赤ちゃんを拾いました。@ライトノベル Vol.3

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1イラストに騙された名無しさん
 ■LANOVATE-CITY■

ライトノベル板の片隅。
ほぼ時を同じくして、二人の赤ん坊が拾われた。

丘の上のお屋敷には女の子――萌絵
下町の酒場には男の子――鐘

個性的な人々に囲まれて成長していく二人は、
やがて当然のように出会い、当然のように、惹かれ合う。

無意味な偶然などありえないこの街で、
王道と嫌展の狭間を歩む二人を待ち受けるものは何か。


――無数のお約束を越えて、   
           いつか幸せなお約束を――

前スレ
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1044932011/l50

http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1041163224/l50

まとめサイト
ttp://towc109.hp.infoseek.co.jp/lavel/

避難所
ttp://www.freebbs.biz/yy2ch/yy2ch.cgi?id=kanemoe
2イラストに騙された名無しさん:2006/12/08(金) 17:01:05 ID:HXxdVNbt
LANOVATE-CITYを震度7の大地震が襲いました。
3イラストに騙された名無しさん:2006/12/08(金) 22:52:49 ID:KqKEptBn
「あらあら、ゲームオーバーだわ」
女は面白そうな声で、不満そうに顔をしかめた。
不健康なまでに白い指をぱちんと鳴らし、ディスプレイやその他もろもろを白濁の向こうに消してしまう。
残ったのは一匹の猫と、女が掛ける骨のように白い椅子だけ。膝に乗ってきた猫を、女の指が適当にあやす。
「やっぱり『本物』のほうがずっと面白いわね。天災なんてなくても、『物語』がきちんと進んでいく」
女は――千の顔持つ無貌の女神は、長い黒髪をざっとかき上げた。唇の端を吊り上げたのは、笑みのつもりなのか。
「さあ。見せて頂戴、騎士に姫君。あなたたちの『世界』を、ね」
4イラストに騙された名無しさん:2006/12/08(金) 23:14:21 ID:BST98x4v
保守だー!!
保守ほしょ!!
5イラストに騙された名無しさん:2006/12/09(土) 00:05:32 ID:dJN/1vlE
まとめフロント更新

さぁてコレで、両々にビクビクする必要はなくなったな……
フフフフフフフフフフ
6イラストに騙された名無しさん:2006/12/09(土) 10:34:56 ID:sryjZqnE
新スレ記念保守
>>1-5乙々です。ログ保存しておきました。
7はじまり1/3:2006/12/09(土) 20:59:58 ID:Yjg+UnZv
始まりはどこだったのだろう。
『組織』の壊滅か。
『神徒』の台頭か。
あの赤子たちが拾われたことか。
さらに以前――『黄金郷』の創り上げた邪神を、一介の殺し屋に過ぎなかった男が倒したことからなのか。
あるいは――死霊使いと呼ばれた男が、『限定蘇生』によって条件付きの不死を可能にした書物からなのか。
それとも。

「全てはあの創世神話から、定まっていたのだろうか……」
吐息が白く渦巻き、虚空に消える。
見目麗しい少年だった。
肩に垂れる長い黒髪と、黒瑪瑙のごときつややかな瞳。
金糸銀糸で飾られたゆるやかな黒衣は彼の体型をあいまいにしていたが、その立ち姿は隙のない武道者のものである。
10代半ばにしてはやや小柄であると見えた。
まだ子供のように細いその首からは、大型の十字架が下がっている。
8はじまり2/3:2006/12/09(土) 21:03:00 ID:Yjg+UnZv
「意味のない問いです」
暗がりに声が響く。
もともと礼拝堂という建物は声が響きやすく、それゆえに相手の位置もわかりにくい。
けれども少年には、声の主の位置がわかっていた。たとえ彼女が完璧に気配を絶ったとしても、その精度が若干下がるだけだったろう。
「わかっているよ、<オムニス>。僕たちはその時やれることをやるだけだ」

生まれる前から存在した始まりに必要な意味はない。
憎むべき"悪魔憑き"を従属させることに成功した『黄金郷』に対抗するために、秘密裏に『教団』と『組織』の一部が手を組んでいたことも。
『組織』が王道財閥に支えられるほど脆弱化したことで、『組織』のノウハウを手にしていると言う『神徒』と『教団』が手を組み直したことも。
そしてこの20年、『教団』の最奥で変わらず続けられた血なまぐさい「改良」すらも。
「みんな、過ぎ去ってしまったことだから」
その上に現状があるという変えられない事実があるのなら、その先を変えていくことしかできないではないか。
9はじまり3/3:2006/12/09(土) 21:03:54 ID:Yjg+UnZv
ふと、彼は自身の黒髪を手にとってつぶやいた。
「『彼』に合わせるならば――切ったほうがいいのだろうな」
「お切りしましょうか」
「いや、これでいい」
長い髪を後手に束ね、十字架からナイフを引き抜く。
研ぎ澄まされた白刃は、黒糸よりも簡単に彼の髪を切り落としていった。

「もったいないですね」
<オムニス>が本気でそう言っているのに気づき、少年は知らず苦笑した。
最後のひと房が切り落とされる。
「さて、姫君の謁見に行くとしようか」
そう言って顔を上げた少年は、取り違えそうなほど『彼』にそっくりだった。
10イラストに騙された名無しさん:2006/12/09(土) 21:11:50 ID:Yjg+UnZv
6乙!
そして止める間もなく始めちゃいましたよ。
酔い過ぎなければ朝までに続き書きます。
勝手に進んじゃっててももちろんokです。
それでは。
11イラストに騙された名無しさん:2006/12/09(土) 23:32:07 ID:5wgaCffM
邪神群がオリジナルと呼ぶ世界で
唯一無二の姿を持つ者が二人

どちらがオリジンで、どちらがフェイカーなのだろうか
時の薇を回すのは、誰?
12飲みすぎました。“再会”1/2:2006/12/10(日) 17:58:44 ID:55px5k5H
王道学園の図書館は、文字通り書の館だった。
遠目には王族の城とも見える重厚なその建物は、地下2階地上6階の旧館にそれとほぼ同規模の新館、さらに学園長の趣味でライトノベル専用の分館を備えている。
学園には幼稚舎から大学院まで含まれているせいか、絵本から希少本まで、あらゆる書物が開架式の本棚に納められていた。

当然そこで働くのはボランティアや本職の司書たちであり、図書委員ではない。
では萌絵をはじめとする図書委員の仕事は何かというと――
「えーと、『三銃士』に『カラマーゾフの3兄弟』……」
紙片に目を通しながら、萌絵は厚手の本をカートに入れていく。紙片にはさまざまな書名がリストアップされていた。

実は、図書館は大学寄りに建てられており、初等部や中等部の者にはやや近寄りがたい。
そのため、図書委員が月に1度リクエストを取り、学級文庫を入れ替えしているのである。
萌絵はカートをくるくると取り回しながら、次の本を探して歩いた。
「『特撮ヒーロー大全』……空ちゃんか……『ビジュアル版悪魔事典』……これはオブシディア……」
自分で買えばいいのに、とも萌絵は思うが、営利団体のトップである彼女たちは総じて精神的・経済的損失に細かい。出来を確かめてから決めたいのだろう。

「鐘の……」
彼のリクエストした本は、萌絵の身長からするとやや高い位置にあった。爪先立ちで手を伸ばせば何とか届きそうな――
「えい、よっ……っ!」
目当ての本を抜いた瞬間、萌絵はバランスを崩して後ろに倒れこんだ。衝撃に身構える。
13“再会”2/2:2006/12/10(日) 18:00:41 ID:55px5k5H
「おっと」
しかし床に尻餅をつくよりも早く、萌絵はよく知っている声とともに抱きとめられていた。
「危ないよ、萌絵」
「ありがとう、」
鐘。
そう言いかけて、萌絵は言葉を止めた。

振り向いた先にいたのは、私服姿の少年だった。年は萌絵とそれほど変わるまい。おそらく一般の利用者なのだと思われた。
ややざんばらの黒い髪。賢い獣のような黒い瞳。萌絵よりも頭半分は高い背丈と、まだ肉よりも骨が目立つ体つき。
そのどれもが、萌絵の幼馴染によく似ていた。
なにより、その生真面目と人の良さが混ざった顔つきが、本当に鐘にそっくりだった。
少年に制服を着せて、二人同時に並んでいなければ、教師はおろかクラスメートまで騙せそうである。

でも、と萌絵は思った。彼は鐘ではない。よく似ているけど、違う人だ。
「すみません」
「何を謝るの?」
萌絵の言葉に、少年は不思議そうな顔をした。尋ねる声までもよく似ている。
その声で、少年は爆弾発言を続けた。

「やっと久しぶりに会えたのに、僕の姫」
14やっと話が始まった:2006/12/11(月) 23:35:14 ID:CfJsFbT0
何を……
この少年は何を言っているのだろう?
萌絵を「姫」と呼ぶのは鐘と、そして
あの夢の、誰もいない悪夢の中で
屋敷を襲った、残酷な人形の形で
萌絵を連れて行こうとした……

「本を探すの? 手伝おうか?」
少年が伸ばす手を
「や……っ!」
萌絵は思い切りふり払った。
少年の手は予想以上に飛んで、本棚に軽く当たった。

そして、萌絵は見てしまう。
少年の顔を。
永遠に忘れられないだろうと萌絵は直感した。
忠誠を誓った姫に裏切られた、騎士の顔を。

「本当に……気がついていないんだね」
黒メノウに似た目を伏せて、少年は低い声で告げる。
「わかっていたつもりだったけど……それでも期待していたんだな。
 萌絵が僕を覚えていてくれる、
 萌絵なら『僕』と『彼』を間違えないだろう、って」

「『彼』? 間違え?」
萌絵は自分の口がそう言っているのを聞いた。
どうして逃げないの、と萌絵は自分に問うた。
この人は"迎え"かもしれないのに。鐘のいない世界に連れて行かれるかもしれないのに。

それでも足は動かなかった。
恐怖ではない。
離れがたいほど、萌絵は安らいでいたのだ。鐘と過ごした幼い日のように――
「あなた、誰なの?」

「君のための君だけの騎士……だった」
沈痛を通り過ぎて無表情に近づいた漆黒の瞳が、困惑を複雑に抱えた薄茶の瞳に近づいていく。
「今は、ただの――」
その陰で動いていた少年の手が、萌絵の首に手刀を入れる!
「『教団』の、手先だよ」
悲鳴もなく萌絵の体はくず折れた。
だから、少年が続けた言葉を聞いたかはわからない。

「『黄金郷』が君を狙っている。『神徒』も君を欲しがっている。
 だから君は、『教団』に行くのが安全なんだ。
 君の本当の願いを――僕らの"約束"をかなえるためにも」



萌絵の失踪を鐘が知るのは、これより数時間後になる。
 
16イラストに騙された名無しさん:2006/12/12(火) 00:08:18 ID:9Woy5ZsZ
えー、自分ひとりが妄想を黙々と書いている図になっていそうで怖い今日この頃です。
一応着地点は考えてありますが、いかんせん自分に中学生男子はよくわかりません。
なのでどうしても少女小説視点からの少年像になってしまいます。わーきらきらしいやー
萌絵やオブシディアや空の視点だけで書くならいいんでしょうけれど。

個人が占拠するのもどうかと思うので、一旦反応を待ちます。
夢オチ並にずるい終わらせ方も考えてあるので、ここで切ってもかまいません。
メール欄やりたかっただけだし……
17少年と白衣:2006/12/13(水) 23:02:14 ID:TaNoytaP
頭が痛い。

目を覚ますと電灯がちかちかと瞬いていて、その度辺りの暗さが濃くなったり薄くなったりする。
それで僕は、寝ている間に夕方どころか夜が来たらしいと知った。
「気がついた?」
起き上がる気配を感じたのか、
ベッドを仕切るカーテンを開けて、白衣姿のシスターが顔を出した。
「すみません……どのくらい眠ってました?」
「2時間くらいかな。期末で根詰めすぎたんじゃない?」
「まさか」
互いに笑う。
僕は頭が痛かったけれど、それでも笑う。
なんだかずきずきするんだ。それに視界もかすむ。
「モトカさんが迎えに来るそうだから、もう少し寝ていなさい」
母さんが?
「いえ、自分で帰れます」
僕はあわててベッドから降りようとする。
この年で母親の迎えなんて、そんな恥ずかしい真似できるか。
「それに、萌絵と約束が」
シスターが真剣な顔になる。
「だめよ、寝ていなさい」
そう言って僕を寝かせようとするシスターの顔は厳しくて、少し、
辛そうなのは、何でだ?
18少年と姫君:2006/12/13(水) 23:13:14 ID:HDW+8x6Z
――頭が、痛む。
ずきずきと。ぎしぎしと。
外側から締め付けて。
内側から押し当てて。
「眠りなさい」
その言葉に従うように、
目の前が暗くかすんでいく。
眼球もぐるぐる回っているみたいだ。
めまいなんて柄じゃないのに。
薄い黒布をかけていくように
どんどんどんどん暗くなる。
『めまいを起こしたときは視界が白くなるのよ』
……そう言ってたのは誰だっけ?
頭が痛い。
……ほどいた薄茶の髪と瞳で、
痛い頭が、ぐるぐると考える。
……白い寝台の上にちょこんと座って、
思い出せ。思い出すな。思い出さなくちゃいけないんだ!
『ああ、びっくりした』
そう言って笑っていた――ボクノ守ルベキヒト
19硝煙と少年と白衣:2006/12/13(水) 23:18:48 ID:HDW+8x6Z
僕はまぶたをこじ開け、胆の底から叫んだ。
「消え去れっ!」
気迫は気塊となって魔術とシスターを吹き飛ばす。
シスターは空中で姿勢をたて直し、着地と同時に愛銃を抜いた。
その間に僕の手は手近のパイプ椅子を投げつけて時間を稼ぐ。
懐にトンファーはない。
ナイフはこのご時世で持ち込めない。
銃なんてもってのほかだ。
でも、シスターのデスクになら、あるいは――
シスターがパイプ椅子を払い落とす。
その視界に僕はいないはずだ。
シスターは素早く身を翻し、
120度ほど回転したところで、
僕の銃口と向き合った。
20イラストに騙された名無しさん:2006/12/15(金) 15:30:30 ID:MuvWIZ3S
あ、あぶねー。
IEで見つからないから落ちたかと思った……

211/2:2006/12/16(土) 00:33:16 ID:k1syj9cp
「さすがね」
シスターの声には色がない。
「椅子を投げると同時に最大速度でデスクへ向かう。そして一発でデスクの引き出しから、君の手に合う銃を見つけて、完璧に斜線を確保する。
いいえ、それ以前からかしら。
薬と魔術を併用して、『教団』屈指の男たちでもおとなしくなるやつ使ったのに……数時間眠っただけで、君は立ち上がれる。
『彼ら』が<主人公補正>という祝福を、君に過剰に与えたから」
そこには罪悪感なんてまるでなくて――少なくとも僕にはそう見えた――だからってそれを誇っているという風でもなくて、ただただ実験結果を読み上げているみたいな声だった。
撃鉄を起こした状態で、僕はできる限り冷静に聞こえるように尋ねた。
「いったい何のつもりですか? 俺は『教団』と対立するような覚えはないですよ、シスター」
俺は、とあえて強調する。赤子のときに『教団』の監視がついていたことも聞いているから、大方向こうにはあるのだろう。
でも、いったい、なんで今頃?
「君の存在自体が問題なのよ、『彼ら』にとっては。
そして私は、『彼ら』の命令には絶対服従なの。
今回は君の足止めを命じられただけで、殺すことは命じられていないから、殺さなかっただけ」
「……命じられれば、殺しにくるんですか」
それは疑問じゃなく確認だった。僕が問うことはただひとつだ。
222/2:2006/12/16(土) 00:35:16 ID:k1syj9cp
「萌絵を、どうしました?」
「かえしたわ。あの子が本来いるべき場所に。あの子がいるべき人の許に」
その、言葉に、
僕は頭が真っ白になり、次いで真っ赤になった。
ふざけんな、と脊椎反射で思う。
萌絵が本来いるべき場所?
『ここ』以外にあるわけないじゃないか。
だって萌絵は友達が好きで、学校が好きで、屋敷の家族が好きで、酒場のみんなが好きで――
……幼馴染として、僕が好きで。
好きなものを護るために、僕と一緒に、みんなと一緒に、戦うって"約束"したんだ。
「萌絵をどこへやった!」
銃声。
突然手元で起きた音に気をとられた、その隙をついてシスターは身を翻した。動揺した僕は引鉄を引いていたのだ。身長計にうがたれた銃痕だけが残る。
一瞬迷って撃鉄を戻し、僕はシスターの後を追った。
23話に絡めてくれると少し期待:2006/12/20(水) 08:24:30 ID:wABmXpng
★赤ちゃんスレのみんなでクリスマスツリーを飾ろう '06★
 ※板にちなんだものを飾り付けて、他板の赤ちゃんスレに転送キボンヌ※
 ※ガイドライン: http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/gline/1138443562/
           ☆
         ,ノ ヾ
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       イ   彡ヽ      / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      ノ,  ミ  ..ゝ     | http://game9.2ch.net/test/read.cgi/cgame/1154073757/58-60
      彡  ,    ,ヘ     | え、えーと、ツリー届けに来たですが、
     ノ  ,, , , ,  ヾ    .| お取り込み中ですか…?
    彡  ,  [・]Δ┌┐   \__  ______________
    ●○[歩]   ,,,  ~~ミ       .∨
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  彡   , ,           ,,,  ヾ    ヽ⌒╋⌒ノ
 ノ ,,           ,,,   ミ  ミ    .γ'ノ'ノハヽ
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●○[歩] 碁石と将棋の駒…fromこすみ&竜馬@旧囲碁将棋板(.dat落ち)
[・]Δ┌┐ 6面体ダイスと4面体ダイスとビリビリに破られたMTGのカード
    .~~´  …fromバナナ=ウマー&ミーニャーたん@卓上ゲーム板
24とりあえずAAだけ:2006/12/21(木) 08:03:42 ID:8bhvV1Sm
★赤ちゃんスレのみんなでクリスマスツリーを飾ろう '06★
 ※板にちなんだものを飾り付けて、他板の赤ちゃんスレに転送キボンヌ※
 ※ガイドライン: http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/gline/1138443562/
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    ●○[歩]   ,,,  ~~ミ  | ※コメント
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彡 )__)/,  、、         ゝヽ、!!゚ ー゚ノ §、!´-`ノl
  ⌒ ⌒ ⌒⌒i⌒|'⌒'⌒⌒ ⌒   ([l大l]) §([l卯l])|
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)__)/ ライトノベル読本…from鐘&萌絵@ライトノベル板
25こっちはネタ用:2006/12/21(木) 08:04:46 ID:8bhvV1Sm
★赤ちゃんスレのみんなでクリスマスツリーを飾ろう '06★
 ※板にちなんだものを飾り付けて、他板の赤ちゃんスレに転送キボンヌ※
 ※ガイドライン: http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/gline/1138443562/
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●○[歩] 碁石と将棋の駒…fromこすみ&竜馬@旧囲碁将棋板(.dat落ち)
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/終/)   …fromバナナ=ウマー&ミーニャーたん@卓上ゲーム板
)__)/   終わりのクロニクル(1901頁のライトノベルw)…from鐘&萌絵@ライトノベル板
26イラストに騙された名無しさん:2006/12/21(木) 08:17:54 ID:8bhvV1Sm
す、すまん。AA改変だけで手一杯だった。
できればスレ住人で決めて、適当なコメント考えて送ってもらえないだろうか。
自分はカキコできるのは夜遅くになるんだが、
イベント上あまり止めずに今日中に贈ったほうがいいだろうから。

