiといったか? それで飛んで運ぶことが出来たとしても、イスカンダル殿の騎馬でも、病院まで運ぶのは無理だろう。
 迂闊に動かすだけでも危険だし、何よりこの男の体力が持つとは思えん。それに……治療しようにも医術の心得を持った人間がいなければどうにもならん」
「まあ、みたところ魔術師のようだし、簡単には死なんだろうがなあ。それでもほっとくだけでどうにかなる怪我でもないのは確かだ」

本人が気を失ってるからなあ、とライダーは付け加える。
17創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 00:22:04 ID:tjWC/Ju/
 
衛宮自身の意識があれば自分の治療魔術でどうにかできるはずなのだそうだ。
だが現実問題として彼は意識不明であり、無理矢理起こすというわけにもいかない。
レッドは自分の支給品であるX-Wiを見る。
肩に背負うためのストラップが取り付けられた白い板状の物体が二枚ついていた。
説明書きによれば、これを背負って発動させることにより、光の翼を羽ばたかせて高速で飛翔することが出来るらしい。
便利な移動手段になりそうではあるが、今必要なのはそんなものではなかった。
目の前にあるこの怪我を治すことのできる何かだ。
最初に動けるようになってから、レッドは男の背中から破片を抜こうとしたがハクオロに止められた。
血の出血具合からして、体の中の大事な血の管を損傷したのだろうと。
この破片を抜けば栓の役目を果たしていたものが無くなり、血が一気に吹き出るだろうと言う。
そうすればもはや男の命はもつまい。
だが破片を抜かないままでは包帯を巻くことすらできないのだ。
状況は絶望的といっていいものだった。

「それでも、それでも諦めるなんてできるか! また死んじまうんだぞ……イエローみたいになんかさせるかっ!」

レッドはおもむろにX-Wiを担いで南へと駆け出した。
そこには広大な河川が横たわりレッドの行く手を遮っている。

「何をする気だレッド!」
「劇場に行けばチョッパーがいるはずだ! だから……こいつで飛んで行ってチョッパーを連れてくる!」

走るレッドの背中に位置する白い機殻が光の翼を展開する。
その時、空間に金属を打つような響きがあった。




・――光とは力である。




これは声なのか。
レッドには分からない。
だがその瞬間、強烈に背中を推す力が生まれた。

「うわぁあああああああああああ!?」

猛烈な勢いで斜め上の空に押し出される。
体勢が崩れそうになるところをすんでのところで踏ん張った。

「レッド!」
「大丈夫……っ!!」

空中戦は初めてではない。
空を飛ぶポケモンに捕まって戦ったこともある。
レッドはその感覚を思い出し、体の余計な力を抜く。
自然体。
そして背中の翼に語りかけるように意思を込める。

「飛べ!!」

再びその背に強烈な推進力が宿った。
地上の景色が遠く離れていく。
ハクオロとイスカンダルの姿も小さくなっていく。

「んじゃ、いってくる! すぐ戻るから待ってて!!」

眼下の二人に手を振ってから、レッドは再び前を向いた。
19創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 00:23:44 ID:E74uRtUY
 
行くは南の町並みに存在するはずの劇場。
チョッパーを連れて戻ってくることを考えれば、どんなにスピードをだしても急ぎすぎということはない。

「頼むぞ……X-Wi! 加速しろぉぉおおおお!」

今そこに消える寸前の命がある。
それを救える可能性があるのなら止まることなど考えられなかった。
目の前で死んでいったイエローだけではない。
そのショックから立ち直らせてくれたフィーロという青年もすでに命を落としたという。
レッドたちが辿り着く直前に傷の男の凶刃にかかったポニーテールの少女は、もう二度と目を開けることはない。
ここで何とかしなければ取り返しなどつかないのだ。
だからレッドは動くことをやめない。
もうあんなことを繰り返したくないから。
雄叫びにも似たレッドの声に応えるように光の翼は輝きを増した。
猛烈な勢いで、まさに風を切るような速度で――――レッドは南を目指して空を征く。




【B-4 南端/一日目 昼】

【レッド@ポケットモンスターSPECIAL】
【状態】:南に向かって高速移動中、疲労小、左肩に傷(両方とも簡易治療済み)、腕に○印
【装備】:X-Wi@終わりのクロニクル、蓮の杖@とある魔術の禁書目録、絶縁グローブ(軽く焦げ)@ポケットモンスターSPECIAL
【所持品】:基本支給品一式×3、二重牙@トライガン・マキシマム
【思考・行動】
 1:劇場に向かい、チョッパーを連れてB-4の橋の袂へ戻る
 2:衛宮の治療後、美琴を追う。
 3:女の子(魅音)を救えなかったことを後悔。
 4:ライダーと慎重に仲間を捜し、『ノルマ』を達成する。
 5:ある程度はライダーを信用していますが…。
 6:赤い髪の『クレア』に会ったら、フィーロの名前を出す。
 7:絶対に無常からフシギダネと取り戻す。
【備考】
※参戦時期はポケモンリーグ優勝後、シバの挑戦を受ける前です(原作三巻)
※野生のポケモンが出てこないことに疑問を持ってます。
※フシギダネが何故進化前か気になっています
※『クレア』をフィーロの彼女だと勘違いしています。
※後回しにしていますが図書館にあったパソコンに興味


   ◇   ◇   ◇


「おっほォ、すげえなオイ! 余も今度機会があったら是非使わせてもらおうか!」

レッドが小さくなっていった南の空を眺め、イスカンダルは顔に似合わぬ無邪気な声を上げた。
確かに凄まじい性能だ。
誰でも空を飛べる道具などハクオロのいた世では考えられない。
だがだからこそ確信する。
今この手に隠し持つ治癒符というものが本当に傷を治す力があると。
己の常識の外にこの殺し合いは成り立っているのだと改めてハクオロは実感した。

「イスカンダル殿。彼が戻るまでこうしていても仕方ない。貴方の荷物を探しましょう」
「ん? おお、申し出はありがたいが、見ればハクオロよ、貴様は手傷を負っている様子。
 まあ自分の荷物くらいは自分でどうにかするゆえ、そこでその男の様子でも見ておいてくれ」
「それは貴方も――」
「なあに気にするな。こんな傷はそのうち血も止まる」

そういってイスカンダルは巨大な十手を取り出した。
元はハクオロが持っていたものだ。
だが、腕を折った者が持っていたところで役には立たないだろう。
ゆえにそれについては黙っていることにした。

「よし、ブケファラスよ、ご苦労であった。下がってよいぞ」

ブケファラスと呼ばれた駿馬はイスカンダルの声に応えるように嘶くと、すぅっと姿を消した。
ハクオロが目を見開いて驚く。
それを受けて浅黒い肌の偉丈夫は得意げに口の端を歪ませた。

「あれぞ我が愛馬ブケファラスよ。なにやらいつもよりちょいと召喚に魔力を使うんで引っ込ませてもらったがな。怪我のせいかのう」
「召喚……? 自由に呼び寄せることができるのか」
「おう、そうだ。ところでこれから貴様はどうする気だ? 当面の目的がないなら余やレッドと共に来ぬか?」
「ああ……そうだ、アルルゥという少女を知らないだろうか。あとはカルラという妙齢の女だ。共に尻尾や獣の耳が生えているのだが……」

そうだ。
魅音は死んでしまったが、まだ守るべき者は残っている。
ここで休んでいるわけにはいかないのだ。

「ほう、獣人か? だがそのような女は見とらんなぁ」
「そうか、では前原圭一、竜宮レナ、北条沙都子、古手梨花、園崎詩音という名前は……」
「レナだと?」

その名前に征服王はぎょろりと目を向けて反応した。
知り合いだろうか。
ハクオロはそれについて問うてみる。

「我らの仲間として別行動しておるよ。新たな仲間を探すためにな」
「何だって!?」

魅音は言っていた。
仲間は何よりも大事なものだと。
そんな彼女の仲間も同じ考えを抱いていた。
皆の力を合わせてここから抜け出すという奇跡を成し遂げると。
彼女は、園崎魅音は間違ってはいない。
そう――。

「ハクオロよ。その名前、何処で聞いた?」
「あの少女だ。彼女の名前は……園崎魅音」
「……そうか」

ハクオロは魅音の遺体が横たわる樹の方角を見ながらその名を告げた。
それを聞いてイスカンダルも察したのか、重々しく頷いた。

「ならばハクオロよ。我らと共に来い。おぬしの探し人もレナたちが見つけてきておるやも知れぬ。
 そして余の配下となるがいい。共にギラーミンへと挑もうではないか」
「配下……いやそれは……私も一国の皇として……」
「ならば返事はすぐでなくとも構わん。考える時間は与えよう。
 もし嫌というのならば余はいつでもその挑戦を受けるゆえ、遠慮なくかかってくるがいい――王は一人で充分ゆえ、な」
「いや、そういうことではなく……」

なにやら無理やりイスカンダルのペースに乗せられている気がしないでもない。
結局ハクオロの返事も聞かぬまま言いたいことを言い終わると、征服王と名乗る巨漢は豪快に笑いながら己の荷物を探しに瓦礫へと向かっていった。

「……」

残されたるはハクオロと衛宮のみ。
レッドもイスカンダルも好人物であることは疑いようも無い。
だが、この男はどうなのだろうか。
22創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 00:25:15 ID:E74uRtUY
 
だが、この男はどうなのだろうか。
あのレッドが危険を犯してまで助けようとする価値のある人間なのか。

「私は……何を考えている」

この男は殺し合いに積極的に加わっている可能性が高い。
もしこの男を蘇生させたとして、魅音の仲間たちやハクオロの家族を害する可能性がないと言い切れるのか?
もしアルルゥやカルラを殺したら?
いや、それ以前にエルルゥ、ベナウィのどちらかを殺していたとしたら?

「……仲間は、何よりも、大事だ……」

園崎魅音の言葉だ。
ハクオロもそれを正しいと思う。
ならばこれはその仲間を守ることになるのではないのか?
この男に突き刺さっている破片を、ほんの少し押し込むだけでいい。
レッドは怒るだろう。イスカンダルは……分からない。
だが、そうしたところでハクオロの仕業とはわからないだろう。
元から瀕死の身体。
ほんの僅かに破片が深く食い込んだところで気付く者はいない。
今、イスカンダルは橋の瓦礫に向かい、こちらに背を向けている。

「うおーい、ハクオロよ! 荷物がどこら辺にあったか、心当たりはないか!?」

突如として大声を向けられた。
一瞬、ハクオロの鼓動が高鳴る。
落ち着け。
そう念じて固い唾を飲む。

「確か、橋の上にそれらしいものが置いてあったかと!!」

叫びかえす。
その声に震えは無い。
だが、なぜわざわざ彼の目をここから遠ざけるようなことを?

「おう、すまんなぁ!!」

イスカンダルが土手を駆け上がっていき、そして姿が見えなくなる。
視線を戻す。
血まみれの衛宮。
ピクリとも動く様子は無い。

「……私は」

無意識のうちに心は決まっていたということなのだろうか。
突き刺さった破片の頭に袖をあてがう。
力を込めた。
ずぐり、と。
一瞬だけ衛宮の体が痙攣した。
はらわたを切り裂いた感触だ。

「もし地獄(ディネボクシリ)というものが本当にあるとするなら……私はそこに堕ちるのだろうな」

そういってから、ふと何を今さらと自嘲した。
もはや数百数千数万に至るほどの屍を、数え切れぬ戦の中で造り出してきたのではないか。
戦乱を呼ぶ獣と、この自分をそう呼んだのは誰だったか。
地獄行きはとっくの昔に決まっていたことだ。
そう――、

それでも仲間を――自分を家族と呼んでくれた人々を守りたかった。

だからハクオロは皇となったのだ。

歩き出す。
イスカンダルの方角へと。
間もなく衛宮は死ぬだろう。
レッドはその死を悲しむだろう。
だが彼ならばきっと大丈夫だ。
それを乗り越えて前へと進む強さを持っている。
この身は手負い。
そしてレッドやイスカンダルも傷を負っている。
機を見てこの治癒符を使ってやればよい。
説明書きがなかったので今まで使用法に気付かなかったとでも言えばよい。
風で飛ばされた説明が書かれた紙片を今さっき、そこで見つけたと。

「荷物は見つかりましたか!?」

大声でイスカンダルを呼ぶ。
彼は数秒後、土手の上から顔を出し、

「おお、見つかったぞ! わざわざ来てくれてすまんが、ゆえに貴様はゆっくり休むがいい」
「それは良かった。ではレッドを待ちましょう」

ハクオロの言葉の上に波はない。
凪のように、一切の揺ぎ無く。


   ◇   ◇   ◇


殺し続けた。
ナイフで、銃弾で、毒で、爆弾で。
貫いた、切り裂いた、燃やした、沈めた、押し潰した。
一度としてその意味を疑わず、その価値を慎重に推し量り、天秤の傾いた方を救うべく。
もう一方を空にするべく、殺した。
殺して殺して殺し尽くした。
そう、それは正しい。
多くを救うべく犠牲を認める。
増えた不幸の数よりも、守られた幸福の数が勝るなら、世界はほんの少しだけ救済に近づくはずではないか。
たとえ足元におびただしい数の屍が積み重なっていたとしても。
それで救われた命があるなら、守られた数こそが貴いはずだ。
100を救う代わりに50を殺す。
1000を救う代わりに500を殺す。
10000を救う代わりに5000を殺す。
切嗣がやってきたことはそういうことだ。
かつて彼は憧れた。
だがそれを口に出すには少年特有の気恥ずかしさが先に立った。
もしそれを口に出すことが出来ていたなら、切嗣の運命は変わっていただろうか。
眩しい日差しの中で、憧れの彼女に訊かれた。
その微笑を、その優しさを、決して失いたくないと思った。
こんなにも世界は美しいのだから、今この瞬間が永遠であって欲しいと。
そう思うから、そう思うなら、誓いの言葉を口に出来たはずだ。
初めにあった気持ちを、いつまでも、決して忘れずにいられたはずだ。
始まりの自分を忘れ、いつしか磨り減っていくことしかできなかったような、そんなことにはならなかったはずだ。
数多の嘆きを知って、数限りない絶望の果てに、何も残さず終わるようなことには――、




――――きっと、ならなかったはずだ。


 




【衛宮切嗣@Fate/Zero 死亡】
26創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 00:27:12 ID:tjWC/Ju/
 
27創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 00:27:20 ID:E74uRtUY
 
【B-4 橋の袂(北岸)/一日目 昼】
【ハクオロ@うたわれるもの】
【装備】:なし
【所持品】:基本支給品一式×2<ハクオロ、魅音>、
      コンテンダー・カスタム@Fate/Zero 、防災用ヘルメット、コンテンダーの弾薬箱(スプリングフィールド弾27/30) 、ロープ×2、消火器、防火服、
      カッターナイフ、黒色火薬入りの袋、大型レンチ@BACCANO!、ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、双眼鏡、医薬品多数、ライター、
      起源弾@Fate/Zero(残り28発)、クチバの伝説の進化の石(炎、雷、氷)@ポケットモンスターSPECIAL、
      空気ピストル@ドラえもん メリルのハイスタンダード・デリンジャー(2/2)@トライガン・マキシマム 、排撃貝@ONE PIECE、
      デリンジャーの残弾20 鉄パイプ爆弾×4、治癒符5枚@終わりのクロニクル
【状態】:右足と右肩に銃創(包帯処置、止血処置済み。ただし消毒なし)、左手首骨折
【思考・行動】
 1:ギラーミンを倒す。
 2:レッドを待つ
 3:仲間(魅音の仲間含む)を探し、殺し合いを止める。全てを護り抜きたい。だが…。
 4:できれば美琴を助けたい。
 5:ミュウツーに対して怒りの念。
 6:アルルゥを失ったら……失った家族を取り戻す為に……?
【備考】
※クロコダイルの名前は知りません。
※クロコダイルの能力を少し理解しました。
※B-4の橋が美琴の超電磁砲によって完全に崩落しました。渡る事はまず不可能です。
※B-4木陰に園崎魅音の死体が腕を組まされて横たわっています
※B-4橋崩落現場付近に、クロコダイルの首と胴に別れた死体があります。
※レッドの包帯は治療のために消費しました。



【ライダー(征服王イスカンダル)@Fate/Zero】
[状態]:魔力消費(小)、疲労(中)、全身に傷(小〜中)および火傷(小)、出血中  腕に○印
[装備]:張維新の衣装とサングラス@BLACK LAGOON、包帯、スモーカー大佐の十手@ONE PIECE
[道具]:基本支給品一式×2、きせかえカメラ@ドラえもん きせかえカメラ用服装イラスト集
     イリアス英語版、各作品世界の地図、拳銃の予備弾30発、ウシウシの実・野牛(モデル・バイソン)@ワンピース
[思考・状況]  
 1:バトルロワイアルで自らの軍勢で優勝。
 2:レッドを待つ。
 3:レッドを従え『ノルマ』を達成し、レナ達に自らの力を示す。
 4:四次元ポケットとバイクを回収しに図書館へ戻りたい。
 5:首輪を外すための手段を模索する。
 6:有望な強者がいたら部下に勧誘する。
 7:次の放送までに劇場へ向かう。
 8:アーチャー(ギルガメッシュ)、クロコダイルを警戒する。

【備考】
※ヤマハV−MAXセイバー仕様@Fate/Zeroは図書館入り口に停めてあります。
※四次元ポケット@ドラえもんは図書館の中に放置されています。
※原作ギルガメッシュ戦後よりの参戦です。
※臣下を引きつれ優勝しギラーミンと戦い勝利しようと考えています。
  本当にライダーと臣下達のみ残った場合ギラーミンがそれを認めるかは不明です。
※レッド・レナ・チョッパー・グラハムの力を見極め改めて臣下にしようとしています。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
※自分は既に受肉させられているのではと考えています。
※ブケファラス召喚には制限でいつもより魔力を消費します
【治癒符@終わりのクロニクル】
御坂に支給。
身体強化系の概念が封じられた符で、札型の賢石ともいうべき物。7th-Gの肉体改造技術や1st-Gの文字に寄る能力付加で造られている。
作中では他にも防護符、加速符、強化符など、様々な種類がある。
負傷した部位に張ることで治癒の効果を得ることが可能で、丸一日でかなりの重傷も回復する。
五枚ずつのセットになっている。


【X-Wi@終わりのクロニクル】
レッドに支給。X-Wi(エクシヴィ)と読む。
風見・千里が装備している、賢石式概念兵器のバックパック。
起動すると、光の翼を生じさせて高速飛翔が可能。使用者への負荷を無視すれば超音速まで到達する。
また、概念条文 ・――光とは力である を発動させている効果でマグライトの光などがビーム砲になったりする。
372 :静かに訪れる色なき世界(修正版) ◆SqzC8ZECfY:2009/06/03(水) 00:12:17 ID:VWysPlK2
仮投下終了です。


代理投下終了です。
多数の支援、ありがとうございました。
31創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 00:37:36 ID:tjWC/Ju/
仮投下&代理投下乙です

前の投下の疑問点や矛盾点は解消されているとは思いますが、今度はまた違う場所が引っかかりました

一つ前の話で、敵だったはずのクロコダイルを死なせて錯乱した美琴を見て、なおかつ彼女を助けたいと考えていたので、
>>11の辺りの思考展開に矛盾というか、ちょっと違和感がありました
前の話では、
>対して娘の方は巻き込んだとはいえ、私達を襲った男を攻撃した。
>遠く見れば、君らもまたあの男に襲われた私達を助けてくれたことになる。
>本来なら争う必要などないだろう。なのに、なぜ今争っている!
なんてことも言ってましたし
32創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:10:04 ID:E74uRtUY
投下乙!
キリツグーーー……これもロワですね、安らかに眠ってくれ。キリツグの人生観の描写がこれまた哀しい。
ハクオロさんがかなり危うい感じになっててこの先が怖い。
王故の決断だけども放送でカルラの名前も呼ばれるだろうに、もしアルルゥまで死んだらどうするんだろう。
ライダーの言動に和んだり、レッドの決意に思わず熱くなったりしたから余計にそう思いました。
33 ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:14:48 ID:E74uRtUY
お待たせしました。
それではクーガー、リヴィオ、ラッド、御坂投下します。
34This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:15:41 ID:E74uRtUY
D-4地下・地下鉄駅構内に四人の人間が一堂に会している。
生まれ育った環境は異なり、本来は出会う筈もなかった四人。
その場を支配する空気には残念ながら穏やかさは見られない。
一瞬でも目を放せば何かが爆発を起こしそうな程に危うい。
確かなことはひとつ。今から起こるのは――闘争の幕開けだ、という事だろう。
そして車両の残骸の山の上に人影があった。

「死ね」

一人目――ミカエルの眼の使徒、ラズロ・ザ・トライパニッシャー・オブ・デス。
両目を細めて、口元を歪ませながら取った行動は一つ。
ソードカトラスを握った右腕を前へ向けたかと思うと即座に発砲する。
地下鉄駅内という閉鎖的な空間もあり、発砲音が広く響く。
『持っていく力』、エンジェルアームの力を封じた弾丸が飛んでいく。

「ヒャッハァ!」

二人目――とあるマフィアの殺し屋、ラッド・ルッソ。
下品染みた笑いを軽快に飛ばし、彼もまたラズロと同様に動く。
右肩に担いだバズーカの砲口を向けた。
数メートル左に居るラズロの方ではなく、彼が銃口を向けた対象と同じ方へ。
続けて引き金を振り絞った。銃器を扱う手つきとは思えない程にあっさりと。
二人の一連の動作を経て、数発の銃弾と一発の砲弾が残りの人影へ向かう。


「――ッ!」

三人目――『超電磁砲(レールガン)』の異名を持つ少女、御坂美琴。
驚きに満ちた声を零し、自分が狙われている事に気付く。
ラズロとラッドの言動からなんとなく予想する事は出来ていた。
しかし、あまりにも早い。早すぎた。
逃げろ、と盛んに本能が叫んでいるのがわかるが咄嗟には身体が動かない。
ならば抵抗するしかない。
当然自分はこんな場所では死にたくはないし、相応の力も持っている。
右腕に意識を傾けて、自分だけの力をイメージ。
死にたくはない。どこかで死んでしまった『あいつ』のようには――
35創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:15:47 ID:aC3BASAK
支援
36創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:16:02 ID:tjWC/Ju/
 
37創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:17:18 ID:aC3BASAK
支援
38This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:17:47 ID:E74uRtUY
思い出してしまった。
こんな時に何故かは自分ですらもわからない。
『あいつ』はこんな風に誰かと戦って死んでしまったのだろうか、と。
そう考えてしまう自分が別の誰かであるかのようにも思えてしまう。
『あいつ』――上条当馬が自分にとって特別な存在だったかのような感覚。
心地よいのか悪いのかと思う以前に、ただただ困惑するしかなかった。
そしてその困惑は確かな遅れとなる。
浮き彫りになったものは反応の遅れ。
結局御坂はその場から一歩動く事も、何一つの抵抗も出来なかった。
強いて言うならば呆然と前を見ることぐらい。
やがて御坂の身体に銃弾と砲弾が喰らいつく事だろう。


この男が居なければ、確実に。


「ラディカルグッドスピード、脚部限定ッ!!」

そいつは四人目――最速のアルター使い、ストレイト・クーガー。
クーガーが口を開くや否や、流れるように一閃の軌道が宙に描かれた。
同時に音が一つ二つ三つと連続する。
それらは金属が何かとぶつかって弾かれた音だ。
続けてすっかりとひしゃげた銃弾がパラパラと地に落ちた。
そしてクーガーの右足が己の存在を示すかのように真っ直ぐと上を向いている。
俺に捉えれらないものはない、とでも言っているように。
更にクーガーはそれだけで終わらない。
高く蹴り上げた右足を戻し、間髪入れずに前方へ踏み込む。
ラッドの放った砲弾との距離を詰めて、己の体躯を跳ばす。
今度は左脚を向けて、表情には一切の恐怖などは浮かべずに。
只、自信という感情だけをサングラスの下に潜めて左脚を大きく振るう。
39創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:17:49 ID:tjWC/Ju/
 
40創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:18:35 ID:aC3BASAK
支援
41This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:18:53 ID:E74uRtUY
「遅い! 俺を仕留めるには速さが足りない!」

左脚を、紫色の装甲を纏わせた左足で砲弾を蹴り返す。
同時に挑発染みたセリフを添えるところから余裕があるのだろう。
ラズロとラッドはその言葉に答えるよりも先に、身軽に後方へ跳ぶ。
瓦礫の山を蹴り、砲弾の炸裂を見届ける猶予すらもある。
このぐらいの芸当はどうという事はない。
幾ら傷を負っていようがラズロとラッドの身体は特別なものだ。
そして二人もクーガーと同様にこれだけで終わらせるつもりはなかった。

「相変わらずだなぁ、ストレイト・クーガー! それでこそ殺り甲斐があるってモンだ」

ラズロがクーガーと戦うのは初めてではない。
今も鮮明に覚えている、忌々しい敗北の記憶が脳裏に浮かぶ。
だが、竦むことなくラズロはクーガーに向けて再度引き金を引く。
殺意と、そして憎しみをエンジェルアームの力に乗せて、一切の躊躇は見せずに。
もう一度戦える。今度こそ必ず殺す。殺せないわけがない。
どことなく嬉しげな表情を浮かべるラズロは只、ドス黒い感情を胸に潜めて戦闘を続行する。

「おいおいおいおいおいーーーなに? なにしてくれてんのお前?
いや、スゲぇよ。まさか蹴り返してくるなんてマジスゲぇ。じゃあ、もっと楽しもうぜ!」

一方、ラッドの方もまた笑みを漏らしていた。
自分が撃ち放ったバズーカの砲弾の結末は予想を外れたものであった。
全く動じることなく、逆に蹴り返してきたクーガーに対し思わず興味が惹かれる。
趣味の悪い列車で突っ込んできた時に抱いた感情も忘れてはいない。
どんな感情か、とは最早言うまでもない。
それは明確な殺意。舐めた真似をしてくれたクーガーは殺す。
追撃のバズーカを発射し、さも興味深そうにクーガーの次の行動を観察。
そして再び放たれた凶弾に対し、クーガーは――


撤退した。

42創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:18:59 ID:tjWC/Ju/
 
43This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:19:47 ID:E74uRtUY
「――え?」


ただ逃げたわけではない。
後ろへ転換し、アルターの力を以って加速。
ラズロとラッドの方へ背中を向ける格好になりはしたがそれも一瞬の事だ。
数メートル走り切った事でAA弾とバズーカの砲弾から逃れる。
ついさっきまでクーガーが居た場所の付近は眼もあてられない状況に。
コンクリートが粉々に砕け、砂埃として宙に漂っている。
もし、巻きこまれていたら――顔を青ざめながらもそう思わずにはいられなかった。
間一髪でクーガーにより抱き抱えられ、この場に似つかわしい声を上げた御坂は呆然と前を見ていた。


「あ、ありがとう……」
「なに、気にすることはありませんよ」

取り敢えず礼の言葉を告げる御坂の表情は微妙なものだ。
引きずられるように声のトーンもどことなく低い。
電撃を喰らわせてしまった事がどうにも気がかりなのだろうか。
あまり良い礼の仕方でない事は確かだ。
しかし、クーガーはそんな御坂のよそよそしい返事を気にした様子はない。
いつも通りに、たとえ年下であろうが女性に対して相応の礼儀を以ってクーガーは言葉をかける。
但し、その時間はあまりにも短いものであった。
クーガーは直ぐに御坂からは眼を逸らし、前を見据える。

「しぶてぇな。ほんとうにしぶてぇ」

難なく着地し、残骸の山を駆け出したラズロの姿がクーガーの視界に入る。
片腕しかないものの、器用に新たな銃弾を装填を行うあたりが流石殺し屋というべきだろう。
また、装填した弾丸にAAの力はなく至って通常のものだ。
弾の節約のためなのかもしれない。
そう。クソッタレのクーガーを仕留めるため、必ず殺せる瞬間のための温存――なのかもしれない。

残弾に余裕のある銃弾を半ば乱射気味に撃ちながら、ラズロは更に速度を上げる。
御坂を抱えている事もあり、クーガーの動きにはほんの少しの隙があった。
好都合だ。密かに感想を零しながらラズロは銃口を向けて、狙いをつける。
そんな時、ラズロは自分の横から何かが迫っている事に気付いた。

「……なんだ、おまえ」

ソードカトラスの銃底で衝撃を受け止め、目の前の『ヤツ』に疑問を問う。
果たして問うと表するほどに礼節があるとは思えない。
それもその筈だ。発した言葉に最大限のイラつきをこれでもかと滲ませている。
ニヤニヤと、何を考えているかわからない笑みを見せている男に対して。
唐突にバズーカの砲身で殴りつけてきた、ラッドが確かに其処に居た。
44This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:20:27 ID:E74uRtUY
なぁ、てめぇの左腕可笑しくね? 綺麗スッパリ千切れてんのに……もしかして治ってるんじゃねぇの、それ」
「あん? てめぇみてぇなチンピラと一緒にすんな。ミカエルの眼舐めんじゃねぇよカスが」

売り言葉に買い言葉といったところか。
不快感を押しつけるようなラッドの問いに対し、ラズロもまた口汚く答える。
しかし、分からない話でもない。
確かにラズロの左腕は、持ち前の再生力により今も修復が行われている。
その事はいい。が、何故ラッドがわざわざ口に出すのが不明瞭だ。
自分と同じようにクーガーを標的にしていたのではなかったのか。
ラッドに殺されるつもりも心配もないが、邪魔をされた事で当然腹立たしさはあった。
それも殺意を孕ませた、とても生やさしいものではない。
一方、ラッドの方はラズロの様子を眺め、どこか得心がいった顔を浮かべた。

「あーわかった。ミカエルの眼がなんだか知らねぇし、てめぇが俺みてぇに目覚めちまったのかも知らねぇしぶっちゃけ興味ねぇや。
だが、こいつだけは言える。てめぇさ、実は余裕あんじゃねぇのか?
実は俺もあのおっさんも嬢ちゃんも全員ブッ殺して一人だけ生き残る……そう思ってんのか?」
「わけわかんねぇヤツだな。つか、当たり前だろ? 俺がてめぇら如きに殺られるわけねぇだろうが」
「……やべぇ、お前最高だわ」

沸々と、ヤカンに入れた水を煮沸させるようにラッドのテンションは上がっていく。
何もラズロが口にする事は真っ赤な嘘というわけではない。
今までの立ち振る舞い、更には憎らしい程に膨れ上がった自信がラズロの言葉に真実味を持たせる。
ラッドもその事を認識しており、そして確信した。
思わず今以上に力が入り、ラズロとの距離が近づく。


「決めた。てめぇは――ブチ殺す!」


それは絶大的な死の宣告。
力任せにバズーカの砲身を振り下ろす。
ソードカトラスだけでは耐え切れず、ラズロは止む無く離脱。
叩くべき対象を失ったバズーカが砂塵を生みだす。
その粉塵の中でラッドは確かに笑っていた。
火がついた。さながら何かのスイッチがついたような様子さえ見せている。
一方のラズロも黙ってはいられない。


「ハッ、やってみろよ――クソが!」


再び吐き出された銃弾がラズロの意思を現していた。



◇     ◇     ◇

45創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:20:27 ID:aC3BASAK
支援
46創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:20:33 ID:tjWC/Ju/
 
47創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:21:16 ID:tjWC/Ju/
 
48創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:22:25 ID:38nIr/6P
支援
49創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:22:51 ID:aC3BASAK
支援
50This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:23:27 ID:E74uRtUY
「……こいつはラッキーだな」

ボソリとクーガーが呟く。
前方数十メートル程か。
其処には一迅の台風もとい戦闘が広がっている。
それはラズロとラッドの戦いの証。
生憎、介入者など一人たりとも許す雰囲気はなかった。
銃弾と砲弾、そして互いに殺しを楽しむかのような言動が飛び交う。
今のところ二人に致命傷はない。
やがてクーガーは後ろを振り返る。

「お嬢さん、お名前を教えてくれますか?」
「……み、御坂――」
「おっと、こいつは申し訳ありません。
私の名前はストレイト・クーガー。ズバリ! 文化の神髄を追い求める男です!!
先程の俺の力はラディカルグッドスピード。素晴らしいでしょう、何よりも速さを愛する私に相応しいアルターです。
ん? しまった! アルターの事についてまだ何も言っていませんでしたね。ああ、なんてコトをしたんだ俺は!
説明の不手際、それは時間のロスであって即ち人生の浪費にも等しい――ぎ、ぎゃあ!!」
「ご、ごめんなさい……」

御坂が謝った理由には彼女の能力が関係していた。
途中で話しが脱線し、唐突に捲したてたクーガーの身体に何かが走った。
それは俗に超能力ともいうべき力、御坂が得た『レベル5』の能力。
力は最小限に――話を進めるためにあくまでもちょっと黙って貰うために。
しかし、クーガーが予想以上に大きなリアクションを取ったため御坂はたじろぐ。
元々クーガーに対し能力を使うだけでもやりすぎだろうかと考えていたため、申し訳なさで一杯になる。

「いえいえ、謝ることはありませんよ。さぁ、気を取り直してどうぞどうぞ」
「み、御坂美琴。その……色々とごめんなさい」

だが、クーガーに怒りを見せる様子はない。
その事実が御坂に安堵を齎すが、再度謝罪の言葉を口にしたのは彼女の性格さ故の問題だろう。
出会いが出会いだったため、未だにクーガーへの警戒は完全に消えていない。
よって少し口調がぎこちなく、他人行儀なのも仕方のない事であった。
寧ろクーガーの方もその事を察しているようで、彼も愛想良く振るまっている。
そして取り敢えずの自己紹介が済み、クーガーが期を見計らったように口を開く。
51創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:24:09 ID:aC3BASAK
支援
52創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:24:39 ID:YziFmMG5
 
53創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:24:42 ID:tjWC/Ju/
 
54This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:25:34 ID:E74uRtUY
「それでみさとさん、一つ相談なんですが……担当直入に言いましょう。今すぐこの場から逃げてくれませんか?」
「え?」

思わず口を半開きにして御坂は驚いたような顔を見せる。
自分の名前が間違っていることに対する指摘すらもおざなりにさせる程に。
今の御坂に出来ることといえばただただクーガーに疑問の眼差しを送るしかない。

「実はあのモヒカン男にはちょいと腐れ縁がありまして。それにもう一方のヤツも相当に危なそうだ。
だから、俺があいつらを止めてやりますよ。この俺の速さでね」
「だ、だったら私も――」

クーガーの申し出に思わず御坂は声を張り上げた。
確かにあの二人の男は危うげな印象がある。
しかし、二人のうち一方、ラッドの方は元はといえば自分を狙ってきていた。
故に関係のないクーガーにラッドの相手をさせるのはどうにも気が引ける。
ラッドがここまで来たのは自分の責任だ。
ならば自分が責任をもってどうにか片をつける。
そう思った、その瞬間――

唸るような大声が響いた。


「どこ行くんだ、てめぇらあああああああああああああああ!!」


背筋が凍るような、ラッドのドスが聞いた声が。




◇     ◇     ◇


55創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:25:48 ID:aC3BASAK
支援
56創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:25:55 ID:YziFmMG5
  
57This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:26:28 ID:E74uRtUY
ラズロは殺す。
殺り合いの最中に聞いた、この男の名前をラッドはきっと忘れないだろう。
だが、ラッドの標的は何もラズロだけではない。
ラズロを蹴り飛ばし、一旦距離を取り、そしてラッドは大きく跳躍する。
目標はもう一人の対象へ、そいつはどこかの仮装大会にでも出てくるような服を着た男。
両脚に奇妙な光を纏い、尋常ではない速度を見せつけたクーガーその本人。
あの自身に打ちつけられた顔が苦痛に歪み、死んでいく様はそれはそれは愉快なものだろう。

しかし、忘れてはならない。
この場にはもう一人殺してやりたい相手が居る事を。
ラズロ以外に、そしてクーガー以外に。
その名は――御坂美琴、たった今クーガーに名前を告げた少女。
彼女もまたラッドの標的の一人であった。

(舐めやがって……クソアマが)

御坂は言っていた。
『死んでなかったんだ』――と自分に向けてポツリと。
何も不自然な言葉ではないだろう。
御坂にとってラッドはどう考えても友好的な存在ではない。
ただ、問題であったのはその言葉に含ませた感情だ。
御坂は言った。先刻の言葉を、何故かホッとしたように。
ラッドにはその理由が分からず、同時に許せなかった。

(ずいぶんと余裕あるじゃねぇか、おもしれぇ)

ラッドには御坂の事情など知る由もない。
だから、ラッドが認識する事実は『殺されかけた相手に無事を喜ばれた』事のみだ。
たとえ御坂がまた殺人を犯してしまったのではないかと、思いあぐねていたとしても関係はない。
只、ラッドは殺意に身を投げ出す。
バズーカのダイヤルを換えて砲身を向ける。
マニュアルが正しければ、砲弾ではなく一本の熱線が発射される事だろう。
そしてその熱線を女に。自分に詰まらない同情を与えてくれた御坂にくれてやる。
やがて起こるであろう未来のビジョンがラッドにいいようのない高揚感を齎す。
しかし、ラッドの眼前に広がったものはまた別のものであった。


「衝撃のファーストブリットオオオオオオオオオオオオーーーーーッ!!」


それはラディカル・グッド・スピードにより迸る虹色の輝き。
クーガーの第一の弾丸であった。


◇     ◇     ◇

58創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:26:33 ID:tjWC/Ju/
 
59創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:26:41 ID:YziFmMG5
 
60創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:26:43 ID:aC3BASAK
支援
61This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:27:24 ID:E74uRtUY
まるで予期していたような構図であった。
クーガーはラッドの方へ向けて跳び、そして一発の蹴りを放った。
只の蹴りではない。それはクーガーの得意技の一つ。
踵に備えられたピストンにより跳躍し、更にアルターにより強化された跳び蹴りを放つ。
『衝撃のファーストブリット』の直撃を受け、ラッドは壁に叩きつけられた。
生まれたものは強すぎた勢い。心配する理由もない御坂ですらも思わず息を呑んでしまう程の威力だ。
一部分ではあるが崩壊を起こした外壁の山に埋もれたのだろうか。
既にラッドの姿は肉眼では確認出来ず、動く人影も見られない。
恐らく気絶――それはこの場に居る誰もが思った事であった。

「さぁ、行ってください、みさとさん。
こんな危険な場所にレディをいつまでも留まらせてしまうのは文化的ではありません。
それに俺は死にませんよ。何故なら俺の速さを捉えるコトなんて誰にも出来やしない――あの人以外にはね」

依然としてクーガーの口調はどことなく軽い。
されどその言葉から確かな意思が御坂には感じられた。
上手くは言葉に出来ない。
出会って碌に時間が経っていないにも関わらず、クーガーの言葉が力強いと思える。
この人ならやれる。見た目以上に広い背中がそう言っている。
そしてその背中が今はこの世にはいない、『あいつ』のものと何故かダブって見えた。

「わ、わかったわ」
「いい返事です、みさとさん。そうだ、こいつを預かってもらえますか?
自分で持っているとどうにも落としそうなのでね」

意を決し、駆けだそうとする御坂にクーガーが振り向きざまに何かを投げる。
それはタイム虫眼鏡、蒼星石のローザミスティカなどが入ったデイバック。
クーガーの得意とする戦いはアルターを使用した高速近接格闘戦。
用心を兼ねてという事なのだろう。紛失することのないように御坂に託す。
そんな御坂は一瞬、戸惑ったような顔を浮かべる。
逃がしてくれるだけでなく、持ち物すらも貸してくれるというのだ。
何から何まで世話になってしまった自分が情けない。
だが、ここでクーガーの意思に背けば更に申し訳がたたない。
62創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:27:52 ID:YziFmMG5
 
63創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:27:57 ID:aC3BASAK
支援
64創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:27:59 ID:tjWC/Ju/
 
65This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:28:12 ID:E74uRtUY
「……絶対に預かってる。だから、その……クーガーさん……」
「おっと、最後まで言わないでください、みことさん」
「と、というか私の名前はみこ――あれ?」
「合っているでしょう」

漸く口に出せた言葉。
が、散々に間違えたくせに今度は合っていたため何も言えなくなる。
美琴はついバツの悪そうな表情を浮かべてしまう。
少し余裕が出来てきたのだろうか。
年相応の、少女特有のあどけなさが微かに見えていた。
しかし、御坂はいつまでもこの場に立ち止まるわけにはいかない。
そしてそれはクーガーも同じことであり――彼は最大限の速度を以って加速した。
サングラスをクイっと上げて、不快感は感じさせない笑みを御坂に向けた後に。

「また会いましょう、みことさん! 今度は笑顔の貴方が見たいなぁと、どこぞのバカヤロウが思っていると覚えてくださいな!」

ラディカルグッドスピートの補助を受け、ラズロの方へ疾走するクーガー。
最早クーガーを止められることは出来ず、御坂も止めるつもりもない。
ならばどうするか。答えは案外と直ぐに出た。
デイバックをしっかりと担ぎ、下腹に力を込める。


「忘れたくても覚えてるわよ、バカ!」

どうも年上とは思えないクーガーに向けて一声叫び、そして御坂は駆けだした。
クーガーの意思を無駄にしないためにも、生き残るためにも。
元来た道を頼りに全力で走る。
頬を撫でた、ひんやりとした冷気が一際肌寒く思えた。



◇     ◇     ◇

66創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:28:46 ID:tjWC/Ju/
 
67This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:28:58 ID:E74uRtUY
「気分はどうだ?」
「ん〜……なにがだ?」

既にどこからどこまでが列車の残骸かすらも判らない。
所々不自然に抉れ、ボロボロになった地下鉄のホームでラズロとクーガーが今も対峙している。
互いに無傷というわけではない。
クーガーの身体には数発の銃痕が、そしてラズロの身体には打撲により青く腫れあがった傷が痛々しい。
それらの負傷をクーガーはアルターで、ラズロは自前の再生力でやりくりしている。
そんな状況に僅かな膠着が訪れた時にラズロが意味深な台詞を吐いていた。

「劉鳳だったっけかな。ゼツエイとかいう人形を使うヤツだ。てめぇと同じ服を着たアイツは俺は殺した」
「……何が言いたい?」

あくまでも冷静に、目の前のラズロがどれほどに憎らしい存在に見えても。
クーガーに動じた様子は一向に見られない。
少なくとも表面上では、たとえラズロが何を言おうとしているのかが予想はついても。
クーガーは只、低い声でラズロに答える。
一方、満足がいったのかいかなかったのかは定かではない。
只、笑いを我慢しきれない様子でラズロが続けていく。

「なんつーか滑稽だよな。二人揃って俺に殺されるなんてよ。
てめぇら、なんのために呼ばれたんだろうなぁ――ってな。やっぱさ、俺に殺されるために呼ばれたんじゃねぇか?
ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「おーおー、たいした自信だなぁ。ラズロ……!」

やはり聞くまでもなかった。
そう言うかのようにクーガーはホームを歩き、ラズロとの距離を詰める。
距離は十分、ラディカルグッドスピードの加速でなら問題ではない。
そうと決まればグズグズしている暇はない。
ラズロを黙らせる
総身を一迅の風に変えるかのように、クーガーは急速接近を経て右回し蹴りを放つ。
しかし、やがてクーガーは己の目を疑う事になった。
68創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:29:16 ID:aC3BASAK
支援
69創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:29:18 ID:YziFmMG5
  
70創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:29:42 ID:tjWC/Ju/
 
71This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:29:53 ID:E74uRtUY
「おせぇな」

ラズロは少しだけ身を後ろに傾け、クーガーの蹴りを避わした。
更にそれだけでは飽き足らずクーガーに向けて蹴り返す。
銃を使わずに、クーガーがやったように右脚の回し蹴りを選択したのは余裕の現れに違いない。
そう。今のラズロにはクーガーの速さが見切れていた。
寧ろこうなることは遅すぎたくらいだろう。
薬物投与、そして肉体改造により強化された五感。
ミカエルの眼に同じ手段は二度と通用しない――たとえ制限という足枷があれど、その異常性は消えていない。
身体を逆九の字の形に仰け反りながらもクーガーは踏み止まり、直ぐに顔を上げた。

「感謝しろよ、出血大サービスだ」

ラズロの声、そして何処からともなく轟音が響き始める。
見ればラズロがデイバックから何かを出している。
物理法則をものの見事に裏切った特別製のデイバック。
そこから飛び出すものは――圧倒的な暴力の塊であった。

「見せてやるぜ――こいつをな」

要塞。もしく戦車と評すべきだろうか。
両側に備えられた、大きな車輪が地下鉄のホームにめり込む。
更にいつの間にか手綱を繋がれた二頭の巨牛が雁首を揃えている。
それらこそが遥か以前、ゴルディアス王がゼウス王に与えし神獣、“飛蹄雷牛”(ゴッド・ブル)
間髪入れずにラズロは飛び乗る。玉座を模した、その兵器の全てを司る場所へと。
第四次聖杯戦争に於いてライダーのクラスに召喚を受けたサーヴァント、征服王イスカンダルこそが本来の持ち主。
常識を超え超常の域に達した兵器――“神威の車輪(ゴルディアスホイール)”がその姿を見せる。
小金色の輝きを従わせながら、やがてゴルディアスホイールはクーガーの元へ突貫。
72創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:30:11 ID:aC3BASAK
支援
73創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:30:20 ID:YziFmMG5
 
74創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:31:01 ID:tjWC/Ju/
 
75創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:31:11 ID:aC3BASAK
支援
76創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:31:43 ID:YziFmMG5
 
77創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:31:54 ID:tjWC/Ju/
 
78This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:32:14 ID:E74uRtUY
「ガッ!」

宝具のあまりにも規格外な能力に驚きを隠せなかっただろう。
避ける事は叶わず、クーガーの身体がいとも容易く吹き飛ばされる。
ホーム内には止まる事も出来ず、今は一両の列車も通過していない線路の方へ。
だが、距離の関係からか神威の車輪にそれほど加速が掛っていなかったのが幸いしたのだろう。
叩きつけられる瞬間、クーガーは器用に反転し、少し体勢を崩したもののしっかりと着地した。
そして、ゴルディアスホイールに跨ったラズロに対し一瞥をくれる。
ほんの一瞬の沈黙。巨牛がホームを蹴り、力任せに線路へ降り立つまでの時間はあまりにも短い。
再度向き合うクーガーとゴルディアスホイール。クーガーが次に打つ手段は意外なものであった。

「あん?」

思わずラズロは眼を疑った。
どうせ真っ向から向かってくるであろうと思っていた。
だというのに、当のクーガーは――


「悪いなぁ、ラズロ。このストレイト・クーガー、分の悪い賭けはあんまり趣味じゃないのさ。
そういうわけでまた会おう。お前が生きていたらなぁ、ハーッハハハハハハハハハハハハハハ!」


ラディカルグッドスピードを纏い、一目散に線路脇を走っていく。
一度もラズロの方を振り返る事もなく、バカ笑いを見せつけながら。
呆気に取られたラズロだが、やがて気を取り直したかのように手綱を握りしめる。


「待ちやがれ、ストレイト・クーガアアアアアアアアアアーーー!!」


ラズロがクーガーの後を追うのはさも自然であった。


◇     ◇     ◇

79創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:32:16 ID:aC3BASAK
支援
80創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:32:46 ID:YziFmMG5
      
81創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:32:50 ID:aC3BASAK
支援
82This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:33:02 ID:E74uRtUY
眼前の視界は闇に満ちている。
地上に出れば光は差し込むだろうが、生憎未だ出口は見えない。
だが、クーガーは一歩も止まることなく走り続ける。
己の視覚を頼りに、己の誇りともいえる加速を以ってして。
既に何度かの分岐点を経て、地図を見なければ自分が何処に居るかもわからないがそれで構わなかった。
クーガーの思考に――迷いはない。
少しの焦りのようなものはあったが。

「なぁ、そろそろ終わりにしようぜ。どうせこいつからは逃げられねぇんだからよ」

ガリガリと、線路をいとも容易く削りながらゴルディアスホイールが進軍している。
ゴルディアスホイールに座するラズロが余裕げに口を開く。
事実、クーガーとは違い今のラズロには絶対的な余裕があった。
視界が暗いといえどもクーガーが目印となり見失う事もない。
たとえ障害物があろうともゴルディアスホイールの馬力に勝てるものはそうそうない。
そして何よりもゴルディアスホイールの速度はクーガーの脚力以上であった。

魔力という概念とは無縁のラズロが宝具を扱える事と引き換えに課せられた制限。
本来のゴルディアスホイールに比べて、全てのスペックが劣っているがそれはクーガーも同じ。
所詮、アルターという異能を持っていようが一人の成人男性と一騎の馬車では速度の差は明確。
スタートダッシュの遅れとラズロが完全に乗りこなせていない事がクーガーにとって幸いした。
しかし、今では確実に詰まっている。
相対距離を0に、その瞬間を考えるだけで快感が込み上げる。
ゴルディアスホイールで憎らしいクーガーの身体を押し潰す。
口元をニヤつかせ、ただ一心にゴルディアスホイールを走らせ――その瞬間、ラズロは見た。
前方に一条の光がこちらに向かい伸びている事に。


「――こいつを待っていたッ!!」

一方、クーガーは大声を上げながら砂利道を蹴り飛ばす。
一体何だというのだ。ラズロは思わず前方から眼を逸らし、クーガーの方を見やるが捉えられない。
ラディカルグッドスピードにより当然跳躍力も強化されている。
ここ一番の跳びを見せ、回転を織り交ぜながらクーガーはとある場所へ着地。
視線を追わせたラズロは思わず眼を疑う。
何故ならクーガーが宙に浮いているように見えたためだ。
いや、そうではない。
光があった。サングラスを少し上げ、悠然と立つクーガーの下に、先程の光が二つ。
まるで人間の目のように、輝くそれは――地下を走る列車であった。
間髪を入れずに激突。御坂を無事に逃がす為に、そしてゴルディアスホイールに対抗するにはこれしかない。
ホームに張られていたダイヤグラムをチラリと確認していた幸運を噛み締める。
そしてクーガーの狙いがまさに功を奏し、地下鉄とゴルディアスホイールが依然としてぶつかり合う。
83創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:33:28 ID:aC3BASAK
支援
84This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:33:45 ID:E74uRtUY
「つまんねぇんだよ!」

だが、ゴルディアスホイールは宝具の中でも上位に位置する。
当然ゴルディアスホイールを引く役目を持つゴッドブルも只の牛ではない。
逆に押し返し、列車の車輪からは悲鳴のような金属音が響き、赤い火花を散らしている。
しかし、クーガーの表情には最早焦りといったものは見られない。

「忘れたか、ラズロ! 俺のアルターはありとあらゆるものを速く走らせるコトだ!!」

ラズロは漸く気づく。
見れば地下の外壁が、列車後方の線路が、所々のコンクリートが抉れている。
この現象は力の予感。この殺し合いに呼ばれるまで一度たりとも聞いた事はなかった。
されどラズロは知っている。何度目だ、と答えが直ぐには出てこない程に絡まった腐れ縁。
そう。確信を以って知っていると言えるのだから。
クーガーがこれから何を言おうとしているのかも。
自分がどうするべきなのかも――たとえそれが間に合わずとも、ラズロは知っていた。




「ラディカル・グッドスピードオオオオオオオオオォォォ――リターンズッ!!」



虹色の光が車両を包み、アルターが形成される。
順々と列車の一部分が剥がれ、瞬時に何処からともなく新たな装甲が装着。
二回り程に大きくなった列車の威圧感はゴルディアスホイールのそれと勝るとも劣らない。
先程クーガーが発現した列車よりも更に大きく、そしてゴージャスに。
それこそがラディカル・グッドスピードの、見る者を圧倒させる強大な力の果て。
エキセントリックな風貌は変わらず、爆発的な加速も失われていない。
メタリックパープルの車体を支える車輪は線路を蹂躙し続け、爆走する。
押し返されていたゴルディアスホイールを逆に押し返し出す。
85創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:33:50 ID:tjWC/Ju/
 
86This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:34:27 ID:E74uRtUY
「チッ、舐めんじゃねぇぞッ!!」

一方、ラズロにも食い下がるつもりはない。
ゴルディアスホイールに意識を集中し、その力を具現化する。
瞬く間にゴルディアスホイールの周囲には無数の紫電が走る。
元々は宙を駆け、その際に発する電撃からまるで稲妻を蹴って駆ける牡牛と称されたものだ。
後の稲妻を司る大神ゼウスに捧げられた事実は伊達ではない。
自身は特殊な加護を盾にし、一方的にクーガーのラディカルグッドスピードへ電撃を浴びせる。
減速は免れない。更にそれで終わらず先頭列車の左側面部がやがて真っ黒に焦げ、ボロボロと崩れ落ちた。
流石は宝具。たとえ制限されようともその威力は驚異以外の何ものではない。

「ラズロオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「なんだ!?」

だが、劣勢と取れる状況を顧りみる様子を見せずクーガーは叫び、新たなアルターを構成する。
破壊された部分の修復。必要なものは物質と己の力。
当然、疲労を伴うが壊される度に再構成を行い続ける。
たとえ片膝を列車の頭頂部につけようとも、止める事はない。
ほんの少し、余裕の色が失せ始めたラズロの目を食い入るように見据える。

「劉鳳のヤロウは最後まで戦ったか!?」
「戦ったぜ。俺が狙ってるのも気づかず、しこたま銃弾を受けやがった。身体半分吹っ飛んだあいつは憐れなもんだったなぁ!」
「それからどうした!? あいつはそんなコトで終わるヤツじゃねぇだろう!?
その逆境からあああああああああああ――あいつはお前にどんな世界を見せた!?」
「黙れよ。ああ、あんなにしぶてぇヤツはそうそう居なかった!
あいつは生きてるのが可笑しい状況から俺に一発喰らわせやがった。ゼツエイとかいうクソったれな人形でな!!」

互いの言葉の奔流が交わる。
その勢いはラディカル・グッドスピードとゴルディアスホイールの争いを示すかのように。
クーガーとラズロもまた己の意思をぶつけ合う。
クーガーはラズロの半ば自棄気味に放った言葉確かに聞き、そして深く頷く。

「そうかい。だったら見てもらうぜ、ラズロ!」

聞く前からわかっていたのだろう。
片膝を上げ、再び両の足でしっかりと車両を踏みしめる。
脚元に広がるメタリックパープルのボディ。
決して止まる事のないこの愛すべき速さの象徴。
言うなればnever(ネバー)――ends(エンズ)。
今は亡き友、そして何処かで生きていると信じる愛しい女性を思い浮かべ、クーガーは咆哮をあげる。
まるで彼らが自分の傍に居ると信じているように。
87創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:34:28 ID:YziFmMG5
  
88創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:34:47 ID:aC3BASAK
支援
89創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:35:21 ID:tjWC/Ju/
 
90創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:35:33 ID:YziFmMG5
 
91This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:35:39 ID:E74uRtUY


「このラディカルグッド・スピードの真の姿を!」


虹色の光がクーガーの全身に収束する。
さながら暴風、アルターが引き起こす一迅の突風だ。
やがてクーガーの全身にラディカルグッド・スピードが纏われる。
生身が覗く部分は一つもない。アルターの鎧とも言うべきだろうか。
その姿こそがラディカル・グッドスピードの真の姿であり最終形態でもあった。
それに合わせて真下の列車も完全に修理が終えたかのように傷一つ無くなっている。
次に宙返りを行い、数十メートル後方へクーガーは着地。
持てるだけの力を動員し、クーガーはラズロに向かい疾走する。
眼にも止まらない。事前にクーガーの思考を読まなければ到底避けようのない動き。
走り過ぎた後には碧色の閃光が波打ち、その速さを物語っている。
更に今のクーガーには普段の彼とは決定的に違う事があった。
クーガーだけでなく、ラディカル・グッドスピードの方にも。
そう。今のクーガーを全身は、そして爆進し続けるラディカル・グッドスピードは――


青と銀の輝きを放っていた。


「俺と劉鳳の、そしてあいつにゾッコンな水守さんの分を合わせた――この輝きをなぁッ!!」

それは一種の奇跡なのもかもしれない。
アルター能力者が使用するアルターは唯一無二の、己自身の武器。
その際にアルターが持つ色彩は能力者のイメージに左右される。
ラディカル・グッドスピードの元々の色はメタリックパープル。
だが、今のラディカル・グッドスピードには新たな色があった。
本来は濃い赤、主に頭部周りと胸部を覆う装甲には渋みの利いた青色が。
元々銀色で彩られた装甲には更に輝かしい銀が映える。
まるで劉鳳のアルター。絶影が放つ色彩が混じっている。
そして同様に変色したラディカル・グッドスピードがゴルディアスホイールと今一度ぶつかり、更なる加速を生みだす。
グングンと、今も絶えず行われている稲妻など気にする様子もなく前へ進む。
その勢いは誰にも止められない。たとえ紛うことなき神獣といえども。
この速さは――なにものにも止められる術はなかった。
92創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:36:14 ID:tjWC/Ju/
 
93This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:36:32 ID:E74uRtUY

「ヤロウ……! ッ! なんだ!?」

やがてゴルディアスホイールの側面でガクンと、何かが崩れる音が響く。
ラズロは咄嗟に首を回す。見ればゴルディアスホイールを支える左車輪が崩壊を起こしていた。
右の方はどうかというと同様に危なく、今にも脱輪をしそうな程だ。
このままではゴルディアスホイールと命運を共にする事になる。
やはり片腕だけのハンデは大きかったのかもしれない。
今更ながら左腕を失った事を憎らしげに思い、ゴルディアスホイールを乗り捨てることも考える。
その瞬間、一際大きな衝撃音が後方で唸りを上げた。
遂に左車輪が完全に潰れ、ゴルディアスホイールは大きくバランスを崩す。
咄嗟にラズロは飛び降り、危機を逃れようとするが、彼の視界に飛び込む影が一つ。
そいつは紫と青と銀の戦士、最速のアルター使い。


「逃がすか! 抹殺のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――!!」


ラズロに向かって跳んだ男。言うまでもなくストレイト・クーガー以外に居ない。
既に用はなくなったのだろう。クーガーは今まで走らせていた列車のラディカル・グッドスピードを解いている。
瞬く間にバラバラに分解された列車がゴルデイアスホイールを飲み込み、やがて共に外壁に押し潰される。
一方クーガーの背中のノズルのような部分からは虹色のアルター粒子が噴射。
横周りの超高速回転につられアルター粒子も周囲に振り撒かれる。
幻想的な光、眼を奪われる光景が地下鉄線路上空で顔を出す。
しかし、ラズロの身体には思わず緊張が走った。
ミカエルの眼ともあろう者が――今は亡き、マスター・Cが此処に居ればそう罵るのが簡単に想像できる。

だが、こいつは舐めてはかかれない。
もう一人の自分が警鐘を鳴らしているような感覚。
頭で考えたわけではない。只、そうしなければならないと思った。
ソードカトラスを前へ突き出す。AA弾の入れ替えは既に済んでいる。
こいつは此処で仕留める、絶対に。
ラズロにそう思わせるだけの気迫が確かにそこにあった。
そしてクーガーは打ち放つ。
更なる加速を掛けて、全身全霊を込めて――クーガーは己の、最後の技を叫ぶ。

94This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:37:14 ID:E74uRtUY
「ラストブリットオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


回し蹴り。ラディカル・グッドスピードによる強烈な回し蹴りが飛び込む。
セカンドブリットを飛ばし、全力のラストブリットが大気を震撼させる。
まるでそうなることが初めから決まっていたように、鮮やかとラズロの腹へ。
思わず血反吐を吐くラズロだが、それだけでは終わらない。
クーガーは右足をラズロに叩き込んだ後、アルター粒子の放出量を増大させる。
更に加速を加えて、ラズロの背中を地下鉄の線路と地上を覆う天井へ叩きつける。
そしてクーガーの速度は未だに衰える事無く加速し続ける。


「受けろよ!これが俺の、いや俺達の――」


たとえ天井の外壁にヒビが入ろうと、大きな亀裂が走ろうとも、崩れ落ちようとも――
ラディカル・グッドスピードの輝きに陰りはなかった。
そして遂には一部分ではあるが、完全に崩壊した外壁をぶち破り、眩しい程の光をその身に浴びて、地上へ躍り出る。



「速 さ だ ! !」



駄目押しの一蹴り。
ラズロの身体はクーガーから遠く離れ、受け身を取ることも叶わず大地へにうちつけられる。
その光景をクーガーは確かに見届け、彼もまた地上へ落ちてゆく。
アルターが砂のように全身から抜け落ちながら、
一片の闘気も見せず、まるで眠りこけたような様子であった。



◇     ◇     ◇


95創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:37:23 ID:aC3BASAK
支援
96創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:37:26 ID:YziFmMG5
   
97創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:37:57 ID:tjWC/Ju/
 
98創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:38:29 ID:YziFmMG5
 
99創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:39:16 ID:tjWC/Ju/
 
100This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:39:18 ID:E74uRtUY
「クソヤロウどもが……!」

ゴルディアスホイールが呼び出された駅構内。
ホームには瓦礫が我が物顔に蔓延り、移動することも容易ではない。
そんな場所にラッド・ルッソが一人愚痴を洩らしている。
クーガーのファーストブリットの直撃を受け、不覚にも気を失っていた。
しかし、ラッドのタフさ、そして不死者の異常性のお陰で覚醒は早いものであった。
10分、いや15分程だろうか。一応時計を眺めてみるが気絶した時間は覚えていないので意味がない。
取り敢えず判る事は定時放送とやらはまだ行われていないようだ。
禁止エリアに踏み込み、ゲームオーバー――そんな事実は御免だ。
放送を聞くに越したことはない。

「あー……取り敢えず上に出るか」

やがてラッドは歩き出す。
自分はまだまだ脱落していない。
そう言わんばかりに、憮然と辺りを見回しながら大股で闊歩する。
クーガー、ラズロ、そして御坂――殺すべき奴らの名前はしっかりと胸に刻んでいる。
次こそは必ず殺す。ニヤケ笑いを誰に見せるわけでもなく零しながら、地上への階段を目指す。
その歩みに迷いのような感情はこれっぽちも見られなかった。


【D-4地下・地下鉄駅構内/1日目 昼】
※地下鉄の駅への入り口は、D-4、G-7ともに何らかの形で隠蔽されていました。
※他の駅の位置や具体的な路線は不明ですが、どの入り口も同様に隠蔽されていると思われます。
※ホームには列車3両分の残骸が山になっています。

【ラッド・ルッソ@BACCANO!】
[状態]:全身裂傷(中)、腹部に傷(大)、顎の骨にヒビ、全て再生中 不死者化
[装備]:ワイパーのバズーカ@ワンピース、風貝@ワンピース
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
 1:あのギラーミンとかいう糞野郎をぶっ殺す。
 2:そのためにこの会場にいるやつを全員殺す。とにかく殺す。
 3:クーガー、ラズロ、御坂は殺す。
 4:ギラーミンが言っていた『決して死ぬ事のない不死の身体を持つ者』(不死者)は絶対に殺す。
 5:宇宙人(ミュウツー)は出来れば最後の最後で殺す。
 6:左腕が刀になる女(ブレンヒルト)も見付けたら殺す。 詩音はまあどうでもいい。
 7:ギラーミンが言っていた『人間台風の異名を持つ者』、『幻想殺しの能力を持つ者』、『概念という名の武装を施し戦闘力に変える者』、『三刀流という独特な構えで世界一の剣豪を目指す者』に興味あり。
【備考】
 ※麦わらの男(ルフィ)、獣耳の少女(エルルゥ)、火傷顔の女(バラライカ)を殺したと思っています。
 ※自分の身体の異変に気づきましたが、不死者化していることには気付いてません。


