ここは気軽にオリジナルの短編やショートショートのSSを投下するスレです。
好きな内容、ジャンルで投下して下さい。コテトリ、作品名はなるべくつけましょう。
面白いものには素直にGJ! を。
投下作品には「つまらん」と言わず一行でも良いのでアドバイスや感想レスを付けて下さい。
面白いものには素直にGJ! を。
投下作品には「つまらん」と言わず一行でも良いのでアドバイスや感想レスを付けて下さい。
荒れ防止のため「sage」進行推奨。
SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルーしましょう。
夏の日1/2
久し振りに帰った田舎は昔と同じで湿った磯臭い風が吹いている。
だけど景色は変わっていた。ガキの頃走り回った岩場は無くなって良く解らないリゾートスポットになってる。
悲しいね、とは思うんだけど水着の女の子がはしゃいでるのを見るとやっぱりにやけてしまうのは仕方ない亊だと思いたい。
このまま実家に直接帰るのも芸がないし、何年も顔を合わせていない親父殿と顔を合わせるのも何となく嫌だ。
そんな訳で勝手知ったる町をブラブラと散策する亊にした。
都会とは違ってあくせくする事なく、のんびりゆっくりと田舎のペースで時間が流れている。
近所のおっちゃんおばちゃんは顔に皺が増えたみたいだけど元気そうだ。
昔通った駄菓子屋は潰れてたのは残念だけど、コンビニになってたから便利なのかも知れない。
裏山の方に足を伸ばすと、鬱蒼と膝まで繁った草が青臭くて、それも昔のまま変わらない。蝉の鳴き声も喧しくて昔のままだ。
変わっているようで変わらない。変わらないようで変わっている田舎はひどくアンバランスに感じる。
懐かしいんだけれど懐かしくなくて、僕は所在のなさを感じて居心地が悪い。
ボケーッと歩いていると長い長い階段に気付く。
昔は本当の石段立ったけど、今はコンクリートの階段になっている。この先には確か神社がある筈だ。
ちょっと確かめたい亊が出来たので登ってみる。
昔は平気のへいざで駆け上ったけど、今の僕は運動不足なのか途中で息切れをしてしまう。
シャツが汗で濡れた背中について気持ち悪い。でも、気にせず登る。
疲れ果てた僕を出迎えたのは昔と変わらない鳥居と狛犬。そして境内のヒンヤリとした空気。
ここは、ここだけは、何一つ昔と変わっていない。その証拠に大きな樫の木に刻んだ相合い傘が残っている。
そう言えばここだった。初恋のあの子に告白したのも、初めてキスしたのも、……したのもここだった。
何もかもが懐かしい。
せっかくだからお参りをして、なにか良い亊がありますようにと神頼み。
さて、そろそろ実家に顔を出そうと階段を下っていくと、懐かしい見知った顔が此方に向かってきた。
――あの子だ。昔はさほど垢抜けてなかったけど、凄い美人になっている。
それだけじゃなくて、胸に子供を抱いている。
昔話はやめておこう。やっぱり時間は流れている。
僕は彼女を無視しようと思ったけれど、そうは問屋が卸してくれなかった。
僕に気付いた彼女はなつかしいね、元気だった、等と話し掛けてくる。僕は愛想笑いと頷く亊だけしか出来ない。
逃げる様に彼女と別れて、ぼんくらしながら歩き続けると空が暗くなってきた。大粒の雨が降ってきた。
僕はなんだか可笑しくて雨宿りをしないで歩き続けた。
濡れ鼠になりながら昔は吸わなかったタバコをポケットから取り出して口にくわえて火を着けた。
涙が出てくる。悲しいからじゃなくて、タバコの煙が目にしみたんだ。雨が目にはいったからだ。
こんな夏の日も悪くない。決して良くもないけれど。
早速投下してみた。
5 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/29(金) 19:00:30 ID:27x+KnfD
けっ、職人とも言えないぜ!
ま、まぁ乙と言ってやらんでもない!
ツンデレだー∈(・ω・)∋
しいて欠点をあげるなら、助動詞がちょっとな……
8 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/30(土) 03:06:35 ID:910dVnDQ
ここは低レベルで文体が稚拙な小説はおkですか?
小説関連のスレはどれもレベルが高くて(というか自分が低すぎる・・・)
投下できないので・・・
別にいいんじゃね
指摘とか欲しいならしないこともない
んでは私も、ちょっと前に怪談の賞に出そうと書いて、結局出せなかったやつを。
これはまだ怪談ではありません1/2
これはまだ怪談ではありません。
怪談は最後に由来が書かれるのだと勇は言います。なんでも「由来がないとただ怖いだけじゃないか」とのことでした。勇は趣味で怪しい本などを色々と読んでいるので、怖がりの私のよく知らないようなことを教えてくれました。
本当のことかは解かりません。
勇はとてつも迂闊で馬鹿な人だったので、聞きかじったことを言っていただけかもしれません。
そう。
勇は迂闊で馬鹿な人でしたから、携帯で事故で死んだと聞いた時も、泣きながらいかにもありそうなことだと思いました。
スキューバでの事故で、心臓が止まったということでした。
私はとりもなおさず、勇を確認するためにすぐ家を出ましたが、台風のせいで勇のいる島の手前で足止めされたのです。
私は宿のベッドで毛布をかぶり、早く朝が来てほしいと思いました。
そうするといつの間にか何かの声が聞こえてくるのです。
どまりすえ ふくりくの
何のことか今も解かりません。
恐る恐る毛布の中から顔を出すと、部屋の隅で何かが踊っていました。
それはなんというか、半透明の私とそう背丈の変わらない、人の形のようなモノでした。指も関節も明確ではないのです。人の形はしていても明らかに人間ではありませんでした。
それの顔の部分には林檎のような赤い玉が浮かんでいて、私はそれが目ではないかと思いました。
どまりすえ ふくりくの
それは妙に甲高い声をどこからかだして踊っています。踊っていたように思います。
手足をゆすって体を振っていて、あれは踊っていたのではなければなんだったのでしょうか。
これはまだ怪談ではありません2/2
どれだけの時間が過ぎたのか、気がついたらそれは動きを止めていました。
「ゆうこ?」
初めて意味の解かる言葉をそれは口にしました。
私の名前です。
私はこれが勇だと思いました。
勇が私に会いに来てくれたんだと。
「勇! 勇!」
叫んだ時、それは急に顔?を近づけてきました。
そして。
「うまそうだ」
私は悲鳴をあげました。
宿の人が悲鳴を聞いてやってくださいましたが、その時にはそれは私の前から消えていました。
あれは勇だったのだろうかと私は思っていたのですが、その日のうちに勇に会うことはできました。勇は生きていたのです。
連絡された時こそ心臓は止まっていたのですが、すぐに息を吹き返していたということでした。私は携帯を飛行機に乗る前に止めてそのままにしていたので繋ぎがつかなかったのです。
勇に昨晩のことを話してみましたが、仮死状態だった時間には私は飛行機で、宿でとまっていた頃には普通に病院でTVを見ていたそうです。
二人でとって返して宿の人に聞いても、あれがなんだったのかは解かりません。そこに宿ができたのも二年前で、近所で不慮の死を迎えたひともいないし、妖怪などの話も伝わっていないということでした。
結局、何がなんだか解からないのです。
落ちもついてないし縁起も解からないのでは怪談ではないなあと勇は呑気にいっています。
ですからこれはきっと怪談ではありません。
誰か私が何にあったのかを教えてください。
そうでなければ、この話はずっと怪談にはならないのです。
お粗末。
>>8 最初は誰も(ry
数かいてたら上手くなるから、書くことをオススメ。
数書かないと下手なまま…いや、たまに最初っから上手い人もいるけど。
とりあえず数を書き続けてたらこなれると思いますよ?
私程度にはすぐなれるから!
そして踏み越えていけるからっ。
それじゃ自分は即興で書いたの投下。
支援
放課後の百合
西日が教室を朱色に染め上げる。細長くなった私の影が、立て付けの悪いガラス窓を越えて廊下に伸びる。
「ごめん、私……槙の亊好きだけど、でもそれは友達だからで……」
私より頭一つ低い諒子は、むにゃむにゃと口ごもっている。その仕草を私の目は捕らえて放さない。
大体の予想は付いてる。私はその言葉を黙って聞くしか出来ない
「私、好きになるならやっぱり男の子が良いし、ゴメンね!」
諒子はポロポロと涙を溢して私を拒絶し、更に逃げる様に教室を出ていった。
まあ、仕方ないのだろう。いきなり女に告白されたら普通なら困る筈だ。諒子を好きになってしまった私が悪いんだ。
振られた筈なのに、心がチクチクと痛いのに不思議と涙は出てこない。振った方が泣いて振られた方が無かないなんて、これじゃあべこべだ。
だんだんと暗くなっていく教室の中、所在をなくした私は何する訳でもなく黒板へと向かう。
足取りはけっして軽くない。どちらかと言えば重すぎる。強がってみせてもやっぱり心は酷く痛い。
振られたから痛いんじゃない。諒子というかけがえのない友達を私の我が儘で失ってしまったから痛いんだ。
こんなに痛いのなら腹を括って首を括ろうかと思うけど、私は臆病で痛がりだからそれが出来ない。
募る諒子への想いが重い私の心を引きずって、赤いチョークで小さな相合い傘を書く。
諒子の名前と私の名前。涙が溢れてしまって歪になった相合い傘。
涙は拭っても溢れてくる。痛い心をそのままに、相合い傘を消した。
こんな事で友達を失ってしまった。でも、初めてじゃない。そして、これが最後ではないだろう。
諒子に振られた心が痛くなくなったら別の娘に恋をして、同じことを繰り返すだろう。
制服の袖で涙を拭うと、教壇の上の花瓶に一輪の百合が生けてあるのが見えた。
綺麗だけど、やっぱり諒子の方が綺麗で可愛い。
そう思ってしまえる私は筋金入りの百合なんだろう。
――救いようがないね、私。
――幕。
投下完了。
>>13 体験談っぽい感じで面白かったです。
>>9 >>13 ありがとうございます
今書いてるのですが、どうやら短編とはとても言えない長さに
なりつつあります・・・
>>17 どうもありがとうございます。
>>18 別に投下する場所はここ以外にもあるし、のっけに長篇でも大丈夫。
あんまり精神論とかいうてもあれなんで具体例をというと、小説家とか色々と輩出している金原瑞人のゼミでは、のっけに長篇をかかせるそうですよ。
素人は短編からとかいう決まりはないのです。
とにかく書くことに慣れてしまえばいいんですよ。
がんば。
なぜか出身者が長編を投げ出すゼミ……
古橋と秋山だけかw
保存用に鉄コミュニケーションと猫の地球儀を帯びつき広告つきでもってるんだが――
知ってるかい?
1998年から2000年の、あの頃は、四ヶ月に一冊のペースで秋山作品の新刊が読めた、夢のような時間だったってことを……。
…すまん。
夜になんか投下します。
10年前とかまだ小学生だなぁ
ボンボン卒業してLOMやってたころ
23 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/04(木) 21:12:42 ID:hfQgailU
期待
いかがでしょうか。投下してみます。
いきなり二、三日で将来の進路を考えろって言われても、これから先何十年の人生を
この短い期間に決めてしまうのは、わたしには非常に残酷な事だ。
わたしなんかまだ16年しか生きていない、まだまだ半端者の女子高生。
すまし顔で美人の担任は、訳知り顔でわたしたちを苦しめる。大人の髪の香りは
インチキに染められた、せっけんの香り。
なのにクラスのみんなは何が楽しくて騒いでいるのか分からない。わたしが暗い顔をすればするほど
みんなの真夏の太陽のような厚かましい輝きを放ち、わたしを不機嫌にさせるのだ。
もっとも悩んでいるのは、私だけかもしれない。
「ねえ、委員長。進路の紙、書いた?」
「へへへ。まーだだよっ!」
「でも、お勉強も出来る優等生ちゃんは、将来はエリートになるんだろうね」
「ははは」
軽薄な笑い声は、わたしの十八番。隙なんか見せてられない、暗くなんかできやしない。
クラスの顔の良い子ちゃんは、嘘っぱちに固められた仮面の化粧。すっぴんでなんかいられない。
「ねえ、有田くん。このプリント…」
「ん?何?」
「今日休みの香川くんに届けてあげられないかな。帰り道の途中だよね」
「へへへ。委員長の願い事じゃ、ノーって言えないなあ。任せて」
「サンキュー。さすが有田くんだね」
デブで不細工な有田にこんなさわやかに頼みごとが出来るのは、わたしぐらいだろう。
どうよ、わたしって偽善者だ。わんこのように尻尾を振っているけど、首から上はジャッカルだ。
だけど有田は尻尾に騙されて、ジャッカルからぱくっ。なんてね。
ジャッカルの牙は噛み付くと痛いぞ。でも、返り血が飛んでくるのは覚悟の上。
そんな覚悟、小さなわたしに出来るわけがない。だから、みんなと訳もなく笑い続けるのだ。
「委員長のメガネ、かわいいね。ぴったりだもん」
「へへへ、ちょっとお勉強が出来るって感じ?」
「自分で言うなー」
「はははは」
わたしの尻尾は嫌になる。
「石川さん、そろそろ学級日誌を提出してくださらない?」
「はーい!先生」
担任の東野はわたしを気安く呼ぶ。そんなにわたしは安いのか。
わたしの将来でこんなに苦しめている元凶なのに、委員長の悲しい性か、やっぱり尻尾を振ってしまうわたし。
嫌いだ。大嫌いだ。何が嫌いかって、東野とわたしは似すぎている。
この間だって、わたしが隙を見せて一人でお手洗いで落ち込んでいた時、東野がそっと近づいてきて、
「大丈夫、先生も一緒に悩んであげるから」と、オトナの常套句をはき捨てた。
しかし、次の日クラスのヤツらと釣るんで、へらへら笑っていたことをわたしは忘れない。
置いてきぼりにされたわたしは、けっして忘れない。
「先生、おはようございます」
の声だけは、いつもの様に明るいのだ。
わたしも、ヤツも偽善者だ。わんこの尻尾を切り落とされた時、わたしはただの
心無いケモノになってしまうだろう。ヤツもきっと同じだろう。
そうだ、剣が欲しい。研ぎ澄まされて、大気でさえも斬りおとす剣が欲しい。
そして、ヤツの尻尾を笑いながら斬ってやる。
進路調査の紙は、本日が提出期限。
この苦しみも今日までか。悩みに悩み、わたしはある結論にたどり着いたのだ。
「みなさーん、進路の紙を出してくださーい」
明るいみんなの委員長は、仕事仕事と教室で声を張り上げる。腹のうちなんぞ、見せる必要はない。
わたしは、クラスメイトの未来のように薄っぺらい紙をかき集め、職員室の東野の元へ。
「おつかれー。石川さん」
「はい。これで全員分です」
「…そういえば、この間さ…悩んでたでしょ、石川さん」
「!」
「先生、ずっと心配でね。でも、わたしが暗くすると石川さんも…困っちゃうよね?」
東野は進路希望の紙を捲りながら、側に突っ立っているわたしに話しかけてきた。
本心なのか、偽善なのか。なんだか、わたしは東野の側にいるだけで、
何もかも見透かされているような、いないような気がする。
「心配しないで下さい!わたしは…大丈夫」
そんなわたしも、東野を見透かしているような、いないような。
やっぱりわたしと東野は似ている。
そんなわたしが選んだ道は、教師。
わたしは嘘っぱちに固められた偽善の教師になるのがお誂えだから。
おしまい。
でした。投下終了
中二病患者っぽさは上手い。イヤな感じが良く出てる。
が、助詞がたまにおかしい。
ショートショートスレがあったとは……
記念投下
SSスレじゃないスレのほうが少ないぞ、この板
33 :
虫1/7:2008/09/14(日) 04:38:59 ID:oT6KnhvK
目覚めると、枕元に老人が立っていた。
白髪に長い白髭をたくわえ、白い着流しと白木の杖を身に付けている。
「あなたは一体だれですか?」
目覚めたばかりの青年が、半ば寝ぼけた状態で尋ねる。
「ワシか? ワシは仙人じゃよ」
何を馬鹿なと思ったが、老人には不思議な風格がある。
「仙人というと、古代中国のアレですか?」
「うむ、しかしアレとは失敬な奴じゃな」
持っていた杖で額をコツンと叩かれた。
「これは失礼。しかし、どうしてこんな所に……」
青年は平凡な容姿で、平凡な会社に勤め、平凡な毎日を送る、つまりはぱっとしない人
間。“仙人”がわざわざ訪ねてくる理由など思い当たらない。
「わしはお前の祖先にあたるんじゃ。仙道を究めんと遠い昔にこの国を離れたのじゃが、
やはり子孫の行く末が気になってな。こうして様子を見に来たという訳だ」
「ご先祖様でしたか、これはお見苦しい姿を……」
気にするなと言うと、老人は懐から小さな壷を取り出し、蓋を開け中身を見せる。
壷の中には、一匹の虫が入っていた。小型の蜂のような、豆粒くらいの大きさで金色に
輝く羽虫だ。
「これは何ですか?」
「うむ、こいつは幸運のお守りじゃ。お前はどうも、ぱっとしない生き方をしてるようだ
から、これを授けよう。大事にするのじゃぞ」
そう言うと、老人は煙のように姿を消した。
こんな時間にw
支援
35 :
虫2/7:2008/09/14(日) 04:42:37 ID:oT6KnhvK
会社に向かおうと家を出ると、虫もくっついてきた。彼の肩にちょこんと乗る。
「まあ幸運のお守りと言うくらいだ、連れて行くのもいいだろう」
車に乗り込もうとすると、虫が肩から離れた。タイヤに止まったかと思ったら、いきな
り尻尾の鋭い針を突き立てる。分厚いゴムに穴が空き、タイヤはパンクしてしまった。
「こいつ、何しやがる!」
怒鳴りつけるが、虫は何事もなかったかのように再び青年の肩に停まる。
「やれやれ、参ったな」
仕方なく電車で会社に向かうが、遅刻してしまい上役からこっぴどく怒られた。
仕事中も虫は肩に停まっていたが、不思議なことに誰も気に留めない。他の人間には見
えていないのかもしれない。
仕事が終わると、同僚から声を掛けられた。
「なあ、これから接待に誘われてるんだが、お前もどうだ? 美人のいる店を紹介してく
れるらしいぞ。しかも代金は先方持ちだとよ」
断る理由もない、二つ返事で青年が頷く。
すると、また虫が動き始めた。
36 :
虫3/7:2008/09/14(日) 04:45:16 ID:oT6KnhvK
青年の鼻先に留まると、ガブリと噛みついた。
「痛いっ!」
思わずうずくまる青年。その直後、強烈な腹痛が彼を襲った。
「おい、大丈夫か?」
同僚が気遣う。
「具合が悪そうだな、今日の所は休んだ方がいい。誘うのはまた今度にするよ」
「そんな……」
またかという風に、青年は憎々しげに虫を睨む。
次の日は休日だった。
青年は、昨日のことなど忘れるくらい浮かれた様子で身支度をしている。今日は、愛す
る彼女とのデートの日なのだ。
いざ出掛けようとすると、案の定というか虫もくっついてきた。
「お前、今日はおとなしくしていてくれよ。デートの邪魔をしたら承知しないぞ」
青年は虫に念を押す。はたして通じているのかは分からないが。
待ち合わせ場所のカフェテラスには、彼女が先に着いていた。笑顔で青年を迎える。
「やあ、待たせたね」
「ううん、全然」
彼女は美しく教養もあり、青年にとっては自慢の恋人であった。
「それで、考えてくれたかい? 結婚のこと……」
「ええ、私もあなたと一緒になりたいわ。でも……」
彼女の顔が曇る。
「どうしたんだい? 何か悩みがあるなら打ち明けてくれ」
37 :
虫4/7:2008/09/14(日) 04:49:05 ID:oT6KnhvK
「実は、父の会社の経営がちょっとね……一時的にお金を借りて、当座をしのげれば何と
かなるんだけど、そのためには保証人が必要なのよ……」
困った顔をし、すがるような目つきで青年を見つめる。
「何だ、そんなことか。おやすいご用だ、僕が力になるよ」
「ありがとう、助かるわ」
彼女がバッグから書類を取り出した。
「早速だけど、これを書いてもらえるかしら」
「何だ、用意がいいな」
「あなたと早く一緒になるためじゃないの」
その一言で青年は舞い上がってしまう。
しかし、書類を受け取った瞬間、虫が素早く青年の手の甲に針を突き刺す。
「あっ!」
思わず手を振り払うと、その拍子に書類を手放してしまった。さらに運悪く、その瞬間
風が吹き、書類はあっと言う間に飛ばされ、近くを流れる川へと落ちていった。
「どうしてそんなことするの? もういいわ、私と結婚したくないのね!」
彼女は怒って立ち去ろうとする。
「違うんだ、待ってくれ」
必死になだめすかすが、彼女の機嫌はなおらない。結局、今日の所はここで別れること
になった。
支援
39 :
虫5/7:2008/09/14(日) 04:51:41 ID:oT6KnhvK
部屋に戻ると、次第に怒りがこみ上げてきた。
「何が幸運のお守りだ! お前が来てからロクなことがない。いいかげんにしてくれ!」
しかし虫は彼の周りを飛び続ける。
青年の怒りが頂点に達した。彼は近くにあったハエ叩きを手にすると、虫めがけて思い
っきり振り下ろした。
叩きつけられた虫は、ピクピクと震えていたが、やがて完全に動かなくなった。
「ざまあ見ろ」
週が明け、青年は修理したばかりの車で会社に向かう。
通り道にあるトンネルに差し掛かると、入り口には通行止めの文字が。
「何かあったんですか?」
車を停め、近くにいた警備員に尋ねる。
「先週、トンネル内でタンクローリーの爆発事故があったんですよ。まだ封鎖中なんで、
迂回してもらえますか?」
事故があったのは丁度このぐらいの時間、死者も出たらしい。もし自分も車で通勤して
いたら……そう思うと、青年の体に冷たいものが走った。
会社に着くと、先週の接待に誘ってきた同僚がいない。上司に尋ねてみる。
「ああ、彼なら入院してるよ。接待で行った店が、ひどい暴力バーだったらしくてね。先
方さん共々、こっぴどくやられたらしい」
40 :
虫6/7:2008/09/14(日) 04:54:38 ID:oT6KnhvK
青年の胸に疑問が生まれる。
「ひょっとすると……」
帰宅すると、部屋の前に二人の男が。彼らは刑事だった。
「この女に見覚えは?」
差し出されたのは恋人の顔写真。
「実は彼女、結婚詐欺でしてね。男を保証人に仕立て上げては雲隠れして、金を稼いでい
たんですわ。あなたは幸い被害に遭われなかったようですな」
一通りの聴取を済ませ、男たちは帰っていった。
青年は、力なく部屋に入った。
「ようやく理解できた、あの虫は俺のことを守ってくれていたのだ。トンネル事故、暴力
バー、結婚詐欺……虫が引き留めていなければ、ひどい目に遭っていたに違いない。それ
なのに俺は何てことを……」
悔やんでいると、側に仙人が現れた。
「まったく、お前というやつは何というそそっかしい人間だ……」
「面目次第もございません……」
青年は小さくなる。
「幸運を呼び込む虫を、自分の手で殺してしまうなんて、我ながら愚かだと思いますよ」
「それなんじゃがな、正確にはあの虫は“不幸を食べる虫”なんじゃよ。人の不幸を栄養
にし成長する。結果として宿主は不幸を免れる」
41 :
虫7/7:2008/09/14(日) 04:56:15 ID:oT6KnhvK
老人は続ける。
「お前があの虫を殺したことで、今まで虫が蓄えてきた不幸は、これから全てお前に降り
懸かるじゃろうな。気の毒なことだ」
青年の顔から血の気が引いた。
「そ、そんな……何とかならないんですか?」
「何ともならんな。それに、ワシの子孫は何もお前だけではない。お前のようなボンクラ
には見切りをつけて、もっと優秀な末裔を探すとするよ」
「お願いです、見捨てないで下さい」
懇願する青年に、老人は呆れたようにため息をつく。
「あきらめろ、世の中そんなに虫のいい話はないもんじゃ」
以上でつ
投下乙
オチがいいなw
いいね、このオチ
1/7を見た瞬間に7って多くね?とか思ったが読んでよかったぞ
ショートショートを書くのって難しいよね。
読んでるだけだと簡単に作れそうなイメージがあったけど、実際に書いてみると下手な長
編を書くより大変。
星新一とかすごいな。
46 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 15:58:07 ID:e1IAE1UQ
書き手はおらんか?
なんかお題くだぱい
49 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/18(木) 00:35:21 ID:xS6cfoY3
50 :
息子1/4:2008/09/18(木) 00:39:19 ID:xS6cfoY3
「残念ですが、あなたの病気は今の科学では手の施しようがありません」
突然の言葉に、俺は耳を疑う。
「余命は、あと二、三年といったところでしょう。お気の毒です……」
医師の言葉に目の前が真っ暗になった。
家に帰ってからもふさぎ込み、食事が喉を通らない。
「どうしたんだよ、兄さん」
弟がそれを心配する。
「うるさいな、一人にしてくれよ」
俺は部屋に閉じこもり、ベッドに寝ころんだ。
「冗談じゃない、俺はまだ……」
「死にたくない……ですかな?」
誰もいないはずの部屋の片隅から、不気味な声が。見ると、痩せて青白い顔をした男が
ニタニタと笑いながらこちらを見ていた。
「な、何だお前は!」
一体どこから入ってきたというのだ。
「これは失礼、私は悪魔です」
「悪魔だと?」
「ええ、信じる信じないは自由ですがね……」
そう言って男はククッと笑う。
「ふざけるな!」
枕元の灰皿を投げつけるが、男には当たらず、体をすり抜け壁にぶつかった。
背筋が凍り付く。まさか本物の……
「まあ、そう怖がらないで下さい。私はあなたとゲームをしにきたのですよ」
「ゲームだって?」
悪魔が慇懃に頷く。
「私の言う条件をクリアできたら……」
「この体を治してくれるのか?」
51 :
息子2/4:2008/09/18(木) 00:41:44 ID:xS6cfoY3
いやいや、と悪魔が首を振る。
「残念ながら少し違います。しかし、結果的にあなたは生き延びることができる」
「どういうことだ?」
悪魔はコホン、と咳払いを一つして、話を続ける。
「亡くなるまでに、あなたにお子さんが生まれたら、あなたの意識をその子に移して差し
上げます。つまり、あなたは自分の息子として生まれ変わる訳ですな」
俺はしばらく考えたが、このまま人生が終わるのはやはり耐えられない。
「分かった。だが、もし賭けに負ける……つまり、俺に子供が産まれなかったら……」
「はい、そのときは……悪魔が頂くものは魂と、昔から相場が決まっておりまして……」
不気味な笑いに、思わずゾクリとした。
ふと、あることを思い付く。別に俺の実の息子でなくともよいのでは。例えば……
「養子なんてのはだめですよ、イカサマです。あなたの子供かどうか調べるために、DNA
鑑定もしますのであしからず」
流石に向こうもプロだ、そう甘くはない。しかしDNA鑑定とは、悪魔の世界も近代化が
進んだものだ。
「では、健闘をお祈りします……」
そう言い残して悪魔は消え去った。
52 :
息子3/4:2008/09/18(木) 00:45:02 ID:xS6cfoY3
その日から俺は、恋人探しに奔走した。
元々そんなにもてるような人間ではないのだが、文字通り命がけのアプローチをしたお
かげで、何とか一人の女性をものにすることができた。
器量はそこそこ。正直そこまで愛してもいなかったのだが、あまり贅沢は言ってられな
い。何しろ時間がないのだ。
「これを受け取ってくれないか?」
指輪を見せ求婚すると、彼女は頷いた。
慌ただしく式を挙げ、そして子づくりに精を出す。ほどなく彼女の妊娠が分かる。
「これで一安心だ、賭けは俺の勝ちだな」
久しぶりに目の前に現れた悪魔に、俺は勝ち誇った顔で言った。
「はたして、そううまくいきますかな……」
意味ありげな笑みを浮かべ消えゆく悪魔。悪魔のくせに負け惜しみとはみっともない。
それからしばらくして、俺は病院のベッドの上にいる。病気が進行したのだ。
体には様々なチューブがつながれ、必死の延命措置が施されてはいるが、おそらくそう
長くは持たないだろう。
「まあいいさ、束の間の苦しみだ」
俺は生まれ変わった後のことを色々と想像していた。よくよく考えてみると、一から人
生をやり直せるというのは悪くない。多額の保険金や遺族年金も入るから、生活の心配も
ないだろう。
「全く、悪魔さまさまだな」
その時、ノックの音がした。
「あなた、入るわよ」
妻が見舞いに来たようだ。
「こんな時間に来るとは、珍しいな」
「ええ……どうしても、あなたに話しておきたいことがあって……」
53 :
息子4/4:2008/09/18(木) 00:48:44 ID:xS6cfoY3
どこか思い詰めた表情の彼女。
「驚かないで聞いてちょうだいね。実は、私のお腹にいる赤ちゃん……あなたの子じゃな
いのよ……」
「ど、どういう……ことだ?」
予想もしていなかった告白にたじろぐ。
「私には、他に愛してしまった人がいるの。この子はその人の息子よ。確証はないけど、
私には分かるの」
彼女は続ける。
「あなたは、私を愛してなんていなかった。まるで子供を産むための道具としてしか、私
のことを見ていないようで」
その通りだった。
「それに……病気のことだって何も話してくれなかった。どれだけ私が傷ついたか、あな
たには分からないでしょうね」
その時どれだけ俺が絶望したか、彼女には分からないだろう。
赤ん坊が俺の子でないということになれば、悪魔との契約はご破算だ。おそらく奴はこ
のことを見越して、わざわざDNA鑑定などという条件を付けたのだろう。
「くそ、やられた……」
そのショックに、俺の容態は急変した。顔からみるみる血の気が引いていくのが、自分
でもはっきりと分かる。医師が呼ばれたが、間に合わないだろう。
次第に意識が薄れ、目の前が暗くなり……
俺は生まれ変わった。
まだ歩けない赤ん坊なので、ベビーベッドに寝かされている。
そして目の前には、嬉しそうに俺のことを見つめる両親の顔。
すなわち、元妻と俺の双子の弟の顔が……
おしまい
まさかのGodEndキター!
落として持ち上げるとは、上手いなぁ
弟と双子だって事は最初の方に書いてあると良いかもー
まぁ完全なる私の好みだが
こりゃ良作だ。
読みやすいし、落ちもいい。
なかなか面白かった。乙。
落ちがグッドエンドに見えるけど、なんだか恐ろしさも感じて、とてもよかった。
悪魔の仕事があまりに雑なので笑った。
悪魔にしてみれば、男の魂は持って行けなくても、
契約に従って赤ん坊の魂は貰えるから正直かまわないんだな。
一卵性双生児だったってことか
だったらDNAは完全に同じだからDNA鑑定してもわからない
60 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/19(金) 22:34:26 ID:2HcOYI39
短編は読みやすくていいね、もそっと人が集まらんかな。
実は一卵性双生児でもDNAは少しだけ違うんだけどね。
まあ、DNA鑑定では差が出ないくらいごく僅かな違いだから全く問題ないけど。
じゃあちょっと投下するぞよ。ソネット規制一ヶ月ぶり解除記念。
なお作品中に登場する国家、組織、人物は、現実世界のものとは
一切何ら関係がございません。
-----------------------------------
グレートコリア海軍所属イージス、世宗大王艦は、南米への航行中に謎の暴風雨に遭遇し、
基地局との通信が途絶する。通信機の故障かとも思われたが、ローラン、GPS、
その他の電波系航行システムもすべて機能不全となり、不安を覚えた艦長は、思わず独断で
帰投することを決意した。「釜山港に帰る!」
「艦長、大変ニダ!」
「どうしたんだね、パク通信士」
「通信室の日めくりカレンダーが、1598年を示してるニダ!」
「なんだってェ〜ッ!」
副長を派遣して確認し、くだんの日めくりを持ってこさせると、確かに日付は1598年9月20日を
指している。いったいどういうことか。
「パク通信士、貴殿はどうせジョークアイテムを掴まされたニダヨ。多分昨日までは普通の
カレンダーで、このページからジョークページに違いないニダ」
副長の指摘に、通信士は紅潮した顔を幾分か落ちつかせた。
「なるほど副長は賢いニダ。こんなことで騒ぐなんて、恥ずかしくて胸が張り裂けそうニダ」
「忘れたまえ、そんなことは」
「もう忘れたニダ」
こんなやりとりがあって、艦はついに釜山へと帰投した。が、そこには近代的な港はなく、
浜に引き揚げられた木造船と、小屋を組んで俵や長持などを積み上げた、異様に原始的な
港湾だけがあった。
「これはどうしたことニダ。アジア一のハブ港が、なんてざまニダ」
「艦長、水深が足りないニダ。最近浚渫サボっていたニダかね〜」
「ケーソンも見あたらないニダ。ってか町がないニダ」
「間違って中国の浜にでも来てしまったニカ?」
だが、慣性航法システムは確かにそこが釜山であることを示している。
「変ニダ。キム上士、カッターで接岸して様子を見てくるニダ」
「アイサー」
上士とクルーが上陸すると、そこに集まっていたのはどうも日本人らしかった。当然言葉が
通じない。時代がかった着物を着たスネ毛・ヒゲモジャ・頭ボサボサの日本人に囲まれて、
上士たちは弱ってしまった。
「これはどうしたことニカ? 同胞はどこにいるニダ?」
「上士どの、ウリは毎年旧正月には天神でソープランド通いしてるニダ。イルボン語が分か
るニダ」
「ペク兵長、それはいいアイデアニダ。任せるニダ」
ペク兵長は、日本人リーダーらしき男に昂然と話しかけた。
「あー、イルボン人ども、この辺にいい店はないニカ」
「何を言ってるでござる、珍妙な服を着て、おぬしら朝鮮軍か」
「偉大なるウリナラ海軍軍人ニダ」
「斬れッ」
ペク兵長は斬り捨てられてしまった。上士をはじめ兵士たちは腰を抜かし、その場に膝を
ついて泣き声ともうめき声ともつかない声で騒ぎ出す始末。それに辟易したリーダーは、
ほかの兵たちを殺すことをやめ、近くの穴蔵にぶち込んだ。
「上士……ウリたち、どうなってしまうニカ……」
「本船が近くにいるニダ。きっと艦長たちは、ウリたちを助けに来てくれるニダ。我慢して
待つニダ」
だが助けは来なかった。
翌日、同じ穴蔵に老人と少年とが投獄されてきた。老人は耳が聞こえなかった。
「おっちゃんたち、けったいな服装してるニダ。でも布は上質ニダ。ウリの穴と引き換えに、
その上着をくれないニカ?」
魅力的なオファーだったが、兵たちは無下に断った。夜は寒いのである。
「ウリたちはそれよりも情報が欲しい。ここはどこニカ?」
「釜山ニダ」
「釜山にしては寂れている。どこか中国か、イルボンの海岸じゃないニカ?」
「中国とかイルボンって何ニカ?」
「このガキ、とぼけるんじゃないニダ」
と、兵の一人が懐から何かを取り出した。
「まあまあ喧嘩はよくないニダ。ここに携帯キムチがあるニダ。これを一口あげるから、
知ってることを教えて欲しいニダ」
その兵が携帯キムチのタッパーの蓋を取ると、凄まじい匂いが穴蔵の中に充満した。
兵たちはその香りを胸一杯に吸い込み穏やかな顔をしたが、少年と老人はひっくり返って
しまった。
「それ、それを、どこかにやるニダ。臭い。臭すぎる」
「ウリのキムチをバカにするニカー!!」
「待て待て待てまて」
キムチの兵士は怒りで自我を忘却し、自律神経を混乱させてぶっ倒れてしまった。
「キムチは最近、若者には不人気ニダ。子どもなら仕方ないニダ」
「そんなもの食わされるくらいなら、ウリはなんでも喋るニダ」
少年から話を聞いた兵たちは、ますます混乱してしまった。
「要するに、イルボンたちがまたテーハミングに攻めてきたニカ。そして釜山は更地に……
怒りで我を忘れそうニダ」
「細かいことはじっちゃんが詳しいニダが、じっちゃんは耳が聞こえないニダ。字を書ける
ひとがいれば、筆談できるニダ」
「ウリたちは世界最高の教育を受けているので、文盲率はゼロニダよ?」
彼らは老人と筆談を始めたが、何一つ通じなかった。
「おっちゃんら、このけったいなウネウネ文字は何ニカ?」
「偉大なるハングルニダ。世界一合理的で機能的な文字ニダ」
「ふーん、よくわからんから、漢字で書いてくれとじっちゃんはいってるニダ」
「韓字のわかる兵はいないニダ……」
「漢字ニダ」「韓字」「いや漢字」「いやいや韓字」
結局筆談はご破産となった。
「それにしてもおっちゃんらアホニダね。ガン首揃えてこんなところにぶち込まれるなんて。
立派に戦って捕まったニダか?」
「勿論ニダ。世界一勇敢な兵士ニダよ」
「李舜臣さまも、いまごろどこかで戦っているニカね〜」
それを聞いて、兵の一人が叫んだ。
「わかったニダ! ウリたちは過去にワープしてきたニダ! ネットで落としてきたイルボ
ンのマンファでそういうのがあったニダ!」
「えええ、そんなことがあり得るニカ?」
「美帝の映画にもそういうのがあったはずニダ。ウリナラの偉大な科学力をもってすれば、
そういうことが突然起こっても不思議ではないニダ」
「まとめると、日帝と美帝が悪いニダね?」
「そう言うことニダ」
「じゃあ、今ウリたちは……」
「凶悪超時空太閤hideyosiの捕虜ニダ」
「……!!」
兵たちは獣のように叫びだした。泣くもの、ほかの誰かに見境なしに掴みかかるもの、
少年の腰巻きに手をかけるもの、火をおこす役に立ちそうなものを探して、穴蔵の中は狂乱の
るつぼとなった。
「おい捕虜ども、静かにせんか!」
穴蔵の扉が開いて、六尺棒を持った衛士が警告した。その瞬間、フリチンの少年にブレー
ンバスターをかました上士を先頭に、中の全員が出口に殺到した。衛士は驚いて不覚をとり、
砂の上に尻餅をついた。兵たちはそのまま脱兎の如くに逃げ去り、あてどもなく海へ入っ
て沖を目指して泳ぎ始めた。
「なんて逃げ足の早い奴らだ!」衛士は歯がみしたが、時既に遅し。この衛士は翌日切腹した。
結局脱走した九人のうち、運良く艦に発見されて収容かなったのは上士と兵一人、それに
少年だけだった。
「せっかくお持ち帰りするなら、娘を連れてくるべきだったニダね、キム上士」
「冗談はよして下さい。ウリたちは地上で諜報活動に明けくれた挙げ句、イルボンの精鋭と
激戦を行い、兵は一人また一人と倒れ、ついにウリとコ上兵だけになって、辛うじて不幸な
この少年を救ってきたニダ」
「冗談ニダ。よく生還したニダ。で、どんな情報が得られたニカ?」
「今はhideyoshiの時代らしいニダ」
「(火病!!)」
「要するに、あの日めくりは正しかったニダ。今は1598年ニダ」
「パ、パク通信兵を呼べ」
通信兵が出頭した。
「パク通信兵、参りました」
「あの日めくりはどうしたニカ?」
「捨てたニダ」
「怒りで胸がアチチイチイファビ、」
「艦長落ちつくニダ」
「もう日付がわからなくなってたニダ」
「どっちみち大して重要じゃないニダ」
「それもそうニダ。ケンチャナヨ」
その晩、士官会議で今後のことが相談された。
「イルボンの漫画では、バレンパンで軽油を補給してたニダ」
「この時代、石油なんて掘ってないニダ」
「しばらく漂流するニダ。問題は食糧ニダ」
「上陸して買おうにも、不審人物として扱われるのがオチニダ。イルボンかミョン人に遭ったら、
殺されること請け合いニダ」
「死んだ鯨でも流れてこないニカ〜?」
「だってあれは……」
「提案があるニダ。食料は挑戦水軍から買うニダ。船には旗が揚がってるはずだし、
同胞の船とわかれば交渉しやすいニダ」
「それはいいアイデア」
「有利に交渉を進めるために、ちょっとだけ加勢して友好をアピールするニダ」
だがその機会はなかなか訪れなかった。同胞水軍の活動は、話に聞くよりずっと低調だっ
たのである。だが冬も始まる頃、ようやくその機会が訪れた。南から海岸沿いに、同胞海軍
がものすごい勢いで北上してきたのである。艦長はその船列に艦を寄せ、ラウドスピーカー
で呼びかけた。
「食料を買うニダ。売れニダ。珍しいものと交換ニダ」
巨船の出現に驚いた水軍たちも、敵ではないとわかると急ぐのか、艦を無視して通過し始めた。
たまりかねた主計長が、船側に出て舷側から下の同胞達に呼びかけた。
「コラ、食料がなくて困ってるニダ。分けて欲しいニダ。同胞なら助ける義務があるニダ」
下からはこんな返答が帰ってきた。
「それどころじゃないニダ。鬼島津が追ってくるニダ。速く逃げないと、殲滅されてしまうニダ」
主計長は艦長に、一部始終を報告した。
「あの水軍は李水軍の精鋭ニダ。鬼島津を追跡して、北へ向かってるらしいニダ。でも島津
は南にいるらしいニダ。そんなことはどうでもいいニダ。おそらく島津水軍を蹴散らせば、
連中食料を売ってくれると思うニダ」
「なるほど、じゃあ蹴散らそう。400年後の軍艦の力を見せてやるニダ」
「天文学的な技術力の差ニダね」
「400年とは、想像を絶する数値ニダ」
大王艦は南に向かった。南からは、予想通り島津の水軍が北上してくる。
「さあ、七面鳥撃ちニダ。CIWSニカ? 魚雷ニカ?」
「馬鹿なことを言わないで下さい艦長。補給はできんニダ。どうせ相手は木造船、キールで
乗り上げて砕いてしまえばイイニダ」
「それは名案ニダ」
イージス艦が突撃すると、さしもの島津水軍も大混乱となった。船列が乱れ、めいめい思
い思いの方向に脱出する。世宗大王艦はそれを追って、アリを踏むように海面を滑り始めた。
「ウェーハハハハ! 気持ちいいニダ! それ一隻! また一隻! 面舵イッパーイ、次は
アレニダ! ヒヒヒ、あれば二隻衝突して、逃げるに逃げられないニダね!」
だが、ひとつ誤算があったのである。この艦は、イージスとしては非常識なほど
トップヘビーだったのだ。そして運が悪いことに、重なり合った二隻の木造船の浮力、
一杯に切った舵による傾斜、これらが相乗効果を生んで、もともと微妙だった艦のバランスが、
一気に崩壊してしまたのだ。
「かかか艦長転覆転覆転覆」
「おちつくニダ副長、ウリナラ造船技術は世界一! ひっくり返っても復元するニダ!」
そして上下が反転し、すべての電気系統が落ちた。
島津兵は見た。青天高い冬空の下、恐るべき猛威を誇った奇妙な巨船が、その活動を
停止するのを。停止した巨船は瓜のように長い真っ赤な腹を晒し、海上にぷかぷか浮いていた。
その表面には一杯にフジツボと海藻がついて、みるからにおぞましい海獣の甲羅のようにも
見えた。島津兵は恐る恐る巨船に近づき、反撃がないのを見てとると、ためしに船体に向かっ
て発砲した。弾は金属音とともに跳ね返った。
島津水軍の将、義弘は唸った。反撃しないとは何たる余裕か。これを置いてここを通過す
れば、後ろから攻撃されないとも限らぬ。どうしたものか――。
と、突然巨船はごぼごぼと音を立てて、海の中に沈み始めた。海上に大きな泡が立った。
船はそう、まるで海亀が海に潜るように素早く海水をかぶって、またたくまに水面下に没し
てしまったのである。義弘ら島津勢は、なすすべもなくそれを見守った。
だが、そのあと海中からドカンという奇っ怪な音が一度響いたのみで、巨船は二度と彼ら
の前に現れなかった。島津兵はこの巨船を伝説として後世に伝えた。李舜臣の水軍には、恐
るべき亀甲の船がいたと。それは島津の船を砕き、銃弾を弾き、兵らの上に殺人的猛威を
振るったあと、忽然として消えてしまったのだ。
以後、亀甲船は一度として目撃されていない。
(了)
変なところで改行が入るのはなぜなんだぜ?
メモ帳からコピペするとだめなんかな……。
プレビューではきちんと表示されるんだけど。
お粗末様でした。
ニダー板でやれwww
キ……キムチくせーっww
71 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 22:32:56 ID:eDc7Qyau
上に参りまーす
>>68 ネタとして面白いけど
俺もニダー板でやれと言わざるを得ないwww
(1/3)
…ふと起きてみると、私はなぜか便器そのものになっていた。
狭い大便用の個室の中、浄水槽と配水管で壁と床につながれた私の肉体は、
どういうわけか堅い陶器に変化し、仄暗い蛍光灯の明かりの下で鈍く輝いている。
(な、なんだよコレ…どうして俺が便器になっているんだよ!)
私は焦った。
しかし身体は動かない。
すると、
「ガチャ…」
突然、トイレの扉が開く音がした。
(誰か来る!)
私はとっさに身構えた。
しかし身体は動かない。
焦る私をよそに、コツコツコツと足音が近づいてくる。
私がいる個室の扉がゆっくりと開いた。
そこには体重100kgはあろうかという脂性のデブが仁王立ちしていた。
(ま、まさかっ!)
そう、そのまさかである。そのむさ苦しい脂デブは糞を垂れに来たのだ。
(2/3)
(やめろっ!やめてくれぇっ!)
私は叫んだ。
無論その声は誰にも届かない。
私の恐怖をよそに、目の前の脂デブはスラックスのベルトを外しシミだらけのブリーフとともに引きずり降ろした。
私の目の前には恥垢だらけの包茎チンコが突き出される。
「ふう〜、ヤバイぜ。漏れそうだ」
どう見ても死にかけた豚にしか見えない脂デブはそう呟いた。そしてぼりぼりと尻を掻きながら後ろを向く。
(やめろっ! 頼むからやめてくれっ!)
私は叫ぶ。
しかし、私の叫びは言葉にはならない。
静寂に包まれた大便用の個室の中で、弛んだ腹をさらけ出したデブの苦しげな呻き声だけが虚しく響いた。
恐怖に震える私の目の前で、押し寄せる便意に耐えかねるようにいそいそとブリーフを引き降ろす脂デブ。
今度は私の目の前に、方々にケツ毛の生えたイボだらけの汚いケツが突き出された。
そのデブの汚いケツは、大きく開かれた私の口にドッカリと乗っかってきた。
(むぐう〜っ!んむむ〜っ!)
私は言葉にならない叫びを発した。しかしその瞬間、
「ブビーッ!」
と屁が私の口の中に充満する。
あまりの臭気に私は失神しかける。
何故自分がこのような過酷な仕打ちを受けなければならないのか、私は自らの運命を呪った。
(3/3)
…そしていよいよ真の恐怖がやってきた。
イボだらけの尻の肉の奥に鎮座する浅黒い肛門が大きく開かれ、そこから巨大な一本糞が先端を覗かせた。
それは、メリメリとイヤな音を立てて肛門から搾り出されてゆく。
私はもがいた。そして神に祈った。
しかし運命は無情にも私の想像した最悪の事態へと突き進んで行った…。
「…ふう〜。たっぷり出たなあ。昨日ギョーザ食ったから糞も相当クセエな!」
脂デブはそう言って、大きく溜め息をついた。
糞をくわえ込んだまま半狂乱になっている私の口に、アンモニア臭たっぷりの尿がジョロジョロと垂れ流される。
その後、脂デブはトイレットペーパーで自分の肛門を拭い、それらを再び私の口の中に放り込んだ。
立ち上がったデブは、大きく伸びをし、脱糞後の爽快感に浸っていた。
その傍らで泣き叫ぶ私の存在などまるで気づかず、満足そうに微笑む。
ふと、脂デブは私の方へ振り返った。 自らがひねり出した排泄物を一瞥し顔を顰める。
そのまま乱暴に便器の蓋を閉じてレバーを動かし、中身を全て私の胃へと流し込んだ。
私は発狂した。しかしその叫びを聞いたものは誰もいなかった…。
76 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/26(金) 21:46:46 ID:AwBF9Sdn
素敵な話ですね
ふむ、無機質変身でトイレの便器をえらびますか
78 :
1:2008/09/27(土) 02:57:19 ID:7PIM8oNX
お初です。
時計の針が3を指したころ。
明日の大学の秋学期ガイダンスのための荷物整理も終わり
私は寝る前に顔を洗おうと一階の洗面所に向かった。
今日は昨日と打って変わってやけに肌寒かった。秋の訪れを否応にも感じる。私は薄い上着をはおった。
階段を降りるとき、ふと窓から覗く鉄道の踏み切りが視界に入った。
ただ一本の照明がぼんやりと、不気味に闇から浮かび上がらせていた。
あそこは昔から頻繁に自殺があるところだ。
最寄の駅には快速が止らず、電車は最高速でここを突っ切っていくのだ。
人通りも少なく、確かに鉄道自殺にはもってこいの場所だった。
そんな名スポットのすぐ近くの家で生まれ育った私は
今更恐怖を覚えるまでもなかったが、確かに気分のいいものではない。
階段を降りて洗面台で顔を洗う。
そして水分をタオルで拭き取り私は鏡を見た。
きつく拭いたせいですこし頬が赤い。
後ろの浴室は明かりが消え、薄暗い。擦りガラスからかすかに
蛇口のメッキ部分が洗面台の明かりを光反射して光っているのが見えた。
79 :
2:2008/09/27(土) 02:58:58 ID:7PIM8oNX
キキキ・・・
明かりが少し揺らいだ。もう蛍光灯の寿命が近いらしい。
・・・
寒い。外からの冷えた冷気が吹き込み私を震えさせた。
さっさと部屋に戻って布団を被ろう。
私は洗面台の明かりを消した。
一瞬で当たりは闇に包まれ視界を奪われた。
廊下の明かりのスイッチを私は手探りで探した。その時。
プルルル・・・!
ビクン!
私の心臓は跳ね上がった。突然リビングの電話機が鳴り出したのだ。
一体誰だこんな時間に・・・
深夜の電話なんて気分の良いものではない。
プルルル・・・プルルル・・・
私は廊下の明かりをつけた。
無意識に自分の周りに人気が無いかをチェックした。
パラララ・・・パラララ・・・
二階の子機がほんの少し間を置いて鳴り出した。
どうせ親が起きて二階で出るだろう。私が出る必要は無い。
私は電話のベルが止むのを待った。
80 :
3:2008/09/27(土) 03:00:50 ID:7PIM8oNX
プルルル・・・プルルル・・・
パラララ・・・パラララ・・・
プルルル・・・プルルル・・・
パラララ・・・パラララ・・・
鳴り止まない。誰も出ない。
静かな家にけたたましくベルが鳴り続けた。
何故か電話は私が出ることを求めているような、そんな気がした。
私が出ろ。そうベルが言っている。
私は恐る恐る電話機に近づいた。
プルルル・・・!
近づくと耳に響く程煩い。こんなに音量が大きかっただろうか。
早く出ろ、ハヤクデロ。私は意を決して電話に出た。
「もしもし・・・」
「・・・」
反応が無い。
「もしもし・・・」
「・・・」
普通なら、ここで「どなたですか?」などと言うだろう。
だが何故かその時の私にはそのセリフが出なかった。
何故か、人間ではない、得体の知れないものがいると、
そんな気がしたからだ。もちろん何の根拠も無いが。
81 :
4:2008/09/27(土) 03:02:20 ID:7PIM8oNX
カンカンカン・・・
かすかに聞こえる・・・何かを叩く音・・・だが聞きなれた音・・・
そう、これは踏み切りの遮断機のベルだ。何故だろう。
遮断機の下に”それ”があるのだろうか。
何故か私は家の前の踏み切りが気になった。
私は電話機を置き、急いで窓の外の踏み切りを見た。
だが鳴っていないのが見て分かった。そもそもこんな時間に踏み切りが
鳴ったら家の中に居ながらにしてわかる。
私は急いで戻った。そして受話器をもう一度耳に当てた。
カンカンカン・・・
まだ聞こえる・・・
カンカンカンカン・・・カン。
止った。
プツン。
そこで切れた。
82 :
5 終:2008/09/27(土) 03:03:47 ID:7PIM8oNX
なんだったんだろう。突然、寒気が私を包み込み得体の知れない恐怖が襲った。
私は急に怖くなって、リビングの明かりを全てつけ、背中を壁につけへたり込んだ。
・・・ふと気がつけばさっき鳴っていなかったはずの外の遮断機のベルが鳴っていた。
・・・カンカンカンカン・・・
ぷわーーーーーーーーーーーん
異様に長い貨物列車の警笛。
そして、踏切を越えた頃に鳴り止んだ。
また、あそこで人が死んだ。
長屋の一間にて。
「いってくるぜ」
「あんた……死なないどくれよ」
「フン、つまらねぇこと言うんじゃねえ」
パタン(戸を閉める)
(しばらくして)
トントン、トントントン
「はぁい、誰だい」
「夜分どうも。質屋の手代です」
「アラ。何の用だい」
「いえね、さっきご主人が刀を質入れして、かわりに竹光を持ってかれたんでさ」
「エッ」
「で、その差額で、いままで質入れしてたモンを全部こちらに届けてくれってね」
「そんな」
女房、戸口に出る。外は驟雨。
「おかみさん、どうしたんです、濡れますぜ」
「……」
(終)
84 :
極意:2008/09/28(日) 00:25:54 ID:UDilb4SW
山本はある会社のセールスマンである。
しかし、彼は生来の口下手で、その上、その会社の商品は家庭向けのものが多かったため、
どうしてもセールスの相手は主婦が多くなり、そのためにますます気後れしてしまうので、
山本の営業成績は悪かった。
そこで、山本は友人で売上トップの中川に相談してみることにした。
「なあ中川、どうやったら君みたいにうまくセールスを進められるんだろう?」
「ああ、簡単なことさ。まず、血液型を聞くんだ」
なるほどそうかとうなづいて、山本はそのアドバイスに従ってセールスをすることにした。
そして1週間後。
「山本、俺のアドバイスは役に立ってるかい?」
「ああ、それなんだけど。女性はやっぱり占いの話題とかが好きかと思って話を進めようとするんだけど、なかなか話題が広がらないんだ。
せっかくアドバイスしてもらったけど、やっぱり元から話のセンスのある奴じゃないと無理みたいだ」
「バカだなあ、聞くのは旦那の血液型のほうだ」
85 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/28(日) 01:10:57 ID:eSMtm8ck
コンドーム?
87 :
84:2008/09/28(日) 20:32:54 ID:UDilb4SW
88 :
84:2008/09/28(日) 20:37:45 ID:UDilb4SW
89 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/30(火) 04:38:40 ID:CaRDYe3u
(1/3)
『ちんぽの花園』
一面に咲き乱れるたくさんのちんぽ。
これは幻なのか?
それとも悪夢なのか?
ちんぽ一本一本がゆらりと高く首を天にかかげ、香しい白濁液が滴らせる。
生命の息吹を感じさせる香ばしい生臭さが春風に煽られ、私の嗅覚を刺激した。
ここは「15歳の勃起」と名づけられた花園。
生温い汗が飛び散り、青臭い息吹が満ちるこの花園には、若々しい生命のが満ち溢れていた。
青春の喜びと悲しみ、挫折と寂寥を孕みながら花園は今日もまた終わり無き一日を迎えるのだ。
永遠と思える静寂の中で、彼らもまた無言のまま己の若さを漲らせる。
誰も見ることなく、誰にも振り返られることないまま、春風の中でただただ虚しく。
そこには失われた純情があった。
満たされない悲しみに溢れていた。
膨れた肉茎の節々に流れる朝露は、彼らの涙なのか?
青春の虚しさとはかなさを伝える、彼らの無言の訴えなのか?
多くの夢と挫折を孕んだまま咲き乱れるちんぽたち。
今日もまた吹き荒む春風の中で仄暗い空を虚ろな目で見つめ続けていた。
90 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/30(火) 04:39:28 ID:CaRDYe3u
(2/3)
そんな折であった。花園をかき乱す闖入者たちが訪れた。
一糸纏わぬあられもない姿のめしべたち。
亜麻色の長い髪をなびかせた蕾たち。
春の乙女たちだ。
乙女たち舞い踊るたびに乳房は豊かに揺らいだ。
乙女たちの新鮮で柔らかな肉が軽やかに弾んだ。
滑るような白い素肌が、ちんぽたちに眩しい。
薫り立つような薔薇色の微笑みで、乙女たちは語り合う。
未熟な乳房や瑞々しい尻の放つ薄桃色の芳香。
甘酸っぱい吐息が、花園にかつてない彩を与える。
ちんぽたちは一斉にわななき、その鎌首を大きくもたげた。
するとどうであろう。
突然、乙女たちは呻いた。
愛の季節の訪れを告げる疼痛が乙女たちを目覚めさせたのだ。。
若草のような恥毛に包まれた薄桃色の花弁。
その控えめな割れ目から、乙女たちは一筋の血潮を流した。
鮮やかな一筋の血潮は閉ざされた白い腿を流れ、地面に雫を垂らす。
勢いを増して咲き誇るちんぽたちに、その雫が飛び散る。
ああっ!