話のネタとしては、萌絵と鐘がこのツリーが送られたときに
また一緒にこの屋敷でクリスマスをやろう、の願掛けがわりみたいのは
思いついたが、SSまで書く暇がねー。後付の回想か?

ちなみに吊るした本がライトノベル読本なのは
特定の本だけ薦めるのはアレかなー?と思ったので。
その意味で2つ目ネタ用が終黒なのは、あれ吊るしたら枝折れるだろwってことで

たぶん一文字ならAAもずれないと思うので、コメントに合わせて変えていいです。
27話に絡めてくれると少し期待:2006/12/21(木) 13:33:31 ID:1vwONvgJ
既に分岐してるし、後でまとめるようになってるみたいだから、
あと2日くらいは大丈夫かも。
28イラストに騙された名無しさん:2006/12/21(木) 23:11:39 ID:I8zk1Wrz
纏めか
今年も年末は忙しくて書けないぜ… orz
頑張ってくれーっ
29イラストに騙された名無しさん:2006/12/22(金) 01:02:00 ID:HKdYdsfC
>>27
あ、そうなんだ。それほど焦らなくてもよかったか。
とりあえずAAは上の感じでいいかな?ライトノベル板だから本しか思いつかん。

【本】←こんな感じで小さくするのもいいかもしれんが少し寂しかったんで。
30イラストに騙された名無しさん:2006/12/22(金) 01:05:43 ID:HKdYdsfC
ごめん。途中で送信してしまった。
大きい・小さいどっちでも贈る本のネタは何がいいかな?
「ラノベ本の詰め合わせ」ってのもありかも。
31イラストに騙された名無しさん:2006/12/22(金) 13:02:54 ID:EnyKys7G
おお、職人さんGJ。健在で何より。
ものは毎年上下半期でやってるラノベ大賞?の本詰め合わせはどうだろう。
ネタ候補としては富士ミス十傑集をあwせdrftgyふじこ

以下SS↓

やらなきゃと思うほどツリーがきれいに飾られる法則。
そんなことを思い浮かべてしまうような、絶妙のタイミングでそのもみの木はやってきた。
飾られているのはSPAM缶に囲碁と将棋の駒、6面体ダイスと4面体ダイスとビリビリに破られたMTGのカード。
卓ゲーのバナナちゃんから送られてきた、ちょっと不思議なクリスマスの手紙の余白には、『飾りをつけて次に送って』と書かれている。
「そっか、もうクリスマスになるんだっけ」
試験勉強そっちのけで、萌絵はその行事に思いをはせた。
空ちゃんや名門君は都合がつきにくいから、早めに予定聞かなきゃ、とか。
オブシディアがシュークリームで塔を作るとか言っていたけど大丈夫かな、とか。
今年も鐘や酒場のみんなを呼んで、ツリーの飾り付けをしなくっちゃ、とか……

「ねえ、鐘。試験が終わったらクリスマスの飾り付けしよう」
――それは、とても平和な時間。
「はあ、萌絵は余裕だなあ」
「違うよ、乗り越えるために楽しみを作っておくの」
「知ってる。……いいよ、期末の最終日な」
「ありがと、“約束”だよ!」
そう言って笑った彼女が――萌絵が『鐘』に連れ去られる、数日前のことである。
32話に絡めてくれると少し期待:2006/12/23(土) 14:10:55 ID:N8qZWkWS
33イラストに騙された名無しさん:2006/12/23(土) 21:52:55 ID:JMQdOWcr
あははは、ぽやっとしてるうちに全スレに行き渡ってるみたい(;´∀`)
とりあえず後どうするか、ガイド板の方のぞいたほうがいいかも。

向こうの途中経過だと、飾りは終わクロになってるけどそのままでいい?
自分としては特にこだわりないし。
まあ、十傑集推薦地雷本[爆]はまずいがなw
34話に絡めてくれると少し期待:2006/12/24(日) 20:38:32 ID:vNDcP2YG
★ 赤ちゃんスレのみんなで飾ったクリスマスツリー'06 ★

        \  |  /
         / ̄\
      ─( ゚ ∀ ゚ )─    そして…完成したツリーは届いた
         \_/、○    しかしそこには萌絵も鐘も居なかった
        彡 * ミ∧_|_∧   
     + イ *  (◎旦●)  果たして鐘は萌絵を取り返し、
       ∵* ミ *..ゝ     無事この場所に帰ってこれるのだろうか…
      彡*ー-.__.┬ ,ヘ +
  + ノ ◎<・)┴◎ヾ
    彡*  ,* [・]Δ┌┐
  + .●○[歩]'ー -- .,, ~~ミ
  彡 ,, *    *,,,[→] ヾ +
  /`○.__,○─* -- ..,Д,,ヽ
 *彡< `(ェ)´ >*   *  ,, ̄ヾ +    ヽ⌒╋⌒ノ
 ノ .(  ▽  ) ◎ー-οοミ*__ミ.   .γ'ノ'ノハヽ
彡 |_O-─-O   *    *    ゝ* ∠(´ヮ`;リ'ゝ
/終/perl/)~i⌒iヘ⌒ヽフ⌒⌒'    と| |゚ つ
)__))____)/ i (・ω・ )       .  <ソ_ハゝ
          しi  iし─J         .  ∪l_ノ
352/2:2006/12/24(日) 20:45:07 ID:vNDcP2YG
.Д SPAM缶詰…fromスパッツ@架空請求・SPAM板
●○[歩] 碁石と将棋の駒…fromこすみ&竜馬@旧囲碁将棋板(.dat落ち)
[・]Δ┌┐ 6面体ダイスと4面体ダイスとビリビリに破られたMTGのカード
/終/)~~    …fromバナナ=ウマー&ミーニャーたん@卓上ゲーム板
)__)/ 終わりのクロニクル(1901頁のライトノベルw)…from鐘&萌絵@ライトノベル板
 ヘ⌒ヽフ  豚しゃぶ用特選SPFポーク&秋に拾い貯めたぎんなん
(  ・ω・)οο…from渉@食べ物板  .__ ┬
 ∧_|_∧                ◎<・)┴◎自転車fromリンタン@自転車板
(◎旦●) グラッグ…fromキャプテン@SF・FT・ホラー板
さいたま太陽…fromそし@同性愛サロン
< `(ェ)´ >:檀君クマさん…fromキムチ太郎@ニダー板
/perl/) Programming perl  …fromウ坊@WebProg板
)___)/
◎ドーナツ板、CDではなく。…fromあゆみ@アニソン等板
* 電飾 …fromモナ板
∵  曹植たんのシラミ … from茶筅 奇妙丸 鍋丸@三国志戦国時代板
'ー -- ひも飾り …from無敵の赤ちゃん@顔文字板
[→] 案内板 …fromガイドライン板

ガイドライン板に、(もはや何だか判らない)完全版?も有り)
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/gline/1138443562/129-130
36イラストに騙された名無しさん:2006/12/29(金) 09:59:32 ID:60vYJ7u6
すまん、クリスマス前の話なのに年の瀬になってしまった……
終わらせる気はあるので、生温かく見守ってくれるとうれしいです……
37そっくりさんならこれやらないとな。:2006/12/29(金) 12:42:40 ID:u1McMUMt
厚い雲が月を隠し、裏路地に回れば街灯もない。
鐘は夜目が利くほうだったが、人体改造されたシスターにはかなわなかった。もうひとつの要因もあり、行き止まり近くでまかれてしまった。
「くそっ」
鐘はそのまま行き止まりへと進み――足を止めた。振り返りながら撃鉄を起こす。
(3、4……5人、か)
戦闘力は『組織』のコックローチ程度、単体ならば無力化できなくもない相手だ。逆に言えば、複数で来られると厳しい。そのため選んだのが狭い行き止まりだった。
そのことに気づいているのか、あるいは別の理由があるのか、そこここにいる追跡者は襲撃してこない。
代わりに、路地の角から現れたのは――
闇よりも黒い襞飾りと、死者よりも白い細紐。硬い黒革で腰を締め、留め金をかけた首元まで漆黒に染めた立ち姿。
少ない明かりの中、唯一輝くのは琥珀にも似た金色だ。彼女の胸元にささやかに、彼女の腰へと鮮やかに。
黄金に包まれた白い面は、石像よりもなお無表情に、紫紺の瞳で鐘を見つめる。
「なぜです?」
瞳の下にごく薄く、生々しく刷かれた紅い跡。
「なぜ……殺す必要があったのです、鐘!」
オブシディアの叫びと同時、不可視の牙が鐘を襲う。
牙は一瞬前まで鐘のいた地面をえぐり、さらに彼へと襲い掛かる。
鐘は壁を蹴り、2段跳びでその上に立った。そのすぐ真下を牙が削る。
押さえようとするコックローチを銃で牽制。
――上から見るオブシディアは、金の花芯を持った闇色の薔薇のようである。
「何を言ってるんだ、オブシディア」
「知れたことを」
オブシディアは手を掲げ、さらに牙を放つ。避けきれず、鐘の腕から紅いものが流れた。
「オブシディア……!」
「『組織』のため、殺された私の部下のため、私たちの友情のため――死んでください」
最後通牒。
コックローチが同時に襲い、オブシディアの牙が放たれた。
38どこまで増えるか彼女の出番:2007/01/04(木) 03:10:47 ID:U4TGZRY+
ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%BC%E9%A6%B4%E6%9F%93より幼馴染と判定……」

天から声が落ちる――

「砕!」
裂帛の気合で振るわれた太刀が、コックローチの腕を折り、足を砕き、腹を突き飛ばす。
即座に返した刃の根元から、すっと切先へ艶光。その鋭さを『牙』に知らしめる!
「斬――!」
『牙』を成していた力場が断ち切られ、爆風が辺りをかき回す。
鐘はぐいと腕を引かれた。

――声が落ちると知ったときにはもうそれほどのことが為されていた。
巻き上がる風に、エプロンの裾をはためかせ。
馴斬刀を構えたろぼ子が、そこに凛と立っていた。
鐘がいた場所に――鐘がもういない場所に。
39なんかもーみんな来いよ。:2007/01/04(木) 03:16:30 ID:U4TGZRY+
「お兄ちゃん、こっち!」
「空?! 何が」
「話は後、ろぼ子さんが引きつけている間に、早く」
そういう間にも空は鐘の手首を掴んだまま、暗い道をひた走る。
後ろでは「だめです、絶対にさせません!」と懸命にろぼ子が叫んでいた。
おそらく、オブシディアに。
「……わかった。わかったからちょっと離してくれ。走りにくい」
「むう。――乙女のときめきなのに」
「何か言ったか?」
「なんでもない……っ!」
突然空は停止し、体を緊張させた。鐘にもその理由はすぐわかった。
この先――たぶん空たちの行かねばならない方向に、戦う者の気配がある。
昼に正面から向き合ったならば、空と鐘とで倒せるだろう。
奇襲を仕掛けられたとしても、昼ならばなんとかかわせただろう。
だが、今は曇り空の夜。それも街灯のない裏路地だ。
鐘たちは直感していた。
この闇を味方に、暗躍する者の力だと。
死んだことすら気がつかぬまま殺される、そんな恐怖を呼ぶ存在だと。
「くう、もう少しなのに――名門は何やってるのよ」
「いっちーまで来てるの?」
「おう、いるぞ」
背後からの声と、
「ぎゃっ」
空の悲鳴はほぼ同時だった。
40さらに増える:2007/01/04(木) 03:39:08 ID:U4TGZRY+
「よお、鐘」
「ちょっと名門、何私の頭に手載せてるのよ」
「ああびっくりした、いっちーか。危うく撃つところだったよ」
「嘘つけ。お前指をかけてすらいないじゃないか」
「離せ、離しなさい、って何か増えてる?」
「じゃああれ、いっちーの護衛なんだ?」
「ああ、まあ……似たようなものかな」
「ちょっ、お兄ちゃん髪がくずれる、くずれるってば」
「王道の戻るのが遅いから、鐘と行き違ったかと思って、ここを任せて探していたんだ」
「そうか。……ありがとう」
「気にするな。こちとら虎姫の勅令に逆らえないだけなんだからさ」
「二人とも暢気にくっちゃべる振りしてなでなでしてんじゃないーっ!」
ついに両手を振り上げて、空が抗議の意を示した。
「声が大きいぞ、王道」
「誰のせいよっ、ていうか何で二人して私の頭に手を載せるのよ?」
「「だって高さがちょうどいいし」」
「……………………………シャーッ!!」
 手乗りタイガーの猛攻が始まる。名門のみロックオン状態で。
「うお、ばっ、何で俺だけ?!」
「うるさいうるさいうるさい、あんたにこれ以上出番はないからいいの!」
「あるだろ! こう、励ます友人の役とか! 次の手がかりを渡す友人の役とか!」
「“手がかり”?」
名門の必死の反論に、鐘が疑問の声を上げた。――名門の登場場面が増えた。
「手がかりって言っても、長耳さんのところで情報を買おうってだけなんだけどな。正直なところ、俺たちも事態の急変についていけてないんだ」
41その頃のろぼ子:2007/01/04(木) 16:27:06 ID:hCMd/1Lb
月も星もない裏路地で、突風にそれぞれのフリルをはためかせながら、少女と娘は相争う。
「退いてください」
「だめです、絶対にさせません!」
『牙』と太刀とを打ち合わせながら、互いに一歩も譲らない。
焦れたオブシディアはついに、奥の手を使った。
「止まりなさい。目覚めさせた私の命令です」
「!」
ろぼ子の動きが急停止した。手をだらりと下げ、焦点が不安定に揺れている。
「やはりマスター登録は、私のままになっていたようですね。さあ、そこをどいてください。
 私は『組織』の名にかけて、鐘を……消さなくてはならないのですから」
オブシディアの言葉に、しかしろぼ子は唇を震わせ、うつろな声で呟きを紡ぐ。
「愛しい幼馴染に……あえて刃を向ける……自分だけでは、どうしようもない……用意された、理由のために」
ろぼ子の中で何かが書き換えられていった。
マスターの制御よりも優先される絶対命令が、彼女の中を駆け巡る!
「だめですだめです絶対だめです、そんなおいしいシチュエーション、許すわけにはいきません!」
瞬間、ろぼ子が太刀を振るった。
制御から弾かれたことを知り、オブシディアの顔色が変わる。
「無茶な! 第一、鐘の幼馴染は萌絵だけとプログラムされているはず」
「定義プログラムの導入により、あなたも幼馴染と認定されています。
 幼馴染、切るべし――斬るべし――killべし!」
曇天の冬の夜を裂くように、きしゃった雄叫びが高々と上がった。
42イラストに騙された名無しさん:2007/01/04(木) 16:38:27 ID:hCMd/1Lb
ギャグっぽい嫌展にしようと思ったのだけど、失敗気味。
ごめんろぼ子&名無しさん。

ところで幼馴染定義をウィキペで引くと、主要なお子様全員が幼馴染というすごいことに。
これはあれか。気がつかないうちに幼馴染ハーレムものになっていたのか鐘スレは。
……あるのかな12人の幼馴染ゲー。委員会に撲滅されそうだけど。
43イラストに騙された名無しさん:2007/01/15(月) 09:18:25 ID:TT+hNJQ1
  ,,,,.,.,,,,
 ミ・д・ミ <ほっしゅほっしゅ!
  """"
44イラストに騙された名無しさん:2007/01/15(月) 22:45:44 ID:4h6rQHlb
ではほっしゅ君に質問だ。

現在鐘は3つの選択肢を出されている。
名門「情報を制するものが勝つ。一刻も早く長耳さんのところへ行こう」
王道「ろぼ子さんはもともとお兄ちゃんを迎えに来てたんだよ。
   いったん酒場に帰ったほうがいいと思うな」
セバス「鐘殿は銃以外身一つでここまで来たそうですな。
   手馴れた武器などを取りに学校へ戻ったほうがよろしいのでは」

長耳家・酒場・学校、どれに行ってもそれなりに話はできる。(理由はメール欄)
さあ、君はどうする?

