【軍事】ミリタリー系創作スレ【兵器】

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1名無しさん@お腹いっぱい。
古代ローマから近未来まで、軍事関連の創作スレッドです
トムクランシー的テクノスリラーから架空戦記、果ては漫画まで、
ミリタリー要素が入ってるなら何でもOK!

関連スレ
■○創作関連質問&相談スレ 40○■(※軍事板)
http://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/army/1219150925/l50

自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第63章
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220184382/l50
2名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 13:59:20 ID:fxSW8J/m
関連スレに驚いた
軍持板ってそんなスレがあるほど創作多いんだ
3名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 14:39:50 ID:DlluA1rn
おもしろそうだ
4名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/02(火) 20:27:38 ID:hydoYTJq
ちなみに軍板にはこんなのもありまつ

中高一貫の防衛女子校設立 その10
http://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/army/1208464876/l50
5名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 01:53:30 ID:M5DIkhM0
図書館戦争の話を考えてみたんだけど、投下するならばここですか?
6名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 02:02:02 ID:d2XiHALa
あれはどちらかというと恋愛系かも
あれ?恋愛総合ってまだないんだっけ
7名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 02:07:26 ID:xXXGcfOT
戦闘とか訓練とか軍事的描写が中心なら、ここでいいんじゃね?
8名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 02:12:42 ID:xXXGcfOT
図書隊と良化委員会の抗争は激化する一方。
遂に国連が停戦決議を出すも収まらず、状況は国連軍派遣、米軍による爆撃と次第に悪化していき…

という下らないネタを思いついた
まぁ自衛隊の治安出動が先か
9名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 02:15:42 ID:d2XiHALa
実際はそんなことになる前に政治的闘争が主人公達の知らないところで繰り広げられて
権力争いの結果いつのまにか収まってそうだけどね
10名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 14:02:09 ID:h7WaUOXa
ここってタイフーンが立てたスレ?
11名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 14:33:56 ID:do1FjkuC
>>10
どのタイフーンを指してるのかわからんが、本家本元は軍板に籠もってるし、
荒らしは「自衛隊がファンタジー〜」スレに行ってるんで違う
12名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 15:14:53 ID:pBCCkTam
ここって孫子とか呉起とかのスレ?
13名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 16:29:12 ID:do1FjkuC
ミリタリー的なら良いんじゃない?
14名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 20:27:53 ID:MRBWBjI7
架空兵器の創作って難しいな
何かコツないもんかね
15名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 20:43:20 ID:VLvdto7z
>>14
時代設定にもよりそうだけど、まずは資料集めじゃないか
16名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/03(水) 21:13:44 ID:xXXGcfOT
■○創作関連質問&相談スレ 40○■
http://hobby11.2ch.net/test/read.cgi/army/1219150925/l50
↑に相談してみては?
17図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 00:03:29 ID:rpj0oaKP

 出会いと別れは大抵突然やってくるものと相場が決まっている。
 彼の場合もそうだった。
 正化11年2月26日、彼にとっての出会いと別れがやってきた。
 突然ではあるが礼儀正しく、そして陰鬱に。

「辛いお話となります」

 暗い表情のその図書館員は、話し始める前から泣き出している女性図書館員二名を連れて玄関先にやってきた。
 事件発生当日以降続報がないニュースで両親の生存をあきらめていた彼は、無表情のまま事務的に一同を家へと招きいれた。

「お邪魔させていただきます」

 一礼し、玄関へと上がる。
 先頭を歩いていたその図書館員は、残酷な通知を見てしまった。
 職業柄、文書を読む速度と識別力には自身があった。
 だが、このときばかりはその自身が妬ましい。
 靴箱の上に置かれていた通知書は三通あった。
 危険な業務における死亡には保険金の支払いはできないが、月の半場が過ぎているために今月分の保険料の振込みは依頼する通知書。
 彼の両親についての病院からの死亡通知書。
 工業大学からの入学通知書と入学金の督促状。
18図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 00:04:51 ID:rpj0oaKP
「ああ、奥へどうぞ」

 抑揚のない発音で奥へと案内される。
 男は運命を呪った。
 戦闘後の混乱で遅れに遅れた殉職の連絡。
 よりにもよって病院からも生命保険会社からもその連絡が行った後での訪問。
 重要な案件とは、第一報をこちらから入れない限り、かなりの悪影響が想定される。
罵声や殴打の一つは覚悟する必要があるな。
 覚悟を決めて、彼は部下たちとともに客間へと足を進めた。

「当たり前ですけど、やっぱり死んだんですね」

 一通りの説明と謝罪を受けた後で、無表情の青年はぽつりと言った。
 その表情には怒りも悲しみもなかった。
 精神の均衡が崩れかけていることを示す極端な無表情以外には何もなかった。
19図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 00:06:06 ID:rpj0oaKP
 彼の舌はそこで凍りついた。
 ここまでで反応がないということは、言外の趣旨を説明しなければならない。
 つまり、金はやるから訴えるな。という道に外れた依頼を。

「ああ、ご安心ください。両親は任務の内容を理解して働き、殉職したわけですし、別に皆さんが殺したわけではありませんし」

 直接的な表現ではないが、青年は彼を救った。
 
「そのお金って小切手ですかね?それとも手渡し?
 今週の金曜日までに入学金その他を振り込まないと、大学の入学資格が取り消しになってしまうんですよ」

 一同が身動き一つできない中、青年は言葉を続けた。

「まぁ、行けなければそれはそれでしょうがないんですけどね」
「振込みになります、人事院の手続きしだいという点がありますが、今週末までというのは、その、難しい、かと」
「そうですか、まあ仕方がないですね」
20名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 00:07:04 ID:Bgn20Q4S
荒らしが湧きそうなスレだなあ
軍板とちがってIDでてるだけましだが
21図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 00:07:16 ID:rpj0oaKP
 人生を激変させる出来事が続いているにもかかわらず、青年の言動には抑揚というものが全くなかった。
 事前に連絡を受けていたとはいえ、両親の死。
 それを金で解決したいという依頼。
 大学に入学できなくなったという現実。
 彼は、それら全てを仕方がない事と受け入れていた。

「それでは他にお話がないようでしたらお引取り願ってもよろしいでしょうか?」
「あ、あの」

 昆虫のような感情のない目でそう告げられたとき、同行を命じた部下の一人が口を開いた。
 
「私どもに、何かできる事はないでしょうか?」

 彼は思わず舌打ちしそうになった。
 辛うじてそれを堪える。
 両親を帰してくれ、そういった話に容易につながる言葉を、よりにもよってこのタイミングで。
22図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 00:09:49 ID:rpj0oaKP
「いえ、特にはありませんよ。
 いただけるものはいただけますし、それ以上の事を仕事でここに来られている皆さんに求めるというのも酷な話でしょう?」
 
 明確な拒絶。
 一同は今度こそするべき事がなくなった。
 結局、それから一分もしないうちに彼らは青年の家を去る事になる。
 後の調査で判明したところでは、青年は大学に入学できず、陸上自衛隊へ入隊し、PKOで海外へ幾度と無く派遣された事が判明している。
 この当時では、哀れな青年、という認識で誰もが哀れむ程度で話が完結した。
 当然の事であるが、図書館とメディア良化隊の激闘の物語はここから始まるのであるが。
23図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 00:11:04 ID:rpj0oaKP
正化31年6月11日 関東図書隊管轄 習志野図書館

 攻撃は突然だった。
 突然乗り付けた通常のバンから拡声器が現れ、そして早口で三度の査察勧告。
 次の瞬間には強制執行を告げるメッセージと共にメディア良化隊強制執行部隊の突入が始まった。
 
「総員戦闘配置、強制査察部隊は正面玄関より突入を開始。
 戦闘可能な隊員は直ちに武装、迎撃せよ」

 利用者の避難誘導もままならない中、スピーカーは戦闘の開始を宣言していた。
 大学を門前で去り、陸上自衛隊で最精鋭である空挺団員として過ごしてきた経歴を持つ彼は、関東図書隊防衛員としてそこにいた。
 正面玄関の防弾ガラスに無数の銃弾が叩き込まれ、次の斉射でそこは開口部へと変わる。
 三度目の斉射。
 空気抵抗以外何も障害がない銃弾たちは、容赦なく図書館の資産を破壊していく。
 閲覧机、書架、そこにある本、カウンター、不運な図書隊員。
 何の躊躇もない、混じりけのない悪意。
 手元にある9mm機関拳銃を確認する。
 マガジンは装填中のものを入れて3本。
 サイドアームのSIG−P220は2本。
 隣で早くも応戦を始めた隊員が、不運にも頭蓋を砕かれて昏倒する。
 脳髄が、血液がぶちまけられ、それをまともに浴びた人々が悲鳴を上げる。
 弱装弾を用いたとしても、銃火器とは人体へ致命的な損傷を負わせる事のできる道具なのだ。
24図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 00:13:31 ID:rpj0oaKP
 そんな情景を、彼は不思議そうに眺めていた。
 これは戦争なのに、どうしてもっと応戦しないのだろう。
 弱装弾の機関拳銃ではなく、89式小銃やショットガンだって配備されているのに。
 
「とはいえ、考えるのは後か」

 手についた同僚の脳髄を戦闘服に擦り付け、安全装置を解除する。
 盗難防止用の防犯カメラによると、敵は五人。
 装備は、MP5か、日本人ならば9mm機関拳銃を使えよ。
 左に三人、右に二人。
 二人のほうからやるか。
 音を立てないよう注意しつつ位置を移動する。
 カウンターの直ぐ向こうに。敵兵士二名の足音が聞こえる。
 足元にあった兆弾を掴み、反対方向へと勢いよく投げる。
 思ったよりも狙いは正確で、金属製の書架へぶつかり、物音を立てる。
 敵の反応は素早かった。
 すぐさま物音がした方へ銃弾が叩き込まれる。
 左側の三人も発砲しているらしい。
25図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 00:14:33 ID:rpj0oaKP
 よろしい。
 全身の筋肉を使って中腰の姿勢に入り、カウンターから頭部と銃だけを表す。
 まさに目の前の位置に二名、一人がこちらを確認し、銃を向けようとする。
 その前に発砲。
 3点バーストで9mmパラベラム弾を相手の胴体へ叩き込む。
 ボクサーに重いパンチを叩き込まれたかの様に敵は崩れ落ちる。
 その横にいる同僚は、崩れ落ちつつある仲間を撃たないよう射角に気をつけて発砲する。
 それを無視して再度発砲、敵は片腕に銃弾を三発喰らい、回転して倒れる。
 そこまでして床へ伏せる。
 案の定左の三人がこちらへ向けて銃弾を浴びせてくる。
 手前の二人は至近距離からの銃撃で重症だからよいとして、どうするべきか。
 短く考え、とりあえず匍匐前進にて左側へと移動を始める。
 敵の銃撃はしつこく続いている。
 カウンターの上から物音、見上げると、ちょうど真上に敵が現れている。
 援護射撃の間に突入してきたが、予想以上の距離を匍匐で移動しているこちらを見つけられないらしい。
 くるりと天井へ向き直り、フルオートで銃弾を喰らわす。
 足元から両足に銃弾を撃ち込まれ、敵は絶叫してこちら側へと落ち込む。
 こいつは一生歩けなくなったな、ざまあみやがれ。
26>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 00:16:59 ID:rpj0oaKP
ってなお話なのですが、このスレ・板でやるにはちと暴力的表現が過ぎますか?
NGな意見が多いようでしたら中途半端ですが投下をやめて、別の投下先を探してみます。。。
27名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 00:22:06 ID:/7zEwAbh
図書館戦争って作品の二次創作なのかな?
ここでやってもいいし、二次創作総合スレで続けても
どっちでも構わないと思うよ
28名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 00:30:14 ID:bP4G1vK1
ガンアクションなら十分だと思うが
ともかく投下乙
29>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 00:36:33 ID:rpj0oaKP
 よろしい。
 全身の筋肉を使って中腰の姿勢に入り、カウンターから頭部と銃だけを表す。
 まさに目の前の位置に二名、一人がこちらを確認し、銃を向けようとする。
 その前に発砲。
 3点バーストで9mmパラベラム弾を相手の胴体へ叩き込む。
 ボクサーに重いパンチを叩き込まれたかの様に敵は崩れ落ちる。
 その横にいる同僚は、崩れ落ちつつある仲間を撃たないよう射角に気をつけて発砲する。
 それを無視して再度発砲、敵は片腕に銃弾を三発喰らい、回転して倒れる。
 そこまでして床へ伏せる。
 案の定左の三人がこちらへ向けて銃弾を浴びせてくる。
 手前の二人は至近距離からの銃撃で重症だからよいとして、どうするべきか。
 短く考え、とりあえず匍匐前進にて左側へと移動を始める。
 敵の銃撃はしつこく続いている。
 カウンターの上から物音、見上げると、ちょうど真上に敵が現れている。
 援護射撃の間に突入してきたが、予想以上の距離を匍匐で移動しているこちらを見つけられないらしい。
 くるりと天井へ向き直り、フルオートで銃弾を喰らわす。
 足元から両足に銃弾を撃ち込まれ、敵は絶叫してこちら側へと落ち込む。
 こいつは一生歩けなくなったな、ざまあみやがれ。




 絶叫しつつこちらを向き、そしてその手が足へと伸びた。
 冷静に判断して、痛む足を混乱からとりあえず押さえようとしていたのだろう。
 だが、そこにはホルスターに収められた拳銃もある。
 正当防衛の用件は満たされた。
 未だ残っている銃弾を、伸ばした腕の肩へと送り込む。
 再び絶叫。
 戦闘服が裂け、砕かれた肩が露出する。

「大丈夫か!?」
「貴様!何をした!」

 カウンターの向こうから敵の言葉が聞こえる。
 負傷した同僚に、こちらが拷問を加えているとでも思ったのだろう。
 短い時間で両足と片腕を無力化された敵兵は、定期的に神経が伝える激痛を絶叫で表現することしかできないがな。

「協定違反だぞ!攻撃をやめろ!」
「査察のふりをした突入をしてきた連中がよく言うよ」

 小声でそう呟き、上体を起こしたまま匍匐を続ける。
 静かに、しかし手早くマガジンをチェンジし、起き上がる姿勢を取る。
 腰の手錠を取り出し、アンダースローで倒れたままの敵兵へ投げつける。
 やはり狙い通り、低い弾道で投げられた手錠は、敵兵の手前でこの場では大きすぎる金属音を出す。
 物音がしたほうへ銃撃。
30>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 00:38:07 ID:rpj0oaKP
 よろしい、二人分の発砲音だ。
 再度上体を露出させ、発砲。
 斜めに並んでいた良化隊員の一人に銃弾が命中する。
 胴体、胴体、胴体、足、腕、胴体。
 わき腹から入ったから、彼の死は確実だろう。
 一瞬引き金を緩め、その隣にいた敵を狙う。
 どうやら射耗し、弾倉交換をしたいらしい。
 だが、現実が彼を許さない。
 同僚の血液を浴び、目の前で四人の同僚が無力化された現実が、彼の手に正確で迅速な動作をする事を許可しない。
 あと五発ある。
 引き金を絞る。
 書架、胴体、胴体、胴体、頭。
 一発はずれたが、これで相手は死亡確実。
 最初に入ってきた五人は、これで全員を無力化したわけだ。
 大いなる満足感に包まれつつも、弾倉を交換し、カウンターを越えて玄関へ向かう。
 遮蔽物に身を隠しつつ、表を伺う。
31>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 00:39:17 ID:rpj0oaKP
 数名の図書隊員が倒れている。
 一人は図書隊特殊部隊員らしく、89式小銃を持っている。
 その向こうにはメディア良化隊のバン。
 数名の敵兵が警戒に当たっている。
 小銃がほしいな、拳銃弾では敵を確実には仕留められない。
 特殊部隊員の方を見る。
 驚くべきことに、向こうもこちらを見ていた。
 彼は小銃を掴み、こちらへと放り投げた。
 銃声。
 有能で判断能力に優れていたらしい彼の頭脳は、その銃弾によって打ち砕かれた。
 本来であればあえて表記する必要もないのであるが、頭部へ重大な損傷を被った事による即死である。
32>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 00:40:44 ID:rpj0oaKP
 しかし、最後の仕事は十分すぎる効果を生んだ。
 一つ、89式小銃を陸上自衛隊習志野空挺団に所属していた男に渡したこと。
 二つ、スナイパーの位置を露出させたこと。
 三つ、露天位置で、少なくとも攻撃しようとはしていない図書隊員を射殺させたこと。
 武装も、法的権限も問題なし。
 交戦規定はクリアされた。
 メディア良化隊は、自分たちで戦場を野外へと広げてくれた。
 手元の小銃は、少なくとも見た目的には損傷がない。
 念のために最初の一発を排出し、そして戦闘を再開する。
 小銃を構え、スナイパーを確認する。
 動揺しているらしく、銃口を空に向けて襟元の無線へ何かを話しかけている。
 言い訳をしているか、叱責を受けているか。
 小銃を構え、照準機の向こうに敵の胴体を確認する。
 狙うは上半身、口元がわずかに見える。
 どうしよう。
 その口元は、そう言っている。
 発砲。
 3点バーストで放たれた5.56mm弱装弾は、狼狽しているスナイパーの胴体に正確に突き刺さった。
 勢い良く木の上から弾き飛ばされ、敵は木の立っていた民家の庭先へと落下する。
33>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 00:41:45 ID:rpj0oaKP
 それを確認してから位置を移動。
 別の窓から敵を確認する。
 残るは三人、車内に二人。
 周りから聞こえる銃声が減ってきた。
 戦闘の終わりが近いのだろう。
 再度発砲。
 周りを見回していた敵兵の戦闘服に命中。
 弱装弾であろうとも、使っているのは自動小銃。
 敵は打ち倒され、身動きをしない。
 他の敵兵が応射してくる。
 散発的な銃声が轟き、外壁に着弾していることが分かる。

「そうこなくっちゃ」

 直ぐ隣で見当違いの方向を銃撃している敵兵を狙う。
 単発に切り替えて発砲。
 地面、地面、胴体、足、腕。
 この戦闘が終わったら、射撃の練習をしないとな。
 そんな事を思ったとき、凄まじい衝撃が側頭部を襲った。
 思わず小銃を取り落とし、そのまま床へと激突する。
34>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 00:44:53 ID:rpj0oaKP
本日はここまで投下してみます
明日の23時に再投下予定です

>>27
はい、図書館戦争という小説の二次創作です
ご指摘を受けてから二次創作総合スレがある事に気がつきました。。。
ドンパチがメインになるので、こちらへの投下を継続しようと思います

35名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 07:24:12 ID:BXxlc0Sf
投下乙。
そんなに区切らないで1レスにもっと詰め込んだ方がいいと思うよ。
36名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 08:54:27 ID:/JaYJQFa
60行までいけるんだったな
37名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 08:54:58 ID:9N9Qvya6
そうだよ
60行の4096バイト
38名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 10:57:23 ID:NPcfdy3b
>>34
乙!某所図書館戦争関連スレからきました。
楽しみに待ってます。
39>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 23:58:34 ID:rpj0oaKP
正化31年6月11日 関東図書隊管轄 習志野図書館 1F児童書エリア

「ざまあ見やがれ!」
「止めを刺せ!」

 敵の罵声で意識を取り戻す。
 どうやら、いつの間にか窓の近くまで来ていた敵に撃たれたんだな。
 妙に鈍い痛みを覚えつつ、ヘルメットに手を当てる。
 銃弾が命中し、反れた事を示す傷跡。
 反れた?
 映画じゃあるまいし、最後の瞬間がこんなに続くわけもないか。
 小銃は、あと何発かわからないのであきらめ、機関拳銃を手に持つ。
 窓から上半身を露出し、発砲。

「何で!?」「死んでいない!」

 辛うじて狼狽する事だけできた敵兵に、容赦なく銃弾を叩き込む。
 至近距離でフルオート、胴体へ、胴体へ、胴体へ、胴体へ。
 絶対に死んだろうな。
 でもまだだ。
 空になった機関拳銃を手放し、腰の拳銃を抜く。
 唖然とした表情の最後の一人を狙う。
 それにしても、こんなに見逃していたとは。
 八発発砲し、その全弾が敵の胴体へ命中した。
 まあ、距離にして3mもないのだから無理もないか。

「さてさて」

 再び遮蔽物に身を隠し、取り落とした小銃を見る。
 素晴らしい、ダブルクリップじゃないか。
 弾倉を交換し、敵車両を見る。
 運転席に一人、もう一人が助手席にいる。

「もうここは戦闘領域だぞ」

 運転席を狙い発砲。
 防弾ガラスに銃弾が突き刺さり、そして敵兵は銃弾を受けて身動きできなくなる。
 続けて助手席へ発砲。
 ガラスの割れ方から敵兵の無力化まで、先ほどと全く同じ展開であった。
 素早く車へ接近し、車内を窺う。
 呻く敵兵が二人、あとは無人。
 立てかけられた銃器を回収し、鍵を抜く。
 その上で計器や無線機、ハンドルに拳銃弾を撃ち込んでおく。
40>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/04(木) 23:59:24 ID:rpj0oaKP
「こんなことをして、どうするんだ」

 運転席の男が苦しげに言う。
 小銃弾を喰らってまだ話しかけられるとは、大したもんだ。

「気にするな。他に武器はあるのか?」
「後ろに、ある」
「じゃあ車を燃やすから降りてもらおうか」

 俺の言葉を聴いた敵兵は、信じられないといった表情でこちらを見る。

「図書館を防衛する事があんたらの仕事だろう。
 どうしてそこまでする」
「そう、図書館を守るために働くのが俺の仕事だ。
 あんたらみたいに人を殺すことを仕事としているわけじゃない」

 答えつつドアから離れる。

「防衛のために敵軍の兵器を破壊することがそれほど不思議か?
 いいから早く降りろ」

 弾倉を交換しつつ、後部ドアを開く。
 おやおや、これはこれは。

「あの乱戦の中、回収だけはきっちりやってたんだな」

 武器と共に押収されたらしい図書が集められている。
 無造作に銃弾を車外へと出し、図書の入ったナップザックを背中に背負う。
 一丁だけ取り出したMP5に装填し、戦闘服にいくつかの弾倉をねじ込む。
 燃料給油口を開放し、車から離れる。

「二人とも降りたな?」

 重傷の二人は、死にたくはないらしく、車からなんとか降りている。
 それを確認してから給油口を狙い、無造作にフルオートで銃弾を叩き込んでいく。
 金属部品に銃弾が命中して火花が飛び散る。
 気化しているガソリンガスにすぐさま引火。
 給油口から勢い良く燃焼したガスが噴出し始める。

「これでよし、と」
<<指揮所より交戦中の各部隊へ>>

 燃え盛る車を前に満足げに感想をもらすと同時に、指揮所から通信が入った。

<<メディア良化隊は執行終了を宣言した。直ちに戦闘を中止し、撤退せよ>>
41>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 00:02:36 ID:N36IM1dC
「よかったな、戦闘終了だそうだ」

 燃え盛る車を眺める二人に声をかける。
 結局正面玄関に突入してきた敵部隊は、この二人を除いて装備も人員も全滅したわけだな。
 俺って強いんじゃないか?
 救急車が傍らで停車する。
 すぐさま救急隊員が下車し、こちらへ駆け寄ってくる。

「どうなってる?」
「図書隊員の重傷者多数、敵にも出ているようですよ」

 広場を指差す。

「まるで戦場だな」
「まるでじゃなくて、ここは戦場ですよ」

 燃え盛る車両、身動きできない重傷者、そして屍をさらす戦死者。
 自衛隊でも公式には経験したことのない、本格的な市街地戦闘の結果がここにある。
 まあ、今日は少しばかり激しかったかもしれないが。

「どうなってるんだこれは」

 燃え盛る車両を背景に喫煙を楽しんでいると、こちらへやってきたメディア良化隊の包囲部隊員が険しい声で尋ねてきた。

「戦闘の結果だろ。何か問題でも?」

 こちらの背嚢を見てくる。

「貴様、それは」
「ああ、あんたらのいう検閲対象図書だよ。
 悪いが返してもらった」

 その言葉に相手は激昂し、手を伸ばしてくる。

「そいつをこちらに寄越せ」
「おおっとぉ?やるのか?」

 その顔面に9mm機関拳銃を突きつける。

「停戦は嘘か、そうなんだな?」

 周りにいる他の良化隊員たちが腰の拳銃に手をかける。
 タバコを捨て、こちらへ向けて腰の拳銃を抜く。
42>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 00:08:33 ID:N36IM1dC
「いいんだな?まだ続けるんだな?撃つぞ」

 安全装置を解除する。
 銃を突きつけられた良化隊員は顔面蒼白になっている。
 左手で持つ拳銃で、別の良化隊員の頭を狙う。

「お前もいいんだな?じゃあ銃撃戦を始めるぞ」

 一挙に戦闘状態へと投入した周囲に、救急隊員たちは慌てて車へ戻ろうとする。
 この状況が長引けば、あそこの二人は確実に死ぬな。

「おい、銃を抜けよ、正当防衛の用件を満たせないじゃないか」

 9mm機関拳銃を突きつけた敵兵に促す。
 相手は顔面蒼白のうえ、どうやら失禁しているらしい。
 だらしのないやつだ。

「まあいい、じゃあ始めるぞ」

 ゆっくりと引き金に力を入れる。
 目の前の男は確実だろう。
 至近距離のうえ、防弾服を着ていない。
 もう一人も同様だ、何しろヘルメットの頭を狙っている。
 弱装弾とはいえ、一発で射殺することができるだろう。
 狙いを微調整し、引き金をゆっくりと絞っていく。
43>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 00:10:27 ID:N36IM1dC
「やめないか!」

 思わず引き金を引ききってしまうほどに素晴らしい一喝だ。
 後ろを見ると、我が部隊の敬愛すべき隊長殿がこちらへやってくるのが見える。
 今年で28歳、この習志野図書館の防衛部を切り盛りする女傑である。
 ちなみに俺は、隊長殿との相性が良くない。
 敵の死者を増やす事による敵方面部隊の破壊を主張する俺に対し、彼女はあくまでも防衛部としての通常業務の遂行を要求するからだ。

「貴様ら、既に戦闘は終了しているぞ!銃を仕舞わんか!」

 おやおや、敵軍の指揮官まで出てきやがった。
 こちらは見たことがあるな、過去に何度かこの図書館に来場している。
 恐らくは防衛体制の確認と内部の偵察が目的だったのだろう。
 だから俺は怪しい人物は締め出すべきだと主張したのに。

「これはどういうことなんだ?なぜ戦闘が終了しているのに銃を抜いている?」

 隊長殿は、険しい表情でこちらを睨む。
 その表情は『おまえ、またやったな』と語っている。
 わかっているなら聞くなよ。

「ああ、これはですね、戦闘終了が欺瞞情報だったようなので戦闘を再開しようとしたわけです」

 一応形だけは付き合うため、それらしい事を報告する。

「欺瞞情報?何を言っている?」
「戦闘終了を宣言したはずが、武装した良化隊員に書籍の引渡しを命じられました。
 他数名も接近してきたため、交戦の意思ありと判断し、自衛のために止むおえず武器を出しました」

 まあ、停戦についての欺瞞情報など、どんな事があろうともあるはずがないのだがね。
 そんな事をやった日には、双方共に誰が命令しても、いつまでも戦闘を継続し続けてしまう。

「なんにせよ、戦闘は終わった。双方共に武装を解除し、撤退するぞ」
「それにはこちらも同意する。今日の戦闘は特に激しかった、今回の事は双方の誤解を原因とする些細なトラブルで済まそう。
 お前たちもいいな?」

 話のわかる指揮官同士でよかったな。
 まあ、ここでもう一戦といわれてもそれはそれで良かったんだが。
44>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 00:12:34 ID:N36IM1dC
正化31年6月12日 関東図書隊管轄 習志野図書館 地下1階大会議室
 
「それでは、戦闘の際の状況を説明してもらおうか」

 激戦を生き抜いた俺は、査問会へ召喚されていた。
 俺が何をしたんだというのが正直な話だ。
 
「戦闘行為は図書隊防衛員の正当な業務と聞かされていたのですが、違うのでしょうか?」
「我々の質問に対して回答したまえ、君の質問など受け付けてはいない」

 これはまたフレンドリーなことで。
 これだから事務方は嫌いなんだ。

「当日は午後シフトのため、1300時より2200時までの防衛業務についておりました。
 許可を受けているはずの銃器を装備し、与えられたはずの銃弾を携行しておりました」
「余計な表現は必要ない、事実のみを報告したまえ」

 気に食わない爺様だな。
 しかし、この査問会の趣旨が俺の行動にケチをつけようとしている事がわかる以上、遠慮は必要ないだろう。

「事実のみですよ、私はいったい何で査問を受けているのかが理解できません。
 戦闘行為で処罰を受けなければならないのならば、すべての図書館防衛隊員に公平に罰を与えていただきたい」

 そんなことはできないだろうがな。
 我ながら子供のような事を言っていると内心苦笑してしまうが、嫌がらせの様に下らない事を口に出してしまう。
 防衛のための戦闘を行った防衛部員を、その行為について処罰すれば、図書隊は崩壊する。
 それは図書館の自由法が形骸化することを意味し、長く続いた公的機関同士の内乱に悪い意味で決着をつけることになる。

「何度も言うように、聞かれたことに対して、事実のみを報告したまえ」

 メガネをかけたひ弱そうなその事務方は、それでも偉そうな態度で命令した。

「そうですか、大変失礼いたしました。
 あまりにも皆さんが原則派に対する攻撃を意図した悪意に満ち溢れた言動を取るものですので、ついうっかりしてしまいましたよ」
「君は何かを勘違いしているようだが、我々は原則派への攻撃を意図しているわけではない」
「そうですよね、攻撃のための材料を集めているだけでしょうね」

 あきらめた様に呟く。
 相手の言動は露骨ではあったが、露骨なだけであり、明確ではない。
45>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 00:13:53 ID:N36IM1dC
「まぁ、そのお言葉が本当だと仮定すると、今回の査問はどのような趣旨なのか理解しかねますがね」
「いいから」
「ああ、事実のみを、簡潔に、でしたね」

 嫌味はこれくらいでいいだろう。
 記憶を呼び戻し、発生した出来事を脳内に時系列的に並べて口を開く。

「1504時に敵軍より奇襲を受け、民間人を誘導しつつ防御戦闘を実施。
 1510時に吉永三等図書監他三名が陣前防御のために前進、その後1521時に通信途絶。
 1529時敵軍の銃撃により正面玄関が破砕され、屋内戦闘へ突入しました。
 この際に頭部へ集中していたらしい銃撃で三井一等図書士が頭部に被弾し殉職。
 こちらの反撃により、敵五名を無力化しました。
 続いて1540時に正面玄関前を偵察、図書館特殊部隊員の方より自動小銃を受け取りました。
 その後、彼は足を負傷して身動きの取れないところ、敵狙撃手により頭部を狙撃され殉職。
 私は一時的に受領した小銃を用い、玄関前の敵二名を無力化しました。
 戦果確認中、至近距離より私の頭部を狙った無警告の銃撃を受け一時昏倒。
 恥ずかしながらその直後のことは良く覚えておりませんが、とにかく敵三名を無力化。
 正面玄関前まで戦闘地域に入っている様子でしたので、突入してきていた敵車両を銃撃、乗員二名を無力化。
 敵軍の撤退を阻止するため、装備および輸送車両を破壊。
 その際に当館より奪われた図書を発見、これを確保しました。
 1558時、戦闘終了の宣言を受けて図書館へ戻る最中、メディア良化隊封鎖部隊と認識の違いを原因とするトラブルに巻き込まれるも解決。
 同日2200時にシフト交代および銃火器の返納を行い、当日の任務は終了しました」

 速記者に対しての嫌がらせのように一気に報告を終える。
 
「よろしい、概要はわかった。
 今回の査問委員会は、君の任務自体を非難するものではない」

 無言で先の言葉を待つ。

「戦闘の結果としてメディア良化隊に出た損害が大きすぎることについてである」

 本題は最初に言えよ。
 そう内心で毒づくと同時に、査問委員会が招集された理由に見当がつく。
 まあ、そう思われても仕方がないか。
 何しろ故意にやったんだからな。

「先の執行での攻防戦は、近年まれに見るほどの死傷者を出した。
 その中で、死者については君一人が出している」
「それも、一人や二人ではない、君一人での防衛戦闘が行われた正面玄関前だけで8名。
 一生歩けなくなったものや、腕を失ったものもいる」
「君が銃撃したという狙撃手は、今も意識が戻らない」
「施設内だけではなく、野外にいた車両への限度を超えた攻撃に抗議も来ている」

 やりすぎた事に対する非難か。
 建前のようなものだが、図書隊交戦規定については多くの制約が伴っている。
 一つ、弱装弾を使用すること。
 一つ、頭部や顔面を狙わないこと。
 一つ、無力化による拘束を最終目的とし、過度の物理力の行使はこれを禁ずる。
 一つ、施設外へ向けての発砲は射角を考慮し、適切なるものとする。
 などなど、他にもさまざまな形で死者を出さないための規則が定められている。
 全く、サバイバルゲームをやっているんじゃないんだぞ。
46>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 00:23:13 ID:N36IM1dC
「これらについて、何か申し開きはあるかね?」

 口々に委員たちが言い放った後、ようやく俺の意見を述べる許可が出た。

「まず第一に、死傷者と申されましたが、死者はこちらにも出ています。
 内一名の特殊部隊の方は、足を負傷して身動きの取れない状態で頭部へ狙撃銃によるものでした。
 私の行ったことは、あくまでも戦闘可能な人員に対する、正当防衛に留まっています。
 それに、一度は至近距離から明確に殺傷を意図した頭部への銃撃も受けています。
 ボイスレコーダーがないのは残念ですが、彼らはそのときにこう言ったのです。
 止めを刺せ、とね。
 これらを全て棚の上に挙げて、図書隊による過度の物理力行使があったなどと抗議してくるほうがどうかしていると自分は考えます」

 どうせこちらの法務部からの死者に対する抗議は無視されているのに、相手の言い分を気にするとはね。
 原則派を攻撃できればなんでもいいのだろう。
 図書隊には原則派と行政派という二つの派閥がある。
 原則派とは図書館の原則と独立性を重視する一派であり、俺のような防衛部員が特に多く所属している。
 まあ、そのような認識でも持たない限り、公的機関同士が銃火器と税金を使って殺し合いを合法的に繰り広げる現実には耐えられないからな。
 一方、行政派とは図書館を行政のコントロール下に置くべきとする一派である。
 対立する法律を仰ぐ組織が武力闘争を繰り広げる現在、どうしてそのような事を主張するのか俺には良く分からない。
 恐らくはそれはそれで何か意味とメリットと正当性があるのだろうが、今のところ納得する回答をもらった事は無い。

「第二に、歩けなくなったものや腕を失ったらしい人々についてですが、戦闘要員はそれを勘定に入れて任務に当たります」

 だから防衛部要員は給料が高い。
まあ、実際には給与は業務部と同等で、各種危険手当や勤務手当てがついている形になるが。
 宣誓もしているし誓約書も書いている。
 詳細に調査をしたわけではないが、敵も間違いなく同じ事をしているだろう。
 とやかく言われる筋合いはない。
 
「意識が戻らないらしい狙撃手については、そもそも相手が身動きの取れない人間に対して、頭部を狙って発砲している事実を抜きにしないで頂きたいです。
 自分は、生命を守るための正当防衛を主張します」

 まあ、実際には肩辺りを狙って外したんだろうがな。
 大切なのは身動きの取れない負傷者の頭部を狙撃したということだ。
 とはいえ、厳密に言えば俺に武器を与えてくれたのだから、負傷しつつも戦闘行為を行ったという解釈になるんだろうがな。

「野外にという点については、戦闘地域を野外に拡大したのは敵側である事を前提に入れていただきたいですね。
 自分はあくまでも反撃したに過ぎませんし、それで結果として奪われた図書を奪還することができました」
「君の言い分はわかった」

 遮られる前に何とか最後まで話せたな。
 さて、減棒か、謹慎か。
 諭旨免職や懲戒免職ということはないだろう。

「君の今回行った行動は、あくまで結果として被害の拡大を招いてしまっただけであり、意図したものではない。
 また、車両の破壊云々についてはそもそもが野外に展開している良化部隊が発砲している以上、そこも戦闘領域と見なされる。
 この原則を破るものではない。
 よって、当委員会は先方に対し、互いに死者が出たことを遺憾に思う旨を伝えるにとどめる事を決定する。以上だ」

 随分とこちらよりの結論としてくれたようだな。
 答えははじめから決まっていたということか。
 そこから考えると、どうやら俺に釘を刺すことが目的のようだな。
 敬礼し、向こうも答礼する。
 しかし退出は促されない。

「もういい、退出したまえ」
「はっ!それでは失礼いたします」

 敬礼し、答礼が終わるのを待ってから退出する。
47>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 00:24:24 ID:N36IM1dC
正化31年6月11日 1200時 関東図書隊管轄 習志野図書基地隊員食堂

「どうだった?」

 査問会のために当日のシフトは全てなくなっている俺は、好物の大蒜ラーメンを存分に楽しんでいた。
 そこへ声をかけてきたのは、優男のネーミングで女性隊員たちに大変好評の吉田一等図書士だ。

「やりすぎだとさ」

 ドンブリから顔を上げずに答える。
 まあ、実際には意図して殺害を行っているわけだからやりすぎと言われて当たり前なんだがな。

「事務方の言うことなんて気にするなよ?防衛部は業務部、そして原則派と行政派は別なものなんだから」

 こいつは良い奴なんだが、どうも危険思想的なところがあるんだよな。
 原則派と行政派は仲が良いわけでは決してないが、どちらも図書隊だ。
 もちろん業務部と防衛部もそうだ。
 
「わかってるって、それで今日はどんな用だ?」
「お前さん、転属だよ」

 唐突に言われた言葉に、恥ずかしながら俺は反応を返せなかった。
 過度の武力行使を問題とする防衛部員を転属させる場所があるとしたら、それは検閲対象が存在しない図書館だろうか。
 あるいは非武装であるがゆえに攻撃対象に入らない業務部員か。
 
「業務か?まさか、調達の出向とかじゃないだろうな」

 兵站は軍事行動を実施する上で非常に重要な活動である。
 古来より兵站を軽視した軍隊は敗北してきた。
 だが、港湾や道路も無制限に戦場にするわけにはいかない。
 そのため、敵味方双方共に調達は一般の物流業者および防衛産業に頼っている。
 そこでの業務は非常に重要な任務ではあるが、俺のやりたい事には関与できない。

「図書特殊部隊だよ」

 その時に箸を取り落としてしまったとしてもしかたないだろう。
 図書特殊部隊。
 自衛隊が実戦を行わず、本格的な銃撃戦を経験したことのない警察特殊部隊しかいないこの国では、作戦行動経験を持つ唯一の部隊である。
 UH−60多目的ヘリコプターおよび装甲バスを主な輸送手段とし、ナイフから自動小銃まで多彩な武装を持つ。
 通常の防衛要員とは違い、図書業務も兼任する文武両道のエリート集団である。
48>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 00:29:41 ID:N36IM1dC
「あのエリートに俺が?」
「たった一人で一個小隊を倒した男がよく言うぜ。
 来週には辞令が出るはずだから、準備をしておけよ」

 何でそれを知っている、という疑問は忘れ、素直に転属を喜ぶことにしよう。
 通常図書館業務も含む形にはなるが、図書特殊部隊にはメリットがある。
 つまり、重武装で最前線へ送られるという事だ。

「一兵卒に生まれた幸せを実感してるよ」

 玄田隊長を筆頭とするエリート部隊。
 そこへきちんとした装備を持って参加できる。
 もちろん、9mm機関拳銃と言った自衛装備ではなく、敵の殺傷を行える歩兵用装備だ。
 運がよければ狙撃銃を扱わせてもらえる可能性もあるだろう。
 たまらんな。


「いいのか?毎回生死をかけた任務になるぞ。
 メディア良化委員会はこと図書特殊部隊に対しては面子にかけて攻撃してくる」
「だからこそ、俺の仕事もあるってもんよ」
「下手に死者を出すと後で叩かれるぞ?」

 心配げな表情でこちらを見られる。
 図書特殊部隊が参加するような作戦は、当然ながらニュースになるほど世間の注目を集める。
 そこで大勢の死者が出れば、世間の関心を余計に集めてしまう。
 彼の心配は当然であるが、杞憂であるとも言える。
 確かにメディア良化隊はこの国のマスメディア、出版業界に対して絶大な権力を持っている。
 何しろ、彼らが『公開するべきではない』と判断すれば、出版物も、映像も、情報自体も、何一つが世の中に出ない。
 その良化隊を抱える国が命令すれば、マスコミはいくらでも図書隊を叩くだろう。
 しかしながら、俺が所属する図書隊という組織は、ただ図書館司書が武装して出来ている存在ではない。
 黙って叩き潰されるほど、弱い存在ではないのだ。

「だからこそだよ。
 死人は出さないようにすればいいんだろ?ちゃんと狙うよ」

 意図して重傷者を出す趣旨の発言に対し、吉田は何も言わなかった。
 彼の転属は二週間後。
 そして、社会人にとってトラブルの無い二週間とは一瞬を意味する。
49>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 00:30:47 ID:N36IM1dC
正化31年6月19日 1300時 関東図書隊所属 武蔵野図書基地 第18予備倉庫

「それで、彼は駒として使われるの?」

 髪の長い女性が尋ねる。

「私の聞いている話だとそうです」

 この倉庫の警備を担当する防衛部の隊員が答える。
 
「相手にそういう連中がいるとはいえ、こちらも身内を犠牲にして同じ事をしなければならないというのは」
「言わないで」

 女性は隊員の言葉を途中で遮った。

「私たちはそういう感情を持たないのが仕事でしょ」
「そうですね。畜生、こんな仕事になど就かなければ良かった」
「今更の話よ、それは」

 気だるげに窓の外を見る。
 自衛隊の車両に護衛された後方支援部の弾薬輸送車両がゆっくりと敷地内へ入ってくるのが見える。

「冷戦作戦、ね。
 名は体を現すとは言ったものだけど、ここまで露骨なものは初めてだわ」


 彼の配属と合わせて、武蔵野図書基地には従来よりも多くの武器弾薬が配備されることとなった。
 協定に基づき、その種類と数量は事前にメディア良化委員会へと通告されており、そして彼らも同様の武装強化を実施した。
 双方からの申告を受けた警察庁は、その過剰武装に眉をしかめた。
 通常、使用される武器弾薬は弱装の拳銃弾を発砲するものを主としていた。
 しかし、今回採用された武器の多くは9mm機関拳銃、いわゆるサブマシンガンを主とするものだった。
 短時間に多くの銃弾を発射できるその武器を使えば、人体の損傷はそれだけ大きくなる。  
 対立は抗争へと変わり、そして今、戦争へと進化しようとしていた。
 個人携行装備の実戦評価試験を無料で行える自衛隊にとって現状は歓迎できるものだったが、治安を預かる警察としてそれは看過しがたいものだった。
 しかし、12年前の日野の悪夢を見逃し、あるいはあえて手出しをしなかった警察は、図書隊とメディア良化委員会双方に発言権を持っていなかった。
 こうして、誰一人止める者なく抗争は激化の一途をたどることとなる。
50>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 00:33:07 ID:N36IM1dC
本日はここまで
51名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/05(金) 00:34:38 ID:aWX1OIO8
ちょっと図書館戦争買ってくる
52名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/05(金) 00:36:30 ID:zj1JI/af
GJ
夢中になって読んだわ。続きが楽しみです

>>51
原作のノリとは大分違うぞこれw
53名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/05(金) 01:29:57 ID:UufS7hPI
いいなぁ、幡池裕行の挿絵で脳内補充して読んでるw
54皇国の守護者 ◆0XNxKTqPV6 :2008/09/05(金) 02:13:46 ID:aWX1OIO8
「また凄まじい数を集めたものだな、帝国も。」
皇国軍少将、新城直衛は望遠鏡を覗きつつそう言った。
「この龍虎平野を抜ければ、我が軍はまともな防戦が出来なくなりますから。」
彼の個人副官である天霧冴香は、彼ら自身の窮地を軽く説明する。
今彼らの前面には、帝国軍猟兵三個師団が展開していた。
諜報では、更に三個師団が予備軍として存在しているらしい。
それに加え、内王道と東沿道の前面でも帝国軍は運動を行っているとの情報が、導術連絡によりもたらされた。
彼と我の兵力差は三倍以上。
しかも、新城たちに任された皇龍道だけの兵力差で見れば五倍以上はある。
その上、天象院は今日から一週間は晴天が続くと予想している。そして風は穏やか。
つまり、敵の竜が活動するには絶好の環境になる。
それらは総合すると、こうなる。
皇国は今、風前の灯火である。
皇国の誰もが信じたくない現実を前に、冴香は恐怖を感じていなかった。
何故か。彼女の隣にいるのが新城直衛だからだ。
彼女だけでなく、皇国の全員が彼に希望を持っていた。いや、すがっていた。
皇国軍の危機を幾度なく救ってきた彼ならば、必ず。そう盲信している。
しかし、彼自身は全くもって恐怖と緊張で怯えていた。
彼は帝国相手に、一度しか勝ったと思ったことがない。
その他は兵をすりつぶしてその場しのぎをしただけ、そう思っている。
たが冴香にはその姿こそが頼もしかった。
いつも通りの彼。不安に包まれ自己不信で、そのくせ何かをしたがって。それに。
「全く、本領の奴等は東方辺境領の経済を潰したいのか?もう東方辺境領軍は限界のはずだぞ。
それが先鋒に三個師団とは!」
新城を苦しめてきた好敵手、ユーリアは今新城の下にいる。
負ける要素は冴香にとっては、無い。
しかしながら、奇跡が起こるとも彼女は毛頭思っていない。
ただ、泥の中を這いずり回りその身を苦痛に満たしてでも勝利を、最上の価値のある勝利を得る。
彼女には、新城はそうするに足りて十分過ぎる存在なのだった。

皇紀五六七年五月四日。皇国史上最も長い数日が始まろうとしていた。




むしゃくしゃしてやった、反省はしていない。
55名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/05(金) 02:59:55 ID:HprxyFEa
>>50
乙です。原作のノリを期待してたけど完全に別物だったよ……
56名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/05(金) 09:41:12 ID:IbScMwXl
>>50
乙!
原作とは確かに別物だが、それもいいと思っている。
続きを楽しみにしています。
57名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/05(金) 15:16:53 ID:N6nivopw
ちょっと原作買ってくる
58>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 23:32:42 ID:N36IM1dC
正化31年7月1日 1301時 関東図書隊管轄 武蔵野図書基地 図書特殊部隊執務室

「失礼します」

 声と共に扉が開かれ、荷物を床に置いた一人の隊員が現れる。
 8人の人間を殺害し、3名に消えることのない障害を負わせ、残る3名には長期間の入院を必要とする重傷を負わせた彼が、ようやく到着したのだ。

「やあ、いらっしゃい」

 小牧 幹久二等図書正。
 笑う正論で知られた男らしい。
 正論だけではなく、周囲が顔色を変えるようなきつい皮肉を発する事もあるとか。
 まあ、普通のことをしている範囲では実に人付き合いの良い人間とも聞いている。
 粗相をしなければ、それなりの関係が築けるかもしれんな。

「君がキリングマシーンさんだね。
 一人で暴れるような状況下には追い込まないから、安心して手足を狙ってね」

 やれやれ、有名人は辛いな。
 彼とはあまり仲良くなれないようだ。

「小牧、目下の人間相手とはいえ失礼だろう」

 小牧図書正の頭一つ分下の位置にある口が声を発した。
 堂上 篤二等図書正。
 背は低いが有能な人間と聞いている。
 射撃、格闘、指揮、いずれにもそれなりな才能を有しているとか。

「防衛部員としての戦闘能力に問題がないことはわかっている。
 しかし、図書特殊部隊とはただ鉄砲を撃っていればいい職業ではない。
 これからの訓練期間において、それをじっくりと覚えてもらう」
「はっ、よろしくご指導ご鞭撻の程をお願いいたします」

 敬礼、答礼。
 この場でのやり取りは、それで終わった。
 業務部の人間に施設内部を簡単に案内してもらい、宿舎に戻ってその日は終わった。
59>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 23:38:03 ID:N36IM1dC
 翌日から始まった訓練は、特筆すべきものはない。
 図書業務に関する座学から始まり、通常の練成、射撃訓練、市街戦教習や隔壁、シェルターなどの防衛設備の点検。
 図書に関することを除けば、自衛隊で行っていた訓練とさほど変わらない。
 部隊の同僚たちは、大抵が俺のやらかした事を聞いて距離を置くか、露骨に敵対的な態度を取るものばかりだった。
 残りの少数は友人まで行かない同僚。
 まあ、初日はこんなものだろう。
 それから一週間、襲撃も防衛出動も無く、平和な日々が続いた。
 メディア良化隊といえども、年中鉄砲を振り回しているわけではない。
 彼らとて公務員である以上、書類仕事や申請作業に追われる。
 しかし、敵対する公的機関を襲撃するために作成される申請書というものは一度見てみたいな。
 公共の安定を守るため、有害図書の排除を提案するものであります。
 とか書いているのだろうか?

「よう」

 そんな事を考えつつ食事を楽しんでいると、同室の手塚一等図書士が声をかけてきた。

「おう」

 短く答える。
 向かい合わせの席に座る。

「また射撃訓練で絞られてたな」

 この日の午前中に行われた実弾射撃訓練のことを言っている。
 教官がランダムに設置するペイント弾発射標的に対する市街戦を想定した訓練で、俺は全ての無力化に成功した。
 しかし、その全てが防弾衣の胴体に致命傷を負っている事を指摘されたのだ。

「無力化に至る時間は最短記録を更新している。
 的中率は95%であり、また相手に一発も発射させなかったその行動力は特筆に価する」

 最後に行われた総評で、堂上教官はそう論じた。

「しかし、防弾衣が意味を成さない程の攻撃は、無用な戦闘の激化を誘発しかねない。
 これは貴様一人だけではなく、全員を危険に晒す。
 その点を十分認識しない限り、お前は動員されても出撃することはありえない。
 良く胸に命じておくことだ」
「一言一句覚えてるんだな」

 手塚は驚いたようにそう答えた。

「別に、俺は仲間を危険に晒したいわけじゃない。
 無意味な殺戮を楽しみたいわけでもな。
 まあちょっと、引き金を引いている時間が長すぎたわけだ」
「無力化自体は、褒められるべきことではあるけどな」

 痛くても、怪我を負っても、相手が引き金を引ければ、こちらがやられる可能性は0にはならない。
 交戦中はいくらでも交代要員を投入できる良化隊とは違い、戦闘が終わるまで増援の投入はできないこちらは、僅かな負傷すら許されない。
 そのためには、意図した殺害にはならない程度の物理力の行使は許されるはずなんだがね。
 思わずため息を漏らす。

「まあ、俺は俺なりに考えがあって任務に励んでいくさ。
 誰のどんな考え方が正しかったかなんて、結果が出ないとわからないしな」
「結果って、何かあるのか?」
60>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 23:40:01 ID:N36IM1dC
 手塚は不思議そうに尋ねてきた。
 現時点では一兵卒に過ぎない俺が、戦争の結果を考えているという発言が不思議だったのだろう。
 当然の疑問ともいえる。

「この戦争、失礼、この抗争がこれ以上できない、そう誰かが判断すれば、終わるだろ?」

 俺の言葉に手塚は息を呑む。
 重傷者が溢れかえり、死者が屍を晒し、もしそれが一方的に発生したとしたら?
 ベテランが現場からいなくなる。
 より大きな権限を持っているメディア良化隊ならば、その損害を埋める事ができるかもしれない。
 しかし、それは新兵だ。
 新兵は弱い。
 ベテランの支援を受けられなければなおさらだ。
 それもやられたら?さらに増援を?
 それも重傷を負ったら?もっとたくさん殉職したら?
 自衛隊や警察でも動員しない限り、組織が成り立たなくなる。
 政府も、世論も、そこまでの損害は隠し通せない、無視できない。

「危険思想と、単純に切って捨てるわけにはいかない話だな」
「個人の主義信条は、公共の福祉に反しない限りは尊重されるべきだからな」

 真剣な表情の手塚に対し、苦笑しつつ返す。
 頭のいい人間は一を聞いて十を理解してくれるからありがたい。

「ベトナムを再現するつもり?」

 頭上から降ってきた声に、浮かべていた苦笑を消す。
 面倒な女の登場だ。
柴崎 麻子、普通の業務部図書館員にしては頭が切れすぎる美人だ。
 図書館内部の情報にも明るい。
 頭脳明晰で外見は美人の一言。
 これで悪いうわさを一切聞かないということは、頭の切れる単なる情報屋というよりも、何かがあると考えるべきだろう。

「メディア良化隊がこれ以上は不経済と考えられる一線を越えられるのであれば、意図してそうするのもありだよな?」

 あえて挑発するような発言をする。

「ちょっと、あなた一人で戦争でも始めるつもりなの!?」

 無駄にでかい声でそこへ割り込んでくるのは笠原 郁。
 女性初の図書特殊部隊という名誉を得てはいるが、正直なところ試験に受かった理由が分からない。
 まあ、射撃はともかくとして身体能力と根性はたいしたものだと思うがな。
61>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 23:42:20 ID:N36IM1dC
「始めるも何も」

 苦笑しつつ笠原の目を見る。
 真っ直ぐな視線ってのは敵意がこもっていても眩しいものだな。

「現状は戦争状態だろうが」

 そんな眩しい眼差しに、あえて反論を試みた。
 あっという間に胸倉を掴まれる。
 言葉遣いもそうだが、実に失礼な女だ。
 
「あんた、もう一度言ってみなさいよ」
「逆に聞くが、笠原、お前は現状をどのようなものだと考えているんだ?」
 
 俺の言葉に襟元を掴む手の力が緩まる。

「大の大人が鉄砲振り回しての盛大な喧嘩か?それとも、本を守るための聖戦か?」

 俺の言葉に詰まった笠原の手に力がこもる。
 反論できなくなったら暴力とは、いやはや、若々しくていいな。

「解釈に相違が出かねない状況であることは否定しないよ」

 一触即発の状況にさりげなく割り込んだのは、笑う正論こと小牧図書正だった。
 その隣では堂上図書正が苦々しい表情で立っている。
 そして彼は口を開いた。

「お前たちがそこまで若き情熱を持て余しているとは知らなかった。
 喜べ、今からお前たちには長距離走を手配しよう。
 グランド十周だ、思う存分吐き出して来い」

 結局、堂上図書正の監督で行われた長距離走は、グランドを三十周するまで終わらなかった。
62>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 23:44:09 ID:N36IM1dC
正化31年7月12日 1100時 関東図書隊管轄 武蔵野図書基地 図書特殊部隊執務室

「出動準備、ですか?」
「総員出撃だからな」

 驚いて尋ねた俺に、堂上図書正は当然のように答えた。
 大規模な作戦があるとは聞いていたんだけどな。
 露骨に殺害を試みる癖はこの際不問という事か。

「五分でブリーフィングだぞ」
「はっ!」

 敬礼し、作戦室へと移動する。
 ベテランから俺たち新米まで揃っている状況はなかなか壮観だ。
 
「少し早いが全員が揃ったようなので始める」

 玄田司令は一同を見回して満足そうにうなづくと、太い声で説明を始めた。
 今回の出動場所は千葉ニュータウンにあるニュータウン総合図書館。
 関東図書隊千葉支部の新基地が設置されつつある。
 最近良化委員会の活発な活動が報告されていたが、遂に先日襲撃が発生した。
 この襲撃で現地の警備部隊は大損害を被り、また図書館内部の防衛設備にも致命的な損傷を受けた。
 現在も急ピッチで復旧作業が行われているが、作業には一週間はかかるものと思われる。
 それまでの期間、総合図書館は図書特殊部隊による警備を要請してきた。
 期間は一週間、始めの四日間は第一小隊が、残る三日間は第二小隊が警備を担当する。
 第一小隊の出動は今から一時間後だ、いや、待て」

 説明を行っていた玄田司令に、堂上図書正が足早に近寄る。
 何か耳打ちを受けた玄田司令は、顔色を変えると一同に向き直った。

「総合図書館に良化隊の襲撃が開始された、第一小隊は五分以内にヘリポートへ集合しろ!
 第二小隊も出動準備、急げ!解散!」

 作戦室内は蜂の巣をつついた様な喧騒に包まれた。
 全ての特殊部隊員が足早に自分のロッカーへと向かい、そしてその中には俺の姿もあった。

「こんな直ぐにとは、よほど総合図書館に何かあるんだな」
  
 隣のロッカーで防弾服を身につけつつ手塚が話しかけてくる。

「威力偵察して、弱かったから襲撃したんだろうよ」
「何よそれ」

 俺たちの会話に笠原が割り込んでくる。
 もちろん、直ぐ隣ではなくロッカーの向こうからだ。
63>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 23:49:03 ID:N36IM1dC
「威力偵察というのはあれだ、偵察活動の一種で、それなりの規模を持った部隊で襲撃をかけ、敵の戦力を推し量る。
 弱ければ主力を呼び寄せこれを撃滅、強ければ上層部に指示を仰ぐ」
「それじゃまるで」
「まあ、俺たちは上の命じるままに動けばいい。戦場で余計なこと考えてると死ぬぞ」

 話を切り上げるようにロッカーを手荒く閉め、銃器の受領へと向かう。

「強引な切り口だったな」

 後ろを追いかけてきた手塚が半笑いで声をかけてくる。
 いや、これは緊張で引きつっているのか。

「出動前に喧嘩してもしょうがないからな」
「確かにな」

 手塚は笑い声らしい引きつった音を出した。

「お前さん狙撃手だったな」
「ああ」

 図書特殊部隊では、89式小銃や9mm機関拳銃で武装した部隊の他に、狙撃班を用意している。
 彼らの目的は敵の殺害ではなく、狙撃手がいるという事実による敵部隊の抑止にある。
 敵の指揮官を集中して狙撃すれば大きな効果があると思うのだが、それは戦闘の統制を取れなくする可能性から禁止されている。
 それで敵に圧倒されてしまったらどうするのだろうか?
 ただでさえ数で負けているというのに、図書隊上層部の考える事は理解できない。

「不用意に身を晒すなよ。
 まぁ、砲爆撃がない以上、流れ弾にだけ気をつけておけば大丈夫だろうけどな」
 
 冗談めかしてそう言うと、ようやく緊張が消えてきたらしい手塚は笑い声らしい声を発することができた。
 あちこちに弾痕を付けたヘリコプターが帰還したのはそれから二十分後の事だった。
64>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 23:51:24 ID:N36IM1dC
正化31年7月12日 1130時 関東図書隊管轄 武蔵野図書基地 ヘリポート

「人員割を発表する」

 帰還したヘリコプターは、敵の対空射撃によってかなりの損傷を受けていた。
 先ほどから応急処置が続けられているが、出力を上げるとどうしても安定しなくなるそうだ。
 そこで、苦肉の策として分隊単位での輸送が提案された。
 それに伴い、俺たちは二個分隊単位での輸送を命じられることとなる。

「無難だな」

 さすがに実戦慣れしている幹部が揃っているだけあり、先発、後発の戦力バランスが程よくとられている。
 しかし、重機関銃の一つでもあれば随分と楽になるんだがな。

「ねえ」
「どうした?」

 予備隊として列の端に並ばされている俺に、笠原が声をかけてきた。

「あんた悔しくないの?」
「何が?」
「何がって」

 不思議そうに尋ねた俺の態度の何かが気に喰わなかったらしく、笠原の声音に怒りが混ざる。

「何がって、私たちは予備隊の扱いなのよ?」
「すまん、予備隊の何が不満なのかを教えてくれ」

 彼女の怒りはますます増したらしい。
 顔が赤く染まる。

「それってつまり、足手まといって事じゃない!」

 ああ、もう。
 どこから説明すればいいんだ?
 堂上図書正は先発隊と共にヘリへ乗り込みだしているし、小牧図書正はニヤニヤとこちらを見ているだけだ。
 後発隊の他の隊員たちは装具の点検を行っている。

「あのなあ、こういう状況での予備隊というのは、戦果拡張のための決定打として使用する戦力だ。
 そこに役に立つか立たないか分からない連中を集めてどうするんだよ?」
「でも」
「口論している暇があったら装具の点検を行う事をお勧めするよ、死にたくなければね」

 再び強引に会話を切り上げ、装具の点検を始める。
 俺たちの乗るべきヘリコプターが戻ってくるまで、残り40分。
 今回はいつもとは違う。
 俸給分の働きというやつを、思う存分にしてやろう。
65>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/05(金) 23:53:12 ID:N36IM1dC
本日はここまで
66名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/06(土) 00:06:27 ID:5UsTVJLu
>>65
お見事!キャラの性格とかよく考えてるな

予備隊や予備戦力って考え方は軍事訓練を受けた者なら常識的に持ってるけど
軍事組織じゃない図書隊の一兵卒じゃわかんないわな
作者さんはそういう訓練を受けた人かな?