91 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/30(火) 04:40:15 ID:CaRDYe3u
(3/3)
だが乙女たちは花園の中で踊りつづける。
華やかに、軽やかに、艶やかに。
そう、この乙女たちこそ咲き誇る春の女王たちなのだ。
柔肌から真珠のような汗を流し、花弁から真紅の血潮が滴らせ、
それでも乙女たちは薄桃色の頬に笑顔を浮かべたまま、可憐に踊り続けた。
乙女たちの白い脚は、花園に咲く無垢な茎たちを無遠慮に踏みしめる。
脚の下で虐げられ、ちんぽたちはそれでもなお逞しく立ち上がろうともがいた。
傷だらけの純情と求めえぬ愛情を探して。
永遠の愛と無限の悦びを勝ち取るために。
乙女たちに、己の全てを委ねるために。
最後に彼らは乙女たちの微笑みに向け、力強く我が身を震わせ一瞬の悦びとともに果てた。
赤黒い肉茎を弾けさせ、己の持つ生命の迸りを惜しみなく吐き出し、搾り出したのだ。
そのただひと時のために、彼らは全てを賭けた。
彼らはゆっくりと萎れてゆく。
崩れ落ちるように大地に倒れる。
霞む陽射しの中、呆然とする思考の中でもなお、その視線は乙女たちを追う。
視界の中で踊り狂う乙女たちの甘い香を思い、柔らかな肉体を夢見ながら。
そして再び乙女たちを待つのだ。
永遠に繰り返される、苦行と快楽の輪廻の中で。
乙女たちに己の無辜の愛が受け入れられる、その時まで。 (了)
>>89 頭の中に情景が浮かんだ
おかげで吹いた
どうしてくれる
情景想像するとすげぇwwww
94 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/01(水) 06:00:30 ID:Q3rtExl5
『変身』
猛烈な臭気に私は目を覚ました。
直前まで見ていた不穏な夢の断片が、まだはっきりとは目覚めていない頭の中に散らばって、いたるところに不安なシミを残していた。
ひどく不気味な夢だった。
夢の中で私は、得体の知れない巨大な毒虫になっていた。ただでさえ狭い部屋の中で、脇腹に抉られた深い傷から溢れたヌメヌメとした己の体液に足を絡めとられて身動きもままならない。
身体はもう腐りかけているのだろう。
毒虫という自分の殻と、自身が放つ猛烈な悪臭に閉じ込められて、誰にともなく助けを求めて私は絶叫した……。
本当に嫌な夢だった。あの悪臭がまだ鼻先に匂っているような気がする。
私は気分をかえようとベッドサイドの煙草に手を伸ばした。
身体が思うように動かない。そう思ったとき、またあの悪臭が、今度は夢の余韻などではなく、私の鼻腔を直撃した。
まさか。いや、そんなはずはない。悪い予感が込み上げてくる。
私はおそるおそる、壁の鏡を覗いた。
そこにはベッドの上に横たわる巨大な毒虫が横たわっていたのだ!
まさか、私は……。
私は咄嗟に振り向いた。目の前には確かに黒光りする毒虫がいる。
私ではなかった! 私は毒虫ではなかった!
なぜなら私は、毒虫が垂れ流した大量のウンコだったから……。
〈了〉
『ドラえもん のび太の罪と罰』
〜プロローグ 〜
富士見町の繁華街の外れで、一人客引きをする少女がいた。
呂律の回らない口調で、道行くサラリーマンを必死に客引きをしている。
焦点の定まらない視線や、ふらつく足取りを見れば、彼女が普通でないことはすぐに分かる。
肉の削げ落ちた頬や、落ち窪んだ眼窩、それと年のわりに乾燥した素肌など、明らかに薬物中毒の症状が見られる。
「お客さん、2時間1万円でどうですか?お兄さん?」
サラリーマン風の男は、その少女の危なっかしい様子を見るなり、足早に立ち去った。
それに追いすがろうと少女は駆け出した。が、足がもつれて倒れる。
「えへっ!今日は中々お客さん付いてくれないな?」
彼女はあの源静香ちゃんのなれの果てだった。
そこには日本中の少年達を熱くさせたパンチラヒロインの面影はない。
今はただ、行きずりの客を相手に小銭を稼ぐヨタカに過ぎない。
彼女を今の悲惨な境遇に貶めたのは、あののび太である。
甘言を用いて静香ちゃんをその気にさせ、散々その若き肉体を玩んだのはあののび太だった。
その後ジャイアンやスネ夫から金を取って静香ちゃんを抱かせ、さらにはシャブ漬けにしてソープに飛ばしたのだ。
その稼ぎまでも巻き上げたのび太は、身も心もボロボロになって客が付かなくなると静香ちゃんをあっさり捨てた。
愛する人に捨てられてしまった静香ちゃんは、自殺未遂事件をたびたび引き起こした。
つい先日も硫化水素を用いた自殺を試み、危ういところを出来杉くんに救われたばかりなのだ。
別の労務者風の男に静香ちゃんは声を掛ける。
その労務者風の男はまとわりつく静香ちゃんを軽くいなし、近くにいた売人から覚醒剤を購入した。
グラム単位で2万円と、最近は相場が落ち着いている。
少しくしゃくしゃになった福沢諭吉を5枚ほど売人に渡すと、その浮浪者は再び歩き出した。
静香ちゃんはフラフラとした足取りで、その労務者風の男の後を追った。
「のび太さん、のび太さんなんでしょ?私、静香よ」
覚醒剤の影響ですっかり肉の削げた頬に、無理矢理笑顔を浮かべて男の肩にもたれかかる。
その労務者はすこし面倒くさそうな表情をしたが、仕方がない、といった感じで静香ちゃんの腰に手を回した。
そのまま二人は近くのラブホテルに入る。
今夜は、この男が彼女の「のび太くん」になるのだ。
ただのスレた娼婦に成り下がったかつての国民的ヒロインは、誰とも分からぬ男と今夜もセックスをする。
僅かな金と、我が身を滅ぼす覚醒剤のために…。
〜ドラえもん のび太のもはやこれまで〜
「ドラえも〜ん!ジャイアンがいじめるよぉ!」
今日ものび太くんが泣きながら懇願するので、ドラえもんは仕方なく不思議なポケットに手を入れた。
困ったときにはドラえもん、それがのび太のルールだ。
少し困り顔でポケットを探るドラえもんの姿を見て、のび太くんは泣き落としが上手くいったとほくそ笑んだ。
今日、のび太くんはジャイアンの店の権利書を奪って登記の名義を書き換えてしまったのだ。
さらに甘言を用いてジャイ子を騙し、ジャイアンを連帯保証人にしてブラック金融から多額の金を引き出してもいた。
現在、激怒したジャイアンは血眼になってのび太の行方を捜している。このままだと発見されるのは時間の問題だ。
とりあえず換金した3000万円ほどの現金と、無記名債券の束を手にし、のび太は高飛びしようとしていた。
―行き先はルクセンブルグ。そこは裏金パラダイス。この火傷しそうなブラックマネーを信託投資にぶち込むと、
国営銀行がきれいさっぱりクリーニングしてくれる。この上がりで俺はモナコのカジノで豪遊するんだ。
そしてパリの赤線でパリジェンヌを買いまくって枯れるまでセックスするんだ。
のび太の期待と股間はパンパンに膨らんでゆく。
―静香ちゃん、誰それ?ああ、このあいだ無理矢理に堕胎させて借金のカタにソープに売り払ったあの淫乱娘か!
もう俺はあんなロリ娘なんぞ興味ないって、冗談よせよ。俺はこれからパツ金巨乳のパリ娘とシャンパンセックス
する男だぜ。あんな小娘なんぞシャブ漬けにして花電車芸で温泉ストリップ周りでもさせてろっての。
―それよりドラえもん、はやく秘密道具出してくれよ。なにやっているんだよ。早くしないとジャイアンが俺を殺しに
くるんだよ。下手すりゃ極東会も俺を消しに動き出してるかもしれないんだよ。
そうイラつくのび太の目の前で、ドラえもんはモタモタとポケットをまさぐり続ける。
痺れを切らしたのび太は遂にドラえもんに怒鳴りつけた。
「もう何やってるんだよドラえもん。僕のことが大事じゃないのかい?」
そしてのび太はスーツの裾を少し広げ、胸ポケットに突っ込んだ札束を少しチラつかせた。
報酬だぜ、そう匂わせたつもりだ。
人間もネコ型ロボットも所詮は金で動く、のび太はそう確信していた。
もちろんのび太はそんな金を渡すつもりなどない。
秘密道具を出し次第ドラえもんは殺す、その積もりであった。
「あ、あった!」
遂にドラえもんが叫んだ。
「ほんと!ドラえもんありがとう!」
感謝の言葉を述べつつも、のび太は胸の奥のホルスターに吊った拳銃に手をやる。
ドラえもんが秘密道具を出した瞬間に、ドラえもんを射殺するつもりだ。
興奮するのび太の目の前で、ドラえもんはゆっくりと秘密道具を取り出した。
「ちゃちゃちゃ!レミントンM870ショットガン!」
ドラえもんの手に握られた黒光りする凶器。
のび太の表情が一瞬緩む。追いつめられた今、血路を切り開く確かな相棒としてこれほどふさわしい道具はない。
ドラえもん、ありがとうよ、そうほくそ笑みながらのび太はドラえもんの握るショットガンに、ゆっくりと手を伸ばした。
その瞬間、ドラえもんは素早くショットガンを構え、のび太に銃口を向けた。
「えっ?」
咄嗟のことに、唖然とするのび太。
「…な、なんだようドラえもん?どうしてボクに銃口を向けるんだよ?」
のび太は拳銃を掴んだ手を止めた。怯えた表情でドラえもんの顔を見返す。
そこにはいたのはいつものドラえもんではなかった。
ほがらかな笑顔を浮かべのび太を優しく見守ってくれたあのドラえもんの面影など、何処にもなかった。
鬼畜、そんな言葉がお似合いの一匹の野獣がそこにいた。
「ド、ドラえもん?」
驚愕するのび太。そんなのび太をドラえもんは殺意に満ちた目で睨みつける。
「のび太、貴様が3000万の現金と総額一億の債券を持ってることはお見通しなんだよ。とっととそれをよこしな!」
ドラ声でのび太に怒鳴りつけると、ポンプアクションで散弾をチェンバー内に装填する。
「それにな、のび太、お前がケイマン諸島の口座に合計1億5000万の隠し資産を持ってることも知ってるんだ。
しかもその金はスネ夫を騙して親父に横領させた子会社の運営資金だってのも俺は知ってる。
のび太観念しろよ。昨日自殺未遂を引き起こして意識不明の重態に陥った静香ちゃんのためにもな!」
ドラえもんはショットガンの銃口をのび太の鼻先に押し付けながら、のび太の懐にあった拳銃を引っ張りだす。
「こんなちゃちい拳銃で俺を殺そうってのか?俺は未来のネコ型ロボットだぜ、全身防弾なんだよ馬鹿!」
せせら笑うドラえもんの目の前で、のび太は呆気にとられていた。
―それよりも、静香ちゃんが自殺したって本当か?
市原のデブ社長が経営する新風俗に、マゾ調教済みの静香ちゃんを売り飛ばす契約のことが脳裏を過ぎった。
国民的ヒロインの脱糞マゾプレイをいたく気に入った変態社長からは前金をしこたま貰ってあるのだ。
―あの市原のヤンキー上がりもまた極東組の盃だ。不義理は直ちにタマに関わる…ヤバい!
のび太の額に冷や汗が浮かぶ。
そんなのび太の表情を楽しそうに眺めながら、ドラえもんは金の詰まったバッグを取り上げた。
「ジャイアン、全部済んだぜ。入ってこいよ」
ドラえもんが廊下の方に向かって声を掛けた。
あれ?これ読んだことある
―ジャイアン?ジャイアンだと!
扉がゆっくりと開く…薄暗い廊下に人影が映し出される。
その人影を部屋の明かりが照らし、その容貌を明らかにした。
そこにはジャイアンがいた。
顔が赤銅色に染め、憤怒の眼でのび太を睨みつけるジャイアンが立ちはだかっていた。
その手には釘バット。野球チームのスラッガーであるジャイアンは野球の流儀に乗っ取りのび太を始末しに来たのだ。
「のび太、よくも…よくも貴様!」
ジャイアンがのび太に歩み寄る。
一瞬、のび太の脳裏に幸せだった小学校時代の思い出が浮かんだ。
学校の放課後に空き地に集まり、草野球をして遊んだあの幸せな日々。
空き地にはジャイアン、スネ夫、出来杉君たちがいた。
みんなのび太の方を見て笑っている。
「のび太さ〜ん、早くぅ!」
静香ちゃんの声がする。眩い夏の日差しを浴びて、満面の微笑みを浮かべてのび太に手を振っている。
二度と返らない、少年の夏…。
それがのび太の最後のイメージだった。
のび太は少し笑った。
その瞬間、頭蓋骨が砕ける音を聞いたような気がした。
記憶はそこで途切れた。
そのままのび太は真っ暗な世界へ落ちていった…。
〜のび太の煉獄の魂〜
1.静香
退院後、ラブホで客のペニスをくわえているとき、静香の携帯が鳴った。
忙しいのになによ、と慌てて電話に出た静香は、そこで信じられない事実を聞かされた。
「えっ?のび太さんが……生きてるですって?」
静香はショックのあまりそのまま携帯を落とす。
客が不審がって静香の股間をまさぐるが、普段淫乱の静香ちゃんの股間も今日は何故か乾いたままだ。
いやらしく絡みつく客を足蹴にし、静香ちゃんは服を着てラブホを飛び出した。
タクシーを呼び止め、病院へと向かう。
「あの男、あののび太が生きてるなんて、そんな!」
タクシーの中で悔しさのあまり泣き出す静香ちゃん。
彼女の人生をボロボロにした憎き男、野比のび太。
憎んでも憎みきれないあの男。
しかし彼女の操を奪い、彼女を大人の女にした男でもある。
愛憎交じりの激しい感情が、静香の心のなかでせめぎ合う。
「いっそ、私の手でのび太さんを…」
静香はタクシーの中で呟いた。
2.ジャイアン
「えっ?のび太の野郎が生きてるって!」
ジャイアンは受話器を握りながら、愕然とした。
剛田青果店を追い出されて家族で四畳半に引っ越したジャイアン一家。
さきほどまで暴れまくっていた借金取りのチンピラに殴られ、傷口に絆創膏を張りながらその電話を受けた。
「そうだよジャイアン、サツ関係の知り合いに聞いたらあいつ生きてるってさ!」
スネ夫の声は震えている。のび太のせいでスネ夫のパパは会社の資金を不正融資し、業務上横領に問われた
スネ夫の父は会社のビルから飛び降りて自殺してしまたのだ。
「だって、俺アイツの頭蓋骨を叩きわって殺したんだぜ!」
ジャイアンの声も震えだした。
「死んだの確認したのかよジャイアン!俺がやるって自信満々に言ってたじゃん!」
スネ夫は泣き叫んだ。魂の叫びだ。全てを失った男の絶望がその叫び声に詰まっている。
「わ、悪かったよスネ夫。とにかく今すぐに病院に行くよ!」
ジャイアンは電話を切った。
ジャイアンは振り返ると、脳溢血で倒れた父、ノイローゼで寝込んでいる母を見た。
みな憔悴しきっている。
そしてジャイ子の遺影を見た。
のび太の「結婚してやるよ」という甘言で騙されて権利書を渡し、騙されたと分かって自殺したジャイ子…。
ジャイアンの目に涙が溢れた。
そのまま駆け出すようにアパートを飛び出したジャイアンは、全力で病院に向かった。
「なぜアイツは生きているんだ?俺は確かにアイツの脳味噌が飛び出たのを見たのに!」
3.パパとママ
生まれたときは天使のように可愛い赤ちゃんだった。
あの日、すくすくと伸びやかに育って欲しいと、その赤子に「のび太」と名づけた。
二人はその記憶が甦り、目頭が熱くなった。
あの時の玉のような笑顔、あの可愛かったのび太が…どうしてこんなことに。
もはや極東組の手が回り、のび太は逃げようもない、という話をドラえもんから聞かされた。
しかものび太は幼馴染達に手をかけ、彼らを騙して売り飛ばしたのだという。
何度も自殺未遂を起こし、街娼に落ちぶれた静香ちゃんの訴えに、パパとママに気持ちは揺れた。
そこに飛び込んできたのがジャイ子ちゃんの投身自殺の一報だった。
また去年、スネ夫のパパの会社を潰したのも、のび太のせいだという。
このままでは、のび太は悪魔になってしまう。
「もう、あの子を殺すしか…」
ママの一言に、パパは無言だった。目線を合わせずに素直に頷いた。
二人は、ドラえもんとジャイアンから持ち込まれたのび太殺害計画に同意したのだ。
愛息のび太のこれ以上の堕落を食い止めるために。
愛息のび太の穢れた魂を救済するために。
そして今日、死んだと思ったのび太が生きているという。
―何故だ?どうして?今生き返っても、なにもいいことなんかないんだぞ、のび太。
相反する親心同士が二人の中で渦巻く。
息子が生きているという僅かな喜びと、何故ここで死ななかったのかという気持ちと…。
二人はタクシーで病院に向かう間も、終始無言だった。
4.病院に集った共犯者たち。
病院のベッドで眠るのび太を、ドラえもんやパパやママが虚ろな目で見下ろしていた。
その背後でジャイアンとスネ夫と静香ちゃんが澱んだ瞳でのび太を見ている。
看護婦の格好をしたドラミちゃんを引き連れて、ドクター出来杉くんがのび太を診察を終えた。
「のび太くんは助かったみたいですよ」
出来杉先生が言うと、病室中の空気に緊張感が張り詰める。
「?」
その空気を察した出来杉先生は不審に思った。
(息子さんが助かったというのに、なんでこの人たちはこんなに暗いんだろう?)
出来杉先生は首をかしげながら診察道具を仕舞い、回診を終え出て行った。
取り残されたレギュラーメンバーたちは、昏々と眠るのび太を見下ろしながら溜め息をついた。
「どうして生きてるんだよジャイアン。極東会の仕業に見せかけて、頭蓋骨を叩き割ったって言ってたじゃないか!」
スネ夫がジャイアンに詰め寄る。ジャイアンは少し戸惑いながらも言い返した。
「仕方がねーだろ。脳味噌をぶちまけてたから死んだと思ったんだよ、何で生きてるのかコッチが聞きたいくらいだ!」
ジャイアンも困った顔をしていた。
「私だって…」
静香ちゃんが語りだした。
「私だってのび太くんに無理矢理犯されて孕まされて、殺したいほど憎いんだよ。ジャイアンさんに任せたのにどうして!」
遂に静香ちゃんは泣き出した。
子宮全摘出した静香ちゃんは、もう一生子供を産めない身体になった。
そう、のび太のせいだ。
ドラえもんスレに投下されてたな
病室の扉の傍で、ドラえもん一人だけが無言で立ち尽くしていた。
野比のび太を保護、教育、育成するための特定意志薄弱児童監視指導員である彼。
今回の事態は、彼の任務が失敗してしまったことを意味する。
内気でシャイで、ひ弱な少年であったのび太を、確かにドラえもんは厳しく鍛えた。
いつまでも甘えさせては駄目だと、心を鬼にしてのび太に接したのだ。
そのせいか、幼少時とは別人のような強さを持つ青年に育っていったのび太。
だがまさか、のび太の中にこれほどの悪意が眠っているとはドラえもんも予想だにしていなかった。
日に日に横暴になり、周囲の人間達に牙を剥く、そんな凶悪な一人の男に育ってしまったのび太。
暴走し、破滅に向かってまっしぐらに突き進むのび太を止めるためには、命を絶つしかなかったのだ。
そう、我々友達の手で…。
「…で、どうするよ?今なら誰も見てないよ」
スネ夫はみんなに向かって言う。どこか冷めた声だ。
視線もまた暗い…しかしその瞳の奥には、何か決意をした、そのような色が見えた。
「どういうことだよスネ夫?」
普段は卑屈なスネ夫とは思えないような口調に、ジャイアンは少し戸惑っている。
そんなジャイアンを見つめ、病室全体を見渡したスネ夫は、静かな声で言った。
「だからさ、いまここでのび太の生命維持装置をちょっといじればさ、わかるだろ?」
スネ夫の思わぬアイデアに、病室内の空気が一変した。
ハッとしたような表情を浮かべ、互いに顔を見合わせる。
様々な思いが錯綜している。しかし今のスネ夫の言葉は、そんな彼らに一筋の光明を与えた。
みんながスネ夫を見つめる。その視線を受けとったスネ夫は、意を決したように無言で頷いてみせた。
スネ夫の手が、生命維持装置のスイッチに伸びてゆく。
シンと静まり返る病室で、生命維持装置の立てる小さな機械音が、やけに大きく響いた。
が、スネ夫の手がスイッチに触れようとしたそのとき、
突然のび太が反応した。
「助けて…」
呼吸器の隙間からかすかに漏れる声は、確かにそう言っていた。
「…助けてドラえもん。今度は真面目に生きるからさ。」
その声にはっとなり動きを止めるスネ夫。部屋の空気も止まった。
ベッドで眠るのび太の目から、涙が一筋流れ出る。
その涙はゆっくりと頬を伝い、そのまま鬢の辺りに流れ落ちた。
「どうしたんだよスネ夫、早く切ってしまえよ!」
戸惑いを見せながらも、ジャイアンが叫ぶ。
しかしスネ夫は動かない、いや、動けなかった。
散々自分達を騙し、多くの人間を苦しめたそののび太が、今、目の前に横たわっている。
殺したいほど憎んだその男は、今は誰よりも無力だ。
生命維持装置のスイッチを少し動かせば、のび太は確実に死ぬ。
元々瀕死の重傷だったのだから、殺人とバレる可能性も薄い。
―しかし、しかし!
「止めて!」
緊張した空気を打ち破るように静香ちゃんが叫んだ。
「のび太さんを殺さないで!私の愛する人を殺さないで!」
泣き叫びながら静香ちゃんはのび太に縋りつく。
「のび太さん生きて!お願い!そしてもう一度私を抱きしめて!…私、あなたを本当に愛しているのよ!」
静かな病室の中で、静香ちゃんの鳴き声だけが響き渡った。
病室の隅で、のび太の母もすすり泣きを始める。
スネ夫は一度目を瞑り、生命維持装置のスイッチからゆっくりと指先を離した。
迷いは無かった。
確かに彼は父の仇である。
静香ちゃんの人生を破壊し、ジャイアンの妹を死に追いやり、家庭を滅茶苦茶にした罪深き男だ。
だが、彼には生きてその罪を償ってもらおう、そう思った。
もう一度、のび太の言葉を信じてやろう…それが友情じゃないか。
ふと見ると、ドラえもんが涙を流していた。
ネコ型ロボットにも、涙腺があるんだな…そんなどうでもいいことをスネ夫は思い、ドラえもんに微笑み返した。
その後のび太は無事に一命をとりとめる。
そしてこれから、のび太の贖罪の日々が始まるのだ。 (了)
>>101 >>107 ※今回のは投稿規制で欠けた部分も含めたファイナルエディションバージョンです。
(1/5)
『尾崎豊物語1 15の夜、愛の目覚め・編』
「け、見城さん。…それは一体、何?」
ある春の夜、汗ばむような熱気に包まれた薄暗いシティホテルの一室で、尾崎豊は全裸でベッドの上に横たわっていた。
両手首と両足首はそれぞれローブで拘束され、不安そうな尾崎豊は傍らに座る見城を見上げる。
うっすらと汗ばむ見城の裸体は、ホテルの間接照明の仄暗い光の中で力強く蠢く。
浅黒い肌、鍛え抜かれ盛り上がった強靭な筋肉.
その威圧感を目の当たりにした尾崎豊は、自分の胸の鼓動が高鳴るのを感じた。
見城徹は尾崎の問いに答えなかった。
無言のままベッドサイドのテーブルに向き合い尾崎にはあえて目もくれない。
テーブルのガラス天板の上に小皿を取り出した。そしてその中にオリーブオイルを注ぐ。
尾崎豊の視線を背中に感じつつ、それをあえて無視することで、嗜虐的な喜びを覚えていた。
額の伝う汗を右手で拭いながら、背後から聞こえる尾崎豊の押さえたような吐息を聞く。
背中で尾崎豊の焦燥を感じる。見城徹は唇の端を僅かに上げて意地悪く笑った。――そう、それでいい。
ルイ・ヴィトンのレザーハンドバッグからパラフィン紙に包まれた薬を取り出す。
それを先ほどの小皿に、こぼれないように丁寧に中身のパウダーを落とす。
パウダーを全て小皿に入れた見城は、そのオイルを人差し指で丁寧に攪拌し始めた。
静寂の中で、尾崎の高鳴る息吹と、見城の鼻息だけが、嫌に大きく響く。
不意に見城徹は尾崎豊に向き直った。
虚を突かれ、動揺の表情を隠せない尾崎に向かって、見城は熱い視線を注ぐ。そして優しげな笑顔を尾崎に見せた。
(2/5)
「さあ、尾崎。こっちにお尻を向けてごらん?…ほら」
躊躇する尾崎。
予想はしていた。しかし今、その予想が現実のものとなり、尾崎の中に迷いが生じた。
見城の視線が痛い。その熱い視線から逃れようと、尾崎は思わず顔を背け、ベッドシーツの中に埋める。
見城は大きく溜め息を付いた。尾崎の身体に圧し掛かると、強靭な両腕で尾崎の腰を持ち上げる。
強張る尾崎を無視し、強引にうつ伏せさせると、そのまま尾崎の小振りな尻を自分の方に向けさせた。
「あっ、んんっ!」
言葉にならない短いうめきを上げる尾崎豊。僅かに抵抗を試みるものの、見城徹の力強い腕力でそれが許されない。
尻を大きく突上げた姿勢で尾崎は、ベッドシーツの端を少し噛んだ。
見城徹の視線を尻に感じる。尻の肌がチリチリと焼けるようだ。
そして何故だろう、目にはうっすら涙が浮かぶ。
「大丈夫だよ尾崎。これはね、気持ちよくなる薬なんだよ…すぐに」
不安と緊張で打ち震える尾崎を見下ろした見城は、いたわるような口調で尾崎に語りかけた。
同時に尾崎の臀部全体を、なぞるような指使いで撫で回す。
見城は小皿から指先でオイルを掬い取り、その指先を尾崎の肛門の滑るように挿入した。
「け、見城さんっ!な、何をするんですっ!」
突然、肛門に鋭い痛みを覚えた尾崎は、弾けるように腰を振った。
しかしその腰を見城は素早く抱え、抵抗を制する。
「大丈夫だよ尾崎。す〜ぐに気持ちよくなるからね〜…」
見城の指先が、尾崎豊の肛門をかき回し、オイルをたっぷりと肛門の内壁に塗りこめた…。
(3/5)
部屋中にギシギシとベッドスプリングが軋む音が響く。
それに混じって尾崎豊の短い悲鳴と、見城徹の野太いうめきが交錯する。
見城徹の膝の上に抱きかかえられた尾崎豊は、下から激しく突上げる衝撃に耐えかね、泣きながら見城に縋りつく。
見城徹の肩の筋肉が、尾崎自身を貫くたびに尾崎の腕の中で硬直し、痙攣する。
尾崎豊の耳元に、見城徹の生温い吐息が吐きかけられる。
鼓膜を揺さぶられるような野太いうめき声は、さらに尾崎豊の性感を高めてゆく。
貫かれた肛門は見城徹の灼熱の肉棒にかき回され引き千切れそうだ。
「あ、ああっ!ああっ!け、見城さんっ!」
「どうだい尾崎、気持ちいいかい尾崎?す、凄いだろ、このクスリ!」
痺れるような快感が肛門から吹き上がり、脊髄を通って脳天まで昇り詰める。
尾崎豊の思考は混乱の極みで、さまざまな感情やイメージが物凄いスピードで渦巻く。
電撃のような快感の波が幾度も尾崎を襲い、気づけば尾崎自身のペニスも隆々と勃起し射精していた。
尾崎豊の放った精液は、見城徹の分厚い胸板や盛り上がった腹筋の上に飛び散り、ゆっくりと流れる。
「おまえを本物にしてやるからなっ!尾崎っ!おまえを永遠の存在にしてやるからなっ!」
「け、見城さんっ!」
「おまえは俺のモノだっ!尾崎、おまえを本物に…お、尾崎ィィッ!」
尾崎豊の直腸に熱いものが迸った…。
(4/5)
激しい情交、そして幾度も押し寄せる快感の波…尾崎豊はベッドの上でまどろんでいた。
薄暗いホテルの部屋は、先ほどまでとは打って変わって静寂に包まれている。
エアコンの温度設定が若干高めなのか、春先にも関わらず汗ばむような熱気が尾崎豊の肌を包む。
思考を集中できない。見城さんから貰ったあのクスリの影響なのだろうか?
彼の横で見城徹は野太い鼾をかいて寝ている。尾崎は見城の横顔を見つめた。
見城徹…ついさっき、あれほど激しく自分を求めてくれた男。
その圧倒的なパワーと、男性的な荒々しい精力に、尾崎豊は完全に圧倒されてしまっていた。
今までの人生の中で、あれほどまでに他人に求められたことは無かった。
そのことが、尾崎豊の中のプライドを突き動かした。
歪んでいる、確かにそうだ。
しかしこれほどまでに濃厚な人間関係がかつてあっただろうか?
禁断の愛に包まれた尾崎の中で、今、自分への確信が芽生えつつあった。
(俺は、俺は見城さんを信じるっ!)
尾崎はいつしか心の中で叫んでいた。
…これから自分はどうなってしまうのだろう?本当の自分、あるべき姿とは?
思春期の尾崎を苛め続けてきた疑問の数々…。
そんなものはライブステージの上で繰り広げられる歓喜と熱狂に比べれば、とてもちっぽけな物思えた。
(考えるな、感じろ!感じ取るんだ尾崎っ!)
見城さんは、そう言って送り出してくれた。
ステージの上で自らを曝け出し絶叫するあの瞬間こそ本当の自分姿なのか…。
そう、見城さんは自分の悩みを真摯に受け止め、あるべき自分の姿を提示してくれた。
そして抱きとめてくれたのだ。
(5/5)
突然、肛門に鋭い痛みが走った。
「うんっ!」
痛みに耐えかねた尾崎は、思わず短く悲鳴を上げた。
直腸の奥の方から、何かが流れてくる感触がする。
便が洩れ出て来たのか、と一瞬頭を過ぎる。
尾崎はすこし慌てて腰を浮かせ、自分の肛門に指先をあてがった。
ヌルリとした粘液質の感触。
痛みを覚えつつ、それを指先で掬い取り、目の前に持ってきた。
僅かに生臭い。赤い自身の血の他に、見城から吐き出された灼熱の精気が粘つくように絡まって いる。
尾崎は暫くそれを眺めた…。
――これが見城さん自身。
そう尾崎は心で呟く。
見城に向き直った。
目を瞑り深い眠りの世界にいる見城。
先ほどの獰猛な獣のように自分を支配しようとしていた見城を思い出し、尾崎は思わず赤面した。
指先の、自身と血と見城の精液が入り混じって桃色に染まった粘液をもう一度眺めた。
そしておもむろにそれを自分の口に運んで舐めた。
少し苦い味がした。(了)
(1/5)
『尾崎豊物語2 15の夜、愛の地獄・編』
…バー「オルフェ」のドアを開けると、そこは肉の洪水だった。
一糸纏わぬ男女の肉体が複雑に絡みあいのた打ち回っている。
部屋の方々で歓喜の呻きが上がるたびに、その肉の氾濫はわななく。
「…な、なんですかこれ!どういうことなんです?須藤さん!」
尾崎は見城と須藤の方を振り向いて言った。そのまま絶句してしまった。
そこには全裸の須藤と見城が立っていたのだ。
全裸の須藤は股間からは仮性包茎のペニスが勃起させている。
一方、見城の手には、黒々とした巨大なペニバンが握られていた。
バーの薄暗い照明の中でそれは、不気味に鈍い光を放っていた。
「な、一体どういうことなんです?貴方達はいったい、何なんですか!」
「尾崎、こういうことであよ。見ればわかるよね」
須藤は尾崎の目をジッと見つめながらそう言い、ニヤリと笑った。
「ふ、ふざけないでください!こんなこと最低ですっ!ボク、こんなのもうイヤなんですっ!」
尾崎は叫んだ。
するとバーの中で絡み合っていた無数の男女の動きが突然止まった。
嘗めるような視線が尾崎に注がれる。
尾崎はその視線が自分の肉体を這うのを強く感じた…耐えられないほどに。
視線の圧力に気圧された尾崎だったが、なんとか気を持ち直した。
「貴方がそんな人だとは思いませんでした!そこをどいてください!僕、帰りますっ!」
しかし須藤も見城も動かない。尾崎の目を見つめたままニヤニヤ笑う。
――おかしい、何かが。
(2/5)
突然、尾崎は背後から抱きすくめられた…見城徹だった。
筋肉の盛り上がった図太い腕で、尾崎の肉体を抱きしめると、いきなりその手を制服の裾に差し入れた。
そのまま尾崎の乳首を指先で探る。
「なあ尾崎、そんなこと言わないで、一緒に楽しもうぜ」
見城は尾崎の耳元で囁いた。熱く甘い吐息を尾崎の耳へと吹きかける。
思わずゾクッと体が反応してしまう尾崎。
抵抗しようとしたが、見城の指先は既に尾崎の乳首を玩ぶ。
もう一方の手は尾崎のブリーフの中に侵入し、股間を探る。
その指先が尾崎のペニスをつまむと、慣れた手つきでペニスをしごき始めた。
「何するんですか、止めてください!」
尾崎は抵抗する。しかし見城の指先の動きに反応してしまう自分を抑えることが出来なかった。
見城の指先が蠢くたびに身体は熱くなり、力が入らない。
「大丈夫だよい尾崎…俺に任せろよ」
見城が再び囁いた。
ふと前を見ると須藤が立っていた。
熱い視線で尾崎を見下した須藤は、ゆっくりと顔を尾崎に近づける。
人差し指で尾崎の顎を上に向けると、その唇に強引にキスをしようとした。
「ん、止めてください!」
尾崎は顔を背ける。し
かし須藤は尾崎の顔を自分に向けさせると唇を重ね、一気に舌を挿入させてきた。
須藤の舌は尾崎の上唇から歯茎を這い、門歯の間に割り込もうとする。
少しタバコ臭い息が尾崎の口腔の中を満たした。
「尾崎、もっとリラックスしろよ。本当のお前の姿を、俺達がわからせてやるよ…」
見城は尾崎のペニスを鷲掴みにし、力強く握った。その中指が尾崎の亀頭の包皮をめくる。
見城指が敏感なカリを直に刺激した瞬間、尾崎は自分が勃起してゆくのを感じた。
カウンター席の脇に設けられた簡易ステージの上で、尾崎は須藤のペニスをしゃぶらされた。
密集した須藤の陰毛が尾崎の鼻先をくすぐり、塩気のある汗の匂いが尾崎の鼻腔を満たす。
(3/5)
(…息苦しい)
尾崎は思った。喉奥まで侵入した須藤の亀頭が尾崎のディープスロートを塞ぐ。吐き気が尾崎を襲う。
しかし須藤は容赦せず尾崎を責めた。腰を前後にグラインドさせ、両手で尾崎の頭を掴み股間にグイグイと押しつける。
尾崎の口の中で須藤の陰茎が怒張し、あふれ出しそうだった。
その陰茎の熱さが、尾崎の本心とは裏腹に尾崎の中に眠る本能を昂ぶらせた。
「ああっ、尾崎凄いよっ!豊の舌がボクのチンコを這い回って…ああっいいっ、もうイキそうだよ!」
須藤が喘いだ。するとバーに集う客達から歓声が上がる。
(…見られている!)
尾崎は思った。バーの客達の視線が自分の裸と、陰茎を咥え込む自分の口元に注がれているのを強く感じた。
須藤の陰茎は益々熱く怒張し、尾崎の口の中で痙攣を始める。
「お、尾崎っ!俺もうダメだっ…うっ、ああっ!」
須藤は一際大きな喘ぎ声を上げると陰茎を大きく痙攣させ、尾崎の喉の奥に向かって大量の精液を吐き出した。
熱い精液が尾崎の喉から鼻腔まで達し、一瞬息が詰まった。
「ゲホッ、ゴホッ!」
と、尾崎はむせた。
その瞬間、バーの客達がワッと大声を上げた。
尾崎はその喧騒の中で一人蹲り、喉の奥から溢れる大量の精液を口から手に吐き戻した。
(…身体が言うことを利かない)
尾崎はボーッとする頭でそう思った。
「尾崎、本番はこれからだよ…」
うずくまる尾崎に向かって、見城が声を掛けてきた。思わず振り返る尾崎。
その目に飛び込んできたのは巨大な倍日レーターをかざす見城の姿だった。
見城の目から放たれる強い視線を感じた尾崎は、本能的に身をすくめた。
見城の目には、紛れも無い狂気が宿っていた。
「大丈夫だよ尾崎。いきなりで刺激が強かったみたいだが、こんなのすぐ慣れるさ」
見城は尾崎の傍にしゃがんだ。尾崎をうつ伏せにさせると、腹の下に手を差し入れ尻を大きく上に向かせた。
抵抗する尾崎。しかし見城の力は強く、消耗しきった今の尾崎ではどうすることもできなかった。
(4/5)
見城は小皿の中にオリーブオイルを注いだ。その様子を息絶え絶えのなかで見つめる尾崎。
尾崎の視線に気付いた見城は振り向くと、尾崎に向かって微笑んだ。
「大丈夫だって。これは、とても気持ちよくなる薬だよ…この間もこれ、使ったじゃないか」
見城はそう言うと、傍らのハンドバッグから白い粉の入った小袋を取り出した。
その端を少し破ると、先ほどの小皿の中にサラサラと流し込み、それを薬指で優しくかき混ぜた。
「さあ尾崎、こっちにお尻を向けてごらん?」
見城は言った。尾崎は躊躇する。うつ伏せの姿勢のまま尾崎は動かずにいた。
すると見城は強引に尾崎の腰を引き寄せ、尻を持ち上げた。その尻をバーの客達に見せ付ける。
バーの客達は溜め息交じりでその尻を眺めた。尾崎の形の良い尻が、バーの照明の中で白く輝いた。
「…ひぎいっ!」
いきなり肛門に刺激が走り、尾崎は悲鳴を上げた。
見城の指先が尾崎の肛門に侵入してきたのだ。
先ほどのオイルで濡れた指は、事のほかスムースに尾崎の肛門に突き刺さる。
尾崎はそのショックで思わず逃げようとするが、見城の腕で腰を抱えられて、それは叶わない。
見城の指先が尾崎の肛門の中でゆっくりと這い回る。
指先の薬が直腸内部の粘膜に塗りつけられてゆく。
バーの客たちが再びざわめきだした。
しかしその声は尾崎には遠くから響いてくるようにしか聞こえなかった…既にクスリが回ってきたのだ。
クスリが尾崎を覚醒させ、陶酔の世界に堕ちてしまったようだ。
意識はあるものの自分の身体が自分のものではないような、そんな気持ちだった。
身体のアチラコチラが熱く脈打っている。
精神は混濁し、目の前の風景が突如輝きだした。
様々な思考やイメージが駆け巡る。
肛門は熱く締まり、それとともに勃起したペニスが股間で脈打っている。
「そろそろだな…」
見城は呟いた。尾崎を見つめる見城の目は…まるでモノを見るように冷ややかに醒めていた。
(5/5)
尾崎はバーの客達の視線を感じた。
(…みんなに見られている)
そう思うと顔が真っ赤になった。激しい羞恥が尾崎の感情を昂ぶらせる。
「…尾崎、また勃起してきたな」
見城が笑った。
事実その通りだった。尾崎の思いとは裏腹に、身体は素直に羞恥プレイに反応している。
尾崎は遂に泣き出した。今までの自分が崩れてゆく…そう思うともはや溢れ出る感情を抑えることが出来なかった。
壇上で四つん這いにされた尾崎を、見城は背後からバイブレーターで責める。
巨大なバイブレーターが尾崎の肛門を刺し貫き、直腸の奥まで深く沈む。
「ああっ!あがあっ!あひいっ!」
尾崎は大声を上げて悶えた。全身を大きく震わせ、髪の毛を振り乱して暴れる。
見城のバイブレーターが突き出される度に、尾崎の若き肉体は大きくうねる。
バーの客達の興奮は最高潮に達した。見城の調教が終われば尾崎の肉体は彼らに捧げられるのだ。
今や遅しと待ち侘びる彼らの目は血走り、鼻息は荒い。
「尾崎…もう一度頼むよ。これから長い付き合いじゃないか。もう一度君の口で俺をイカせてくれ」
突然須藤が声を掛けてきた。
須藤は壇上で喘ぐ尾崎に近づくと、髪の毛を掴んで尾崎の顔を持ち上げた。
快楽と苦痛に歪んだ尾崎の顔は紅潮し、汗ばんだ額に後れ毛が張り付いている。
須藤は尾崎の頬を掴み口を開けさせると、既に回復し隆々と勃起した陰茎をその中にねじ込んだ。
「…ゴフッ!」
いきなり喉を亀頭で刺激され尾崎は咳き込んだ。
しかしすぐに須藤の陰茎にしゃぶりつくとそれを舌で舐め回し、亀頭を思いっきり刺激した。
数分後、尾崎は叫びながら絶頂に達した。床の上に大量の精液を放ち、痙攣する尾崎。
それと同時に須藤も陰茎を痙攣させ、尾崎の口の中へ本日2回目の射精をした。
その様子を満足気に見つめた見城は、尾崎の肛門からペニバンのディルドを抜き去った。
黒いシリコンラバーでコーティングされたそれは、尾崎の肛門からの出血で血まみれだった。(了)
(1/3)
『尾崎豊物語3 灼熱のゲイボーイ・編』
「出来ないよ須藤さん!俺…俺、こんな所じゃとても無理ですっ!」
バックステージで尾崎豊は叫んだ。
周囲のスタッフの視線も気に留めず、泣き出しそうなヒステリックな声でプロデューサーの須藤に喚き散らしす尾崎。
「尾崎、お前なら出来る!聞こえるだろ、あの大きな歓声を!あれはみんな、お前のことを求めて叫んでいるんだ!」
須藤は緊張に打ち震える尾崎豊の肩に手を置き、尾崎に向かって諭すように叫んだ。
骨柄の大きいしなやかな尾崎の肢体が、今は弱った小鳥のように弱々しく打ち震えている。
須藤はその尾崎の首筋に視線を落とした。
生白い素肌の上に、うっすらと浮かび上がる汗…尾崎豊の若く瑞々しい肉に、思わず熱いものを覚えた。
「でも…須藤さん」
「いいから舞台に上がれ!そして、お前の全てをさらけ出すんだっ!」
――尾崎は真性のマゾ気質だ。馬鹿騒ぎして興奮する連中の目線に晒せば、尾崎は必ずこれに感応する。
尾崎豊は須藤に縋るような目を向けた。
しかし須藤はその視線を冷たく無視した。
尾崎自身に責任を持たせる、そうした決然とした意思表明であった。
尾崎はなおも不安そうな表情のままだった。
そんな尾崎豊に、背を向けたまま無視を決め込んだ須藤は、スタッフに威圧的な視線を送る。
(尾崎を甘やかせるな!奴は必ずやり遂げる。だから一切手出しはするな!)
スタッフ達は須藤の意思を察し、おのおのスタンバイする。
その喧騒の中で、尾崎豊は只一人、立ち竦んでいた。
押し寄せる緊張、プレッシャー…今までの尾崎の人生で、かつて無かったものだ。
尾崎豊は一度目を瞑った。
しばらくそのまま瞑目する。
そして意を決したように立ち上がると、ステージに向かって駆け出していった。
「よし、これでいい…」
ステージに向かう尾崎の後ろ姿…尾崎豊の肉感的な尻を見つめながら須藤は一人呟いた。
(2/3)
…灼熱のステージ。その地獄こそが尾崎豊にとって、快楽の坩堝であった。
激しく攻め立てる観客の視線が彼、尾崎豊を昂ぶらせた。
全身を刺し貫く無数の熱視線。
あまりの法悦に彼の肉体は電気が走ったように敏感に反応した。
毛細血管まで充満するアドレナリンが筋繊維と皮膚の汗腺を焦げ付かせる。
地鳴りのようなバスドラの咆哮、強烈にファズの掛かったハムバッカーの分厚いギターサウンドのサスティーン。
その暴虐で官能的なビートが、彼をまだ見ぬ世界まで昇華させてゆく…。
尾崎豊は叫ぶ。すると狂気に達した観客達がその叫びに応える。
尾崎豊が俯く。その憂いを感じた観客が、虚ろな溜め息を漏らす。
観客は尾崎のありとあらゆる挙動に反応し、尾崎自身を崇拝し求めていた。
彼らにとって尾崎は神であった。
尾崎の苦悶の表情に畏怖をおぼえ、尾崎の歓喜の叫びで躁的熱狂に陥り、尾崎の微笑みに陶酔の涙を流すのだ。
(俺はこの愚衆を支配している!)
そう尾崎は悟った。
(俺こそがこの憐れな迷える子羊を真理の道へ誘うことが出来るんだ!)
愛欲の地獄の果てに尾崎豊の見たものは、尾崎自身の感得した原始の神の姿であった。
シャーマンと化した尾崎はステージの上でさらに激しく絶叫しのた打ち回った。
(3/3)
「尾崎は遂に開花したな…」
ステージの裾で須藤は呟いた。
その目には慈愛と、そして悶々とした暗い嫉妬の炎が満ちていた。
見城によってマゾヒストの本質を悟らされた尾崎…。
それは須藤には決して成せない肉の掟による支配であった。
尾崎を肉感の下僕として組み伏せ、捻じ伏せる…それは筋肉過剰のナルシスト、見城徹の独壇場であった。
しかし須藤はステージ上の尾崎を見て悟った。
――尾崎の真の才能を開花させることが出来るのは俺だ。
握り締める拳に、汗がにじむ。
――尾崎豊という一人の男を、俗世の地獄の業火の中で精神や人格までも打ち据えて、狂乱の域で弾けさせる
ことが出来るのは俺だけだ。
プロデューサーなんて職業は、しょせんサディストじゃなきゃ出来やしない、そう須藤は思っていた。
尾崎をとことん叱り飛ばし、追い詰め、捻じ伏せ、押し潰し、精神も人格もブチ壊す。
そこからこの男の中に眠る何かを搾り採らなければならないのだ。
そういう意味で尾崎は最高の素材といえた。
衝動を掻き立てるドラムスのビート、腹の奥までズンッと響く情熱のサウンド。
尾崎を崇め慕う青少年達の官能をブロウアップさせる音楽の力…。
(俺こそが尾崎を真のカリスマに仕立ててみせる!俺こそが…、俺こそが!)
そう呟く須藤の股間ははち切れんばかりに勃起していた。(了)
(1/4)
『尾崎豊物語4 ヘテロ・魔女の誘惑・編』
「尾崎さん。服を脱いで、早くこっちに来て…」
「えっ、ええっ!あっ…」
尾崎はうろたえていた。
ベッドの端に座る繁美はブラウスの胸元を大きくはだけ、胸元を寄せて乳房の谷間をやや強調して見せる。
足を組み替え、腰を大きくくねらせシナを作り、尾崎豊に攻撃的な熱い視線を注ぐ。
尾崎の目線が自分の胸元から腿に注がれているのを充分に感得した繁美は、少し微笑んでみせた。
ただしその目は上目遣いに睨めつけるように鋭く、尾崎を捉え離さない。
「早くっ!尾崎さんっ!…女に恥をかかせるつもりなの?」
繁美は少し懇願するような表情を浮かべた。もちろん演技だ。
「で…でも。僕…あの、ええっと…」」
尾崎は繁美を前に戸惑いを見せた。頬が上気したように赤く染まり、目線は中途半端に彷徨う。
(可愛い!私が教えてあげるわ、尾崎君!)
繁美はベッドの上から身を乗り出し、尾崎の腕を乱暴に掴み、強引にベッドに引き寄せた。
尾崎は繁美の上に倒れこみ、のしかかる。
高まる鼓動、頬をつたう汗、荒々しい吐息、緊張のあまり表情が硬ばってり、尾崎は繁美から目線を逸らす。
しかし繁美は尾崎の顔を両手で挟み、強引に自分に向けさせた。
いきなり尾崎の唇に自分の唇を押し付ける。
「むんっ!んんんっ!…むうんんっ!…んん〜」
尾崎は驚き、唇を繁美から離そうとする。刹那、繁美の舌が尾崎の唇を割り、口腔のなかに侵入してきた。
同時に、繁美の右腕が尾崎の股間を鷲掴みにする。
「あっ、 あああっっ! 繁美さん!」
尾崎の股間は、はち切れんばかりに硬直し、熱く脈動していた。
「うふっ! カワイイ! 貴方は何もしなくていいの! 私がリードしてあげるから!」
そういって尾崎の右手を、自分の乳房にあてがった。
熱い夜が始まる。
(2/4)
繁美は尾崎を仰向けにすると、尾崎の上着の裾から両手を入れた。掌が尾崎のわき腹から胸へと這うように動く。
指先が尾崎の乳首を探り当てた瞬間、尾崎の上体がわずかに反応する。
繁美は微笑みながらゆっくり尾崎のTシャツをはだけた。指先は乳首の周辺を焦らすように這わせ、
唇を尾崎のへそに近づけ、唇をあてがい吸った。
「し、繁美さん…」
繁美は尾崎の言葉を無視した。
尾崎の若いオスの体臭に自分の中のメスが激しく感応しているのが分かった。
子宮の辺りに熱が帯びてゆく。経血の流れる痛みにも似た本能的な疼きがヴァギナとアヌスを引き絞っていく。
(この男を…尾崎豊を絞りつくしてやるわっ!)
繁美は湧き上がる喜びに耐えかねるように尾崎のジーンズのファスナーを引きおろした。
既に欲求ではち切れんばかりに隆起した肉棒がそこにあった。
ジーンズとブリーフに締め付けられ窮屈そうに収まった尾崎の肉茎は弾けるように飛び出し、起立した。
その逞しさに一瞬驚き、そしてうっとりするようにソレを眺める繁美。
灼熱を放つ赤みを帯びたその肉棒は、尾崎の鼓動に呼応するようにビクンッビクンッと敏感に脈打つ。
尾崎は恥ずかしそうに顔を背ける。
繁美はゆっくりと尾崎の肉茎に頬を寄せ、口唇を亀頭に触れさせた。その瞬間、
「ぅあうっ!」
尾崎は反応して頭を大きく振った。
肉茎がわずかに揺らぎ、繁美の唇を軽く打つ。
しかし繁美は動ずることなく、口唇と舌を軽く撫で付け、肉茎に這わせた。
(3/4)
(…茎と裏筋を中心に、始めは焦らす。)
それはかつて繁美を調教した黒服の男から仕込まれたテクだ。
(男の快楽は果てる一瞬に掛かっている。湧き上がる興奮を刺激と上手く同調して高めてゆかねばならない)
黒服の男がかつて耳元で囁いた言葉だ。
(…そう、タイミングが問題なんだよ、繁美。)
一瞬、繁美の脳裏に、かつて自分の肉体を通り過ぎていった男達の愛撫の記憶が過ぎった。
スプリングが軋む音を立てて繁美の肉体は手馴れた男達の腰の下で激しく弾み、
腰が砕けるような衝撃の中で何度も何度も昇天した、あの若き日の、バブリーな夜の記憶…。
(そういえば、あの男が私の”女”を開発してくれたっけ、名前は何だったかな?)