「って、セバスチャンさんいつの間に?!」
>>39からずっと此方に」
「あの気配、貴方だったの……」
45イラストに騙された名無しさん:2007/01/18(木) 00:29:16 ID:b96sSRsf
  ,,,,.,.,,,,
 ミ・∀・ミ <位置関係から長耳さんのとこに行くべきじゃないかな!
  """"
46イラストに騙された名無しさん:2007/01/20(土) 23:59:01 ID:qOJ0XGbB
「よし、長耳さんのところに行こう。僕たちみたいな人から、情報が集まってるはずだから」
そして鐘と空と名門は長耳さんの家に向かいました。
セバスチャンは帰りましたが、連絡はすぐにつくそうです。鐘と空には秘密ですが、伊達に忍者ではないですね。

それにしても気絶しちゃった萌絵、どこに運ばれたんでしょうか……

「萌絵! もえっ! もぉおええぇぇええ!!!(ばきばき、めりめりっ☆)」
「旦那さま屋敷が壊れます! 執事さんと庭師さんが行ってるから落ち着いてください!」
「あ、ああ、だが……(愛しさと切なさと焦りと畏れの入り混じった表情で書棚の片隅を見て)ああ、萌絵! もおぉえぇぇえ……っ!」
「だから旦那さま屋敷が(肩をたたかれて振り返る)お姉ちゃん」
「ほれ、角材どけるの手伝い。旦那さまが握ったら最後だべ」
「う、うん……今回お姉ちゃんは落ち着いてるんだね」
「さっき酒場から連絡があっただから。鐘君と二人でプレゼント買いに行くから、遅くなるって連絡あったそうだべ」
「……デートにしても遅いと思うけど。もうずいぶん暗いし」
「試験最終日だから、羽根のばしてるのかもしれないだべねえ。まあ、一応モトカさんが監視装置で位置は把握しているそうだし、鐘君も萌絵様もそう簡単にさらわれる人じゃなかろ? 大丈夫だべ」
「そっか。そうだね。(さらにできた角材をよそに運ぶ)それより素直にジュニアケータイって言おうよ、お姉ちゃん」
47イラストに騙された名無しさん:2007/01/21(日) 00:16:46 ID:AOkQBjZ2
「 そ れ だ あ ! 」
「ひゃあ!(からこらころん、と角材が落ちる)」
「どうしただべ、旦那さま。大声出して」
「すっかり忘れていたが、この間萌絵にもジュニアケータイを持たせたんだ。あれで現在地がわかるはずだ!(神速で携帯を操作、硬直する)こ、ここは……」
「(横から覗き込んで)……ラブホだべ(少し顔を赤くする)」
「うおお(もはや言葉はおろか声にすらなっていない野太いおたけび)」
「あ、だめです旦那さま角材はだめ、あれもそれもだめですってば!」
「ふおお(おたけびどころか衝撃波にも等しい轟音)」
「魔道書はもっとだめだべえぇえ!(手元の角材を同時に三本投げる)」
「(時間差で投げられた角材を巧みにかわして)今パパが行くぞ、萌絵!(屋敷を飛び出す)」
「どどどうしようお姉ちゃん、旦那さまの頭からなぞの白い煙が」
「こっちで執事さんに連絡すっから、そっちで庭師さんに報告!」
「わかった!」

やれやれ大変なことになったようですね。
ちなみにラブホは学校周りにはありませんから、よほど遠くへ離れた様子。
さて、何があってそんなところにいるのでしょうか。
……そしていつになったら終われるのでしょうか。
バレンタインやりたい方ごめんなさい、がんばって終わりますから……
48イラストに騙された名無しさん:2007/01/22(月) 00:04:01 ID:78VnMmcx
目を開けると、目の前に枕があった。
薄紅色の、やたら大きな枕である。
どうやらいつもの癖で、枕に顔を突っ込んだ状態で眠っていたらしい。
「うにー……?」
うつ伏せになっていた萌絵は、寝ぼけたままころんと仰向けになり、
「えっ?」
目を見開いた。
天井の鏡が、萌絵の全身をばっちり映している。
三つ編みのほどけた髪も、胸元までボタンを外されたブラウスも、絶対領域ぎりぎりまでめくれあがったプリーツスカートも……
メガネのない、素顔も。
隠されていない頬を風が撫ぜ、萌絵はぶるりと震えた。
「萌絵? 起きたの?」
「だめっ!」
何がかはわからない。
しかし確実に胸をつく嫌な予感に、萌絵は激しく頭をふった。
「……メガネ、どこ?」
「そこの棚に置いたよ。今ちょっと手が出せないから、自分で取ってくれる?」
うん、と生返事をして萌絵はベッドから降りると、のろのろと棚に向かった。
メガネをかけて、やっと部屋を見る余裕が出てきた。
ベッドのすぐ上に鏡があるというのも珍しいが、そのベッドも丸くてぼよぼよしている。
赤紫のライトとミラーボールのおかげで、うす汚れた壁紙の色が何なのかさっぱりわからない。
家具の少ない割りにカラオケセットがあり、全面透明窓の浴室にはなぜかすべり台がついていた。
49イラストに騙された名無しさん:2007/01/22(月) 00:04:37 ID:78VnMmcx
「ごめんね、近場で逃げ込めるところって、ここしかなくってさ」
背を向けたソファから、聞き慣れた声がした。
鐘に似た、鐘とは違う少年の声。
萌絵を「僕の姫」と呼んだ、『教団』の手先の人。
――び、と何かをちぎる音がした。
「これ済んだら案内するから、もう少し待ってて」
「何か手伝おうか?」
会話があまりに普段の調子と変わらないので、無意識に萌絵はそう言っていた。
ソファの向こうが一瞬沈黙し、やがて吹き出した。
その途端、萌絵はしまったと思う。この隙に逃げればよかったのだ。
しかしその可能性は、笑いながら封じられる。
「残念ながらこの建物は包囲されていてね、外じゃよその勢力がうろうろしてる。
 ――抜け駆けした僕らを責める勢力も、ね」
後半は自嘲混じりだった。
「生き残れる自信があるなら逃げてもいいよ。萌絵がどこに行っても僕は捕まえられるけどね」
うにー、と萌絵は考えて、ソファの裏へ向かう。
「いいよもう、手伝う。んで、事情を吐き出してもらうんだから」
「え、うそ、ちょっ待」
あわてた声で少年が止めようとしたときには、萌絵の視界に彼の姿が入っていた。
上半身裸の細いからだが――生血のついた包帯と、灼けてひきつれた傷跡だらけで。
50イラストに騙された名無しさん:2007/01/29(月) 18:35:52 ID:v6P3eAtT
昔、セールスマンと元殺の最後の戦いとか書いてた。
AA職人に転向したんで、なんつーか、古巣に挨拶にきたというか……まあ、贈り物。
これからも時々描かせて貰うな。


                       ,-‐-、
                      /ハノハ ヽ
                  ━=y (゚−゚;!!_ゝ
                     と[l大l]つ[二>
                      /と__/
                        (__/
                  / /
               /  /
               / /
            //
       `\ヽ从人从//´
51イラストに騙された名無しさん:2007/01/29(月) 18:50:47 ID:v6P3eAtT
    __
 , ´    ヽ
 l  ,'◎ノ◎
 §、!´ーノ\,, //
 §0l卯l]つ;:,';;.―
   く/_|〉 / |''\
   し'J
52イラストに騙された名無しさん:2007/01/29(月) 22:18:57 ID:05PccYBi
>>50
お前は俺か。
同じころに書いてて転向先も同じとは。
53イラストに騙された名無しさん:2007/01/30(火) 00:03:53 ID:Z7OYH5um
まさかバトコテになってたりは、しないよなw

           __
        , ´    ヽ
        l  ,'◎ノ◎  ← 目
モミアゲ→ §、!´ーノ   ← くち
         §0l卯l]つ;:,';;.―
          く/_|〉 / |''\
           し'J
5450:2007/01/30(火) 01:48:22 ID:aIblx16E
今は長編のアトリエスレで描いてるが、そこそこ面白い。
55イラストに騙された名無しさん:2007/01/30(火) 16:47:42 ID:Iim6Ckam
なんか伸びてると思ったらー!
素敵ですありがとうございます。
セールスマンの話大好きですよー。
ハードボイルドやらアクションやら格好よくて。
……こっちも、がんばろう。うん。
56やっとアク禁とけた:2007/02/06(火) 04:49:06 ID:z4vUWmwP
「……」
「えーと、あまり見られると気恥ずかしいんだけど」
「……」
「あ、ビアトリス制御で傷はすぐふさがるから問題ないよ」
「……」
「あの、萌絵さん、着替え返シテイタダケマスカ?」
「……う」
それまできつくにらんでいた萌絵の表情が、くしゃりと歪んだ。
「……何で……?」
眼鏡の向こうの瞳が潤み、途切れのない雫をこぼす。
「ああええと、ほら、これは悪魔憑き相手に油断しただけだから。
 萌絵が泣くことじゃないから。大丈夫だからさ」
だから着替えを……と続ける少年に、萌絵は「ちがう」首を振る。
そして、大音声で

「どうして起こしてくれなかったの!」

怒鳴った。怒鳴り続けた。
「私も戦うって決めたのに!
 大切なもの、大事な人を私が守るって決めたのに!
 私のせいで傷つく人が出るのはもう嫌なの!
 あなたも、鐘も、『ほかの子』たちも!」
573点リーダーは便利だ。:2007/02/06(火) 04:51:08 ID:z4vUWmwP
最後の発言に、少年は顔色を変えた。
「萌絵、まさか」
「……見たよ。……見えちゃった」
黒の衣が、指から滑り落ちた。肩を落とし、萌絵は力なく俯く。
「あなたは……『あなたたち』は……」
突然唇をふさがれ、萌絵の顔は真っ赤になった。
ふさいだのは少年の左手だったが。
チチッ。
秒速の抜き撃ちが萌絵の背後、天井近くの影を撃ち抜いた。
「バタフライ、『組織』か!」
「オブシディアが探しに来てるの?」
少年は答えず手早く支度を済ませていく。
そして萌絵の腕を引いた。
「地下を使って目的地へ行く。急いで!」

二人が駆け出した後に、薄紅色の携帯が残った。
ジュニアケータイは淡々と、自分の現在地を伝えていた。
 
58イラストに騙された名無しさん:2007/02/10(土) 13:38:05 ID:lB5ged9B
久々に来たがまだ続いてたのか。
萌絵スレと鐘スレ統合したのね
59番外編。バレンタインの話。:2007/02/14(水) 02:15:23 ID:agTcV7hz
白い花で作られた花束に、やはり白いリボンが結ばれる。
「はいどうぞ……プレゼントか何かですか?」
「まあ、そんなもんです」
小銭を数えて会計を済ませ、黒服は花屋を出た。

枯葉を残すには遅く、若葉が萌えるには早すぎる。
そのせいか、囲いの中は妙にあっけなく明るかった。
黒服は片手に花束を下げ、慣れた様子でゆっくりと目的の場所へ向かう。
やがて、そこについた。
「よう」
軽い調子で、黒服は手を挙げる。
そこには"誰も"いない。
ただ、白い墓標が立っているだけだ。

数年前。
謎の化物「エキドナ」によって、『組織』は崩壊に瀕した。
それだけの組織員が死んだ。
たくさんの有能な者と、それ以上に多い忠義者が、血を流した。
オブシディアを庇うために。
そして、帰る場所のない者たちの帰る場所――"家族"を守るために。

墓標に、黒服は花束を供える。
かつての仲間たちに黙祷し――にやりと笑う。
「今年は『びっくりチョコレート(ただし外れが9割)』だそうだ。
 当たりが出たら、ミッキー印のオブシディア様ブロマイドがもらえるってスペシャルだぞ。
 まあ、なぜか年々団員は入れ替わっているんだがな」
うらやましいだろう? 黒服は続ける。
60固ゆでは無理です。:2007/02/14(水) 02:18:29 ID:agTcV7hz

お前らが見られなかった黒曜の姫が、大輪の薔薇のように開いていくところをみんな見てやる。
それまでは意地でも生き延びてやるからな。
だから、それまでオブシディア様がお健やかであるように。
あの方が長く長く笑って、幸せなお顔を見せてくださるように、祈ってくれ。
団長命令だ。
……お前もだぞ、平服?

黒服が立ち去り、墓標には花束だけが残る。
白い花で作られた大きな花束と、もうひとつ。
慎ましく置かれた小さな花束は、おそらくはたったひとりのためのもの。
よく似た花束をミッキーが持っていたことを、黒服は知っている。
意外に乙女ちっくなことをする、と思う。
――平服と何があったのか、とも思う。

通信機から連絡が入り、黒服は我に返った。
さあ、仕事だ。
オブシディア様以外には、引かぬ媚びぬ顧みぬ。
それがSOS団団長としての、彼の誇りなのだから。
61名無しさん@公民館でLR変更検討中:2007/02/15(木) 22:47:36 ID:cgPMTh46
素敵な話でした。昔を思い出しますね。
62名無しさん@公民館でLR変更検討中:2007/02/16(金) 01:58:18 ID:XZ6iHKgT
ありがとうございます。
以前から狙っていた甲斐があります。
次はひな祭りかー。

……いえ、クリスマスもやりますよ?
63イラストに騙された名無しさん:2007/03/27(火) 16:36:18 ID:t5OxpfUx
保守
64イラストに騙された名無しさん:2007/03/28(水) 21:31:38 ID:jvuBCHro
あげない方がよろしいかと
65イラストに騙された名無しさん:2007/04/02(月) 01:17:53 ID:z6K3QNwu
上がったおかげで、見つけた俺参上

絵とか無いの?
66イラストに騙された名無しさん:2007/04/02(月) 23:13:36 ID:ykuZUfkM
脳内補完推奨
67イラストに騙された名無しさん:2007/04/13(金) 13:55:41 ID:B4xKkp80
AAならいくつかあるのだが、そういえば絵師さんという話はなかったな。
68イラストに騙された名無しさん:2007/04/17(火) 14:06:42 ID:wfeXlrEu
しばらく来ないうちにまとめサイトまでできてたのか
69イラストに騙された名無しさん:2007/04/17(火) 23:32:04 ID:lNf35xIW
のんびり成長してるよー
最近動いて無いけどw

年度変りで忙しいんだろうなぁ
70>>41から続きっぽく1/4:2007/05/03(木) 17:55:15 ID:ENt/joI6
「斬るキルkill!!」
ロボ子はオブシディアの元へ一直線に跳び上がる。
オブシディアは咄嗟に障壁を展開、反撃の準備をし、同時に目の前に迫るロボ子は

ずるべたーん

何もないところで転び、目を回した。

「……マルチ化ウィルス……まだ効果があったのね」
オブシディアは障壁を張ったまま完全に目を回したロボ子の様子に呆然とする。
そのまま数秒が過ぎ、気を取り直したオブシディアは鐘の後を追いかけた。

十数分後、オブシディアはこちらに向かってくる人影があることを確認した。
その人影――王道空にオブシディアは一言言う。
「空、これはどういうことですか?」
「ん、お兄ちゃん達には足止めって言ってあるよ。後はお兄ちゃんがいるとややこしくなる
話もあるし、私だけが握っている情報もあるから」
空は言いながらオブシディアに近づいていく。
「そうですか……」
オブシディアは言いながら気を落ち着け、次に空を見る目が鋭くなる。
「私相手に足止めなど、いくら空でもできる話とできない話がありますわよ」
普通の人間なら震え上がるほどの視線。しかし空は平然としたまま。
「足止めが本題じゃないから。ま、言いたいことは山ほどあるからとりあえず一発殴られなさい」
「なぜですか? 私の部下を殺した鐘を助けた以上、空も敵とみなしますわよ」
「だからそれが誤解なのよ」
「私はこの目で確認しましたわ。この私が鐘を見間違えるわけがありません」
「見間違えたから一発殴りたいわけよ。私は」
「そんなはずがありませんわ」
かみ合ってそうで全くかみ合ってない会話が途切れ、沈黙がおりる。
空はため息とともにオブシディアを見た。
すでに纏う雰囲気は獲物に襲い掛かった虎だ。
「あーもーこのわからず屋! 少しはこっちの話を聞けー!」
712/4:2007/05/03(木) 17:57:32 ID:ENt/joI6
  ・名は力を与える――