◇     ◇     ◇

101創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:39:53 ID:aC3BASAK
支援
102創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:40:00 ID:tjWC/Ju/
 
103創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:40:22 ID:aC3BASAK
支援
104創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:40:25 ID:YziFmMG5
 
105創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:40:41 ID:tjWC/Ju/
 
106創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:40:54 ID:aC3BASAK
支援
107This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:41:06 ID:E74uRtUY
「急がないと……この内容が正しければクーガーさんの仲間が居る。あの人の仲間なら信用出来るかもしれない……」

エリアC-3に差し掛かった地点、息を切らしながら御坂が走る。
クーガーから預かったデイバック。そこには一枚のメモ用紙が入っていた。
それはクーガーがこの殺し合いで得た情報を纏めたものだ。
意外にもクーガーは小まめに整理をしていのだろう。その内容は十分に判り易かった。
危険人物は計七名。内五名は無常、ラズロ、ヴァッシュ、水銀燈、クロコダイルと名前が判っている。
しかし残り二人については簡単な外観の特徴についてのみしか記載がない。
まあ、どちらも顔面に傷跡があれば黄金の鎧を纏っているとかなり判り易い特徴ではあるが。

そしてこの会場はループしている事、そして何よりもC-4駅で仲間と待ち合わせをしている事が御坂の注意を惹いた。
自分を逃がしてくれたクーガーなら信用が於ける。
接触を行うにも多少は危険が少ないことだろう。
もう必要以上に他者とは関わりたくはなかったが、クーガーから預かった品を渡すぐらいはしておきたかった。
クーガーの元に戻る選択肢が不思議と頭になかった事に御坂は気付かない。
戦闘行為への介入。それは命を捨てる覚悟を持つ必要がり、同時に命を奪う覚悟が必要となる。
そう。御坂は無意識的に逃げの選択を取ってしまったのかもしれない。
只、人を殺したくはない――その縋るような思いは決して忘れずに、御坂はC-4駅を目指す。
その後の事については、未だ思考が回ってはいなかった。


【D-4とC-4の境目付近/1日目 昼】

【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
【状態】:疲労(大)  全身打撲(小) 自分への強い嫌悪感 軽い暴走状態 クーガーへの信頼 大きな喪失感 精神不安定
【装備】:なし
【道具】:コイン入りの袋(残り98枚)
【思考・状況】
 基本行動方針:脱出狙い?
0:もう誰とも会いたくない。
1:誰にも近付いて欲しくない。
2:切嗣を見捨てたことを後悔。
3:上条当麻に対する感情への困惑。
4:ラッドを殺さなかったことへの安堵。
5:自分が素性を喋ったことに対して疑問(暗示には気づいていません)
6:PM:3時までにC-4駅に着き、真紅と橘あすかと落ち合う。その後クーガーのデイバックを返却する。
【備考】
 ※ 参加者が別世界の人間とは知りません(切嗣含む)
 ※ 会場がループしていると知りました。
 ※ 切嗣の暗示、催眠等の魔術はもう効きません。




◇     ◇     ◇


108創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:41:34 ID:YziFmMG5
   
109創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:41:45 ID:tjWC/Ju/
 
110創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:42:24 ID:aC3BASAK
支援
111創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:42:34 ID:YziFmMG5
    
112創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:42:41 ID:tjWC/Ju/
 
113This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:42:46 ID:E74uRtUY
――ラズロ、ラズロ。



声がする。自分を呼ぶ名前だ。
ウザったい声。いつ聴いてもムカついてくる。
もう一人の俺である癖に俺も数段弱っちいヤツだ。
そして何よりも決定的にこいつは甘い。
ここ一番って時にどうにもヘマをかましてしまいそうだ。
だからこそ俺が一緒に居なくてはならない。
たとえこいつがどんなにノロマなバカヤロウでもこいつはもう一人の俺なのだ。
それにこいつもこいつなりに努力をしてきた。
俺に近づくために、俺に頼るだけではなく、てめぇ一人の力でもミカエルの眼としてやれるように。
血の滲むような積み重ねの成果が確かにこいつにはある。
だから俺たちは一つの身体に二つのナンバーを得るようになった。

そう。こいつは俺ほどじゃないがそうそうやられるタマじゃあない。
だが、まだ一人にはさせておけない。
きっと俺の助けが要る時がこれから先来るであろうから。
その思いに違いはない。
しかし、脳みそがガンガンと俺に教えている。
それは出来ない、と。
真っ向から否定してやりたい。が、納得してしまう自分が確かに居た。
危なっかしいこいつをまだ放っておけないというのに。
ああ、柄にもねぇことだが今の俺は弱気な考えしか浮かばない。
流石に効いた。骨の芯まで揺さぶられた感覚だ。
意識を保つだけでも痛みでどうにかなってしまいそうになる。

だから、ちょっとの間だけだ。
絶対に俺は戻ってくる。
だから、今だけは少し寝かせてくれ。
俺が居ねぇ間は頼むぜ。


なぁ――クソッタレ、リヴィオ


◇     ◇     ◇

114創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:43:18 ID:aC3BASAK
支援
115創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:43:19 ID:YziFmMG5
       
116創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:43:28 ID:tjWC/Ju/
 
117創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:43:50 ID:aC3BASAK
支援
118創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:44:10 ID:aC3BASAK
支援
119創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:44:21 ID:tjWC/Ju/
 
120創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:44:34 ID:aC3BASAK
支援
121創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:45:01 ID:YziFmMG5
 
122創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:45:32 ID:aC3BASAK
支援
123創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:46:27 ID:YziFmMG5
 
124創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:46:53 ID:tjWC/Ju/
 
125創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:50:55 ID:I9ovOU3J
支援
126創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:51:38 ID:5+WiX/f8
支援
127創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:51:40 ID:I9ovOU3J
支援
128創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:52:00 ID:tjWC/Ju/
 
129創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:52:21 ID:I9ovOU3J
支援
130創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:53:05 ID:I9ovOU3J
支援
131創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:53:56 ID:I9ovOU3J
支援
132創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:54:50 ID:I9ovOU3J
支援
133創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:54:57 ID:5+WiX/f8
ん?さるさんか?
134創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:55:46 ID:I9ovOU3J
支援
135創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:56:56 ID:I9ovOU3J
支援
136This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:58:04 ID:E74uRtUY
すみません、いきなりPCの調子が……orz
時間かかりましたが投下再開しますー。
137創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:58:33 ID:I9ovOU3J
支援
138創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 01:58:55 ID:aC9uX8yS
支援
139This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 01:59:30 ID:E74uRtUY
「ラズロ……?」


全身ズタボロな男が仰向けに倒れ、心底驚いたような顔を見せている。
特に背中と胸部の損傷がひどく、赤黒い血飛沫が肉体を濡らしていた。
依然として続行中の再生が頼みの綱が致命傷には至らなかった。
その理由は至って明確。クーガーの蓄積した疲労が大き過ぎた。
アルターの多大な使用、特に列車のアルター化と最終形態の発動はクーガーから多くのものを奪っていたに違いない。
だが、男――リヴィオはそれどころではなかった。
ラズロが何処かへ消えてしまった。
その事実が今の彼の意識を支配していた。

「いったいどうして……?」

フラフラとしながらも漸く立ち上がる。
入れ替わった覚えはない。
ラズロからの要求はこれっぽちもなかった。
リヴィオの方はというと勿論ない。
ラズロと同等に殺り合う相手では自分に荷が重すぎる。
何よりラズロがあの戦いを自分に譲るとは到底思えなかった。

ならば何故、今自分の番が回ってきたのか。
ラズロは一向に呼びかけに応じない。
まるで永久に眼の醒めない眠りに落ちてしまったかのように。
心当たりはあった。きっと間違いはない。

「ストレイト・クーガー……あの男の力とでも言うのか……?」

ラズロが見ていたように同時にリヴィオを見ていた。
あの輝きを、そしてあの恐るべき速さを。
彼の蹴りがラズロを――そう思うだけで思わず寒気が走った。
今の自分では勝てそうにもない。
取り敢えずはこの身体の再生を待つしかない。
最低でも戦闘を行うのに支障がない程には治しておきたい。
特に左腕の欠損はかなり時間を必要としそうだ。
だが、どのみちラズロの帰還を待たなければならない。
当分は何処かで身を隠すべきだろう。
地図に載っている施設にでもたどり着けば、現在位置の確認にもなる。


「……行こう。俺がやらなくちゃ……」

クーガーの生死は確認する必要もない。
なにせあのラズロが二度も戦った相手だ。
無事である筈がない。
そう。彼はもう一人の自分であり一心同体だ。
ラズロの復帰を願い、リヴィオは黙々と施設を目指す。
いざとなれば自分一人でやっていかなければならない。
一つの覚悟を背負いながら、リヴィオはソードカトラスをしっかりと握りしめる。

140This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 02:00:09 ID:E74uRtUY
【E-6 南東部/1日目 昼】

【リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】
[状態]健康。全身治癒中 全身裂傷、内臓にダメージ、左足負傷、左腕欠損(再生中)、胸部及び背中にダメージ大 背中のロボットアーム故障
[装備]M94FAカスタム・ソードカトラス×2@BLACK LAGOON、.45口径弾×14、.45口径エンジェルアーム弾頭弾×6@トライガン・マキシマム
[道具]支給品一式×5、
    スチェッキン・フル・オートマチック・ピストル(残弾15発)@BLACK LAGOON、スチェッキンの予備弾創×1(20発)、
    ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、.45口径弾24発装填済みマガジン×3、45口径弾×24(未装填)
    天候棒(クリマ・タクト)@ワンピース、不明支給品0〜1
[思考・状況]
 0:何処かの施設で身体を休め、ラズロを待つ。
【備考】
 ※原作10巻第3話「急転」終了後からの参戦です。
 ※ニューナンブM60(残弾4/5)、GPS、チックの鋏@バッカーノ! はAA弾頭の一撃で消滅しました
 ※とりかえ手ぶくろによって左腕を肩口から奪われました。
 ※ラズロとの会話が出来ません。いつ戻ってくるか、もしくはこのまま消えたままかは不明です。


◇     ◇     ◇

141This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 02:00:55 ID:E74uRtUY
燦々と照りつける太陽が実に眩しい。
南国のリゾートでバカンスを楽しむとしたらこんな心地なのだろうか。
キラキラと光る砂浜で寝転び、傍には惚れた女が自分にこれまたキラキラとした眼で覗きこむ。
きっとそんな人生も歩めたかもしれない。
ロストグランドという場所に生を受けなければ、文学者にでも成れたかもしれない。
時々の休暇には愛する人とご機嫌な愛車にでも乗って何処かへフラリと遠出する。
踏み入れたことのない大地。その感触を確かめながら存分にその土地特有の光景を楽しむ。
幾多の人々が喜びを、悲しみを、楽しみを、そして愛を分かち合いながら共存する。
きっと見つかるはずだ。長い時間を掛け、数えきれない世界を見て、他者と触れ合っていけばきっと必ず。
『文化の神髄』――自分が追い求めたものが判ったに違いない。

「……ハハ、俺もヤキがまわっちまったのかなぁ」

仰向けに横たわりながらクーガーは苦笑いを洩らす。
明らかに弱々しい声が痛々しさを覚える。
アルターの度重なる無茶な使用がたたったのだろう。
今のクーガーには立ち上がる気力も体力も残されていない。
それどこから指先一本も動かせない。
いや、その表現は正しくはなかった。
何故なら元々動かそうとする指などないのだから。
そう。クーガーの両腕は肩から綺麗に消失していた。
右腕に至っては右半身も失われており、その傷はあまりにも深い。
原因はラズロが放ったAA弾。
ラストブリットの直撃の瞬間、ラズロは無我夢中で引き金を引いていた。
狙いはずれたものの、それはアルターですらも抑えきれない負傷をクーガーに遺した。

「すいません、水守さん。俺はどうやらここまでのようですが……後悔はありませんよ」

だが、今のクーガーには不思議と後悔という念はなかった。
もう言葉を発するだけでも激痛が襲っている事だろう。
見れば口元は血に塗れて、HOLYたる証ともいえる制服には赤い飛沫が散っている。
更には全身からも夥しい血液が流れ出し、クーガーの周りには血だまりが出来ている。
誰が見ても致命傷だ。助かる術は恐らくない。
しかし、クーガーが浮かべる表情には確かな感情が見えていた。
諦めといった類ではない。只、こうなることを予期していたかのような目つき。
この結果を良しとし、全てを受け入れたような印象が強い。


142創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 02:00:57 ID:I9ovOU3J
支援
143創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 02:01:24 ID:glkhBDRn
兄貴…
しえん
144創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 02:01:52 ID:tjWC/Ju/
 
145This Speed Never Ends ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 02:02:04 ID:E74uRtUY

「色々と生き急いじまったからなぁ……まあ、仕方ない」

クーガーの強力なアルター能力には『複製』という人工処置が絡んでいる。
日々の食料さえ満足に手に入れる事が出来ない人々。
クーガーはそんな彼らへの食糧支援と引き換えに、自分が複製実験のモルモットとなる事を受け入れた。
新たな力と引き換えにしたものは己の寿命。
だからこそ思える。今、この瞬間に己の命が消え失せようとも、僅かであった余命が少し速まったぐらいの事だ。
此処で朽ちようとも――悔いはない。


「じゃあな……元気でやれよ、社長……カズマ…………」


立ち止まってしまったわけじゃない。
只、少し走り過ぎてしまっただけなのだから。
何よりも速く、自分の誇りともいえたこの速さはいつだって風と共にあった。
その事実は決して曇る事なく、ずっと自分の胸の中で生きる。
ロストグラウンドでの友人等に別れを告げ、クーガーの瞼は静かに閉じられていく。
同時に全身からも力が抜け、左腕が力なく垂れ下がり地面に落ちる。



それが速さに生き、そして速さの果てに命を擦り減らした男の最期となった。





【ストレイト・クーガー@スクライド:死亡確認】
【残り37名】
146創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 02:02:23 ID:aC3BASAK
支援
147創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 02:02:37 ID:tjWC/Ju/
 
148 ◆Wott.eaRjU :2009/06/03(水) 02:03:16 ID:E74uRtUY
投下終了しました。
たくさんの支援ありがとうございます。
なにか矛盾点などあればお願いしますー。
149創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 02:03:30 ID:glkhBDRn
…なんでだろう…いま胸がきゅーっといてぇ…
しえん
150創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 02:07:26 ID:I9ovOU3J
兄貴ーーーー!!
名前を間違わずに言ったフラグで覚悟はしていたが…
原作よりも鮮烈な最後だったぜ
投下乙でした


しかしヴァッシュが命がけで作ったAA弾も残り6発か
4人もの命を奪うなんて…
151創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 02:10:47 ID:YziFmMG5
投下乙です!
……書き手として、羨ましいいいいいいい!
うまい。うまいなぁ、本当に。
知らないキャラも混ざっているというのに、こんなに読みやすいなんて。
心理描写しつつの速度があるバトルが素敵。
ダブルファングはもちろん、残ったキャラがどうなるのかがメッチャクチャ気になるぜ!
…………最速で己の道を突き抜けちまった兄貴に合掌。
152創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 02:15:51 ID:aC9uX8yS
くそっ、明日仕事なのにこんな時間まで……
修正&投下乙です!感想はまた後で書かせてもらいます!

アニキ……あんたって人はっ!
153創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 02:39:40 ID:5+WiX/f8
うわあああ!
すごい!超大作ですね。
今日仕事あるのについついこんな時間まで見てしまったw
感想は時間がないので後ほど。

…また予約入ってるし、勢いは止まらない!
154創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 02:53:28 ID:glkhBDRn
正直予約入った時からそりゃあ予感はあったけど、実際こたえるなぁ…
でもそれを上回る熱さ、格好良さ、読ませる上手さ!すげぇよ。
クーガー…熱く速い男だった。兄貴…!こっちも胸が熱いぜ。
うぅ、もう一回じっくりじっくり読むわ



細かいかもですが『複製』でなく精製(精成?)かと。あと
「両腕は肩から綺麗に消失していた。 」となると「左腕が力なく垂れ下がり」は少し。
しかしGJ!GッJ!
155創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 08:42:38 ID:wJy5YOXk
あれ?何でFateのキャラが死んでるの?
Fateって贔屓作品じゃなかったの?
156創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 15:47:50 ID:sT6bpAJo
兄貴ってFateなのか?
157創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 16:52:15 ID:I9ovOU3J
この流れでよくそんな下らない事を書き込めるなw

E-6にリヴィオって事は地下鉄は北行きと南行きの2路線は少なくともあるのかな
分岐点とかもあるっぽいし結構広がりがありそうだな
最初佐山達が乗ってたのが一周して戻ってきたかと思ったけど

佐山たちはどこに出現するやら
158創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 16:54:42 ID:wJy5YOXk
>>156
いや、その前
159創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 17:09:35 ID:sT6bpAJo
投下乙です。

アニキィィィィィィィィィィッ!
160創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 20:50:55 ID:6YfSj98I
投下乙
すげえよアニキ!
安らかに眠ってくれ
今度はリヴィオが来たか
ラズロ程では無いがこいつも相当強いよな
これからこいつがどんな道を選ぶのか期待だ
161創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 21:15:28 ID:5+WiX/f8
お二方、投下乙です。

>>静かに訪れる色なき世界(修正稿)
切嗣…安らかに眠ってくれ。
ハクオロはやっちまったなぁ…。
そんなことしたらまたレッドが悲しむぞ…。
何としても助けたいレッドと、殺すか生かすかで苦悩する二人の対比が印象的でした。
前回のSSの問題点も気にならなくなってますし、特に問題は見当たらないかと。
レッドがチョッパーを探しに行くために別行動を取った点も○。

>>This Speed Never Ends
アニキ、アニキ〜!!
「俺に任せて逃げろ」展開だったから、覚悟はしていたが…。
そしてまさかのラズロ化解除。
これからリヴィオがどんなスタンスで動くか楽しみ。

スピード感ある戦闘描写と、所々に挟まれる心理描写、そして読むことを苦にさせない文章構成はとても素晴らしいです。
改めてGJ!
162創る名無しに見る名無し:2009/06/03(水) 21:30:01 ID:tjWC/Ju/
>This Speed Never Ends
遅れ馳せながら投下乙です

やっぱり名前を間違えないのは死亡フラグか……!
二転三転する先の読めない戦いに、渾身のぶつかり合い
始終飽きの来ない展開に痺れました
163 ◆Wott.eaRjU :2009/06/04(木) 00:27:20 ID:w7nEkLeS
感想どうもありがとうございます。

>>154
ご指摘どうもです。
うっかりしてました……正しくは複製ですね。
左腕の件はクーガーのダメージを右半身の消失という事にし、左腕は健在という方向で修正しようかと思います。
それと御坂の荷物にクーガーから預かったデイバックが記載するのを忘れていたのでそこも修正します。
164創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 00:33:21 ID:uoamhINm
いや精製だろw
165 ◆Wott.eaRjU :2009/06/04(木) 00:36:03 ID:w7nEkLeS
ああ、なんかボケてました!
精製ですね。すいませんーorz
166創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 00:38:31 ID:UJnfcOSN
吹いたwww

てか、劉鳳は左半身を持っていかれ、クーガーは右半身を持っていかれたのか……微妙な因果を感じるぜ
167創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 00:59:00 ID:uoamhINm
どんだけ複製したいんだよw
168創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 01:00:50 ID:AjwY6HQJ
ゴルディアスってクーガーより速いのか?
169創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 01:06:37 ID:NmN9W0W6
>>168
時速400km超まで出てたのは原作で確認できる
フルパワーだと一〇〇mを瞬きくらいの間で走り抜けてたから、
少なくともその1.5〜2倍は出てるっぽい概算
170創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 01:08:53 ID:uoamhINm
地上を走る時の速度は時速400kmくらいかな
威力はまともに踏まれたら超一流の英霊でも一発で退場しかねないほど。
戦略爆撃機並みの破壊力。

クーガーの脚部限定は正直なところ何キロ出てるのかわからん
イーリャンの絶対知覚振り切った時は全身アルター状態だったかもしれんしな
171創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 01:13:12 ID:AjwY6HQJ
クーガー数十キロを数秒で移動してたからそれより速いっての変じゃないか
イーリャン時もどうみても全身じゃなくて脚部としか思えんし
172創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 01:42:16 ID:uoamhINm
全身アルターに包まれてるぞ
173創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 07:54:08 ID:AjwY6HQJ
>>169
ああそういやそんなシーンもあったな>神威の車輪
フル神威の車輪、制限なしリヴィオと似たような速度域か
その速度と質量で轢き逃げは痛すぎる
投下乙
しかしまあクーガーはやっぱ死ぬんだなぁ。で大抵漢死にw
まあ兄貴だし仕方ない
で、チンカスに交代と、どう動くか気になるところ
174創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 09:09:51 ID:dmV1WqYO
早死にするキャラくらい馴染みになってきたなw>半ばで熱血死
したらば見たらまた愛されててフイタww兄貴好きだな本当。いや別に嫌いじゃないけどw
175創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 09:30:56 ID:CiG1bx8z
で、切嗣死亡はこのまま通しなのか?
何か流されちゃった感があるけど
176創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 11:14:55 ID:imgSdhLf
問題ないでしょ
ていうか、修正版かなり完成度高いと思うけど
177創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 11:30:13 ID:CiG1bx8z
いくら完成度高いって言ってもなあ…
ここでFateのキャラ殺すのはどうかと思う
ワンピースのキャラだって、まだ二人も残ってるのに
178創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 12:30:44 ID:aK4Qbmih
こういう低脳な月厨がいなければなぁ
179創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 12:56:10 ID:6XCKX6Xn
規制で感想が遅れましたが、お二方とも投下乙です!

>静かに訪れる色なき世界
切嗣、やはり逝ってしまったか…

何よりも、情の人であるハクオロをここまで追い詰めたロワという会場が恐ろしい
部下の死を目の前で看取り、家族を部下を自分の知らぬところで亡くし、
殺し合いの中で共にいた仲間をも亡くした
原作のように不安定になっても引き戻してくれるエルルゥは既にない
葛藤と共に一つ一つボタンをかけ間違えていくように選択ミスをしていくハクオロ

レッドとライダーのまっすぐな強さと明るさとの対比で
余計にそのつらさが際立っていく感じを受けました
王ゆえの決断とはいえ、今まで受けた無力感と、残った家族の大切さが生んだこの選択
なんとも悲しいなぁ…

読んでいてはがゆさと無力さを感じさせる、静かないい話でした。GJ!

そういえばレッドの向かった先は劇場周辺…ヤバイ。逃げろ、レッド超逃げろ!
そこら辺は最も激戦区が予想される場所だー!


>This Speed Never Ends
あ、アニキィイイイイイイイイイイ!
ハイテンションで早口で、そしてとびきり熱くて文化的な、どこまでもクーガーな最後だった!!

神威の車輪での速さ対決、地下鉄を使っての大質量の衝突、どちらも凄いけど
やはり!魂と魂のぶつかり合いが熱すぎる!
そりゃあラズロだって燃え尽きてしまうさ

そして全てを燃やし尽くすかのような、劉邦の思いを背負った蒼いアルター。
読んでいるこちらにもNever Endsな熱さを残していった

どう表現すればいいのかわからない、この切なさと感動
完全燃焼、この言葉がぴったりな、クーガーの兄貴らしい最後だったよ…!
万言を費やしても語りきれる気がしない感情を呼び起こさせる、素晴らしい話でした!!
GJ!GJです!!

ああ、でもやっぱり御坂は救われないな
兄貴のハイテンションで少し御坂らしさが戻ったのに、恩人がまた死んでしまった
クーガーが望んだように、御坂の笑顔が見れる日は来るんだろうか

そしてラズロが消え、自分で主導権を握ったわけでもなく変わってしまったリヴィオはどうするんだろう
ラズロのように吹っ切れているわけでもなく、原作のリヴィオのように自分で立とうとしているわけでもない
次にどう考えて、どう動くかがすごく楽しみだ
180創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 13:07:01 ID:6XCKX6Xn

ってしたらばに素晴らしい絵が投下されている…だと…!?

青いアルター、never endsの文字があの熱さと切なさを思い起こさせるなぁ
兄貴、安らかに眠ってくれ…
心のそこからGJ!
181創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 14:38:17 ID:Fr33Xu0C
>>175
ハクオロの思考展開に少々無理を感じたかな
123話での思考との乖離が激しすぎる気がする
2つの話の間で変化があったとすれば美琴がレッドに電撃を浴びせたことだけど、
人を殺してしまったショックで暴走したのは明白なんだから、むしろ殺しを忌避していた証明だと取れるだろうし
原作で、敵対していた相手をたくさん味方に引き入れたハクオロだけに尚更
182創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 15:22:16 ID:CiG1bx8z
>>178
黙れよワンピ厨
183創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 16:21:59 ID:aK4Qbmih
おめでとう!低脳はゴミカスに進化した!
184創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 16:33:20 ID:dmV1WqYO
どっちも焦んじゃねーよww順番だろ?www
185創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 19:59:29 ID:6XCKX6Xn
>>181
切嗣は信用できる人柄と確認したライダーに攻撃してて、
かつ警戒バリバリの同行者、最後には電撃で仲間を殺されかける
信用できる要素があまりないんだよなぁ

前話では争いを避けるためと、本当に助けたいと考えていたけど
落ち着いて考えた時警戒心が強くなるのはしょうがない気がする

ロワ開始当初なら思考に違和感があるけど、身内をなくしてて、
特に情が強いからこそ失うことに臆病になるのには違和感を感じないかな
186創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 20:01:38 ID:5a/U50U+
んなことより、しばらくチョンピのキャラ死んでないな
これは酷い贔屓だな
187創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 20:33:38 ID:MLOZWbBB
美琴を助けるって思考欄にあるのに切嗣の言い分を何も聞かずに殺すってのはおかしいと思うんだが…
188創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 20:49:13 ID:qDZ6BjBN
まあ信頼できる相手と敵対関係だから悪って決めつけるのはどうかと思ったが。
昔の仙水じゃあるまいし、仮にも一国の皇が戦争が良い国と悪い国が戦っているなんて思ってるわけないだろうしね。
まあ、別に状況的にしかたないの一言で片づけてもいいけど。
189創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 20:52:46 ID:NmN9W0W6
>>185
>切嗣は信用できる人柄と確認したライダーに攻撃してて、
前話では、その件について「情報交換をして溝を埋めるべき」と美琴を説得してる

>かつ警戒バリバリの同行者、
警戒を解こうと尽力してたのはハクオロ本人

>最後には電撃で仲間を殺されかける
人を殺したショックでああなったのは明白なんだから、むしろ「凶悪ではない相手」と結論付ける材料な気がする

>落ち着いて考えた時警戒心が強くなるのはしょうがない気がする
美琴と切嗣について、ハクオロが知っていると思われるのは、大きく分けて
・ライダーのことを敵と見ている(美琴と切嗣)
・自分達のことは敵の味方だから敵視しているだけで、直接的には悪意はない(美琴)
・人を死なせたことで錯乱したほど(美琴)
・そんな少女が必死に護ろうとする男(切嗣)
・ライダー曰く、ここではない「望みを叶える戦い」でライダーと争っていた(切嗣)
の5点だと思うんだ
前の話で、対話して認識の相違を埋めようとしていたように、
「立場の違いから敵対しているだけで、クロコダイルのように極悪な相手だとは思えない」というのが自然だと思う
ハクオロは戦場でそういうのを多く経験してるんだから、
>ライダーを敵だといった、その衛宮たちの立場に立って考える。
>ならばライダーが実は彼らに討たれる理由をもった悪逆非道の輩であったと?
>だがそれは考えづらい。
>(中略)
>――ならばレッドには悪いが衛宮を助けぬほうがいいのかもしれない。
という思考に持っていくのはかなり不自然だと思う
聖杯戦争に参加してたのはライダーも同じなんだから、そのことは殺し合いに積極的に乗る根拠としては弱いだろうし
190創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 20:56:46 ID:236KTXwQ
やるなら、議論スレでやってくれ
……ていうか、分岐すればいいじゃん
191創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 20:58:38 ID:qDZ6BjBN
ああ、すっかり忘れてたけど、そういやここ分岐性だったな
192創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 21:03:49 ID:uoamhINm
こんなほっといても死にそうな男を危険視するっつーのもねぇ
193創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 21:05:07 ID:aK4Qbmih
だから面倒なんだよ月厨の扱いは
194創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 21:06:55 ID:uoamhINm
すんまそん…じゃあ改善案
危害を加えられそうだから殺すんじゃなくて
足手まといになるから殺す方向にしてはどうかな
195創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 21:08:32 ID:236KTXwQ
だから、議論スレでやろうと何度ry
本スレでgdgdしたくねーのよ
196創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 21:21:06 ID:z03D28RA
つーかこの程度の違和感ならパロロワじゃ日常茶飯事だろ
いちいち目くじらを立てる程でも無いと思うけどな
修正も丁寧にしてあってかなり話も面白くなってたし、これ以上はただのわがままに見えるんだが
197創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 21:44:09 ID:MLOZWbBB
>>196
こんな違和感は見たことないが…
自分はそんなにSSを見れてないみたいだな

まあ、議論スレに移ろうか
198創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 21:46:09 ID:NmN9W0W6
>>196
前に投下されて破棄になったゾロと大阪のSSが、
前話の思考との食い違いを次々と指摘されてたけどね
199創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 22:04:12 ID:pdb1JROG
新人さんの予約にwktkしつつ、久々に地図更新!
全体的に左に寄り気味
ループだから関係ないとはいえ、ロベルタさんのボッチが際立つw

http://loda.jp/mitemite/?id=100
あれ?これはもしかして投下後に放送行くのか?

※地下にいるキャラは少しぼかしてあります
200創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 22:05:53 ID:pdb1JROG
専ブラ使ってる人はこっちの方がいいかな
http://loda.jp/mitemite/?id=100&img=100.png
201創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 22:08:02 ID:6XCKX6Xn
地図更新乙です!!

そういや次は放送か!
黒幕は少し触れられるのかな?
202創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 22:15:29 ID:uoamhINm
あれ、美琴の場所が違うんじゃ
203創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 22:22:09 ID:OlfPkFHq
黒幕はセワシ君だな。
204創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 22:25:00 ID:pdb1JROG
あ、本当だ
失礼しました。修正バージョンです
CDE-4周辺に人が集まりすぎて配置しづらいw

http://loda.jp/mitemite/?id=101&img=101.png
205創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 22:26:45 ID:6XCKX6Xn
修正乙ですー

セワシ君www
ではドラミちゃんを推しておこうw
206創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 22:33:21 ID:CiG1bx8z
ギラーニンでいいじゃん
何でわざわざ黒幕なんか出すの
207創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 22:37:43 ID:6XCKX6Xn
>>206
志村ー名前名前www
208創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 22:41:06 ID:in1dykZK
地図更新乙です。
人数偏り酷すぎるw

>>206
それは前に誰かが説明してた。
それと
ギラーニン ×
ギラーミン ○
209創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 22:42:11 ID:7AInr+hI
その疑問何度目だろうな。
ギラーミンにはロワを主催するだけの力はない、ただのガンマンに過ぎない、って
何度か理由が述べられているのに。
まあ、同じIDの書き込み見る限り、ワンピースにしか興味がないってことはわかるけど。
210創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 22:51:32 ID:HnNCn6fh
地図更新&修正乙です!

…うん、これは配置しづらいだろうなぁ
なんだこの偏りはw

今回の戦闘も激しかったし、放送後地上部に地下の影響が出たりしてw
211創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 22:56:47 ID:pdb1JROG
確かにあれだけガッツンガッツンやってれば、少なくとも軽度の地震ぐらい起きてもおかしくないなw

212創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 23:11:56 ID:CiG1bx8z
>>209
ああ、そうだったね
で、何でそんなキャラが主催として通っちゃったんだっけ?
213創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 23:19:16 ID:6XCKX6Xn
前スレで圭一が巻き込まれるって話が出てたなw >地上部
流石に崩壊はしな…いよね?w
214創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 23:24:10 ID:HnNCn6fh
いやいや圭一だしわからんぞww
ピンポイントで崩壊とかw
215創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 23:26:33 ID:qDZ6BjBN
>>212
ああなんだいつもの人か
っていうか、ワンピ厨煽りの人と月厨騙りの人といつもの人って同一人物だったのな
ありがとう、ゴミが固まってると気付けて少しすっきりしたよ
216創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 23:27:13 ID:CiG1bx8z
何で圭一だしになるんだか
圭一は別に不幸キャラとかじゃないだろ
217創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 23:28:31 ID:CLsXYfKH
>>209
まあ、某ロワじゃ文句なしのシリーズ最弱ラスボスが
主催を立派に勤め…てないんだった
えっと、圭一はなんだかんだでなんだかしてくれるよきっと
218創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 23:31:52 ID:59DBg6cB
地下鉄はもうボロボロだよな……
まだ走っている線はあるのか?
あったとしても脱線事故とか起こしそうだけど。
あれだけ派手にドンパチやってたんだから地上に音が漏れていてもおかしくは無いよね
219創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 23:34:32 ID:CiG1bx8z
>>215
都合悪くなったら人をゴミ扱いして逃げるのか
やだねそういうの
220創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 23:40:35 ID:pdb1JROG
これからの話で明らかになっていきそうだけど、まず地下の全体像が掴めないからなぁ
地下鉄だけじゃなく色々と眠ってそうでwktk
221創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 23:44:47 ID:in1dykZK
今気になること。
・首輪の秘密
・地下の秘密
・湖の秘密
・主催者の秘密(?)
222創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 23:52:45 ID:59DBg6cB
古城にある○についても……思い出してあげてください
223創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 23:54:24 ID:pdb1JROG
ココ・ジャンボも忘れないであげて!
224創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 23:54:54 ID:fQaJ7xeq
あとは古城の○の枠も気になる所かな
むしろここまで出番のない廃坑や映画館も
自由が効く分楽しみだったりする
225創る名無しに見る名無し:2009/06/04(木) 23:59:06 ID:in1dykZK
わ、忘れてた訳しゃないんだからね!!
・首輪秘密
・地下の秘密
・湖の秘密
・主催者の秘密
・古城の○の秘密(New!!)
226創る名無しに見る名無し:2009/06/05(金) 00:02:23 ID:vVZNxTmX
前スレがあと少しだから先に埋めないか

http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1241420923/
227創る名無しに見る名無し:2009/06/05(金) 00:45:41 ID:Xth5U4BC
そういやあの湖、3つの湖って聞くと最近のポケスペが浮かぶんだが…
まだ単行本化してない内容だし、関係はないか。
228創る名無しに見る名無し:2009/06/05(金) 00:51:37 ID:vczxmzrz
>>225
前から気になっていたがこのロワ火種のほかに秘密というか謎多すぎw
ラストまでにまとめれんのかな?
ちなみに秘密って首輪が概念、地下はその存在が、3つ目の湖とそこに何があるのか?、真の黒幕は誰なのか?、3つの大きさの異なる○をはめるとどうなるのか?
であってたっけ?地下とか地図がないとまったく分からんしw
だれかいないかな?地下の地図作ってやるっていう凄い人

ていうか秘密じゃないかもしれないがジョジョ出典の亀忘れられてなければいいが・・・
229創る名無しに見る名無し:2009/06/05(金) 01:00:09 ID:PMKHiw9W
まだ第二放送だ、気楽にいこうぜ!

ああ、気になるといえば○印のついたコインとか、ココ・ジャンボとか気になる支給品もあるな
230創る名無しに見る名無し:2009/06/05(金) 01:03:42 ID:n1OrADK7
まあ、全部ブラフでした!とかでも良いんじゃないかと個人的には思うけどw
ネタがある人がこの先進めていけばいいさー。
231創る名無しに見る名無し:2009/06/05(金) 01:14:34 ID:MEp8SoXI
空中要塞ダモクレスとかテポドンあたりが有力かな?
232創る名無しに見る名無し:2009/06/05(金) 13:44:08 ID:fzz15z0u
テポドン…?
233創る名無しに見る名無し:2009/06/05(金) 15:47:33 ID:AALAW8Ie
テポドンは時事ネタすぎるww
ダモクレスってw
まあ地下があるんだから空中に何かあってもおかしく…いやいやww
234創る名無しに見る名無し:2009/06/05(金) 19:19:53 ID:blkRtojt
テポドン?、ああ、今年の映画のポケモンか
たしか前売券と引き替えにもらえるんだっけ?
235創る名無しに見る名無し:2009/06/05(金) 20:10:24 ID:Zh5bS4LQ
>>228
確かに多いw
秘密に関してはそれで合ってると思う。
首輪が概念、ってのは概念条文の聞こえる条件ってのも今んとこ謎?
この幾つかの謎をどうやって繋いで行くかが楽しみ。
236創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 00:08:14 ID:uVgHe7gl
延長なしなら今夜投下かな
237 ◆T4kibqjt.s :2009/06/06(土) 00:34:03 ID:1i4aPvjz
それでは、投下を始めます。
238意志×拳 ◆T4kibqjt.s :2009/06/06(土) 00:35:06 ID:1i4aPvjz
中指の腹に小さなトゲが刺さっていた。
不意に走った痛みの正体はこれだったかと、レナは引っ込めた手を庇うようにやんわりと包む込む。
気付かぬうちに木のささくれに触れていたらしい。切り揃えられた爪の先で器用に痛みの元を取り除くと、一拍遅れてぷくりとした血の球が生まれた。
手持ちのハンカチでさっと拭う。お気に入りの花柄を汚すのは嫌だったが、我慢するしかない。
嫌なのはむしろ、ちょっとした痛みにみっともないくらい大きく身構えてしまったことの方だ。
声を上げるようなことこそしなかったものの、ほんの些細な刺激にすわ敵襲かと過剰反応してしまった。事実を知ってみれば滑稽でしかない。
細かな傷など、森を歩けば自然に付くものと知っていたはずだろうに。
闇雲な警戒心に振り回された結果、疑心暗鬼に陥っていたというのか。失敗の許されない、この状況で。
焦ってはいない。かすかな欺瞞が何を言ってこようと、せめてそう思いたい。
血が止まらなかったので同じように何度か拭った。

「ああ……悲しい……もう何度目かも分からない悲しい話をしよう……」
「お、おいまた始めたぞこいつ……」

約束の時間は迫っていた。まだ急ぐ必要はないが余裕を持って合流するならそろそろ移動を始めたい。
こちらから別行動を提案しておいて待ちぼうけを食らわせるのは常識で考えても失礼だろう。
基本には忠実であるべきだ。たとえそれが、ただの待ち合わせでない場合でも。

「俺は、俺たちは仲間となるべき人材を求めてこうして歩き回っていたんじゃないのか。
ああ、そのはずだ。だからこそわざわざ暗い、足場も悪い森の中をさまようなんて真似をしているんだからな。
まるで変質者だがその実そこにはこんな場所に隠れでもしないと平穏を得られない弱者を保護しようという崇高な目的がある。
俺は何でもかんでも壊すことしか考えられないイカれ野郎だが、だからこそ素晴らしいものには素直に称賛を送りたいと思う。何せ俺の命の恩人の発案だ。
さらにそれがギラーミンの企みを壊すことに繋がるとなれば、乗らない理由はどこにもないだろう。
ラッドの兄貴が人を殺し俺は奴の野望を壊す。改めて口に出してみたが完璧。やはり完璧だ。どこにも綻びなんて見当たらない。
それでもこの完璧さを再確認する意味で敢えて別の言い方を考えるとしたら……パーフェクト、だ」
「何も変わってねぇじゃねぇか!?」
「……見たか、この理想的なリアクションを。いや、たとえ見えなくても、聞くことしかできなかったとしても構わない。
それだけでも今のが正に俺の期待した反応だと言うことは十分に伝わるはずだ。
いささかベタすぎるところはあるがそれについては俺も偉そうなことは言えない。互いの反省点として記憶に留めておこう。
シャフトの野郎ではこうはいかん。……やっべぇ、まじ嬉しい。もしかして俺ってば最高のパートナーに巡りあったんじゃないだろうか。
見た目が全然人間っぽくないとかラッドの兄貴を差し置いて最高とはどういうことだとかはこの際横に置いておこう。
俺が言いたいのはつまり俺たちはチームとしても最高だと言うことだ。
大分回り道をしたような気もするが俺の主張はこの一言に集約しれていると言ってもいいだろう。
素晴らしい……本当に素晴らしい。運命というものが本当にあるなら俺はそれを決めた奴に一生頭を下げ続けなくてはならない。
常に下しか見えない生活は余り想像したくはないが、それくらいのことをしないと俺の感謝の気持ちは表現できない。
なのに!なのにだ!そんな最高の俺たちが弱者を保護ようと歩き回っているというのに、誰とも出会わないとはどういうことだ!?」

考えがなかった訳じゃない。勝算がなかった訳でもない。
これまで得た情報。会場の広さ。決意を示すために多少ハードルを上げたとは言っても、三人は可能な数字だと思った。
結果は、期限を前にして勧誘どころか接触すらもゼロだけれど。
約束を違えたとか。
イスカンダルに認められたいとか。
そういうのではないけど。
一つの失敗は。そのまま部活メンバーの危険に繋がるから。
ぎゅっと、強く手を握った。

239意志×拳 ◆T4kibqjt.s :2009/06/06(土) 00:36:36 ID:1i4aPvjz
「何故だ!?俺たちのやっていることは曲がりなりにも正義に近いことのはずだ!それにさえ神は背を向けるというのか!?
……いや、すまん。『正義』などと言う言葉を軽はずみに使ったことは謝ろう。俺みたいにぶっ壊れた野郎が口にしたことも含めてだ。
仮に今のセリフを聞いたやつは嬉々としてこういうだろう。『お前の正義が別の人にとってもそうだとは限らない』と。
ああ分かっている。人間誰しもそういうのをカッコいいと思っちまう時期があるもんだ。俺にだってあった。
それに別に間違ったことを言ってる訳じゃない。むしろ正しい。何でも疑ってみようというその態度は大いに誉められるべきだと思う!
それでも!それでもだ!
俺は今の自分の発言のせいで議論が『正義とは何か』などという高尚な方向に流れてしまい、結果本当に俺が言いたかったとが無視されるんじゃないかという恐怖で一杯だ!!
それを防ぐためなら俺はちょっと背伸びしたい年頃の連中に馬鹿にされることくらい、喜んで耐えようじゃないか!
奴らがなんと言おうと俺たちのしていることは決して貶されるようなことではないはずだ!普段貶されるようなことばかりしている俺がそう思うんだから間違いない!
だが現実は非常だ!良いことだからと言って上手くいくとは限らない……分かっちゃいる……。
分かっちゃいるが一つ言わせろ……悲しい……この現実が悲しい…………ああ悲しいなぁ!
せっかく!せっかく!!俺の命の恩人が考えた作戦だというのにッ!俺はッ!クソッ!何の役にも立っていないッ!
それどころかッ!壊してッ!壊してッ!壊すことばかり考えている俺はッ!この最高のチームの………………
……足手まといなんじゃないのかああああああああああああああああ!!!?」
「ぎゃああああああああ!?」

絶叫とともにグラハムが降り下ろしたレンチにチョッパーが目を飛び出させて悲鳴を挙げた。
湿った泥と草の地面は小型レンチで殴り付けられただけとは思えないほど陥没し、気のせいかしゅうしゅうと煙を立ち上らせているようにも見える。
原因不明と表現しても差し支えない突発的なグラハムの暴力は、位置的にチョッパーの頭上に落とされていてもおかしくはなかった。
地面の代わりにチョッパーの頭がへこむような羽目にならなかったのは多分偶然だ。グラハムの意思はあまり関係ないと思う。
レンチを降り下ろした姿勢のまましばらく固まっていたグラハムは、やがて小さくぽつりと呟いた。

「…………少しだけすっとした」
「俺は死ぬかと思ったぞ!?」
「だが俺は自分が楽になるために命の恩人を怯えさせてしまった……何て罪深い男なのだろう俺は……ああ悲しい……また悲しくなってきた……」
「お前もしかしてずっとそれ続けんのか!?」

幸せはもろい。
頑張って頑張って、その上にさらに頑張りを重ねないと手に入らないほど貴重なのに、やっと手にしたそれはあっけないくらい簡単に壊れてしまう。
油断してはいけない。今ある幸せは次の瞬間には崩れるんじゃないかと、常に思っているくらいでちょうどいい。
楽しい時を過ごせる幸運を忘れずに。
もしそれが取り上げられそうになったときは全力で阻止する。戦って戦って、戦いぬく。
たとえ自分が汚れ役になっても構わない。幸せは勝ち取るものだから。
240意志×拳 ◆T4kibqjt.s :2009/06/06(土) 00:38:06 ID:1i4aPvjz
「二人ともそろそろ移動しようか。時間もなくなってきちゃったかな……かな」
「ああ……そうだな……誰にも会えなかったことは悲しいが……俺は逆にこれを良い機会と考えあのおっさんにこう言ってやろと思う……。
『お前なんかの手下になりたがる奴は誰もいなかったぞざまぁ見ろ』と…………」
「そうだな!頑張ったって言えばきっと分かって……ってケンカ売る気満々だこいつーー!?」

出会ってからこちら、ちっとも変わらない騒がしさに思わず苦笑してしまう。
雛見沢とは似ても似つかない、それでいて部活メンバーのように明るい仲間。
では、その仲間を心の奥底でほんの一部でも裏切っている自分は何なのか。

「レナ、顔色があんまり良くないぞ……もしかして疲れてるのか?」

レナの浮かべた笑みは一瞬浮かんできた礼奈の顔を覆い隠せるくらいには純粋なものだったはずだ。
それでもやはり本業の医者の目は誤魔化せないらしい。

「何だと……それは良くない……もしおっさんに何を言われるか気にしているなら心配するな……。
実は俺はさっきから奴の全身の関節をどうやってバラバラにするか……そればかり考えていた……」

グラハムも、彼なりの表現ではあるが心配してくれているのだろう。
終始だるそうに伏せられていた顔を向け、鬱蒼と伸ばされた髪の隙間からレナを見る。濁りがちだった視線に気遣いの色が見えた。

「あはは……敵わないなぁチョッパーくんには。でも大丈夫だよ。
グラハムさんもあんまり危ないことは言わないで欲しいかな、かな」

胸の前で両手を振って困ったように笑う。
医者としての性分からか尚も渋るチョッパーとまた何かぶつぶつと呟きはじめたグラハムを半ば追い立てるようにして歩き出した。
集合場所は劇場。
約束した仲間は見つけられなかったけど、最善の選択だったかも分からないけど、行動だけは全力を尽くしたと信じて。
移動時間の短縮と僅かでも誰かに会える可能性が上がることを願って通り道は一番大きな通りを選んだ。
その選択が、レナを一人の男と巡り合わせる。


241意志×拳 ◆T4kibqjt.s :2009/06/06(土) 00:39:23 ID:1i4aPvjz



ひびのような縦線が走る腕を引きずるように歩く。一人が占拠するには広すぎる大通りの中心で、誰に憚るでもなくゆっくりと。
歩みの遅さは全身を蝕むアルター化の後遺症に苛まれているからでも、絶望に足を絡めとられたからでもない。
その証拠に男、カズマの目は純粋な光に満ちている。
純粋な、飢えと獰猛な本能と攻撃的な意思に満ち、ギラギラと棘ののように鋭い光に溢れている。
行くあてはない。それにも関わらず迷いはない。
考えはあるが、恐らくそれを聞いたものは一様にこう言う。そんなものは考えてるうちに入らない、と。
構わないと吐き捨てた。誰とも知れぬ輩に馬鹿だクズだと後ろ指をさされることにはとっくに慣れきっている。
彼らの言うことを否定する気もない。実際頭を使うのは苦手だ。
だが、だからどうした。
考えることさえ人任せにして、カズマはただ己が唯一誇りとする拳を振るって歩く。
ただの馬鹿でしかないカズマは、ロストグラウンドの粗暴な日常に戻る方法を他に知らない。
太く短く。そう月並みに表現することさえ憚られるカズマの生き方は、多くの者にとって理解の範疇を越るものだった。
荒くればかりのロストグラウンドにあってさえカズマほど尖りのある生き方をするものはそう多くない。
異端なのだ。カズマという男は。どこに行っても。
それでも、ロストグラウンドの生活では親しくしていた者がいなかった訳ではない。
兄貴と慕った男がいた。肩を組んだ相棒がいた。同じ屋根で暮らした少女がいた。
暴れることしか脳のない男の手綱を握ろうとする者たちがいたからこそ、曲がりなりにもカズマは日々の生活を送ることができていた。
今となっては、そのどれもが遠いものになってしまったが。
獣を繋ぐ鎖となる人物はもういない。
がむしゃらに猛る心を静めようとする仲間も、いたいけな少女に容赦なく振るわれる拳を押さえつけてくれる友もいない。
名を刻んだ者たちもことごとく逝ってしまった。
一匹だけになった獣は、ただひたすらに牙をむき続ける。
出会うはずのなかった技術によって加熱された本能が焼き切れるそのときまで。
持ち手をなくした手綱が、再び握られるときはいつのことか。

そして、カズマは一人の少女と巡り合った。

「私は竜宮レナ。あなたに戦う意志がないなら、話を聞いてくれると嬉しいな」

仲間より一歩前に出て、少女は手を差しのべる。
土壇場で掴んだ千載一遇のチャンスを決して逃すまいと。仲間を救うための選択を決して誤るまいと。

「関係ねぇな」

男はその手を払い除ける。
誰もが等しく敵でしかない。拳は手を握るためではなく、潰すためにある。
これまでと同じく。これからも変わらず。
交わるはずのない運命を引き寄せるのは意志の力か。立ちはだかる壁を打ち貫くのは拳の力か。
二人、己の太さを競い合う。
242創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 00:39:27 ID:y+zka02s
243創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 00:39:51 ID:QdazMutX
支援
244創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 00:40:44 ID:pO12ARST
 
245創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 00:41:29 ID:pO12ARST
  
246創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 00:43:11 ID:y+zka02s
247:意志×拳 ◇T4kibqjt.s 代理投下:2009/06/06(土) 00:48:02 ID:MDzBQ4Kx
【E-3道路/1日目 昼】
【カズマ@スクライド】
【状態】:COOL 疲労(大) 全身に負傷 砂鉄まみれ 右腕に痛みと痺れ 右目の瞼が上がらない 右頬に小さな裂傷(アルターで応急処置済み)
     腹部と頬に打撃ダメージ、脇腹と左肩に銃創
【装備】:桐生水守のペンダント(チェーンのみ)、スタンドDISC『サバイバー』@ジョジョの奇妙な冒険
【道具】:基本支給品一式×4(食料を3食分、水を1/3消費したペットボトル×2、)、不明支給品(0〜5)、聖剣グラム@終わりのクロニクル
    モンスターボール(ピカ)@ポケットモンスターSPECIAL、君島邦彦の拳銃@スクライド
【思考・状況】
1:ロストグラウンドに戻り、かなみを助ける。そのために優勝する
2:ギラーミンを殴り飛ばす
3:ムカつく連中をぶん殴る。(ゼロ:誰かはよく分かっていない、仗助:死亡を知らない、クレア、レヴィ)
4:次に新庄、伊波と出会ったら……
5:メカポッポが言っていた、レッド、佐山、小鳥遊に興味。
※ループには気付いていません
※参戦次期原作20話直後。


【チーム名:○同盟】
1:主催者の打倒。
2:二チームに分かれ、それぞれで『ノルマ』(仲間集め、殺し合いに乗った者の討伐を、計三人以上行う)を達成する。
3:出会い、信用した相手に印のこと(腕に○の印を描き、その上に包帯等を巻く)を教える。
4:次の放送時に劇場へ集合。
5:サングラスにスーツの男(無常)、クロコダイル、サカキ、アーチャー、ミュウツーを警戒。クレアという女性を信用(グラハム以外)
6:ラッドについては微妙(グラハムの兄貴分という情報はあります)。


【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康 私服 右腕に○印 僅かに罪悪感
[装備]: 包帯 二重牙@トライガン・マキシマム
[道具]:支給品一式(一食分、水1/10消費)、ドライヤー
[思考・状況]
0:ノルマに従いカズマを勧誘、あるいは討伐する。
1:とりあえずはグラハム・チョッパーと行動し、『ノルマ』を達成する。
2:部活メンバーと合流したい(ただし、積極的に探すかは保留)
3:劇場へ向かう。
4:何とかして首輪を外したい
5:イスカンダルの勧誘は保留。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
248創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 00:48:33 ID:pO12ARST
 
249意志×拳 ◇T4kibqjt.s 代理投下:2009/06/06(土) 00:48:44 ID:MDzBQ4Kx
【トニートニー・チョッパー@ONE PIECE】
[状態]:健康 腕に○印 悲しみ
[装備]:なし 包帯
[道具]:支給品一式(一食分、水1/10消費) タケコプター@ドラえもん、 タオル、救急箱
[思考・状況]
1:グラハム・レナと行動し、『ノルマ』を達成する 。
2:仲間と会いたい
3:グラハムの様子を見る。
4:劇場へ向かう。
5:ギラーミンを倒し、脱出する。
6:イスカンダルの臣下になるかはとりあえず拒否。
※レナからはあまり情報を受けていません。圭一たちについての情報は知りません。
※参戦時期はCP9編以降。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。


【グラハム・スペクター@BACCANO!】
[状態]:健康  ちょっと凹み 青いツナギ姿 腕に○印
[装備]:無毀なる湖光@Fate/Zero 包帯 小型レンチ
[道具]:支給品一式、(一食分、水1/10消費。うち磁石は破損)、スペアポケット@ドラえもん、かぁいい服
海楼石の網@ONEPIECE
[思考・状況]
1:レナ・チョッパーを助ける。
2:ウソップを殺した者を壊す。
3:イスカンダルに敵意。
4:殺し合い自体壊す
5:ラッドの兄貴と合流、兄貴がギラーミンを決定的に壊す!
6:イスカンダルの勧誘は断固拒否。
※レッドたちがクレアを信用していることを知りません。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
250創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 00:49:25 ID:MDzBQ4Kx
代理投下終了です
251創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 01:05:57 ID:rVJDaTKS
投下乙
三人組のコントにワロタ
レナー!
女の子が太さを競い合っちゃらめぇー!!
252創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 01:07:12 ID:0hRJ4qNZ
投下&代理投下乙!
グラハムのセリフが色々と凄い!wすさまじく長いのに全く違和感を感じさせないのが上手い!
冒頭のレナやカズマの描写がなんというか深くてつい読み込んでしまいました。
特に最後の締め。レナとカズマの手を対比させるところが印象に残って続きが気になりすぎますw
でも、サバイバーのこともあるし交渉が穏便に済みそうになさそうなところが怖いw
253創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 01:09:27 ID:rVJDaTKS
サバイバーは怒らせさえしなければ問題ないと思うが…
グラハムあたりがたやすく着火点になりそうw
254創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 01:42:18 ID:v1z7OTo7
何でみんなワンピースのキャラ殺そうとしないのかなあ…
荒れる原因にもなるんだから、さっさと殺すべきじゃないかと思うんだけど
255創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 01:51:29 ID:0t4jKuWb
投下乙です!

3分の1はグラハムの語りで埋まっているとかw
本当にグラハムの語りが上手い!
最高のパートナーといった少し後に無意識で攻撃しかけるとか、
一挙一動がグラハムらしいという他ないw

ボケのグラハム、ツッコミにチョッパー、この二人を上手くまとめるレナ、本当にいいチームだw
レナが舵を握っているようで、二人に精神的に救われてるというのもまたいいなぁ

それにしても全体の構成と描写が上手すぎる
グラハムとチョッパーのコントで和むもにレナ視点によって緩ませすぎず
カズマという野生的な男の説明でロワの空気を取り戻させ
邂逅によって最後に緊張感を持ってくる。
たった二言の会話でここまで緊張感を演出するとは
うまい、なんとも上手い…!

カズマはこの後の放送で兄貴、クーガーの名前が呼ばれた時どう出るのか
サバイバーのこともあわせて、この交渉大荒れの予感がするぜ…!

