【俺達が】就寝前イメージランド〜第2章〜【主役】

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11
2Mr.名無しさん:05/03/15 14:21:16
まあ、まんこを舐めるのはホドホドにな
3Mr.名無しさん:05/03/15 14:21:17
ららら
4Mr.名無しさん:05/03/15 14:21:42
ぷ〜〜〜〜〜
5Mr.名無しさん:05/03/15 14:43:50
自演だけで1スレ消費とは・・・すげぇな
6Mr.名無しさん:05/03/15 17:20:14
>>1
乙です
7Mr.名無しさん:05/03/15 20:40:01
スレ建て乙。
8Mr.名無しさん:05/03/15 23:15:03
読みたい・・・寝むたい・・・でも読みたい
9Mr.名無しさん:05/03/15 23:57:35
>>1
早く読みてぇ
10Mr.名無しさん:05/03/16 01:06:44
次スレはっけえええええん
>>1よ 期待してるぜ
11Mr.名無しさん:05/03/16 01:09:06
スレタイがいい感じだ
121:05/03/16 01:13:07
第5話
魔王フィカブーを見事討伐した俺と深田が下山するや、麓の選手村は大騒ぎ。
「おーーーーーい!!朝一の奴らが還ってたぞぉおおおおお!!」
「マジか!!勇者どこよ!?」
「祭りキターーーーーーーーーーヨーーーーーーーーーーー(・∀・)」
ゲートから村に入るなり、俺達は勇者コンビとして、ビールをかけられたり抱きつかれたりで、もみくちゃにされる。深田は腕の手当てをするために救護所に、
俺は酒場に連行されて一躍時の人。
「そういえば雑魚っぽいのがもう2人いたような」
「まあいいじゃん。魔王居なくなったんだし。気のせいってことにしておこうぜ!」
最後まで雑魚扱いの真岡兄弟。俺は密かに彼らの死を悼み黙祷を捧げた。その後は飲めや食えやの歓迎三昧。しかし俺は深田の腕の状況が気になって気分が
浮かない。ここの連中はそんなことはどうでもよくて、とにかくお祭り騒ぎができればいいようだが。
俺はこっそり酒場を抜け出し、救護所に走る。
「深田さんの様子はどうなんですか?」
「うーむ、切断面の治療はおkなんじゃが…」
医者の話では、持ち帰った腕は魔王が食いちぎった時に瘴気に冒され腐敗が進んでいる。高位治癒魔術でなければ、元に戻すことは難しいとのこと。生憎、
魔術師は世界に5人といない。当然ここにいるわけがない。
麻酔術で眠っていた深田が目を覚ました。あるべきところにない自分の腕を見て、少し寂しそうな目をした。
「何と言ったらいいか…」
「いいえ、覚悟していたことですから。この手に剣を握った日から」
訪れる沈黙。医師が気を利かせて席を外してくれた。
「深田さん、そろそろ教えてくれないか?地球人である俺が…いや君と俺が何故この世界にいるのか」
深田は遠くを見るような目をして語りだした。
「わたしも5年前までは普通の高校生でした。普通に学校に通い、普通に友達と笑い合い、そして普通に恋をするはずでした。でもあの朝、通学途中のわた
しは自転車ごと川に落ち、気が付くとこの世界にいました」
131:05/03/16 01:14:06
「5年間…」
俺は絶句した。この子は5年もの間、この世界でたった一人で生き抜いてきたのだ。その辛苦は想像を絶するものだったろう。
「幸いにもわたし達の身体能力は、この世界で飛躍的に向上するようです。あなたがフィカブーを倒した時のように」
「……」
「勿論、あなたがフィカブーを倒せた理由はそれだけではありません。その剣は異世界人が魔王を倒す為だけに鍛えられた剣です」
深田は、俺が手に携えている剣に目を落とした。確かにあの時、この剣は俺に恐ろしいほどの力を与えれくれた。
「わたしに剣をくれた老魔術師は言いました。この剣で魔王を倒せば地球への帰還を可能にするゲート石を手に入れられる」
俺は懐から石を取り出した。石の色はは真っ赤な血の様で、美しくも不気味な輝きをたたえている。
「そして去り際にこう言いました。わたし達異世界人は、魔王を倒す為だけに”この世界そのもの”に呼ばれるのだと」
「そんな理不尽な……待てよ、君がフィカブーを倒す為に呼ばれたってことは……俺も別の魔王を倒す為に召喚されたってこと!?」
「…ええ。可能性は充分にあります」
フィカブーが言っていた祭りとは、新しい魔王の台頭を意味していたのか。異世界人と魔王で1セット。お互いが対となってこの世界に存在している。
「でも、あなたはそのゲート石であちらの世界に帰ってください。石を砕けば地球への門が開きます。一人通ると消えてしまいますが」
「深田さんはどうする?」
「腕を治す為に南の老魔術師を訪ねてみます。どっちみち、こんな姿では家に帰れませんから。その後であなたの対となる魔王を倒します」
「……」
俺はゲート石を握り締めた。これを砕けば元の世界に帰還できる。またいつもの生活に戻れる。あの平和な……
「よかったですね」
深田は寂しそうに笑った。その顔を見て、石を握る俺の手は緩んだ。
141:05/03/16 01:16:35
「南の老魔術師かぁ。俺も会ってみたいな」
「え?」
「俺も付き合うよ。それに…」
「それに…?」
「帰るなら2人一緒にだ」
俺は深田にゲート石を渡した。
「ありがとう…ございます…」 
深田はさっきとは打って変わって、いつも通りのおっとりとした笑みを浮かべた。翌朝、俺たちは南に向けて村を出た。
                                                          続く
15Mr.名無しさん:05/03/16 01:21:38
オレ携帯だから次スレ探したよ
今日一日なかなかスレ立てない1のことが気になって仕方なかった
16Mr.名無しさん:05/03/16 01:31:09
>>1
乙。おまいは絶対天才だ。
171:05/03/16 01:41:32
スマソ。修正。

×魔術師は世界に5人といない。
○高位魔術師と呼べる術者は世界に5人といない。

×「わたし達異世界人は、魔王を倒す為だけに”この世界そのもの”に呼ばれるのだと」
○「わたし達異世界人は、魔王を倒す為だけに”この世界そのもの”に呼ばれるのだと。
魔王を倒すことなく異世界人が死ねば、その段階でまた次の異世界人が送り込まれるそうです」

×「そんな理不尽な……待てよ、君がフィカブーを倒す為に呼ばれたってことは……俺も別の魔王を倒す為に召喚されたってこと!?」
○「そんな理不尽な……待てよ、君とフィカブーがどちらも存在する時点で呼ばれたってことは……俺と対になる魔王がいるってこと!?」
181:05/03/16 01:42:45
今日はここまで。
19Mr.名無しさん:05/03/16 01:53:47
新スレ乙。あいかわらずいけてるな。
そろそろ濡れ場期待w
20Mr.名無しさん:05/03/16 01:54:42
ちょっとこの話いいんじゃない?
1ワールドに吸い込まれるのが心地よい
21Mr.名無しさん:05/03/16 02:15:24
今回は話が複雑だな
22Mr.名無しさん:05/03/16 02:50:06
適度な複雑さだぜ
それより、スレタイは「妄想」で検索できた方がよかったな
23Mr.名無しさん:05/03/16 04:22:51
やっと見つけたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
甜歌の登場はいつなんだろう?ワクテカ
24Mr.名無しさん:05/03/16 21:49:20
ゲーム化キ凡
251:05/03/17 00:54:48
第6話
俺は慣れない馬の背に揺られながら、街道をひたすら南に向かっている。深田は普段と一向変わることなく、のほほんと馬を並走させる。レンガの舗道はとにかく延
々と遥か彼方まで伸びている。行けども行けども辺りは草原ばかり。
魔王との戦いで服がボロボロになった俺は、村で貰った冒険者用の麻布製の服を着ている。その上に鋲付革鎧を装備。剣は錆びた青銅の剣から深田が持っていた異世
界人専用ロングソード(+5)に昇格している。深田は片腕になってしまった為、腕が元通りになるまでは小振りのサーベルを装備するつもりのようだ。
それにしてものどか過ぎる。あまりののどかさに、俺は思わず大あくびをした。それを見た深田は小さく笑う。俺は慌てて取り繕う。
「み、南の老魔術師ってどんな人?」
「さぁ、わたしも会ったことはないんですよ。もう少し南西に進んだ所にあるレク村に住んでいるという噂です。白黒双方の魔術に長けた超偉大な魔術師で、どんな
怪我や病気も治せるとか」
「へぇ」
偉大というだけあって、さぞ高齢なのだろう。俺はワー○ナだとかガン○ル□ァといった典型的魔術士の姿を想像した。
その後も特に会話をするでもなく、ぽっくりぽっくり歩く俺達。ふと前方を見ると、一人の少女が岩の陰で休んでいる。俺はとりあえず声を掛けてみる。
「どうしたんだ?」
「この先に根城を構える盗賊に襲われて馬を奪われちゃったんです……大事なお薬も全部一緒に」
見ると年の頃は10歳か11歳くらい。日本でいえばまだ小学校に通っていても不思議ではない年頃だ。よく誘拐されなくて済んだものだ。薬というのは、恐らく家族
の病気か何かを治す為に必要なものなのか。
「かわいそうに……で、どこまで行くつもりなんですか?」
「レク村です」
奇しくも同じ目的地ではないか。俺達は顔を見合わせてお互いの思う所を確認して頷き合った。俺は下馬して少女の目に視線を合わせて、できるだけ優しい笑みを浮
かべて申し出た。
「よかったら一緒にどうだ?俺達もレク村に向かっているんだ」
「はい…でも、できれば…」
「ん?」
「ちょっと馬を貸して欲しいんだけど」
261:05/03/17 00:55:18
少女は俺の隙を突くと、俊敏な動作で馬に飛び乗った。
「それじゃそういうことで」
馬の手綱を引き、そのまま走り去ってしまった。
「………………」
俺はただただ茫然自失してそれを眺める。少女を乗せた馬は小さな点となり、ついには地平の彼方に消えた。
やられた……!!!
「あはははは、一本取られましたねぇ」
まるで他人事のように笑う深田。
「笑い事じゃないだろぉぉぉお!!」
「まぁまぁ、あの子はこの先に盗賊の根城があるって言ってたでしょ。その人達から馬を奪えばいいじゃないですか」
またのんびりした顔で過激なことを。
とりあえず途方に暮れていても仕方が無いので、俺達は先に進む。しばらくすると確かに盗賊の根城が見えてきた。だが様子がおかしい。建物のあちころから火の手が
上がっている。近づいてみると盗賊達は一人残らず皆殺し。砦の入り口には盗られたはずの俺の馬が放置されている。
深田が地面に落ちている色とりどりの粉を人差し指でつまんだ。
「何だ、その怪しい粉は?」
「魔術に使用する秘薬の粉ですね。この組み合わせは爆炎系魔術ののようです」
つまりこの火事と殺戮は魔法によって起こされたということか。しかし一体誰が。馬に近寄ると、確かに俺の馬だ。そして馬の鞍には一枚の付箋紙が貼られており、下手
糞な字で”ありがとうございました 甜歌”とだけ書いてある。
「甜歌……まさかあの子が……いや、まさかな」
俺達は盗賊の砦を物色してみた。食物庫には食糧が蓄えてある。僥倖とばかりに食糧を火事場泥棒的に頂戴して、俺達は旅路を急いだ。
                                                                         続く

27Mr.名無しさん:05/03/17 01:01:21
甜歌キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
281:05/03/17 01:07:28
今日はここまで。
29Mr.名無しさん:05/03/17 01:57:59
天下ワルイコ(・∀・)イイ!!
30Mr.名無しさん:05/03/17 02:28:04
南西の村とは呉市の事か?結構こういうの好きだぞ俺。
31Mr.名無しさん:05/03/17 11:03:02
1がイメージしてるフカキョンはお嬢様刑事のフカキョンでFA?
32Mr.名無しさん:05/03/17 15:43:34
>>31
富豪刑事だろw
33Mr.名無しさん:05/03/17 20:15:49
ともさかりえのお嬢様は名探偵ってドラマが面白かった記憶がある
341:05/03/18 01:18:14
第7話
日が暮れようとしている。今日中にレク村に到着したいところだが、目の前には魔物が多く潜む巨大な森。かといって迂回すれば、さらに時間がかかってしまう。
仕方が無いので、安全策をとって森には立ち入らず野営することにする。焚き火を作り、昼間に盗賊のアジトで頂いた干し肉を齧った。交代で番をする必要があ
り、俺は深田に先に睡眠を取ってもらうことにした。毛布に包まり横になった彼女が、俺に話しかけてくる。
「地球ではどんな生活をしていたんですか?」
「ん?ああ、俺は家電屋でさ。なんつーか、退屈な日々を送っていたよ。毎朝起きて仕事して。帰ったら飯食って2chして寝る。その繰り返し」
「にちゃん?」
そう言えば深田がこちらの世界に来たのは5年前だ。その頃はまだ2chは今ほどメジャーではなかったはず。
「うーん、インターネット上で色々な仲間と話したりするんだよ」
「へぇ、いいなぁ。わたしも大学合格したらパソコン買って勉強したいなぁって思ってたんですよ」
「………」
「もう大学入学とか言ってられる状況じゃないんですけど。ハハハ、馬鹿みたいですよねぇ」
「そんなことないよ」
俺は深田にかけてやる言葉が見つからず押し黙ってしまった。会話のない時が流れていく。
「はぁ、眠くなってきました。それじゃあ、3時間ほどしたら起こしてください」
「了解」
森の方からは奇妙な吠え声が聴こえるが、ここにいれば安全なようだ。焚き火がパチパチと音を立てる。それを見ている内、襲ってきたのは激しい眠気。男の建前
上、先に寝るわけにはいかなかったとはいえ少し航海して…いや、後悔して……………こぅ…………
zzzzzzzzz
351:05/03/18 01:20:20
「あの〜寝てるんですか?」
「ぉわっ!?」
俺は気配を感じて目を覚ました。いつの間にか深田が起きて、俺の目の前に座っている。
「あ、俺寝てないよ!いやマジで寝てない」
言い訳をする俺に、
「そうですかw」
妙に色っぽく笑う深田。その瞳の焦点は俺の目で結ばれている。出会ってあまり時が経たないとはいえ、ここまでマジマジと彼女の顔を見つめたことはなかった。し
ばらく何とも形容しがたい空気が流れる。お互いの視線は依然直線を作ったままで、その距離は次第に短くなっていく。
(こ、これは…まさか、”その時”なのか。なんか知らんが早速”その時”が来てしまったのか!?)
目をつぶり、必要以上に顔を近づけてくる深田。慌てて身を退くが、彼女の胸が俺の身体に触れる。
「ちちち、乳…じゃなくて、ち、ちょっと待った!俺達それはまずいって!!」
「そんなことありませんよ。男と女ですからこれくらいは自然の摂理として許されます」
もし深田が三つん這いで目の前にいたら 、などという糞スレを立てたくなるほど俺は焦った。しかし、目ををそらそうとしても、何かに取り憑かれたようにそらせない。
「それとも隻腕の女は嫌いですか?」
「いや、そんなわけじゃ断じて…あ、やばい…そこは」
彼女は俺の股間に手を伸ばしてきた。怒張したそこから、温かいものがじわじわと流れてくるのを感じる。このまま彼女の誘いにのってみるのもいいかもしれない…俺は
快楽の淵に身を投げ込むべく全身の力を抜いた……
361:05/03/18 01:21:35
「ちょっと何してるんですか!!」
突如浴びせかけられた叫び声に、俺は驚いて目を開けた。深田が先程寝ていた場所で半身を起こして、驚きの表情をたたえて口を押さえている。そんな馬鹿な。深田は今
まさに俺の珍子さんを……股間に目を向けると、見たこともないオバハン(泉ピン子)が俺の珍子さんに口を当てて、精液を吸っているではで亜qw背drftgyふじこl
p;@:「@!?!?!?
「いやああああああああああああああああああああ!!」
絶叫する俺。しかし情けないことに混乱して、身体を動かすことが出来ない。その間もオバハンは夢中で俺の珍子さんにむしゃぶりついている。
「じっとしてて下さい!スクブスです」
「す、スクブス!?」
スクブスというとあのサッキュバスとも呼ばれる淫魔のことか。それにしても、淫魔と言えばもっと若い女性のイメージがあるだけに少し残念、などと言っている場合では
ない。深田がサーベルを構え、そろそろとこちらに近づいてくる。切っ先は明らかにオバハンの頭部を狙っている。
しかしその口腔には俺の珍子さんが!!!
「動かないで」
「あ、ちょっと待て!!どこ狙ってるんだ?おい、やめえええええ!!」
371:05/03/18 01:22:00
翌朝、俺達は寝不足の眼をこすりながら出発した。片腕になってもそこは剣の名手。深田は俺の珍子さんを外して、スクブスの頭部のみを刺し貫いた。スクブスは消滅。俺は事なきを
得た。何も頭でなくても胸とか狙えばよかったと思うのだが。
「スクブスに襲われた時、どんな夢を見てたんですか?」
「え、あ、え、その…もう覚えてないんだな、これが。あはは、ハハハハ」
適当にごまかしてみた。
「ふふふ、そうですか」
深田は意味ありげな微笑を浮かべた。それは淫夢の中でスクブスが浮かべた笑みに重なり、俺は思わず身震いした。やはり女は怖い。

                                                                             続く。
38Mr.名無しさん:05/03/18 01:23:37
待ってたぞ!!
391:05/03/18 01:40:20
>>30
>>31
そう。
今日はここまで。
40Mr.名無しさん:05/03/18 01:41:42
ごっつワロタw
三次市民は潜在能力高いな
411:05/03/18 01:44:24
>>40
実は呉市民。
42Mr.名無しさん:05/03/18 01:50:00
呉市民だったのかよw
431:05/03/18 01:54:11
>>42
転勤。住民票は呉のまま。
真今日はここまで。
44Mr.名無しさん:05/03/18 04:09:41
相変わらず(・∀・)イイ!!
45Mr.名無しさん:05/03/18 07:32:32
いい展開だ(・∀・)
46Mr.名無しさん:05/03/18 17:31:51
こういう一見バカバカしいことに才能使うやつが多いよな
この板って
47Mr.名無しさん:05/03/18 22:08:00
相変わらず素晴らしい
毎朝、出勤途中、電車の中、携帯でこのスレを読むのが
唯一の楽しみ。
48Mr.名無しさん:05/03/18 22:27:20
いいセンスだ・・・
49Mr.名無しさん:05/03/18 22:43:16
前から疑問だったんだが
>>1はその日寝るときに考える妄想を書き込んでんの?
それとも前日妄想したネタを書き込んでんの?
50Mr.名無しさん:05/03/18 23:47:08
オレが思うのは、カキコがなかったときに、>1はどこで何してんのかなあーってこと
511:05/03/19 00:54:45
第8話
丘を上ると真っ青な大海が視界を埋め尽くした。深田によるとセットー海と言うらしい。海岸沿いに小さな村が見える。深田は地図に目
を落とし、現在位置を確認して頷いた。
「間違いなさそうだわ。あれがレク村です」
「結構小さな村なんだな。港っぽいけど」
桟橋が見えるが、停泊してい船舶はほんの3隻ほど。
「この大陸があるのは世界の端っこですからねぇ。こんな辺境まで貿易に来る変わり者はいないんでしょうねぇ」
「端っこ?」
「あ、言ってなかったですね。セットー海の先は、何にも無いらしいんですよ。もの凄く大きな滝があるだけだって」
「へぇ…」
さすがファンタジー世界。天平説が大手を振ってまかり通っているわけだ。
丘を駆け下り俺達はレク村へと入る。中央通りに人影はまばらで落ち着いた雰囲気だ。早速老魔術士を訪ねようと村人A(橋谷。小学校
時代。ピアニカ破壊事件の容疑者)に尋ねる。すると驚きの返答。老魔術士は3ヶ月前に他界したという。かなりの勢いで落胆する俺達。
そこに村人Aは続ける。
「今はお孫さんが南の魔術士の名を継いでるよ」
望みがつながった。村人Aに礼を言い、教えられた場所に赴いてみる。さすがは偉大な魔術士が住む館なだけはある。ちょっとした宮殿
のようだ。馬鹿でかい扉をノックをするとメイド(片桐はいり)が現れ、無愛想に俺達を奥に通してくれた。厳かなドアを開けると、そこ
は薄暗い広間。広間の奥まった所で台座に鎮座しているのは…
「あああああ!?」
俺達は仰天した。草原で馬を掠め取ってくれたあの少女ではないか。
521:05/03/19 00:55:07
「馬泥棒!!」
今にも掴みかからんばかりの勢いで叫ぶ俺に、
「馬泥棒とは人聞き悪いなぁ。甜歌はちょっと借りただけなのに。その証拠にちゃんと返したでしょ」
と、少女は至って明るく無邪気に言い放った。
「あれは返したとは言わないよ!ってか、何でお前がそこに座っているんだよ」
「甜歌がこの館の主、15代目南の魔術士だもん」
「は?」
俺は唖然とした。この子供は何を言っているんだ。
「あ〜あ、甜歌何だか機嫌が悪くなっちゃいそうだな〜」
「何だと、この糞ガキ!!」
「ま、待ってください。あまり彼女を刺激しない方がいいと思います」
「深田さんまで何言ってんだ。こんな子供が南の魔術士のわけが…」
ふと頭の中に昨日の光景が浮かんだ。壊滅した盗賊のアジト、散らばる魔術の秘薬、そして滅茶苦茶下手糞な書置き……こいつなのか。こいつ
が南の魔術師なのか。”いや、展開わかり杉だからw”などという天の声など一切聴こえない俺は混乱した。
「で、おにいちゃんとおねえちゃんは何しに来たの?」
「ごめんなさい。実は…」
深田はこれまでの事情を説明した。意外にも真剣な眼差しで聴いている甜歌。
「おねえちゃん…かわいそう……」
好感触、と思った矢先に、甜歌は何かを閃いて指を鳴らした。
「そうだ!それじゃあ、おにいちゃんが甜歌のテストに合格したら治してあ・げ・る!」
「テ・ス・ト?」
きょとんとする俺達をよそに、甜歌は秘薬を目の前の床にばら撒き、目を閉じて杖を構えた。そして何やら低い声で呪文を唱え始める。すると
石造りの床が粉々に砕けて宙に舞い上がった。
531:05/03/19 00:55:51
おわわわわ!?」
たまらず転倒する俺。石は終いには俺の身長の倍はあるかという巨大な人型を造り上げた。
「おにいちゃん、この子を倒してみてよ。そしたらおねぇちゃんの腕、元通りにしたげるから」
「ハハハ…冗談だろ?」
「本気でやらないと死ぬよ♪」
甜歌はニカッと歯を見せて、杖を高く掲げた。どうやら冗談ではないようだ。ゴーレムの腕が、俺の頭上めがけて腕を振り下ろされた。
                                                            続く
54Mr.名無しさん:05/03/19 00:59:47
>>1キター!!
55:05/03/19 01:37:09
>>49
前日妄想したのをベースに書いてる。

今日はここまで。
56Mr.名無しさん:05/03/19 01:50:19
・・・やっと、やっとこのスレ見つけたぁぁああああ!!!!!!!
これでまた>>1の妄想ワールドを堪能出来るぜ!
57Mr.名無しさん:05/03/19 02:09:18
>>55
やっぱりそうか。
予め話がわかってる妄想してもつまらんからな。
5849:05/03/19 02:33:36
>>1はもう異世界かな?
もう一つ疑問あった。
話が切れるのはそこで寝てしまったってことなのかな?
59Mr.名無しさん:05/03/19 17:23:07
1虚し杉w
さろそ気付けよ
遊ばれてることに
60Mr.名無しさん:05/03/19 21:58:26
ピアニカ破壊事件の詳細が知りたい・・・
61Mr.名無しさん:05/03/19 22:24:03
てんかまじかわいいよ〜









欲しい
62Mr.名無しさん:05/03/19 22:38:44
>>59
お前のおかげで春の到来を実感したよ
63Mr.名無しさん:05/03/19 23:16:35
>>59
春厨乙
64Mr.名無しさん:05/03/19 23:46:17
最近カズの代表復帰を妄想する
妄想で半泣き
651:05/03/20 00:37:01
第9話
ゴーレムの一撃は、俺の肩をかすめて床に激突した。激しく陥没する石造りの床。続いて第二、第三の攻撃がとんでくるが、動きが鈍いので
何とか回避できた。最初は急展開に面食らい動揺しだが、よくよく見ればゴーレムの動きは隙だらけだ。石が擦れあう無機質な音を発しなが
ら、ゴーレムは俺に向けて腕を大きく振りかぶった。
俺は攻撃を身を屈めて避ける。
「足元がお留守だぜ」
あたかもヤムチャに向けるがごとく、放った渾身の一撃はカウンターでゴーレムの大腿部に命中。足から折れたゴーレムは、床にしたたかに
打ちつけられて砕け、元の石塊に身を帰した。
「へぇ、おにいちゃん見た感じ雑魚っぽいけどやるね。まぁ、小手調べなんだけど。それじゃあ……ニヒヒヒ、こんなのはどうかな〜?」
甜歌は小悪魔のような笑みを浮かべた。今度はゴーレムの時より長い詠唱。広間に立ててある8本の燭台上の蝋燭から、火が一箇所に集まる。
火はこれまた不気味な人型を形成した。
「イフリートさん、やっちゃって下さい」
炎から生まれた精霊は、腕を炎の鞭に変貌させて振るう。鞭が俺の肌を打ち付ける度に得も言われぬ快感が全身を電流のように流れる、わけがな
く、とにかく熱過ぎ。その上幾らロングソードで斬り付けても、炎は一瞬揺らぐだけで斬り裂くことはできない。
俺万事休す。イフリートが炎の抱擁で俺を焼き尽くさんと手を伸ばした。
その時、
「もうやめてください!」
深田が風系魔術を施したサーベルを横一文字に振るった。風を纏った斬撃に切り裂かれイフリートは消滅。
「あ〜!ズルだぁ。おねえちゃんは強いんだから、手を出しちゃだめだよ」
「そうだ。何で手出しすんだよ」
何故か息を合せて抗議する俺と甜歌。
「ダメなんです。わたしの為にあなたが苦しむのなんて……ダメなんです」
悲しげな表情でうつむいた深田。彼女の気持ちを嬉しく思う反面、複雑な心境。
661:05/03/20 00:37:39
「深田さん……そいつは俺の実力を過小評価し過ぎ」
「え?」
「俺だって魔王を倒したんだ。それに深田さんの腕を治して、一緒に帰るって言ったろ?」
「でも……」
「心配はいらない。俺だって、俺だって女の子の一人くらい助けられる」
俺は改めて甜歌の目を見据えた。その視線を受けて彼女はたじろぐ。
「な、ならお望み通り甜歌のとっておきの召喚術で……」
次はどんな精霊が出てくるのか。正直、イフリートにすら苦戦した俺に対抗できるはずがない。胸の内にある自信が再び揺らぎ始める。
しかし、一度は掲げられた杖が下ろされた。
「やーめた!!」
甜歌は投げやりな声で叫んだ。
「えぇ!?」
せっかく格好いいところを見せたのに、これでは拍子抜けしてしまう。
「なんか甜歌が弱いもの苛めしてる悪者みたいじゃない」
「いや、既に十分過ぎる程悪役だから」
「違うもん!甜歌は正義の魔術士なんだから。いいよ、おねえちゃんの腕治して上げる」
「マジか!?それマジか!?」
いきなり事態は好転。俺興奮。ところがどっこい、
「あ、思い出した。そう言えば腕を形作る材料がないんだった。アッハハハ」
甜歌はあっけらかんとして言い放った。
「お前、本当は最初から気づいてたろう」
「うん」
671:05/03/20 00:38:11
平然と返事をしやがる。
「おい」
「だって…だって甜歌遊んで欲しかったんだもん!!」
今度は打って変わって泣き出しそうな表情。最初は憎らしかったものの、その顔を見ていると、次第に責める気持ちが失せていく。
「はぁ…」
ため息をつかずにはいられない。希望を見出したり絶望の淵に落とされたり、疲れる一日だ。肩を落とす俺をよそに深田が甜歌に問い
かける。
「その材料というのはどこにあるんですか?」
「セットー海を渡って、更に砂漠やら山やらを越えた所にあるヤウタの沼だけど…あ!こうしよーよ。お詫びに甜歌が一緒に付いて行ったげる♪」
「いや、遠慮しておくよ、さぁ、深田さん、さっさと別の方法を探しに…」
身を翻して広間の出口に歩き出す俺。しかし、
「お願いします」
深田が甜歌に頭を下げた。無言の抵抗を続ける俺に彼女は言う。
「大丈夫ですよ。旅の仲間は多い方がいいですしね」
「決まり!安心してね♪おにいちゃんとおねえちゃんは、正義の魔術士甜歌が守ってみせるから!」
「こんな阿呆な展開ありかよ…」
茫然自失する俺。心強いと言うべきか、不安材料を抱えたと言うべきか。とにもかくにもこうして甜歌は俺達と旅を共にすることになった。
                                                           続く    
681:05/03/20 01:04:17
>>58
大概は一晩で一つの話が完結する。8、9話みたいなのは、一晩目で大筋を妄想して
二晩目で再度後半を練る。
>>60
俺が使っていたピアニカが、奴が使った次の日に鍵盤が外れてた。俺にとっては奴が禿しく黒。

今日はここまで。
69Mr.名無しさん:05/03/20 01:24:52
>>1
70Mr.名無しさん:05/03/20 02:31:22
>>1よ。
まとめサイトを作ってくれ。
いや、マジで。
71Mr.名無しさん:05/03/20 12:22:17
>70
君、言い出しっぺの法則を知ってるかね?
72Mr.名無しさん:05/03/20 12:37:54
毒男創作系スレの慣わしだなw
73Mr.名無しさん:05/03/20 13:52:29
>>70 乙
74Mr.名無しさん:05/03/20 14:15:26
>>70
激しく乙です。
7570:05/03/20 14:23:26
いや、第三者の俺が作ると著作権云々でまた揉めるかもしれない。
>1本人の運営ならその辺はまったく問題無いだろうし。
そもそも俺HP作れないし作った事ありません・・・。
ごめんよ。
76Mr.名無しさん:05/03/20 14:51:43
いやいや1も作れないかもしれないし
条件は一緒

>>70 乙
77Mr.名無しさん:05/03/20 15:01:09
>>1よ、もっと文章は簡潔に、
シャープさが前スレの頃より減ってるぞ。

褒めるばかりじゃアレなんでたまには苦言など。
言っとくが叩いてるわけじゃねえぞ。
78Mr.名無しさん:05/03/20 15:51:30
苦言を呈すことができるならばお前が手本を見ry
79Mr.名無しさん:05/03/20 20:15:57
>>78
おまえバカだろ?
80Mr.名無しさん:05/03/20 21:40:45
>>79
そういうこというなよ
81Mr.名無しさん:05/03/20 23:55:41
>>79
いや、お前の方が馬鹿だから
82Mr.名無しさん:05/03/21 00:02:28
どっちでもイイよ。
マターリいこうぜ
831:05/03/21 00:05:01
第10話
出発は明朝。その夜は甜歌の屋敷に宿泊させてもらうことにした。俺達は不自然な点に気づく。甜歌の祖父である12代目南の魔術士は
他界したと聞いたが、彼女の両親の姿が見当たらない。この家で目にしたのは、甜歌の他にメイド(片桐はいり)のみだ。
夕食の席。テーブルで久々にちゃんとした料理を囲む。俺は疑問を述べてみた。
「甜歌のお父さんやお母さんはどこに?一応、一緒に旅に出ること言っとかないと」
「それならいいよ。パパとママは半年前に死んじゃったから」
「あ……ごめん」
俺は自分の迂闊さを呪った。と同時に甜歌の今の言動に不審さを覚えずにはいられない。通常、半年というとまだ故人の死に慣れるには早
い。こんな年端のいかない子供なら尚更だ。ところが彼女は顔色一つ変えず、それどころか笑みを浮かべたまま食事の手を休めることもし
なかった。よほど逞しいのか、それとも……
この次の話をどう切り出していいか分からず、俺は萎縮してしまった。それを見兼ねた深田が助け舟を出してくれた。
「あ!そういえば、わたしの腕を治す材料って、どんなものなんですか?」
「うん。肉土って言って超珍しい土なの。甜歌もまだ見たことないけど、この近くではヤウタの沼でだけ採れるって、ジャランのすみっこ
に書いてあった」
「ジャラン?」
「旅行情報誌」
「へぇ…」
食事を終えた俺達はそれぞれの寝室に案内されて、疲れた身体を休めた。ベッドはやはり気持ちいい(アパートでは畳の上で万年床)。
翌朝、俺達は旅支度を整え、レク村内の船着場に向かった。昨日は無かった巨大な帆船が停泊している。1週間に一度、二つの大陸間を往復
する定期船とのこと。その他にも10数人の乗船客がいるようだ。船賃(深田に借金)を支払って乗船。ほどなく碇が上げられ、船は出航した。
「船旅なんて久しぶりでワクワクするなぁ。何年ぶりだろう。別府に行って以来だから10年ぶりか」
俺は潮風を全身に浴びるべく、大きく伸びをした。
「ふふふ、子供みたいですね」
と深田。笑い合う俺達。爽やか。
841:05/03/21 00:05:36
ーーーーーーーーーーーーー2時間が経過ーーーーーーーーーーーーー
「暇すぎ……」
行けども行けども青海原のみ。船内TVはないし、お馴染みの船内ゲーセン(スティックを右に引いたら左に走る高橋名人の冒険島とか入ってる)
もない。とにかく娯楽がないので俺は暇を持て余した。ていうか酔ってきた。船酔い。ここまで揺れが激しいとは。俺ピンチ。乗り合わせた商人
から酔い止めを購入し、とりあえず船室に戻って横になるが思わしくない。少しでも力を抜くと、下の寝台で寝ている親父(店の前店長)の頭上に、
吐瀉物を撒き散らしそうな勢いだ。親父が嫌味たっぷりに言う。
「おいおい、兄さん大丈夫かよ。ここで吐かないでくれよw」
「はい…」
そこに深田が入ってきた。
「どうですか?」
「うーん、さっきよりちょっと良くなったかな。深田さんと甜歌は平気なのか?」
「わたしは船旅に慣れてますから。甜歌さんも特に船酔いの症状は出てないですねぇ」
「我ながらだらしねぇ…」
少し無理をして俺が身を起こそうとした時、今までにはない激しい衝撃が船を揺るがした。
「おわっと!?」
「きゃっ!」
船室が急激に傾斜し、俺は壁に叩きつけられ、更に深田のタックルを腹部に食らった。
「深田さん!どいてどいて!!」
「え!?あ、はい」
我慢しきれず、俺は胃の内容物を吐き出した。それは隣で失神していた親父(前店長)の顔面に満遍なく飛び散った。このまま起こさないほうがい
いだろう。とりあえず吐いて人心地がついた俺は、船が水平を取り戻すのを待ち、深田と共に船室を抜け出してデッキに立った。天候は快晴。嵐と言
うわけでもなさそうだ。銛を手にした船員達が欄干から海中を見下ろす中に、ちゃっかり甜歌も混ざっている。
「甜歌、無事か!何があったんだ?」
「ああ、クラーケンが襲ってきたみたいだよ」
「クラーケンって、確か馬鹿デカい烏賊だっけか?」
「50mくらいあるって。あ、今船の下に潜ったよ」
「マジか!?」
851:05/03/21 00:06:06
叫んだ途端に、ぶっちゃけあり得ないくらい長くて太い触手が10本、海中から飛び出した。その一本が不意をついて俺の隣に居た深田を捕らえ、宙
に持ち上げた。俺は彼女を助けるべく背中の剣を探るが、ない。ない。ない。慌てて船室に置いてきてしまった。不覚。舌打ちをする俺に甜歌が提言する。
「あれくらいだったら雷系術を使えば一発でやっつけられるけど」
「いいぞ、甜歌。それいってみよう!」
「でもおねえちゃんも一緒に黒焦げにしちゃう」
「却下」
そんな頭の悪い会話を繰り広げているうちに、深田は海中に引きずり込まれてしまった。
「深田ーーーーー!!」
「そこをどいてくれ!」
「え?」
背後から高めの女性を魅了するような声が響いた。振り返ると長身で彫りの深い顔をした侍風イケメン(平井堅)が、日本刀を手にして立っている。彼は
逡巡している俺の横をかすめてると、烏賊の触手の上を身軽に走り、一気に烏賊の頭部まで接近した。
「何かわからんけど、頑張れ!」
自分が主人公と言うことすら忘れ、思わず応援する俺。
「南無三!!」
イケメン(平井堅)は、日本刀で烏賊の頭部を刺突した。烏賊あっさり絶命。そして海中に飛び込み深田を救出、無事デッキに帰還した。カッコよすぎ。
深田は大量に水を飲み、呼吸をしていない。こんな時こそ人工呼吸なのだが、生憎俺はやり方をしらない(大学時代、運転教習所で一度習ったきり)。そ
んな俺をよそに、イケメンが深田の唇に自分の口を当てた。
「あ…」
俺は思わず小さな声を漏らした。が、今は見守るしかない。人工呼吸と心臓マッサージをしばらく繰り返すと、深田は呼吸を取り戻して水を吐き出した。
安心して顔を合わせる俺と甜歌。イケメン(平井堅)は深田に優しく語り掛ける。
「お嬢さん、もう大丈夫だ」
「あ、ありがとうございます…」
見詰め合う2人を、俺は蚊帳の外で見守っているしかなかった。 
                                                    続く
86Mr.名無しさん:05/03/21 00:10:22
お前すげえな

俺はとてもじゃねえがこういう妄想はできねえ…
人工呼吸とはいえ横取りされるような展開は…
871:05/03/21 00:15:36
>>70
まとめサイトは継続力ナッシングな俺では運営維持できん。スマン。
>>77
スマン&トンクス=スマトン。冗長的な文章だが、オナニィだと思って勘弁してくれ。
88Mr.名無しさん:05/03/21 00:15:44
なんて切ない妄想なんだよ。。。
891:05/03/21 00:21:06
>>78>>81
Mizのアルバムでも聴いて落ち着こうぜ。
90Mr.名無しさん:05/03/21 00:36:08
まぁ書き込むだけでもかなりの労力だろうしな。
病気とかすんなよ。富樫みたくしょっちゅう休載されたら困るから。
91Mr.名無しさん:05/03/21 00:56:00
富樫ってあの絵でもしょっちゅう休載すんの?
921:05/03/21 01:02:30
今日はここまで。
93Mr.名無しさん:05/03/21 01:05:19
>>1
94Mr.名無しさん:05/03/21 01:20:49
・・・・っつーか、顔も名前も知らない赤の他人の妄想を毎日
楽しみに読んでる俺達っていったい・・・・・


・・・まぁ、面白いからいっか!
95Mr.名無しさん:2005/03/21(月) 12:32:30
1はまた本命とくっつけないのかよ・・・
96Mr.名無しさん:2005/03/21(月) 17:38:21
そこが毒男らしい
97Mr.名無しさん:2005/03/21(月) 19:12:24
今回は赤川さんは出てこないの?
おれファンなんだけど
98Mr.名無しさん:2005/03/21(月) 19:40:12
リアル赤川さんはまさかこんな場所に自分のファンがいるとは思ってもないだろうなw
99Mr.名無しさん:2005/03/21(月) 21:58:23
リアル赤川さんて言い方、なんか生生しくていいな
1001:2005/03/22(火) 01:39:53
第11話
航海3日目。
退屈な船旅は続く。平井はすっかり船内の人気を欲しいままにしている。クラーケンを倒した上に、恋人の仇を探して世界中を回っている
というイケメソ的な旅の理由も手伝って、既に船中の女子の憧れの的だ。俺はというと吐瀉物をかけた親父(前店長)とむさ苦しい船室で
同居中。
今日も特に何をするでもなく暇を持て余しデッキに出てみると、平井が深田と話している。あんまり楽しそうに話しているので、俺はさり
げなく近くに寄った。柱の影から2人をこっそり観察していると…
「おにいちゃん、何してるの?」
「うわ!?」
甜歌だ。いつの間にか俺の背後に立っている。
「べ、別にこれといって何もしてないよ。盗み聴きしようなんてこれっぽっちも。ちょっと潮風に当たりに来ただけだよ」
「へぇ、そうですかぁ」
全く信じていない風だ。
「恭子おねえちゃんと堅が気になるんでしょ?」
「え!!何言ってんだ。こ、子供がそんなこと気にしてるじゃないよ」
「いいからいいから♪でもねぇ、あの2人結構お似合いだよね。堅はイケメンだし、噂によるとあっちの方も結構ヤリ手らしいよw」
「く…」
「おにいちゃん、残念でした♪でも、すぐにいい人が見つかるよ。意外と身近な所から」
いたって楽観的に言ってくれる。
1011:2005/03/22(火) 01:40:20
「何でお前にそこまで予言されなきゃならないんだ?」
「甜歌は大魔術士だからそれくらい分かるの。じゃあね」
人の心を乱すだけ乱して行ってしまった。ナイス小悪魔ぶり。俺はどうにも落ち着かず、結局2人の会話を聴くこともできずその場を去った。
夕食を取った後も頭がぼーっとしている俺は、凪の海でも見て落ち着こうと再び甲板に出た。偶然そこには深田が独りで海を眺めていた。
「やぁ」
「どうも」
久々に会ったような違和感が、2人の間に張り詰めた。俺は我慢できず本題に触れる。
「いい夜だね」
「いい夜ですね」
訪れる沈黙。海面を月明かりが照らし、幻想的な光景を作り上げている。俺は勇気をふり絞った。
「あのさ……平井さんってどんな人なんだ?」
「え、何でそんなこと訊くんですか?」
「ちょっと気になってね」
深田は少し考えた後、口を開く。
「そうですねぇ。一言で言うとイケメンですね。カッコいいし頭もいい、あと歌もうまいんですよ。完璧ですね。旦那にするならあんな人
が理想ですね。でも彼は…」
「わ、わかった。もういいよ」
俺は眩暈がして逃げるようにその場を離れた。今の会話から判断するに、やはり深田は平井に惚れている。そして、これは付随的に判明した
のだが、どうやら俺自身も深田に本格的に恋をしていたようだ。俺ショック。
そこに渦中の人平井が現れた。俺の隣に立ち、海原の遥か向こうを指差して言った。
「もうそろそろコクシ大陸が見えてきますよ。明朝には着くでしょう。ところで、今から俺の部屋に来ませんか?」
いきなりの平井からの誘いに、俺は面食らった。
「え?」
「うまい酒があるんですよ」
どういう魂胆かはわからないが、俺は平井の誘いに乗ってみることにした。
続く
1021:2005/03/22(火) 01:40:57
今日はここまで。
103Mr.名無しさん:2005/03/22(火) 02:18:53
1乙。まいど基本押えてるよなぁ。
104Mr.名無しさん:2005/03/22(火) 20:08:03
ひょっとして平井堅がパーティに参入か?
1051:2005/03/22(火) 20:34:25
第12話
平井の船室。
俺はイケメンに滅法弱い。地球にいた頃、イケメンの同僚と飲み屋などで席を同じにすると、どうしても会話が弾まない。
相手の性格に関係なく外見面で気後れしてしまうのだ。我ながら情けない。
彼は年季の入ったズタ袋の中から、徳利と杯を2人分取り出した。
「僕の地元で出来た酒なんですよ」
「はぁ、そうですか」
俺は注がれた杯を口に運ぶ。というか今になって思い出した。俺は下戸だった。
「うまいですねぇ」
日本酒だ。接着剤みたいな味がする。何とか我慢して旨そうな顔を造ろうと努力してみる。
「口に合ってよかった。ところで深田さんのことなんですが」
早速キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)ヨ━━━!!!!!
「綺麗な人ですね」
「あ、ああ、そうですねぇ…( ゚Д゚)ポカーン」
「それに聡明だし、性格も落ち着いていて」
「え、ええ、そうですねぇ…(((( ;゚Д゚))))ガクガクブルブル」
「思わず惚れてしまいそうです」
「お、おお、そうですかぁ…(orzorzorz)」
手に持った杯を落としそうになり、俺は危ういところで受け止めた。平井はそんな俺が落ち着くのを待つかのように間を
置いて言葉を続けた。
1061:2005/03/22(火) 20:34:53
「大事にしてあげて下さい」
「へ?」
鳩が豆鉄砲を食らったような表情の俺。
「深田さんのこと」
「あ……い、いや、俺は別段彼女と付き合ってるとか、そんなんじゃなくて、その何というかdrtgyふじこめんlp;@」
「ハハハ、そうですか」
彼は大きく笑いながら酒を口にした。俺も動揺ごと酒を飲み干す。もう下戸だの気にしている場合ではない。
「僕にもそんな時がありました」(ここでひとみを閉じてが流れ出す)
平井は過去について語り出した。彼も元は小さな村のこれまた小さな酒場で、シンガーとして普通の暮らしをしていた。
貧しいながらも恋人と2人の充実した日々。結婚も考えていた。しかし、ある夜、前魔王フィカブーの軍が村を焼き払い、
平井は命からがら逃げ出すものの、恋人は魔王軍の軍師エナリ(えなり)の手にかかり命を落とす。それからは復讐のみに
人生を費やすべく旅を続け、今に至る。ぶっちゃけRPGの登場人物の生い立ちによくある話。だが実際に本人の口から直に
聞くと、彼のやるせなさに共感せずにはいられない。
「何て言ったらいいのか…」
会話に窮した俺は、平井の杯が空いていることに気づき、神の助けとばかりに酒を注いだ。彼は注がれた酒を一気に飲んだ。
そして真剣な表情でこんな申し出をしてきた。
「僕を、あなた達の魔王討伐に同行させて頂けないだろうか?」
1071:2005/03/22(火) 20:35:19
俺は面食らった。
「え、それをどこで!?」
幾ら打ち解けたとは言え、深田が喋るはずがない。お互いにこの世界で生きていく上で、異世界人と知られると何かと不都合が
起こる可能性があるので、魔王関係の話題は極力避けるように申し合わせていたからだ。となると、
「甜歌ちゃんから聴きました」
やっぱり。きつく口止めしておいたのに、ベラベラ喋りやがった。
「僕の恋人を殺した男エナリ(えなり)は代々の魔王に仕えることを条件に、永遠の命を得たと聞きました。奴は次に現れる魔
王の足元にも必ず跪くはず」
俺達と行動を共にしていれば、単独で動くよりも効率良くエナリに近づけるというわけか。何だか利用されている気がしないで
もないが、正直平井ほどの剣士かつ純正イケメンが仲間に加わってくれれば心強い。何より彼の今の口調は揺ぎ無い決意を感じ
させる。
「俺は別にリーダーってわけじゃないから、自分の一存じゃ決められない。深田さんと甜歌からも了解貰わないと…」
「それなら、もう了解を得ました」
断る理由はどこにもなくなった。
「……なら、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
お互いに軽く会釈を交わし、同時に杯を干した。その時、天井に開いた穴から暗い船室に一条の明かりが指した。夜が明けた。
                                                        続く
108Mr.名無しさん:2005/03/22(火) 21:34:57
えなりキターーーーーーー!