声とともに響くは概念条文。組織が技術提供し、王道財閥と共同開発した物のひとつである。
オブシディアは概念空間の発生を感じながら、かすかに冷笑を浮かべた。
「概念空間……そんなもので実力差が覆るとでもいうのですか? 」
冷笑を浮かべたままオブシディアはフワリと着地し、空を、そして"空"を見る。
「……夕日? 今は夜のはず……なるほど、"空"」
空は不敵に笑いオブシディアに近づいていく。
「そ、空を操って夕日に見せてるの。見せてるだけだけどね」
オブシディアも同様に近づきながら話す。
「それでこれが何の意味を持つというのですか?」
「それはね」
オブシディアと空の距離は一歩分。お互いの睨みを利かせ、空は拳を握る。
「話を聞かない相手に対して話し合うのに、こーゆーことも必要なのよ!」

鈍い音とともにオブシディアの顔面に空の拳が直撃する。
一歩よろけたオブシディアはキッと空を睨みつけると空に向けて拳を振るう。
「よく、これが話し合いだといいますわね?」
空も一歩だけよろけると再び拳を振るう。
「ええそうよ。これが話しあいよ!」
夕日に照らされた空間に二人の殴り合う音が響く。
オブシディアは、半歩よろけた。空は殴りながら言葉は続ける。
「まったく、オブシディアの部下が殺られたとき、お兄ちゃんがどこにいたか正確に把握してるの?」
答えは拳とともに返ってくる。
「当然、部下の所にいたわ」
「違うわ」
再び空が殴るとともに話す。
「その時間、鐘はシスターの所にいたのよ」
「そんなことはありえない。私は確かにこの目で見たわよ」
「幻術、変装。騙す方法はいくらでもある」
「確かに普通はありますわね。でも私が――」
「クローンもあるわね」
723/4:2007/05/03(木) 17:58:28 ID:ENt/joI6
真っ向勝負の殴り合い。それが空の一言で均衡が崩れオブシディアの手が止まる。
しかし、言葉だけは否定を続ける。
「いえ、それでも違いは出るわ」
「そう。だから間違えたことに怒ってるのよ。私は」
空も手を止め、まっすぐオブシディアを見る。
「オブシディア。あなたはお兄ちゃんのどこを見ていたの!
あなたは、今のお兄ちゃんを見ていない。お兄ちゃんを通して過去を見てきた。
だからその過去が現れたとき、違いを見ることができなかった」
「私が――過去を?」
オブシディアが考えもしなかったこと。だからこそ動揺が声になり現れる。
その様子をひそかに確認し、空はさらにたたみかける。
「私はお兄ちゃんの現在しか知らないから、映像に一瞬映っていたあいつは別人だとわかったわ」
「そんなことはな――」
オブシディアの否定。だがすべてを言わせず空は続ける。
「私も色々調べてるのよ。噂、伝承、神話。真実をつかむために必要なものわね。
大したことはわからなかったけど、それでも過去……言い換えると前世がキーワードの一つ
になっていることはわかったわ」
空は一歩前に。二人の距離が完全になくなる。
息がかかるほどの距離まで空はオブシディアに顔を近づけ、言う。
「でも、過去は現在の状況を把握するための材料に過ぎないわ。
過去に、前世なんかに縛られてはダメよ。過去に縛られては現在が見えなくなる。
正しいことが見えなくなる。だからオブシディア、目を覚ましなさい! 現在を見るのよ!
その上であなたが見た人間が本当に鐘だったか判断しなさい!」


二人の動きが止まる。静寂があたりを支配する。
734/4:2007/05/03(木) 18:01:04 ID:ENt/joI6
いつしか概念空間は消え、あたりは暗い路地に戻っていた。
時間にして10秒。その長い沈黙の後
「……確かに……あの人は鐘ではない……わ」
ポツリとこぼしたオブシディアの言葉に空は安堵の息をつき、一歩後ろに離れる。
「でも、だとしたらあの人は……」
「そんなの本人に聞けばいいわ。萌絵も何か考えがあって一緒にいると思うし」
「萌絵が? ……そうですわね。だとしたら早く見つけ――」
オブシディアはハッと表情を強張らすと、ひとつ頷く。
「黒服からあの人を見つけたと報告がありましたわ」
「じゃ、行こうよ。鐘には私から連絡しておく」
「わかりましたわ」
お互い普段の調子に戻り、ひとつ頷くと二人は走り始めた。



「ところで、あの概念空間には何の意味がありましたの?」
オブシディアは走りながら疑問を浮かべる。
結局空を夕日に変えることに意味を見出すことができなかった。
その問いを聞かれた空はいたずらっぽく笑い、
「夕陽をバックに親友同士殴り合い。そのまますぐに仲直り。ほら、王道展開でしょ。
私の実力じゃこうでもしないと殴ることもできないわよ」
答えを聞いたオブシディアは苦笑を浮かべる。
「それはもはや王道ではなく古典の域ではなくて?
それに私が空を親友と思っていなければ意味がありませんわよ」
オブシディアの言葉に空はさも驚いたように言う。
「あれ? オブシディアが私を親友だと思っていないなんて全く考えなかったよ?」
「……はぁ。こういうときの空は、何処までが本当で何処までが嘘か全く分かりませんわね」
あまりにもわざとらしい空の言葉に、オブシディアはため息を一つ吐き走ることに集中した。

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止まり過ぎと思い書いてみた。ほんとSSって難しいな。
74イラストに騙された名無しさん:2007/05/05(土) 08:41:31 ID:rwDRQTOX
王道GJ!
概念の使い方うまいな。
75イラストに騙された名無しさん:2007/05/07(月) 20:43:23 ID:YKTapCDS
お、久しぶりに書き込みが
乙っ
76イラストに騙された名無しさん:2007/05/10(木) 01:41:55 ID:ZBKWzoi1
お久です……
知らない間に話が進んでいてビクーリです。
ありがとうございます。
(とてもピーだなんて言えない……)

春も終わりかけだというのにクリスマスしてどうしよーと思ってましたが
続きを書く気力が出てきました。
終わらせましょう、必ず。

……もしかしたらプロットになっちゃうかもですけど(アーアーアー)
77イラストに騙された名無しさん:2007/05/12(土) 08:08:37 ID:q6ag8cDO
逆に考えるんだ。
今年のクリスマスにあわせればいい。
そう考えるんだ。
78イラストに騙された名無しさん:2007/07/18(水) 16:01:21 ID:s1mU8jlr
ほんとにそうなりそうだよ77……
ネタも結末も決めてるのに、どっから書くか困っているんだ。
79イラストに騙された名無しさん:2007/07/28(土) 00:38:12 ID:r7RMZC/M
どっから書くか困っているなら、全部同時に書けばいいじゃない(マリー)
二カ月書き込みないからついにダメかと思った。

なかなかこれないけど楽しみにしてますよー。
環境変わって応援しかできないのが残念だ。
80イラストに騙された名無しさん:2007/07/31(火) 16:07:59 ID:CPWavDQn
ひっそりと……
夏待ちスレのごとく潜水を続けながら、「物語」はひそやかに動いていた。
無数の声。
重奏される怨嗟の声。
護るものを喪い、レゾンデートルを失い、絶望の中であえぐもの共の声。

それらは
生まれたときから「定め」を背負わされ、
「定め」の中で生きることを選択し、
己が力のすべてを用いて「定め」のために戦った。

しかし、
神をも打ち消す力を持ちながら、
しかし神ならぬ身であるが故に、

少女を、喪う。

何度も。
何度も。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も――

そして歴史は巻き戻り、
彼のものだけを残してすべては、
少女の記憶へ戻っていく。
網目の上を滑って。
81イラストに騙された名無しさん:2007/07/31(火) 16:09:09 ID:CPWavDQn
故にこそ、ただひとり残された存在は。
虚無の中で唇を開き、自責の声をあげ始める。
神をも打ち消す力を持ちながら
しかし神ならぬ身であるが故に
騎士という人の身であるが故に、彼女にはけして届かないことを……

それは神代の時代から
黄金の瞳の無慈悲な姫が
己が身をささげたそのときから
繰り返された「物語」。
82イラストに騙された名無しさん:2007/08/14(火) 22:04:37 ID:VwnqzUEQ
ほs
83イラストに騙された名無しさん:2007/08/24(金) 23:01:33 ID:+NAN59xg
帰ってきた
ココへ…

物語を紡ごう……
84そのころのロボ子 1/1:2007/08/25(土) 23:11:15 ID:H22W3668
「う……ん」
ロボ子は再起動をしたとき、視界がふらふらと上下に揺れていた。
「……?」
理解できずl頭に疑問符を浮かべていると、すぐ近くから声がした。
「起きたか? タイプゼロ」
「ハイ……って、なぜ私はおんぶされているんですか?」
知らないはずの男の声。だが自然と気を許してしまう。
警戒などまったくしないままロボ子は質問する。
「道端で気絶していたのを見かけたから、酒場に連れて行こうとしただけだ」
男はことさら無愛想を装いながら答える。
「そうでしたか。ありがとうございます。あ、もう大丈夫です。歩けます」
ロボ子は降ろしてもらい改めて男を見る。
やはり知らない男だ。なのに奇妙な懐かしさを感じる。
男はしばらくロボ子の様子を確認した後、口を開く。
「……今は幸せか?」
唐突な問い。それに対しロボ子は一切の躊躇もなく答える。
「幸せです。鐘君がいて、バーテンさんがいて、モトカさんがいて、ママさんがいて……その中に私もいます。
笑って怒って悲しんで、うれしくて恥ずかしくて楽しくて、毎日が同じなようでまったく違って。
……そのすべてが大切で。
だから、暴走してしまうこともあるけど私は幸せです」
その答えと表情に、男は小さくうなずくとロボ子に背を向け歩き出す。
ふとロボ子は男が向う先に、何かを抱いた恰好の長い黒髪の女性がいることを確認する。
その二人を認識したとき、ロボ子の視界がノイズで見えなくなり、同時に失っていた記憶が少しだけ蘇る。

「あ……」
視界が回復した時、すでに二人の姿はなく、ロボ子は一人立っていた。
ロボ子は二人がいなくなった路地を見続け、やがて、
「――、―――。ありがとうございます」
二人を表す単語を呟き、ロボ子も歩き出した。家族がいるはずの酒場へと。


もちろんリセットで直前のデータが消え、今、鐘たちが何をしているか覚えていなかった。
85イラストに騙された名無しさん:2007/08/26(日) 12:02:04 ID:+IgOs0LX
おお、良作乙! じわりと暖かい良い話…

…てか「もちろん」じゃねえwがんばれやロボ子ぉぉぉぉおお
86イラストに騙された名無しさん:2007/08/27(月) 22:13:43 ID:GB7PPiSJ
あらすじ
欲しくなってきたな
87イラストに騙された名無しさん:2007/08/28(火) 21:42:29 ID:9KXTiY7O
ちょい、あらすじってみるか
88はげしく適当なあらすじ?:2007/08/30(木) 22:09:50 ID:hVdmsIbu
時は流れ……
『組織』総帥府の襲撃を境に、闇は姿を消した。
様々な出会いと、いくつかの事件を越え幼子だった二人は、子供から大人へと変わろうとしていた。
いまや鐘と萌絵は中学生。
王道学園に入学した二人は、刺激は無いが心地よいぬるま湯に浸かったような時間をすごしていた。

だが、そんな平穏を引き裂くように飛来した矢。
ろぼ子を模したメイドの姿をした襲撃者。

そして現れる、もう1人の”鐘”。

『教団』よりつかわされた少年。
少年とともに、シスターも動き始める。
様々に張り巡らされた奸計に、鐘は戸惑う。

停滞したかのような時の歯車は、再び回り始めた。
89イラストに騙された名無しさん:2007/09/05(水) 21:35:14 ID:64hXDLtx
ごめんなさいごめんなさいごめんなs(以下無限ループ)
ども、言いだしっぺです。
夏休みに書こうとしたら書込み拒否→風邪→百日咳という素敵コンボで倒れてました。
ぶっちゃけ長耳が書けないんですよこいつから話が始まるのに!
そして84ありがとう!

えーと、今後論文のため来れないかもしれないんで、考えていた予定だけ。
シスターは最善の道に悩みながら、命令どおり教団トップと萌絵を引き合わせてしまいます。
萌絵は秋せつら人形の中の人と対面し、人を捨て神に変わることを迫られます。
空はメイドロボたちに狙われながら、数多いる元・鐘に説教をぶちかまします。
オブは父と対面し、この世界のループと少しずつ食い違った歯車に気づきます。
一流は父を襲う敵と空を襲う敵が同じ事を知り、己の技能をもって空を助けます。
そして、もう一人の「鐘」は、自分が萌絵とともに生きる最も最善の道と信じて、(メール欄)の鐘と対面します。
鐘は護るべき萌絵に護られる矛盾に悩みながら、もう一人の「鐘」と対面することになります。

うん、あきらかに長すぎ&キャパシティ足りなすぎですね<ごめn(以下無限ループ)
ア○スから思いつくからいけないんだよ。

長耳とろぼ子および大人組の出番はぜんぜん決まってません。
少なくとも旦那はなんとかしなきゃ……たぶんもうラブホ突入後のはずだし……

あとこれはあくまで言いだしっぺが考えていた予定なんで、
今の書き手さんでまったく変えてしまってもかまいません。むしろそれを望む。
以上長文失礼しました。
90イラストに騙された名無しさん:2007/09/06(木) 22:58:33 ID:oMN7e3OT
未来は変わる
物語の紡ぎ手によって

立場も変わる
時と共に

どうなるかは、今だ謎だ
91イラストに騙された名無しさん:2007/10/12(金) 20:31:48 ID:LYztHYZP
名無しの頭に話はあれど、卒論でクリスマスまで動けず。
いい加減長耳に状況解説させんと話が進まない。
ていうか旦那が走ったまま放置だしコロさんも動いてないし何より鐘の出番が全然ない現況です!






ねえ、萌絵。
大切なものを守りたいと、そのために戦えるほど強くなると、君は言ったけれど。
俺を……守りたいと、言ってくれたけれど。
ねえ、萌絵。

君にもう、騎士は必要ないのかな。

92イラストに騙された名無しさん:2007/10/12(金) 20:54:37 ID:LYztHYZP
慌てて否定する、萌絵の顔が、すぐに浮かぶ。
萌絵は優しいから、優しすぎるほど優しいから。
だから君の大切なものを、全て守る騎士になりたくて、俺はやれること全てを費やしてきた。

でも、鍛えれば鍛えるほど、気づいてしまう。
抑えても溢れている萌絵の魔力の前に、当たり前の人の力はゴミでしかないこと。

魔術に抵抗はできても、魔術そのものを扱う点では、俺はオブディシアはもちろん空にも劣る。
それでも、直接的制圧力があれば、君を守れると信じていた。

萌絵は優しいから。
優しいから、人を斬れない。殴れない。押さえ込まれてすら、躊躇するだろう。
だから、俺は守りたかったんだ。
俺の力で。
君を。
なのに。

『大切な人を、守りたいの』
うつむいた顔を染めていたのが、夕陽だけなら、よかったのに。



93イラストに騙された名無しさん:2007/10/12(金) 20:56:46 ID:LYztHYZP
君が力を得てしまったら。
戦うと、覚悟をきめてしまったら。
君は全てを守れるんだ。少女の特権を使うまでもなく、それだけの力が萌絵にはある。
俺を必要としなくても。



そうしたら。

僕は、どうなってしまうのだろう…………?
94イラストに騙された名無しさん:2007/10/15(月) 03:22:34 ID:XmKmnFSk
「鐘?」
いぶかしげな声に鐘は我にかえった。
「悪い、いっちー。ぼうっとしてた」
「呑気なヤツだな。このプロテクトを解かないと情報にありつけないっていうのに」
そう交わす間にも、少年たちは熟練のピアノ弾きのように指を活発に動かしている。
青白い明かりが二人の顔と、その後ろの寝台を照らしていた。
安っぽい造りのそれの上は、不自然なほどきれいに片付けられている。
いや、鐘と一流が訪れた時にはもう、長耳が住居にしている倉庫全体が、まるで引っ越し後のように生活感を一掃させられていたのだ。
これまでの流れに関わる、何かのトラブルに巻き込まれたのか。
あるいは萌え萌えな女の子を作るあまり、著作権などに触れたのか。
機材だけはまるごと残っていたことから、後者の可能性が高そうなことは、鐘としては複雑だったが安心もしていた。
突然機材の上から飛び下りた、小型のメイドロボが、長耳からのメッセージを伝えるまでは。
95イラストに騙された名無しさん:2007/10/15(月) 21:17:46 ID:nXhPQLsK
パパの一声で表情自由自在な赤ちゃん
http://vision.ameba.jp/watch.do?movie=609547
96イラストに騙された名無しさん:2007/10/30(火) 03:12:45 ID:KagkEjg9
くそう、時間が無い… orz
誰か俺に時間をクレー!
97イラストに騙された名無しさん:2007/11/10(土) 21:01:26 ID:bmyF8vte
久し振りに来たけど少しずつ進んでるね
みんなガンバレー

その後の展開つらつらと考えてたら>>89とは全く違う展開になってしまった
書けるかわからないけど、もし書いたら投下していい?
98イラストに騙された名無しさん:2007/11/11(日) 13:32:32 ID:RwlApYNQ
むしろそれが見たい。
卒論〆切繰り上がってんじゃねえや馬鹿ーっ。