それにしても最後の予告ネタww
256創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 06:31:09 ID:Im3nvXPh
圭一はレナの精神安定剤っても過言じゃないしな
発症するまえに合流できればいいな
257創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 19:32:19 ID:eYk6swNr
地の文が若本にwそういえばK1とカズマは声一緒だな
258創る名無しに見る名無し:2009/06/06(土) 21:53:45 ID:PeoLoUHS
すごいグラハムがうまい。
レナの心理描写も今までの話をうまくリレーしてて、しかもすごくキャラらしさが出てる。
しかしなんと言っても最後の一文で全て持ってかれたw
凄まじい破壊力だwwww
259創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 00:56:52 ID:bd0h2re9
>>257
スクライド、アニメ見たことないんだが声同じなのか。
…そんなことより、予約が入ってますよ。
260創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 00:59:36 ID:SLBMQRpB
おお、ホントだ!
社長と真紅のコンビかー。楽しみだw
261創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 01:08:16 ID:KUbQANcl
カズマとK1は中の人一緒だけど、
声は結構違うからレナが間違える事はあまりなさそうだね。

片や暴走無差別マーダー、片や我様のパシリというか奴隷……
口調とかは結構似てると思うんだけど、全然違うなぁ
262創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 01:12:03 ID:o2m+7TdL
イヤッホゥ予約キタ!
社長と真紅はいいコンビだよなぁ


カズマはなんとなくK1と会ったら声が似てるというだけでイラッとしそうな感じがするw
263創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 10:50:30 ID:7eFPUYdZ
そしてバラライカと無常の予約も来たな。
いよいよ放送が近いか?
264創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 11:19:02 ID:SLBMQRpB
なんと!バラライカと無常もだと!?
確かに今の予約分が終われば放送も近いな!
ん?でもレナ組とカズマも必要な気が……。
265創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 12:31:34 ID:a7VQEs2d
いちおう雰囲気からしてK1は奴隷から部下みたいなのに格上げになったと感じたがなあ
266創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 14:34:46 ID:bd0h2re9
>>264
レナ組&カズマは必要に感じるが
考えようによっては、書かないと言う手も。
267創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 17:07:24 ID:G1N6/tRH
あとは学校組の交渉とかか
268 ◆b8v2QbKrCM :2009/06/07(日) 18:11:30 ID:LtV+wS49
バラライカと無常、投下します
269創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 18:13:57 ID:bd0h2re9
お、早い。
支援
270No Problem ◆b8v2QbKrCM :2009/06/07(日) 18:14:56 ID:LtV+wS49
「目ぼしいものは見当たりませんねぇ」

フロア一帯を巡って最初の感想がそれだった。
無常はつまらなそうに窓外を一瞥し、踵を返した。
E−5エリア中央、病院。
そのとあるフロアに無常矜持の姿はあった。
理由は語るまでもないだろう。
奇妙な縁で同行者と相成った女の手当てのためだ。

「見つかったといえば争った形跡と死体がひとつ……。
 荷物まで持ち去っている辺り、実に抜け目がない」

得るものはなかったが、別段落胆するほどのことでもない。
元より何かを得ようとして歩き回っていたわけではないのだから。
理由を一言でいえば、単なる暇つぶしだ。
女は必要な道具を集めるや否や、手伝いは要らないと言って処置室から無常を締め出したのだ。
尤も、無常としても見張り以上の助力をするつもりはなかったので、二つ返事でそれに応じたのだが。

「さて……」

正午も近い。
そろそろ手当ても終わった頃合だろう。
女が居るであろう処置室へ引き返しながら、無常は思考する。
次の放送に劇場で合流するという連中もそろそろ近くまで来ているはずだ。
それに加えて、これまでの戦いで負傷した者が病院を目指してくる可能性もある。
遠からず――市街は激戦の渦中と化すだろう。
無常としては実に好ましい展開だ。
ゲームスタートからおよそ十二時間を経て無傷。
武装も充実し、情報戦の面でも優位に立っている。
笑いが堪えられなくなるほどに理想的な状況ではないか。
これなら自分が手を下すまでもない。
他の連中が勝手に殺し合って数を減らしていくのを、安全圏から見物しているだけでもいい。
だが、それでは少々面白みに欠ける感がある。

「そうですね、片腕でも一人か二人は削れるでしょう」

相手は部屋の中で飼い殺す愛玩犬でも、檻に閉じ込めて観賞する猛獣でもないのだ。
思い通りに使ってやらねば『制する』には程遠い。
廊下の奥の処置室の扉を押し開ける。
甘ったるさと生臭さと鉄臭さが入り混じった血液の臭気が、空気の対流に乗って廊下に漏れた。

「おや、ずいぶんと大仰ですね」
「ふん……」

ベッドに腰掛けた女の姿は、妙に目を引く風体であった。
切断された右腕の肩口を大きな止血器具で圧迫し、肩より先の部分も、処置室で調達したらしい道具で縛ってある。
更に切断面は止血パッドを貼った上で幾重にも包帯が巻きつけられており、もはや腕の輪郭が伺えない。
外部からは見えないが、包帯の内側にはまた違った止血法が施されているのだろうか。
しかしそれでも止め切れていない分の血液が、紅いコートに滴って赤い斑点を作っていた。

「言って頂ければ針を刺すお手伝いくらいはしましたよ」
「そんなものを預けられるほど信頼されてるつもり?」
271No Problem ◆b8v2QbKrCM :2009/06/07(日) 18:15:40 ID:LtV+wS49
無常はスタンドに提げられた輸血パックと、そこから伸びる管を目で追った。
管を流れる赤血球の溶液は、露出させられた右腕の付け根から、女の静脈へと流れ込んでいく。
左手で針を刺すとすればそこしかないだろう。
幾らなんでも、左手で針を持って左腕に刺すというのは物理的に不可能だ。
見渡せば他にも処置の痕跡が転がっている。
流血を拭ったらしい血塗れのタオル。
空のアンプルと使用済みらしい注射器は、鎮痛のために使ったものか。
白く清潔であったはずの処置室が、野戦病院さながらの状態に成り果てている。
女はそんな処置室の中央で堂々と脚を組み、まるで昔からこの部屋の主であったかのように振舞っている。
ふと、無常は女が自分に向けた言葉を思い出した。
『貴様からはKGB野郎(チェーガー)と同じ匂いがする』
KGB――旧ソ連の国家保安委員会。
無常の認識からすれば、彼が生まれるよりずっと以前に崩壊した国家の情報機関である。
随分と古臭い比喩をされたものだと思ったが、成る程、軍絡みの人間だったということか。

「ところで。もうすぐ12時ですが、その様子では銃も撃てないのでは?」

無常はわざとらしく時計を確認し、煽るように語った。
この戦場を制するために、私は此処に居る。
女はそう大見得を切ったのだ。
焚きつけてやれば動かないはずはない。
しかし、女は無常の言葉をあっさりと鼻で笑った。

「確かにな。だが、何も私が引鉄を引かなくても戦うことはできるさ。
 手負いの相手に油断したところを伏兵が一撃……古典的なやり方だ」

女は言外に述べているのだ――貴様も手札を晒せ、と。
それも、自分が『別に戦わなくてもいい』とは言わないだろうと踏んだ上での発言に違いない。
物事の順序を考えれば自然な帰結だろう。
同盟を結んでから腕を失ったのならまだしも、実際は逆なのだ。
よほどのお人好しでもない限り、使えない相手に声など掛けない。
しかし無常はこの女との共闘関係を望んだ。
それはイコール、無常矜持はこの隻腕の女に利用価値を見出しているのだという明確な宣言でもある。
ならばその利用価値とは何か?
少し前にこの女に流した情報と、現在時刻と所在を考慮すれば、解答は自然と導き出される。
即ち、もうじき劇場に集結するであろう脱出狙いの集団への攻撃だ。
繰り返しになるが、手傷を気遣って戦闘から遠ざけるくらいなら、最初から協力を申し入れたりなどしない。
逆に言えば協力を申し入れた時点で、戦力として活用しようと目論んでいるのは明白ということだ。
それに対し、女は『貴様も動かなければ私は使い物にならないぞ』と言い放ったのだ。
大した度胸だというより他にない。
自分の命までもを囮に使い、こちらの能力を晒させようとしているのだから。
どうやらアルターの力を見極め、潰す術を探ると宣言したのはハッタリではないらしい。

「いいでしょう。私達は対等な立場での協力関係ですからねぇ。
 しかし標的は以前お知らせした集団だけとは限りませんよ」
「構わん。行動開始は放送直後から。それでいいな」

構いませんよ、と無常は頷いた。
幾らこの女が考えを巡らせようと、結局は無常の思惑通りに動いている。
――問題は、ない。



   ◇  ◇  ◇


272No Problem ◆b8v2QbKrCM :2009/06/07(日) 18:16:21 ID:LtV+wS49



「手負いの相手に油断したところを伏兵が一撃……古典的なやり方だ」

疼痛と軽い吐き気が神経を刺激する。
コンディションは最悪、シチュエーションは最低。
バラライカは思うようにならない身体を見下ろして眉を顰めた。
彼女はまだ、右腕を切り落とした槍の効力に気付いていない。
ありとあらゆる手段による治癒を阻害する、必滅の黄薔薇。
しかしその呪いは、長期戦、それも魔術などの超常能力の存在を踏まえた戦いで真価を発揮する。
人間の自然治癒には限界がある。
たかが数十分で腕部切断の重傷に変化が起こるわけがない。
つまり、バラライカにとってはただの刃物で切断されたのと大差ない傷なのだ。
数日や数週間というスパンで見れば別だが、この殺し合いはそこまで長引かないだろう。
最悪、今日中で片がつく可能性すらある。
故にバラライカは、槍の呪いなど気に留めることもなく、今後の行動について思考を巡らせる。
返す返すも憎らしいのは、あの赤い目の男だ。
確かアーチャーとかいう名前だったか。
傷つけば傷ついただけ動かなくなるこちらに対して、あちらは不死身。
実に不公平な戦力差だ。

「いいでしょう。私達は対等な立場での協力関係ですからねぇ」

オールバックの男が何やらほざいている。
頭に響いて不快極まりない。
声だけでこうも神経を逆撫でできるというのも、ある意味では大した才能ではないか。

「しかし標的は以前お知らせした集団だけとは限りませんよ」

下らないことを。
最初から一人残らず手に掛けるつもりだったのだ。
順番が前後するくらい大したことではない。
バラライカは肩に掛かっていた輸血の管を払い、脚を組みなおした。

「構わん。行動開始は放送直後から。それでいいな」

構いませんよ、と男は頷く。
大方、こちらが思い通りに動いているのを小気味良く感じているのだろう。
せいぜい悦に入っているがいい。
否が応でも戦列に引きずり出して、隠しているものを曝け出させてやる。
不幸中の幸いだったのが、あの少年に対して劇場の五人について漏らしていたことだ。
少年の反応からして、五人の中に少年と親しい者がいるのは確定的。
それが危険人物に狙われていると知ったからには、強者たるアーチャーに縋って阻止を懇願するに違いない。
銃撃を平然と捌く不死身の男……得体の知れない『アルター』とやらにぶつけるには丁度いい。
――問題は、ない。



273No Problem ◆b8v2QbKrCM :2009/06/07(日) 18:17:11 ID:LtV+wS49
それにしても、名簿に併記されているギルガメッシュという言葉――
シュメール神話のギルガメシュを名乗っているのだとすれば、随分と尊大なものだ。
知り合いだというライダーの名の横にも、イスカンダル、即ちアレクサンダー大王の異名が記入されている。
揃いも揃って奇妙な嗜好である。
そういえば、最初の頃に出会ったのび太という少年は、時間を越えて移動する術があると言っていた。
ここに集められた者の中にも、そうして集められた未来人が混ざっているのかもしれない。
また、それとは逆に、過去から連れてこられた者も。

「ギルガメシュにアレクサンダー……本物だったら面白いわね」

冗談交じりに、バラライカは呟いた。








【E-5 病院・処置室/1日目 昼】
【バラライカ@BLACK LAGOON】
[状態]:腹部に中程度のダメージ、右腕切断(入念に止血済み。治癒不可)、肋骨骨折、身体全体に火傷(小)、頬に二つの傷、疲労(中)
[装備]:ヴァッシュの衣装@トライガンマキシマム(右腕の袖なし)、デザートイーグルの予備弾×16
    AK47カラシニコフ(30/40、予備弾40×3)、 シェンホアのグルカナイフ@BLACK LAGOON
[道具]:デイパック(支給品一式×3)、デイパック2(支給品一式×1/食料一食分消費)、下着類、AMTオートマグ(0/7)、
    不死の酒(空瓶)、探知機、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×二枚、通り抜けフープ、
    ロベルタのスーツケース@BLACK LAGOON(ロケットランチャー残弾7、マシンガン残弾80%、徹甲弾残弾10)、手榴弾×3、
    ロベルタのメイド服@BLACK LAGOON、ガムテープ、ビニール紐(少し消費)、月天弓@終わりのクロニクル
[思考・状況]
 0:放送までは身体を休める
 1:戦争(バトルロワイアル)を生き抜き、勝利する。
 2:ウルフウッド(名前は知りません)を警戒。
 3:アルターとやらを知る。
 ※のび太から、ギラーミンのことや未来のこと、ドラえもんについてなどを聞き出しました。
 ※ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×二枚に『モヒカン男と麦藁帽子の男に気を付けろ byストレイト・クーガー』とメモ書きされています。
 ※デイパックを二つ持っています。
 ※D-4中央部一帯にあるビルの構造を熟知しています。
 ※元の服は下着を除いてビルに捨てました。
 ※チョッパーを医者だと推測。
 ※○印と包帯の情報を知りました。
 ※ギルガメッシュを不死者の類かもしれないと思いました。
 ※バラライカの右腕がマンション敷地内に落ちています



【無常矜待@スクライド(アニメ版)】
【装備】:ハンドガン@現実 予備段数×24
【所持品】:基本支給品一式×2、不明支給品0〜2個(確認済み)フシギダネ(モンスターボール)@ポケットモンスターSPECIAL 、
      黒電伝虫と受話器なしの電伝虫のセット@ONE PIECE
【状態】:健康
【思考・行動】
 0:放送までしばらく待つ
 1:殺し合いで優勝する
 2:○印の情報を利用する。
 3:カズマ、クーガー、あすかの始末
 4:レッドや同行者たちとはまた会いたい
 5:バラライカを殺さずに、生きたまま自分の手駒として制す。
【備考】
※○印と包帯の情報を知りました。
※レナ・チョッパー・グラハム・ライダー(イスカンダルのみ)の名前は知りましたが顔は知りません。
274 ◆b8v2QbKrCM :2009/06/07(日) 18:17:52 ID:LtV+wS49
短いですが投下終了です
275創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 18:18:06 ID:bd0h2re9
276創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 18:58:58 ID:KUbQANcl
投下乙です!
短いながらも、お互いに相手を利用しようとしているこの空気……
果たしてどちらがボロ雑巾のように使い捨てられるのか、こんな文章をかけて正直羨ましいな。

あれ……このままじゃレッドと鉢合わせだよね?
レッド止まれ〜!この二人に捕まったら拷問された挙句、餌に使われてしまうぞ!
277創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 19:01:42 ID:yv+eD9BG
作戦会議か
短いが練りこまれておるわい
投下乙!
278創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 19:42:56 ID:XhLhTdR+
まずは医療技術を持つチョッパーとの合流だから劇場→病院だろうね>レッド
しかしうまいこと応急処置したな。これで次のバトルまでは持つか?
放送後は再びバラ姉さんの融資が見られることに期待。
279創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 22:48:18 ID:XhLhTdR+
ところでクーガー追悼イラストを書いてくれた方に伺いたいのですが、あれをwikiにのせてもいいですかね?
280創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 23:39:06 ID:o2m+7TdL
投下乙です!

流石元軍人、処置の手際がいい
確かにこれだけ信用の置けないことがわかっているやつに、手伝わせたりしないよなぁw
今までの経験上、常識的に考えて思いもよらない道具や能力をみているし。
最も隙をさらけ出すときに警戒するのは当然か

この二人の、共闘している他のコンビたちとは一線を画す殺伐とした空気がすごくいいな
互いの視点から描かれることで、情報と思惑の違いがわかって面白い
そして互いに一切信用してないどころか、利用することしか思っていない所がなんともw

しかしこの話で、持っている情報の齟齬が浮き彫りになったような気がするな
情報自体が武器、交渉材料とわかりきっているから細かい情報交換なんかする訳ないし
のび太の話や今までの戦闘経験からある程度以上異世界のことやらをわかっている姐さんと比べて、
片やほとんど人と接触せず、共闘する仲間から信用されてない無常
ロワに関しての情報はバラライカに軍配があがるか
常人を超えた能力持ちを見てもアルターの一種としか思わないだろうしなぁ
何も見返り無しに教えることはないだろうし、いい気になってる無常哀れww


それにしても
>声だけでこうも神経を逆撫でできるというのも、ある意味では大した才能ではないか
思わず確かにと頷いてしまったwww
281創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 23:53:36 ID:SLBMQRpB
投下乙!
信頼感ゼロのマーダーコンビらしく凄い緊迫感があるなぁ。
バラライカの冷静な処置には流石元軍人としか言えない。
無常がバラライカのセリフから彼女の事を推測するシーンが地味に印象に残った。
確かに無常から見ればなんだか古臭い比喩にしか思えないしねぇ。
いつ崩壊してもおかしくない。だけどもどれほど殺せるかも予想がつかないコンビがさらに気になった一作だと思いました!
282 ◆RFGz8y4N2E :2009/06/08(月) 03:16:29 ID:j4PGxd+k
>>279
私は一向にサムワン。よしなに
283創る名無しに見る名無し:2009/06/08(月) 03:21:15 ID:j4PGxd+k
すまん名前欄は別に何でもないんだぜ
284創る名無しに見る名無し:2009/06/08(月) 12:31:12 ID:qJXPQBFt
気になったんだが名簿に真名って書いてあるもんなの?
285創る名無しに見る名無し:2009/06/08(月) 16:09:08 ID:VFcw6kiA
確定してなかった気がする
286創る名無しに見る名無し:2009/06/08(月) 17:48:40 ID:LYeqhgsT
たしか切嗣やギルが名簿見たときの反応が真名出てるにしてはおかしかった記憶がある。
でもまあどっちとも確定できない微妙な反応だったとも思うし、いいんではなかろうか。
287創る名無しに見る名無し:2009/06/08(月) 20:55:15 ID:Mytz9GqI
>>282
やってしまったwwってあの人か!

>>286
どちらも真名出てても一切気にしなさそうだもんなw
288創る名無しに見る名無し:2009/06/08(月) 21:17:27 ID:LYeqhgsT
よし、うp完了なんだよ

ttp://www26.atwiki.jp/marurowa/pages/335.html
289創る名無しに見る名無し:2009/06/08(月) 22:21:48 ID:Mytz9GqI
>>288
編集乙!
290創る名無しに見る名無し:2009/06/09(火) 00:11:53 ID:Vh+OwvVw
【洒落】エロゲースレッド5229【Share】
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/download/1244468399/
からきました
291創る名無しに見る名無し:2009/06/09(火) 23:20:46 ID:TGcvvcIu
>>286
切嗣は反応しないとおかしいかな…
マスターとしては一番気になる情報だし
292創る名無しに見る名無し:2009/06/09(火) 23:45:49 ID:kNsLxCSD
イスカンダルは初日に堂々と真名を名乗ってたけどな
もちろん切嗣も聞いてる

ギルガメッシュの方は、切嗣は看破したのか否か、したならいつしたのか、っていうのは不明だね
ちなみに、イスカンダルは一回会っただけで見当をつけてたっぽい
293創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 01:18:40 ID:MGss4O21
仮投下来てるぜ、と携帯から連絡だけしておく
294創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 01:22:34 ID:Viz5IKrL
よし、じゃあ代理投下開始します。
295代理投下:2009/06/10(水) 01:24:21 ID:Viz5IKrL
◆OQO8oJA5SE:2009/06/09(火) 23:54:41 ID:Pe8hs8C2
Alteration【英】【名】

【意味】
1. 変更、改変
2. 修正
3. 進化



*      *       *


296代理投下:2009/06/10(水) 01:25:03 ID:Viz5IKrL
ALteration In Closed Eden  ◆OQO8oJA5SE:2009/06/09(火) 23:55:18 ID:Pe8hs8C2
暖められたティーポットが一定の間隔で音を立てる。
規則正しいリズムを刻むのは、陶磁器の中に注がれた熱湯だ。
熱い湯はエネルギーに従うまま循環し、ポット内部にあった茶葉の中からいくつものエッセンスを引き出す。
香り、味、風味……それらが色と共に湯へと溶け出し、無色無味な液体は神秘的な飲み物へと変貌を遂げる。
めでたく紅茶へと進化した琥珀色の液体は急騰口から注がれ、純白のカップを満たしていく。

そのカップを取るのは、大きさと不釣合いな小さな手。
小さな、しかし美しい手は優雅にカップ持ち上げると、可憐な唇へとそれを運ぶ。
そして少女は湯気を立てるその液体を嚥下し、ひとこと。

「……今度は渋くて飲めたものではないのだわ」
「文句があるなら僕に入れさせなければいいでしょう!?」


*      *       *


297代理投下:2009/06/10(水) 01:26:03 ID:Viz5IKrL
――時は、遡る。


時計の短針がまだ11時を指さない時間帯、彼らは特に何ごとも無く南下し、順調に図書館を目指していた。
先ほどまで海魔との戦い、そして殺気立ったクーガーとの対峙と張り詰めた出来事が多かったせいもあり、どこか肩の力を抜いた道程であっ

た。
"それ"と、出会うまでは。

「そん、な……」
「……なんて、ことなの」

地図で表すならばD-4、図書館のすぐそばで"それ"はうつぶせに倒れこんでいた。
通りに面するアスファルトの上に、カーペットのように赤い血だまりを作って。
"それ"の背中には幾つものガラス片が深々と突き刺さり、ピクリとも動かない。
周囲の血は頂点に輝く太陽にさらされ乾燥し、さびた鉄の臭いを撒き散らしていた。
そう、誰が見ても一目瞭然な状態で、麦わらの男……ルフィは死んでいた。
もちろんあすかとて死体を見るのは初めてではない。
だが数時間前まで、怒り、笑い、言葉を交わした者のあまりにあっけない死に様。
すぐそばに這い寄る死の気配に思わず唾を飲み込んだ。
だが歩みを止めたあすかの視界で小さな金色が前へと歩み出る。
真紅はルフィに近づくと、黙々とその背中からガラス片を取り除き始めた。

「何をしているのあすか、手伝いなさい」

高圧的な、だがどこか壊れそうな儚い声色に何も言い返せず、無言で作業を手伝い始める。
ルフィの血はほとんど流れ出したようであり、照りつける陽光も手伝ってパリパリになるほどに乾燥している。
ガラス片を取り除いても、新たな血があふれ出すことは無くその先をわずかに赤色に濡らすのみだ。
時折触れた彼の体は冷たく、生命を失ったというその実感だけをあすかに突きつける。

そして程なくしてガラス片はすべて取り除かれ、ゆっくりと仰向けに寝かせる。
だがその表情を見た瞬間、あすかは思わず息を呑んでしまう。
ルフィの顔は歯を食いしばり、無念そうに顔を歪めている。
鬼気迫るその表情に圧倒されるあすか。
だが対する真紅は小さな手でそっと瞼を閉じさせる

「……あすか、ルフィをあそこへ運んで欲しいのだわ」

彼女が指し示したのは道端に植えられている街路樹だった。
力の抜けた少年の体は人にとっては重いものだが、エタニティ・エイトにとっては苦にもならない。
八つの宝玉に支えられ、街路樹を背もたれ代わりに麦わらの少年の体を安置する。
照りつける陽光は青々と茂った葉に遮られ、風通しもあわせて見た目よりもよっぽど涼しい。
周りがアスファルトだらけで埋葬できない以上、これが最善の措置であろうことは想像に難くない。
そしてガジュマルの木に背中を預けるルフィの姿はまるで遊びつかれて昼寝をしているようにも見える。
ただ、もうその体は立ち上がることはなく、その瞳も二度と物を映すことはない。
そんなルフィに対し、真紅はスカートの端をつまみ、恭しく優雅に頭を垂れる。

「ルフィ……もうあなたに届くかどうかは分からないけれど、せめてお礼を言わせてちょうだい。
 あの子たちに会わせてくれると言ったその言葉……本当に嬉しかったのだわ
 ありがとう……だからゆっくりとお休みなさい」

そして顔を上げた彼女は踵を返し、もう振り返ることなく図書館へと歩みを進める。
あすかもその後を追い、いや、少し前へ出るようにして進んでいく。


298創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 01:27:25 ID:hkG4/oU5
 
299創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 01:28:06 ID:hkG4/oU5
 
300代理投下:2009/06/10(水) 01:28:46 ID:Viz5IKrL
そして数分後……そんな彼らを真っ先に歓迎したのは壁に穿たれた巨大な穴だった。
明らかに何者かによって破壊された壁に、あすかは警戒態勢をとる。
だが真紅は対照的にずかずかと足を踏み入れていく。

「ちょ、ちょっと! まだ辺りに敵がいるかもしれないんですよ!」
「ルフィの体はもう冷たくなっていたわ。
 私たちに敵意を持つものがいるなら、あんな隙だらけの状態を放っておくわけが無いわ。
 それにこれは、どう見ても"中から出て行った後"なのだわ」

そう言われるままよく見てみれば壁の欠片はすべて外側に散らばっている。
明らかに内部から破壊された痕だ。

「それによく見てみなさい。この床の傷跡……何か見覚えが無くて?」

言葉に従い周囲をよく観察すれば、床部分がいくつか削り取られたようになっている。
幾度と無く見た覚えのある凹み……そう、これは間違いなくアルター能力を発現した痕だ。

「――あ」

そういえばクーガーが最初に飛ばされたのは図書館だったという。
彼の性格から考えて、最速で最短距離を突っ走るため壁をぶち破ってもおかしくはない。
周囲を良く見れば彼がアルター能力を発揮した際にできる衝撃波の後のようなものも散見できる。
罰の悪そうな顔のあすかを尻目に、図書館への侵入を果たした真紅は一路、貸し出しカウンターの奥を目指す。
その先にあるのは司書室。一般人立ち入り禁止の休憩室もかねた事務室である。
彼女がそこを目指した理由、それは、

「服を乾かしたいのだわ」

道中、太陽光を浴びていたとはいえ、服はまだ完全には乾いておらず、
中のキャミソールにいたってはまだじっとりとしていて正直不快だ。
真紅としては安全に乾かせる場所ならばどこでも良かったのだが、
偶然にも備え付けのストーブがあり、効率的に衣服を乾かすことも可能なようだ。

「あすか、最初に言っておくわ」
「何ですか?」
「……もし覗いたらひどいことを「誰が人形の着替えなんて覗きますか!!」

球体間接に欲情するほどマニアックな人種でも無ければ、ロリータ・コンプレックスという奴でもない。
怒りを載せたドアは大きな音を立てて閉まり、あすかと真紅は別行動をとることになる。
だから真紅が服を乾かす間、彼はしばしの休息を得ることになる――はずであった。

「……ところであすか、頼みたいことが一つあるのだわ」

だが、扉の向こうから真紅は一つの仕事を申し付けたのだ。
自分が服を乾かす間に本を探して来い、というのである。

「何も考えず、目に付いたものを持ってきてくれたほうがいいのだわ」

何とも高圧的な言い分……それでも従ってしまうあたりが橘あすかという人物なのかもしれないが。
とにかく言われるとおり一般小説、論文……様々なコーナーから本を集めた。
(何故かごっそり地図の置かれていたコーナーから本が消えていたのは不思議ではあったが)
そして文句を言いつつもいくらか本を探してきたと思えば、唐突に『紅茶を入れろ』と命じられたのである。
それゆえ先ほどのリベンジもかねて『紅茶の入れ方』片手に試してみたのだが……結果は見ての通りだったらしい。

そして、今現在――11時30分に至るというわけである。

*      *      *


「香りは良いのだけれど……まぁ、無いよりはましなのだわ」

カップ片手に読書を始める真紅の側にはうず高く詰まれた本の山。
あすかが目をやるといつの間にか数冊を読み終えている。

「随分と早いですね。何かわかったんですか?」
「いいえ、何も?」

アレだけ酷使しておいてこのぞんざいな扱い……
しかもせっかく集めた本もやたらと飛ばし飛ばし読んでいるような気がする。
青筋を浮かべ始めたあすかに対し真紅はあくまで冷静に語る。

「仕方ないわ。妙な"仕掛け"がされているのだもの」

そう口にした真紅は手にしていた『携帯獣研究序説』のあるページを差し出す。
"No150"と銘打たれたそのページを見たあすかは奇妙なことに気づく。

(……意味が、分からない?)

特に小難しいことが書かれているわけでもない。
そのページに何かが書いてあるということは認識できる。それが文字であることも認識できる。
だが、理解できないのだ。文章の意味がどうしても頭に入ってこない。

「これは……"理解できなくする"能力?」
「ええ、それも色々な本にされているところを見ると、あの男によって行われたもののようね」

そう本来ならゆっくりと本を読む真紅がまるで速読のごとく本を読んでいた理由。
ものによっては読める箇所のほうが少ない本すら多く、『読み飛ばさざるを得なかった』というのが真相なのである。

「……とりあえず、これは持って行くことにするのだわ」
「? 読めないものに価値があるんですか?」
「お馬鹿ね。隠されているという事は、それだけ見られたくないということでしょう?
 ここから逃げ出すためのヒントになるかもしれないのだわ」
「で、でもそんなものが僕らの手に渡るようにしてあるなんておかしいでしょう!?」

とっさにした反論なのだが、これが案外的を得ているように感じられる。
そう、常識的に考えてわざわざギラーミンが反乱を煽るような真似をするはずが無い。
なぜならこのゲームに参加させられた者が一致団結して反旗を翻す……そんな展開、百害合って一利なしではないか。
だがしかしその指摘にも真紅は慌てた風もない。

「そう、そうなのだわ。あすかの言うことももっとも、至極当然なこと。
 ……でも、それを言ったらこの施設だって、殺し合いにはまったく不要なものでしかない……そうでしょう?」

そもそもあの男が言った通り、これがタダの勝ち残り戦であるならば、、もっと単純なフィールドを用意すればいい。
そこには図書館だの遊園地だのといった"遊びのある"施設はまったく必要がなく、
たとえ何らかの思惑でそれらの施設が作られたとしても、このように本を敷き詰める必要はまったく無いのであった。

「だからこそ意味を読み取るべきなの。表面からも、裏側からも、じっくりと」

そう言いながら、真紅の視線は積み上げられた本の背表紙をなぞっていく。
『携帯獣研究序説』、『精神感応性物質変換能力に関する資料』、『聖書(ver聖堂教会)』
『ライ麦畑で捕獲せよ』、『アーサー王伝説』、『ギルガメッシュ叙事詩』
『ゴロゴロコミック7月号』、『タイトル不明の小説(著者:小鳥遊泉)』、
『不死者に関するレポート(ネブラ社社外秘資料)』、『KOUGA=DEATH=SHADOU☆NINJUTU=SHINAN=SHO』
……エトセトラエトセトラ。

恋愛小説に学術レポート、果ては胡散くさいオフセット印刷まで無作為に集められたそれら。
だがしかしいくつかの文献、特に"仕掛け"がされている本に、何度も頻出する単語がある。

――鍵となるのは『進化』、……かしら?

『携帯獣研究序説』によるとポケモンの一部には『進化する』ものがいるらしい。
また、あすかの持つ"アルター"とは進化(ALTERATION)から名前を取った能力らしい。
また世には人への進化を促す賢石というものもあるようだ(真紅は賢石が何なのか知らないが)
これが意味するのは、進化が何らかの鍵を握って――

(それはあまりにも、発想が飛躍しすぎというものだわ)

渋い紅茶を口にして気持ちを落ち着かせる。
0の状態から結論を前提に組み上げられたロジックは往々にして無理があるものになるのだ。
さっきの考えも自分の考えながら、発想の飛躍としか言いようがない。
"仕掛け"のなされている本にも『進化』の単語が出てきてないものはたくさんある。
……というかそっちの本のほうが遥かに多いくらいだ。

さて、真紅がそんな極端な考えにいたった原因は、偶然手にした論文である。
論文と聞くと機械的な作業であり、誰が書いても似たり寄ったりになる印象がある。
だが実際は内容そのものが無機質である分、筆者の人となりが普通の文章よりも色濃く出るものなのだ。
そしてこの論文、このキース・ホワイトという人物の書いた論文は一見隠れているが、
それでも『進化』に対する異常な執着――偏愛とも呼べるその執念がにじみ出ている。
妙な力のせいでほんのさわりの部分と断片しか読めないが、それでもわかる。
論文の癖に『天使(エグリゴリ)』だの『悪魔(アザゼル)』だの、妙に詩的な単語が入るのも自己陶酔の表れだろうか。

(……いけないのだわ)

目を閉じ、思考を停止させる。
やはり放送が近づいているから焦って、結論を急いでしまうのだろうか。
それとも先ほどのルフィの死を目撃したのが想像以上に負担になっているのだろうか。
ほとんど読めない論文を机に置き、代わりに1冊の本に手を伸ばす。
手にしたハードカバーの児童文学……これだけはあすかの集めてきた本ではない。
タイトルに惹かれ、司書室の机の上においてあった"それ"に手を伸ばしたのだ。
ハードカバーにしっかりと刻まれたその名は『Alice's Adventures in Wonderland』……『不思議の国のアリス』である。

(アリス……穢れ無き究極の少女……そして私たち薔薇乙女が目指すべきもの……)

アリスゲーム。
薔薇乙女たちが互いにその存在(ローザミスティカ)を賭け、戦いあうことで究極の少女"アリス"を目指す残酷な遊戯。
1世紀以上もの間、姉妹たちはそうすればお父様に会える、そう信じて戦い続けてきた。
生きることは戦うこと、そのことに異存はない。
だが親しい姉妹を物言わぬ人形に還しすことが本当に正しいことなのだろうか。
そして『不思議の国のアリス』を読んでいる今、その思いは強くなっている。
この本に描かれている"アリス"とは想像力豊かな優しい子供だ。
そんな子供の名を関した少女が争いの果てに待つものなのだろうか?
そして、そんな子供をお父様は本当に求めているのだろうか?
303創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 01:36:47 ID:Viz5IKrL
支援ー
この場所で別れ別れになってしまった姉妹たちの姿を思い出す。
翠星石、蒼星石、そして水銀燈。
彼女らの命が失われる瞬間を想像しただけでも胸が締め付けられる。
それがたとえ敵対している水銀燈であっても。
だからその未来を防ぐために真紅は真っ直ぐに走り出す。
現在自分にできること……これらの本から情報を収集するという方法で。
そして今出来ることはもう一つ、ある。
ふいに机の向こうに目をやれば、あすかも紅茶の渋さに顔を歪めながら、読み取れる部分に目を通している。

「……ねぇ、あすか」

本に目を落としたまま、真紅はあすかに語りかける。

「なんですか真紅?」
「知識だけでは図れないことも、この世の中には多いのだわ。
 紅茶の入れ方を知っていても、おいしい紅茶が入れられるとは限らない……さっきのあなたのように。
 ……それだけは覚えていてちょうだい」

進化。
この閉じられた楽園の中で文字通り進化するなど、都合のいいことはそうそうありえない。
だがきっと、ちょっとした"進化"だけならば誰だろうと可能だ、と真紅は考える。
橘あすかという青年は、基本的には善人だ。
それなりに機転も利くし、地図を見ただけでループを見抜いたように頭も決して悪くない。
だが、とかく空気を読む――他人の心を推し量る力に多少……いや、大分欠けている。
そのせいでルフィとの遭遇の際は危うく無駄な争いを引き起こすところだった。
しかしながらそれは経験によって培われるものである、と思う。
だからもっと多くの人と触れ合えば、磨かれ、その人間性は輝きを放つだろう。
だから今度のことも考え、自らの糧にして欲しい……そう、願わざるを得ない。
一歩一歩、でも着実に。
数分前の温い紅茶よりも先ほどの紅茶のほうが遥かに味わい深かったように、人は僅かな時間でも"進化"することが出来るのだから。

「――そんなこと、わかってますよ」

どこか拗ねたように返事をし、再び渋い紅茶を口に入れる。
その反応が心当たりがあるからなのか、それとも単に下の相手から説教じみたことを言われたからなのか。
真紅にはわからない。ただ前者であればいいとは思う。

ふわりと窓から風が舞い込んで、開いていたページが勝手にめくれる。
その風にさらわれ、紅茶の香りが二人の鼻を刺激する。
二人の間に会話は無く、司書室に響くのはページをめくる音と時計の針が動く音。
居心地の悪いような良いような不思議なティータイム。
この殺し合いの場所に不釣合いな穏やかな時間。
たとえそれがあと少しで破られるとしても。
たとえこの後に果てのない地獄が待っていたとしても。
ただ、今だけは休息を。
【D-4/図書館/一日目 昼】

【真紅@ローゼンメイデン(漫画版)】
【状態】:健康
【装備】:庭師の鋏@ローゼンメイデン
【所持品】:基本支給品一式、不明支給品0〜2個(未確認)、不思議の国のアリス@現実他、いくつかの本。
【思考・行動】
 1:殺し合いを阻止し、元の世界へ戻る。
 2:引き続き情報収集をする。
 3:PM3時までにC-4駅に戻り。クーガーと合流する。
 4:列車に乗って、会場全体を一通り見ておきたい。そのため3時までは辺りを探索、その後再び電車に乗って最終的にはG-7駅を目指す。
 5:ループを生み出している何かを発見する。
 6:誰かと契約したい。しかし誰でもいいという訳ではない、あすかが望ましい。
【備考】
 ※参戦時期は蒼星石死亡以降、詳細な時期は未定(原作四巻以降)
 ※あすか、クーガーと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。
 ※蒼星石が居る事や、ホーリエが居ない事などについて疑問に思っていますが、参加時期の相違の可能性を考え始めました。
 ※ループに気付きました。ループを生み出している何かが会場内にあると思っています。
 ※情報交換済みの人物:ルフィ、前原圭一、クーガー
 ※彼らの知人:レナ、沙都子、梨花、魅音、詩音、切嗣(圭一)、ゾロ、チョッパー、ハクオロ、アルルゥ、カルラ(ルフィ)
 ※要注意人物:アーチャー(遭遇)、ライダー(詳細ではない)、バラライカ(名前は知らない)、ラッド(名前は知らない)
        無常、ラズロ、ヴァッシュ、カズマ、クロコダイル、水銀燈(殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める)
 ※対主催チーム(佐山、小鳥遊、蒼星石)の存在、悪魔の実の能力者の弱点(カナヅチ)を知りました。
306創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 01:37:52 ID:0kHzDiFA
支援
【橘あすか@スクライド(アニメ版)】
【状態】:腹部に軽い痛み
【装備】:HOLY部隊制服
【所持品】:基本支給品一式、螺湮城教本@Fate/Zero、不明支給品0〜2個(未確認)
【思考・行動】
 1:ギラーミンを倒し、元の世界へ戻る。
 2:引き続き情報収集をする。
 3:PM3時までにC-4駅に戻り。クーガーと合流する。
 4:列車に乗って、会場全体を一通り見ておきたい。そのため3時までは辺りを探索、その後再び電車に乗って最終的にはG-7駅を目指す。
 5:ループを生み出している何かを発見する。
【備考】
 ※参戦時期は一回目のカズマ戦後、HOLY除隊処分を受ける直前(原作5話辺り)
 ※真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました(アリスゲームは未だ聞いてない)。
 ※ループに気付きました。ループを生み出している何かが会場内にあると思っています。
 ※情報交換済みの人物:ルフィ、前原圭一、クーガー
 ※彼らの知人:レナ、沙都子、梨花、魅音、詩音、切嗣(圭一)、ゾロ、チョッパー、ハクオロ、アルルゥ、カルラ(ルフィ)
 ※要注意人物:アーチャー(遭遇)、ライダー(詳細ではない)、バラライカ(名前は知らない)、ラッド(名前は知らない)
        無常、ラズロ、ヴァッシュ、カズマ、クロコダイル、水銀燈(殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める)
        カズマとアーチャーは気に食わないので、出来れば出会いたくもない
 ※対主催チーム(佐山、小鳥遊、蒼星石)の存在、悪魔の実の能力者の弱点(カナヅチ)を知りました。
 ※参加者によっては時間軸が異なる事を知りました。
308創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 01:38:24 ID:Viz5IKrL
 
【飛鳥が集めた図書館の本】
 あすかが集めた本(+α)に関しては次の通り。
 (ただしこれ以外にも本がある可能性があります。)
 また、一部の本にかけられた読めなくなる"仕掛け"の解除条件は不明です。

【携帯獣研究序説@ポケットモンスターSPECIAL】
 オーキド博士の著書。
 ポケモンについて記述されている。"仕掛け"は大目。

【精神感応性物質変換能力に関する資料@スクライド】
 アルター能力について書かれた資料。
 なお、書かれていないが桐生水守によってまとめられたもの。
 "仕掛け"は大目。

【ライ麦畑で捕獲せよ@終わりのクロニクル】
 ダン・原川の私物。著者はゴリンジャー。
 『ライ麦畑にミステリーサークルを書いてソ連の衛星に連絡を取ったスパイ』が出てくる小説らしいが詳細は不明。
 "仕掛け"はされていない。

【アーサー王伝説@現実】
 アーサー王の"一般的"な伝説が記された児童文学。
 "仕掛け"はほとんどされていない。

【ギルガメッシュ叙事詩@現実】
 太古の英雄・ギルガメッシュについて書かれた書物。
 "仕掛け"によってほとんど読めない。

【聖書(ver聖堂教会)@Fate/ZERO】
 Fate/ZERO世界における一般的な聖書。
 "仕掛け"はほとんどされていない。

【ゴロゴロコミック7月号@ドラえもん】
 のび太が愛読する児童向け漫画の7月号。
 "仕掛け"はされていない。

【タイトル不明の小説(著者:小鳥遊泉)@WORKING!】
 小鳥遊宗太の姉、小鳥遊泉の書く恋愛小説。
 ちなみに伊波まひるはこれを愛読している。"仕掛け"はされていない。

【不死者に関するレポート(ネブラ社社外秘資料)@BACCANO!】
 ルネ・パルメデス・ブランヴィリエ率いるネブラ製薬部門第六開発部の社外秘資料。
 "仕掛け"は大目。

【KOUGA=DEATH=SHADOU☆NINJUTU=SHINAN=SHO@BLACK LAGOON】
 小説版に登場。
『濡れた紙の上を歩く』、『麻の上を毎日飛び続ける』といった胡散臭い修行方法の書かれたオフセット本。
 "仕掛け"はされていない。

【キース・ホワイトの論文@ARMS】
 進化について書かれたらしい論文。
 "仕掛け"は大目であり、序論と一部の単語しか読めない。

【不思議の国のアリス@現実】
 有名な児童文学。ちなみに英語版。
 "仕掛け"はされていない。
310創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 01:39:56 ID:hkG4/oU5
代理投下の代理投下終了です
311創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 01:50:55 ID:Viz5IKrL
投下&代理投下乙!
ルフィの死体にすぐさま走り寄る真紅の優しさが良いなぁ。
その後のセリフも以前の話と上手く繋がっててグッド!
未だに紅茶を煎れさせられてるあすかがなんともw
だんだんとマシにはなってるけどまだ合格点貰えてないところが読んでて面白かったw
そして今回沢山手に入った書物……仕掛けの真相が気になるなー。
程度に差があるようだけどはてさて。
真紅がアリスの事について言及するのはちょいとしたクロスオーバーなのでニヤリとしてしまった。
それとコウガデスシャドゥーってwこれは予期しなかったお遊びwww
最期の紅茶を混ぜた台詞が実に真紅らしく、今のあすかにぴったりだと思いました。その後のあすかの反応もツボにw
312創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 02:09:42 ID:yNLr315Z
代理&投下乙!
社長って、このロワの中で着実に精神的成長してきてるよね。
真紅との掛け合いも好きだなぁ。
色々な本をゲットしたね、「理解させない力」か……。
本を解除したとき、一体何が起きるのか楽しみだね。

翠星石も蒼星石も……そしてクーガーさえ死んじゃってるこの状況。
次の放送を聴いた時二人がどれだけショックを受けるのか、想像もつかないな。
でもこの二人組みだったらきっと平気さ……
頼む、クーガーの忘れ形見になってしまったビリビリを助けてやってくれ。
313創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 02:13:53 ID:QynL3zKv
投下乙!
数時間前に笑顔で別れたルフィとあんな再開をしてしまうとは…。
もう死んでいるけど、真紅のルフィに対する言動がとてもらしいと思いました。
もうすぐ放送だけど、
二人は放送を聞いて冷静でいられるだろうか…。

今までの話との繋がりも多く見られ、僅かだけど進化してる社長とかも良い感じw
それにしてもこの二人は本当に良いコンビだ。
新たな謎も出てきたし、本当に謎が多いな、○ロワは。

それと一つ気になったのは、ルフィの支給品。
あれはまだルフィが持ったままですかね?
314創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 04:54:50 ID:IvPvb1Xv
投下・代理投下乙です!

ああ、なんともいい雰囲気の作品だなぁ…!
ルフィの死体に出会ったときの反応もだけど、
進化で新たな謎が出てきた時点で思考に没頭するわけでなく、社長に対して思いを馳せられる所が実に真紅だ
真紅の優しさと思慮深さが、なんともらしい
同じコンビでも、金ぴかとはえらい違いだw

社長は回を重ねるほどいい味が出てきているね
変わらぬ掛け合いと、進化していく精神
そして進化しない紅茶を入れる腕w
年齢詐称コンビといい、このロワのロリとのコンビはなぜこんなにもいい味が出てるのか
ああもう大好きだ!

今まであまりわかっていなかった図書館の蔵書にスポットが。
前にライダーが地図を総ざらいしていたけど、他の蔵書にも仕掛けがあるとは
そのものずばり進化がキーワードのARMS、スクライド、ポケモンは進化するものが大半、うたわれの亜人も進化といえなくもない
ローゼンとARMSで共通する「アリス」と、各作品に共通する「進化」。
「騎士」が共通するキーワードとして扱われていたのと同じような、
こういう作品単位でのリンクの仕方は思わずニヤリとさせられますな

どのような意図でわざわざこのような本を置いていったのか
これは主催側の情報が少し明らかになるかもしれない放送前に楽しみになるフラグの一つだ
それにしてもまた謎が増えたww全く、○ロワは戦場と謎の宝庫だぜフゥーハハァーw

一貫して流れる、落ち着いた優しい雰囲気が素晴らしいかったです。GJ!
315創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 14:27:44 ID:pmzadAtE
死んでまででしゃばってくるワンピキャラうぜえ
316創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 15:12:01 ID:Fi3yHSuM
これで放送かな?
317創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 20:22:03 ID:jcV4HfW4
あれ?図書館って出火してなかったっけ
318創る名無しに見る名無し:2009/06/11(木) 01:05:36 ID:NPP9OjU2
一部損壊してるけど、燃えてはいないよ
爆破の描写があったけど、一部だろうし
319 ◆T4kibqjt.s :2009/06/11(木) 23:13:22 ID:q+ssG5K0
したらばにも書き込みましたがこちらでも報告を。

仮投下スレに第二回の放送案を投下いたしました。
問題等なければ禁止エリアと死亡者を追記して本投下したいと思います。
禁止エリアについては意見を頂けると幸いです。

それでは、よろしくお願いします。
320創る名無しに見る名無し:2009/06/11(木) 23:42:12 ID:yWDkBHl/
放送案仮投下です!
自分は特に問題ないように思えました。
禁止エリアはもう決めてもらってもいいんじゃないかなーとw

黒幕の存在が触れられてて今後が気になる!
321創る名無しに見る名無し:2009/06/12(金) 00:32:46 ID:t72YzWlT
放送仮投下乙です!
気になった点を……
・首輪の性能は不明だけど、参加者の位置や盗聴機能があった場合の監視とかは。
 黒幕がやっているのか。
・ギラーミンはあくまで表向きへの操り人形で、放送室に軟禁されてて首輪爆破の権利は持ってないって事なのか。

ギラーミン自体も、今の状況を面白いと思っていないのか……
これから一体何が起こるのか、非常に気になるね!
322創る名無しに見る名無し:2009/06/12(金) 00:38:53 ID:xKWSthnL
今更ギラーミン実はかっこいいみたいなことにされてもなあ…
素直に偽物ってことにしとけばいいじゃん
どうせもうのび太もドラえもんも死んじゃってるんだし、本物のギラーミン出すメリットなんてないでしょ
むしろこれから参加する人が、ギラーミンのためだけにドラえもん把握しなきゃいけなくなるんだから、
やっぱ偽物にしとくべきじゃないの?
323創る名無しに見る名無し:2009/06/12(金) 05:52:43 ID:/MgrbnBS
仮投下乙です!

同じく、特に問題はないと思います
これは早く感想が書きたい…!
324創る名無しに見る名無し:2009/06/12(金) 07:01:55 ID:s7T/ZNEJ
ううむ、こうきたか。
うまいこと補完されて、それでいて後に繋ぐ自由度もあるいい仕事だと思います。
禁止エリアについては、中心部あたりで参加者の動きを封じるのがそろそr一つくらい欲しいところ。
あとロベルタさんがこのまま動かなそうなのでキャンプ場あたりw
325創る名無しに見る名無し:2009/06/12(金) 07:12:12 ID:zBlXfvGB
学校組についてはもう書かれないって事でいいのか?
かなり楽しみにしてたんだが
326創る名無しに見る名無し:2009/06/12(金) 13:06:27 ID:x5rhPA9h
ギラーミンの性格が違う
327創る名無しに見る名無し:2009/06/12(金) 14:26:18 ID:YH2eQ9Dt
見ました。
なるほど、シナリオライターか!考えたなぁ。
>>221さんが上げた点以外は特に問題ないかな。
良い繋ぎだと思います。
328創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 19:18:40 ID:eXYDNH7E
なおった?
329創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 20:15:45 ID:HfaBhI2P
シナリオライターって演じている間はキャラ変わるのか?
330創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 20:41:01 ID:/pNitp70
黒幕候補はプーチン、オバマ、謎の魔法少女の3人に絞られたようだな。
331創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 20:52:30 ID:1y9sBjkK
シナリオライター使う意味が分からない
進行役としてギラーミン雇ったならそのまま任せればいいのに
シナリオライター使うならわざわざ雇わなくてもその辺の奴拉致ってくればいいのに
本来と違う性格を演じさせる意味も分からないし
332創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 21:03:32 ID:eXYDNH7E
>>331
とりあえず不満があるなら議論スレに書き込みな。
だが、その前にお前はもう一度OP見直してこい。
話にならんわ
333創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 21:08:42 ID:cBMY35xA
お、直ったのか。

>>331
それも一理あるけど、黒幕もギラーミンの事を一切信用してないんじゃないの?
余計な事を話して欲しくないとかさ、それこそギラーミンである理由なんて「誰でも良かった」って感じでさ。

まぁ、今更ギラーミンの本意じゃなかった的な展開もちょっと嫌だけどね。
スタートの説明時に二人も殺してミューツー脅迫してるわけだし、
あれはシナリオライター無しでしょ?
334創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 21:31:03 ID:/0aitr7f
てかホント何でギラーミンなんだよ…
どう考えても主催向きのキャラなんかじゃないのに
だいたいこのスレに、ギラーミンを知ってる奴が何人いるって言うんだよ
どうせみんなよく知らないんだろ?
OP書いた奴だって、性格間違えるくらいだからたいして愛着があったわけじゃないだろうし
誰からも好かれてるわけじゃないから、ろくな活躍出来ないのは目に見えてる
かと言って、簡単に退場させれるポジションでもないし
ドラえもん好きとしては許しがたい扱いだよ
335創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 21:34:18 ID:Cg+5id90
いい加減ギラーミンでとやかく言うの諦めろよ
ウザいし醜いだけだぞ
336創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 21:37:43 ID:J7n1pdnD
>>334
そんなに君がドラえもん好きなら今から物書きとしての腕を磨いてこい
そして、対主催の終盤辺りから誰にも文句が言えない位完璧な展開でギラーミン無双すれば?
分かってると思うが、ここはSSスレなんだから書き手じゃない読み手が文句言っても何にもならんぞ
ただの読み手としてこれからもずっといるつもりなら読み手様乙w
337創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 21:39:47 ID:/0aitr7f
てかもう、ドラえもんって作品自体何のために出たのか分からないくらいだ
踏み台にされるためだけに出たようなもんじゃん
338創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 21:42:04 ID:luLEuQm0
参加作品って投票で決めたんだっけ?
ドラえもん好きな奴いないのに、何で通ったの?
339創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 21:44:20 ID:/0aitr7f
ドラえもん好きがいないってとこは否定しないんだな
340創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 21:51:11 ID:J7n1pdnD
ドラえもん好きがここにいるかどうかなんて誰にも分からんだろう、常識的に考えてw
これが悪魔の証明という奴か……まあいい
341創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 21:55:12 ID:/0aitr7f
>>340
要するに、自信持って断言は出来ないわけだろ?
342創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 22:07:49 ID:fo1REasL
またどうでも良い事で……。
読み手が設定について考えても時間の無駄だぜ?
343創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 22:10:28 ID:cBMY35xA
結局何が言いたいのかな?
主催ギラーミンが気に入らないのだとしても、もう始まってしまっている以上挿げ替えることなんて出来ないわけだし。
全くもって生産性が無い議論だとは思わない?
むしろ空気が悪くなる事に対してのデメリットがあるよね。
反省ならロワが終わってからすれば言いし、嫌ならもうここを読むのをやめなよ。

ちなみに俺はドラえもん大好きだよ。
秘密道具抜きに主役5人は、魅力ある素晴らしいキャラクターだと思うし、
人生の中で一番長い時間見ているアニメだと思う。
把握している度合いだって他の作品よりも上位に位置するよ。
宇宙開拓史だって昔数回見ただけだから完璧に把握しているわけじゃないけど。
2Hの映画で把握できるなら他の漫画やライトノベルよりは大分敷居が低いと思うな。

長々書いちゃってなんだけど、これ以上話すなら議論スレ行こうよ。
344創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 22:10:34 ID:Cg+5id90
意見があるなら議論スレに行け
トリ付きだと尚良いぞ
345創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 22:17:08 ID:/0aitr7f
ドラえもん好きならこんな仕打ち納得出来るとは思えないけどな
346創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 22:22:54 ID:Svi8QWSK
このロワのメインはバッカーノとかひぐらしとかローゼンとかブラクラとかの、
まあいわゆる大人向け?の作品であって、
他の作品はオマケでしかないんだよ
ドラえもんなんて特にね
あれ児童漫画でしょ?
大人でも楽しめるとかよく言うけど、結局は子供向けでしかないし
なんていうか、テーマ性とか、そういう高尚さがないんだよね
347創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 22:28:33 ID:G1/1IFul
ギラーミンの知名度は気にするような問題じゃないっしょ

開幕時と違ってリメイク版で宇宙開拓史だって公開されたんだしさ

俺もドラえもんは好きだなキャラクターや秘密どうぐは勿論として
それを活かす話がすき。
348創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 22:32:05 ID:/0aitr7f
好きって言ってる人は、単行本全巻くらいは持ってるんだよね?
大長編やカラー作品集、+とかも含めて
349創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 22:37:40 ID:pw6Qu4Lk
リロードするたびにあぼ〜んが増えてて吹いた
350創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 22:41:12 ID:7oFAjFhK
>>346
                             |
                             |
      ∩___∩             |
      | ノ  _,  ,_ ヽ        ((  | プラプラ
     /  ●   ● |         (=)
     |    ( _●_)  ミ _ (⌒)   J  ))
    彡、   |∪|  ノ
⊂⌒ヽ /    ヽノ  ヽ /⌒つ
  \ ヽ  /         ヽ /
   \_,,ノ      |、_ノ
351創る名無しに見る名無し:2009/06/13(土) 23:57:24 ID:/0aitr7f
OP書いた人ってまだいるの?
出来れば何でギラーミン選んだのか聞いてみたいんだけど
352創る名無しに見る名無し:2009/06/14(日) 00:06:32 ID:na5kQaA+
議論スレに行け。
353創る名無しに見る名無し:2009/06/14(日) 00:08:37 ID:FYju7uI5
したらばでは書き込み規制されてるんじゃね?
354創る名無しに見る名無し:2009/06/14(日) 00:36:50 ID:Gz5dMOe/
向こうの議論スレに意見も無いし、トウカしてもいいんじゃない?
T4氏はいるのかな?
355創る名無しに見る名無し:2009/06/14(日) 00:58:18 ID:SHpwYrTj
問題ないと思います。

禁止エリアもどうなるかな?
356 ◆T4kibqjt.s :2009/06/14(日) 16:20:37 ID:bz8xco4A
それでは、放送を本投下いたします。
357第二回放送 ◆T4kibqjt.s :2009/06/14(日) 16:22:34 ID:bz8xco4A
正午になると同時に放送用のスイッチを入れる。
人間味のない平坦な声。

「ごきげんよう諸君。無事二回目の放送を迎えることができて嬉しいよ。
諸君もこの放送を聞けば生き残っている実感を得られるだろう?その感覚を忘れないでくれたまえ。
当たり前の話だが死んでしまえばもう何も感じることはできなくなる。
諸君が生の実感を持ち続けたいと願うなら、最後の一人になるしかないのだ。
もっとも願いは人それぞれだ。死んでしまった誰かを生き返らせるために最後の一人になるというなら、それもいいだろう。
いずれにせよ、諸君の奮起に今後も期待している。
では、禁止エリアと新たな死亡者の発表だ。
まずは禁止エリアから。

13:00からF-6
15:00からD-3
17:00からC-1

以上の三ヶ所だ。
但し、電車内に限っては禁止エリアであっても移動可能であることを伝えておこう。
もっとも、誰かに突き落とされるような場合には意味がないので危険には違いないがね。
次に死亡者を発表する。

翠星石
カルラ
園崎魅音
ドラえもん
東方仗助
モンキー・D・ルフィ
サー・クロコダイル
吉良吉影
蒼星石
春日歩
ナナリー・ランペルージ
衛宮切嗣
ストレイト・クーガー

以上だ。生存者は37名になる。
聞き漏らしはなかったかね。同じことを二度言うつもりはないので、聞き逃した情報は知り合いにでも教えてもらうことだ。
もっとも、その者が真実を伝えてくれるという保証はどこにもないがね。
まぁつまらない死に方だけはしないでくれたまえ。
それでは放送を終える。
六時間立ってもまだ生きている者がいたら、そのときまたお会いするとしよう」

語り終えたあと、余韻を持たせるような数秒の沈黙。
静かに放送用のスイッチを切る。



358第二回放送 ◆T4kibqjt.s :2009/06/14(日) 16:23:56 ID:bz8xco4A


バトルロワイアルの会場の遥か彼方、あるいは、極めて近くに位置する場所。
スイッチばかりがやたらと多い大型の装置にスペースの大半を閉められた狭苦しい部屋で、ギラーミンは備え付けの椅子を無視するように真っ直ぐに立っていた。
対面する機械は放送用のものである。たった今二度目の放送を終えた。
嘲るようでいて励ますようでもあり、それでいて冷たく突き放しているともとれる何とも捉えどころのない内容であった。
声色から意図を推し量ろうにも、口調はのっぺりとして平坦そのものであり、およそ感情というものが感じられない。
ただ、苦さにも似た渋味のにじんだ、低い、年齢を重ねた男の声であると知れるだけだ。
長身を覆う黒地のマントに同色のつば広の帽子。
目鼻を残して特異な衣装に隠されているため人相を知ることは出来ないが、その分細長い針のような視線の鋭さが際立っている。

冷徹さを隠そうともしない風体である。声だけ聞けば放送が彼の喉から発せられたことを疑う者はいないだろう。
しかし、中身に目を向けて見るとどうだろう。
容赦のない殺し屋を絵に描いたような風貌とあまりに印象が食い違っていないか。
復讐に身を焦がす者にしてはこれまで見せた所作はあまりに無味乾燥に過ぎはしないか。
人形のように血の通わぬ言葉からはおよそ意思というものが感じられず、入力された音声データを再生するプレーヤーの様に彼自身の存在は希薄だ。
あたかも、流された放送はギラーミンによるものではないかのように。
むしろ、誰によるものでもない言った方が正確かもしれない。

それほどに、これまでギラーミンが果たした仕事の価値は薄い。
少くとも彼自身はそう感じていた。

──いけ好かねぇ。

声には出さず胸中で呟く。視線はじろりと眼前の一点に注がれていた。
空きスペースに四角い、手のひら程の大きさの道具が置かれている。『シナリオライター』と言う名前らしいがライターというには少し大きい。
理屈は知らない。だがこの道具に台詞の書いた紙を入れ火を灯すと指定された者はその通りに喋る。
話者や細かい演出等をト書きとして組み込むことも可能であり、だからこそ『シナリオ』の名が付けられたのだろう。
火を灯している間しか機能しないとは言え、一度作動すれば支配を抜け出すことは難しい。
二度の放送と開幕のルール説明をこの機械の命ずるまま、自分の意思と関係なしにこなしたギラーミンは身を持ってそのことを実感していた。
次の放送が近づけばまた奴が、あるいはその手の者がシナリオの書かれた紙を持ってくるだろう。
面白みのない台詞と簡単な演出だけが書かれた、下らないシナリオを。
その時がくるまで、ギラーミンは特にすることがない。
これが、放送やルール説明の場における、彼のものとも思えぬ立ち振る舞いの真相であった。

奴、恐らくは奴らがどのような組織で、何を目的としているのかは知らされていない。
このライターはギラーミンに与えられたものだがそれが奴らの私物なのか、あるいは殺し合わせている連中に与えた支給品のようにどこぞから奪ってきたものかさえ分からない。
これまでの極僅かな接触で推測できることと言えば連中がとてつもなく慎重で用心深いと言うことだけである。
自分達が表に現れるようなことは極力避けどうしても必要な場合はギラーミンを間に立たせた。
ライターの力で自由意思と感情を奪ってしまえば情報流出の心配もあるまい。
ただでさえ連中とギラーミンの接点はこれまで皆無だったのだ。自分が出てきたからと言って奴らの影を思い描く者はいないと言っていい。

359第二回放送 ◆T4kibqjt.s :2009/06/14(日) 16:25:02 ID:bz8xco4A
今回に関して言えばこれみよがしに演出された「因縁の再会」も良い隠れ蓑となるだろう。
なぜ自分をと、直接聞いたことがある。答えは一言だった。誰でも良かった、と。
殺し合うメンバーを見繕っている途中で偶々目についた。ギラーミンが選ばれた理由は本当にそれだけのようだった。
付け加えるとすればギラーミンの体質か。地球より遥かに引力の弱い星系出身のギラーミンは身体能力が地球人より圧倒的に低い。
地球人と正面から戦った場合、たとえ相手が子供でも勝つことはできないだろう。
しかし、射撃のような技能や知力に関して言えば劣るどころか並の者より余程切れる。
つまるところ、ギラーミンは反逆の心配なく使える便利な駒という扱いだった。
満足できる立場ではない。
とはいえ見返りが皆無という訳でもない。無事に目的を達成したときには莫大な報酬を約束されている。
ルール説明のときに語った脱獄からその後の生活にかけてのくだりは事実であり、胡散臭さを差し引いても魅力的な話ではあった。
今のところこれといったトラブルは起きていない。死亡者は順調に数を重ねている。
連中としては思惑通りと言ったところなのだろう。それが何なのかと言えば、まったく検討もつかないが。
知りたいとも思わなかった。少くとも今は。
自分から波風を立てて無駄に立場を危うくする必要はない。

ただ。
不思議と、このままつつがなくことが終わるとはまったく思えなかった。

──機械に任せて上手くいくと思わねぇこった。悪知恵はコンピュータじゃ弾けねぇぜ。

企むのが連中であれ、殺し合っている奴らであれ。
自分だったとしても。
ギラーミンは長い背を屈めて葉巻に火をつける。
打ち捨てられた燐棒が、ピンと尖った音を立てて宙を舞った。


【黒幕について】
ギラーミンの雇い主。
ロワ開催の目的、規模、正体等は一切不明。
また、放送意外にギラーミンに与えられた役割、権限についても不明。


【シナリオライター@ドラえもん】
見た目は普通のライター。シナリオを書いた紙を中に入れ火をつけるとそのとおりの行動を取らせることができる。
誤字があってもそのまま演じさせるといった融通のきかない面もある。
原作コミックスでは8巻「ライター芝居」に登場。
360創る名無しに見る名無し:2009/06/14(日) 16:25:36 ID:Cthm6zhv
支○
361 ◆T4kibqjt.s :2009/06/14(日) 16:27:41 ID:bz8xco4A
以上で投下終了です。
仮投下からの変更点は、
・放送内に電車内は禁止エリアの影響を受けない、という内容を追加
・本文で触れられた以外のギラーミンの権限、役割は不明であることを追記

以上の二点です。
それでは、よろしくお願いします。
362創る名無しに見る名無し:2009/06/14(日) 16:37:27 ID:Cthm6zhv
投下乙!
もう放送後の内容については予約可能って事でいいのかな?
363創る名無しに見る名無し:2009/06/14(日) 17:10:36 ID:FYju7uI5
投下乙です
他の放送案がなければこれでいいのかな?

予約はいつ頃からだろう
364創る名無しに見る名無し:2009/06/14(日) 19:31:36 ID:9EFRsCmb
トウカ乙です。
中央が禁止エリアになったか。
これでだいぶ動きが制限されてきたな。ただでさえごちゃごちゃしてるだけに遭遇率も上がりそう。
ところで死亡者の読み上げは第一回放送で五十音(名簿も五十音)なので順番を直しておいたほうがよいかと。
365創る名無しに見る名無し:2009/06/14(日) 20:27:09 ID:c/D0hlMw
投下乙です!
黒幕関係が今後一層気になってきたー!

じゃあ、放送も本投下されたから15日の0時から予約合戦開始?
366創る名無しに見る名無し:2009/06/14(日) 21:44:17 ID:TBf6jw5K
少しもめたが放送も無事迎えられたし、また新たな展開があるの楽しみだな
とりあえずマップ真ん中付近がどう転ぶのかが楽しみだ
それにしても今回の禁止エリア真ん中からF-6の橋を通っての脱出が出来なくなり、またD-3、C-1と左上と分断するように来るとは真ん中に対して厳しくなって来たな
367創る名無しに見る名無し:2009/06/14(日) 21:45:39 ID:IQNI1scc
15日0時なのかな
368創る名無しに見る名無し:2009/06/14(日) 22:18:05 ID:1E77fKhe
投下乙です。
良い繋ぎだ。
特に問題もないみたいだしこれでいいんじゃないかな。
予約は0時からOKってことで良いかな。
369創る名無しに見る名無し:2009/06/14(日) 22:59:04 ID:iaY3fbTG
ということは今から一時間ほどで予約解禁か!
おお、今からどのキャラに予約入るか楽しみだ……。
370創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 00:09:52 ID:rxNG5bgp
早速予約3つ入ってるな。
どいつもこいつも楽しみだ。
仲間の死を知ったあすかとゾロの心境がどうなるのかが楽しみ。
371創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 00:15:24 ID:R1i/v4/b
おお!早速三つも。
個人的にはナインと一緒に予約された美琴が心配すぎる……!
372創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 00:17:07 ID:8+pcokxQ
ま、まて! ARMSの天敵は電気だぞ! まだ希望はある!
373創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 00:53:35 ID:R1i/v4/b
そ、そうだ。そういえば電撃は天敵だったw
でも、なんだか弱い考えしか浮かばないぜアニキ……orz
374創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 01:52:08 ID:I8B1Wjyw
その電気も次には体性ついちまう・・・もうダメぽ
375創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 01:59:37 ID:lfgJ+xEb
今更だけど、ワンピースって何で5人も参加してんの?
そんなに人気あったの?
376創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 02:23:51 ID:O8b/jchW
予約3つ!イヤッホォ!
いやいや、意外と電撃耐性つくまでは時間かかってたぞ
だから大丈夫…なのか?うわぁ自信ないw

あのトリオとゾロが一緒に予約されてるのに吹いたw
どれだけ迷ってるんだお前はww
377創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 02:24:31 ID:kwNE33bB
せめてあすか&真紅組に合流して欲しいぜ…しかしここはロワだからな…
笑顔の貴女が見たい、と思っているバカを思い出せ!