今日は早いんだな、>>1。いつも乙。
109Mr.名無しさん:2005/03/22(火) 22:09:26
おかげで今日は早く寝れそう
もう一丁来る?
1101:2005/03/22(火) 23:39:23
今日はここまで。
111Mr.名無しさん:2005/03/22(火) 23:55:20
今原稿用紙何枚くらい書いたんだ?
112Mr.名無しさん:2005/03/23(水) 13:15:49
今回はかなりの長編になりそうな予感。
113Mr.名無しさん:2005/03/23(水) 21:34:35
スマン&トンクス=スマトン。いいね〜流行りそう
114Mr.名無しさん:2005/03/23(水) 21:44:52
MSネタじゃない話で正直ここまでおもしろくなるとは
思わなかった。
続きが楽しみだ。
1151:2005/03/24(木) 01:39:39
第13話
船はコクシ大陸に到着した。港町マ・ツヤーマに降り立った俺達一行は、装備を整え砂漠地帯に向けて出発する。砂漠でジャイアン
トスコーピオンやらバジリスクやら名物モンスターが現れる。だが甜歌と平井を加えたパーティは、特に苦戦することなく適度の経
験地を稼ぎながら、砂漠地帯を抜けて山岳地帯に至る。山を越えて、目的地ヤウタの沼が近づくにつれ、異臭が立ち込め始めた。
鬱蒼と茂った森が拓け、沼は俺達の前に姿を現した。
「これが…ヤウタの沼」
異様な光景を目の当たりにして、俺達は思わず絶句した。濁った黄土色の沼があり、その周囲に何とも形容しがたい色合いをした泥
状の何かがウネウネと脈打っている。白を基調として所々に赤い筋が混じった、まるで死体の肌のような色だ。
「な、なかなかどうしてフレッシュなカラーですね」
ちょっとやそっとのことでは動じない平井も、面食らっている様子で呟いた。
「これがニクツチだよ」
甜歌は蠢く土を素手ですくい上げ、俺の鼻っ面に突きつけた。ドロドロとした形態は土というより泥だ。
「おゎ、臭っ!!」
「臭くない臭くないwさぁて、ちゃちゃっとやっちゃいますか!」
彼女だけは意気揚々として、見た目も匂いも全く気にならないようだ。やはり魔術士だけあってどこか変わっている。俺が妙な納得の
仕方をしている間に、甜歌は手頃な岩の上にニクツチを盛った。
「深田おねえちゃん、腕見せて」
「あ、はい」
甜歌は岩の上にあぐらをかいて、深田の腕を観察しながらニクツチをこね始めた。フルスクラッチで見事に腕の形を造り上げていく甜
歌。モデラーとして食っていけそうだ。俺と平井はその見事な手捌きに、ただただ見惚れるばかり。そうしてかれこれ2時間ほど経と
うという時、平井が俺の肩を叩いた。
「ん?」
「少し周囲が騒がしくなってきたようです…」
1161:2005/03/24(木) 01:40:05
彼は背にした刀の柄を握った。俺はゆっくりと周りを見回す。あらびっくり。いつの間にやら魔物に包囲されている。スケルトンやロッ
ティングコープスなど、アンデッドな面々がざっと40から50体。
「愚かなる者達よ。ここが我の領地と知っての侵入か…」
中心人物らしい青白い顔をした魔術士風の老人が、目を真赤に染めて凄んだ。かなりご立腹のようだ。
「リッチか…マズいことになりましたね」
「リッチ?」
「不死の肉体を得た魔術士です。どうやらこの一帯は彼の領地だったようです」
「そんなことジャランには書いてなかったけど」
「リッチがいるなんて書いたら観光客が来ないでしょうから」
「いや、観光客とか普通に死ぬし……まぁいいや」
腕の再生術が終わるまで、甜歌と深田を動かすわけには行かない。俺と平井はそれぞれ得物を構えると、アンデッドに斬りかかる。だ
が通常の魔物と違い血肉を持たない彼らに、斬撃や打撃は大した効果を見せない。
「如何せん数が多すぎますね。対アンデッド用の銀武器を用意しておくべきでした」
「ここまでなのか…」
「剣を貸してください」
背中越しに聴き慣れた声が。
「へ?深田さ…!?」
深田は俺の手からロングソードをひったくると、アンデッドに向かって駆け出した。その双肩からはしっかりと日本の腕が揃って伸びて
いる。甜歌の施術が成功したようだ。だが、それにしても、これだけの数を相手に特攻を掛けるのは、
「無茶だ!」
しかし、俺の声が届くより早く、深田の初撃がスケルトン5体を一撃の元に粉砕した。振り上げられた剣身が白銀色に光る。
「あれ、剣の色が…」
「なるほど。属性変化剣というわけですか」
「ゾクセイヘンカケン?」
「説明は後です。僕達も行きましょう」
1171:2005/03/24(木) 01:42:17
刀を水平に構えて走り出した平井。俺もその後を追う。が、よくよく考えてみると先ほど深田に剣を渡した為武器がない。俺ピンチ。あ
っという間にロッティングコープスの集団にのしかかられ、バイオなんとかというゲームのヤラレキャラ状態。
「うわ、やべぇ!」
間一髪、というところでロッティング(ryの身体を炎が覆った。
「もぅ、おにいちゃんしょうがないなぁ」
「甜歌!」
「やっぱおにいちゃんはわたしが守ってあげないとねぇ♪」
甜歌は深田が持っていたサーベルを俺によこす。ようやく俺も参戦。どうにかこうにか雑魚アンデッドを一掃した。残るリッチを前にする俺達。
「面白い。貴様ら!この我に適うと思って…お…お…お」
リッチの言葉が途切れた。首筋に一筋の線が現れる。
「は、はいごから、と、とは、ひ、ひき、きき」
「殺し合いに卑怯もなにも有りませよ?」
いつの間にかリッチの背後に回りこんでいた深田が、目を細めて微笑んだ。リッチの首がズルリと地面に落ちた。深田完全復活。それどころか
以前に比べて、刃の切れ味は鋭さを増している。鬼気迫るほどに。
「や、やったな…深田さん」
俺は崩れ落ちるリッチの胴体越しに深田さんを見た。
「ありがとうございます」
深田は緊張を解き、いつも通りのほほんとした笑みをたたえた。
                                                            続く
118Mr.名無しさん:2005/03/24(木) 01:47:10
リッチは不死の魔物って書いてあったけど、首切られて死んだのか?
1191:2005/03/24(木) 01:58:02
>>118
ロングソードが属性変化で銀武器になって対アンデッド特効武器になった(次回解説予定)
今日はここまで。
120Mr.名無しさん:2005/03/24(木) 02:36:33
1がDMでTRPGやってみたい。楽しそうだw
121Mr.名無しさん:2005/03/24(木) 22:47:40
パーティーに僧侶系スキルを持ったメンバがいないのが気になる・・・。
これはこの先の新キャラをお楽しみってことでいいかな?
122Mr.名無しさん:2005/03/24(木) 23:12:56
>>121
そんなこというと>>1は期待を裏切ろうとするんじゃねぇかw
123Mr.名無しさん:2005/03/25(金) 00:24:57
僧侶系?赤g
1241:2005/03/25(金) 01:04:14
第14話(前半)
「とすると、深田の剣はその場の状況に応じて属性を変えられるオールマイティな剣ってことか」
ここはコクシ大陸の玄関口であり最大の港町マ・ツヤーマの酒場。
「そういうことですね」
平井は頷いて、コーヒーカップを口に運んだ。
「この剣にそんな凄い秘密があったんですねぇ」
と、深田は驚いているのかいないのか、相変わらずの天然ぶり。
「あったんですねぇって、今まで使ってきて気づかなかったのかよ」
「はぁ、剣の色が変わったりしたのは今回が初めてです」
どういうことだ。深田の腕が元に戻ったことが原因なのか。それとも別の原因があるのか。謎は深まるばかりだ。俺は首を捻った。
「ところで、これからどうしましょうか?」
そうだ。剣のことは今は置いておいて、これからの身の振り方を考えなければならない。深田の腕を取り戻したものの、俺の対と
なる魔王は一向に誕生の片鱗を見せないのだ。魔王が活動するのを待たなければ、行動を起こせないとは皮肉なものだ。
「魔王が現れる予兆とかないのかな?」
俺はこの世界に来てすぐに魔王と戦ったわけで、魔王の世間に対する影響がどの程度のものなのか今一ピンとこない。
「全開フィカブーが現れた時は、各地で魔物が異常発生していましたが、各地の魔物の絶対数は均衡を保っているようですね。エナ
リ(えなり)が動き出したという情報もない」
平井はやはり仇敵エナリが気になるようだ。
「やっぱとりあえずは様子見、ってことか」
俺は諦め顔で言い放って、ウィンナーを齧った。
「そうですねぇ。まぁ、また〜り行きましょう」
深田の緊張感のない一言。しかし実際そうするしかないのだから、どうしようもない。とりあえずは剣の稽古でもして……あ!!
「そういえば!」
俺は手を叩いた。重要なことを忘れていた。
1251:2005/03/25(金) 01:04:43
「甜歌、お前を送っていかないと」
全員が一斉に甜歌を見た。ビクッとする甜歌。彼女の同行は深田の腕を治癒するまでの約束。唯一魔王討伐の個人的理由がない彼女に、
これ以上一緒に旅をさせるのは気が引ける。
「甜歌ちゃんは魔王と戦う理由はないわけだし、それに僕達と一緒に居れば多大な危険が及ぶことになる」
と平井。もっともだ。続いて深田が深々(フカダガフカブカ)と頭を下げる。
「甜歌さん、本当にありがとうございました。何とお礼を言っていいやら」
「う、うん…」
甜歌は少し寂しそうに笑って、一度だけ頷いた。俺は違和感を覚えた。
「ごめん。甜歌もう部屋に戻るよ。今日は疲れちゃった。みんなおやすみなさい」
「おやすみ」
三人同時に返事を返した。しばらくは黙々と食事をとっていたのだが、俺はあくびを一つして立ち上がった。
「ふぁ〜、俺ももう寝るよ」
「ああ、時間も遅いしお開きにしますか。僕も刀の手入れしないといけないし」
「おやすみなさ〜い」
それぞれが宿屋の自室に戻っていく。俺は一人だけトイレに行く振りをして、自室とは逆の方向に歩き出した。

                                                       後半に続く
1261:2005/03/25(金) 01:05:06
age忘れた。
127Mr.名無しさん:2005/03/25(金) 01:07:47
>(フカダガフカブカ)
d(゚-^*) ナイス♪
1281:2005/03/25(金) 01:18:51
今日はここまで。
129Mr.名無しさん:2005/03/25(金) 01:50:27
ワクワクテカテカ
130Mr.名無しさん:2005/03/25(金) 03:25:57
橋本甜歌って実在するタレントだったんだな・・・。
131Mr.名無しさん:2005/03/25(金) 16:10:04
ツンデレの方が100倍面白いage
1321:2005/03/26(土) 01:27:03
第14話(後半)
俺は甜歌の部屋の扉を軽くノックした。
「甜歌、起きてるか?」
「誰?」
「俺だよ」
わずかな間を置いて扉が開かれ、甜歌が顔を見せる。
「入っていいか?」
「うん」
招かれるままに部屋に入り、彼女はベッドの上に座り俺は窓際に立った。
「短い間だったが、本当にありがとな」
「うん」
「甜歌がいてくれなければ、深田の腕は元に戻らなかった。やっぱ、お前は最高の魔術士だな!」
「うん」
気まずい。とにかく気まずいふいんき(何故か変換ry)だ。俺は話題を変えるべく、あれこれ記憶を辿った。
「あ!ってかさ、最初甜歌にゴーレム仕掛けられたときはマジ怯えたよwあれ、本気じゃなかったんだよな」
「本気だったよ」
「え……」
更に気まずい。「まっさかぁ」とか言って笑ってくれると思ったのだが。いや、まさか本気で殺そうとしてたとは…
「おにいちゃんの目を見ていると、パパやママを思い出したの」
「俺の目で?」
「うん。腐った魚みたいな目」
「うわぁ…」
うわぁ。これまたきつい一言。まぁ、確かに元の世界で家電屋をしていた時分には、上司から結構同様の言われたことがあるが(orz)。
甜歌にまで同じことを指摘されては、さすがの俺もへこんでしまう。だが、それだけで殺そうとしなくても。
重苦しい空気が流れる。俺は二の句がつげず、フリーズしたまま。そこに甜歌が口を開いた。
「実は甜歌は南の魔術士の本当の孫じゃないんだよ」
1331:2005/03/26(土) 01:28:04
「へ?」
「パパとママが死んでから、魔術士の御爺ちゃんに引き取られたの」
甜歌は訥々と語り始めた。彼女は身分の低い家の出で、両親は田園に雇われ、馬車馬のように朝から夜まで働かされた。彼女自身
も幼い頃から歌が得意で、6歳の時から、既に路上で観光客相手に唄を歌っては、わずかばかりの金を稼いでいた。
「パパもママも生きることに縛られていたわ。そして、いつか裕福になって楽になりたいって言ってた。努力をすれば、いつかは
楽になれるって。でも、そんなのウソ。人間は決して平等に造られてなんかないんだもの」
その通りだ。誰もが同じスタートラインにいるわけではない。手枷足枷を嵌められた人間は、いつまで経ってもゴールには付けない。
四六時中付き纏うのは無節操に襲ってくる焦燥感と、悠々と前を走る人間への嫉妬。
「努力してもムダだって分かったのかな。ある日を境にパパ達は変わっていった。あんまり働くなって、甜歌がお金を持って帰ら
ないと、すごく恐い顔で叱ったわ」
両親は甜歌を虐待し、その度に彼女はこう言って謝っていたという。いつか必ず、甜歌がパパとママを楽にしてあげるから、と。
「自分に他の子にない力があるって知ったのは、その頃だった。簡単な魔術なら誰に教えてもらわなくても使えるって気づいたの」
魔術士としての才能に目覚めた甜歌は家に走った。自分のこの能力があれば両親に富をもたらすことができる。沢山稼いで帰った時
より誉めてくれるに違いない。しかし家で彼女を迎えたのは、稼ぎを催促する手の平だった。そして、金がないと知ると彼らは異常
な剣幕で甜歌を打ち据えた。甜歌は必死に謝りながら身を丸くした。だが、彼らは手を緩めなかった。激しい痛みが全身に絡みつき、
吐き出した真赤な血が肌を染めていく。もう謝っても許してもらえない。魔術が使えるという証拠を見せれば喜んでくれるはず。い
や、それだけではだめだ。許してもらうには、今すぐにでも彼らを楽にしてあげなければならない。
「だから甜歌は、甜歌は…パパとママが楽になれるよう…もやして………あげたの」
今まで必死に抑えてきた感情が一気に露出したのか、夥しい数の涙の粒が次々と甜歌の頬を伝わっていく。
1341:2005/03/26(土) 01:28:31
「甜歌…」
「でもね。おにいちゃんは違ったの。パパやママとは違ったの。深田おねえちゃんを”助ける”って言った時、おにいちゃんの目か
ら優しさが伝わってきた。甜歌はおねえちゃんがすごく羨ましかったわ」
「俺は…」
「ねぇ、おにいちゃん。死んだら本当に楽になれるのかな?」
”死ぬことで幸せになれるはずがない”。喉まで出掛かったそんな台詞を、俺はどうしても吐くことが出来なかった。彼女の歩んで
きた、まだ人生と呼ぶには短すぎる11年を思うと、俺にそんな励ましをする権利はないように思えた。家電屋で無為に日々を過ご
してきた俺には。今できることといえば、ただ一つ。甜歌の隣に座って、彼女の肩を抱いてやることしかできない。
「あったかい…しばらくこのままでいてもいい?もう会えないかもしれない」
「ああ、いいよ」
せいぜい5分ほど、甜歌は俺の腕の中で静かに目をつぶっていた。揺り篭で眠るような、とても安らかな表情。俺がその顔に見とれ
ていると、甜歌は急に俺の腕を振りほどいた。
「よぉし!!ありがとう、おにいちゃん。短い間だったけど、おにいちゃんや深田おねえちゃんや堅といれて、甜歌とっても楽しか
ったよ♪」
精一杯の空元気。痛いほどに伝わってきた。己の悲しみを内に閉じ込めるため、これまで幾度となくこの少女がとってきた行動だ。
思えば彼女はあの広い屋敷で、ずっと独りで泣いていたのかもしれない。俺はそんな甜歌に次のような提案をしてみた。
「あのさ甜歌、ちょっと付き合ってくれないか?」
「何を?」
「いや、大したことじゃないんだけどな。俺達と一緒にさ……」
「……」
「ちょっくら魔王でも倒しに行ってくれないか?あの、その、なんだ。お前の力が必要なんだ」
先ほどと同じ大粒の涙が甜歌の頬を流れた。その涙の粒を服の袖で拭うと、
「うん!」
甜歌は小さいながらも、確かな強い声で返事をして頷いた。
                                         続く
135Mr.名無しさん:2005/03/26(土) 01:39:52
ヘビーに行くなぁ。いいよいいよ。
1361:2005/03/26(土) 01:49:46
今日はここまで。
137Mr.名無しさん:2005/03/26(土) 01:53:20
あーあ。
>>1の妄想でついに涙を流しそうになったなんてコンチクショウ俺!
138Mr.名無しさん:2005/03/26(土) 02:13:21
>1
目から鼻水が出てとまりませんよ、コノヤロー!
139Mr.名無しさん:2005/03/26(土) 05:26:22
ありがちな設定だが誰も思いつかない。
それが>>1の妄想ワールド。

しかし何食ったらこれほどハイクオリティな妄想が出来るんだ?

っつーか、魔王を倒した後、孤児の甜歌はどうなるんだろう?
次の魔王を倒してもゲートは2個。
それは深田と>1が使うんだろ?
そしたら甜歌は一人ぼっちになっちゃうじゃん!?

うおー!先が気になってしかたがねぇよ!!!!
140Mr.名無しさん:2005/03/27(日) 01:15:35
>>1さんは今日は来ないのか?
1411:2005/03/27(日) 01:29:02
第15話(前半)
船に揺られて一週間。俺達はシフィロマ大陸(最初の大陸。今日名前決定)に帰ってきた。とは言っても、今回訪れたのはレク村で
はなく、王都シ・フィーロにあるナジ港だ。人が集まる所に情報あり。魔王出現のしっぽでも掴めないかと、俺達は王都に足を踏み
入れた。
「人が多いなぁ」
俺は大通りを目の前にして呻いた。
人、人、人。今まで通過してきた村がのんびりとしていただけに、街は余計人口密度が高く感じられる。様々な商店が軒を連ね、矢
鱈と賑やかだ。
「ねぇねぇ、これだけいろんなものがあると、何だかウキウキしてくるね」
甜歌が明るく笑う。禿しく同意。こう活気があると、ついつい雰囲気につられて衝動買いに走ってしまうのが俺の悪い癖。俺は深田
に剣を返したので、自分用の武器がない。立ち寄った中古武器屋で破格のブロードソードを購入した。
「情報収集ってしたことないんだけど。とりあえず、そこら辺歩いている人に話でも聞いてみるのかな?」
俺は平井に問うた。RPG寄りの世界だけに、よくドラ○エとかで往来を歩く人々に、一人一人話しかけるシーンを思い浮かべたか
らだ。
「そんなことしていたら日が暮れてしまう。情報屋を当たりましょう」
冷静に切り捨てられた。もっともなご意見。どうやら彼にはなじみの情報屋がいるらしい。的中率は73%とやけに具体的な数値が
算出されている。ほどほどに当たるらしい。俺達は彼に付いて、細く入り組んだ路地を歩き回った。そうして着いた民家には「シ・
フィーロの母」という看板。中に入ると、紫色の絹衣を身に纏った中年のオバハン(希木樹林)が一人、テーブル越しに座っている。
「堅坊、よくきたねぇ」
シ・フィーロの母は平井の顔を見て不気味に笑った。
「堅坊はやめてくださいよ」
「うるせぇよ。簀巻にしてオタ川に流すぞ?」
こわっ。脈絡もなく急に切れた。このオバハンこわっ。長居は無用とばかりに、早速魔王について占ってもらう。
「ん?あれまぁ、魔王はこの世界に既に現出しておるわぃwアヒャヒャヒャ」
シ・フィーロの母はまるで祭りの報せを受けたかのように、邪悪かつ愉快痛快という風に笑った。
1421:2005/03/27(日) 01:29:27
「マジか!?で、どこに?」
シ・フィーロの母に駆け寄る俺。
「知るか、たわけた腐れ外道が。ワシでもどこに現れたかまではわからんわい」
「腐れ外道…」
居場所こそ分からないものの、魔王が現れていることは判った(的中率は7割方だが)。それだけでもよしとすべきか。そんなこと
より、腐れ外道と罵倒されたことの方がショッキングなわけで。言葉の意味が分からない甜歌が、俺の顔を見上げて言う。
「おにいちゃん腐れ外道なの?」
「いや、どうだろ。そうなのかな…ハハハ」
その時、何やら俄かに表が騒がしくなった。家を出ると、街の人々が皆一様に心配そうな顔をして、同じ方向を向いている。そちら
に目を移すと、王宮から火の手が上がっているのが目に入った。見過ごすわけにもいかず、俺達は王宮に急ぐ。城門をくぐり王宮内
に駆けつけると、兵士達が羽を生やした無数の魔物達と奮闘している。
「こいつは凄まじいな…」
俺は思わずこぼした。ところどころに兵の骸が横たわっている。とにかく敵の数が尋常ではない。こちらも、ぼやぼやしている暇は
ない。俺達に気付いた魔物の一群が、武器を構えて襲ってきた。
1431:2005/03/27(日) 01:30:32
「皆さん、応戦してください」
落ち着いてロングソードを構える深田。
「応!」
勇猛に応えて刀を抜く平井。
「わかってるよ!おにいちゃんはおk?」
杖を顔の前で水平にする甜歌。
「待て!おkじゃない、剣が抜けない!!」
そして、うろたえる俺。
さきほど購入したばかりの剣を鞘から抜こうとするが、抜けない。どうやら初期不良品を掴まされたようだ。四苦八苦してようやく抜
けた時には、深田達が敵を一掃した後だった。俺冴えなさ杉orz俺が落ち込んでいると、すぐ傍に倒れている兵士(香山。小学校時代。
ドッジボールがとにかく好き)が、何かを伝えようと口を動かす。
「加勢か…早く王を………あの二つの塔のどちらかに……」
兵士(香山)は息絶えた。俺は手の平で彼の目を閉じてやった(あれ一度やってみたい)。
「二つに一つ。二手に別れましょうか」
平井が眉をしかめて、東西二本そびえ立つ尖塔を、交互に見上げた。
「じゃあ、甜歌はおにいちゃんと行く!」
「そうですね。敵は多勢ですから複数攻撃魔術を使えるわたしと甜歌さんがそれぞれ、あなた達についた方がいいと思います」
俺は甜歌を見た。まるでピクニックにでも行くような瞳をしている。こちらは今にも腰が砕けそうだというのに。いや、こんなことで
はいけない。俺は自らを奮わすべく両手で頬を張った。
「よし、行くぞ!甜歌」
「うん♪」
二組に別れた俺達は、それぞれの塔に向かった。
                                               続く
144Mr.名無しさん:2005/03/27(日) 01:33:30
うおー!
文庫本をブツ切りにして読んでる気分だ!w
1451:2005/03/27(日) 01:34:05
今日はここまで。
遅うなってスマソ。
146Mr.名無しさん:2005/03/27(日) 01:34:06
>おkじゃない
ワロスwwwwwwww
147Mr.名無しさん:2005/03/27(日) 01:40:49
くっそー分岐イベントはまだないのかよ
148Mr.名無しさん:2005/03/27(日) 02:29:13
>1
いつも乙!
あんたの妄想なんだから安心して自分のペースで書いてくれ。
俺達は待ってるだけだからさ。
149Mr.名無しさん:2005/03/27(日) 10:26:01
>>1
いつもお疲れ様。

>(香山。小学校時代。 ドッジボールがとにかく好き)
こういう細かいところがイイ!
150Mr.名無しさん:2005/03/27(日) 21:01:11
FF5でフォークタワー?ってのあったよね
魔法のみの塔と打撃のみのと
なんかそれを思い出した
151Mr.名無しさん:2005/03/27(日) 21:48:28
FFワカンネ
152Mr.名無しさん:2005/03/27(日) 23:13:50
俺はどちらの塔のボスも打撃で倒したけどね。
正攻法がわからずにorz
1531:2005/03/28(月) 00:58:36
第15話(後半)
「ハァハァ、ちょっと休憩」
倒れた使い魔から剣を抜いた俺は、たまらず階段にどっと腰を落とした。入る前の威勢はどこへやら。上を見上げると、螺旋状の階段が、
めまいを催すような長さで遥か頂上に向かって渦を巻いている。その上、各種使い魔がひっきりなしに襲ってくる。甜歌が魔術でカバー
してくるものの、いかんせん持久力がついていかない。この世界にきて大分鍛えられたが、やはり長年の運動不足がたたっているようだ。
「おにいちゃん、しっかりしてよぉ」
甜歌はと言うと至って疲れ知らずに、何百段あるのか知れないこの螺旋階段をものともしていないようだ。ご立派。若さ万歳。本当に
純魔術士なのかと。問いry)
「深田さんと堅はもう頂上に辿り着いただろうか」
「どうかなぁ。でも、おにいちゃんがモタモタしてると、先にゴールされちゃうよ、ほら、立って!」
「いや、競争しているわけじゃないんだから……わかった、わかったよ。急ごう」
少しずれている気がするが、甜歌が言うことは正しい。もしこちらが王のいないハズレの塔なら、早急に向こう側に加勢に向かわなくて
はならない。俺達は再び螺旋階段を上っていく。さきほどから比べて魔物の数が減ってきた。再びばててきた俺は、甜歌に怒られない程
度に走る速度を落とした。そうして黙々と走っているうち、ふと疑問を抱いた。
「あのさ、甜歌、思ったんだけどさ」
「なに?」
「甜歌は飛行魔術とか使えないの?飛べたら楽に上を目指せる」
「えぇ、そんな魔術あるわけないよ。ファンタジーの本読みすぎなんじゃないの?」
「そうですか…」
笑われてしまった。俺からすると十二分にファンタジックワールドなのだが。ここは。
「今度は甜歌が質問する番ね」
「ん?ああ、どうぞ」
「おにいちゃんは恭子おねえちゃんのことが好きなの?」
「おぅわっ!?」
1541:2005/03/28(月) 00:58:59
俺は危うく躓きそうになって、間一髪で体勢を整えた。こうも唐突な質問を浴びせかけられると、言葉を失ってしまう。コクシ大陸に向
かう船の中で、自分が深田に恋心を抱いていることを知った。平井に深田を奪われる気がして、ひどくうろたえた。彼女は自分のもので
ないのに。やはり俺は深田に片思いをしているのだろう。だが、ここで好きだとか言うのは気恥ずかしい。
「うーん、どうだろう。多分違うんじゃないか」
俺はついそう答えた。小学校時、3組の宮城さんが好きなのかと質問をされて、さも興味がないという顔で答えた時のように。
「そうなんだ、よかった…」
「え?」
「なんでもないよー、あ!頂上が見えたよ」
確かにすぐ先で螺旋階段は終わっており、壁と、かつて扉であったろうものが見える。かつて、と付けたのはそれが粉々に崩れ落ちてい
たからだ。かすかにだが砂埃が舞っている。まだ壊されてから大して時間は経っていないようだ。
俺は確信した。王はこちらの塔に逃げ込んだのだ。そしてそれを追う魔物も……
「甜歌、頼む」
「うん」
杖の先を、扉を塞いでいる石塊に向けて、甜歌は呪文を唱える。小爆発が巻き起こり、岩を粉々に砕いた。部屋の中に乗り込む俺。その
目に飛び込んできたのは、4本の腕を持つ黒い腰巻を巻いた悪魔。王らしき人物に、今まさに斬りかからんとしている。ヤバイ。
「ちょい待て!」
俺は声に反応して振り向いた魔物に、不意打ち御免とばかりに、ブロードソードで渾身の一撃を食らわせた…つもりだった。しかし、剣
は2本の腕に白刃取りされ、次の瞬間には俺は弾き飛ばされて、床に叩きつけられた。魔物は俺を見下ろす。
「愚かな者達よ。我が名はトライアス。ここまで来た褒美に、先に汝らに死を与えようぞ」
3本の剣撃が同時に俺を襲う。下2本の腕には片手剣。上2本の腕で両手剣を操っている。3人を相手にするようなもので、俺は捌くの
がやっと。目に見えて劣勢に陥っていくのがわかる。
1551:2005/03/28(月) 00:59:23
「くっ…」
「ククク、愚かよのぅ」
3本の剣に気を取られていた俺のみぞおちに、強烈な足蹴りがめり込んだ。
「うげっ!」
「逝くがいい」
やられる!…そう思った瞬間、トライアスの振り下ろそうとする腕が一瞬にして凍りついた。
「おにいちゃん、一旦退いて!」
甜歌が叫んだ。氷系魔術で援護してくれたのだ。
「女児が余計な真似を…仕置きをせねば」
「て、甜歌…」
まずい。敵のターゲットが俺から甜歌に移った。トライアスが手を掲げ、その先から邪気の炎が走り甜歌の足元を直撃した。彼女の華奢な
身体が、壁に叩きつけられた。
「甜歌!」
俺は彼女に駆け寄ろうと立ち上がる。
「これ、まだ戦いの只中ぞ。疾く掛かって来ぬか」
そんな挑発に乗ることなく、俺は甜歌に向けて歩を進める。
「我を無視するとはいい度胸だ!!」
トライアスが吼え、手にした剣の一本をこちらに投げ放った。だが、俺は神反応で振り返って、それを斬り落とす。
「なんと」
「われさっきから舐めた口きぃてくれとるのう…」
怒り心頭の為、地の広島弁が出る。口汚く罵ってこそいるが、不思議と心は澄みきっている。俺は確信した。次で決着をつける。
1561:2005/03/28(月) 00:59:48
「人間よ、参るぞ!」
「こいやぁ!」
トライアスが凍っていない下2本の腕で剣を構えて、速攻を掛けてくる。見える。どいうわけか、次の奴の手が予見できた。左右双方向
からの袈裟斬り。俺はナイスタイミングで受けて流す。そして、トライアスの右肩からばっさりと胴体を斬り裂いた。
「貴様…」
最初で最後の苦痛に歪んだ表情を浮かべ、呻き声を挙げるトライアス。剣を引き抜くと、血を撒き散らしながら地に倒れ伏した。俺は甜
歌の身体を抱え起こす。幸いにも大した怪我はなく、すぐに目を覚ました。
「おにいちゃん・・・」
「もう安心だぞ。悪い奴は倒したから」
そこに深田と平井が駆け入ってきた。
「大丈夫ですか?」
深田が声をかける。
「ああ。見ての通りだ」
瀕死のトライアスを一瞥る俺。
「…わ、我ごとき倒すのにここまで苦労しておってはなぁ。ククク、エナリ様の足元にも及ばんわ。我は魔王様を探すための尖兵に過ぎん。
そこの王がそうかと思ったのだが…見当違いだったようだ…」
「お前今エナリと言ったな!?」
トライアスの肩を激しく揺らして、平井はエナリの居場所を必死に聞き出そうとする。しかし彼はすでに虫の息で、声は届いていないようだ。
嘲笑を浮かべながら、消え入りそうな声で呟く。
「この近くでかすかに魔王様の匂いがしたんだがなぁ…まぁいい。人間達よ。せいぜい楽しんでおくんだな。我ら魔族の時代が到来するまでの
短い時間を……んん?……また匂いが………にお………」
トライアスは居並ぶ俺達を舐めるように見た。そして一際大きな笑いを浮かべて絶命した。
「くそっ!!」
平井は魔物の身体を、床に叩き付けた。黒い煙を上げながらその身体は塵に帰った。
「エナリが魔王を見つけて合流すれば厄介なことになる。俺達は奴より先に魔王を探し出して倒さなければ」
怒りモードが解けて、俺は通常の話し方に戻っている。緊張をたたえた表情で、深田と平井が頷いた。王は完全に存在を忘れ去られていた。
                                                             続く
157Mr.名無しさん:2005/03/28(月) 01:27:28
はじめて寝る前に読めたよ。おつ>1
158Mr.名無しさん:2005/03/28(月) 01:32:25
俺も落ちる。ノシ >>1
159Mr.名無しさん:2005/03/28(月) 01:32:37
ひょっとして平井か甜歌が魔王って事か?
160Mr.名無しさん:2005/03/28(月) 01:32:58
>王は完全に存在を忘れ去られていた。

最後の文章にテラワロス
1611:2005/03/28(月) 01:36:39
今日はここまで。
162Mr.名無しさん:2005/03/28(月) 01:53:31
(・∀・)イイヨイイヨー
163Mr.名無しさん:2005/03/28(月) 06:56:49
>>159
予想(・A・)イクナイ
164Mr.名無しさん:2005/03/28(月) 09:32:45
>>163
はげどう
165Mr.名無しさん:2005/03/28(月) 21:33:31
>>163
ま、>>159は思いついたことを書き込みたくてしょうがなかったんだよ。
>>1よ。我々の戯言は気にせず、思うように物語を続けてくれ。
今回も最高によかったぞ。
1661:2005/03/29(火) 02:14:45
第16話(前半)
王の命を救った俺達は多額の報酬を与えられた。王は宮殿への滞在も申し出てくれたのだが、俺達は魔王討伐の旅の途中の為、遠慮しておいた。
再び情報を得るべく、俺達はシ・フィーロ市街を歩いている。
「あぁ、宮殿のお料理おいしかったなぁ…」
甜歌はうっとりとした表情で呟いた。頭の中には、今朝食べた最初で最後であろう超絶豪華な宮廷料理の像がグルグル回っているに違いない。
「甜歌らしいな。で、これからどうしよう。また情報収集する?」
俺は深田に尋ねる。お馴染みののんびりとした笑顔で深田は言う。
「いえ、もうシ・フィーロで得られる情報は全て得ましたから」
「というと?」
「はい、実は宮殿で諜報係の方とお話させてもらったんですが、この都での事件を皮切りに、どうやら各地で魔王の誕生に影響されて魔物が
出現し始めているそうなのです」
話によると、小規模ではあるが、各地でその土地に通常生息していない魔物の発生、更に魔族軍の結成が確認されているという。深田が開い
た地図には軍が確認された3つの地域が赤くマーキングされている。平井は腕組みをして赤印を見据えた。
「つまり魔物の軍をつぶして行けば、魔王の手がかりが得られるかもしれない、ということですか」
「その通りです」
「魔王の軍勢に殴りこみかぁ。おもしろそう。甜歌ワクワクしてきたよ」
甜歌ノリノリ。
「ち、ちょっと待った!俺達だけで行くのか?」
俺焦りまくり。
1671:2005/03/29(火) 02:16:54
「はい、何か問題でも?」
深田は事も無げに首をかしげた。問題大有りだ。確かに今までは何とかやってきたが、幾らなんでも魔王軍3個師団をたった4人で相手しよう
など、正気の沙汰ではない。返り討ちにされるのがオチではないか。
しかし深田は、
「何とかなりますよ」
「何とかなるって・・・はぁ」
彼女は天性の楽天家で、何を言っても無駄だ。俺はため息をついた。といって、ここで下りる気は毛頭ない。彼女の分のゲート石を手に入れて、
一緒に帰ると約束したのだから。
「勿論、今の装備のままで向かうつもりはありません。それこそ無駄死にです。あなたの分の異世界人専用武器を貰いに行きましょう」
「異世界人専用の…?」
「はい。これと同じような武器です」
そう言いながら、深田はロングソードを見せた。俺がフィカブーを倒した時も、この剣が力をくれた。やはり異世界人専用というだけあって、
何か特別な金属で出来ていたり、特殊な鍛えられ方をしているのだろう。
「わたしにこのロングソードをくれた北の老魔術師を尋ねてみましょう」
「了解」
俺は大きく頷いた。
「いいなぁ、甜歌も専用杖欲しいなぁ」
甜歌は深田の持つ剣に触れようとした。
「あ、駄目です。この世界の人が持つと手が溶けますよ」
「え……」
ふと俺の脳裏に、やっぱり今回も溶けるのか、という突込みが聴こえた気がした。
                                                          続く
1681:2005/03/29(火) 02:18:43
今日はここまで。
169Mr.名無しさん:2005/03/29(火) 02:56:51
>>167
また溶けるのかよ!
170Mr.名無しさん:2005/03/29(火) 04:21:13
やべwwwwまた溶けるwwwおまい最高だわ>>1wwwwwwwwwwwwwww
171Mr.名無しさん:2005/03/29(火) 09:47:08
なるほど、俺達の突込みは確実に>>1に届いたか。
172Mr.名無しさん:2005/03/29(火) 21:22:50
毎日>1の妄想を読んでいると小学生の頃に少年ジャンプ
を毎週ドキドキワクワクしながら読んでたのを思い出す。
何か(・∀・)イイ! よ、>1の妄想は。
173Mr.名無しさん:2005/03/29(火) 21:53:32
第4話と第5話見逃しちゃったんだけど誰か録ってない?
174Mr.名無しさん:2005/03/29(火) 22:03:42
もう16話なのか!ワンクールでおさまるのかな。
1751:2005/03/29(火) 23:20:58
第16話(後半)
縄があれば首を吊りたくなるほどの寒さの中、俺達一向はキタミの街を目指して、夕暮れ時の風雪吹きすさぶ街道を歩いている。
「もう少しですよ」
深田が行く先を指差した。複数の灯りが、一つ場所に寄り添ってともっている。俺達は元気を取り戻し歩を早めた。すると近
づくにつれて、やけに派手な看板が街の入り口を飾っているのが見えてきた。石造りのゲート上に設置されたこれまた石で作
られた看板は、周囲にランプが何本か取り付けられており薄暗がりの中でも文字を確認できる。
「き、きた、きたみ、おん、」
まだこの世界の文字に疎い俺が何とか読もうとしていると、隣にいた甜歌が助けてくれた。
「キタミ温泉にようこそ、って書いてるね」
「キタミ温泉?」
深田は地図上のキタミの街を指差した。お馴染みの温泉マークが記されている。
「はい、キタミは温泉観光名所なんですよ。ちなみに北の老魔術士はここで温泉宿を経営しています」
「大魔術士が温泉宿を?」
「こんな先の知れない世の中ですし、魔術士も霧や霞を食べているわけではありませんから」
「やったー!甜歌温泉大好き!!」
何だかんだで、北の魔術士の宿屋にご一行様到着。どてらを羽織った貧相な爺さんが迎え出た。
「いらっしゃい。何名様…って、フカキョンじゃないか」
「お久しぶりです」
1761:2005/03/29(火) 23:21:29
魔術士の爺さんはやけに馴れ馴れしく、深田の手を取った。だがそれもすぐに合点がいった。客室に招き入れられた俺達は、
彼らが出会ってからの経緯を聞かせてもらった。5年前、深田はこの世界に召喚された。その際に気を失っているところを、
宿屋を建てる土地を探す為に諸国を旅していた北の魔術士に助けられた。以後、深田は彼と旅を共にし、剣術と魔術を教え
られ、この世界で生きていく力を与えられたというわけだ。そして1年前、魔術士は、深田に異世界人と魔王の関係を教え
て進むべき道を示し、更に異世界人専用ソードを彼女に与えて別の途についた。その後は、この街に落ち着いてまったりと
宿屋を経営している次第。
「お師匠様、異世界人専用武器の在り処を教えていただけませんでしょうか」
深田が真面目な面持ちで、魔術士に頼み込む。すると、
「裏山にあるから、勝手に取ってけばいいわい」
と、簡単な返事。
「裏山に?」
「そうじゃ、裏山の中腹に洞穴がある。そこの一番奥まった場所に、この街の連中が聖剣として祀っておる」
「あのー、聖剣って、そんなの持ち出したら悪いんじゃないんですか?」
俺は恐る恐る進言した。
「あー、気にせんでいいわい。どうせ山の主を恐れて、誰もあそこに近寄ろうとせんでの。100年経っても気づかんじゃろう
て。まぁ、明日の朝にでもこっそり入山するがいい。ワシが入山口まで案内してやるから」
「山の主?」
また巨大なドラゴンなんてものが棲みついているのではないか。一気に不安になる俺。
「なに、主といってもいつも寝ているから、騒がなければどうということはない」
信用していいものか。
1771:2005/03/29(火) 23:22:31
「ところでフカキョン、しばらく見んうちに大人になったのぅ。わしゃ見違えたぞ。今夜は風呂でも入ってゆっくりしていけ」
一瞬、俺は爺さんの目に鋭い光が宿ったような気がした。
夕食をとった後、俺達は交代で入浴することにした。この宿屋は貧乏なので露天風呂が一つしかないそうだ。最初に深田と甜歌
が入り、その後に俺と平井が入ることになっている。
女性陣2人が入浴している間、俺達は特に何をするでもなく部屋でくつろいでいた。俺は窓外の景色を眺め、平井は書物に目を
落としている。しかしお互いにそわそわしているのが分かる。落ち着かない。
「ちょっと外見てくる」
「あ、それなら僕も行きましょう」
2人で一緒に部屋を出て、宿屋の狭い廊下を歩く。前方から甜歌がタオルを肩にかけてやってきた。
「あーいいお湯だったぁ♪」
パジャマに身を包み、湯上りの上気した顔をしている。冷たい空気が気持ち良さそうだ。
「あれ、甜歌。深田さんは?」
「おねえちゃんならまだお風呂に入ってるよ。かなりの長風呂みたい。甜歌はのぼせそうになったから、先に出ちゃった」
「そうか」
俺はさも興味なさそうな返事をして、早足に浴場に向かう。平井も後を追ってくる。
「まだ深田さんは出ていないそうですね」
「らしいな」
2人とも真剣かつ緊張した表情。脱衣場を迂回して、俺達は外に出た。露天風呂の塀が、城壁の様に眼前に立ちはだかる。
「俺は別にノゾキ見ようとしてるわけじゃないよ」
「ぼ、僕だってそんな下卑た行為をしようだなんて」
お互いに内心を明かそうとしない。実際は2人とも女に飢えて魔が差したのである。
「ちょっとた疑問なんだけどさ、この塀の強度ってどんなもんなんだろうな?」
「さぁ…ちょっと試してみたいですね…」
「試してみたいな…ちょっと穴を開けるくらいでいいんだがな」
平井が刀を抜いて構えた。性欲という根源的な欲求の前に、人格者かつイケメソである平井の理性も勝てなかったようだ。
「こりゃ、ワシの宿屋の設備に傷をつける気か」
1781:2005/03/29(火) 23:22:58
ヤバイ!北の魔術士に見つかった!!慌てて踵を返そうとするが、時既に遅し。俺達は即座に見えない力で体を縛られた。
恐らく神経系統を麻痺させる術だ。
「まぁ、落ち着け。中を見るならこっちに来い。予め開閉できる蓋を作っとるからのぅ」
マジか!?同じ穴の狢だったのか、爺さん。術が解け、俺達は身体の自由を取り戻した。先ほど深田と話した際に、彼が
見せた目の光はこれを意味していたのか。
「ワシが温泉宿をしてる理由の一つはこれなんじゃわい。さぁ、ここがベストポジションじゃ」
爺さん。それは立派な犯罪だから。曲がりなりにも偉大な魔術士の一人といわれる北の魔術士の名を冠しているのに。
「ちょっと待て、爺さん!やっぱりフカパイ…じゃなくて、深田さんのあられもない姿を覗き見させるわけにはいかない」
北の魔術士のにやけた顔をみて、俺の中で一時はひきこもっていた理性が、急に息を吹き返した。
「何を言うか。ワシは育ての親も同然。それにお前らも共犯のくせに」
恩人とか育ての親とか一切関係ないから。
「共犯なんて滅相もない!僕らはただちょっと散歩していただけです」
「どうだかのぅ。お前さん緊張して声が高くなっておるぞ("style"歌う時くらい)」
恥も外聞もなく言い争いになる俺達。傍から見るとあまりにも醜い姿。
「あの〜、先程から何をモメてらっしゃるんですか?」
「外野は黙っててくれ。俺達は今フカパイをどうするかについて…」
後ろから声をかける者を追い返そうと、振り返った俺が見たのは…
「フカパイって何ですか?」
きょとんとしているのは当の深田。そして目の前に夢にまで見たフカパイ(ファンタジーなので鳩胸ではなくリアル胸)が。
バスタオルを巻いてはいるものの、そのボリュームはなかなかどうして見事なものだ。などと感嘆している場合ではない。
うまくごまかさなければ。
1791:2005/03/29(火) 23:23:28
「いや、その、あれだ。海に棲んでるフカだよ。この近くではワニって呼ばれて名物になってるんだっけ、な?」
俺から平井にパス。
「え!?ええ……そうですよ。フカのすり身で作られたパイなんて食べてたいなぁと思って、ね?」
平井から魔術士の爺さんにパス。
「お、、おお。そうなんじゃ、隣のワクチ村にマンサクさんの料理屋があって、そこに材料を分けてもらいに行こうと準備
をしていたところなんじゃっ!」
Gooooool!!!
おk!ナイス俺ら!!GJ!ちょっと苦しい気もするが、大体辻褄は合っている。これでフカパイも納得しないわけがない。
「それはそれは。今夜は猛吹雪だそうですけど気をつけてくださいね」
その夜、俺達は凍てつく吹雪が襲う中、食べたくもないフカのパイを作る為に、はるばるマンサクさんの家を訪ねた。
明けて翌朝、俺達は聖剣を求めて入山口までやってきた。俺と平井、そして北の魔術士は、昨晩の買い出しによる疲労素を目
の周囲にどっさり集積させている。そこに追い討ちをかけるように、
「おにいちゃん、あのフカパイあんまりおいしくなかったねぇ」
甜歌のきつい一言。確かにあれは不味かった。でも違うんだ、甜歌。本物のフカパイは。真の意味でのフカパイは、きっとお
いしいはずなんだよ。
俺は気を取り直して、北の魔術士に話しかける。
「山に登って剣を取ってくればいいんだろ?」
「ところがどっこい、そう簡単にはいかんよ。この山に一度に入山できるのは2名までと決まっとる」
「何だよ、それ」
魔術士に聞き返すと、彼は面倒くさそうに答える。
「この山に3人以上の集団で立ち入ることはできん。一人でも多く入れば、途端に山の主が騒ぎ出すでのう」
そんなおっかない場所から本当に聖剣を取ってきてもいいのだろうか。再び不安に取りつかれる俺に、平井は告げる。
「剣を持つべきあなたが一人目として、あと一人を僕らの中から選ばないといけませんね」
「どうしようか…」
突然降って湧いた選択肢。俺は腕組みをして沈思黙考した。

ここで分岐。
@深田と入山
A甜歌と入山
B平井と入山
                                                     続く
1801:2005/03/29(火) 23:26:24
最初の分に加筆