991/6:2007/11/16(金) 21:55:00 ID:bkw47OPg
誰もいない路地。そこに一人、音もなく影が流れるように移動する。
ふと影は止まる。
警戒を隠しもせず、しかし影は諦めのため息をひとつ吐くと立ち止まる原因を見る。
「このエロ耳。なんであなたがここにいるわけ?」
その影、シスターは路地にたたずむ長耳に声をかける。
シスターのいつもの呼びかけに、長耳はいつものようなおちゃらけけた雰囲気などなく。
「約束を果たしにきた」
その様子にシスターは思わず吹き出しそうになる。
「エロ耳にシリアスは似合わないわよ。それに約束? なにか約束したかしら?」
長耳はその言葉にただ首を横にふる。
「僕とシスターが始めてあったときにね」
「初めて会った時? ああ、あの時何か約束したかしら?」
あくまでとぼけるシスターに長耳は一つ頷いた。
「出会ってすぐの約束。シスターは言葉では言わなかったけど。
 確かに『私を止めて』、そう言っていたよ」
「……まったく、妄想が激しいわよ」
「シスターが二人に危害を加えるのを止める。それが約束だった」
あくまで認めないシスターに、長耳は続ける。
シスターは観念したように溜息を吐くと長耳をまっすぐ見つめる。
「……ほんと。いつも大事な時には鋭いんだから。
でも、今回はそれにはあてはまらないわ」
シスターの目を見、ゆっくりと頭を振り、長耳はさらに質問を続ける。
「でもオブシディアの暴走もわかってやったことだよね」
「ガンスリンガーやロボ子の注意をそっちに向けさせたかったからね」
「鐘が本当に殺されたらどうするつもりだった?」
「それはないわよ。彼女は鐘を殺せない」
「ないかな?」
「ないわね。それくらいオブシディアは鐘に恋している」
「そっか」
確かに。心の中で呟きながら長耳は苦笑を浮かべる。
シスターは話は終わりとばかりに歩き出そうとする。
「それで、いい加減どいてくれないかしら」
1002/6:2007/11/16(金) 21:56:58 ID:bkw47OPg
まだ邪魔をするように立っている長耳に告げ、歩き出す。
長耳はシスターを遮るように前に立ち話しかける。
「でも、萌絵を誘拐したよね。どうしてかな?」
「悪いけど秘密よ。情報屋らしく自分で調べなさい」
「難しいこと言うなあ。スフィアから完全に独立、かつ上層部のごく一部しか知らない中身を知るのは無茶だよ。
推測だけならまとめてあるけどね。今頃鐘君聞いているんじゃないかな?
でも情報を知ってる人が目の前にいることだしこれが手っとり早いよね」
シスターは手を額に移し、溜息を吐く。
「どうやって? 力ずくは無理なのはわかってるわよね」
「うん。だからたとえばね。シスターの貴重な変身シーンをノーカットでスフィアに流すとか?」
「…………」
シスターの怒りボルテージが上がっているのに気付かないかのように長耳は話し続ける。
「あとはシスターの個人情報(ねつ造)を垂れ流しとか?
んー。シスターの恥ずかしいシーン詰め合わせもいいかな?」
「…………」
「まぁ。うそでも人によっては真実に見えるからねー」
「……コロス」
早々に堪忍袋の緒が切れたシスターは一気に詰め寄ると長耳を締め上げる。
「だ、だから! 今のはちょっとしたお茶目なジョーダンだって!
シスター! まさか僕が本気でやるなんて思ってないよね!」
「あんたならやりかねない!」
「ひどっ! あー、僕のガラスのハートが傷ついたー!
見た目どおり紳士な僕がそんなことするわけないじゃないか!」
「ツッコミ省略。即制裁」
「うわ、ちょ、やめ! そ、それに僕言ってないことあるのに成仏したくないー!」
長耳の顔が青くなりながらも長耳は言葉を続ける。
「あら、それじゃあ最後に一言だけどうぞ。きっと地獄が待っているわよ」
絶対零度な声音でシスターは長耳に告げる。

「うん。本当に僕ひとりで来てると思う?」
1013/6:2007/11/16(金) 21:58:17 ID:bkw47OPg
ふとあらわれた新しい気配に、シスターは即座に長耳を放り出し後ろを振り返る。
銃の照準をその気配に合わせようとし、途中で止めざるを得なかった。
そこには一人の男が立っていた。手に持った銃を一部の隙もなくこちらに標準を合わせている。
「……ま、そういうことだ。悪いがシスター相手に手加減はできない」
闇のさらに闇、シスターをしてその存在に気づいていなかった。
身構えることもできず、シスターはすでに自分が『詰んで』いることを悟る。
「ガンスリンガーが来てるとはね。鐘の方はどうしたのよ」
「あっちはロボ子ひとりで十分だと判断した。それに」
「それに?」
「本当は俺達が何もしなくても、鐘自身が何とかすると思うからな」
そこにあるのは息子への揺るがない信頼だった。

シスターはそんな様子をみて、今日初めての微笑みを見せる。
「親馬鹿ね」
「なんとでも言え」
「でも私もそう思うわ。大抵のことわね」
シスターは同意を示すと言葉を続ける。
「でも、今回だけはそうじゃない」
どういうことだ? と元殺は続けようとするが、そこに長耳の声が遮った。
「黒服が、少年と萌絵を見つけた。鐘たちも間もなく連絡がいくはずだよ」
だから、と長耳は続けようとして、シスターの顔色の変化に口を閉じる。
その顔色は大きな焦りと少しの諦め。
「シスター?」
長耳の呼びかけにハッと気づくと、少し呼吸を落ち着かせる。
1024/6:2007/11/16(金) 21:59:49 ID:bkw47OPg

「長耳。私が最近知った情報を話すわ。ただし萌絵たちの居場所に向かいながらね」
「さっき秘密といってたのに、どういう心境の変化かな?」
「長耳、ガンスリンガー。 鐘と彼と萌絵を同時に会わせてはならないわ」
シスターは視線を向け、二人に走ることを促し自らも駆け出していく。


「深き森の深き闇 深淵にて生まれ 深淵より転輪す
旋風を駆りて竜と語り 人と在りては微笑みて 手には力を抱いて逡巡
魔眼の者は救い手と共に 月下に二人は大地に戻る」

「……確かそれは昔から伝わる歌の一節だったよね」
長耳の言葉にシスターは頷き言葉を続ける。
「ええ、そしてこの歌はこれから起こるあることを表しているわ」
「予知の歌。でも、あれは解釈が多すぎて結局ホラレベルの意味にしかならないはず」
長耳の否定にシスターは頭を振り、言葉を続ける。
「普通はね。でも、『彼』を知っている人間にとってこの後の歌の意味が明確になる」



今宵にて運命の糸は巡り 全ては全ての帰途につく
風が吹き 夜に吹き 竜が啼き 道を築き 神が動く 北の方から風が生まれ 北の方から道が生まれ
騎士は騎士として戦い 竜は竜として空駆ける 全ては結末へと至る道 壁を越えられない物語
1035/6:2007/11/16(金) 22:01:34 ID:bkw47OPg

「さて、この物語はどう動くのか」
「さあ? まだ、私たちは観察するだけだと決めたのよ。忘れてないわよね」
「……ああ、分かってる」


「ここで待ってればいいのね」
「ええ、すべての道はここに通じるようになったわ」
「この公園が最終地点。で、オブシディア、なにか思い出した?」
「……とても大切なことのはずなのに、肝心なことを見落としてる……と思うけど」
「わからない以上しょうがない。やっぱりお話聞かせてもらうしかないかな?」
「そうね。なぜ萌絵を誘拐したか。はっきりさせないと」


「さて、予定はどこまで変わりますかな?」
「本当に変わりますか?」
「我々『教団』は3年早く動きました」
「我々の動きはこれまで。『教団』として後は見守るのみ」
「これが失敗だとしてもまた一からやり直すだけ。それだけのことですからな」
1046/6:2007/11/16(金) 22:02:32 ID:bkw47OPg
懐かしき人の至る道を 寄り添いて歩く 手は届き声は届くとも 糸がそれを阻む
集う者達の戦は始まり 二人は壁を挟み 同じ想いを胸に
宴は始まり村は踊る 竜は眠り騎士は去る 花嫁は無冠にて泣き 詞を噤みて彼は来ず 
かくして彼女は独り 糸を紡ぎて涙を流す


「ここまでが『教団』に伝わる歌。そして……」

もう一度シスターを息を吐く。長く短い沈黙の後、シスターは二人に告げる。
「……あの三人が出会えば、世界が終るわ。
この歌は、世界の始まる前に起きた事実、そして再び起きる悲劇その物なのよ」

――始まりに起きた悲劇の運命が、いま再び動き始める。
105イラストに騙された名無しさん:2007/11/19(月) 10:27:22 ID:RZsApA6H
GJ
なつかしい顔ぶれに泣きそうになった。
続きも読みたい。
書けなくてごめん。
106イラストに騙された名無しさん:2007/11/20(火) 13:09:10 ID:QVTedpBj
GJ!
いっきにクライマックス風になったねえ。
長耳&鐘父書くの苦手だから、彼らの登場がとても嬉しい。
あと、昔のネタ使われてるとこがすごく嬉しかった。
子どもたちが出会うとき、果たして何が起こるのか。



……旦那とメイドさんたちのことも、忘れないようにしないとな。

1071/5:2007/11/25(日) 18:55:10 ID:0n/MuN7v
「ちっ」
少年に手をひかれながら萌絵も走る。
組織のバタフライが飛びかい、地上に出ようとしても出られない。
「組織にも優秀な人間が残ってるな……このままでは逃げ切れない」
こっちから撃ち落とすなどのアクションを起こせば完全に特定される。
そうするとあっという間に包囲されるだろう。
コックローチなら問題ないがそれ以上の戦力が投入されていることは間違いない。
萌絵がいる今できるなら戦いたくない。
それに今、あいつに会うと、また、あれが起こるかもしれない。それは避けたい。
そう思いながら少年は走り続け、ひとつの出口に出る。
「ここなら見つかっても近くに教団の支部がある。なんとかなるか?」
自問するがするが、吟味する時間すら惜しかった。
「姫。まだ走れますか? あと少しの辛抱です」
「……」
萌絵は無言のまま肩で息をしている。
少年はその様子を肯定ととり一気に地下道から外へ出る。
1082/5:2007/11/25(日) 18:56:24 ID:0n/MuN7v
「遅かったわね」
目の前に二人の少女がいた。一人は静かに、一人は腕を組みながら待っていた。
少年は行動が完全に読まれていたことを認め、懐かしい少女へと苦笑を向ける。
「こちらの行動を制限するための罠だったのか。組織にも優秀な人間がいるね。
それにオブシディアが自分でくるなんて正直思わなかったよ。……いや、思いたくなかった。かな」
「……あなたは誰ですか?」
オブシディアは聞く。もっとも聞きたかったことを。
オブシディアが鐘と間違えた少年について。
「わからないか? いや、本当は分かっているはずだ。オブシディア。
君は覚えているはずだよ。絶対に忘れるはずがないんだ」
少年はそう言い。一息吸い、答える。
「僕は琉。昔騎士だった男だよ。それで十分だよね」
「……!」
オブシディアは顔に無表情に、琉と告げた少年をみる。
「嘘ですわね。仮にあなたがいること自体には驚かないわ。
でも、なぜ、あの時の記憶を持っているの? 鐘は憶えていないというのに」
「うん、簡単なことだよ。今の僕は教団に造られた"琉"。
そして、教団から"琉"すべての記憶と力を植え付けられた存在さ。
前と同じようにね」
「……また、繰り返すつもり?」
「そうならないために3年早く動いたんだよ。だからここには萌絵がいて鐘はいない。
今度こそ僕が萌絵を守るんだよ」
「……」
オブシディアは沈黙し、
「オブシディア。どういうこと? さっきからなに話してるかわからない」
空は疑問を口にする。
「空、できるだけ早く、できれば鐘たちがここに来る前にケリつけないといけませんわ」
「理由を言ってよ」
「彼と鐘そして萌絵が前世と同じことを繰り返したら……この世界は鐘達に殺される」
1093/5:2007/11/25(日) 18:58:11 ID:0n/MuN7v
空は少しだけ沈黙し考えていたが、諦めるとオブシディアに聞く。
「意味がわからないのだけど?」
「この世界が始まる前にあったこと。萌絵の前世が鐘の前世を庇おうとし、そこの琉に殺されましたわ。
その時に鐘と琉の力が共鳴し……世界が二人によって殺されましたのよ」
オブシディアの語りを空は黙って聞いていたが、ふとオブシディアに対し聞く。
「つまりその前世とやらに起こったことが繰り返されると思っているのね。オブシディアは?」
空はあえてオブシディアに確認する。
「ええ、あまりにも今の状況はそのときと酷似している。あの時も……そうでしたわ」
「大丈夫だよ、オブシディア。萌絵も素直について来ているしこのままいけば問題なんて起きないさ」
リュウからの否定。そこにはもう一つ驚く情報も含まれていた。
「萌絵? まさか自分の意思でついていこうとしているの?」
「ごめん……でも私、視ちゃったから、彼らを」
肯定する萌絵の言葉にオブシディアは黙り、空は腕を組みなおす。
「そう、萌絵が自分の意思で教団に行くのなら止める必要性は感じないわね」
「空?」
オブシディアの疑問の声を無視し、空は萌絵に言葉をかける。
「でも、それは鐘に二度と会えない選択よ」
「え?」
萌絵の驚きに、空は噛み砕くように説明する。
「つまり、一度教団に入ったら萌絵は二度と外に出られない」
「そんなことは僕がさせない。僕が護衛としているのだから。
萌絵がしたいことはできるようにする。そう教団と取引した。だから僕はここにいるんだ。
……本当は嫌だけど、萌絵が望めば鐘にも会わせるよ」
「教団が萌絵をそんな風に扱うなんて思っているなら、それは勘違いもいいところだわ」
反対する琉に対し、空は一蹴する。
「安全は確かに確保されるでしょうけど、死ぬまで実験塔と自分の部屋の往復だけ。
結局は実験動物扱いで終わりよ」
「君になぜそんなことがいえる」
「そりゃ私が王道財閥の一人娘だからよ。敵のことは敵以上に知ってないと勝てないものよ。
経済でも、戦争でもね」
1104/5:2007/11/25(日) 19:02:04 ID:0n/MuN7v
――時間は少しだけ遡る。鐘と名門は長耳の伝言を聞くことになる。

「ピ――、現在、多分1件の伝言を預かっています。再生します」
初音ミクっぽい声が聞こえ、次に聞こえてきたのは間違いなく長耳の声だった。

「今回のこと、とりあえず時間ないから要点だけ言うからね」
「誘拐犯は教団の関係者なのは間違いない」
「個人の目的は不明だが、教団は萌絵を使ってある研究を完成させようとしている」
「その中身は、神殺し。教団の持つ強化人間技術の究極系。その人間を作りだそうとしている」
「なぜ今動き出したかは不明。ただ、萌絵に危険が迫っているのは間違いないと思うよ」

「そんな……なんで萌絵が必要なんだ?」
鐘の呟きに答えるものはなく、ただ、長耳の推測のみが再生される。
「萌絵が必要な理由は不明。ただシスターが何か知ってそうなんで、これから聞きにいってくるよ」
まるで明日の天気について聞くような軽い口調で長耳が言い、そこで再生が切れる。
「鐘、どうする? どうやら教団全体が相手みたいだけど?」
名門の簡潔な質問に鐘は
「もちろん萌絵を助ける。それだけだよ」
同じように簡潔に答える。

Piririririri――

「……空? ん、分かった。そこに合流すればいいんだな?
鐘、萌絵の場所が分かった。いくよな?」
「ああ、もちろん」
二人は頷くと矢のように駆け出していく。

しばらくして、
「ピ――、あ、もう1件ありました。誰もいませんがとりあえず再生します」
再び再生が始まる。誰もいない部屋でその音は流れる。

「ねぇ鐘君。もし萌絵がそれでも教団に行くって言ったら、君はどうするかい?」
1115/5:2007/11/25(日) 19:03:40 ID:0n/MuN7v
――再び場面は萌絵たちに戻る。

「さて、もうすぐお兄ちゃん達は来るころね」
「なるほど……時間稼ぎか」
「違うよ。萌絵に今から確認するだけ。答えによっては私はここを退く」
空は顔を萌絵に向きなおし、萌絵の目をしっかり見、問いかける。
オブシディアも同様に萌絵を見る。


「萌絵。あなたは彼を信じて彼といっしょに行くの?」


対して萌絵は


「私は、私は――――」
112イラストに騙された名無しさん:2007/11/27(火) 02:19:35 ID://eaLFYk
記憶のない記録の中で、彼女は大勢を殺してきた。
ただのわがままだとわかっていたのに、繰り返し殺してしまった。
それは何千回も、何万回も。