しかし◆Wo氏が速さが足りててワロタ
378創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 02:27:15 ID:O8b/jchW
最速兄貴氏、解禁前に予約してたのかw
世界を縮めすぎだww
379創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 02:32:22 ID:rxNG5bgp
>>375
ロワ内人気はどうか知らんが一般人気はかなりある。

>>376
ナイン&電撃少女はまずまともに戦闘になるかどうか…。
ゾロに関しては言わずもがなw
病院からどんどん離れとる。
380創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 02:36:23 ID:QVrHcwzr
クーガーに慰められた分も切嗣死亡の報でチャラかなぁ
全力全開で行けばむしろナインのがヤバい
381創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 02:39:03 ID:R1i/v4/b
ホントだ、解禁前に予約してたwww
しかし、ナインの方には地味にアヴァロンもあるから侮れないぜ……おお、なんか怖くなってきた。
でも、確かに絶対戦闘というわけでもないしねw
382創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 02:48:35 ID:QVrHcwzr
ガチの再生能力者たちの闊歩するこのロワ内じゃあお守り程度だけどなw
士郎inアヴァロンくらいの性能ならナナリーも死なずに済んだのに
383創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 02:53:52 ID:NYcJgdCI
>>380
そのクーガーも死んじゃったしな

>>382
セイバーとの契約が鍵だから、切嗣が持てばそれくらいはあった>アヴァロン
384創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 03:40:44 ID:kwNE33bB
2人の訃報でどうなるか。もう弱い考えに反逆しろとしかww前話の感じだと少年誌的覚醒は難しいのかな。
クーガーの慰めを支えに覚醒とか…全力ならあるいは…や、そうだな、戦闘必須じゃないしな!
慌てない慌てない……でもなんかこう、怖いのは何故なんだぜw
385創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 07:56:36 ID:lfgJ+xEb
>>379
一般人気がいくらあったって、ロワ内人気がないんじゃ意味なくない?
その一般人気だって、DBや幽白、剣心とかの方が上だろうし
386創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 13:17:26 ID:rxNG5bgp
そういえば、美琴を助けてくれたクーガーと切嗣がもう死んじゃったんだよな…。

>>384
美琴にはクーガや切嗣の分まで頑張ってほしいが…。
まぁ良い方向に考えようぜw

>>385
参加作品、参加者は投票で決めた。
参加してるってことはそれなりにロワ内人気もあるってことじゃないかな?
一般人気に関してはその三作品にかなわないとしても十分知名度あると思うよ。
387創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 13:58:19 ID:lfgJ+xEb
>>386
DBとかの方が人気あるのに、そっちが出てないのはおかしくない?
388創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 14:14:04 ID:rxNG5bgp
>>387
いや、何がおかしいのかさっぱり。
ロワ内、創作板人気はワンピースの方がその時はあったんじゃないの?
そもそもおかしかったらなんなのさ、早く殺せと?
っていうかお前やっぱりいつもの人か。

スルーできなくってスマンカッタ。
389創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 14:25:00 ID:iOxNL676
だから言ってるじゃん
あれは俺が多重したんだって
390創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 14:31:02 ID:HuQVVcFT
ハイハイワロスワロス
391創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 16:03:10 ID:Q/YeXdU0
えーっと。何をもって一般人気だの言ってるのかは知らないけど
少なくとも累計発行部数ではとっくにワンピはDBも越えてるわけなんだけど

参考までに↓

ONE PIECE 累計1億7500万部
DORAGON BALL 累計1億5000万部
SLAM DUNK 累計1億1000万部
幽☆遊☆白書 累計5000万部
るろうに剣心 累計5000万部
392創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 17:09:12 ID:TU4BiLLC
何で構うの?
スルーしたほうがいいだろうに
393創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 17:21:56 ID:co/uEa5n
スルーしろ、どうせいつもの荒らしだろ

それにしても、最速兄貴氏は相変わらず早さが足りすぎてるwww
394 ◆Wott.eaRjU :2009/06/16(火) 00:14:10 ID:j4zCZC20
よし、投下一番乗りは貰ったー!
というわけで真紅、橘あすかを投下します。
395創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:14:46 ID:C7Ttxsmz
はやい!
396進むべき道はいつもそこにある ◆Wott.eaRjU :2009/06/16(火) 00:14:52 ID:j4zCZC20


――言葉が出ない。


それが今現在の橘あすかを言い表すにはぴったりな言葉だ。
出会って間もないけれども悪い人間ではなかったモンキー・D・ルフィとの別れ。
その時に感じた感情よりも更に色濃く、直ぐには収めることは出来ない。
相手を思いやる気遣いに多少掛けていたとしても、今のあすかはどうにも口を開く気にはなれなかった。

悲しいとは思う。当然だ。
自分の同僚、たとえプライベートでの付き合いは希薄だったとしても頼れる男が死んだ。
しかも数時間前に別れたばかりの……だけども叫ぶ事はしない。
元々大袈裟に感情を見せるタイプでもないと自分では思う。
だけども、それ以前の問題として我慢しなければ、と強く思った。
何故だろうか。決まっている……そうしているからだ。
彼女が、この自分の背丈半分にも満たない小さな少女がじっと耐えているからだ。
この場で知り合い、今までずっと行動を共にしている少女の背中が一段と小さく見えるのは気のせいだろうか。

「し、真紅……」

結局、彼女の名前を呼ぶ事ぐらいしか出来ない。
その程度の事しか出来ない自分自身がどうにも嫌になった。
別に自分が励ましの言葉を告げる義理もないというのに、何故か痛々しい程に。


◇     ◇     ◇

397進むべき道はいつもそこにある ◆Wott.eaRjU :2009/06/16(火) 00:16:15 ID:j4zCZC20


『――六時間経ってもまだ生きている者がいたら、そのときまたお会いするとしよう』

第二回目の定時放送が告げられた。
内容は大きく分けて二つ。
新たな禁止エリアの所在、そして死亡者の情報。
呼ばれた名前に知り合いのものがなかった参加者も居るかもしれない。
だが、生憎彼ら――真紅と橘あすかの二人には居た。

(クーガー……こんな時まで速さを求めなくてもいいでしょうに。まったく、あなたという人は……!)

背を向け、呆然としたように立ち尽くす真紅を心配そうに見やりながらあすかは思う。
途中で出会ったギルガメッシュ、そして前原圭一はこの時だけは意識から遠のいた。
ストレイト・クーガー。どんな時でも速さを追い求めた男の死が只、深く胸に突き刺さる。
衝撃は大きく、劉鳳の死を聞いた時にも劣らない。
いや、それ以上ともいうべきだろうか。
数時間前に出会ったクーガーの方が、より一層死んだという実感を感じられたような気がしたためだ。
首を逸らし、思わず窓の外を眺める。
相変わらずの口調で、クーガーが今にも顔を出してくれはしないかと淡い希望を抱いた。

だけども、それは叶わないことをあすかは知っている。
放送の内容を信じないわけにはいかない。
事実、先程紛れもない死を確認したルフィの名前はしっかりと呼ばれた。
わざわざクーガーに関して間違った情報を送る理由もないだろう。
したがってクーガーは――死んだのだ、確実に。

どういう死を迎えたのかはわからない。
満足して逝けたのだろうか、それとも無念さに塗れたものだったのだろうかと思うが直ぐに疑問は解ける。
こんな無益な殺し合いに呼ばれたのだ。
きっと無念だったのだろう。そうに決まっている。
兎に角、判る事は三人も居た、誇り高きHOLY部隊が只一人になってしまった事について。
自然と拳を握った。力強く、叫び声と代わって自分の感情を代弁するように。
398創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:16:46 ID:cSZL25cY
399進むべき道はいつもそこにある ◆Wott.eaRjU :2009/06/16(火) 00:17:37 ID:j4zCZC20
(……やってみせますよクーガー、そして劉鳳。
HOLY部隊には未だこの僕が居る……その事をあのギラーミンという男に知らしめてやりましょう、絶対にね)

たった一人の宣戦布告。
誰に聞かせる事もなく、己の胸底に潜ませる。
確かにA級のアルター能力者である劉鳳とクーガーの死は、B級のあすかにとって大きな衝撃だ。
だが、逆に考えてみれば自分が彼らよりも優れている証明と成り得る。
そう。この場でHOLYとしての義務を果たせば自ずと――。
心が昂ぶらない筈がない。死にたくはないという大前提に、ギラーミンの行いを一人の人間として許せない想い。
そこに自身の有能性のアピールが付け加わるのだ。
しかし、曲がりなりにも殺し合いの場所に依然として立っているわけであり気分は晴れない。
未だに目の前の真紅にも碌に話を持ち掛けられないのだからなお一層に。

(いつまでも此処に居るわけにはいかない、もっと他者との接触を行わないと。でも……僕は一体どうすれば)

どうする事も出来ない自分が恨めしい。
桜田ジュンという少年に続いて、翠星石と蒼星石という名前も放送で呼ばれていた。
真紅の事が可哀そうだとは思う。
だけどもそんな言葉を掛けるだけでは、逆に何も言わない方がいいのではないかと考えた。
人形である以前に真紅はただの少女ではない。
彼女の話からすれば自分よりも永い年月を過ごしてきたらしいが頷けるものだ。
その証拠に真紅は一切取り乱してはいない。
桜田ジュンの時も、翠星石と蒼星石、更には再びルフィの名前を聞かされクーガーの死を知った今でさえも。
真紅は泣き叫ぶ事はせずに、一粒の涙も見せず、悲しさで両肩が震えている事もない。
いっそ取り乱してくれればそれ相応に対応するというのに……。

それが彼女の強さなのだろうとは思うが、逆にあすかは自分の取るべき行動を決めあぐねていた。
以前のあすかにはあまり見ることは出来なかった気の配り方。
覚えていないわけではない。第一回目の放送で、自分の何気ない言葉がルフィに気に障ったことは今も鮮明に覚えている。
全面的に自分が悪かったわけではないと思うが、確かに無神経であったのも事実だ。
二の轍は踏まない。ただ、そう思いながらあすかは真紅の次の行動、そして言葉に気を配る。
上手くやれるだろうか。この場で真紅とギクシャクした関係はあまり望んではない。
出来れば円滑に会話が通じるくらいに関係が望ましい。
そう。今までの関係が続けば――自然と全身に緊張が走った。
400進むべき道はいつもそこにある ◆Wott.eaRjU :2009/06/16(火) 00:18:49 ID:j4zCZC20
何故なら唐突にそれは起きたのだから。
目の前の真紅が急に振り返り、その小さな口を開きだす。
薄桃色の、幼さと大人びた雰囲気を混ぜ合わせたような唇が嫌に印象的だ。
そして言葉が紡がれる。

「……クーガーは遠い場所へ行ってしまったようね」

そうですね。心なしか小さな声であすかは答える。
表情は暗い。どちらが? 勿論、両方ともだ。
直ぐに重苦しい沈黙が二人の間に生まれる。
やはりこうなったか、とあすかは半ば納得するがそれでどうするかといわけでもない。
ただ、言うべき言葉に迷うしかない。
そんな時、真紅がまるで見透かしたように言葉を続ける。

「辛いことだとは思うのだわ。だけど……私たちは立ち止まるわけにはいかない。それだけは忘れてはいけないのだわ、あすか」
「え……? え、ええ……」

意外だった。
真紅の口から出た言葉は悲しさを訴えたものではない。
どちらかというとあすかを気遣う言葉。
依然として気品さは失われていないその表情に弱気は見られない。
吸い込まれそうな程に済みきった、蒼色に輝く瞳が今もじっとあすかを見つめている。
思わず眼を逸らしてしまった。同時に奇妙な息苦しさを感じる。
覚えがある感覚。世界で一番大切な存在であるキャミィと知り合ったばかりの頃、何度も何度も身体に走ったようなものだ。
何をバカな――脳裏に浮かんだ感情を否定し、視線を戻す。
目の前には変わらない真紅の表情が浮かんでいる。

「それと言っておきたいコトがあるのだわ」
「なんですか?」
「……翠星石と蒼星石の名前が呼ばれたコトについてよ」

ついにきたか。今のうちに慰めの言葉を探している自分が哀れに思える。
だが、真紅はそんなあすかを特に気にしていないような様子を見せている。
401創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:19:26 ID:cSZL25cY
402進むべき道はいつもそこにある ◆Wott.eaRjU :2009/06/16(火) 00:20:06 ID:j4zCZC20
「私たち、ローゼンメイデンはローザミスティカを一つずつ持っている。翠星石と蒼星石にも当然あるのだわ。
そしてもう一体のローゼンメイデン……水銀燈にローザミスティカを渡すわけにはいかない」

凛とした真紅の表情に変化はない。
告げた内容はローザミスティカ、ローゼンメイデンにとって何よりも大切なものについて。
あすかには聞いたことがある。
確か真紅達はそれを集めているのだと。
殺し合いともいうべき、“アリスゲーム”と呼ばれる戦いで。
だが、それよりも大切な事があるのではないか。

「だから今後は今まで以上に貴方の力をあてにさせてもらうのだわ、あすか。
水銀燈があの子たちのローザミスティカを手に入れていたら厄介だもの」

口を挟みたい。
その思いはだんだんと強くなっていく。
依然として平然とした様子の真紅を見ると無性に。
何故なら――

「真紅ッ!」
「……なに?」

いつもと変わらない彼女の顔と、そして言葉を聞くと疑問が湧いた。
どうして、どうして変わらない――


「……翠星石と蒼星石の二人が呼ばれたんですよ? どうして、あなたはそんな平気でいられるんですか……?」

403創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:20:31 ID:cSZL25cY
404進むべき道はいつもそこにある ◆Wott.eaRjU :2009/06/16(火) 00:21:06 ID:j4zCZC20


まるで“何もなかった”ように振舞う真紅があすかはどこか痛々しく感じてしまった。
真紅を気遣ったわけではないかもしれない。ただ、抑えられそうにもない疑問を吐き出したかった。
詳しくは知らないが、彼女ら二人が真紅の姉妹である事は知っている。
人形だろうが家族である事に変わりはない。
それも一人ならまだしも二人同時にだ。
あすかには真紅が何故、これほどまでに冷静さを保てるのかわからなかった。
本当に彼女達の死について特に思う事がないのであれば、悪いが自分は真紅を見損なうだろう。
そんな事すらもあすかは思っていた。

そして真紅の表情に変化があった。流石に驚いたのだろう。
身体の割に大きな瞳をさらに見開く。
見返してやる。
自分は間違った事は言ってない。無言でそう言い聞かせるように、真紅を睨む。
しかし、意外にも真紅が取った行動は返事ではなかった。
くいくいと、まるで犬に伏せの合図をするかのように手を上下させている。
良い気分はしないが真紅の背丈を考えれば仕方ないかと言い聞かせる。
しぶしぶ腰を落とし、真紅と目線を合わせるがまだ真紅の指示は終わっていない。
今度は右を向けとの事だ。相変わらず自分勝手だな――そう思いながらも、一応従ってはみる事にする。
その時、ふいにあすかの左頬に何かが触れた。

405創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:22:08 ID:cSZL25cY
406創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:23:04 ID:cSZL25cY
407創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:23:34 ID:D8QBUDW+
支援
408創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:24:58 ID:pp46s5Sl
409創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:25:30 ID:cSZL25cY
410進むべき道はいつもそこにある ◆Wott.eaRjU :2009/06/16(火) 00:25:46 ID:j4zCZC20


「い、いたあああああああああぁぁぁー!?」


触れたもんじゃない。横殴りに叩かれたのだ。
真紅が自身の金髪の髪を、まるで鞭のように振るったのが事の原因と言える。
かなりの衝撃だったため、思わず情けない声を上げてしまった。
以前にもこんな事はあった。そう、あの時はルフィと一緒にやられた。
平手ではない。たかがツインテール状の髪の毛とは馬鹿に出来ない衝撃。
その犯人は両腕を前に組み、見開いていた眼を細めている。
じとーと冷ややかな視線を浴びせてくる少女人形、真紅がいましがた武器に使った自分のツインテールを丁寧に直す。

「な、何するんですか!? あなたはいつもいつも言葉よりも手が出て――」
「うるさいのだわ」

すっと腕を前に翳し、真紅がそう言い放つ。
抗議の言葉を口にしていたあすかは思わず言い黙ってしまう。
いつもこんな調子だ。
真紅に理不尽な暴力を受けるのも、そしてペースを握られてしまうのも。
悔しいとは思うがどうにも言い返す事も出来ない。
そうさせるだけの雰囲気が真紅からは感じられた。
不機嫌な様子かはわからないが、少なくともご機嫌というわけでもなさそうだ。
続けて疑問の言葉が心なしか、少し語気が強まった口調で真紅の口から零れ出る。

「あすか、あなたにはそう見えているのかしら? 私が本当に平気でいる……あなたには本当にそう見えて?」

言葉に詰まる。
どうにも首を縦に振れない。
ただ、さっきまでの自分とは違うことは判る。
そう、先程までは真紅が一体何を考えているのかが全く判らなかった。
だけども今では真紅の感情が少しは判ったような気がしている。
やはり、これは――悲しみだ、間違えようもない。
たとえ直接的な言葉を口に出さずとも、今の真紅を見ればそう思わずにはいられなかった。
同時に自分はつまらないことを聞いてしまったのだと自覚する。
悲しくないわけがなかった。単に真紅は悲しみを自分の中だけにしまっておいたというわけだ。
それを自分はわざわざ――気分の良い事ではない。
謝りの言葉を言うべきか。
一瞬の逡巡を経て、あすかはやはりそうするべきだと考える。
411創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:26:29 ID:cSZL25cY
412進むべき道はいつもそこにある ◆Wott.eaRjU :2009/06/16(火) 00:26:34 ID:j4zCZC20
「だいたい、私はこれでも臆病者なのだわ。あの子達の名前が呼ばれたコトを気にしないわけがないじゃないの」
「へ、へぇ……意外ですね。あなたが自分からそんな可愛らしいコトを言うとは」
「あすか、それはどういう意味かしら? まったく、失礼するのだわ」

だが、生憎タイミングを失ってしまった。
他愛もない会話に留まり、あすかは真紅の不機嫌そうな眼つきから目を逸らす。
やはり真紅は強い。何故こうまでも強くなれるのかと疑問に思う程に。
ふと、あすかは想像を張り巡らす。
真紅が言っていた契約、もしそれに同意すればもう少し彼女を知ることが出来るのではと――しかし、直ぐに否定する。

(い、一体何を。別に真紅のコトが気になっているというわけでもないのに……)

そんな想像は意味がない。
契約とは真紅に力を分け与える意味でもあり、今以上に自分の負担が増える。
そこまでする義理はない。大体、真紅の事を必要以上に気にする必要もないのだ。
けれども、何故だか動揺は直ぐには収まらず、冷や汗すら出てきたかもしれない。
真紅に気取られぬように、あすかは極めて冷静に努めようとする。
幸いな事に真紅は特に気付かなかったのだろう。
直ぐにあすかから目を放し、すたすたと歩いていく。
その先は図書館の出口。
ドアノブがついた、古風なドアが其処にあった。

「さぁ、そろそろ行くのだわ。支度をしなさい、あすか。無駄にしていい時間はなくってよ」

方針は既に決めてある。
取り敢えず三時ぐらいまではこのあたりの探索。
そして今はもうクーガーは居ないが、列車で会場を見て回ることは未だ有益な事だと思える。
あすかもその点は同意だ。
故に急いで真紅の後を追い、彼女の後に図書館のドアを通ろうとする。
その時、不意にあすかは気がついた。
413創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:26:48 ID:x19YIceu
し円
414創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:27:19 ID:cSZL25cY
415創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:28:02 ID:pp46s5Sl
416進むべき道はいつもそこにある ◆Wott.eaRjU :2009/06/16(火) 00:28:26 ID:j4zCZC20
「あら?」

真紅が少し驚いたような声を上げて、頭上を見上げた。
上に映るものは出入り口付近の図書館の天井の一角。
しかし、真紅と天井との間に顔を出すものがあった。

「気が利くわね。少しだけ見直したのだわ」
「それはどうも」

真紅がその小さな腕をドアに触れる先にあすかが手を伸ばしていた。
最初の出会いを経て、真紅がとある民家のドアを開けることが出来なかった小さな事件。
きっとあの事を覚えていたのだろう。
礼を言われてないせいか、少し気恥ずかしそうな顔を浮かべながら、あすかは静かにドアを開けていく。
徐々に差し込まれる、昼下がりの日光が真紅の小さな顔に差し込む。
眩しさのあまり、真紅はほんの少しだけ眉を顰める。

(翠星石、蒼星石……お疲れ様なのだわ)

思い浮かべるのは大切な姉妹達。
アリスゲームにより戦う運命にあろうと愛する気持ちは変わっていない。
たとえ、彼女達が動かぬ人形になった今であろうともだ。
彼女達と過ごした日々の記憶は消えることはない。
自分が彼女達と同じく、この殺し合いに脱落する時、歯車が止まってしまうその時までは絶対に。
だから、今は進まなくてはいけないと真紅は思う。
417創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:29:02 ID:pp46s5Sl
418創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:29:05 ID:cSZL25cY
419進むべき道はいつもそこにある ◆Wott.eaRjU :2009/06/16(火) 00:29:10 ID:j4zCZC20
(あなたたちのローザミスティカ……あなたたちが生きた証を見捨てるコトは出来ない。
水銀燈、いいえ彼女だけじゃなく誰にも渡しはしない。私が必ず持ち帰ってみせるのだわ)

ローザミスティカを集める。
それは究極の存在、“アリス”への近道。
図書館で見つけた不思議の国のアリスという童話の主人公と同じ名前。
お父様、ローゼンが追い求めしアリスを目指すのは真紅とて第一の目的だ。
翠星石と蒼星石が脱落した今、結果としてはアリスへの道が縮まったと言えるかもしれない。
だが、どうにも喜ぶ気にはなれない。
そもそも真紅は姉妹同士で戦うことに乗り気ではなかったのだから。

しかし、ローザミスティカを放置するわけにはいかない。
あれはアリスへの欠片であると同時にローゼンメイデンの全てだ。
人間と同じように生き、永い年月を賭けて学んだ全てが詰まっている。
軽いものではない。そう、あれはローゼンメイデンの誇りを手に取れる形にしたもの。
彼女達の誇りというべきものを素正の知れぬ人間、そして水銀燈預けるわけにはいかない。
もし、そうなるのであれば自分の手元に置こう。
たとえ翠星石と蒼星石が望まないとしても、誰かにローザミスティカがいいように利用されるだけ事はされて欲しくない。
依然として冷静さを貫いた表情の裏に、真紅は人知れず覚悟をうちたてる。

(私はあなたたちの妹で良かった。心かそう思うのだわ、翠星石、蒼星石。
だから、私は歩いてゆく。これから先、私を待っている道はきっと平坦のものではないわ。だけど……諦めたくはないのだから)

既にこの場に残るローゼンメイデンは二体。
水銀燈とは昔のように手を取り合う事はきっと出来ないだろう。
だけども、一人ぼっちというわけではない。
少し正確に難があれど、あすかは悪い人間でもない。
それにたとえ一人であろうとも真紅は何もせずに止まるつもりはない。
何故だかジュンとの契約が解かれ、契約の指輪に鈍い光が残っていようとも。
翠星石と蒼星石が果たせなかった想い――それら全てを背負う覚悟は出来ているのだから。


(ローゼンメイデンの第五ドール、真紅……私は生き残ってみせるのだわ。
そう、ローゼンメイデンの誇りに賭けて――絶対に)


420創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:30:06 ID:cSZL25cY
421進むべき道はいつもそこにある ◆Wott.eaRjU :2009/06/16(火) 00:30:14 ID:j4zCZC20
そしてドアが完全に開けられたことで、今まで以上の光が真紅の顔に振りかかる。
だが、真紅に動じる様子はない。
眩しさを感じるよりも心地良さの方が勝っているといったところだろうか。
太陽の光にも負けない、誇らしげな表情が映える。
誇り高きローゼンメイデン第五ドールの、いつもと変わらぬ微笑がそこにあった。



【D-4/図書館/一日目 日中】
【真紅@ローゼンメイデン(漫画版)】
【状態】:健康
【装備】:庭師の鋏@ローゼンメイデン
【所持品】:基本支給品一式、不明支給品0〜2個(未確認)、不思議の国のアリス@現実他、いくつかの本。
【思考・行動】
 1:殺し合いを阻止し、元の世界へ戻る。
 2:引き続き情報収集をする。
 3:列車に乗って、会場全体を一通り見ておきたい。そのため3時までは辺りを探索、その後再び電車に乗って最終的にはG-7駅を目指す。
 4:ループを生み出している何かを発見する。
 5:誰かと契約したい。しかし誰でもいいという訳ではない、あすかが望ましい。
6:翠星石、蒼星石のローザミスティカを手に入れる。 
【備考】
 ※参戦時期は蒼星石死亡以降、詳細な時期は未定(原作四巻以降)
 ※あすか、クーガーと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。
 ※蒼星石が居る事や、ホーリエが居ない事などについて疑問に思っていますが、参加時期の相違の可能性を考え始めました。
 ※ループに気付きました。ループを生み出している何かが会場内にあると思っています。
 ※情報交換済みの人物:ルフィ、前原圭一、クーガー
 ※彼らの知人:レナ、沙都子、梨花、魅音、詩音、切嗣(圭一)、ゾロ、チョッパー、ハクオロ、アルルゥ、カルラ(ルフィ)
 ※要注意人物:アーチャー(遭遇)、ライダー(詳細ではない)、バラライカ(名前は知らない)、ラッド(名前は知らない)
        無常、ラズロ、ヴァッシュ、カズマ、クロコダイル、水銀燈(殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める)
 ※対主催チーム(佐山、小鳥遊、蒼星石)の存在、悪魔の実の能力者の弱点(カナヅチ)を知りました。

【橘あすか@スクライド(アニメ版)】
【状態】:腹部に軽い痛み
【装備】:HOLY部隊制服
【所持品】:基本支給品一式、螺湮城教本@Fate/Zero、不明支給品0〜2個(未確認)
【思考・行動】
 1:ギラーミンを倒し、元の世界へ戻る。
 2:引き続き情報収集をする。。
 3:列車に乗って、会場全体を一通り見ておきたい。そのため3時までは辺りを探索、その後再び電車に乗って最終的にはG-7駅を目指す。
 4:ループを生み出している何かを発見する。
5:真紅が気になる……? 
【備考】
 ※参戦時期は一回目のカズマ戦後、HOLY除隊処分を受ける直前(原作5話辺り)
 ※真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました(アリスゲームは未だ聞いてない)。
 ※ループに気付きました。ループを生み出している何かが会場内にあると思っています。
 ※情報交換済みの人物:ルフィ、前原圭一、クーガー
 ※彼らの知人:レナ、沙都子、梨花、魅音、詩音、切嗣(圭一)、ゾロ、チョッパー、ハクオロ、アルルゥ、カルラ(ルフィ)
 ※要注意人物:アーチャー(遭遇)、ライダー(詳細ではない)、バラライカ(名前は知らない)、ラッド(名前は知らない)
        無常、ラズロ、ヴァッシュ、カズマ、クロコダイル、水銀燈(殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める)
        カズマとアーチャーは気に食わないので、出来れば出会いたくもない
 ※対主催チーム(佐山、小鳥遊、蒼星石)の存在、悪魔の実の能力者の弱点(カナヅチ)を知りました。
 ※参加者によっては時間軸が異なる事を知りました。

422創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:30:23 ID:pp46s5Sl
423 ◆Wott.eaRjU :2009/06/16(火) 00:31:33 ID:j4zCZC20
投下終了しました。
いつも支援どうもありがとうございます。
それでは何かありましたらお願いしますね。
424創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 00:58:47 ID:x19YIceu
投下乙!
真紅……少しはあすかに甘えてもいいんだぞ……
もうローゼンの世界で友好関係を築いていた人はみんな死んじゃったな。
雛苺も死んでるみたいだし、ますます救われないけれど。
ここの真紅の芯の強さには目を張るものがあるな。

そして社長、お前ってやつは……まさか人形相手に?
失望した!このロワの凸凹コンビは一体どうなってるんだ!?
ニコ兄ペアとはまた好意の関係が真逆なのも面白いね。

このコンビは大好きだ、とくにあすかの精神的成長は見ていて面白い。
それとあすかの状態表、アリスゲームの説明はもう既に受けているよね?
さかのぼって見てみたらクーガーと別れた時から間違えてるっぽい。

後は、気付いた誤字脱字を。
>>419  水銀燈預ける→水銀燈「に」預ける?
>>419  少し正確に難が→少し性格に難が
え……細かいって?……すみません
425創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 19:52:23 ID:jNUS/IPc
投下乙
真紅かわいいな
本当はつらいはずなのに堪えて強く振る舞ってるのが悲しいぜ
あとあすかしっかりしろ
426創る名無しに見る名無し:2009/06/16(火) 20:00:49 ID:/JrcOUye
投下乙!
あ、あすかが真紅を気遣い始めた!?
KYだったときからだんだんと成長してきてるのかな。
原作でも成長率あったからなー、あすかは。
真紅はついに水銀燈と2人きり。
ローザミスティカの心配をしているが、翠と雛のは沙都子組が、蒼のは美琴がもってるんだよな。
しかも美琴は比較的近くにいる……果たして真紅は3つを手に入れられるのか。
え? 銀様が手に入れられるのか? いや、でも銀様何気に大ピンチだし……。

2人の仲の進行がわかりやすかったです、GJ!
427 ◆T4kibqjt.s :2009/06/17(水) 01:04:16 ID:Rb3YXeRr
放送について、死者発表を50音順に修正したものを仮投下スレに投下しました。
ミスをしてしまい申し訳ないです。
428創る名無しに見る名無し:2009/06/17(水) 02:25:57 ID:7gpYeDAw
>>427
修正乙です!
429創る名無しに見る名無し:2009/06/17(水) 15:29:26 ID:EY57PGmG
修正乙です。
延長がなければ今日投下かな?
楽しみだ。
430創る名無しに見る名無し:2009/06/17(水) 19:16:01 ID:WZrHJlSR
修正乙〜。
そうか、今日か…wktkして仕事が手につかんな。投下出来るなら今は推敲中かな。がんばれ
431 ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:12:32 ID:PrpxUKEN
仕事してくださいww
ちょっと時間はやいですが、
拡声器涙目ヴァッシュ、男キラー伊波、両性類新庄、方向音痴ゾロ、投下開始します
432太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:14:04 ID:PrpxUKEN


 太陽。
 タロットの19番。


 *****




『そのときまたお会いするとしよう』


 放送はその言葉を最後に途切れた。


 古城におけるある一室、そこに張り詰めていた空気がその言葉を最後に少し弛緩する。もっとも、『少しは』というのが頭に付く。
 そこにいる3人の顔は、安堵こそあるものの、厳しいそれだからだ。


「小鳥遊くん、よかった……無事、だった」
「佐山君もブレンヒルト先輩も呼ばれなかった」
「ウルフウッドもリヴィオも呼ばれなかった……だけど……」

 この中では1番安堵が顔に現れているのは、部屋の扉辺りで隠れている少女、伊波まひる。
 彼女ほどではないが、少し安心している様子がとれるのは、イスに座る丹精な顔の(現在)少年、新庄・切。
 そして、1番沈痛な表情をしているのは、新庄の向いのベッドに座る男、ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
 そして3人の手にはそれぞれ名簿と筆記用具が握られており、さきほどまで放送の内容をメモしていた。


 禁止エリア、そして死亡者たちの名前を。
 13人という、またしても多い死者の数を。


 3人の知り合いの名前は誰も呼ばれなかった。その点に関しては3人ともほっとしていた。どの知り合いも、彼らにとっては大切な人だからだ。
 新庄とブレンヒルトについては少し関係が薄いとはいえ、先輩と後輩だ。死んでしまえばショックに決まっている。
 ヴァッシュは東方仗助、吉良吉影の名前に顔を曇らせたが、それは広瀬康一の知り合いで協力者であり敵対者だ。仗助と会えなかったのは残念だが、ショックを受ける
ほどではない。


 ただし、ヴァッシュが出会った少女、園崎魅音の名前は別だった。
 決してお世辞にも友好的だったとは言えない。罵倒の言葉、悪辣な笑み、それはヴァッシュも分かっていた。
 彼女はきっと他人に害なす思考だったのだ、と。彼女が死んで助かった者がいるかもしれない、と。それでも――


「でも、やっぱりそういう理屈じゃない……あの子だって、もしかしたら止められたかもしれないんだ。僕が、あの時……」

 あの乱闘騒ぎが思い浮かぶ。黒服の男、怪しいメイド、広瀬康一、園崎魅音。
 あの時自分には場をかき乱すことしかできなかった。もし、躊躇わずにあの少女を取り押さえる事ができていたら、そう思うと溜まらなかった。


「ヴァッシュさん……気持ちは分かるよ。でも」
 新庄が慰めようとしたのか、声をかけようとした。だが
「わかってる。こうやって放送があったんだから、いつまでも未練がましくしていちゃいけないんだって。
 そんなことしてたら……その間に、もっともっと死んでいく人が出ちゃうし、ね」
 ヴァッシュが手元の名簿を見ながら辛そうな顔をした。新庄もそれにつられて名簿を見る。
 そこに書かれた65人の名前、そのうち既に28人の名前にチェックマークが入っていた。
433太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:14:44 ID:PrpxUKEN

 それは死亡の証。新庄にはその名前を横線で潰すことがどうしても躊躇われた。名前とはいえ、なんだかその人自身を鉛筆で汚すように思えて。
 それでも、チェックを入れることもなんだか辛かった。まるで自分が死体処理をするような、そんな事務的な感覚を感じてしまったから。


「6時間で、28人……」


 新庄の呟きに、ヴァッシュは顔を曇らせ、離れたところにいる伊波はびくっと体を震わせた。それに気付いた新庄が口を抑える。

「ごめん伊波さん! 怖がらせるつもりは無かったんだけど」
「だ、大丈夫……新庄さんやヴァッシュさんの前で、私だけ怖がってるなんて、できないよ」

 伊波は表情に恐れを残しながらも笑ってそう言った。
 放送前、新庄はついに死というものを実感し始めた自分を励ましてくれた。確かに、放送でその実感が更に強まり、怖いのは確かだ。
 でも、新庄も頑張っている、それでも自分を気遣ってくれる、と思うと、その恐怖に屈してはならない気がした。



 誰も強くない。だから、共に支えあって頑張らなければならない。新庄がそう教えてくれた。
 信じろ、信じようとした相手を信じろ。メカポッポがそう教えてくれた。
 人の足を停めるのは絶望≠ナはなく諦観(あきらめ)”、人の足を進めるのは希望≠ナはなく意志=B高槻さんがそう教えてくれた。



「私は、諦めない……新庄さんを、ヴァッシュさんを信じて……弱い私だけど、少しでも支えていく……そう、決めたから」



 伊波は恐怖を拭い去り、新庄とヴァッシュに笑顔と共にそう言った。
 その答えに新庄は微笑んでうなずき、もう信用してもらったことに、ヴァッシュは涙目で頷いた。
 のだが、ヴァッシュはやがて苦笑して




「決めてくれたのはいいけど……そこからもう少し近づいて来れないかな、まひるちゃん」
「ご、ごめんなさい……支えると決めても、男の人はまだ怖くて」
「ああ、ごめんごめん! 大丈夫! そこから見てくれてるだけでも充分支えになってるから!」
「ヴァッシュさん、そのフォロー、どうなんだろ……世のストーカーの免罪符になりそうで僕怖い。特に僕が捜してるとある人」
「え?」


 新庄がとある男を思い浮かべながら、ふと窓から部屋の外を見下ろした。
 別に何気ない、ちょっと何かに目を落とした、ただそれだけの動作のはずだった。

「え?」

 だから、新庄は一瞬呆けた声しか出せなかった。

「どうしたの?」

 ヴァッシュがそれに気付き、新庄の視線をゆっくりと追う。


 日も高くなり、日差しも強くなってきた屋外。見下ろした方には北を向く古城の門がある。
 門の前には大きめの庭が広がっている。もっとも、手入れをされていないのか、雑草が伸びまくっており、本来の
役目を果たせない花壇が草まみれで泣いていそうなものだった。
 その花壇にある石畳みの道も、汚れが溜まりに溜まってとても見れたものでなく、皹が入っているような酷い有様だ。
434太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:15:27 ID:PrpxUKEN



 その上に、赤色が散っていた。緑髪の倒れている男を中心に。




 ******


 逆位置の意味は『消沈、停滞、挫折』。
 実際の状況は悪くないが、その発展性がなくなる、それ自体が停滞、中止になる、という意味がある。
 例えるなら、道を進んでいたら日が沈み、道の先が暗闇に包まれ、先に行けばいいか、どうしたらいいのか不安になる、そんなところか。


 落日により訪れる、闇だ。


 ******




『モンキー・D・ルフィ』




 その名前を聞いた途端、何かがおかしくなった。



 その名前の前に聞いた、蒼星石の名前への考えも、完全に消え去った。



 突然足の力が抜け、体中に力が入らなくなった。



 おい、なんでだ。
 なんで俺は今倒れていくんだ。
 今までもったじゃねえか。それが、なんでここで。




 あいつの死が、そこまでショックだったっていうのか?
435太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:16:31 ID:PrpxUKEN




 ふざけるな。
 俺はしんじねえ。
 自分の目で見るまでは。



「おーい、ゾロー」



 信じてたまるか、あんな奴の戯言なんざ。



「ゾーロー」



 見るまでしんじねえ、あいつの亡骸を見るまでは



「…………」


 あの能天気な船長の死に様を見るまで―


「”ゴムゴムのーーーー!”」


 あ?



「”気付け”ーーーーーーー!」
「グアアアアアアアアアアア!?」


 いきなりぶん殴られた!?

「てめえ、何しやがるルフィ!」
「お前こそ!おれがゾロゾロゾロ言ってるのに気づかないじゃねえか!ゾロが悪い!」
「んだとこら!」

 俺は目の前のぷんすか怒っているルフィに対して同じく怒鳴った。
 そう、目の前の……ん?


「……おい待て」
「なんだよゾロ!」
「おまえ……死んだんじゃなかったのか?」
「は?…………あー」

 ルフィは俺の質問に何かを思い出すような暢気な顔をした。
436太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:17:28 ID:PrpxUKEN

 
 ったく、そんなこったろうと思ったがな。ギラーミンの野郎、よくもまああんなホラを。


「ったく、おまえが死んだなんてありえねえとは思ったがな」
「ああ、わりぃ、おれしんじまった!」
「ああそうかよ」








「おい、もう1回言ってみろ」
「おれしんじまったんだって」
「…………」



 ルフィは俺の目の前でヘラヘラ笑っている。
 いつもみてーに、能天気に。








 おい





「悪ぃな、ゾロ。せっかくグランドラインにだって来たのにな」



 おい、こら




「怒るだろうなー、みんな。ナミも、サンジも、チョッパーも、ロビンも、フランキーも」




 待て



「あっちじゃきっとウソップにも怒られちまうなー。ま、しゃあねえ!」
437創る名無しに見る名無し:2009/06/17(水) 20:17:40 ID:WZrHJlSR
仕事できね
しえん
438太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:19:28 ID:PrpxUKEN




 だから




「後は、任せた。ゾロ、海賊団やみんなのこと、頼むな。お前にしかたのめねえんだよ」




 こら



「お前ならできるって、んじゃあ」






 ――――もう限界だ。





「ぐああっ!!」

 次の瞬間には、ルフィが思いっきり宙を吹っ飛んでいった。


 変な話だな。
 たしかお前のジジイの話じゃ、ゴムの体に効くのは愛ある拳って話じゃなかったか?


 俺は今愛なんてこめちゃいねえぞ。今、俺が拳に込めたのは――


「おいルフィ。てめえ、いつからそんな奴になった」
「ゾロ……」

 起き上がったルフィが頬を抑えながらこっちを見た。
 俺はそのルフィに早足で進み、胸倉を掴んで引っ張り上げた。


 これが、俺がついていってやる、って決めた船長の姿かよ。
 ったく、情けねえ。


「何が任せるだ。おい、てめえの役目は、そんな易々と頼めるものじゃねえだろ」
「……」
「わかってるのか。てめえの役目、船長を今後一切任せる、ってことはよ」
439太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:20:31 ID:PrpxUKEN



『俺は、海賊王になる男だ!!』



「てめえ自身の夢も他人にやっちまう、ってことだろうが!!」
「っ!!」


 俺はもう一度ルフィを殴った。
 だが、今度はルフィは吹っ飛ばず、足でこらえて立ち止まる。


 そして、俺を見たその顔は……一変していた。
 その顔は……悔しさに満ちていた。


「しかたねえだろ!!」

 ルフィの拳が飛んできた。
 俺はそれをもろに顔に喰らった。が、俺の体はふっとばねえ。

 どうした、手前はそんなに弱かったのかよ。全然堪えねえぞ?

「おれはもう死んだんだ! だったら、お前に任せるしかないだろ!! 仲間を、船を! おれはもう、あいつらの船長じゃいらねえんだよ!!」

 ルフィがそう叫ぶ。
 奴の悔しさはよくわかった。ああ、そうだろうさ。
 奴の夢へのそれは俺がよく知っている。
 それが、死で終わっちまったんだ。悔しいだろうな。辛いだろうな。なきてえだろうな。



 それがどうした


「てめえの夢は、てめえだけの夢だろうが!!」


 俺がふたたび奴を殴る。死、って奴でふぬけたあいつを、ぶっ飛ばす。


「死んだくらいでお前の夢は終わっちまうほど、薄っぺらいもんじゃねえだろ!!」
「!! ゾロ……」
「てめえはそんな奴じゃない。死んだって関係ねえ!そうだろ!」
「……」
「死んだんだったら、ゾンビになってでも、骸骨になってでも、幽霊になってでも船長をやれ!」
「っ!!」




「てめえのその麦わらは、死んだっててめえのものだろうが!!



 ルフィは俯き、俺はその顔に容赦なく拳を入れようとする。
 いくらでもやってやる。手前が、船長がふぬけてるのが直るま――
440太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:21:19 ID:PrpxUKEN





 その拳を、止められた。



 ルフィの手によって。
 こっちを見上げ、にかっと笑ったルフィによって。



 *****

 正位置の意味は、『達成、成就、満足、友情、愛情、可能性』
 一転して、プラスの意味になったな。まさに、上りし太陽があらゆる物を照らし出し、輝かせるということか。
 太陽の光により道先の闇は消え、人は道の先の可能性を見出す。
 そして、人が目指す可能性――


 人はそれを、夢と呼ぶ。


 *****





「そう、だよな。……へへっ、そうだ。おれの夢は、おれのもんだ。誰かに任せていいもんじゃなかった」
「やっとわかったかよ、馬鹿船長」
「ああ、悪かったなゾロ。おれ、死ぬのって初めてだからよ。ちょっとばかし、暗くなってた」
「いや、普通死ぬのは1回きりだ」
「あ、そっか。ははは……よっし、ゾロ!」
「なんだよ」


 そう言うとルフィはその腕を思いっきり後ろに伸ばした。



 おい、待て。
 このパターンは……まさか。


「お、おい!まて!」
「おれはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「意味がわかんねえんだよ、おい!!」





 その腕が、物凄い速さで戻ってきて
441太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:23:04 ID:PrpxUKEN







「『死んでも』!!」




 俺の顔に、拳が直撃し





「海賊王になる男だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」









 俺はその痛みと共に、意識を手放した。










442太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:23:35 ID:PrpxUKEN

 ――――ありがとな、ゾロ――――



 ――――俺はてめえの死体を見るまでしんじねえからな。これは、あくまで夢だ――――



 ――――それでいーよ。あとさ、チョッパー……助けてやってくれ――――



 ――――大事な船医だ。まあ、頼まれてやるか――――



 ――――さんきゅ。んじゃあ、どうする?どう言ったほうがいいかな、おれ――――



 ――――そうだな。……これなら、てめえが死んでも生きてても、どっちだってかまわねえだろ――――



 ――――だな。死んでたら……お前が来る頃にはもう、俺海賊王になってるぞ?――――



 ――――なら、俺もそっちに行くころには、世界一の大剣豪だ――――











 ――――負けねえぞ―――――   ――――上等だ――――


 ――――負けんなよ――――    ――――ハナからそのつもりだ――――
443太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:24:02 ID:PrpxUKEN















                  「「またな」」














 ******
444太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:24:30 ID:PrpxUKEN


「大丈夫かなあ」


 新庄はさっきの一室で、ベッドに寝ている男の傍にいた。


 この部屋はヴァッシュが目覚めた後、同行を承諾してくれたヴァッシュと共に情報交換をしながら城を探索していたところ見つけた部屋だ。
 廊下などの寂れてひび割れたところとは一線を画す部屋で、中の道具やベッドは明らかに新しい、人の手入れが行き届いているものだった。
 なにより、そこには医療品が充実していた。薬、包帯、メス、等等。ここは医務室、だと一応3人は判断した。城に医務室、というのもどうも違和感があるが。
 一先ず、せっかく医療道具があるのだからと、伊波の足の細かい傷に消毒や包帯を施した。やったのはもちろん、伊波本人。男が触れられないのだから仕方ない。
 ヴァッシュの肩の傷を2人は気にしていたが、ヴァッシュが直りかけている肩の傷を見せると、それ以上は言わなかった。
 それがどういう作用のものかは、彼は語らなかった。だから2人もそれには触れなかったのだ。

 そこで放送を聞いている途中に、外の男を発見した3人は、すぐに外に向かい男を助けた。
 刀を三本持ち、傷だらけの男。新庄と伊波はその様相に警戒した。このような様なら、殺人鬼、と判断するのが当然だろう。それほどまでに血まみれだった。
 だが、ヴァッシュは男の刀を3本とも抜き、その刀身を触ったりすると、躊躇い無く男を抱え上げた。
 彼曰く『彼の刀は血に塗れていない。拭いたにしても、短い時間じゃ感触でわかる。けど、それがない。だからこれは全部彼自身の血だ』と。
 そう言って、ヴァッシュは彼を助けるべく医療室へと運んでいった。
 その背中を見ながら二人は思った。『多分、彼はそんな理屈抜きで助けたかったのではないか』と。
 殺人者か、そうでないかを関係なく。情報交換と一緒の会話で、彼らもヴァッシュのことをなんとなく理解し始めていた。
 ヴァッシュの明るさに、彼に抱いていた警戒心が和らいでしまうほどに。


 そして、止血や消毒、包帯などを、怪我になれているらしいヴァッシュ、応急処置の方法くらいは学んでいる新庄の2人で行った。
 伊波は男に触れないので、道具を探してマジックハンドで手渡す手伝いに留まった。
 輸血もしたかったが、輸血パックは見つけられても男の血液型がわからなかった為、ひとまずはここまで処置して、彼が目覚めたらすぐに血液型を聞くという手はずになった。
 それで所用でここにいないヴァッシュと伊波に代わり、新庄がここで男の傍にいるのだった。

「大丈夫かな……ここまでして死んじゃった、じゃ……嫌だよ」

 男の寝顔を見ながら新庄は辛そうな顔をした。そう心配したくなるほどの血の量だったからだ。あんなに怪我して、元気でいられる人間など――







 そう思ってみていた男の口が、大きく開き――





「うあああああああああああああ!!ルフィてめえええええええええ!!」
「ワアアアアアアアアアアアアアアア!?」
「あ? てめえ……誰だ?」
「さっきの叫び声をなかったことにしないでよ!? なんで突然叫ぶのさ!?」
「おれの刀はどこだ」
「お願いだから話題を一つに絞ってくれないかな! あ!そんなことより君の血液型――」



445太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:24:57 ID:PrpxUKEN
【A-2 古城跡・2階・Dr.くれはの医療室/一日目 日中】
【ロロノア・ゾロ@ワンピース】
[状態]疲労(中)、全身にダメージ(大)(止血、消毒、包帯済み)、左腿に銃創(治療済み)、血液不足
[装備]
[道具]支給品一式×2(食料と水一人分消費)、麦わら海賊団の手配書リスト@ワンピース、迷宮探索ボール@ドラえもん、
    不明支給品(1〜3)、一方通行の首輪(血がこびりついている)
[思考・状況]
 0:刀はどこだ?こいつは誰だ?あとルフィの奴、覚えてろ
 1:傷を治す為病院に向かう。
 2:ウソップの仇打ち
 3:ゲームにはのらないが、襲ってきたら斬る(強い剣士がいるなら戦ってみたい)
 4:ルフィ(死体でも)、チョッパーを探す。橘あすかにも会ってみたい。リーゼントの男にも興味
 5:首輪の秘密が気になる。
 6:金ぴか鎧(アーチャー)は次に会ったらただではすまさない。
 7:あの声は何だったんだ?
 ※参戦時期は少なくともエニエスロビー編終了(45巻)以降、スリラーバーグ編(46巻)より前です。
 ※吉良吉影のことを海賊だと思っています
 ※黎明途中までの死亡者と殺害者をポケベルから知りました。
 ※入れ墨の男(ラズロ)が死亡したと考えています
 ※圭一に関しては信用、アーチャーに関しては嫌悪しています。
 ※雪走が健在であったことに疑問を抱いています。
 ※第1回放送を全く聞いていないので、ウソップ以外の黎明及び早朝の死亡者、
  禁止エリアを知りません。
 ※大阪(春日歩)から、危険人物としてクーガー、カズマ、ヴァッシュの情報を教えられました。
 ※不明支給品は一方通行のものです。

【新庄・運切@終りのクロニクル】
[状態]:健康
[装備]:S&W M29 6インチ 6/6@BLACK LAGOON 、尊秋多学園の制服、運命のスプーン@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]:支給品一式(食料一食消費、水1/5消費)、予備弾丸26/32 、八千代の刀@WORKING!!、秋水@ワンピース、雪走@ワンピース
[思考・状況 ]
1:ゾロの血液型を聞いて輸血をする。
2:ヴァッシュを待つ。
3:メカポッポを待ってみる。(なかば諦め)
4:まひると行動しながら小鳥遊を捜す。。
5:佐山と合流しここから脱出する
6:ブレンヒルトについてはまだ判断できない。
7:人殺しはしない。
8:ゾロについてやや警戒。
※小鳥遊宗太については、彼の性癖とかは聞いています。家庭環境は聞いていません
※新庄の肉体は5:30〜6:00の間にランダムのタイミングで変化します。
 変化はほぼ一瞬、霧のような物に包まれ、変化を終えます。
 午前では女性から男性へ、午後は男性から女性へ変化します。
※参戦時期は三巻以降です
※カズマを危険人物だと認識しています
※まひるに秘密を話しました
※ヴァッシュと情報交換をしました。ウルフウッド、リヴィオ、広瀬康一、メイドの女性(ロベルタ)、園崎魅音(詩音)、黒服の男(サカキ)についての情報を得ました。
 殺してしまった男(ベナウィ)に関してと、殺害した状況に関しては話したどうか、後続の書き手に任せます。

※古城跡の2階の1室が、Dr.くれはの医療室@ONE PIECEになっています。



 *****
446太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:25:22 ID:PrpxUKEN



「じゃ、あの男の人は任せて。大丈夫だよ、きっと悪い人じゃない」
「し、信じてますけど……でも、今じゃなくちゃいけないんですか?」
「うん。僕が自分を見失ったせいだから……ごめんね、君達を置いていって」


 男が倒れていたのとは反対方向、ヴァッシュが辿り着いた方の門の前に、伊波とヴァッシュはいた。
 伊波は離れた壁から見守っていて、ヴァッシュはそんな彼女に向かってはにかんだ。
 ヴァッシュは伊波のその態度が決して悪意のものではないと知っている。病気のようなものだから仕方ないのだと。
 それでも自分を見送りにわざわざ来てくれた。多分今こうして男の自分と話すのも辛いんじゃなかろうか。彼女に酷使させるのは辛かったが、それでも嬉しいと思う
自分がいる。


 そう、彼はここから少し離れる。
 理由は、気がかりなことがあるからだ。
 コウイチが死ぬ前、連絡を取る事を約束した黒服の男性。
 だが、コウイチの死、人を殺したショックで逃げ出してしまったヴァッシュはその連絡手段を放置してきてしまい、そのまま6時間も経過してしまった。
 もういないかもしれない。そもそも、自分は彼の名前を知らない。だから、放送で既に呼ばれている可能性もある。
 だけど。


「もし、彼が生きていたら。もし、まだ連絡を取ろうとしてくれていたら……そう思うと、やっぱり僕は戻らなくちゃいけないんだ。
 本当、ごめん」
「だ、大丈夫、です……わ、私も新庄さんも、が、頑張りますから……。新庄さんに何かあったら、私があ、あの男の人を!」
「いや、あの人は大丈夫だと思うけどなあ」

 たどたどしく言いながら伊波は手に持ったマジックハンドをぶんぶんと振った。それが彼女なりの懸命な送り出しなのだと、ヴァッシュは悟る。

「隣のエリアだし、時間はかけないようにするから! あの人か、あの通信機か……どっちも見つからなかったら、すぐ戻ってくるから!
 4時までには必ず戻るよ! それまで……新庄くんを、助けてあげて?」
「……は、はい!」


 伊波の返事を聞き届けると、ヴァッシュはデイパックを担いで走り出した。
 手元には、新庄と交換した愛用の銃。もう、人の命を奪わないことをこれに込めて。
 行き先は、南。


 自分が通信機を放置してしまった辺り、そして、人がいる可能性がその周辺で高く、捜すのにも時間がかからなそうな場所――






 『学校』へ向けて。
447太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:25:47 ID:PrpxUKEN





【A-2 古城跡南/1日目 日中】

【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@トライガン・マキシマム】
[状態]黒髪化、左肩に刺突による傷(再生中)
[装備]ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃 6/6 @トライガン・マキシマム
[道具]支給品一式、拡声器@現実、予備弾丸36発分
[思考・状況]
基本:殺し合いを止める、今度こそ絶対に。
 1:ベナウィを殺した場所と学校へ行き、黒服の男(サカキ)と電伝虫を探して連絡を取る。見つからなくても4時までには古城跡に戻る。
 2:新庄、伊波と同行する。ゾロについては信用。
 3:ウルフウッド、リヴィオとの合流。
 4:ウルフウッドがいるかもしれない……?
※原作13巻終了後から参加
※サカキ、ロベルタの名前はまだ知りません。
※詩音を『園崎魅音』として認識しています。詩音は死んだと思っています。
※口径などから、学校の死体を殺すのに使われたのはロベルタの持っていた銃ではないかと考えています。
※義手の隠し銃には弾が込められていません。弾丸を補給すれば使用可能です。
※全身の切り傷は再生しました。
※伊波、新庄と情報交換をしました。佐山、ブレンヒルト、小鳥遊、高槻、メカポッポ、片目の男(カズマ)の情報を得ました。



【A-2古城跡・門前/1日目 日中】

【伊波まひる@WORKING!!】
[状態]:疲労(小)、足に擦り傷・切り傷 、男に触られた事による動揺
[装備]:学校の制服
[道具]:支給品一式(食料一食消費、水1/5消費)、ARMSのコア(中身は不明)@ARMS マジックハンド×2 @WORKING!!
[思考・状況]
1:新庄、ヴァッシュと支えあい頑張る。
2:新庄を助けながら、ヴァッシュを待つ。
3:メカポッポの到着を待つ。(半ば諦め)
4:諦めない。常に信じ抜く。
5:佐山、小鳥遊と合流する。
6:ゾロに対して大分警戒。
※新庄を信用しています。また、彼女の特異体質を知りました
※佐山・御言に関しては変な人ということを聞いています。ブレンヒルトについては、知り合いということだけ聞いています。
※運命のスプーンのことは知りません。
※ARMSのコアの事は一応目を通しましたが、何の事かよくわかってません。
※ヴァッシュと情報交換をしました。ウルフウッド、リヴィオ、広瀬康一、メイドの女性(ロベルタ)、園崎魅音、黒服の男(サカキ)についての情報を得ました。
 殺してしまった男(ベナウィ)に関してと、殺害した状況に関して話したどうか、後続の書き手に任せます。
448太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:26:14 ID:PrpxUKEN




 *****


 どうだ?今回の話は。
 ? 向こうで騒いでいる二人組、彼らはまるで太陽のようだ、か。
 成程。確かに、奴らは太陽に相応しいかもしれんな。だが、奴らに逆位置はあまり似合わんな。俺としては、もっと奴らに相応しいカードがあるんだが……。


 まあいい、それはまたの機会にしてやる。さて、次は何にする。


 何? そろそろ蜂蜜に飽きてきた?
449太陽-The Sun- ◆YhwgnUsKHs :2009/06/17(水) 20:26:47 ID:PrpxUKEN
投下終了です。
感想、矛盾点、ご意見ありましたら是非お願いします。
450創る名無しに見る名無し:2009/06/17(水) 20:26:48 ID:WZrHJlSR
しえん
451創る名無しに見る名無し:2009/06/17(水) 22:26:41 ID:Rs0MjQH1
とっくに死んでるのに何度も出しゃばってくるなよチョンピキャラ
他のキャラは死んだ後は登場したりしないのに
どんだけ贔屓されてんだよ
452創る名無しに見る名無し:2009/06/17(水) 22:59:56 ID:FCWFK2hU
>>451
そんなの作者の勝手じゃね?
453創る名無しに見る名無し:2009/06/17(水) 23:03:32 ID:Rs0MjQH1
>>452
だからってチョンピだけ贔屓されすぎじゃね?
そもそも、人気もないのに5人も出てる時点でおかしい
454創る名無しに見る名無し:2009/06/17(水) 23:14:51 ID:EmeuXTGP
投下乙!
このロワではなかなかのヘタレっぷりを見せてるヴァッシュ……
ここらで一発名誉挽回になるか?
でも、ヴァッシュとゾロが入れ違いになったのは不幸中の幸いかもねぇ。
ゾロなら指名手配に変な先入観は持ってないだろうけど、警戒はするだろうし。

ルフィとゾロの会話も良かったわ……二人らしいと思った、一番最初の仲間だもんなぁ。
それとロニーさん、あんたが主催って可能性もあるんだからな!w
タロットカードは詳しくないけど、面白い演出だと思いました。
455創る名無しに見る名無し:2009/06/17(水) 23:22:52 ID:9fxRJHsz
>>453
なんか最近逆に構って見たくなった。
最初に言いたいことは人気が無きゃ10年以上もジャンプでやれないと思われます。

それとここにある作品は『ワンピース』という作品であって
貴方が言うような作品名ではありません。

最後にそれほど『ワンピース』と言う作品に嫌悪感を現さなければならないのなら、
別の『ワンピース』が参戦していないロワ、あるいはまったく異なった創作に移転するのことをお勧めします。
なぜならここではすでに『ワンピース』と言う作品のキャラクターが確実に
右往左往、一喜一憂しなければならないからです。
456創る名無しに見る名無し:2009/06/17(水) 23:32:02 ID:Rs0MjQH1
>>455
んじゃ言い方変えるわ
ワンピースが人気ないとは言わないけど、他にもっと人気ある作品があるだろ
このロワに参加してる中でも、fateやジョジョ、ブラクラなんかの方が人気あるはず
少なくとも2ch上では
ワンピースは一般人気は凄いかもしれないけど、その分2chでの人気は低い
だいたい10年連載ってのも、今のジャンプに他にまともな作品がないってだけで、
ワンピースの人気を証明することにはならないと思うけどね
457創る名無しに見る名無し:2009/06/17(水) 23:38:18 ID:9fxRJHsz
>>456
一番最後の質問にも答えてくださいませ。
最後の質問がこちらとしては一番重要だったのですが。
如何でしょうか?

それと貴方の言う
『このロワに参加してる中でも、fateやジョジョ、ブラクラなんかの方が人気あるはず
少なくとも2ch上では』
の発言の根拠などを教えてくれたらこちらとしても議論しやすくてありがたいです。
458創る名無しに見る名無し:2009/06/17(水) 23:47:24 ID:EmeuXTGP
いい加減にしなよ、お互いに何を言おうと納得する気は無いんでしょ?
せっかく投下があった直後にこんな流れじゃ、感想もつきにくいと思うんだけど。
分かってんの?感想は作者にとって最高の燃料なんだよ?

これ以上やりあうなら議論スレ行きなって。
459創る名無しに見る名無し:2009/06/17(水) 23:47:44 ID:Yj5nD4FW
>>457
なんでお前はスルーもできねぇんだよアホ
460創る名無しに見る名無し:2009/06/17(水) 23:53:26 ID:EY57PGmG
投下きてた!乙です。
空気読まず感想投下。

ヴッシュとゾロがバトンタッチか。
え〜と、方向音痴×両性類×女性恐怖症…?
…新庄、頑張れ。

相変わらずタロットカードを使った話と心理描写が上手いなぁ。
謎のある終わり方でしたし、何だこれは…。

ゾロとルフィの夢の中での会話はかなりらしいと思いました。
ゾロがルフィを説教して、それを聞いたルフィが考え改めて光を取り戻す辺りなんか特に。
絆を感じるなぁ。

それとゾロが目覚めた後の新庄とのやりとり、なんかどこかで見たようなw
最後は血液型を聞くところで終わったけど…
あれ?確かゾロって原作でも血液型の公式設定なかったような…。

そしてヴッシュは学校に向かったか。
確か学校には…。
また場をかき乱さないことを祈るw
461創る名無しに見る名無し:2009/06/18(木) 00:09:00 ID:uZyjb0f7
投下乙です。
ルフィとゾロの掛け合い、というか夢の中での出会い、お互いにケンカして夢を託して更なるたかみを目指す、
>>454で言ってる人いるけど二人らしくてよかったです。
そして残りの3人も放送での反応も、元の世界の知り合いは呼ばれてないのにあの落ち込みというか恐怖というかの反応も、特に一般人のいなみんには衝撃が強いか!

学校へ向かったヴァッシュと共に今後の展開に期待したいのが
地味に情報を多く持っているゾロと、二人の情報交換だったりする
大阪からのヴァッシュの情報とかも含めて、
そして古城に一つ目の首輪が………。


実は放送後に狙ってたパートだったんだけれど
負けてよかったと思える作品でした。

改めてGJ!
462創る名無しに見る名無し:2009/06/18(木) 00:24:45 ID:BOyqPMT6
ルフィとゾロの掛け合い、みんな「らしい」って言ってるみたいだけど、そうでもないような
どっちかって言うとむしろ違和感感じた
何て言うかな
ルフィって原作だと、死んでも気にしないようなキャラだったと思う
463創る名無しに見る名無し:2009/06/18(木) 00:28:21 ID:NGuYY3Db
人間として決定的な何かが欠けてるような性格だからな
個人の捉え方の問題だから違和感は無いが
464創る名無しに見る名無し:2009/06/18(木) 00:39:35 ID:6iz9n1vd
んな細かいとこどうでもいいだろ…
これだからワンピ厨は…
465創る名無しに見る名無し:2009/06/18(木) 00:51:27 ID:0C6XEJCx
>>462
それは女ヶ島編で否定されただろ。
エース処刑に危機を助けにいくと決意するとき「ごめん」と心の中で仲間に言ってる。
何より死んでも気にしないキャラならメリー号の別れの涙は嘘かいな。
シャンクス腕消失やウソップ大喧嘩でボロ泣きしたし、そこまでドライじゃないよ。
466創る名無しに見る名無し:2009/06/18(木) 00:55:17 ID:BOyqPMT6
>>465
自分の死に対してって意味
なんせ死ぬときに笑う奴だし
死んだら未練がましいことは言わずにさっさと成仏すんじゃないかなと
467創る名無しに見る名無し:2009/06/18(木) 00:59:27 ID:0C6XEJCx
>>466
「死にたくない」「オレはここでは死なねぇ」とインペルダウンで(ry
死に場所が自分にとって納得のいかない時なら、ルフィも反逆する漢だ。
468創る名無しに見る名無し:2009/06/18(木) 01:05:33 ID:0C6XEJCx
大事なことをしてなかった!