縄があれば首を吊りたくなるほどの寒さの中、俺達一向はキタミの街を目指して、夕暮れ時の風雪吹きすさぶ街道を歩いている。
深田によると、そのキタミという街に北の魔術士は居を構えているという。
1811:2005/03/29(火) 23:31:14
>>179
×フカのすり身で作られたパイなんて食べてたいなぁと思って、ね?」
○フカのすり身で作られたパイなんて食べてみたいなぁと思って、ね?」
182Mr.名無しさん:2005/03/29(火) 23:37:46
>>1乙。
今日のもノリノリだったね。
これを原作にして誰かマンガ描いてくれないかな。
ホントは全員リアルキャストでドラマにしてほしいが。
183Mr.名無しさん:2005/03/29(火) 23:39:00
今日は>>1早かったな。乙。
個人的には平井が楽しみ。
184Mr.名無しさん:2005/03/29(火) 23:56:11
出たぁ、分岐!@フカパイに一票
1851:2005/03/30(水) 00:26:40
>>173
第4話
5階への階段を駆け上った俺達は、巨大な扉を前にする。重く軋む扉を開けるとそこは大広間。
「よぅ、待ってたぜ。俺の部屋まで辿りついたのは貴様達が始めてだ」
これが魔王フィカブーか。魔王と言うには若い容姿。というより金髪ロンゲ、色黒、節操のなさそうな口調と、明らかにDQN属性。
「しかし異世界人だけが残るとはなぁ…」
彼は意味ありげな含み笑いを浮かべて、俺達2人を交互に見比べた。どうやら彼には、異世界人かどうか見抜く能力があるらしい。
しかし、どういうことだ。異世界人は俺だけのはずなのに。
「七面倒な常套句は要らねぇ。俺の首が欲しければ持っていきな」
「行きます!!!」
目を見開き、深田が吼えた。神速で魔王に接近、凄まじい剣の応酬が繰り広げられる。しかし力量の差は圧倒的だ。深田が精一杯
の猛襲をかけているのに対て、フィカブーは左腕しか動かしていない。
「所詮、女か(プゲラ」
「しまった!?」
フィカブーが一瞬の隙を突いて、大きく剣を振り降ろした。何かが俺の前に、飛んできて床に突き刺さった。深田が持っていた剣だ。
一緒に斬り飛ばされた右腕の肘から下が、柄を握ったままぶらさがっている。
「ウソだろ…深田さん!!」
俺は深田の方に視線をやる。さすがにダメージが大きいのか、床に膝を突いている。
「俺は魔王なんだぜ?そう易々とタマとられてたまるかっての。灰になりなwww」
フィカブーはうずくまる深田に向けて右手を開いた。手の平に素人が見ても分かるほどの邪気が集約する。そこに俺は無我夢中
で走り寄り、すんでのところで深田を救い出す。ナイス俺。そして崩れた壁の影に隠れ、彼女の背を壁に預ける。
「ごめんなさい。約束したのにあなたを守り切れませんでした。逃げてください…」
「そんな……そんなわけにはいかないだろ」
1861:2005/03/30(水) 00:27:12
とはいえ、さきほど深田を抱える為に錆びた剣を落としてしまった。深田を翻弄した魔王相手に、丸腰ではお話にならない。
「オラオラどうした!そこの道化師、てめぇを相手してやってもいいんだぜ?」
フィカブーは床に刺さった深田の剣から腕を取り、剣をこちらに向けて投げた。それは目の前の壁に突き刺さる。フィカブーは取った
腕に噛み付き、食らっている。俺は覚悟を決めて剣を引き抜くと姿を曝した。深田に教わった通りに剣を構える。その剣は、錆びた青
銅の剣とは明らかに違う感触。手にしっくりとくる。まるで俺の心を汲み取ってくれるかのように、柄は握る手になじむ。
「ほぅ、なかなか見上げた根性じゃねぇか。死ねよ!!」
こちらに向けて突進してくるフィカブー。オーガロードの打撃に匹敵する重い一撃を繰り出す。しかし俺はそれを受けきる。
「く…!」
「なに!?」
続けざまに剣を振るうフィカブーだが、俺は危ういながらも剣で捌いていく。
(俺結構いけるじゃん!?)
意外な好展開に調子に乗りかけた時、俺は凄まじい衝撃に吹き飛ばされた。油断が手元を狂わせ、魔王の爪が繰り出した衝撃刃をまとも
に食らったのだ。思考を何とか保ちつつ、攻撃を受けた腹に手を当ててみる。
「キレ…テナイ!?」
俺はシコルスキー(inオリバ戦)チックに驚いた。革鎧にはかすり傷一つ付いていない。(実はこの鎧は防御力こそ低いが邪耐性+20)。
全ての状況が俺に味方してくれている。さすが俺。
「いけるぞ!!」
「小癪なんだよ!」
剣を下ろして、今度は邪気の炎を放ってくるフィカブー。が、それすらも俺は剣の一振りで防ぐ。そのまま炎を切り裂いてフィカブーに
走り寄り胸を刺し貫いた。苦悶の声を一つ上げて崩れ落ちるフィカブー。
「なかなか上物の異世界人じゃねぇか…だがお前みたいなのが現れたってことは…ククク(悪スレの住人っぽく)、これから起こる祭りの顛
末を見届けられないのが残念だ……じゃあな」
フィカブーは最期までほくそ笑みを浮かべながら絶命した。同時に、彼の身体が徐々に溶けていく(俺以外が俺専用MSに乗った時みたい
に)。そして一つの石が残る。俺はそれを手に取ってみた。
1871:2005/03/30(水) 00:27:55
「これは…」
真紅の怪しい光を放つ拳大の石だ。
「……ゲート石……」
背後からの声に振り返ると、深田がマントの切れ端で縛った腕を庇いながら立っている。
「ゲートイシ?」
「わたし達のような…地球から来た異世界人が……あちらに帰る為に必要なゲート石です…」
                                                         続く
第5話はこのスレの頭。
今日はここまで。
188Mr.名無しさん:2005/03/30(水) 00:59:15
1いいよ1
189Mr.名無しさん:2005/03/30(水) 00:59:55
ここまできたのも、、、想定の範囲内。
190Mr.名無しさん:2005/03/30(水) 01:12:08
>>189
ん?どういう意味だ?
191Mr.名無しさん:2005/03/30(水) 14:19:45
>>179
やっぱ深田と甜歌は人気あるだろうから、あえて3の平井で。w
192Mr.名無しさん:2005/03/30(水) 17:12:19
しかしこのスレってびっくりするくらい常連しか来てないっぽいな
193Mr.名無しさん:2005/03/30(水) 19:05:41
>("style"歌う時くらい)
"style"での裏声を思い出してワラタ
194Mr.名無しさん:2005/03/30(水) 23:16:28
寝る
195Mr.名無しさん:2005/03/30(水) 23:27:47
グッナイ
よい妄想を
196Mr.名無しさん:2005/03/30(水) 23:50:21
今日はまだなのか?
1971:2005/03/31(木) 01:44:16
第17話(深田)
「深田さん、一緒に来てくれないか」
俺は深田の目を見詰めて頼んだ。
「はい、わたしでよろしければ」
深田は少し頬を赤く染めて、首を縦に振った。
「おにいちゃん、おねえちゃん、気をつけてね」
甜歌の心配を隠し切れない声に見送られて、俺達は山へと入っていった。
山道は木々が鬱蒼と茂り昼なお薄暗い。しかし登山道がある程度整備されているので足元は確かだ。魔物は特に棲んでいないよう
で、時折野鳥や動物の啼き声が響くだけ。ただしそれでも俺にとっては耳にしたことの無い不気味な音で、ともすれば魔物と勘違
いして、聞き知らぬ声が鳴る度に身体をビクッとさせてしまう。横を歩く深田は特に気にする様子も無いというのに。
「深田さんは強いなぁ。こういうところ一向に平気そうだけど」
「あなたはまだこの世界に来て日が経ってないから仕方ないです。わたしはもう5年間この世界にいて、色々なところに行きま
したから」
そう軽く答えた深田の横顔を見て、俺は複雑な気持ちになった。神妙な面持ちになる俺に、深田が問う。
「5年間であっちに変化はありましたか?」
「ん、そうだなぁ。別段大きく変わったところはないよ。あ、ドリフの長さんが亡くなったな。あと冷蔵庫やらTVやらの処分時
にリサイクル料金がかかるようになったよ。そんなに変わってないよ。相変わらず不景気は続いてるし、5年間じゃそうそうは世
界は変わらないよ。帰っても全然違和感覚えないだろう」
「そうですか。よかったです」
深田は安心したような、それでいて悲しみを湛えた表情。今度は俺が深田に質問をする。
「深田さんはさ、あっちに帰ってからやってみたい事とかあるの?」
「やりたい事…ですか?」
深田はしばらく考えて、
「素敵な恋愛をしてみたいですねぇ」
と乙女チックな回答。
「素敵な恋愛?」
「はい、王子様みたいな人と、素敵な恋愛をしてみたいです」
1981:2005/03/31(木) 01:44:50
王子様みたいな人…俺の頭に、金髪オカッパでカボチャパンツをはいた典型的かつ貧弱な王子様像が浮かんだ。
「そう…なんだ。王子様みたいな人がタイプなんだ…」
俺とは正反対のタイプだ。ススムちゃん大ショック。しかし深田はそれに気づく様子もなく続ける。
「でも、わたしには一生無理な話なんですけどね」
「え?」
「わたしに人を好きになる資格はないんです」
その言葉を最後に深田は黙り込んでしまった。どういうことだ。人を好きになる資格は無いとは。
「深田さん、一体…」
「あ!着きましたよ。あれが聖剣の洞穴みたいですよ」
はぐらかされてしまった。洞穴に到着した俺達は、冷たい空気が満たす穴に入っていく。さして大きな洞穴で
は無く、すぐに聖剣のある石室に辿り着いた。聖剣は思ったより小振りで、深田のロングソードより少し刃渡り
が長いくらいだ。
聖剣を手に取ろうと近づく。その時、俺は奇妙な気配に気付いた。すぐ横の暗がりを見てみると、居る。何か居る。
俺はその方向に目を凝らしてギョッとした。子供の背ほどの木乃伊が椅子に腰掛けているではないか。
「うゎ!」
「しっ!この木乃伊生きているみたいですよ」
深田が声を潜ませて言う。木乃伊なのに生きているとは、面白い冗談だ。
「ハハハ、そんな馬鹿な…息づいてる!脈々と息づいてる!?」
不用意に木乃伊に触れた俺はまたもや仰天して、慌ててそれから離れた。木乃伊の腕は確かに温かく、脈を打っていた。
ていうか、この木乃伊が山の主なのか。
(どど、どうするよ?)
(とりあえずこのまま通り過ぎましょう。幸いにも鈍感なようです)
そういえばさっき結構大きな悲鳴を上げても、起きなかった。どうやら大分深く眠り込んでいるようだ。
俺は少し安心して歩き出そうとした。と、足元で枯れ枝が折れる小さな音がした。
「あー、よく寝た」
しまった、木乃伊が起きちまった!!!!!!!!
                                                 続く
199Mr.名無しさん:2005/03/31(木) 01:46:25
ひさびさにリアルタイムきた!
と思ったら今日はここまでか。
2001:2005/03/31(木) 01:56:49
今日はここまで。
2011:2005/03/31(木) 01:57:30
明日は棚卸なのでちょい厳しいかも。
202Mr.名無しさん:2005/03/31(木) 02:09:56
>>1乙。
俺は明日引っ越しだ。当分来られないけど、
また>>1や皆に会えるのを楽しみにしているぜノシ。
203Mr.名無しさん:2005/03/31(木) 02:15:47
>>1
毎晩乙。無理せずマターリ続けてくれ。
204Mr.名無しさん:2005/03/31(木) 14:10:09
1は文章に気合が入っている日と力を抜いてる日があるような気がするなw
オレ的には14話後編と16話後編がツボだった
205173:2005/03/31(木) 22:39:38
>>185
うわーありがとう!
206Mr.名無しさん:2005/03/31(木) 23:57:36
キノイ?ってナニ?
207Mr.名無しさん:2005/04/01(金) 00:09:34
マジレスすると「コノイ」だ
208Mr.名無しさん:皇紀2665/04/01(金) 00:13:10
>>207
妖精かなんか?RPGじゃ頻出?
209Mr.名無しさん:皇紀2665/04/01(金) 00:15:45
>>206
ミイラ。
210Mr.名無しさん:皇紀2665/04/01(金) 00:19:46
>>209
…さてはいいヤシだな、おまい
てか、ひょっとしてマジだったのか?(;´Д`)
211Mr.名無しさん:皇紀2665/04/01(金) 00:21:13
木乃伊なんて読めないやつざらにいるんじゃね?
少なくとも常用じゃないだろ
212Mr.名無しさん:皇紀2665/04/01(金) 00:28:54
ミイラ・・・そーいやそんな字書いたってやっと思い出した
ところで投稿日のとこが・・・なんじゃこら?
213Mr.名無しさん:皇紀2665/04/01(金) 01:41:31
今日は>>1も来ないだろうから、マターリ飲んでいた。さくら水産だが。
2141:皇紀2665/04/01(金) 01:50:00
第17話(深田後半)
目一杯背伸びをする木乃伊を前にして、俺と深田は剣を抜き構える。
「ふぁー、あれ、お客さんですか?」
物腰柔らかそうな声。好青年といった感じだ。
「あなたが山の主さんですか?」
深田が尋ねた。
「はい、そうです。僕が山の主です」
どこかで聞いたことのあるイントネーションで山の主は自己紹介をした。俺達が剣を構えているのを見て、
「いやだなぁ。危害なんて加えませんよ。しかしお客さんだなんて嬉しいなぁ」
と、白い歯を見せた。中々話の分かる木乃伊らしい。
「あなたはとても素敵で綺麗なお嬢さんですね」
いきなり木乃伊は片言で深田を誉めた。
「ありがとうございます」
「深田さん、照れてるのか?」
俺は深田の顔を覗き込んだ。
「黙ってろ、タコスケ」
前言撤回。何だ。この態度の違いは。
「僕は木乃伊の国の王子なんですよ」
嘘だ。王子が何故にこんな場所で朽ちているのか。嘘に決まっている。98%くらの確率で。
「王子様なんですかぁ。わたし憧れちゃいます」
乙女の眼差しになる深田。いや、それ王子でも木乃伊だから。一見脈々と息づいているが、決して生きとし生けるものではないから。
「よかった。僕の妻になって下さい」
いきなりプロポーズしちゃったよ。木乃伊の分際で。
2151:皇紀2665/04/01(金) 01:50:30
「あら、どうしましょう」
笑っていやがる。どうしましょう、ではない。木乃伊の嫁になるつもりなのか。天然を通り越して、ドキドキしてしまう。
「深田さん、やめときなよ」
「だから黙ってろっつってんだろ、腐れた烏賊が。嫉妬してんじゃねぇよ」
しかし口が悪い木乃伊だ。
「嫉妬?」
さすがの俺も頭に来て、思わず睨み返した。
「おっし、わかった。それじゃあこうしよう。お嬢さんとの結婚を賭けて僕と決闘しよう」
木乃伊はどこから取り出したのか、巨大な戦斧をぶら下げた。
「な…!?」
いきなり俺と木乃伊が決闘開始。急展開にも程がある。これも棚卸後のハイテンションからか?
そんなこんなで、こっちの都合など一切お構い無しで繰り出された木乃伊の初撃。
「重っ!?」
重い。恐ろしく重い。ていうか痛い。手がビリビリする。か細い手足から繰り出される戦斧の一撃は紛うことなく重量級と言っていい。
「おらおら、どうしたよ?」
容赦なく斧を振り回す木乃伊。お前必死過ぎ。故に俺も超必死で防がざるを得ないわけだが。
「く…!」
防ぎそこなった斧の刃が俺の左腕をかすった。かすっただけだが、肉がえぐれて血が飛び散る。
「深田さん、待っててくださいね!今すぐこいつを殺して……え?」
唐突に木乃伊の身体が真っ二つ。いつの間にか深田がロングソードを抜いている。
「その人を傷つけないでください。わたしの……大事な人なんですから」
俺は耳を疑った。言った。今確かに言ったわたしの大事な人と。健康診断でも異常なかったし、まず間違いない。
「そんな…」
木乃伊は無念そうな声を上げて地面に崩れ落ちた。
2161:皇紀2665/04/01(金) 01:50:53
「いま、わたしの大事な人って…」
俺は深田に駆け寄って、先ほどの発言を指摘した。
「だって、あなたがいないと魔王を倒してあっちの世界に帰れないじゃないですか」
と、深田はあっさりした返答。
「あ、そういうことか…だよな」
大事の意味を履き違えた俺。とんだ醜態。
「はい。2人で一緒に帰りましょうね♪」
深田は笑った。俺もつられて笑った。笑うしかなかった。
とにもかくにも聖剣ゲット。岩から引き抜き、早速素振りをしてみると、重すぎず軽すぎず、長すぎず短すぎず。参ったかクソッタレと
言わんばかりに手に馴染む。まるで自分の身体の一部になったようだ。
俺が剣を愛でていると、それを側で微笑みながら見ていた深田が急に口を押さえた。一旦周囲を見渡して壁際に走ると、壁に寄り掛かっ
て激しく嘔吐した。彼女に駆け寄り、俺は背中をさすって声をかける。
「深田さん、大丈夫か?」
「え、ええ。ちょっと酔ったみたいです」
何に酔ったんだろう。木乃伊か?木乃伊に酔ったのか?あまり大丈夫そうには見えない。船酔いでもないのに、いきなりげぇげぇ吐かれ
れば、誰でも心配してしまう。何か悪い病気に感染したのでなければいいが。木乃伊って病気持ちっぽいし。
とにもかくにも俺専用異世界人専用聖剣を手に入れた俺達は、山を下った。
                                                          続く
2171:皇紀2665/04/01(金) 01:55:03
結局書いちまった。今日はここまで。
218Mr.名無しさん:皇紀2665/04/01(金) 02:09:21
キテタ━━(゚∀゚)━━!!
219Mr.名無しさん:皇紀2665/04/01(金) 02:13:37
棚卸し&妄想乙!
220Mr.名無しさん:檀ふみ2005/04/01(金) 18:34:30
この「何かありそう感」がいいね
221Mr.名無しさん:檀ふみ2005/04/01(金) 19:36:55
俺専用異世界人専用聖剣
なげーよw
2221:皇紀2665/04/02(土) 00:14:24
第17話(甜歌)前半
「甜歌、一緒に来てくれないか」
俺は甜歌の目を見詰めて頼んだ。
「うん、甜歌に任せてよ!」
甜歌は嬉々として、思い切り首を縦に振った。
「2人とも十分に注意してくださいね」
「ああ。ありがとう」」
深田の不安を隠し切れない声に見送られて、俺達は山へと入っていった。
山道は木々が鬱蒼と茂り昼なお薄暗い。しかし登山道がある程度整備されているので足元は確かだ。魔物は特に棲んでいないよう
で、時折野鳥や動物の啼き声が響くだけ。ただしそれでも俺にとっては耳にしたことの無い不気味な音で、ともすれば魔物と勘違
いして、聞き知らぬ声が鳴る度に身体をビクッとさせてしまう。一方、横を歩く甜歌はというと鼻歌混じりで余裕綽々。
「ピクニックみたいでなんか楽しいねー!ね?おにいちゃ…って、元気ないじゃん。恐いの?」
「な、何言ってんだよ。そんなわけないだろ。恐くなんかないよ」
「大丈夫だよ。甜歌がついてるから」
「そいつはどうも」
こんな少女に励まされている自分を情けなく思いつつ、甜歌の気持ちを嬉しく思った。そして気付いた。並んで歩いてどうする。
いざとなればこの子を守るのは俺の役目だというのに。気を取り直して、できるだけの虚勢を張って甜歌の前に出てみた。しばら
く歩いていると、後ろから甜歌の声。
「変なこと訊いていい?」
「ん、ああ。なんだ?」
「甜歌はおにいちゃんにとって何?」
「へ?」
余りにも唐突な質問。これまで深く考えたことは無かった。年下だが妹とは違う。実際の妹はこんなに可愛いらしいものではない。
ただの旅の仲間とも違う。何とも不思議な存在だ。俺は考えあぐねた末、
「シラネ」
「もう!真剣に答えてよ」
2231:皇紀2665/04/02(土) 00:14:48
「うーん、そうだな。甜歌は俺にとって、とても大事な人、だな」
とりあえず答えてみた。文才の無い俺には、これくらいしか表現が見つからない。実際そうなのだし。
「とても大事な人、か。そうなんだ。甜歌はおにいちゃんのとても大事な人なんだ♪」
思いの他気にいって頂けた模様。
「じゃあ、甜歌は俺のことどう思ってんだ?」
今度は仕返しとばかりに、意地悪な問いをそのまま返してみた。
「え、ええ!?わたし?わたしは…えっと、その、ああああ!!洞窟ってあれじゃない?ほら、見て見て!!」
彼女はひどい慌てようで、登山道の先を指差す。確かに洞穴がある。はぐらかされた格好だが、あまり困らせてもかわいそうなので、
それ以上は追求しないことにした。
洞穴に到着した俺達は、冷たい空気が満たす穴に入っていく。さして大きな洞穴では無く、すぐに聖剣のある石室に辿り着いた。聖剣
は思ったより小振りで、深田のロングソードより少し刃渡りが長いくらいだ。聖剣を手に取ろうと近づく。その時、俺は奇妙な気配に
気付いた。すぐ横の暗がりを見てみると、居る。何か居る。俺はその方向に目を凝らしてギョッとした。子供の背ほどの木乃伊が椅子
に腰掛けているではないか。
「うわぁ!」
珍しく驚いた甜歌が俺に抱き付いてきた。何だかんだいっても子供だ。
「あ、あはは。どうってことないよ。ただの木乃伊だよ」
と平静を装うが、内心は怯えまくり。だが、ここで頼りになるところを見せておかなければ。意を決して木乃伊に触れた俺は仰天して、
慌ててそれから離れた。木乃伊の腕は温かく脈を打っている。
「生きてる!」
木乃伊の癖に生きている。或いはこれが山の主なのか。
「とりあえずこのまま通り過ぎよう。幸いにも鈍感なようだし」
俺は甜歌の手を握った。さきほど甜歌が悲鳴を上げた際にも、目を覚まさなかった。どうやら大分深く眠り込んでいるようだ。慎重に
できるだけ物音を立てずに歩き出す俺達。と、足元で枯れ枝が折れる小さな音がした。椅子が軋んだ。木乃伊のが音を立てて、椅子か
ら立ち上がったではないか。そして欠伸をして一言。
「あー、よく寝た」
起こしちまった!!!
                                                 続く
2241:皇紀2665/04/02(土) 00:55:35
今日はここまで。
225Mr.名無しさん:皇紀2665/04/02(土) 01:03:59
なんでこう甘ずっぺえかな。
乙。
226Mr.名無しさん:皇紀2665/04/02(土) 01:28:31
今回の話は読んでてニヤニヤしてしまうな。
2271:2005/04/03(日) 00:40:21
第17話(甜歌後半)
目一杯背伸びをする木乃伊を前にして、俺は剣を抜き構える。
「ふぁー、あれ、お客さんですか?」
意外にも物腰柔らかそうな声。好青年といった雰囲気だ。
「あなたが山の主さん?」
甜歌が尋ねた。
「はい、そうです。僕が山の主です」
山の主はうやうやしく自己紹介をした。俺達が剣を向けているのを見て、
「いやだなぁ。危害なんて加えませんよ。しかしお客さんだなんて嬉しいなぁ」
と、黄色い所々抜け落ちた歯を見せた。中々話の分かる木乃伊らしい。
「あなたはとても素敵で可愛らしいお嬢さんですね」
いきなり木乃伊は片言で甜歌を誉めた。
「そんなぁ、甜歌照れちゃうなぁ」
まんざらでもないという顔で照れる甜歌。
「甜歌…相手は木乃伊だぞ」
「黙ってろ、ゴキブリ野郎」
木乃伊がいまにも食いかからん剣幕で俺を威嚇した。前言撤回。何だ。この態度の違いは。ムッとする俺をよそに、木乃伊は甜歌を
くどき続ける。
「僕は木乃伊の国の王子なんですよ」
嘘だ。王子が何故にこんな場所で朽ちているのか。嘘に決まっている。96%くらいの確率で(残り4%はちょっと木乃伊の国を見
てみたい好奇心)。
「よかったら僕の妻になって下さい」
いきなりプロポーズしやがった。
2281:2005/04/03(日) 00:40:52
「何を馬鹿なこと言ってんだ。お前木乃伊だろ。それに甜歌はまだ11歳だ」
「寧ろ適齢期。木乃伊の国では10歳になりゃ結婚できるんだよ、ピンボケ頭」
さも当然のように木乃伊は言い捨てた。文末の罵倒が一々頭に来る。
「だからその木乃伊の国っていうのはどこにあるんだ?」
「俺の心の中だよ、ボケが。タコス食って寝てろ」
やはりこいつの妄想だったか。さすがの俺も頭に来て、思わず睨み返した。
「何?その眼。あ、わかった!てめぇ、妬いてんだろ?このロリが」
「なな、何言ってんだ!俺はただ」
取り乱して否定する俺を、下から甜歌の顔がのぞき込む。時が止まる。そして、
「おにいちゃん……ロリコンなの?」
「!!」
はい!!立派なロリコンであります!!ロリコンといっても10歳から30歳まで、幅広くカバーするオールラウンドプレイヤーであ
ります!でもやっぱり少女には特別興味津々!!イェス!んなこと暴露できるわけないだろ!!!!と、ついついイェスマンを模倣し
てしまうほど焦る俺。
「何言ってんだ。俺はただ甜歌をこんな木乃伊の嫁さんにするわけにはいかないから」
できるだけ平静を保って言い訳をしてみた。甜歌はまだ訝しげな表情。
「おっし、わかった。それじゃあこうしよう。甜歌タソとの結婚を賭けて僕と決闘しよう」
木乃伊はどこから取り出したのか、巨大な戦斧をぶら下げた。
「な…!?」
2291:2005/04/03(日) 00:41:31
俺と木乃伊の決闘開始。急展開にも程がある。そんなこんなで、こっちの都合など一切お構い無しで繰り出された木乃伊の初撃。
「重っ!?」
重い。嫌になるくらい重い。ていうか痛い。手がビリビリする。か細い手足から繰り出される戦斧の一撃は紛うことなく重量級と言っていい。
「おらおら、どうしたよ?」
容赦なく斧を振り回す木乃伊。お前必死過ぎ。故に俺も超必死で防がざるを得ないわけだが。
「く…!」
防ぎそこなった斧の刃が俺の左腕をかすった。かすっただけだが、肉がえぐれて血が飛び散る。
「甜歌タソ、待っててくれ!今すぐこいつを葬り去って………ぐぉわ!!」
唐突に木乃伊の頭が爆発して弾けとんだ。哀れ木っ端微塵。甜歌が杖を木乃伊のこちらに向けている。呆気にとられた俺に、甜歌は笑いかける。
「甜歌、木乃伊に興味ないもん」
「ハハハ…ナイス甜歌。よし!聖剣を…」
「待って、おにいちゃん」
「な、何?」
さきほどの話題をぶり返されるのでは。俺は不安に胸を詰まらせた。しかし、甜歌は至って神妙な表情で一言。
「わたしにとっても、おにいちゃんは大事な人だよ」
「甜歌………」
俺は彼女の肩に手を置いた。
「ありがとな」
とにもかくにも聖剣ゲット。岩から引き抜き、早速素振りをしてみると、重すぎず軽すぎず、長すぎず短すぎず。参ったかクソッタレと言わんば
かりに手に馴染む。まるで自分の身体の一部になったようだ。俺が剣を愛でていると、それを側で微笑みながら見ていた甜歌が急に服の袖口を引
っ張ってきた。
「おにいちゃん、魔王をやっつけて早く帰られるといいね…」
「ああ、まかせとけって」
愚かな俺は、その時の甜歌の淋しげな表情に潜む本心を、汲み取ってやることができなかった。

                                                    続く
           
230Mr.名無しさん:2005/04/03(日) 00:43:44
今日は早めの時間にキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
231Mr.名無しさん:2005/04/03(日) 00:51:38
イェスマンネタが出たのにワラタ
232Mr.名無しさん:2005/04/03(日) 01:10:57
しかし>>1の妄想は既に妄想の域を飛び出している。
これはもう、妄想小説と呼んだほうがいいだろう。
2331:2005/04/03(日) 01:16:50
今日はここまで。
234Mr.名無しさん:2005/04/03(日) 02:55:27
俺もイェスマンにワロタwww相互リンクしてんのか?w
ところで…1はロリコンなんだよな?
235Mr.名無しさん:2005/04/03(日) 14:25:38
エヴォネタも頼むよ
2361:2005/04/03(日) 23:37:18
第17話(平井)前半
「平井、一緒に来てくれないか」
俺は平井の目を見詰めて頼んだ。
「はい」
平井は快く了解してくれた。
「2人とも十分に注意してください」
「おにいちゃん、堅、気をつけてね」
「ああ。ありがとう」
深田と甜歌の不安を隠し切れない声に見送られて、俺達は山へと入っていった。
山道は木々が鬱蒼と茂り昼なお薄暗い。しかし登山道がある程度整備されているので足元は確かだ。魔物は特に棲んでいないよう
で、時折野鳥や動物の啼き声が響くだけ。ただしそれでも俺にとっては耳にしたことの無い不気味な音で、ともすれば魔物と勘違
いして、聞き知らぬ声が鳴る度に身体をビクッとさせてしまう。一方、横を歩く平井はというと、全く動じている様子はない。
それにしても、イケメンと2人きりで歩いていると、どうにも表現しがたい気分になってくる。
苦心して話題を探している内、俺は平井の刀に目を留めた。
「いつもその刀を肌身離さず携えてるね。何か理由があるのか?」
「ええ…これは死んだ恋人の形見なんです。彼女が護身用にと僕に買ってくれた、初めての贈り物でした」(ここで”ひとみを閉ry)
平井はそっと腰の鞘に触れた。歌い手として酒場で働いていた当時の平井は武術などとは無縁で、そんな彼を鍛えようと彼女がプ
レゼントしてくれたのだという。
「ごめん。悪いこと訊いちゃったな」
まったくどうして俺はこうも軽はずみな発言が多いのだろう。
「いいえ、もう10年も前の話ですから」
10年間。彼は10年も仇敵エナリを追跡していたのか。その年月の長さには眩暈すら覚える。平井は特に表情を変えることなく、
訥々と話す。
「でもね。僕は最近不安に思うことがあるんですよ」
「え?」
「もしエナリを倒せたとして、その後僕はどうなるんだろうって。この10年間それだけに人生を費やしてきた。それ以外に何も
ないんです」
2371:2005/04/03(日) 23:37:38
彼が垣間見せたのは、長い時を孤独の内に生きてきた者が見せる眼差し。俺は平井に自分と通じるものを感じた。
「でも僕は仇討ちをやめることはできない。今でも彼女が夢の歌で僕に無念さを叫ぶんです。仇を討ってくれ、と。だから僕が復
讐を止めることは絶対に許されないんです」
呪縛。ふと俺の頭にそんな言葉が浮かんだ。
「すみません。変な話をしちゃって。あ、着いたようですよ」
平井は登山道の先を指差した。洞穴に到着した俺達は、冷たい空気が満たす穴に入っていく。さして大きな洞穴では無く、すぐに聖
剣のある石室に辿り着いた。聖剣は思ったより小振りで、深田のロングソードより少し刃渡りが長いくらいだ。聖剣を手に取ろうと
近づく。その時、俺は奇妙な気配に気付いた。すぐ横の暗がりを見てみると、居る。何か居る。俺はその方向に目を凝らしてギョッ
とした。子供の背ほどの木乃伊が椅子に腰掛けているではないか。
「木乃伊ですね」
「そうだな」
と俺は平静を装って返答するが、内心は怯えまくり。だが、同じ男としてここで弱みは見せられない。意を決して木乃伊に触れた俺。
しかし次の瞬間には仰天して、慌ててそれから身を離した。木乃伊の腕は温かく脈を打っていたのだ。
「生きてる!」
木乃伊の癖に生きている。或いはこれが山の主なのか。
「とりあえずこのまま通り過ぎよう。幸いにも鈍感なようだし」
「そのようですね」
俺と平井はこっそりと木乃伊の前を通過しようとする。さきほど触った際に目を覚まさなかったことが示すように、どうやら大分深く
眠り込んでいるようだ。と、足元で枯れ枝が折れるごくごく小さな音がした。それに呼応したように椅子が軋んだ。木乃伊が音を立
てて、椅子から立ち上がったではないか。そして欠伸をして一言。
「あー、よく寝た」
起こしちまった!!!
                                                 続く
           
238Mr.名無しさん:2005/04/03(日) 23:39:17
乙。
でも、堅コースはいまんとこそそらないw
239Mr.名無しさん:2005/04/03(日) 23:49:56
うほっ展開も、アリだな
2401:2005/04/03(日) 23:51:42
今日はここまで。
241Mr.名無しさん:2005/04/04(月) 00:35:41
>1
今日も乙です!
続きを楽しみにしてるよん。
2421:2005/04/04(月) 22:29:47
第17話(平井後半)
目一杯背伸びをする木乃伊を前にして、俺と平井は剣を抜いて構える。
「ふぁー、あれ、お客さんですか?」
意外にも物腰柔らかそうな声。好青年といった雰囲気だ。
「あなたが山の主ですか?」
平井が尋ねた。
「はい、そうです。僕が山の主です」
山の主はうやうやしく自己紹介をした。そして、俺が向ける切っ先に目を合わせて、
「いやだなぁ。危害なんて加えませんよ。しかしお客さんだなんて嬉しいなぁ」
と、黄色い所々抜け落ちた歯を見せた。中々話の分かる木乃伊らしい。
「ところで、あなたの音封銀盤(この世界のCD)持ってますよ。っていうかファンです」
いきなり木乃伊のファン宣言。平井はCDを出していたのか。
「あ、どうも」
調子を狂わされて、照れて頭をかく平井。
「平井、相手は木乃伊だぞ」
「黙ってろ、カマドウマ野郎」
木乃伊がいまにも食いかからん剣幕で俺を威嚇した。前言撤回。何だ。この態度の違いは。ムッとする俺をよそに、木乃伊は平井に
提案を持ちかける。
「実は僕も木乃伊の国では売れっ子R&Bシンガーなんですよ」
嘘だ。売れっ子R&Bシンガーが何故にこんな場所で朽ちているのか。嘘に決まっている。85%くらいの確率で(残り15%は木乃伊
が作った曲を聴いてみたい好奇心)。
2431:2005/04/04(月) 22:30:16
「よかったら僕とコラボレートしてください。Ken Hirai featuring Mi→Raなんてどうでしょう」
いきなりを楽曲提供を申し出る木乃伊。何でもfeaturingを付ければいいと思っていやがる。大体Mi→Raの→は何なんだ。→は。
「僕は今、歌を歌うわけにはいかないんです」
戸惑う平井。木乃伊は全てお見通しとばかりに鼻で笑って、首を左右に振った。そして左足でリズムを取ると、
「♪仕事に負けた 夢に負けた 生きることに負けた 俺は人生の敗残者」
唐突に歌い始めた。歌詞は極めてネガティブだが、木乃伊の声はパワーのある痩身からは想像がつかない重低音ボイスだ。ヴィヴラー
トもしっかりしている。
「♪朝起きるたびに 俺は生まれてきたことを恨み 涙する(ハモリ)」
うわぁ…平井が誘われるように、合わせて高音部を歌い出した。ついつい聞き惚れてしまうようなナイスハーモニー。
「♪ああ あの頃は良かった あの頃に戻りたい あの頃に戻りたい Forever young Sha lala...(フェードアウト)」
どこまでも後ろ向きな曲を2人は歌いきった。
「…初期ミニアルバムの中で一番のフェイバリットナンバーをよく知ってましたね」
と平井。
「ファンであり、同じアーティストですから」
と木乃伊。
音楽を通して2人が解りあった瞬間。俺はというと見事に孤立。彼らに嫉妬の念を抱かずにはいられない。音痴なのでなおさらのこと。
「お前らなぁ、いい加減に…」
「何?その眼。あ、わかった!てめぇ、僕らがユニット組むの妬いてんだろ?このオンチが。おっし、わかった。それじゃあこうし
よう。甜歌タソとの結婚を賭けて僕と決闘しよう」
木乃伊はどこから取り出したのか、巨大な戦斧をぶら下げた。
「な!?」
2441:2005/04/04(月) 22:30:36
俺と木乃伊の決闘開始。急展開にも程がある。そんなこんなで、こっちの都合など一切お構い無しで繰り出された木乃伊の初撃。
「重っ!?」
重い。吉本のオーディションを受けたくなるくらい重い。ていうか痛い。手がビリビリする。か細い手足から繰り出される戦斧の
一撃は紛うことなく重量級と言っていい。
「おらおら、どうしたよ?」
容赦なく斧を振り回す木乃伊。お前必死過ぎ。故に俺も超必死で防がざるを得ないわけだが。
「く…!」
防ぎそこなった斧の刃が俺の左腕をかすった。かすっただけだが、肉がえぐれて血が飛び散る。
「平井さん、待っててくれ!今すぐこいつを葬り去って………ひぎぃ!?」
不意に萌えな悲鳴を上げて、木乃伊が苦悶の表情を浮かべた。俺と木乃伊の間には、いつの間にか刀を持った平井が入り込んでいる。
平井が鞘に刀を収めると同時に、木乃伊の上半身と下半身が真っ二つに分離した。
「やはり僕はまだ歌を歌うわけにはいきません。エナリを倒すまでは」
「平井…」
とにもかくにも聖剣ゲット。岩から引き抜き、早速素振りをしてみると、重すぎず軽すぎず、長すぎず短すぎず。参ったかクソッタレ
と言わんばかりに手に馴染む。まるで自分の身体の一部になったようだ。俺が剣を愛でていると、平井はいつになく晴れた顔で俺に言った。
「見つかりました。エナリを倒した後にやりたいことが」
「そうか。よかったな!」
俺は、彼が何をやりたいのか、訊かないでおいた。それが何なのか、痛いほどにわかったから。
                                                         続く
245Mr.名無しさん:2005/04/04(月) 22:43:58
GJ。>1
しかし>243は惜しいな。今日は早いからか?
2461:2005/04/04(月) 22:52:30
>>245
スマトン。
甜歌の分を消し忘れていた。
×「何?その眼。あ、わかった!てめぇ、僕らがユニット組むの妬いてんだろ?このオンチが。おっし、わかった。それじゃあこうし
よう。僕と決闘しよう」
○「何?その眼。あ、わかった!てめぇ、僕らがユニット組むの妬いてんだろ?このオンチが。おっし、わかった。それじゃあこうし
よう。コラボレート権を賭けて僕と決闘しよう」
いや、俺はコラボレートなんて望んでいないのだが。
247Mr.名無しさん:2005/04/04(月) 23:25:09
カマドゥーマ(便所コオロギ)ワロスage
248Mr.名無しさん:2005/04/04(月) 23:27:25
先が気になる!!!!
249Mr.名無しさん:2005/04/04(月) 23:43:16
17話だけで5日かかってるもんなw
250Mr.名無しさん:2005/04/05(火) 06:46:09
なんだ、うほっ展開じゃなかったかw
251Mr.名無しさん:2005/04/05(火) 11:59:11
漏れにとって今毒男板で最も熱いスレsage
252Mr.名無しさん:2005/04/05(火) 22:53:27
今夜はまだ〜?
2531:2005/04/06(水) 01:33:57
第18話(前半)
俺は俺専用異世界人専用聖剣を下ろして、リザードマンの死骸に眼をやった。
「ふぅ、これで全部だな」
「ご苦労様です」
深田が額の汗をぬぐう。甜歌と平井もほっと一息ついた。俺達4人の周囲には、倒した30体近い魔物の屍が散乱
している。
キタミの街を後にした俺達は、一路南東のガシヒロに向かっている。魔族軍が発生していると思われる場所だ。深
田がシ・フィーロの諜報係から得た情報によると、通常棲息していない先程のリザードマンのような魔物が出現し
始めているこの一帯が臭い。そして、都市ガシヒロを中心にして、円を描いて新しい魔物の出現地域が広がってい
る。まだ目立った動きは無いものの、ガシヒロの都市内部に魔族が巣食っている可能性は高い。
まるで解説でもするように、俺が頭を整理していると、石造りの壁が目に飛び込んできた。幅は街一つをそっくり
囲うほどの長さで、壁越しに尖塔の頭が何本か姿を見せている。
「あれが学園都市ガシヒロみたいですね」
平井はかなりの高さがある外壁を、物珍しそうに眺めている。
「平井はこの街は初めてなのか?」
「ええ、僕は魔術や学校には縁がなかったですから」
「学校?」
聞き返す俺に、平井に代わって深田が答える。
「はい。ガシヒロは学園都市なんですよ。東西3Kmの領内には、この大陸最大規模の魔術学園を擁しています」
「魔術学園……」
近づくに連れて外壁はその迫力を増し、訪れるものを圧迫する。まるでその中にあるものを隠しているかのようだ。
ゲートで簡単な入都審査を受けた後、俺達はガシヒロの都に入った。外観とは打って変わって、壁内は活気と喧騒
に満ちている。俺達はまず往来を歩いてみることにした。魔族に関する情報を得られるかもしれない。
しばらくして俺は奇妙なことに気付いた。あちこちに肖像画が描かれたポスターが貼られている。その中に、でか
でかと書いてある文字を解読すべく試みてみる。
「学園長…せ、せん…せんきょ……?」
学生時代、英語の成績はてんで駄目だった俺だが、今ではこの世界の言語に関しては大分判読できるようになって
きた。
「よくできましたぁ!」
2541:2005/04/06(水) 01:34:52
甜歌が誉めれくれた。大人気ないようだが、ちょっと嬉しい。
「近々魔術学園の学長選挙が開かれるようですね」
と平井。なるほど。学園都市だけに、学園長を決定するにも街を上げての選挙になるわけだ。
俺達は情報収集の為に酒場に立ち寄ちることにした。まだ昼間ということで、ほとんどが昼食を取りに来ている客
のようだ。飲んだくれて眠っている男が一人いるだけいる。とりあえず適当な席を見つけ、昼食を取ることにした。
「で、どうやって情報を?」
やたらと固い肉をナイフで苦心して切りながら、俺は深田と平井に問うた。
「どこの酒場にも情報屋は受注しているはずです」
深田は辺りを見回す。そして泥酔している男に目を留めると、やおら席を立ち彼の側に近づいていった。そして、
「情報屋さんですか?」
いつもながら彼女の怖いもの知らずには驚かされる。そんなに都合よく……
「はい、そうですが、何か?」
…いっちゃったよ。男は顔を上げて、酔っている割には明瞭な返答をした。俺達3人も急いで2人の元に駆けつける。
「魔族?さぁなぁ。確かにここいらに潜伏して軍の準備をしているってのは聞いてるが、それ以上はなぁ」
情報屋は意味ありげな笑みを浮かべた。深田は懐から巾着袋を取り出して、情報屋の前に差し出した。
「学園内部に不穏な動きがあるって噂だ」
再び情報屋は黙りこんでニヤニヤと笑う。更に情報料を要求しているのは目に見えて明らかだ。
「ちょっと財布を見せてもらえますか?」
深田は俺の方を向いて、ニコッと微笑んだ。嫌な予感を感じて、というか覚悟を決めて、俺は財布を彼女に渡した。
「ありがとうございます」
ああ、やっぱりort。俺のなけなしの全財産は情報屋の手に抱かれた。
「具体的には?」
「学園内で最高の地位に立てば、かなりの数の魔術士を掌握できる。つまり今回の学園長選挙に魔族が絡んでいるっ
て話だ。俺が持っている情報はここまでだ。学園内は教師と学生、用務員などの関係者を除いて、一切立ち入り禁止
になっているからな。じゃあなノシ」
2551:2005/04/06(水) 01:35:18
彼は再びカウンターにうつ伏せになり、すぐさま寝息を立て始めた。のび犬並に器用な男だ。
俺達は元の席に戻る。平井が思案顔で口を開いた。
「まさか選挙への魔族の介入を調査させて下さいとも言えませんし、どうやら学園に潜入するしかないようですね」
「でも一般人は入れないんだろ?」
先程の情報屋の言葉を思い出す俺。
「それなら学生として入学すればいいじゃないですか」
深田はいとも簡単そうに提案した。
「え?」
「入学試験を受けるんですよ。週一で募集かけてるはずですから」
「マジで言ってるのか!?」
「やったー!学校だー!!」
入学試験という言葉に慄く俺。それとは対照的に甜歌は危機感ゼロではしゃぐ。こうして俺達は急遽入学試験を受け
ることになった。
                                                   続く
2561:2005/04/06(水) 01:46:03
今日はここまで。
257Mr.名無しさん:2005/04/06(水) 01:53:21

想像もつかん方向に…
魔法学園かよ!!
258Mr.名無しさん:2005/04/06(水) 02:08:03
学園ファンタジーに移行か!?
相変わらず>1は俺達の意表を突く。w
259Mr.名無しさん:2005/04/06(水) 06:50:34
しかし、最近の>>1の文章はほんといいな。
どんどんまとまってきている上に、軽妙で読むのにまったく億劫にならない。
もし上達を目指すなら、ライトノベルや創作文芸系の板に行ってみるのもよいかと。
厳しい目利きの指摘はきっといい肥やしになるぞ。
260Mr.名無しさん:2005/04/06(水) 08:11:00
ぬるぽ
261Mr.名無しさん:2005/04/06(水) 10:01:34
>>259
あんまり1を乗せるなよw
凹んで来なくなったら困る
262Mr.名無しさん:2005/04/06(水) 13:04:41
>1には毒男板の専属妄想作家でいてほしいね。
263Mr.名無しさん:2005/04/06(水) 22:13:44
まとめサイト作ってもいいかな?
皆と1がいいと言ったら作るよ。
264Mr.名無しさん:2005/04/06(水) 22:19:03
前回との話のギャップに驚いたよ。きのいをやっと倒したと思ったのにw
265Mr.名無しさん:2005/04/06(水) 22:27:46
>>263
頼んだ!
266Mr.名無しさん:2005/04/06(水) 22:47:20
>263
俺には技術が無いから待ってたぞ。よろしくな!
2671:2005/04/06(水) 23:01:00
第18話(後半)
一週間が経った。朝の冷たい空気が身も心も引き締めてくれる中、俺達は受験会場である魔術学園の大講堂に向かっ
ている。
魔術学園の入学試験は年齢制限が無く、誰でも受けることができる。試験は大まかに筆記と実技で構成されている。
筆記は全1,000nからなる魔術概論に沿って出題、実技は受験者が最も得意とする魔術を披露して、双方の合計点で
合否が判定される。今回受験するのは定員10名に対して70名弱。魔術の心得がある甜歌や深田はともかく、俺
はこれまで魔術などとは全く縁がなかった。この6日間で、実技面では風系魔術のごくごく初歩的な術を使えるよ
うになっただけ。筆記はもっと厳しい。元々この世界の言語をほとんど読み書きできない俺が、1,000nの参考書に
どう太刀打ちしろというのか。
最初はまだ平井がいるので安心していたのだが、実は彼は試験を受けることができないことが発覚した。というのも、
願書を提出する際に純戦士という理由で、適性検査に落ちてしまったのである。この世界には、先天的に魔力を体内
に蓄積させることができない人間がおり、彼はそれに当たるのだそうだ。俺は幸か不幸か中途半端な量の魔力を蓄え
られるらしい。
そんな状況での受験であるから、俺はいよいよもって緊張の色を隠せないわけで。
「緊張するなぁ。大学入試を思い出すよ」
「おにいちゃん、頑張って!」
甜歌は自分も受験することなど忘れたかのように俺を励ました。彼女は南の老魔術士の後継者であるから、実技オン
リー筆記0点でも合格できてしまうだろう。
「大丈夫ですよ。落ち着いて本来の力を出し切れば」
深田も俺を勇気付けてくれた。
「できるだけやってみるよ」
俺は覚悟を決めて、両頬を手の平で打った。試験会場に入ると、既にほとんどの受験生が席について、皆一様に参考書
に目を落としている。
2681:2005/04/06(水) 23:01:26
「受験番号69、69…69したくない、っと……お、ここか」
69というステッカーが貼ってある席に座る。ふと横を見ると、どこかで見たことがある青年(ニート 24歳)が座って
いる。ライバルではあるものの、隣に座ったのも何かの縁、俺は声をかけてみる。
「お互いに頑張りましょう」
すると彼はそのイガグリ頭をこちらに向けて、こうのたまった。
「いや、俺は別に受かろうなんて思ってないから。親が魔術学園出れば職があるってうるさくすすめるんで、仕方なく
受験してるんだ。そもそも働いたら負けかなと思ってる」
こいつにだけは負けたくないと思った。
俺が密かに闘争心に火を付けていると、試験官が試験の流れを説明し始めた。午前中は筆記試験。基礎魔術、発展魔術、
選択魔術(攻撃魔術、治癒魔術)、特殊魔術の4科目を順番に受けていく。問題用紙と答案用紙が配られて、緊迫した
空気の中でその時を待つ。
「はじめ!」
講堂内に試験管の低い声が響いた。
(えーい、ままよ!!)
俺は鉛筆を高く掲げ、鬼気迫る勢いで答案用紙を埋め始めた…
−−−−−−−−−−−−−−−−3時間後−−−−−−−−−−−−−−−−
見事玉砕した俺は、真っ白に燃え尽きて肩を落とした。大体この世界に来て一ヶ月と経っていないのに、専門用語満載の
テストを受けるという暴挙に出たのが無謀過ぎだったのだ。
しかし、終わった以上、思い悩んでも仕方がない。実技で挽回すれば良い。今から1時間ばかり休憩時間を挟み、午後の
実技試験に賭けるしかあるまい。解答用紙が回収されるのを待ち、俺が立ち上がろうとすると試験官が声を張り上げた。
「受験番号4、12、34、69番を除いて退室するように」
俺は腰を上げたまま固まった。周囲の学生が次々と退室していく。甜歌と深田がのん気に手を振っている。事態が把握で
きないでいる俺の前に、試験官が問題用紙と解答用紙を置いた。
「早く席につきなさい」
「は、はい!」
2691:2005/04/06(水) 23:01:59
言われるがままに再度席につく俺。問題用紙に目を通すと、簡単な一般常識の問題のようだ。とりあえず問題を解くしか
あるまい。平生、深田や平井からこの世界の情勢については色々教えてもらっていたから魔術の問題よりは大分楽だ。30
分もすると俺は筆記用具を置いた。釈然としない俺を他所に、試験官が答案を回収していった。
ほとんど休憩時間を取る間もなく、2時間目の実技試験に突入。受験者は順番に教壇の前に呼ばれて、得意の魔術を採点
される。深田達は苦労なく術を成功させて、試験官達を唸らせた。段々と自分の番が近づいてくる。
「ニート・ローエンシュタット」
俺より先にイガグリ男が名を呼ばれた。ニートという名前らしい。それにしてもローエンシュタットとはまた厳かな苗字
だ。ああ見えて良家の出なのだろうか。彼は可もなく不可もなく実技をこなした。そして、ついに俺の名が呼ばれる。俺
は講堂内の脇の緩やかな階段を下りて行く。ニートがすれ違いざまに、俺の耳に囁いた。
「今の自分は勝っていると思う、少なくともお前には」
「何!?」
どこまでも嫌味な奴だ。
壇上に仁王立ちした俺は、彼奴にだけは負けてなるものかと杖を胸の前に突き出し、あらん限りの魔力を集める。するとど
うだろう。昨日までは直径1mほどだった真空の刃が、今日は2mもの大きさの刃を発生させることに成功したではないか。
「やった!」
と、油断した瞬間、刃がコントロール不能に陥り、勝手に飛び出した。真空の刃は真向かいに座っている試験官のコメカミ
を掠めて窓にはめてあるステンドグラスを粉砕した。
水を打ったように静まり返る試験会場。
(やっちゃったよ……)
顔面蒼白の俺に、試験官は無言でハンカチを取り出し、血を拭いて一言。
「殺すよ?」
「すみません…」
俺はおずおずと退散した。落胆のあまり、隣でニートがニヤリと笑ったのも、もう気にはならなかった。これで合格の可能
性は限りなく低くなった。
2701:2005/04/06(水) 23:02:22
講堂から出た俺は、深田達と一緒に合格発表を待つ。ガシヒロ魔術学園の合否発表は運転免許試験並に早い。1時間ほどで
敷地内の掲示板に結果が張り出された。
…67、68、70…
案の定、俺の番号69は記されていない。深田と甜歌達は当然のことながら、腹立たしいことに、受かる気がないニートま
でが合格しているというのに。
「おにいちゃん。元気出して」
「……」
甜歌の慰めも効をなさないほど、すっかりしめやかモードの俺。そこに深田が口を挟んだ。
「あの〜、もっとよく見てください」
「…?」
深田が指差す方向を見ると4という番号に続いて………69!!??掲示板の隅のほうに、まるで俺自身の存在意義を表現す
るかのように、ひっそりと自分の受験番号があるではないか。それにしても何故こんな外れにポツンと。よく見ると番号の
上に小さく文字が書いてある。
「よ、ようむ…用務員……試験…?」
何かの見間違いだろうか。俺は読み書きの師である甜歌に確認を求めた。
「うん、そうだよ。用務員って書いてあるね」
「つまり、俺は用務員の試験に合格したってことなのか?」
「はい。早い話が住み込み雑用係としての採用ですね」
深田は何もかも知っていると言う風。
「深田さん、何か仕組んだろ?」
「仕組んだなんて。こんなこともあろうかと思って、あなたの名前で用務員試験も同時に申し込んでおいたんです、ハイ!」
ハイ!ってあんた……やられた。そういうことか。俺が筆記試験の最後に受けた一般常識試験は、用務員試験の追加科目だっ
たというわけか。
「先に言っておいてくれればよかったのに」
「すみません。傷つけちゃ悪いと思ったんです。まるで受かるとは思ってないみたいだし」
いや、十分に傷ついています。まぁ、実際問題として深田の予想は的中したのだが。
とにもかくにも、そんなこんなで俺達の学園生活が幕を開けるのであった。
                                                      続く
2711:2005/04/06(水) 23:03:22
>>263
スマトン。よろしくお願いします。
272Mr.名無しさん:2005/04/06(水) 23:20:27
>>270
> とにもかくにも、そんなこんなで俺達の学園生活が幕を開けるのであった。
この学園生活により、とうとう僧侶系美少女との出会いが!
273Mr.名無しさん:2005/04/06(水) 23:53:07
>1
いつもながら乙!
>263
よろしく頼んだ!
2741:2005/04/07(木) 00:07:03
今日はここまで。

>>272
まだわからん。
275まとめサイト:2005/04/07(木) 11:01:56
それでは僭越ながら作らせて頂きます。
サイト作りは素人なので、デザイン等には期待しないでくれ。
では、しばしお待ちを。
276Mr.名無しさん:2005/04/07(木) 17:48:13
期待するなと言われても期待sage
277Mr.名無しさん:2005/04/07(木) 21:51:58
>>275
うん、待ってる〜♪
278Mr.名無しさん:2005/04/07(木) 22:40:02
>>275
がんばって!楽しみにしてるよ!
279Mr.名無しさん:2005/04/07(木) 23:15:33
>275
前スレのただのhtml保存ならあるぞ!
必要なら言ってくれ。
280Mr.名無しさん:2005/04/08(金) 00:52:41
二日振りに見ました
〈まとめサイト〉さん頑張って下さい!
>>1さん本日もマタ−リとお待ちしてます
2811:2005/04/08(金) 00:56:10
第19話(前半)
「おい新入り、飯行ってこいや」
用務室長(島田洋七)が、気さくな声で促した。
「はい」
ようやく昼飯だ。俺はすきっ腹を抱えて学生食堂に向かう。この学園では用務員も含めて、全ての職員が学生食堂で朝昼晩
三食を取っている。もっとも、学生達でてんやわんやする時間帯は極力避けているので、俺が食事を取る頃にはいつも食堂
はガランとしている。俺は食堂のおばちゃんからトレーを受け取り、料理を乗せていく。そして壁際の席に腰を下ろし、よ
うやく一息ついた。
この学園に来て今日でちょうど2週間が経つ。俺は先ほどのもみじまんじゅうを是非持たせてみたい用務室長の下で雑事を
教わっている。学園内の清掃、庭の手入れから消耗品の取替えに忙殺される日々だ。深田や甜歌は学生として生活している
ので、毎晩門限の30分前に時間を決めて顔を合わせている。そして、その際にお互いに得た情報を交換している。おかげ
で目的の魔族と関係があると思われる人間が3人に絞れてきた。
俺が黙々とパンとスープを交互に口に運んでいると、初老の男が食堂内に入ってきた。学園長である岸辺(一徳)だ。彼は
おばちゃんからトレーを受け取ると、俺が座っている位置からそう遠くない所に席を取った。
岸辺学園長は何ともつかみ所のない顔立ちで、外面からは何を考えているのか判じ難いことこの上ない。しかし、実際はか
なりのキレ者で、学園を10年間に渡って運営、世界レベルでの名門校に仕立て上げた立役者だ。封建的な部分は最低限保
ちつつ、革新的な制度も考案して取り入れてきた。入学年齢制限の撤廃や週一入学試験の導入といった具合に、広く人々に
魔術を習得する機会を与えている。無論、古来からの秘匿的な因習が色濃く残る魔術士業界であるから、それを快く思わな
い者も大勢いるわけだが。彼は今回の選挙にも出馬している。
(どうかなぁ。パッと見魔族には見えないけど、あの眠たそうな目の裏に何か隠していそうだなぁ)
2821:2005/04/08(金) 00:56:47
俺は食事をしながら、密かに彼の様子を盗み見ていた。すると、今度は黒ぶち眼鏡を掛けた男が入ってきた。副学園長の生
瀬(勝久)だ。彼はちょうど俺を挟む格好で学園長と真反対の位置に座り、持参した弁当を開いた。
生瀬は学園長の対抗馬として、次期学園長の座を狙っている。金と名誉を渇望し、その性質は邪の一言に尽きるという。今
回の出馬表明をしてからというもの、学園長とは犬猿の仲らしい。
(魔族っぽいよなぁ。何か知らんけど魔族っぽいよなぁ。ハリケンアッパー(東)が必殺技っぽいよなぁ)
外見と声だけで根拠のない推測をしていると、更に紳士然とした口ひげを蓄えた男が入ってきた。教頭の陣内(孝則)だ。
彼はトレーを持って、岸辺達を避けるように腰掛けた。
陣内はその落ち着いた立ち居振る舞いから、生徒、教師を問わず学園内の女性に対して高い人気を持つ。彼の行動の根底に
あるのは一切の無駄を排除する現実主義だ。女子に言わせれば、その冷徹さが魅力の一つなのだそうだ。彼もまた学園長選
挙に出馬している。
(女性関係華やかそうだなぁ。羨ましいなぁ。魔族なんかなぁ)
ていうか、
(うわぁ、囲まれてるなぁ。俺囲まれちゃってるなぁ。出辛いなぁ)
上から見ると、壁際の俺を中心にして東に学園長、西に生瀬、そして南に陣内といった按配。俺はとうに食事を終えていた
のだが、出ように出られず困惑した。と、その時、
「だーれだ?」
聞き覚えのある声と共に、突然何かが視界を覆い隠した。
2831:2005/04/08(金) 00:58:06
「うわ!?」
仰天して椅子からずり落ちる俺。机と椅子の間から上を仰ぐと、甜歌が申し訳なさそうな、それでいて笑いを噛み殺しなが
ら見下ろしている。彼女は手を合わせて、
「ごめ〜ん、おにいちゃん。授業サボっておにいちゃんに会いに来ちゃった♪」
「いてて、驚かすな…よ」
体勢を立て直すや、身体を硬直させる俺。学園長候補達が皆俺の方向を見ているではないか。
「ああ、君、大丈夫かね?」
岸部が痴れ者でも見るような顔をして、声をかけてきた。
「ははは、どうも。甜歌、行くぞ」
俺は甜歌の手を握ると食堂から逃げるように出て、そのまま正門前の並木道まで走った。
「はぁはぁ、ったく、肝を冷やしたよ」
「ごめんね、おにいちゃん…」
予想外に反省しているようだ。俺は少し考えて、
「ん〜、そうだな。甜歌だから特別に許してやるよ」
真面目な表情をしてみた。
「え、ウチだから?」
甜歌がはっとして頬を赤らめる。
「ああ、その…なんだ………甜歌はお子様だからな!」
「もぅ、おにいちゃんの意地悪!!」
追いかけてくる甜歌に顔を合わせたまま、俺は調子に乗って後ろ向きに駆けた。何とも傍から見ると恥ずかしいことのこの上な
い、m9(^Д^)プギャーと嘲笑されること請け合いの光景だが、当事者としては楽しくてたまらないわけで。と、笑っていた甜歌
の表情が急に強張った。
2841:2005/04/08(金) 00:58:25
「あわわわ、前、前、まえっ!!!」
大慌てで俺の前方、つまり俺から見ると後方を指差した。
「へ?…っ!?」
地面が消えた。続いて景色が下から上に回転する。いや違う。回転したのは俺だ。前方不注意で歩道を踏み外したと気付いた時
には、俺は崖を一気に転げ落ちていた。転がる。転がる。ジャッキー(チェン)じゃあるまいし、もうそろそろイイだろ、とい
う思いも無視して頑張って転がっていく。ああ、これは死ぬなと観念し始めた時、ようやく俺は木の幹に激突して止まった。
「痛ぇ…」
身体中に激痛が走る。どうしようもなく痛い。激痛の余り目も開けられないでいると、落ち葉を踏む音がして人の気配が俺の前
に立った。
「じっとしていてください」
声と共に、温かい何かが俺の身体を覆った。そして次第に、忌まわしい身体中の痛みが薄らいでいき、ついには完全に消えてし
まった。目を開けると、そこには一人の女性が俺の身体に両手をかざしている。どうやら彼女が治癒魔術を施してくれたようだ。
「痛みが……消えた」
「傷はもう大丈夫だと思いますが、一応お医者様に見てもらってくださいね」
端正な顔立ちをした女性は、白い歯を見せて笑った。
「ありがとう」
「大事でなくて良かったです。それでは私は用があるので失礼します」
「あの、あなたは?」
「上原(多香子)といいます」
「上原…さん」
上原と名乗った女性は甘い、それでいて清潔感に満ちた香りを残して去っていった。落ち着いた口調が整った顔立ちと相まって、
何と言うか……(・∀・)イイ!! 。立ち去る彼女の後姿に見惚れて俺がぼんやりとしていると、入れ違いに甜歌が駆けつけてきた。
「おにいちゃん、大丈夫!?」
「ん、大丈夫だよ。上原さんが治癒魔術で治してくれた」
甜歌は少しムッとした。
「上原さんって、さっきウチがすれ違った?」
「そう、上原さん…」
「おにいちゃん、だらしない顔し過ぎ!」
「いででで!」
背中をつねられた俺は、だらしなく身をよじらせた。
                                                        続く 
285Mr.名無しさん:2005/04/08(金) 01:03:28
上原キタキタキタキタキター(゚∀゚)