繁美は少し笑った。
…笑いながら尾崎を上目遣いで見た。
尾崎は既に快楽に溺れているのが分かった。
焦らしに耐えかねているように腰のあたりをもぞもぞと動かしている。
「繁美さん!ぼ、僕…ボクは、もう…」
ほとんどすすり泣きに近い尾崎の声が聞こえる。
(4/4)
繁美の舌はゆっくり尾崎の肉茎を登ってゆき、亀頭に達した。
赤紫色に充血した尾崎のカリは、今にも爆発しそうにに脈動を続ける。
尿道も、それ自体呼吸しているように、わずかに開閉を繰り返している。
繁美は微笑んだ。既に自分が尾崎を支配しているのを感じた。
尾崎豊の激しい喘ぎを耳で捕らえながらさらにもう一度微笑み、目の前で痙攣する尾崎の茎に舌をあてがう。
そのまま滑るように口腔全体で肉茎を包み込んだ。
「あうっ!!」
その瞬間、尾崎の叫びと共に、繁美の口腔に生臭い粘液が迸った。
思った以上に多量の精液が迸り、繁美は一瞬唸った。
「むんっ!んむんっ!」
尾崎豊の放った熱く苦い粘液を口一杯に受け止める。
さらに舌を肉茎の裏筋に這わせ、尾崎の尿道内の残滓を全てしごき出す。
肉茎は繁美の口の中でなおも熱く脈打つ。
繁美の舌が這い回る度に、刺激に耐えかねた尾崎はうめき声を上げる。
(たまらない。最高。この男を吸い尽くしてやる。)
繁美の下半身は燃え上がっていた。愛液が花弁を伝い、密度の濃い叢や大腿の肌を滴っていた。
「豊…ズルいわ。貴方だけ勝手に…」
繁美は身を起こし尾崎を見下ろした。わずかな軽蔑と、この男を支配している歓喜に溢れた表情で。
そして口一杯に溜まった尾崎自身の欲情の雫を掌に吐き出し、尾崎の胸に塗り込めた。
尾崎の胸板は興奮のためか激しく上下動を繰り返す。
「今度は私の番…。私もイかせてくれない?貴方のやり方で…」
そう呟くと、尾崎の上に圧し掛かり、尾崎の唇に自身の唇を重ね、舌を滑り込ませた。(了)
このスレもうだめぽ……
(1/5)
『尾崎豊物語5 自我との邂逅・編』
見城さんに連れてこられた地下パーティーは、まさに修羅場だった。
黒檀の重い扉を開いた瞬間、生臭く湿った淫靡な匂いが、尾崎の鼻腔を優しくくすぐる。
薄暗い部屋の方々から、押し殺したような無数の人々の息吹が立ち昇り、女性のすすり泣く声も聞こえる。
「さあ尾崎、我々も入ろうよ…」
尾崎の背中を軽く押し、見城は中へ入るように促す。
見城の手の感触…尾崎を抱きすくめ、息苦しいほどの熱き抱擁で包んでくれる見城の逞しい手。
そこから伝わる体温は、尾崎の身体の奥で蠢く欲情の炎を揺るがす。尾崎は生唾をゴクリと飲み下した。
「見城さん、ここは一体?」
少し不安げな声で尾崎は尋ねる。見城は無言だ。
暗がりに目が慣れると、松明に照らし出された部屋の様子がわかった。
多くの生白い肉体の洪水が、床の方々で波を打っている。
逞しい腕、豊満な尻、丸みを帯びた臀部が、開かれた両足の間で激しく上下する。
長い髪の女性が、過剰な筋肉に覆われた男の腰にすがりつき、その股間の図太い肉棒をくわえ込んでいる。
また黒いボンテージに身を包んだ逞しい男二人が抱きしめあい、互いの肉体をまさぐりながら唇を求め合っている。
「尾崎、我々もこの中に入ろう…分かち合うんだ」
声を掛ける見城の方を、尾崎は振り返る。するとそこには、すでに衣類を脱ぎ去り裸になった見城が立っていた。
射すくめるような目で尾崎を見つめる見城…その視線の熱さに、尾崎は一瞬たじろぐ。
しかし尾崎は目線を逸らせなかった。見城の股間にそそり立つ巨大な肉茎が、脈打つように尾崎の前で痙攣する。
そう、尾崎の菊門を優しく貫いたあの肉茎…尾崎はあの日の夜の記憶を思い出し、思わず頬が火照るのを感じた。
(2/5)
「ねえお兄さん、なかなか男前じゃない?」
立ち竦む尾崎に何者かが抱きついてきた。そのまま尾崎の耳たぶを舌でやさしく舐める。
甘く、生温い息吹が尾崎のうなじを這う。尾崎の上腕に、たわわに膨らんだ女の乳房が押し付けられる。
「えっ、う、うわっ!」
尾崎は驚き、一瞬身を強張らせた。するとその女は、耳元で優しく微笑みながらささやいた。
「大丈夫よボウヤ、私達が優しく導いてあげるから、うふっ!」
そのまま女の手はゆっくりと尾崎の胸元を這う。ブレザーの制服のボタンをたくみの外し、尾崎の胸の素肌を撫でる。
女の指先が、尾崎の素肌に触れる…尾崎の乳首を指先で軽く転がし、同時に尾崎のうなじを嘗め回す。
「ああっ…ボク、あのっ!」
たじろぐ尾崎の目の前に、見城か近付く。優しげな見城の目線が、不安げな尾崎の心に光を投げかける。
「大丈夫だよ尾崎、もう君は我々の仲間なんだからな」
そういって微笑む見城は、そのまま尾崎の制服のベルトを外す。
緩んだズボンの裾から、女は巧みに手を滑り込ませて尾崎の尻を直に触る。
硬く貼った尾崎の尻の肉を分けるように指先が進み、尾崎のアナルを探る。
「ああっ、ダメです止めてくださいっ!そんな所…」
「何を言ってるんだ尾崎、臆したのかい?」
見城は尾崎を諌めた。その瞬間、女の指先は尾崎のアナルを探りあて、迷うことなくその中へと侵入した。
(3/5)
「ひ、ひぐうっ!」
尾崎は身体を弾ませるように反応する。
昨晩、見城によって貫かれたアナルの傷に鋭い痛みが走り、尾崎の脊椎を駆け上った。
「あら?このボウヤはまだなのかしら…?」
「いや、彼は既に貫通式を済ませているんだが、まだ不慣れでね」
尾崎のすぐそばで買わされる言葉…四つの手が尾崎の若き肉体を愛撫するなかで、それは呪文のように響く。
女の指先が尾崎の前立腺を探りあて、そこを圧迫する。勃起を促しているのだ。
見城は尾崎のズボンとブリーフを引き摺り下ろし、尾崎の下半身を丸裸にした。
「尾崎、かわいいな尾崎、もう勃起しているじゃないか?」
「あら、このボウヤは中々元気ねえ」
もはや抵抗が出来ないほどに感じてしまった尾崎は、少し恥らうように両脚をすぼめる。
しかし見城の逞しい両腕がそれを許さなかった。
より大きく押し広げられた尾崎の両脚…そこから天に向かって反り立つように、若き尾崎の肉茎が現れる。
「まあ…逞しい」
女は感嘆の声を上げる。そして空いたもう一方の手で、尾崎のペニスを軽く掴み、そのままゆっくりをスラストさせた。
「ああっ!ダメですもうっ!お、お願いですうっ!」
叫ぶ尾崎。
気づくと部屋中にいた多くの人間の視線が、全て尾崎に集まっている。
熱く、なおかつ鋭い多くの視線が、尾崎のそそりたつ肉茎や、痙攣する臀部に集まる。
その視線に、尾崎はさらに昂ぶり、敏感になってゆく。
(4/5)
「尾崎、ではそろそろ禊を済まそうか…なっ?」
見城は下から尾崎を見上げる。
悦びに満ちた見城の微笑みに慄然とする尾崎…しかし何故だろう、心のどこかでそれを期待している自分もいる。
「ほら、はやくやってあげなさい見城さん。この子、このままフィニッシュしちゃうわよ」
クスッと微笑みながら女は囁く。
女の左手は尾崎の肉茎を優しく掴み、指先で亀頭を撫でる。
時折女の指先が尿道をしごくたびに、尾崎は絶頂に達しそうになる。
「そうだな、これ以上焦らしたら、尾崎はすねちゃうかもしれないしな」
周りの人間達が少し笑う…尾崎のあられもない痴態を見て、喜んでいるのだ。
「はうっ!」
尾崎は叫んだ。見城の口が尾崎の肉茎をくわえ込んだのだ。
そのまま激しく肉茎を吸い込む見城…尾崎の亀頭が見城の喉の奥へと侵入し、食道に近い辺りまで達する。
見城は喉の奥をしごきながら、尾崎のペニスを激しく刺激する。
「ダメです見城さんっ! ああっ!」
抵抗を始める尾崎…しかしいつのまにそばに来ていた屈強な男たちによって尾崎は押さえ込まれていた。
ニヤニヤと笑いながら尾崎を押さえつけるむくつけき男たち。
「待ってろよ尾崎くん、次は我々が君を導くからな」
「そうだぜ尾崎くん、君は今、我々の仲間達の関心を全て集めてるんだよ、ははっ!」
(5/5)
「私もお手伝いしなくちゃね、尾崎くん。これからもよろしくね!」
そう囁いた女は、もう一度尾崎のアナルに深々と指先を突っ込んだ…さらに深く。
その中で暴れる指先は、尾崎の本性を暴きだすかのようだ。
甲高い悲鳴を上げながら愛撫に翻弄される尾崎。
その尾崎の美しき痴態を眺めながら交わい、自慰を始める周囲の者たち。
上り詰める尾崎は、薄暗い部屋の彼方で未知の輝きを見た。
荒ぶる魂の行き着く先、めくるめく快楽の上り詰めたその先に、一筋の光明を見出していた。
今、尾崎の肉体を汚す巧みな愛撫の中で、尾崎の精神は自分を縛り付ける全てから解き放たれていった。
「ああっ!うわああぅ!」
かつて無い絶叫とともに、尾崎は大量の精液を放った。
その精液を一滴も残さず飲み干す見城の目の前で、尾崎は失神した。
本当の自分にたどり着けた気がした。(了)
(1/3)
『尾崎豊物語6 音のない部屋・編』
「う、うぐうっ!」
思わぬ激しい突き上げに、尾崎は思わず唸ってしまった。
尾崎は全日空ホテルのスィートルームにある男との密会に来ていた。
相手はイベント興行の利権を持つ業界の初老の男。尾崎のことを気に入ってくれ、密会の回数も今日で10回近い。
少し高めに設定された空調の部屋の中で、尾崎は男の腹の下で怒張したペニスをくわえて舌で刺激する。
今回も丁寧に洗浄した男のアナルに中指を差込み、そこから押し付けるように前立腺を刺激してやる。
すると衰えた男の生殖器に活力が漲り、尾崎の口の中から溢れんばかりに怒張してゆく。
還暦近いのに大したおっさんだな、と尾崎は思った。
「頼む。もっと舌を丁寧に…そう、丁寧に裏筋をなぞってくれ、ああっ!」
男は尾崎の愛撫で何度も喘ぎ、そのたびに尾崎の顔を股間に無理矢理埋めようとする。
尾崎の鼻腔の中に男の陰毛の先端が入り込み、何度も咳き込んでしまう。
徐々に男の興奮が高まってきたようだ。
口の中の男根が見る間に膨張し、喉の奥深くに侵入しようと暴れた。
(2/3)
尾崎は手で男の腰を押し返そうとするが、興奮した男はそんなことお構いなしに尾崎を攻め立てる。
男のむさ苦しい体臭にげんなりしながら、尾崎は一度男を満足させるべきだと考えた。
前立腺を刺激する中指をさらに直腸の奥まで差し入れる。そして指の腹全体を用いて男の直腸内をなめす。
同時に奥歯を用いて男の亀頭を刺激する…この男は舌全体で亀頭を包んでやると、そうとう感じることは承知してる。
「うがああっ!はあっ!」
男は部屋中に響き渡るような大声で吠え、ものの数秒で絶頂に達した。
同時に尾崎の口の中に、ことのほか大量の精液を流し込む。
男はそのままベッドに倒れこんだ。
尾崎は男の体を避けるようにしてベッドサイドに移動し、エチケットペーパーの中に男の残滓を吐き出す。
喉の奥の不快感…自分が穢れていく嫌な感じが、尾崎を身震いさせた。
(今日一日付き合うだけで、また郡山でのライブ興行権が入るんだ。)
心の中で尾崎はそう呟いた。
男はしばらく荒々しく呼吸していたが、その手が尾崎の股間に伸びる。
醜い男…だが今の尾崎はこのような男の愛撫でも勃起できるし、アナルにも射精できる。
そう、少しの我慢、それが尾崎を開発した見城さんからの教えだ。
男の節くれた手のひらでペニスを玩ばれながら、尾崎はマルボロメンソールに火をつけ、大きく一服した。
タバコの中に仕込まれている例のクスリが燃焼し、尾崎の脳髄をチリチリと刺激してゆく…。
(3/3)
男の手コキに任せ、ペニスを勃起させながら尾崎はテレビを付けた。
どうでもよいバラエティー番組や、くだらないトーク番組をすっ飛ばして、尾崎はニュース映像を探す。
何のことは無い、このくだらない雰囲気の中で正気を保てる何かがほしかっただけだ。
勃起した尾崎のペニスを男は口でくわえた。ネチャネチャと粘液質の音を立て、尾崎のペニスを必死にバキュームする。
同時に自分のペニスをしごいているようだ。
普段は威張り散らす傲岸な男…その実態は、容姿の整ったゲイボーイに対する羨望と嫉妬に狂った、ただのホモだ。
尾崎は自分の亀頭にざらついた感触を感じ取りながら、チャンネルを変えてゆく。
十分後に射精してやろう、そう思った瞬間、テレビの映像に目が留まった。
歌番組で自分が歌っている映像が流れた。ステージのスポットライトの中で、着流したTシャツ姿の自分が絶叫している。
額に流れる汗もぬぐわぬまま目をつぶり、少し鼻に掛かった声で。
尾崎はその自分の姿に見惚れた。多くの観客たちの視線の中で、昂ぶる自分を抑えかねるように苦悶する自分の姿。。
曲がクライマックスに向かう中で、尾崎は自分のペニスが怒張してゆくのを感じた。
ホモのおっさんの愛撫ではなく、自ら惚れこんだ自分自身の虚像に興奮したのだ。
尾崎は目を閉じる…アコギで奏でられる15の夜、過ぎ去りし過去の幻影。
「う、うぐっ!」
数分後、尾崎は射精した。大喜びで自分の精液を飲み干す男をよそに、尾崎は極彩色の夢を見ていた。
覚醒剤…魔のクスリ。(了)
(1/4)
『尾崎豊物語7 スワンソング、絶望の月・編』
「繁美、お前じゃダメなんだ!繁美、お前じゃあ…お前じゃあダメなんだよっ!」
尾崎は絶叫しながら繁美を殴りつけた。
「なにするの痛い、あなたっ!やめてっ、殴らないでぇっ!」
しかし尾崎豊は振り上げた拳を繁美に向かって何度も打ち付けた。
頭や肩、こめかみと、次から次へと続く打撃の嵐に、繁美は身を屈め小さく悲鳴を上げることしか出来ない。
「あなた、いったい私が何したっていうのっ!あなた痛いっ、やめてっ!」
「繁美ぃ、お前じゃぁ!繁美ぃお前じゃあっ…!ダメなんだよぉ!」
尾崎の表情は鬼気迫り、吊り上った三白眼は憤怒の念を放つ。
怒りに歪んだその双眸は、足元でうずくまる繁美を睨みつける。
打撃はまるで容赦なく、時に殺意すら感じられた。
そこには繁美の存在を絶対否定するような非情さがあった。
一撃ごとに繁美は自身の肉体が軋むのを感じた。男と女では力の差は歴然としている。
何も出来ず蹲ったままの繁美は恐怖のあまり全身が硬直する。
今はただひたすら耐えるしかない…しかしそれももう限界に近づいていた。
そして思わず面を上げたときに、尾崎のフック掛かった打撃が額と鼻先を削ぎ取るように捉えた。
一瞬、意識が飛ぶ。
鼻の奥から脳髄にかけてきな臭さが立ち昇る。
視界は揺れ、何かフィルターがかかったように周囲の音が奇妙にこもる。
繁美は遂に床に倒れた。
冷たいフローリングの床の感触が、繁美の頬に伝わる。そして視界の端で、自分が流した鼻血が滴るのを捕らえた。
腫れあがった瞼が視界を奪い、鼻の奥からさらに生暖かい血が伝う。痺れるような痛みが鼻腔を伝い思考を奪う。
(…私は一体何故こんなところにいるの?どうしてこんな目に遭わなければならないの?)
繁美は自身を見失いかけていた。その中でも尾崎の怒号が響く…。
(そうだ、今私は…私は尾崎に殴られているんだ。)
ふと我を取り戻した、まさにその瞬間であった。
「繁美っお前じゃあっ、母さんの代わりにはなれないんだあ〜!」
一際大きく振りかぶった渾身の一撃が繁美の顎を真っ直ぐ捉え、そのまま繁美は昏倒し意識を失った。
(2/4)
…尾崎の体の重みと、、恥部を貫く鈍痛を感じ取り、繁美は目を覚ました。
尾崎が今、自分の肉体を犯している。
すでに着衣は全て剥ぎ取られ全裸であった。
春先の肌寒さが繁美の意識を徐々に現実世界へと引き戻す。
体が全く動かない。
尾崎に組み伏せられているからだけではなく、尾崎の身勝手な愛撫に抵抗する余力が失われていた。
尾崎によって殴られた箇所が軋むように痛みを訴え、合唱した。
(まだ生きている…)
繁美は薄目を開け天井を見上げ思った。
尾崎の呻き声と繁美の股間に腰をひたすら打ちつけ続ける乾いた音だけが仄暗い月明かりの包む部屋を虚しく響く。
既に繁美の意識のなかには尾崎の存在は無かった。
尾崎という存在は、今はただ自身の肉体を蹂躙する物理的な存在に過ぎない。
(3/4)
(私は間違っていた…?)
繁美は今、たとえようもない戦慄とともに、自分への疑義を抱いた。
かつて愛した男、無邪気で繊細で、それでいて自尊心の塊で、鋭さとナイーブさを持ち合わせた男。
そこに自分はほれ込み、そして契りを結んだ…上手く御せる、そういう自信があった、はずだった。
(甘かったのか…?)
いや、そうではない。
繁美の考えていた以上に、この世の中には如何ともし難い衝動的な狂気が存在していたのだ。
誰よりも愛されたいと願い、さまよう男は、同時に誰よりも嫉妬を抱く危うい男であった。
狂気の声の渦巻くなかで、尾崎は他者への絶対的な依存と絶対的な支配を求めた。いつしか舞い上がり、理性を失う。
狂気と暴力をもって、他者を拘束しようとする。そして怒り狂い、泣き叫ぶ…そして今夜も。
彼を見出し、売り出した見城、須藤という男達を失ったいま、彼は真実の自分と向き合わざるを得なかった。
そこで、虚像をみた。そしてそれ以外何も見出せなかった…それが尾崎豊という男だ。
嘘と虚勢を叫び続け、遂に現実という障壁に立ち向かわなかった男は今、崩れそうな自我を狂気と暴力、
そして覚醒剤の陶酔の中で逃避し、泣き叫んでいる。
文字通り、破滅に向かって…。
(4/4)
今、尾崎は自分の乳房を口に含み、激しくしゃぶりついている…何かをブツブツ呟きながら。
「母さん…どうしてなの?母さん。…どうして僕を置いていったの、母さん?」
尾崎の肉体は汗ばみ、生臭い呼吸は激しくなる。
うめき声を上げながら尾崎は徐々に昂ぶりを見せる。
繁美は泣いた。それは彼のためではなかった。
ただ、自分でもわからない溢れ出る感情が、繁美の理性の堤を音も無く崩してゆく。
溢れ出た感情は、ただ虚しく、冷たかった。
「母さんっ!」
尾崎はそう叫んだ。同時に一瞬、激しく痙攣し、体を弾ませた。
その後、硬直した体から力が抜け、崩れるようにゆっくりと繁美に体を預けた。
繁美の子宮に、熱い迸りが注ぎ込まれる。
しかしその感触は、繁美の肉体を沸かせることはなかった。
尾崎豊が果て、眠り落ちる姿を繁美は醒めた目で見続けた。
肉体の痛み、窓から差し込む月の明かりだけが、今の繁美にとって確かな現実だった。(了)
141 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/05(日) 02:22:10 ID:p+d7S6Us
age
上がってるから見てみたら……ここって!8禁禁の板だよね?
!8じゃなかった18だ
健全板です
エロ禁止だと思ってたわ……LR的に……
あ、書き終わったんだ
お疲れ様、あっちだったらきっと大絶賛されるから
エロパロ板にいってらっしゃい
(1/4)
『尾崎豊物語8 終章、春の夜の帳・編』
「俺は、俺は…見城さんの愛がなくちゃダメなんだ!見城さん!」
ベッドの上で悶えながら、尾崎は絶叫した。
「もう一度、僕を調教してくれよ! もう一度、もう一度だけでいいから!」
尾崎豊は愛が欲しかった。愛されたかった。
すでに二十代も半ばを越え、もはやかつてのように若者の代弁者なんて子供だましも通用しなくなった。
未だに彼を慕うのは、妄想から醒めない一部の狂ったファンとオウムの若手信者ぐらいだ。
見城と須藤が作り上げてくれた”十代のカリスマ”という虚像は既に過去の栄光に成り下がっていた。
尾崎は孤独だった。
「俺は…もしかして騙されていたのか?見城さん!須藤さん!俺のことを愛していてくれたんじゃなかったのか?」
尾崎は混迷する。
「まさか、俺の事を躍らせて、金儲けしてただけなのか?そんな…まさか…俺は信じない!」
尾崎の脳裏に渦巻く疑惑。
…自分自身を前面に剥き出して疾走したあのステージ。
魂が求めるままに叫び怒鳴ると、客席の愚衆共はそれに合わせ狂ったように熱狂し喚き涙を流した。
自分を崇め、激しく求め、完全に上気した表情で自分を見つめていたあの無数の視線。
あの身を貫く無数の視線と狂気との狭間で自分は何度も昇天した。
(もう一度、もう一度あそこに立ちたい。あの場所で俺は燃え上がりたいんだ!)
尾崎はすすり泣き始めた。悔しかった。悲しかった。
いったい俺は何処へ行くのか?不安が尾崎を包む。
(2/4)
そんな時、彼は思い出したのだった。
かつて自分を売り出し、自分を世間知らずの青少年のヒーローに仕立ててくれた見城徹の存在を。
(あの夜、見城さんは俺のことを激しく求めてくれた。…あのとき俺は本当の自分の居場所を見つけたんだよ見城さん!)
自らの肉茎を、ジーンズの生地の上からゆっくりと撫でて刺激し始める。
(俺は、俺は!見城さんに全てを委ねたんだよ!なのにどうして?どうして今、俺のことを見てくれないの?)
尾崎の右手の動きが、徐々に激しさを増す
(なんで、俺は間違っているのか見城さん?)
尾崎はベッドの上で悶えた。そして突然泣き出し、声に出して叫んだ。
「見城さん!…俺、もう一度頑張るからさ。もうワガママばかり言わないよ…俺どうしたらいいかわからないんだ!」
泣き出す尾崎。
「見城さん、お願いだ!もう一度、もう一度!俺のことを愛してくれ!」
少し腰を屈め、ジーンズを膝のあたりまでぎこちなく下ろし、蹴飛ばすようにして脱ぎ払う。
ベッドの上で下半身を晒す尾崎は、暫く天井を見詰めていた。
股間の男根は隆々と勃起し、力強く起立し天井にこうべを向けたまま硬直している。
そう、かつて繁美がその逞しさに感嘆の溜め息を上げたあの肉茎だ。
しかし今、尾崎を奮い立たせているのは、見城徹への熱き思い、それだけだった。
尾崎はおもむろに覚醒剤の粉末を指先に乗せた。
両足を開くと注意深くゆっくりとその指先を自分の肛門に差し込む。
(3/4)
一瞬、尾崎の脳裏に「商業主義」という言葉が過ぎった。
(…まさか俺は見城さんと須藤さんの操り人形だったのか?)
そう考え、すぐに否定した。いや、そんなはずはない!と力強く自分に言い聞かせた。
指先は肛門からゆっくりと直腸の粘膜を分け入った。
括約筋の圧力にビクつきながら恐る恐る奥へと進む。
直腸自体の圧力で指先に乗せられたクスリのパウダーが擦られ、腸管に塗り込められるのを感じた。
指が中ほどまで進入する頃、肛門の縁の辺りに痛みを覚えた。
古傷…見城さんに初斬された時以来弱くなっている部分だ。
見城さんが残していった傷。そのことが尾崎を昂ぶらせる。
気付くと尾崎は今にも射精しそうなほど感じてしまい、亀頭は赤黒く充血し痙攣している。
「け、見城さん!」
尾崎は思わず呟いていた。
悔しかったが、自分は見城や須藤のような大人達に支えられて初めて立つことが出来る存在だと いうことを理解した。
彷徨い惑う心のどこかでその事実を受け入れ始めていた…しかしもう、遅い。
自分の力で立ち、本当の自分の力だけで全てを切り開くなど、そんなことは虚構に過ぎない…そうなのか。
――商業主義、それとも愛?
なおも尾崎の思考は巡る…。
(4/4)
突然、肛門から脳天に突き抜けるような衝撃が走った。
あまりの衝撃に尾崎はその場に卒倒した。
頭蓋のなかで何かが爆発した。全身が喜びに激しくふるえる。
――暗い夜の帳が俺を呼んでいる!自由は今、自分の目の前に限りなく広がっている!
壁に拳や蹴りを無造作に叩き込む。拳の皮は擦り剥け血が流れだしたが全く気付かない。
目が血走って視界が朱に染まる。ゾクゾクするような快感が体の奥から吹き上がる。
頭の中で何かが爆発してように今までの思考が吹き飛んだ。
押し寄せる快感の波に耐えるかのようにのた打ち回った。
――体が熱い。燃えるように熱い。
そのまま大きく海老反って、両手両足を激しくバタつかせた。
勃起したペニスは遂に射精を開始した。
全てを脱ぎ捨て全裸になった尾崎豊は、扉を蹴り開け、ついには夜の街の中を駆け出した。
血走った目で。流れる汗も、涎も、拭わぬまま。
今なら、本当の自分に辿り着けそうな気がした。
「母さん!!」
そう叫ぶと、尾崎は目前に広がる無限のシャングリラに我が身を投げ出した…。
…翌日、致死量の2倍の覚醒剤を打った状態で倒れ伏している尾崎豊が発見された。
病院に搬送されたが、救命の甲斐も虚しく間もなく死亡が確認された。
享年26歳。 (尾崎豊物語 終わり)
>>142-145 この程度なら通ると思ったんだが…やっぱまずいか。
ポルノのつもりじゃなくて結構真面目に書いたんだけどね。
とりあえず強引に終わらせたんで、許してね。
>>146 ( ´,_ゝ`)プッ
せっかく書く力はあるんだから、空気とLRとスレタイを読むことも覚えようぜ。
153 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/06(月) 01:39:52 ID:IOTXX8iw
見城徹って幻冬舎の社長のこと?
155 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/09(木) 05:28:58 ID:VMSqUzwK
>>41 読んで思ったのは、
老人「……しかし、まぁ…本当に虫がいいのは、実はわしなんじゃがな……、ヒヒヒ……」
そう言って煙のように消え、立ち去ろうとする老人の後ろ姿から、
一枚の、羽虫の羽が音もなくヒラヒラと舞い落ちてきた・・・
まぁ、オレの勝手なイチャモンさ
うちの家系は、先祖代々続く怪しげな呪術士の家系だ。
そのせいで、俺は昔から意味の分からん修行を強制され続け、
子供時代にはろくな思い出が無い。
しかもうちの家系が代々伝えている呪術というものが、(本当か
どうかは知らんが)一瞬で世界中を地獄に変えてしまうほどの
恐ろしい術らしい。わざわざ苦労して、そんな得体の知れんモノ
を継承させられるなんてまっぴらゴメンだと思った俺は、高校を
出ると同時に親に反抗し、家を出た。
しかし勢い良く家を飛び出してはみたものの、高校を出てすぐの
ガキが一人で生きていくのはかなり大変だった。金も人脈も無く、
地元を離れ都会に出たため友人もいない。この世界は、弱いもの
に対しては限りなく厳しい逆風が吹き荒れている。社会に出て、
俺はそれを痛感した。
これだけ沢山の人がいるのに、皆他人には無関心で我関せずを
決め込む。困っている人がいても平気で素通り。身なりや外見、
社会的地位だけで人を判断し、自分よりも劣っていると見なした
相手には、容赦ない侮蔑の眼差しを突き立てる。街は物欲と性欲と
エゴで溢れ返り、憎悪と絶望とストレスが日々大量生産され続け
ている。
俺もそれなりに色々やってきたが、頑張っても頑張っても暮らしは
楽にならず、辛い日々が続いた。そんな駄目オーラが全身から立ち
登っているせいだろうか、最近ではコンビニの店員にも見下され、
つり銭を雑に渡される事もしばしば。マニュアル通りの接客でさえも、
してもらえなくなってきた。俺は、こんな世界を憎んだ。
こんな世界なら、丸ごと地獄に落としてやりたいとさえ思った。
地獄に落とす。
一瞬、よからぬ考えが脳裏を横切ったが、俺は頭を振ってその
邪念を思考から追い出した。
そんなある日の事。
今住んでいるアパートの家賃を払うのも厳しくなってきた俺は、
もう少し安い部屋に引越すため、荷物の整理をしていた。
実家を出てから転がり込むように入居したこの部屋。多少名残
惜しいが、背に腹は変えられず。黙々と荷造りに精を出した。
その荷造りの最中、押入れの中から見慣れない箱を発見した。
テープで厳重に封をされていて、俺にはそんな箱をそこに仕舞った
記憶すらなかった。何が入っているんだろう。テープを剥がし、
恐る恐る箱を開ける。
中には、一冊の古文書のようなものが入っていた。
箱には見覚えが無かったが、その書物は見た事があった。うちの
家系に代々伝わっている呪術の、奥義が書かれている秘伝書だ。
この書物は、一族の当主以外は読むことはおろか触れることさえ
許されておらず、子供の頃、ふざけてこの書物を書庫から持ち出して
滅茶苦茶叱られた事を覚えている。
そんな書物が、なぜこんなところに。
俺は少しの間考え込んだが、荷造りの途中だった事を思い出して
箱を閉じようとした。どれ程貴重な文献であっても、今の俺には全く
関係の無いものだ。しかしその時、突然書物の表紙がうっすらと
青白く光り出した。頭の中に声が響く。
「こんな世界は地獄に変えてしまえ」
「奴らには地獄こそ相応しい」
どこから聞こえてきているのか分からないが、謎の声が頭に直接
語りかけてくる。なんなんだこの声は。俺はどうにかしてその声を
振り切ろうと耳をふさぎ頭を激しく振ったが、どうしてもその声に抗う
事ができなかった。
身体が勝手に動き出した。
勝手に書物を手に取り、ページをめくり出す。そして意識とは裏腹に、
俺の身体は部屋の中を動き回り始めた。俺はマジックを手に取り、
部屋の中のありとあらゆるところに面妖な模様を描き出した。
それが描き上がると、今度は部屋の中心に立ち、訳の分からん
呪文を唱え始めた。
自分の声が、まるで自分の声に聞こえない不思議な感覚を感じ
ながら、俺は謎の力に抗い続けた。だが俺の心の中には、この声を
完全に否定できない迷いがあった。
心の片隅にある「こんな世界なんて地獄に落ちればいいんだ」と思う
気持ちが邪魔をして、この声の呪縛を断ち切る事が出来なかった。
そうこうしている内に、世界を地獄に変える呪われた儀式は無事
終了してしまった。とうとう阻止する事が出来なかった。俺はもしか
したら、とんでもない事をしでかしてしまったのかもしれない。
心の中は恐怖と不安と罪悪感で満たされていたが、それらは儀式
による心身の疲労にかき消され、俺はそのまま倒れるように眠りに
落ちて行った。
翌日の朝。
ベッドの上で目覚めた俺は、意識が覚醒していくと共に昨日の
出来事を思い出した。勢い良くベッドから起き上がり、シャッと
カーテンを開ける。そこには、いつもと何ら変わらぬ町並みが
広がっていた。
「ゆ、夢だったのか」
ほっと胸を撫で下ろして部屋の中に視線をうつした俺の目前に、
現実が突きつけられた。床や壁一面に描かれた、あの面妖な模様。
やはりあれは夢ではなかったのだ。昨日は疲労でかき消された
恐怖と不安と罪悪感が、再び鎌首をもたげて俺の頭の中を
のた打ち回る。
窓から見た光景には、何も変化が無かったんだ。もしかしたら、
代々伝わってきていたこの呪術は、真っ赤な偽物だったのかも
しれない。世界中を地獄に変える呪いなんて、冷静に考えたら
そんなものある訳無いじゃないか。しかも、もしそんなものが本当に
あったとしても、俺なんかが一人で発動できるはずもない。
昨日の声も全部幻だ!この落書きも、俺が寝ぼけて描いたに
違いない!
無理矢理にでもそう自分に言い聞かせて、俺は職場に向かうため、
いつもと同じように家を出た。
その日一日、俺は周りの様子を常に観察しながら過ごしたが、
特に変わったところも無く、普通に平凡な一日がただ過ぎていく
だけだった。当たり前だ、変わったところなんてあってたまるか。
俺は徐々に落ち着きを取り戻しつつある自分に安堵していたが、
ここでふと一つの考えが頭に浮かんだ。
もしかしたら、今の世の中は、あの呪術を作り出した遥か昔の人々
が考えていた、地獄そのものなのではないだろうか。欲望が溢れ、
人が人を蔑み、殺し合う。昔の人が、地獄というものはこんな世界の
事だと考えていたのなら、世界を地獄に変えても今までと何ら
変わる事の無いこの状況も、理解できる気がする。
今が既に地獄なのだから。
仕事が終わり、帰宅途中に近所のコンビニに寄った。いつも態度の
悪い店員が、今日は妙に丁寧にお釣りを渡してくれた。昨日までの
世界は、昔の人が思い描いた地獄よりも、コンビニ店員の接客態度
の分だけ更に酷い世界だったのだろうか。
そんなくだらない事を考えながら、俺は家路を急いだ。
ごめん3レスで貼る予定が4レスになってもうた
なんか面白くなりそうな気配
続ききぼー
162 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/10(金) 19:50:41 ID:idA6h9G2
163 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/10(金) 23:05:08 ID:eQVCfv46
「かさ」
「気持ちを無理してる人はね、他人にも気持ちの無理をさせてるのよ」
マスターの言葉にホノカは顔を上げた。
「ハルナさん、誰が気持ちの無理をしているの?」
とっさにホノカは答えると同時に、注文以来、初めて自分が言葉を発したことに気づいた。
女性がマスターを勤めるバー。ホノカは月に2、3回は顔を出していた。
ハルナはホノカの言葉に口元だけ上げて笑うと、
「外、雨降ってるよ。入り口のとこにある透明傘、使っていいから。」
と目線を入り口にやった。
ホノカは残り1/3程度になったグラスに目をやり、氷はもうほとんど残っておらず、いつの間にこんな時間が経ったのだろうと時計を見た。
「におい嗅いでるみたいよ、ホノカちゃん」
ハルナの言葉に少しだけ笑みを向け、今日の会計をお願いした。
164 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/10(金) 23:18:06 ID:eQVCfv46
外に出ると、やはり雨が降っていた。
ハルナに借りた透明傘に当たる雨の音と少し踵の高い靴の音が耳にこだましている。
今日、バーを訪れた時は雨の気配はなく、ホノカは疲れる恋愛を終えた後であった。
「この雨、少し出来過ぎじゃないの」と雨音に消えるくらいの声でホノカは独り言を言った。
傘を打つ雨音は大きくなった。ホノカは顔の前で傘を短く持ち、身をかがめて透明傘のビニールの向こう側を流れる雨粒を見つめていた。
いきなり、ドンという音で雨音が遮断された。何かが足にぶつかったのだ。
165 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/10(金) 23:35:21 ID:eQVCfv46
足元を見るとダンボールがあった。
ダンボールの中には小さな犬が丸くなってホノカを見ていた。
ホノカはしゃがんで傘をダンボールにかざした。
「久しぶりに見たよ、キミみたいな子。驚かしてごめん。」
と言って、しゃがんだまま黙っていた。
しばらくしてホノカは傘はそのままスッと立ち上がりダンボールから離れ、また歩き始めた。
明日新しい透明傘を持ってお店に行こうと、コンビニに寄った。
雨に濡れたホノカを女性店員がちらっと見た。ホノカは透明傘のかかっている窓際の方へ足を運んだ。
透明傘を手に取ろうとした時、窓に映った自分の姿が目に入った。ホノカは手を止めたまま静止した。
ホノカは雷に打たれたかのように突然走り出し店を出た。
ホノカは来た道を全力で走った。
166 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/10(金) 23:39:24 ID:eQVCfv46
ダンボールも傘も、まだそのままだった。
ホノカは仔犬をひょいと抱え、傘の柄を右頬で押さえ歩き始めた。
>>161 これで完結なのですスミマセン。
また何か書いたら書き込みます。
読んでくれてありがとう!
>>162 その通りです。完結です。
オチが弱いから終わってないように見えるのかな……
『あなたの未来、占います』
この看板を出して三日目になるが、客はまだ一人も来ない。
街外れの小さな建物の一室、奇妙な調度品に囲まれた部屋で、俺は一人ため息をつく。
「やれやれ、当てが外れたなあ」
折からの不況で職を失い、新しい働き口が見つからない。そこで俺は、占いで生計を立
てることを思いついた。
社会不安が広がる中、神にもすがりたいと思う奴は大勢いるだろう。それに真っ当な商
売を始めるのに比べれば、元手も少なくてすむ。そんな風ないい加減な考えで、即席の占
い師となったのはいいが、現実は甘くないようだ。
「失敗だったな、さっさと次の商売を考えるとするか……」
そう言って部屋を片付けようとしたとき、ノックの音がした。
「あの、す、すみません……」
入ってきたのは一人の青年だった。小柄で痩せて、不健康そうな青白い顔をしている。
「ぼ、僕の未来を占ってもらえませんか?」
神経質な様子で、キョロキョロとあたりを見回しながら尋ねる。
「もちろんです、よくぞいらっしゃいました。まあ、おかけ下さい」
店を畳もうとした矢先に客が来るとは、皮肉なものだ。青年を椅子に座らせ、テーブル
を挟み向かい合う形で私も腰を下ろす。
「僕は絵描きになりたいんです。でも、賞に応募しても落選ばかりで、自分には才能がな
いんじゃないかと悩んでいます。こ、このまま描き続けてよいものでしょうか、それとも
他に仕事を見つけた方がいいのでしょうか?」
このご時世に、のんきなことだ。しかし、そんなことを口にするわけにはいかない。
「お待ち下さい、今、あなたの未来が映し出されます……」
テーブルの上に置かれた水晶玉に手をかざし、呪文を唱える。見よう見まねなのだが、
なかなかさまになっていると自分でも思う。
さて、どうしたものか。見たところパッとしない男だし、絵描きとして大成するとは思
えない。かと言って、先ほどからの挙動不審なさまを見るかぎり、普通の勤め人としてや
っていけるとも思えない。
俺は、ふと意地悪なことを思いついた。商売に失敗した気晴らしに、こいつをからかっ
てやろう。どうせ今日で店仕舞いするつもりなんだ、試しにこの男がなれそうもない職業
を挙げて、反応を見るのも一興だ。
「……見えました。あなたには人を動かす才能がおありのようだ、政治家になるのがあな
たの使命です」
171 :
とんでもない占い師 3/3:2008/10/11(土) 17:33:54 ID:vjJkI/SB
無論、口からでまかせだ。こんな貧相で神経質な男に政治家なんて務まるはずもない。
しかし意外にも、青年は本気にしたようだ。
「僕にそんな才能があるとは知らなかった。ありがとうございます、あなたのおかげで目
指すものが見つかりました」
頬を紅潮させた青年は、そう言うと金を置いて、勢いよく部屋を飛び出していった。
「やれやれ、変な男だったな。周りにおだてられやすい性格なのだろう。案外、本当に政
治家になるかもしれんな」
まあ知ったことではない。俺は部屋の片付けを始める。すると、先ほど青年が座ってい
た椅子の足下に小包が。開けてみると一枚の絵が入っていた。忘れていったのだろう。
「お、なかなか上手いじゃないか。絵の道を断念させてしまい、悪いことしたかな」
その絵の片隅には青年のサインが書かれていた。
『アドルフ・ヒトラー』
で、この男が大成してチョビヒゲおやじになるんですね
173 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/11(土) 17:40:56 ID:oHyaLuaZ
オチに何故か吹いてしまったw
GJ
あ、そうかヒトラーって若い頃に絵師志してたんだっけ
今日は朝からとても運の悪い一日だった。
まず、朝のニュースでやっていた星占いが最下位だった。次に、トースター
が故障して、シリアルで味気ない朝食を余儀なくされた。更に、待ち合わ
せ時間を間違えてしまい、一時間も早く待ち合わせ場所の公園に到着して
しまった。そして最後に、こういう事もあろうかとカバンに忍ばせておいた文
庫本が、壊滅的につまらなかった。
古書店の棚の、左端から6番目の小説は必ず面白いというジンクスが打ち
破られたのもショックではあるが、公園のベンチから見上げた空がみるみ
る灰色に染まっていく光景は、今朝からの不運のクライマックスを想像させ
るに足る物々しさを醸し出していた。
星占いの燦々たる結果に気をとられて、天気予報の確認を疎かにした自
分に対する苦情がいくつも頭の中に浮かんだが、口にするだけ空しくなる
ので別のことを考えることにした。手にした文庫本はもはや私を満足させる
ことは永久になさそうであるし、この何も無い閑静な公園で、私はこれから
後数十分をどのようにして過ごすべきだろうか。
私は辺りを見回し、知的好奇心を満足させうる事象を探してみた。すると、
私の目の前に一匹の猫がトコトコと登場した。毛並みの中々きれいな三毛
猫で、私の座っているベンチから10メートルほど離れた所に座り、毛繕い
を始めた。2歳くらいだろうか、人間にしたら恐らく中々の美男子、いや三
毛猫はほとんどがメスなので美人と言うべきか。首輪はしていないが、お
よそ野良猫にはない知性のようなものが感じられる顔つきで、まるで物語
に登場するキャラクターのような猫だった。
私は彼女を勝手にミケと名づけ、彼女を中心に頭の中で物語を想像して時
間をつぶすことにした。ここから先私は語り部となり、彼女について物語を
膨らませていく。だが、私に猫の気持ちがわかるはずも無いので、完全に
フィクションである。
私は瞳を閉じ、空想の世界へと旅立った。
*****
ミケは苛立っていた。
なぜなら、今日は彼女の組織の定例会議の日なのに、時間通りに集合場
所に来たのが自分だけだったからだ。この公園の縄張り保持・拡大を図る
ための、今後の方針について話し合う重要な会議であるのに、メンバーの
このやる気の無さはなんなのだ。これだからネイティブ(ここでは野良猫の
事を指す)は馬鹿にされるのだ。
考えれば考えるほどヒゲが総毛立ってくるのを感じて、彼女は冷静さを回
復すべく再び毛繕いに精を出し始めた。こうしている時が一番落ち着くので
ある。しかし、彼女の努力も、この間の抜けた一声によって水泡に帰してし
まった。
「あれ、リーダー今日は集まる日だったっけ?」
怒りに引きつった顔を向けた先に、その声の主は緊張感のかけらも無い表
情で立っていた。茶色の毛並みで全身に黒や黄土色のぶちのある、ネイ
ティブの典型といった風貌の猫だった。彼は自分のセリフがミケの機嫌を
革命的に損ねた事を全く気にかける様子も無く、むしろその事実に気が付
いていないような雰囲気で彼女に近づいてきた。私は彼をブチと命名する
ことにした。
ミケも最初は怒りの感情を顔全体で表現していたが、半ば諦めたかのよう
にため息をついて、怒りを静めるというよりかはむしろ呆れてしまっていた。
ブチはいつもこのような感じのキャラクターなのだろう。こういうメンバーを統
括するリーダーの苦労というものは、相当なものに違いあるまい。私はミケ
に対する同情の念を禁じえなかった。まあ組織というくらいだから後何匹か
構成員が存在するのだろう。私は、残りのメンバーがマトモであることに望
みを託した。まあ、それは私の空想のさじ加減なのだが。
そうこうしている内に、遠くから数匹の猫の言い争う声が聞こえてきた。恐
らく残りのメンバーだろう。それが聞こえるや否や、ミケの顔に再び怒りの
表情が浮かび上がってきた。その表情から残りのメンバーもブチと同類、も
しくはもっと酷い問題児揃いなのが想像に難くなかった。空想の世界とは
いえ、全くご愁傷様である。
「ったくお前に預けたのがそもそものまちがいだったんだよ!」
近づいてくるにつれて次第に口論の内容がはっきりと聞き取れるようにな
ってきた。どうやら三匹の猫の内、黒猫と白猫が言い争いをしていて、それ
に虎猫が冷ややかな視線を送っているという構図のようだ。
「なによ!あんたがいつも何処に隠したかわからなくなるって言うから、あ
たしが代わりに隠してあげたんじゃない!」
彼らは自分達が今遅刻の真っ只中にいるという事を全く意に介さない様子
で、口論を続けていた。虎猫も彼らを促す訳でもなく、ただただ黙って後ろ
からついてきているだけだった。私はこの黒猫をクロオ、白猫をシロコ、そし
て虎猫をトラと名づけることにした。
ミケの前まで来ても一向に口論を止める気配の無いクロオとシロコに対し
て、ついに怒髪天を突いたミケの一声が飛んだ。
「こらお前達!遅刻は罰として三食分の食料提供という決まりを忘れたの
かっ!」
この一声で一応口論を終了した二人だったが、いかにも不服そうな表情で
互いにまだぶつぶつと独り言を呟いていた。
「トラ!お前も同罪だぞ!」
我関せずを決め込んでいたトラは、非常に不本意な表情で足元を見つめて
いる。
「そもそも、何で揉めていたのだ?場合によってはここで裁判をひらくことに
なるぞ」
落ち着きをある程度取り戻したミケが、クロオとシロコにたずねた。この組
織の決まりとして、組織内の揉め事は5匹の多数決によってその是非を決
定することになっているのである。特に、食料問題、情報のリーク、暴力事
件などは必ずここで判決を下すことになっていた。こうすることによって組織
の規律を正すのは、どこの組織でもやっていることだ。ミケの質問を受け、
まず口を開いたのはクロオだった。
「シロコがよぉ〜、おれのメザシをネコババしやがったんだよぉ〜」
まるで子供が告げ口するかのような口ぶりだった。それを聞いたシロコはヒ
ゲと全身の毛を逆立てて叫んだ。
「何言ってるのよ!あんたの代わりにあたしが隠してあげたんじゃない!あ
んたがいっつも隠したまま無くしちゃうからって頼んできたんでしょ!!」
「じゃあさっさと出せよ!あれはおれんだからな!」
「あんたこそ、隠したげたお礼にエビの尻尾くれるっていった約束守りなさ
いよ!」
話が見えてきたミケは、二人に鉄拳制裁を食らわせて一時黙らせた。彼女
の長年の経験から、彼らを黙らせるのに一番効率の良い手段はこれだと
わかっているのだ。渋々一時停戦をする二人に向かって、ミケはリーダー
らしく冷静に話し始めた。
「大体の状況はわかった。要するに、クロオが依頼の代償としてエビの尻
尾をシロコに譲渡すれば丸く収まるのではないのか?」
最もな意見である。これに対してどう言い訳するのかと、4匹の8つの目が
クロオに向けられる。
「……いや、ちゃんとやろうと思ってたんだけどよぉ、……尻尾、無くしちま
ったんだよ」
ミケとトラはまたいつもの事かとため息を、ブチはあまり状況をよくわかって
いないらしくニコニコと、そしてシロコは話し終わる前にクロオに飛び掛って
いた。
「嘘つくんだったらもっとマトモな嘘つきなさいよ!脳みそ膿んでるんじゃな
いの!?馬鹿なの!?」
マウントポジションを取ったシロコは、鋭い爪を容赦なくクロオの顔面に向
かって振り下ろした。その拳は先ほどまでクロオの顔のあった空間を引き
裂き、一振り毎に数本の黒い毛が宙に舞った。
「ま、まてよ、ホントだって!ホントに無くしちまったんだよ!」
首のわずかな動きだけで必殺の拳を懸命に避けながら、クロオが器用に
命乞いを始めた。だが、普段はメンバーで一番耳の良いシロコだが、今は
何を言っても聞こえている様子は無い。
「死ね!死んで詫びろ!あの世で思う存分メザシ食ってろ!!」
シロコの鉄拳が飛ぶ。
「驚かそうと思ってここに置いといたんだよ!ホントだって!」
シロコの拳がクロオの顔面を捉えようとしたその瞬間、ミケとトラが飛び掛
り、暴れる彼女を二人がかりでなんとか取り押さえた。
「ったく、なぜ僕までこんなことをしなくてはならんのだ」
取り押さえる際、ヘンなトコロを触ったという理由でシロコに引っかかれた
頬を摩りながら、トラがぶつぶつ独り言を言っている。しかし他には被害も
無く何とか騒動は収まったが、この二匹を和解させなければ根本的な解決
にはならない。
どうしようかと頭を悩ませていたミケだったが、先ほどのドタバタの最中にク
ロオが口走ったセリフを思い出した。
「おい、クロオ、お前さっきなんて言ってた?ここに置いてたとか何とか……」
土埃で半分灰色猫になったクロオが、肩で息をしながら答えた。
「あぁ、昨日の晩、この辺りに置いといたんだよ。びっくりさせてやろうと思
ってよ。くそっ!おれ達の縄張りでネコババとはどこの組織のモンだっ!?」
これを聞いて、ブツブツ文句を言っていたトラも口を挟んできた。
「これは意外と大きな問題だぞ。下手をすれば組織間の問題になってくる」
そうだ。他の組織の縄張りで食料を搾取したとなれば、これはもはや一匹
だけの問題ではなくなってしまう。これが理由で抗争状態に入った組織は
数知れない。あまりの無秩序さに、先日この公園の組織の代表者たちが
集まって、議会を設立したところだ。
「そうだな、議会に報告となると大事になってしまうな」
組織の中で頭脳派のミケとトラが頭を悩ませている横で、彼らと最もかけ
離れた頭脳の持ち主が徐に口を開いた。
「その尻尾なら、さっきまでそのへんにあったよぉ。おいら見たもん」
ブチである。その言葉に、今まで各々で考えに耽っていた4匹が、一斉に
ブチのほうに視線を集中させた。
「おいブチ、それは本当か?何時頃の話だ?」
質問攻めを仕掛けようとしていた3匹を代表して、ミケが質問を開始した。
「そうだなぁ〜、リーダーと会う前においら水飲み場に行ってたんだ。その
行く途中で見たんだよ。リーダーと会ったのは帰りだよ」
「ということは、9時過ぎか。議会の風紀パトロールは8時から始まるから、
それ以降の犯行はムリ。そうなると……」
そうだ。そうなると、犯人は組織の内部の者となる。内部犯ならパトロール
にも怪しまれない。
「おい!てめぇ〜!てめえが食いやがったんだな!?」
ブチに飛び掛ろうとするクロオをシロコのドロップキックで撃退させ、ミケは
全員を自分の前に座らせた。
「これから本日の起床以降のアリバイを一人ずつ聞かせてもらう。いいな?」
4匹はゴクッとツバを飲み込み、頷いた。まず最初にミケが口を開いた。
「ではまず私から話そう。私は今日は朝6時半に起床。その後7時の代表
者会議までの間はいつもの場所で毛繕いをしていた。隣の組織のリーダ
ーと一緒だったので彼に聞いてもらえばアリバイは実証できる。その後会
議が9時15分まで。9時半からここでうちのミーティングがあるので、25分
にはここに来ていた。そのときすでに尻尾は無かった。ブチと出会ったのも
そのときだ」
裏を取るまでわからないが、話からミケはアリバイが立証されているものと
見てよい。まあ最初から彼女が犯人だとは、他のメンバーも思ってはいな
かったが。それほどに普段からの信頼は厚かった。次に口を開いたのはト
ラだった。
「僕はそこの二匹の口論で目がさめた。だいたい9時過ぎかな。そこからずっとそいつらと一緒だったから犯行はムリだ」
その内容からすると、クロオとシロコにも犯行は不可能だ。推定犯行時刻
の9時から9時20分の間は三匹一緒だったからだ。そうなってくると、犯人
はブチか。いや、彼は先ほどの話から考えると犯人ではない。もし犯人だ
ったとしたら、帰りにミケと会った時に臭いでバレているし、彼は嘘をつくの
が劇的に下手なので、今までの話に嘘が混じっていればすぐ判別できる。
今のところ彼は嘘を言っていない。
ということは、やはり内部犯ではなかったのか。少しほっとする4匹を尻目
に、ミケは内部犯以外での可能性について考察し始めた。
「外部の犯行とすると、野良犬、カラスあたりも可能性が無いわけではない。
しかし今日はどちらの警報も出ていなかったので、その可能性は薄いだろ
う。今日の会議は内容を変更して、今から現場検証を行う。よいな?」
一同の賛同を得て、ミケ達は付近の検証を始めた。
「おいクロオ、お前どの辺りに置いたんだ?」
ミケの質問に、クロオが記憶の糸を辿りながら答える。
「たしか……、あの木の下辺りだったと思うぜ。だっていつもあそこでミーテ
ィングしてるだろ?」
そう言って彼は、私の座っているベンチのすぐ横に立っている銀杏の木を
指差した。
「ああ、だがそろそろ季節的に銀杏の実が落ちてくるだろう。私はあの匂い
が苦手なんだ」
「あたしもキライ〜!たまんないわよっ」
「でもアレを拾っていく人間がいるんだぞ。人間とは変わり者だな」
などと話しながら、彼らが木の根元の辺りまでやってきた。しかしどうやら
尻尾はないようだ。匂いで追跡しようにも、銀杏の匂いが邪魔をして中々う
まくかぎ分けられない。
「ブチ、お前は朝、やはりここで尻尾を見たのか?」
銀杏を興味深げに足で突付いていたブチは、いきなり自分に話が振られた
ので、少し驚き勢い余って銀杏を踏んづけてしまった。みんなに笑われな
がら、彼は情けない表情で答えた。
「い、いや、おいらが見たのはもう少しあっちだよ。あのベンチの下辺り」
そう言って5匹は私の座っているベンチに視線を移した。
「間違いないな?」
ミケの確認に、ブチは力強く頷く。
*****
私は、腕時計で現在時刻を確認すべく、空想の話を一旦中断して閉じてい
た目を開けた。待ち合わせの時間まで後10分くらいか。そろそろ駅前の
方にでも向かうとするかな。そんな事を考えながら、私は今自分の頭の中
で猫達が現場検証を行っているであろう銀杏の木の方に、なんとなく視線
を向けた。
私は、一瞬我が目を疑った。
ミケ以外の猫達は完全に私の空想上のキャラクターのはずだったのに、な
んとその木の下には、私が思い描いていた姿そのままの猫達がいたので
ある。ブチ猫に白猫、黒猫に虎猫。そして先程の三毛猫。みんなイメージ
通りの猫達だ。しかも、現場検証さながらに木の根元をクンクン嗅ぎ回って
いる。こんな偶然、本当に起こり得るのだろうか。
私の中で現実と空想の世界が倒錯し、一瞬軽い眩暈を覚えた。
「よし、落ち着け、大丈夫だ。ほんの偶然だ……」
そう自分に言い聞かせながら、私は深呼吸を大きく三回繰り返した。私は
空想は好きだが、現実と区別が付かなくなるほど重症ではないし、ある程
度の常識はわきまえているつもりだ。どこにでもあるような空想が、たまた
まどこにでもあるような現実と重なっただけだ。確率的に考えても、今朝の
畳み掛けるようなアンラッキーと然程変わるものでもない。
そうだ、私の空想の中では、彼らはこれからこのベンチに向かって皆で歩
いてくる事になっていたはずだ。暫く様子を見て、こちらに来ないようであれ
ば、これは単なる偶然。私の空想とはまったく関係の無い事象だ。待ち合
わせの時間が迫ってきていたが、このままではすっきりしないと思った私
は、もう暫く彼らの様子を観察する事にした。
……ちょっと待て、猫達が本当にこっちに向かって歩いてきた!
う、うそだ、そんな馬鹿な……!私は再び眩暈を覚えそうだったが、なんと
か踏みとどまった。ちょっと信じられないが、ここまで一致すると不安や倒
錯よりも好奇心が思考を支配し始めていた。
もしここで、私の足の下にエビの尻尾でも落ちていたら……。
世の中には偶然という言葉があり、ある種の因果律によってそれはドラマ
ティックに発生すると、どこかの本に書いてあったような気がする。
私は、恐る恐る足を地面から持ち上げた。
しかしそこには何も無く、ただ公園の土が敷き詰められているだけだった。
日常の中にそうそうドラマが起こるはずもない。空想の猫達と彼らの姿が
重なっただけでも、十分ドラマティックだったじゃないか。空想世界にこれ以
上何かを望むのは、ちょっと欲張りすぎだろう。
7割の安心と3割の残念とを胸に、私はベンチを立つと駅のほうへと歩き出
した。そろそろ待ち合わせの時間だ。なぜか、後ろから猫達の冷たい視線
が突き刺さっているような気がしたが、自身の無罪放免を確認した私は、
全く意に介さなかった。文庫本をカバンに放り込み、身軽になった両手でぐ
っと伸びをすると、もう思考は猫達の事から今日の天気の心配へと移行し
ていた。
*****
待ち合わせ場所である駅の改札まで来ると、すでに相手が到着していた。
どうやら公園で時間をつぶしすぎたようだ。
「もう、遅い遅い!待たせすぎてあたしがおばあちゃんになっても知らないんだからねっ!」
ご立腹の様子だが、昼飯をおごると提案するや否や顔から笑顔がこぼれ
た。なんとも忙しい顔だ。
「あれ?それどうしたの?」
ふと、彼女が私の足元を指差した。
「ん?なに?」
私はズボンに何か付いているのかと思って自分でも見てみたが、特に異
変は無い。
「違うわよ、裏!靴の裏!何か踏んでるわよ。右の方。ほら少しはみ出し
てるでしょ?」
そういわれてみると、何かが靴の裏に付着しているようだ。特に違和感は
感じなかったのでガムか何かだろう。右足を挙げて裏側を確認する。
その瞬間、私は凍りついた。
「……、今日の昼飯は、エビフライにしようか……」
湿った風が木々をざわめかせている。道端に咲く花が妙に物悲しく見える
のは、よどんだ空が彩度を奪っているからだろうか。それとも私の心の映し
鏡なのだろうか。
雨が降っていなければ、帰りにもう一度この公園に寄ろう。そして彼らにき
ちんと謝ろう。五匹分の、エビフライの尻尾を持って。
やっぱり踏んじゃってたかw
動物が喋る話はほのぼのする
面白かったよ
おもしろかったー☆
猫かわいいよ猫〜
「あー、つまんねぇ」
キョウヘイはゴミの散らばった汚い部屋の中で大の字に寝転んだ。
「ババアもうるせえよな。俺みたいな天才に向かって学校行けとか。あんな歯車製造工場、行って何の役に立つってんだよ。」
彼は本来なら高校2年生であり、今は学校に行っていないといけない時間だった。
しかし、彼は自室にいる。そう、彼はどこにでもいる引きこもりの一人だったのだ。
「テレビもゲームもネットもつまんねぇし。誰が金払ってると思ってるんだよ。」
愚痴を言いながらも、することが無いのでネットにつなぐ。
そこで、彼は変なバナー広告を見つけた。
「なんだこれ・・・『本物のリセットボタン。嫌なこと全てをリセットできます』・・・だって。馬鹿か?」
普段なら興味すらもたないはずだが、何故かその日は興味を持ってしまった。
・・・自分はどこかで選択を誤ったのではないか・・・
・・・人生、やり直しができないだろうか・・・・
ふと、そんなことを思ってしまったのだ。
親のクレジットカードを失敬して購入手続きを行い、次の日、彼の手元にそれはやってきた。
見た目はジョーク商品のようだ。20cmくらいの箱の上に、ドクロマークのボタンがついている。
説明書を取り出した彼は、半分呆れながら読み進めていった。
『 これは本物のリセットボタンです。
すべてをリセットできます。
押す前に、本当にリセットしてもいいかを考えてから押してください。
まだ、戻れますよ? 』
もしかして、あれか? 押した瞬間爆発して、人生をリセットするってことなんだろうか?
怪しんで見たが本体はしっかりした作りになっているので、内部に爆弾が仕組んであるかなんて分からない。
「まぁ、いいや。爆死したら爆死したで。一瞬で死ぬんなら、それは幸せだろ。」
半分投げやりに、キョウヘイはボタンを押した。
その日、太陽系の3番目の惑星が宇宙から姿を消した。
184 :
恋人ショップ:2008/10/25(土) 17:08:34 ID:Q1QqEdSS
恋愛感も変わり、今や恋人もお金で借りる時代になった。
「今までのナオミA17が古くなったから、新しい恋人探そうと思うんだ。」
「じゃぁ、ミサA15はどう?」
カタログを見ながら、友人が言ってきた。
「ミサA15ってすごい高いじゃん。月15万だっけ? 俺には無理だよ。」
「そうだよな。それならA20スペックで我慢するしかないか。」
「ちょっと、考えるわ。」
友人と別れ、恋人屋の店頭に赴く。
そこにはいくつものディスプレイが並び、色とりどりの女性や男性の姿が映し出されていた。
「いらっしゃいませ、お客様。新規のご用件でしょうか? それとも機種変更でしょうか?」
「ナオミA17から機種変更したいんだけど。」
「かしこまりました。ちなみにお客様、只今なら男性へのポータビリティなら格安で変更できますが?」
「いや、女性でいいよ。」
「かしこまりました。では、流行のミサA15は如何でしょうか。月15万になりますが。」
「もう少し、安いのは無い?」
「では、こちらのアヤA18。少々スペックが劣りますが、まだまだ使えますよ。」
「うーん、A15ぐらいのスペックがいいんだけど・・・」
ふと、片隅のパンフレットが気になった。
「あれ? このヨシコA15って新型?」
たくさんの女性の中に、少し気になる女性が映っていた。
自分には、ミサA15より可愛く見えるが、なぜかディスプレイによって大々的に宣伝されていなかった。
「ヨシコA15は、あまりスペックが良くないので、今はまだお客様に正式サービスを行っていないのです。」
「そうなの・・・この子がいいんだけど・・・」
「そうですか。・・・・では、特別にお客様にモニターとしてお貸しいたします。代金は、評価後のご請求になりますが、よろしいでしょうか?」
「本当? ありがとう。」
店員に言われるままに書類に個人情報を書き、家に帰ってヨシコA15の到着を待った。
やってきたヨシコA15は本当に可愛かった。
ただ、言葉に標準語違反があるらしく、それで正式サービスになってないんだと納得した。
でも、それ以外は素晴らしい女性だった。
ヨシコA15と一緒に居ると、まるで恋人ショップの商品だなんて思えないくらい、素晴らしい日々が続いた。
まさに、彼女はミサA15なんかとは比べ物にならない素晴らしい女性だった。
それから、1ヶ月が経ち、日々、ある不安が付きまとってきた。
それは、代金のことだ。
店員は代金を評価後の請求と言っていたが、ミサA15に匹敵する女性なら、15万じゃ済まないだろう。
月末になり、おそるおそるヨシコA15に聞いてみた。
「君は本当にステキな女性だったけど・・・月額使用料・・・すごい高いんだろう?」
言葉をしゃべることを店に禁止されていた彼女は首を振った。
「え?」
そして、彼女は一つの書類を見せてくれた。それは、店との契約の破棄書類だった。
彼女は、俺の為に店を辞めてくれたんだった。
「・・・こどば(言葉)の訛った女性でも、・・・今まで通り付き合ってくれっか?」
顔を赤らめ、声を小さくして彼女は聞いてきた。
答える代わりに、彼女にそっとキスをした。
本当は「星新一」スレに投稿しようと書いたんですが、あっちにはふさわしくないので、こっちに書かせてもらいました。
恋愛物は私の課題なので、それへの挑戦で書きました。
186 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 16:38:25 ID:fdOwkkCx
乙
携帯みたいなノリで買い替えるのか
いいな
まさに携帯は恋人、か
しかしアンドロイドかと思ってたが
最後のくだりを見ると実は人間なのか?