投下乙です。

ルフィとゾロの掛け合いを堪能しました。
素直に「ごめん」と言えるルフィとはっきり怒るゾロ。
上辺だけ見ればつかず離れず2人に、本当は友情が溢れている。
伝わってきます。いい別れのSS、ありがとう!
469創る名無しに見る名無し:2009/06/18(木) 01:42:37 ID:IpNIqr01
まぁ捉え方次第かな。
確かに死を覚悟したらすっぱり諦めるし、未練なんて残さないかもね。
ただそんなことより
普通死んだらすべて終わりだけど、死んでも夢を諦めるなと
無茶苦茶なことを言うゾロとそれを聞いて立ち直り
死んでも海賊王になると言ったルフィ。
常識的に考えて人間としてずれてるが、らしいっちゃらしいかなと思った

っていうかそもそも死んだ後のルフィの心境なんて原作でもわからない。
でもこういうルフィもありなんじゃないかって気がした。
方向音痴だけど人の道は正せるゾロ、ってのも原作通りだしw
470創る名無しに見る名無し:2009/06/18(木) 01:45:48 ID:6iz9n1vd
指摘してるように見せかけて、実は雑談したかっただけか
これだからワンピ厨は
471創る名無しに見る名無し:2009/06/18(木) 02:03:35 ID:2qZ8z0Jd
デジャヴだ
472 ◆b8v2QbKrCM :2009/06/18(木) 03:32:39 ID:hZTySptr
遅くなりましたが、御坂美琴、ナイン・ザ・コードギアス投下します

さるさんになったら避難所の方に落としますので、気が向いたら代理投下お願いします
473UN-SYMMETRY ◆b8v2QbKrCM :2009/06/18(木) 03:35:41 ID:hZTySptr
『――以上の三ヶ所だ。
 但し、電車内に限っては禁止エリアであっても移動可能であることを伝えておこう』

放送の終わりも待たずにナインは走り出していた。
聞きたかったのは禁止エリアの位置だけ。
死者数はともかく、死亡者の名前を聞く必要性は感じられなかった。
他にも何か語ることがあるとすれば、生存者の感情を煽る厭味な台詞くらいのものだ。
ならばわざわざ耳を傾ける必要はない。
ナインの現在位置は、B−2の山頂から市街へ続く坂の中ほど。
図らずも、15:00から禁止エリアとなるD−3エリアを迂回する形になっている。
この点については素直に幸先がいいと思える。
しかし、地図に記載されるような道を選んでいるのに、誰にも出会わないのは宜しくない。
放送が死亡者名を語り終え、現時点での生き残りの数を発表する。
以前から彼女が知る人の名前は、どちらも呼ばれなかった。
果たしてそれは喜ぶべきことなのかどうか、まだ判断できそうにない。

「残り37人……」

ナインは疾走を続けながら意識を思考に傾けた。
始まりからおよそ12時間。
生存者は6割を切っているが、まだ『残り少ない』というには程遠い。
レースに喩えるなら、ようやく折り返し地点が見えてきたという程度だ。
一刻も早く新たな参加者と遭遇し、事を運ばなくてはならない。
ナイン自身を除き36人――それだけの命が失われた暁に、彼女の願いはようやく叶うのだから。

可能性が低いことは知っている。
本当に望みを聞き入れるのか――
そもそも死者を生き返らせることなどできるのか――

許されないことだというのも分かっている。
生存のために他者を斬殺し殴殺し絞殺し轢殺し銃殺し爆殺し――
まるで概念戦争のように――

だが、ナインにはそれらを全て踏み越えるべき理由がある。
それは責務、あるいは義務と言い換えてもいいだろう。
なだらかな山道を抜けたところで、ナインは足を止めた。
地図上で言えば、C−3とC−4の境界の北端部。
学校からU字状に伸びた山道の終着点付近だ。
目の前の坂道は町へと一直線へ続いていて、視界が非常に開けている。
そこでナインが見止めたのは、左手を流れる川に掛かった橋の惨状であった。

「落ちてる……?」

遠目でも見間違えようがない。
B−4エリア南部に架けられた小規模な橋は、その中ほどが完全に崩落してしまっていた。
よもや最初から落ちていたというわけではないだろう。
考えられるとすれば、戦闘の影響。
たった六時間で実に十五人もの死者が出ていたのだ。
今も死者の出るペースが変わっていないと仮定すれば、既に半数近くが命を落としていることになる。
それだけ多くの戦闘が勃発していれば、橋のひとつくらい落ちていても不思議はない。
ナイン自身も、それほどの死闘を経てきたばかりなのだ。

「……」

未練がましく振り向きかけ、寸でのところで踏み止まる。
ここで振り返ってしまったら、固めた覚悟が揺らいでしまいそうだった。
自責など後からいくらでもできる。
殺し合いに勝ち残り、望みを叶えた後からでも。

「――いこう」
474UN-SYMMETRY ◆b8v2QbKrCM :2009/06/18(木) 03:36:31 ID:hZTySptr
ナインは再び駆け出した。
迷う道理もない一本道。
やがて坂道の終わりが近付き、南北に分かれた太い丁字路が見えてくる。
北を選べば崩落した橋へ。
南を選べば市街地へ。
ナインはしばし足を止めて、どちらを目指すべきか考える。
思い返せば、ここの市街をナインが訪れるのはこれが初めてになる。
林の中に一人だけで送り込まれたのが始まり。
ナナリーと出会い、温泉に入り、左腕を失って。
『ARMS』なんていう代物に縋って力を手に入れて。
それでもナナリーを護ることができなくて――
全ては山と森の中の出来事。
見渡す限りに緑ばかりが広がっていて、人工物を見つけることすら稀だったのだ。
新たに踏み込んだ無機質な風景は、果たしてそんな記憶までも薄れさせてしまうのだろうか。

「――南、ね」

やはり、人が多いであろうところへ行くべきだろう。
後悔も躊躇いも悲しみも――全てを置き去りにしてナインは駆ける。
今の自分には、振り返る権利などないのだから。




   ◇  ◇  ◇




美琴がC−4駅の南口に辿り着いたとき、ちょうど時計の針が十二時を指した。
ざざざ、と耳障りな音が響き、男の低い声が周囲に反響する。

『ごきげんよう諸君。無事二回目の放送を迎えることができて嬉しいよ』

美琴は歩くペースを少しだけ落とした。
しかし移動自体は止めず、ゆったりとした足取りで構内へ進入する。

『諸君もこの放送を聞けば生き残っている実感を得られるだろう?その感覚を忘れないでくれたまえ。
 当たり前の話だが死んでしまえばもう何も感じることはできなくなる』

ずきり、と胸が痛む。
あちこちにできた痣の痛みではない。
もっと深くて――救いようのない痛覚。

『諸君が生の実感を持ち続けたいと願うなら、最後の一人になるしかないのだ。
 もっとも願いは人それぞれだ。死んでしまった誰かを生き返らせるために最後の一人になるというなら、それもいいだろう』

生き返らせる。
至極平易な単語なのに、今の美琴はその真意を理解しきれない。
――生き返らせる。
――死者の蘇生。
――死んだ人間が戻ってくる。
――死んだという事実がなかったことになる。
幾ら表現を変えても、そこから先へは思考が動かない。
475UN-SYMMETRY ◆b8v2QbKrCM :2009/06/18(木) 03:37:27 ID:hZTySptr
分かっている。
分かっているのだ。

誰かの死を嘆くなら。
自らの罪を悔やむなら。


選択肢はおのずと見えてくるのだと――


しかしそれは選べない。
それだけは選んではいけない。
だから思考が動かないのだ。
まるで何重にもロックが掛けられてしまったかのように。

『いずれにせよ、諸君の奮起に今後も期待している。
 では、禁止エリアと新たな死亡者の発表だ。まずは禁止エリアから』

美琴は、はっと顔を上げた。
下らないことに気を取られて、大事な情報を聞き逃したのでは笑い話にもならない。
構内の真ん中、北口と南口を同時に見渡せる場所で、美琴は足を止めた。

『13:00からF-6。15:00からD-3。17:00からC-1。以上の三ヶ所だ。
 但し、電車内に限っては禁止エリアであっても移動可能であることを伝えておこう。
 もっとも、誰かに突き落とされるような場合には意味がないので危険には違いないがね』

現在位置はC−3の駅構内。
一番近いのはD−3だが、そこが禁止エリアになるのは三時間も後だ。
当面は禁止エリアのことを気にしなくても大丈夫だろう。

『次に死亡者を発表する』

――呼吸が、止まる。
放送が来れば明らかにされると知っていたのに、喉が震えてうまく息ができない。
きっと誰かが……彼女の知る誰かが、その名を呼ばれるに違いない。
衝動的に耳を塞いでしまいそうになるが、それすらも震えた腕では成しえない。
美琴の唇から拒絶の言葉が漏れる。
しかし、そんなか細い抵抗も虚しく、静かに読み上げが始まっていく。

聞きたくない。知りたくない。確かめたくない。
思考を満たす否定の文句の只中に、聴覚からの強烈な刺激が突き刺さる。


『――衛宮』


それは、赤い絵の具によく似ていた。
キャンパスを塗り潰した無秩序な色の上を、鮮烈な赤色が横切るように。


『切嗣――』


最も聞きたくなかった人の名前が、美琴の心を塗り潰した。


冷たい床材に膝を突く。
膝の皿が痛々しい音を立てたことすら、気付いているのかどうか。
美琴はただ呆然と目を見開いていた。
476UN-SYMMETRY ◆b8v2QbKrCM :2009/06/18(木) 03:38:32 ID:hZTySptr


  嘘――

漏らした呟きすら白々しい。

  こんなことになるなんて――

そう言い逃れでもしたいのか。

  違う、判っていた――

判りきったことだった。
衛宮切嗣は、自分を庇って深い傷を負っていた。
放っておけば命に関わることくらい、素人である美琴でも理解できた。
それなのに――逃げたのだ。
人を死なせてしまったという事実を突きつけられ、その咎から逃げ出したのだ。
助けなければならない人を置き去りにして。


『春日歩――』


衛宮切嗣は死んだ。
御坂美琴が逃げ出したせいで。
それが現実。


『カルラ――』


読み上げられていく名前は殆ど耳に入らない。
喉の奥から何かがせり上がってくるような感覚に、美琴は口元を押さえた。
胃袋の内容物が溢れようとしているのではない。
精神的な苦痛を吐き出そうと、肉体が物理的に足掻いているだけだ。
呼吸が自然と荒くなる。
心臓は鼓動で自壊しそうだ。
不規則な吐息の合間を縫って、どうにか酸素を確保する。
わずか半日程度の間に、様々なことが起こりすぎた。


『吉良吉影――』


放送で伝えられた、上条当麻と一方通行の死。
自らの電撃がもたらした、砂男の死。
裏切りも同然に見過ごした、衛宮切嗣の死。
あのレッドとかいう少年はどうしているのだろう。
電撃を受けて命を落としたか、あるいはまだ生き長らえているのか。
仮に後者なら、もうすぐ彼の名前も呼ばれるはずだ。
そうなったとき、自分はどんな顔をしているんだろうか。


『サー・クロコダイル――』


時間の流れがやけに遅く感じる。
名前一つにつき2秒とかからないはずの読み上げが、まるで潮の満ち干のようだ。
声という波がざあっと押し寄せて、残響を残して引いていく。
477UN-SYMMETRY ◆b8v2QbKrCM :2009/06/18(木) 03:39:49 ID:hZTySptr
『翠星石――』


力の抜けた肩からデイパックが滑り落ちる。
腕を撫ぜる肩紐の硬さを感じながら、美琴は視線を下ろしていった。
自分のものではないデイパック。
信頼されて、預けられた品。
美琴はデイパックを拾おうと、腕を伸ばした。


『ストレイト・クーガー――』




―――――――――――――――――――――?




『蒼星石――』


思考が硬直する。


『園崎魅音――』


今、何と言った?


『東方仗助――』


論理が破綻する。


『ドラえもん――』


どうして、呼ばれるわけのない名前が?


『ナナリー・ランペルージ――』


感覚が乖離する。


『モンキー・D・ルフィ――』


この耳障りな叫びは何?


『――以上だ。生存者は37名になる』


478UN-SYMMETRY ◆b8v2QbKrCM :2009/06/18(木) 03:41:10 ID:hZTySptr
絶望を、理解する。






駅の構内に、御坂美琴の悲鳴が響き渡っていた。




――――――――――――



――――――――



――――



――どれほどの時間が経ったのだろう。
美琴は床に膝を突いたまま、声もなく俯いている。
虚ろな瞳は、果たして風景を捉えているのであろうか。

「どうして……」

また、彼女を信じた男が死んだ。
上条当麻が。
衛宮切嗣が。
ストレイト・クーガーが。
万人に問えば、その多くはこう答えるだろう。
君のせいではない、と。
砂男――サー・クロコダイルの件を含めてもなお、大衆は彼女に同情を示すに違いない。
上条当麻の死は彼女の与り知らぬところでの出来事であり、
衛宮切嗣とクーガーの死は、誰の目にも英雄的行動の果ての落命と映る。
第三者の視点から見れば、彼女は救われるべき立場でこそあれ、責められる立場ではないのだ。
しかし、この世の全てが彼女を赦そうと、御坂美琴は自分自身を赦さない。
それどころか、次第に冷えていく思考が氷片のように彼女の心に突き立っていく。


ここに連れてこられる以前――上条当麻は美琴の電撃を浴びていた。
すぐには命を落とさなかったのだとしても、相当深い傷を負っていたはずだ。
そんな状態で殺し合いに放り込まれて、まともな抵抗が出来たのか?


夜が明けてすぐ――自分はドラッグストアで幾つもの衣料品を集めていた。
それらを適切に使えていれば衛宮切嗣は死なずに済んだかもしれない。
それ以前に、自分が意地を張って攻撃を続けていなければ、彼が傷を負うことすらなかっただろう。


つい先ほど――クーガーは逃げろと言った。
誰が彼を殺したのか、大方の見当はつく。
クーガーの言葉に反するとしても、踵を返して戻っていれば助けられたのではないか。


479UN-SYMMETRY ◆b8v2QbKrCM :2009/06/18(木) 03:42:11 ID:hZTySptr
積もる後悔に際限はなく、自責の念は止まらない。
美琴は腕を抱き、二の腕の肌に爪を立てた。


「動かないで」


聞き覚えのない声と共に、冷たい感触が首筋を撫ぜる。
それが刃物であることを悟るのに、美琴は数秒の時間を要した。
表面は金属のような質感だが、形状も大きさも真っ当な刃物とはかけ離れている。

「……私を、殺す?」

異常なほど冷静に、美琴は現状を俯瞰した。
声の質からして呼びかけの主は少女。
背後に立っているので姿は見えないが、恐らく自分よりも年上だろう。
目的は考えるまでもない。
しかし美琴は、抵抗どころか逃げ道を探す素振りすら見せなかった。
ここで殺されたとしても当然の報いではないか……そんな気さえしていた。
暫しの沈黙の後、声の主は美琴の問いかけを肯定した。

「ええ……そのつもりよ」

答えを聞いて美琴は瞼を閉じる。
思えば、一方通行が死んだ時点で、妹達が実験の被害者となることはなくなったのだ。
罪の意識と、また誰か死なせるのではという恐怖に震えるくらいなら――

「さっきまではね」
「え……?」

美琴の首筋から刃が離れる。
唐突な心変わりに追いつけていない美琴に、次なる言葉が投げかけられる。


「あなた、人を殺したの?」




   ◇  ◇  ◇




びくり、と少女の肩が震えた。
ナインは目の前で跪く少女の背を、感情の読み取れない眼で見下ろしていた。
自身の左腕に目をやれば、着衣の袖が肘まで上げられたことで露出した部分から、鋭い刃が伸びている。
前腕部の外側から、鎌のように突出した刀身。
悲鳴を辿ってこの少女を見つけた直後、ナインは確かに、彼女を殺めるつもりでいた。
少女は明らかに我を失っており、ナインの接近にすら気付いていなかった。
わざわざ気配を消す努力などしなくても、背後から殺害するのは容易だっただろう。

それなのに、ナインは少女に声を掛けてしまった。
まるで反応を確かめようとするかのように。

覚悟が足りなかったと言われたらそれまでだ。
甘さが残っていると言われたら言い訳できない。
それでもナインは声を掛けた。
悲しみに打ち震える少女の姿が、さっきまでの自分と重なったから――
480UN-SYMMETRY ◆b8v2QbKrCM :2009/06/18(木) 03:43:07 ID:hZTySptr
「……そう! あいつも! 衛宮さんも! クーガーも! 私が!」

違う――ナインは直感した。
彼女は彼らを"直接的には"殺していないに違いない。
己のせいで死なせてしまった……それを"殺した"と置き換えて、自分を責めているのだ。


『私は魔導器ネモ。そして――お前に殺された、ナナリーとずっと共に居た者だ』


不意にネモの叱責を思い出す。
間違いなく、自分はナナリーを死なせた。
この少女もまた、多くの人を死なせてしまったのだろう。

「そう……私も"殺して"しまったわ。
 もしあなたがそれを罪だと思うなら――」

平静を装ってはいたが、ナインは内心でひどく動揺していた。
少女が誰かを死なせていたからではない。
ネモの言葉を思い出したからでもない。

少女に告げようとした一言が、同情や良心からではなく――


  私と一緒に勝ち残りましょう。
   そして、みんなを生き返らせるの。


――明らかな打算から生まれてきたことに。

ナインは唇を閉じ、言葉になりかけた音を飲み込む。
確かに、たった独りで全参加者を殺害するのは多大な困難を伴う。
だがそこに志を同じくするものが一人でも加われば、確率は二倍だ。
どちらか一方でも生き残れば、もう一方の願いも同時に叶うのだから。
三人になれば三倍。四人になれば四倍。
全員の蘇生を望む者が増えれば増えるほど、それを成し遂げられる可能性は上がっていく。
それに自分ひとりでは力が足りない状況に陥っても、二人や三人なら話は変わってくる。

しかし、これは踏み越えてはいけない一線ではないだろうか。

振り向こうともしない少女の後姿は、明らかに幼い。
ひょっとしたらナナリーと同じくらいなのかもしれない。
そんな子供にこれ以上の咎を与えてしまえと?
騎士を名乗り、全ての業を背負うと決めたのなら、それを貫き通すべきではないか。

迷う心の片隅から、違う思考が布に垂らされた墨のように広がっていく。

そんな綺麗事を後生大事に守り通して、志半ばに死んでしまったらどうするのか。
見ず知らずの誰かが勝ち残り、偶然にも全く同じ願いを掲げてくれることを期待する?
第一、業を背負うというのなら、他者を巻き込む覚悟も必要に決まっている。
孤独を気取って自己満足で死ぬわけにはいかないのだ。

ナインは深く息を吸い、そして吐いた。

「――覚えてる?
 最後の最後まで生き残って、あの男に勝てば、死んだ人を生き返らせることもできるってこと。
 私はそれに賭けることにしたわ」
481UN-SYMMETRY ◆b8v2QbKrCM :2009/06/18(木) 03:45:43 ID:hZTySptr
これは卑劣な誘導だ。
選択肢を提示するように見せかけて、都合のいい結論を出させようという謀略だ。
上手くいけば、少女の自発的な決定という体裁を整えた上で、目的の成就に近付くことができる。
失敗しても、殺害のチャンスを一回無駄にするだけだ。
そして、必要なことは既に伝えた。
後は何もせずに立ち去ればいい。
ナインは、生身のままの右手を握り締めた。

「だから……あなたにも手伝って欲しいの」

やっぱり卑怯者には成りきれない。
全ての業を背負うと誓ったのだから、この業も自分で背負っていこう。
死んでしまった人達へ新たな命を贈るために。
名前も知らない少女に、道を誤らせたという罪を。

「……」

少女が振り向く。
赤く泣き腫らした瞳からは、少なくとも敵意は感じられなかった。
ナインは握っていた右手を解いて、そっと少女に差し出した。
もしも全てが上手くいったとしても、背負った業は消えてくれないのだろう。
けれど、それでいいんだとナインは思う。

きっとそれが、業というものなのだから――



   ◇  ◇  ◇



あなたにも手伝って欲しいの。
この女の人は、確かにそう言った。
一方通行の存在によって早々に諦めてはいたが、勝者が得られる『力』のことは覚えている。
だが、それによって死者を生き返らせようという考えは、一度たりとも脳裏を過ぎったことがなかった。
かなり早い段階で勝ち残るという選択肢を放棄した美琴にとって、女の提案はまさに青天の霹靂であった。
……いや、今回の放送を聞いたとき、実は美琴も同じ結論に到っていた。
殺人を拒む感情によって、無意識のうちに選択肢から押し退けられていただけで。

「でも……」

差し伸べられた手を前にしても、美琴は躊躇い続けている。
殺し合いに勝ち残るということは、また誰かを殺さなければならないということ。
もう誰も殺したくない。
もう誰にも死なれたくない。
それは美琴の偽らざる本心だ。
けれど、本当にそれでいいのだろうか。


もし仮に――億に一つもありえない仮定だが――自分が一方通行を殺害できたとして。
忌まわしい実験を阻止するためだとしても、果たして一方通行を殺められなかったのか。


幾ら考えても答えは出ない。
だが、胡乱な思考とは裏腹に、身体は静かに動いていた。
差し出された女の掌に、美琴の手が重ねられる。
願いを叶えることが出来たなら。
死なせてしまったことも、殺してしまったことも、刻まれた咎も、全部なかったことに出来る。
482UN-SYMMETRY ◆b8v2QbKrCM :2009/06/18(木) 04:00:57 ID:hZTySptr
どうしてこんなことを想うのか分からないけど――
そうすればきっと、あいつにまた会える気がした――












【C-4 駅/1日目 日中】



【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
【状態】:疲労(大)  全身打撲(小) 自分への強い嫌悪感 軽い暴走状態 多大な喪失感 精神不安定
【装備】:基本支給品一式
【道具】:コイン入りの袋(残り98枚)、タイム虫めがね@ドラえもん、蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン
【思考・状況】
 基本行動方針:優勝狙い?
1:殺し合いに優勝し、優勝者の褒美で参加者の死亡を『なかったことにする』
2:優勝への望みと、人の死を拒む感情の板挟み
3:切嗣とクーガーの死への自責
4:上条当麻に対する感情への困惑
5:真紅と橘あすかとの合流に関する変更は未定
【備考】
 ※ 参加者が別世界の人間とは知りません(切嗣含む)
 ※ 会場がループしていると知りました。
 ※ 切嗣の暗示、催眠等の魔術はもう効きません。




【ブレンヒルト・シルト@終わりのクロニクル】
[状態]:疲労(中)、左半身に火傷(小)、左腕欠損(ARMSで代替)
[装備]:汗で湿った尊秋多学院制服(左袖欠損)、ARMS『騎士(ナイト)』@ARMS(左腕に擬態)、全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero アリス・ザ・コードギアスの衣装@ナイトメア・オブ・ナナリー
[道具]:支給品一式×2、アンフェタミン@Fate/Zero
[思考・状況]
 基本行動方針:優勝狙い
1:殺し合いに優勝し、優勝者の褒美でナナリーを含む全ての参加者を『蘇らせる』
2:望みが同じ参加者とは協力する
3:佐山と新庄には注意(特に佐山)
4:1st-G概念を行使できるアイテムを手に入れる
5:ミュウツー、ラッド、詩音を許すつもりはない
※森林破壊者、男湯銃撃者を警戒しています。また双方とも別人だと思っています。
※ARMSコアの位置は左胸です。
※ARMSについては詩音には話していません。
※アリスの衣装はネモが変化した姿です。ネモの意識、特別な力はありません
※髪を切りました
483 ◆b8v2QbKrCM :2009/06/18(木) 04:02:16 ID:hZTySptr
投下終了です
484創る名無しに見る名無し:2009/06/18(木) 07:45:48 ID:y8V8UcXA
投下乙

クーガーの死を知ったことで美琴のマイナス思考が加速+ブレンヒルトとの接触でついにマーダーかしてしまうのか?
ほんと美琴はこれからどうなるんだろうな

ミスは死亡者を読み上げてるところのレッドへの心配のところ、後者だとレッドは生きてて放送には呼ばれない、ってことくらいかな
485創る名無しに見る名無し:2009/06/18(木) 08:23:11 ID:XbYsMtxf
>>452
触らないほうがいい
486 ◆b8v2QbKrCM :2009/06/18(木) 22:02:35 ID:hZTySptr
>>484
確かに、そこは後者じゃなくて前者が正しいですね
487創る名無しに見る名無し:2009/06/18(木) 22:47:47 ID:4xN55zSU
投下乙
美琴がマーダー化か?
今の精神状態ではそもそも戦えるかどうかすら危ういからな
このまますんなり行くとは思えんが、できれば思いとどまってほしいな
488創る名無しに見る名無し:2009/06/18(木) 23:09:50 ID:HeI96PmZ
投下乙
美琴に関わる人間はみんな退場していくね、
根が優しい中学生に人殺しの業は重すぎるよ……

ブレンヒルトも美琴も、思いとどまってほしいねぇ。
489創る名無しに見る名無し:2009/06/19(金) 02:29:25 ID:0H4GWKPX
投下乙!
美琴が段々と追い込まれていく描写が上手い!
確かに美琴と関わりを持ったキャラが死んでいく……。
ナインと出会った時に殺されてしまうんじゃないかと思ったけどこれもまた過酷そう道だー。
対主催とマーダー、どちらの方向にせよいつか完全に振り切ってしまうのかと思うと今後が気になる。

490創る名無しに見る名無し:2009/06/19(金) 20:47:02 ID:RZQ4Aoxi
追い詰められて行く美琴で俺の股間がえらい事にw
491創る名無しに見る名無し:2009/06/19(金) 20:47:51 ID:gC84nsar
変態だー!(AA略
492創る名無しに見る名無し:2009/06/19(金) 21:38:13 ID:fBo0B0LD
何てことを言うんだ
元気になってきたじゃないか
493創る名無しに見る名無し:2009/06/19(金) 21:47:57 ID:4JDihRfo
↓ミコト関連で変態が増えてきた事について新庄君が一言↓
494創る名無しに見る名無し:2009/06/19(金) 22:48:46 ID:RZQ4Aoxi
新庄「変態の何が悪いんですか?」
495創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 00:00:35 ID:FDiYLz3e
圭一「男が変態で何が悪い」
496創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 00:18:09 ID:yxro+dSk
クーガー「俺はこう思うんです。人間は自由だと」
497創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 00:30:18 ID:fANyA8qc
何このクソ寒い流れ
498創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 00:48:07 ID:VtV3n3F3
>>497
じゃあ流れを変えてくれ
499創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 02:45:53 ID:bbEKImXm
てす
500創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 09:29:01 ID:wePnCbq+
たびたびこういう流れになるよね
死者スレ見てるみたい
その割に死者スレは伸びてないし
501創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 12:24:35 ID:K7Um6TWW
ワンピースアンチスレ106
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1245161455/l50
ワンピースが面白いとか言ってる奴は通ぶりたいカス
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1243660897/l50
ワンピース(笑)<<<<ヴィンランドサガ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1211753458/l50
ワンピースの作者って高卒だよなwwww
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1244692550/l50
もしかしてワンピースの作者って人間的に小さい?
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1239365793/l50
ワンピースのバトルシーンが糞な件
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1242050761/l50
ドラゴンボールに惨敗してるワンピース
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1242960194/l50
海皇紀>>>>>>>>>>ワンピース
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1194966010/l50
ワンピースはキモヲタが涙垂れ流しで見る糞アニメ
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/anime/1204867975/l50
502創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 12:56:02 ID:KAv/eNQY
俺こういう二次創作大嫌いなんだよ
寒気がする
503創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 12:58:15 ID:60YVaSrD
いいじゃん
504創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 13:00:36 ID:KAv/eNQY
>>503
どこがいいのか論理的に説明しろよ
505創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 13:20:02 ID:qAyDnKCN
創発板には本当にマゾが多いこと
506創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 13:21:42 ID:yxro+dSk
まぁ性癖だから仕方ない
寒気するなら余所行けよ。風邪引くよ
507創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 13:27:44 ID:X06y2nq1
サウザントサザエさん
508創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 18:18:09 ID:FDiYLz3e
>>507
なんだそれはw
509創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 19:58:43 ID:tNDu4jbR
いよいよ中盤か
510創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 22:51:58 ID:+iwVhB6P
65人いた参加者がもう37人なんだよな。
でもまだ37人だ。
まだ1日目の昼なのに、結構なペースで死んでいってる気がする。
511創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 22:53:07 ID:2TN1gA/3
でもまだ誰も死んでない作品が4つも
512創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 22:55:43 ID:Rq4+uhp6
まだまだこれからさね
惨劇フラグはそこら中に立ってるし
513創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 23:06:14 ID:eui84kSr
つか惨劇に限らずともプラグは多いと思うな、
恋愛プラグと脱出プラグが見当たらないだけで
514創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 23:09:15 ID:QHex4oU9
確かに恋愛フラグはあまりないかもなぁ。
脱出フラグは……ま、まだ慌てる時間じゃないって多分w
515創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 23:30:19 ID:EvT/L/hd
>>513
脱出プラグといわれて、
何故かエヴァのエントリープラグ的な脱出ポッドが思い浮かんだぞ。
516創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 23:32:25 ID:2TN1gA/3
そんな話はどうでもいい
517創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 23:32:41 ID:Rq4+uhp6
そういやwikiの本編用語集が寂しいな
何か書けないもんか
518創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 23:36:47 ID:eui84kSr
しまった!
何なんだよ脱出プラグって
脱出フラグだよorz

……恋愛プラグのが危険だな……。
519創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 23:51:01 ID:FDiYLz3e
ベッドインはまだかね?
520創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 23:54:41 ID:mlwFd4xS
おっとミュウツーに予約が入ってる
521創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 23:56:20 ID:+iwVhB6P
お、ホントだ。
ひょっとして新人さんかな?
どんな作品を書くか楽しみだ。
522創る名無しに見る名無し:2009/06/21(日) 00:02:15 ID:FWOo2s8r
ミューツーて…
個人的にこの間違いは許し難いが
523創る名無しに見る名無し:2009/06/21(日) 00:06:42 ID:Q7YJ6ymT
おお、ほんとだ予約入ってる!
単独予約かー、今から気になるなぁ。
524創る名無しに見る名無し:2009/06/21(日) 18:24:29 ID:UZWTM3+Q
新規書き手さんが増えるのは嬉しいが、最近見ない書き手さんにも戻ってきて欲しいなあ。
TE氏とかEH氏とか最近見なくて淋しいぜ……
525創る名無しに見る名無し:2009/06/21(日) 20:10:58 ID:SUPg5W6+
EH氏と言えば
仗助、アルルゥ、ゾロ、クリス、クレア、カズマ、ドラえもん、沙都子
の大人数予約がどんな展開になるかが楽しみだったなぁ。
この人の書くSSも好きだからその気になったらぜひまた書いてほしいな。
526創る名無しに見る名無し:2009/06/21(日) 20:58:45 ID:peuFFslN
今度は佐山と小鳥遊が予約されてるな
527創る名無しに見る名無し:2009/06/21(日) 21:01:03 ID:RdQIJdhh
おお、本当だ! クーガーが危うく堕ちかけた話の人か、これは両方とも期待だ
528創る名無しに見る名無し:2009/06/21(日) 23:52:00 ID:UZWTM3+Q
おお!wktkが止まらない!

>>525
確かイデったんだよね……結構な大作っぽかったし読んでみたかった。
あの人が書くSSは展開が読めなくて面白かったんだよなあ
529創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 00:12:21 ID:X7076L03
更に予約が!!
今度は学校組だと……?
wktkするしかないぜー!
530創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 00:12:49 ID:Je5jXfUc
>>528
そうそう。イデめ…。
なんせ8人予約だったからなぁ。
まぁ今更こんなところで嘆いても仕方ない。
これから投下されるSSに期待しよう。
学校組の予約も入ったしな!
531 ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 01:14:13 ID:Rp43zP73
こんな時間ですけど。
佐山・御言、小鳥遊宗太の投下を開始したいと思います。

もしさるさんになってしまったら避難所の方に落としますので。
どなたか代理をしてくれたら嬉しいです。
532GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 01:16:30 ID:Rp43zP73




━━ガタン━━ゴトン━━


耳に入るのは、断続的に続く音。線路を電車がひた走る音。


━━ガタン━━ゴトン━━


それは彼、小鳥遊宗太にとっては毎日のように聞いている日常の音だ。


━━ガタン━━ゴトン━━


そう……瞳を閉じれば、まるであの騒がしくも平穏な毎日に戻ったような感覚を覚える。

あぁ、駅に着いたらバイトに行かないと……。
今日も小さくて可愛い先輩。
働かずに食材を食い散らかす店長。
表情が読み取りにくいけど、意地悪で。でも根はいい人で、可愛そうな佐藤さん。
最近は少し治ってきたけど……相変わらず男嫌いで殴ってくる伊波さん。
その他沢山の変人達との生活が……俺を待っているはずなのに……。

うっすらと瞳を開くと、目の前には無表情でこちらを見つめる佐山君の姿が見える。

先ほど彼の口から聞かされた事実……それをまだ俺は、受け入れる事が出来ない。

『蒼星石君と吉良吉影は……殺されていたそうだよ』

二人の安否を尋ねた僕に対して、佐山くんはそう言い放った。
少し俯いていたけど、とても淡々とした口調で。
533GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 01:19:11 ID:Rp43zP73

自分で言うのもなんだけど……俺、小鳥遊宗太は小さいものが好きなだけのごく一般的な高校生だ。
人が実際死ぬところなんて見た事が無いし。
あの広い会場で首を吹き飛ばされた外人の女の人や、銃で撃たれた外人の男の人。
二人の死という事実さえどこか朧げで、現実だとは思えなかった。
あのラズロっていう変なモヒカン男に蹴り飛ばされて、銃を向けられた時だって……
痛かった、怖かったけど。
なんて言えばいいんだろう……よく分からなかったんだ。
死という実感が、沸かなかったんだ。
結局自分は派手な服の男の人と、佐山君に助けられた……。
考えが甘すぎる……そう言われたら否定できないと思う。
けど俺は言ったんだ、佐山君に対して俺が思う事を。

「佐山君……二人の元に戻ろうよ。きっと俺たちを待ってるよ」


     ◇     ◇     ◇



「蒼星石ちゃん達は?大丈夫かなぁ、心配だなぁ……」

小鳥遊はそう言うと、腹部を摩りながらこちらを見つめてくる。

……ここは本当のことを言うべきだろうか?
短い間だが行動を共にして分かる事……それは彼がおそらく未だこの状況を受け入れていないだろうという事だ。
佐山は腕時計へと視線を流す、11時30分……放送の30分前だ。
考えて見れば、ここに来てから私達はずっと運が良かったのかもしれない。
ラズロという男に襲われるまで、私達は殺し合いに乗った人間には会っていない。
大きなケガを負った参加者にも会っては居ない。
殺し合い開始からの6時間で15人が死亡した点から見ても、それは幸運としか言いようが無いだろう。
だからこそ……単なるサバイバル生活、どこかを探検しているかのような気分で居られたとしても、それは致し方ないことなのかもしれない……

「言い訳だな……」

佐山は小さく、そう呟いた。
534創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 01:21:24 ID:EACgdeIx
しえん
535GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 01:21:43 ID:Rp43zP73

そう……彼自身でさえもラズロと戦闘を交わすまでは、どこか現状を甘く見ていた部分があったのかもしれないのだ。
えっ?と小鳥遊は首を傾げるが、それを無視。
佐山は拳を強く握り締める、爪が手のひらに食い込み、それが痛覚として脳に情報が伝わる。

本気を出すと誓ったのでは無かったのか?
にも関わらず、私は何をしていた……蒼星石君達が殺されていたとき、私は一体何を……。

獏に夢を見せられていた……。
言い訳だ、戦闘が終わるまでの間ずっと過去を見せられていたとは考えられない。

音も無く、二人は殺されてしまっていた……。
それは有り得ない。ラズロという男は負傷していた、銃を使わなかったとしても、戦闘していた際の音は聞こえたはずなのだ。

……要するに私は気を抜いていたのだ、ここが戦場であるにもかかわらず。
探している間も、小鳥遊君と話している間も、意識の一部は二階へと向かわせていたつもりだが……
無意識のうちだとしても、本気を出していなかった事に変わりは無い。


「どうしたのさ、大丈夫?佐山君」

心配そうな小鳥遊の声が佐山を思考から引き戻す。
そして視線を上げる……いつの間にデイバック出したのだろう。
小鳥遊は抵抗もせずにダラリとしている獏を抱えながら、こちらを見つめている。
もう直に放送が始まる……現時点で隠す意味は無い、むしろ隠す事による不審を与えかねない……。
そして何より、小鳥遊に現状を理解させるため……佐山は口を開いた。

「蒼星石君と吉良吉影は……」

「えっ?」

「殺されていたそうだよ」

真っ直ぐ小鳥遊を見つめながら、佐山はそう言った。
小鳥遊は目を見開いて、その眼を震わせながらこちらを見つめている。
苦しいのだろうか。震える小鳥遊の手の間で漠は手足をジタバタと振ってもがいている。
536創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 01:24:30 ID:E29xBDjN
支援
537GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 01:25:25 ID:Rp43zP73

「何を……言ってるのさ」
「聞こえなかったのかね、二人は殺されていたそうだ」
「そうだって……一体誰から聞いたの?」
「ストレイト・クーガー。先ほど私たちの命を救ってくれた男だ」
「き、きっと嘘だよ」
「嘘をつく理由は無い」
「だって……さっきまで、4人で同じ駅に居たじゃないか!
 二手に分かれて……探していたじゃないか!」

小鳥遊は勢いよく立ち上がると、声を張り上げる。
それに対して佐山は、無表情で相手を睨みつける。
それが答えだ……と言うかのように。

それをみた小鳥遊は、力なく椅子へと座り込んだ。
小鳥遊が俯くと、力の緩んだ手から漠が滑り落ちる。
無事地面へと着地をした漠は、佐山の元へと駆け寄っていく。
それを受け入れるかのように右腕を差し出すと、俊敏な動きで佐山の肩まで駆け上っていった。
俯いた小鳥遊動かない……今ここで、小鳥遊には現状を把握してもらわなければならない。
急に理解をしろ、といっても難しい事は百も承知だ。
だが……それを受け入れない限り、この先を生きていく事は不可能だ。

佐山は立ち上がると、列車の後方へと視線を向けた。
列車の連結部のドア。その窓の向こうには誰も居ない車両が伺える……。
さらにその車両の向こうは……何もかもを飲み込んだかのような漆黒の闇が広がっている。
G-7駅を出発したときには5両あったはずの電車は既に残り2両。
ストレイト・クーガーによって後方3両は線路を逆走してどこかへと消えてしまった……。
ゆっくりと歩き、銀色をしたアルミのドアの前へと進むと、視線を上げた。
古ぼけた電子掲示板に「次は 廃坑 」と表示されている。
頭の中に地図を思い浮かべた次の瞬間、後方から小鳥遊の声が聞こえた。

「佐山君……二人の元に戻ろうよ。きっと俺たちを待ってるよ」
538GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 01:30:58 ID:Rp43zP73

佐山は小鳥遊へと視線を戻した。
小鳥遊の瞳には力が無く、未だ縋るような視線をこちらへと向けている。

「小鳥遊君……それは一体どういう意味かね」
「クーガーって人は、きっと何か見間違えたんだよ。
 それか嘘をついているに決まってる……」
「いい加減にしたまえ」
「佐山君こそ、どうしてそんな見ず知らずの人のことを信じるのさ!」
「普段私はあまり乱暴な言葉は使わないようにしているのだが……言わせて貰おう。
 ━━現状を理解しろと言っているんだこの糞野郎」

佐山は表情を変えず、あくまで淡々と小鳥遊に言い放った。

「えっ」
「君は今、この場所がどんな場所だか理解しているのかね。
 ……そう、殺し合いの場所だ。それも私たちが考えているよりも相当性質が悪い類のね」
「佐山君?」
「第一回放送で15人が死んだ……そして先ほどの二人を見て分かった事がある」
「……」
「ここには私の知っているどんな概念兵器よりも強力な武器を所持している参加者がいる。
 目にも止まらぬ速さで移動できる手段を持っている参加者も居る、道具を無しでだ。
 蒼星石君のように動ける人形もいれば、この手袋のように奇奇怪怪な道具まで存在する」

佐山は、自らの左腕が消滅したときに血で濡れた制服を、ラズロから奪い取った左腕を小鳥遊の前に突き出した。

「これを見たまえ。
 私の血だ……私がラズロから奪い取った腕だ!」
「あ……」
「ここは殺し合いの戦場だ、次に死ぬのは私かも知れない、君かもしれない。
 いいかね?あの二人は死んだんだ。死んだ人間は生き返る事は無い、どのような手段を用いようとも」

小鳥遊は自らの前に突き出された赤黒くなった制服と、佐山の体には合わない巨大な腕を虚ろな瞳で見つめる。
その次の瞬間、進行方向へと押し出される感覚が体を襲った。
539創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 01:31:35 ID:Je5jXfUc
支援
540GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 01:33:10 ID:Rp43zP73

━━減速している。
 
そこに気付いてからの佐山の行動は素早かった。
すぐに小鳥遊を座席から引き剥がし、床に組み伏せる。
自身も身を低くして、小鳥遊の耳元で静かに。と呟いた。
徐々に減速していく列車、全神経を聴力へ、視界へと集中させる。
右腕の手袋を確認……今現在、武器と呼べるのはこの手袋だけだ。
もし参加者が居たら、有無を言わさず両腕を奪い取る。
相手には不信感を与えるかもしれないが……
殺し合いに参加していないと判断できるのであれば返してやればいい。
もし乗っていると判断したその時は……。

やがて、列車は駅のホームへと滑り込んで止まった。
大きな音をたててアルミの扉が開く。
注意深くドアから、列車の窓からホームの様子を探った……。
誰かが居る様子は無い、駅のホームは見晴らしがよく、数個のベンチがあるだけだ。
人が隠れることができる障害物は見当たらない……佐山はこの場所が安全だと判断する。

「とりあえず降りる事にしよう、小鳥遊君」
「……うん」

小鳥遊は力なく返事をすると、佐山に引きずられるかのように列車の外へと出た。

     ◇     ◇     ◇

駅のホームは荒廃が進んでいる。
壁にはひびが入って、地面のタイルは所々が割れている。
時折ほの暗い地下鉄の路線から……低い重低音の、何かが遠くで崩れているような音が聞こえる。
一通りの安全確認を済ませた佐山は、力なくベンチに腰掛けている小鳥遊の隣へと腰をかける。
大きくため息をついたその時、隣から今にも消え入りそうな声が聞こえてくる。
541創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 01:34:03 ID:Je5jXfUc
sage
542GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 01:35:46 ID:Rp43zP73

「佐山君……」
「何かね」
「君はどうしてそんなに……落ち着いていられるの?」
「……」
「二人が死んだのだとしたら……悲しくは無いの?」
「如何してそう思うのかね」
「だって……」
「……二人が死んだのは、私の責任だ」
「えっ」
「私が二手に分かれようと言った、私が二階の様子に気づく事が出来れば……」
「そ、そんな事」
「これは私の責任だ、私が一生背負っていかなければならない業だ」
「……」
「私は確かに君よりはこういった場所に慣れているのだろうね。
 命を失うかもしれない戦場に、身を投じていた事もある」
「え……」
「仲間が死ぬという事に慣れはしないよ……だが、死者に花を手向けるのは全てが終わった後でいい」

佐山はおもむろにデイバックへ手を突っ込むと。
水が入った500mlのペットボトルと、袋に入っている乾パンを取り出した。

「二回目の放送まで残り10分だ……食事を済ませようじゃないか」

バリッと袋を開けると、一欠けらのパンを取り出して口に放り込む。

「食欲……無いよ」
「食べるべきだよ、生き残りたいのなら。君の探している伊波まひるという少女に出会いたいのなら」
「伊波さん……」
「蒼星石君と吉良吉影が生きているのであれば……次の放送で名前は呼ばれないはずだ。
 もし君が正しかったとしたら私は詫びよう。そして全力で二人の元へ向かおうじゃないか」
「うん……分かった」

小鳥遊はデイバックを取り出すと、佐山に習って乾パンの袋を力任せに開いた。
勢いあまって中身が少し飛び出すが……気にする事も無く袋に手を入れ、乾パンを口に放り込む。
殺し合いが始まってから……何も口にはしていないはずなのに、胃は食べ物を受け付けない。
唾液が吸われ、口の中がパサパサする……それを水で無理やり流し込み、次の乾パンを口へと放り込む。

……二人は黙々と食事を続ける、一言も言葉を交わす事は無い。
佐山が肩に乗っている獏へと乾パンの一欠けらを与えた瞬間、
駅に備え付けられているスピーカーからザザッという音と共に忌々しい声が響き渡る。
543GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 01:37:51 ID:Rp43zP73

     ◇     ◇     ◇

 
━━六時間たってもまだ生きている者がいたら、そのときまたお会いするとしよう」

数秒の沈黙が続き、プツッという音をたててスピーカーは沈黙した。
第二回目の放送が終了した……二人にとってその内容はあまりにも残酷で、これからの道が険しいであろう事を示していた。

「うっ……ぐっ……蒼星石ちゃん……吉良さん……ごめん、本当にごめん……」

小鳥遊は涙を流しながらそう呟くと、涙を必死にこらえるように震えている。
対する佐山は……驚愕の表情で放送内容を記したメモを見つめている。

━━ストレイト・クーガー━━

先ほどの放送の中に、確かに彼の名前があった。
ラズロに負けたという事なのだろうか……あの目にも留まらぬ速さをもってしても、この会場で生き残る事は不可能だという事なのか。

そしてもう一つ、ラズロ……やつの名前は名簿には存在しない。
偽名を使っていたという事だろうか。だが、未だ生きていると見たほうがいいだろう。
何故ならば闘っていたはずのストレイト・クーガーは死んでいるのだから……。

唯一の救いは……新庄・運切、彼女の名前が呼ばれなかった事だが……。

「小鳥遊君……そのままでいい、聞いて欲しい」
「うっ……うっ……」
「私が君と別れて、ストレイト・クーガーと共に君の前に現れた間の話だ」


     ◇     ◇     ◇

ラズロの持っている銃、ソードカトラスから撃ちだされたAA弾により、佐山の左腕は消滅した。
突然の消滅、そして激痛に襲われた佐山は、とっさの判断で逆方向へと飛び退いた。
次の瞬間、先ほどまで佐山が居たであろう場所は、周りの物を巻き込みながら抉るように消滅している。

一体何が起きたのか……いや、そんな事よりも撤退をしなくては。
周りを見渡し、回避経路を……

そう考えている間にも、佐山の目と鼻の先が「持っていく力」によって消滅する。
一か八か……ラズロに向かっていくしかない。
一つの答えを導き出して、脚に力を入れたその瞬間。
目の前に突然派手な服を着た長身の男が現れる。

━━誰だ?━━

その疑問が頭に浮かんだ次の瞬間、腹部に強い衝撃が加わって体はくの字へと曲がる。
そして周りの景色が凄まじい速さで塗り替えられていく。
見えるのは男の背中、佐山が男に担がれている。そう理解をしたその時。
その男は駅に程近い一本の木の根元へと佐山をおろした。
544創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 01:38:42 ID:Je5jXfUc
メ枠に入れたつもりが本部にsageって入れてたw
アホス。
支援
545GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 01:40:18 ID:Rp43zP73

「ふぅ……何とか間に合ったか。
 いや、間に合っては居ないな……すまないな少年、もう少し早さが足りていれば」

佐山の左腕からは、おびただしい量の血液が噴出している。
断面は鋭利な刃物で切り取られたかのようで、そこから来る激痛に顔を歪めていた。

「大丈夫だ、すぐに止血をすれば命は……」

長身の男が話しかけてくる。
その言葉を無視して、佐山は右肩にかけてあったデイバックを地面に下ろした。
右手を使って器用に鞄を開けると、手を突っ込んで中をまさぐり始める。
そして取り出した一つの手袋を、口を使って器用に右手へとはめ込む。
その右手を左手の肩口へと添えると、思い切り力を入れて引き出した。

左肩から傷口にかけて……まるで最初から取り外せるものだったかのように、あっけなく外れ落ちた。

「なっ……」

長身の男が驚愕を顔に貼り付けて目を見開いた。

「ふぅ……半信半疑だったが……まさか本当に取り外せるとは」
「おいおい少年、一体何をやったんだ!?」
「この『つけかえ手ぶくろ』を使ったのだよ。先程は助けて貰った様だ、礼を言おう」
「こいつはぶったまげたな……」
「本当はのんびりと挨拶をしたいところだが……私は戻らせてもらおう。
 駅の二階に居る仲間があの男に殺されかねないのでね」

そういって駆け出そうとした佐山に、長身の男は言った。

「二階にはローゼンメイデンと人間の遺体があるだけだ」

佐山は目を見開いて、クーガーへと振り向いた。
546創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 01:43:23 ID:Je5jXfUc
547創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 01:48:27 ID:yPFRl1kq
支援
548創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 01:56:54 ID:X7076L03
投下来てた!
支援ー。
549創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 01:58:45 ID:X7076L03
 
550創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 02:00:51 ID:X7076L03
  
551GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 02:01:03 ID:Rp43zP73

「何故それを……」
「誤解はしないでくれ……俺が行ったときにはもう既に……
 おそらく殺したのはラズロだ」
「ラズロ?」
「あぁ……さっきのモヒカン野郎の事さ」
「……小鳥遊君が危ない」

そう呟くと、駆け足で駅へと走っていく。

「待ちたまえ少年、俺の名前はストレイト・クーガー。
 まだあの駅に仲間が残っているというのなら、力を貸そうじゃないか」
「……私の名前は佐山・御言。悪いがまだ君の事を信頼しているわけでh」

全てを言い終わる前に、クーガーは佐山を担いで駅へと走り始める。

「はっはっは!俺を信じられないってのならそれでもいい。
 俺は俺が思うままに、お前の仲間を助けるまでだ!」







そうして目にも止まらぬスピードで駅へと戻った二人を待ち構えているのは、地下通路への階段。
おそらく小鳥遊はここへ逃げ込んだのだろう……ドアは拉げていて、その奥の暗闇からは物音が聞こえる。

「もう降ろしてもらっても、いいだろうか」
「佐山、これを持っておくてくれ」
「……何かねコレは」
「今は話している時間も惜しいだろう、後で読んでくれればいいさ」

それは一枚の紙だ、綺麗な四つ折でたたまれていて中を読む事は出来ない。
それを受け取って胸ポケットにしまった次の瞬間、クーガーは再び加速をして暗闇の通路を下っていく。
あぁ……吐きそうだ。
そう思いながらも、佐山はクーガーの顔を見る。
サングラスをしていて目を見ることは出来ないが……何か決意を秘めたようなその表情を見たとき。
佐山はこの男を信用に足りる男だと、そう思った。
552GO AHEAD ◇tt2ShxkcFQ  代理投下:2009/06/22(月) 02:01:26 ID:/1O+UHjm

「何故それを……」
「誤解はしないでくれ……俺が行ったときにはもう既に……
 おそらく殺したのはラズロだ」
「ラズロ?」
「あぁ……さっきのモヒカン野郎の事さ」
「……小鳥遊君が危ない」

そう呟くと、駆け足で駅へと走っていく。

「待ちたまえ少年、俺の名前はストレイト・クーガー。
 まだあの駅に仲間が残っているというのなら、力を貸そうじゃないか」
「……私の名前は佐山・御言。悪いがまだ君の事を信頼しているわけでh」

全てを言い終わる前に、クーガーは佐山を担いで駅へと走り始める。

「はっはっは!俺を信じられないってのならそれでもいい。
 俺は俺が思うままに、お前の仲間を助けるまでだ!」







そうして目にも止まらぬスピードで駅へと戻った二人を待ち構えているのは、地下通路への階段。
おそらく小鳥遊はここへ逃げ込んだのだろう……ドアは拉げていて、その奥の暗闇からは物音が聞こえる。

「もう降ろしてもらっても、いいだろうか」
「佐山、これを持っておくてくれ」
「……何かねコレは」
「今は話している時間も惜しいだろう、後で読んでくれればいいさ」

それは一枚の紙だ、綺麗な四つ折でたたまれていて中を読む事は出来ない。
それを受け取って胸ポケットにしまった次の瞬間、クーガーは再び加速をして暗闇の通路を下っていく。
あぁ……吐きそうだ。
そう思いながらも、佐山はクーガーの顔を見る。
サングラスをしていて目を見ることは出来ないが……何か決意を秘めたようなその表情を見たとき。
佐山はこの男を信用に足りる男だと、そう思った。
553創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 02:03:30 ID:Je1eEdkR
554創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 02:03:49 ID:X7076L03
 
555創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 02:04:28 ID:Je1eEdkR
556創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 02:04:52 ID:X7076L03
 
557創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 02:05:08 ID:Je1eEdkR
558創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 02:06:54 ID:Je1eEdkR
559創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 02:07:26 ID:X7076L03
 
560GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 02:07:43 ID:Rp43zP73

     ◇     ◇     ◇

「ここから先は君も知っているだろう、列車に追いつき、壁をけり破って君を助けたという事だ」
「……」
「彼が嘘をついていたとは到底考えにくい……蒼星石君が人形だという事も知っていたし、
 私と小鳥遊君の命を救ってくれたのだから」

小鳥遊は落ち着いたのだろうか、袖で涙を拭うと佐山を見て言った。

「そのメモというのは……」
「これだよ」

佐山が差し出したその一枚の紙、そこに記されていたのはただの一文。

『PM3時。4-C駅にて橘あすか、真紅と落ち合う』

「これは……」
「あぁ、仲間と落ち合う予定があったという事だろう」
「クーガーって人の仲間だという事は」
「危険人物である可能性は低いだろうね」
「……いくの?」
「それを含めて、これからの行動をどのようにするか……話し合おうじゃないか」
「……」

小鳥遊は俯いて、再び口を閉ざした。

「小鳥遊君、さっきも言ったと思うのだが。この殺し合いは私たちの想像以上に一方的なものだ」

小鳥遊は答えない。

「信じられない威力を持つ銃。目にも止まらぬスピードで移動できる者。また、そのスピードさえ捕らえることが出来る銃の使い手。
 私たちからの常識からは逸脱している……未だあっていない参加者の中にも、そういった参加者は居るだろう。
 事実、私たちの仲間は二人。殺されてしまった……。
 後悔なら全てが終わってからすればいい……私たちにはまだやる事があるはずだ」
「え……?」
「新庄君と伊波まひる君はまだ生きている……」
「伊波さん……」
「何とか武器を手に入れて、彼女たちを守ってやるべきではないのかね」

佐山は小鳥遊を見つめる。
これは小鳥遊だけに言ってるものではない。そう、自分自身に対しても。
━━佐山の姓は悪役を任ずる━━
本気を出して、どのような過ちを犯そうとも、なんと罵られ様とも。
正しくも誤っているだろう……この道を進んでいく。
それが死んでしまった蒼星石、吉良吉影への償いだと信じて。
もう後戻りは、出来ないのだから……。

     ◇     ◇     ◇
561GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 02:09:13 ID:Rp43zP73
「何とか武器を手に入れて、彼女たちを守ってやるべきではないのかね」

そう言った佐山の言葉に、後悔や悲しみに包まれている頭の中にとある人影が浮かび上がる。

最初は嫌だった、目を合わせるたびに殴られて。正直ワザとやってるんじゃないのかと……。
間違えたシフト組むなよ畜生!と店長に言いたかった事もある。
一つ年上の癖に、全然先輩らしくないし……。
彼女の男嫌いを治すよう言われたけれど、正直嫌だった。

けど、彼女と接していくうちに。段々と彼女のことが分かってきた。
無理やり褒めろと言われたから褒めたヘアピン……。
彼女はそれを大事にして、ヘアピンを毎日のように変えていて。
自分がプレゼントしたそれでさえ、大事に取っておいてくれているらしい。
片思いが上手くいかない佐藤さんに対して、本気で心配をして泣いていた彼女。
他人の為にここまで泣ける人を、俺はあまり見たことが無い。
自分のトラウマとして残っている女装暦……彼女はそんな俺を気持ち悪がることなく。
面白がって回りに広げる事も無く、何かあるたびに助け舟を出してくれる。
みんなにたきつけられてデートをした時だって、無理やり女装をさせられている俺に対して優しい言葉をかけてくれた。

小さいものこそ至上だと思っていた俺も、一瞬彼女のことをいい子だと思ってしまった。
有り得ない……屈辱だとさえ思ったけれど。
彼女もきっと、この会場のどこかで震えて泣いている。
男嫌いがたたって、男の人と行動を共にするのは難しいだろう。
つまりは、力がある男の参加者に守ってもらう事すらできないという事だ。
こんな恐ろしい場所で、彼女は一人震えているのだろうか?

助けなければいけない。
ただ純粋に、そう思った。

後悔や悲しみだけが支配していた体に、僅かに力がわいてくる。
視線を上げて佐山を見つめる小鳥遊は力強く頷いた。

「佐山君……探そう。伊波さんと新庄さんを」


     ◇     ◇     ◇



「では、状況を整理しようか」
「うん」

二人は地図を広げて、向かい合うようにして座っている。
562GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 02:10:22 ID:Rp43zP73

「まず私たちの武器と呼べるものだが……この『つけかえ手袋』と」
「この秘剣”電光丸”だね」
「今、さらに詳しくメモを見て分かった事なのだが……この手袋にはどうやら、回数制限があるようだ」
「えっ」
「見たまえ」

佐山が差し出した紙を小鳥遊は手にとって視線を落とした。
表面には使用法や性能なのが載っているが、回数等は特に書かれていない。

「あれ。書いてないよ?」
「クリマ・タクトを思い出して欲しいものだね」

小鳥遊は首をかしげながらも、説明書を裏返す。
よく見てみれば、左下にとても小さい文字でなにやら書いてあるのが分かる。
メガネをずらし、裸眼で目元に近づけて睨みつけてみる。
『尚、取り外す事が出来る回数は5回までです。取り付ける事に回数制限はありません』

「詐欺だ……」

小鳥遊は顔をしかめつつ、そう呟いた。

「私の左腕、ラズロの左腕。すでにもう2回を使っている。
 つまりは残り3回分ということだ」
「ここ一番で使わないと……あっという間に無くなりそうだね」
「……出来れば戦闘では使いたくは無いな」
「えっ?」
「考えてもみたまえ、損失した体の一部を他人の体を奪う事で補う事が出来る」
「そ、そんなっ」
「いらぬ火種を巻く事になる可能性はあるが……上手く使えば先ほどのように自身の一部の代用を作る事だって出来る」
「そうだけど……」
「しかし、この左腕……やはり使い勝手がいいものではない」

ぐるぐると左腕を回しながら、佐山は言った。
それに対して小鳥遊は首を傾げた。

「私とラズロでは体格が違いすぎるのだよ。それにこの筋肉質の腕……少々重過ぎる。
 大体この腕はどうなっているのかが気になる。自分の思うとおりに動かす事が出来るうえ、触覚までも備わっているが。
 血管が私と繋がっているわけでもない……実に不可解だ」
「そんなに重さって変わる……?」
「日常の生活には支障は無いだろう……だが、戦闘となれば話は違う。
 私は重量級ファイターというわけではない、すばやく動くには体のバランスが崩れすぎる」
「……」
「出来れば私と似た体格の人間と交渉をして、腕の交換を……」
「佐山君、何を言ってるのさ!」
「ははは冗談に決まってるじゃないか落ち着きたまえ」
「……とてもそうは見えないんだけど」
563GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 02:11:28 ID:Rp43zP73

ジト目で佐山を睨みつける小鳥遊に対して。
気にする事も無く佐山は口を開いた。

「そちらの秘剣”電光丸”に関して言わせて貰えば、小鳥遊君にうってつけの武器だと思うが」
「……そうかな」
「戦闘訓練を受けていない君でも、その剣を取れば達人とでも戦うことが出来るだろう。
 そのうえ相手を無駄に殺傷する心配も無い」
「確かに、そうだね」
「だが、まだ足りない……私たちには武器が必要だという事だ。最低限仲間を守る事が出来る火力が」
「って事は、武器がありそうな場所に行くの?」
「その様な場所があるのならいいんだが……」
「見た感じ、無いよね。どうする?廃坑の周辺を探す?さらに地下鉄で移動する?」
「いや、もう地下鉄は使わないほうがいいだろう」
「え?」
「聞こえなかったのかね?放送前に響いていた重低音……あれは何かが破壊されている音だ」
「そういえば……」
「線路の状況を見ることは出来ないが……もしどこかで列車が走る事が出来ないような状況になっているとしたら。
 それはすなわち脱線に繋がる、戦闘をするまでも無く君と私は仲良くつぶれたトマトのようになる訳だよ」
「……はは」

小鳥遊は乾いた笑いを浮かべて冷や汗を流した。

「だが、気になる事はある。何故地下鉄なんてものが存在しているのか……」
「何故って、移動するためじゃないの?」
「ここは殺し合いの場所だ、わざわざ隠した入り口まで用意して。
 隠れるような事が出来る広大な場所を主催側が用意すると思うのかね」
「……佐山君が言ったんじゃないか。主催はサプライズを用意する物だって」
「これは明らかにサプライズの域を超えている。
 迷宮程度ならまだしも、会場全域に張り巡らされている隠れ場所など。
 臆病者の参加者が本気で隠れたら、見つけることは至難の業だと思うが」

佐山は古びた壁にかけられている。真新しいプレートへと目を向けた。
[E-2駅 ← 廃坑 → G-7駅]
二つの駅を結ぶ地下鉄……路線図等は見当たらなかった為全貌を見ることは叶わないが。
主要施設と駅をつなげているだけだとしても、広大な距離の路線があることになる。
564GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 02:13:09 ID:Rp43zP73

「何事にも理由というものはあるものだ。
 この広大な地下鉄を作った理由……私だとしたら一つしかないな」
「……そうか!」
「小鳥遊君も分かったようだね」
「これはあくまでカモフラージュ。そういうことだね」

得意げな顔で言った小鳥遊に対して、佐山は頷いた。

「その通りだ。地上ではなく地下にしか作らざるを得なかった物があるとしよう。
 そしてそれはこの殺し合いに関してとても重要なものだ。だが主催者たちも作成や使用、調整をせざるを得ない為。
 入り口は封鎖する事が出来ても消す事は出来ない」
「だから隠し扉を作った……けれど、もし見つかってしまった場合。それをすぐに壊されるのは主催にとっても困る」
「だからこその地下鉄だよ……地下空間はあくまで地下鉄のため、そう参加者に思わせるために作られたものだ」
「確かに、暗くて明かりの無い線路内に隠し扉があるとしても。参加者は地下鉄に乗っている限り見つけることは出来ない」
「しかしその可能性がある路線の長さは広大だ、探す事は出来ても多大なる時間をロスする事になるだろう」
「……でも、迷路探査ボールがあれば」
「ここでも有効なのか……私にもそれは分からないが。可能性はあるだろうね」

二人は目を合わせると、力強く頷いた。
お互いの目にもう曇りは無い。

「やる事は山積みだ、だが体は一つしかない。重要なのは何から片付けていくかという事だ。
 一つ、新庄君と井波まひる君を捜索して保護する。
 二つ、まずは強力な武器を見つけ、ラズロの様な参加者にも対抗可能な状況を作る。
 三つ、地下鉄内には必ず何かある。それを探索する為にこのまま路線を捜索するか、ロロノア・ゾロと合流して迷宮探索ボールの使用権を得る。
 四つ、午後3時までに4-C駅へと向かい、ストレイト・クーガーの仲間と合流をする。
 勿論この中のいくつかを同時進行することは出来るだろう……だが、どれを最優先に行うか。
 それはこれからの向かう場所、その場で起きる様々な事にも影響が及ぶだろう」
 
佐山は右手で4本の指を立てて。小鳥遊の目の前へと突き出した。

「佐山君、俺たちは……」

小鳥遊はまっすぐに佐山を見つめ、口を開いた。

    ◇     ◇     ◇

二人の青年は、大切な仲間の死を知った。
それは何の前触れも無く、唐突に……人の死というものは、いつでもそういう物なのかもしれない。
一人の青年は、自らを責めた。
一人の青年は、それを受け入れる事が出来なかった。
だが悲しみは乗り越える事が出来る、そして人は学ぶ事が出来る。
奇しくも仲間の死という事実は、二人にこの状況を正しく認識させ。
強い決意を生まれさせた。
これから二人がどのような道を進むのか……それは分からないが。
確実に今、再出発の一歩を踏み出そうとしている。
少し……ほんの少しだけ後ろを振り向く事もあるかもしれないが。
二人の青年は、真っ直ぐ前を見つめて。その小さな第一歩を……
565創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 02:13:53 ID:/1O+UHjm
支援
566GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 02:14:30 ID:Rp43zP73

【H−3地下・地下鉄駅構内/一日目 日中】
【佐山・御言@終わりのクロニクル】
[状態]:健康、左腕欠損(リヴィオの左腕を移植)
[装備]:つけかえ手ぶくろ@ドラえもん(残り使用回数3回)、獏@終わりのクロニクル
[道具]:基本支給品一式(一食分の食事を消費)、空気クレヨン@ドラえもん
[思考・状況]
1:これからの行動方針を決める。
2:新庄くんと合流する。
3:協力者を募る。
4:本気を出す。
※ポケベルにより黎明途中までの死亡者と殺害者を知りました。
※小鳥遊が女装させられていた過去を知りました。
※会場内に迷宮がある、という推測を立てています。
※地下空間に隠し部屋がある、と推測を立てています。
※リヴィオの腕を結合したことによって体のバランスが崩れています。
 戦闘時の素早い動きに対して不安があるようです。
※地下鉄を利用するのは危険だと考えています。

【小鳥遊宗太@WORKING!!】
[状態]:健康、腹部に痛み
[装備]:秘剣”電光丸”@ドラえもん
[道具]:基本支給品一式(一食分の食事を消費)
[思考・状況]
1:これからの行動方針を決める。
2:伊波まひるを一刻も早く保護する。
3:佐山と行動する。
4:ゲームに乗るつもりはない。
5:全てが終わった後、蒼星石と吉良吉影を弔ってあげたい。
※ポケベルにより黎明途中までの死亡者と殺害者を知りました。
※過去で新庄の顔を知りました。
※獏の制限により、過去を見る時間は3分と長くなっています。
※地下鉄を利用するのは危険だと考えています。
567創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 02:15:06 ID:X7076L03
 
568GO AHEAD ◆tt2ShxkcFQ :2009/06/22(月) 02:16:29 ID:Rp43zP73
以上で投下終了です。
>>552さん申し訳ない……一回頼んだのだから、任せるべきでしたよね。
ご意見、注意、修正点等があったらお願いします。
569創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 02:28:35 ID:X7076L03
投下乙!
冒頭での小鳥遊がなんだか不安定に感じたから嫌な予感がしたけどそんなことはなかったぜ!
まさかのクーガーのメモで真紅、あすか組と接点が出来て今後の出会いが楽しみになってきたー。
若干現実逃避気味になった小鳥遊に対する佐山の叱咤も実に佐山らしいと思った。
そして今後の作戦会議の会話のテンポが素晴らしく読みやすかったです。
次の話へのふりも選択肢が四つあってどれも面白そうだなーw
570創る名無しに見る名無し:2009/06/22(月) 19:00:22 ID:Je5jXfUc
投下乙!
佐山と小鳥遊視点が交互に入れ替わって
二人が何を思い発言し、何を考えているのかがわかりやすかったです。
この二人のコンビも良いなぁ、だいぶ板についてきた。

地下鉄に関する二人の考察はなるほど納得。
かなり広いだろうし、確かに何があってもおかしくない。
これは脱出フラグに繋がるか…?
まさかネタアイテムかと思った迷路探索ボールがキーアイテムになるとはw

んで、今後の行動方針は、選択肢にすると4つか。
偶然か必然か、今は古城に新庄、伊波、ゾロの三人が一緒にいるな。
距離的にもそんなに遠くないし、もし合流出来れば
4つある選択肢が一気に二つ達成できるな。
しかしそう上手くは行かないか…?