>>1乙!!今日は気合い入ってるな〜
286Mr.名無しさん:2005/04/08(金) 01:17:41
上原か・・・やっぱセリフはボー読み、演技は大根なんだろーか?
2871:2005/04/08(金) 01:26:20
今日はここまで。
288Mr.名無しさん:2005/04/08(金) 01:32:33
赤川さんじゃないのね・・・
289Mr.名無しさん:2005/04/08(金) 01:33:27
>>288
信じて待っていようぜ
290Mr.名無しさん:2005/04/08(金) 01:55:19
赤川さんもいいけど、上原も(・∀・)イイ!
どっちも(・∀・)イイ!
291Mr.名無しさん:2005/04/08(金) 01:55:44
上原か・・・・・・てるてる家族の夏姉ちゃん萌え
292Mr.名無しさん:2005/04/08(金) 01:56:28
>>290
おまえいい椰子だな
293Mr.名無しさん:2005/04/08(金) 02:40:53
3週間分くらいまとめて読んだよ
前スレにくらべて文章ウマすぎ>>1
まとめサイトできるんだな
294Mr.名無しさん:2005/04/08(金) 02:46:56
ここまで来ると妄想なのか自作小説なのか判らないな。
まぁ、読んでて面白いからどっちでもいいけど。w
2951:2005/04/09(土) 00:25:38
第19話(後半)
黄昏時。
沈みかけの太陽が、学園内の建物や樹木を黄金色に染め上げていく。一日の内でこの短い時間だけは、それら平凡な物が一種神秘
的な美しさで彩られる。間もなく訪れる夜を前に、日常的な存在達が垣間見せる非日常的な美しさだ。
といった具合に、柄にも無く感傷に浸りながら、俺はモップや雑巾、バケツといった清掃道具を携えて図書館に向かって歩いてい
る。毎夕この時間に行う館内清掃を、自分が担当しているからだ。中央広場の少し外れに位置する図書館は、荘厳なゴシック建築
の2階建てだ。入り口には学問の神だかをモチーフにした爺様の石像が、まるで無学の徒である俺を威圧するかのように睨みつけ
ている。
扉のノブに手を掛けて、俺は図書館内に入った。ちょうど司書の稲垣(吾朗)が本を抱えて運んでいる所に出くわした。
「どうもこんばんは。清掃に来ました」
「ご苦労様。頼むよ」
稲垣と挨拶を交わして、俺は早速掃除に取り掛かった。まだこの時間は1階は自習学生が多いので、まずは2階から済ませる。こ
の2週間、毎日掃除をしているので段取りは完璧だ。俺は軽やかなステップで床にモップを滑らせていく。
「ん?」
ふと気付くと、視界の隅に机で読書に没頭している人影が入っている。深田だ。書物に目を落とす眼差しは真剣そのもの。邪魔し
ては悪いと思いつつも、俺は彼女に声をかけてみる。
「深田さん」
「ん?あ、どうも、こんばんは」
「何かすごく真剣な顔してたけど、何読んでるの?」
「え…っと、別に大した本じゃないです、はい」
2961:2005/04/09(土) 00:26:32
深田はいつになく慌てて、両腕で本を覆い隠した。卑しいようだが、表紙の"人と魔族の関係"という題名を、俺は見逃さなかった。
さすが勉強熱心な深田だけあって、魔族についての知識の習得は欠かしていないらしい。それに比べて、俺の用務員っぷりときたら。
既にこの仕事にやりがいすら見出りしていたりするから、我ながら泣けてくる。
「ところで用務員さんの制服、すごくよく似合ってますねぇ」
素直に喜べない誉められ方だ。ちなみに俺が着ている用務員の制服は、全身緑色をした小人みたいな布の服である。
「モップを握る姿も堂に入ってますよ。仕事師って感じで」
更に畳み掛けてくる深田。同じことを普通の人間が言ったなら嫌味にしか聞こえないのだが…
「ん、そうか?まぁ、最初の頃に比べたら仕事に慣れてきたかな」
俺ってどうしてこう単純なんだろうか。彼女の口からだと、こんな誉められ方でも嬉しくなってくるのだから。
「深田さんも学園生活はどうよ?」
毎晩情報交換はしているものの、あまりじっくりと話す時間がなかったので、この際とばかりに尋ねてみた。
「とても楽しいです。親しい友達も出来て、次のお休みに一緒に街へお買い物に行く約束したんですよ」
「へぇ、いいなぁ。俺なんか娯楽と言えば、室長と一緒に酒飲むぐらいだぜ」
俺達は思わず声を出して笑った。館内にまばらにいる学生が、一斉に戒めるように俺達を見た。気まずい顔をして、小声になる俺と
深田。
「やっぱり学生生活っていいものですね。高校3年の時にこの世界に来てから、すっかり忘れてました。こんな気持ち」
「だよな。俺も学校の空気に触れていると、こう生気が漲ってくるというか。リアル学生時代にはこんな気持ちは感じてなかったよ。
何ていうか、一言で言うと…」
「一言で言うと?」
「え、えっと……青春」
言っちまったよ。齢26にして青春という言葉を口に出しちまった。家電屋でいる頃には、青春どころか既に白秋の到来すら感じて
いた人間が、よくもまぁ言えたものである。
「青春ですよねぇ」
「青春だよなぁ」
しみじみと青春を噛み締める俺達。
2971:2005/04/09(土) 00:26:56
ん?ちょっと待て。何かおかしい。っていうか、2人ともすっかり現状に満足している。魔族の調査を二の次で学生生活及び用務員
生活を満喫しまくっているではないか。やばいよ、やばいよ。
「深田さん、俺らこんなことしてる場合じゃないよな」
「ですね」
俺達は現実に戻った。
「それじゃ、仕事があるから」
うなだれてモップ掛けに戻ろうかと階下を見下ろした俺は、造形美すら感じさせるピッシリリーゼントヘアを見た。あれは副学園長
の生瀬ではないか。毎日この時間は図書館にいるが、彼を見るのは初めてのことだ。
「どこに行くつもりだろう?」
要注意人物の一人だ。見逃すわけにはいくまい。
「ハットりますか?」
深田は生瀬に目をやったまま提案した。
「ハット…る?」
未知の言葉だ。
「忍び足で尾行するんです」
「ああ…なるほど。ハットリか…」
微妙だ。
俺達はコソコソと、かつ急ぎ足で階段を下りて生瀬の後ろに付いた。書棚の影に隠れながら、やたら早歩きの生瀬に距離を離されない
ようにハットる。一体幾つの棚に隠れただろうか、広い図書館の壁際で生瀬は歩を止めた。他の棚から離れて、一つだけ書棚が壁に密
着している。見るからに怪しさ爆発だ。キョドりながら周囲をギョロギョロ見回した後、生瀬は書棚に手を触れた。すると、来た!来
ましたよ!お約束。棚が回転式扉になっており、彼はそこに吸い込まれるように消えていった。
俺達は顔を見合わせ、互いの意思を確認して頷きあった。いざハットり続行。俺は気付かれないように少し間を置いて、生瀬が手を触
れた位置に自分の手の平を置いた。扉が回転する。深呼吸を一つして、俺は暗闇に足を踏み込んだ。
                                                          続く
298Mr.名無しさん:2005/04/09(土) 00:51:03
乙。ハットる、ワラタ。
今日はここまでか?
2991:2005/04/09(土) 00:54:37
ハットるでぐぐったら同じよう意味のが出てきたorz

今日はここまで。
300Mr.名無しさん:2005/04/09(土) 00:56:03
おやすみ〜
301Mr.名無しさん:2005/04/09(土) 01:08:31
このままのペースでいくと1000埋まる前に容量オーバーするぞw
302まとめサイト:2005/04/09(土) 19:42:49
http://www.geocities.jp/nerumae_imageland/index.html
とりあえず、こんな感じで。要望なんかはサイトの方にお願いします。
前スレ963-966、協力感謝です。
303Mr.名無しさん:2005/04/09(土) 21:14:43
>>302
乙。
304Mr.名無しさん:2005/04/09(土) 21:37:36
>>302
GJ!
305Mr.名無しさん:2005/04/09(土) 22:07:30
>>302
乙。
306Mr.名無しさん:2005/04/09(土) 22:20:19
>>302
ナイスまとめサイト!
でも、改めて最初のころの>>1レスを読むと今と違いすぎでワロスwww
甜歌とセクースする展開はもう想像できんな。
307Mr.名無しさん:2005/04/09(土) 23:36:43
>302
禿しく乙です
308Mr.名無しさん:2005/04/09(土) 23:37:49
次スレのテンプレにまとめサイトのURLをいれようぜ。
3091:2005/04/10(日) 00:15:31
第20話(前半)
「それにしても、どこまで続いているんでしょうねぇ」
深田が緊張感を微塵も感じさせない、お馴染みのもっさりとした口調で呟いた。
図書館の隠し扉をくぐり長い階段を下りた俺達は、地下通路を歩いている。通路は人一人が通れるくらいの幅なので、俺が先に歩き、
深田がその後ろにつく形になっている。
先に白状しておくと、実は俺達は既に生瀬を見失っている。と言うのも、勇んで扉をくぐった俺は、浅薄にもその先が段差などとは想
定しておらず、勢い余って階段から落下してしまったのだ。しかし、全く当てもなくあるいているわけでもない。通路の床は土砂が堆
積していて、そこに生瀬の靴跡がしっかりと残っている。それを深田が照明魔術で照らしながら、トボトボと追跡しているのである。
「生瀬は一体ここで何をしているのかな」
「さぁ、こっそりリアルドールでもコレクションしてるんですかね」
「リアルドール…」
俺は生瀬がリアルドールを愛でている姿を想像した……意外とあり得る。いやバッチリ所持していそうだ。深田が何故リアルドールな
んてて語句を知っているのかは、この際追求すまい。
気を取り直して尾行続行。しばらく暗い通路を進んでいくと、狭い路が途切れ開けた場所に出た。
「広っ!」
俺は立ち止まって前方を見回した。眼前に広がっているのは、ちょっとしたドーム球場くらいはある広大な空間だ。空間には結構な数
の石室が点在している。俺はその内の一つに近付き、ぐるりと周囲を歩いてみた。約3m四方の石室は扉を一つ備えており、ビッシリ
と文様や文字が刻まれている。
「これは…」
「玄室みたいですね。わたしの推測ですが、どうやらこの広大な空間はカタコンベに思えます」
「オノマトペ?」
いや、全然違うし>>俺。
「カタコンベです。一文字として一致していませんが」
そら指摘された。
「スマソ」
詫びながら、俺は期待通りのレスに快感を覚えた。
3101:2005/04/10(日) 00:15:53
カタコンベとは地下墳墓のこと。文様には眠る人や降臨する天使が描かれていることから、あながち外れでもないらしい。すると、この
石室の向こう側には遺体が安置されているのだろうか。
「でも、何でこんな場所に?」
俺は首を捻った。しかしその答えは深田の口からではなく、
「ここはかつてのこの地域の王族が葬られている墓地」
不意に響いた声によってもたらされた。
「誰だ!?」
声がした方向に目をやる。暗がりから人影が徐々に浮かび、昼間出会った上原が姿を現した。
「上原…さん?」
「また会いましたね」
彼女は小さく笑った。俺はつい口元が緩んでしまう。
「奇遇だなぁ。でも、どうして上原さんがここに?」
「図書館で本を探していると、あなたの姿が見えて、つい追いかけてしまったの」
「あの、どちら様ですか?」
深田が俺に問う。ほんの一瞬だが、眉をひそめた気がした。
「上原さんって言って、治癒魔術を専攻している学生さんだよ」
「へぇ、とても仲がよろしそうですねぇ」
深田は微笑をたたえている。
「え、そうかな。今日会ったばかりなんだけど、そう見えるかな」
「そう見えます」
深田は依然として微笑をたたえている。
「参ったなぁ」
「何を参っているんですか……不ュ…ィです」
深田はまるで石膏で固めたように同じ微笑をたたえている。二言目が小さくて、よく聞き取れなかった。
「ふゅ……何?」
「何でもありません。そんなことより生瀬さんを追いましょう」
深田は微笑をたたえている……はずだ。”はずだ”という表現を使ったのは、言い捨てるや、彼女はさっさと俺の前に出て歩き出してしまっ
たからだ。ヤバイ。乏しい女性経験で培われた俺の第六感が警告した。さっきの微笑はいつもと違う。こんな深田を見るのは初めてだ。これ
以上彼女に話しかけるのは危険だ。
「生瀬さんって、副学園長のこと?」
上原が俺に問いかけた。
3111:2005/04/10(日) 00:16:22
「うん。話せば長くなるんだけど…」
「口軽過ぎですから」
迂闊に事情を説明しようとした俺を、深田が遮った。こちらを振り返ることなく。
「あの、私帰った方が…いいのかな」
上原が困ったように見つめる。
「そうだな。いや、別に上原さんを嫌ってるとかそんなことはないんだよ。でも、この先は危険そうだし…」
俺は言葉を選びながら上原を帰そうとする。魔族と遭遇する危険がある以上、少なくとも彼女はここにいないほうがいい。
その時、背後でゴリゴリと石が擦れる音がした。後ろを振り返った俺は言葉を無くした。玄室の扉が少しずつ開いていく。
                                                            続く
3121:2005/04/10(日) 00:18:06
>>302
烈しく乙&トンクス。俺の妄想をまとめてもらって申し訳ない。
313Mr.名無しさん:2005/04/10(日) 00:33:05
>>312ワロス
そうだよな。元は1のただの妄想なんだよな・・・
携帯からもチェックしている俺がいるのに。
3141:2005/04/10(日) 01:01:21
きょうはここまで。
315Mr.名無しさん:2005/04/10(日) 05:53:14
>>302
GJ!
>>1
イイヨイイヨー
316Mr.名無しさん:2005/04/10(日) 12:26:26
生瀬の読み方は、『うぶせ』でいいの?
317Mr.名無しさん:2005/04/10(日) 12:34:07
>>302 GJ!!!
>>1 毒男じゃないけど毒男板で唯一チェックしているスレだ。期待してます
318Mr.名無しさん:2005/04/10(日) 14:24:38
>>316
なませじゃね?
319Mr.名無しさん:2005/04/10(日) 23:38:17
まとめサイトのカウンタ、えらい回ってるな。
このスレ見る限り、せいぜい10人くらいしか居ないと思ってたが。
ROMってる人がけっこう居るのかな。
3201:2005/04/10(日) 23:45:21
20話(後半)
玄室から現れたのは一体の木乃伊だ(キャラ設定は前に出た奴の色違い。今度は緑色。別にハムナプトラ見ているからでは
ない)。どこか日本の戦国時代を彷彿とさせる甲冑に身を包んでいる。木乃伊は目深にかぶった兜から漆黒に塗りつぶされ
た眼をのぞかせた。痩せ細った身体に反して、身がすくむほどの威圧感を感じずにはいられない。
「我が主の安眠を妨げる者に……」
君主を守るべく共に埋葬された兵なのだろうか。ゆっくりとした動作で鞘から刀を引き抜いていく。
「ひょっとするとかなりまずい展開なんじゃないか?」
急な追跡劇だった為、俺は俺専用異世界人専用聖剣を持ってきていない。深田も同じだ。
「ですね。生前は王の近衛兵だったでしょうから、相当な実力の持ち主だと思います」
深田が冷静に分析した。俺達は顔を見合わせて、再び木乃伊に目を移した。鞘から現れた刀は錆一つ無く、とても長い年月
を経ているとは思えない。
木乃伊剣士が口を大きく開いた。
「…死を与えん!!!」
怒号一声、猛ダッシュで俺達に突進してくる。かなりの勢いで。
「キターーーーーーーーー!!」
「逃げましょう!」
俺達2人は回れ右すると、脱兎の如く逃げ出した。敵は鎧で重武装しているので、何とか逃げ切れるだろう。このまま出口へ
まっしぐら。と思いきや妙な違和感……さっき確か”俺達2人”と書いたな。………あ。上原!俺達、上原のことをすっかり
さっぱり忘れてる!!
「くそ!」
急停止して振り返ると、案の定逃げ遅れた上原の前に木乃伊剣士が立ちはだかっている。俺は彼女を守ろうと駆け出す。
「間に合いません、どいてください!!」
駆け出した俺の背後から深田が叫んだ。振り返るより先に、魔力の集中を感じた俺は身を翻す。それを確認した深田が、木乃伊
に向けて爆炎魔術を放つ。こちらに大して無防備だった木乃伊は頭部に直撃を喰らった。
「上原さん!」
しかし、木乃伊は一度は身をのけぞらせたものの、すぐに体勢を立て直した。全く効いていないようだ。刀の切っ先が上原の胸
につきつけられる。
3211:2005/04/10(日) 23:45:53
「我が王とその領土を脅かすイキョウの者よ……貴様の侵略を許すわけにはいかぬ」
イキョウとはどういう意味だろうか。と、考えている間に木乃伊の刀は上原の胸に徐々に刺さっていく。俺は無意識の内に目を
覆った。そして、次に目を開けた時に飛び込んできた光景は、驚くべきものだった。
「く…さすがはマ…ゾ…」
胸を刺し貫かれながら、上原が木乃伊の顔面を鷲づかみにしている(アイアンクロー状態)。
「私Mっ気なんかないわよ」
上原は冗談のように言うと、まるで土くれでも握りつぶすように木乃伊の顔面を粉砕した。途端に木乃伊の身体は塵と化して散
った。上原は恍惚とした表情を浮かべている。唖然として彼女に見入る俺と深田。我に返た上原は、こちらを見て笑う。
「まぐれまぐれ♪」
「まぐれって…」
と、今度は他の玄室の扉が次々と開き、先ほどと同タイプの木乃伊戦士が十数体飛び出してきた。それらが同胞の弔いとばかりに、
一気に上原に襲い掛かった。あっという間に屍の群れに覆い隠される上原。しかし、一瞬閃光が走ったと思ったら、木乃伊達は木
っ端微塵に弾け飛んだ。またもや上原はこちらを見て笑う。
「まぐれまぐれ♪」
「いや、まぐれじゃないから。絶対ありえないから」
そう易々と騙されてたまるものか。
「やっぱり駄目か…」
上原は、主を無くしてまだ動いている木乃伊の腕を踏み潰すと、苦々しく吐き捨てた。
「余計な邪魔を。せっかく学園を舞台に謀略にはまる勇者様一行って設定まで作ったのに」
話が全く見えてこない。
「設定…どいうことだ?」
「鈍いわねぇ。私は魔族なの。魔族。わかる?マ・ゾ・ク」
上原が指を鳴らした。するといつの間にか俺達を取り囲んでいたガーゴイルが輪を狭めてくる。そのまま扉の開いた玄室に追い詰
められてしまった。
「経緯を説明している暇はないから、とりあえずコトが終わるまでそこに入っていてちょうだい」
決して話を膨らませようとして面倒になって急遽変更したわけではない急展開に戸惑いながら、俺と深田は光のない石室に閉じ込
められた。
                                                         続く
322Mr.名無しさん:2005/04/10(日) 23:53:11
>>1おつ!
3231:2005/04/11(月) 00:33:29
今日はここまで。
324Mr.名無しさん:2005/04/11(月) 01:02:08
まともな展開だがおもしろいな
325Mr.名無しさん:2005/04/11(月) 01:18:33
あまりに暇だったから転写男まとめサイトを久しぶりにみた

なんか急に泣けてきた

そんな日曜の夜


明日も早いからもう寝るよ… おやすみおまいら

よい夢を
326Mr.名無しさん:2005/04/11(月) 02:33:36
>>1は「妄想ファンタジー」という新ジャンルのパイオニアだ!
327Mr.名無しさん:2005/04/11(月) 17:18:43
絵師はもう来ないのかな
328Mr.名無しさん:2005/04/11(月) 19:35:08
剣で刺された上原の胸が気になる。チクビが見えるんじゃないかと思って
329Mr.名無しさん:2005/04/11(月) 22:55:40
CERO全年齢対象
330Mr.名無しさん:2005/04/11(月) 23:54:03
>>328
おまいさんが妄想すればきっと見えるYO!
3311:2005/04/12(火) 01:14:34
第21話(前半)
玄室の中の空気は冷たい。深田が照明魔術で辺りを照らしてくれているので、室内はほのかに明るい。正方形をした空間の中央に王の石棺が
安置されており、その周りには様々な装飾品や古い貨幣などが備えられている。
一体どれくらいの時が経っただろうか。俺と深田は、ここに閉じ込められた当初は脱出の方法を探ってみたが、扉はまるで溶接でもされたか
のように密閉されていて、壁も頑丈で崩しようがない。完全に閉じ込められたと気付いた今となっては、脱出方法を考え付くまでは、無駄な
体力と魔力を使わないようにと、壁によりかかって地面に座っている。
「そろそろ明かりがきれそうです」
深田が申し訳なさそうに呟いた。照明魔術を、さきほど唱えたのを最後に一時控えることで、彼女の魔力を節約することにしたのだ。
「うん。ありがとう」
俺は不安を押し殺して笑みを浮かべた。
ここに閉じ込められてから、俺達は今分かっていることについて整理してみた。上原は魔族で、俺達が学園内に侵入したことを察知していた。
そして俺に近付き取り入ることで、俺達を抹殺しようとした。しかし、このカタコンベのガーディアンである木乃伊は彼女を魔族だと見破り排
除しようとした。木乃伊が上原をイキョウの者と呼んだは、恐らく異境よりも異教という意味合いだろう。そして、彼らを一網打尽にしたこと
で馬脚を現したというわけだ。実力から見て、彼女がこの地域に棲息する魔族の長と見ていいだろう。
だが、まだ解らない事も多い。上原がこの学園に潜んだ真意は何なのか。俺達が街の情報屋の情報から推測していたのは、学園長選挙で立候補
者と結託することで、この大陸の魔術士を掌握するというものだった。仮にそうだとすれば、上原は岸部、生瀬、そして陣内の誰かと契約を結
んでいるのだろうか。最も怪しいのは俺達がここに来る発端になった生瀬であるが、確証はない。それに、上原は去り際に”コトが終わるまで”
と言っていた。コトとは一体何を指しているのか。俺達を敢えて殺さずに閉じ込めた理由も気になる。幾ら急いでいたとはいえ、丸腰の人間を
葬ることなど容易なはず。
3321:2005/04/12(火) 01:15:15
「頭が痛くなってきたよ。伏線も無く、飛び飛びに事実だけが提示されていく。こんな滅茶苦茶で強引なストーリー書いてる奴がいたら、謝罪
と賠償を請求してやりたいニダ」
「同感ニダ」
深田が俺の真似をしてふざけた。こんな状況なのに思わず笑い出してしまう俺達。こんなに笑ったのは久しぶりだ。2人して大笑いしていると、
明かりが徐々に弱くなり、ついには完全に絶えて暗闇が訪れた。俺たちの笑みも消え、沈黙が玄室を満たす。
「…寝ますか」
「…そうしようか」
地面に横になって、目をつぶる。深田がすぐ側にいるとは言っても、墓の中で死者を横にして眠るだなんて、あまりいい気持ちがするものでは
ない。俺はうまく寝付けず、できるだけ楽しい妄想をしてイメージランドに入ろうと試みていた。
すると、
「日本ではどんな生活をしていたんですか?」
深田が質問をぶつけてきた。
「ん…そうだな。普通に朝起きて会社行って帰って飯食って寝て、でまた朝起きて会社行って…この繰り返しだったよ」
「楽しかったですか?」
「それなりに楽しかった…」
一度は適当に答えてみた。が、しかし、
「…ゴメン、ウソ。決して楽しいものじゃない。何となく就職して何となく仕事をして、何となく歳を取ってる感じ」
何故か本音を吐いてしまう俺。彼女の平常とは違うトーンの声を聞いていると、ごまかしてはいけない気がした。
「今は楽しいですか?」
つっこんでくるなぁ。
「うん。おかしな話だけど今は楽しい。勿論、日本に帰りたいってのが一番の願いだよ。でも、なんていうか、その過程としての今がとてもかけ
がえのない時間に思える」
まるでゲームか妄想の産物にも見える世界に入り込み、深田や甜歌、平井と一緒に旅をしている。この異常な現状が、至上の幸いに思える自分がいる。
深田が口を閉じたので、質問攻めは終わりと判断する俺。
3331:2005/04/12(火) 01:15:59
ところが、
「あっちの世界に付き合っている人はいるんですか?」
油断していた所に、いきなり強烈な右ストレートを喰らった。
「え!!……い、いないけど…」
「そうですか」
再び静けさが戻った。胸を手の平で押さえると、鼓動はドクドクと鐘を打っている。
そこに深田が一言。
「くっついて寝ませんか?」
俺は止めの一撃を喰らった気分。
「あ…お…」
言葉が出てこない。胸が心臓マッサージでもされたように圧迫され、身体が凍りつき、続いて自分でも驚くほどに、大量の汗が噴き出してきた。
「別々に寝てたら寒さで体力を奪われてしまいます。温め合えば少しでも違うはず。まぁ、お互いに肉布団になるって要領ですね」
「温め合う…肉布団…」
俺は暗闇をいいことに、手で股間を確認した。果たしてシメジ(1パック168円)が松茸(一本5千円)にクラスチェンジを遂げている。
そうしている間にも、深田がこちらに身体を寄せてくる。微かな吐息が首筋にかかり、衣服越しではあるものの確かに彼女の体温が伝わってくる。
「別にやましいことを考えているわけじゃないですから、安心してください」
深田は眠そうな声で呟いた。いや、そちらにその気なくても、こちらとしてはやましい行為に走らないでいられるかどうか。っていうか、誘ってい
るようにしか見えないんですけど。
(やばい…理性が……)
すぐ側で仏さんが見ていようといまいと、髭の中年配管工が主人公のゲームで4−2からいきなり8−1にワープするくらい間の行程を飛ばした
行為であろうと、そんなことはこの際スルーの方向で。俺は努めて自然な動作で、深田の肩に手をやった。彼女もそれを拒もうとしない。
(いざ出陣!!!)
俺が息を大きく吸い込んだ、まさにその時、今は懐かしスタードッキリ丸秘報告のタイミングで扉が爆破された(多分5回くらい角度を変えてリプレイ
されてスタジオで大爆笑が巻き起こってる)。
「おにいちゃん、恭子おねえちゃん、助けに来たよーーーー!!」
慌てて身体を離した俺達の前に、甜歌が飛び込んできた。
                                                            続く
3341:2005/04/12(火) 01:16:48
今日はここまで。
335Mr.名無しさん:2005/04/12(火) 01:25:06
くわあああああああ!!!!!!!!!
いいとこでえええええええええ!!!!!!!!!
336Mr.名無しさん:2005/04/12(火) 04:00:38
絵は描けるけど描かないほうがスレのためだと思ってる
>>1
今回も(・∀・)イイ!!
337Mr.名無しさん:2005/04/12(火) 06:31:36
>>1おつ。
このスレ常駐してるの何人だろ。
こんなノリノリのライトノベルを少人数で独占してるのも
贅沢だよなあ。
338Mr.名無しさん:2005/04/12(火) 07:58:56
正直、勃起した
339Mr.名無しさん:2005/04/12(火) 09:03:08
ノシノシ 常駐組
340328:2005/04/12(火) 15:53:51
見えた!オーキッドピソクでした
341Mr.名無しさん:2005/04/12(火) 16:23:18
>>340
(´・ω・`)omedetou.
3421:2005/04/13(水) 01:26:16
第21話(後半)
「て、甜歌、俺達がここに閉じ込められてると、よくわかったな」
そう言う俺の眼は、禿しくキョドっている。
「メチャクチャ心配したんだからね!ウチが方々探してたら、稲垣さんが、おにいちゃん達が地下室に入っていくの見たって教えてくれたの」
稲垣に感謝しながら、もうちょっと時間を稼いでくれていればよかったものを、と恨めしく思ったりもする。
「深田さん、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
深田は、先ほどの大胆な行動など、まるで夢の出来事だったとでも言うように、一切そんな素振りを見せない。一体彼女の真意はどうなのだろうか。
ようやく立ち上がった俺達に、甜歌が布に巻かれた棒状のものを差し出す。布を剥いでいると、俺専用異世界人専用聖剣と異世界人専用ロングソードが
姿を現した。
「甜歌…」
「やっぱ2人はこれがなくちゃ決まらないでしょ」
「ありがとう」
俺は礼を言うと、甜歌の手から剣を受け取った。ここしばらく感じていなかった感触。彼女が言うとおり、やはり俺はこいつがないと始まらない。深田
に目をやる。同じく剣を手に取った彼女も同様の気持ちらしい。
剣を鞘に収めると、俺は、深田と甜歌に向き直る。
「上原を止めないと」
「上原って、おにいちゃんを助けてくれた、あの?」
「そうだ。上原がこの学園に異変をを起こそうとしている」
「どういうこと??何が何だかさっぱりわからないよ!」
甜歌は混乱して目を回しそうな勢い。だが、それはこちらも同じ。俺達も状況を完全に把握しているわけではない。ただし、やるべきことは定まっている。
「事情は後で説明するから。今は上原を探すのが先決だ」
「おにいちゃんに任せるよ…」
「よし、行こう!!」
勢いよく玄室から駆け出す俺。
「おうわっ!!」
その途端、何者かと思いきり衝突した。俺は転んで、腰を地面にしたたかに打ちつけた。
3431:2005/04/13(水) 01:28:06
「いてて…こんな場所に一体誰……あああ!!生瀬!?」
「何だね、君は急に飛び出してきて。しかも何で呼び捨てなんや。まぁいい。失敬するよ」
生瀬だ。俺は深田と顔を見合わせた。自分達がこの地下墓地に入る発端となった男が目の前に立っている。っていうか、このまま見逃すわけにはいかない。
「ちょっと待ってください、副学園長。こんな所で何をしていらっしゃるんですか?」
「何って…君らの知ったことじゃない」
「上原と関係あるんじゃないですか?魔族の上原と」
「な、そ、んなことあるかいな!上原って誰やねん。聞いたことも無いわ!」
怪しい。語尾にビックラメーションマークを付けて必死に否定するあたり、実に怪しい。俺が訝しげな表情をしていると、甜歌が、生瀬が来た方向を指差して、
「ひょっとしてこっちに何か隠してあるんじゃない?」
「何もない。断じて何もないよ」
と生瀬。
「え〜、本当にぃい?」
「ないってゆうとんのじゃぁあ、われ糞ガキがぁぁあああ!!」
絶対何か隠している。生瀬の過剰な反応から判断して、何も無い方がおかしい。
「うわ〜ん、このおじちゃん怖いよ〜」
泣きついてきた甜歌の手を取り、生瀬を横にかわすと、俺はその先にあるものを見定めるべく進んでいく。
「ちょっと待てや!!」
ズカズカと歩いていく俺達の背後から、生瀬は攻撃魔術を繰り出そうと魔力を練る。副学園長の地位にあるだけあって、腐っても高位魔術士の肩書きは伊
達でないわけだ。しかし僅かな隙をついて、生瀬の首筋に剣の刃が当てられる。
「案内してもらえますよね♪」
生瀬に剣を突きつけながら、深田がにっこり笑った。
「…わ、わかった。わかったから、はよ剣下ろせ…」
彼は神妙な態度になって、俺達をカタコンベの深部へと導いていく。
3441:2005/04/13(水) 01:28:49
しばらく進んでいくと、整備された通路は終りを告げ、天然の洞窟に変わってきた。曲がりくねった道を抜けた先に明かりが見えてきた。近付いていくと、
そこは10畳ほどで天井が高い空間になってるのが確認できた。空間に入り、数本の燭台の明かりによって浮かび上がる光景を前にして、俺は愕然とした。
濃い紫色をした楕円形の物体が5本、地面から僅かに浮いて存在している。その中でも中央に位置する物体は、ゆうに5mはあろうかという高さだ。深田
と甜歌も俺の側に並んで、揃って物体を見上げる。
「これは…」
俺は後ろに佇む生瀬の顔を見た。しかし、彼はさきほどのもの凄い剣幕とは打って変わって、人形のように無表情。
「異空間転送ゲート」
答えは生瀬の肩越しに響いた。姿を現したのは上原。その両翼を固めるように、岸部と陣内が、生瀬と同じ感情を感じさせない表情で付き従っているでは
ないか。
「あなた達に記念すべき魔族召喚ゲートの開通式を見せてあげるわ」
上原は端正な顔を崩すことなく、冷ややかな笑みを浮かべた。
                                                                  続く
345Mr.名無しさん:2005/04/13(水) 01:56:13
今日もいいとこで・・・・!
3461:2005/04/13(水) 02:01:42
今日はここまで。
347Mr.名無しさん:2005/04/13(水) 02:13:36
地下室に入っていくのを稲垣が見られてるのかよw
もはや隠し通路でもないな
348Mr.名無しさん:2005/04/13(水) 02:15:48
生瀬はあのキャラ設定か
349Mr.名無しさん:2005/04/13(水) 04:27:01
アツくなってまいりましたよ
350Mr.名無しさん:2005/04/13(水) 21:17:27
上原タソのオーキッドピンクがオレの目の前に!
351Mr.名無しさん:2005/04/13(水) 23:32:39
>>350
何事も無かったように服元通りになってるんじゃね?
ラノベだし
352350:2005/04/14(木) 00:11:07
>>351
ラノベって何?教えて
353Mr.名無しさん:2005/04/14(木) 00:21:36
ライトノベルの略称であることも調べられないお前はダメ人間
354Mr.名無しさん:2005/04/14(木) 00:55:07
口は悪いが優しいヤツです。
3551:2005/04/14(木) 02:14:34
第22話(前半)
「そもそも私がこの学園に入り込んだのは、高い魔力を持つ者が一同に会しているから」
上原は、直立不動で立つ岸部達3人を手で示した。
「特に彼らはこの学園の頂点に立つだけあって、体内にかなりの魔力を蓄えている。彼らに取り入るのは簡単だったわ。人間の、特に
男ほど懐柔し易い生き物はないわね」
そう言う彼女の表情は、不気味な色気を含んでおり、俺は戦慄した。ともすれば、自分が彼らと同様に操られる羽目に陥っていたからだ。
「じゃあ、何故私がこの3バカの魔力を必要としたのでしょうか?」
上原は指を鳴らした。それに呼応して、岸部達3人は意思のない人形のごとく、上原の指示に従い中央に設えてあるゲートを取り囲んだ。
そして、一斉に両腕を胸の前に突き出し、魔力をそれに注ぎ始める。
「魔族召喚ゲートを開く為に莫大な魔力が必要だった…」
俺は眉をしかめて、上原の問いに答えた。
「うーん、85点ってところね」
再び上原が指を鳴らす。すると中央を除く4つのゲートが光り、中から4体のレッサーデーモンが現れた。茶褐色の身体に蝙蝠の羽を背
負い、狼を凶悪にしたような顔つきをしている。
俺はうんざしてい、もう一度答える。
「中央の馬鹿でかいゲートだけを開く為に莫大な魔力が必要だった、ってことか」
「正解!」
この街の周辺には、以前から中級程度の魔物が跋扈していたので、小型のゲートは早い内から完成していたのだろう。問題は真ん中に鎮
座ましましている冗談のような大きさをしたゲートだ。学園のトップ3の力を持ってようやくこじ開けられるこの扉。どれほどの魔物を
呼び寄せる能力を持っているのか。想像しただけでオラ何だかワクワクして、いる場合ではない。
「悪いけど、そうはいかない。君を止めてみせる」
3561:2005/04/14(木) 02:14:57
鞘から抜いた俺専用異世界人専用聖剣を構え、俺は上原を見据えた。深田と甜歌も臨戦態勢を取る。
「ダメダメ。あなたとオチビさんの相手をするのは、この子達よ」
レッサーデーモンが2体ずつ、俺と甜歌の前に立ちはだかる。
「甜歌、落ち着いて対処しようぜ」
「おにいちゃんこそ震えてるよ。2匹ずつだし、何とかなるんじゃない?」
甜歌は強いなぁ。全然物怖じしていない。俺は人見知りが激しいので、初見の相手はどうも苦手だ。
肝心の上原はというと、深田に歩み寄っていく。
「最初会った時から、あなたとやってみたかったの」
「わたしと?」
深田は怪訝な顔。
「…少し語弊があるわね。兼ねてから噂で聞いていたあなたとやってみたかった。有田と関係を持ったあなたとね」
深田の動きが止まった。それに反応するかのように、異世界人専用ロングソードの刃色が瞬時に漆黒へと変化した。思い返すとフィカブ
ーと戦った時も剣はこの色だった。剣が備えている属性変化能力により、対魔特攻武器に変貌したと見て間違いあるまい。それにしても
有田とは何者だろうか。
上原は俺がいる方向に視線をやり、微笑を浮かべる。
「あら、ひょっとして彼には知られなくなかったのかしら?」
問い掛けに対する深田の回答は神速の剣撃。一瞬にして間合いを詰めると、上原の胸めがけて剣を振り下ろした。しかし、そこは魔族。
紙一重で身を翻してかわし、深田の腹部に拳打を連続で叩き込む。
「くぅ…」
か細い腕から放たれた打撃は、見た目に反して強烈な威力。大きく吹き飛ばされた深田は、辛うじて踏みとどまった。しかし、ダメージ
は大きく、彼女の口から吐き出された血が床を濡らす。
「図星だったようね」
「深田さん!」
深田に向かって叫ぶ俺。
「よそ見は禁物よ」
3571:2005/04/14(木) 02:15:17
気を取られている俺の鼻の先を、レッサーデーモンの図太い爪がかすめた。2体のレッサーデーモンは素早い動きで俺に続けざまに攻撃
をしかけてくる。先にこちらを片付ければ話にならない。甜歌は2体のデーモンの攻撃を巧みに避けながら、魔術を放つ機会を伺ってい
る。あの歳であれだけ戦い慣れしているのも、どうかと思う。
2体のレッサーデーモンに手一杯の俺をよそに、上原は腹を押さえて肩膝をつく深田を見下ろしている。その顔が俄かに曇り、次いで何
かに気付いた。
「あ…まさかとは思うけど、私、大事な部分を殴っちゃった?」
依然として腹部を庇いながら、深田は鋭い目で上原を睨み付けた。                              
                                                          続く
3581:2005/04/14(木) 02:28:38
今日はここまで。
359Mr.名無しさん:2005/04/14(木) 02:31:13
待ってたぜ!>>1
有田かよ!出てくるのかよ!
360Mr.名無しさん:2005/04/14(木) 02:46:55
いやもう>>359に禿同www
361Mr.名無しさん:2005/04/14(木) 17:57:35
しかしレス少ないのによく書いてるなw
362Mr.名無しさん:2005/04/14(木) 21:42:29
>>361
>>1は、書くこと自体の楽しさを味わいながらやってんだと思うよ。
一昨日より昨日、昨日より今日と、日増しに上達してる。
最初はよかったのは勢いとノリだけだったんだけどなー。
既存のものを踏まえた上にだけど、それなりに読ませ方を心得てきている。
363Mr.名無しさん:2005/04/15(金) 04:40:58
・・・・・>1が来ない
今日は休載か・・・・
仕事が忙しいのかな?
それとも新人の歓迎会でもあったのだろうか?
364Mr.名無しさん:2005/04/15(金) 06:47:28
昨夜はなぜかカテゴリ雑談のどの板にも接続できなかったから
サーバが落ちてるのかと思ったが、違うの?
3651:2005/04/15(金) 15:12:47
第22話(後半)
「意外とあっけなかったね、おにいちゃん…って、あれ?」
黒焦げになったレッサーデーモン達を前に、甜歌が俺に呼びかける。しかし、こちらはそれどころではなく、かなりの勢いで苦戦モー
ド。幾らレベルアップしたとは言え、相手は悪魔の眷属が2体。下級などと冠しているが、リザードマンやロッティングコープスみた
いなそこらの魔物とは強さの桁が違う。俺はこの世界に来て間もない頃、これらの数段格上のグレーターデーモンを倒すことに成功し
た。しかし、あれはあくまで天文学的確率の上に偶然成り立った奇跡的なクリティカルヒットがあってのこと。いつもいつも、そうう
まく事が運ぶはずがない。
「おにいちゃん、待ってて。今そっちに助けに行くから!」
「おお、甜歌スマソ!」
敵の攻撃を受け流しながら俺が甜歌の方を向いた、まさにその時だ。よそ見しながら振った剣の切っ先が、レッサーデーモンのひどく
繊細で、まるで赤ちゃんのお腹のように脆弱な部分にヒットした。
「あら?」
甲高い悲鳴を一声上げて絶命するレッサーデーモン。
「おにいちゃん、危ない!もう一匹が!」
「マジか!?」
甜歌の警告に仰天して後ろを振り返った俺。その際、逆手に握った剣が、背後から襲い掛かろうとした残りのレッサーデーモンの、これ
またとても敏感で中学生時代の甘酸っぱい思い出に匹敵するほど触れられたくない部分に、突き刺さった。俺はこれはラッキーとばかり
にそのまま切り裂く。結局、甜歌が助けに来るまでに2体とも倒してしまった。ナイス俺。手放しに嬉んでいいのか微妙だが、まぁ、勝
ったもん勝ちということで。そんなことよりも深田が心配だ。
「深田さん、今助太刀に行くぞ!」
助太刀ってw
「わたし一人でやれます」
「何無茶なことを…」
実力差は明らかだというのに。
「やらせてください」
3661:2005/04/15(金) 15:13:08
見かけとは裏腹に、どうしてこう強情なのか。俺と甜歌はやむなく様子を見ることにした。
気力で何とか立ち上がった深田。上原に向けて突進するも、ダメージが大きいのか、最初見せた勢いはない。上原は全ての攻撃を軽くい
なし、隙をついて容赦なく連続攻撃を叩き込む。
「有田が惚れた女だからどんなものかと思えば、この程度とはね。正直失望したわ」
苛立たしげに吐き捨てる上原。またもや腹部に蹴りをまともに喰らった深田は、身体を海老のように曲げてもがき苦しむ。上原はわざと
腹を狙っているのだろうか。そういえば、さっき確か”大事な部分”と言っていたが。あれと関係があるのかもしれない。
「あなたの抱いている運命ごと掻き消して上げる。感謝するのね」
上原の左腕に強大な魔力が集積していくのが、はっきりと感じて取れる。
「お別れよ」
勝ち誇った表情で別れを告げる上原。一方の深田はと言うと、この事態だというのに彼女の方を見ておらず、少し様子がおかしい。
「駄目……駄目よ…」
独り言だろうか。自分の腹部に目を落としてブツブツと語りかけている。
「深田さん!しっかりしろ」
「動いてはダメ…」
言葉が途切れた。上原の手の平から禍々しい魔力の衝撃波が放たれた。
「深田さん!」
助けに入ろうとしたが時既に遅し。どす黒い波は地面をえぐりながら、深田を飲み込んだ。が、波が止んだ後には微動だにしていない深
田の姿が。あれだけの衝撃波の直撃を受けたのにどうやら無事のようだ。所々衣服が破れてこそいるが、顔はいつも通りのほほんとした
捉えどころのない笑顔。
「深田さん。大丈…」
一度はほっと胸を撫で下ろした俺だが、すぐに言葉を飲み込んだ。彼女の浮かべている日常的な笑顔。この危機的な状況において表れた
それはあまりにも異常で、そして何より危険なものに映る。それを証明するように、深田の首筋、手首、身体、そして顔、露になってい
る部分の血管がくっきりと浮き上がっていく。
「おねえちゃん、どうしちゃったの?」
「わからない。だが、彼女の体内で何かが起こっている…」
俺と甜歌は、ただただ見守るしかない。
上原は深田の状態を見て、満足したように口元を緩めて言う。
「いい顔になったわ」
深田は剣答える。
「いきます」
3671:2005/04/15(金) 15:14:20
異世界人専用ロングソードの刃が黒く光った。
一撃で決めるつもりだ。戦歴の浅い俺にも分かる。深田の口調は、断じて強がりやハッタリの類ではない、他ならぬ確信から生まれた
ものだ。何故かは解らないが、語調からは確かな根拠が汲み取れる。
俺は息を呑む…………暇も無かった。動きをこの目では捉えることができなかったが、気が付くと深田と上原の立ち位置が入れ替わっ
ている。一瞬の間に起こった出来事を把握できず、俺は思わず甜歌と顔を見合わせる。
「甜歌、見えた?」
「いや、ウチも全然見えなかった…」
既に決着はついている。俺達外野が固唾を飲んで見守る中、先に口を開いたのは上原。
「あなたは自分で、その身体の中の運命と共に歩くことを選んだ。もう引き返せないわよ?」
「…わかっているわ」
苦悶の表情を浮かべながら深田が答えた。浮かんでいた血管がゆっくりと元通りに消えていく。
「そう……有田によろしくね。さようなら」
頸部から鮮血の飛沫を上げて、上原は倒れ伏した。
                                                         続く
368Mr.名無しさん:2005/04/15(金) 15:25:24
>>1よ…
お前ネ申だよ…ストーリーの良さに震えるぜ…
369Mr.名無しさん:2005/04/15(金) 16:55:35
なにこの展開。マジで震えがくる。
370Mr.名無しさん:2005/04/15(金) 19:45:46
深田のお腹には有田との赤ちゃんがいるのだろうか。
毎日毎日寝る前にこんな妄想をして、>>1も大変だな。
371Mr.名無しさん:2005/04/15(金) 19:53:59
>>370
言っちゃったよw
372Mr.名無しさん:2005/04/15(金) 22:49:46
最初は前シリーズの方が好きだと思っていたが、今シリーズもイイ!GW特番まで引っ張って欲しい
3731:2005/04/15(金) 23:32:19
第23話(前半)
結局、上原の目的は学園地下に巨大魔族召喚ゲートを作り、学園トップ3の魔力を注いで、それを開通させることだった。その為に、
怪しまれにくい学生として学園内に潜り込み、岸部達に取り入ったというわけだ。誰をも魅了する端正な顔立ちに、俺も危うく騙さ
れるところだった。
上原が死ぬと、岸部、陣内、そして生瀬の催眠は解けた。3人とも衰弱して気を失ってはいたが、命に別状は無かった。あのままゲ
ートに魔力を放出し続けていれば、まず間違いなく3人とも今頃はカラカラの木乃伊だ。カタコンベから帰還後、魔族の存在が明る
みに出て、彼らは揃って選挙への出馬を取り消された。魔術協議会の審問が行われ、魔族に意のままに操られるような人物は、学園
長として不適格と見なされたからだ。改めて候補者を募るらしい。
俺達はというと、戦いの後、警備室に魔族の存在していた事実と岸部らの居所を匿名で書置きして、そのまま学園を去った。魔族を
倒すという目的は果たしたわけだし、ここで目立つと何かと具合が悪いと考えたからだ。
そして今、もう夜も更けようという頃。ようやく平井と合流して、宿屋に併設している酒場で一息ついたところである。
「お疲れ様でした」
経緯を聞き終わった平井が、深々と頭を下げた。
「申し訳ない。留守番させて」
今度は俺が頭を下げた。
「いいえ、仕方ないです。僕には魔術の才がないんですから」
「堅のことだから、ウチらがいない間、どっかでコレでも引っ掛けてたんじゃないの?」
と甜歌。いつの間に、どこでそんな言い回しを覚えてきたのか。魔術学園の寮で悪い友達に影響されたのかもしれない。由々しき事
態である。
3741:2005/04/15(金) 23:32:41
「そ、そそ、そんな滅相もない。あ!そうだ。こっちもすごい情報を仕入れたんですよ!!」
引っ掛けてきたようだ。この焦りっぷりからして、間違いなく女遊びをしている。正直羨ましい。
「次の目的地ラミハで魔族の動きが活発化してきたんです。何でも既に街は占拠されて魔族の手に落ちているようです」
「まじかよ…」
「はい。ラミハの街を拠点にして、奴らは日に日に勢力を拡大しています。それに対して、国軍が大規模な掃討作戦を計画している
らしいです。事態は一刻を争う。早めに、できれば明日にでも出発した方がいいんじゃないでしょうか…深田さんはどう思います?」
一同、深田の方を向く。しかし、彼女は目線こそこちらを向いているが上の空だ。
「深田さん?」
「え……ああ、そうですね」
再度の平井の呼びかけに、心ここにあらずといった風のおぼつかない返事をした。
「(深田さん、どうしたんですか?少し様子がおかしい気がするんですが)」
不思議に思った平井が、俺に耳打ちをする。
「(ああ、色々あってね。)出発は明日の朝でいいと思うよ、うん。今日のところはもう寝ようか」
深田の胸中を察して、俺は早めに切り上げることを提案してみた。
「そうだね。色々なことがあって、何だか眠たくなってきちゃった」
甜歌は大あくびをして立ち上がった、
「了解です。おやすみなさい」
平井も部屋へと戻っていく。彼らの後について、寝室に向かおうとする俺の背後から、
「あの、ちょっといいですか」
と、声がかけられた。
「ん?」
振り返った先にいたのは深田だ。
「少し付き合ってもらえますか?」
ひどく思いつめた表情。
「何に付き合うんだ?」
「一緒に外を散歩してくれるだけでいいんです」
断る理由はない。俺は首を縦に振った。そして彼女と共に宿屋を出た。
                                            続く
375Mr.名無しさん:2005/04/15(金) 23:35:30
やった!リアルタイム
376Mr.名無しさん:2005/04/16(土) 00:00:08
>>1おつ
続きが気になるな
377Mr.名無しさん:2005/04/16(土) 10:27:17
ついにセックスか
3781:2005/04/17(日) 01:23:39
第23話(後半)
天頂の月が投げかけるのは、淡くぼやけた光。この時間になると街頭を歩いても、すれ違う人は少ない。
道路脇の街路灯が道を照らす。水銀灯はもちろん電球すら存在しない世界であるから、それではガス灯
なのかと思いきや、実は光源は魔力だったりする。毎夕、街灯魔術士が魔力をこめることで、きっかり
一晩、煌々と輝き続けるのである。魔術万歳。
俺と深田はこれといって会話を交わすでもなく、黙々と夜の街角を散歩している。俺は何を話していい
のかわからず、ただただ彼女の歩幅に合わせるて横を歩くだけ。深田はと言うと、少し肌寒いのか青い
外套に身を包んでおり、顔からはいつのもの柔和な表情は影を潜めている。
この気まずい雰囲気を打破する為には、何か会話を切り出さなければと思いつつ、なかなかタイミング
が計れないでいる。そうしている間にとうとう街の中央に開いている広場に突き当たった。
「少し座りませんか?」
深田がベンチを指差した。俺は頷いて、一緒にベンチに腰を下ろした。空を見上げてると、宝石箱を散
りばめたように星が瞬いている。これだけ多くの星は、去年の春に赤木町の牧場で見て以来、お目にか
かったことがない(商品を渡し間違えて夜10時位に届けに行った)
「星が綺麗だね」
月並みな台詞を言ってみた。
「そうですね」
深田が、久々に笑みを浮かべた。とても小さな笑みではあったけれど、俺は安堵を覚えた。しかし、そ
れも次の深田の言葉で、動揺に変わることになった。
「上原が言っていたこと、覚えてますか?」
「何のことだ?」
唐突な質問に、俺は上原戦の記憶を辿っていく。
「有田のことです」
「有田…」
3791:2005/04/17(日) 01:24:02
有田。そうだ。上原が会話の中で出した名前だ。”関係を持った”とか”惚れた女”だとか言っていた。
「有田はかつてわたしの恋人でした」
「!!」
出た。出ちゃったよorz 一番聞きたくなかった話だ。出来うることなら、耳を塞いでしまいたい。
「彼が魔族と知った時には、既に深い関係にはまり込んだ後でした」
さらに爆弾発言キタ━━━━━━━━ッ!!有田って魔族なのかよ。生粋の毒男にはこの手の色恋話は堪える。
「その後、彼は突然姿を消し、わたしはとり残されました。そして、最近になって原因不明の嘔吐を繰
り返す度、わたしの中で、ある一つの疑惑が次第に膨れ上がってきました」
さらにさらにやばい発言が来そうな悪寒。ああ、鼓膜破っちまいてぇなぁ。
深田は自分の腹に触れた。
「疑惑?」
「はい。でも今日の戦いで、疑惑は確信に変わりました……わたしのお腹には有田との子供がいます」
「!!」
やっぱり…キタ━(;´Д`);´Д`);´Д`);´Д`);´Д`)━!!
しかし、同時に俺は納得がいった。聖剣の洞窟での激しい嘔吐、学園図書館で読んでいた人間と魔族の関
係性を著した本。そして上原戦における彼女の異常な言動も、自身と母親を守る為に胎児が深田を一時的
に魔族化させたのだとすれば、合点がいく。心に引っ掛かっていたわだかまりがとれた。
「ごめんなさい、今まで黙っていて。でも、どうしてもあなたに聞いておいて貰いたかった」
「妊娠してるようには見えないけど…」
何を言っているんだ、俺は。デリカシーの欠片もない発言に、俺は自分の迂闊さを呪った。深田は困っ
たような顔をしたが、答えてくれた。
「ものの本によると、人と魔族の間にできた子供は、通常人間に見られるような妊娠の兆候を見せない
らしいです。お腹は大きくならず、そしていつ生まれてくるのかも分からない。1ヶ月で生まれること
があれば、50年経っても生まれないこともあるそうです」
3801:2005/04/17(日) 01:24:23
「そうか…」
深田に元彼とはいえ魔族の恋人がいたとは。っていうか、それくらい想像つくだろ>>俺。相手が魔族とい
うのは特殊ではあるけれども、深田ほどの女性が色恋と無縁の筈がない。俺ではあるまいし。しかし、そ
れを別にしても子供まで宿しているという事実。俺は愕然として言葉が出ない。モー娘の矢口ではないが、
裏切られたような感覚に陥ってしまう。彼女と付き合っているわけでもないのに。
隣の深田を横目で伺うと、彼女の瞳から水滴が累々と落ちている。
「深田さん…」
名を呼びかけたのとは裏腹に内心は”逃げ出したい”。とにかくこの場から逃げ出したかった。俺は時間が
解決してくれるのを待つかのように、唇を噛み締めるだけ。
「ごめんなさい」
深田は冗談みたいな量の涙を流して、ひたすら泣いた。ここまで感情を露出する彼女を見るのは初めてだ。
俺は彼女の肩を抱こうと右腕を伸ばしたが、いざ触れようという段になって、思いとどまった。その行動が、
自分の本音に正直なものではないと気づいたからだ。そこには、魔族の子を身篭った深田を嫌悪する自分が
いた。同時に、俺はそれよりも更に激しい自己嫌悪を抱いた。
「大丈夫だよ…深田さんは悪くない…」
上辺だけでその場しのぎの慰め。もう今までのようには彼女と向き合えない、そう思った。俺はやはり卑怯
で最低の男だ。
                                              続く
381Mr.名無しさん:2005/04/17(日) 01:30:16
キター!
これで安心して寝られる。
オヤスミ&乙 >1
382Mr.名無しさん:2005/04/17(日) 01:40:13
深田が魔族の子を・・・・なんてこったい!!!!!!!!
383Mr.名無しさん:2005/04/17(日) 01:45:04
>>382
てめぇ、わざとらしく驚きやがって・・・w
3841:2005/04/17(日) 01:49:42
今日はここまで。
385Mr.名無しさん:2005/04/17(日) 03:39:42
妄想の域を遥かに超えてるな。
386Mr.名無しさん:2005/04/17(日) 08:36:45
そのお腹の子が魔王だな
387Mr.名無しさん:2005/04/17(日) 09:27:05
いや、わからんぞ?
実は主人公が魔王だったっていうオチかもしれん。
388Mr.名無しさん:2005/04/17(日) 10:01:55
随分前から複線張ってたんだな
寝る前にする妄想とは思えん
これからも楽しみにしてるぜ!
389Mr.名無しさん:2005/04/17(日) 16:52:14
まとめページ管理人は仕事早いな
390定期コピペ:2005/04/17(日) 17:15:16
まとめページのURLをもっかい。