>>187 全員人間です。
(確かにアンドロイドに取れる名前ですね。ちょっと言葉が足りなかったか・・・)
189 :
年の数だけ:2008/10/31(金) 08:42:36 ID:jeep6Uox
「あなたの年の数だけダイヤをあげます」
こんな企画が話題となった。ある宝石販売会社が、宣伝の一環として発表した懸賞だ。
大々的にPRが行われ、当然のことながら、応募は殺到した。
一人につき一通の応募しか出来ず、また年齢が高ければ高いほど得なので、疎遠な祖父
母や親類に連絡し応募を頼む家族も大勢いた。
そして抽選日。特設会場が用意され、ステージの前では大勢の人々が固唾を飲んで発表
を待っている。
「さあ、いよいよこの瞬間がやって参りました。幸運を手に入れるのは一体だれなんでし
ょーか!」
壇上の司会者は大きな箱に手を突っ込み、一枚のハガキを取り出す。そしてカメラが近
づくと、当選者の名前を巨大スクリーンに映し出した。
『デーモン小暮』
190 :
名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/31(金) 08:44:45 ID:iIi9wHMF
面白い
193 :
名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/31(金) 15:24:42 ID:zXjcKL5x
194 :
名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 14:30:09 ID:lLlICEkd
age
195 :
名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/03(月) 16:01:45 ID:tP9OihoH
わらた
196 :
星熊 ◆jLMGHVkXMI :2008/11/11(火) 22:48:25 ID:8UOvPR6f
N星のN星人は、自分の種族を存続させることに全てを捧げる生物であった。
N星は生物にとって過酷な環境にあり、彼らはそれに打ち勝つため、科学技術を発達させ、自然を自らの住みやすい環境に変えた。
しかし、それでも突然の事故や病を防げない。
彼らは脆弱な体が種の存続にとって危険なものであると感じ、自らの体を改造するようになる。
やがて世代が進み、技術が進んだ結果、彼らは生殖機能と脳を除き、体のほとんどをロボット化することに成功した。
これで、大丈夫。
しかし、安心しているのもつかの間、N星人の間で大規模な戦争が起こり、
半ば物質と化した頑丈な体で壮絶な殺し合いが行われ、彼らは、一時、絶滅の縁にまで追い詰められる。
このことに、N星人達ははかりしれない恐怖を感じた。
それはN星の大国、Rの大統領も同じことであった。
「もう一度このような戦争が起きたら我々は滅びてしまうだろう。何とかしなければ」
「大統領、S博士が戦争をなくす方法を発見したそうです。」
「なに、本当か。」
「はい、多くの犠牲を払いますが、確実な方法だそうです。」
「種の存続こそ我々の至上目的だ、どんな犠牲でも払う、彼に任せてみよう」
1億年後、地球からの探索船に乗った二人の男がN星に降り立った。
「ここが、見捨てられた星、Nですね。隊長。」
「そうだ、観測する限りでは、戦争や隕石で荒廃したわけでもないのに、知的生命体が確認できない星だ。」
「どこか、温暖な星にでも移住したんですかね。僕も早く地球に帰って海にでも休暇を取って行きたいですよ。
あっと、なんだ、なにかが積まれてるぞ。」
二人の前には黒く輝き、文字らしきものが刻まれたプレート状の物体の山がそびえていた。
「どれどれ、分析器にかけてみよう、、、こ、これは、N星でとれる宇宙有数の頑丈な物質だ。」
「なんですかね、まるで名札やお墓みたいだ」
「何千万年以上も風雨に耐えているのに一つついていない、さすが宇宙有数の頑丈な物質だけはある。」
「隊長、これって地球では希少な物質ですよね。それが、こんなにも。地球に持ち帰りましょうよ。」
「もちろんだ、これで我々人類もさらに発展するな。」
二人はN星全体の探索を終え、地球に帰る準備を始めた。例のプレートを溶かしてインゴットにし、探索船に積んでいく。
「なんか泥棒みたいで、この星にいた人たちに悪いなぁ。大事なものだったらどうします。」
「見捨てられた星だ、問題ないだろ。」
「ですよね。でも、気のせいかな、プレートを溶かすたびに、悲鳴が聞こえるような気がするんですよ。
まるで、全てを犠牲にしてでも守ろうとしたものが奪われた時のような悲鳴が、、、」
197 :
星熊 ◆jLMGHVkXMI :2008/11/11(火) 22:50:06 ID:8UOvPR6f
↑題名は「行く末」で。
素人なんでお粗末ですがよろしくお願いします。
『微エロの朝』
その電車乗りますっ!
勢いよく階段を駆け下りた美嘉は、閉まりかけの電車のドアに飛び込んだ。セーフ。
今度遅刻すると今週三度目、担任に何をいわれるか分からない。
車内はそれほど混んでいなかった。だが車両の奥に向かって歩き出した美嘉は、
股間に急に何かが食い込むのを感じ、飛び上がらんばかりに驚いた。咄嗟に体を
前のめりにして、この不明な魔の手から逃れようとする。だが、それがいけなかった。
朝長さを間違えたのだろう、美嘉の下腹から長々と垂れた赤褌の前垂れが、尻の
後ろで電車のドアに挟まれていたのだ。後ろから股間を回してへその下で腰紐を通し、
折り返して垂らしただけの褌だ。美嘉が前進したぶん腰紐が下がって、薄い陰毛が
外気に触れた。驚いた美嘉は腰骨の上で紐を押さえて、反射的に屈みこもうとした。
紺のスカートが尻の後ろで高くめくれあがる。だが、彼女の不幸はそれに留まらなかった。
紐が切れて、褌が床に落ちたのだ。ここに至り、美嘉はようやく痴漢の正体に気づいた。
慌てて褌を拾い上げようとするが、一端をドアに噛まれた赤い布は、小柄な彼女の
力では外すことができない。美嘉は焦った。
「田村」突然声がして、美嘉ははっと振り返った。立っていたのは、ロードランナー部の
ロボ太君だ。
「え、ちょ、ちょっといま、あたし」うろたえる美嘉に、ロボ太はにっこりと微笑んだ。
「大丈夫。僕が助けてあげる」
ロボ太は爆弾を取り出すと、起爆装置のスイッチを押した。
―終わり―
199 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 21:49:10 ID:dxgIDJWY
「さかな」
最近最近、近所にかわいい幼女が住んでいました。
幼女はおうちで飼っている金魚に餌をあげるのが大好きでした。
幼稚園で白い金魚と水色の水槽の絵を描いて、先生に褒められました。
次の日、幼女が公園で遊んでいるとお隣のむくげちゃんがバケツを持って
走ってやってきました。
「桜ちゃん、桜ちゃん。ほうら、見て。きれいな金魚でしょう。
この子はおうちがなくってとってもかわいそうなんだ。」
バケツの底には灰色の魚が二匹。あんまり動かない、元気がないよ。
「桜ちゃんは優しいもんね。この子たちを助けてあげて」
幼女はバケツを持ってお家に走って帰りました。
二匹を水槽に放すと、きれいなお水のおかげですいすいと泳ぎ始めます。
幼女はとっても嬉しくなりました。
次の日も、幼女が公園で遊んでいると今度は牡丹組の女の子がバケツを持ってやってきます。
バケツの中には鼠色の魚が3匹。
「金魚がそこの水たまりにいたの、お日さまが照ったら乾いて死んじゃうよ」
幼女は急いでバケツを持って帰ります。
「この子たちも金魚だもん、助けてあげないと」
黄色い水槽の中で魚たちは元気そうです。
「お願い金魚を助けてあげて」
優しい幼女を頼って公園には次々バケツを持った人が詰め掛けます。
幼女は一生懸命魚をお家に運びました。茶色い水槽の中をたくさんの魚が泳ぎます。
「あれえ、白ちゃんが見えないよ」
ある朝、幼女は水槽の前で目を丸くしました。
探しても探しても、どどめ色の水の中に白い魚は見当たりません。
「きっとまだ眠っているんだね」
次の日も次の日も幼女は白い魚を探します。目の前を灰色の魚が行き過ぎます。
だんだん幼女は嫌になってきました。何日も何日もすぎました。
「ちょwwww何これ自重wwwwwwwたまんねえわ、放置しすぎじゃねwwwww
ベランダ出すわwwwwww」
お母さんが水槽をかたずけて、幼女はもう魚の絵を描くのをやめました。
冷たい風が吹き始めます。水槽はくろずんで中はもう見えません。
黒くぬめった水面に目を凝らすと
何十何百という黒い魚の頭がこちらを見ているばかりなのでした.
母親の口調wwww
気軽に短編スレ……だと……
そういえばこんなスレあったよね! けっこう伸びてたし
はたと伸びが止まったのは、みんな常駐スレに散ってしまったからかな?かな?
ていうか母親の口調wwwwwwwww
スレがちょっと過疎っちゃうと
つまらなくなってタブを閉じてしまうんじゃないかな
もう一度守り立てることは充分可能だと思うよ
そっか、タブで開いてるスレ閲覧メインだとそうなのかもだねえ
とりあえず、投下がなくちゃだねー
1レスに収まらなかったのはここでいいんじゃないかって希ガス
2,3レスの短編で特に該当するスレがなかったものはここに、ってことかな
そそ
そうだねー
確かにそういう使い方がふさわしいかもこのスレ
たまにはageてみよう
209 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 03:36:29 ID:zlJdpnRI
ageてなかた
目の前は壁。左右と前を壁に取り囲まれている。
漫画のような行き止まりに思わず息を飲みこんだ。
「行き止まりですね〜、先輩」
間延びした声に振り向くと俺を追いかけていた後輩がブレザー姿でゆらゆら立っていた。
黒髪ロングでどこか平面的な顔立ちの彼女は純和風な雰囲気がして俺の好み的には悪くは無いはずだが、相変わらずどっかぐねぐねしていて芯のない彼女が化け物めいて見えて困る。
「……」
「……」
しばし向かい合い対峙する。相手に疑われない程度に周囲を見回すが壁は高くて容易には飛び越えられそうにない。
だからといって後輩の横を通って逃げるというのはなんか怖くて出来ない。彼女に近づくのはなんとなく避けたかった。危機察知能力的な意味で。
行き止まりに追い込まれた哀れな俺と、平面的でゆらゆらぐねぐねした追い込む側の後輩。
じっと互いが互いに相手の次に取る行動を察するべくお互いを観察する。
が、しばらくすると後輩はぽっと頬を染めた。
「先輩と見つめ合うのは〜恥ずかしいです」
「別に見つめ合ってねーよ」
ぼけられると突っ込まずにはいられない。
「そうですね〜、本題に入りましょう」
「俺は入りたくないんだが」
彼女は俺の言葉を華麗にスルーして背中、どうやらブレザーの中へと手を入れてなにやらごそごそしてる。
そして後輩が取り出したのは一本の瓶。
これがビール瓶だったらサスペンス的に死亡フラグの香りを感じたところだが、その瓶に書かれたラベルにはリンゴ酢の文字が躍っていた。
何故リンゴ酢。
「意中の人にリンゴ酢をぶちまけると恋愛成就するそうです〜、雑誌に書いてありました〜」
そういってにこりと後輩は笑うがその笑みはは虫類ちっくでダメだ。この彼女は無表情な方が映えると俺は勝手に思っている。
というかぶちまけるってなんだコノヤロー。そんなおまじないがあってたまるか、むしろそれは呪術のたぐいだろ。
後輩の読んだ雑誌が何かは知らないがその雑誌の編集者とライターに最大級の不幸があるよう祈っておく。
「断る」
「大丈夫です、先輩が私を好きになれば結果オーライだと思います〜。恋に落ちるのは一瞬、だったら痛いのだって一瞬です〜」
「なんだその理屈! つーか痛いってなんだ!」
突っ込んだ瞬間後輩がつかつかと俺に近づき黙ってビール瓶、もといリンゴ酢瓶を振り下ろす。
「うぉ?!」
間一髪それを避ければリンゴ酢瓶は行き止まりの壁にぶつかり無惨に砕け散った。
辺りに酢の香りとさわやかな林檎の香りが広がる。
お前農家の人に謝れ。あとリンゴ酢をぶちまけるにしてももっとやりようがあるだろ。
「なんだこのサスペンス劇場は」
割れたリンゴ酢瓶を手にした彼女はぶっちゃけちょっと人殺しする五秒前である。
「いいえ純愛系ラブストーリーです〜」
「ねぇよ!」
「ちゃんとスィーツで甘い気分になれるように砂糖も持ってきてます〜」
そういうとリンゴ酢の時と同じようにごそごそとブレザーの背へと手を伸ばす後輩。
彼女はリンゴ酢に濡れた右手は使用できないため、左手に上白糖を取り出して見せた。500グラム入りである。
どうでもいいがリンゴ酢といい砂糖といい、そういうものはせめてリュックとか鞄とかに入れろよ。
「スィーツ違いだ」
「そうですね、失敗してしまいました〜」
今日中にやらないとダメなのに〜とつぶやくと後輩はしょんぼりと肩を落とした。
この辺は未だ小動物的で許容範囲なんだが。普段が普段なので絶対本人に伝えることは無いがそんなことをちらっと思いつつそろそろとその場を離れる。
「今日はあと367分ほど残ってますから、頑張ります〜」
溜め息一つで軽く復活した後輩はゆらゆらしながらうんうん頷いて自分を励ましている。
どうやらあと367分ほどは気が抜けないらしい。
スィーツなラブストーリーなんて嘘っぱちだ。
俺は心の中でリンゴ酢農家の人に謝りつつ行き止まりを後にした。
終わり
-------
某スレのお題で書いたけどお題勘違いして書いてた……
あれ?
どこが勘違いなんだ?
……ん、俺も何か勘違いしてるのか?
こういう後輩大好きだwww
とりあえず乙!
いや、お題がスィーツじゃなくて「スィート」なんだ!
スイーツなのかスイートなのかでも悩んだのに結局間違えたw
ん?
スイーツ=スィートじゃないのか?
ってか、スィートってなんだ?
よくわからなくなってきたぞ
別に、スイーツがスイートに置き換わっても違和感無いような。
実際、俺はスイーツの意味でスィート使ったし。
とりあえず、こういう後輩は当事者にならない限りは
皆笑って見てそうでアレだが、俺も好きだw
当事者じゃないからなw
215 :
1/2:2009/03/21(土) 03:20:20 ID:EguvQixZ
「あぁ、もう!」
雑誌、カップラーメンの空き容器、新聞紙、空き缶、ペットボトルに牛乳パック。
それらのものが雑多に詰め込まれたゴミ袋を見た俺は、思わず変な声を出してしまった。
「おい、ゆん! どういうことだ!」
「え、どうしたのしょーちゃん?」
俺に呼ばれて、キッチンに併設されているテーブルで、
俺お手製のオムライスを頬張っていた、古沙場弓(こさばゆん)が、
口いっぱいにオムライスを詰め込んでこっちに歩いてくる。
「おいお前、3Rって知ってっか?」
「う〜ん、リリカル・ロマンチック・リポビタン?」
「……」
驚くべきは一つも当たっていなかったことですらなく、
きっとリリカルとリポビタンは「R」ですらなく「L」であるということだろう。
「なにその魔法少女御用達の栄養ドリンクみたいなの」
「新商品?」
「どこのだよっ!?」
「小林製薬かなぁ」
「少なくともあそこのネーミングセンスではねぇよ!」
多分小林製薬の商品ならゲンキニナールとかそんな感じだ。
ってそんな事を話していたのではない。
「ってお前、ゴミのぶんべ……」
「小林製薬と言えばその直球なネーミングセンスで知られる企業じゃない?」
うん?
「さかむけをケアするからサカムケアとかさ」
「あ、あぁ?」
「私、ずっと思ってたんだけど」
「ほぅ」
「ユリナールって女の子が飲むと……」
「ならねぇよっ!? 期待したような結果は訪れねぇ!?」
「ちぇー」
弓はものっすごいつまんなそうな顔をしたのち、
残りのオムライスを片づけるべくキッチンの方へ……って待て。
「まだ用事は終わってないぞ」
「いやー、オムライス冷めるー」
猫舌で冷ましてから食べるくせに。
「ほら、このゴミ袋見ろ!」
「女の子のゴミを見るとかいやらしー」
「見なくて済むなら見たかないわ!」
それにこいつは本当に見られたくないようなゴミはこうやって捨てない。
それくらいのことは知っている。
216 :
2/2:2009/03/21(土) 03:20:49 ID:EguvQixZ
「お前、少しは環境のこと考えて分別するとかさぁ」
「あれ、実際ゴミ焼却場では一緒にして燃やしてるらしいわよ?」
「そうだとしてもだなぁ……」
「それにペットボトルとか牛乳パックだってリサイクルする方がコストかかるのよ?」
「ご近所の手前とかもあるだろうしさぁ……」
「だってしょーちゃんが分別してくれるし」
「うん、どう考えてもそれが最大の理由だ!!」
はんばヤケになりつつゴミを分別していく。
「ごちそーさまでしたー」
オムライスを食べ終えたとおぼしき弓が、
律儀にも食事終了のあいさつをこなす。
「おそまつさまでしたー」
「おやすみなさーい」
「待て、返答がおかしい」
「ほえ?」
何が? といった表情。
「今、土曜日の昼間だぜ?」
「日本で一番盛り上がってるのは、土曜日の深夜」
「だとしても! 学生の参加していい時間じゃねーよ!」
「参加するために寝るんじゃない!」
なんという間違った正論。
「どうすんだよ、今日出かける約束しただろーが」
「あー、言われてみればそんなのもあったような、なかったよーな」
「あるんだよ。ほらつべこべ言わず行くぞ!」
「うー、準備するから待っててー」
そう言って洗面所の方へ歩いていく弓の姿を見ながら溜息一つ。
ゆんは間違いなく気がついていないだろうが本日はホワイトデー。
バレンタインにゆんから何かを貰った記憶はまったくなく、
0に3をかけても0であるからして何かを返す必要はまったくないのだが、
今日が楽しい一日になればいいなぁ、とそんな事を漠然と思うのだった。
ホワイトデーに書いた、
バレンタインネタを、今さら投下
季節はずれの季節ネタってやーねー
なんというダメ娘。あったらいいなをカタチにする小林製薬にあやまれ!
こういう娘にかぎって減らず口が得意だったりするから余計にタチがわりーのだぜww
男は、なんだかんだで絶対間違いなくこういうやり取りが好きなはずだw
野球をやらなくなったのは、いつからだろう。野球を観るだけになり、
やろうと思わなくなったのは。
小中高と野球に打ち込み、高校では甲子園の土も踏み――だが、
それだけだ。そこで、自分がプレイヤーとして関わる野球は終わった。
何故終わったのだろう。今にして思う。
別に故障があったわけではない。レギュラーでこそなかったが、高校
では控えとして、代打や代走、代守として重宝された。
だから、だろうか? そう自問してみると、答えが返ってくる。多分、と。
――……レギュラー、結局取れず仕舞いだったもんなぁ。
やめようという意志があったわけではない。もう二度と続けるものか
という意志があったわけでは。でも、続けなかった。それ以来、二度と
やらなかったというのは、厳然たる事実だ。
それから十年という月日は、決して短いものではない。あの頃、ただ
ひたすら白球を追いかけるだけだった自分も、大学を卒業し、就職活動
を経て普通の会社に総務として勤務する毎日だ。仕事も地味ながら
やり甲斐があるもので、付き合っている女性もいる。
現状には概ね満足している。概ねだ……概ね?
――満足しきってるわけじゃ、ないんだよなぁ。
その語尾には、やはり多分という言葉がつく。
過去の自分がわからないように、答えが“多分”という言葉だったように、
やはり今の自分もわからない。“多分”という言葉をつけなければならない
程度には、わからない。
では、そんなあやふやな自分が、今、この瞬間抱いている気持ちは、
一体何だと言うのだろうか。
ギュッと掌を絞ると、木製のグリップがその掌に固い感触を返してくれる。
握っているのはバットだ。木製の、それなりに使い込まれた、古い物。
かつて、十年前自分が握っていたバットだ。十年間一度も物置から
出していなかったそれは、だが、それ故に十年前の自分を思い出させて
くれる。そして、その結果得た気持ちは、戸惑いや感傷ではなく、心に
何かが満ちていくという感覚――充足だった。
概ね満足している現状に欠けていた、一欠片のピース――
対峙している相手は、投手だ。俺がいるのは、バッターボックス。そして、
手にはバットがあり、頭にはヘルメットが乗っていて、あの頃と同じような
膝を軽く曲げ、脇を締め、肩の力を抜いた構えを取っている。
服は、急遽参加した為スーツそのままだが、それを除けば、そこにある
のはあの頃の空気だ。少なくとも、あの頃の空気に似た空気だ。
バットだけではない。この状況、空気こそが、一欠片のピースそのもの。
「……俺、好きだったんだなぁ」
今更ながらの実感が、口をついて出る。相対している投手にも、背後で
構える捕手にも聞こえないような、小さな声の呟きは、だがしかし俺の
耳には届く。実感として。事実として。
俺は、野球が好きだったんだという、今更ながらに気づく事実。
それを理由も無く気づかぬままでいた自分への嘲笑と、今更では
あるがそれに気づけた事に幸いを感じる微笑。その嘲り混じりの喜びは、
そのまま手指に力として伝わる。
投手が振りかぶって、片足を上げ、そして投げる。
投げられたボールは、角度から見てインハイを狙ったストレートだ。
あの頃の自分ならば、このコースのこの球は――
「……っぁ!」
――打てる!
やや鈍い、軟式ボール独特の音が響き、白球が空へ舞い上がる。高く、
高く舞い上がって……ポスッ、という音を経て、捕手のミットへと
収まった。
「……あちゃー」
キャッチャーフライ。だが、その結果に、俺の顔には笑みが浮かぶ。
今、思い出した。思い出せた。思い出させてくれたこの場、この状況への
感謝と、そして今後を思っての笑みだ。
もう、俺は忘れないだろう。例え頂上は取れなくても、例え何も賭かって
いない場であろうとも――俺はもう、野球をできる喜びを、忘れない。
終わり
ここまで投下です。
過去に打ち込んだものが脳裏を駆け抜けて泣けた。
色々な理由で疎遠になってしまった好きだったものに改めて出会った時って、すっごい感動するよね。
俺も学生時代の部活思い出した
今でもときどき、何となく素振りしちゃうんだよなぁ…
『ss』ってなんていう言葉の略だっけ?
なんか解釈にもよるらしいです
俺はショート・ストーリィだと思ってるけど、ここの
>>1だとショート・ショートだね
ありがとう
ここは流れからショート・ストップと言って欲しかった……
セガサターンだろjk
綾は初恋の相手であった。
幼い頃は誰もがするであろう、気を引くために靴を隠したり、机の引き出しに虫を忍ばせたり……。
綾が僕のことをよく思っていなかったことはわかっている。でもそれは子供ながらの恋心が成せる術であって、決して悪気があったわけではない。
なのに……。
諸般の事情により来月末日をもって、貴殿と当社との雇用関係を打ち切りますので、よろしく御配慮下さるよう御連絡申し上げます。
人事部長 高木綾
初恋多分なんも関係ねえwww
ある裁判所で画期的な装置が作られました。
「人間には犯罪誘発遺伝子が存在し、この判定方法を使えば簡単に凶悪犯罪者をみつけだす事が可能になります」
「判別率99.9%か、なるほどこれはすごい!」
さっそくこのシステムは裁判に取り組まれ、ベルトコンベアに乗せられた凶悪犯罪者達が次々と処刑されていきます。
「まさか大統領が犯罪者だったとは、この装置は本当に素晴らしい! 今日は1000人分の書類を持ってきたぞ」
「では早速データを入力します」
そういうと装置の開発者は書類の詰まったダンボールを抱え、裁判装置の中へと入っていきました。
「今日は1000人分です」
「作業が追いつかないよ、その辺に積んでおいてくれ」
装置の中では一人の男が書類に○と×をつけ、手前のレバーを引き犯罪者を処刑していきます。
「あぁ、こいつはうちの庭で犬を散歩させている男だ、死刑」
レバーを引くと男は粉々になりました。
「こいつは公衆トイレに並んでるときに割り込んだ男だ、死刑」
「こいつは……
あれ、なんかでじゃぶ
むかーしむかしあるところにダンスが得意なムカデ君がいました。
50本の足を変幻自在に操り、本能のまま踊るその姿をひとたび見れば誰もが虜になり、森のパーティでムカデ君が踊ればみんな釘付けになってしまいました。
しかしたった一匹、それを快く思わない生物がいました。蛙君です。
蛙君はムカデ君の素晴らしいダンスに嫉妬し、ムカデ君を貶めてやろうと悪魔の企みを企てました。
ある日蛙君は手紙を書きました。
『並ぶものなきムカデ様、あなたのダンスはまことに素晴らしく私は心酔しています。そして是非とも参考にさせていただきたいのですが、あなたはどのようにダンスを踊るのですか?
まず27番目の左足を上げ、13番目の右足を上げるのですか?それとも最初のステップは40番目の右足を踏み出して、それから3番目の足を上げるのですか?
お返事を心よりお待ちしています。蛙』
手紙を受け取ったムカデ君は、初めて自分がどのように踊っていたのか考えた。
最初はどの足を動かしてる?その次は?そしてそれからは?
こうして考えてるうちにムカデ君はダンスを踊れなくなってしまいました。
あれこれ読んだことある
「212年後に地球は確実に滅ぶ」
ある科学者によって発表された論文を、はじめは誰も信じなかった。根拠となる計算式があまりに難解で、誰も解こうとはしなかったのもあるが、一番の理由は、その科学者が黒人で、しかも無名であり、発表した日が4月1日であったからだ。
ところがが半年後、論文にあった隕石の姿が、新型宇宙lens式望遠鏡(ユニシス)によって捉えられると、世界は癌を告知された患者に等しく、誰もが青ざめて刹那沈黙した。
しかしながら212年後。もう、その頃には、今生きている者は隕石の衝突以外の理由で死んでいる。今の子供たちの子供たちも、おそらく同じ。だから、どう捉えて良いかわからなかった。
果たして200年後、地球からどこかの星へ移り住むことは可能であろうか。
一体何人が? いや、自分が乗るわけでは無いのだ。どうでもいい。恐れるべきか。悲しむべきか。我が身の幸運を神に感謝すべきか。
皆が混乱していた。この件をきっかけに派生し、世界に瞬く間に広まった宗教の教祖は言う。
「考えても仕方がない。備えるのはこちらの損。次世代に任せようではないか」
人類オワタwww
237 :
創る名無しに見る名無し:2009/04/27(月) 14:05:10 ID:r/9FyKeC
また微妙な年数を…w
次の世代はそれが当たり前すぎてさらに次の世代に託すなw
光も逃げ出す森の中。ある日の夕暮れのこと。
双子のリスのどんどんとぐりぐりと狼の俺様の三匹が
腹減った腹減った言いながらブナの木に噛り付いていると
「見てるほうが辛いからやめろ」と熊のベア吉に叱られた。ベア吉は背中に鮭を乗っけている。
「だったら食い物よこせ」と俺様は吠えた。
するとベア吉は俺様たちの目の前に、まだ濡れている鮭を放り投げた。俺様は鮭に飛びついて貪り始めた。
どんどんが「なんでくれるの?」と愛らしい声でベア吉に訊ねる。
「鮭は飽きた」
「じゃあ何を食べるの?」
「今は人間だな。鮭や蜂の巣なんてダサいぜ」
やめろ。
「人間ってどんな味?」
今度はぐりぐりがベア吉に聞いた。聞くなよ。
「人間は文明の味がする」
俺様は鮭を噴出しそうになる。
「文明の味ってどんな味?」
ぐりぐりはよっぽど人間の味に興味があるらしい。
「一言で言えば、鉄の味だな」
それは血の味だバカ。
「どんな人を食べたの?」
どんどんが聞いた。
「今日は婆さんを食った。鉄と少し薬の味がした」
確かにそうだった。
「おいしかった?」
「不味かった」
確かに婆さんは不味かった。
「ごちそうさま」
これ以上は耐えられない。さっさとここから離れよう。
「じゃあなリス共」
どんどんとぐりぐりはハモりながら「ばいばーい」と前足を振ってきた。
俺様は尻尾を振ってそれに応える。日はすでに落ちていた。
俺様は森の奥へと歩き出す。奥に行くほど闇は濃くなる。
人間は文明の味がする。ベア吉の言葉が俺様の体で燻る。
俺様は茶色い地面に口を擦り付けて顔を綺麗にする。口の中はまだ鮭臭い。
そうだ河で口を洗ってこよう。ついでに風呂も済ませよう。
すると森の中で何かが鳴いているのに俺様は気付く。
俺様の腹じゃない、さっき鮭喰ったし。それに雷でも鳥でもない。
いや、やはり鳴いているのは俺様の腹だ。しかし鳴いているのは腹の外側だ。
腹にくっきり残っているこの一筋の古傷が鳴いているのだ。
あのバカ熊、思い出しちまったじゃねえか。
気がつくと俺様は駆け出していた。水へ河へと走り出していた。
河に着くなり俺様は固そうな水面に首突っ込んで、口の中をぶくぶくぶくさせた。さっさと失せろ鮭の味、今はそういう気分じゃないんだ。腹の古傷はまだ鳴る、ズキンズキンと鳴く。俺様はそれをかき消そうと、またぶくぶくする。
ズキンズキンうるせぇよ。今更鳴くな。
文明の味。真っ赤なあの娘を食ったときは、そんな味はしなかったけどな。
(了)
文学だなぁ。
うまいなぁ・・・。
最後の方でやっと気づいてハッとしたよ。
おおう、一読では気付かなかったw あの狼かw
弟が愚痴をこぼしながら家に帰ってきた。
「ぼくはケチなのかなあ」と、呟きながらわたしの背後に現れる。わたしは雑誌を捲る手を止めて、ぴょこんとソファーに正座した。
大学のサークルの付き合いで、焼肉を食べに行ったときのやりとりを不貞腐れながら彼は話す。
「同じ血を分けた姉弟だから、お姉さんに何でも話しなさい」
わたしたちの仲間に入りたかったのか、部屋の壁掛け時計は自重することなく、深夜の合図を鳴らしていた。
「新入生たちは『先輩の奢りだから』って、どんどん注文してくるんだよね」
食べたい盛りの若者たちだ。大学生というだけで、何もかも許される存在だと信じてやまないのだろうか。
かっとして食った、何でもよかった、未だ反省していない。
そんな言葉がわたしに聞こえてくるではないか。
「新入生は気持ちよく飲み食いしてくれるから、先輩としてそれはそれで嬉しいんだよ。ぼくもつられて上ロースたのんじゃった」
「わたしはまだ食べたことないのに!!」
「はいはい。でね、お会計はぼくら先輩が払うからさ、同学年のヤツ同士で割り勘したんだよ」
にんにくのにおいをさせながら、弟は上着を脱ぐ。シャワーにでもかかろうということか。食事の後だから、しっかり歯磨きして欲しい。
わたしたち姉弟が親から言いつけられた掟なのだから、幾つになっても守るべきものだと思う。
ふんふんと、わたしはわたしで雑誌を捲りながら弟の話を聞き続けた。
「計算したら、割り勘の端数が出てしまってね、どうする?って、みんなで話してるうちにクラスの前川がすっとその分を出したんだ」
「へえ、よかったじゃん。儲けもんだね、ラッキー」
「でもね、一緒にいた女子のヤツラがさあ、『太田くんも前川くんを見習って、すっと札ぐらい出しなさいよ』って…」
「ムカつく小娘だねえ」
わたしは前川という男に会ったことはないが、何となく虫の好かないやつということだけは分かった。
おまけに弟の前で得意気な顔をして、女子大生どもにチヤホヤされているところまで想像してしまったわたしはダメかもしれない。
「別にぼくも端数分を出してもよかったんだけどさ、ああいう言われ方をするとぜったい出したくなくなるんだよね…」
「そうだよね。あんたはケチじゃない」
十字架のネックレスを外し、浴室に向かう弟の背中は小さく見えた。
臆病者が貧乏くじを引き、考え無しの無鉄砲がもてはやされる。
そんなもんだよ、と腐る弟をたしなめながらわたしはパジャマに着替えた。
余程ケチと言われたのがショックだったのか、シャワーを浴びた弟はそそくさと自分の寝室に消えた。
そんなもの気にしなくていい。わたしは弟がけっしてケチではないことぐらい分かっている。
銭なんて、所詮人間がこしらえた泥団子だ。使い方が荒いとすぐに壊れてしまい、だからと言って丁寧に扱うと
扱っている人間が馬鹿にされるという、扱いづらい泥団子。そんなものに価値を見出す者どもはせっせと泥を集め出す。
弟の寝室を覗くと既にぐっすりと布団に包まる姿が見えた。
わたしは弟の側で添い寝をして、気付かれないようにそっと彼の首筋をくんくんとにおいをかいだ。
すこしにんにく臭い。歯磨きはチキンとしているようだが、これ以上は望まないし、わたしには慣れっこだ。
弟の髪を掻き揚げ、そっとわたしのくちびるを近づけて白い歯で甘く首筋を噛む。弟はうんうんと軽くあえぐ。
きみはケチではない。けっして出し惜しみをするような器の小さい人間ではない、と高鳴るわたしの鼓動とともに耳打ちした。
やがて、わたしはすっと立ち上がり、歯磨きのために風呂場に向う。食事の後の歯磨きは小さい頃からの習慣だ。
きょうの弟の味は疲れているのか乳酸の味がした。疲れているときはいつもそうだ。それでも、弟のものはいつも美味しい。
歯磨きの前にもう一度ぺろりと舌なめずりをして、弟の味との別れを惜しみながら洗面台に立つ。
わたしの牙が歯茎と同じ色に染まっていた。きょうも弟の恵みに感謝して「ごちそうさま」と祈りを捧げる。
にんにくだけは勘弁してくれと、今度弟に言っておこう。ネックレスも別のヤツに変えて欲しい。
だけど、彼をケチだとなじるヤツラはなにさまだ。
わたしに出し惜しみなく血液を飲ませてくれる弟なのに。
おしまい。
ヴァンパイ姉キタコレwww
弟はちゃんと知ってるんかいなw
一人の男がゴム工場の見学に来ています。
最初の場所では彼は哺乳ビンの口の部分を作る機械を見せられました。機械は「シュー、ポン!」という音を立てています。
「この”シュー”という音はゴムが鋳型に挿入されている音です」とガイドの人が説明します。
「ポンという音は哺乳ビンの口の部分に穴を針で開けている音です」
その後、見学のコースはコンドームを作る場所に来ました。機械は、「シュー、シュー、シュー、シュー、ポン!」 という音を立てています。
「ちょっと待った!」と見学している男が言います。「”シュー、シュー”って音は分かるけど、たまに起きる”ポン!”って音はなんなんだ?」
「ああ、あれは哺乳ビンの口と一緒だよ」とガイドの人が言います。
「4つに1つのコンドームにああやって穴を開けているんだ」
「それじゃ、コンドームとしては良くないじゃないか!」
「そうだけれど、哺乳ビンの口の売上にはとても良いんだよ」
>>239-240 このお話いいね、好きだ
動物たちそれぞれのキャラの立ちかたといい、名前のいいかげんさといいw
俺様のモノローグもいいかんじ
>>247 アネクトード的だな、うまいこと言いおって
251 :
牛乳パック:2009/05/14(木) 20:30:13 ID:RB0C1caA
朝目覚めたら牛乳パックになっていた。辺りを見まわすと、見覚えのあるオレンジジュースや野菜ドレッシングがある。どうやらここは我が家の冷蔵庫のようだ。それにしても寒い。早く出してくれ!
突然冷蔵庫のドアが開いた。妹の腕が伸びてきて、俺を掴む。妹よ、気付かないのかい。お前のたった一人の兄さんだよ!
妹は俺を傾け、マグカップに注いだ。次の瞬間、俺の背に思わず声を上げさせるほどの寒気が走った。気持ちいい。なんて快感なんだ。もっと傾けてくれ……。マグカップに白い液体が注がれる。一気に飲み干す妹を眺めながら、俺は思った。
もう人間には戻れないんだろうな。
禁断の快感を覚えてしまったか・・・w
悠長すぎる。中身なくなったらペチャンコに潰されてゴミ箱行きなのに
いやいや、妹が手ずからリサイクルして
手透きのはがきにしてくれるかも……
最後に牛乳パックのまま、親父が残りを飲み干しました。
「マンションじゃなくも平気よ。アパートでいいわ」
同棲する事になったとき、そう彼女は言った。愛があればいいの、とほほえむ彼女を見て、俺は嬉しくなったものだ。
倹約家の彼女はとどまる事を知らなかった。
「携帯がなくても平気よね。公衆電話があるもの」
「テレビがなくても平気よね。ラジオがあるもの」
「車がなくても平気よね。電車があるもの」
かくして俺は、このハイテクの時代に昭和の生活を強いられている。それもこれも俺への愛だと思っているから始末に悪い。
俺は我慢が出来ず、別の女をつくり夜の街で遊ぶようになっていた。
ある晩帰宅した俺をいきなり彼女は罵倒した。浮気がばれたのだが、俺も開き直った。
「お前なんかいなくたって平気さ。ほかの女がいるからな!」
彼女は青くなった。
ざまあみろ。お前がいつも言っているセリフだ。
彼女が泣きながら、台所で何かやりだした。後ろから覗き込むと、彼女は血まみれになって自分の手首を切っている。
「うわっ!」
彼女が振り返りざま、俺の胸に包丁を突き立てた。
「現世で結ばれなくても平気よ。来世があるもの」
よくまとまってるなーw
>>257 おうふ、これは良作ww
淡々とした語りが怖ぇ
それは人食い狼が出没するという噂が近隣に広まり始めた頃のお話。
あるところに赤ずきんと呼ばれる年端のいかない女の子がいました。
素直で優しい赤ずきんは町のみんなからとても大切にされていました。
ある日、赤ずきんが庭で遊んでいると、家のほうからお母さんの呼ぶ声が聞こえます。
「赤ずきん、悪いのだけれど、おつかいを頼まれてくれないかしら?」
「うん、いいよおかあさん!」
一も二もなく元気よく返事をする赤ずきんに、お母さんは微笑み、しかし少し心配そうな顔を作ります。
「じゃあ森のはずれのおばあさんのところにこれを届けてきてね。近頃は怖い狼が出るらしいから、ちゃんと寄り道しないでまっすぐおばあさんの家に行くのよ?」
「はい! いってきまーす!」
フルーツの入ったかごを落とさないようしっかりと腕にかけ、赤ずきんは手を振りながら歩いていきました。
大人でも薄気味悪さを感じる森の中、赤ずきんは悠々と鼻歌を歌いながら進んでいきます。
「おおかみなんてなーいさ、おおかみなんてうーそさっ」
怖い狼、というものにいまいちピンときていなかった赤ずきんはワクワクしながら楽しげに歌い続けます。
これではかっこうの獲物です。狼に食べにきてくださいと言っているようなもの。
そう、赤ずきんが狼に見つかるのに時間はかかりませんでした。木々の合間から長い口とぎょろりと鋭い目が覗きます。
「ありゃあ、とてもうまそうな娘だな。ぐへへへへ。この先には確かばあさんが一人住んでたな。ようし」
狼はいやらしく笑い、赤ずきんに気づかれないよう先回りしていきました。
「こんにちは、お嬢ちゃん」
突然聞こえた声にびっくりして赤ずきんは立ち止まります。
「ふぅ、びっくりしたー。だあれ? もしかしておおかみさん? でもおおかみさんにしては声が高いわね?」
「私はおおかみさんじゃないよ。かわいいかわいいうさぎさんだよ。それはともかく、お嬢ちゃんはこんな不気味な森の中で何をしているんだい?」
「わたしは、おかあさんのおつかいでおばあさんのおうちにいく途中なの」
「そうなのかい。でも、この辺りは最近怖い人食い狼が出るんだよ? お嬢ちゃんは怖くないのかい?」
「ぜんぜんへいきよ。おおかみが出ても話せばわかってくれると思うの。わからなかったら、めって怒って更生させてやるわ」
「それは頼もしいね。じゃあ勇気のあるお嬢ちゃんにいいことを教えてあげよう。そこの道を少し行ったところにすごく綺麗なお花が咲いてるんだ。行ってみるといいよ」
「でも、おかあさんが寄り道はだめだって……」
「そのお花を持っていったらおばあさんもとても喜ぶと思うよ。それなら少しくらい寄り道したってきっと怒られないよ」
「そうかな。ありがとう、うさぎさん! また今度いっしょにあそびましょうね!」
「ええ、是非……ね」
姿の見えない自称うさぎさんの口車に乗った赤ずきんは、おばあさんの家へ続くのとは違う方向の道へと入っていくのでした。
こんこん、と木の扉をノックする音が聞こえます。
「遅れてごめんなさい。おばあさん、いますか?」
「赤ずきんかい? 今具合が悪くてね、悪いけど勝手に入ってきてくれるかい?」
「分かりました」
扉が静かに開閉する音が聞こえ、ベッドの上で扉を背に布団をかぶっていたおばあさんは心の中でいやらしく笑います。
そう、まんまと先回りした狼はすでにおばあさんを食べ、入れ替わってしまっていたのです。
笑い声とよだれを必死に抑えているうちに、そんなことは夢にも思っていないであろう赤ずきんが近づいてくる足音が狼の耳に届きます。
「いやぁーいつもすまないねぇ、赤ずきん」
不自然に高い声で狼は言いました。
「いいのよ、おばあさん。……あら? ねえおばあさん、なんだかお耳が大きくないかしら?」
「それはね赤ずきん、お前の声をハッキリ聞くためだよ」
「声も男の人が無理して出しているような感じに聞こえるけれど」
「それはね赤ずきん、喉の具合が悪いからよ」
「じゃあ、おばあさん、その布団からはみ出してる狼みたいな大きな口はどうしてなのかしら?」
「それはね赤ずきん。…………お前を食べるたぁ──」
ごりっ
布団を勢いよくはねのけ赤ずきんに食らいつこうとした瞬間、狼は口の中に押し込まれたひんやりとした違和感に思わず動きを止めました。
「……こう言いたそうだな。“ねえ赤ずきん、なぜ白いずきんをしているの?”と。私がなぜ赤ずきんと呼ばれてるのか、教えてやろうか? それはな」
頭にかぶった白いずきんを取り、それを呆然としている狼にかぶせながらその少女は言いました。
「服が汚れるのが嫌でかぶせた白いずきんが獲物の返り血でスカーレットに染まるからだ」
重い破裂音が響き渡り、狼のかぶった白いずきんは少女の予告どおり真っ赤で毒々しい緋色に染まりました。
白煙が上がるリボルバーを口から引き抜き、ずきんで血をぬぐい懐に仕舞います。
「ち。間に合わなかったか」
狼のふくれた腹を見ながら苦々しく呟いていると、小屋の扉が勢いよく開かれました。
「おばあさんっ……!?」
少女が視線を向けると、そこには片手にフルーツのかご、もう片手には綺麗な花をたくさん持った赤ずきんをかぶった女の子が息を切らせ立っていました。
目の前の光景を見、赤ずきんは絶句することしかできませんでした。
「ごめんな、お嬢ちゃん……おばあさん、助けられなかった」
少女の言葉を理解したのか、赤ずきんは力なくその場にへたり込みます。
会話もなく、少女が罰が悪そうにしていると、ふいに背後から布を引き裂くかのような音が聞こえてきました。
狼が生きていたか、と少女が振り向いてみると、狼の腹から鋭くとがったナイフが飛び出していました。
缶詰を開ける要領でさばかれていき、一周するかしないかというところでナイフがピタリと止まります。次の瞬間、中から胃液にまみれたおばあさんが飛び出してきました。
「ぜぇ、ぜぇ。ちょいと、勝手に殺さないでおくれよ」
「ば、ばあさん生きてたのか!」
「当たり前さね。あんたが来るまで腹の中で待ってたんだよ」
「お、おばあさぁんっ……!!」
ベタベタなのを気にすることもなく、泣きじゃくって抱きついてきた赤ずきんの頭をおばあさんは優しく撫でます。
「ま、なにはともあれ、一件落着か」
こうしておばあさんも赤ずきんも無事助かり、近隣を騒がせていた人食い狼の一件は終わりを告げたのでした。狼の駆除には是非、『ウルフハンター赤ずきん』をごひいきに。
いろいろと酷いな、おいwww
あ、無論いい意味でねw
どうでもいいが、赤頭きんbeforeの声で気づかんかったんか狼はw
庭で穴を掘っていると、地面の中に何かが埋められているのを見つけた。
それはボロボロに錆びたクッキーの缶だった。中には人形や、おもちゃの宝石や、日記帳や、カセットテープが入っていた。日記帳には少しだけ面影のある筆跡で、どこにでもいる少女のどこにでもあるような日常が綴られていた。
カセットテープを再生してみた。少しだけ面影のある声が語り始めた。
「このタイムカプセルを開けるとき、私はいくつになっていますか? お嫁さんになるという夢が叶ってるといいと思います。
将来このテープを一緒に聞く人が、素敵な男の人だといいと思います。その人とおばあちゃんになるまで、幸せに過ごしていたいです」
僕は殺した妻を埋めることを思いとどまり、警察に自首した。
うわー・・・取り返しがつかない・・・
切ないなぁ・・・
泣いた
あうあう
これは…きっついなぁ…
「もううんざりだ!」突然、俺の眼が叫んだ。
「あんたの見たがるものといったらいやらしい映像ばかり。 僕はもっと美しく芸術的なものを見たいんだ。
今日限りであんたの眼をやめさせてもらう」眼はポロリと床に落ちた。
「それを言うなら僕だって」今度は耳がつぶやいた。
「安っぽい歌謡曲ばかり聴かされるのは苦痛だよ。クラシックを堪能したい」
「だったら君も自由になればいい」床を転がっていた眼が、俺の耳めがけて言い放った。
「僕たちにも所有者を選ぶ権利があるはずだ」それを聞くなり、耳は意を決して落下した。
「こいつといったらロクに他人と口をきかない、おまけに口臭も酷いもんだ」
「その口臭を毎日嗅がされる僕の身にもなっておくれよ」口と鼻が立て続けに落下した。
「毎日洗ってくれないせいで不潔極まりない。おかげで仲間もずいぶん減った」
「めったに外に出ないもんだからすっかり弱っちまったよ。立っているだけで辛い」
「まだ20代だというのに、このたるみ具合はなんだい?」
「汚いものばっかり握らせやがって、畜生」
その後も身体の造反はおさまらず、俺に対する罵倒が延々と続いた。
ついに俺の身体は、脳を残すのみとなったかのように思われた。そのとき、
「おとうさん、おとうさん」一つの小さな器官が俺に話しかけてきた。
「おまえはどうして俺を見捨てないんだい?」脳だけになった俺はそいつに問いかけた。
「あなたはわたしを大事にしてくださったじゃないですか」そいつは答えた。
「一度も本来の使用法を試すことがないほどに……つまり、箱入り息子ってやつですね」
ダジャレ、しかも下ネタじゃねえかよwwwwwwwそんな予感はしてたよwwwwwww
アホスwwwwwwwwww
ひでえwww
なんぞこの着想www
おもしれ〜! www
オチは下ネタだが、身体が造反して離脱して行くって発想はすごい。
感服致しました。
「最近変な夢ばかり見て、睡眠不足に悩まされてるんです……。”好きな夢を見られる薬”なんてありませんかね?」
「ありますとも。この薬を睡眠の直前に飲めば、誰でも好きな夢を見ることができます。……ただこの薬には問題がありまして」
「何ですか?」
「飲んでから五時間は絶対に眠れなくなります」
「それじゃ、まったく意味が無いじゃないですか!」
「はい。ですから、殆どのお客様はこれを不眠薬としてお買い求めになります」
意味ねえw
無茶をいうw
284 :
Mr.後困る:2009/06/27(土) 02:32:27 ID:tLdMFGCM
長寿ダービー
神々が娯楽の為にダービーを始めました
今から生まれる人間の内誰が一番長生きするかを当てる賭け事です
だが勉学の神、力の神、商売繁盛の神、美しさの神の4柱はイカサマで
生まれる人間に自分の力の一部を与えました
勉学の神は賢い人は長生きする方法を見つけると思い賢い知性を与えました
力の神は力強い人は何があっても自分の体一つでやっていけると思い怪力を与えました
商売繁盛の神は大金を稼げれば長生きできると思い商才を与えました
美しさの神は美しければ庇護され長生きできると見る者全てが羨む美貌を与えました
無理矢理参加された死の神は死以外何も持っていないので何も与えませんでした
それからしばらく経ち
勉学の神「あの子が賢すぎて人生を先読みしすぎて絶望して自殺したよ」
力の神「あいつ皆から頼りになりすぎて過労で死んだ」
商売繁盛の神「ウチのは札束の山に埋もれて窒息死、お前のはどうした」
美しさの女神「ストーカーに殺された・・・・・」
力の神「かなり力を使ったのに全員同時に死んで掛け金が戻ってきただけで大損だ」
勉学の神「やはりイカサマはいけませんっていう事ですかね・・・」
死の神「何で元締めの俺が操作したって思わないんだ?」
それ一番イカサマじゃねーかwww
テラ直接ッw
おもれーなw
男はついに意を決すると女に声を―
「待て、落ち着け。勢いだけの第一声、そいつがまずかったせいで今までどれだけ失敗してきたと思ってる?」
「馬鹿!どうして止めるんだ。こういうのはタイミングが全てなんだよ。周りを見てみろ。初対面同士なんだ、きっかけをつくった奴が圧倒的に有利なんだよ。」
「で、でもさ、それで変な顔されたりしたら…」
「別にいいじゃない。どうやったって、どうせ上手くいきやしないんだ。」
「そんな事はない。私が言いたいのはだな、ここは冷静に…」
「おいおい!このシチュエーション!きたんじゃないの!きたんじゃないのこれ!」
「貴様は黙ってろ!お前らのその意気地のなさが駄目なんだよ。冷静に考えてと言うなら尚更、この機を逃すわけにはいかないだろうが。行くぞ。」
「ち、ちょっ…とっ…!」
「えぇい離せ!はっ…」
グラスから滴り落ちた結露がややもテーブルを濡らし、そこに落ちた煙草の灰がジュウと音を立てた。しかし迷惑を被る人間などもはやなく、わずかな視線が彼を辱しめたのみであった。
光が満たされた場にいて尚、男は夜の闇に包まれていった。
「お集まりの皆さん、それでは私の研究の成果を発表しましょう。」
「卵…。卵がどうかしたのかね。」
「この卵をこの高さから床に落とし、私が開発した緩衝材で割れる事なく見事受け止めてごらんにいれます。」
「なんだその程度の事。これまでの…」
「これがその緩衝材です。」
「なんと、こんなに薄いのかね。」
「そうです。従来の半分以下の厚さにする事に成功しました。理論上は、ある程度力を込めて投げつけても大丈夫なはずですよ。」
「これはすごい。君、一体どうやってそんな事を可能にしたのかね。」
「はは、現段階ではお教えできませんな。飽くなき研究、努力…何よりも私は幸運でした。」
「これが実用された暁には…」
「そう焦らず。まずは先の通り、ご覧に入れましょう。私の開発した緩衝材を敷き…落とします。」
卵は心地よい音を立てて割れた。
「あ。」
だめじゃんw
最高に吹いたw
ひでえっすよwww
293 :
289:2009/06/30(火) 17:46:19 ID:8s434D/k
「はいはい、いい席あるよ、お兄さんどうだい最前列。今あるチケットなら買い取ってあげるよ」
「ほんとかい、2枚都合できるかい」
「勿論だとも。さあさ、こいつでVIP席ご招待だ」
「よっしゃ姉さん、さすが見る目があるね。今日はこうだ、堅い堅いと言われてるがそうでもない。デカイ不安があるのさ。倍率ほどの開きがない以上、当たっても儲けの少ない本命を買う理由なんざない。そこでこうだ…」
ワー ワー
「さあ始まりました本日の質疑応答。あなたの夢は何ですか、私の夢は政治家が政治をしてくれることです」
「総理、総理の仰る改革とは現状あるもの全てを否定することなのか」
「私はそんな事は思っておりませんし、発言した覚えもありませんが。何か〜、改革の流れを止めたいがためにあることない事でっちあげてるような、私にはそう感じられますがねぇ。」
ワーワー 「馬鹿余計な事いうな!」「下手に攻めるなっ、守れっ」
「これは意外。いったいった、総理がいった、攻めにうって出ました」
「ところで総理、今週の『失言?ソーリー!』のコーナーに入りますが…」
ワーワー
「あっと野党もやってしまった。馬鹿はお互い様なのか〜。解説のタレント議員さん」
「ほんとにねー、お互い悪い所ばかり見せてねー。ところで次の選挙どこから出ればいいのかしら」
「さすがの関心のなさです。さあ国会シリーズ2009、まだまだ熱戦は続きます」
ワーワー
294 :
Mr.後困る:2009/07/01(水) 14:08:02 ID:RCy975tJ
靴
男「すいません、右足と持ち合わせが無いので左だけ売って下さい」
店員「駄目です、片方だけじゃ売れません」
女「その片方、私が買います」
男「女、片方だけじゃ意味無いだろう」
女「じゃあちょっと待ってて」
数分後
女「足切ってきた」
男「正気か!?」
女「いいの・・・貴方と同じ境遇で生きられるんだから・・・」
男「・・・・・女」
女「・・・・・何?」
男「右足切っちゃ駄目だろう、靴を分け合えないじゃないか」
295 :
Mr.後困る:2009/07/01(水) 14:24:20 ID:RCy975tJ
新ジャンル「自分以外全員渡辺」
朝礼
渡辺「男君おはよ〜」
男「おはよう渡辺」
渡辺「先生〜おはよ〜」
渡辺先生「おはよ〜、じゃあ出席とるね〜、渡辺さん」
渡辺達「「「「「「は〜い」」」」」」
渡辺「男く〜ん」
男「はい・・・」
昼休み
渡辺A「男君はぁ?」
渡辺B「如何したのぉ?」
渡辺A「お弁当忘れたからぁ、分けてもらおうと思ってぇ〜」
渡辺B「じゃあ、私の・・・あれあれ〜私のお弁当が無いよぉ」
渡辺R「男く〜ん」
男「他の奴らの分け過ぎてもう無いぞ」
自宅
母渡辺「お帰りぃ男ぉ」
姉渡辺「男が居なくて寂しかったよぉ」
妹渡辺「早くご飯食べよぉ」
母渡辺「あれあれ、ご飯が炊けてないよぉ?」
男はいっそ自分も渡辺になれればと思いながら
ソファー渡辺に腰掛け、TV渡辺の渡辺チャンネルの渡辺行進曲を聞きながら
静かに目から涙渡辺を零した
渡辺さんの口調がおかしかったらすいません
296 :
無限ループ:2009/07/01(水) 16:03:39 ID:+ohyMkLM
「漫画家がよく言いますけど」
「うん」
「キャラが勝手に動いてくれる物語というのは面白い訳です」
「なるほど」
「そこで、キャラを自動生成後、人格をシミュレートして、キャラが勝手に動く物語生成装置というものを作ってみました」
「うーん……でも、キャラが立ってないと物語は面白くならないんじゃないの?」
「立っているキャラというのは、印象に残るキャラということですよね?」
「正確にはどうかな……まあ、似たようなもんかも知れんけど」
「似たようなもんです。という訳で、自動生成したキャラ達にお互いを面談してもらい、印象に残ったキャラを、物語のキャラとして選んでもらいました」
「シミュレートされた人格達によって選んだのか。本物の人間と判断基準が違うのでは?」
「違うかも知れません。でも、"似たようなもん"かも知れません。実験してみる価値はあるのでは?」
「……あるかもね。で、その結果は?」
「これから動かすところですよ。あなたに一緒に見てもらいたかったから」
「うほっ、嬉しいこと言ってくれるじゃないの」
「……じゃあ、動かしますね、そこのディスプレイに文章が表示されますよ」
「分かった」
やがて、ディスプレイには以下のような文字が表示され始めた。
『「漫画家がよく言いますけど」
「うん」
「キャラが勝手に動いてくれる物語というのは面白い訳です」
「なるほど」
「そこで、キャラを自動生成後、人格をシミュレートして、キャラが勝手に動く物語生成装置というものを作ってみました」
……
また来たのかよ。
だから、言ったじゃないか。確かに俺はあの日部活を休んださ。でも部室を荒らしたりなんかしちゃいない。
俺にはアリバイがあるんだよ。よし子、あのよし子だよ。そう、あいつ。あいつと一緒に別の場所にいたんだよ。
よし子もそう言ってた?それなら何の問題もないじゃない。あの子が嘘をつくような子かよ。まぁ少し馬鹿な所はあるが、嘘をついたりなんかしない。
その通りだろう。ほら、ほら見ろ。
なに、その時何をしてたか?