どうなるにしてもこれからが楽しみ過ぎる。
色々な可能性に繋がる良い繋ぎでした。
GJ!!
571創る名無しに見る名無し:2009/06/23(火) 00:36:19 ID:Lt1p4WzQ
規制食らってるみたいです。
ミュウツー、仮投下スレに投下来てます。
572カツラへの言葉 ◇yvUxRPre9c 代理投下:2009/06/23(火) 21:26:17 ID:d/hl6nkg
ーそれでは放送を終える。
六時間立ってもまだ生きている者がいたら、そのときまたお会いするとしよう」



そして放送は終わりを向かえ再び周囲は静けさを取り戻した。

今回の13人と最初の放送で呼ばれた15人と合わせて28人で
生き残りは俺を含めて37人、このままのペースでいけば最初のノルマは余裕を持って達成できるであろう
少なくとも1日が終わるまでにマスターが殺されることはないだろう、そう、このペースが続くのであれば…
これからは人数も減り、生き残っているであろう相手も手強くなっていくはず、つまり死者の数は減っていくといっていいだろう。
だからこそ、油断はしない、マスターを助け出す、どんなことをしても……
ミュウツーはそう決意して動き出す、目指す先は…病院、
ポケモンであるミュウツーを直すための設備が病院にあるかどうかは分からない
ただ、傷を負った人間が向かうとすればここであろう場所と言っていいだろう
見失ってしまった二人もひょっとしたら傷を治すために病院に向かっているかもしれない
まだ半数以上が残っているとはいえ残りの人数が少なくなってきている
さらに死にはしなくても負傷をしたものも多いのではないか、それならば病院で傷の治療をすると考えたからだ。
足取りは重い、じこさいせいの治癒効果も薄く疲れも多い、急いだり慌てたりする必要は無い、
それでも足は止めない、全ては俺を創ったマスターの為に……


病院に向かい歩いていながらも周囲への注意は怠らない、
容赦などするつもりも無い、同時に隠れていたとしても見逃すわけが無い
確かに制限によって念で相手の位置を掴むことはできないが注意をしていれば
隠れているもの、隠そうとしているものは意外と簡単に見つけることができる。
そう例えば今俺の近くに出来ている、この落ち葉や茂みで何かを隠そうとしている不自然な
スペースとかのことだ、罠の可能性もなきにしもあらずではあるが
それならば引っかかった振りをして返り討ちにしてやればいいだけだ
それより、ものではなく人が隠れていると考えたほうがまだ可能性がある。
そう考えて落ち葉をどかす、
573カツラへの言葉 ◇yvUxRPre9c 代理投下:2009/06/23(火) 21:27:15 ID:d/hl6nkg
落ち葉のしたから出てきたのは年端もいかない子供の死体であった。
その死体を見てミュウツーは立ち止まる、
目の前に現れた死体、それはミュウツーにとってよく知る人物でもある
ポケモントレーナー、イエローの死体だったからだ。


かつてスオウ島で四天王の野望を阻止すべく共に戦ったいうなれば戦友と言っていいだろう

俺にしてみれば数少ない信用の置ける人間であり、イエローからすれば俺のことを友達と思っていたのかもしれない
最初の放送で名前を呼ばれていた以上は助かってはいないと思っていたが
今その亡骸がミュウツーの目の前にある。
マスターの命を助けるためとはいえ俺がこの殺し合いに乗っている以上は
殺さなければならなかったかも知れない、

ポケモンを傷つけることを嫌う以上この殺し合いに乗るような存在ではない。
つまりは俺のように人を殺すことが出来る奴に殺されたということだ。



「……殺し合いに乗っている以上は俺にとっては都合のいい相手ではある……が
もし誰が殺したのがわかったのならばそいつには容赦はしない!!」

今までのマスターのための行動から少しばかり外れた行動である、

たしかに人を殺していくのならば俺にとって都合のいい存在であることに異論は無い、だが

それがイエローへの弔いになるのならば、例えそんな弔いを望んでなかったとしても……
そう思いミュウツーは再び歩き出す、まさかイエローを殺した相手が目的地の病院にいるとは知らずに…
574カツラへの言葉 ◇yvUxRPre9c 代理投下:2009/06/23(火) 21:28:30 ID:d/hl6nkg
再び歩き出したミュウツーはある小さな疑問を持ち始めていた。
イエローの体に触れたときに既に体は冷たくなっていた
それは問題ない、6時間以上前の放送で呼ばれている以上は
あの放送の裏が取れたようなものだからだ。
さっきの放送が嘘ではない、つまりギラーミンは何らかの方法でこちら側の情報を手に入れている
という状況証拠を手にいれたようなものに過ぎない。
そして今現在、周囲に人影らしきものは無く襲われる危険も逆に人を殺すチャンスも無いといっていいだろう
温泉の2階に隠れていた最初の放送とは明らかに状況が違う。

ミュウツーの疑問点、それはこのゲームが始まったときのギラーミンとの約束に遡る。
2人の間に交わされた約束

・ゲーム開始から24時間経つまでに参加者を32人以下にならなかったらカツラを殺す
・さらにゲーム開始から二日経過した時点でミュウツーが優勝しなかった場合も同様にカツラを殺す
・その間のカツラの安全は保障する(最もミュウツーの目の前に映ったカツラはぼろぼろになっていたが)
・カツラの声を6時間ごとに聞かせてくれる、方法はそのときになればわかる。

温泉の2階に隠れていた最初の放送の時ならまだしもその後は戦っているわけでもなく
隠れているわけでもない時間が有った、そして放送の時もマスターの声は一向に聞こえてこない、
これは一体どういうことなのか、死亡者の名前が呼ばれるということはこの舞台の状況、
つまりは俺の状況は分かっているはずである、なのに何故マスターの声が聞こえてこないのだ、
よくよく考えれば最初にマスターの姿を見たときもマスターの声は聞こえてこなかった。
575カツラへの言葉 ◇yvUxRPre9c 代理投下:2009/06/23(火) 21:29:44 ID:d/hl6nkg
つまりあそこに映っていたマスターは偽者で声を伝えることが出来ないのか
姿だけを似せるのであればメタモンの1匹でもいれば不可能ではないし“さいみんじゅつ”などの手段もある

あるいは既に逃げ出すことに成功したのではないか、グレン島でジムリーダーをする実力者であれば
隙を見て逃げ出すことが出来るかもしれない、マスターの持つギャロップならば運を見方につければ逃げ切ることも出来るかもしれない

そうでなければ既にマスターは死んでしまっているか、考えたくも無いが可能性は十分にありえる。
最悪の可能性…もし俺が無事に優勝したとしてもマスターは助からないなんてこともある


もしそうなら俺が人を殺して回ることに何の意味があるのだろうか
マスターが今も奴の手元にいる保障なんて実はどこにも無いのだ
ならば俺はこれ以上手を汚す必要なんて無いのではないだろうか
そう考えミュウツーは修羅の道から戻りギラーミンを倒しに向かう事を決め……
576カツラへの言葉 ◇yvUxRPre9c 代理投下:2009/06/23(火) 21:31:16 ID:d/hl6nkg



られなかった。
今までのことは単なる可能性に過ぎない、単純に気絶をしているだけと
考えるのが無難と言っていいだろうしたとえ逃げることが出来たとしても
俺たちをここに連れ出した方法で連れ戻されるだけだ。

あるいは端から俺のことなど気にも留めていないのか。
どちらにせよマスターの言葉が聞こえず、こちらの意思を伝えることが出来なければ
確証など得られるはずもない、

いや、俺の意思をマスターに伝えることは出来るかもしれない、
念による意思疎通、テレパシーといってもいいだろう
遠くにいる相手に使ったことは無い上、“じこさいせい”同様に制限がかけられている可能性
も十分にある、だが試してみる価値は十分にあるだろう、失敗したところで何かを失うリスクもほとんど無いのだから
ミュウツーは早速念を送り込む、マスターであるカツラへの言葉を載せて




マスター、聞こえますか・・・俺の声が聞こえますか







【D-5南 1日目 日中】
【ミュウツー@ポケットモンスターSPECIAL】
【状態】:疲労(中)
【装備】:機殻剣『V−Sw(ヴィズィ)』@終わりのクロニクル、アデルの十字槍@BACCANO!
【所持品】:基本支給品一式、不明支給品0〜1個(確認済み)
【思考・行動】
 1:マスター(カツラ)を救う為、24時間以内に参加者を32人以下まで減らす。
 2:とりあえずの目的地は病院
 3:男(ラッド)には殺害数を稼いで貰う。殺すのは後回し。
 4:魅音かハクオロが細胞を移植し、自分を追ってきたら相手をする。 魅音の死に気づいていない?
 5:イエローを殺した相手を見つけたらたとえ後回しにしたほうが都合がよさそうでも容赦しない。
※3章で細胞の呪縛から解放され、カツラの元を離れた後です。
  念の会話能力を持ちますが、信用した相手やかなり敵意が深い相手にしか使いません。
 ※念による探知能力や、バリアボールを周りに張り浮遊する能力は使えません。
 ※名簿を見ていないため、レッド、サカキの存在を知りません。
 ※ギラーミンに課せられたノルマは以下のとおり
  『24時間経過するまでに、参加者が32人以下でない場合、カツラを殺す。
   48時間経過するまでに、ミュウツーが優勝できなかった場合も同様。』
 ※カツラが本当にギラーミンに拉致されているかは分かりません。偽者の可能性もあります。
 ※V−Swは本来出雲覚にしか扱えない仕様ですが、なんらかの処置により誰にでも使用可能になっています。
  使用できる形態は、第1形態と第2形態のみ。第2形態に変形した場合、変形できている時間には制限があり(具体的な時間は不明)、制限時間を過ぎると第1形態に戻り、
理由に関わらず第1形態へ戻った場合、その後4時間の間変形させる事はできません。
 第3形態、第4形態への変形は制限によりできません。
 ※男(ラッド)と戦った相手が「左腕が刀になる女」であると知りました。
 ※ブレンヒルトの場所は見失っています。
 ※ギラーミンから連絡のないことへの疑問、もしカツラが捕まっていないという確証を得られたら?
 ※なぜギラーミンの約束したカツラからの言葉が無くなっていたのかは不明です。
 ※本当に念のテレパシーがカツラに届くかは不明です。また内容は次以降の書き手にお任せします。
577カツラへの言葉 ◇yvUxRPre9c 代理投下:2009/06/23(火) 21:36:06 ID:d/hl6nkg
415 : ◆yvUxRPre9c:2009/06/23(火) 00:35:31 ID:bWY7ADkw
以上です、誤字、脱字、問題点などありましたらご指摘のほうお願いします。

代理投下終わりです。
578創る名無しに見る名無し:2009/06/23(火) 23:40:53 ID:C2aZPqRX
投下乙!
おお、イエローとの遭遇がこんな形で来るとは!
一人称主体のミュウツーの心理描写が上手いなぁ。
冷静に状況を考えてる辺りが実に恐ろしい。
そしてまたしても新たな謎がー!カツラに声が届いたらミュウツーの今後がかなり変わりそうで続きが気になってしまう。
579創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 00:22:13 ID:NKU8Z4q5
投下乙
そういえば、6時間置きにカツラの声を聞かせるってイベントがあったか……
ん、いや!忘れて無かったよ!

テレパシーが成功すれば、また展開が変わってきそうだね!

ところでポケスペはまだ把握しきれてないんだけど。
ミュウツーって普通に話せるの?テレパシーだけじゃなく?
今までずっとテレパシーだったから、ちょっと気になった
580創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 00:42:27 ID:BuTcU2+T
>>579
できる
てか読んでないなら無理に指摘しなくてもいいよ
581創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 14:20:07 ID:I3HdsaMg
投下&代理投下乙!!
そういえば放送後にカツラの声を聞かせると言うイベントがあったな。
…すっかり忘れてた(汗)
ただそれをそのような形で話に繋げるっていう手もあったか。
ミュウツーが対主催側に寝返るかと思ったが、そうはならなかったなw
果たしてミュウツーの声はカツラに届くのか!?
これまた楽しみな繋ぎですね。
582創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 23:26:35 ID:U8wjy2KK
ウルフウッド、梨花、ギル、圭一、レッド、カズマ、レナ、チョッパー、グラハム、無常


10人予約…だと……?
流石TEF氏、やってくれるぜ!
583創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 23:38:46 ID:I3HdsaMg
おお!これは楽しみだ。
しかしひぐらしキャラが三人も出るのか、良い予感はしないな。
あれ?無常とバラライカって一緒にいなかったっけか?
584創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:21:41 ID:qU9aI3DE
10人って……すごっ。
とうとう中央の火薬庫に火がついたか!
期待せざるを得ないね。

バラライカ姐さんが入ってないね、これは意図的なのかな
585創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:49:49 ID:Q1lFzbbI
これは乱戦の予感
今度こそ糞チョンピのキャラが死ぬといいな
586創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:54:58 ID:FCWNqjhT
>>584
この様子だと意図的にはずしたっぽいかな?
どんな大爆発を起こすか楽しみだ。
587創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 22:01:29 ID:AoVZh5CI
お、あの氏が久し振りに予約を。
楽しみだわ
588創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 22:03:43 ID:ltoTB4v4
学校組は延長か。
大変そうなパートだからじっくり頑張ってくださいー。

そして、ひさびさの元EH氏きたーーー!
ラズロが居なくなったリヴィオだから余計楽しみw
589創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 22:04:12 ID:4+HtbKV2
さらに予約キマシタワー
590創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 23:23:25 ID:Dq9h+phl
この前の元/1氏に続いてさらに今回の元EH氏の予約!
なんか少し前の書き手が戻ってくれるっていいね

この調子でUc氏やo9氏やWD氏とかも戻ってきてくれたらうれしいな
591創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 23:33:59 ID:qu4obIYU
にぎやかになってきたな
偶然見たけど○ロワが創作板で勢いのあるスレ4位になってたのもなんか分かる気がする
592創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 23:55:12 ID:ltoTB4v4
4位とは知らなかったw

確かに最近賑やかだけど感想が以前よりも減っちゃったなぁと思うのは俺だけ?
感想は書き手さんの原動力にもなるし出来るだけつけるようにしていこうぜー。
593創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 23:56:03 ID:4+HtbKV2
規制がなw
594創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 00:04:13 ID:AoVZh5CI
すまぬ……最近はwikiで確認するのが精一杯なんだ……。

ネタバレ名簿を見てふと思ったんだが、○ロワも中盤に差し掛かって来てるんだな。
今んとこ脱出フラグってあったっけ?
595創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 00:06:00 ID:7eJvE9+d
自分も佐山と小鳥遊の投下があったときに感想書いたが規制ではじかれたわ
今更だけど地下の考察とかすごく丁寧で、それでいておもしろかったです
596創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 01:26:37 ID:7J170DrI
これは良い流れだ。
一時期心配だったけどしばらくは安心かな?
と、詩音&ロベルタも予約入ったな。

>>594
謎は多いが恋愛と脱出フラグがない。
脱出フラグは、可能性あるとすればまだ秘密がありそうな地下か…?
597創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 01:31:14 ID:En4io8+p
おお、ホントだ新しい予約だー!
って、またロベルタさんと遭遇とか詩音カワイソスw

脱出フラグは特にわからないなぁ。
598創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 01:35:52 ID:c/5ayM6x
そして、また増える
599創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 01:46:12 ID:En4io8+p
なんというラッシュ……!
予約5つとか凄いぜ!
600創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 01:56:59 ID:TekVnVir
予約ラッシュ……だと!?
ライダーとハクオロさんもきたね。
脱出フラグ、主催側が隠そうとしているのは地下と本かな?
首輪も概念が関わってそう、って位しか分かってないよね。

恋愛フラグは。
ニコ兄、梨花ペア。あすか、真紅ペアにその気配が……
何か色々間違えてるよね、実年齢は小さいほうが高いし。
601創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 02:25:55 ID:D7YkoSAl
何かその二グループは恋愛ってより、保護者と子供って感じだな。
特にニコ梨花コンビなんか
602創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 02:57:54 ID:yTdTaJv1
あすかは当然保護される側だよな?
603創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 03:01:37 ID:MltBh6Kx
>>592
GW前からのybbの全規制でROMしかできないやつが量産されてるから当たり前
604創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 03:03:22 ID:En4io8+p
ああ、あすかは確かに保護する側じゃないなw
605創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 03:10:24 ID:V5JslnQd
でも今結構みんな書き込めてるよね
606創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 03:35:48 ID:c/5ayM6x
執筆中だと、投下分を読んだり感想書いたりする暇がないから困る
一段落して呼んだときには何日も経ってるから、スレに書くのは気が引ける
607創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 03:40:55 ID:En4io8+p
感想は出来るだけ書いてるな。
規制は今までされたことないけどされたら嫌だなぁと常々思う。
608創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 20:43:57 ID:7c3KBdE5
この半年くらいで5回くらい規制されてるよ
最近異常じゃね?
被害者の会でモリタポ貰えたから今年一年は大丈夫だけど
609創る名無しに見る名無し:2009/06/27(土) 00:18:30 ID:RyNXuTUS
学校組は破棄か、残念だけどしょうがないね。
またのご予約を心よりお待ちしています。

でも……もしまだ完成させる気があるなら、書いて欲しいな。
ちょうど週末突入だし、個人的には日曜夜位までなら再延長ありでいいと思うけど。
勿論今回限りでね。
610創る名無しに見る名無し:2009/06/27(土) 14:46:42 ID:HE1TgDWz
どれくらい完成してるかによるけど、まだ書く気があるのなら
後日また再予約して欲しいな。
またの予約をお待ちしております。
リヴィオ・ザ・ダブルファング投下します
 陽が、登り始めていた。
 周囲には大量のコンクリート、そして少量ではあるがあの砂の惑星では考えられない緑。
 暴力的なまでに渇いた空気など此処の世界には存在せず、瑞々しい豊潤な空気が全てを包み込んでいる。
 呼吸をするだけで肺が充足感に満たされる。
 視界を動かすだけで緑の木々が瞳を癒やしてくれた。
 これが地球。これが、あの惑星に住む誰もが求めているであろう世界。
 その真っ只中に男――リヴィオ・ザ・ダブルファングは居た。
 その平穏な光景とは裏腹に、ボロボロで満身創痍な身体を血に染めて、リヴィオが独りぼっちで歩いている。

「いてえ……な……」

 ポツリと零れた言葉。
 辺りは無人、もちろん言葉を返してくる人物は居ない。

「……いてえよなあ……」

 だがそれでも、リヴィオは口を動かし続ける。
 誰かからの返答を期待するかのように、呟きを止めない。
 静寂に支配された世界の中、一人ぼっちで言葉を吐き、そして自嘲的な笑みを浮かべる男。
 彼の歩行した後には、身体から零れ落ちた鮮血により、一筋の道が形成されていた。

「……いてえよ……本当にいてえよなあ、ラズロ……」

 誰も居ない空間へ言葉を紡ぎながら、リヴィオは進む。
 体を襲う予想以上のダメージに苦しみながらも、決して力尽きようとせず、身を隠せる場所を求めてさ迷い続ける。
 そして、その無茶な行軍が幸をそうしてか、ようやく彼は目的地の施設に辿り着いた。
 思わず零れるは安堵の溜め息。
 しかし、それも一瞬。視界の中に聳え立つ白色の施設を見上げ、リヴィオは決意に顔を引き締める。

「……大丈夫だ、絶対に守り抜く……俺自身を、そしてお前の身体も……」

 血塗れの身体を引きずり、リヴィオは歩き出す。
 この殺し合いに於ける出発点である施設―――病院へと、彼は欠片の迷いも見せず足を踏み入れた。



□ ■ □ ■



 破壊され尽くした玄関と無人のロビーを潜り、周囲に警戒を飛ばしながら進んでいく。
 視界に移る景色はあの時と何も変わっていない。
 敢えて変化点を挙げるならば、あの金髪の死体に死斑が浮かび上がっていた事だけ。
 それ以外に変化は見られない。
 数多の戦闘を乗り越えてきた彼と違い、この施設は比較的平穏な半日を過ごしていたのだろう。
 ふと視界の端に移った階段にリヴィオは接近し、そして階上へと登っていく。
 自動治癒能力を持つ彼に医療道具などは必要無い。
 だというのに、彼はこの施設を休息の場として選択した。
 最も近い施設であった神社をスルーし、病院へとわざわざ出向いたのだ。

 何故か?

 正直に言えば、そこに深い理由は無い。
 ただ、此処から始めたかったのだ。
 ラズロがバトルロワイアルを始めたこの場所から、彼は自分のバトルロワイアルを開始したかった。
613創る名無しに見る名無し:2009/06/27(土) 17:56:00 ID:ifdtb9jJ
「……此処で良いか……」

 病院に侵入してから数分後、リヴィオはようやく休息の場を選択し終える。
 それは手前と奥、その左右の四つにベッドが設置された病室。
 本来ならば重病や重傷を負った患者が、治療に専念する為に使用される部屋。
 リヴィオはその部屋の窓寄り右手側のベッドに腰掛け、小さく息を吐く。
 窓外に視線を送ると、そこには病院に備わった唯一の玄関が見える。
 この位置からならば、他の参加者が病院内に入ったとしても直ぐさま察知できる。
 また既に病院内に誰かが居り、もしこの病室に乗り込んできたとしても、迎撃も窓からの逃亡も可能。
 休息の場として最適とまでは云えないが、最低限の条件はクリアしている。
 後は彼自身が警戒を怠らなければ、どうとでもなる環境だ。

「……ラズロ……」

 身体を休めつつも、如何なる事態が発生しようと迅速に対応できるよう、気は抜かない。
 張り付めた緊張感の中、リヴィオはポツリと相棒の名前を呼んだ。
 過酷な世界を共に生き、そしてつい数十分前唐突に消えてしまった相棒。

 ―――そう、相棒だ。

 ラズロがどう思っていようと、リヴィオはラズロの事を相棒だと感じていた。
 孤独な人生を共に歩いてきた、無力な自分に生きる術を与えてくれた―――相棒。
 ラズロがいなければ、とっくの昔に自分は死んでいた。
 あのゴロツキに溢れ返る砂の惑星で、そして恐らくはこの殺し合いの中でも、自分は生き抜く事は出来なかっただろう。

「……済まない……」

 表に出て初めて気付く、身体中を占領する痛み。
 超速治癒が追い付かない程の膨大なダメージ。
 この全てを奴は背負っていた。
 その粗暴な仮面の下にこれだけの痛みを抱え、それでもその痛みを表情に出す事なく、戦い続けた。

「……本当に、済まない……」

 本来ならば自分が背負う筈だった、痛み。
 本来ならば自分が受け持つべきだった、痛み。
 それを、全て、請け負わせていた。
 このバトルロワイアルが開始してから今まで、何もせず、
 様々な実力者達との戦いで傷付いていく相棒を、最も安全な場所から見ていただけだ。

「……お前にばかり全部押し付けて……」

 何時だって、そうだ。
 痛い事や辛い事は全てラズロに押し付けてきた。
 あの糞みたいな親の下に居た時も、あの糞みたいなゴロツキ達に襲われた時も―――何時だって。
 思えばあの人との戦いだってそうだった。
 意気揚々と戦いに挑み、身体能力としては遥かに劣る男に心臓を貫かれ、結局はラズロが表に出た。
 過去との決着でさえ、ラズロ頼み。
 情けない。心底から情けない話だ。

「本当に……済まない……」

 そして、ラズロは消えた。
 高速の人形を操る男を殺害し、摩訶不思議な爆弾を使う男を殺害し、そして音速で場を支配する男をも殺害し、消えた。
 戦果としては凄まじく、だがその代償としてラズロは消失に至った。
 自分では勝利を得る事は出来なかったであろう猛者達を撃破し―――消えてしまったのだ。

「……お前の頑張りは無駄にしない……」

615創る名無しに見る名無し:2009/06/27(土) 17:57:12 ID:ifdtb9jJ
 流血に染まった拳銃を残された右腕で握り締め、リヴィオは小さく呟いた。
 戦う相棒の姿を思い浮かべながら、ずっと頼りにしていた相棒の姿を思い浮かべながら、リヴィオは決意する。
 彼が帰還するまでこの身体は守り抜くと、彼が帰還するまで必ず生き抜くと、堅く決意し外を眺める。


『ごきげんよう、諸君』


 ―――そして、その時、遠方の空から無機質な声が響き渡った。



□ ■ □ ■



「ストレイト・クーガーは死んだ、か……」

 放送を終えると同時にリヴィオは思わず安堵の言葉を零していた。
 二度もラズロに立ち向かい、最後の最後まで反逆を止めなかった不思議な男。
 性格には難があるように感じたが、実力は一級品。
 紫色の装甲――最後の瞬間は青と銀の入り混じった物であったが――に身体を包み戦闘を行う、音速の戦闘機。
 弾丸を避けるのではなく蹴り飛ばす、という超常的な戦闘力を有した敵であった。

 だが、死んだ。
 否、ラズロに殺された。

「……流石、だな」

 放送を聞いて、ラズロの偉大さをまた思い知らされた。
 だからこそ、その感服の念に比例するように、決意も強くなる。
 アイツの分まで、アイツが帰ってくるまで―――拳銃を握る右手に更なる力が込められていた。

「そして、あの二人も……」

 決意の次に思うのは二人の男について。
 この殺し合いの場に拉致される直前まで、ラズロが死闘を繰り広げていた二人の男。
 世界から人間台風と呼ばれ畏怖されていた男、ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
 ミカエルの眼から「ザ・パニッシャー」の異名を授かった唯一の男、ニコラス・D・ウルフウッド。
 それら宿敵の姿が、リヴィオの思考を占めていた。

「あの二人がそう簡単に死ぬ訳は無いか……」

 ふと思い出されるは、あの時の激闘。
 目配せの一つもなく互いの標的をスイッチするという異常なコンビネーションを見せ、ラズロと従者に傷を負わせた。
 もし、あのまま戦い続けていたらどうなったのか……リヴィオには想像する事が出来なかった。
 いや、普通に考えればラズロの勝ちは揺らがない。
 幾らあの二人といえど、トライ・パニッシャーを装備したラズロを相手に勝利する事は不可能な筈だ。
 事実、ウルフウッドは一度瞬殺され、ヴァッシュはプラントの翼手を用いてさえ防戦一方だった。
 順当に考えても、ラズロが勝利する筈である。

「……くそっ!」

 ――だが、リヴィオは見てしまった。
 命にも至たる傷を負い、それでも大切な家族を守る為に立ち上がった男の姿を、
 半年以上に及ぶ拘束を受け衰弱しきった状態で尚、能力を発動しあの窮地から逃げ仰せた男の姿を。
 不可能を可能にする男達の姿を―――リヴィオは見てしまったのだ。

 そのヴィジョン達はリヴィオの記憶へと強烈に刷り込まれ、そして、とっくの昔に心の奥底へ封印されていた筈の感情にさえ、揺さぶりを掛けていた。
617創る名無しに見る名無し:2009/06/27(土) 17:58:01 ID:ifdtb9jJ
「ヴァッシュ・ザ・スタンピード……ニコラス・D・ウルフウッド……」


 ある疑問がリヴィオの感情の中をさまよい歩く。

 ――もし……万が一、いや億が一、彼等が勝利したとして、その時彼等は自分の事をどうしたのだろうか?
 ――自分を、故郷の皆を殺そうとした自分を、殺したのだろうか?
 ――……恐らくウルフウッドは殺そうとし、ヴァッシュ・ザ・スタンピードはそれを阻止するだろう。
 ――そう、恐らくあの男は自分を殺害する。
 ――一度は見逃したが、あの後ラズロ……つまり俺は故郷の皆を殺害しようとした。
 ――故郷の皆に向け最強の個人兵装を撃ち放ったのだ。
 ――そんな俺を、あの男が許す訳がない。
 ――許してもらえる訳がない。

 パン、と渇いた音が孤独な病室に響き渡る。
 熟考という渦に巻き込まれた思考を引き戻しす為、リヴィオが自身の頬を隻腕で叩いたのだ。

「俺は戻らない……ラズロと共に生き抜く……」

 ふと見れば、彼の身体を覆う裂傷が消えていた。
 クーガーとの戦いで負った内臓へのダメージや背中と胸部の打撲は未だ治癒しきれないが、それでも徐々に回復している。
 謎の爆弾に吹き飛ばされた左足も、完全にでは無いが回復したと云っても良いだろう。
 左腕も肘関節の所まで伸びてきている。
 これならばリヴィオであっても、ある程度の戦闘をする分には支障ない範疇だ。

「行こう、戦うんだ」

 心は揺らげど、決意は揺るがない。
 今まで助けてもらった相棒を守る為に、リヴィオは両の脚で立ち上がる。
 瞬間、急加速。
 床を蹴り、知覚外のスピードで窓をぶち抜き、殺し合いの場へと舞い降りるリヴィオ。
 聳え立つビルディングと街路樹を一瞥し、片腕のダブルファングが歩き出す。
 本来ならばもう少し休息を取って置くべきだっなかもしれない。
 せめて喪失した左腕が生えきるまでは、待機しておくべきだったろう。

 だが、彼は進行を開始していた。

 胸に宿った感情を振り切るよう、病院を飛び出していた。
 あの光景を、故郷の家族の為に戦うウルフウッドの姿を心中に描きながら、その光景を頭から振り払おうと必死に努力しながら、リヴィオは世界を踏み締めた。
 死力を尽くした相棒の為に、二本牙の異名を冠した男が始動する。
 他の参加者から半日遅れで、リヴィオ・ザ・ダブルファングのバトルロワイアルが、始まった――。



619創る名無しに見る名無し:2009/06/27(土) 17:59:12 ID:ifdtb9jJ
【E-5 病院前/1日目 日中】

【リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】
[状態]健康。全身治癒中 、内臓にダメージ、左足負傷(完治寸前)、左腕欠損(再生中・肘まで回復)、胸部及び背中にダメージ大 背中のロボットアーム故障
[装備]M94FAカスタム・ソードカトラス×2@BLACK LAGOON、.45口径弾×14、.45口径エンジェルアーム弾頭弾×6@トライガン・マキシマム
[道具]支給品一式×5、
    スチェッキン・フル・オートマチック・ピストル(残弾15発)@BLACK LAGOON、スチェッキンの予備弾創×1(20発)、
    ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、.45口径弾24発装填済みマガジン×3、45口径弾×24(未装填)
    天候棒(クリマ・タクト)@ワンピース、不明支給品0〜1
[思考・状況]
 0:ラズロが戻るまで必ず生き抜く。
 1:参加者の排除。ウルフウッドとヴァッシュに出会ったら決着を付ける?
 2:ウルフウッドに――?
【備考】
 ※原作10巻第3話「急転」終了後からの参戦です。
 ※ニューナンブM60(残弾4/5)、GPS、チックの鋏@バッカーノ! はAA弾頭の一撃で消滅しました
 ※とりかえ手ぶくろによって左腕を肩口から奪われました。
 ※ラズロとの会話が出来ません。いつ戻ってくるか、もしくはこのまま消えたままかは不明です。

これにて投下終了です。支援ありがとうございました
って、アレ?なんかトリが変わってる?
wikiには予約スレのトリで編集してくれると嬉しいです
622創る名無しに見る名無し:2009/06/27(土) 18:38:28 ID:JSEWGQKB
投下乙
仕切り直しか
いなくなった相棒への想い
リヴィオの立ち位置が明確になるいい話でした
623創る名無しに見る名無し:2009/06/27(土) 20:33:11 ID:TD7q1k5B
投下乙!
リヴィオに替わってどうなるかと思ったが、参戦時期的にこうなるよなー
行動方針は生存優先になったようだが、怪我も治りかけだしまだまだ引っ掻き回してくれそうだww


あとタイトルが合いすぎてて噴いた
624創る名無しに見る名無し:2009/06/27(土) 20:56:29 ID:ifdtb9jJ
投下乙です
決意を新たにしてはいるけど、そこはかなり危険な気が……!
トリは仕様が変わって、トリキーに使える文字数が増えたので、一部トリップが変化してしまったそうですよ

では、自分も投下します
625地獄への道 ◆b8v2QbKrCM :2009/06/27(土) 20:58:37 ID:ifdtb9jJ
橋の袂、川の岸。
河を流れる水の音だけが響く静かな空間。
青々と茂った広葉樹の木陰に、ハクオロはひとり腰を落としていた。

「カルラ……お前まで……」

太い幹に背を預け、低い声で呟く。
また喪ってしまった――

「私は……!」

なんと無力なのだろうか。
ただひたすら喪い続けるばかりで、誰一人として護れない。
大切な人も。
大事な家族も。
自分を信じてくれた少女も。
ハクオロが護りたいと願った者達が、次々と掌からこぼれていく。
悔悟の念は尽きることなく湧き上がる。
広い会場のせいで再会を果たせず、そのために護ることができなかったというなら救いはある。
しかし実態はどうだ。
トウカに護られ、魅音に護られ、そして二人を喪った。
自分がもっと上手く立ち回れてさえいれば、二人は死なずに済んだのではないか。
せめて二人だけでも護ることができたのではないか。
思考の隅に根拠のない仮定が浮かぶ。
それは後悔を糧に際限なく膨らんでいき、ハクオロの心を内側から責め立てていく。
ここで、仕方がなかったのだと開き直ることが、ハクオロという男にはできなかった。


あのとき、ああしていれば。


もっと力があれば。


――自分さえいなければ。


「駄目だ、それだけは」

ハクオロは頭を振って、脳裏に過ぎった考えを振り払う。
全てを投げ出してしまえば、悩み苦しむこともないだろう。
だがそれだけはできない。
この地に唯一残った家族――アルルゥ。
彼女は今もどこかで助けを待っているに違いない。
それなのに、身勝手な逃避など選べるものか。
ハクオロは地面に突いていた右手を握り締めた。
土と雑草が指で掘り起こされ、拳の中へと押し込められていく。
手先の動きに引き寄せられるように、肩の傷が疼痛を訴える。
だがそんなものは気にならない。
心を引き裂くこの痛みと比べれば、無いも同然の痛覚だ。

「アルルゥだけは……」

――ハクオロは決意する。
どんな手を使ってでもアルルゥを護る。
それが己に架せられた使命であると――

「……この身に代えても……!」
626地獄への道 ◆b8v2QbKrCM :2009/06/27(土) 20:59:27 ID:ifdtb9jJ
遠くから足音が近付いてくる。
かなりの大股で、重量を感じさせる歩調。
ハクオロは拳を解き、足音の方へ顔を向けた。

「イスカンダル殿か。どうでしたか」
「辺りには誰もおらんな。こそこそ隠れとる様子もない」

イスカンダルはハクオロと同じ木陰に入り、そこで足を止めた。
傷を負って動きの鈍ったハクオロに代わって、イスカンダルは歩哨の真似事を買って出てくれていた。
彼が言うには、サーヴァントの卓越した視力を以ってすれば、辺り一体を隈なく見渡すのも容易いのだという。
さすがに透視のようなことまでは出来ないらしいが、人間の枠組みを越えた視力だけでも充分過ぎるほどに有用だ。
――サーヴァント。
イスカンダルからその奇跡について聞き及んだ際、ハクオロは耳を疑わずにはいられなかった。
偉大なる功績を残し、信仰の対象となった英雄。
『世界』なるものと契約し、力の代わりに死後を売り渡した者。
そうした者達は、死んだ後に英霊と呼ばれる霊的存在となり、時間と世界を超越して存在し続けるのだという。
サーヴァントとは、本来なら人間には御し得ない高位の霊である英霊が、条件付で召喚され使役されるときの姿。
その条件とは、ありとあらゆる願いを叶える万能の願望器――聖杯を巡る戦いへの参加権。
イスカンダルが口にした英雄の名は、イスカンダル本人も含めて、ハクオロの知識の中には無いものばかりであった。
だが、ハクオロにはそれよりもずっと気に掛かることがあった。
サーヴァントのような存在を召喚できる秘法。
万能の願望器、聖杯。
それらが実在するというのなら、ギラーミンのいうことも与太話では済まされなくなってくる。
最初に聖杯について聞いたときは、ハクオロも半信半疑であった。
しかし、ここまで詳細に語られてしまうと、流石に信じざるを得なくなってしまう。

「…………」

全ての願いを叶える方法は実在した。
もしかしたら、殺し合いがこうも急速に進んでいるのは、それの存在を知っていた者が多くいたからではないか。
イスカンダルが、自分以外にここにいる唯一のサーヴァントだと言う、アーチャー。
……そして、衛宮。
不意に、ハクオロの思考をとある疑念が過ぎる。

「イスカンダル殿……貴方はこの戦いに勝ち残り、何を願う……」

願いを叶えるために、自分以外の全員を犠牲にする――
聖杯戦争とこの殺し合いの間には妙な類似点がある。
だが、相違点も非常に多い。
その最たるものは動機だ。
イスカンダルからの伝聞だが、聖杯戦争はマスターもサーヴァントも、聖杯を必要とする者だけが選ばれるという。
願いの内容は人それぞれなのだろうが、願いを持っているということは共通しているはずだ。
対して、この殺し合いに望んで身を投じたものは誰もいない。
ギラーミンが提示した褒美に釣られて集まった者達の殺し合いとは断じて異なる。
願いを叶えられると言われても、最初から託す願いを持っているとは限らない。
その中の数少ない例外が、聖杯戦争の参加者達であるとハクオロは考えた。

「失礼な問いだとは分かっている。しかし……」

サーヴァントは聖杯という願望器を求めて召喚される。
それはつまり、イスカンダルも聖杯に託す願いを持っているということだ。
願望器を巡り殺し合った者達が、果たしてこの場における殺し合いを厭うだろうか。
だが、イスカンダルは返答の代わりに豪快な笑いを返してきた。

「願うことなど何もない。
 余が聖杯に託さんとした願いは既に実現しておるからな。
 見ろ、この身体を。霊体であればこんな傷はそうそうつかんぞ。
 マスターからの魔力供給も必要にならんようだしな」
627地獄への道 ◆b8v2QbKrCM :2009/06/27(土) 21:00:10 ID:ifdtb9jJ
嬉しそうに口の端を上げるイスカンダル。
傷だらけの肉体は、いつの間にか出血が止まっていて、乾きかけの生傷を晒している。
ハクオロは、この信じがたい回復力もまたサーヴァントが特別たる所以なのだと思っていた。
しかしイスカンダルの主張を聞く限りでは、本来はもっと傷つきにくい代物であるらしい。
――この男は弱体化を喜んでいるのか?
ハクオロは一瞬だけ疑念に視線を険しくしたが、すぐに力を抜いた。

「確かに、戒めから解放されたのは喜ぶべきことだな」
「ん? いやぁ、それは別にどうでもいいんだが」

マスターによる束縛からの解放。
イスカンダルはそれを喜んでいるのだと、ハクオロは考えた。
だが、返答は否定。
いよいよ混乱の色を強めるハクオロに、イスカンダルは訥々と語る。

「サーヴァントと言ってもな、所詮は一時の客人(まれびと)よ。
 地を踏む脚も、手綱を持つ腕も、魔力で模られた作り物に過ぎん。
 ならば最初に望むべきは確固たる肉体に決まっておる。
 それさえあれば、他の望みは自力で叶えりゃいい」

それに余のマスターは気持ちのいい奴であったぞ、と笑顔で付け加える。
ハクオロは納得と疑問の入り混じった感情を抱えたまま、傍らの大男から視線を外した。
とりあえず、イスカンダルには誰かを殺めてまで唯一の勝ち残りを狙う動機がないということは確認できた。
しかし、一つの疑念が晴れると同時に、また別の疑問が浮かび上がってくる。

「どうした?」
「いや……聖杯戦争では、サーヴァントだけでなくマスターも願いを叶えられるのだろう?
 あの男はどんな願いを抱いていたんだろうな、と思っただけだ」

声色は落ち着いている風であったが、内心では酷く震えていた。
衛宮という男が何を願って殺し合いに身を投じたのか。
あの雷を操る少女は、人を殺めることに慣れていない様子であった。
そんな少女に慕われていた男が、どうして。
もしも、本来は戦いなど望まないが悲痛な理由で止む無く……とでも答えられれば、この男を殺めた理由が瓦解する。
そうなればハクオロは自分の行為の重大さに押し潰されてしまうかもしれない。
ここで、仕方がなかったのだと開き直ることが、ハクオロという男にはできなかった。


皮肉なことに。

『積極的に殺し合いに関わっているかもしれない』から殺したはずが、

『積極的に殺し合いに関わっていたのでなければ』正当化できなくなっていたのだ。


ハクオロの恐れなど気付きもしていないかのように、イスカンダルはふむと顎鬚を撫でた。
衛宮の死は、先ほどイスカンダルも確認していた。
きっとハクオロの思惑通り、自然に力尽きたのだと思っているはずだ。

「分からん。他のマスターには殆ど出会わなんだからな。
 ランサーのマスターの声を聞いたのが一度、セイバーのマスターと顔を合わせたのが二度、それが全部だ。
 あの男の願いなど見当もつかん」
「そうか……」

ハクオロは短く息を吐いた。
それが安堵の溜息であったことに、果たしてハクオロ以外の誰が気付けたのか。
二人の会話が途切れるや否や、奇妙な静寂が辺りを包み込んだ。
川面に跳ねる魚も囀る小鳥もいない、非自然的な静けさ。
唯一、青い葉を茂らせた枝が小刻みに揺れて、漣のような音を立てている。
628地獄への道 ◆b8v2QbKrCM :2009/06/27(土) 21:00:54 ID:ifdtb9jJ
「今度はこちらからひとつ訊ねて良いか」

沈黙を破ったのはイスカンダルだった。
ハクオロはすぐに首肯した。
しばらくこちらからの質問が続いたのだから、次は相手に訊ねる権利があるのは当然だ。
イスカンダルは少し間を置いて、抑揚を抑えた声で問いかける。


「ハクオロよ――何故あの男を殺した」


心臓が、高鳴る。
見られていないはずだ。
気付かれていないはずだ。
それなのに、どうして……!

「あ……」

手が震えているのが分かる。
今口を開けば、声もきっと震えているだろう。
だが、何かしらの返答を返さなければならない。
沈黙を通すということは、肯定以外の何物でもないのだから。

「い……一体何を言っているんだ……」
「刺さっておったものが独りでに沈んでいったとでも言うのか?
 余は貴様を糾弾するつもりなどない。その理由を聞いておきたいだけだ」

そうして、一拍置いて、

「貴様を仲間に加えるかどうか決めるためにな」
「……私は」

ハクオロは目線を伏せた。
糾弾するつもりはないという言葉に偽りはないだろう。
ならば、ここで嘘をつく意味はない。

「部下が……家族がいたんだ。
 だが、みんな殺されていった……」

ハクオロの独白を、イスカンダルは静かに聞いていた。
その表情は、顔を伏せたハクオロからは窺えない。

「ベナウィとカルラは死んだという事実だけを聞かされた。
 トウカは私の手で死なせたようなものだ……!」

独白は続く。
聞き手の存在など忘れたように、心の内を吐き散らしていく。

「武人が命を落とすのは当然の因果かもしれない……だが!
 何故だ! 何故エルルゥまでが!」

右の拳を握り締める。
止め処ない怒り、そして悲しみ。
もしここに魅音がいれば、ハクオロはこうも感情を吐露しなかっただろう。
私情を抑え、魅音を気遣いもしただろう。
だがその少女はもういない。
ハクオロの目の前で、静かに息を引き取ったのだから。

「……すまない、取り乱した」
629地獄への道 ◆b8v2QbKrCM :2009/06/27(土) 21:01:44 ID:ifdtb9jJ
深く息を吸い、そして吐き出す。
右手に視線を落とせば、掌を汚す泥の中に、濁った血が混ざっている気がした。

「だが、それが理由だ。あの男が私の家族を殺したかもしれない……殺してしまうかもしれない……。
 たった一人残った家族まで……アルルゥまで!
 そう思った殺したのだ。偽りなどない……それだけだ」

もうこれ以上、大切な人を喪いたくない。
それは皇としてではなく、人としての切なる願い。
イスカンダルはハクオロの独白を黙って聞いていたが、やおら歩き出すと、木陰の外へ出て行った。
そして赤毛の頭を大仰に掻いた。

「確かに我らは仲間を集めておるが、それと同時にもうひとつ別のことをやっとるのだ。
 有り体に言えば、殺し合いに乗ったものを倒すことなんだが――」

そこで一旦言葉を切り、ハクオロに向き直る。

「ハクオロよ、余は貴様をどう処するべきなのだろうな」

ざぁ、と風が吹き抜ける。
梢が揺らぎ、緑の葉が旋風を描いて散っていく。

「……問われるまでもない」

ハクオロは立ち上がり、イスカンダルの目を見据えた。
地獄へ落ちる覚悟は決めていたはずだ。
この期に及んで、何を迷うことがあるというのか。
即座に斃されないだけ感謝をしてもいいほどだ。

「貴方達と道を同じくする資格など、私にはない」

衛宮を殺した自分が、衛宮を助けたいと願ったレッドと轡を並べられるはずがない。
ましてや、レッドはあの少女をも救おうとしているのだ。
万に一つそれが叶ったとして、どんな態度で少女に会えばいいというのか。
きっと、イスカンダルには感謝すべきなのだろう。
もし彼に看破されなければ、自分は何食わぬ顔で誘いを受けていたかもしれない。
そんな真似をしては死んでいった皆に合わせる顔がない。

「そうか」

イスカンダルは小さく頷いただけで、それ以上の追求はしなかった。
今はそれすらもありがたかった。

「助けて頂いたことには改めて礼を言う。
 それと、レッドのこともお願いしたい……それでは」

ハクオロは軽く頭を下げ、自分の荷物を手に踵を返した。
たった半日の間に多くのものを喪いすぎた。
この上アルルゥまで死なせてしまうわけにはいかない。
何としても探し出し、護り抜いてみせる。
もしそれが叶わなければ――!

「ハクオロよ!」

イスカンダルのよく通る声が響き渡る。

「願望器を信じるな」
630地獄への道 ◆b8v2QbKrCM :2009/06/27(土) 21:02:54 ID:ifdtb9jJ
ハクオロは、足を止めた。
彼には人の心が読めるのか――そう思わずにはいられない。
もしアルルゥを喪えば、あるいは喪わずとも、最後の生き残りとなって皆を生き返らせれば。
そんな考えが脳裏を掠めたばかりだった。
ハクオロの応えを待たず、イスカンダルは言葉を繋ぐ。

「聖杯も、褒美として用意してあるという力とやらもそうだ。
 誰もが血眼になっちゃあいるが、存在する保証はどこにもない」

ハクオロはイスカンダルに背を向けたままで、その語りを聞いていた。
聞き流して立ち去ってしまえればよかった。
だが、イスカンダルの言葉には、それを許さない威圧がある。

「それを忘れるなよ」
「……言われるまでもない!」

内心の焦りを隠し、ハクオロは歩き出した。
とにかく今はアルルゥを探すことだけを考えるのだ。
もしも、仮に、万が一……そんなことは全て後回しにすればいい。

天頂の太陽が、まるで地獄の底のように燃えていた。







【B-4 橋の袂(北岸)/一日目 日中】


【ハクオロ@うたわれるもの】
【装備】:なし
【所持品】:基本支給品一式×4、
      コンテンダー・カスタム@Fate/Zero 、防災用ヘルメット、コンテンダーの弾薬箱(スプリングフィールド弾27/30) 、ロープ×2、消火器、防火服、
      カッターナイフ、黒色火薬入りの袋、大型レンチ@BACCANO!、ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、双眼鏡、医薬品多数、ライター、
      起源弾@Fate/Zero(残り28発)、クチバの伝説の進化の石(炎、雷、氷)@ポケットモンスターSPECIAL、
      空気ピストル@ドラえもん メリルのハイスタンダード・デリンジャー(2/2)@トライガン・マキシマム 、排撃貝@ONE PIECE、
      デリンジャーの残弾20 鉄パイプ爆弾×4、治癒符5枚@終わりのクロニクル
【状態】:右足と右肩に銃創(包帯処置、止血処置済み。ただし消毒なし)、左手首骨折
【思考・行動】
 1:ギラーミンを倒す。
 2:何としてもアルルゥを護り抜く。
 3:もしそれが叶わなければ……?
 4:ミュウツーに対して怒りの念。

【備考】
※クロコダイルの名前は知りません。
※クロコダイルの能力を少し理解しました。
※B-4の橋が美琴の超電磁砲によって完全に崩落しました。渡る事はまず不可能です。
※B-4木陰に園崎魅音の死体が腕を組まされて横たわっています
※B-4橋崩落現場付近に、クロコダイルの首と胴に別れた死体があります。
※レッドの包帯は治療のために消費しました。
※聖杯戦争とサーヴァントについての情報を一通り得ました。
※どこへ向かうかは次の書き手にお任せします。
631地獄への道 ◆b8v2QbKrCM :2009/06/27(土) 21:03:49 ID:ifdtb9jJ
【ライダー(征服王イスカンダル)@Fate/Zero】
[状態]:魔力消費(小)、疲労(中)、全身に傷(小〜中)および火傷(小)、出血中  腕に○印
[装備]:張維新の衣装とサングラス@BLACK LAGOON、包帯、スモーカー大佐の十手@ONE PIECE
[道具]:基本支給品一式×2、きせかえカメラ@ドラえもん きせかえカメラ用服装イラスト集
     イリアス英語版、各作品世界の地図、拳銃の予備弾30発、ウシウシの実・野牛(モデル・バイソン)@ワンピース
[思考・状況]  
 1:バトルロワイアルで自らの軍勢で優勝。
 2:レッドを待つ。
 3:レッドを従え『ノルマ』を達成し、レナ達に自らの力を示す。
 4:四次元ポケットとバイクを回収しに図書館へ戻りたい。
 5:首輪を外すための手段を模索する。
 6:有望な強者がいたら部下に勧誘する。
 7:次の放送までに劇場へ向かう。
 8:アーチャー(ギルガメッシュ)、クロコダイルを警戒する。

【備考】
※ヤマハV−MAXセイバー仕様@Fate/Zeroは図書館入り口に停めてあります。
※四次元ポケット@ドラえもんは図書館の中に放置されています。
※原作ギルガメッシュ戦後よりの参戦です。
※臣下を引きつれ優勝しギラーミンと戦い勝利しようと考えています。
  本当にライダーと臣下達のみ残った場合ギラーミンがそれを認めるかは不明です。
※レッド・レナ・チョッパー・グラハムの力を見極め改めて臣下にしようとしています。
※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
※自分は既に受肉させられているのではと考えています。
※ブケファラス召喚には制限でいつもより魔力を消費します
※アルルゥの存在を知りました。
632 ◆b8v2QbKrCM :2009/06/27(土) 21:04:35 ID:ifdtb9jJ
投下終了です
633創る名無しに見る名無し:2009/06/27(土) 22:36:17 ID:RyNXuTUS
おぉ、二つも投下が来てる!投下乙です!

>>ひとつ分の陽だまりに ひとつだけ残ってる
リヴィオが再出発を決意したか……
ラズロに対する気持ちや、揺れる心の描写が良かったです。
ニコ兄と会う事が出来たとしたらどうなるんだろうか。

>>地獄への道
ハクオロ追い詰められてるな……
アルルゥにもしもの事があったら、恐ろしい事になりそうだ。
二人が別々の道を選ぶとは予想外、でもしょうがないか……
ハクオロは自分がどういう行いをしたかを理解しているし。
ライダーが責める事が無いとはいえ、一緒に行動するなんて難しいもんね。

ライダーの男気溢れる対応や、ハクオロの悲壮感が伝わってくるいいお話しでした。
しかし○同盟は大変な事になっちゃったね……
レッドやレナ達がどうなるのか心配だなぁ。
634創る名無しに見る名無し:2009/06/27(土) 23:05:54 ID:okNwQj3N
お二方投下乙です!

>>ひとつ分の陽だまりに ひとつだけ残ってる
タイトル上手いなぁ、今回の話にぴったりだと思いました。
ラズロが感じた痛みを噛みしめながら決意を固めて、その過程でヴァッシュやウルフウッドとの対決を決める描写が素晴らしい。
てっきり神社の方に行くのかと思ったけどラズロと同じ場所で始めたいとは……実にリヴィオらしい!
新たなスタートをきったリヴィオだけど是非ともヴァッシュやウルフウッドと出会って欲しいなぁ。


>>地獄への道
ハクオロさん……カルラ死亡も知ってしまって凄い危ういぜ……。
ライダーがハクオロのキリツグ殺害を知ったのは意外だったけど、流石ライダーとも思った。
そして別れ……うん、仕方ないよね。バトルにならなかっただけでも良かったと考えるべきか。
別れの際に願望器に頼るなと力強くライダーがかっこいいなぁ。ハクオロも頼らないとは言ったけどこの後どうなるか……。
もしアルルゥが死んでしまったらと思うと今から不安になってくる。
635創る名無しに見る名無し:2009/06/28(日) 00:01:43 ID:yJnm6o0+
投下乙
ライダーとハオクロ別れたか
ハオクロの苦しみが伝わってきただけに修羅の道を行きそうで先行きが不安だ
しかしやはり話の雰囲気がいいな
636創る名無しに見る名無し:2009/06/28(日) 21:00:06 ID:MOn59Q3o
ライトノベルは把握が大変だね……面白いからいいけどさ。
終わクロって一巻上下読んだだけでついていけるかな、
新庄 運・切が同一人物だって紹介も出なかったし。
1stGの話はひと段落したみたいだけど、二巻以降もブレンヒルトって活躍するの?
637創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 14:12:57 ID:SVPZqRje
>>636
確か六巻あたりで風見とガチバトルやったりするはず
それ以外の巻ではそんなに活躍してないかな
638創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 19:21:18 ID:E8kSA07S
今日は10人予約の投下日か
楽しみだ
639創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 22:11:38 ID:rNNDVgbE
色々火種はあるけどニョロッと混じってる蛇野郎が怖いぜ
それぞれの放送後の反応もあるからな。10人だし一層大変そうだ…また仕事が手に付かnai
640創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 22:23:55 ID:/ARBUX/H
規制がとけね(ry
と思ったら解けてた
641 ◆Wott.eaRjU :2009/06/29(月) 23:38:35 ID:FBhT+Crd
おお、投下は明日ですか。
大変なパートだとは思いますが頑張ってください。

では……代わりといってはなんですが詩音、ロベルタを投下します。
642創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:39:16 ID:pS++Qk9f
きたー!支援
『――六時間経ってもまだ生きている者がいたら、そのときまたお会いするとしよう』

二回目の放送を告げる声が響く。
底辺を這い蹲る者達の酒場、イエローフラッグ内は無音に包まれていた。
しかし、人影が一人も居ないわけでもない。
乱雑に置かれた椅子に、先程食事を終えたばかりの長髪の少女が一人腰掛けていた。
目の前のテーブルには名簿や地図を開き、一本のペンを片手に、少女はなんとも形容しがたい表情を浮かべている。
悲しんでいるのか、それとも怒っているのかもわからない。
どうにも判別がつかない様子に一切の変化はな――いわけでもなかった。


「……死んじゃったんですね、お姉」


少女は、園崎詩音は絞り出したような声を上げた。


◇     ◇     ◇

644創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:39:51 ID:jYpeWDCw
645創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:40:04 ID:pS++Qk9f
支援
646創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:40:41 ID:jYpeWDCw
只の姉妹ではない。
一卵性双生児、元々一つであった受精卵が二つに別れた事による出生。
言うなれば自分の分身ともいうべき存在。
園崎魅音――“本当の園崎詩音”は永遠に失われた事を先程の放送は意味した。
その事実は詩音にとって到底無視出来る事実ではなかった。

(これで私が本当の魅音……戻ったんですね。本当の私が、ようやく……)

悲しんでいる様子は見られない。
たとえ姉妹といえども、幼い頃名前を入れ替えた“妹”であろうとも魅音の死を聞いて涙を流す事はない。
何故なら既に切り捨てようと考えたのだから。
優先すべき存在が詩音に力を与えてくれる。
魅音よりも、いや、この世界の何よりも大事なものが詩音にはある。
それはたった一つの存在、あの夕焼けの日に自分を助けてくれた少年。
少年――北条悟史の声を聴き、そしてあの顔をもう一度見るためなら自分は何だって出来る。
その自信は崩れず、この先もきっと変わることはない。

(ええ、そうです。私にとっては都合が良くなった……その筈です。
だから、喜んでもいい筈なのに……どうして、どうしてこんなに苦しいんでしょうか……。
悟史くん以外はいらない……そう決めたのに)

だから、魅音が此処でのたれ死のうが詩音には関係はない。
それどころか魅音が死んだとなれば彼らは誤解する事だろう。
ヴァッシュ・ザ・スタンピードを始め、詩音を“園崎魅音”として認識した参加者達。
魅音の名を騙って敵対した詩音は死んだものと思われ、恐らくこれ以上他者に情報が伝わる筈もない。

その事は嬉しいと思う。
当然だ。殺し合いに乗っていると知られればそれだけで他者に付け入る隙は狭くなる。
月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)やハナハナの実があるといえど必要以上の消耗は避けたい。
順調に人数が減った事も合わせ、この場での生存は以前よりも近づいていると言えるだろう。
疲労は依然として残ってはいるが五体に欠損はなく行動に支障もない。
既にお人良しな青年を手に掛け、順調な過程を進んでいる。
その認識は間違ってはいない。
しかし、どうしても出来ない。
意識が、自分の心が喜びの感情に停止を掛けている。
少なくともそれを顔に出すなと。
他の誰でもない、もう一人の自分がそう語りかけているような感覚が過った。

(……何を考えているんでしょうね。お姉のコトなんて今の私にはどうでも良い。
だけど、お姉は確かに私の姉妹だった……それは変えようのない事実です)

魅音の様々な顔が浮かび、そして消えていく。
園崎の宿命、全てが入れ替わったあの日があろうとも彼女はもう一人の自分であった。
一緒に話し、遊び、笑ったり泣き合ったした記憶が消える事はない。
たとえ自分の方が一方的に魅音を切り捨てたとしても。
確かに充実したあの思い出を――嘲る事は詩音には出来なかった。


(だから……さようならです、お姉。私から言える言葉はそれだけです。
だって、それ以上に言える資格もないのだから……お姉を捨てた私には)


よって、詩音は別れの言葉を送る。
一切の悲しみも侮蔑も乗せずに、自分だけに聞こえる言霊が漂う。
黙々と、何処かを歩き続ける詩音の表情には依然として感情の色はない。
これで終わった。そう言いたそうな詩音の瞳はただ、目の前の景色を映し出している。
きっと自分に対して後ろめたさを抱えたまま死んでしまった魅音について、この先考えることはないだろう。
少なくとも、この殺し合いに優勝し、悟史と出会うまでの間は。
全ての意識を傾けなければ生き残る事は出来ない。そう強く確信しているのだから。
そして漸く詩音は目的の地に辿り着く。
649創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:41:30 ID:jYpeWDCw
650創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:42:01 ID:1jTvZoAO
 
651創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:42:21 ID:pS++Qk9f
支援
652創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:42:34 ID:jYpeWDCw
(ふぅ、この辺ですねぇ)

息を整えながら、詩音は地図を取り出し、位置の確認をする。
地図に記された湖の一つ、エリアD-6内のそれが目の前にある事がわかる。
“3つの湖に隠された力を解き放て” 。詩音を動かした、地図には記されていない3つ目の湖の存在を示した言葉。
そもそも本当に力とやらがあるとは限らず、謎を解く方法も定かではない。
所詮、眉唾の情報だ。そう思う人間は少ないはないだろうし、詩音も全てを信じたわけでもない。
しかし、もしこれが本当の話であれば――そう思えば自然と足が進んでいた。

自分でも不思議なくらいに速かった歩みにはどこか別の影響があったのだろうか。
たとえば、何か衝撃的な事実を聞き、その事について考える事を避けたのかもしれない。
良く知った、知り過ぎた人の名を聞き、どういう反応をすればいいのかと思いあぐねたのだろうか。
真実は誰にも、もしかすれば詩音にもわからないが結局、大きな問題ではない。
直ぐに辺りを見回し、何か眼につくものはないかと詩音は考える。
言うまでもなく、隠された力に近づくための手掛かりが存在するかどうかを。

(普通の湖のような気がしますけど……もう少し調べてみましょうか)

しかし、結果は芳しくはなかった。
あまり流れは速くはないが、それなりの深さはありそうな湖が広がっている。
同時に特に異変といえるようなものは見られない。
少なくとも自分の見える範囲では何も不自然なものはなかった。
詩音はそう結論づけ、再び歩を進めていく。
時間に余裕がないわけではない。別に参加者を一人でも多く殺す事が目的ではない。
優勝さえ出来れば良いだけの話であり、他の参加者達が潰し合いをしてくれるのであれば好都合だ。
もう少しの探索を決め、詩音は依然として前へ進んでいき――漸く身の異変を感じた。


654創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:43:09 ID:pS++Qk9f
支援
655創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:43:16 ID:jYpeWDCw
656創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:43:32 ID:1jTvZoAO
 
657創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:43:35 ID:E8kSA07S
10人投下今日は無理なのか・・・
予約期間過ぎてるけど一応完成してるみたいだし、10人という大人数投下っていう点からも、1日くらい延長でもいいんじゃない?