http://www.geocities.jp/nerumae_imageland/index.html

>>1の全ての妄想がここに!
3911:2005/04/18(月) 00:57:44
今日は何もしてないがここまで。
392Mr.名無しさん:2005/04/18(月) 01:05:26
えっ。。。

お、おつかれ >1
また余裕のあるとき書いてね。
393Mr.名無しさん:2005/04/18(月) 02:46:14
>>1
日曜日で本業の家電店が忙しかったのか?
慌てなくてもいいからまた続き書いてな。
気長に待ってるからさ。
394Mr.名無しさん:2005/04/18(月) 04:53:04
>>388
伏線
395Mr.名無しさん:2005/04/18(月) 11:35:15
そして>>1は姿を消した・・・
396Mr.名無しさん:2005/04/18(月) 23:05:45
少しはエロ分補給してほしいよ
3971:2005/04/18(月) 23:18:34
第24話(前半)                                        
そろそろ日が暮れる。
見上げた空はいわし雲が彼方まで群れをなし、産卵中の鮭の腹のごとく朱に染まっている。視界には、だだ
っ広い草原が広がるのみ。早朝、馬車でガシヒロの街を出発した俺達は、ラミハまでの道のりのようやく4
分の1程度を来た。所々で魔物の襲撃を受けたが、さして強敵ではなく、労を要することも無かった。
俺は、御者を務める平井の横で、ぼんやりと頬杖を突いて景色を眺めている。背中越しに幌の中から、深田
と甜歌が談笑しているのが聞こえる。女というのはつくづく会話が好きな生き物だ。
今朝、俺は深田に会うのが不安でならなかった。昨晩の失態が気にかかっていたからだ。嘘でも彼女の肩を
抱いてやるべきだったのではと。ところがどっこい、当の深田は、昨晩の取り乱しようはどこへやら、ケロ
ッとして挨拶をしてきた。その後の俺に対する態度も、これまでと変わった様子はない。俺はホッとすると
同時に、理解に苦しんだ。幾らポジ属性の彼女とは言え、あれだけの重大な告白をして平気なはずがない。
顔で笑って、心ではまだ泣いているのではないか。しかしながら、彼女はそんな感情はおくびにも出さない
から、こちらとしては尚更下手な勘繰りを繰り広げてしまうわけで。
そんな俺の思惑を乗せて、馬車は走る。
「そろそろ日が暮れますね」
平井が口を開いた。会話を交わしたのは、かれこれ1時間ぶりくらいだろうか。言葉は明瞭としていて、眠
気などこれっぽっちも催していないようだ。懐にブラックブラックガムかミンティアでも忍ばせているのだ
ろうか。
3981:2005/04/18(月) 23:19:00
うん。露営の場所を確保しないとな。にしても、平井は眠くないの?」
「ああ、僕はこれを噛んでますから」
平井は懐から薄っぺらい何かを取り出した。
「ブラックブラック烏賊(こんなの→ ttp://www.siokara.cjb.net/siobin/sio001/src/sa19711.jpg)」
うわ、烏賊かよ。ブラックブラックって付ければ、何でも眠気覚ましとしてまかり通るとでも思っているの
かと。そもそも黒くないし。っていうか、本当に烏賊ですか?それ。
「かなり刺激強くて、一気に目が冴えますよ。足一本分けてあげましょうか?」
平井は”それ”の足を、一本もぎろうとする。
「…ありがとう。でも、いいっす」
とりあえず遠慮しておいた。
それはともかく、元々露営は覚悟していたので、馬車にはある程度の食糧はもちろん、毛布類を積載してい
る。出発前に冒険者の為のレジャー情報誌ジャラソをめくった所、この辺りには宿泊施設はおろか、民家す
ら一軒として存在しないらしいからだ。
「ヤタ!キャンプ、キャンプ♪」
甜歌がはしゃいだ声を上げて、俺と平井の間から顔を突き出した。彼女の、何をするにしても、楽しんで事
に当たれる素質たるや見上げたものだ。
「キャンプもいいですけど、あそこに建物が見えますよ?」
今度は深田がひょっこり顔を出した。確かに目を凝らしてみると、小さな林に守られるように白い建物が見
える。
「行ってみましょう。一晩の宿を貸して貰えるかもしれない」
3991:2005/04/18(月) 23:19:28
平井は速度をやや上げて、謎の建造物目指して馬車を走らせる。甜歌には申し訳ないが、やはりキャンプを
するよりも、しっかりした屋根と壁がある中で寝たい。しかし、目標に近付くにつれ、期待は不安に変わっ
ていく。建物自体は円筒形のレンガ造り、円錐形の尖がり屋根を被っている。だいぶ年季の入った、という
よりも、かなり老朽化が進んだ建物のようだ。平井は建物の前で馬車を停めた。
「誰か住んでいるかもしれません。ノックしてみます」
自身の身長より少し高い扉を、平井はノックした。しかし返事はない。再度、今度は少し力を強くして叩くが、
やはり反応は返ってこない。
「誰も住んでいないのかな…あれ?」
彼が両手でノブを引くと、扉が軋んで開いた。俺達は顔を見合わせた。
「い、いきなり中に入るのは悪いんじゃないか?人が居たりしたらさ。こういう場合、とりあえず家の周りを
回ってみるべきだろう」
俺は冷静に状況を分析した上で提案した。決して臆したわけではない。決して。
手分けして建物の周囲を歩いてみることになり、俺は中庭を調べる為に建物脇の細い道を入って行った。か
つては生活の糧を生み出していたであろう、菜園らしきものが目に飛びこんできた。主を無くして久しいよ
うだ。壁にはめ込まれた窓ガラスも、所々ひび割れ、とても人が住んでいるようには思えない。そうして歩
いている内、俺は庭の隅でまだ新しいジャガイモの皮を発見した。水分を多分に含んでおり、少なくともそ
う時間は経っていなのではないだろうか。俺が疑問に感じていると、深田達が庭に入ってきた。
「どうやら廃寺院のようです。林の中に墓所がありましたから。でも大丈夫。壁が何かをぶつけた跡みたい
に所々崩れ落ちてて、墓所ではあちらこちらに意味不明の穴ぼこが開いてますが、これといって怪しい場所
はないようですね」
純度120%のミステリースポットじゃないか…
「ここに泊めて貰いましょう」
「マジで言ってるのか、深田さん…」
「ヤタ!廃寺院、廃寺院♪」
甜歌。ここ、はしゃぐところじゃないから。断じて。
4001:2005/04/18(月) 23:19:48
俺の第六感が告げるこの建造物の危険性、及びジャガイモの皮の事を深田らに伝えようとした、その時である。
「全員、動くな!」
頭上から怒号が響いた。屋根を見上げると真っ白な僧衣を羽織った女が、こちらを睨んでいる。彼女の手には
朱塗りの長柄武器。先端には斧と槍が合体したような刃が取り付けられている。
「そこから動かないでよ!」
そう言って、屋根に設けられている窓から、中に戻っていった。
「なんだろあれ……尼さん?」
俺は平井の方を見る。
「さぁ…」
3分ほど経っただろうか。勢いよく扉が開いて、先ほどの女が怒涛の勢いで姿を現した。年の頃は20代前
半だろうか。オカッパみたいな髪型が特徴的だ。唖然とする俺達を前に、両膝に手を突いて息を切らしている。
「ハァハァ…ちょっと待って、休憩」
ちょっと待ってみた。
「私はカエラ!墓盗人どもよ、成敗してくれる!」
カエラは、彼女の身長の1.5倍はある槍だか斧だかの切っ先を、俺の鼻っ柱に突き付けた。
                                               続く
4011:2005/04/19(火) 00:23:47
今日はここまで。
402Mr.名無しさん:2005/04/19(火) 00:34:22
乙!

ブラックブラック烏賊、怖…。
403Mr.名無しさん:2005/04/19(火) 00:47:40
カエラかよw
404Mr.名無しさん:2005/04/19(火) 01:06:05
今日の妄想は長いな。w
昨日お休みだったからサービスか?

なにはともあれ乙!>1
405Mr.名無しさん:2005/04/19(火) 06:27:40
きゃぁぁぁぁぁぁあぁぁ!
ブラックブラック烏賊恐いぃぃぃぃぃぃぃぃ!
406Mr.名無しさん:2005/04/19(火) 06:51:52
ほんとに烏賊なの?
エイとかでなくて?
407Mr.名無しさん:2005/04/19(火) 08:43:15
カエラって誰?
408Mr.名無しさん:2005/04/19(火) 08:46:16
新しい僧侶系の仲間なんだね
409Mr.名無しさん:2005/04/19(火) 09:25:17
写真のブラックブラック烏賊持ってるのは>>1なのか?
410Mr.名無しさん:2005/04/19(火) 14:26:24
411Mr.名無しさん:2005/04/19(火) 20:51:18
>>408
まだ分からんぞ?
魔王の仲間かもしれん。
412Mr.名無しさん:2005/04/20(水) 00:14:40
カエラとは、なかなかオツな人選だけど、人物描写が難しくなりそうだな。
4131:2005/04/20(水) 00:29:50
スマソ。今日も休載させてくれorz

>>409
どっかの掲示板で拾った。
414Mr.名無しさん:2005/04/20(水) 01:01:08
>>1オツ。またーり行こうぜ。
415Mr.名無しさん:2005/04/20(水) 22:10:42
無限と思われた>1の妄想力にもやはり限界があったか・・・
でも、まぁ、>1のペースで妄想してくれ。
俺達はただ待ってるだけだからさ。
416Mr.名無しさん:2005/04/20(水) 23:56:56
>>1
無理すんなよ。
春はいろいろと家電屋は忙しいだろうから。
推敲に時間をかけたいときもあるだろうし、
あくまで自分自身の楽しみとして書き込んでくれ。
俺たちのことは気にかけんでいいからな。
4171:2005/04/21(木) 00:37:33
第25話(後半)
「ち、ちょっと待った!俺達は墓泥棒なんかじゃないよ!」
思い出した。あれは確か、以前読んだゲームの攻略本に載っていたハルバートという武器だ。
「問答無用!」
カエラは俺に向かって、ハルバートで斬り付けてきたではないか。斧での一撃を、咄嗟に俺専用異世界
人専用聖剣で受け止める俺。彼女の細身からは想像も寄らない男顔負けの馬鹿力だ。俺が力を込めて弾
き返そうとすると、拍子抜けするほど素直に、圧し付ける力が消えた。と思いきや、間髪入れず今度は
槍での刺突が俺の胸部を襲う。俺ピンチ。しかし、あわやという所で深田の剣が槍を止めた。
「わたし達は本当に墓荒しじゃないんです」
「それじゃあ、何故こんな所にいるの?」
カエラと深田の力は拮抗しており、お互いに微動だにしない。
「理由を話すと長くなるので、できれば一度ハルバートを下ろして貰えませんか?」
「とか何とか言っちゃって、放したら反撃してくる算段でしょう」
カエラは至って懐疑的で、一向に力を緩める気配はない。
「そんなにわたし、ずる賢く見えますか?」
「見えるわ!あなたの天然顔の下に秘められた計算高い本性が」
なかなか優れた洞察力だ。深田なら、間違いなく反撃に打って出るだろう。
こうして、互いに引かない力比べに俺達が見入っていると、いつしか林の方から薄緑色をした気体が風
に乗って流れてきた。するとどうしたことか。それを吸い込んだカエラの目が俄かにとろんとしてきた。
「絶対、このお墓から…金品を…掘り出し……zzz」
彼女のハルバートを握る手から力が抜け、地面に大の字に倒れてしまった。側に寄って見ると、どうや
ら眠っているだけのようだ。
「寝ちゃったよ、この人。どうしたんだ…ろ…あれ…何だかウチも眠く……zzz」
4181:2005/04/21(木) 00:37:57
今度は甜歌が眠りに落ちてしまった。俺はさっぱり事態が掴めず狼狽するばかり。そうしている内に、
深田と平井もその場に倒れた。まさかと思い、俺は林を見据える。すると、林の中から黄緑色の奇妙な
物体が、宙を漂いながら墓に近付いてくるではないか。カンニングのデブくらいの大きさをしたその肉
の塊は、およそ緊張感のない浮き方で、身体中に無数に生えている突起物から、先ほどの黄緑色をした
ガスを噴き出している。恐らくは、あれが催眠効果を持っているのだろう。俺だけあのガスに耐性があ
るのだろうか。
俺は肉塊に斬り掛かろうと、足を踏み出した……が、力が抜けて地面に倒れこんだ。睡魔が俺達の身体
にまとわりついてくる。瞼を開いているのがやっとだ。別に耐性があるわけではなく、単に人より遅れ
て催眠ガスが回ったようだ。昔からクラスで一人だけ遅れて風邪に罹っていた俺だけに。
「くそ…」
その間にも、肉塊は2本の触手で墓を掘り起こして、副葬品の貴金属を体内に取り込んでいる。どうやら、
この魔物がカエラの言う墓泥棒のようだ。
隣で平井が眠っている。よく見ると、彼の衣服から紙包みがまろび出ている。あれは確か、
「ブラック…ブラック…烏賊……」
鉛を下げたように重い瞼を、精神力で見開きながら、俺は平井の元に這って行く。辛うじて彼の元に辿り
着き、紙包みを開く。中には例の烏賊状のものが。最後の力を振り絞って、それを噛み締める。足を一本
だけ噛むつもりが、勢いあまって頭から齧ってしまう俺……
*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
口内から鼻、さらに脳天へと雷のような衝撃が走った。俺を包んでいた睡魔は雲散霧消し、お目目パッチ
リ、頭スッキリ。でも口の中は地獄。ワクワクしてくるほど激辛。
余りの辛さに悪寒を覚えながら、俺は俺専用異世界人専用聖剣を構えて、例の緑の魔物に斬り付けた。あ
っさりと真っ二つに裂けた魔物は、体内から催眠ガスと今までに喰った貴金属を撒き散らし、まるで萎ん
だ風船のように地に落ちた。
俺は魔物と夥しい数の貴金属を見比べた。よくもまぁ、これだけの量が入っていたものだ。そうしている
と、深田達が目を覚ました。カエラだけはまだ眠ったままだ。
4191:2005/04/21(木) 00:38:19
深田が俺の隣に立つ。
「この魔物は金属を喰らうゴールドイーターみたいですね」
「どうやら、こいつがこの子が言ってた墓盗人みたいだ」
俺はカエラに目を移した。穏やかに寝息を立てていて、一向に起きる気配はない。
「どうしよう…」
思案に明け暮れる俺。その手が握る紙包みに、平井が気付いた。
「あ、僕のブラックブラック烏賊。なるほど、それで眠気を妨げることができたんですね」
そうだ。これがあった。俺は眠っているカエラの口元にブラックブラック烏賊の足を近づけてみた。すると、
彼女は寝ながらにして、烏賊に噛み付いたではないか。どうやら寝ながら食べる性癖があるようだ。
「辛っ!」
効果覿面。怒涛の勢いで目覚めた。寝起きバッチリのカエラは、俺の側に落ちている緑の魔物を凝視した。
「これは…?」
「こいつが君の言ってた墓盗人だろうな」
俺は辺りに落ちている副葬品の一つを拾い上げて、彼女に突きつけた。
「ご、ごめんなさい!私の早とちりで」
カエラは自分の頭を軽く叩いた。
「ハハハ、いいよ。無事、魔物を退治できたんだし」
まだ叩いている。
「わかったわかった、もういいよ。勝手に庭に入り込んだ俺達にも非はあったんだ」
まだ叩いている…と言うより殴っている。次第に力がこもって来た。っつか、ゴンゴン音してる。って、
おい!出血してきたぞっ!!
「わああああ!マジ大丈夫だから!!天地神明に誓って、君は全面的に猫の額ほども悪くないから!!!」
「本当に?」
まだ少なからず自責の念に駆られている様子。
「ああ」
カエラは手を止めた。どうやら精神が不安定になると自傷する癖があるらしい。ひょっとするとメンヘル
少女なのだろうか。
4201:2005/04/21(木) 00:38:56
何とか誤解を解いた俺達は、コロッと機嫌を変えたカエラによって、寺院内に招かれた。話を聞いてみると、
彼女はこの寺院に独りで住んでいる僧侶らしい。
「ここ一週間、毎晩寝ずの番を試みたんだけど、何故かいつの間にか眠くなっちゃうんだよね」
カエラは笑って言い放った。7日間も同じ手口に引っ掛かっていたのか…。
その後、カエラは自分がこの寺院にいる理由を話してくれた。つい3ヶ月ほど前までは、ここも通常の寺院
として機能していた。しかし、ラミハを占拠した魔族の影響で、この一帯に魔物が頻繁に出現するようにな
った。特に寺院は目の仇にされ、幾度も魔物の襲撃を受けたのだと言う。余りの襲撃の多さに、僧侶達はこ
の場所を去った。しかしカエラは独りでこの寺院に残り、魔物を撃退し続け、寺院を守ってきたのだと言う。
「ここを守れるのは私だけだから」
そう呟くカエラの表情は、どこか寂しげだった。こうまでして寺院を守る特別な理由があるように思える。
「あの、できればここに一晩泊めて頂きたいんですけど」
深田が、カエラに申し出た。そうだった。危うく真の目的を忘れるところだった。
「いいわよ。独りより大勢の方が楽しいし。出来ることなら何日でも居てちょうだい」
「そうもいかないよ。明日の朝にはまた出発するから」
「そうなの…ところで、どういう目的の旅を?」
「魔族退治!」
甜歌が自信満々に叫んだ。
「魔族って、ラミハの街の?」
「ん、ああ…まぁ、そうだけど」
「へぇ……よし!じゃあ、私も一緒に連れてって!」
「えええ!?」
「ここで待ってても事態は変わらないわけだし、どうせなら一緒に行って魔族を倒した方が早いわ」
一理ある。
「それにあなた達、見たところ、回復術あんまり得意じゃなさそうね。信仰心低そうだもの」
確かに。俺達は神を信じて助けを請うような純粋な人間ではないな。
俺や平井は問題外として、甜歌や深田は簡単な回復魔術を使用できる。しかし、魔術の範疇にある回復術
はあくまで簡易的なもので、神の力を借りる純粋な回復術のような強力な回復効果は得られない。
4211:2005/04/21(木) 00:39:43
「どう?お役に立てると思うけど」
カエラは俺の目を見つめた。不思議と引き込まれそうになる目だ。回復術のプロがいてくれれば、魔族と
戦う上で大分有利になるはず。俺はぐるりと深田達の顔を一巡して彼らの賛同を確認した後、頷いた。
                                             続く。
422Mr.名無しさん:2005/04/21(木) 00:44:51
新メンバーキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
423Mr.名無しさん:2005/04/21(木) 00:44:53
> クラスで一人だけ遅れて風邪に罹っていた
毒男の鑑だな
424Mr.名無しさん:2005/04/21(木) 00:53:19
平井は戦士
深田は魔法剣士
甜歌は魔法使い
カエラは僧侶

ところで・・・・>>1のジョブは何だ?勇者?
425Mr.名無しさん:2005/04/21(木) 00:58:46
家電屋のままだったり
426Mr.名無しさん:2005/04/21(木) 00:59:55
烏賊が今回の伏線になっていたとは、さすが
427Mr.名無しさん:2005/04/21(木) 01:02:06
次は武闘家の赤川さんが登場したりして。w
4281:2005/04/21(木) 01:15:16
今日はここまで。

>>424
職業は特に決めてない。
429Mr.名無しさん:2005/04/21(木) 01:23:37
>1
乙!
今日もナイスな妄想だった!
毎日>1の妄想を読んでたら頭の中に情景が浮かぶようになったよ。w
430Mr.名無しさん:2005/04/21(木) 01:52:44
 _____  _____          _       _ _     
 |_____  | |      |   rヘ、 ||    / / | |     
    __ / /   ̄ ̄ ̄ ̄    \ \/ /    / / | |   /\
    | レ' /              \  〈    / | | レ'´ /
    | /                / , \ く_/| |  |  , ‐'´   
   / /                  / / \/   | |  | |   _ 
   / /    ______  / /          | |  | l__| |
 / /    |           | |/         | |  |____丿
  ̄         ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄                ̄         

             __                  _
     く\  __,|  |__          rー――┘└―― ┐
      ヽ冫L__   _  |         | ┌─────┐ !
     く`ヽ__|  |_| |_        ー' | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|`┘
      ∨|___   ___|         r‐、 ̄| | ̄ ̄
      / 〉  /  \             | | |   ̄ ̄|
      / /  / /\ \_          / \_| | ̄ ̄
    く / <´ /   \ /        / /\   `ー――┐
      `  `´       `         `ー'   `ー───―'

431Mr.名無しさん:2005/04/21(木) 23:55:46
>>430
いや、どっちかっつーと実写版が見たいぞ。
キャストそのままで。
432Mr.名無しさん:2005/04/21(木) 23:57:31
主役は1かw
433Mr.名無しさん:2005/04/22(金) 00:40:42
ということは、えなりは顔が溶け、
赤川さんも銀幕デビューか。
4341:2005/04/22(金) 01:12:12
悪い。パソコン新製品出て、帰るの遅くなった。
スマンが今日も休載で。
435Mr.名無しさん:2005/04/22(金) 01:28:36
>>434
ほいな。
また余裕のある時によろしくね。
気長に待ってるよ〜。
436Mr.名無しさん:2005/04/22(金) 01:34:10
そうか、忙しい時期なんだな。
仕事もガンガレよ〜。
437Mr.名無しさん:2005/04/22(金) 03:13:54
newリブレットほしいよ、でも高いよ……値引きしてくれまいか?>1
438Mr.名無しさん:2005/04/22(金) 11:10:19
>>437
絵師タソ…
4391:2005/04/22(金) 22:33:55
第26話(前半)
「さて、どうしたものでしょう」
白い陽が天頂に輝く下、深田は思案顔で顎に手を当てる。
寺院で一夜を明かした俺達は、太陽が顔を出す頃にカエラと共に出発し、先刻ラミハに到着した。いや、
正確にはラミハの町の門が見える場所に着いたと言うべきか。町に入れないのである。中に入る為に門を
くぐらねばならないのだが、そこに魔族による検問が敷かれているからだ。
「ヤックソの支配は深刻みたいですね」
平井が渋面を作った。
カエラが持っている情報によると、ここを支配しているのはヤックソ(やっくん)という魔族の王子らし
い。ヤックソ(やっくん)は一夜にしてラミハを占領、配下を使い町並みを魔族の要塞に造り替えた。住
民達は抵抗したものの、ヤックソ(やっくん)の軍勢は余りに強力だった。手練れを集めた自警団でも敵
わず、降伏を余儀なくされた。以後、人々は彼の搾取に甘んじる生活を送っている。
「町に入れるのは、元々此処に住んでいる住民、許可を得た貿易商人、そして…」
「魔族、或いは魔物か」
俺はカエラの目を見た。彼女は首を小さく縦に振った。
「そう。特に私達の様な冒険者は、立ち入りはおろか、見つかれば即刻袋叩きでしょうね」
ヤックソ軍の規模は計り難い。いきなり特攻を掛けてもまず勝ち目はあるまい。町に潜入してヤックソを
討つ機会を狙うのが得策だ。侵入する手立てを何とか見出さなければ。
考えあぐねて立ち尽くす俺達。すると、今まで黙っていた甜歌が、俺の袖を引いた。
「いっそ魔物になればいいじゃん♪」
「変装したってすぐバレちゃうだろ。ハロウィンじゃあるまいし」
「違うよ。魔物そのものになるんだよ」
また事も無げに何を言い出すんだ、この子は。発言を理解できないでいる俺に、甜歌は明るく続ける。
「ポリモルフアザーの魔術を使えば、魔物とか人間じゃないモノに変身できるよ」
「マジで!?」
その手があったか。甜歌が高位の魔術士ということをすっかり忘れていた。確かに魔術で人間以外のモノに
変身できれば、町への侵入も不可能ではない。
4401:2005/04/22(金) 22:35:01
「でかしたぞ!甜歌」
「ただし効果は完全なランダムだから、何に変身するか分からないけどね」
「へ…」
「あと持続時間は大体30分くらいだから」
「へ…」
オラ、何だかすっげぇ不安になってきたぞ。
「検問を突破したら、すぐに町の人間に紛れれば大丈夫でしょう」
「ですね。先ほどから見ていると、検問は魔物に対しては甘そうだし。わたしも甜歌さんの案に賛成です」
「変身なんて面白そうじゃない」
平井、深田、そしてカエラ。みな賛成のようだ。一抹の不安が残るものの、俺も甜歌の魔術に身を委ねるこ
とにした。
「Ok!それじゃ、みんなウチの前に並んで。まとめていくから」
俺達は甜歌の前に横一列に整列した。一転して真剣な面持ちで杖を水平に構えて、瞑想を開始する甜歌。緊
張して見入る一同に向かって、甜歌が杖を振るった。杖から発生した怪しげな黒い煙が、俺達を包む。もく
もくと煙が立ち上るが、不思議とけむたくない。しばらくして、己の身体に異変が起こり始めた。全身の力
が抜け、まるで気体になったかのように体が軽くなっていく。奇妙な事態に戸惑っていると、煙が徐々に晴
れていった。再び自分の体の重みが、のしかかってきた。
煙の中から姿を現した隣の深田を見て、俺は仰天した。姿は深田のままなのだが、肌が異様に青白く、瞳は
血の様な真紅。自分の姿を見た深田は口を開けた。
「成功したようですね」
左右の犬歯は長く尖っている。どうやら彼女はヴァンパイアに変身したようだ。
「大成功!堅とカエラと、あと、うわぁ……おにいちゃんも無事変身したみたい…だね」
深田の隣に立つ平井はワーウルフ、つまり人狼に姿を変えた。人間の体に狼の頭が乗っているお馴染みの姿。
カエラはボーパルバニーに変身している。一見、普通のウサギだが、前歯が異常に長い。最初に首をはねら
れて呆然とする、例のあれだ。
4411:2005/04/22(金) 22:35:29
ところで、俺は一体何に変身したのだろうか。感覚はハッキリせず、姿勢がうまく取れない。水中にでもい
るかのような。俺は自分の身体に目を落とした。
「って、スライムかよ!!俺!!!!!!!!」
よりにもよってスライムとは。それもドラゴン某に登場する愛嬌のある姿ではなく、ガチャガチャで販売さ
れているバケツ入りのスライムに近いリアルな姿。俺の身体は、定まった形状を保っておらず、色は藻の茂
った沼みたいな不鮮明な深緑。半透明で中が透けている。しかも所々気泡がブクブク発生しているバブリー
スライムときた。見た者がついつい生理的嫌悪感をあらわにせずにいられない姿………ウハwwwwwww
変身前とおんなじじゃんwwwww
「まぁ、すぐに術も解けることですし」
平井がいつでも獲物を求めていそうな凶暴顔で、俺を慰めてくれた。打ちひしがれている俺をよそに、甜歌
も自分自身にポリモルフアザーを掛ける。同じく漆黒の煙から出てきた甜歌は、また何とも可愛らしい子猫
タソに姿を変えている。
「何で甜歌だけまともなんだ?」
「施術者は変身後の姿を選べるんだよ」
甜歌は喉を鳴らした。そういうものなのか。
とにかく、こうしてヴァンパイア・レディ、ワーウルフ、ボーパルバニー、猫、そして醜悪なスライムとな
った俺達は、検問をしている町の入り口に向かうのであった。
                                              続く
442Mr.名無しさん:2005/04/22(金) 23:12:48
乙。
カエラの次はシャブマルさんかよw
443Mr.名無しさん:2005/04/22(金) 23:26:25
>>438
それはタブレット
4441:2005/04/22(金) 23:46:09
今日はここまで。
445Mr.名無しさん:2005/04/22(金) 23:54:32
ヤックンワラタ
446Mr.名無しさん:2005/04/23(土) 00:39:50
スライムワラタ
447Mr.名無しさん:2005/04/23(土) 11:18:46
しかし1はレスしねえなぁ
448Mr.名無しさん:2005/04/23(土) 13:39:52
>>447
それが1クオリティ。

今作は全何話なんだろ。
449Mr.名無しさん:2005/04/23(土) 16:24:58
>>448
今回はかなりの長編になるだろうな
休載が多くなってきたけど大丈夫かな
幼女スレみたいに投げ出すのだけは・・・
450Mr.名無しさん:2005/04/23(土) 16:32:13
GWが終われば夏のボーナス商戦が始まるまでは家電店も
きっとそんなに忙しくないだろう。
前シリーズもキレイに終わらせてくれたし、今回も大丈夫じゃ
なかろうか?
4511:2005/04/24(日) 00:17:58
今日は休載…っていうか、スマソ、しばらく隔日で書く。
452Mr.名無しさん:2005/04/24(日) 03:22:07
>>451
了解っす!
どうぞ自分のペースで書いてね。
俺達は待ってるだけだからさ。w
453Mr.名無しさん:2005/04/24(日) 05:08:44
よく考えたら初期は他の奴らも作品書いてたんだよな…
454Mr.名無しさん:2005/04/24(日) 09:08:59
そうだな。たまには他の奴も書いてみたらどうだ?
あまり寂れてると1もモチベーションが下がるかもしれんし。
455Mr.名無しさん:2005/04/24(日) 12:44:06
っつか、ここの常連のおまえらってどんな奴なの?
456Mr.名無しさん:2005/04/24(日) 13:20:21
>>455
毒男なのは間違いない
457Mr.名無しさん:2005/04/24(日) 13:37:33
ごめん、毒男じゃないや…。
458Mr.名無しさん:2005/04/24(日) 15:21:58
>>457
おまい妄想のセンスあるな
459Mr.名無しさん:2005/04/24(日) 15:39:22
>>457
1には及ばないが
ダイヤモンドの原石のような可能性を見た
460Mr.名無しさん:2005/04/24(日) 19:12:53
オレも毒男ではないが1の妄想ワールドが好きでずっと読んでる
仕事で疲れた後や、朝、会社に行くときの清涼剤でつ
461Mr.名無しさん:2005/04/24(日) 20:49:02
>>460
その調子で続き頼む
462Mr.名無しさん:2005/04/24(日) 21:36:52
>>453
俺も一度書いたことあるよ
だが1の妄想を読んでたらそれで満足するようになった
4631:2005/04/25(月) 02:49:35
第26話(後半)
検問所が近付くにつれ、緊張は否が応にも高まっていく。石造りの門の両脇では、鎧を来たゴブリンが2匹、
門兵として鋭く目を光らせている。いざ門をくぐろうとする俺達の行く手を、2本の槍が遮った。ゴブリン
は鼻を鳴らして、俺達の身体を嗅ぎ回り始めた。幾らポリモルフアザーで姿を変えていても、魔物に匂いを
嗅がれるのは、あまりいい心地がするものではない。彼らはひとしきり俺達を匂った後、槍を引込めて吐き
捨てるように言った。
「ハイッテイイゾ」
「ありがとう」
先頭の深田が礼を言う。残りの4匹もその後に続く。しばらく進んで、検問所のゴブリン達の視線が離れた
ことを確認すると、俺達はそそくさと建物の陰に隠れた。同時に変身した時と同じ黒い煙が上がり、各自の
変身が解けていく。
「大成功!」
猫の姿から元に戻った甜歌が、興奮に身を震わせた。
「ええ、匂いを嗅ぎ回られた時はどうなるかと思いましたけど」
そう言う深田も、肌は元の血色を取り戻し、狼のようだった犬歯は影を潜め、人間の姿に戻った。その後ろ
では平井とカエラも元に戻っている。
さて、肝心の俺自身はというと、
「……あの、甜歌さん。俺だけ元の姿に戻らないんですけど…」
依然として、側溝に溜まるヘドロを掻き集めたような姿のまま。
「あれ、おかしいなぁ。何でおにいちゃんだけスライムのままなんだろ」
それはこちらが訊きたい。4人は不思議そうに俺を見下ろす。
「まぁ、そのうち元に戻るよ。それにね、ポリモルフアザーでスライムになるのって、確率的に結構レアな
んだよ」
甜歌は気まずそうに笑った。っていうか、全然慰めになっていない。
結局、俺だけスライムの姿のままで、町へ情報収集に繰り出すこととなった。町の往来は魔物と人間が入り
乱れており、何とも奇妙な光景だ。大通りを進んでいくと、両脇に露店が増えてきた。この辺りはハナマノ
レマーケットと呼ばれ、商売人が集まる場所らしい。一見賑やかななようで、よくよく人間達の顔を観察し
てみると、誰しもが硬い表情で魔族の支配に怯えている様子。
その時、
「助けてくれ!」
4641:2005/04/25(月) 02:50:30
絶叫が響いた。次いで雑踏にどよめきが起こった。視線を声の方向に投げかけると、若い人間の男が、複数
のゴブリンに取り囲まれて殴る蹴るの暴行を受けている。その後ろで残酷な笑みを浮かべているのは、ター
バンを頭に巻いた男。
「商人ごときが舐めた口をききおって。貴様らは黙って搾取されておけばいいものを」
彼は腕組みをして、残酷な笑みを浮かべている。
「ショーニンゴトキ!ショーニンゴトキ!」
ゴブリンは馬鹿の一つ覚えのように唱えながら、棍棒で殴るのをやめない。
「あの男性は魔族ですね」
深田が苦虫を噛み潰したような顔で呟いた。なるほど。確かにあのターバン男からは、人間とは違う雰囲気が
発せられている。
「可哀想だけど、今助けに出れば何かと厄介です」
悔しいが平井の言う通りだ。ここで助けに出れば、俺達の正体がばれかねない。直情的な行動は慎むべきだ。
しかし、下等な魔物は暴行をエスカレートさせ、ついに一匹が斧を取り出して、四つん這いにさせられた男の
首に当てた。
危険な状況だ。俺は手に汗を…握ろうとしたが、汗を握る手はおろか汗を流すこともできないので、とりあえ
ずウネウネと身体を動かしてみた。
と、今まで黙っていたカエラが小さく言葉を発した。
「…許せない」
「へ?」
様子がおかしい。この眼は…そうだ。寺院で自分を殴った時の、言うなればメンヘルの眼だ。
「弱いもの苛めは許せない!!」
「カエラ!!」
唐突に彼女はハルバートを構え、ゴブリンに斬りかかっていった。幾らメンヘル入っているからといって、いき
なり過ぎる。俺は彼女をパーティに加えたことをいまさらながら後悔し始めた。しかし後の祭り。カエラのハル
バートは、斧を振り下ろそうとするゴブリンの腕を斬り飛ばした。隙を突かれたゴブリン達は、ギャーギャーと
耳障りな奇声を上げて、蜘蛛の子を散らすようにその場を離れていく。
「ほぅ」
ターバン男は一向に動じることなく、寧ろ状況を楽しむかのように、カエラを凝視する。それに対して彼女も負
けじと睨み返す。男は腰のサーベルを抜きかけたが、何を思ったのかすぐに鞘に戻した。
4651:2005/04/25(月) 02:51:08
「いきなり私が出たのでは面白くないな。お前達、やれ」
しかし、ゴブリンは離れた場所からカエラを見つめて、何やら話し合っているだけ。
「あの魔物達、逃げ出すんじゃないか?」
「いいえ。彼らは臆病者故の計算高さを備えています。自分達と相手の戦力差を計っているんです。あの様子だと、
すぐに反撃を開始するはず。カエラさんが危険だわ」
深田は異世界人専用ロングソードを抜いた。確かに数では圧倒的にゴブリンが有利だ。加勢に入った彼女の後
を、平井と甜歌が追う。もうどうにでもなれと、半分自棄になって俺も後を追う。
しかし、そんな俺の進行方向に、一匹にゴブリンが立ちはだかった。
「スライムノクセニ」
ゴブリンはいかにもレベルアップの素という感じの俺に向かって、シミターを振り上げた。
その瞬間、黒い煙が立ち上り、ゴブリンの視界を覆い隠した。次にゴブリンの目に飛び込んできたのは、俺
専用異世界人専用聖剣を握る俺の姿。
「ナンダト!?」
「よっしゃ!ようやく元に戻った」
唖然とする魔物を狙って、俺はゆっくりと剣を振りかぶった。
「キサマ…ナニモノダ?」
「商人だ」
一刀の元に、ゴブリンの首が刎ね飛ばされた。
                                                続く
4661:2005/04/25(月) 02:51:37
今日はここまで。
467Mr.名無しさん:2005/04/25(月) 07:19:34
>>1
夜遅くに乙。
そうだよな。あんたはリアル商人だったよな。
妄想も、昼の仕事もがんばってくれ。
468Mr.名無しさん:2005/04/25(月) 12:54:58
> 「キサマ…ナニモノダ?」
> 「商人だ」

こういうやりとり、ベタだけど大好きだ。
469Mr.名無しさん:2005/04/25(月) 21:03:37
なにげにキメ台詞のセンスあるな
470Mr.名無しさん:2005/04/25(月) 21:38:07
今日は休みなんだな
4711:2005/04/26(火) 00:39:02
今日はおやすみ。
4721:2005/04/26(火) 19:18:15
さっき赤川さん(リアル)が久々に店に来たよ…