で、この話は原作のどの辺りになるのかね
戦争と内乱の間くらい?
67>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/06(土) 02:53:00 ID:KJkTwm5z
>>66殿
訓練は残念ながら受けたことが無いです

原作で言うと図書館戦争と図書館内乱の間です
史実だとこの後『クマ殺し事件』や武蔵野第一図書館襲撃が起こります
68名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/06(土) 23:44:04 ID:14GsFxz4
クマ殺しとかは戦争でも前の方じゃなかったっけ?
個人的には武蔵野と小田原の間くらいの話に見える
69名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 01:31:38 ID:hlsxqvdF
>>5
GJ!!
続き楽しみにしてます
70名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 23:53:36 ID:vJy6OOqt
>>5
GJ!
続きを待っているのだが・・・
71名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 13:42:03 ID:ezfmqV5W
短めなのを投下してみる。
72名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 13:48:04 ID:2jVEPvGX
支援
73名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 14:01:32 ID:ezfmqV5W
大日本帝国海軍第四戦隊・第二分隊、鞍馬



白根級超甲巡二番艦の彼女は、白波を蹴立ててパラオ沖を走っていた。一応護衛として冬月級アイギス艦が二隻続いている。しかし、かなりの速度を出しているといって、取り立てて急いでいる訳でも無かった
『どうです?良い絵は撮れていますか?』
CICに降りていた艦長の松永大佐は問い掛けた。相手は、色々艦内を細工して(勿論外接であるが)艦の各所をモニターしている男だ
『いやぁ!これはいい!迫真の映像が撮れてますよ!』
確か映像監督の庵乃とかいったか
『それは重畳』
『あとは上陸支援の砲撃シーンを撮れたなら完璧です!一大ヒット間違いなしですよ!』
些か子供のように興奮気味だが、海軍の広報に役に立つなら問題無い
『ふむ・・・実際の訓練をお見せしろと、上からは言われております』
『なんと!それはありがたい!』
というよりは、彼等が持ち込んだ映画の設定がリアルなのにかこつけ、過激な内容の訓練を映画の撮影協力としてやってしまおうというのが、海軍としての魂胆だ
『オーストラリア、エミューパーク周辺の海図を』
既に陸軍が強襲上陸をかけていて、それを豪陸軍が多勢で攻撃をかけて来ているのが前提だ
74名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 14:04:11 ID:ezfmqV5W
『おお!』
CIC内の画面が、ずくさまオーストラリアの地方都市に変わった事に監督は感嘆の声をあげ、そして首を捻った
『映画ですと、ブリスベンに直接乗り込むのですが』
『艦砲による支援のしにくさから、沿岸都市に直接乗り込むなんて面倒はしませんよ』
ま、焼け野原にするなら問題無いが、なるべく都市攻撃は避けるのがセオリーだ。ああ、威嚇の為に二つ三つ都市を消滅させるのも結構ありな戦術だが
『へええ』
しきりに監督は首を振っている
『マーカーを』
仮定として陸軍から、とされる発見済みの敵陣が地図に示される
『砲兵をピックアップ』
陸軍が特に苦労する火点が、取捨選択されて浮かび上がる
『我が艦の主砲の射程は三万メートル程です』
通常弾での話で、RAPを使用した場合はその限りではない
『やはり射程外から?』
アウトレンジで叩き潰すことを監督は期待しているようだ
『本艦はあくまで戦艦ではありませんし、現代の陸軍砲兵は、三万も楽に射程内ですから』
その分では、監督が乗る艦を間違えたとしか言いようがない。帝国海軍も、流石に戦艦を貸すのまでは出来ないという事だろう
『ですが、よりエキサイティングな映像をお見せ出来ると思いますよ』
75名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 14:06:11 ID:ezfmqV5W
『といわれますと?』
監督は良く解らないようだ。艦長はニヤリと笑った
『主砲撃ち方始め!あ、実射は最後にしますんで』
復唱が返ってくる間に言っておく
『了解です』
『では、しばしお付き合い下さい。スクリュー反転!機関後進全そーく!』
スクリーンに自艦から三つの矢印が同時に放たれていくのに合わせて、かなり急な制動が行われているせいか、踏ん張りが遅れた監督は前のめりになる
『な、なんでこんな事を?』
『現代の砲兵は対砲兵レーダーを持ちますんで、発射地点が即座に掴まれます、故に』
『レーダーに感!』
CIC要員が叫ぶ
『新たなポイントを表示!目標は適宜撃て!』
新たに発見された砲兵陣地が地図にマーキングされていく。そしてそこから伸びた矢印は、艦の表示の手前に落ちて輪を作る
『海上ですから水柱ができるだけですが、地上に落ちた場合の危害範囲です』
輪の意味に庵乃が質問を発する前に、艦長は答える
『おも〜か〜じ!次!また前進するぞ!備え!』
事前準備を整えておく。再びCIC要員が叫ぶと、地上から矢印が延びる
『自走砲陣地をピックアップして表示だ!』
移動している物とそうでない物を別ける。どちらがより脅威かは言わずもがなだ
76名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 14:08:59 ID:ezfmqV5W
『近頃の自走砲は、たった二分で砲弾を放って位置を変えて来ますからね。また、こちらの強襲上陸に対応しての展開である事を考えれば』
マーキングした陣地で消えた物は少ない
『こうなるわけです。殆どが自走砲でしょう。精鋭かつお高い』
『な、なるほど』
あぁ、いかん。ちょっと怖い顔をしているな
『我が艦が叩き潰すに足る目標が存在する。というわけです・・・よし!スクリュー再反転!全速前進!』
再び制動で身体が傾く。さっきよりは緩いが
『こりゃあすごい。場所の読みあいなんですね』
『ま、そういう事です』
庵乃の向ける、感心と興味の視線を無視しつつ、艦長は考える。敵の砲弾よりこちらの砲弾の方が効果範囲は広く、この三斉射で自走砲を六台は屠っているだろう
現ドイツ陸軍の新型自走砲が、調達定数594台なので、わずか数分でその1%が失われたと考えれば、その被害のおぞましさがわかる
『艦長!』
モニターしていたCIC要員がこっちを向いた
『二発が命中コースです!』
矢印が重なると、艦長は適当に命中箇所を言い、応急処置を命じる
『大丈夫、ですよね?』
庵乃は心配したようだ、この艦が撃沈判定を受けるのではないかと
『はは、それはありません』
77名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 14:13:23 ID:ezfmqV5W
艦長は笑った
『私は確かに射程内と言いましたが、このあたりの距離ですとあちらはRAPを使っての砲撃である事は間違いありません』
威力の下がった155ミリ砲弾を、たかだか二発程度喰らったぐらいでこの艦はぐらつかない。なにせ水雷戦隊の突入支援の為、大量に存在した米海軍の巡洋艦を一手に引き受ける役割で造られた艦なのだから
『そうですか、安心しました』
庵乃は胸を撫で下ろした。流石は小粒といえども戦艦、頼もしい限りである
『陸軍が助攻を始めました!』
砲兵がこちらにかかりきりになっているのを幸いに、陸軍が進攻を始めたのだ。火砲支援が無い相手とあって、有利に事を進めているようだ
『これで相手は迷い始める。どちらを先に相手どるか、あるいは退き下がるか』
だが、この場で退き下がるということは海岸線に陣地を構築され、海に追い落とすことが不可能になる事と同意だ。とても褒められた選択ではない
『砲撃を続ける。徹底的に叩き潰せ!』
それから三発の被弾と引き換えに十回の斉発を得る事が出来たところで、訓練は終了した
『おおよそ、今の訓練で我が艦は36台(各砲塔につき一台撃破の判定)の新型自走砲を撃破し、残りの陣地を潰ししていくことになります』
78名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 14:16:29 ID:ezfmqV5W
『そ、そうですか』
激しい艦の運動のせいで、庵乃はグロッキーになりつつあった
『実際は白根と共に行動しますので二倍の72台、まぁ低く見積もって50ぐらい喰えるのが実際ですかな。型式が古ければ倍は固い』
何せ二分で移動可能という最新型が全てでの話だ、一つ前ぐらいの型だと十二分程かかる
『っ!?新しい訓練データの指示!内陸からミサイル発射を確認!目標は本艦!』
しめしだされた地図の内陸から、いくつもの矢印がのびる。カウントは80だ
『なにぃっ!?そうか!MLRSのATACMSの転用を想定か!対空戦闘用意!射程に入り次第撃ち方始め!』
これまで遠巻きにしていた駆逐艦が近付いてくる
『花月、満月、防空戦闘に参加します!』
おそらくVLSからあるだけの対空ミサイルが打ち出されているはずだ。その矢印が伸びて、あちらの矢印と交錯する
『判定!SAM射出成功数は二艦で40!うち迎撃成功は32!』
うーん、まずいな。ESSMが欲しいところだ
『残り48発!』
刻々とミサイルは接近してくる
『ECM!チャフ!』
『判定!10発ロスト!』
残り38!
『高角砲!ぬぅ!こちらは自走砲とやったときに二基やられていたな』
回頭して四基とも使える舷を向けるべきだったか
79名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 14:20:23 ID:ezfmqV5W
『判定!僚艦と共に10基撃墜!』
『CIWS!』
25ミリのガトリングが、片舷三基あり、それが最後の盾だ
『判定、撃破7、命中21発、鞍馬大破、航行には問題無しなるも、大火災の為減速。状況終了・・・追記、油断大敵。緊急派遣軍、艦隊司令部参謀』
艦長は頭を抱えた。あの人は人が悪すぎる、自走砲とやりあうだけじゃなかったのかよ。随伴艦がたった二隻の時に奇襲の飽和攻撃とか
『あ、あのー』
庵乃はいきなり置いていかれたのでぽかーんとしている
『ああ、司令部がサプライズをしてくれたようです。してやられてしまいました』
『はぁ・・・あ、でもおかげさまで良い絵が撮れました』
波しぶきをこれでもかとあげる鞍馬、応急に走る乗員、そして特に、真剣かつ必死に慌てる艦長らCIC要員。収穫としては大漁過ぎるぐらいだ
『あはは、実戦でこうならないよう頑張りますよ』
自分の失敗を良い絵と言われた艦長は、苦笑しながらそう言うしかできなかった



そのあと主砲の実射撃訓練を行い、鞍馬は内地へと帰還、監督は映画の撮影に復帰した。一年後に封を切られた映画が、そのリアリティ溢れる迫力から大ヒットを記録したのは言うまでもない
80名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 14:38:08 ID:ezfmqV5W
投下終了
いきなりさるさんとか言われて焦りました。携帯からだと、一回貼り付けて、何字か書き直さないと投下出来ないみたいです


とりあえず自走砲部隊VS戦艦をば、ちなみに最後のATACMS乱舞は、陸自の対艦ミサイル大隊が16両96発なんでマジに飛んでくる恐れが・・・
ついでに近場の陸軍である韓国だと、自慢の新型自走砲が消えてなくなるか、K55の10%が消し飛ぶという恐ろしさ



戦艦はロマンにょろ
81名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 01:32:52 ID:7RizgdmT

空母は好きです。でも戦艦はもっと好きです
82名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 20:56:30 ID:t57uJHU4
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221219453/

軍板から移転して参りました。お見知りおきを・・・。
83>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/14(日) 22:36:08 ID:Bdih8rDO
正化31年7月12日 1230時 関東図書隊管轄 千葉ニュータウン総合図書館

 ヘリの窓から見た千葉ニュータウン総合図書館前は戦場だった。
 あちこちに現地守備隊の土嚢で築いた陣地が設けられ、そのいくつかに敵車両が突っ込んでいる。
 転々と死体らしい人影が倒れているが、ここからでは敵味方の区別が付かない。

「今のところ戦闘区域は玄関前にとどめられているようだが、時間の問題だな」

 思わず感想が漏れる。
 突破された正門前には、車両の陰に整列した、メディア良化隊の増援部隊の姿があったからだ。
 その後ろには無数の救急車。
 敵さんは本気で攻め落とすつもりらしい。
 ああ、重火器さえあれば、屋上から狙い撃ちにしてやるのに。
 そんな感想を持つ俺を乗せたヘリコプターは、地上からの対空射撃を浴びつつも着陸態勢に入った。


「ごっつい眺めだな」

 最後尾でヘリから降り立つなり彼はそう呟いた。
 屋上に設置されたヘリポートには、安全圏ギリギリまで重傷者が並べられていた。
 呟きつつも彼は低い姿勢を取り、絶対に下からの銃弾を浴びない姿勢を取る。
 他の同僚たちは何を血迷ったか背筋を伸ばして整列している。

「軽傷の者は収容を手伝え!」

 片腕を包帯で固定された玄田隊長が叫んでいる。

「第三派到着しm」

 敬礼しつつ報告しようとした三等図書正が、左斜め下から飛来した敵弾で脳組織を破壊される。
 どうしてこの戦場で背筋を伸ばしてそんな事をしようとしたのかは永遠の謎になった。

「頭を下げろ!遮蔽物から露出するな!」

 血しぶきの一部を浴びた玄田隊長が叫び、ようやく他の連中も姿勢を低くする。
胸壁に身を隠していた図書隊員たちが、銃だけを遮蔽物から出してブラインドショットを一斉に開始する。
 よく狙わないで行われるそれは、野外戦では脅威にならない。
 しかし、十数人が建造物の屋上から遮蔽物のない階下へ向かって行う場合、それは嫌がらせ以上の効果を発揮する。

「くそったれが、第三派は館内防衛に入れ、指揮官は堂上、二階ロビーテラスで防戦中だ、急げ!」

 オーケイ、まだ敵は玄関で食い止められているって事だな。
 臨時に指揮を引き継いだ図書士長に率いられつつ、俺たちは最前線へと足を進めた。
84>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/15(月) 01:23:13 ID:nyJWxC5b
 屋上で話を聞いた時は、あくまで玄関で敵を食い止めていると思ったんだがな。
 先ほどまで臨時の指揮官を勤めていた図書士長の脈拍を確かめつつも、内心でそんな事を思う。
 二階ロビーテラスへ向かうように命じられた俺たちは、屋上から三階に降り立った途端に銃撃を浴びた。
 通路の向こうから飛び出して来た三名の良化隊は、三人とも躊躇無く発砲。
 先頭を進んでいた図書士長は顔面を含む十数か所に被弾し、残念ながら即死してしまった。
 
「おい、大丈夫なのか?」

 俺の後ろで銃を構え、通路の向こうを見ている図書士が尋ねる。

「即死だね、残念ながら」

 念のために脈を取るが、勿論死んでいる。
 
「どうするよ!?」

 廊下の向こうからは断続的に銃弾が飛んでくる。
 こういう装備の充実も必要だと後方支援の連中が知っていて助かったな。
 そんな事を思いつつ、腰のスタングレネードを抜く。

「3カウント、援護しろ」

 手短の二人に命じる。
 安全ピンを外す。
 手に持った9mm機関拳銃の安全装置解除を確認する。
 
「おい、そんなものを持ってどうする気だ?」

 仲間の一人が声を掛ける。

「同じ訓練を受けてきたはずだろ?
 グレネードで威嚇、ひるんだ所で制圧だ」
「連中は5mは先の角だぞ?たどり着く前にやられちまう」

 嘆かわしい事だ。
 こいつは屋内戦闘のカリキュラムを真面目に受けていなかったのか。
 あるいは、受けた訓練や与えられた教本をその通りにしか受け取っていなかったのだろう。
85>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/15(月) 01:24:36 ID:nyJWxC5b
「俺がグレネードで威嚇して廊下の向かいの壁に取り付く。
 お前らがその間支援射撃を連中のところへ叩き込む。
 その後は俺がやる。OK?」
「わ、わかった」

 嘆く暇もない。
 二人が一連射を叩き込む。
 グレネードのレバーを外して点火、2秒待って投擲する。
 狙い通りに飛んでいき、敵が潜む場所へと飛び込んでいく。
 
「爆弾だ!」「投げ返せ!」

 敵の狼狽する声が聞こえる。
 それを無視して壁へ駆け足。
 壁に半身を預ける形で伏せ、下を見て目を閉じる。
 轟音。
 目を閉じてもなお感じる程の閃光が発生する。
 目を開き、耳鳴りを無視して前を向く。
 味方を見ると、角から頭を出さない。

「使えない連中だ」

 聞こえないのをいい事にそんな感想を漏らして前進。
 10秒とかけずに曲がり角へと到着する。
 徐々に復旧しつつある耳は、敵が喚き声を漏らしている事を確認する。

「目が見えない!」「俺の手がぁ!!」

 どうやら、飛んできたグレネードを投げ返そうとした勇者がいるらしい。
 まことに申し訳ないが、そんな事が出来る余裕を持たせて投げる訓練は今時やっていない。
 ありがたい事に、最低一人は戦闘能力を完全に奪えたようだな。
 素早く銃と片目だけを角から覗かせる。
 やはり三人。
 全員が目や耳を押さえてのた打ち回っている。

「残念だったな」

 至近距離で頭部を狙って発砲。
 敵三名は無力化された。
86>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/15(月) 01:26:17 ID:nyJWxC5b
「遅くなりました!」

 俺たちが到着した時、二階ロビーテラスおよび玄関は凄まじい状況になっていた。
 どうやらそのまま突入してきたらしい敵装甲車両が玄関をぶち破って各坐しており、その周囲にはこちらの重傷者が倒れ伏している。
 それを互いに無視し、玄関の支配権を巡って双方が銃弾による交渉を続けている。
 重機関銃に手榴弾、あとは無反動砲でもあれば随分と楽なんだがな。
 早速階下へ向けて銃弾を叩き込みつつ、彼はそんな事を思った。
 後ろからは発砲を開始した同僚たちの銃声に混じり、口喧嘩している声が聞こえてくる。

「どうして助けに行かないんですか!あんなに怪我人がいるのに・・・教官!顔に怪我を!?」
「もう三回も衛生が助けに行った。全員撃たれて重傷だ。
 それから俺のはかすり傷だから気にするな」

 なんとまあ、暢気な事だ。
 しかし、状況は芳しくないな、衛生兵も気にせず銃撃か。
 まさしく戦場じゃないか。
 それじゃあどうして向こうの負傷者はいないんだろうか?
 当然の疑問を持った彼の眼前で、それに対する回答が披露された。
 不運にも数発の銃弾を受けた敵兵が倒れ、こちらの銃撃が控えられる。
 その隙に相手の銃撃が激しくなり、車両の影から飛び出してきた敵衛生兵が負傷者を回収、撤退する。
 何てことだ。
 味方の情けなさぶりに呆れ返った瞬間、隣で銃撃をしていた隊員が被弾する。
 そのままフェンスに倒れこんだ彼にさらに銃撃が集まり、頭部から赤い飛沫が上がる。
 絶命確実だ。
 おやおや、負傷者にも容赦なしか。
 低い姿勢を保ったまま、彼は死者から89式小銃を受け取った。
 だったらこっちも、容赦はいらないって事だよな。
 堂上図書正はまだ後ろで何か言い争いをしている。
 小牧図書正は裏口の警備担当だ。
 俺の班の上官は屋上で死んだし、今の上官は階下への銃撃で忙しい。
 結構、それでは戦争を始めようか。
 
 階下の敵に向けて早速発砲をする。
 自動小銃特有の高い発砲音が連続で鳴り響き、三発目から命中が始まる。
 弱装弾とはいえ自動小銃の攻撃を受けた敵はすぐさま無力化され、そのまま地面へ倒れこむ。
 直ぐに俺に向けての攻撃が激しくなる。
 救出の準備なのだろうが、そうはいかん。
 首から提げた9mm機関拳銃を階下へ向けて適当に連射し、嫌がらせのような牽制を行う。
 撃ちつくすと同時に銃を手放し、同僚の遺体から弾薬を受領し、小銃の弾倉交換を行う。
 直ぐに遮蔽物から身を乗り出し、再度の発砲。
 こちらへ来ようとしていた敵衛生兵が慌てて遮蔽物へと逃げ込む。
 それを確認しつつ、別の障害物からこちらへ射撃していた敵兵へ銃弾を叩き込む。
 一発顔面に当たったな。
 まあいい。
 反撃が来る前に再び身を隠し、匍匐前進で別の場所へと移動する。
 その間にも機関拳銃の弾倉を交換する。
 土嚢の影から銃だけを出し、先ほど衛生兵が現れた方向へ適当に銃弾をばら撒く。
87>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/15(月) 01:29:38 ID:nyJWxC5b
「撃つな!医療班だ!」

 階下から敵の叫びが聞こえる。

「こっちの医療は撃つのに、そっちは撃っちゃいかんのかよ」

 苦笑しつつも小銃を構え、敵の声が聞こえたほうに銃弾を叩き込む。
 残念ながら一人も倒せず、舌打ちしつつ身を隠す。
 堂上図書正からの叱責を覚悟したが、まだ何か言い争いをしているらしい。
 暢気な事だ。

「なあ、防火設備は今も動いているのか?」

 隣で銃撃をしていたこの図書館の防衛員に声をかける。

「知らん!動くはずだがここじゃわからんっ!」

 極度の興奮状態にあるらしいその防衛員は、それでも質問には回答してくれた。
 階下の敵装甲車両を見る。
 装甲車といっても、実際には車体に防弾加工を施したバンに過ぎない。
 自動小銃を車体正面のエンジン部分に向ける。
 銃声にまぎれてエンジン音が確かに聞こえる。
 近くに友軍の負傷者はいない。
 引き金を絞り、全弾を叩き込む。
 正面の金属部分が次々と打ち砕かれるが、そもそも銃撃戦の最中のために敵味方共にそれに気がつかない。
 弾倉を交換し、再度の連射。
 正面部分に次々と被弾し、遂にガソリンガスの燃焼が始まった。

「たっ退避!!」

 それを見た敵の指揮官らしい男が引きつった声を上げる。
 そこを狙い発砲。
 左胸に着弾し、敵は回転しつつ地面に叩きつけられる。
 撤退を開始した敵部隊は散発的な銃撃しかしてこない。
 姿勢を高くした人間から撃つ。
 他の友軍も発砲していることから、敵は車から離れることすら適わない。
 火災報知機が作動し、スプリンクラーが水をばら撒く。
 日野の悪夢の教訓から、図書館では必要以上の水を散布できるように設計が施されている。
 台風発生時の様な強力な雨が、天井から降り注ぐ。
 だが、ガソリンの燃焼は車体内部で発生している。
 そう簡単には消えはしない。
 雨が邪魔をしてなかなかこちらを視認できない敵に対し、こちらは上から発砲だけしておけばいい。
 続けざまに四人ほど倒し、そして俺は堂上図書正に羽交い絞めにされた。

「もういい!やめろ!」
「離せ!危ない!!」

 信じられなかった。
 今の俺は、危険な階下に対して無防備に上半身を晒している状態だ。
 この上官は、もしかしてドサクサにまぎれて俺を殺したいのか?
 
「早く離してくれ!」

 そして俺の懸念は的中し、敵の放った銃弾が少なくとも三発、胴体に命中した。
 そこで我に返ったらしい堂上図書正はようやく俺を離し、真っ青な顔でこちらを見る。

「退避!」「医療班急げ!」

 敵兵たちの叫び声が銃声に混じって聞こえ、そして大きな爆発が発生する。
 オレンジ色に光る天井と、多くの人間たちの絶叫を聞きつつ俺の意識はゆっくりと消えていった。
88>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/15(月) 01:31:40 ID:nyJWxC5b
本日はここまで
89名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 13:49:20 ID:JErJFfuS
投下乙
一人称視点も良いもんだね
90名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 16:46:42 ID:0kBe8Cnl
図書館戦争でこんなに負傷者や死者がでるの初めて見た
91名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 18:41:48 ID:JzaMMocH
>>90
ペイント弾じゃなく実弾で撃ち合うなら、むしろこれくらい死者や負傷者が出るのが自然
92名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 09:42:10 ID:uHfwsopX
砲が無いだけまだましな方だ
93名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 19:29:21 ID:ctWxoo4Y
普通は銃撃戦やりゃ死人がごっそり出るわな
だからこそ茨城で「相手殺しちゃったかも」でガクブルした笠原に少々納得がいかない

銃を持って何かを守ろうと決意した人間が、人を殺す事を躊躇してどうすんだ
銃を持った瞬間から殺す事と殺される事を覚悟すべきじゃないのか?

その点が図書館戦争シリーズで一番不満に思った事なんだよな
94名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 19:31:40 ID:025nvvz/
その死者や負傷者がでないように最大限努力しながら闘争してるのが図書館戦争だからなー
95名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:17:30 ID:n+y+WJmC
あのシリーズで一番納得いかないのは、国家による武力の独占が崩壊してるという
ワイマール共和国末期も真っ青な状況なのに、だれもそれを気にしてないこと。
96名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 23:52:35 ID:cJbR1dXK
事実上の内戦状態なのだから、図書館どころの騒ぎじゃなくなると思うのだけどね
97名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 01:31:00 ID:zm/uPhKR
>>95
「『気にしたら負けかな?』と思ってる」とかだったりしてな
「マスコミの背後に某国が付いてる」とかでもなければ
夢邪鬼の作り上げたナイトメアワールド(別命:押井ワールド
98名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/17(水) 23:23:13 ID:ga+9j1Ze
>>5
次回どうなるか期待
99名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/19(金) 20:35:51 ID:b1K7BG+R
しかし 図書館戦争シリーズが星雲賞を取ってるのには納得いかんなぁ
100名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/19(金) 20:37:30 ID:wYrECAYn
あれはラブコメとして傑作ですゆえ
軍事モノとして見るのが間違い
101名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 23:16:56 ID:2qEtzQ3R
現在ロボット物SS統合スレで、みんなで一から設定考えて
それを形にしてみようってのをやってるんですが
肝心のメカとか兵器とか、敵組織の構図とか
その辺に詳しい人が不足しております
このスレから詳しい方が支援に来てくださると嬉しいです
102名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 00:55:44 ID:j8RNvIAN
軍オタを呼ぶと、まず2足歩行メカを兵器化する必然性から始まるぞw
103名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 17:58:25 ID:QK3l9ISR
>>102
大友克洋の「武器よさらば」のゴンクか
星野之宣の「サージャント」ならwktkするけどな、メカフェチとしてw
104名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 23:43:48 ID:r9ZDDqlA
また古い作品で戦争しに来たなw
105名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 00:38:15 ID:6LvGVtHC
個人的にはガサラキを押しておこうか、ボトムズでも良いけど
106 [―{}@{}@{}-] 名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 18:43:27 ID:JFCnsW6O
なぜガンダムがでないのか理解できない
107名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 23:11:04 ID:EQw7fCM0
やはりヴァンツァーだろうと思う
108名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 00:22:08 ID:z3deN1dC
ガングリフォンもなかなかいいよ。

日本外人部隊とか、ハルトマンとか
109名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 15:37:40 ID:6hGV79nZ
SNS作りました よろしく!

BLACKHAWK SNS (ミリタリー好きの為のコミュニティ)
http://blackhawk.xii.jp/

110名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 21:09:27 ID:2XZ4+IyQ
保守を兼ねてSSを書いてみた
多分つまんないと思うけど、暇で暇で死にそうって人は見てってくれ
111名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 21:11:16 ID:2XZ4+IyQ
2021年7月17日…伊豆半島西岸某所
低く落ちた細長い月が海岸線を照らす。切り立った岩場に波の当たる音が響く
海岸線を取り巻く道路の山側で警戒を続けるオレの微光暗視眼鏡に、明かりを落とした車列が近づいてくるのが見えた
海岸線で待つ仲間に赤外線ライトで合図を送ると、向こうからも了解の合図が帰ってきた
無線はどこで誰が傍受しているかわからないから、失敗の許されない今回の作戦では使用していない
たとえそれが陸自の最新式デジタル無線機であっても。そして、相手がまだハイテク化されていない中国軍であっても…

普通の乗用車が数台連なってオレの足下の道路に停まった。10年以上前から言われている「地球温暖化」対策で作られたハイブリッドカーはさすがに静かだ
まだディーゼルのけたたましい音を立てる自衛隊の車両よりは今回の作戦に向いているのかもしれない
先頭の車からスーツを着た男が数人降りてきた。そして真ん中と最後尾の車に取り付きうやうやしくドアを開けた
本来なら菊の御紋を付けたリムジンに乗り、群衆が歓迎の声を上げる中、にこやかな笑顔を見せて手を振りながら降りてくるのが彼らの常だ
だが今日はオレでも買えるような安い乗用車に乗り、陸上自衛隊特殊作戦群の精鋭(と自分で言うのもなんだが)が周囲を警戒する中、沈痛な面持ちで彼らは車から降りてきた

2000年以上続いた一族の末裔…この国の「象徴」でもある天皇陛下と皇族たちは、海岸線の岩場をゆっくりと降りていった
112名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 21:13:13 ID:2XZ4+IyQ
きっかけは2008年の選挙だった…と知っている人は言う
オレも当時10歳、その頃の記憶はある
当時野党だった民主党の大勝利に日本は湧いていた。官僚政治の終焉、格差の是正…「国民の生活が第一」と謳った彼らの政策の一つが「防衛費の大削減」だった
陸自10万人体制、戦車・戦闘艦・戦闘機の半減、燃料費を抑えるために訓練を減らし、余剰分を貧困層の救済に充てる…
耳障りのいい平和や予算削減といった言葉をオレより上の世代は鵜呑みにしたらしい
実際、数年は景気のいい話が続いた。アジア諸国との交流を強め経済状態は好転
しかし、本当の危機はそれからだった

「日米安保の破棄」を言い出したのはアメリカだったが、きっかけを作ったのは日本だ
沖縄の米軍基地を5年以内に撤収する事、そして地位協定の破棄を要求した日本。その時点でアメリカは日本を見捨てる方針を採択したのかもしれない
在日米軍最後の部隊が日本を離れるそのときに、時の大統領は「日米関係は新たなステージに入った。相互のたゆまぬ努力が世界の平和を実現することになるであろう」と演説した
今思えばこれはかなりの皮肉だ。だがその時点でコレが皮肉だと気づくヤツはいなかったか、いてもマスコミから無視された
113名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 21:15:04 ID:2XZ4+IyQ
上辺だけの好景気でも、身内のいないオレにまともな職場が用意される事は無かった。だから不人気だった自衛隊に入隊した
オレが入隊した時には部隊では確実に戦争が来ると考えていたようで、少ない予算で考えられる限りの訓練をやっていた
罵声を浴びせられ、時には卵を投げつけられても黙々と訓練に精を出す現場部隊…そんな現状に嫌気がさし、最高の訓練を受けられる環境を求めてオレは特殊作戦群に転属した

柵の外では日米安保破棄から数週間もしないうちに中国軍の艦船が沖縄近海に出没するようになった
北海道ではロシア国境警備隊の巡視船が日本の領海内にある漁船に対し発砲、島根や九州沿岸で韓国の密漁船が一気に増加
コレはヤバい、と日本人が思ってももう後の祭りだった

中国が国連安保理事会に「日本国内にいる中国人の奴隷的境遇の改善」を要求し「果たされない場合の軍事的処置」を通告してきたのは2020年の暮れだった
もともとが言いがかりであり改善のしようも無い、期限とされた1月17日早朝に中国軍は沖縄と長崎を強襲した
1月中に沖縄が陥落、国連安保理事会の裁定でアメリカの管理下に置かれることになった
3月中旬には九州が陥落、4月には四国が落とされ、5月5日の大規模な強襲作戦により名古屋が陥落した
政府は静岡県を縦断するいくつかの大きな川を防御線として、まだ落ちてない北陸や関東からの反撃を考えているというが…資源も無いのにまず無理だろ
そんな事は百も承知…な政府の賢い人たちは、最後の希望を国外へ逃がす事にした
「天皇家の亡命」だ
114名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 21:17:06 ID:2XZ4+IyQ
月が水平線に落ちようとしている。本来なら沼津近辺の明かりが映るはずだが、灯火管制で周りには漆黒の闇が広がるばかりだ
そんな中、沖合の水面に黒い塊が浮かび上がってきた。8隻しかない海上自衛隊の潜水艦だ
日本で最後に作られた「てんりゅう」級の最新艦「じんりゅう」だ。以前、韓国に併合された対馬に侵入する時に使ったっけな
ボートに乗せられた皇族ご一家が海岸線を離れてじんりゅうに向かう。予定通り3隻のボートが…出てないな
2隻のボートが海岸を離れたが、あと1隻の周りで何やら人が動いている
離脱まであと数分しかないのに何やってんだ?

ガサ
草の音が背後で響く
ほぼ条件反射で振り向いたオレはそこにいた人影に掴みかかった
アゴを片手で押さえて足を引っかけてそのまま倒す。腰からナイフを抜いて一気に心臓を狙う…寸前で手を止めた
黒いジャージ上下に同じく黒いバッグを背負った10代半ばの青年…この場には似つかわしくない相手だ
だがその顔には見覚えがある
「武仁殿下…」「…くっ…はなせ」言われるままにアゴを押さえていた手を離した
天皇陛下の弟の孫…甥孫に当たる武仁親王だ
手を貸して体を起こしてやる、そして尋ねた「何をしているのです?離脱まで時間が…」その時、緊急連絡用の無線機から声が飛び込んできた
『13番のパッケージをロスト。速やかに発見確保せよ』至短時間とはいえテフシ(電波封止)の状態で無線を使った理由は目の前のコイツか
115名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 21:17:53 ID:2XZ4+IyQ
「…オレは残る」
武仁親王の言葉にほんの一瞬だけ思考が停止した
コイツは何を言ってるんだ?残るって?どうせ滅びる事がほぼ決定の国に残って何をするんだ?
「殿下、何を言ってるんですか?」素直に疑問が口に出た
「オレはこの国に残って戦う。皇族が全員逃げ出したら、誰がこの国を守るんだ?」若者らしいまっすぐな目が闇に浮かぶ
「…あなた方の亡命はこの国が再建するために必要な事です」この国に再建する余地があるとは思えないが、一応は言ってみる
「大叔父様も兄もいる、オレ一人がいなくても皇室は十分機能する…だけど、民を見捨てて逃げた象徴なんて誰が信用するんだ!?」
「静かに…!声が大きい」親王の口に人差し指を当てると、彼も少し冷静になったのかゆっくりと腰を下ろした
「あんたは…この先、どうするんだ?」親王が顔を上げて不意に尋ねてきた
「別の命令が下るハズです。反攻作戦時の後方かく乱か、偵察任務か…さもなくば山に入ってゲリラ戦ですかね」
資源の無いこの国に反攻作戦をやるような余裕があるとは思えない、そしてオレたちみたいな特殊部隊員や情報関係者が戦後どういう風に扱われるかは考えるまでもない
事実、オレにも別の戸籍が与えられている。市ヶ谷の親心なのかゲリラ戦を展開せよということなのかはわからないが…
「オレも戦う、だから連れて行ってくれ!」不意に親王がオレの手を掴んだ
「な、何を?冗談を言っている状況では…」「冗談じゃないんだ!オレは…」親王の手に力が入る
「ただ、友達を守りたいんだ!逃げたくないんだ!だから…」あぁそうか、ピンと来た
「守りたいのは友達、ですか?僭越ながらコレ、ではないんですか?」そういってオレは小指を立てて見せてみた
「あ…いや、まぁその…」親王は途端に俯き顔を赤らめた(とはいえ暗闇で見えないが)
なるほど、皇族とはいえ彼もただの男か、そう考えると一気に親近感が湧いた
116名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 21:20:53 ID:2XZ4+IyQ
正直オレは最高の訓練とスリルを求めて特戦群に入っただけの男だ。愛国心とか使命感とかはあんまり考えていない
家族もいないし特に守りたいモノがあるわけでもない
だが彼は逃げられる立場にあっても、惚れた女のためにこの国に残って戦うという
その無鉄砲ぶり…面白い!彼が残りたいと言ってるんだ、ここは一つ要望を通してやろうじゃないか
無線から再度、声が聞こえてきた『あと5分で最終便を出発させる。13番のパッケージを速やかに発見せよ』
親王がすがるような目でオレを見る。オレは無線機に手を伸ばし…スイッチを切った
「あ、ありがとう…」男にそんな目で見られても嬉しくない、オレは目線をそらして言った
「あなたは最終便のボートが出てから隠れていたところから出てきた、という事でいいですね?」
うんうんとうなずく親王にオレは暗視装置を手渡した
「せめて家族にお別れを」

神妙な面持ちで離れていくボートを見守る親王をよそに、オレは小隊長にこの状況をどう説明するか考えるのであった…

〜完〜
117名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 21:25:13 ID:2XZ4+IyQ
昔、日本が侵略される小説ってのを書こうとしたんですが…
どう考えても超長編になるので諦めました
このSSはその時の小説の最初のシーンになる予定だったヤツです

まぁ拙著でホント申し訳ないorz
でも書きたいという欲求と、書いたモノを見てもらいたいという欲求に勝てなかった…
118名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 21:40:56 ID:N/nQcoDG
>>117
投下乙
突っ込みどころは多々有れど、とりあえず完結おめ
119117:2008/09/27(土) 21:52:21 ID:tKGm3MNH
>>118
thx
突っ込みどころ多いよね…わかっちゃいるんだけどねorz

自分のサイトで色々と小説もどきを書いてるんだけど、そっちがちょっとスランプでつい寄り道をしたくなっちゃって…
120名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/27(土) 23:37:02 ID:AhEAx6Xb
>>117
投下乙。突っ込まれないような物を書こうとすると資料集めるだけで
書くのと同じぐらい時間がいるというジレンマがあるからなw
121名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/28(日) 10:19:00 ID:fsZhxtGl
軍事物は突っ込み多そうだもんな
122名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/28(日) 14:36:27 ID:qn2lT7eb
しかも突っ込む側の知識も正しいかどうか定かじゃない
出版されていたり発表されている情報が正しいという保証も無いし…(特に特殊部隊関係)

こういう点は格闘技の世界と似たようなものかな
123>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/29(月) 01:22:10 ID:MJ6PjgiJ
正化31年7月29日 1000時 関東図書隊管轄 武蔵野図書基地 大会議室

 敵味方あわせて21名が殉職し、彼を含めて60名の重軽傷者が出た千葉ニュータウン総合図書館攻防戦はニュースとしては小さな取り扱いとなっていた。
 図書隊としては、公務員同士の職務のぶつかり合いでそれほどまでの犠牲者が出る現状の異常さを大いにアピールしたいところである。
 しかしながら、メディア良化隊としては、世論にそのような働きかけをされては困るのだ。
 そのために、彼らは自分たちの持つ権力を存分に発揮し、テレビ・新聞・インターネット・その他出版物に対する強力な統制を敷いた。
 本件については、それが発生したという事実以外については一切公表不可としたのである。
 今のところ統制は非常にうまくいっており、近隣住民以外はこの攻防戦の情報についてほとんど何も知らない状況になっている。

「・・・以上のように、自分は交戦後の事については、ほとんど記憶していない状況であります」

 被弾により重い打撲となった胸部の痛みに耐えつつ、俺はそう締めくくった。
 先の攻防戦にて、通過した通路、加入した後の戦闘で、良化隊側に14名の死者が出た事から、再び査問会が開かれたのである。

「覚えていない、ね。
 すまんが、もう一度最初から繰り返してくれ」

 彼の報告を聞き終えた査問官は、呆れたような口調で促す。

「はっ、館内に入った所から繰り返させていただきます。
 三階連絡通路にて敵三名と遭遇、その際の銃撃で飯田図書士長が殉職されました。
 至近距離からの頭部および上半身への銃撃により、ほぼ即死。
 自分が脈を取り、確認しました。
 その後、鈴木、佐藤両図書士の支援を受けつつ、スタングレネードによる威嚇を実施。
 訓練が足りなかったのか自分もその影響を受け、視界不良のまま発砲、敵三名の無力化を行いました」
「それでは、少なくとも三階での死者については、あくまで事故だったと言いたいわけだね」

 報告しろといいつつこちらの発言を遮るという非礼を受け、彼は内心で腹を立てる。
 もっとも、このような場でそれを表に出す愚はさすがに冒さないが。

「その通りであります。
 スタングレネードの影響が消えてから発砲するべきだったと反省しております」
「まぁ、いい。続けたまえ」

 さすがに露骨な嘘過ぎたかと彼は発言してから肝を冷やしたが、相手はどうでも良いようだった。
 これは意外な反応である。
 
「はっ、続けます。
 二階に到着後、現地の守備隊長に指示を受けようとしましたが、乱戦状態のために断念。
 自身の判断にて戦闘に突入、階下への銃撃を行いました。
 一弾倉分を発砲したところで、隣の隊員が殉職、この際に頭部への過度の物理力行使がありました。
 ここで自分は弾幕を途切れさせてはいけないと、同僚の89式小銃を借り、階下への攻撃を継続。
 複数の敵の無力化に成功しました。
 しかしながら、直後に敵車両が爆発、咄嗟に身を引こうと上体を起こしたところで敵の銃撃を少なくとも三発受けました。
 この際の衝撃で自分は意識を失い、結果として交戦後の事については、ほとんど記憶していない状況であります。以上です」
124>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/29(月) 01:32:08 ID:MJ6PjgiJ
 長い説明をほぼ途切れなく終えると、俺は査問官の言葉を待った。
 想定される処罰の内容には予測が付く。
 恐らく、出動待機、あるいは反省文提出か。
 間違っても転属や処罰はありえない。
 そう判断されるような形で行動し、報告したからである。
 査問官は隣に座っている男の方をちらりと見ると、一転して笑顔を浮かべて口を開いた。
 
「状況は把握した。
 繰り返させてしまってすまなかったな。帰ってよろしい」

 この場で何らかの処断が下るものと覚悟していたのだが、まあいい、帰してくれるのならば喜んで帰ろう。
 基地に帰ったらあれこれと書かなければならない書類が山のようにあるからな。
 そんな事を思いつつ、俺は退出した。

「しかしなぁ」

 廊下を歩きつつ、思わず声が漏れる。
 査問官の隣にいた男、一体何がしたかったのだろうか。
 結局査問会の間、一言も発する事はなかったし、メモを取っている様子もなかった。

「すまなかった!」

 考え事をしながら歩いていたせいで、目の前の堂上図書正に気がつかなかった。
 急制動で激突を回避する。
 畜生、胸が痛い。

「堂上図書正、自分に何か?」
「先日の負傷、あれは俺の責任だ。すまなかった」

 堂上図書正は謝罪を繰り返した。
 その隣には小牧図書正の姿もある。
 どうやら、事務室で悶々としていた堂上さんに進言し、謝罪ツアーに同行したのだろう。
 良い人たちなんだよな。
 まあ、堂上図書正は戦場で隣に立ってほしくはないが。

「頭をあげてください。
 自分の負傷、まあ、怪我といえるほどのものでもないですが。
 とにかくこれは、ちょっとした事で遮蔽物から身を晒せる位置にいた自分の不注意ですから」
「そんな事はない!」
「堂上図書正、私はそのように報告したのですから、そのような事実で間違いはないはずです」

 反論を封じる。
 
「そういうわけみたいだね」
「そういうわけなのです小牧図書正」

 こっちは話が通じやすくて助かる。
 あとはこっちでやっておくよ、と小声で言われ、俺は敬礼してその場を立ち去った。
125>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/29(月) 01:34:09 ID:MJ6PjgiJ
同日同時刻 関東図書隊管轄 武蔵野図書基地 大会議室

「それで、どうするのかね」

 査問会が終わったために照明がつけられた会議室の中で、査問官は隣に座っていた男に声を掛けた。
 その男は、査問会の間一度も発言をしていなかった。

「冷戦作戦に変更はありません。
 彼には今までどおり、いや、今まで以上に、役立ってもらいましょう」

 男の言葉に査問官は不快な表情を浮かべた。
 隣に座っている男とその一党が進めている作戦は、査問官の認める図書隊のあり方から大きく逸脱するものだったからである。

「私には、君たちがやろうとしている事を止める権限はない。
 だが、理解は絶対にできそうも出来ないな」

 査問官の言葉に、男は愉快そうな表情を浮かべた。
 外見からは20代前半とも30代後半とも見えるこの男は、どのような表情をしても他人を小ばかにしているような印象を与える欠点があった。

「貴方の主義信条を曲げてまで、無理にご理解を頂く必要はありませんよ。
 我々は我々がもっとも適切と考えるやり方で、この国の文化と言論の自由を守っていきます」

 男は、丁寧語ではあるが大変に失礼な内容を言い放った。

「そういうわけですので、彼については、今後は査問はなしになるでしょうな。
 隙はありますが、彼の行いには処罰を与えるような問題点はない」

 そこまで言うと、男は許可も求めずに懐からタバコを取り出した。
 一本を取り出し、咥えて点火する。

「しかしまあ、良化隊の連中には本当に呆れさせられますね。
 戦闘行為で犠牲が多く出たなんて、よくもまあ恥ずかしげもなく抗議してきたものです」

 男は愉快そうに続ける。

「死者の数はこちらの方が多いし、こちらの衛生兵を三度も攻撃しておいてその言い訳が、誰も気づかなかった、ですからね。
 ルールが変わってきた事を、こちらも理解し対策を練らないと」
「無秩序な殺し合いを容認するのか?」

 男の発言を看過し得なかった査問官は、厳しい口調で尋ねる。

「それを望んだのは彼らです。
 まあ、彼らはそのずっと前、日野の悪夢の頃からそういうやり口が大好きでしたけれども」

 全ての図書館員の心に刻み込まれている事件。
 それが日野の悪夢である。
 メディア良化法に賛同する暴力団体によって銃弾を火を叩き込まれたその事件では、多くの犠牲者が出た。
 犠牲者とは銃弾を撃ち込まれて殉職した同僚であり、焼き払われた書物である。
 警察も消防も、事態が決定的になるまで登場しなかった。
 決定的とはつまり、実行犯が現場から消え去り、火災が消火不可能になった状態である。
126>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/29(月) 01:37:00 ID:MJ6PjgiJ
 今にして思えば、不謹慎ながらあれは良かったな。
 肺の奥底まで紫煙を飲み込みつつ男は思った。
 司法すら従えるメディア良化委員会。
 法務省管轄なのだから当然といえばそうだが、とにかく彼らは絶大な権力、強力な戦力、便利な非合法活動組織を持っている。
 いつまでも法律に従った体制でしのげるものではない。
 日野の悪夢はまさしくそれを証明した出来事であり、それが今の図書隊創設に貢献している。
 サブマシンガンやアサルトライフルを中心とした武装を持ち、検閲対抗権という名の戦闘許可を持つ。
 戦闘許可とはもちろん人間を殺傷する事に対する免罪符である。
 合法的に戦う権利を手に入れた事により、図書館は弾圧に屈さないという選択肢を選ぶ自由が与えられた。
 
「彼らがあくまでも力による解決を望むのであれば、我々は力による拒絶を選択する。
 これは争いなどと言う生易しいものではなく、我々と良化隊との戦争なのですよ」

 男は断固たる口調で言い放った。
 彼は心の底からそう信じていた。
 査問官は唖然とした表情でそれを眺める。

「人命も、税金も、何もかもを投入し、我々は戦い続ける必要があります。
 彼らがこちらの人員を意図的に殺傷するのならば、我々も遠慮する必要はない」
「それが戦火の拡大を招く事は、当然理解しているのだろうね?」

 査問官の問いに、男は歪んだ笑顔で答える。

「当然です。
 彼らが更なる重武装を投入し、もっと大規模に戦闘をしたいというのであれば」

 彼はそこで言葉を切り、査問官の目を覗き込む。

「更なる戦火の拡大を望むのであれば、こちらも付き合ってあげるまでですよ。
 弱装弾をやめるのであればこちらも、重火器を持ち出すのであればこちらも。
 どこまででも検閲に対抗してやればいい。
 我々にはその権利があり、それは法律で保障されているのですから」

 そう言い放つ彼の顔は、正しく悪魔のそれだった。
127>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/29(月) 01:38:50 ID:MJ6PjgiJ
正化31年8月10日 1339時 関東図書隊管轄 武蔵野図書館 大会議室

 その日、彼は午後シフトに入っていたため、遅い昼食を取ろうとしていた。
 メニューはご飯、味噌汁、沢庵、焼いた鮭。
 どこに出しても恥ずかしくない日本食である。
 箸を手に持ち、いただきます、と行儀良く言う。

<<哨戒中の警備より入電。良化特務機関が当館周辺に展開中!総員至急警戒態勢に着け!
 館内に残っている利用者は至急館外へ退去してください!>>
  
 そんな彼に答えるように、スピーカーが敵襲を告げる。
 彼の周囲で昼食を取っていた職員たちが一斉に立ち上がり、ある者は武装を取りに、またある者はシェルターへ退避するために移動を開始する。

「食い物の恨みは、おっかねぇぞ」

 彼は恨めしそうに呟くと、自動小銃を受け取るために席を立った。
 彼の位置から武器庫へは、駆け足でおよそ五分。
 何事もなく館内への突入を許すはずがないため、十分な時間があると言える。

<<業務部より、敵の本命は館長室です!>>

 非常ベルに混ざり、柴崎の声が聞こえる。
 どうして彼女がと思わず歩調が緩むが、耳のイヤホンからは続けざまに命令が飛び込んでくる。
 考えるのは後回しにし、彼は武器庫へと足を進めた。
 幸い何事もなく到着し、武器弾薬を受領する。
 先日から、俺もようやく89式小銃を持てるようになった。
 まあ、いつもどっかから調達していたんだがな。

<<急ぎ武装し、上官の指示を受けろ。敵は複数のルートから館内への侵入を試みている>>

 状況は芳しくないようだが、今回もせいぜい活躍させてもらおう。
 それにしても、ここは図書隊の事実上の本拠地だというのに、敵は何を考えてここへ襲撃を掛けたのだ?
128>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/09/29(月) 01:42:42 ID:MJ6PjgiJ
本日はここまで
129名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 07:58:55 ID:YK0Ol7cE
投下乙!
どこまで激しい戦争になるのか
130名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/29(月) 08:33:55 ID:MrQl6mvi
これぞ本当の戦争だな
GJ!
131無名の帝国兵:2008/10/02(木) 22:22:09 ID:SUy5EPL/
初めまして、今日初めてここに来たんですが、いい板ですねー。どれも素敵なSSばかりで。
図書館戦争なんか特に好きな作品なので、こんな素敵な作品があるなんて嬉しいです。
申し遅れましたが自分は、無名の帝国兵ともうします。これから宜しくお願いします
「戦場のヴァルキュリア」ネタでちょっと考えてるんですが、投下するならここでしょうか?
132名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/03(金) 01:12:37 ID:N5yYP5yt
>>131
戦場のヴァルキュリアとは珍しい気がする。
いいんでない?
133名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/03(金) 11:55:52 ID:aLGNNFNW
期待せざるを得ない
134名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/03(金) 19:52:09 ID:HxwgT3x1
>>116

後の大東亜天國連邦、中華王国の国王と将軍ですね
135名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/06(月) 22:22:11 ID:kYP6lUgD
資料がないと書けない。下手に資料があると何処までも書かなければ行けない気分になる。
と思いつつ中二病な設定スレ覗いてたらなぜか目から汗が噴き出した。

色のおかしい零戦とか
モデリングが何か変なティーガーとか
何故か補給が行き届いた日本軍とか

そう言うのを笑ってスルーできるような人間に私はなりたい…
136名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 19:48:14 ID:NEQ7D9uP
投下がこないのう
137名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 20:38:57 ID:NeAc0XGN
ネタが無いからなぁ
オレも書き始めたヤツが2行で頓挫しとるorz
138>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/10/12(日) 22:54:24 ID:4+NZ2+5S
正化31年8月10日 1343時 関東図書隊管轄 武蔵野図書館 一階通用口

「こちら通用口!殉職2名!重傷者も出ている!何とかしてくれぇ」

 増援を要請していた図書士が、盾にしていたテーブルを貫通してきた銃弾で絶命する。
 良化隊はここへの襲撃部隊全員に89式小銃を持たせており、そこから放たれる5.56mmNATO弾は大抵の遮蔽物を貫通してしまうのだ。
  
「絶対に壁から前に出るなよ」

 廊下を右往左往していた所を捕まえた防衛員に命じ、俺はその状況を放置した。
 軍用の突撃銃から放たれる銃弾は、民間向けに作られた普通の家具などで防げるものでは決してない。
 
「こちら通用口前、初期配置の部隊は全滅、増援を要請する」
<<了解、付近の分隊を派遣する。なお全特殊部隊員は堂上図書正に合流し、強奪された図書の奪還にあたれ、以上>>
「了解しました。通信終わり」

 通信を終えると、横で不安そうにしていた防衛員を向く。

「申し訳ないが、別の場所で仕事がある。
 増援は要請したが、到着までは何とか粘ってくれ」
「なんとかします」

 無表情で彼女は答える。
 幸運にも廊下側のドアを警備していた彼女は、仲間たちが次々とやられていくのを壁越しに聞くという程度の損害で済んでいた。
 そのような状況で、一人になれという命令を聞けるとは大したものだ。

「よし、最後にちょっとだけ手伝う」

 隊員をどかし、小銃を肩に掛ける。

「何をするんですか?」
「耳を塞いでろ」

 スタングレネードを手に持ち、安全ピンを外す。
 反対の手でドアノブを握り締め、軽く開ける。
 そのまま力任せに閉める。

「何してるんです!」
「突入!!」

 隊員の咎める声を上回る声量で叫ぶと、再び扉を軽く開けてグレネードを投擲する。
 敵の猛反撃が始まり、ドアはあっという間に穴だらけになっていく。
 一瞬の間。
 その後に爆発音と悲鳴が響き渡る。
 素早く小銃を構え、室内の様々な箇所を狙って発砲する。

「下がれ!立て直す!」

 ドアの向こうからは悲鳴と号令が聞こえてくる。
139>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/10/12(日) 22:55:16 ID:4+NZ2+5S
「扉の開閉でこちらに集中させ、スタングレネードで目潰しを食らわす。
 突入の号令と小銃の連射はただの嫌がらせだよ」

 弾倉を交換しつつ説明する。

「戦略っていうやつですね」
「これは戦術と呼ぶ。まあ、米軍の連中はテクニックと格好つけた横文字で言いたがるがね」

 微笑みつつ訂正する。
 どうして図書隊はもっときちんとした軍事教練を行わないのだろうか。
 我々は、自衛隊よりもよほど戦争状態に近いというのに。

「あの、次の交代が終わったら、お部屋にお邪魔してもいいですか?」

 歯科用の手鏡で室内の様子を最後に観察していると、そんな嬉しい言葉が背後から掛けられた。

「よろこんで。目的は、俺の教本かな?」
「はい、お見通しでしたか」

 できれば外れてほしかったがね。
 しかし、向上心のある人間とは実に良い。

「日米仏英独露、軍に警察、あるいは特殊部隊とバリエーションは豊富だよ。
 華々しい戦果には繋がらないかもしれないが、君の生存率向上には役立つはずだ」

 世間ではマニュアル人間と言うと応用の利かないというネガティブなイメージが強い。
 応用の利かない人間は確かに使い物にならない。
 しかしマニュアル通りの動作を機械的にする事もできないような人物こそが問題である。
 そういった人間は自分好みの行動を行い、必ず友軍を危機に陥れてしまう。

「増援も来たようだし、ここいらで失礼するよ」

 廊下の向こうから六名の防衛部員がやってくるのが見えた俺は、笑顔で女性隊員と別れた。
 無線で命じられた同僚たちの支援へと向かわなければならない。
140>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/10/12(日) 22:56:03 ID:4+NZ2+5S
「おや、まあ」

 階段を駆け上がっていくと、丁度上の階へと駆け上がっていく二人の人影が見えた。
 一人は手塚、もう一人はありがたくない事に笠原だ。

「上か!?」

 瞬時に駆け出しつつ叫ぶ。
 この上といえば屋上しかない。
 恐らく、館長室にあった何かを奪った敵が、屋上へと逃げ込もうとしているのだろう。
 と言うことは、リペリングで降りる気か?

「屋上だ!本を持って逃げる気だ!」

 ありがたい事に、俺の想像を手塚が肯定してくれる。
 面白い事をやってくれる。

「わかった!」

 大声で答えつつ、無線を入れる。

「本部!敵は屋上から降下すると思われる、中庭に警戒線を!」
<<了解した。手短な部隊を向かわせる>>

 本部からの返答に返事をする暇も無く、俺は屋上へと達した。
 屋外へと通じる扉は開かれている。
 そのまま飛び出したくなる誘惑を無視し、扉横の壁へと張り付く。
 先ほどのミラーで手早く左右を確認しようとしている俺を、笠原が追い越す。

「無闇に出るな!」

 咄嗟に叫びつつもミラーを捨て、小銃を構えて飛び出す。
 幸いにも伏兵は無く、視界には今まさに降下しようとする敵兵の姿が映る。
 無言で発砲。
 上半身に命中し、よろけた敵はそのまま手すりを乗り越えて落下していく。
141>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/10/12(日) 22:58:31 ID:4+NZ2+5S
「なんて事をするの!?」

 怒号を発する笠原を無視し、ゆっくりと階下を見る。
 真下の植え込みのあたりに落下した敵兵の死体が転がっており、回収に待機していたらしい敵部隊が接近しつつあるのが見える。

「奪われた図書は中庭、敵部隊接近中、支援を求む」

 無線で手短に報告し、手すりから慎重に上半身だけを見せて発砲を開始する。
 遠慮の無い連射。
 人間の抵抗しようという意欲を打ち砕くのに一番良いのは連射である。
 どこで読んだかは忘れたが、何かに書かれていた説を思い出す。
 まるっきり嘘と言うわけでもないらしく、敵部隊は俺一人の連射に驚いて素早く下がっていく。

「あたしが降りる」

 威嚇の成果に満足していると、後ろで何やら言い争いをしている声が聞こえる。
 それを無視して弾倉を交換し、再度の威嚇射撃を行う。
 今度は少しだけ狙う。
 敵は完璧に隠れているつもりなのだろうが、場所が悪かった。
 植え込みでは、銃弾は防げないのだ。
 怪しい場所全てに銃弾を叩き込み、そのうちの何発かは幸運にも命中したらしい。
 眼下からは敵の上げる苦痛の叫びと、後退を命じる号令が聞こえる。
 どうやら、敵指揮官は自分たちが余りにも不利な状況である事を理解しているようだ。

「手塚、笠原、手伝え」

 後ろで未だに言い合いをしている二人に短く命じると、手塚はおとなしく小銃を構えて眼下への発砲を開始した。
 どうしても降下したかったらしい笠原は、何やら不満げな様子ながらもその後に続く。
 
<<こちら堂上、屋上の班へ、そちらから見て左から進入する>>
「了解、どうぞ」

 堂上図書正からの通信に答えた途端、敵部隊の命運は尽きた。
 雄たけびなど上げず、無言で発砲を繰り返しつつ突入した堂上隊によって敵部隊は全滅し、動ける生存者は手早く後退していった。
 武蔵野基地への襲撃はこの小さな攻防戦を頂点として一気に沈静化し、五分後には終結宣言が出された。
142>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/10/12(日) 23:03:46 ID:4+NZ2+5S
短いけど本日はここまで
143名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 23:24:11 ID:2MfLHsEK
>>142
相変わらずお見事、原作から変化付けてきたな
まさか全編、ハードな戦争モードを貫くとか?

小田原とか茨城が凄まじい事になりそうだな…
144名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 01:03:24 ID:kLvQOBjI
正化31年8月10日 1343時 関東図書隊管轄 武蔵野図書館 一階通用口   
「絶対に壁から前に出るなよ」

 廊下を右往左往していた所を捕まえた防衛員に命じ、俺はその状況を放置した。
 軍用の突撃銃から放たれる銃弾は、民間向けに作られた普通の家具などで防げるものでは決してない。
  「突入!!」

 隊員の咎める声を上回る声量で叫ぶと、再び扉を軽く開けてグレネードを投擲する。
 敵の猛反撃が始まり、ドアはあっという間に穴だらけになっていく。
 一瞬の間。
 その後に爆発音と悲鳴が響き渡る。
 素早く小銃を構え、室内の様々な箇所を狙って発砲する。

「こちら通用口前、初期配置の部隊は全滅、増援を要請する」
<<了解、付近の分隊を派遣する。なお全特殊部隊員は堂上図書正に合流し、強奪された図書の奪還にあたれ、以上>>
「了解しました。通信終わり」

 通信を終えると、横で不安そうにしていた防衛員を向く。

「申し訳ないが、別の場所で仕事がある。
 増援は要請したが、到着までは何とか粘ってくれ」
「なんとかします」

 スタングレネードを手に持ち、安全ピンを外す。
 反対の手でドアノブを握り締め、軽く開ける。
 そのまま力任せに閉める。

「何してるんです!」

「下がれ!立て直す!」

 ドアの向こうからは悲鳴と号令が聞こえてくる。

「こちら通用口!殉職2名!重傷者も出ている!何とかしてくれぇ」

 増援を要請していた図書士が、盾にしていたテーブルを貫通してきた銃弾で絶命する。
 良化隊はここへの襲撃部隊全員に89式小銃を持たせており、そこから放たれる5.56mmNATO弾は大抵の遮蔽物を貫通してしまうのだ。

 無表情で彼女は答える。
 幸運にも廊下側のドアを警備していた彼女は、仲間たちが次々とやられていくのを壁越しに聞くという程度の損害で済んでいた。
 そのような状況で、一人になれという命令を聞けるとは大したものだ。

「よし、最後にちょっとだけ手伝う」

 隊員をどかし、小銃を肩に掛ける。

「何をするんですか?」
「耳を塞いでろ」

145名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 01:04:17 ID:kLvQOBjI


「戦略っていうやつですね」
「これは戦術と呼ぶ。まあ、米軍の連中はテクニックと格好つけた横文字で言いたがるがね」
「扉の開閉でこちらに集中させ、スタングレネードで目潰しを食らわす。
 突入の号令と小銃の連射はただの嫌がらせだよ」

 弾倉を交換しつつ説明する。
 微笑みつつ訂正する。

「増援も来たようだし、ここいらで失礼するよ」

 廊下の向こうから六名の防衛部員がやってくるのが見えた俺は、笑顔で女性隊員と別れた。
 無線で命じられた同僚たちの支援へと向かわなければならない。

 どうして図書隊はもっときちんとした軍事教練を行わないのだろうか。

「あの、次の交代が終わったら、お部屋にお邪魔してもいいですか?」

 歯科用の手鏡で室内の様子を最後に観察していると、そんな嬉しい言葉が背後から掛けられた。
 我々は、自衛隊よりもよほど戦争状態に近いというのに。
 応用の利かない人間は確かに使い物にならない。
 しかしマニュアル通りの動作を機械的にする事もできないような人物こそが問題である。
「よろこんで。目的は、俺の教本かな?」
「はい、お見通しでしたか」

 できれば外れてほしかったがね。
 しかし、向上心のある人間とは実に良い。

「日米仏英独露、軍に警察、あるいは特殊部隊とバリエーションは豊富だよ。
 華々しい戦果には繋がらないかもしれないが、君の生存率向上には役立つはずだ」

 世間ではマニュアル人間と言うと応用の利かないというネガティブなイメージが強い。

 そういった人間は自分好みの行動を行い、必ず友軍を危機に陥れてしまう。

146名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 01:05:02 ID:kLvQOBjI


「上か!?」


 恐らく、館長室にあった何かを奪った敵が、屋上へと逃げ込もうとしているのだろう。
 と言うことは、リペリングで降りる気か?
「おや、まあ」

 階段を駆け上がっていくと、丁度上の階へと駆け上がっていく二人の人影が見えた。
 一人は手塚、もう一人はありがたくない事に笠原だ。
「屋上だ!本を持って逃げる気だ!」

 ありがたい事に、俺の想像を手塚が肯定してくれる。
 面白い事をやってくれる。
 屋外へと通じる扉は開かれている。
 そのまま飛び出したくなる誘惑を無視し、扉横の壁へと張り付く。
「わかった!」

 大声で答えつつ、無線を入れる。

「本部!敵は屋上から降下すると思われる、中庭に警戒線を!」
<<了解した。手短な部隊を向かわせる>>
 無言で発砲。
 上半身に命中し、よろけた敵はそのまま手すりを乗り越えて落下していく。
 本部からの返答に返事をする暇も無く、俺は屋上へと達した。

 先ほどのミラーで手早く左右を確認しようとしている俺を、笠原が追い越す。

「無闇に出るな!」
 瞬時に駆け出しつつ叫ぶ。
 この上といえば屋上しかない。
 咄嗟に叫びつつもミラーを捨て、小銃を構えて飛び出す。
 幸いにも伏兵は無く、視界には今まさに降下しようとする敵兵の姿が映る。
147名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 01:05:49 ID:kLvQOBjI
「なんて事をするの!?」
 増援を要請していた図書士が、盾にしていたテーブルを貫通してきた銃弾で絶命する。
 良化隊はここへの襲撃部隊全員に89式小銃を持たせており、そこから放たれる5.56mmNATO弾は大抵の遮蔽物を貫通してしまうのだ。
  
「絶対に壁から前に出るなよ」
 怒号を発する笠原を無視し、ゆっくりと階下を見る。
 真下の植え込みのあたりに落下した敵兵の死体が転がっており、回収に待機していたらしい敵部隊が接近しつつあるのが見える。

 遠慮の無い連射。
 人間の抵抗しようという意欲を打ち砕くのに一番良いのは連射である。
 どこで読んだかは忘れたが、何かに書かれていた説を思い出す。
 まるっきり嘘と言うわけでもないらしく、敵部隊は俺一人の連射に驚いて素早く下がっていく。

「あたしが降りる」

 威嚇の成果に満足していると、後ろで何やら言い争いをしている声が聞こえる。
 それを無視して弾倉を交換し、再度の威嚇射撃を行う。
 今度は少しだけ狙う。
 敵は完璧に隠れているつもりなのだろうが、場所が悪かった。
 植え込みでは、銃弾は防げないのだ。

 どうやら、敵指揮官は自分たちが余りにも不利な状況である事を理解しているようだ。
<<こちら堂上、屋上の班へ、そちらから見て左から進入する>>
「了解、どうぞ」

 堂上図書正からの通信に答えた途端、敵部隊の命運は尽きた。
 雄たけびなど上げず、無言で発砲を繰り返しつつ突入した堂上隊によって敵部隊は全滅し、動ける生存者は手早く後退していった。
 武蔵野基地への襲撃はこの小さな攻防戦を頂点として一気に沈静化し、五分後には終結宣言が出された。
「手塚、笠原、手伝え」

 後ろで未だに言い合いをしている二人に短く命じると、手塚はおとなしく小銃を構えて眼下への発砲を開始した。
 どうしても降下したかったらしい笠原は、何やら不満げな様子ながらもその後に続く。
 
148名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 01:06:55 ID:kLvQOBjI
本日はここまで
149名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 02:46:31 ID:B1ZNiaKY
もまいらが書こうとして挫折したネタはどんなのだ?
俺のはWWUが現代の技術で行われていたら、というやつなんだが。
150名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 10:49:40 ID:4Iz4kzsb
>>149
自動車のオートパイロットの技術が無人兵器に転用されるネタ

書いてるうちに「クリスティーン」みたいなホラーになって挫折
151名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 11:01:42 ID:iJWaT4F6
>>149
タチコマみたいなロボットが装備された近未来の自衛隊もの
とはいえマジ戦争やるわけじゃなく、演習中の一コマみたいなのを考えてた

挫折したといより、アイデア段階で止まってるだけ…
でも書く時間が無いんだよなぁorz
152名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 13:17:21 ID:1MC9RDBH
>>149
今は亡きエロパロ板の「仮想戦記でエロパロ」スレに投稿するべく資料を漁って書き上げたWW2物、をリファイン中
今も書いてるんだけれど終わりが見えねぇ…
153>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/10/14(火) 02:42:08 ID:N8qMXTtL
正化31年8月13日 1300時 関東図書隊管轄 武蔵野基地 男性寮

「17時までだからよろしくね」

 俺の部屋に入るなり、挨拶もそこそこに教本へと飛びついた女性防衛員に苦笑しつつ、俺はコーヒーを入れた。
 同室の連中は全員が仕事のため、幸運と呼ぶべきかは悩むが二人きりの環境である。

「あのぅ」

 鼻歌を歌いつつ豆を挽いていると、遠慮がちな声で呼びかけられる。
 
「コーヒーは苦手ですか?」
「いえ、そうではなくて、この教本についてなのですが」
「ああ、質問ですね」

 にこやかに応じ、差し出された本を見る。
 SATの戦術について触れている項目か。

「スタングレネードは人質の人体に悪影響を及ぼす可能性があるので注意が必要とありますよね?」
「確かに、心臓の弱い方がまともに喰らうと、最悪心停止の恐れがありますよ。
 ですが、我々の任務でそのような状況は考えにくいですから、ここは予備知識として入れておくに留めるのがいいでしょう」

 着眼点は決して悪くないが、図書隊の任務に人質がいる状況は想定されていない。
 それは明らかな犯罪行為であり、いくら警察が役に立たないとはいえ、そこまで露骨な状況では彼らが出張ってくるだろうからな。

「そうなると、前回の戦闘で見せて頂いた、注意をひきつけて投げ込む戦法はかなり有効ということですね」
「念のために言うと時と場合によりますが、でも有効ですね。ただし」
「ただし?」

 彼女は小首を傾げて不思議そうな表情を浮かべる。
 時と場合による、という表現に食いついてこない所を見ると、注釈の方は蛇足だったか。

「信管の作動時間限界まで待ってからの投擲が必要です。
 そうでないと、敵に対処する時間を与えてしまいます」
「なるほど」

 感心した表情で彼女は頷く。
 
「注意一秒怪我一生、敵を効率的に無力化するには、この名言を逆手に取ればいいわけです」
「注意を怠らず、それでいて間をおかず、立て続けに攻撃を行えばいいわけですね」
「その通りです」

 勉強熱心な事は実に良い。
 生き残ろうという意欲のある兵士は長生きできるという法則から考えると、運にさえ恵まれれば彼女はきっと長生きできるだろう。
 願わくば、五体満足で寿退社か満期除隊をしてほしいものだ。

「何か質問があったらまた聞いてください」
「ありがとうございます」

 笑顔で答えた女性隊員に満足しつつ、再びコーヒーを入れる作業に戻る。
 図書隊に入って以来初めての穏やかな時間をすごしつつ、彼は満足していた。
 効率的に敵を無力化する方法を語り合う時間を穏やかと表現するあたりが、彼の人間としての歪みを象徴していたが。
154>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/10/14(火) 02:43:45 ID:N8qMXTtL
「今戻ったが、邪魔だったか?」

 手塚が帰宅した時、俺は未だに穏やかな時間をすごしていた。
 ふと時計を見れば、時刻は17時を少し回った頃。
 どうやら、少しばかり話し込みすぎたようだ。

「邪魔どころか丁度いい、我が部隊の狙撃手をご紹介しましょう」

 笑顔で招きいれ、手塚を紹介する。
 将来有望な凄腕狙撃手(予定)という売り口上に、手塚は珍しく照れているようだ。
 
「手塚さんは、特殊部隊で狙撃手をやられているんですね」
「いや、まあ、腕前の方はまだまだなんだけどな」

 手塚の珍しい反応を楽しみつつ、先ほどまでの話題を思い出す。
 小火器による屋外からの攻撃に対し、どのようにして効率的な反撃を行うか。
 狙撃手の視点から手塚に語ってもらうのも悪くはない。
 まあ、屋外から屋内を狙う練習はしていないだろうけどな。

「手塚、悪いんだが、狙撃手の視点から狙いやすい奴ってのを教えてくれないか?」
「何を頼まれるかと思えば。まあ、この部屋の惨状を見れば分からんでもないか」

 呆れたように室内を見回しつつ手塚は言う。
 確かに、今のこの部屋の状況は、控えめに言って特殊部隊の士官室だ。
 まあ、実際俺たちは図書特殊部隊という正規の特殊部隊員なんだがな。