い、いや、ほら、あいつ馬鹿だから、な。その、あれだ、結構ホラ吹きな所あるんだよな、前から思ってたけどさ。はは。
おい、違うって、俺は無実だって。
「この仮想空間では、行動範囲を日本に限定する事により、予測乖離率を
従来製品の3分の1以下(当社比)まで低下させる事に成功……また、サ
イトから配信される追加パッチを強化する事で、N.S.Sも大幅に改善され…
…市民AIはステレオタイプモデルですが、それにより市民一人当たりのデ
ータ量のスリム化が図れ、現実とほぼ同等数の人口を……」
僕は電車に揺られながら、先程購入した仮想空間ソフトのパッケージを斜
め読みしていた。そこには、購入した店で延々と繰り返し聞かされた内容
以上の事は何も書かれていなかったが、そんな事は僕にとってどうでも良
かった。僕はそのパッケージに、最寄り駅に到着するまでに持て余すであ
ろう数分のうちの、ほんの何割かの退屈を緩和してくれる以上の事は求め
てはいなかった。実際は、そんな謙虚な期待にすら答えてもらえなかった
のだが。
期待はずれの箱をリュックの中にしまうと、僕はそのリュックの中から1枚
のディスクケースを取り出した。透明なケースの中に、何の特徴も無い普
通のディスクが入っている。窓からの太陽光を浴びて規則的な反射を繰り
返すそのディスクは、他の人から見れば先程のパッケージと大して変わら
ない程度の(もしくはそれ以下の)興味しか呼び起こさないものであろうが、
僕にとってそれは何時間眺めても飽きない、とても大切で、とても愛おしい
存在だった。
ディスクのラベルが貼ってある部分を見つめ、ケース越しにそっと指で触れ
る。僕のこの動きをモーションキャプチャーで解析すれば、まるで恋人の手
にそっと触れているような動きだと認識されるかもしれない。
自分の世界に入り込みすぎてしまい、ラベルに書かれている文字を思わず
口に出して読んでしまいそうになったが、駅到着を告げる車内アナウンス
がタイミングよく流れたため、何とか自らを現実に引き戻す事ができた。も
し車内アナウンスが少しでも遅れていたら、僕は他の乗客から好奇の眼差
しを1ダースほど突き立てられていただろう。
この、槍に見立てた眼差しのイメージがまだ心のどこかに残っていたのか
どうかは定かではないが、僕はなぜか、何も無い空間を手で払いのけるか
のような動作をしてしまい、その動作を誤魔化すように早足で最寄り駅の
ホームへと降りていった。
初夏を思わせる気持ち良い風が目の前を吹き抜けていったが、それに感
銘を受ける心の余裕を持ち合わせていなかった僕は、ノーリアクションで改
札をくぐり、家路を急いだ。
僕が彼女と出会ったのは、2年前の春の事だった。当時まだ大学生だった
僕は、いつも通っていた図書館に新しく転属してきた彼女を見て、一目惚
れしてしまった。美しく艶やかな黒髪、吸い込まれそうな白い肌、そして眼
鏡の向こうから微笑みかける優しい瞳……。どれをとっても完璧だった。理
想の異性像を映し出す立体ホログラムが開発されたとしても、彼女と1ドッ
トのズレも生じないように思えた。
それまでほとんど女性と接した事の無かった僕は、デートに誘うどころか、
彼女にまともに声もかけられないような状況だった。唯一出来る事と言え
ば、窓口で彼女に本の検索を依頼する事くらいだったが、たったそれだけ
の事が他のどんな事よりも嬉しくて、図書館に通う回数がそれまでの3倍
になった。
しかし、いつまでもこのような停滞した状態ではダメだと思い立ち、ある日
思い切って彼女に声をかけた。
「す、すみません……」
彼女はいつものように笑顔で対応してくれた。
「何かお探しですか?」
僕は、今までの人生で使わずに(使えずに)ストックしていたありったけの
勇気を総動員して、昨日徹夜で考えた台詞を口にした。
「つ、次の土曜日に、あなたを映画に誘える方法が書いてある本は、あり
ますか?」
僕の発した言葉が想像の範疇を超えていたかのように、最初はきょとんと
していた彼女だったが、数瞬後にはもういつもの笑顔に戻っていた。そして、
「少々お待ちください」
と、いつもと同じ対応で返答し、そしていつもと同じように端末を操作し出し
た。静寂の中、彼女の打つキーボードの音だけがカタカタと響く。いつもと
変わらぬ風景。しかし、僕の周りの空気だけは、いつもより何倍も重く感じ
られた。
その時程激しく後悔した事は、それまでの人生で一度も無かった。寝坊して受験に失敗した時も、徹夜で完成させたレポートをデリートしてしまった
時も、これに比べたら些細な事のように思えた。彼女が端末を操作し、検
索結果をメモして渡してくれるまでの時間が、永遠のように思えた。何度も
逃げ出したくなったが、ここで逃げ出してしまえば本当に二度と彼女に顔を
合わせることが出来なくなると思い、何とか踏みとどまった。
「残念ですが、当図書館にはご希望にそえる書籍は無いようですので、宜
しければこちらにお問い合わせください」
彼女が差し出したメモを、僕はなるべく彼女の顔を見ないように受け取った。
きっと僕は泣きそうな顔をしていたに違いない。メモに視線を落とす。そこに
は、どんな断りの文句も、誹謗中傷の言葉も書かれていなかった。そのメ
モに書かれてあったのは、彼女のフルネームと、二つのハイフォンで区切
られた11桁の数字だけだった。ふと顔を上げると、そこには彼女の少し恥
ずかしそうな笑顔があった。
その日を境に、何の面白みも無かった僕の世界は、楽園となった。
2週間ほど前、僕は彼女と喧嘩をしてしまった。
ほんの些細な内容だったが、付き合いだしてからもう丸2年が過ぎようとし
ている今の今まで、大小問わず喧嘩は一度も無かったので、少なからずシ
ョックを受けた。
友人からは、付き合っている恋人同士は普通喧嘩をするものだと聞かされ
ていたが、僕達二人の関係は、普通のカップルとは比べ物にならないくら
いに深い愛情で結ばれていると確信していたので、そういう類の話は今ま
で歯牙にも掛けなかった。
しかし、実際に喧嘩が起こってしまった今となっては、僕が抱いていたその
確信は、単なる幻想であったと認めざるを得なかった。
僕がそのような幻想を持つようになったのには理由があった。それは、ある
種の畏れから逃げ出すためだった。その畏れとは、「女性が何を考えてい
るのかが全く分からない」という気持ちを原因とする、異性関係に対する漠
然とした畏れだった。
僕は元々人付き合いがうまいわけではない上に、女性と接した経験が一
般の男性に比べて明らかに不足している事を自覚してた。そんな僕が、女
性と円滑なコミュニケーションを築いていける訳が無い。
だから僕は、そんな僕と付き合ってくれている彼女はそういうものを超越し
た特別な女性で、僕の拙いコミュニケーションでもいつも笑顔で接してくれ
る女神のような存在とばかり考えていた。
実際彼女はいつも笑顔で接してくれたのだが、僕が意図的にそういう風に
思い込もうとしている節も確かにあった。僕のそういう未成熟なところが、も
しかしたら彼女の大きな負担となっていたのかも知れない。
この喧嘩自体は、お互いに非を認め合い謝罪する事ですぐに解決できた
のだが、僕の心の中には今まで見て見ぬ振りをしてきた大きな恐怖が急
速に広がっていった。その恐怖の前では、僕はボット型ウイルスに感染し
たコンピュータのように無力だった。
その日の晩、僕は一生懸命考えた。
女性が何を考えているのかが全く分からない僕が、彼女とこれから仲良く
していくのにはこの先一体どうすれば良いのか。自分の頭の中の情報だ
けでは明らかにソースが不足している状態だったので、ネットで片っ端から
検索し、ヒントを探した。何時間もの間情報の濁流の中で悶え続け、空がう
っすらと明るんできてもお構いなしに検索を続けた。
そんな中、僕はある匿名掲示板で興味深い投稿を目にした。
「シミュレート・エデンについて」
いつもは、この薄暗い廊下でも特に問題なく鍵穴にキーを差し込めるのだ
が、今日は気持ちが昂ぶっていたため手元がぶれ、数回の開錠失敗を余
儀なくされた。しかし僕はそんな些細な事にいちいちイラついている暇は無
かったので、ドアが開くや否や部屋の中に飛び込み、ポストから掴み取っ
てきたDMの束をテーブルの上に投げつけると一目散にコンピュータの前へ
と向かった。
豊かなリクライニング機能を備えたメッシュチェアのその機能を全く無視し
て前のめりに座ると、僕は折りたたまれたA4用紙をリュックから取り出し、
強引に開いてデスクの上に広げた。そこに書かれた文章を、まるで自分に
言い聞かせるかのように一行目からぼそぼそと読み上げる。
【シミュレート・エデン】
シミュレート・エデンとは、既存の仮想空間ソフトウェアと個人のキャラクタ
データを使って、未来の出来事をシミュレートする手法です(キャラクタデー
タとは、その人の現時点での全人格、全記憶、全経験、全判断基準を電
子データとして外部ストレージにデジタル再構築した一群のデータ集合体
を指す。たいていの場合、それは各人毎にディスク1枚にまとめて記憶され
る)。
仮想空間の中に存在するAIをキャラクタデータに置き換え、あなたの代わ
りにその人物に架空の世界で色々と行動してもらうことによって、様々な出
来事を事前に予測することが可能となります。複数のキャラクタデータを置
き換えることにより、そのキャラクタデータ間の人間関係をシミュレートでき
るのが最大の特徴です。条件を整えることにより、95%以上の予測一致率
を可能にします(あくまでも条件次第の理論値です)。できる限り最新の仮
想空間ソフトウェア(N.S.S搭載版のものが好ましい)を用意し、キャラクタデ
ータもフルサイズのものをご用意ください。
・用意するもの
1:コンピュータ
2:ネット環境
3:仮想空間ソフトウェア(N.S.S搭載版推奨)
4:自分のキャラクタデータ(フルサイズ推奨)
5:相手のキャラクタデータ(同上)
・実行手順
1:コンピュータをネットに接続する
2:仮想空間ソフトウェアのインストール
3:最新パッチで仮想空間を最適化(N.S.S)
4:任意のAIをキャラクタデータに置換する
5:フィルタリング設定、ログ設定を行う
6:シミュレートする期間を設定する
7:エンターキーを押下する
・注意事項
1:この手法は、個人情報保護法に違反する違法行為です。
2:仮想空間ソフトウェアのこのような使用法は、保証対象外です。
3:このシミュレートの結果は、何の法的価値も持ちません。
4:これはあくまでも予測であり、電子予言の類ではありません。
5:全ての行為に関して、自己責任で行ってください。
僕は足りないものが無いか今一度確認し、作業工程をもう一度頭の中で
繰り返した。そう、僕は彼女との未来をシミュレートしようとしているのだ。こ
うして今後起こりうる問題を事前に察知しておき、その時になって当惑しな
いようあらかじめ準備をしておこうというのが僕の出した結論だった。
これにより、僕は彼女との間に起こる様々な問題について、それが起こら
ないように立ち回ったり最小限の被害で食い止める事ができるようになる。
予測の品質上、全てのものを防ぐのは不可能だが、確実にトラブルの数を
減らす事はできる。
コミュニケーションをうまく築けない僕にとっては、彼女と僕自身を傷つけな
いようにする為にはこうするしか方法が無かった。少なくとも、今の僕には
そう思えた。
通常、この方法を行うにあたり、最も大きな難関は「相手のキャラクタデー
タをどのようにして入手するか」という問題だ。僕はネットの情報を頼りに、
彼女のキャラクタデータを彼女に何の疑いもかけずに入手する事に成功し
た。
その方法とは、最近若いカップルの間で流行している「デジタルアークサー
ビス」を利用するという方法だ。「デジタルアークサービス」というのは、現
時点での自分のキャラクタデータを作成し、それを金庫の中にしまっておく
サービスの事で、最近は、付き合い出したカップルが記念に二人の今の気
持ちを永遠に保存したり、結婚するカップルが新婚時の初々しい気持ちを
ディスクに閉じ込めたりするなど、恋人同士の記念でこのサービスを利用
することが流行している。
このサービスをそのまま利用すれば、彼女のキャラクタデータは二人の同
意がないと開ける事のできない金庫の中に保管されてしまうが、保管前に
ディスクをすり替えてしまえば問題ない。
僕は彼女が前々からこのサービスに興味があった事をうまく利用し、先日
の喧嘩の埋め合わせという名目で、いかにも彼女の要望を聞いたかのよう
な立ち振る舞いでこのサービスに申し込んだ。そして彼女の隙を突いてま
んまとディスクのすり替えに成功し、自分自身と彼女の二人分のキャラクタ
データを入手したのだ。
彼女を騙しているようで多少の罪悪感もあるが、彼女を愛するが故の、今
後の二人の幸せのためには仕方の無い必要悪であると僕は自分自身を
納得させた。
ソフトのインストール、最適化、AIの置換と作業は順調に進み、フィルタリン
グとログの設定を済ませ遂に全ての準備が整った。予測期間をとりあえず
10年に設定し、緊張と共にエンターキーを押下する。処理時間を示す青い
バーが一定の速度で伸びていく。しかし次の瞬間、
……ピピッ
アプリケーションエラーを告げる乾いたアラート音が鳴り響き、それまでの
緊張を全て台無しにしてしまった。おかしいぞ、どこにも不備は無かったは
ずなのに、一体僕はどこをミスったんだ?急いでログを確認し、エラー箇所
の特定を図る。
ログには、AIの起動に不正があったと記されていた。何故だ?AIは僕たち
のキャラクタデータに完璧に置換されたはずだ。何度も確認した。それなの
に一体どうして……。僕は今日の作業工程を含めたそれまでの全ての記
憶をもう一度振り返り、何かおかしいところは無かったかどうか考えてみた。
・
・
・
……!
僕の頭の中に、あるひとつの記憶が浮かび上がった。
僕はキャラクタデータを作成するために彼女と二人でデータセンターに行っ
た時の事を思い出した。そこでの作業中、隣の部屋で作業をしていた彼女
はなぜか僕の倍近くもデータ作成に時間がかかっていたのだ。
彼女は僕よりも2歳年上だし読書家だったので、データ量が僕よりも多かっ
たんだろうとその時は特に不思議には思わなかったが、もしかしたら彼女
は今までデジタルアークを渋っていた僕が急に乗り気になった事を怪しん
で、データにプロテクトを掛けていたのかもしれない。
実際に、このプロテクト処理のためにシミュレート・エデンを失敗したという
事例がいくつかネットで紹介されていた。まさか彼女がそこまで僕の事を
疑っていたなんて……。シミュレートに失敗した事よりも、データにプロテク
トが掛けられていた事実のほうが、僕にはずっとショックが大きかった。
しかしここまで準備してきたのだから、そう簡単に諦める訳にはいかない。
それなりに費用もかかっているし、何より、彼女との幸せな未来がかかっ
ている。僕は彼女のキャラクタデータのファイルを眺めながら、別のコンソー
ルでプロテクト解除の方法を検索し始めた。
これは流石に難解を極めた。シミュレート・エデン自体が違法行為である事
に加え、キャラクタデータのプロテクト解除は更にこれ単体でも懲役刑に値
する犯罪である。最初からある程度分かってはいたが、そう簡単に見つか
るものではない。数時間情報の荒波と格闘したが、思うような成果は得ら
れなかった。
特に解決策が見つからないまま、僕は画面をぼーっと眺めながら次の手を
考えていた。画面には、彼女のキャラクタデータファイル群がずらっと並ん
でいる。しばらく画面を眺めていた僕は、ふと何か違和感を覚えた。
この画面は、どこかがおかしい。
だがどこがおかしいのかが分からない。どこだ、いったいどこがおかしいん
だ……。早くなる心臓の脈動を抑制するかのように低速度の呼吸を意識的
に繰り返しながら、僕は食い入るように画面を凝視した。沈黙の中で、コン
ピュータの冷却ファンだけが一定の音階を奏でている。
・
・
・
十数分の沈黙を破って、僕は思わず感嘆の声を上げた。そうか!分かった!
分かったぞ!何処がおかしいのかが!
彼女のキャラクタデータファイルは、その総容量が不自然に大きかったの
だ。一般的に、長く生きた人や、多くの知識を持っている人のほうがキャラ
クタデータのデータ量は大きくなりやすい傾向にある。しかし、彼女のデー
タ量は異常だった。
世の中の天才といわれている人々や長寿で有名な人々のキャラクタデー
タサンプルと比較しても、彼女のデータ量は飛びぬけて大きかった。プロテ
クトが原因かとも考えたが、プロテクトは圧縮技術を多用しているので、プ
ロテクトされたデータは実際のデータ量よりも若干小さくなる傾向があるた
め、その可能性は考え難い。
自分が疑われてプロテクトをかけられていたのではないかという仮説が覆
されたので、特に何の解決にもなっていないこの発見が、僕にとってはま
るでシミュレーションに成功したかのように嬉しかった。本当に良かった。
そして少しでも彼女を疑った自分の弱い心を深く反省した。
しばらくして冷静さを取り戻した僕は、データ量が大きいというこの発見か
ら、AIが正常に動作しなかった原因を推測してみた。
そこで出た結論は2つ。
一つは、「ファイルの破損」。何かしらのファイルが破損することにより、本
来よりもかなり大きなファイルとなってしまう事が稀にある。
ディスクから読み込んだ時の破損なら再度AIに置換処理を行えば済むが、
ディスクのファイル自体が破損している場合は、どうしようもない。破損した
ファイルを特定し、僕のデータからコピーしてでき得る限り彼女のファイルに
近づくようにデータ内容を修正するしか無い。しかしそうなってくると、1日や
2日で済むような作業では無くなってしまうし、予測一致率もかなり低下し
てしまう。
僕は恐る恐るチェックソフトを走らせ、置換先のAIとディスク本体の両方をス
キャンした。結果は、両方とも異常なし。つまり、ファイルの破損が原因で
はなかったのだ。ほっと胸を撫で下ろす。
二つ目は「不要ファイルの混在」。キャラクタデータは一つのファイルではな
く無数のファイルの集まりから構成されているので、その中に本来あるべ
きでないデータが混在してしまったため、動作に不具合が出てしまったの
ではないか。
もしこれが原因だとすると、データ量が大きいという先程の発見も、不要な
ファイルの分だけ容量が大きくなってしまったという事で説明できる。
僕は、自分のキャラクタデータのファイル数と、彼女のキャラクタデータのフ
ァイル数を比較してみた。キャラクタデータは、基本的にその構成ファイル
の個々のサイズは人によって違うが、ファイル数自体は誰のものも同じに
なるように設計されている。つまり、ここで僕のものと比較して1つでもファ
イル数に誤差が生じた場合、原因はそのファイルという事になる。
比較結果、彼女のファイル数の方が1ファイルだけ多いことが分かった。や
った!遂に原因を突き止めた!どうしてこんなところに不要なファイルが紛
れ込んだのか理由は分からないが、今はとにかくそのファイルを特定し、
取り除くことに全精力を傾けよう。
本来、何千個ものファイル群から一つの異なるファイルを見つけるのは非
常に骨の折れる作業なのだが、今回は比較的楽に発見することができた。
それは、このファイルのデータ型が明らかに他のものとは違っていたからだ。
この不要ファイルのデータ型は、どうやら特定メーカーのモバイル端末から
撮影された3Dムービーファイルのようだった。
このようなデータファイル群の中にムービーファイルが混在する事なんて、
普通に考えたら有り得ない事だ。一体どうして……。とりあえず僕はその
ムービーファイルにどんな内容の映像が記録されているのかを確かめるた
め、そのファイルの再生に必要なライブラリをネットで取得してきた。環境を
整え、ファイルをダブルクリックする。僕は、固唾を呑んでムービーが映るの
を待った。一体何が入っているんだろう。
プレイヤーが起動し、ムービーがスタートした。
そのムービーに映っていたのは、彼女の姿だった。
ムービーの中の彼女は、最初照れくさそうにはにかんでいるだけだったが、
暫くするとゆっくりと話し始めた。その内容は、今まで僕が体験してきたど
んな事よりも、そしてこれからの人生で出会うであろうどんな大事件よりも
衝撃的な内容だった。
彼女は、付き合い出した頃から既に不治の病に冒されていた。
そして、彼女の寿命は長くてもあと半年しかもたないという事。その事実は、
僕たちが喧嘩した2週間前のあの日に医者から知らされたという事。
デジタルアークサービスをやりたがっていたのは、僕と一緒に過ごした数
年間をかたちとして残したかったから、そして、僕にずっと覚えていてほし
かったからだという事。
キャラクタデータにこのムービーを混在させておいたのは、自分の死後僕
がこのファイルを見つけてくれるだろうと思ったからだという事。
そして、自分が死ぬ前にこれが発見されて、余計な心配をかけたくなかっ
たという事。
最後に、病気だという事をずっと隠しててごめんなさいという謝罪の言葉と、
今まで有難う、私は幸せ者でしたという感謝の言葉が収録されていた。
「一緒におばあちゃんになってあげられなくて、ごめんね……」
その台詞を最後に、ムービーは終了した……。
しばらくの間、僕は放心状態から抜け出すことが出来なかった。そうか、デ
ータ作成時に時間がかかってたのは、これを撮っていたからか。延々とリ
ピート再生されるムービーが、どこか非現実的でたちの悪いジョークのよう
に僕には思えた。
あり得ない……!
信じられない……!!
ここまで受け入れられない現実が、この世に存在するなんて……。僕は、
とてもじゃないがこのムービーの内容を信じることが出来なかった。
そして、リソース不足でフリーズしてしまったOSのように、僕の心は完全に
沈黙した。
数分の沈黙。
ハっと我に返った僕は、思い立ったようにコンピュータにしがみついた。そう
だ!シミュレーションだ!このムービーファイルを取り除いた彼女のキャラク
タデータで、未来をシミュレートしてみればいいんだ!10年後の元気な彼
女の姿がきっと見れるはずだ!
僕はこの信じられない現実を打ち消したいがために、先ほどまでとはまっ
たく違った目的のためにシミュレート・エデンを実行した。
処理は正常に終了した。僕は恐る恐るログの確認をする。そこには、いつ
もと変わらない元気な彼女の姿が書き込まれていた。泣いたり笑ったり喧
嘩したり、僕と一緒に平凡だが幸せな日々を送っていた。
やっぱりあんなムービーは嘘だったんだ。彼女にまんまと騙されたんだ!
前の喧嘩の仕返しだな?まったく、やってくれるじゃないか。自分に言い聞
かせるように作り笑いを浮かべながら、僕は心の中で呟いた。
しかし、そんな強がりさえも打ち砕く事実が、僕の前に突きつけられた。
半年先のログから、彼女の名前がきれいに消えているではないか。フィル
タリングを変更し、予測期間を変更し、何回も何回もシミュレーションを実行
してみた。
しかし結果は同じ。
何度やっても、半年以上先には彼女のログが書き込まれることはなかった。
様々なパターンでシミュレーションを135回実行したが、結果は変わらなか
った。
こぶしを握り、キーボードの上に思い切り振り下ろす。派手な破壊音と共に、
キーがいくつか外れてデスクの後ろに飛んでいった。
僕はなんて臆病で卑怯者なんだろう。自分の不安を解消するために、彼女
に嘘をついてだましたりして。二人の未来のためなんて、嘘だ!自分が傷
つくのが怖かっただけじゃないか!
彼女は、自らの死という最大級の恐怖を目の当たりにしても、それでも僕
に微笑んでくれていたのに。僕が感じていた畏れなど、彼女の感じていた
死への恐怖に比べたら、取るに足らない些細なものじゃないか。
それなのに……。
有機的な音が一切なくなった部屋の中では、電源の入ったままのPCが無
機的な冷却ファンの低音を響かせている。
プツン。
長時間マウスポインタを動かさなかったため、モニタがセーフモードに入り、
スクリーンセイバーが起動した。ランダムに様々なイメージ画像が画面に
表示される。山、海、犬、お寺……。ヒーリングイメージが次々と切り替わ
り表示される中、それは不意に表示された。
画面いっぱいの、彼女の笑顔。
去年海に行った時、僕が撮った写真だ。
ドクン。
爆発的なな衝動が、僕の体の中から溢れ出した。僕は無意識のうちにメッ
シュチェアから立ち上がっていた。早く、早く行かなきゃ。
大きく深呼吸して、引き出しの中から指輪のケースを取り出す。それをポケ
ットに突っ込むと、クロックアップされたCPUのように普段の数倍の速さで
駆け出し、部屋を飛び出して行った。
1秒でも早く、愛する人に会いたい。
1秒でも長く、二人で楽園を感じていたい。
今の僕のキャラクタデータを作ったら、きっとその中にはこの二つの気持ち
しか存在しないだろう。
夕暮れの街を一人駅へと急いでいると、初夏を思わせる気持ち良い風が
目の前を吹き抜けていった。季節の移り変わりから時の移ろいを連想して
しまい、僕は必死にこの季節感を無視した。
さっきまで何の感銘も受けなかった風が、今は鐘の音のように、残酷なほ
ど心に響き渡っていくのを感じながら、僕は改札をくぐった。
[END]
308 :
創る名無しに見る名無し:2009/07/05(日) 06:09:57 ID:fVJ1sb8g
長えw でも面白かったっす
GJ
俺の家の居間で、ジャージ姿の「先生」は思いっきりくつろぎながらテレビを見ていた。
「先生」と言っても、実のところは近所に住むお姉さんである。歳は結構離れているが、幼なじみと言ってしまってもいいかもしれない。
ゆるい性格に似合わぬ明晰な頭脳で高校教師となった彼女が赴任したのが、たまたま俺の通う学校だったという話だ。
教師と教え子という関係になってからも、「先生」は今までのように我が家に入り浸っている。
うちは両親が共働きで家を空けがちなので、彼女が世話を焼いてくれるのは正直助かっていた。
しかし二人の関係が変化した今では、これはまずいのではないかと思っている。
というか教師が特定の教え子の家に、日常的に上がり込んでるのはまずいだろ、常識的に考えて。
もちろん本人にもそのことを言ったのだが、「ばれなきゃいいのよ」の一言で一蹴されてしまった。
さて、前置きが長くなった。本題はこれからだ。
まるで俺の存在など空気か何かであるかのように、「先生」はだらけきった姿勢でテレビ画面に釘付けになっている。
ちなみに、見ているのは魔法少女アニメだ。別にオタク趣味という訳でもないのだが、この番組だけは好きらしい。
よくわからない人だ……。
それはさておき、そんな無防備な先生の姿を見ているうちに、俺の中にちょっとしたいたずら心がわき上がってきた。
俺は気配を殺して彼女の背後に忍び寄ると、唐突に肩をつかんだ。
「最近凝ってるんじゃないですか、せんせー」
「あはは、まあねー」
俺に合わせて、「先生」も軽い口調で返してくる。
さて……これからどうしよう。はっきり言って、この先をまったく考えてなかった。
勢いだけで何やってるんだろう、自分。
このまま肩を揉んでしまうのもありだが、いちおう相手は女性なわけで。
なんとなくセクハラっぽいだろう、それは。
というか、こうして直に触れているとなんとなく「先生」が異性であることを意識してしまって……。
まずい。このままだと思考が倫理的にアウトな方向に突っ走ってしまう。俺だって健全な思春期の男子だもの。
とりあえず手をどけよう、そうしよう。
俺はまず、左手を「先生」の肩からどけようとする。ところがその瞬間、彼女の手が動く。
今までに経験したことのないスピードと握力で、その手は俺の手を捕獲する。
そして、俺の手をまた肩の上に戻した。
え……? 何それ?
ねえ、どういうこと? この行動の真意は何?
「先生」は、黙して語らない。ただ、その頬がわずかに赤く染まっているようにも見えた。
えっと、つまり……。「先生」は俺に触っていてほしいってことか?
ということは、まさか俺のことが好……いやいやいやいや、本気で肩が凝っているってことも考えられ……考えられるか?
ああ、ダメだ。頭が熱暴走を起こしてきた。もうまともに考えられねえー!!
結局俺は、両手を「先生」の肩に置いたまま硬直するしかなかったのであった。
続かない
実際に見た夢をSSにしてみるという、無謀な試みの結果
もちろんアレンジは加えてますが
オチが上手くつけられなかった……
まさかの夢オチ
これから三十年ぶりに佳代子に会う。テレビ番組の企画である。妻も子供たちも快く送り出してくれ嬉しかった。
佳代子は、生涯で最も愛した女性と言っても過言ではない。無論、彼女もそうであったろう。しかし、あの頃の二人は若かった。若過ぎたが故に世間知らずで、周りに迷惑ばかり掛けていた。
そして二人は引き裂かれた。もう一度会う約束を交わしながら、すでに三十年の月日が流れていたのだ。きっと佳代子もいいお婆ちゃんになっているだろう。お茶でも啜りながら、子供や孫の話でもしようじゃないか。もうあのカーテンの後ろには佳代子がいる。
司会者は涙ぐみながら、私たちの経緯を語っている。
「――では、佳代子さんに登場して頂きましょう! あれから三十年、佳代子さんは結婚もせずにずっとずっとひとりで待ち続けていたのです……」
テラクライシスw
って笑い事じゃねえじゃんか!
昼間はあれほどかしましかった油蝉の声も、日が暮れるとどこかへ消えてしまう。
瓦を焼きつけるような日射すら、夜はどこか違う世界のよう。
聞こえてくる虫の声も涼しげだ。
蝉か。蝉の命は短い、と昔読んだ本に書かれていたのを思い出す。
確かフランスの昆虫学者だ……ファーブルとかいった。
人間の命も、そう長くはない。
自分の放り投げてきた時間を思い出し、暗澹として腕を窓の方へ伸ばす。
往時と同じように、夜風は肌に心地よい。
蝉のように、熱く、光を浴びて自分を世に叫ぶべきだったろうか?
蝉のように、まっしぐらに走るべきだったろうか。
蝉のように、地道で暗い幼虫生活を耐え抜き、羽化し天へ飛翔すべきだったろうか。
蝉のように。
この蝉は妥協した。
この蝉は直視せず逃げた。
この蝉は怠惰へ溺れた。
この蝉は。
もう、逃げるまい。
人間は蝉には負けられないだろう。
人の矜持が、自尊心がそれを拒否する。
蝉のごとく残り少ない時間を生き抜いてやる。
蝉のごとく輝いて、叫び抜くんだ。
蝉になれ。
決めた。俺は本気を出す。
……明日から。
窓の外で、寝ぼけた蝉がジジ、と啼いた。
絶望の音が、肩先から染み透っていった。
以上、「アブラゼミ」で書いてみました。
某所に投下誤爆ってしまった。
明日からww心えぐられるなぁ…w
ファーブルに人生変えられたから、名前を見てぎょっとしてしまった
駄目だこいつ早くなんとかしないと(AAry
かっこいい…
明日からw
321 :
創る名無しに見る名無し:2009/07/27(月) 13:03:25 ID:Jvhece74
ダイエットじゃないんだから
322 :
◆77r3yrtC9I :2009/07/29(水) 01:12:13 ID:DSjywhE6
タイトル「準備」
「表よりも裏、白よりも黒、光よりも真っ暗闇が好きなんだ。
冬の寒さに身を震わす度に、春の暖かさを思い浮かべてにやけてまうんだ」
私がいつものように語り出すと、その人は困ったように笑った。
そんな笑顔が見たくて何度も語った。
その人は何度も笑ってくれた。
3ヶ月前、私がお気に入りの小説を読んでいると、
「その小説、映画になるんだって。良かったら一緒に見に行こう」
とその人が私を誘った。
そして今日。休日。晴れ。
私は、休日における雨の日の魅力について話しながら、隣を歩くその人の苦笑を楽しみつつ、これから見る映画を想像し、期待に胸を膨らませていた。
雨の魅力の話しが一段落したのち、
「3ヶ月分の期待がようやく弾ける時が来たのだ。爆発だ。スーパーノヴァだ」
と喚き立て、超新星爆発の美しさ、真っ暗闇の中の大きな輝きの美しさについて話していると、程なくして映画館に到着した。
映画を見終わった帰り道、
「主人公が不幸なる、そして乗り越える。その過程に堪らないカタルシスを感じるんだ」
「役者さんは主人公の苦悩を上手く表現できてた。だからこそ、ラストの笑顔が素敵だった」
私は興奮気味に話し続け、その人はやっぱり困ったように、けれども嬉しそうに笑っていた。
その人の笑顔が見れなくなると、私は確実に不幸になるな。
そう思った私は、そろそろ幸せになろう、と決めた。
その人は殺された。
勿論、私に殺された。
私の幸せのために殺された。
私は幸せになりたかった。
小説の主人公に憧れた。主人公みたいに不幸を乗り越えて笑いたかった。
でも私は平凡だった。不満はあっても不幸なんて大層なものはなかった。
だから、自分で不幸を作った。その人を殺した。
その人を殺して、悲しみに震えて、不幸は寒いものなんだと理解した。
理解したならあとは証明するだけだ。不幸の証明として涙を流せば幸せの準備は整うのだ。
けれど、涙は流れなかった。証明に失敗してしまった。
不幸の寒さに震えた私は、
幸せの暖かさを想像して、
満面の笑みを、浮かべてしまっていた。
自虐の快楽のために自らの手で大切な人を殺す話なのかな
とても素敵。
不幸なほど幸せを想像して得られる喜びが多い、か
聖書にも「心の貧しい者は幸い」って書いてあったな
暇だったから、みんなで考えた。
「世界で一番たくさん殺した奴って誰だろう?」
「ウィンチェスターじゃね」
「ノーベルっしょ」
「ダーウィンだよ」
「キリストかマホメットだろう」
皆が顔を見合わせる。
「なぜ二大宗教の開祖?」
「奴等の思想が迷走して、いまだに殺戮の方便になってる」
「思想が世界に与えた影響分も数えると牽連性が薄すぎないか?」
「いや、薄くない。オウムの教祖は信者の行いについても罪に問われた」
「なるほど。しかし生み出した思想の影響も考えるとなると、他にもありそうだな」
「あ、俺わかった」
わかった、と言った奴に、全員が振り向く。
「一番たくさん殺した奴ってさ、神様じゃん」
「うーん、そこまで曖昧な概念じゃあ、殺した“奴”にはならないんじゃないか」
「そっか。めんどくせーな」
「じゃあ国だ」
「国だって誰が創作したかなんてわからねーじゃん」
「や、しかし、国は守られる農民と守る替わりに搾取する王の両者が作り出したとも言える」
「殺しの原因は甘受する農民の惰性と搾取する王の傲慢、か?」
「原因が人に帰属したな」
「国って、付加価値の交換の拠点となる市場なんかが発展したものなんだよな」
「じゃあ、一番たくさん殺した奴って、お金を考え出した奴?」
「でもお金を考え出した奴は、お金のシステムを作り出す要求が社会にあったから作ったんだろう」
「その要求を生み出したのは?」
「交換経済かな」
「じゃあ、交換経済の原因は?」
「より多くの財を欲する、人々の欲望」
「なぜ欲望を持つ?」
「より良く暮らしたいから」
「……今まで歴史で習って来た数々の殺しあいは、何千年か前のヨーロッパ人の向上心が原因だったのかよ」
「より良く暮らそうとすると、後世に殺戮と闘争を生む……?」
議論が止み、静まり返ってしまう。
「……ははっ、それでも俺はより良く暮らしたいね」
「俺も」
「俺もだ」
「同意」
「ペンは剣よりも強し。而して志のみにパンは与えず」
全員が溜め息。
「何社回った?」
「15」
「同じく」
「俺20」
「……50」
「内定は?」
全員が、深く深く、溜め息。
夏までに決まらないなんて、終わったも同然である。
彼らのそら寒い夏は、始まったばかりなのに終了の雰囲気に満ちていた。
325 :
記憶喪失した男:2009/07/30(木) 16:16:41 ID:sTBvNybX
これで出来がイイとか笑っちまうんだが
さすがキチコテ
記憶さんより俺の奴に何かレスくれよう
完全にスルーされると悲しいやんか
>>328 「俺は三年生だ」
これ以上の感想は書けないやね
めんごめんごw
>>328 オチに殺人遺伝子とか幸せになるために人を殺したとかしないできちんとしたオチを持ってきた時点で十分いい
途中でなんとなく察したけどやっぱ身につままされるオチはいいね
まぁわたしゃキチンと就職できてるからガンバレ☆としか言えないが
初投稿です。よろしくお願いします。
晩メシのサバ味噌缶をパカっと開けたら妖精が出てきた。
「 謝謝、アナタ命の恩人アル。願い事言うよろし、みっつOKアル 」
チャイナドレスに猫耳、鼻メガネの眼鏡っ娘妖精だ。
「 遠慮するなアル。何でも来いやー! 」
怪しい香りがプンプンするが、もし本当に望みが叶うなら……
「 じゃあ、金が欲しい 」
月収13万のフリーター。当然の望みだ。
「 すじこ? 」
「 は? 」
「 間違ったアル。……えーと、いくら? 」
思わず腰が砕けそうになったが、こらえて俺の希望額を言う。
「 5百万くらい…… 」
「 了解したアル。ちょっと銀行いってくる 」
そう言って妖精は消えた。
「 ……。」
夢でも見てたんだろ。と自分に言い聞かせ、ちょっと気持ち悪いが
妖精の入ってたサバ味噌缶をおかずに晩メシを食べた。
どすっ。
食後の煙草を吸ってたらアパートの外から音がした。
外には誰もいなかったがなぜか黒皮のカバンがあった。
「 まさか、あの妖精が…… 」
反射的にカバンの中身を覗く。何束かの札束が見える。
「 マじかよ。やられた1億円って言っとけば…… 」
それでも思わぬ大金を手にした俺は興奮した。
妖精に感謝し、カバンを脇にかかえ部屋に戻ろうとしたとき声をかけられた。
警官が二人いた。
「 夜分恐れ入ります。南署の警察の者ですが、近くで引ったくり
事件がありまし……」
二人の警官は俺の持っている黒皮のカバンを凝視していた。
「 恐れ入りますが、重要参考人として署までご同行お願いします 」
そう言って、有無を言わさずカバンごと俺をパトカーに押し込んだ。
「 やられた。眼鏡っ娘妖精のくせにイケイケの武闘派かよ 」
けたたましく鳴り響くサイレンの中、俺はそのギャップに萌えていた。
ひったくりは武闘派じゃありません><
「 ひでーめにあったぜ 」
警察にしょっぴかれた俺だが、被害者が犯人の特徴を覚えていたのと
カバンが無傷で戻ってきたということで翌朝には開放された。
念のため犯人の特徴を聞いてみた。案の定、チャイナドレスの女だった。
へろへろの状態でアパートに着く。ビールを飲んで早く寝たい。
「 おかえりアル。無事で何よりじゃの 」
成人化した妖精が勝手に俺のビールを飲んでいた。
「 無事で何よりじゃねー!勝手に人のビール飲むんじゃねー! 」
ブチ切れた俺に対し妖精は少しひるんだ。そして、すまなさそうに言った。
「 これ第3のビール。ビールじゃないアル 」
「 う、うるせーっ!そんな問題じゃねー!!! 」
「 ……ごめんアル。許してちょんまげアル 」
言い方にイラっとなるが素直に謝ったので許すことにした。
怒鳴ったせいか喉が渇いていた。妖精が持っている缶を
奪ったがすでにカラだった。
「 おい妖精。願い事あと二つはOKか? 」
「 いいアル 」
奪った缶からビールの残り香が漂ってくる。どうしても飲みたい。
「 大至急ビール出せ。スーパードライだ、第3のビールじゃねーぞ
350の缶10本でいい。贅沢は言わん。二つ目の願い事はそれだ 」
「 わかったアル。ちょっとだけ待つアル 」
妖精は不思議な仕草をした。瞬間にスパードライ350缶が現れた。
「 スゲーな、おい。なんて魔法だ 」
俺はすかさず1本、奪うように手にした。
「 あっ、だめアルっ、ちょっと待って 」
「 うるせーっ!俺にビールを飲ませろ! 」
妖精の言葉を無視してプルタブに力を込めた。
ぶしゅー!!!!!!!!しゅー!!!!!
もの凄い勢いで泡柱が立った。
それは当然、おれの顔面を直撃した。しかもぬるかった。
「 冷えたビールが飲めないなんて! 」
寝不足か、怒りのせいか、俺は意識を失った。
気が付くと俺はベッドで横になっていた。
「 気づいたアルか? ビール飲め。キンキンじゃ! 」
どうやら妖精が運んでくれたようだ。時計は午後2時を指していた。
妖精がビールを持ってきてくれた。
惨劇を繰り返さないよう、静かにプルタブを引いた。
妖精にも飲むように勧め、二人で乾杯した。
「 かぁーっ、うまっ! 」
目覚めのビール。喉や胃に強烈にしみこんでくる。
妖精も酒好きらしく、ぐびぐびと豪快に飲んでいる。
「 最後の願い事どうするアル? 」
妖精が聞いてくる。
金が欲しい。と言ったら引ったくりをするような奴だ。
ビールだって、あんなに泡が吹き出たということは、
どっかから無理矢理、瞬間移動させたのだろう。
物質を欲しがる要求は迂闊には出来ない……
「 あー、もういい。三つ目の願い事は辞退する 」
考えるのが面倒になったので辞退することにした。
「 それでいいアルか? 」
「 あぁ、それでいい 」
「 わかったアル。妖精は三つの願い事を聞き入れた時点で、人間の前
から消えなければならない。三つ目辞退ならば、これにておさらばじゃ 」
妖精の理屈はよく分からないが、それに異存はない。
「 ビール勝手に飲んでごめんアル。じゃ、達者での 」
そう言って妖精は消えた。
だが何故か、妖精が身に付けていたものは全部残されていた。
「 忘れ物って、もういないか。お前も元気でな 」
妖精が着ていたチャイナドレスはクリーニングに出し、
身に付けていた下着や猫耳カチューシャは洗濯機で洗った。
取りに来ることも無いとは思うが捨てることは出来なかった。
数ヵ月後、彼女が出来た。お約束でチャイナドレスや下着が見つけられた。
「 気のきかない女は、これだから……。」
と、妖精のことを思い出しては一人にやけた。
いまのところ、彼女とはうまくいっている。
帰してもらえるのかよw
337 :
332:2009/08/10(月) 21:09:55 ID:21Jgr5RW
338 :
エロネタ注意:2009/08/10(月) 21:13:41 ID:21Jgr5RW
『処女の血』
俺の前に悪魔がいる。
典型的な羽根としっぽ、赤い目を除けば、黒一色の服装がクールな紳士だ。
勉強しないで大学行けたらなァ。悪魔に寿命でも売って……と妄想して
たら、本当に現れた。
「 貴様の望み、処女の血と引き換えに叶えよう 」
悪魔いわく、処女の血を一滴飲めば50年寿命が延びるらしい。
俺には妹がいる。中学2年。正直、顔は残念だ。
悪魔いわく、5秒ほど手を握ればそれで血は採れるれしい。しかも無痛。
俺はダッシュで妹を部屋に連れてきた。俺の大学合格は決まりだ。
悪魔を友達の友達の占い師。ということにして妹に紹介する。
悪魔には、手相を見るふりをしながら血を採ってもらう。作戦は完璧だ。
男に手を握られるのが恥ずかしいのか、おずおずと手を出す妹。微笑む悪魔。
妹の手を取り、手のひらをながめ、そして悪魔が言う。
「 ……女。うぬは処女ではないな 」
驚愕する妹。 えー! 心の中で仰天する俺。
「 ……女、うぬは処女ではないな! 」
肩を震わせている妹。 お、俺まだ童貞なのに! 動揺する俺。
「 女に問う!うぬは処女ではなかろう! 」
悪魔の声が大きく響く。 ……妹よ、もういい。素直になれ。
「 ……でも 」
妹はつぶやく。そして意を決したように言った
「 でも、アナルは処女です! 」
俺と悪魔はずっこけた。
妹は俺の100歩、先を行っていた。
了
夜10時、風呂上り。パジャマ代わりのTシャツ短パン姿で缶ビールを飲んで
いたら突然、成人化した妖精とスーツ姿の男が現れた。
「 え? うわ、何? え? 何これ? 」
私は動揺した。同じようにスーツ男も動揺しているようで、私と妖精を交互に
見渡している。
「 お前ら2人!今日から付き合うアル! 」
「 えー!!! 」
私とスーツ男は同時に叫び声を上げた。思わず私は男を見た。痩せ型で、短髪。
サッパリした顔の男だ。誠実そうで悪くはない。というか、かなりいい。
男も私を見つめている。熱い視線を感じ、高鳴る鼓動。このトキメキ。
「 あ、あの、私でよければ 」
「 ……あ、俺で良ければ 」
あっさり成立してしまった。妖精は満足げな表情をしている。
「 一目合ったその日から、恋の花咲くこともアル。見知らぬアナタと
見知らぬアナタでカップル成立じゃの。良かったアル。これにてさらばじゃ 」
そう言って妖精は、チャイナドレスと猫耳カチューシャを残し消えていった。
「 あの、ところでここ何処ですか? 」
スーツ男が言う。私も男が何処から来たのか、まったく分からなかった。
「 えーと、アパートっていうか川崎っていうか 」
「 ……川崎って、神奈川県の川崎? 」
男が驚いた表情で聞いてくる。そして言う。
「 うわー俺、仙台市民なんだけど 」
「 えー! 」
男は仕事帰り、仙台駅に向かって歩いていたところを妖精に呼び止められ、左手を
見せてと頼まれたので、手を出したらいきなり握られて、気が付いたら私のアパート
の中だったという。
恐るべし妖精。やることがえげつない、というか犯罪なような気がするが……
仙台までの電車を調べたら、最終の新幹線には間に合わないことが判明した。
男はそのまま私のアパートに泊まり、翌朝始発の新幹線に乗って帰っていった。
あれから半年。
私は男と結婚し仙台に住んでいる。妖精は、私に彼氏のほかに子供まで授けてくれた。
想像どおり、男が帰れなくて私のアパートに泊まったとき。出会って即日って奴だ。
妖精がそこまで計算して選んだのか、はたまた全くの偶然かは分からないが、男は
31歳だが、親のプレッシャーが相当あったらしく結婚をかなり焦ってたらしい。
妖精に拉致されてのジェットコースター展開に運命を感じ、すぐにでもプロポーズ
するつもりだったと言う。
なぜ妖精がツナ缶から出てきたかは未だに謎だが、縁とはつくづく不思議なものだと思う。
妖精が残していったチャイナドレスと猫耳カチューシャは大切に保管してある。
もし夫と喧嘩したときは、2人でこれを見て初心に戻りたいなと思っている。
ええ話や・・・なのに何故か笑ってしまうのはなぜw
342 :
339:2009/08/12(水) 04:59:36 ID:c/On14Zn
>>341 感想サンクス
恥ずかしながら、339前半部分のコピペ忘れていました
ぎりぎり内容は破綻してませんが、あらためて掲載します
ふー、早起きは三文の得だぜ(汗)
夕食のサラダを作ろうと、ツナの缶詰を開けたら妖精が出てきた。
「 謝謝、アナタ命の恩人アル。願い事言うよろし。ひとつだけOKアル 」
チャイナドレスに猫耳、鼻メガネをかけた15センチくらいのポニーテールの妖精だ。
「 ……。えーと、あなた何? なんで缶詰から出て来んの? 」
妖精に聞いてみる。何がなんだが訳がわからない。
「 話せば長くなるので省略します。願い事かもーん! 」
「 ……。」
まったくもって意味不明だ。そんな私を見て妖精は言った。
「 ノリが悪いのー。そんなんじゃ、彼氏できないアルよ 」
私はギクリとした。28歳独身一人暮らし、約3年間彼氏がいない。
「 はは〜ん、どうやら図星じゃの 」
ニヤニヤしながら妖精が言う。
「 ちょっ、関係ないでしょ。別に…… 」
内心ドキドキしながら私は言った。結婚を焦ってるわけではないが、彼氏は欲しい。
「 じゃ、彼氏いらないアルな? 」
そっけなく妖精が言い放す。
「 ……すいません、嘘つきました。お願いします 」
女として何かに負けた気がした。
「 了解したアル。ちょっと適当にみつくろってくる 」
そう言って妖精は消えた。
「 ……。」
夢でも見たのかな。と自分に言い聞かせた。ツナ缶の製造年月日を確認する。
全然問題ないので、普通に食べた。
夜10時、風呂上り。パジャマ代わりのTシャツ短パン姿で缶ビールを飲んで
いたら突然、成人化した妖精とスーツ姿の男が現れた。
「 え? うわ、何? え? 何これ? 」
私は動揺した。同じようにスーツ男も動揺しているようで、私と妖精を交互に
見渡している。
「 お前ら2人!今日から付き合うアル! 」
「 えー!!! 」
私とスーツ男は同時に叫び声を上げた。思わず私は男を見た。痩せ型で、短髪。
サッパリした顔の男だ。誠実そうで悪くはない。というか、かなりいい。
男も私を見つめている。熱い視線を感じ、高鳴る鼓動。このトキメキ。
「 あ、あの、私でよければ 」
「 ……あ、俺で良ければ 」
あっさり成立してしまった。妖精は満足げな表情をしている。
「 一目合ったその日から、恋の花咲くこともアル。見知らぬアナタと
見知らぬアナタでカップル成立じゃの。良かったアル。これにてさらばじゃ 」
そう言って妖精は、チャイナドレスと猫耳カチューシャを残し消えていった。
「 あの、ところでここ何処ですか? 」
スーツ男が言う。私も男が何処から来たのか、まったく分からなかった。
「 えーと、アパートっていうか川崎っていうか 」
「 ……川崎って、神奈川県の川崎? 」
男が驚いた表情で聞いてくる。そして言う。
「 うわー俺、仙台市民なんだけど 」
「 えー! 」
男は仕事帰り、仙台駅に向かって歩いていたところを妖精に呼び止められ、左手を
見せてと頼まれたので、手を出したらいきなり握られて、気が付いたら私のアパート
の中だったという。
恐るべし妖精。やることがえげつない、というか犯罪なような気がするが……
仙台までの電車を調べたら、最終の新幹線には間に合わないことが判明した。
男はそのまま私のアパートに泊まり、翌朝始発の新幹線に乗って帰っていった。
あれから半年。
私は男と結婚し仙台に住んでいる。妖精は、私に彼氏のほかに子供まで授けてくれた。
想像どおり、男が帰れなくて私のアパートに泊まったとき。出会って即日って奴だ。
妖精がそこまで計算して選んだのか、はたまた全くの偶然かは分からないが、男は
31歳だが、親のプレッシャーが相当あったらしく結婚をかなり焦ってたらしい。
妖精に拉致されてのジェットコースター展開に運命を感じ、すぐにでもプロポーズ
するつもりだったと言う。
なぜ妖精がツナ缶から出てきたかは未だに謎だが、縁とはつくづく不思議なものだと思う。
妖精が残していったチャイナドレスと猫耳カチューシャは大切に保管してある。
もし夫と喧嘩したときは、2人でこれを見て初心に戻りたいなと思っている。
「 睡眠薬 」
画期的な睡眠導入剤が発売された。
1錠服用するだけで、たちまち熟睡と謳っていた。
しかし、すぐに返品の山となった。
『 :使用上の注意
本剤服用後、6時間以内に目が覚めない場合、
本剤を持って大至急、医師に相談してください 』
「 鎮痛薬 」
画期的な鎮痛剤が発売された。
1錠服用するだけで、たちまち痛みが治まると謳っていた。
しかし、すぐに返品の山となった。
『 :使用上の注意
本剤服用後、4時間以内に痛覚が戻らない場合、
本剤を持って大至急、医師に相談してください 』
駄目さ加減がw
でも、極稀にだけど(そしてここまででは無いけど)
駄目な注意書きってあるよね。それ注意する意味あんのか、というw
目が覚めてない人間は医者に行けないよなw
>>346-347 レスありがとう正直うれしい
二番煎じで、リズムも良くないけど
「 ○○薬 」2発目
「 胃薬 」
画期的な胃薬が発売された。
1錠服用するだけで、たちまち胃痛を直すと謳っていた。
しかし、すぐに返品の山となった。
『 :使用上の注意
本剤服用後、18時間以内の飲食はご遠慮ください 』
「 目薬 」
画期的な目薬が発売された。
1回点眼するだけで、たちまち目の状態が良くなると謳っていた。
しかし、すぐに返品の山となった。
『 :使用上の注意
1回の点眼量(37マイクロミリリットル)を厳守の上
点眼してください。誤差がありますと効果を得られません 』
>>348 ツッコミ待ちか? ツッコミ待ちなんだな?
そんな量計れねえよっ!
>>349 ツッコミありがとう。
ネタ切れだが無理矢理続ける。
「 湿布薬 」
画期的な湿布薬が発売された。
どんな激しい動きをしても剥がれない。と謳っていた。
しかし、すぐに返品の山となった。
『 :使用上の注意
本湿布薬をはがす場合、専用のはがし液が必要です。
お近くのスーパー、薬局でお求めください 』
薬ネタ最終投下
「 睡眠薬 」再び。
画期的な睡眠導入剤が発売された。
望んだ睡眠時間通りの睡眠が出来るらしい。
この睡眠薬を買った多くの人々が満足した。
ただ、リピーターとなる人は少なかった。
この睡眠薬を買った人ほとんどが
『 永遠に眠りたい 』
と、望んだためである。
お後がよろしいようで。これにてお開き。
乙
寝苦しい夜だった。
酷い夢だった。
見覚えのある部屋の中。目の前で女性が倒れている。
しかも鮮血にまみれて……。
俺の手には血糊のべったりついたナイフが握られていた。倒れている女性にも見覚えがある。
そう、その女性は二十年前に別れた彼女の母親。
あのとき結婚を猛反対されていて、殺したいほど憎んでいたあの女……。
「俺が殺したのか?」
女性はぴくりともしない。
俺は逃げ出した。
周りには誰もいない。
俺は走った。走って、走って、できるだけ遠くに行こうと思った。
そして……
「あなた、朝よ。起きて」
「ゆ、由実?? なぜここに……」
彼女と別れてから二十年。ずっと独身を貫いてきたはずなのに、目の前にいるのは別れたはずの彼女、由実だった。
「何寝ぼけてるのよ。早く起きてちょうだい。今日は母さんの命日だからお参りにいかなきゃならないのよ」
そしてリビングに行くと、テーブルには俺とよく似た男の子と、二十年前の由実と瓜二つの女の子が座っていた。
「パパ、おはよう!」
「おはよう! 休みだからって、夜更かしはいけないんだぁ」
由実との息子と娘? なのか!? いったいどうなっているんだ……。
そういえば、今日は母さんの命日だと言っていたな。
「義母さんが亡くなったのって……」
「そうね……結局、犯人は捕まらなかったけれど……」
やはり殺されていた。
誰かが由実の母親を殺害したおかげで俺たちは結婚することができた。そして、二人の子宝にも恵まれ幸せな生活を送っているのか。
でもいったい誰が?
まさか俺?!
そんなわけはない! 二十年前に戻ることなんてできるわけないじゃないか!!
それならなぜ……
「起きろ! 早く起きるんだ175番! 起床時間はとっくに過ぎてるぞ。さきほど連絡があって、175番の死刑執行は今日になったそうだ……」
「 カーナビ 」
「 最近のカーナビって凄いですよね。ハードディスク搭載ってパソコン並ですね 」
「 ……あ、そうですね。自分の車もハードディスク搭載型です 」
会話の流れを切った安藤の問いに石井はありきたりな返事しかできなかった。
「 DVDとか地デジとか見れるしテレビというかほとんどパソコンですよね。
それに最近通った道とか場所とか、日時、GPSの位置情報なんかも、
履歴に残してるらしいですよ。便利機能や学習機能で使用するために 」
「 …… 」
石井の返事は無かった。よどんだ沈黙を破るように安藤が言う。
「 石井さん。あなたの自家用車のカーナビを、お借りしたいのですが 」
「 ……。」
一瞬、石井のまぶたが迷う。
( 囚人のジレンマか。まさかカーナビ相手になるとは…… )
だが石井は表情も変えずに最後の賭けに出た。
「 どうぞ、ご自由に 」
「 ありがとうございます。捜査ご協力に感謝します 」
安藤は静かに席を立ち、鑑識課に向かった。
内田山山麓死体遺棄事件。事件発生から3ヶ月が過ぎようとしていた。
「 千羽鶴 」
祖母が入院した。
母が毎日病院に通っている。検査結果次第では長期入院の可能性もあるらしい。
生粋のおばあちゃんっ子であるアタシは毎日でもお見舞いに行きたかったが、
母に家事全般を言いつけられてるのでそれは叶わなかった。
「 ばあちゃん、千羽鶴喜んでくれるかな…… 」
小学校の担任の先生が入院したとき、クラス全員で千羽鶴を送ったことを思い出した。
ある程度の家事はするが、夏休みでどうせ暇だし、高校2年にもなったんだから折り紙で
鶴を折るのも早くなっているはず。膳は急げとアタシは近所の100円ショップに行って
大量の折り紙を買ってきて1人で鶴を折り始めた。
家事の合間を見ながらアタシはせっせと鶴を折った。最初はいまいちシャンとしない
鶴だったが慣れてくると凛とした鶴を折れるようになった。
折り紙を折って折って折りまくった。それこそ朝の8時から夜の11時まで折り続けた。
1日200羽を目標にひたすら折り紙と格闘した。
気合と根性と意地で何とか5日間で千羽の鶴を折りきった。彩りを考え100羽づつ
糸を通し、なるべく見栄えが良くなるよう完成させて母に託した。
アタシの千羽鶴がきいたかどうかは不明だが、千羽鶴が完成した4日後、祖母は元気に
退院した。
「 ありがとう。千羽鶴のおかげだよ 」
祖母はちょっと涙目になっていた。ちょっと照れたがアタシも素直に喜んだ。
「 まったく馬鹿なんだから 」
母に文句を言われる。アタシは今、腱鞘炎で病院に通っている。
ほのぼのしたいい話だなw
357 :
創る名無しに見る名無し:2009/08/27(木) 22:10:09 ID:7EnhziCJ
「もう1周年なのにまだ1度もS-1に投下してない」
彼女は僕の隣に座りこみそんな言葉を口にした。
「もしかしたら私、自分がこだわりすぎてるのかもって思うの。私のつまらないSSでみんなを
不快にさせたらどうしようって。ひどいレスをつけられたらどうしようって。もし私が、もっと気楽に
創発板と付き合えていたら、こんなことにはならなかったのかもしれない」
彼女の目から静かに涙が押し出され、それが一粒ずつ、膝に落ちていった。僕は指の先でその涙を拭きとった。
無理やりに、彼女は少し笑った。
「1周年なんて早いんだよ。毎日仕事して、創作して、たまに挫折なんかして、すぐに終わっちゃう。
ねぇ、創発板ってなんだろうね?」
「さあね、わからないよ」
「みんなは楽しい時間を過ごせてるのかなぁ?」
「さあね、わからないよ」
「いやな思いとかツマンネとか感じてないかなぁ?」
「作品が面白ければ幸せだし、くだらなければ苦痛になる」
少しだけ鼻をぐずらせて、彼女は僕のほうに倒れこんできた。そして涙を僕のシャツでぬぐった後に
額をあごの下にこすりつけてくる。
「わからないよ。私、これから先、みんなに面白いと思ってもらえるのかなぁ?」
僕は軽くため息をついた。両腕で彼女の体を包みこみ、しばらくそのままでいた。
「君が考えるより住人は優しいのかもしれないし、それに……」
言葉をくぎり彼女の額に唇をつける。涙なのか汗なのか、彼女の顔はやたらとしょっぱかった。
「これからもまだ創発板は続いていくんだ。ゆっくりやればいいさ」
雑談スレで1周年と聞いたので書いた
たったこれだけの文章に3時間もかけたが後悔はしていない……かも?