というわけでGWスペシャル予告
TVシリーズでは語られなかった、第四の分岐のその後を描いたOVA版俺専用MS
473Mr.名無しさん:2005/04/26(火) 20:34:46
MS編キタ━━(゚∀゚)━━ッ!!
474Mr.名無しさん:2005/04/26(火) 22:24:11
個人的にはファンタジー編が好きなので
ストーリーと関係ない番外編なども妄想してほしい
475Mr.名無しさん:2005/04/26(火) 23:13:53
MS編復活か。楽しみにしてるよ。
476Mr.名無しさん:2005/04/26(火) 23:30:56
スペシャルキタ━━(゚∀゚)━━ッ!!
4771:2005/04/26(火) 23:52:41
第27話(前半)
宙を飛ぶゴブリンの首が、戦闘開始の合図になった。ゴブリンのみならず、周囲にいた魔物が一斉に俺達に襲い掛
かる。もちろんむざむざとやられるわけにもいないので、俺達は応戦する。たちまちハナマノレマーケットは修羅
場と化した。
俺や深田、平井、そしてカエラ。接近戦を得意とする戦士は乱戦に強いが、魔術士の甜歌はそうはいかない。瞑想
と詠唱をしている間は完全に無防備になってしまう。俺達は甜歌を守るように円陣を組みながら、敵をなぎ倒して
いく。
浴びせられる攻撃を受け流しながら、平井が俺に話しかけてくる。
「こんな時、異世界人専用聖剣はいいですね。対魔特攻だし」
「貸そうか?身体、溶けるけど」
「遠慮しときます…」
冗談を交わしながら、俺も負けじと懸命に俺専用異世界人専用聖剣を振るう。しかし、やはり多勢に無勢。甜歌を
中心にした円の径は徐々に狭まっていく。俺らピンチ。
と、その時、
「お待たせ!」
まるでオーブンからお待ちかねのピザを取り出して来た時のような、緊張感のない甜歌の声が背中越しに響いた。
気付くと、背後に強大な魔力の塊が発生している。次いで無数の魔力で出来た光の矢が、俺達を避けて正確に魔物
だけを射っていく。そして、周りを取り囲んでいた20匹近い魔物をあっという間に倒してしまった。凄まじい威
力。
「ナイス!甜歌」
「ありがと!初めて使ったんだけど、間違えて味方に当たらなくて良かったぁ」
試し射ちだったのか…本当に良かった…俺は悦に浸る甜歌を眺めがら、心底ホッとした。魔物の頭数が減り、士気
を高める俺達。
「そこまでだ…」
4781:2005/04/26(火) 23:53:11
突如声が響いた。声の主は、傍から戦いを見ていたターバンの男だ。
「なかなか楽しめたが、そろそろ遊びは終りだ」
男が手の平を顔の高さまで上げると、それに呼応して上空から複数の巨大な影が降り立ち、俺達を取り囲んだ。グレ
ーターデーモンが四匹。暗黒の翼を広げて威嚇し、今にも飛び掛らんという勢い。下手に動くのは危険だ。
「私の名はヤックソ」
この男がこのラミハの町を占領した魔族の王子ヤックソか。初めて、まじまじと彼の顔に見入る。全方向からの攻撃
に対応できそうなくらいにロンパった眼。HPのトップに置くとキモがられそうな笑顔。彼を構成するあらゆる要素に、
戦慄を覚えずにはいられない。
「貴様らごとき下郎を葬るのは容易いことだ……だが人間にしてはなかなかの腕。特別にハナマノレ祭で使ってやろう」
「ハナマノレマツリ?」
俺は聞き返す。
「楽しいお祭りだ。それまで牢に放り込んでおけ」
ヤックソはいかにも悪者然とした高笑いを上げて背を向けた。その直後、不意を打って後頭部に鈍痛が走り、俺は気を
失った。
………………一体、どれくらい気を失っていたのだろうか。気が付くと、俺は独房に身を横たえていた。照明といえば
通路の壁面に差してある蝋燭の、か細い明かりだけ。牢を満たす湿った冷たい空気が、心細さを助長する。
「捕まったのか…」
俺はため息を一つついた。独房の通路側を、お馴染みの格子状の鉄格子が塞いでいる。隙間は狭すぎて、いかに細身の
俺でも抜け出ることは出来ない。俺は鉄柱に手を掛けた。通路を挟んで向こう側にも独房がある。俺はそこに人影があ
るのを見て取った。あれは…
「カエラ!大丈夫か」
俺は鉄格子を揺らした。俺の声に気付いて、カエラはこちらを見た。暗がりでよく見えないが、一見して外傷は無さそ
うだ。しかし、彼女の表情は、暗がりの中にいるからではなく、ひどく暗い。
「ハハハ、捕まっちまったな」
わざと明るく振舞ってみた。
「…ごめんなさい。私があの時手を出さなければ…」
4791:2005/04/26(火) 23:54:11
やばい。強い罪悪感に駆られているようだ。俺は寺院でのことを思い出して、慌てて言葉を重ねる。
「も、もういいよ。済んだことだし。ところで、あの時凄い剣幕で斬りかかっていったけど、何か理由でも?」
「……」
カエラは答えない。
「ごめん。悪いこと聞いた」
「助けたい。その一心だったわ」
「え?」
唐突な言葉に、俺は面食らった。
「人を助けたいと思うと、周りが見えなくなってしまうの…」
カエラは訥々と語り始めた。
                                                   続く
4801:2005/04/27(水) 00:06:20
今日はここまで。
GWSPは5/3くらいの予定。
481Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 00:12:16
>>1
スペシャルを楽しみにしてるぞ
482Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 00:16:13
今夜もイカス!GWのMS編も楽しみ
483Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 14:36:36
1よ
いい加減に気付きなさい。釣られていることに
誰もおまえの駄文なんて本気で読んでないってことに
484Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 17:17:56
1は妄想を自分の好きなようにかいてるだけ
だれかに読まれてうれしいとかの感情は全くないよ
485Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 17:33:24
>>484
妄想ロボかよw
486Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 21:31:18
>>483お前うざい
487Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 22:14:42
そろそろ絵師キボソヌ
488Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 22:36:33
>>487
前絵描けるけど描かないって人いたな
1は一日置きみたいだから1がうpしない日には絵師うpしてくれよ
489Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 22:36:57
絵はいらん!読者それぞれの妄想イメージを尊重してくれ
といってもほとんど実在の人物だがな・・・
490Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 22:41:48
イメージが壊れるって人は見なきゃいいじゃん、ってのは勝手かな?
個人的には、描ける人はどんどん描いてもらいたいのだが。
491Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 22:42:02
だからよけいに絵はいらんのよ
492Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 22:51:24
マジで読んでて楽しいよwww
当方ROMるだけでうpもストーリーも書けないけど
毎夜楽しみにしてる
493Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 22:57:20
じゃあ絵はまとめサイト氏にお願いしてあっちにだけ掲載してもらうとか
494Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 23:20:26
>>490
そんなこと言ったら俺が描くぞ
描けない俺が真っ先に描くぞ
495Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 23:24:29
1の妄想はTV番組形式だから視聴者からの投稿コーナーみたいな感じで
ナディアのエンディングみたいにw
496まとめサイト:2005/04/27(水) 23:35:26
中の人です。
まとめサイトに掲載を希望する方は、[email protected]
送りつけて下さい。
もちろん、upしても保管させて頂きます。
どちらかと言えば、絵も楽しみたい派です。
497Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 23:36:00
>>496
まとめ乙
498Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 23:39:16
>>495
なるほどそういう考え方ならありだな
499Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 23:44:33
オリジナルのキャラ像はあくまで1の脳内にあるって「設定」かw
500Mr.名無しさん:2005/04/27(水) 23:54:24
アタイこそが 500へとー
501Mr.名無しさん:2005/04/28(木) 21:42:01
今夜は期待age
5021:2005/04/28(木) 22:06:32
第27話(後半)
「昔から、自分が何の為に生まれてきたのか、その意味を分からずにいたわ」
蝋燭のかすかな明かりが、カエラの半身を浮かび上がらせている。明暗の極端なコントラストが
彼女の平常時とメンヘル時の二面性を暗示している、というと都合が良過ぎるだろうか。
俺は壁に背をもたれさせて、カエラの小さな声に耳を傾ける。
「修道院に入ったのは13歳の時。修道院付属の寄宿学校を卒業した後、他の子はみんな結婚し
ちゃったけど、私は人の役に立ちたくてそのまま残ったの。奉仕活動でいろんな人達の笑顔を見
て、もっと人の喜ぶ顔が見たくなったから。その時だったわ。自分が生まれてきた意味を知った
のは」
人の喜ぶ顔が見たい。ここまで純粋な動機で自分の職業を選んだ人を、俺は身近に知らない。皆
とりあえず仕事に就き、とりあえず金を稼ぐ。俺もその一人だ。家電屋をしているのだって、た
またま内定を貰えたからに過ぎない。今のご時世、自分の好きなことを仕事にして飯を食えるな
んて、一部の機会に恵まれた人間だけだ。そんな達観した振りをして、生ぬるい諦念に身を浸し
ている俺が、ひどく矮小に思えた。
「でも、やることなすこと裏目に出ちゃうんだよねぇ、これが。母親譲りなのかな。昔から一意
専心っていうか注意力不足っていうか、馬鹿っていうか。一つのことに向かうと他が見えなくな
っちゃうの。で、失敗ばかり。しかも、最近はそれが特にエスカレートしてきてるのよね」
カエラは、消え入りそうなほど小さな笑みを浮かべた。殺されようとする人を助けたいという心
に、直情径行な性格が手伝って、あんな無謀な戦いを挑んだということか。納得がいった。
俺の中にもう一つの疑問が浮かんだ。
「そう言えばさ、カエラは何であの修道院を独りで守っていたんだ?他の僧侶は逃げ出したのに」
「院長達は逃げ出したんじゃないわ。この辺りの魔物が姿を消すまで、他の寺院に一時退避なさ
っているだけ。ヤックソを倒したら、避難先に一緒に持っていかれたお金で、荒らされた修道院
を建て直すって言ってたし」
「お金?」
5031:2005/04/28(木) 22:07:08
「ええ。修道院領の地代とか故人の罪を洗い流す為の施物とか、院長様は修道院のことを考えて
かなりの備蓄をしてらしたから。ちょっと取り過ぎのような気もしてたけど、院長様はそんな私
の邪推をいつも戒められていた。いずれは民の為に使用するのだと。だから、私は彼らが帰って
これるるようにこの地域に平穏を取り戻したい。またこの土地の人達の笑顔が見たいし、それが
私の生きる理由だから」
「そうだよな。きっと戻ってくるよ」
「うん…きっと…」
 返事をしたカエラの声は震えていた。俺達は会話を無くした。
 彼女は心のどこかで悟っているのかもしれない。院長はもう戻ってこないことを。彼は聖務よ
りも修道院領主として資産運営に熱を上げ、農民に対して必要以上の地代と施物の徴収を行い、
相当額の財を貯め込んだに違いない。それは領地を統べる貴族の感覚に近いだろう。ラミハ周辺
の農村地帯は魔物出現で荒廃し、農民も安全な地に移住し始めている。話によるとヤックソの軍
勢を前にして、一国の軍隊が撤退を余儀なくされたそうだ。財産を抱えて真っ先に逃げ出した者
が、いずれ不毛の地となるであろうこの地に、果たして未練を抱いているだろうか。
鉄格子越しに見えるカエラは、相変わらず沈んだ面持ち。
外面からは想像がつかない彼女の複雑な内面を知ったような気がした。院長のやり方に、カエラ
は内心失望していたように思える。或いは彼女の自傷癖や最近になって直情性に拍車がかかった
というのは、人々の信心と自分自身の信念を裏切っている罪悪感に原因があるのかもしれない。
俺は努めて明るくカエラに声をかける。
「カエラはすごいなぁ」
「え?」
「自分が生まれてきたことの意味とか理由を見極める。それって、なかなか難しいことなんじゃ
ないかなぁ。俺なんかは、ただただ流されていく日常の中で、ふとした瞬間に、そういえば人生
に意味ってあるのかな、なんて思う時がある。でもすぐにまた忘れて元の日常に戻っていく。そ
の繰り返しだよ」
何を言っているんだ、俺は。
5041:2005/04/28(木) 22:07:33
「だが、君は自分が生きる意味を見出している。これは何にも勝る才能だと思う」
 我ながら歯が浮くような奇麗事を言ってのけるものだ。
「ありがとう…とても救われた気分。って、人々の魂の救済を職務とする私が、こんなことじゃ
いけないよね、うん」
戯言でも人に勇気を与えることが出来る。家電屋にいる時は他人のことを親身になって考えるこ
となどなかった。そんな俺の心に、カエラの笑顔を見た途端喜びが芽生えた。励ました当の本人
でありながら、戸惑わずにはいられない。
「よし!!」
膝を叩き、カエラはおもむろに立ち上がった。そして両手でしっかりと鉄格子を掴んだ。一体何
をするつもりだろうか。暗闇で目を凝らしていると、鉄格子がグニャリと捻じ曲がったではない
か。鉄の棒は少しずつ湾曲していき、ついには人が通れる大きさにまで間隔が広がった。何と言
う馬鹿力。ゴリラじゃないんだから。近くに見張りが居ないのを確認して通路に踊り出たカエラ
は、呆然とする俺の房の鉄格子を同じ要領で曲げた。
「いざ脱出作戦開始!深田さん達を助けに行きましょ」
 ひょっとして躁鬱病も持っているのか。さっきまでとは打って変わって意気揚々と通路を歩い
ていくカエラ。俺は彼女のテンションに遅れを取らぬよう、後を追った。
                                    続く
505Mr.名無しさん:2005/04/28(木) 22:27:32
乙。今日は早いな。
506Mr.名無しさん:2005/04/28(木) 22:53:00

ここで絵師登場ですよ!
507Mr.名無しさん:2005/04/28(木) 23:24:52
乙鰈!
続きを期待してるぜ!
5081:2005/04/29(金) 00:05:28
今日はここまで。
509Mr.名無しさん:2005/04/29(金) 00:29:20
面白い、面白すぎだよ!
510Mr.名無しさん:2005/04/29(金) 07:00:29
PC壊れて見れなかったんだけど、残っててよかったぜ
>>1やっぱGJ!
511Mr.名無しさん:2005/04/30(土) 00:02:06
今夜も期待
512Mr.名無しさん:2005/04/30(土) 00:28:32
>>511
今日は来ないよ
513Mr.名無しさん:2005/04/30(土) 00:44:58
>>511
今夜はお休みだろ。

>>1、あんたは「展開の妙」の心得と、いくばくかの文才があることは確かだ。

>カエラは、消え入りそうなほど小さな笑みを浮かべた。

これなんて、カエラ独白のワンカットを締めくくるのにふさわしい
とてもきれいな言い回しで正直感動したよ。
こういうのを“情景”っていうんだろう。
(そんなカエラが終盤の見せ所を作るんだからな。>>1はスゲーよ。)

 大体、このスレッドのモチーフ、「自らの就寝前の妄想」なんて
多くの人の秘かに愉しんでいるちょっとしたことを形にする行為
自体、相当なアイディアだとおれは思っている。
量産のスピードもあるし、2ちゃん作家としての今後に注目したい。
このスレが大団円を迎えたら、
>>1には他の人が書いた本をいっぱい読むことと
自分の最も書きたいものを探すのに時間を使ってみてほしい。

 名無しのくせにえらそうなレスになった。
みんなスマソ。
514Mr.名無しさん:2005/04/30(土) 09:54:56
>>513
すごい分析してるな
おまい何者?
515513:2005/04/30(土) 10:55:40
>>514
ただの名無しさ。
(↑これ、言ってみたかった)
516Mr.名無しさん:2005/04/30(土) 13:58:28
褒めてくれる人もいるようだがまだ拙い部分もあるから
>1には大事に執筆してほしい。

とりあえず今夜を楽しみに待とう。
5171:2005/04/30(土) 14:31:29
悪い。思ったより忙しくて妄想をまとめる暇がないので、しばらく休載。っつかGWSPまで。
クオリティ向上に関しては勘弁してくれ。元々、文章書くのに推敲を重ねないといかん方なの
だが、諸事情により、帰宅後の自分の時間があまり取れないので。適当に書いていくよw
518Mr.名無しさん:2005/04/30(土) 14:54:29
>>517
すっかり小説家気取りだなwww
519Mr.名無しさん:2005/04/30(土) 16:26:54
>>1
ちょっと残念だけど、むりすんなや。
自分が楽しめる範囲でやってくれればいいよ。
520Mr.名無しさん:2005/04/30(土) 19:13:09
GW中は家電屋はカナーリ忙しそうだな。
まぁ、本業をガンガッテくれ。
気長に待ってるからさ。
521Mr.名無しさん:2005/04/30(土) 20:16:02
>>517
むしろ適当上等。
初代スレのころなんかえれー適当だったがそれでも面白かった。
522Mr.名無しさん:2005/04/30(土) 20:32:48
さてお前らよ
これから3日間どうするよ?
523Mr.名無しさん:2005/04/30(土) 21:34:33
3日も来ないのか。
適当に雑談でもしてないと、スレが落ちてしまうな。
524Mr.名無しさん:2005/04/30(土) 21:43:59
ここでおまいらの妄想ですよ
絵師も投稿しる!
525Mr.名無しさん:2005/04/30(土) 22:05:29
じゃ、家電関係の雑談をしようぜ。

 おれんちのそばには結構でかい家電屋が2軒ある。(関係ないがドンキもある)
業界最大手のYと、そこそこなKだ。
昨年の秋、2ちゃんで好評のオイルヒーターを買うため両方で値段を見た。
やはり表示価格はYの方が安い。
ただ、使い勝手を知りたかったので移動させるときどれほど重いか実際に
試したかったが、いかんせん、両店とも棚の高いところに飾ってあったのだ。

「あれ、降ろして貰えますか?」

重い、大型タイプのオイルヒーターだ。おろすとなると相当な重労働だ。
業界最大手のYでは、「そんなのかんべん」とばかりに笑ってごまかされた。
一方、似たような飾り方をしていたKでは快く対応してくれた。
ちょっとは値段が張ったけど、Kで購入せずにはいられなかったよ。

仕事の上で「労を取る」ってのは大事なことなんだなと自分自身学びました。
>>1も、お客さんの身になって仕事してねん。
526Mr.名無しさん:2005/04/30(土) 22:18:02
>>525その店員が実は>>1だったりして。
それとなく探りを入れてみれば・・・
527Mr.名無しさん:2005/05/01(日) 00:05:08
>>526
インターネットコーナーのホームページをここにしとくとか?
528Mr.名無しさん:2005/05/01(日) 00:28:19
>525
家電持ちながら「溶ける!溶ける!!」と騒いでみたら?
529Mr.名無しさん:2005/05/01(日) 00:32:58
>>528
笑顔でつまみ出されるからw
530Mr.名無しさん:2005/05/01(日) 00:58:13
>>582
wwwwwwwwwwwww
531Mr.名無しさん:2005/05/01(日) 00:58:44
あまりのおかしさにアンカー間違った。
>>528
な。
532Mr.名無しさん:2005/05/01(日) 01:15:19
>>525
店員の裁量という感じもするがな
533Mr.名無しさん:2005/05/01(日) 17:21:02
前に描かないって言ったけど分岐Cの続きクルーということで描きたくなった
534Mr.名無しさん:2005/05/01(日) 17:37:53
>>533
描いてくれ
解禁されたようだし
535Mr.名無しさん:2005/05/01(日) 17:46:08
536Mr.名無しさん:2005/05/01(日) 21:26:12
>>535
GJ
なかなか雰囲気出てるな
でも一番右が赤川さんでグッジョブってしてるのが浜崎なのはわかるんだが
上戸とテンカはどっち?
537Mr.名無しさん:2005/05/01(日) 23:54:38
一番右がテンカで手前が赤川さんじゃないの?
538Mr.名無しさん:2005/05/02(月) 18:26:00
age
539Mr.名無しさん:2005/05/02(月) 23:37:05
>>535
GJ!
左から上戸、浜崎、テンカで
手前が赤碕さんじゃね?
ってか、赤碕さん萌え
540Mr.名無しさん:2005/05/02(月) 23:38:51
新キャラかよ
541Mr.名無しさん:2005/05/03(火) 00:05:39
間違えた。
赤川さん萌え。
542Mr.名無しさん:2005/05/03(火) 00:29:27
>>541萌え
543Mr.名無しさん:2005/05/03(火) 00:59:43
今年は猛暑になるのか冷夏になるのか予想つかんな。
エアコン買うか迷うな。
544Mr.名無しさん:2005/05/03(火) 01:40:26
>>543
暑いなら必要だし、冷夏なら安くなる。
どっちにしろ金があるうちに買っとけ。
出来れば>1の家電屋でな。w
545Mr.名無しさん:2005/05/03(火) 06:39:53
>>544
>>1のとこで買ったら触ると溶けるからやだ。
546Mr.名無しさん:2005/05/03(火) 09:56:39
>>545
買う時に聞けばいい。
「このエアコンは俺専用ですか?」って。
547Mr.名無しさん:2005/05/03(火) 13:48:45
だれか>535の絵を携帯で見れるようにしてくれないか、たのむ
548Mr.名無しさん:2005/05/03(火) 14:29:05
1はもう来なかったりしてなw
5491:2005/05/03(火) 23:24:04
GWスペシャル 〜OVA版俺専用MS第1巻〜
俺はゆっくりと目を開ける。右方の窓に視線をやると、月の表面が無機質な表情で迫っている。
「着いたか…」
3月。己の過去を知る旅に出るべく、俺は月行きのチケットを取った。しかし愚かにも月への渡航だけで4日費やす
ことを算段に入れていなかった為、泣く泣くチケットを払い戻したのである。その後、店長に怒涛の勢いで嘆願して
このゴールデンウィークに、特別に2週間の長期休暇を貰ったのである。
「当機は間もなく月面宇宙港に到着致します。なおドックに着艦の際、小さな揺れが発生いたしますので、座席に戻
りシートベルトをお締め頂きますようお願い致します」
船長(片山。大学時代。運転免許の終検で3回落ちた)のアナウンスが船内に響いた。娯楽室や展望室に行っていた
乗客達が次々自分の席に戻ってきて、あちらこちらからシートベルト金具のロックを掛ける音が聞こえてくる。そし
て、それが確実になされているか、数名のスチュワーデスが各席を順番に確認していく。
「シートベルトはお済みですか?」
スチュワーデスの一人が、俺の席を覗き込んで笑顔を投げ掛けてきた。
「はい」
俺は小さく返事をして、窓外の景色に目を戻した。月の表面には白い巨大なドームが一つ。そこから道路が四肢を広
げるように伸び、散在する小型のドームに繋がっている。中央の大きなドームが、宇宙港が置かれている月面都市だ。
大気のない月では、宇宙空間より飛来する小隕石や宇宙放射線からの被害を防ぐ為に、都市はヤドカリのようにドー
ムを背負う形状を取らざるを得ない。
船はドックに船体を収めた。
「月面宇宙港に到着致しました。ご乗船ありがとうございました。」
5501:2005/05/03(火) 23:24:27
シートベルトを外す。シートに身体を抑え付けていた力がふっと消失した。俺は席を立つ。床を少し蹴るだけで、身
体が地球の6倍は浮く。若者言葉で表現すると”ロクイチG”。つまり地球の6分の1しか重力がない。しかしこの
感覚も、何故か俺の身体は覚えている。地球を出発して初めて地球の重力から開放される際も、誰もが経験したこと
のない浮遊感に戸惑うものなのだが、不思議と俺の場合は昔の勘を取り戻すかのように、すぐに慣れた。
人ごみでごった返す月面宇宙港を出る。そこに広がっているのは背の低いビル群。上を見上げると、照明により人工
的に昼間が作られている。月にいながらにして、都市では地球と同じサイクルで昼夜が入れ替わる。
同僚の話によると、赤川さんは夫である鳥羽と共に、市営の一般労働者用アパートで暮らしているという。アパート
と言っても月面都市在住の労働者のほとんどがそこに暮らしているのだから、その規模はかなりのものらしい。号室
がわからない以上、郵便受けの表札を確認しながら探していくしかあるまい。
俺は旅行鞄を肩に掛けると、地図を片手に市営アパートに向けて歩き始めた。
その矢先である。
「遅刻遅刻〜〜〜!!」
少し先の角を左に曲がった先から、わざとらしい声が聞こえてきた。デジャヴを感じずにはいられないシチュエーシ
ョン。(三次聖剣編参照)俺は身構えた。と、視界の左から右に高速度で人影が横切った。それを追って首を右に振
ると、トーストを咥えた少女が、今まさに壁に激突せんとしている。ロクイチGの下で勢いを付けすぎたようだ。
俺は目を覆った。しかし、
「なんの!」
ナイス運動神経で壁面に足から着地してショックを和らげた。月の重力下だからできる芸当だ。
「おお、お見事」
などと感心している場合ではない。彼女は勢いに任せて壁をキックし、その弾みで人間魚雷よろしくこちらに突っ込
んでくるではないか。前方不注意にも程がある。
「あわわわ!?どいて〜〜〜!!」
「ぐぉえ!」
5511:2005/05/03(火) 23:24:52
食パンが宙を舞った。腹に強烈なタックルをお見舞いされ、俺は受け止めきれず、バランスを崩して激しく尻餅をついた。
「痛ててて……君、大丈夫か?」
俺の股間スレスレで、少女はうつ伏せに倒れこんでいる。
「ううぅ、大丈夫です。ごめんなさ〜い」
幸いにもお互いに大した怪我はない。彼女は申し訳なさそうに顔を上げた。
「お……おお…おにいちゃん!?」
突拍子のない声と共にひどく驚いた表情。
「おにいちゃんって、俺のこと?」
俺の顔を、まじまじと見つめる少女。自ずと耳から顔面にかけて紅潮させていく俺。
「うん!やっぱりおにいちゃんだ」
「あの、君は一体何者ですか?」
「え……」
少女はしばしあっ気に取られて口をあんぐり開けた。そうかと思うと、何かにはっと気付き、あどけない顔を寂しさが満
たす。しかし、それも束の間、今度は満面の笑みを浮かべた。何とも感情の移り変わりが忙しい子だ。
「知らない。赤の他人。でも……でも、とっても大事な人!」
抑えきれなくなった感情をぶつけるかのように、彼女はいきなり俺に抱き付いてきた。俺はまたもや不意をつかれ、少女
を胸に抱く格好で仰向けに倒れた。再び見詰め合う格好になる二人。この少女の顔、どこかで見たような…どこかで……
…俺は必死に記憶を巻き戻していく。月面宇宙港到着、4日間の宇宙空間の旅、広島西宇宙港。記憶を辿っていく内、段
々と巻き戻し速度が緩やかになっていき、ある場所でピタリと停止した。それは出発するきっかけとなった連邦軍三次基
地跡の光景。そうだ。あのアルバムを見た時だ。アルバムの中にいた連邦軍の制服を着た少女はこの子によく似ていた。
5521:2005/05/03(火) 23:25:17
「君は…俺を知っているのか?」
「知らない」
打って変わって素っ気無い態度。怪しい。
「天地神明に誓って?」
「知らないったら知らないよ!!」
少女はなおも意地を張って突っぱねる。
「でも、さっきおにいちゃんって…」
「うわああああああああああああ!」
いきなり泣き出してしまった。それに反応して周囲が騒がしくなる。
「なんだなんだ」
「あの男、小学生を泣かせてるぞ」
やばい。俺は少女の手を握ると、脱兎のごとく現場を離れた。今のご時世、少女と一緒にいるだけで警戒の目で見られる
というのに、傍からすれば、俺はどう見繕っても誘拐犯にしか映らない。しかし、ここで職務質問など受けている時間の
余裕はない。自分でも近年希に見る全速力で人気のない裏路地を選んで走る。走る。走る。
「ハァハァ、ここまでくれば大丈夫だろう」
地べたに腰を落として喘ぐ俺。少女はしばらく俺の顔をのぞきこんでいたが、何を思ったのか側から離れて行った。
彼女は本当に何も知らないのかもしれない。他人の空似というのはよくある話で、実際俺は接客業をしていく上で、兄弟
でもないのに瓜二つという人間を少なくとも3組は知っている。また、仮に彼女が何らかの情報を持っていたとしても、
一緒にいれば何かと不都合が生じてくるはずだ。お縄を頂戴することになり兼ねない。
俺はこっそりとこの場から離れようと腰を上げ、ゆっくりと地面を蹴った。背後を振り返ると、戻ってきた少女が佇んで
いる。その手には2本のミネラルウォーターが握られている。
俺は歩を止めた。糸が見えた。断ち切ってはならない糸。質量を持たないそれが、俺達の間には確かに存在してる。そう
思えた。結局、再び少女の元に歩み寄って、俺はミネラルウォーターを受け取った。
2人並んでペットボトルに口を付ける。
「おにいちゃんはどうして月に来たの?」
少女は問う。自分の過去を探しに来た、なんて言えやしない。
5531:2005/05/03(火) 23:26:01
「う、うん。観光にな」
「じゃあ、ウチが案内したげるよ」
「でも君は登校中じゃないのか?」
俺は通学鞄を指差した。痛い指摘を受けて、少女は苦笑いを浮かべる。
「こ、細かいことは気にしない気にしない。どうせ小学校の学習内容じゃ簡単すぎるし」
「親御さんが心配してるぞ」
「お父さんとお母さんは……いないの」
急に重く沈んだ顔になった。もうこの世の人ではないということか。俺はどうしてこう言ってはいけないことを言ってし
まうのか。
「ごめん」
「お願い!おにいちゃんと一緒にいさせて」
沈思黙考する俺。少女は俺に向かって、真剣な眼差しを突き刺す。
「わかったよ。ただし目的地までな。そういえば君の名前は?」
「名前……えっと、橋本」
「ハシモトって、苗字だけ?下は?」
「ウチとおにいちゃんは初対面なんだし、いきなり下の名前で呼ぶのは馴れ馴れし過ぎだよ」
そうなのか。”おにいちゃん”は馴れ馴れしくないのか。それにしても何故名を隠すのだろう。俺に知られると都合が悪
いのだろうか。
「通報されるとマズいから、ウチらは兄妹っていう”設定”にしようよ。父親が不倫相手に密かに生ませた腹違いの兄弟
だから歳が離れてるってことで」
妙ちくりんな設定まで捻り出した。
「あ、ああ。じゃあここに行きたいんだけど」
俺は地図を取り出して、市営アパート付近を指し示した。
「ここなら中央通りを通り抜けた方が早いね。ついて来て」
5541:2005/05/03(火) 23:26:28
俺は少女と共に、裏路地を抜けて喧騒に溢れた中央通りに飛び込んだ。月面都市一の商店街ということで、多種多様な店
舗が軒を連ね、様々な人種が往来している。まさに人種の坩堝という表現が相応しい。中央通りを抜けると、少し離れた
位置に高いフェンスで覆われた広大な敷地が目に入った。標識から判断すると連邦軍施設らしい。広場の中央にMSや戦
闘機が置かれており、一定距離を置いてその周りに観衆が集まっている。
「あれは?」
「先月、連邦軍に新しく配備された新型MSの一般公開だよ」
「へぇ」
わざわざ市街地に会場を設けて、MSをお披露目する時代になったのか。税金から軍事費予算をまかなっている以上、地
球連邦も民間人に大してサービスに走らざるを得ないらしい。俺は道端に打ち捨てられているチラシを拾い上げた。今回
公開しているMSについての紹介が写真入りで載っている。主力となる量産型白兵戦用MSビブロ、大口径ランチャーを
抱えた中距離戦用重MSデスパ、スピアと呼ばれるロングライフルを装備した長距離支援MSバリスタ。いずれも最新鋭
機という振れこみ。俺はMSを見上げる内、疑問を抱いた。何故これら新型が導入されたのだろうか。特に大きな戦争の
最中というわけでもないのに、である。
「おお!何だ、あれ!?」
観衆の一人(西村。中学。一緒に紅の豚を観に行った)が声を上げた。彼が上空を指差した先には、新しい別のMSの機
影が見える。観客が見守る中、謎のMSは会場に降り立った。他のMSの黒や緑一色という地味なカラーリングとは対照
的に、白と黒のコントラストが映える機体。会場は一時静まり返って、次いで所々から拍手が沸き起こり、ついには大き
な歓声へと変貌した。近くの観客が受注企業によるパフォーマンスなのだろうと推し測る声が聞こえる。しかし、俺は腑
に落ちない。それというのも、当の会場スタッフである連邦軍人達が戸惑っているようなのだ。白い機体の登場を感知し
ていない様だ。
「あれは…」
橋本が呟いた。亡霊でも見ているかのような怯えた瞳。
5551:2005/05/03(火) 23:26:58
双肩に巨大なロングライフルを背負うMSは、歓声に応えるかのようにスラスターを吹かせた。そして、そのまま一気に
ビブロに急接近すると、ビームサーベルで肩口から袈裟掛けに斬り裂いた。ビブロの上半身が爆発して四散する。金属片
が飛び散り、観衆の頭上に降り注ぐ。歓声が悲鳴に一転して騒然とする会場。残り2機の新型MSが応戦を開始し、市街
地は瞬時にして戦場と化した。
「危ない!逃げるぞ」
俺は隣にいる橋本の手を強く握って引いた。しかし彼女は硬直して動けないでいる。
「どうした?」
デスパと対峙する白いMSを見据えながら、彼女は搾り出すような声を発した。
「第三世代……」
                                                第2巻に続く
556Mr.名無しさん:2005/05/03(火) 23:37:15
>>554
こないだ紅の豚スレにいた?
557Mr.名無しさん:2005/05/03(火) 23:59:27
>>1乙。
いや、今日もありがとう。
なんだかあんたの話がなくちゃいられなくなっちまったよ。

>俺は歩を止めた。糸が見えた。断ち切ってはならない糸。
>質量を持たないそれが、俺達の間には確かに存在してる。そう思えた。

今日の感動ポイントはここですた。

あと、まとめサイト管理人氏もありがとうね。
558Mr.名無しさん:2005/05/04(水) 00:48:58
うほおおおおおおおおおおおおお
5591:2005/05/04(水) 01:04:47
今日はここまで。

>>556
居た。
5601:2005/05/04(水) 01:05:32
訂正
×白い機体の登場を感知していない様だ。
○白い機体の登場を関知していない様だ。
561Mr.名無しさん:2005/05/04(水) 01:32:16
俺専用MSキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!!!
562Mr.名無しさん:2005/05/04(水) 03:19:38
超乙!
続き気になるぜぇぇ
563Mr.名無しさん:2005/05/04(水) 04:02:08
さすがスペシャル。
>>1乙
564Mr.名無しさん:2005/05/04(水) 07:20:43
むちゃむちゃおもろいんですが


>>1禿乙
565Mr.名無しさん:2005/05/04(水) 13:49:39
>>1おなじみの誤字はあったものの、今回、全体的によくまとまっててクオリティ高いね。
566Mr.名無しさん:2005/05/04(水) 17:19:35
今夜も期待age
567Mr.名無しさん:2005/05/04(水) 19:29:43
船長(片山。大学時代。運転免許の終検で3回落ちた)

税Rへの皮肉っぽく思えたのはオレだけかな?さっき電車脱線スレ見てきたから
とにかく今夜の就寝前も楽しみ!
5681:2005/05/04(水) 23:14:35
今日は休載。
569Mr.名無しさん:2005/05/05(木) 01:07:04
>>1
GW、店の人出はどうだい?

>今日は休載。
ゆっくり休みな。また続きを楽しみにしてるよ。
570Mr.名無しさん:2005/05/05(木) 02:27:05
スペシャルやばい。最後の一行で震えがきた。
こういうのを待ってたんよ...
もう俺>>1に一生ついてくからな
5711:2005/05/05(木) 20:22:26
悪い。今日も休載。っつか、次は6日。
家庭の事情で、休日以外は妄想をまとめられんようになったor-z
5721:2005/05/05(木) 20:57:06
間違えた。
7日。
573Mr.名無しさん:2005/05/05(木) 21:06:52
乙。楽しみにしとく。
574Mr.名無しさん:2005/05/05(木) 22:14:26
期待してるのも確かだけど、ここに連載してることが>>1の負担にならないでほしい。
無理しないで。
575Mr.名無しさん:2005/05/05(木) 22:30:06
気にするな!
576Mr.名無しさん:2005/05/05(木) 22:36:35
いつかこのスレのフラッシュできるといいね。
漏れ見たら感動して泣くかもしれんYO
577Mr.名無しさん:2005/05/05(木) 23:52:31
正直、>>1となら結婚してもいいと思ってる
578Mr.名無しさん:2005/05/06(金) 01:09:17
>>577
え!!
1って女なの?
579Mr.名無しさん:2005/05/06(金) 01:12:42
577は女です。スマソ。
580Mr.名無しさん:2005/05/06(金) 01:25:16
>>579
なかなか見事な妄想だなw
581Mr.名無しさん:2005/05/06(金) 01:37:23
>>580
>>578のが見事と思われ。
582Mr.名無しさん:2005/05/06(金) 03:36:42
っつーか、毒男板の、しかも妄想スレを読む女ってどうなんだ?
流石にヤバイだろ。w
583Mr.名無しさん:2005/05/06(金) 06:50:58
妄想族の女
584Mr.名無しさん:2005/05/06(金) 14:57:09
>>1よ・・・そろそろ空しくなってきたか?
585Mr.名無しさん:2005/05/06(金) 17:57:35
正直このスレは電車男を超ていると思う。
まさに毒男板の鏡。
586Mr.名無しさん:2005/05/06(金) 23:11:15
今夜はナシなのでサミシイですね
5871:2005/05/07(土) 00:31:28
>>584
まだ。
588Mr.名無しさん:2005/05/07(土) 21:21:32
ああ
589Mr.名無しさん:2005/05/07(土) 21:36:36
>1の妄想まだ〜?
590Mr.名無しさん:2005/05/07(土) 21:47:56
>>589
焦るな。
591Mr.名無しさん:2005/05/07(土) 23:20:22
俺の妄想っつったら
通勤のとき電車から降りてきた人軍に切り込む
電車に乗る人軍の切り込み隊長になることぐらいだな
毎朝合戦だよ
592Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 00:02:41
>>591
寝る前じゃなく、毎朝妄想してるのか。
健康的だなあ。
5931:2005/05/08(日) 00:07:40
第2巻
「第三世代?」
聞き返す俺の言葉など耳に入らず、橋本は放心状態でMSから視線を外せないでいる。
第三世代と呼ばれた機体は、ロングビームサーベルの一撃でデスパが装備している巨
大なランチャーを一刀両断。相手のずんぐりむっくりとした体躯から繰り出される鈍
重な攻撃をことごとく避け、ライフルで頭部を打ち抜いた。間髪を入れず、いつの間
にか距離を取ってスピア砲にエネルギーを充填していていたバリスタが、第三世代に
向けて発射した。しかし、それすらも紙一重でかわした第三世代は、シールドを弾き
飛ばされたものの機体はほとんど無傷だ。
「強い。連邦のMSでも全く歯が立たないのか…」
戦闘に見とれている俺は、その圧倒的な性能に驚嘆した。だが、それ以上に先程から
妙な感覚に襲われている。いわゆる既視感というやつだ。あの第三世代というMSを
どこかで見た気がしてならない。それがいつのことなのか、夢か現かすらも定かでは
ない。それなのに、まるで旧い友に再会したような。
「っと、こんなことしてる場合じゃないな」
そうだ。悠々と観戦している状況ではない。俺は動けずにいる橋本の身体を抱きかか
えると、その場を離脱すべく駆け出した。パイロットには気の毒だが、元々遠距離専
用のバリスタでは第三世代には到底適わないだろう。しかし時間稼ぎにはなる。
と、その頭上を轟音が通過した。
「新手か!?」
空を見上げると、どどめ色とでも言うのか、暗い紫色で塗装された機体が目に入った。
戦闘機にしては少々いびつな形状のそれは、空中で人型に変形した。可変型MSだ。
肩アーマーには連邦の軍章。
5941:2005/05/08(日) 00:08:06
新型は着地したかと思うと、そのままサーベルを構えて第三世代に向けて突進する。
思わぬ増援に意表を突かれた第三世代は、右腕を切り飛ばされて体勢を崩した。しかし
敵もさるもの。膝を突いた格好でビームライフルを構える。その照準は連邦のMSには
向けられていない。銃口が狙う先は俺達だ。
「やばい!!」
俺は咄嗟に橋本の身体に覆い被さって守る。迫るビーム。だが間一髪で弾は弾かれた。
辺りに金属が溶ける異臭が漂う。瞼を開けると、どどめ色のシールドが俺達の前に聳え
立っている。第三世代は既に姿を消してしまったようだ。
「そこの民間人、何でさっさと避難しないの!」
拡声器から苛立ち混じりの怒号が響いた。女の声だ。激しい中にどこか冷たさを感じさ
せる声色。俺は彼女が乗るMSのメインカメラに顔を向けて、申し訳なさそうに両手を
合わせた。すると、
「あなたの名前は?」
「へ?」
俺は声を張り上げて自分の名を名乗った。
「く……いいわ。行きなさい」
女パイロットは苦々しそうに言い捨てた。やはり俺達のせいで敵を逃がしたことに苛立
っているのだろう。
サイレンが近付いてくる。戦闘が収まった演習場に、連邦軍所属の軍用車や救急車が次
々と集合して来た。その倍はあろうかというマスコミも。俺は橋本を抱えて、それらを
避けるように野次馬の中に溶けこんだ。
月面都市の夕方は、照明を徐々に弱めることで再現される。俺と橋本は中心街の広場で、
据えられたベンチに腰掛けている。隣に座る彼女の表情は浮かない。できれば“第三世
代”のことを聞き出したいのだが、あの驚愕した様子を思い出すと踏ん切りがつかない。
すぐ側のTV局前に設置されている大型モニタには、昼間のMS一般公開会場襲撃の報
が絶え間なく流されている。仕事を終え帰宅中の会社員、買い物中の主婦、部活帰りの
女子学生、誰もがモニタから流れてくる戦争の匂いに歩を止めている。
5951:2005/05/08(日) 00:08:46
つい30分ほど前、白いMSに会場を襲撃させたグループから声明が発表された。彼らは
一年前の戦争で敗れた友岡公国の残党、というと語弊があるだろう。というのも友岡公
国は敗戦以来、戦争放棄を主張している。実際には連邦の監視の下に武装を禁止されて
いると言ったほうが適切なのだが、とにかく今回の襲撃について一切の関与を否定した。
では犯人は一体何者なのかと言うと、故友岡王の遺志に傾倒した一部の残党とのこと。
彼らは友岡公国からの連邦の完全撤退を要求。昼間の戦闘は軍事力を見せつける為のプ
レゼンテーションの意味合いだった。しかし連邦軍最高司令官山田は威信を傷つけられ
て引くに引けず、それを拒否。こうして再び戦争の火蓋が切って落とされたわけだ。
既に宇宙港では月面都市への出入りが制限され始めている。戦争が本格化すれば、地球
に帰るのも一苦労だ。早めに真相を確かめなければなるまい。
俺は橋本の横顔を再度見た。とりあえず彼女は家に送っていくべきだろう。
「橋本、家に送ってってやるよ」
「え!?でも、まだ目的地に着いてないじゃん」
「ありがたいけど、あんなことになっちゃったしなぁ」
「ウチはおにいちゃんに付いていく義務があるの」
「義務って何だよ。そもそもお父さんやお母さんが心配するだろうし」
「…いや!絶対にいや!!」
だだをこねる橋本を俺が持て余していると、肩を叩く者が。
「君、何をしているんだ?」
肩を叩いたのは若い警察官(倉橋。中学時代の後輩。現職警察官。GTAが好き)。俺
は眼を見開き硬直した。こんな時間に歳の離れた俺達が言い争いをしているのを見て怪
しんでいるようだ。
「あ、いえ…別に少女に悪戯とかそういうことを目論んでいるわけじゃ」
我ながらお見事な墓穴掘り。
「ねぇ、おにいちゃん。そろそろ家に帰ろうよ」
橋本が俺の腕を引っ張った。ナイスフォロー。
5961:2005/05/08(日) 00:09:09
「おにいちゃん?それにしちゃ歳が離れているようだねぇ」
警察官はなおも疑いの目。
「…実はウチのお父さんとお母さんは愛人関係で。おにいちゃんとは腹違いの兄妹なの。
いつもはお母さんの目があってなかなか会えないんだけど、今夜は特別におにいちゃん
と会う許可が下りたの。ね、おにいちゃん」
「あ、ああ」
示し合わせたとは言え、こうも取ってつけたような設定で上手く騙され…
「そうか。おにいさんと仲良くな」
騙されてる!!コロコロッと騙されてる!!疑り深いと思ったら思いのほか単純でよか
ったー\(^o^)/
俺達は敬礼する警官に、作り笑いで別れを告げて中心街を出た。そのまま橋本に手を引
かれて、裏路地を進んでいく。黙々と俺の手を引っ張る彼女に、俺はただただついてい
くしかない。しばらく歩いて、巨大な集合住宅の前に辿り着いた。
「着いたよ、おにいちゃん」
「ここか」
一体何十世帯が入居しているのか、整備されている点を除けば、香港の九龍城を彷彿と
させる。プレートには確かに市営住宅の文字が記されている。早速鳥羽の住む部屋を探
そうと、俺が郵便箱に近付こうとすると、俺の背後でドサリと地面に何かを落とす音が
した。
振り返ると、音の発生源はビニール袋。収まりきらない大根やパンが顔をのぞかせてい
る。そして袋の横には人間の足。俺は恐る恐る視線を上げた。
「赤川……さん」
照明が完全に落ち、月面都市に夜が訪れた。
                                   続く
597Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 00:21:13
久しぶり&乙
598Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 00:24:31
>>1締め切り順守おつ。
紫の新型可変MSに、締めの赤川さん登場か。
今回も以降に繋がる見せ場作ったね。
可変MSのパイロットは浜崎か?新キャラか?きになるな。

とにかく、>>1がよかったスレの住人らしくてよかったー\(^o^)/
5991:2005/05/08(日) 02:12:27
今日はここまで。
600Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 02:15:14
乙であります(・∀・)ゞ
601Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 02:32:44
ウホッ!
602Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 02:33:18
ぐわ〜〜〜〜!!!!
またいいところで・・・・・!!!!!
603Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 02:51:26
>>1はよかったー!\(^o^)/ スレの住人でもあるんだな
604Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 08:25:03
昨夜は眠気に負けて今見たので朝age
続きが待ち遠しいですね
605Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 11:33:40
>振り返ると、音の発生源はビニール袋。
>収まりきらない大根やパンが顔をのぞかせている。
>そして袋の横には人間の足。

おお、遺体の入った袋落としたのかと思ったwww
おれ、読解力無さ杉 orz
606Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 11:55:06
心配するな。俺も少しだけ思った。
607Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 14:07:49
1の文章は多少解りにくいところがあるな
あと表現の重複が多い。これは語彙数に関係あると思う
前も誰か言ってたけど読書量が足りないんじゃね?
608Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 14:10:16
かもな
ただそういう文章の上手い下手はできるだけ気にせずに
思うだけ妄想を垂れ流してほしいというのが俺の願い
609Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 15:21:36
>>608に禿げ上がるほど同意。
それと>>1以外の男にも妄想を書いてほしい。
>>1が書かない時寂しいからさ。
610Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 15:25:01
俺は今の1の文章好きだから、このままのクオリティで満足だ。
ただ、人によっては「面白ければいい」ってもんじゃないってのも分かる。
俺は小説は気にしないんだけど、漫画は絵が下手だと読まない。それと似たようなもんだろ。
でも、無理はしないで欲しい。妙に凝りすぎないでくれ。
とにかく1乙。
611Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 16:11:03

ポマイラそして>>1
宣伝とか思わないで聞いてくれ

やりたいならまず見ろ

http://adult-sex.jp/a039
612Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 17:12:48
こないだ人大杉で見れんかったorz
613Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 20:45:33
>>611
GJ!!レベル高杉
俺らがそこをクリックするなんて妄想、普通思いつかない
614Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 21:29:59
>>607
でも、なかなか綺麗な比喩を使うことがたまにあってびっくりする。
615Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 21:35:16
文章表現云々より、盛り上げ方が上手いのは確かだ。
616Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 22:19:17
ここまで文章の拙さを指摘されて1はよく書く気になるなw
614なんてまるで担任が中学生の文章を評価する時みたいだwww
617Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 22:25:17
618Mr.名無しさん:2005/05/08(日) 23:15:56
ヒント:華麗にヌルー
619Mr.名無しさん:2005/05/09(月) 00:01:04
そろそろクルー?
6201:2005/05/09(月) 00:55:49
今日は休みで。次回は明日か明後日か明々後日くらい。
621Mr.名無しさん:2005/05/09(月) 01:31:06
>>620
待ってる;&hearts
622Mr.名無しさん:2005/05/09(月) 03:09:01
1のスルーぶりが笑えるw
623Mr.名無しさん:2005/05/09(月) 19:12:26
テンカ見たくて今日テンテレ見たら
テンカ出てなかった…(´;ω;`) ウッ
624Mr.名無しさん:2005/05/09(月) 21:22:50
大の大人がそんなことで泣くなよ
625Mr.名無しさん:2005/05/09(月) 22:10:39
ハシモトテンカって見たことない
626623:2005/05/09(月) 22:50:09
テンカのHPは見たけど動いてしゃべってるテンカが見たい・・・
赤川さんファンは多いけどテンカファンて俺だけとか?

>>1のおかげで自分の隠れたロリ属性に気づかされたorz
627Mr.名無しさん:2005/05/09(月) 23:52:25
ロリコンでもいいんじゃないかな
628Mr.名無しさん:2005/05/10(火) 17:07:57
保守
629Mr.名無しさん:2005/05/10(火) 17:47:33
このままdat落ちに一票age
630Mr.名無しさん:2005/05/10(火) 20:10:14
おいらも妄想していい?
631Mr.名無しさん:2005/05/10(火) 21:13:38
>>630
いいんでない?
ただ妄想する人は一応、トリつけてよ。
632Mr.名無しさん:2005/05/10(火) 21:30:55
でも1もつけてないぞ
633Mr.名無しさん:2005/05/10(火) 22:48:24
混沌のままでいいよ
634Mr.名無しさん:2005/05/10(火) 23:51:27
>1がいないので、お口汚しに俺の妄想をば。

俺の名は毒男。
いつも上司や先輩社員に怒られているスチャラカ会社員。
裏の顔はこの街に巣食うダニ共を消す伝説のスイーパー(殺し屋)だ。
だがスイーパーの仕事は現在無期限の休業中。
今は単なるダメ会社員だ。

ある残業明けの夜、会社から解放された俺は自分のアパートへと車を走らせていた。
(あぁ〜〜〜〜、疲れた。やっと終わったよ・・・・)
(しかし俺を置き去りでみんなして飲みにいっちまうんだもんなぁ・・・)
(でも俺の仕事が遅いのが悪いんだけどな・・・(´・ω・`))

疲れてした俺は少しでも近道しようと裏通りをショートカットしようと
狭くて薄暗い裏通りを慎重に車を走らせていった。

(ん?)

誰か揉めている。
・・・チンピラ風の男2人と・・・女が・・1人。

・・・以前の俺なら助けに入ったが、今の俺は堅気だ。
何よりゴタゴタに巻き込まれるとやっかいだ。

俺は横目で見ながら車を通過させようとした。

(!!!?)
(今のは!)

多分続く。
635634:2005/05/10(火) 23:54:17
久しぶりに妄想を書いたけど、読んでみたら無茶苦茶だ・・・
俺はすっこんでます・・・。
636Mr.名無しさん:2005/05/10(火) 23:57:53
>>635
自分が思うままに書け
それがこのスレの醍醐味
637Mr.名無しさん:2005/05/11(水) 00:00:57
>>635
続けろよ。>>636に大賛成。
ここでは文章の得手不得手よりも勢いが大事。
ただ、続きを書くときは634のレス番コテでたのんま。
638634:2005/05/11(水) 00:05:50
>636
>637
うう・・・ありがとう。

漠然とした自分の妄想を文章化するのが難しくて・・・

でもまた書いてみます。ありがとう。
6391:2005/05/11(水) 00:24:42
>>634
乙。

俺は多分明日。
640Mr.名無しさん:2005/05/11(水) 00:44:59
 夜。砂漠の街の神殿。その最奥部。
床に巨大な文様が描かれ、その縁で一人の老人が釣り糸をたらしている。
老人の背後を僧侶たちが取り囲み、必死の形相で呪文を唱えている。
部屋の片隅では幾人かの男たちが固唾を呑んで老人を見守っている。
ときおり描かれた文様が水面のようにゆれる。
「むっ、大きい・・・」
老人の持つ竿が突然揺れ動き、文様内を釣り糸が激しく動く。
釣り糸の動きにあわせて僧侶たちの詠唱が早く大きくなってゆく。
老人の顔が苦痛にゆがみ、僧侶たちの詠唱をかき消すように老人の悲鳴があがる。
同時に僧侶たちが悲鳴を上げ、倒れてゆく。
力のなくなった老人の手から竿が離れ、文様に吸い込まれてゆく。
部屋の隅にいた男たちが老人に近寄ると、老人は事切れていた。
「町長殿、やはり騎士団にお願いするしかありますまい。」
僧侶を助けおきしながら若い男が年配の男に諭すようにいう。
「大僧正殿。」
年配の男は老人の傍らから動かない。


641630:2005/05/11(水) 00:47:38
忘れた。
>>640=630。
ちょっと書いてみる。
642Mr.名無しさん:2005/05/11(水) 01:42:53
>>639
明日よろしくね〜、待ってる。
>>640
おいおい、なんだか面白そうじゃねぇか!?
643630:2005/05/11(水) 01:56:16
 気がつくと満天の星空。
仕事中のおいらは葱を抱えて砂漠の真ん中に立っていた。
事態を把握しようと周りを見渡すと、星明りに照らされて人影がちらほらとうごめいている。
どうやら異世界に召還されたらしい。
でなきゃ工場で葱を洗っていたおいらが砂漠の真ん中で突っ立ているわけないもの。
さすがに3回目ともなると慣れたのもので、(ああ、また巻き込まれたな)なんて思っていると、ちらほらと「げー、またかよ」とか「勘弁してくれりょー」なんて声が聞こえてきて、(結構、経験者いるやん)なんて思ってしまう。
(結構、砂漠の夜って寒いなあ)なんて思いながら水の滴る葱をもっているとドスの効いた声が響いた。
「おい、ここに洞窟があるぞ。」
(砂丘に洞窟なんてあるわけないだろ)なんて思ってると、
「おっ、結構中はあったかいぞ。お前ら、来いって!!」
ドスの効いた声にエコーが掛かって聞こえてくる。

644630:2005/05/11(水) 02:22:30
ドスの効いた声の持ち主はお節介な人柄らしい。
呼び掛けるだけでなくて、穴から出てきて人影に近づいていくと相手の手をとって洞窟の方に引っ張ってゆく。
「おい、お前、あそこあったかいぞ。」
「いえそのflだsjfぎおあfl」
「あったかいって!ここ寒いだろ。」
その様はまるで893が気弱な一般人に因縁をつけているみたいだった。
でもまあ、こうゆう状況だと、声のでかいお節介焼きが場を仕切るわけで、なんとなくみんな洞窟の方に集まっていく。
おいらもさすがに葱を抱えて砂漠を旅するわけにも行かないので、洞窟に近づいてゆく。
近づいてみると、ドスの効いた声の男は片っ端から集めた人を穴に放り込んでいく。
おいらも穴に入って見ると、落ちた先は洞窟というよりも遺跡って感じで、整然と石を積み上げた天井の低い部屋になっていた。

645Mr.名無しさん:2005/05/11(水) 07:05:16
>>640
すげーいいプロットじゃん。
続きが楽しみだ。

しかし、みんな真面目な妄想が多いな。
俺の就寝前妄想は性欲の塊w
646Mr.名無しさん:2005/05/11(水) 22:25:25
オレの中で毒男版内最良スレと化してきています
647Mr.名無しさん:2005/05/11(水) 22:26:07
1はまだかな。
>630>634も乙。続きが楽しみだよ。
648Mr.名無しさん:2005/05/11(水) 22:37:59
あえて欠点を言えば630のはなんか読み難い
649Mr.名無しさん:2005/05/11(水) 22:56:00
来るかっ?
650Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 00:02:45
そろそろ来る?
651Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 00:07:46
お〜、なんか盛り上がってきたな
6521:2005/05/12(木) 00:12:12








    あ ぶ り だ し











とかやったら怒る?
653Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 00:12:48
652は1ではありません。ごめんちゃい
654Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 00:19:38
期待age
655Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 00:19:39
なんかわからんがワロタ
656Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 00:19:39
>>645
お前の妄想待ってる
657656:2005/05/12(木) 00:28:55
まただ・・・
同じ時間に、同じスレにレス。これで何度目だ?
どんな過疎スレでも同じことが起きる。
俺と同じ波長を持つ人間がいるのか?