今の瞳に映るのは、死んでいった沢山の『二人』。
どちらも大切で、
どちらも守りたくて、
だから両方に手を伸ばして、
いつも、届かなかった。

……罪深い。
これ以上は、もう失う訳にはいかない。
大切なものがある。
大切な人がいる。
だから。

「私は――」
行くよ。
その言葉を、突然の轟風が遮る。
北風だった。

113イラストに騙された名無しさん:2007/11/27(火) 02:38:19 ID://eaLFYk
「やらああああああああああんっ!」
突風に乗り、叫び声とともに猛絶な勢いで現れたのは、半分忘れかけられていた旦那だった。
ずざざざざっとリュウの前に滑り込む。
「やらん、やらんぞ!ちょっと難しく言うと不許可!」
「……ちなみに簡単に言うと?」
「やなこった」
空のツッコミに律儀に返しながら、しかし旦那は緊張を解かない。
足をぱん、と踏み下ろして、ろうろうと口上を述べる。
「ローティーンの身でありながら、血の繋がらぬ親とはいえ、父への挨拶顔見せすらなく、蝶よ花よと育てた娘、悪逆非道に拐し、その日のうちのラブホ入り、あの小童でさえ許せぬ所業を、まして盗人ごときに堪忍、あ、で〜き〜る〜かあ〜っ!」
それっぽい動きをつけながら、旦那は一息に言い切った。
誰も邪魔できなかった。

飛び出したオレンジの濡れタオルが、素早く目標に巻き付くのも。

「捕りましたぞ!」
紙を破るような音とともに物陰から飛び出したのは、旦那と途中合流した執事だった。
「さすが『野兎捕獲の符』、威力絶大ですな」
「くっ、東邦の気配消しか」
知識はあったが『現在での』経験はなかった。
そのささやかな隙を突かれたのである。
リュウは己の油断に歯がみした。
「しかし捕ったは捕ったがよ……」
同じく途中合流した庭師が、苦い顔をして執事の隣に並ぶ。
「どうしてわたくし達まで巻きとられていますのっ?!」
青筋たてたオブシディアが叫んだ。
その下でむーむー言っているのは、顔の半ばまでタオルに巻き付かれた空だ。
頭ひとつ周りより低いせいで、余計な高さまで巻き付かれたらしい。ちびっ子の宿命だ。
114イラストに騙された名無しさん:2007/11/27(火) 03:35:27 ID://eaLFYk
「これは申し訳ございません。どなたが萌絵様を死地へそそのかすかわかりませんでしたので、おそれながら皆様捕縛させていただきました」
執事が一礼し、萌絵の体が緊張を孕む。
「萌絵」
あるいはそれは、旦那のいつになく真剣な顔のせいだったかもしれない。
「私は萌絵の想いを尊重したいし、理不尽に押さえ付けるつもりもない。
だが、親として間違いだと思えば、萌絵に嫌われても止めなくてはならないとも思う。
……私は、萌絵の親であることを誇りに思うから」
優しく微笑んで、旦那は続けた。
「『教団』に行くのはやめなさい。あれは、性能確認のためにあらゆる『神』を殺す場所だ。
神殺しなんてくだらないもののために、萌絵をみすみす殺させに行かせることなど私には堪えられない。
ましてこいつは……いずれ萌絵を殺すことになるのだから」
誰もが息を呑んだ。
旦那が逆エビ反り固めで長台詞を吐いたから、ではなしに。

115イラストに騙された名無しさん:2007/11/27(火) 19:08:51 ID:EeZ2w8h6
ここで全部持っていった旦那に完敗! GJ!
オブシディアも空もご愁傷様

捕えられてしまったリュウに挽回のチャンスはあるのか
116イラストに騙された名無しさん:2007/11/27(火) 22:53:35 ID:hb9FrwBg


昔の話か
萌絵とオブオブと鐘は、昔から何かあったが
其処に流(りゅう)が加わるかっ

しかし、はっぴーに行きたいぜw
117急転:2007/11/29(木) 12:09:15 ID:394jt3yH
『我、訴え、喚起せん』
『我、訴え、喚起せん』

突如降り落ちる無数の声。
呪の詠唱は多重に響きわたり、辺りの空気を塗り変える。

「『黄金郷』だと?!」
誰かの叫び。

即座に執事がエッケルザクスを解いた。魔力持ち3人が高速詠唱、結界が彼等を取り囲む。
次の瞬間。

宵闇に沈む公園に、あまたの『神』が降臨した。

118一方その頃:2007/11/29(木) 13:07:31 ID:394jt3yH
「さかなさかなさかな〜♪ってやつかい?」
「みんなで食べる気にはならないけどな」
一流の軽口に、鐘も笑って返す。
公園に入った途端、二人は『名状しがたきものども』に出迎えられていた。待っていたところは忠実らしい。
「鐘、ここは任せて先に行け」
「え、でもいっちー……」
友人の正体を知らない鐘は躊躇する。彼からみれば、一流は運動神経が優れているだけの一般人だ。
しかし同時に、任せても平気だと鐘の直感は告げていた。一流は、この程度では死なない、と。
「君には待ってる姫がいるだろ。早く行ってやれよ」
「わかった。無理するなよ」
「何、その時は先輩仕込みの逃げ足を見せてやるさ」
そりゃ安心だね、と言って鐘は駆け出した。他より大きく開いた隙間、会話の間に見い出したそこを襲い、敵の肉壁を突破する。
せめて一流を押さえようとする『名状しがたきものども』をぎりぎりで避けながら、一流は鹿のように逃げ回る。
そして、鐘が充分距離を開くのを確認すると。
「よし」
したっ、と飛んで、
したっ、と着地。
その時には全てが変わっている。
太刀を抜いた剣豪のごとく、戦いに最適化された肉体へ。
「さあ……理解しあおうではないか!」
黒づくめの忍者装束で、少年は獰猛に笑った。
1191/5:2007/12/01(土) 20:14:01 ID:YKzZOAG8
「ねえ、オブシディア」
神が迫る。3人が同時発動した結界は神の一柱や二柱なんなく妨げただろう。
ただ数が多い。黄金郷が仕掛けた罠はここにいる戦力を確実に殺すレベルの力を持っていた。
神との距離が縮まる。
しかしこんな時であるのに空は気軽に聞く。
「何、こっちは今忙しいのですわよ」
オブシディアは忙しいといいながらも冷静に対処している。
空はその様子を確認し、聞く
「このことも前に会ったこと?」
「ありましたわ」
「その結果どうなった?」
「全部追い払いましたわ。ただし黄金郷の介入の結果、わたくしを含む魔術師はほぼ行動不能。
……今回もそうなる可能性が高いですわね」
「そりゃそうよねえ。私だとあれ一柱すら倒せそうにないものね」
「腐っても神ですわよ。いくら黄金郷に使役されるような弱い神でもね」
「すごいわね。で、あれが歌で言うところの壁になるのかな」
「いえ、あれは壁ではありませんわ」
「そっか、じゃ、"壁"って何?」
「……わかりませんわ」
「?」
「その時々によって"壁"は変わりますのよ。だからそれが起こることが分かっていても
どのように起こるのかがわからない。ゆえに止めることができないのですわ。
唯一止められるのならそれは3人が出会わないことでしたが……今回はどうなりますか」
「じゃ、もう一つ。萌絵のお父さんや執事さんがここに来ることは必然だった?」
「……ええ、立場や能力は違いますけれど、ここにいたことは確かですわ」
「ってことは配役も決まっているってことね」
「これも運命というものですわね……結末は変わらないのですわ」
1202/5:2007/12/01(土) 20:16:50 ID:YKzZOAG8
オブシディアの言葉にしばし黙り、空は口を開く
「それじゃ最後の質問」
「今度はなんですの?」
「私は前もいた?」
数瞬の沈黙の後オブシディアは告げる。
「そういえば、いませんでしたわ」
「じゃあ、私はこの話に本来ない要素なのよね」
「……ええ。そうですわね。おかしいですわね。わたくし、普通に受け入れていましたわ」
オブシディアの疑問に空は答える。
「ま、私はもともとこの世界の人間じゃないからね。いなくて当然よね」
「……? どういうことですの」
「ほら、前にこっちに遊びに来た子がいるでしょ。バナナちゃんって子。
私はどっちかって言うとそっちに近いのよ。私の世界はとっくに無くなっちゃったけどね」
オブシディアは空の言葉に苦笑いを浮かべる。
「空、親友とか言いながら秘密が多すぎますわよ」
「それはお互い様でしょ。あ、そうだ、これ持っててもらうとうれしいかな。これ私の命綱だから」
そういって空はオブシディアに"運命"を放り投げる。
「空? 武器を手放してどうするつもり」
「今有効なのは、武器じゃなくて情報だからね。結界もうちょっと頑張って」
「まったく、今度は何をするつもりかしら?」
「すぐにわかるわよ」
空は携帯を取り出しながらオブシディアに振り向く。
「あの時、私にだけ聞かせてくれた最後の歌詞。あれ本当はなかったのね。
あれが起こったことなら、世界が殺されることもなかったものね」
「ええ……あれはわたくしが希望を歌ったものですわ。おかしかったかしら?」
オブシディアは素直に認め、空に告げる。空は笑みになりオブシディアへと話す。
「絶対叶えようね。私、この世界が好きだから」
「……空?」
いつもの空とどこか違う。そう思い思わず問いかけるが、すでに空はこちらを見ていない。
1213/5:2007/12/01(土) 20:20:11 ID:YKzZOAG8
空は携帯を操作し、目的の番号へとつなげる。出てきた相手は開口一番、
『こんなこともあろうかとー!』
『地下3000メートルだろうが結界の中だろうがどんな状況でも通話通信可能な携帯。名づけて――』
「どうでもいいから彼女に代わって」
『ひ、ひどい! 前口上くらいいわせてくれたっていいじゃ――』
『――はい。かわりました。最近空が遊びに来てくれなくて少しいじけ気味の――』
「ごめんねー。でも今の状況わかって言ってる? 結構ピンチ状態なのよ」
『分かってますよ。携帯通して見てますから』
「分かってるなら端的に頼むわね。"インデックス"としての力を貸してほしいの」
『分かりました。そこにいる"神"の情報。全部一気に送りますね』
「ん、これで全部……オーケー。攻略法ありがとうね」
『お礼は大晦日までに遊びに来ることでいいですね。約束ですよ』
「……分かったわ」
『その一瞬の沈黙はなんですかー?』
「大丈夫よ。なんとか予定あけるから。じゃ、切るわね」

Pi!

という音と共に携帯を切り、空はみんなに声をかける。
「それじゃ、ここにいる"神"には丁重に帰ってもらいましょうか」
一つの名前を聞き、旦那は空に聞き返す。
「"インデックス"だと……黄金郷から消えた彼女が王道財閥に?」
「王道財閥の切り札の一つってところね。もちろんその意味だけでいっしょにいないわよ?」
「それは分かっている。そうでなければ萌絵を王道学園になど通わせない」
「それであれにはどう対処するのですか?」
オブシディアの問いに空は口の端だけで笑いながら言う。
「敵味方の戦力分析をもとに行動指針を立てたわ。
これから私の言う通りに動いて。琉も動いてくれるかな?」
「……萌絵を守るためだ。従うよ」
「それで充分よ。今だけは休戦にしといてね」

空は結界の中心に立ち、指示を飛ばす。
1224/5:2007/12/01(土) 20:22:22 ID:YKzZOAG8
「オブシディア。右、30°から50°にかけて念動力」
「執事さん。左25°に向けて一撃を見舞って」
「萌絵。目の前の空間に向けて幻視。範囲3mで」
「萌絵のお父さんは後ろ幅3Mの結界をゆるめて」

その指示に4人は躊躇なく行動する。
一つの指示、ひとつの行動で神の動きはゆるまり、集まり、逸れていく。
だが――
「"神"の一柱。攻勢結界を突破しましたわ」
「萌絵。3秒後、前方5mに召喚魔法」
神により少しずつ追い詰められ、迫って来ている。
「空、このままじゃまずいですわよ」
「もう少し……琉、準備してて」
「何を?」
「考えられる限りの最強の攻撃方法を」
「……わかった」

神は迫る。15m……10m……5m……

空は動く。まるで詰将棋のように琉に指示する。

「琉。目の前の空間へむけて10秒後、"殺して"」
「!……知っていたのか?」
「教団がやってきたことから推測しただけ……3、2、1。今」
瞬間、琉によって一発の銃弾が放たれる。
なんてことはないはずの、"神"にとってはかゆくもないはずの銃弾。
しかし、いつのまにかその空間に押し込まれた"神"が、その一発の銃弾により"殺される"。

「……これはあのときの小僧と似た力……か?」
敵戦力の急激な減少。しかしそれでも神の軍団は止まらない。ひるまない。
神が萌絵に迫る。距離はゼロ。どうやっても止まらない距離。
間に合わないはずの距離と時間、神は触手を振り上げ……
1235/5:2007/12/01(土) 20:24:33 ID:YKzZOAG8
銃声とともに"神"に銃弾が叩き込まれ、神は一瞬よろめき、
「ハッ!」
琉の一撃によって殺された。 

一瞬後、銃声のした方角から一人の少年が飛び込み萌絵の前に立つ。
その少年はまず萌絵に声を掛ける。

「萌絵、遅くなってごめん」
「鐘……」


「そこっ! 見つめ合ってないで戦いに戻って! まだまだわんさかいるんだから!」

二人は戦場にて再会する。二人の運命はまだ分かれ道にすら立っていない。
124イラストに騙された名無しさん:2007/12/02(日) 00:36:03 ID:jI5OHoeh
GJそして乙

鐘が到着してしまったねえ。
空はどうする気だろうねえ。

あと大人組、シスターは変身してそうだね。
誰か書かないか長耳。

125イラストに騙された名無しさん:2007/12/02(日) 03:32:05 ID:jI5OHoeh
同じ顔から自分への殺気を感じるというのは、どうにも気分のいいものではない。
まして何も知らぬまま背中を合わせ、強大な敵と戦っている最中では。

カートリッジを叩きいれ、それが最後であることに鐘は舌うちした。元々予備の拳銃だ、弾はそう多くない。
「お兄ちゃん。3時の方角に連射」
空の指示に体が勝手に動く。そう感じるほどスムーズに指は動き――引っ掛かった。
(ジャム!)
一瞬の隙、追い込まれていた『神』がそこにねじこみ攻めんとする。
「退け!」
同時に琉が鐘を引き倒し、『神』に向けて連射。それでも詰めに2手加算された。
「鐘、大丈夫?」
「ああ、平気だよ」
心配する萌絵に、鐘は笑って答える。だが、うまく笑えたか自信はなかった。

引き倒された瞬間、確かに聞こえた。
自分によく似た、
冷笑する自分によく似た声で、
彼はこう言ったのだ。

また『できそこない』か、と。
126毎回ここ忘れてしまう。:2007/12/02(日) 03:57:35 ID:jI5OHoeh
「使いな」
僧服の少年は鐘に銃を放ると、胸の十字架からナイフを引き抜き、投擲で"殺した"。
放られた銃を受けとり、鐘の指はまた指示通りに弾を打ち込んでいく。
――鐘の心の奥深く、沈めていた疑問が浮き上がる。
事態は終盤に入っていた。
――『騎士』はもう、必要ないのではないかと。
空の指示が、的確に状況を詰めていく。
――自分が『騎士』である必要は、ないのではないか、と。
オブシディアの魔術が、確実に"神"の戦意を削っていく。
――追い掛けても追い掛けても、『姫たち』は遠くて。
萌絵の魔力が、近づく敵を押し退け続ける。
――だから憧れた。守りたかった。守れる自分になりたかった。本当に本当に憧れていたんだ……貴方に。
そして、見慣れた顔の知らない少年が、最後の2柱に止めを放つべくナイフを構える。その後ろに萌絵をかばい、萌絵もまた口を開いて

「駄目えええええっ!」

叫んだ。
「あの子たちは友達なの、殺さないで!」
「それ以前に人質取られちゃ、下手に動けないけどね……」
そう、全てを退けてなお残っていたのは、メイド姉妹を拘束した、しょごす君とビヤーキーだったのだ。
久しぶりの登場だというのに、目が完全にイッている。
1271/4:2007/12/09(日) 18:56:51 ID:WHijzPae
イッチャッた眼をした二匹と対峙しうろたえる萌絵。
慎重に間合いを測る琉。
そして、
「あれ…? みんなどうしたの?」
萌絵は何故か溜息を吐いている空、オブシディア、旦那を見る。
琉や鐘も疑問符を浮かべている。

それを見てオブシディアは説明する。
「あのしょごすとビヤーキーは萌絵、あなたに召喚されているのですわよ」
「?」
「……まあ、あの下手な演技でどうこうしようって言うのが間違いですが」
「え、と……つまり?」
「つまり、あの2匹は別に操られているわけではありませんわ」

「……しょーごーすークーン」
低く唸り始めた萌絵に対し、露骨にうろたえ出す、しょごすとビヤーキー。
どう見ても演技でした。本当にありがとうございます。
その様子に捕まっていた演技をしていたメイド姉妹は、あっさりしゅごすから
抜け出し萌絵の前にくる。

「萌絵お嬢様。このことについてはオラから話すだべ。
これから話すこと、しっかり聞いて欲しいだ」
メイド姉の言葉に、黙る萌絵。
1282/4:2007/12/09(日) 18:58:35 ID:WHijzPae
「しょごす君とビヤーキーがこんなことをした理由、
簡単に言ってしまえば萌絵お嬢様から離れたくなかったんだ。
萌絵お嬢様が"教団"に行くことは、離れ離れになってしまうことなんだ。
だからこんな芝居をうったんだべ」