うむ
額だから汗ですよ
だがそれが良い
「 夏休み 」
「 あー、明日から学校やだな。行きたくない 」
冷夏の夏休み。することがなくて家でダラダラ過ごしてもそれなりに快適だった日々。
居間のテレビの前でぼんやりとアニメを見ながら娘が言った。
「 なに子供みたいなこと言ってるの。ちゃんと準備しておきなさいよ 」
台所で夕食の準備をしながら母親は言う。
「 やだなー、始業式とか暑いし、久しぶりに顔合わせて妙なテンションになる奴いるし、
夏休み終わってもいじめっ子はいじめっ子だし、いじめられてる子見捨てるわけいかないし、
いきなり学級崩壊とかありそうだし。嫌だなー。わたしも不登校になっちゃおかなー 」
娘のグダグダな愚痴に苛つき、包丁を置いて強い口調で母親は言う。
「 あんたねぇ、いい大人がうだうだ言ってんじゃないの! もう3年も先生やってるんなら
すこしはシャッキっとしなさい! 」
「 はいはい…… 」
気のない返事をし、重い腰を起こして娘は自分の部屋に向かった。
社会人になっても夏休みの終わりに憂鬱な思いをするとは娘は学生時代、想像もしていなかった。
注:書き手、学校の先生の休暇状況を理解していません。
『清き一票』
「あなたの清き一票を、我が夢をかなえる党にお願い致します!」
「一票でいいんだな?」
「ぜひともお願い致します!」
「よし、わかった」
「ありがとうございます!!」
“それでは衆議院議員選挙比例代表の投票結果を発表いたします。”
夢をかなえる党 一票
「 赤とんぼ 」
いつのまにか蝉の鳴き声が消えていた。どこからか秋の虫の音が聴こえる、
空の色が深く透きとおる。優雅に舞う銀ぎつねの尾ようにススキの穂が風になびく。
軽トラックで男は走る。
倒れている稲はないか、水が落ちきっていないところはないか。男は田んぼを見回っている。
9月の中旬を過ぎれば「稲刈り」が始まる。いい状態で稲刈りができるように男は、最後の
ひと手間に時間を惜しまない。毎日のようにあぜ道を歩く。
家族総出、親戚一同、猫の手どころか犬の手さえ借りたかった頃の稲刈り作業。
でも、もうそれも遠い昔。もはや重機のオペレータを名乗っていいほどに、農機具は
巨大化自動化され、少人数でも楽に稲刈り作業が出来るよう様々な工夫がなされ発達した。
それでも人手が有るに越したことはない。いつも手伝いにきてくれる親戚筋に「今年も頼む」
と男は連絡をする。そして週刊天気予報をまめに確認する。
夕暮れ。いつものように田んぼを見回って男は軽トラックに戻る。
軽トラックのアンテナのてっぺんに赤トンボが停まっている。
「 もう、そんな時期か…… 」
誰に問いかけるでもなく男はつぶやく。あらためてあたりを見渡せば、無数の赤トンボが
夕陽に羽根を輝かせ宙を舞っている。すいーすいーと華麗に風をきるオニヤンマはもう
少数派だ。
「 赤とんぼでさえ毎年来ると言うのに…… 」
溜め息混じりに男は言う。遠くで働き家庭を築いた男の息子は農作業を手伝うどころか
ここ3年、実家にさえ帰ってこない。
寂しそうに男は軽トラックに乗り込む。アンテナに停まっていた赤とんぼはドアを閉める
音に驚いて宙に飛び立った。
男は妻の待っている家にむかう。男の乗った軽トラックを無数の赤トンボが追い越していった。
これはいい情景カット
364 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/02(水) 21:38:07 ID:Mc0icPJa
求められれば応えよう。そう誓ってから幾星霜。
長い旅の最中には、このような事もありました――
極寒の夜と、灼熱の昼とが交互に訪れる星へとやってきた彼は、その中間、
寒くも暑くもない夕暮れ時に、とある声に呼び止められました。
「おいお前さん」
「なんだね」
彼は立ち止まると、声の主を探しました。
けれど、見渡してもどこにも姿は見当たりません。声はすれども姿は見えず。
「お前さん、ここだよここだ。俺はここだよ」
足元からの声に気づき。しかりと見れば、そこには一匹の蛙が跳ねていました。
「お前さん、ここのもんじゃないね?」
「はて、それはまた何ゆえ」
「おいらの声にすぐに気づかぬ。ここの者ならすぐ気づく」
「なるほど、それは道理」
「ここのもんじゃないならば、ここの外から来たならば、願いたい事一つある。
願いたい事一つだけ」
蛙はぴょこぴょこ跳ねながらいいました。
「俺をここから連れ出してくれ。どこか遠くへ連れてってくれ」
「はて、それはまた何ゆえ」
「ここは俺には寒すぎる。ここは俺には暑過ぎる」
極寒でもあり灼熱でもあるこの星に、蛙はうんざりしているようです。
「寒けりゃ身体は動かない。暑けりゃ身体は干からびる。どうにもこうにも
上手くない。ここは俺には上手くない」
「求められれば応じましょう。さりとて一体どこへと行きたく?」
「どこへだろうと構わない。ここでなければ構わない」
「ならば次行く星の道、私と共に参りましょう」
そう言って彼は手を差し出しました。ぴょいとその手に飛び乗って、蛙はにこりと
笑いました。
次の星へと至ったそこは、緑豊かな水の星。蛙はたいそう喜びました。
「ここはいいとこ。俺にも上手い。水も美味けりゃ空気も美味い」
「満足していただけましたか?」
「満足満足大満足さ! 感謝しきりの仕切りなおし、今日からここが俺の場所!」
「それは良かった」
蛙は男の手からぴょいと跳びあがり、近くの葉っぱに降り立ちました。
ぱくり。
その蛙を、近くに隠れていた蛇が一のみ。
「あ」
蛙は一声そう残し、蛇の腹へと消えました。
「……あれあれ、まあまあ」
彼はその様を見ていましたが、特に何をするでもなく、蛇を見つめています。
「なんだいなんだい。俺様の食事に文句があるのか? あるなら言えよ、聞いてやる」
「いえ、何も。助けてくれとは求められておりませぬゆえ」
「だったらいいさ。何もない」
蛇は満足そうに頷きます。
「では、私はこれで」
彼はそう言ってその場を後にしました。
蛇は挨拶をするかのように、げふっとげっぷを一つ付き、彼の姿を見送りました。
「さてさて、私に何かを求めてくれる、そんなモノはいないかな……?」
彼は何事もなかったかのように旅を続ける事にしました。
ずっとずっと、永く永く続く、求めるモノを求める、そんな旅を。
これは、その一ページ――僅かな、小さな、一ページ。
終わり
ここまで投下です。
節をつけて歌にしたくなる文章だ
良かった。
好きだわ
「 インフルエンザ 」
新型インフルエンザが発見された。
新型に対するワクチンが開発され製造が始まった。しかしワクチン製造量には限りがあった。
新型の予防接種を受けたくとも簡単にはことが進まなかった。
健康に留意している人はマスクを買い着用した。
新型インフルエンザが潜伏している
新型インフルエンザに注意していた人も感染した。いままで新型インフルエンザを気にして
いなかった人々も徐々にウィルス感染しないよう気をつけるようになった。
新型インフルエンザが流行りだした。
テレビ報道が人々を徐々に不安にさせる。予防接種を求める人が病院に駆け込む。
しかし、ワクチンの絶対数が足りない。多くの人が予防接種を受けられなかった
『 新型インフルエンザが大流行しています。ワクチン接種を早急にお受けください 』
テレビ報道が過熱する。連日連夜の新型インフルエンザに関する情報が人々の不安を煽った。
もう予防接種を受けていない人は犯罪者のような扱いだ。人々は病院に殺到した。
そして全国の病院で備蓄してあるインフルエンザワクチンが底をついた。
新型インフルエンザが流行っている。
「 病は気から……か。うまいこと言うもんだ 」
ふてぶてしい笑みを浮かべて男は部屋を出た。そして長年勤めていたテレビ局に辞表を提出した。
男は全国ネットで放送されるニュース番組のプロデューサーだった。
数日前からある製薬会社の株価が跳ね上がっていた。
新型インフルエンザのワクチンを製造している会社だ。
男がその会社の株を持っているか、男が製薬会社と関係があるのかどうかを気するものはいなかった。
新型インフルエンザの報道も少なくなった。
大量生産されたワクチンのおかげで新型インフルエンザの流行も、すぐに終焉を迎えた。
製薬会社の株価はどうなったのか、男がその後どうなったのかを気にするものは誰もいない。
うお、社会派w
でもありそーだよな。
今後を予想
インフル予防接種祭り
↓
足りない分を海外から輸入
↓
規準を満たさない未承認ワクチン流通
↓
薬害
↓
舛添あぼーん
「 秋刀魚 」
【 秋の味覚。旬の生さんま 1尾98円!】
「 さんま…… 」
ふと男は足を停める。
買い物い来たスーパーで氷詰の発泡スチロールの箱にさんまが雑然と並んでいた。
鮮度がいいのだろう。眼は清く澄んで体は名前のごとく刀のように輝いていた。
「 昔は綺麗に食べれなかったな 」
男は昔を思い出す。背中の美味しいところだけ食べたい、ちょっとでも苦いところはイヤ。
男の幼い頃、皿に乗せられた焼さんまはいつもぐずぐずになっていた。
「 もっと綺麗に食べられる。苦いところも栄養有るから食べなきゃダメ 」
小学生から中学生。繰り返された母親の小言が利いたのか、男は高校生の頃には頭と骨だけ
を残し綺麗にさんまを食べられるようになっていた。
大学時代。コンパや飲み会で安い居酒屋に行くたびに男はさんまを頼んだ。
さんまだけではなく、ほとんどの焼き魚、煮魚を男は綺麗に食べた。魚を綺麗に食べら
れない者からは凄いと尊敬されていた。
社会人一年生として半年が過ぎた頃、男は上司に日本料理屋へ連れていかれた。
料亭……? 男は少しだけ緊張した。上司には奢るから。と言われたが、安いだけが売り
の大衆居酒屋しか知らない男にとってそこはちょっと敷居の高い場所だった。
「 さんまの塩焼き頼んでもいいですか? 」
生ビールと上司が頼んだ料理が二品ほど来た後、男は上司に尋ねた。
「 お、いいねぇ。俺も貰うか 」
上司も注文するつもりだったのか、さんま塩焼き二つ、あと日本酒、冷やで。そう、辛口。
と迷いもせずなめらかに店員に告げた。
十数分後、こおばしい香りとともにさんまの塩焼きが運ばれてくる。
すごい。レモンじゃなくて、すだちだ……。小さなことにいちいち男は感動する。
ちょっとだけ醤油をさんまと大根おろしにかけ、すだちを絞る。爽やかでそして和風を
感じさせる酸味がふんわりと漂う。男はさんまの背中の肉をほぐし口に運ぶ。焼けた塩と脂。
そしてかすかに香る醤油の風味とすだちの酸味が口の中に一体となって広がっていく。
旨い。やはりさんまは旨い。と感動している最中、男は上司に日本酒を勧められる。
男は日本酒をあまり好まなかった。大学時代、一杯のコップ酒で記憶をなくしたことがあるのだ。
( 今日は大丈夫な気がする…… )
上司に勧められるまま男はガラスの杯を手にした。ちょっとだけ口に含み、味を確認する。
大丈夫、これならいける……男は一気に冷や酒を流しこんだ。あまり香りが強くなくさらりと
飲み込めた。口の中に残っていたさんまの残り香が消され、遅れて舌と喉が少し熱くなった。
( 旨い。日本酒ってこんな飲みやすかったっけ…… )
男はたまらず、さんまを口にして杯に残っている日本酒を飲み干した。そんな男を見て
上司は得意げにニヤリと笑った。
それ以来、一人暮らしでさんまを焼くのは手間だが、秋のちょっとした贅沢として
辛口の吟醸酒とすだちを準備し、焼さんまを愉しむのが男の秋の恒例行事となっていた。
【 秋の味覚。旬の生さんま 1尾98円!】
「 さんま……1尾98円か。……俺が馬鹿だった 」
目頭が熱くなり、涙があふれそうになるのを堪え、男はレジに向かい会計を済ませ店を出た。
9月6日、新潟競馬場新潟2歳ステークス。ウインズ新横浜にて男は熱くなっていた。
玉砕上等で生活費を突っ込む。……案の定、残ったものは一円の価値もないハズレ馬券だけだった。
25日の給料日まで約2週間。700円程度の小銭と400枚ほどの1円玉が男の全財産。
今の男にとって1尾98円のさんまは、もはや手の届かない高級食材だ。
10円玉3枚、5円玉2枚、1円玉10枚で買った特売品のもやし(2袋50円)を手に男は誓った。
「 27日の中山オールカマーで勝負だ。おぼえてやがれJRA! 」
給料日当日にさんまを食べるか分からないが、この男がまったく懲りてないのは間違いないようだ。
おわり
うまい!
オチはもっと違うのを期待してしまった・・・
「 天高く馬肥ゆる秋 」
「 天高く馬肥ゆる秋。今日の晩ご飯は聞いて驚け、松茸ごはーん! 」
「 うおっ! 」
「 もどきー!!! 」
「 …………。」
金曜日の晩ご飯。今日の嫁は妙にテンションが高い。
俺33歳、嫁29歳、結婚して1年半になるがまだ子供はいない。
嫁は、良く言えば節約家、悪く言えばケチw(今のところ小さなwぐらいですんでいる)だが、それを
除けば、料理は美味いし家事全般もそつなくこなす、なかなかできた専業主婦だ。
「 メインディッシュは庶民の秋の味覚、生さんまの塩焼き。そして食後のデザートは梨! 」
「 おー、いいね 」
永谷園松茸のお吸い物とエリンギ、たけのこで作ったという松茸ご飯もどき。正直、松茸料理を食べたこと
のない俺には、もどきの松茸ご飯で充分だ。
以前はさんまの内臓を食べられなかったが嫁の、さんまのはらわたは最初に大量の大根おろしと一緒に飲み込め。
それで美味しいところを最後に食べる喜びが更に増す!という妙に説得力のある助言を聞いてから平気になった。
「 週末のお楽しみー、晩酌タイム!今日のビールはグレードダウン! 」
「 は? 何それ 」
俺の前に置かれた缶ビールは、いつものビール(正直に言えば発泡酒)から悲しきかな「 第3のビール 」
に変わっていた。しかも発売と同時に話題になっている某スーパーの350ml缶100円の奴だ。
手取りで約25万の給料と半年に1回のボーナスは約50万。それなりに俺なりに頑張っているつもりだ。
嫁と結婚して、まず晩酌の回数が減らされた。まぁそれは我慢できる。しかし俺自身で健康に留意して愛飲して
いるキリン淡麗生グリーンラベルが何が悲しくて第3のビールに…… 俺は嫁に猛烈に抗議した。
「 まてコラ! 一週間仕事頑張ってへろへろになって、あー、明日休みだ。一週間お疲れ様でした俺。
今週も頑張ったな…… ビールビールと、そいであの缶を開ける時のプシュッ!って音が至福の瞬間だった
俺に対し、何たる仕打ち。それは断じて受け入れられん! 」
俺の抗議に対し嫁は真顔で反論する。
「 怒っちゃダメです。これには明確な理由があります。もうアナタもアナタの財布もアナタだけの物では
ないのです。この未曾有の不況の中、このぐらい頑張らないと親子三人暮らしていけないのであります 」
――ん? 嫁の言ってることが一瞬理解できなかった。嫁の言葉を頭の中で繰り返す。 ――あっ!
「 ……赤ちゃんできちゃった。3ヶ月だって 」
恥ずかしいのか、嫁はほのかに顔を赤くして言った。
「 ば、馬鹿ヤロー、何故それを先に言わん!こら大変だビールいや実家に電話だ。あーもう!でかした嫁! 」
俺は舞い上がった。俺や嫁の両親から、孫はまだかー、孫はまだかー。とプレッシャーを掛けられてたので
早速実家に電話した。そしてビールで祝杯を上げた。第3のビールだがこの際、細かいことは気にしない。
いつもは350ml缶2本と制限を掛けられているが、今日は4本までOK。と嫁に了解を貰った。
松茸ご飯とさんま塩焼きを肴に、俺は大いに飲んだ。そして早くも親バカ全開で嫁と盛り上がった。
深夜2時ふと目が覚める。
ダブルベッド(倦怠期にはシングルベッド二つに出来る優れもの)で嫁はすやすやと寝ている。
子供出来てもおっぱいやお尻触るぐらいはいいよな。と、もぞもぞと嫁に接近して手をだす。
「 ぐはっ! 」
おっぱいを触った瞬間、故意にか寝ぼけてか、嫁の肘打ちが俺のみぞおちにクリーンヒットする。
「 母強し。やるな嫁! 」
息苦しさをおぼえながら、情けなくすごすごと引き下がる俺。そしてまたあっさりと眠りに落ちる。
嫁の言った「 天高く馬肥ゆる秋 」と、嫁が子供を授かった嬉しさからか、その後俺は
嫁とまだ見ぬ我が子が純白のペガサスにまたがり、晴天の青空を楽しそうに駆け上がる夢を見た。
いま俺スゲー間抜け顔で夢見てるんだろうな。と夢の中でにやけていた。
土曜日。休日の朝だが嫁にしつけられ、平日の朝と同じ時間に起きテレビを見ながら朝食をする。
『 本日は日本全国、秋晴れの空が広がるでしょう。さて秋の味覚が出回っておりますが、この季節によく
使われる【天高く馬肥ゆる秋】ですが元々は中国の古い国で、敵が夏のうちに充分に太らせた馬を駆り、
一生懸命育てた秋の収穫物を強奪しに来るので充分に警戒しなさい。という意味で使われていました。
しかし、日本ではその語感もあり、旬の秋の食べ物が美味しくて馬も肥える。という意味合いで使われる
ことが多くなりました。
男心とも女心とも言われますが、この季節、天候が変わりやすくまた、台風発生による被害も…… 』
「 ……。」
テレビのお天気お姉さんの分かりやい解説で、俺は天高く馬肥ゆる秋の古い意味を知った。
煙草を切らしたので近所のコンビニまで歩いて買いに行く。天気予報通り見事な秋晴れだ。
「 マイルドセブンひとつ…… あ、すいません、じゃなくてえーと、わかば。ひとつ下さい 」
節約節約と自分に言い聞かせ、普段のマイルドセブン(300円)をやめて、わかば(190円)にする。
早速コンビニの灰皿の前で1本取り出して火を着ける。吐き出した煙が空に吸い込まれていく。
普段のマイルドセブンに比べ、わかば。はかなり辛い。これなら本数もだいぶ減らせるだろう……
――天高く馬肥ゆる秋か…… やれやれ、どうやら馬は俺だ――
俺の背中に乗る騎手は相当の手練手管らしい。気づかないうちに俺はその見事な手綱さばきに従っていた。
ま、それもいっか。と呟いて晴天の空の下、俺は嫁とまだ見ぬ我が子が待つアパートに、にやけ顔で帰った。
おわり
う〜ん、矢張りうまい!
ついオチを期待してしまう自分は、読んではいけないようだ・・・
嫁ええな!(くわっ
ほのぼのしました
いい夫婦の日とかにまた読みたいです
383 :
378:2009/09/15(火) 19:24:04 ID:inpS6nOd
>>380 すまん。俺の芸風なんで諦めてくれ。
切れ味鋭いショートショートを書く技量は俺には無い。
コテ付けてないが文章表記で俺だと分かるだろうから
スルーしてもらえれば助かる。レスありがとう。
あとこの場を借りて、レスくれる人ありがとう。
ショートショートというよりショートストーリーの俺だが
過疎ってるのでここに居座るw
秋刀魚のはらわたの旨さが分からないなんてもったいない!
というのは置いといて、嫁さんいいよ嫁さん
土曜日だ。嗚呼、土曜日だ。
世間一般の社会人にとって非情に貴重な休日の始まりだ。
貴重ではあるが、これと言って特別な出来事があるのかと言われれば答えはNOだ。
全く無い。何も無い。本当に無い。
ただ、ダラダラと無為に時間を過ごし、月曜日になったら半泣きで出勤するのだ。
仕事に遣り甲斐は全く無い。給料も別に多くは無い。
何が楽しくて仕事をやっているのかと問われてもな。無職でもやってけるなら、無職になっている。
少なくとも世の中の大半の社会人はそんな感じだろ?
出来る事ならば、南の島で一日をのんびり、ゆっくりと過ごしたい。隣に美女が居てくれれば言う事無しだ。
生憎、そう言うわけにもいかない。住宅ローンを組むのだってある程度は安定した信用のある地位や肩書きは必要だ。
職業は?そう問われたら、社会人です。と即答出来るようにな。
お前だったら如何だ?
ご職業は何ですか?という質問の回答が「正義の味方です(笑)」だったら。
俺なら間違いなく海に沈めて、頭を冷やしてもらうがな。
まあ、自己否定になってしまうんだがな。一応、正義の味方(笑)なんてものをやらされている。
本業は歯牙無いサラリーマンだ。そういうと俺の雇い主は不機嫌になる。
会社員としての収入の方が圧倒的に上なのだから、正義の味方が本業なんて口が裂けても言えねぇ。
こんなモン副業だ。アルバイトだ。寧ろ、奴隷扱いだ。
お前等知ってるか?奴隷って言うとネガティブなイメージがあるかも知れないけどな。
元々、奴隷ってのは高待遇なんだぜ?映画みたいに最底辺のヒエラルキーを一身に背負っているけどな。
奴隷一つにしても、その辺の道端で歩いている奴を掻っ攫って扱き使っているわけじゃあない。
人買いに高い金支払って召抱えてんだ。そんな簡単に死なれちゃあ困る。
それに貴族連中の間では若くて健康でよく働く奴隷を召抱えているのがステータスの一つだったそうだ。
だから飯だって良い物をしっかり食わせてもらえる。かなり大切にされていたそうだ。
映画みたいに痩せこけた奴隷、今にも逝きそうな奴隷、病気した奴隷を使っているなんて恥ずかしくて人に言えたもんじゃあない。
話を戻そう。俺が副業としてやらされている正義の味方(笑)とやらの収入は奴隷未満だ。
映画に出てくるような奴隷が一番近い。寧ろ、奴隷in映画その物だ。
正直、辞めてやりたい。辞めれるものならな。
正義の味方(笑)って奴は本当に金にならない。全然ならない。只管ならない。
ブラックなのか?と問われたら、ブラックなんて物じゃない。暗黒だ。
命賭けてんのに、マジで雀の涙なんだぞ?
第一、これから50年だか60年だか生きていく上で役に立つのかと問われたら、全く役に立たない。
今後、俺が転職するとしてだ。職務経歴書に書けるか?正義の味方(笑)だなんてよ?
マジでバカなんじゃねーのかと。
それは兎も角、今日は土曜日だ。少なくとも明日の夕方までは、パラダイスだ。
だからだ。だからこそだ。こんな時に出撃要請(笑)なんてものが入ると噴飯ものだ。
泣いても仕方が無い。俺は単車を飛ばし、秘密基地(笑)に向かった。
別に妙齢の美人博士が居るわけでも無い。妹キャラ的な美幼女が居るわけでも無い。
この秘密基地(笑)とやらが変形して巨大ロボ(笑)になるわけでも無ければ、巨大ロボが出撃するわけでも無い。
正義の味方スーツ(笑)に着替える為に来ただけだ。なんでも、このコスプレ衣装は現代科学を結集して設計されたらしく
非常に金がかかっているらしい。どんな機能があるのかは俺もよく知らん。マニュアルも社外秘扱いになっている為
熟読する為には態々、此処まで来なければならない。アフターファイブに読みに来るなんてのは論外だ。
土日にだって、こんな所なんかに来たくはない。面倒極まりないからな。
分かっている事と言えば、元祖ヒーローの様に「変身!とぉ!!」とポーズを取っても変身出来ない事くらいだ。
研究員曰く「まずは形からだ。」との事だ。だったら、元祖ヒーローと同じような仕様にしてくれ。
すぐさま人身御供を探す旅に出てやる。
そんなわけで俺はトイ○ラスとかに売ってそうな、正義のヒーロー変身セットを半泣きで身に纏い
違法改造した単車に乗り換え、現地に急行する。
現場にはマスコミや野次馬、警察で溢れ返っていた。
ついでに言うなら日○征服(笑)を企む悪の怪人(笑)なんてものは居ない。
武装した銀行強盗が居るくらいのもので正直、場違いな事この上無い。
だって、そうだろ?この俺の恰好…如何見ても秋○原から迷い込んできたコスプレイヤー以外の何者でも無い。
そもそも、コスプレイヤーの意味の分からない奴や年配の方が見れば如何思うんだろうな?悪ふざけした変質者としか言い様が無い。
野次馬のターゲットが銀行強盗から俺に切り替わった。携帯電話各社に言ってやる。写メなんて無くせ。
万に一つでも顔バレしたら俺の人生終わりだな。世界の最果てでダンゴムシのようにひっそり生きるしかない。
兎に角、アルバイトの雇い主の自己満足に付き合うため、群集を押しのけ銀行に立ち入った。
警察が何か言っているがシカトだ。シカト。万が一、発砲されても銃弾程度じゃ怪我一つする事も無い。
見た目はヒーロータイツの出来損ないだが、性能だけは本物のヒーローさながらだ。
店の中を見回してみると典型的な強盗ルックの強盗たちが居た。殺傷能力抜群の重火器を装備している様はさながら映画の悪役だ。
シュワル○ェネガーに秒殺される役がバッチリだな。そんな事を思いながら、ショットガンを付き付けられている行員を救う事にした。
死なれてしまってはラブロマンスに発展しないからな。
と思ったが、生死を問わずラブロマンスに発展しない事が発覚した。
母親と大して変わらないような年齢の恰幅の良い中年女性とのラブロマンスなんて御免だ。
そもそも、この手の現場で若い女が人質になっていた例は一度も無い。ただの一度たりともだ。
だけど、良いんだ。こんな変質者じみた恰好した奴に惚れる女なんて居るわけが無い。寧ろ、居たら嫌だ。
泣きたくなる気持ちを押し殺して、強盗の顔面を蹴り飛ばす。行員も一緒にすっ飛ばしてしまったが
まあ気にする事は無い。雇い主曰く「死者が出なければ良い。」多少のケガは目を瞑ってくれるらしい。
目を瞑ってくれない奴も居る。蹴り飛ばされた強盗の仲間である。
「よ、よしこーーーーッ!?」
「テメェ!女の面に蹴りを入れやがるたぁ、どういう了見だ!?」
「よくもリーダーの嫁さんに!」
嫁さん?蹴り飛ばした強盗の目だし帽を引っぺがすと、別嬪さんが目を回していた。
これは一体、どういう事なのだろう?
「リーダーの嫁だと?」
「そうだ!俺のよしこに舐めた真似しやがって!ぶっ殺すぞ!!」
俺は心の底から絶望した。人目も憚らず泣いた。
強盗達が狼狽しているが知った事じゃない。泣かずにはいられない。
「テ、テメェ…何を泣いてやがる!?」
よくもまあ、そんな事が言えたもんだ。この宿六は。
「そんなに知りたいか?」
「あ?」
「そんなに知りたいのかって聞いてんだよ、このカス野郎が!!そんなに聞きたいなら教えてやるよ!!
良いか?今日は土曜日だ!世間一般じゃ休日って言うんだよ!
少ない給料でグチグチ五月蝿い上司や、頭の沸いた客のクレームから開放されるパラダイスの初日なんだよ!!
それが何だ?テメェ等みたいな社会のクズで俺の休日は半分に日曜日だけになっちまったんだよ!
キチガイ同然の恰好で頭の悪い若造には写メ取られて、逝きかけの老人には睨まれるしよ!
だけど、雇われて金を貰っている以上、雇い主の意向に従うってのがプロフェッショナルってなもんなんだ!
それが例え出動の報酬が500円だとしてもだ!500円だぞ!?500円!!駅前の快楽亭のワンコインランチ一食分だぞ!?
そりゃあ、これが5万や10万貰えるなら二日ある内の一日くらいならくれてやっても良いかなとか思わんでも無いさ!
なのに1日潰して、一食分の給料だぞ!?警察には公務執行妨害で逮捕されかけた事だって一度や二度じゃない!!
労働基準監督署に相談してもお話が破綻するから頑張って耐えろとか言われるしよ!!」
「お前、苦労してんだな…だったら、こっちに来いよ」
「黙れや、三下!!」
犯罪者の仲間入りさせようとしやがるバカが居たので、ヤクザキックで蹴り倒してやった。
「こんなアホな仕事、辞められるならとっくに辞めてんだよ!!
雇い主にアホみたいな額の借金があるって設定にされているから、嫌々やってんだよ!!
空気読めよ、クソが!!自己破産しようにもお話が(ryとか言われて取り合ってもらえねぇし!!
何よりもだ…」
俺は殺気を込めて、強盗のリーダーを指差した。
「お、俺がなんだ…?」
強盗のリーダーは俺のマジで泣ける身の上話を聞いて、すっかりドン引きしていた。ぶっ殺す。
「俺はな…生まれて来てから今まで、他人に迷惑をかける事も無く真面目に生きて来たんだ…
だけど、お前は違うよな?人に迷惑をかける犯罪者だ。だってのにコレはどーゆーこった?」
俺は強盗のリーダーからよしこと呼ばれた女を指差した。
「よ、よしこが何だってんだ?」
「俺はな…」
「な、なんだ…?」
「俺は!!彼女居ない歴が年齢と同じで!風俗に行く勇気も無いせいで!未だに童貞で!!右手が彼女なんだよ!!
中学の時はスポーツに精を出して、女と遊ぶ暇は無かった!高校は男子校で女ッ気ゼロで!
大学じゃ何をトチ狂ったか、サークルの誘いを全部冷たく断って、一人ぼっちで4年間過ごした!
社会に出てみれば新たな出会いがあるかと思いきや、量産型のヒヒ爺としか出会いがねぇ!
実家に帰れば両親から孫の顔はまだかと言われる!もう一度、言う!俺は童貞だ!!
なのにも関わらず、テメェは何なんだ?クソ同然の犯罪者の分際で嫁!それも別嬪の!!
こんな不公平な話があるかぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
涙が止まる頃には何もかも綺麗に片付いていた。人質は全員無事だし、強盗は血の海に沈んだ。
そして、俺の泣き言は外まで聞こえていたらしく、皆ドン引きしていた。
俺は何一つ語る事無く、違法改造された単車で秘密基地(笑)に帰還した。
一刻も早く、この変態スーツを脱いで普通の人間の恰好に戻りたかった。
俺は500円玉を握り締め、トボトボと秘密基地(笑)の駐輪所へ歩みを進めた。
そんなに長い距離を歩くわけでは無いが、ちょっとした考え事をするだけなら充分な距離だ。
そして、俺はこう思った。
「日本征服を企む悪の組織に所属するやたらと露出の多い美少女幹部(18歳)とのラブロマンスがあっても良い筈だ。」
処女でツンデレだと尚良いなと思いながら単車に跨り、休日の続きを楽しむ為、我が家へ続く道を走らせた。
おしまい
おもしれえww語りに悲哀がwww
初めてみるトリップだけど次にどこかで見かけても読むことにするわGJ!
>386-394
軽快でおもしろくて読みやすくていいな。好きだわ。
主人公年齢、脳内で30に設定したが、40超なら更に泣けてくるなw
ハイスペックなご当地ヒーローみたいなのを想像したw
面白いな。正義の味方とかありえない、普通にフィクションな
話のはずなのに、妙なリアリティを感じてしまうのは何故なんだぜw
今年も日本は花粉戦線真っ只中にあった。
花粉症の奴は大変だねぇ。俺にとっちゃ、他人事だ。
生まれてこの方、花粉なんぞに悩まされた事はただの一度も無い。
厄介な事と言えば、この時期に鼻風邪を引くと、遂に俺も花粉症の仲間入りかと勘違いする事くらいか。
まあ幸い、今年も他人事で済みそうだ。
ただでさえ厄介な世の中なのだ。厄介事は少ないに越した事は無い。
最も何が厄介なのかと問われると、返答はこうだ。
「厄介な気がするだろ?何と無く。」
本当に厄介な目にあってる奴に失礼だと言う奴もいるが。
それこそ他人事だ。知った事じゃない。
最近、世界各地で出没するようになったヒーローモドキが
「俺の日曜日を返せぇぇぇええええッ!!」
と、涙声で犯罪者の類をボコボコにしている様は流石に同情している。
全国ネットで「俺は童貞だ!」とか叫んでいるのを放送されたんじゃ、そう思うのも仕方が無いだろ?
まあ、アレはアレでそれなりに人気があるらしい。
それにしても、あのヒーローの名前、なんて言うんだろうな?
TVで見る時は大抵、泣き叫びながら強盗の類をボコボコにしていて
名前を名乗るわけでも無いし、決め台詞と共に決めポーズを取るわけでもない。
偶然、現場を見た同僚曰く、「疲れ果てたサラリーマンみたいで可哀相だった」そうだ。
因みにネットではドウテイジャーとか、カネナインジャーとか、ヤスミナインジャーといった
明らかに子供達に夢を与えられない名前を与えられている。
名前以前に泣きながら悲痛な叫び声をあげながら戦うヒーローなんて
如何足掻いても子供に夢を与えるのは無理だろうけどな。
そもそも、あのヒーローは子供に夢を与えるつもりは更々、無いようだが。
まあ、花粉症とか泣き虫ヒーローなんてのは如何だって良い。
俺にはもっと重要な出来事が差し迫っていた。
最高の予知夢を見てしまった。
火事の夢だ。火事の夢なんてロクでも無い夢だと思うだろ?
良い夢だと思う奴はよく分かっている。
悪い夢だと思う奴は馬鹿だ。大馬鹿野郎だ。
今から俺が有難い話をしてやるから、是を機会に認識を改めるべきだ。
火事の夢ってのは良い夢だ。何故かって?金運がアップする予知なのさ。
どういう理屈なのかは知らない。知った事じゃない。
人間の脳のメカニズムなんてのは宇宙や深海と同じで謎と浪漫に満ち溢れている。
だから俺達凡人が逐一、細かい事を知る必要なんてのは全く無い。
そんな事よりも夢の話だ。
今週に入って三回も火事の夢を見たんだ。
三回とも小火だったんだが、一週間に3度も火事の夢を見たとなれば世界を覆いつくす程の大火に匹敵するに違いない。
要するにだ。人の目には見えざる何かの力が、謎の脳みそパゥワーが
お前に大金やるから取り合えず、宝くじでも買っとけと言っているのだろう。きっと。
一度目の夢はストーブをしまおうとしたら、火を噴き倉庫を焦がした。
二度目の夢は何故か灰皿が出火。部屋の片隅を焼いた。
そして、三度目の夢は知らない家が舞台だった。
知らない家の、知らないリビングで、知らない女の子と、その妹が寝ていた。
俺は薄暗いリビングの隅で、その二人をぼんやりと見ていた。
流石、夢。普通ならこんな状況に陥ったら、気付かれる前に退散するに決まっている。
俺の真っ白な経歴に前科が付くなんて堪ったものではない。
何処ぞの誰とも知らない奴の家に不法侵入しても焦らないって事は夢なんだろう。
俺は何かをするわけでも無く、ただぼんやりと一人の女の子と幼子が寝ているのを眺めていた。
すると突然、何物かが窓ガラスを叩き割って、火種を投げ込んで来た。
ストーカーが放火した。何故か分かる辺り、やっぱり夢なんだろうな。
そう思い、漸く自分の置かれている状況を理解した。俺は夢を見ているんだなと。
目の前の光景が現実なんて、とても思えないしな。
何せ、3歳か4歳くらいの幼子が、18歳くらいの少女を「逃げないと!逃げないと!」って
有り得ないスピードで引きずってるんだぜ?
これが現実だとしたら、ホラー或いは、コメディだ。目の前で見ていた俺だから断言してやる。
その光景は実に気持ちが悪かったと。そして、少しだけ、ほんの少しだけ笑えた。
それにしても、炎は大して燃え広がっていないし、玄関まで目と鼻の先だと言うのに
少女は「ゴメンね、ゴメンね」と繰り返すばかりで、自分から動こうとしない。
諦めてしまったのだろうか?相当、アホとしか言い様が無い。
夢の中の出来事とは言え、生き伸びようとする意思が全く見えない少女の無様な姿に俺は呆れ返っていた。
とは言え、助けてやろうという気も更々無かったし、事の顛末を見届ける事にした。
あの調子なら幼子が少女を外まで連れ出してくれるだろうし、焼死体なぞ見た事の無い俺が見ている夢だ。
悪い事にはならないだろうし、なるとしても、その前に目を覚ますに決まっている。
だから、手を貸す事も、声をかける事もしなかった。
有り得ないスピードで少女を引っ張る幼子の姿が気持ち悪いなと思いながら眺めていただけだ。
それにしても、何度も言うが本当に気持ち悪いなコイツ等。
片方は「ゴメンね」を連呼し、もう片方は「逃げないと!」を連呼していた。
コイツ等、他に言葉を知らんのかと思っていると、二人が期待に応えてくれたのか、別の言葉を喋ってくれた。
と言うよりは発してくれた。
「ヒッ!?」と
新たな人物の登場である。
顔はよく分からないが、間違い無く醜男の手合いだ。顔が残念と言うよりは雰囲気が犯罪者予備軍だ。
ただ一目見て、理解した。この男はストーカーだ。この男が放火した。奴の望みは無理心中だ。
見た目が怪しいから決め付けたのでは無い。何故か分かってしまうのだから仕方が無い。所詮は夢だしな。
玄関の前に立ち塞がるストーカーを前に姉妹は完全に怯え切っている。
ストーカーは目的を達成出来ると大喜びしている。
俺が嫌悪感を抱くには十分過ぎる光景である。
この先、この男が何をしようとしているかも手に取るように分かる。望んでも居ないのに先の展開が手に取るように分かる。
そして、思った通りの展開が矢継ぎ早に繰り広げられる。
何と言うか…実に無粋だと思う。これが映画なら暴動が起きても可笑しくは無いのだが、所詮は夢だ。
そう夢でしか無い。それも顔も名前も知らぬ、赤の他人の夢。
だが、このストーカー野郎が、これからやろうとしている事は不愉快極まり無い。
別に俺の中に眠る正義感が目覚めたわけでは無い。
別に気紛れを起こしたわけでも無い。
ただ許容出来なかった。ただそれだけだ。
だから、俺は夢の世界の傍観者から登場人物の一人として介入した。
ドラマや映画のヒーローの様な白々しい台詞も、格好付けた仕草も必要無い。
ただ目の前の不愉快極まりない豚野郎を殴り飛ばす。それで一切合財、全てが丸く納まる。
お前はアクションゲームの敵キャラかと突っ込みたくなる程、見事に吹き飛んだのは流石、夢と言ったところか。
「この馬鹿は俺が始末しておいてやるから、早く逃げろ。」
少女が何か言っているが、よく聞こえない。目覚めが近いのだろう。
「この馬鹿女がッ!!さっさと行け!!」
そう言ったつもりなんだが、ちゃんと喋れているかかなり怪しい。
それでも、二人の少女は割としっかりした足取りで、玄関から外へ出て行った。
炎が全く燃え広がらず、火事と言うには随分と小さな燃え方をしているが、この侭、此処に居るのは拙そうだ。
夢だと分かっていても焼死なんて嫌だろ?
目を覚ます前にストーカー野郎にトドメを刺さなければと思い。未だに呻いている男の方へ近付いた。
駄目だ。身体が重い。何者かに追われる夢を見ている時のように歩みが遅い。
殴り飛ばすのも億劫だ。寧ろ、夢なのに何故、こんなに俺はムキになっているのだろうか?
段々と馬鹿馬鹿しくなって来たが、そう思った時にはもう遅い。
ストーカー野郎と額をかち合わせたと言うのに、もう起きるなんてのは無念過ぎる。
此処まで来たら、トドメを刺すなり何かするのが筋ってものだろ?
それにしても、身体が重い。本当に残された時間は少ない。トドメを刺すのは難しそうだ。
だから、胸倉を掴んで一言、恫喝してやるだけに留めておいた。
「次、俺の目の前に現れたら、骨の2〜3本は覚悟しておけよ」と。
ストーカー野郎が奇声に近い、怒声を浴びせて来たが滑舌が悪すぎて何を言っているのか分からない。
健常者に分かる言葉で喋ってくれ。この気違い野郎と皮肉ってやる程の余力も無い。
だから、ストーカー野郎を放置して玄関をくぐり抜けた。
玄関を抜けた先は自室のベッドの上だった。
そして、俺は思った。
火事の夢、今日で三回目だ。何が何でも、宝くじを買うべきだ。
だから、その日、宝くじ売り場で売り場のオバちゃんと他愛も無い話をしていた。
「最近、火事の夢ばっか見てるから今日は当たる。絶対に当たる。間違いなく当たる。
見知らぬ女の子も助けてやったんだ。俺に穏やかで平和な老後を過ごせと恵比寿さんが言っているに違いない。」
よく当たるとの評判で何度もTVで紹介されている有名な宝くじ売り場で学生時代から愛用しているが何の事は無い。
単純に買う奴が多いから、結果として余所の売り場より当たる確率が高いに過ぎない。
これまで俺がやって来た事は高額当選者の為に外れくじを買いまくって来ただけで、回収率は50%前後といったところだ。
「金運アップの夢だろうが、大安吉日だろうが、高額当選の店だろうが兄さんには当たらないようになっているんだよ。
もう諦めな?あたしゃ、もう何年って同じを事を聞かされて来たけど、紙くずを買うばっかりじゃないか。
大体、その若さで老後、隠居なんて浅ましい事を言う奴には当たるわけが無いだろ。」
「売り子が客の購入意欲を削ぐような事を言うもんじゃないだろ…」
溜息交じりにやれやれと言ってやる。アメリカのコメディアンか何か並のオーバーリアクション付きだ。
「ああ、客だったのかい?私はてっきり、恵まれている大人に募金しているお人好しかと思ったよ。」
全く、客に向かって何て言い草をするんだと思ったが、これも普段通りのやり取りだ。
別に不快にもならないし、此処で今日こそ間違いなく当たるよ!なんて言われてしまったら嘔吐モノだ。
「此処の張り紙に高額当選のお知らせを追加するお客様に向かって、なんて事を言いやがる…」
「ま、でも、本当に当たるんだったら、給料全部つぎ込んでも問題無いんじゃないかい?」
問題大アリだ。ドアホ。宝くじに夢を見てはいるが現実も、しっかり見据えている。
当選金額が億単位の宝くじは全国・地方問わず全て買い揃えるようにはしているが、一度の投資金額なんてのははした金同然の金額だ。
だから、今回もいつも通り投資金額ははした金だ。
「また今回も小銭かい?どうせ当たりゃしないんだし、そんなに貧しいんだったら、その分、貯金に回せば良いのに…」
余計なお世話だ。ついでに言っておくが、俺は断じて貧しい暮らしはしていない。
そりゃ、裕福な暮らしもしていないが職を失っても半年くらいは食い繋いでいけるくらいの貯えはある。
だから、そこの所、誤解するな。マジで。
俺は職場に戻るなり後輩に話しかけられた。
「先輩、また紙くず買って来たんスカ?絶対、馬の方が回収出来ますって!」
ドイツもコイツも失礼極まりない。それに馬じゃローリターン過ぎる。
「んな事、言ったって俺、此処に就職してから先輩が高額当選したトコ一度も見た事無いっすよ?」
ああ。俺も生まれてこの方、俺が高額当選したところを一度も見た事が無い。
まあ、今に見ていろ。LOTO6、TOTO、ジャンボ宝くじのミラクル大三元で13億円を手に入れた暁には
課の皆に100万円ずつくれてやった上で隠居生活してやる。
「盛り上がっている所、悪いんだが…」
「ボスにはニートだった俺を拾ってくれた恩があるからなー…何か欲しいモンとかあります?」
「いや、金運向上は大火で、小火は健康不調だ。今週に入って三日目とか言っていたな?体調だけは気をつけろよ?」
「パードゥン?」
「健康に気を使って、働け」
翌日、俺はインフルエンザ、花粉症を患い、マンションの階段で躓き、踊り場まで転落。左足を骨折した。
改めて、夢診断って奴は凄いものだと思い知らされた。
ついでにLOTO6、TOTO、グリーンジャンボの当選金額は合計300円。いつも通りだ。
おしまい
投下乙。
おもしろいし上手い。だがあえて言う。
さすがに今の時期、花粉症ネタからはいられるのは違和感がある。
展開的に、削ってちょいと修正でも充分押し切れるような気はしたが……
まぁ単なる俺の、嫉妬からくるひがみwなんで気にしないでくれ。
引き続き投下プリーズ!
同人のようなもので、自分の作品を出す機会がありまして、
過去にここに投下したものを修正して載せようと思っています。
なので一応報告を。
もし見る機会があればにやにやしてやって下さい。
パパは、つりが得意だ。
海でも、川でも、湖でも、行った先ではかならず大物をつってくる。
「でも、パパがつったいちばんの大物はママなんだけどな」
これがパパの口ぐせだ。
ぼくには意味がわからないけれど。
昨日もパパは、いつものようにつりにでかけた。
それなのに、朝になっても帰ってこない。
心配になったママとぼくは、パパの行きそうな海や、川や、湖をさがしまわった。
そうさく願いも出して、おおぜいの人でさがした。
それからしばらくたって、パパは首をつった姿で発見された。
それほどうまいわけでもないな
>>410 投下乙だけどあまりにも手抜きすぎるっす。
>>410 あんまりっちゃあんまりなオチですねw ただやっぱり端的でいいので過程が欲しかったです。
「つる」の活用法をもっと掘り下げれば、濃いブラックユーモアに昇華できると思いますよ。
昔々、人間が暮らす平和な国にとても綺麗なお姫様がいました。
そんなお姫様に魔人や怪物を支配する国の王様、魔王が一目惚れし求婚しました。
とても優しいお姫様でも、魔王と結婚するのは嫌だと言いました。
王様も国民もみんな、みんな嫌だと言いました。
魔王はとても傷付き、悲しみ怒りに打ち震えました。
全ての生き物を支配する者、神様は怒り悲しむ魔王の姿を見て言いました。
「魔王よ。お前はとても強い生き物だ。
お姫様を攫って、お前の妻にしてしまえ。」
そして、魔王は神様の言葉に従い、お姫様を自分のお嫁さんにする為に攫ってしまいました。
お姫様を失った王様と国民はとても悲しみました。
だけど、誰もお姫様を助けようとはしませんでした。
魔王がとても強いから、皆、とても怖がったのです。
そんな時、国で一番、勇敢で強い騎士が名乗りをあげました。
「王様、私がお姫様を救い出して差し上げましょう。」
騎士が名乗りをあげた事に影響を受け、国の人達は勇気を取り戻し
騎士と一緒に助けに行くと言い出すようになりました。
王様はそんな勇敢な騎士を褒め称え、勇者の称号を与えました。
騎士は勇者になり、仲間を連れてお姫様を救うべく魔王に戦いを挑みました。
魔王はとても強く。一人、また一人と仲間は殺されました。
流石の勇者も絶対絶命の危機に陥りました。
勇者と呼ばれても、普通の人よりもほんの少し強いだけの人間でしかありません。
秘めた力もありません。伝説の武具もありません。奇跡だって呼び起こせません。
ただ一つの勝機も無く、逃げ出す手立ても無く、戦いにすらなっていません。
そんな戦いを見てお姫様は勇者を助けようと魔王の前に立ちはだかりました。
「魔王様、もう止めて下さい。私は貴方の妻になります。だから、勇者様を殺さないで下さい。」
魔王は、そんなお姫様の姿を見て、とてもとても苛立ちました。
お姫様が自分の事を好きになったわけでは無いからです。
それでも、お姫様が自分のお嫁さんになるならと勇者の命だけは助ける事にしました。
「良いだろう。勇者の事は生かしておいてやろう。では、今から婚礼の儀式を行う。勇者よ、お前も見て行くが良い。」
そして、魔王は勇者の両腕と、両足をもぎとりました。
達磨の様な姿にされた勇者は獣のような声で鳴きました。
あまりにも大きな声だったので魔王は勇者の舌を千切り、腹を潰しました。
無様にのた打ち回っている勇者を尻目に魔王は、お姫様のドレスを破り裸にしました。
そして、泣き叫ぶお姫様を無視して勇者の見ている目の前でお姫様を犯しました。
やがて、勇者は自分の無力さを嘆き、無残な姿に変わり果てた仲間の姿に悲しみ
魔王を恨みながら死んでしまいました。
勇者は命を失い、お姫様の体内に新たな命を宿した事で魔王は満足しました。
ですが、お姫様は満足した魔王の隙を見て、足元に落ちていた勇者の剣で自分の心臓を貫きました。
「魔王よ。私の魂は天に昇りやがて地に戻る。その時、私はこの方と共に貴方を殺しに行く。」
そう言い残して、お姫様は死にました。
自分のお嫁さんだった物の死体を見て魔王は呆気に取られました。
何時から居たのか、神様が哂いながら魔王の前に姿を見せました。
「魔王よ。実に面白い見世物だった。これからも私を退屈させてくれるなよ?」
神様は魔王に皮肉を言いましたが、魔王にとってはそれ所ではありません。
魔王は必死になって神様にお願いをしました。
「神よ。貴方の奇跡で彼女を生き返らせてくれ。」
しかし、神はその願いを叶えはしませんでした。
「魔王よ。彼女達はお前を恨みながら死んでいった。
復讐の機会は与えてあげないと可哀相だ。
そして、彼には人間の与えたちっぽけな称号では無く、真の勇者の力を与えてやろうと思っている。」
真の勇者の力。それは神様が与えた強大で残酷なルールでした。
勇者になる条件、それは人間の総人口が半分以下になったら発動する事。
人間が死ねば死ぬ程、力を増す事。
非力でとても弱い人間が持つ唯一最強の切り札でした。
だけど、その切り札を使いたければ死ね。
もっと死ね。
沢山死ね。
いっぱい死ね。
只管死ねと言っているのです。
魔人の王である魔王ですら人間を庇いました。
「私は人間を傷付けるつもりも、滅ぼすつもりも無い。
今回は残念な結果になってしまったが人間との共存を望んでいる。」
しかし、神様はそんな魔王の姿勢を否定しました。
「魔王はもっと残忍で、残酷であるべきだ。そして、滅ぼさなければならない。」
魔王は怒りました。全ての人間と魔人の為に神様に戦いを挑みました。
勇者達を圧倒的な力で殺した魔王ですら神様の前では赤ん坊同然でした。
魔王を殺した神様は悩みました。
魔界に存在する魔王の殆どは人間の想像とは違って残酷で残虐な存在では無かったからです。
仮に人間の想像通りの魔王が居たとしても、他の魔王に倒され魔界は平和と秩序を保ちます。
そこで神様は人間に対し、真の勇者という存在を生み出したと同時に、真の魔王という存在を生み出しました。
魔界に存在する全ての魔王を一人で殺せるだけの力と、残虐非道な心を持った力でした。
そして、真の魔王を殺せるのは真の勇者だけというルールも作りました。
その日、真の魔王独りと、魔界の戦争が始まり、終わりました。
神様は騎士と、お姫様の魂を真の勇者の力と共に人間界に放流しました。
神様は世界の大まかなルールを作り、細かい事は成り行きに任せました。
結果として、世界は神様の望んだ通りの結果になりました。
魔王が魔界を支配し人間界を滅ぼそうと非道の限りを尽くし
多くの人間が死に絶えた所で勇者が現れ魔王を倒しました。
また神様は悩みました。
予定通り魔王が勇者に討たれ、世界は平和になりました。
魔王が死に平和になってしまえば人間は死なないのです。
人間が死ななかったら勇者も現れません。
これでは面白いけど、面白くありません。
神様は悩みついた末に、ある名案を生み出しました。
魔王も何らかの条件下で発生するようにすれば良いと。
魔王が死に世界が平和になり、みんなが油断している時に魔王が発生し悪夢のような世界が出来上ると。
それから数千年、神様にとって最高の生物にとって最悪の時代が過ぎました。
神様は力が強く、とても頭が良かった為の油断でした。
世界に不具合が発生しました。
平和な世の中に、全く人の死なない時期に勇者が産まれたのです。
そして、魔王は魔界を支配出来るだけの力を持ちながら残虐でも冷酷でもありませんでした。
それでも神様は傍観していました。
もしかしたら、これまでとは違う展開を見る事が出来るかも知れないと。
何よりも真の勇者と真の魔王の殺し合いも既に飽き始めていました。
だけど、いくら眺めていても勇者は何もしません。魔王もまた何もしませんでした。
何もしない勇者と魔王が面白くない神様は様々な場面で暗躍し二人が出会うように仕向けました。
そして、二人は神様の思惑通りに出会いました。
結局の所、神様は自分の作った物が殺し合い滅ぼし合う様を見るのが好きらしく
これから始まるであろう凄惨な殺し合いを期待して興奮していました。
だけど、神様の思惑とは裏腹に二人は意気投合して、とても仲良くなりました。
これはこれで面白いと思い、神様は二人の前に姿を現しました。
神様はこれまでの経緯を話し、どんな望みでも叶えてやる変わりに自分にとって面白い世界を作って欲しいと言いました。
二人は暫く考え込みました。
そして、眼を見合わせてお互いに剣を抜きました。
しかし、刃の矛先は神様でした。
流石の神様も驚きました。
「何故、私に剣を向ける?神である私に逆らうのか?」
勇者は言いました。
「五月蝿い。黙れカス。グダグダ抜かして無いで取りあえず死ね。」
魔王は言いました。
「良いから死ね、俺達に殺されてしまえゴミクズ。」
勇者と魔王は、残酷な歴史の真実を知り怒っていました。
神様も怒りました。自分が作った遊び道具に悪口を言われるなんて考えてもいませんでした。
神様は二つの失敗作を壊そうとしました。
ですが、彼等は神様にとっての失敗作です。
人間の世界ではよくある事です。
失 敗 が 元 で 命 を 落 と す
それを神様は理解していませんでした。
兎に角、二人の力は出鱈目でした。
神様の剣は勇者の一太刀で神様の腕ごと破壊しました。
神様は剣が駄目ならと神通力で二人を殺そうとしましたが、それを魔王は簡単に跳ね返し神様を殺しました。
そして、世界から神様が居なくなり生物は初めて自分の意思で未来を決める力を得ました。
神様を殺してしまい真の平和を得て、二人は相談しました。
『これからどうする?』
二人は考えました。考えに考え抜いた結果…
「面倒臭い、何もやらねぇ。」
「まー、復讐は出来たしどうでも良いや。」
二人は大昔に殺された騎士と、お姫様の魂を受け継ぐ者だったのです。
そんな二人も天寿を全うした頃、神様の国から別の神様がやってきました。
神の創造物が神を殺す力を持つ危険な世界であると判断したからでした。
新しい神様はこの危険な世界を破壊しようとしました。
創造主の神なら一度念じる事により崩壊する世界ですが、新しい神様は創造主では無い為、力尽くで壊さなければいけません。
勇者と魔王が居なくなって数百年後、規格外生物の脅威も無いこの世界など神の力の前に一瞬で崩壊する予定でした。
しかし、予定は未定という言葉があります。
神様の大誤算があったのです。
勇者と魔王の魂は、騎士とお姫様の魂が転生した姿でしたが二人は男同士だったので結ばれる事はありませんでした。
しかし、二人に共通する性格があったのです。
魂は同じであっても人格までは同じになりません。
そんな二人は無類の女好きだったのです。
二人は規格外の遺伝子を世界中に垂れ流していました。
結果として魔界、人間界の総人口の内、3割は彼等の遺伝子を受け継ぐ規格外生命体だったのです。
世界を破壊しようとした神様は規格外生命体の手によって
何をしに来たのか分からない程の勢いで殺されてしまいました。
そんな事態を重く見た神界の神様達は構ってらんねぇとシカトを決め込む事にしました。
その日から人間界と魔界は神様からの干渉を受けなくなり
いつまでも平和な日々が続く事になりました。
めでたしめでたし。
最後、遺伝子のくだりがちょっとうん?ってなったけど、
それまでの神様の好き勝手さ加減と自業自得は良かったと思う。
投下GJでしたー。
壮大な連作RPGシリーズをダイジェストで読んだみたいだwこの世界観の中でまた別の物語が出来るかもしれんね
◆B21/XLSjhE は上手いな。
読んでて、ん?ってなる事もあるけど、どれも面白いし引き込まれる。
今後の投下にも期待してるよ
◆B21/XLSjhEのうまさは異常
すんげえ楽しめますた
ドラクエもこんなインパクトあるストーリー据えて欲しかったとか思うぜ……人が死ぬとかじゃなくがっつし心もってくアレがソレでナニです。
長かった一週間が漸く終わり、短い土日が一瞬で終わってしまった。
今から一眠りして目を覚ましたら、また齷齪と仕事をせにゃならん。
憂鬱極まり無いが、中々面白い体験をしたので時間があるなら是非とも聞いていってくれ。
幽霊屋敷と銘を打ってはみたが、別に季節遅れの怪談話をするつもりは無いから
その手の話が苦手な奴も安心して話を聞いていってもらいたい。
この糞不景気の呷りを受けて、俺の勤め先の経営状況は最悪だ。
最悪だから、暇な事この上ない。どの程度、暇かってーと、アレだ。
週休二日のところが三日になる週があったり、始業と同時にTVを付けて
のんびりとニュースを見ながら、遅めの朝食を摂ったりと…
大凡、雇われの身には見えない不真面目極まりない勤務態度が
罷り通るくらい暇なのだ。これで金が貰えるんだから意外と良い職場なのか?