以前、何枚かの写真を見た。そこには幼い俺と、
父と母、そして俺と並んだもう一人の子供・・・
だが、その子の部分は破り取られている。
俺はその子が誰なのか、何故か聞くことができなかった。

そんな記憶がふと蘇ってきた。ばかげた妄想だとは思う。
その子は俺の…
今さっき、俺と同じ時間にレスしたこいつは…
658Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 00:33:20
第3巻
6591:2005/05/12(木) 00:33:43
第3巻

第3巻
「おねぇちゃ………あ」
俺の視線を意識して、橋本は慌てて口をつむった。どうやら赤川さんと面識があるようだ。
赤川さんは言葉を発さない。いや、発そうとしない。その様は俺への対応に迷っているかのようだ。
「鳥羽さんですね」
俺は鳥羽の妻を真っ直ぐに見た。この瞳、見覚えがある。旧連邦基地で見つけたアルバムの中だけ
ではない。それ以前にこの瞳と出会っている。憶測が次第に確実さを帯びていく。
「唐突にお訪ねして申し訳ありません。でも教えてほしいんです。俺の過去を」
重い口調で切り出す俺に対して、彼女は短い間を置いて口を開いた。
「過去って言われても、夫の以前の職場での仕事仲間ということしか知りませんけど」
赤川さんの口調は、ほとんど赤の他人に対するそれだ。
「俺はこの一年間のことを言っているんです」
「一年間…ああ、事故で昏睡されていたとか」
「違う。違うんだ。俺はその間…」
「い、いい加減にして貰えませんか?あなたのことなんてほとんど知らないのに」
「鳥羽さ…いや、赤川さん。これを見てくれ」
俺はバッグから旧連邦軍基地で見つけたアルバムを取り出した。あちらこちらが焼けてボロボロにな
ったアルバム。その中から自分と赤川さんが並んで写っている写真を抜いて、彼女に手渡した。
「他人の空似ってあるもんなんですねぇ。わたしもよく言われるんです…」
表情は平静を装っているものの、彼女のアルバムを持つ手は震えており、明らかに動揺している。
赤川さんは言葉を続けた。
「…ヒトミに似てるって」
「いい加減にしてくれ!」
俺は激昂した。ここまで衝動的に人に当たったのは何年ぶりだろうか。別段彼女がヒトミに似ていな
いからではない。寧ろよく似ている。Look back againのPVとか特に。そうではなくて、どこまでもし
らばっくれる彼女の態度に業を煮やしたのだ。
「おにいちゃん、もうよしなよ…」
橋本が俺の袖を引く。
6601:2005/05/12(木) 00:34:06
「うるさい!お前もお前だよ。知ってるんだろ。なぁ、俺が何なのか知ってるんだろ?」
舞い降りる静寂。ひどく怯えて俯く橋本の頬を滴がつたう。その涙が俺を我に返した。
「…ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ」
俺はこの場の空気に耐え切れず逃げ出した。いや、空気だけではない。彼女らがひた隠しにする、得
体の知れない自分の過去と対峙するのが怖くなったのもある。
わき目も振らず、夜の街に駆けているうち、足は自然と中央通りに向かった。人ごみに混じることで、
己の特異な存在を埋没させたかったのかもしれない。息切れを起こす頃には、繁華街の一角に立って
いた。コンビニに立ち寄り、安い缶ビールを買った。普段酒を好んで飲むことはないのだが、今は少
しでも現実から遠ざかりたい。
コンビニ裏の壁によりかかって酒を一気に煽る。やはり不味い。しかし、しばらくすると酔いが回っ
てきて、心なしか楽になってきた。二口、三口と缶の頭に口をつける。
「これからどうすりゃいいんだ…」
俺はぼんやりと人の流れに見とれる。仲むつまじく歩くカップルが、いつも以上に嫉ましく思えた。
ふとした瞬間に、俺の横に何者かが立った。
「あの、少しよろしいですか?」
甲高い声。エウリアンがラッセソのシルクスクリーンを売りつけようとしていうのだろう。その類の
セールスに、特に声をかけられやすい俺は直感した。
「いらないよ」
一蹴した。だが、酩酊しているからだろうか、直感は外れた。正面を見上げると、3人の男(安田大サ
ーカス)が立っている。いずれもグレーの軍服に身を包んでいる。甲高い声を出したのは丸坊主で髭
を生やした、いかにも入道といった顔つきの男(クロちゃん)。中央に立つ男がリーダーらしい。開
襟してネクタイを巻いたその男が、俺の名前を確認した。俺は頷き、
「そうだけど、あなた方は?」
問い返した。
「連邦軍のものだ。我々とご同行願いたい」
全くどうかしている。三文小説ではあるまいし。どうして俺の人生にはこうも陳腐な展開が用意され
ているのだろう。目の前に神妙な面持ちでいる軍人達が、滑稽な道化師のように思えた。自然と口を
ついて出る哄笑を押し殺すことができない。俺は普段ではまずあり得ない挑戦的な態度で、彼らを睨
み返した。
6611:2005/05/12(木) 00:34:36
「あんたらが俺の過去を知っているのか?」
「それは一緒に来ればわかることだ」
「嫌だと言ったら?」
相撲取りのような肥満男(HIRO)が前に出て、ペットボトルを数秒の内に空にした。俺は戦慄した。
「わかった。どこへなりと連れて行けよ」
半ば自棄になって、俺は自らすすんで彼らの軍用車に乗り込んだ。
車の行き先は昼に襲撃を受けた連邦軍の基地。敬礼する門兵の間を通り過ぎ、敷地内の中央に位置す
る建物の前で止まった。俺はネクタイ軍人の後ろをついて歩く。
(なんだ?)
違和感を覚えた。すれ違う連邦職員達が、俺の顔を見ると立ち止まるのだ。どうやら基地内において
俺は結構な有名人らしい。エレベーターに乗って建物の最上階まで昇り、月面基地の司令長官室と思
しき部屋に通された。
「よく来てくれたな」
部屋の奥で、席を立って出迎えたのは白い口ひげを蓄えた男だ。襟章から推測するに恐らくは中将。
柔和そうな人相だ。
「私は里山(大学時代の教授。倫理学)この月面基地の司令長官だ。早速だが掛けたまえ。君の過去
について、全てを説明しよう」
俺は誘われるままに、応接セットのソファに腰を下ろした。指令は俺の過去について洗いざらいを話
してくれた。連邦軍のMSパイロットになったきっかけから友岡公国との最終決戦まで、つまり空白の
一年の総集編を。
「―――と言う訳だ」
全てを話し終えた司令長官は、葉巻に火を付けた。
「俺が元連邦のパイロット…」
「俄かには信じがたいだろうがな」
「……」
友岡公国との最終決戦で、俺は次世代俺専用MSの爆発に巻き込まれたが、その直後奇跡的に回収され
て一命を取り留めた。しかし、覚めるかどうかも判然としない昏睡状態に陥っており、そのまま連邦
を除隊され三次中央病院に移されたというわけだ。実際は1週間ほどで覚醒した。連邦に居たころの
記憶をそっくり喪失して。
確かに辻褄は合う。だが、まだしっくりこない。パズルのピースは与えられたものの、それらがしっ
かりと組み合わさっていないような状態。里山司令から与えられたのは情報に過ぎず、自分自身の記
憶と呼べるものではない。
6621:2005/05/12(木) 00:35:03
「どうして自分がここに呼ばれたのか、わかるかね?」
そうだ。なぜ俺が今更ここに呼ばれたのか。第一、月面都市に滞在していることは、同僚にすら明か
していない。
「いいえ」
「我が軍のMSに搭載されているメインカメラの映像は、常に基地内の司令室に送られている。昼間の
襲撃の際、釈機のカメラに君の顔が映った。私でなくてもピンと来ただろう。君の畠敷での活躍ぶり
は軍内報で幾度となく報じられていた。民間出身のエースパイロットとしてな」
「でも何故今更俺、いや自分を呼んだのですか?」
「君も知っての通り、本日我々は旧友岡公国残党の奇襲を受け、新型MS三機を撃破された。彼らは先
の戦いで回収した第三世代俺専用MSを握っている。君をおいて互角に渡り合える人間はいまい」
「しかし…」
「今一度、力を貸して貰えないだろうか?」
「……考えさせてください」
一晩猶予を貰って、俺は司令室を出た。
昏睡状態だからと一度クビにしておいて、また力を貸せとは虫のいい話だ。受ける義理はないはず。
それなのに俺は逡巡している。なぜだろうか。
苦悩しながら通路を歩いていると、黒いパイロットスーツを着た女性とすれ違いざまに目が合った。
「昼間はどうも」
声をかけられた俺は、鳩が豆鉄砲を喰らったような表情。歳は自分とさほど変わらないだろうか。栗
色の髪を胸元まで伸ばしている。襟章には2個、銀の星が光っている。
「あなたは?」
「私は釈中尉。この月面基地に所属しているパイロットよ」
女性ながらこの若さで中尉の位置にいるとは、かなりのやり手に違いない。冷静というか冷めた口調
も、軍隊という集団の中でのし上がっていく上で必要なものなのかもしれない。それに比べて家電屋
でチーフにすらなっていない俺と来たらorz。それにしても“昼間はどうも”とはどういう意味だろう
。初対面のはずだ。昼間、女性、パイロット、そして冷めた口調。キーワードを重ねるうち、俺は演
習場での光景を思い起こした。そうだ。あのどどめ色をした可変型MSに登場していた女性パイロットだ。
「あ、あの時はすみませんでした」
深く頭を下げる俺に、釈は嘲るような笑顔を浮かべる。
「あなた、俺専用MSに搭乗していたそうね」
「はい」
6631:2005/05/12(木) 00:35:52
「何故出てきたの?」
「へ?」
「今頃ノコノコ出てきて伝説のエース面されちゃ、たまったものではないわ」
「そんな、俺は別に…」
「確かにあなたの戦歴は輝かしい。かつて敵勢力の基地だったこの月面基地を戦艦三次が陥落。その
際、主力MSに乗っていたのはあなただった。そして一年前の戦いでもオールドマン副司令…いいえ、
友岡国王の謀反を防いだ」
釈はここで一呼吸を置いた。
「でもね。あなたの時代は終わったの。私はいわばあなたの後継者。でも全てのパイロット技術にお
いてあなたを上回っている」
俺は対応に困った。いきなり因縁を付けられても、こちらとしては参ってしまう。そもそもMS乗りと
して復帰すると決まったわけではないのに。
その時、基地内に警報が鳴り響った。基地内アナウンスによって、パイロット達にミーティングルー
ムへの集合が促される。
「敵襲……そうだわ。こうしましょう。あなたと私、この戦いでどちらが多くのMSを墜とせるか、
これで真のエースを決めるの」
「いや、俺はMSに乗ると決めたわけじゃ…」
聞く耳持たず行ってしまった。どうしていいか迷っていると、オペレーターにより俺の名が呼ばれた。
俺は仰天したが、無視するわけにもいかず、やむなく釈の後についてミーティングルームに向かう。
既に10人ほどのパイロットが集合している。若野(中学時代。卓球部の先輩)と名乗る威圧的な態度
の士官が作戦指示を与えている。俺は一番後ろの席に座った。
「敵は先の襲撃と同じく第三世代を出してきた。取り巻きのMSはヴァイオールおよそ10機。その
内2機は強襲用Rタイプだ。釈隊は基地正面から迎撃、倉岡隊は後方からの援護を行う」
ホワイトボードには釈隊に混じって、俺の名前が記されているではないか。
「あの…」
俺はそっと腕を挙げた。
6641:2005/05/12(木) 00:36:15
「何だ?」
「何で自分が普通に出撃することになってるんですか?」
「俺が独断で組み込んだ」
「独断って、そんな無茶苦茶な」
「ここを攻略されれば月面都市は友岡公国残党の手に落ちる。連邦軍友岡公国駐留軍は撤退を余儀な
くされ、その後は容赦ない連邦狩りが始まるだろう。奴らは執念深い。友岡国王を殺したお前は、無
論その矢面に立たされるだろう。これはお前自身を守る戦いでもあるってわけだ」
「…はぁ」
どうにも強引な話だが、勢いにまかれた俺はおずおずと引き下がった。
「よし。それでは全員戦闘配置につけ。解散!」
「戦場で待っているわ、先輩」
ヘルメットを手にした釈が、横から不適な笑みを投げかけながら、俺を追い越していった。
俺はMSマニュアルを片手に、パイロットスーツに着替えて、指定された第3ハンガーに向かう。整備
班は出撃準備でてんやわんや。俺にはメビウスという機体が用意されている。釈が搭乗していたあの
可変型と同じシリーズだ。
「よぉ、エース久しぶりだな」
「えっと、どなたです?」
「ああ、そうか!忘れちまったんだよなぁ。俺ぁ整備班班長の福原(高校時代。坊主)ってもんだ。
このメビウス−ムラマサ型の操縦系統はお前用にカスタマイズしてある。レバーの固さからマスコッ
トの位置までな!」
「操縦系統って、ほとんどわからないんだけど」
「MS操縦は頭でするもんじゃねぇ。身体でするもんだ。なぁにコクピットに座れば身体が思い出し
てくれるさ」
「思い出せなければ?」
「あの世行きだな」
福原は屈託なく笑った。
6651:2005/05/12(木) 00:36:37
「そんな…」
「今回の敵はお嬢ちゃんや倉岡の隊だけじゃ退けられない。猫の手じゃねぇが、あんたの力が必要だ。
頼りにしてるぜ?伝説のエースさんよ」
福原は景気付けとばかりに、俺の背中をドンと叩いた。
背中をさすりながら、俺はコックピットに乗り込んだ。内部はシンとして暗闇で満たされている。シ
ートに座ってはみたが、周囲を埋め尽くす計器は何が何やら皆目見当がつかない。
「どうしろってんだ…」
俺は一人ごちて、福原から預かったIDキーをスロットに差し込んだ。コントロールパネルの計器類に
火が灯り、シートを囲む全方位スクリーンにハンガーの映像が映し出された。目線より少し低い位置
に置かれたメインディスプレイには、OS起動状況を示すプログレスバーが伸びていく。そして“WELC
OME!!”の表示。
「何が、ようこそ、だ」
操縦桿とスロットルレバーを握り、緊張を抑えるべく目をつぶる。闇の中でMSの息吹を感じる。そう
していると、一陣の風が吹いた気がした。とても懐かしい感覚。次に目を開けた時、コントロールパ
ネル上の全ての計器類が、意味を持つものに変わっていた。
「解る……」
心が震えた。
「こうなったら、死んでも生きて帰ってやる!」
勘を取り戻すように、ゆっくりと機体をカタパルトへと乗せていく。オールグリーン。オペレーター
がゴーサインを出した。
「ムラマサ、出ます!!」
俺は確信に満ちた手つきでスロットルレバーを引いた。  
                                     続く
6661:2005/05/12(木) 00:37:52
悪い。また長くなった。
あと658は誤爆。
667Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 00:45:18
>>1
GJ
668Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 00:50:20
俺も妄想してみる。

って書きだしてたら1来てるwwwww俺ワロスwwwwwwwwwwwww
お疲れ1。てかGJ。特に福原。
669Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 00:54:38
>>657
お前の妄想、アツいな
なんか好きだ
6701:2005/05/12(木) 00:57:55
>>668
スマソ。遮っちまったよorz

今日はここまで。
671Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 01:04:15
>>1
おまい最高だぜ!
しかし…浜崎はいないのか?(´・ω・`)
672Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 01:04:52
スマソ野暮な事聞いた
気にしないでくれ、楽しみに待ってるから
673Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 01:12:01
>相撲取りのような肥満男(HIRO)が前に出て、
>ペットボトルを数秒の内に空にした。俺は戦慄した。
>「わかった。どこへなりと連れて行けよ」

ここワロタ。
674688:2005/05/12(木) 01:12:55
>>1
いいよ、気にスンナ。いつも楽しませてもらってるし。
でもせっかく書いたから俺も落としてくぜ?酒の勢いだけでGO!だ
675688:2005/05/12(木) 01:13:46
俺は死んだ。
てかはえーよ。まだ妄想はじまったばかりだよ。
神 「いやこれからだし。これがはじまりだし」
神キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
神 「早速だけどお前は選ばれた」
何にw
神 「この8本の剣の中から一本をとって外科医に戻れ」
だから何にwwwていうか後半リアルすぎなんですけどwwwwwwワロスwwwwww
神 「 うお下界の間違い。揚げ足とんなよ人間」
うっせーよ神wwwwwwwwwだからなんに選ばれたんだよ俺wwwwwwww
神 「さっきからお前が私のせりふ切まくってるんだよ。今ちゃんと話そうとしてるんだから。
いいか、時が来たのだ。世界を更新するときが」
ちょwwま
神「 いいから聞いて。
世界は定期的に更新されないと淀んで腐ってしまう。あれだ、金魚鉢の水と同じだ。
そのときに、次の世界の方向性を今の世界の連中に決めてもらうルールになっている」
なんで?
神「 私は現場の声を大事にする神だから」
理想の上司だなオイwwww
神「 だから話を聞けと。で、決めてもらうといっても、お前らの好きな民主主義とかはまどろっこしくてつきあってられん。
そこでお前らから8人の人間を選びだし、こいつらに決めてもらうことにした。その一人がお前」
ほかに選びようがあったろwwwまあいいやwwwwあと剣は?
神「 話し合いで解決すればそれもいいが、たぶんお前らそういうのめんどうだろ。
だから腕っ節で勝負っ、てなったときに便利なように武器を支給するルール」
この神クオリティ高杉wwwヤバスwwwwwwww
神「 いいから選べよ。どうせもう覚悟決まったろこのVIPPER崩れ」
すいません。素に戻ります。あと幼女なんですね神。
神「 仕様でな。
さて剣の内容だが次の通りだ」
676688:2005/05/12(木) 01:24:04
続き。

---
神「 一つは炎熱の剣。ものを燃やす。
   一つは融解の剣。ものを溶かす。
   一つは凍結の剣。ものを凍らせる。
   一つは電撃の剣。電気を走らせる。
   一つは重力の剣。重力を操る。
   一つは幻影の剣。幻を作り出す。
   一つは光の剣。レーザーとかビームとか出す。
   一つは闇の剣。暗黒空間とか作るのかなあ?」
すいません説明がどんどんアバウトになってるんですけど…
神「 私もよくわかってないんだもん。
どれでもいいよ。好きなのもってって」
正直どれも微妙です。ところでこれって、ほかの剣はほかのやつが持ってくんですよね?
神「 当たり前だ」


ここまで妄想して止まった。
ここからなんとしても下界に帰りつつバトルして、あと幼女神とエロエロしたいんだけど。
やっぱり>>1はすごいな。
677668:2005/05/12(木) 01:29:14
悪い、俺668だった
688って未来人かよ
678Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 02:19:29
いいぞいいぞ、>1も書いたし他の書き手も書き出した。
スレがにぎやかになって嬉しい。
679Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 12:17:21
>>1てメビウス使ってるの?俺といっしょ!
680Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 17:45:02
幼女スレが廃れた今、このスレが俺の楽しみ
681Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 20:31:30
>>671
浜崎については、続きを楽しみにしようぜ。
今は釈ちゃんに注目したい!
682Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 20:49:08
>>676
>一つは融解の剣。ものを溶かす。

俺専用かよw
6831:2005/05/12(木) 22:54:29
今日はお休みで。第四巻は17日くらいまでに。
684Mr.名無しさん:2005/05/12(木) 23:54:41
>>683
おう。お疲れ。
楽しみに待ってるよ。
685Mr.名無しさん:2005/05/13(金) 00:11:59
なんかニュー速にも似たスレッドが立ってるな。
いい感じで盛りあがっとる。
http://news19.2ch.net/test/read.cgi/news/1115833143/
686Mr.名無しさん:2005/05/13(金) 00:14:57
>>685は読むべきスレなのか?
誰か教えてくれ
687Mr.名無しさん:2005/05/13(金) 00:20:22
>>686
そのスレの最後のレスだけ見た。
>>685がこのスレの存在を教えていた。
意味わからん。
688Mr.名無しさん:2005/05/13(金) 01:06:51
ニュー速からきたけど、ムーヴメイルの話はどうなったのよ
689Mr.名無しさん:2005/05/13(金) 01:10:30
>>688
何それ?
690Mr.名無しさん:2005/05/13(金) 01:15:33
>>689
あれ?このスレじゃなかったかな
たしか1スレ目にでてきてたと思うんだけど
691Mr.名無しさん:2005/05/13(金) 01:20:50
>>690
そんなのあったか?
っていうかムーヴメイルって何?
692Mr.名無しさん:2005/05/13(金) 01:24:12
にゅーそくからきますた。
キュンとしたw
勿論('A`)です。
これからいさせてもらうぜ
693630:2005/05/13(金) 19:28:50
誰かが非常用懐中電灯を持っていたらしく、部屋はほのかに明るい。
部屋の隅に行って砂まみれになった葱の砂を落としていると大量の砂と一緒にドスの効いた声の男ともう一人Tシャツだけの男が降りてきた。
「おーい、誰かズボン持ってねえか?」
イケメンなTシャツだけの男が必死で部屋の隅に行こうとするのを押さえつけながら、ドスの効いた声の男が周りを見渡して言う。
Tシャツだけの男を見て何人かの女が悲鳴をあげる。
「いや、俺、ほら、寝るとき、Tシャツだけの男だし・・・」
誰も聴いてないのに必死に弁解する若い男。
「あー、おいらズボン2枚はいてるから、一枚なら・・・」
ドスの効いた声の男にってゆうより、Tシャツだけの男に声をかけると飛ぶ様にこちらに駆け寄ってきた。
で、作業着のズボンを脱いで渡してあげる。
よく見ると、他の人たちも結構パジャマとかラフな格好の奴が多い。
ほとんどの奴が靴はいてないし。
まあ、夜中に召還されれば、こんな格好になるよなって思っていると、ドスの効いた声の男が自己紹介をはじめた。
694Mr.名無しさん:2005/05/13(金) 21:06:48
ワクワクテカテカ
695Mr.名無しさん:2005/05/13(金) 23:30:55
>>693
おいおいおいおい!
続き、気になるじゃねーか。
696Mr.名無しさん:2005/05/14(土) 00:30:19
そろそろ1はきつくなってきたか?
697Mr.名無しさん:2005/05/14(土) 13:21:44
>>696
最初の頃が神過ぎたんだろ
毎晩うpしてたからな
698Mr.名無しさん:2005/05/14(土) 15:18:07
>1は忙しいor疲れてるみたいだな。
・・・新しいチャレンジャーはいないのか?
699Mr.名無しさん:2005/05/14(土) 22:19:22
1ガンガレ
700Mr.名無しさん:2005/05/14(土) 22:25:29
皆の衆、気持ちはわかるが>>1を急き立てないでほしい。
細々でも長く連載するためにはここへの書き込みが>>1の負担になってはよくない。
少なくとも17日まではゆっくり待とうや。
701Mr.名無しさん:2005/05/14(土) 22:49:38
>>700に禿同。俺は根気良く待ってるよ。
702Mr.名無しさん:2005/05/14(土) 23:21:07
オレハマッテルゼ が明日出走
7031:2005/05/15(日) 01:14:48
>>679
PCMV15CA。
704Mr.名無しさん:2005/05/15(日) 01:18:34
>>1
おっ来たな。ゆっくりでいいぜ。俺はのんびり待つよ。
705Mr.名無しさん:2005/05/15(日) 16:57:33
>>1お茶ドゾー( ^^) _旦~~
706Mr.名無しさん:2005/05/15(日) 17:27:00
幼女スレの末期みたいになってるぞ…
707Mr.名無しさん:2005/05/16(月) 08:01:49
保守
708Mr.名無しさん:2005/05/16(月) 21:02:26
>>630の続きがすごく気になるのだが・・・。

葱洗い工場から召還されたあと、どうなるんだ?
やっぱその世界を守る勇者になるの?
709Mr.名無しさん:2005/05/16(月) 22:59:41
ここはageとく。
710Mr.名無しさん:2005/05/16(月) 23:18:38
もし>>1の妄想が尽きたら>>1の家電相談スレでも立ててくれ。
7111:2005/05/16(月) 23:35:39
明日書けそう。
712Mr.名無しさん:2005/05/17(火) 00:11:50
楽しみにしてる
713630:2005/05/17(火) 02:17:21
「俺の名前は今井。召還されるのは2度目で前ん時は傭兵隊の小隊長やってた。お前は?」
ズボンをはき終えたイケメンにふる。
「あー、俺は松岡。前にも来たことはあるっつーか、前に来たときは諸国放浪やってました。こっちの世界の人と一緒に。お前は?」
っておいらに振ってくる。
「えっおいら?じゃあ、東で。前はパン屋やってました。」
「ちょっと、待ってよ。前に来た時って事は、あなたここがどこか知ってるの?」
おいらの発言をかき消すように若い女が松岡に向かっていう。
おそらく、初めて召還されたのだろう。大きな瞳を不安げにゆらしながら、ヒステリックな大声が響く。
「つーか、ここどこかわかんねえけど、召還されたのは間違いねーだろ。寝てて気がついたらしらねー場所にいんだからよ。」
松岡の発言をきっかけに堰が破れたようにめいめいが話し出す。
「召還ってなんだよ?」とか「ここどこやちゅーねんっ!」とか「家に帰りたい」とか「どこ触ってんのよ」とか。
714630:2005/05/17(火) 02:17:43
どど、どどどっという地響きのような音とともに、人の怒鳴り声が聞こえてきた。
今井と松岡が目を見合わせ、すばやく穴からからよじ登って外にでてゆく。
部屋にいても今井の馬鹿でかい声が聞こえてくる。
砂漠をさ迷って5日も経っているのに、今井の声だけはでかいままだ。
しばらくして、松岡が穴から降りてきた。
瞳が輝いている。
「何かあったの?」
松浦が松岡に尋ねる。
「ここから二日程のところにある町に向かう連中がきてね。
今井さんが交渉して、俺たちも連れて行ってもらえるようになりそうだ。
とりあえず、水と食料をわけてもらえるらしいから、みんなを上にあげよう。」
松岡はおいらにそう言うと、手始めに松浦を抱えて穴から出そうとし始めた。
715Mr.名無しさん:2005/05/17(火) 02:28:01
いきなり松岡だの松浦だの意味ワカンネ
716Mr.名無しさん:2005/05/17(火) 02:28:34
一人称がおいらってのがマヌケな感じでいいな
717Mr.名無しさん:2005/05/17(火) 18:22:52
718Mr.名無しさん:2005/05/17(火) 19:30:13
見たよ。
719Mr.名無しさん:2005/05/17(火) 19:57:16
>>717やっぱ>>1の店で新しいの買うのかな
7201:2005/05/17(火) 21:13:46
721Mr.名無しさん:2005/05/17(火) 22:11:13
1は何が言いたいんだ・・・?


ワロタが。
7221:2005/05/17(火) 22:33:19
7231:2005/05/17(火) 22:46:13
第四巻
カタパルトから発進したのは俺が最後だった。地上に視線を落とすと、既に倉岡(小学校時代。実家は動物病院。
一緒にうみしま博に逝った)隊のバリスタ6機が配置についており、長距離射程砲を構えて敵機を待ち構えてい
る。俺はバーニアを吹かせて、釈搭乗のどどめ色メビウスを先頭とする釈小隊の最後尾についた。釈隊は隊長機
以外は全てビブロの全6機編成。
勘を取り戻しつつあるとは言え、ブランクは大きい。あまり目立った行動はせず、庭の隅のダンゴムシを見習っ
て、ひっそりと援護射撃でもしているのが安全策だろう。我ながらコスい。
ビープ音が鳴り、メインディスプレイに通信要求のダイアログボックスが表示された。タッチパネルに触れると、
ウィンドウが開き釈中尉の顔が映し出される。
「ミーティングで支持された通り、あなたには我が小隊のサポートについてもらいます。ただし、これだけは肝
に銘じておいて」
「何を?」
「邪魔だけはしないで」
「はい」
と答えたものの、こんな半ば素人の自分に邪魔をするなという方が無理だ。っていうか、それならMS戦闘に参加
させるなよと小一時間(ry。
釈との通信が切れると、今度は別の周波数で通信が入った。音声だけのコソ〜リ通信。ID表示を見ると地上で後方
援護を指揮している倉岡のようだ。
「気にすんなよ。釈中尉は今アレだから。特にいつも2日目はカリカリするんで、俺らもとばっちり受けてんだ。
ところで、あんた伝説のエースなんだってな。ってことはあの第三世代は元相棒か?」
お調子者らしく、やたらテンションの高い口調だ。
「そうなりますね」
「因果な話だ。だが、あんたなら奴の機体特性を熟知しているだろうから、或いは白星を上げるチャンスかもし
れんぜ。おっと、いよいよ敵さんが近付いてきた」
言いたいことだけ言って、倉岡は通信を切った。
7241:2005/05/17(火) 22:46:53
なるほど、レーダーの端に複数の赤い点が出現した。レーダーを広範囲表示から近距離表示に切り替える。
その時、
「敵機より交渉要求の通信が入りました。攻撃は指示が出るまで行わないで下さい」
オペレーターから全機に向けて通達が入った。
緊張の中、敵機を視認でできる距離まで接近した。全身黒で塗装を施されたヴァイオールF型が8機、青いカラ
ーリングのR型が2機、そして第三世代俺専用MSだ。
連邦と友岡公国残党軍、双方のMSがアスファルトの大地に降り立ち、ついに相まみえた。先頭に立つのは旗機と
思わしきR型。背中に円筒形をしたミサイルポッドのようなものを背負っている。
「私は友岡公国開放連合所属ジンギスカン隊のモスカー大尉(ジンギスカンの長髭)である。今すぐに基地を明
け渡して頂きたい。さもなければ強制的に排除する」
短い間を置いて、月面基地司令室の里山司令は返す。
「我々は暴力に屈するつもりは毛頭ない。寧ろ貴殿らを迎撃するだけの十分な兵力を有している。早急な撤退を
勧める」
「いい返事だ。では友岡公国の守護神リーズヘクテの名の下に、攻撃を開始する!」
唐突にR型のミサイルポッドが開いた。否、正確にはミサイルではない。ポッドからは10個ほどの円盤が、ま
るで花火が輪を広げるように、射出された。バーニアを備えており、それぞれが独立制御で動作しているらしい。
「スティッキングマイン!?」
釈が吼えた。
「ストッキングマン?」
俺がストッキングを頭から被った男(俺の中でイェスマンはこのイメージ)を連想した、まさにその時、円盤が
高速で釈隊目掛けて飛び出した。直線的な動きではなく、まるで意思をもつかのように、MSを目指して迫ってく
る。俺は射程から外れているのか、幸いにも円盤に感知されていない様子。釈は円盤の動きを完全に見切って、
ライフルで確実に落としていくが、2機(岩切と橋田。大学時代の同じゼミ)のビブロが避け切れず、円盤の吸
着を許してしまった。
「爆発………しない」
俺は唖然とした。ビブロは無傷のまま静止している。
「迂闊だった。スティッキングマインはその名の通り吸着する機雷。機体に吸い着き、意図的に爆発させること
ができる」
釈が歯噛みをした。
7251:2005/05/17(火) 22:47:35
「ってことは、つまり…」
モスカーの意図を察知した俺は、息を呑んだ。MSをすぐに破壊するのではなく、生殺与奪の権を握る。これによ
って隊の動きを止めたということか。
「彼らは人質というわけだ。さぁ、道を開けてもらおうか」
モスカーが髭を撫でた。しかし、その意に反して、釈は毅然とした態度で言い放つ。
「勘違いしてもらっては困るわ。軍隊を相手に人質とは笑わせる。彼らも元より覚悟の上よ」
「釈中尉、それはちょっとひどいんじゃないか?」
俺が口を挟むが、一向に受け入れる様子はない。他のパイロットからも、釈に意義を唱える者は現れない。当の
ビブロ2機の搭乗者からも言葉はない。
「部外者は黙っていて」
冷徹に吐き捨てる釈の迫力に押され、俺は二の句を継ぐのを躊躇った。
「ほぅ……腐った連邦にも、まだこんな人材は残っていたか」
淡々と話すモスカー。俺には、スピーカーの向こう側で、彼が卑劣な笑みが浮かべたように思えた。2つの轟音
が同時に鳴り響き、爆発四散したビブロの残骸が降り注いできた。
俺には釈の真意が分からない。部下を犠牲にすることに迷いを示そうとしなかった彼女の真意が。
爆音を号砲にして釈隊が一斉に攻撃を開始した。
「あ、ちょっとまだ攻撃指示は!」
オペレーターがおお慌てで制止するが、釈は聴く耳を持たない。ジンギスカン隊もそれに応戦し、またたく間に
一帯は修羅場と化した。
「お、始まったみたいだな。よし!お前ら、この前みたいに味方に命中させるんじゃねぇぞ!撃ち方始め!!」
倉岡がバリスタ隊に攻撃命令を下した。何とも一抹の不安を抱かずにはいられない。
マシンキャノンや長距離砲の弾が飛び交う中、俺は極力目立たないように、ウロウロしながら、僚機の援護射撃
をしていた。と、2機のF型がこちらに気付いた。開放チャンネルを使って、敵(ジンギスカンの禿と長髪髭)か
らの通信が入る。
「そこのメビウス、どうやら仕官専用機のようだな」
「え、俺?」
まずい。狙いを付けられた。路地裏でDQN(中学時代。ブルートの裏で。走って逃げた)に絡まれた時のように、
立ちすくむ俺のムラマサ。
「アンディ(長髪髭)、行くか?」
「任せて下さい。テリーヌ少尉(禿)が出るまでもありませんよ。行くぞ!」
勝手なことを言っている。
7261:2005/05/17(火) 22:48:00
「冗談じゃない」
俺は機体を後退させながら、ライフルを連射する。勿論命中しない。
「逃がすかっ!!」
F型はマシンガンを撃ちながら接近してくる。幸いマシンガンでは、ムラマサの装甲には大した損傷を与えられな
いようだ。これが俺に根拠のない自信を与えた。
「ちょ、調子に乗るなよ!」
とかいいながら俺自身が調子に乗って、敵機目掛けて体当たりを食らわせた。思いも寄らぬ反撃にひるんだところ
を、サーベルで腹部を刺し貫く。サーベルを抜き、後退した直後にF型は大破した。
「やった…」
息を切らして見守っていると、そこにテリーヌ(禿)のF型が接近してくる。
「貴様、よくもアンディ(長髪髭)を!!」
さすが上官だけあって、先ほどのF型とは動きが違う。しかし、俺は彼の攻撃をことごとく避けていく。
「違う。調子に乗ってるだけじゃない」
「何を独り言を言っている!」
激昂したテリーヌ(禿)少尉は、既に俺の敵ではなかった。ムラマサの機動力を活かして、マシンガンをシールド
で防ぎながら、一気に間合いを詰める。そのまま僅かにジャンプすると相手の胸部を踏み潰した。ドッと崩れ落ち
るテリーヌ(禿)機。
「感覚が戻ってきたのか。反応速度が上がっている」
そうだ。決して調子に乗っているだけではない。急速にMS戦の感覚が蘇っている。神経が極限まで研ぎ澄まされ、
周囲の状況が手に取るように分かる。
「みんなは…」
俺は息をつく暇もなく辺りを見回した。釈機はモスカー搭乗のR型と交戦中。他のビブロもF型とほぼ互角の戦いを
している。そんな中でR型が一機、後方のバリスタ隊を目掛けて突貫をかけている。遠距離援護に特化されたバリス
タは、接近戦に持ち込まれれば一たまりもない。
俺が追撃しようと、スロットルを握る手に力を込めた時、奇妙な違和感に襲われた。
「何かが足りない…」
この戦場にあるべきものがない。周囲で戦っているのはヴァイオールだけだ。もう一機…
「来る」
7271:2005/05/17(火) 22:48:22
直感が報せた。ムラマサの上半身をひねらせ、サーベルで背後からの攻撃を受け止めた。
「第三世代!!」
第三世代俺専用MSが放った重量級の一撃に耐え切れず、ムラマサの肘部関節が悲鳴を上げ始めた。運の悪さがもた
らした偶然なのか、或いは必然なのか。この化け物と戦う羽目に陥ってしまうとは。かつて共に戦った化け物と。
「倉岡中尉、気をつけろ。R型が向かってるぞ」
とりあえず倉岡に注意を促しておいた。
「了解。何とか迎撃してやるさ」
相変わらずのあっけらかんとした態度で応じる倉岡。倉岡隊の心配よりも自分の心配だ。こいつを何とかしなけれ
ば。第三世代からの攻撃を避けながら、こちらも間を縫ってはライフルで反撃する。
「こいつ、全部避けやがる!」
延々と続く撃ち合い避け合いに、俺の苛立ちのボルテージは否が応にも高まっていく。そうしている内に気付いた。
これだけの射撃の応酬をしていながら、先ほどからお互いにダメージを一撃も与えられていない。不自然だ。
「この動き…」
見覚えがある。
「似ている…」
誰と?
パイロットは一体何者なんだ。余りに不自然だ。第三世代が繰り出す攻撃が、まるでビデオを再生するかのように脳
裏に浮かんでくる。今、俺はシールドで相手のサーベルを防御している。次は…
「バルカンか」
シールドのマウントを強制解除して機体を抜く。標的を見失って、バルカンの弾が地面をえぐった。距離をとって対
峙するムラマサと第三世代。
「次は、次はどう来る…いや、そうじゃない。俺ならどうする」
ライフルだ。第三世代は腰のビームライフルを抜き、こちらに照準を合わせる。
「させるかよ!」
負けじとムラマサのライフルを抜いて、引き金を引く。双方のビームが激突、閃光を発して消滅した。やはりだ。こ
のMSは俺と同じ行動パターンを持っている。
「こいつは………俺なのか?」
戸惑いが隙を生んだ。第三世代の背中に装備された二門のロングキャノンが、上方に伸びたかと思うと、肩アーマー
の上に乗りこちらに砲身を向ける。俺の背後では依然としてMS戦が行われている。
「ヤバい!釈中尉、ロングキャノンがくるぞ!!」
7281:2005/05/17(火) 22:48:49
この距離では阻止できない。俺はスラスターを最大に吹かし、とりあえず安全圏まで逃れようと、機体を急発進させた。
「あれほど邪魔をするなって言ったのに!各機、緊急回避しろ!」
俺の方を見て釈が怒号を張り上げた。モスカーも事態に気付き、機体を後退させる。
眼を焼かんばかりの極大の光が二本迸った。敵味方問わず、数機のMSが直撃を食らい連鎖的に爆発を起こした。出力を
絞っていたのか、月面都市の分厚い隔壁を破られなかったのが救いだ。
「なんて破壊力だ」
ムラマサは直撃こそ免れたものの、肩から上をそっくり奪われてしまった。胸部のサブカメラに切り替えようにも動作
しない。すなわち完全に目を奪われた格好だ。メイン動力部に命中していれば、今頃イケメソに転生して薔薇色の人生
が始まっていたはず。しかし、それも時間の問題だ。コックピット内の計器からは火花が走り、機体は非常に危うい状
態。
「もう少し…もう少しなんだ」
俺はうわ言の様に呟く。何がもう少しなのか。自分でも分からない。この非常時に何を言っているのだろう。混乱して
激痛を覚える頭を片手で抑えながら、俺はたまらずハッチ開閉ボタンを押した。外は暗く、硝煙と金属が焼ける匂いが
鼻をつく。
そこで俺が見たのは、
「コックピット?」
コックピットだ。パイロットの姿はない。ハッチを囲む白い装甲。俺は上を見上げた。第三世代俺専用MSの顔がある。
どうやら第三世代はオートパイロットシステムで動いていたようだ。
導かれるようにその装甲に触れてみる。すると、俺の脳内で記憶が一気に湧き上がった。まるで深海から、無数の気泡
が海面を目指して浮上してきたかのようだ。昨晩、司令から与えられた情報が、明確な記憶として認識されていくのが
実感できる。
そしてパズルは完成した。
「赤川さん…甜歌…全部思い出したよ」
俺は再び第三世代俺専用MSの顔を見た。
「俺が判るのか?俺を……受け入れてくれるのか?」
返事の代わりに、内部の収納ポケットから骸骨のマスコットが落ちた。俺がかつて搭乗していた際に、御守として付け
ていたものだ。俺は第三世代俺専用MSのシートに身を躍らせた。
                                     続く
729Mr.名無しさん:2005/05/17(火) 22:55:35
730Mr.名無しさん:2005/05/17(火) 23:02:31
>>1キター!!!!
7311:2005/05/17(火) 23:54:26
今日はここまで。次は未定。
732Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 00:02:50
>>1乙 MS編イイね
733Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 00:38:28
(・∀・)イイ!!
しかしストッキングマンはひでぇw
オートパイロットシステムが気になるところだが、まぁ無理しないでいつか書いてくれ
とりあえず次はファンタジー編に戻るのかな?
734Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 00:42:35
MSの良さに改めて気づいた。
735Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 01:16:11
こういうことだったのか。
乗ってるパイロットが何で溶けないのか不思議だったんだ。
736Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 01:38:12
マンを持して1が登場w
737Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 03:58:41
>>735
第3世代は溶ける機能無いんじゃなかったっけか?
738Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 12:37:27
>>735第三世代は確か挽肉になるじゃなかったかな。

>ジンギスカン隊のモスカー大尉(ジンギスカンの長髭)
>>720-722はこれの複線だったかwさすが
739Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 12:40:07
やっぱ>>1の妄想はずば抜けてるな。
740Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 12:52:20
月一でも俺は>>1の妄想を待つよ。
てか>>1小説とか書いてみたら?「あなたの本を出版します」てのあるYO
ttp://www.pub.co.jp

このスレのまとめでもいいし・・・このスレの住人ならみんな買うよな?
741Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 17:10:03
アホか
742Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 18:20:53
>>741
アホだとっ!?
743Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 18:32:12
そういうのは出版したい人だけが金銭的に損するシステム。
所詮は自己満足のためだからね。(山田は例外中の例外)
ほんとに売れるもんなら、出版社に持ち込んで普通に出版できる。
まあ、>>1の場合、著作権とか面倒そうだ。
744740:2005/05/18(水) 20:04:50
>>743まあそりゃプラスになるくらい売れるとは思ってないよ。
でも確かに著作権の問題があるな〜。

>>1どうよ?
745Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 20:17:30
>>744
プラスにならないなら、普通にコミケで出したほうがお気楽でいいんじゃない?
コピー本だって十分だし、おれらファンとの交流もできるし。

難を言えば、広島から東京の有明まで来るのが大変ってとこかな。
746Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 20:51:41
わざわざコミケとか行って買うのめんどい。
んなもん行ったことねーよ。
つか、今のぬるい感じが激しく気に入ってる。
747Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 21:12:44
俺も。コミケで>>1が家電売るなら行くけど。
7481:2005/05/18(水) 23:09:02
まぁ、適当に。
あと>>733の言う通り、しばらくファンタジーに戻ろうかなと思う。
OVAは当初予想してたより長編になりそうなので気長に。とうにGW終わってるしw
749740:2005/05/18(水) 23:14:15
そうか〜。さりげに、2ちゃんねるで話題になって大ベストセラーに!そしてついに
待望のキャストそのままでドラマ化ケテーイ!
ってゆう妄想してたよ・・・
750Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 23:15:28
いいから、お前は黙ってろ
751お茶汲み係:2005/05/18(水) 23:20:02
>>1お茶ドゾー( ^^) _旦~~
752Mr.名無しさん:2005/05/18(水) 23:21:38
>>1
乙。気長に待ってるから。仕事がんがって。
753740:2005/05/18(水) 23:25:41
>>750ごめん(;*;)
754Mr.名無しさん:2005/05/19(木) 00:36:44
マターリ行こうぜ、な?
755Mr.名無しさん:2005/05/19(木) 00:39:18
>>740
しょげるなよ。
あんた、かわいいからさ。
756740:2005/05/19(木) 03:15:53
>>755ありがとう〜




757Mr.名無しさん:2005/05/19(木) 22:40:38
今日は誰も書かないのかな
758Mr.名無しさん:2005/05/19(木) 23:18:07
>>1は同誌でW連載してるようなモンだから大変だわな
7591:2005/05/19(木) 23:24:34
あと2,3日中に書けたらいいかな、なんて思ったりするけど、正直ようわからん。
760Mr.名無しさん:2005/05/19(木) 23:27:59
おーまあ無理すんな。お気に入り登録してい毎日チェックしているから安心しろ。
761Mr.名無しさん:2005/05/19(木) 23:28:55
>>760
オナジク
762Mr.名無しさん:2005/05/20(金) 02:10:24
ニュー速のスレ削除されちったか?
763Mr.名無しさん:2005/05/20(金) 19:54:52
>>760オネジク
764Mr.名無しさん:2005/05/20(金) 22:04:23
まとめのカウント600くらいいってるね
なかなかのもの
7651:2005/05/21(土) 01:00:05
>>764
ぶっちゃけその中の50くらいは俺だと思う。
前作った設定忘れて読み直しに行ってるから。
766Mr.名無しさん:2005/05/21(土) 01:07:44
>>765
妄想も長編だと大変だな。w
まぁ、頑張ってくれ!
待ってるからさ。
767まとめサイト”管理”人:2005/05/21(土) 01:20:45
>764
まぁ、100くらいは俺だけどな。
768Mr.名無しさん:2005/05/21(土) 01:33:11
450くらいは俺だから…
769Mr.名無しさん:2005/05/21(土) 01:40:23
三人かよw
770Mr.名無しさん:2005/05/21(土) 11:28:56
>>1が妄想書かなくても普通にレスしてればこのスレもつな。
この流れワロタw
771Mr.名無しさん:2005/05/21(土) 12:07:12
おいおいイメージランドで行こうぜ。
俺はときどき眠っていなくても音声だけの夢を見るよ。
>>1、まとめサイト管理人氏、>>768
乙です。
772Mr.名無しさん:2005/05/21(土) 19:27:22
音声だけ?
興味あるな(・∀・)ニヨニヨ
773Mr.名無しさん:2005/05/21(土) 21:44:42
いや、眠りの境い目辺りで、人の声がおぼろげに聞こえて来るんだ。
今朝は『この医療センターから飛び降りてやるわっ』っておばさんが叫んでいる声だった。

もう2スレ目も>773まできたか…3スレ目突入しそうだな。
初代スレの初期から見ていたが、まさかここまで続くとは思わなかったよ。
774Mr.名無しさん:2005/05/21(土) 23:08:24
>>773毒男の妄想は超絶的なエネルギーを持っているのです。
775Mr.名無しさん:2005/05/21(土) 23:28:48
>>774
エナジードレインする香具師も中にはいるがな・・・
776Mr.名無しさん:2005/05/22(日) 12:44:51
>>773
それ本当に医療センターから飛び降りたんじゃね?
777773:2005/05/22(日) 13:43:37
救急センターだったかも。
つうかうちの周りにそういう施設はないし、頭の中で直接聞こえてくる声だから違うと思う。
どこかのセンターで本当に飛び降りていたら怖いな。