「一番なのは遮蔽物から離れた位置にいる奴だな。
 俺が使っているのは一発ごとに装填を行うボルトアクションライフルだが、よほど慌てない限りは三発以内に当てる自信がある」
「そうだろうな。良化隊は一時的にしろ嫌でもそのような状況に置かれるから、防戦側の俺たちはそういう目標を一番に狙えばいい」
「身を隠せない場所にいる人間を最初に狙う。言われてみれば、当然ですね」

 素直に同意する。
 しかし、彼女の言われてみれば、という言葉が気にかかる。
 確か一般防衛部員でもその程度の教育は受けるはずなのだが。

「次に狙うべきは?」

 疑問はひとまず置いておき、先を促す。

「次は、遮蔽物から半身以上を出している奴だな。
 そういう奴は基本的には射撃中か、移動をしようとしている奴だから狙えない場合もあるが、それでも当たる確立は大きい。
 それに、外れたとしてもお前は狙われているんだぞと教えてやれるからな」

 これまた素直に同意できる意見である。
 教本どおりといえばもちろんそうだが、そもそも教本とは実際の現象をできるだけ類型化して記載しているのだから当然である。
 
「いわゆる制圧射撃ですね。
 命中しなくてもいいから銃弾を叩き込み、敵の行動を妨害するわけですな」
「例えば無限に撃てる機関銃があれば、敵をその障害物に釘付けにできるというわけですね」

 俺の補足説明に感心したように頷き、たとえ話で理解している事を示してくる。
 生徒役としては満点の反応だ。

「そういう事ですね。まあ、無限に撃てなくとも、数名で交互に射撃すればいいわけです」

 補足に補足をしつつ、さらに深まった疑問に内心で回答を求める。
 こんな事は基本中の基本どころか、座学で確実に習う内容だ。
 習った記憶があるのだから間違いない。
 これだけ勉強熱心な人物が、訓練中は弛んでいたというのも考えにくいのだが。
 こちらの立場を考えて、素直に感心しているふりをしているのだろうか。
155>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/10/14(火) 02:45:57 ID:N8qMXTtL
「まったく見当違いの方向にわざわざ銃撃する必要はないから、この二つだな。
 二人は狙撃手じゃないから、他にもスタングレネードや近接格闘も絡んでくるけどな」
「そのあたりは実は先ほどまで話し合っていたところだから、これで基本的な事については以上だな。
 ところで、話は変わるんだけど出身県はどちらですか?」

 やや強引ではあるが、身辺についてを簡単に質問してみる。
 できれば、ここから訓練時代の話を少し聞けるといいのだが。

「私ですか?出身は茨城です。水戸準基地に最初は配属されていたんですが、こちらへ転属しました」
「茨城、というと、笠原が同郷だな」

 手塚が驚いたように言う。
 それ以前に驚くべきことがあるだろう。
 地方公務員である図書隊員の場合、県を超えて転属と言うのは普通はありえない。
 あるとすれば、犯罪などに関わり元の部署にいられない場合や、本人の強い希望により転属する場合だ。
 しかし、それであってもよほどの理由が無ければ県外転勤は認められない。
 
「そうなんですか。水戸というと、やはり納豆は美味しいんですか?」

 あまり触れるべきところではないのだろう。
 差し支えの無い質問で終わらせるべきだ。

「美味しいですよ。まあ、今では通販でどこでも買えてしまいますけど」
「やはり食品は産地でできたてが一番ですよ。
 まあ、納豆でできたてという表現はおかしいですが」

 苦笑しつつ、転属に関わらないところで質問を試みる。

「一緒に転属してきた人はいるんですか?」

 見たところ指輪はしていないが、職場結婚の可能性を探る。
 これで解決すれば、それはそれで問題が無い。

「ええ、三人ほどいますよ。それについてでお願いがあるのですが」
「なんでしょう?」

 そのうちの一人が旦那である可能性は否定できないが、お願いとはなんだろう。

「実は、私たちにもう一度図書館防衛の方法についてを教えてほしいのです」
「防衛の方法と言うと、つまり屋内戦闘の戦術やら何やらについてですか?」
「はい」

 これはどうした事だろう。
 訓練に打ち込んでおらず、現実を知っていまさら必死になったのか。
 それとも、自分たちが受けていた訓練がまともではなかった事を知り、今からでも知識を吸収しようとしているのか。
 前者は今日一日の問答でありえないと信じたいが、後者は後者で信じたくない事実だ。

「同僚が生き残るための手助けになるのであれば、喜んで。
 まあ、私たちは緊急出動もありえるので、その場合はご容赦を」
「ありがとうございます!」

 茨城図書隊か、何かあるなこれは。
 笑顔で頭を下げる彼女の後頭部を見つつ、俺はそんな事を思った。
156>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/10/14(火) 02:48:56 ID:N8qMXTtL
本日はここまで
157名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 06:50:12 ID:0vW0OniI
正化31年8月13日 1300時 関東図書隊管轄 武蔵野基地 男性寮

「17時までだからよろしくね」

 俺の部屋に入るなり、挨拶もそこそこに教本へと飛びついた女性防衛員に苦笑しつつ、俺はコーヒーを入れた。
 同室の連中は全員が仕事のため、幸運と呼ぶべきかは悩むが二人きりの環境である。

「あのぅ」

 鼻歌を歌いつつ豆を挽いていると、遠慮がちな声で呼びかけられる。
 
「コーヒーは苦手ですか?」
「いえ、そうではなくて、この教本についてなのですが」
「ああ、質問ですね」

 にこやかに応じ、差し出された本を見る。
 SATの戦術について触れている項目か。

「スタングレネードは人質の人体に悪影響を及ぼす可能性があるので注意が必要とありますよね?」
「確かに、心臓の弱い方がまともに喰らうと、最悪心停止の恐れがありますよ。
 ですが、我々の任務でそのような状況は考えにくいですから、ここは予備知識として入れておくに留めるのがいいでしょう」

 着眼点は決して悪くないが、図書隊の任務に人質がいる状況は想定されていない。
 それは明らかな犯罪行為であり、いくら警察が役に立たないとはいえ、そこまで露骨な状況では彼らが出張ってくるだろうからな。

「そうなると、前回の戦闘で見せて頂いた、注意をひきつけて投げ込む戦法はかなり有効ということですね」
「念のために言うと時と場合によりますが、でも有効ですね。ただし」
「ただし?」

 彼女は小首を傾げて不思議そうな表情を浮かべる。
 時と場合による、という表現に食いついてこない所を見ると、注釈の方は蛇足だったか。

「信管の作動時間限界まで待ってからの投擲が必要です。
 そうでないと、敵に対処する時間を与えてしまいます」
「なるほど」

 感心した表情で彼女は頷く。
 
「注意一秒怪我一生、敵を効率的に無力化するには、この名言を逆手に取ればいいわけです」
「注意を怠らず、それでいて間をおかず、立て続けに攻撃を行えばいいわけですね」
「その通りです」

 勉強熱心な事は実に良い。
 生き残ろうという意欲のある兵士は長生きできるという法則から考えると、運にさえ恵まれれば彼女はきっと長生きできるだろう。
 願わくば、五体満足で寿退社か満期除隊をしてほしいものだ。

「何か質問があったらまた聞いてください」
「ありがとうございます」

 笑顔で答えた女性隊員に満足しつつ、再びコーヒーを入れる作業に戻る。
 図書隊に入って以来初めての穏やかな時間をすごしつつ、彼は満足していた。
 効率的に敵を無力化する方法を語り合う時間を穏やかと表現するあたりが、彼の人間としての歪みを象徴していたが。
158名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 06:50:45 ID:0vW0OniI
「今戻ったが、邪魔だったか?」
 素直に同意する。
 しかし、彼女の言われてみれば、という言葉が気にかかる。
 確か一般防衛部員でもその程度の教育は受けるはずなのだが。

「次に狙うべきは?」

 疑問はひとまず置いておき、先を促す。

「次は、遮蔽物から半身以上を出している奴だな。
 そういう奴は基本的には射撃中か、移動をしようとしている奴だから狙えない場合もあるが、それでも当たる確立は大きい。
 それに、外れたとしてもお前は狙われているんだぞと教えてやれるからな」

 これまた素直に同意できる意見である。
 教本どおりといえばもちろんそうだが、そもそも教本とは実際の現象をできるだけ類型化して記載しているのだから当然である。
 
「いわゆる制圧射撃ですね。
 命中しなくてもいいから銃弾を叩き込み、敵の行動を妨害するわけですな」
「例えば無限に撃てる機関銃があれば、敵をその障害物に釘付けにできるというわけですね」

 俺の補足説明に感心したように頷き、たとえ話で理解している事を示してくる。
 生徒役としては満点の反応だ。

「そういう事ですね。まあ、無限に撃てなくとも、数名で交互に射撃すればいいわけです」

 補足に補足をしつつ、さらに深まった疑問に内心で回答を求める。
 こんな事は基本中の基本どころか、座学で確実に習う内容だ。
 習った記憶があるのだから間違いない。
 これだけ勉強熱心な人物が、訓練中は弛んでいたというのも考えにくいのだが。
 こちらの立場を考えて、素直に感心しているふりをしているのだろうか。
 手塚が帰宅した時、俺は未だに穏やかな時間をすごしていた。
 ふと時計を見れば、時刻は17時を少し回った頃。
 どうやら、少しばかり話し込みすぎたようだ。

「邪魔どころか丁度いい、我が部隊の狙撃手をご紹介しましょう」

 笑顔で招きいれ、手塚を紹介する。
 将来有望な凄腕狙撃手(予定)という売り口上に、手塚は珍しく照れているようだ。
 
「手塚さんは、特殊部隊で狙撃手をやられているんですね」
「いや、まあ、腕前の方はまだまだなんだけどな」

 手塚の珍しい反応を楽しみつつ、先ほどまでの話題を思い出す。
 小火器による屋外からの攻撃に対し、どのようにして効率的な反撃を行うか。
 狙撃手の視点から手塚に語ってもらうのも悪くはない。
 まあ、屋外から屋内を狙う練習はしていないだろうけどな。

「手塚、悪いんだが、狙撃手の視点から狙いやすい奴ってのを教えてくれないか?」
「何を頼まれるかと思えば。まあ、この部屋の惨状を見れば分からんでもないか」

 呆れたように室内を見回しつつ手塚は言う。
 確かに、今のこの部屋の状況は、控えめに言って特殊部隊の士官室だ。
 まあ、実際俺たちは図書特殊部隊という正規の特殊部隊員なんだがな。

「一番なのは遮蔽物から離れた位置にいる奴だな。
 俺が使っているのは一発ごとに装填を行うボルトアクションライフルだが、よほど慌てない限りは三発以内に当てる自信がある」
「そうだろうな。良化隊は一時的にしろ嫌でもそのような状況に置かれるから、防戦側の俺たちはそういう目標を一番に狙えばいい」
「身を隠せない場所にいる人間を最初に狙う。言われてみれば、当然ですね」

159名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 06:51:19 ID:0vW0OniI
 苦笑しつつ、転属に関わらないところで質問を試みる。

「一緒に転属してきた人はいるんですか?」

 見たところ指輪はしていないが、職場結婚の可能性を探る。
 これで解決すれば、それはそれで問題が無い。

「ええ、三人ほどいますよ。それについてでお願いがあるのですが」
「なんでしょう?」

 そのうちの一人が旦那である可能性は否定できないが、お願いとはなんだろう。

「実は、私たちにもう一度図書館防衛の方法についてを教えてほしいのです」
「防衛の方法と言うと、つまり屋内戦闘の戦術やら何やらについてですか?」
「はい」

 これはどうした事だろう。
 訓練に打ち込んでおらず、現実を知っていまさら必死になったのか。
 それとも、自分たちが受けていた訓練がまともではなかった事を知り、今からでも知識を吸収しようとしているのか。
 前者は今日一日の問答でありえないと信じたいが、後者は後者で信じたくない事実だ。

「同僚が生き残るための手助けになるのであれば、喜んで。
 まあ、私たちは緊急出動もありえるので、その場合はご容赦を」
「ありがとうございます!」

 茨城図書隊か、何かあるなこれは。
 笑顔で頭を下げる彼女の後頭部を見つつ、俺はそんな事を思った。
「まったく見当違いの方向にわざわざ銃撃する必要はないから、この二つだな。
 二人は狙撃手じゃないから、他にもスタングレネードや近接格闘も絡んでくるけどな」
「そのあたりは実は先ほどまで話し合っていたところだから、これで基本的な事については以上だな。
 ところで、話は変わるんだけど出身県はどちらですか?」

 やや強引ではあるが、身辺についてを簡単に質問してみる。
 できれば、ここから訓練時代の話を少し聞けるといいのだが。

「私ですか?出身は茨城です。水戸準基地に最初は配属されていたんですが、こちらへ転属しました」
「茨城、というと、笠原が同郷だな」

 手塚が驚いたように言う。
 それ以前に驚くべきことがあるだろう。
 地方公務員である図書隊員の場合、県を超えて転属と言うのは普通はありえない。
 あるとすれば、犯罪などに関わり元の部署にいられない場合や、本人の強い希望により転属する場合だ。
 しかし、それであってもよほどの理由が無ければ県外転勤は認められない。
 
「そうなんですか。水戸というと、やはり納豆は美味しいんですか?」

 あまり触れるべきところではないのだろう。
 差し支えの無い質問で終わらせるべきだ。

「美味しいですよ。まあ、今では通販でどこでも買えてしまいますけど」
「やはり食品は産地でできたてが一番ですよ。
 まあ、納豆でできたてという表現はおかしいですが」

160名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 06:51:52 ID:0vW0OniI
本日はここまで
161名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 13:08:09 ID:dJzgQFsL
わざわざ改変してまでコピペするノータリンが湧くのは仕様か
162名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/15(水) 20:47:10 ID:jpva+GVD
  _  ∩              _ ∩        
( ゚∀゚)彡 >>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM ( ゚∀゚)彡 >>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM
 ⊂彡              ⊂彡

もっとハードに頑張って!!!
163名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/18(土) 17:02:24 ID:Sz55saJH
ネタは有っても気力が持たないぜ!
164名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/19(日) 00:29:13 ID:wnCcVDW3
ここ読んでると各書き手さんのこだわりとか熱を感じるな
>>149-152のネタも可能ならば読んでみたい
165図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/10/21(火) 22:33:09 ID:45UPst3u
正化31年8月20日 1300時 関東図書隊管轄 武蔵野基地 屋内防衛訓練所

「当たって!!」

 戦闘服に身を固めた女性防衛員が叫びつつ、窓から外へ向けて発砲する。
 しかし、事前に発砲する事を告げての射撃など、実戦経験が豊富な敵には無意味な行動である。
 彼女が銃を構えつつ叫んだ時、既に敵は遮蔽物の陰へと飛び込んでいたのだ。

「落ち着いて!ちゃんと狙えばきっと!」

 別の女性防衛員がフォローしつつ発砲する。
 だが、既に別の遮蔽物へと飛び込みつつある敵に命中する事はない。

「ええい!ちょこまかと!!」

 不甲斐ない同僚に苛立ちの声を漏らしつつ三人目の女性防衛員が発砲をするが、やはり命中しない。
 きちんと狙って発砲しているが、そもそも敵は全身の殆どを遮蔽物に隠している。
 それどころか、長すぎた射撃の隙を突いて狙撃されてしまう。

「良美!」

 胸部を撃たれて蹲った同僚の姿に、最初に叫んだ女性防衛員が悲鳴を上げるが、彼女も直ぐに死人の仲間入りをする。
 戦場では、余所見をしている余裕など存在しないのだ。
 
「香織まで!?」

 僅か数秒で同僚二名が無力化されたという現実に、最後に残された女性防衛員は冷静な判断力を失った。
 顔ごと向きを変え、大振りな動作で周囲にいるはずの敵を探す。
 だが、現実は彼女が視覚できる少し先からやってきた。
 狙撃手が放った弾が、彼女の心臓がある場所へ命中したのだ。

「命中、全員無力化を確認。そこまで」

 スピーカーから昨日俺の元へ質問しに来た女性防衛員の声が流れ、演習は終了した。
 先週の非番の際に取り交わされた約束に従い、俺は水戸準基地から転属してきた防衛員たちの個人教官をしていた。
 うら若き戦乙女たちの個人レッスン、といえば聞こえはいいが、現実は無常である。
 休日に戦闘服に身を包み、泥塗れになって怒号を張り上げるわけだ。
166図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/10/21(火) 22:34:16 ID:45UPst3u
「新城二等図書士」
「はい」

 演習終了と同時に建物の外へ整列した一同に対し、俺は指導を開始した。
 まず始めに、最初に発砲を始めた防衛員に尋ねる。

「水戸準基地では発砲に際して掛け声を出すように指導していたのか?」
「はい!そのような訓練はしておりません」
「ではなぜ叫んだ」
「緊張していたからだと思われます」

 真面目に指導を受ける新兵のような態度で回答される。
 そのような回答をされてもこちらとしては困ってしまうのだが。

「これから発砲すると敵に告げる必要はない。
 今後は戦闘中に必要以外の事で口は開かない事だ。
 それと、敵の行動を見て命中しそうも無い時には発砲は控えた方がいい。
 弾薬は無限に持てないのだからな。
 次に藤堂二等図書士」
「はい!」

 先ほど仲間にフォローの声を掛けていた防衛員に矛先を変える。

「なぜ室内に退避しなかった?
 仲間がやられた以上、少なくとも何らかの行動を取るべきだったとは思わないか?」
「はい、混乱してしまい、動作できませんでした。申し訳ありません」

 彼女はひどく反省した様子で謝罪の言葉を漏らす。
 
「これが実戦ならば、君は敵弾で心臓を吹き飛ばされて即死だった。
 ごめんなさいを言う余裕もない。何故そうなったのかわかるか?」
「はい、混乱し、身を隠さなかったからです」

 先ほどは酷く狼狽していたが、今は落ち着いて自分の行動を分析できているらしい。
 だったら最初から冷静に対処してほしいものだが。

「外から狙撃されているのに窓際に棒立ちになるのは賢くない行動だ。
 戦闘中に狼狽する事も感心できない。
 後から分析して理解できる脳を持っているのだから、それを反省ではなく予測に用いるべきだな。
 最後に南郷二等図書士」
「はい」

 最初に殉職した女性防衛員が返事をする。

「先の二人もそうだが、君が一番酷かった。何故そう言われるかはわかるな?」
「最初に死んだからでしょうか?」
「ぜんぜん違う。君は仲間へ苛立ちの声を出しつつも、なんら戦局に寄与できる行動を取れなかった。
 実戦で同じような事があれば、あるいは続けば、君は一人きりで戦場に立つ事になるぞ」

 俺の指摘に南郷は驚いたような表情を浮かべる。
 恐らく、本人は全く無意識に発言したのだろう。
 驚きは、ばつの悪そうな表情へと変わる。
167図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/10/21(火) 22:36:16 ID:45UPst3u
「全員その場で腕立て伏せ30回!」

 突然の号令に三人は慌てて腕立て伏せの体制を取る。

「始め!1、2、3、新城二等図書士」
「はい!」

 腕立て伏せの途中で声を掛ける。
 この間、全員は腕を伸ばした状態で耐えなければならない。

「掛け声はまずいが、射撃の腕は良かった。
 あとはもう少し発砲を早めるべきだ。次回の訓練にはそれを是非考えてほしい」
「はい!」
「4!5!6!」
 
 相手が返事をした瞬間に号令を行う。
 彼女たちは号令に対して即座に対応する訓練も不足している。
 嫌がらせにしか見えないが、このような事もしなくてはならない。

「・・12!13!藤堂二等図書士」
「はいぃ」

 情けない声が返ってくる。
 まだまだ始まったばかりだというのに情けない。
 華奢に見える外見をしているとは思ったが、本当に一般人レベルの筋力しかないとは驚きだ。

「訓練が足りていないようなので全員20回追加!
 それはさておき、咄嗟に仲間をフォローできる事は部隊の生存率向上に貢献する事だ。
 あとは、言葉ではなく行動でそれを行えるようにすれば問題ない。
 嘘に聞こえるかもしれないが、非番の時にはこの訓練以外にもゲームセンターのガンシューティングをやってみるといい。
 イメージトレーニングとしてはいいぞ。金はかかるが面白いしな」
「はぃ!早速行ってきます!」

 複数の方向から目標が多数出てくる環境を気軽に味わう手段として、最近のガンシューティングは効果的と言える。
 もっとも、イメージトレーニング以上の意味は無いが、彼女にはまずそれが必要に思える。

「・・声が小さくなってきたぞ!35!36!南郷二等図書士!」
「はい!」
「元気じゃないか、それならばあと30回はできるな!」
「はい!」
「ならばそれは次回へ回す。全員気ヲ付ケ!」

 即座に、とはさすがにいかないが、可能な限りの素早さで全員が整列する。

「南郷二等図書士は混乱しつつある現状で、自我を保ったまま行動できる精神力を持っている。
 あとは、それを有効活用できるよう戦術を覚え、技術を身に付け、磨く事が重要と考える。
 当図書館にもそのような本は多数ある。非番の時に探すといい」
「はい!ご指導ありがたくあります!」
「よろしい、では佐藤二等図書士!」

 俺たちの直ぐ後ろで指揮所と呼ばれる移動式統制機を操作していた先日の女性防衛員を呼ぶ。

「本日の訓練はここまででよいか?」
「はい!ご指導ありがとうございました!」
「じゃあ、いつもの口調に戻らせてもらいますよ」

 演習の終了を確認し、口調を元に戻す。
 特別訓練の間は上位者として振る舞い、それらしい口調をしてほしい。
 当初丁寧語で指導していた俺に四人が要望した内容に従っていたが、さすがに疲れる。
168図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/10/21(火) 22:36:55 ID:45UPst3u
「なかなかいい鬼軍曹ぶりだったぞ」

 ようやく偽装を解いた手塚が声をかけてくる。

「やめてくれよ。堂上図書正にでも見つかった日には、一生分グランドを走らされそうだ」
「あるいは笠原と乱闘騒ぎか」

 楽しそうに言わないでくれと内心で呟く。
 ボヤけない程に精神的疲労が重なっている。

「あの、ありがとうございました!」

 先日の女性防衛員、佐藤二等図書士が再び礼を告げてくる。

「同僚の頼みです。それも自分の訓練にもなる内容ですから、礼には及びませんよ」

 笑顔でそう答えつつ、内心では茨城図書隊に対する不信感の増大を覚えている。
 基礎的な訓練が成されていない。
 戦術についての指導の跡もない。
 これは明らかに異常だ。
 休日にこれだけ真面目に演習に打ち込める人間が、訓練だけはまともにやっていなかったという事はありえない。
 しかも、一人二人ではなく四人だ。
 以上の事から推測するに、茨城図書隊では少なくとも新兵に対してはまともな訓練を施していない。
 重大な問題である。

「それでは、四人ともこの場の後片付けをお願いします。
 私は手塚とちょっと話がありますので」
「「「「ありがとうございました!」」」」

 綺麗にハモった返答を聞きつつ、俺は手塚を少し離れた位置へ呼び出した。

「どう思う?」
「今すぐ茨城図書隊へ怒鳴り込みたい気分だな」

 同感である。

「とはいえ、四人もの人間を嫌ってまともな訓練を施さないというのは考えにくい。
 十中八九、これは政治的な問題だろう」
「そうなんだろうな、信じがたいが」
「玄田隊長には俺から報告しておく。悪いが、後片付けの監督を頼む」
「わかった、頑張れよ」
「頑張るよ」

 玄田隊長に話をする前に、敬愛する直属上官殿にも報告をしないといかんな。
 話の方向性を決めてから報告しないと、俺の立場が悪くなるな。
 歩きながら思考をまとめていこう。
169図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/10/21(火) 22:37:27 ID:45UPst3u
本日はここまで
170名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 00:12:13 ID:pqAdQRww
正化31年8月20日 1300時 関東図書隊管轄 武蔵野基地 屋内防衛訓練所


 真っ赤な湖の湖岸。

 少年と少女はそこにいた。

 全ての人間が融合した世界で、二人は『存在』していた。

 少年が少女の首を絞める。

少女は、少年の頬を優しく撫でる。

 そして、言った。



「気持ち悪い」

「ええい!ちょこまかと!!」

 不甲斐ない同僚に苛立ちの声を漏らしつつ三人目の女性防衛員が発砲をするが、やはり命中しない。
 きちんと狙って発砲しているが、そもそも敵は全身の殆どを遮蔽物に隠している。
 それどころか、長すぎた射撃の隙を突いて狙撃されてしまう。

「良美!」

 胸部を撃たれて蹲った同僚の姿に、最初に叫んだ女性防衛員が悲鳴を上げるが、彼女も直ぐに死人の仲間入りをする。
 戦場では、余所見をしている余裕など存在しないのだ。
 
「香織まで!?」

 僅か数秒で同僚二名が無力化されたという現実に、最後に残された女性防衛員は冷静な判断力を失った。
 顔ごと向きを変え、大振りな動作で周囲にいるはずの敵を探す。
 だが、現実は彼女が視覚できる少し先からやってきた。
 狙撃手が放った弾が、彼女の心臓がある場所へ命中したのだ。

「命中、全員無力化を確認。そこまで」

「こっちが気持ちわるいっちゅうねん」



 エセ関西弁を言いつつ動画を終了させる。

 まったく、正月早々不快な思いをしたなぁ。
171名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 00:13:18 ID:pqAdQRww
「俺の名前は、ガロード・ラン!」


「いい加減にしろゴルァ!!!」


 腰から拳銃を抜き、室内の全員に向かって怒鳴る。

「はい!そのような訓練はしておりません」
「ではなぜ叫んだ」
「緊張していたからだと思われます」

 真面目に指導を受ける新兵のような態度で回答される。
 そのような回答をされてもこちらとしては困ってしまうのだが。

「これから発砲すると敵に告げる必要はない。
 今後は戦闘中に必要以外の事で口は開かない事だ。
 それと、敵の行動を見て命中しそうも無い時には発砲は控えた方がいい。
 弾薬は無限に持てないのだからな。
 次に藤堂二等図書士」
「はい!」

 先ほど仲間にフォローの声を掛けていた防衛員に矛先を変える。

「なぜ室内に退避しなかった?
 仲間がやられた以上、少なくとも何らかの行動を取るべきだったとは思わないか?」
「はい、混乱してしまい、動作できませんでした。申し訳ありません」

 彼女はひどく反省した様子で謝罪の言葉を漏らす。
 
「これが実戦ならば、君は敵弾で心臓を吹き飛ばされて即死だった。
 ごめんなさいを言う余裕もない。何故そうなったのかわかるか?」
「はい、混乱し、身を隠さなかったからです」

 先ほどは酷く狼狽していたが、今は落ち着いて自分の行動を分析できているらしい。
 だったら最初から冷静に対処してほしいものだが。

「外から狙撃されているのに窓際に棒立ちになるのは賢くない行動だ。
 戦闘中に狼狽する事も感心できない。
 後から分析して理解できる脳を持っているのだから、それを反省ではなく予測に用いるべきだな。
 最後に南郷二等図書士」
「はい」

 最初に殉職した女性防衛員が返事をする。

陸上自衛隊で三等陸佐、世間一般で言うところの陸軍少佐をやっている。

 と、言っても野戦任官、戦場で上官が死んじゃったから臨時に昇進を遂げるって言うあれだ。

 日本は北の某国とかれこれ1年ほどドンパチを続けているからな、正規の教育を受けた隊員は嫌でも昇進していくのさ。

 んで、ここは朝鮮半島の某所にある旧アメリカ海兵隊の基地だ。

 元いた連中が沖合いに浮かぶ揚陸艦に撤退していったんで、臨時で俺たちが出張ってきてるのよ。



「政府広報です。我が軍は破竹の勢いで現在も進撃中。戦場の皆さんを銃後から支援するため、戦時国債を購入しましょう」
172名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 00:14:59 ID:pqAdQRww
「杉田三佐殿。連隊本部より呼び出しが来ております」

「ん、ごくろーさん。すぐいくわ」

 ノートパソコンを閉じて立ち上がる。

 あーあ、どうせ出撃なんだろうな。

「掛け声はまずいが、射撃の腕は良かった。
 あとはもう少し発砲を早めるべきだ。次回の訓練にはそれを是非考えてほしい」
「はい!」
「4!5!6!」
 
 相手が返事をした瞬間に号令を行う。
 彼女たちは号令に対して即座に対応する訓練も不足している。
 嫌がらせにしか見えないが、このような事もしなくてはならない。

「・・12!13!藤堂二等図書士」
「はいぃ」

 情けない声が返ってくる。
 まだまだ始まったばかりだというのに情けない。
 華奢に見える外見をしているとは思ったが、本当に一般人レベルの筋力しかないとは驚きだ。

「訓練が足りていないようなので全員20回追加!
 それはさておき、咄嗟に仲間をフォローできる事は部隊の生存率向上に貢献する事だ。

「はぃ!早速行ってきます!」

 複数の方向から目標が多数出てくる環境を気軽に味わう手段として、最近のガンシューティングは効果的と言える。
 もっとも、イメージトレーニング以上の意味は無いが、彼女にはまずそれが必要に思える。

「・・声が小さくなってきたぞ!35!36!南郷二等図書士!」
「はい!」
「元気じゃないか、それならばあと30回はできるな!」
「はい!」
「ならばそれは次回へ回す。全員気ヲ付ケ!」

「情報はどうなっている!?」「本国より連絡!至急退避しろとの事です!!」「退避たってどこに!?」「警報!!」

「NBC警報!手ごろな建物に入り、開口部から離れろ!!」「前線へ連絡しろ!早く!!」「空自がこの近辺から急速に離脱していきます!」

「連隊長殿!?どういうことでありますか!?」


 NBC警報だって!?ま、まさか、北の核兵器?


「特殊部隊の破壊作戦が失敗して発射されたらしい。諦めろ。ここも目ひょうらしいからn・・・」

 諦めきった表情の連隊長が呟くその後ろから、凄まじい閃光と、圧力が、おしよせてきt・・・・・・
173名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 00:16:41 ID:pqAdQRww
「・・・・・・???」

 目を開いてみる。

 視界に入るのは無人の町並み。

 背後にあるのは無人の駅。

「聞いていたよりも天国ってのは近代的なんだな」

 基礎的な訓練が成されていない。
 戦術についての指導の跡もない。
 これは明らかに異常だ。
 休日にこれだけ真面目に演習に打ち込める人間が、訓練だけはまともにやっていなかったという事はありえない。
 しかも、一人二人ではなく四人だ。
 以上の事から推測するに、茨城図書隊では少なくとも新兵に対してはまともな訓練を施していない。
 重大な問題である。

 俺の名前は・・・おかしいな。確かに俺は杉田一郎。EVAの事なら連隊内で一番詳しい三等陸佐だ。

 図演で第三新東京市を敵要塞と仮定して鎮圧したこともあるほどあれこれハマってはいたが、現実と空想の区別が付かない可哀想な頭はしていない。

「どう思う?」
「今すぐ茨城図書隊へ怒鳴り込みたい気分だな」

 BAKOM!!

「ドゥワ!!」


 某タイツ姿の宇宙人みたいな声を出して吹っ飛ぶ俺。

 運良く受身を取り、そのまましばらくゴロゴロと地面を転がる。
174名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 00:18:33 ID:pqAdQRww
本日はここまで
175名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 00:22:53 ID:1RToxrCl
>>5
乙であります!
変な阿呆に屈せずに頑張ってください。
176名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 09:04:07 ID:RB9iHWhc
こういうのは削除依頼に出すべき何だろうか
17710/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ:2008/10/23(木) 00:37:04 ID:xB2ppYzt
GJ!
最初は1発ネタかと思ってたけど結構長かったんだね
だんだん面白くなってきた
178名無しの帝国兵:2008/10/26(日) 16:47:54 ID:l/5rpytB
前話してた戦場のヴァルキュリアネタがようやっと少しできたので、今更ながら投下してみる。
舞台設定:1939年、この世界によく似たもうひとつの世界で「ラグナイト」という俺らで言う石油みたいな地下資源をめぐって
「連邦」と「帝国」が戦争をする。
主人公はその連邦と帝国に挟まれて位置する武装中立を国是とした小国「ガリア公国」の義勇兵。
もともとラグナイトが多くあるガリア公国に、帝国がそれを狙って侵攻を開始してしまう。
という話です。
有名なのは第七小隊ですが、今回は第三小隊の話です
179名無しの帝国兵:2008/10/26(日) 16:55:51 ID:l/5rpytB
1939年--ヨーロッパ北部−ガリア公国

ヨーロッパ大陸にある小国、ガリア公国の首都近郊にある田舎町、ブルールの大通りを足早に歩いていく。
「まさか俺にまで招集がかかるとはねえ・・・大学卒業までもう少しだったのになあ・・・」
俺はフランク・ホワイトマン22歳、大学卒業を前にして徴兵されてしまった、かわいそうな大学生だ。
ガリア公国には、有事に備え『国民皆兵制度』なる制度が存在する。
この制度はガリア公国が戦争状態に突入した際に戦力不足を補うため文字通り、国民を兵士として義勇軍として徴兵するという制度である。
しかし全くの素人を徴兵しても何の意味もない、そこでガリアでは、高等過程から国の指定する必修カリキュラムとして、国民は皆兵科選択式の軍事教練を受講している。
フランクもこの制度によって徴兵されたのだ。
「ま、いいや、とりあえず急ごう・・・日が暮れる前につけばいいんだが・・・。」
とりあえず、その日の内には目的地である義勇軍駐屯地に着いたがその日は近くの宿に泊まるようにと警備の連中に言われた、今日はとりあえずつかれた、早いとこ休もう
180名無しの帝国兵:2008/10/26(日) 16:59:09 ID:l/5rpytB
翌日−ガリア公国首都ランドグリーズ−義勇軍第三中隊駐屯地−上級仕官事務室

 「失礼します、フランク・ホワイトマンです。入ります。」
ドアをノックして、官姓名を名乗り、部屋に入ると一人の女性がデスクの椅子に腰掛けていた。
きりっとした顔立ちで、メガネをかけている。
「本日付で、義勇軍第三中隊に配属になりましたフランク・ホワイトマンです。」
「ご苦労、よく来てくれたわね、私が貴方の直属の上官、エレノア・バーロット大尉である。」
「早速ではあるが、辞令を言い渡す、フランク・ホワイトマンを二等軍曹とし、義勇軍第三隊偵察兵として任ずる・・・以上、わかったわね?」
「ハッ、了解しました、拝命いたします。」
「よろしい、では――――――
「失礼します、ライナ・ローウェン二等軍曹であります。入ります。」
会話をさえぎって部屋に入ってきたのは、ライナと名乗った女性だった。
自分と同じくらいの年だろうか、プロポーションもなかなかのものである
「何の用か。」
バーロット大尉がライナに尋ねた、彼女は答える。
「本日付で配属になる予定のフランク軍曹を迎えに来たんですが・・・隊長が“そろそろバーロットのとこだろう”って・・・。」
「そうか、ご苦労・・・でも大変ね、まだ若いのにあの人の補佐なんて・・・同情するわ。」
「いえいえ、そんな・・・」
「でもあれじゃない、あの人って・・・・・・」
「まぁ・・・・・」
ほうっておくとこのまま世間話に花が咲きそうなので、俺はあわてて口を挟んだ。
「あのー、大尉・・・・?」
「あら、ごめんなさい。私からの話は以上よ、後はライナ軍曹に任せるから、後は彼女に聞いて。」
「了解しました・・・で、どうすれば・・・・?」
「じゃあとりあえず、行きましょうか。」
ライナはそう言うと、俺の手を引っ張って歩き出した。
いきなり手を握られて驚いたが、悪い気はしなかった。
181名無しの帝国兵:2008/10/26(日) 17:01:26 ID:l/5rpytB
とりあえずここまでということで
182名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/31(金) 13:45:48 ID:OkknMdet
乙よん
183>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/11/01(土) 00:58:26 ID:caKq4ETy
正化31年8月20日 1304時 関東図書隊管轄 武蔵野基地

「お疲れ様です」

 通り過ぎる図書正の答礼を待ちつつも思考をまとめる。
 現在分かっている事実は三つ。
 茨城図書隊から転属してきた四名の女性防衛員は、戦力として通用するレベルにない。
 前の部署では必要最低限の訓練しか受けていないとしか言いようがない知識量である。
 現在、本人たちは休日にも訓練を行う事に何も異論がない。

「お疲れ様です」

 別の図書正が通りがかるのを見かけ、脇に退いて敬礼する。
 答礼を確認して腕を下ろし、再び歩き始める。
 三つの事実から導き出される推論は二つ。
 不真面目な人間が実戦を見て更生したか、満足な訓練を受ける事ができなかった。
 
「お疲れ様です」

 今度は図書特殊部隊の図書士長が通りがかる。
 先ほどと同じように脇に退き、敬礼をする。

「おい、聞いた話じゃ若い女性防衛員たちとお楽しみしているそうじゃないか」

 先ほどと同じようにやり過ごそうとするが、残念な事に声をかけられてしまう。

「はい、先ほどまで大量に打ち込んでやりましたよ」

 ニヤリと笑いつつ返す。
 もちろん相手は冗談とわかっており、休日に運動しすぎると体を壊すぞ、と忠告を残して笑いながら去っていく。
 立ち去るのを確認して再び歩き出す。
 二つの推論について確認しよう。
 実戦を経験した怠け者は、自分を見つめなおして真摯に訓練に打ち込むか?
 自分の経験上からすれば、答えはイエスである。
 では、真相がそうだった場合、わざわざ非番の隊長に報告すべき事項であるか?
 やはり答えはイエスである。
 基礎的な事を何も学ばずに卒業できるような訓練を行っている事は問題である。
 将来を考えれば、手遅れかもしれないが今すぐに是正するべき事だ。
 
「こんな時間にどうした?」

 おっと、まとめ終わっていない状態で堂上図書正の登場だ。

「実はご相談があって参りました」
「相談?ふむ、場所を変えるか。ついてこい」

 ありがたい事に、堂上図書正は俺の相談したい事があまりよろしくない内容である事に気が付いたらしい。
 後ろを付いて歩きながら、残された推論について手早く確認する。
 満足な経験を受けられずに訓練を終了するという事がありえるのか?
 絶対にないとは言い切れない。
 しかし、この推論を進めていくと、恐ろしい結論が見えてくる。
 つまり、茨城図書隊はまともな訓練を行う能力がない。
 もしくは、まともな訓練を行うつもりがない。
184>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/11/01(土) 00:59:12 ID:caKq4ETy
「それで、相談ってのはなんだ?」
「先ほどまで自分たちが実施していた演習に関係がある内容なのですが」
「まさか、移動式統制機を壊したんじゃないだろうな」

 恐ろしい事を言われてしまう。
 移動式統制機とは、先ほどの演習でも使用していた名前の通りの装置である。
 様々な入力端子、動画、音声の形式に対応しており、ある程度防犯設備がある場所ならば、すぐさま情報収集が可能になる。
 当然高価であり、記憶が確かならば数千万円は下らないはずだ。

「もしそうならば、今頃自分はヘリを奪って逃走中ですよ」
「そうだろうな、俺の場合は遺書を書き終えた頃だろう。
 それでなんだ?」
「茨城図書隊について、看過しがたい問題が発生している可能性を確認しました」

 わざともったいぶった表現をする。
 最初から断定系で話しかけたので、相手に頭ごなしに否定される恐れがある。

「看過しがたい問題という表現は穏やかじゃないな。
 何を見つけた?」
「茨城図書隊では、何らかの事情により新兵へ満足な訓練を実施できない、あるいは実施していない疑いがあります」

 俺の言葉に堂上図書正は一瞬絶句した。
 
「お前、自分の言っている意味はわかっているな?」
「理解しております」
「なら続けろ」

 ありがたい事に、先を促された。
 ここでめったな事を言うもんじゃない。いいな?などと流されては困る。

「本日の演習に参加した四名の元茨城県図書隊員たちは、その動作から基礎的な訓練を受けた様子が全く見受けられません。
 また、非番の日に訓練を希望するほどの熱意を持ちつつも、必要な知識を全くといって良いほど持ち合わせておりません。
 これは、不真面目な人間が更生したと考えるよりも、まともな訓練を受けた事がないと判断するべきであると自分は考えます」

 俺の推論を聞いた堂上図書正は、ひとまずは反論がない事を頷いて伝えてくる。

「以上の事から推測するに、茨城図書隊はまともな訓練能力を持っていないか、あるいはそのような人物でも訓練完了としてしまう風潮があるかです」

 防衛部員は、訓練完了の判定について非常に厳しい基準が設けられている。
 その審査は厳格であり、融通が全く利かない。
 一切汚職がないとは言い切れないが、賄賂、権力、色仕掛け、温情といったものが通用しづらい。
 この審査を通れば人間を殺傷できる武器を持ち、実戦に投入されるのだから当然である。
 
「わかった。今から玄田隊長のところへ行くぞ。いいな?」
「はい、ご助力頂き有り難うございます」

 想定される中で最高に近い回答をもらい、俺は思わず笑顔になった。
 そこから先の展開は早く、非番だというのに俺たちは、途中で見かけた小牧図書正と共に駆け足で玄田隊長の私室へ向かった。
185>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/11/01(土) 01:03:27 ID:caKq4ETy
「なんだなんだ、クーデターでもしに来たのか?」

 入室の許可をもらうなり部屋へなだれ込んだ俺たちを見て、玄田隊長は怪訝そうな声を出した。
 だが、事情を説明していくにつれて彼の表情は歪んでいく。
 わざわざ相談に行った甲斐があるというものだが、できれば誰でもいいから俺が納得できるだけの形で完全に否定してほしかった。

「この問題については俺が預からせてもらう。
 もちろん悪いようにはせん。結果が出たらお前たちにも教えてやる」
「ありがとうございます。
 仮に誤解だとしても、自分たちには重過ぎる内容です」

 玄田隊長ならばきっと何とかしてくれるという安心感を持ちつつ、俺たちは退出した。
 その希望はある意味であっており、別の意味であっていなかった。

「なん・・・だと?」

 非番明けの執務室で、俺は呆けたような口調で与えられた辞令を読み上げた。

「人材交流の一環として、茨城図書隊への移動?」

 確かに早急に調べるべきであると進言はした。
 しかし、そこへ一人で行ってこいというのは想定の範囲外だ。
 
「堂上図書正殿、自分は一人で行くのですか?」

 念のために尋ねてみる。
 この手の特殊任務に一般防衛部員や業務部の人間が行くとは考えずづらいが、人間として希望的観測に頼ってしまうのは仕方がない。
 第一、俺は警視庁公安部や自衛隊情報保全隊の経験はないのだ。
 本職の情報関係の人間としての役目は果たせないだろう。

「いや、お前一人だ」

 堂上図書正の発言は冷酷な現実を伝えていた。
186>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/11/01(土) 01:05:29 ID:caKq4ETy
大変に短いですが、本日はここまで
187名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/01(土) 21:41:19 ID:xI/SZysW
>>186
きもちわるい
188名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/02(日) 12:04:02 ID:09zvCVGr
>5
次回は茨城に粛正の嵐ですね!期待!
189名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 19:12:14 ID:Yvl/pD8G
図書館戦争 ◆XRUSzWJDKMキタ━━━( ゚∀゚ )━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━( ゚∀゚ )━━━!!!!
190創る名無しに見る名無し:2008/11/11(火) 23:49:20 ID:kpIotNhM
>>149
自衛隊戦記ものを散々妄想しては、毎回挫折の繰り返し…。本格派の軍事小説は知識不足で、自分でも読み返して萎えたりするからなあ。

とりあえず完成作品を一本投下してみる事にするです。
自衛隊ラノベもの。
http://34bangai.chips.jp/bbs/img/56.txt

191190:2008/11/12(水) 00:34:41 ID:xh6n9j75
原稿用紙100枚前後の作品なので、自サイト掲示板の添付ファイルURLを貼りつけてみた。
SS形式じゃなく長文になっちまって申し訳ないですにゃ。
192創る名無しに見る名無し:2008/11/12(水) 10:08:12 ID:u9ejrm4r

>>111-117
個人的に、負け戦の雰囲気ただよってるの大好きなので、凄く楽しめた。
亡国の皇子と特殊部隊の兵士って組み合わせが妄想を書き立てました感じで。
正直続きが読んでみたくなりました。
現在進行形の作品が完成したら、この続きを是非!

>>190
↑で貼り付けたのをPCから確認したら激しく見辛かったので、
改めて分割して貼りなおします。連投謝罪orz

http://34bangai.chips.jp/novel/ns-03-1.html
http://34bangai.chips.jp/novel/ns-03-2.html
http://34bangai.chips.jp/novel/ns-03-3.html
http://34bangai.chips.jp/novel/ns-03-4.html
http://34bangai.chips.jp/novel/ns-03-5.html

今後も需要があればこの系統を書いていこうかと思う。
とりあえず図書館戦争買ってくる!
193創る名無しに見る名無し:2008/11/12(水) 17:45:19 ID:iMcF+xNc
かなりの大作だな…すげーわ
194創る名無しに見る名無し:2008/11/12(水) 21:35:30 ID:+kpz8bv8
しょっぱなの「諦めちゃダメ」で諦めてウィンドウを閉じた
195190:2008/11/12(水) 23:08:37 ID:xh6n9j75
>>193
改めて原稿用紙カウンターで調べたら117枚あった。
出版物と比べたら3分の1冊分程度だけど、ここじゃドン引きの枚数だったかも…?
大作というのが枚数についてなのか内容なのか気になるところですw

>>194
お目汚し申し訳ない。
冒頭の引きを勉強中なので、どこでUターンしたのか教えてもらえたのはかなり助かります。
こういうレスはマジで参考になる。

拍手くださった方ありがとうです!
196創る名無しに見る名無し:2008/11/12(水) 23:09:42 ID:RCY8EuvF
>190氏
非常に上手い作品だと思います。特に文章表現というか、一文一文の繋げ方が上手いな、と感じます。
文と文の連続性を維持するって言うのは意外と難しかったりするので、自分も物書きの端くれとして参考にしたいと思わされました。

ただ、個人的な意見を言わせてもらうなら、もう少し「書きたいもの」を明確化し、それに特化すればよいのではないかと思います。
キャラクターを見せたいならもっとそれぞれの深い描写が必要ですし、DACTというこのシチュエーションを書きたいなら、もっと専門的描写を増やして
リアリティを高めてみせたほうがよいのではないでしょうか。あるいは、文体をこのままにストーリーを派手なものにするという方向性もありかと思います。
面白かったんですが、なんというか特徴無く纏まりすぎているような印象を受けたもので……。

生意気なこと書いて申し訳ないですが、まあ参考程度に聞いたいただけたらと思います。結局のところ書いている本人が満足できるという事が大切であると思っていますので。
今後の活動にとても期待しています。
197アヒル ◆jEcXgVN.0s :2008/11/13(木) 00:32:16 ID:E161Ht6P
や、こんなに反応を頂けると思っていなかったので、正直驚いています!
以後、作品のタイトルにあやかってアヒルのトリをつけますにゃ。
>>196
鋭いご指摘ありがとうです。
>「書きたいもの」を明確化し、それに特化する
これについては、以前から課題だった部分だと思います。
自分でも軍事小説にするかラノベよりにするかで、かなり迷いが作品に出てたんじゃないかと今にして思う…。
大きな事件を扱う長編に設定して書けば、キャラの精神面をこまかに描写しやすいかもしれません。

こんな作品が読みたいとかあったら、ぜひリクエストよろしくです。
多分にアヒルの趣味が反映されそうですが、お応え出来そうなネタなら飛び付きます。
198創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 09:35:16 ID:Anwh9s4l
できればtextじゃなくて、このスレに分割して貼ってほしかった
50KBを超えるような量ならtextでもいいと思うんだけどね
199創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 10:52:04 ID:RqyK3xFK
>>198
スレに貼ると著作権が2ちゃんに取られるから
200創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 11:54:05 ID:Np7cUrz3
>>186
本当、面白いです。
でも良化隊員をあっさり殺すのはどうかと。
膝や背骨を撃ち抜き、一生障害で苦しむようにした方が良いように思いました。
遺族補償と障害補償でどちらが良化隊の負担に成るかで違ってきますが
201創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 15:16:26 ID:XQMVHUL0
>>200
室内戦闘のような近距離戦では脅威の即時無力化が求められますから、怪我だけとかを狙うのは危険だからではないでしょうか?
特に主人公は軍事系特殊部隊式の考え方をしていますし。
というか、主人公がわざわざ相手を苦しめることを目的としたやり方を採用する動機がわからないのですが……。それは軍人の考え方ではないと思います。
202創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 16:01:10 ID:7DnRPn9n
5.56mmで弾数と携帯性よくしたけど、
2・3発当ててもそのまま反撃してくるって理由で7.62mmに変えたくらいだし。
即時に敵を無力化できるのは大口径の拳銃くらいだろ。
203創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 16:20:54 ID:XQMVHUL0
>>202
すいません、「速やかに無力化」と書くべきでした。
つまり室内戦闘のような場合では、下手に敵の負傷を狙うと無力化が不十分で反撃を受ける可能性が残るため、確実に相手の戦闘能力を奪うまで(大抵の場合、相手が死亡するまで)
攻撃するのがセオリーではないか、といいたかったのです。戦闘時においては「相手の急所に複数弾を撃ち込む」とか「相手が倒れるまで撃ち続ける」といったやり方をとると聞いたことがあったので。

200氏の「膝や背骨を撃ち抜き、一生障害で苦しむようにした方が良いように思いました。 」というレスは、そのような点から、自衛隊で訓練を受けたプロである主人公が取る戦術としては
ふさわしくないのではないか、といいたかったのです。
204創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 20:06:55 ID:Np7cUrz3
>>201
苦しむ云々は重要では無くてですね。
復帰不可能な障害を負わせ、医療費等で良化隊の予算を余計に使わせる事が主な目的です。
後は視覚的な凄惨さで世間に知らしめる事ですね。
射殺しては棺が一度切りですが、片足の無い人間や車椅子姿の人間は延々と人々の目に映りますから。

>>203自衛隊で訓練を受けたなら腹を狙いますよ。
確実に動きを止められますし
205創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 21:25:52 ID:15eLzf78
自衛隊は敵がボディアーマー着てるの前提に入れてないから、場合にもよるでしょ
グレネードの爆風と衝撃で行動不能にする方が有効らしいが
206創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 21:46:28 ID:YeUwa8cB
「図書館戦争」は建前とはいえ無制限のキリングゾーンは厳禁で
即死ではなく負傷退場を両者に求めてるだろ(良化隊は往々にして越えたりするが

「実弾を使ったサバゲー」みたいな狂ったシチュエーションが
眩暈を伴った倒錯の快感を生み出してるんだろーけど
207創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 22:00:57 ID:Cu12HcYU
即死が回避できれば負傷しても治療が早いからそうそう死なないでしょ
海兵隊とかは股間撃つらしいな、防弾の心配もないし

負傷した奴を引き摺りながら後方へ避難させるから
介護した兵隊が戦列に復帰するまでは二人倒したことになる
イスラム系のゴロツキだと仲間撃たれても気にしないが規律の取れた現代軍なら
衛生兵や仲間がが飛んでくるから敢えて見逃して
戦略減らすのも正しい戦術
208創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 22:02:12 ID:Cu12HcYU
戦略減らすってなんだw
敵の数だw
209創る名無しに見る名無し:2008/11/15(土) 01:53:19 ID:qwLDrd0b
>>205
ボディーアーマーを着てる着てないは関係ない。
狙って一番当たりやすいから。
頭に比べて、大きいし動きが少ない。
210>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/11/17(月) 00:34:27 ID:TRZaSe+a
正化31年9月1日 1504時 水戸図書準基地

 着任の挨拶から五時間、荷物を持ったまま基地内を案内されるとはまるで嫌がらせのようだとは思っていたが。
 いまこうして自室の前まで持たされていたところを見ると、どうやら本当に嫌がらせだったようだ。

「しかしねぇ、東京の精鋭特殊部隊員さんがはるばる茨城くんだりに来て何を研修されるんですかね?」

 なかなかに失礼な口調だ。
 だが、相手は年齢も階級も上だ。
 ここはおとなしく回答をするべきだろう。

「自分が受けた命令は、水戸準基地にて現地部隊との密接な関係の構築と、より効率的な訓練についての情報交換となっております」
「効率的な訓練?」

 俺を案内していたこの基地の図書正は、疲れきった表情で俺の言葉を繰り返した。
 
「この基地で研修に値する効率的な訓練とやらが行われると思ってるんで?」

 意味深な言い方をしてくれる。
 面白くは思っていない人間もいるということか。
 現状に不満を覚えつつも、行動には移れない。
 協力者として獲得するには最適っていうわけか。

「興味深い内容の訓練が行われているらしいと複数の人物から聞いております。
 とても楽しみです」

 直接的に協力を求めるのは賢くないだろう。
 そう考え、身分を隠した監査員であるとも取れる内容を伝える。

「そこまで真面目な人間ならば、粗略には扱えんな。
 手が疲れただろう、部屋に入れるところまでは手伝ってやる」

 図書正は途端に態度を変え、断る間もなく俺の荷物を持って部屋へと入った。
 これはひょっとすると、当たりを引いたかもしれん。

「ドアを閉めろ」
「はい」

 上位者としての命令に、素直に従う。
 さて、どのようなお話をいただけるのか。
 
「東京から研修に来たといっていたな」
「はい」

 図書正はそれを確認すると表情を和らげた。

「そうか、佐藤たちは元気か?」
「はい、貴方は?」
「連中の熱意に負けて、東京への転勤を手伝った人間だよ。
 今では防衛部清掃部門臨時補佐代行とやらを勤めている」
「天下りした官僚のような役職名ですね」

 露骨過ぎる役職名に、思わず苦笑してしまう。
 
「仕事の内容もそのようなものだ」
「一つ質問なのですが、よろしいでしょうか?」
「何でも聞いてくれ」
211>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/11/17(月) 00:36:00 ID:TRZaSe+a
 直接的な質問はまだ控えておくべきだろうか。
 判断基準とするべき知識と経験の不足を痛感するな。
 こんな事ならば、除隊する前に情報本部の連中ともっと仲良くしておくべきだったな。

「この基地では、清掃は防衛部の仕事なのですか?」
「戦闘という意味での防衛以外が俺たちの仕事、なのだそうだよ、館長によるとな」
「大変参考になりました。ありがとうございます」

 笑顔で回答する。

「それは何より。
 困ったことがあったら申し出るように」
「ありがとうございます」

 俺の敬礼に答礼しつつ、図書正は退出していった。
 さて、お仕事を始めるか。
 旅行鞄から荷物を取り出す。
 移動に伴う臨時休暇に買ってきた盗聴電波探知機を起動する。

「おーおー、凄い凄い」

 ヘッドフォン経由で自分の声が聞こえてくる。
 数万円単位で買えるわりに凄い性能だ。
 手早く位置を特定し、取り外す。
 
「仕込みは良し」

 もう一つ妙な電波があるが、これは恐らく盗撮機だろうな。
 嫌がらせに自分を慰める行為でもしてやろうか。

「ん〜ん〜今日は死日和〜」

 自由大国アメリカの文化は素晴らしい。
 映画といい、音楽といい、品がないものを楽しむという自由がある。
 マリンコの連中に頼んで移民したくなるくらいだ。
 ラップトップを取り出して起動する。

「この無駄に長いパスワードがなぁ。規則だとは理解しているんだが」

 パスワードを忘れたと総務に泣きついていた同期を思い出す。
 あれをやるとまずいんだよな、フォーマットするしか選択肢がないからな。
212>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/11/17(月) 00:36:59 ID:TRZaSe+a
「しつれいしまーす」

 俺が初日の報告書をまとめようとした途端、入室の許可も求めずに見知らぬ男たちが入ってきた。

「何か御用で?」

 折りたたみ式の画面を閉じつつ尋ねる。
 友好的には見えない表情からして、歓迎パーティーのお誘いではないだろう。

「東京から来たってのはあんたでいいんだよな?」
「ええ、そうですよ。歓迎パーティーのお誘いですか?」

 俺の回答に、男たちは愉快そうに笑った。
 実に不愉快な感じだな。
 備品はともかく、任務中の私物の破損は保障してもらえるのだろうか。

「ああ、歓迎パーティーだよ。その前に、この基地の流儀については聞いてるのかよ?」
「ローカルルールって奴ですね。まだ伺っていませんが」
「じゃあ、今から教えてやるよ」

 彼が俺に教えてくれた内容は、とても興味深いものだった。
 一つ、防衛部は業務部に従うべし。平時において、これは最優先事項である。
 二つ、防衛部は業務部の許可なく発砲する事を禁ずる。
 三つ、防衛部は常に平和的解決を追求しなければならない。
 四つ、福利厚生施設の運用については、業務部の指示に従わなくてはならない。
 五つ、防衛部員は心理的圧迫感を業務部へ与えているため、日常生活においては業務部員の要請に答えなければならない。

「なるほど、水戸準基地ではとてもユニークな規則が運用されているんですね」

 どうやら満足な訓練が施されていない理由が見えてきたな。

「そうなると、私はこれからどうなるんでしょうか?」
「東京で何をやっていたのかは知らないが、ここでは俺たち業務部に従えって事だよ」
「先に言っておくが、館長や司令に意義を申し立てても無駄だぞ。
 客は客らしく、おとなしく部屋に引きこもっている事だ」

 なかなかに分かりやすい脅迫だ。
 この程度の連中ばかりならば、報告書が作成しやすくていいのだがな。

「どうやら、自分の立場を正しく認識して行動する必要が在りそうですね。
 ご忠告有り難うございました」
「結構素直じゃないかお前」
「よく言われますよ」

 苦笑しつつ答えたところで、アナウンスが俺たちの間に割って入った。

<<館内各員へ、メディア良化委員会より査察の通達が来ました。
 業務部員は直ちに端末をロックし、退避してください。
 防衛部員は非武装にて防弾盾を持って玄関へ集合、危険な行為は慎むように、以上>>

 おいおい、防衛部員は武装してこその防衛部員だと思っていたんだが。
 非武装で危険な行為を慎んで防衛しなければならないのか。
 これは厳しい場所だな。
213>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/11/17(月) 00:38:54 ID:TRZaSe+a
正化31年9月1日 1510時 茨城県立図書館近郊 メディア良化隊関東方面隊茨城第4大隊野戦指揮所

 通告した突入の時間まであと十分。
 今回の査察を担当するこの部隊は、図書館近郊に車列縦隊を止めて臨時の指揮所を設けていた。

「情報に間違いはないな」
<<ええ、内部からの情報です。奴は間違いなくここにいます>>

 メディア良化隊情報部からの連絡を受けた隊長は、口の端を吊り上げて笑った。
 彼は、かつて千葉県にて部隊を率いていた。
 だが、ニュータウン図書館執行の際に部下を大勢失った責任を問われ、この地へと飛ばされていた。
 そして、抵抗らしい抵抗もない茨城県立図書館の執行を担当していた。

「今回は撃ってもいいんだろうな?」
<<構いません。しかし、程ほどにしてくださいね>>
「俺の狙いは奴だけだ。だが、多少の犠牲は仕方がないだろう?」
<<ええ、まあ現地の無力化工作は十分な段階へ達しています。
 内部工作が上層部に発覚しかけているという情報もありますし、ここいらが潮時でしょう、お待ちを>>

 通信の相手は不意にマイクを切った。
 何か新しい情報が入ったらしい。

<<失礼しました。
 新しい指示です。出来るだけベテランの人間を死傷させてください>>
「今更気づいたとしても手遅れにしろって事か。
 了解したよ。盛大にやってやるさ」

 彼は通信を切り、再び口の端を吊り上げた。
 覚悟しろ人殺し、今度はお前が殺される番だ。
214>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/11/17(月) 00:42:59 ID:TRZaSe+a
本日はここまで
メディア良化隊の階級がわからない。。。
215創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 18:11:39 ID:U+GGeUZN
GJ
216創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 21:54:46 ID:QZRrm4ky
汚物乙です
217創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 22:56:54 ID:0zVgLpcL
良化隊の階級…
やっぱりお役所なんで普通に「係長」とかだったりするのかね?
麻薬取締官とかは階級が無いみたいだし…
218創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 14:50:31 ID:vXlA6J6k
スマソ
微妙にスレ違いかもしれませんが、ちとこのスレの人に質問
今構想中のSSで設定に詰まっています

もし自分の住んでる町が、某ゾンビゲーのように
バイオハザードが発生して隔離されてしまった場合、
少しでもサバイバル知識やら、ミリタリー知識があるような
このスレの住人みたいな場合は、まずどういう行動をするのでしょうか?
水と食料の確保くらいは思いつくのですが、
その他の点を参考までに教えていただけると嬉しいです
219創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 15:54:40 ID:eUY6kANZ
ゾンビの種類を把握
道具を使うゾンビ>走るゾンビ>鈍いゾンビ、の順で危険

装備はゾンビの歯が通らない
皮の厚いライダースーツにフルフェイス
武器は銃みたいに貫通するものより
面的破壊力が大きい破砕斧や槍のように間合いの広いもの方が良い

ゾンビ映画では街の中央へ向かう場合が多いが
人口=ゾンビの数だから危険

国道は渋滞を免れないので田舎道を通り
歩道も走れるバイクの方が行動範囲が広い
まず第一に手に入れるのは物資を大量に詰めるトラックや路線バス
これにバイクや食料を載せて港へ向かう

タンカーや貨物船を奪取して食料を積み込んだら陸から離れる
これでもうゾンビは追って来れないので安全

取るべき行動は
・自衛隊基地へ向かう(自衛隊が逃亡、全滅していた場合無意味)
・船に乗る(食料を集めるまでが大変)
・大型ショッピングモールに篭城(動かないと、物凄い数のゾンビに囲まれる)
の3つだな
220創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 16:35:54 ID:vXlA6J6k
>>219
さっそくありがとうございます。
一応設定としては「町が1つ、丸ごと封鎖されている」状態なので
強引に町から出ようとすると、問答無用で射殺というのを考えています
よって、船やら基地に向かうのは無理という方針でやろうかと
実際に町一つを隔離した場合、自衛隊等が
射殺等の、そういった行為をするかどうかも教えてもらえたらと

>歯の通らない皮の厚いライダースーツにフルフェイス
これは考え付きませんでした。
すごい参考になりますた。


一応、大まかな序盤の設定としては

・テロ、もしくは事故で町に血液感染型のゾンビが発生
・町が(自衛隊に?)封鎖される
・テレビ報道では「危険なので家から出ないように」
・主人公は楽観的に自宅に引きこもる
・数日後にライフラインが断絶。電気・ガス等が使えなる
・買い置きの食料もあまりないので、仕方なく外へ
・まずはショピングモールを目指す

ってのを考えてます
221創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 16:43:55 ID:2x2Z0BWx
>タンカーや貨物船を奪取して食料を積み込んだら陸から離れる
>船に乗る(食料を集めるまでが大変)

これって、船の中でもし誰かがゾンビ化してしまったら
逆に逃げ場がなくなって大ピンチになってしまうんじゃね?
222創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 17:01:35 ID:rxIAIjbI
ゾンビ相手に殲滅戦するなら篭城する施設を選ぶ
二階建て以上の施設で、敷地面積が広く、防火シャッターで区画封鎖できるのが大前提
ショッピングモールは出入り口が多いので塞ぐのに人手が要る
学校はそこそこ粘れる、一階を捨てて封鎖区域にし二階から梯子で出入りする

こういった施設は屋上に貯水タンクがあるので、雨水が溜まるよう細工しておく
食料はその辺のコンビニから強奪、銃弾が切れると役に立たない銃器は必要ない
強いのは槍やハンマーや投石

町の人口なら多くて5万人程度なので粘って倒しまくればその内いなくなる
人口以上にゾンビは増えないので

>>221
小型のクルーザーやフェリーでも良い
とにかくゾンビが泳げないのを最大限に利用
223創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 17:12:22 ID:cXr869tG
自衛隊については、軍事板の創作質問スレの方で聞いた方がいいかも

どういう行動をとるかといえば、まず自衛の手段と食糧、水を確保して出来るだけ多くの人と脱出の方法を探るかな
脱出が無理だったら(大規模感染の恐れがあるからどうしても脱出を阻止されるとか)外と連絡をつけて食糧や武器の支援を受けて籠城、根本的解決を待つ
こんなとこかね
まあいざとなったらパニックを起こしちゃいそうだけどw
224創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 17:19:49 ID:rxIAIjbI
とりあえずリビングデット三部作は絶対に観た方が良いよ

ドーン・オブ・ザ・デット
ナイト・オブ・ザ・リビングデット
ランド・オブ・ザ・デッド

遅いゾンビは大したことない様に描かれることが多い
『生きてる人間の臭いを本能的に察知』して群がってくるのが恐ろしい所
225創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 17:23:13 ID:He69235B
動物系ゾンビも怖いよね
設定的にどう扱うかで、色々違ってきそうだ

篭城するなら、落とし穴や鳴子とかの原始的トラップも有効かな?
大量のゾンビを誘導できるなら、一箇所に閉じ込めて燃料で焼き尽くす作戦も良いかもしれない
作戦規模的に前者は中盤、後者は終盤だね。多くの人との連携が必要だけど
226218:2008/11/18(火) 17:29:07 ID:vXlA6J6k
>>221
やっぱり閉所は危ないのね…

>>222
学校に立て篭もるのもいいかも
学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEADとかいう漫画で
そういう展開あった気もするし、鉄板方法なのだろうか
殲滅作戦というよりは、時間いっぱいまで、たまに迎撃しながら
逃げ回る展開にしようかと思っています
>貯水タンクがあるので、雨水が溜まるよう細工
このアイデアはいただいた!