まあ、勤務態度や朝飯の話は如何だって良いんだ。
見ていたニュースが切欠に始まった雑談が事の発端でな。
心霊スポットとして有名な廃墟と化した病院で放火騒ぎがあったのさ。
詳しい事は省略するが、その病院に纏わる暗い噂は全部、嘘っぱちでただの病院跡だったのだと。
所謂、幽霊の正体見たり枯れ尾花ってオチだったわけだ。
ま、人の噂の真相程、下らねぇ話は無いって事なのだろうな。
俺は柄にも無く一抹の寂しさを湛えて、すぐ傍でニュースを見ていた上司に話を振ったのさ。
「なんだか盛り下がるもんっすね。」とな。
上司は苦笑いしながら「心霊スポットの正体なんて、どれもそんなもんだ。」
どれも…?俺は疑問をそのまま、上司にぶつけてやったね。
「他にも心霊スポット扱いされている所があるんすか?」
「地元密着型の超ローカル心霊スポットだがな。興味があるなら招待してやっても構わんぞ?」
心霊スポットを、そうでは無いと暴く。
なんとも無粋な話ではあるが、これはこれで非日常的で刺激的な出来事だと思わないか?
俺は思ったね。だから、二つ返事で上司の誘いに乗ったのさ。
「も、マジでギブアップ。これ以上は無理っす。」
真っ暗な廊下で此方を見向きもせずに恐ろしい事を淡々と背中で語る上司の姿すら、この世の者とは違う物に見えた。
「自宅の廊下のど真ん中で泣き出されても適わんな。」
そんな上司の失礼な一言と共に屋敷に明かりが点いた。
「…って、自宅?」
「ああ。近所で幽霊屋敷扱いされている我が家の正体って奴だな。」
「あー…そーなんすか。じゃあ、消えた奉公人ってのは…」
「無駄に広いだろ?学生の下宿場として、部屋を提供していた時期があってな。
だが、3姉妹の内の1人。まあ、俺の生みの親なんだがな。知らん人間が我が家を出入りするのは気に食わんと言い出してな。
下宿していた学生が卒業したと同時に下宿場としての役目を終えたと言うわけだ。」
「なーんだ。他の話もそんな感じのオチがあるってわけっすね?」
「いや。全てその三姉妹が実際に体験した事だ。本人とその友人達から聞いた話だが、恐らく嘘だと思う。」
「ですよねー!」
「この辺一帯が首塚なのは確かな話だが、俺はこの屋敷で心霊体験をした事なぞ一度も無いからな。
俺が生まれてから、心霊現象が無くなった。そんな話を信じられると思うか?バカバカしい。」
成る程。この屋敷は元心霊スポットってわけだ。そして、上司の誕生と共に幽霊の類が消えたか成仏したと。
上司は噂話を全て嘘っぱちだと言うが、恐らくは全て事実なのだろう。
今もこうして首塚の上に建ててある屋敷の中からケツを向けてるわけだからな…非常に帰りたい気分になってきた。
「しかし、相手が男だと脅かし甲斐の無いな。」
余計なお世話です。このクソ上司。全然、普通の屋敷じゃないじゃないか。
今朝のニュースでやっていた病院と全然、状況違うじゃないか。
釈然としないが、グダグダと酒呑んだり、女が如何だとか、良い酒を呑めとか、煙草より葉巻が良いとか
副業するなら株よりもFXが良いとか、ガキの頃に好きだった遊びの話だとか下らねー話をしていたのさ。
それにしても、この上司殿。他の奴と話をする時はお堅い話ばっかする癖に俺が相手だとアホな話しかしねぇ。
俺だって真面目な話くらい出来る程度の教養はあるんだぜ?
それはさて置きだ。しこたま酒呑んで飯食って、良い気分で寝転がって良い気分で、うつらうつらとしていたのさ。
今となっては笑い話なんだが、この時ばっかりは自分の軽率さを心底恨んだね。
居るんだよ。足元に。
顔と腕だけの女が。俺の両足をがっちりと抱え込んで哂ってやがる。
ついでに目の部分は空洞で、中は真っ黒だ。
驚きの余り、声を出せないでいると、もう1人いやがった…同じく目が空洞で顔と腕だけの女が。
ゲラゲラと哂いながら、俺の顔を引っ叩いてきやがる。大して痛くは無いが、顔が近いせいで怖い。怖すぎる。
やっぱり、化物屋敷じゃないか!!あのクソ上司は何処へ行った!?
目線だけで上司の姿を探すと、やたらとデカイ右腕に足を掴まれ引き摺られていた。
しかも、この野郎、こんな状況なのに熟睡してやがる!?
もしかして、心霊現象が起きても気付いていなかったのか?
兎に角、こんな恐怖体験、俺一人で味わうなんてゴメンだ。
「助けてくれぇぇぇぇぇぇえええ!!」
声が裏返ってしまい情けない事、この上無い。
幽霊二人の哂い声が大きくなり、俺を引っ叩く力も心無しか強くなって来た。
まるで俺が怯えているのを喜んでいるかのようだ。
クソ!なんで俺が独りで他人の家の心霊現象で怯えなきゃいけないんだ!
兎に角、このクソ上司を起こして恐怖を分かち合わせてやる。でないと理不尽過ぎる。
「起きろおおおおお!!!」
「うるっせぇッ!!!」
あ、起きた。上司殿は右腕の幽霊を左足で蹴り飛ばした。
右腕の幽霊は心無しか、気まずそうに漂っていた。顔が無いからよく知らん。
そして、俺を引っ叩いて喜んでいた幽霊二人は哂いもせずに固まっていた。
焦り?怯え?これは一体、どーゆーこった?
上司はのっそりと立ち上がり、俺…と言うか、二人の幽霊を一瞥して夢遊病者のような足取りで、ゆっくりと俺に近付き…
俺の両足を抱え込んでいた幽霊を蹴り飛ばし俺を引っ叩いていた幽霊の髪を引っ掴んで壁に叩き付けた。
上司は俺の前に座りただ一言「煙草」とだけ言った。
俺は慌てて、ラッキーストライクを上司に咥えさせ、火を点けた。
お前、さっき葉巻の方が良い言うてたのは何処行った?
上司はゆっくりと紫煙を吐き出すと…
「……あえ?」
間抜けな声を発した。そして、煙草を足の裏に落として大層、驚いていらっしゃった。
つまる所、この御仁は今の今まで寝ぼけていらっしゃったようだ。
そして、痛みのあまりに悶絶している幽霊達の存在に気が付いた。
「あ?こいつ等、いつも夢の中に出て来る奴じゃねーか…それにしても、こんな悪趣味な人形、屋敷には無かった筈だが…」
それにしても、足癖の悪いお方だ。幽霊を足蹴にしたり、踏み付けたりして様子を伺う奴なんて
世界広しとは言え、このお方くらいのものだろう。
たまに幽霊が「ぐえっ」とか、カエルをひき潰したような声で呻いて少しだけ不憫になってきた。
因みに、もう独りは俺の背中の影に隠れて怯えている。
「それ人形じゃなくて幽霊っすよ。さっきまで、それに襲われてましたし、それに後ろ。」
「あ?」
超デッケェ右腕が、どうしたものかと漂っていた。
「あー…じゃあ、何か?この屋敷は本物の幽霊屋敷だったって事か?」
「ええ。で、何か今まで、寝ぼけながら幽霊退治っぽい事をしていたみたいっすよ?」
「それは驚きだ。」
大して驚いてもいない上司が足蹴にしていた幽霊に体重をかける。ゴリッとか音してるんだけど大丈夫なのか?
デッケェ右腕が止めに入るが煙草の火を押し付けられて、すぐに大人しくなった。なんっつーか、アレだ。
コイツ等、弱いな。いや、上司が非常識なだけなのか?幽霊退治と言うか暴行だよな、コレ。
「お前、本当に幽霊なのか?幽霊さんですかー?おーい?殺しますよー?」
そりゃあ、口元が地面に押し付けられているんだから喋る事なんて出来無いわけで。
て言うか、幽霊を殺したら如何なるんだろうな?成仏すんのか?だったら殺した方が良いのか?
意外と怖いものでは無いようなので、知的好奇心を満たす事を上司に提案した。
「それじゃ、喋れんでしょう?つーか、意思の疎通が出来るんだったら色々、話聞いてみましょうよ?」
「それもそうだな…おい、喋れ。」
上司は幽霊から足を退けて問いかけたが、此処までされて素直に喋る筈も無く…
「サイッテー…」
そして、そんな口の訊き方をすると当然、オシオキされるわけで…
しかも、相手が生き物じゃないだけに容赦も全く無いと来たもんだ。
ドンッ!!と大きな音が部屋に鳴り響いた。上司が顔の幽霊を踏み潰した音だ。
ホント、サディスティック…と言うか、バイオレンスな人だ。
「今まで夢の出来事と思って容赦して来たんだけどな。現実に起こっている事なら話は別だ。
悉く、俺の安眠を妨害してくれたんだ…お前等、もう一度死ぬか?」
俺は居た堪れなくなって、つい幽霊を庇ってしまった。
「ま、まあまあ、抑えて抑えて…なんか凄く怖がってますし、もうちょっと穏やかにいきましょうよ?
なんつーか、本当に幽霊なのか怪しいくらいですよ?」
と、俺の背中に隠れて怯えている顔を上司の前に差し出す。
何と言うか、生首を差し出しているみたいで変な気分だ。
「つーか、俺、幽霊触っちゃったよ…なんで触れるん?って言うか、幽霊で良いんだよな?」
「この屋敷が建つ前から、色んな幽霊達と遊んでいたんだけどさ。
ホント、このオッサン酷いんだよ?マジ、私等の存在に気付かないでやんの。
つーか、気付いたと思ったら、この仕打ちだよ?信じらんない。」
生首がペラペラと喋り出す光景事態が俺には信じらんない。
「それに引き換え、君は良い感じだ。
無様なくらいに怯えてくれたしね。アレはもう笑うしか無いって感じ。」
余計なお世話だ。
それにしても、幽霊なのに以外と辛気臭くないな。
「誰がオッサンだ。この屋敷が建つ前から幽霊やっているのならば、お前達こそ年寄りだろう。」
生首2人?2つ?兎に角、なんか生首を二個抱きかかえて雑談している様は…ホラー?コメディ?
兎に角、上司がまたキレそうなので、宥めつつ引続き、話を促す事にした。
「だって、私等が死んだのって17歳の時だし、永遠の17歳ってわけ。」
「化物面しておいて、何が永遠の17歳だ。若作り過ぎるのにも程がある。」
まあ、生首で何も無い空間から両腕が生えていて、目の部分は空洞…
どんなにうら若き乙女であっても、あんまり…いや、全く魅力なんてものを感じないのは事実だよな。
「バーカ。そうじゃなくって、幽霊ってのは成長しないの。死んだ時点で時間も止まるわけだし?」
成る程。若くして死ねば永遠の若さを得る事が出来るってわけだ。
だけど、この化物面じゃあなぁ…
「酷いなぁ。化物面化物面って。女の子に向かっていう言葉じゃないよね?」
しまった。考えていた事が何時の間にやら、口に出ていたようだ。
「だが、事実だろう?最近の馬鹿餓鬼みたいな口の訊き方をしているせいで怖さは無いが
顔だけなら、3流ホラーだな。」
そんな本物の幽霊相手に3流とか身も蓋も無いご意見だ。
「そりゃあ、私等だって若いんだし、その時代にあった物言い位するに決まってんでしょ。」
「それに外見だって、こんな感じに。」
2個の生首に胴体と身体が生え、顔が普通の女の子の顔になった。
何と言うか、此処まで非常識だと笑うしかねーな。
つーか、白いワンピースに白い肢体…いかんいかん、幽霊に欲情するとか流石に有り得んわ。
ただ…なぁ?
「フツーのカッコしてりゃ全然、可愛いな?」
「君、良い事言うね。そこのDVオヤジとは大違いだ。」
「俺の睡眠を妨害した報いだ。」
「私等の事、今日初めて認識した癖に!」
「細かい事を一々、気にするな。クソババァ。」
「オニーサン、オヤジが苛めるよ。助けてー!」
幽霊二人が俺に縋り付いて来る。少し嬉しいと思ってしまった俺は間違えているのか?
「まあ、何でも良いが…今まで俺の安眠を妨害しやがった。主にそこの右腕。」
今まで放置されていた、右腕がふわふわと漂っていた。
「取り合えず、この子等みたいに喋れるようにはならないのか?」
俺が右腕の問いかけると右腕は丸まり、人の姿になった。
「だってさ、100年くらいこの土地で幽霊やってんのにさ?
私達の事を嘘だって言って認めようともしないんだよ?
酷い時は暴力を振るって来るし!さっきは煙草の火を押し付けられたし!
皆、このオッサンに嫌気が指して成仏しちゃったよ!
お陰で今じゃ残った幽霊も私達3人だけだよ!!」
今まで黙っていた反動のせいか、人の形になった途端、苦言を並び立てる。
それにしても、幽霊である事を気付いてもらえないってのはそんなに嫌な事なのだろうか?
そもそも、嫌気が指したから成仏するって普通は逆なんじゃないのか?
疑問は尽きないが、こればっかりは生きた人間の価値観じゃ理解出来そうにない。
「知った事か。」
本当に幽霊相手だと容赦無いな。
そして、幽霊の価値観なんて本当に知った事じゃないようだ。
何と言うか、此処まで非常識だと笑うしかねーな。
つーか、白いワンピースに白い肢体…いかんいかん、幽霊に欲情するとか流石に有り得んわ。
ただ…なぁ?
「フツーのカッコしてりゃ全然、可愛いな?」
「君、良い事言うね。そこのDVオヤジとは大違いだ。」
「俺の睡眠を妨害した報いだ。」
「私等の事、今日初めて認識した癖に!」
「細かい事を一々、気にするな。クソババァ。」
「オニーサン、オヤジが苛めるよ。助けてー!」
幽霊二人が俺に縋り付いて来る。少し嬉しいと思ってしまった俺は間違えているのか?
「まあ、何でも良いが…今まで俺の安眠を妨害しやがった。主にそこの右腕。」
今まで放置されていた、右腕がふわふわと漂っていた。
「取り合えず、この子等みたいに喋れるようにはならないのか?」
俺が右腕の問いかけると右腕は丸まり、人の姿になった。
「だってさ、100年くらいこの土地で幽霊やってんのにさ?
私達の事を嘘だって言って認めようともしないんだよ?
酷い時は暴力を振るって来るし!さっきは煙草の火を押し付けられたし!
皆、このオッサンに嫌気が指して成仏しちゃったよ!
お陰で今じゃ残った幽霊も私達3人だけだよ!!」
今まで黙っていた反動のせいか、人の形になった途端、苦言を並び立てる。
それにしても、幽霊である事を気付いてもらえないってのはそんなに嫌な事なのだろうか?
そもそも、嫌気が指したから成仏するって普通は逆なんじゃないのか?
疑問は尽きないが、こればっかりは生きた人間の価値観じゃ理解出来そうにない。
「知った事か。」
本当に幽霊相手だと容赦無いな。
そして、幽霊の価値観なんて本当に知った事じゃないようだ。
「それで俺に纏わり付いて来る理由は何だ?」
「幽霊と人間の関係って言ったら、脅かす側と驚かされる側に立つのが常識でしょう?
で、何でアンタは生きている人間の癖に、死んだ私等を脅かす側に居るのかな?
ベテランの幽霊としては、それがヒジョーに気に食わない。」
そりゃあ、人間に暴行を加えられたとあっちゃあ、幽霊も形無しだ。
寧ろ、幽霊が本気で怯えているしな。
と言うか、3人とも何故、俺に縋り付く…って言うか、コレはアレか?
取り憑かれているって奴じゃねーのか?まあ、嬉しいから良いか?
いや、ダメだろ?だけど、この状況はハーレムって奴だ。
うん。美味しいな。気にせず続けよう。
「それで俺に如何して欲しいんだ?」
「もっと怖がれ!!」
「徹底的に存在を否定してやるから、さっさと成仏しろ。ド阿呆。」
そろそろ、幽霊娘達が泣き出しそうなので、別の話を振ってやる事にした。
もう少し抱きつかれていたいし、まだ成仏されるのも色々と惜しいだろ?
「つーか、幽霊って触れるんだな?足もあるし。」
「まあ、姿形は割と自由自在かな。顔と足だけにしたり、腕だけにしたりね。勿論、足だけを消す事も出来るしね。
で、君がイメージしている幽霊の身体。幽体になると私等も人間に触る事が出来なくなるの。」
説明しながら、幽霊娘の姿がコロコロと変わる。その様を見て何と無く、トランスフォーマーを思い出した。
「最初から幽体にしておけば、殴られずに済んだものを…お前等、マゾヒストか?」
因みに、足癖の悪いこの御仁。まだ一度も殴っていない。
「んなわけあるかっ!!幽体だとアンタが私等の存在に気付かないから態々、実体になって脅かそうとしたんじゃない!!」
脅かそうとして、蹴り飛ばされているんじゃ世話ないな。
存外、間抜け…まあ、それはそれで可愛らしいのか?
「そうか。で、何時から俺をストーキングしていたんだ?」
「アンタが生まれた時から。」
成る程。それで上司が生まれてから、この屋敷で怪奇現象が起きなくなったというわけか。
スルースキルが高すぎるが故に、この屋敷に巣食っていた幽霊達は上司を脅かそうと必死になり
結果も実らぬまま、失意の内に成仏していった…てっきり自縛霊の類になるとばかり思っていたが
死んで無い人間の常識や想像なんて全くアテにならないって事らしい。
「で、いつまで続けるつもりだ?」
「勿論、アンタが私達に恐れおののくまでよ!!」
「諦めろ。半人前」
即答でバッサリと切り捨てなすった。
「お前達が幽霊というのは、まあ良い。信用もしよう。また心霊現象に出会ったとしよう。
となれば、俺が真っ先に考えるのはお前達のその馬鹿面だ。」
「なんですって!?」
「最後まで聞け。どんなに恐ろしい心霊現象が起きても、お前達の仕業と考えただけで
それは実に滑稽極まりない、笑える上に下らない物事として認識してしまうだろう。
つまり、お前達の存在が幽霊の地位を失墜させてしまった。だから、諦めろ。」
「あーもー!このオヤジ、マジでムカツクー!!」
「恨むなら、己の無能を恨め。」
「君からも何とか言ってよ〜!!このオッサン、口悪すぎ!!」
すまん。3人娘よ。俺では到底、太刀打ちでないような御仁なんだ。
「お前等では俺の事を如何する事も出来んのだろ?だったら諦めて成仏しろ。
それが嫌なら、ソイツに憑いていけ。お前等の事を怯えていたようだしな。
ソイツを脅かして、自分を慰めていれば良い。」
なんと言う押し付けだ。と言うか、これが目的で呼んだんじゃないだろうな?
まあ、こんな別嬪さん3人も頂けるなら是非、貰いたいが。
「別に着いて来ても良いけどよ。もう怖いとは思えねぇけどなぁ?
もう可愛い女の子にしか見えねー。」
「幽霊を口説く奴なんて世界広しとは言え、お前だけだろうな?」
幽霊に暴行を加える奴なんて世界広しとは言え、貴方だけですよ。
つまる所がお互い様って事だ。口に出して蹴られては敵わんので心の中だけで思い留めておく。
「どうする?オニーサンに憑いて行く?」
「このオッサン、神経図太いし…オニーサンに憑いて行こうか?」
「うん。そうだね…ね。君に憑いて行っても良い?」
これは非常に美味しい展開なのでは?
俺の出す結論なんて今更、言うまでも無い。
「こんなに可愛い子が3人も着いて来るなんて、断れるわけが無いしな。良いぜ。着いてきな。」
幽霊って言っても、顔は良い。俺に懐いている。触る事も出来る。
アレやソレでコレでナニな事やったって、死人に口無し。
幽霊保護団体なんてワケのワカンネー連中が出てこない限りはナニをヤっても問題無いって寸法だ。
いやー、この屋敷に招待されたのは、この上ない幸運だ。
そう思っていた時期が俺にもありました。いや、今でも幸運だと思ってるけどよ。
「…物の見事に憑かれたな。」
職場の喫煙所で煙草を吸っている俺の姿を見て、上司が呆れたように呟いた。
俺の右足と左肩から女の首と両腕、背中からはデッケェ右腕が生えている。
「憑かれているって言うか…寄生っすかね」
幽霊三人娘曰く、「留守番なんてツマンナイ。連れてけ!」という事で外出時は各々、化物形態となって俺に寄生している。
「寄生。または合体。何にせよ立派な化物だ。」
「どーよ、カッコイイでしょ?」
コイツ等が鏡に映らないせいで、俺がどんな恰好になっているのかはよく分からないが
どう贔屓目に見ても、カッコヨクは無いだろうと思う。
「カネナインジャーだか、ヤスミナインジャーだか知らんが例のヒーローが現れたら乱入して来い。泣いて喜ぶと思うぞ?」
冗談じゃない。見た目と言動が残念でも、強さだけは本物のヒーローなんだぞ。
一般ピープルの俺じゃ瞬殺されるのがオチだ。
「オニーサンと、オッサンにしか見えないようにしてるんだけど、他の人にも見えるようにして良いの?」
本当に悪の怪人になってしまうから勘弁してくれ。
「それで幽霊に取り憑かれた感想は?」
「完全に幽体になってますからね。重さも感じないし変な感触するわけでも無いんで特に何も無いっすかね。
ただこの子等の分も食わなきゃいけないから、常に空腹との戦いっすけど。」
幽霊の癖に一丁前に腹を空かす。だけど、俺に取り憑いている時は空腹や睡魔も俺に反映されてしまう。
お陰で食事量が都合4人分必要になってしまったわけだ。
寝る時は俺から離れて実体の状態で寝てくれるお陰で睡眠時間が4倍必要って事は無いのがせめての救いか。
腹が減ったなら飯の時だけ別の奴に憑いてくれば良いのにと言ったら
3人とも「そんな浮気みたいな真似は出来ない」だってよ。全く持って可愛い奴等だ。
お陰で財布と阿の所は常に枯れっ放しだ。未来永劫、潤う事は無いかも知れない。
「次は幽霊を孕ませるつもりか?」
上司が呆れ顔でとんでも無い事を言い出してくれたが意外と切実な問題じゃないのか?
つーか、相手が人間でも孕むのか?そもそも、幽霊って孕むのか?
「さあ…成仏してった幽霊達も妊娠したって人は見た事無いし…」
「そもそも、幽霊とエッチするなんて君くらいじゃ?」
「て言うか、人間と幽霊の間で出来た子供って人間?幽霊?」
彼女達が悩んでいる姿は差し詰め、赤ちゃんは何処から来るの?って感じに見える。
だけど、幽霊の赤子って何処から来るんだろうな?
幽霊と人間の間に子が宿るか如何かは分からないが中々、面白そうだ。
幽霊の父親になれたら面白いなと思いつつ、滋養強壮剤を飲み干した。
おしまい。
終業後、上司の車に乗り、高速をぶっ飛ばす事、小一時間。
人里から少しばかり離れた山の麓にその屋敷はあった。
ノリで来たは良い物の、まさか良い歳して小学生じみた事をする事になるなんてな。
尤も、こんなに興奮するのも小学生の時以来か?
それにしても屋敷の周囲には人工の光など無く、唯一の光である月明かりに照らされた屋敷の佇まいは
その古臭さも相まって、化物の類が住み着いていると言われても疑いの余地は全く無さそうだ。
「この屋敷…本当にただの建物なんすか?結構、マジで怖いんすけど…」
わざと口にしないと恐怖で押し潰されそうだ。勝手に幽霊屋敷扱いされているって事前情報のお陰で
どうにか恐怖よりも興奮が上回っているのが正直な意見だ。
「この屋敷は40年程前にある女が夫の残した遺産で建てた屋敷でな。
母1人娘3人、数人の奉公人が住んでいたそうだ。
後は何処かで聞いたような話が多々あってな。一晩にして奉公人が全て消えた。
住人、全員が二階で寝ていると、誰も居ない筈の一階でナニカが大暴れする。
寝ていると日本兵だか、落ち武者だかが踏みつけて来る。
とある時間帯になると屋敷の中で突風が起き、人間だけが飛ばされる。
一階部分のスキマは落ち武者の生首が転がっている。
二階部分のスキマには黒い影だけが動き回っている。
あー、これはマジだが、この辺一帯、元は首塚だ。」
おいおいおい。ドレもコレもデンジャーな噂ばっかじゃねーか。
そんな事よりも此処は心霊スポットじゃねーぞって言って欲しくて質問したのに
興奮よりも恐怖心の方が上回っちまったじゃねーか。
「じゃあ、入るか。」
慣れた手つきで扉を開け、さも当然かのように中に入る上司を慌てて追いかけた。
突拍子も無い与太話を延々と聞かされていたせいで気付かなかったが
今になって考えてみりゃ、首塚って時点でマジモンの心霊スポットじゃねぇか。
「此処って心霊スポット扱いされてる場所じゃねーんすか?首塚ってマジモンでしょ?」
上司にハメられたと思って慌てて問い質した。多少、言葉が乱暴になってしまったが仕方が無い。
俺はヘタレなんだ。本当にこの手の場所ってのはお近づきになりたくない。
「中身は見ての通りだ。誰も住んでいない。なのにも関わらず、埃も積もっていないし綺麗なものだ。」
上司は俺の事を無視してマイペースに話を進めていく。
「3姉妹と、その母親。奉公人もそうだったな。この屋敷の住人は何処へ行ったのだろうな?」
いつも暖かい、ご声援有難う御座います。
途中で話が抜けてたり、6と7の中身が同じだったり
7が2個あったり、途中で規制入ったりグダグダで申し訳御座いませんでした。
一先ず、今作の幽霊屋敷を持ちまして、このスレでの活動を終了させて頂きます。
現在、長編の執筆に取り掛かっておりますので
板の何処かで目にする事が御座いましたら是非、宜しくお願い致します。
駄文、与太話にお付き合い頂き有難う御座いました。
乙なんだぜ!
ネタが無いので以前他板に投下したのをここに晒してみる。
長くてすいません。
「 気のきかない妖精 」
アイスを食べようと、徳用バニラアイスの蓋をめくったら妖精が埋まっていた。
「 ……し、謝謝。……アナタ命の恩人アル。……さ、寒い死む 」
ボクは慌てて妖精をスプーンで掘りだした。台所に行って、お椀にポットのお湯を
入れてきて、妖精を指でつまんで、そっとお椀に入れた。
「 あぢーっ! あぢ! 殺すきアルかーっ! 熱湯コマーシャルじゃねーっ!!! 」
もの凄い勢いで妖精に怒られた。慌てて妖精を引き上げる。急いで水を持ってきて
お湯をうすめ、指で確認した後、そっと妖精をお椀に入れた。
「 ふ〜、生き返るアル。極楽極楽。さっきは怒鳴ってすまんアル。……さてと 」
赤いチャイナドレスに猫耳、鼻眼鏡をかけた10センチ程のポニーテールの妖精だ。
鬼太郎の目玉おやじのようにお椀でくつろぐ妖精は言った。
「 謝謝、アナタ命の恩人アル。願い事言うよろし。ひとつだけOKアル 」
ビックリ展開だ。ほっぺを思い切り叩いた。普通に痛かった。
妖精の言う通り、願いが叶うなら…… 今、家には誰もいない。思い切って言ってみる。
「 実物の女の人のハダカが見たいです 」
「 は? 」
妖精はそう言って固まった。
「 えーとですね。生の女の人のハダカを見たいです 」
ボクはもう一度はっきり言った。
「 いやいやいやいや。言いたいことは分かるが、……お主、何歳アルか? 」
「 12歳で、中1です。できれば、こういう人がいいです 」
ボクはおもむろに隠し持っているグラビアアイドルの写真集を出した。
「 ……お、お主、己の欲望に忠実じゃの。うむー、困ったアルな 」
写真集の表紙を見ながら妖精は言った。
「 ダメですか? 」
「 わしの特殊能力の関係上、この人直接は難しいのー。
他の人でもいいアルか? 」
「 かわいい感じで、すらっとしている人なら…… 」
可愛ければ嬉しいけど、ある程度の妥協はできる。
「 了解したアル。ちょっと目閉じるアル 」
「 どうするんですか? 」
何をされるか分からないので聞いて見た。
「 わしが変身するアル 」
「 えー! 」
予想外の答えにボクは驚いた。小さい上に鼻眼鏡もあるから顔はよく分からない。
「 心配するなアル。妖精界の松坂慶子と言えばわしのことアル。
鼻眼鏡はおのれの美貌を隠す為じゃ。だから安心して目閉じるアル 」
マツザカケイコって誰?と思いながらも、ハダカを見れるならとボクは目を閉じた。
「 つるぺたー、たぶんしー、ひゃくななじゅー、 ちょいやっ!!! 」
妖精は謎の呪文を唱えた。
「 変身完了したアル。写真撮影は禁止じゃ。まぁ、妖精だから写真、写らないけどの。
おさわりも禁止アル。さわったら即変身解除じゃ。目を開けてもいいアルよ 」
妖精の声が聞こえた。ボクはゆっくりと目を開けた。
「 ! 」
ボクは圧倒された。ボクの理想像を遥かに超えた、綺麗なお姉さんが立っていた。
猫耳と鼻眼鏡はしてないが、話し方、赤いチャイナドレス、ポニーテールは……。
本当に妖精が変身したんだろうか?
「 どうした? 不満アルか? 」
「 い、いええ、ああの、可愛いです 」
部屋の中で2人きり。ボクは一気に緊張した。お姉さんは微笑みながら言う。
「 んー、髪どうするアル? おろしたほうがいいかの? 」
「 あ、あの、おろしてもらっていいですか? 」
お姉さんは、リボンを外し軽く頭をふった。女の人特有の甘い香りが漂ってきた。
髪をおろしたお姉さんは、美少女から美女に変わった。これだから女の人は困る。
緊張と興奮で、頭に血がガンガン上ってくるのがわかる。
「 ちょっと目を閉じてもらっていいかの? 」
お姉さんが言う。言われたままに目を閉じる。興奮しすぎて鼻血を出す。って
ことを理解する。非常にヤバイ。本当に鼻血が出そうだ。
目を閉じてるので、かすかな音にも敏感になる。ぱさっぱさっ。と音がした。
「 もう目を開けていいアル 」
お姉さんが言う。目を閉じたまま、ボクは恐る恐る聞いてみる。
「 ……も、もしかして脱いじゃいました? 」
「 すっぽんぽんの丸裸じゃ 」
衝撃的だった。その言葉だけでご飯3杯はいける。
目の前に綺麗なすっぽんぽんのお姉さんが…… ターボ全開、妄想満タン。
絶対ヤバイ。ボクは鼻を手で押さえた。そして頑なに目を閉じたまま言った。
「 すいません。あの、あ、ちょっと、マジ無理っぽいんで、胸と、えー、
あの、あの、あそこ、手で隠してもらっていいですか? 」
「 手ブラに手パンかの? わかったそうするアル 」
嗚呼、お姉さん。そんな下品な言葉を…… と思いつつも興奮度マックス状態が続く。
いまにも鼻血が吹き出そうだ。そしてさらに大変なことに気づく。あえて口に出さ
ないが、下半身のアノ部分にも大量に血が巡っているようだ。こちらも大変なことに
なってた。はっきり言って動けない、はっきり言って動くとヤバイ。
でも、見なければ間違いなく後悔する。
「 ……見てもいいですか? 」
「 ……いいアル 」
もうほとんどヤケクソだった。
倒れるときは前のめり。ボクは覚悟を決めた。
鼻から手を離して、ゆっくりと目を開けた。
それから10年の月日が流れた。
僕は妖精の事が忘れられなくなり、妖精の絵を描くようになった。
中学時代は野球部の練習後、高校では美術部に入り黙々と妖精の絵を描きつづけた。
まぶたに焼き付いている笑顔とシルエットは、美しさを失うことは無かった。
高3の夏。
マンガを投稿し、受賞して雑誌に載ればそれを妖精が見るかもしれない。と
思った僕は、絵だけではなくマンガも描くようになった。そして妖精との出会いと
別れを忠実に再現したマンガを出版社に投稿した。
投稿したマンガは、『 佳作 』という地味な賞を貰った。絵は目を引くものが
あるが、ストーリーにリアリティが無さ過ぎる。ただ妖精の表情は生きている。と
微妙な評価だった。
ただ僕の描いた妖精の絵を偶然に見た、同じ出版社のライトノベル担当編集者が
興味を持ってくれたらしい。挿絵を描かないか?と誘われた。
僕はチャンスだと思い、すぐさま飛びついた。勉強もせずに絵を描きまくった。
冬。僕の絵は、挿絵に採用されることが決まった。
夏の冷蔵庫。正確には冷凍庫だが、そこが妖精との出会いの場になったので
ペンネームを『 夏野 零蔵(なつの れいぞう)』とした。
「 僕、上京してイラストやマンガを描く 」
家族の前で僕は宣言した。
勘当同然で上京した僕は、昼夜関係なく、アルバイトに励み、寝る暇を惜しんで
妖精の絵を描いた。当初は、絵の仕事を回してもらっている。という感覚だったが、
1年ほど経った頃には名指しで仕事が舞い込むようになった。そしてその1年後には
絵の収入だけでも、なんとか生活できるようになった。
僕が21になったばかりのとき、大きな転機が訪れた。
僕が絵を担当しているSF小説が15万部の大ヒットとなった。絵の評判も良かった
ようで、担当から、イラスト集を出さないか?と打診があった。
僕は、過去に投稿した妖精との出会いのマンガを元に、SFマンガを描くので掲載して
欲しい。と願い出た。20ページ以内。と条件がついたが即答でGOサインがでた。
これが売れて、少しでも僕の名が流れれば妖精に気づいてもらえるかもしれない。
高校の頃から夢であり、目標であった妖精との出会いと別れを描いたマンガを出せる
ことに歓びを感じ、僕は猛然と机に向かった。
マンガのストーリーを考える。
売れまくったSF小説の外伝扱いのマンガだ。
銀河系、とある惑星。
主人公は名も無い少年戦闘機乗り。
ある日少年は戦場へ出撃する直前、滑走路で傷ついた妖精を助ける。
妖精は、願い事を一つ叶える。と言った。少年は言う。
「 僕には家族も友達も恋人もいない。恋人ごっこで構わない。
僕にキスして欲しい 」
妖精は言う。
「 わかった。私はあなたを忘れない。けして忘れない 」
妖精は少年の唇にキスをする。
そして言う
「 あなたは私の恋人。必ず帰ってきて 」
少年は言う
「 ありがとう。必ず帰ってくる 」
そして少年は飛び立つ。終わり無き戦いの彼方へ。
僕は苦笑いする。ベタだ。ベタどころでは無い。陳腐だ。もう時代を問わず戦争、
戦闘モノに必ず使われるエピソードだ。笑い話だって山ほどある。
でもそれでいい。キャラクターがしっかりしていれば、ベタで陳腐でもいい。
もはやそれは、『 王道 』に成りうる。
そして物語は進む。
少年は青年になり、壮年になる。
「死神パイロット」「ゾンビファイター」「笑う悪魔」
いくつかの通り名がつけられる。でも男は気にしなかった。
男は1人、場末の酒場で過ごす。
死なない。いや死ねないのか。酒と煙草をやりながら独り苦笑いする。
男は背後に気配を感じる。でも振り返らなかった。
「 あなた死神って言われてるらしいわね 」
「 あぁ、呪われているみたいでね 」
「 呪いを解いてあげようか 」
「 いや結構。それなりに気にいってるんでね 」
「 そう。余計なお世話ね 」
男は最後まで振り返らなかった。
男は戦場に向かい、妖精はさすらいつづける。
いつかまた出会うときまで……
これで外伝の物語は終わり。
後半はどうとでも取れるが、あとは読者が思い望んだ展開を想像してくれる。
担当に見せれば「 夏野クン、これベタ過ぎ 」と笑われる可能性が高いが
僕は気にせずネームを仕上げた。
マンガの執筆に入る。僕は、前半の妖精と少年の出会いを描ければ、後はもうどう
でもよかったので本編と外伝の時間軸や世界観、キャラクターの関連付けはすべて担当
と字書きの先生にお願いした。本編にも、妖精、戦闘気乗り、のキャラはいるのでどう
にでもなるだろうし、もともとは字書き先生の作品だ。
字書き先生もノリノリだったらしく、その作業はすんなりと終わったらしい。
僕はどんどん、どんどん描き進めた。中高生の頃の、情熱が戻ってきたかのように
筆が進んでいく。目を閉じれば、あの、アイスクリームに埋まっていた妖精のことが
昨日のことのように思い出せる。
「 充実してるって、こういう状況だよな 」
なんとなく呟いてみる。
気が付けば丸3年、絵描きを生業としている。当初は生活も厳しく、仕事でも理不尽
な扱いを受けたことが幾度かある。人様の上昇気流に運良く乗れた。という気もするが
それでも、僕自信で望んだ企画の仕事が出来ている。
「 僕も出世したもんだ。妖精に感謝だな 」
そう言い聞かせて、あらためて気合を入れなおした。
イラスト集用の書き下ろしマンガ、イラストの仕事がすべて終わった。
予定されていた期日より5日ほど早かった。
絵さえ完成させれば、基本的に僕の仕事は終わったと言っていい。後はデザイナー
さんや編集さんが頑張ってくれるはずだ。お願いしたいことはすでに連絡しているの
で、本が出来上がるのを待つだけだ。
その後、紆余曲折いろいろあったが、無事イラスト集は発売された。
単なる偶然だと思うが、たまたま僕の誕生日と発売日が同じで、22歳の誕生日が
嬉し恥ずかしの初イラスト集出版記念日になった。
初版1万部で目指すは3万部。という予定だったが、意外に売れ行きがよくあっさり
3万部を突破した。
さらに驚いたことに、出版社経由で故郷の新聞社からインタビュー取材の申し込みが
あった。担当からは『 ただで宣伝できるのだから取材拒否は許さない 』と半ば強制
的に取材を受けさせられた。
初イラスト集は5万部を突破した。
初イラスト集の成功もあってか、僕の絵描きとしての仕事は順調そのものだった。
重版のお陰で、まとまった額の貯金も出来た。
経済的余裕が出来たので、2ヶ月ほど新規の注文をなるべく断るようにした。
考えてみると妖精と出会ってから中学では野球をやっていたが、高校からひたすら
絵を描いていきて、いまに至っている。
東京に出てきて5年になる。若さに任せて絵を描いてきた。
いまが僕自身を見つめなおすチャンスかもしれない。とぼんやり考えていた。
残っている仕事を整理し一気に片付けた。
月刊誌の仕事があるので1ヶ月丸々とは行かないが、2週間ほど休める状況になった。
さて、何をしようか。と考える
海外旅行、東京探索、ディズニー巡り、ジブリ美術館、温泉でまったり ……
いままで仕事の絵を描いているか、妖精の絵を描いているかのどちらかだったので
何をして遊ぶなど考えたことが無かった。
ちょっと問題アリだな。と苦笑いしながらコーヒーを飲んでたときだった。
がさっ
郵便受けに何か入れられた音がした。
宛先も差出人も未記入の白い封筒だった。
念のため、用心深く封筒をハサミで斬り中の便箋を取り出した。
便箋を開いて目を通す。
『 前略
今年の夏は冷夏で、アイスクリームに埋まることなくダラーって過ごしとる。
いつぞやの夏は助けていただきありがとう………………………………………………
中でも忘れがたい日でござる。凄…………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………
…………つい最近、お主の描い……………………………
「 ! 」
僕は思わず外に飛び出した。
でも、そこには誰もいなかった。
「 ……。」
封筒には宛先も差出人も記入がなかった。切手さえ貼っていない。
妖精に間違いないはずだ。
でも、そこには誰もいなかった。
僕は部屋に戻り、再び便箋を広げた。
『 前略
今年の夏は冷夏で、アイスクリームに埋まることなくダラーって過ごしとる。
いつぞやの夏は助けていただきありがとうアル。あの日のことは、長い妖精人生の
中でも忘れがたい日でござる。凄かったのー、いろんな意味で。けけけ。
つい最近、お主の描いた絵本、拝見したアル。
凄いのー、大活躍アルな。わしも妖精のはしくれ。わしに関わった奴が成り上がって
行くさまを見るのは痛快じゃ。ま、たまに不幸になる奴もいるがの。けけけ。
ところで、最後に載っておった絵2枚、すごいべっぴんさんアルな。
わしも、べっぴんさんになりたいアル。さすがに中1の小僧の分際で、女のハダカの
見せろ!言うただけあるわい。お主の想像力もたいしたモノじゃのー。
わしが特殊能力使ってお主に幻覚(お主の理想願望映像な)見せた時の動揺ぶり。
わしが「 すっぽんぽんの丸裸じゃ 」と言ったときのお主の顔と、ち……自粛アル。
あれは笑ったのー。若いっていいわーアルよ。羨ましいアル。
最後の最後で、鼻血ぶーっ!ってどんだけ凄いハダカ想像してたのかの。けけけ。
まぁ、早い話が10年前、お主が見た女の人やハダカは、お主の想像で、現実には
存在しないということアル。
と、いうことで妖精の思い出話もここまでアル。
お主は、まだまだ忙しいと思うけど、お主の実家の冷蔵庫そろそろ壊れそうだから
直しに行ったほうがいいと思うアル。
それと『 チャイナドレスの妖精へ捧ぐ 』って、やめたほういいアル。
キモい奴じゃのーとか、痛い奴じゃのーって思われてるぞ。いやマジで。
最近わしはカップル成立させたから気分がいいのじゃ。
お主も彼女でも見つけてヨロシクやってください。期待してるアル。
それでは、提供はチャイナドレスの妖精でした。元気での。さらばじゃ。
かのこ 』
「 やれやれ 」
僕は苦笑した。
そしてキレた。
「 かのこ。じゃねー! かしこ。だー!!! 」
僕は絶叫した。でもまだまだ叫び足りなかった
「 僕の10年間、返せー!!! 」
僕はだいぶスッキリした。でも、もう一言いいたかった。
「 童貞の純情もてあそぶなー! 」
「 はは、やられたな 」
僕は妙におかしくなって声を出して笑った。
僕自身で、『 呪われている、呪いをとく 』なんてマンガ描きながら
実は、妖精に呪われてたのは僕だった。なんて、とんだお笑い種だ。
10年間妖精の手のひらの上で誰もいないのに、僕は1人で楽しく踊っていたようだ。
「 まいったな。妖精じゃないな、妖怪だな。そういえば10年前、
妖精界の松坂慶子とか言ってたから、老獪なおばさん妖精だったんじゃ……
鼻眼鏡と猫耳で外見ごまかしてた。となればすべて丸く収まるな 」
僕は、笑いつづけた。
妖精への怒りや恨みは不思議と湧かなかった。それよりおかしくて堪らなかった。
「 中1の小僧なんて熟女妖精からすれば、蛇に睨まれた蛙状態。だろうな。
よかった。鼻血だけで済んで、本当によかった 」
生き恥を晒さなくてよかった。と今頃になって僕は赤面した。
どうやら妖精の呪いは10年で解けたらしい。
僕の心の中で燃えさかっていた情熱の炎が消えた。
やれやれ、本当にこれからのこと考えないと行けないな。とつぶやく。
僕の10代の時間、ほとんどを妖精に捧げた。
後悔はしていない。逆にかなりの額の貯金も出来て感謝しなければいけない。
コーヒーを飲みながら、仕事机や本棚、資料の山をぼんやりと眺める。
ちょっとだけ色が変わったようにも感じる。
「 まだ、23だし何でも出来るよな 」
このまま仕事控えて夜間大学でも行こうかと漠然と考えていた。
携帯電話が鳴る。
表示を見る。いつもの担当だ。
余程の緊急時以外は固定電話に来るはずだ。何かやらかしたのか?と
最近の僕の仕事を振り返りながら電話に出る。
『 もしもし?夏野クン? 大変なことなっちゃった。
もしもし?聞いてる? ホントすごい大事件だよ! 』
担当はハイテンションだった。口ぶりから悪いニュースではないようだ。
「 えーっと、なんですか? 仕事は断ってますけど 」
『 そんなこと言ってる場合じゃないって。ヤバイって!
夏野クンの描いたあのマンガ、「 実写で映画化したい 」って
ハリウッドからオファー来たんだって! 』
ぶーっ!!!
僕はコーヒーを噴き出した。そしてむせた。
『 もしもし?ねぇ聞いてる?凄いよ。
字書き先生と夏野クンと映画監督でシナリオ作って、日本的詫び寂びを
表現したいから出来ればサブのアートディレクターもお願いしたい。って
ついでに……
やれやれ、僕は苦笑した。
どうやら、まだまだ妖精の呪いは解けていなかったようだ。
このまま死ぬまで踊り続けないといけないようだ。
担当は延々と喋り続けている。
やれやれ、僕は苦笑した。
これだから気のきかない女は困る。
「 僕は英語が出来ない 」
おわり
おもろかったです。
さり気に熱いのがいい感じですなー。
情熱って、今結構嘲笑われたりしがちですけど、
こういうの見るとやっぱり大切だよなー、って再確認できますね。
ありがとうございました。
おおっと立て続けに長編投下ktkr
あ、あとで読むもんね! 乙!
幽霊屋敷
>>426-
気のきかない妖精
>>440-
>377-378の連作だす。
「 嫁。政権交代が話題となって久しいが、我が家の家計に直接的な影響はあるのか? 」
土曜日の晩ご飯。俺33歳、嫁29歳、結婚して1年半ちょい。
投票には行くが政治にはまったく興味が無い俺。結婚当初から嫁にがっつり財布の紐を握られ
ているので、もう我が家では俺が派手なクーデターでも起こさない限り政権交代は無い。
来年の今頃は新米パパになっているはずなので、一応今後の生活ために嫁に確認してみる。
「 うーん、高速無料化になってもうちにはあまり関係ないし、新首相、献金問題でいじられ
てるからひと悶着ありそうだし…… 結局よく分からないのであります 」
「 そうか…… 」
嫁も政治にはあまり関心はないが、俺よりはテレビニュースや新聞記事などで知っているかなと
思い聞いてみたが、どうやら俺とたいして差はなさそうだ。
「 政権交代と騒がれましたが、一庶民にはあまり関係の無いことのようでであります 」
「 そうか。そうだな…… 」
晩ご飯のおかず、麻婆風味野菜炒めを肴に1本目のビール(第3のビール)を飲み干した。
2本目のビール(第3のビール)に手を掛けたとき、宅配業者が荷物を持ってくる。
「 うは! 裕美ちゃん仕事早すぎ 」
「 何それ。裕美の奴、何送ってきたんだ? 」
裕美は実家の近所に住む俺のいとこだ。俺のより2歳年下だが既に10歳男と8歳女の二児の
母で、スッピンになるとまゆ毛ドコー?の典型的な元ヤンだ。何故か嫁と仲がよくメールやら電話
で頻繁に連絡を取りあっている。
「 子供出来たって報告したら、新品に近いベビー服あるからあげるって話しになって 」
「 ……。」
「 瞬ちゃんと麗ちゃんのお下がりだけど、どうぞって 」
嫁が妊娠したことが判明して2ヶ月になろうとしている。
――嫁よ。仕事が早いのは裕美じゃなくて、お前のほうじゃないのか?
と思ったものの口には出さない。
事実、うちの財務大臣は仕事が早かった。
親戚縁者友人知人に連絡を取りまくったのだろう、一部の気の早い人からベビーベッドや
子供をあやす玩具がすでに贈られてきて、それらは狭い寝室のダブルベッドの隣で静かに
主の誕生を待ちわびている。
――申請で戻るとはいえ出産費用は馬鹿げた金額だし、子供が生まれたらもっと広いアパート
への引越しも必要だ。お金が嫌というほどかかるのは分かっている。
しかし、新しく生まれてくる命。せめて身につける服ぐらいは真新しいものを着せたい……。
「 …………。」
自分の収入に不甲斐なさを覚えながらも、心に芽生えた葛藤に俺は思わず黙り込む。
「 ベビー服っていっても2,3歳用の服で新生児に着せるものじゃないから大丈夫 」
「 ……そうか、そうだな 」
俺の心を見透かしたように嫁は笑う。食事を済ましている嫁は早速ダンボール箱を開ける。
見事な竜の刺繍が入った小さなスカジャンを見て嫁が喜ぶ。
「 ありえねー…… 」
「 さすが裕美ちゃん。このセンスは買いだわ 」
誉めているのかけなしているのか分からない嫁に俺は苦笑する。
他にも有名なロゴが入ったトレーナーやジャンパーがわらわらと出てくるが、いずれも
クリーニングに出したのかすべて律儀にもビニール袋に包まれていた。
「 ……裕美の奴、案外まめだな 」
「 凄いよね。みんなブランド品だ 」
――ありがたいなぁ。
酔いのせいか、急に感極まり目頭が熱くなる。そして今しがた心に抱いた思いが恥ずかし
くなり、手にしたビール(第3のビール)を飲み干してごまかす。
「 えーいっ、電話だっ、裕美に電話だっ!!! 」
待ってたとばかり嫁が携帯を渡してくれる。呼び出し5回、久しぶりの声が聞こえる。
「 俺だ。まぁ、その、あれだ。服ありがとう。感動した。待て、嫁に代わる 」
「 ちょ、何それ 」
あまりの裕美との会話の短さに、嫁は呆れ顔で笑う。
後はお決まりのコース。嫁は裕美といつもの長電話を始めた。
「 ……嫁。 ぐはっ! 」
眠りにつく前。もぞもぞと嫁に密着しお尻を触ったが、案の定、嫁の肘打ちが俺の
みぞおちにクリーンヒットする。
ムラムラ問題は結構切実なのだが、うちの厚生労働大臣は非情だ。
これ見よがしにエロDVDでも借りてこようか。など一人悶々としながら秋の夜長は
ふけていった。
日曜日、朝。
いつもの時間に朝食をとる。テレビも新聞も巨人優勝のニュースをでかでかと扱って
いるが、それ以外はさしあたって明るい話題は無い。
「 ……あれだな。政権交代があっても、松井がアメリカでMVP取っても、巨人が
日本シリーズで優勝しても、まぁ世間はあまり変わらないってことだな 」
テレビに耳を傾け、お茶をすすりながらぼんやりと呟く。
「 朝っぱらからそう辛気臭いこと言いなさんな。
……まぁ、アレですよ。アメリカで大統領が変わろうが、日本で政権交代があろうが、
我が家の総理大臣は未来永劫アナタなのでありますから、四の五の言わないで頑張って
ください。ということです。
……あとで巨人の優勝記念セール行ってみない? ちょっと気が早いけど赤ちゃんの
服、見に行こうよ 」
――嫁よ……。
今時、キャバレーの呼び込みですら使わない言葉だが、その言葉に俺は酔いしれる。
「 ……そうだな。たまには人で賑わったデパートもいいかもしれん 」
俺って扱いやすいんだろうな。と苦笑いしつつ、玩具を買いに街に出かける子供のように
俺はデパートの開店時間を心待ちにした。
晴天の空の下、駅に向かう並木通りを嫁と共に歩く。
――子供が生まれれば生活が一変するだろうな。
初々しいデートのようにはしゃいでいる嫁の隣で漠然と考える。
ネガティブなことを忘れるつもりは無いが、それよりも期待のほうが遥かにでかい。
名ばかりの総理大臣で構わない。嫁や生まれてくる子供の期待を裏切らないよう努力
しよう、と心に刻む。
「 嫁よ 」
「 ん? 」
「 ……いい天気だな 」
「 そだね。絶好のお出かけ日和 」
「 普段の行いがいいからだな。俺の 」
「 はいはい。アナタにはかないません。であります 」
俺の隣で無邪気に笑う嫁の横顔がまぶしかった。
おわり
あー、すっげーいい。すっげーいいよ。ほんといい。
ほんわかぱっぱほんわかぱっぱ嫁えもんって感じだ。
意味不明だがなんていうか、その、いいんだよ! とにかく!
GJっしたー。
453 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/08(日) 02:29:12 ID:6aeUv1wb
いいなあ
こういうの
454 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/13(金) 19:55:12 ID:fL0JY83J
マイナーなギャルゲーSS祭りを開催したいです。
マイナーなギャルゲーSS祭り!
1. SS祭り規定
自分の個人サイトに未発表の初恋ばれんたいん スペシャル、エーベルージュ、センチメンタルグラフティ2、canvas 百合奈・瑠璃子のSSを掲載して下さい。(それぞれの作品 一話完結型の短編 20本)
EX)
初恋ばれんたいん スペシャル 一話完結型の短編 20本
エーベルージュ 一話完結型の短編 20本
センチメンタルグラフティ2 一話完結型の短編 20本
canvas 百合奈・瑠璃子 一話完結型の短編 20本
ダーク、18禁、クロスオーバー、オリキャラ禁止
一話完結型の短編 1本 プレーンテキストで20KB以下禁止、20KB〜45KB以内
2. 日程
SS祭り期間 2009/11/07〜2011/11/07
SS祭り結果・賞金発表 2011/11/08
3. 賞金
私が個人的に最高と思う最優秀SSサイト管理人に賞金10万円を授与します。
455 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/13(金) 19:57:42 ID:fL0JY83J
(1) 初恋ばれんたいん スペシャル
初恋ばれんたいん スペシャル PS版は あまりのテンポの悪さ,ロードは遅い(パラメーターが上がる度に、
いちいち読み込みに行くらしい・・・)のせいで、悪評が集中しました。ですが 初恋ばれんたいん スペシャル PC版は
テンポ,ロード問題が改善して 快適です。(初恋ばれんたいん スペシャル PC版 プレイをお勧めします!)
初恋ばれんたいん スペシャルは ゲームシステム的にはどうしようもない欠陥品だけど。
初恋ばれんたいん スペシャル のキャラ設定とか、イベント、ストーリーに素晴らしいだけにとても惜しいと思います。
(2) エーベルージュ
科学と魔法が共存する異世界を舞台にしたトリフェルズ魔法学園の初等部に入学するところからスタートする。
前半は初等部で2年間、後半は高等部で3年間の学園生活を送り卒業するまでとなる。
(音声、イベントが追加された PS,SS版 プレイをおすすめします。)
(3) センチメンタルグラフティ2
前作『センチメンタルグラフティ1』の主人公が交通事故で死亡したという設定で
センチメンタルグラフティ2の主人公と前作 センチメンタルグラフティ1の12人のヒロインたちとの感動的な話です
前作(センチメンタルグラフティ1)がなければ センチメンタルグラフティ2は『ONE〜輝く季節へ〜』の茜シナリオを
を軽くしのぐ名作なのではないかと思っております。 (システムはクソ、シナリオ回想モードプレイをおすすめします。)
(4) canvas 百合奈・瑠璃子シナリオ
個人的には 「呪い」 と「花言葉」 を組み合わせた百合奈 シナリオは canvas 最高と思います。
456 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/28(土) 11:27:15 ID:wXhVuX6U
マイナーなギャルゲーSS祭り!変更事項!
1. SS祭り規定
自分の個人サイトに未発表の初恋ばれんたいん スペシャル、エーベルージュ、センチメンタルグラフティ2、canvas 百合奈・瑠璃子シナリオ
のSSを掲載して下さい。(それぞれの作品 一話完結型の短編 10本)
EX)
初恋ばれんたいん スペシャル 一話完結型の短編 10本
エーベルージュ 一話完結型の短編 10本
センチメンタルグラフティ2 一話完結型の短編 10本
canvas 百合奈・瑠璃子 一話完結型の短編 10本
BL、GL、ダーク、18禁、バトル、クロスオーバー、オリキャラ禁止
一話完結型の短編 1本 プレーンテキストで15KB以下禁止
大文字、太字、台本形式禁止
2. 日程
SS祭り期間 2009/11/07〜2011/11/07
SS祭り結果・賞金発表 2011/12/07
3. 賞金
他人の意見や感想も参考にしますが・・・
最終的には 私が個人的に最高と思う最優秀TOP3SSサイト管理人に賞金を授与します。
1位 10万円
2位 5万円
3位 3万円
p.s
自分の個人サイトがない場合自分の個人ブログにSSを掲載して下さい。
マルチうざい
いい作品読んで、いい気分になった
あとにこういうのって、ホントうんざり
はじめまして、こんにちわ。
----------------
場所は金剛山。
展望台でメクラが一言「絶景かなあ。絶景かなあ。」
女「ぜっけえよう。高野山までみえる。キレエヨウ。ナチの宮までみえる。
キレエヨウ。」
もうふぶき。
おれは、非生産的な無色だ。
無色じゃない!無職だ。
最近ではてれびにニートとか言われてる。
てれび会社の人は、おれをなんだと思ってんのか。
それでもてれびは好きだ。
―――― おれは、ヒッセイサンテキな無職。
――― ヒッヒッヒ生産的なのは、筒井康隆だ。
おい、下げにしろって、言っといて
こないとは、どうゆうことだ。
小説書いて、名無しってのも、必要ないだろ。
ペンネームでいいだろ。 会社のひとにばれない
名前なら、いいんだろ。
わしは、上の作中のとうり、無職だけど。
文章を書くひとは、アクがつよいんだから。
灰汁
ちゃんとしろよな。
―――ふう。なんてのか。さすがに、スレ主は、
ペンネームかいたり、わたしは、アキたので、ここは
見ません言うとか なんか、しゃっきりシナイと
いけないね。
大阪より。
船頭おおくして小舟未来に帰港
「 ようこそ高知へ!! って、かいてるやああん。
いつもとおんなじやっ! 」
「 儚き夢 」
「 三千円でしばらく夢見られるんだ。安いもんだろ 」
テレビや新聞の広告に踊らされて初めて買った宝くじを手に男は言う。
しかし彼の妻は容赦しなかった。
「 なに言ってんの。三千円あったらどんだけ物が買えるかわかってんでしょね。
あなたが好きなサバ味噌缶だって三十個も買えるのよ、毎日食べてもいいのよ?