と意見を書いてみる
ぶっちゃけ早く読みたいだけなんだけど
658創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:44:01 ID:jYpeWDCw
659創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:44:36 ID:pS++Qk9f
支援
660創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:44:38 ID:1jTvZoAO
 
「――セニョリータ」


何かが弾ける音が無数に響き、詩音はそれが何であるかを察知する。
その正体は月霊髄液が自動的に防御したためによる、鋭さを帯びた衝撃音だった。
パラパラと銃弾が零れおち、同時に聞き覚えのある声が響く。
酷く冷たく、底知れぬ恐怖を感じさせる女性の声。


「お目に掛かるのは三度目ですね。ですが――」


忘れるわけもない。
あまりにも古風なエプロンドレスが嫌でも目を引く。
腕に携えた一個の墓標、いや、バカみたいな銃器は今も詩音を狙っている。
月霊髄液により銃撃を防ぐ事は出来たが、どうやら女の方も期待はしていなかったようだ。
女の実力は既に知っている。月霊髄液とハナハナの実があれども自分一人では到底叶わないだろう。
詩音は早くも見切りをつけ、この場から立ち去る方法を考え、何か利用できるものはないかと視線を飛ばす。
そんな時、詩音は新たな異変に気付く。
それは奇しくも女が件の銃器――パニッシャーのロケットランチャーの銃口を詩音へ向けた時と同じ瞬間。
自分の方にめがけて真っ直ぐ飛来する砲弾越しに詩音は確かに視覚する。



「これで永遠にお別れです」


女は以前掛けていた眼鏡を今は掛けていなかった事に。
そして今まではその眼鏡のせいで気付けなかった、いや、わからなかっただけかもしれない。
言いようのない深みを秘めて、まるで悲しみの底をずっと見てきたかのような瞳が女の顔にあった。
その女性こそ詩音と同じくこの場での優勝を決めた参加者。

ロベルタ――十分な休憩を取り、永い間殺意の爪を研いでいた狂犬は、ただ冷酷な笑みを浮かべていた。





◇     ◇     ◇


新たに加わった脱落者は十三人。
一回目の死者を加えれば合計二十八人の参加者が死んだ。
十二時間の間による結果と考えれば上出来と言えるのだろうか。
真実はわからない。だが、確かに言えることはあった。
少なくともこの結果に“まだ”満足していない参加者が一人居る。
その人物は傍から見れば狂っているように見えるかもしれない。
実際、彼女を言い表すには“狂犬”もしくは“狂戦士”などの言葉がお似合いだ。
パニッシャーの砲弾により、地面と詩音の月霊髄液を巻き込みながら生まれた爆風へ飛び込んだ女性。
そう、ロベルタは未だこの状況に対し何も満足はしていない

(足りません……殺しあいとやらを終わらせるには、まだ足りない……!)

地面を蹴り、煙の先の詩音を感覚で追う。
自身の目的、この殺し合いの一刻も早い終結を目指して。
但し、その結果に至るまでの過程を特に気にする事はない。
たとえ何人の人間が死のうとも、この場から抜け出せればそれでいい。
一秒でも早く、あの“クソ共”の喉笛にナイフを、脳天に銃弾を叩き込む――たったそれだけが願いだ。

よってロベルタは放送を聞き終えた後、即座に行動を起こした。
禁止エリアを避け、中心を目指した結果、湖の傍に差し掛かったのはついさっきの事。
そして銃弾を弾いた奇妙な力を見て、抱いていた疑問は確信に変わった。
間違いない。こいつは自分に園崎魅音と名乗った少女だ。
偽名を使われていたと勘付くが今となっては些細な問題でしかない
一見、何処にでもいるような少女にしか見えないが、不思議な力を使い、二度も逃がした相手。
特に詩音自身の反応を上回る速度で銃弾を弾く月霊髄液を破るには、相応の手段が必要になるだろう。
未だ完全な策は見つけてはいないが、見逃すという選択はロべルタにはなかった。
ただ一つの願望がロベルタという焚き火を燃やす薪となり、その炎の勢いに陰りはない。

663創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:46:02 ID:jYpeWDCw


(何もいらない。ただ、あの方の無念を晴らせれば……この身がどうなろうとも、知ったコトではありません……)


あの方は全てを教えてくれた。
革命を信じ、結局はコカイン畑の番犬でしかなかった自分に手を差し伸べてくれた。
共にテロ活動を行ったかつての同志を裏切り、逃げ延びるしかなかった自分を。
自分には到底不釣り合いな優しさをもって、屋敷の女中として置いてくれた。
あの方は、あの方は、あの方は――御当主様はあまりにも慈悲深い人だった。
だから、爆煙が御当主様を吹き飛ばし、若様の涙を受け止めたあの日に決めたのだ。
御当主様を殺した奴らを、全ての不義に――鉄槌を。
サンタマリアの名に誓って。

そのためにはロべルタは力強く腕を伸ばす。。
願いに近づくための一歩を、詩音の命を刈り取るための一手を掴むために。
しかし、そんな時ロべルタは不意に自分に迫るものがある事に気付いた。
それは一つではない。数は二つ、それらが出てきた場所はロべルタの両肩。
蕾が花開くように伸ばされた腕が二つ、ロべルタの喉を狙う。


「いい加減しつこいですよ、この暴力メイドッ!」


恐れを振い、ありったけの怒りを込めた詩音の鬼気迫る表情と怒声がロベルタに突きつけられる。



◇     ◇     ◇


665創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:46:37 ID:1jTvZoAO
 
666創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:46:47 ID:jYpeWDCw
667創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:47:29 ID:jYpeWDCw
自分は運が良いのか悪いのか。
ロベルタに
対して再びハナハナの実を発動させた詩音は胸中でそんな事を思った。
湖の周囲には特に障害物もなく、狙撃の可能性も考えて月霊髄液を待機状態にさせていたのが功を奏した。
ロケットランチャーが着弾する瞬間、念のために横へ身体を飛ばす事も忘れてはいない。
しかし、ロべルタと再会した事に喜べるはずもなかった。
しかも以前よりも様子が可笑しいロベルタは見ていて気味が悪くなってくる程だ。

(でも、この月霊髄液があれば大丈夫ですからねぇ。確実に、確実にやれば……きっと失敗するコトはない筈……!)

だが、何も絶望的な結果だけが待っているとはいえない。
確かに返り討ちにするのは難しいかもしれないが、こちらには武器がある。
自動防御する月霊髄液は自身の守備に専念させ、ハナハナの実でロベルタへの攻撃を行う。
今も詩音に疲労を蓄積させ続ける月霊髄液だが、その効果の強大さは既に身を以って知っている。
常に自動防御状態にさせておけば、少なくとも危険はない。

後は隙を見て逃げだぜばいい話だ。
ロベルタはどう見ても自分と同じように殺し合いにのっている。
ならば無駄に争わずに彼女にも参加者を減らしてもらうのも一つの手だ。
何より正面切って戦えばそれだけ危険も大きくなる。
わざわざそんなものに乗ってやる理由もないのだから。
そして月霊髄液に守られながら詩音は今、自分がやるべき事に意識を集中させる。


(だから、この辺でお終いにさせてもらいますよ!)

既にハナハナの実により出現させた両手はロべルタへ伸びている。
数秒にも満たぬ間に手は目的へ辿り着くだろう。その後、爪で喉を裂けば流石のロべルタも只では済まないに違いない。
どうやらロベルタの方も何か考え事をしていらしく、漸く気づいたようだ。
好都合――自然と詩音からは笑みが零れた。
あわよくばこの場でロベルタを殺し、彼女から物品を奪えるかもしれない。
そんな希望すらも抱いてしまう程に詩音は確かに余裕を感じていた。
もう、あとほんの少しで届くと思った。
刹那、詩音はクルリと首を回し、こちらを向いたロベルタと目が合った。


「――え?」


間が抜けたような声が喉を震わせる。
どうしてこのタイミングでなのか。
当然そんな事も思ったが詩音に疑問を、そして不安を抱かせたものは別にあった。
その理由はロべルタが浮かべる表情に対して。
そう、ロべルタは何故か笑っていた。
心地いいものではない。全身の毛という毛が逆立ちしそうな程のおぞましさがそこにあった。
驚きと恐怖のあまり思わず手を止めてしまうが、直ぐに気を取り直して手を伸ばそうとする。

だが、それは少し遅かった。
669創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:48:07 ID:1jTvZoAO
 
670創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:48:18 ID:jYpeWDCw
ロベルタはその間に横を向き、詩音の左手と向き合う形となる。
何をするつもりなのか。
疑問に思う詩音だが、その答えは直ぐに出た。
唐突に左手に走った感覚と共に、詩音にとって最悪な結果を伴いながら――
詩音は自分の左手が激痛に塗れ、“何か”が離れていった事に気付いた。
それは細く、どこか見覚えのある形をしており、詩音はそれらが何であるかを悟る。
一つだけではない。それらは合計三つの指。
誰のものかは言うまでもない――言いようのない痛みが詩音に全てを教えてくれたのだから。


「ぎ、ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」


絶叫。
叫ばずにはいられなかった。
左手の、ハナハナの実で生えさせた自分の指が食い千切られた。
無事な指は親指と小指しかなく、間には赤黒色に染まり出した気味の悪い空間が出来た。
獰猛な野生動物ならまだ現実味があるが、やったのは一人の女だ。
ロべルタの身体能力はテロリスト上がりの身である事もあり、常識の範疇では測れない。
さながら全身に機械を積んでいるかのような、鍛え抜かれた躯体からは想像を絶するほどの力が備わっている。
特に鍛えたわけでもない詩音の指は柔らかく、食い千切る事は困難ではなかったのだろう。
しかし、詩音がロベルタの力の全てを知っているわけではなく、まさかこんな手段に出るとも思っていなかった。
いかにも詩音のハナハナの実の策に掛ったと思わせたが、それはフェイクでしかなかったというわけだ。
血まみれな指を吐き捨て、悠然と詩音を睨むロベルタの眼には“逃がす”という意思は見られない。
どこまでも冷徹な瞳に直視され、詩音は依然として襲い来る痛みと共に怒りを露わにする。

「こ、このバケモノ! あんたは、あんたは絶対に許さないッ!!」

ロベルタをバケモノと称する詩音だが、彼女の方も普通とは到底言い難いと言えるだろう。
端正の取れた顔から生まれる、普段の理知的な笑顔は今では見る影がない。
ロベルタが“狂犬”であれば、今の詩音はまさに“鬼”という呼ぶに相応しい。
両眼を見開き、憎悪と怒りに潰された瞳が喰らいつくようにロベルタを睨む。
肝の小さい人間であれば失禁してしまうかもしれない程の迫力。
逃げるという選択肢をこの瞬間だけは忘れてしまう程の怒りが今の詩音にはあった。


(そうだ。私の手は悟史君と繋ぐためにあったんだ!
こんな手じゃ、きっと悟史君は悲しむ……もしかして私を避けるかもしれない。
嫌だ……そんなコトは嫌。悟史君に見捨てられたら、私はどうすればいいの!?
ようやくわかったのに……悟史くんが生きてるってようやくわかったのに!!
許さない。この女は絶対に許さない――――殺して殺して殺して殺して殺してやるッ!!)


赤黒い血液を滴らせる自身の左手を見るだけでロベルタに対する怒りが募る。
自分達の幸せを壊された。一度そう思ってしまえば更に想いは増長を見せた。
ロベルタは殺す。ただで殺すのではなく、最後まで後悔させながら殺し尽くす。
指の一本も残してやるものか。全て切り取った後に自身の口にでも突っ込ませてやる。
だってこの女はあまりにも罪深い事をしたのだ。
だから自分は仕返しをしてやるのだ。きっと悟史君もそう願っているだろうから。
ドス黒い感情に身を任せ、詩音は月霊髄液での攻撃に転じようとする。
水滴を鞭のようにしならせ、最早晴れ切った煙の先に居るロべルタの顔面を狙う。
672創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:48:58 ID:jYpeWDCw
673創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:49:05 ID:pS++Qk9f
支援
同時にロべルタも動き、詩音へ近づく。
月霊髄液での攻撃は一瞬で終わる。
それさえ終わらせればあとは自動防御に変えればいいだけだ。
何も問題はない。だが、強く信じた筈の確信は脆くも崩れ去る。
自分の目の前に迫るものに詩音は思わず眼を疑った。
それは一個の墓標――もとい最強の個人兵装と謳われた兵器。

パニッシャーの銃挺が詩音に向かって勢いよく振り下ろされていた。


「ひっ!」

月霊髄液は同時に二つの行動を出来ない。
よって咄嗟に攻撃を停止し、詩音は月霊髄液でパニッシャーを受け止める。
衝撃が水銀の壁を力強く揺らす。
その威力故に反響する音も凄まじく、思わず詩音は耳を塞ぎたい衝動に駆られ顔を伏せてしまう。
だが、詩音自体に疲労はあれども負傷はない。
直ぐに反撃の一手を投じようと、ロべルタの方を見上げる。


「ちょっと――嫌、嫌……!」


しかし、詩音には何も出来ない。
月霊髄液に指示を与える間もなく次が来ていたためだ。
ロベルタは返す腕で二撃目のパニッシャーを振るう。
横殴りの、詩音では到底反応できそうにもない程の速度を以ってして。
月霊髄液越しであろうとも凶悪な勢いで襲い来るパニッシャーは見えている。
もし何かの間違いで生身でも貰ってしまえば――最悪な結果しか想像出来ない。
思わず一歩後ずさりをしてしまう。
月霊髄液がある限り大丈夫なのだと頭で理解していても、身体が前に進もうとしない。
鬼のような顔には明確な恐れが浮かび、段々とその色は濃くなっていく。
そしてロベルタは詩音の心情を見抜いているように腕を振る。
675創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:49:37 ID:1jTvZoAO
 
676創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:49:41 ID:jYpeWDCw
677創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:50:21 ID:jYpeWDCw

「嫌、嫌、嫌、嫌、いや……」

二撃目で終わりではなかった。
三撃目、四撃目、五撃目――暴れ狂うパニッシャーの勢いに衰えはない。
方向に規則性などない。一見すれば出鱈目な、されど詩音では目に追う事すらも危うい変則的な軌道が一層に恐怖を煽る。
使用条件を緩めるために本来のものより重量が軽くなっているとはいえ異常ともいえる速度だ。
それはロベルタの常識離れの怪力による賜物であり、止めることは出来ない暴力が渦巻く。
何度も何度も喰らいつくようにぶつかるパニッシャーはまるで獰猛な生物のようにのたうちまわっている。
詩音の耳をつんざく衝撃音は依然として続き、その音も次第に大きくなっていく。
園崎家という特殊な家に生まれた詩音といえど、根本的には一般人の域を出ない。
既に魔術兵装や悪魔の実といった超常に触れていようとも、詩音には未だ耐性が足りていない。


「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌――嫌ああああああああああああああああああ!!」


肉体的な痛みよりも、精神的な恐怖が詩音を潰してしまった。
最早ハナハナの実による反撃など意識の片隅にもない。
ただ、一刻も早くこの恐怖から逃げ出すだけを考えている。
自然と後ろへ進ませた歩みは速くなり、いつしか詩音が考えている以上の速度で進んでいた。
よって詩音は気付く事が出来なかった。
自分の後ろにあるものに、もう少し距離があると思っていたのに――そこには既に大地はなかった事に。
足を踏み外し、目的地であった湖に詩音は体勢を崩しながら落ちていく。

「き、きゃあ!」

しまった、と思うもなく冷たい水が詩音の全身を襲う。
服が水浸しになってしまったがそんな事を気にしている暇はない。
直ぐに陸に上がり、この場から離れなくてはならない。
幸い直ぐ眼の前に自分が先程まで立っていた地面がある。
ほんの少し、軽く泳いでしまえば大丈夫な距離。
だが、詩音はここにきて漸く思い出す。自分が泳げなくなっているのを。
ハナハナの実の、悪魔の実のデメリットであるカナヅチの性質のせいだという事に。
片腕という事もあり必要以上に水を飲んでしまいながらも、詩音は無事な方の手を伸ばして土を握りしめる。
その瞬間、再び激痛が走った。
679創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:51:12 ID:jYpeWDCw
680創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:51:53 ID:jYpeWDCw
681創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:51:56 ID:pS++Qk9f
支援
682創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:52:54 ID:jYpeWDCw

「う、うあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

恐らく待ち構えていたのだろう。
パニッシャーを上から打ちたて、詩音の右手は不快な音と共に潰された。
辛うじて原型はあるものの、何かものを掴むことなど到底出来そうにもない。
同時に右腕の粉砕は詩音に大きな意味を与えていた。
それは月霊髄液の守りが追いつかなかった事について。

詩音に知る由もないが魔術兵装とは鍛錬を積んだ魔術士が使うものだ。
本来、詩音が使える筈もないものを、今回のバトルロワイアルのために半ば無理やりに使用出来るようにしている。
そのため、本来よりも低い性能かつ必要以上の疲労を要す事となり、今の詩音は既に疲労が溜まり過ぎていた。
故に奇しくもパニッシャーは月霊髄液を掻い潜り、詩音の右手に辿り着いた。
そして支えとなる力を失い、詩音は再び湖の中に落ちていく。
上を見上げ、なんとか陸に上がろうと詩音は必死に身体を動かそうとする。
だが、ロべルタに見逃すつもりはなかった。


「が、ゲボゲボ……!」

上からの衝撃が襲った。
正確には月霊髄液が受けたのだが、詩音の最悪なコンディションからその性能は格段に落ちている。
詩音への直撃は免れたもの、月霊髄液は完全に衝撃を殺しきれず、そのまま下へ押し込まれる。
湖の底へ、カナヅチとなった詩音にとって抜け出しようのない深みへ
ロベルタが握るパニッシャーは無常にも詩音を逃がそうとはしない。
今の詩音が泳げない事は知らないが、両手が既に使い物にならない状態を好機と見たのだろう。
ただ、一切の感情をかなぐり捨て、何も映してはいない瞳でロベルタは詩音を見下ろす。

必死に抵抗するがロべルタの力はあまりにも強い。
元々何かを掴もうにも両手が使えない。
次第に詩音の抵抗は弱まっていく。
それは酷く自然な話であり、悲しい光景でもあり、同時に――


全てが終わった証でもあった。



◇     ◇     ◇

684創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:53:20 ID:pS++Qk9f
支援
685創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:54:04 ID:jYpeWDCw
686創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:54:11 ID:pS++Qk9f
支援
687創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:54:16 ID:kBl9Xnud
支援!


(悟史くん、助けて……悟史くん……)


薄れゆく意識の中、詩音は必死に悟史の名前を呼んでいた。
ようやく逢えると思った。
ようやく声を聞く事が出来ると思った。
ようやく話が出来ると思った。
ようやくまた、あの日のように頭を撫でてくれると思っていた。
空白だった時間を取り戻せるものだと思っていたのに。
こんな結末はあまりにも悲しすぎると強く思った。


(詩音は待ったんですよ……ずっと、ずっと逢いたかった……たったそれだけでよかった。
悟史くんが居れば、私はそれだけで良かったのに…………)


たとえ自分が本当の魅音であろうと悟史にとって自分は詩音だ。
詩音の名前を呟きながら、両腕を上へ伸ばす。
助けを求めるかのような素振り。
当然、誰もその手を握り、陸に引き上げてくれるような人間は居ない。
しかし、詩音は決してその手を下げようとはしない。
ただ、奇跡が起こる事を信じて。
悟史が握り返してくれないか。
そんな一握りの願いは捨てていなかった。


(ねぇ、悟史くん……何が足りなかったのかな……私、悟史くんのためなら何だって出来るんだよ。
だから……死にたくない。まだ、私は届けてないから……悟史くんに私の想い……届けてないの…………)


声を震わせながらもロべルタから自分を助けてくれる悟史の姿が浮かぶ。
きっと彼がこの場に居たら自分をそうしてくれただろう。
たとえ園崎の人間だろうと、魅音を騙って近づいた自分でもだ。
だって、悟史は優しい人だったのだから。
少し頼りないところがあっても、彼の優しさは自分に力をくれた。
あの困った顔が、はにかんだ顔が、自分に向けてくれた笑顔が大好きだった。
だからいっそうに悲しさを覚えている。
もう、悟史に逢えないのだと思うと悲しみでどうにかなってしまいそうだった。
まだ面と向かって自分の愛を伝えてないというのに。
だが、詩音の意思を嘲笑うかのように、確実に湖の水は彼女の命を削っていく。

689創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:55:03 ID:jYpeWDCw
(……あは、なにをやってたんでしょうね、私は。結局悟史くんに逢えずに、折角魅音にも戻れたのに…………。
ごめんなさい、悟史くん……。詩音は頑張りました。バカな男の子も一人殺しましたけど……無駄だったみたいです。
残念ですけど……詩音はもうやれるコトはやりましたよね。ねぇ、悟史くん……悟史くん…………いつか、また逢える日があったらその時は…………)


悟史への想いは今も消えていない。
だけども、それ以上に詩音の身体には限界が来ていた。
今では碌な抵抗も出来ず、パニッシャーに押し付けられ大量の水を飲んでしまった。
きっと自分はもう直ぐ死んでしまうだろう。
判りたくもない現実が痛々しい程に判り切ってしまう。
ずっと伸ばしていた両手も次第に下がり、そのまま其処へ沈んでしまうのではないかと思ってしまう。
永久に、もう誰にも見られる事なく一人ひっそりと永遠の眠りへ落ちていく。
あまりにも容易いイメージ。到底受け入れたくはないが、否定の意思を持つだけの気力もない。
既に諦めが詩音を支配し、彼女は身を任せようとしていた。


(その時は一杯話しましょうね……。
たとえ私達以外の人がみんな居なくなっても……絶対に約束ですよ、悟史くん…………)


だから、最後の別れを詩音は一人、水の世界の中で告げる。
これで言い遺した事はない。
もう永くはない自分の身体を考えれば上出来だ。
そう考え、詩音はゆっくりと目を閉じようとする。
もう、悟史のために全てを果たし尽くした自分にほんの少しの達成感を覚えながら――



そんな時、何かが聞こえた。


691創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:55:43 ID:jYpeWDCw
692創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:56:04 ID:pS++Qk9f
支援
693創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:56:33 ID:jYpeWDCw
幻覚なのかもしれない。
朦朧とした意識は当てにはならない。
このまま無視しようかと考えたがやはり聞こえた。


“頼むよ”と、少年の声が――。


その少年の声を聞き忘れる事など有り得ない。


同時に思った。
何を頼まれたのか。
自分は何かを忘れてはいないかを。

悟史との思い出には。
悟史と自分を繋ぐ間には。
大事な約束があった筈だ――

途切れ掛けた意識を強引に覚醒させる。


(違う……私が悟史くんにしてあげられることは……まだ、残ってる…………!)


気のせいなんかじゃない。
思いだす。悟史との全てを、全ての出逢いを。
今の自分が出来ることを。
この死にゆく身体でも守れるものはある。
一度は守ると誓い、一度は捨てる事を決め、そして今度は――


それは全てのピースが音を立てて噛み合った瞬間。


695創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:57:07 ID:pS++Qk9f
詩音…じゃない、支援
696創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:57:13 ID:jYpeWDCw
697創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:57:20 ID:1jTvZoAO
  



“沙都子を頼むよ”――愛しい人の声が一段と強く聞こえた。




(そうだ。私は、私は――守ってみせる!あの子を、悟史くんに託された約束を、沙都子を守るんだ!)



閉じかけた両眼を開く。
水が入ってこようが気にすることか。
それよりも大事な事は一つだ。
悟史の願いを絶やすわけにはいかない。
自分を“ねーねー”と呼んでくれた沙都子を、彼のたった一人の妹を守る。
ただ、それだけを強く想いながら詩音は自身を奮い立たせる。
意を決したように、詩音は上を見上げた。
  

(絶対に殺させない、あの子だけは、最期の希望は……悟史くんの願いは潰させはしない!)


今もパニッシャーを押し付けているロべルタはきっと沙都子をも殺すだろう。
そんな事はさせない。沙都子は必ず悟史の元へ無事に送り届ける。
あの日、悟史が雛見沢を去る直前に交わした約束が色褪せる事はない。
故に詩音は最後の力に全身全霊、正真正銘の全力を掛ける。


(せめて少しだけでも、あの女を止められたら……これ以上……!)


両手が潰された今、ハナハナの実は最早意味がない。
よって詩音が選ぶものは別の手段。
詩音の疲労により今にも消えそうな月霊髄液に意識を集中させる。
一瞬で、ロべルタに避ける時間を与えないタイミングでの指定攻撃。
自身の防御を捨てて、詩音はロベルタへの反撃を決意する。


699創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:58:00 ID:jYpeWDCw
700創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:58:00 ID:1jTvZoAO
 



やがて月霊髄液が鞭上へ姿を変えて、水面へ向かう。
あまりにも細い形状に力強さはない。
だが、詩音の表情に陰りは見られない。
やがてパニッシャーが打ちつけられそのまま自分は死ぬだろう。
しかし、詩音は今度こそ噛み締めていた。
満足げな感情を、悟史の願いを叶えられるという充実感を全身で感じて。


(沙都子……あなたは強く生きて)



月霊髄液が水面から飛び上がった。
そして既に詩音の顔に鬼は宿っていない。
そこに居るのはただ、妹の身を案じる一人の。




――心優しい姉の顔があった。






◇     ◇     ◇


702創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:58:48 ID:pS++Qk9f
支援
703創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:58:49 ID:jYpeWDCw

「……上々ですね」


湖の辺でロベルタが一人呟く。
彼女の傍には横たわるものが一つあった。
全身が水に濡れ、頭には一輪の“花”が咲いている。
真っ赤な、ロベルタにとって何度も見た花だ。
特に感慨はない。そうするためにパニッシャーを振るったのだ。
――問題があるわけがない。

また、ロベルタの荷物は以前よりも増えていた。
食糧を始めとした一人分の基本支給品と移動用のMTB。
そして血に塗れた円形の物体。
それは俗に首輪というものであり、ロべルタはそれを慎重に自身のデイバックに戻した。


「何かに使えるかもしれません。持っているには越した事はないでしょう」

テロリスト時代に培った技術が応用できるかはわからない。
しかし、何も自分が解析する必要もないだろう。
この手の技術に秀でた者の協力を取りつければ事足りる。
勿論、首輪の解析と命を天秤に掛けてもらっての上での話だが。
血に染まった黒鍵を湖で洗い流し、移動の準備をする。
そんな時、ロベルタはふと疑問に思った。
この――先程まで動いていた“これ”は湖を探るような素振りを見せていた事に。
だが、考えていても答えは出なく、やがて思考を中断させる。
時間にすればものの数秒だが十分過ぎる。
少なくとも彼女は、未だやるべき事が残り過ぎているロべルタはそう感じた。
そしてロベルタは走り出す。


「これで一人……ようやく一人。しかし、まだまだ……これからです」


パニッシャーを無理に振り廻した事による疲労の残滓は未だ残っている。
一旦休憩を取るべきか。
考えるまでもない。そんな暇はない。
既に十分に取ったではないか。止まれない理由があるというのに。
優勝という手段での殺し合いの終結。
たとえギラーミンが褒美の約束を反故にしたとしても標的が増えるだけだ。
故にロべルタは更なる戦場を求め、地を蹴り飛ばす。

705創る名無しに見る名無し:2009/06/29(月) 23:59:39 ID:pS++Qk9f
支援
706創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 00:00:48 ID:IR37HIe0
しえん
707創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 00:00:49 ID:bOudmI9f
  


「殺す……誰であろうとも、必ず……!」


自分が殺した少女が奇しくも似た目的を持っていた事も知らずに。
ただ、愛する人のために――
ロベルタにとって決して笑い飛ばせはしない理由を、彼女は永遠に知る事はない。
ロベルタが聞こえるものはたった一つ。
口へ放り込んだ新たな錠剤を噛み砕く音。
どこか残酷な音色を奏でるそれしか聞く事は出来なかった。




【D-6 湖周辺/一日目 日中】
【ロベルタ@BLACK LAGOON】
[状態]:メイド服を着用 薬物依存、疲労(中) 右腕に切り傷(応急処置済み) 、肋骨にヒビ、腹部にダメージ小、眼鏡なし 、
[装備]:パ二ッシャー@トライガン・マキシマム(弾丸数60% ロケットランチャーの弾丸数2/2) コルト・ローマン(6/6)@トライガン・マキシマム
    投擲剣・黒鍵×5@Fate/zero
[道具]:支給品一式×2(水1/4消費)、コルト・ローマンの予備弾35 グロック26(弾、0/10発)@現実世界
    謎の錠剤入りの瓶@BLACK LAGOON(残量 55%)
    パ二ッシャーの予備弾丸 2回分、ロケットランチャーの予備弾頭1個、キュプリオトの剣@Fate/Zero
[思考・状況]
0:放送まで休む。
1:サカキとのゲームに乗り、殺し合いに優勝する。
2:必ず生きて帰り、復讐を果たす。
【備考】
※原作6巻終了後より参加
※康一、ヴァッシュの名前はまだ知りません。(よって康一が死んだことも未把握)
※詩音を『園崎魅音』として認識しています。
※ギラーミンの上に黒幕が居ると推測しています、よって優勝の褒美は有効であると考えています。
※錠剤を服用しました。幻覚症状などが現れています。
※ループに気付きました。
※ロベルタの眼鏡は戦闘中に何処へ飛んでいきました。本人は気付いてません



◇     ◇     ◇


709創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 00:00:53 ID:pS++Qk9f
支援
710創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 00:01:36 ID:pS++Qk9f
支援
711創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 00:01:51 ID:bOudmI9f
  

いつか見た光景が広がっている。

夕焼けの日。

スーパーへ買い物に出かけて。

違法駐車していた原付を蹴り飛ばして。

見慣れない男達に路地裏に連れられて。

護身用のスタンガンでどうにか切り抜けようとして……。


やっぱりだ。

私は知ってる。この記憶を。

確かに私は知っている。

全てが始まった瞬間。

私の思い出に忘れられない一ページが綴られた日。

もう一度戻りたかった日々の始まり。

それが確かに目の前にある。


理由はわからない。

奇跡だろうか。不意にそう思ってしまう。

でも、どうせ奇跡を起こしてくれるならあの水の中で――

ううん、前言撤回。

だって、やっぱり嬉しいんですから。

この奇跡は、言葉で言い尽くせないぐらいに。


713創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 00:03:16 ID:3X/fTj/j
支援



『大丈夫かい、魅音』



彼の言葉に頷く。

胸の鼓動が早まったのを感じた。

あの時、頭を撫でられた時よりも前に。

そしてあの時以上に昂ぶっているのがわかる。

実際に彼が私の頭を撫でてくれた事で更に強くなった。

もう、何も言葉が出せないくらいに。

だけど、言わなくてはならない。


今回だけは――顔を上げて、しっかりと。


ずっと待ち続けた彼の瞳に私自身を映して。



「ありがとう……でもね、私は魅音じゃないんです」



彼が驚いたような顔を見せている。

ごめんなさい。あの時は直ぐに言えなくて。

だけど、今度は言えます。

715創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 00:04:17 ID:FeoCeIy8
支援
716創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 00:04:44 ID:3X/fTj/j
支援
「私は魅音の、お姉の妹の――」


たとえ本当の魅音が私だとしてもそれは関係ない。

この人を愛した私は魅音じゃない。

だったら私は魅音じゃなくてもいい。

だって、この想いを忘れたくはないから――



だから私は口を開く。

失われた時間を埋めるように。

そしてこれからの日々に光が差し込むコトを願って。







「園崎詩音です。初めまして――北条悟史くん」










そう言って私は悟史くんに顔を向けた。



自分でも不思議なくらいに。



こんな顔が出来たんだと思える笑みが零れ出た。



同時に私の頬を涙が伝う。



それは待ちわびた想いが叶った。



そう思うと私は嬉しさで一杯になった。




どうしようもなく、本当に――




ただ、死んでもいいと思える程の嬉しさが目の前にあった。






  



【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に:死亡確認】
【残り36名】
719創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 00:06:07 ID:3X/fTj/j
支援
720創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 00:06:56 ID:bOudmI9f
  
721 ◆Wott.eaRjU :2009/06/30(火) 00:07:10 ID:5/0kBGWK
投下終了しました。
支援どうもありがとうございます。
なにかあればお願いしますね。
722創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 00:14:58 ID:HnCPdDK7
最後の詩音の攻撃は不発だったってこと?
723 ◆Wott.eaRjU :2009/06/30(火) 00:18:21 ID:5/0kBGWK
と、ロベルタの思考欄に放送まで休むとありますがこれは消し忘れです。

>>722
あ、すいません。ロベルタが避わす描写が抜けてましたね……。
ご指摘どうもです。wikiに収録された際、寸前で避けた描写を加筆する事にします。
724創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 00:24:00 ID:FeoCeIy8
投下乙です
詩音3度ロベルタから生き延びることはできなかったか
しかしロベルタ恐ろしいな
指を食いちぎり、パニッシャーを軽々と振り回すとか
そして3つの湖の謎が分からずじまいに
これから先どうなるんだろう
725創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 00:28:21 ID:BEYRrK3k
投下乙!!
やっべぇ……まさにバトルロワイアルって感じのお話で読み入ってしまいました。
ロベルタのターミネーターばりの強さと、詩音の追い詰められていく描写が素晴らしかったです。
何気に悪魔の実のカナヅチ設定を忘れていたから、そこにもビックリ!

詩音は最後に優しいねーねーに戻ったか……
お疲れ様、どうか夢の中だけでも悟史と仲良くしてくれ。
詩音の最後の攻撃は、避けられたって事でいいのかな?

湖の秘密は、ブラフだったのかね。
まぁ、イエローフラッグにあったって時点で信憑性が……w
本当に何かが隠されているとしても、今回はその姿は見えなかったって事か。

TEFさん了解です。
10人も書くんだし、個人的に一日延長は全然問題ないと思います。
ってかレポート用紙に書き込んでるって……すごいなぁ
726創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 01:15:23 ID:bOySpFfF
悪魔の実の能力者は水に入った瞬間に力抜けて、もがくことすら出来なくなる
元々弱ってたならなおさら
少なくとも、常人よりははるかに鍛えてるルフィでも、水の中では身動き一つ取れてない
詩音が岸掴んだり反撃したりするのも無理だと思う
727創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 02:33:50 ID:DbQ11CR9
展開には一切影響しないし、それぐらいいいんじゃね?
728創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 12:36:50 ID:wdgAwGZ3
常人より遥かに鍛えたとゆうか完全に超人だろ
そんなヤツでも何も出来ないのに常人の詩音は行動を出来るのがオカシイ
そこだけ直せばいいだろうが
729創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 15:16:14 ID:cq5vZdmU
古城組&クレア予約来てますわ〜、楽しみ。
では感想を。

ロベルタマジ基地、コワイ。
さすがに三度目はなかったか、詩音…。
でも最後は優しい姉に戻れたし、これで良かったのかな?

詩音の水中での抵抗に関しては、ちょっと岸に手がつくくらいはまぁ良いかと思います。
手がついても力が入らずに結局自力じゃ上がれなかっただろうし。
最後の攻撃は、月霊髄液の精神制御攻撃だし、詩音が奇跡を起こした、と言う見方をすれば問題ないと思います。
730創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 16:53:54 ID:JPgxI6xs
悪魔の実は海が駄目なんだろ
731創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 17:18:14 ID:VcuciWQb
ロベルタにパニッシャーを持たせるな危険
732創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 17:51:23 ID:0sCmHQAQ
海がやばいのは間違いないが、淡水はそれほどじゃないんじゃなかったか。
どんな種類の水でも駄目ってなったら酒も飲めないし風呂にも入れないぞ。
733創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 17:56:39 ID:wdVF0+AX
能力者の力を封じる海楼石も海のエネルギーを発する石だしな

川とか湖がダメな描写って原作にあったのかね?
734創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 18:19:19 ID:cq5vZdmU
>>733
能力者になると泳げない体になる。
海に嫌われ溺れる訳だから、海でなければ水に浸かっても泳げるし、大丈夫…
と言う訳でもないらしい。
その海という定義が、水たまりのことを言うらしい。
だから、海でなくても川だろうが湖だろうが半身以上浸かったらアウト。

作者が読者の質問に答える単行本専用コーナー、SBSで言ってたと思う。
ちなみに風呂に関しては能力者はシャワーや半身浴だけで済ますことが多いらしい。
つまり水に浸からなければ良いから訳だから、水を浴びたり飲んだりする分には問題ない。
原作での描写(と言えるかは微妙)は確かエニエス・ロビー編の
ナミ対カリファ戦でナミのセリフがそれっぽかった気がする。
735創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 18:32:31 ID:bOySpFfF
海ってのは、水が溜まってる場所全てを指すって作中で明言されてる
736創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 18:41:33 ID:BEYRrK3k
でも、今回の詩音の最後の攻撃は精神力を使ったものだし。
もがく事についても子供時代のルフィは山賊に落とされたときもがきまくってたよね。

大人になった能力者は無駄に体を動かすと余計酸素を消費するって知ってるからもがかないのかな。
ルフィは単に無駄に動かないほうが苦しくないから、とかすれば一応自然だし。
ってか作中海に落ちた能力者なんてルフィとスモーカー位じゃない……?
737創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 18:43:30 ID:wdVF0+AX
説明乙

アラバスタ編での集団入浴とカリファの泡風呂で混乱してた
しかし、ワンピ世界の常識ってすげぇなぁ
738創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 18:45:07 ID:FeoCeIy8
能力者でありながら動けたのは湖の謎と関係がある
と自分は勝手に想像してる
けれど実際ロベルタがダメージ受けたわけでもないしいいんじゃないかと思うけど
739創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 19:13:39 ID:hQvtPa+K
そんな細かい設定持ち出してもしょうがないだろ
誰もがワンピースに関して詳しいわけじゃないんだし
公式設定では「海に嫌われカナヅチになる」ってことになってんだから、湖は平気でもいいじゃん
740創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 19:24:59 ID:JPgxI6xs
展開に関係ないし、どうでもいいな
741創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 19:48:46 ID:Yb4hnBUv
どうでもいいことでグダグダ文句言い出すからワンピ厨はウザいんだよな
やっぱワンピなんか参加させるべきじゃなかったんだよ
さっさと殺した方がいいな
742創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 20:05:49 ID:wdgAwGZ3
いいから市ねよw
743創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 20:15:31 ID:Yb4hnBUv
>>742
ワンピ厨乙w
744創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 20:27:19 ID:7Ua3rsGd
子供の頃のルフィが海に落とされたときに、沈まないようもがいて頑張ってた場面があったと思うが
745創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 22:42:48 ID:nWNqY1c+
一巻読んできた。
確かにもがいてるな。
原作でできることはOKってことでいいんでない?
746創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 23:15:43 ID:bOySpFfF
最初の頃はもがいたり出来てたけど、
最近の方で水に落ちたシーン見ると、抵抗出来ずに沈んでる
これは設定変わったってことじゃないか?
747創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 23:40:26 ID:UprIRt4Z
後出しに準拠した方がよくない?
748創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 23:51:43 ID:aPbcJHLo
そう言う場合書いたモン勝ちじゃないかな?

むしろロベルタの状態表に詩音の道具が加えられてない方が
個人的には気になったかな

折角面白い話なのに、いちいち言うもんじゃないよ

そう言えばロベルタがやや中央よりに来たことで
火種がさらに広くなった気がするんだが……
749創る名無しに見る名無し:2009/06/30(火) 23:55:02 ID:FeoCeIy8
したらばにお詫びがきてるんだが・・・
自分は一気に投下してほしいかな
750創る名無しに見る名無し:2009/07/01(水) 00:06:09 ID:/lw8dWRk
前編来てるな。一気に読みたいから我慢するか
751創る名無しに見る名無し:2009/07/01(水) 00:11:20 ID:lWCAq5Ku
お詫びは兎も角……前編とうかしておいてそれはねぇんじゃ無いのか。
それって結局「間に合ってないけどそれでも期限ぶっちぎっても投下したい」という事じゃないか。
ここ予約したい人だって居ただろう。
一度はきしてまとめて投下すればいいのに
752創る名無しに見る名無し:2009/07/01(水) 00:30:12 ID:KScj+guL
う〜ん、自分も一気に投下して欲しかったけれど。
理由も言ってるし、自分は良いと思うよ。
勿論だけど今回限りでね。

何はともあれ意見がある人は議論スレ行こうぜ。
753創る名無しに見る名無し:2009/07/01(水) 00:33:47 ID:O/w3F7/3
どうせ分岐制なんだから気にせず書き終わってから投下すりゃいいじゃん
その間に他の人が予約したって、分岐すればいいだけなんだから
754創る名無しに見る名無し:2009/07/01(水) 01:05:02 ID:zQQHi8Bb
理由も言ってるし、今回限りと言うことで良いと思うな。
楽しみにしてます。

んで、古城&クレア組は破棄か。
矛盾はあれか?多分あれだ。
またの予約を楽しみにしてます!!
755創る名無しに見る名無し:2009/07/01(水) 17:51:34 ID:nm9UsdPU
分岐なんてしたって誰も書かないじゃん
756創る名無しに見る名無し:2009/07/01(水) 18:04:17 ID:js3S5d9/
そりゃそうだ。
分岐される作品の書き手からすれば、自分の書いたものを無視して別の話書かれるとかされてその続き書こうなんて誰も思わないよ。
分岐ってのはとどのつまり「お前の話の続きは書きたくない」っていう「リレーの放棄」なんだから。
757創る名無しに見る名無し:2009/07/01(水) 18:20:05 ID:O/w3F7/3
じゃあ分岐制にする意味ないじゃん
758創る名無しに見る名無し:2009/07/01(水) 22:00:47 ID:Dt3c3ArB
意味はあるだろ。
お前らとリレーなんかしたくねー! 俺一人で書く! ってんなら誰も止めないし。
ソレを読んで面白いって感想付けてくれる人がいるなら需要はあるだろうし。
というか今さらそんなことに気付いたのか?
759創る名無しに見る名無し:2009/07/01(水) 22:31:15 ID:MtVpN6uz
分岐制は荒らし対策にも有効だから
760創る名無しに見る名無し:2009/07/01(水) 22:47:08 ID:gHHh/QqT
荒らしのゴネ徳がウザいから
自己満足のゴミSS書かせて放置するのが分岐です
761創る名無しに見る名無し:2009/07/01(水) 22:58:05 ID:O/w3F7/3
じゃあ分岐制とか言うなよ紛らわしいから
荒らし無視制とか言えよ
762創る名無しに見る名無し:2009/07/01(水) 23:24:28 ID:Dt3c3ArB
そっちのほうが紛らわしいわ。あほか
763創る名無しに見る名無し:2009/07/01(水) 23:27:21 ID:PuylzcT9
まぁ落ち着け。ウーロン茶でも飲んでゆっくりしよう。
764創る名無しに見る名無し:2009/07/01(水) 23:52:49 ID:togHT3Qr
仮投下スレへの指摘はあっちとこっちのどっちでするべきなんだろう
とりあえず、ひとつ言うとすれば、令呪をカズマの治癒に使うのは設定上無理

瀕死の傷を負ったサーヴァントに一瞬で治れと命じても、そいつが治癒スキルを持っていない限り、
傷が魔力の糸で縫合されてしばらく戦闘続行できるようになるだけで、痛みは消えないし能力も低下する
しかも令呪の効果が切れたらダメージが増加して跳ね返ってくるって設定だったはず
……だよね?

しかし投下速度遅いな
765創る名無しに見る名無し:2009/07/02(木) 00:13:32 ID:QrupOvmS
予約延長して、それでも間に合わなくて、前後編に分けて投下して
そんでこれかよ…
流石に計画性なさ過ぎじゃないの?
てか後編2レス分だけなら昨日投下出来たでしょ
766創る名無しに見る名無し:2009/07/02(木) 00:21:34 ID:mC+aSIBK
投下来てたのか
ギルさま優しすぎる…
>>764
そんな設定は聞いた事もねーぞ
エーテル体の状態の鯖なら膨大な魔力の塊である令呪使えば無理やり身体は直せるはず
ただ、ゲイボルグなどの武器で傷付けられた場合はその限りじゃない

んで、今回の場合だが令呪は鯖に使わないなら単なる魔力のストックにすぎず
第四次の言峰状態になる。
自身の魔力回路を起動しなくても魔術が発動出来るけど、カズマが傷を治すのは
ちょっとあり得ないな。
傷を回復させたいなら別のアイテムにすべき。
つーかそこまで消耗してたか?
原作じゃ残りかすすらなくなったような状況でも戦い続けてる男なんだが
767 ◆SqzC8ZECfY :2009/07/02(木) 00:31:34 ID:Z/M1bq/Y
空気読まずにちょっと失礼します。
したらば規制で予約スレに書き込めないのでここで。
129話「止まらない世界」と135話「銃弾と交渉と」からクレア・スタンフィールドとレヴィ予約します
768 ◆SqzC8ZECfY :2009/07/02(木) 17:44:47 ID:Us4aPEA4
そして2chも規制されるか分からないので今のうちに追記します。
したらばに書き込もうとすると「Proxy規制中:80番ポートが開いています」と表示され、書き込みができません。
お手数ですが管理人さんに解除をお願いします。
769創る名無しに見る名無し:2009/07/02(木) 21:01:55 ID:2Er3JUL4
TEF氏のSSは破棄か。
仕方ないかもね…また気が向いたら書いて欲しいな。
770創る名無しに見る名無し:2009/07/02(木) 21:23:18 ID:8lq2PrHF
気にせず書き続けてくれたらすごいうれしい
771創る名無しに見る名無し:2009/07/02(木) 21:56:16 ID:NiEU3LvR
だな。暇ができたら何時でも書きにきて欲しいな

そして早速予約がキタ!!!
久し振りの氏が書くバトルか、今から楽しみだぜ!
772創る名無しに見る名無し:2009/07/03(金) 17:45:12 ID:3ph/7nAs
辛抱出来ん子らやなぁ
773創る名無しに見る名無し:2009/07/03(金) 17:45:55 ID:3ph/7nAs
誤爆や
堪忍な
774創る名無しに見る名無し:2009/07/03(金) 21:43:16 ID:3KarQyyc
関西弁(笑)
775創る名無しに見る名無し:2009/07/03(金) 22:18:31 ID:YbOY6o/9
ウルフウッドがパニッシャーを担いで>>774の元へ向かったようです
776創る名無しに見る名無し:2009/07/03(金) 22:44:05 ID:5LLzl50j
そしてそのあと
>>774の姿を見たものはいない…
777創る名無しに見る名無し:2009/07/03(金) 22:57:02 ID:hrNwriS0
無茶しやがって……。
778創る名無しに見る名無し:2009/07/03(金) 23:08:21 ID:z7tTw81V
大丈夫さ、どうせ一緒にいるヴァッシュが変わりに殴られてすませるよ
779創る名無しに見る名無し:2009/07/03(金) 23:47:41 ID:hrNwriS0
でも今ウルフウッドと一緒にいるのは幼女だぞ、
代わりに殴られるなんて……。
780創る名無しに見る名無し:2009/07/04(土) 00:48:30 ID:vC8DxtCZ
またこういう流れかよ
いい加減キモイ
781創る名無しに見る名無し:2009/07/04(土) 00:49:27 ID:p0jK1L9K
>>780
トリつけてくれ
そっちの方がNGしやすいから
782 ◆Wott.eaRjU :2009/07/04(土) 00:58:13 ID:IwCdfmK5
では、完成したのでクリストファー、沙都子、アルルゥを投下します。
783 ◆Wott.eaRjU :2009/07/04(土) 00:59:09 ID:IwCdfmK5
「十三人か……なんだか不吉な数字のような気がするのは僕だけかな?
どうせなら十とか十五とかの方がキリの良い数字だと思うけど」

二回目の放送が終えて直ぐ、飄々とした声が響く。
二十代男性の声を連想させるそれは同意を求めていたが応じるものはない。
声の主、クリストファー・シャルドレードはやがて両肩を竦める。
しかし、その表情からはそれほど残念がった様子は見られない。
半ば予想していたのかもしれない。
自分の飛ばした、少し不謹慎な軽口に笑みで同意する事はないだろうと。
苦笑いは兎も角、少なくとも大笑いはない。
たとえ無骨な、古い友達のチー以外の人間だとしても。
なんとなくクリストファーにはそんな自信があった。

「……クリスさん。笑おうにも笑えませんわ」

案の定、予想した内容を含んだ返事が返ってきた。
見れば金髪の少女が咎めるような顔を向けている。
わかっていたけどちょっと反省。
この女の子、北条沙都子と必要以上に不仲になって得な事はない。
だって彼女は友達――いや、厳密にいえば親友の友達なのだから。
但し、出会ってあまり時間が経ってない親友の話だが。

「ごめんごめん。やっぱり僕は不自然な存在だからまともな考えが出来ないみたいだね」
「そんなコト……」

特に意識したわけでもないが自嘲するようにクリストファーは口を開いた。
不自然な存在、“不老”の力を与えられた、クリストファー自身を示す言葉。
自然な存在に憧れ、同時に不自然な自分とでは崩せない隔たりがある。
今出た言葉はそれを無意識的に認識しているためなのであろう。
かつてクリストファーはそれを壊す為に、ただ人間を超えようとひたすらに殺す技術を磨き――

その話は今は特に関係ないだろう。そう、今はまだ。
それよりもクリストファーにはやるべき事があった。
自分の言動でどう反応を返せば良いか困っている沙都子。
やるべき事はそんな彼女と楽しく話を進める事だ。
楽しいというのはあくまでもクリストファー主観ではあるが。
だが、その前に一つ。
苦しくもあり悲しくもある話を終わらせなければいけない。
こっちは沙都子視点の話であったけども。


「おっと、いけない、話がそれた。それで沙都子――大丈夫?」


少しだけ、おどけた様子は消してクリストファーは沙都子に問う。
何に対しての質問なのかは言ってはいない。
だってきっとわかってくれる。そう思っていた。
この状況で、この疑問が意味する事は一つ。
放送で知った、ギラーミンから知らされた二つの情報。
その内の一つをクリストファーは話に切り出す。

784 ◆Wott.eaRjU :2009/07/04(土) 00:59:56 ID:IwCdfmK5


「園崎魅音って名前が呼ばれたから、ちょっと気になってね」


そして駄目押しの一言。
表情からあまり心配そうでなさそうに見えるのは気のせいだろうか。
いや、それはきっと気のせいではない。
クリストファーに特に不安はない。
園崎魅音には少しばかしの同情の念はあったが所詮は他人。
友達の友達の友達とややこしい関係だが、生憎彼女のために流す涙は持ち合わせていなかった。
だって自分は園崎魅音とやらの顔すらも知らないのだから――訊かれたらそう答えるかもしれない。

関心がある事は一つ。
沙都子が魅音の死についてどう反応するかについてだ。
悲しむことは悲しむだろう。
だが、本当の問題はそこからだとクリストファーは考える。
知人の死にショックを受けて潰れるか、はたまたそれをバネにして更なる歩みを目指すか。
まあ――結局、考える間もなくクリストファーには答えが判っていたのだが。


「ええ……大丈夫ですわ。だっていつまでもクヨクヨしていたらきっと魅音さんに怒られてしまいますもの」
「うん、やっぱり予想通り☆ 良い子な沙都子には素敵な歌のプレゼントを贈ろう! ルラララララ〜♪」
「け、結構ですわクリスさん!」


外見は二十代といえどクリストファーは既にその三倍以上の時は生きている。
その永い間、超越のためにずっと人間を見続けてきたコトで彼の観察眼は相応のものだ。
だから判っていた。沙都子がここで挫けてしまう人間ではない事に。
沙都子は歩いていく勇気を貰ったのだから。
どこか口が悪く、臆病な人形の少女から確かに。


そしてこれまた予想通りの反応を返し、プイと横を向いてしまった沙都子の横顔をクリストファーは笑顔で送る。
どうやら子供扱いされたと思い、少しむくれた様子はなんとも面白い。
しかし、クリストファーは沙都子からは視線を逸らし、別の方向へ傾けた。
まだまだ仕事は残っているらしい。
生きるために年長者としてのけじめをつけようとしているのだろうか。
だけども多分それは関係ない。ただ単にそういう堅いことは抜きにクリストファーは気になったに違いない。
もう一人の小さな同行者はどんな事を考えているのだろうかと。


「やあ、アルルゥ。気分はどうだい?」
「んー……クリス」


腰を下ろし、アルルゥの目線と自身の高さを揃えてクリストファーが優しげな声で問いかける。
一方のアルルゥはまだクリストファーのさながら吸血鬼染みた風貌に慣れていないせいか少し小さな声で答えた。
まあ、元々人見知りが激しいアルルゥにとっては上出来だろう。
その事実は知らないがクリストファーはアルルゥの態度に特に気にすることはなかった。
強いていえばアルルゥがまだ何か言いたそうに少しそわそわとしているぐらいだろうか。
そんなクリストファーの心情を察したようにアルルゥは再び口を開いた。

785 ◆Wott.eaRjU :2009/07/04(土) 01:01:12 ID:IwCdfmK5
「カルラとジョースケが呼ばれた」
「うんうん、カルラって人とヒガシカタジョースケは死んじゃったからね。名前が呼ばれるのは当然のコトさ」
「クリスさん、もっと別の言い方があるんじゃありませんこと……?」


いつの間にか後ろへ来ていた沙都子がひそひそとアルルゥに聞こえないような声で囁く。
だが、クリストファーはいつもと変わらない笑みを返した。
だって仕方ないじゃない――非情にも思える言葉と共に。
既にアルルゥはカルラと東方仗助の死について知っている。
レヴィという粗暴な参加者がこれまた粗暴なやり方で教えてしまったためだ。
だけども、放送で再び彼らの死を知る事はアルルゥにとって辛い事に違いない。
沙都子はそう思ったのだが、結局その意図が何かを為せたわけではなかった。
少し心配気に沙都子はアルルゥの方を覗きこむ。
瞬間、沙都子の表情は明らかに強張った。


「え? 名前、呼ばれるの……?」
「そうだよ、アルルゥ。死んじゃった人はさっきみたいに呼ばれちゃうんだ。
前にもあったでしょ? 今みたいなやつ。
わかりやすい内容だからてっきりヒガシカタジョースケはわかってると思ったけどね」
「あ……」

アルルゥの様子が可笑しい。
呆然と、目の前に不思議そうな顔をしたクリスが居ることも忘れているような様子だ。
カルラと仗助の死は今も悲しいだろうが、何か別の事について考えているように見える。
それも些細な事ではなく、悲しい結果を暗示するものはないかと沙都子は感じた。
やがてその推測は間違いではなかった事を知らされた。


「でも、ジョースケはわからないって。
ベナウィとトウカとおねーちゃんが呼ばれたけどよくわからないって……え……」


アルルゥも理解してしまったのだろう。
クリスが言った言葉を、仗助が敢えて誤魔化した意味を。
その小さな頭で自分の意思とは裏腹に認めたくはない事実を。
自然と言葉は止まってしまった。
そしてその代わりに流れ出たものは――きらめく雫。
786 ◆Wott.eaRjU :2009/07/04(土) 01:01:57 ID:IwCdfmK5
「ク、クリス!」
「あーなるほどねぇ。まったく……問題の後回しは嫌われちゃうよ、ヒガシカタジョースケ」

同時に全てを悟った沙都子はクリスに声を掛ける。
しかし、クリストファーは独り言を呟くように言葉を洩らしただけだ。
沙都子の意図は察していただろうが言葉も行動も特に返しはしない。
ただ、立ち上がり、面倒事から逃げるように窓辺の椅子に腰かけてしまった。
それもご丁寧に両目をしっかりと閉じて、さも自分は関係ないですよといわんばかりに。
クリストファーの無責任ぶりに沙都子は腹立たしさを覚えるが、今はそれどころではない。
直ぐにクリストファーからは目を離し、前を見据える。
そこには既に溢れ始めた涙があった。


「うえ……うえ…………ジョースケ、ウソついた。アルルゥにウソついた……」

一滴から始まったものは勢いを増し、既にアルルゥは泣きじゃくっている。
遂に知ってしまったのだから。
カルラと仗助だけではなく死んでしまった仲間が居た。
それも彼ら二人よりも以前に。
二人だと思っていた数が一気に五人に増えた現実がアルルゥの小さな胸に突き刺さる。
大きすぎた悲しみを言葉で言い尽くす事は出来ず、ただ大粒の涙を零し続けるしかなかった。
悲しみの大きさ故に人目を憚る勢いを見せる、感情の奔流は誰であろうと止められそうにない。
沙都子とクリストファーはアルルゥが泣きやむのを待つしかな――いわけではなかった。


「……え?」


アルルゥが顔を上げる。
全身を確かに走った感触は決して不快なものではない。
視線の隅に揺れる髪、そしてその人物の体格からアルルゥは理解した。
力強い抱擁の主が誰かという事に。


「しっかりしてくださいまし! アルルゥさん……」
「……サトコ」


沙都子がアルルゥの小さな身体を抱きしめる。
アルルゥの背中に両手を伸ばし、彼女の小さな顔を自らの胸に押し付けて。
まるでアルルゥが流す涙は、抱いた悲しみは自分が受け止める。
言葉に出さずともそう言わんばかりの様子を見せていた。

787 ◆Wott.eaRjU :2009/07/04(土) 01:02:46 ID:IwCdfmK5
「確かにアルルゥさんのお友達は死んでしまいましたわ、仗助さんはあなたには言わなかった。
だけど、仗助さんはアルルゥさんを困らせようとしたわけじゃありませんわ!」
「ジョースケが……?」

仗助と長い間行動を共にしたわけではない。
だけど、沙都子は知っている。
いつ死んでも可笑しくなかった傷を負いながらも、自分に言付けを頼んだ仗助の顔を忘れる事はない。
そして死の間際、仗助が言った言葉もまた同時に。
この場で知り合っただけにしか過ぎないアルルゥを気遣う言葉は今も鮮明に蘇る。
そう、仗助が見せた“黄金の精神”は沙都子が彼を悪い人間ではないと判断するのに十分過ぎた理由だった。

「仗助さんはあなたに悲しんでほしくなかったから……そうに決まってますわ。
だって、私たちは仗助さんに頼まれたのだから。
アルルゥさんのお父さん、ハクオロさんとあなたを会わせてくれと確かに言っていましたわ!」
「おとーさん……おとーさん……」

ハクオロという名前は名簿に載っている。
未だ顔も知らない人物だがアルルゥの父親ならば話は別だ。
ハクオロという単語に明らかに反応したアルルゥは彼の名を何度も呟いている。
余程深い絆で結ばれた親子なのだろうか。
ほんの少し、アルルゥの事を羨ましいなと思いながらも沙都子は両腕に力を込めた。
さっきまでよりも強く、そして優しくもあり――


同時に小さな姉の顔を見せていた。


「だけど安心してくださいまし。絶対に……このねーねとクリスがあなたをハクオロさんに会わせて差し上げますわ!!」

沙都子が浮かべる表情に曇りはない。
沙都子がアルルゥに向けて言い放った言葉に、気遅れのようなものを感じさせる事はない。
きっと以前の沙都子では与えられなかったであろう強さがそこにあった。
そう、この殺し合いに呼ばれた直後。
クリストファー、そして沙都子に大事な事を教えてくれた翠星石に保護されたあの時では。
そんな沙都子の姿を見てアルルゥはいいようのない心地良さを覚えた。
だが、それでもアルルゥは沙都子に自らの顔を押し付ける。


「ひっ…………うぇ、うぇ…………」
 

溜めこんだ悲しみを全て流しきるように。
沙都子の言葉を噛みしめ、ハクオロとの再会の実現を胸に固く留めて。
そして死んでしまった仲間とたった一人の姉の顔を思い浮かべて、アルルゥは依然として涙を流し続ける。
沙都子はそれ以上何も云わず、ただアルルゥの身体を自分の身に引き寄せた。
決して――放しはしない。
そう言わんばかりに、力強く。



◇     ◇     ◇


788 ◆Wott.eaRjU :2009/07/04(土) 01:05:40 ID:IwCdfmK5



――僕も入ってるんだなぁ、まあいいけどね。


窓辺の椅子に腰掛け、時折沙都子とアルルゥの方を見やりながらクリストファーは思う。
沙都子が言った言葉、自分とクリスがハクオロを絶対に捜しだすという旨。
別に拒否する気はなかった。友達の頼みは無下に断りたくはない。
何故かだそんな心境になっていた自分が少し不思議にも思えてくるのは気のせいだろうか。
答えは出ない。しかし、別の事で確信した事があった。


――けど、やっぱり沙都子とアルルゥは優しいな。
死んじゃった人間の事でこんな風に感情を出せるのは良い事だよ、少なくとも僕達“吸血鬼(ラミア)”よりかは。


放送で知らされた十三人の死者。
翠星石の名前が呼ばれた時、少しだけ表情を顰めたクリストファーだが基本的には関心がなかった。
たとえ不老という力を与えられたとしても傷をつけられれば誰だって死ぬ。
そんな判り切った事はとうに理解し、既に何十人もの同類が壊れ、去っていったが特に感情を持った事はなかった。
それがヒューイ・ラフォレットにより造られし存在、“吸血鬼(ラミア)”での常識。
しかし、沙都子とアルルゥは違う。
彼女等は死んだという事実を受け止め、相応の感情を見せている。
泣きたい時は泣く様に、嬉しいと感じた時は笑うように――至極自然な反応だ。
不自然な存在には真似が出来ない。クリストファーが自身にはないものだと既に判断してしまったものが確かにある。
羨ましくもあり、素晴らしいものだとも思いながらクリストファーは二人に対して悪い感情は持っていなかった。


――僕が死んじゃったら沙都子とアルルゥは悲しんでくれるかな。ま、確かめる手段なんてないけどね。


少なくとも、意味のない想像を働かせるくらいには。



◇     ◇     ◇


789 ◆Wott.eaRjU :2009/07/04(土) 01:06:25 ID:IwCdfmK5
「沙都子、悪いけどもう一回僕達の方針を言ってくれないかな」
「ええ……当面はレヴィさんともう一度会って、このローザミスティカの事を聞き出す。
もしくは翠星石のお友達の真紅とハクオロさんと合流するでよろしいですわね?」
「うん、素晴らしいね沙都子。アルルゥもいいかな?」
「ん!」

クリストファーの言葉に沙都子が答え、そしてアルルゥも言葉を返す。
沙都子と手を繋ぎ、常に傍にすり寄っている事から大分信頼しているのだろう。
微笑ましい光景だなとクリストファーは思いながら、彼女らの先導役を駆っている。
やがて一行はF-2エリアの西出口に辿り着いた。

放送を聞いた事で彼らが決めた方針。
蒼星石の名前が呼ばれた事により、沙都子のローザミスティカの持ち主はほぼ特定された。
それは放送で呼ばれたもう一体のローゼンメイデン、蒼星石の存在。
生憎、ローザミスティカがこの場に居るローゼンメイデン以外のものとは彼らは考えていなかった。
蒼星石のものであれば翠星石の一つの願いは潰えてしまった事になる。
だが、もしかして何かの間違いであれば――そう思い、彼らは再びレヴィと接触する事を決めた。
ローザミスティカを持っていたのは彼女であり、どういう経緯で手に入れたのかを聞く必要がある。
それにアルルゥに対しての行動を考える限り、彼女が他者と不要な争いを起こす可能性も無視できない。
そうなる前に止めなければならない。
もし、自分達の知人が、何も知らない人たちが怪我をする前に。

沙都子が中心となって決めた方針にクリストファーもアルルゥも特に異論はない。
そう、確かにクリストファーには異論はなかった。
人知れず、己の胸中だけに抱いた感情はあったが。


(やっぱり死んでないか。フェリックス・ウォーケン……いや、今はクレア・スタンフィールドだっけ。
あのどうしようもないバケモノは、まったく)


フェリックス・ウォーケン――名簿ではクレア・スタンフィールドという名で載っている男。
燃えるような赤髪を逆立たせ、雨が降りしきる中、ミスト・ウォール屋上で戦った。
そしてこの殺し合いでも、今度は不思議な人形を侍らせて戦った。
結果は0勝2敗。しかも自分の存在すらも忘れられていた。
自分の方は一瞬とも忘れたことはなかったというのに。

造作もなく人を殺せた自分に人を殺せなくなった原因を作った男の名前が呼ばれなかった。
その事実に対しクリストファーは純粋に残念だと思っていた。
クレアが死ねば間違いなくこの殺し合いでの脅威が一つ減る事になる。
だが、同時にクレアの名前が呼ばれなかった事を当然だと感じている節もあった。
790 ◆Wott.eaRjU :2009/07/04(土) 01:07:27 ID:IwCdfmK5