>>223
銃器やら部隊行動やらの専門知識がいりそうなら、
そっちでも質問してみようかと思います

>>224
その三部作以外にもロメロ三部作から死霊の盆踊りまで
ゾンビ映画は好きなので見ておりますぜ

でも、走るゾンビってのはどうも微妙だと思うので
自分が書くとしたら、のんびり緩慢なゾンビになると思います
227創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 17:33:05 ID:fw66isy9
>>225
柱にロープ縛り付けてもう片方にハンマーつける

下にいるゾンビにブン投げる

ハンマーを引き上げて回収

またブン投げる

エンドレスハンマー攻撃
228創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 17:34:34 ID:tjyOxSOe
>>218
ダメ人間の参考にこんなやつもいるってことで、ドーゾ

知識があるからって、冷静に判断できるとは限らないよなーとオモタ
自分なんかは、親が目の前でぶっ倒れて救急車で運ばれた事とか、
大地震で部屋に閉じ込められて出られなくなった経験があるんだけど、
どっちの時も完全に半狂乱になって何の役にも立たなかったしw

あと時代劇に斬られ役で出た事があるんだけどさ、
大規模合戦シーンみたいなのに参加してるともう大混乱よー
あれだけ稽古と打ち合わせとテストも重ねたのに、
実際に坂道を突撃号令で駆け上がったりして、バリゲード乗り越えたり
敵に出くわしたりしたら、ほとんど頭の中真っ白になったw
ちなみに武道経験も十五年くらいあったから騎馬隊何するものぞ
とか思ってたんだが、撮影時にその度迫力を見て腰を抜かしてしもた事もw

知識みたいなのは多少あっても危機管理能力の無い俺みたいなのは、
映画なら冒頭数分で脱落すると思われるwww
ゾンビ相手にするとか、マジムリと思われる(自分には)
229創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 17:37:41 ID:fw66isy9
ゾンビ相手に一番やったら駄目なのは止まることだったりする
普通に考えて歩くより遅い死体に捕まるわけないし
ナイト・オブ・ザ・リビングデットの最後の方見てみ
230創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 18:30:30 ID:rpgDD1G1
まぁ、分かりやすく言うなら時速10kmで走る最強の戦士は
時速20kmで走る自転車に乗った小学生には追い付けないってこった

間合いを取る>遠距離攻撃>追いつかれたら逃げる>間合いを取る>遠距離攻撃>最強の戦士死ぬw
231創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 19:34:07 ID:hQUtyFep
>>230
人型ゾンビだけに気を取られて
野良犬型ゾンビに噛まれるタイプだな
232創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 19:36:01 ID:OT3NwL9b
ドーン・オブ・ザ・デットを見る限り犬には感染しないんですけどね
233創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 23:49:13 ID:ku81MdGy
ゾンビものを見る度に思うんだけど、ロードローラーを乗り回したくなるよね。
234創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 04:10:28 ID:vCYYj4q9
ムツゴロウ王国に逃げ込めばいい
ゾンビなんか餌だろ
235創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 20:16:55 ID:xHdO46oQ
>>220
自衛隊の対応ですが
初期は射殺で、その後は隔離になると思います。
初期は病気の感染方法とウイルス?細菌?が分からないのと、隔離施設が無いから。
隔離施設が確保(ゾンビでも壊せない強度の設備)がされた後は
被害の拡散防止の為に少数(個室〜最大でも家族単位?)
で隔離されるでしょう。
隔離施設は最悪、猿轡をしてベッドに拘束される形なども考えられます。
ウイルス?細菌?の同定がされていれば検査結果が出るまで。
されて居なければ、かなりの長期間になるでしょう。

隔離施設はコンテナを改造した物や鉄筋コンクリートの施設を改装した物など
手間の少ない物になるかと思います。
236創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 20:55:02 ID:ombanR4w
どこかの超独裁国家と法治国家日本を同じ土俵で見てはいけない。
政府が命令を発動して、
尚且つ自衛隊が様々な法的問題やメディアや各省庁や野党からの圧力などをクリアして町の隔離に成功したとしても、
武器も持たずに夢遊病者のように歩く集団に向かっていきなり銃弾をぶち込んで射殺したら、
命令した奴と撃った奴は殺人罪で有罪判決はほぼ確実。
この国では報道管制が難しいので、
テレビ局が町にヘリ飛ばした時点で政府も自衛隊も下手な真似はできない。
もちろんテレビ局のヘリを撃ち落すなんて断じて不可能です。
237創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 21:16:15 ID:Y252mxiS
小説の「宣戦布告」なんか撃てない自衛隊の姿がモロに出てるしな
社民党め…
238創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 21:23:22 ID:gFuZ5ng2
まあ、現地部隊の反乱覚悟の行動に期待するぐらいしかないね
239創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 21:23:33 ID:1TZv+Nqu
うへ、15年近く前の原稿が出てきたよ…。
自衛隊のPKO派遣ネタだってさ。改稿して晒してみるかな…。
240創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 21:35:10 ID:2GUmOFRX
大抵のゾンビ作品では全人類が死ぬとゾンビになる
理由は放射能か、地獄が満杯になったのが原因
241創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 21:40:14 ID:tM5cuLxH
ゾンビだって腹が減れば死ぬだろうから、隔離・封鎖ってのは有効だよな
都市にある食い物は意外に少ないらしいし
242218:2008/11/19(水) 22:15:59 ID:FAuyAImP
ちょっと時間がなくて全レスできなくて申し訳ない
後に、まとめて見させてもらいますです
243創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 23:53:27 ID:ombanR4w
>>241
死んでいるからゾンビなんだぞ
244創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 00:09:12 ID:x5thmgpG
でも活動停止はするだろうな
無限に動き続ける永久機関みたいなのを内蔵してるならともかく
細胞を活発化させるウイルスも所詮は生物よ エネルギーがなければどうということはない
245創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 01:08:47 ID:l/aVOs1U
ゾンビが人間を食べるのは動物の最も強い欲望が食欲だからで、(ロメロでは生者への憎しみも含まれる)
満腹とか空腹、要するにエネルギーの摂取は関係ない
ようするに人形に一つだけ自律プログラムを与えたようなもんだな
これはロメロではR複合体、バイオではTウィルスという原因の違いはあるけれども、
一応は共通しているし、だから脳が破壊されるか完全に腐るまで動き続ける
死んでいるということは内臓や血流も当然活動してないんだから、
胃袋に食い物入れても意味無いもんな
246創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 01:19:12 ID:x5thmgpG
しかしそれならゾンビを動かしてるエネルギーってなんなんだ?
体内に蓄えられていた何かか?
人形が動くにはネジを巻くなり動力源をつけなければいけないが・・・
ウイルスごときが人体を動かすほどのエネルギーを生産できるだろうか?
ATP系やら何やらを活性化させるせよ、元となるエネルギーはどこからくるのだろう?
うーん・・・まあどうでもいいか。

そういや食欲じゃなくて性欲が活性化したゾンビが出てくる映画かなんかがあったな・・・
247創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 01:19:25 ID:C7ypXiaP
生前記憶していた行動を反復して繰り返す
芝刈りで芝を刈るのが日課の奴は芝刈りゾンビになるし
ゴルフが好きな奴はゴルフゾンビになる

この辺はランド・オブ・ザ・デットで出てたな
248創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 07:47:27 ID:nlYMYIrq
>>239
期待
249創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 12:02:06 ID:dakwv8kX
>>236
おそらくは、現行法でも可能でしょう。
感染症対策で強制隔離に従わない→警察官職務執行法で射殺→警察力で対応できないから治安出動。

感染者を逃がす事は著しく公共の利益を損ねる事となりますので
政治的には兎も角、法的には問題ないでしょう。
250創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 20:43:18 ID:l/aVOs1U
>>246
それは言わないお約束
>>249
見事に憲法違反です
ゾンビになったら指示に従わないのではなく、従えない
要するに心神喪失状態なんだから、
指示に従わないくらいで射殺したりしたら人権蹂躙と見なされることになる
最低でも正当防衛を主張できるだけの要素が無いとダメ
第一、前例が無いのだから強制隔離できる法律も無ければ
自衛隊を治安出動できる法律も無い
それをやって、後で裁判所で審査されたらほぼ確実にアウト
251創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 20:50:47 ID:x5thmgpG
心停止にしろ脳死にしろ、
いちど死んだらもう人間じゃない(人権の享有は出生に始まり死亡に終わる)んだから
何でもしほうだいなんだけどな
発病系のゾンビは扱いに困るねえ
252創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 23:44:58 ID:l/aVOs1U
実はゾンビの側も何でもし放題なんだけどな、
人権が無い、要するに人間とはみなされないから刑法とかも適用されないし
多分戦うとしたら害獣駆除みたいな扱いになるけど、死体損壊の罪もあるからなあ

でもこういう話してると、日本で実際に未知の流感が発生したら大変な脅威になることが分かるな
なんせ事前知識が無いから治し方や病人の隔離なんかの対処もできない。
警察も自衛隊も何をしていいか分からないし、
そもそも最高指揮官である政府自体がどうすればいいか分からないだろう

現実でも鳥インフルエンザが存在していて、これはまだ予測されてるだけマシだが
多少のパニックは避けられんかもなあ、病院はパンクするといわれてるし、
「うがいと手洗いで頑張ります。」なんていう婦警もいたらしい。
感染者数383人内死亡者は241人、 国内での感染者数推計3200万人(4人に1人が感染)
パンデミック起こる前に自分で何か備えておいた方がいいな・・・・・・
253創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 23:51:31 ID:I6qAj6zT
パンでミック(なんて変換だ)の対策計画は、たしかあったはずよ
公園への仮埋葬とかいろんな特別措置に関する法令解釈やら、
体勢や行動指針についても

地下鉄サリンの時なんかもそうだったけど、決まることさえ決まれば
意外に警察や軍隊ってのは動き早いよね
254創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 23:55:38 ID:rH083lb0
地下鉄サリンの時は、先に公安とかが動いてたからあれだけ早かったんじゃね?
宗教やら右翼関連の対処だけはモリモリ動くのに、
それ以外ではさっぱり軍の初動が遅いという印象を受ける
255創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 00:05:59 ID:Zd4W9Ovm
情報を集めて、行動に至るまでの道筋を作ってくれる組織が必要なのは確かだね
この分野で言うとCDCみたいな組織か

目に見える形で危機が進行してるなら、現地部隊の対処そのものは早いね
阪神みたいな大規模災害時は演習名目ですぐ偵察出してるし、
出動命令前に近隣部隊で動員もかけてる
256創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 00:11:35 ID:FQrji3ZD
>>253
ああ、今日もニュースサイトに感染者が一人でも出たら、
学校を閉鎖にする方針なんかを対策機関が纏めていたらしいけど
現実に起こった時そいつらがどこまで上手くやれるか分からん
例えば自分の住んでる地域で最初の感染爆発があった時のことを考えると、
個人単位でも備えておいた方がいいだろう
257創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 23:29:40 ID:Xp4EBzi/
>>250
いや合法。
治安出動http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%BB%E5%AE%89%E5%87%BA%E5%8B%95
正当防衛http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A3%E5%BD%93%E9%98%B2%E8%A1%9B
緊急避難http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%8A%E6%80%A5%E9%81%BF%E9%9B%A3
感染症を保持してる可能性が存在する人を殺害する事も、遺体を損壊する事も可能。
258創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 23:57:09 ID:Xp4EBzi/
因みに、厚生労働省が新感染症と指定すれば、強制隔離もOK
今年改正された感染症法でも規定されてる。
259創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 00:04:55 ID:5OzRoVAl
組織的に統制された部隊行動としての武力行使を正当防衛や緊急避難で解釈するのは無理があるだろう。
治安出動も感染病患者の人権を公共福祉の観点から制限する法的根拠には成りえない。
ゾンビはすでに死体と解釈すれば自衛隊の武力行使も可能かもしれないが。
260創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 01:37:45 ID:H7SinkOV
つーか最終的に成否決めんのは裁判所だからな
国民の意見に沿わないと判断された時点で無理だろ
裁判所も国民の意思は無視できんし、それ考えると>>257は荒唐無稽
大抵の人は病気になったくらいで処刑なんて許すわけないからな
しかも>>258だって厚労省が指定しない限り意味無し
当たり前だけど科学的証明もまともにできない物に指定なんてそう簡単にできるわけがない
261創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 09:30:06 ID:M498xSJc
>>259
元々、治安出動での武器使用は正当防衛か緊急避難しか認められてない。
しかし、無症状病原体保有者と非保有者の区別がつかない状況では、認めざるおえんでしょう。
警察や自衛隊の指示に従わず、封鎖を突破しようとすれば
正当防衛(若しくは緊急避難)は適応可能と。
>>260
たしか、そこは大臣が指定すればOK
262創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 19:48:20 ID:M3eO45Rl
個人的には、現行法の解釈をgdgdやられるよりは、
ゾンビ対策特別措置法とかぶちあげてくれた方がワクワクする。
現行法内で如何んとするか、と葛藤するのも、そのうえで超法規的行動に踏み切るのも、
面白いとは思うけどね。
263創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 21:06:55 ID:H7SinkOV
>>261
一体誰が認めざるをえない状況になるんだよ?
危険な伝染病が発生しましたからこの町を封鎖します、
といきなり言って国民や企業や各政治団体を納得させられるか?
感染者の隔離が許されてる病気ってのは、その病気に関して長い時間調査して、
できるだけ多くの人間に危険性を伝えて、多数派の理解が得られていると言う前提付きなんだぞ。
それに大体大臣の指定って言ったって、政策決定の全権を大臣が握ってるわけねえだろうが。

封鎖の突破=射殺を止むを得ない事態って解釈も謎だな、なぜ追跡して止めなかったんですか?
車のタイヤを撃てばよかったんじゃないですか?住人に理解が得られて無いのが悪いんじゃないですか?
等など腐るほどの疑問が湧いてくるし、警察も自衛隊も自分の行為を正しいと決定する権利は無い
何故なら彼らは悪魔で分立されている権力の一つが保有する機関でしかないから。
当たり前だが、裁判官と検察官と弁護士の数だけ法律の解釈の仕方はある
結局のところ、大多数の賛同が得られない限りは正当性を認められることはない、少なくともこの国では
264創る名無しに見る名無し:2008/11/28(金) 08:36:46 ID:cd8rrnlT
首相が「非常時に付き、自衛隊最高司令官として憲法を停止し戒厳令を布きます」と言うなら
自衛隊の賛同を得るだけでいいな。
265創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 01:29:09 ID:h0hU5fWf
>>263
はあ?納得?なに言ってんの?
法的に可能と言ってるのだが。
指定に長い調査や納得・理解などは必要ない。
感染力と致死性などの危険性の認識と大臣の決断だけ

「正当防衛・緊急避難」
より多数を生かす為に、人権は制限される。
自衛隊の指示に従わず、封鎖を突破しようとする実力行使は
重大な感染症を意図的に広げようとする行為だね。

自衛隊や警察は決定しない。
事後、裁判で認めざる負えないと言ってるの。
想定はドーン・オブ・ザ・デッドやバイオレベルの感染力や致死性でしょう?

創作と違って、動く車のタイヤだけを撃つなんてほぼ不可能だよ。
266創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 12:59:25 ID:M8rOQYh3
>>264
それだと政府の力が司法を上回ることになるだろ
>>266
>法的に可能と言ってるのだが。
ある視点からは可能であっても、違う視点からは不可能とみなされる
これは現実の法廷闘争でも度々あることで、
結局この場合、より多数派の賛同が得られる主張が一応の正解になる
>>249でボケたこと言ってるけど法的に可能かどうかは、
政治的に可能かどうかと言うのとほとんど同じ話だ、ユーザーの数だけ法の解釈や使い方があるんだからな

>感染力と致死性などの危険性の認識と大臣の決断だけ
感染力と致死性などの危険性の認識ができて、
尚且つ大臣の決断を促すためにどれだけの証拠とそれを集めるための時間が必要かな?
>事後、裁判で認めざる負えないと言ってるの。
アホか?町一つ封鎖するだけでもどれだけの訴訟が発生すると思ってるんだ?
それに加えて射殺なんかしたら政府の側が過失を認めざるを得ないし、それでも事態の収拾は困難を極めるだろう
町一つでウィルス汚染が起こったくらいでは殆どの日本国民は重大な危機とは認識しないだろうしな

>創作と違って、動く車のタイヤだけを撃つなんてほぼ不可能だよ。
距離、標的のスピード、使用される銃器の種類、狙撃手の人数によるな
追跡車両で標的車のすぐ隣に着けてタイヤを撃つ方法もあるし
実際に銃を撃ったら分かるけど、近距離でなら動く標的を撃つのはそんなに難しくない
ところで君は本物を撃ったことがあるのかな?まさか創作物で読んだだけの知識で物を言ってるんじゃないだろうな?
267創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 13:01:57 ID:cx1sEY8R
印パ情勢みたいな流れだな
双方に冷静な対応を望む
268創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 13:05:37 ID:M8rOQYh3
アンカミス>266じゃなくて>265
しかしゾンビ物の話が法律と政治の話に繋がるとはな
ゾンビ版宣戦布告でも誰か書いて欲しいな
269創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 16:03:05 ID:W1u5KLdt
誰が責任を追うのか議論が始まり手遅れになる。
いくら法律を捏ね回しても政治のやり方は変わらない。
270創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 17:22:26 ID:+OOg/2Ub
日本が舞台になる以上こういう議論は避けられんわな
271創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 22:39:40 ID:M8rOQYh3
でも実際日本だけじゃなくて、独裁国家でも国民感情を無視した事をするのは難しいんだよな
北朝鮮やジンバブエみたいなのはどっちかっていうと特殊な方で、
大抵の独裁国家には当たり前にネットや衛星放送があるし、国外への出入りも難しくないから、
国民の価値観の多様化で政府批判なんかも結構あったりするし、政府の側も融和路線を取る事が珍しくない。
でも個人的には独裁国家は別にそんなに悪いわけじゃなくて、良くないのは政情不安定な国だと思う。
272創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 03:50:43 ID:WXNY8Xdq
開発独裁は国の発展に必要な体制と思ってる、たとえばフセイン政権とかね

あのジンバブエのムガベでさえも、途中まではうまくやれてたらしいじゃないか
やっぱり、ある程度発展した後の民政移行がむずかしいんだろうね
273創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 06:44:49 ID:zODw6S1h
独裁者の権力への固執が原因なのか
民衆の「支配されることへの慣れ」が原因なのか…

上手いこと民主主義に移行した国ってどこがあったっけ?
274創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 06:49:49 ID:WXNY8Xdq
うーん
民主主義がアレなことになって残念な国だけれど、
制度上成功した国であれば韓国とか
自国を目の前の敵国に売り渡す指導者を曲がりなりにも公正な選挙で選び、
クーデターが起こらなかったぐらい民主的な体制になったものね
275創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 08:52:39 ID:Jqg05UAL
>>266
どっちがボケてんだか
法と世論は関係ないね。
裁判では提出された事実のみで争われる(裁判員で違ってくるかもしれんけど)。
どちらにしても、当事者意外は仕方ないと納得するだろうけどね。
感染拡大が防がれれば他人事だし、"広がった場合"の想定も出るのだから。
想定はバイオとして、数時間で症状がでるから
感染力と致死性は直ぐ分かるね。
これで、潜伏期間が長いと封鎖自体が無意味だけど。
ウイルスの同定など、"明確"な証拠は必要ない。
訴訟?
「緊急避難・正当防衛」
意味わかる?裁判で決まると言ってるんだけど。
狙撃手w
ああ、マークスマン事か?
自衛隊は小型の移動目標を撃つ訓練なんてしてるの?
全力で逃げる車に追い付き、併走してタイヤを撃つ訓練とか。
今度、80kmぐらいで走る車のタイヤを、目の前から目で追ってみなさい。
それに火線を避けようと、脇道や遮蔽物の影になるべく早く入ろうとする。
射撃機会は、すれ違い様のほんの僅かな時間だね。
そもそも、車両を止める障害は真っ先に展開するだろうから
車両に乗って逃げようとする行為には、迎え撃つだけで追う側にはならないだろう。

ハワイで一回撃った事はあるよ。
でもね、日本人が行けるような射場は基本的に減装薬だから
自衛官でもないかぎり違いは無いんだよ。
276創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 10:41:51 ID:ZGfVN00W
>法と世論は関係ないね。 裁判では提出された事実のみで争われる
法と世論が関係ないなら、裁判員制度の採用には至らなかっただろうな
日本の場合は責任分担の意味合いが強い気がするが、
しかし少なくとも司法が信用を失うことは法治国家にとって致命的な問題なので、
世論に対する配慮は確実に存在する。

>感染拡大が防がれれば他人事だし、"広がった場合"の想定も出るのだから。
逆だろ、感染拡大によってようやく事態の深刻さを理解して政府に早急な解決を求め、
広がらなければ事態の深刻さを理解していない人々が政府を糾弾する、日本では良くあることだし、
そもそも当事者以外は仕方ないと認めるという想定が謎だな、この国ではみんな違う考えを持って生きることが許されているのに。

>想定はバイオとして、数時間で症状がでるから
良くお前みたいなキモ軍ヲタがやることだが、想定をなぜお前が定めるのかも謎だし、(それも明らかに自分に都合の良い)
それにバイオだと個人差で発症までに数日くらいかかることもある。
第一普通軍人的に考えるならできるだけ最悪の事態を想定しないか?

>意味わかる?裁判で決まると言ってるんだけど。
実際に莫大な数の裁判が行われた場合、それら全てに緊急避難・正当防衛が認められると?
一つでも認められなかったらその時点で信用は確実に揺らぐし、その他の裁判にも影響を及ぼす
緊急避難・正当防衛が認められる可能性があることも確かだが、しかし認められない可能性もそれ以上に存在する。
何しろ前例の無いことだからな

>狙撃手w
いいかキモ軍ヲタ君、拳銃でも散弾銃でもライフルでも何かを狙って銃撃すればそれは狙撃という行為になるんだぞ。
狙撃手=狙撃専用ライフルを持った兵士、というのはよくお前みたいなキモ軍ヲタが脳内設定することだけどな
>自衛隊は小型の移動目標を撃つ訓練なんてしてるの?
訓練していないからといって必ずしもできないということの証明にはならない、ところで警察はどこに行ったのかな?
>全力で〜
ああ、だからなんで自分に都合の良い想定だけをするんだろうなこの馬鹿は。

>ハワイで一回撃った事は〜
そうか、俺は中東で撃った、ちなみにそこは軍の対テロ部隊や警官、金持ち、国王が来るようなところで、
弾もちゃんと包装された物だから、減装薬ではないだろうし、そんな弾を使いたがる人間がいない
観光客が全然行かないところだから、俺も最初言ったときは門前払いを食ったし、
その後に入れた時はスタッフどころか客にまで職務質問された
ところでこの質問だけコメントが何故か少ないのは気のせいかな?
日本人が行けるところでもまともな弾を撃たせてくれるところはそれなりにあるはずだが。
277創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 13:00:29 ID:LfLTYt3e
独裁主義というよりは権威主義だったけど、
フランコ独裁を経た、彼の死後のスペインも比較的穏当な民主化移行を薦めることができた。

経済発展による安定した経済的中間層の形成が不可欠だろうな、民主化のためには。
イギリスでブルジョワジーたちが革命を起こし、その後に
産業革命を経て労働者層が力をつけていったように、
経済発展による恩恵を受けた人々が政治的発言権を要求して、民主制は成立していく。
かつてスペインも、貧富の差や社会制度上の格差が大きかった20世紀初頭には、
内戦に突入してしまったし。
フランコ独裁体制下での経済発展が民主化を導いたというのは皮肉なことだが。
278創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 13:59:15 ID:WXNY8Xdq
フランコ将軍はスペインの国難を救ったよね(´・ω・`)
人民政府だったら枢軸に屈して併合されてただろうし
279創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 18:43:42 ID:Jqg05UAL
>>276
裁判員は司法が世論に配慮しないからだろ。
町を一つ犠牲にしなければ封じ込められない感染症に
脅威を感じないとか、都合良すぎだろ。
俺は全て、封じ込めが成功する前提で話して居るんだか。
封じ込めが成功しなければ、裁判も何もない。
潜伏期間が数日では開けば封じ込め自体が物理的に無理。
町一つでも自衛隊のマンパワーが足りるかどうか。
お前と違って、認められる可能性の方が高いと見るね。
屁理屈だな。
軍隊・警察で狙撃手は他とは区別された人員の事だ。
自衛隊よりも、武装も貧弱で射撃数の少ない警察に何を求めるの?
お前みたいなバカは、自分に都合が悪いと
都合が良い想定って言うんだろ。
その自称、「中東で銃を撃ちました」は
俺が特殊作戦群の隊員を自称するぐらい無意味だってわかってる?
恥ずかしくない?
280創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 18:51:41 ID:Jqg05UAL
>>279
修正
潜伏期間が数日では、封じ込め自体が物理的に無理。
281創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 00:48:19 ID:IeCqERKC
いい加減この馬鹿>>279と話すのは飽きてきたな、回を重ねるごとに馬鹿さ加減が増していく。
>裁判員は司法が世論に配慮しないからだろ。
なぜそうだと言える?
>町を一つ犠牲に〜
だから何故?
>俺は全て、封じ込めが成功する前提で話して居るんだか。
それで?そんな前提をお前が作っている事をお前以外の他人が知る術があると?
>封じ込めが成功しなければ、裁判も何もない。
封じ込めが成功しなかった場合に裁判が起きないという仮定がどうして発生するんだ?
>潜伏期間が数日では〜
俺に言っても仕方ない、それはお前が間違えたことだ。
>お前と違って、認められる可能性の方が高いと見るね。
だから?俺はその反対だと思うし、その根拠を提示している。基本的にお互い反対のことを思っていなければ議論は成立しない
最も現在のところお前が酷い馬鹿だと判明した今、これが議論と言えるかどうかも怪しいが
>軍隊・警察で〜
で?そうで無い組織も他国にはある、そういう視点で俺は見ている、見識の狭い君と俺を一緒にして欲しくはないな。
>自衛隊よりも〜
それでも出来ないという証明にはならないし、実戦経験では警察の方が上だとも言える。
>お前みたいな〜
だからお前と一緒にするな、お前は勝手な設定をズラズラと並べ立てるが、
俺はそうはしないし、またお前の話も一部は認めている、
第一そういう細かい設定をすると色々突かれる可能性が高くなるからできるだけ曖昧な表現に留める方が良い
日本語は幸いにも、曖昧な表現に優れた言語でもあるしな。
>その自称〜
その自称ハワイで銃を撃ちましたは、俺が伝説の傭兵を自称するくらい無意味だって分かるか?
当たり前だ、ここで確固としたソースを示すことは出来ないからな。
ただ、俺の方がお前よりも信憑性の高い話ができる。
分かるよ、お前は銃なんか撃ったことは無いんだし、
その経験の分野を突かれると何も言えないんだろ?「軍ヲタ?銃を撃ったことも無いのにか?w」
なんて俺に言われたらお前の主張の正当性が幾らあったって、コケにされるのが落ちだからな。
経験不足を恥ずかしく思うなら、実践しなさい。お前には無理だと思うけどなw(←wのマークを使うのは本当に気持ちが悪いんだよな)
>修正〜
修正しなくてよろしい、お前の話には最早興味が湧かない。

反論したかったら反論しろ、それはお前の自由だ。
ただお前か俺のどっちが正しいかはもう誰も興味を示していないだろう
しかしお前が俺を酷く白けさせたために、俺が中東で武装勢力と関わった時や、
兵士や傭兵に捕まった時の話をお前以外の人々にお詫びにこのスレの方針に則って、
できるだけ小説的に話そうかと思ったが、やめた。
お前が変わりにやってみたらどうかな?その自称ハワイに行った時の話しでも皆さんに聞かせたら。
そうだな真珠湾攻撃の時の話なんかいいんじゃないか、お前の妄想文で書き連ねて。
282創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 01:01:33 ID:iK28PE3i
中東だかハワイだかの話はどうでもいいので、どうか両名とも謹んでくれ、頼む。
どんな興味ある話でもそういう態度で話されると不愉快にしか思えん
283創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 20:34:49 ID:bbTbQ5gP
>>281 お前に合わせるから馬鹿なコメントになるんだよ。
最高裁判所http://www.saibanin.courts.go.jp/qa/c1_2.html
>>国民の理解しやすい納得のいくものになると思われます。
>>だから何故?
じゃあ何故?
封鎖と書いてるのに分からない?
日本という国家の滅亡(行政システムの停止)だろ。
間違えたって言われてもね。
前提じゃないと、そもそも封鎖が成功しないんだけど。
根拠?お前の願望だろ。
日本だよ。
実戦経験?……実戦経験
284創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 20:44:09 ID:bbTbQ5gP
途中で投稿しちゃった。
続き
想定が無いと議論なんぞできんだろ。
分かるよ。
だから恥ずかしいんだよ。
いやいや、俺の方がお前よりも信憑性の高い話ができるよ。

白けたのは知らんがな、俺もお前の相手は疲れるよ。
そういう話は書けば良いんじゃない?
ここは創作発表板なんだし。
285創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 20:57:56 ID:wNm/X2tL
両名とも自分の非を認めないで互いに責任転嫁をしあう所がそっくりだね。
286創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 21:01:29 ID:reus5X6r
文章が長過ぎて読む気になれない
誰か要約してくんない?
287創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 21:13:38 ID:dZQoz1ek
>>286
ゾンビ有事下における自衛隊・警察関係者の妨害をする有識者(笑)のロールプレイ中なんだから邪魔しちゃダメだよ
288アヒル ◆jEcXgVN.0s :2008/12/01(月) 21:27:49 ID:bB5BRVKP
空気嫁ない子が流れぶったぎって投下しますorz

先週だか、雑談スレで、
「恋愛軍事小説書くお!」と名乗りをあげた者ですが、正直すまんかった。
気が付いたら別物に…。

http://34bangai.chips.jp/novel/ns-04-1.html

なるだけ本来のテーマに流れが出来る様にがんがる。
今日は導入部分投下します!

こちらは
お詫び自衛権ラブコメ↓
http://34bangai.chips.jp/novel/ss-11.html

289創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 21:52:13 ID:bB5BRVKP
×自衛権
〇自衛隊

相変わらずひどい誤字だ…。
290創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 14:18:06 ID:7gf0a+al
ここにも中東サバゲ君が涌いたのかwww
御愁傷様
291創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 19:12:39 ID:SfLEfVRl
まあゾンビ論議よりゾンビの話のが読みたいしな
292創る名無しに見る名無し:2008/12/03(水) 03:49:48 ID:1oV3uQqs
このスレって何人くらいSS職人さんいるんだ?
293創る名無しに見る名無し:2008/12/03(水) 07:46:40 ID:jnRResm4
とりあえず一人以上
294創る名無しに見る名無し:2008/12/03(水) 09:52:00 ID:QTSimWD0
>>288
人工衛生の部品とか作るノリで町工場のおっさんがロボ作ってる図が頭に浮かぶ。
ダジャレにあやかって記念日決定とかいかにもありそうだから困る。
大阪人が東京人をナチュラルに敵視してる様子には妙に納得させられるものが。
なんかこう、環状線に装甲列車が走ってたりするような国なんだろう、たぶん。
大阪民国ロゴ入りTシャツとかをヒロインが私服として素で着てきたりしたとき
主人公が上手くツッコめれば、ラブ1%コメ99%な会話も夢ではないと思われ。
295 ◆jEcXgVN.0s :2008/12/05(金) 15:10:00 ID:/6wHuH66
>>294
お返事遅くなりましたが、感想どうもです。
環状線に装甲列車というのを見ていて、
パトリオットのパッケージ一式で編成された防空列車とか連想して萌えたw

でもあんまり需要なさそうなんで、投下は躊躇われるorz
296創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 18:46:20 ID:jiXjXJeH
>環状線に装甲列車
それなんてカルッセル?
297創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 01:39:42 ID:ciwtnWmW
パンプキンシザーズは未読だな。
今度読んでみよう。
298創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 08:38:16 ID:Zrlc0ivX
カルーセル麻紀ですよね 分かります
299創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 02:33:05 ID:J9Sr5b40
大阪つながりですね、わかります
300 ◆jEcXgVN.0s :2008/12/08(月) 18:45:25 ID:cDwsqtiJ
保守投下。
民国の続き↓
http://34bangai.chips.jp/novel/ns-04-2.html

需要無ければ打ち切りまっす
301創る名無しに見る名無し:2008/12/08(月) 21:42:58 ID:tCdwlNqh
おっつ乙
少なくとも一人、完結まで追いたいやつがいるぜ
302創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 17:30:52 ID:o/AtNwlX
>>300
乙!
続き待っているので継続の方向でお願いします
303創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 18:29:31 ID:t/CBNv3l
外部の糞サイト宣伝うぜえ
貼り付け投下しないなら、1回だけURL貼ってマンセーにブクマさせて出てくるなよ
304創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 18:30:48 ID:t/CBNv3l
http://34bangai.chips.jp/
マンセーはこれブクマしてこのスレ使うな
305 ◆jEcXgVN.0s :2008/12/09(火) 19:17:57 ID:Db4AJ9lE
ややっ。
ご不快にさせてたなら申し訳ないっす。
どうにも著作放棄に踏み切れなくてね…。
ご支援くださった方ありがとですにゃ。
がんばりまっす。

以後の投下方法どうしたものかのうorz
306創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 20:16:14 ID:PWG8yEOT
だったらサイトだけで公開してれば?
そんなこと言ってたら投下なんてできないだろ
307 ◆jEcXgVN.0s :2008/12/09(火) 20:55:02 ID:A4lhnktO
うぬ、わかりました。
以後は直貼りで参加させてもらいます。考えるが甘すぎだったすね。

自サイトに引きこもってもだれも見に来ると思えないんでw…orz

ご迷惑かけてすいません
308創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 22:23:41 ID:WDB6Ao3c
出会い系とかの如何わしいサイトの宣伝じゃないんだから良いんじゃね?
309創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 23:35:12 ID:vJDyuvsv
別にかまわんとは思うがね
まぁ、確かに難しいところではあるよな
310創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 02:15:29 ID:h05t427N
まあ記憶某のように
平然と構わないのなら話は別だろうがな
311創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 04:18:48 ID:vS0E1o4e
誰も見に来ないような作品の著作なんて、誰も利用しようとすら思いません
徒労ってやつです

38歳彼女いない歴38年の大魔法使いが、包茎で悩むようなものです
徒労ってやつです
312創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 17:41:41 ID:GxWDP5ul
コンプレックスなんてそんなもんさ
313創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 00:45:24 ID:Vir0IHC2
>>311
病院行ってみたら? それ専門みたいなのあるでしょ。
314創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 06:25:34 ID:A8CUbrza
>>313
肥満って言われた。
315創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 09:23:30 ID:MP+6PpHL
息子が肥満?
316創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 21:48:07 ID:jbvMMUGF
亜成(アナル君)がいるんだから、肥満(コエミツ君)とかリアルで絶対いる
317創る名無しに見る名無し:2008/12/14(日) 04:49:57 ID:0tPuDXdd
図書館のおっさんまだー?
318創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 14:41:11 ID:tyV5IuHI
>>317
図書館戦争の話書いてる人ならしばらく前から停止状態だよ
もう一つのスレも本人のサイトもかなりの期間未更新

319創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 21:54:31 ID:Wsc/1UVU
図書館の人はサイト持ちだったのか
見てみたい……が、難しいだろうなぁ
320創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 22:00:27 ID:eb+xEO56
ほほう、他のスレでも書いてるんだ
321創る名無しに見る名無し:2008/12/22(月) 20:06:23 ID:WQzkPCV9
先月入院して退院した楽しみでスレに来たのだが
新作SSが無くて残念
322創る名無しに見る名無し:2008/12/24(水) 22:17:52 ID:j/4S6G0z
職人が誰もいなくなったね
323>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/12/25(木) 23:39:56 ID:jNYDlGjF
正化31年9月1日 1520時 茨城県立図書館正面玄関

「これより執行を開始する!」

 お決まりの書面読み上げが行われ、虐殺の火蓋が切って落とされた。
 戦闘を進むのは64式自動小銃を装備した良化隊員たち。
 通常の執行で見られるはずの防弾盾を装備した人員はいない。
 彼らは、ここを守る図書隊が非武装である事を事前に知らされている。
 大昔のフランス大陸軍のように綺麗な横隊を作り、小銃を構えて前進を続ける。

「抵抗を止め、直ちに進路を開けよ!これはメディア良化隊からの命令である!」

 拡声器からは良化隊隊長の叫び声が響き渡る。
 この時点で、誰もがいつもの展開を予想していた。
 つまり、盾を構えるだけで何もしない防衛部員を掻き分けた良化隊員が館内へ突入。
 政治的な配慮で残されている数冊の規制対象図書を押収し、執行終了。
 館内に帰還した防衛部員たちが、業務部員たちに罵られつつ清掃作業を開始する。
 繰り返されてきたショーである。
 だが、この日は違った。
 非武装無抵抗非服従とは、相手が殺戮を許可されていない場合にのみ成り立つという事を彼らは失念していたのである。

「進路妨害を確認!抵抗を実力で排除せよ!」

 突然拡声器から号令が発せられ、良化隊員たちは小銃の安全装置を解除した。
 一部始終を見ていた俺は、窓から身を隠した。
 銃声、悲鳴。
 この図書隊は、これから酷い目にあうだろうな。
 他人事のように思いつつ、弾薬庫までの道を思い出す。
 あそこには平和なんちゃらの会とやらがいたが、今もいるんだろうな。
 出し抜く方法を考えつつも、俺は足早に駆け出していた。

「図書正!この弾が抜けますよこの盾!」

 最初の斉射を生き延びた図書士が叫ぶ。
 当然である。
 厳密な規格に基づいて作られたものを除いて、軍用突撃銃の銃弾を何発も耐えることのできる盾はない。
 玄関前は、控えめに言って地獄だった。
 あちこちで即死した防衛部員たちが倒れ、負傷者はうめき声を上げている。
 何てことだ、あのクソ館長め。
 この任務が終わったら殺してやる。
 そこまで考えたところで、彼の思考は途切れた。
 良化隊の第二射により、先ほど悲鳴を上げていた図書士と共に死亡したのだ。
 残念な事に、長らくまともな実戦を経験していなかった彼は戦闘中における正しい行動を忘れていたのだ。

「確保しました」

 殉職したばかりの図書正の隣で、一人のメディア良化隊員が報告する。
 正面玄関前に配置されていた図書隊員は14名。
 その全員が殉職だった。
 全身の複数個所に7.62mm弾を受けるという現象は、人体の耐えられる限界を超えている。

<<館内へ突入、連中が動き出す前に弾薬庫を押さえろ>>
「了解」

 反撃を許さずに敵の対抗手段を奪う。
 戦闘の基本ではあるが、さすがに敵が哀れになってくる。
 良化隊指揮官は図書館の正面玄関を見た。
 開け放たれたそこからは、逃げ惑う図書隊員と発砲を繰り返す良化隊員の生命を賭けた鬼ごっこが見える。
 報道という武器を持つ彼らにとって、執行の場でどのような事が行われようと、それが社会的に批判される事はない。
324>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/12/25(木) 23:41:30 ID:jNYDlGjF
正化31年9月1日 1522時 水戸図書準基地 弾薬庫前

 何とか弾薬庫への突破に成功した俺は、とても興味深い光景を目にしていた。
 困り果てた表情の図書隊員たち。
 手に箒や鉄パイプ、破壊して凶器に仕立て上げたパイプ椅子を持った集団。
 それらが対峙している。

「これはーどういうことなのでしょうか?」

 最寄の図書隊員へと尋ねる。

「どうもこうも」

 まだ若いその図書隊員は、肩をすくめて答えた。

「全責任を負うことの出来る役職の人間がいない以上、弾薬庫の解放はできないと業務部の連中が言うんだよ」

 思わず眩暈がする瞬間である。
 と、そこへ館内から撤退してきたらしい一団が合流する。
 誰もが同僚の返り血を浴び、凄惨な外見をしている。

「西山図書正だ。俺が責任を取るから弾薬庫を開けろ」

 彼は図書隊員と業務部員の間に歩み出ると、極めて平坦な声音でそう告げた。

「血に塗れた姿でそれ以上近寄らないで下さいよ。
 それと、図書正程度では駄目です。本図書館の規則では、防衛部員は無条件に業務部員の階級の一つ下に相当すると定めています。
 早く司令か副司令を探してくる事ですな」

 およそ四十歳前後だろうか。
 同じ図書正であるはずのその業務部員は、鼻で笑いつつ告げた。
 愚かな奴だ。
 連鎖的に起こる怒号を聞きつつ、俺は心の底からそう思った。
 敗走し、冷静な判断力を失っている兵士に横柄な態度で接してはいけない。

「あのー」

 耐え切れずに声をかける。
 一同の視線がこちらを向く。
 業務部員たちは面倒そうな、防衛部員たちは殺気立った視線を向けてくる。
 頼むからそんな目で俺を見ないでくれ。

「差し出がましいようですが、今は非常時です。
 鍵を持っているのであれば、速やかに出されたほうがよろしいかと」
「ふん、東京の若造は黙ってろ。
 大体だな、こんな腰抜けどもに銃を渡したところで、何も出来んよ。
 さっきも玄関前で成す術もなくなぎ倒されていたじゃないか」
「言わせておけば!」

 西山図書正の部下らしい一人が声を上げて業務部員へ掴みかかろうとし、鉄パイプで肩を容赦なく叩かれる。
 居合わせた全ての防衛部員たちが突撃の動作に入る。
325>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/12/25(木) 23:42:40 ID:jNYDlGjF
「おっと、目にゴミが」

 空気の読めることに定評がある俺は、目に入ったゴミを取るために下を向いた。
 何かを強い力で殴りつけるような音が聞こえる。
 恐らくは非武装で戦闘に晒された事によるストレスから聞こえる幻聴だろう。
 その場に居合わせた全ての防衛部員が、一斉に駆け出す。
 何かあったのだろうか?目を閉じているのでよくわからないな。
 視線を落とすと、靴紐がほどけているのが見える。

「靴紐がほどけてるな・・・このままでは危険だ!」

 どうでもいい事を呟きつつ靴紐を結びなおす。
 周囲からは、12名の業務部員に38名の防衛部員が襲い掛かったような騒音にも似た幻聴が聞こえる。

「働きすぎなのかな、俺」

 視線を上げると、そこではルール無用の殺し合いが実施されていた。

「来るな!来るな!」

 箒を振り回しつつ叫んだ若い業務部員が押し倒され、直ぐに数名の防衛部員がそこへ飛び掛る。
 直ぐ隣では、先ほど防衛部員を鉄パイプで殴打した業務部員が、奪い取られたそれによって頭部を殴りつけられている。

「助けてぇ!」

 細いメガネの奥から冷たい視線を注いでいた女性業務部員は、髪を掴まれつつ別の隊員に顔面を殴打されている。
 
「鍵があったぞ!」

 気絶したのか全く身動きをしない業務部員の懐を探っていた防衛部員が叫ぶ。

「鍵を開けろ、ありったけの弾薬を持ち出すんだ」

 さりげなく近くに倒れていた業務部員に蹴りを入れつつ西山図書正が命じる。
 
「ああ、武蔵野の人」

 さりげなく視線で脅迫しないでほしい。

「すいません、目にゴミが入っていて、靴紐を結びなおしていて、幻聴に耐えていたら今の情況が理解できません。
 お手数ですが現状を簡単に教えてもらえますか?」
「敵襲だ。
 急ぎ武装しろ。
 君には小隊を任せる」
「把握しました。蔵書の防備が最優先でよろしいですね?」

 俺がそう尋ねると、西山図書正は心の底からの笑顔を浮かべた。

「当然だ、それこそが我々の義務だからな」
326>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/12/25(木) 23:49:13 ID:jNYDlGjF
凄く短いですが本日はここまで
327創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 01:52:35 ID:zfEMC+yW
投下乙!
まってました!!
328創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 11:14:57 ID:G6YuX5pM
キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!!!
図書館戦争 ◆XRUSzWJDKMが降臨
続編投下がんばってくさだいw
329創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 15:20:37 ID:79dhue1d
おお!新作きてる!
330創る名無しに見る名無し:2008/12/27(土) 06:02:12 ID:6RSALJpV
投下乙!
331創る名無しに見る名無し:2008/12/27(土) 13:00:23 ID:3tOKkl3O
「おっと、目にゴミが」で吹いたw
主人公は玄田の後継者になれるな
332創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 18:10:57 ID:kUXdCq0G
>>326
もっとまとめて落とせ馬鹿
333>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/12/28(日) 22:49:51 ID:EOy5OZrF
正化31年9月1日 1525時 茨城県立図書館1F 歴史書エリア

「よーし!よーし!離れろ!!」

 書架を揺さぶっていた一人の良化隊員が叫び、同じく揺さぶっていた隊員たちが離れていく。
 耐震補強されていないその書架は、徐々に速度を増しつつ転倒。
 隣の書架へと勢い良く激突した。
 激突された方の書架は衝撃を吸収しきれず、さらに隣の書架を巻き込んで転倒。
 その隣も、さらにその隣も同様である。

「すげーな」
「これで火をつけられれば凄い綺麗なんだろうな」

 轟音を立てて行われる巨大なドミノ倒しを眺めていた良化隊員たちは、口々にそのような感想を言い合う。
 既に館内各所は制圧されており、シェルター室に逃げ込めなかった業務部員たちは全員縛り上げてある。
 つまり、彼らを制止できる人間は館内のどこにもいなかったのだ。

「撃て!」

 突然号令が聞こえ、銃弾が殺到する。
 転倒した書架を眺めていた良化隊員たちは、真横からの銃撃でなぎ倒されていく。

「止めろ!誤射だ!」

 この分隊を率いていたメディア良化隊の幹部がそう叫んだとしても無理はない。
 何しろ、この図書館を守る図書隊員は非武装の状態にあるはずだからだ。

「撃つな!止めろ!」

 再び彼が叫んだとき、確率論の奇跡が起こった。
 彼の制止など無視して放たれ続けていた5.56mmNATO弾が、開かれた口内に着弾したのだ。
 口内および脊髄を吹き飛ばされた彼が絶命の瞬間に見たのは、武装した図書隊員たちの姿だった。

「歴史書エリア確保、第一小隊は第七廊下を通って風俗文化エリアへ移動する」
<<了解、後続の第二小隊にそこを封鎖させる>>

 全員の無力化を確認した俺は、無線機に向かって報告し、部下たちを見た。
 誰もが破壊されつくした歴史書フロアを見て怒り、涙している。
 当然であろう。
 図書館員で本が嫌いな人間は絶無と言ってよい。
 誤解を恐れずに直接的な表現をすると、図書館員とは本好きである。
 その彼らが、無残に破壊された閲覧室を見れば怒らないはずがない。

「前進する。先頭は俺とそこの吉田図書士、後方警戒を怠るな。
 トイレ、倉庫、給湯室。一室ずつ確認していくぞ」

 指示を出しつつ、現状に満足した。
 いいぞ、もっと怒れ。
 適切に抑制された怒りは、一人の人間を勇敢な戦闘要員へと変えるからな。
334>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/12/28(日) 22:50:50 ID:EOy5OZrF
「おい!俺たちを先に助けろ!」

 隣のフロアへ向かおうとしたとき、虚勢を張っている事が丸分かりの声音で命令が飛んできた。
 視線を向けると、縛り上げられた業務部員が数名、こちらに向けて好意的ではない視線を向けている。

「二人、廊下を監視しろ」
「はっ」

 部下に出入り口を見張らせ、数名を連れてそちらへ歩いていく。

「第二小隊到着しました」

 部下からの報告で増援の到着を知る。

「な、なんだその目は」
「怯える必要はありませんよ。私たちは同僚じゃないですか」

 友好的な口調と好意的な笑みを浮かべつつ歩み寄る。
 だが、縛り上げられた業務部員たちには逆効果だったようだ。

「ケッ、見下しやがって。
 だいたいお前らがだらしないからこんなになったんじゃないか」

 それ以上の悪態を、彼は続ける事が出来なかった。
 素早く駆け出した一人の女性防衛員が、89式小銃のストックでその顔面を殴打したのだ。

「黙れクソジジイ」

 言われてみると、口から血と唾液と砕けた歯を吐き出している彼は、およそ40歳前後の壮年男性だった。
 ちなみに、自衛隊であれば普通科に相当する防衛部実戦部隊では、大体20代から30代で人員が構成されている。
 そこからすれば、確かに40歳代はジジイなんだろうな。

「ぶったな!」
「何発でもぶん殴ってやるよ!」

 再び振り上げられたストックを掴む。

「まあまあ落ち着いて。
 彼も良化隊員に殴られて興奮しているようですし」

 俺の言葉に二人は目を丸くする。

「いや、正しくは倒れて顔面をぶつけた、だな。
 そうですよね?」
「何を今更!」

 若い業務部員は怒りを隠しもせずに怒鳴った。

「お前ら訴えてやる!懲戒免職にしてやるからな!」
「所で、政治家の知り合いはいますか?市議会でも県議会でもいいですが」
「そんなものはいないが」

 突然の俺の質問に、それでも業務部員は答える。
 素直な事はいいことだな。
335>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/12/28(日) 22:52:01 ID:EOy5OZrF
「じゃあ図書隊やその他公的機関上層部には?
 大企業の重役でも良いですが」
「そんなものねぇよ」

 ふむ、不思議な男だ。
 それでは、何を持ってここまで大きな態度を取れるんだ?

「それでは、確実に来るであろう懲戒免職処分の後に、どうやって生活していくつもりなんですか?」

 俺の言葉に一同が目を丸くする。
 
「お前たちが今までやってきた事は嫌がらせでも苛めでも差別でもない。
 刑法および公務員職務規定に違反する行為だ」
「ふん、お前東京から来た奴だから知らないだろうがな、この水戸では」
「あのなぁ、お前たちの大好きな館長様はそれどころじゃないだろう?
 これだけの破壊を起こしたんだ。確実に懲戒解雇の後に裁判だ。
 見せしめの意味合いもあるだろうから思いつく限りの余罪を追及されるだろうな。
 そしてもちろん、お前らも」

 俺の言葉に一同は絶句したって、こいつらどれだけ驚いているんだ。
 子供じゃないんだから、法に従った処分と処罰があるに決まっているだろうが。

「さて、俺は遊びに来たんじゃなくて監査に来ているわけだが、何か言う事があるんじゃないか?」

 不思議そうな顔でこちらを見てくる。
 まったく、みなまで言わせるなよ。

「お前と仲のいい数人だけでも罪に問われないように出来るとしたら、どうするね?」
「そんな事があんたにできるのか?」
「報告書の内容に注意すればね。さて、どうするよ?」

 こちらを見上げるその目を覗き込む。

「さあ、選択してくれ。
 この戦闘が終わるまでがタイムリミットだぞ。
 今の件も含めて俺に協力するか、みんなと仲良く処分を受けるか。
 よぉーく考えておいてくれ。何がお前にとって、一番メリットがあるかをな」

 交渉はここまででいいだろう。
 彼は確実にこちら側に来る。
 結婚指輪もしているし、その上その歳で懲戒免職じゃあ人生おしまいだからな。
 公務員の懲戒免職とは民間で言うところの懲戒解雇であるが、ある意味前科よりも再就職でペナルティとなる。
336>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/12/28(日) 22:53:21 ID:EOy5OZrF
「小隊長、そろそろ」

 戦場にしてはちょっと時間を取りすぎたな。
 部下に諌められ、一同を振り向く。

「第三と第四小隊が2Fを制圧、敵部隊は負傷者も死者も残して1Fへと撤退中です」

 通信士が報告する。
 ふむ、二個小隊で敵を撃退。
 練度不足を数で補ったか。
 どうやら西山図書正殿は戦術を心得ているようだ。

「第一小隊より指揮所、西山図書正聞こえますか?」
<<感度良好だよ武蔵野の人>>
「第四小隊を二つに分けて階段防御をさせてください。
 それと」
<<わかった、第三小隊は西第二階段から下ろして君の指揮下に加えよう。 
 うまく使ってくれよ>>

 破格の待遇だな。
 うん?無線機の向こうから銃声が聞こえる?

<<敵襲か、糞、二個小隊はいるな>>

 なんでもないように告げるが、状況はかなりまずいな。
 指揮所は臨時の陣地に篭ってはいるが、攻者三倍の法則は、指揮と練度が近い場合にのみ適応される。

「西山図書正、第三小隊は貴方のところへ。
 あとは一階の奪還は私と部下たちでやります。それまで持ちこたえてください」
<<分かった。助力に感謝する。いいかお前たち、射撃なんて数年ぶりだが、やってみせなければなるまいよ>>

 轟音が聞こえ、音声が途切れる。
 通信機が破壊されたか。
 これはよくないな。

「第三小隊は直ちに指揮所の救援!第二小隊は半分を増援に同行させろ!
 第一小隊と残りは俺に続け!」

 一斉に全員が小銃に装填する。

「これより残された図書館施設の奪還に向かう。
 動くものを何でも撃つなよ」

 まったく、業務部の連中は何でさっさと撤退しないんだ。
 おかげで要らぬ面倒ばかりかかる。
337>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/12/28(日) 22:55:09 ID:EOy5OZrF
正化31年9月1日 1526時 茨城県立図書館 無線交信

<<こちら第一小隊長、第四小隊は二階から敵の指揮所を狙え、少なくとも時間稼ぎになる>>
<<しかし、指揮所の攻撃は禁止されているはずです>>
<<あいつらが先にやってきたんだ!遠慮するな!>>
<<畜生、確かに。攻撃を開始します>>

<<上階から銃撃!指揮所への攻撃は協定違反だぞ!>>
<<今回は通告は止めておけ、こっちもやってるからな>>
<<畜生!あいつら車も狙ってやがる!>>
<<部隊を下げろ!車から離れろ!>>
<<煙が出てるぞ!館内の部隊は消火器を集めろ!>>
<<バカ野郎!館内の部隊は先に二階を何とかしろ!>>
<<そりゃこっちの台詞だ!外から狙撃で何とかならないのか!>>
<<駄目だ!あいつら目に付くもの全てに弾幕を張ってきやがる!狙撃班は後退します!>>
<<逃げるな臆病者!戦え!>>

<<こちら第三小隊、指揮所付近へ到着、畜生、あいつらやりたい放題やってやがる>>
<<状況は正確に報告しろ>>
<<敵部隊多数を確認、攻撃中、指揮所との交信は不能>>
<<全部隊に告ぐ、作戦終了まであと10分。なんとしても敵部隊を館内から押し出せ>>
<<第四小隊撃ちまくれ!敵は確実に混乱しているぞ!>>
<<はっははは!了解ですよ武蔵野の人!>>
<<第一小隊は風俗文化エリアへ突入をかける。ドアごと蜂の巣にしてやれ、撃て!>>

<<至急!図書隊が廊下から突入してき>>
<<どうした!報告しろ!>>
<<こちらは関東図書隊、そちらの装備を使用して申し訳ないが、諸君らのご同輩は全滅したぞ、以上>>
<<畜生!>>
338>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/12/28(日) 22:58:54 ID:EOy5OZrF
正化31年9月1日 1535時 茨城県立図書館 1F書籍修復室

「あ、あの、隊長何を?」

 床にしゃがみこんでポケットの中を探っている隊長に、一人の隊員が恐る恐る尋ねる。
 次々と劣勢を伝える通信を聞いた隊長は、黙り込み、何故か部屋の角に修理中の書籍や薬液を集めだした。
 そして、ポケットの中を探っている。

「お前、タバコを吸っていたな」

 隊員の質問には答えず、しかし回答となる内容を彼は口にする。

「先週止めましたが・・・駄目ですよそれは!」

 隊長の意図を察した隊員は、常識を持つ人間として当然の反応を示す。
 建造物への放火は、明らかにメディア良化隊の任務から逸脱しており、かつ重罪である。

「うるせぇんだよ」

 隊員の諌める声に全く耳を貸さず、隊長は手に持った機関拳銃を薬剤のビンへ向けて発砲する。
 室内の誰もが一瞬そちらへ目をやり、そして信じられない光景を目にする。
 弾倉を空になるまで行われた彼の発砲だが、残念ながらそんなに簡単に発火する物質はこの部屋にはなかった。

「お前ら!誰でも良いからライターをよこせ!」
「隊長!落ち着いてください!」
「火だよ!火がいるんだよ!」
「敵襲!」

 怒号と報告が乱れ飛び、そして銃声がそこへ参加した。
 
「あの野郎!遂にきやがったな!」

 千葉から茨城へと左遷され、そして部下たちを殺戮した宿敵を見つけた彼は歓喜した。
 遂に、部下たちの敵が討てる。
 やっと、自分の職業的な意味での未来を奪った相手を殺せる。
 彼の心の中は、復讐を果たせるという純粋な歓喜に満たされた。
 そして、扉から飛び出した途端無数の銃弾に貫かれ、彼は表情を輝かせたまま絶命した。
 かくして、茨城県立図書館を襲った一連の戦闘は、その終幕を下ろした。
 良化隊の隊長が戦死し、さらに館内に突入した人員の多くを失った彼らは、戦闘終了のサイレンを聞いてすぐさま停戦を申し出た。
 結局のところ、甘く見すぎていた彼らは、防衛部の暴走で武器を手に入れた図書隊員たちによって多大な損害を被る事となった。
 殉職11名、重軽傷者35名。
 廃車になった輸送車両4台。
 それが彼らの被った損害だった。
 勿論の事、図書隊も多大な損害を受けている。
 殉職者28名、業務部員の死者3名、重傷者は双方合わせて40名を超えている。
 蔵書や設備の損害も大きく、再建にいくらかかるかは算出に時間がかかりすぎ、結局一ヵ月後まで具体的な金額が出なかった。
339>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/12/28(日) 23:00:54 ID:EOy5OZrF
正化31年9月6日 1000時 水戸図書準基地

「関東図書隊の尊敬すべき友人に対し、敬礼!」

 西山図書正の号令に従い、全員が一糸乱れぬ敬礼を行う。
 それに答礼しつつ、すっかり様子の変わった水戸準基地を見る。
 基地全体を覆っていた負の感情は消え去っている。
 多くの死傷者が出た事は痛ましい出来事だが、彼らには未来が与えられた。
 つまり、職務に誇りを持って普通に与えられた業務が出来るという未来が。
 タクシーに乗り込む直前、西山図書正が松葉杖を器用に操りつつ駆け寄ってくる。

「今回の件では世話になった。
 武蔵野基地からの教導人員派遣の件、よろしくお願いします」
「私の好きなようにさせていただきありがとうございます。 
 早急に手配します」

 タクシーに乗り込む。
 
「運転手さん、駅までお願いします」
「あいよ、水戸駅までね」

 運転手は賃走に切り替えて車を発進させる。
 このまま高速に乗って基地へ帰れればとても格好が付くのだが。
 しかも特急指定席は禁止と言うのはどういう事だ。

「お客さん、お疲れのようですね」

 私服ではあるが、あの状況から俺を民間人だと思うわけがないか。

「ええ、わけあって東京からの出向でしてね。
 研修かと思えば大変なドンパチに巻き込まれてしまい、いやはや、とても大変でしたよ」
「だが、君のおかげで茨城図書館の汚染は食い止められた。礼を言うよ」

 突然かけられた声に、反応が出来ない。

「ああ、ご安心を。
 図書隊の情報関連に携わる者です」
「そうですか」

 投げやりな言葉に、運転手は認識証を投げてよこす。
 そこにはごく普通の業務部員の名前と役職が書かれている。
 おやおや、その下にはもう一枚、ごく普通の防衛部員の役職名が書かれた認識証があるな。
 すげぇな、後方支援部が業務委託している民間企業の社員証も持っていやがる。

「それで、情報関連に携わる方が私に何か?」
「いやあ、感謝の言葉をどうしても直接告げたくてね。
 私たちはまだ部門としては正式には組織されていません。
 そのため、表立って動くことが出来なくて貴方に色々と任せてしまいました」

 よく言うよ。
 それならどうしてこうもスピーディーに館長を含む業務部への強制捜査が入る。
 心の中で罵っている間にも、複数台の警察車両がすれ違っていく。
340>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/12/28(日) 23:05:54 ID:EOy5OZrF
 16時間連続に及ぶ事情聴取に耐えかねた館長は全てを自白し、そして即日で懲戒解雇処分を受けた。
 業務部員たちも各自が与えられた個室で同様の事情聴取を受け、そして一人ひとりが時間差で自白した。
 もちろん図書隊としてはそれだけで済ませるはずがなく、館長を含む数名の業務部幹部は本日付で逮捕状が発行されたそうだ。
 上層部は、これを各地にいるであろう不穏分子への警告として徹底的に活用するつもりなのだろう。
 まあ、問題はこれで関東図書隊内部において誰が責任を取らされるかだが、俺のような下っ端が退職届を書かされて済むようなものではない。
 つまり、心配する必要はないということだな。

「君が獲得してくれた協力者たち。
 あれはとても有効だったよ。どこまで辿れるかはわからんが、まあそっちは俺たちの仕事だからな」

 内部告発という形を取った複数の協力者たちは、館長およびそれに従う業務部員たちの全ての罪を公開した。
 査問会で、上申書で、記名した告発文書で。
 結果、内容を重視した関東図書隊は9月2日早朝に部隊を派遣、後始末の続く水戸準基地の中で容赦のない『事情聴取』を開始した。
 
「茨城の図書隊はしばらく大変でしょうね。
 捜査は県内全域の全ての人員へ拡大します」
「それは大したものですね。
 今でこれでは、皆さんが本格的に始動したらどうなる事やら。
 ああ、これはもちろん好意的な意味で言っていますよ」

 いつの間にか、どこにでもあるような一般車両が後ろについている。

「ところで、あなたもリクルート組ですか?」
「ええまあ、桜田門から」

 道理で警察の初動が早いわけだ。
 天下りのあるべき姿、というわけか。

「しかしまあ、仕事でならタクシーのメーターは回さないで欲しかったですね。
 経費削減も立派な任務でしょう」
「貴方が水戸準基地からここへ帰る間の領収書が無くては不自然ですから、諦めてくださいよ」

 運転手は苦笑しつつ車を止める。
 後ろの車も停車する。

「それでは、私はここで」
「続きは本物が?」
「ええ、そんなところです」

 後ろの車から運転手の格好をした男が降りてくる。
 こっちは本物だろうな。

「これからも図書隊の利益のために、大いに頑張ってください。
 何かあれば、連絡します」
「私はその手の訓練を積んだ事はないんですけどね」

 運転手はこちらを見るとニタリと笑い、口を開いた。

「大丈夫、直ぐに慣れますよ。死ななければ」

 冗談じゃねえ、俺は突然の心臓麻痺で死んだり足を滑らせて川に落ちて溺死する趣味はないんだ。
 内心で呟く俺を無視し、交代した本物らしい運転手は無言で水戸駅へと車を発進させた。
341>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2008/12/28(日) 23:06:57 ID:EOy5OZrF
本日はここまで
342創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 23:11:22 ID:f+GkyYa8
おおどんどん続きが来る
いいねぇいいねぇ
343名無し:2008/12/28(日) 23:42:13 ID:A+d1ap/M
 ミス板に挑戦する!犯人は誰だ!! (ミステリー)
飯島愛が幻聴で苦しんでいたみたいだけど、もしかしたらパラメトリック・
スピーカーを応用した攻撃を受けていたのかも。

パラメトリック・スピーカーとは超音波を使うことで鋭い指向性を持たせる
ことができる音響システム。特定の狭い範囲にいる人に選択的に音を流す
ことができる。

つまり近くに人がいても、その人には聞こえないよう音を使った攻撃も
できる訳だ。これを使えばターゲットに幻聴が聞こえていると錯覚させ
ることができるし、聞こえる内容により、精神的に追い詰めることも
可能だろう。超音波だから壁に反射させれば壁から音が聞こえてく
るように感じさせることもできるし、何も知らない人がこの攻撃を受けたら
相当動揺するだろうね。

この原理を応用したものに音響兵器があるらしい。使用すると不快感や
平衡感覚喪失を一時的に発生させ、時間照射では健康被害を与える危険性
も指摘されている。(ウィキペディアから引用なので、間違ってるかも)
つまり飯島愛に音波を照射し続ければ、耳がおかしくなり耳鳴りも聞こえる
ようにもなるだろし、体調も悪化するだろう。また目覚まし時計に照射す
れば機能を麻痺させ、時計の針の動きを止める等して、番組に遅刻させる
こともできるのでは?