誰もネタを出さないようなので、前スレからコピペ。既読の人はゴメン。
778Mr.名無しさん:2005/05/22(日) 13:44:03
861 名前: Mr.名無しさん 投稿日: 05/03/08 23:22:21
俺はまず朝は磯野貴理子のバキュームフェラで目覚める。
松居直美と森尾由美に抱きかかえられて風呂へ入る
そのままファクかと思いきや「おまいら『おそく起きた昼は』の収録あるから
きょうはセックスおあずけだな」「ええ〜?いじわるぅ〜!!」
とりあえず三人に裸エプロンさせて朝飯をつくらせる。
米飯は一度三人に咀嚼させてお粥状に柔らかくさせて
隠し味にオシッコ。オシッコは森尾由美のが一番美味い。
で、メシのあとは朝っぱらからファンタ飲みながら2ch、
根元はるみのおっぱい枕で寝そべって。
西村知美がポテトチップを口に運び、はしのえみがフェラ。
全裸はわび・さびがないから極小ヒモビキニ。ブラジル風。
特別にモンペ姿の高木美保が口移しで俺にファンタグレープを飲ませる。
俺が「よし、今日はソープでも逝くか」と言うと
磯野貴理子、森尾由美、松居直美、西村知美が泣きながら
「イヤイヤ、もっとワタシを抱いて!夫も子供も捨てるから」と引き止める。
「うっせーな、今日はソープな気分なんだよ!!」と家を出る。
高級リムジンが待っている。運転手は菅源太郎。
車に備え付けのPCで最高級ソープを検索。源太郎がバカだから道間違える。
直行して5Pする。帰りに安楽亭へ行ってタン塩と特選和牛カルビを死ぬほど食う
そして回転寿司行って炙りサーモンとサーモンマヨネーズだけ食う。
そしてセブンイレブンへ行っておでんをテキトーにみつくろってもらい熱燗を煽る
そのころ、女たちが迎えにくる。しかし女たちは朝のメンバーとは入れ替わっている。
メンバーは川島なお美、藤田朋子、渡辺満里奈。全裸で騎馬を組んで家まで帰る。
帰ると焼酎で沸かした風呂に入る。入るメンバーは和久井映見と山崎トオル。
いっさい手をつかわずにさっぱりとする、風呂を出る。
風呂を出ると浜口京子と山本美憂に抱きかかえられてPC前に座る。
小一時間ほど毒男を煽って遊ぶ。ニュー速ではガーター姿の安藤優子がフォロー。
遊んでいる最中青木さやかのバきゅームフェラ。顔射。
で、茉奈・佳奈のレズプレイを鑑賞しながらオナニーして寝る。
779Mr.名無しさん:2005/05/22(日) 21:44:44
・・・ってな具合にレスが埋まりつつあるが >>1は来てくれるのか?
7801:2005/05/22(日) 22:44:46
わりい。
今日上司の送別会。
明日は休みなんで溜まったのようやく書けそう。
781Mr.名無しさん:2005/05/22(日) 23:14:22
現実の>>1も大変な生活を送っていそうだな。がんがれ。
782Mr.名無しさん:2005/05/23(月) 19:19:14
さて期待ageしとくか
7831:2005/05/23(月) 21:34:06
第28話(前半)
「よっしゃ、武器奪還成功」
番兵長であるゴブリンチーフが守っていた宝箱の中から、俺は異世界人専用俺専用聖剣を取り上げた。
カエラもハルバートの柄をしっかりと握り締める。
「ようやく本調子に戻れそうね」
やはり彼女には躁鬱のきらいがあるようだ。完全に躁モードで、ハルバートをブンブン素振りしている。
頼もしいことこの上ないが、ちょっと怖い。その内に何かやらかしそうで。
彼女と共に房を脱出した俺は、番兵のゴブリンやコボルトを倒しながら見張りの詰め所までやってきた。
まぁ、倒したといっても、ほとんどカエラが素手で締め上げたわけで、俺は後を付いてくるだけだった
のだが。幸いなことに、詰め所には俺達から押収した装備品がまとめて保管されていた。勿論、深田達
の装備品も宝箱に収められていた。しかし肝心の持ち主である深田達の姿を、見つけることができない
でいる。ここまで数十はあろう独房を全て覗いてきたが、彼らの姿はついに見出せなかったのだ。
深田らの武器を布で包みながら、俺はカエラに話しかける。
「どういうことだろう。深田さん達も同じように投獄されているんじゃないのか?」
「ええ。あなたが気絶した後、私達は一緒にここに入れられのだから間違いないわ」
「じゃあ、一体どこにいるんだ…」
俺が歯がゆさに眉をしかめていると、
「……騒々しいなぁ……」
つい先ほど調べた独房から、低い呻く様な声がした。人影は無かったはずなのに。俺とカエラはその独
房に近寄り、暗闇に向けてよくよく目を凝らしてみた。すると、中年の男(岸部四郎)が房の奥で横に
なっているではないか。彼の視線は虚ろで、生気を微塵として感じさせない。俺は警戒しながら問う。
「あなたは?」
「俺は岸部という者だ。かつてザ・タイガースという冒険者グループで活躍していたが、解散後はすっ
かり仕事が無くなってしまってな。その後、ルックルック隊という傭兵部隊に所属していたが、少々遊
びが過ぎて借金を背負い、首になっちまった。そこでヤックソを倒してカムバックしようとこの街に来
たんだが、返り討ちにあいこの様ってわけだ」
詳細な自己紹介乙。そこまで尋ねていないのに。無気力な語り口の割にはよく喋る男だ。
7841:2005/05/23(月) 21:34:30
「岸部さん。ここで、のほほんとした女の子と、声が高そうなイケメソと、天然系の少女を見ませんで
したか?」
「それなら、つい先ほど闘技場に駆り出されていったのを見た」
「闘技場?」
「恐らくハナマノレ祭りだろうな」
「ハナマノレ祭り…」
俺の脳裏に、ハナマノレマーケットでの情景が蘇った。ヤックソは確か“ハナマノレ祭りで使ってやる”
と言っていた。ハナマノレ祭りとは一体…。
そんな疑問に答えるかのように、岸部は説明を付け加える。
「ハナマノレ祭りってのは、ヤックソが大きな戦をけしかける前に開催する一種の闘技大会。そこでは
魔物と人間が闘う。魔物といってもオークやゴブリンチーフの比じゃねぇ、ヤックソ軍三強と呼ばれる
高ランクの魔物どもだ。早い話が、自軍の兵達に三強の実力を示し、士気を鼓舞させる生贄の儀式だな」
どうやら事態は思った以上に深刻のようだ。俺は肩に背負った深田達の得物を見た。武器がここにある
以上、彼らはなぶり殺しだ。ためらっている余裕はない。俺はすぐに心を決めた。
「行くしかないな、闘技場へ」
カエラも頷く。それを見て岸部は、
「あまりオススメできんな。ヤックソは魔王軍の中でも折り紙つきの三大魔族の一人。特に人間界侵略
を進める上で、重要な意味を持つラミハ方面軍を統べる実力者だ。奴はこの街を拠点に、これから一気
に勢力を拡大する算段だ。少々腕が立つくらいでは適う相手じゃない。俺なら親兄弟が捕われても助け
にいかんよ」
相変わらず身を横たえたまま忠告した。
「忠告ありがとう。岸部さん」
俺はボスゴブリンから奪った鍵束で、彼の牢屋の錠前を開錠した。
「でも、俺達はやっぱり行かなきゃ。岸部さんも早く逃げてください」
「そうか。まぁ、俺は折りを見て逃げさせてもらうよ。あんまり長く眠っていたもんで、身体が目を覚
ますまで、しばらく時間が掛かりそうなんでな」
寝転んだまま、一向に動き出す素振りなど見せず、岸部は答えた。どこまでも無気力な人だ。
7851:2005/05/23(月) 21:34:54
岸部の独房を後にした俺とカエラは、地下牢を守る番兵達をなぎ倒しながら、ハナマノレマーケットに
走る。人間は皆門戸を閉ざして、家に引き篭もっているようだ。外に出れば、何をされるかわかったも
のではないので当然だろう。一部の店だけが開いている状態。
「警備が薄過ぎるわ」
併走するカエラが不審そうに漏らした。確かに地下牢から脱出してからここに至るまで、余りに警備が
手薄だ。倒した番兵の数は両手の指で足りる。
「多分ハナマノレ祭りに参加する為に、街の魔物のほとんどが闘技場に集結しているんだろう」
ハナマノレマーケットを過ぎると、ローマのコロッセオを模したような、いかにもな闘技場が姿を現し
た。中からはおぞましいほどの大歓声が漏れてくる。
「とりあえず中に入ってみるしかないな。でも、どうやって入ろう。見つかれば厄介だ」
「そうだね…うーん、あ!!」
辺りを見回して、何を発見したのか、カエラは魔術薬屋の軒先に貼付してあるポスターを指差した。
「ねぇ、あれなんて使えそうじゃない?」
“新発売!!即効性モンストールCで、あなたも今すぐ憧れの魔物になれる!!”
嫌な予感がした。俺は気が進まないのだが、カエラについて店の扉をくぐった。
「いらっしゃい」
奥から店主(元上司。36歳独身。転勤の辞令下りて昨日送別会)が出てきた。
「モンストールCありますか?」
「あるよ。でも、あれ最近のモンプレブームで超品薄でねぇ。メーカも生産追いついてない状態で、今、
在庫2本しか残ってないんだよ。ちょっと待ってて」
彼は店の奥に在庫を取りに引っ込んだ。
「モンプレって?」
カエラに問うと、
「モンスターに変身する趣味ね。ポリモルフアザー使えるのは甜歌ちゃんみたいな高レベルの魔術士に限
るから、普通は魔術薬で変身するの。有名なレイヤーになると、自分でオリジナルモンスターの薬を調合
するし、追っかけも付いたりするんだって」
コスプレみたいなものか。しばらくして店主が2本のガラスビンを手にして戻ってきた。
7861:2005/05/23(月) 21:35:21
「今うちの店には、このボーパルバニーと…」
彼はウサギの描かれたビンをカエラの前に出した。そう言えば、この街に入る時もカエラはボーパルバニ
ーに変身していた。ヤバい。この流れは本格的にヤバい。
「バブリースライムマッドネスしか残ってないんですよ」
やっぱキタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!予感的中。お前ら、期待通りの展
開ですヨ!
カエラは巾着袋から代金を取り出して、店主に手渡した。
「お買い上げありがとう。即効性だから、すぐに効果出るよ」
「それじゃ、早速飲もうか」
「ちょwwwwwおまwwwww待て!!っていうか、マッドネスって何??ねぇ、マッドネスって、あのマーブルマ
ッドネスのマッドネス?」
「いいから男らしく飲みなさいっての!」
カエラは素早くビンの蓋をねじ開けると、ついでに俺の口もこじ開けて、問答無用で深緑色のドロドロとし
た液体を流し込んだ。大学時代に一度飲んで絶句したガラナコーラに似た味。例の不可解な感覚に襲われ、
俺の体に変化が表れ始めた。
                                              続く
787お茶汲み係:2005/05/23(月) 22:11:59
( ^^) _旦~~>>1お茶ドゾー
788Mr.名無しさん:2005/05/23(月) 23:02:12
つ◎ >>1ドナーツもあるよ
789Mr.名無しさん:2005/05/23(月) 23:11:44
早速上司登場かよww
7901:2005/05/24(火) 00:40:35
きょうはここまで。次は26日か、多分それくらい。
791Mr.名無しさん:2005/05/24(火) 01:17:55
忙しそうだな。待ってるぞ。
792Mr.名無しさん:2005/05/24(火) 01:53:56
俺も待ってる
793Mr.名無しさん:2005/05/24(火) 12:35:30
あいかわらず素晴らしい妄想だな
794Mr.名無しさん:2005/05/24(火) 18:21:07
630はどうなったんだ?
795Mr.名無しさん:2005/05/24(火) 22:28:09
じゃあ、そろそろ仕事に行って来るか。
ところで疑問に思うのだが、
>>1の家電店では、このスレのことは話題になったりしないの?
796Mr.名無しさん:2005/05/24(火) 22:54:17
>>795
1テラ
ってかバラしてはないだろw
797Mr.名無しさん:2005/05/25(水) 23:32:30
1はまだか!
798Mr.名無しさん:2005/05/25(水) 23:40:13
おいおいせかしてやるなって。やつは必ず来るさ。
799Mr.名無しさん:2005/05/25(水) 23:46:17
次は26日ごろって言ってなかった?
800Mr.名無しさん:2005/05/26(木) 00:22:52
801Mr.名無しさん:2005/05/26(木) 23:13:59
期待あげ
802Mr.名無しさん:2005/05/26(木) 23:54:27
今晩も約三人が>>1の登場を今か今かと待っている
803Mr.名無しさん:2005/05/26(木) 23:58:39
>>802俺を入れたら四人だぜ!
804Mr.名無しさん:2005/05/26(木) 23:59:37
>>802
その3人に、俺も入っているんだろうな?
805Mr.名無しさん:2005/05/27(金) 00:03:30
やはりお前らには俺がついてないとダメみたいだな
806802:2005/05/27(金) 00:06:08
>>804
もちろん!
8071:2005/05/27(金) 00:15:47
第28話(後半)
魔物に変身した俺とカエラは、円形闘技場に入り込むことに成功した。
闘技場内は、全体を通路が取り囲んでいる。場内はハナマノレ祭りを観に来た魔物が溢れ、通路までこぼれ
出ている始末だ。だが、俺達に限っては比較的楽に進むことができる。というのも、このバブリースライム
に変身した身体ときたら、さすがマッドネスと名乗るだけはあって、体液が極めて強い酸性なのだ。俺の身
体に触れた魔物は片っ端から取り込まれて、この体液で溶けてしまうのだから道を開けざるを得ない。
そうして、俺は憐れな魔物を吸収しながら、低い場所にある客席まで辿り着いた。客席といっても、岩石を
削った粗い造りのベンチだ。ちなみに俺の身体は有機物だけを溶かすようで、石や金属は溶けない。
「すごい熱気だな」
俺は横にちょこんと座っているカエラにこぼした。バブリースライム自体は発声器官を持たないのだが、身
体の中に取り込まれている犠牲者の頭部を通じて言葉を発することが出来る。どこまでもキモいな>>俺。
カエラは当然喋れないので、首を縦に振って答えた。刀のように鋭利で長い前歯が、石の座席に当たり甲高
い音を立てた。
待つことしばし、俄かに歓声が大きくなった。中央の闘技エリアに一匹のオークが姿を見せたからだ。
「ウハwwww藻前らwwww待たせたなwwwwつか待ち杉!wwww俺司会のビッパーwwwwヨロ!」
明らかに人選ミスと思われる司会はVipper調。
「まずは我らが主wwwwヤックソ様のwwwwご挨拶!」
司会が客席上部の特別席を手で指し示した。そこには真紅のローブに身を包んだヤックソの姿がある。彼は重
々しい口調で語り始めた。
「我が忠実なる兵達よ。ハナマノレ祭りに集ってくれたことを感謝する。しかし、まず残念な報せをせなばな
らない」
気付けば、奇声を上げていた魔物達が、ヤックソが口を開いた途端に皆押し黙っている。
「ガシヒロで任に就いていた上原が死んだ」
会場にどよめきが起こる。
8081:2005/05/27(金) 00:16:40
「これは我々にとって余りに大きな損失だ。しかし、彼女の死をむだにしない為にも、我が軍に一任されたガ
シヒロ方面への侵攻計画は必達せねばならない。我々はそれを成し遂げる力を持っている。今日、この日のハ
ナマノレ祭りは、我が軍の力を示し人間どもからこの世界を奪い返す為の第一歩である」
寂とした闘技場にパラパラと拍手が生まれ、ついには今まで以上の大音声となって地を揺るがした。ヤックソ
は兵の心を掴む術を心得ている。上原は個人としての力こそあったが、まだ多数の部下を持っていなかったの
で、どうにか倒すことができた。しかし、これだけの大軍勢を持って侵攻されて、ガシヒロやシフィーロは果
たして持ち堪えられるだろうか。
俺が危惧していると、ゴブリンに槍で威嚇されながら、入場ゲートから闘技エリアに人間が数人連れ出されて
きた。
「あ!!」
俺は思わず驚きの声を上げた。人間の数は全部で6人。その中に深田と平井、甜歌の姿があるではないか。大
きな怪我は負っていないようだが、鎖で手を拘束され自由を奪われている。
「こいつらはwwwwこの街でヤックソ様に立て付いた愚か者どもwwwww今日の生贄なwwwww」
扇情的な司会に影響されて、観客席から6人に向かって大ブーイングが浴びせれる。
「続いてwwwwヤックソ軍が誇るwwwなんか強いらしい奴ら入場wwwww」
深田達が出てきたのとは反対側の入場ゲートが開いた。そこから巨大な影が二つ。ドラゴンの亜種ワイバーン
と、漆黒の翼を持つグレーターデーモンだ。いずれも並の冒険者が適う相手ではない。幾ら深田達の実力が並
でないとは言っても、武器を持っていないのでは話にならない。俺は自分の身体に目を落とした。そう、彼ら
の武器は今、俺の身体の中に保管してある。
「それじゃ早速バトルレディイイイイイイゴォオオオオオオ!!wwwwww」
8091:2005/05/27(金) 00:17:04
俺は目を見張った。ワイバーンとグレーターデーモンに対する生贄達は丸腰、更に鎖で両手の自由を奪われた
ままだ。敵うはずがない。ちょうど深田、平井、甜歌対グレーターデーモン、ワイバーン対生贄3人(エキス
トラ)の形になっている。とか言っている間に早速生贄1(佐藤。小学校。特になし)がワイバーンのブレス
に焼かれて散る。その一方で深田と平井は、甜歌を守りながらグレーターデーモンの攻撃を巧みにかわしてい
る。反撃ができない以上、このままでは埒が明かない。
「カエラ、こいつはマズいことに・・・あ」
カエラが前足を小刻みに震わせている。貧乏ゆすりなのか。ウサギなのに。何かを我慢しているようだ。尿意
…いや、違う。カエラの性質からしてこれは恐らく、
「待て。早まるな、カエ…おぅわ!?」
彼女は跳躍すると、前の席のいかにも鈍そうなオーガの頭を蹴り、闘技エリアに飛びこんだ。やはり突っ走っ
たか。闖入者に目を奪われる場内。
「ウハwwwwこれまた可愛らしいウサチャンwwwwww」
司会がカエラを捕らえようと近寄った。しかし彼の手は空を掴んだ。思いに反してウサギが跳びかかってきた
からだ。いや、跳びかかっただけではない。
「アヒャアアwwwwwヤバwwwww首落ちるwwwwwwドラワロスwww」
慌てて首を支えるがもう遅い。ボーパルバニーの必殺の一撃を食った司会の頭は、首から滑り落ちた。その顔
は最後までハイテンションな笑みを湛えたまま。これが噂に聞くVipクオリティか。
などと感心している場合ではない。シンと静まり返る闘技場。次いで、観客達がザワザワと混乱の兆しを見せ
る。俺は止むに止まれず、ノソノソと客席から闘技エリアに向かう。途中、接触した魔物を次々に吸収しながら。
グレーターデーモンの不意を突いて、カエラが歯で深田らの鎖を断ち切った。
「ありがとう……あなたは?」
ウサギに視線を合わせる深田。しかし、それがカエラだとはわからない。
8101:2005/05/27(金) 00:18:36
「深田さん、あれ、あれ!!」
平井が驚愕の声を上げた。深田と甜歌もその方向に目をやる。その先にいるのは……俺かよ!
「うわぁ、気持ち悪ぅい」
甜歌が眉をしかめた。無理もあるまい。我が身ながら、何と言うか筆舌に尽くし難い姿。十数匹の魔物を吸収し
た上、早くもそれらが半透明な体内で分解、消化され始めている。
「どうやら敵が三体に増えてしまったようですね」
と深田。思いきり誤解されてしまった。
「ちょっと待った!深田さん、オレだよオレ、ほら、オレ!!」
俺は体内の“口”を使って必死に弁解する。が、取り込んだ魔物の頭が一斉に言葉を発したものだがら、その光
景はまさにB級ホラー映画。
「どうやらオレオレ詐欺的に、人を惑わせるスライムみたいですね」
ハハハ( 'ー`)、やっぱり。
「エネャ ジンテ レスワヲレオ!!」
異世界の言葉を発しながら、グレーターデーモンが深田に攻撃をしかける。彼女は間一髪で避けるが、反撃の糸
口が掴めない、のも当たり前だ。武器は俺が持っているのだから。
「みんな、こいつを使え」
ドサリと地面に布包みを落とす俺。粘液にまみれた布がはだけて、中の装備品の一部が見えた。それに駆け寄った
深田は、
「これは、私達の装備品…ということは」
異世界人専用ロングソードを拾い、俺を見上げた。その背後から、グレーターデーモンが腕を振り下ろす。しかし、
彼女はそちらに目を向けることすらなく、異世界人専用ロングソードを頭上に掲げる。悪魔はその刃の上に、攻撃
の手を下ろす格好になった。黒く野太い腕が、まるで大根でも切ったように落ちた。
深田はなおも俺から目を放せないでいる。
「あなたは…」
腕を斬り落とされたグレーターデーモンは、怒りに任せたて鋭い爪で、深田を背後から切り裂こうとする。しかし、
刀を手にした平井が割って入り、攻撃を受け止める。
8111:2005/05/27(金) 00:19:00
「あなたはまさか…」
向かい合う俺と深田。その後ろでは、平井とグレーターデーモンの力比べ。杖を取った甜歌が詠唱を開始する。そ
して、
「堅、もういいよ!!」
「おう!」
平井は支えていたグレーターデーモンの攻撃を、受け流して身を退いた。力の行き場を失くしたグレーターデーモ
ンは体勢を崩す。そこに甜歌が高位爆炎系魔術を炸裂させる。爆発と共に巻き上がった砂塵が辺り一帯を覆った。
それが次第に晴れていくと、大きくえぐれた地面が姿を見せた。その中心では、身体から煙を上げながら、グレー
ターデーモンが倒れ伏している。起き上がる気配はない。
「やぱり、あなたは……」
深田は絶句した。砂埃の中から現れたのは、スライムから人間に戻った俺の姿だった。薬の効果が切れたようで、
カエラもボーパルバニーから人間に戻っている。
「あの、その…」
そう長い時間、別々にいたわけではない。だが、深田を前にして、ぎくしゃくしてしまう自分がいる。まだガシヒ
ロでの夜のことが、引っ掛かっているのかもしれない。
「何て言うか…助けに来たよ」
「ありがとう…ございます」
俺達はお互いに照れを隠すように笑った。
                                     続く
812Mr.名無しさん:2005/05/27(金) 00:20:03
1乙!
813Mr.名無しさん:2005/05/27(金) 00:21:11
リアルタイム遭遇だな
1乙。
照れ隠し深田もいいな。
814Mr.名無しさん:2005/05/27(金) 00:29:35
俺を入れて五人。
815Mr.名無しさん:2005/05/27(金) 00:37:45
じゃあ俺も入れて。六人。
8161:2005/05/27(金) 00:41:27
今日はここまで。

ってか、以前GWスペシャルで赤川さんがヒトミに似てるって言ってたけど、
あれ矢井田瞳な。俺、勘違いしてたよ。
817Mr.名無しさん:2005/05/27(金) 00:43:00
乙!!
818Mr.名無しさん:2005/05/27(金) 00:50:53
くぅ!やっぱ>>1の妄想は一味違うなぁ。w
819Mr.名無しさん:2005/05/27(金) 01:41:45
>>815
ぶっちゃけそんなにいないだろw
820Mr.名無しさん:2005/05/27(金) 01:46:41
ヤイコなのか……微妙だw
821Mr.名無しさん:2005/05/27(金) 02:09:43
いいな。うむ。
822お茶汲み係:2005/05/27(金) 02:14:44
>>1お茶ドゾー( ^^) _旦~~
823Mr.名無しさん:2005/05/27(金) 20:31:57
今日カラオケで矢井田の映像見たよ
これが赤川さんなのかと感慨深かった
824Mr.名無しさん:2005/05/28(土) 00:21:41
突然の書き込み失礼します。
下記のサイトで小説を書いています↓
http://art.eki.to/SKY-official/

感想とか意見とか聞かせて下さい。
今後もどんどん更新する予定なんでよろしくお願いします。
マンガ化する際のアドバイスもお願いします!
825824:2005/05/28(土) 00:48:40
 俺→テラ テラヲ(29歳)
    知り合いの母親ツン デレコに惚れる。その際スタント能力「Sexy Mother Fucker」を発動した。体型は丸い。
 エビヲ→テラヲの友人。スタント能力「Cisser Hands」を持つ。スタント能力のため、友人が少ない。 
 ツン デレコ→ツン三兄弟の母親。テラヲのスタント「Sexy Mother Fucker」により、テラオに狂い、三男レフティの育児を放棄した。
ケイン似。
 ツン ネミアイ→ツン三兄弟の長男。テラヲの友人だったが、母親を奪われた。世界復興のためにテラヲから母親を奪回した。ホソメ。
 ツン タァイクォ→ツン三兄弟の次男。母親には興味はなかったが、世界復興のために兄に協力する。ヤリチン。
 ツン ハック→ツン三兄弟の三男。世界を復興させられるスタント能力「The Last Fortume」を持つ。ただ小学生のため、スタント能力を使いこなせていない。
826824:2005/05/28(土) 00:48:59
 「デレコー!」
ゆっくりと上昇をはじめる飛行船のタラップから半身を乗り出すデレコが俺に助けを求めるように手を伸ばす。
エビヲが必死でアクセルを踏み込み、ミニクーパーを飛行船の真下までもってくるが、屋根の上で伸ばした俺の手はデレコに届かない。
デレコを小脇に抱えたツン長男が皮肉な笑いを浮かべて飛行船の中に消える。
暴れるデレコから俺がプレゼントしたメガネがはずれ落ちてゆく。
アクセル全開のミニクーパーは地面のバウンドに跳ね上がり、屋根にいた俺は振り落とされそうになる。
空中でデレコのメガネをキャッチした俺の目の前で、ミニクーパーがひっくり返り、飛行船が夕日に消えてゆく。
地面に叩き付けられながら、俺はデレコのメガネを壊さないように両手で包み必死で守る。
俺とデレコの思い出を・・・。
827824:2005/05/28(土) 00:50:06
世界は第三次世界大戦後、荒廃した世界で生き抜くため、人々は特殊能力をそれぞれ身につけていた。その能力は人それぞれ異なるため、人々はそれに個々の名を与えていた。そしてそれらはその個人の代わりをすることから英語のスタントという。
ある地方都市で、一人の青年が友人の母親に欲情した。
物語はそこから始まる・・・。
828Mr.名無しさん:2005/05/28(土) 00:50:44
>>825
いや、お前824じゃないからw
829824:2005/05/28(土) 00:52:56
ミスった。
でもいいや。
俺が824ね。
830Mr.名無しさん:2005/05/28(土) 00:57:32
ごめん、何がどうなってんだ?
新しい妄想がきたのか?
831Mr.名無しさん:2005/05/28(土) 01:07:30
だな、設定が今一つ把握できない
832824:2005/05/28(土) 01:20:04
>>830
そう、俺の妄想。
833Mr.名無しさん:2005/05/28(土) 01:31:19
オツ 新ネタか!
834824:2005/05/28(土) 01:57:41
ツン家には若い女中、優秀な執事、そして三人の子供たち、そしてあの女がいた・・・。
そう、あの女こそが俺を狂わせた。すべてはあの女と出会ったことから始まったのだ。
あの女、「デレコ」そう、名前はデレコ。ありがちな名前、だが少なくとも俺にとっては特別な名前。
この世界で唯一俺が愛することになった女が、俺の友人、ネミアイの母だったことは偶然という言葉で片付けるには安直すぎるだろう。今となっては俺と奴はデレコをめぐる敵同士だ。
8日前の俺達がこんなことになるとは微塵だに想像しなかった。もしあの時に戻れるとして俺に「止めろ!」という一言を頭に浮かべさせることができたなら、俺はこんな恐ろしい事態を避けることができたはずだ。
だが、そんなことを考えても今は手遅れ、何もかもはドミノ倒しのようにこんな場所に俺を運んできた。本当に信じられない。
・・・でも、もうそんなことを言っても何も始まらない。とにかくもう一度デレコ俺の元に取り戻すこと。それが今の俺が求めるただひとつの事なんだ
835824:2005/05/28(土) 05:05:55
 ネミアイの結婚式で見たデレコは身体のラインがはっきりでるドレスを着ていた。ドレスの色は場に不似合いな黒。その時点で俺はあの能力のことに気づくべきだった。この世界では誰もが持つ能力「スタント」の存在に・・・。
836824:2005/05/28(土) 05:16:29
 最後の戦争の後、コンピュータのリセットボタンを押したかのように、世界は再び次のステップを歩み始めた。その前の戦争で枢軸国が敗れたときのように。いや、それ以上に歴史は変わった。ちょうど昔の連中が好んで未来を不幸なものとしたように。
 俺の住む世界はクラシック・アニメの「AKIRA」に少し似ている。多分、この「AKIRA」とやらを作った奴は天才と呼んでも過言ではないだろう。
837824:2005/05/28(土) 05:40:16
 あの戦争の後から、人々は各々が銘々に自らの代わりをする能力、すなわち「スタント」を持っていることに気づいたそうだ。
 この能力が発生するのはたいてい成人前後。発生しない人間はごく稀。そういった人々は劣勢人種「ノンミキサー」と呼ばれ能力者「スタンタンス」と区別されて、二次大戦時ドイツにおけるユダヤ人のように同じ人間として扱われなくなった。

838824:2005/05/28(土) 05:43:49
 それは多分、君たちの住む世界におけるインポテンツの男と一緒のようなものだと俺は想像する。いや、別に君たちの事に興味があるわけじゃない。なぜなら俺はすでにこちら側にいてもう君たちの世界の先にいるのだから。
839824:2005/05/28(土) 05:54:15
 これは俺とデレコの物語だ。ここまで俺が歩んできた命の物語、そして俺を狂わせたデレコ、命を懸けて愛したデレコにまつわる物語だ。こうして今、彼女に贈ったメガネを手にしている今、俺はそれを君たちに語る。
 聞きたくない奴は聞かなくてもいい。だって時間は遡ることはできないのだから。
君が選ぶのなら、どのような未来も開ける。君が俺の、いや、俺とデレコの話を聞きたくないのなら、君はデレコと俺のことを知らない人生を歩むことができるのだから。
そう、今君に示されている選択肢は二つ。俺とデレコのことを知る人間となるか、俺とデレコのことなどに興味を持たないまま生きる人間となるか、その二つなんだ。
840824:2005/05/28(土) 07:26:49
タンタンスの家系の一人息子として俺は生まれた。スだから俺はブルボン朝時代の貴族のように優雅に暮らしていた。
もちろん悩んだりしないわけじゃない。俺にだって悩みはある。その悩みのひとつは貴族の間でもやはり位の違いがあるように、スタンタンスの間でも上下の区別があることだ。
だが俺が抱える悩みはひとつではない。君たちと同じように。俺はこの世界で最も大きな悩みを抱えている。
そう、俺はこの世界では欠かせない能力、スタントが発現しないのだ。スタンタンスの家系に生まれ、成人したにも拘らずに。
841Mr.名無しさん:2005/05/28(土) 08:03:29
なんか読みづらい…さっぱり分からん。
842Mr.名無しさん:2005/05/28(土) 12:12:39
初期の山田を思い出す。
843Mr.名無しさん:2005/05/28(土) 12:14:39
1以外の作家がとかく受け入れられない件について
844Mr.名無しさん:2005/05/28(土) 13:30:28
やっぱり1と比べちゃうとな。
1レス完結とかのあっさりしたやつならいいのかもね。
845Mr.名無しさん:2005/05/28(土) 15:10:51
うん
ファイブスターみたいな感じか?

とにかく始まったばかり
どう転がるか楽しみ
846Mr.名無しさん:2005/05/28(土) 15:54:00
妄想っつうか文章表現に凝ろうとしてるだけにも見えるな。
作家みたいな真似しても絶対うまくいかねーと思う。
作家になるな。妄想家になれ。
847Mr.名無しさん:2005/05/28(土) 18:14:19
>>841
>>846
1自演乙
848Mr.名無しさん:2005/05/28(土) 18:33:45
久々にのびてると思ったら新人キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
849Mr.名無しさん:2005/05/28(土) 21:27:04
英文和訳のような文章に萌え。
850Mr.名無しさん:2005/05/29(日) 00:04:16
>>846
> 作家になるな。妄想家になれ。
いいこというじゃん。
851Mr.名無しさん:2005/05/29(日) 00:14:50
>>824のサイトを見てきた
技術的な話はそこの掲示板で散々やられてるな
てか、ちょっとためになった
vipperも来てるが、晒されてるのか、晒しに行ったのか
852824:2005/05/29(日) 17:20:25
ツン家は最後の戦争のあとにチャイナからこちらに渡ってきた一族だ。一方、俺の家は軍需産業を支える機械工場を営んでいた。
あの戦争で負けたニッポンは再び「敗戦」という屈辱を味わった。水素爆弾が次々にチャイナからニッポンに投下され、ニッポンの都市は焦土と化した。もちろん俺の祖先の工場もやられた。
その焦土と化したニッポンを征服したのは主にチャイナの人間だ。だから俺はツン家と比べれば被征服者と戦争の勝者という関係にある。これも俺のコンプレックスのひとつとして心に刻まれている。
853Mr.名無しさん:2005/05/29(日) 21:40:26
続きマダー?チン チン 
854824:2005/05/29(日) 23:15:24
戦争が起こったのは俺の誕生日と同じ日で27年前の12月23日に始まった。その当時のニッポンのことは知らない。チャイナによる情報統制が厳しく、そのころの記録はきれいにデリートされているのだ。
戦争はまず一瞬のうちに世界各地の大都市を破壊した。そしてそれはその一ヵ月後に終了し、俺はニッポンの荒涼とした砂漠みたいな中にできた一都市に生まれたのだ。

俺の幼少期にはさまざまな事件が起きた。チャイナ・コリアのフクオカ抗争「アルマジロ事変」、これはまだチャイナとコリアの間でフクオカの領土分割がまとまっていなかったために勃発した争いだそうだ。
続いて起こった「バタフライ事件」これはラッシャとチャイナのエゾ分割統治が戦争の前から決まっていたことにコリアの代表、ウォ・テイシュウが異議を唱え国際問題化したものだ。
結局、今のところエゾはラッシャの領土と決まっている。住んでいるのはたいていニッポンの人間なのだが。
しかし事件は挙げていくときりがない。なぜならさきに言ったように今でもまだニッポンは占領下にあるのだから。「レックス紛争」、「キリン問題」、「バーバリアン作戦」これらは今でも続いていることだ。
855Mr.名無しさん:2005/05/29(日) 23:31:53
1よ・・・次はいつだ・・・・
856お茶汲み係:2005/05/29(日) 23:44:19
>>1いいお茶が入ったんだが・・・
857Mr.名無しさん:2005/05/29(日) 23:49:37
>>857
      _,,..,,,,_
     ./   `Э 代わりにミーが頂くねん。 
     l    つ
      `'ー--‐⊃
858Mr.名無しさん:2005/05/30(月) 02:02:12
824とかただのスレ汚しだよな
859Mr.名無しさん:2005/05/30(月) 10:10:39
>>858
そう言うなよ。キモイタ上等の妄想の吹き溜まりじゃないか。また〜り逝こうぜ。
860お茶汲み係:2005/05/30(月) 18:53:01
みんなお茶飲め( ^^) _旦~~
 
差し入れだ

ttp://loose.in/mobaio/sakuhin/kimowota.html

http://loose.in/mobaio/
861お茶汲み係:2005/05/30(月) 18:54:08
↑h抜き忘れゴメン
8621:2005/05/30(月) 22:51:06
第29話(前半)
「お兄ちゃんだぁ!!」
「うわっ!甜歌、ちょい待て!」
深田との再会を噛み締める間もなく、毎度おなじみ、こちらの都合などお構い無しで甜歌が抱き付いてきた。
「おわっと、っと、と!?」
俺は、まるで歌舞伎のように片足でステップを踏んで、辛うじて体勢を保った。
「やっぱお兄ちゃんはウチの王子様だね」
年収280万の貧しい王子様です。
「よくあの牢獄を逃げ出してこれましたね」
平井は感心した表情を浮かべて、懐から取り出した拭い紙で刀身の血を拭った。
「ああ、カエラがうまくやってくれたんだ」
皆が一斉にカエラの方を向くと、彼女は頬を紅く染めて目を逸らした。結構照れ屋らしい。しかし実際の所、今回の
脱出劇は彼女の腕力と機転が無ければ有り得なかった。もっとも投獄される原因を作ったのも彼女と言ってしまえば、
それまでなのだが。
俺は彼女に笑いかけた。
「ほんとありがとな、カエラ」
「え!ん、うん…」
紅い頬を更に紅潮させて俯くカエラ。どうにも具合が悪そうだ。
「助けてくれえええええ!」
和やかな空気をかき消すように、闘技場に裏返った悲鳴が轟いた。すっかりさっぱり忘却の彼方だった生贄2(吉川。
中学校。ドルーピーに似てる)が、ワイバーンに頭から丸呑みにされているではないか。
「ああ、吉川…」
生贄3(野間。中学校。何故か正露丸の匂いがする)が顔面を蒼白にして、憐れな生贄2を襲った惨劇に身体を震わ
せている。恐らくは親しい旅の仲間だったのだろう。
その側にカエラが歩み寄り、
「仇は取って上げるわ」
いとも簡単そうに言ってのけた。また喧嘩を吹っかけるつもりなのか。
「この人が先陣を切って」
8631:2005/05/30(月) 22:51:34
腕を水平にピンと張って俺を指差した。マジか!俺か!この俺が取るのか!!仇を!!
「か、カエラさん。何で俺が…」
「さっきのお返しよ」
先ほどの赤面ぶりとは打って変わって、彼女の態度は至ってつっけんどんだ。
「さっきの?」
「私を照れさせるなんて言語道断」
カエラの言葉をどう解釈していいか分からずうろたえる俺。それをよそに生贄2が悲愴な表情で訥々と言う。
「彼、吉川は俺の……いえ、何でもありません。どうかよろしくお願いします」
いや、そこ濁すくらいなら言わなくていいから。エキストラなんだし。俺は心中突っ込みながら、表向きは神妙な面
持ちで頷いた。
「皆で同時に仕掛けた方がいいんじゃないか?」
俺は平井に耳打ちした。
「ここはカエラさんに従っておいた方がいいですよ。また何かあったら面倒ですし」
確かにメンヘル発動されたら困るが、と言って俺が1人で立ち向かうのは幾らなんでも。
「っつか、さっきから気になってたんだけど、あれってほとんどドラゴンだろ。1人で渡り合えるものなの?」
「大丈夫でしょう。あとドラゴンと違って、ワイバーンには腕がないんですよ。毒こそ持っているものの、ブレスも大
した威力じゃありません。まぁ、ドラゴンに比べたら足元にも及びませんね」
平井は事も無げに解説した。
「敢えて注意点を挙げれば?」
「ブレスと、あと毒牙にさえ気を付ければ、何てことないです」
「毒を喰らったら?」
「あなたが一発抜く余裕すらなく死ねます」
短時間で対象を死に至らしめる即効性の毒ということか。平井が何故俺のオナニーペースを知っているかは、記憶の奥
底に封印してしまおう。
「それ聞いて安心したよ…」
8641:2005/05/30(月) 22:51:58
俺は俺専用異世界人専用聖剣の柄を握りしめる。いざ相対してみると、改めてその大きさに驚かされる。頭から尾の先
まで、全長は大型の観光バスぐらいはあろうか。蝙蝠の翼を生やし、細長い首の天辺に蛇の頭が舌をチロチロと出し入
れしている。
先手はワイバーンが仕掛けてきた。息を大きく吸い込んだかと思うと、炎のブレスが俺を襲う。しかし、初動で察知し
た俺は、横に回りこみワイバーンの脇腹を剣で斬りつけた。が、敵もさるもの。ものともせず、尻尾で俺を叩き飛ばす。
「痛ぇ…」
地面で腰をしたたかに打ち付けたが、何とか立ち上がる。そこにどす黒く鋭い牙が、俺の腕を捉えた。
「お兄ちゃん!」
甜歌が叫んだ。
「く、くぬやろ!!」
激痛に顔を歪ませながら、俺は腕に咬み付く巨大な頭部に、渾身の力で剣を突きつけた。一声奇声を上げた後、ワイバ
ーンの首がだらりと垂れ落ちた。
「ヤバ!俺牙にやられたぞ!!毒回る、ドクヲ('A`)dこえかcsgyふじこlp;!!」
すっかり理性を無くし、慌てふためく俺の腕を、誰かが優しく持った。
「あ…」
カエラだ。無言のまま俺の前腕部を持つと手の平をかざした。そこから発せられるわざとらしいほどに神々しい光が、
腕から毒を抜き去っていくのがわかる。
「あ、ありがとう」
「これに懲りたら、あんなシチュエーションはもうやめてよね」
何も赤面させたくらいでそこまで根に持たなくても。並外れた照れ屋だ。或いは他に何か理由があるのだろうか。それ
にしても、今まで腕力ばかりが目立っていたせいで本業の回復術が影をひそめていただけに、彼女の新しい一面を垣間
見た気がした。
8651:2005/05/30(月) 22:52:23
そんな中、俺は異変に気付いた。グレーターデーモンに続いてワイバーン、ヤックソ軍を代表する2匹の魔物が敗れて、
闘技場に不穏な空気が渦巻き始めたのである。彼ら独自の言語で、こちらに向けて野次が飛んでくる。口汚く罵られて
いるのだろう。皆目解読できないのが寧ろ幸いとするべきか。
「観客、いや、兵士達が騒ぎ始めた…」
これから予測される事態に、俺は危機感を覚えずにはいられない。深田らはともかく、乱戦になると唯一心配なのは甜
歌だ。
「甜歌、俺の側を離れるな…って、甜歌?」
甜歌は俺達の後ろであぐらを組んで座っている。
「どうした、甜歌?」
「いや、ちょっと準備を」
「準備?」
「いいからいいから、ウチのことは気にしないで」
気にしないでといわれると、余計に気にしたくなる。
「来ます!」
深田の声に反応して、俺は周囲を見渡した。痺れを切らした魔物達が、闘技エリアに侵入し、ジリジリとこちらに迫り
寄ってきている。その数は数百、いや、ひょっとすれば千を上回っているようにも思える。
近年稀に見る量の冷や汗を垂らしながら、俺は俺専用異世界人専用聖剣を構えた。深田達も一斉攻撃に備える。眼と鼻
の先まで詰め寄って、魔物達は停止した。
「息を合わせている…」
まるで台風を前にした一時の静けさ。所々から漏れる魔物達の不気味な呼吸の合唱には、圧倒されるものがある。
そして轟音。闘技場を埋め尽くす無数の魔物が同時に咆哮した。そして、津波のように俺達を目掛けて、ある者は跳躍
し、ある者は走り、とにかく怒涛の勢いで押し寄せてきた。
俺は覚悟を決めた。
8661:2005/05/30(月) 22:52:44
「死なばもろとも!」
先陣を切って跳躍してくるゴブリンを迎え撃つべく、俺は上半身を反らせて剣を力任せに振った。ところが、
「あれ?」
剣身は魔物の身体に命中することなく、空を切った。勢い余って無様にこける俺。ゴブリンの姿は見えない。代わりに、
つい先ほどまでは無かった光の筒が、俺達がいる闘技エリアを覆うように天に伸びている。そして、そこを境にして、
魔物はこちらに入って来られないようだ。
「こ、これは…」
虹色の壁が俺達をぐるりと囲んでおり、その頂点はどれぐらいの高さなのか、視認することができない。俺はその美し
さに思わず見惚れた。
「私も見るのは初めてですが、恐らく最高位魔術アブソリュート・サークルですね」
深田がのほほんと呟いた。
「あぶ、あぶ…アブナソー…」
「あの、つっこむの面倒くさいので、一々ボケないでもらえますか?」
やんわりと怒られた。
「これは魔力で構築された、いわゆる結界みたいなものです。この輪に触れた者は敵であろうが味方であろうが、たち
まち消滅します」
確かに。考えなしに輪の中に潜り込もうとする魔物が、光の輪に触れた途端に消滅している。輪は相当強い魔力で形成
されているようだ。
「まさか!」
俺は甜歌に目を移した。やはりあぐらを組んだまま、小声で、しかし絶え間なく詠唱している。アブソリュート・サー
クルは甜歌が作り出している。
「少なくともこの中にいる間は安全です」
「でも、甜歌は…」
「ええ。術者の魔力と体力を徐々に消耗させる為、持続時間は甜歌さんの能力次第ということになります。恐らく半時
といったところでしょうか」
8671:2005/05/30(月) 22:53:12
俺は甜歌の額を伝う一筋の汗を見て、歯噛みした。早急にこの窮地を脱する手立てを考えねば、彼女の身が危険だ。
その時、頭上から甲高い笛のような音が迫ってきた。
「なっ!?」
その異様な音が消え、ふわりと人影が降り立った。砂が巻き上がり、視界を遮った。
「まだ子供なのに大したものだ。雲の上まで伸びていたぞ」
砂煙を纏って現れたのは、他ならぬヤックソだった。上空までそびえるアブソリュート・サークルを飛び越えてきたよ
うだ。
「この醜態は貴様等を見くびった私の身から出た錆だ。この始末は我が手で付ける。その前に…」
ヤックソはロンパった眼で、エキストラの内で唯一生存している生贄3を見据えた。そのキモい視線に射られた生贄3
が、足元から石化していく。眼で殺す男、ヤックソ。
「雑魚はこの場に相応しくないのでご退場願った」
無慈悲で底知れぬ力を見せつけられた俺達は、攻撃に踏み出せない。
「ククク、貴様等と剣を交えられるのは、或いは僥倖かもしれんな。さぁ、4人一緒にかかってくるがいい…」
ヤックソは腰に下げた鞘から、細身のレイピアを引き抜いた。
                                    続く

868Mr.名無しさん:2005/05/30(月) 23:04:12
>>1
乙!野間の解説笑ったw
869Mr.名無しさん:2005/05/30(月) 23:14:58
870Mr.名無しさん:2005/05/30(月) 23:23:02
今日もGJ!
続き楽染み
8711:2005/05/30(月) 23:26:04
今日はここまで。
872Mr.名無しさん:2005/05/30(月) 23:28:13
乙。
カエラいいな
873お茶汲み係:2005/05/30(月) 23:43:29
>>1お茶ドゾー( ^^) _旦~~
874Mr.名無しさん:2005/05/30(月) 23:49:47
やっぱ>>1が来ないと始まらないな
875茶菓子係:2005/05/31(火) 00:23:25
つ◎ >>1ドナーツもあるよ
876Mr.名無しさん:2005/05/31(火) 00:27:09
実際のカエラもこんな感じなのか?
もっと清楚だと思ってた
877Mr.名無しさん:2005/05/31(火) 00:39:31
>>876
妄想に使うのは外見だけで、中身は1が適当に想像してるという説。
878Mr.名無しさん:2005/05/31(火) 01:29:47
やっぱ>>1あってのスレッドだな。
879Mr.名無しさん:2005/05/31(火) 01:32:36
カエラのモデルってだれ?
880Mr.名無しさん:2005/05/31(火) 10:38:38
>>879
カエラじゃね?
881Mr.名無しさん:2005/05/31(火) 13:49:12
>>1はtvkのsaku saku見てるんじゃね?
882Mr.名無しさん:2005/05/31(火) 19:55:31
>>881
広島じゃそれやってないよ
vodaのCMからと、俺は思ってる
883Mr.名無しさん:2005/06/01(水) 00:18:21
ツンデレコは?
884Mr.名無しさん:2005/06/01(水) 00:40:15
モーソー中
885Mr.名無しさん:2005/06/01(水) 01:02:51
今夜はナシですかソーですか
886Mr.名無しさん:2005/06/01(水) 01:05:07
小学校の頃ジャンプの発売日だけが楽しみだった

このスレは幼い頃の記憶を呼び起こすよ
887824:2005/06/01(水) 04:04:19
 初めてデレコを見たときの衝撃。俺は一瞬にして彼女の虜になった。
強い意志を感じさせる太い眉。その下ですべての者を見下すように冷たい光を放つ切れ長の瞳。酷薄そうな薄い唇。ぴったりとしたドレス越しにわかる時間と金をたっぷりかけたであろう鍛えられた肉体。
俺の下半身はいきり立ち、目は常にデレコを追いかけていた。
デレコがまわりの人々に挨拶しながらさりげなく大広間を抜け出したとき、俺は夢遊病者のように、彼女のあとを追った。
このとき俺が何を考えていたかなんてわからない。
俺の頭の中は、デレコの太い眉、切れ長の瞳、薄い唇、鍛えられた肉体で溢れ返っていたのだ。
888824:2005/06/01(水) 04:05:47
気がつくとそこは女性用トイレだった。
個室から出てきたデレコが汚物でも見るような眼で俺を見ている。
二人きりだった。
今こそ愛の告白を。いやその前に女性用トイレにまで押しかけた非礼をわびなければ。そんなことより女性用トイレにいる言い訳をしなきゃ。
真っ白な頭の中で駆け巡る思考とは別に俺の口から小さな声が漏れた。
「Sexy Mother Fucker」
するとどうだろう。
寸前まで、侮蔑するような光を放っていたデレコの瞳が潤みだし、きつく引き締めたいた唇から小さなため息が漏れた。
「っああ・・・」
デレコは倒れるように俺に襲い掛かり、二人はなだれる様に大理石の床に倒れ、デレコの薄い唇がむさぼるように俺の唇を求め、
デレコのたくましい左腕が俺を抱きしめ、デレコの右手は俺のいきり立つ下半身をまさぐり、俺の手はデレコの鍛えられた胸をまさぐり、
もどかしげにデレコが俺の服をはいでいき、デレコの黒いドレスが宙を飛んだ。
どこか遠くで女の悲鳴が聞こえ、男の怒声がした。
889824:2005/06/01(水) 04:21:20
屋根から雨が漏っていた。
その雫が俺の顔に当たって眼がさめた。
近くでいい匂いがするなと思っていると、唇に冷たい金属が触れ、口の中に暖かい液体が流れ込んでくる。
スープだ。
身体を動かそうとすると激痛が走った。
「まだ動かないほうがいいよ。」
エビヲの声だ。
スタントをコントロールできなくて、スタンタンスの世界から爪弾きにされたエビヲ。
その能力ゆえに人々からも嫌われ、町外れのあばら家に隠れ住むエビヲ。
スタントのない俺が悩みを打ち明けられた唯一の友。
(ここはエビヲの家なのか・・・?ああ、そうだ。俺はデレコとめくるめく官能の世界にいたんだ・・・。)
デレコ!!
デレコのことを思い出し、飛び起きようとすると身体中に激痛が走り思わず呻く俺。
「まだ無理だって。」
「デレコは?俺のデレコはどうなった?」
「デレコって、ツンの女主人?俺のって、一体何やったんだよ。ゆっとくけど、君はツン家の連中に川に投げ捨てられたんだよ。助けるのにどれだけ苦労したことか。」
(投げ捨てられた?何で?いやそれよりもデレコはどこだ?何があったんだ?)
890824:2005/06/01(水) 04:46:23
 結局俺が動けるようになったのはそれから一週間後だった。
その間、エビヲが街に出て情報を仕入れてきてくれた。
街の噂によると、ミアイの結婚披露宴で俺がスタントを使ってデレコを殺そうとしたことになっているらしい。
俺はツオ家の次男ヤリチン・タァイクォに返り討ちにあい、ツオ家反逆の咎でテラ家の人間は全員捕まり、絞首刑にされた。
「ははっ。面白いよね。君はスタントが使えないのに。一体ネミアイの結婚式で何があったんだ?」
(俺がスタント?何のことだ?俺はただデレコと愛し合い・・・、スタント?)
「エビヲ、スタントの発現条件は?」
「は?なんだい今さら。そんなの、口に出すだけだよ。スタントの名前を。」
(まるで汚物を見るような眼で見ていたデレコが突然態度が変わったのは俺が何か言ったからじゃなかったか?
確か、愛の告白じゃない、言い訳じゃなくて・・・。
Sexy Mother Fucker。そうだ、Sexy Mother Fuckerと言ったんだ。
スタント?俺の?Sexy Mother Fucker?
一体何なんだ?何が起こった?)
「エビヲ」
「なんだい?」
「Sexy Mother Fucker!!!!」
「なに?」
「Sexy Mother Fucker!!!!!」
「だからなに?」
891Mr.名無しさん:2005/06/01(水) 14:11:54
>スタントをコントロールできなくて、スタンタンスの世界から爪弾きにされたエビヲ。
>その能力ゆえに人々からも嫌われ、町外れのあばら家に隠れ住むエビヲ。

warota
892Mr.名無しさん:2005/06/01(水) 15:06:52
うほw
893Mr.名無しさん:2005/06/01(水) 17:34:32
なんとか読めるようになってきたな
894Mr.名無しさん:2005/06/01(水) 22:31:00
うん。何か読みやすくなった。
895Mr.名無しさん:2005/06/01(水) 22:39:12
でも、まだよくわからんw
896Mr.名無しさん:2005/06/01(水) 23:24:21
>>1
今回は赤川さんは出ないの?
897Mr.名無しさん:2005/06/02(木) 00:12:17
>>896
俺も気になってた。
898Mr.名無しさん:2005/06/03(金) 12:36:40
保守
899Mr.名無しさん:2005/06/03(金) 16:50:12
そして誰もいなくなった・・・
900Mr.名無しさん:2005/06/03(金) 18:09:25
900げと
901お茶汲み係:2005/06/03(金) 21:20:13
俺はいるぜ

みんなお茶ドゾー( ^^) _旦~~

902Mr.名無しさん:2005/06/03(金) 21:57:14
オレもいるぜ。1を信じて待つ!
9031:2005/06/03(金) 22:54:50
多分、明日か明後日か明々後日くらい。
904Mr.名無しさん:2005/06/03(金) 22:58:24
おおまかだなwでも待ってるぞ>>1
905Mr.名無しさん:2005/06/04(土) 14:51:14
102 :名無し物書き@推敲中?:2005/06/03(金) 17:01:30
>>99
これ?
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/male/1110864051/419


103 :名無し物書き@推敲中?:2005/06/03(金) 17:22:07
>>102
skyに負けず劣らず糞っぽいな


104 :名無し物書き@推敲中?:2005/06/03(金) 17:36:43
しかし、ちょっと酷い出来栄えだぞ。


105 :名無し物書き@推敲中?:2005/06/03(金) 17:57:30
>>102
確かに酷い出来栄えだ。有り得んな…まとめページまで作ってるし。
小説と言えるレベルじゃない。


106 :名無し物書き@推敲中?:2005/06/04(土) 04:01:20
>>103
skyの比較対象にはちょうどいいな


107 :名無し物書き@推敲中?:2005/06/04(土) 09:42:26
目糞鼻糞
906Mr.名無しさん:2005/06/04(土) 15:39:20
言わせとけ。
907Mr.名無しさん:2005/06/04(土) 16:17:28
まあ、小説だと思う方が文盲だろ。
妄想だと最初から>>1は言ってるのに。
908Mr.名無しさん:2005/06/04(土) 18:37:08
そういや最近妄想できてねえよ
工房くらいまでは1じゃないが寝る前の妄想すごかったのに
909Mr.名無しさん:2005/06/04(土) 22:47:27
保守age
910Mr.名無しさん:2005/06/04(土) 22:54:48
1は今頃てんかりんのサインを手に入れる為に徹夜組だろうな
911Mr.名無しさん:2005/06/04(土) 23:02:21
甘い。俺が>>1の代わりに並んでいる。
だから今晩ヤツは来る。
9121:2005/06/04(土) 23:23:22
>>910
行ってはない。行っては無いが、写真集は予約した。
913Mr.名無しさん:2005/06/04(土) 23:57:52
それを言いに現われたのか>>1よ…嬉しいよ。
914Mr.名無しさん:2005/06/04(土) 23:58:18
>>912
流石
915お茶汲み係:2005/06/05(日) 00:17:20
写真集予約記念お茶ドゾー( ^^) _旦~~
916Mr.名無しさん:2005/06/05(日) 00:38:27
久しぶりに前スレ見てきたけど久々に感動した。
最後に方とかヤバイ。>>1のすごさを再認識したよ。
917Mr.名無しさん
じゆーがた