造作もなく人を殺せた自分に人を殺せなくなった原因を作った男の名前が呼ばれなかった。
その事実に対しクリストファーは純粋に残念だと思っていた。
クレアが死ねば間違いなくこの殺し合いでの脅威が一つ減る事になる。
だが、同時にクレアの名前が呼ばれなかった事を当然だと感じている節もあった。

(まあ、そりゃあそうだよね。あれが簡単に殺されるわけないし、それにあっさりとやられたら僕がもの凄い弱いってコトになっちゃうし。
でも、なんだかいろんな人達が居るからと思ったけど……やっぱりそうそう上手い話はないんだなぁ)

一言で言うならばクレアは人間ではない。
生物学上でのヒトの定義に収まるのは姿形だけではないか。
半ばクリストファーは本気でそう思っていた。
何をバカなことをと笑う人間も居るかもしれない。
実際、クリストファーも嘲る立場に立っていただろう。
十字槍を指で受け、更にそれを使って銃弾を捌くことを始めとしたクレアの異常な力を垣間見なければ。

この世に造られてから二度目に知った敗北。
歯の前歯の全てを折られたあの時よりも更に感じた絶望はあまりにも深かった。
絶対に勝てない――掛け値なしにそう思えた。
その認識は今も変わらない。
更に力を手に入れたクレアには何があろうとも自分では勝てないだろう。
だが、クリストファーは知っている。
そんなクレアに立ち向かった一体の少女人形を――クリストファーは知っていた。


(だけど……悔しいのは変わらないよね。ほんとうにさ…………)


彼女の存在が自分に何か影響を与えたのだろうか。
真実はわかない。
ただ、わかっている事は一つ。
副業として殺し屋をしていた自分が二度も負けたのだ。
たとえ勝てないとわかっていても悔しさは消えない。
そんな事を思いながらクリストファーは歩を進めていく。
時折頬を撫でる風は、クリストファーの感情とは裏腹にいつまでも冷たく吹いていた。



791 ◆Wott.eaRjU :2009/07/04(土) 01:08:48 ID:IwCdfmK5
【F-2 遊園地西出口/1日目 日中】
【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康、L3
[装備]:象剣ファンクフリード@ONE PIECE、レッドのニョロ@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]:支給品一式×2<沙都子、翠星石>、グラン・メテオ@ポケットモンスターSPECIAL、
     翠星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン、翠星石の亡骸首輪つき、
     雛苺のローザミスティカ@ローゼンメイデン
     F2000Rトイソルジャー@とある魔術の禁書目録(弾数30%)、5.56mm予備弾倉×4
     カビゴンのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、ゴローニャのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL
[思考・状況]
1:絶対にアルルゥをハクオロに会わせる。
2:真紅、もしくは蒼星石にローザミスティカを届ける。水銀燈には渡さない。
3:部活メンバーに会いたい。
4:レヴィと再び会い、ローザミスティカ入手の経緯を聞く。


※参戦時期は具体的には不定。ただし、詩音を『ねーねー』と呼ぶほどに和解しています。『皆殺し編』の救出以降ではありません。
※名簿は確認したようです。
※雛見沢症候群の進度は具体的には不明。L5まで進行した場合、極度の疑心暗鬼と曲解傾向、事実を間違って認識し続ける、などの症状が現れます。
 説得による鎮静は難しいですが不可能ではありません。治療薬があれば鎮静は可能ですが、この場にあるかどうかは不明です。
※真紅、蒼星石、水銀燈に関しては名前しか知りません。
※アルルゥの名を仗助から聞きましたが、アルルゥの家族の詳細についてはまだ把握していません。
※レヴィに対して良い印象を持っていません。
 またレヴィがドールを壊して、ローザミスティカを奪ったのではないかと疑い、それが蒼星石のものではないかと考えています。


【クリストファー・シャルドレード@BACCANO!】
[状態]:健康、左手と背中に火傷
[装備]:アウレオルスの暗器銃(装弾100%)@とある魔術の禁書目録、マスケット銃用の弾丸50発
[道具]:大きめの首輪<ドラえもん>
[思考・状況]
1:さて、これからどうしようか
2:沙都子とアルルゥを守る。
3:クレアには会いたくない。だけど……
※ローゼンメイデンについて簡単に説明を受けました。他のドールの存在を聞きました。
※名簿を確認しました。
※参戦時期は、『1934完結編』終了時です。


【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]健康、頭とわき腹に軽い痛み、いくらか擦り傷(治療済み)
[装備]なし
[道具]支給品一式×2<アルルゥ、仗助>、ニースの小型爆弾×1@BACCANO!、
    不明支給品(0〜1)<仗助> 、ひらりマント
[思考・状況]
1:ハクオロに会いたい
2:沙都子は信用。クリスは怖い(でもちょっと信用)。レヴィは謝るまで許さない。
※ここが危険な場所である事はなんとなく理解しましたがまだ正確な事態は掴めていません。
※不明支給品(0〜1) <アルルゥ>はひらりマントでした
※放送の内容を理解しました。エルルゥ達の死も認識しています。
792 ◆Wott.eaRjU :2009/07/04(土) 01:10:42 ID:IwCdfmK5
投下終了しました。
タイトルは「クリストファー・シャルドレードは一人淡々と考える」でお願いします。
ではまたの機会に。
793創る名無しに見る名無し:2009/07/04(土) 01:42:53 ID:vNxYcrS+
投下乙!
魅音が死んだ事によって沙都子がどうなるか、少し心配だったけれど。
ねーねーになっただけあるね、安心しました。
そしてアルルゥ……とうとうみんなが死んでしまっている事を知ったか。
ハクオロ、アルルゥ共にどちらかが失われれば、もう壊れてしまいそうだね。
どうか会えますように……いや、でもロワだからなぁ。

そしてクリス、やっぱりお前は不自然だ!w
リカルドじゃないんだから、もう少し子供には気を使うべきだよ!
でも翠星石の行動に影響を受けて、また少しずつクリスは変わろうとしているんだね。
どうか二人を守ってやってくれ。

しかしこの3人はこれから何処へ向かうのか、先が楽しみになるお話でした。改めて乙!
794創る名無しに見る名無し:2009/07/04(土) 01:52:06 ID:vNxYcrS+
っと、肝心なことを書き忘れてました。

アルルゥはカルラやトウカを呼び捨てにはしてなかった気がします。
カルラおねえちゃん、トウカおねえちゃん。って感じ?
ベナウィはどうだか覚えてないけど……すごい細かい事だけど、気になりました。

あぁ、でもここのアルルゥは「この腐ったゲームをぶち壊す」とか思っちゃう子だからなぁ
795創る名無しに見る名無し:2009/07/04(土) 11:25:17 ID:o2SQr/DH
投下乙です
そういえばアルルゥって仗助から死亡者の情報説明されてなかったんだったな
他のキャラより重い現実を味うことになったが沙都子のおかげでなんとか立ち直ることができてよかった
そしてクリスは相変わらず淡々としてるな、アルルゥに対しても気遣い0だし

さて今日明日あたり半クリクレアとレヴィの投下があるのか
ちょうどいい感じにつながってて面白いな
796 ◆Wott.eaRjU :2009/07/05(日) 00:01:45 ID:QoPUhogR
感想どうもありがとうございます。

>>794
了解しました。ではwiki編集された際に修正しておきますね。
ご指摘どうもです。
797 ◆SqzC8ZECfY :2009/07/05(日) 00:35:21 ID:/451lh7V
申し訳ありません、完成しましたが推敲の時間が欲しいので延長をお願いします。
明日まではかからず投下出来ると思います。
798創る名無しに見る名無し:2009/07/05(日) 00:38:21 ID:QoPUhogR
了解しました。頑張ってくださいー。
799創る名無しに見る名無し:2009/07/05(日) 00:43:28 ID:Q/g99NMl
>>797
予約してたっけ?
800創る名無しに見る名無し:2009/07/05(日) 00:46:55 ID:UKyTIuc+
>>797
まぁ普通に延長するだけだし問題ないでしょ

>>799
>>767で予約してる
801創る名無しに見る名無し:2009/07/05(日) 20:30:40 ID:ygjh1KXx
延長なければ今日は劇場付近の乱も投下されるのか。
クレア、レヴィも投下されるそうだしwktkだわ
802創る名無しに見る名無し:2009/07/05(日) 20:33:50 ID:LGsX1AGQ
ココロオドルってやつだなw
投下が楽しみだw
803創る名無しに見る名無し:2009/07/05(日) 21:07:04 ID:T1ggq1Me
全裸で待ってるぜw
804創る名無しに見る名無し:2009/07/05(日) 21:15:12 ID:ygjh1KXx
と、残念ながら元EH氏は延長か。
まぁ、wktkできる時間が延びたと考えれば良いもんだぜ
805 ◆SqzC8ZECfY :2009/07/05(日) 23:44:01 ID:zVy4dkus
投下します
806God&doG ◆SqzC8ZECfY :2009/07/05(日) 23:45:29 ID:zVy4dkus
ソレは奇妙な光景だった。
巨大なジェットコースターにキラキラと電飾を纏ったメリーゴーランド。
そして遠くからでも目に付くほど大きな観覧車。
そのどれもが鮮やかなカラーリングに彩られ、見るものを楽しませるべく機械に制御された動きを繰り返している。
だがそれらを利用する来客は存在しない。
少なくともここには楽しむためにやってくる者はいない。
遊園地に相応しい家族連れやカップルの楽しむ声は望むべくもない。
この地には殺し合いに放り込まれた人間しか存在しないからだ。
彼らにとっては様々な遊具は敵から身を隠すための障害物でしかありえない。
よって現在この地を移動中のクレアにとっても、これらの施設は標的を探索するのに邪魔なものとしか写らなかった。
スタープラチナの視界は遥か彼方まで精密に映し出すが、流石に透視能力までは持ち合わせていない。
先ほどまで戦っていた連中の生き残りを探してみたが、どうやらどこかに隠れたか。
見つけるのはなかなか骨が折れそうだった。

「……いけ」

がしり。
スタンドの脚が地面を叩き、その反動で石化したクレアの本体が飛び上がる。
次にクレアの左足が地を蹴った。
そして再びスタンドの右脚。
多少よたついてはいるものの、走ることは出来ている。それもかなりのスピードで。
現在、クレアの肉体は右半身がまったく動かない状態だ。
ゆえにまともに走ることはおろか歩くことすら難しい。
だからその機能を補うべくスタープラチナに働いてもらわなくてはならないことになる。
そのための方法をクレアは短期間で編み出し、マスターしつつあった。
石化した箇所はそのまま右半身のみ出現させたスタンドで支え、その力を自身のそれとして扱う。
右はスタープラチナ、左はクレア自身だ。
そんな複雑な操作よりも、いっそすべてスタンドで動かせばもっと簡単に制御できるのだろうが、それはクレアの個人的な嫌悪感が許さなかった。


――こいつは俺じゃない。


自分自身を世界の中心と自負するクレアにはそういった想いがあった。
この世で最も信じられるのは己そのものだ。
だから己の肉体がどんなに不完全になろうとも、それに寄せる信頼はその他全てを凌駕する。
見れば目の前に大きな橋のようなものがそびえたっている。
鉄骨だけで作られた隙間だらけの橋――クレアにはそう見えた。
目の前の地面に突き刺さっていたその柱の根元のひとつに手を掛ける。
捕まる場所もないつるりとした表面を、握力にものを言わせてがしりと掴む。
スタンドと自身の肉体を連動させた動きで、まるで猿のかなにかのようにするする登っていく。
一番上まであっという間だった。
とても右半身が動かない男とは思えぬ動きだった。

「初めてやって初めて出来た。これも努力の賜物だな」

隙間だらけの鉄骨で出来た橋の上でクレアは呟いた。
贅沢を言えばこれを見た人間から喝采を貰いたいところだったが、他の誰かを見つけたら迅速に殺してしまわなければならない事情がある。
先ほどの放送で知らない名前が次々と呼ばれたが、フィーロの他に守るべき人間が名簿にいないことは確認してある。
つまりターゲットは見つけ次第、速攻で抹殺。
流石に褒めてくれる人間を殺すというのはクレアとしても心苦しかったので、誰もいなくてよかったと思うことにしようと考えた。
さて石になっていて首が回らないのでスタンドの視界で周囲を見渡す。
ここは地上から十メートルほど上だろうか。
それ以上に大きい施設があちこちにあるので遠くの景色もよく見えるとまではいかないが、そこそこの距離を見渡すことが出来た。
こうしてみても今のところ誰も見つからない。
807God&doG ◆SqzC8ZECfY :2009/07/05(日) 23:46:15 ID:zVy4dkus
ひょっとしてもう逃げたのだろうか。
それともどこかに隠れているのか。

「……こういうときは闇雲に動くより、まず近いところからじっくり行くのがいい気がする」

この鉄橋は遊園地をぐるりと囲んで一周する配置になっているようだった。
まずはここから下を見渡しながら探していこうか。
それにしても鉄橋の先を見てみると途中で何やら縦に一回転しているが、どういう理由があるのだろうか。
まあいい。
一回転しろというならやってやろうじゃないか。
走る。
生身の左脚とスタンドの右脚を交互に前へと運ぶ。
クレアの肉体が高速で鉄橋の上を滑るように走っていく。
360°の急勾配へと突撃。
スピードが生む遠心力で重力に逆らい、見事に橋が輪になったループ部分を走り抜ける。
何の意味があったかは分からないが実はこれは凄いことなのではないだろうか。
スピードが落ちて途中で止まったら真っ逆さまになってしまうからだ。
クレアはそう考えて偉業を達成した自分に対する喝采を浴びたい気持ちに駆られるが、結局誰もいないので諦めることにした。
気を取り直して再び前へと進むことにする。
もはや半身が石化した影響はまったく感じられないほどの俊敏な動きだった。
戦闘にどんな影響が出るかはまだ試さなければ何ともいえないが、これならそこそこいけるような気がする。


――油断せず、迅速に、だ。


クレアは心の中でその言葉を繰り返し呟く。
自分は世界の中心だ。
それは確信。
だがそれでも世界の全てが思い通りになるとは流石に思っていない。
なんの努力もせずに望みが叶うなど甘ったれた妄想でしかないのだ。
神なんてのは信じていないし、祈るだけで叶う願いなどというものはありえない。
そんなものを見たことはないからだ。
だからクレアは努力する。
神がいるとしたらそれは自分自身の中に存在すると、そうクレアは考えている。
考え方を変えよう。
嘆いたって現状は何も変わりやしない。
こいつが俺じゃないとしたら、こいつがいなきゃ俺が何も出来ないとしても、ならばこいつを俺のものにしてやろう、と。
自分のの言うとおりに動くのならば、こいつは自分自身だ。
言うことを聞かないなら聞くようにしてみせる。そしてさらに上の次元で動かしてやる。
これも努力のひとつだろう。
なんせここいらにはそうでもしなければ自分をこういう目に合わす奴らがいる。
面白い。実に面白い。とても面白くなってきた。
フィーロやガンドールの兄弟たち、そして列車の乗客には悪いが、正直わくわくしてきているのを抑えきれない。
そいつらが現時点でクレアの上か同じところにいるというならもっと積み上げるまでだ。
人間に限界なんかない。己自身に限界なんかない。
もっとだ、もっと積み上げろ。
更なる高みへ。それが人間だ。
何処までだって登れるさ。
教会で十字架にかけられてる神様だって元は人間だったと聞く。
だったら神様にだってなれるはずだ。
それが人間だ。


「いや――――それが俺だ」


   ◇   ◇   ◇
808God&doG ◆SqzC8ZECfY :2009/07/05(日) 23:47:02 ID:zVy4dkus


神はいねえ。
少なくとも金もねえ、力もねえ、中国系のメスガキだったあたしには神だの愛だのといった代物はなぜかいつもソールドアウトだ。
変わりにあったのは「力」だ。
カネもモノもナイフも銃も、とことん意味を還元していけば残るのはたった一言――それだけだ。
少なくとも神なんかよりゃよほど役に立つ。
ま、モノのわからねえ時分にはそいつに縋って泣き喚いたりもしたもんさ。
結局いくらそうやってもどうにもならないと悟るまではな。
要するにあたしが言いたいのは、人生の刃の上で大切なモンなんてのはそれっくらいしかねえってことだ。
あのクソ野郎が誰が死んだとかどうとか抜かしてやがったが、まあ死んじまったそいつらの幾分かは、おそらくそれが分かってなかったんだ。
あと他に理由があるとすりゃ残りは運だ。そいつが足りてなかったんだろう。
姐御と糞めがねはどうやらまだ運も力も尽きちゃいないらしい。
結構なことだ。
だがあたしのほうは下手うっちまった。
このトゥーハンド様がワンハンドになっただなんてまったく笑えねえ。
現状は明らかにジリ貧だった。
手負いで生き残るためには誰かと組むことが一番手っ取り早いんだが……会うやつ会うやつことごとく駄目だ。
感覚で分かる。
カルラとかいう女の死体に縋って泣いてたガキも、そいつと組んでたペド野郎も、あいつらは「あっち側」だ。
あいつらの理屈は愛だの正義だのが通用する場所でしか成り立たねえ。
そして殺し合いってのはどうやったって「こっち側」の理屈がまかり通るんだ。
「あっち側」の理屈で動く奴は信用できない。
「あっち側」ってのはどうやったってあたしらとは違う世界の人間で――そういう風に感じるところがたまらなく駄目なんだ。
多分……あいつらが嫌いってわけでもないんだ。
けどあいつらと組んだとしても、おそらく絶対に決定的な場面であたしらは道を違える。
そしてその時、「あっち側」の奴らはあたしを汚い野良犬を見るかのような目で見るんだろう。
それが違いだ。
どうやったってどうしようもできない境界なんだ。
ああそうさ。あたしは所詮、野良犬だ。
どうすっころんだところであたしは銃でしか物事をどうこうできないし、誰もそれ以外のことを求めない。
……ああ、そういえば一人だけいたっけな。
なんの得にもならねえようなことに自分の命まで銃口のど真ん中に晒して、あたしの生き方に干渉してきた馬鹿がいた。
だけど、な。
それでもやっぱりあたしがあんたと一緒にいるには、あたしは銃でなくちゃ駄目だから――――やっぱりあたしはこうしなくちゃあいけないんだ。

【ミカエルの眼の再生薬】
【飲めばどんな傷もたちどころに全快する。
 ただし肉体の再生力を強制的に活性化して回復させるため、体に凄まじい負荷がかかる。
 一回に一本以上服用したり、肉体そのものに限界が来ている場合は耐え切れずに死亡する場合がある】

あの野郎から奪った荷物に入ってたアイテムの最後のひとつ。
説明書きにはこう書かれていた。
飲めば傷が治る。
だが下手をすれば死ぬ。
……上等だ。
銃が撃てないレヴェッカ姉さんになんざ、せいぜいどんな糞女にもついてる股ぐらの穴程度の価値しかねえよ。
だったらやるしかねえだろ?
あたしはポーチに入った5本のアンプルのうち一本を取り出した。
アンプルというよりは試験管のような形のガラスのような容器に妙な色をした液体が入っている。
栓を開けた。
くんくんと嗅いでみるが、これといって妙な匂いはしなかった。
流石に緊張しないかといやぁ嘘になる。
809God&doG ◆SqzC8ZECfY :2009/07/05(日) 23:48:19 ID:zVy4dkus
唾を呑み込んだ音が予想以上に大きく喉を鳴らした。
だが――笑えるぜレヴェッカ。
今ここで、銃を撃てないお前になんの価値がある?
いつ何処から来るのか分からない殺し屋にビビッて、逃げ回って、怪我の痛みに泣き喚いて、あとは?
そいつのどっかに意味なんてもんが挟まってると思うのか?

――安い命<<low life>>

あたしの命なんてモンはシティエンドの看板と同じだ。
泥酔いしながらドライブとしゃれ込むときに決まって弾丸ぶち込む、腐って錆びた看板だ。
例え誰が違うと言おうが、世の中の価値観はそんなことは聞いちゃくれない。
単純だ。ただ事実だ。
さあ、いけ。
いっちまえ。
そんな命に意味なんてのがあるとしたら、そいつは死にかけの間際に拾ったときぐらいのモンだぜ。

「…………っは……がっ!」

一息に飲んだ。
体中がレンジにかけたみたいに沸騰する感覚。
ズタボロになったほうの腕がシュウシュウと湯気を立てる。
もうどうなってんのかわからなくなるくらいに感覚がぶっ飛んじまってる。
時間の感覚もよくわからない。
一秒なのか数十秒なのか。
気付けば腕からはもう煙は出なくなっていた。

「……痛みが消えてやがる」

あせる気持ちを抑えてテーピングを外しにかかった。
ヤクでも決めたみたいに気持ちが逸る。
おいおい、マジかよ治ってやがるぜ、おい!
親指動く。小指動く。人差し指動く。
銃が持てる!

「ようやっとツキが向いてきやがったかよ……ん?」

何気なく治った手を空にかざした時だった。
視界の端に何か動くものが目に入ったんだ。
この遊園地をぐるりと囲むように配置されたジェットコースターのレールの上をどこかの馬鹿が走っていやがる。
そいつはどこかあの赤毛野郎に似ているような気がする。
だとすれば随分様変わりしてるが、なんかあったか?

「ま……何があっても関係ねえよなぁ? ええ、オイ」

もしアイツだとするならここで見逃す選択肢はありえねえ。
借りは返す。
アイツの眉間にあたしの銃弾をぶち込んでやる。
810God&doG ◆SqzC8ZECfY :2009/07/05(日) 23:48:59 ID:zVy4dkus
今、あたしはどうしようもないくらいに浮かれている。
ああそうだ。
怪我が治った今、ここで、この瞬間は、指を切られた恨みは正直どうでもよくなっていた。
アイツは強い。
掛け値なしだ。
殺り合いたくてたまらねえ。
安いこの命の重みを図るなら今をおいて他にねえ。
多分アイツはあたしのことはどうでもいいと思っていたんだろう。
そうでないならあの時に殺しておくくらいはするはずだ。
そうさ、どうでもいい命なんだ。
なあ、レヴェッカ。
それが嫌なら吼えてみろ。
『あたしはここにいるぞ』とあいつに向けて、このくそったれた殺し合いの世界にむけて吼えてみろ。
それがあたしの流儀だ。ガンスリンガーの流儀だ。
誰かの命を撃ち抜いて、自分の命を拾うのさ。
さあ行け。追うんだよ。


GO! GO! GO! GO!


811God&doG ◆SqzC8ZECfY :2009/07/05(日) 23:50:48 ID:zVy4dkus
【F-3西部 遊園地/1日目 日中】
【レヴィ@BLACK LAGOON】
[状態]健康 西へと移動中
[装備]スプリングフィールドXD 5/9@現実、スプリングフィールドXDの予備弾9/30 @現実、
    AA12@現実、予備弾薬(マガジン)×5
    支給品一式×2<クリストファー、カルラ>、クリストファーのマドレーヌ×8@バッカーノ!シリーズ
    包丁@あずまんが大王、ミカエルの眼の再生薬×4@トライガン
[道具]支給品一式(一食消費、水1/5消費)、応急処置用の簡易道具@現実、痛み止め
[思考・状況]
基本行動方針:悪党らしく、やりたいようにやる。
0:クレアを追いかけて殺す
1:他の参加者と接触してなるべく穏便に情報を集める。他にバラライカの情報を集める。
2:クレア、カズマ、クリスは出会い次第殺す。
3:爆発?を起こしたゼロを許さない。(レヴィは誰がやったかは知りません)
4:他の参加者に武器を、特にソードカトラスがあったら譲ってくれるように頼む。断られたら力尽く。
5:アルルゥにとことん嫌悪感。
※参戦時期は原作五巻終了後です。
※スタンドの存在を知りましたが、具体的には理解していません。ポケモンと混同してる節があります。
※ポケモンの能力と制限を理解しました。


【クレア・スタンフィールド@BACCANO!】
[状態]:西へと移動中
    拳に血の跡 脚にいくらかの痛み、左肩にわずかに切り傷、背中に銃創、腹部・胸部・右頬にダメージ(中)、
    右半身がコンクリートと癒着(右目失明、右腕並びに右脚の機能喪失等)
[装備]:スタンドDISC『スター・プラチナ』@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:支給品一式×2 未確認支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、ギラーミンから元の世界へ戻る方法を聞き出す。
1:この鉄橋の上から他の参加者を探す。
2:優勝のために他の参加者を殺す。迅速に、あらゆる可能性を考慮して。
3:レヴィ、ウルフウッド、梨花、沙都子、クリス、カズマと再び出会った時には彼女らを殺す。
4:フィーロを殺した相手が分かったら、必ず殺す。
5:スタープラチナに嫌悪感
【備考】
※参戦次期は1931~特急編~でフライング・プッシーフット号に乗車中の時期(具体的な時間は不明)
※フィーロがいたことを知りましたが、名簿はまだ見ていません。
※ほんの一瞬だけ時間停止が可能となりましたが、本人はまだ気付いていません。
※梨花が瞬間移動の能力を持っていると思っています。
※右半身の数箇所がコンクリートと一体化しました。余分なコンクリートはスタープラチナが破壊しましたが、機能は戻っていません。



【ミカエルの眼の再生薬@トライガンマキシマム】
クリストファーに支給。
飲めば致命傷すらたちどころに全快する。一回分ごとに試験管のような容器に入っている。5本セット。
ただし肉体の再生力を強制的に活性化して回復させるため、体に凄まじい負荷がかかる。
一回に一本以上服用したり、肉体そのものに限界が来ている場合は耐え切れずに死亡する場合がある。
原作中でウルフウッドは二本同時に服用して爆発的な回復をみせたが、その代償はあまりに大きかった。
812創る名無しに見る名無し:2009/07/05(日) 23:51:38 ID:zVy4dkus
投下終了です。
ご意見ご感想おまちしています。
813創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 00:10:34 ID:cBmZLMrv
投下乙!
ミカエルの眼の再生薬キターーー!ウルフウッドのあのシーンで使われたぐらいの活躍をしてくれるかな。
スタープラチナをもう一人の自分として使いこなす決意をするクレアが良いなぁ。
努力を忘れないところが実にクレアらしいし、レヴィも危うげながらもぶれてないぜ。
原作の描写を随所に取り入れてるのも個人的に上手いなぁと思いました。
814創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 00:20:38 ID:2Ef2TJNd
投下乙です
ものすごい続きが気になる終わり方だなぁ

クレアがらしすぎる。思考もそうだけど、スタープラチナを右半身の変わりに使ってすでに常人かそれ以上の動作が可能とか
そしてジェットコースターのレールを走り回るとかwおまけに一回転w
レヴィはミカエルの眼の再生薬で全回復か
仲間を集めようにも思想の相違から組むことができないとかこれからを考えると厳しいな
そして数少ない神様いない派の人間が目の前のクレアだったりするし

個人的に知らないから聞きたいんだけど
ミカエルの眼の薬って身体に死ぬかもしれないほどの凄まじい負荷がかかると書いてあるが無事生きてたらその負荷も全快するのか?
それとも後から負荷がかかるタイプなのか?
815創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 00:36:21 ID:p3w1VUeS
てかあの薬は普通の人間に効果あるのか?
ミカ眼で改造された人間にしか効かないものとばかり思ってた
816創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 00:52:24 ID:1YSwBWtn
投下乙!
さすが努力の天才、クレアだな……
すでにスタープラチナを使いこなして、走り回る事だって出来ちゃうだなんて。
この調子だと簡単にやられそうは無いな。

レヴィも完全復活か、トゥーハンドに戻ったわけだけど。
やっぱりレヴィにはロックが着いていないとなぁ……
二人の勝負がどうなるのか、非常に楽しみだ。

ってか遊園地、本当に騒がしい場所だな!
二人の精神描写が上手くて面白かったです

>>814
後者だと思うよ。
817創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 00:55:55 ID:lFRJeM/s
ミカエルドリンクは一度に2本以上使用しなければ問題はない
2本以上負荷がかかりすぎてほぼ確実に死ぬ。
1本なら特に問題は無い。まあ時間を空けず2本飲んだりしたらヤバイが
といってもミカエルの人外達用の物だから普通の人間が使ったら
一本でも確実に死ぬ。猛毒だし
818創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 06:45:18 ID:wpKOayFh
>>817
使えば使うほど老化するんだから一本ずつでも回数がかさめばヤバいだろ
819創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 09:54:41 ID:tQwX87/6
改造の影響の異常促進で年を取るのが速いが
5本セット使って一気に老化はしねぇよ
820創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 12:35:47 ID:vFFsLWMY
>>819
マスターの老化の原因はあの薬で治療したからじゃなかった?
821創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 14:01:58 ID:tQwX87/6
そんな事何処にも書いてねぇよ
822創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 16:25:55 ID:vFFsLWMY
今確認出来んが特に説明なくても設定と
描写見れば一目瞭然じゃね?
ラズロ鍛えてた頃とウルフウッドにやられた後のマスター違いすぎだろ。
823創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 16:37:58 ID:tQwX87/6
治療しただけど書いてあるだけだろ
そもそもウフルウッド改造手術受けて歳食ってんだから
824創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 16:55:01 ID:9/VmvF4S
ウルフウッドって二本飲んでどうなったの?
漫画知らないからだれか教えてくれorz
825創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 18:11:56 ID:wpKOayFh
だから治療すると代謝の異常促進で老化するんだろ
>>824
身体がぐずりとなってヴァッシュが泣いた
826創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 23:40:38 ID:zfQIaCAN
俺の記憶が正しければヴァッシュは辛そうな顔はするが一度も泣かなかったはず
827創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 01:42:09 ID:zbGqO79G
むしろ泣いたのは読んでる俺のようだったって言うね……

そして噂をすれば何とやら、学校組み+ヴァッシュの予約が来てる!
828創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 02:05:19 ID:5jJ/g+QM
おお、ほんとだ学校組に予約が!
そしてバラライカと無常さんのコンビにも予約入ってる!
放送後予約埋まるの速いなーw
829創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 02:09:28 ID:0nNPeVh1
とゆうかミカエルドリンクはあの人外が飲んでるから効果あるんだろ
更に代謝機能上げるもんなんだから。
普通の人間が飲んでも意味無いでしょ、って上でも言ってるか
830創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 02:25:13 ID:MbeEXatg
細けぇことはいいんだよ!

んなこと言ったらポケモン用のアイテムが人間に効くか怪しいし、
セイバーの魔力がないアヴァロンはただの凄い鞘になってしまう
831創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 20:02:33 ID:NSdCYhTv
1時間くらいで投下かな?
832創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 20:45:23 ID:reLExj/h
予約破棄かあ、残念だな
また次の機会を楽しみにしてます
833創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 21:01:00 ID:/r/PJbkR
うーん、また期限破棄かぁ。予約入らなかったら投下してほしいものだが…。
そろそろフラグも多くなってきたし、最大5日じゃ足りなくなってきたのかな?
834創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 21:25:11 ID:5jJ/g+QM
基本予約日数を5日、延長で+2日とかにする?
150話も越えたしもう中盤だろうからどうにも長くなっちゃうだろうし。
835創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 21:29:45 ID:NDhNDdkX
確かに延ばしてもいい時期かもな。
二日延ばして書き易くなるなら願ったり叶ったりだ。
書き手さん方は宜しければ意見お願いします。
836創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 21:31:49 ID:zbGqO79G
そうだね、結構複雑になってきているし。
6人を5日で書ききるのは難しいと思うよ。

基本5日に延長2日か、それとも基本三日で2日延長を二回できる様にするか。
どちらにしろ救済処置は必要だと思う。

もしまだ書いて居てくれているのなら、是非中心部組みは投下して欲しいな。
837創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 21:51:50 ID:MGtJOG4A
延長ってしたら何かペナルティがあるわけでもないんだし、
わざわざ宣言しなくても最初から期限1週間くらいにしてもいいと思う
838創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 22:01:56 ID:5jJ/g+QM
>>837
延長は基本的に急用や不測の事態が起きた時に便利だからあった方がいいと思う。
一週間で書ける!と思って予約してもリアルで急に予定入ったらアウトだしね。
流石に一週間から延長とかは長すぎだと思うし。
839創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 22:25:59 ID:MGtJOG4A
でもこれから先、延長必要になること多いだろうし
そのたびにいちいち申請するよりは、最初から期限長めに取っといた方がいいんじゃないの?
事情によっては申請する暇もないかもしれないし
840創る名無しに見る名無し:2009/07/07(火) 22:36:31 ID:NSdCYhTv
そろそろ、期間延長も必要だね。
書き手の意見を聞いてみたいな…
841創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 00:27:31 ID:4NtmoCwz
予約期間の問題は議論スレで話し合う方がいいんじゃないかな?
そして大量予約来たーーー!!
10人とかやばすぎるぞwww
842創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 00:40:18 ID:g6M+cKki
また破棄されそう
843創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 00:50:28 ID:zgrMv98K
このパート大人気だなww
ラッドが来るか。あの混沌とした状況でどう暴れてくれるんだろうな?
そういえばラッドとギルはアニ2ndでも混戦で遭遇してたな。
844創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 01:01:49 ID:2Ek9M3bT
梨花ちゃんなら9人全員一瞬で殺せるはず。
俺は信じている。
845創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 02:08:49 ID:kdp8k6JT
>>844
怖い顔した幼女が注射器片手にお前んちの方へ歩いていくのを見たぞ
846創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 12:47:48 ID:5CHqQ32V
大丈夫、梨花ちゃまには関西弁(笑)の牧師が付いているから


おや、誰か来たみたいだ
847創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 15:41:22 ID:2Ek9M3bT
関西弁(笑)って梨花のストーカーだろwww
848 ◆tt2ShxkcFQ :2009/07/08(水) 22:29:44 ID:Ps8lXLQN
少し自信が無いので。
バラライカ、無常矜持の投下を仮投下スレへとさせていただきました。
問題無いようでしたら本投下をしたいと思います。
ご意見などよろしくお願いします。
849創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 23:31:28 ID:2Ek9M3bT
バラライカの言葉が一部女性言葉になってたのが気になりました。
無常については原作を把握してないので分かりませんでしたが…
850創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 23:37:39 ID:zgrMv98K
仮投下乙です。
反対意見が出そうではありますが、面白そうなので個人的には有りだと思います。
851創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 23:44:40 ID:nyu2/Zsw
>>848
展開の方は特に気になったところはなかったと思う
ただやはりマネマネの実がどうかな、とは思う
相手をコピーするのに右手で顔に触れるというリスクが必要だけど、コピーしてしまったら情報戦や頭脳戦では最強クラスの能力だからな
提案としては
・コピーできる回数(人数)に制限
・変身中は個人特有の能力を使えない(今回は無常だからアルターが使えなくなるとか)
あくまで個人の意見だけど

そういえば死人ってコピーできたっけ?
死んだ人間になれるのは原作にあったけど
852創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 23:49:07 ID:g6M+cKki
いい加減悪魔の実出し過ぎだろ
手軽なパワーアップアイテムだし出したくなるのは分かるけど
一度食べたら戻らないし後への影響も大きいんだから、もう少し考えて出すべきじゃないの?
てか、当たり前のようにハナハナやらボムボムやら出してるけど、
設定上同じ悪魔の実は存在しないことになってるよね
853創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 23:49:52 ID:+O2hW6mi
特に問題は無いかと
854創る名無しに見る名無し:2009/07/08(水) 23:57:17 ID:zgrMv98K
>>851
死体に触れてコピーは無理そうだが、対象が死んでも履歴は消えないはず。
あと、原作でもマネマネ中は個人の技は使えない。(肉体も完全に他人のものになる為)

>>852
確かに出過ぎではあるが、出展については主催が時空転移可能だから問題無いんじゃないか?
855 ◆tt2ShxkcFQ :2009/07/09(木) 00:01:36 ID:uH4Sl9n5
>>849
了解です、バラライカは難しいですね……
敵対している人間との会話で女性言葉は確かに変だ、修正しますね。

>>850-854
指摘ありがとうございます。
個人的に包帯+○の情報を何とか活かせないかと思って加えた描写でしたが。
確かにこのままじゃ一方的になりそうですね……
DBのウーロンみたいに時間制限をつけたり、>>851さんの言うとおりメモリーに制限を付ける様な形はどうでしょうか?
できる限り残したいと思うのですが、無理なようならばマネマネの実の描写はごっそり削ります。
856創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 00:14:14 ID:o/vjapmd
>>854
それはまだ分かんないだろ
黒幕誰か決まってないんだし
何度も言うけど、ギラーミンには時空転移能力なんかないからな
857創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 00:19:12 ID:MkuJbbz2
てかなあ……マネマナの実の能力はボンちゃんが持ってるのは確かだけど、マネマネの実がワンピースに出たわけじゃないってのが……
今さらだけど、厳密にはオリジナルアイテムだよねえ、アイテムの外見とか込みで。
しかも、一回付与したらもう外せないから能力によってはメンタリティや一般人であること……というかそいつであることの必要性もはがれちゃう。
あんまりやり過ぎるとちょっと……とは思う。
858創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 00:33:41 ID:zpajiyOP
>>856
キャラ毎に参戦時期が異なるんだから主催陣が時間転移出来ないとおかしくないか?
859創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 00:45:54 ID:ExbagA4u
>>858
同意する。
時空・時間は全て黒幕の後付け設定でいい。
この話は議論スレでやろうか…
860創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 17:00:08 ID:noLmZ7Lc
議論するまでもねぇよ
時空、時間の操作出来なくて黒幕が務まるかよ
861創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 19:20:53 ID:8tlkTF/N
てかそろそろ黒幕決めといた方がいいんじゃないの?
862創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 19:40:42 ID:zpajiyOP
書き手が放送で明らかにするんじゃないか?
863創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 19:45:51 ID:oRVkCwVZ
どうだろう。
そろそろ書き手同士の話し合いも必要かな?
まぁ多分まだ焦る時期じゃない。
864創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 20:05:55 ID:Tijpq2vJ
まだ第2回放送直後だぞ?
それこそ第3回頃でいいと思うんだが。
865創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 20:16:32 ID:8tlkTF/N
早めに決めちゃいけない理由もないだろ
むしろ決めれるなら早く決めた方がいいと思うけど
ギリギリまで待ってから決めたんじゃ、矛盾とかも出てくるだろうし
予め決まってれば、そういう方向にリレーで引っ張っていくことも出来るし
866創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 20:16:33 ID:ExbagA4u
っていうか期間延長の話を決めたいのだが…
通常5日、延長2日の意見と
通常3日、延長2日×2回の意見が出てるのかな?
867創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 20:30:06 ID:b82BF1Y+
というか書き手の意見が聞きたい
868創る名無しに見る名無し:2009/07/09(木) 20:44:06 ID:kmXzlwkQ
したらばに書き込みたいがいまだに規制解除されない上、メールしても返事がない件。
869 ◆tt2ShxkcFQ :2009/07/09(木) 23:38:09 ID:uH4Sl9n5
昨日は沢山のご意見ありがとうございました。
皆さんの意見を踏まえてもう一度よく考えまして、マネマネの実はやめておくことにします。

修正したものを仮投下スレに投下しておきました、手間でなければ再度確認をお願いします。

>>866
まだ数回しか書いてないペーペーですが……
前者がいいのではないかと思います。
自分はまだ自分の執筆にかかる時間が分からないので、8割方完成してから予約をするのですが。
その間予約されないかと怖いですし……一週間に増えるのは嬉しいです。
そしてやはり、話は複雑になってきていますし。
3日間で纏めて完成品を作るのは少し難しいのではないかと思います。
870 ◆Wott.eaRjU :2009/07/10(金) 00:36:17 ID:IQsGNEPx
>>869
仮投下乙です!
何も問題ないと思いますよ。本投下お待ちしています〜。

>>866
延長中の身ですが私も意見を……。
自分も前者の方に賛成ですね。
自身の筆の遅さもありますが個人的に基本3日では少し厳しいかなと最近感じてきましたので……。
議論スレで話すべき問題ならばあちらでもトリを出しますのでよろしくお願いします。
871 ◆tt2ShxkcFQ :2009/07/10(金) 23:03:29 ID:XH16zm03
>>870
ありがとうございます!

それでは。
無常矜持、バラライカ投下しますね。
872bitter enemies in the same boat ◆tt2ShxkcFQ :2009/07/10(金) 23:04:26 ID:XH16zm03



漂うのは独特の鉄臭さと煙草の煙。
その二つの匂いは入り混じり、白で統一された病室へと染み付いていく。
窓から差し込んでいる眩い日差しは白い壁や床に反射して、病室の中を明るく照らしていた。
この殺し合いの会場の中心部……E-5に位置する大きな病院、その丁度3階部分。
病室の中には四つのベッドが備え付けられており、それぞれが部屋の角を位置取る様に配置されていた。
バラライカ、無常矜持の両名は窓際のベッドに向き合うように腰かけて、放送までの僅かな時間を休憩に使っている。

病室の中は重苦しい空気が支配しており、互いに言葉を交わす事も無い。
二人は何処から入手したのだろうか、互いに煙草を銜えながら相手をけん制するかのように相対している。
バラライカは相手を射殺すような視線を、無常矜持は相手を馬鹿にするかのような笑みを顔に貼り付けて……。


やがて無常は相手から視線を引き剥がし、窓の外へと移した。
そこにはこの病院唯一の入り口が見て取る事が出来る。
もしも他の参加者がこの病院へとやってきたとき、迅速に対応するためだ。
ここまでの経緯は上場、負傷もしていなければ無駄に体力も使っていない。
盗聴を駆使して面白い情報も入手した上、殺し合いに乗っている手駒をも手に入れた。
……だが、唯一つ気に入らない事がある。

『○印と包帯の情報』

せっかく手に入れたこの情報を上手く活用できる手札が、今の自分には無い事である。
あわよくば殺し合いに乗っていて、尚且つ顔の割れていない人間に会う事が出来たとしたら。
それを教えて絶望の内に朽ち果てる『○』同盟を見てみたかったものだが……。
なかなか如何して思い通りにはいかないものである。

(まぁ、劇場に集まるという情報を得ただけでも良しとするか……。
この女と共に挟撃をすれば、奴らの恐れおののく姿も楽しむ事が出切るだろう。
あぁ……また一つ、私の渇きが癒えそうだ)

そんな事を考えながら煙草を床に落とし、黒々とした革靴でそれを踏みにじると。
バラライカへと再び視線を戻して口を開いた。

「そういえば、食事がまだでしたねぇ。
 腹が減っては戦はできぬ。放送までに軽く食事をとりましょう」

そういって自らのデイバックへと手を入れると、水の入ったペットボトルと乾パンが入った袋を取り出した。
バラライカはその無常の一挙一動を睨みつけている。

「貴様と同じ部屋で食事をしろと?つまらん冗談をほざくなコメディアン」

「……そうですか、残念です。ですが状況が状況ですから、我慢しては頂けませんか?」

互いが互いを全く信用していない、利用している者同士の現状では相手から目を離す事は出来ない。
よって違う部屋で食事を取るという選択肢も選ぶ事は出来ないのだろう。
そのうえ無常はよく理解をしていた。
バラライカはこの共闘を快く思ってはいない。
アルターについて興味はあるようだが、無常から離れられるチャンスがあるようならばそれを逃す事はしないだろう。と
だからこそ相手が離れる事を提案するようならば、それを引き止めるつもりでは居た……
873bitter enemies in the same boat ◆tt2ShxkcFQ :2009/07/10(金) 23:05:52 ID:XH16zm03


だがしかし、それは杞憂に終わったようだ。
バラライカも無常がそれを許さないことを予測していたのだろう。
舌打ちを一つつくと、自らのデイバックから乾パンの入った袋を取り出し、口と残った左手を使って乱暴に開け放つ。
その様子を満足そうに見ていた無常は、自らも袋を開いて中にある乾パンを口の中に放り込む。

食事とは、人間が活動をする為には必要不可欠なものだ。
こと戦場において、食事は生死に直結するといっても過言ではない。
いざと言う時「力が出なかった」では洒落にならないし、
この病院を一歩出れば、次はいつ休憩できるか、食事を取ることができるか。
それは誰にも分からないし、そんな時間があるという保障は何処にも無いのだ。
食べれるときには食べておかなければならない。
例え食欲が無かろうと、気に食わない奴が近くに居ようと……。

また一つ、無常は乾パンを口へと放り込む。
パリっという音と共に口の中に薄い塩味が広がった。
世辞にも旨いとは言えないだろう……殺し合いをしろというのだから。
もう少し上等な物を用意できないのだろうか。

二人は黙々と、乾パンを口へと運んでいく。
一言もしゃべる事は無く、乾パンを咀嚼する音だけが病室に響いていた。
そして無常がペットボトルの水を口に含んだ次の瞬間、
バラライカはベッドから立ち上がった。
そして窓の外を怪訝な顔で睨みつけている。

「どうかしましたか?」
「……あれを見ろ」

バラライカの見ている方角、病院の入り口へと視線を向ける。
そこには全身を血に染めたモヒカン男が、病院の中へと入っていくのが見える。
左手が無いようだが、元から失っているのだろう、その左腕に大きな出血の様子は無い。
そしてその右手には、種類までは特定できないものの銃が握り締められているのが見える。

(殺し合いに乗っている参加者か……実力は未知数だが、もうこれ以上手駒はいらない。
 ここは放って置いて他の参加者を減らして貰うのがいいか)

そう考えて居た無常の目に、荷物を抱えて立ち上がったバラライカの姿が見えた。

「お待ちください、彼を殺しにいくのですか?」
「当たり前だ」
「彼はおそらく殺し合いに乗っている参加者でしょう。今彼を殺すのは得策ではないと思いますが」

立ち上がり、バラライカへと一歩近づきながらそう言った無常に、バラライカの冷たい視線が突き刺さる。
874bitter enemies in the same boat ◆tt2ShxkcFQ :2009/07/10(金) 23:07:02 ID:XH16zm03


「ここは戦場だ、殺せるときに殺しておかなければ何時か足元をすくわれる事になるぞ」
「ですが我々、二人だけで残りの参加者を殺すには少々手間がかかるとは思いませんか?」
「……貴様はあの男を殺すなと、そう言っているのか?」
「その方が懸命ではないかと……」
「下らないな」
「ハイ?」
「茶番だと言っているんだ」

バラライカは煙草を銜えたまま口元を吊り上げて無常を見据える。

「ここで一度、私の立場を明確にしておいたほうがいい様だな」


相手の瞳を見た無常は、思わず背中に悪寒が走るのを感じた。
それは相手を凍て付かせる氷の瞳、その瞳で無常を見据えながらバラライカは口を開く。



「私は行く手を遮る全てを容赦しない。それを排撃し、そして撃滅する。

 親兄弟、必要があれば飼い犬まで。

 殺し合いに乗っていようと怯える子供だろうと関係ない。

 参加者全員が私の行く先を遮る障害物だ」



耳が痛くなるほどの静寂が部屋を包み込む。
他の意見なんておそらく付け入る隙すらないのだろう。
不敵に微笑むバラライカを目の前に、無常は改めて痛感する。

━━やはりこの女、一筋縄では行かない。

「相手はこちらには気付いていないだろう、アドバンテージは此方にある。
 よって奴を撃滅する。以上だ」

そう言って出口へと歩みを進めようとするバラライカ。
対する無常は怯えるわけでも、怒るわけでもなく……ただただ不気味に、微笑んでいた。
次の瞬間無常は大きく屈むと、バラライカへと向かって飛びかかる。
875bitter enemies in the same boat ◆tt2ShxkcFQ :2009/07/10(金) 23:08:18 ID:XH16zm03


何の前触れも無い、突然の行動。
だが、それにいち早く気付いたバラライカは、左手にて持っていたカラシニコフを無常へと向けるため方向転換をする。
しかし無常とバラライカの距離は3メートルも無い、無常はその銃が此方へと向く前に左手でその銃口を掴み上げ、それを逸らす。
そして右手で相手の顔面を掴み上げ、そのまま2メートル奥への壁へと押さえつける。

「勝手な行動は謹んで頂きたいですねぇ」
「何のつもりだ、無常矜持」

次の瞬間、無常は首元に冷たい感覚を覚える。
視線を下へと向けると、首元にはバラライカの左手にてしっかりと握られているグルカナイフの姿が見える。
接近戦ならばナイフの方が有利……それを知っていたバラライカは、早々にカラシニコフから手を離し、
懐からグルカナイフを抜き取って居たのだ。

「このまま喉を引き裂いてやってもいいのだが、
 それをも貴様のアルターとやらは防いでくれるのか?」
「どうぞ、試してごらんなさい」

大きく目を見開き挑発的に笑う無常の顔を、バラライカは鋭い眼光で睨みつける。
数秒間の静寂が病室を包みこむ……短いようで、無常にとってそれはとても長い時間。
果てしなく続くかのように感じたその時間は、バラライカがナイフを降ろした事によって終わりを告げた。
尚も変わらず鋭い眼光で無常を睨みつけながら、バラライカは口を開く。

「いいか、よく覚えておけ。
 慢心は身を滅ぼす、何時か貴様の足元をも掬う事になるぞ」


無常にはアルター能力がある……
対象のアルター能力を強制解除、吸収するアブソープション。
「向こう側」のアルター結晶体からコピーした能力、ホワイトトリック&ブラックジョーカー。
攻撃力のみでみれば参加者の中でも上位に食い込むだろう。
だが体が鉄になる訳でも、不死になれる訳でもない。
もしも無常がバラライカの脅しに動揺していたら、少しでも変化を見せていたら。
恐らくは首は切り裂かれ、この病室はブラッドバスへと様変わりしていた事だろう。

無常も右手をゆっくりと離すと、襟元を直しながら自らが使用していたベッドへと歩み戻っていく。

「ご高説感謝します、肝に銘じておきますよ」

そう言った無常の後ろで、バラライカも一旦は諦めたのだろうか、再びベッドへと腰を下ろす。
そしてデイバックの中から探知機を取り出した次の瞬間。
病院のスピーカーからザザッと言う音と共に、二人にとっては戦果を告げる放送が始った。
876創る名無しに見る名無し:2009/07/10(金) 23:11:34 ID:IQsGNEPx
 
877bitter enemies in the same boat ◆tt2ShxkcFQ :2009/07/10(金) 23:12:23 ID:XH16zm03



     ◇     ◇     ◇


生存者は37名……残りは約半分。
バラライカにとって、その放送は禁止エリアと残り人数を知るための物でしかない。
だが、そんなバラライカにとって気になった人物の名前が一人……

━━ドラえもん━━

戦争開始直後に葬ったあの「野比のび太」という子供の仲間。
そしてあのギラーミン……雇われ用心棒が復讐の対象としていたもう一人の参加者だ。
復讐の対象が居なくなったにも関わらず、ギラーミンはそこには一言も触れず。
まだこの戦争を続行するつもりらしい。
今まで復讐に堕ちた人間をごまんと見てきたが……あの男の言動、行動には若干の違和感を覚える。

これは何か、裏がありそうだ……。

そう考えるも、バラライカの基本方針は変わらない。
ギラーミンの裏に何があろうと、知った事ではない。
全ての参加者を排除、撃滅してギラーミンをも含めて全て屠る。
この戦争の勝者になること、それこそが彼女の望みなのだから……。

そうしてメモをした紙をデイバックの中に入れると、視線を上げて無常を睨みつける。

アルター能力と言う謎の力を秘めている男、無常矜持。
圧倒的優位な立場に居るにも関わらず、自らの快楽のために戦場にて敵を弄ぶ下種。
奴の行う一挙手一投足、全てを見逃すわけにはいかない。
必ずしやアルター能力とやらを見定めて、その喉元を喰いちぎってくれる。
……だが、まだ危うい橋は渡らない。
コンディションは最悪……まともにぶつかり合えば、死体に成り果てるのは此方だろう。
舐めているのだろう、まだ無常は此方に手を出す事は無い。
ならば確実に始末する事ができるその瞬間を、ただ待てばいい。
そして、もう一つの不安要素。
AK-47━━通称、カラシニコフ銃。
使い慣れた武器だが、これを隻腕で使うのには限界がある。
0距離にて射撃すれば何とか当たるだろうが、それでもその反動に耐える事ができる保障は無い。
となれば余り好みの武器ではないが……。
"フローレンシアの猟犬"……ラブレス家の女中、ロベルタのこのスーツケース。
火力に関しては申し分ない、これからこちらを使っていくほうが得策だろう。

デイバックにカラシニコフを入れ、スーツケースを取り出すと、その取っ手を力強く握り締める。

優位に立っていると思い、慢心するがいい無常矜持。
最後に笑うのは、この私だ。
878創る名無しに見る名無し:2009/07/10(金) 23:12:30 ID:IQsGNEPx
 
879創る名無しに見る名無し:2009/07/10(金) 23:12:56 ID:bckjEnbb
支援
880創る名無しに見る名無し:2009/07/10(金) 23:13:22 ID:IQsGNEPx
 
881創る名無しに見る名無し:2009/07/10(金) 23:14:29 ID:IQsGNEPx
 
882bitter enemies in the same boat ◆tt2ShxkcFQ :2009/07/10(金) 23:14:37 ID:XH16zm03

     ◇     ◇     ◇


無常は放送を聞き終えると、メモに記してある一人の参加者の名前を見つめる。

━━ストレイト・クーガー━━

速さを極めたアルター使い。
クーガーの速さに対応するのは至難の技だ、それは無常に取っても厄介な程に。
それこそ相手の考えを読む事ができる様な……その様な状況でなければ相手にするのは難しいだろうと思っていた相手。
そんなクーガーが……劉鳳に引き続き、命を落とした。

やはり自分は、全てのものの上に立つ男だ。

そう確信を得ざるを得ない様なこの状況に、無常は笑いを抑える事が出来ない。
ダメだ、この女に不審を与えるような行動は避けなければ……
そう思うが、それは口を開いて大きな声となって木霊する。

「アーハッハッハッハッハッハッハ……クフッ。いや、失礼を……」

突然笑い出した相手に、バラライカは何の反応も示さずただただ睨みつける。

この会場に居る約半数は消えた。
状況は圧倒的有利、コンディションは最高。
後はあの粗暴なネイティブアルターさえ始末すれば……厄介な相手は全て消えさる。
……あぁ、橘あすかとかいう奴も居るか。まぁそっちは捨て置いても問題は無いだろう。

禍々しい笑みを顔面に貼り付けながら、無常は時計へと視線を移して口を開く。

「さて、12時を回りましたね。
 病院に侵入したあの男は未だここに居ますか?」
「奴は既に出て行った。貴様の思い通りになっているという訳だ」

探知機を睨みながら言ったバラライカへ、無常は少しおどけながら答える。

「そんな怖い顔をしないで頂きたい。
 ふむ……この辺りも大分賑やかになって来ましたねぇ。
 さぁ、その探知機で単独行動をしている馬鹿を消すのもいい。
 大人数で行動している……そう、『○』同盟を絶望の内に打ち捨てるのもいいでしょう」

仰々しく両手を広げ、無常は笑いながら言う。
そしてどちらとも無く、二人は自らの荷物を持ち上げると病室の外へと歩み進んでいく。
後に残るのは血臭いと煙草の煙のみ。

二人は病院を後にする。
再びこの戦争を再開するために。
一時の休憩は終わったのだ、それは二人にとっても、恐らく他の参加者にとっても。
絶望を振りまくために歩み始めた二人を止めるすべは、誰も持っていないのだから……。

883bitter enemies in the same boat ◆tt2ShxkcFQ :2009/07/10(金) 23:17:38 ID:XH16zm03

【E-5 病院付近/1日目 日中】

【バラライカ@BLACK LAGOON】
[状態]:腹部に中程度のダメージ、右腕切断(入念に止血済み。治癒不可)、肋骨骨折、身体全体に火傷(小)、頬に二つの傷、疲労(中)
[装備]:ヴァッシュの衣装@トライガンマキシマム(右腕の袖なし)、シェンホアのグルカナイフ@BLACK LAGOON
    ロベルタのスーツケース@BLACK LAGOON(ロケットランチャー残弾7、マシンガン残弾80%、徹甲弾残弾10)
[道具]:デイパック(支給品一式×3)、デイパック2(支給品一式×1/食料二食分消費)、下着類、AMTオートマグ(0/7)、
    不死の酒(空瓶)、探知機、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×二枚、通り抜けフープ、
    手榴弾×3、、AK47カラシニコフ(30/40、予備弾40×3)、デザートイーグルの予備弾×16
    ロベルタのメイド服@BLACK LAGOON、ガムテープ、ビニール紐(少し消費)、月天弓@終わりのクロニクル
[思考・状況]
 1:戦争(バトルロワイアル)を生き抜き、勝利する。
 2:ウルフウッド(名前は知りません)を警戒。
 3:アルターとやらを知る。
 4:何かを隠している無常に警戒。
 ※のび太から、ギラーミンのことや未来のこと、ドラえもんについてなどを聞き出しました。
 ※ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×二枚に『モヒカン男と麦藁帽子の男に気を付けろ byストレイト・クーガー』とメモ書きされています。
 ※デイパックを二つ持っています。
 ※D-4中央部一帯にあるビルの構造を熟知しています。
 ※元の服は下着を除いてビルに捨てました。
 ※チョッパーを医者だと推測。
 ※○印と包帯の情報を知りました。
 ※ギルガメッシュを不死者の類かもしれないと思いました。
 ※バラライカの右腕がマンション敷地内に落ちています。
 ※ギラーミンの裏には何かがあると考えています。



【無常矜待@スクライド(アニメ版)】
【装備】:ハンドガン@現実 予備段数×24
【所持品】:基本支給品一式×2(食事一食分消費)、不明支給品0〜2個(確認済み)フシギダネ(モンスターボール)@ポケットモンスターSPECIAL 、
      黒電伝虫と受話器なしの電伝虫のセット@ONE PIECE
【状態】:健康
【思考・行動】
 1:殺し合いで優勝する
 2:○印の情報を利用する。
 3:カズマ、あすかの始末
 4:レッドや同行者たちとはまた会いたい
 5:バラライカを殺さずに、生きたまま自分の手駒として制す。
【備考】
※○印と包帯の情報を知りました。
※レナ・チョッパー・グラハム・ライダー(イスカンダルのみ)の名前は知りましたが顔は知りません。
884創る名無しに見る名無し:2009/07/10(金) 23:18:12 ID:IQsGNEPx
 
885 ◆tt2ShxkcFQ :2009/07/10(金) 23:21:35 ID:XH16zm03
投下終わりました。
ご意見、注意点、修正点があったらお願いします。

仮投下から本投下まで時間がかかってしまってすみませんでした。
886創る名無しに見る名無し:2009/07/10(金) 23:34:14 ID:IQsGNEPx
投下乙!
なんだろう、食事シーンなのにこれほどギスギスした空気は……w
リヴィオを利用しようとする考えが実に無常らしい。やっぱり色々とネチネチ考えるのが彼らしいなー。
でも、バラライカと衝突した時に「無常さんやばいーw」と思ったのは自分だけじゃないはずw
バラライカがドラえもんの死にギラーミンが特に反応しなかったのに疑問を抱いたバラライカが流石すぎる!
OPでのびたに執着してるの参加者は知ってるしねぇ……確かに疑問に思っても可笑しくはない。
この二人がこの先どれほど血の雨を降らせてくれるかに期待ー!
887 ◆tt2ShxkcFQ :2009/07/10(金) 23:37:00 ID:XH16zm03
一つ書き忘れ……
タイトルは「呉越同舟」の英訳です。
888創る名無しに見る名無し:2009/07/11(土) 08:52:00 ID:VvSIlGTg
投下乙
バラライカ怖え
空気が重い。
無常も命懸けのはずなのに妙に生き生きしてるし。
こいつらが暴れ出したらと考えるともう楽しみすぎる
GJでした
889創る名無しに見る名無し:2009/07/11(土) 13:09:57 ID:sCIoC52o
進行役なんだから、放送で私情挟まないようにするのは別におかしいことでもないと思うけど
メタ視点とかない、ただの参加者がそんなこと気にするかな
890創る名無しに見る名無し:2009/07/11(土) 15:00:18 ID:gToJim5F
メタ視点じゃないからこそ気にするもんだと思うが
参加者視点から見れば、「進行役」じゃなくて「首謀者」なんだから
891創る名無しに見る名無し:2009/07/11(土) 21:22:20 ID:egv6u9Dh
投下乙!
ううむ、協力してるのになんとも緊張感が凄い。
アンチ○同盟コンビだが、果たしてこれからどうするか。
改めてGJ!



ところで、今夜投下期限のがあるけど、次スレを用意しておいた方がよくないか?
892創る名無しに見る名無し:2009/07/11(土) 23:08:02 ID:1fQJoNcs
あ、もう容量が後わずかなのか。
次スレ立てるのは良いが、テンプレはどうする?
したらばの議論スレでは執筆時間に関する意見で
基本5日延長2日って意見があるみたいだけど。
特に反対意見もないようだから、テンプレに加えても問題ないかな?
893創る名無しに見る名無し:2009/07/11(土) 23:10:54 ID:cgTxddGj
いいと思うよ
その方が書き手も落ち着いて書けるだろうし
894創る名無しに見る名無し:2009/07/11(土) 23:24:40 ID:gToJim5F
ちょっと立ててみる
895創る名無しに見る名無し:2009/07/11(土) 23:29:01 ID:gToJim5F
マルチジャンルバトルロワイアルpart16
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1247322362/

立ててきた
896創る名無しに見る名無し:2009/07/11(土) 23:36:52 ID:cgTxddGj
>>895
スレ立て乙
897創る名無しに見る名無し
>>895
スレ立て乙です!
             __
      /`ヽ/   ο `ヽ、
    /⌒ヽ/           i
   /,ニユ、{     ,r''{下、'ー-、,__
   {(  {ヽヽ   /^'イ:」ヾ',ィー-、ゝ、
   `  い ヽ, ム、    /::/ ̄`ヾー--.、
       `ゝ (__}__, /`⌒ヽ;::::::::::::\;:::::`ヽ、
       `ー '    `{::::::::::::::::::::::_;_:;;;;:::::::::::;ノ`ヽ,
              ヽ、:::::::;r''´  \ ̄ ̄  ̄
                 ̄  `` ー '

           ,ィ'
         /{′
      _{ {,. -─‐-_、_
    ∠-,rー    ,r',rー‐、'、
     / / ,.    j {   ゙}i
     ゝ/,/ ,イ   ,ス ヽ__ノ;
      'イ ト、  '/'>、-ュキ=ゝ、
      {  ,!ノ,. -'´  </~!|」:i__\
   _,. -',.-イ´     ,r:';ニ-‐=‐::`ヽ、
  (_r'' ´(_|__    //:::::::::::::::::::::::::::::\
   `      `ーク::::::::::;r‐-、;:::::::::::;/`ヽ、
            `ー-(   ヽ─'`ー─ '
                `ー-‐′

     ____ _,, -‐―  、 __
   /'´ ̄ ヽヽ       、ヾァ_
  〃  /  v   ヽ  \  Yj
 /'   //  /,  /  、\. \.ミiヽ
 l|   l |i /〈 〈 iv,,rl=iミ,l  l.トミK
    l || |レ-_、,V  {fひl|  l.トリノ
    レ \ll〃iぃ.  、てノl  ljク、
      / ハ 、tリ,  ⊂⊃ ./イ \
      // / ⊃ -   /  /.;l|ヽ.;.;ヽ
       |.| /  `_ァ‐ ィl  /」_:li.;.い.;.;.>
      || j   /タ\lリリ-:´::r`-イ.;.l
      レ   >/|<:.    Y  :::::l.;.;l   む? 埋めるのですか?
        <_/: L >:.   ::l.  :: ::l.;.l
          〈___...:::::l::. :: ::l_.l
          「;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;;l::.  ::.::l
          ヽ、_ , r‐ t¬::  ::::::l
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         l::;;:::::::::::::;;::i;:::;;;ヽ∠ Y
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