高性能指向性マイクやカメラを使うことにより、呼吸音、喉の動き、目の
動き等でターゲットを観測し、ある一定条件に合わせ波動拳を使えば
ターゲットが<これこれこうすると、幻聴が聞こえるんです。>みたいに
医者に言うようになる。医学書にそれに近い症例があれば、医者は
<飯島さん、それはこの病気ですね。ではこの薬を出しましょう。>
みたいな話にもなってくる。そうして薬を日常的に飲ませるようにして
急に変死しても、それなりの言い訳がたつような状態をキープし、別の
ターゲットに圧力をかけるベストのタイミングで飯島愛を殺す。なんて
妄想どうだろう。
344創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 12:43:51 ID:/MBzh+E+
>>341
二度と書かなくていいよ
345創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 17:27:57 ID:HESFe5x0
なんか人が死にすぎの気がしないでもないないけど…>>341GJ!
こんなリアル戦場見せたら、郁あたりは再起不能になるかもしれんな
346創る名無しに見る名無し:2008/12/30(火) 12:29:26 ID:Iroh8zOH
>>343
有線でなく無線を使ったトリックだと「盗聴器検知器」を使えばバレますな
347創る名無しに見る名無し:2009/01/01(木) 00:24:49 ID:JAMa6vxI
test
348創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 06:50:06 ID:oKmTnGzz
図書館戦争 ◆XRUSzWJDKMが早く続編を投下してくれますように
  ∧_∧
  ∧( ´∀`)
 ( ⊂   ⊃
 ( つ ノ ノ
 |(_)_)
 (__)_)
349創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 11:15:46 ID:XYwjs0Nl
図書館戦争氏を待たずに長編投下していいものだろうかどうか…
3割くらい書き終わったんだが
350創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 13:03:57 ID:OiKe21UX
書き終わってから悩め
351創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 15:53:16 ID:6GdvOSRa
>>349
投下中に割り込まなきゃいいんじゃないの?
読者としては次に誰が投下するのかを楽しみにできるし

投下する分量で悩んでるなら、
50行*5レス分以上でストーリーが途切れる所までを投下する
を目安にすると読む方としては嬉しいな
352創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 00:55:42 ID:l5or72eq
話題
みんなは空戦、陸戦、海戦のどれが一番好き?
俺は陸戦だなぁ
353創る名無しに見る名無し:2009/01/24(土) 14:12:53 ID:3/NN3DuK
>>352
そう考えていた時期が、俺にもありました
「ステルス艦カニンガム出撃」ってやつが面白い
陸戦には陸戦、海戦には海戦の魅力があると思った
354創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 18:06:28 ID:klHa23ZW
>>353
そうなんだけどね
でもやっぱり歩兵ってやつが好きでさ、どうしても俺の中では陸戦と空海戦は一線を画しているんだよなぁ
チラ裏スマソ
355創る名無しに見る名無し:2009/01/26(月) 07:53:38 ID:zr9Cj5Ew
陸…その他大勢の雑魚達(主人公の仲間達は取って付けたようなネームド)VSその他大勢の雑魚達(敵側は基本的にノーネーム)
+ 主人公VSその他大勢の雑魚達(敵側は基本的にノーネーム)

海空…ネームドVSネームド

なだけで本質は同じ
356創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 21:16:14 ID:y8pHfxkK
近代で艦隊戦はないし、空戦はスペックと物量できまるから知略で攻める部分が分かりにくい
伏兵とか仕様がないしね

海戦=諜報を用いて見敵必殺、先手必勝
空戦=速度と数で勝れば勝てる、常に2対1
357創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 09:37:01 ID:3rQzy6it
http://tfr.seesaa.net/article/112714864.html
こういう、深い知識が有れば
現実的な味気ない空戦も面白くなりそうだけどね。
358創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 10:03:26 ID:Ip3wylKi
昔はレーダーより下を飛行すれば映らないとかよく言ってたけど
今は上から下に探知する偵察機があったりするしな
359創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 21:02:13 ID:eNJ1xn3Y
図書館戦争の続きマーダー?
360創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 21:10:03 ID:3eHllGEc
空戦で伏兵……制空権を握ったぜHAHAHA!と本土上空を我が物顔で跳んでみたら、トンネルに偽装した
格納庫から耐熱舗装された道路的な偽装滑走路を経てなんとグリペンが!
……いや、なんでもない
361創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 17:34:40 ID:mrez1g8w
そこはVTOL機が出る場面ではないか?
362創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 13:44:28 ID:3cvlu+TS
トンネルがパカッと左右に開いてハリアー出撃?
363創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 20:19:55 ID:xh6OTtML
お好み焼き屋の地下に…
364創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 13:29:27 ID:OrYJc1Q3
立ち食い蕎麦屋の地下じゃなかったか?
365創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 14:35:23 ID:usdmVpAE
昔はVTOLといえばハリアーで当たり前だったが、これからはF35Bの時代となるんだろうか。
個人的にはYak38にもいっぺんくらい光を当ててやりたかったりする。何とかして
366>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/02/10(火) 00:50:24 ID:4DCoPLJo
正化31年9月6日 1600時 関東図書隊所属 武蔵野基地

「いやはや、大変な旅でした」

 報告を終えた俺は、笑みを浮かべたままそう結んだ。
 査問会でこそ無いが、名だたる管理職を前に報告をさせられるのは大変な苦痛だった。

「現地の、西山という図書正から報告は受けている。
 若干の齟齬はあるものの、おおむね報告書と間違いは無いようだな」

 名前が未だに思い出せない幹部の一人が言う。
 現地からの報告書を書く人間と口裏を合わせているのだから間違いなどあるはずが無い。

「はあ」

 生返事をし、会議室内はしばらく沈黙に包まれる。

「ああそうだ、現地の業務部員から君を名指しで告発書が送られてきているのだが、何か知っているかね?」
「告発とは穏やかではない表現ですね、どのような内容でしょうか?」

 返事の代わりに一枚の書類を手渡される。
 書かれている名前には見覚えが無いが、内容には見覚えがある。
 どうやら茨城準基地ではヒエラルキーの交代が行われたらしく、弾薬庫前の乱闘をどうしても第三者による責任とする必要があったようだ。

「書かれている内容が良く理解できないのですが、現地に一ヶ月といなかった私が、防衛部員を扇動して武力クーデターのようなものを起こしたと?」
「そう書いてあるな」

 総務部付とされている図書正が答える。
 どうやら、この三十代前半と思われる人物が情報部門の責任者に近い人物なのだろう。
 全てを知った上で茶番に付き合っている事を示す意地の悪い笑みを浮かべている。

「心外ですな、私は茨城準基地の特殊な権力構造の中でも監査の任務を全うし、業務部員たちの名誉を守れる報告を作り上げたというのに」
「特殊な権力構造とは何かね?」

 彦江副指令が身を乗り出して尋ねる。
 図書隊行政派の中で非常に高い地位にいる彼としては、行政人事により県庁から派遣された須賀原茨城県立図書館長の失態で冷静な思考を失っているようだ。

「茨城では、野蛮な防衛部は業務部の下に存在するものであり、それは業務上の個々人の関係にも反映されるというものです。
 実際、私は命令により非武装で銃弾に貫かれる防衛部員や、戦闘中に弾薬庫の解放を拒否するために暴力を振るう業務部員を目にしました」

 俺の言葉に全員が絶句する。
 どうやら、俺が本当に書いた報告書は情報関連の部署の人間が削除したようだな。
 ヒエラルキーに関する質問が皆無だからおかしいとは思ったんだが、そこまでやるとはな。

「私は今まで、行政派とはあくまで主義信条の世界での話だと思っていました。
 しかしながら、どうやら原則派である防衛部員を好きあらば殺そうとする存在のようですね。
 もちろん比喩的な表現ですが、まさか後ろから撃たれるとは思いませんでしたよ」
「おかしいと思ってはおりました」

 玄田隊長が俺の言葉を引き継ぐ。

「異常に練度の低い隊員たち。
 玄関先での不可解な殉職者数。
 弾薬庫前で戦闘中に発生した防衛部員による業務部員への攻撃。
 彦江副指令、もちろんご説明いただけますな?」

 あーあ、玄田隊長も怒ってしまった。
 丸く治めるつもりだったのだが、告発書など書くのが悪い。
 業務部幹部一同で再就職先を探すがいい。
 紛糾し始めた会議を見つつ、俺は内心で嘲笑した。
367>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/02/10(火) 00:51:10 ID:4DCoPLJo
「防衛部が予算を取りすぎるのが対立の温床になるとどうしてわからん!」
「先ほども申し上げたように、粗末な装備と保障でメディア良化隊とぶつかり合いたいのでしたら、私は今すぐにでも交代の辞令を受け取りますぞ?」
そもそも行政派は図書隊の一員であるという自覚があるのですか?」
「その発言は取り消せ!私を侮辱するつもりか!」
「客観的な事実を申し上げている。だいたい、あなたがたのおかげで貴重な人命が失われたというのによくもそのような事が言えたものですな」
「・・・須賀原茨城県立図書館長は茨城県庁より派遣された人間だ。行政派の一員と言うわけではない」
「トカゲの尻尾切りですか。呆れてものも言えませんな」
「貴様!そもそもがあんな若造の報告程度でここまでの態度を取るという事は、わかっているんだろうな!」
「私も非武装で前線に立たされるんですか?それならば上層部ではなくて警察に相談する必要があるようですな。
 殺人の予告を受けたとね」

 基本的に業務部員たちが声を張り上げ、冷徹にそれを返すのが防衛部員と流れは奇妙に思える。
 しかし、怒号を発すべき時と場合を心得ている人間というものはそういうものなのだ。
 逆に言えば、平日の特殊な状況とはいえ会議中に大声を張り上げるのは褒められた姿ではない。
 まあ、防衛部側の内容も挑発的に過ぎるのだから手放しで賞賛できるものではないのだが。
 それなりの地位にあるはずの人々が口々に罵倒を繰り返している光景は大変に興味深いものだった。
 だが、楽しい罵倒大会はその火種を付けた情報関連の図書正によって鎮圧された。

「須賀原元茨城県立図書館長は、いわゆる市民団体と親密な関係にあったと報告を受けております」

 いまにも掴みあいを始めそうだった一同は、その言葉に一瞬静止した。
 だが、彦江副指令は呆れたような表情を浮かべて口を開く。

「市民団体と懇意にしていない図書館長などいるはずがない。
 親密だったからといって、なんなのだ?」
「その市民団体は、図書隊の内部からの崩壊を誘うために浸透工作を行っておりました。
 ちなみに、主だった資金提供先をいくつか辿ると、いわゆるペーパーカンパニーに行き当たりました」

 図書正の言葉に、一同は沈黙する。
 図書隊の崩壊で利益を得る団体。
 それはメディア良化隊か、良化法に賛同する団体に他ならない。

「我々は、そのような角度からも攻撃を受け始めたという事か」

 先ほどまでのやり取りで精神力を消耗したのか、彦江副指令は力なく呟いた。
 俺の報告書は若造の程度、で済まされるというのに、随分と差をつけられたものだ。
 現場からの報告を軽視するのはとても良くない方針なのだが。

「現在の茨城県内の業務部幹部は相当に浸透されていると私は判断します」

 報復のための最後の一押しが必要と判断した俺は、叱責を覚悟で口を開いた。
 全員の視線が俺に集まる。
 興味深そうな、あるいは馬鹿にしたような視線。
 どちらにしても、いらんことを言ったかもしれない。
 俺が内心で悔やんだ瞬間、総務部付の図書正が口を開いた。

「彼の判断を私は支持します」

 ありがたい事に、総務部付の図書正さんは俺の判断を支持してくれるらしい。
 政治的に強い人間の支援はとてもありがたいものだ。
 特に、否応無く情報部門の駒とされてしまった人間としては。

「稲峰司令、正直に発言してもよろしいでしょうか?」

 総務部付図書正は、図書隊を統べる稲峰図書司令に独特な表現で発言の許可を求めた。
 
「構いません。思うところを述べてください」

 そして、その申請は承認された。
368>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/02/10(火) 00:52:30 ID:4DCoPLJo
「我々情報関連に携わる人員は、今回の件についてかなり早い段階から兆候を掴んでいました。
 しかし、実験部隊という立場から、積極的に反撃をする事ができず、結果としてこのような結果となりました。
 茨城以外にも三つ、同じような傾向が見られる地方拠点があります。
 我々としては、同種の問題を再発させないためにも、我々の部門を正式に認めていただく必要性を感じています」
「正規の部門として諜報部門を設けるという事の意味を理解しているんだろうな」

 彦江副指令が押し殺した声で尋ねる。
 正規の部門として諜報部門を設ける。
 つまり、図書隊は図書館外でも戦争を行うという意思表示を内外に宣言する事になる。

「早いか遅いかの問題ですよ。
 既に敵の浸透工作は行われており、そして効果を挙げているんですからね」

 総務部付改め情報部の図書正が言った事は事実だった。
 今回の茨城県での一連の騒動は、敵側から見れば大成功だった。
 原則派と行政派の対立。
 首都に近い茨城での防衛戦力の壊滅。
 あとに残されたのは無力化工作を受けた脆弱な残存兵力のみ。
 おまけに、そこでは防衛部員と業務部員は道で出会っただけで取っ組み合いの喧嘩を始めかねない程に険悪な雰囲気になっている。
 問題は早期に改善されなければならない。
 関東図書隊は速やかに教導部隊を派遣しなければならないし、現地では大規模な人事異動が必要だ。
 そこで消費される予算、人的資源、あるいは破壊された施設や財産の復旧に必要な様々な資材。
 ヒト・モノ・カネ・時間、あらゆる要素が浪費される。
 もしこの会議の光景が中継されていれば、今頃敵の情報部門は祝杯を挙げているに違いない。

「情報部門の創設は、可及的速やかに行う必要があります。
 関係各所に働きかけ、早急に手配しましょう」

 稲峰司令の言葉により、情報部の創設は認められた。
 まあ、会議の場でこれほどの言い方をするからには、必要な人間には既に声がかかっているのだろう。
 あるいは、既に必要な書類やしかるべき確認も終わっているのかもしれない。

「図書特殊部隊は一個小隊を教導部隊として茨城へ派遣してください。
 期間は来週から半年間。
 出来るだけ早く、彼らが独り立ちできるように訓練をお願いします」
「了解しました。
 同時並行で幹部を何人か、逆にこちらへ呼び寄せて徹底的に教育しなおしましょう」

 シフトがきつくなるが、まあ俺には関係の無い事だ。
 つい先日まで監査に行っていたわけだから、そのような人間を再び現地へ、それも教育部隊として送り込みはしないだろう。
 むこうさんとしても、再び俺の顔を見て穏やかではないだろうからな。
 特に業務部の連中は。

「メディア良化隊が今後も同種の手を使う可能性は十分にあります。
 詳細は後ほど情報部門から受け取るとして、内部に入り込まれている可能性が高いエリアについては速やかに対策を打ちましょう。
 休憩を入れて、三十分後より会議を再開します」

 最後に稲峰指令が宣言し、会議は一旦解散となった。
 この後の会議については参加できなかったが、あの情報部の図書正が絡んでいる以上、ロクでもない話になったのだろう。
369>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/02/10(火) 01:03:07 ID:4DCoPLJo
正化31年9月6日 1633時 関東図書隊所属 武蔵野基地 喫煙所

「凄い騒ぎだったみたいだな」

 今では随分と少なくなった喫煙者たちと煙を吸い込んでいると、たまたま通りがかったらしい手塚に声をかけられた。

「おお、死ぬかと思ったよ」

 軽く手を上げて挨拶しつつ、短くまとめた感想を伝える。

「おまえの行くところ激戦ばかりだな」

 何やら話したいことがあるらしく、手塚は近くの椅子に腰掛けた。
 付近を漂う紫煙を、うっとおしそうに振り払う。
 そんなに嫌ならば喫煙所に来なければいいのに、と内心で思いつつタバコを消す。

「新種の攻撃も受けたしな。
 まったく、良化隊の連中はあんな仕事をさせておくのがもったいない連中だよ」

 今思い出しても、敵ながら天晴れという表現が見事に当てはまる仕事ぶりだった。

「お前がことあるごとに言っていた戦争っていう言葉。
 大げさでもなんでもないんだな」
「今更のセリフだよそれは、第一話で言うべきだったな」

 俺の言葉に手塚は苦笑する。

「第一話ね。そうだな、俺たちが図書隊に入隊し、銃を手に取ったときにいうべきだったな、確かに」

 今回の茨城の一件は、特にその被害の大きさから全図書隊員の知るところとなっているらしい。
 隠蔽されるよりはマシだ。
 しかし、俺は大切な事を忘れていた。

「いたわね!」

 大きな女性の叫び声。
 この場合の大きな、とは身長と声量の両方にかけてあるのがポイントだ。

「やあ笠原さん、お疲れ様」

 とりあえずフレンドリーに挨拶をする。
 挨拶は社会を円滑に回す潤滑油らしいので、つまり効果的なのだろう。

「なぁーにがお疲れ様よ!!」

 極めて遺憾な事に、彼女は何らかの事情で大変に憤慨しているらしい。
 面倒な事だ。

「あんた、水戸でも大暴れしてきたそうじゃない!?」

 何をそんなに怒っているのだろうか?
 水戸黄門か納豆にでも思い入れがあるのか?

「正確には、殺されかけて必死の抵抗をしてきた。というのが正しいな」

 とりあえず訂正しておく。
 しかし、なんだって彼女はこれほどまでに興奮しているんだ?
 どうやら水戸で戦闘を行った、という点で激怒しているようだが。
370>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/02/10(火) 01:06:34 ID:4DCoPLJo
本日はここまで
371創る名無しに見る名無し:2009/02/10(火) 13:00:54 ID:slrOkKs6

>>5
続き楽しみにしています
372創る名無しに見る名無し:2009/02/10(火) 21:02:54 ID:nhMKzkHY
いいですねぇ・・・・こんな図書館戦争を待ってました!
373創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 00:57:37 ID:JPe1JxnO
つかそろそろ図書館戦争スレを個別に立てても問題ないんじゃない>>5
374創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 03:23:14 ID:PgksbIkH
図書館戦争の人キター
375創る名無しに見る名無し:2009/02/13(金) 01:58:24 ID:W7JLvv33
>>373
今のところ一人しか書いてないんだから、
個別にスレを立てる必要はないんじゃないか?
376創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 00:53:31 ID:+nVHpyt4
>>375
え…?個別スレ立てには複数の書き手がいる事が条件なのか?
VIPだと新ジャンルやブーン系とか1人でやってるのが大半だから、
ここも書き手が1人でも希望すればスレ立てできるものかと思ってた。
377創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 04:48:07 ID:MXbvi4f4
1人でもいればスレ立てできるよ
てか一人もいなくても立ってるスレも…ゲフンゲフン

ただ単に別に本人が希望してるわけじゃないのにスレ分離する必要があるほど
人が多いわけじゃなくね?って意味だと思う
378創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 07:01:31 ID:6CIr3w6q
1000まで行ってから考えてもいいんじゃね?
オレは現状維持で問題ないと思うが…
379創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 10:20:38 ID:Zkc4CTJV
 ∧_∧
  ∧( ´∀`)
 ( ⊂   ⊃
 ( つ ノ ノ
 |(_)_)
 (__)_)

380創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 22:47:26 ID:mYMoz1hO
フランス外人部隊にでも入隊してこい
381創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 23:19:30 ID:VJ7F9uLe
外人部隊に入った伯父曰く
「フランス語が無理」って言ってた
382のるまんじ:2009/02/25(水) 03:24:00 ID:TtuVMDTK
 ここは故郷のイギリスから遠く離れた異国の空、フランスのノルマンディー上空200メートルほどの場所。
空を覆うほどに広がる飛行機の大編隊から投げ出された体は火を噴く機体に見送られながらゆったりと落下して
いく。真っ暗闇の空で地面から伸びるサーチライトを眺めながら、あの機体にもう少し長く乗っていたら火だる
まだったなぁ。パイロットは可哀想だなぁなどと考えた。改めて下を見渡せば、もうずいぶんと地面が近づいて
いる。そして僕はつい先ほどまで脚にくくりつけられていた袋がどこかへ飛んで行ったことに気がついた。あの
袋には予備の弾薬とか食料とか色々と入っていたのに、まったく困った物だと思う。まあ、肩のライフルさえあ
ればどうにでもなると思ったらそれもどこかへ吹っ飛んでいた。つまり僕は、敵地のど真ん中に裸一貫で着地せ
んとしているのだ。なんという不運だろう。しかしここで嘆いても落ちる体は空に登らない。とにかく降りたら
こそこそ逃げて、誰か味方から拳銃でも借りようか。そんなことを考えている間に僕の体は見知らぬフランスの
土地に降り立ち、うっかりしてあんなに訓練した受け身も忘れ、ジンとくる衝撃に涙をこぼして耐えることになった。

 とりあえずこの体に覆い被さって暑苦しいパラシュートのしたから潜り出ると、腹のボタンを叩いてパラシュ
ートから脱出した。まだ痺れている膝を撫でながら辺りを見回す。遠くからは対空放火の機関銃の音が響き、さ
らに遠くからは飛行機のエンジン音が響いてくる。周囲に物音一つ無いことを確認した僕は、茂みに沿ってトボ
トボと歩き始めた。武器がない、地図がない、食料もない。ないない尽くしで敵陣を歩く僕だった。

 しばらく歩くと機関銃の音が大きく聞こえるようになってきた。なるほど近くに対空陣地があるらしい。僕は
抜き足差し足でそちらの方に近づいて、様子を見ることにした。拳銃一丁も無いのにまったく無謀だと思うけど、
とにかく寂しい僕は人のいる方へ行ってみることにした。誰か味方でも戦っていればいいなぁなんて考えながら。

 姿勢を低くして、藪に紛れて進んだ先にはドイツ兵が居た。彼らは対空砲座、Flakvierlingの4門の機関銃
を空の輸送機に向け、何かを叫びながらその引き金を引いていた。その連続した発射音は凄まじく、弾倉を交換す
る時の静寂がそれを強調している。彼らが空に夢中になっている隙に背後に回り込むと、そこには彼らの武器が
きちんと整頓されて置かれていた。その中から手榴弾を一つ拾い上げると、柄のキャップを外して紐を引っ張り、
彼らの足下に投擲。ごろごろと転がって対空砲座の足下へと落ちた手榴弾は、一瞬の沈黙のあと爆発した。
383創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 06:43:51 ID:7bFju7RT
>>382
淡々とした文章が逆に新鮮だわ
続きは書く予定あるのかな?
384創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 01:09:31 ID:FW/v26C6
上に書いてあるゾンビについて不毛な議論交わしてるのを見て思った

此処の趣旨とはずれるが、軍体が戦っている横でゾンビは人間か否かで揉め続ける法廷闘争物も面白そうだ
ロボットに人権はあるかで裁判するSF物ってあったけな
385創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 01:20:29 ID:FW/v26C6
うわ日本語変になってる
386創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 19:17:21 ID:JBJmwQMW
>>384
人に危害を及ぼさない時点では駆逐する必要はないだろ
元ネタとなるハイチのブードゥーゾンビは肉体労働奴隷として酷使はするが
持ち主以外が勝手に破壊すると怒られるぞ

「器物扱い」が法的にぴったしだと思うがな
自意識が有るとやっかいだがw
387創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:02:25 ID:djByI3A2
お話の続きはまだですか?
388創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 06:13:34 ID:Zwy9qu3b
図書館戦争 ◆XRUSzWJDKMが早く続編を投下してくれますように
   ∧_∧
  ∧( ´∀`)
 ( ⊂   ⊃
 ( つ ノ ノ
 |(_)_)
 (__)_)
389創る名無しに見る名無し:2009/03/22(日) 22:50:45 ID:bRDbV9Qd
保守代わりに短編を投下します
ホントは傭兵系SS創作所用に考えてたけど、向こうはあまりにも過疎ってるもんで…
390れじょんの侍:2009/03/22(日) 22:53:55 ID:bRDbV9Qd
松陰先生…拙者はあなたに引き続き、ここ墨西哥の地でまたしても仕えるべき主を失ってしもうた…

「たとえ儂が死罪になろうとも、決して追い腹を召してはならん」との言葉通り、生き恥を晒して遠く欧羅巴まで逃げ延びて…
そして"れじょん"なる番方集団に拾われ、そこで尊敬すべき主に仕える僥倖に恵まれもうした

"だんじゅう大尉"は"れじょん"でも有名なお方で、伊太利や土耳古で多くの戦勲を上げられたという
冷静かつ勇猛果敢、事故で左手を失って尚その乗馬の腕は番方に並ぶ者無しと評判であり申した
我が番方は墨西哥なる国に送られ、かの国で戦を続けておった。大筒を運ぶ者どもを警護せよとの命を受け、我らはここ"かめろん"なる地で彼らを待ち申した
しかし先に現れたるは何百という墨西哥の騎馬軍団、我が方は40名ほどの兵しかおらぬ。敵は軍使を送り「我らに屈せよ」と命じてきた
それでも我が主君"だんじゅう大尉"殿はその命を拒否、我らは死ぬまで戦いを続けると誓いを立て申した
勇敢なる大尉殿であった…敵は次々と数を増し我らの守る陣地までにじり寄ってきた。敵弾をものともせぬ大尉殿だが、戦いのさなかに胸を撃たれて討ち死にな

されたのだ

またも軍使が我が陣に送られてきた
「諸君らの戦、誠に天晴である。しかし余計な人死にを出すことは無用なり、降伏せよ」と軍使は伝えてきた
しかし我らは"だんじゅう大尉"殿と交わした約定がある。降伏はまかりならん、と組頭の"もぉど少尉"が軍使を追い返した
なしてこ奴らは腹を召そうとせんのだろう?主君を失えば追い腹を召すのが家臣の勤めであろう。忠義の証を立てるべきではなかろうか

「いや、それは違うぞカトー」拙者の具申に少尉殿が言った
「ダンジュー大尉は徹底抗戦を命じた。その命に逆らうことが忠義の証となるのか?我らは最後の一兵になろうとも、敵を一人でも多く倒し大尉殿の名を立てるべきだろう」
なんという…拙者が間違っておった
主君に殉じ死ぬことが忠義の証であると思っておった、しかし主君の意に殉じ戦うべき道があることを全く失念しておった
考えてみれば追い腹を召すのはすぐにでもできる簡単なことだ、だが最後の最後まで主君の遺志のために戦うことは全く困難であろう
拙者は意図せぬうちに楽な道を選ぼうとしておったのか…

松陰先生が追い腹を禁じたのも、そのためであったのかも知れぬ
拙者は主君の意も酌めぬ愚か者であったか…
しかし恥じ入る暇はない、敵は火を放ち我らに迫ろうとしておる
そうはさせぬ。最期の一瞬まで拙者は戦う
それが失った主君たちへの忠義の証となろう

来るならば来い!

----------

メキシコ戦争(1862〜1867年)におけるフランス外人部隊最大の激戦地カメロン
外人部隊の歴史で最も名の知れているといわれるダンジュー大尉はこの地でメキシコ軍の狙撃兵に胸を撃たれて戦死
そして後を引き継いだモード少尉をかばって戦死したのは「カトー」という名の部隊兵だった

その「カトー」がどのような人物であったかの記録は残っていない
391創る名無しに見る名無し:2009/03/22(日) 22:57:24 ID:bRDbV9Qd
下げ忘れた…ゴメンorz

言葉とか用語とかはそれなりに考えたつもりですが、やっぱりネットだけの資料漁りじゃ限界があるなぁ…と実感

最近読んだ外人部隊の本に出ていた「カメロンの戦い」を参考に書いてみました
実際、この戦闘で「カトー」なる部隊兵が上官をかばって戦死してるようです
この年代に日本人がフランス外人部隊に入ってるとか…可能性はあるかもしれないと妄想を膨らませてみました

まぁ図書館戦争氏が帰ってくるまでの暇つぶしになれば幸いです
392創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 16:24:32 ID:Tik3sMQ9
幕末の海外放浪日本人傭兵物かぁ
こういうのも珍しいw

幕末に限らず、戦国期とかでも意外に海外へ渡った日本人傭兵ってのはいたらしいね
下人として売られていって、行き着いた先がインドシナあたりの植民地警護とか
393>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/03/25(水) 01:56:39 ID:O3zaaDYb
正化31年9月6日 1634時 関東図書隊所属 武蔵野基地 喫煙所

「おい笠原、やめないか」

 手塚が素早く止めに入る。
 生真面目で頑固で、ちょっと口が過ぎるところもあるが、基本的にはいい奴なんだよな。
 俺と笠原の間に割って入った手を見つつ、俺は二本目のタバコを咥えた。

「手塚、あんたには関係ない」
「こいつは激戦から今日帰還したんだ。何か思うところがあるんだろうが、今はやめろ」

 ありがたい心遣いだ。
 差別的待遇に激戦に長距離移動と査問会。
 俺の体はボロボロだ。

「冗談じゃないわ!茨城図書館のニュースのおかげで、こっちは大変な目に合ったんだから!」

 なんだかよく分からんが、茨城の一件で何か不利益を被ったらしい。
 程度にもよるが、まあその怒りを誰かにぶつけないとすまない程の問題だったのだろう。

「笠原さん。経済的なのか精神的なのか、はたまたそれ以外のどのような形なのかは知りません。
 とにかく、公務によって発生した問題で損害を受けたのですね?」

 事務的な口調で尋ねる。
 手塚も笠原も、驚いた表情を浮かべてこちらを見る。
 全くの他人と言うわけでもない相手にする口調ではないのだから彼らの反応は当然だろう。
 俺の問いに対する反論も回答もなし。
 これは、恐らく私的な、対人関係か本人の精神的なところでの問題だろう。

「私が茨城に赴き、そこで結果として戦闘に参加した事は全て任務によるものです。
 任務に関する事で文句があるのであれば、私ではなく、上官やあるいは司令部、いや、命令を発した部門に申し立ててください」
「あんた、そんな責任転嫁して情けなくないの!二言目には公務だの任務だのって、あんたはロボットか!?」

 めんどくせぇな。
 内心で簡潔な感想を呟いてしまう。
 一体どのような事情でこちらに対して怒り狂っているのかは知らないが、正直うっとおしい。

「それで、要するになんだっていうんですか?
 流れ弾があなたの家族か友人か、あるいは恋人にでも当たったんですか?」
「そうじゃない!そうじゃなくて」「いいかげんにしなさいよ」

 笠原が言葉に詰まりつつも何かを言い返そうとした瞬間、どうやら必死に追いすがってきてようやく到着したらしい柴崎が会話に乱入した。

「柴崎、悪いけど邪魔しないで」
「郁、あなたの個人的な事情で人様に迷惑をかけるのは止めなさい」

 一切の反論を許さない冷たい口調で柴崎は笠原に命じた。
 
「私は!!」

 よほど我慢がならなかったのだろう。
 何か言い返そうと彼女が柴崎の方を見た瞬間、こちらまで痛くなるような見事な音を立てて平手打ちが炸裂した。
394>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/03/25(水) 02:00:10 ID:O3zaaDYb
正化31年9月6日 2134時 関東図書隊所属 武蔵野基地宿舎 共用スペース喫煙所

「ごめんなさい、待ったかしら?」

 夜の闇を眺めつつ喫煙をしていた俺の後ろから、一人の女性の声がする。
 
「いえいえ、今来たばかりですよ」

 お約束ともいえるセリフを吐きつつ、四本目だったタバコを煙缶に放り込む。
 自動販売機のモーター音だけが響いていた部屋に、火が水に突入した事を知らせる微かな異音が混ざる。

「それで、お話というのは?」

 彼女の性格から考えるに、愛の告白ではないだろう。
 さぞかし不愉快な話が俺を待っているに違いない。

「今日はごめんなさい」

 唐突に謝られた。
 どんな話がくるのかと身構えていただけに、思わず脱力してしまう。

「ええと、どれについてですかね?」
「笠原の事よ」

 あの失礼な女についてか。
 なるほど、確か彼女と目の前の女性は仲がとても良かったな。

「まぁ、特に気にしないで下さいよ。
 彼女の信じる何かに、私の行動が合わなかったという話でしょうから」

 俺の言葉に彼女は目を丸くした。
 何か変な事を言ったのだろうか?

「ああごめんなさい、そんなに重たい話じゃないのよあれは」
「はあ、そうですか」
「それよりも、あなたに聞きたいことがあるの」

 薄暗い喫煙所。
 自動販売機の灯す微かな光しかないその空間で、彼女はとても綺麗に見えた。

「冷戦計画、という言葉を知っているかしら?」
「れいせん計画?」

 今度こそ人生を実り多くする様な話題かと思えばこれだ。
 それはさておき、聞きなれない名前だ。
 れいせん、というからには、十中八九『冷戦』か『零戦』なのだろう。
 大穴で『霊泉』の可能性もあるが、それでは何をしたいのかが全く分からない。

「あまり聞かない名前ですが、零式艦上戦闘機の復活計画でも進んでいるんですか?」
「あら、あなた情報部の人間なのに、冷戦計画を知らないの?
 むかしむかし、アメリカと旧ソ連がやっていた冷たい戦争と書く方の冷戦よ」

 意外そうな表情で言われる。
 意外も何も、そもそもからして俺は情報部の人間ではないのだがな。
395>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/03/25(水) 02:02:09 ID:O3zaaDYb

「私は情報部の人間ではないので知らなくても当然ですよ。
 それで、そのなんたら計画が何か?」
「んー知らないならそっちはいいわ。
 それよりも、あなたは情報部の人間じゃないって言うのは本当?
 私は上からそうだと聞かされていたんだけど」

 露骨に話を逸らされたような気がするが、それ以前の問題だな。

「色々と不幸がありましてね。気が付けば情報部の協力者的な立場になっていたんですよ」

 苦笑しつつ真相を伝える。
 しかし、目の前の女性は前々から只者ではないとは思っていたが、まさか情報部の人間だったとはな。
 
「あらそうなの。まあいいわ、伝達事項があります」
「まあいいで流さないでほしいのだが」

 俺は国内で諜報戦なんてやりたくはないんだ。
 その手の仕事でただでさえ幸薄い現状を悪化させたくないからな。

「来週、図書隊戦略委員会という組織の立ち上げが発表されるわ。
 あなたはそこで、図書隊の戦力向上という任務が与えられます」

 胡散臭い名前の組織だが、戦力向上という任務内容には大いに興味をそそられる。
 まあ、お題目だけが立派な生ゴミ置き場という可能性もあるので、無邪気に喜ぶわけにもいかないがな。

「戦力向上。抽象的な言葉ですね。
 普通科装備の充実を図れ、という命令なんですか?」
「それもあるでしょうけど、まあもっと広い意味もあるんじゃないかしらね。
 詳しいところは委員会で聞くように。とのことよ」

 これまた面倒な話である。
 軽機関銃一つ導入する事が許されていない現状で、一体どのような行動が許されるというのだろうか。
 下手をすれば、抽象的かつ達成不可能な目標を与えられて、その未達成を理由に処罰されかねない。
 さらに言えば、任務が増えたにもかかわらず、それについての手当についての説明が一切ないことも不安を掻き立てる。
 
「微力ながら全力を尽くします」

 内心では大いに思うところがあり、また異議申し立てしたいことも多々ある。
 しかし。上官から命じられた公務員は、いつだってそう答えるしかない。
396>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/03/25(水) 02:03:07 ID:O3zaaDYb
正化31年9月9日月曜日 1000時 関東図書隊武蔵野基地 第十一会議室

「会議を始める前に言っておきたい事がある」

 委員長を務める友鶴一等図書監が最初に口を開いた。

「この委員会の目的は、現在の図書隊をいかにして維持させていくかを話し合う場ではない。
 未来の図書隊員たちに、どれだけの戦力を引き継がせる事が出来るかを考える場だ。
 もちろん現実味がある事は重要だが、5年10年のスパンで考えるような内容でも遠慮なく提案しろ。
 以上だ。それでは会議を始める」

 なかなかに将来性のある委員会のようだ。
 友鶴図書監が言うとおりの事を行い、そして正当性があればきちんと承認される仕組みになっていれば、だが。
 そんな捻くれた事を考えている間にも議事は進んでいく。
 
「以上の事から、自分は図書隊全員がいつでも自由に実弾射撃訓練が出来る環境整備が重要と考えます」

 先ほどまで発言していた図書士長が着席する。
 警察や自衛隊の連中が聞いたら心の底から同意する提案である。
 それが出来るだけの予算措置をどうするのかという問題はあるが、それはそれで解決策を考えるべきだからな。
 こういうとりあえず意見を言わせるタイプの会議は実りが多い。
 もちろんの事ながら、それを妄想で終わらせないための上層部と提案者の努力があってこその実りだが。

「ふむ、私が前にいた組織では君たちほど実弾射撃はやらなかったが、現状でもそのように感じるのだな」

 図書監は興味深そうにそう言った。
 こいつ、いや、この人も元自衛官か。
 現在の階級からしてそれなりの階級にいたのだろう。
 この委員会、立ち回り方次第では図書隊に対して結構な見返りがあるんじゃないか?
 人間相手の施設防衛。
 陸上自衛隊にとっては大金を払ってでも得たい情報だ。
 ついでに経験もほしいんじゃないだろうか。

「次は自分ですね」

 俺が立ち上がった瞬間、一同が緊張した。
 ここ最近の激戦すべてに参加している事から、俺は図書隊一の武闘派と思われているそうだ。
 どっちかというと、俺は巻き込まれているのだから戦場が俺を好んでいると言うべきなのだがな。

「まず、図書隊員すべてに自動小銃の配備が必要です。
 これを最低限の増強とし、各小隊ごとに軽機関銃の配備も必要です」
「それほどの増強が必要なのか?」

 図書監は俺の目を見て尋ねる。

「先の戦闘で、敵軍は自動小銃を数多く配備していました。
 つまり、出来る限り我々もそれに近い体制を整えませんと。
 具体的には、全員が陸自の普通科並の装備を持たなければなりません」
「敵が全員に自動小銃を配備する前にか?」
「そうです。既に始まっているわけですから、出来る限り急ぐ必要があります」

 敵が投入してきている以上、既に手遅れな状況なんだがな。
 手遅れだからといって、これ以上遅らせていいという理由はない。
397>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/03/25(水) 02:03:53 ID:O3zaaDYb
「そっちはわかった。だがMINIMIの配備なんて出来るのか?」
「発射速度が速いだけで、同じ弾薬を使用すると言い張ればいいんじゃないですかね?」

 我ながら苦しい言い訳だが、直ぐに相手も同じような理屈で持ってくるだろう。

「確かに、敵軍が持ち出してからこちらも配備するのでは、経験という面で不利になるな」
「そのとおりでございます」

 図書隊が陸上自衛隊普通科と全く同じ装備で戦う。
 それは国防と言う観点で見た場合、大変に有益な事だ。
 野戦こそないが、装備の問題点や戦闘方法など、訓練では得られない貴重な情報が入手できる。

「もちろん、それらを達成するには自衛隊の協力が必要ですけども」
「安心しろ。そのために私はここに座っている」

 随分と露骨な意思表明だが、ありがたいかぎりだ。
 自衛隊からの援護射撃無しに、速やかな装備の増強は望めない。
 もちろん、海外の優れた技術にも大いに関心があるがね。

「それと、機動隊の盾。
 あれの三枚重ねが必要ですね、ジュラルミンタイプの奴です。
 余剰予算で買い取れませんかね?」
「んん、調整は必要だが、やってでき無い事はないだろうな。
 警察庁としても、あえて断る理由はないはずだ」

 先ほどまで退屈そうにしていた三等図書監が咳払いをしつつ答える。
 この人は元警察官僚か。
 確かに、この国の武装組織は全てが実戦経験を欲しているのだから、警察官僚がいても不思議ではないか。

「侵入者の視界を奪い一方的に攻撃できる装備や、その他侵入防護装置が必要です。
 ああ、もちろん安全に敵を攻撃できるような物もですけれども」

 言うだけならば無料だからな。
 思いつく限り提案すべきだろう。

「具体的には?」
「スモークグレネードと熱源監視装置、車両の突入を防ぐためのボラード式バリケード。
 最低でも陸自の防弾チョッキ2型。出来ればクラスWのボディーアーマー。
 可動式の装甲プレート。窓用に50mm程度の防弾ガラス。陣前防御用の装甲車両ですね」

 実に贅沢かつ機動性が皆無な装備たちだが、我々は図書隊であり自衛隊ではない。
 それらを担いで前線に行く必要はないのだ。
 であるならば、思う存分言う必要がある。
398>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/03/25(水) 02:07:09 ID:O3zaaDYb
「防弾チョッキは実現性が高いな。
 装甲車両は相手も持ち出す可能性を考えると難しい。
 それ以外については財務との戦闘が不可避となるが、意味はある」

 一等図書監殿は考え込む目をしつつ回答される。
 間違いなく普通科出身だろう。
 それならば、目の前の幹部は従うべき上官殿だ。
 原子力発電所などの重要防護施設への防御計画は、自衛隊の永遠の課題だ。
 各地の図書館がそのモルモットとなってくれるのであれば、彼はきっと同意し、働きかけてくれる事だろう。
 もちろん、彼の以前の同僚たちも。

「今までの意見をまとめると、
 1、隊員の増員
 2、予算の更なる獲得
 3、政治的な後ろ盾の強化
 4、情報戦への注力
 5、武装の強化
 6、防御装備および施設の追加
 以上の六点となる。
 これら各項目について、来週の会議までに提案者各自のプランを提出しろ。
 出来る限り全てについて実現できるように、だ。
 諸君らの政治的な意味での後ろ盾は我々委員会上層部が責任を持つ。
 遠慮なく、萎縮する事なく、未来の図書隊員たちのための計画を立案するんだ。
 異議がなければ今回の会議はここまでとする」

 一等図書監殿は、そう告げると一同を見回した。
 もちろん俺に異議はない。
 周囲の委員たちも同様なようだ。
 当然だろう、ここまで言われて異議があれば、そいつは人の話を聞けないタイプかよほどの捻くれ者のどちらかだ。

「よろしい。それでは図書隊の未来のため、各員の努力に期待する。解散」

 一同の無言での服従に一等図書監殿は満足げに頷かれ、そして会議は終わった。
 俺は念のため、確認を行おうと一等図書監殿の元へと歩み寄る。
 敬礼、答礼。

「陸上自衛隊第一空挺団、団本部中隊降下誘導小隊でした」
「北部方面隊冬戦教で一佐をやっていた。よろしく頼む」

 参ったな。
 大した人だろうとは予測していたが、部隊最先任上級曹長殿並みの存在だったとは。
 
「過剰な敬語はいらん。
 態度ではなく行動で示してくれれば良い。
 期待しているよ。隊へ戻れ」

 短い命令を受け、俺は敬礼すると退出した。
 自衛隊幹部に警察官僚。
 そして元自衛官。
 そんな連中に行動の自由を与えて、図書隊はどこへ向かうつもりなのだろうか。
 微かな期待を感じつつ、俺は自室へと急いだ。
 午後からは平常どおりの訓練が待っているのだ。
399>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/03/25(水) 02:08:17 ID:O3zaaDYb
本日はここまで
400創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 04:05:41 ID:1XIzkayH
図書館戦争氏キテター
401創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 19:45:22 ID:6dRZQrNj
>>5
待っていた
402創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 22:18:58 ID:LSkjWwk4
>>5
GJ!
すごく面白かった
403創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 22:46:09 ID:qBER82XN
冬季戦技教育隊で1佐だったら普通に教育隊長だな
何にせよGJ!
404創る名無しに見る名無し:2009/03/26(木) 01:21:39 ID:vjsRfiIU
  _  ∩              _∩        
( ゚∀゚)彡 >>図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM ( ゚∀゚)彡 >>図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM
 ⊂彡              ⊂彡
405創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 13:29:01 ID:owXJEPwY
_  ∩              _∩        
( ゚∀゚)彡 >>図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM ( ゚∀゚)彡 >>図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM
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406創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 20:43:26 ID:ZhtBbRQc
ここのSS見て図書館戦争の原作買いたくなったがラブコメ分が多いらしいので
多分原作買ったらがっかりするだろうな
407創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 08:20:30 ID:C/bJxVT2
>>406
確かに軍オタにはお勧めできない
が、読んでみたらこのスレの話をもっと楽しめるぞ
408創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 15:04:09 ID:ViazXT8f
そこから話を広げられるところが面白いかもしれん

ところで404や405がズレたように見えるのだが
409>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/03/30(月) 01:16:00 ID:c50jqseh
正化31年9月16日月曜日 1249時 関東図書隊武蔵野基地 第十一会議室

「・・・のように、実弾射撃演習の自由化についてはある程度の目処がついたと自分は考えております」

 報告を終えた図書士長が口を閉じる。
 自由な提案が許され、和気藹々の一歩手前まで行った前回の会議。
 今回のものは、出席者が変わったのかと思うほどに厳しい内容となった。

「君がどう考えたかはわかった。それで、調達部門との調整はどうなっているのだ?」

 早速友鶴図書監の質問が飛んだ。
 その口調は不必要に思えるほどに厳しい。

「はい、現在のところは自分の知り合いの担当者に話しをしておりまして」「君はふざけているのか?」

 さあ、始まったぞ。
 前回は話の分かる上官だった彼は、今回は鬼教官へと変貌を遂げていた。
 先ほどまでの全員が、この調子で叩かれている。
 もちろんの事ながら、正当な理由で、だが。

「私は一等図書監だ。それなりの権限と立場を持っている。
 君の知り合いの担当者とは何者かね?」
「え、ええと、物流業者出向の一等図書士でして」
「どうして調達部長と話をしない?なぜ私を連れて行かないのだ?
 それとも、担当者レベルの話だけで君の提案は実現可能なのかね?」
「いえ、それだけでは難しいかと」

 友鶴図書監は目を細くした。

「難しい、ではなく、承認が降りなければ不可能だろう?
 この会議が終わり次第、調達部長にアポを取ってくれ。
 私も同行する。
 今の発表で使った資料を印刷しておいてくれ」
「わ、わかりました」

 図書士長はハンカチで汗を拭いながら答える。
 
「君の費用や購入費用についての計算結果は向こうの担当と打ち合わせて出しているんだな?」
「はい、三度計算をやり直して出しました。あらゆる要素を入れているつもりです」
「よろしい、ならば間違いはないだろう。順序は逆だがよくやってくれた。
 次の発表に移ろうか」

 困ったな、俺の出番だ。
 
「私の提案は装備の強化と防御施設の増強でしたが、まずは装備について報告いたします」

 俺の言葉を聞いた全員が資料を捲りだす。
 プロジェクターを操作し、次のスライドを映し出す。

「89式小銃の現在の調達価格は、ごく一部の部隊へ配備する事を前提とした少数ベースのものです。
 メーカーの営業担当者に確認したところでは、年度あたりの調達数量が倍になったという仮定で、現状の85%までは落とせるとの事でした」

 聞くたびに見積もり金額が落ちていく営業と言うのはどうなのだろうかと思うが、買う側としては非常にありがたい存在だった。
 その他小火器も含めて全てを外国産に変えるプランがあるという脅しは、想像以上に効果を発揮してくれた。
 基本的に国産品を調達しなければならない自衛隊とは違い、我々は極端な話ロシア製AK-74でも構わないのだ。
410>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/03/30(月) 01:31:17 ID:c50jqseh
「これらの弾薬および保守部材についても、定数を倍に増やし、さらに調達回数を増加させる事でのコスト低下はかなりのものです。
 詳しくは資料をご覧になっていただくとして、これは先の士長殿のご提案にもお役に立てるものではないかと考えております。
 狙撃銃、軽機関銃についても同様です。
 とはいっても、これらの装備品については単価がかなりしますので、一括大量導入は難しいものと思われます。」

 装備についての強化計画は、現時点での進捗を見ると大変に順調である。
 俺の説明を要約するとそうなる。

「防弾盾については三監殿のご協力を得まして、警視庁側の担当者と廃棄予定の盾を一括購入する方向で話しています。
 何とか今年度中に話を付け、来年度の頭には購入できるよう予算化の作業が必要です」

 別に犬猿の仲と言うわけではないが、図書隊と警察の仲は良好ではない。
 日野の悪夢でまったく役に立たなかった彼らをこちらが憎悪しているというのは確かにある。
 だが、治安機関である警察としては、重武装の上に自分たちの指示を全く聞かない図書隊を好ましくは思えないのだ。

「ボディーアーマーについては一監殿は同行して頂きましたのでご存知かと思いますが、防衛省と交渉を進めています。
 当面は、自衛隊と同様のものを購入し、特殊部隊、都道府県庁所在地、それ以外の守備隊の順番で装備の更新を進めます。
 具体的な金額および月ごとの進捗予定はお手元の資料をご覧下さい」

 具体的な数字だのグラフだのを口頭では省いただけでも説明が長くなる。
 図書隊という組織は、現時点で見てもそれなりに巨大な組織なのだ。

「自動小銃、狙撃銃、軽機関銃。
 これらの装備を三本の柱とし、二個小銃小隊に狙撃と機関銃分隊をつけて一個中隊を編成。
 各都道府県に二個中隊を置き、即応部隊として図書特殊部隊を大隊規模まで拡張したいと考えています」

 これは妄想に近いプランだ。
 現在の日本国の都道府県数は四十七。
 つまり九十四個の中隊が必要となる。
 歩兵中隊は基本的に約二百名となっているので、一万八千八百名の図書防衛部員が必要となる。
 これは戦闘職種のみの数である。
 一般的に、歩兵師団は二から三個連隊で編成され、一個連隊は同じく二つから三つの大隊で構成される。
 図書防衛大隊を二個中隊で編成し、端数はどこかの部隊で吸収したと仮定すると、未来の図書隊は五個図書防衛師団を持つ陸上自衛隊並の組織となる。
 すべてが達成されたと仮定すると、霞ヶ関には図書防衛省が置かれ、図書防衛大臣が閣議に出席して意見を述べるのだろう。

「壮大なプランだが、難しいだろうな」

 友鶴図書監は苦笑しつつ意見を述べる。
 確かに、提案者がこんな事を言っては叱られるが、現実味は限りなく少ない。
 仮に図書隊が頑張って三個師団ほど揃えたとしよう。
 恐らく、メディア良化隊も同程度の人数を揃えてくるはずだ。
 結果は凄い事になる。
 会戦こそないだろうが、先進国でありながら、国内で師団規模の軍事組織が内戦を繰り広げるわけだ。
 現状でも大変に面目が立たない状況であるが、今以上に国家の威信は落ちる。
 恐らく、そこまで行く前に何らかの政治的決着がつけさせられるだろう。
411>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/03/30(月) 01:37:09 ID:c50jqseh
「はい、ですが出来るだけの増強は絶対に必要です。
 戦闘部隊が余剰人員を抱える重要性はもちろんの事ですが、装備品の増強は必ず行わなければなりません。
 我々が彼らより先に強力な武装を揃える事は優位点となりますが、彼らが揃えてからこちらが持つのではただ不利なだけです」
「そうだな。人数の増員については来年度からの話となるが、装備品の増強は今年度中にもある程度は進められるはずだ。
 まずはそこから始めてほしい」

 予想通りの回答だ。
 図書隊では、不測の事態に備えて結構な金額の予備費が積み立てられている。
 この中から一定量の金額が流れるように手配してもらえるという事だろう。
 実にありがたい話だ。

「了解しました。
 車両止めのバリケードについても具体的な金額が出ております。
 見た目こそ公園にあるような金属ポールですが、これはスイッチ一つで飛び出し、そしてトラックの突進を止める性能があります。
 また、自衛隊の煙幕弾に時限装置を取り付ける事で、敵の視界を奪い、事故の誘発や一方的な攻撃が可能です」
「しかし、攻撃側である敵の方が有利ではないか?
 確か昔の軍隊でも、突撃の前には煙幕で身を守ったんだろう?」

 政治的な後ろ盾の強化が最優先であると唱えていた二等図書正が尋ねてきた。
 確かに、基本的に煙幕は攻撃側が使用するものだ。
 だが、それが有効なのは、あくまでも守る側が対象方法を持っていない場合に限られる。

「ええ、ですので煙幕を使用しつつ、熱源監視装置で狙いをつけるわけです。
 それなりに高価な機材ですから、全員ではなく一部の人員に持たせる形になるでしょうが、意味は大いにあります。
 煙幕は確かに視界を奪いますが、銃弾をはじき返す事はできません。
 図書館という侵入路が限られる施設を防衛する以上、我々は圧倒的優位に立てるわけです」

 視界を奪う煙幕。その向こうから飛んでくる必殺の銃弾。
 突撃を躊躇させるには十分すぎる。
 バリケードが導入されれば、車両で危険地帯を突っ切る事もできない。
 そうなれば、敵は煙幕が晴れるまで車の陰に隠れるか、こちらと同様の装備を持って、死ぬ気で駆け抜けるしかなくなる。

「試供品を入手しろ。演習場を使って早急に実験したい」
「わかりました。手配します」

 俺の報告が終わるなり会議は終了した。
 もちろん全員に、次回の会議では更なる具体化という宿題が与えられている。
 しかし、面白くなってきた。
 来年度まではひたすらに事務作業を行うものかとばかり思っていたが、そうではないらしい。
 図書隊の予備費がいくらかは知らないが、うまくすれば特殊部隊だけでも早期に重装備が可能となる。
 そして、図書特殊部隊とは俺の所属する隊であり、最前線に借り出される役回りだ。
 とてもとても、楽しみだ。
412>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/03/30(月) 01:39:10 ID:c50jqseh
本日はここまで
413創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 06:14:54 ID:awZir5Yh
おぉ、新作来てた
GJ!
414創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 12:19:22 ID:JUfJDJee
  _  ∩       
( ゚∀゚)彡 >>図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM 新作!新作!
  ⊂彡
  _  ∩       
( ゚∀゚)彡 >>図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM 新作!新作!
  ⊂彡
415創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 23:04:02 ID:EUYTq7bA
>>412
GJ!!
でも、蛇腹鉄条網が出てこないのはチョット不思議ですね。
416創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 01:01:44 ID:7RbRSQRE
>>415
そこまでやるのは原子炉級の立ち入り制限施設じゃないと無理じゃね?
あくまで図書館は一般人の出入りが前提の公共施設だし
417創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 01:12:05 ID:qRFC857A
>>416
蛇腹鉄条網は即効展開が出来るから、普段は閉まっといて
非常時に侵入想定地へ簡単に展開させる事ができる。
車で三角形に繋いだ蛇腹鉄条網を、ざーっと広げる映像見た事ない?
418創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 01:19:39 ID:qRFC857A
あと、一つだとリアカーやワゴン車使ったりしてね。
勿論、人がちまちま設置したりもする。
419創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 01:21:06 ID:qRFC857A
あ、
>>417の車はトラックね
420創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 15:09:31 ID:p2Qk5Iwo
架空戦記ものでミサイルを迎撃する話を書いているのだが、
北朝鮮のそれと重なってシャレにならねえw
421創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 20:31:11 ID:wUSfUE63
>>420
巡航ミサイルなら戦闘機で追撃して墜とすミッションも有りw
422創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 03:41:06 ID:aZsTeo5b
むしろ竹槍でですね
423創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 12:27:50 ID:fWq+QDUB
あー誤探知とかびびったわー
424創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 12:45:15 ID:ct56MFH1
PAC3の中の人もドキドキだろうな

>>417
ニュースで新屋演習場の入口に蛇腹を設置してたよ
珍しいことに2段重ねだったわ
425創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 00:07:23 ID:aoriM8ot
軍板の紫電改スレの長編絡みで、SM-3に自意識が芽生える話を構想してたんだけど、
ここに投下しても大丈夫かな?それとも擬人化総合スレの方が妥当なんだろうか。
426創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 00:29:24 ID:JqEiQHRW
>>425
紫電改絡みの長編は下記のスレに投下している

他に行き場所の無い作品を投稿するスレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1223547316/

ぶっちゃけ書いてるのは俺なんですけど、最後まで構想は出来てるのに
なかなか書き上がらなくてすみません…
427創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 02:18:44 ID:aoriM8ot
>>426
紫電改スレの長編とは直接の関係は無い予定なんだけどな…

まあ構想のきっかけは紫電改スレの打ち合わせスレだったわけだし、
そちらのスレに投下させてもらう事にします。
428創る名無しに見る名無し:2009/04/18(土) 06:07:55 ID:IbPna9dv
図書館戦争 ◆XRUSzWJDKMが早く続編を投下してくれますように
   ∧_∧
  ∧( ´∀`)
 ( ⊂   ⊃
 ( つ ノ ノ
 |(_)_)
 (__)_)
429創る名無しに見る名無し:2009/04/25(土) 06:24:32 ID:OIzkKWsm
図書館戦争 ◆XRUSzWJDKMが早く続編を投下してくれますように
   ∧_∧
  ∧( ´∀`)
 ( ⊂   ⊃
 ( つ ノ ノ
 |(_)_)
 (__)_)
430創る名無しに見る名無し:2009/04/26(日) 12:24:31 ID:oY154Et5
なぜに組み体操…

んでも
図書館戦争 ◆XRUSzWJDKMが早く続編を投下してくれますように
   ∧_∧
  ∧( ´∀`)
 ( ⊂   ⊃
 ( つ ノ ノ
 |(_)_)
 (__)_)
431創る名無しに見る名無し:2009/04/26(日) 15:43:17 ID:e1U0MP9k
図書館戦争氏じゃなくてすみません…

ここで聞くべきなのか分からんのですが、
>>425さんに引き続き、軍板紫電改スレ絡みの短編を思いついて、
この際専用スレを立ち上げてしまってもいいでしょうか。
ここも擬人化スレもどちらも毛色が異なりしっくりこないもので…
432創る名無しに見る名無し:2009/04/26(日) 19:13:03 ID:0whD5b8V
>>431
>>426のスレではダメ?向こうも書き込み数はそれほど無いみたいだけど。
433創る名無しに見る名無し:2009/04/28(火) 00:32:57 ID:5innKLMc
>>431
是非投下を
軍事的な話題なら、原則なんでもありなはず
このスレに不適切かを決めるのは作者ではなく読者で、少なくとも私は貴方の投下を待っています

434431:2009/04/30(木) 22:22:43 ID:xOi1lnmB
お騒がせしてすみません、取りあえず今回はスレ立てを見送ります。
季節ネタで急がないと時期を逃してしまうというのもあり、完成したら改めてこちらに報告します。
435創る名無しに見る名無し:2009/05/03(日) 06:08:34 ID:zuGux7oT
保守
436>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/05/05(火) 22:13:31 ID:t5hf9u+G
正化31年9月23日月曜日 1257時 関東図書隊武蔵野基地 第十一会議室

「それで、君は今の今まで言い出さなかったわけだが」

 自信満々に報告を終えた俺に、奥まった位置に座っていた図書正が声をかけた。

「君は元自衛官と聞いているが、ここに至るまで鉄条網を出してこないとは何事だ?
 それとも、教範を最初のページから音読してやらないと理解できなかったのか?」

 その瞬間、俺がショックを受けなかったといえば嘘になる。
 長篠の戦いを持ち出すまでもなく、障害物、柵や鉄条網は歩兵や騎兵の天敵だった。
 それは人間の進撃を阻止する。
 足を止められた兵士たちは、それを突破するまで無条件に銃弾や砲弾を喰らう事になる。
 日露戦争では多くの日本兵の命を間接的に奪い、第一次世界大戦欧州戦線ではもっと多くの血を流す要因となった。
 もちろん、第二次世界大戦やその後の地域紛争でも重要な対人障害として活躍している。
 構造は単純だ。
 主に鉄線で作られ、直線やコイル状などに加工されて用いられる。
 剃刀のような刃物や、触りたいとも思えない棘がつけられているタイプもある。
 支柱で支えられているために人体で踏み潰す事は不可能だ。
もちろん市販のワイヤーカッターが一つあれば数分で突破は可能だが、銃弾の嵐のなかでそれをなすのは非常に困難である。
 我々にとっては、極めて有用な兵器となりうる。
 
「申し訳ございません。直ちに取り扱いのある商社の選定に当たります」
「そうするといい」

 図書正は満足げに答えると再び沈黙した。
 発想と雰囲気から見て、この人も元普通科だろう。
 あるいは施設科の出身かもしれない。
 そこまで考えたところで、会議室の扉が控えめにノックされた。 
437創る名無しに見る名無し:2009/05/05(火) 22:15:01 ID:OqOHNTBv
お、図書館戦争の人キター
438>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/05/05(火) 22:21:38 ID:t5hf9u+G
 ドアを開けて現れたのは、どこかで見た事のあるような気がする、しかし見覚えがないとも言える微妙な風貌の図書士だった。
 彼は室内の一同に向かって敬礼すると、無言のまま友鶴図書監の隣へと歩み寄る。
 座ったままの彼の耳元へ口を近づけ、何事かを報告しているようだ。

「何?」

 彼は驚いたように聞き返した。
 どうやら緊急性を要すあまり愉快ではない話題なのだろう。
 その証拠に、幹部が居並ぶこの会議を中断してまで報告している。

「やはり彼が?」
「はい」
「確認されたんですね?」
「はい、間違いありません」

 何やら小言で会話がやりとりされている。
 声が小さすぎるため、長方形に配置された机の対面に位置している俺にはほとんど聞き取れない。
 しかし、それでも『良化隊』『ケースBの欺瞞情報』『漏洩が確認』という言葉を聞き取れた。
 断片的なそれらを組み合わせると、以下のようになる。
 恐らくは情報部で事前にマークしていた男性が、メディア良化隊に対して情報を漏洩した。
 その情報とは欺瞞情報で、経路を確認できるように内容を変えて怪しいと思われる人物に伝えられている。
 まったく、何時からあるのか知らないが、我が情報部も人並みに仕事が出来るじゃないか。

「そうですか、残念ですね」

 友鶴図書監はそこまでいうと、不意に顔面から表情を消した。

「適切に処理してください」

 俺は恐怖した。
 一切の感情が篭っていない事務的な口調。
 それは明らかに、何か重大な事を命じている。
 図書士は敬礼すると、再び無言で退出していった。

「ああ、大した話ではない、気にしないように。
 それよりもどうした?報告は終わりかね?」
「はい、私の報告は以上です」
「よろしい、本日中に書類を仕上げろ。
 明朝一番で防衛省のほうに訓練用の資材および人員を借りに行くぞ」

 随分と手が早い。
 確かに図書隊はいつ戦闘が発生してもおかしくない状況だから当然か。

「了解いたしました。直ちに実行します」

 返事をしつつ、俺は脳内のスケジュール表をチェックしていた。
 たしか、今日は1300時から2100時までの延長シフトだったはずなのだが。
 その日から悪夢の超過勤務週間が始まった。
 防衛省へ飛び込み、教導部隊の派遣を依頼する。
 各種メーカーへ日参し、様々な機器の購入を行う。
 必要な物資が揃い次第、効果判定のための演習を実施する。
 得られた成果を元に稟議書を作成し、プレゼンを行い、申請が通らなければ通るまでやり直す。
 絶望的な日々だった。
 目的意識があるからこそ精神が持ったわけだが、一週間の残業時間が休日出勤も含めて105時間というのは狂っている。
 現在の俺の通常シフトは一日八時間なので、先ほどの残業分も含めると、なんと一週間168時間中145時間働いているわけだ。
 そんな苦労が実り、図書特殊部隊に対して軽機関銃2門、鉄条網500メートル分、全員分の89式自動小銃が与えられた。
 これらの装備を整えるだけでも、本来であれば数ヶ月単位の時間が必要とされる。
 そのはずのものが目の前に揃っているという事は、友鶴図書監は事前に根回しを全て済ませていたのだろう。
439>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/05/05(火) 22:23:02 ID:t5hf9u+G
正化31年9月30日月曜日 1715時 関東図書隊武蔵野基地 施設防衛訓練場

「演習の成果はどうだ?」

 機関銃を撤去している隊員を眺めていると、唐突に堂上図書正に声をかけられた。

「とても順調に進んでおります。
 煙幕は駄目でしたが、銃座を設けるというアイデアはとても効果的ですね」

 赤外線式照準装備については、本家自衛隊でも本格的に採用されていないだけあり、残念ながら今だ採用の目処が立っていない。
 そのため、敵にしかメリットのない煙幕弾は採用を見送らざるを得なかった。

「あんなものを図書館の屋根に置くのは納得できんな。ああ、命令だというのはわかっているぞ」

 仮設の三階建て模擬図書館を見上げつつ堂上図書正は言う。
 彼の視線の先には、屋上部分に設置された三つの金属製の物体がある。
 対物ライフルでも持ち出さない限りは貫通不可能な、油圧旋廻駆動の防盾付き機関銃座だ。
 厳しい時間制限の中でも現物を持ってきてくれたアメリカの民間軍事会社から購入している。
 低列度紛争の戦場で、拠点防衛の要としての役割を期待しているらしい。
 銃器の取り付け部分を別途購入する事により、東西を問わず軽機関銃から重機関銃までなんでも付くという売り向上だった。
 簡単に配置転換が出来る軽機関銃を固定砲座にするという発想はなかったが、俺たちのような立場の場合、これは大変役に立つ。
 
「ところで、鉄板は分かるが、その前についている金網はなんなんだ?
 あんなところまで飛びかかれる良化隊員は恐らくいないぞ」

 不思議そうに尋ねる堂上図書正の視線を追うと、RPG-7対策の金網が施された部分を言っているらしい。

「ああ、あれは対戦車ロケットを打ち込まれた時の対策ですよ。
 弾頭が金網部分に命中すると、電気信管がショートするようになっているんです。
 良化隊がそれらを用いる可能性は現時点では低いですが、取り外して専用モデルにすると無駄に改造費用がかかります。
 あって困るものでもないですから、そのまま付けておくつもりです」

 俺の丁寧な説明に、何故か堂上図書正は呆れたようだった。
 良化隊が対戦車ロケットランチャーを現時点では使用する可能性が低いという見積もりが、既に甘いという事だろうか?
 確かに連中は暴徒を装った放火や、警察を抱き込んでの通信かく乱すら行ってくる。
 北朝鮮ゲリラ部隊のふりをした更なる攻撃があったとしても不思議ではないか。
 さすがは特殊部隊の教官、俺が恥をかかない形で教えてくれたわけだ。

「ご安心ください、もし彼らが重火器を持ち出して来るようなことがあれば、こちらも直ぐに対処します。
 遅れを取る事はあるかもしれませんが、我々は最後には必ず勝利しますよ」
「お前は一体、いや、すまん。任せる」

 何か言いたかったようだが、堂上図書正は途中で口を閉じた。

「堂上図書正殿、自分に何か」

 落ち度があるなら指摘してほしい。
 そう言おうとしたところで、召集を告げるサイレンが会話を強制終了させた。
 図書特殊部隊は総員戦闘準備、五分後にブリーフィングルームへ集合。
 久々の緊急出動だ。

「話は後だな」
「ええ、そのようですね」

 短く答え、機関銃を運んでいた班を向く。

「時間がない。担いだまま直行しろ。
 さっそく出番だぞ!」

 俺の怒号に機関銃班は驚いたような表情を浮かべ、次の瞬間には嬉しそうな顔をして駆け出した。
440>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/05/05(火) 22:23:54 ID:t5hf9u+G
「今回の作戦は移送ミッションだ。四両で車列を組み、陸路を強行突破する」

 第一声からして実に刺激的な作戦だった。
 日ごろ、その持てる人員や装備からすれば随分と消極的な対応をする図書隊としては珍しいとも言える。
 だが、次の瞬間にその疑問は消えた。

「輸送対象は、我々にとっての聖典だ。タイトルは」

 玄田隊長は有名な古典作品の名前を口にした。
 俺は読んだ事がないが、作品の概要ぐらいは聞いたことがある。
 本は人心を誑かすと断定している独裁国家が舞台だったはずだ。
 法を犯して勝手に個人所有されている書籍を焼く仕事をしている公務員が主人公で、最後がちょっと思い出せない。
 とにかく、半世紀以上昔に今の日本を予言したとされている作品だ。

「・・・のように、我々にとってまさに聖典と呼ぶべき作品だ。
 問題の書籍は、現在所有者である古物商、つまり古本屋のご主人宅に保管されている。
 我々はそこまで受領に赴き、十分な警戒態勢を敷いた後に車両へ書籍を移動する」

 そこで玄田隊長は言葉を切り、手元の端末を操作する。
 巨大なスクリーンに映し出される画像が切り替わり、聖典の表紙から詳細に書き込まれた地図へと変わる。

「地図中央の個人宅から、まずは最寄の国道へと移動」

 地図上に現れた矢印が、アニメーションで動き出す。

「国道に入り次第北上、最寄の第二十八図書隊基地を目指せ。
 基地に入り次第、聖典は待機中のヘリに積み込み、あとは空路で武蔵野基地を目指す」

 矢印はヘリのアイコンへと変わり、今までの倍以上の速度で武蔵野基地へと突き進む。

「既に問題の個人宅には情報部の工作員が五名、武装して待機中だ。
 我々は車両に分乗して現場へ急行。
 人員もろとも回収し、このルートを使って移動する」

 スクリーンに現れたのは、特に人通りの少ない道を選んでの帰還ルートだった。
 おいおい、こんなルートじゃ襲ってくださいと言っている様なものじゃないか。

「これが個人宅ではなく地方図書館ならば大規模な部隊を送り込めるんだが、すまんな。
 質問がなければ出動準備に入れ」

 俺は迷わず手を上げた。
 ここは自衛隊の教育隊ではない。

「本ルートでは敵の襲撃が予測されますが、武装はどの程度まで可能なのでしょうか?」

 室内の全員の視線が俺に集中する。
 堂上図書正は険しい顔で見てくるし、小牧図書正は何かを考えているような表情を浮かべている。
 笠原は既に立ち上がろうとしているし、それ以外の隊員たちは呆れた様な顔をしている。

「私は好き好んで市街戦をやりたがるような人間ではありません。
 しかしながら、良化隊もしくはその賛同団体は、まず間違いなく銃火器で武装してこちらに引渡しを迫ってくるでしょう。
 そうした際に、人通りの少ない道では我々はなすすべがありません」
「検閲が実施されている地域以外では、銃火器の使用は厳しく制限されている。
 我々も基地へ移動後には使用が予想されるため、自動小銃を持って移動する。
 しかし、市街地での発砲はこれを禁ずる。
 もちろん攻撃を受けた場合には別だが、彼らとて公務員だ、法を遵守するだろう」

 了解いたしましたと言って着席する。
 法の遵守については、彼らが守る必要性を感じればだろうな、と皮肉めいた思いを抱いてはいるがわざわざ口に出すまでもない。
 その程度のリスクは、当然図書隊上層部も勘定に入れているだろう。
441>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/05/05(火) 22:25:47 ID:t5hf9u+G
「現在のところ現地は静かだという話だが、この先はわからん。
 準備を急げ、解散」

 全員が立ち上がり、敬礼するのももどかしく室内から飛び出していく。
 日ごろのニュースにもならない戦闘とはわけが違う。
 今回の任務は、図書隊の歴史に確実の残る重要性を持っている。

「あの」

 機関銃分隊に声をかけられる。
 わかったよ、わかっているよ。

「スマン!皆まで言うな、次の演習では俺が責任を持って分解整備をする。約束だ。
 だからそんな目で見ないでくれ!」

 緊急出動だというから張り切って駆け足をさせたが、まさか使わないとは。
 想定の範囲外と言うものだ。

「約束ですよ?それで、自分たちは待機を命じられたのですが、今回は整備をして帰還をお待ちしております」
「え?」
「え?」

 呆けたように尋ねた俺に、ニヤリとしつつ目の前の図書士は聞き返す。

「だって、待機って、え?」
「待機ですよ、でも約束されましたよね?」

 てっきり苦情を言いにきたのかと思ったらこれだ。
 勝手に早合点したとはいえ、まんまとしてやられた。

「参ったよ。ちゃんと整備するさ。
 状況次第では出動するかもしれないから、準備は済ませておいてくれよ」
「了解しました。御武運を!」

 結局整備する事にはなったが、久方ぶりに敬意を込めた敬礼をされた。
 悪い気はしないな。
442>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/05/05(火) 22:29:00 ID:t5hf9u+G
本日はここまで
443創る名無しに見る名無し:2009/05/06(水) 00:27:37 ID:5+F9BnBE
GJ!キナ臭さが増してきた…
444創る名無しに見る名無し:2009/05/06(水) 07:08:35 ID:fIHz2HGi
  _  ∩       
( ゚∀゚)彡 >>図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM 新作!新作!
  ⊂彡

キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!!!