「で、でも……私は」
「それにオラもまだ、萌絵お嬢様とは離れたくないだべ」
「……!」
息をのむ萌絵にメイド妹が続ける。
「そうですよ。私たちは萌絵お嬢様をそれこそ赤ん坊の時から見てきたのですよ。
こんなことを言っては失礼かもしれませんが。萌絵お嬢様を妹として見ていました」
「オラは、本当のことを言うと萌絵お嬢様を自分の娘をして見てただべ……」
「……」
「だから、萌絵お嬢様と離れ離れにはまだなりたくないです」
「萌絵お嬢様が不幸になるような選択はさせたくないだべ」

「……」
すっかり黙り込んでしまった萌絵に旦那から声がかけられる。
「萌絵。私はまだ萌絵の父親でいたい。だから、教団に行くことはやめてくれ。
萌絵が殺されに行くなんて耐えられん。これは一人の父親としての頼みだ」
三人の父親と母親の言葉に萌絵は黙りこむ。
目には涙を浮かべ、自分がどうすればいいかもわからない。
1293/4:2007/12/09(日) 18:59:32 ID:WHijzPae
見てしまったものがある。

――死んでいった沢山の『二人』。
――まるで操り人形のように繰り返し繰り返し、それは起こり続ける
――眠ってしまった"私"の悪夢が現実に侵食し泡のように禍をばらまき弾ける
――たくさんたくさんたくさんたくさん視えない糸で操られ
――見えない結果に向けて動き続ける
――私は、眠ってしまった"私"は悪夢という名の糸を紡ぎ、うなされ涙を流す

それは遥か昔に起こり、いまも続いている事実。


知ってしまった気持ちがある。

――お父さんの私を大切に思う気持ち
――お姉ちゃんたちの私を大切に思う気持ち
――琉の後悔と絶望と、それでもあきらめない希望の心
――オブシディアの友達として私に向けられた気持ち
――鐘の……

それは決して操ることのできない気持ち。


分かってしまった自分の心。

――お父さんを大好きな私の気持ち
――お姉ちゃんたちを大好きな私の気持ち
――琉を今度こそ救いたいと思う私の気持ち
――オブシディアと仲良くしたいと思う私の気持ち
――鐘への……

それは決して騙すことのできない気持ち。
1304/4:2007/12/09(日) 19:01:09 ID:WHijzPae
さまざまな矛盾の中、萌絵は動くことができなくなる。
だれも動こうとしない中、一人だけ唐突に動き出す。

「しょうがないか……。姫は強引にでも連れて行くよ」
声とともに動くは琉。萌絵の手を引っ張り、連れ出そうとする。
萌絵はその行動に反応することができない。

しかしそれと同時に全員が動き出す。目の前に立つはメイド姉。
「ダメだべ。絶対連れて行かせないべ」
両手を広げ、目一杯邪魔をするように立ちふさがる。
「邪魔だよ」
それを一蹴しようとし、止め、方向転換し、再び動き始め、目の前に立つ違う人間に刃を向ける。
「鐘、おまえならいいか。ほかの人を傷つけたら萌絵が怒る。
ただ、おまえならたとえ怒られても構わない」

「……わかった。相手になるよ」
鐘は静かに答え、ナイフを持ちかえる。
その言葉を出すのにないまぜになった感情を押し殺し、ただ無機質に言いきる。
「琉、その行動がどういう意味をもっているか分かっているの。また、繰り返す気?」
オブシディアの言葉に、琉は頭を横に振る。
「大丈夫。鐘にだけは力を使わない。そうすればきっとあれは起こらない」
言外に鐘以外で直接邪魔をする人間には"殺す"力を使うこと、
また力を使わなくても鐘に勝てるという自負が込められている。
オブシディアは何も言えなくなり、ただ立ち尽くす。何が起こってもいいように力を溜めながら。
旦那も準備行動を終え、いつでも行動を起こせるようする。
メイド姉妹はどうすることもできずにただ、見守る。


鐘、琉、萌絵を中心として円陣が組まれる。
二人の戦いが始まろうとしている。
131イラストに騙された名無しさん:2007/12/09(日) 19:41:19 ID:J4ZcP/df
乙ー。
締め切り迫ってて今回はちと無理そう。

……書いてたら笑ってやって。

132書けないのでこれまでのまとめ。:2007/12/11(火) 01:52:37 ID:aXK/9Ts+
萌絵をさらった鐘そっくりの少年・琉は教団に作られ記憶を受け継いだ、かつての萌絵の騎士だった。
かつて彼が鐘と争い、萌絵を殺してしまったことで始まった悲劇は、萌絵の我が儘――琉も鐘も救いたい――のために繰り返され、世界は何度も滅びてきた。
その事実を知るオブシディアは、しかし3人が揃ってしまった今、悲劇を防ぐ手だてを持たない。
一方イレギュラーである空は、あちこちに死亡フラグを立てつつ何かを決意しているようだった。

その頃シスターはバーテンと長耳に、教団に伝わる歌と3人の関係を説明しながら、公園に向かう。
また、鐘とともに動いていた一流も、鐘を先に行かせ、忍者姿になってひとり戦っていた。

2柱の邪神は干渉せず、教団は静観し、黄金郷は何の目的か大量の『神』に萌絵たちを襲わせる。
空の指揮のもと屋敷のメンバーと子どもたちが協力し、『神』をなんとか追い払ったが、それは核心に向かう序章でしかなかった。

これまでの『二人』を見てしまった萌絵は、罪悪感から教団に向かうことを一度は決意するが、屋敷の人々の説得によって、本当の望みに気づいてしまう。
けれども琉は萌絵を連れて行こうとし、その場を納得させるために、鐘に勝負をふっかける。
何も知らない鐘はそれでも承諾したが、心の内に迷いを抱えたままだった。
萌絵が戦うと決めた今、彼女よりも弱い自分が、なお騎士として萌絵の側にいる意義はあるのだろうか、と。

存在意義が揺らいでいる上、同じ顔の琉に「出来損ない」と断じられた鐘は、果たして勝機を掴めるのか。
そして悲劇への完全な引金となる「壁」は何を指すのか。
今度こそ、「壁」をうがち悲劇を回避することはできるのか――
物語は、未だ語り手を求めている。



……ってところだと思うんだけど、どうでしょうかね?

133イラストに騙された名無しさん:2007/12/11(火) 02:18:24 ID:aXK/9Ts+
追記する前に送っちゃったよ。

萌絵は矛盾する意思で固まって動けなくて、琉は鐘なら傷つけても後悔しないと考えてます。ついでに本気を出さなくても勝てると判断してます。
……ものすごい不利じゃなかろうか、鐘。

ああっ、いかん。考えてしまうっ!

1341/2:2007/12/14(金) 23:15:12 ID:8egQUXH3
琉が仕掛ける。鐘が避ける。
琉が仕掛ける。鐘が避ける。
攻防は、空の目にはそうとしか映らない。まして周囲は、執事たちくらいしか追い付いてないだろう。
「…馬鹿よね」
鐘は避け続けていた。
琉が誘っても、のらないままで。
「ほんと、バカ」
琉も仕掛け続けていた。
急所にならないところばかりを。
「ねえ、思わない?」
見えている空には解る。
まったく、何て素直でない優しさなんだろう。何て馬鹿馬鹿しいほどの人の好さなんだろう。
これは二人の時間稼ぎだ。
決められない萌絵に考える時間を与えるための、不器用な選択。それでも教団の支部が近いここでは、琉にできるギリギリのことなのだろう。
そして鐘はそれに乗った。事情なんてほとんど話してないのに、オブシディアの言葉通りなら、何も覚えていないはずなのに。
命がけに見える戦いは、全てを知る琉と何も知らない鐘の、姫にささぐ滑稽な踊りなのだ。
「思わない?だからこそ、好きだって」
そう言って、空は親友二人に笑いかける。
虚をつかれた顔のオブシディアと。
泣き濡れそうな瞳の萌絵に。

135イラストに騙された名無しさん:2007/12/15(土) 00:00:37 ID:8egQUXH3
「空…先ほどからおかしいですわよ。何が言いたいのです」
「うん?言いたいのはひとつだよ。

今の萌絵は嫌い。

こんだけ愛されて守られて……なのに、難しいからって、難しいからってその先考えるの止めてるっ。全部を、全部を望むなら望みなさいよ。教団に行くならそう、そう言えばいい。誰に止め、止められても進める、進める力があるくせに……一体何を悩むのよ?!」
彼女の声は震えていた。
「空ちゃ」
「選びなさい、選びなさいよ!全てが終わる、終わる前にみんな、みんな選んで、そいで進むしかないんだからっ!」

台詞が、その後も続いたのかはわからない。
空は唐突にくずおれたから。
彼女の背には、ボウガンの矢があったから。

「空ちゃん!」
萌絵の叫びに、いくつかの事態が動く。
振り向く鐘を取り押さえる琉。
狙撃手に向かう"牙"とタオル。
萌絵を押し倒すしょごす。
メイド姉妹をかばう旦那と庭師。
そして、
けれど、
敵は、消えた。
まるで、邪魔なものを掃除した、それだけだったように。

まるで、世界を滅ぼすシナリオを、邪魔させないかのように。

136イラストに騙された名無しさん:2007/12/15(土) 01:40:14 ID:JqkMACUZ
「まったく、『神』の次はメイドロボ?物量だけは尊敬するわね」
「『黄金郷』の名は伊達じゃない。金にものを言わせるだけの、権力も広げているしな」
裏社会での有名人は、会話しながらメイドロボに銃弾を叩き込み続ける。
「ほらエロ耳、ちゃんと伏せてないとまとめて撃つわよ」
「何を言うんだ、ぺたんこ可憐メイドVS豊満美人シスターなんて、こんな状況見逃せるわけないじゃないか!うわあ萌え萌えなのにもったいないパンチラ嬉しいけどもったいない服裂けも素敵だけどもったいない〜っ」
「……まとめて撃ったほうが世界のためかしら」
心底悲しそうな長耳に、シスターはぼそりと呟いた。
バーテンは賢く沈黙を保った。

彼らが見逃した一体が、空の背を撃ち抜いたことを知るのは、もうしばらく先のことになる。

137イラストに騙された名無しさん:2007/12/15(土) 08:44:40 ID:NoJ/+2gl
>>132
まとめ乙。
なるほど、そうなってたのか。
あらためてみると、矛盾ありそうで怖いな。


>>134
乙ー

空、終了のお知らせ。
ちなみに便利すぎは仕様でした。
それ自体が死亡フラグというネタ……。(自分でネタばらし格好悪い)
俺、ひどいやつだなあ。

……これは自分が考えてた三通りの展開のうちの一つに決まったかも。
1381/5:2007/12/15(土) 20:03:41 ID:NoJ/+2gl
赤く染まる――。

萌絵は見る。空の体から赤い模様が広がっていくのを見る。

ただ、見る。空の服が赤一色に染まっていくのを。

「あ……あ……」

鐘は見る。空の肌から血の気が失っていくのを。
琉に抑えられながら、空が生気を失っていくの見る。

「……う……あ」

オブシディアは聞く、空の言葉を。
かすれていく最後の言葉を

「あ……とは……まか……せたわよ……オブシ……」

止まる。空の言葉が。止まる、心臓の打つ音が。

「そ……ら……?」

オブシディアの呟き。その眼には涙が伝い、空だったものを見る。
「あなたは、どこまで分かっていましたの? こうなることも予測していましたの?
答えなさい……答えなさい……答えて!」

その言葉はやがて慟哭となって周囲に響く。
1392/5:2007/12/15(土) 20:05:45 ID:NoJ/+2gl
「なんども……」

萌絵のつぶやき。その中に含まれるぞっとするような響きに旦那と執事は振り返る。

「萌絵?」
萌絵の目は空に向けられながら、しかし空を見ていない。
萌絵は呟き続ける。

「何度も何度も何度も何度も繰り返し。最後にずっと独りきり。
目が覚めるといつも独りきり。ずっとずっと独りきり」

「萌絵? 僕がいるよ? 僕が守るって、今度こそ守るって約束したよ?」
琉の言葉に萌絵は言う。

「大丈夫だよ。今、決めたんだ。みんな、私が守るんだ、今度こそ失わないように」
萌絵の異常にメイド姉妹は気づき、もう一度呼びかける。
「萌絵?」
しかし萌絵は反応せず、呟く。
「誰もいない、独りきりでいる私。そんなのはいや。
新しく出会っても、みんなすぐにいなくなってしまうの。
"教団"が"黄金郷"が"神"が、みんなわたしからたいせつなひとを奪っていくの。


みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな

だから、決めた。みんなとたのしく暮らせるように、わたしが独りにならないように」


「まずはきょうだんをこわすの」
1403/5:2007/12/15(土) 20:07:31 ID:NoJ/+2gl
「萌絵? 本当にそんなことを考えているのか?」
旦那は言う。しかし萌絵はすでに聞いていない。
ただ黙って、歩き出す。目の前の教団へと。

"ひび割れた"眼鏡を掛け直し、歩き出す。一歩一歩ゆっくりと。
誰も声をかけられない。止める声を出す人間もいない。
その雰囲気の中

「萌絵」

しかし、一言で萌絵の歩みを止めた。
声の発生者は鐘。琉をゆっくりと押しのけ、萌絵に語りかける。

「萌絵の騎士になりたかった」
「ううん。しょう、はわたしのきしだよ、いまだって」
「でも、萌絵ははるかに強い力を持っていて、僕が守る必要なんてなかったんだよね」
「ううん。そうじゃないよ。わたしも、みんなをまもりたいだけなんだよ」
「……そっか。今でも僕は萌絵の騎士かな?」
「うん。そうだよ」
「ありがとう。それじゃ、行こうか?」
「うん。うれしいな、いっしょにいこう」
「うん。……萌絵は絶対守るよ。空の分も」

二人は連れ立って歩きだす。その様子に琉だけが我にかえる。

「ダメだ! そんなことをしたら二人とも本当に殺されてしま――」
琉は言い、二人の前に立ち、見た。

萌絵の目を
ひび割れたガラスの向こうにある目を
今は悲しみの色に揺れているがそれだけのはずの目。
だが
1414/5:2007/12/15(土) 20:11:23 ID:NoJ/+2gl
「は」
一音。
「はは」
二音
「ははは」
三音
声を出すほどに壊れる。
騎士としての自分。教団員としての自分。
男としての自分。琉としての自分。
自分が自分たらしめているすべての要素が、
静かに、しかし速やかに壊れていく。
ただ萌絵の目を見ているだけで、すべてが壊れる。
そこに映るは深淵。それを殺すために作られ、それゆえ対処できるはずの心が壊れる。

――頭に響く声がある。

コワレロコワレコワレコワレテイケ
コワレロコワレコワレコワレテイケ
コワレロコワレコワレコワレテイケ
コワレロコワレコワレコワレテイケ
コワレロコワレコワレコワレテイケ
コワレロコワレコワレコワレテイケ
コワレロコワレコワレコワレテイケ
コワレロコワレコワレコワレテイケ

永遠に繰り返される呪詛の声なき声――

「ははははは……うっくっ!」

視界は塞がれて何も見えない。かすかな一肌のぬくもりを感じ、
琉はオブシディアに抱きかかえられるようにして立っている自分に気づく。
琉が気づいたとこを察知したオブシディアは琉から離れる。
1425/5:2007/12/15(土) 20:13:54 ID:NoJ/+2gl
すでに二人はいない。


ただ立ち尽くしている面々の中に、二人だけがいなかった。


「二人は?」
「教団の中に入っていきましたわ……今の二人を止めるすべはわたくしにはありませんわ」
「そうか……?」
「わたくしも同じようにしたいぐらいですから」
「……そうか」
「それにしましても、よくあの死線にさらされて戻れましたわね」
「僕は"神"も殺せるんだよ? いくら力があっても"神"に精神が耐えられなければ意味がないよ」
「そうですわね」
やせがまんを言う琉にオブシディアは軽く答える。

音が変わり教団の中の音が慌ただしくなる。
その音を聞きながら。琉は言う。

「……変わったな。未来が」
琉の言葉にオブシディアは頷く。
「ええ、空が変えました。ただし最悪な形で、ですわね。
いえ、お父様にとっては最良の形かも知れませんが」
オブシディアは教団を見つめながらつぶやく。

「あの時に言えなかった壁、分からないとごまかしてしまった壁。
……萌絵の中にある"心の壁"は、ある意味最悪の形で崩されましたわ」
「すべての敵に死を。か……はは、僕が言うのもなんだけど。もうどうしようもないかもな」

それを最後に二人は黙りこくり、時々悲鳴の聞こえる教団の施設を見る。

事態は最悪に向かって進んでいる――
1436/5:2007/12/15(土) 20:16:57 ID:NoJ/+2gl

「息子が間違った方向に進もうというのなら、叱ってやるのが親というものだな」

その声にオブシディアは振り返る。そこにいるのは元殺、長耳、シスターの面々。

「琉様、遅れてしまい申し訳ありません」
「シスター。いや、いい。これはどうしようもなかったこと」
謝るシスターに声を掛ける琉。その様子を見て長耳が一言。

「なるほど。シスターって以外としょ……いたっ、て、ぶったー!」
「ええい! 気色悪い声で気色悪いこと言うな!」
あまりにもいつも通りのやりとりに、困惑するオブシディア。
この最悪な状況。なのにこの人たちは変わらない。

そこに
「そうだな。いくら大事な娘といっても、叱らないのはダメな親だ」
「そうだべ。旦那様、ひとつきつく叱るべ」
「お姉ちゃん。ほどほどにね」
旦那、メイド姉妹の声がかかる。