会社潰れたのはしょうがないけど、早めに仕事見つけなきゃ心中ものよ。
まったく家計のこと考えないんだから嫌になるね! 」
妻の言う通り、男は一ヶ月前に失職した。
不況の波をもろに受け、男が長年勤めていた会社は倒産した。
しかしハローワークで失業給付金を貰う手続きをしただけで男は疲れ果てていた。
この不況の中、五十過ぎのおっさんがそう易々と新しい仕事に就けるわけはない……
開くと共に満席になる求人情報検索の端末、長蛇の列の各種窓口。
もはや殺気さえ覚える失業者の群れに、男が圧倒されてしまうのも無理はなかった。
「 でも当たったらどうするんだよ 」
妻のもっともな怒りに男は弱々しく呟く。
「 当たるわけないでしょ!そんなに簡単に当たるんなら私だって買うわよ。
あなたみたいに勤めてた会社が潰れるような運のない人に当たるわけないんだから! 」
言うだけ無駄だった。まだ金銭的余裕はあるが、失業保険が出ることを言い訳に
ちんたらと過ごしている男に妻は苛立っていた。
一億円とは言わない。せめて百万でも当たってくれれば……
男は願った。しかし願い虚しく当選番号の発表と共に、男の手にした十枚の宝くじは
夢も消え、末等の三百円分の価値に成り下がった。
「 外れたからってくよくよしないでね。そうそう当たるものじゃないんだから 」
がっくりとうなだれる男に妻は声を掛ける。
「 ……そうだな。過ぎたことは忘れて頑張るか 」
儚き夢か。短い間だが夢は見れた。年が明けたら真剣に仕事を探そう……
妻の言葉に男は癒させる。そして気持ちを新たに再就職という目標を掲げた。
年明けの宝くじ売り場で男は七等の三百円を手にした。
そして新年早々にも関わらず人の絶えないハローワークに出向き懸命に仕事を探した。
儚き夢だった。
七等の三百円で男が買った履歴書用紙は、すべて不採用通知とともに返送されていた――
おわり
乙です
現実ってのはとことんきびしいもんだよね
夢の名残で買った履歴書すらもはかなく消えたというのが物悲しい
>>462 うまいもんですね。最後まで読みました。
星新一や、筒井康隆さんをよむ感じで、
オチをさがしちゃいました。
つらいよ。読んでそんした。
男だから、いいです。わたしわ、おとこですからね。
虚構ながらやるせなさがドキュメンタリーのものだな
ギャグはない。
ごめんちゃい。
「肉」
いろいろかんがえられるがめんどうだ。
考え メ
りょうしのこと
りょうしのこと
しか肉がうまいだろうこと。
コト
うまのにくがうまいだろうこと
肉
馬
めんどう
>>467 この文はすごいガンチクが深いんだよう。
2個がんちくが、入ってる。
書こう。
りょうし、2種類のりょうしで、ボクが音は
まったくおなじものなのに、イメージで
ビジュアルなイメージで、どっちかを、
かたっぽう、思えば、どっちか
わかること。
(まあ、これはできなくてもいいけど、)
(こころに、でるんです。えいぞうが。)
(もやっとした写真みたいなのが。 )
2こ目は、肉をくうとゆうことが、
あたらしい肉、あたらしいにくのしゅるい
をたべるとゆうことが、
いかにムズカシイのか、。
いかにじぶんの心の中の文化を
こわしてしまうのか、。
だから、キョヒカンが あります。
肉にたいしてね。
これは、テレビじんも、感覚では、
もやもやとだけど、わかってます。
わかってるひとがいます。
へんしゅうって、そんななまやさしいものではありません
↑
才能まるでなし
469は かかん方がいいぞ。
471 :
レス代行:2010/01/15(金) 00:38:44 ID:i6LJ/wzz
「 屋根の上のドン引き 」
「バイト……。いまさら引かれたって困るんだよ。ちゃんと仕事しろよ」
「いや、しかしですね。一軒家の屋根の上とはいえ下手すれば死にますよ?」
大学の冬休み、実家に帰り暇を持て余していた俺は、友達の親戚の兄弟の友達。
分かりやすく言えばまったくの赤の他人の紹介で、土建屋のアルバイトに来ている。
日給1万円という破格のバイト代に目が眩んだ俺は、てっきりスコップや
つるはし片手に穴掘りでもするのだろうとろくっすっぽ仕事内容も確認せずに
ホイホイと飛びついた。
旨い話にゃ裏がある…… 俺は今、猛烈に後悔している。
氷点下の屋根の上に土建屋の社長、よぼよぼのじいさん社員2人、そして俺。
アルバイトの仕事内容は屋根の上の雪下ろし。
雪おろし自体、冬季限定の仕事として成立する地方だからそれは別にいい。
問題はスリル満点どころか下手すりゃ命がけと言ってもいい程に男の度胸を試される、
『命綱無し』での雪おろしなことだ……
「こらバイト。んなヘッピリ腰で仕事になるか。しゃんとしろ、しゃんとッ!」
「無茶言わんでください。俺まだ死にたくないです」
プラ製のでかい雪よせスコップで黙々と屋根から雪を降ろしている社長ならびにじいさん
社員二人に比べ、明らかに俺の動作は遅い。
しかし命あってのバイト代。社長の怒鳴り声にびびりながらも俺は慎重に慎重を重ね
足元をいちいち確認しながらちまちまと作業を続けていった。
いよいよ2階建ての屋根の最上段に上がるときが来た。
高いところが苦手と言うわけではない。しかし普通の人の感覚なら間違いなく恐怖を
感じるだけの高さは充分ある。
「雪も積もってっからバランスだけ気をつければ滑り落ちることはない」
「……そッすか」
社長の言葉に説得力はまったく無い。しかしその言葉を信じる以外俺に残された道はなく
震える手足は寒さのせいと自分に言い聞かせ社長の後に続いた。
「バイト煙草吸うか?」
「いりません。それどころじゃないです」
「バイト小便大丈夫か?高いところからするの気持ちいいぞ」
「絶対しません!おしっこで雪解けて屋根から滑ったらどうすんですか!!!」
及び腰の俺をからかうように社長は言う。癪なことにじいさん社員二人も俺を
見て笑っている。
……こいつら!!!
BGMで猪木ボンバイエが流れて来そうなほどに怒りの炎が燃え上がる。
しかし悲しきかな地上約10メートル(体感50メートル)のリングの上。
俺の闘魂はガスコンロのスイッチを切るかのように簡単に消え去った。
「よし、完了。バイト、一服した後撤収するぞ」
「……あの、これどうやって降りるんすか?」
雪おろしを終え、煙草を吸いながら社長に聞いてみる。
雪があったときはそれが足場となりそれなりに安定していたが、その雪も
無くなりおまけに屋根はとたん製で、滑り落ちてください。と言わんばかりに
てらてらと滑りやすくなっている。
472 :
レス代行:2010/01/15(金) 00:39:29 ID:i6LJ/wzz
「決まってるだろ、滑り台みたいに滑ってそのまま下に落ちるんだよ」
「は……?」
――本気かこいつら?
社長を含めニヤニヤしている3人に俺は思わずドン引きした。
「心配すんな。バイトだろうがパートだろうがちゃんと労災も保険も降りる」
「ちょっ、そういう問題じゃないでしょう!死んだらどうするんですか!!!」
ずるっ!!!
「うおっ!」
声を荒げた瞬間、足が滑る。
悔しいことにそんな俺を見て更に3人は笑う。
「大丈夫だって、毎年恒例だ。もっと言えば屋根から落ちて怪我したほうが
見入りが良いんだって。がっちし保険入ってるからな。おまえ大学生で暇なんだろ?
どうだ足折って3ヶ月くらい入院すればちょっとした金持ちになれるぞ」
「馬鹿なこと言わないでください!絶対嫌です!!!」
「でもなぁ。残念ながら降り方それしかないんだよ」
「……マジすか?」
社長の言葉に俺は目の前は暗くなり遺書を書いていないことを後悔する。
「あぁ。まぁ俺が見本見せるから黙って俺について来い。でも最初に落ちた方が
安全なんだぞ。雪も柔らかいところ狙っていけるしな」
「……そうすか。それしか無いならしょうがないっすね。一番最初が安全なんすか?」
「当然だろ。だから社長の俺が一番最初に落ちる」
「……わがまま言ってすいません。俺が最初でもいいすか?」
恥ずかしながら我が身可愛さに思わず本音が出る。
「おいおい、それは無いだろうが。俺が一番に決まってんだよ!」
「うおー、そこを何とか、なんとかお願いします!!!!!」
一番最初が少しでも安全ならばと、なりふりかまわず俺は頭を下げてお願いしつづけた。
しーん……
頭を下げつづける俺に屋根の上で3人がドン引きしている。
なんとなく嫌な予感がする。……もしかしてからかわれた?
「ぶひゃははははははははははは。馬鹿かバイト、んな訳あるか!」
案の定、嫌な予感は的中した。
「おまえさんも引っかかり易い奴だな」
よぼよぼじいさん社員もケラケラと笑っている。
猪木ボンバイエ! 猪木ボンバイエ! 猪木ボンバイエ! 猪木ボンバイエ!
「ふざけんなコラっ!!!!!!!!!!!!!」
俺の闘魂が目覚めた。頭の中で鳴り響く猪木ボンバイエのファイト!の掛け声の
瞬間、俺は怒りに身を任せ立ち上がった。
「わっ、馬鹿!!!」
「へっ!?」
ずさ――――
「うお――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
どふっ!!!
ご想像の通り俺は屋根から落ちた。
――何てこった。自らくだらないオチつけてしまった……
てめーら少しは心配しろ!!!
屋根の上でゲラゲラ笑っている3人に俺はドン引きする。そして2度とこんなバイト
するもんかと心に誓った。
……筈だったが1万円欲しさに今日も雪おろしにせいを出す俺だった。
473 :
レス代行:2010/01/15(金) 00:40:11 ID:i6LJ/wzz
おわり
※この話はフィクションです。雪おろしは危険です。雪国の皆さん気をつけましょう。
オモロかった。
飛び降りて怪我するかと思った。
「信号の話」
「やぁ君。君は今、信号が青に変わるのを待ってから渡ってきたねぇ。身なりを見るに社会人なんだ。
その社会人の君は、赤い信号を見て止まり、信号が青くなったのを確認してから渡ってきたね。
その年になって、信号を律儀に守ってるんだねぇ。……そうだね、君はきっとつまらない人間だ。
上から言い渡されたことを律儀に、疑問も持たずに守り続ける、そういう人間だよ。
小さな頃から、上の人間の言うことは絶対だと信じて生きてきたんだろうねぇ。
小学校の頃には先生の言うことに従い、中学校に上がっては先生に笑顔を振りまき、
高校に行っては先生に頭を下げて来た、そういう人間さ。
………………
「やぁ君。君は今、信号が赤なのを確認してから、左右を見渡して、
それからやっと渡ってきたねぇ。赤なのは一目瞭然だけれど、一旦立ち止まって左右に気を配って、
それから渡ったんだね。……そうだね、君はきっとつまらない人間だ。
周囲を気にする余り正常な判断ができなくなる、そういう人間だよ。
周りが前進するならば死が待っていても一緒に進むし、
周りが止まればそれが如何に間抜けな眺めになっても従う烏合の衆さ。
周囲の空気に左右され、人の意見に右往左往し、立ち位置を縦横無尽に変える、そういう人間さ。
………………
「やぁ君。君は今、信号が青なのを見て、それから渡って来たねぇ。
見たところ学生さんかな。すごいね、こんなに素直な子は今時珍しいし高く評価されるんじゃないかな。
信号が青だから、渡る。これが素直じゃなきゃなんて表現するか迷ってしまうところだよ。
赤なのに渡るでもなく、青なのに渡らないでもなく、赤だから渡らないし青だから渡る。
……そうだね、君はきっとつまらない人間だ。そう教えられたからそうするし、
だからこそ自分の行いに何の疑問も抱かない、そういう人間だよ。
正しいと教わったサインとしての信号だけを頼りに、信号が青なら戦地にも赴く人間だよ。
戦争が起これば疑問も持たずに特攻し、リストラが有れば進んで志願し、
犯罪に逢えば真っ先に害を被る、そういう人間さ。
………………
「やぁ君。君は今、信号が赤なのを確認したけど、そのまま一息に渡って来たねぇ。
そんな理由で信号を無視してしまうくらいなら、もう少し早く出発するべきだったんじゃないかな。
信号が赤なのを見てから渡ったってことは、青なら渡ろうと思うし、赤なら渡っちゃいけないと思いながらも、
渡るつもりだったってことだよね。信号に従う気もないのに、一応確認だけはせずには居られないわけだね。
……そうだね、君はきっとつまらない人間だ。遅れてはならない用事があったのに、家を早く出ることはしないし、
自分が出遅れたというミスを信号を無視することの免罪符にしている。君には合理性が欠けていると思うよ。
遅れてはならない用事があれば早く出発するし、早く出発できないなら用事の時間をずらすべきだし、
それすらできないなら用事を組んではならない、そんなことは常識さ。
………………
「やぁ君。君は今、信号が青なのに一旦立ち止まって左右を確認して、それからやっと渡って来たねぇ。
信号が青なのに、止まる。良いよ、とっても良い。君は信号だけに振り回されない、
自分の意思をちゃんと持ててる人間だ。信号は青だけど、信号を無視した何かが走って来るかもしれない、
だからこそ確認する。非常に無難で慎重な選択のできる人間だと思うよ。
……でも、だからこそ君はつまらない人間なんだよ。結局のところ、信号を見てから考えているのでは遅すぎるんだよ。
本当の選択っていうのはそういう物じゃない、もっと小さな問題で、自分が全て、全てが自分であるべきなんだ。
信号が青なのに左右を確認するなら、それはもう信号という物を確認している意味がないよね。
だから君は左右を確認したら、信号を見ずに進めば良かったんだ。
それでようやく、少しだけ早くなることができる。信号が青なのを見てから進むなら左右を確認しなくていいし、
信号が赤なのを見てから進むなら信号を見る意味がないし、逆を行くならもはや確認の意味すらない、
そんなこともわからないのが人間さ。
……………………………
……………………………
……………………………
「たとえば、君があそこの薬局を目的地に設定したとしようか。
君ならきっと、今信号が青の方に進んで、それから、次の信号が青に変わってから進むか、
今信号が青の方に進んで、それから、次の信号が青に変わる前に左右を確認して進むか、
左右を確認せずに進んで、それから、左右を確認せずに進むか、
まず信号が赤の方に進んで、それから、今信号が青の方に進むか、
左右を確認してから進んで、それから、左右を確認してから進むかするよね。
でも、そんなんじゃ結局は信号に左右されているんだよ。信号を見てから渡っている時点で、それは信号無視でもなんでもないんだ。
「じゃあ僕はどうなのかって、そんな顔をしているね。でも君のご期待には添えそうにもないよ。
だって僕は、信号なんて物を見たことがないから。
「それじゃあね」
激しい、クラクションの音。
そして、とまる、音。
………………………………
………………
「やぁ君。信号って何か知ってるかい」
以上です。友人に見せて、答え(の一例)を明かしたら「絶対無理」「解かるわけない」と言われてしまいました。
よろしければ改善点など助言をいただきたいです。
あ、しまった・・・4段落目の2行目は消し忘れです。脳内削除してやって下さい。
>478
乙。過疎気味のスレに来てくれるのはうれしいです。
助言と言うか批評ぽくなってすいませんが(的外れなことを言ってたらごめんなさい)
>答え(の一例)を明かしたら「絶対無理」「解かるわけない」と言われてしまいました。
明かした答えを「オチ(物語の展開)」として考えるなら友人同様俺も分かりませんでした。
ついでに言えば「答え(の一例)」と書いているので、実は読み手に色々と拡大解釈させる手法
を試みているのかもしれないと思ってしまいました。
>「じゃあ僕はどうなのかって、そんな顔をしているね。でも君のご期待には添えそうにもないよ。
>だって僕は、信号なんて物を見たことがないから。
じゃぁ今までの前振りは一体なんだったのかとここでかなり戸惑います。
だって僕は、信号なんて物を見たことがないから。をどう捉えるかがポイントだろうとは思うけど
(語り部、信号の存在を無視。視覚的に信号が見えない。信号の無い世界の住民。
タイトル通り信号の擬人化、他の何かの擬人化、人以外のもの。など)
序盤の流れからではちょっと無理がある気がします。
そしてそのまま何も明かされないまま終わるので?となってしまいました
この場で「答え(の一例)」が明かされてないので何ともいえないけど(俺が読解力が無いだけかもw)
会話文の閉じ括弧の有無や3点リーダー、改行の使い分けだけではなく、出来れば明確なヒントが
あったほうが分かり易いし、序盤の思わずほっといてくださいと言いたくなる文も生きてくるのでは
ないかと俺は思います。
改善点や助言が欲しいのならば下記スレに投下してみてはいかがでしょうか。
俺よりも断然小説技法スキルの高い住民がレスつけてくれると思います。
【mitemiteだし】感想を付けてもらうスレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1232885881/l50#tag202 長文すいません。過疎っている今がチャンス、引き続き投下おまちしてますぜ!
端的に言えば不自然だよね。
信号の概念とそれに反応する人々を正確に捉えた発言をしておいて知らないも見たことないも糞もないものだ。
幾つかパターン考えてみたが、これは書き方で落とすのは難しい。
そもそもの文章コンセプトに問題があると思うよ
肝心の文章の方も書き手が脳内補完してしまって必要なところを省きすぎてる。
>>480 長文レスありがとうございます。
「答え」を求めるような書き方を(本文外で)してしまったのがマズかったのかもしれませんね・・・
拡大解釈(もとい、丸投げ)もアリだったんでしょうか。
>じゃぁ今までの前振りは一体なんだったのかとここでかなり戸惑います。
私の側では従ったことがない、存在を無視、というのを相変わらずの語り口で表現してみたつもりではありますが、
あえてなんとでも取れるように書いてみました。
ただ、お二人のレスを見て、はっきりオチを書くことの大切さは理解したつもりです。
ちなみに一応「最後は斜めに渡った」がオチなんですが、今度はちゃんと表現できるようになりたいものです。
>>481 レスありがとうございます。
「見たことない」が抽象的過ぎる気はしましたが、この文は崩したくなかったのでやってしまいました。
文章のコンセプト・・・は何とも言えませんが、私がこういう物を書きたいのでがんばってやっていこうと思います。
脳内保管に関しては反省の一言に尽きます。やはりもっと書き込むべきでしたね・・・
拙い文章にお付き合いくださり、ありがとうございました。
>>473 おもしれーw
最後のオチがまたw
>>482 そもそも、何がどう「問題」でどのような「答え」が求められているのか、
というのがよくわからなかった。
結局、人間なんてどうあってもつまらないものさ、というような
信号自身の述懐だと思って読んでた。
>>482 なんというか、皮肉というには面白みが無い、ただ人をイラつかせるだけの
文章だと思ってしまいました。
皮肉とは、痛いところを突かれながらも、ウイットが利いているために
怒るに怒れない、嫌うこともできない、そういうものだと思ってます。
「やあ君。……」で始まる文章は、どれも社会通念として信号を認識している一般の人たちを
見下しているような響きがあります。
これは作者さんの狙いどおりなのかもしれませんが、読んでいて心地よいものではありませんでした。
少なくとも、私には。
「沸点低過ぎww」と笑っていただいて構わないのですが、
お話として肝の部分をぼやかして、答えも何もあったものではないと思います。
こんな書き込みをしている私こそ、このお話に登場する「つまらない人間」
そのものなのです。
俺とお前とLANケーブル。
何時ものようにPCを立ち上げる。
そして、決まりきった動作で2chブラウザを立ち上げてスレの巡回をする。
そうしているとメッセンジャーの窓が立ち上がって北海道の友人が話しかけてきた。
メッセをしつつ2chを巡回する。
メッセで話が弾んでいるとネットで知り合った自称名古屋の人もメッセにあがってきたので三人でチャットを楽しんでいた。
その後ふと、気がついた。
自分は大阪に居る。
そして二人は北海道と名古屋。
まったく場所の違う三人がまるで居合わせているようにレスポンスの遅延無く会話ができている。
不思議なことだ。
何時もは当たり前のように感じていたがよくよく考えてみるとすごいと思うことがたくさん出てきた。
あらゆる場所にかけれる電話や地球の裏側でも伝えることのできるインターネット。
疑問に思ったのでネットワークの仕事をしているという北海道の友人にメッセで聞いてみた。
曰く「例え内容がゴミのような投稿であろうと何千万というネットワーク機器や何千と在る何十万もする機器がその投稿を運んでいる」と。
ネットでの通信をするために色々な人間や会社や機器が携わっている事を知った時はショックだった。
それから自分は2chで立て逃げや何も考えないでスレを立てた奴に対して
「お前の無駄なスレ立てはネットワーク資源の無駄使い」だと言う様になり
削除依頼するようにスレ立て人に薦めている。
そういう観点って、欠けてるよねぇ。
何か「そうだよなぁ」と頷いてしまった。
削除依頼しろなんて言っても無駄だがな
削除ガイドラインも読めない奴が削除依頼の手順なんてわかるはずがない
さっさと自分で依頼だして、後はスルーした方がいい
この話はフィクションです。
登場人物事件とは一切関わりがありません
って書くの忘れてたw
>>483 レスありがとうございます。
「問題」「答え」というのを私が発言してしまったせいでややこしくなってしまった感はありますね、反省します。
意外と「信号による話」ととらえる人が多くて驚きました。
ちなみに私自身は全くそのつもりがありませんでした・・
>>484 レスありがとうございます。
皮肉というか、嫌なことを言うだけの奴で、最後にオチとして行動を描きたかったのですが、
どうにも私の力不足で「オチあるの?」というような文章になってしまってます。申し訳ないです。
私自身の文章外のレスでの「問題」「答え」がかなり影響を与えてしまってるようで・・・
やはり文書きはあまり多くを語るものではないのかもしれませんね。
規制解けてた・・・そして酉つけ忘れ失礼しました。
仮に「問題、答え」の行りが全くなかったとしてもこの話では意味不明
仮に斜めにわたるオチだとして、人を納得させられるだけのオチではないし
「見たことがない」という表現が非常に不適切極まりない
「気にとめたことがない」なら意味は通るが、深刻な問題として全く面白くない
着想からまずいんだってこれ
>>491>>492 レスありがとうございます。
指摘された通り脳内補完が多すぎたと思います。反省しています。
「説得力」も課題になりそうですね。私の中ではそれなりに理屈は筋道立てていたのですが、表現しきれなかったようです。
表現力が無くて文章の中心部や主張がぼやけてしまったことが非常に残念です。
こういう文を面白く落とせるように精進致しますので今回はこの辺りで失礼します。
494 :
1/2:2010/02/06(土) 23:02:22 ID:R3jgu51J
さみしがりやな硬貨
「おや、なんだこれは」
ある夜、部屋に帰り何気なく財布を開くと、男はいぶかしげな声をあげた。
中身の寂しい財布の中に、一枚だけ見慣れない硬貨が入っていたからだ。
男の住む国では、数種類の硬貨が流通している。ただし、いずれも銀色の硬貨である。
だが、今男の財布に入っているのは、紛れも無く金色の硬貨だった。財布の中に無造作に並ぶ
銀色の硬貨の中、ただ一つ金色に輝くその硬貨。一体いつ、どこでこんな物が紛れ込んできたのか、
男には皆目検討も付かなかった。
男は財布からそれを取り出し、表と裏を交互に見つめた。よく見るとそれは、
見た目、大きさ、デザイン、その全てが、男の住む国で流通している最高額の硬貨、N硬貨と同じであった。
流通している量も多く、その全てを集めれば恐らく、この狭い部屋なら簡単に
あふれ出てしまうほどの量になるだろう。財布に入っている他のN硬貨を手に取り比べてみると、
重さもほぼ一緒のようだ。つまり、色の違いを除けば、他は全く同じという事になる。
なぜ、このような物が作られたのか。造幣局のミスか。元々銀色の硬貨に、誰かがいたずらで金色を施したのか。
それとも、何かの記念硬貨だろうか。しかし、もし記念硬貨であれば、記念であると硬貨に刻まれているはずである。
それに、この国で金色の記念硬貨が作られたという話など、聞いた事が無い。
ならば、偽造硬貨の可能性はどうだろう。だが、本物そっくりに作らなければならない偽造硬貨に、
わざわざ本物と違う色を施すだろうか。
「まあ、これが何なのかはさて置き、珍しい物であるには違いない。とりあえず、財布の中に忍ばせておこう」
男はそうつぶやくと、金色の硬貨を大事そうに財布に仕舞った。いくら考えても、満足な結論は得られそうにない。
財布を机の上に置くと、男はベッドに身を投げ出し、そのまま眠りについた。
翌朝、男は目を覚ますと、ふと昨日の金色の硬貨の事が気になり、財布から取り出した。
男の手に握られたそれは、窓から注ぐ朝の光を受け、キラリと輝いた。
「昨日は気が付かなかったが、改めて見るときれいな物だな」
満足そうに眺めていると、男はもう一方の手に握られている財布に違和感を覚えた。
昨日と比べると、少し重たくなったような気がしたのだ。中を見てみると、どういう訳か、財布の中身が増えている。しかも、N硬貨だけが数枚。
「一体、どういうことだろう。昨日の金色の硬貨といい、不思議な事が続くものだ。しかし、損をした訳ではない。神様か何かからの贈り物だと思って、ありがたく受け取る事にしよう」
男は困惑しつつも、得をした気分でその日を過ごした。
次の日の朝。男は起きるとすぐに、財布へと手を伸ばした。もしかしたら、という気持ちと、まさか、という気持ちで、
財布の中を確認した。すると、昨日と同様、N硬貨だけが増えている。
「やはり、増えているな。こんな幸運は2度と無いだろうし、せっかくだからいただいておこう」
その日からというもの、毎朝決まって2、3枚の硬貨が増えるようになった。増える硬貨は決まって同じ種類、
つまりN硬貨だけだった。男は、朝起きるのが待ち遠しくなった。金色の硬貨を財布に入れ、一晩寝るだけで、
勝手にお金が増えてゆくのだ。増える枚数は微々たる物であったが、男にとってはそれで十分だった。
ところが、しばらくそんな日が続いたある朝。突然、財布の中身に変化が見られなくなった。
こんな日もあるのだろうと、男はそれほど気にしなかった。しかし、次の日も、その次の日も、財布の中身が増える事は無かった。
男はとまどったが、財布の中身が増えるようになった現象の原因がわからない男には、その現象が止まった理由などわかるはずもなかった。
495 :
2/2:2010/02/06(土) 23:03:37 ID:R3jgu51J
硬貨の増加が止まってしばらく経ったある夜。男の夢の中に、突然あの金色の硬貨が現れた。
<誠に勝手ながら、お邪魔いたします。今日はあなたにご報告があり、こうして夢の中に現れた次第でございます>
男は大変驚いたが、この硬貨には聞きたい事が山ほどあった。せっかくの機会だと思い、男は硬貨に尋ねた。
「君はいったい何者なんだ。いったいなぜ、他の硬貨と違って、金色をしているんだ」
硬貨はまるで、その質問が来ることを予期していたかのたように、冷静に答えた。
<はい。実はぼくも、なぜ自分が金色をしているのかわからないのです。恐らく、製造過程において
何らかの原因で金色が施され、そのまま市場に出回ってしまい、回りまわってあなたの財布にたどり着いたのだと思われます>
「それじゃあ結局、きみが金色をしている理由はわからずじまいか。ところで、どうして最近、おれの財布の中身が増えるようになったのだ?」
<これには理由があります。ぼくはこれまで、外の世界に出てから、何枚もの仲間に出会いました。
しかし、そのどれもが銀色をしてました。自分だけ仲間外れなんだという、さびしい気持ちになりました。
ところがある日のこと、ぼくにはある不思議な力が備わっていることに気がついたのです>
「すると、その不思議な力とやらのおかげで、財布の中身が増えたというというわけか。それで、その不思議な力とは何なんだ?」
金色の硬貨は、その自らに起こった出来事を振り返りながら答えた。
<それはある晩のことです。ぼくは眠りにつく前にふと『自分と同じ金色のN硬貨に会ってみたい』と願いました。
すると次の朝、その願いが届いたのか、この国のどこかから、何枚かのN硬貨がぼくの所に引き寄せられてきたのです。
初めは驚きましたが、この力を使えばいずれ、この国のどこかにいるかもしれない金色のN硬貨に会えるのではと思い、
毎晩のようにこの力を使ってみました。けれど結局、引き寄せられるのは銀色のN硬貨だけで、ぼくと同じ金色の硬貨には出会えませんでした>
「硬貨も眠ったりするとは驚きだ。だがまあ、これでだいたいの話はわかった。しかし最近、それも止まってしまったようだけど、きみはその願いを諦めたのかい?」
<そんな事はありません。ですが、一晩で集められる枚数は、せいぜい2、3枚です。これではいつ、ぼくの仲間に会えるかわかりません。
他に方法はないかと思案しているうちに、思い切って国中の全ての仲間を集めてみればいいのだと考えました。
そしてぼくは、数日前から『この国で流通している全ての仲間と会いたい』と願い続けました。そして今夜、その願いは叶いました。
おそらく明日の朝、あなたが目を覚ます頃には、きっとこの部屋に集まっている事でしょう。
国中のN硬貨が集まってくるんですから、きっと1枚ぐらい、ぼくと同じ金色をしたものがいるはずです>
「星新一っぽいショートショートを作るスレ」に投稿しようと作ったのですが
どうしても1レスに収めきれずこちらに
スレ汚し失礼しました
ひょっとして、朝起きると男はミンチよりひでえや状態に?
こわいなw
あのスレは別に1レス限定ってわけでもなかったと思うから、
投下しても良かったんじゃないかと思うよ。
498 :
創る名無しに見る名無し:2010/05/29(土) 15:24:25 ID:pqe/FTKb
普通に原稿におこしたら短編なんだけど
ここだと長編になるのかなぁ
どのくらいまでがSSかな?
(あ、猫……)
学校へ向かう途中、下り坂をぽつぽつと歩きながら、なんとはなしに視線を
めぐらせた先に、その猫はいた。通勤通学の時間帯、たいして大きな通りと
いうわけではないがそれなりの交通量がある車道の向こう側の歩道、こちらから
遠い側の端に丸くなって眠っている。野良猫だろうか。距離があるので毛並みの
良し悪しまで判断はつかないが、時折車のエンジンやクラクションが騒音を立てる
のも、真っ白い体が排気ガスで汚れるのも気にせずその場に陣取っていることから
して、なかなか図太い神経の持ち主であるようだった。
そこそこ猫好きの私としては、近付いてもっとじっくり観察したいところだったが、
なにしろ通学途中のことだし、横断歩道はもっと先だ。名残惜しげに首を回して
まんまるな毛のかたまりをじっと見つめつつも、足は止めずにそのまま通り過ぎた。
しばらく行って横断歩道を渡ったあとも、わざわざ引き返したりせずそのまま進んだ。
道端の、しかも向かいの道端の眠っている猫に構って遅刻などしていられない、
私はその程度に真面目な、ふつうの学生なのだ。
私はふつうの学生なのだ。
というわけで、その日も学校生活は至って平穏無事に過ぎた。少しだけ舟を
漕いだりしながらも真面目に授業を受け、休み時間には友達とくだらないお喋りで
盛り上がり、放課後は部活で――とても規則のゆるい美術部だ――ある程度
作業を進め、あまり暗くならないうちに学校を出、帰路についた。
単に信号のタイミングが合わなかったからという理由で、朝渡った横断歩道ではなく、
もうすこし先、坂を上りきったところにある横断歩道を渡ることにした。
一日の学校生活を終えた分だけの疲れを抱え、ぽつぽつと歩いた。途中まで
一緒だった友達とは既に別れていたから、お喋りをするでもなく、夕闇の中を
ぼんやりとひとりで歩いていた。一日の学校生活をすごす分だけの忙しさを
通り過ぎてきた私は、その姿を見かけるまで、朝の猫のことなどすっかり忘れていた。
(あ、猫……)
そして、驚いて足を止めた。
猫は、朝見たときと寸分たがわぬ姿で、同じ場所にいた。
ゆっくりと近付いて腰をかがめ、しげしげとその顔を眺めた。どう見ても熟睡
しているとしか思えないような表情をしているが、呼吸にあわせて猫の輪郭が
ふくらんだりしぼんだり、そんな動きがない辺り、つまりはそういうことなのだろう。
もっとちゃんと確かめたくもあったが、金魚一匹飼ったことのない私は、確認のために
どんな方法をとればいいのか分からなかった。というよりも、思いついた方法を
実践してみるのが嫌だったのかもしれない。猫の体に軽く触れてみるだけで、
その温度から容易に確かめることはできるだろうが、道端の埃まみれの死体に
触ってみるのには抵抗があったのだ。朝晩の冷え込みが厳しくなってきたこの時期、
傷ひとつないように見えるこの猫が一日で腐ってしまうということはないだろうが、
得体の知れない虫やらばい菌やらが潜んでいないとも限らない。
(それにしても)
本当にきれいな死体だ。朝、道路の向かい側から見て、眠っているだけだと
思ってしまったのも無理はない。もしかしたら、その時点ではまだ生きていて、
昼間のうちに息を引き取ったのかもしれない。いずれにせよ、まさに眠るような
死だったのだろう。いつもの朝の風景の中、エンジンやクラクションの音に、
排気ガスの黒い塵に、スズメやカラスの鳴き声に、舞い上がる埃に紛れて、
静かに死んでいったのだ。寿命だったのだろうか――あれこれ考えていると、
だしぬけに目が合った。
その猫と、だ。猫は目を開けていた。口が開き、小さな舌がのぞく。声が聞こえた。
「死なんて、こんなもんさ」
ぎょっとして、勢いよく体を起こし、一歩退いた。
慌てて周囲を見渡し、そばに誰もいないことを確認すると、再び白猫に視線を
落とした。間違いなく、目も口も閉じていた。相変わらず、熟睡中といった風情で、
死んでいる。いや、相変わらず死んでいるというのも妙な言い回しだけれど。
自分が妙に腰が引けたような体勢をとっていることに気付くと、私はしゃんと
姿勢を正して、ふうと息を吐いた。知らぬ間に、辺りはだいぶ暗くなっている。
最後にちらりと足元の猫を一瞥してから、足早に歩き出した。
疲れているのだろう。じっと猫を見つめるうちに、ちょっとぼんやりしてしまったの
かもしれない。
私は、ふつうの学生なのだ。
急ぎ足で坂を上り、横断歩道を渡って、家に帰った。途中で道草をくうことも
なかったし、特に変わったことも起こらなかった。いたって普通に、帰宅した。
ここで、親戚が亡くなったとか、知人が事故に遭ったとか、そういう報せが
入ったならば、大いにそれらしい雰囲気になるのだろうけれど、生憎というべきか
幸いというべきか、そういった類の連絡もなく、家族そろっていつものように
一日を終えた。
そうして数年経つけれど、未だにそんな報せは入ってこない。せいぜいが、
会ったことのない人物――知人の親が亡くなっただとか、家族の友人が亡くなった、
という話を聞く程度だ。私は未だに、ごく身近に起こる死というものを経験していない。
時折、あの猫のことを思い出しては、考える。
(つまりは、こういう状況が「こんなもん」なのかもしれない)
中坊時代の日記からふくらませた短編
尻すぼみ気味だけど締め直す気にならないまま放置してたので
賑やかしに投下、読んでいただいた方どうもでした
502 :
思春期:2010/05/29(土) 21:21:58 ID:pqe/FTKb
長いかもだけど人もいないし投下しちゃおうかな。
どうやら射精したようだ。
好きでもない男とのセックス後ほど
自分の馬鹿さ加減にあきれる瞬間はない。
相手が汗っかきの場合、特に要注意。
覆い被されて、相手の汗が体に付着するる嫌悪感から、
お腹に蹴りを入れないように、気を付けなくては。
内藤は胡坐を掻きながらコンドームをはずしている。
この男の6つに割れた腹はぷにぷにお腹の武士と、
同じ生物、同じ性別なのかと疑う程だ。
おやすみ。全ての後始末を終え、
パンツを履き終えると、
内藤は私の髪を撫ぜておでこにキスをし、
私に腕枕をしながら眠りについた。私は携帯電話を手に取る。
今夜は百回、心の中で武士に謝ろう。
503 :
思春期:2010/05/29(土) 21:25:21 ID:pqe/FTKb
「こんな自分、もういやだなぁ」
久美にメールを送りながら、小さく、小さく呟いた言葉は、
内藤に聞こえただろうか。彼は身動き一つしない。
ホテルの空気は乾燥している。
朝起きると、喉が干物になっていた。
内藤が寝ている間に干物状態のままそそくさとホテルを発つ。
フロントの自動ドアが開いた瞬間、
攻撃的な寒さに鼻がツーンと痛くなる。
寒いよ、馬鹿。気候に悪態をつく。まずは、家に帰らなくては。
玄関を開け、ただいまを言う前に、靴を履き替えていた母と眼が合った。
「おかえり。今何時?」
「8時」
「そうね。見事に朝帰りね。今日から冬休みでしょ。
冬休みくらい、しっかりばあちゃんの面倒見てよね。
お母さんだって仕事あるんだから。」
プリプリしている母を見送り、手を洗うために洗面所へ向かう。
子供の時からの習慣はなかなか、抜けないもので、
今でも外出後に手を洗わないと、
ばい菌がお腹を痛くさせるという内容の紙芝居の絵が頭に浮かぶ。
玄関から少し奥の廊下に進むと、嗅ぎなれた、祖母の便臭がする。
エンシュアリキッドばかり飲んでいるからか、祖母の便臭は微かに甘い
手を洗ってから、居間に向かう。
祖母は寝たきりになってから、玄関とトイレから近い、
居間で生活を送るようになった。
介護用ベッドのリモコンを押し、ギャジアップさせ、祖母の上体を起こす。
「おばあちゃん、そろそろ起きよう。朝だし。」
「おはよう。今日は雨?」
「今日は晴れだよ。」
「それじゃぁ、良い一日だね。」
祖母はにっこり微笑む。寝たきりの祖母に、外の天気は関係ないのに
504 :
思春期:2010/05/29(土) 21:28:46 ID:pqe/FTKb
私は手袋越しに手を繋ぐのが好きだ。
手が手袋の分大きくなり、温もりが増したような気がして嬉しい
「里香ちゃんはすごいよ。俺が同じ立場だったら、
きっと里香みたいにはできない。」
武士は会うたびに同じことを言っている。
「正直面倒だけど、お小遣いはずんでもらっているし、
介護施設でバイトしてるようなもん。
自分のおばあちゃんだし、嫌じゃないよ。」
「ふーん…。あ…。」
武士は繋いでいた手をいきなり振り解いた。
武士の視線の先の歩道橋には私たちと同じクラスの男子が
ちょうど道路を横断しているとこだ。彼はこちらには気付いていないだろう。
「びっくりした。見られたかと思ったね。」
武士は安堵した様子で、微笑んでいる。非常に面白くない。
「別に。クラスの人たちなんて、私たちが付き合っていること
みんな知っているんだし、見られたっていいじゃん。
何でわざわざ手を離さなきゃいけないわけ?意味分からない。」
唇を尖らせ、武士を睨んでみせた。人に見られるくらい何だというのだ。
私は手を繋いでいたいのに、手を繋いで歩いていると、幸せいっぱいなのに。
武士は違うのだろうか。
「え…。何で里香ちゃん怒っているの?…ごめん。」
「いいよ、もう。」
私があからさまに機嫌を悪くすると、彼は私の目を見ずに、
目を伏せながら猫背になって私の後ろについて歩いてくる。
武士のいじらしさが可愛い
505 :
思春期:2010/05/29(土) 21:31:38 ID:pqe/FTKb
「おじゃましまぁす」
ワンオクターブ高いよそ行きの声を出す。
玄関からあがったら靴はきちんと揃える。
家の奥から武士の母の「いらっしゃ〜い」という声が聞こえる。
玄関前の階段を武士に続いて登っていく。
目の前で左右に揺れる武士の尻が可愛くてたまらず、
ペロンと掌で撫ぜまわす。
「やめてよ〜〜」
尻を両手で隠しながら武士は階段を昇る。
二階にある武士の部屋に着くと、私は年中敷きっぱなしの
煎餅布団に寝転がる。ゴロゴロと布団と体温の心地よい温度差を堪能し、
思い切りシーツの匂いを嗅ぐ。武士の首筋の匂いがする。
「ほらぁ、寝転がっていないでちゃんと座ってよ。
ばんざいして〜。ばんざ〜〜い。」
武士に促されるままに両手を挙げるとスルスルとセーラー服を脱がされ、
キャミソールとパンツ一枚になる。
武士はセーラー服をハンガーにかけている。
やっぱり武士は几帳面だなぁと思いながら私は再度ゴロゴロとする。
ハンガーに服を掛け終わった武士が、私の上に覆いかぶさる。
ため息が出るような幸福感。心地よいベールに覆われているような安堵感。
「気持ちいいね。幸せだよ。」
武士に引っ付いていると、安心と幸せと充実感の次に、
性欲が湧いて出てくる。お誂え向きに、
今私の右の太ももに当たっている彼のペニスは勃起している。
さわさと彼のペニスを撫ぜ回と手を払われてしまった。
途端に幸せは吹っ飛び、詰まらない気持ちになる。
彼は、不満顔の私を宥める様に小さな小さなキスをする。
「そういうことしちゃ、だめだよ」
彼は笑顔で言う。きっと彼は気付いていない。
私が武士とどんなにかセックスしたいかを。
私がセックスを拒まれ、どれだけ悲しみ、腹が立っているかも。
セックスレス。あぁ。腹が立つ。
506 :
思春期:2010/05/29(土) 21:34:48 ID:pqe/FTKb
オムツ交換の楽さは、対象が仰向けの状態で腰を挙げる動作、
いわゆるヒップアップ動作を行えるかどうかによって大きく差が出る。
祖母は最近ヒップアップ動作が難しくなってきている。
いつか、完全に動けなくなるときがくるのだろうか。
その前に、死ぬのだろうか。
ふと、そんなことを考えている自分がすごく意地悪な人間に感じる。
「おばあちゃん」
祖母に声を掛けると、きょとんとした顔でこちらを見ている。
ああ、そうか。補聴器が外れているのだ。
そっと、祖母の耳に補聴器を付けてやる。
「おばあちゃん」
祖母は数秒こちらを見ると、今度は目を閉じてしまった。
今は夕方、調子が悪くてもしょうがない。
認知症とは、夕暮れ時から症状が悪化するものだからだ。
いつも日が暮れてから、朝の笑顔を忘れ、猜疑心に満ちた目と、
それとは対照的に、収縮・伸展を顔面の筋肉が忘れてしまったのかと
感じるほどに無表情になってしまう祖母をみて、
自分を失うことの恐ろしさを感じる。
しかし、朝と、夕本当はどちらが祖母の本質なのか、
本当は誰にも分からない。
あるいは、そのどちらも、祖母らしさであるのかもしれない。
以前は、私やほかの家族には見せなかった、
鋭利で、切なく、その癖に、関心・興味を宿さない眼光。
祖母が隠してきた本質が、病気と老いで露になったのか。
祖母のベッドをギャジーアップさせる。
オーバーテーブルの上には、母お手製のお粥と、
大根の味噌汁にとろみをつけたもの、
梅干、そして、エンシュアリキッド。
祖母は昼食は少し食べてくれるが、あまり食事を摂ろうとはしてくれない。
この夕食もきっと、ほとんど破棄することになるだろう。
母はそれなのに、きちんと毎日祖母の分のお粥を炊く。
私の家は千葉だけど、祖母が名古屋出身ということで、
我が家の食卓の味噌汁は赤味噌だ。
その赤出汁も、祖母はもうすすらない。
脱水と栄養失調を防ぐために、不愉快な程に甘いエンシュアリキッドを、
一匙ずつ祖母の口に運ぶ。
朝の祖母は笑顔で飲むが、夜の祖母は口を閉ざし、飲むことを拒否する。
でもね、生きていくためには飲まなきゃ駄目なんだよ。
子供のころ、嫌いな食べ物は一口でもいいから、
食べなさいと祖母に言われた。
祖母いわく、嫌いな物でも子供のうちに少しでも食べておけば、
大人になってから食べられるようになるのだということだ。
根拠はない。だけど、確かに、18歳現在の私に嫌いな食べ物はない。
祖母の言うことは大体正しいのだ。
507 :
思春期:2010/05/29(土) 21:38:05 ID:pqe/FTKb
そんなことを思い出しては、
この祖母をずっと家で支えて生きたいと心に強く思う。
しかし、明日もきっと何度も、
「何でおばあちゃん、施設に入れないんだろう」とも思うのだろう。
「ねぇ、ギュってしてよ。」
胸が苦しくなるほど抱きしめられた。
体が苦しいと、心の苦しさは和らぐ。
「うれしいよ、里香がそんなこと、俺に言ってくるなんて。
今日も会おうと言ってくれた時すごくうれしかった。
俺はいつだって里香から連絡くるの待っていたからさ。」
内藤は腕の力を弱めることなく、耳元で囁く。
「別に…。私が今、あんたに何をしているか分かる?」
「う〜ん…。なに?」
「武士が会ってくれなくて、寂しいから、あんたに抱きしめさせて、
寂しさを紛らわしているの。あんたは寂しさを紛らわせる道具だよ。
私って最低?」
内藤は何も答えない。その代わり、腕の力を更に強めた。
私はいよいよ、息が苦しくなって、嬉しくてしょうがなかった。
硬くなり始めたペニスが下腹部に当たる感触がセックスを予感させる。
この予感が叶うと確信できる関係は、
虚しさと罪悪感を伴おうとどうしたって手放しがたいのだ。私にとっては。
内藤がいつもの手順で、いつもの手技で私を愛撫する。
私はいつも通り少し大げさに鳴いてみせる。内藤はこれを喜ぶ。
どうして、普段絶対に内藤に媚びたりしないのに、
セックスのときは内藤に媚びてしまうのだろう。
自分でも不思議だ。内藤は挿入中何度も何度もキスをする。
頭を撫ぜて、私の名前を呼ぶ。
そして、私の乳首を子供がさらさらの砂をいじる様に撫で回す。
私はペニスが膣の奥を擦れる感覚を意図的に意識する。
クリトリスを自分の中指で押しつぶす。
あぁ…。そう呟いた時が合図。二人でオーガズムに達する。
深いオーガズムの後私はいつも涙が出てしまう。武士のときも内藤のときも。
「里香、どうして泣いているの?」
内藤は私を抱きしめながら言う。性器はつながったままだ。
私は内藤の汗を不快に思いながらも抱きしめ返す。
「自分でも分かんないよ。何でだろうね?何でだと思う?」
「里香はいつも悲しいんだよ。でも、里香には俺がいるよ。
利用されていたっていいんだ。
里香が少しでも気持ちが楽になれば、俺はそれでいい。
里香のこと愛しているんだ。」
キスをされる頬に付着する唾液が気持ち悪い。武士に早く会いたい。
508 :
思春期:2010/05/29(土) 21:40:33 ID:pqe/FTKb
冬休みが明け、久しぶりにクラスメイトの顔を見る。
みんな受験モード一色で、手から参考書を離さない。
「久しぶり。っていうか、あけおめ。」
「あ〜、里香じゃん。太った?あけおめ。
メール返さなくてごめんね。いきなりセックス疲れるとか、
寂しいとか送られても意味不明だし。武士とはうまくいってるの?」
久美は付箋まみれの英語の単語帳から目を離さずに続ける。
「それと、あのイケメンの内藤とかいうセフレとも。
うまくいってるの?」
「ちょっと…教室でその話題はやめてよ〜。
武士にばれちゃうじゃん。トップシークレットなんですけど。」
「あんたはお気楽極楽でいいご身分だね。
私は受験勉強で忙しいからさ、どっか行ってくれる?
フリーター志望のあんたには分かんないだろうけどねぇ
私はここ3ヶ月で5キロも太ったのさ。この、絶望的な気持ち。
でも食べる。それが私の生きる道。」
はははと笑いながら久美は「手に参考書女子グループ」のもとへと
行ってしまった。久美とは中学時代からの付き合いで、
高校受験の時にはよく一緒に塾に残って受験勉強をしたものだ。
お互いに第一志望だったこの高校に合格して3年後、
久美は一流大学を目指しているのに、私は何にも決まっていない。
大学受験をしないということは決まっているけど、
これから先どうなるのだろうか、自分でも分からない。
武士や母はよく大学くらい受験しろと言っていたけれど、
この時期になれば、もう何も言わなくなった。
私は、母に高校を卒業したらもっと祖母の世話をすることを約束した。
久美は「手に参考書女子グループ」と問題を出し合っている
。武士を探すと、「手に参考書男子グループ」と勉強をしている。
私は早く担任が来て朝のホームルーム始まらないかなと思いながら、
i-podのイヤホンを耳に装着し、机に肘をついて目を閉じた。
「私は1人でも平気です。というより、1人がいいのです」と、
誰に向けるでもなくポーズをとりながら、時間がたつのを待つ。
509 :
思春期:2010/05/29(土) 21:42:24 ID:pqe/FTKb
「自分は世界で1人みたいな振りするのやめろって〜」
背中を叩かれた。振り返ると久美が笑いながら立っている。
どうやら私の1人でも平気ですよ作戦はあっさり久美に見破られていたようだ。
「だって、久美は勉強ばっかりじゃん。
ガリ勉ぐるーぷと仲良くしちゃってさ、私はさみしいよ、
里香ちゃん泣いちゃう!」
泣きまねをして見せると、今度は頭を叩かれた。
「ははは。里香は馬鹿だね。ちょっと、この単語帳から問題出してよ。」
久美に促されるまま単語帳を手にする。
「え〜っと、ワーはどういう意味でしょう?」
「ははは!warでしょ!里香は本当にばかだねぇ!
世界があんたみたいな人間ばかりなら、戦争も起きなさそうだね。」
よく意味が分からなかったけど、久美と一緒に笑った。
久美は優しい。武士も優しい。内藤も優しい。家族だって優しい。
みんな優しいのに、優しい人に囲まれているのに。
私だって、優しくなりたいのに。みんなが当たり前に出来ることを、
どうして私には出来ないのだろうか。
510 :
思春期:2010/05/29(土) 21:46:04 ID:pqe/FTKb
途方に暮れている母の背中を見て、母には悪いけど、
この出来事が母が家にいる時に起こって良かったと思ってしまった。
私しか家にいなかったら、
便まみれの祖母の手を洗うのは私の役目になっていただろうから。
オムツ交換は便に触れずに行えるけど、
祖母の指を洗うのは手袋ごしでも便に触れなければならない。
今から武士に渡すバレンタインチョコを作ろうと思っていたのに、
祖母の便まみれの指を見たら作る気が萎えてしまった。
祖母の初めての弄便。オムツの中の便が気になったのだろうか。
私がスーパーに買い物に行く前にオムツ交換してあげていたら、
祖母は便まみれにならずに済んだかもしれない。
「おばあちゃん。オムツに指をいれちゃったの?」
母が脱力した声で祖母に声を掛ける。
「う〜ん?な〜んもそんなことしてないよ?指に泥が付いているけど、
頭をさっき掻いたからかな?不思議だね。」
「おばあちゃん、これ泥じゃない。うんちだよ。
おばあちゃんが、自分のうんちをいじったの。分かる?
それを今から綺麗に洗わないといけないの。」
「そう?ありがとうありがとう。済まないね。」
二人の会話を後頭部で聞いて、居間を後にした。
部屋で膝を抱えて座ってみる。
なるべく体をコンパクトに折りたたんで、小さく小さくなってみた。
どんなに体を縮めても、存在を消すことはできない。
自分を失っていく祖母を見て、老いていくことは怖いと感じる。
いつも、私を膝の上に乗せて一緒に日向ぼっこをしていた祖母が、
別人になっていく。
完全に認知症が進んでしまえば、祖母は気が楽になるだろうか。
いつだって、何かしてあげたいと思うのに、
全力で祖母と向き合い介護をすることが出来ず、
自分が最低の人間になったようで、
そんな思いをさせる祖母を憎んだり、愛しいと感じたり、
その繰り返しが私を消耗させる。
誰かのために何かをしてあげたいと思っていても、
結局自分が一番可愛いということを、私はまだ知りたくなかったのだ。
私は再び1階に降りた。リビングに入ると、
祖母の指は肌色に戻っていた。母が洗ってあげたのだろう。
祖母は既に寝息をたてている。さっきまで起きていたのに。
キッチンへ向かい、冷蔵庫から材料を取り出す。
武士の喜ぶ顔を想像したら、おなかの底がクスクスと笑い出して、
俄然やる気がみなぎってきた。明日はバレンタイン。
恋人たちの特別な日に、愛する人のためにプレゼントを作る喜び。
私はやっぱり幸せなのだ。私の幸せの前提は武士なのだから。
511 :
思春期:2010/05/29(土) 21:49:09 ID:pqe/FTKb
昨日作ったチョコを忘れずにかばんに入れて、家を出る。
今日は授業はないけれど、
自主勉強をしている武士にチョコを届けたくて、学校に向かう。
下駄箱に久美が立っていた。
「里香。今日も学校に来たの?受験生でもないのに
自主勉強でもするつもり?」
「ちがうよ?今日はバレンタインじゃん!
武士にチョコを渡すために決まってるじゃん」
「ふ〜ん。そう。武士は受け取らないかもね!」
「は?」
厳しい目をしながら久美が言い放つ。意味を図りかねていると、
チャイムが鳴り響いた。
「じゃぁ、私は勉強があるから。」
久美はそういうと自習室へと向かって行ってしまった。
私は一限目が終わるまで図書館で時間を潰す事にした。
誰もいない図書館の鍵はかかっていたので、
職員室に鍵を借りに行き、図書館の内側から鍵を閉めた。篭城。
パイプ椅子に腰掛け、窓から外を眺める。
カビとインクの匂いが、私を安心させる。
図書館の匂いは子どものころからすきだった。
グラウンドで2年生が体育の授業を受けているのが見える。
半そでに半ズボンの彼らは2度の気温の中汗をかいてサッカーをしている。
私は高校2年生のときの体育は殆ど出席していない。
クラスメイトと協力してスポーツをする気にはなれなかった。
いつも、どこにいても誰といても心臓を圧迫されるように
焦燥感に襲われていた3年間。友達もいたし、彼氏もいた。
周りに恵まれ、環境に恵まれ、可能性はいくらでもこの手の中にあった。
私はそのことを知っていた。だけど…。
今はただ、グラウンドで笑う彼らを見て
ノスタルジックな感傷に浸る自分を嘲笑する。
武士がいないと私はこんなにも弱い。
一人が好きだと、ズンズン自分勝手に歩いてきたけれど、
その足は地面を踏みしめてはいなかった。
常に足は3センチ浮いた状態で前に進んだのか、後ろに後退したのか、
はたまたその場に留まっているのか、
私には実感することができなかった。
しかし、私ももう高校を卒業するのだ。
今後の見通しは立っていないけれども、そろそろ思春期を
脱しても良いころではないか。自分自身に一番辟易とさせられるのだ。
自我の喪失を願う埋没主義を自分自身に啓蒙していこう。
うん、そうだ。これが大人になるということなのかもしれない。
時計を見た。
もうすぐ一眼目が終わる。少し大人になった私を武士に見せに行こう。
512 :
創る名無しに見る名無し:2010/05/30(日) 15:21:32 ID:GOl9w/qP
>>499-500 現代人は人が死ぬところから遠ざけられているから、こういうちょっとした機会がないと、
死ぬっていう事が身近に普通にあるって事には気づきにくくなってるね
513 :
思春期:2010/05/31(月) 01:10:40 ID:OAhSQuR2
意気揚々と武士に会いに行った私だが、久美の言ったとおり
チョコを受け取ってもらうことは出来なかった。
武士の目は赤く充血していた。
「俺が勉強に集中できなくて大学落ちたらお前のせいだから」
そういって武士は私の顔に私が手渡したチョコを投げつけると
自習室に戻ってしまった。
思い当たる節は恐らく内藤の件だろう。
そして久美がそれを武士に告げたのだろう。なぜか確信がもてる。
彼女の狙いは何か。知りたくもないけれど。
やたらと呼気・吸気のリズムが耳に響く。
指先が痺れてくる。そろそろ、脳みそに酸素が足りなくなって
倒れるんだろうなと、冷静に傍観している自分がいる。
過呼吸の発作は初めての事ではなかったから動揺はしなかった。
ただ、みっともない姿を彼らに見せたくなくて、
必死で女子トイレに這っていき、発作が治まるのを待った。
冷静になれよと自分に言い聞かせる。だって仕方のないことじゃないか。
私が快楽のために武士を裏切って内藤とセックスをしていたのは
事実なのだから。涙は出ない。自分の手で大事に大事にしてきた愛を
自分で壊してしまった。
いつもは、体が苦しければ心の苦しさは緩和されるのに、
今回ばかりは、どんなに息が苦しくても、
私を慰める苦しさを得ることは出来なかった
514 :
思春期:2010/05/31(月) 01:13:05 ID:OAhSQuR2
それから私は学校には行かず、家で祖母の世話をする日々を送った。
「おばあちゃん。今日は少し暖かいみたいよ。
少し春らしくなってきたねぇ。」
「そうなの?私、春が一番好きなの。お外に行きたいわ。」
「いいよ。もう少し暖かくなったらお散歩ね。」
この頃の祖母はどうやら心が23歳にタイムスリップしているようで、
日中の調子の良いときはまるで
友達としゃべっているかのようにかしましく会話をすることが出来る。
しかし、夜の祖母のどうしたことか。
日中に昼寝をしてしまうのがいけないのか、目は爛々と怪しく光り、
眉間に皺を寄せて口を閉ざしている。
薄暗いリビングに祖母の痩せこけた頬の陰影が強調され、
孫の私ですらゾッとする迫力を秘めている。
昼の祖母と夜の祖母。同じ人間なのに。
漱石だったか、人は矛盾する生き物だと言ったのは。確かに、
天使と悪魔の両極端な獣を抱えて人は生きているのかもしれない。
ていうか創発はエロ禁止だから、揉めないうちにどこか別の場所に持ってった方がいいと思う
517 :
思春期:
がーん。
エロだったって気付かなかったよ!
ご忠告ありがとさん!