  _  ∩       
( ゚∀゚)彡 >>図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM 新作!新作!
  ⊂彡

445創る名無しに見る名無し:2009/05/06(水) 10:24:36 ID:w+Ac+G8B
GJ!
鉄条網のこと調べてみた
http://www.shopbiz.jp/ss/exhibitor/26350060/product20670.html
マジ痛そう
http://www.k3.dion.ne.jp/~j-gunto/gunto_023.htm
軍刀で鉄条網を切断とか
軍刀に破壊筒、ワイヤーカッターで鉄条網に挑む良化隊……ゴクリ
446創る名無しに見る名無し:2009/05/06(水) 18:03:25 ID:8YBzyrse
ついに念願の図書館戦争がきたぞ!
これでかつる!
次回はいよいよ市街戦だ!
447>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/05/07(木) 00:00:28 ID:MUaNcfjE
>>445殿
448>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/05/07(木) 00:01:29 ID:oRYDj883
間違えた。。。>>445殿に感謝。鉄条網ってググっても意外にヒットがなかったはずなのに。精進します
449431:2009/05/07(木) 03:53:54 ID:2T2NLLGJ
ようやく完成しました。
本来ならば>>426のスレに投下すべきなのですが、
こちらの住人さんのご好意のお言葉に甘えまして、
また軍板紫電改スレを知っていただきたく今回はこちらに投下させて頂きます。

ただ今規制に巻き込まれ中ですので、これより先本文は避難所代行スレを使わせてもらいます。
450創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 06:39:42 ID:6MDdwZRg
鉄条網のほかにこんなのは如何ですか?

機動阻止システム(MOBILITY DENIAL SYSTEM)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%9F%E5%8B%95%E9%98%BB%E6%AD%A2%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0

それと民間が海賊対策で使う・・・船舶や車載もできます
長距離音響発生装置:LRAD-RX
www.cornes-dodwell.co.jp/product/p_c/lradmrad.html
解説動画です
www.youtube.com/watch?v=yZwciHrSKwA

これで暴徒に成りすましていて対処しやすいのがミソです。
451創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 09:32:29 ID:BVnRxMtj
LRAD(エルラド)は海自のソマリア沖派遣部隊とか水産庁の捕鯨船とかで使ってるらしいね
どんなものか、一度くらってみたいな
452創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 11:01:56 ID:2b/369qD
『春よ、来い』

「はあ……」
もう何度目になるかも分からないため息をつく。
狭くて薄暗い潜水艦の中で私はその時をひたすら待ち続けていた。

私は大日本帝国海軍の特殊攻撃機M6A1、晴嵐の名で呼ばれている。
魚雷や爆弾を抱えて敵にぶつけるのが己の任務だけれども、それだけなら他の攻撃機と変わらない。
違うのは目的地まで潜行し、その後浮上した潜水艦のカタパルトから射出されていく水上機だということ。
海面に着水できるように取り付けられた、橇にも似たフロートが何よりの証拠。
攻撃機でしかも潜水艦に搭載できる機体は他に例がなく、そこが特殊機たる所以である。

海軍の秘密兵器として開発された私は、普段は伊四〇〇型潜水艦の中で過ごしている。
航空機を収納できる世界最大の潜水艦、とは言え水上の航空母艦に比べれば狭いので小さく折り畳まれた状態で収まっている。
ひとたび命令が下ればものの数十分以内で組み立て作業を済ませ、そして敵地へと向かう。
でも現実は、ここに配備されてから一度も出撃した事がない。外の様子も分からないまま、徒に時間だけが過ぎていく。
搭乗員の方たちはみないい人ばかりなだけに、なかなかお役に立てない事を歯がゆく思う。
その一方で、実際に出撃するとなったら果たして上手く作戦を遂行できるだろうかという不安もある。
私はともかく、中で操縦する人はちゃんと生還できるのだろうか。
そんな思いを巡らせながら退屈で、しかし気の抜けない毎日が続いていた。


「そんなとこにずっと閉じこもっていたら精神衛生上良くないでしょ、たまには気晴らしに表に出てみない?」
ある日思いがけない誘いを持ってきたのは、二式水上戦闘機(二式水戦)ちゃんだった。
彼女は零戦こと零式艦上戦闘機さんの妹で、兄妹揃って美貌の持ち主で外見も性格もよく似ている。
フロートがついていなければ、設計者でない限り見分けがつかないだろう。
「今ちょうどお花見にはもってこいの時期なのよ」
「お花見…ですって?」
「知らないの?満開の桜を眺めながら、お弁当を食べたり遊んだりみんなでわいわいやるの」
「ええ…初めて聞くわそういうの」
「なら尚のこと行かなきゃ。これを逃したら次の年まで機会がないわよ」
「でも、いつ出撃命令が下るかもしれないし、呑気に出かけてる場合じゃ…」
「大丈夫!その日は特別に上層部の許可を貰ったから、心配しないで。国内の水上機でお花見をしてもいいという許可をね」
「国内の水上機、てことは他の方たちも来るの?」
「そう、今零式三座水上偵察機さんと手分けして声をかけて回っているの。たまにはこういう水上機だけの集まりもいいでしょ」
ここだけの話、二式水戦ちゃんは局地戦闘機の紫電改さんとお付き合いしてるとの事だけど、
どうやら今回の集まりは彼氏も抜きにした水上機だけらしい。
「そういう事なら…私も是非行ってみたいわ」
「なら決まりね。詳しい日程についてはこの紙に書いてあるからよく読んでおいて、それじゃ」
紙を渡すと二式ちゃんはそそくさと飛んでいく。かつてこれほどまでに心がときめくような出来事があっただろうか。
お花見の日が来るのを私は楽しみで仕方なかった。
453創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 11:02:43 ID:2b/369qD
いよいよ当日、潜水艦搭乗員の方たちは、限られた設備の中でもお花見に必要な持ち物を用意してくれて、
快く私を見送ってくれた。皆の温かい心遣いに感謝しながら、迎えに来た二式水戦ちゃん及び三座水偵さんと一緒に
目的地へと向かう。他の参加者は現地で直接合流するとの事。

「さあ、そろそろお花見の場所が見えてきたわ。あれが全部桜の木なのよ」
三座水偵さんの言葉に上空から見下ろすと、そこには想像もつかなかった風景が広がっていた。
ほんのり紅色に染まった、あたり一面がまるで花でできた雲のよう───
「何て……綺麗」
それ以外の言葉が思いつくはずもなく、私はただひたすら感嘆の息を漏らす。
大地に降り立つと、今度は花の雲が上に位置する状態になり、そこからひらひらと花びらが雪のように静かに舞い降りて、
少しずつ地面を薄紅に染めていく。
今まで過ごしてきた潜水艦の中とは、ここは完全にかけ離れた別天地であった。

「この桜の花はね、満開になったら大体一週間で散ってしまうのよ」
「たった一週間で?」
二式水戦ちゃんの言葉に私は驚く。
そう言えば木にも多少のばらつきがあって、まだ半分ぐらいというのもあれば、あらかた散ってしまって
代わりに枝から葉が生えはじめたものもある。
「そう。短い命だからこそ、精一杯咲き誇る姿にいっそう愛おしさを覚えて、限られた期間に美しい花を眺めながら
宴を楽しむ習わしがこの国に根付いたのかもね」
僅かの間ひときわ輝く、かくも儚く気高くそして潔い桜の木。
私はその姿が国を挙げての戦いに、全てを捧げる若者たちと不意に重なった。

「それはそうと、宴会に適した場所をそろそろ決めなきゃだけど…どうしたものかしら」
三座水偵さんに倣って辺りを見回すと、先客と思われる団体が桜の木の下のあちこちに集まってきている。
「ちょうど今が最盛期だからね、考える事は皆同じ…あら?」
少し離れたところに見える見事な枝ぶりの大きな木には、何か下に敷いてあるだけで花見客の気配はない。
しかし近づいていくと敷き詰めた緋毛氈の真ん中に荷物が、それぞれの端には二機の水上機が横たわっており、
私たちに気づくと起き上がってこう告げる。
「あ〜あよく寝た、やっと来たねみんな」
「絶好のお花見日和だからうんと早起きしないといい場所は取れないよ」
『水上機一行 予約』こう書かれた張り紙のある緋毛氈に寝そべっていたのは、零観こと零式水上観測機さんと、
小型水偵こと零式小型水上偵察機さんだった。

零観さんは今ではすっかり珍しくなった複葉機で、本来は戦艦から発射される砲弾を観測するのが仕事である。
しかし他にも対潜哨戒や船団護衛などの任務を幅広くこなしていて、また空戦も得意でついこの前も最新鋭の
敵グラマン戦闘機(F6F)を撃退したという。
一方、小型水偵さんは私と同じく潜水艦に搭載できるよう開発された機体で、三座水偵さんより一回り小さい。
金魚のような可愛らしい見た目に反して、実は米国本土への爆撃を敢行し成功した唯一の機体である。
この様な勇ましい経歴をそれぞれ持っているだけに、今回も思い切った行動に出たのだろう。
ちなみにこの二つの偉業は、いずれも同じ方によって成されたという。
私にもこの様な凄腕の操縦士が乗れば、新たな武勇伝を生むことができるのだろうか。

私たちが彼女たちの維持していた場所までたどり着くと、二機は完全に立ち上がって敬礼の姿勢を取る。
「我ら二名、早朝よりこの地に到着し、花見の宴基地の設置及び最前線の防衛に成功しました」
「ご苦労であった、貴官らの活躍に感謝する」
釣られてこちらも敬礼を返し、一瞬の間を置いてお互いに笑い合った。
「でもあなた達が場所取りしてくれたから本当に助かったわ。いい天気だけにかなりの花見客が来ているものね」
「じゃあ早速お弁当にしましょうか。沢山用意してきたから遠慮なく食べてね」
「やったー、うんと早起きしたから僕もうお腹ペコペコだよ」
お弁当という言葉に小型水偵さんは餓鬼大将のようなはしゃぎ振りである。
454創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 11:03:28 ID:2b/369qD
「……」
しかし二式水戦ちゃんがお弁当を広げ始めると、一変して周囲に沈黙が流れる。
確かお弁当は彼女が用意するから、他の機体たちは持ってこなくてもいいと前もって言われていたのを思い出す。
「どうしても今日の集まりに参加できないからせめてお菓子を作ってみんなに渡したい、
って強風姉さんの分も預かってきたの。さあどうぞどうぞ」
その言葉を聞いて、みんなの引きつった表情がいよいよ決定的なものとなった。

ちなみに強風さんは二式水戦ちゃんと同じ水上戦闘機で、紫電改さんのお姉さんにあたる。
彼女の機体を元に陸上戦闘機、紫電及び紫電改が作られたからである。
付き合っている相手のお姉さんだから二式ちゃんもまたそう呼ぶのだろう。
艦上偵察機の彩雲さんから聞いた話によると、海軍の機体は料理上手が多く陸軍航空隊から羨ましがられている程であるが、
例外として二式と強風の水戦だけが致命的なまでに下手だという。
二機の指導にあたった補給艦伊良湖さんにも手に負えないので、師匠の間宮さんが見かねて再教育を施したとの事であるが、
果たしてどの位改善されたのだろうか。
「みんなどうしたの、お腹空いてるんでしょ?遠慮しないで早く食べなさいよ!」
苛立ち混じりの彼女の促しに、そろそろ何かしら反応を返さないと気まずくなり始めたその時、思わぬ援護が入った。

「遅くなってしまってごめんなさい」
「私たちも入れて貰っていいかしら」
大きな包みを抱えて現れたのは、紫雲さんと瑞雲さんである。いずれも同じ時期に開発された水上偵察機で、
これまでにない新機能が盛り込まれているとか。
「ちょうど私たちもこれから始めるところだったのよ、どうぞ入って」
三座水偵さんの言葉で新たに二機が加わる。彼女たちが持ってきた包みは、お弁当の入ったお重であった。

「足りなくなるといけないと思ったから、私たちも作ってきたの」
これまた彩雲さんから聞いた話だけど、料理上手の海軍機の中でもこの二機の腕前は群を抜いており、
お店に出しても十分通用するという。特に製造工場が同じなだけあって、紫電改さんは幼い頃から紫雲さんの
手料理のお世話になっていて、今でもお姉さんや二式ちゃんに内緒で食べに行っているのを何度か目撃したとの事。
「わあすご〜い、美味しそう」
先ほどまでとは打って変わって、皆の表情が輝き始める。確かに二式ちゃんの用意したものと比べて、
申し訳ないけど絵にたとえると、一流画家がカンバスに描いた色彩豊かな油絵と、子供がクレヨンで殴り描きした
スケッチブックの落書きぐらいの差がある。
「じゃあ早速、いただきまーす」
当然の如く、みんな紫雲さんたちのお弁当に手を伸ばそうとしてる。
でも、私は…

「ちょっと、晴嵐ちゃん?」
「そんなもの食べたらお腹壊すよ?」
「ありがとう…二式ちゃんの作ってくれたお握り美味しいわ」
周囲の慌て振りをよそに、私は二式ちゃんのお弁当箱からお握りを一つ取り、口に運んでにっこりと彼女に笑いかける。
いくら不器用とは言え、彼女なりに一生懸命みんなのお弁当を用意してくれたのだから、
そんな気持ちを踏みにじる真似はしたくない。そして見た目の割に、お握りはそれほど不味くなかった。
やはり間宮さんの再指導がそれなりに効果が出ているのだろう。
尤も潜水艦暮らしが長い私は、皆より味覚に敏感でないのかも知れないけど。
455創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 11:04:14 ID:2b/369qD
「どういたしまして。晴嵐ちゃんに気に入って貰えて何よりだわ」
私の笑顔につられて、それまで俯いて唇を噛みしめていた二式ちゃんもぱっと明るさを取り戻した。
続いて強風さんが作ったお団子も勧められたのでそれも頂く。やはり食べられなくはなさそうである。
「…今度はもっと上手く作れるように頑張るからね」
少し照れたように彼女は私の耳元でそっと囁いた。
そんな私たちのやり取りを見ていた他の水上機もはっと気づき、恐る恐る二式ちゃんのお弁当に手を伸ばし始める。
私が毒味係をして安心したのか、或いは先に美味しい方に手をつけてしまったらもっと食べられなくなると考えたのだろう。
ともあれ二式ちゃんの面目は保たれ、ひとまずこの場は収まった。

「…ちょっと塩味が強すぎるかしら。煮物は特に調味料の加減と入れるタイミングが重要なのよ」
「はいはい分かりました先生、次から気をつけます」
紫雲さんの文字通り辛口の批評にも、余裕で返せるほど二式ちゃんは機嫌を取り戻していたので私は安心する。
そう言えば彼女は補給艦だけでなく、最近は紫雲さんのところにも料理を習っていると、これも彩雲さんからの情報である。
実は同じ偵察機で名前に雲がついているのもあって、二機はとても仲がいいらしい。

一通りご馳走を食べた後、私は瑞雲さんからお酒を勧められた。
注がれた器の中に、風に吹かれて落ちた桜の花びらが入り込む。
そのまま飲んでしまっても構わないという言葉に従うと、仄かな香りが口の中に広がった。
花の他に葉っぱもよくお菓子の材料に使われると彼女に教えてもらい、つくづく桜は見るだけでなく五感で楽しむものだと納得した。

その後私たちは歌ったり遊んだり他愛のないお喋りをしたりと、桜の木の下で思い思いのひとときを過ごす。
楽しい時間はあっという間に過ぎていき、気がつくと太陽が既に西の方角に傾き始めていた。
「ああ楽しかった、そろそろお開きにしましょうか」
「夜の桜もまた格別だけどね。晴嵐ちゃんはまだ見たことないでしょうから見せてあげたいな」
夜桜が見たくない訳ではないけれど、私はこれで十分満足している。
月光さんの様な夜間戦闘機なら見る機会はいくらでもありそうだが、残念ながら私は夜間の訓練は受けていない。
あまり帰りが遅くなると潜水艦の方達にも心配かけてしまうし、今まで存分に満喫したのだから
これ以上贅沢を言ったら罰が当たるだろう。

しかしそんな贅沢な望みは思いもよらぬ形で実現した。陸上爆撃機の銀河さんが私たちの様子を見に来てくれて、
何でも陸軍の五式戦闘機さんとのお花見を済ませた帰りだという。彼女も月光さんと同じく夜間の出撃が可能な機体であり、
なんと夜桜の見事な場所を案内しながら帰り道を送ってくれると言うのである。願ってもない申し出に私たちは大喜びした。
確かに暗闇にうっすらと白く浮かび上がる姿は、昼間にはない艶やかな美しさがある。
夜桜を十分堪能しつつ、私たちは安全に帰途につく事ができた。

「今日はとっても楽しかった、また水上機だけで集まりたいね」
「是非そうしましょうよ。今回来れなかった方達も含めて」
別れ際、誰もが口々にそう言い出す。

「みんな本当にありがとう、今日の事は決して忘れない…」
最後の機体が見えなくなるまで、潜水艦の上から私は手を振り続けた。

(これで…思い残すことなく、お国のために身を捧げられるわ、私…)
456創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 11:05:03 ID:2b/369qD
「──その日は私の生涯の中で最も輝いていた一日でした」
それから長い年月が過ぎて21世紀、展示機となった晴嵐はかつての思い出を語る。
「何しろ潜水艦の中でずっと過ごしてきたものですから、こんなに美しい景色があるとは想像もつかなかったのです」
合衆国ワシントン郊外、ダレス国際空港に隣接する航空博物館、その一角に旧日本軍機と共に彼女はひっそりと身を寄せている。

あの水上機たちのお花見から数ヶ月後、ついに晴嵐の所属部隊に出撃命令が下った。
作戦内容は西太平洋ウルシー環礁に停泊する米艦船への攻撃、しかし決行日の二日前に日本は無条件降伏を受け入れ、
ここに戦争は終結したのである。用済みとなった晴嵐は折り畳まれた状態のまま射出され、洋上廃棄となった。
こうして活躍の場を再び得ることのないまま、彼女は歴史の表舞台から永遠に退いたのであった。
今ここにある唯一の現存機体は、製造工場に残っていたのを米軍が持ち出して、後年復元したものである。
日本国内には存在しない旧軍機を、戦勝国アメリカがかなり良好な状態で、
それなりの数を所有しているのは歴史の織り成す皮肉と言うべきか。

「水上機の仲間たちと過ごしたあの日の事は、この先も決して忘れる事はないでしょう」
この博物館には何種類かの旧日本軍展示機体があるものの、晴嵐を除き水上機の姿は見当たらない。
結局、水上機だけの集まりはあのお花見が最初で最後となった。
最早祖国の大空を飛び回るのも、仲間たちとの再会も二度と叶うことはないだろう。
しかし彼女は、己の胸中に秘めた思いを明かす事なく、美しい思い出話を語るのみである。

そんな晴嵐の話に、熱心に耳を傾ける制服姿の青年がいた。
祖父の代から飛行機乗りで、彼も迷わずこの道を選んだという。
「この度日本への配属が決まりました。今日ここを発つのですが、その前にあなたの話が聞けて良かった」
「それはそれは…季節が春ならば、今でも桜は見られるでしょうか」
「ええ、向こうの隊員からちょうどこれからが見頃だと聞かされております。今から楽しみでなりません」
「まあ良かった…日本の桜を堪能してきて下さいね」
「有り難うございます、どうかあなたもお元気で。向こうに着いたら桜にまつわるあなたの美しいお話を、
必ずや多くの方々に伝える事を約束いたしましょう。それでは」

晴嵐に笑顔を見せながら敬礼し、青年は去っていく。
その笑顔はかつて半世紀以上も前、彼女の傍らにいた者たちと寸分違わぬ表情であった。
457以上>>452-457代理投下:2009/05/07(木) 11:06:02 ID:2b/369qD
本文は以上です。
今回は本スレにあったお花見ネタから思いついたもので、向こうにある長編とはまた別の話です。
できればシーズン中に書き上げたかったのですが、時間がかかりすぎて時期からずれてしまいました。
この様にある程度史実に基づきながらも、兵器を擬人化し時代考証も無視した何でもありのカオスな内容が
紫電改スレの特徴です(他にも大和、空母加賀、ドイツ第三帝国などのスレもあります)。
ちなみに本スレでは水上機=女性イメージが定着しており、全員女言葉なのはそのためだったりします。

専用スレを立てようと思い立ったきっかけは、この様な独自性から既存の創作発表板のスレでは
収まりきれないのではというのと、軍事板の趣旨から離れすぎた創作性の高い書き込みが
本スレでは敬遠される様になったので、こちらに別スレを立てて完全に棲み分けようと考えたからです。
(もちろんこの場合は他の軍板嫌スレを含めたテーマでないと、維持するのは厳しいと思いますが)
もっと需要が高まってから専用スレは検討していきたいと思います。
458創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 19:33:31 ID:t/C9Oz6G
>>450
LRADは高い機材だし、良化隊の狙撃兵に真っ先に壊される気が
459創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 19:34:19 ID:t/C9Oz6G
上の液体は研究中だし
460創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 20:46:58 ID:gYjOu20D
>>445
 そこのサイトに乗ってる「浮遊式回転バリア」って何だ?と思ったが、空中でなく水に浮くバリアか……ああびっくりした。
461創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 21:29:43 ID:6MDdwZRg
>>458
暴徒になりすました良化隊や親良化委員会団体を想定してで
銃火器で反撃されたら、軽機の鉛ダマでと思いまして
462創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 21:45:14 ID:BVnRxMtj
>>452-457
う〜ん、まぁ擬人化スレならOKっぽいけど
このスレじゃあんまり需要なさそうだな…
463431:2009/05/07(木) 23:22:31 ID:2T2NLLGJ
>>462
ご意見ありがとうございます。
こちらには不適切な内容の文章を発表してしまいすみませんでした。
正直なところ擬人化スレでも受け入れられるかどうか自信がありません。
擬人化の対象となる事物にかけ離れた行動を取らせてしまっていますので…

やはり当面は行き場のないスレへの投稿が無難でしょうか。
464創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 23:34:51 ID:R2iU0al0
擬人化はあそこ総合スレだからだいじょうぶなんでないすか
絵とかSSとか入り乱れてるし、比較的動きも穏やかだしね

擬人化対象にそのものとかけ離れた行動させてるので不安なのであれば、
エピソードを下調べして史実路線でいくとか工夫してみるといいかも

晴嵐はウルシー行き以外目だった作戦行動もないだろうから、エピソード的にむずかしい機体だよねw
465創る名無しに見る名無し:2009/05/13(水) 22:59:10 ID:jLzSGrcI
上げ
466創る名無しに見る名無し:2009/05/17(日) 02:00:46 ID:FBinz8nt
初めまして防衛女子校スレから来ました。防衛女子校スレでSSを書いていた人がこちらにいるらしくリンクが貼られていました。また来ます。
467創る名無しに見る名無し:2009/05/17(日) 08:30:48 ID:YFZbm1Hl
>>288
HPが見られません
またUPしてください
468創る名無しに見る名無し:2009/05/17(日) 11:20:56 ID:QDiO4h1H
1行何バイトまで書き込めるんだろ?
256Byteだと、書きづらいんだけどなぁ〜
469創る名無しに見る名無し:2009/05/17(日) 20:00:34 ID:QDiO4h1H
他板投下の推敲版投下はありかな?
ボリュームは倍になってるけど?
470創る名無しに見る名無し:2009/05/17(日) 20:05:43 ID:grtnY+Go
>>469
お願いします
471創る名無しに見る名無し:2009/05/17(日) 20:14:57 ID:grtnY+Go
>>469
図書館戦争のSSばかりなので別の視点のSSを読んでみたいです
472創る名無しに見る名無し:2009/05/17(日) 20:25:48 ID:grtnY+Go
防衛女子校のスレを見ている人もこちらに来ている人も
こちらにいるみたいだから交流しましょう
473創る名無しに見る名無し:2009/05/17(日) 22:10:50 ID:aDZ97YzQ
>>469
マルチは必要としておりません
スレを汚染せず、隔離病棟にお引き取り下さい
474創る名無しに見る名無し:2009/05/18(月) 06:11:34 ID:aYW096DY
俺は歓迎だ。たぶん軍事板の防衛女子校の常連だと思うが、あそこもいろいろあるからな。
475創る名無しに見る名無し:2009/05/18(月) 08:35:16 ID:YLnYk6Dh
実質図書館戦争以外の作品は投下し辛い空気になりつつあるからな…
少しでも流れが変わればいいけど。
476創る名無しに見る名無し:2009/05/18(月) 11:25:21 ID:46rUMtRg
キャラ萌なんかいらねーよ
477創る名無しに見る名無し:2009/05/18(月) 12:44:32 ID:8Le4gLVF
空気なんて関係ねえ
第一、図書館戦争知らんし
478創る名無しに見る名無し:2009/05/18(月) 19:39:05 ID:MJ67ENpj
>>468
面白ければ大歓迎です
479創る名無しに見る名無し:2009/05/18(月) 20:25:41 ID:sdgocrPl
>>475
そんな空気あるか?
オレはまったく感じなかったぞ

今だって投下するためにコツコツ書きためてる最中さ
気にせずどんどん投下しちゃっていいんじゃね?
むしろ図書館戦争氏もそれが希望だと思うが
480創る名無しに見る名無し:2009/05/19(火) 12:11:19 ID:Z0vvJ1DO
図書館戦争とモロかぶるが華氏451で書いていい?w
リメイクされることだし
481創る名無しに見る名無し:2009/05/19(火) 13:26:40 ID:iZq5LPVk
図書館戦争とそれ以外の作品投下に対する反応があからさまに違うからな…
何か書こうと思ったけど見送るわ
482創る名無しに見る名無し:2009/05/19(火) 15:12:15 ID:ly9mbDtB
>>480
それは見てみたいな
でも華氏451って軍事モノだっけ?
483創る名無しに見る名無し:2009/05/19(火) 20:09:47 ID:Z0vvJ1DO
軍事一直線ではないけど焚書や本の摘発の際に民間と衝突があるから、
なにかしら軍事っぽく書けるかなーと思って
484創る名無しに見る名無し:2009/05/19(火) 21:48:31 ID:ly9mbDtB
>>483
まだ書いてないんだ?
じゃあオレが先に投下してもいいか?
ついさっき完成して、今は推敲中なんだが…
485創る名無しに見る名無し:2009/05/19(火) 22:00:59 ID:Z0vvJ1DO
どうぞどうぞ
486創る名無しに見る名無し:2009/05/19(火) 22:33:31 ID:ly9mbDtB
では遠慮なく…
487フェアバーンによろしく:1:2009/05/19(火) 22:35:34 ID:ly9mbDtB
骨の砕ける音とともに、ヤンキーがその1が地面に崩れ落ちた
それが、少年とオジサンの出会いだった

7月の終業式の日、明日から夏休みだというのに少年の顔は暗い。トボトボと家に向かうさなか、いつも通りかかる公園から怒声が聞こえてきた
こっそり木陰に隠れて様子をうかがうと、一人のホームレス風のオジサンが地元でも有名なヤンキー4人組に囲まれている
不運にも目をつけられたオジサンだが、4人に囲まれても表情一つ変えずニヤニヤと笑っている
体格はそう大きくない。ボサボサの髭と髪のせいで年齢はよくわからないが、たぶん40歳くらいに見える
怒鳴るのに飽きたヤンキーその1がオジサンの襟首をつかんだ…その瞬間、オジサンの手が動いた

オジサンの体が一瞬沈んだ…と同時にヤンキーその1の顎をオジサンの手の平が撃ちぬいた
操り人形の糸が切れたように、ヤンキーその1が白目をむいて垂直に地面に崩れ落ちる
一瞬茫然となり顔を見合わせたヤンキーその2とその3、しかし立ち直りも早い。次の瞬間には怒声とともに同時にオジサンに襲い掛かった。一人はパンチ、一人

は蹴りを放つ
しかしオジサンは手足が命中する前に一歩前に踏み出して二人の間に入り込んだ
蹴りを放ったその3の顔に手を掛けて地面に叩きつけると、振り向きざまに掴みかかってきたその2の顔にカウンター気味の肘をめり込ませた
後頭部を強打して白目をむくその3の横に、鮮血を吹き出しながらその2が倒された

仲間3人が一瞬で倒され、残るヤンキーその4の選択肢は…
「てっ、テメェ、ぶ、ぶっ殺す、すっぞ!!」
そう叫ぶその4の手にナイフが握られている
顔を真っ赤にして叫ぶその4を見ても、オジサンの表情は変わらない
「それで俺を刺そうってのか?まぁやってみな」余裕の表情でその4の正面に立ち、両手を左右に大きく開いた
後戻りできなくなったヤンキーその4が怒声とともにオジサンに突っ込んでいった
オジサンは突き出されたナイフを体をひねってかわすと同時に、ナイフを持っていた手を掴み、逆の手でその4の顔に肘打ちを入れた
そのままその4の頭をつかみ、鼻っ柱にひざ蹴りを叩き込む…うめき声もあげず、その4は仲間たちと同じように地面に崩れ落ちた
488フェアバーンによろしく:2:2009/05/19(火) 22:37:37 ID:ly9mbDtB
汗一つかいていないオジサンは、鼻歌交じりにヤンキー達の懐をあさっている。やがて何枚かの紙幣を手に嬉しそうに立ち上がって歩き始めた
少年が慌てて後を追うと、近くの川に架かっている橋の下に入っていった
堤防を降りてそっと橋の下を覗く少年、しかしそこには誰もいない…

「よぅ、ボウズ。何か用か?」
背後から声をかけられて慌てた少年、そのまま逃げようとするが襟首を掴まれてしまった
「まぁ待て待てっ!暴れるなって…」
オジサンが手を離したはずみで少年は転び、背負っていたランドセルの中身がいくつか飛び出した
「おいおい、ランドセルの中身が…」
一枚の紙を拾い上げて目を通すオジサンの顔が怪訝なものに変わっていった
「”せいきゅうしょう”って、なんじゃこりゃ」
白い紙に手書きで”せいきゅうしょう 50まん円”と書かれている
少年は立ち上がり、他のランドセルの中身を拾い上げながら口を開いた

「それ…払えって…」
「今時のガキは50万なんて大金持ってんのか?すげぇなぁ」
「…違うよ、それは…僕が美帆ちゃんに迷惑かけた”いしゃ料”だって…」
「?」
「僕が美帆ちゃんのことを好きだって言ったら、タカシ君が”お前みたいなウジ虫君が美帆ちゃん好きになるなんてありえねー”とか言って…」
「あぁ…」納得したようにオジサンは手を叩いた「要するにお前さんはイジメられてんだ」
「…」恥ずかしそうにうつむく少年
「で、その”美帆ちゃん”に迷惑かけたからってんで、その”タカシ君”ってのに絡まれてんだな?」
「タカシ君は背も大きいし、サッカークラブのエースだから…仲間も多いし、だから…」
「相変わらずくっだらねぇなぁ〜ガキのイジメってやつは…で、ボウズは俺に何の用だったんだ?」
「え、あの…」
「だいたい話は読めてるけどな。要するにボウズは、俺に戦い方を教えてほしいんだろ?さっきの公園での一件も熱心に見てたみたいだしな」
「え…気づいて…」

オジサンは少年の両肩に手を置いた
「やめとけ、ボウズ。俺の技はガキが使っていいもんじゃない。そんないいものじゃないんだ」
489フェアバーンによろしく:3:2009/05/19(火) 22:39:50 ID:ly9mbDtB
まるで別人のように真剣な顔をするオジサン、でも少年も視線を上げてオジサンに真正面から向き合った

「僕は…強くなりたいんです!美帆ちゃんの前であんなにバカにされて…彼女も僕のことをバカにして…でも、もう弱いままでいたくないんです!」
「ダメだ、オレはそんなに暇人じゃねーよ。強くなりたかったら空手でも柔道でもいくらでもあるだろ?オレとは違って優しく教えてくれるぞ」
「母さんが…月謝なんて出してくれないんです。ホントの母親じゃないし、父さんはずっと海外に行ってるし…」
「じゃあ本でも読め。さっさと帰って図書館にでも行くんだな」

そう言ってオジサンは橋の下に置いてある段ボールハウスに向かっていった…その背中に向けて、少年が飛びかかっていった
「…!な、何をしやがる!」
腰にしがみつく少年の腕を取り、手首を捻って地面に叩きつけた
「うぐっ…!」
ロクに受け身も取れず少年の顔が苦痛にゆがむ。しかし数旬の間をおいて立ち上がり、またもオジサンに飛びかかっていった
「う…うわぁぁぁ!」
と叫び声をあげて、今度は正面から殴りかかる。オジサンはその手を取って少年の足を払った
少年の体が地面にたたきつけられる瞬間、取った手を引きつけて地面に当たらないようにする

「どういうつもりだ?」
「…襲って、かけられた技を盗むんだ…マンガで見たから、きっと…」
オジサンの顔が呆れたように歪んだ。そして少年の手を離した
「バッカ野郎…そんなんで強くなれたら誰も苦労しねぇっての。体のできてないガキがそんな事やっても怪我をして終わりだぜ」
「…」
「そこまでして強くなりたいんか?」
「…」

少年は無言のまま膝をそろえて座り、コクリと強く頷いた
オジサンが天を仰ぎ、大きな溜息を一つ吐きだした。そして少年に向き直って言った
「…教えてやってもいい」
「ホントですか!?」
少年が嬉しそうに目を輝かせた
「ただし、条件がある。”オレの事を誰にも言うな””俺の教えた技術を悪用するな”そして…」
そこでオジサンの腹が唸り声をあげた
「…毎日、食い物を持ってこい。いいか?」
少年は大きくうなずいた
「よし、じゃあ明日から教えてやる。時間のあるときでいいからここに来い。それと…今、何か食い物があったらちょっと分けてくれ」
490フェアバーンによろしく:4:2009/05/19(火) 22:41:58 ID:ly9mbDtB
翌日からオジサンの訓練が始まった
「まずは基礎体力と体の使い方だ。ストレッチと補強運動は毎日実施だ」
じっくり時間をかけてストレッチして体の節々を伸ばす。そのあとは補強運動…要するに筋トレだ
「拳立ては特に重要だ。拳の使い方を学べるからな…素人はだいたい手首が曲がってるもんだが、それで殴ると自分の手を傷めることになる」
砂利の上で拳を作り、その上で腕立て伏せ…拳立てを何回も繰り返す。さっそく中指の付け根が腫れ上がった
「首を鍛えろ。殴られても、絞められても、投げられても平気なようにな」
あおむけに寝て頭を地面から上げる、これだけでも少年の首が悲鳴を上げた
始まって1時間で少年の服が汗でびしょ濡れになった
「夏休みの終わりまで40日。いかんせん時間がないからな…楽ができると思うなよ。次だ」

前転、後転、逆立ちといったマット運動。しかし下が土や砂利なので前転するだけで背中が痛い
「痛いのはうまく回ってない証拠だ。なに、目が回る?それもうまく回ってない証拠だ。自分の体がどういう風に動いているかを感じろ」
基本の立ち方、足さばき。足の親指の付け根を基本にして動く
「動いてる限り、踵が地面に着くことはありえないと思え。素早い動きこそ戦闘を有利に進める第一歩だ」

訓練の合間を縫ってオジサンがいろいろな話をしてくれる

「この技…というか技術はな、20世紀の頭にイギリス人のウィリアム・フェアバーンっていう人が考え出したんだ。もう200年以上前だな。彼は上海という街で警察官をしていたんだ。上海って知ってるか?」
「知ってるよ。大漢中の都市でしょ?社会の時間に習ったよ」
「彼は日本の柔術や大漢中…当時の清国で伝わっていたカンフーの技術を取り入れて、軍人や警察官に必要な格闘技術というのを作り上げていったんだ。WWUC

QC…通称”フェアバーン・システム”だ」
「”フェアバーン・システム”…」
「格闘の技術だけでなく、ナイフや棒術、そして銃の射撃まで組み合わせた総合的な戦闘術だ。このフェアバーン・システムを元に各国の軍隊や警察は独自のCQ

C(近接戦闘術)を発展させていったと言われているんだ」
「オジサンはどこでこの技を習ったの?」
その質問を聞いた瞬間、オジサンの口が重くなった

「…それは、内緒だ」
「そうなの?ふ〜ん…」空気を読んで少年が話題を変えた
「でもオジサンもこういう風に特訓したことがあったんだ?」
「そりゃそうさ〜こんなもんじゃなかったぞ。マジで何度か死にかけたからな…」
何か遠くを見るような目をしてオジサンはつぶやいた

しばらく無言で少年が持ってきたパンを頬張るオジサン。が、パンを食べ終えると突然その口を開いた
「ボウズ、強くなれ…男は強くなけりゃ何をやっても説得力がないからな」
「え?…うん、わかった」
「でもな、強くあると同時に正しくあれよ。そうでなきゃその強さに説得力がなくなる」
「正しく…?」
「オレはな、ボウズ」少年の方に向き直る
「強さが正しいと信じてきた。弱い国家、弱い民族、弱い人々が弱いが故に虐げられる様を見てきた。だからこの国は強くあるべし、と信じた」
ポカンとする少年に構わず、オジサンは話し続ける
「だが違った。強さだけでは正しくなれんことを知った…多くの血が流れた後でだがな」
そしてオジサンは立ち上がった
「正しくあるためにオレにはやらなきゃならんことがある。いつかお前さんもわかってくれる、と信じたいもんだ」
「なんだかよくわかんないけど、僕はオジサンのこと、信じてるよ」
少年がそういうと、オジサンはうれしそうにほほ笑んだ
「よし、じゃあ続きをやるか!お前さんを一人前の戦士にしてやるぞ!」
491フェアバーンによろしく:5:2009/05/19(火) 22:44:44 ID:ly9mbDtB
夏休みも中盤に入ると、少年の体にも目に見える変化が表れてきた
白かった肌は赤色から褐色に変わり、細かっただけの腕に凹凸が見え始めてきた
肩と背中の筋肉が少しずつ、だが確実に盛り上がり続けており、腹筋も薄っすらと割れ始めてきている
最初の頃はできなかった拳立ても楽々こなせるようになり、マット運動から発展した受け身はコンクリートの上でも取れるようになってきた
それに合わせるように、オジサンは少年に技を教え始める

「打撃技、投げ技、関節技とあるが…すべての技は繋がっているというのは覚えておけ。まずは打撃技、突き技に蹴り技、肘打ち…」
「あれ?オジサンは手のひら使ってたのに、突き技って拳で殴るんだね?」
「アゴとか鼻っ柱とかは掌底…手のひらで十分だ。掌底は力をダイレクトに伝えられるから重宝するぞ。でも腹とか殴るのに手のひらじゃ威力ねーだろ?」

肘打ちやヒザ蹴りなどの技は、相手を掴んでから使うことも多い
「間合いが近くても使えるからな」
そう言いつつオジサンは少年の腕や首を掴み肘打ちやヒザ蹴りを叩き込む
あまりの痛さに涙がにじむが、それでも少年はオジサンに立ち向かっていった
「関節技や投げ技はこちらから仕掛ける系の技はあまりない。相手の動きを利用するんだ。襟首を掴んでみ?」
言われたとおり少年がオジサンの襟をつかんだ…瞬間、手首の関節に激痛が走った
「人間の関節がどういう風に動くかよーく考えろ。教えられる技は少ないが、技は人間の間接分だけあると思え」

技につなげる受け技も習う
「人間の体の中心…正中線だ。これが防御の基本となる。軸をずらして相手の攻撃をかわし、軸で回って相手の攻撃を受け流す」
少年が突き出した棒を体を捻ってかわし懐に入る。次の瞬間には少年の体が宙を舞っていた
しかし少年も慣れたもの、背中を丸めて地面を転がりつつ立ち上がり、そのまま投げ終わった態勢のままのオジサンに襲い掛かった
「おぉっ!?」
顔面に放たれた少年の拳をかろうじてガードするが、そのまま少年がオジサンの頭を掴み下に引き付けた。その先には少年の膝頭が…
その瞬間、少年が一瞬ためらいを見せた。その隙を逃さずオジサンが少年の足の付け根を押さえて膝を止め、そのまま足を取って少年の体を押し倒した
「あいって…」
後頭部から叩きつけられて少年の目に星が舞った
「…まだまだ、だな」
オジサンが差し出した手を取って、少年が立ち上がった
「もうちょっとだと思ったんだけどな〜」
「ボウズ、最後の最後で躊躇っただろ?」
「え、そうかな…」
「やっぱりな…まだボウズには足りないモノがあるな」
「そうなの?」
「まぁまだ早いか…今は技を身に付けていけ、さぁもう一本だ」
492フェアバーンによろしく:6:2009/05/19(火) 22:46:47 ID:ly9mbDtB
8月30日…台風が近づいているらしく空は厚い雲に覆われ、いつも見える真っ赤な夕日も今日は見えない
「明日で夏休みも終わりか…ボウズ、宿題は終わってんのか?」
「大丈夫だよ。僕、勉強はできるんだ」
「…そーゆーことを言うからイジメられんじゃねぇか?まぁいいか。今日の訓練は終わりだ」
「ありがとうございました!」
そこでオジサンが少年の顔をじっと見た
「…ボウズ、明日は台風が来るらしいな」
「うん、そうだよ?」
「それでも、明日は絶対に来いよ。大事なことを教えなきゃならんからな」
「大事なこと?」
「そうだ、この夏休み中に教えたことで一番大事なことだ。必ず来いよ」

翌日の朝、台風直撃の嵐の中を少年は歩き、なんとか橋の下までたどり着いた
「オジサン、いないの?」
増水した川の水が橋の下まで近づいている。避難したのかな…とあたりを見回すと、橋と堤防の付け根付近に黒い服を着た男が立っていた
「えっと…オジサン…だよね?」
昨日までとはあまりにも違う様子に少年は驚いた
伸び放題のボサボサだった髪は上部を残して地肌が見えるほど刈り込まれており、不精髭はすべて綺麗に剃り落とされている
ボロボロの服は黒い服…生地の分厚い戦闘用の軍服に着替えられており、穴のあいたスニーカーは磨き上げられた軍用ブーツに変わっていた
そして何よりもオジサンの様子が違った。昨日までのどこかのんびりした様子とは違い、今日はその眼に殺気が宿っている
「来たか…」
そう呟きオジサンは少年に近付いてきた
「今日が最後の訓練だ。これから大事なことを教える」
少年の数歩手前でオジサンは足を止めた
「オレの教えた技術は全て戦い人を殺すためのモノだ。だがどんなに高度な技術も、使用する者の意志がなければ意味がない」
「な、なんか怖いよオジサン…」
少年の目に怯えの色が浮かぶ。それに構わずオジサンは腰から何か光るものを取り出した
「その意志を身につけろ。こいつでオレを殺せ」

光るモノが投げられて地面に突き刺さった
ナイフ、しかもチンピラが使う小さなジャックナイフではない
乗用車の車体ぐらいなら容易に引き裂くことのできるブレードに、血で濡れても滑らないように幾重の溝が刻まれたグリップ、軍用のコンバットナイフだ
「ハンデをやろう、オレは素手だ。さぁ、ナイフを取れ」
「え…む、無理だよ…」
「じゃあオレがお前を殺す」
風の音が鳴った、と同時にオジサンが間合いを詰めた
防ぐ間もかわす間も無く、オジサンの拳が少年の脇腹に突き刺さった
ろっ骨を折らないように慎重に計算されたその一撃、しかし今まで食らってきた打撃技とはケタが違う衝撃に、少年の体がくの字に折れ曲がった。内臓が歪み思わず胃の中身すべてを吐き出した
酸っぱい胃液の匂いが鼻に残る、が、何とかその場に立ちあがった
「お…オジサ…」
「どうした、それで終わりか。ならばこの技を使う資格はない。ここで死ね」
左の拳がアゴに命中、脳が揺さぶられ視界がぐにゃりと歪む…そのまま首の後ろを掴まれてひざ蹴りを腹に叩き込まれた
その場に崩れ落ちた少年の上にオジサンが馬乗りになる。そして顔面を平手ではたいた

「どうした、おい!テメェは強くなりたいんじゃなかったのか!?さぁ、やってみろ!殺してみろ!でなきゃ死ぬぞ!」

オジサンの手が少年の首を締め上げる。薄れていく意識の中、少年の視界に地面に刺さったナイフが入った
何も意識はしなかった。少年はナイフを地面から抜き取り、オジサンの脇腹に突き立てた
493フェアバーンによろしく:7:2009/05/19(火) 22:49:21 ID:ly9mbDtB
刃先が脇腹にのめりこむ寸前に、オジサンの手が少年のナイフを持つ手を止めていた
しかし少年は止まらない。オジサンの顔をもう片方の手で引っ掻き、ひるんだところでオジサンの耳を掴んだ
そのまま地面に引き込むと同時に自分の体を回転させる。上下が入れ替わりオジサンの上を取った…瞬間、オジサンの喉元にナイフを突き刺した
ナイフが深々と突き刺さる…水を吸った地面に
いつの間にか少年の視界からオジサンが消えていた。背後に気配を感じ、自らが圧倒的不利な立場にあることを悟った少年
しかし諦めず手元の石を取って振り向くと同時に石を振り上げた…が、そこには石を振り下ろす対象はいなかった
オジサンは少年の数m先に立っていた。今までの殺気は消え、いつもの飄々とした雰囲気がそこにあった

「よろしい、合格だ。これでもう大丈夫だな」

我に返った少年の体が震えてきた

「殺す気の相手に立ち向かい、ためらわず殺すつもりで技を放った。そして負けそうになっても最後まであきらめなかった。十分だ」
「あ、あの…オジサン…僕…」
歯の根がカチカチと音を立てる。雨に濡れた体のせいじゃない、殺し合いの恐怖が今ごろになって少年を襲う
「これでオレの教えることはなくなった。さぁ、行け。もう二度とここには来るな。オレの事も忘れろ。いいな?」

恐慌に駆られた少年が泣きながら叫び、橋の下から走り去って行った


どれくらい時間がたったのか、いつの間にかオジサンの背後にスーツ姿の男が一人立っていた
オジサンよりは頭一つ分ほど高く、年は20代に見える。同じように頭頂部だけを残して短く切った髪型、服の上からでもわかる鍛えられた体躯
全身からにじみ出る剃刀のような気配を隠しもせず、男はオジサンのそばに近づいた
「中尉」
男がオジサンの耳そばでささやいた
「わかってる」
「しかし…」
「言うな、またその手を子供の血で染めるのか?オレはもうお前らにそんな任務はさせたくない」
そして中尉と呼ばれたオジサンは、男の方に向きなおった
「大丈夫だ、アイツはオレの事を喋らんよ。お前たちの弟弟子だ、信じろ」
男が口の端を釣り上げた。いや、それは精一杯の笑顔だったのかもしれない。しかしすぐに口を結ぶ
「迎えは?」
「上で待っております」
「わかった、行こうか」
そう言って中尉とその部下は、堤防を上がっていった
494創る名無しに見る名無し:2009/05/19(火) 22:50:40 ID:ly9mbDtB
連投規制があるんでちょっと休憩
今日中に続きを投下します
495創る名無しに見る名無し:2009/05/19(火) 22:58:35 ID:dW+p+uvD
投下乙
496フェアバーンによろしく:8:2009/05/19(火) 23:17:01 ID:ly9mbDtB
翌朝、台風一過の青空の下を少年は学校に向かって歩いていた
昨日は一日中、恐怖で体が震えていた
激しい痛み、殺されるかもしれない恐怖、そして…人を殺すという恐怖
ナイフを握ったあの瞬間、少年は確かにオジサンを殺すつもりだった
でもそれは殺されるかもしれなかったから…殺されそうなら人を殺してもいいのか?
布団の中で自問自答を繰り返し、でも結局、結論は出なかった

ハッキリとわかるのは…自分は生き残る道を選んだということ、そしてそのための手段を手に入れることができたということ
強くなるということは…こういう力を手に入れることだったのか
そして正しくあれ…正しくなければ力なんか持っちゃいけないんだ
正しくあるというのはどういうことか?今はよくわからない、でも理不尽に抗うのは正しいことだと思う。そのためにこの力を手に入れたんだ

翌朝目覚めたときには、心の中の迷いはすべて吹っ切れていた
顔の傷の件を義母は聞いてきたが、転んだといって適当にごまかした
どうせ父親への義理があるから聞いてきただけ、自分のエステのことにしか興味のない人なので適当にあしらっておけばいい
清々しい気分で、少年は学校の門をくぐった

始業式が終わり、連絡事項がいくつかあってそのまま終礼になった
少年は荷物をまとめてクラスを後にしようとする。しかしその前に幾人かの影が立ちふさがった

「なーにシカトして帰ろうとしてんだよ」
例のいじめっ子、タカシ君と取り巻き連中だ
「50万持ってきたのか?慰謝料払えって言ったよなぁ?」
「そうだそうだ!払えよ」
「美帆ちゃんにメーワクかけたんだから当然だよな〜」
まだ残ってるクラスメイトも巻き添えは御免と目を逸らす。その中には例の美帆ちゃんもいた
嫌悪感を露わにした目をこちらに向けるが、それが自分に向いてるのかタカシ君たちに向いてるのかはわからない
ていうかどうでもいい

今まで何でそんなに怖かったのか、目の前の連中には何の迫力も無い。昨日のオジサンに比べたら、電柱にくくりつけられている看板と何の違いも無い
「そんなお金持ってないよ。常識で考えたらわかるよね?」
わざと挑発的に言ってると、案の定タカシ君たちの表情が少し険しくなった

「なんだと…メーワクかけたら慰謝料払うのがジョーシキだろうがっ!」
「じゃあ裁判所にでも行ったら?慰謝料の請求なんて裁判でもやんないと無理なんだよ。知らないの?」
タカシ君の顔色が変わった。取り巻き連中も顔を見合せて何やらヒソヒソと話している
「じゃあ僕は帰るね。塾があるんだ」
そう言って連中の間を抜けようとするが、頭半分くらい大きい取り巻き連中の一人が少年の襟首をつかんだ
「待てよ、話は終わっ…」
497フェアバーンによろしく:9:2009/05/19(火) 23:21:30 ID:ly9mbDtB
最後まで言わせる気は少年には無かった
襟首をつかんだ手の肘関節を上から手刀で叩き落とすと、重心の崩れた相手の顔が眼の高さにまで落ちてきた
そのまま相手の髪を掴み、姿勢の崩れる勢いを利用して下に引き込む…と同時に右ヒザを顔面に叩き込んだ
(ヒザ蹴りは足首と脛を一直線にすると、膝が尖って効果が倍増するぞ。引き込む力と腰を入れる力、反作用でさらに威力は倍だ)
オジサンの教え通りの技を食らい、取り巻きその1は鼻を押さえて膝をついた
(倒れた相手には必ずとどめを刺せ、戦闘はそこで終わりじゃない)
膝をついた相手の鳩尾に少年のつま先が突き刺さる。蛙が踏まれたような声を出して、取り巻きその1は床に倒れこんだ
茫然と立ちすくむタカシ君たち、周りから女子たちの悲鳴が聞こえてきた
そんな中、少年は悠然と歩を進める

「邪魔するなら、無力化するよ。いい?」
少年の宣言に取り巻き連中が固まった。さらに歩を進めようとする少年だが…
「お、おい!お前ら仲間がやられてなに見てんだよ!?」
タカシ君の罵声が飛んだ
「え…だって」
「なぁ…」
取り巻きたちが顔を見合わせる
「自分で止めたらいいんじゃないの?もしかして僕が怖い?先生にチクっちゃう?それでも、いいよ」
少年の挑発を受け、タカシ君の頭に血が上った
「て、てめぇ…ぶっ殺してやる!」

タカシ君の右拳が少年の顔面を襲う
しかし少年の動きの方が早かった。左前に歩を進め、タカシ君が拳を引っこめると同時に顔面に肘打ちを叩き込む
思わず仰け反ったタカシ君のアゴに手のひらを押し付けた。そのままアゴを押し込むとタカシ君の首が、そして背骨が弓なりに曲がった
後頭部を叩きつける衝撃音がクラス中に鳴り響いた

白目をむいているタカシ君の顔を少年は踏みつけた
「これに懲りたら、もう関わらないでほしいな…ねぇ?」
目が合った取り巻きたちが首を縦に振る。満足したようにうなずいて、少年はクラスを後にした
498フェアバーンによろしく:10:2009/05/19(火) 23:24:33 ID:ly9mbDtB
少年は走った。学校を出て一目散に河川敷に向かって走っていった
オジサンに会うために、どれだけ強くなったか話すために、そして言えなかった「ありがとう」を言うために
しかし少年が堤防から見たモノは、日防軍憲兵隊に封鎖された河川敷の姿だった

ライフルを持った憲兵隊員たちが周囲を警戒し、軍用犬が橋の下を嗅ぎまわり、空には日防軍の戦闘ヘリが旋回している
少年は封鎖線のすぐそばまでやってきた。大人たちに混じって中の様子を伺おうとする
「やぁ、坊や。どうしたのかな?」
そんな少年に一人の背広の男が話しかけてきた
笑顔が張り付いたような顔の中年男性だが、後ろに憲兵隊の兵士が銃を構えているところを見ると、この人も憲兵なのだろう
少年が内心の緊張を隠すように口を開いた
「何があったのかな〜って。何かあったのおじさん?」
「凶悪犯が潜んでいたんだ。見おぼえないかなぁ?」
背広が取り出した写真には、日防軍の制服に身を包んだあのオジサンが写っていた
動揺を見破られないように慎重に首を横に振る
「んーん、知らない…この人なにしたの?」
「一昨年にあった日防軍クーデターの主犯格の一人さ。機動強襲群っていう恐ろしい部隊の隊員でね。潜入や暗殺のプロっていう危険な奴なんだ」
機動強襲群というのがどんなところなのかは知らない。しかし”潜入や暗殺のプロ”といった言葉が少年の胸に突き刺さった
「ホントに見覚えない?そっか、もし見かけたら近くの交番か日防軍の駐屯地か基地まで連絡してね」
背広の言葉にうなずいて少年は走り出した、いや、その場から逃げだした

いつの間にか近くの公園に来ていた
はじめてオジサンと出会ったあの公園だ
少年は公園に入り、はじめてオジサンを見た時に隠れていた木の陰までやってきた

(…オジサン…僕は…強くなってたよ。でも、正しいことはできたのかな…?)
ふと木を見上げる。茂った葉っぱの中に何か光るモノが刺さっていた
(あれって…!)
抜き取って確かめてみる。間違いない、最後の戦いのときに使ったナイフだった
何でこんなところに…と周りを警戒しつつそのナイフをまじまじと眺めた

戦いのために作られた道具、それはオジサンが教えてくれたCQCと同じモノだ

”強くなるために、そして正しくあるために、その道具を、そして技術を使うんだ…”

オジサンの声がそのナイフから聞こえてきた、ような気がした
何か吹っ切れたように少年は立ち上がり、その足を家に向けた

(オジサン、僕は頑張るよ。強く、そして正しくあるために…)

その顔には青空と同じくらいさわやかな笑顔が浮かんでいた

〜完〜
499創る名無しに見る名無し:2009/05/19(火) 23:30:17 ID:ly9mbDtB
つい最近、軍隊式の格闘術を習う機会があったので、それを参考に書いてみました

話自体の元ネタはもう懐かしゲーになってしまった「フロントミッション3」からです
「日本でクーデター」というネタにつなげられるような話があまりなかったので…

格闘描写は難しい…アッサリにすると迫力がないし、ゴテゴテ書き込むと勢いが削がれるような気がします
擬音とか「!」とか多用するのもなぁ…と試行錯誤しながら書いてみました

感想とか意見とか、改善点とかあれば教えてください
まぁ「つまらん」って言われたらそれまでですが…orz
500創る名無しに見る名無し:2009/05/19(火) 23:42:56 ID:dW+p+uvD
フライングしてごめんなさい。改めて投下乙。軍事板ではミリタリーレンジャーや防衛女子校のスレで書き込みしていたものです。という俺も向こうのリンク誘導でこちらに来た。向こうと違い軽く読めそうな気がしました。これからの活躍を祈念します。
501創る名無しに見る名無し:2009/05/20(水) 01:50:47 ID:x/3Ji70f

オジサン子供相手に教える技や心構えが過激すぎw
背景がキナ臭そうだけど爽やかな感じの話だった
502創る名無しに見る名無し:2009/05/20(水) 07:35:43 ID:dpiGakqE
投下乙。
オジサンこええw
503創る名無しに見る名無し:2009/05/20(水) 12:36:08 ID:vTdF07O7
投下乙
『「経験者」は経験する前の精神構造に戻れない』て聞いたこと有るが
少年が人殺しにならず、ほんと良かった

軍人と武人の違いは「決定権が他者にあるか自分にあるか」て処にある
オジサンは戦闘術獲得した後で居場所が違うと気付いたのかもしれぬ
504創る名無しに見る名無し:2009/05/20(水) 23:38:20 ID:RvDQX265
防女にカエレ
505創る名無しに見る名無し:2009/05/23(土) 23:07:58 ID:PqTXuCh1
468氏はどこに消えたのだろう。
506創る名無しに見る名無し:2009/05/24(日) 08:12:29 ID:zddLImPV
>>505
他板にまで追っかけてくる仕切屋がいるので
無視してる
507創る名無しに見る名無し:2009/05/24(日) 11:44:36 ID:rLqxmEDK
BS0(8)
−昭和18年1月10日深夜 東京−
 けたたましいサイレンの音で目覚めた、帝国陸軍伊集院近衛師団大佐は、寝室の窓を開き、夜空を見上げた。
 極東地域有数の人口を誇る大日本帝国の首都とはとても思えない、灯火管制された闇の中、帝都の空は地上とは対照的に、鳴り響くサイレンと、地上から伸びる探照灯の長い光で満たされていた。
「奴だ…よりによって我が国に…それもこの時期に現れるとは…何たることだ…」
 帝都周辺に設置された高射砲陣地からの対空砲火と、地上から伸びた探照灯の光の先には、ひしゃげた球形の物体が青白く輝きながら音もなく浮かんでいた。
 サイレンに混じって上空から降ってくるエンジン音は、夜間強行出撃を行った戦闘機だろう。時折、探照灯の光の帯を飛行機らしい影が掠める。
 恐らく。いや当然の如く、帝国陸軍…海軍も持てる力の全てを投入し、攻撃を加えているだろう。が、飛行物体は全く動じず、ゆっくりと、ある時は物理法則を無視するかの様な機動を取って、帝都の空を遊弋していた。
「高射砲や戦闘機では太刀打ちできまい…」
 彼は最優先の任、『玉体の安寧』に就くべく、夜着の帯に手を掛けた。と、彼の細君があり得ない時間帯の来客を告げた。
「大佐殿。お迎えです」
「早いな…待ってもらってくれ」
 戦況が芳しくない現在、近衛師団の大半は既に海外に転出しており、現在は皇居警護程度の要員しか配置されていない。早い行動をいぶかしがりながらも、軍服に着替え、玄関に歩を進めた伊集院を、玄関先から近衛士官が敬礼で迎えた。
「大佐殿。近衛師団坂鬼少尉、お迎えに上がりました」
 砂埃にまみれている。自らサイドカーを飛ばして来たのだろう。形式どおりに答礼しながら、伊集院は坂鬼少尉に問いかけた。
「早いですね。誰(の指示)?」
「自分の独断であります。電話よりも確実です。(電話は)通じる様な状態ではないと判断しました」
 良い判断だ。恐らく帝都の電話交換台はパニックに陥っている。深夜にこの状況を処理するだけの交換手の数はなかろう。
「指揮系統を無視してですか?坂鬼少尉?」
 伊集院の言葉に坂鬼少尉は笑顔で応えた。
「火急の事態であります。それに、気の利いた非番の連中は一斉に大佐殿をお迎えにあがっている頃合いでしょう。負けるわけにはいきません」
「困った人達ですね…仕込みを誤りました…他力本願では、先出世できませんよ?近衛は誰が指揮を執っています?」
「当直の東郷中尉殿です。中尉殿も自分も『いかに楽をするかを考えろ。だが、実行するな』と、怠け者を自称されている上官殿からの薫陶を十二分に受けております」
 坂鬼の言葉に伊集院は苦笑した。
「悪い上官ですね。出世は無理でしょう…実行に移したのは失敗です。私が忙しくなりました…よし、出ましょう」
 いつの間にか伊集院の後ろに控えた細君に、大外套を羽織らせさせると、彼は細君に告げた。
「しばらく帰りません。留守を頼みます」
「ご心配なく、大佐殿。私はよろしくやってますわ…」
 サイドカーのエンジン音が伊集院邸から消え去ると、玄関先に一人残された伊集院の細君は夜空に林立する探照灯を筋を見上げてつぶやいた。
「大佐殿…『本気』の様ね…何か良くわからないけど…(先が)長くないのかな…」
508創る名無しに見る名無し:2009/05/24(日) 11:46:14 ID:rLqxmEDK
こんなのは板違いだろうか?
509創る名無しに見る名無し:2009/05/24(日) 12:47:22 ID:a17lIw1k
507さんのは板違いではないです。何か期待感を持たせるような気がします。
510創る名無しに見る名無し:2009/05/24(日) 17:18:13 ID:2CE9Nmjj
>>508
そんなことはないです
戦前の飛行機を主人公としたSSがあるくらいだから
期待しています
511創る名無しに見る名無し:2009/05/24(日) 22:02:30 ID:PNSwBhUg
取りあえずこのスレでNGなのは擬人化ネタ?
後は武器のカタログスペックや時代考証がきちんとなされていないものとか、
余り軍事色の強くない話も読まれずに終わりそうだけど…
512創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 07:01:11 ID:f6MGr6PS
投下乙、BS0何か裏があるタイトルですね。
513創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 07:46:00 ID:SXQMsE/Z
「2時の方向!右だ!敵さらに旋回!」
後席の男が叫んだ。自分を中心に世界がひっくり返り、地面が真横に流れてゆく。

――北ベトナム上空。高度17000フィート。
北爆へ向かうF−105戦闘爆撃機と護衛のF−4戦闘機は北ベトナム空軍のミグ21の奇襲攻撃を受けた。
大量の爆弾を積み鈍重なF−105では軽快な運動性能を誇るミグ21にとってはいい的である。空中戦はF−4に任せるほか無かった。
「くそっ!速い!!見失った!どこへ行った!?」
「3時の方向!上、上だ!ダイブしてくるぞ!」
当時の北ベトナム戦闘機の戦法は運動性を活かした急降下での攻撃だった。米空軍の機体は戦闘機としてより爆撃機として特化した機体が多く、完全な旧式だが優れた運動性能を持つミグに撃墜される事もしばしばある。
これに対処すべく、米空軍は海軍に配備されていたF−4を空軍仕様に改修し、攻撃機の護衛にあてた。
雲を突き破り、白い尾を引きながら、二つの『戦う翼』は空を舞っていた。 少しでも攻撃に有利な位置に付けるべく、互いに縦横無尽に機動を描く。
「急旋回するぞ!」
パイロットの男は操縦桿を思い切り引き、スロットルレバーを最大まで押し込んだ。F−4のエンジンは紅炎を吐き出し、鋼鉄の巨体は強引とも思える旋回でミグの背後へ回り込もうとする。
しかし、小型で軽快なミグは一向に自機の正面には現れず、その都度旋回を強要されるパイロットの消耗は無視出来る大きさでは無い。
「ミサイルアラート!!ケツに着かれてるぞ!!」
後席のレーダー士官が叫ぶ。パイロットはフレアを空中へ撒き散らしながら旋回する。