「それで、君達はどうする?」
元殺はオブシディア、琉に質問する。
元殺の目を見、オブシディアはその質問に即答する。
「鐘と萌絵を止めますわ」
「分かった」

元殺は頷くと教団のドアを開ける。二人を止めるために。


希望とともに物語は巻き戻らず先へと進む。この先に決められた道筋はない。
144そして世界のヒトになる1/3:2007/12/16(日) 00:20:30 ID:H+Pmf9DB
赤く 赤く 流れていく

それは まるで 夕暮れの

鉄錆の におい



蛍光灯の、白い光が空を照らす。
ぐっしょりと赤く濡れていた背は、固く茶色くこごっている。
青い肌に、かたまった髪がひと房たれていた。
「間に合わなかった」
忍び姿の少年は、それだけしか言わなかった。
背の高い彼女の幼馴染みは、自分の拳を壊しそうなほど、固く握って。
泣くことを許せないのだと、わかってしまったら責められなくなった。
あなたのせいじゃないわ、とも、言えなかったけれど。

数年前を思い出す。
太陽の下を歩けないからと、狭い書の館に閉じ込められていた私に、彼女は地下の居所をくれた。
陽光を絶やした空間で、私は彼女と同類と、研究の中で時を過ごした。
いつか、彼女が年老いて。
同類が、ゆっくりとくちて。
私だけが幼いまま、けれど時折思い返しては、誰かに語るのだろうと思っていた。

なのに。

あまりに早すぎる終わりに、私は息を切らしながら呆然としていた。

これは、約束を守ったということなの?
それとも、もう忘れてる?
145そして世界のヒトになる2/3:2007/12/16(日) 00:40:04 ID:H+Pmf9DB
「みんなして放置していったの?」
同類が珍しく声を尖らせる。少年は首をふって、
「僕が…運ぼうとしたら……」
「覚え書きのようなものが落ちたので、従うことにしたのです」
暗がり、そのさらに暗い場所から声がした。
壮年というには若く、
少年と呼ぶには育ちすぎた声が、
告げる。

「死後30分以内に青色が来たら、娘になると」

息をのんだのは、私だったか同類だったか。
だって、何という無謀。
「時間は?」
白衣を翻して同類が尋ねる。
「もうすぐ、30分になる」
では本当に分の悪い賭けだ。
けれど同類が仰向けた顔は、穏やかに力を失っていた。
誰かにもたれるように。
……期待、されている。
「きーちゃん」
同類が、呼び掛ける。
私の背中を押すために。
――押されて私は、空の前に膝を着いた。
146そして世界のヒトになる3/3:2007/12/16(日) 01:30:04 ID:H+Pmf9DB
「何を……?」
怪訝そうな声が届く前に、
私は屈みこんで、牙を立てた。
唇から、私の赤く黒い血がにじむ。
「あなたを迎えたくはなかった。
あなたには陽の下を歩いてほしかった。
けれどあなたが、あなた自身の責任において、求めるのならば応えよう。
生まれ堕ちなさい、我が娘よ――」
そして、
私は血を与えた。
「何をしてだがふっ!」
「こんなこともあろうかとー!」
騒ぎをよそに、私はがくがくと飛び跳ねる手足を押さえる。彼女のそれは抱えられるほど小さく、細かった。
死後30分弱経過後の、しかも血を流しすぎての転化……正直に言えば、化け物にならないだけで恩の字だ。まして空自身の記憶など――
「うっ、ク」
意思を持った動きを感じ、私は押さえていた力を抜いた。ゆっくりと彼女の瞼が開き、23度瞬いて焦点を結ぶ。
暗がりのさらに奥で、声の主が慄く気配がした。まして少年と同類は、息を詰めて彼女が起き上がるのを見ているしかない。
上を向く彼女の小さな顔が、大きな瞳が私を捉えて。
「……いい加減髪洗いなさいよ。青色が濃くなってるじゃない」
「流れる水はぁ、ニガテなのですよー」
「問題ない血族でしょうが!」

――かくて、イレギュラーは死にきり。
手乗りタイガーは、大人への道を止めた。
147イラストに騙された名無しさん:2007/12/16(日) 01:52:32 ID:H+Pmf9DB
「……貧乳ロリが確定したな、王道」
「う、うるさいうるさいうるさい!そっちこそ衣装の丈足りてないくせに!(ぽかぽか)」
「いーんだよ育ち盛りなんだか、て、ちょおま力つよすぎゃあああああっ!」

男ツンデレ好きだからまだ見たいんだよねー。
自分で書くのは下手なんだけどねー。
そんな超個人的事情により空復帰。

……冷静に考えりゃ、王道の病院運びこんで奇跡の復活でも良かったのな。
あと二人はフラグ臭気になって駆け付けたってことにしてください。

148イラストに騙された名無しさん:2007/12/16(日) 20:24:16 ID:zey5fuox
空、終了のお知らせ(SF的な意味で)ですな。

乙、と言いたい所だが、ここにいないで卒論を書きあげるんだw
いや、逃避エネルギーが働くのはわかるけどね。
149イラストに騙された名無しさん:2007/12/17(月) 21:16:04 ID:hFZBQbx2
一日経ってから一文抜けてることに気づいた。今は見てないだろうけど。

あと少しだ、頑張れー。
150イラストに騙された名無しさん:2007/12/21(金) 11:01:07 ID:vnmp3c9N
オワタ
一眠りしたら続き考える。
1511/4:2007/12/22(土) 20:20:24 ID:4v0hzdxI
月の光の入らぬ通路。蝋燭の明かりで照らされた場を歩く一人の女がいた。
その女は手にはロザリオを持ち、きょろきょろと必要以上に周囲を警戒する。
祈りのお言葉を口ずさみながら歩いていく。その声は震え、恐怖と必死に戦っている。
侵入者が現れた。それだけの情報により全員が配置についた。
いや、そのはずだった――

暗い教会の内部は不気味な静けさの中時折叫び声がこだましている。
女は手に汗を握りながら、とどまることはせず、歩き続ける。
女は恐怖と戦いながら、侵入者を迎撃するために移動する。

カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン

一歩歩くごとに足跡が響く。
足は震え、静かに歩こうとしてもそれすら叶わない。

カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン

あれは人間の姿をした化け物だ。

入口に配置された迎撃部隊が一瞬で壊滅した。
その様子を見た人間はそう報告し、それを最後に連絡が途絶えた。
いや、化け物というだけなら問題などない。
問題は

カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン

どう考えても勝てない、その一点のみである。
それでも教団のため女は戦いに向かう。

カカツン、カカツン、カカツン、カカツン

音が重なる。その音は自分以外が発する音。
1522/4:2007/12/22(土) 20:23:32 ID:4v0hzdxI
女は止まる。息を殺し、じっと耳を澄ます。

カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン

足音は止まらない。


女は精神を集中し、いつでも攻撃できるように銃を向け、音のする方を向き、待つ。
敵を迎撃する。勝てないと分かっていてもそれでも立ち向かわなくてはならない。

カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン
カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン
カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン

短く、長い時間。
一瞬が無限に引き伸ばされた感覚のなか、女は待つ。

カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン
カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン
カツン、カツン、カツン、カツン、カツン、カツン


そして


『それ』と目が合った。
ヒトの形をした深淵そのものを。

「いやああああああああああああぁぁぁぁぁっ!」

女は理性を吹き飛ばされ、すべてが深淵に塗りつぶされる。
1533/4:2007/12/22(土) 20:28:54 ID:4v0hzdxI
二人、萌絵と鐘は並んで歩く。
二人とも無言。ただ、手を軽く握り合い、自然体で通路を歩く。

時折向ってくる教団員。しかし一瞬で意識を失い倒れ伏す。
目の前には目があっただけで倒れた女性もいる。

二人は無言。ただ寄り添って歩く。

銃撃音が響くが弾丸は二人に当たる前に壊される。
撃った人間も次の瞬間倒れ伏す。

二人は無言。その気持ちも寄り添って、ただ違いだけがある。

一人は破壊を望む。これ以上失わないために。
一人は守る事を望む。これ以上失わないために。

邪魔するものなどない。邪魔など誰にもできない。
二人はそれぞれの目的のため、そこに向かう。
教団中枢部。教団を仕切る場へと。


扉が壊れる。そこには1人の人間が座っていた。
教団内で絶対の権力を持つ1人。それを萌絵が視る。

決して一枚岩ではないという教団。しかしその中において最上の位を持つ者。
それは教団内で教皇と呼ばれた人間だった。

その人間は二人を見て語りかける。
萌絵を見ても、その眼を見ても変らずそこにいる。
1544/4:2007/12/22(土) 20:35:06 ID:4v0hzdxI
「長かった……本当に長かった」

「……」

「はじめましてかな。萌絵、そしてその騎士殿よ」

「……」
二人は無言で教皇の前にいる。

「ようやく我々の計画が完成する。
あの、我々にとって殲滅対象でしかない偽りの神ではなく、人により育てられ、人の心を持った神。
我々の信仰する本物の神が、神の上、神を超える本物の神が生誕する」

「……」
二人は言葉を発しない。そして教皇はそのことを気にしない。

「さぁ萌絵。いや、新世界の神よ。今こそ世界を作り変えようではありませんか。
すべての人を幸いへと導くために」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

来週は帰省するため多分来れない。

ついで、仮にここのキャラでギャルゲー作る場合下手でも立ち絵あった方がいい?
それとも下手な絵ならむしろない方がいいだろうか?
……まぁそもそも製作期間、気力が続くまで+忙しいと中断だから完成しないと思うけどね。
155イラストに騙された名無し:2007/12/29(土) 16:25:23 ID:9EjIhsCw
hosyu
156イラストに騙された名無しさん:2007/12/30(日) 21:06:38 ID:aAqfZ1BT
すまん、続きはあるんだが長すぎる上に今携帯しか繋がらない。

明日調子がよければ書く。

立ち絵はAAだと楽しいとおもう。

157終幕へ到るためのいくつかの断章1:2007/12/31(月) 23:15:08 ID:In/33WIM
一方その頃、保護者集団は建物内を『洗浄』していた。
残留する萌絵の気配は、それだけで常人を狂わせるに充分だったのだ。
シスターは聖別された弾丸で聖魔法を唱え、琉は異能で『殺して』いく。
その傍らで。
「幻想生成!」
「イマジン・メイカー!」
渋い低音と楽天的な声によって放たれた力が、萌絵の撒いた『毒』を押し潰していく。
それは浄化とは異なる、力に対してさらに圧倒的な力で抑え込む所業だった。
「概念空間を利用してとはいえ……」
「凄まじいとしか言いようがないな……」
父親組が複雑そうに頷きあう。その後ろでは
「いやああああああ」
「オブシディアさん、しっかりするだべ」
「まだトラウマだったんだな……」
「怒りますってあれは」
そう、それは古代から続く、人間が邪を圧倒する手段のひとつ。
観念存在への純粋な愛――萌え萌えぱぅわ〜が『毒』を圧倒しているのだ。
幻想使いの二人からは、全国の名無しさんから発せられる、こうばしい力強さがみなぎっていた。
「さすが、コミケ最終日はひと味違うね!」
「何の話よ」
担当区域を『洗浄』し終えたシスターが突っ込む。
「それにしても、これほどまっすぐトップのところに向かうとはね。我が娘ながら大胆だ」
「無駄に害したくはなかったんだろう。ほとんどが気絶か」
気狂いだ、とは言えなかった。
「余力もそれほど割けないし……ちょっと遠回りになるけどこのルートで行きましょう」
シスターが汚されていないだろう迂回路を挙げ、琉が頷く。
その顔に若干疲労の色が浮かんでいることに、オブシディアは気がついた。
158不吉な付け方だから予告しよう:2008/01/02(水) 16:44:25 ID:XXDpId+M
ごめんやはり携帯は手が辛いですわ。
来週職人さん帰るらしいけど、一応結末まで書いといてネットつないだら書き込みます。
できるの8日だけどな! しかも早くてだけどな!
結局クリスマス越しちまったし……すまぬ。

159イラストに騙された名無しさん:2008/01/05(土) 23:03:48 ID:m7AIyfAq
あけおめことよろ(遅)

>>157
GJ
ああ、そういや最終日だったね。
シリアス雰囲気吹き飛ばすおバカな二人に和んだ。 

>>158
wktkして待ってます
160イラストに騙された名無しさん:2008/01/12(土) 04:13:04 ID:lIBG3OZR
ごめん、復旧まで当分かかりそうだよ……
できたら学校から書くが、気になるなら進めても構わん。
実は最後まで書けてないしな<オイコラ
161久しぶりに台本形式で:2008/02/02(土) 22:28:01 ID:8ecTPoBg
技研少女「それにしても空、もし私が来なかったらどうするつもりだったのですかー?」
空「うーん? 病院行って奇跡の復活?」
技研少女「心停止から45分は過ぎてるんですがー」
空「そこはほら、カエル顔の医者がいたりとか」
技研少女「ヘブンキャンセラー?」
空「新宿の医師でも可」
技研少女「メフィスト先生ですか?! パワーバランスおかしくなるから禁止ですよ。きっと」
空「注文多いわね。ま、冗談はともかく策はあったわよ」
技研少女「本当ですかー?」
空「いや、普通命の危険がある所に行くのに策なしじゃいかないから」
名門「で、何があった?」
空「それはね……」
技研少女「…………」
空「な・い・しょ……って何3人とも呆れた顔して見てるのよ!」
技研少女「本当はないのですのねー。期待して損しました」
名門「まったくだ。期待して損した」
空「む〜。ちゃんと死亡フラグ立てながら復活フラグも立ててたんだから!」
技研少女「はいはい」
名門「死亡フラグ立ててた自覚はあったんだな」
ぎっしー「そう何個も用意できますかー?。邪気眼的に」
空「だから、一発勝負は好きじゃないのよ。ま、そっちだと名前変わっちゃう予定だったからね」
技研少女「……でもそれって正確には蘇生じゃないですよー」
空「だから復活フラグなの」
技研少女「……間に合ってよかったですの」
空「うん、ありがとうね」
技研少女「どういたしまして」

名門「二人で納得してないでくれ。途中から意味がわからなくなったんだが」
空「いいの、気にしなくて。また、そのうち必要になるかも知れないから今は内緒なのよ」
技研少女「まったく、必要にはならないで欲しいです」
162イラストに騙された名無しさん:2008/02/15(金) 02:05:05 ID:fNxJIFYu
ごめん、まじでごめん。そしてありがとう。

ネット復活したけど書き込み拒否られて、そのままずるずるとやたら忙しく……てか卒論中より忙しいのは何故!?
うわあんモトカとマリーとか黄金卿とか萌絵の問答とかあるのに! あるのに!




……データなくしたダメな私を力一杯なじってくれ。いっそ思いきり殴ってくれ。むしろ慰めてくれ。

163慰めてみるテスト:2008/02/24(日) 09:25:01 ID:561VlxCi
「そりゃあ災難だったな。
 だけどまぁ、また書く楽しみができたと、そう考えたらどうだい?」

バーテンはそっけない調子で言うと、カウンターにグラスを置いた。

           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
          | さあ、こっちきて一杯飲みな。         |
          |       こいつは俺の奢り……いや  |
             \____ ___________/
  日 凸  ▽ ∇ U    |/ [] [] [] □□ 
  ≡≡≡≡≡≡≡≡  ∧∧  ≡≡≡≡≡≡≡≡
   U ∩ [] % 曰  (,゚Д゚,)  三 三 ニ 三
  _______▼_と ∽ )_______ 
             ...┴       
  ―――――――――――――――――
                 |\
   ━┳━ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
   ̄ ┻  ̄| あんたがこれから見せてくれる物語の対価、前払い分だ  |
         \________________________/
164イラストに騙された名無しさん:2008/02/24(日) 20:34:06 ID:WooLBdgJ
なにこれ
165イラストに騙された名無しさん:2008/02/24(日) 22:30:19 ID:CDp+pkla
一言で言うと「鐘」と「萌絵」を主人公として赤ちゃんの時から育てるスレ。
最近はライトノベルネタをパロりつつ、リレーSSをしながら成長して、中学生時代に突入中?
ネタジャンル広くて(クトゥルフまで混じってる)ので原作把握すらままならないがなー。
登場人物も多くて今からだと把握大変かも。
できるだけ過去のネタ拾いつつ結構好き勝手やってるけどね。
興味持った人はまとめWikiに過去ログあるから見て欲しい。


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| もしかして私一年以上でてないのかしら。
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   | /  /
    ∨    |  アンタは出番あっていいわよね。
日 凸 U | ______
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 U ∩ [] ∨% (゚Д゚;) < ……そういう問題か? それより何で俺がここにいる?
__ ∧∧___∧_∧|つ∽)_ \_____________________
  ( #`<)日(    )∇           /
― /   つ―(    つ―― _  _ 。〇 私、鐘君たちのこと忘れて帰ってきちゃいました。
 (___ノ   ━┳━)   ァく`!〕  ヾ] |  ……どうしましょう。
 ━┳━   └ ┃-・   | K/ ノノ)ノ)〉 \_________________
 ̄ ┻  ̄ ̄  ┻ ̄ ̄ ̄| l、!;゚ヮ゚ノ |
                l l.([l卯l]) |
166イラストに騙された名無しさん
舞台裏ってことで、目ぇつぶってくだされ。
あと説明乙。