しかし、それが失敗だった。
ミグの持つアトール対空ミサイルは精度が低く、信頼出来る物では無かった。
ミグを駆る北ベトナムパイロットの狙いはミサイルを回避すべく旋回機動を描いた瞬間。その一瞬に機関砲を撃ち込む事だったのだ。
F−4はミグの思惑通りの機動を見せ、見越した目標へ向け30mm機関砲が火を吹いた。
「機関砲被弾!第一エンジン停止、尾翼も言う事を聞かない!ダメだ、落ちる!」
F−4のパイロットとレーダー士官との通信はここで途絶え、護衛を失ったF−105は爆弾を棄て撤退を余儀なくされた。
勝者となったミグはその上空で悠々と旋回し、基地へ向け進路を取った。
514創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 08:48:08 ID:dTI+EmI3
たしか、北ベト側の作戦は爆弾を投棄させるのが目的で、一当てして
逃げるのが基本。米軍機相手の格闘戦は厳禁されてた筈
ミグ21でもF-4相手に不利だったからね
515創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 09:31:57 ID:SXQMsE/Z
厳禁というわけじゃ無かったけどダメそうならすぐ逃げてたみたいだよ。
強い奴は強かったらしいし。
516創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 16:49:24 ID:BKQpga81
そもそも基本的にソ連戦闘機は格闘戦を重視した設計じゃないのよ。
今も昔もね。
517創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 19:23:42 ID:EzYahM3V
BS0(9)
−昭和18年1月11日 近衛師団−
 訳も判らぬまま、右往左往する警察官と憲兵隊、軍関係の車両を避けながら伊集院を乗せたサイドカーが、近衛の門を駆け抜けた頃には既に日付が変わっていた。
 この状況では、出仕している兵は多くはなかろうと踏んだ伊集院であったが、その予想を裏切るかの様に、既にかなりの数の兵が活動を開始していた。

「情報収集の必要はありません」

 自らの施した『仕込み』に満足しつつ、司令部に歩を進めた伊集院は、彼の部下達に、こう宣言した。驚いたような表情の部下達を見回した伊集院は彼の方針を、いつもの様に丁寧な言葉遣いで披露した。
「手柄狙いの連中が、情報を根こそぎ持って行っているはずです。。知らせたくないものを、我々が根掘り葉掘り聞いても大して益にはなりません」
「それでは、我々は何を?」
 当直士官、東郷中尉がこの場の誰もが抱く疑問を伊集院に投げた。
「ここ(近衛)に帝都防衛を担う実務部隊の担当者を集結させます。それが、我々の第一の任務です。留守番程度の人員しかいない近衛にそれ以外できることはありません」
 情報収集作業の手を止めた、幕下の表情を確認しながら伊集院は続けた。
「陸海軍に任しておいたら、主導権争いだけで数日かかります。それならば、近衛が仕切りましょう。玉体護持は近衛の責務です。そのためなら、いかなる手段を採ってもかまいません。いいですか?あらゆる手段を講じて、連中をここ(近衛)に集合させて下さい」
 全員の同意を確認した伊集院は具体的な指示を始めた。
「会議は明朝午前9時。坂鬼少尉は会議室の準備を。簡単な兵棋演習ができるようにして下さい。対象は関東地区一円です。手配を頼みます」
「東郷中尉は、軍令部、陸軍航空本部に出席要請。『強要』してください。忙しいと言われるに決まっていますから、『あれ』に関する有力な情報と、その対策を近衛が持っていると伝えて、参謀格を何としても出席させてください」
「大佐殿。本当でありますか?」
 新品少尉の頃から伊集院付きの古参下士官が質問した。
「そう言うことにしておいてください。でないと誰も集まらないでしょう…それでも駄目なら…勅命だとねじ込んで下さい」
「勅命…」
「了解しました」
 問題があると言おうとした下士官の声を遮って東郷中尉が答えた。
「それと…海軍軍令部に今すぐの面会の予定を取り付けて下さい。私が軍令部に出向きます」
 と、扉が開いて伝令が駆け込んできた。
「大佐殿。侍従長からです。陛下が『散策』をされるので、警護を大佐殿にお願いしたいとのことです」
「深夜の『散策』ですか…勅命は、どうやら本当になりそうですね。すぐ行きます!」
518創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 19:24:33 ID:EzYahM3V
BS0(10)
−日本近海 昭和18年1月11日早朝−

「出張?それも近衛?」
 母港横須賀へ向かいつつある、連合艦隊第二戦隊所属戦艦陸奥。艦長の山澄大佐から私室に呼び出された砲術長、土師少佐は思わず聞き返した。
 海軍砲術学校卒業者が、陸軍からの招聘を受けて重砲兵の訓練教官の任に当たることはあるものの、作戦中の戦艦の砲術長を名指しで、それも、ほとんどが海外に転出している近衛師団への出張命令となると、胡散臭さしか感じられない。
「軍令部からの命令と…近衛から平文で要請が来た。『可及的速ヤカニ参内サレタシ』。出頭でなく参内ときてる。陛下の意向という事だろう。近衛の伊集院大佐とは面識がある。大佐が一枚噛んでいるのは間違いない」
「信頼に足るヒトなのですか?自分は陸サンとはあまり付き合いがないので…」
「陛下が色々と理由を付けて手元に置きたがる人物だ。まぁ、そうだな…一言で言えば、『帝国臣民の鑑』だな」
 天皇の海軍侍従を拝命している艦長は、近衛との付き合いは他の海軍将官よりも断然多い。
「それは…大人物ということですか?」
「忠臣。その一言だ。もう少し大佐に色気があれば、今頃は中将で、軍令部長だろうな。砲術長にも並々ならぬ難題を吹っ掛けてくるはずだから。絶対に、安請け合いはするなよ?」
 楽しいものを思い出したような顔になった艦長は、表情を引き締め、砲術長に告げた。
「水偵を用意させる。そいつで近衛に向かってくれ。何せ『可及的速ヤカニ』だからな…本艦も横須賀帰港を中止し、東京湾口に向かう」
「兵が荒れますな…もう上陸割りまで決まっておりますから…」
「ああ。そいつが頭痛の種だ。まぁ、本艦が『帝都防衛の切り札』と言っておるので悪い気はしないがね」
519創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 19:25:51 ID:EzYahM3V
BS0(11)
−昭和18年1月10日 皇居北の丸 近衛師団司令部会議室−

「帝都の護りは鉄壁だと、どの口で言った!せっかく海軍が防空の任を陸軍に『譲って』やったのに何の役にも立ってない!」
 近衛師団の招集で急遽開催された時別会議は、初っぱなから、陸軍航空本部と海軍航空本部の参謀章を吊った将官との罵倒の応酬で幕を開けた。
「何ぃ!陸軍を愚弄するか!もう一度言ってみろ!」
「おお、何度でも言ってやる!陸軍は役立たずだ!最初から海軍に頼めばよかったんだ。今後の帝都防空の任は海軍に任せて貰おう!」
「海軍ごときに帝都の防衛は任せられん!おとなしく海で遊んでろ!」
「陸式はすぐにひがむ。そんな事だから勝てんのだ!」
「貴様ぁ〜外に出ろ!」
「おお!上等だ!」
 防空戦闘の当事者…陸軍調布244戦隊と、追浜から強行出撃した海軍追浜空の教官達が、白けた表情で成り行きを見つめる中、陸海軍の罵倒合戦は更に激しさを増しつつあった。

「責任の所在がはっきりすれば、あれの来襲がなくなると言うのですか?よろしい!ならば続けてください!」
 一触即発の状況となった会議室に、会議主催者、伊集院大佐の押し殺した声が響いた。
 会議進行のため同席した、近衛師団将校連はあっけにとられた。感情を押さえているとはいえ『温厚』という形容詞が最も似合う伊集院大佐の怒声を初めて耳にしたからだ。
 静かな迫力に会議室は静まり、今にもつかみ合いに発展しそうだった陸海軍の将官はバツの悪そうな表情で居住まいを正した。

「伊集院大佐…正直に言おう。陸軍航空本部は、『あれ』への対応策を持っていない。いや、『あれ』の正体すら掴みかねておる。海軍サンも同じだろう。貴官に多大な期待をしておるのだ。で、貴官は『あれ』が何か知っておるのか?」
 何とか落ち着いたのを確認した、出席者の最高位、陸軍航空総監、土肥原大将は、陸海軍の航空関係者が熱望している謎の飛行物体への対抗策の有無を問いただした。自然、全員の目が伊集院に集中する。
「大正7年。本職は、陸大卒業とともに近衛師団に入隊。直後、シベリアに出征しました。吉田少将殿。ご存じですね?」
 一礼して、口を開いた伊集院忍近衛大佐は、丁寧な口調で出席者の一人、陸軍第一航空軍参謀長の吉田喜八郎少将に言葉を振った。
「ああ、良く知っている。いきなり近衛からシベリアに出征、戦死したと思っていたら、ロシアの亡命貴族令嬢と一緒に帝都の空に飛行船で『凱旋』してきたのは驚きだった」
 一瞬、何のことかという表情になった吉田少将は、それでも伊集院の経歴について、諧謔を加えながら同意を示した。

「ほぉ…あの空から凱旋した英雄は伊集院大佐でしたか…」
 沈黙していた隻腕の海軍航空本部長、塚原二四三中将が声を上げた。海軍の航空畑にも伊集院の『武勲』は大いに知られていたようだ…一触即発のギスギスした空気が幾分か和らいだ。
「ロシア帝国貴族が取りうる最良の帰国手段を本職に提供したに過ぎません。もちろん、善意だけではありません。亡命者…軍人の妻子の保護を本職は託されたのです。近衛将校の私の身分は十分役に立ちましたし、軍が私を処分することはできなくなりました」

 言葉を切って、全員を見回し、短い沈黙をはさんで、伊集院は陸海軍首脳を悩ませている飛行物体の正体を告げた。
520創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 20:13:39 ID:K64TIxwM
>>517
投入乙
不思議に思ったのだが
BS0の1〜7がなく8から始まっているのに
不思議な感じがします
521創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 21:39:23 ID:zgCrNg4E
おぉ、なかなか面白そうな…
長編になりそうだ

住民の少なかったこのスレも、賑わってきて嬉しい限りです
522創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 22:20:33 ID:EzYahM3V
設定も、いろんなところからのパクリですし…
いきなり8から始まっているのは、1〜7がミニタリーっぽくないためです
523創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 13:24:58 ID:qNK/MKY5
投下乙

ロシアからの亡命者か
「鬼の血族」で無いこと祈る
524創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 19:27:51 ID:ZAYVCoqZ
>>507
投下乙
疑問ですが題名のBS0のBSって何のことですか
深い意味がありそうです
>>522
そういわずに投下してください
525創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 20:47:52 ID:fvaXdrSI
BS0(12)
「帝都の空を蹂躙する『あれ』の正体ですが、本職は、我々の住む世界の外。宇宙から飛来したものであると考えております」

「馬鹿な!」
「与太話もいい加減にして貰いたい!」
「空想小説の講釈を聞きに来たのではない!」
 伊集院の言葉が信じられなかった様だ…あちこちから声が上がった。軍隊は徹底した現実主義である。残念ながら『あれ』は現実のものとして彼らに認識された訳ではないらしい。
「こと軍務に於いて、本職が嘘偽りを申したことは一度たりともありません!」
 彼の言葉で、激向して席を立とうとしていた陸海軍将官が硬直し、再び会議室が沈黙した。
 全員の沈黙を確認し、伊集院は続けた。
「明治41年、シベリアのツングース地方で大爆発が起こったのはご存でしょうか?その正体を見極めるべく、その年のうちに、イギリスの著名な探検家、チャレンジャー教授が密かに現場に乗り込み『あれ』と最初の遭遇をしました」
 会議室に響く伊集院の言葉…チャレンジャー教授の名前は記憶になくとも、ツングース大爆発はその規模、謎について各国の軍事関係者の想像力をかき立てる絶好の材料だ。知らない人間はいない。熱い沈黙が続いた。
「帝国外務省は英国経由でこの情報を入手し、調査の機会をうかがっていましたが、当時、ロシアの政情は不安定で、調査団を送り込むことは不可能でした。事実、チャレンジャー教授も正規の手続き経ない不法入国で、強制退去させられています」
 海軍はもちろん、陸軍航空総監の要職にある土肥原も初めて耳にする話である。衝撃すら覚えているようだ。
「この後、ロシア革命が起こり、帝国は共産主義者から満州を防衛するため、チェコ軍捕囚の救出を名目にシベリアに出兵しました。列強の出兵の理由は『あれ』です。本職の出征もそのためでした。帝国は列強に後れを取るわけにはいかなかったのです」
「ちょっと待て!なぜ貴様が…新米将校が、わざわざ赴く必要があったんだ?貴様には悪いが、貴様以上に優秀な連中は俺も含めて陸大には結構いたはずだ」
 半ば狼狽して吉田が伊集院に質問した。
「私は陸軍士官学校在籍当時、同期の吉田学生に、自分の御役目について『一度だけ、少しだけ』話をした事がありました。もう、お忘れですか?」
 吉田は絶句した。意図して忘れようとしていた事を強制的に思い出さされたらしい。怖気さえ浮かべて伊集院から視線を逸らした。
「…まさか…あれか…本当だとは今の今まで思ってもみなかった…」
「その様な御役目もあるという事です」
 伊集院は一瞬、暗い表情になった。
526創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 20:49:54 ID:fvaXdrSI
BS0(13)
「シベリア出兵後、本職は情報収集のため、可能な限りツングースに近づく必要がありました。ウラジオストクより先に進軍しない列強との規約を無視し、シベリア奥地のバイカル湖東側まで我が陸軍が進出したのはそのためです」
「沿海州共和国、極東共和国の建設を画策していたのではなかったのか…」
 土肥原が驚きを隠せない声でつぶやいた。海軍側は…声すら出ない…
「土肥原大将殿までがそう信じていらっしゃるのなら秘匿は完全であったということになりますね」
 伊集院は微笑を浮かべて続けた。
「本職は、帝国陸軍占領したバイカル湖東岸からさらに北のツングース地方に、精鋭8名を率いて潜入しました。そして我々も『あれ』と遭遇したのです」
 熱い沈黙が重い沈黙に変わった。彼らは今、歴史の裏側を覗きつつあった。

「さて、ここから先は軍機…程度では収まりません。土肥原大将殿、塚原中将殿は別室にご足労願えませんか?今から話す内容は、墓の中まで持って行って貰わなければなりませんので…」
「我々を信用できんと言うかっ!」
 陸海軍の参謀が同時に怒鳴った。
 軽く手を挙げて、怒声を制した伊集院はゆっくっりと言葉を発した。
「ろくでもない真実なぞ、知るべきではありません。世の中には知るべきでないものも、少なくはありません。これは、そのような類のものなのです」

 会議室は更に静まりかえった。

「何、ほんの2、30分です。陛下から菓子と煙草を賜っております。皆さんは一息入れていただきます。恐らく、今日は長い一日になるとおもいますよ?」
527創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 22:25:26 ID:TSbRCPPB
投下乙
528創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 22:58:42 ID:JH0Zoj2J
乙でした

あれって、もしかしてBEAT?
529創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 23:31:11 ID:fvaXdrSI
>>528
BEATって何ですか?
すみません…不勉強なもので…
530創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 23:38:35 ID:JH0Zoj2J
>>529
BEATはマヴラブオルタネィティブっていうエロゲ出てくる地球外生命体で、人類はBEATと数十年間戦争している。
531創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 23:45:30 ID:fvaXdrSI
おお…そっち系は探検してないです…すみません
前にもレスしてますけど、設定そのものが、
あちこちの作品(この場合は小説が1本と少女漫画が1本)
のパクリです
532創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 23:48:22 ID:u6Br43Ez
そりゃあBEATじゃなくてBETAだw
533創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 23:51:52 ID:JH0Zoj2J
>>531
面白ければ問題はないから大丈夫だw
あと、マヴラブオルタネィティブを詳しく知りたければ、まとめwikiでもみてくだしあ
534創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 23:54:08 ID:JH0Zoj2J
>>532
本当だwスマソorz
535創る名無しに見る名無し:2009/05/26(火) 23:55:44 ID:u6Br43Ez
ドンマイw
536黒服の男:2009/05/27(水) 20:49:27 ID:3jcKwujp
シテレシマシ

アナタノ
自然現象見タモノハノ
一部アリナイモノデス
デスカラ調査スル価値ノ
人ニコトハ
ハナスコトハ…
537創る名無しに見る名無し:2009/05/27(水) 23:07:32 ID:F+9I/tos
BS0(14)
 恩賜の菓子と煙草で、徹夜明けの疲労を一時的に紛らわしていた会議出席者の前に、『ろくでもない真実』を聞かされたらしい土肥原大将と、塚原中将が戻ってきた。
 陸海軍の将官、近衛師団員達は、土肥原大将、塚原中将の表情に何とも言えない影…澱の様なものを認めた。
 恐らく、伊集院の『ろくでもない真実』にショックを受けたのだろう。『あれ』の正体に、少なからず衝撃を受けていた参謀連は、上官の表情を見て、これ以上『ろくでもない真実』について詮索するまいと密かに誓った。
 残念ながら、首魁がこの様な状況でも軍隊は機能する。戦闘下で指揮官が落命するのは、ままある事である。指揮官の落命『ごとき』で戦闘を中止することはできない。ここは戦場なのだ。
「…キ-44の12ミリでは歯が立たん。確実に命中しているはずなのにだ!糞っ!陸軍に20ミリがあれば…」
 悔しがる調布244戦隊…通称近衛飛行体のパイロットの言葉を(嫌な意味で)海軍追浜空の教官が補足した。
「20ミリでも変わらん…(20ミリを)全弾浴びせたが、全く手応えがなかった。いや、当たっているのかすらも判らん」
「頭数を揃えて一斉攻撃したいところだが、いかんせん夜間だ。空中衝突で墜落するのがオチだ。残念だが、夜間出撃に耐えられる技量の持ち主は、244空にはそう多くはない」
「ウチ(追浜)は教育隊だからハナから無理だ。自分も無理言って出撃したんだ。高射砲はどうなんだ?」
「海軍サンと同じだ。命中してるかすらも判らん。それよりも、砲弾の破片で、被害が出ている。今のところ何の害もない飛行物体より、下の方が心配だ。どうだろ?海軍のフネから迎撃できんのか?口径がでかい分、威力はあるだろう?」
「冗談は止せ!陸(おか)に向けて対空砲ぶっ放したら、下は火の海だぞ?」
「下策だが、体当たりという方法もあるんじゃないのか?いや…やれという訳じゃない…」
 参謀章を吊した陸軍将校が、済まなそうに迎撃案を述べた。
「それは試しました。あっさりかわされて恥かいただけです。あの機動は常識外です。それに、敵かどうかも判らん物に体当たりしても損なだけです」

 沈黙していた伊集院が口を開いた。
「単純な方法で決着をつけるしかありません。そう、極めて物理的な手段で」
「物理的な手段?」
「どうやって?」
「運動エネルギーは質量と速度の二乗です。大質量を高速でぶつければ、いかに頑丈な物体とはいえ何らかの傷を負うはずです」
「その方法は既に試しました。駄目だったと言ったはずです」
「300ノット程度の速度で2トン程度の重量。それも中空の軽金属をぶつけても大した威力にはなりません。衝突の際に自壊するので、威力はかなり相殺されます」
「爆撃機をぶつけろというのか?しかし、キ-44を上回る速度の爆撃機は…」

「何も航空機に限る必要はありません。高速の重量物であれば何でも宜しい。そのために第二艦隊の砲術長に同席して貰っています」
「…まさか…」
538創る名無しに見る名無し:2009/05/27(水) 23:12:39 ID:F+9I/tos
BS0(15)
 伊集院は頷いて彼の腹案を示した。
「本職は、戦艦の徹甲弾による迎撃を提案します」
「無茶言わんでください!鉄砲で狙うのとは訳が違う!」
 さすがに海軍側から抗議の声が起こった。

「土師少佐殿。貴艦…戦艦陸奥の主砲の散布界と命中率は?」
 反論を平然と無視し、伊集院は砲術長に問いかけた。
「…軍機であります」
 鍛え上げられた大日本帝国海軍の至宝。生ける射撃管制装置とでも言うべき、第二艦隊旗艦、戦艦陸奥の砲術長は、戸惑と…歓喜を含んだ声で応えた。
「かまわん。お話ししろ」
 事態の打開に一筋の光明を見いだしたのか、会議再開から一言も発しなかった塚原中将が砲術長を促した。
 砲術長は、歓喜の表情をあからさまに浮かべ、答えた。
「速度21ノット、距離32,300mで遠近200m/左右52m、命中率14.9%であります」
「ほぉ、素晴らしい…」
 伊集院は素直に感嘆を示した。この命中率は陸上・海上を問わず奇跡に分類されるべき数値だ。
「つまり8門で斉射した場合、必ず1発は命中するということですね?」
「ご命令とあらば、本職は『全弾』命中させてみせます!」
 伊集院の質問に砲術長は大見得を切った。恐らく、彼は全弾を命中させるだろう。いや、外すつもりで射撃を命じる砲術担当者は、この世には存在しない。
 砲術長の言葉に敬意を示し、伊集院は彼に会釈をした。
「それでは、戦艦主砲の命中範囲に『あれ』を追い込む方法を考えねばなりません。本職は、その…そちら方面は不得手でありますので、陸海軍航空部の皆様と、高射連隊の皆様の知恵を拝借したい…」
 迎撃方針が決まった事で、会議は一気に作戦立案に移行した。程なく、演習卓と、関東地方の地図、長い電話線が会議室内部に引き込まれ、陸海軍の将官、実務担当者は、『あれ』に対する精密な対応を立案し始めた。
539創る名無しに見る名無し:2009/05/27(水) 23:31:49 ID:AuL5UV6m
支援
540創る名無しに見る名無し:2009/05/27(水) 23:50:53 ID:dS8PJQ/t
古きよき怪獣物ぽいw
541創る名無しに見る名無し:2009/05/28(木) 00:03:34 ID:REykiTCV
乙でした

飛行してるのを艦砲射撃で迎撃って無茶にもほどがあるぞw
542創る名無しに見る名無し:2009/05/28(木) 00:05:31 ID:PCgASG9o
三式弾の予感
543創る名無しに見る名無し:2009/05/28(木) 04:57:37 ID:nkIkUprM
投下乙
544525(555):2009/05/28(木) 07:37:27 ID:MNvnI0PN
軍事板の方のレスがありますが、まぁ、予想のとおり
軍事板に投下したSSのストーリー上に登場した
の事件の創作板版です

実在の人物や、部隊など史実と何とか整合性
を取りたいと考えているので、資料集めが大変です
なかなか進行しないと思います

こっちに投下した関係で、軍事板SSとの整合性が
取れなくなっていますが、軍事板版は修正したものを
某所で公開してます

創作板のSSは最後までミニタリー(540さんのレスに近い感じで)
に徹したいと…
545創る名無しに見る名無し:2009/05/28(木) 13:41:53 ID:/s9oOKNq
推敲後の防女すれへの投下を熱望!
546創る名無しに見る名無し:2009/05/28(木) 14:29:22 ID:PkpKCdCe
>>541
旧日本軍ならば
あの技術習得に鬼のような執念を傾ける彼らならできるハズっ…!
547創る名無しに見る名無し:2009/05/28(木) 17:36:41 ID:biLSkwek
>>「ご命令とあらば、本職は『全弾』命中させてみせます!」

絶対言いそう
548創る名無しに見る名無し:2009/05/28(木) 18:58:45 ID:iQsQGQnz
>>545
同感
防女スレが寂しくなりました
549創る名無しに見る名無し:2009/05/29(金) 01:30:20 ID:SUIhIqiw
>>541
空間機動中に追尾するのじゃなく
追い込んだ空域にさしかかったタイミングを計って射撃なら匠の技で可w
550創る名無しに見る名無し:2009/05/30(土) 04:17:05 ID:rXE6+1xs
実際は米軍の方が命中率は良かったらしいけどね
射撃数が違うから
551創る名無しに見る名無し:2009/05/30(土) 07:53:16 ID:0zC9xZ+7
金剛と榛名の射撃成績ほ、射撃距離2万5000メートルで命中率14パーセント
米国海軍の命中率が訓練射撃の傍受電報、報告書などによると日本海軍の3分の1程度

平間洋一編『戦艦大和』(講談社 2003年)P20−22

って事らしいが、米軍の命中率ってのはいくら位だったのかな
552創る名無しに見る名無し:2009/05/30(土) 21:47:25 ID:rXE6+1xs
それは計算方法が違うから
夾叉弾三発につき、一発命中と判定してた
553創る名無しに見る名無し:2009/05/30(土) 23:28:23 ID:vClnaDkG
>>552
>夾叉弾三発につき、一発命中と判定してた
それは米軍から砲撃されて夾叉弾三発を確認したら一発命中でカウントしてたってこと?
554創る名無しに見る名無し:2009/05/30(土) 23:34:59 ID:RGA1ta3Z
アッツで電探付きの射撃がほぼ日米同程度、ソロモンではニミッツ直々に日本側の射撃が練度が高いから鍛え直せとプログラム組んで訓練してる時点で推して知る練度な件
実射訓練についても、摩耗と交換考えたら良いもんでもない(結局木阿弥になる)、それに実射じゃ無い訓練は日露の時もおんなじ、作戦前に一度慣らし程度にやるのが適当
ついでに日本の射法は当たりだしたら一気にあたるが、それまでの命中がどうしても少なくなるのもある
555創る名無しに見る名無し:2009/05/31(日) 10:10:56 ID:/6FyUvLu
>>552,554
大口径の主砲と限定して
有視界での命中率は、結局米軍と日本軍とどっちが上だったの?
556創る名無しに見る名無し:2009/05/31(日) 10:19:23 ID:lHOsMBCI
機械的な状態や砲術の腕にもよるだろうし、命中率って数字にこだわること自体が微妙な希ガス
557創る名無しに見る名無し:2009/05/31(日) 12:54:07 ID:2dOZvK9/
まあ結局勝ちゃいいんだしな。
極端な話、命中率90パーセントの神業命中率一隻と10パーセント命中率100隻がやったら
最後に勝つのは多いほうだろうし
558創る名無しに見る名無し:2009/05/31(日) 13:00:19 ID:P8Vay3k8
戦場だし仲良く試し打ちという訳にもいかんだろうしな

ちなみに現在の日米両国
陸海空ともに自衛隊の射撃技術は米軍を驚かせてるという話
559創る名無しに見る名無し:2009/05/31(日) 17:43:47 ID:lHOsMBCI
ヤキマとかでの逸話を聞くとそうなのかもだね
でも米英のその手の賞賛って、どこか皮肉が混じってるようで素直に受け取れないw
まるで飢えた狼のような重巡だ!的なあれだ

練度の高さにもそうならざるを得ない哀愁が漂うのが皇軍であり自衛隊だとおもう
みんな貧乏が悪いんじゃ
560創る名無しに見る名無し:2009/05/31(日) 18:02:07 ID:3jV0lo45
wiki厨かw
561創る名無しに見る名無し:2009/05/31(日) 18:36:36 ID:zmIT0nTG
>553
命中しなくても、命中と判定するって事。
>>554
お陰で、巡洋艦の塑性変形について戦時にやっと知る事になったがね。
散布界が狭かったのはそのせいでもあるし。
>>555
レーダー射撃で測的の早い米軍の方が有利。
「敵巡洋艦ノ夜間射撃ノ精度ハ、電探関連射撃指揮装置ヲ有スルモノト推定セラレ、約5000ノ射距離ニテ初弾必中。爾後、連続有効弾ヲ得ルニ対シ、我ハ初弾精度、散布界、斉射間隔共ニ著シク劣勢ナリ」
昭和18年7月5日、クラ湾夜戦における駆逐艦「谷風」の戦闘詳報
562創る名無しに見る名無し:2009/06/05(金) 22:50:08 ID:dRFURpOO
過疎化しているな
555氏もまたきてください
563創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 19:47:52 ID:jInrmmkt
>>561
夜戦じゃ「有視界」とは言えないんじゃねーかと
564創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 20:14:38 ID:OZeU6+GT
>>563
発砲炎は夜間の方が目立つ希ガス
565創る名無しに見る名無し:2009/06/07(日) 21:16:14 ID:jInrmmkt
>>564
夜戦で命中率が下がるのは共通認識だと思ったが違うのか?
566創る名無しに見る名無し:2009/06/08(月) 20:44:12 ID:EuOtnzm8
図書館戦争氏復活キボンヌ
567創る名無しに見る名無し:2009/06/08(月) 20:44:21 ID:U3KUd5MX
>>565
「敵がそこに居る」と判断しなきゃそもそも夜戦は起きないしw
旧日本帝国海軍の得意技は夜間水雷戦と聞いた

彼我のレーダーの性能の差が職人技を無しにした時期で
両者ともに機器の条件が同等なら兵の熟練度がものいうだろうけど
568創る名無しに見る名無し:2009/06/08(月) 20:47:15 ID:0uhw4h32
図書館戦争 ◆XRUSzWJDKMが早く続編を投下してくれますように
  ∧_∧
  ∧( ´∀`)
 ( ⊂   ⊃
 ( つ ノ ノ
 |(_)_)
 (__)_)
569創る名無しに見る名無し:2009/06/08(月) 21:07:08 ID:/j7/y37+
>>563
発砲煙で測距しにくい、海上など、湿度が高いと遠くはぼやける
570創る名無しに見る名無し:2009/06/09(火) 23:14:52 ID:H0KksTCV
また図書館戦争信者か
571創る名無しに見る名無し:2009/06/10(水) 22:48:03 ID:hhbf1T3Y
図書館戦争……夜間戦闘……戦艦……大戦をなぜか生き残った戦艦大和を海上移動図書館に改装……自衛のための46サンチ砲……
ハッ! なにいってんだオレ!?
572創る名無しに見る名無し:2009/06/11(木) 19:12:33 ID:e0rsiLip
>>544
ブログを見ましたが
完成したら壮大な話になりそうですね
573創る名無しに見る名無し:2009/06/15(月) 22:19:29 ID:jNaT7yYq
図書館戦争 ◆XRUSzWJDKMが早く続編を投下してくれますように
  ∧_∧
  ∧( ´∀`)
 ( ⊂   ⊃
 ( つ ノ ノ
 |(_)_)
 (__)_)
574創る名無しに見る名無し:2009/06/20(土) 23:14:58 ID:zZ1K3YuA
保守
575創る名無しに見る名無し:2009/06/24(水) 19:42:37 ID:GZDvJv0m
図書館戦争 ◆XRUSzWJDKMが早く続編を投下してくれますように
  ∧_∧
  ∧( ´∀`)
 ( ⊂   ⊃
 ( つ ノ ノ
 |(_)_)
 (__)_)
576創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:08:21 ID:xcn2ieqw
ユギオということで朝鮮戦争絡みのSSを書いてみた
保守兼ねてご笑読ください
577英雄の言葉:1:2009/06/25(木) 00:10:22 ID:xcn2ieqw
「下がれ!後退だ!」
「中隊長が…ユン大尉が戦死した…」
「米軍の戦車も後退してる…早く逃げないとオレたちもヤバいぞ!」
自分の配属先である韓国軍第1師団第11連隊第2大隊第7中隊に到着した学徒兵・チェ下士が見たものは、陣地を放棄し散り散りになって後退してくる将兵の姿だった

釜山の学生だったチェ下士は16歳になったばかり、自分たちの祖国を、そして家族を守るために韓国軍に志願した
6月25日に38度線を越えて侵攻してきた北朝鮮軍、ソ連製の戦車を与えられて機械化された軍に貧弱な武装の韓国軍は手も足も出ず、8月までにここ釜山周辺を囲む山地一帯まで追いつめられた
のちに「釜山橋頭堡」と呼ばれることになる防御線、その中でも防御の核心と成り得る村落「多富洞(タブドン)」正面を守る第11連隊
1週間の基礎訓練だけでそんな部隊に配属されたチェ下士の心中は高揚感と不安感の入り混じったものだった
しかしそんなチェ下士を待っていたのは、必死の形相で敗走する仲間たちの姿だった

「何をボサっとしとるか新兵!」古参兵らしき曹長に声をかけられた
「じ、自分は本日付で配属されたチェ下士で…」慌てて敬礼しようとするが、その前に曹長の鉄拳がアゴに命中した
「バカ野郎!戦場で敬礼なんかするんじゃねぇ、狙撃されるだろうが!」そう言いつつ曹長はチェ下士の襟首をつかんだ
「ど、どこに行くんです?」
「とりあえず後退だ。ウチの中隊長が戦死したことを大隊長に報告せんと…大隊長!大隊長はどこだ!?」
叫びつつ後退する曹長に、同じように敗走する第7中隊の将兵たち
その前に一人の将校が立ちふさがった

「何があった!なぜ後退するのだ!」曹長を止めて詰問するその将校はまだ若く、襟首には星が並んだ階級章があった
傍らに大佐の階級章をつけた韓国人と、米軍のおそらく将校らしき人が控えていた
「し、師団長…」曹長は一瞬絶句するも、すぐに口を開いた
「第7中隊第3小隊長代理のアン曹長です。中隊長と第1小隊長が北鮮の砲弾で戦死を…将軍、大隊長は、大隊長はどちらですか!?」
師団長と呼ばれたその将校と傍らに控えた大佐が顔を見合わせた。何か言葉を交わすともう一人の米兵に何か英語で話しかける
数度頷き納得したような表情を浮かべる米兵、そして師団長はアン曹長とチェ下士に声をかけた
「曹長、それと君は学徒兵だな?敗走してくる中隊の将兵をここに集めてくれ。私の、ペク師団長の命令だと言え」
その時初めてチェ下士は、目の前の将軍が韓国陸軍第1師団のペク師団長であることを知った
578英雄の言葉:2:2009/06/25(木) 00:12:42 ID:xcn2ieqw

敗走してきた将兵たちをチェ下士は半ば強引に斜面にある唐辛子畑に連れてきた
アン曹長や他の将兵たちがペク師団長の周りに集まっている
「諸君、まずは落ち着いて腰をおろせ」将軍の声に皆が半ば亡霊のようにその場に座った
将兵を見回す将軍の顔は赤い、興奮しているのかあるいは熱病に冒されているのか
しかしその声に込められた力強さに、皆の視線が集中する

「連日連夜の激闘、まことに御苦労で感謝の言葉も無い。よく今まで頑張ってくれた
だがここで我々が負ければ、我々は祖国を失うことになるのだ。我々には退がるところはない、だから死んでもここを守らなければならないのだ!」

疲れ切った将兵たちの目に光が戻ってきた

「しかもはるばる地球の裏側から我々を助けにきてくれた米軍が我々を信じて谷底で戦っているではないか
彼らを見捨て自分だけ助かろうなどとは、大韓の男子ならできるはずがない!」

将兵の間から声が上がった
「そうだ!オレたちは大韓の男だ!」
「北鮮なんぞに負けるか!」
銃剣を着剣する音があちこちから聞こえてきた

「今から私が先頭に立って突撃し陣地を奪回する。貴官らは私の後に続け。もし私が退がるようなことがあれば、誰でも私を撃て!」
将兵たちが下がってきた方向から、砲弾の破裂する音が聞こえてきた

「さぁ行こう!最終弾とともに突撃するのだ!」

将兵たちの雄叫びが山々に谺した
チェ下士も叫んだ。不安感はもう欠片もない
祖国を、家族を守るために、この師団長のもと命をかける。心の底から湧きあがるような高揚感が体を支配していた

最終弾の弾着音が鳴り響いた
「私に続け!」
師団長の号令のもと、チェ下士は腹の底から声を出して将兵たちと共に駈け出していった
579創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:16:17 ID:xcn2ieqw
ペク将軍の話、軍オタなら知ってる…よね?
もしかしてマニアック過ぎたかも試練orz

有名なペク師団長の「私に続け」ですが、兵士目線からの話って聞いたことないんです
という訳で想像半分に書いてみました
チェ下士以外は実在の人物です。米兵は米軍第8連隊長のマイケレス大佐
この突撃で米軍と韓国軍の関係は一気に緊密なものになったそうです
580創る名無しに見る名無し:2009/06/25(木) 00:48:38 ID:RY7NFWrh
投下乙
白将軍の著書は作戦級のかんがえかたや軍の動きが活写されてていい本だよね
兵隊の戦記で描かれる軍隊生活とはまた違った面白さがある

第一師団は消耗率も非常に高かったそうだから、
兵士目線の話がこちらまで聞こえてくるほど生き残りは多くないのかもしれない
映画のブラザーフッドはそれっぽいらしいけど、未見だな
581創る名無しに見る名無し:2009/06/26(金) 22:04:04 ID:xtQZvoN1
乙でした
582創る名無しに見る名無し:2009/06/28(日) 11:36:02 ID:fi7uGmXc
>>580
女向けのイメージで売り出してたブラザーフッドだけど、けっこう硬派な戦争映画だったと思うんだよな
弟のために頑張ってた兄貴がだんだん戦争の狂気にさらされて狂っていく様や、その反面ひ弱な弟が強い戦士に変わっていく様とか好きだったよ

白将軍はなんか親日罪とやらで立場が悪くなってるそうだけど、かの国にも常識があると信じたいもんだな…
583創る名無しに見る名無し:2009/06/28(日) 20:17:57 ID:39bSveI+
まあいまはアキヒロ政権で保守が巻き返してるんで大丈夫かと
日本と違ってあっちは、左に寄ってったらリアルに地上の楽園化が待ってるから洒落ならんねw
584創る名無しに見る名無し:2009/07/03(金) 19:27:02 ID:PiKXUPD6
戦国時代の兵器として「鉄牛車(てつぎっしゃ)」
古代ローマの「チャリオット」を牛車で再現。
牛車の表面は鉄砲玉を通さない南蛮鉄の鉄板で固め、
牛たちにも南蛮鉄の甲冑を着せる。
585創る名無しに見る名無し:2009/07/05(日) 12:56:29 ID:UvedEemb
チャリオットは草木のない裸地・乾燥地帯でこそ威力を発揮する
586創る名無しに見る名無し:2009/07/06(月) 00:34:12 ID:aCUe7ATy
確かに、起伏が多い国内ではあまり使えないかもしれないな
587創る名無しに見る名無し:2009/07/14(火) 01:59:53 ID:G0zeEGeo
図書館戦争 ◆XRUSzWJDKMが早く続編を投下してくれますように
  ∧_∧
  ∧( ´∀`)
 ( ⊂   ⊃
 ( つ ノ ノ
 |(_)_)
 (__)_)
588創る名無しに見る名無し:2009/07/27(月) 20:03:21 ID:WWCeL3tg
てす
589創る名無しに見る名無し:2009/08/08(土) 12:52:18 ID:o/nkX+Is
図書館戦争 ◆XRUSzWJDKMが早く続編を投下してくれますように
  ∧_∧
  ∧( ´∀`)
 ( ⊂   ⊃
 ( つ ノ ノ
 |(_)_)
 (__)_)
590創る名無しに見る名無し:2009/08/08(土) 22:23:53 ID:xHYX5vOG
俺も図書館氏をまってるぜ
591創る名無しに見る名無し:2009/08/12(水) 20:33:39 ID:7qtuZOV9
俺はむしろ525氏のほうの新作を待つぜ
592創る名無しに見る名無し:2009/08/12(水) 20:57:49 ID:rCErEaUa
>>591
それなら555氏のブログに行きゃいいのに…
まぁ525の続きはまだないみたいだけど
593創る名無しに見る名無し:2009/08/19(水) 23:46:18 ID:QVGAgPU1


●  もしも日本が米英に負けていたら   ●

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/12(水) 10:16:37 ID:EoGxdxl60
もしも、あの大東亜戦争において、金甌無欠の我が大日本帝国が
万が一にも、鬼畜米英に負けるような事になっていたら、今頃、大日本帝國はどうなっていたんだふか……を考えてみるスレの第2段。


http://academy6.2ch.net/test/read.cgi/history2/1250039797/


594創る名無しに見る名無し:2009/08/20(木) 01:58:31 ID:QcrsqViS
あの日あの時日本が勝てるなんて思ってる奴なんか一人もいなかったよ。
国民が一番よく分かってたろうよ。この厳しい状況下で大国なんか相手に出来る筈は無いと。

もしもも何もない。
米国側も苦しかったとはいえども、赤子の手をひねる構図は変わらないよ。
595創る名無しに見る名無し:2009/08/25(火) 23:36:09 ID:rpgz6zkE
米国に完敗しないためには

米国を一通り叩ける核兵器+運搬手段が量産できるまで待って
通常部隊は平時のままで、核兵器だけの全力射撃しかないのでは?

日本はガラス質の台地になるけど、米国も3等国へ転落。
第三国へも米国が“戦後のために”打ち込むだろうからドミノ式に
劣等国以下が増える。
この場合、相対的にみれば日本もそんなに悪い位置にいないと思うよ。
596創る名無しに見る名無し:2009/08/26(水) 19:39:52 ID:mZkrhaZv
問題はその前提条件にまでたどり着けるかどうかだな
597創る名無しに見る名無し:2009/08/28(金) 01:05:41 ID:v+us/grR
>>595
日本という国自体が消滅して中華の植民地と化してるだろ
598創る名無しに見る名無し:2009/08/29(土) 00:36:41 ID:qxYYAiEl
やはり日本が第2次大戦で負けないためには、米軍と戦争したらイカンのだろうね。
タイトルは忘れたが佐藤大輔の小説と押井守のパクスヤポニカでは南北戦争の決着をいじる事で
米国の力を限定させて、極東アジアにおける日本の対抗馬を消すことで戦勝国にしてたな
599創る名無しに見る名無し:2009/08/29(土) 00:43:01 ID:shqh5R/2
>>598
アメリカが南北国家分断されてるなら英国の勢力が強いな
ブリタニア帝国...げふんげふんっ
600501隊大尉:2009/08/29(土) 10:39:34 ID:i6cck4h9

日本が戦勝国になる事なら、できたIFがある。
イタリアと一緒に対独宣戦すること
当時、日本とフランスは余り争ってないから英国さえなんとかすれば
連合入りは可能だろ

とりあえずイタリア(バチカン)は満州帝国を承認してるから
中華民国を中華の盟主と判断して撤退し満州帝国を独立させる事だな
賠償金として北韓は中華民国か華北が南朝は米国が奪うという事で

これで残存戦力と樺太と台湾と満州油田の権益と南洋海域は手に残る

戦犯裁判は中立国で行って、極悪な奴はABC関係なく死刑でなく無期懲役刑→大戦後に釈放
状況も状況だし一部の団体以外は靖国に参拝しても問題ない時代にはなるが
核は所持してるな
あとアメリカの犬としての常任理事国もあり得るが

朝鮮戦争は昔の日本が危惧してたみたいに蘇共VS米華の戦争になるのかな?

実質的には「裏切り」だから一部の人は「戦争に負けても裏切りは許せない」と主張する左翼もでるだろ。

ただユダヤ人や一部の中東欧(アジア系)の支持は得るから悪い立場にはならない
601創る名無しに見る名無し:2009/08/29(土) 14:47:42 ID:2ZYFZzTU
話してねぇでなんか書けよ
602創る名無しに見る名無し:2009/08/30(日) 21:24:36 ID:1xutQqX4
↑あんたが書けば?
603創る名無しに見る名無し:2009/08/30(日) 21:41:14 ID:GV+fP23r
なんて程度の低い返しだ
604創る名無しに見る名無し:2009/08/30(日) 22:02:19 ID:GTDAhRbA
程度の低い返しにわざわざ構うんですね^^
605創る名無しに見る名無し:2009/08/30(日) 22:03:06 ID:GV+fP23r
606創る名無しに見る名無し:2009/08/31(月) 02:12:31 ID:8Jf9vdEW
図書館戦争の人失踪したの?
それともホムペや別スレで書いてるの?
607>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/09/01(火) 01:28:08 ID:0TBl5xI0
正化31年9月30日月曜日 1930時 神奈川県相模原市 下溝古山公園付近

「後続車両なし」

 自動小銃片手に後方警戒に当たっていた図書士が報告する。
 現在俺たちは、故意に国道を外れて人気のない道を移動している。
 というのも、最終的にはヘリで移動するため、あえて武蔵野基地に近くない図書隊基地へと向かっているのだ。
 俺たちが国道を強行突破する可能性を恐れて、敵は確実にある程度の戦力を武蔵野基地方面へと向かわせている。
 これは一種の賭けともいえる危険な作戦だ。
 だが、基地到着から輸送までの期間に確実に襲い掛かってくるであろう良化隊員を減らすため、危険でもこのような策が取られている。

「気を抜くなよ。ライトを消して、暗視装置を使っているかもしれん。
 前列からも異常の報告はないな?」

 この車に乗る分隊長を務めることになった俺の仕事は多い。
 最初にさせたのは、全員に実包を渡し、それを装填させる事だったが。
 なぜ図書隊がそれを嫌がるのかは知らないが、実戦経験者は実弾を装填すれば、異常なほどに神経質になる。
 彼らに先に装填させておく事は、決してマイナスにはならないのだ。
 特に、今回のような明らかに襲撃が予測される場合には。

「まさか我々が国道を抜けて最終的に空路で運ぶとは思っていないでしょうね」

 後部座席で隣に座る図書士が安心したように言う。
 考えが甘いな。
 メディア良化隊がこちらと最低でも同等の頭脳を有し、そして警察のシステムなんぞ掌握しているに違いないという現実を無視している。
 あのNシステムとかいうナンバーを認識し、そして追跡するシステムは、確実に俺たちの現在位置を把握できているだろう。
 そして、合法的にか非合法的にかは知らないがそれを好きなだけ利用できるであろうメディア良化隊は、既に襲撃か検問の準備を整えているはずだ。
 日野の悪夢でいくら呼んでも警察が来なかった時点で、どうして図書隊上層部はそこまで思考できる頭を持とうとしなかったのだろうか。
 あるいは、そこまではありえないだろうと自分たちの内心を安心させたかっただけなのかもしれない。
 この世には、主義主張のためならば大量殺戮を進んで喜んで行う人間がいくらでもいると認めたくなかったのかもしれないな。
 被害妄想に近い俺の妄想を肯定したのは、突然わき道から飛び出した大型トラックだった。
 それは先頭車両の横腹に突っ込み、反対側の斜面にある法面へその車体を叩き付けた。
 乗っていた連中は確実に重傷を負っているだろう。

「なんだ!?事故か!?」

 運転していた図書士が暢気な叫び声を上げる。

「そんなわけがあるか!敵襲だ!発砲準備!」

 この夜道で無灯火で、狙ったように先頭車両のどてっぱらに突撃してくる事など故意以外に考えられない。
 横転した先頭車両は、既に黒煙を上げ始めている。
 あれでは生存者がいたとしても助からないだろう。
608>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/09/01(火) 01:29:30 ID:0TBl5xI0
「先頭は諦めろ!後退!」

 運転手に対して素早く命令を出すが、俺の素早い決断を後ろからやってきたトレーラーが妨害した。
 道路を塞ぐように停車し、フロントガラスを砕きながら銃弾を振りまいてくる。

「本部に発砲許可を求めろ。既に銃撃を受けているとな」

 周囲に殺到する銃弾から身を隠しつつ、通信士に命令する。
 なんてこった、イラク並じゃないか。
 重火器がないだけまだマシだがな。

「後方から数名!接近中です!」
「発砲準備!本部はなんだって?」

 部下からの悲鳴のような報告に答えつつ、通信士に尋ねる。

「わかりません!雑音でどことも繋がりません!」

 信じがたい報告である。
 まさか関東圏でジャミングを受けるとは思わなかった。
 もちろん通信機が壊れている可能性もあるにはあるが、そんな楽観的思考が出来る場合ではない。
 電波局に盛大に喧嘩を売りやがったようだ。
 免許を取り上げられてしまえ。

「呼び出し続けろ!」

 罪のない通信士に怒鳴りつけ、ポケットから携帯電話を取り出す。
 表示は圏外。
 無線機を妨害する連中が携帯電話を見逃すわけもないか。
 変に納得しつつ、最後に見た公衆電話を思い出そうとする。
 だめだ。
 NTTは公衆電話を各地に残しているが、最盛期に比べればその数は恐ろしく減少している。
 最寄の公衆電話がどこにあるかはわからないが、そこまで行く事は不可能だろう。
 思考をめぐらせている僅かな間にも状況は悪化していく。
 周囲から聞こえる銃声はさらに増え、車体各所に着弾する銃弾は増加の一途を辿っている。
 防弾車でなければ今頃は全員が殉職していたな。

「こりゃあ、そのままじゃだめだな」

 他人事のような口調で呟く。
 傍らの図書士が、責めるような視線でこちらを見る。
 ああ、わかっているよ。
 指揮官としての責務を果たさなければいかんよな。

「総員安全装置解除、我々は私の判断で敵と思われる勢力に反撃を行う。
 以後の責任は全て私にある。
 遠慮はいらんから、動くものすべてに銃弾を叩き込め」

 暴れれば暴れるほど通報件数が増える。
 メディア良化隊が神奈川県警に対してどれほど圧力をかけられるかはわからないが、物事には限度がある。
 精一杯抵抗してやろう。

「動く奴は全部敵だ!遠慮するなよ!」

 俺はドアを軽く開け、接近する人影に遠慮の無い連射を浴びせかけた。
 それを合図に、全員が発砲を開始した。
609>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/09/01(火) 01:34:42 ID:0TBl5xI0
正化31年9月30日月曜日 1935時 神奈川県警本部 通信司令室

「はい、110番です。事件ですか?事故ですか?」

 相模原市のとある民家から発せられた通報が始めだった。
 その家に住む老夫婦は、家の近くから無数の発砲音が聞こえると通報してきた。
 電話を受けたオペレーターは、老夫婦の住所と音が聞こえる方向を出来る限り確認した。

「それは恐らく爆竹ですね。
 暴走族が集まっていると通報がありました。
 直ぐに警察官を派遣しますので、戸締りを厳重にし、表に出ないようにしてください。
 ご協力有り難うございました」

 彼が老夫婦に丁寧に指示を下している間にも110番通報は増えていく。

「はい、110番です」
「暴走族がですね」
「直ぐに警察官を」
「大丈夫です、落ち着いてください」
「そうです、爆竹です」
「いいえ、違います。戦争じゃないんですから機関銃なんて」
「大丈夫ですから、こちらの指示に従ってください」
「爆発!?」

 事前の通達に従い決められた文言を繰り返していた一人が声を高める。
 それにあわせ、さらに通報件数が増加する。

「遠くから爆発音ですか」
「はい、何かがガラスを割った?」
「叫び声というのは具体的にどのようなものでしょうか?」
「車が燃えているんですね?直ぐに消防へ連絡します」
「はあ、貴方が元自衛官だったとして、どうして銃声とわかるんですか?」
「道路がメディア良化隊に封鎖されている?ああ、恐らく検閲を行っているんでしょう」
「ですから、良化隊は警察とは違うので我々では何も出来ません」
「銃で撃たれた!?」

 再び別のオペレーターが叫ぶ。
 抗争は悪化の一途を辿っているらしい。
 しかし、この場に詰めている警察官たちには何も出来ない。
 彼らは組織に属する駒であり、上の言う事は正当な命令として受け取らなければならない。
610>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/09/01(火) 01:36:11 ID:0TBl5xI0
「火災が別の車両にも引火しているそうです」

 一人の警部補がこの晩を預かっている当直幹部に声をかける。

「駄目だ。県警本部からの命令は守らなければならない」

 車両火災は重大な問題なのだが、この場を預かっているキャリア組の幹部にはそれよりも大切なものがあった。
 母子家庭に育ちつつも学びたかった彼は、ひたすらに勉学に励む青春時代を送った。
 時にやさしく、時に厳しい彼の母親は、息子が楽しい青春時代を送れるよう、ひもじい思いをしないように、身を粉にして労働をしつづけた。
 彼が十八歳のとき、無理に無理を重ねた彼の母親は、風邪をこじらせて肺炎を発症し、さらに免疫力の低下から来る合併症を併発してこの世を去った。
 倒れてから僅か二週間。
 彼が進学を諦め、全てを母親への恩返しに捧げようと決断する時間すら与えない、あまりにも短い闘病生活だった。
 以来、彼は母親に立派な墓を立て、そして豊かな暮らしを手にして母親にそれを見せるために学び続けた。
 奨学金を手に入れ、特待生としての地位を確保し、教授や先輩に媚を売って警察官僚への切符を手に入れた。
 あと五年、それだけの時間があれば、節制し続けていた彼は十分な貯蓄を得て豊かな暮らしを確保できるはずだった。
 その将来設計が、崩されようとしている。

「近隣住民が流れ弾を受けて負傷しています。
 直ぐに救急車を派遣しなければ危険です」

 別の警部が報告する。
 彼から見れば、警部の報告は忌々しいだけだ。
 どうして自分の責任と裁量の範囲内で全てを処理してくれないのか。
 俺の足を引っ張りたいのか。

「駄目だ。メディア良化隊の封鎖は解除できない」

 警視は首を横に振る。
 彼は来週には警視庁へ栄転する事になっている。
 ここで波風を立たせるわけにはいかない。

「警視、複数の民家に被害が出ています。
 既に二台の車両が燃焼し、通報件数は増える一方です」
「消防から封鎖解除の要請が来ています!」
「相模原病院から問い合わせが来ました」
「米軍から救援の申し出がありました。
 それが無理でも警備隊を偵察に出すと言っています」

 事態は悪化の一途を辿っている。
 十分な弾薬を持った歩兵小隊が、遮蔽物に恵まれた住宅地で市街戦をやっているのだから当然である。

「さらに爆発音が聞こえたと通報が入りました」
「マスコミが阻止線に来ているので追い払えとメディア良化隊から要請が来ています」
「警視!県警本部からもっとうまくやれと指示が来ました」

 部下たちに囲まれた警視は、殺意の篭った視線を天井に向けた。
 そこには誰もいないが、彼には県警本部長を始め、この日の当直を命じた上司、今は非番のはずの同僚、高圧的だった良化隊幹部が見えている。
 もう、彼のキャリアはおしまいだ。
 素直に命令に従っているだけだが、ここまで問題が大きくなれば知らん振りは出来ない。
 記者会見で謝罪する県警本部長、その隣にいる自分。
 新聞に大きく書かれた見出し「神奈川県警の怠慢!」「当直幹部に問題!?」「警察と良化隊の黒い繋がり」
 田舎の警察署に転属か、あるいは警察自体を去り、外郭団体へ天下るか。

「公安部から通報!関東図書隊が出動しました!」
「同じく公安部より通報、メディア良化隊神奈川基地からも増援が出動しました!」
「東京航空局より関東図書隊所属ヘリコプターが現場へ向けて移動を開始すると通報がありました」

 問題はどこまでも拡大していく。
 漫画や小説でもない限り、日本国の市街地のど真ん中でドンパチが始まれば、それは大きな問題になるに決まっている。
 それが長時間ならばなおさらだ。
611>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/09/01(火) 01:41:22 ID:0TBl5xI0
正化31年9月30日月曜日 1936時 神奈川県 アメリカ合衆国軍在日米陸軍司令部

「まったく、日本人たちにも困ったものだ」

 本当に困った表情を浮かべて在日米軍司令官であるオースチン陸軍中将は呟いた。
 彼の前には大佐を始めとして多くの陸軍軍人たちが集まっている。

「兵たちが困惑しています。
 日本と間違えてソマリアに来てしまったとジョークを飛ばす下士官まで出ています」
「JSDF(自衛隊)も困っているようです。
 まあ、彼らは巨大地震でもない限りは元々行動の自由がありませんので何もできませんが」
「既に装甲車両に分乗した偵察中隊の出動準備が整っています。
 ポリスたちは無視して日本政府に要請を出してはいかがでしょうか?」

 将校たちは口々に好きな事を口にする。
 彼らは合衆国軍軍人の一員だが、本土を遠く離れた日本に駐屯するファミリーでもある。
 礼儀作法が重視されない場所では、それなりに砕けた対応が許されている。

「我々が勝手に行動する事は許されない。
 現地のポリスたちが対応できるといっている以上、我々に出来る事はゲートの警備を強化することぐらいだ」

 中将は諦めたような笑みを浮かべつつそう命じた。
 彼は、それなりに長い軍務経験を通じて日本という奇妙な同盟国の特徴をよく理解していた。
 この国は議会制民主主義を称する社会主義国家であり、何よりも大企業を優先するという行き過ぎた資本主義を持っている。
 それでいて国家を動かす官僚たちは異常なエリート主義に陥り、自分たち以外全てに価値を見出していない。
 教育機関は何よりも主義信条を尊び、愛国心とはテロリズムと同義語だと社会を動かす大多数は信じる。
 国旗国歌は価値の無いものだとマスコミが叫び、多くの知識人たちがそれを肯定する。
 だが、国民たちの順法意識は高く、治安はある程度の水準に抑えられている。
 もちろん何事にも例外はあるが、それでもこの同盟国は豊かで平和な社会を維持し続けていた。

「ジャップたちの奇妙なあの法律、国家検閲法のようなものが原因なのでしょうね」

 中佐が呆れたように呟く。
 その差別的な表現には誰もが注意しようと思うが、後に続けられた言葉に沈黙する。
 もちろん合衆国でも、必要に応じてある程度の情報統制や報道管制が敷かれる事はありえる。
 しかし、それは国民のパニックを抑えるためや、流言による二次被害をなくすためだ。
 この同盟国は違う。
 法律が制定された経緯や当初の理念は未だにわからないが、とにかくこの法律は国家を運営する人々のためのものだった。
 自由と民主主義。
 アメリカ合衆国の求める同盟国としてのルールを逸脱しかねないこの法律は、ナチスの武装親衛隊が復活したような奇妙な武装組織を作ってでも維持されている。
612>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/09/01(火) 01:42:57 ID:0TBl5xI0
正化31年9月30日月曜日 1937時 神奈川県相模原市 下溝古山公園付近

「後ろ!三人!」

 短く警告の叫びを上げると、俺は人影に向かって発砲した。
 直ぐに車体の各所から火線が発せられ、障害物に向かっていた人影たちがなぎ倒される。

「そろそろまずいですよ」

 補給係を命じられた負傷している図書士が報告する。
 この車に乗せられた弾薬箱も、そろそろ底が見えてきたようだ

「全員順番で単射に切り替えろ。
 切り替えたものは隣に合図、受けたものは単射に切り替えろ。
 油断を誘って連射でなぎ払うぞ」

 先ほどよりは声を低め、俺は罠を仕掛ける事にした。
 思ったよりも物事はうまく進むらしい。
 徐々に単射に切り替わっていくこちらを侮ったのか、敵は弾幕を張りつつ一斉に接近を図ってくる。

「馬鹿どもが。あと三十秒粘るぞ。
 みんな我慢してくれよ。残りの弾薬を全部分配しろ」

 手渡された弾倉を見ると、装填している分を除いて残りマガジンは三つ。
 これが切れたら皆殺しだろうな。
 それまでに友軍の増援かマスコミか警察が来る事を祈ろう。
 そのまえに敵の増援が来たらおしまいだ。

「もうチョイひきつけろ、もう少し、もう少し」

 こちらの弾薬が尽きかけていると考えているのだろう、敵は大胆にも数人単位で固まって遮蔽物へ向かいだした。
 銃撃はもちろん行っているが、連射に比べて散発的な攻撃は敵の接近を防げるものではない。
 
「もう少しだ。
 俺が叫んだら直ぐに銃撃を止めろ。
 奴らが出てきたら一斉に撃て。いいな?」

 銃撃をしている者を除いて全員が頷く。

「おまえ、俺が弾が無いと叫んだら止めろ、取るなと叫べ。
 いいな?」

 臨時補給係の図書士に命じる。
 彼は俺がやりたい事を正しく理解し、やや不安そうにしつつも首を縦に振る。

「いいな、よし、いくぞ」

 俺の命令が行き渡っている事を確認し、息を吸い込む。

「だ!だれか!弾をくれ!頼む!!!」
「やめろ!取るな!俺だって無いんだ!」

 露骨過ぎる叫びだが、敵は見事に引っかかってくれたようだ。
 数人が支援攻撃を行いつつ、五名ほどの集団が駆け足でこちらに向かってくる。

「撃て!」

 素早く小銃を構えた俺は、誰よりも早く発砲を開始した。
 5.56mm弱装弾に貫かれた二名が倒れる。
 すぐさま全員が俺に習い、我々は激しい防御射撃を実施した。
613>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/09/01(火) 01:44:58 ID:0TBl5xI0
本日はここまで
614創る名無しに見る名無し:2009/09/01(火) 13:15:37 ID:5A1fPJTL
うわー!失踪してなかった!!
まじでうれしいwww
乙です!これからも応援していきます!
615創る名無しに見る名無し:2009/09/01(火) 20:06:35 ID:8bBRug60
こりゃ激しいわ
笠原とかがこの現場を見たら、あの純情乙女はどんな面するかな?

何はともあれGJ!
616創る名無しに見る名無し:2009/09/02(水) 20:30:21 ID:J6r1ATmW
帰ってきた!
図書館戦争氏が帰ってきた!
これでジオンはあと10年は戦える!

それにしてもとうとう本格的な市街戦に突入か
警察と良化隊との繋がりといい、まともな先進国とは思えない
アメリカ人が馬鹿にするのも仕方ないなw
617創る名無しに見る名無し:2009/09/02(水) 21:12:24 ID:C364/q7b
投下乙です。どう転がって行くのか。
618創る名無しに見る名無し:2009/09/03(木) 06:38:09 ID:9l92PmWH
関連スレ

[映画・ゲーム] 創作考察01 [小説・アニメ]
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/war/1230798012/
619創る名無しに見る名無し:2009/09/05(土) 06:18:38 ID:LcxyF1sE
━━ヽ(゚∀゚)ノ━( ゚∀)ノ━(  ゚)ノ━ヽ(  )ノ━ヽ(゚  )━ヽ(∀゚ )ノ━ヽ(゚∀゚)ノ━━!!!
図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM氏 GJ!
620創る名無しに見る名無し:2009/09/05(土) 13:14:49 ID:PxiSj1Dg
投下乙、待ってた期待を裏切らぬハードな展開
いままで存在が希薄だった警察の描写の一部が見られて
現在の図書隊・良化隊・警察の力関係に納得です

公安・自衛隊がどう関わるかにwktk
621創る名無しに見る名無し:2009/09/06(日) 07:22:13 ID:87HQWgSi
過疎ってるな・・・
622創る名無しに見る名無し:2009/09/09(水) 02:33:32 ID:A0/T/ZVJ
投下まち
623創る名無しに見る名無し:2009/09/11(金) 20:06:04 ID:b+pg73+4
生贄警視「もう無理ぽ」だなw
しかし、ジャミングは不味いぞ。
自衛隊や消防からも容赦なく電波取り上げる奴らだぞ。
624創る名無しに見る名無し:2009/09/12(土) 13:37:03 ID:MVJw5o/e
マスコミが暴走した、というよりは特定団体が権力掌握した状況かのぉ?>メディア良化隊
「焚書」といい、宗教団体みたいな感じ(創○が政権取ったIF世界
625創る名無しに見る名無し:2009/09/12(土) 16:30:44 ID:Cx4lZ7Gy
公明がそんなことしようものなら学会員から取って食われるから
626創る名無しに見る名無し:2009/09/15(火) 13:37:42 ID:prJ7BaLJ
過疎りすぎage
627創る名無しに見る名無し:2009/09/19(土) 14:59:17 ID:7KJ25nzL
大型連休に投下期待
628創る名無しに見る名無し:2009/09/23(水) 21:07:44 ID:3BsRsxqt
大型連休最終日にきて何も投下無しとはどういうことだ・・
629創る名無しに見る名無し:2009/09/24(木) 21:49:00 ID:xJfz488k
前もこんな質問した気がするけど、オマイラが挫折してしまったssを教えてくれ
630創る名無しに見る名無し:2009/09/25(金) 04:19:40 ID:MpKUAHIi
図書館、カンバック!
631創る名無しに見る名無し:2009/09/27(日) 20:40:03 ID:UERf0f0w
図書館age
632創る名無しに見る名無し:2009/10/03(土) 06:15:04 ID:hnfH5RzI
                 r、ノVV^ー八
                 、^':::::::::::::::::::::::^vィ       、ヽ l / ,
                 l..:.::::::::::::::::::::::::::::イ      =     =
                    |.:::::::::::::::::::::::::::::: |     ニ= 図 そ -=
                  |:r¬‐--─勹:::::|     ニ= 書 れ =ニ
                 |:} __ 、._ `}f'〉n_   =- 館. で -=
  、、 l | /, ,         ,ヘ}´`'`` `´` |ノ:::|.|  ヽ ニ .な  も ニ
 .ヽ     ´´,      ,ゝ|、   、,    l|ヽ:ヽヽ  } ´r ら   ヽ`
.ヽ し き 図 ニ.    /|{/ :ヽ -=- ./| |.|:::::| |  |  ´/小ヽ`
=  て っ 書  =ニ /:.:.::ヽ、  \二/ :| |.|:::::| |  /
ニ  く. と 館  -= ヽ、:.:::::::ヽ、._、  _,ノ/.:::::| | /|
=  れ.何 な  -=   ヽ、:::::::::\、__/::.z先.:| |' :|
ニ  る と ら =ニ   | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::.|'夂.:Y′ト、
/,  : か   ヽ、    | |::::::::::::::::::::::::::::::::::::_土_::|  '゙, .\
 /     ヽ、     | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::.|:半:|.ト、    \
  / / 小 \    r¬|ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| \
633>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/04(日) 12:48:38 ID:tOm/OqX1
正化31年9月30日月曜日 2018時 神奈川県相模原市 下溝古山公園付近

「きたぞー!」

 ドアの隙間から外を監視していた図書士が叫ぶ。
 いい加減周囲から漂う血の匂いに飽きていた俺は、その希望の持てる内容の叫びで力を取り戻した。

「遠慮するな。残りの銃弾を全部叩き込んでやれ」

 数十分前の小さな成功から一度も姿を見せない敵に飽き飽きしていた仲間たちは、喜んでその命令に従ってくれた。
 穴だらけになった民家からこちらに向けて反撃を試みていた良化隊員たちに、無数の小銃弾が襲い掛かる。
 いわゆる近代的な民家は、風雪には強くとも、自動小銃から放たれた軍用ライフル弾を押しとどめる効果などあるはずも無い。
 絶叫、悲鳴、そういった心を和ませる音楽が聞こえてきた。
 馬鹿どもが。
 俺たちは弾が少ないから撃たなかっただけで、お前たちが陣地に使っている民家に発砲することに抵抗は無いのだ。

「撃て撃て!遠慮はいらんぞ!全弾くれてやれ!」

 退路を塞いでいたトレーラーと民家の壁の間を、車体をこすりつつ軽装甲機動車がこちらに向けてやってくる。
 自衛隊が正式配備している、角ばった装甲が目立つ素敵な乗用車だ。
 それは、調子に乗って叫んでいる俺たちを盾にするようにして停車する。
 
「直ぐに発砲を止めろ!あそこは民家だぞ!」

 誰だか知らないが、今更やってきた図書監が偉そうに命令をしてくる。
 そのまま突っ立って命令していろ、直ぐに敵の銃弾がお前を黙らせてくれるからな。

「直ぐに弾を下さい!奴らをここで潰しておかないと、後々面倒です!」

 恐らくは良化隊の非合法部隊。
 それも荒事専門の精鋭部隊だろう。
 そいつらをここで皆殺しにしておく事は、中長期的な視点から見てとても図書隊のためになる。
 この種の作戦行動が益になる事は少ないと敵に知らしめる効果もある。
 何よりも、それなりに統制の取れた軍事行動を実施できる敵の人間を一人でも減らすことができるという大きなメリットがある。
 民家へ向かっての発砲はとても褒められたものではないが、そもそもが良化隊が陣地として使用しているのが悪い。
 確かに良化隊にはメディアを使ってこちらを攻撃する能力があるが、ではどうして図書隊が民家をわざわざ攻撃したのかという点は説明が必要だ。
 つまり、目の前の穴だらけの民家の中で民間人が何人死んでいようとも、俺たちはその責任を追及される可能性はきわめて低いのだ。
 そのような利益しかない行動なのだが、目の前の彼にそれを説明している時間は無い。
 それに、思考をめぐらせている間に、彼は流れ弾か跳弾で、物理的な意味で頭をやられてしまったらしい。
 
「指揮権を俺が引き継ぐ、全員直ちに目の前の民家を攻撃せよ!」

 こういったしだいなので、俺たちはそれから三十分に渡って発砲を継続し続けた。
 生存者が裏口から逃げたのか、それとも全滅したのかは知らないが、とにかく良化隊からの反撃がなくなるまで。
 その後も続々とやってきたこちらの増援部隊に包囲され、俺たちは最寄の基地へと移動した。
 途中で二回の遭遇戦闘があったが、いずれもこちらが盛大に銃弾をばら撒いての先制攻撃を行った事により、良化隊は執行の停止を宣言してきた。
 つまり、我々は今回の戦闘に勝利したわけだ。
634>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/04(日) 12:50:03 ID:tOm/OqX1
 それは小さな勝利であり、偉大な一歩だった。
 火力には火力で、もっと大きな火力にはより多くの火力で。
 図書隊は、専守防衛を貫く反撃機能付き標的から、一つの軍事組織へと変貌を遂げたのだと全世界へ向けてメッセージを送ることが出来たのだ。
 俺がやるべきことは、最悪でも最終的に利害関係者全てが等しく損害を受ける事であり、最良の場合では図書隊だけが勝てる状況を現場レベルで目指す事だ。
 上の連中がその状況をいかにして作っていくかには大変興味があるが、それは俺の仕事ではない。
 今回の件については査問会も特になく、良化隊に非がある事からマスコミを使っての攻撃も少なかった。
 武蔵野基地前の『平和市民団体』はいつものことだから別にいいとして、俺の周囲は驚くほどに何もなかった。
 上層部レベルでは何やら動きがあったと漏れ聞く。
 その何やら、というものがどういった方向性のものだったかはわからないが、一つだけはっきりとしている事がある。

「図書隊は、本格的に戦争を行う事を決意したようだな」
「物騒な事を呟いているな、お前」

 並べられた機関銃を前に、無感動に呟いた俺に対して、手塚が突っ込みを入れてくる。
 あの輝かしい相模原武力衝突から一週間後、俺の目の前にあるのは5.56mm軽機関銃の群れである。
 陸上自衛隊の普通科連隊が目にしたら、ボルト一つ残さずに持ち去ってしまうほどの素晴らしい光景だ。
 その隣には、今まさにトラックから降ろされようとしている狙撃銃の群れがある。
 今ゲートをくぐってきている大型トラックには、鉄条網や砲座が収められているらしい。

「機関銃に狙撃銃に鉄条網、おまけに銃弾に対しては無敵に等しい砲座。
 男ならば、この光景に興奮してしまっても仕方がないだろう?」

 俺の意見は、男ならばきっとわかってもらえるはずだ。

「こいつらを人間に向かって使用しないという前提だったらな」

 対する手塚は乗り気ではない様子だ。
 これだからイケメンは困る。
 人間というものは、公共の福祉に不利益をもたらさない範囲で素直であるべきだ。

「兵器というものは人間を効率的に殺傷するための道具だろ。
 それに、これらは非武装の民間人を虐殺するためのものじゃない。
 全力で俺たちを殺しに向かってくる相手から、身を守るための道具だ。
 それならば、強力なほど良いに決まってるじゃないか」

 楽しげに答えた俺に、手塚はやや引き気味の表情を向けてくる。
 失礼な奴だな。

「それに、年がら年中振り回すわけじゃない。
 定期訓練以外は、防衛戦闘でしか持ち出さないだろう。
 それほど心配する事は無いさ」

 俺は曖昧な笑みを浮かべつつそう答えた。

「是非、そうであってほしいものだな」
 
 ため息と共に返ってきた手塚の言葉は、残念な事に現実にはならなかった。
 正化31年10月7日月曜日、メディア良化隊は図書隊の防衛力強化に対し、メディア良化法に基づく査察力向上を宣言した。
 もはや双方は完全な陸軍歩兵部隊に他ならず、諸外国および国内の双方を支持する団体から、重武装化を非難するコメントが発せられた。
 しかし、全面的な武力衝突を決意した二つの団体は、そのような周囲の雑音など既に無視する事としていた。
 彼らにも我々にも、それを可能とするだけの法的根拠と発言力はあるのだ。

 同年10月9日水曜日、図書隊は防衛部の大幅な増員を発表。
 同年10月10日木曜日、メディア良化隊特別査察部隊は部隊数を倍増させる計画を発表。
 同年10月17日木曜日、関東図書隊は図書特殊部隊の定数を倍増させ、装甲車両および輸送ヘリコプターの増加を決定。
 同日にメディア良化隊特別査察部隊は緊急展開力の向上を理由にヘリコプターの配備を決定。
 翌10月18日金曜日、法務省内にて図書隊とメディア良化隊の間で対空射撃を禁じる協定が結ばれる。
 そして双方が一連の戦闘能力向上を宣言し終えたこの日、俺は図書隊機関銃運用課程の教官としての任務を与えられた。
 もちろん自衛隊からの教官派遣は受けているが、図書隊は最終的に独力で全てを行うという目標がある。
 外部からの助力は、いつ良化隊の妨害を受けて失われるかわからないからである。
635>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/04(日) 12:52:13 ID:tOm/OqX1
正化31年10月21日水曜日21:32 関東図書隊武蔵野基地 大会議室

 この日、関東図書隊の主だった人間は、非常召集をかけられこの部屋へ集められていた。
 稲峰図書司令を頂点に、主だった部課長、実務担当者、内部的に所属が明らかになっている情報部員たち、そして何故か俺である。

「即応体制に入っている部隊は?」

 上座に座る図書監が尋ねる。
 彼は、この場において司会者としての役割を持たされている。

「図書特殊部隊一個中隊、防衛部選抜部隊二個中隊と装甲バス十台です。
 参加部隊は既にご周知の通り、外出を禁じ、即時出動態勢にて待機中です」

 一人の防衛部図書正が立ち上がり、片手のメモを見つつ報告する。
 ありがたいことに、俺はその初動部隊に含まれている。
 家族もおらず、自衛隊時代の友人たちは平日に会う事が困難である俺は構わないが、個人的な外出の予定を持っている連中には災難だったようだ。

「弾薬は四基数を今回の任務用に確保していますが、空輸にて最大で六基数分を搬入可能です。
 これとは別に、巡回を装って二個小隊の戦力が一時間以内に駆けつけられるように周辺に待機しています。
 施設の防衛が可能になった段階で、当面は彼らが施設の封鎖を行います」

 約一個大隊。小銃弾を防ぐ装甲車両と輸送用のヘリコプター。
 大変な戦力である。

「敵の戦力は?」

 当然の質問である。
 敵戦力の規模によって、こちらの行動も随分と変わってきてしまう。

「およそ一個大隊規模。ヘリボーンは協定で行えない事になっていますので、対処可能な範囲です」

 一個大隊の軽装歩兵部隊。
 こちらも同数で、しかも軽機関銃を多く配備している事を考えれば、十分対処可能な戦力である。

「敵の増援はありえるんだろうな?」

 敵もどうやってかこちらの情報は入手しているだろう。
 重装備は無しで、一個大隊が篭る建物を落とそうとするのであれば、当然ながらこちらよりも多い戦力が必要となる。

「短時間で大きな損害を受けた場合にはありえます。
 現場に急行できる範囲には最大で二個大隊の戦力がいます。
 苦戦した際には、これらが駆けつけてくる可能性は十分考えられると思います」

 寄せ手三倍の法則か、それなりに真っ当な頭は持っているらしい。
 だが、敵がよほど愚かでない限り、逐次投入ではなく一度に押し寄せてくるだろう。
 戦術の原則とは、相手よりも多くの戦力で、相手に対応する時間を与えずに目標を達成する事である。
 こちらの戦力を誘引する事が目的でもない限り、逐次投入はありえない。
636>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/04(日) 12:54:28 ID:tOm/OqX1
「情報部からもよろしいでしょうか?」

 ここで情報部のあの図書正が手を上げた。
 誰もが彼の行動に注目している。

「無線傍受および信頼できる筋からの情報です。
 先ほどのお話にありました今回の作戦に参加すると目される部隊すべてに外出待機が発令されています。
 また、弾薬の搬入回数がここ半年間で見るとかなり増加しています。
 以上の事から、彼らの初動はかなりの規模になる可能性は非常に高いと情報部では判断しております」

 我が情報部はなかなかに仕事が出来るらしい。
 せいぜいが末端の非合法工作員であるという程度の認識である俺は、他人事のように感心した。
 もちろん玄人が引っ張る素人集団という認識を改めるほどには至っていない。
 それは、今回の作戦も含む今後の実績で判断すべき事だ。

「敵装甲車両の対策は?」

 当然の質問である。
 火力向上が成されたとはいえ、それらはあくまでも5.56mm弾を使用するものである。
 小銃弾を防ぐ事のできる車両を持ち出されれば意味はない。

「展開時に鉄骨を組み合わせたものを配置します。
 敵が装甲ブルドーザーでも持ち出さない限りは確実に効果があります」

 ごく一般的な対戦車障害物である。
 三本のレールを用いて作られるそれは、人力では除去が困難な重量を持っている。
 また、地面をしっかりと保持できる構造をしている事から、車で体当たりをした所で逆に車両が破損してしまう。
 もちろん工兵車両を用いれば簡単に撤去が可能だが、それには十分な経験と支援体制が必要となる。
 つまり、現在こちらが掴んでいる範囲の状況では、メディア良化隊は対戦車障害物を円滑に除去する事は不可能となる。

「鉄条網は?」

 障害物をすり抜けて浸透を図る人間に対し、絶大な効果を持つ障害物の名前が挙がる。
 既に各種の試験を潜り抜けた一品が納入されており、次回の作戦には持ち込まれる事が当然だと誰もが考えていた。

「既にトラックに積み込まれています。建物の全周に配置してもなお余る量です。
 土嚢についても同様です」

 図書隊の任務には防衛しかない事から、彼らは野戦築城についてはかなりの技術と蓄積を持っている。
 今回は今までの積み重ねの集大成が大いに役立っているようだ。
637>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/04(日) 12:56:57 ID:tOm/OqX1
「銃座は?」

 俺の強い要望でようやく採用されたあの防弾銃座の事だ。
 あれを使って安全かつ大量に銃弾をばら撒くことが出来るのであれば、これほど幸せな事は無いだろう。
 もっとも、アレを使用することが出来るのは機関銃分隊の連中だけである。
 一兵卒に過ぎない俺は、小銃分隊の事実上の下士官として行動するため触ることすら出来ない。
 こんな事ならば、せめて幹部レンジャー過程を完了してそれなりの地位についてから退役しておけばよかったと今更ながら後悔する。
 まあ、俺のような歪んだ人間の下につく下士官たちにはさぞかし不評となっただろうがな。

「ヘリで屋上へ運び込みます。
 書籍の輸送にもヘリを使う予定ですので、展開時の最終便がそのまま書籍の積み込み完了まで待機することになります」

 回答者たちの言葉に淀みは無い。
 今回の作戦は、以前から幾度となく想定が繰り返されてきている。
 施設内の見取り図も、周辺の地形状況も、現場への輸送ルートや飛行経路も、全てが入念に調査され、検討されてきた。

「敵の対空射撃には対応できるんだろうな?」

 ヘリコプターを預かる航空班長が不安そうに尋ねる。
 大隊規模の歩兵部隊が盛大に弾薬をばら撒く現場に最重要の貨物を運搬するために乗り込むのだ。
 彼が自分の部下たちの事を心配したとしても誰もそれを嘲る事はできない。

「彼らが協定を遵守するという前提では大丈夫です」

 不安そうな彼の質問に、法務部の幹部は冷たく回答する。
 とはいえ、この場にいる人間たちには、上は稲峰司令から下は最下級の俺に至るまで、それ以上の答えを用意することはできない。
 良化隊に電話をかけて「ヘリを撃たないですよね?」と質問したところで「協定を遵守するよう関係各部署に通達済みである」以外の回答が返ってくるはずがない。
 
「負傷者の搬送体制は?」

 質問の声に、衛生課長が起立して報告する。

「周辺のヘリポートを持つ八つの病院へ分散して確保しました。
 最大で150名の短期収容が可能です」

 言葉にすると短いが、その内容は驚くべきものである。
 緊急用のヘリポートを持つ大病院を八つも確保したのだ。
 これはかなりの成果であるといえよう。
 まあ、そうできるように図書隊は医学生向け優先図書貸出サービスや論文の買取、報酬付き講演会の実施を行っている。
 衛生課長だけの成果ではなく、日ごろの金銭的な投資の結果であるとも言えるだろう。
 あまり綺麗なやり方ではないかもしれないが、負傷する可能性がある現場からすれば、このようなやり方には大いに賛同できる。
638>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/04(日) 12:58:27 ID:tOm/OqX1
「野辺山氏の病状は?」

 再び情報部の図書監が起立する。

「最新の情報によると、既に危篤状態であるとのことです。
 恐らく、今週末までは持たないだろうと専属医師から聞いております」

 今回の作戦目標である財団法人情報歴史資料館。
 理事長である野辺山宗八氏が管理するこの施設には、メディア良化法制定から現在に至るまでの報道記録が収められている。
 現在では海外に出向いて収集しない限りは民間人では知ることの情報の山である。
 これらの情報資料は財団法人の財産となっており、大抵の事に自由が通るメディア良化隊とはいえども、さすがに自侭に振舞う事はできない。
 戦うことよりも後世に伝える事を第一としていたのか、晩年の野辺山氏はそれらの資料を大々的に持ち出すこともなかったため、今までのところお目こぼしを受けていた。
 しかしながら、80歳を超える高齢である彼が亡くなれば、当然のことながら良化隊は全てを闇に葬るための行動を開始するに決まっている。
 そういった次第のため、彼らはここに集まっている。

「野辺山さんは良き友人でした。
 彼の持つ資料の一切は、私にゆだねて頂く事が決定してはいますが、良化隊はそれをなんとしても阻止しようと行動してくるはずです。
 既に一部部隊は現地入りのための行動を開始してはいますが、皆さん、よろしくお願いしますよ」

 基本的には沈黙を貫いている稲峰司令が珍しく自身の考えを伝えてきた。
 彼の持つ今回の作戦についての意気込みが伝わってくる。

「小田原の件とは別になりますが、気になる情報があります。
 重要度と緊急性、どちらも高いものです」

 だが、図書正の話はまだ終わっていなかったようだ。
 再び口を開き、誰もが注目する。

「詳細があいまいな情報ですが、稲峰司令に対する誘拐計画があるというものです。
 規模、目的、日時などの情報がないため、現在のところ詳細を調査中となっております」

 これまた嫌な情報だ。
 これだけの会議でわざわざ報告していると言うことは、少なくとも信頼性は高い情報なのだろう。
 稲峰司令や要人警護課長が表情を変えていないところを見ると、事前にある程度の根回しはしていたのだろう。
 むしろそうなると、詳細も既に掴んでいるが、内部からの漏洩を見込んで釘を刺す事が目的なのかもしれない。
 あるいは、既に見込みは出来ていて、流出経路を確認する事で今後偽情報を流す際の実験をしているのかもしれないな。
 まったく、世の中が裏表のない素直で純粋な人間ばかりだったらこんな事でいちいち悩む必要はないのだが。

「詳細が不明とはいえ、無視できる内容ではないな。
 稲峰司令、身辺にはくれぐれもお気をつけ下さい」

 司会役の図書監が畏まった様子で自重を促す。

「気をつけましょう。
 なに、この足です、気ままに一人で飲みに行ったりはしませんよ」

 笑えないジョークを彼が発し、それに一同が曖昧な笑いで答えたところで会議はお開きとなった。
 翌10月22日の午前五時三十二分、野辺山宗八氏は享年八十四歳でこの世を去った。
 彼の訃報を非常呼集のサイレンで知らされた俺は、内心で冥福を祈りつつ、ロッカールームに向けて全力疾走を開始した。
639>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/04(日) 13:00:05 ID:tOm/OqX1
本日はここまで
軍板時代と違って一投稿あたりの行数が多いと、投下間隔がどうしても長くなってしまい申し訳ないです
640創る名無しに見る名無し:2009/10/04(日) 13:18:22 ID:4LZR89N8
>>639
GJ!です
ついに小田原ですか、また激しい戦闘になりそうな…

軍事板でもSSを書いてたんだ、どこのスレですか?
F世界か防女か…他にもあったかな?
641>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/04(日) 13:48:30 ID:tOm/OqX1
>>640殿
F自スレです
別のスレに同じコテハンは良くないと前に聞いたことがあるので、
向こうでは同じトリップですが物語は唐突にというコテハンで投下してます
今はあのスレもこの板に移動してきているのでよろしければどうぞ
642創る名無しに見る名無し:2009/10/04(日) 14:37:01 ID:4LZR89N8
>>641
F自スレですか。私は防女スレ住人でした
最近はずっとこっちに居座ったままですが

F自スレは私が軍板住人になった頃にはもう伝統あるスレになっちゃってたから、そっちには何も投下したことがない…
スレも長く続き過ぎると新規参入が難しくなりますorz
643>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/04(日) 14:48:37 ID:tOm/OqX1
>>642殿
新しく投下しようって人から見ると、長く続いているスレってやっぱり投下しづらいんですか?
F自スレは長い事投下しているんですけど、気がつくと最近新しい人がいなくて寂しいんです
住民の皆さんは優しいですし、気が向いたら是非投下していってください
644創る名無しに見る名無し:2009/10/04(日) 15:17:25 ID:4LZR89N8
>>643
昔投下された作品と被ってるとか、シリーズ通して登場している人物とかの扱いが難しかったりですかね
F自スレの話も脳内に一つだけアイデアがあったりしますが、どーもスレの雰囲気と違う感じが…

今はここに投下用の話を書いてる最中です
なかなか筆が進みませんがorz
645>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/04(日) 16:06:48 ID:tOm/OqX1
>>644殿
お話の印象からして被ると言っても被っている部分があるという状態でしょうし、
登場人物についてもオリキャラではなく二次創作に対してのお話ではないかと勝手に考えております

もしそうなのであれば大丈夫だと思いますよ
私個人の勝手な意見ですけど、F自にしろこのスレにしろ、投下いただけたら嬉しいですし、連載いただけたら幸せです
646創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 08:04:37 ID:ueQnjB0c
>>639
乙でした。
原作では誘拐が先でしたっけね?
しかし警察よりも重武装ですなwまあ比例して強化はしてるでしょうが‥‥。
装甲バス、軽装甲機動車、機関銃ときたら。
次は、ミニガン砲塔搭載のブルトーザー改造戦車とか73式が来そうですねw
この調子では、いずれ徹甲弾の使用やキャリパー導入しそうな予感も。
そうなると、自衛隊系の装甲車以外は防護力に不安が出ますね。
民間とか他国の装甲性能は大体が一発こっきりの
最大防護性能で作られてるそうですから。

装甲バスのイメージは警察の特型警備車でいいですか?
647創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 18:50:25 ID:sfx1dssw
図書館氏乙です
とうとう完全な戦争に移行しましたか
もう内戦一歩手前ですね
というか笠原とかはこの状況に耐えられるんだろうか
図書館隊は正義の味方とかいう幻想は完全に吹き飛んでしまいましたね
どこまで状況がエスカレートしていくのかというか主人公がエスカレートされていくのか楽しみです

あとF自スレの物語は唐突にも楽しみしてます
648創る名無しに見る名無し:2009/10/05(月) 19:37:56 ID:K+BQaVOp
防女スレから遊びに来ました
>>641氏や>>642氏の言うとおり防女スレも新人がSSを投入しにくくなっています
原因はSSを投入しても設定と違うなど文句を言う人間が出てくるからです
そのおかげで555氏や212氏(ここの642氏かな)がいなくなってしまいました
どこのスレもそういうものかもしれない
そういう私も創作系のスレッドを見ることが多くなっている
649創る名無しに見る名無し:2009/10/06(火) 11:43:22 ID:uSQwACBs
>>647
「戦争を決意した時点で、どちらも正義を持ち、悪でもある」

そうでなきゃ人を的に銃弾なんて叩き込めない
650666Squadron:2009/10/12(月) 08:42:14 ID:kLqhxt+V
我々の地球とはほんの少しだけ異なる歴史を辿った地球のお話
651666Squadron:2009/10/12(月) 08:43:42 ID:kLqhxt+V
首相閣下におかれましては、我が国ならびに同盟諸国軍が被っております人的被害につい
ては、すでに関係諸機関よりの詳細な報告によりご承知おきのことと存じます。言うまで
もなく本職は祖国と女王陛下に忠節を尽くすものであり、今次大戦における我が陣営の最
終的勝利については微塵も疑い無きところではありますが、昨今の戦死傷者数の統計を精
査するに慄然とせざるを得ないこともまた事実であります。ことに深刻なのが航空兵の損
失で、海峡方面は比較的穏やかではあるものの、中東および極東戦域での損失は無視でき
ないレベルにあり、敵占領下の欧州大陸に侵攻する爆撃機軍団の損耗率に至っては、極め
て憂慮すべき状態にあると申し上げざるを得ません。去る1940年の春、閣下が下院で
発言されました歴史的演説の通り、キリスト教文明の存続が我が国の奮闘に係っている以
上、敵に更なる重圧を加え、我が方の勝利をより確実なものとするためには、あらゆる手
段を用いるべきであり、敢て伝統的、道徳的観念に由来する諸々の制約を、一時的に撤廃
することも必要と愚考致します。故に本職は婦人航空兵採用枠の拡大と実戦部隊への編入
を強く進言するものであります。

戦時内閣特別顧問 W・P・リンデマン
652666Squadron:2009/10/12(月) 08:45:45 ID:kLqhxt+V
月曜の朝

英国海軍航空隊予備義勇兵シャーロット・ホームズ少尉の操縦するグラマン・マートレッ
ト艦上戦闘機FN142号機は、北海上空1,000フィートを時速150マイルで飛ん
でいた。
9気筒の星型空冷エンジンが奏でるピストンとプロペラの交響曲を響かせて飛行する米国
製単座戦闘機の翼下では、第三次援ソ高速輸送船団FR77が、グリーンランドとスカン
ジナビア半島の間に広がる北極圏の海を、ムルマンスク目指して進んでいる。
船団を構成する全18隻の内訳は、近代的な大型貨物船が15隻、1万6千トン級タンカ
ー3隻。
これらの船が船腹一杯に積み込んだ積荷−戦車と飛行機、そして航空燃料−は東部戦線の
全局面を変えるに足ると言われている。
これに巡洋艦2隻、駆逐艦5隻、フリゲート艦、掃海艇、コルベット艦各1隻、そしてホ
ームズの所属する英国海軍航空隊第666戦闘飛行中隊を搭載した、9千トンの商船改造
空母グラップラー、計11隻から成る英国海軍第14護送戦隊が随伴していた。

『ハロー<シュガーのS>、こちらストロングマン』
無線電話を通してグラップラーの空中戦闘管制官アダムズ大尉が呼びかけてきた。
<シュガーのS>はシャーロットの、ストロングマンはグラップラーの呼び出し符号だ。
「こちら<シュガーのS>、感度良好どうぞ」
『レーダーに不明機1、方位0−2−0、30マイル接近中』
連合国と枢軸国、どちらの飛行場からもこれだけ距離のある北極圏の洋上で、この方向か
ら接近する航空機は、トロンハイムに基地を置くKG−40のコンドル以外に有り得ない。
フォッケウルフFw200コンドルは、ルフトハンザ航空の26人乗り商業輸送機として
作られた4発機で、長距離哨戒機として就役したFw200Cは2千200マイルを越す
航続距離を持っている。
軍用機としては武装が弱く、機体強度も戦闘機動を行うにはやや脆弱ではあるものの、長
大な航続距離を活かして北海上空を哨戒し、Uボートを誘導するだけでなく、自らも爆撃
を加えてくるコンドルは、連合国船団にとってまさしく疫病神と言えた。
だが今回、FR77には空母グラップラーが加わっている。
イラストリアスやフューリアスといった艦隊型空母に比べれば玩具のようなものではある
が、これまで陸上機の援護が受けられないエア・カヴァーの空白海域で、Uボートと独空
軍機に好き勝手されてきた援ソ船団に、待望の上空直援機が付いたのだ。
653666Squadron:2009/10/12(月) 08:47:49 ID:kLqhxt+V
マートレットを上昇させながら、シャーロットの目と手は敏捷に動いた。
反射式照準器のスイッチを入れる。
スロットルとミクスチャーとプロペラピッチを調節する。
高度計、対気速度計、ブースト計、コンパス、潤滑油圧力計をチェックする。
機銃を装填―マートレットの翼内に装備されたブローニング機関銃の装弾は、フレキシブ
ルケーブルを介し、シートの左右に並んだレバーを使って手動で行われる―する。
補助翼と昇降舵のトリムタブを調整する。
機銃の試射を行うと、6挺の50口径機関銃が咆哮し、斉射の反動で3.4トンのグラマ
ン戦闘機が震動する。
FAAの標準迷彩を施された戦闘機から放たれた曳光弾が、鉛色の雲が垂れ込める北極圏
の空にオレンジ色の軌跡を描いた。
『目標直進、交差方位。速度変わらず』
「了解ストロングマン」
ヘッドフォンを通じてアダムズの落ち着いた声が聞こえる。
グラップラーのレーダーに誘導されたマートレットは、兎の巣穴を急襲するバセットハウ
ンドのように雲の中に突っ込んだ。

FN142号機が雲の上に出ると同時に、シャーロットの目の前に、コンドルの巨大な機
影が迫ってきた。
距離は500ヤードもない。
まさか北海上空で単発戦闘機出くわすとは思ってもいなかったコンドルの操縦士は、予想
外の事態に一瞬の思考停止状態に陥り、急降下して雲に飛び込むための2秒間を空費する
というミスを犯した。
一方、時速500マイルの相対速度でコンドルに対進するシャーロットには、攻撃を躊躇
する理由は何もなかった。
種っぽい何かが虹色の閃光とともに弾け(イメージ映像)、感覚が鋭く研ぎ澄まされ、思考
が冴え渡る。
急接近するコンドルが空中に静止しているかのようだった。
機械的と言えるほど無感動に操縦桿に取り付けられたトリガーボタンを押し込むと、照準
器一杯に膨れ上がった4発機の機首に、毎秒60発を超える銃弾が撃ち込まれる。
正面衝突の直前、上げ舵をとってコンドルの背中を掠めたマートレットの操縦席から、ド
イツ機の風防ガラスが粉々に砕け散るのを認めたシャーリーは、そのまま上昇旋回に入っ
て後上方からの降下攻撃に移ろうとしたが、コンドルは急激に機首を下げると、あっとい
う間に海面に突入してしまった。
『目標の撃墜を確認、よくやった』
「PEACE OF CAKE(朝メシ前さ)」
FN142号機が船団上空でヴィクトリーロールを打つと、期せずして汽笛の大合唱が起
こった。
「お嬢さん方もなかなかやりますな」
「今のところは、だ」
第14護送戦隊旗艦H・M・Sユリシーズの艦橋で、一部始終を見ていたヴァレリー艦長
が双眼鏡から目を離して微笑むと、戦隊司令のティンドル提督がむっつりと答えた。
654666Squadron:2009/10/12(月) 08:49:30 ID:kLqhxt+V
655666Squadron:2009/10/12(月) 08:52:45 ID:kLqhxt+V
656創る名無しに見る名無し:2009/10/14(水) 23:38:25 ID:Jvadz8Su
船団護衛もの北。しかもFR77。
"史実"より空母少なめだけどしっかり飛ばしてるからいいや。
この機体が格好良く飛んでいるところは初めて見た気がするw
……ところで、艦載機にロッ(ry

> リンデマン
UPロケットはハズレだと理解してくれてると良いけど。
657>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/18(日) 00:39:18 ID:KPGTfiPo
正化31年10月22日水曜日05:35 関東図書隊武蔵野基地 ロッカールーム

「おい、出動だぞ」

 ロッカールームまであとわずかとなり、必死に息を整えていた俺は平然を装いつつ手塚に答えた。
 しかしいかんな、たかだか200メートル程度で息がここまで乱れるようでは生きてはいけない。
 この戦闘が終わったら、しばらくは自主訓練に励むとするか。

「いよいよだな」

 手塚と共に廊下へと進む。
 出動命令が出ているだけあり、基地内は騒然としている。
 実戦前のこの独特の雰囲気はたまらない。
 指揮官も一兵卒も関係なく、前線も後方も区別なく、一致団結して事に当たろうとする一体感を感じられる。

「狙撃班は出るのか?」
「当たり前だろう、全員出動だよ。
 いざと言うときは文字通りの意味で援護射撃をするから安心してくれ」

 思わず手塚の顔を見る。
 こいつにしては面白い冗談を言ったものだ。

「背中は任せたぜ」

 笑顔で答えつつ、更衣室のドアに手をかける。
 
「なあ、今回の作戦、大規模になるんだろう?」

 手塚が声をかけてきたのはその瞬間だった。
 何時になく不安そうな声である。

「それは間違いないよ。
 楽しみだな」

 俺の口から思わず本音が漏れてしまったとしても無理はないだろう。
 大隊規模での陸兵のぶつかり合いだ。
 こちらには機関銃がたっぷり、防御陣地や障害物も山のようにある。
 さぞかし愉快な戦闘となるだろう。
658>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/18(日) 00:40:14 ID:KPGTfiPo
「おはよう諸君」

 ヘリの前に整列した俺たちの前で、玄田隊長が訓示を垂れている。
 一個大隊を投入する大作戦である、いつもと違う出だしとなるのも無理はない。

「諸君らはこれより、間違いなく今年最大の作戦に参加する事になる。
 日本国の、古き良き時代から今に至る歴史を葬らんとする敵を打ち倒す作戦だ。
 我々は主義も、信条も違う。
 しかし、我々は同じ日本国民であり、図書隊員である。
 日本国の文化と言論の自由を護るため、戦い抜いてきた」

 玄田隊長はここで言葉を切り、俺たち一人ひとりの目を見てきた。
 まったく、勇ましい上に有能で、演説の才能まで持っているとはな。
 アンタはどこまで凄い人間なんだ。

「今日この日、我々は重要な局面において、結集する。
 日本国の歴史を保護する。
 人々に、友人に、そして家族に自由を取り戻すために。
 今すぐには何も変わらないかもしれん。
 だが、我々の勝利は必ずや後世の人々の記憶に残るだろう」

 再び沈黙。
 ヘリコプターのエンジン音が、遠くを次々と出動するトラックの轟音が、俺たちの耳に届く。
 さすがにいつもとは作戦の規模が違うだけはある。
 ここまで念の入った出動は、PKF時代以来無いな。

「すまんがみんなの命を俺にくれ」

 あの時、第十八次アフガニスタンPKF、三十八回目のパトロールでも、俺は同じ言葉を言われた。
 そのときにはついつい大声で「レンジャー」と叫んでしまったが、ここではそう叫ぶわけにもいかない。
 奇襲を受けたときの小隊員で生き残ったのは俺だけだったが、こうして再び出撃しようとしていると、アフガンの戦友たちが帰ってきてくれたような気持ちになるな。

「先発は第一小隊、直ちにヘリで現場へ乗り込め。
 第二から第四小隊は出動態勢で待機、車両部隊は最大速度で現場を目指せ。
 臨時編成図書第501大隊出動する、目標は小笠原。往くぞ諸君!」

 かくして、のちに日本の一長い水曜日と呼ばれる一日が始まった。
659>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/18(日) 00:42:35 ID:KPGTfiPo
正化31年10月22日水曜日07:10 神奈川県小田原市 財団法人情報歴史資料館

 エンジンとプロペラが奏でる轟音が、レシーバー越しにも鼓膜を叩く。
 現在の俺たちは、輸送ヘリコプターに詰め込まれて出動中である。
 既に眼下には情報歴史資料館のヘリポートが視界一杯に広がっている。
 どんどん落ちていくエンジン音、そして衝撃。

「降りろ!GOGOGO!」

 堂上図書正が声を張り上げ、俺たちは遂に戦場へと降り立った。
 他の隊員たちも続々と降り立ち、何人かは軽機関銃や弾薬箱も運び出す。

「第二小隊降下急げ!集合を待たずに正門封鎖に参加せよ!」

 小隊陸曹ならぬ小隊図書士長の号令で図書士たちが駆けていく。
 俺たちを降ろしたUH-60Jは旋回し、増援部隊を運ぶためにできる限りの高速飛行で飛び去っていく。
 それを暢気に見送る暇もなく、俺の所属する第一小隊は屋上階段を抜けて階下へと駆け下りる。

「防火扉を閉めるぞ!」
<<屋上第一機関銃座展開開始>>
「弾薬箱を下ろすぞ、ゆっくりだ、よし、三階西階段抵抗拠点設置完了」
<<屋上狙撃班は全員配置につきました>>

 通りすがりに作業中の隊員たちが、あるいは無線経由で、次々と報告が入る。
 すばらしい。
 到着から五分と経たずに戦闘準備が次々と完成している。
 普通科、つまり陸軍歩兵部隊とはこうでなければならない。
 もちろん今の俺の肩書きは図書特殊部隊である事は承知している。
 しかし、陸上自衛隊が非公式にはジャパニーズアーミーと呼ばれる事と一緒で、看板を変えた所で実情に違いはない。

<<繰り返す、第一小隊は一階正面の防御を担当、第二小隊の展開を援護せよ>>

 いわゆる本部小隊から通信が入る。
 散々ブリーフィングでやった内容だ、この期に及んで再度説明されるまでもない。
 ようやく到着した正面玄関前で、俺は内心でそう呟きつつも小銃の装填を確認する。

<<こちら小田原301、正門前に車両部隊先遣隊の到着を確認、これより開門します>>

 前進配備されていた現地の図書隊からの報告が入る。
 車両部隊の連中、ヘリコプターに負けてはいられないと随分かっ飛ばしてきたようだ。

「先遣隊だとまずは人員だったか?」

 隣の図書士が尋ねてくる。
 
「そうだよ、人員、弾薬、そして障害物。
 その順番でやってくるはずだ、妨害がなければな」

 自分の記憶を確認しつつ回答する。
 今回の作戦では、まず最低限の装備を持った人員を空陸から送り込み、それから弾薬と障害物を運び込む事になっている。
 メディア良化隊の執行日時はいまだ送られてきていないが、テロリストを使って先制攻撃を仕掛けてくる危険性があるためだ。
 これは被害妄想ではなく、情報部の潜入工作班による裏づけが取られている確度の高い情報である。
 拳銃、ライフル、そしてもちろん弾薬。
 刀剣や爆発物が提供されているという情報もある。
 確認中となっている稲峰司令誘拐に使用される可能性もあるにはあるが、まずはこの図書館に使用されると考えた方が良い。
 何しろ、自力で消火不可能なレベルまで建物に火をつけてしまえば彼らの勝ちなのだ。
 こちらが反撃しづらい民間人を偽装したテロ攻撃ならば、銃火器や爆発物の効果は倍増する。
660>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/18(日) 00:43:26 ID:KPGTfiPo
「第二中隊かけあーし!」

 あれこれと考えている間に、車両部隊先遣隊から降車した連中が展開していく。
 ヘリコプターに比べると若干の積載力の余裕がある彼らは、必要最低限以下ながらも大盾と土嚢を持っている。
 速やかに事前に定めた位置へ移動し、植え込みを刈り、わずかな土嚢を置き、即席の塹壕を作り始める。
 コンクリート製の外壁に守られた我々とは違い、彼らは遮蔽物を自分で設ける必要がある。
 本格的な塹壕陣地は後続の車両部隊が運ぶ物資と施設部隊が建設する。
 しかし、それまでの間に戦闘が発生しないという保証がない限り、彼らはその時にできるだけの防護処置をしなければならない。
 よほど死にたい者以外、戦場においては遮蔽物の確保を第一とする。
 それは犯罪組織であろうと、警察であろうと、軍隊であろうと


「第二中隊も到着したか」

 後ろからかけられた声に振り向くと、玄田隊長の巨体があった。

「敬礼!」
「別にいい」

 慌てて敬礼を命じる現地守備隊の図書士長に苦笑しつつ答礼し、玄田隊長は窓の外を見る。
 展開していく第二中隊。
 分隊単位で設けられていく仮設陣地。
 それらの中心部分、正門から正面玄関に通じる道をふさぐように、鈍く光る灰色の守護者たちがいた。
 車体に装甲板を貼り付け、窓に関してはガラスは諦め防護板をはめ込むことにより、防壁として利用できるようになった装甲バスである。
 本格的な実戦は今回が初めてだが、フル装備の小銃小隊が手持ちの弾薬全てを叩き込むという実弾試験はパスしている。
 使用する弾薬に違いはないのだから、実戦でもそれなりには役立つだろう。

「後続の部隊の到着はまだか」
「えっと、交通事故による渋滞に巻き込まれているようです。到着予定時刻は0815の見込との事です」

 無線機を背負った伝令が報告する。
 年若い女性の声に思わず注目すると、久々に見る笠原だった。
 さすがに装備を纏うその姿は図書隊防衛員そのものだったが、女性が武装する姿はどうしても好きになれない。
 女性とは、戦場以外の職場でこそ活躍するべきだ。
 ああ、この場合の戦場とは、もちろん言葉どおりでの意味の場所だけを指す。
 人間味溢れるフェミニストたちから見れば唾棄すべき邪悪な男女差別主義者である俺は、内心でそのような事を思いつつ、挨拶程度の意味合いしか持たない軽い敬礼をする。
 過去の経緯からすれば当然と言うべきなのだろう、笠原は嫌な奴が視界に入ってきたという表情を浮かべて答礼しなかった。
 まあ、いい。
 女性に好かれない事には慣れている。

<<ストーカーワン、ストーカースリー>>

 苦笑を浮かべていると、耳にはめたレシーバーのチャンネルが自動的に切り替った。
 情報部用の非常通信だ。

「トイレに行ってきます」

 小隊図書士長に報告しつつ廊下に出る。

「ストーカースリー受信」

 廊下をゆっくりと歩きつつ、小声で会話可能になった事を伝える。
 無線の向こうからは男女のどちらともわからない声が現在の我々が想定すべき状況を伝えてくる。
661>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/18(日) 00:45:31 ID:KPGTfiPo
<<想定Q号、状況スノーマン>>
「ストーカースリー、想定Q号、状況スノーマン、了解」

 ロクでもない事になってきたな。
 図書隊の創設期には、多くの退役自衛官が警備員として参加したとされている。
 その噂はある程度は本当らしく、用語や通信符丁はかつて自衛隊で使用されていたものが多い。
 想定Q号とは大規模不正規戦が想定されているという事、状況スノーマンとは警戒態勢発令に備えよという意味だ。
 やれやれ、今回は通常の戦闘も従来にはない大規模な戦闘になると思われるのに、不正規戦まで大規模にやられては困る。

「勘弁してほしいな、本当に」

 トイレに入りつつ、俺は心の底からの呟きを漏らした。
 小便器の前に立ち、排泄行為を開始する。
 今回の作戦の中で、どのようにして想定Q号に対応するべきか。
 大変に困難な問題である。
 
「まあそう気にするな」

 俺の呟きは、いつの間にか隣に現れた堂上図書正に聞かれていたらしい。
 廊下での通信中は周囲の気配に気を配っていたので、最後の呟きしか聞かれていないはずだ。

「お疲れ様です。すいません、妙な事を呟いてしまいまして」

 大規模な戦闘を前に参っているというシナリオで行こう。
 俺は殺人狂だという誤解は既に解けているので、それで何とかなるはずだ。

「それも気にするな。笠原は精神的に未熟な面がある。
 ああいう態度を露骨に取ってしまうのは社会人としてマズいことだが、それは俺から言っておく。
 お前はあまり気にせずに任務に励め」

 どうやら、堂上図書正は先ほどのやり取りを見て俺の後を追ってきたらしい。
 なるほど、ぎこちない関係の改善を図ろうとする俺と、それを拒絶した笠原。
 俺はすぐさまトイレに向かい、小便をしながら勘弁してほしいと弱音を吐く。というわけか。
 意外に違和感のないストーリーだな。

「ありがたくあります。
 任務に精進します」

 手がふさがっているために軽く目礼し、俺は排泄行為を継続した。
 施設課(これは今の自衛隊でも同じ名前だ)が到着したのは、それから十五分後の事だった。
 対戦車障害物を積んだ大型トラックはここへ向かう途中で追突され、現在は警察の現場検証中らしい。
 遅延の原因となった事故渋滞といい、確実に何かが起きているな。
 そんな事を考えつつ土嚢運搬を手伝っていると、耳元のレシーバーがまた勝手にチャンネルを変えた。
 仕方のないことではあるが、これが戦闘中に起きたらと考えると恐ろしいな。
662>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/18(日) 00:48:31 ID:KPGTfiPo
<<ストーカーワン、ストーカースリー>>

 静かに同僚たちから距離を置き、安全と思われる位置まで退避する。
 おや、あれは玄田隊長とお供の堂上笠原ペアか。
 とりあえずこちらの口の動きを読まれないように、あさっての方向を見ておくか。

「ストーカースリー受信」
<<想定Q号、状況レモンジュース>>

 なんということだ。
 状況レモンジュースとは、警戒態勢発令、交戦に備えよという意味である。
 これは非常に困った話である。
 俺は最悪の場合ばれても構わないが、基本的には身分を隠して行動するという区分の情報部員である。
 今の所、確認できている範囲では周囲の同僚たちにはばれてはいない。
 現状の図書特殊部隊および防衛部には、出動状態での一般待機しか命じられていない。
 一般待機。
 この言葉には公務員的な意味での厄介さが潜んでいる。
 一般待機状態の図書隊員は、上官の命令がない場合には別命あるまで文字通りの待機となる。
 しかし、目の前で何かが起こった場合、図書防衛のために自主的に行動する事が求められる。
 基本的にはその行動自体が問題視される事はない。

「ストーカースリー、想定Q号、状況レモンジュース、了解」

 小声で答えつつ、俺は一般待機における問題点についてを思い出す。
 一般待機は、何かあった場合に個々の隊員の自主性を認めている反面、責任の上層部への追及をなくしてしまう。
 それはあくまでも現場の暴走です、となるわけだ。
 つまり、俺のような人間にとっては、とても都合がよく、その代わりに後が怖い命令なのだ。

「ストーカースリー、勇敢なれ。ストーカーワン通信終了」

 勇敢なれ、か。
 それを言われたら、動かなくては空挺レンジャーの徽章が泣く。
 今の俺は自衛官ではないが、制服を脱いだら別人になるわけではない。
 いざという時は、覚悟しないといけないな。
 今の職場は割りと気に入っていたのだが。

「残念だったな」

 仲間たちを見つつ呟く。
 何事も悲観して考えてしまうようなクセは持っていなかったと思ったが、自分の見込み違いだったか。

「図書隊の若き英雄が随分と縁起でもない事を言っているわね」

 いきなり後ろからかけられた声に、思わず銃を構えて振り返ってしまう。

「ちょっと!」

 そこに立っていたのは私服姿の女性だった。
 年齢は俺よりも上のようだ。
 慌ててこちらに突き出された両手にはペンとメモ帳。
 首からはカメラを提げ、腕には報道の腕章をつけている。
 もう一つ付けられている腕章には『週刊新世相』の社名が記載されている。

「失礼しました!お怪我はありませんか?」

 考え事をしていたとはいえ、とんでもない事をしてしまった。
 他のマスコミ連中ならばまだしも、週刊新世相は我々の事を好意的に報じてくれる数少ない国内報道機関のひとつだ。
 脳裏に残る記憶を何とかかき集めた結果によると、目の前の女性は折口という人物のはずである。
 玄田隊長と個人的に親密な関係に近い状況にあるという非公式情報もあったはずだ。
663>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/18(日) 00:49:35 ID:KPGTfiPo
「びっくりしたじゃない!気をつけてよね」

 快活な口調で彼女はそう言うと、こちらに向けてペンとメモ帳を構えた。
 
「関東図書隊、そのエリート部隊である図書特殊部隊。
 今回は、その中でも異色の経験を持つ新人特殊部隊員の取材、というのが目的よ」

 彼女は聞いてもいないのに自分の目的を告げてきた。
 まあ、おかげでこちらから質問する手間が省けたのでありがたいが。

「もしよければ、今から少し取材させてもらってもいいかしら?
 ああ、もちろん作戦行動中に邪魔にならない範囲で取材を行う許可は貰っているわよ」

 後ろを見ると、他の仲間たちは別の部隊に交代して休憩に入っているようだ。
 小隊図書士長がジェスチャーで構わんという風に手を振る。

「では休憩時間のようなので、手短にですがお受けいたします」

 諦めたように呟き、俺は取材を受ける事になった。
 いくら図書隊に好意的な相手とはいえ、俺はマスコミ関係者と話をする事が大嫌いなんだがな。

「前歴は陸上自衛隊のレンジャー部隊だったとか?」

 早速インタビューが始まったらしい。
 俺の前歴をある程度把握しているようだな。

「正しくは第一空挺団の降下誘導小隊です」

 一応訂正しておく。
 もちろんこの程度のことは理解しているうえであえて聞いているのだろうが。

「それはどんな部隊なのかしら?」

 無知なフリをして意表を突くつもりなのだろうか。
 それとも、本当にその手のことに疎いのだろうか。
 どちらでもいいか、言葉に気をつけないと現役の連中に迷惑がかかってしまうな。

「本隊の降下を支援するための部隊ですよ。
 詳しい任務内容は自分ではなく本省の広報にお尋ねされたほうがよろしいかと」

 我ながら百点満点の回答だろう。
 これ以上詳しい表現はあえて省くのが大人の受け答えというものだ。
 空挺団の全員がそうなのかは知らないが、少なくとも俺を含めて人様にいえない事をしていた連中は確かに存在していたからな。

「その部隊にいて、海外へ派遣されたわけよね?」

 よく調べていらっしゃる。
 まさかとは思うが、こっちが本題なのだろうか?
 帰国からしばらくはこういった手合いが多くて難儀したが、どうして人間というのは何でも知りたがるのだろうか。
 図書隊に属している俺が言う事ではないが、世の中には知ってはいけない事、知る必要がないことと言うものが確実に存在するんだが。

「過去の自分の任務については、退役後も機密保持の観点からお話できません。
 申し訳ありません」

 別に話すつもりはないのだが、とりあえず詫びておく。
 役人的な言い回しはどうも不親切な印象を与えかねない言葉になるので困るな。
664>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/18(日) 00:51:07 ID:KPGTfiPo
「そう、それじゃ仕方ないわね。
 休日は何をしているのかしら?」

 厄介な話かと思ったが、いきなり普通のインタビューに変わってきたな。
 まあそれはそれでありがたいのだが、調子が狂うな。

「自主訓練を主に行っています。
 あとは消耗品を買出しに行ったり、後輩の面倒を見るときもありますね」

 自分で言っておいてなんだが、随分と空しい日々を送っているな。
 振り返ってみると、俺には友人がいないのか?
 いや、そんなはずはない。
 しかしながら、戦友は今の隊も含めているが、完全にプライベートの付き合いというものがないな。
 やれやれ、今から心配する事ではないが、寂しい老後になりそうだ。

「現在のあなたの任務は?」

 表情にはもちろん出していないが、俺の内心の感傷を無視して更なる質問が飛んでくる。
 ダメもとで聞いているのかもしれないが、どうしてこうも答えられないことを聞いてくるのだろう。

「図書特殊部隊の一員として、小田原図書館防衛の任務に当たっています。
 詳細につきましてはお話できません」

 このあたりは別に答える必要はないだろう。
 相手だって理解しているに違いない。

「それもそうね、ところで恋人はいるの?」

 どうしてこうも質問の性質が変化するのだ。
 最初は俺の自衛隊時代の話で、次は休日の過ごし方。
 その後は現在の任務内容ときたものだ。

「プライベートについてはお話できません。
 が、特別にお教えすると、残念ながらおりません」

 特に隠すような話ではない。
 まともな友人すら少ないというのに、彼女などいるはずがない。

「特別ついでに好みの女性像を教えてもらえるかしら?」

 完全にプライベートの質問になってきたな。
 まあその方がありがたい。

「それは機密事項です。申し訳ありませんがお話できませんね」

 茶目っ気たっぷりに言った所で、交代の時間が来たようだ。
 せめてタバコの一本でも吸いたかったのだが、残念だ。

「やれやれ、休憩はおしまいのようです。
 申し訳ありませんが、任務に戻らせて頂きます」

 敬礼し、仲間たちの方へと足を進める。
 平和な時間はこれでおしまいだろうな。
 さて、今回も頑張るか。
665>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/18(日) 00:56:07 ID:KPGTfiPo
本日はここまで
666創る名無しに見る名無し:2009/10/18(日) 08:14:43 ID:3zbFqLIo
乙!
ちゃめっけたっぷりのところで噴いたw
667創る名無しに見る名無し:2009/10/18(日) 19:46:15 ID:8nlp9ZK5

久しぶりに笠原を見たような気がする
果たして原作組に活躍の機会はあるのか
668創る名無しに見る名無し:2009/10/18(日) 21:42:14 ID:ZMs2Wurs
乙!
しかし小牧が空気だな…

さては彼女とラブラブ中か
漫画版に出てきたという話だし
669創る名無しに見る名無し:2009/10/19(月) 00:26:40 ID:rHwvYUA2
投下乙
一瞬、海を越えて遠くに行くものだと思ってしまった>小笠原
670>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/23(金) 02:21:18 ID:qMzT1Xr9
正化31年10月22日水曜日09:57 神奈川県小田原市 財団法人情報歴史資料館

「いよいよだな」

 安全のために全てのガラスを撤去した開口部から前方を睨みつつ、俺は静かに呟いた。
 ここ情報歴史資料館は、合衆国海兵隊工兵大隊も認めるしかないほどの完璧な防御陣地となっていた。
 小火器のみのメディア良化隊執行部隊ならば、相当の犠牲を払わない限りはここを突破することは不可能だ。

「うまくすれば外周陣地だけで食い止められるかもしれないな」

 隣で小銃を抱えた同僚が声をかけてくる。
 それはさすがに希望的観測と言うものだろう。
 結局こちらの対戦車障害物設置班は到着できなかった。
 現場検証後に多重事故に巻き込まれ、今も二度目の現場検証中らしい。
 恐らく、敵は装甲車両を先頭に突撃してくるだろう。
 
<<こちらは指揮所、玄田だ>>

 とりあえず何か気の効いた言葉を返そうとした俺は、レシーバーから飛び込んできた隊長の言葉に口を閉じた。
 どうやら全隊員向けにもう一度演説をするつもりらしい。

<<良化隊の通告してきた執行開始時刻まであと二分、残念ながら車止めとは届かなかったが、それでも我々には十分な遮蔽物と武器がある。
 ヘリコプターによる資料輸送完了まで、なんとしても持ちこたえてくれ。
 良化隊の攻撃は苛烈なものとなるだろう。
 しかし、ここは耐えねばならん。
 全員で生きて帰るぞ。以上だ>>

 思っていたよりも穏やかな内容だな。
 全員で生きて帰ろうか。

「生きて帰るぞ」

 そのフレーズが気に入った俺は、隣の同僚に笑顔で言った。
 彼もその言葉はお気に召したらしい。
 恐怖と緊張で歪んだ表情を若干緩め、もちろんだと返してくれた。
 ただいまの時刻は午前九時五十九分。
 遂に正門の向こうに良化隊の執行部隊が見えてきた。
 先頭は警察から徴収したらしい銃器対策警備車のようだ。
 角ばった装甲が特徴的な、全面防弾の装甲車両である。
 
「やべぇな」

 手元に対戦車ロケット砲があればあの程度の車両は紙屑のように吹き飛ばしてやれるのだが、今の俺には非力な軍用突撃銃しかない。
 集中砲火で何とか運転手を殺傷できればいいのだが、相手も当然その程度の準備は整えているだろうな。
 奴ら、こっちが対戦車障害物と機関銃の組み合わせを手に入れたと知って、出来る限りの防御力を整えたな。
 しかし、警察車両に包囲されつつ銃を手に篭城していると、テロリストになった気持ちになる。
 こちらも法に基づき武装し、抵抗する権限を与えられた公務員のはずなんだがな。
 まったく、この国は一体どうなってしまったんだ。
671>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/23(金) 02:25:35 ID:qMzT1Xr9
<<ストーカーワンより全ストーカー、緊急、想定Q号、状況アップルジャック、アップルジャック>>

 背筋が凍る通信が入ったのは、俺が内心でぼやいたその瞬間だった。
 状況アップルジャックとは、交戦状態を意味する。
 視界の中で、いくつかの木が閃光を発する。
 事前にわかっていたならば、排除を含む適切な処置を行いやがれってんだ。
 おかげで現場が苦労する。

「伏せろ!」

 そこまで考えたところで、俺の脳は命令した。
 一人でも多くの同僚を救い、敵軍に反撃せよ。
 咄嗟に同僚の腕を掴んで同様に地面へと引きずり込みつつ、仲間たちへと叫ぶ。
 銃声、柔らかい何かが砕ける音。
 絶叫、悲鳴、苦痛の呻き声、警告の叫び。
 間に合わなかったか。

「こちらはメディア良化隊である、今の銃撃は何か!?
 協定違反だぞ!こちらはこれより強制執行に入る!」

 開口部の向こうから、良化隊指揮官の怒号が飛び込んでくる。
 白々しい事を言いやがって。
 あまりの怒りに表情が歪んでいく事を自覚しつつ、俺は耳から飛び込んでくる情報を聞き取った。

<<今の攻撃は良化隊では無いが敵のものらしい。
 良化隊が突っ込んでくるぞ!迎撃しろ!総員反撃せよ!>>

 玄田隊長の怒りに満ちた叫び声が耳に入り、そして屋上から聞き間違えようの無い軽機関銃の一斉射撃音が轟きだした。
 開口部の向こうから連鎖した絶叫が聞こえてくる。
 こちとら安全な砲座から軽機関銃を一斉射撃しているのだ。
 いかに車両に身を隠そうとも、屋上から一斉射撃を受ければ命中弾が出ないはずが無い。
 ざまあみやがれ。
 一人残らず殺してやる。

「反撃だ!全員反撃しろ!」

 小隊図書士長が声を張り上げる。
 大慌てで身を隠した俺たちは、再び大慌てでそれぞれの持ち場へと戻った。
 もちろん敵に対して反撃する事に抵抗などあるはずも無い。

「反撃せよ!」
「反撃!撃ち方始め!」
「ぶっ殺してやれ!」
「見える奴から撃て!反撃開始!」
「木だ!木を狙え!」

 あちこちから反撃開始を告げる命令が聞こえ始め、この図書館に集結した全部隊が猛反撃を開始した。
 その中には当然俺も入っている。
 開口部から半眼だけを出し、目に付いた動く影めがけて発砲。
 当たったかどうかはわからないが、少なくとも嫌がらせにはなるはずだ。
 とにかく一人でも多くのメディア良化隊員を負傷させ、奴らに手間をかけさせてやらなければならない。
 
672>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/23(金) 02:26:59 ID:qMzT1Xr9
正化31年10月22日水曜日10:00 神奈川県小田原市 財団法人情報歴史資料館屋上 臨時指揮所

「そうだ!木を丸裸にしてやれ!」

 大声で機関銃班を指揮する部下を見つつ、玄田は最初の被害報告を聞いていた。

「戦闘開始直前の奇襲で随分とやられました。
 使用された武器は恐らく自動小銃と狙撃銃です。
 報告はまとまりきっていませんが、現時点の情報では一名が殉職、三名が緊急搬送が必要とされる重傷で、他十八名が軽傷を負いました。
 重傷者を除く負傷者は戦闘続行可能です」

 奇襲の効果は意外に大きかった。
 緊張が張り詰める直前を狙った一斉射撃。
 それは一人の命を奪い、少なからぬ隊員に傷を負わせ、さらには全隊員の反撃を極めて慎重なものとさせていた。
 先ほどから景気良く撃ちまくっている軽機関銃たちは、本来ならば全てが良化隊執行部隊を撃っている筈だった。
 しかし、どこにいるか分からない敵への牽制射撃に半数が持っていかれてしまった。

「負傷者の後送準備を急がせろ、狙撃班は良化隊主力だけを狙わせろ。
 まずは正門で出来るだけの時間を稼がせるんだ」

 冷静に命令を下している彼の目は、奇妙な光景を捉えていた。
 正門を正面から睨む形で設置された防犯カメラからの映像である。
 閉じられた正門の向こう、展開している良化隊の陣形がおかしい。
 道路の中央を開け、左右に展開している。

「なんだ、あれは」

 彼が思わず声を漏らしてしまった瞬間、猛スピードで正門へ向けて突撃する装甲車両が登場した。
 他の車両と同じく銃器対策警備車なのだが、その車体正面には、ブルドーザーのようなブレードが飛び出している。
 それは速度を更に増しつつ良化隊の中央を駆け抜け、一切の減速無しで正門へと激突する。
 指揮所まで届く轟音が轟き、左右から中央へと閉じるタイプの正門は、装甲車両ごと敷地内へと飛び込んだ。
 
「あの車を止めろ!」

 いささか遅きに失した感はあるが、それでもこの異常事態で命令を下す事ができたのはさすがと言える。
 この時、玄田の頭の中には千葉ニュータウン図書館防衛戦の被害報告書が映し出されていた。
 バリケードごと突破された正面玄関、その中心で鉄くずになっている全焼した車両。
 良化隊はそれを再現しようとしているのだ。
 もちろん、燃やすつもりまでは無いだろうが。
 正門から正面玄関までは150mほどある。
 その途中には装甲バスが車列を作っており、更に陣地もいくつかある。
 
「止めろ!」

 玄田の命令を聞いた機関銃班が直ぐに目標を変える。
 引き金を引いたままのため、そのまま銃弾の嵐が周囲へとばら撒かれるが誰も気にしない。
 この種の攻防戦では、銃弾が到達する恐れのある範囲全てに強制的な避難命令が下されるからだ。
 物品の損害など、法律と金銭でいくらでも処理できる。
 モニター越しにもはっきりとわかるほどに銃弾が殺到している装甲車を見つつ、玄田は阻止が不可能である事を素早く悟った。
 火花を盛大に散らしてはいるが、外見でわかるほどの損害は無い。
 このままでは正面玄関は。
 彼がそこまで思ったとき、主に人為的な原因から発生した車両事故が発生した。
673>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/23(金) 02:27:55 ID:qMzT1Xr9
 事故の発生原因は、実戦を経験した装甲車両の運転兵ならば誰もが納得する内容である。
 戦場において、戦車を筆頭に装甲を持った車両は敵の攻撃を受けやすい。
 それは、突破を中心とする攻撃的な任務に使われやすく、さらに装甲を持っている事から敵の攻撃が予測される場所に投入されるからでもある。
 だが、一番の原因はなんと言っても目立つ事。
 角ばった、塹壕よりも高い位置にある、脅威度の高い敵性の物体。
 人間は、それを目にすれば当然攻撃する。
 砲も、ミサイルも、ロケットも、小銃弾や手榴弾、それしかなければ拳銃弾でも。
 特に混戦時においては効果が明らかに無いものであってもとにかく敵を倒そうと投げつけられる。
 結果として、装甲車両の中にいる人々は、装甲を貫くかもしれない、あるいは全く効果が無いとしても自分を殺そうとする明確な殺意に晒される。
 世界中の兵士が冷酷非情な殺戮マシーンでないように、装甲車両の運転兵であっても、仮に彼が正しい知識を持っていたとしても、そのストレスに耐え切れるとは限らない。
 装甲車両を操っていたメディア良化隊員もそうだった。
 彼は自分の乗っている車両が自動小銃の弾丸を弾くと教えられていたが、実際に装甲が絶え間ない着弾音を鳴り響かせるという現実に耐えられなかった。
 正門を突き破り、視界一杯に装甲バスが広がった時点で、彼は生存本能の命じるままにハンドルを大きく左へと切った。
 突破後は車両の間を突けばさらに先へと進めると散々ブリーフィングで説明されていたにも関わらずだ。
 結果として、彼と同乗する十二名のメディア良化隊員たちは、重大事故の後に生きたまま火葬されるという悪夢に晒された。

「良化隊が突っ込んでくるぞ!撃て!」

 横転した車両の救出のために前進を開始した良化隊員たちは、情け容赦の無い銃弾の嵐に晒された。
 当然彼らは応戦する。
 既に情報歴史資料館を取り囲むメディア良化隊とそこへ立て篭もる図書隊員たちは全力で撃ち合いを続けており、その動きは誰も止めることが出来ないものとなっていた。
 敵も味方も無く、ただひたすらに視界に入る全てを撃ちまくる。

「止めろ!撃つな!」

 救出隊を阻止しようと銃撃を繰り返す図書隊に対し、メガホンを持った良化隊の管理職が慌てて静止しようとする。
 だが、同僚たちが生きたまま火葬されようとしているとはいえ、彼の動作は余りにも無防備すぎた。

「あの上半身出している奴を撃て!」

 それは後知恵で考えればとんでもない事だが、銃弾が飛び交う戦場では当然の心理だった。
 すぐさま銃弾が殺到し、同僚たちを助けようとした勇敢なメディア良化隊神奈川支部小田原支所第四特務執行課長の頭部が吹き飛ぶ。

「課長!?応戦しろ!」

 脳髄を地面に向けて撒き散らす上司の姿を見た部下たちは、当然のように弔い合戦を始める。
 当たり前の事だが、目の前の惨劇に激昂する彼らには、数十メートル先で今にも死のうとしている同僚たちのことは頭から消えている。

「あついいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!」

 本来であればすべての人々が銃撃を止め、救出活動に参加したくなる絶叫が響き渡る。
 だが、怒号と命令と銃撃音がやり取りされる戦場においては、その絶叫は余りにも小さすぎた。

「おい!車が燃えているぞ!撃ち方やめ!撃ち方やめ!」

 比較的にだが安全な位置から状況を見ている図書隊のとある小隊長が慌てて発砲を止める。
 ある程度統制が取れている彼の小隊はそれで発砲を止めるが、弔い合戦に燃える良化隊にはそのような事情は関係が無い。
 抵抗が弱まった箇所を完全に制圧しようと銃撃が殺到し、不用意に身を晒していた一人の隊員が銃弾を受けて室内へと弾き飛ばされる。

「西田!?畜生!あいつらぶっ殺してやる!」

 小隊長の配慮は真逆の方向へと作用した。
 命令に従って攻撃を控えた結果として、同僚の死傷に繋がったという現実は、武器を手にした図書隊員たちの理性のタガを外すのに十分な威力を持っていた。

「応戦しろ!一人残らずたたき出せ!」

 誰に命令されずとも小隊図書士長が怒鳴り、軍隊的な意味で直属の部下である図書士たちが発砲を再開する。
 そして限界を超えた横転車両の爆発炎上をもって、この場は更なる興奮の渦へと叩き込まれる。
 ここまでくると、敵は意地でも突入しなければ士気に関わるし、こちらはもとより敵の突入すら許す事のできない立場だ。
 さあ、楽しくなってくるぞ。
674>>5図書館戦争 ◆XRUSzWJDKM :2009/10/23(金) 02:30:52 ID:qMzT1Xr9
凄く短いですが本日はここまで
次回はいよいよ攻防戦の本番です

>>666殿
ジョークが苦手な自分としてはとてもありがたい感想であります

>>667殿 >>668殿
今回は原作組も大活躍しますのでご期待ください

>>669殿
思いっきり誤記でした
申し訳ありません
675創る名無しに見る名無し:2009/10/23(金) 18:48:33 ID:FwF39Bkl
乙です
なんという狂乱っぷり
重火器がないことが逆に状況を泥沼化させてるような
小火器しかないのに装甲車とかはありとか酷い話だよなw
676創る名無しに見る名無し
高速更新お疲れ様です
狂乱の銃撃戦の次に何が起こるかw